AAAキャラバトルロワイアルpart4
- 1 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/01(土) 14:14:36 ID:VXLRhZgV0
- ここはトライエース(以下AAA)キャラでバトルロワイヤルを行う企画です。
参加資格は全員にあります。
参加型リレー小説というテーマを元に、皆さんで物語を作り上げていきましょう。
・企画発祥スレ
バトルロワイアル企画を考える inゲームサロン
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/gsaloon/1160050565/l50
・過去スレ
http://game12.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1162909976/
http://game12.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1172767328/
http://game14.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1186147301/
・まとめWiki
http://www23.atwiki.jp/aaarowa/
・したらば掲示板
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9356/
詳しい説明・ルールは>>2以降。
- 2 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/01(土) 14:22:13 ID:FlwBBILS0
- 【基本ルール】
・全員で殺し合いを行い、生き残った最後の一人が勝者。
・勝者には元の世界への帰還と、それとは別の褒美が主催者より与えられる?(未決定)
・参加者間でのやり取りに反則はない。
・参加者全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者無し)となる。
【スタート時の持ち物】
・参加者があらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
(義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない)
・また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される
・ゲーム開始直前に参加者は開催側から以下の物を支給される
「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。鞄などの類であればなんでも可
「地図」→ 大まかな地形の記された地図。禁止エリアがあるならば、それを判別するための境界線と座標がひかれている。
「コンパス」→ 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる
「照明器具」→ 着火器具+携帯ランタン(油は2〜3日分or切れない)、または懐中電灯。
「筆記用具」→ 普通の鉛筆と紙、もしくはノートの類。
「水と食料」→ 通常の飲料と食料。目安としては通常の成人男性で二〜三日分。
「名簿」→全ての参加者の名前のみ明記。
「時計」→ 普通の時計。時刻がわかる。主催者側が指定する時刻はこの時計で確認する
「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが入っている。作中の道具や武器、銃火器など
【放送関連】
一日四回、六時間毎に放送が入る。(0時、6時、12時、18時)
放送内容は「禁止エリアの場所と指定される時間」「過去6時間に死んだキャラ名」
「残りの人数」「主催者の気まぐれなお話」等。
【首輪・禁止エリア関連】
ゲーム開始前からプレイヤーは全員、「首輪」を填められている。
首輪が爆発すると、そのプレイヤーは死ぬ。(例外はない)
主催者側はいつでも自由に首輪を爆発させることができる。
この首輪はプレイヤーの生死を常に判断し、開催者側へプレイヤーの生死と現在位置のデータを送っている。
24時間死者が出ない場合は全員の首輪が発動し、全員が死ぬ。
「首輪」を外すことは専門的な知識がないと難しい。
下手に無理やり取り去ろうとすると首輪が自動的に爆発し死ぬことになる。
プレイヤーには説明はされないが、実は盗聴機能があり音声は開催者側に筒抜けである。
開催者側が一定時間毎に指定する禁止エリア内にいると首輪が自動的に爆発する。
なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
例え首輪を外しても会場からは脱出できないし、禁止能力が使えるようにもならない。
首輪の材質は「何が起きても首に超フィットする不思議なご都合主義パワーが篭った首輪」。
よって体を巨大化させるなどしても首輪を外すことは出来ない。
主催者側が一定時間毎に指定する禁止エリア内にいると首輪が自動的に爆発する。
禁止エリアは3時間ごとに1エリアづつ増えていく。
- 3 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/01(土) 14:23:22 ID:FlwBBILS0
- 【能力・能力制限関連】
身体能力、攻撃能力については基本的に無し。
(ただし敵ボスクラスについては例外的措置がある場合あり)
治癒魔法については通常の1/10以下の効果になっています。蘇生魔法は「気絶状態を治す」程度。
キャラが再生能力を持っている場合でもその能力は1/10程度に制限される。
しかしステータス異常回復は普通に行える。
その他、時空間移動能力なども使用不可。
MPを消費するということは精神的に消耗すること。MPを消費する=疲れる。
全体魔法の攻撃範囲は、術者の視野内にいると判断された人物。
MPは自然に徐々に回復(通常時なら二時間で10%、睡眠時はその2倍ぐらい)?
【キャラの特殊能力制限で決まっている設定】
・レナス 原子配列変換及びMP変換、世界再生能力の無効、精神集中※後述
・フェイト ディストラクションの弱体化(本編で使える技は特に制限なし)
・マリア アルティネイションの弱体化(本編で使える技は特にry)
・フレイ 空中浮遊の高度制限 空間移動←まだ決まっていない
・ダオス 時間転移能力の無効 空中浮遊の高度制限
・ガブリエル 崩壊紋章の無効、真・ガブリエル化による能力上昇無し(神曲は使用可能)
・ロキ ドラゴンオーブによるパワー解放の無効(支給品のドラゴンオーブを入手すれば可)
・ルシオン 形態変化の無効 再生能力の効果の弱体
・アーチェ 杖浮遊の無効(支給品にアーチェの浮遊杖があるなら別)
・レザード 移送方陣の無効 屍霊術(一人ぐらい)
・エイミ 竜変化(一回だけ)
・ノートン 再生能力の弱体
・シン 空中浮遊の高度制限
※レナスの精神集中について
1.放送毎に1回使用可能
2.使用中は完全に無防備
3.使用するには集中できる環境が必要
4.聞ける声は任意で選べない
5.声は聞こえるが人物を特定できる程鮮明ではない
6.ブラムス探知能力は無し
7.一応レナス一行が介入する事でその人間の死を回避する事は可能(放っておいたり、間に合わない場合は当然死亡)
【アイテム・クリエイション・料理関連】
アイテムによる回復は制限を受けない。
料理は「材料があればつくれるが、回復効果はない」いわゆる空腹を満たす程度。
ボーマンの調合スキルは薬草があればOK
【フェイズガン関連】
フェイズガンは弾丸がなく、エネルギー弾を発射する銃である。
だから弾込めする必要はないが、エネルギーが切れると撃てなくなる。
最大エネルギー量は100%で、銃の残量を(***/100)と示す。
[例] (70/100)とすると,残量が70%残っていることになる。
銃の威力または性能によって、弾を撃ったときの消費量が異なる。
またエネルギーが足りないときは一切撃てない。
[例] 残量が(41/100)の時、パルスショットガン(散弾式のフェイズガン)消費エネ33%は撃てるが、残量が(32/100)の時は撃てない
フェイズガンのエネルギーは放送ごとに50%補充される。
注意)徐々に補充されるわけではなく、一気に補充される。
フェイズガンを所持品と持っているとき〔名前〕〔性能〕〔消費エネルギー〕〔残量〕の順番に書く。
- 4 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/01(土) 14:23:51 ID:FlwBBILS0
- 【会場関連】
舞台になるのは原作ロワと同じ沖木島。街並みは現代風の田舎町。
現地調達できるアイテムは『普通に使ったら武器にならない』かつ『類似品が支給されてない』
・悪い例
「押入漁ってたらこんなの出ちゃいました」
「ちょwニュートロンボムwww」
・良い例
「押入漁ってたらこんなの出ちゃいました」
「広辞苑か……まあ役に立つかもなしれないし、貰っておくか」
食料は一軒につき一食分程度?
診療所には医療器具は無い?
- 5 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/01(土) 14:24:30 ID:FlwBBILS0
- 【書き手の心得その1(心構え)】
・この物語はリレー小説です。
みんなでひとつの物語をつくっている、ということを意識しましょう。一人で先走らないように。
・知らないキャラを書くときは、綿密な下調べをしてください。
二次創作で口調や言動に違和感を感じるのは致命的です。
・みんなの迷惑にならないように、連投規制にひっかかりそうであれば保管庫にうpしてください。
・巧い文章はではなく、キャラへの愛情と物語への情熱をもって、自分のもてる力すべてをふり絞って書け!
・叩かれても泣かない。
・来るのが辛いだろうけど、ものいいがついたらできる限り顔を出す事。
できれば自分で弁解なり無効宣言して欲しいです。
【書き手の心得その2(実際に書いてみる)】
・…を使うのが基本です。・・・や...はお勧めしません。また、リズムを崩すので多用は禁物。
・適切なところに句読点をうちましょう。特に文末は油断しているとつけわすれが多いです。
ただし、かぎかっこ「 」の文末にはつけなくてよいようです。
・適切なところで改行をしましょう。
改行のしすぎは文のリズムを崩しますが、ないと読みづらかったり、煩雑な印象を与えます。
・同じ文末を連続して使用するのはなるべく避けましょう。
・かぎかっこ「 」などの間は、二行目、三行目など、冒頭にスペースをあけてください。
・人物背景はできるだけ把握しておく事。
・過去ログ、マップはできるだけよんでおくこと。
特に自分の書くキャラの位置、周辺の情報は絶対にチェックしてください。
・一人称と三人称は区別してください。
・極力ご都合主義にならないよう配慮してください。露骨にやられると萎えます。
・「なぜ、どうしてこうなったのか」をはっきりとさせましょう。
・状況はきちんと描写することが大切です。また、会話の連続は控えたほうが吉。
ひとつの基準として、内容の多い会話は3つ以上連続させないなど。
・フラグは大事にする事。キャラの持ち味を殺さないように。ベタすぎる展開は避けてください。
・ライトノベルのような萌え要素などは両刃の剣。
・位置は誰にでもわかるよう、明確に書きましょう。
【書き手の心得3(一歩踏み込んでみる)】
・経過時間はできるだけ『多め』に見ておきましょう。
自分では駆け足すれば間に合うと思っても、他の人が納得してくれるとは限りません。
また、ギリギリ進行が何度も続くと、辻褄合わせが大変になってしまいます。
・キャラクターの回復スピードを早めすぎないようにしましょう。
(今までの話を平均すると、回復魔法使用+半日費やして6〜8割といったところです)
・戦闘以外で、出番が多いキャラを何度も動かすのは、できるだけ控えましょう。
あまり同じキャラばかり動き続けていると、読み手もお腹いっぱいな気分になってきます。
それに出番の少ないキャラ達が、あなたの愛の手を待っています。
・キャラの現在地や時間軸、凍結中のパートなど、雑談スレには色々な情報があります。
本スレだけでなく雑談スレにも目を通してね。
・『展開のための展開』はイクナイ(・A・)!
キャラクターはチェスの駒ではありません、各々の思考や移動経路などをしっかりと考えてあげてください。
・書きあがったら、投下前に一度しっかり見直してみましょう。
誤字脱字をぐっと減らせるし、話の問題点や矛盾点を見つけることができます。
一時間以上(理想は半日以上)間を空けてから見返すと一層効果的。
- 6 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/01(土) 14:25:04 ID:FlwBBILS0
- 【作品を書いた時の必要事項】
・作中での時間表記
深夜:0〜2
黎明:2〜4
早朝:4〜6
朝:6〜8
午前:8〜10
昼:10〜12
真昼:12〜14
午後:14〜16
夕方:16〜18
夜:18〜20
夜中:20〜22
真夜中:22〜24
・キャラ表記について
【座標/場所/時間】
【キャラクター名】[MP残量]
[装備]:キャラクターが装備している武器など、すぐに使える(使っている)ものを記入。
[道具]:キャラクターがザックなどにしまっている武器・アイテムなどを記入。
[状態]:キャラクターの肉体的、精神的状態を記入。
[思考]:現在具体的に考えている事・行っている事を記入。
[行動方針]:キャラクターの目的
[備考]:その他何か特記事項。無くても良い。
【名前 死亡】※死亡したキャラが出た場合のみいれる。
【残り○○人】※死亡したキャラが出た場合のみいれる。
以下、人数分。
−例−
【クロード・C・ケニー】[MP残量:50%]
[装備:木刀]
[道具:アップルグミ・フェイスガン・デイバック(支給品一式)]
[状態:頭部裂傷]
[思考:混乱]
[行動方針:主催者を打倒]
【ノートン 死亡】
【残り40人】
【修正に関して】
・修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述してください。
・NGや修正を申し立てられるのは、
「明らかな矛盾がある」「設定が違う」「時間の進み方が異常」「明らかに荒らす意図の元に書かれている」
「雑談スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等)」
以上の要件のうち、一つ以上を満たしている場合のみです。
・批判も意見の一つです。臆せずに言いましょう。
ただし、上記の修正要望要件を満たしていない場合は
修正してほしいと主張しても、実際に修正される可能性は0だと思って下さい。
・書き手が批判意見を元に、自主的に修正する事は自由です。
- 7 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/01(土) 14:25:33 ID:FlwBBILS0
- 【読み手の心得】
・このスレは投下・雑談を兼用しています。きたんなく雑談しましょう。
・好きなキャラがピンチになっても騒がない、愚痴らない。
・好きなキャラが死んでも泣かない、絡まない。
・荒らしは透明あぼーん推奨。
・批判意見に対する過度な擁護は、事態を泥沼化させる元です。
同じ意見に基づいた擁護レスを見つけたら、書き込むのを止めましょう。
・擁護レスに対する噛み付きは、事態を泥沼化させる元です。
修正要望を満たしていない場合、自分の意見を押し通そうとするのは止めましょう。
・嫌な気分になったら、バーニィ(ぬいぐるみも可)をふかふかしてマターリしてください。
・「空気嫁」は、言っている本人が一番空気を読めていない諸刃の剣。玄人でもお勧めしません。
・「フラグ潰し」はNGワード。2chのリレー小説に完璧なクオリティなんてものは存在しません。
やり場のない気持ちや怒りをぶつける前に、TVを付けてラジオ体操でもしてみましょう。
冷たい牛乳を飲んでカルシウムを摂取したり、一旦眠ったりするのも効果的です。
・感想は書き手の心の糧です。指摘は書き手の腕の研ぎ石です。
丁寧な感想や鋭い指摘は、書き手のモチベーションを上げ、引いては作品の質の向上に繋がります。
・ロワスレの繁栄や良作を望むなら、書き手のモチベーションを下げるような行動は極力慎みましょう。
・あまりしつこくダジャレを言ってる人がいたら「時空剣士乙」「クレス自重しろ」等で返しましょう。
- 8 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/01(土) 14:27:11 ID:FlwBBILS0
- 【参加者&生存状況】
スターオーシャン2(SO2) 11/15
○クロード/○レナ/○セリーヌ/○アシュトン/○プリシス/○ボーマン/○ディアス
○レオン/●オペラ/○エルネスト/●ノエル/●チサト/●シン/○ミカエル/○ガブリエル
スターオーシャン3(SO3) 6/15
○フェイト/○ソフィア/●スフレ/○クリフ/●ネル/●ロジャー/○マリア/○アルベル
●アドレー/●ミラージュ/●クレア/●ノートン/●ビウィグ/●ヴォックス/○IMITATIVEブレア
ヴァルキリープロファイル(VP) 7/13
○レナス/○アリューゼ/○レザード/○ルシオ/●メルティーナ/●ジェラード
●夢瑠/●ロウファ/●エイミ/○ジュン/○ブラムス/○ロキ/●フレイ
ヴァルキリープロファイル2(VP2) 1/2
●アリーシャ/○ルーファス
ラジアータストーリーズ(RS) 3/8
●ジャック/○リドリー/●ガンツ/●エルウェン/○ガウェイン/○ミランダ
●ガルヴァドス/●ルシオン
テイルズオブファンタジア(TOP) 4/9
○クレス/●ミント/○チェスター/○クラース/●アーチェ/○すず
●ダオス/●デミテル/●ジェストーナ
合計 31/62
○=生存 ●=死亡(一日目真昼〜夕方、開始から6〜10時間経過)
禁止エリア
C-04、G-03、E-06
19時にH-07、21時にI-07、23時にD-04
主催者:ルシファー(スフィア社)@SO3
【キャラの参加時期】
基本的に本編終了後(原作で死亡しているキャラは死亡した後)
SO2:本編終了後、BS前
VP:レナスとルシオはAエンド後 ロキとフレイはChapter7〜8辺り?
VP2:アリーシャ、ルーファス共にユグドラシルのオーディン戦後
RS:人間編END後?
TOP:チェスターは未来編突入直後
- 9 名前:テンプレ修正:2008/03/01(土) 14:29:40 ID:FlwBBILS0
- 【参加者&生存状況】
スターオーシャン2(SO2) 11/15
○クロード/○レナ/○セリーヌ/○アシュトン/○プリシス/○ボーマン/○ディアス
○レオン/●オペラ/○エルネスト/●ノエル/●チサト/●シン/○ミカエル/○ガブリエル
スターオーシャン3(SO3) 6/15
○フェイト/○ソフィア/●スフレ/○クリフ/●ネル/●ロジャー/○マリア/○アルベル
●アドレー/●ミラージュ/●クレア/●ノートン/●ビウィグ/●ヴォックス/○IMITATIVEブレア
ヴァルキリープロファイル(VP) 7/13
○レナス/○アリューゼ/○レザード/○ルシオ/●メルティーナ/●ジェラード
●夢瑠/●ロウファ/●エイミ/○ジュン/○ブラムス/○ロキ/●フレイ
ヴァルキリープロファイル2(VP2) 1/2
●アリーシャ/○ルーファス
ラジアータストーリーズ(RS) 3/8
●ジャック/○リドリー/●ガンツ/●エルウェン/○ガウェイン/○ミランダ
●ガルヴァドス/●ルシオン
テイルズオブファンタジア(TOP) 4/9
○クレス/●ミント/○チェスター/○クラース/●アーチェ/○すず
●ダオス/●デミテル/●ジェストーナ
合計 31/62
○=生存 ●=死亡(一日目夜〜夜中、開始から12〜16時間経過)
禁止エリア
C-04、G-03、E-06
19時にH-07、21時にI-07、23時にD-04
主催者:ルシファー(スフィア社)@SO3
【キャラの参加時期】
基本的に本編終了後(原作で死亡しているキャラは死亡した後)
SO2:本編終了後、BS前
VP:レナスとルシオはAエンド後 ロキとフレイはChapter7〜8辺り?
VP2:アリーシャ、ルーファス共にユグドラシルのオーディン戦後
RS:人間編END後?
TOP:チェスターは未来編突入直後
- 10 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/01(土) 14:38:16 ID:/tqk/Ha8O
- >>1
スレタテ乙乙
- 11 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/01(土) 14:47:38 ID:4UOj99rR0
- >>1
乙です
- 12 名前:目障りなら“殺せばいい” これ以外やり方を知らない:2008/03/01(土) 14:49:57 ID:4UOj99rR0
- 二回目の放送が終わってから一時間程経過した頃には、プリシスとアリューゼは目的地である氷川村に到着していた。
道中、放送を聞く為に立ち止まることもあったが、それ以外には特に問題も起こらず順調に進んでいる。
強いて問題を挙げるとしたら、二人とも放送で知り合いの名が呼ばれたことにより、口数がちょっとだけ減ったくらいである。
「少しいいか?」
アリューゼは背負っていたデイパックを地面に下ろしながら呟いた。
ランタンを取り出して火を灯す。この手の道具の扱いには慣れているのか、作業は本当に少しで終了した。
「へ〜、見かけによらず器用なんだ。でもさぁ、別に明かりは必要なくない?」
辺りは暗くなってはいるものの、別に彼らは明るい場所から急に暗い場所へ行った訳ではない。既にこの暗さに目が慣れている。
おまけに、今夜の月はとても明るかった。まさに月夜に提灯ならぬ月夜にランタンである。
「ああ、別に夜道を歩く分には必要ないな」
「? じゃあ何で?」
「そうだな……この村を良く観察してみな。普通の村の風景と比べると、何か違和感を感じないか?」
プリシスは言われた通り村を観察すると、確かに何かが違和感を感じた。ただ、その正体までは分からない。
「ヒント、今は夜。ただし暗くなってはいるが、時刻はまだ7時」
このヒントを聞いて、プリシスはやっと違和感の正体に気づいた。
「あっ! 明かりがついてる家が一つもないんだ!」
その答えに満足したのか、アリューゼは僅かながら笑みを零す。
「その通りだ。この島には住人のいない、住人のいない家に明かりなんてつく筈がない。逆に言えば……」
「明かりがある場所には誰かがいるってことね」
アリューゼは頷くと、左手で持っているランタンをプリシスに見せるように少し持ち上げた。
「そうだ。つまりこいつは夜道を歩く為の照明じゃねえ、他の奴らを誘き寄せる為の餌って訳だ」
「う〜ん……でも、それって危なくないの? ゲームに乗った人たちも呼んじゃうじゃない」
「別に構いやしねえよ」
構わないという発言に対し、プリシスは何か言おうとしたが、
「むしろ、本命はアシュトンって奴だ」
アシュトンの名を出されて言葉が詰まる。
「お前、そいつに言いたいことがあるんだろ? 話すチャンスくらいはくれてやる」
「…………」
「ただ、聞く耳を持たなかった場合は容赦はしねえぞ。こっちも仲間を殺されてるんでねえ、そいつを殺す理由はあるんだよ」
プリシスは無言で頷いた。それを確認すると、アリューゼは右手を差し出して声をかける。
「分かったならさっさと動くぞ。取り敢えずお前もランタンを出せ。点けてやるから」
「いいよ、それくらい自分でやるから!」
そう言ってプリシスはランタンを弄り出した。ランタンの明かりは直ぐに点いた。点灯までの時間はアリューゼの時より遥かに早い。
「準備オッケー! さ、早く行こうアリューゼ」
アリューゼは無言で頷き、二人並んで歩きだした。
■
- 13 名前:目障りなら“殺せばいい” これ以外やり方を知らない:2008/03/01(土) 14:51:45 ID:4UOj99rR0
- 暗い部屋の中で、アルベルはこれからの人生に関わる(かもしれない)問題を前に頭を抱えていた。
その問題の発生源は、同じ部屋にいる猫耳メイドだ。いや、正確には猫耳メイドがいることが問題なのではない。
猫耳メイド【レオン・D・S・ゲーステ】性別♂。アルベルはこのレオンの姿を見て、思わず「可愛い」と思ってしまった。
彼はこのことを、男として踏み込んではいけない領域のように感じていたのだ。
(落ち着け。俺はこんな餓鬼を見て「可愛い」なんて考える奴だったのか? 断じて否ッ!)
……別に、可愛いものを可愛いと思ってはいけないなんてことはないのだけど。
「アルベル」
「うおっ!?」
そんなくだらないことを考えているとき、突然後ろから名前を呼ばれた。振り返った先にいたのは、先ほど寝たはずのディアスであった。
「お前、寝たんじゃなかったのか」
「どうも寝付けなくてな。そんなことより、お前に貸して置く物がある」
ディアスは右の拳を差し出す。その拳をゆっくりと開くと、中には小さなピアスが一つだけあった。
「あん……ピアス?」
「着けてみれば分かる。左耳にな」
アルベルは言われた通りにピアスを身に着ける。すると不思議なことに、視野が広がり感覚が研ぎ澄まされたではないか。
「な、何だ!?」
「魔眼のピアス。見張りには持って来いだろう?」
確かに便利な道具だとアルベルは思った。だが、直ぐに疑問が浮かぶ。
「おい、こんな便利なもんがあるならさっさと出せよ」
ディアスはアルベルに一枚の紙切れを見せる。魔眼のピアスの説明書だ。
「先程も言ったが、寝付けなくてな。荷物整理をしていてたまたまこれを見つけた。……このピアスは俺の物ではない。後で必ず返してくれ」
「成程、お前の物じゃないってんなら仕方ない。分かったからお前はおとなしく寝て……ん?」
会話の途中にも関わらずにアルベルは、魔眼のピアスにより研ぎ澄まされていた感覚のお陰であることに気づき、急いで窓際へ移動する。
窓から外の様子を窺うと、夜の暗がりの中に浮かぶ二つの明かりを見つけた。
「どうした?」
「見てみな、どうやら間抜けがいるようだぜ」
その明かりをディアスも確認するが、彼は怪訝な表情を受けべる。
「……罠じゃないのか?」
「んなもんどっちだって構わねえ。誰かいるってんならやることは一つだろ。丁度剣の試し切りもして置きたかったところだ」
アルベルはピアスを外すと、ディアスに投げ渡した。
「おい、待てアルベル!」
「ここはお前に任せた。話の分かる相手だったらここに連れてくる、そうじゃないなら殺す。これで構わないよな?」
アルベルは返答も聞かなで、玄関を潜り明かりの方へ駈け出した。
ディアスは慌てて後を追いかけてアルベルを引き留める。彼の怪我した左肩に掴みかかって。
「〜〜〜〜ッ!!! てめぇ、何しやがる!」
「悪い、わざとじゃないんだ」
絶対わざとだろ! と言おうとしたが、ディアスの話がそれを遮る。
「相手が誰であれ、ゲームに乗っている者なら思う存分暴れて構わない。それが例えアシュトンだとしてもだ。だが、もしプリシスだったときは少し待って欲しい」
「? 何でだ?」
「お前は、プリシスのことはアシュトンから聞いたのだろう? しかし、俺もお前もプリシス本人には会ってはいない。つまり……」
「つまりあれか、そいつはゲームに乗ってない可能性もあるから様子を見てから攻撃しろってことか?」
「ああ、その通りだ。付け加えるなら、出来るだけ彼女を仲間に引き入れたいという理由もある。彼女の持つ技術は有用だ」
アルベルは少し考えてみた。確かに不確定な情報で動くのは愚の骨頂だ。実際、見た目だけでゲームに乗った者扱いされた彼には特に良く理解できる。
「ちっ、しゃーねえな。だが、そいつが本当にゲームに乗っていた場合は容赦しないからな」
そして、アルベルは駈け出して行った。
- 14 名前:目障りなら“殺せばいい” これ以外やり方を知らない:2008/03/01(土) 14:53:47 ID:4UOj99rR0
- 残されたディアスは、家の中に戻り、荷物の前で腰を下ろす。
(当初の予定とは違ったが、あの男を引き入れて置いて正解だったな)
元々アルベルは自分たちの用心棒として雇ったのだ。他の参加者を見つけてわざわざ接触に向かうなど想定の範囲外だ。
だが、ディアスはそれでも構わないと考えていた。
他の参加者と出来るだけ情報交換をして置きたい。その役目をアルベルがやってくれるなら、その間にレナたちを危険に晒すこともない。
仮に相手がゲームに乗った者だとしても、自分たちから離れた位置で戦ってくれるなら、こちらに被害が及ぶ可能性は低いだろう。
相手のスタンスが分からない内から、自分たちの寝床を話すほどアルベルも馬鹿ではない……と思いたい。
(問題は、俺がどこまでやれるのか……か)
荷物から三本の刃を取り出し、腰に差す。
そうなのだ、一人でレナとレオンの二人を守り切るのが難しいだろう。その為にアルベルを雇ったのだ。
だけど、アルベルを引き留めず敢えて行かせた。なら、自分が弱音を吐くわけにはいかない。二人は何があっても守り切らなければならない。
ディアスは一度大きな溜息を吐くと、魔眼のピアスを身に着けてからソファーに腰を下ろす。
そのとき、ピアスの力で鋭くなった感覚の中で、何か違和感を感じた。
「…………?」
より集中して違和感の正体を探ってみる。答えは直ぐに分かった。周囲に人の気配が三つあったのだ。今この部屋にいるのは、自分を除いて二人。
ではもう一人は誰だ。アルベルが戻って来たのか? と考えたが、この三つ目の気配からは、次第に敵意のようなものが感じられるようになってきた。
そしてこの気配を見つけてから数秒後、これもピアスの力なのか、ディアスの頭にハッキリと警報が鳴り響く。『敵襲』とけたたましく。
次の瞬間、彼の頭上――この家の天井が砕け、巨大な白い光弾が飛び込んで来た。
■
「ねえアリューゼ。今気づいたんだけどさぁ」
「ん……どうした?」
氷川村で“夜釣り”を始めてから数十分が経過した頃、プリシスが突然声をあげた。ちなみに夜釣りの成果は未だない。
「わざと目立つならさ、てきと〜な家に明かりを点けて、そこで誰かが来るのを待ってた方が楽じゃないの?」
それを聞いたアリューゼは、呆れたような表情を浮かべる。
「確かに楽だけどよ、家に明かりが点いてるってのは流石に怪しすぎるだろ。それじゃあ誰も近寄ってこないぞ」
「何でよ?」
「そりゃあ罠に見えるからに決まってんだろ。こうやって明かりを持ちながら歩くのと違ってな、本当に人がいるのか分からないんだ。多少の面倒は我慢しろ」
返答を聞いたプリシスは、頷きながら溜息を吐いた。
「う〜ん、人を誘き寄せるってのも大変なんだね」
疑問が解決したところで、二人は再び歩き出す。人を探す為に。そして、その目的はあっさり達成されることとなる。
「それで、お前らは人を誘き寄せて何しようってんだ?」
知らない男の声。アリューゼは、直ぐに声のした方にランタンを向ける。その際、プリシスを自分の後ろに下がらせることも忘れない。
ランタンの明かりに照らされたその男は、やたら露出の多い服を着ていた。そして、絵にかいたような悪人面であった。
- 15 名前:目障りなら“殺せばいい” これ以外やり方を知らない:2008/03/01(土) 14:55:56 ID:4UOj99rR0
- 「質問に答えな。何をするつもりなんだ?」
悪人面の男――アルベルは、睨みを利かせながら再度二人に問う。彼の右手は、腰に差している剣の柄に添えられており、直ぐにでも抜刀出来る状態だ。
「何って――アリューゼ?」
「プリシス、お前は下がってろ」
質問に答えようとしたプリシスを、アリューゼは右腕で制した。アルベルは確かに悪人面に見えたが、質問の内容はゲームに乗った者のするものではない。
だが、警戒に越したことはない。それがアリューゼの判断であり、その判断は決して間違いではない。いや、正解と言えるだろう。
しかし、もしここでプリシスが彼の質問に答えていれば、もしアリューゼが彼女の名前を出さなければ、ここから先の出来事は、大きく変わっていたかもしれない。
「プリシス……だと?」
アルベルはその名前を知っていた。彼と対峙した、龍を背負った男の言っていた名前。ディアスが言っていた名前。ゲームに乗った可能性がある者の名前。
先ほどこの二人が話していた「人を誘き寄せる」という言葉により強めていた警戒の度合が、この名前を聞いた途端一気に跳ね上がった。
「成程、龍を付けた阿呆の言ってたことは、強ち間違いではないようだな!」
叫びと共に腰の剣を抜き放つと、そのまま彼独特の構えを執る。
「龍……もしかしてアシュトンのこと!」
「下がってろと言ったはずだッ!」
アリューゼはプリシスに怒鳴りつけた後、鉄パイプを取り出し、臨戦態勢に入った。この男の目的は分からないが、相手剣を抜いた以上当然の行動だ。
「アシュトン? ああ、そんな名前だったな。だが、そんなことはどうでもいい。一応、お前は直ぐに殺すなと言われてるが……どうするべきかなぁ?」
アシュトンを知っている。プリシスは直ぐには殺すなと言われた。彼の言葉から分かったことはこの二つ。
ジャック・ラッセルの証言から、アシュトンの目的が「プリシスの望みを叶える為」ということは分かっている。
このことから、アシュトンがこの男に「プリシスは殺すな」と言われただろうということは、容易に想像できた。
こんなことをアシュトンから言われるような男なのだ、この男もアシュトン同様ゲームに乗っている可能性が極めて高いだろう。何より悪人面だし。
「……殺る気があるのかないのか聞いてるんだよ」
アリューゼは、アルベルを睨みつけたまま構えを解かない。それをアルベルは「殺る気がある」という意思表示と受け取った。
男二人は、睨み合ったまま動こうとしない。二人とも数多くの修羅場を潜って来た兵だ。下手に動ける訳がない。
しかし、少女を一人蚊帳の外にしたまま行われている睨み合いは、本人たちには予想外の出来事で、
アルベルの後方、割と近い場所から発生した光と轟音によってで終わりを迎えた。
- 16 名前:目障りなら“殺せばいい” これ以外やり方を知らない:2008/03/01(土) 14:57:27 ID:4UOj99rR0
- 「――――ッ!!」
先ほどまで自分のいた場所から、未だ彼の仲間がいるはずの場所から聞こえてきた音に、アルベルは一瞬気を取られてしまった。
その一瞬の隙をついて、アリューゼはアルベルに猛進する。
「くッ!」
不意をつかれた形となったアルベルだが、相手に向けて慌てずに剣を振う。
だが、その動きを読んでいたアリューゼは、その巨体に似合わぬ軽やかな動きでアルベルの背後に移動する。
彼の世界では『ダーク』と呼ばれる戦闘技術だ。
アルベルは慌てて後ろに振り返るが、既に目の前には、回転を加えられた強烈な裏拳が迫っていた。
「グァッ!」
短い呻きと共に、アルベルの体は右方向へ吹っ飛ばされる。アリューゼは、それを見送る何てことはせずに、追撃を加える為再度突進する。
進路上に赤い靄が掛かっていることに気づかないで。
「ッ! な……んだとぉ!?」
靄に触れた途端、アリューゼに肉体的でなく精神的な負荷が幾度となく襲いかかる。
(ふん……意外と上手くいくもんだな)
アルベルは、吹き飛ばされながら魔掌壁を放っていた。
それも、普段この技に使用する左手ではなく剣を握ったままの右手でだ。これには、上手く使用出来たことに本人も少し驚いているくらいだ。
兎に角追撃は妨害出来た。口の中に溜まった血を吐き捨てながら立ち上がる。吐き出された血には白い固形物、即ち歯も混ざっていた。
(それにしても、一体何があった? あいつらが襲撃されたってのか?)
彼は魔掌壁によって出来た僅かな時間で考える。あの時の轟音は、まず間違いなく自分がいた民家の方から聞こえてきたものだ。
とすると、考えられる中で一番可能性が高いのは、あの民家が何者かに襲撃されるということだ。
(この阿呆共を放って置く訳にはいかないが……用心棒を頼まれている以上、あいつらを助けに行くべきだろうな)
結局彼は、ディアスたちを助けに行くことを選択する。
最悪の場合、この二人に向こうの襲撃者を加えた数を自分一人で相手にすることになるのだが、それこそ望むところだった。
そうと決めたら早速動かなければ。魔掌壁もそろそろ効果がなくなる頃だろう。
アルベルは民家の方へ向かおうとするが、突然飛来して来た光弾が、彼の足下にある土を抉り取った。
「動かないで!」
「……あん?」
完全に蚊帳の外だった少女からの攻撃に驚き、そちらに顔を向けると……先ほどとは別の意味で驚かされた。
少女が自分に向って銃を構えていた。別に銃を向けていたことに驚いたのではない。その銃に見覚えがあったのだ。
(あれは、確かネルが使っていた……)
彼はこの銃を突き付けられたことがあった。つまり目の前で見たことがあるのだ、間違える筈がない。
では、何故その銃をこの少女が持っているのか? その答えは考えるまでもなかった。いや、この銃のお陰で答えに辿り着いたと言える。
アシュトンはこの少女がゲームに乗ったと言っていた。ネルの名前は先の放送で呼ばれている。そして、この少女はネルの獲物を持っているのだ。
そこから導き出される答えは一つ――
「ハハ……成程、お前たちが殺ったのか」
「動かないでって言ったでしょ!?」
プリシスがまた警告を口にするが、アルベルはまるで聞いちゃいない。
魔掌壁から解放されたアリューゼが、プリシスに駆け寄っている姿も目に入ってはいるが、完全に無視だ。
ディアスたちを助けに行こうとしていたことも、今この瞬間は忘れてしまっていた。本人に自覚はないだろうが、今、彼の脳内を満たしているものそれは、
「見逃してやらなくて正解だった……死ねッ! クソ虫ッ!!」
仲間を殺した者への怒り。ただそれだけであった。
■
- 17 名前:目障りなら“殺せばいい” これ以外やり方を知らない:2008/03/01(土) 14:58:54 ID:4UOj99rR0
- 僅か数秒前までの綺麗に整えられた部屋は、今は瓦礫に覆われて見る影もない。天井には穴が空いており、そこから月明かりが漏れている。
そんな状態の部屋で、ディアスは少年に声をかけながら必死に揺さぶっていた。
「レオン、おいレオン、起きろレオン!」
「ん……あ……」
うめき声が聞こえた。どうやら意識戻ったようだ。
「レオン、俺のことが分かるか?」
「え……ディアス……お兄ちゃん?」
どうやら、寝起きの割には意識もはっきりしているようだ。ディアスは安心して大きく息を吐く。
「ああ、そうだ……立てるかレオン?」
「うん、大丈……あれ?」
左腕を使って立ち上がろうとしたが、上手くいかずに倒れてしまう。ディアスはそれを見て慌てて支える。
「そういえばお兄ちゃんどうして……そうだ、確かルシファーって奴に殺し合えって……」
「残念だがその殺し合いはまだ続いている。詳しく状況を教えてやりたいところだが、今は時間がない」
ディアスは一枚の地図をレオンに手渡す。そこには、丸印が一つとバツ印が六つ記入されていた。
「いいかレオン。今俺たちはこの丸印の場所、つまり氷川村にいる。そして、バツ印は禁止エリアの位置だ。ここまではいいな?」
レオンが頷くのを待ってから、ディアスは話を再開する。
「その内、H-07は既に禁止エリアとなっている。そして、今から約二時間後にI-07が禁止エリアとなる。
今からお前には、レナを連れてI-07を通過し、I-08へ行ってもらいたい」
「ええ!! ちょっとどういうこと? って言うかレナお姉ちゃんいたの?」
どうやらレオンは、今になって自分の隣にレナが寝かされていることに気づいたらしい。まあこの暗がりではしょうがない。
「だから時間がないと言ったのだ。詳しいことは、レナが起きた後彼女から聞いてくれ」
「レナお姉ちゃんは起こさないの?」
「ああ、今は起こす訳にはいかない。それと、俺もお前たちとは一緒に行けない」
レオンは抗議の声を上げようとするが、ディアスはその行動をさせない。護身刀“竜穿”を引き抜くと、それをレオンの眉間に突き付ける。
「いいから言うことを聞け! 正直に言おう、お前たちは足手纏いだ。俺にはそんな奴を連れ歩く余裕はない」
抗議をしたくても、剣を向けられては出来る筈がない。レオンは、ただ黙ってディアスを見つめることしか出来なかった。
その僅かな沈黙の中、彼はディアスの頭から血が滴り落ちていることに気づく。
「あ……ディアスお兄ちゃん、血が……」
ディアスは、空いた手で血を拭ってから、静かに語り出した。
「言った筈だ、殺し合いはまだ続いていると……今、この周辺にはゲームに乗った奴がいる。
お前たちには万が一のときにそなえて、そいつが移動できない場所……禁止エリアの向こう側へ移動して欲しい」
「なっ……馬鹿にしないでよ、僕だって戦え「では、だれがレナを守るのだ」……あ」
反射的に隣にいるレナを見る。彼女は未だに目を覚ます気配がない。
「もし俺が敗れたとき、お前はレナを守りながらそいつと戦えるのか?」
「…………」
「それに、お前は俺と違って戦いだけした能がない者ではないのだぞ。お前は戦いのことではなく、その頭脳でこの状況を打開する方法を考えろ。
俺のような人間は、お前たちのような人間の邪魔となる者を出来る限り排除する。そうするべきではないか?」
それを聞いてレオンはハッとした。そうなのだ、自分の役割は首輪を外してこの殺し合いを終わらせることなのだ。断じて自ら戦いを挑むことではない。
「分かったよ、言う通りにすればいいんでしょ」
ディアスは肯定の言葉を聞くと、二人の出発準備に取り掛かる。レオンにレナを背負わせ、さらに落ちないようにシーツを使って固定する。
デイパックは、嵩張らないよう一つにまとめてから持たせた。取り敢えずこれで準備は終了。
比較的損傷の少なかった窓を開け、そこから外へ出る。
「言われるまでもないとは思うが、制限時間は約二時間だ。辛いとは思うが、頑張ってくれ」
「うん……お兄ちゃんも死なないでね」
「心配するな。さあ、もう行くんだ」
ディアスに促され走り出すレオン。その姿を最後まで見送ることもぜずに、ディアスもまた走り出した。目的は、勿論自分たちを襲撃したものを倒す為。
彼は襲撃された瞬間、自分に支給された三つ目の道具『セフティジュエル』を使用していた。
この道具の効果が説明道理なら、敵は動けずにいる筈だ。レオンを逃がす時間を作れたのもこの道具のお蔭である。
そして、予想道理家の近くで固まっている人物を見つけるが、ディアスはそれを見た瞬間大きな舌打ちをしていた。
- 18 名前:目障りなら“殺せばいい” これ以外やり方を知らない:2008/03/01(土) 15:02:00 ID:4UOj99rR0
- 屋根の一部が崩れ落ちた民家、その前に男が一人立っていた。その男は、半壊した民家を、自分の手で起こした破壊の跡を見上げて渋い表情をしている。
(サザンクロスでさえ……この程度の破壊しか出来ないか)
この男――ガブリエルは、潜伏先が禁止エリアとなった為、新たな潜伏先を探すべくこの村へやって来ていたのだ。
村に到着後直ぐに、ガブリエルは二つの小さな明かりを見つけた。それが何だかは知らないが、積極的に係る気はなかった。
今の彼の状態は酷いものであり、おまけに魔力も残り少なかったからだ。だが、その明かりの正体くらいは確認しよう考え、暗視機能付き望遠鏡を取り出す。
そして、明かりの方を見ようとしたところ、明かりを見る前にそれとは別の二人組を見つけてしまったのだ。その内、片方は彼もよく知っている相手である。
暫く見ていると、知らない方の男は何処かへ走り去り、知っている方の男は近くの民家に入って行った。勿論彼らはガブリエルに気づいていない。
ガブリエルはこれを好機と考えた。相手の潜伏先が分かっているなら、その家を外から破壊してしまえばいい。
運がよければそれだけで相手を殺せるかもしれない。仮に相手に手傷を負わすことすら失敗しても、瓦礫となった家からは直ぐに出て来れないだろう。
つまり、撤退に必要な時間は十分に取れると考えていたのだが、
(今の状況も……上手く行かないものだ)
ガブリエルは、今になって見上げるのを止めて体の向きを変えた。彼は、攻撃後から今にいたるまで一歩も動いていなかったのだ。っていうか動けなかった。
理由は分からないが、サザンクロスを放った直後から、まるで金縛りにあったように動けなくなってしまったのだ。
そして今、漸く動けるようになったにも関わらず、彼の表情は相変わらず厳しいものだった。
目の前には、自分が先ほど攻撃をした男――ディアスが、その殺気を隠そうともせずに立っていたのだ。
「ガブリエル……貴様だったのか」
「……愚かな。どんな手を使ったかは知らないが、逃げておけばよかったものを」
ディアスは、腰に差した咎人の剣の柄を握るとそれを勢いよく引き抜いた。
【I-06/夕方】
【アルベル・ノックス】[MP残量:90%]
[状態:怒り、左手首に深い切り傷(応急処置済みだが戦闘に支障あり)、左肩に咬み傷(応急処置済み)、口内出血、左の奥歯が一本欠けている]
[装備:セイクリッドティア@SO2]
[道具:木材×2、荷物一式]
[行動方針:ルシファーの野郎をぶちのめす! 方法? 知るか!]
[思考1:まずはこの二人(プリシスとアリューゼ)を殺す]
[思考2:傷を治してもらうまでディアス達の用心棒をする]
[思考3:後方で何が起こっているのか気になる]
[思考4:龍を背負った男(アシュトン)を警戒]
[現在位置:I-06 町中]
※木材は本体1.5m程の細い物です。耐久力は低く、負荷がかかる技などを使うと折れます。
【プリシス・F・ノイマン】[MP残量:100%]
[状態:不安、アシュトンがゲームに乗った事に対するショック]
[装備:マグナムパンチ@SO2、セブンスレイ〔25〕〔25/100〕@SO2]
[道具:ドルメラ工具セット@SO3、????←本人&アリューゼ確認済み、首輪、荷物一式]
[行動方針:惨劇を生まないために、情報を集め首輪を解除。ルシファーを打倒]
[思考1:目の前の男(アルベル)に対処する]
[思考2:氷川村で情報収集]
[思考3:仲間、ヴァルキリーを探す]
[思考4:アシュトンを説得したい]
[思考5:どこかで首輪を調べる]
[現在位置:I-06 町中]
【アリューゼ】[MP残量:70%]
[状態:正常]
[装備:鉄パイプ@SO3]
[道具:????←本人&プリシス確認済み、荷物一式]
[行動方針:ゲームの破壊。ルシファーは必ず殺す]
[思考1:目の前の敵(アルベル)を殺す]
[思考2:プリシスを守る]
[思考3:氷川村で情報収集]
[思考4:ジェラードとロウファの仇を討つ。二人を殺した者を知りたい]
[思考5:必要とあらば殺人は厭わない]
[思考6:ヴァルキリーに接触]
[現在位置:I-06 町中]
- 19 名前:目障りなら“殺せばいい” これ以外やり方を知らない:2008/03/01(土) 15:03:27 ID:4UOj99rR0
- 【ガブリエル(ランティス)】[MP残量:25%]
[状態1:右の二の腕を貫通する大きな傷(右腕使用不可能)、右肩口に浅い切り傷、太腿に軽い切り傷、右太腿に切り傷]
[状態2:左腕をはじめとする全身いたるところの火傷と打撲]
[装備:肢閃刀@SO3、ゲームボーイ+ス○ースイ○ベーダー@現実世界]
[道具:セントハルバード@SO3、ボーガン+矢×28@RS、暗視機能付き望遠鏡@現実世界、????×0〜2、荷物一式×4]
[行動方針:フィリアの居ない世界を跡形も無く消しさる]
[思考1:ディアスに対処。ただし無理はしない]
[思考2:参加者が減るまで適当な家に潜伏する。潜伏先に侵入者が現れた場合は排除する]
[思考3:体の傷を癒す]
[現在位置:I-06 町中]
【ディアス・フラック】[MP残量:100%]
[状態:頭部流血]
[装備:咎人の剣“神を斬獲せし者”@VP、護身刀“竜穿”@SO3]
[道具:クォッドスキャナー@SO3、どーじん@SO2、どーじん♀@SO2、ミトラの聖水@VP、荷物一式(照明用ランタンの油は2人分、水は未開封3本)]
[行動方針:ゲームに乗った参加者の始末]
[思考1:ガブリエルはここで確実に仕留める]
[思考2:アルベルと合流。約束を破ったことを謝る]
[思考3:アシュトンとプリシスを警戒]
[現在位置:I-06 町中]
※ディアスの3つ目の支給品はセフティジュエル@SO3でした。
※荷物一式×3はディアス達のいた民家(半壊)に放置されています。
【レオン・D・S・ゲーステ】[MP残量:100%]
[状態:左腕に違和感(時間経過やリハビリ次第で回復可能)]
[装備:メイド服(スフレ4Pver)@SO3]
[道具:幻衣ミラージュ・ローブ、どーじん、魔眼のピアス(左耳用)、小型ドラーバーセット、ボールペン、裏に考察の書かれた地図、????×2、
荷物一式×2]
[行動方針:首輪を解除しルシファーを倒す]
[思考1:ディアスに言われた通り移動する]
[思考2:首輪、解析に必要な道具を入手する]
[思考3:信頼できる・できそうな仲間やルシファーのことを知っていそうな二人の男女(フェイト、マリア)を探し、協力を頼む]
[思考4:レナお姉ちゃん重い……]
[備考1:首輪に関する複数の考察をしていますが、いずれも確信が持ててないうえ、ひとつに絞り込めていません]
[備考2:白衣、上着は血塗れの為破棄。自分がメイド服を着ていることに気づいていません]
[備考3:第二回放送は聞き逃しましたが、禁止エリアについては知っています]
[現在位置:I-06 町中]
【レナ・ランフォード】[MP残量:10%]
[状態:精神力枯渇が原因で気絶中]
[装備:無し]
[道具:無し]
[行動方針:仲間と一緒に生きて脱出]
[思考1:?]
[現在位置:I-06 町中]
- 20 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/01(土) 16:10:29 ID:p6cRlXDVO
- 新スレ&投下乙!
ついに人数が半分になったんだなあ。
しかし女キャラはもう10人も残ってないのか…
- 21 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/01(土) 16:58:39 ID:9EvVV8SbO
- 乙!
- 22 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/01(土) 18:07:48 ID:/+U6MFJy0
- 激しく乙!
果たしてこの先このSO2集団が何人いなくなるか
今からwktkが止まりませぬw
- 23 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/01(土) 20:25:44 ID:05+hxKXG0
- ここにきてSO2勢死にまくりの予感w
阿ル部ル達とアーチェ達、wiki収録時はどっちを先にすればいい?
試験投下スレに落とされたのはレオン達、本スレに投下されたのはアーチェ達が先なんだけど
- 24 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/01(土) 21:03:42 ID:B3vvn9QF0
- >>8
セリーヌすでに死んでるはずだが?
- 25 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/01(土) 21:42:47 ID:FlwBBILS0
- >>24
すいません…直し忘れてましたorz
- 26 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/01(土) 21:44:02 ID:FlwBBILS0
- >>23
氷川村の方でいいんでないかと。
- 27 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/02(日) 17:33:50 ID:jfAu29QB0
- アルベル達の時間表記間違ってね?
第2放送終わった後だから夜になってるんじゃないか?
- 28 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/02(日) 22:04:20 ID:MRaYPisQ0
- よっしゃぁぁぁ、ようやく書き手紹介書き終わったぁぁぁ!
コメント出来るようにしてあるんで、付けてくれると有難いです。
自分に感想貰えたら誰だって喜ぶ。俺だって喜ぶ。
正直書き手の数が予想より多くて吹いた。
なんだ、けっこう俺達いけてるじゃないか!
ちなみに実家から帰ったら携帯厨に逆戻りなんで、「wiki更新する人現れてよかった」とか思わずに更新してくれると助かるんだぜ
- 29 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/03(月) 01:34:02 ID:nbGkw/DR0
- >>27
指摘サンクス。コピペしてたのをうっかり変え忘れてた。
wikiの方は修正しておきます。
>>28
超乙。
パソコンが復活したので、暇な時はwiki更新できると思うから安心してくれ。
- 30 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/03(月) 15:21:25 ID:sBXnDqob0
- AAAハジマタ
- 31 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/04(火) 23:47:31 ID:/QGQisR20
- おいもう巨乳がソフィアしか残ってないじゃねーか
リドリーやミランダは胸あるのか?
- 32 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/05(水) 00:05:31 ID:DKcU6bJh0
- 巨乳に欲情するなど愚の骨頂。
胸は過剰に大きい必要は無い、適度なサイズ、適度な張りこそ真の美乳。
そう例えば…ヴァルキュリアのような…そんな胸です
- 33 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/05(水) 00:11:12 ID:aRUfJj/50
- エイミのおっぱいが好きでした……
あんな化け物になっちゃうなんて・・・
まさに魔乳になっちゃった
- 34 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/05(水) 00:17:05 ID:NFvPXrQCO
- >>32
レザードさん即レス乙です^^
- 35 名前: ◆O4VWua9pzs :2008/03/05(水) 20:45:56 ID:jI4NW7iG0
- 新トリでひさびさだ。
リドリー予約します
- 36 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/05(水) 23:43:41 ID:DKcU6bJh0
- これは期待
リドリー空気脱出なるか!?
- 37 名前: ◆O4VWua9pzs :2008/03/06(木) 01:07:37 ID:VwBHFYPf0
- リドリー投下します。
- 38 名前: ◆O4VWua9pzs :2008/03/06(木) 01:08:55 ID:VwBHFYPf0
- 「はあ…はあ…はあ…」
痛い。
胸が痛みで疼く。
つい半時間前に対峙したミラージュと呼ばれる女によって刻まれた傷が疼く。
肋骨を破壊された。人間業とはおもえないほど素早い踏み込みで付けられた傷。
相手が万全な状態だったら確実に骨を折るどころではなかっただろう。
そう、リドリーはソファに腰掛け、胸を押さえながら痛みに耐えていた。
応急処置はとうに済ましている。だが……痛みは引くどころか、徐々に増していくばかりである。
「はあ、はあ、はあ――――」
動悸が荒くなっていく。心臓が胸を引き裂かんばかりに飛び出そうとする。
刻々と増していく。体に寄生した蟲の様に刻々と蝕んでいく。
毒物を飲まされたような吐き気。
全身を焼かれるような熱さ。
全身を鎖で縛り付けたような重さ。
ナイフで抉られたような頭痛。
リドリーは知っていた。この痛みの正体が何なのか。
- 39 名前: ◆O4VWua9pzs :2008/03/06(木) 01:09:57 ID:VwBHFYPf0
- 耐え難い激痛が体中を蹂躙していく。
痛い。
―――そ……
痛い。痛い。
―――て…の
痛い。痛い。痛い。
―――相手に
痛い。痛い。痛い。痛い。
―――く…ん
痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。
―――さ………
痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。
―――こ…る
激痛の中にノイズ交じりの声が聞こえる。
その断片的な言葉を少しずつ紡ぎ出す。
―――その程度の相手に苦戦されては困る
意識にその声が響くと共にリドリーの意識は深淵の闇に堕ちていった。
+++
- 40 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/06(木) 01:19:48 ID:f374yVcv0
- 支援
- 41 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/06(木) 01:33:52 ID:SAbdlJuu0
- えーと、規制されたのかな?
- 42 名前: ◆O4VWua9pzs :2008/03/06(木) 01:37:56 ID:TQal3cPoO
- 携帯から失礼します
なぜか書き込めないのでしたらばに投下しておきます
- 43 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/06(木) 20:18:52 ID:f374yVcv0
- 投下GJ!
何だかリドリーがえらい事に…!ジャックもルシオンも死んだ今、こいつを止められるのはいるのか!?
- 44 名前:カタストロフィーは想いとは裏腹に 代理投下:2008/03/07(金) 01:52:05 ID:zeKBcrDz0
- ―――目を覚ますのだ。
―――リドリー・ティンバーレイクよ。
誰かが私を呼んでいる。
私はまだ寝ていたいのに声の主はそれを邪魔する。
目蓋に明かりが灯る。
あれほどあった痛みが治まっている。
リドリーは軽くなった身体を起こし、辺りを見渡す。
「ここは…金龍城」
金龍城。
目を覚ました場所はかつて自分の中に金龍を宿した場所。
自分が銀龍に殺された場所だった。
―――ドックン
『リドリーーー!! オレだ! ジャックだ!』
―――ドックン―――ドックン
『リドリーっ! おい! しっかりしろ! リドリーっ!』
―――ドックン―――ドックン―――ドックン
「リドリーよ」
「!?」
突如の声にリドリーはハッと声の元を振り向く。
- 45 名前:カタストロフィーは想いとは裏腹に 代理投下:2008/03/07(金) 01:53:48 ID:zeKBcrDz0
- 黄金の神殿の中央に光の粒子が集まり、形を成していく。
そこには、毅然と佇む一匹の龍。
全身を金色の鱗を覆わせ、神々しいまでに金色のオーラを漂わせる金の龍。
金龍―――クェーサーである。
クェーサーはリドリーを見据えると。
「時は満ちた。銀龍フォティーノ亡き今、お前は器として役目を果たす時が来たのだ」
リドリーは表情を変えず向き合う。
「我は銀龍に代わって、歪みに満ちた世界を正し、新たな世界を創造し、監視せねばならない。
我らは復活したのだ。運命はもう近くまで来ている。
我らは融合し、一つになった。だが、フォティーノがいる限り、交代することは叶うことはなかった。
しかし、フォティーノは死んだ。この殺し合いの舞台で消え去ったのだ。
銀龍をも屠る力を有する者がこの舞台に蔓延っているのだ。
我らは人間如きに殺されるわけにはいかない――――この意味が分かるな?」
「はい」
リドリーは小さく頷く
「そうだ。リドリーよ。お前の力では最後まで生き残れない。
我らはトゥトアスの秩序を監視しなければならないのだ。ここで倒れるわけにいかないのだ」
「………」
「さて、始めようではないか。案ずることはない。
お前の意識は取り込まれ、完全に我のものとなる。
お前は何も心配いらな――――」
「――――クェーサー……」
- 46 名前:カタストロフィーは想いとは裏腹に 代理投下:2008/03/07(金) 01:54:51 ID:zeKBcrDz0
- リドリーはイグニートソードを取り出し、自分の首元に剣を当てる。
「私と一緒に死にましょう」
「何…!?」
金龍の顔が強張る。
「私にはどうしても守りたい人間がいます。
ですから、我が命をもって使命を終わらせます」
「何だと!? 貴様は気は確かなのか?
一人の人間のために世界を滅ぼしていいのか?
人間を野放しにしておけばトゥトアスの大地はどうなる?
お前一人の勝手の行動がアルガンダースを蔓延させ、世界を滅ぼすことになるのだぞ」
「私も―――」
リドリーは金龍城に再び戻って、あることを思い出していた。
何故忘れていたのであろう? こんなに大切なことを。
+++
金龍の器。
私には宿命があった。私には成就しなければならない理由がある。
だから、私はもう引き返せない。
霊継ぎの儀式を受けてから自分の存在意義を考えてきた。
そして、決心したのだ。
トゥトアスの歪みを救えるのなら喜んでこの身を金龍に捧げようと。
騎士たるもの常に冷静であり、正しい判断をしなければならない。
国と民を守る者は国と民のためならば個人的な感情に流されてはならない。
私は幼いころからそう教わってきた。
そうか―――ならば私は皆の見本になるために貴族の名に恥じない立派な騎士になろう。
そのために不要のことは一切排除しよう。
そう決意した。
それからというものずっと寒かった。私の心は城壁のように凍えていた。
でも、自分を殺し、前に進まなければならなかった。
だって……それが一番正しいことだから――――……
- 47 名前:カタストロフィーは想いとは裏腹に 代理投下:2008/03/07(金) 01:56:00 ID:zeKBcrDz0
- 後悔はなかった。私が死ぬことで世界が救われるのだから。
トゥトアスはもう疲弊しきっていた。
人間たちの傲慢が世界を枯渇させ、アルガンダースを蔓延させる原因を生んだ。
人間たちがこのまま繁栄しつつければ、世界は近いうちに滅び去ってしまう。
だから、私は一度世界を創り直すために、金龍の器になることを望んだ。
―――この私…リドリーという存在を失ってでもいいと
―――自分が自分でなくなっていいと
金龍が光臨すれば、私の意識は失われ、人間たちの滅亡は必至である。
でも、トゥトアスが救われるなら、私は全てを擲った。
人間たちを裏切ってでも、私は成さなければならい。
唯一自分だけが世界を救えるのだ。自分と人間たちを犠牲にすれば、世界の秩序が守られる。
そう、自分に言い聞かせる。
度に―――アイツのことが頭に浮かんだ。
でも、世界を救うためには私を捨てなければならない。
そう、また言い聞かせた。
でも、また―――アイツの事が心に浮かんだ。
私はアイツを振り切るように世界の果てへと金龍降臨の地へと向かった。
……いや、今思えば逃げていたかもしれない。
そして、私は金龍の器へとなろうとしていたとき。
『リドリーーー!! オレだ! ―――だ!』
それでも
アイツは
アイツは
追いかけてきてくれた。
- 48 名前:カタストロフィーは想いとは裏腹に 代理投下:2008/03/07(金) 01:56:49 ID:zeKBcrDz0
- ―――ドックン
嬉しかった。
初めて会ったときと変わらないまま、何も変わらないまま、呼んでくれた。
その瞬間、意識が薄れる。銀龍の攻撃を一身に受けたのだ。
死。
命の灯火が薄れるのが分かった。
それでも、アイツは心配そうに私を抱きしめくれた。
―――ドックン―――ドックン
暖かい抱擁。永遠に解けることのないと思っていた心が満ちていく。
そして、また呼んでくれた。
『リドリーっ! おい! しっかりしろ! リドリーっ!』
私の名前を―――リドリーを。私として呼んでくれた。
―――ドックン―――ドックン―――ドックン
その瞬間、分かったんだ。
『……嬉しい。また名前を呼んでもらえた』
困惑するアイツの顔、見物だったな。
『…私はお前と…』
+++
「私も初めは金龍に全てを捧げるつもりでした。
そのためにかつての仲間を殺めることになっても、宿命に従うことが正しいことだから。
でも、アイツは何度傷つけても、私を仲間だと家族だと言ってくれた。
何もなかった私に。
想いを
意志を
教えてくれたのは彼だった」
頬が温かくなっていく。
アイツを想えば
笑みがこぼれる。
アイツを想えば
胸が締めつけられる。
アイツを想えば
―――生きていると実感する
- 49 名前:カタストロフィーは想いとは裏腹に 代理投下:2008/03/07(金) 01:57:49 ID:zeKBcrDz0
- 悲しくないのに涙が溢れてくる。
「私は―――ジャックが愛おしい。
愛しくて
愛しくて
たまらない」
本当は嫌だ。
自分が自分じゃなくなるのは嫌だ。
私が私でなくなれば、この想いもなくなってしまう。
ジャックに対する愛しい想いも消えてしまう。
ジャックは私の希望だ。だから命に代えて彼を『守りたい』。
自力では金龍を抑えられない。しかし、好機は今であった。
金龍が私の意識に融合する前に手を打つ。
強制的に入れ替わる前に自分を殺す。
私たちは一心同体、私の精神を殺せば、同時に金龍も殺せる。
これは使命でもなんでもない。
これは紛れもなく自分の意志。
暖かい愛しい涙が頬中に伝い落ちていく
「出会ってくれてありがとうジャック。
―――大好き」
瞳を閉じ、覚悟を決める。最後の戦い。
人類の敵である金龍クェーサーを倒すべく、リドリーは剣を自分の心臓に振り翳す。
愛しき者を守るため、少女は自分の想いを身体に刻む。
- 50 名前:カタストロフィーは想いとは裏腹に 代理投下:2008/03/07(金) 01:59:00 ID:zeKBcrDz0
- ―――どうしてあなただけ助かろうとするの?
か細い生気のない声が耳朶を打つ。
「え…!?」
リドリーは閉じていた目を見開く。その瞬間、金縛りにあう。
そこには、褐色肌の少女と凛とした風貌の女性、長い金髪の女性が私を覗きこんでいた。
その目は生気がなく恨めしそうに私を魅入っていた。彼女たちは皆この舞台で私が殺した者たちであった。
一同は一斉に壊れたオルガンのように訴えかける。
「「「どうしてあなただけ助かろうとするの?」」」
三人の身体から夥しい血が溢れ出る。それは私が刻み込んだ箇所から止め処なく吹き出る。口元から蛇口のように零れ出る。
「「「痛かったよ」」」「「「苦しかったよ」」」「「「死にたくなかったよ」」」「「「生きたかったよ」」」
「「「報われなかったよ」」」「「「家族のところ帰りたかったよ」」」「「「愛する人のところに戻りたかったよ」」」
「「「助かりたかったよ」」」
「「「でもどうしてあなただけ助かろうとするの?」」」
「「「私たちはあなたに対して何もしなかったのにどうしてこんなことするの?」」」
「「「どうして殺したの?」」」
「ちっちがう!!」
リドリーは後退しながらも頭を左右に振り必死に否定する。
恐怖から涙が滲み出る、目を背けられない。
言い聞かせる。これは幻だと、性質の悪い幻覚だと。
しかし、悪夢は覚めない。死体達は生々しく私を睨みつける。
「ククク、リドリー・ティンバーレイク。これがお前が背負ってきた道程だ。
どの人間よりも業に満ちておる。足下を見るがいい」
どこからか金龍の声が聞こえる。その声に咄嗟に足元を見る。
足元には積み上げてきた死体の数々。
人間。妖精。ライトエルフ。ダークエルフ。ブラッドオーク――――
ありとあらゆるの種族が無造作に積み上げられていた。
数十万という死体の山の上でリドリーは足を踏みしめていた。
あまりの凄惨な光景に思考が停止する。何も考えられない。
「そうだ、すべてお前によって引き起こされた戦争で死んだ者たちだ。
お前はその頂点に立っている。お前が望もうと望むまいと本来唾棄される存在」
「違う、私は私は―――」
突然死体たちがコーラスを上げるように絶叫する。
「「「「「「「「「「「「「――――――――」」」」」」」」」」」――――――――
- 51 名前:カタストロフィーは想いとは裏腹に 代理投下:2008/03/07(金) 01:59:55 ID:zeKBcrDz0
- 終わりのない怨恨の言葉、罵声、呪詛。
耳が脳が全身が引き裂ける。精神が粉々に砕かれてしまう。
「リドリーよ。意志には関係なく、償わなければならない。
金龍の器として、お前は使命を完遂しなくてはならない」
「違う違う違う違う違う違う違う違う違う」
リドリーはジャックのことを想い、剣を手に取る。
これら全ては金龍が見せている幻だ。
今のうちに始末をつけないと手遅れになる。
リドリーは自らの命を絶つべく剣を振り下ろす。
だが、身体が動かない。
持っていた剣をカランと地面に落とす。
周囲は地獄のような光景ではなく、元の金龍城へと変わっていた。
「ククク……助かったよ。お前が躊躇している内に身体のほとんどをのっとることができた」
自分が自分でなくなる感覚が蝕んでいく。精神が腐蝕していく。
いいようのない嫌悪感が広がる。
「そんな……」
思考が絶望に塗り潰されていく。
そんなリドリーを見て金龍は満足げに笑みを浮かべる。
吐き気を催すぐらい邪悪な笑み。
「人間ごときがこの私に敵うと思ったか!? 愚か者がッ!!」
その瞬間、身体は完全に自分ではなくなった。
―――ジャック、ごめんね……
+++
- 52 名前:カタストロフィーは想いとは裏腹に 代理投下:2008/03/07(金) 02:00:32 ID:zeKBcrDz0
- ソファの上で横たわっていた少女は身体を起こす。
ここは鎌石局の待ち受けの一室。少女は戦闘で傷ついたケガを癒すために、休息を取っていた。
あれほど悩ませていた全身の激痛は治まっている。
ケガはまだ残っているが戦闘に支障はきたすことのない微々たるものだ。
突如、少女は大声で笑い出す。
「あはははははははははははははははははははは。
ああ、なんて気分がいい! 最高に気分がいいよ!
やっとこの手で直接いたぶれる。人間どもをいたぶれる」
そこには、姿形は少女のなりをしているが、全てにおいて元の少女とは違った。
そいつは金龍クェーサー。トゥトアスの監視者。秩序を調停する者。
人類にとって紛れもなく悪。全人類を脅かす敵。
クェーサーが今そこに吼えていた。
「さーて、身体の馴染み具合はどうかな」
クェーサーは手を翳す。無尽蔵といえる魔力によって形成された武器が現れる。
器となった少女が得意としていた武器―――黄金の斧が具現化する。
「……」
金龍はいまいち納得いかず、頭を掻く。
今度は両手を合わせ魔力を込め、正面に振り下ろす。収束させた魔力を放出させる。
爆音と共に正面に巨大な穴が出来上がる。
手加減をしているとはいえかなりの威力である。
- 53 名前:カタストロフィーは想いとは裏腹に 代理投下:2008/03/07(金) 02:02:35 ID:zeKBcrDz0
- 「これが、ルシファーが言っていた制限か?
……違うな」
確かに真の力が開放できない。
いまいち魔力が練り上がらない。
だが、内部から自分の能力を抑えている奴がいる。
「あははは。リドリーめ。無駄な足掻きを」
微力ながら、リドリーが自分の動きを拘束するために抗っている。
所詮は海原に石を投げ込むぐらいの抵抗。本当に微力なものだ。
だが、鬱陶しい。この私に付き纏うな羽虫が。
金龍は考える。リドリーの思考を完全に融合させるにはどうすればいいのか。
答えは簡単だ。
「だったら、お前が守ろうとし、愛していた者を殺そう。お前のひどく絶望する様を見届けよう」
今後の行動方針? 否、もうすでに決まっている。
金龍の胸には、心に決めていたものがある。銀龍フォティーノとジャック・ラッセルの邪魔が入ったために、叶えられなかった願い。
渇望、切望、熱望していた。
金龍は望む―――
殺戮を。抹殺を。惨殺を。虐殺を。根絶を。絶滅を。殲滅を。死滅を。滅亡を。
すべてを人間どもに刻み込むのだ。
それだけが金龍クェーサーが求める最上級の望みだから。
- 54 名前:カタストロフィーは想いとは裏腹に 代理投下:2008/03/07(金) 02:03:04 ID:zeKBcrDz0
- 【C−4/夜中】
【リドリー・ティンバーレイク】[MP残量:80%]
[状態:金龍クェーサー、腹部に激しい痛み、肋骨にヒビ、自己治癒中]
[装備:イグニートソード@SO3]
[道具:グラビティレイザー(エネルギー残量[90/100])@SO3、忍刀菖蒲@TOP、アーチェのホウキ@TOP
他クレアとスフレの支給品幾つか(0〜4)、荷物一式×3]
[行動方針:人間の根絶、最後まで生き残る]
[思考1:ジャックを殺す]
[思考2:人間を殺す]
[現在位置:鎌石局受付]
※ミラージュの荷物(支給品一式、ルーズリーフ、及びそれに記したメモ)は役場内に放置されています
※リドリーの意識はまだ消えていません
※制限により金龍化はできません。
魔力を増幅するようなデバイスがあるなら別。
【イグニートソード】
封印された魔人の憤怒により刀身が赤く染まった魔剣。
・低確率で火球が飛び出す。
【グラビティレイザー】
重力衝撃波を利用した銃。
SO3本編最強のフェイズガン。EXダンジョンは除く。
- 55 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/07(金) 02:04:48 ID:zeKBcrDz0
- 代理投下終了。
最初の一行空白じゃないと書き込めないようなんで、勝手にその辺りを修正してしまいました。
◆O4VWua9pzs氏すいません。wikiに入れる時にはしたらばの方を入れますので…。
- 56 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/07(金) 22:28:01 ID:WR8Q4WdR0
- 新作乙。
金龍クェーサーか、どんな奴だったか全く記憶にない。ラジアータは人間編しかやってないからかな。
- 57 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/08(土) 19:46:59 ID:vgsPrxjK0
- ラジアータ詳しくないからよく分からないんだけど、リドリーが金竜化するとどんな事になるんだ?
戦闘能力が格段に上がるとか、治癒能力が人間より速いとかそんな感じ?
- 58 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 22:26:10 ID:dkjZ5giz0
- 「カタストロフィーは想いとは裏腹に」をwikiに入れようと思うんだけど、
作者氏は新トリとの事ですが、書き手紹介とかでは以前のトリと同じでいいでしょうか?
それとも別扱いの方がいいですかね?
