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青春探偵小説『グランドスラムの少女達』
1青春探偵小説『グランドスラムの少女達』 投稿者:リリー  投稿日:2008年01月14日(月)21時35分44秒
『グランドスラムの少女達』

CAST

藤本七海 
細川藍
一木有海  

『R&G探偵社』第3弾
『表バージョン』と『裏バージョン』の二つの小説が交互に展開し、お互いに影響し合います
『表』…聖テレジア女子学園中等部と、その野球部のメンバーを中心とした青春スポコン小説
『裏』…『R&G探偵社』の少女探偵達が、悪と戦うアクション小説
第一試合(第一話)から第三試合(第三話)までの三話構成です
2投稿者:リリー  投稿日:2008年01月14日(月)21時38分44秒
登場人物(表)

【聖テレジア女子学園中等部・軟式野球部メンバー表】
一番・サード    #5 木内梨生奈    【1年B組7番】(り〜な)
二番・セカンド   #4 伊倉愛美     【2年B組3番】(まにゃ)
三番・ピッチャー  #1 細川藍      【1年A組31番】(あい〜ん)
四番・ライト    #9 藤本七海     【1年C組29番】(ななみん)
五番・ファースト  #3 ジョアン・ヤマザキ【3年D組34番】(じょわん)
六番・レフト    #7 渡邊エリー    【1年D組36番】(えりりん)
七番・センター   #8 近藤エマ     【1年A組10番】(えまちん)
八番・ショート   #6 大木梓彩     【2年A組4番】(あず〜)
九番・キャッチャー #2 中村有沙     【3年B組22番】(ありりん)
補欠・マネージャー #10 一木有海     【1年C組2番】(あみ〜ご)
監督・顧問        中田あすみ    【体育教師】  (あすみん)
3投稿者:気を取り直して頑張りましょう  投稿日:2008年01月14日(月)21時38分49秒
 
4投稿者:リリー  投稿日:2008年01月14日(月)21時39分15秒
登場人物(裏)

【R&G探偵社・社員名簿】
?1・吉田永憲     【指令】      『レッド・ライオン(赤き獅子)』(レッド)
?2・ダーブロウ有紗  【作戦総指揮】   『マッド・エッジ(狂刃)』(デカアリ/ダーさん)
?3・ジャスミン・アレン【参謀】      『アイアン・メイデン(鋼鉄の処女)』(ブラッディ・ジャスミン)
?4・岩井七世     【参謀】      『クリムゾン・レイン(深紅の雨)』(出っ歯ちゃん)
?5・俵有希子     【秘書・チームT】 『ダブル・フィッシャーマンズ・ノット・オールド(二重釣糸縛り・甲)』(ミミー)
?6・俵小百合     【秘書・チームT】 『ダブル・フィッシャーマンズ・ノット・ヤング(二重釣糸縛り・乙)』(ジョー)
?7・村田ちひろ    【チームS】    『サムライ・ガール(剣術小町)』(サムガー)
?8・中村有沙     【チームN】    『アンダー・クイーン(地下世界の女王)』(チビアリ)
?9・ジョアン・ヤマザキ【チームS】    『ブラック・パイソン(黒の毒蛇)』(デッパリンダ)
?10・近藤エマ     【チームE】    『キャンディ・ボール(飴玉)』(ジェリー)
?11・木内梨生奈    【チームR】    『ムーン・ライト(月光)』(デコッパチ)
?12・渡邊エリー    【チームE】    『ビー・アタック(蜂の一刺し)』(ぷるぷる)
?13・細田羅夢     【チームR】    『ライトニング・ボルト(雷電)』(ダッチャ)
?14・藤本七海     【チームN】    『キラー・タイガー(人喰い虎)』(パッツン)
?15・橋本甜歌     【アルバイト】   『クラッシュ・ノイズ(騒音)』(テンカリン)
5投稿者:リリー  投稿日:2008年01月14日(月)21時40分16秒
【加藤組】
加藤浩次         加藤組・組長
楠本柊生(元帥)     ホストクラブ『9×9(クック)』オーナー
浜津智明(なすび)    ラブホテル『アンダー・キャッスル』フロント係・伊倉愛美の父

加藤夏希         暗殺組織『TTK』元『戦士』『デーモン・ハート(魔王の心臓)』・加藤浩次の娘
加藤ジーナ        暗殺組織『TTK』元『戦士』『スカーレット・ニードル(真紅の針)』・加藤浩次の娘

【山本組】
山本圭壱         山本組・組長
後藤理沙(弥勒)     山本組・用心棒
箕輪はるか(みのぽー)  山本組・用心棒
秋山恵   山本組・用心棒
松本政彦(ゴルゴ)    新宿歌舞伎町風俗店『SM倶楽部エトワール』用心棒・大木梓彩の父 

安田裕己(安田団長) 安田大サーカス団長・麻薬組織ボス難田門司の部下
黒川明人(クロちゃん)  安田大サーカス団員・麻薬組織ボス難田門司の部下
広瀬康幸(HIRO)   安田大サーカス団員・麻薬組織ボス難田門司の部下
6投稿者:リリー  投稿日:2008年01月14日(月)21時40分43秒
【聖テレジア女子学園・職員】
佐藤珠緒         中等部・1年C組担任(家庭科)
近藤春菜(こんどん)   中等部・1年A組担任(国語)
中田あすみ        中等部・非常勤講師(体育)
中川翔子(しょこたん)  中等部・臨時養護教諭
武川行秀         総合学園長

【聖テレジア女子学園・初等部児童】
細田羅夢         初等部・6年D組24番
川?樹音         初等部・6年A組5番
鍋本帆乃香        初等部・5年C組31番
メロディ・チューバック  初等部・5年C組17番

【聖テレジア女子学園・高等部生徒】
村田ちひろ        高等部・1年B組33番(剣道部所属)
7投稿者:リリー  投稿日:2008年01月14日(月)21時41分13秒
【天歳市立虹守中学校・野球部】
バーンズ勇気       3年・ピッチャー
高橋郁哉         2年・キャッチャー
永島謙二郎        2年・セカンド
木村遼希         1年・ショート
日向滉一         1年・サード
橋本甜歌         2年・マネージャー
木内江莉         2年・マネージャー
井上雅史(マー)     監督・顧問

【叡智大学付属渓岳園高等学校・野球部】
山元竜一         虹守中OB・私立叡智大付属渓岳園高校3年・野球部エースピッチャー
前田公輝         虹守中OB・私立叡智大付属渓岳園高校1年・野球部サード
堀江幸生         下ノ国中出身・私立叡智大付属渓岳園高校1年・野球部キャッチャー
8投稿者:リリー  投稿日:2008年01月14日(月)21時41分38秒
【少年野球チーム・茶々山マンボウズ・メンバー】
間寛平(カンペー)    監督
鍋本帆乃香(ホノカハン) 寛平の孫娘
渡邊聖斗         天歳市立茶々山小学校6年
吉野翔太         天歳市立茶々山小学校5年
丸山瀬南         天歳市立茶々山小学校5年
荒木次元         天歳市立茶々山小学校5年
ミッチェル・ベンジャミン 天歳市立茶々山小学校4年

【草野球チーム・虹守商店街ピーナッツ・メンバー】
内村光良         スポーツライター
三村勝和         酒屋経営
大竹一樹         無職
吉田永憲         『R&G探偵社』社長
松本政彦         請負人
府川亮          CDショップ経営
飯尾和樹         クリーニング店経営
9投稿者:リリー  投稿日:2008年01月14日(月)21時42分20秒
【虹守町】
井出卓也(フニャオ)   私立忠律高等学校2年・元『R&G探偵社』メンバー
白木杏奈(カピバラ)   私立忠律高等学校2年・元『R&G探偵社』メンバー

【下ノ国町】
飯田里穂(リッピー)   天歳市立弓削高等学校1年・元『スクラッチ』メンバー
堀江幸生(マンプク)   私立叡智大付属渓岳園高校1年・元『スクラッチ』メンバー
ド・ランクザン望(ド)  私立本巻城高等学校1年・元『スクラッチ』メンバー
篠原愛実(ツンツン)   天歳市立下ノ国中学校3年・元『スクラッチ』メンバー
洸太レイシー(メガネ)  天歳市立下ノ国中学校3年・千秋レイシーの兄

【天歳警察署】
菊池輝一(テル)     天歳警察署刑事
中尾賢樹(ケンキ)    天歳警察署刑事

10投稿者:リリー  投稿日:2008年01月14日(月)21時42分35秒
【原村】
千秋レイシー(ギョーザ) 木内梨生奈の元彼・洸太レイシーの弟
松尾瑠璃         暗殺組織『TTK』元『戦士候補生』『ELO(電光楽団)』
長谷川豊(ハセヤン)   ペンション『ハセヤンズハウス』オーナー・瑠璃の義父
長谷川大樹        ペンション『ハセヤンズハウス』従業員・ハセヤンの息子   
清水ミチコ(ミッチャン) 諏訪市民病院看護士長

モニーク・ローズ     暗殺組織『TTK』元『戦士』『キャット・ウーマン(愛猫家)』・指名手配犯    
11投稿者:うぎょッ  投稿日:2008年01月14日(月)21時43分29秒
リリーが新スレ立てやがった
12投稿者:リリー  投稿日:2008年01月14日(月)21時44分33秒
長くなりましたが、これが登場人物です

この小説は、とても長くなりそうですが、最後までお付き合い願えたら…と思います
今作品も、よろしくお願いします
13投稿者:これは楽しそうだ  投稿日:2008年01月14日(月)21時46分31秒
 
14投稿者:つか、すご!!  投稿日:2008年01月14日(月)21時48分14秒
 
15投稿者:117  投稿日:2008年01月14日(月)21時50分34秒
おぉ、登場人物も多いし,かなり規模が大きそうですね!
「表」と「裏」の世界か・・・内容のギャップも、なかなか面白そうです。
16投稿者:内P・・・  投稿日:2008年01月14日(月)21時51分53秒
 
