魔物と魔力と動力石の関係 ・魔物とは この世界が神の絵であるという前提の元に語るならば、魔物とは「滲み」の一種。 本来あるべき姿を歪めてしまった動植物、それが魔物と呼ばれる生き物である。 ・魔物の生態 魔物は本来あるべき姿を歪めてしまった存在の為、生態系として必要な機能や器官を備えて居ない。 元が歪んだ存在であるため、子孫を残そうという意識も少ない。 早い話、多くの魔物は生殖器や胃といった、欲求に繋がる器官を持っていないのだ。 極まれに、動物としての原型を強く留めた魔物が子を成し群れを形成することもあるが、その出産率はきわめて低いと言われている。 また、一般的な種としての生態を備えた魔物も存在するにはするが、それは逆に動物と変わりが無いために魔物と認識されない場合が多い。 魔物を魔物と定義するもの、それはコアとも言うべき心臓部を備えていること。 このコアだけは、どんな弱い魔物も必ず備えている。 ・魔物の食事 魔物は基本的に食事をしない。 前述の生態で述べたが、胃を備えていない魔物も多く、そもそも食欲という欲求もない。 魔物は、そのコアに自然の魔力を吸収することで命を繋ぐのだ。 森に住まう魔物は土の魔力、海に住まう魔物は水の魔力。 その存在に必要な魔力を、自然界から自然に取り込むことで命を永らえさせている。 ・魔物の戦い 魔物は魔力で命を繋ぐ。 その魔力が枯渇した時、魔物は他者を襲う。 他者を食らうことで他者の魔力を吸収するという術を知っているのだ。 また、竜種を初めとする子を成す魔物は、妊娠時に自然と魔力を欲する。 胎内の子に魔力を分け与えるため、自然から吸収するだけでは魔力が追いつかず、きっかけ次第で直ぐに他者を襲うほど凶暴になるのだ。 そして、魔物は総じて縄張り意識が強い。 自分の縄張りはそのまま食事を取る魔力供給所のため、他の魔物が入り込むと魔力の供給量が減ってしまう。 その為、魔物たちはそれぞれの棲家を守るために戦うのだ。 ・魔物の分布 大きく東西南北に、魔物は住み分けをされている。 北の火山地帯には火のに属する魔物、東の森には土に属する魔物、等だ。 もちろん、それに類しない魔物も存在する。 例えば、山岳部に住まう鷲頭に獅子の身体を持つグリフォンという魔物は、火山地帯に属しているが風の属性が強い。 ・魔物の気性 北の魔物は気性が荒い。 それは人間が鉱山開発のために縄張りを侵すことが多いからだ。 棲家を奪われた魔物は、自然と魔力に飢えて人を襲うようになる。 東の魔物は気性が穏やかで知られている。 神龍の加護が厚い東の森は魔力が豊富で、余程の事がなければ飢える事がないためだ。 住人の"共感"能力もこれに拍車をかけ、子を成す魔物が多く生息し人々の生活に強く密着している。 南の魔物は縄張り意識が普通より強い。 海は森に勝るとも劣らず魔力が豊富だが、そこに住まう魔物は貪欲だ。 外敵の脅威が無い海では思うさま魔力を供給でき、総じて海の魔物は他の土地のものよりも大型になる傾向がある。 そして、その巨体を維持するためにより安定した縄張りを求める。 船が縄張り上を通るとこれを沈めようとするのはその為だ。 また、南の住人は竜喰いの影響か魔力を体内に多く保有する人間が多い。 それは食事とは言えないまでも、魔物にとっては食指をそそるデザートのように映っているのかもしれない。 西の魔物は余り動かない。 砂漠はそもそも魔力に乏しいため、無駄に活動して魔力を浪費することを良しとしないのだ。 その為、砂鮫のような捕食魔物を除いて、西の魔物は岩のように微動だにしない物が多い。 やたらと感覚が極端でも知られ、砂中に居ながら正確に砂上の人間の様子を伺うものもいれば、移動中に意識せず隊商を撥ねて行く鈍感なものもいる。 砂漠における舞は魔力を呼び込むため、実は人の生活圏に魔物が多く生息していたりする。 ・動力石とは 動力石とは、魔力を原動力として様々な効果を生み出すまさに動力である。 その製法は各地に点在する『工房』でのみ管理され、門外不出。 唯一知られていることは、工房が『ハンターギルド』と密接な関わりを持つことから、魔物が材料にされているのではないか、という俗説ていどだ。 ・動力石の種類 動力石は、この世界に存在する4つの魔力をそれぞれ顕現させる。 ◎火の動力石 ライター、コンロなどの火を生み出す力はもちろん、ランタンの代わりに灯りを生み出したり、熱を生み出し保温効果に利用したりする。 また、そのエネルギーを利用し、動力車や動力船なども開発されている。 爆発力にも注目されていて、粉末状に砕いたものを利用した銃などの兵器も開発されている。 ◎土の動力石 物質の硬度を高める効果を利用され、鎧や剣などの武具の強化用として使用される。 また、その派生として布で作られたテントを鉄の硬度に変えるなど、建造物の強化にも利用されている。 ◎水の動力石 多くはその効果が保冷として利用され、食材の鮮度を保ったりと便利に使われている。 また、強力なものは水を自在に湧き出させるため、一つあるだけで水樽を持ち歩かなくても旅の水に困らなくなり、砂漠などでは高級品として取り扱われている。 ◎風の動力石 扇風機や送風機として利用されることもしばしば。 物の重量を軽くする効果が利用され、運搬用カーゴを軽くしたり鎧を軽く強化するなどに使用されている。 また、現在開発途中ではあるものの、その効果を最大限に利用し空を飛ぶという計画が実行中。 ・動力石の加工 動力石は魔物のコアを加工することで作成する。 その為、その魔物がどの属性の魔力をどの程度保有していたかによって、動力石の種類と強さが決まるのだ。 竜種を初めとする強く強大な魔物ほど、多くの魔力を保有し強力な動力石となる。 ・動力石の普及 火の動力石が最も普及している。 これは北の帝国が動力石の第一人者であると同時に、魔物被害ももっとも多く、動力石の元となる火の魔力を帯びたコアが多く手に入る事が理由である。 次いで水の動力石。 これは彼の南の地方では竜食いなど、魔物を狩る風習があることが原因だ。 さらに言えば、コアは非常に硬く食用に適さないのも理由に上げておこう。 逆に、魔物と共存を推し進めている森の土の動力石は品数が少ない。 害の無い魔物を狩ることは自然に反する行いとして、現地人との諍いが絶えない。 西の風の動力石は、非常に特殊な普及率を見せる。 普段は砂漠の魔物はほとんど動かず、発見することも困難だ。 だが、巫女祭の時期になると首都周辺に多くの魔物が集まってくるため、その時期だけは風の魔物が多く狩り取られる事になる。 よって、一定期間のみ大量に普及すると、それ以後は時期がくるまで全く出回らない、という現象が起こるのだ。