- 59 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/11(火) 23:40:53 ID:9/qRU+KVO
- その辺は作者さんにお任せするしかないよなぁ
旧鳥どれかわからないし
- 60 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/12(水) 02:58:19 ID:YUQohm7x0
- (実は某ロワのおかげで旧トリ知ってるんだけどね…)
そういえば書き手ロワで全滅しちゃったなw
最初に死んだ人が結局一番目立ってたなんて皮肉にも程があるwww
- 61 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/12(水) 13:28:20 ID:oSRIF5aHO
- >>60
バトロワにはよくあることだw
このロワでも早期退場のダオスやルシオンの方がクラースやネストより目立ってるしw
- 62 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/12(水) 20:07:41 ID:Tl/cbDMoO
- ダオスをだおす
- 63 名前: ◆O4VWua9pzs :2008/03/12(水) 22:46:25 ID:ffnLj2WU0
- ご感想ほどありがとうございます
>>58
wiki編集お疲れです
登録は新トリでお願いします
ちなみに旧トリは◆ZhOaCEIpb2ですので継続の形で
>>62
クレス乙
- 64 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/14(金) 16:24:40 ID:HJAOF/+C0
- wiki編集しておいた。これでいいかな?
目次見て気付いたけど、放送後の10話で5人死んでるんだな。ここに来てすごいハイペースだ。
人数半分になったし、中盤の後半に突入というところだろうか。
- 65 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/14(金) 16:25:57 ID:HJAOF/+C0
- >>62
くだらない事ほざいてないで目の前の状況に対処しろ
チェスターが狂ったらお前のせいだからな
- 66 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 15:34:40 ID:kFU136Xt0
- 念のため保守
- 67 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 20:42:24 ID:bdgLDhkE0
- なあ、マーダーランキングに登録するとしたら、
アーチェを殺したのってチェスターになんの?ボーマンになんの?
- 68 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 22:58:18 ID:67bLp4Xo0
- 今の状態だとチェスターになってるね。
まあ騙されたとはいえ飲ませたのはチェスターだしこいつの戦績でいいんじゃないだろうか。
- 69 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/21(金) 10:44:41 ID:gVQF2zJ4O
- かなり微妙なラインだけどそれだとガルヴァドスはチサトのスコアじゃない?
食わせたのは(食うのを促したのは)チサトだし。
- 70 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/21(金) 19:28:38 ID:7zqTWmaw0
- そういやここまで来て戦力を温存……どころかまだ戦ってないキャラもいるよな
そんな彼らの活躍に期待
- 71 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/21(金) 22:07:48 ID:kUJ9qzom0
- なんだかマーダートップ3は三人が三人とも質が違うヤバさを持ってんな。
というか、ここマーダー同士の殺し合いが少なすぎない?
- 72 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/21(金) 22:55:59 ID:sXQ5UN4U0
- スタンス不明を除くと、
洵とデミテル、ルーファスとシン、オペラとヴォックス、アシュトンとノートン、ルーファスとガウェイン、ミカエルと洵&ミランダ
マーダー同士の戦いはこれだけか。まぁ確かに少ないかもな
- 73 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/23(日) 23:45:29 ID:+ab2ws8EO
- しかも勝率は明らかに対主催<マーダーだからどんどん人が減っていく。
- 74 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/26(水) 20:29:46 ID:IFJvQyj70
- >>71
アシュトン:実質三人力のチート。最近少し能力は落ちたけどまだまだ元気。色々と狂ってる。
リドリー:金竜覚醒。止められそうなルシオンやジャックも既に死亡済み。
ボーマン:上位三人で唯一まともな精神状態。冷静で頭がきれる。破砕弾により無限に小型爆弾精製可能。
- 75 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/28(金) 22:04:40 ID:dr0lbjgB0
- まあ、マーダーは貴重だから序盤から潰しあいさせるのは勿体無いからね。
このロワでは対主催の方が貴重になってるけど。
- 76 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/29(土) 01:14:00 ID:EXlH043I0
- ぜひともこれからは積極的にマーダー同士の対決も見たいね、
対主催減るのがエスカレートしないためにも・・・。
>>74
狂ってないマーダーも貴重っちゃ貴重だよな
- 77 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/30(日) 06:04:29 ID:8Y5fQclh0
- ボーマンは綺麗なマーダー
- 78 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/30(日) 13:31:41 ID:sd48q6pCO
- 対主催のレザードは綺麗なレザード
- 79 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 10:48:26 ID:m6CI5Qi/0
- 綺麗なレザード吹いたw
- 80 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/12(土) 20:29:50 ID:ei5fV5qa0
- あれ、まとめが見れない……
- 81 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/13(日) 00:13:00 ID:ncNsna990
- 自分は見れたよ
- 82 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/13(日) 00:19:27 ID:XkZQdlJc0
- あ、見れるようになった
鯖が不調だったのかな、すまんかった
予約したいが難しいパートが多すぎるから困るw
密集してやがるなぁこいつら
- 83 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/13(日) 01:14:04 ID:rI32748FO
- ネタはあるけど、現在PSPでボーマン無双の真っ最中なので書けない。
そしてアシュトン弱体化にorz
- 84 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/13(日) 01:15:35 ID:XkZQdlJc0
- >>83
弱体化マジかorz
PSじゃリーチ短くてレナより弱かったのになぁボーマンさん
- 85 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/13(日) 18:08:51 ID:FgtZ2eurO
- まあ去年もこの時期は過疎ってたしなw
とりあえず人はいたようで安心した
- 86 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/13(日) 18:33:56 ID:2MgE4oKq0
- >>85
新年度の始まりだからなー
繋ぎを書きたいパートがあるんだが、おれの作品が原因で停滞したら目も当てれんのがなぁ
超展開ってどこまでOKなのかしら
- 87 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/14(月) 12:05:59 ID:Abst179HO
- 今年から社会人になって書く暇が無いorz
ネタはあるんだが自己リレーになるキャラがでるのもネック。
>>87ここは比較的超展開オッケーじゃないっすか?
そもそもAAA作品の大半が超て(ry
- 88 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/14(月) 12:08:27 ID:Abst179HO
- アンカーミス86です。
- 89 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/16(水) 16:01:55 ID:YhOsJV2F0
- うーん、クロードはアシュトンの悪行は知らないと見てOKなんだろうか?
- 90 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/16(水) 16:12:04 ID:ovMrbmce0
- >>89
ジャックからはアシュトンのことを聞いてないようだし、知らないんじゃないの
- 91 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/18(金) 04:26:02 ID:QLEe4kNS0
- 「予約」とは………………… キャラキープの心ではないッ!
「予約」とは!! 締め切りの効果に!! 進むべき道を切り開く事だッ!
クロード、アシュトン、ボーマン、チェスター、クレス、マリアを予約させていただきますが構いませんねッ!
- 92 名前: ◆wKs3a28q6Q :2008/04/18(金) 04:27:08 ID:QLEe4kNS0
- 構うよチクショー鳥忘れるとか駄目すぎだろコノヤロー
すいません、改めてクロード、アシュトン、ボーマン、チェスター、クレス、マリアを予約させていただきます
- 93 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/18(金) 10:09:37 ID:z5Y+5KKl0
- ――これは期待できるッ!
- 94 名前: ◆yHjSlOJmms :2008/04/19(土) 21:09:40 ID:Zp4hrshX0
- >>92に期待ッ!!
試作品をしたらばに投下しました。
なんか自分したらばに大分お世話になってる気がするんですが…。
指摘や意見などいただきたいのでよろしくお願いいたします。
- 95 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/20(日) 02:16:42 ID:VoUCBy0H0
- >>94
おお、GJ!
2は未プレイなんで詳しいことはわからないけど、反魂のはあれでいいかと
グレイが自力でやれちゃう術だし、レザードは普通にやれそうだもんなぁ
- 96 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/20(日) 17:01:15 ID:6RlbJSNg0
- >>92
投下にwktk!
>>94
試験投下乙!
ちょっと気になった事を指摘させて欲しい
ルーファスとクリフは役場から西の方へおいかけっこをしていた事になってるけど、
レナス達のいた観音堂は役場から東のほうだったよな?
夜間と言う事でかっ飛ばしているヅラムスを追い越してレナス達が鎌石村方面に行く事は可能なんだろうか?
ルーファス達が東方面におっかけっこしたとしても、C-5は既に進入不可だし、
よほど時間とルートの条件がよくない限りヅラムスの方と先に出会う可能性が高い気がするんだ……
状態表がないから憶測交じりになっているが、野暮な事を突っ込んでいたらすまん
- 97 名前: ◆yHjSlOJmms :2008/04/21(月) 00:22:01 ID:c3gQ8Ciw0
- >>96スミマセン。方角の誤表記です。野郎2人の追いかけっこは東方向のつもりでした。
禁止エリアを南側に迂回して23時前にD-4を通過。レナスたちとD-5で夜中か真夜中に遭遇予定です。
- 98 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/25(金) 04:13:59 ID:IowoCps70
- あれ、「幸運と不幸は紙一重」のページに追跡表が抜けてたから追加したのに反映されてないぞ・・・
前の話の状態表を張り付けてるからタグの間違いってわけじゃないだろうし・・・
なんでだ?
- 99 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/25(金) 20:04:32 ID:MmE3eHal0
- >>97
把握した
そういやヅラムスは場所の目安がぼかされているからどうとでもなるんだったな
鎌石村が危険地帯になりそうだ……
- 100 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/25(金) 20:12:02 ID:udEpxAK40
- ああ、それね。それとその次の話の2つはアットウィキモードじゃなくてテキストモードで作成されてからなんだ。
この2つの話は、wikiの管理人さんに頼んむしかないかな。
- 101 名前: ◆yHjSlOJmms :2008/04/27(日) 02:01:16 ID:u3KglbHW0
- 質問なんですが。自己リレーをするのはまずいですよね?
Partnerでのルーファスの台詞ですずの介入を示唆するようなものがあるので
すず使ったほうが良さそうなのと展開的にもそっちのほうが面白そうなんですが…。
- 102 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/27(日) 02:02:22 ID:eTjfj5ce0
- 良いんじゃないかな、別にやりたい人も来てないし
別ロワじゃ書き手さんがずっと一人で書いてる。伏線とかが複雑だから他の人じゃ描けないのもあるけど
- 103 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/27(日) 02:27:20 ID:Dg3/wWSA0
- >>101
問題ないんじゃないですかね
今までこれだけ放置されてるキャラですし
一日くらいは「すず書いてる人いたら挙手」って言って待った方が形式としてはよさそうですが
- 104 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/27(日) 04:49:39 ID:Yomf984r0
- それ以上にロキの放置されっぷりは異常
一応第2放送より前の話でフラグは立っているけど、
ロキ本人の出てくる話はしばらくお目にかかっていない気がする……
Wikiで状態を見たら真昼から全然進んでいないんだが、どうしたものか
そういやどこかにとんずらこいた無人君はどうなったんだろう?
- 105 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/27(日) 06:10:09 ID:u3KglbHW0
- 大丈夫そうですが>>103さんがおっしゃるように今日一日待った上で予約しようと思います。
書いてる人や使おうと思ってる人がいたら遠慮なく出てきて下さい。
- 106 名前: ◆yHjSlOJmms :2008/04/27(日) 06:20:11 ID:u3KglbHW0
- トリ忘れてるしorz
>>105は自分です。それにしてもさすが休日。
平日よりレスが早いw
- 107 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/27(日) 11:24:00 ID:qaK4+zRa0
- 二回目の放送後出番が無い人達
すず(C−4移動中、予約?)
フェイト、エルネスト、クラース(D−2休憩中。ロキと接触?)
ロキ(D−2?自転車で移動中)
ガウェイン(D−6鎌石村へ移動中)
偽ブレア(D−6待機中)
洵、ミランダ(F−1休憩中)
ルシオ(F−2休憩中)
ミカエル(F−2移動中)
アシュトン(I−6休憩中、予約済)
ところで>>92での予約は延長って事かな?
- 108 名前: ◆wKs3a28q6Q :2008/04/27(日) 20:36:06 ID:Dg3/wWSA0
- すみません、思った以上に長くなってきたので火曜日まで延長させてください
火曜日までに仕上がらなければ一旦破棄したいと思います
- 109 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/28(月) 00:20:50 ID:V4vTmmMcO
- おkおk、焦らす間やってくれ
楽しみにしてる
- 110 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/28(月) 02:09:15 ID:jIEQ0JVP0
- 同じくwktkしてる
- 111 名前: ◆yHjSlOJmms :2008/04/28(月) 22:31:01 ID:2P83CMDX0
- >>108面子見ただけで大変そうなのが伝わってくるし、ゆっくりと書き上げてくださいな。
取り敢えずいない様なのでレナス、レザード、ソフィア、クリフ、ルーファス、すずを予約します。
- 112 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/29(火) 23:33:48 ID:HUeCFItz0
- wktkしますが、ここホント書き手さん少ないですね。
- 113 名前: ◆wKs3a28q6Q :2008/04/29(火) 23:56:48 ID:hxKCEUoO0
- >>111
イヤッホーウすずがどう絡むのか期待してますよ!
>>112
仕様です。
レザード・ヴァレスの塔でフリーズするくらい我々にはどうしようもない事です。
だがそれでも楽しいと思えちゃうのがAAA信者のすごいとこだな。
覚悟はいいか?俺はできてる。
すみません、単刀直入に言うと予約を破棄します。
矛盾点の修正やら行動方針変更理由の説明なんかをしはじめたら止まらなくなって来たので……
キャラキープすみませんでした。
- 114 名前: ◆yHjSlOJmms :2008/04/30(水) 00:11:27 ID:9hxokzf30
- >>113ドンマイです。クレス+マリア+チェスターだけでも1本書けそうな面子なのにそれに加えて
勘違いされてるクロードや、2トップマーダーまで加えては相当なボリュームになるのは必至。
しかしこのままでは、今月投下なしと言うピンチ。
なんで、推敲は1回しかしてませんが投下します。
- 115 名前:天才(変態)が欲するモノ:2008/04/30(水) 00:14:30 ID:9hxokzf30
- あれからどれくらいの時間がたっただろうか、レザードが用意したソフィアの術の取得は遅々として進まず、いたずらに時間だけが過ぎていた。
言われたように熱心に移送方陣の取得に取り組むソフィアだったがそもそも、レザードが扱う術と紋章術の形式が違う。
それを一から学ぼうと言うのにはたかが数時間では短すぎた。
現在レナスはこの観音堂の入り口で見張りを行っている。
時折レザードがソフィアを罵倒する声が聞こえてくるだけで静かな物だ。
そんな中レナスは焦っていた。既に参加者の1/3以上が死亡している中で、自分はまだ誰とも刃を交えていない。
戦い自体しないに越した事はないのだが、主催の言いなりになった人間を止めるつもりでいる自分が1度も戦闘を行っていないのはなんとも歯がゆい。
せめて何か情報が仕入れることができるかもしれないと思い、これから起きる惨劇で死に逝く者達の声に耳を傾けてみた。
レナスの意識が深い底まで落ちていく。
何の雑音も耳に入らなくなると、続けて彼女の耳に何者かの死の運命が届けられる。
「止まれ! これ以上近付くんじゃねぇ!」
息を切らした男の声が響いてきた。
「いいかっ、もう一度だけ言う! こんな真似はよせ! お前が守ろうとした奴も決してそんな事は望んじゃいない!」
「だまれっ! そんな事はなぁ、俺が一番知ってんだっ! けどな、俺にはもうこの方法しか残されてねぇんだっ!
もう一度、共に同じ時間を生きたい…。その為には…あいつの望まないことだろうとなんだってしてやる!」
「ルー…フ……」
「お前には世話になった…だから、今だけは見逃してやるっ! 俺の考えが変わる前に消えろっ!」
2人の声を荒げたやり取りの後にカチャリと金属の止め具を外すような音が聞こえた。
「ク……、てめえ何のつもりだ!?」
「一先ず話をしようじゃねえか! 俺はお前を説得しに来ただけなんだ。
傷つける気なんざサラサラない。だったらこんなもんいらねえじゃねえか!!」
ジャリッと一歩踏みしめる音共に鋭い風切音が聞こえてきた。
「っつ!」
「言っただろ! これ以上近づくなってな…。次は外さねぇ…」
「…今ので確信したぜ。その気になったらお前は間違いなく俺を殺せてた。それが出来ないって事はお前はまだ迷ってる。
迷ってるならそんな事をするんじゃない。アリーシャって奴が、今お前にして欲しい事は自分のためにお前が苦しむ事じゃない。
それにお前がしようとしていることは今のお前のような思いをする奴を作るだけだ。
そんな事してでも守りたい存在がいることは理解できる。けれど、大事な誰かを失う苦しみを知ってるお前が…」
「うるせぇっ! だったらてめぇはわかんのか!? 大事な誰かを…この身を捧げてでも守りたいと思った奴を失った、俺の気持ちがっ!」
「わかるさ…。今までだって何人もの仲間を失ってきた。大勢の仲間を助けるために他の何人かを斬り捨てるような真似だってした。
その都度後悔もしたし苦しい思いもしてきた。だがな、俺はお前みたいにはならなかった。なっちゃいけねえんだっ!
残された俺たちができる事は、そいつのやろうとした事を引き継ぐ事だ。だから…ー…ス!
「くっそぉぉぉぉっ!!」
悲痛な叫びの後にドサリと大きな何かが倒れこむ音がした。
「畜生! 何で…何でなんだよ…。俺のことなんか放っておいてくれればこんな事には…」
- 116 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/30(水) 00:14:50 ID:0qk8NV7y0
- しえーん
- 117 名前:天才(変態)が欲するモノ:2008/04/30(水) 00:15:32 ID:9hxokzf30
- 聞こえてきた死に逝く者達の声はここで途絶えた。
(近いな…。1人が説得しようとしていたようだし、もしかしたら止められるかも知れない…。
参加者が早くも半数近くになってる現状でルシファーとの決戦での戦力は1人でも多い方がいい)
そう考えるや否や二人の教室と化している、観音堂の1室に足を踏み入れた。
部屋を出る時とさして変化のない光景を見渡してから切り出した。
「少しいいか?」
もちろん話しかける相手は練習しているソフィアだ。
間違っても自分からレザードに話しかけるという事はしたくはない。
「どうしたんですか?」
熱心に見ていたレザードのテキストから目を離し、レナスの方に視線を向けるソフィア。
「もうすぐこの近くで誰かが殺される。私はそれを止めに行きたいのだが、お前を置いて行く訳にもいかない。すまないが付き合ってくれ」
「また誰かの声が聞こえたんですか?」
「ああ、誰かまではやはりわからなかったが、これ以上参加者が殺されるのは止めたいんだ」
それを聞くや否や身支度を始めるソフィア。レナスも手早く用意をし始めたその時。
「恐れ多くながら進言させていただきますが、無用なリスクは避けるべきかと…」
今まで黙っていたレザードが口を開いた。
「貴様の意見は聞いてなどいない。後をついて来るなら勝手だが、来る気が無いならここでお別れだ。
貴様のような危険人物を野放しにする事になるが、今の所害は少なそうだしな」
過去の事があるからだろう、未だにレザードと共に行動する事に抵抗のあるレナスは冷たく突き放すように言った。
「やれやれ」
そんな言葉を聞いて肩をすくめるレザード。きつい言葉を投げかけられてもどこか彼の表情が恍惚としているのはやはり彼が変態だからだろうか。
「行きましょうレナスさん。私もこれ以上罪のない人が死ぬのなんてイヤですから」
最早そんな二人のやり取りにはなれたソフィアはレナスを促しデイパックを背負うと、術の練習をしていた部屋を出た。
部屋に1人残されたレザードも荷物を背負おうと床に手を伸ばした時、彼はソフィアの術の残滓を感じた。
(あの女が言っていた紋章術と今この場に残った感覚とでは明らかに術式が違う…。
どちらかというと我々の魔法のそれに近い…。移送方陣の習得には程遠いが、一応成果はあるという事か?
ということはやはり私の仮説どおりに個々の能力は主催に害を及ぼす物だけを使用できないように書き換えられているだけで、追加で何かを習得する事はできる可能性が高いな…。
現状ではこれ以上の事は出来そうにはないが、脱出の為の鍵には成り得るな…)
実験の成果が僅かながら出たことに確かな手応えを感じつつ、先に出た二人の後を追って観音堂を後にした。
- 118 名前:天才(変態)が欲するモノ:2008/04/30(水) 00:16:42 ID:9hxokzf30
- (くそっ、いつまで追ってくるつもりだあの野郎)
役場を出てひたすら東の方角へ走ったルーファスだったが、未だにクリフは声を荒げて自分を追ってくる。
(流石に俺もこれ以上走れない。覚悟を決めて追っ払うしか…)
逃走を始めた時に自分の中を駆け巡った不安は未だに拭えないが、これ以上逃げ回る事は不可能と判断を下す。
ルーファスはその身を翻すと共に矢を構え、その矢先をクリフに向け叫んだ。
「止まれ! これ以上近付くんじゃねぇ!」
クリフは言われたとおりにその場に立ち止まると、ルーファスに向かって負けじと叫んだ。
「いいかっ、もう一度だけ言う! こんな真似はよせ! お前が守ろうとした奴も決してそんな事は望んじゃいない!」
「だまれっ! そんな事はなぁ、俺が一番知ってんだっ! けどな、俺にはもうこの方法しか残されてねぇんだっ!
もう一度、共に同じ時間を生きたい…。その為にはあいつの望まないことだろうとなんだってしてやる!」
アリーシャと一緒にいた時間は、自分の生涯過ごしてきた時間の中ではほんの一瞬にも満たないような期間だ。
しかし、その僅かな時間の中で抱いたこの感情は、それまでのルーファスの人生の中で感じた事のない掛け替えのない物だった。
だからそれを奪った者も許せないし、もう一度手にする手段があるのならそれに縋ったりもする。
「ルーファス…」
当初の懸念どおりクリフの言い分を理性は正しいと納得し始めていた。
「お前には世話になった…だから、今だけは見逃してやるっ!俺の考えが変わる前に消えろっ!」
本当は撃てるかどうか自信はなかったが、これ以上クリフに説得を続けられたら自分が折れてしまうのではないかと思ったルーファスは苦し紛れに叫ぶ。
そんなルーファスの姿を見てクリフはその身に付けていたナックルを外し地面に放り捨てた。
金属同士がぶつかる耳障りな音が夜の空に響き渡る。
「クリフ、てめえ何のつもりだ!?」
「一先ず話をしようじゃねえか! 俺はお前を説得しに来ただけなんだ。
傷つける気なんざサラサラない。だったらこんなもんいらねえじゃねえか!」
和睦を求める者が武器を持ってたら信用なんてしてもらえないという事を言いたいのだろうか。
武器を捨てたクリフだったが放つ気迫に変わりはない。
真摯な瞳を真っ直ぐルーファスに向け一歩踏み出す。
気圧されたルーファスが一歩退くと共に、手を伝う汗で矢が滑ってしまった。
しっかりとクリフの額目掛けて照準していた弓を反射的に反らしてしまう。
「っつ!」
頬をかすめた矢が彼方へと飛んでいった。
「言っただろ! これ以上近付くなってな…。次は外さねぇ…」
言っている事とやっていることの違いにウンザリしつつも再び矢をつがえる。
「…今ので確信したぜ。その気になってたらお前は間違いなく俺を殺せてた。それが出来ないって事はお前はまだ迷ってる。
迷ってるならそんな事をするんじゃない。アリーシャって奴が、今お前にして欲しい事は自分のためにお前が苦しむ事じゃない。
それにお前がしようとしていることは今のお前のような思いをする奴を作るだけだ。
そんな事してでも守りたい存在がいることは理解できる。けれど、大事な誰かを失う苦しみを知ってるお前が…」
クリフの言っている事はもっともだ。ルーファス自身も理解はしている。
しかし、クリフの言うとおりにするという事はアリーシャとの再会を諦めねばならないという事。
彼にはその行為がアリーシャの事を忘れる事と同位に思えて仕方がなかった。
理解出来ても感情がそれを受け入れるのを拒む。ルーファスはクリフの説得を阻むべく声をあげる。
「うるせぇっ! だったらてめぇはわかんのか!? 大事な誰かを…。この身を捧げてでも守りたいと思った奴を失った俺の気持ちがっ!」
きっとこいつにはわからない。俺の気持ちが。
もうどうしたらいいのかすらわからないこの苦しみを。
ルーファスの問いかけにクリフは逡巡することなく応えた。
「わかるさ…。今までだって何人もの仲間を失ってきた。大勢の仲間を助けるために他の何人かを斬り捨てるような真似だってした。
その都度後悔もしたし苦しい思いもしてきた。だがな、俺はお前みたいにはならなかった。なっちゃいけねえんだっ!
残された俺たちができる事は、そいつのやろうとした事を引き継ぐ事だ! だからルーファス!」
更に一歩前に出てルーファスに手を差し伸べるクリフ。
錯乱状態に陥ったルーファスがとうとう構えた矢をクリフ目掛けて放とうとした。
- 119 名前:天才(変態)が欲するモノ:2008/04/30(水) 00:17:37 ID:9hxokzf30
- 「待って!」
そんなルーファスを遮るように澄んだ声が響き渡る。
その声はクリフ、ルーファス共に知っている人物ソフィアの声だった。
「ソフィア…」
「嬢ちゃん!」
突然現れた少女に目を向ける二人。よっぽど急いできたのだろう、体を前屈みにし、側の木に手を掛けて肩で息をしている。
やや遅れて、同行者の2人も暗がりの中から現れた。
「ルーファスさん。辞めてください! 事情はわかります。さっきの放送で呼ばれた人の中にいましたよね?
貴方の大切な人が…。きっとそれでこんな事を…。でもアリーシャさんはこんな事を望んじゃいないはずです!」
「うるせぇ! どいつもこいつも似たような事言いやがって! それでも…あいつを生き返す為にはこれしかないんだよ!」
構えた矢をソフィアに向けるルーファス。
1度はその身を挺して危機を救った少女に対して弓を向けてしまう程、彼の頭は混乱していた。
それを見てレナスはすぐさまにルーファスの前に剣を構えて立ちはだかる。
「言ったはずだ。次に会った時に考えを改めてなかったら刃を向けるとな!
貴様はまだ迷っているようだが、その矢を放った時はわかっているだろうな?」
睨みあうレナスとルーファスの間に更にもう1人割り込んできた。
「ヴァルキュリアよ。ここは私に任せていただけないでしょうか?」
「レザード? どういう風の吹き回しだ?」
「なぁに、主催との決戦に必要な戦力は多い方がいいですからね。それに用は彼が言ってる人物を生き返らせれば良いのでしょう?」
メガネの縁を押し上げ位置を直すとレザードはルーファスの方に振り返った。
「なんだ? てめえは?」
ルーファスは突如目の前に躍り出た不審な男に矢を向ける。
見たことのない奴だが、どうにも胡散臭い奴だ。
「お初にお目にかかります。我が名はレザード・ヴァレス。しがない錬金術師です。それと少々の魔術を嗜んでおりまして」
レザードはどこか芝居がかった様子で話し始めた。
「だからなんだってんだよ?」
ルーファスは殺意を向ける相手がコロコロと変わったことで、一時的な錯乱状態から解放されていた。
それと同時にルーファスはどこかレザードの話す事に惹きつけられ始めていた。
最早そんなルーファスの声には敵意は込められていない。
「単刀直入に言いましょう。貴方の願いを叶える手段を私は知っています」
ルーファスの様子を見て満足そうな笑みを浮かべつつ続けるレザード。
「!」
- 120 名前:天才(変態)が欲するモノ:2008/04/30(水) 00:18:20 ID:9hxokzf30
- 唐突にレザードから衝撃的な一言を聞いたルーファスの表情は驚きを隠せない。
「見た所貴方はミッドガルドの住人ですね? 私には判ります。
そして、ここにいるソフィアと違って私と同じ世界の住人という事は、元の世界に戻れば私の知識が活かせるという事です。
私達の世界では反魂の法という儀式がありまして、他の者の命を捧げる事で望んだ者を復活させる事ができるという術ですが、ご存知ありませんか?
私はその術の詳しいやり方を存じ上げています」
そう、その秘術さえ使えば人の蘇生は叶う。だがそれには代償がある。
「レザード! 貴様! 私がその様な行為を見逃すとでも思っているのか!? そもそもその術に用いるのに代償とする魂はどうするつもりだ?」
過去に自分もその秘術を用いてエインフェリアを迎えた事があったが、対価とする魂をレザードに集めさせたら碌な事にはならないと思ったレナスは当然反論した。
「その魂はこの会の主催の物でも構わないのではないでしょうか? どうせ貴方はこのような行いをした主催に対して慈悲はかけないのでしょう?
魂まで滅するのなら、この方が望む人物の蘇生に使った方が有意義だと私は思いますがね」
よもや、レザードの口からこのような言葉が出るとは思っていなかったレナスは口を噤んでしまった。
代わりにルーファスが声を荒げてレザードに問いかける。
「おいっ! 本当にアリーシャを生き返らせる事ができるのか!?」
今にも掴みかからんばかりの勢いだ。
「今は不可能ですが。ミッドガルドに戻ることが出来れば可能です。
だからどうでしょう? 武器を納めて我々と共に戦いませんか?
そもそもその方が死んだのは主催が原因ですし、彼を倒す事で貴方の望みも叶う。我々としても戦力は多い方がいい。
それに優勝してその方の蘇生を依頼したところで復活できる可能性は高くありませんしね。
だったら、蘇生方法を知っている私達についておいた方が賢い選択だと思いますが?」
興奮した様子のルーファスを宥める様に落ち着いた声色でレザードはルーファスに語りかけた。
それを聞いてとうとうルーファスは武器を取り落とした。
「アリーシャを生き返す事が出来るんだな…」
そうつぶやくと彼はその場に泣き崩れた。
緊迫していた空気が晴れた。この殺し合いに心を乱した青年を見事説得し、凶行に走る前に止める事が出来たのだ。
涙を流し最良の策を見出した事を喜ぶルーファス。
相棒と自分の勘を信じ最後までルーファスを正しき道に戻そうと尽力したクリフ。
漸く救える命を救えた事に満足そうな笑顔を浮かべるソフィア。
主催に反旗を翻したものとして成果を挙げることができたレナス。
一仕事終えやれやれといった様子で肩をすくめるレザード。
この場にいる全員が晴れやかな顔をしている。
この場に生まれた新たな結束。
この絶望の島の中に生まれた小さくとも確かな希望の灯火。
ソフィアはそれを感じていた。
まだ再開できない幼馴染や、かつての仲間達。
外せるかもわからない爆弾付きの首輪。
どこにいるかすらわからないルシファー。
懸念材料は多い。
だが、それがなんだというのだ。きっと自分達みたいな集団がこの島の各地にも出来てるに違いない。
そんな皆が力を合わせればきっと不可能だって可能にできる。
そう思った矢先の事だった。
樹上より舞い降りる黒い影。
その影は真っ直ぐルーファスに落ちると彼の胸に手にする剣を突き立て彼を血溜まりに沈めた。
「いやああああああぁぁぁぁぁぁっ!!」
少女の悲痛な叫びが全てを飲み込むような漆黒の空に吸い込まれていった。
- 121 名前:天才(変態)が欲するモノ:2008/04/30(水) 00:19:33 ID:9hxokzf30
- 突如として飛来した絶望を呼ぶ黒い影。
藤林すずである。
時間は遡る。
潜伏先の民家より出る時に見つけた置手紙らしき物。
その手紙の文字は読めなかったが、落ち合う場所を示したものであろうと推理し、ならばと目印になりそうな施設内を捜索していた丁度その時である。
なにやら外から大声で喚いている声が聞こえてきた。
何かのワナかと思い警戒しながら外を観察すると、そこには2人の長身の男が追いかけっこをしていた。
(まったく…。あれではこの暗闇の中でも自分の居場所を教えているようなものじゃないか)
だが、それは今の自分にとって好都合である。
音もなくその2人を追跡するすず。
最初は金髪の方が殺しに乗った人間で、追われている緑の長髪の方がルシファーの意に反して、殺し合いを拒んだ人物だと思った。
だが、大声でやり合っている2人の会話の内容から判断するなら真逆だった。
追っている側が非殺し合い派で、追われている側が殺し合い推奨派らしい。
(どういった経緯でこんな事に…? いや、関係ない。今の私は獲物を探していて、そして目の前にその獲物が現れた。それだけ…)
いつからだろうか? 今の様に獲物の内情などを考えるようになったのは。
里ではそのようなことを考える事は間違っていると教えられたのに。
標的を発見し次第隙を見て音もなく殺す。それだけを叩き込まれてきた。
そうだ、私の技はあの時みたいに誰かを守ったりするものなんかじゃない。
自分の身は自分で守り、1人でも多くの攻撃目標を駆逐する為の物だったはずだ。
追跡を始めてかなりの時間が経過したところで変化が起きた。追われてた側が武器を手に追跡者に振り向いたのだ。
ここですずはどちらを最初の獲物にするかを決めることにした。
(金髪の方はいつ攻撃されるか警戒している。
その意識の大部分を正面の矢にむけてはいるけど、僅かながらに奇襲が失敗する危険性がある。
対する緑の方は武器の先に意識を集中しているみたい。
まぁ、無理もないか、武器の性質上そうせざるを得ないものだから…。ならば)
第一目標を緑の長髪にする。
木々を音も無く飛び移り彼が背にしている木の上に位置を取る。
こちらに気付いた様子は全くない。
- 122 名前:天才(変態)が欲するモノ:2008/04/30(水) 00:20:35 ID:9hxokzf30
- 仕掛けるタイミングをうかがう。
だがここで更に状況に変化が訪れた。別方角から少女が仲間を引き連れて登場したのだ。
どうやらこの者達も緑の男の説得をするつもりらしい。
だがそんな事今の彼女にはどうでもよかった。
(5人。殺れるの? 今の疲労状態で…)
優勝を狙っているのでここで無理をしても仕方が無いが、獲物を前にして後退するなど里の掟に反する事になる。
(1人なら奇襲で確実に…。後は他の奴の出方次第)
素早く状況の変化に対応した判断を下し、改めて様子を見る。
説得は佳境に差し掛かっていた。
見事に眼鏡の男が標的にしていた緑の男を言いくるめたみたいだ。
その場に崩れ落ちる獲物。
(今!)
身を隠していた木より剣を構え急降下。
こちらにがら空きの背を向けている標的の左胸―――即ち心臓目掛け突き下ろす。
(まずは1人…)
ここで自らの武勲に酔いしれる様では3流以下である。
すぐさま次の標的を捜し求めるすずのいや殺戮者の目。
その目が捕らえたのは様々な反応を見せる獲物たち。
今にもこちらに殴りかからんとする激昂した金髪。
剣を抜き臨戦態勢をとる浅葱色の鎧を纏った銀髪の女性。
素早く後衛の位置に引き下がると、何やら魔法陣のような物を大気に浮かび上がらせている眼鏡。
(流石この時間まで生き延びている猛者といった所か、この奇襲に怯むような弱者は生き残っていない)
となれば退くかと判断しようとしたその時。
「いやああああああぁぁぁぁぁぁっ!!」
少女(すずよりは明らかに年上だが)が悲鳴をあげその場に崩れ落ちた。
(第2目標補足)
既に1人目を殺した剣は貫いた体から抜いて構えている。
隙をさらした少女まで自分なら1回の跳躍でいける距離だ。
殺気を込め両足に力を込める。
だがこちらの狙いを察したのか騎士風の女がその進路上に立ちはだかった。
金髪の大男は捨てた武器を拾うことなく、怒りの咆哮をあげながら直接殴りにこちらに来ていた。
(やはり出し惜しみせずにブラッディーアーマーをつければよかったか…)
自分の判断ミスに舌打ちを入れようとした時すずは気づいた。
(いや、この状況使える。戦闘続行)
怒りに任せ直線的な攻撃しか仕掛けてこない大男。
少女を守るため積極的な攻撃を仕掛けてこない騎士。
自分が少女を執拗に狙えば、魔法で狙われる危険性も減る。
ピンポイントに狙うにも広域魔法でなぎ払うにしてもこう仲間と密集されては両方出来ないはず。
それに今の時間も場所も自分に味方していた。
時間は夜中。
月明かりはあるとはいえここは森林地帯の中余計に暗い。
こういった場所での戦闘は我ら忍びの得意とする場所。
前後左右だけでなく木々を跳び回り三次元的要素も取り入れ攻め立てる。
- 123 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/30(水) 00:20:40 ID:0qk8NV7y0
- しあーん
- 124 名前:天才(変態)が欲するモノ:2008/04/30(水) 00:21:44 ID:9hxokzf30
- (くっ、この少女強い!)
レナスは素直に少女の腕に舌を巻いた。
当然1対1なら遅れをとる事はないが、状況がそうさせてくれない。
完全に戦意喪失したソフィアをかばいつつ戦うには厳しい相手だ。
それに少女の戦闘スタイルも苦戦の原因だ。
常に動き回り急所目掛け鋭い一撃をヒットアンドアウェイで繰り返してくる。
ソフィアを執拗に狙っているが、隙見せればこちらにも仕掛けてくる。
何度目かになろうかのソフィア目掛けての斬撃を受け止める。
一瞬止まった少女目掛けてクリフと呼ばれた男が殴りかかる。
だが、当然のようにその拳は空を切る。
(あんな闇雲な攻撃では当たらん。見た感じ本来はもっと上手い戦い方をしそうだがあいにく今は怒りに我を忘れているようだ)
レザードからの援護の魔法もこう動き回られては期待できない。
(レザードの力を宛てにするとは私も焼きが回ったか…)
そんな事を考えていたら今度は自分が狙われた。
あわやという所で、手にした剣を盾にする。
体重をかけて剣を振り払う。
(体重や単純な腕力だけならこちらに分があるが)
レナスは焦り始めていた。
(結局1人救っても1人犠牲にしてしまった…。いや、このままでは犠牲者が増えかねない)
何か自分もこの殺し合いを止めるためにできる事をと思っての行動だったが、結局は数だけの計算なら±0であり、更に仲間まで危険な目に遭わせてしまっているのだ。
そんな思考がレナス自信の剣も鈍らせていた。
- 125 名前:天才(変態)が欲するモノ:2008/04/30(水) 00:23:33 ID:9hxokzf30
- (あれ…? おかしいな何で俺は倒れてんだ?)
うつ伏せに倒れたままの状態で頭だけ上げると、そこには小柄な少女がまさに縦横無尽に跳び回りソフィア達に牙を剥いていた。
(やべぇ…助けねえと…)
立ち上がろうとしたが全く力がはいらない。
それどころか体を動かすだけで、いや呼吸をするだけで左胸から発する激痛が全身を駆け巡る。
体が濡れている。しかもなんか生温かい。
地面に広がる血の池を見てルーファスは漸く自分の身になにが起こったか理解した。
(そうか…俺はあのチビに…わりい、みんな俺はもうダメみたいだ…。最後まで迷惑かけちまったな…)
そんな事を思いながら戦闘の光景をぼんやり眺める。
よく見ると仕掛けてきた少女はソフィアを執拗に狙っているようだった。
(くっ、ソフィア…)
彼女の名前を胸の中で呼んだのと、ルーファスが落とした弓矢を拾い上げ木にもたれかかるように立ち上がるのは同時だった。
(そうだ…俺はまだ死んじゃいねぇ! だったらまだ…いや、今度こそ誰かを護れる!)
さっきは動くだけで激痛が走ったのに何事だろうか?
心に湧きあがった闘志のおかげか、立ち上がる事ができた。
(なんだよあいつら…押されてんじゃねえか)
理由はなんとなくわかる。
戦意喪失のソフィアに、それを守るので手一杯のレナス。
怒りで我を失ってるクリフに、魔法ができるといったレザードもあの混戦では味方を巻き込みかねない。
完全に怯えてうずくまるソフィアを見つめる。
(アリーシャは護れなかったけど…せめてソフィアだけでも…! 護ろうとした女の子を1人も護れないなんてヘタレもいいとこだしな…)
弓を構える。想像を絶する激痛がルーファスの体を駆け巡った。
途切れそうになる意識をなんとか執念で繋ぎとめる。
(あぁ…何やってんだか…俺は…。こんなことしても俺はもう助からない。
こんな激痛に耐えてまでやることか? このまま目を閉じればアリーシャのとこまで逝けるってのに…)
それでも彼は構えを解かない。
引き絞る弓の弦を焼けるような痛みに耐えながら維持し続ける。
鏃が向かう先には常に襲撃者の少女がいた。
満身創痍の今の状態では呼吸が不規則に乱れる。
それに応じて照準が僅かにぶれた。
失った血の多さからか、視界も時折ぼやける。
そんな状態で敵味方共に動き回っている戦場へ敵だけを射抜く矢を放つのは不可能だ。
だが、ルーファスはそうは思わなかった。
極限まで高められた集中力と、今まで幾千幾万もの矢を放ってきた経験から標的を射抜くための軌跡が完璧に見えていた。
突如として横風が吹き始める。
しかし今の彼には何の障害にすらならない。
矢が受ける風の影響。それによる着弾点のズレすら見えている。
僅かに左へと照準を修正。
そして、矢羽を持つ手の力を緩める。
限界まで張り詰められていた弦が戒めを解かれる。
それと共に打ち出された矢はまさしくルーファスが思い描いた軌道に乗って駆け抜けた。
- 126 名前:天才(変態)が欲するモノ:2008/04/30(水) 00:24:49 ID:9hxokzf30
- 標的の右肩に突き刺さるルーファスの一撃。
当然必殺の一撃のつもりだったが、ルーファスの殺気を敏感に感じ取ったすずは、済んでの所で身を捻り致命傷を避けることが出来たのだ。
戦場の動きが完璧に止まる。
全員がルーファスの方を見つめ驚愕の表情を浮かべている。
ただ1人襲撃者である少女を除いて。
その一瞬の静止した時を利用し彼女は撤退をしようとしていた。
(おいおい…なにを驚いてんだよ? それよりそいつが逃げちまうだろうが…。まぁ、いいか…)
「後は俺に任せな」
残された命を燃やし今度こそ必殺の一撃をあの敵にぶつける。
構えた弓に矢の代わりに無数の眩い光が装填される。
解き放たれた光の矢はそれぞれがまるで意思を持つかのように様々な軌道を取りながら少女に迫る。
的確に人体の急所目掛けて伸びるそれを少女は驚異的な反応でなんとか避けていた。
しかし、致命傷を避けるので精一杯。肩や二の腕、太腿が貫かれる。
「奥義っ!」
無数の光が再度ルーファスの手に集う。
その輝きは混ざり合い巨大な光の矢を形作る。
「アスタニッシュグリッツ!」
闇を切り裂く流星の如き光の槍は少女の体に大穴を穿つと、彼方へと飛び去っていた。
「ま、俺にかかりゃ…こんな…もん…さ…」
(漸く…護れたぜ…。アリーシャ…今逝く…)
満足そうな表情を浮かべながら彼の意識は虚無の世界へと旅立った。
- 127 名前:天才(変態)が欲するモノ:2008/04/30(水) 00:26:23 ID:9hxokzf30
- 「ルーファスさんっ!」
ソフィアが真っ先に駆け寄ると、操り糸が切れた人形のように崩れ落ちたルーファスを抱きかかえた。
「ルーファスさんっ! 目をっ目を開けて!」
懸命に彼の亡骸を揺さぶるソフィア。
「ソフィア…」
沈痛な面持ちでソフィアを見つめるレナス。
「くっそぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
やり場のない怒りを近くの巨木にぶつけてその木をへし折るクリフ。
「ソフィア。無駄です。その方は既に死んでいます」
意外にもソフィアに最初に声を掛けたのはレザードだった。
ソフィアは突きつけられた事実を否定するかのように頭を振る。
もう手遅れだというのに彼の傷口に癒しの紋章術『ヒーリング』を施す。
「傷は塞ぎました…。だから、起きて下さい…。起きてよ…ルーファスさん! お願いだから…」
嗚咽混じりの声でルーファスに語りかけるが当然のように返事はない。
「いい加減にしないかっ!!」
暗がりの森の中にレザードの叱責が木霊した。
「貴様の気持ちはわからんでもないが、こんな事で取り乱しても主催の思う壺だぞっ!
しかも貴重な魔力も無駄遣いするとは…いつ敵が襲ってくるかもわからぬこの状況でいざという時どうするつもりだ!?
このザマでは次は貴様の番だ! だがそれでは困るのだよ、対主催の鍵となるかも知れん貴様に死なれてはな!」
レザードのセリフに怒りを露にして反論するソフィア。
「こんな事? こんな事ですか!? 貴方にとっては些細な事かもしれない…。また目の前で誰かが死んだだけの事かもしれないっ!
でもこの人は、ルーファスさんは私の事を何度も助けてくれた人なんですっ!」
「そうだ。貴様はまたこの男に守られた。それは貴様が自分の身すら守れぬほど弱いからだ。そして、貴様はこれからも誰かに守られる。
その誰かを犠牲にしてなっ!! ソフィアよ、心を強くしなさい。魔法の強さは即ち精神の強さ。
この者の死を乗り越える様な心の強さが己を守る力に、そして誰かを救う力になるのです」
(レザードの奴…。言葉はきついがソフィアを立ち直らせようと?)
流石のレナスも面を食らった。まさかレザードが他者を思いやるような行動に出るとは。
ソフィアはとうとう黙り込んでしまった。
レザードはレナスの側に寄るとソフィアに聞こえない様にレナスに囁いた。
「彼女へのフォローをお願いします。私はソフィアの見えない所でこの方の遺体を弔おうと思います。
まだ彼女はこの方との別れに耐えられそうにありませんからね」
レナスは感動すら覚えた。あのレザードがこんなセリフを口にするなんて。
「わかった。ソフィアの事は任せろ。彼の遺体の方は頼んだぞ」
「はい…心得ています」
レナスはまだ涙を流してるソフィアを伴って離れていった。
「貴方も彼女の側に」
続けてクリフも促す。
「アンタはどうするんだ?」
漸く怒りが収まり始めたクリフが応える。
「この方の遺体を弔おうと思います」
「だったら俺も」
「いえ…。貴方はソフィアの友人なのでしょう? なら、彼女を慰めてあげて下さい。これからの心構えは私の方で彼女に諭したつもりです。
ですが、あのような少女にこの別れはきついでしょう。支えてあげて下さい」
クリフの申し出をやんわりと断るレザード。彼をよく知るものがいたら鳥肌モノのセリフを吐く。
「わかった」
言われたとおりクリフもレナスとソフィアが消えた暗がりへと消えていった。
そんなクリフの様子を見てレザードが口元を歪めた事に気付く者はこの場にはいなかった。
- 128 名前:天才(変態)が欲するモノ:2008/04/30(水) 00:28:23 ID:9hxokzf30
- ルーファスを抱きかかえるとレナスたちが消えていった方向とは間逆の方へと歩き出すレザード。
(流石に我ながら歯が浮くような事を言ったものだ。しかし単純な奴らだ。まぁ、私の思惑に気付く者がいるとは思えんがな)
十分遺体を運んだところで地面に下ろす。
『バーンストーム』
その傍らの地面に大穴を空けその穴にルーファスの遺体を降ろす。
「汝 美の祝福賜らば 我その至宝 紫苑の鎖に繋ぎ止めん」
おもむろに大魔法の詠唱を始めたレザードは
『アブソリュート・ゼロ』
作り出した絶対零度の氷柱にルーファスの遺体を閉じ込めた。
(この器には腐敗してもらっては困るからな)
雲の隙間から降り注ぐ月明かりが氷柱を美しく照らす。
(フフフ…。まさかハーフエルフと引き合わせてくれるなんて…。やはり貴方は最高ですよレナス・ヴァルキュリア。
彼が刺された時は肝を冷やしましたが、傷も最小限に留まり、その傷もあの小娘が塞いでくれましたしね。
災い転じて福となすといったところでしょうか?
主神オーディンの魂の器であるハーフエルフ。彼の体を使えば私はヴァルキュリアと同格の存在となれる。すなわち、成長する事ができる神へと!
それに私の仮説が正しければ、この場でかけられている能力の変更は個人レベル。
彼の体に私の魂を入れることが出来れば今私が使えない術も使用可能となる可能性が高い。
肉体の能力もオーディンと匹敵するものになり主催を倒す事も可能でしょう。
現在の私1人の力では輪魂の呪を行う事は難しいですが、ブラムスや強力な魔導師の力を使えばあるいは…。
まぁ、首輪があるうちは術を行使しても爆破される恐れがあって出来ないわけですがね。
だが確実に手札は揃いつつある。フフフ…、レナス貴方をこの手にすることができる日もそう遠くはないのかもしれませんね)
【ルーファス死亡】
【すず死亡】
【残り29人】
※ルーファスの遺体は傷を塞いだ上で氷漬けにし、D-5とD-4の境目(D-5側)に掘った穴に埋めてあります。
※すずの荷物は遺体のすぐ側に放置。回収するかどうかは次の方に任せます。
- 129 名前:天才(変態)が欲するモノ:2008/04/30(水) 00:31:01 ID:9hxokzf30
- 【D-5/夜中】
【レザード・ヴァレス】[MP残量:70%]
[状態:正常]
[装備:天使の唇@VP+大いなる経典@VP2]
[道具:神槍パラダイム@RS・アップルグミ×2@TOP・エルブンボウ@TOP・レナス人形フルカラー@VP2
連弓ダブルクロス@VP2・矢×27本・荷物一式×4分(ルーファスの所持していた荷物を2つのバックに入れて持ち運んでます)]
[行動方針:愛しのヴァルキュリアと共に生き残る]
[思考1:愛しのヴァルキュリアと、二人で一緒に生還できる方法を考える]
[思考2:その一端として、非常に不本意だが、ソフィアに移送方陣を修得させてやる]
[思考3:その他の奴はどうなろうが知ったこっちゃない]
[思考4:四回目の放送までには鎌石村に向かい、ブラムスと合流]
[思考5:ブレアを警戒。ブレアとまた会ったら主催や殺し合いについての情報を聞き出す]
[思考6:輪魂の呪を行い成長する神になる]
[思考7:首輪をどうにかしたい]
[備考1:ブレアがマーダーだとは気付いていますが、ジョーカーだとまでは気付いていません]
[備考2:レザード1人では輪魂の呪は出来ません。協力してくれる魔術師が必要です]
[現在地:D-5とD-4の境目(D-5側)]
【ソフィア・エスティード】[MP残量:80%]
[状態:ルーファスを目の前で殺された事による精神的ショック状態]
[装備:クラップロッド@SO2、フェアリィリング@SO2、アクアリング@SO3]
[道具:レザードのメモ、荷物一式]
[行動方針:ルシファーを打倒。そのためにも仲間を集める]
[思考1:フェイトに会いたい]
[思考2:レザードの指示に従い魔法(移送方陣)を修得する]
[思考3:四回目の放送までには鎌石村に向かい、ブラムスと合流]
[思考4:自分の知り合いを探す]
[思考5:ブレアに会って、事の詳細を聞きたい]
[現在地:D-5西部]
※レザードのメモには移送方陣についての詳細が書かれていますが、これを読めば移送方陣が修得出来るという訳ではありません。
【レナス・ヴァルキュリア】[MP残量:100%]
[状態:戦闘によりやや疲労+何も出来ない自分に対する自責の念]
[装備:魔剣グラム@RS]
[道具:ダブった魔剣グラム@VP、合成素材×2(ダーククリスタル、スプラッシュスター)@SO3、荷物一式]
[行動方針:大切な人達と自分の世界に還るために行動する]
[思考1:ルシオの保護]
[思考2:ソフィア、クリフ、レザードと共に行動(但しレザードは警戒)]
[思考3:四回目の放送までには鎌石村に向かい、ブラムスと合流]
[思考4:協力してくれる人物を探す]
[思考5:できる限り殺し合いは避ける。ただ相手がゲームに乗っているようなら殺す]
[思考6:レザードを若干見直した]
[思考7:ソフィアを励ます]
[現在地:D-5西部]
【クリフ・フィッター】[MP残量:70%]
[状態:戦闘と走り回ったことによる疲労]
[装備:ミスリルガーター@SO3・閃光手榴弾@現実・サイレンスカード×2@SO2]
[道具:ドラゴンオーブ・エターナルソード・メルーファ@SO2・バニッシュボム×5@SO3・フレイの首輪・荷物一式×3]
[行動方針:首輪を解除してルシファーを倒す]
[思考1:ソフィアを励ます]
[思考2:脱出の手段を見つける]
[思考3:仲間を集める(マリア、フェイト優先)]
[思考4:首輪は調べられたら調べる]
[現在位置:D-5西部]
- 130 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/30(水) 00:33:38 ID:9hxokzf30
- 投下終了です。
状態表見難くてスミマセン。改行多すぎてエラーでたもんで。
マーダー2人も減らしてしまいましたが、大丈夫でしょうか?
毎回チェックはするんですがどこかしらでミスをしてるので、指摘やご意見をお願いいたします。
- 131 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/30(水) 00:41:26 ID:0qk8NV7y0
- ルーファーーーーーーーーーーース!
とうとうヘタレ脱却したな……これがノートンとの違いだ!
あれ?でも「ジェストーナと一緒だな!」っていうとあんまりカッコよく聞こえない……
そして俺の嫁お疲れ様。
やはり5人相手じゃ分が悪かったか……
ブラッディアーマーは対価が対価なだけに簡単に使えないからなあ
ちなみにマーダー減ったのは個人的に問題なし
氷川村が対主催だらけの殺し合いの真っただ中だし、ぶっちゃけ俺が書いてる話だとマーダーサイドが人員的にも装備的にもパワーアップしちゃうし
- 132 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/30(水) 16:37:02 ID:1UA/vTMLO
- 新作乙!
ルーファスはマーダーしたりヘタレたり大変だったなあ
しかしクリフは本当に主人公してるな
あと、クリフの行動方針に「役場に戻る」ってあった方がいいんじゃない?
ルーファスは死んだけどミラージュが死んだ事は知らないだろうし
- 133 名前: ◆yHjSlOJmms :2008/04/30(水) 20:37:01 ID:UnP4jHmw0
- >>132指摘サンクスです。
案の上忘れてるしorz
クリフの状態表を以下に変更します、
【クリフ・フィッター】[MP残量:70%]
[状態:戦闘と走り回ったことによる疲労]
[装備:ミスリルガーター@SO3・閃光手榴弾@現実・サイレンスカード×2@SO2]
[道具:ドラゴンオーブ・エターナルソード・メルーファ@SO2・バニッシュボム×5@SO3・フレイの首輪・荷物一式×3]
[行動方針:首輪を解除してルシファーを倒す]
[思考1:ソフィアを励ます]
[思考2:脱出の手段を見つける]
[思考3:仲間を集める(マリア、フェイト優先)]
[思考4:首輪は調べられたら調べる]
[思考5:役場へ戻る]
[現在位置:D-5西部]
- 134 名前: ◆wKs3a28q6Q :2008/05/03(土) 08:13:57 ID:IUmwcjeD0
- アホみたいな長さになってしまいましたがクロード・アシュトン・チェスター・マリア・クレス・ボーマンを投下します
- 135 名前:不協和音 ◆wKs3a28q6Q :2008/05/03(土) 08:18:18 ID:IUmwcjeD0
- アシュトン・アンカースという友人がいる。
エクスペルの冒険で、初めて出来た男の仲間。
レナとセリーヌさんとの三人だけの冒険が不満だったわけではないし、『両手に花』という状況で喜びを感じないほどストイックな性分でもない。
ただ、それでも同性の仲間が出来たことは嬉しかった。
宿屋に泊まる時に一人ではなくなり、隣の部屋から聞こえてくる楽しげな話声に密かに嫉妬することもなくなった。
野営の時もそうだ。アシュトンが仲間になって、後衛の女性陣に任せないといけないという事態がなくなった。
仲間が増えて接する機会は減ってしまったが、それでも“疎遠”と呼ぶ程ではなかった。
古くから共にいたし、何よりも彼という人間をよくわかっていたから。
運も間も悪くて、乙女チックな一面があって、弱気で、そのくせ戦場では頼りになる樽マニア。
こんなに濃い個性、絶対他とは被らないだろう。
だから僕は仲間が増えた今でもアシュトンと仲良くしていたいと思う。
他者にはない素敵なものを、彼はいっぱい持っているのだから。
勿論、ずっと友人であり続けたいのはアシュトンだけではない。
あの日共に旅した仲間達は皆、個性的で掛け替えのない存在だ。
レナも、セリーヌさんも、オペラさんも、エルネストさんも。プリシス、ディアス、ボーマンさん。チサトさんにレオン。
みんなみんな、掛け替えのない大切な友人だ。
――ノエルさんだって、本当に大切な友人だった。
暇を見つけてはよくバーニィと戯れていた。
ピョコピョコと両手を動かしては僕らの援護をしてくれた。
みんなで刺身を食べるときだけは箸を素早く動かして大トロを一人で掻っ攫ってくれた。
とても気が利く人だった。
争いが、本当に嫌いな人だった。
勿論僕だって争いは好きじゃないし、他のみんなだってそうだろうけど、ノエルさんは別格だった。
あの人は優しいのだ。みんなとても優しいけど、そんなみんなも一目置くぐらい優しいのだ。
だから、きっとその優しさ故に彼は命を落としたのだろう。
もう会う事が出来ないんだと思うと視界がぼやけそうになる。
だけど、今はまだ立ち止まるわけにはいかない。僕の仲間がまだこの島には残っているのだ。
ノエルさんには悪いけど、彼を悼むのは全てが終わってからにしよう。
この島では、少しの気の緩みが命取りとなる。
最初に襲われて気を失ったのも、チサトさんに誤解されたのも、全ては僕のミスのせいだ。周りがよく見えていなかった。
ジャックの死もそうだ。
姿を見られたくないのなら、後ろからこっそりついていけばよかったじゃないか。
黙って見送り、のんびりと待ち、ジャックの死に気付くことさえできなかった。
錯乱した少女に襲われたにしろ何らかの理由で禁止エリア内で動けなくなったにしろ、僕がついていってれば対処できたはずなのに。
それなのに、保身を優先して犠牲者を出してしまった。
言い訳をするなら、この異常な状況のせいで神経がすり減っていたのだろう。
だけどもう同じ過ちは繰り返さない。
例え疑いを向けられたって、チサトさん達の元に駆けつける。
……大丈夫だ、もう判断は誤らない。
ノエルさんの死に心を痛められるくらいには冷静になっている。
さっきまで心に余裕がなかったのに、だ。
それはきっと信頼のできる仲間が今目の前にいるからだろう。
彼は僕が名前を呼んだら立ち止まり、こちらを見た。
その際にエネミーサーチが反応したが、これだけで相手が殺し合いに積極的に参加していると決め付けるのは早計だということはついさっき学習済みだ。
戦場で突然背後から声をかけられたら警戒心を露わにして当然なのだ。
だから僕は、今までの失敗を生かし笑顔で彼に近づくことを選択した。
「あぁ……なんだ、クロードか」
――アシュトン・アンカースという友人がいる。今、僕の目の前に。
☆ ★ ☆ ★ ☆
- 136 名前:不協和音 ◆wKs3a28q6Q :2008/05/03(土) 08:23:45 ID:IUmwcjeD0
-
何が、起こったのだろう?
気付かぬ内に催眠術か手品にでも引っかかってしまったのだろうか?
それとも、これは夢だろうか?
そうでなければ説明がつかない。
大切なヒトが――アーチェが、腰から下を残して“飛び散った”なんて。
「なん……でだ……? おい、何とか言えよ……アーチェ……」
ようやく喉から言葉が出た。
だけどよ、このセリフはないんじゃねえのか?
だってよ、このセリフは目の前の肉片をアーチェだって認定することになるんだぜ?
おかしいだろそんなの。
仲間内じゃ一番付き合いが浅かったけど、それでもコイツがどんな奴かはよく分かってるつもりだ。
こいつが軽口を返さない時は、よっぽど傷ついてる時なんだ。
だから俺はアーチェに秘仙丹を渡したんだ。
本当はアーチェを襲ったクソ野郎の事をもっとよく聞きたかったけど、気を使いながら上手に聞き出す自信がなかったからその事には触れないでいたんだ。
だってそうだろう?
こいつを飲んで横になってればきっと元気になるんだから。話はそれから聞いたって遅くないだろ?
だから貴重な貰い物をお前にやったんだぜ?
分かったらさっさと起きろよ。いつもみたいにやかましく喋れよ。
長々とお前の冗談に付き合ってやれるほど、今の俺達は暇じゃないんだぜ?
「う……っ」
アーチェを見ている内に、胃液が逆流してきやがった。
クソが、何考えてるんだよ俺は。アーチェは大事な仲間じゃねぇか。
軽口で散々罵ったけど、本当にゲロっちまうほど醜い外見はしてないぞコイツは。
胸はペッタンコだけど他は並より遥かに上だ。
そんな女を見て吐いちまうなんて最低だぞ。
飲み込めよ。昔はそれこそ泥水を啜るような暮らしだったじゃねえか。
あれに比べたら自分の胃液を飲むくらいどうってことないはずだろう?
――あぁ、そうだよ。認めるよ畜生。もう本当は理解しちまってるんだ。
目の前の肉片はアーチェだってことくらい。
もうアーチェが起き上がる事はないってことくらい。
アーチェの死の直接の原因は、きっと俺だってことくらい。
そう、俺が、アーチェを殺しちまったんだってことくらい。
「………………」
最低の気分だ。仲間をこの手で殺しちまった。今すぐにでも死んでしまいたいほどだ。
だが、俺はまだ死ぬわけにはいかない。
今さっき認めたように、アーチェは俺が与えた秘仙丹で死んだんだ。
それはつまり、秘仙丹を俺に渡したあの野郎が、間接的にアーチェを殺したってことなのだ。
だったら俺のやる事は一つだ。ボーマンの野郎をぶっ殺す。
自分自身の贖罪やルシファーなんざ後回しだ。
あのクソ野郎を、アーチェの代わりにぶっ殺してやる……ッ!
☆ ★ ☆ ★ ☆
- 137 名前:不協和音 ◆wKs3a28q6Q :2008/05/03(土) 08:28:33 ID:IUmwcjeD0
- 彼等はいつもひとつだった。
勿論彼等には個性があるし、考え方にも違いがある。意見が食い違った事も多々あった。
それでも、彼等らひとつだった。
そんな各自の意見の違いも含めて、『アシュトン・アンカース』という存在だった。
どれだけ揉めても最後は一丸となって何かを成し遂げてきた。
少なくともアシュトン自身は二人と一身同体だと思っているし、ギョロとウルルンもそのことに不満を持つことはなかった。
なんだかんだ言いながら彼等は楽しくやってきた。
この殺し合いの場においても、彼等はひとつとなり激戦を生き延びてきた。
だけどそれは、あくまで上辺だけの話。
結果的に同じ行動を取ることにしても、その“理由”は大抵の場合バラバラだった。
今まではそんな事は問題にならなかった。これからも問題にならないと思っていた。
少なくともアシュトンはそう思っていた。
二匹は大切な友人だから、彼等はひとつなのだから、結果的に自身の我儘を聞く形になった二匹も、プリシスのために行動してくれると。
アシュトンは友人を、無条件で信じてしまっていた。
――――彼等は、ひとつ“だった”。
☆ ★ ☆ ★ ☆
状況は一瞬で変わってしまった。
クレス君が意識を取り戻してから、僅かながら追い風が吹いているとさえ思えたのに。
最初は警戒したけれど、偶然出会ったクレス君の仲間は彼の言うとおり信頼出来そうな人物だった。
彼らのやり取りを見ていると、未だ出会えぬい仲間達が恋しくもなった。
短い時間しか彼らを見ていないけれど、私がみんなと築いたモノと同じものを、彼らの間に感じることができた。
彼らを見てると希望を感じることができたし、頭数も揃っているため余程のことがない限り全滅することはないだろうとさえ思っていた。
なのに、その矢先に小さな爆炎が幻想的な希望と少女の命を奪い去ってしまった。
(一体、何が!?)
だが今はショックを受けている場合ではない。
先程までの和やかな空気が一変してのこの惨状だ。
クレス君やチェスター君は頭が真っ白になっていてもおかしくはない。
私がしっかりして、状況の把握をしなくては……
「う……っ」
チェスター君が嘔吐をしそうになっている。
……無理もない。『内側から弾け飛んだ人体』などという普通にいけば一生拝む事のない代物を目の当たりにしてしまったんだ。
気分が悪くなったとしても、責められるものではないだろう。
掛ける言葉があるわけでもないので、一旦彼は放っておく。
今一番大事なのは彼女が何故死んだのかだ。
チェスターはボーマンから秘仙丹を貰ったと言っていた。
その秘仙丹を飲んだ途端にアーチェは爆死してしまった。
普通に行けば、アーチェの爆死にはボーマンが一枚噛んでいるとみて間違いないだろう。
だが、それだと腑に落ちない点が生じてくる。
チェスター君は秘仙丹をクレス君にあげるつもりだったと言っていた。
それはつまり、ボーマンがクレス君が重体であることを教えると共に秘仙丹をチェスター君に渡したということだ。
殺意があって秘仙丹を爆薬にしたのだとしたら、その獲物はクレス君ということになる。
だとしたら何故クレス君をあの時に助けた? 私に殺されることを恐れてか?
だとしたら何故あの時私の誘いに乗らなかった?
優勝狙いで私もクレス君も殺したいのなら、私の誘いに乗っておいて私に爆薬を口にさせればよかったはずだ。
口に入れるだけで爆発するのであれば、何も騙して自主的に飲ませる必要はないのだから。
適当に話を合わせて近付き、私を爆殺してから眠りっぱなしのクレス君を殺してもよかったのに、それをしなかった理由は?
もしかしてボーマンは、クレス君に何らかの私怨があるのか?
- 138 名前:不協和音 ◆wKs3a28q6Q :2008/05/03(土) 08:35:28 ID:IUmwcjeD0
- 「待ちなさい!」
……いけない、少し脱線してしまった。
ボーマンの目的は今考えるべきことではない。そもそも彼が殺したと決まったわけじゃないのだから。
今大事なのは誰がアーチェを殺したのか、だ。
踵を返し森の奥へと消えそうだったチェスターの目は、悲しみと怒りに満ちている。
感情の赴くままにボーマンを殺しに行く気かもしれない。。
「……聞きなさい」
一瞬だけ歩みを止めるもすぐにまた動きだした彼の腕を掴む。
悪いが彼を行かせるわけにはいかない。
勿論「相手が誰であろうと殺してはいけない」なんてことを言いたいのではない。
考え得るケースで最悪なのは『ボーマンが秘仙丹をくれたのは善意であり、にも関わらずに怒りに身を任せたチェスターが彼を殺してしまうこと』である。
それだけは避けなくてはならない。それだけの話だ。
「よく考えて。貴方、あの娘から話を聞いた時に何って言ったか覚えてる?」
もう殺し合いもずいぶん進み、私の仲間もほとんどが命を落としてしまった。
まだ何も出来ていないというのに、動き出す前に手を取り合えるものがほとんどいなくなってしまったのだ。
はたして一体何人の仲間がまだこの島で生きている? わからない。わからないが、きっと多くはないだろう。
だからこそ貴重な仲間をこれ以上失うわけにはいかない。ましてや確証のない疑惑なんかで。
勿論チェスターが怒りを鎮め私達と行動してくれるのがベストなのだが、どうやらそれは難しそうである。
ならば止めるのはやめよう。どの道仲間を探しに行く必要があるのだ。“アーチェ殺しの犯人”を追う事を止める必要はない。
要は、怒りの炎を遅かれ早かれ倒さねばいけない者に向けてもらえばいいのだ。
そしてその“犯人”を追いながら仲間を集め戦力を補強してもらえばいい。
だから私は、チェスター君を誘導する。出来るだけ仲間を失わないために。
「女の子を殺し、ホテルで人を襲った犯人は炎を使っていたって」
「…………」
「そしてアーチェはその犯人にも襲われていた
「…………あ?」」
「もし、アーチェがその殺人鬼から逃げ切って私達の所までやってきた……と、“思い込んでいた”のだとしたら?」
「ま……さか……」
一瞬、チェスターの顔から怒りの炎が消え失せる。私の言ったことが分からないとでも言いたげだった。
それもそうだろう。これは言いがかりと言っても過言でないような推理なのだ。
だが、チェスター君の顔が見る見る内に歪んでいく。
「自在に炎を操るのなら、時間差で攻撃する技があってもおかしくはないわ」
まるで鬼の様な形相で私の顔を――おそらくは、と言うよりまず間違いなく『私の顔』でなくここにはいない『アーチェの殺害犯の顔』を――睨みつける。
その表情は凄まじく、ギリギリと歯を食いしばる音が聞こえそうなほどだ。
そしてその瞳に込められた想いは、『怒り』から『殺意』へ切り替わっているように思えた。
「クロオオォォォォオォォォォォォオォォオォォォォォオォォォオドッ!!」
殺意に満ちたその声に不覚にも怯んでしまう。
まずい。そう思った。今の彼は仲間集めなど放ったらかしで復讐に走りかねない。
まずい。そう思って、思考を『どう彼を止めるべきか』に切り替えたと同時に彼はすでに走り出してしまっていた。
☆ ★ ☆ ★ ☆
クロード・C・ケニーがアシュトン・アンカースを発見するおよそ3時間前。
アーチェ・クラインが爆死するおよそ4時間前。
そしてルシファーによる定期放送のおよそ10分前。
一人の殺人鬼が、目を覚ました。
- 139 名前:不協和音 ◆wKs3a28q6Q :2008/05/03(土) 08:42:33 ID:IUmwcjeD0
- 「酷いなぁ、風邪引いちゃうかもしれないじゃないか」
アシュトン・アンカースは不満そうに呟きながら前髪を整える。
ウルルンが約束通り第二回放送の10前に起こそうとした所、寝惚けたアシュトンが「あと五分」などとほざいたので、前髪を凍らせて額を冷やしてやったのだ。
「ぎゃふ(しっかりしろ。そんなことでは命がいくつあっても足りんぞ)」
「ごめんごめん、分かってるって……」
ウルルンへと謝罪しながら、アシュトンは伸びをする。
「うん、スッキリした。寝すぎちゃうより仮眠の方がスッキリするってホントなんだね。誰が言ってたのか忘れちゃったけど」
おどけたように言いながらデイパックから地図や名簿を引っ張り出すアシュトン。
――何かが、違う。ギョロとウルルンは訝しんだ。
それが何なのか上手く言葉に出来ないが、休息を取る前と後では何かが決定的に違うように思えた。
(……どういうことだ? 休息を取って気でも緩んだか?)