17投稿者:キャスト覚えきれなかったらどうしよう  投稿日:2008年01月14日(月)21時52分48秒
楽しみすぎる
18投稿者:とりあえずこの変が気になる…  投稿日:2008年01月14日(月)21時52分54秒
内村光良         スポーツライター
三村勝和         酒屋経営
大竹一樹         無職
吉田永憲         『R&G探偵社』社長
松本政彦         請負人
府川亮          CDショップ経営
飯尾和樹         クリーニング店経営
19投稿者:>18  投稿日:2008年01月14日(月)21時54分13秒
映画『ピーナッツ』のメンバー
20投稿者:楽しみ  投稿日:2008年01月14日(月)21時54分45秒
早くみたいです!
21投稿者:今回は  投稿日:2008年01月14日(月)21時55分18秒
保存しておいた方がいい
過去ログ見れなくなってるから
22投稿者:リリー  投稿日:2008年01月14日(月)22時03分28秒
忘れてました
前作『らりるれろ探偵団』はここで見れます
http://ame.x0.com/tentele/070923205005.html
前々作『SAMURAI DRIVE』はここです
http://ame.x0.com/tentele/070222214415.html

3さん、ありがとうございます
ちょっと新スレ立てる時、失敗しちゃいました
早速、コメントありがとうございます
今回も楽しんで頂けるよう、がんばります
しかし、心配なのは、野球にまったく興味のない方、または嫌いな方に楽しんで頂けるかどうか…あと、「こんな設定(キャラ)覚えてないよ」ってことにならないかどうか…
とにかく、発表します

では、プロローグからどうぞ
23投稿者:リリー  投稿日:2008年01月14日(月)22時04分10秒
プロローグ『スターティングメンバー発表』

まず、少女達を出迎えたのは、満開の桜の花。
今年は例年にない暖冬で、もう3月の上旬には街中の桜の蕾は開いてしまい、4月にはもう既に葉桜となって散りかけていた。
しかし、ここ、聖テレジア女子学園の構内に植えられた桜だけは、その淡いピンクの花弁を咲き誇らせている。
「金の使い方、間違うてへん?この学校…」
呆れたような、冷めたような目で、その桜を見上げる少女は、そう関西弁で呟いた。
黒く艶やかな、腰まで真っ直ぐ伸びた髪、その前髪は眉毛の上で一直線に切り揃えられている。
肌は白く、その分、黒目が大きく目立つ。
可愛らしい少女を、よく「人形の様」と比喩するが、まさにその少女、【藤本七海】の第一印象を語るには、その例えが適切だった。
24投稿者:リリー  投稿日:2008年01月14日(月)22時04分34秒
セーラー服、スカート、ソックス、そしてベレー帽…少女の身に着けている物は、全て真っ白だ。
異なるのは、黒の革靴に、緑の胸のリボン。そして胸元と左袖の『St.T』と金色の筆記体で組み合わされた、紺色で盾形のエンブレム。
聖テレジア女子学園の制服である。
天歳市の中心部にある、聖テレジア女子学園…初等部、中等部、高等部からなる、日本屈指のミッション系お嬢様学校である。
緑のリボンは、中等部を表す。ちなみに初等部は赤、高等部は青だ。
この学校には、財閥、大企業の経営者、政界の大物等の裕福な家の令嬢が、多数通っている。
その為、この学校には金がよく集まる。
授業料はもちろん、保護者からの献金も多い。
そして、本来ならば、高い学力を有していないと入学できないレベルの学校なのだが、それに満たない学力の者から送られる『裏金』も、その集まってくる金の一部である。
この藤本七海も、その『裏金』で入学したクチである。
25投稿者:リリー  投稿日:2008年01月14日(月)22時05分30秒
七海の背後から、またも関西弁の濁声が飛ぶ。
「お〜い、七海〜!何しとんのや?はよ、こっちおいで!みんなで写真撮ろうや!」
やれやれ…そう言いたげな溜息をつき、七海はゆっくりと振り返る。
そこにはアルマーニのグレーのスーツを着た男、吉田永憲…通称『レッド吉田』が手招きしていた。
長身の吉田は、高級スーツもそれなりに着こなしているが、その顔は随分庶民的だ。
その吉田の後ろにも、七海と同じ姿の少女が3人いる。
「もう…。レッドさん、でかい声で呼ばんといてくれる?メッチャ恥ずいねん!」
そう言いながら、七海はトボトボと吉田のもとへ行く。
他人が見たら、この関西弁の2人を親子と見るだろう。
しかし、そうではない。
男と少女の関係は…いや、男と4人の少女の関係は、一言では表すことのできない複雑なものであった。
26投稿者:リリー  投稿日:2008年01月14日(月)22時06分02秒
「何をぼんやり眺めてたの?」
3人の少女のうちの一人が、七海に訊ねた。
広い額を前髪で隠し、襟足で二つに髪を括った、眉の薄い和風で上品な顔立ちの少女…彼女の名前は【木内梨生奈】。
「うん、ちょっと、桜をな…」
「桜…?あんたは、花より団子だろ?」
栗色のウェーブした髪…美しい、コーカソイドの外国人顔の少女…【近藤エマ】は、そう言って七海をからかった。
「それを言うなら、たこ焼きじゃない?」
黒髪だが、これもウェーブがかかり、これもキリリと美しく引き締まった外国人顔の少女…【渡邊エリー】は、エマに耳うちする。
七海と梨生奈を日本人形に例えるなら、エマとエリーは西洋のセルロイド人形である。
「うるさい!そんな風流な見かた、してへんわ!」
可愛らしい顔を、不機嫌に歪める七海。
「じゃあ、どんな見かたをしてたの?」
と、梨生奈が訊く。
「経済的な見かたや…」
七海の返答に、エマとエリーはまた笑った。
「あはは!さすが、関西人!」
「ナニワの商人!」
梨生奈だけは、不思議そうに首を傾げる。
「桜と経済…?どんな見かたよ?」
27投稿者:リリー  投稿日:2008年01月14日(月)22時06分39秒
七海は、桜の木を振り返って桜を指差す。
「あの桜…一体、いくらかかっとるか知っとる?」
「…?ああ…。新聞にも出てたわね…」
梨生奈も苦笑しながら、桜を見上げた。
この桜…いや、この広い聖テレジア女子学園の構内にある全ての桜は、はるばる青森県から運び込まれたものである。
この学園の…初等部、中等部、高等部を全て統括している総合学園長、武川行秀は大変なロマンチストであり、彼の性格が形となって、この桜となった。
「新入学生が希望に胸を膨らませている入学式に、散ってしまった桜を見せるなど可哀そうです」…この一言で、莫大な費用をかけ、構内の葉桜を全部引き抜き、青森の蕾桜に植え換えたのだ。
「私達、新入学生を可哀そうって思う前に、引き抜かれた桜を可哀そうって、思わないのかしら?」
その梨生奈の言葉に、七海は首を横に振る。
「桜が可哀そう?梨生奈…あんたも大概なロマンチストやな。ウチが言うとるんは、金のことや!」
その莫大な費用は…在学生の親が払った学費から出されている。
28投稿者:リリー  投稿日:2008年01月14日(月)22時07分01秒
「可哀そう言うんなら、アホみたいに高い授業料払うてる親御さん達や!」
「でもさ、そのお金って、誰かさんを裏口入学させたり、裏口進級させた分も入ってるよね?」
エリーが口を挟む。
「じゃかしい!!」
「うるさいな!!」
その裏口入学、及び裏口進級の為に、裏金を払わせた七海とエマは、エリーを同時に怒鳴った。
「こらこら、ケンカはやめなさい。そや、この桜をバックに写真撮ろう!ワシが払うた学費も使われとることやし…」
吉田の言葉に、4人の少女は一斉に突っ込んだ。
「私達(ウチ等)が稼いだ、お金でしょ(やろ)!?」
今日は、聖テレジア女子学園中等部の入学式である。
七海、梨生奈、エマ、エリーの4人は、今日から中学生となる。
29投稿者:リリー  投稿日:2008年01月14日(月)22時07分52秒
プロローグの途中ですが、今日はこれでおちます

それでは、みなさん今後ともよろしくお願いします
30投稿者:おおー楽しみ  投稿日:2008年01月14日(月)22時13分03秒
壮大な物語になりそうだな
31投稿者:有海ってこのシリーズに出てたっけ?  投稿日:2008年01月14日(月)22時30分42秒
初登場?
32投稿者:乙です  投稿日:2008年01月14日(月)22時48分49秒
キャスト見たら一気に懐かしさを感じた
シリーズのキャストの多さを比べると、らりるれろは外伝っぽいなぁ

リリーさん、今回も応援します!
33投稿者:おわぁああぁ!!!!」  投稿日:2008年01月14日(月)23時25分11秒
すげぇぇええ!
楽しみw
34投稿者:てか幸生  投稿日:2008年01月14日(月)23時40分55秒
不良少年から野球少年って
更正したなぁ
35投稿者:age  投稿日:2008年01月15日(火)17時28分59秒
頑張って!
36投稿者:D  投稿日:2008年01月15日(火)17時30分26秒
プロローグからもう文句無しです!やっぱリリーさんって最高!
37投稿者:tatu  投稿日:2008年01月15日(火)18時11分27秒
中日ドラゴンズファンのリリーさんならたぶんわかると思うのですが
藍と愛美が左利きで
左利きが守りやすいポジションがピッチャー、ファースト、レフト、センター、ライトと言われています。
藍は、ピッチャーなのでサウスポーでも読めますが、愛美はセカンドなので今回は、右利きの設定なのでしょうか?
教えてください。
38投稿者:がんばれ!リリーさん  投稿日:2008年01月15日(火)19時18分57秒
第1作から読んでます

今回も楽しみにしています
39投稿者:キャストに文句つけるようで悪いが  投稿日:2008年01月15日(火)20時52分11秒
美沙さんもらりるれろで少し出たから出しても良かったんじゃないかと思う。
まぁ個人的な意見なのできにしないでください。
応援してます。
40投稿者:リリー  投稿日:2008年01月15日(火)21時09分27秒
第一回目から、多くの激励のコメント、ありがとうございます
ご期待に副えるよう、がんばります