そして二匹は違和感の正体にほぼ同時に勘付いた。
眠りにつくまで常に纏っていた狂気がすっかり鳴りをひそめている。
気が動転していたレオンは気が付かなかったようだが、微笑みにしても狂気に染まった冷たいものだったのだ。
それが今はただの笑みになっている。あの旅をしていた頃の、普通の笑みに。
これは余談だが、プリン頭のスカートを履いた変態の方はかなりの手練に見えたのだが、アシュトンがレオンの仲間と知って油断でもしていたのかレオンに対する攻撃を見抜けなかったようだ。
(まあ、おそらくは戦闘から離れたためだろう。獲物が現れればまた狂気に染まるはずだ)
アシュトンの狂気は現実逃避によるものである。ギョロとウルルンはそう考えている。
プリシスに拒絶された事実を認めたくないがために、無理矢理納得せざるを得ない理由付けをした。そしてそれを行動指針にアシュトンは殺戮に走ることにした。
最初に襲った三人に顔見知りがいなかったのは幸運だろう。
アシュトンは弱い男だ。あの段階で仲間に説得を受けたら恐らくは殺戮に走れなかったはずだ。
そしてプリシスに拒絶された現実と殺戮に走ろうとした事への罪悪感から、さっきまでのアシュトンとはまた違った方向に壊れてしまってたと思われる。
それを思うと殺戮方面に壊れてくれたのは幸いだ。廃人になられたら自分達にはどうしようもないのだ。
自分達も困るし、口には出さないが大事な友だと思っているアシュトンが廃人になるのは見ていて忍びない。
狂気に走るのも見ていて楽しいわけではないが、魔族にとっては特別不快に思うようなことでもない。
だから心の底で感謝しながら、あの男を殺させてもらった。
(休息を取ったのは失敗だったかもしれないな……)
あの男とあの女を異常に残忍な殺し方をしたのも、一種の逃避行為に思えた。
盗賊や魔族、襲い来る者を容赦なく殺す程度には度胸があるが、無抵抗な者を殺せるほどアシュトンの心は強くない。
あちらも仕掛ける気満々だったとは言え、途中からは命乞いする一方だった男を殺した際に少なからず罪悪感を感じたのだろう。
だがアシュトンはもう引き返すことが出来ないのだ。引き返せるほど強い心は持ち合わせていないのだ。
あの殺戮ショーは罪悪感を振り切るためにやったのあろう。『こうしてプリシスのために役立てる事は最高に楽しい』と自分自身に思い込ませるために。
弱い自分が殺戮に走るのを、プリシスのせいにするために。
(アシュトンは冷静になってきている。このままでは、いずれ……)
気付かせるわけにはいかない。『プリシスのために殺しをしている』はずが、本当は『プリシスを言い訳に殺しをしている』ということを。
そんなことになったら、逃げ場を失ったら、弱いアシュトンは崩壊する。それだけは何としてでも避けなければならないのだ。
戦闘を重ねることで、『プリシスのためにやっている』という意識を強めてきた。
自らが傷つくことで、『プリシスのためにここまでやっているんだ』というヒロイズムに酔う事が出来た。
そうして罪のない人間を殺した事への罪悪感から逃避していたというのに、体の傷を癒させるために休憩を取らせてしまった。
冷めてしまった湯を再び沸騰させるのは難しいというのに。
『――フフン…、こんばんは諸君』
場の空気が一気に張りつめる。第二回放送が始まった――――
☆ ★ ☆ ★ ☆
- 140 名前:不協和音 ◆wKs3a28q6Q :2008/05/03(土) 08:53:18 ID:IUmwcjeD0
- 許せなかった。大切な人を奪った奴が。
許せなかった。何にも出来なかった自分自身が。
許せなかった。心の底から憎んでやった。なのに、結局仇も取れなかった。
アミィも、村のみんなも、誰一人守れずに、その仇すらダオスに横取りされてしまった。
そのダオスすらも、この島で勝手に死んでしまったようだ。
そう、俺はこの島でも何一つ出来てないのだ。
何にも出来ないまま、ミントは命を落としてしまった。付き合いは短かったが、本当に優しい人だった。
クレスともいい雰囲気だったし、この二人はそう遠くない未来で夫婦にでもなっているんじゃないかと思っていた。
だけど、そんな日は二度と来ない。何も出来ないって分かっていたくせに、焼け落ちる校舎を眺めてる内に、彼女の未来は奪われてしまった。
あの分校で焼け死んでいた女の子にしてもそうだ。遺体を埋めてやることすら出来ず、その仇も逃がしてしまった。
そしてその仇は、クロードは、今度はアーチェを殺しやがった。
俺は何も出来てない。俺がしっかりしていれば、助かった命もあったかもしれないのに。
「何……すんだよッ!」
だから俺は走り出した。これ以上の悲劇を生ませないために。
なのに、俺の体は地面へと吸い込まれた。
背に感じる重みの正体は見なくても分かっている。
「落ち着けチェスター!」
当然だ。だってこの声は、長年背中を守ってきた親友のものなのだ。聞き間違えるはずがない。
「離せ、離しやがれ、クレス!」
クレスの方が、俺よりも人間が出来ている。偽りのない本心だ。
だからアミィを安心して任せられると思っていたし、アミィの死後すぐにお前がミントとくっ付いてもアミィの気持ちが踏みにじられたとは思わなかった。
お前の誠実さはよく分かってるつもりだったからだ。
だから俺はお前と親友であることを誇りに思うし、お前のためなら何だってしてやろうと思えた。
それこそ、お前を逃がすためなら単身ダオスの前に残ることくらい屁でもない。
だって俺は信じていたから。お前ならアミィや俺の仇を取ることが出来るって。お前はそれを絶対に成す男だって。
そうだ、俺はお前をあらゆる面で信じていたんだ!
なのに……なのに何でだ!?
「ふざっけんなよ! 仲間が……アーチェが殺されたんだぞ! 悔しくねえのか!? いつからお前はそんな冷たい奴になっちまったんだ!」
「チェスター、いいから話を……」
「話!? 話って何だよ! 大事な仲間の仇を討つことよりも大事な話ってのは何なんだよ!」
畜生、クレス、何でお前はそんなに冷静でいられるんだよ!?
昔のお前なら、怒りを滾らせてたろうに……俺のいない間の冒険で、そんなに変っちまったのかよ!?
「悔しくないわけないだろッ!」
クレスの叫び声が聞こえる。その言葉には、怒りや後悔、悲しみの念が入り混じっているように思えた。
「アーチェは仲間だったんだ! ずっと冒険してきた、大切な……」
だからこそ、俺は余計に腹が立つ。きっとお前の意見は正しい。だけど、正しいと理解できてもきっと納得は出来ないから。
「なら、何でだ! お前そんな冷たい奴だったのか!? 大切な仲間が死んだのに、仇を取ろうとも思わないのかよ!」
何で変ったんだよ。アミィが恋してたお前は、俺が親友と思っていたお前は、そんなに“大人”じゃなかっただろ!?
「仕方がないだろ! 悲しいけど、前に進まなくちゃいけないんだ! そうしなきゃ、生き残ってる大事な人が守れないんだ!」
「仕方がない……? お前……アーチェの死をそんな一言で済ませるのかよ!」
「そうじゃない! いい加減にしろよチェスター! 」
そうじゃないなら何だって言うんだよ。何でお前は……お前はッ!
「いい加減にしろ? いい加減にするのはお前だろ、クレス。ミントの死もそうやって『仕方がない』の一言で済ませちまったのかよ!?」
不意に体を浮遊感が襲う。クレスによって立たされたと理解した時には、左頬に衝撃を受け無様にも地面を転がっていた。
何しやがる。そう言ってやろうと立ち上がり、見てしまった。
クレスのあの目。怒りと悲しみと後悔に満ちながらも、狂気は孕んでいないクレスの目を。
「そんなわけ……ないだろ…… だけどミントは僕が塞ぎ込む事を望んでなんかいない。他の仲間を放ったらかしで絶望に浸ってほしいなんて、絶対に思っていないんだ!」
- 141 名前:不協和音 ◆wKs3a28q6Q :2008/05/03(土) 08:58:18 ID:IUmwcjeD0
- ――あぁ、そうか。気付いちまった。どうしてこんなにも腹が立つのか、その単純明快な答えに。
「……だろうな。ミントも、アーチェも、そんな事を望むような奴じゃねえ。そんなこと、俺だって分かってる」
これは嫉妬だ。醜く愚かな、くだらない嫉妬心だ。
クレスみたいに大人になれない、仲間のために感情を押し殺す事の出来ない、幼い自分にイラついてるんだ。
だけどもうどうしようもなかった。それが分ったところで、はいそうですかと敵討ちをあきらめられるわけがなかった。
「でもよ……そんなもんじゃ割りきれねえんだよ。割り切れるわけがねえ。大事な人が死んだのに、暢気こいて大局を見れるほど、俺は人間が出来てないからな」
「チェスター!」
「ああ、クレス。お前はすげえよ。ちょっと見ない間に俺の知らない冒険をして随分成長したもんだ。尊敬するね。そんな合理的な考え、俺には出来ねえ」
ぐにゃり。
自身の唇が歪んだことが分かった。おそらくは冷たい笑みを浮かべているだろう。
この場面でまるで鬱憤を晴らすかのように自然と笑みが出るという事は、もしかしたらずっと前からクレスに嫉妬していたのかもしれない。
「さすがは時空剣士様だよ。お前にはリーダーの資質がある。お前ならダオスを追い詰めれたのも納得だ。もうお前は片田舎で笑顔に包まれながらのほほんと暮らしていたお人よしの少年剣士じゃないんだからな」
本当はずっと憧れていた。嫉妬心もあったのかもしれないが、普段そんなものを抱いてたという自覚はなかった。
ただただ俺より秀でたクレスの事を尊敬し、アイツと肩を並べて歩きたいと願っていた。そうすることで、俺は自分が『素晴らしい兄貴』でいられるとさえ思っていた。
実際、戦闘技術をはじめ多くの点でクレスと対等になれた時から見ていた景色は、今までの人生で最も光り輝いている。
だからこそその景色を奪っていったあいつらが許せなかった。大切なものを奪った奴らが許せなかった。「復讐なんて意味がない」と分かりつつも、仇を追わねば気が済まなかった。
……あの時はお前も隣にいたはずなのに、あの時ダオスから庇った背中は随分と遠くに行っちまった。もう奴の背中も見えやしない。
だからそれが悔しくて、アイツに置いて行かれる自分が許せなくて、深夜に一人俺は弓を射続けた。
差がついてたことは分かっていたけど、それでも俺は再びお前と肩を並べて歩きたかったから。
そうしないと、劣等感に押し潰されて、あの日見続けていた景色を二度と見られないような気がしてたから。
「お前は間違ってないぜ、正しいから胸張れよ。けどな……」
だけど、今はもう違う。お前に追いつこうだなんて思わないし、きっともう二度と追いつけない。
俺は今、お前が歩んできた成長の軌跡とは違う道を行こうとしてるのだから。
「誰もがお前みたいに正しくあり続けられるわけじゃねえんだよ、クレス」
自嘲めいた笑みを浮かべ、もう一度だけクレスを見る。
「チェスター……」なんて間抜けな声を洩らす姿は、肉体的にも精神的にも完璧な時空剣士様とは思えない滑稽なものに見えた。
「俺は行くぜ。止めても無駄だ」
「チェスター!」
「……止めんなよ。こんなことになっちまったが、お前は俺の親友だ。殺し合いたくなんてない」
もしもクレスが実力行使に出たら、俺はクレスを殺そうとするだろう。
出来る事なら無力化程度にしておきたいが、成長したこいつ相手じゃそんな余裕は微塵もない。
俺の想いが――本気でクレスと殺し合う事も辞さないということが伝わったのか、クレスは俯いて拳を握るだけだった。
説得の言葉が浮かばないのだろう。こちらに説得される気がないのだから当然だ。
クレスが実力行使に出ることはないと判断し、再びクレスに背を向ける。
走り出そうとしたら、背後からマリアの声が聞こえてきた。
「次の放送まで、私達はこの村で策を練るわ。殺し合いを止めたいって人間がいたら、合流するよう言ってもらえないかしら? 勿論、貴方も歓迎するわ」
「…………」
返事はしなかった。
こちらに寄越さずにクレス討伐の手伝いをしてもらおうという気持ちもある。
だがそれ以上に、殺し合いに乗らない人間を集めようという意識が希薄になった俺が仲間面をするのは、何となく気が引けたから。
- 142 名前:不協和音 ◆wKs3a28q6Q :2008/05/03(土) 09:01:28 ID:IUmwcjeD0
- 「……あばよ、クレス」
呟き、元来た道を走り出す。もうここへは戻らない。もう絶対振り返らない。
俺の後ろに在るものは、道を違えたかつての親友。こんな事にならなければ、再び背中を預け合っていたかもしれない長年のパートナー。とても正しく、希望に満ちた時空剣士。
心から脱出を願ってる。クレスなら、絶対出来ると思っている。
だからこそ、俺はここには戻らない。あいつと共に脱出する資格があるとは、今の俺にはとても思えなかったから。
☆ ★ ☆ ★ ☆
顔には出さないが、ギョロはめまぐるしく変わる状況に僅かながら混乱していた。
アシュトンがウルルンが叩き起こされた際に見せた表情は、以前のアシュトンのそれだった。
別にアシュトンに人殺しをやめられたら困るからというわけではない。
見ず知らずの人間が死のうが生きようがどうでもいいし、人を殺そうが殺さまいがアシュトンの自由だ。
ギョロにとって問題なのは、アシュトンが自分自身を殺すこと。ただそれだけだ。
アシュトンの命が自分の命と直結しているからではない。
ギョロに取っては短いが、とても濃い時をアシュトンと過ごし、アシュトンの事が好きになったから。
口には出さないが、アシュトンとウルルンとの生活があればギョロは満足だった。
だから別に、アシュトンが殺戮に走った時も「意外だな」と思いつつも特に止めようとは思わなかった。
長々と落ち込まれる方が見ていて辛いし、日頃我儘を言わせてもらっている分この島では極力アシュトンの意思を尊重するつもりだった。
だからもし「やっぱり改心する」と言われても、「そうか」とだけ頷くつもりだ。
――だが、「僕は何てことをしてしまったんだ」と塞ぎ込み自殺を考えるのだけは困る。
自分やアシュトンの命を落とすつもりは更々ない。
だから、アシュトンが“戻った”時には正直焦った。
『罪悪感を消すためにハイになって無茶な行動を取ったが、休みを挟み気持ちが落ち着くと急に罪悪感が蘇ってきて塞ぎ込む』
ありえない話ではない。
(…………大丈夫、なのか?)
アシュトンの瞳は、もう先程までの狂気に染まったそれではない。
楽しそうに上擦っていた声も、今やすっかり元通りだ。
「…………これからどうするんだ?万全じゃないようだが、まだ休むか?」
なのに何故だろう。アシュトンからは先程よりも狂気を感じる。
目に見えない、もっとおぞましい狂気を。
「そうだね……まだ大人数との戦闘は避けたい所だし、一旦移動しよう。ここじゃあ町へ行く人間に見付かるかもしれないしね」
「……具体的にはどこへ行くつもりだ?」
まだアシュトンは首輪を集める気なのだろうか?
いつもの口調が――平和な世界の台所でエプロンをつけながら「そうだね、今日はいい卵が入ったし、オムライスにしよう」と言う時と変わらぬ口調が、ギョロの頭を更に混乱させていく。
「禁止エリアの近くはどうかな?あんまり来る人もいなさそうだし……」
「……なるほど、確かに人の来る方向が限られるそこなら我らも人の接近を感知しやすいな」
ギョロは、相棒ゆえにアシュトンを理解しようとし続け、とうとう理解が出来なくなった。
だからギョロは迷っている。
これ以上ゆっくりと考え事をする時間を与えていいものかと。
これ以上頭を冷やさせると、アシュトンは己の行いを悔いて立ち止まってしまうのではないかと。
(立ち止まらせるわけにはいかない……この島で立ち止まる事とは、死に直結する!)
だからギョロは考える。
アシュトンがウルルンと話し合って決めた目的地まで行く間、ずっと頭を悩ませる。
(……どうすれば、アシュトンを先程までのバーサーカー状態に戻せる?)
- 143 名前:不協和音 ◆wKs3a28q6Q :2008/05/03(土) 09:09:15 ID:IUmwcjeD0
- ウルルンは、ギョロと同じくアシュトンの異変に気付きながらもさほど問題視はしていなかった。
アシュトンは弱い。いい奴故に弱い。だから仮に冷静になったとしても、新たな“逃げ道”を考えつくだけでさほど問題にはならないと。
それよりも問題はプリシスだ。今プリシスに死なれるのは非常に困る。
勿論個人的な感情を言ってしまえばプリシスなど所詮は『仲間の仲間』にすぎないし、別に死んでしまっても「ああ、死んでしまったのか。黙祷」くらいの感情しか抱かないだろう。
だがアシュトンは違う。プリシスの死が崩壊に繋がるかもしれないのだ。
今までのような崩壊なら問題にはならないが、自ら命を絶つ方向に走られたらさすがに困る。
アシュトンも放送で呼ばれないかと心配していたようだが、実力が未知の大男のお供だけではいつ死んでもおかしくない。
(素敵なご褒美、か……)
先程の放送で告げられた『ご褒美』とやらがどんなものかは分からない。
それこそ角砂糖を三つ投げられて「よ〜しよしよしよし。ご褒美をやろう!」と小馬鹿にされる可能性もある。
だが、もしルシファーが真面目に褒美とやらを寄越す気がある場合、その『褒美』とやらを狙う価値は十分にある。
何せ奴は殺人劇の役者に十賢者や奴らを倒した光の勇者御一行様を選んだのだ。
まさか褒美が金や地位ということはあるまい。役者は皆それらを十分に持っているのだから、そんなものは角砂糖三個と大差ないのだ。
一番高い可能性は役者が誰一人として持たない未知の技術を与えられる、ということだろう。
有能な部下を得るための殺し合いだった、というのなら殺し合わせた理由にもなるし、褒美に奴の持つ技術を与えられてもおかしくはない。
そもそも奴は「優勝者は生きて帰らせて元の生活をさせてやる」とは言っていなかったしな……奴の配下にされてもおかしくはない。
まぁ奴の軍門に降るのは癪ではあるが、知人が皆死んだエクスペルに留まる理由も特に無いし、それはそれでありだろう。
そして十賢者を蘇らせた事を見るに、死者蘇生術も奴は持っている(それもレナのように“瀕死の人間”でなく“完全なる塵芥と化した者”を蘇生する力だ)
つまり、奴が『褒美』として死者蘇生術を使わせてくれるのなら、プリシスに死んでもらって一向に構わないのだ。
それどころかアシュトンに“最後の一人”への執着心を強めてもらうためにさっさと死んでくれた方が有難い。
プリシスが死に、プリシスを蘇らせるためにアシュトンが勝ち残り、蘇らせたプリシスと二人仲良くルシファーの下で働く。
おそらくこれが現時点で考えられるベストエンドだ。
もっとも、この殺し合いの意味を否定していると取られても面倒なので、プリシス以外は蘇らせるわけにいかないのだが。
まぁその辺は大した問題じゃないだろう。今のアシュトンはプリシスのために仲間を切り捨てることを選択したからな。
あとはどのタイミングで「ルシファーは死者を蘇らせられる」と伝えるかだ……
出来れば次の放送で伝えてほしいが、先程と同じように放送の最後に言われ尚且つプリシスが死んでいた場合、取り乱してロクに聞かない恐れもある。
『動転した直後に差しのべられた救いの手に飛びつく』か、『気が動転して話も聞かずに“壊れてしまう”か』……
放送まで待つとギャンブルを強いられる事になる。
かと言ってプリシスが死ぬ可能性から敢えて目を反らしているように見えるアシュトンに死者蘇生の話をすべきかどうか……
「プリシスは死なないから関係ない!」などと怒鳴られるだけならともかく、その後拗ねられてチームワークに乱れが生じては困る。
互いに信頼し合い一丸となってこその“アシュトン・アンカース”なのだ。
そして自分達の前に立ちはだかる最大の壁。恐らくはギョロも分かっていることだろう。
“プリシスは、このゲームには乗っていない”
冷静になって考えれば誰にだって――それこそアシュトンにだって分かる。
あの時先に仕掛けたのはこちらなのだ。かつての知人が殺し合いの場で襲って来たらまずは無力化してから話を聞こうとするだろう。誰だってそーする。俺もそーする。
実際プリシスの攻撃に殺意はなかった。アシュトンは攻撃されたことにショックを受けてそこまで頭が回らなかったようだがな……
とにかく、今もっとも問題なのはプリシスをどうすべきかだ。
アシュトンが蘇生の可能性を信じる前に死なれても困るし、かと言って生き延びてアシュトンと会われても困る。
プリシスに会わないよう、プリシスの気配を察する度にそれとなくプリシスと会えないルートに誘導してきた。
三人の参加者を減らす機会を捨ててまで、プリシスからは引き離してきた。
だがそれももう限界に近づこうとしている。
- 144 名前:不協和音 ◆wKs3a28q6Q :2008/05/03(土) 09:15:40 ID:IUmwcjeD0
- あの時取り逃がした三人と合流を果たしている可能性が高く、もうプリシスにはアシュトンが殺し合いに乗ったことが伝わっているはずだ。
複数人での生還を果たすため、説得なり殺害なりしようとこちらを狙って動くだろう。
説得されそうになったら、プリシスを殺さなくてはいけない。
『愛しい人のため』という名目をもって行われた殺戮を愛しい人に咎められては、アシュトンの心は壊れてしまうだろうからな……
とりあえずプリシスを殺してもアシュトンが発狂しないような言い訳を何か考えておかねばな……
見知らぬ場所で死んでくれるか、アシュトンに気付かれぬ内に消し炭に出来ればいいんだが……
(……まったく、世話が焼けるやつだ。我々が無事に帰るため、ここまで苦労しなくてはならないとはな)
やれやれと思いながらもウルルンは決して顔に出さない。
顔に出さず、アシュトンに気付かれないように事を終えることこそが友情である。
少なくともウルルンはそう考えた。
だからこそ、人間に好感を持ち始めた今でも冷静にプリシスの殺害計画を考えられるし、
「アシュトン! アシュトンじゃないか!」
こうしてギョロと二人でクロードに息吹で攻撃を仕掛けることだってできる。
火炎と吹雪。それを見て、慌ててクロードはスターガードで両者を防いだ。
ガード時に飛び出してきたものはアシュトンがヒラリと回避する。
全快でないとは言え、やはり動きにキレが戻ってきている。
最小限の動きで回避したことを見るに、冷静な思考を取り戻して手に入れたのはデメリットだけじゃないみたいだ。
「あぁ……なんだ、クロードか」
アシュトンが笑みを浮かべる。
そうだ、お前の恋敵だ。レオンの時のようにバッサリと斬り伏せてやれ。勿論今回は急所を外さないようにな――
「ごめんごめん、ちょっとピリピリしててさ。駄目だよ二人とも、クロードに攻撃しちゃあ」
なん……だと……? アシュトンが、ギョロと俺を制止しただと……?
いや、戦略的に見ればさほどおかしい事ではない。スターガードの構えを解かせるため仲間を装うのは有効な手段と言えるだろう。
だが、先程までのキリングマシーンと化したアシュトンにそこまでの知能は無かったはずだ。
罪悪感から逃れる事と相手を殺す事だけに全神経を集中させていた男が、急に戦略を練るようになった。
勿論、ありえない話ではない。休息を取って頭が冷静になったのだから、策略を練るくらいの余裕はあるだろう。
「まったく、気をつけてくれよ」
口ではそう言いながらも顔を綻ばせて駆け寄るクロードを、アシュトンは一太刀の元に斬り捨て――なかった。
これ以上ないであろうチャンスにも関わらず、だ。
これにはギョロも驚いたらしく、露骨に動揺の色を瞳に浮かべる。
こちらを信頼している様子なためプリシスにはまだ会っていないと思われるが、会話でおかしなことにならないといいのだが……
だがアシュトンの狙いが分からぬ以上、下手な手出しは危険である。
ギョロもそれは分かっているらしく、戸惑いながらもクロードへの攻撃を控える。
「ごめんごめん。それよりクロード、今まで……」
「ごめん、アシュトン。今は時間が惜しいんだ……あの煙が上がっている場所に、チサトさん達がいるかもしれない」
「……チサトさんが? もしかしてクロード、チサトさんと会ったの?」
「ああ……詳しくは行きながら説明する。ついてきてくれるか?」
焦りの色を浮かべながらも、真剣な表情でクロードが問う。
その言葉に、アシュトンは微笑み――邪悪なものでなく、かつての冒険中に見せていたような微笑みだ――を浮かべながら返事をした。
「勿論だよ。だって僕らは親友じゃないか」
☆ ★ ☆ ★ ☆
『アーチェ殺害の犯人はクロード』なんて、心にもないことを言って悪かったとは思う。
だが仕方がないのだ。大切な人を亡くし冷静さを失った者に冷静さを取り戻させるのは難しい。
今はそんな時間も惜しいのだ。彼が犯人を倒したいというのなら、遅かれ早かれ倒さねばならない者を倒してもらうほうが手っ取り早いし効率的だ。
それに、どの道ある程度村を見て回ったら『村で人が来るのを待つ組』と『仲間集めと殺し合いに乗った者の討伐のため島中を移動する組』とに分散するつもりだったんだ。
彼には討伐組の役目を果たしてもらうとしよう。
- 145 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/03(土) 23:39:18 ID:CHYw6FpE0
- 大作乙!
とにかく読み応えがあって、大人数の心情とか考えとかすごく丁寧でよかったです!
ちょっとアシュトンの移動が長すぎる気もするけど、まあ許容範囲内だと思うし。
偉そうでごめん。
もう一度乙とGJを送っておく!
- 146 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/03(土) 23:39:50 ID:/aj6dHw60
- 規制くらった? 支援
- 147 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/03(土) 23:51:01 ID:35pdaCKc0
- 続き読みにしたらば行くのもあれなんで代理で続きをこちらに
- 148 名前:不協和音 (代理):2008/05/03(土) 23:55:13 ID:35pdaCKc0
- ――そんな打算的な思惑通りにいくほど、この殺し合いは甘くはなかった。
チェスター君に頼みはしたものの、正直宛てにはなりそうもない。
そのうえチェスター君を行かせてしまった私にクレス君は少なからず不満を抱いたと思う。
「マリアさん……僕は……間違っているのでしょうか……」
そして何よりの失策はクレス君の自信を喪失させた事。折角仲間の死を乗り越えられたというのにこれでは不味い。
生き残っている仲間を救うためにも、復讐ではなく脱出のための策作りを優先する。そのこと自体は正しい。むしろ最善の選択だ。
かと言って、このままチェスター君を放っておいて見殺しにするのが善であるわけでもない。
あちらを立てればこちらが立たず。難しい問題だ。
「いいえ、間違っていないわ。貴方も、そしてチェスター君も」
正義の反対はまた別の正義である。非常によく聞く言葉だ。それこそ野球ゲームですら聞けるフレーズだろう。
だが、頻繁によく耳にするという事はそれ相応の理由があるからだ。
つまり、この考えは正しい。少なくとも大衆が支持する程度の正しさは持っている。
「チェスター君と意見がぶつかるのはこれが初めて、なんてことはないはずよ。共に冒険をしていれば衝突することぐらいある。
ただ今までと違うのは、どちらかが折れるまで話し合う時間がないことと、どちらかを後回しに出来るほどの時間もないということ。
まったくこの殺し合いはよく出来てるわ……今までの冒険と違って圧倒的に時間がない。パーティー全員の要望を聞けなくすることで、最終的な目標が同じ者同士を分断させる狙いがあるのかもしれないわね」
この殺し合いのルールは非常によくできている。腹立たしいが、そう評価せざるを得ないだろう。
これが普通の旅ならば、優先順位で揉めることはあれど基本的に最後は全員の希望を叶えられる。
だがここではそうも行かないのだ。仮に複数のやりたい事があって、それらがまったく同じであっても、それらの優先順位が違う者とは決して共に行動出来ない。
だからこそクレス君には念を押していたのだ。仲間が死んでも、その優先順位を変えないように。私と別れ、敵討ちや仲間の埋葬に行ったりしないように。
「仲間の仇を討とうとする気持ちも、仲間の死を乗り越えて生きてる仲間を救おうとする気持ちも、正しい事に変わりはないわ。
ただその二つの優先順位が、貴方とチェスター君とで違っちゃっただけ。それだけの話よ」
未だにクレス君は俯いている。これでいいのかと自問自答しているのか、無力感に打ちひしがれているのかは分からないけど。
それでも、彼には立ち上がってもらわなければいけない。私一人でどうにか出来るほど、ルシファーは甘くないのだから。
「……チェスター君を追いたい気持ちは分かるわ。だけど、私達の怪我じゃ何も出来ない。出来るとしたら足を引っ張ることぐらいよ」
「こんな怪我ぐらい、気になりません」
「……クレス君、落ち着いて。貴方も本当は分かっているはずよ。怪我人二人がサイキックガン一つでどうこう出来るわけがないって。
分かっていて、“何かが出来るのに何もしなかった”と思い込むのはやめなさい。自分を責めるのは簡単だけど、それで行動を起こす事を止めるのはただの逃げよ」
クレス君は喋らない。きつい言葉で凹んでいる、ということなら可愛らしいの一言で済むのだが、そういうわけでもなさそうだ。
おそらく彼は、頭の隅に浮かんでしまった邪な考えを振り切れずにいる。感情の赴くままにそれを叫びたくなっている。
それでも彼の理性がそれを押し留めているのだろう。仲間の死に呆然とするだけだった先程までと比べると、それは成長とも取れた。
- 149 名前:不協和音 (代理):2008/05/03(土) 23:56:32 ID:35pdaCKc0
- 『救えるかも分からない見ず知らずの人間の命よりも、目の前にいる大切な人の命を守りたい』
その考えは、決して責められるものじゃない。人間なら誰もがそう思うだろう。
クレス君の仲間だから信頼はするつもりだったが、チェスター君にかつての仲間達ほど思い入れがあるかと聞かれれば勿論ノーだ。
彼はつい1時間前に出会ったばかりの会話もろくすっぽした事のない、言わば“知人の知人”なのだ。私は彼がどんな音楽が好みなのかも知らないのだ。
そんな彼とかつての仲間を対等に扱っては、かつての仲間に失礼というものだ。
だけどそれは決して口に出してはならない。その考えは、一歩間違えれば『他者を犠牲にしてでも生かしたい者を生かす』という思想に繋がる。
それになにより口に出されて良い気はしない。無用な不信感は与えないべきだ。
クレス君もそれが分かっているからこそ、口に出さずにいるのだろう。
『大切な親友を見殺しにして、見知らぬ者達と共に脱出することに意味なんてない。今すぐにでも彼を追う』と。
だから私もその考えを言葉に出して否定はしない。それがおそらく、その考えを押し殺す彼に対する礼儀というやつだろうから。
「それに、アーチェを追って来なかった事から察するに、クロードはすでに移動を始めているはずよ。こちらには現れなかったし、おそらく次の獲物を求めてアーチェとは違う進路を選んだんでしょうね。
あれからそこそこ時間も経っているし、よほど運が悪くない限りすぐには遭遇はしないはずよ」
「……今思えば、どうしてそのクロードって人が追って来ないのか、ちゃんと考えるべきでしたね……」
クレスが自嘲めいた笑みを浮かべる。どうやら彼は責任感が強すぎるらしい。
「アーチェが死んだか確認にも来なかったほどだもの、よほど自信のある技だったんだと思うわ。彼女がここに辿り着いた時には、おそらく既に手遅れだった」
そうは言ったものの、大がかりな準備もなしにそんな事が本当に出来るのか怪しいものだ。クロードが犯人じゃない可能性も大いにある。
だからこそ次にボーマンに会っても無条件で信頼したりはしないし、むしろ疑ってかかるべきだと思っている。
もっとも、今のクレス君にはこれ以上負担をかけるわけにいかないので当分ボーマン犯人説は胸の内にしまっておくが。
とは言え、クロードを警戒しておくに越したことはない。彼が殺し合いに乗っていることは確実なのだ。最悪の事態を想定しておいて損はない。
仮に本当にアーチェがクロードによって殺害されていた場合、それはクロードから逃亡することは不可能ということ指し示す。如何に不利な状況になろうと、先程の戦いのように逃走することは出来ない。
いずれクロードは倒さねばならないが、その時までには万全の準備をしておきたいものだ。
出来れば、接近せずに倒せるような策も欲しい。
「……そう、ですね。すみません、くだらないことを言って」
「気にしないで。それより、この村で使えそうなものがないか探しましょう。私達にも出来ることが、きっとあるはずよ」
「……はい!」
やはりクレス君は強い。もう少しウジウジされるかと思ったけど、彼は素直に従ってくれる。
おそらく彼の胸には強い決意が秘められているのだろう。決して挫けないという、強い決意が。
(……その決意が砕けないよう、気をつけなくちゃね)
強い決意程、“決意を破らねば決意を貫き通せぬ場面”に弱い。今回のように大勢を救うために仲間を見殺しにする可能性が高い行動を、彼は次も選べるのだろうか?
仲間のために決意した意思を貫くため、彼は仲間を犠牲にするような非情な選択を出来るのだろうか?
答えはまだ、わからない。
☆ ★ ☆ ★ ☆
- 150 名前:不協和音 (代理):2008/05/03(土) 23:57:43 ID:35pdaCKc0
- 「アシュトン! アシュトンじゃないか!」
それは全くの偶然だった。ホテルを目指し走り始め、間もなく見慣れた横顔を発見したのだ。
だがしかし、ここは過酷な殺し合いの場。不意に声をかけたのがいけなかったのか、ドラゴンブレスで迎撃される。
が、これはなんとかスターガードで防ぐことができた。ジャックの遺品を持ってきたのは正解だったようだ。
その際にエネミーサーチが警告を発してきたが気にしない。
ただの警戒レベルでも反応してしまうということはアーチェの件で学習済みだ。
ここでアシュトンに剣を向けて今までと同じ失敗を犯す程馬鹿じゃない。
「あぁ……なんだ、クロードか」
ほら、こうして剣を向けず敵意がない事をきちんと示せば、ちゃんと相手にも伝わるんだ。
アシュトンはギョロとウルルンを制止し、バツが悪そうに眉を下げた。。
「ごめんごめん、ちょっとピリピリしててさ。駄目だよ二人とも、クロードに攻撃しちゃあ」
「まったく、気をつけてくれよ」
返す言葉に怒りの念は含めない。ただただ軽い、冗談を飛ばす口調で言う。
みんなで旅していた頃の事を思い出し、自然と顔が綻んだ。
「ごめんごめん。それよりクロード、今まで……」
「ごめん、アシュトン。今は時間が惜しいんだ……あの煙が上がっている場所に、チサトさん達がいるかもしれない」
そう、誤解を与えずアシュトンと合流できた今、一刻も早くチサトさんの所に戻らなくては。
アシュトンがいればチサトさん達の誤解も簡単に解けるだろう。
「……チサトさんが? もしかしてクロード、チサトさんと会ったの?」
「ああ……詳しくは行きながら説明する。ついてきてくれるか?」
不安が全く無かったと言えば嘘になる。ここはこんな島だ。ろくすっぽ説明もされずついてこいと言われたら拒絶したっておかしくない。
それでもアシュトンは微笑んでくれた。話を聞く前から、頷いてくれた。
「勿論だよ。だって僕らは親友じゃないか」
「ありがとう。さ、行こう!」
ああ、そうだな。普段はどこかヘタレてるのに、こういう時は本当に頼もしく思えるから困る。
……ありがとうアシュトン。急いでたから適当に喋ってるように聞こえたかもしれないけど、本当に感謝しているよ。
さすがは僕の親友だ。
「……チサトさんの他に仲間はいるのかい?」
移動しながら、アシュトンが聞いてくる。まぁ当然の質問だろう。仲間は多いに越したことはないのだから。
「いや、それが……分からないんだ」
誤解を解くためにも、どの道アシュトンには真実を伝えねばならないだろう。
アシュトンにまでいらぬ誤解を受けぬよう言葉を選び、正直に告白を始める。
「実はチサトさんには誤解を受けちゃってね……僕がこの島で人を殺して回ってるって」
「何でまたそんな誤解を?」
「いやさ、化け物からチサトさんを助けようとして攻撃したんだけど、それが原因みたいなんだ」
思わず苦笑いが漏れる。
確かに短絡的だったかもしれないが、仲間を守るための行動がまさかここまで話を拗れさせる事になるとは。
「あ、そうそう、これは仲間の話に繋がるんだけど、その時青い髪の青年にも襲われたんだ」
「青い髪の青年?」
「ああ。何でか知らないけど僕が女の子を殺したって言って、チサトさんと一緒になって襲ってきたんだ。
一応正義感は強いみたいだったし、チサトさんと一緒にいるとは思う。誤情報を流したいだけの悪者って可能性もないわけじゃあないけど、ちょっと考えにくいかな?
あと、倒したはずの化け物も普通に起き上がって僕を攻撃してきたから、共通の敵を持った者同士ってことで一緒にいる可能性も……」
「はは、クロードも敵が多いんだね」
おかしそうに笑みを浮かべるアシュトン。苦笑いならともかく普通に笑みを浮かべられたことに違和感を感じるが、どうおかしいのか上手く表現できそうにないので口に出さないでおいた。
まったく、笑い事じゃないんだけどな……
「……ん? クロード“も”?」
そこで気づいた。クロードも、という表現に。
もしかしてアシュトンも僕と同じように誰かから誤解を受けたのだろうか?
アシュトンなら大いにあり得る。というか誤解を受けない方が難しいだろう。
- 151 名前:不協和音 (代理):2008/05/03(土) 23:59:41 ID:35pdaCKc0
- 「ああ、うん。ピンクの髪の女の子を逃がしちゃってね」
「……まさか、アーチェか!?」
驚いたな。まさか同じ人物に誤解されているなんて。
逃がしちゃって、という事は僕と同じように誤解を解こうと追い回したのだろう。
彼女があれだけ怯えていたのは、凶暴そうなドラゴンを背負った青年に追いかけまわされてたからなのかもしれない。
「……クロードの知り合いなの?」
一瞬、アシュトンの目が凍てつくような冷たさになった。いや、なった気がしただけかもしれないが。
それでも、やっぱり何かおかしい気がした。もっとも僕もこの島に来てからどうも空回りばかりしているから、この島独自の雰囲気が人を変えてるのかもしれないけど。
だからアシュトンの異変は特に気にしないことにした。きっとチサトさんの目に映った僕も今までの僕とは違うのだろうし、それが原因でまた仲間と仲違いなんて御免である。
「あー、うん、知り合いっていうか何って言うか……僕の事も誤解してる娘なんだ。
ジャックっていうアーチェの仲間が誤解を解いてくれるはずだったんだけど……」
ジャック・ラッセル。この島にきてまともに会話できた最初の人物。
彼が死んだのは僕の失策のせいだと言えるだろう。あの時僕が付いて行ってれば、今頃は……
「そう……死んだんだ、彼……」
どうやらアシュトンもジャックの事を知っているらしい。どの程度の知人なのかは分からないが。
「ねえ、クロード」
「ん?」
もう二度とジャックの時のようにはならない。
そう誓った矢先だった。アシュトンから、思いがけない言葉が聞けたのは。
「ごめん。僕達ここで別れよう」
☆ ★ ☆ ★ ☆
まったく、俺はネーデ人に何か縁でもあるのだろうか?
あと数時間で禁止エリアになる場所に留まる奴はいないだろうと判断し通り抜けようとしたD-04で、俺はノエルと再会した。
仲間に会うのはこれで二人目。これで目出度く二人しかいないネーデ人の知り合い両方に再会したことになる。
もっとも、ノエルの方はとうの昔に冷たい体になっているのだが。
(……念のため診ておくか)
時計で時間を確認する。大丈夫だ、禁止エリアになるまでにはまだ時間がある。
本格的な検死なんて勿論無理だが、ゆっくり死体を眺められるほど安全なエリアなどそうそうない。
殺害犯の獲物ぐらいしか得られる情報はなさそうだが、情報はあって困るものじゃないからな。
- 152 名前:不協和音 (代理):2008/05/04(日) 00:01:07 ID:35pdaCKc0
- ――俺は弱い。この先生き残るためには、その事実を素直に受け入れるしかないだろう。
紋章術者のようにデカい一発も持ってなければ、剣士のようにリーチがあるわけでもない。
これが殺し合い開始直後なら、得意武器を持てなかった剣士くらいになら勝てるのだろうが、すでに12時間も経っている。
武器を得られなかった者達は既に全滅しているだろう。そして彼らを殺した強者達は、奪った支給品でさらに強力になっているはずだ。
そんな連中に真っ向から挑んで勝てると思う程、俺は自信過剰じゃない。そんなものは己の命を縮めるだけだ。
大事なのは現状をしっかりと把握すること。そしてその把握した手札をうまく使ってゲームを進めることだ。
そして今の俺の手札は、正直相当なものである。勿論悪い意味で。
大富豪の最強カードが11だった時に感じる「何だこれ」という感想をそっくりそのまま抱けるだろう。
まず自分の支給品がアクアベリーオンリー。子供の遠足のリュックサックにだってもう少し何か入っているぞ。
しかもそのアクアベリーすらアドレー相手に無意味に消費してしまった。いや、残っていても特に使い道はなかった気もするけど。
しかしアドレーの支給品だけは唯一のアタリと言っていいだろう。普通の人にとっては使えない代物かもしれないが、薬剤師の自分にとってはこの上なく有難いアイテム。
実際調合セットに含まれたアイテムを利用して先程2人も殺すことが出来た。まさに大富豪における八切りの8。弱い手札の中じゃ実質一番強いカードだ。
しかしこのカードはもう切れない。アルテミスリーフが半分ほど残っているだけなのだ。
そこまでして得たものは、正直割に合わない物ばかり。
まず七色の飴玉。これは論外。舐めると楽しい気分になるとか。アホか。
そしてパラライチェック。本来ならばアタリにも思えるのだが、これを装備したチサトがしっかり麻痺するのを見てしまっている。
じっくり見てもよく分からないが、模造品か出来そこないなのだろう。まぁ、「麻痺は効かないぞ」というハッタリにはなりそうなので装備しておくが。
最後の一つはフェイトアーマー。装備しているとHPが少しづつ回復するというよく分からない仕組みの鎧だ。
凍結も無効にするらしく、紋章術師との戦いに非常に有効に思われるが、如何せん武器がない。
これだけ付加効果のある鎧なのだ。素手で撲殺する間敵の攻撃を防ぎ続けてくれるほど頑丈な出来ではないだろう。
一応痛みを和らげるために装備はしとくが、過度に期待して無茶をすることはよした方がよさそうだ。
やはり武器だ、武器がいる。素手なのとナックルがあるのとじゃ天と地ほどの差があるからな……
だがしかしそう簡単に武器など手に入るものだろうか?
先程も言ったように、この殺し合いももう中盤に入っている。武器を持った人間を殺して奪うのには骨が折れることだろう。
チサト達にやったように騙し打ちで毒を盛ろうにも盛るための毒物がない。それになにより、俺を信用してくれる奴があとどれほどいると言うのか。
チサトとノエルだけでなく、すでにセリーヌとオペラが死亡している。クロードはゲームに乗っている。ディアスはかつての仲間ってだけで信用してくれるほどお人よしではないだろう。
つまり無条件で俺を信じれくれそうな人間は残すところあと5人。レナにアシュトン、レオンにプリシス、それからエルネスト。
俺を除いて現在生存者が33人と仮定すると、俺を信じてくれそうなのはだいたい6人に1人ということになる。
俺の予想ではこれは殺し合いに乗った奴と遭遇するよりも低い確率である。
そして未だに殺人鬼には会っておらず、無条件で信頼してくれる者には会ったばかり。確率からいって無条件で信頼してもらえる仲間には当分会えないと思った方がいいだろう。
だとしたら誰かとの同盟を考えるべきなのかもしれない。信頼を得ることは難しいが、利害が一致する人間を見つけることは容易いはず。
人間的に信頼できなかろうが構わないのだ。すでに周りは敵だらけで、これ以上悪い事にはなりようがない状況なのだから。
- 153 名前:不協和音 (代理):2008/05/04(日) 00:02:32 ID:35pdaCKc0
- 「ん……? こいつは……ッ!」
数多くつけられたノエルの傷。それらを見ながら視線を足もとまでずらしていき、そして気付いた。
バーニィシューズ。
普段走り回らない紋章術師だろうとバーニィ並みの俊足を得られる魅惑のアイテム。これを求めてバーニィレースで破産する者も少なくはないらしい。
(ノエルを殺した奴はバーニィシューズの効果を知らなかったのか?)
とすると、ノエル殺人犯への認識を改める必要がある。てっきりノエルすら一撃でしとめられない人間だと思っていたが、どうやらバーニィシューズを履いたノエルを逃がさない程の実力者のようだ。
正直俺ならバーニィシューズを履いた奴にあっさりと逃げられる自身がある。犯人は機動力に優れているのか……
バーニィシューズを頂くとするが、これで安心だとは思わない方がよさそうだ。特にこの傷の大きさに合う剣を持つ機動力の高い殺人鬼と戦う際は逃げるという選択肢を消した方が良さそうだ。
そうなった時に一人ではやはり不利。俺が生き残るのに仲間の存在は必要不可欠だ。
だが一枚岩の大集団ではいけない。優勝狙いとばれた途端、その結束力で俺の前に立ち塞がれる。
利害関係のみで成り立っている集団か、もしくは武器はよくても本人に運動能力のない集団が望ましい。そういう所なら裏切る際にも勝算がある。
とりあえずノエルから脱がせたバーニィシューズを履き、金髪の青年の死体を診る。
大きな刺し傷以外に特に傷は見受けられず、大した情報は得られそうにない。
若干痙攣の後が見られるが、短い時間で道具もなしじゃ麻痺攻撃を食らったのかは分からなさそうだ。まあだが麻痺攻撃を警戒しとくに越したことはないだろうな。
「さて……行くか」
目的地は変更だ。本当ならここを突っ切って釜石村まで行きたかったが、今の手札じゃあそこに行くメリットがない。
拠点にぴったりの場所に潜む殺人者がいる場合そいつの狙いはまず間違いなく奇襲であり、それはすなわち話を聞く気がない事を指す。
殺し合いをする気のない者がいる場合は集団と見ていいだろう。
『前衛が少ない場合は前衛になると言って武器を貰い、前衛がいる場合は前衛の連中が消耗するまで守ってもらう』というのが当初の作戦だったが、この作戦ももう使えない。
仮に後者になった場合、まず間違いなく前衛の奴にバーニィシューズを譲渡するはめになる。
現段階でバーニィシューズは俺の手札の最強カードになったのだ。それを早々に手放すわけにはいかない。
武器の譲渡をしなくて済みそうな、本当に利害関係のみのチームを組む。そのために俺は今から森へと引き返す。
生に執着し傷ついた奴が単独でいるとしたら、他者に見つかりにくい森の中だろう事が一点。
そして予想以上に煙を上げるホテルには自然と人が集まるであろうことが一点だ。
現れたのが話の通じない相手の場合今の装備ではピンチになるが、例の逃走が不可能そうな剣士が相手じゃない限りバーニィシューズで逃げられるはずだ。
まだガソリンが付着したままだから逃走経路が限られるが……その程度のギャンブルは仕方がないと割り切るしかあるまい。
山分けという条件を持ちかけて取りに行ってもらえば回収し損ねたガルヴァドスの支給品も手に入るかもしれないのだ。
この賭けのリターンは決して低いものじゃない。どちらかと言えばローリスク・ハイリターンな方。
だったら答えは決まっている。コールだ。鬼が出るか蛇が出るか、その賭けに乗ってやる。
☆ ★ ☆ ★ ☆
- 154 名前:不協和音 (代理):2008/05/04(日) 00:04:23 ID:Zgqc39CV0
- 「別れようって……一体どうして!」
「クロードは誤解されてるんだし、その方がいいよ。」
誤解されているんだから、一緒に行かない方がいい。
かつて僕がジャックに提案し、そして後悔する原因になった提案を、今アシュトンはしてきている。
「駄目だ! この島では何があるのか分からないんだ、別行動なんて危険すぎる!」
アシュトンに悪気がないのは分かっているのに、つい声を荒げてしまう。
また同じミスを犯すわけにはいかないんだ!
「心配しないでよ。これでも一応クロードの足は引っ張らずにきたつもりだけど?」
「分かってるよ、アシュトンが弱いだなんて思っちゃいない。でもこの島には十賢者だって……」
「だから別れるんだよ、クロード」
アシュトンが急に立ち止まる。置いて行っては本末転倒なので、仕方なしに足を止めた。
「ねえクロード。プリシスを見てないかい?」
「いや……見てないけど……」
「僕は会ったよ。殺し合いが始まってすぐに、池の近くで」
プリシスに会った。それは素直に喜べることだ。プリシスは大切な仲間の一人だし、首輪を外せる可能性がある数少ない人物だ。
だけど、どうしても喜びの言葉が口から出ない。
プリシスに会ったのなら、何故アシュトンは単独行動をしているのだろう?
いつもの彼なら、プリシスを一人になんかしないはずなのに……
「でもね、僕は拒絶されちゃったんだ。だから傍にはいられない。心配だけどね」
馬鹿な……プリシスがアシュトンを拒絶したって?
確かにアシュトンに恋愛感情を持ってるってわけじゃなかったのかもしれないが、少なくとも嫌ってなんかいなかったはずだ。
それなのに、どうして……
「ああ、いいんだよクロード、そんな顔をしなくても……この島は“そういうルール”なんだもん。かつての仲間だって拒絶される可能性はあるよ」
確かにそうだ。一人しか生き残れないというルール上、仲間だろうが手放しでは信用できない。
積極的に仲間を殺して回る人がいなくても、疑わしい仲間を避けるのは当然のことと言える。
それでもやっぱりプリシスがアシュトンをっていうのは考えにくいけど、僕とチサトさんの前例がある。
何かしらの誤解を受けて拒絶されたという可能性もあるだろう。
「それよりも、クロードにはプリシスの護衛を頼みたいんだ」
「プリシスの……?」
「うん。変な大男が傍にいたみたいだけど、彼一人じゃちょっと心配だからね。クロードなら実力的に申し分ないし、プリシスに拒絶される心配もないからさ」
そう言ったアシュトンの表情はどこか悲しそうだった。
本当は自分で守ってあげたいんだろう。だけど、きっと彼はそれが出来ないでいるのだ。
理由は聞けない。見ただけで分かる戦闘の痕が、おそらく関係してくるのだろう。
僕のように戦闘する姿を見られたか、もしくは……誰かを殺すところを見られたのかもしれない。
暗いうえに服の色に溶け込んでいてわかりづらいが、アシュトンの体には血痕が付いている。
とはいえ、さっきからアシュトンが僕を襲って来ないことからも分かる通り、アシュトンに自ら仕掛ける気などない。
おそらくはあの冒険の時みたいに襲ってきた者を倒したにすぎないのだろう。
だがそんなことただの目撃者には分からない。分からせようにも逃げられたらどうしようもない。
僕がアーチェやチサトさんの誤解を解けなかったように、アシュトンもまた誤解を解くのに失敗したのだろう。
「だから、チサトさんは僕に任せて、クロードはプリシスの元に向かってほしいんだ。
クロードが言ったように、十賢者みたいな強い奴らがたくさんいる今、プリシスの護衛は多いに越したことがないからね」
「でも、だからって……」
「頼むよ、クロード…………君にしか出来ないんだ」
- 155 名前:不協和音 (代理):2008/05/04(日) 00:06:05 ID:35pdaCKc0
- 君にしかできない。
そう言われて、僕の心は揺らぎ始めた。
確かに、もう12時間近く経っているのだからのんびりしている時間はないし、アシュトンには倒すとまでは行かなくても十賢者から逃げ果せるだけの実力がある。
その怪我の原因かもしれない馴れない両手剣が不安材料ではあるが、ギョロとウルルンのおかげで奇襲には対処できるだろう。
実際僕と違い自力で修羅場も乗り越えてきたように見える。
……あれ? むしろ未だに修羅場を乗り越えたことがない僕の方がおかしいのか?
ま、まあとにかく、確かにアシュトンの言う通り僕は心配しすぎなのかもしれない。
何よりアシュトンの誤解を解けるのは、実際にアシュトンが殺し合いに乗っていないと知ってる僕だけかもしれないんだ。
それぞれ仲間がいなくて誤解までされている身。誤解は広まりつつあるのかもしれないし、被害を少しでも減らすよう一刻も早く誤解を解いて回り仲間を作るか?
それこそ、今やらなければ後悔する事なのかもしれない。被害が大きくなりすぎてどうにもならないことになったら目も当てられない。
ジャックの時のように間抜け面して待っているのではなく、かと言って非効率的にも固まって行動するでもなく、僕は僕にしか出来ないことをやるべきじゃあないのか?
「……プリシスはどこに?」
「今は分からない。けど、僕もクロードも見てないってことは氷川村の方にはいないんだと思う」
「そうか……じゃあ、こうしよう。もうちょっと行けば確か分かれ道があるはずだ」
デイパックから地図を出して確認する。G-05で道が二股に別れていた。
「僕はここを右に行こうと思う。神社を覗いて、それから山を反時計回りに移動しながらプリシスを探す」
「……なるほど。じゃあ僕はホテル跡に寄って、それから平瀬村やらを覗いて反時計回りに移動してくよ」
決まりだ。一旦ここで別れて、それぞれ自分にしか出来ない事に全力を出す。
そして仲間を集めて合流し、プリシスと一緒に首輪を外す方法を考える!
「待ち合わせ場所は、そうだな……釜石村にしよう。どんなに遅くても次の次の放送までには釜石村に来ること」
「オーケイ、分かったよ。9時間後にはプリシスと会えるんだね……頑張らなくちゃ」
いや、僕がプリシスを見つけられるとは限らないんだが。
そう思ったが口には出さない。やる気を出してるならそれを殺ぐことはないだろう。
「ああ、そうだ、これ……使ってないし、アシュトンに渡しておくよ」
そう言って、ジャックの形見のレーザーウェポンを差し出す。
アシュトンの事を誤解したまま死んでしまったジャックは僕を恨むかもしれないが、これからのアシュトンの行動を見ていればきっと許してくれるはずだ。
「使い方はまだよく分かってないんだけど、ジャックが装備してたものだから使えるものだと思うんだ」
「……いいのかい? クロードにだって必要かもしれないじゃないか」
「いいさ。僕には愛用の剣があって、楯もあって、そのうえ敵意のある者を教えてくれるアイテムなんかも持っているんだ。これ以上僕が持ってたら罰が当たっちゃうよ」
そう言って、半ば強引にアシュトンへ押しつける。
これで少しでもアシュトンが生き残る確率が上がればいいな。
「それじゃ、僕は行くよ。後悔しないよう少しでも早く行きたいから」
「あ、うん、分かったよ。クロードの事を誤解してる人がいたら、ちゃんと誤解を解いておいてあげるから安心して。
……クロードが殺し合いに乗った、なんて聞いたら、きっとプリシスは泣いちゃうもんね」
「アシュトン……」
寂しそうにアシュトンが笑う。それからすぐにアシュトンは僕に背を向け走り出した。「それじゃ」と、ただそれだけ続けて。
「僕も……僕もちゃあんと誤解を解いて回るから! だから、だから死ぬなよ、アシュトーンッ!」
危険を顧みず大声で叫ぶ。素直な気持ちを伝えたかったから。声が届いたかは分からないけど。
アシュトンの誤解は解いておくから、アシュトンの居場所は作っておくから、無事にもう一度再開したい。
この気持ちに嘘はない。だから僕も走り始める。もう二度と同じ過ちを繰り返さないように。
迷いも吹っ切った。頭は冷静になった。僕にしか往けない道を見つけた。だったら後は走るだけだ。それでいいんだよね、父さん、ジャック――
放送の内容を聞き忘れた事を後悔するのは、それから数十分後の事だった。
☆ ★ ☆ ★ ☆
- 156 名前:不協和音 (代理):2008/05/04(日) 00:08:00 ID:Zgqc39CV0
- 煙を見せつけられたのは、一体これで何度めだろうか。
走り始めてしばらくすると、木々の上に見える夜空に煙が立ち上るのが見えた。
最初に思い出したのはあの日襲われたトーティス村で、次に浮かんだのは焼け落ちた学校。
それからアミィ、名前も知らない女の子の亡骸、そしてアーチェ。
憎悪が腹の底から溢れ出し顔面に現れるのが自分でも分かるようだった。
「あの野郎……ッ!」
あの煙で分かった。奴はあそこにいる。あいつがまた誰かを焼き殺そうとしてやがるんだ。
そしてその場所も大体の見当がついている。
「くそっ、待ってろよ、チサト!」
あの時一緒にクロードと戦った一人と一匹。
あいつらは決して悪い奴なんかじゃなかった。時間があればゆっくり話もしたかった。
いや、過去形なんかじゃない。もう一度あいつらと話して、出来れば一緒にクロードの野郎と戦いたかった。
だけどもうそれは難しい事なのかもしれない。
前回は準備が出来ていなかったからか何もすることなく撤退したが、クロードはご丁寧にアーチェを爆殺するほどの残忍な男。
目撃者は全員消すぐらいのことを平気でしかない男なのだ。
その男が俺達三人を野放しにしてくれるはずがなかったんだ!
「くそっ、くそっ」
もっとだ、もっと速く走るんだ俺!
もう二度とあんな想いはしたくないんだろ! 救える命を救いたいんだろ!
必死の思いで草を掻き分け前へと進む。走りやすい道を探す時間も惜しい。
ただ今は、今度こそ誰かを救えると信じて足を動かすだけだった。
どれだけ時間が経ったのか分からない。ただ恐ろしいまでに長く感じた。
頭の隅で、冷静な自分がこう告げる。「クロードの野郎はもう行っちまってるよ。チサト達は諦めて、息を整えたらクロード探索を始める方がいいんじゃないか」と。
それでも俺は止まらなかった。止まれなかった。
クレスみたいに完璧じゃないけど、時空の戦士の出来損ないもいいとこだけど、それでも何かが出来る筈だって。そう思いたくて、俺は森を駆け抜ける。
するとようやく森を抜け、俺の細い目に爛々と輝く炎が映った。
残念ながら見間違いの類ではない。どこからどう見てもあの時のホテルだ。
「ちく……しょおォ!」
この現実に動揺したのか、はたまた全力疾走したツケか、心臓が破裂するんじゃないかと思う程胸はバクバク言っている。
それでもそんなことを気にする余裕、俺にはなかった。
足に鞭打ちホテルの中に飛び込んで、精一杯声を出す。
「おい、誰か……誰かいないのか……!?」
その時だ。頭にコンと何かが当たった。クロードかと思い慌てて振り向く。
『男の腕には若干きついため火傷した手に優しくない』
そんな理由でエンプレシアを拳から外していたことを一瞬後悔し、石を投げた人物の姿を見てそれが徒労だったと知った。
ホテルからそれなりに離れた木陰から小石を放ったその影は、全く予想していなかった、だが予想出来ないわけじゃなかった人物の者だった。
「よう、数時間ぶりだな。金髪の兄ちゃんには会えたかチェスター?」
ボーマンの口元が笑みを形作る。その歪みが邪悪なものに見えたのは、おそらくは揺らめく炎のせいだろう。
そんな風に見えてしまうとは、どうやら俺は相当疲れているらしい。
「どうだ、俺の自慢の秘仙丹は効いたかい?」
その言葉に、俺の胸がチクリと痛んだ。
☆ ★ ☆ ★ ☆
- 157 名前:不協和音 (代理):2008/05/04(日) 00:09:35 ID:Zgqc39CV0
- 短い眠りから目を覚まし、冷静になった頭で今までの行いを思い出して以来、アシュトン・アンカースは猛烈に後悔していた。
遊び間隔で男の傷口を抉ったことを。
紋章術師と思われる女性をいたぶるように何度も何度も斬りつけたことを。
変った服を着た少女の頭部を踏み潰したことを。
そして、レオンに対して行ったことを。
それら全てを、アシュトンは心の底から悔いていた。
(僕は馬鹿だ。何てことをしたんだ……)
休息を取る間は警戒をギョロとウルルンに任せ、自身は極力神経を摺り減らさないようにするはずだったが、“呑気に他事を考えられる程度の余裕”はアシュトンに冷静さと深い後悔を与えてしまった。
その事に気付いていたがずっと黙っていたギョロが、ようやくその口を開き本人へと尋ねてみた。
「……ふぎゃー(……どうした、アシュトン)
ふぎゃふぎゃ、ふぎゃっふ(ホテルのある方向には既に火の手が上がっている。疲労が溜まっているなら無理してチサトを殺しに行く必要はない)
……ふぎゃっふぎゃぎゃ(……それとも、何か気になることでもあるのか?)」
気になること。それの中身が、今の二匹は気になっている。
アシュトンは今、何を考えている? 一体今のアシュトンはどうしたいんだ?
「ううん、そうじゃないよ…………ただ、今まで僕が殺してきた人達の事を考えちゃってさ」
「…………」
「少し、後悔してる。あの時の僕は馬鹿だった。ギョロ達にも迷惑だったよね、ごめん」
二人に申し訳なさそうに頭を下げ、これからのことを考える。
(ちゃんと反省しなくちゃな……)
情けなく眉を下げ、かつて光の勇者ご一行の台所番として活躍していたころのアシュトンの表情で。
アシュトンは、心の底から反省をする。
(次からは遊ばないでさっさと殺さなくっちゃね)
――致命傷を与えた後で首を撥ねずに暢気に男をいたぶったせいで、紋章術師に反撃の余地を与えてしまった。
――紋章術師を嬲り殺しにすることに時間を裂いたせいで、獲物を一人逃がしてしまった。
――少女の首を意味なく踏み砕く事に時間を使い、残りの人間を殺す時間を失ってしまった。
――レオンに要らない事をペラペラ喋るのに体力を使い、レオンを仕留め損なった。
“それらの事を”アシュトンは猛烈に後悔している。
後悔し、そして悪魔は成長する。
バーサーカーモードが解けて失ってしまった破壊力をカバーするように、頭はだんだん冴えてくる。
プリシスも大男という協力者を使っていた。光の勇者を始めとする歴代の英雄達には、必ずパートナーがいた。
一人で偉業は成せないのだ。むしろ仲間を上手く使ってこそ、ヒーローはカッコよくなれるのだ。エクスペルを救ったクロード・C・ケニーがそうであったように。
そこから殺人鬼は習んだのだ。仲間を作る事は大切である、と。
- 158 名前:不協和音 (代理):2008/05/04(日) 00:13:15 ID:Zgqc39CV0
- もっとも、彼がクロードを仲間にしようとしたのはそういった理由からではない。
理由は簡単。クロードに言った通り、今クロードが死ぬとプリシスが悲しむから。
プリシスに好かれたいと思っているという事は、未だにプリシスはクロードの事を想っているのだと認めている事になる。
その事に気付いてしまえば、クロードの死がプリシスに何を齎すのか予想するのは簡単だった。
そして、アシュトンは決めたのだ。クロードだけはまだ殺さないと。
クロードを殺すのは、集めた首輪を見せてプリシスの一番になってからだと。そうすれば、プリシスは泣かないで済む。だって一番はクロードじゃないのだから。
(そうさ、僕は君のためならどんなことだって出来る)
今のアシュトンは、ギョロとウルルンが思った以上に強かった。
確かにレオンを斬りつける時まではプリシスを“殺人の言い訳”にしている節があった。毎回毎回プリシスの事を口に出していたのもそのためだ。
だが今の彼はそうではない。冷静に考えて、“彼は自分が誤っていることを認めた”のだ。
それでもなお、彼はプリシスのために殺し合いに乗ろうと決めた。泥を被ってでもプリシスの望みを叶えたいと思った。
何故なら彼はプリシスの事が好きだから。
だからアシュトンは無理矢理手プリシスを手に入れようとはしなかった。プリシスが笑ってくれなければ、奪い取っても意味がないと思ったから。
プリシス自らが自分を好きになってくれないと意味がないのだ。
――プリシスも、きっとそうなのだろう。
冷静になりプリシスの行動の不可解さに気付いたアシュトンは、ある一つの結論を出した。
それは『プリシスは最後の一人になるつもりなど無い』というもの。
もし仮に最後の一人になるともりでいるのなら、何故裏切るかも知れない大男を傍に置き、自分に惚れていると分かっている男を遠ざけようとするのだろうか。
告白した時の反応からも、特別自分が嫌われているわけじゃないことくらいは分かっていた。
理由は考えたらあっさりと出てきた。僕を殺す気などなかったのだ。そもそも最後の一人になりたいのなら、あそこで追いかけてくるのが自然である。
つまり賢いプリシスは一人だけしか生き残れないと分かって『この戦いに生き残りたい』と考えたのではなく、『一番好きな人を生き残らせたい』と考えたのだ。
自分と同じ事を考え、本当は人を殺したくないけどクロードを生き残らせるために仕方なく人を殺すことにした。
見るからに危なそうな自ら手を下す踏ん切りのつかないプリシスが雇った戦闘狂といったところか。
だとしたらプリシスが殺し合いに乗ったと広めてしまったのはプリシスにとって不本意かもしれない。
だが、それによってプリシスが殺し合いに乗れるのなら、それは喜ばしい事なのだ。踏ん切りをつけさせてあげられるなんて、こんなに嬉しい事はない。
『プリシスに好かれる事』と『プリシスに嫌われるかもしれないがプリシスの役に立てること』なら、迷いなく後者を選ぶ。
それがアシュトン・アンカースという男であり、それが新たな彼の行動方針を支えている。
今は嫌われてもいいからプリシスの役に立ちたいと。あの日プリシスが言ったように、いつか1番になれる日がくるのだから、その時まではどれだけ泥を被ろうが構わないと。
(プリシスは気付いているんだ。クロードに想いは届かないって。だから2番目に好きな僕に失恋の辛さを受け止めてもらおうと、あの時生かしておいたんだね)
軽快か足取りで、アシュトンはホテル跡へと向かっていく。
大切な人の笑顔を、なんとしてでも守り抜くために。
- 159 名前:不協和音 (代理):2008/05/04(日) 00:15:13 ID:Zgqc39CV0
- ☆ ★ ☆ ★ ☆
迂闊だった。バーニィシューズという強力なカードを手に入れたせいで、楽観的になっていた。
少し考えれば分かることじゃないか。何故この事に思い至らなかったのか。
『秘仙丹を飲み爆死した友人を見て怒りに駆られたチェスターが、俺と出会った場所まで復讐を果たすためにやってくる』
ホテルに戻らなければ簡単に避けれたはずの些細なトラブル。
だが、遭遇してしまった“些細なトラブル”は“何としても崩さねばならない高い壁”へと切り替わる。
奴は情報を握っている。俺が殺し合いに乗ったという情報を。
その情報は、スタンスを偽り殺し合う気のない者の中に潜伏することを不可能にする最悪のカード。
これを使われると話が通じるかどうか怪しい殺し合う気の者のみとしか手を組めなくなる。
ただでさえ少ないカードをこれ以上減らされては堪らない。奴は始末する。今、ここで!
(とは言ったものの、俺はこれ以上近付けないからな……あちらさんから来てもらうとするか)
考えてる内にチェスターの後姿が炎の中へと消えそうになる。これ以上中に入られたらまずい。
ガソリンのせいで近付けない以上、あちらから近づいてもらう必要がある。
放っておいて炎でやられるのを待ってもいいんだが、正面口以外から脱出された場合が厄介だ。
こちらは炎に近付けないせいで遠回りをしながら奴を追いかけるはめになる。
だから俺は足もとから適当にそれなりの大きさの石を拾い上げる。
コントロールには自信がないが、背中を狙えばどこかしらには当たるだろう。万が一外したとしても何かを投げられたことには気付くはずだ。
肉弾戦を主にやってるため遠くまで飛ばすだけの肩の力くらい持っている。
そして大きく振りかぶり、チェスター目掛けて投げつけた。
結果は予想外の大当たり。頭部という名の急所に当たるとは思わなかった。
当然こちらに気付いたチェスター。
思わぬ不意打ちを受けたからか、間抜けにも棒立ちになっている。こういう時に遠距離用の武器があればな……いや、なくてもガソリンさえなければ首枷で仕留めてやったのに。
「よう、数時間ぶりだな。金髪の兄ちゃんには会えたかチェスター?」
とにかく今はこちらに来てもらわない事には始まらない。
そう思い、これみよがしに笑顔を作り皮肉を言う。
金髪の青年の事を聞いた時の反応からして、チェスターは簡単に熱くなるタイプだ。ここまで小馬鹿にされてればキレて飛びかかってくるだろう。
手ぶらであるし、遠距離攻撃をされはしまいと踏み、木の陰から姿を現しとどめの一言を口にする。
「どうだ、俺の自慢の秘仙丹は効いたかい?」
- 160 名前:不協和音 (代理):2008/05/04(日) 00:17:16 ID:Zgqc39CV0
- しばしの沈黙。飛びかかってくるかと身構えていた俺には予想外の事だった。
チェスターが顔を上げる。くしゃくしゃになったその顔は、憐れになるほどみっともなかった。
「俺、俺……すまねぇ……あんたが折角くれたってのに、無駄にしちまった……
アーチェの奴が疲れてるみたいだからあげたら、すでにクロードの奴に何かされてたみたいで、爆発……しちまった……ッ!」
一体何を言っている? クロード、だと? もしかしてこいつは、俺が渡した秘仙丹の正体に気が付いてないのか?
何故クロードの仕業だと思っているのか分からないが、俺に対する敵意は全く感じられない。
それどころかむしろ俺の事を信頼しているようにも見える。
(おいおい、ひょっとしてこれはカミサマの贈り物ってやつか?)
よほど辛い出来事だったのか、チェスターはアーチェという奴の死を口にすることで感情のコントロールが効かなくなったらしく、その場でしゃがみ込んでしまった。
おいおい、泣きながら地面を叩くとか、そういう青臭い事はもう少し安全な場面でやった方がいいんじゃないのか?
「おい、まずはこっちに来い! そのままじゃ焼け死んじまうぞ!」
折角手に入れたカードをみすみす手放すことなど出来やしない。まずはチェスターを安全な場所に移してからゆっくりと同盟を結べばいい。
奴は俺を疑ってはいないようだし、クロードの情報を与えれば喜んで仲間になりそうだ。
「チサトもガルヴァドスも死んだ! 俺だけはガソリンを引っ被りながらもガルヴァドスの技のおかげで助かったが、他の二人は助からなかった!」
最初にチェスターと会った時、あいつはホテルの方から来た。チサトと情報交換をしている可能性はかなり高い。
が、ガルヴァドスの方は見た目が見た目だ。どんな効果のある技を使えるのかまで把握してるほどコミュニケーションはとっていないだろう。
「ガルヴァドスによって脱出させられたなら、どうしてガルヴァドスが死んだと断言できるんだ」と言われたら反論できないのが難点だが、その時は単身チェスターに確認に行ってもらうだけだ。
チェスターという手駒を失うのは痛いが、そうなっても俺自身には被害は出ない。
もっとも、精神的に参っているらしいチェスターは「そうか……」とだけ呟いてとぼとぼと歩いて来たのでそんな考えは全くの徒労だったわけだが。
ていうか分かったならサクサク動いて貰いたいものだ。チンタラしてたら焼け死んでしまうぞ。
……こんな状態じゃあガルヴァドスのデイパックは諦めた方が良さそうだな。
まぁそれでもいいさ。大して労せず仲間を得ることが出来たんだ。お釣りは十分くる。
まずは話を聞いてやり、それに合わせて二人の死をクロードのせいにする。それからクロードを倒すためという名目の元で協力させる。
……悪く思うなよ、クロード。どうせお前は乗っちまってるんだ。恨むなら自分が乗ったことを知る人間を生かした己の甘さを恨んでくれ。
- 161 名前:不協和音 (代理):2008/05/04(日) 00:18:28 ID:Zgqc39CV0
- ☆ ★ ☆ ★ ☆
(いたぶって遊ぶようなマネは論外だよなあ、百害あって一利なしって感じだし)
ホテル跡を目指しながら、僕は今後の戦い方を考える。
これまでのように自分が楽しむかのような戦い方をするわけにはいかない。あれは隙も大きくなるし無駄な体力を使ってしまう。
自分の命は、プリシスのために使わなくてはならないのだ。
自分の体力は、プリシスの夢を叶えるためだけに使わなくてはならないのだ。
弱者をいたぶる際の細やかな満足感のために時間とMPを使うなど、あってはならないことである。
(……それに、惨殺してやりたいほどの恨みがあるわけじゃないしね)
感情の高ぶりに身を任せて必要以上にいたぶった事には罪悪感を感じている。
そもそも、こんなことにならなければ恨みもない人間を自ら襲うなんてしない。人を斬ること自体別にそんなに好きじゃないのだ。
だからその点においても反省はしているし、悪かったなとも素直に思う。
素直に思うが、殺さなければよかったとは露ほども思わない。だって彼女達を殺したのは大切な人の笑顔を守るためなのだから。
(次からは首なり心臓なりを狙って楽に殺してあげなくっちゃ。そうすれば相手も苦しまないで済むし、僕も迅速に次の行動に移れる。うん、一石三鳥だ!)
だから僕は決意する。もう二度と遊んだりなんかしないと。無駄な事は絶対にしないと。
そうでもしなくちゃ、プリシスの笑顔は守れないから。
「……そうだ。次の放送でどの道立ち止まらなきゃいけないし、その時にでも遺書を書こう!」
「ふぎゃ!?(遺書!?)」
「ふぎゃっふー!(何を考えているんだアシュトン!)」
あ、2人とも怒ってる。もしかして遺書を書いてすぐに死ぬとでも思っているのだろうか。
プリシスを置いてさっさと死ぬわけなんてないのに……ずっと一緒にいるんだから、そんなことぐらい言わなくっても分かってほしいな。
「考えたんだ、僕が殺しちゃった人達にお詫びをする方法を。
それでね、思い付いたんだけど、彼らにも家族や友達がいると思うんだ。
だから、あの旅で稼いだ僕のお金を、全額僕が殺しちゃった人達の大切な人が受け取れるように遺言を書いとこうかなと思って」
勿論、そんなことで罪が消えるわけではないけれど、やらないよりはいいだろうと思った。
殺したくないけど殺さなくっちゃいけないのなら、せめてこれくらいはしなくっちゃね!
「ふぎゃー……(アシュトン、お前……)」
「ふぎゃ、ふぎゃふ!(待て、誰かいる、それも二人だ!)」
何だ、生きてたのか。それが正直な感想だった。煙が立ち込めてたし、てっきりもうチサトさんは死んでるものだと思ってたけど。
まあでも、生きてたなら生きてたで利用法はある。さっきまでと違って、今の僕なら何でも上手く利用できる気がしている。愛の力は偉大ってことかな?
とにかくチサトさんは生かしておこう。そしてクロードの誤解を解いて釜石村まで連れていくんだ。
そうすればきっとプリシスは喜んでくれる。プリシスの幸せが僕の幸せなように、クロードの幸せはきっとプリシスの幸せなんだ。
だからクロードの誤解を解いたことが分かれば喜ぶはずだし、目の前で首輪を取れば自分が殺したわけでもない死体から回収するなんてズルをしてないって証明にもなる。
チサトさんは道中で首輪集めるのに利用して釜石村でプリシスの目の前で死んでもらうとしよう。
勿論、痛くないように配慮して殺してあげる。それが誰にとっても幸せな選択肢だ。
(……それに、プリシスが変な誤解をして傷ついちゃったら嫌だしね)
クロードはいい奴だ。ずっと旅してきたからよく分かる。彼は自分のために殺し合いに参加するような奴ではない。プリシスもそれは分かっているだろう。
だからもしクロードが殺し合いに乗る場合、それはやはり自分ではなく“他の誰か”のためなんだ。そしてその“誰か”は、まず間違いなくプリシスじゃない。
だからプリシスがその事を考えないよう、クロードが殺し合いに乗ってるなんて誤解は片っ端から解かねばならない。
そして、万が一耳に入ってた時の事を考えて誤解だったと証明してあげなくてはならない。
まったく、罪作りな男だね、クロードは。
- 162 名前:不協和音 (代理):2008/05/04(日) 00:20:26 ID:Zgqc39CV0
- 「あれ……? ボーマンさん?」
敵意はない。そう示そうと敢えて堂々姿を見せたはいいものの、そこにいたのは見慣れぬ男とボーマンさんの二人だった。
化け物とやらの姿は勿論、チサトさんの姿もない。
「アシュトンか……」
どこか警戒したような雰囲気を出すボーマンさん。まあこの島では妥当な反応だろう。
隣にいる男はどこか呆けたようにこちらを見ている。その男の髪色は、クロードが言っていたチサトさんと共にクロードを襲った奴のそれだった。
(確かこの青い髪の男は殺し合いに乗ってない確率が高いんだったっけ……っていうことはボーマンさんも殺し合う気はないのかな?)
冷静に分析しながら二人を見る。
ボーマンさんはこちらの出方を窺うように、青髪の男は何かを考え込むようにしながら僕の方を見つめていた。
「アシュトン……お前はこのゲームに乗ってるのか?」
当然のように尋ねられる質問の答えを用意してなかった事に今更ながら気付いてしまう。
まいった、どうしよう。不誠実だろうがここは嘘をついて「乗っていない」と答えた方が得策だろうか。
悩んでいると、青髪の男が急にその目を見開いた。
「ドラゴンを……背負った男……ッ!」
男の顔が見る見る内に怒りに染まる。おかしいな、君とは初対面のはずなんだけど。僕、君に何かやったっけ?
考える間もなく、青髪の男が掴みかかって来た。勿論ぼけっと突っ立ってやられてあげるつもりはない。
バックステップで男と距離を取り、迎撃態勢に入る。
本当ならここで放ったドラゴンブレスが当たるものだと思っていたけど、ブレスを出すのが若干いつもより遅かったせいで当たらなかった。
もしかしたら二匹とも、僕にずっと付き合わせてたせいで体調不良なのかもしれない。
「いきなりどうしたんだチェスター!」
チェスターと呼ばれた青髪の男を押さえつけ、結果的に数秒遅れのドラゴンブレスからチェスターの命を救うことになったボーマンさんがチェスターに問う。
そこでチェスターから飛び出したのは、思いがけない言葉だった。
「そいつだ! アーチェを、アーチェを襲いやがった野郎は! 龍を背中に生やした男なんだッ!」
……やれやれ。反省した途端、調子に乗って時のツケがきた。僕って本当についてないなあ。
まあ、今回は高い授業料だと思っておこう。実際アーチェとかいう女を逃がしたのは僕の責任でもあるんだから。
だからとりあえずチェスターとやらを説得して、それが無駄なら……さっき決めたように、素早く手際よく殺しちゃおう。
☆ ★ ☆ ★ ☆
- 163 名前:不協和音 (代理):2008/05/04(日) 00:21:42 ID:Zgqc39CV0
- こんなにも幸運が続いていいのだろうか?
チェスターは俺が思う以上にいい情報を持っていた。
(おいおい、あのアシュトンが乗ってたってマジかよ……)
アシュトンはてっきり殺し合い反対派だと思っていたが、どうやらそういうわけではないらしい。
チェスターが叫んでいる言葉を鵜呑みにするなら、アシュトンはアーチェとやらの仲間を二人も惨殺したらしい。
見たところ使い慣れてなさそうな両手剣で二人もの人間を殺したのなら上出来じゃないか。正直、ここで手放すには惜しい存在だ。
アシュトンには少しでも多く殺してもらわなくちゃいけない。
すでにこれだけの傷だ、俺と戦う事になる前にはくたばってくれるだろう。万が一死ななくても重症のアシュトンになら勝てるはずだ。
「待て、チェスター、落ち着くんだ! お前は実際にアシュトンが殺すところを見たわけじゃあないんだろ?」
「くっ……確かにそうだけどよ、アイツは言ってたんだ、二匹の龍を背負った男に襲われたって!」
先程から叫んでいる内容は、アーチェという少女から聞いたものに過ぎないようだ。それも、外見的特徴しか聞いていないらしい。
「あのなぁチェスター。お前さんの常識ではどうか知らんが、背中に龍を背負った奴なんて山一つ越えりゃたくさんいるぞ」
呆れたような声を出す。少しわざとらしすぎた気もするが、チェスターはその事に違和感を覚えることなく「どういう意味だよ」と返してきた。
「お前の住んでる地域ではどうなのか知らんが、俺の住んでる国には龍を背負ったタルルートっていう種族がいるんだよ」
勿論嘘だ。そんな部族はいやしない。種族の名前なんざアシュトンが樽好きだったことを思い出して咄嗟に付けた適当極まりない名前だ。
だが、チェスターにはそんなこと分かりっこない。言っちゃ悪いが頭の方は良くなさそうだし、世界中の民族を暗記しているなんてことまず無いだろう。
「……くそっ、悪かったよ!」
バツが悪そうにチェスターが言う。どうやら疑いながらも納得してくれたようだ(もっとも、納得がいかなくてもこう言うしかないだろうが)
「……ボーマンさん?」
不思議そうにアシュトンが呟きを漏らす。まあそれも仕方がないだろう。嘘をついてまで殺し合いに乗ってると言われた人物を庇う理由など普通はないのだ。
「ま、これから俺達は仲間になるんだ。仲良くやろうじゃないか」
その疑問を解決するため、チェスターの肩に手を置いてからアシュトンの方へと歩み寄る。
そして耳元で囁いてやった。「事情は分からないが、信じているからな」と。
これでいい。これでアシュトンは俺の事を“限りなく怪しくてもかつての仲間をどんな信じようとする馬鹿”と見てくれるはずだ。
それでいい。アシュトンには『利用しやすい奴』と思い込ませておく。
「いつでも始末出来て、今はまだ使えている」と思われてるうちはアシュトンに襲われる事もないだろう。
- 164 名前:不協和音 (代理):2008/05/04(日) 00:23:58 ID:Zgqc39CV0
- アシュトンへの耳打ちを終えると、わざとらしく肩を組みチェスターの所まで連れて行く。
「今さっきの事は互いに忘れろ。もう俺達はチームだ。強敵であるクロードを倒すための、な」
「……ああ、そうだな。悔しいが、俺一人じゃアイツを倒せそうにねえ。力を貸してくれ」
弱弱しく頭を下げるチェスター。その無様な姿がとても憐れで、クロード討伐ぐらいは本当に付き合ってやろうとさえ思えてきた。
「ああ、勿論だ」
当然こう返事をしておく。ようやく強者ともそれなりに渡り合えるカードを手中に収めたのだ、自らカードの機嫌を損ねる事はない。
「……そう、だね」
アシュトンの返事が歯切れ悪い。相手がクロードということもあって気圧されたか?
もしくはチサトを殺すまでの俺みたいにかつての仲間を殺めることには抵抗があるのか……
まぁどちらだろうが関係ない。戦闘で壁としてきっちり働いてもらえばいいのだ。
「ああ、そうだ、誰か弓支給されてないか?」
思い出したようにチェスターが呟く。が、生憎二人とも首を横に振るだけだった。
「……なあ、チェスター、言わなくちゃいけないことがある」
「ん?」
「俺達は弱い。仲間を守ってやれる余裕なんかないほどに。だから今こうしてチームを組んでクロードに挑もうとしている」
チェスターにハッキリ言わなくてはいけないこと。それはチームを組む最大のデメリットである支給品の再分配について。
チーム全体の利益が最大になるよう分配すると、アシュトンにバーニィシューズを譲渡するはめになる。下手したらフェイトアーマーもだ。
折角得たバーニィシューズを手放す程俺は馬鹿じゃあない。
「俺達は戦闘の時自分の身を自分で守らなくちゃならない。なら支給品をどうするかは各自の自由だ。自分の身を守るのに必要だと思う者は無理に譲らなくてもいい」
「で、でもよ、折角仲間になったんだから……」
「ああ、だからまずは要らないと思った物だけを互いに挙げよう。そして合意が取れればそれらを交換すればいい」
あくまで等価交換。その言葉にチェスターは不満そうだが気に留めず話を進める。
「で、俺はパラライズチェックと七色の飴玉とかいうアイテムを要らないと思ってる。チェスターは何かないのか、交換に出してもいいアイテムは」
効果が期待できないパラライズチェックとどんな成分なのか一切不明な怪しい飴玉。
後者はともかく、うまくいけば前者の方は何かしらと交換できるかもしれない。
「……俺は弓も持ってないし、何でも交換していい」
そう言ってチェスターはデイパックからアイテムを出す。
地べたに置かれたアイテムは、スーパーボールに、それから……
「エンプレシアか」
エンプレシア。レナが使っていたナックルだ。
サイズが若干きついかもしれないが、ナックルは俺の待ち望んでいた武器だ。これを逃す手はない。
「チェスター、悪いがこいつをパラライズチェックと交換しないか? 何なら飴玉も全部やる」
気分が明るくなる薬物でも仕込まれているであろう飴玉は砕けば調合に使えたかもしれないが、エンプレシアと交換なら惜しくない。
何としてもここは武器を手に入れなくては……
「ん、ああ……あんたに任せるよ」
「おいおい……いいのか、そんな適当で」
言いながらもしっかりエンプレシアを試着する。
うーん、やはり少しばかりきついな。あまり長い間装備していると拳を痛めそうだ。
「ああ、ここ来るまでの旅じゃ仲間に要らないアイテムを譲るのは当たり前だったからよ……
まあ、今思えばそういう風潮もクレスがリーダーをやってたからかもしれねえけど、俺はそういう方が気楽だから」
どうやらチェスターはかつての冒険の時と同じように在りたいらしい。甘い考えだ。
言えばスーパーボールもくれそうだが、そうしてしまったらチェスターが戦力外になるのでやめておく。
この場でチェスターを殺してアシュトンとだけ組んでもいいが、アシュトンが俺を殺そうとしてきた場合サシだと少々分が悪い。
チェスターには最小限の武装だけを与えておくのが得策だろう。
「ああ、そうだ。この飴玉は今舐めておけ。気分が明るくなるそうだ。仲間が死んで辛いのは分かるが、塞ぎ込んでちゃやれるものもやれなくなる」
足を引っ張らないように、というのもあるが、それ以上にこの怪しいアイテムの実験台にするためにチェスターに七色の飴玉を勧める。
チェスターは特に警戒をすることもなく言われるがままに飴玉を舐めはじめた。即効性はなさそうだが……まあ様子見だろう。
- 165 名前:不協和音 (代理):2008/05/04(日) 00:25:16 ID:Zgqc39CV0
- 「アシュトンは何かないのか、要らない物」
「……ないですよ。それに僕は今の武器でも何とかやれますから」
やれやれ、殺し合いに乗ってるだけあって上辺の付き合いもする気はないってか。
ま、確かに上辺だけでも仲良くしちまうと殺すのがつらくなるからな……だが俺はもう躊躇わない。家族の元に帰るためなら何だってやってやるさ。
「それより早く移動しよう。平瀬村には人もいそうだし、放送までには探索を終えちゃいたい」
アシュトンの提案に反対する理由は特にない。実際拠点にもってこいな村には獲物が少なからずいるだろう。
貧弱な武装で釜石村に向かおうとした時と違い、今の俺には仲間も武器もある。よほどの強敵と当たらない限り死ぬことはないだろう。
チェスターが殺し合いに乗り気じゃないっぽいのが難点だが……思考能力は低下しているようだし、うまく言いくるめられるかもしれない。
「あ……悪い。俺、平瀬村には行きたくねえんだ」
が、平瀬村行きは予想外にもチェスターの反対にあってしまう。アシュトンが露骨に不満を顔に出した。こんな状況でも分かりやすい奴だ。
「その、仲間が二人ほどいるんだけどよ、なんっつーかさ、あの二人は俺なんかより全然凄いっていうか、見てるものが違うっていうか……
脱出のため何を優先すべきかが分かってるって言えばいいのかな。
とにかく、今の俺じゃあ奴らの力になれそうにないんだ。それどころか足を引っ張るかもしれない。だから合流したくねえ。
それに、俺はクロードの野郎を倒したいんだ。二人は平瀬村を拠点にするみたいだから、一緒にいたらそれもできねえ。
……だから、悪い。俺の我儘だけど、出来れば俺に付き合ってくれ」
再び頭を下げるチェスター。正直長々と喋られてもその気持ちはよく分からない。
だが反殺し合いの人間で、頭脳的で、なおかつ強大な力を持っているのだとしたら、そんな奴とは関わらない方がいいに決まっている。
自分が何人も殺した事に感づかれる恐れがあるうえに、最後の一人になるために“抜ける”ことが出来なさそうだからな。
かと言って十賢者すら蘇らせるような奴を倒せるとも思えないし、そもそも自分を倒せるような奴を参加させるほどルシファーとやらも馬鹿じゃあるまい。
そんな連中と組むにはリスクばかりが高すぎる。アシュトンは不満なようだが、平瀬村は避けた方が賢明だろう。
「おいおい、そんな顔するなよアシュトン。仲間が頭まで下げたんだ、付き合うしかないだろ」
「……分かりました。じゃあ、とりあえずは菅原神社ならどう?」
殺し合いに乗っているとはいえアシュトンはアシュトンか……
あのアシュトンが殺し合いに乗ったって言うから、てっきり「従わなければ殺す」ぐらいに理性がぶっ壊れたのかと思っていたが、意外とそうでもないらしい。
どちらの方が利用しやすいのかは分からないから素直に喜んでいいものか微妙だが。
「ああ、悪いな……俺はそれでOKだ」
「俺も異論はない」
さて、チーム全体の方針は決まったな。あとはチェスターをうまく騙して人数を減らしていくだけだな。
……待ってろよ、ニーネ、エリス。絶対に家に帰るからな。
☆ ★ ☆ ★ ☆
- 166 名前:不協和音 (代理):2008/05/04(日) 00:26:30 ID:Zgqc39CV0
- (やれやれ、困ったな)
ホテル跡を離れ数十分。アシュトンは一人考えていた。
ボーマンにより二人と組む事になったのは構わない(むしろ有難い)のだが、如何せん彼らはクロードを敵対視している。
クロードの性格上、自分が生きて帰るために殺し合いに乗ることはまずないだろう。
だから「クロードが殺し合いに乗った」と聞いた者は誰しもが「クロードはレナのために殺し合いに乗った」と考える。
おそらくプリシスの耳に入った場合、プリシスだってそう思うだろう。そしてその心はきっとどうしようもないぐらい傷つくのだ。
その事がアシュトンには許せないのだ。その後自分の物になりやすいとしても、プリシスが傷づかないに越したことはない。
そのためにも、プリシスの一番になれるまではクロードがゲームに乗ったと耳に入れさせてはいけないのだ。
唯一の救いはプリシスとの合流まで時間があることだが、それまでに誤解を解けるかどうか……
(だけど……悪いことだけじゃなかったし、うまくやれば今まで以上にプリシスの役に立てるかもしれない)
殺し合いに乗ったからと言って気が強くなるわけでもなければ発言力が強くなるわけでもない。
アシュトンがチームの行動方針を無理矢理決めることはほぼ不可能だ。だが……
(ボーマンさんは僕達に嘘をついている)
考えていることを予測出来れば、個人単位でならそれとなく誘導できるかもしれない。
情報を武器と扱うなら、アシュトンの手には今『クロードの正体』いう最強の武器がある事になる。
先程チサト達がどうなったかを聞いた際にボーマンから引き出せた「二人はクロードに殺された」の言葉――これが嘘だというのはその時クロードと居た自分自身が一番良く分かっている。
こんな嘘をつく理由なんて猿にだって分かる。自分がチサトとガルヴァドスを殺したのだ。
それはつまり、クロードの無実を晴らすと同時にボーマンを敵に回すことを示している。
だが今のアシュトンにとって同盟を結びプリシスの笑顔のため利用できる参加者は貴重である。
クロードの無実をどのタイミングで晴らすべきか。そのことだけをアシュトンは考える。
早く解かねばならないが、極力長い事ボーマンを利用したい。さて、最良のタイミングは一体いつだろうか?
(やれやれ、なかなか一人っきりにはなれそうもないし、これじゃあギョロとウルルンに意見を聞くこともできないや)
- 167 名前:不協和音 (代理):2008/05/04(日) 00:28:37 ID:Zgqc39CV0
- そう、アシュトンは今ギョロとウルルンとコミュニケーションを取ることが出来ない。
二匹の声はボーマンたちには理解できないが、アシュトンの声は普通に聞こえてしまうのだ。
だから、彼らは一つになれない。二匹にとって目の前にいるのは、今までのように“言葉にしなくても考えの理解できるアシュトン”ではないのだから。
『首輪を狩る』
それが、彼らを繋ぐ共通の目的。
『プリシス・F・ノイマン』
それが、彼らに不協和音をもたらす存在。
(ふふ、でも頑張るよプリシス……君が笑顔でいてくれるなら、僕は何だって我慢できる……
僕が“一番”になれるまでプリシスの笑顔を守れる人がクロードしかいないって言うのなら、僕はよろこんでクロードを君に会わせるよ。
僕の“一番”は君なんだから。君の幸せは全部僕が叶えてあげるよ)
――プリシスのためなら死ぬことさえ辞さないアシュトン・アンカースは、およそ9時間後に訪れるであろう再会を糧に歩を進める。
(どうする……? アシュトンには悪いが、人間のために命を無駄に捨てる気はない。
……何を考えているのか分からない以上、プリシスに会うのは得策じゃないだろう。下手なフォローは裏目に出かねない。ウルルンもそこは分かっているだろう。
赤髪の女を殺した後のように、なんとかしてプリシスに会わせないようにしなくてはな…… さっさと死んでくれるといいのだが……)
――死ぬつもりなど毛頭ないギョロは、プリシスが死ぬまでどのようにアシュトンを引き離しておくかを考える。
何かしら理由を考えてアシュトンを釜石村から遠ざけなければならない。アシュトンがプリシスのために自殺するのを避けるために。
そして同時にプリシスを失った際にどうフォローするかも考える。アシュトンがプリシスの後を追わないように。その後、プリシス蘇生のために優勝を目指すバーサーカーになるよう誘導する言葉を。
(クロードか……不味い事になったな。最後の数人での乱戦に縺れ込ませてその隙にプリシスを消すつもりだったが……
仮に本当にプリシスが殺し合いに乗っていたとしても、アシュトンと同じように『愛しい人を生き残らせる』ことを考えてる場合、その場にはプリシスだけでなくクロードもいることになる……
12時間経つというのに、奴は大きな傷を負っているように見えなかった……
消耗させた方がいいかもしれないが、奴は殺し合いを止める気でいる……仲間を集め立ちはだかれては分が悪い……
アシュトンが何を考えているのかは分からないが、クロードとプリシスは殺させてもらう、釜石村でッ)
――死ぬつもりなど毛頭ないウルルンは、アシュトンの生存の枷になる二人を如何にして殺すかを考える。
次で釜石村で会った時に、アシュトンに咎められぬよう出来るだけ事故を装うような形で殺す方法を。
そしてプリシスの蘇生を仄めかし、自分自身の生存を第一目標にさせる方法を。
彼らは、プリシスを中心にバラバラになりつつあった。
- 168 名前:不協和音 (代理):2008/05/04(日) 00:31:55 ID:Zgqc39CV0
-
☆ ★ ☆ ★ ☆
したくもない殺し合いを命じられた。別に誰が悪いわけでもないさ。
そう、バラバラの道を行く彼らだけど、根本にあることは何も変わっちゃいないんだ。
一人の勇者は同じ失敗を犯さないように何が何でも一人の大切な仲間を信じると決めて、
一人の剣士は二度と大切な人を失わないように折れかけの心に鞭を打ち、
一人の女性は大切な人を一人でも多く救うために感情を殺そうとし、
一人の夫は大切な家族を泣かせないために最善の選択を取り、
一人の青年はせめてこれ以上大切な者を殺されないように憎悪と殺意を原動力にし、
そして一人の男と二匹の龍は大切な者の笑顔と生存のために尽力しようとしている。
ただそれだけなのだ。誰もが皆、大切な人のために行動しているだけなのだ。
この中に誰か明確な悪人がいるわけじゃあない。これは倒すべき絶対悪がいる物語ではない。
ほんのちょっぴり個々の想いが強すぎて、不協和音を奏でてしまう。
要するに、これはそれだけの話なのだ。本当にただ、それだけの話。
【E-04/真夜中】
【アシュトン・アンカース】[MP残量:100%(最大130%)]
[状態:疲労小、体のところどころに傷・左腕に軽い火傷・右腕にかすり傷(応急処置済み)、右腕打撲]
[装備:アヴクール@RS、ルナタブレット、マジックミスト]
[道具:無稼働銃、レーザーウェポン(形状:初期状態)、???←もともとネルの支給品一つ、首輪×3、荷物一式×2]
[行動方針:第4回放送頃に釜石村でクロード・プリシスに再会し、プリシスの1番になってからプリシスを優勝させる]
[思考1:プリシスのためになると思う事を最優先で行う]
[思考2:チェスター・ボーマンを利用して首輪を集める]
[思考3:菅原神社に向かう]
[思考4:プリシスが悲しまないようにクロードが殺人鬼という誤解は解いておきたい]
[備考1:ギョロとウルルンは基本的にアシュトンの意向を尊重しますが、プリシスのためにアシュトンが最終的に死ぬことだけは避けたいと思っています]
[備考2:ギョロとウルルンはアシュトンが何を考えてるのか分からなくなるつつあります。そのためアシュトンとの連携がうまくいかない可能性があります]
[現在位置:ホテル跡周辺。西]
【チェスター・バークライト】[MP残量:100%]
[状態:全身に火傷、左手の掌に火傷、胸部に浅い切り傷、肉体的、精神的疲労(重度)、クロードに対する憎悪、無力感からくるクレスに対する劣等感]
[装備:パラライチェック@SO2の紛い物(効果のほどは不明)、七色の飴玉(舐めてます)]
[道具:スーパーボール@SO2、チサトのメモ、荷物一式]
[行動方針:力の無い者を守る(子供最優先)]
[思考1:クロードを見つけ出し、絶対に復讐する]
[思考2:アシュトン・ボーマンと協力して弱い者や仲間を集める]
[思考3:今の自分では精神的にも能力的にもただの足手まといなので、クレス達とは出来れば合流したくない]
[思考4:菅原神社に向かう]
[備考:チサトのメモにはまだ目を通してません]
[現在位置:ホテル跡周辺。西]
【ボーマン・ジーン】[MP残量:40%]
[状態:全身に打身や打撲 ガソリン塗れ(気化するまで火気厳禁)]
[装備:フェイトアーマー@RS、バーニィシューズ]
[道具:エンプレシア@SO2、調合セット一式、七色の飴玉×2@VP、荷物一式*2]
[行動方針:最後まで生き残り家族の下へ帰還]
[思考1:完全に殺しを行う事を決意。もう躊躇はしない]
[思考2:アシュトン・チェスターを利用し確実に人数を減らしていく]
[思考3:菅原神社に向かいながら安全な寝床および調合に使える薬草を探してみる]
[備考1:調合用薬草の内容はアルテミスリーフ(2/3)のみになってます]
[備考2:秘仙丹のストックが1個あります]
[備考3:アシュトンには自分がマーダーであるとバレていないと思っています]
[現在位置:ホテル跡周辺。西]
- 169 名前:不協和音 (代理):2008/05/04(日) 00:33:25 ID:Zgqc39CV0
- 【F-02/夜中】
【クレス・アルベイン】[MP残量:30%]
[状態:右胸に刺し傷・腹部に刺し傷・背中に袈裟懸けの切り傷(いずれも塞がっています)、HPおよそ15%程度、何も出来ていない自分に対する苛立ちと失望(軽度)]
[装備:ポイズンチェック]
[道具:なし]
[行動方針:ルシファーを倒してゲームを終了させる]
[思考1:平瀬村を捜索し、武器(出来れば剣がいい)や仲間を集める]
[思考2:拠点になりそうな建物を探してそこで脱出に向けての話し合いをする]
[思考3:チェスターが仲間を連れて帰ってきてくれるのを待つ]
[現在位置:平瀬村内北東部]
【マリア・トレイター】[MP残量:60%]
[状態:右肩口裂傷・右上腕部打撲・左脇腹打撲・右腿打撲:戦闘にやや難有]
[装備:サイキックガン:エネルギー残量[100/100]@SO2]
[道具:荷物一式]
[行動方針:ルシファーを倒してゲームを終了させる]
[思考1:平瀬村を捜索し、武器(出来れば剣がいい)や仲間を集める]
[思考2:拠点になりそうな建物を探してそこで脱出に向けての話し合いをする]
[思考3:チェスターが仲間を連れて帰ってきてくれるのを待つが、正直期待はしていない]
[思考4:移動しても問題なさそうな装備もしくは仲間が得られた場合は平瀬村から出て仲間を探しに行くつもり]
[現在位置:平瀬村内北東部]
【G-05/夜中】
【クロード・C・ケニー】[MP残量:85%]
[状態:右肩に裂傷(応急処置済み、武器を振り回すには難あり)背中に浅い裂傷(応急処置済み)、左脇腹に裂傷(多少回復)]
[装備:エターナルスフィア@SO2+エネミー・サーチ@VP、スターガード]
[道具:昂魔の鏡@VP、首輪探知機、荷物一式×2(水残り僅か)]
[行動方針:仲間を探し集めルシファーを倒す]
[思考1:神塚山を反時計回りに移動するルートで仲間を集め、第4回放送までに釜石村に行きアシュトンとアシュトンの見つけた仲間達に合流する]
[思考2:プリシスを探し、誤解を解いてアシュトンは味方だと分かってもらう。他にもアシュトンを誤解している人間がいたら説得する]
[思考3:アーチェを追って誤解を解きたかったが何処へ逃げたか分からないうえ行動に疑問を感じているので、今はただ会える事を祈るのみ。会えたら誤解をちゃんと解こう]
[思考4:第一回放送の禁止エリアの把握]
[思考5:リドリーを探してみる]
[現在位置:G-05、G-05とG-06の境界付近]
[備考1:昂魔の鏡の効果は、説明書の文字が読めないため知りません]
[備考2:第一回放送の内容の内、死亡者とG-03が禁止エリアという事は把握]
- 170 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 00:40:07 ID:Zgqc39CV0
- 転載終了。
改めて読んでも凄い量ですねw GJ!!と言わざるをえない。
しかしアシュトンとボーマンを1パーティーに入れるなんて予想だにしてなかった展開。
チェスターは間違いなく死んだなこりゃw
個人個人の心理描写を細かく書いて登場人物を大きく動かした力量にも感服っス!
- 171 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 11:04:11 ID:d5lC3wVd0
- 代理投下乙ー
しかしクレスとマリアはこの状態でミカエルのいる方に向かったわけか・・・オワタな
- 172 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 14:41:11 ID:cpLCbfHhO
- GJです!
切ないなー
いろいろ気になってた伏線が丁寧に絡み合っていて面白かった!
- 173 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 02:18:37 ID:iFvArlac0
- GJです!トップマーダー級の内二人を同じパーティーに入れるとはw
どいつがいつ死んでもおかしくないな。
>>171
マリアがジェラートの様にミカエルの声をクリフと間違える気がしますw
- 174 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 08:50:36 ID:XfeNiy7yO
- >>173
AAAの声かぶりっぷりは異常w
- 175 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 12:01:56 ID:2m7z0GIc0
- 今気付いたがアシュトン&ボーマンが鎌石村を目指してて、リドリーが鎌石村にいるわけだろ・・・?
ついでに最期にルーファス殺して殺害数2位タイになったすずの死体も鎌石村の付近にあるわけだ
トップマーダー鎌石村に集結しすぎだろw
- 176 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 14:03:39 ID:XfeNiy7yO
- 氷川村はガブリエルしかマーダーがいないのに殺伐としてるしなぁ
ミカエルはいい加減頑張れw
- 177 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 16:32:07 ID:qKdCuWXd0
- >>◆wKs3a28q6Q氏
『不協和音』のwiki収録にあたって4分割とする必要があるようですので、
分割点の指定があればよろしくお願いいたします。
- 178 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 17:04:21 ID:XfeNiy7yO
- 長すぎて吹いたw
そういや3分割なら前・中・後にできるけど、4分割ならどう表記するんだろう?
- 179 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 17:11:19 ID:qKdCuWXd0
- シンプルに(1)(2)(3)(4)と考えていましたが…その辺りに関しても指定があれば、併せてよろしくお願いいたしします。
- 180 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 23:44:40 ID:ecm7KhEw0
- 変に悩むより1,2,3,4で良いと思います
- 181 名前: ◆wKs3a28q6Q :2008/05/06(火) 01:05:09 ID:LxXc81MJ0
- うげ、そんなに長かったのか……
特に指定はないので、字数制限に引っかからない『☆ ★ ☆ ★ ☆』の位置で適当に切っていただけると幸いです
あと番号表記についても(1)〜(4)でお願いします
お手数かけてすみません
- 182 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 03:00:07 ID:0ygG3rlC0
- wiki収録完了しました。
当方の不手際で編集履歴を汚してしまったことをお詫びいたします。
- 183 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 09:42:25 ID:LxXc81MJ0
- >>182
乙! こちらこそ繋ぎの癖にアホみたいな長さでお手数かけました。
残り人数も半分切ったし、生存者の現在地が分かったほうが便利そうだからまとめてみた。
【平瀬村】
洵&ミランダ F-01 夕方 休憩中
ミカエル F-02 夕方 獲物探索中
ルシオ F-02 夕方 休憩中
クレス&マリア F-02 夜中 行動開始
【氷川村】
アルベルVSアリューゼ+プリシス I-06 夜 戦闘開始
ディアスVSガブリエル I-06 夜 戦闘開始
レオン&レナ I-06 夜 逃走開始
【鎌石村】
ブレア D-06 夕方 放送後方向決定
ガウェイン D-06 夕方 移動中
リドリー C-04 夜中 覚醒中
【D-02】
フェイト&エルネスト&クラース D-02 夕方 ロキのベルに気付いた(鎌石村を目指している)
ロキ 最後に登場したときはC-04/真昼だったが、夕方にはD-02まで辿りついた模様
【第4回放送までに鎌石村に行く気の人達】
レナス&レザード&ソフィア&クリフ D-05 夜中 ソフィアを励ます
へんたいかめんヅラムス D-05 夜 移動中
アシュトン&ボーマン&チェスター E-04 真夜中 移動中
クロード G-05 夜中 移動中
こうして見ると鎌石村がえらい人気。生存者29人中9人が第4回放送までに行く気満々。
更にフェイトら3人も目指しており、現在いる3人を含めたら半数を超える15人が鎌石村に集まることに。
氷川村は戦闘勃発。誰も近付いてきていないため止まる可能性は少なそうだ。レオン達はどこに行く?
平瀬村はマーダーあり反主催ありの状況ながら放送後に動きがない。クレス達だけ進みすぎちゃってるが一体どうなる?
ちなみに平瀬村の反主催は全員合流してもサイキックガンしかまともな装備がないという惨状。
んで真昼という驚異的な遅さを誇るロキとフェイトら。合流後に鎌石村なり平瀬村なりに突っ込ませれば空気脱却になる・・・かも。
そしてクロードよ、今気付いたけど北東の方お前しかいねえぞ……ヅラムスあたりと合流できるか?
- 184 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 15:11:45 ID:jzmvNZ4O0
- >>182毎度毎度乙でございます。
>>183平瀬村周辺にいるとどうやら空気になる傾向があるみたいですね。
- 185 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 23:12:06 ID:ZqkK7B7Z0
- ここのアシュトンには石田声がよく合いそうだ…
- 186 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 14:54:44 ID:f+VuVxsJ0
- >>183
ロキはレザードとずいぶん差が着いちゃったな・・・
- 187 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 19:34:10 ID:rNskGv4i0
- やっと規制が解けたぞ!
>>183と微妙にかぶるが現段階の場所ごとのキャラまとめを。
時系列と場所の詳細等々はこの際無視だこの野郎!
【鎌石村】
・リドリー@金竜クェーサー
民家にて潜伏中、金竜の意識が覚醒してしまった事で更に殺る気満々
リドリー自身の意識はまだ残っているが、戻せるキーマンは既に死亡済
【鎌石村付近その1(D-2組)】
・エルネスト、クラース、フェイト
鎌石村へ移動中
ロキの接近に気付いたものの、まだどうなるか分からない
・ロキ
首輪解除に向けて暗躍中
この3人に対してどう接するのかが見もの
【鎌石村付近その2(D-5組)】
・レナス、ソフィア、クリフ
落ち着いたら鎌石村に向かう事に
ショックを隠せないソフィアをとりあえず落ち着かせる
・レザード
ルーファスの遺体をいい状態で保存できてご満悦
そしてついに野望を実行に移し始めたが……一体どう転ぶのか!?
・ヅラムス
修羅場なんて何のその、1人鎌石村に向けて高速移動中
夜間+ここまできたのに ま だ 戦っていないので絶好調……なのか?
【鎌石小中学校付近】
・ガウェイン
鎌石村へ向けて移動中
・IMITATIVEブレア
まだどうするかは未定、特に思う所が無ければホテル跡を目指す予定?
【鷹野?神社付近】
・クロード
アシュトンの無実(嘘)の証明と仲間集めの為、神塚山周辺を巡る事に
対主催どころかマーダーにまで狙われる状況になった今、
果たして誤解が解ける時は来るのか……?
- 188 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 19:34:59 ID:rNskGv4i0
- 【平瀬村】
・ルシオ
何とかミカエルをやり過ごす事に成功、洵たちと合流を図る
……だけど自分以外は皆マーダーだよ、がんばれルシオ
・ミカエル
ルシオを倒して意気揚々、残り2人も殺る気満々
……だけど実際は誰も殺せてませんから、残念
・洵、ミランダ
ひょんな事で行動を共にする羽目になったマーダーs
互いの腹の底は見えずじまい
【平瀬村付近】
・マリア、クレス
決意を新たにゲーム打開へ
武器と仲間を求めて平瀬村へ向かうが、平瀬村は……
【ホテル跡付近】
・ボーマン、アシュトン、チェスター
ひょんな事から組む事になった3人組、ひとまず菅原神社へ
マーダー2人組(+2匹)の思惑はいろいろと複雑なようで……
そして勘違い大魔王チェスター、
アーチェやチサト組を殺ったのは目の前のそいつだよー!
【氷川村】
・アルベルVSアリューゼ、プリシス
互いの誤解から戦闘に発展
というかお前ら、対主催同士で戦っている場合ですか!
・ディアスVSガブリエル
レオンとレナを逃がす時間稼ぎの為に対峙するディアス
相手は負傷しているとはいえ本編ラスボス、果たして─?
・レオン、レナ
ガブリエルから逃れるために禁止エリア(予定)の先へ向かうが……
逃げ切れても方向的に空気フラ……うわなにをするやめr
【おまけ(というか参加者に非ず)】
・無人君(意思持ち配布済アイテム)
H-7からどこかへ逃走中
でも方向次第では空気になったり爆破……はされないか、首輪ないし
様々な思惑が渦巻き始めて、オラ、ゾクゾクしてきた!
- 189 名前:不協和音 ◆wKs3a28q6Q :2008/05/07(水) 20:37:17 ID:lsWsCYx30
- GJ!
なんっつーか、こいつら協調性皆無だなw
マーダー組は勿論対主催集団まで好き勝手やっててまあるで纏まる気配がないw
しかしこれでレオンが空気になったらロキ・レオンと考察キャラが揃って空気化することになるな
レザード以外ももっと頑張れw
- 190 名前:189:2008/05/07(水) 21:01:05 ID:i8BRm4VrO
- ('A`)殺せよ
鳥消し忘れた時の恥ずかしさは異常。
というか最近異常に重たいな
- 191 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/09(金) 07:10:15 ID:U4BPEfQO0
- 平瀬村は空気なわりに火薬庫すぐるw
- 192 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/09(金) 18:55:58 ID:BsD/MVmf0
- ルシオが殉を助けようとして死にそうで恐い
ルシオ逃げて超逃げて
- 193 名前: ◆MJv.H0/MJQ :2008/05/16(金) 01:41:51 ID:KcubJJpCO
- 一人自己リレーになってしまいますが、エルネスト、フェイト、ロキ、クラースを予約します。
- 194 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/16(金) 01:47:40 ID:b1jNkqyF0
- 期待せざるを得ない
- 195 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/16(金) 01:49:52 ID:p9EHZD0I0
- 楽しみだ。ロキが楽しみだ
- 196 名前: ◆yHjSlOJmms :2008/05/18(日) 03:28:37 ID:b5kovE+K0
- >>193に期待。自分もそいつら書こうとしたんですが、簡単な自己紹介をしてお別れかロキによる殺戮ショーしか浮かんでこなかったんですよね。
短いですが>>193が投下されるまで保守代わりに投下
- 197 名前:光の勇者ジョーカーを引く:2008/05/18(日) 03:33:05 ID:b5kovE+K0
- (さて…どうしたものかしら?)
沖木島北東部に位置する鎌石小学校の教室で漆黒のローブのような物を身に纏った女性、ブレアはこれからの自分が取るべき行動を思案していた。
(次の禁止エリアは近場ではD−4が指定された。禁止エリアになるには未だ時間的余裕はあるからホテル跡の方には迎えるけど…)
しかし今の彼女には懸念材料があった。
自分の思惑に気付いているレザード・ヴァレスの存在である。
案の定奴はグール化したエイミを退け、今もこの島のどこかで生きている事になる。
(観音堂でグールパウダーを飲ませたエイミに襲わせてからかなりの時間が経過しているけど、まだ彼が観音堂にいる可能性がある以上はこのままホテル跡に行くのは危険ね。
現在指定されているエリアの関係上ホテルや鎌石村方面に行くにはD−5を経由し南に進路をとらなければならないけれど、レザードも何やら人を探していた様だし、
島の東側に人が集まりそうな施設が少ない以上鉢合わせる可能性が高いわ。
グールパウダーという手札を切ってしまった今奴とやりあっても返り討ちに遭うのがオチね)
先程遭遇したガウェインが始末してくれれば願ったりなのだがそうも行かないだろう。
(となれば…。他の参加者との接触を図るのがベターよね。
ガウェインにレザードの悪評を広めるように言ったけど、所詮殺し合いに乗った人物の言い分だし、信用されるか怪しいところね…。
となればレザードを陥れるためにも、ルシファー様に反旗を翻したような連中がいいわ…。
このままここに留まるのも手だけど、禁止エリアに囲まれつつあるこの場所は、参加者探しには適さない。
以上を踏まえるとE-5を迂回して鷹野神社に行ってみるのがいいかしら。
氷川村に発生する禁止エリアI-7、H-7から出てきた人間が集まる可能性も高い)
目的地の選定を終えた彼女は出発の準備を始めた。
作業を進めながら彼女の思考は何故自分がこの島にいるのかを考える。
(単純な参加者達の虐殺目当てなら私にもっとそれに適した性能をお与えになるはず)
ところが今の自分の戦闘能力は、オリジナルであるFD空間内では一般人であるブレアの能力をコピーした程度の物でしかない。
故に彼女は自分の創造者は自分に参加者をただ殺して回るような存在になってもらうつもりが無いのだと結論付ける。
では何故自分はブレアなのか? 何やら哲学的なことを考え始めた自分に対し冷笑を投げかけながらも尚も自分の存在意義を考える。
(ブレアであるメリットはルシファー様が過去の敗北の原因であったフェイトたちと面識があること。
しかも友好的な関係のはずだ。オリジナルのブレアは彼らのFD空間内での協力者であったのだから。
更にルシファー様の実妹であるという事。それらを活かす事で殺し合いを止めようとする集団に取り入るのは容易であろう)
集団に入り込むことで可能になる殺し合いの進行を促す行為はなんなのか。
(まずはその集団の中で互いの疑心を高め内部崩壊を増長する。狂気と理性の狭間で揺れている人物へ最後の一歩の後押し。
今後は積極的に殺しまわるよりもそうする方がきっとルシファー様もお喜びになるはず)
新たな行動指針も考え終えた彼女は学校を後にした。
- 198 名前:光の勇者ジョーカーを引く:2008/05/18(日) 03:34:03 ID:b5kovE+K0
- □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
頼れる仲間アシュトンとの再会と別れをしたクロードは現在1人で神塚山の麓にいた。
もうまもなく最初の通過ポイントである鷹野神社に差し掛かるところである。
(ん? 明かりが点いてる)
確かに室内という空間にいるのならば照明をつけたくなる時刻である。
普通の状況なら全くもって違和感など無い光景だが、今はそんな状況ではない。
獲物を求めて徘徊する殺し合いに乗った人間達が複数いるはずなのは、放送時の死亡者数から考えてまず間違いない。
こんな周囲に何もないところで堂々と明かりをつけていればそんな連中が嬉々として押し寄せてくるだろう。
そんな事まで気が回らないほど荒事に慣れて無い様な人があの中にいるのだろうか…。
もしくは、その様な人物を装い近くを通りかかった者を引き寄せワナを張って待ち構えているのか…。
クロードはどうするべきか悩んだ。
当然前者であれば保護するのもやぶさかではないのだが、後者である場合は自分の身に危険が及ぶ。
(なにを迷っているんだ僕は…。さっき決めたじゃないか自分にしかできない事に全力を出すと。それに自分の保身を考えたばかりにジャックとは死に別れてしまったんだ。
あの中に力の無い人がいたら一緒に行動して守れば良いし、ワナを張っているような奴だったら倒すまでだ。僕にはそれが出来るだけの武器と力があるんだから)
クロードは手にした武器を強く握り締めると、弱い者は守る、力を振りかざす者は叩き伏せるという新たな決意を胸に神社の鳥居をくぐった。
- 199 名前:光の勇者ジョーカーを引く:2008/05/18(日) 03:35:43 ID:b5kovE+K0
- □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
(誰か来たみたいね…)
移動自体はスムーズに行われて大して時間はとられなかった。
1時間前から神社内で明かりを点けこうして誰かが来るのを待っていたのだが、意外と早く人と会う事が出来た。
普通の参加者なら明かりを点けて他の参加者に見つかるような真似はしなかっただろうが彼女は違う。
とにかく誰でも良いから参加者に会いたかったのだ。この際殺し合いに乗った人間でも構わない。
その時はガウェインにしたように交渉に移ればいい。逆に殺し合いに乗ってないのなら好都合だ。
上手く言い包めてレザードを倒すのに一躍買ってもらう。役目を終えたのなら上手く誘導し殺し合いに乗せる。
どうしてもそれを拒むのであれば手持ちの武器パラライズボルトで拘束し、身動きの取れない相手を万能包丁でじわじわと嬲り殺す。
その第一ステップは今クリアされた。
そして、その工程は第二段階に移る。
ブレアは境内に入ってきた人物を観察した。この島に送られる前に参加者の情報はある程度ルシファーから教わっている。
(彼は確かクロード・C・ケニー。エターナルスフィア内のある年代において銀河規模の危機を仲間と共に救った人物。高い戦闘能力を有しまた、集団を引っ張るリーダーシップも持っている。おそらく殺し合いに乗っていないだろうが念には念を入れるか…)
「あっ、あなたは…この殺し合いに乗っているのですか?」
包丁を両手で握りしめ小刻みに震える。あたかも怯えた無力な参加者を装い相手の返答を待つ。
ここで殺る気満々の人間であれば襲ってくるだろうが、自分が主催者の送り込んだ刺客であると告げるには十分な距離がある。
それから交渉に移ればいいし、集団に溶け込もうとしている優勝狙いの人間や、殺し合いに乗ってない人間だったらこうされては「自分は乗ってないから安心してくれ」と言うに違いない。
相手のスタンスを探るにはこれ以上無いと思われる行動だ。
「待ってください。落ち着いて。僕はこの殺し合いになんか乗ってません」
案の定敵意が無い事を告げてきた相手に心の中で笑みをこぼす。
- 200 名前:光の勇者ジョーカーを引く:2008/05/18(日) 03:36:45 ID:b5kovE+K0
- (さて…次のステップに移りましょうか)
「よかった…。私には戦う力なんてありませんからこうして身を隠していたんですが…」
安心した演技をしながらクロードに語りかける。
「そうですか…。でしたらこの明かりは危険すぎますよ。遠くからでも誰かがいることがバレバレです」
お節介にも照明を使う事の愚を進言してきた。他の参加者を釣るためにやった行動だったし釣果も上々だ。
まぁ、今自分が演じている無力な人間の行為にしては確かに愚かな行為だったとは認めざるを得ない。
「そうですね…。申し訳ありませんでした。そこまで気が回らなくて…」
一先ずこのまま無力な参加者の振りを続ける事にする。
(さて、彼の行動方針も掴んだところでここからどう誘導してレザード討伐に動いてもらおうかしら…)
「先ずは自己紹介と今まで何があったかお話でもしましょうか…。私の方の自己紹介は長くなりそうなので出来ればそちらから」
なまじ相手の名前や大まかなプロフィールを知っているのでボロが出ないうちに先に話をさせる。当然そんなボロを出すつもり等無いが念のためだ。
「僕の名前はクロード・C・ケニーです。ここに来てからは――――」
彼はこれまでの経緯を話し始めた。
ここに来た時に最初に遭遇した人物に襲われ気を失った事。
目を覚ました時には最初の放送を聞き逃した事。
その後かつての仲間と再会したもののちょっとした誤解から戦闘になってしまった事。
久々に出会った他の参加者にも誤解を受けてしまった事。
誤解させてしまった人物の知り合いと遭遇し、誤解を解いてもらおうとした所、何があったかわからないけど禁止エリア内で首を吹き飛ばされてしまった事。
そしてつい先程別の仲間と再会し互いの受けた誤解を解くべく別ルートで鎌石村を目指している事。
(中々振り回されているじゃない…。信頼関係を築いていた仲間からは誤解され、それを晴らすために折角再会した他の仲間とも別行動。
漸く会えた別の参加者は不運にも他者を騙して利用しようとしている私。まぁ、精々利用させてもらうわ、光の勇者さん)
「っと、僕の方はこんな感じなんですが貴方の方は?」
- 201 名前:光の勇者ジョーカーを引く:2008/05/18(日) 03:38:40 ID:b5kovE+K0
- (さて、ここからが本番ね)
「まずは私の身の上からお話しましょう。私はブレア。この殺し合いを始めた張本人であるルシファーの実の妹です」
ブレアはそう切り出すと自らのプロフィールを語った。もちろん語る内容は自分のオリジナルであるブレアの物。
FD空間とエターナルスフィアの関係を話すか迷ったが、後々フェイト達と出会った場合その事を話していないのは不自然だと思い教えてやった。
「そんな…。僕達がいた世界が創られた物だという事ですか? だったら僕達の戦いはなんだったんでしょうか?
銀河の危機を救うため十賢者と戦った事も、貴方達FD空間側からしたらそのネットワークゲームを盛り上げるために起きたただのイベントに過ぎないとでも言うんですか?
そんなイベントの所為で父さんやカルナスの乗組員は死んだって言うんですか!?」
(まぁ、普通はそのようなリアクションをとるでしょうね。自分達がいた世界が実は管理する者がいて創り物でしたなんて言われたら…。
だがこれで取り乱してもらっては困る。こちらの本題はレザードに対処してもらう事だから)
これでは本題に移れないと判断した彼女は彼を励ます事にした。
「そういう捉われ方をされてもしょうがないと思うわ。でもね、わたしは違うと思うの。
別にエターナルスフィア全員の人格を私達スフィア社の人間がプログラムしたわけでもないし、あそこの人たちは自分の意思で選び行動しているわ。
ただ、私達FD人の方が貴方達エターナルスフィアよりも高度な技術を持っていて、他の次元世界に干渉する術を手にしていただけ。
だから、貴方がしてきた戦いもその時の苦労や喜びに私達が作ったシナリオなんて無いわ。兄は貴方達を0と1の集合でしかないプログラムと称していたけど、貴方達は紛れも無くこの世界に存在している一つの命なの」
(そう…作り物なんかではない。寧ろ作り物であるのは私自身だ。殺し合いをスムーズに進行させるという事を目的として作られた人形。
私は彼のように苦悩したり、自分のしてきた事の意義を求めたりはしない。)
ブレアの思考に一瞬ノイズの様なものが走る。
彼女はイラついていた。先に会ったガウェインに対しても。
彼やクロードは彼女が出来ない事をしてのける。
誰に命令されるわけでなく自分の意思を持ち行動する。
その行動は時に無意味なものだったり、無駄の多いものだったりするのだが、それをするための権利を持っている。
対して自分はプログラムされたとおりにしか動けない。
臨機応変な対応が求められるこの場では不可欠なものとして自ら思考し行動する為のAIは組み込まれているが、ルシファーによって決められた行動方針『殺し合いの進行をスムーズにする』というものを大きく逸脱する行動を選ぶ事など出来ない。
持たざる者が持っている者を妬むという感情。
その感情が彼女のAIにノイズをもたらしていた。
しかしそのノイズも植え付けられたプログラムによって抑えられる。
通常通りの思考プロセスを取り戻した彼女は目下のところの障害であるレザード・ヴァレスの排除の為の行動に移る。
- 202 名前:光の勇者ジョーカーを引く:2008/05/18(日) 03:40:22 ID:b5kovE+K0
- 「それで、私がここに来てから起こった事なんだけど…。最初にある男女の2人組みに出会いました。
レザードという男とエイミという女で、殺し合いには乗ってないと言ってたので行動を共にしていたのですが…。
観音堂で破れた羽を持つ魔物と遭遇した時の事です。
レザードは一睨みでその魔物を服従させると、その魔物にエイミを取り押さえさせ彼女に見たこともない薬を飲ませました。
何が起こっているのかわからなかった私が動けないでいるとエイミが見る見る魔物に変わっていき、私を襲ってきたのです!」
当然真実を告げる事などできないので、あの場で自分がエイミにした事をレザードに押し付けそれっぽい話をでっち上げた。
「よくそれで無事でしたね?」
ブレアを無力な存在と認識しているクロードは当然のように湧き上がる疑問を口にした。
あたかもその光景を思い出すだけでも恐怖が体を駆け巡っているかのように震え自分の体を抱きしめながらブレアは続ける。
「はい…。私のデイパックに入っていた物が役に立ちました。
確か超スタンボムR1型という名前の爆弾でして、爆発と共に相手を気絶させる事ができると書いていた代物です。
最初にあの2人に会った時に良い印象を受けなかったのでその道具の事を黙っておいたのです」
「それを使って出来た隙に乗じてここまで逃げてきたと…」
「はい。その後の放送でエイミの名前は呼ばれたのですが、レザードの名前が呼ばれませんでした。
もしかしたらまた彼は誰かと接触して殺そうとしているのかも…。
本当は止めたいのですけど私には武器も力も無くて途方にくれていたのです」
ガウェインとの遭遇の件は話すのをやめておいた。クロードはそのガウェインに襲撃されているからだ。
適当な人物をでっち上げそいつからガウェインの遭遇した人物の誤情報をクロードに教える事も考えたが、今は手駒となるクロードの方が大事だ。
一応参加者の名前や容姿、経歴は頭に入れているからガウェイン以外の奴から聞いた事にすればいいのだが、後々その人物と遭遇した時にややこしいことになりかねない。
- 203 名前:光の勇者ジョーカーを引く:2008/05/18(日) 03:44:03 ID:b5kovE+K0
- 「わかりました僕がそのレザードという人物を止めます。そいつがどこに行ったかとかはわかりますか?」
「わかりません。ただ出会った時には鎌石村に向かって歩いていました」
「鎌石村ですね。丁度僕の次の目的地はそこです。ここを出たら神塚山を東側から迂回して鎌石村に行くつもりでした」
「あの…クロードさん。その方向から鎌石村に行こうとすると禁止エリアにぶつかりますよ。
そういえば、1回目の放送は聞きそびれていたんでしたね。C-5、E-6、G-3は禁止エリアにされています。
神塚山を迂回して真っ直ぐ鎌石村に向かうとC-5に入ってしまいますよ。そうなるとかなりの遠回りをしなければならなくなります。
ご友人の方との約束もあると思いますが、レザードを止める為にもここから真っ直ぐ鎌石村に向かった方が…」
それを聞いたクロードは若干悩みながらもブレアの意見に同意した。
「その、ご迷惑でなければ私もご一緒させて下さい。何も出来ないかもしれないけれど、人に厄介ごとを頼んで自分だけ安全なところにいるわけにはいきません!」
そんなつもり等微塵も無いが、口が達者なレザードにクロードが言い包められる恐れもあるので同行する事にした。
(それに、この男はレザードを始末してもらった後にも利用価値がある。
参加者の中に恋仲であるレナ・ランフォードがいたはずだ。
未だ彼女は生きているらしいがクロードが彼女の死を知った時に上手く誘導すれば彼を殺し合いに乗せることができる。
戦闘能力の高いこの男がそうなれば殺し合いのペースが上がるのも必然)
彼女は予想以上に有用な駒を手にした事に気付かれない様にほくそ笑むとクロードと共に鷹野神社を後にした。
かくして、彼女は思惑通りルシファーに反抗する者と行動を共にする事になったのだが誤算があった。
切り札足り得るパラライズボルトの存在を隠しておきたかったので、遭えて互いの支給品の確認をしなかったわけだがその判断は早計だ。
なぜならクロードの支給品には、集団の中に身を潜めるいわゆる潜伏型マーダーを見つけるのに大いに役立つであろう物が存在しているからだ。
現在は持ち主を有用な駒として認識しているので反応は示さないが、いざ隠していた牙を剥こうとした時には察知されてしまうだろう。
果たしてこの判断が彼女に幸運をもたらすのかクロードに幸運をもたらすのか、結果はまだわからない。
この島の殺し合いにもまたシナリオなど存在しないのだから。
- 204 名前:光の勇者ジョーカーを引く:2008/05/18(日) 03:45:00 ID:b5kovE+K0
- 【G-06/真夜中】
【クロード・C・ケニー】[MP残量:90%]
[状態:右肩に裂傷(応急処置済み、武器を振り回すには難あり)背中に浅い裂傷(応急処置済み)、左脇腹に裂傷(多少回復)]
[装備:エターナルスフィア@SO2+エネミー・サーチ@VP、スターガード]
[道具:昂魔の鏡@VP、首輪探知機、荷物一式×2(水残り僅か)]
[行動方針:仲間を探し集めルシファーを倒す]
[思考1:予定変更で鎌石村へ直行 可能ならばアシュトンとアシュトンの見つけた仲間達に合流する]
[思考2:プリシスを探し、誤解を解いてアシュトンは味方だと分かってもらう。他にもアシュトンを誤解している人間がいたら説得する]
[思考3:アーチェを追って誤解を解きたかったが何処へ逃げたか分からないうえ行動に疑問を感じているので、今はただ会える事を祈るのみ。会えたら誤解をちゃんと解こう]
[思考4:ブレアと共にレザードを倒す]
[思考5:リドリーを探してみる]
[現在位置:鷹野神社周辺]
[備考1:昂魔の鏡の効果は、説明書の文字が読めないため知りません]
[備考2:ブレアによって1回目の放送内容を把握しました]
[備考3:ブレアの持ち物は基本的な物以外は万能包丁だけだと思っています]
【IMITATIVEブレア】[MP残量:100%]
[状態:正常]
[装備:万能包丁@SO2]
[道具:パラライズボルト〔単発:麻痺〕〔50〕〔100/100〕@SO3、荷物一式]
[行動方針:参加者にできる限り苦痛を与える。優勝はどうでもいい]
[思考1:クロードを使いレザードを殺す]
[思考2:レザードがマーダーだと広める ]
[思考3:無差別な殺害はせずに、集団に入り込み内部崩壊や気持ちが揺れてる人間の後押しに重点を置き行動]
[思考4:レナの死をクロードが知った場合クロードをマーダーに仕立て上げる]
[現在位置:鷹野神社]
[備考1:※クロード、ルシオ、ルーファス、クリフの特徴を聞きました。
ガウェインとは彼らがマーダーだと広めるように約束しています。
名前は聞いていませんが、前持って人物情報を聞かされているので特定しています]
[備考2:上記のガウェインとの約束はクロードには果たしていません(嘘を教える事で自分が疑われるのを避けるため)
また、クロードと行動を共にしている間は保身を優先し、誤情報を広めるつもりはありません]
[備考3:パラライズボルトはジャケットの内ポケットに潜ませています]
[備考4:クロードの持ち物は基本的な物以外エターナルスフィアとスターガードだけだと思っています]
- 205 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/18(日) 03:47:53 ID:b5kovE+K0
- 投下終了です。
いろんなフラグをばら撒きたいから書いてみた反省はしているだが後悔は(ry
なんか微妙に見づらい気が…。
今まであまり意識した事なかったんですが、改行無しで1行にどれ位の文字数を入れれば良いでしょうか?
後修正箇所や指摘もお待ちしております。
- 206 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/18(日) 12:47:53 ID:/C6UA+vw0
- おおおおお、GJ!
クロードは人に出会えてよかったね、ジョーカーだけどw
しかしブレアもこれで安全圏から引き摺り下ろされたわけか・・・
はたしてどうなることやら
- 207 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/18(日) 19:46:22 ID:7kpTsF/l0
- >>193
期待しとります!
>>197
GJ!
クロード、一難去ってまた一難だな
会う人には誤解されるか、マーダーに出会うとか、もう散々だなw
そして鎌石村がまたすごい事になりそうな予感……
そういやVP勢でエネミーサーチ(もしくはそれが発する光)を完全に理解できるのはレナスだけかな?
- 208 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/19(月) 02:34:26 ID:1B6AEs1M0
- GJ
ブレア空気脱出か。
それにしてもクロードは移動する方向が変わりすぎだな。
改行に関しては環境によって変わるので具体的な文字数とかは答えられません。
長くなりすぎないよう切りの良い箇所や句読点で改行すればいいと思うよ。例えば、
>ここはトライエース(以下AAA)のキャラクターでバトルロワイヤルを行う企画であり、参加資格は全員にあるリレー小説というテーマを元に、皆さんで物語を作り上げていくというスレです。
という文を改行しろと言われた場合俺なら、
>ここはトライエース(以下AAA)のキャラクターでバトルロワイヤルを行う企画であり、
>参加資格は全員にあるリレー小説というテーマを元に、皆さんで物語を作り上げていくというスレです。
といった感じかな?
- 209 名前: ◆yHjSlOJmms :2008/05/20(火) 22:40:28 ID:ro+geJH60
- >>208アドバイスサンクスです。
、で改行はなんか違和感があったんですが問題なさそうですね。
>>207たしかエネミーサーチの発光体は装備者にしか見えないって事にしてたはずです。
いまいち覚えていませんが…。
- 210 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/20(火) 22:42:56 ID:vVk57Ztv0
- ベストの改行位置ははさんざ議論されたのに未だに結論の出てないところですからねえ
- 211 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/20(火) 23:12:27 ID:FKcH6HNG0
- >>209
そういえばそうだったかも……
他人に見えてたらアーチェも何かしらの反応したはずでしたね
他人に見えるか見えないかは別として、
説明書無しの状態で分かるのは誰なのか何となく気になっただけですので、
深く考えなくても問題ないです
- 212 名前: ◆MJv.H0/MJQ :2008/05/22(木) 23:15:41 ID:nBngm0NuO
- すみません、行き詰まったので予約破棄します。
何かほんとすみません。
- 213 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/23(金) 21:17:23 ID:4cz1mV260
- そうですか・・・残念です
気にしないでください、次回作に期待しておきますんでw
- 214 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/24(土) 01:19:09 ID:Y0mrUHtv0
- >>212ぶっちゃけあいつら難しいですよ。
繋ぎとしての話なら浮かんでくるんですがそこまで持っていくのが難しいですよね。
次回作に期待です。
- 215 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/24(土) 01:32:30 ID:e/zrDBH80
- あいつらを話に盛り込みたいのに時間の調整が出来ねえ・・・
む、むずいぜ・・・
- 216 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/24(土) 02:16:20 ID:txNlH6Yy0
- >>212
残念、次回に期待してる
どこも盛り上がりというか泥沼というか、展開が難しそうになってきたからなぁ
- 217 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/25(日) 17:36:48 ID:tpnY1vlW0
- 質問ッス
首輪の中身って爆薬と盗聴器その他はある程度自由に設定していいんですよね?
- 218 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/26(月) 02:11:19 ID:Uh/Sb2ilO
- 個人的には問題ないかと
ぶっちゃけ首輪ネタは事前に聞かなくても書きあげてから試験投下スレに落とせばいいと思いますよ
- 219 名前: ◆yHjSlOJmms :2008/05/26(月) 23:44:58 ID:Y3kjMRSn0
- >>218了解しました。
一先ず試作品のところに書き込んでおいたんで、ご意見やツッコミをお待ちしております。
一応ですが、ディアス、アルベル、ガブリエル、アリューゼ、プリシス、無人君を予約します。
余りにも指摘が多くて修正しきれなければ、一旦破棄しにきます。
- 220 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/26(月) 23:58:29 ID:Uh/Sb2ilO
- がんばれ!
AAAロワは基本的に暴投大歓迎だぜ><
- 221 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:10:21 ID:UgTI8kBd0
- 最近の◆yHjSlOJmms氏の頑張りは異常
俺ももっと書かねば…
- 222 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 00:52:00 ID:3gfImpH2O
- ネタがないわけじゃあないんだが、繋ぎなうえに更に密集しちゃうのがなぁ……
火種ぶち込むにしてもパートが減るのはあまりよろしくないだろうし
- 223 名前: ◆yHjSlOJmms :2008/05/28(水) 22:53:33 ID:Sz+VuSfW0
- >>221週休2日のおかげですねw
1日遊んでもまだ時間があるわけですから、たまってたネタを纏めて書いただけです。
そろそろネタが無くなりそうなので、また長い事ROMるとおもいます。
今のところ問題無しでよいのでしょうか?
取り敢えず、金曜深夜まで何もなければこっちに本投下します。
- 224 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/29(木) 09:11:20 ID:OJE3RydAO
- ふむ、私もあれでいいと思いますよ
つーかガブリエルどうなるんだw
- 225 名前: ◆yHjSlOJmms :2008/05/30(金) 23:38:19 ID:EHX/rdqN0
- 深夜って訳ではありませんが、眠いので寝る前に投下します。
- 226 名前:もの言わぬ友よ:2008/05/30(金) 23:40:17 ID:EHX/rdqN0
- 月光煌めく夜天の下、2人の男が対峙していた。
1人は蒼き孤高の剣士ディアス・フラック。
もう1人はある科学者が己の恨みを乗せて創り出した存在。天使の名を冠した狂信者ガブリエル。
かつて刃を交えた両雄は再びこの地で合間見える事となった。
引き抜いた剣を正眼に構えディアスはガブリエルを睨みつける。
相手の出方を伺いつつ戦略を組み立てていた。
自然と着目するところは相手の体のいたるところに見受けられる切り傷や焼け焦げた衣服。
(ここに来るまでに大規模な戦闘をしたようだな…。
こちらとて無理は出来るような状況ではないが付け入る隙はある)
特に接近戦を行う上での重要なファクターである武器を操る右腕の刺し傷と、
攻守共に必要になる機動力の要とも言える脚部の裂傷。
(速力でかく乱して、相手の右側を攻める。
あまり褒められた戦い方ではないが相手はあのガブリエルだ。それに…俺はまだ死ねない)
構えた剣の柄を強く握りこみ、弧を描くような動きで相手の右側に回りこむ。
その軌道の先を捉えるべく、ガブリエルはボーガンの銃口をこちらに向け射抜いてきた。
その矢を自らの振るう剣から発する衝撃波『空破斬』で叩き落す。
放った飛ぶ斬撃は矢をはじき返して尚、その勢いを殺すことなくガブリエルへと直進する。
だがその衝撃波は、更に強力な衝撃波に正面からぶつかるとかき消された。
ガブリエルの放つリング状の力場『ディバインウェーブ』の前にはこの程度の威力はそよ風程度に過ぎない。
周囲の瓦礫をなぎ払いながら徐々に広がる力場がディアスに迫った。
「ちっ」
舌打ちを一つ口から吐きつつ天目掛け跳躍する。
『朱雀衝撃波!』
己が纏う闘気を焔の炎と化し、南方を守護する四神『朱雀』を形作る。
そのまま一気にガブリエルに急降下。
その勢いはさながら水面の獲物を捕らえる猛禽の如き鋭さ。
空中にいる事で回避は出来ないが、たかが矢の1本。
自分の身体を捕らえる前に燃え尽きる。
ディアスはそう判断して回避と攻撃の両方を兼ねたこの技を選んだ。
ガブリエルはいつの間にか持ち替えていたハルバードで、
鳳凰を打ち抜くべく鋭い突きを放っていた。
キィインと鋭い金属同士がぶつかり合う音が鳴り響く。
- 227 名前:もの言わぬ友よ:2008/05/30(金) 23:41:54 ID:EHX/rdqN0
- 「くぅっ」
完全に勢いを殺されたディアスの身体が重力に引かれ地に落ちる。
その着地の隙を逃すガブリエルではない。
すぐさま再度『ディバインウェーブ』をディアスに見舞う。
剣を盾にして正面から受けるも、ディアスは吹き飛ばされた。
傷ついていながらも尚その威力は健在で、正面からハンマーで殴られたかの様な衝撃がディアスを襲う。
十数メートル離れた家屋の外壁に叩きつけられ血を吐き、一瞬意識がブラックアウトする。
朦朧とする頭を振り、霞む視界でガブリエルを捕らえると、
自分とガブリエルとの間に1本の矢があった。
その矢がディアスの心臓を射抜かんと闇夜を駆ける。
「ぐぁっ」
なんとか身体を反らして急所を避けたが、左肩に深々とそれは突き刺さった。
「そろそろ無駄な抵抗はやめてデリートされたらどうだ? そもそも貴様が戦う理由はなんだ?