有海は『一七同盟』には出てきましたが、『R&G』には出てません

藍が左利きというのは、前に読者さんに教えて頂きましたが、愛美お左利きとは気がつきませんでした
ポジションをセカンドにしたのは、物語を読んでいただけたら解明されますが…

美沙さんのことは、忘れてました
でも、出てくるとしても回想シーンになるかもしれないです…
今の所、出てくる予定はないですが…

では、更新します
41投稿者:リリー  投稿日:2008年01月15日(火)21時10分28秒
4人の少女と一人の男は、並んで校舎に向かう。
真っ白な三階建ての校舎。
その壁には、濃淡様々なエメラルドグリーンのタイルが、所々に散りばめられ(初等部はクリムゾンレーキ、高等部はターコイズブルーのタイル)、昇降口の天窓は、ステンドグラスになっている。
昇降口付近に、彼女等のクラス編成表が張り出されている構内掲示板がある。
既に、多くの新入生やその保護者が群がっており、自分達が一体何組になるのか、確認することができない。
「ほら…。レッドさんがのんびり写真なんか撮ってるから…」
4人の中で郡を抜いた気難し屋、エマは頬を膨らませた。
「ホンマやで。一体、何枚写真撮るん?写真集でも出すつもりかい?」
4人の中で群を抜いた突っ込み気質、七海もレッドを責めた。
「写真集?いいわね、ソレ。私、可愛いからバカ売れしちゃうかも…」
4人の中で群を抜いたナルシスト、エリーはそう言ってはしゃいだ。
「あんまりレッドさんを責めたら可哀そうよ。私達の思い出の為に、写真を撮ってくれたんだから…」
4人の中で郡を抜いた常識人、梨生奈だけがレッドを庇った。
「梨生奈…。おまえだけや…ワシに味方してくれるんは…」
吉田は、そう言って涙ぐんだ。
「そこでレッドさん。私達の代わりにクラス表を見てきて下さい。今こそ、その無駄に高い身長を活かす時です」
「なんちゅう、言い草や…」
梨生奈の冷たい言葉に、吉田は別の意味で涙ぐむ。
「立ってるモンは、社長でも使え…やな」
七海は、ニヤリと笑って、吉田の広い背中を叩いた。
42投稿者:リリー  投稿日:2008年01月15日(火)21時14分00秒
レッドが人ごみを掻き分けて、構内掲示板のクラス編成表を見に行った。
その時、一人の少女が申し訳無さそうに、自分の後ろに立っているのを、七海は気が付いた。
「ん?」
肩を縮ませ、少し緊張気味に立っている少女は…初等部で同じクラスだった、【一木有海】。
細く尖った顎、少し吊り上がり気味な目、可憐な顔立ちをした少女。
七海同様、黒く真っ直ぐ伸びた長い髪…。
しかし、その性格は七海とは正反対。
弱気で遠慮がちなその性格は、いじめっ子達にとって、恰好のターゲットだった。
そう…お嬢様学校でも…いや、お嬢様学校だからこそ、いじめは日常的に行われていた。
「何やの?一木さん…」
そう訊ねる七海に、有海は恐る恐る口を開く。
「あ、あの…私…また、藤本さんと同じクラスになって…その…」
「ああ、そうやの?で、ウチら何組なん?」
「え…あ…C組です…」
「C組か…。おおきに!」
「あ、あの…また、よろしくお願いします…」
そう言って、有海は頭を深く下げた。
その拍子に、頭のベレー帽が地面に落ち、有海は慌ててそれを拾う。
43投稿者:リリー  投稿日:2008年01月15日(火)21時15分09秒
「うん、よろしゅう。せやけど、一木さん。クラスメイトに敬語はやめようや…。初等部ん時もそう言うたよね?」
「あ…ご、ごめんなさい…」
「謝らんでもええよ」
「ごめんなさい…」
「せやから………もう、ええわ…」
七海は溜息をついて、視線を有海から逸らした。
「ねえ、有海、私達は何組だか知ってる?」
エマがそう訊ねた。
「あ…はい…。ええと…近藤さんは…A組です…」
「A組ね。じゃあ、エリーは?」
「渡邊さんは…D組です」
「D組?私達、離れ離れ?しかも、A組とD組なんて…校舎の端と端じゃない…」
エリーはそう言って、泣き出しそうな顔でエマの手を握る。
エリーはナルシストでもあるが、泣き虫でもある。
こんな事ぐらいで、本当に目に涙を浮かべた。
「あなた達、初等部でつるみ過ぎたのよ。意識的に離されたわね」
梨生奈は、そう分析をした。
「木内さんは、B組です」
「…?ああ…ありがとう…。て、いうか、一木さん、全部覚えてたの?」
梨生奈は、軽く驚いて有海に訊ねた。
44投稿者:リリー  投稿日:2008年01月15日(火)21時17分37秒
「あ…はい…。一応…」
「凄いわね…。普通、自分のクラスのことしか見ないものだけど…」
「私…計算とか苦手でしょ?だけど…暗記物なら、何とか…」
有海は、そう笑って深く礼をすると(今度はベレー帽を右手で押さえ)、逃げるように去って行った。
そこに、吉田が人ごみから帰って来た。
「ああ、見てきたで!ええと…エマがA組、梨生奈がB組、七海が…いや、エリーやったけ?ええと…」
「もう、ええわ」
「レッドさん、お疲れ」
4人の少女は、スタスタと昇降口に向かう。
「え?ええの…?」
吉田も、トボトボと着いていく。
「あ、あの…今度、一緒のクラスになる…」
有海の声が聞こえる。
七海は、ふと有海を見た。
また、別の少女に有海は挨拶をしている。
(ウソやろ…?クラスメイト一人一人に挨拶するん…?いや、クラスメイト全員、覚えたんか?)
七海は軽く口笛を吹くが、どうでもよさそうに視線を前に移した。
45投稿者:リリー  投稿日:2008年01月15日(火)21時18分27秒
4人は一旦、吉田と別れる。
保護者は、一足先に体育館に入場して、新入学生を待つことになる。
それぞれのクラスの下駄箱に靴を入れ、真新しい上履きに履き替える。
下駄箱横の廊下に長机が設置され、その上には多くの紅白に編みこまれた花のバッジが乗せられている。
そのバッジを、2人の3年生が「おめでとうございます」の言葉とともに、新入生に手渡している。
その2人とは、【ジョアン・ヤマザキ】と【中村有沙】。
ジョアン・ヤマザキ…その名前からもわかるように、半分、外国人の血が入っている。
エマやエリーは白人系だが、このジョアンは黒人系。
ソバージュの髪、琥珀色の肌、エキゾチックな美しい顔に白い歯を浮かべ、満面の笑顔でバッジを手渡している。
彼女を人形に例えるなら、バービー人形か…。
「見ろよ…ジョアンのワザとらしい笑顔…。つくり過ぎだよな」
愉快そうに、エマはエリーに耳うちする。
「それに比べて、チビアリの方ときたら…」
チビアリと言われたのは、中村有沙。
日本人顔だが、彼女にも四分の一、外国人の血が入っている。
一言で言って、上品な美少女。
彼女も、七海や梨生奈と同様、日本人形の様な趣きを持っている。
しかし、その折角の美貌は、仏頂面で台無しになっている。
何も言わず、ただ無言、無表情で、バッジを片手で手渡している。
隣のジョアンが笑顔でバッジを渡しているものだから、その無礼さは引き立ってしまっている。
46投稿者:リリー  投稿日:2008年01月15日(火)21時21分02秒
「おめでとうござ…なんだ…おまえ達か…」
ジョアンは、目の前に立っている者達が、七海、梨生奈、エマ、エリーと知ると、その笑顔を途端に引き上げた。
「何や?あんたの笑顔は、人を選ぶんか?」
七海は挑発的に、ジョアンに話しかけた。
「当たり前だよ!アタシはマックの店員じゃないんだ!さっさとコレ付けて体育館に行きな!」
ジョアンは、花のバッジを七海達に投げつけた。
「その点、チビアリは誰に対しても平等というか、公平というか…」
梨生奈は、苦笑いしながら中村有沙を見た。
「なんで、こんな無愛想な女に、こんな役目を押し付けたんだろうねぇ…」
エマは呆れ顔で言う。
「綺麗どころだからであろう?」
何の臆面もなく、中村有沙は無表情で言い切った。
「でたよ…ナルシーアリサ…」
エリーは、そう言って吹き出した。
「貴様に言われる筋合いはない」
エリーの目を見ずに、中村有沙は、やはり無表情で呟いた。
47投稿者:リリー  投稿日:2008年01月15日(火)21時24分19秒
七海達4人は、体育館に向かう。
ここ、聖テレジア女子学園の構内は、大きく分けて二つのエリアからなる。
高等部のエリアと、初等部、中等部を合わせたエリアだ。
だから、中等部の体育館は、初等部の体育館の上にある。
つまり、二階建ての体育館なのだ。
初等部と中等部は、クラスが一学年につきA組からD組まで、4つある。
しかし高等部になると、エスカレート式に入学する者と、外部から受験して入学する者、スポーツ推薦で入学する者もいるため、クラスはG組まで増える。
中等部にも受験や推薦で入学する者はいるが、クラスが増える程でもない。
だから高等部のエリアは、校舎、グラウンド、体育館、武道館、プール、全てが広い。
七海達にとって、中等部でも勝手知ったる我が家の庭…と言ったところだ。
校舎二階からの広い渡り廊下に出ると、そこには様々なユニフォームを着込んだ上級生達が端に揃って待ち構えていた。
バスケットボール、バレーボール、ソフトボール、ハンドボール、テニス、陸上、水泳、柔道、剣道、弓道…。
どうやら、部活動の勧誘のようだ。
「入学式やのに、もう、勧誘?」
「今年から、こういう風になったのかな?」
七海達は少し躊躇したが、ここを通らないと体育館に辿り着けないので、そのまま進む。
48投稿者:リリー  投稿日:2008年01月15日(火)21時27分19秒
すると、七海達に、真っ赤なソフトボールのユニフォームを来た二人の女生徒が、声をかけた。
「ねえ、ねえ!あなた達、噂は聞いてるわよ。凄く運動神経良いんだって?」
「ソフトボールやってみない?楽しいよ!」
そのソフトボール部の2人は、2年生の【伊倉愛美】と【大木梓彩】である。
彼女等は低身長のうえ童顔なので、七海達新入生と見た目上、大差ない。
2人のユニフォームには、背番号はない。
つまり、レギュラーではない、ということだ。
「ソフトボール?…う〜ん…もう少しボールが小そうて、上投げで放れるんやったら、考えてもええな…」
上級生を相手に、腕組みをした大きな態度で七海は答えた。
「ボールが小さくて、上投げ…?」
「それじゃあ、野球になっちゃうよ?」
「そうや!ウチは野球がしたいねん!」
つまり、七海の返事は「NO」ということだ。
唖然とする2人をよそに、七海はズンズンと渡り廊下を進む。
梨生奈は、「ごめんなさいね」と言う風に、愛美と梓彩に対して手を合わせ、七海の後を追いかける。
エマとエリーは、何の興味もない、と言う風に、お喋りしながら通り過ぎる。
49投稿者:リリー  投稿日:2008年01月15日(火)21時29分08秒
「ね、ねえ!!来たよ!!」
「あ、あの子が…!?例の…?」
「あ!絶対に勧誘しなくっちゃ!!」
上級生達が、こちらを見て色めき立っている。
「な、何や?」
七海達は、戸惑った。
そんなに七海達の運動神経の良さは、評判になっているのだろうか?
「ま、まいったな〜…。部活動なん、これっぽっちもする気、起きひんのやけど…」
そう言いながらも、まんざらでもない様子の七海。
「ねえ!うちの部活に入って!!」
「ううん!うちよ!うちよ!」
彼女達は、こちらに向かって殺到した。
「おおう!?マ、マジかい!?」
七海は、思わず後退りする。
その肩を、梨生奈が受け止める。
「違うわよ…」
「あん?」
梨生奈の言葉通り、様々なユニフォームや胴衣を着た上級生達は、そのまま七海達の傍らを素通りしていく。
50投稿者:リリー  投稿日:2008年01月15日(火)21時29分54秒
「な、何なん?」
思わず、後ろを振り向く七海。
上級生達は、一人の女生徒に群がっている。
「な、何や?あれ!」
「あの子ね、細川さんよ」
「細川ぁ!?誰やねん!!」
折角教えてくれた梨生奈に、七海は逆切れ気味に詰め寄る。
「ニュースや新聞で見たことない?天才スポーツ少女って…」
上級生の熱烈な勧誘の中心にいる少女の名前は、【細川藍】。
中等部では数少ない…いや、今年に関してはただ一人の、スポーツ推薦での入学を認められた少女である。
細川藍は小さな寿司屋の娘で、とてもじゃないが、聖テレジアに入学できる財力もないし、彼女自身もそれ程の学力があるわけでもない。
しかし、スポーツ推薦によって、高額な授業料は全て免除となっている。
彼女は小学生の時、バスケ、バレー等の地域チームに掛け持ち出場し、Jr選手権の優勝旗を全て獲ってしまったぐらいの力の持ち主である。
個人競技ではなく、チーム競技での優勝である。
つまり、彼女さえいれば、どんなチームでも「勝てる集団」になる…ということである。
最近、部活動にも力を入れている聖テレジアが、そんな藍を放っておく手はなかった。
藍自身は、どんなスポーツをやるのか、まだ決めかねているようで、全ての部活動にも勧誘のチャンスはある。
そこで、この騒ぎなのである。
51投稿者:リリー  投稿日:2008年01月15日(火)21時31分14秒
細川藍…背が高く、ポニーテールに結んだ髪の毛は薄く茶色がかかり、肌は白く頬は赤い。
弾けんばかりの笑顔が非常に可愛らしく、おそらく男女、双方から好かれるような…そんなタイプの少女である。
「…ウチが一番好かんタイプやな…」
七海は、憎々しげに言い放った。
「何よ?嫉妬?」
「ちゃう!せやけどスポーツ推薦なら、ウチ等かて余裕で受けられると思うで?何も裏金なん渡さんでも…」
そう…七海だけでなく、梨生奈、エマ、エリー、そして先ほどの3年生、ジョアン、中村有沙の身体能力は並では…いや、特級クラスにある。
しかし、彼女等はその能力を、人前で発揮してはならない…。
その能力は、はっきり言って『異能』と言い表せるものだからだ。
少なからず、混乱が起きる…。
七海達は、部活動を諦めざるを得ない。
だが、そんな制約を受けなくても、彼女達は部活動をやるつもりは毛頭ないのだが…。
「ケ…!入学初日からチヤホヤされて…ええ気なもんや!!」
七海は、吐き捨てるように言った。
「やっぱり嫉妬してるよね…?」
「してへんっちゅうに!!」
エマとエリーのヒソヒソ話しに、七海は噛み付かんばかりに怒鳴った。