そこまでして守りたいものなど今の貴様には無い筈だが…」
ボーガンに新たな矢を装填しながらガブリエルがディアスに語りかける。
「貴様も私と同じく愛おしい家族を奪われたのだろう…。そう、フィリアがいない世界に存在価値など無い。
貴様もそう思わないか? 父が、母が、妹がいなくなった世界を憎んでいたのではないか?」
ガブリエルはディアスの過去を知っていた。
情報収集等を司る4機の素体によりディアスをはじめ十賢者と戦った12人の過去は調査されていたのだ。
消せない傷跡である血塗られた過去を思い出しディアスの目が大きく見開かれる。
脳裏に過ぎ去りし日の悲劇がフラッシュバックし、次第に彼の瞳が曇っていく。
父が血飛沫を上げて崩れ落ちる姿。血溜まりに沈んでいく母の姿。
薄れ行く意識の中で垣間見た、妹に容赦なく突き立てられる刃の群れと断末魔の叫び。
そんな光景が鮮明に再生される。
彼はこの出来事がきっかけで故郷であるアーリア村を飛び出した。
その頃の彼だったら、このガブリエルの台詞を肯定したであろう。
このまま戦意を失っていたであろう。
だが、今の彼はそうする事はなかった。
彼はその絶望を乗り越え、あの戦いを最後まで生き抜いたのだから。
そして、その戦いの中で死別した家族と同じくらい大切なものを手に入れたのだ。
そんな彼らに恥じる戦いなんてしたくはない。
再び滾った闘志で手にした剣を握り締め、地面に突き刺し身体の支えにしながら立ち上がる。
地から引き抜いた剣を平に構えて、眼前の敵に射る様な眼光を放つ。
その彼の瞳には先程の暗雲など無かった。
- 228 名前:もの言わぬ友よ:2008/05/30(金) 23:43:00 ID:EHX/rdqN0
- 構えを取りながらもディアスの口が言葉を紡ぐ。
「確かに俺は惨劇を止めることの出来なかった己の無力さを呪い、
自分だけ生き残ってしまったという後悔の念に押しつぶされた」
そのまま真っ直ぐガブリエルに向かって駆け抜ける。
放たれた矢を僅かに身体そらし回避する。
電光石火の速さで間合いを詰め、どんな相手であろうと打ち貫く刺突『疾風突』だ。
ガブリエルは持ち替えた肢閃刀でその一撃を受け止める。
火花が2人の間で散る中ディアスは更に言葉を続けた。
「世界も憎み、力だけをただ闇雲に求め振りかざした。
それでも、俺の心は晴れなかった。一生このままでも良いとさえ思っていたっ」
肉迫したこの間合いでただにらみ合いを続けるような真似はしない。
ディアスは彼の冴える太刀捌きを象徴する剣技『夢幻』を見舞う。
「だが、そんな俺にレナが手を差し伸べてくれた!」
数合の打ち合いの末間合いが開かれた。
その間合いを詰めるべく跳躍しながらも彼の言葉は止まらない。
「クロードが傷つける以外の力の使い道を示してくれたっ!」
跳躍と共に一太刀、降下と共にもう一太刀。X字を剣閃で描く『クロスウェイブ』
彼の怒涛の攻めにガブリエルは防戦一方となる。
「皆が共に支え合うという事を教えてくれた!!」
着地と共に沈む身体のバネを利用して続けざまに剣を振り上げる。
軋む身体が悲鳴を上げるがそれでも彼は止まろうとしない。
放った『朧』が空と大地と共にガブリエルを断つ。
盾にしていた肢閃刀が砕け、ガブリエルの身体に一筋の傷跡を刻み込んだ。
「俺はあいつらがここからの脱出に絶望しない限り、
騎士となり守り抜くとっ! 剣となり道を切り拓くと誓ったっ!」
吹き飛ばされたガブリエルの身体が受身も取れずに地面に墜落する。
ディアスは振り上げた剣を上段に構え直し闘気を送り込む。
かつての惨劇の記憶から生まれる負の感情により編み出した剣技『ケイオスソード』
だが、いまやその一撃に暗い感情は込められていない。
仲間の道を切り拓くため己が手を汚す事も厭わない。そんな覚悟が込められた一撃だ。
「これが俺の戦う理由だっ!!」
ディアスの叫びと共に放たれた渾身の一撃がガブリエルに直撃した。
- 229 名前:もの言わぬ友よ:2008/05/30(金) 23:43:59 ID:EHX/rdqN0
- 「ハァ…ハァ…」
息をもつかせぬ連続攻撃。
負ったダメージが身体に残る中で繋げられるような連撃ではなかった。
(手応えは十分。しかしコレで仕留められていなければ…)
無常にもその懸念は現実となる。
1人の男の怨念を宿した狂天使はゆらりと立ち上がった。さながらその姿は紅い幽鬼の様。
「そうか…。それが貴様の理由か。だが、私もこの世の全てを消すまで止まれんのだっ!」
ディアスに負けじと自らの戦う目的と意志を乗せ『ディバインウェーブ』を撃つ。
回避する余力が無かったディアスはまともに食らってしまう。
「がはっ」
叩きつけられた小屋の窓をぶち破って床に転がり落ちる。
そんな彼に容赦なく追撃するガブリエル。
瞬時に詠唱を完成させ、印を切り呪紋を放った。
ディアスの仲間であるセリーヌ・ジュレスを葬った一撃『スターフレア』で小屋ごと吹き飛ばす。
ディアスは降り注ぐ星光と瓦礫に襲われながらもなんとかそれを耐え抜いた。
瓦礫を押し退け立ち上がった彼の心は未だ屈していない。
その証拠に剣を持つその手は力強く握られている。
「しぶとい奴だ…。だが、コレには耐えられまい」
それはガブリエルの最強の一撃『神曲』
彼の奏でる旋律は、例えるならディアスへの葬送曲。
(あれを食らったら流石に死ぬな…)
そんな事を考えていたディアスだが、引くことも臆する事もしなかった。
改めて剣を平に構えると月光をその背に浴び、大地を蹴る。
(俺はこのやり方しか知らない!)
距離は20メートル弱。とても『神曲』の発動を阻める距離ではないがそれでも駆け抜ける。
しかし距離を半場まで詰めたところで途端に足がもつれ、その場に倒れこんでしまう。
精神はまだ戦う事を辞めようとしていないが、身体の方が先に参ってしまったのだ。
そんな姿を見て勝利を確信し、笑みを浮かべるガブリエル。
そして、ガブリエルがその力を解放しようとしたその刹那。
小さな一つの影がディアスの前に躍り出た。
その小さな影がディアスを覆うように青白いドーム状の力場を展開する。
ガブリエルの『神曲』がもたらす破壊の光と青白いドームの光がぶつかり合い爆ぜる。
ディアスはこの小さな乱入者を知っていた。
「お前は、プリシスの…」
彼の前に現れたのは、少し前にガブリエルの前から姿を消していた無人君である。
無人君は自らに備えられた機能『バーリア』を展開し、ディアスの事を守ったのであった。
小さな身体に秘めた力を目の当たりにしたディアスは、限界を迎えていた己の身体を奮い立たせる。
(そう…。1人で勝てないのなら、仲間と共に戦えばいいんだ!)
13人目のメンバーといえる無人君の作ったチャンスを逃す事などディアスには出来ない。
「おおおおおっ!」
雄叫びを上げ立ち上がると、ガブリエル目掛けて残りの距離を駆け出した。
ガブリエルが懐からカードの様な物を出して掲げていたが、そんなもの構うものか。
全身を矢としてガブリエルに迫り、その手に持つ剣を深々とガブリエルの身体に突き刺す。
勢いはそのままに、二つの身体がもつれ合うように大地を転がった。
- 230 名前:もの言わぬ友よ:2008/05/30(金) 23:45:05 ID:EHX/rdqN0
- 地面に仰向けになって倒れているディアスを覗き込む無人君。
「ありがとう無人君。お前のおかげだ…」
ディアスはそんな小さな友人に感謝の意を伝える。
無人君はコクリと頷くと一つの方向を向いて静止した。
続けてディアスのマントの裾をクイックイッと引っ張り始める。
「そっちに何かあるのか?」
上体を起こし、無人君の見つめる方向に視線を送る。
(そう言えば、あの方向にはアルベルの奴が行ったきりだったな)
呼吸を整える事ができたディアスは立ち上がると、その方向に向かって歩き始めた。
トコトコとそんなディアスを案内するように無人君も小走りを始める。
その歩みの先には彼の製作者プリシスがいる事を無人君はわかっていた。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
ディアスが去ってしばたくたった後、一つの影がムクリと起き上がった。
(まさかこの私があの下賎な魔物の様に、死んだ振りをしてやり過ごす事になろうとは)
身に付けた衣装こそボロボロであるが、その身体からは傷が消えてなくなっていた。
ガブリエルはディアスが突っ込んでくる間際にセリーヌのデイパックより手に入れた『リヴァイバルカード』を使っていたのである。
このアイテムは使った後1回だけ復活を遂げる事が出来るようになる代物であった。
何故セリーヌがこのアイテムをガブリエル戦で使わなかったかというと、
このアイテムの対象者は使用者だけであったことが原因だった。そうなると自分しか復活できない。
アリーシャには手渡す暇など無かったし、ジェストーナも途中まで死んでいたものだと思っていた。
加えて自分が1回だけ蘇生したところで、前衛のいない状況では結果は変わらないと判断していたのであろう。
その結果『リヴァイバルカード』は使われる事無くガブリエルの手に渡ってしまったのだ。
(しかし、この屈辱すぐにでも晴らしてやるぞ…)
放置されていたデイパックを拾い上げ、中からハルバードを引き抜くと一人と一体が向かった方向へ歩き出した。
- 231 名前:もの言わぬ友よ:2008/05/30(金) 23:46:48 ID:EHX/rdqN0
- ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
「見逃してやらなくて正解だった……死ねッ! クソ虫ッ!!」
怒りに燃える瞳でプリシスと呼ばれた少女へと迫る。
そんなアルベルの前にアリューゼが立ちはだかる。
「邪魔だ!」
叫びと共に剣を横薙ぎに払う。
所詮相手の獲物は鉄パイプ。
それもフェイト愛用の鉄パイプみたいにガチガチにカスタマイズされている様な代物でもなさそうである。
だから、この一太刀で相手の胴と腰をお別れさせてやれるはずだった。
しかし、アリューゼも数々の武勲を挙げた戦士である。
アリューゼは鉄パイプの腹でその斬撃を受けようとせず、
相手の剣閃に対して平行に手にした獲物を構えると、僅かに角度をつけた。
アルベルの剣閃は、その鉄パイプの表面を滑り狙いから反れてしまう。
横薙ぎに振るった一撃が反れた今のアルベルは、上体が開き無防備になっていた。
その無防備な所に、身の丈以上の大剣を自在に振るうアリューゼの豪腕が打ち込まれる。
「ぐぅ」
やや前屈みになったアルベルの横っ面に鉄パイプを思いっきり叩き込む。
ぶっ飛ばされたアルベルだったが、すぐさま起き上がり未だに燃え滾っている怒りの炎を二人に向ける。
「そうだったな! テメエもグルだったなっ! だったら纏めて潰してやるよ! クソ虫共っ! 『無限空破斬!』」
ディアスと同じく我流で己の剣技を磨いてきた彼も、剣を振るという基本的な動作を一つの技へと昇華させていた。
一見がむしゃらに剣を振っているようだが、地を疾る剣圧は確実に二人を捉えていた。
アリューゼは鉄パイプで同量同圧の風圧を作り出し衝撃波を相殺させた。
プリシスも身軽にステップを踏み、それらを回避。
どうしても避けられない物は『マグナムパンチ』の文字通り鉄拳で叩き落とす。
このままでは互いに体力を消耗するだけで泥仕合になる。
そうなれば人数において不利な自分が押し切られると判断したアルベルは、戦力の温存など考えなかった。
『無限空破斬』を飛ばしながらも、右手には次の技のために闘気を込め始めていた。
標的2人が『空破斬』迎撃のために足を止めた瞬間に『吼竜破』を撃ち出す。
彼の闘気が作り出すのは6匹の黒龍。
内の4匹をアリューゼに2匹をプリシスへと嗾ける。
更にアルベルは追撃をかけるべく剣を持ち直し飛び掛かる。
向かう先は同じ戦場を共に戦った仲間の仇プリシス。
2匹の黒龍の対応に追われていたプリシスにアルベルの白刃が迫る。
- 232 名前:もの言わぬ友よ:2008/05/30(金) 23:48:16 ID:EHX/rdqN0
- ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
牙を剥く4匹の邪龍を潰していたアリューゼの視界にプリシスへと飛び掛かるアルベルの姿が映った。
このままではプリシスがヤバイと判断を下したアリューゼは、
まだ残っていた3匹の黒龍を無視してプリシスの方へと駆け寄る。
1匹が左脇腹に喰らい付いて来たがそれも無視。
2人の間に割り込み自らの身体を盾にする。
「ぐああぁぁっ」
背中を切り裂かれたアリューゼに焼けるような痛みが走り、傷口から鮮血が吹き出した。
「アリューゼっ!」
かばった少女が心配そうな瞳をこちらに投げかけてきた。
身体を両断されなかっただけましだが、かといって軽視できるような負傷でもない。
苦し紛れに振るった鉄パイプはアルベルに当たることなく空を切った。
飛び退いたアルベルが剣を振り、刃先についた血を払う。
「随分とそのガキにご執心だな! このロリコン野郎!」
挑発的な物言いのアルベルには構わずプリシスを自分の背後に下がらせる。
逆転の手は無い事は無いが、この相手に通用するかどうか。
奥義であり自分の切り札『ファイナリティブラスト』
不可避の猛進から放つ斬撃と爆撃の二重奏。
重量級のアリューゼの突進を正面から受け止める事は難しく、
どこまでも追いすがる猛追からは誰も逃れられない。
だが今対峙している男はその突進を防ぐ術を持っている。
先程見せた不死者の様な者を障壁とする妙な技。
あれを出されたら奥義が切り札には成り得ない。
しかし、このままでは押し切られるのも時間の問題だ。
(一か八か…仕掛けるか)
腰を落とし、足を踏ん張り闘気を解放する。
解き放つ力は暴力的な風を巻き起こし周囲の木の葉をざわめかせた。
そんなアリューゼの闘気に触発されたアルベルはニヤリと口元を歪め剣を構える。
「おもしれぇ! ルシファーの言いなりになるようなクソ虫にしては悪くねえ。
来いよ! 叩き潰してやんぜ!」
回避するような無粋な真似をする気など無かった。正面から受け止め相手を粉砕する心積もりだ。
しばしのにらみ合いの後、同時に飛びかかろうとした時。
「待て!」
「「ディアス!?」」
彼を知るアルベルとプリシスが異口同音に新たに現れた人間の名を呼ぶ。
- 233 名前:もの言わぬ友よ:2008/05/30(金) 23:49:42 ID:EHX/rdqN0
- ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
無人君に連れられた先は戦場となっていた。
この場にいる人間を見渡す。
見知らぬ男とプリシスに、対峙する形でアルベルが立っている。
「アルベル。コレはどういうことだ? 相手がプリシスだったら少し待てと言ったはずだ」
今まさに飛び掛からんとしていたアルベルが不機嫌そうにその問いに応えた。
「ああん!? しっかり見極めたぜ。このクソ虫どもは殺し合いに乗っていやがる。
その証拠にネルが使ってた武器をあのガキが持ってやがる。
大方殺して奪い取ったんだろうよ」
その答えを聞いて驚いたのはプリシスだった。
ジャックから聞かされていた『セブンスレイ』の持ち主の名前を口にするアルベル。
狂戦士と化したアシュトンと戦い、命を落としたネルの名前がアルベルから出てきたのだから無理もない。
しかも、こっちが殺し合いに乗っているなんて言っている。
「ちょっと待ってよ! 私達はそんなつもりなんて無いよ!」
どうやら互いの勘違いの果てに、脱出を狙う者同士で殺し合いをしていたらしい。
なんとか自分達にかけられた嫌疑を晴らそうと声を荒げる。
「けっ! 旗色が悪くなったら今度は懐柔策か? 本当にどうしよもねえクソ虫だな!
ディアス。こんな奴らの言う事なんざ信用できねえ。 殺るぞ」
「待てと言っただろ! よく考えろ。
二人でまとまって行動している時点で殺し合いに乗っていない可能性の方が高い。
勝ち抜けるのは1人だけというルールだからな」
「互いに利用しあってんだろ? お前が手を出さねえんなら俺1人でも殺るぜ」
「だったら、ここまでボロボロになってでも手を組んでいる必要性が無いだろうが。
どちらかが戦ってる隙に逃げればいいはずだ。
それをしないという事は互いに協力し合っている証拠に他ならない。そうだな、プリシス?」
「うん! そうだよ。この武器は少し前にネルさんと一緒に戦っていた人から貰ったんだ!
その人達アシュトンと戦って、いっぱい人が死んで…それで私…私…」
涙を浮かべながら次々と言葉を繋いでいくプリシスの頭に、ディアスがポンッと優しく手を乗っける。
「落ち着けプリシス。互いの情報を交換する必要もあるだろう。
それにお前に渡したいものがある」
そう言うと無人君を抱き上げプリシスに手渡した。
途端にプリシスの表情が明るくなる。故郷にいる頃から共にいた友人と再会できた事に喜びを隠せない。
「無人君!! ディアスが持っていたの?」
「いや、俺もさっき会ったばっかだ。だが無人君が俺をここまで連れてきてくれた。
とにかくあの家で落ち着こう。行くぞアルベル」
「そだねっ、行こっアリューゼ」
完全に蚊帳の外だった二人を伴って、近くの家屋に入っていった。
- 234 名前:もの言わぬ友よ:2008/05/30(金) 23:51:34 ID:EHX/rdqN0
- 「そうか…そういう経緯でアシュトンは…」
一通り事情を聞いたディアスは少し憂鬱そうに言葉を漏らした。
「私そんなつもり無かったんだけど、今考えるとやっぱりあの声はアシュトンの声だったと思う。
どうしよう…私の何気ない言葉の所為で関係ない人が何人も…」
シュンと気落ちした様子のプリシスの肩に優しく手を置くアリューゼ。
「あの場合仕方がないだろ。なぜか知らないが姿が見えなかったのだからな」
「んなトチ狂ったクソ虫の事なんざ関係ねえ! それよりもディアス。
このガキが持ってる技術がどうとか言っていたが当てになるのか?」
先の戦闘の応急処置を終えたアルベルは、ディアスが出がけにそんな事を言っていた事を思い出して彼に訪ねた。
「あぁ、だがその前に…」
ディアスは荷物から紙とペンを取り出すと文字を書き始めた。
『ルシファーは首輪の爆発条件に自分に逆らおうとした時と言っていた。
現に目の前でルシフェルの首は吹き飛ばされた。
ここでも下手な言動をすれば俺達もああなりかねない』
「だったらどうしようも出来ねえじゃねえか!」
アルベルがイラついた様子で叫びながら壁を殴る。
「落ち着け。最後まで聞いてからにしろ。この単細胞」
そんなアルベルの様子を見てアリューゼが彼を咎める。
先の戦闘のわだかまりが残っているのかアリューゼの口調は攻撃的だ。
普段のアルベルならここで「表に出ろ」といって食って掛かっただろうが、
流石に現状を把握しているのか、チッと一つ舌打ちをしてドカリと座り込む。
自分に全員の視線が戻ったことを確認して新たな紙を全員に見せる。
『ルシファーがどのような手段で俺たちが逆らったかどうかと判断していると思う?
俺は俺達の言葉を盗み聞くような機械か、姿を記録する装置で監視しているに違いないと踏んでるのだが』
『そんなのありそうもないよ? どんなに技術が進んでいても
そんなものをやたらめったら配置してたら、集まる情報を処理なんて出来ないよ』
とプリシス。
『いや、俺達の監視目的なら最も適切なものが全員に取り付けられているはずだ』
そう書いた紙を掲げてディアスは自分の首輪を指差した。
『これにそれらの機械を備え付ければ参加者全員を監視できるはずだ』
そこでアリューゼが割って入る。
『推論を並べているだけじゃ埒が開かん。調べてみようぜ』
紙と共にネルの遺体から回収した首輪をその場にいる全員に見せた。
『んじゃ、ちょっと待ってて。ぱぱっと調べちゃうからさ』
腕まくりをしながらプリシスは荷物からドルメラ工具セットを取り出すと、首輪の解体を始めた。
- 235 名前:もの言わぬ友よ:2008/05/30(金) 23:52:51 ID:EHX/rdqN0
- 作業はものの十数分で終わった。
中身から出て来たものは4つだった。
液状爆薬のシリンダー。
そのシリンダーは首輪と同様にリングの型をしており比較的柔軟な素材で出来ていた。
中には2種類の液体。それらを隔てるように薄い隔壁が設けられている。
無理やり首輪を引っ張れば隔壁がひび割れその隙間から2つの液体が混ざり合い化学反応を起こし爆発を起こす。
但し、この隔壁は衝撃に対してはかなりの強度を誇っていて、戦闘中に万が一当たっても暴発はしそうに無い。
逆に形状変化には大変脆く、引っ張ったり捻ろうとすると簡単にひびが入る。
爆弾に普通の火薬を使わなかったのは、湿気てしまい不発になるかもしれないという配慮だろう。
そしてそのシリンダーから伸びる8本の回路に接続されているのは小さな紅い宝玉。
それには紋章力のようなものが込められていてどんな役割をしているかわからなかったが、
そこから延びる配線から察するに首輪の制御を司る物に違いない。
8本の線はおそらく製作者が首輪を作るときに間違って起動した場合に
解除するために設けたコードが1本と、それに気付いた者を欺くためのダミー用の配線7本。
上手く当たりを切ることができれば爆弾は無力化できるかもしれないが、
1/8のギャンブルを命がけでやる気にはなれなかった。
その宝玉からは別の配線が伸び、その先端は送受信機と拾音装置に繋がっていて、ディアスの推測を裏付けた。
科学技術の結晶ともいえる3つの部品マイクと、送受信機と、爆弾。
コレだけ小型で高性能な物をプリシスは留学先の地球でも見たことはなかった。
それらを紋章力による信号で制御。
簡単に述べるとそのような構成をしていた。
- 236 名前:もの言わぬ友よ:2008/05/30(金) 23:57:35 ID:EHX/rdqN0
- ばらされた部品を眺め終えたディアスがペンを走らせる。
『どうやら盗聴だけで、盗撮の心配はこの首輪に関しては無さそうだな』
『で? コイツは外せるのか?』
アルベルが殴り書いたような字で疑問をぶつけてきた。
『ん〜、今のままでは無理だね。紋章力に関しては私も専門外だし、どんな信号が送られてるかわからない。
それにまだ私達が気付いていない機能があるかもしれないから下手にいじれない。
紋章についての専門知識を持った人にこの宝石を見てもらって、発せられる信号を解析。
その後はその信号を誤魔化すための装置を横から接続して制御を乗っ取る。
続けて爆弾に繋がった回路全部に解除用の信号を流して切断。
最後に爆薬のシリンダー片側に穴を開けて1種類だけ液体を抜き取る。
その後は首輪を無理やり取っても大丈夫だよ。
でも、今は紋章術の専門家もいないし、回線乗っ取り用の機械も無いからお手上げ』
『機械ならなんでもいいのか?』
ディアスもプリシスに質問をぶつける。門外漢の彼にはこの程度の質問しか出来ない。
『この家にあるような家電製品じゃダメ。もっと高性能な演算処理ができる機械が必要だよ』
『んじゃ、機械だけなら目星はあるじゃねえか。コイツをばらそうぜ』
そう書かれた紙と共に無人君を指差すアルベル。
彼も未開惑星出身者だが、フェイトたちと共に行動していた為、無人君には高度なCPUが積まれているのは容易に想像できた。
そんな彼に青い金属の塊、即ち無人君が剛速球で投げつけられる。
顔面でその直撃を受けたアルベルはもんどりをうってぶっ飛ばされた。
「ダメ! 無人君は私の大事な友達なんだからそんな事出来るわけないでしょ!」
(言ってる事とやってる事が違うだろうが…)
やれやれといった態度でアリューゼが肩をすくめた。
一つ咳払いをしてディアスが言葉を発する。
「紋章術の専門家なら心当たりがある。急いでいたから合流地点を決めれなかったが、
レオン達にはI-8に向かってもらっている。合流するぞ」
ディアスが促すとプリシスも荷物をまとめ立ち上がる。
それと共にアリューゼも立ち上がった。
「まぁ、あの青髪の女が起きるまでの契約だったしな。ついでにまだ報酬を貰ってねぇ」
アルベルも嫌々と言った様子で彼らの後に続く。
- 237 名前:もの言わぬ友よ:2008/05/31(土) 00:04:31 ID:QRWimdCj0
- ここで先頭を行くデイアスが外の異変に気付いた。
人影が一つ、周囲を探るようにうろついているのだ。
目を凝らしてその人影の正体を探る。
背後のプリシスもその誰かの正体を見極め2人はその人物の名前を口にした。
「「ガブリエルっ!?」」
前の二人が止まる事で後ろがつっかえる。
「どうした?」
アリューゼが身を屈める2人に尋ねた。一応前の2人に習って彼とアルベルも壁際に身を屈める。
「敵だ」
「間違いないのか?」
短く応えたディアスにアリューゼが更に問いかける。
「ああ、あいつには説得も無意味だし、この島の参加者を皆殺しにするつもりだ。
先程確かに倒したはずだが…」
「ならどうする? このままやり過ごすのか? それともぶっ倒して行くのか?」
アルベルの質問を聞きつつ、考えをまとめながらディアスはガブリエルを観察する。
先程奴の身体を貫いた傷や、全身に見受けられた傷跡が無くなっている。
どんな手品を使ったかはわからない。
数の上ではこちらの方が有利だが、全員それぞれ疲弊している。
ガブリエルからダメージが完全に消えているか判断しかねるが、先程と違って奴に全力を出されたら勝算は薄い。
ここは首輪解除のキーパーソンであるプリシスと護衛に誰かをつけて逃げてもらうか。
そうまとめた後に口を開こうとしたとき。プリシスが先に言葉を発した。
「私に手があるんだ。少し時間を稼いでくれないかな?
殺し合いに乗ったガブリエルを放って置くともっとたくさんの人が死んじゃうよ。
私達で力を合わせてあいつを倒そうよ!」
(確かにプリシスの言う事にも一理ある…。先程二手に分かれてしまったからこそ、
首輪の解析が頓挫してしまったわけだし、まとまって行動していた方が良いかもな)
「わかった俺が前に出よう。おそらく奴は俺を探しているだろうし、俺以外の存在を知らないはずだからな。
アルベル、お前は伏兵として伏せていてくれ。
俺がやられそうになるか、プリシスの準備が完了した時に隙を作る役目を担って貰う。
アリューゼ、お前の傷では戦うのも厳しいだろうから、プリシスの護衛と手伝いに専念してくれ。
プリシス、お前は首輪解除の鍵を握っている。
約束してくれ、俺達が時間稼ぎに失敗したり、お前の考えていた手が通用しなかったら撤退してくれ」
ディアスの指示にアルベル、アリューゼは頷くがプリシスだけは抗議の声を上げる。
「そんなっ! 私だけ逃げろって? 冗談でしょ?それに1人だけ前に出るって…」
しかしディアスの真剣な面持ちから、彼が冗談で言っているのではないことはプリシスにも判っていた。
「奴の『ディバインウェーブ』の前には数で攻める事に余り意味は無い。
それに、いいか? 俺の知る限りこいつをどうにかできる人間はお前ぐらいしかいない。
そんなお前が死んだら最悪の場合、最後の一人まで殺し合いを続けるしか手はなくなる。
それだけは避けなければならない。だから…わかってくれ!」
プリシスは目を伏せながらもディアスの言葉に頷いて見せた。
「よし、俺が先に出て奴の注意を引きつける。
アルベル、お前は後ろの窓から出てガブリエルの背後に回れ。
アリューゼ、プリシスを任せた。プリシス、お前を信じている。
だから、お前も俺を信じろ。必ず時間は稼いで見せるし、俺は死なん!」
そう言うとディアスは扉を蹴破りガブリエルの前に躍り出た。
- 238 名前:もの言わぬ友よ:2008/05/31(土) 00:09:50 ID:QRWimdCj0
- ディアスの姿を見つけたガブリエルはニヤリと口元を歪める。
手にしたハルバードを両手で構えディアスを睨みつける。
(やはり、さっきまで使ってなかった右腕を使っているという事は傷が癒えているのだな)
あくまで自分の役目は時間稼ぎ。正面からガブリエルと対峙しながら剣を構えつつ口を開く。
「何故生きている?」
「フンっ、当然の疑問だな。なに、貴様の知り合いセリーヌ・ジュレスを葬った時の戦利品に一度だけ死を逃れる効力の支給品があってな。
それを使わせてもらったに過ぎない」
仲間の名前を耳にしたディアスの身体が怒りで打ち震えた。
「セリーヌを? 貴様が?」
「そうだ…。無意味にも私に挑みかかり、そして死んだ。虫けらのようにな」
その言葉を聞いてディアスの中で何かがキレた。
怒りと共に振り下ろした剣で『空破斬』と『弧月閃』を放ち、間髪いれずに自分もガブリエルに肉迫する。
放たれた『ディバインウェーブ』に初撃がかき消された。
「はあああぁぁぁっ」
広がる力場を飛び越え、雄叫びと共にガブリエルに飛び掛かるディアス。
金属の激しい衝突音が闇夜に吸い込まれる。
斬り結んだ2人が互いの持つ獲物越しににらみ合った。
「一つ…、言い忘れた。貴様もあの女の様にここで無意味に果てるのだ」
「貴様ぁぁぁっ!」
剣を力任せに弾き、間合いを広げる。
そのディアスにガブリエルが戦斧の槍部分による突き、斧部分による叩きつけ、石突による薙ぎの3連撃を放つ。
突きを交わし、殴打を流して薙ぎ払いを剣で受け止めるディアス。
懐より取り出した短刀『竜穿』をガブリエルの額目掛けて投擲。
こめかみを霞めて短刀は彼方へと飛んでいった。
怯んだその隙に懐に入り込むとディアスは太刀を浴びせる。
しかし、その太刀はガブリエルには届く前に、広がる力場で遮られてしまう。
吹き飛ばされたディアスが空中で身を翻すと着地した。
再度離れた間合いで、にらみ合いが始まる。
- 239 名前:もの言わぬ友よ:2008/05/31(土) 00:11:09 ID:QRWimdCj0
- ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
戦端が切られた中プリシスは自分の考えた手を実行に移していた。
無人君を『無人君スーパービーム』が放てる状態に変形させると、砲身にエネルギーを充填し始めた。
様々な計器に目をやりつつマニュアルで照準の制御を行う。
(ダメだ…。内部のエネルギーが減っている。だったら!)
無人君の背後のバッテリーボックスを開き2本のコードを伸ばす。
伸ばしたコードを『セブンスレイ』のエネルギーカートリッジにつなげて無人君にエネルギーを送り込む。
だがそれでも予定の7割程度しかチャージされない。
(この家には電気が通じてないし…)
何か代用の利きそうな物を探し求めるプリシス。
脱衣所にあった無駄にデカイ洗濯機、軒先にある後輪のパンクした自転車、そしてアリューゼ。
彼女の頭の上に豆電球が灯った。
「アリューゼっ、お願いがあるんだ」
プリシスは無人君を待機状態にしてその手を忙しなく動かしていた。
洗濯機をばらしモーターを取り出すと簡易な発電機に改造する。
その回転軸と自転車の車輪の回転軸を一本の棒でつなげると、発電機から伸びたコードを無人君に接続した。
ここまで所要時間僅かに5分。
「これ漕いで!」
?マークを浮かべるアリューゼにこの急場凌ぎの装置の説明をする。
今無人君のエネルギーが足りなくて、如何にかして電力を送り込まないとならない事。
この自転車を漕ぐと電力が発生する事。
自分は無人君のコントロールをしなければならない事。
取り敢えず自分はそれを漕げば良い事だけは理解したアリューゼは自転車に跨った。
額に汗を浮かべてアリューゼが自転車のペダルを漕ぎ続ける。
もちろん自転車のギアはトップギア。そのペダルは尋常じゃないくらいに重い。
「アリューゼ、頑張って! 後もう少し…」
無人君に備わった計器の内の一つ。内部エネルギーを示す計器は85%を指し示していた。
- 240 名前:もの言わぬ友よ:2008/05/31(土) 00:13:24 ID:QRWimdCj0
- ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
(どうにもこうやってコソコソするのは性に合わねえ)
裏手に回っていたアルベルは唇を噛みながら機会を伺っていた。
現在の戦況は5分5分といったところか。
だが、その拮抗も長くは続かない事を彼は読み取っていた。
戦闘開始から出し惜しみもなく大技を放つディアスに対して、対峙しているガブリエルと呼ばれた男はまだ余力を残している。
何度目かになる鍔迫り合いと共に火花が散った。
次第にディアスの息が上がってきているのがここからでもわかる。
(そろそろ援護しねえとまずいか?)
だが、相手はとてつもなく強い。
奇襲をかければ隙を作る事は出来るだろうが、ここで援護に出たら奇襲どころではない。
正面から遣り合って隙を作れるかは微妙なところだ。
しかし、このままでは間違いなくディアスは押し負ける。
袈裟懸けに斬りかかった斬撃が空を切る。
生じた隙にガブリエルの回し蹴りがきまり蹴り飛ばされた。
立ち上がろうとしたディアスの膝が折れる。
止めといわんばかりにそんな彼に迫るガブリエル。
「チィ!」
身を隠していた物影よりアルベルは飛び出すと、ディアスが体勢を整える為の時間を稼ぐべく『空破斬』を放つ。
その攻撃を回避するガブリエル。
アルベルは2人の間に割り込んで、ディアスに悪態をつく。
「手間取ってるようじゃねえか?」
「お前! 身を潜めていろと!」
「けっ! 死にそうだったのはどこのどいつだ?」
「…」
ディアスは返す言葉も無く黙り込んだ。
「オラ! 立てよ! それとも、もう戦えねえのか? だったら下がってろ!
いい加減暴れたくてウズウズしていた所だ!」
威勢の良い叫びと共に一歩前に踏み出すアルベル。
「フッ、まだ俺はやれるさ…。それに、お前だけではあいつには勝てん!」
2人の我流剣士がそれぞれの獲物を握り締め、ガブリエルに同時に斬りかかった。
- 241 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 00:21:36 ID:y3Yri5QV0
- 援護!
- 242 名前:もの言わぬ友よ:2008/05/31(土) 00:22:09 ID:QRWimdCj0
- ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
(今宵は乱入者の多い日だ)
ガブリエルは心の中で毒づいた。
迫る2筋の白刃を掻い潜り、反撃として『ディバインウェーブ』を見舞う。
2人とも剣を盾にして衝撃波を受け止める。
「「『空破斬』」」
異口同音の咆哮と共に同じ技を放つ。
2つの衝撃波は互いに混ざり合うと巨大な空圧の柱となりガブリエルに迫った。
(流石にこれは『ディバインウェーブ』でも相殺仕切れんな)
飛び退きこの攻撃を交わした所にアルベルから脳天目掛けて振り卸しが繰り出されていた。
ハルバードでその一撃を受け止め、掌打を鳩尾に決める。
「がはっ」
血を吐き、目を見開くアルベルへの追撃はディアスによって阻まれた。
「ちっ」
そんな2人を諸共『ディバインウェーブ』で吹き飛ばす。
ブロック塀に叩きつけた二人をただ眺めるようなガブリエルではない。
『スターフレア』
解放した魔力光が新たに瓦礫の山を築き上げる。
だが、ここで立ち昇る煙に視界が塞がれてしまった。これでは、仕留められたかどうかわからない。
手持ちの道具に暗視スコープがあるのを思い出しそれを装着する。
瓦礫の中に人影が2つ立ち上がった。
(まだ抗うのか…。だが何度立ち上がっても同じ事だ)
ボーガンに新たな矢を装填しながらその2人に歩み寄る。
そんな中、後方で小さな爆発音が木霊した。
その方向を見ると暗視スコープ越しに巨大な人型の様な者と、その上に跨る小さな人影。
加えてその横で何かに座ってる人影が見えた。
- 243 名前:もの言わぬ友よ:2008/05/31(土) 00:24:03 ID:QRWimdCj0
- ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
その爆発音を聞いて顔を見合わせるアルベルとディアス。
あれはプリシスたちの準備ができた事を知らせる合図で、解体した首輪の爆薬を破裂させたものである。
「どうする? 準備は出来たらしいが隙を作れなきゃ話にならねえぞ」
小声でディアスに語りかけるアルベル。
ディアスは暫しの黙考の後に
「俺に手がある」
険しい顔つきでディアスは言葉を発した。
「お前? 正気か?」
ディアスの策を聞いてアルベルは彼にしては珍しく素っ頓狂な声を上げた。
「あぁ、頼んだぞ」
ディアスはそう言い残し一直線にガブリエルの方へと駆け出した。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
「馬鹿の一つ覚えのような突撃。いつまでもまかり通ると思うか?」
『ディバインウェーブ』を放ちディアスを吹き飛ばさんとする。
それをディアスは正面から受けても尚、弾丸のような勢いで突っ込む。
受けた衝撃で血を吐き、左腕があらぬ方向に曲がろうとその勢いは止まらない。
「玉砕覚悟か…。ならば!」
ハルバードを上段に構えてガブリエルは彼を迎え撃つ。
既に2回も見ているディアスの『疾風突』如何に疾い攻撃でもタイミングは掴めている。
間合いに入り次第両断する腹積もりだ。
そんな彼がここに来て更なる加速をした。
ディアスはその背にアルベルの『空破斬』を受け推進力を得たのだ。
タイミングを外されたガブリエルの脇腹にディアスの剣が再度突き刺さる。
だが、ガブリエルも黙って刺されるようなことは無い。
カウンター気味に放った拳打でディアスの胸を貫いていた。
その場に崩れ落ちながらディアスは最後の叫びを上げた。
「撃てー! プリシスー!!」
只ならぬ気配を感じたガブリエルは先程発見した人型物体上の人影にボーガンを射掛けた。
- 244 名前:もの言わぬ友よ:2008/05/31(土) 00:26:19 ID:QRWimdCj0
- ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
耳に入ってきたディアスの叫び声。
(何言ってるの? ディアスがそこにいたら巻き込まれちゃうじゃない! 早く逃げてよ!)
ビームの照準器越しではよくわからない。無人君の背後から顔を出して二人の姿を覗き込む。
そんなプリシスの眉間目掛けて夜風を切り裂きボーガンの矢が迫った。
「えっ?」
次の瞬間に彼女の眼前に大きな背中が現れ、迫る矢の盾となった。
「ア…リュー…ゼ?」
「無事…か? プリシス…?」
肩越しにこちらを見て語りかけるアリューゼ。
その瞳からは徐々に力が抜けてきている。
「どう…して?」
「なぁに…、もう目の前で…お前みたいなガキに死なれるのが…嫌なだけ…」
アリューゼはプリシスの瞳に浮かぶ涙を、無骨で大きなその指で優しく拭った。
「聞け…。ディアスって野郎は…死んだ…。このまま躊躇っていたら全滅だ…。
だから、奴を撃つんだ…。それが、あいつの願いだ…」
リング状に広がる力場が2人に襲い掛かるもアリューゼはその身を盾にし、プリシスを守る。
プリシスは一度その大きな背中に向かって頷くと、無人君の銃座に着いた。
そんなプリシスの後姿を眺めながらアリューゼの意識は徐々に薄れていった。
(こんな…ガキ庇って死ぬなんてな…。いつから俺はこんな…)
死して尚、大きなこの男の身体は地に伏することはなかった。
- 245 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 00:27:26 ID:y3Yri5QV0
- 更に支援!
- 246 名前:もの言わぬ友よ:2008/05/31(土) 00:28:59 ID:QRWimdCj0
- 無人君の銃座でガブリエルを照準器の十字の中に収めた。
ディアス諸共撃たねばならない事に躊躇いが無いといえば嘘になる。
僅かに震える指先が引き金にかかる。
(でも、ここで撃たなきゃ、ディアスとアリューゼが無駄死にになっちゃう…。だから…!)
「いっけぇぇぇっ! 『無人君スーパービーム』」
引き絞ったトリガーと共に放たれた蒼白いエネルギーの奔流。
対抗のためにガブリエルが『神曲』を放つがそれでも、放たれた粒子は周囲の大気を焼きながらガブリエルに襲い掛かる。
命中。そして爆発。
濛々と立ち昇る煙を前に立ち尽くすプリシス。
そう、これでガブリエルを倒せるはずだった。倒せるはずだったのに。
奴はそこに立っていた。
ガブリエルはディアスの死体をアリーシャと同様、盾にして直撃を間逃れていたのだ。
「そんな…」
ガブリエルの前にあるディアスだったモノ。
その姿は見るも無残に焼け爛れていて、背中に至っては完全に炭化していた。
ディアスの遺体はそのような姿になろうと剣を離す事は無かったが、
その手をガブリエルは強靭な握力で握りつぶし、ディアスの遺体から剣を奪い取った。
その後は用済みと言わんばかりに無造作に瓦礫の中に投げ捨てる。
「このぉっ、クソ虫がぁぁぁっ!!」
その光景を目の当たりにして激昂するアルベル。
「うわあああぁぁぁっ!」
半狂乱になったプリシスが『マグナムパンチ』のコントローラーを握り締める。
2人が同時にガブリエルに飛び掛かるが、彼の放つ衝撃波がそれを阻み2人を弾き飛ばす。
「ちっ、これでは…また、傷だらけではないか…。
まぁ、良いだろう。後は貴様とあの触覚を生やしたプリン頭だ」
ガブリエルはディアスの死体から奪った剣を握り締め、プリシスの方に向かって歩き始めた。
しかし彼の歩みは巨大な何かに羽交い絞めされ、止まる事となった。
顔を上げたプリシスがガブリエルの背後の者の名前を叫ぶ。
「無人君!!」
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
ガブリエルはディアスに対しセリーヌ達の戦いは無意味だったと告げた。
しかし、そんな事はなかったのだ。
アリーシャとセリーヌの与えたダメージがあったおかげで、ディアスは一度目の戦いでガブリエルを倒す事ができた。
そして、ジェストーナが最後に見せた行動は無人君の記憶の中に残り、彼に今のような行動を選択させた。
追い詰められし者達の牙はここにきて尚、ガブリエルにその牙を突きたてていた。
無人君が最小半径最高硬度の『バーリア』を展開する。
その中にガブリエルを閉じ込めると無人君は体内に残る全てのエネルギーを暴走させ始めた。
彼の狙いは自爆してガブリエルを倒す事。
この『バーリア』はガブリエルを逃がさないためと、外にいる2人に被害が及ばないようにする障壁。
そんな彼の狙いに気付いた少女が叫び声を上げる。
「無人君っ!! やめてぇ!!」
- 247 名前:もの言わぬ友よ:2008/05/31(土) 00:31:28 ID:QRWimdCj0
- □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
「無人君っ!! やめてぇ!!」
僕の聴覚センサーが彼女の声を拾った。
それだけは出来ないよ。だってこいつを逃がしたら君まで…。
「なんで? なんで私の言う事を聞いてくれないの?」
そう、僕は君が創ったロボットだ。本当は言う事を聞かなければいけないんだけど…。
「自爆なんかしたら、もう私と一緒にいられなくなっちゃうんだよ!?」
そうだね…。僕達はずっと一緒だった。
故郷のリンガ村を出た時も、エナジーネーデに飛ばされた時も。
「もう一緒に遊べなくなっちゃうんだよ!?」
尚も叫ぶ僕のマスターの声をセンサーが捉える。
うん。一緒にいっぱい遊んだね。
追いかけっこしたり、高いところに一緒に上ったり、かくれんぼしたり…。
「そんなの私イヤだよ!!」
僕もイヤだよ。でも、君が死んじゃうのはもっとイヤだ。
だから、最初で最後の我侭を許して欲しいんだ。
「友達が…、いなくなっちゃうのは…、もう…イヤだよ…」
泣き崩れる彼女の姿を視覚センサーが映している。
大丈夫だよ。今の君には僕以外にもいっぱい友達がいるんだから。
リンガ村にいた時とは違うよ。機械ばっかりいじってて、周りから変な子って言われてたあの頃とは違うんだ。
君を守ってくれる友達がいる。君を頼ってくれる友達がいる。
だからもう、泣かないで。
暴走したエネルギーが臨界点を迎えた。
僕の身体から赤い光が漏れ出す。
その現象が意味するところを彼女も知っている。
「無人君っ!!」
もうすぐお別れだね。
僕は喋る事は出来ないから伝えたい言葉を伝える事ができないけど。
さようなら。僕の大切なお友達。
大好きだよ。僕の小さな御主人様。
ごめんね。ずっと側にいてあげられなくて。
そして、最期に。
プリシス、僕を創ってくれて
ありがとう。
長き夜の始まりに戦端を切ったこの戦いは、大地を揺るがす爆発音と少女が叫ぶ友の名と共に終焉を迎えた。
- 248 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 00:33:08 ID:y3Yri5QV0
- もういっちょ支援!
- 249 名前:もの言わぬ友よ:2008/05/31(土) 00:33:43 ID:QRWimdCj0
- □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
爆発の余波が収まり漸く視界がはっきりしてきた中でアルベルが立ち上がった。
(どうなったんだ?)
流石にあの爆発の中心にいては跡形もなくなるだろう。
無人君がいた爆心地には一振りの剣が残されているだけだった。
それ以外は大きなクレーターが一つあるだけだ。
(あれは、オペラとかいう奴が最初使ってて、今までディアスが使ってた剣か)
その剣を拾い上げる。あの爆発の中でも傷一つつくことなく、その刃には一点の曇りも無かった。
(コイツはお前の追加依頼の報酬として貰ってくぜ)
「俺に手がある」
そう言ったあいつは自分に空破斬をぶつけろといってきた後に、
「プリシスをレナ達の所まで無事に送り届けてくれ」
と言ってきた。
(まぁ、返事はしてねえんだが。このまま無視するにはなんとも後味悪いしな。
それにルシファーの野郎をぶっ倒すにはこの方法が一番早そうだ)
バリアの外に放置されていたディアスとガブリエルのバックを拾い上げると、
その近くにフェイト達が確かノートパソコンとか呼んでいた物に似た物が落ちているのを見つけた。
ついでにそいつも拾い上げこの場にいるもう一人の生き残り、プリシスの方に向かって歩き出す。
「オラ、立てよ!」
まだ泣き続けるこのガキを無理やり立たせた。
(これだからガキの扱いは面倒くせえ)
「行くぞ。いつまでもこうしている訳にはいかねえだろうが!」
だがこのガキは俺の手を振り解きまたへたり込みやがった。
「私が…私がここでガブリエルを倒そうなんて言わなければ、ディアスもアリューゼも死んだりしなかったっ!
無人君も壊れたりなんかしなかったっ! アシュトンの事もそうっ!
私があんなこと言わなければ…ネルって人も、夢留って子も死ななかった…。
きっと、みんな私の事を恨んでる…」
ったくこんな事までディアスの依頼に入ってるのだろうか?
ため息を一つした後、再度プリシスを立たせる。
「んなことはねぇよ…。ディアスもアリューゼも戦士だ。
戦いの中で死ねた事に後悔や恨みなんてねえ! 守ろうとしたものを守れたのなら尚更だ。
夢留って奴は知らないやつだからわからねえが、ネルも誰かを恨んで死ぬことなんてしねえ。
それにあのみょうちくりんな機械もだ」
そう言ってプリシスに先程拾った小型端末のモニターを見せる。
そのディスプレイには無人君と呼ばれた機械が最後に出力しようとしたメッセージが残されていた。
たった1語。文字数にして5文字の言葉。
『ありがとう』と。
その文字を見たプリシスは端末を抱きかかえてまた大声で泣き始めた。
- 250 名前:もの言わぬ友よ:2008/05/31(土) 00:36:51 ID:QRWimdCj0
- 【I-06/夜中】
【アルベル・ノックス】[MP残量:60%]
[状態:左手首に深い切り傷(応急処置済みだが戦闘に支障あり)、左肩に咬み傷(応急処置済み)、左の奥歯が一本欠けている。内臓にダメージ]
[装備:セイクリッドティア@SO2]
[道具:木材×2、咎人の剣“神を斬獲せし者”@VP、ゲームボーイ+ス○ースイ○ベーダー@現実世界、????×0〜1、荷物一式×6(一つのバックに纏めてます)]
[行動方針:ルシファーの野郎をぶちのめす! 方法? 知るか!]
[思考1:プリシスをレオン達に合わせる]
[思考2:傷を治してもらうまでプリシス+レオン+レナの用心棒をする]
[思考3:龍を背負った男(アシュトン)を警戒]
[現在位置:I-06 町中]
※木材は本体1.5m程の細い物です。耐久力は低く、負荷がかかる技などを使うと折れます。
【プリシス・F・ノイマン】[MP残量:100%]
[状態:アシュトンがゲームに乗った事に対するショック、仲間と友人の死に対しての深い悲しみ]
[装備:マグナムパンチ@SO2、セブンスレイ〔単発・光+星属性〕〔25〕〔0/100〕@SO2]
[道具:ドルメラ工具セット@SO3、????←本人確認済み、解体した首輪の部品(爆薬のみ消費)、無人君制御用端末@SO2?、荷物一式]
[行動方針:惨劇を生まないために、情報を集め首輪を解除。ルシファーを打倒]
[思考1:仲間、ヴァルキリーを探す]
[思考2:アシュトンを説得したい]
[思考3:首輪の解析を進める]
[現在位置:I-06 町中]
[備考1:ガブリエルの持ち物で、アルベルの道具欄に無い物は爆発に巻き込まれ消滅しています]
[備考2:護身刀“竜穿”@SO3がI−6のどこかに落ちております]
[備考3:アリューゼの持ち物は彼の遺体の側に置いてあります]
[無人君制御用端末について:無人君の行動ルーチンや姿勢制御を行っていたものです。それなりに高性能なCPUを積んでいます]
[首輪について:中の構成品は、爆薬、マイク、送受信機、制御用紋章力結晶体(以下結晶体)です。
結晶体は首輪の制御を行う信号をだしており首輪の機能の中枢を担っています。
そこからの信号が途絶えた瞬間に爆弾は爆発する仕組みになっており、仮に術に精通しているものが結晶体の仕組みを暴いたとしても解除できません。
あくまで術師が解析した結果を踏まえて結晶体をハックする装置作らなければ外せないでしょう。
その他に結晶体は首輪の持ち主の生死を判断していますがプリシスはその機能に気付いていません。
また8本の線の内、当たりだけを切断しても、ルシファーの下に配線が切られたという情報が行くのでその場で爆破されるでしょう]
【ディアス死亡】
【アリューゼ死亡】
【ガブリエル死亡】
【無人君大破】
【残り26人】
- 251 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 00:40:57 ID:QRWimdCj0
- 投下終了です。
改行は気を使ってみましたが見にくくなかったでしょうか?
もうすこしアリューゼに見せ場をあげたかったんですが、相手との因縁が少なかったんであっさり死んでもらいましたw
- 252 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 00:45:01 ID:y3Yri5QV0
- >>226
gj、不覚にも涙腺が……!
そして今まで忘れられかけていた無人君に光が当たってよかったよ
- 253 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 01:23:38 ID:rzSmow0z0
- 細かいことですが、アルベルは我流でなく、エダール剣技の使い手じゃなかったですか?
- 254 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 02:19:34 ID:kFjQFgMx0
- 我流で合ってたような気もする
- 255 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 19:00:59 ID:sZzJ4r6P0
- 我流なんだけどもなぜかエダールと一緒
- 256 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/31(土) 23:34:38 ID:oD5xK52SO
- む、むじんくんがぁぁぁぁぁ!
投下GJ!
ジェストーナ、おまえは無駄死にじゃなかったぜ……
- 257 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/01(日) 14:08:23 ID:GcMBBN17O
- でぃ、でぃあすぅぅぅぅ!
ていうか最近wiki更新されないね……
- 258 名前: ◆yHjSlOJmms :2008/06/01(日) 20:38:24 ID:3hPshMmo0
- 何度も推敲したのに設定の方でミスが出るなんてorz
なんか>>255さんの感じだと直すか微妙ですがどうしましょうか?
- 259 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/01(日) 20:51:01 ID:sq6EdGCE0
- シウスさんが言ってた、エダール剣技は少しアレンジを加えただけで我流扱いされるから困るって。
冗談は置いといて、投下GJ。
ガ、ガブリエルてめぇぇぇぇ! ラスボスのくせに断末魔もなく死ぬとは情けない。
- 260 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/01(日) 21:04:48 ID:GcMBBN17O
- まったくだ、アリーシャを見習いたまえ
- 261 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/02(月) 23:21:35 ID:FzFJ4ZVU0
- まぁ、プリシスと無人君が二人の世界を作ってる中、
ガブリエルがアリーシャ張りの長台詞で喚き始めたら空気嫁と言わざるを得なくなるしなw
- 262 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 17:48:11 ID:58pFWTFD0
- つまりガブリエルは空気読んで黙って散ったと。
残りのマーダーはアシュトン、ボーマン、ミカエル、ブレア、洵、リドリー、ガウェインか?
本編で敵キャラだったやつやラスボスだったやつ大分退場したのにまだこんなにいるなんて…
しかも半分ちかくがSO2で内二人が仲間キャラとか何気にいい感じに狂ってるロワだよなあ…。
- 263 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/03(火) 23:33:09 ID:Dcxy2RSa0
- >>262ミランダの事もたまには思い出してあげてください。
もしかしてRS勢はみんなマーダーか?
- 264 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/04(水) 01:39:56 ID:Vnd1atFnO
- ラスボスで残ってるの主催のルッシー除けばロキだけだからな
ラジアータは全員マーダーだけど…実際成果あげてるのがリドリーだけで…
- 265 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/04(水) 01:43:49 ID:KsvZFfGx0
- SO2は仲間キャラマーダーの3人で9人も殺しているというのに・・・
- 266 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/06(金) 23:53:43 ID:xFhjWst90
- VPは個性派揃いだよなぁ
変態とヅラはともかく、貴重なマーダーに外道対主催なチャリンコマスター
キャラがたっているけど、いろんな意味で何考えているか掴めない奴らばかりだから困る
あれ、女神様とマーダー包囲網の中にいる彼の影が薄いような……
- 267 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/07(土) 02:00:54 ID:trjlGRHQO
- 主人公ヒロインコンビの影が薄いとはこれいかに
ルシオは立派に色々やってるじゃないか
クロード助けたりミカエル追っ払ってマーダー二人の命を助けたり
- 268 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/07(土) 18:34:08 ID:usqSZKPh0
- VP2・・・
- 269 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 16:15:20 ID:a3xaHJUt0
- メインキャラがVPと被りまくるからって言っても少なすぎるよな。<VP2
別に非戦闘キャラも大丈夫だから、せめてレオーネとかダレスとか参加させてやればよかったのに…。
- 270 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 17:30:03 ID:63VRlXGZ0
- VP2は初めはこのロワに加えない方向だったのが、開始ぎりぎりになって2人参加になったらしいから仕方がないさ。
- 271 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 19:50:25 ID:fN8Ac3n10
- VP2組の二人はそれなりに活躍してお亡くなりになったのがせめてもの救いですね。
しかしこのロワの殺害ペースは異常だな。
まだ島西部の火薬樽が残ってるのに2回目の放送後から既に10人とか。
- 272 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/08(日) 20:41:06 ID:NQeosgFIO
- 何気に『一人死亡』が少ないからなw
たいてい二人以上が一緒に死んでく
RPGならではの集団戦が多いからかな
- 273 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/09(月) 21:28:53 ID:6P+6CvFi0
- パーティ内の仲間意識が強いキャラが多いからじゃないの?
仲間意識薄そうなVPでも今回参加したキャラは結構仲間を作るor他人を利用するような
エインフェリアも多いから、自然に集団行動をとってるみたい。
- 274 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/14(土) 21:05:54 ID:A/BP3A6EO
- PCからなぜか書き込めないんだが、みんな避難スレ見てくれてるんだろうか?
- 275 名前: ◆yHjSlOJmms :2008/06/14(土) 21:20:39 ID:sUUMWi2X0
- 避難スレ見て来ました。
自分的には>>236までが前編で>>237までが後編のつもりで書いてましたので、それでお願いいたします。
それと毎度ながら更新マジで乙であります。
自分もいじり方わかればやりたいんですがね…。
- 276 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/14(土) 21:27:22 ID:sUUMWi2X0
- 訂正>>237までが× >>237から○
- 277 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/15(日) 14:17:51 ID:SZbcD8ZzO
- wiki更新してて気付いたんだけど次100話なんだな……
長かったぜ、ちくしょう……
>>275
wikiは簡単ですよー
ぶっちゃけ俺もこのロワではじめてwikiをいじったし
wikiモードで編集ってのを選べば下の方にタグの解説でますし、本編更新する時は前の話を編集モードでコピーすれば本文とキャラ名とタイトルを差し替えるだけですみますからね
- 278 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/16(月) 23:13:53 ID:Snf1IDKe0
- >>277そうか漸く100話か…。
ぶっちゃけ過疎ってるから何とかそこまでは行きたいですね。
wikiいじれるようでしたら自分で壊しといてなんですが土日にでも無人君の墓をたてに行きますw
- 279 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/21(土) 11:52:15 ID:pRMgW94U0
- >>278
ガンガレ、超ガンガレ
そういえばルシオとロキって何エンドから来てるか決まってたっけ?
- 280 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/21(土) 15:27:02 ID:pRMgW94U0
- ・・・と、すまん、テンプレではルシオはAエンディング後になってるな
てことはロキの悪行は知ってるでOK
ロキもルシオは殺したはずって言ってたね
スレ汚しごめんなさい
- 281 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/22(日) 00:25:20 ID:bP/oD7Gc0
- 最近2ちゃんが重いし、書き込めないって人のために専ブラを紹介しとく
もうすぐ100話なんだし盛り上がっていこうぜ!
PC→JaneStyle
http://janestyle.s11.xrea.com/
携帯→i2ch(家ゲーRPGの板入ってから『ロワ』で検索かければ表示される)
http://i2ch.net/
- 282 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/22(日) 03:58:48 ID:Ru/qOgag0
- >>281サンクス。
しかし職人さんが皆筆を休めているこの状況で100話はくるのでしょうか?
- 283 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/22(日) 04:50:30 ID:bP/oD7Gc0
- >>282
世の中には試験シーズンほど筆が乗る人間がいてな(ry
あんま数多く落としてない人間が100話貰うのは気が引けるが、今晩までに誰も投下しないなら空気を読まずに100話目をかっさらわせてもらうつもりだよ
さあ速筆のエース達!100話が欲しければ私と勝負といこうじゃないか!
- 284 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/22(日) 15:59:23 ID:TBr3+EUzO
- じゃあ俺も100目書くよ!
- 285 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/22(日) 16:01:04 ID:bP/oD7Gc0
- も り あ が っ て ま い り ま し た
- 286 名前: ◆Zp1p5F0JNw :2008/06/22(日) 18:51:19 ID:QKIEGTo/0
- >>283-284
どうぞどうぞ
しかし予約はしておいた方が良いと思うよ?
俺が予約してしまうかもしれないからね…。
ガウェイン、ブラムスを予約します。
- 287 名前: ◆wKs3a28q6Q :2008/06/22(日) 18:53:07 ID:bP/oD7Gc0
- じゃあお言葉に甘えて予約しようかな
ロキ、クラース、エルネスト、フェイト、ミカエル、洵、ミランダ、ルシオを予約します
- 288 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/22(日) 19:55:35 ID:s0hNJwjw0
- 二人に期待ッ!!
>>286ヅラムス初バトルの予感
>>287メンツがカオス過ぎるw 近場にいるのにスルーされた時空剣士と女王様カワイソス
- 289 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/22(日) 23:25:01 ID:Ks/i7aMx0
- 投下ラッシュきたこれ、正座して待ってる!
- 290 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/23(月) 04:46:58 ID:ZEaZbMiN0
- おもすぐる・・・
- 291 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/23(月) 07:48:22 ID:BJF7Kxg7O
- 昼間や夕方の連中に夜中の連中が絡めないのは仕方がないw
- 292 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/23(月) 10:12:45 ID:iWVZ4DnAO
- 無視されるなんてムシの居所が悪くなるなあ
- 293 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/23(月) 13:12:54 ID:MePEM7D/0
- >>292
時空剣士自重!
というかお前危険な状態なの分かってんのか?
- 294 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/23(月) 16:29:07 ID:BJF7Kxg7O
- >>292
時空剣士乙
未だにまともな装備のないパーティーなんてヅラムスとお前らくらいだぞ自覚あんのか
- 295 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/23(月) 17:15:47 ID:yCyIQkmr0
- ヅラムスの武器は拳だから装備なんて必要ないぜ
- 296 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/23(月) 17:24:44 ID:lS/0OdLC0
- むしろ!ダイヤモンドを指にはめて殴ったらほんの少し威力が上がったりしてな
ダイヤモンド硬いよ、ダイヤモンド
- 297 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/23(月) 23:01:12 ID:CcPcNNLB0
- たしかに肉体が武器だからな
さて。ヅラムスがどんな笑いを取ってくれるのかが
今から楽しみだw
- 298 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/23(月) 23:09:56 ID:aqhZFLX30
- ブラムスの武器はヅラだろ、外見的に考えて
- 299 名前: ◆wKs3a28q6Q :2008/06/24(火) 01:00:46 ID:4Z9GrUZz0
- ヅラムスの人気は異常。
未だに戦ってないのに空気と無縁とか凄すぎるw
さて、>>286氏やエースによる記念すべき話を期待してた方々には申し訳ないですが、記念すべき100話目はこの私がいただきますッ!
くうき? なにそれ吸うもんだろ?
- 300 名前:久し振り。 ◆wKs3a28q6Q :2008/06/24(火) 01:05:49 ID:4Z9GrUZz0
- 自転車にも随分と慣れてきた。
代わり映えのない景色にウンザリし、暇を持て余していたので挑戦してみたら、案外簡単に前輪を浮かせては知らせることが出来た。
ふふん、時間つぶしには持って来いな乗り物じゃあないか。
「そこで止まれ、こちらに戦闘の意思はない」
ご機嫌にしばらく走っていると、突然小汚いおっさんが現れた。
勢いで轢いてやってもよかったが、衝突の衝撃で自転車が壊れても面白くないので止めてやる。
……つもりだったが、急には止まれないんだなこれが。
「お、おい!? ……うおっ!」
剣を構えるも、構わず突っ込む自転車を見て何かあると勘繰ったのか、地面に転がるようにして避けてくれた。
酷く滑稽なその姿を嘲笑してやろうかと思い、足の裏を使って自転車の勢いを抹殺する。
「はは、悪い悪い。すぐには止まれないものでね」
敵意むき出しで剣を構えるおっさんを嘲笑いながら自転車を降りる。
「で、言われた通りに止まってやったけど、何か用かい?」
何の用かと聞いてはやったが、別に言われた通りにしてやる気はない。
止まってやったのも、レナスの情報を持っていないか聞いてみようと思っただけ。
「……まずは、荷物を二つ持っている理由を聞こう」
ああ、そういえば二つ持っていたな。面倒くさい質問をする奴だ。
「これは鮫面の奴から貰ったものだ。襲ってきたから返り討ちにしてやったんだよ」
嘘は吐かない。吐く意味もないし、それで反感を持たれても困らない自信はある。
(あの構え……このおっさん、剣については素人だな)
使えそうにないし、聞きたい情報を聞きだしたら殺しておくか。
殺しまくるのが目的じゃないが、試しに首輪をボッコボコにしたいとも思っていたところだ。
こいつの首輪は耐久テストに使うことが出来る。つまり、こいつの殺害は別に無意味なものではないのだ。
「ま、疑うのは自由だけど」
背負っていたデイパックから右手を解放し、重力に任せて体の左側に回ってきたデイパックの中を漁る。
我ながら多くの武器を手に入れたものだ。
さて、こいつはどれで殺すか……
「エルネストさん!」
奴の後ろから声がした。なんだ、コイツ仲間がいたのか。
それとも今ようやく再会を果たした、殺し合いに巻き込まれる以前のお友達かな?
まあどっちでもいいんだけど。
「エルネスト……そいつは殺し合いに乗っているのか?」
さらに別の声がする。
とりあえず一番上にあったストライクアクスを手にし、顔を上げる。
一番手前には、剣を構えた先程の小汚いおっさん。
やや離れた位置に武器を持たず隠れるようにしてこちらの様子を窺うおっさん。
そして顔にペイントしてる方のおっさんを庇うようにして立つ、鉄パイプを構えた――
「……安心しなよ、僕はこの殺し合いに乗っちゃいない。その証拠に」
再び身を屈め、デイパックから先程入手した首輪を取り出す。
それを指先でクルクルと弄びながら笑顔を向けた。
「ほら、首輪。このデイパックの持ち主を返り討ちにした際に手に入れたんだ。殺し合いに乗ってたら、わざわざ首輪なんて集めないだろ?」
おっさん二人はまだ警戒をしているようだが、青い髪の青年は僅かに警戒を解いたようだ。
それでいい。
おっさん二人などどうでもいいのだ。大事なのはあの青い髪の青年のみ。
おっさんの殺害を止めてまで懐柔する価値のある男、ただ一人。
「ところで君……あの場所でルシファーに楯突いてた人だよね? 知り合いみたいだけど、話を聞かせてもらえるかな?」
☆ ★ ☆ ★ ☆
- 301 名前:久し振り。 ◆wKs3a28q6Q :2008/06/24(火) 01:07:27 ID:4Z9GrUZz0
- ルシオがいるのは、平瀬村の民家の2階。
コミュニケーターを使用する際無防備になる事を考えて、深い意味もなくその家を選んだ。
子供部屋だったのだろうか、虫取り網が壁に立てかけてあったりと、殺し合いとは無縁なのどかな部屋。
その部屋の机の上に、それは置いてあった。
「双眼鏡、か……」
ミカエルが今どの辺をうろついているのか分かるかも知れない。
そう思い、連絡を後回しにして双眼鏡を手に取った。
「暗くて見にくいな……」
数分後、ルシオは索敵を一時中断することにした。
というのも、先程から欠伸が頻繁に出るうえに瞼が降りてきているからだ。
(参ったな……このぐらいの運動、今までなら平気でこなせていたのに)
エインフェリアになってからも、窃盗で生活していた頃も、毎日気を張り詰めていた。
にも関わらず、今の自分は疲労で瞼が降りてくる。
本人は気付いていないが、他のエインフェリアや冒険者に比べてルシオは規則正しい生活を送ってきた。
神界では新入りなので見張りをさせられることが多々あったが、そういう日はしっかりと昼間に睡眠時間を設けられていた。
窃盗団として暮らしていた時も、得物が徘徊しない時間帯に睡眠はきっちりと取っていた。
ルシオは、睡眠の大切さを知っている。少しの疲労が、集中力の欠如が命取りになる世界を生きていたのだ。
体に染みついたその癖はなかなか取れない。危険の去った今の内に体を休めておくんだと、脳が命令を出してきている。
(どうする……仮眠を取るか? 判断力が鈍ってもいけないし……)
更に言うと、今までのルシオにとっての戦いは全て予定通りに行われるものであった。
窃盗団の頃は自分で獲物を駆るタイミングを決めていたし、神界で戦う際も隊長が事前に襲撃をかける時を伝えてくれた。
しかもそれらの戦いは「終わり」が必ず見えている。
大局的な意味での終わりは見えずとも、その時々の戦いは比較的短い時間で終わり、次の戦いに備えて自由な時間が訪れる。
それがルシオの経験してきた『戦い』だった。
だが、この殺し合いはそうではない。
自分から仕掛けるにしても計画を立てる余裕などなく、防衛するにしても役割分担をする仲間がいない。
全ての役割を己一人でこなし、そのうえで目的達成のため島中を駆けずり回らなければいけないのだ。
『プラチナに会う』という目的でさえ当ても無ければ終わりも見えない。
そんな状況で、ルシオの疲労はドンドンと蓄積していっていた。
「……洵には悪いけど、少し眠ろう」
勿論、我慢できない量ではない。この程度の疲労なら、いざとなったら無視できる。
だがしかし、ここで無視をしてしまうと、いずれいざとなっても無視できない量になる。
それならば、今の内に疲労は取っておくのが得策だ。連絡も、頭をスッキリさせてから行った方がいいだろう。
そう考え、とりあえず1時間ほど寝ようとルシオはアービトレイターを手に壁にもたれかかる。
さすがに横になって眠るなんて無防備な事は出来ない。
(そういえば……あの人、どうなったのかな……)
無防備な形で寝かせてきた金髪の青年。彼はチェスなんとか君に無事保護されたのだろうか?
そんな事を考えながら、ルシオの意識は落ちて行った。
☆ ★ ☆ ★ ☆
- 302 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/24(火) 01:11:37 ID:oblmmi+J0
- しえん
- 303 名前:久し振り。 ◆wKs3a28q6Q :2008/06/24(火) 01:15:32 ID:4Z9GrUZz0
- 「なるほどね、ルシファーは時間も操るし空間も生み出す創造主か。面白い話だ」
殺すか、こいつら。
フェイトの話を聞いて最初に抱いた感想がそれだった。
自分も出会った人間には嘘を吹き込むつもりだったが、まさか自分と同じ行動を取る人間がいるとは思いもよらなかった。
もっとも、自分はこんな分かりやすい嘘を吐く気など更々ないが。
「確かに嘘みたいな話ですけど、本当なんです!」
「俺も、彼の言う事に嘘はないと思っている。嘘みたいな話だが、そもそも嘘を吐く理由がないだろう?」
必死のフェイトの訴えかけでも、ロキの心には届かない。
自分も嘘を吐くつもりだっただけに、フェイトが嘘を吐くことになんら疑問を持たないのだ。
(まあ、だけど全部が全部嘘ってわけでもなさそうだな。おそらく、時間を操るっていうのは本当だ。それならアイツが生きているのにも説明がつく)
二人の抗議を聞き流しながら、ロキはルシファーについて考える。
時間を操る。恐らくルシファーの能力にそれがあることは間違いない。
死んだはずのルシオが生き返ったことの説明も、その一言であっさり付く。
もしかしたら他にも過去から来てる人間はいるかもしれない。『レナス』が『アーリィ』か『シルメリア』の可能性も考慮しようとロキは心の片隅に置いておく。
この嘘に紛れた真実味のある情報は、押さえておいて損はない。
(……いや、思った以上にコイツは切れ者かもしれないな)
そして疑問にぶち当たる。何故フェイトはわざわざ嘘を教えるのか。
自分の場合はソイツが死のうと生きようと関心がないからなのだが、さほど役に立たなさそうな者を二人も連れている所を見るにそういうわけではなさそうだ。
士気を高めるために敵の能力を低めに教えるならともかく、絶望して殺し合いに乗る者を増やしかねない嘘を吐く意味はない。
殺し合いに乗らせるのが目的だとしたら、二人を手元に置いておく必要性もあまり感じない。
優勝を狙える程度の腕があるなら、片足を封じられても何とかする技量があるのだろうし、わざわざ二人を生かしてなどおかないだろう。
自然な答えは、『仲間にするに値するか篩にかけている』辺りか。
絶望的な力の差にも絶望せず、立ち向かう意志のあるものだけを仲間にする。
身体能力よりも精神面を優先した仲間集めであまり関心は出来ないが、フェイトが単なる馬鹿ではない証明にはなる。
「……分かったよ。ひとまず信じることにする」
ロキも馬鹿ではない。形だけでも信じた方がいいと判断したらそれに従う。
はっきり言って気分が悪いが、フェイトの有用性を考えればそれもやむなしだ。
(それに、時間を操る奴を敵に回す以上、歩兵だろうが駒があるに越した事はないからな)
ロキはルシファーが時間操作の能力を持っていると信じている。
フェイトが単なる馬鹿正直な青年でないと考えるようになって、その考えは核心へと変わっていた。
“時間を捻じ曲げる”というだけでも十分非常識な減少なのに、それをすんなり受け入れられた理由。
ロキはそれを『それ以上に非現実的な能力を口にされたから、相対的に現実味を帯びたのだ』と考えた。
それを狙ってやったとしたら、フェイトは自分の予想以上に頭が切れるということになる。
ロキは雑魚には興味がないが、使える駒には興味を示す。故に、ロキはフェイトらを仲間に引き入れようと考えた(ちなみに、自分が仲間に入れてもらう立場という事は考えていない)
「とりあえず僕はこの自転車で島を一周するつもりだ。君達も付いてきてくれるかい?」
「それなんですが……」
フェイトが申し訳なさそうに口を開く。出てきそうな反論を先に潰しておこうと、ロキが言葉を遮った。
「安心しなよ。怪我人のフェイトは自転車の後ろに乗ればいい。そうすれば僕の漕ぐ自転車は他の人と同じ速度になるだろうし、丁度いい。
それに、僕は平瀬村に向かうつもりだ。何かしら治療に使えるものが手に入るかもしれない」
そこまでを言い切り、友好的な笑顔を顔面に張り付ける。
しかし、フェイト達の表情は一層沈む結果に終わった。
「悪いが……私達は今しがた平瀬村から逃げてきたところでね。あそこには危険な奴がいる。行かない方がいい」
様子を見ていたクラースが口を開く。
はっきり言って、平瀬村に戻るなどクラースは御免だった。そして、フェイトとエルネストも同じ気持ちである。
- 304 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/24(火) 01:17:35 ID:go4Vtr2Q0
- うお、寝ようとしていたところで投下きたこれ!