入学式の今日、顔を合わせた少女達は…これから奇妙な友情を育み合うことになるのだが…それはまだ、先の話しである。
52投稿者:なんだこりゃ  投稿日:2008年01月15日(火)21時32分30秒
 
53投稿者:リリー  投稿日:2008年01月15日(火)21時35分41秒
少し長くなりましたが、プロローグを早く終わらせてしまいました

一つ気になることがあるのですが、『サムドラ』を読んでくださってる方が、どのくらいいるのでしょうか?
過去ログが見れなくなっている今、やはり設定の解説とかしていった方がいいのでしょうか?

それでは、今日はこれでおちます
明日から第一話が始まります
54投稿者:D  投稿日:2008年01月15日(火)21時41分34秒
僕は完璧に読みました!他の人も8割はよんでるんじゃないですか?
55投稿者:リリーさんの小説では  投稿日:2008年01月15日(火)21時59分57秒
「はなし」は「話」ではなく「話し」なんですか?
56投稿者:おおー豪華だな  投稿日:2008年01月15日(火)22時13分48秒
サムドラキャラが皆出てくるなんて…
有海藍は一七そのまんまだな
57投稿者:117  投稿日:2008年01月15日(火)22時58分01秒
おぉ、お馴染みのメンバーから懐かしのメンバーが大集合!
明日からのストーリー、とても楽しみです。
58投稿者:しー  投稿日:2008年01月16日(水)00時30分50秒
初めまして 私はサムドラ読むことができませんでした。でもそれ以外は全部読んでます!!期待してるのでがんばってください。
59投稿者:59  投稿日:2008年01月16日(水)09時29分19秒
あげ
60投稿者:サムドラは読んであります  投稿日:2008年01月16日(水)13時36分18秒
というより(覚えていますか?)らりるれろを読んでサムドラが気になり全部読破しました。

ところで……
↑の登場人物表 省略されても見られる方法ないですか?
自慢じゃないですが全て覚えていられる自信ありません(笑)
メモ帳に保存はしていますが 皆が平等に見られたらいいなと思いますし。画像みたいに保存するところあったら教えてください。
61投稿者:今回  投稿日:2008年01月16日(水)14時57分46秒
リリー様の小説を読むのが初なのですが
それでも大丈夫でしょうか?
62投稿者:デジ  投稿日:2008年01月16日(水)17時09分23秒
初めまして 五作目ですね。
コメントはしてませんが全て読破しました。
あさって受験なのでしばらくコメントできませんが
応援してます。頑張ってください。
63投稿者:月鮫  投稿日:2008年01月16日(水)19時55分28秒
初めましてです。

サムドラから読んでいます。
今回も頑張ってくださいね。
64投稿者:ツグラムかららりるれろまで  投稿日:2008年01月16日(水)20時54分59秒
全部読んでます
どの作品も大好きです
65投稿者:自分も全部読んでる  投稿日:2008年01月16日(水)20時59分31秒
 
66投稿者:リリー  投稿日:2008年01月16日(水)21時18分12秒
117さん、Dさん、前作に引き続きコメントありがとうございます
デジさん、受験がんばって下さい
月鮫さん、初めまして
今作もよろしくお願いします
「話し」は、変換でそのまま出てしまうんですね
特に意味はないんです
多くの方が読んでくださってるとわかり、嬉しく思います
しかし、未読の方をいらっしゃるようなので、毎回少しずつ設定や用語を解説したものを更新前か更新後に少しずつ載せたいと思います

設定説明1
『R&G探偵社』
村田ちひろの元刑事だった父親が部下のレッド吉田と共に創った探偵社
初代社長(ちひろの父)の死後、吉田が二代目社長となり、ちひろが二十歳になった時に、彼女が三代目となる
『TTK』
ユダヤの大富豪の四人組『ラビ』が創った、少女達で構成された暗殺組織TTempt…『誘惑』Torture…『拷問』Kill…『殺人』の頭文字が組織名となっている
この組織の少女達は、全世界の優秀な人間や犯罪者の精子と卵子を組み合わせて人工的に誕生した
この組織のメンバーは皆美少女で、醜い姿の『ラビ』達に奴隷の如く支配されていた
その中の一人、中村有沙が組織を脱走し、ちひろ達『R&G探偵社』が家出娘として保護をしたのがキッカケで、この暗殺組織と死闘を繰り広げることになる
このエピソードの部分が『SAMURAI DRIVE』となる