お休み前に支援しておく!
- 305 名前:久し振り。 ◆wKs3a28q6Q :2008/06/24(火) 01:18:54 ID:4Z9GrUZz0
- 「ああ、奴の名はミカエル。二人にはもう教えたんだが、奴は神の十賢者と呼ばれ、恐ろしい力を誇っている」
「ぷはっ、神だって?」
エルネストの言葉を聞き、堪らずロキは噴き出してしまった。
「へえ、神ね。神。面白いじゃないか、そいつ」
十賢者なんて聞いた事もない。大方そこらの雑魚神族だろう。
それが人間相手に神を名乗ってデカい面をしているといったところか。まったく、面白い冗談だ。
「笑い事じゃないですよ……回避したはずなのに、僕の足はこんな風になってしまいましたし……」
「ああ、行くとしたら鎌石村だ」
「元々俺達は鎌石村を目指しててな。ロキが通った道ならばリスクも他より少ないだろう」
黙れ腰抜け。喉まで出かかった言葉を、ロキは何とか胸の内に留めておいた。
他の二人はともかく、フェイトを手放すのは正直惜しい。
だから面倒だと感じながらも三人の説得を開始する。
「安心しなよ。僕は神だ。信じてもらえないだろうけどね」
場が一瞬で静まり返る。やはり易々とは信じられないのだろう。
「悪いけど僕は強いよ。過信はしてないけど、卑下する気もないからハッキリ言う。僕は強い」
その瞳には迷いがない。確固たる自信を持っていることは、三人にもよく伝わった。
「それでも私は反対だ。そこまでしてリスクを冒して何になる?」
それでも、クラースは反対の意を表明した。
クラースにとって、最終目標は生還である。ミカエルの討伐でもなければ弱者の蹂躙でもない。
そんな彼にとってのベストなこの場の結末は、ロキを引き込み鎌石村に行くことなのだ。
そしてフェイトの情報とロキの首輪などを合わせ、改めて釜石村で考察したいと思っている。
だが――
「悪いけど、進路の変更はしない。僕は平瀬村に向かわせてもらう」
ロキとて、妥協する気は更々なかった。
クラースのように深い理由があるわけではない。
ただ単に、自分の立てた計画を死のうが生きようがどうでもいい人間に左右されるのが気に入らないだけだ。
そんな酷くくだらない理由。それでも、ロキにとっては大きな理由。
「そんな……どうして!?」
クラースの一言でロキが折れると思っていたフェイトが、驚きの声を漏らした。
勿論「気に入らない」なんて本音を漏らす程ロキの頭は悪くない。
冷静に、フェイトの食い付きそうな理由を述べる。
「どうしてって、決まってるだろ? 僕はこの殺し合いを終わらせるつもりだからさ」
クラースは黙って聞いている。
彼も仲間を失いたくはないし、殺し合いも出来る事なら破壊したい。
ロキが納得のいく答えを出してきたら、クラースもロキ達と共に平瀬村に引き返すつもりだった。
「僕は逃げてるだけの君達とは違う。殺し合いに乗った奴は倒すべきだと思っているし、僕にはその力がある」
確かに、ロキの言い分には一理ある。
友人を殺したくはないが、例えばミカエルのような顔も知らない殺人鬼なら殺すことに大きな抵抗感はない。
その想いは三人に共通している。
彼らは誰一人として、無殺傷で各々の冒険を終えたわけではないのだから。
「それに、そのミカエルとやらに他の連中が殺されるのは嫌だろう? なら、僕らがミカエルを倒すべきだ」
彼らが逃げたのは、力が無かったから。
ミカエルを倒すことは不可能だと判断したから、戦略的撤退をした。
死にたくないから、仲間を救うためにも死ねないから、ミカエルから逃げた。
そんな彼らの目の前に、ロキは餌をぶら下げる。
「とは言え、さっきも言ったように僕は自分の力を過信したりはしないつもりだ。そのミカエルとやらを無傷で倒せるとは思えない。
だから、力を貸してもらえるかな。もし一緒に来てくれるなら、僕の支給品から好きな武器をあげるよ」
ファルシオン、ストライクアクス、グーングニル。更にはスタンガンやデッキブラシなんかもある。
これらを一人で使い切るのはどうせ無理なのだから、出し惜しむ事はしたりしない。
人間を駒と考えるように、支給品もまたロキにとっては駒でしかないのだ。
- 306 名前:久し振り。 ◆wKs3a28q6Q :2008/06/24(火) 01:24:05 ID:4Z9GrUZz0
- 「…………」
フェイトがエルネストと顔を見合わせる。心はロキへと傾いていた。
だが、二人にとって誤算があった。クラースもまた、自分達と同じでロキと行くと思った事だ。
「悪いが、それでも私は行くことが出来ない。私の目的は殺人ではないのでな」
そう告げ、クラースは立ち上がる。
クラースの最優先事項は安全。もはやフェイト達の目的とは一致しようがなかった。
そもそもフェイトを救った目的は情報を得ることであり、それはもう達成済みだ。
いずれどこかで切り捨てるつもりだった男と、武器を持たない一人の男。
彼らと別れるだけだと思えば、さほど大きなダメージではない。
「そんな……クラースさん!」
それでもフェイトはクラースの説得を試みる。フェイトにとって、クラースは大事な仲間なのだ。
自分の命を救ってくれ、あまつさえ延々背負ってくれた男を、黙って行かせたくはない。
「いいんでないの、行かせてやれば」
しかし、ロキにとってはそんなのどうでもいいことである。
フェイトが自分に付いた今、他の二人などどうでもいい。
むしろ、武器の分配分が少なくて済むし消えてくれとさえ思っていた。
「でも……クラースさんは大切な仲間で……」
そこまで言った所で、フェイトの言葉は遮られる。
クラースにでもロキにでもない。勿論エルネストにでもない。
暗転した空に浮かぶ、ルシファーの声によってである。
「そうだ、じゃあ後腐れのないようにこうしよう。ミカエルとやらが死んでたら、クラースは僕達と来る」
「……いいだろう。その代わり呼ばれなかった時は行かせてもらう」
ミカエルが呼ばれるなど、ロキは微塵も思っていない。クラースを追い払うために提案だ。
クラースも、分かっていながらそれを受ける。
当事者間で勝手に賭けは成立し、フェイト達が口を挟む間もない内に、二度目の放送が始まった――
☆ ★ ☆ ★ ☆
残り人数36人。ルシファーの放送の後、残った人間について考えていた。
エイミに夢瑠、メルティーナが死亡した。
エイミの腕はよく知っている。奴の一撃は読み易いのに防ぐのが困難な程の恐るべきパワーを誇っていた。
同郷の夢瑠。何を考えているのか読めない部分が多かったが、奴の大魔法は神界でも有名だったと聞く。
そしてメルティーナ。ヴァルキリーを蘇らせる際に見せたあのポテンシャルの高さ。並みの術者とは桁違いの強さだった。
そんな3人でさえ、この6時間で戦死したのだ。生き残りはかなりの猛者揃いと見て間違いない。
あのミカエルやヴァルキリー、ロキクラスの者が過半数を占めているはずだ。ミランダのように根っからの雑魚は片手で数えるほどもいないだろう。
(運のいい女だ……俺達以外の誰とも会っていないとはな)
運。
この要素は、この殺し合いで生き残る上で、大きなウエイトを占めているように思われた。
『誰に遭遇するか』ということもそうだし、『支給品は何か』ということもそうだ。
先程の放送によるとルシオはミカエルから逃げ切ったようだが、ルシオの腕から考えるとリバースドールのような便利な物を使用したのだろう。
大方そんなところだろうと思っていたからミカエルの死亡には期待していなかった。
最後に見えた炎は随分離れた場所からだったことから、ミカエルはこの村を離れたと考えられる。
当分の脅威は去ったわけだが、まだ安心はできない。ルシオが戻ってきたところで、まともな支給品は残っていないのだ。
女――ミランダにも支給品を出させたものの、出てきたのは可笑しな箱と不思議な粉のみ。
説明書は紛失したそうだが、粉の方は小麦粉らしい。ハズレの中のハズレといったところか。
箱の方は「もう一つセットのものがあって、それがないと使えないんです」と言っていた。
どちらも嘘の可能性があるのだが、ミカエル襲撃時に使用しなかったことから見て戦闘で使えるものでない事は確かだ。
とはいえ『騙し討ちで使えるもの』な可能性は残っているので、粉を食料に混ぜられぬよう気を付けた方がいいだろう。
そう思ったので、奴の支給品を管理できなくなるのが辛かったが、荷物は全て各自で管理するようにした。
- 307 名前:久し振り。 ◆wKs3a28q6Q :2008/06/24(火) 01:31:32 ID:4Z9GrUZz0
-
『……洵、洵』
ボソボソとした声が懐から聞こえてくる。
こちらに気を使ったのか、はたまたあちらが大声を出せぬ状況なのか――
とにかく、雑談でもしていたら聞こえなかったであろう音量で、ようやくルシオからの連絡が入った。
物静かな家屋で黙々と体を休めていなければ聞き逃してたな、などと思いながら返事をする。
「ルシオか。今は話せる状況か?」
『ああ……二人とも無事か?』
無言でミランダに“こみゅにけいたあ”を渡してやる。自分の口から語るより、声を聞かせた方がてっとり早い。
それに、きちんと約束を守ったという事を示し、奴の信頼を得ておくに越したことはないからな。
「あの……先程はありがとうございました」
『よかった……無事だったんだ』
“こみゅにけいたあ”越しに、ルシオの安堵する声が聞こえてくる。
が、これ以上会話させてルシオを喜ばせてやる義理はない。安全を伝え終えたようなので、“こみゅにけいたあ”をミランダの手から取り戻す。
「それで……今どこにいる。奴はもう完全に振り切ったんだろう?」
連絡がなかなか無かったにも関わらずこちらから連絡を入れなかった理由。
それはズバリ、ルシオが誰かから身を隠している可能性があったからだ。
若干離れた位置で起こった爆発に、遠目に見える立ち上る煙。
これらから考えるとミカエルはこの場からは離れている事になるのだが、あの爆発を見てやってくる者がいてもおかしくはない。
支給品を使いきったルシオが身を隠しやりすごそうとしていた可能性が高かった。
だから連絡を控えていたのであり、連絡が取れるようになった今ルシオの付近には誰もおらず、それは“ルシオが身を隠しやりすごした奴がこちらに来ているかもしれない”という事を示しているのだ。
ルシオの現在地を聞き次第さっさと移動を開始したい。
だが……帰ってきたのは、予想外の答えだった。
『すまない……まだ帰れないかもしれない』
「……どういう事だ?」
帰れない、ということは、何かトラブルにでも巻き込まれたのだろうか?
『……洵さ、言ってたよな、青い髪の女性と金髪の男が殺し合いに乗っているって。友好的なふりをして近付くって』
「まさか……」
『ああ、いるんだ。この平瀬村に。しかも、もう二人も仲間に引き入れてる』
迂闊だった。ミカエルにばかり気を取られていたが、あの二人組もこの村に来ていてもおかしくはなかったのだ。
それどころか、奴らがこの村に来ている筈だと推理したのは他ならぬ俺自身だ。
何故そこまで気が回らなかったのか……それにしても、まさかあの二人がまだ生き延びていたとはな……
「それで、お前はどうしたんだ。もう奴らの中に入り込んだのか?」
『いや……今はやや離れた所にいる。手に入れた双眼鏡で見ているんだ』
「そうか。武器はまだ手元にあるのか?」
考える。ルシオを行かせるメリットを。
確かに俺は、ルシオが二人組を倒せば儲けもの程度に考えていた。
だがしかし、奴らが仲間を増やしていた場合は話が別だ。
奴らは殺し合いに乗っていないという事実を、ルシオが信じ込まされる可能性が一気に跳ね上がる。
奴らの話を聞かずに倒してもらいたいものだが、4対1じゃ最悪の場合、誰一人倒せぬまま取り押さえられ説得させられてしまうだろう。
それは避けておきたいところだ。
『ああ……剣一本だけど、一応ある。何とか二人の人を助けたい』
「……そう言うと思っていた。だが、今はまだ駄目だ。お前一人では勝機はない。お前一人なら、な」
『洵……』
「場所はどこだ。俺も助太刀するとしよう」
だとしたら、俺も助太刀するしかあるまい。
恐らく青髪の女と金髪の男は戦闘しながらルシオの説得にかかるであろうし、俺にとって奴らとの戦闘はリスクが大きい。
だがしかし、それ相応のリターンはある。
先程も言ったように『運』が、『支給品』がこの殺し合いを制するうえでの鍵となる。その支給品が、4人分も手に入るのだ。
金髪の男と青髪の女以外を始末したらルシオが怒るだろうが、仕方あるまい。二人が殺し合いに乗っていないと知る人物は生かしておけないからな。
最悪、ルシオと女をそこで殺してしまってもいいだろう。
それで残り30人。切り捨てるには早いが、背に腹は代えられないからな。
- 308 名前:久し振り。 ◆wKs3a28q6Q :2008/06/24(火) 01:33:27 ID:4Z9GrUZz0
- 『すまない、洵』
「ふん……連絡を寄越したということは、最初から手を借りる気だったのだろう? 己を過信しない良い判断だ。それで、場所は?」
『ちょっと待ってくれ、今地図を……!?』
ルシオの声がピタリと止まる。嫌でも俺達に緊張が走る。
『な、何が……!?』
“こみゅにけいたあ”越しに、ルシオの焦ったような声が聞こえてくる。
一体何が起こっているんだ? まさか、金髪の男達が誰かに襲撃でも受けたのか?
「あ、あの……」
「何だ」
今まで見張りに付かせていたミランダが、遠慮がちに声をかけてくる。
何やら嫌な予感がした。
「誰か来ます」
「ミカエルか?」
無い、と言いたかったが、ありえない話ではない。
こちらの居場所がバレているのか、いないのか……問題はそこだな。
「すまん、ルシオ、誰か来た。切るぞ。俺達がそちらに向かうまで例の二人組は放っておけ、いいな!」
早口にそう告げ、“こみゅにけいたあ”の通信を終了する。
臨戦態勢をとり、ミランダのいる窓際へと外から見られぬよう姿勢を低くしながら素早く近寄った。
「違うと思います。何やらベルを鳴らしていますので……」
舌打ちをしてやりたいが我慢する。
やはりこの女を引きこんだのは失策だった。ルシオにははぐれたまま見つからなかったとでもいって海に沈めればよかったのだ。
この女を引き込むデメリットは、確かに存在していた。そしてそのデメリットが、今まさに眼前に迫ろうとしている。
――殺し合いに乗っていない人物と遭遇した際、戦闘が出来なくなる。
このデメリットはかなり大きい。
どさくさに紛れてミランダを殺すという手もあるが、そこで一手費やしてしまうとその隙を突かれる恐れがある。
ベルを鳴らして存在をアピールするくらいだ、殺し合いに乗っていようと乗っていなかろうと腕は確かなものなのだろう。
かと言って、敵を殲滅した後にミランダを殺すのはほぼ不可能。この女は弱い。おそらく俺が殺し合いに乗っていると分かるなりさっさと逃走してしまうだろう。
逃げた女がルシオと合流でもしようものなら最悪だ。下手したらルシオにミランダ、金髪の男らの同盟軍が出来あがってしまう。
それだけは避けねばならない。
(さて、どうしたものか……)
今声も出せない内にミランダを殺しても血の匂いが漂ってしまう。
ベルを鳴らしているのが殺し合いに乗ってるものならいいのだが――――
現実は非情である。現れたのは集団だった。
自分のように騙して同行させている者が混ざっている可能性もあるのだが、パッと見で分からなければ意味がない。
奴らを襲う理由はなくなってしまった。とりあえずここはミランダを説得してやりすごして……
「複数で行動してますし、安全そうですよ。洵さん、合流しましょう」
この女……ッ! クソ、どうする? どうすれば……
☆ ★ ☆ ★ ☆
「クラース……本当に行ってしまうのか?」
「ああ、すまないな。君達の健闘を祈る」
心配そうに声を掛けるエルネストに言葉を返す。
この言葉に嘘はない。エルネストは良い奴だ。こんな所で死んでほしいかと聞かれれば答えはノーだ。
オペラという恋人の名が放送で呼ばれ塞ぎ込んでいたのに、私が立った事に気付くなり私に声をかけてくれた。
まったく、年長者の見本のような男だよ、お前は。
- 309 名前:久し振り。 ◆wKs3a28q6Q :2008/06/24(火) 01:34:59 ID:4Z9GrUZz0
- 「なら……これを持っていって下さい。役に立つかは分かりませんけど……」
そう言うと、フェイトがその手の鉄パイプを差し出してくる。
本当に役に立つか怪しいものだな、と心の中で毒突いた。
その遣り取りを見、ロキが露骨に眉を顰める。
「おいおい、わざわざそいつにアイテムを譲ることないだろう」
私もそう思う。まったく、本当にお人好しな奴らだ。
「いいじゃないですか、譲るのは僕の道具なんですし。それに、助けてもらう際に道具を一つ無駄にさせてしまってますし、お礼はしておかないと」
不満そうなロキを尻目に、フェイトが改めて鉄パイプを差し出してくる。
「……何故私にそこまでする? 私は君達と道を違えるんだぞ」
鉄パイプがさほど欲しくもないという事もあり、素直な疑問を口にする。
「それは……僕がクラースさんに死んでほしくないからです」
単純明快。だが、私にはもう真似の出来ない理由。
自由だったあの頃とは、夢だけ見ていたあの頃とはもう違う。
今の私には守るべき人がいて、そのためにも見ねばならない現実がある。
ミラルドは弱い。強い部分も多いが、少なくともエルネストのように恋人の訃報で涙を堪えられるほど心が強くできていない。
私は誓ったのだ。一生を賭けて、私の全てを賭けてミラルドを幸せにすると。
「僕は、もうこれ以上仲間を失いたくありません」
ああ、そうだな。俺だって出来るだけ失わないでこの殺し合いを終わらせたいさ。
でもな、フェイト。お前の言う事を信じるなら、この殺し合いを止めるのなんかほぼ不可能なんだよ。
もう半分と少ししか生き残っていないんだ、にも関わらず未だに首輪の解析しか出来ていない状況で、その子供になにが出来る?
……なあ、フェイト。すまないが、残り人数が1/3を切っても何も進展しないようなら殺し合いに乗ることにしたよ。その方が遥かに現実的だ。
それでも微かな希望に縋るとしたら、そのガキじゃなくて他の何処かにいるかもしれない『既に首輪の解析を済ませた人物』なんだ。
ミカエルの討伐を任せるのが、賢いそのガキの利用方法なんだよ。
お前は真っすぐだ。だけど、真っすぐであれば何でも上手くいくわけじゃない。
「そういう事だ。ま、こっちの目的は島内一周なんだ、嫌でもまた会えるさ」
エルネストが冗談めかした笑みを浮かべ、「お前さんが同じ方向に移動し始めない限り、な」と付け加える。
それから、「俺の荷物で欲しいものがあれば言ってくれ」とも。
「……私が作った“貸し”はシルバーマトックの分だけだ。貰いすぎてそちらの戦力を削るわけにはいかない」
遠慮しなくていいと言わんばかりにエルネストが苦笑を浮かべる。
だが、やはり遠慮したかった。いざ殺し合いに乗った時に、彼らに借りがあるのではやりにくすぎる。
「だから、そいつを貰おう。どうせ使わないだろう?」
そう言い、エルネストのデイパックを指さす。
「俺の荷物か? と言っても、水と食料……あとはスケベな本しかないぞ?」
中身を順に取り出しながら、エルネストが冗談めかして苦笑を浮かべる。
私は最後に取り出したスケベほんを指さし、告げた。
「だから、その本が欲しいんだ。どうせ君は使わないのだろう?」
今度はこちらが、にやり、と冗談めかした笑みを浮かべる。
フェイトはというと、笑うべきところなのか決めかねているようだった。
「本当にこんなのでいいのか?」
肩をすくめ、エルネストが聞いてくる。
「ああ、構わんよ。こんな状況だからこそ、色々出来るうちに欲求は解消しておきたいんでね」
最後まで冗談めかして、エルネストからスケベほんを受け取る。
私が書物を武器にすることを、エルネストには最後まで伝えなかった。
もしかしたら私は、そうすることで彼らと殺し合う事になった際に「エルネスト達とは一線を置いていた」と自分自身に言い聞かせたいのかもしれない。
おそらくエルネストは、最後まで私が妙な気を回したと思っただろう。
だからこそ、彼はそれ以上何も言わない。鉄パイプを持っていけとも、やはり一緒に行こうとも。
「やれやれ、いい趣味してるもんだね」
楽しげに嫌味を言いながら、ロキが支給品を広げる。どうやら根っからの嫌な奴なようだ。
フェイトやエルネストはともかく、彼を殺すのはさほど抵抗なくできそうだ。
- 310 名前:久し振り。 ◆wKs3a28q6Q :2008/06/24(火) 01:37:24 ID:4Z9GrUZz0
- 「それじゃ、話は終わったみたいだし、さっさと好きな武器を選んでよね」
私に対する嫌味なのか、本心からさっさと行動に移りたいのか知らないが、やはりこの態度は癪に障る。
もっとも、この態度に感謝したい部分もあるにはある。
もししっかりと再会の約束でもしていようものなら、時が来ても殺し合いに乗る決意が出来なくなってしまうかもしれない。
このぐらいあっけないぐらいが丁度いいというものだ。
「じゃあな」
そうとだけ告げ、エルネスト達に手を向ける。彼らが何かを言ってきたが、聞き流すことにした。
そして挙げた片手をヒラヒラと振ったまま、私はおよそ12時間ぶりに一人となった。
☆ ★ ☆ ★ ☆
「……これも駄目だな」
腹に括りつけていたフライパンを放り投げ、ミカエルは手にしていたパンを齧る。
表面には出さないが、ミカエルは内心イライラしていた。
逃がしてしまった二人を探したが、結局見つけられなかった。
放送で仲間の死を知り、さっさと逃げ出した可能性が高い。
一応一通り回ってみたのだが、案の定見つけることは出来なかった。
そして家という家を焼き払おうとして――自分の魔力が枯渇寸前だった事を思い出した。
人間二人を焼き殺すくらいなら余裕で出来るが、家という家を焼き払う程の魔力はない。
仕方がないので一旦適当な家屋に入り、体勢を立て直すことにしたのだ。
そして腹に括りつけたウッドシールドが度重なる攻撃の熱の余波と先程食らった一撃でガタがきていることに気付いたのだが……
「けっ、あの野郎……ほんっとーに使えるもんは完全に排除してやがるみてえだな」
民家の中を探してみたが、ウッドシールドの代わりになりそうなものは何もない。
分かっていた事だが改めて腹が立ってきた。
意地でも何かを見つけてやると片っ端から試してみたが、台所にあった鍋もフライパンも突起が邪魔で使えそうにない。
「いい加減この村も潮時かもしれねーな」
最初に襲ったエルネストら3人に、先程襲ったルシオ達。
ミカエルはすでに6人もの人間と遭遇している。
これだけの人数が町から逃走しているのだ。これ以上たくさんの獲物がいるとは考えにくい。
とはいえ残りの32人が均等に3つの村にバラけたとしたら、先程逃げた二人組を除いてもこの村には8人ほどいることになる。
今までの事から考えるに次の獲物も群れていると思われるし、次に見つけた獲物集団を葬り次第、残りの村に向かう時期かもしれない。
ミカエルはそんな事を考えながら、その民家を後にする。
数十分後に、逃がした獲物と再会するなど思いもせずに。
☆ ★ ☆ ★ ☆
フェイト達がクラースと別れてから数時間が経過した。
ロキの「戦闘になったら役立ってもらわなくちゃならないから今は休め」の言葉に従い、フェイトはロキの漕ぐ自転車の後ろに座っている。
その手には、ロキから譲り受けたファルシオンが。
先程の選択でフェイトはファルシオンを、エルネストはザイルを選んでいた。
ザイルを手に取った際、フェイトもロキも目を丸くしたのだが、エルネスト本人はロープ状の物の方が扱い慣れていると言って当然のようにザイルを得た。
本当にその方が戦力になるなら別にいいかとロキもOKを出し、今に至る。
- 311 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/24(火) 01:40:58 ID:go4Vtr2Q0
- お休み前と言いつつワンスモア!
ごめん、後は誰か支援頼んだ……
- 312 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/24(火) 01:43:39 ID:sl1mKx5wO
- 意外と住人多いんだなw
支援
- 313 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/24(火) 01:49:26 ID:sl1mKx5wO
- ばいばいさるさん……
支援
- 314 名前:久し振り。(代理投下):2008/06/24(火) 08:25:12 ID:v2yB2CyR0
- 「見えてきたな」
前方に見えてきた平瀬村を見ながら、エルネストがポツリと呟く。
その言葉からは緊張感を感じ取ることが出来た。
無理もない。嫌という程の実力を見せてきた男と、これから戦おうというのだから。
彼らは警戒を解かずに村に入り、そして自転車のベルを鳴らす。
フェイト達がそうであったように殺し合いに乗らない人間を集めるという目的もあるが、一番の目的はミカエルを誘き寄せるためである。
幸い三人もいるため、奇襲はまず防げるはずだ。
それならば、向こうに待ち伏せされる事を防ぐ意味も込めて自ら誘き出す方が得策である。
そう考え、ベルを鳴らしていたのだが――
「危ないッ!」
自転車から飛び降り、ロキを地面へと押し倒すフェイト。
彼らの首を揃って跳ね跳ばせたであろう軌道を、一陣の剣圧が通り過ぎる。
剣圧。ミカエルには使えぬはずの必殺技。
フェイトとロキが顔を上げると、案の定そこにいたのはミカエルではなかった。
そのことは、ミカエルを知らぬロキにでさえ理解できる。
何故なら、刀を構えて立っていたのは己も知ってる者なのだから。
「ジュン……だったな? 何だい、君は殺し合いに乗っているのかい?」
隙を見せず、ロキが洵に問いかける。
フェイトはロキを庇うように立ち、エルネストもまた自転車の向こう側からいつでもザイルで援護できる体勢を取っていた。
しばしの沈黙。洵にはまだ言葉を発するつもりがない。
「い、一体何を!?」
睨みあいに割り込んできたのは、驚きふためく少女の声。
彼女は洵がロキに不意打ちした事に驚いている。今洵に殺されては困るのだ。
それでは集めてから一網打尽にするという自分の計画が狂ってしまう。
しかしその本音を決して表には出さないで、少女ことミランダは洵を宥めようとする。
洵はミランダのそんな行動を待っていた。
ミランダが何故自ら仕掛けたのかを聞きに来て初めて作戦は成功するのだ。
ロキに仕掛けた段階で逃げられるという可能性が僅かにあったが、その危険は回避した。
漏れそうな笑みを堪え、あくまで真面目な表情を作りながら声を荒げる。
「黙れ。いいかミランダ、その男は殺し合いに乗っている」
「……ふうん、随分面白い言いがかりをつけてくれるじゃないか」
洵の言葉を聞き、ロキはクスクスと笑みを漏らす。
彼の考えでは、洵がそう言っている理由として考えられるのは2つだけ。
『殺し合いに乗っていて自分達を同士討ちさせたい』か、『ビヴィグの殺害現場を見られていたか』だ。
距離的に考えて後者は無いなと考えたロキは、洵が可笑しくてならなかった。
今から自分は目の前の馬鹿を論破する。追い詰められる洵の姿を想像すると、悪戯心に火が付くように思えた。
「言いがかりだと言うのならば答えてもらおう。ルシオを殺害し、ドラゴンオーブを使い神界の征服まで企んだような貴様が殺し合いに反対する理由が何処にある」
だが――その炎は、あっと言うまで掻き消された。その表情からも笑みが消え、この島にきて初めてロキの心に焦りが生まれる。
(なッ……!? そうか、クソ、迂闊だった……ルシファーが時間を操るってことは、何も参加者は“過去”だけとは限らないじというのに……ッ!)
『自分自身が誰かにとっての“過去の人”である』という事を考えていなかった己を呪い、ロキは洵への対応を考える。
無論洵は抹殺する。洵の側にいるあの女もだ。自分に疑念を抱いたのならエルネストも抹殺しよう。必要なのはフェイトだけだ。
一番の問題はこの場を切り抜けた後だ。最悪レナスやブラムスも自分の企みを知っている可能性がある。
そうなった場合、同盟を結べるものは皆無となるだろう。
(どうする……? この失態、どう取り返す!?)
他事を考えながらも隙がないロキ。彼の姿を横目で見ながら、フェイトは彼について考えている。
正直に言うならば、あまりロキにいい印象はない。
クラースに対する態度はお世辞にもいいものとは言えなかったし、所持していた支給品も本人と返り討ちにした者の二人分にしては多すぎるように思えた。
折角得た新たな仲間を失いたくないため黙っていたが、それは失敗だったかもしれない。
残り人数も少ないことで焦っていた可能性もある。とにかく、ロキを手放しに信頼したことは反省すべきなのかもしれない。
(もう一度、冷静に考える必要があるんじゃないのか? 本当にロキを信じていいのか……もしかしたら、目の前の二人を信じるべきなんじゃないのか……)、
フェイトは考える。心ここにあらずのままで、人形のように刀を構えて佇みながら。
- 315 名前:久し振り。(代理投下):2008/06/24(火) 08:25:48 ID:v2yB2CyR0
- 『洵……聞こえるか』
再び懐から聞こえてきた声に、洵は僅かな苛立ちを覚える。
こちらの都合を少しは考え、通信を自重しようとは思わないのだろうか?
『悪いけど、もう限界だ……二人の内一人が殺された。もう一人も取り押さえられている。お前が何と言おうと助けにいく!』
自ら危険に首を突っ込むその姿勢に些かうんざりしながらも、折角のルシオからの通信は利用せねばと思い至った。
ミランダに目配せし、「取ってくれ」とだけ伝える。さすがに何の事か分かるらしく、洵の懐からコミュニケーターを取り出した。
「……気持ちは分かるが、こちらに来てもらいたいな。こちらも今戦闘中でな」
『なっ……本当か!?』
コミュニケーターから聞こえる声。その声に、ロキは聞き覚えがあった。
殺さなければならないと考えていた、かつて自分が使い捨てたエインフェリア。
「ああ、話してやれ。お前を騙し、ヴァルキリーを殺そうとした邪神とな」
にやりと笑い、洵はコミュニケーターを放り投げる。
俯いたままのロキに代わり、フェイトがそれをキャッチした。
コミュニケーターからは、未だにルシオの声が聞こえ続ける。
『ロキ……お前まさか、ロキなのか!?』
コミュニケーターの向こうから聞こえる声。その声が演技とは、フェイトにはとても思えなかった。
フェイトの手のコミュニケーターを、ロキのストライクアクスが乱暴に弾き飛ばす。
元はと言えばコインで決めたスタンスだが、それでも予定を狂わされるのは腹が立った。
『鬱陶しい、殺してやる』
後先なんて考えない。自分の力を過信しているわけではない。
ロキの頭は、至極冷静に「こいつらを全員殺したところで脱出プランに支障はない。最悪フェイトも殺せばいい」という答えを導き出したのだ。
ロキが動く。そして振り上げたストライクアクスは――
「危ない、左だ!」
「洵さん!」
エルネストとミランダの叫び声により、中断せざるを得なくなる。
ロキは己の力を過信しない。この迫りくる炎を受けられると思うほど、愚かな脳みそはしていない。
洵とロキは素早く回避し、そして炎が襲ってきた方向へと意識を向ける。勿論、互いへの牽制も忘れずに。
逸早く攻撃に気付いたミランダは、現在自分の取るべき行動を決めかねていた。
参加者を集め、一網打尽にしてしまいたい。だが、これだけ険悪な人間が手を取り合うなど出来るのだろうか?
(神よ……これも試練なのですか?)
ミランダは考える。洵に付いて援護すれば、人数を一気に減らす事が出来る。仲間に引き込むというステップは踏めなかったが、本来の目的は達成だ。
だが、問題もある。洵には時限爆弾の効果を偽っているため、下手な援護は疑心を与えるだけかもしれない。誰かが早々に死んでくれたら、そいつの武器を使えるのだが……
そしてミランダにとってそれ以上に問題となるのが『これが神の与えた試練かもしれない』という事である。
それが『この状況をどう切り抜けるか』という類のものならば上記の方法で切り抜けられるのだが、『如何にして彼らを結束させるか』を問われている可能性も否定できないのだ。
彼らを宥め、結束させ、当初の予定どおりそれからまとめて吹き飛ばす。それこそが求められている事だとしたら、上記の方法は使うわけにはいかない。
ミランダは考える。己がどう動くべきか。神は何を求めているのか。
「ミカエル……ッ!」
己の手足のようにザイルを使い、素早い回避の出来ないフェイトを手繰り寄せたエルネスト。
彼は僅かな疑心をロキに抱くも、すぐに自己解決へと至った。
ロキは殺し合いに放り込まれる前に悪事をしていた。それは事実だろうと思っている。
だが、ロキはまだ子供だ。本当の“吐き気をもよおす邪悪”というものを目の当たりにし、心を入れ替えたとしてもなんらおかしなことはない。
だとしたら、自分はどうするべきだろうか?
決まっている。ロキの仲間として、年長者として、ロキの分まで謝罪するのだ。そして許しを得、和解させる。
自分はロクでもない彼氏だった。愛する人の死に目にすら逢えず、短い間とはいえ共に戦った男すら止める事が出来なかった。
そんな自分でも、仲間を信じてやる事は出来る。手の差し伸べられる距離に仲間がいる。
死んでしまったオペラのためにも、『オペラの愛するエルネスト』でいるためにも、信じる心を失うわけにはいかないのだ。
そのためにも、まずはこの状況を切り抜けなければならない。
- 316 名前:久し振り。(代理投下):2008/06/24(火) 08:27:05 ID:v2yB2CyR0
- 「よお……久しぶりだなお前らァ! ご丁寧に揃ってくれちゃってよォッ!」
仲間を偽り、この期に人数を減らしたい洵。
仲間を作るべきか否か、神の意思を知ろうとするミランダ。
仲間を想い、どちらに行くべきなのか悩むルシオ。
仲間を駒と考え、不都合な人物の抹消を目論むロキ。
仲間を信じ、意地でも正しくあり続けたいエルネスト。
仲間を信じたいからこそ、ロキに疑念を抱くフェイト。
仲間など作らず、本能のままに殺しつくしたいミカエル。
「ぶっ殺してやるぜェェェェッ! スピキュゥゥゥゥルッ!!」
様々な想いが入り混じり、平瀬村の大規模な戦闘が今、幕を開ける。
【F-02/夜中】
【ルシオ】[MP残量:100%]
[状態:健康]
[装備:アービトレイター@RS]
[道具:コミュニケーター@SO3、荷物一式]
[行動方針:知り合いと合流(特にレナス)]
[思考1:洵達の援護に行くか殺し合いに乗った二人組(クレス・マリア)に仕掛けるか決断する]
[思考2:洵、少女(ミランダ)と合流]
[思考3:平瀬村で仲間の詮索]
[思考4:ゲームボーイを探す]
[現在地:平瀬村内北東部よりやや南]
[備考]:※コミュニケーターの機能は通信機能しか把握していません
※マリアとクレスを危険人物と認識(名前は知りません)
※最初の通信時に驚いたのはアーチェ爆死を見たからです。
※洵とのやり取りの間にチェスターはクレスらと離別しました。すぐに駆けつけても97話に割り込む事はありません。
【F-01/夜中】
【ミカエル】[MP残量:50%]
[状態:頭部に傷(戦闘に支障無し)]
[装備:ウッドシールド@SO2、ダークウィップ@SO2(ウッドシールドを体に固定するのに使用)]
[道具:魔杖サターンアイズ、荷物一式]
[行動方針:最後まで生き残り、ゲームに勝利]
[思考1:どんな相手でも油断せず確実に殺す]
[思考2:この場にいる奴皆殺し]
[思考3:この場の人間を殺しつくしたらそろそろ借り場を他に移す]
[思考4:使える防具が欲しい]
[現在位置:平瀬村北西部]
[備考]:デコッパゲ(チェスター)と茶髪優男(ルシオ)は死んだと思っています。
- 317 名前:久し振り。(代理投下):2008/06/24(火) 08:28:18 ID:v2yB2CyR0
- 【洵】[MP残量:90%]
[状態:腹部の打撲、顔に痣、首の打ち身:戦闘に多少支障をきたす程度]
[装備:ダマスクスソード@TOP、木刀]
[道具:コミュニケーター@SO3、スターオーシャンBS@現実世界、荷物一式]
[行動方針:自殺をする気は起きないので、優勝を狙うことにする]
[思考1:出会った者は殺すが、積極的に獲物を探したりはしない]
[思考2:ロキを殺害し、今後に備え支給品を充実させる]
[思考3:ロキの仲間も出来る事ならこの場で殺しておきたい]
[思考4:現時点でルシオとミランダを殺すつもりはないが、邪魔になるようなら殺す事も考える]
[思考5:ルシオを使ってレナスを利用もしくは殺害]
[思考6:ゲームボーイを探す]
[現在地:平瀬村北西部]
【ミランダ】[MP残量:100%]
[状態:正常]
[装備:無し]
[道具:時限爆弾@現実、パニックパウダー@RS、荷物一式]
[行動方針:神の御心のままに]
[思考1:神の意図を正しく理解し、この状況を何とかする]
[思考2:洵やルシオを利用して参加者を集める]
[思考3:直接的な行動はなるべく控える]
[思考4:参加者を一箇所に集め一網打尽にする]
[現在位置:平瀬村北西部]
【ロキ】[MP残量:95%]
[状態:正常・自転車マスターLv4]
[装備:ストライクアクス@TOP、ママチャリ(ミカエルの炎により半壊)@現実世界]
[道具:10フォル@SO、グーングニル3@TOP、空き瓶@RS、デッキブラシ@TOP、スタンガン、首輪、荷物一式×2]
[行動方針:ゲームの破壊]
[思考1:洵・ミランダ・ミカエルの殺害]
[思考2:見つけ出してルシオを殺害]
[思考3:出来ればフェイトは手ゴマとして取っておきたい。エルネストは別にどうでもいい]
[思考3:自転車で街道を走って島を一周する。途中であった人間達にはいい加減な情報を与える]
[思考4:首輪を外す方法を考える]
[思考5:レナス、ブラムスの捜索(自分の悪事を知っているんじゃないかと警戒し始めている)]
[思考6:一応ドラゴンオーブを探してみる(有るとは思っていない)]
[現在位置:平瀬村北西部]
【フェイト・ラインゴッド】[MP残量:100%]
[状態:左足火傷(戦闘にやや支障有り。ゆっくり歩く分には問題無し)、ロキに対する不信感]
[装備:ファルシオン@VP2]
[道具:鉄パイプ-R1@SO3、荷物一式]
[行動方針:仲間と合流を目指しつつ、脱出方法を考える]
[思考1:ミカエルの打倒。洵達とは出来れば戦いたくない]
[思考2:ルシファーのいる場所とこの島を繋ぐリンクを探す]
[思考3:ロキを信用していいのか見極める]
[思考4:確証が得られるまで推論は極力口に出さない]
[現在位置:平瀬村北西部]
[備考:参加者のブレアは偽物ではないかと考えています(あくまで予測)]
- 318 名前:久し振り。(代理投下):2008/06/24(火) 08:29:56 ID:v2yB2CyR0
- 【エルネスト・レヴィード】[MP残量:100%]
[状態:両腕に軽い火傷(戦闘に支障無し、治療済み)]
[装備:ザイル@現実世界]
[道具:荷物一式]
[行動方針:打倒主催者]
[思考1:仲間は絶対に守り抜く。フェイト・ロキは勿論出来れば洵達も死なせたくない]
[思考2:ミカエルを倒す。その後で生き残っていたら洵とミランダを説得しロキと和解してもらう]
[思考3:仲間と合流]
[思考4:炎のモンスターを警戒]
[思考5:平瀬村で医療品捜索後、ロキ達と島を一周。出来ればその後クラースと合流したい]
[現在位置:平瀬村北西部]
【C-02/夜】
【クラース・F・レスター】[MP残量:100%]
[状態:正常]
[装備:シウススペシャル@SO1、スケベほん@TOP]
[道具:薬草エキスDX@RS、荷物一式]
[行動方針:生き残る(手段は選ばない)]
[思考1:鎌石村へ行き、フェイトから得た情報を手土産に首輪の解析を進めるチームに入れてもらう]
[思考2:ゲームから脱出する方法を探す]
[思考3:参加者が1/3になっても脱出方法が分からないようなら脱出は無理と判断し殺し合いに乗る]
[現在位置:D-02、道から少し外れた森の中を鎌石村方面へ移動中]
-----------
(◆wKs3a28q6Q氏のコメント)
以上です
支援して下さった方、有難うございました
繋ぎで100話目かっさらってすみません。今も反省してない。
- 319 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/24(火) 08:53:09 ID:v2yB2CyR0
- 以上、代理投下完了。
行数でひっかかってしまって、状態表の区切りが避難所のものと
ずれているのですが、そこはご寛恕いただければ幸いです。
そして投下乙&GJでした!
対主催危険派マーダー、因縁も入り混じりでミカエルと戦闘……。これは燃えざるを得ない。
個人的にはエルネスト、クラースの年長者組の心理描写がいい味出してて素敵でした。
しかし、この短時間でウィリーまで出来るようになるとは。神族ってすげぇw
- 320 名前: ◆wKs3a28q6Q :2008/06/24(火) 17:13:37 ID:4Z9GrUZz0
- 代理投下ありがとうございました
しかし自分の投下にミスがありましたので修正させていただきます
>>316のルシオの状態表
×道具:コミュニケーター@SO3、荷物一式
○道具:コミュニケーター@SO3、双眼鏡、荷物一式
>>317の洵の状態表
思考3:隙を突きミカエルの殺害
を追加し、思考3以降の番号を一つづつずらします
毎度ミスしてすみません
- 321 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/24(火) 22:41:52 ID:Z+Ttg6RR0
- >>320投下GJ!
相変わらず繋ぎがうまいなコンチクショーw
真似出来るもんならやってみたいぜ。
- 322 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/24(火) 22:48:58 ID:e15NshKK0
- 新作乙!
多人数でバラバラの場所にいた人物をよくここまで纏められるなあ。
エルかっこいいよエル
今日久しぶりに来たけどいつの間にかジャック死んじゃったんだな。
ジャックの分まで、ラジアータ勢には頑張って欲しいところだ。みんなマーダーだけど。
- 323 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/24(火) 23:52:19 ID:tAEyI+640
- >>322いつから来てないんだよw
さぁ、さっさと見てない作品を読む作業に戻るんだッ!
- 324 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 05:00:07 ID:WyFMlQElO
- >>322
そしてすべて読んだらメモ帳を開いて書き始めるんだ!
- 325 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 00:52:16 ID:SotpOMQs0
- >>299
投下おつ!
クラース、展開次第では第2のボーマンになるのか?
言われてみれば、ここまで来てまだ戦っていないのにヅラムス大人気!
本当、ヅラの人気に嫉妬
- 326 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 21:56:59 ID:qppKN8i/0
- 戦う気迫は十分なのに一度も戦闘なくえらく目立ち
おそらく板読者のウケも一身にかっさらっている
ホントにある意味稀有な存在だな
これからが楽しみだ
- 327 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 11:23:44 ID:b7holmyPO
- ある意味チートキャラだなw
100話は取り損ねちゃったみたいだけど、ヅラムスがどう出るかに期待している
- 328 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 12:52:35 ID:h/OBZPBZ0
- >>326
戦う気はあるのに戦えていない辺り、ある意味サラマンダーに通じる部分はあるよな
スタンスはマーダーどころか反主催ではあるけれど
- 329 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 13:03:22 ID:44SSf1K5O
- まあある意味、
もっともロワの要旨に反しない形での堅実な生存フラグの立て方だな、
ヅラムスの立ち回り方は。
しかも、本人にはふざけているつもりなんざ微塵もないのが恐ろしい。
- 330 名前: ◆wKs3a28q6Q :2008/06/27(金) 19:18:31 ID:ydZK9gwg0
- そういえば氷川村大戦がケリついて、平瀬村で戦争が起こって、南半分はわりと平和なエリアになったんだな
プリンシスの二人がレオン達と合流した場合、放送までにどちらかに介入できるのか微妙だし・・・
もしかして次の放送までにマーダーが全滅して、次がラストの放送になる可能性もあるのか!?
平瀬村がマーダー多めに抱えてるからどうなるか分からないけどね
- 331 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 19:18:55 ID:ydZK9gwg0
- 鳥消し忘れた\(^o^)/殺せよ
- 332 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 22:44:21 ID:SPUiM8MJ0
- >>330どんまい
提案なんだけど次の放送の禁止エリア内にナナミとルシフェルに支給予定だったデイパック配置しない?
各所人が集まりすぎて書きずらいのと、いま本人確認済みアイテムで?になってるのもあるけど、
ほぼ全員何らかの修羅場をくぐってるから、そのアイテムが便利なアイテムでしたってできないんだよね。
配置したらマーダーは嬉々として回収に行くだろうし、大所帯対主催組みは分散しやすくなると思うんだけど。
- 333 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 22:58:29 ID:ydZK9gwg0
- >各所人が集まりすぎて書きずらい
うーん、耳が痛い。確かに三つの村に綺麗に別れちゃったからなあ。
氷川村の二人は人探しをしてくれるから北上してくれるだろうけど、鎌石村の反主催グループは動く気配がなさげだからな・・・
レザード組とプリシスが合流しても遅すぎはしないだろうし、北に留まる奴が全体的に多いから南下させるために支給品配置はありかもね。
あと個人的に次の放送後、1時間に1個の超ハイスピードで地図の右上を封鎖することを提案してみる。
正直ほとんどの人間があっちにいないし、解放しとくくらいなら南下経路・北上経路をある程度限定した方がいいんじゃないかと。
絶対すれ違わなきゃいけないほど残ったエリアも狭くないし。
むしろ誰もいないエリアに単身突っ込まれても厄介かなと思うんだ。
- 334 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 23:18:08 ID:SPUiM8MJ0
- >>330どんまい
提案なんだけど次の放送の禁止エリア内にナナミとルシフェルに支給予定だったデイパック配置しない?
各所人が集まりすぎて書きずらいのと、いま本人確認済みアイテムで?になってるのもあるけど、
ほぼ全員何らかの修羅場をくぐってるから、そのアイテムが便利なアイテムでしたってできないんだよね。
配置したらマーダーは嬉々として回収に行くだろうし、大所帯対主催組みは分散しやすくなると思うんだけど。
- 335 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 23:21:35 ID:SPUiM8MJ0
- すまん>>334はミス。
右上の封鎖は同意ですね。
少し前にブレアとガウェインがそれで空気化しましたしね。
- 336 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/28(土) 00:34:20 ID:c6bTMR6+0
- ガウェインさんは今でも充分空気かと(ry
ところで、放送後動きが無いガウェインと平瀬村連中の話が来たら次の放送行ける?
クリフが役場に戻る方が先かな。
- 337 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/28(土) 00:37:59 ID:Y3klrUCPO
- レオンとレナ……はあってもなくてもよさそうだな
何気にもう第3回放送か、早いな
今まで13人づつ死んでるが、今回はそれより多いか少ないか……
平瀬村が鍵を握るな
- 338 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/28(土) 09:23:20 ID:ZyIj8cMV0
- クリフ役場は時間的に厳しいかも知れないですね。
ただ、放送でミラージュの死を知るより、役場に戻って死んでるの知ったほうがストーリー的にはよさ気。
クリフの主人公ッぷりに磨きがかかりそう。
鎌石組も無理にとは言わないですが、もう1話ぐらいあってもよさそうな組もいますね。
- 339 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/28(土) 21:14:18 ID:gtOVh5Y10
- >>338
そうですねえ、そんな感じかと思われます
まあ、クリフに関しては警戒しながら歩くことよりも早く帰ることを優先して素早く動けば行けるんじゃないかと
- 340 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/28(土) 22:05:20 ID:VuTcHH8q0
- ミラージュの死を目の当たりにした途端、
嫌がらせの如く第3回放送が入ってくる場面を受信した
ガウェインは……今から強烈な奴と遭遇して空気っぷりが加速しなければいいな
がんばれ、超がんばれ
- 341 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 16:46:04 ID:YpUMZDfY0
- >>340今のうちに受信した電波を形にすべく、メモ帳を開いて書き始めておくんだ。
- 342 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 18:13:39 ID:ZP/CVyEAO
- 「久し振り。」をwikiに入れるにあたって前後編にする必要があるようです。
作者氏、どこで分ければいいか教えて下さい><
- 343 名前: ◆wKs3a28q6Q :2008/06/29(日) 19:07:33 ID:VT2Dzqig0
- うわ、まじですか…
前後編に分けるつもりで書いてなかったから、どこで切ればいいのか分からない・・・
えっと、でしたら放送の前後という事で>>306の「残り36人」からを後編としていただけますでしょうか?
それだと後編が長くなるため入りきらないという事でしたら>>308の「クラース……本当に行ってしまうのか?」からを後編ということでお願いします
お手数おかけしてすみません
- 344 名前: ◆Zp1p5F0JNw :2008/06/29(日) 21:44:11 ID:/TTA6r3q0
- すいません、今日中に投下できる見込みがほぼ無くなってしまったので
一旦予約破棄します。
流れを切ってしまいすいません。せめてwikiは編集しときます…
- 345 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 21:46:51 ID:X+AAh4TH0
- 話は唐突に変わるんだが、どこか過去スレを読める場所ってないのかな?
Part2から見始めたんだが、Part1の流れがどんな状態だったか見てみたいと思っているんだ
欲を言うとまとめwikiで読めたらなぁとも思っている
- 346 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 21:48:05 ID:X+AAh4TH0
- 連レスすまん
>>345
残念、またの機会を待ってます
- 347 名前: ◆Zp1p5F0JNw :2008/06/29(日) 22:37:56 ID:/TTA6r3q0
- 何故かwiki編集しようとすると失敗するんだけど俺だけ?
>>345
ttp://takukyon.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/free_uploader/upload.htmlのup0070にうpしてみた。
wikiで読めるようにする方法は…ちょっと分からないですorz
- 348 名前: ◆wKs3a28q6Q :2008/06/29(日) 23:22:40 ID:VT2Dzqig0
- >>344
そうですか……残念です
次の作品を期待して待っています
>>345
そういえばラノワは過去ログが見られたな
何かしら見られるようにする方法はあるんだろうけど、どうするのかわからない……
>>347
うーん、そういえば誤爆スレでもwiki編集が出来ないって声が出てきてたしwikiの鯖がトラブってるのかも
試しに俺もやりにいってみる
そしてうpGJ
- 349 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 23:23:05 ID:VT2Dzqig0
- トリップ学習しようぜ俺
- 350 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 23:36:33 ID:X+AAh4TH0
- >>347
おおお、GJ、そしてありがとうございました!
当時どんな雰囲気だったのかふと知りたくなって無理言ってしまったわけです
>>348
過去ログを見られるようにする方法があるかもしれないってことですかね
wikiの文法とかが分かればな……
もしくはhtmlなりdatファイルを添付して、DLして読んでもらうというのもありなのだろうか……?
何かできればと思ったけど自分の手持ちはかちゅ〜しゃ形式のdatだから、
html形式にしろdat形式にしろ変換が必要な事を思い出し絶望するのであった
- 351 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 00:35:02 ID:MoNGf/370
- 100話越えたら目次が若干みづらくなったな・・・
どうしよ、他ロワ見たいに99話までと100話からを別ページにする?
それか150話行かずに完結しそうだし今のままでいく?
今のままで行くなら番号表記を三桁仕様(98を099に、とか)にしとや方がいいのだろうか。
- 352 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 02:26:28 ID:MoNGf/370
- って俺あほか
98を099にしてどないすんねん
98を098、ね
あと洵の支給品からコミュニケーターを消すのを忘れていたのでwikiでは修正しておきます
- 353 名前: ◆wKs3a28q6Q :2008/06/30(月) 03:39:39 ID:MoNGf/370
- うーん、wiki収録してて気付いたんですが、ルシオが双眼鏡で見ておいてチェスターの存在をさっくりスルーしていましたね・・・
すっかり見ず知らずの他人Aを見てるかのような書き方をしていました
矛盾って程じゃない気もしますが、修正した方がよいでしょうか?
1・寝起きなうえに暗いためチェスターには気付かなかった事にしとく(クレスとマリアにはしっかり気付いたから厳しいか?)
2・チェスターについて触れた分を数行挿入
3・「洵の到着待たなくてもチェスター味方って分かってるんだから3VS2じゃん」となるため、新たな理由づけをする
のどれが妥当か選んで頂けると幸いです
毎度ポカをやらかしてしまって申し訳ない
- 354 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/30(月) 20:10:54 ID:VMhklz0B0
- >>353俺のポカに比べたらかわいいもんさw
1は書いてあるとおりクレス達を認識してるから厳しいですね。
お手数ですが、2が一番妥当じゃないでしょうか?
2やれば3もついでに出来そうですしね
- 355 名前: ◆wKs3a28q6Q :2008/07/02(水) 22:30:21 ID:nDukyJWf0
- 意見ありがとうございます。
>>354さんの言う通り、2(と3)で修正する方針で行かせて頂きたいと思います。
ですが……現在修正作を書いているのですが、どうしてもルシオがチェスターの救出を思いとどまってくれないので、かなり時間がかかっています。
最悪ルシオのパートはごっそり差し替えてクレス達とは遭遇させない方向で行こうと考えていますが、私は筆が遅いためその場合今週中に書きあがりそうにありません。
善処は致しますが、リアルの事情もありますので、今週中に書きあがらなかった場合は一旦作品を破棄させていただこうと思います。
折角100話突破やら放送が見えてきたやらだったところに水を差してしまい申し訳ありません。
- 356 名前: ◆wKs3a28q6Q :2008/07/05(土) 20:30:04 ID:mZqtSjqr0
- すみません、やはり差し替えるネタが浮かばないので一旦破棄させていただきます
ネタが降りてくるかどうか運任せな部分がある人間ですので、いつ修正案が降りてくるか分かりませんから・・・
アイデアが浮かんだ際にまだ空いていたらその時改めて投下させて頂きたいと思います
勿論他の方が彼らを投下してくださってもかまいません
むしろ大歓迎です
キャラ拘束申し訳ありませんでした
- 357 名前: ◆wKs3a28q6Q :2008/07/05(土) 20:36:23 ID:mZqtSjqr0
- あ、書き忘れていましたが、wikiから作品の削除の仕方が分かりません・・・
が、ひとまずリンクを外しておく事はしておきます。
- 358 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/08(火) 00:24:26 ID:AIOXyWzx0
- >>357
ありゃま残念、次回にwktkしておきます
そして保守
- 359 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/11(金) 08:27:12 ID:UHbmV9WiO
- 保守してほしゅいなあ
- 360 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/11(金) 08:30:11 ID:IAgMqtAU0
- >>359
時空剣士乙
いいからお前はさっさと戦え
- 361 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/11(金) 11:58:51 ID:KrdC1rKKO
- ↑基本過疎ってるスレなのに突っ込みが早くてワロタ。
まだ、あまり構想組んでないけど100話のルシオの件の差し替えって作者じゃない人でもやっていいの?
- 362 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/11(金) 13:07:02 ID:IAgMqtAU0
- 個人的にラノワ形式ならいいんじゃないかなと思う
100話のルシオパートを貴方がぼかして書くなりして、補完話としてルシオの話は101話目にするって形で
- 363 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/11(金) 20:59:00 ID:OQRJAMEd0
- 過疎っている時は時空剣士の召喚が効果的なんですね、分かります
>>359-360
連携の早さに嫉妬
- 364 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/15(火) 02:14:11 ID:snz2xFOP0
- で、ルシオの件は結局どうなるんだ?
1、ナイスガイな◆wKs3a28q6Q氏は突然アイデアが浮かんで修正版を投下する
2、>>361氏が来て差し替えを行う
3、このまま破棄。現実は非情である
取り敢えず俺の意見としては、3番以外ならどちらでもかまわない。いろんな意味で3番だけは勘弁。
- 365 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/15(火) 02:16:56 ID:4fkrZUhK0
- >>364
大穴、ルシオだけ100話目を欠席する とか
- 366 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/16(水) 01:57:16 ID:H+gG/VWCO
- まあぶっちゃけ、暗くてチェス太だけ見えなかったでもいいと思うけどね
- 367 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/18(金) 02:41:56 ID:x1IqEHFz0
- 次にルシオが出る話で>>366の方向でフォローを入れるのはアリですかね?
- 368 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/18(金) 12:56:27 ID:Kr+t7QMuO
- >>367個人的には問題ないと思います。
- 369 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 23:00:22 ID:HkFXm1vF0
- ヅラがずらー
……ごめんなさいごめんなさい保守したかっただけです
- 370 名前: ◆wKs3a28q6Q :2008/07/30(水) 13:52:30 ID:W8YXeX5g0
- うん、やっぱり自分で修正しようとするとgdgdになるな……
ですので>>367さんがルシオのフォローを入れて下さるのなら、ルシオパートをごっそり削るか先に投下していただいてその話に合わせるように会話パートを修正しようと思うんですが、それってありですかね?
勿論他の方が破棄したパートのキャラを書いてくださってもいいのですが(ルール的にはそれがベストですし、有難いので投下大歓迎)
- 371 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/10(日) 12:49:46 ID:8IVvIHS50
- 個人的にはアリだと思いますよ
てか過疎り過ぎだろ
- 372 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/22(金) 02:28:45 ID:W01oIF230
- さすがに過疎過ぎなので保守
- 373 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/26(火) 23:39:03 ID:FIWcCYs+O
- 続きまだかな‥‥
楽しみにしてるんだけどな。
とくに美女と変態ご一行!職人さまぁあ
- 374 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/04(木) 22:43:17 ID:NyJdqv0Z0
- 保守
久々に来たらえらい過疎ってますねw
聞きたいんだけど次の放送行くには最低後どの辺の話があればいいかな?
- 375 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/07(日) 00:14:52 ID:M01rNX2IO
- なんといってもルシオ達だな
アイツら前の放送以後通った話0だし
あと北の連中もあれば嬉しい
- 376 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/07(日) 02:46:35 ID:4Z2lewIp0
- そろそろヅラ様の勇姿を見たいものだ
ここまで来て戦っていないのも珍しいよな……
- 377 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/07(日) 14:38:31 ID:McvTqK020
- 人いるんじゃねーかw
- 378 名前: ◆yHjSlOJmms :2008/09/08(月) 22:24:18 ID:+bI4oTUr0
- >>375ルシオ達って100話はやっぱ破棄扱いなん?
◆wKs3a28q6Q氏ほどうまく書けるかがネックだけど3ヶ月ぶりの予約行ってみます。
フェイト、クラース、エルネスト、ロキ、ミカエルで予約します。
ルシオ組みはちょっと絡ませられそうに無いんで勘弁してください。
後精一杯がんばりますが、◆wKs3a28q6Q氏程のクオリティーを期待しないようにして下さい。
- 379 名前: ◆wKs3a28q6Q :2008/09/08(月) 22:51:58 ID:OIa9I7cj0
- イエス、破棄ですすんません
予約がくること自体久しぶりだし期待せざるを得ない
がんばってください
- 380 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 08:21:16 ID:6dqnZlfoO
- えーっ破棄だったの?
何かもったいないなあ…別にルシオがチェスター見つけてても様子見させておけば大丈夫じゃね?
- 381 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 19:43:04 ID:WlnH4BzgO
- まあでもほら、〆方がぶっちゃけ丸投げに近かったから……
- 382 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 00:24:24 ID:CQWJlReXO
- これで洵達も放送後出番が無くなったか…
何か書きにくそうなのが残っちゃったな
- 383 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 00:37:42 ID:FLl0hVA2O
- ミカエルからは逃げたがってるし、こっそり合流してこっそり移動してました〜で問題ない気もする
- 384 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 01:25:18 ID:0dtBUaR70
- 一時期の過疎が嘘のように最近になってまた盛り上がってるな
>>378
投下を正座して待ってる
- 385 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 02:25:02 ID:FLl0hVA2O
- 予約の力は偉大ってことだな
- 386 名前: ◆MJv.H0/MJQ :2008/09/10(水) 11:27:38 ID:rFqwRhXQ0
- せっかくだから俺は余ったルシオ、洵、ミランダを予約するぜ
- 387 名前: ◆wKs3a28q6Q :2008/09/10(水) 13:21:17 ID:AN+EFcF80
- >>386
何という予約祭。
これは期待せざるを得ない……ッ!
__, ノ} _,
ヾミ、 ,イl| ,ィツ
ヾミ、 ノリlj'; ,ィ彡イ
〉ミミY杉ハ='杉彡"
'^".:.:.:.:.:.:.::.:`丶{
/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.ヾミ三ニ≡=-ッ-
/ :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.'.彡''"´ ̄
r==〈r==≦ミ :.:.:.:.ヽ.:.:.}
{:.::::儿_:::::.:::.:}}≠======--、:}
弋彡'iゞr-=彡 f⌒ハ
レ;;公^;ヽ . : :.: :. r' リ
爪rェェ弍 . : :.: :.:::.r-イ
川ーニ´jj{ . : :.: :.:: : イ
巛爪z从} ∠ニ=ヘ
ゞ巛巛lリ _ _,∠二二、\
 ̄ {/ ̄ \ \
/ ヘ. ヘ
/ ∨ ,ハ
{ __ 「::レフ r::v‐ァ く::∨ '、
/(::c' |:::;〈 〉:::/ `ヘ |
{ヘ `¨└^¨ `¨´ Y' | |
/.ハ | | |
月報前ですもんね
乗るしかない このビックウェーブに!
レナス、レザード、ソフィア、クリフ、ガウェインを予約します
- 388 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 20:05:32 ID:rgGRYbvz0
- >>378,>>386-387
これはなんという予約祭り……
wktkが止まらない!
ここで、>>183と>>187-188からの進展をメモしてみる
【鷹野神社付近(G-06/真夜中)】
・クロード 、IMITATIVEブレア
一路鎌石村へ。
クロードの持つエネミーサーチが明暗を分ける……のか?
【氷川村(I-06/夜中)】
・アルベル、プリシス
壮絶な戦闘の果てに生き延びた2人。
早くレナ&レオン組に追いついて首輪の解析を進めたい所。
これで放送後、全員が何かしらの話に登場した事になるのか?
今までの進展と予約の状況から、鎌石村と平瀬村がカオスの予感
- 389 名前: ◆Zp1p5F0JNw :2008/09/10(水) 21:01:31 ID:CQWJlReXO
- 急に予約祭りとは期待せざるを得ない。
この流れに乗って自分も…と言いたいけど没スレに落としておきますぜ
- 390 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 21:04:38 ID:CQWJlReXO
- …さらに没スレ落とそうかと思ったけど投下来るまで待ってます
- 391 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 03:52:24 ID:MJTzYtBEO
- 何という書き手お帰りな祭
これはwktkせざるを得ない
しかし中盤ながらAAAは新規書き手を募集してるんだぜ!
書き手をやってみたいと悩んでる人はレッツトライ!
ラジアータ組辺りを書くと特に喜ばれると思います。
さあみんなで放送まで盛り上げていこう!
- 392 名前: ◆yHjSlOJmms :2008/09/13(土) 00:50:15 ID:T/TsUqCd0
- すみません予約キャラにブラムスを追加させて下さい。
ってかなんでいきなりこんな勢いにw
>>386-387両名に期待ッ!!
- 393 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 04:10:30 ID:UqFec2TK0
- 相変わらずスロークイックなロワだからなw
誰かが予約をすると途端にクイックが始まるのはいつものことさw
- 394 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 20:16:45 ID:lDIZ/dDK0
- 盛 り 上 が っ て ま い り ま し た !
そういえばなかった事になったから100話取合戦再来だったんだな
この流れは期待せざるをえないッ!
- 395 名前: ◆Zp1p5F0JNw :2008/09/14(日) 00:17:17 ID:gJUxP3SB0
- 残念ながら俺は予約祭りに参加できないから支援に徹するぜ…
てな訳で久々の地図をドゾー
ttp://takukyon.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/free_uploader/src/up0010.jpg
- 396 名前: ◆Zp1p5F0JNw :2008/09/14(日) 00:18:11 ID:gJUxP3SB0
- 鳥消し忘れた…鬱だ死のうorz
- 397 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 00:18:26 ID:Wo40bNm30
- 地図すげえええええええ!
感謝しまくらざるをえない
そしてwiki収録を考えると月報に反映させるには明日投下しなくてはならないわけか・・・
あばばばばば
- 398 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 01:02:26 ID:Wo40bNm30
- 鳥ドンマイw
そして質問。1エリアの広さって1Kmだったっけ・・・?
テンプレにあった気がしてたけど見つからねえ・・・
あと今更ながら>>2で禁止エリアが3時間ごとになってるのに気付いた
- 399 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 23:20:35 ID:x67QDAYE0
- 今、Wikiで支給品一覧にないアイテムを追加、
説明が書けそうなアイテムに説明をつけようと思うんだが、
!ダイヤモンド以外にまだ追加されていないアイテムはあるかな?
- 400 名前: ◆yHjSlOJmms :2008/09/15(月) 23:56:48 ID:TKnTjyr20
- ふぅ、期限ぎりぎり間に合ったみたいです。
>>395地図ありがとうございます。早速活用させていただきました。
それでは投下行きます↓
- 401 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 23:59:23 ID:JR2vlgUqO
- 100話はyH氏か!
支援させていただく
- 402 名前:マッハ中年の葛藤:2008/09/15(月) 23:59:24 ID:TKnTjyr20
- …チリンチリン
ロキは夕日をその背に受けて軽快に舗装された道を走っていた。
昼に遭遇したサメ男以来誰とも遭遇することもなく、それはそれは順調なサイクリングだった。
この自転車(彼はこの自転車をスレイプニールと名付けていた)を駆って早10時間以上。
ロキは自身の運動能力を最大限に生かしいくつか自転車にまつわる特殊な走法をマスターした。
初めはバランスをとって走ることすら間々ならなかった彼だが、
今となってはハンドルから両手を放し体のバランスだけで自転車を走らす事も可能としていた。
ハンドルから放したその両手には沖木島の地図が広げられている。
(ここは大体D-2の辺りかそろそろ他の首輪実験もしたいところだな。…ん?)
ロキは眼前に割りと急なカーブを見つけた。
(あれを試してみるか…)
少し前に走った急な坂道で、彼は左ブレーキだけをかけた時に自転車の勢いで後輪が滑ってしまった。
だが、ロキはそのおかげで90度近いカーブを華麗に曲がることができたのだ。
彼はカーブを目の前にして地図をデイパックの中にしまいハンドルを掴むと、自転車のスピードを落とすことなく逆に加速させた。
そしてカーブの入り口に差し掛かった直後
(ここだ!!)
両の眼を見開き、ロキは左ハンドルのブレーキのみを作動させた。
ズザザーーーッ
後輪が滑り、舗装された道によって削られたゴムタイヤが黒いアスファルトの上に尚黒い軌跡を残す。
傾きがきつくなった自転車を無理やり起こしバランスを整える。
転倒しそうになっていた自転車を見事起こして、何事もなかったようにカーブを抜けた道を走らせた。
(成功だ!)
…チリンチリン
高難度の走法を成功させた祝福の鐘として、ハンドルに備え付けてあるベルを鳴らす。
(なんと心地の良い鈴の音だろうか。やはりこの乗り物は格別だな)
ちらりと時計を確認すると、まもなく18時を迎えようとしていた。
…チリンチリン
もう一度鈴の音を鳴らすと彼はいったん第二放送に備えるべく自転車から降りた。
(さて…この6時間で何人死んだのかな?)
- 403 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 00:00:05 ID:x67QDAYE0
- リアル投下来る!
作業中ですが支援体制はいります
- 404 名前:マッハ中年の葛藤:2008/09/16(火) 00:02:30 ID:TKnTjyr20
- (確か鈴の音が聞こえてきたのはこの辺りの筈だが…)
舗装されている道から少し外れた位置にある高木の影に身を潜めるエルネスト。
そこならば舗装された道からは死角になる、その上その人物を100m以上監視できるはずだ。
…チリンチリン
(近いな…、だがおかしい。さっき聞こえた位置と比べるとはるかに近い。この音を出している者は徒歩ではないのか?)
ズザザーーーッ
鈴の音とは異なる音とともにそいつは視界に現れた。
曲がり角をドリフト走行して飛び出す自転車。
そしてその自転車の運転席には褐色の肌をした青年が跨っていた。
普通の人間だったらその光景を目の当たりにしたら、
『なんでいい年した兄ちゃんが華麗にママチャリでドリフトかましていい顔してんだ?』となっていただろう。
だがエルネストは違っていた。
彼の中に宿った野生の勘とも言える第六勘が『あいつはやばい!逃げろ!』と告げていた。
もちろんその勘は『あの青年は痛い奴だ。係わり合いになる前に逃げろ』といった類のものではなく、
純粋にとてつもない戦闘能力を秘めた化け物だと彼を認識しての警告だ。
確かにこの勘は外れることも間々ある。
だが、数多の未開惑星の遺跡を探索し、今もまだ無事に生きていられているのはその勘のおかげであると言っても過言ではない。
しかし、エルネストはそれでもこの青年を判断しかねていた。
なぜなら鈴を鳴らして自分の位置を周囲に知らしめる行為は殺し合いに乗った人間にとって何一つメリットが無いからだ。
他の殺し合いに乗った人間をおびき寄せてしまったり、狩りやすい弱者などからは警戒されてやり過ごされるのがオチだ。
では、鈴を鳴らして移動しているあの青年の真意は何なのだろうか?