それでは更新します
67投稿者:リリー  投稿日:2008年01月16日(水)21時20分19秒
【第一試合・・・VS『加藤組』】

『一回・表』

≪2007年4/3(火)≫
聖テレジア女子学園中等部、1年C組、…藤本七海は、机の上で頭を抱えていた。
その原因は、彼女の担任である。
顔はかなり可愛らしい、苦労知らずのお嬢様のような、若い女性教師だ。
まるで一昔前の女子中学生の手による様な、丸文字で黒板に書かれた『佐藤珠緒』という名前…。
これが、七海の担任の名前である。
気の抜けたような鼻声が、教室中に響き渡る。
「あのぉ〜、私がぁ〜、みなさんのクラス、1年C組のぉ〜、担任をすることになったぁ〜、佐藤珠緒でぇ〜す。教科は、家庭科でぇ〜す」
この声を、この一年間聞くことになるのか…?
七海は、不登校を真面目に考えた。
68投稿者:リリー  投稿日:2008年01月16日(水)21時20分34秒
「みんなとはぁ〜、友達って言うかぁ〜、何でも話し合えるようなぁ〜、関係になりたいとぉ〜、思いまぁ〜す。んふふ…」
(マジかい…。コッチは何も話しとうないわ!!)
七海は、今度は頭痛がしたらしく、コメカミを強く押さえた。
「先生は何歳なんですか?」
早速、質問が飛んだ。
「えぇ〜?いきなり聞くかなぁ〜、そういうことぉ〜」
(いくつでもええやん!はよ、答ええや!!)
七海は、ドンっと足を一回踏み鳴らした。
69投稿者:リリー  投稿日:2008年01月16日(水)21時21分31秒
他の生徒達は、「教えて下さいよー」と口々に言う。
「もぉ〜、しょうがないなぁ〜…。実はぁ〜、先生ぃ〜………34歳でぇ〜す!!」
頭を抱えていた七海は、ガバっと顔を上げる。
(34…?マ、マジかい…!?)
これには、さすがの七海も仰天した。
他の生徒の驚きは、それ以上だった。
どよめきが教室中に響く。
「うそぉ〜!!全然見えない!!」
「もっと若いと思ってた!!」
「先生、可愛い!!」
「結構、年いってんだ…。オバサンじゃん!!」
好き勝手な事を、口々に言う女生徒達。
「こらぁ〜!!誰だぁ〜?オバサンなんて言った子はぁ〜?もぅ〜………プンプン!!」
珠緒は、左右の握り拳を頭の上に乗せ、頬を膨らませる。
教室中が、ドッとうける。
七海は一人、机の下で握り拳を震わせていた。
(オノレは34年間………どういう人生を過ごしてきたんじゃい…!!)
70投稿者:リリー  投稿日:2008年01月16日(水)21時22分21秒
「それではぁ〜、早速ぅ〜、前期の学級委員をぉ〜、決めたいと思いまぁ〜す。誰かぁ〜、立候補いるぅ〜?」
さっきまで賑やかだった教室内が、シンと静まり返った。
(いつもこうや…ウチの学校は…)
七海は、溜息をついた。
ここの生徒達はみな上品で、礼儀正しく、成績も良い…表向きは…。
しかし、目立つ事をとことん嫌い、人の為に動こうとすることもできるだけ避けたい…そんな集団なのだ。
仕切り好きな七海は、手を挙げたくてウズウズしてきた。
しかし、七海は自分のことはよくわかっている。
仕切り好きは、決してまとめ上手ではない…ということを…。
それに他の者達は、自分を決して信任しないだろう…。
ならば誰が良いか…など、代案も出すことも無い彼女達である。
珠緒は、困り果てたように眉を八の字に下げ、口をアヒルのようにする。
「それではぁ〜…推薦してくれる人、いませんかぁ〜?」
すると、途端に数本の手が上がる。
人に対する依頼心も、人一倍強い彼女達である。
71投稿者:リリー  投稿日:2008年01月16日(水)21時23分17秒
一人の生徒が、指名される。
「一木有海さんがいいと思います」
一木有海…さっき、構内掲示板前でクラスメイト一人一人に挨拶していた、あの少女である。
名前を挙げられた一木有海は、ビクンと肩を震わせる。
すると、他の手を挙げた者は、すぐに手を引っ込めた。
つまり、全員が有海を推薦しようと思っていたのだ。
「うん、うん。一木さんがいいよね」
「私もそう思う」
「賛成!」
「初等部でも、学級委員だもんね」
「一木さん以外、いないよね〜」
皆は、口々に言う。
「わぁ〜、一木さんって、みんなから人望あるんだね〜」
珠緒は、満面の笑みで有海に話しかける。
「他に推薦する人がいないみたいだからぁ〜、一木さん、お願いしていいかな?」
有海は、小さく「…はい…」と言って頷いた。
苗字の五十音順で、出席番号の若い有海は窓際の前の席だから、教室の後ろに位置している七海から、その表情を窺うことはできない。
「じゃあ、C組の学級委員は、一木さんに決まりましたぁ〜!拍手ぅ〜!」
みんな、満場一致の拍手を、有海に送った。
72投稿者:リリー  投稿日:2008年01月16日(水)21時24分06秒
しかし、七海にはわかっていた。
これは…陰湿ないじめなのだ。
有海を推薦し、学級委員にしても、皆は彼女の言う事など聞く気はない。
ただ一人、まとまるはずも無いこのクラスを相手に、孤軍奮闘、悪戦苦闘して困り果てる有海を、残酷な目で見ながら楽しむ…初等部でもそうだった。
その前に、有海ほど人をまとめたり仕切ったりするのに不適合な者はいないのだ。
さっき有海は、新しいクラスメイト一人一人に挨拶をしていた…。
つまり、中等部では少しでもいじめられないように…一人でも仲間が欲しかったのか…。
しかし、そういう考え方、態度が、ますます自分を追い込むことになるのだが…。
無意識に…七海は手を挙げた。
「ん?何かな…?え…と…藤本さん?」
珠緒は、出席名簿を確認しながら、七海に聞いた。
(あ、あれ?何でウチ、手を挙げたんやろ?)
クラス中の者の目が、七海に集中する。
有海の目も…。
すがるような目…。
(ええい!!もう、ええわ!!)
七海は、勢い良く立ち上がって言った。
「ウチ、学級委員に立候補します!!」
73投稿者:リリー  投稿日:2008年01月16日(水)21時25分16秒
途端に、クラス中がザワつく。
皆、眉間にシワを寄せ、七海を睨みつけている。
折角の愉快な「遊び」を台無しにするつもりか、と言いたげな目で…。
有海だけは、喜びの表情を隠さない。
珠緒は、困り果てた目で見ている。
「う〜ん…。今、一木さんに決まっちゃったからなぁ〜…。どうしても、やりたい?藤本さん…」
「…え?…ああ…うん…。やりたいです!」
「そう…。じゃあ、投票しようか?」
結果は…有海が34票。七海が2票。
圧倒的多数で、有海に決定した。
七海に投票したのは、七海本人と有海だということは明白だった。
「じゃあ…学級委員は…一木さんってことで…いい?」
珠緒は、七海を哀れむような目で覗き込む。
七海は、立ち上がった。
「………嫌です!ウチ、絶対に学級委員になりたいです!!」
また、ザワつく教室。
「空気読めよ…」
誰かがボソリと呟いた。
「オノレ等の吸うてる、汚い空気のことなんか知るかぃ!!ヴォケェ!!」
七海の怒声に、クラス中がしんと静まり返る。
七海は、何故自分がこんなに意固地になっているのか、わからなかった。
74投稿者:リリー  投稿日:2008年01月16日(水)21時26分16秒
「………う〜ん…わかった、わかった…。じゃあ、一木さんが委員長、藤本さんが副委員長ってことでいい?」
珠緒は、この険悪な雰囲気を打ち払うべく、妥協案を七海に提示する。
「…ええです…」
七海は、渋々と椅子に腰を降ろした。
「じゃぁ〜、2人とも前に出て、学級委員としての意気込みをお願いしまぁ〜す」
有海は静かにゆっくりと、七海はズンズンと足音を立てながら早足で教壇の前に立つ。
主席番号2番の前方に座っていた有海よりも、出席番号29番の後方に座っていた七海の方が、先に着いてしまう。
まず、有海が意気込みを語る。
彼女には、意気込みなど欠片もないのだが…。
「…あの…皆さんに選んで頂いたので…その…がんばります…」
今にも消え入りそうな声で言うと、有海は深く頭を下げ、逃げるように自分の席に着く。
次は七海の番だ。
「え〜…ウチは、このクラスを明るく楽しいクラスにしたいです!特に、いじめとか無くしたいです!以上!」
七海は、ジロリと教室中を見渡した。
皆は、バツが悪そうに、七海から一斉に目を逸らす。
自分の席に戻ろうとする七海に、珠緒が小さく声をかけた。
「藤本さん…。一木さんを…助けてあげてね…」
「…え?」
振り向く七海に、珠緒はウインクした。
伊達に、34歳の教師ではない…と、七海は思った。
75投稿者:リリー  投稿日:2008年01月16日(水)21時42分41秒
少し、『一七同盟』と展開がかぶりますが…
この後、展開はまったく違う方向に行きますので…

設定説明2
『戦士』
『TTK』に所属する少女達の総称
全世界の優秀な人材の『精子』と『卵子』から人工的に創られたので、家族はいない
主人の『ラビ』に謀反を起こさせないために、『洗脳』されている
『ラビ』の命令には絶対服従で、任務を失敗すればリンチという制裁を受け、脱走すれば処刑される
中村有沙はそれを承知で脱走したので、同じ『戦士』達から命を狙われることになる
これが『TTK』と『R&G探偵社』の戦いのキッカケとなる

今日はこれでおちます
76投稿者:リリー  投稿日:2008年01月16日(水)21時47分39秒
あと、60さん
登場人物が多くなってすみません
基本的に『聖テレジア野球部』と『R&G』のメンバーを押さえて下されば大丈夫だと思いますが…
確かに、過去ログに行ったら確認できなくなりますね
画像に保存する方法はわかりません
すみません

では、今度こそおちます
77投稿者:アマノガワ  投稿日:2008年01月16日(水)22時07分44秒
初めまして、アマノガワといいます。
ツグラム以外、リリーさんの作品は読ませていただいています。
自分も小説を書いている身ですが、リリーさんの作品とくらべるととてもちっぽけに感じてしまう、それほどに素晴らしい作品ばかりだと思います。
特にサムドラは伝説的、とでもいいましょうか、心にグッ、と来るものがありました。
これからも頑張ってください。
なるべく応援の書き込みをさせていただきたいと思っています。
それでは。
78投稿者:117  投稿日:2008年01月16日(水)22時12分54秒
またもや,有海へのイジメが・・・その後,どう違った方向へのかも気になります。
79投稿者:117  投稿日:2008年01月16日(水)22時15分01秒
↑、意味分かりませんね・・・すいません。訂正しますと
「その後、どう違った方向へ展開するのかも気になります。」です。失礼しました。
80投稿者:一回表とか  投稿日:2008年01月16日(水)22時36分47秒
木更津キャッツアイみたい
81投稿者:珠緒バロスwww  投稿日:2008年01月16日(水)23時27分00秒