ここでエルネストはこの青年は殺し合いに乗ってないとして仮説を立てた。
(もし彼に俺の勘通りの実力が備わっていた場合、鈴の音におびき出される殺し合いに乗った者を返り討ちに出来るだろう。
そして、その鈴の音を頼りに彼に接触を図るであろうタイプが他にもうひとつ。
今の俺の様に接触する人間を分析した上で行動を起こすタイプだ。
つまり彼は協力しあえる人物と接触する為、敢えてこの様な行動をしているのではないだろうか?)
確かに推察の域を出てはいないが、まだ殺し合いに乗っているより乗っていないと考える方が彼の行動に説明がつく。
(一先ず他の二人の事は隠しておいて彼に接触してみるか…)
決断を下し、身を隠していた木陰から出た矢先、その青年は時計を一瞥すると自転車から降りた。
どうやら彼は第二回目の放送に備えるつもりらしい。
(そういえばもうそろそろ放送の時間だったな。彼との接触は放送の後でもいいだろう)
エルネストはそう判断すると再び木の陰に隠れて、褐色青年の監視に注力した。
- 405 名前:マッハ中年の葛藤:2008/09/16(火) 00:04:13 ID:TKnTjyr20
- メモとペンを執りながらロキは自分に注がれる僅かばかりの視線を感じ取った。
(誰かに見られているな…。まったくさっきの放送の時といいどうしてこのタイミングで仕掛けてくるような真似をする輩が多いのか?
まぁ、いいか。さっきのサメ男の時みたいに隙を晒して釣ってやるか…)
見上げると第一の放送の時と同様に空が急に暗転した。
それと同時にこの催しの主催者たるルシファーの声がどこからともなく聞こえてきた。
「フフン…、こんばんは諸君…」
(さて、さっきみたいに誰か知り合いが呼ばれた辺りで動揺して見せるか…)
一人また一人と殺された者達の名呼ばれる中、3番目にレナスがエインフェリアとして勧誘したメルティーナの名があった。
確か彼女は珍しいことにヴァルハラ行きを頑なに拒み続けている人物だった。
(面識など無いが、他に知った名前が呼ばれるかわからんし頃合いだな)
「なっ…、メルティーナがっ?そんな!?」
(さぁ、今の俺は隙だらけだぞ。来るならさっさと仕掛けて来い)
だが、一向に監視をしている人間が仕掛けてくる様子が無い。
(しまった。少しばかりわざとらし過ぎたか)
名前が呼ばれ続ける中どうしたものかと考えていたロキだったが異変が起きた。
死亡者の名前が最後まで読まれた直後、今まで居場所を察することが出来なかった監視者の気配を感じることが出来たのだ。
(へぇ、あんな所から俺を見張ってたってわけか。
今までうまいこと気配を隠してたってのにばらしちゃって…。差し詰め誰か大事な人でも呼ばれたってところかな)
再び愛車(スレイプニール)に跨ると気配がした方向を進路にとりペダルを漕ぎ始めた。
- 406 名前:マッハ中年の葛藤:2008/09/16(火) 00:05:46 ID:p+BDacQ00
- (オペラが…死んだ…?)
無情にも知らされた愛する女性の死。
その事実を突きつけられエルネストの思考と視界は一瞬真っ白になった。
ここで今自分が何をしていたのかさえ忘れてしまっていた。そう気配を隠すことさえも。
(オペラ…くそっ!誰だ?誰があいつを…。なんで…傍にいてやることが出来なかったんだ…畜生!)
今彼の思考を支配しているのは顔も知らないオペラを殺した相手への憎しみのみ。
そんな負の感情で満たされていた彼の頭の片隅からなにかが警告した。
すぐさま頭の中を切り替える。確かにオペラの死は辛いが、今は他にも成すべき事があるのだ。
咄嗟に顔を上げると残り数十mまで迫っている褐色の青年の姿が目に入る。
逃げようかとも思ったが、相手が自転車に乗っている以上逃げ切るのは困難だと判断し、クラースから借りていた大剣を構える。
「やぁ、さっきから俺をジロジロと見ていたのはあんただね?」
不敵な笑みを浮かべて青年が声をかけてきた。
こちらが武器を構えているというのに、素手のままこちらに歩み寄ってくる。
やはり殺し合いには乗っていないのかとも思ったが、俺の勘は依然と『逃げろ』と告げている。
額からは冷や汗が浮かび、背筋も氷かなにかを突っ込まれたようにゾッとしっぱなしだ。
「オイオイ、そんなに警戒することも無いじゃないか。こっちは見てのとおり素手だし、あんたを襲う気なんてないよ」
笑顔でそのように言い放つ彼は一見無害な好青年に見える。
(やはり俺の勘が外れているのか? とりあえずこいつの出方を待つか)
「そうか済まなかったな。少し前にとんでもなく強い奴と出くわしてな。どうも疑心暗鬼に駆られていたらしい」
一先ず剣を降ろし敵意が無いことを示した。
「そうかい? それは災難だったね…。ところで俺は信用してもらえたと考えていいのかな?」
「あ、あぁ…」
(俺の思い過ごしだった様だな…。とりあえず二人の所に戻って情報交換だな)
「実は同行者がいるんだ。俺達はここからの脱出を目指している。
だが正直戦力的にはまだ心許なくてな。協力してくれると助かるのだが…」
「協力か…。あんた達が掴んでる情報次第かな? まぁ、善処はするよ」
人懐っこい笑みを返してきた青年を伴いエルネストはフェイトたちが待つ方向へと歩いていった。
- 407 名前:マッハ中年の葛藤:2008/09/16(火) 00:08:15 ID:p+BDacQ00
- 「どういうことだ?」
第二回目の放送を聴き終えるや否や開口一番ミカエルはこう呟いた。
少し前に殺した茶髪野郎の名前が今の放送で呼ばれていないのだ。
交戦直後確かにあの男はルシオと呼ばれていたはずだったのだが…。
参加者名簿を改めて確認すると当然のようにその名前があった。
「つまり、仕留め損なったってことかよ?オイ!」
先ほどまで彼の中を満たしていた満足感が見る見る消えていき、代わりにグラグラと煮えたぎったイライラ感が募ってきた。
近場にあった電柱に一発鉄拳を食らわしへし折る。
当然この程度で彼の腹の虫が納まるわけではないが沸騰しかかった頭で現状を整理する。
(クソッ、あの野郎に一杯食わされたってわけか…。しかしどうすっかね?
昼前からここでずっと獲物を探しているわけだが見つけた獲物は二組だけ。
そのどちらからも逃げられたって事か。あぁぁぁぁっ! クソッ。ここでの狩りは止めだ。
さっきの奴らもここに留まっている可能性が高いわけでもない。次の狩場に行くか)
ミカエルは目的地を選定するために、デイパックから地図を取り出した。
(さて、ここからだと氷川村も鎌石村も距離的には大差ないわけだが…。
どっちの方が獲物が多いか…。おおっと、そういやまだ禁止エリアを書き込んでなかったな)
地図とにらめっこしながら、ペンで禁止エリアとなる位置に×マークと時間を書き足していく。
そうして完成した地図を見てミカエルは閃いた。
鎌石村がC-5とD-4の禁止エリアでまるで袋小路の様になっているのだ。
(てぇことはだ。鎌石村から出て行く奴はC-3の南か西から延びている道を使う可能性が高いわけだ。
ついでに鎌石村で出くわした獲物の北側は海で、東側と南側は禁止エリアで封鎖されている。
こいつは絶好の場所だぜ。ここからだと北に続く道を使うのが一番近いな)
いそいそと地図をデイパックの中にしまうとミカエルは平瀬村を後にした。
【F−2/夜(放送直後)】
【ミカエル】[MP残量:30%]
[状態:頭部に傷(戦闘に支障無し)、軽い疲労、]
[装備:ウッドシールド@SO2、ダークウィップ@SO2(ウッドシールドを体に固定するのに使用)]
[道具:魔杖サターンアイズ、荷物一式]
[行動方針:最後まで生き残り、ゲームに勝利]
[思考1:どんな相手でも油断せず確実に殺す]
[思考2:狩場を鎌石村に変更]
[思考3:使える防具が欲しい]
[現在位置:F-2南東部、平瀬村]
[備考]:デコッパゲ(チェスター)は死んだと思っています。
- 408 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 00:09:59 ID:cf/BUM510
- 支援
- 409 名前:マッハ中年の葛藤:2008/09/16(火) 00:10:12 ID:p+BDacQ00
- □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
放送終了後まもなくエルネストは見知らぬ青年を連れて戻ってきた。
こうして連れて来るのだから危険は無いのだろう。
同行者が増えること自体は悪くない。
ミカエルのような奴に襲われても私の生存率が上がるからだ。
私の目標は生きて元の世界に帰ることだ。
フェイトやエルネストと共にルシファーを倒して帰ろうが、最後の一人になって帰ろうがどちらでも構わない。
そう、手段は問わない。最終的に私が生きていればそれでいいのだ。
だから私はこの青年を歓迎しようとした。しかし突如として私の頭の中に声が聞こえてきた。
その声は私が契約した精霊達のリーダー格オリジンのものだった。
(おい、クラース。こいつはまずい。関らない方が良い)
(何を言い出すんだいきなり。見た所ただの好青年じゃないか。何の問題があるのだ?)
(人間である貴様では感ずることが出来ないのだろうが、あいつは神族だ。
確かに今は能力の制限とやらで抑えられてはいるが、本来ならばダオスクラスの能力を有していてもおかしくない相手だ)
(ダオス並みの人物がいることは先のミカエルで確認済みだ。いまさら驚く事ではない。
それに彼は殺し合いに乗ってはおらず、私達と情報交換をしたいと言ってきているだけだ。
まぁ、警戒するに越したことはないが…)
「おいっ、聞いているのかクラース」
オリジンとの会話に意識を割きすぎたからか、自分に話を振られていたのに気づかなかったらしい。
「すまん、まだちょっと疲れているみたいだ。もう一回頼む」
声の主エルネストの方に向き直り内容を聞き返す。
「今後の我々の目的地の事だ、どうやらロキの情報では鎌石村は危険らしい。なんでも自転車で通過する際2,3人の死体を見たそうだ」
「だが、フェイトの傷の治療もせねばなるまい。となれば、進路を変えてホテル方面か?」
正直フェイトの事などどちらでもよかったが、話を合わせるには無難な回答だろう。
「やはりそうするしかないな。フェイトもそれで良いか?」
「はい。なにも自ら危険な場所に向かう必要なんてありませんしね」
フェイトもエルネストに同意した。
「さて、では今度はこっちの番だよな? あんた達が持っているって言う情報を教えてもらおうか?」
まぁ、目的地が危険だったってことを教えてくれただけでもありがたい。
こちらが持っている価値ある情報はフェイトのルシファーに関するものだけだ。
それもあまり希望の持てる情報とは言えないが。
「それに関してはフェイトから聞いてくれ」
エルネストに促されフェイトが口を開いた。
- 410 名前:マッハ中年の葛藤:2008/09/16(火) 00:11:28 ID:p+BDacQ00
- □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
こいつらと出会って漸く情報が手に入ると思ったら言うに事欠いて
『ルシファーはこの世界の大元を作った創造主です』と来たもんだ。
俺の教えた情報も嘘八百もいいところだから、お互い様といえばそうなのだが釈然としない。
だがまったくの与太話と判断するわけにも行かない。
世界を作ったのがルシファーだとは思えないが、少なくとも複数の世界を繋ぐ事の出来る技術を持っている様だ。
でなければ、今ここで顔を合わせている連中の異質さの説明が出来ないからだ。
最初に遭遇したエルネストと名乗るおっさん。
一見すると昼間殺したサメ男の着ていた丈の長い上着を羽織っており、
その上着はミッドガルドやヴァルハラでは見かけない生地で出来ている。
そして極めつけは額にある第三の目。
不死者にならあのような異形の者もいるかもしれないが、やつは間違いなく生きている人間だ。
服装に関してはフェイトも同様のことが言えるが、明らかにこれも素材からして俺の知らない物質で出来ている。
最後にクラースと呼ばれたおっさん。
こいつの服装は割りとミッドガルドでも見かけそうなものだが、奴の中から漂ってくる人ではない者が放つ魔力。
この感覚は高位な精霊の物である事は間違いないのだが、少なくともこれほど高位の精霊を使役する術を俺は知らない。
だから認めなくてはならない様だ、異なる技術体系を持った世界の存在を。
だが、フェイトの奴が持っている情報を全て話したとは考えにくい。
現に何度かなにかを言いかけ、ためらった末に口籠る事があった。
きっとその言いかけた事がこの男の持つ真の情報に違いない。
だから俺は辛抱強くフェイトにもう一度問う事にした。
「本当にこれで君の知っている事は全部なんだね?」
俺が何とか怒りを表に出さない様、どうにかこらえて出した質問にこいつはしれっとこう答えた。
「はい、そうです」
ほう、まだ出し惜しむつもりかこのクソガキが。
どうやら痛い目を見ないとわからないらしいな。
直ぐ手に取れる位置に置いてあったデイパックから武器を取り出しフェイト目掛けて振り下ろす。
殺してしまっては聞き出したい情報も聞き出す事が出来なくなるので左肩を狙った。
だが俺の一撃は、エルネストによって阻まれた。
- 411 名前:マッハ中年の葛藤:2008/09/16(火) 00:14:05 ID:p+BDacQ00
- □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
突如として場の空気が変わった。
フェイトに「本当にこれで君の知っている事は全部なんだね?」と聞いたロキの様子がおかしかったのだ。
その質問に肯定の意を返したフェイト目掛けて斧が振り下ろされる。
どうやら俺の勘は正しかったみたいだ。
頭の片隅で未だにロキを警戒していたからこそ素早く反応する事ができた。
脇においてあった剣を拾い上げこの一撃を受け止める。かなり重い一撃で腕がしびれたが何とか防ぐことが出来た。
このロキの行動に二人もすぐさま臨戦態勢に入る。
「へぇ、まさか受け止められるとは思っていなかったよ」
「やはり殺し合いに乗っていたのか?」
剣で斧を弾き距離を開ける。3対1だというのにロキの表情には余裕があった。
「バカ言うなよ、ルシファーの野郎が気に入らないのは本当さ。だから、戦った事があるフェイトの持つ情報が欲しい。
まだ何か知っているみたいだけど、あれだけ頼んでも教えれくれなかったからね。
ちょっと痛い目を見てもらう事にしたんだけど…。邪魔だからおっさん達には死んでもらおうか!」
言い放ったロキの足元から歪な影が俺達3人目掛けて伸びる。
何とかその攻撃を散開することで回避した。
着地後一息付くような余裕は無かった。クラース目掛けてロキが風のような速さで接近する。
この中でクラースだけ武器を持っていない。つまり奴の攻撃を受け止めることが出来ない。
急いで割って入ろうとしたが、奴から伸びる影に阻まれた。
「ちっ! クラース逃げろ!」
しかしクラースはその場に立ち尽くしたままだ。
だが、クラースが手をかざした瞬間体全体が水で出来た女性の人影が現れた。
その女性が手にした剣でロキの斧を受け止める。
「やれ! ウンディーネ!」
クラースの号令を受けてウンディーネは剣を振り上げてロキを弾く、
後方に吹き飛ばされたロキに地面を滑るように移動するウンディーネが追撃の二太刀目を浴びせようと迫る。
「甘いんだよっ」
振り下ろされる剣撃を掻い潜りすれ違いざまに斧による一撃でウンディーネが真っ二つにされた。
「なるほど、確かに基は高位な精霊かもしれないけど現世で発揮できる力は、
術者の精神力に依存するみたいだな。この程度なら何匹出て来てもわけないね」
嘲笑うかの様なロキの発言に舌打ちを返すクラース。
クラースの召喚術はセリーヌやレオンの紋章術と比べても遜色ないはずなのにああも簡単にあしらうとは。
(このままでは全滅の危険がある。どうにか隙を作らなければ…。だが、あいつには自転車がある以上振り切るのは困難か)
撤退の策を練っていた俺にフェイトが叫んだ。
「エルネストさん! クラースさん! 援護をお願いします!」
見るとフェイトは赤紫色のオーラに包まれていた。
何をするつもりかわからないが、なにか策があるのだろう。
(ならば俺のする事はただひとつだ。
不慣れな武器を持っている時点で出来る事は限られているが、一瞬でもロキに隙を作る事が出来れば…)
- 412 名前:マッハ中年の葛藤:2008/09/16(火) 00:15:24 ID:p+BDacQ00
- □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
今の僕に出来る事は限られている。
さっきの影みたいな遠距離攻撃を持っている相手に今の足の状態じゃ得意の接近戦に持っていく事すら出来ない。
向こうもそれを理解しているはずだ。僕の事を接近される前に迎撃可能だと。
けれど、本当はそうじゃない。
この技は準備がいるけど、発動さえ出来ればある程度の距離を一瞬で詰める事が出来る。
3対1の状態でああも余裕を見せ付けてくるロキは、こちらを甘く見ていると考えて間違いない。
その油断に付け込む事が今の僕達にある僅かな勝機だ。
エルネストさんが懸命にロキに食らい付いている。
その剣閃はすべてロキに見切られ最低限の動きでかわされているが、ロキの行動を大幅に制限していた。
「下がれ! エルネスト! 行け!ノーム」
エルネストさんが退避するのを待ってから、クラースさんが呼び出した謎の細長い生物がミサイルの雨となりロキに襲い掛かった。
巻き上がる土煙でロキの姿が完全に隠れる。
だが、相手もそれは同じ。あの弾幕の中では下手に動く事も出来ないはず。
そんな中僕が目の前に突如現れるなんて思っていないだろう。
『ストレイヤー・ヴォイド!』
体の回りのオーラがより一層濃くなり僕の姿が見えなくなる。
否。その場から消えたのだ。
この技は瞬間移動を可能にする技だ。移動先は先程までロキがいた場所。
移動直後の僕の視界には予定通り奴がいた。僕の突然の出現に驚きを隠せない様子だ。
「だああぁぁぁぁっ!」
強化型鉄パイプを握り締め横薙ぎに一閃する。
完全に意表をついた一撃だったのに、僕の一撃は彼の持つ斧で受け止められてしまった。
(くそっ、なんて奴だ。だけどここで諦めるわけには!)
ここまで接近できるチャンスは二度と来ないかもしれない。
すぐさま連撃へと繋げる。振りぬいた鉄パイプで斧のブレード部分に罅が入った。
『ヴァーティカル』
鉄パイプに闘気を纏わせ、全力で振り上げる。
巻き上げたオーラと共にロキの体がを打ち上がる。
『エアレイド!』
それと共に跳躍し続けざまに闘気を叩きつける。
「ぐわっ!」
流石にこれはダメージがあるようだ。奴の斧も僕の一撃で砕け散っていた。
(よし! あと一息。一気に決める)
ぶっつけ本番になるけれど、僕の遺伝子に刻まれた『ディストラクション』の力を解放する。
ルシファーの言っていた制限が気にはなるけれど、ここで倒しきれなかったら僕達に勝ち目は無い。
先程とは異なり僕の体からは眩い白銀のオーラが迸る。
そのオーラを右の拳に集約させ、バンデーンの戦闘艦ですら沈める破壊の光をふらつくロキに叩き込む。
『イセリアル』
(ほぼゼロ距離。これで!)
蓄積させた『ディストラクション』の力を解放させようとしたその刹那。
突如フェイトの視界がブラックアウトした。
ルシファーの課していた制限は、予想通りフェイトやマリア、ソフィアに対しては厳重にかけられていた。
一定以上のレベルでその力を解放しようとすると、
力を暴走させて彼らに本来備わっているリミッターを強制的に発動させて意識を奪うように細工をしていたのだった。
(くっ、一体どうしたって…言うんだ…?)
その事実を知る由も無いフェイトは浮かぶ疑問と共にその場に崩れ落ちた。
「エルネストさん…クラースさん…。逃げ…」
- 413 名前:マッハ中年の葛藤:2008/09/16(火) 00:18:28 ID:p+BDacQ00
- □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
(仕留め損なったか…。だがロキにもダメージがある。フェイトには悪いが撤退させてもらう)
「エルネスト! ここは逃げるしか…」
幸いフェイトがロキを吹っ飛ばしたおかげで、自転車からの距離が離れている。
「お前だけでも行け。俺はフェイトを助ける」
「バカを言うな。俺達だけではどうしようも出来ない事位判っているだろう」
「問答している時間は無い。どちらにせよ足止めしなければ逃げ切れないんだ! 行け!」
(クソッ、どいつもこいつも…。まぁいい元よりそのつもりだ。
後ろ髪を引かれる思いではあるが自分の命には変えられん)
自転車の方向に走るついでに自分の荷物と、近場に転がっていたバックから飛び出た棒状の物を拾い上げる。
(これは!? いや、先ずは逃げるのが先決だ)
南側に行ったところで平瀬村しかなく、そこにはミカエルがいる。
北にある鎌石村もロキの話が真実ならば危険極まりない場所だが、
ロキの言っていた事は嘘である可能性のほうが高い。
自転車に跨り北に退路を取ると、クラースは盗んだ自転車で走り出した。
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
「フン、手間取らせやがって」
毒突くロキの足元には戦いの末敗れた二人が転がっていた。
しかし、この二人の肩は微かに上下している。
この二人はまだ生きているのだ。
なにもロキの気まぐれから生かされたわけではない。
どうしてもフェイトの知る情報を全て吐き出させたかったのだ。
その為にはどの様な手段が有効なのかとロキは考えた。
(おそらくこいつは痛めつけても、全てを吐かないだろう。そういった不屈の意志のような物が垣間見えたからな。
では、どうするか? そのヒントはこいつが意識を失う前に発した言葉だ。
あの瞬間確かにこいつは、おっさん共に逃げるように言い放った。
こういったタイプの人間はレナスが連れてきたエインフェリアにも多くいた。
このタイプの人間は自分よりも誰かが傷つく事を嫌う。だからこのおっさんも生かしておいたのだ。
フェイトの奴が意識を取り戻したら、目の前でこのおっさんを少しずつ解体してやる。
そうすれば今まで屈する事の無かったこいつの意志も必ず崩れるはずだ)
バックより取り出したザイルで二人を離れた位置に拘束するとロキはフェイトが目を覚ますのをじっくりと待ち始めた。
- 414 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 00:18:49 ID:EMZhVJ10O
- 支援だよ
- 415 名前:マッハ中年の葛藤:2008/09/16(火) 00:19:37 ID:p+BDacQ00
- 【エルネスト・レヴィード】[MP残量:100%]
[状態:両腕に軽い火傷(戦闘に支障無し、治療済み)ザイルで拘束中 気絶中]
[装備:無し]
[道具:無し]
[行動方針:打倒主催者]
[思考1:仲間と合流]
[思考2:炎のモンスターを警戒]
[現在位置:D-2北部、道から少し外れた森の中]
【ロキ】[MP残量:90%]
[状態:正常・自転車マスターLv4(ドリフトをマスター)]
[装備:グーングニル3@TOP]
[道具:10フォル@SO、ファルシオン@VP2、空き瓶@RS、スタンガン、ザイル@現実世界、首輪、荷物一式×2]
[行動方針:ゲームの破壊]
[思考1:レナス、ブラムスの捜索]
[思考2:見つけ次第ルシオの殺害]
[思考3:首輪を外す方法を考える]
[思考4:一応ドラゴンオーブを探してみる(有るとは思っていない)]
[思考5:自転車(スレイプニール)を盗まれてちょっとショック]
[思考6:フェイトが目を覚ましたらエルネストを痛めつけフェイトから情報を引き出す]
[備考1]: フェイト、エルネストの装備と支給品はその場に放置されてます。
[備考2]: ストライクアクス@TOPは破壊されました。刃部分の破片が辺りに散らばっています。
[現在位置:D-2北部、道から少し外れた森の中]
- 416 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 00:20:40 ID:0WR5EiRA0
- ロキてめええええええ!
しえん
- 417 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 00:23:38 ID:cf/BUM510
- 更に支援
- 418 名前:マッハ中年の葛藤:2008/09/16(火) 00:25:29 ID:3ODqTwdQ0
- □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
「ここまで逃げれば安心か…」
慣れない道具だったがかなりのスピードで移動できた。
とりあえず距離だけは稼げたはずだ。
短い付き合いだったが、あの二人は純粋にいい奴らだったと思う。
フェイトからはクレスに似た真っ直ぐな正義感そして、どんな逆境にも諦めずに抗い続ける不屈の心を感じた。
エルネストは年を食っている所為か妙な落ち着きのような物があり、
彼から聞いた仲間の話から察するに年長者として大いに頼られていたであろうことが推察できた。
どことなく自分とクレス達の関係に似ていたのではないかと思う。
そんな二人を見殺しにしてよかったのか?
(私の目的はあくまで生きて元の世界に帰る事。そればかりは譲るつもりなどない。
だが、フェイトの話通りならルシファーを倒すには彼の持つ力が必要なはずだ。
ここで見捨てる事で、エルネストの様に主催者に抗おうとしている者達の希望の芽を摘んでしまっていいのだろうか?)
正直なところこの様な会を催したルシファーは大変気に入らない。
出来る事ならルシファーの鼻を明かした上で元の世界に帰りたかった。
今更悔やんでも仕方のないことかもしれないが、実を言うとフェイトはまだ生きている可能性がある。
ロキがフェイトの持つ情報にこだわっていたからだ。
それを吐き出させるまで、生かされているに違いない。
もちろんロキの沸点の低さは先程垣間見たとおりだ、いつまでも続く物ではないという事も判っている。
それでも急いでこの自転車か、あわてて拾ってきたこのアーチェが使っていたデッキブラシを使えば、駆けつける事が出来るかもしれない。
深い葛藤の中暗い夜道を自転車で走り抜ける。
(助けに行くのならば私一人ではどうにもならない。かといって時間もない。
ならば今から30分以内に協力してくれそうな人間を見つける事ができれば戻ってみよう)
(相変わらず甘いなクラース)
そうやって語りかけてきたのは精霊オリジンだ。
(わっ私はただ合理的な判断を下したまでだ。現状持っている情報ではルシファーを倒すにはフェイトの力に頼らざるを得ないのだからな。
それに優勝してルシファーから逃げ帰るような真似をするより、あいつを倒して帰った方が後味がいいに決まっているからな)
(まぁ、そういうことにしておいてやる。ただお前がそういう人間であるから、喜んで力を貸している精霊もいる事を忘れん事だ)
(////っいいから必要な時以外黙ってろ!)
「うぉっ!」
暗い夜道をヘッドライトも点けずに、しかもオリジンと話していたのがいけなかったのか何かと正面衝突してしまった。
自転車からは投げ出されてしまったが幸い怪我をする事はなかった。
気を取り直して起き上がり、ぶつかった何かを確認してみた。
「!!」
ぶつかったのは物や何かではなく人だったのだ。いわゆるひとつの交通事故である。
しかしクラースが驚いたのは事故ってしまったからではなかった。
自転車で轢いてしまった人物の風貌があまりにも異質であったからである。
その顔には木製のなにやら能面のようなものが装着されており頭頂部は禿げ頭のカツラ。
体は僧侶が纏うような法衣に包まれ、
その手に握るイチジク形の入れ物からは一目見ただけでもTHE・劇物と判るような色をした液体が漏れていた。
こんな彼?でもおしゃれには気を使っているのか、首からはダイヤモンドの指輪に紐をつけたものをぶら下げていた。
(なんだ? こいつは? 取り敢えず助け起こした方がいいのか?)
クラースはたった今出会ったこの不審人物にどう対処しようか迷っていると、
その不審者はムクリと起き上がり、その無表情さが怪しさを引き立てている仮面をこちらに向け口を開いた。
「すまぬ。少しばかり気分が高揚していてな。周囲を気にかけずに走り回ってしまっていた。そちらに怪我などはないか?」
そう言いこの変態は立ち上がると聞いてもいないのに自己紹介を始めた。
「我は不死者王ブラムス。そなたと同じこの殺戮ゲームの参加者だ」
(不審者王? 一応自分の姿を鏡で見た事はあるんだな)
と、クラースの中でオリジンがつぶやいた。
(おいっ! 呼んでもないのに出て来るなと言っただろう。そんな事よりも困ったぞ。
人を探してはいたが、まさか一発目にこんなわけのわからん変態と出くわすとは…)
- 419 名前:マッハ中年の葛藤:2008/09/16(火) 00:26:06 ID:3ODqTwdQ0
- 【C−04/夜中】
【クラース・F・レスター】[MP残量:70%]
[状態:正常]
[装備:無し]
[道具:薬草エキスDX@RS、自転車@現実世界、デッキブラシ@TOP、荷物一式]
[行動方針:生き残る(手段は選ばない)]
[思考1:目の前の不審者王の対処]
[思考2:ゲームから脱出する方法を探す]
[思考3:脱出が無理ならゲームに勝つ]
[思考4:30分以内に協力者を見つけられたらフェイトたちの元へ戻る]
[思考5:思考4が満たされなかった場合はフェイト達の事は諦める]
[現在位置:C−4西部、鎌石郵便局付近の十字路]
【ブラムス】[MP残量:100%]
[状態:変態仮面ヅラムスに進化。本人はこの上なく真剣に扮装を敢行中]
[装備:波平のヅラ@現実世界、トライエンプレム@SO、袈裟@沖木島、仏像の仮面@沖木島]
[道具:バブルローション入りイチジク浣腸(ちょっと中身が漏れた)@現実世界+SO2
ダイヤモンド@TOP、ソフィアのメモ、荷物一式×2、和式の棺桶@沖木島]
[行動方針:情報収集(夜間は積極的に行動)]
[思考1:鎌石村に向かい、他の参加者と情報交換しながらレナス達の到着を待つ]
[思考2:敵対的な参加者は容赦なく殺す]
[思考3:直射日光下での戦闘は出来れば避ける]
[思考4:フレイを倒した者と戦ってみたい(夜間限定)]
[思考5:目の前の刺青鳴子男と情報交換]
[現在地:C−4西部、鎌石郵便局付近の十字路]
- 420 名前: ◆yHjSlOJmms :2008/09/16(火) 00:29:38 ID:3ODqTwdQ0
- さるさん食らったんで繋げ直してました。
投下終了であります。
話の構成とか微妙ですが、こんなんで100話とって良いのかな?
今後の展開の幅の広さを重視して作ってみました。
- 421 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 00:32:01 ID:cf/BUM510
- >>400
投下乙!
最後の最後で思わず爆笑してしまったwwwww
不審者王自重!
そういやここで「!ダイヤモンド」とオリジンのフラグが立つのか?
- 422 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 00:33:50 ID:EMZhVJ10O
- 投下GJ!
やっとこさ100話突破だおめでとーう!
つーか不審者王www
- 423 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 00:38:43 ID:0WR5EiRA0
- 投下GJ!
ツンデレ中年が不審者王と遭遇したことでオリジン活躍フラグが立った……のか?
そして相変わらずロキは外道でいいなw
ミカエルが参戦したらなおさらカオスになりそうだしなー
そういえば獲物の仕留めそこないにようやく気付いたんだなミカエル
総勢7名を仕留め損ねるって結構すごいことだよな・・・w
OPにも出たフェイトが戦闘で活躍していたし、100話にふさわしかったんじゃないかなあと思います
- 424 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 00:39:28 ID:xLqi6/jn0
- 寝る前に支援!
- 425 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 00:49:54 ID:xLqi6/jn0
- 支援が遅すぎた件について…orz
気を取り直して新作GJ!
ヤバイ話なのに最後のツンデレと不審者王に思わず笑ってしまったw
フェイト達がどうなるのかが恐いなあ…また拷問する気かロキは!?
- 426 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 00:53:22 ID:EMZhVJ10O
- >>425
ドンマイw
しかしロキVSブラムスって何気にもの凄い好カードだよな
- 427 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 00:58:54 ID:cf/BUM510
- >>425
どんまい、気にするこたぁない
>>426
言われてみれば双方ともにほぼ無傷、消耗もほとんどないしな
ここにミカエルが乱入しようものなら、もうカオス極まりないな
そして気付いた、フェイトの状態表がない!
- 428 名前: ◆yHjSlOJmms :2008/09/16(火) 01:05:11 ID:7qSmYyJj0
- 皆さん感想サンクスです。
なんだかんだで住民がいることに感激
>>427うっかりもいいところでした。下の物がフェイトの状態表です。
【D−2/夜中】
【フェイト・ラインゴッド】[MP残量:80%]
[状態:左足火傷(戦闘にやや支障有り。ゆっくり歩く分には問題無し)ザイルで拘束中 気絶中]
[装備:無し]
[道具:無し]
[行動方針:仲間と合流を目指しつつ、脱出方法を考える]
[思考1:ルシファーのいる場所とこの島を繋ぐリンクを探す]
[思考2:確証が得られるまで推論は極力口に出さない]
[現在位置:D-2北部、道から少し外れた森の中]
[備考:参加者のブレアは偽物ではないかと考えています(あくまで予測)]
- 429 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 01:57:25 ID:EMZhVJ10O
- 辞典の仕事早すぎワロタw
そういえば「このロワと言えば○○みたいなのがある方がいい」みたいな話を聞いて思ったんだが、100話突破記念にしたらば辺りで作品投票とかやってみたいなあと思ったり
放送単位で区切って、ついでに過去作へ感想つけたりさ
まあ書き手2ndクラスでも作品投票は賑わわないから難しい気もするけれど
- 430 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 03:06:01 ID:sGyb9Nnx0
- うおおおおおおおおお来てる!!
さて読もう
- 431 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 08:18:55 ID:yYgsnVHOO
- 投票やっても票集まらないんじゃないか?
だったら各々好きな話を何作づつ挙げるとかの方がいい気がする。
できたら好きなキャラなんかもやって欲しいw
- 432 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 19:57:33 ID:argGgoyw0
- >>400
ロキの外道っぷりといい、クラースのツンデレっぷりといい、ヅラムスの変態っぷりといい……
皆いいキャラしやがって!GJ!
今後の展開がものすごく気になるところ
とりあえず分かる範囲で支給品の欄をうめてみた
SO3とラジアータは未プレイにつき、誰か頼んだ
- 433 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 20:02:26 ID:ilbkbr/O0
- 投票も良いけど、書き手にニックネームをつけたりとかは?
書き手ロワの時、AAAロワの参加者はトリのままだったし
- 434 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 21:43:09 ID:0WR5EiRA0
- 支給品の情報更新乙!
死体の状況とかも追えた方が便利そうだから死体でのご出演も追跡表に入れちゃってるけどよかったかしら?
>>433
結局空気の人以外本人に何の関係もないあだ名だったしなw
書き手紹介あだ名付きみたいな感じでここか交流所にでも投下したら喜ばれるんじゃないだろうか
少なくとも俺はにやにやする
前回書き手紹介しちゃったから今回俺はノータッチだけどなー
- 435 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 22:35:14 ID:argGgoyw0
- >>434
編集作業乙です
ちなみに支給品のTOPの項を埋め切れなかったのは、今残っているデータが過去編しかなかった為
畜生、クリアデータは一体どこに行きやがったんだ……
話題の書き手ロワを軽く見てきたんだが、
ヅラがあっちにまで浸透していて、あまりの人気ぶりに嫉妬してしまった
不審者王ヅラムス……恐ろしい子!
- 436 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 23:07:05 ID:0WR5EiRA0
- あー・・・言いだしっぺの法則覚悟で聞いてみるけど、100話超えたし目次の話数表記を3桁(百の位0)にした方がいいんだろうか?
あと他ロワに合わせて各話のタイトル横に作者さん書いた方がいいんだろうか?
名無しの書き手さんが結構な割合でいるのが難点だけど
そしてデータか半分近くパアになったんで延長させてください・・・
保存、大事だね・・・
いきなり流れ切ってすみません
- 437 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 21:36:14 ID:I/94zLMU0
- >>436目次はそこまで見づらいわけじゃないからいいんじゃない?
タイトル横の作者名も目次に作者名記してるから大丈夫かと。
もちろんやってくれるなら大歓迎だけどw
それよりも予約の延長ってことでいいの?
今二人予約してる人いるからどっちの人かわからないっす。
- 438 名前: ◆Mf/../UJt6 :2008/09/18(木) 02:27:46 ID:zSMWIYmP0
- 遅ればせながら新作乙でした、>>428さん。
ところでこのパートはなかなか面白そうなので、丸ごと引き継がせて下さい。
フェイト、エルネスト、ロキ、クラース、ミカエル、それからヅラムスを予約します。
- 439 名前: ◆Zp1p5F0JNw :2008/09/18(木) 08:30:34 ID:EAgEAB7TO
- それなら俺はアルベル、プリシス、レナレオンの予約を頂くぜ
- 440 名前: ◆MJv.H0/MJQ :2008/09/18(木) 20:01:55 ID:Pb8JKpAo0
- >>437
>>436は俺ではないですが、俺も事情により後半部分を現在書き直し中です。少し遅れてしまうと思いますが、勘弁してください。
えーと、予約期限って10日間でいいんですよね?
>>438-439
期待。本当に極端なスロークイックっぷりだなw
- 441 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 21:34:58 ID:AcIBU+yG0
- 更なる予約祭りktkr!
これは更なる期待をせざるを得ないッ!
書き手の皆様、がんばってください
wikiの更新(特に一部キャラの現在状況)、できる範囲でがんばるかな……
- 442 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 22:59:31 ID:0L1JzDLE0
- >>438そう言ってもらえると書いた甲斐があったというもの。
みんなしてロキとヅラムスを応援してるんで、エルネストが死なないように祈ってますねw
>>439おそらく本ロワで一番首輪解除に近いメンバー!期待してます。
>>440と>>436の延長を把握。ガウェインの活躍と洵達の動向に注目してます。
このままの勢いで次の放送まで行きたいですねw
しかし、現在予約者4名とは。一体いつ以来のことだろうか…。
- 443 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/19(金) 00:55:31 ID:u67iDVLB0
- 何とか更新完了
突貫工事だから不備や誤り等あったら指摘とか修正よろしく
>>442
そういやエルネスト、かなりヤバい状態だったんだよな
靴の紐の暗示は、このための伏線……だったのか?
あと、ここまで予約ラッシュなのはずいぶんと久しい気がする
- 444 名前:436 ◆wKs3a28q6Q :2008/09/19(金) 19:05:31 ID:p/zWQ5DmO
- うわ、鳥付け忘れてた……
改めて予約を延長させていただきます、すみません
そしてwiki更新お疲れさまです
- 445 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/21(日) 20:21:38 ID:eDjowTvs0
- 各キャラの戦闘回数調べてみた(不意打ち殺害とかは除外、同じ話数でも状況が変わったりした場合はカウント)
5回 アシュトン (プリシス&アリューゼ、ノートン、メルティーナ&ロジャー、ジャック&アーチェ&ネル&夢瑠、アルベル)
ミカエル (ジェラード、チェスター、フェイト&エルネスト&クラース、洵&ルシオ&ミランダ、ルシオ)
クリフ (ダオス、ダオス、ガウェイン、ルーファス、すず)
4回 アルベル (オペラ、アシュトン、アリューゼ、ガブリエル)
ディアス× (ノートン、オペラ、ガブリエル、ガブリエル)
ダオス× (フレイ、エルウェン、クリフ&ルシオン、クリフ)
ルーファス× (シン、ガウェイン、クリフ&ミラージュ、すず)
3回 プリシス (アシュトン、アルベル、ガブリエル)
洵 (デミテル、クレス&マリア、ミカエル)
ガブリエル× (アリーシャ&セリーヌ&ジェストーナ、ディアス、ディアス&アルベル&アリューゼ&プリシス)
アリューゼ × (アシュトン、アルベル、ガブリエル)
オペラ× (アルベル、ヴォックス、ディアス&レナ)
チサト× (ガルヴァドス、クロード、ボーマン)
すず× (ロウファ&ノエル、ミラージュ、クリフ&ルーファス&レナス&レザード&ソフィア)
- 446 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/21(日) 20:22:41 ID:eDjowTvs0
- 2回 レナ (ノートン、オペラ)
ソフィア (シン、すず)
シン (ソフィア&ルーファス、エイミ)
ロキ (ビウィグ、フェイト&エルネスト&クラース)
クロード (ガウェイン、ガルヴァドス&チサト&チェスター)
ガウェイン (クロード、ルーファス&クリフ)
レザード (エイミ&シン、すず)
フェイト (ミカエル、ロキ)
エルネスト (ミカエル、ロキ)
クラース (ミカエル、ロキ)
リドリー (スフレ&クレア、ミラージュ)
チェスター (ミカエル、クロード)
ガルヴァドス×(チサト、クロード)
ビヴィグ× (ガンツ、ロキ)
ミラージュ× (すず、リドリー)
ノートン先生×(レナ&ディアス、アシュトン)
1回 レオン (アシュトン)
ボーマン (チサト)
レナス (すず)
クレス (洵)
マリア (洵)
ミランダ (ミカエル)
ルシオン× (ダオス)
エルウェン× (ダオス)
アリーシャ× (ガブリエル)
ヴォックス× (オペラ)
ジェストーナ×(ガブリエル)
セリーヌ× (ガブリエル)
ロジャー× (アシュトン)
メルティーナ×(アシュトン)
エイミ× (シン)
フレイ× (ダオス)
ネル× (アシュトン)
夢瑠× (アシュトン)
ロウファ× (すず)
ノエル× (すず)
クレア× (リドリー)
スフレ× (リドリー)
アーチェ× (アシュトン)
ジャック× (アシュトン)
ガンツ× (ビウィグ)
デミテル× (洵)
ジェラード× (ミカエル)
0回 ヅラ
偽ブレア
アドレー×
ミント×
アーチェやボーマンの戦闘数が1回ってのは意外かも。つーか、生存者殺害数2位二人の戦闘数少ない…。
逆にミカエルが意外と戦ってるのにワロタw
戦った人数はアシュトンの10人が最多。さすが。
ちなみに一度に相手にした数が一番多かったのはすずちゃんの5人でした。
- 447 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/21(日) 20:58:48 ID:XgkJmh9SO
- 超GJ!
アシュトンとクリフはさすがだな……
ミカエルは「ああ、幼女殺しててもサラマンダーに思えるわけだよ」って意味でさすがw
逆にリドリーは殺害数はダントツの100パーセントなんだな……
確実に殺そうとして逃がしまくってた奴らは見習えw
ていうか主人公戦闘少ねえwww
時空剣士は勿論、レナスやジャックも1回しか戦ってないのな……
体力は有り余ってそうだし、戦ってこなかった連中は今後に期待……していいのかしら?w
そして ヅ ラ ム ス wwwwwww
- 448 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/21(日) 21:39:57 ID:MnC0y5NB0
- まとめ乙!
ボーマンは間接的に殺しに行ってるから怖いよなぁ
ヅラ以外にも偽ブレアもまだ戦闘していなかったのな
偽ブレアもどっちかというと間接的に殺しに行くタイプだよな
ヅラは……ヅラは……
体力も温存しているし、それ以前にその風貌と変態オーラで敵も(味方も)怯んでしまう
本人としても闘う気は満々なのに、これだから困る
予約状況からそろそろ初戦闘の予感がするが……はてさて、どうなることやら
- 449 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/21(日) 21:45:15 ID:cpGtzeXx0
- ヅラムスww
存在感だけは抜群なのに戦ってすらいないとわw
- 450 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/21(日) 22:55:32 ID:bZXCztd4O
- ヅラムス様、VPのあのカッコよかったあなたに戻って下さいお願いしますマジで
って最初は思ってたんだが、もう慣れちまったわwww
ヅラムス様自身は真面目にやってるつもりだからなw
ツッコミ役不在って本当に恐ろしいな…
万一、誰かの荷物から結晶シルメリアが出てくることがあれば
どんな反応するんだろうな
- 451 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/22(月) 00:05:16 ID:9oZ/7rXn0
- ブラムス「我のヅラネタは108式まであるぞ」
- 452 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/22(月) 00:10:13 ID:Hv3nlZrbO
- 僕の駄洒落も108式までありますよ。
ブラムスさんの戦闘が無いのは、逃げてばかりだからです。
ヅラムスがヅラかる、ナンチャッテ^^
- 453 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/22(月) 00:21:16 ID:qMNjCJh90
- >>452時空剣士乙
お前も人のこと言えんだろうがw
- 454 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/22(月) 00:25:02 ID:ugnQvLrp0
- ヅラの人気にShit!
そしてお決まりの─
>>452
時空剣士自重
お前、チェスターがヤバい状況なの分かってんのか!
- 455 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/22(月) 00:41:02 ID:KuNYM+6/O
- >>452
時空剣士乙
お前ら以外に村にいる奴、お前を敵視したチームだけだぞわかってんのか
- 456 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/22(月) 23:27:01 ID:3kr2y+id0
- >>452-455なんというジェットストリームアタック
- 457 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/23(火) 16:41:31 ID:97bJW6US0
- こうしてみると、時空剣士とヅラは人気者だな
もしキャラ人気投票したら上位に食い込むこと間違いなさそうだ
- 458 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/23(火) 19:44:10 ID:r/d4u9f20
- 時空剣士はロワ内の行動よりも頻繁にスレに現れる事で人気を取ってる気がする…
- 459 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/23(火) 19:48:51 ID:wci3TluyO
- ロワでやったことっつったら、ギャグ言って仲間信じて(んで見事に裏切られてて)誓ったはずが呆然としちゃって洵から逃げただけだもんな……
南にいる反主催集団と混ざるか、北にいる敵対チームとぶつかるかで明暗が分かれそうだ
- 460 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/23(火) 23:15:52 ID:Rq20Hq1Q0
- クレスもマリアも脱出ルートのキーマンだしここから出番増えるでしょ。
…増えるよな?
- 461 名前: ◆Mf/../UJt6 :2008/09/24(水) 01:26:23 ID:Z/Nuld9W0
- それでは、予約分の投下を行おうと思います。
一応これにはタイトルは付けてありますが、タイトルが本編のネタバレになるので、
最後のレスになったらタイトルを付加します。
それと、レス数節約のために、念のためこのレスからSS本編を投下させてもらいます。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
沖木島の夜闇を切り裂く、4つの輝き。
1つは、やや黄色味を帯びた白色の光。
それは光源自体の速度が上下するに合わせて高度も増減するところを見れば、自転車の光とすぐに分かろう。
そして2つ……厳密には、一対という表現の方が正しい赤い光。
それは見る者がおよそまともな生物であれば恐怖を感じずにはいられない、魔の存在のみが宿しうる禍々しい眼光。
最後の1つは、それら二者を圧倒する、凄まじいまでの反射光。
ぶっちゃけこれ摩擦係数完璧に0じゃね? と疑いたくなるほどにツルンツルンの、髪の毛の枯れ果てた……
……おっと失礼、頭頂部に一本だけ残ってたのを忘れてた。まあとにかく、老年男性の頭部がその光源。
それら四つの光は、闇の中を比較的高速で移動していた。
その速度は、平均的な青年男性の全力疾走の一歩手前、と言ったところか。
「――ということだ! 理解していただけただろうか!?」
夜間走行用にライトを点けた自転車に乗る、鳴子と刺青の男。
彼は隣で併走する黒い衣の男に、風に吹き消されぬよう大きな声を張り上げ、結びとする。
「……ふむ、あい分かった。
そのエルネストとフェイトなるお前の仲間を助ければよいのだな、クラースとやら?」
刺青と鳴子の男、クラースの隣からその声は返ってくる。
「ああ……そうしたならば、私の持つ情報は全て分け与えよう……ヅラム……ではなくブラムス!」
クラースは誠意を表すべく、隣で併走する男の顔を見ながらその言葉を話そうとして……結局正視できなかった。
クラースの併走者の姿を考えれば、当然と言えば当然だが。
クラースが全力に近いペースで漕ぐ自転車の速度に足で追いすがり、
それでもほとんど息を乱している様子の無い彼の顔面は、赤い眼光が禍々しさを増幅する、
アルカイックスマイルのまま固まっている。
仏像の頭部を削り取り、仮面に加工して自らの顔面にそれを装着する彼の頭部には、
色々な意味で直視できない電球ヘアスタイルのカツラが乗り、
しかも右手には後生大事そうにある医療器具を握り締めている。
その医療器具が浣腸ではなく例えば包帯などであったなら、まだちゃんとその姿を見ることは出来ていたかも知れない、
とクラースは頭を抱えそうになった。
トレントの森に住まう少数民族である、
ジャポン族の司祭が着る「袈裟」と呼ばれるローブを、風にはためかせて疾走する彼の姿は、
厳しい修業のあまり色々と限界が来て、あってはならない方向にはっちゃけてしまった破戒僧のように、
クラースには思える。
もしこの場に都市伝説やら怪談やらに詳しい地球人がいたなら、
高速道路に出没する「百キロババア」やら「ターボババア」やら、
その手の類の妖怪に併走された深夜の高速道路ドライバーの気分はこんなものかも知れないな、と思う者もいるだろう。
それほどまでに、彼の姿は異様極まりない――クラースにヅラム……もといブラムスと呼ばれた、この男の姿は。
(なるほど、確かにこの取り引きは上手い考えと言えるな、クラース)
クラースの指に、いつの間にか嵌まっていたダイヤモンドの指輪から、半実体の像が浮かび闇夜に現出。
金色の髪を小ぎれいにまとめ、茶色の貫頭衣というひどく質素な服をまとうだけの、
中性的な顔立ちをした四本腕の精霊。
これぞ、オリジン――数ある精霊らの、その王として君臨する偉大なる精霊王である。
それに対するはブラムス……「精霊王」に対抗して、「不審者王」とでも呼ぶべき男。
「ふむ、我のダイヤモンドの指輪から、このような面妖な精霊が現れるとはな。何度見ても不可思議なものだ」
(面妖などと言う言葉は、お前だけにはかけて欲しくないものだがな。
ついでに言えば、私にはお前のその身なりの方が不可思議で仕方が無い。
……まあ、お前のもたらしてくれた指輪のお陰で、実体を持てるようになったのは感謝しているがな)
オリジンのその言葉には、半ば呆れのニュアンスがこもり一同の耳に届く。
それでもこれから行われる作戦内容には、支障は無い……一応は。
一方のブラムスは、確たる声を己に届けたオリジンに対し、あくまで淡々たる返答を返すのみ。
「感謝など要らぬ。これも我とお前達との取り引きに過ぎぬのだからな」
と。
ブラムスの言葉には、特別な感情など一切こもってはいない。
- 462 名前: ◆Mf/../UJt6 :2008/09/24(水) 01:27:25 ID:Z/Nuld9W0
- 先ほどブラムスと文字通りの接触を起こしたクラースが、ここまでに行ったやり取り……
それをかいつまんで説明すれば、以下のようになる。
出会い頭に、お互い敵対的な態度を取らなかった双方の話は、ブラムスの「情報を求める」という申し出から始まった。
クラースはそれに対し、「情報交換など行える場合ではない!」と返そうとしたのを、寸前でこらえた。
ここでブラムスからの要求を問答無用で突っぱねるくらいならば、
1つ取り引きを持ちかけた方が利口だという判断が、突如として去来したためである。
その取り引きの内容は言うまでも無い。
「自身が持つ情報は提供するが、その前にロキと言う男に追い詰められた仲間を、
今から可能な限り素早く助けて欲しい。詳しい状況は移動しながら説明する。
仲間を助けてくれたなら、情報はその時に提供する」。
クラースの持ちかけたこの取り引きを、ブラムスは一瞬の逡巡の後に受けることとした。
救出の成功失敗を問わず、最低でもこの男が持っている情報を得られる。
更に彼の仲間を助け出すことにさえ成功すれば、追加報酬は彼の仲間の情報、ひいては新たな味方。
排除せねばならない敵はロキ――決して侮ることの出来ない強敵だが、得られるものは大きい。
ブラムスはロキと敵対するだけのリスクと、情報という二つの要素を秤にかけ、
そして情報の載った皿の方に、「今は夜である」というおもりを追加し、結果としてクラースの取り引きを呑んだのだ。
もちろん、ブラムスはこのクラースという男が虚言を弄し、芝居で自身を罠に嵌めようとしていた、
という可能性も最初考慮したが、途中からその可能性は棄却した。
クラースの切羽詰った態度が演技なら、彼は大劇団の顔役として食っていけるレベルだと言わざるを得ないし、
何よりクラースの証言したロキの振る舞いは、自身の知るロキの人となり……もとい「神となり」と、
ほぼ完璧に一致していたためである。
それほどの名俳優がこの島に連れて来られ、しかもロキの行動を虚言で言い当てている可能性など、
絶無に等しい低確率と言わざるを得ないだろう。
「クラースよ、そのロキという者の下から逃げ出したのは英断だ。
いかに仲間を見捨てた形になったとは言え、お前のその行為を臆病と謗る権利のある者はそうはいないだろう――
この我を含めてな」
「ヅラ……コホン、ブラムス。そのロキという男は、それほどまでに強いのか?」
言いよどむクラースに、ブラムスは息を上がらせる様子など見せずして、彼の問いかけに回答。
「強い。そしてそれだけではなく、狡猾だ。
ロキという男は、神界における二大勢力――アース神族とヴァン神族の血を引く合いの子だが、
奴はその二つの派閥の間を行ったり来たりしながら、自らを利する事に昔から慣れていた。
神々の勢力闘争の軋轢を、上手いことすり抜けてきた奴のずる賢さは、決して侮れるものではない」
「なるほど……要するに、蝙蝠というわけか。人間も神々も、やることは同じく権力闘争とはつくづく救えないな」
「ふむ、違いないな」
ブラムスの言葉には、一抹の皮肉が織り込まれる。
「話を戻すが、そして奴は策略を抜きとした純粋な魔術の腕も実に侮りがたい。
一応奴も神であるからして、生半可な人間の魔術師では歯が立たぬ事くらい、容易に想像できよう、クラースよ」
言い終えたブラムスは、禍々しいアルカイックスマイルを再度クラースに向けた。
横を走るクラースは、その視線をいかにして受け止めるかに迷い、思わず視線までもが宙をさまよう。
ブラムスは果たしてそれを認識できているのかは謎だが、会話が途切れることは無い。
「ひとまず我は先行し、ロキの不意を打つ。
奴は剣と魔術では、魔術の方を得意とする――ならば、魔術を詠唱させる間もなく、
我の得意とする拳の間合いに入り込み、勝負させてもらおう。
相手が奴でなければ、生け捕りにして握っている情報を吐かせてから抹殺しても構わなかったが、
相手が奴では、我とて手加減して戦うことは出来ん。
生け捕りにするまでもなく命を奪わせてもらう――構わんな?」
「わ……私はあいつが死のうが生きようが構いはしないのだが……」
クラースは、正面だけを見ながら言葉を放つ。
自転車を漕ぐ時はよそ見をしてはいけないからという理由ではなく、横を見ることが出来ないから。
「どう考えても人間じゃなく化け物とかその手の類です、本当にありがとうございました」な
眼光を放つ両目でガン睨みされて、それを平然と睨み返せる人間はそうはいるまい。
ついでにその眼光を放っているのが、
一本残しハゲなカツラをかぶり寺の住職のコスプレをした変態仮面では、なおさらである。
- 463 名前: ◆Mf/../UJt6 :2008/09/24(水) 01:28:20 ID:Z/Nuld9W0
- クラースは、可能な限り横に意識をやらないようにして、ブラムスに問う。
「むしろ……その、お前はどうなんだ? ロキとはたまたま知り合い同士だとついさっき聞いたが……」
「いかにも。我は奴と面識はある。
しかし戦場で相見えたとき、互いに互いを殺す事を遠慮し合うような仲ではない。
何ならば取り引き程度なら乗ってやっても構わなかったが、この状況では奴と取り引きするより、
お前達と取り引きした方が遥かに利が大きい、と我は判断した。
そしてロキがお前の仲間のエルネストとフェイトとやらを傷付け、我の受け取る利を損なうつもりであれば、
どこに手加減や温情を加える必要性がある?」
(……なるほど、ごもっともな意見だな)
クラースの傍らで、オリジンは四本の腕を器用に組みながら、こくこくと頷く。
(その理由がどうであれ、手加減をするつもりが無いならこちらに異存は全く無い。
……それではそろそろロキの居場所が近い。打ち合わせ通りに動くぞ、『不審者王』とやら)
「ああ。そのダイヤモンドの指輪まで貸し与えた以上、ゆめゆめ仕損じることのないようにな」
「ご協力、感謝する――ヅ……じゃなくてブラムス」
クラースが自らの発言の訂正を試みたとき、すでに彼の傍らにはオリジンの言うところの「不審者王」の姿はなかった。
ブラムスは、定命の存在には許されぬ超常の脚力をもって、地面を強く蹴りつけ飛び上がる。
まるでその身に体重など存在しないかのごとき、軽やかな跳躍を連続してブラムスは木々の間を音もなく飛び交う。
さながら闇夜に舞う蝙蝠を思わせる、敏捷性と隠密性を無理なく兼ね備えた彼の跳躍は、
クラースにかつての仲間を偲ばしめた。
これで袈裟とヅラと仮面と浣腸がなければ、身震いがするほどに凄絶な光景だっただろうに、
などと思ってはいけない……一応、言っておこう。
とにかく、これで作戦はスタート。
クラースとブラムス、急ごしらえのパーティでなされる救出作戦は。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「さて、ようやくお目覚めのようだね、2人とも」
褐色の肌をしたアース神族とヴァン神族の混血神である青年ロキは、その頬を嗜虐的に吊り上げた。
傍らに燃える小さな焚き火は、最低限の光を維持するために焚かれ、揺らめく。
その炎が弾けるたびに、ロキの顔に差す陰影が歪み、それが愉悦に震える悪魔の表情のようだ、
とフェイトは思った。
先ほど力を解放して気絶――その後に目覚めてみればこんな体たらくとは、
いくら何でも迂闊な判断だった、と思わず後悔の念が押し寄せる。
フェイトとエルネストは今、両足のくるぶしが互いに口付け合うようにして、その足首をロープに縛られている。
両手は言わずもがな。
後ろ手に縛り上げられ、しかもそのロープの端は近くにある大きな木の幹に結ばれている。
いくら超人的な怪力があったとしても、あの木を地面から引っこ抜いて自由を得るなどという荒業は、
少々厳しいだろう。
そもそもそれだけの怪力があれば、木の幹を引き抜く以前に、力任せにロープを引き千切ってしまえばいい話である。
歯噛みするフェイトの顎に、褐色の右手がかかった。
言うまでもなく、ロキの差し出した手である。
「それじゃあもう一度聞くよ、フェイト君。君が持っている情報は、本当にさっき話しただけで全部かな?」
その話し口調は、実に穏やか。
だがその実、フェイトに対して紳士的な話し合いを求めるつもりなど微塵もないのは、実に明らか。
フェイトはその顔を苦しそうに歪め、下唇を噛む。
その時、フェイトの顔にかかった右手の握力が、にわかに強まる。
フェイトはそれに触発されるも、この言葉を吐くのがついに限界だった。
「……僕の知っていることは全部話した。……本当だ」
フェイトはその瞬間、己の顎の奥底から、ごり、という鈍い音が響いたのを聞いた。
次に、目の中で火花が散った。
ロキの左手で顔面を殴られたと知ったときには、フェイトは後頭部を地面に叩きつけられ、視界がひっくり返っていた。
「強情を張るのもいい加減にしろよ――薄汚い人間風情が」
「だから僕はもうこれ以上――!」
「もういい。ならばこちらにも手がある」
ロキはそっとその場で膝を折り、地面に落ちていた光を拾い上げる。
それはストライクアクスの毀れた刃の欠片。その中でも、最も大きな欠片を、ロキはつまみ上げたのだ。
欠片とは言え、その刀身は未だにちょっとしたナイフほどの刃渡りを持ち、焚き火の光を反射している。
急所を一突きにすれば、人間1人を殺すには未だ十分なほどの凶器と言えよう。
- 464 名前: ◆Mf/../UJt6 :2008/09/24(水) 01:28:57 ID:Z/Nuld9W0
- ロキは口の中で短く呪文を詠唱。その対象は、自らがつまみ上げたストライクアクスの欠片。
見る者が見れば、それは炎の魔術であるバーン・ストームを、ごく小規模に発生させたのだと理解できよう。
例えばレザード・ヴァレスのような魔術師が見るなどすれば。
ストライクアクスの欠片は、たちまちのうちに鈍い輝きを帯び始める。
その輝きは、鍛冶職人などにはお馴染みの、鉄を熱した時のあの輝きに他ならない。
自らの手を火傷せぬように魔術の防壁で守るロキは、おもむろにフェイトに対する講釈を始めた。
「ところで、お前は『凌遅刑』っていう刑罰を知っているか?」
「『凌遅刑』……?」
いきなり刑罰の話を始めたロキの、突然の態度の変わりようにフェイトは困惑。思わず疑問系の声を発する。
ロキは虚を突かれたフェイトに対し、ただ淡々と講釈を続けるのみ。
「ああ。僕らの住むアスガルドの下界ミッドガルドで、倭国の人間が時おりやる刑罰さ。
死刑ですら処罰しきれないほどの重罪人が捕まった場合、そいつにはこの凌遅刑が科される」
赤熱する刃の欠片を持ったまま、ロキは涼しい顔をして歩み寄る。
フェイトの元へではなく、その隣のテトラジェネシスのもとへと。
「凌遅刑に処された人間の最期は悲惨なものさ。
処刑人の元にやって来た罪人は、その場で全身を拘束され……そして全身を切り刻まれるのさ、生きたままね」
ロキはフェイトとは別に縛り上げた男……エルネストの前で、再度しゃがみ込んだ。
「最初は手足の指を一本ずつ。
手足の指が飛んだなら、次は腕と足を細切れのスライスに切り落とし、そいつをダルマにしてやる。
……ちなみに『ダルマにする』ってのは、倭国のある工芸品にちなんだ言い方で、『両手両足を奪う』って意味だけど、
分かるかな?」
「…………!!」
フェイトはロキの真意を、静かに汲み取った。
そして、次の瞬間には一気に血の気が引いた。
ロキの取り上げたストライクアクスの欠片。
ロキの話したこの「凌遅刑」という刑罰。
ロキが近寄るその先は、あろう事かエルネスト。
これだけ条件が揃えば、ロキの意味することを理解出来ないフェイトではない。
ロキはエルネストの金髪を、乱暴に鷲掴みにする。
それでも、ロキの言葉は止まる事など無い。
「――その次は、内臓を抉り出し、眼球をほじくり、最後には心臓や睾丸といった急所を引き裂いてジ・エンド。
中には数百回体を切り刻まれるまで死ねずに、最後の最後まで地獄の苦痛に苛まれながら死んだ罪人もいたらしいね。
きっと、そいつはこの世に生まれたことを後悔しただろうな。
ちなみに、倭国のならず者達が身内を私刑(リンチ)する時は、手や足を飢えた鼠だらけの檻に突っ込ませて、
鼠に少しずつ肉や骨を齧らせるっていうやり方もあるらしいけど、今回は設備も無いから略式でいかせてもらおう」
「……なるほど、それで俺をじわじわ切り刻み、フェイトが黙っている事を吐かせようって算段か?
随分と高尚な趣味をお持ちのようだな、お前は」
エルネストは無理やりに頭髪をつかまれ持ち上げられた頭部から、三本の視線をロキに投げかけ、彼を皮肉る。
ロキはその皮肉で腹の底が熱くなりかけたが、あくまで涼しい顔をして取り繕う。
彼の精神力で可能な限り、という注釈は付くのだが。
「ご明察だよ、三つ目野郎。恨むんなら、俺じゃなくてこうも強情なあの阿呆を恨むんだな」
「俺に言わせれば、お前の方が阿呆に見えるんだが――おぶ!!」
固められたロキの拳が、エルネストの腹に突き刺さる。
フェイトはたまらずに声を上げ、立ち上がろうとしたが、身を縛める縄がそれを許さない。
全身から力が抜けるエルネスト。
だがロキはそのまま頭髪を握り締め、簡単にはくずおれる事を認めなかった。
「そう見えるんだったら、お前のその三つの目は1つ残らず腐ってるんだろうな。
何ならこの場で一個眼球を抉り取ってやれば、それも治るかも知れないなあ?」
ロキは熱されたストライクアクスの刃を、もう片方の手で高く持ち上げた。
沖木島の夜にかかる月が、赤く焼け爛れたその刃を静かに見つめる。
「……予定変更だ。最初は足の指を一本ずつもらおうと考えたが、最初はその額に付いた目玉から貰おう」
フェイトはロキのその行為に、顔を一気に青ざめさせる。
「止めろ! エルネストさんに何を……!!」
「安心しな、刺さり所が悪くても失血死なんて楽な死に方はさせてやらない――
そのために刃を熱して、傷口を焼き塞げるようにしてやったんだからなあ!!」
ロキは高々と、刃を振り上げた。
南無三、とエルネストは心中で呟く。
それが終わったなら――。
- 465 名前: ◆Mf/../UJt6 :2008/09/24(水) 01:29:42 ID:Z/Nuld9W0
- エルネストは、呆けたようにその口をぽかんと開けた。
「?」
刃をそのまま額の目に突き刺そうとしたロキの手が、エルネストの示した異常な振る舞いで思わず止まる。
「……おい、どうしたんだ三つ目野郎? 恐怖の余り、気でも狂ったか?」
相変わらず嗜虐的な笑みを取り去らないロキは、だが続けて別の異常にも気付かされる事になる。
フェイトすらも、エルネストと同じく口をぽかんと開けたまま、唖然茫然と言葉を失っている。
「おいお前ら――いきなりどうしたって言うんだ?」
ロキは2人が仲良く見つめている先……すなわち自らの背後の虚空へ何となく振り向き、目をやった。
ロキすらも、呆けたようにその口をぽかんと開けた。
沖木島の東の空にかかる月は、相変わらず眩しい。
だが、さっきとは何かが違う。
その違和感の正体が、月に差した影にあるとロキが知ったとき、
彼にとっては不幸なことに、余りに予想外の光景に、本来狡猾なはずの頭脳が一時的に凍結を起こした。
むしろ、「月に差した影」の正体を知ってしまった時点で、思考回路が凍りつかない人間や神族など、
そうそうはいないだろう。
そしてロキにとっては更に不運な事に、彼は迂闊にも振り向いた時、膝を伸ばして立ち上がってしまっていた。
まあ……その……何て言うか、一言で言えばジャストミート。
ロキが再び思考を開始した時点で、結果についてはもう残念無念また来年と言わざるを得ない。
ロキの視界は、不可避なまでに白一色で埋め尽くされていたのだから。
ボグシャア!!
どう考えても頭蓋骨の二、三箇所は陥没骨折を起こしたとしか思えないような、素敵な効果音が辺りに鳴り響く。
ロキの顔面は、次の瞬間長年漬け込まれてバッチリ熟成した紀州梅の表面のように、クシャクシャに変わっていた。
今や立ち上がったロキの顔面にめり込んでいたのは、宙を飛んで来た白く巨大な箱。
もちろん、クリーンヒットしたのはその角の部分。
そう言えばこれ、地球の東洋で良く使われそうな形の棺桶か、とフェイトは気付かされていた。
そしてその上には、何と人……厳密には「多分人だと思われる何者か」が、
腰を深く落とし、手を背の側に回して、棺桶の上に蟹股で立っている。
地球の東洋の宗教、仏教の司祭である「坊主」が着る祭衣……「袈裟」を着け、
顔には仏像の仮面、頭部にはほとんど頭髪の絶滅したうら淋しい髪型のカツラを装着し、
回された後ろ手には何故か浣腸を握り締めている。
この謎の怪人が、ほんの一瞬前に、月をその背に負いながら棺桶に乗り、空中より飛来したのだ。
その構図は、フェイトをして、ファイトシミュレーターに組み込まれた様々なモーションの
インスパイアに用いられたと噂される、20世紀後期の日本の漫画家が描いたという、
あらゆる願いを叶える龍を呼ぶ七つの宝珠を巡る、某超人格闘漫画のある一コマを思い出さしめていた。
確かそいつの名前は桃だか白だかそんな感じで、舌だけで対峙した相手を倒したとされる刺客。
彼がやって見せた、自分の投げた丸太に飛び乗り、そのまま目的地まで向かうという荒業に、
これはそっくりと言わざるを得ない。
……ちなみに、これが棺桶とその上に乗った怪人が空の彼方から飛んで来て、
ロキの顔面を作画崩壊させるまでの一瞬の内に、フェイトが行っていた思考。
それが終われば、時はまた動き出す。
ロキの顔面にクリーンヒットした棺桶と、その上に乗った怪人と共に。
「ぶるすこふぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ロキは意味不明の奇声を上げ、
鼻血と耳血と口血と目血を爆発的な勢いで四方八方に噴射しながら、
顔面にぶつかった棺桶もろともに、林の向こう側にぶっ飛んでいく。
人間の体の重心は腰ぐらいにあるのに、顔面を強打されてもろともに吹っ飛ぶのはおかしくね?
などという、しごくもっともなツッコミをフェイトが入れようと考えた頃には、
「ゴシカァン!!!」という、コンソメスープか何かでドーピングでもしてるんじゃないかと疑いたくなるような、
危険過ぎる炸裂音を立てて、ロキの顔面は木の幹と棺桶との間に挟まれ、人事不省の一歩手前まで追い詰められていた。
棺桶の上に乗っていたあの怪人は、一方でスケートボードの達人のような巧みな重心移動をもってして、
ロキの顔面の木の幹にめり込ませた瞬間に、棺桶を上空に跳ね上げる。
そこでようやく棺桶の上から飛び降りた怪人は、空中で1つ宙返りを見せて余裕の着地。
彼が右手を持ち上げると、ちょうどそこを狙ったようにして棺桶が落ちてくる。
変態仮面はその棺桶を、妙に満足げに腰の革袋に収めた。
- 466 名前: ◆Mf/../UJt6 :2008/09/24(水) 01:30:33 ID:Z/Nuld9W0
- そう言えば、よく見たら棺桶の角がクリーンヒットしたのは、厳密に言えば顎のあたりだったな、
とフェイトは思い直した。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ついでにクラースまでも、呆けたようにその口をぽかんと開けた。
ここはブラムスが奇行……もとい奇襲を敢行した地点のすぐ近くの茂みの中。
今まで詠唱して準備していたせっかくの召喚術が、手の中で雲散霧消しても、クラースは意にも介さない。
正しくは、「意に介する余裕など失われた」だろうが。
(……奇襲を行う際の極意を簡潔に言えば、
敵が予想していないタイミングで、予想していない場所から、予想していない方法で襲い掛かることだろうが――)
失語症にでもかかったように舌が動かせずにいるクラース。
その指に着けられたダイヤモンドの指輪から、オリジンの半実体の肉体が浮かび上がる。
(――なるほど、あのブラムスなる男が行った行為は、その三つの極意を完璧に満たし、
しかもそれを成し遂げるために必要な超人的な筋力と瞬発力と平衡感覚も、問題なく備わっている。
この作戦、百点満点の評価を付けてやっても構わないだろうな)
(……冷静に評価している場合か、オリジン!)