82投稿者:ところで今回は  投稿日:2008年01月16日(水)23時31分15秒
エロなしなの?
83投稿者:やばい一週間ぐらい  投稿日:2008年01月16日(水)23時48分23秒
見れなくなるから過去ログに飛ばないことを祈る
84投稿者:そういえば  投稿日:2008年01月16日(水)23時59分17秒
携帯サイトでは見れますか??
85投稿者:すいません  投稿日:2008年01月17日(木)00時02分37秒
自分で確認したらみれました
86投稿者:リリー  投稿日:2008年01月17日(木)21時18分46秒
>80
『木更津キャッツアイ』は見てませんが、表・裏と話しが展開していくことは知ってました
今回は、野球の『表・裏』と『表世界』と『裏世界』をかけた展開にしてみました
つまり、4月3日を表と裏、二回繰り返します
基本的に『表』は昼の学校、『裏』は夜の探偵社の話しとなります
>82
そういうシーンはあることはありますが、そんなに多くありません
割合で言うと20〜30%くらいでしょうか

設定説明3
『チーム』
『TTK』の『戦士』は基本的に2人でチームを組んで行動する
同じイニシャルや名前の共通点で組むことが多い

それでは更新します
87投稿者:リリー  投稿日:2008年01月17日(木)21時19分56秒
今日の学校は、午前中で終わる。
早足で下駄箱に向かう七海。
梨生奈やエマのクラスは、ホームルームの時間が長引き、まだ終わらないようだ。
エリーがぼんやりとA組の下駄箱前で待っていた。
「あ、七海!エマのクラス…A組は、もう終わってる?」
「ん?まだなんか終わらへんみたいやね。メッチャ、キレてたもん…担任…。初日やのに…」
「ああ…。A組、こんどんだもんね…」
「こんどん?あの、『鬼渡』のオッサンみたいな顔した?」
エリーの言った「こんどん」とは、A組担任の近藤春菜という国語教師のことだ。
そして七海の言った「『鬼渡』のオッサン」とは、俳優の角野卓造のことである。
近藤は女性なのだが、角野卓造に顔がそっくりなのだ。
「そう、そう!ねぇ、こんどん、いくつか知ってる?」
「あん?ウチの担任が34やから…40近いんやないの?」
「ハズレ…。24だってさ…」
「24!?マジで!?」
「七海の担任も信じられないけど…エマの担任も、同じくらい凄いよねぇ〜」
「なんか、歳のとり方おかしいで…ウチの学校の教師…」
88投稿者:リリー  投稿日:2008年01月17日(木)21時22分15秒
すると、エリーは七海の後ろを指差した。
「ん?」
ふと、七海は振り向いた。
そこには、一木有海が立っていた。
さっきから、声をかけたかったようだが、七海がエリーと話し込んでいたので、声をかけづらかったようだ。
「一木さん?何やの?」
「あ…あの…。きょ、今日は…ありがとう…」
「…?何が?」
「何って…その…学級委員のこと…」
89投稿者:リリー  投稿日:2008年01月17日(木)21時22分31秒
七海は、しばらく考えて、思い出す。
「…ああ…!アレな…。一木さん!」
「は、はい…!」
七海が、急に厳しい口調になったので、有海は猫背気味だった背中を無意識に伸ばした。
「嫌やったら、嫌ってはっきり言わなアカンやん!!」
「………うん…」
「うん、やあらへん!!そんなんやから、みんなにいじめられんねん!!」
「ご、ごめんなさい…」
有海は頭を下げた。
「ウチに謝ることやない!」
「ごめんなさい…」
また、頭を下げた。
「せやから………もう、ええわ…」
深い溜息を漏らす七海。
90投稿者:リリー  投稿日:2008年01月17日(木)21時23分33秒
「でも…藤本さんが副委員長になってくれたから…私、安心した…」
そう言って、気弱な笑顔を見せる有海。
そんな有海に、七海は苛ついた。
「一木さん…。ウチだってな…あんたのこと、いじめはせえへんけど…気に食わんのやで?」
「…え…?」
途端に、悲しげな顔をする有海。
「そない、人に頼ってばっかりで…!いじめる方が圧倒的に悪いけど、いじめられる一木さんにも、原因はあるんやないの!?」
「う…うん…。そうだね…」
そう言われた有海は、顔を真っ青にしてうな垂れる。
少し言い過ぎてしまったか…。
「せ、せやから…もっと一木さんも強うならんと!」
「うん…そうだね…」
ますます、落ち込んでいく。
「ごめんね、藤本さん…。でも、今日は本当に嬉しかったよ…。さよなら…」
「うん。さよなら…」
有海は肩を落として、力ない足取りで帰っていく。
「まったく…」
七海は、そんな有海の後姿を、頭を掻きながら見送った。
91投稿者:リリー  投稿日:2008年01月17日(木)21時24分23秒
「あの子…確か、私達にクラスを教えてくれた子だっけ…?」
エリーが、有海の後姿を指差して聞いた。
「ああ…。初等部の6年の時も同じクラスやった、一木さん。みんなにいじめられてんねん…」
「ふ〜ん…。可愛いね、あの子…」
「タイプなん?」
「うん。タイプ。なんか、いじめたくなっちゃう…」
「やっぱりそうか…。ドSのエリー…」
「超Sの七海に言われるなんて…心外…」
「でもね…」と、エリーは続ける。
「強くなれって…強すぎるあんたが言うのは…ちょっと残酷じゃない?」
「ウチが間違ってるって!?」
意外にもエリーに意見され、七海は少し不機嫌に聞いた。
「だって…虎が蟻に『強くなれ』って言ったって、蟻は虎になれないわ。精々、強い蟻にしかなれないじゃない」
「一木さんが蟻って…それも失礼な話しやね…」
今度は、七海は苦笑いをする。
「私達に比べれば、この学校のみんなは、誰もが蟻よ…」
エリーは、美しい顔で…冷たく言い放った。
92投稿者:リリー  投稿日:2008年01月17日(木)21時26分10秒
そこに、ダダダっと階段を駆け降りる音…そして、高く跳び上がり、着地する。
それは…あのスポーツ推薦で入学した…細川藍だった。
「いや〜、まいった、まいった。こんどん、お説教長いんだもん…」
大きな声で、独り言を言っている。
「あ…!あなた、A組?」
エリーは、今まで話していた七海をよそに、藍に訊ねた。
「ん?そうだけど…?」
「ねぇ、エマはもうすぐ来るかな?」
「エマ…?ああ、あの外国人の子?」
「半分日本人よ。ハーフだから…」
「ああ、あなたもハーフ?私はクォーターだよ」
「そうなの?」
これには、エリーと同様、七海も驚いた。
「おじいちゃんが、フランス系アメリカ人なんだって…。会ったことないけどね」
「フランス系…?」
エリーは半年前、フランス人ハーフの軽薄な少年の運転するバイクに、ワゴン車で突っ込んだことを思い出した。
「で、私ん家、お寿司屋なのね。ハーフのお父さんがお寿司握ってるもんだから、みんな抵抗あるのかな?味は悪くないと思うんだけど、流行らないんだよね〜」
聞かれてもいないことを、ベラベラと喋り出す…。
普通の公立小学校からの入学で、周りに知り合いがいなくても、不安とかそういう感情には無縁なようだ。
93投稿者:リリー  投稿日:2008年01月17日(木)21時27分47秒
「で…その、エマなんだけど…」
「ああ、ごめん!その内来るんじゃないの?」
いい加減な返事をする藍。
そこに、また数人の階段を駆け降りる音…。
「細川さ〜ん!一緒に帰ろ〜!!」
もう、友達をつくったのか…。
「おう!!一緒に帰ろうぜ!!」
藍は、階段から降りてくるクラスメイト達に、手を振って応える。
「細川さん、部活、どこに入るの?」
「う〜ん…まだ決めてないんだよねぇ〜…」
細川藍は、大勢の新しい友達に囲まれながら、賑やかに帰っていく。
94投稿者:リリー  投稿日:2008年01月17日(木)21時28分20秒
「あ、例外…。あの子は蟻じゃなくて、カブトムシかな?」
エリーは藍を見送りながら、そう言った。
「………やっぱり、気に食わんわ…。アイツ…」
七海は、藍の背中を睨みつける。
「嫉妬やないで!!」
七海は、エリーの方に首を向けて言った。
「まだ、何も言ってないんだけど…」
エリーは、困った様な顔で笑う。
「それにしても…6年間もこの学校に居て、友達が一人もできひん一木さんと…たった一日であないぎょうさん、友達つくった細川藍…。この差は何やろうな…」
七海は、さっき厳しいことを言った反省だろうか…少し一木有海のことを案じた。

(『一回・表』・・・終了)
95投稿者:リリー  投稿日:2008年01月17日(木)21時36分04秒
『一回・表』はこれで終了です
明日から同じ4月3日の『一回・裏』が始まります
『九回表・裏』で一話完結、三話まで繰り返します
この小説は2007年の4月3日から2008年の4月3日までの一年間を描いていきます
『らりるれろ探偵団』は2007年の8月の話しなので、この小説に組み込まれている形になります
予定では第二話辺りになります

それでは、今日はこれでおちます
96投稿者:エリーのキャラ良いな  投稿日:2008年01月17日(木)21時39分09秒
角野卓三ワロタw
97投稿者:登場人物で  投稿日:2008年01月17日(木)22時21分27秒

梓彩の父親がゴルゴさんって(笑)
98投稿者:あげ  投稿日:2008年01月18日(金)19時59分34秒
期待
99投稿者:リリー  投稿日:2008年01月18日(金)21時32分51秒
梓彩のお父さんがゴルゴさんに似てるっていうのを思い出しまして…

エリーとエマは、『サムドラ』ではあまりスポットが当たってなかったので、今回は目立たせたいと思います

では、更新します
100投稿者:リリー  投稿日:2008年01月18日(金)21時34分14秒
『一回・裏』

≪2007年4/3(火)≫
「で、どうだった?中等部は?」
「どうも、こうもあらへん!同じや。初等部の時と…。急に皆、根性良うなるわけやないし…」
「でも…私は、学校とか行った経験ないから、それでも七海さんが羨ましいわ」
「せやったら、宿題だけでも学生気分を味わってみいひん?七世…」
「何を言ってるの!」
天歳市、下ノ国町の夜…高架下の広場に、藤本七海はいた。
午後11時…真面目な女子中学生が、街でうろついている時間ではない。
七海自身、真面目な少女でないというのなら仕方の無い話だが、あいにく七海は遊んでいるわけではない。
そして七海の隣にいる、背が高く、細身で、七海より5歳程年上の美しい少女…彼女の名は…岩井七世。
2人の恰好は奇妙なものだった。
101投稿者:リリー  投稿日:2008年01月18日(金)21時34分55秒
まず、身に着けている服。
2人は、映画『死亡遊戯』のブルース・リーや、『KILL・BILL』のユマ・サーマンが着ていたトラックスーツに身を包んでいる。
七海は、黒地に黄色のラインのトラックスーツ…丁度、リーやサーマンの着ていた物とは逆の色使い。
七世は、黄色地に黄緑色のラインのトラックスーツ。
これだけ見れば、2人の少女が夜のジョギングでもやっているのか、と思われるだけで、別段不審な点はない。
しかし、もっと奇妙なのは、2人がそれぞれ手に持っている『道具』なのだ。
七海は…金色に輝く金属バットを手にしている。
そして七世は、雨も降っていないのに…いや、今は夜中だと言うのに、その手に真っ白な日傘を持っているのだ。
102投稿者:リリー  投稿日:2008年01月18日(金)21時35分18秒
「それにしても、七海さんが副委員長ねぇ…。本当に、ちゃんとできるの?」
七世は、心配そうに七海の顔を見る。
「わからへんよ。なんか…これ以上いじめの現場を見たないねん…。初等部の時は、ウチら途中から聖テレに入ったやろ?」
「ええ…」
「初め、何であの子が学級委員やってんのかわからんかったんやけど…いじめやとわかって、胸糞悪かったわ…」
「そうね…。七海さんは、弱い者いじめは嫌いだもんね…」
「そやねん…。でも…今からウチら『チーム7』は、まさにその『弱いモンいじめ』をせなあかんのやろ?」
七世は、ふっと笑って七海の肩に手を置く。
「でも、私達より強い者なんて、そうはいないもの…」
「まあな…」
七海は金属バットを構え、素振りをして暇潰しを始める。
七海は苛ついていた。
今からこなさなければならない『仕事』に?
それとも、一木有海に?細川藍に?
「どうでも、ええわ!!」
七海は、汗を飛び散らせ、バットを振るう。
七世は、そんな七海を、静かな笑みを浮かべて見守っている。
103投稿者:リリー  投稿日:2008年01月18日(金)21時35分40秒
「七海さん…。ストップ…」
七世の言葉に、七海のバットの先が、宙に止まる。
「来たわ…。ターゲットが…」
「やれやれ…。やっとやな…」
七海は、黒地に黄色で『6』と書かれたのリストバンドで、額の汗を拭う。
『阪神タイガース』の、金本のリストバンドだ。
とあるルートで、本物を手に入れたのだ。
七海と七世は、高速道路の橋桁のコンクリート柱に身を隠す。
七世は日傘を閉じる。
そして、じっと『ターゲット』を目で捕捉する。
その『ターゲット』は…5人の少年達だった。
推定、15〜18歳…。
情報によると、中学生から高校生、そして無職の少年達である。
下品なバカ笑い声を上げながら、肩を小突きあったり、跳び蹴りしながら横並びで歩いている。
全員、酒が入っているようだ。
最年長であろう少年が、不法駐車していた黒光りする改造車のドアを開ける。
次々と車に乗り込む少年達。
そしてエンジン音と共に、車のライトが点く。
柱の陰に隠れた七海と七世の顔を明るく照らした。
2人は、そのお互いの顔を見合い、力強く頷いた。
104投稿者:リリー  投稿日:2008年01月18日(金)21時36分05秒
少年達を乗せた改造車は、猛スピードで七海と七世の隠れているコンクリート柱の横を走り過ぎる。
七世は、閉じた日傘を車に向ける。
傘の取っ手のボタンを押す。
すると…傘の先に取り付けられていた、銀色の小さな槍が発射された。
その槍は、見事タイヤに突き刺さった。
破裂音とともに、急ブレーキ音…そして、車はコンクリート柱に次々と車体を擦りつけ、フェンスに突っ込んで止まった。
「おし!!」
七海は、金属バットを構え、その車の元に駆け寄った。
「ゴルアァァ!!」
七海は、気合の篭った掛け声と共に、金属バットで車のリアガラスを叩き割った。
「ゴルアァァ!!ゴルアァァ!!ゴルアァァァァァ!!」
そして、車体のドア、屋根、そしてウィンドウ、フロントガラスに、金属バットをデタラメに叩きつける。
「うわ!うわ!!うわあああ!!!」
「な、何だってんだ!?」
車内は、阿鼻叫喚のパニックだ。
ものの数秒で、車は廃車同然になった。
105投稿者:リリー  投稿日:2008年01月18日(金)21時37分43秒
「このクソガキ!!てめぇ、何しやがんだ!!」
運転をしていた…おそらく、この車の持ち主であろう最年長の少年が、怒りに狂いながら車から降りた。
「ゴルア!!ゴルアァ!!」
しかし、七海は車を破壊したのと全く同じ力で、その少年の身体も打ち据える。
「げ!!な、何だ!?このガキ!!」
「狂ってんのか!?コイツ!?」
次々と車を降りる少年達。
しかしそれは、順番に七海に殴られることになるだけだった。
金属が骨にぶつかる音…そして、アスファルトに散らばる血と歯…。
「こ、このガキ、やべぇ!!」
「け、携帯で先輩、呼べ!!」
一人の少年が、慌てふためきながら携帯電話を出す。
しかしその携帯は、金属バットでヘシ折られた手首から、地面に落ちる。
「ゴルア!!」
そして、当然、その携帯は叩き壊された。
106投稿者:リリー  投稿日:2008年01月18日(金)21時39分06秒
「な、な、何なんだよぉぉぉ〜〜〜!!おまえは!?」
「わかった!わかったから!!お、お、落ち着け!!」
少年達は、手を挙げて降参した。
もちろん、手を骨折した者は手を挙げることができないが…。
「はい、はい、はい…御苦労様、『キラー・タイガー』…」
七世は、開いた日傘をクルクルと回しながら、優雅に歩いてきた。
しかし優雅とは言っても、その恰好はトラックスーツなのだが…。
「お、お、おまえら…一体、何なんだ!?」
「俺達に、何の用なんだよ!?」
少年達は、ガタガタと震えながら、七海と七世…2人のトラックスーツの少女を見上げた。
「用?用なら、もちろんありますわよ?用もないのに、こんなことしません。私達、そんなにヒマじゃありませんから…」
七世は、にこやかに少年達を見下ろして言う。
「あなた達…下ノ国中学の女生徒達に…何をしたか…覚えてます?」
七世の表情から、笑顔はもう消えていた。
107投稿者:リリー  投稿日:2008年01月18日(金)21時40分45秒
今日は、これでおちます
108投稿者:素振りの七海がかわいいですねぇ  投稿日:2008年01月18日(金)22時22分29秒
机の上に置いときたいですね
109投稿者:5人の少年の正体が  投稿日:2008年01月18日(金)22時39分04秒
気になるところです
110投稿者:117  投稿日:2008年01月18日(金)22時52分05秒
昨日は忙しかったんで来れなかったので、今日2日分読みました。
ついに『裏世界』の話がスタート。野球の表裏とかけるとは・・・なかなか面白いですね。
続きも楽しみです!
111投稿者:どないかこないか  投稿日:2008年01月18日(金)23時44分55秒
過去作品を読む術はないものでしょうか…
112投稿者:決め台詞  投稿日:2008年01月19日(土)00時00分07秒
羅夢「オラァァァ!!」
七海「ゴルァァァ!!」
113投稿者:加藤組って  投稿日:2008年01月19日(土)13時01分51秒
らりるれろにも出てた気がするけど…だめだよく覚えてない;
114投稿者:たしか  投稿日:2008年01月19日(土)14時18分56秒
ダーさんが原村へ行けと梨生奈と羅夢に命令した時「加藤組の仕事を終えたばかりよ」と梨生奈が文句を言ってた
115投稿者:リリー  投稿日:2008年01月19日(土)21時04分44秒
5人の少年達については、実は誰でもないんです
ただの名も無き登場人物でして…