点になっていた目がようやく元通りになったクラースが、初めて心の中で発した第一声は、それだった。
(今は冷静に評価すべき場合だろう、クラース)
戦闘に備え、己の得物である二本の槍も併せて半実体化させるオリジンの返答は、にべも無いものだった。
もちろん、常人ならば同意を示したくなるのはどちらの意見かは、言うまでもないだろうが。
クラースはこの茂み……自らの身に帯びた鳴子の音でロキに気付かれないであろう、
ギリギリの距離までロキに接近を行い、その身を隠していた。
クラースがここで何を行おうとしていたかは、
わざわざ説明をするまでもあるまい――物陰からの不意打ちの召喚術の準備である。
ブラムスとクラースとオリジンが事前に組み立てた作戦内容は、実に簡潔。
まずはブラムスがロキに対し接近し、ロキへ奇襲を仕掛ける。
そしてクラースとオリジンが用意したのは、万一ブラムスの奇襲が失敗した時のため二の矢。
ブラムスにしてみれば「貸し与えた」……そしてクラースにしてみれば「取り戻した」と言うべき、
ダイヤモンドの指輪がありさえすれば、クラースが契約した中でも最強級の精霊であるオリジンは、
その本来の力の大半を振るうことが出来る。
召喚されたオリジンが分身し、その分身二体が構えた二対四本の槍を魔法的な電極として、
分身の挟み込む広範囲の空間に、無属性の超雷撃の嵐を巻き起こす。
これを受ければ、たとえダオスに匹敵しかねないほどの潜在能力を持つロキですら、ただでは済まされない。
直撃させることさえ出来れば、一撃でロキを仕留める事すらも不可能な話ではないだろう。
もし奇襲に失敗したなら、ブラムスはそれから作戦内容を陽動に切り替え、クラースが召喚術の詠唱を行う時間を稼ぐ。
そしてブラムスが頃合を見計らって一撃離脱――間合いを取った瞬間、
クラースが召喚術「オリジン」を用いて、ロキに止めの一撃を加えるというのが当初の作戦内容だったのだが……。
(しかし、これでは我々が二の矢を放つまでもなく、ブラムスはロキを仕留めてしまえそうだな。
ブラムスの奇襲が余りにも効果的過ぎたようだ)
余りにも前衛的過ぎて、公共の電波では流せそうにないほどのナイス顔芸、
といった様子で顔面を木の幹にめり込ませ、グロッキー状態に陥ったロキを遠目に見ながら、オリジンは分析する。
(その奇襲が効果的過ぎて、私も思わず呪文詠唱の手を止めてしまったではないか!
奇襲をかけるのは大いに結構だが、そのせいで味方まで驚かせてどうする!?)
(クラース――先人の格言にいわく、『敵を騙すにはまず味方から』と言うだろう?)
(騙すなら敵だけにしろ!!)
クラースは偏頭痛に苦しんでいるように、両方のこめかみを人差し指と中指で揉む羽目になる。
だがそれが終われば、仮にも時空の六英雄の一角に座するクラースなのだ――迅速に次なる行動の準備にかかる。
ロキを倒したのならば、次は人質の救助――エルネストとフェイトの解放である。
(とりあえず、ロキはもうブラムスが仕留めてくれるのは間違いあるまい。ならば、さっさと2人を救助せねばな)
(クラース、とりあえず2人には何と言って謝る?)
(そんなの考えるのは後回しでいい! 今は――)
クラースは、突然に心の声を止めた。
それとほとんど時機を同じくして、全身の毛穴がこじ開けられるような感覚が、彼を襲う。
- 467 名前: ◆Mf/../UJt6 :2008/09/24(水) 01:31:18 ID:Z/Nuld9W0
- これの感覚の正体は言うまでも無い……己の生存本能が上げる、危険信号!
(オリジン!)
(お前も感じたかクラース! おそらくは上――!!)
クラースとオリジンがその首を、仰角90度近くまで傾けた。
2人が上空の全天を視界に収めるのと同時に、沖木島の夜の一点が閃光を放った。
そこから、紅蓮の猛火の花が開いた。
質量すら伴っているのではないかと疑いたくなるほどの苛烈な熱波が、クラースの頬を撫でた。
炎の顎がクラースを噛み砕くまでに要するであろう時間は、おそらくはもう数秒も無い。
クラースの視界は、すでに火炎で埋め尽くされていた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「あ゛ががあ゛……あ゛ががあ゛……!!」
(顎があ……顎があ……!!)
顔面を木の幹に陥没させたロキの顔面は、棺桶を食らった直後からこの先、作画崩壊したまんま戻る気配はなかった。
一挙一動のたびに周囲のモブキャラが「ざわ…ざわ…!」する、
どこぞの闇に降り立った天才を連想したくなるような、
まともな人間ならありえない奇怪なプロポーションを手に入れたロキの顎は、
ブラムスが棺桶に乗って空から飛び込んでくる、という奇襲作戦の結果と言わざるを得まい。
簡潔に説明しよう――ロキの顎は棺桶の角をモロに食らって、その拍子に脱臼を起こしてしまったのだ。
文字通り顎の外れたロキは、目の前の怪人を前に、自らの無力化を悟らざるを得なくなる。
仏像の仮面を着け、袈裟をまとい、ツルッパゲも同然のカツラの下からボサボサの長髪をはみ出させる、
この謎の変態仮面を前にして。
「あ゛ががあ゛……あ゛ががあ゛あ゛があ゛があ゛がががあ゛!」
(畜生……これじゃあ魔術が使えない!)
その変態仮面の正体がブラムスであるなどとは夢にも思わぬロキは、その事実を思い知らされることになる。
呪文詠唱の封印……すなわち自身の戦闘力の大半の欠落を。
魔術師がその身に秘める魔術の力は、敵に回せばもちろん恐ろしい。
その口から放たれる呪文によって、破壊や再生を思う存分に巻き起こされては、勝利を手にすることも覚束なくなる。
だが逆を言えば、魔術師などその口を封じてしまえば、ただの木偶の坊に成り下がる。
舌を切り落としたり顎を砕いたり、猿ぐつわを噛ませるなどすれば、もはや呪文の詠唱は不可能。
ブラムスはロキの顎を脱臼させることで、それを結果的に成し遂げてしまったのだ。
顎が外れた状態で、まともに言葉を喋れる人間など存在するまい。
それは肉体のマテリアライズを強要された神族であっても、また同じこと。
「あ゛ががあ゛あ゛あ゛がががががががあ゛があ゛ががががが……!」
(肉体のマテリアライズが解除できれば……!)
ロキは外れた顎で、必死に言葉を放とうとして、結局その言葉にならない呻き声を生み出すしか出来ない。
もちろんロキの思うことが可能であれば、この場で直ちにマテリアライズを解除し、
その後「ディヴァイン・マテリアライズ・エナジー」……すなわち「DME」と通称される、
霊的存在を物質化させるエネルギーを、再度己の魂に注入して肉体を再構成すればいい。
多少のDMEの損失に伴い、肉体的ダメージは残るが、外れた顎は元通りになる。
だが、この島ではエインフェリアや神族と言った、本質が霊的なものである存在は、
その身を常時マテリアライズさせておくことを強要され、自らの意志で解除することは出来ない。
結果として、ロキは再度自力で顎を嵌め直すほか、魔術の使用を再び可能とする手段は残されていない。
そしてそれがどれほど凄まじい苦痛を伴うか、想像には難くは無いだろう。
キュア・プラムスのような回復魔術を併用し、痛みを和らげようにも、そのためにはまず顎を整復せねばならない。
禅問答じみた、なかなかに難儀な話である。
それ以前に、今のロキにそんな苦行じみた整復作業を、のんびり行う暇があるかと問われれば、
その答えは「否」だろう。
何せ、目の前には謎の変態仮面……もとい「不審者王」ブラムスが存在しているのだから。
(そう言えば、観音堂でレザードと話をした際に聞かされたが――)
ばつん、という何かが弾けるような音が辺りに響き渡った時、怪人の姿はただの残像に成り下がっていた。
もちろんブラムスが行ったのは、超高速の踏み込み。
ブラムスが一瞬前まで立っていた地面には、その踏み込みで陥没した足跡のみが残される。
歩幅にして大股の6歩分程度だった彼我の間合いは、たちまち0。
拳の間合いにまで、詰められる。
(ヴァンパイアの拳士は、その掌打の連撃を叩き込むとき、『このかけ声』を伴うのが伝統とされているらしいな)
- 468 名前: ◆Mf/../UJt6 :2008/09/24(水) 01:32:07 ID:Z/Nuld9W0
- ロキはこの変態仮面を前にし、DMEにより与えられたかりそめの肉体を包む肌が、全て粟立った。
「あ゛ががあ゛……あ゛ががあ゛……! あ゛がががんがががががあ゛ががががあ゛ががががががあ゛がんが――!!」
(畜生……畜生……! 俺がこんな情けない死に方をしなきゃならないなんて――!!)
ロキの目前にまで迫る怪人は、すでにその腕を大きく振りかぶっている。
(我はそのような伝統など聞き及んだことは無いが――だが一興にはなるだろう。ひとつ、試してみるか)
ロキは怪人の構えからして、彼がこれから何をやらかそうとしているのかは分かっている……
分かりきってしまっている。
拳を用いた己の連打。
右手を用いたものでもない。
左手を用いたものでもない。
言うまでもなく、両方を用いたもの。
ちなみにここまでの流れで「もしかしてオラオラですかーッ!?」と思った者がいたなら、
残念ながらそれは不正解と言わなければならない。
ブラムスは「不審者王」……もとい「不死者王」――不死者の王族であるヴァンパイア達の、そのまた王なのだ。
ならば、次に来るフレーズは決まりきっている。
ずばり言って、これだ。
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
(ちなみこれからおよそ7レス半ほど「無駄無駄」のラッシュが続きますが、
容量削減、さるさん回避、作者がコピペに飽きたなどの諸般の理由で中略とします。よって中略)
無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!!!」
ギギギギギャイーーーンギャリギャリギャリンッ!
ドカシッゴボッグガガガガガガボガボ!!
ガココココココバキバキバキャキャキャ!!!
ガコッガコッガコッガコッグゴゴゴゴゴ!!!!
グモッチュイーーンボゴゴゴゴゴ!!!!!
仮面の怪人がロキをフルボッコにするときの効果音を表すとすれば、上記のような感じだろうか。
フェイトとエルネストは、その様子をただただ唖然と見守るばかり。
「すごい……あの怪人……時間を止めながら戦ってる……」
フェイトは、ぽつんとこぼした。
「いや――さすがにそれはないと思うのだが……」
エルネストは少々淀みのある言葉でフェイトをたしなめる。
だが、フェイトの発した感想は決して的外れなものとは言えまい。
フェイトやエルネストらは、もちろん多くの荒事を経験した歴戦の戦士ではあるが、
その彼らの戦士としての動体視力を以ってしてすら、あの怪人の掌打の嵐は、
複数の拳の残像が次から次に現れては消え、そしてロキの全身に突き刺さっているようにしか見えない。
クラウストロ人であるフェイトの仲間……
クリフですら、これほどの超高速の拳打を見舞うことは、果たして可能だろうか?
フェイトは怪人の奇行と紙一重の偉業を呆然と見つめながら、思考してみる。
いっそのこと、時間を止めるか消し飛ばすかして、あのハチャメチャな手数を稼いでいるとでも考えた方が、
よっぽど納得行ってしまうと考えたくなる誘惑に駆られるのは、人間として当然のものだろう。
ちなみに言っておくと、この猛打はもちろんあの怪人ことブラムスが、自力で成し遂げたものである。紛れもなく。
さて、ロキの全身がサンドバッグよろしく滅多打ちにされ、
そろそろ彼にも人生ならぬ神生終了のお知らせが届くめどが立とうとした、その瞬間。
怪人は、ロキの鳩尾に強烈なアッパーを見舞い、一気に上空に振り抜く。
再度ロキの背は木の幹に叩きつけられ、その木の幹すらも怪人の超絶的な拳打に耐え切れず、木っ端微塵に爆砕される。
ロキはその木の幹から巻き起こった木屑を全身にまとい、勢い良く上空に舞い上がった。
怪人も、上空に吹き飛ばされたロキの後を追い、空へ向かい跳躍。
その背に月を負う怪人の頭に着けられたヅラが、月光を反射しまばゆく輝く。
(なるほど……存外このかけ声も悪くないやも知れぬな。
それではロキ――念のため貴様は、我の持つ最強の奥義で止めとさせて頂こう。
最後の最後まで決まれば、万に一つ――否、億に一つも貴様が生き残る目は存在しない。
呪うのならば、このような形で我と対峙する事になった、己の不運を呪うがいい――!)
ブラムスは空中で大きくその右拳を引き込み、肉体を流れる不浄の闘気を集結させる。
(轟然たる我が魔力の胎動――!!)
- 469 名前: ◆Mf/../UJt6 :2008/09/24(水) 01:33:43 ID:Z/Nuld9W0
- たちまちロキは空中で跳ね飛ばされ、一気に地面目指して急降下を始める。
だがそのまま地面に激突を許すほど、ブラムスの拳は生温いものではない。
まるで瞬間移動でも行ったのではないかと錯覚するほどの超高速で、
ブラムスはロキの速度を超えるほどの勢いで急降下――足の下で闘気を練り固め、
その練り固めた闘気を足場として、一気に地面に降り立ったのだ。
なす術もなく落下してくるロキのどてっ腹に、二撃目のアッパーを見舞う。
ロキは最初の一撃を受けた時に倍加するほどの衝撃を受け、再度天に舞い上がる。
もしロキが結界を張ることを放棄していたなら、ロキの腹にブラムスの拳が槍のように突き刺さり貫通していただろう。
再度ブラムスもロキに合わせ、天に向けての跳躍。
打ち上げられたロキの体が最高点まで跳ね飛ばされた瞬間を見計らい、下段への掌打。
ロキは倍速で地面に吸い寄せられるが、その着地点にやはり先回りしていたブラムスは、
そこから三発目のアッパーカット。
宙に舞い上がったロキに向け、ブラムスは更に地上から追い打ちのアッパーカット。
吹き上がる緋色の闘気が、ロキの肉体をズタズタに引き裂いてゆく。
(奥義――!!)
ロキはこの瞬間、死を確信した。
次に来るであろうフィニッシュブローが炸裂すれば、この肉体に残されたDMEは僅かも残さずに削り落とされる。
そうなれば、待つのは死……おそらくは、魂すらも砕かれる!
ブラムスは右手に全ての闘気を集結させる。
渦巻く鮮血の瘴気がブラムスの周囲の植生を次々と枯死させ、そのただならぬ力の昂ぶりを示す。
フェイトは、エルネストは、この一撃の成功を祈り、目の前で大暴れする謎の怪人を見つめ続ける。
(カツラが――光っ……!!!)
魔界のそれを思わせる瘴気が間欠泉のように炸裂。
怪人の着けたヅラが、禍々しく輝く瘴気を受けてきらめくのを、ロキは見続ける羽目になる。
ロキの視界が、鮮血の闘気で埋め尽くされたその刹那――。
怪人は、突如転身。
このまま振り抜けば完全勝利は確定だったはずの拳を止め、ロキに背を向け走り出した。
(!!?)
ロキは混濁しかける意識の中、怪人の行いに驚愕し一瞬限りその脳裏に空白を作る羽目になる。
だがロキは、怪人の行った本来ならばありえない奇行(そもそもこの怪人ことヅラムスは、
本来ありえない奇行ばかりやってるじゃないか、というツッコミはこの際無視する)の理由を、すぐさまに理解する。
なるほど、確かにこれでは自身に叩き込もうとした、そのフィニッシュブローを止めざるを得ないわけだ、と。
空の一点から、迸る閃光。
そこから一気に広がる、渦巻く爆炎。
怪人は、その爆炎の中心点の真下にまで一気に走り込み、そこで本来ならばロキに炸裂させるはずだった、
フィニッシュブローを繰り出す。
緋色の闘気の間欠泉が、大地から吹き上がり、荒れ狂う。
本来ならばこの闘気の間欠泉に相手を巻き込むことで、怪人ことブラムスの奥義は完成するが、
ブラムスはそれでは足りないと即座に判断。
何とブラムスは自らが発生させた闘気の間欠泉に飛び込み、その噴出の勢いに自らの脚力を追加。
地上に残像を残すほどの疾風迅雷の跳躍と共に、全エネルギーを集約させたその右手で、渾身のアッパーカット!
「――ブラッディカリス!!!」
「スピキュゥゥゥゥゥゥゥル!!!」
地上から吹き上がった、闇の闘気。
天空より猛襲する、爆炎の流星。
二者は天と地の狭間で炸裂し、閃光が夜闇を引き裂く。
二者の衝突が巻き起こした烈風が周囲に広がり、轟音と衝撃波が沖木島の夜を揺らした。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
辺り一面の林は、先の闇と炎の正面衝突で、更地の一歩手前にまで荒れ果てていた。
瘴気に触れた木は枯れ果て、熱気に晒された木は炭化した。
今この林を上空から見れる者がいたのなら、彼または彼女は林の一角が抉り取られ、
さながらクレーターのようになっていることに否応なく気が付くだろう。
「……まったく、随分と無茶苦茶な伐採作業もあったもんだな」
言うエルネストは先の爆風に巻き込まれるも、幸いにも後頭部などの急所を打つ事はなかった。
幸か不幸かロキが結び付けた縄のお陰で、爆風の巻き添えでどこかに吹き飛ばされることなく助かったのだ。
そしてそれは、フェイトにとっても同じこと。
「同感です、エルネストさん」
もしロキの縄が彼らの身を木の幹に繋ぎ止める事がなかったならば、今の爆風の拍子に死傷していたかも知れない。
- 470 名前: ◆Mf/../UJt6 :2008/09/24(水) 01:34:56 ID:Z/Nuld9W0
- 先にそれに気付いたのは、フェイト。
(! そうだ……あれさえあれば!)
フェイトは尺取り虫よろしく、胴体を縮め、伸ばし、また縮め、で刃の欠片に近寄る。
エルネストもフェイトのその動きをもって、ストライクアクスの欠片の存在と、フェイトの意図を同時に呑み込んだ。
「なるほど、これはありがたいな……!」
あの刃で縄さえ切り落とせば、この身は晴れて自由。
しかもエルネストにとっては最高にありがたいことに、切り落とした縄をそのまま武器と出来る。
考古学者である彼の得意武器は、考古学者らしく鞭。
もちろんただの縄に武器としての品質を求めるのは誤った判断だが、それでも鞭として振るえる縄は、
あれば丸腰の何倍も心強い。
フェイトが、ストライクアクスの欠片にたどり着く。
同時に、フェイトとエルネストの耳を、聞き覚えのある怒声が強打。
「てめえ……俺様をナメてやがんのか!?」
という声が、ほんの数秒前にブラムスとロキの輪に乱入を仕掛けた男から発される。
灼熱をその武器としてまとう十賢者が一角……ミカエルが、その男の名前。
対するは……ヅラと仮面と袈裟と浣腸が印象的な、謎の不審者王。
仮面を着けたまま名乗ることなく、突如として彼らの前に現れたこの男の名は、
ブラムスであるなどとは露ほども知らぬフェイトとエルネストとミカエルは、「怪人」だの「変態仮面」だの、
彼を思い思いの仮名で呼ぶほか、選択肢を持っていない。
そして不審者王……ことブラムスは、闖入を仕掛けた第三者であるミカエルに、静謐な言質で応じる。
「愚問だな――我はひとたび戦場に立ったならば、たとえ我が敵が赤子であっても油断はしない……
我が貴様を侮る理由は、どこにもない」
「そういうことを言ってんじゃねえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
ミカエルは怒りの余り、炎をまとった拳を地面に叩き付ける。
叩き付けた地面はたちまち赤熱し、飴状のガラスに変質。
フェイトとエルネストは、いかにミカエルが執拗な追跡をかけてきた自身らの敵であると認識はしても、
今回ばかりはミカエルに同意せねばなるまい、と各々の脳裏で考えた。
「だいたい何なんだてめえは!?
てめえは俺様が不意打ちでブチかましたスピキュールを真正面から受け止めて、
それでほとんど無傷だった、ってだけで十分いけ好かねえが――」
「あれで不意打ちを標榜するだと? 愚劣な。
あれほどにあからさまな殺気を撒き散らしての不意打ちなど、ただの無策の突撃も同然。
こうまで稚拙な攻め手では、仕留められる獲物にも逃げられるのが関の山だと――」
「うるせぇんだよこの野郎がぁぁぁぁ!!」
自らの意図せぬところで図星を突いてしまったブラムスに、ミカエルは激昂して拳を振るった。
不死者であるブラムスにとって、炎は可能であれば回避したい攻撃――聖属性に続き、二番目に苦手とする攻撃。
ましてやそれがミカエルほどの実力者から放たれるものであれば、直撃を受けることは出来ない。
だがブラムスにとって不幸なことに、ミカエルの拳は回避を試みるには余りに速過ぎた。
仏像の仮面に守られたブラムスの顔面に、ミカエルの正拳突きが炸裂!
「口ほどにもねえ野郎だった――あ?」
だがミカエルの拳が巻き起こした炎波が闇に溶け去った時、そこにブラムスの姿は無い。
代わって彼の姿は何と――
「……どこを見ている? 我はここだ」
虚空に突き出されたミカエルの拳の上に、見慣れぬ古ぼけた革製の靴が乗っている。
その上に立つ者は両目から赤い光を放ち、ミカエルを睥睨していた。
言うまでもなく、変態仮面その人……ブラムスである。
ミカエルの正拳の上に乗ったブラムスの靴が、蝶のように華麗に舞った。
続いて、ブラムスのその足はたちまち蹴撃を繰り出し、蜂のように苛烈にミカエルの顎を刺す。
ミカエルはたまらずにのけ反り、一方のブラムスは中空でその身を宙返りさせながら、軽やかに着地。
相手の出方を見ながら対応できる――そして望めば一瞬で0に詰め拳の間合いに出来る絶妙な距離をとり、
隙なくその拳を構え、ミカエルを見据える。
「てめえ……今何をしやがった!?」
口元からこぼれた血を拭いつつ、ミカエルは血走った目つきで目前の変態仮面を睨みつける。
ブラムスの答えは、実にそっけないものであった。
「貴様は今まで、聞けば手の内を教えてくれる愚か者としか戦ったことがないのか? 底の浅さが露呈するぞ、下郎め」
ぷつん、と何かが切れる音が、ミカエルから聞こえた。
2人の戦いを見守りながら、縄の切断作業を試みるフェイトは、一瞬そんな錯覚に捕らわれたような気がした。
「クソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
- 471 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 01:35:15 ID:V8pX6rxZ0
- 支援
- 472 名前: ◆Mf/../UJt6 :2008/09/24(水) 01:38:15 ID:B0VrH3cZO
- ケータイより失礼します。
猿ったので続きは避難所に投下しておきます。
どなたか転載を引き受けてくだされば幸いです。
- 473 名前:代理投下:2008/09/24(水) 01:51:52 ID:V8pX6rxZ0
- ミカエルは再度、ブラムスに躍りかかる。
拳対拳の、零距離も同然の激戦。
双方が双方の拳を受け、脚を止め、肘を払い、膝をいなすそのたびに、いくつもの炸裂音と閃光が迸る。
「てめえはぜってぇブチ殺してやる! それが終わったら残りの3人もまとめて皆殺しだぁ!!
覚悟しやがれこのコスプレ変態仮面野郎!!!」
「温い――真の戦士であれば『殺す』などと発言する前に、相手を『殺して』いなければならん。
『殺す』などと吠える前にな」
ブラムスはミカエルの渾身の突きを受け止め、その反動で一気に間合いを取る。
基本の構えを崩すことなく、ブラムスは静かにこの乱入者の分析を行っていた。
(なるほど――どうやら我が先ほど用いた小細工の正体には気付いていないようだな。
小技でかき乱せば、決して渡り合えぬ相手ではないか)
ブラムスが先ほどミカエルの初撃をかわした際に用いた小細工……その正体は『分身(レヴェリー)』と呼ばれる、
戦士にのみ使用を許された秘技である。
闘気によって練り上げた分身を身にまとい、分身にその動きをトレースさせることで、
一撃で二撃分の攻撃を敵に与えるこの技は、使おうと思えばこのような小細工にも使えるのだ。
すなわちブラムスは、先ほど闘気で練り上げた分身をミカエルの前面に展開し、
ミカエルの拳がその分身にヒットした隙に、がら空きになったミカエルの上空に跳躍。
そのままミカエルの拳の上に着地し、挨拶代わりの蹴りを彼の顔面に見舞ってやった――
これが、彼が行った小細工の全容となる。
もちろん、ブラムスはその真相をミカエルに講釈してやるつもりはなど、未来永劫微塵もないのだが。
(とはいえ、第三者がここに闖入してくるなどという事態は、我にも予想外だ。
ましてやこの男は、本来の実力は我とそう大きく変わるものではない――いささか危うい状況と言わざるを得まい)
ブラムスはミカエルの放った炎波の軌道を見切り、それを紙一重でかわし可能な限り隙を作らぬよう努める。
ブラムスの背後で、顎の外れた褐色の肌の青年が涙目になりながら、
そのとばっちりから必死で逃れようとズタボロの肉体を引きずるが、ブラムスはそれに必要最低限の注意のみを払う。
(だが我の考えの至らなさを省みるのは後からいくらでも出来よう。
今なすべきは、この状況の俯瞰と、選び取るべき次なる一手の吟味だ。
ひとまずこの局面、我にとって最悪の事態は、この男とロキが結託し結果的に二対一の戦いを強いられる事だが、
『残る3人も皆殺し』と言ったこの男の姿勢から、それはまずあり得ぬ事態だろう)
ミカエルの言っていた「3人」の内訳は、言うまでもなくエルネスト、フェイト、ロキのこと。
もちろんこの宣言がブラムスの読みを狂わせるために放たれたブラフ、という可能性も皆無ではないが、
この男の性格からしてそれはあり得ない、とブラムスは読み解く。
すなわち、この男はクラースの存在には気付いていない。
(――しかし、結託をされずとも結果的に挟み撃ちにされる可能性は十分に存在する。
ロキもいつまで沈黙しているか分からぬ。消耗を避けるという意味でも、可能な限り短期決戦を図るべきだろう)
ロキに止めを刺すことさえできれば、一気に戦局は自身に有利なものとなる。それにはあと、拳打の一撃で十分。
だが残念なことに、この男ほどの手練を前にしては、その一撃を与える隙すら作り出すのは至難の業。
下手に背を向ければ、その瞬間大火力の正拳突きが自らの背に炸裂するだろう。
ロキに止めの一撃を与えることを牽制されるこの局面、結果的にミカエルはロキを防衛し、
そしてロキに回復の時間を与えているという構図になる。
- 474 名前:代理投下:2008/09/24(水) 01:52:25 ID:V8pX6rxZ0
- この状態でロキがその顎を再度嵌め終え、魔術の詠唱を再び可能としたなら……
そしてそのタイミングが、上手いことミカエルの攻撃と同期してしまったなら……
いかに夜の帳が己の力を後押ししているとは言え、その挟撃で窮地に立たされる危険性は極めて高い。
そしてロキの側はミカエルの攻撃と魔術を同期させることくらい、やって来ない方がおかしいだろう。
たとえミカエルと急ごしらえの同盟を結ぶことはないとは言え、
漁夫の利に対する目ざとさに関して、ロキほど優れた者はなかなかいない。
敵の敵は味方ではないが、敵の敵を味方として利用することなら、いくらでも可能なのだ。
(……となると、クラースなるあの男が、どこまで機転を利かせて動いてくれるかが勝負か。
それがもし当てに出来ぬ事態となったならば――)
最悪の場合、撤退も計算に入れねばならない。ブラムスはそう状況を読む。
もちろん、クラースとの約束はエルネストとフェイトの救助。それと引き換えに、自身は情報を得ることが出来る。
しかしそれにこだわり過ぎて自身が命を落とすようなことになれば、元も子もない。
その場合は遠慮なくクラースとの約束を反故にし、この場は撤退する。
この判断を冷酷非情と糾弾することはもちろん可能だが、必要に応じてその冷酷非情な判断を容赦なく下せない者に、
王の座に着く資格は無い。
それは人間の王であれ、不死者の王であれ、変わらぬ真理である。
ブラムスはその帝王学にのっとって、遥かなる過去から現代まで、ただの一度も下克上の憂き目に遭うことなく、
己の居城の玉座を守り続けてきたのだ。
ミカエルの繰り出した三連続のジャブをいなしたブラムスは、攻撃をかわしざまにしゃがみ込みながらの足払い。
それが虚空しか切れなかったの感じたブラムスは、瞬間後方宙返りで一気に転身。
あと一瞬後方宙返りが遅れていたなら、ミカエルの繰り出した烈火で全身を包まれていただろう。
ブラムスはミカエルの拳の軌道を回避行動と並行して分析。この男の癖を伺うことにする。
(さて、どうしてくれたものか――)
沖木島の夜を、再度闇と炎が禍々しく彩った。
ついでに、淋しく光るブラムスのヅラも。
- 475 名前:代理投下:2008/09/24(水) 01:53:54 ID:V8pX6rxZ0
- 【D−2/夜中】
【クラース・F・レスター】[MP残量:70%]
[状態:正常]
[装備:ダイヤモンド@TOP]
[道具:薬草エキスDX@RS、自転車@現実世界、デッキブラシ@TOP、荷物一式]
[行動方針:生き残る(手段は選ばない)]
[思考1:目前の乱戦に対応(召喚術を使う? 先にフェイトとエルネストを助ける? それとも……)]
[思考2:ゲームから脱出する方法を探す]
[思考3:脱出が無理ならゲームに勝つ]
[現在位置:D-2北部、道から少し外れた森の中]
【ブラムス】[MP残量:75%]
[状態:変態仮面ヅラムスに進化。本人はこの上なく真剣に扮装を敢行中]
[装備:波平のヅラ@現実世界、トライエンプレム@SO、袈裟@沖木島、仏像の仮面@沖木島]
[道具:バブルローション入りイチジク浣腸(ちょっと中身が漏れた)@現実世界+SO2
ソフィアのメモ、荷物一式×2、和式の棺桶@沖木島]
[行動方針:情報収集(夜間は積極的に行動)]
[思考1:鎌石村に向かい、他の参加者と情報交換しながらレナス達の到着を待つ]
[思考2:敵対的な参加者は容赦なく殺す]
[思考3:直射日光下での戦闘は出来れば避ける]
[思考4:フレイを倒した者と戦ってみたい(夜間限定)]
[思考5:クラースの機転を期待しロキと目の前の男(ミカエル)に対処。あわよくば撃破する]
[思考6:最悪の場合、クラースとの『取り引き』を反故にし撤退する]
[現在位置:D-2北部、道から少し外れた森の中]
[備考:スキル『レヴェリー』で作られたブラムスの分身は破壊されました。
この戦闘が決着するまで、再度分身を生み出すことは出来ません]
【フェイト・ラインゴッド】[MP残量:80%]
[状態:左足火傷(戦闘にやや支障有り。ゆっくり歩く分には問題無し)ザイルで拘束中 気絶中]
[装備:無し]
[道具:ストライクアクスの欠片@TOP?]
[行動方針:仲間と合流を目指しつつ、脱出方法を考える]
[思考1:ルシファーのいる場所とこの島を繋ぐリンクを探す]
[思考2:確証が得られるまで推論は極力口に出さない]
[思考3:縄を切り、自由を得る]
[現在位置:D-2北部、道から少し外れた森の中]
[備考:参加者のブレアは偽物ではないかと考えています(あくまで予測)]
【エルネスト・レヴィード】[MP残量:100%]
[状態:両腕に軽い火傷(戦闘に支障無し、治療済み)ザイルで拘束中 気絶中]
[装備:無し]
[道具:無し]
[行動方針:打倒主催者]
[思考1:仲間と合流]
[思考2:炎のモンスターを警戒]
[思考3:縄を切り、自由を得る]
[現在位置:D-2北部、道から少し外れた森の中]
[備考]: フェイト、エルネストの装備と支給品はその場に放置されてます。
- 476 名前:代理投下:2008/09/24(水) 01:54:22 ID:V8pX6rxZ0
- 【ロキ】[MP残量:90%]
[状態:正常・自転車マスターLv4(ドリフトをマスター)
顔面が作画崩壊 顎関節脱臼 再起不能(リタイア)寸前 神生終了のお知らせ]
[装備:グーングニル3@TOP]
[道具:10フォル@SO、ファルシオン@VP2、空き瓶@RS、スタンガン、ザイル@現実世界、
首輪、荷物一式×2]
[行動方針:ゲームの破壊]
[思考1:レナス、ブラムスの捜索]
[思考2:見つけ次第ルシオの殺害]
[思考3:首輪を外す方法を考える]
[思考4:一応ドラゴンオーブを探してみる(有るとは思っていない)]
[思考5:痛みに耐えて顎を嵌め直す]
[思考6:この状況に対応する]
[現在位置:D-2北部、道から少し外れた森の中]
[備考1:現在顎が外れているため、これを整復するまで会話や呪文詠唱などはほぼ不可能です]
[備考2:なおロキは自分をフルボッコにした相手がブラムスだとは、今のところ気付いていません
(ただしブラムスの決め技「ブラッディカリス」を目撃して気付いた可能性もあります)]
【ミカエル】[MP残量:20%]
[状態:頭部に傷(戦闘に支障無し)、図星を突かれて逆ギレ]
[装備:ウッドシールド@SO2、ダークウィップ@SO2(ウッドシールドを体に固定するのに使用)]
[道具:魔杖サターンアイズ、荷物一式]
[行動方針:最後まで生き残り、ゲームに勝利]
[思考1:どんな相手でも油断せず確実に殺す]
[思考2:目の前の変態仮面野郎をブチ殺す]
[思考3:それが終わったら残りの3人(フェイト、エルネスト、ロキ)もまとめて皆殺し]
[思考4:狩場を鎌石村に変更]
[思考5:使える防具が欲しい]
[現在位置:D-2北部、道から少し外れた森の中]
[備考:デコッパゲ(チェスター)は死んだと思っています。]
68 : ◆Mf/../UJt6:2008/09/24(水) 01:44:16 ID:SsOv3JnA
以上で、本編の投下は終了です。
ちなみにこのSSのタイトルは
「今夜の沖木島は所により一時棺桶、その後に炎が降るでしょう。ご注意下さい」です。
- 477 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 01:59:57 ID:V8pX6rxZ0
- 代理投下終了
>>472
GJ
祝ヅラムス初戦闘。ロキざまーw
個人的にはミカエルに頑張ってほしいがMPが少ないからなぁ。
- 478 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 06:39:47 ID:BvtIKV8p0
- >>472
投下GJ!
ヅラムスタオパイパイ式移動方する出来るとは…おそろしい子
それにレザードのやつなんてことをヅラムスに吹き込んでんだw
- 479 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 20:33:15 ID:rH4yRsx+0
- >>472
投下GJ!
本文のネタも秀逸だが、ロキの状態とか題名がまた秀逸でお腹がよじれるかとwwwww
そしてついにヅラ、初戦闘
腐っても不死者王、体力を温存していた事を差し引いても恐ろしい事だ
それと1点ほど突っ込みどころを
フェイトとエルネストの状態表に気絶とあったけど、既に気絶状態から復活しているような……
- 480 名前: ◆Mf/../UJt6 :2008/09/24(水) 21:15:19 ID:B0VrH3cZO
- 再度失礼します。今作の作者です。
>>479
ご指摘ありがとうございます。
実を言いますと、これ以外にも訂正すべき箇所を発見してしまいましたので、
時間が出来次第迅速にそれらの修正を行いたいと思います。
せっかくのSSを不適切な形で投下してしまいすいませんでした。
- 481 名前: ◆Mf/../UJt6 :2008/09/25(木) 00:59:56 ID:zgNtVd920
- お待たせしました。これらが修正点です。
@.>>468と>>469の間に、以下の5行の文を追加。
超高密度の余り、鮮血と見間違えんばかりのつややかな緋色を帯びた闘気が現出し、ブラムスの右手を覆う。
ブラムスはその右手を、容赦なくロキの胴体に叩き込む。
ロキはまだ辛うじて途切れてはいない意識で、詠唱なしで展開可能な急ごしらえの魔力防壁を生み出すが、
そんなものは彼の身を守るためには、何の役目も果たしていないも同然。
ロキの結界を軽々突き破り、ブラムスの拳はロキにクリーンヒット。
A.>>469と>>470の間に、以下の4行の文を追加。
フェイトはその可能性を想像し、ぞっとしない思いに駆られた。
彼らの近くで、小さな光。
ロキがブラムスに奇襲されたとき、取り落としたと思しきストライクアクスの欠片。
すでにその刃に熱はなく、すでにただの白刃に成り果てている。
- 482 名前: ◆Mf/../UJt6 :2008/09/25(木) 01:06:45 ID:zgNtVd920
- B.フェイト、エルネスト、ロキの状態表を以下のように修正。
【フェイト・ラインゴッド】[MP残量:80%]
[状態:左足火傷(戦闘にやや支障有り。ゆっくり歩く分には問題無し)ザイルで拘束中]
[装備:無し]
[道具:ストライクアクスの欠片@TOP?]
[行動方針:仲間と合流を目指しつつ、脱出方法を考える]
[思考1:ルシファーのいる場所とこの島を繋ぐリンクを探す]
[思考2:確証が得られるまで推論は極力口に出さない]
[思考3:縄を切り、自由を得る]
[現在位置:D-2北部、道から少し外れた森の中]
[備考:参加者のブレアは偽物ではないかと考えています(あくまで予測)]
【エルネスト・レヴィード】[MP残量:100%]
[状態:両腕に軽い火傷(戦闘に支障無し、治療済み)ザイルで拘束中]
[装備:無し]
[道具:無し]
[行動方針:打倒主催者]
[思考1:仲間と合流]
[思考2:炎のモンスターを警戒]
[思考3:縄を切り、自由を得る]
[現在位置:D-2北部、道から少し外れた森の中]
[備考]: フェイト、エルネストの装備と支給品はその場に放置されてます。
【ロキ】[MP残量:90%]
[状態:自転車マスターLv4(ドリフトをマスター)
顔面が作画崩壊 顎関節脱臼 再起不能(リタイア)寸前 神生終了のお知らせ]
[装備:グーングニル3@TOP]
[道具:10フォル@SO、ファルシオン@VP2、空き瓶@RS、スタンガン、ザイル@現実世界、
首輪、荷物一式×2]
[行動方針:ゲームの破壊]
[思考1:レナス、ブラムスの捜索]
[思考2:見つけ次第ルシオの殺害]
[思考3:首輪を外す方法を考える]
[思考4:一応ドラゴンオーブを探してみる(有るとは思っていない)]
[思考5:痛みに耐えて顎を嵌め直す]
[思考6:この状況に対応する]
[現在位置:D-2北部、道から少し外れた森の中]
[備考1:現在顎が外れているため、これを整復するまで会話や呪文詠唱などはほぼ不可能です]
[備考2:なおロキは自分をフルボッコにした相手がブラムスだとは、今のところ気付いていません
(ただしブラムスの決め技「ブラッディカリス」を目撃して気付いた可能性もあります)]
以上です。
それでは。
- 483 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/25(木) 11:47:27 ID:hiFsaGOz0
- 空気王ブラムスの初戦闘・・・ktkr!!!!!!!!!
ロキは冷静になればさすがに気づきそうなもんだがどうなるかな
- 484 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/25(木) 21:01:38 ID:au1GG8X/0
- >>483
奴は空気じゃないと思うんだ……(姿的な意味で
彼を空気といったら、みんな空気になってしまう/(^o^)\
- 485 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/25(木) 22:00:42 ID:EhKKo3QYO
- VP組は大好きだから死なないでほしい!
あー楽しい♪♪♪
今後も楽しみすぎる♪♪♪
- 486 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/26(金) 00:05:29 ID:Tk1GCFNe0
- ◆Mf/../UJt6氏の軌跡
1.27話にて本ロワ初投下。ご存知みんなのアイドルヅラムスを生み出す。
2.長き沈黙の果てに90話にてヅラムスを変体仮面ヅラムスに進化させる。
3.101話3作目にしてヅラムス以外を初めて書く。更に本編中にネタを散りばめながらのヅラムスの大活躍を描く。
クオリティー高すぐるw
- 487 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/26(金) 17:12:47 ID:w8zJd2g00
- 101話の作者こと◆Mf/../UJt6氏に業務連絡です
Wikiに話を収録しようとしたところ分割しないと収まりきらなくなってます
どこで分割をご希望かのご連絡をお待ちしております
- 488 名前: ◆Mf/../UJt6 :2008/09/26(金) 17:31:10 ID:dZS+A4osO
- それでは、もう一度だけ登場します。
>>487さん
それでは、>>469のスピキュールとブラッディカリスがかち合って大爆発! のシーンを境に、
前後編への分割を希望します。
wikiの編集、どうもお疲れさまです。それでは。
PS それから話は変わりますが、
そろそろスレの容量もキツキツになってきたみたいなので、
次スレへの引き継ぎを検討してもいい時期かもしれません。
- 489 名前:487:2008/09/26(金) 18:33:03 ID:w8zJd2g00
- >>488
すみま……せん_| ̄|○
できる限り容量を減らしたのですが、前半部分が後2KB弱多いと怒られてしまいました
区切り候補点をもう1度お願いします
畜生、あと少しだったのに……ッ!
- 490 名前: ◆Mf/../UJt6 :2008/09/26(金) 20:05:00 ID:dZS+A4osO
- >>489
では、>>467の、クラースが上空から急襲するミカエル(のスピキュール)を目撃したシーンで、
区切りをお願いします。
- 491 名前:487:2008/09/26(金) 22:31:37 ID:fdLdS0h60
- ID変わっちまいましたが……
何とか編集できました、お騒がせしてすみませんでした
とりあえずこれで名無しに戻ります
- 492 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/28(日) 16:56:21 ID:PjhbSzG0O
- やっと書き込めた……何だよタンパンマンって……
>>472
投下GJ!
ヅラムスつええええええ!!
力任せじゃない辺りにも格を感じるなあ……
ギャグとバトルを同時にこなすとかチートっていうレベルじゃねーぞ!
カツラがカレーよろしく光った時はたまらず吹いた
しかし文章力がすごい……
ただただGJと言わざるを得ない
- 493 名前: ◆wKs3a28q6Q :2008/09/28(日) 17:22:53 ID:PjhbSzG0O
- どうも、レナス組とガウェインを予約していた者です。
今回首輪考察ネタを書いていたのですが、推敲時に致命的ミスが発覚いたしました。
何とかならないかなと頑張ってみたもののちょっと厳しそうなので、とっくに期限は切れてしまっていますが、改めてレナス・レザード・ソフィア・クリフ・ガウェインの予約を破棄させていただきます。
長期に渡るキャラの拘束および度重なる破棄申し訳ありませんでした。
何度も読み返したのに見落とすとか何やってんだろうね俺……
そしてふと思ったんだけど、wikiにルシファー関係で明らかになったことをまとめたりしていいだろうか?
レオン組・レザード組が平行して行ってるし、あると便利かなあと思うんですが。
- 494 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/28(日) 21:53:13 ID:KPaGv6+PO
- ウボアーっっ!ショック!!
変態御一行楽しみにしてたのになぁ泣
- 495 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/29(月) 00:44:35 ID:JzjwPByo0
- >>493そうですか、予約破棄は残念です。次回作に期待。
まとめはあれば便利といえば便利ですね。最近あったのだと首輪の中身とか、フェ、マリ、ソフィの制限とかでしょうか。
- 496 名前: ◆Zp1p5F0JNw :2008/09/29(月) 22:16:31 ID:xfN6se7e0
- 予約期限すぎてしまいましたが投下します。
お待たせしてスイマセン。
- 497 名前:くそむしテクニック ◆Zp1p5F0JNw :2008/09/29(月) 22:17:24 ID:xfN6se7e0
- 「いつまで泣いてやがんだよ!」
ガブリエルとの戦いが終わっても泣き止む気配の無いプリシスにアルベルは苛立つ。
とりあえずいつまでも外にいるのは危険と判断し、引き摺るように民家へ連れて行ったのではあるがこの有様である。
アリューゼ、ディアス、そして無人くんと仲間が目の前で死んだのだから悲しいのは分かるが…。
(仲間が死んで、ね…。ケッ、くだらん)
思い浮かんだ感情を自ら打ち消す。
このまま泣かせっぱなしでは埒が明かない。プリシスにはさっさと首輪解除の為に働いてもらいたいのだが。
しかし口を開けば罵詈雑言が飛び出すアルベルには、プリシスを上手く慰める事は不可能に近かった。
事実先程からアルベルなりに泣き止ませようとはしていたのだが全く効果が無い。
(やれやれ、やってられん)
現時点でプリシスを何とかするのは困難と判断したアルベルは腰を上げ、民家の外へ出ようとする。
その時今まで泣いてばかりだったプリシスから声がかかった。
「…どこ行くの?」
少し不安そうな口調。こんな凶悪な男でもいなくなると寂しいものなのか。
「あいつらそのままにしとくのも気分が悪いだろ」
その問いに対し、アルベルは振り返らずに答えて民家を出て行った。
アルベルが向かったのは先程ガブリエルと戦った場所だった。
そこにはあるのは瓦礫の山に埋もれたままのディアスの遺体。
「ったくよ、偉そうにしてた割にはこのザマかよ」
悪態付きながら瓦礫をどけ、ディアスの遺体を背負って引っ張り出す。
「ま、あの訳の分からん翼野郎を倒せたのはお前の功績もあるからな。こんくれーはしてやるよ」
瓦礫から離れ、地面が土になっている場所まで来ると一旦遺体を降ろす。
「剛魔掌!」
左手にオーラを纏わせて地面を殴りつけると、1m程の深さの穴が開いた。
同時に負傷していた左腕に痛みが走るがこの程度問題無い。
無残な状態となった背中を隠すように、ディアスを仰向けにその穴の中へと入れた。
「精々、成仏しろや。ま、それは無理か」
上から土を被せて穴を塞ぐ。
ここにディアスの使っていた剣でも突き刺しておけば墓らしくなるだろうが、剣はこの状況においては非常に有用な武器だ。
言い方は悪いが剣を無駄遣いするという事は避けたい。
埋葬してやっただけでもありがたく思えよ、とアルベルは土の下のディアスに言った。
「ん…?」
ふと足元を見ると、短剣が一本転がっている。
そういえばディアスの奴が短剣を一本持っていた。恐らくそれだろう。
「こりゃあ…確かあの野郎も」
やけに見覚えがあると思い拾い上げてみると、その短剣は以前ネルが使っていた短剣だった。
「まあんな事は関係無いが…こいつも貰っておくぜ」
別にお前らの分まで戦ってやるって訳じゃねえ。使えそうだから貰っておくだけだ。文句あるか?
ディアスの埋葬を終えたアルベルは、もう一人の戦死者の所へと向かう。
その男アリューゼは十数本もの矢をその身に受けながらも、今もその場に立ち続けていた。
「てめえは気に入らねえ奴だったが中々の腕っ節だったな。それに免じてちったあ弔ってやるか」
そう言ってアリューゼに刺さったままの弓を引き抜く。
全て引き抜いた後、アルベルはあえてアリューゼをそのままにしておいた。
立ち往生したその姿に、同じ武人としての誇りや気迫を感じて。
…まあ、彼の持っていた支給品はちゃっかり頂戴しておいたが。
- 498 名前:くそむしテクニック ◆Zp1p5F0JNw :2008/09/29(月) 22:18:20 ID:xfN6se7e0
- プリシスの待つ民家へ戻りながら、アルベルは心に沸いた疑問について考えていた。
思えばこの場に連れて来られてから、彼はある種の違和感を感じていた。
最初に感じたのは、ラブレターなどというふざけた支給品を掴まされた時…では無く。
氷川村へ向かう途中、女性の死体を発見した時だ。
――俺は戦場で死んだ奴に情けをかけるような奴だったか?
以前の自分ならそんな物には目もくれ無かった筈だ。
なのにあの時といい、今といい。死者を弔うという摩訶不思議な行動に自分は出ている。
それだけでは無い。
放送でネルやロジャー、スフレといった面々の名前が呼ばれた時に感じた怒り。
連中は知り合いとはいえ利害の一致で共闘したまで。ネルに至っては元々敵対関係にあった人物だし、共に行動している間も互いにいがみ合ってばかりだった。
何故そんな奴らが死んだだけで自分は憤りを感じたのだろうか?
戦場で頼れるのは自身の力のみ。他者と助け合ったり馴れ合ったりなんぞ、力の無いクソ虫共がやる事だと思っていた。
しかしフェイト達と戦い、この殺し合いでもディアス達と行動していた今の自分は、かつて自分が弱いと思っていた人間そのものだ。
ならば自分は弱くなったのだろうか?
それでもフェイト達と会う前の自分が、今の自分よりも強いとは到底思えなかった。
その矛盾がアルベルの苛立ちを余計に大きくさせる。
(くそっ、むかつくぜ。ここらで一暴れしてえ所だが…)
だが今のアルベルにはもう一つやらなければならない事があった。
プリシスがいる民家のドアを乱暴に開けると、未だ座り込んだままのプリシスに声をかける。
「おい、ガキ」
プリシスの体が少し動いたような気がするが、明かりも点いていない夜の屋内では目の前の人物の様子もよく見えない。
「俺は今からレオンとレナっつー奴らを探す。見つけたら連れて戻って来るから、てめえはこの建物にいろよ」
「レナと…レオン……」
「そうだ。ディアスの話だと東に向かってるらしい。今から追って連れ戻してくる」
それだけ言って、アルベルは再び建物を後にする。
早いとこ二人を連れ帰って、そいつらにプリシスを叱咤激励させて首輪の解析を進めてもらわなければならない。
(あくまで、俺の首輪を外して怪我を治療してもらう為だ。ディアスの為でも、ガキ共が心配な訳じゃねえし、ましてや早くメイド服が見たいからでもねえ)
誰に言っているのか分からないが心の中でのみ呟く。
そして、東へ向かおうと数歩歩き出した時だった。
「待って…」
民家のドアが開き、中からプリシスが姿を現す。
「あたしも行くよ。レナやレオンを探しに」
涙声では無くはっきりとした口調。まだ目に涙は残っていたが、頬にはもう流れていない。
「ああ?てめえなんぞ足手まといだ。そこで首輪についてもう少し調べてろ」
アルベルがそう言うと、プリシスはその言葉を予測していたのかメモ用紙を渡してきた。
「調べてみたけど、あたしにはよく分からないし…」
(あたしに調べられる事は調べた。これ以上の解析はレオンの協力が必要)
言葉とメモの内容の違い。恐らく盗聴器とやらを警戒しての行動だろうが、こうした事ができている辺り冷静な思考が出来るようになっているのかもしれない。
「それに、アルベルの言う通りだった。いつまでもこうしてる場合じゃないし」
「…いいのか、ホイホイ着いてきて?俺は殺し合いに乗ってない奴でも構わず喧嘩売っちまうような男なんだぜ?」
わざと意地が悪い事を言ってみる(勘違いされまくってる事も考慮してるので強ち意地悪でもないが)。
それにプリシスとアルベルが出会ったのは二時間も前の事では無いし、その出会いも最悪の形だった。安心して信頼できる、とはまだ言い難い。
「大丈夫よ。そしたらあたしが力づくでも止めてやるから!」
だが、プリシスはもう怯んでいない。力強いその答えにアルベルも僅かな笑みを浮かべた。どうやら立ち直ったようだ。
「けっ、好きにしな」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
- 499 名前:くそむしテクニック ◆Zp1p5F0JNw :2008/09/29(月) 22:19:43 ID:xfN6se7e0
- 時間を遡る事一時間、時間にして午後七時。
レナが目を覚ましたのは丁度その時刻だった。
ディアスに言われた通り、レナを背負ってレオンはI-07を横断していた。
「うぅん…あれ、私……ってえ!?レオン!?」
「あっレナ姉ちゃん、目覚めたんだね!」
「え、えっと、これはどーなってるの?私確か、レオンの治療をして…それで、ええと…」
「レナ姉ちゃん、僕を治療してくれたの?あ、いや今それは関係無いか…」
とりあえず、レオンはレナに降りてもらう事にした。正直彼女を背負って走るのは相当にキツい。
だがレナ姉ちゃん意外と体重あるんだね、筋肉質なの?などとはさすがに聞けない。
「ごめん。とにかく急いでるから、悪いけど走りながら話そう!」
レナを降ろすと、レオンはすぐに走り出す。レナもまだ意識が完全に覚めては無いものの彼に並走した。
「聞きたい事は沢山あると思うけど…まず何から…」
「えーっと…じゃあまず、その服は一体どうs」
「…これは聞かないで。自分でも分からないんだよ…」
走りながらレオンは伝えるべき事を簡単に伝えた。
どうやら自分は気絶していて、目が覚めたら目の前にディアスがいた事。
そのディアスに言われて、レナを背負って今東へ向かっている最中である事。
どうやら自分達が眠っていた場所の近くに危険人物がいたらしく、ディアスはそいつと戦う為に残った事。
そこまで話すと、急にレナは足を止めてしまった。
「レナ姉ちゃん、どうしたの?」
遅れてレオンも足を止めて振り返った。
レナは俯いておりその表情を見る事は出来ない。レオンは何かあったのかと、心配そうに彼女の顔を覗き込んだ。
「ごめん…」
ポツリと呟く。
それと同時にレナはレオンに背中を向けた。
「え…!?ま、待ってよレナ姉ちゃん!!」
レオンが慌ててレナの腕を掴み、そのスタートを止めさせた。
「どこ行くのさ!?今からI-08に向かうって言ったでしょ?」
「私、ディアスの所へ戻る」
「えええ!?」
「ディアスが戦ってるのに、私だけ逃げるなんてできない!」
自分の腕を掴んでいた手を振りほどき、レナは本来進むべき方向とは逆…西へ向かって走り出した。
「あ、ちょっと、おーい!」
レオンが叫ぶが、レナはそんな声は聞こえていないとばかりに無視して走り去っていってしまう。
自分もすぐに追おうとして…少し躊躇する。
時刻はもう午後8時過ぎ。あと1時間も経たない内にこのI-07は禁止エリアになってしまう。
このまま東へ向かえば9時までには余裕で突破できるだろう。
だが今からレナを追いかけた場合を考えると厳しい。最悪、戻れなくなる可能性もある。
レナを放ってこのまま東へ向かうか、危険覚悟で西に戻るか…。
「ああーっ!もう!!」
レオンは結局走り去るレナを追う事にした。
ディアスの考えには背く事になるが、彼からはレナを守るように言われている。
I-09へは行けなくなるかもしれないが、どうせ一人で向かった所でディアスの言う事は守れないのだ。
- 500 名前:くそむしテクニック ◆Zp1p5F0JNw :2008/09/29(月) 22:20:35 ID:xfN6se7e0
- しかしレナを追おうと走り出したのはいいが、全く追いつく気配が無い。
それどころかどんどん差を広げられるばかりだ。
元来レオンはあまり運動が得意では無い。冒険でも専ら頭脳労働が担当だし、まだ身体的にも未発達。
加えて何故か着せられているこのスカートに慣れず上手く走る事ができなかった。
「レ゛ナ゜ね゛え゛ぢゃ〜ん……ま゛っでよ゛ぉぉぉ……」
結局レオンのスタミナはものの十数分で尽き、レナを連れ戻すのはほぼ不可能となってしまったのである。
(俺は重大な事を忘れていた…)
I-07のエリアを前に、アルベル達は立ち往生していた。
時刻は20時55分。あと僅か5分でこの先は禁止エリアとなってしまうのである。
第二回放送をあまりよく聞いていなかったせいですっかりその事が頭から抜けていた。
もしプリシスが同行していなかったら、彼女の制止を受ける事もなく、禁止エリア進入によって惨めに死んでいた事だろう。
「仕方ねえ。となるとここは避けるしかねえか…」
「でもこの北のエリアも既に禁止エリアになってるわ。向こう側に行くには、相当回り道しなきゃいけないよ?」
「…くっそ!ディアスの野郎、面倒くせえ所に逃がしやがって!」
「うーん…どうしようか?」
「迂回して行くしかねえだろ。ここに留まってたって何も進展しねえ」
二人がしぶしぶ北へ向かおうとすると。
「…今、何か聞こえなかった?」
後ろを歩いていたプリシスが足を止める。
「あ?何も聞こえねえぞ?」
「しーっ!ちょっと静かに!聞こえなくなるでしょ!」
何だとてめえ、とアルベルは言い返そうとしたのだが。
「……ね〜……ちゃ……」
微かだが、I-07の方から叫んでいるような声が聞こえる。
「ね!?今聞こえたでしょ!?」
「ま、まあ…な」
「誰かいるのかな…?」
暫く声がした方向を見ていると、やがて見覚えのある人物が見えてきた。
「あっ…!?」
「あのガキ!」
「はぁ……はぁ…レナ……ねえちゃ………おぉーい……ぜぇ…ぜぇ…」
そこに現れたのは、紛れもなくレオン・D・S・ゲースケ。
その顔は汗にまみれており、足取りもフラフラ。一応本人は走っているつもりらしいが、その速さは最早一般人の歩くスピードより遅い。
顔も上げていられないようで、こちらにも気付いていないようだ。
「お、おい!ここが禁止エリアになるまであと何分だ!?」
「え、えっと…」
プリシスが支給品袋から時計を取りだして時刻を確認する。
「あ、あと30秒…」
「……ちっ、クソッタレがぁっー!」
レオンに向かい、アルベルは疾走した。
- 501 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/29(月) 22:22:23 ID:EqO/BFBw0
- リアル投下ktkr!支援だ!
- 502 名前:くそむしテクニック ◆Zp1p5F0JNw :2008/09/29(月) 22:22:24 ID:xfN6se7e0
- 頭が揺れる。足がガクガクする。喉が渇いた。肺が痛い。
そんな状態になってもレオンは足と口を止めず、レナを追い続けていた。
「はぁ……はぁ…レナ……ねえちゃ………おぉーい……ぜぇ…ぜぇ…」
もうどの位走ったのか。さすがにI-07のエリアは抜けたと思う。
しかしレナの姿は見えてこない。年齢が違うとはいえ、仮にも男の自分が女の子に全く追いつけないとは…。
さすがのレオンも少し自分が情けなくなる…そこまで考えた時だった。
『禁止エリアに抵触しています』
(えええええ!?)
突如首輪から発生した音声にレオンは混乱する。
『首輪爆破まで後30秒』
(ちょ、ちょっと待って!?タンマタンマタンマ!そ、そうだ素数を…ってあと30秒!?そんな場合じゃないって!)
どうやらまだ自分はI-07にいたらしい。
これだけ走ってまだ1エリアも抜けられないとは情けない…が、そんな事を考えている余裕は無い。
あと30秒で首輪が爆発してしまう。一刻も早くこのエリアから脱出しなくては。
(走れ、動け、僕の足!火事場の馬鹿力を出すんだ!人間死ぬ気になれば何でも出来る!)
だが体は正直だ。いくらレオンが頭で命じても、その通りに動いてくれない。
『首輪爆破まで後20秒』
「くそおぉぉぉっ!」
歯を食いしばって前を向く。心なしか、少しだけまともに走れる気がした。
そして、前を向いた所で見たものは。
「ガキィィィッッッ!!!」
恐ろしい形相でこちらへ向かってくるヘソを出した男だった。
(うわぁっ!?あの人って、確か夕方会ったやばそうな人…!)
そうだ。確か気味の悪い笑みを浮かべながら自分に近づいてきた男。
何でこんな所に!?ここまで自分を追ってきたのか?
いや、でも今僕はセイクリッドティアを持ってないわけで…。
どちらにしろ今の状態では逃げる事は出来ない。
いや、逃げた所で首輪が爆発して死ぬだけだ。
ああ、自分の命もここまでか…。
「手を出せぇぇぇ!」
叫びながらヘソ出し男は手を延ばしてくる。掴まれ、という事だろうか?
レオンは一瞬考える。
首輪を爆破させられる。ヘソ出し男の手を掴む。どちらの方が生存率が高いか。
- 503 名前:くそむしテクニック ◆Zp1p5F0JNw :2008/09/29(月) 22:23:17 ID:xfN6se7e0
- 『首輪爆破まで後10秒』
(考えるまでも無いっ!)
レオンは突き出された手をしっかりと掴む。
首輪が爆発するのは恐らく100%だろうが、この男が自分を殺そうとしているかどうかは分からない。
「うおりゃあああっっっっ!!」
ヘソ出し男は声を上げながらレオンが掴んだ腕を思いっきり回し、放り投げた。
レオンの体は宙を舞い、そして地面に衝突する…。
「うわあっ!」
「きゃあっ!」
…いや、衝突したのは地面ではなく、人間。
衝突した人物を巻き込んで倒れ込む。結局地面に叩きつけられたのは同じだが、おかげで衝撃は多少和らげられた。
そしてぶつかったのは、やはりレオンが知っている人物で。
「プ、プリシス…!」
「いったぁ〜い……あ、へへ、久し振り、かな?」
首輪からの警告は、もう聞こえなかった。
レオンをぶん投げたヘソ出し男ことアルベルは、その後すかさず踵を返す。
視界に入るのはプリシスと衝突するレオンの姿。
(何とかあのガキは助かったようだが…)
今度は自分が危ない。I-06目掛けて全力疾走で向かう。
「アルベルー!急いでー!」
プリシスの声がする。
「言われなくても分かってんだよぉぉぉぉぉ!」
走る!走る!走る!
十数mも無い距離が異様に長く感じる。
「早くー!」
「があああああっっっっ!」
あと3秒。
2秒。
1秒。
- 504 名前:くそむしテクニック ◆Zp1p5F0JNw :2008/09/29(月) 22:24:09 ID:xfN6se7e0
- アルベルの首は繋がっていた。
渾身のヘッドスライディングにより、彼は首輪が爆発するコンマ1秒前に上半身をI-07から出す事に成功したのである。
「ア、アルベル、大丈夫!?」
「…見りゃ分かんだろ。とりあえず生きてるようだぜ」
心配そうに駆け寄ってくるプリシスに答え、アルベルはよっと言いながら立ち上がる。
「プ、プリシス、この人味方なの?」
「うん。一応殺し合いには乗ってないみたいだし」
「けっ。二度も助けてやったのに、まだ俺が殺し合いをしてると思ってやがったのか」
面白く無さそうに言うアルベル。
「あ、ご、ごめんなさい。それと、ありがとうございます」
レオンは素直に謝る。思えばレオンが彼を警戒したのは、ただ単に「顔が恐かったから」の一点に尽きる。
根拠も無く外見で人を判断するなんて、何て失礼な事をしてしまったのだろうか、と。
「わ、分かりゃいいんだよ!フン!」
それだけ言ってアルベルはそっぽを向いてしまった。
やはりまだ少し怒っているんだろうか?
…心無しか顔が赤かった気がするが、それは多分気のせいだろう。
(ああ、そういえば…)
さっきまで色々あって忘れていたが、レオンにはまだ今の状況が飲み込めていないのだ。この際色々整理しておかなければ。
とりあえず、まず真っ先に聞いておきたい事があった。
「ところでプリシス…僕の格好を見てよ、こいつをどう思う?」
「何とも思わねえよクソ虫があっ!!!」
「ご、ごめんなさい!」
何故か聞かれてもいないアルベルが切れた。
そこでレオンは不意に思い出す。ディアスに会う前に残っている彼の最後の記憶は、アシュトンに会った時の記憶で…。
「プリシス…」
「ん?」
「僕さ、アシュトン兄ちゃんに会ったんだよ…そ、それで…」
そう、その時アシュトンから出た言葉。
『プリシスは……生き残るために、僕達を皆殺しにするつもりなんだって』
もし彼の言う事が正しいなら、プリシスは…。
「おい、ガキ。一緒にいた女はどうした」
アルベルの声でレオンの思考は中断された。
「え、あ、そうだ。プリシス、レナ姉ちゃん見なかった?」
「レナ?ううん、見てないけど…。レオン一緒じゃなかったの?」
「僕より先にこっちに向かってたと思うんだけど…」
「おい、とりあえず戻らねえか?その女も戻りながら探せばいいだろ」
こんな所で呑気に立ち話なんてしている場合では無い。
この二人にはさっさと首輪を外す方法を考察してもらいたいし、レナには腕の治療をさせなければならない。
それまでは出来るだけ効率良く事を運んで行きたい、というのがアルベルの考えだ。
「あー、そうだねえ。でもレナはどこ行ったんだろ?レオンは分からないの?」
「う〜ん…ディアスお兄ちゃんを助けに行く、みたいな事を言ってたんだけど…。そう言えば、二人はディアスお兄ちゃんに会った?」
レオンの言葉に、プリシスとアルベルの表情が僅かに曇る。
「…それについても移動しながら話す。とりあえず戻るぞ」
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- 505 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/29(月) 22:24:24 ID:xXZtwhcRO
- 支援
- 506 名前:くそむしテクニック ◆Zp1p5F0JNw :2008/09/29(月) 22:26:10 ID:xfN6se7e0
- 嫌な予感が止まらない。
記憶を頼りに、レナはレオンを治療した場所のそばまで戻って来ていた。
「何…これ……」
見えてきたのは、無残にも崩れ落ちた民家と瓦礫の山。
その様子を見るに、恐らくここで何か尋常でない事態があったとしか思えない。
(まさか…この瓦礫の下に…)
そう思ったが、すぐにそんな訳は無いと首を振る。
これだけの倒壊を引き起こしたのだ、かなりの轟音が響くはず。だがレナがここに駆けつけるまでにそんな音は聞いていない。
周囲に人の気配は全く無いし、この民家が崩れてから結構時間が経っていると思われる。
だから、レナは瓦礫の下にディアスはいないと結論付けた。いや、いないと信じ込んだ。
もし彼が瓦礫の下敷きになっていたとしたら、もう助かっていないだろうから。
崩れた民家を後にして、レナはさらに走る。
足に疲労が溜まるが我慢する。ディアスが危ないかもしれないのだ。
先程の惨状を目の当りにして、彼女はさらに嫌な予感を膨らませていった。
「あ……!?」
それほど離れていない場所で、立っている人を見つける。背格好から男のようだがディアスでは無さそうだ。
少し離れて様子を伺うがその人物はこちらに気づく様子は無い。
いや…気づくどころか、動く気配すらなかった。
「えっと…すいません…」
意を決して、レナはその人物に声をかけてみたのだが返事は無い。
「…こ、この人……!?」
そこで気付いた。
その人物が、既に絶命している事に。
- 507 名前:くそむしテクニック ◆Zp1p5F0JNw :2008/09/29(月) 22:27:12 ID:xfN6se7e0
- 「ど、どうして…」
よく見れば、その男が立っている正面の民家が無残にも破壊されている。
先程の民家と違ってほぼ全壊だ。
レナの中で不安が加速度的に大きくなる。
(ディアス…ディアス……どこ?どこにいるの……!?)
ふらふらとした足取りで周辺を探る。膨らむ不安を抑える為、それだけを気力にして。
そして…とうとう見つけてしまう。
「ここの地面…」
全壊した民家のそばに、やけに不自然な地面がある。
まるで穴を掘った後、何かを埋めたような…。
「違うよね…違うよね?ディアス…!?」
震える声で、最悪の想定を打ち消そうとする。
「違わねえよ」
だがその望みは、背後から聞こえた声によって絶たれてしまった。
聞き覚えのある声にレナは振り返る。
「アルベル…さん…」
そこに立っていた三人の人物。
数時間前までディアスと共に行動していた青年、アルベル。
切断された左腕の治療を施した少年、レオン。
共に十賢者を倒した仲間で、この殺し合いでは初めて顔を会わせる少女、プリシス。
「アルベルさん…今の、違わないって…」
レオンはここに来る途中までに、自分がレナと逃げた後、合流したアルベル達4人でガブリエルと戦った所までの経緯を聞いた。
だが、そのガブリエル戦がどういう結果で終わったのかはまだ聞いていない。
「……どういう、事…ですか?」
レナもレオンと同じように問いかける。
…だが、もう二人共分かっていた。それでも問いかけたのは、まだ認めたく無かったからだろう。
「…ディアスは死んだ。ガブリエルを倒す為に…俺達を守る為にな」
アルベルがそう言うと、レナは糸が切れた人形のように膝から崩れ落ちた。
その目にはやがて涙が浮かんで、止め処なく流れ出す。
「ディアス……ディアス………う、うぅぅ…ディ……ア…」
「お兄ちゃん…あ…あぁぁ…」
つられるかのようにレオンもまた泣き出した。
アルベルとプリシスに二人の涙を止める手段は無く、ただその場に立ち尽くす事しかできなかった。
- 508 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/29(月) 22:27:34 ID:xXZtwhcRO
-
- 509 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/29(月) 22:30:09 ID:EqO/BFBw0
- 支援
- 510 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/29(月) 22:34:49 ID:xXZtwhcRO
- ん…?さるさん?
- 511 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/29(月) 22:38:25 ID:EqO/BFBw0
- ……むしろ容量オーバー寸前の予感!(>>488)
- 512 名前: ◆Zp1p5F0JNw :2008/09/29(月) 22:38:36 ID:znd1E8GvO
- すいません、容量が500越えるまでに投下しきれるか微妙&さるさん食らったので
あと少しだけなんですが続きはとりあえずしたらばに投下します。
どなたか、新スレお願いします…。自分では立てられなかったので。
見切り発車しないで次スレ待てば良かった…俺の馬鹿。
- 513 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/29(月) 22:44:08 ID:EqO/BFBw0
- 試しに立ててくる
- 514 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/29(月) 22:47:56 ID:EqO/BFBw0
- すまんダメだった、誰か頼んだ
- 515 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/29(月) 22:58:12 ID:xXZtwhcRO
- スレ建てできませんでした…orz
- 516 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/30(火) 00:02:19 ID:r1yP6UWR0
- >>515スレ立て行って来る
- 517 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/30(火) 00:15:15 ID:IQs52KAQ0
- テンプレ中だけど一応先に誘導しておく
AAAキャラバトルロワイアルpart5
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1222700688/
スレ立てしてくれた方に最大限の乙を
- 518 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/30(火) 00:17:41 ID:r1yP6UWR0
- 立てました
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1222700688/
テンプレ生存者しかいじってないけどいいよね?
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