加藤組のこと、よく覚えて下さいましたね
『らりるれろ』で書いた時は、何も考えなしだったんですが

では、更新します
116投稿者:リリー  投稿日:2008年01月19日(土)21時08分47秒
「う…」
少年達は、青い顔で顔を見合わせる。
「答ええや!!オノレ等、何をしたんか!!」
七海は、ガツンとアスファルトを金属バットで叩いた。
「…まぁ…いいわ…。こちらの調査通りだと思うから…。私達の言うことが間違ってたり、何か異論があったら、遠慮なく申し出てくださいね」
七世は、小さなピンク色のファンシーな手帳を広げる。
「あなた方は…出身学校である下ノ国中学の3年女子生徒2人を、遊びを通じて知り合い、そして5人で寄ってたかって暴行…」
一切の感情を押し殺し、淡々と読み上げる。
「それで、その女の子達の裸の写真をデジカメで撮って『言う事を聞かなかったらネットでばら撒く』と脅迫した…」
一人の…最年少の、中学生の少年が慌てて口を開く。
「お、俺は、先輩に命令されて…」
「じゃかしい!!まだ、説明の途中や!!」
七海は、その少年の顔面に、バットの先を突きつける。
「まずは、金品の強要…それが払えなくなると、2人を無理矢理援助交際させ、そのお金を毟り取る…。そしてまた、その子達に、別の女の子を紹介させ、また暴行、脅迫の繰り返し…」
「鬼畜やのぅ…オノレ等…」
七海は、まだ殴り足りない、と言いたげな目で、少年達を睨みつける。
「彼女達…事件が事件だし、裸の写真を撮られてるから警察にも通報できず、本当に傷つき、悩み、苦しんでます…」
七世は、悲しそうな顔で少年達に訴えかける。
117投稿者:リリー  投稿日:2008年01月19日(土)21時09分27秒
「だから、私達が…警察とは違う解決方法を、とらせてもらうことになりました」
手帳を閉じる七世。
七海は、バットで一人の少年の頭を軽く小突きながら言う。
「さあ、その裸を撮ったデジカメ…ここに出さんかい!!」
一人の少年が、恐る恐るデジカメを差し出す。
七海はそれを受け取り、データを確認する。
そこには、涙に濡れた少女が、全裸で立たされている写真が保存されていた。
そして、まるでAV女優のような卑猥なポーズを無理矢理とらされているものも…。
その写真を見た七海は、眉間のシワが増え、青筋が額に浮かぶ。
その額は、キッチリと切り揃えられた前髪に隠れて窺えないが…。
七世は、一見無表情のようだが、小さく溜息をついた。
4月3日…今日の日付けのものもある。
つまり、ついさっき撮ったもの…ということだ。
「『キラー・タイガー』…。データを消去して…」
「そない、面倒なことやっとれんわ!」
七海は、デジカメを金属バットで粉々にした。
「これだけってワケじゃなさそうね。さあ、持っている全ての携帯を出して」
少年達の持っている携帯にも画像が保存されているかもしれない…七海はデータを確認することなく、全て破壊した。
118投稿者:リリー  投稿日:2008年01月19日(土)21時10分19秒
「さてと…あなた方が持っている携帯やカメラの類は、これだけね?」
七世の質問に、少年達は、小刻みに何度も頷く。
「でも…もしかしたら、家のパソコンに画像をダウンロードしているのかもしれないし…疑念は晴れないわ…。だから…」
七世は、少年達の前で、その日傘を高速回転させる。
すると…少年達は、着ている服を細切れに刻まれ、たちまち全裸にされてしまった。
七世の日傘の突き出た骨の先は、鋭く研ぎ澄まされているのだ。
「ケケケ…。そんじゃまぁ、楽しい楽しい撮影会といきまひょか?」
七海は、懐からデジカメを取り出した。
そして少年達は、様々な角度、ポーズのヌード写真を撮られるハメになる。
「いい?もし、またこういう事を繰り返したり、あの子達の裸の画像を公開したりしたら…あなた達の画像も公開するわよ?」
「その筋のオッサンに、気に入られるかもしれへんで?」
「それから…あの子達の慰謝料に関しては、後日話し合いましょう。逃げてはいけませんよ?私達よりも、『もっと恐い人』が交渉に行きますからね?」
おいおいと裸で泣く少年達を後に、仕事を終えた七海と七世の『チーム7』は、その場を立ち去った。
119投稿者:リリー  投稿日:2008年01月19日(土)21時11分11秒
先ほどから、無言の七海…。
「どうしたの?機嫌が悪い?」
そんな彼女に、心配そうに語りかける七世。
「決して愉快やない…。こないな仕事…。やっぱ弱いモンいじめや…!」
七海は、吐き捨てるように言った。
「う〜ん…。気持ちはわかるけど…これは必要な仕事よ…」
「ウチ等は探偵やろ?これは…探偵の仕事やない。なんか…仕置人みたいや!」
「仕置人ねぇ…」
七世はゆっくりと、自分のパートナーに語りかける。
「でも少なくとも、あの依頼主の女の子達は救われるわ…。もちろん、心の傷が全て癒されるわけではないけれど…」
そして、言葉を噛み締めながら、自分に言い聞かせるように言う。
「あの、写真に写ってた子も…。被害を広げることも阻止できたわ…。これから先、悲しい思いをすることもない…」
これから先、悲しい思いをさせない…。
七海は、その為に今日、嫌な仕事を一つこなしたのだ。
それは…今日の学校でも、同じことをやったような気がする。
学級委員に立候補した…。
一人の少女に、悲しい思いをさせない為に…。
(これが…これからのウチの宿命なんかな…)
そして、また…一木有海の顔を思い浮かべた。
120投稿者:リリー  投稿日:2008年01月19日(土)21時12分32秒
「そうだわ…。無事仕事が終わったこと、ダーさんに報告しなきゃ…」
七世は携帯電話を取り出すと、電話帳のデータを開き、『マッド・エッジ』という名前に掛けた。
〔もしもし?出っ歯ちゃんか?〕
コール音1回で、そのダーさんこと、ダーブロウ有紗は電話に出た。
『出っ歯ちゃん』とは、ダーブロウ有紗がつけた、岩井七世のあだ名である。
「はい、こちら『クリムゾン・レイン』です。ただ今、『チーム7』、任務を終えました」
〔そうか、そうか、ご苦労さん。どうだ?散々に泣かしてやったか?〕
「はい。『キラー・タイガー』が頑張ってくれました」
〔ははは…。そうか、そうか。じゃあ、私が直々に褒めてやるから、パッツンに代わってくれ〕
121投稿者:リリー  投稿日:2008年01月19日(土)21時12分49秒
『パッツン』とは、ダーブロウ有紗のつけた、七海のあだ名だ。
「七海さん…。ダーさんが褒めてくれるって…」
「デカアリが…?」
『デカアリ』…これも、ダーブロウ有紗を指すあだ名だ。
「要らん!」
「そう言わずに…。ね?」
七海は、顔をしかめて電話に出る。
「もしもし…」
〔おう!パッツン!ご苦労!!どうだ?おまえにピッタリな仕事だったろ?〕
「ウチにピッタリ?アホ言いな!!誰でもできる仕事やんけ!!」
〔誰でもできる?おまえこそ、バカ言ってんじゃねえよ!おまえにしかできない仕事だ!だからこそ、おまえ等『チーム7』に仕事を回したんだよ〕
だからこそ?
七海には、ダーブロウ有紗の真意がわからない。
122投稿者:リリー  投稿日:2008年01月19日(土)21時13分26秒
「ウチにしかできへん仕事?どういうことや?」
〔つまりな…今回の仕事は、あのクソガキ共に、様々な人間がてめぇ等に対して怒りに震えている…ってことをわからせてやらなきゃならねぇんだ〕
「怒ってることを、わからせる?」
〔そう、骨身にしみるほどな…。法律がどうのとか、道徳がどうの…なんて話しをしたって、やつらには届かねぇ。必要なのは、身も震える程の憤怒の感情だ〕
「う〜ん…。チョイ待ち!ウチ、アホやからようわからん!もっと、わかりやすう説明してんか?」
〔ああ、悪ぃ…。つまり、やつ等は人間というよりは、動物だ。人の悲しみをエサにしてる獣だってこと〕
「ああ、それは、ようわかる」
〔動物は、『恐怖』に対して、もの凄く敏感だ。いかに相手へ『恐怖』を与えるか、または、いかに相手からの『恐怖』を避けるか…やつ等の思考回路はそれを優先させる…〕
そう…。つい半年前の自分も、そうだったかもしれない…。
つまり…動物と同じ…。
〔そこで、うちの探偵の中で、一番『怒り』が似合う、パッツンの出番ってことだ〕
「『怒り』が似合う?ウチが?」
〔ダッチャも似たようなもんだけどな〕
「ウチを、羅夢なんかと一緒にせんといて!!」
『ダッチャ』とは、七海と同じ探偵仲間、細田羅夢のことである。
七海は、特に羅夢とは仲が悪い。
気の強い者同士だからだろうか…。
123投稿者:リリー  投稿日:2008年01月19日(土)21時14分00秒
七海の怒りを、ダーブロウ有紗は素直に受け止める。
〔まぁ、そうだな。おまえとダッチャの『怒り』は、中身が違う〕
「中身?」
〔ああ…。ダッチャは、自分の為に『怒る』が、おまえは、他人の為に『怒る』…〕
他人の為に『怒る』………ダーブロウ有紗は、今日の学校の出来事を見ていたのだろうか?
〔だから今回の仕事は、おまえでなけりゃダメなのさ。悪かったな、つまんねぇ仕事させて…〕
「べ、別にええよ…」
反抗的な態度をとったので、これから壮絶な口ゲンカになると覚悟していたので、拍子抜けしてしまう。
〔じゃ、約束通り褒めてやったから、おまえにはもう、用はねぇよ!出っ歯ちゃんと代わってくれ〕
「く…!このアマ…!!」
七海は、しかめっ面で七世に携帯を渡す。
「はい、『クリムゾン・レイン』、代わりました」
〔おう。で、私は明日あたり、やつ等の所へ慰謝料の交渉に行けばいいんだな?〕
「ええ。でも、『マッド・エッジ』…交渉と言うよりも、毟り取りに行くんでしょ?」
〔まあな!!ギャハハハハ!!!〕
ダーブロウ有紗のバカ笑いが、七海の耳にも届く。
(あ…!わかった…!何であの女にムカついたんか…)
七海は、今日出会った、あの少女の顔を思い浮かべた。
(細川藍…。デカアリに似とるんや…どことなく…)

(『一回・裏』・・・終了)
124投稿者:リリー  投稿日:2008年01月19日(土)21時14分23秒
今日は、これでおちます
125投稿者:117  投稿日:2008年01月19日(土)22時13分58秒
鮮やかな「チーム7」の活躍・・・カッコイイなぁ!
次回は「2回表」ですね・・・再び、いじめの問題か?続きも楽しみです。
126投稿者:今回も  投稿日:2008年01月20日(日)00時59分32秒
ダーさんは電話のみですか?
127投稿者:あげ  投稿日:2008年01月20日(日)11時47分05秒
 
128投稿者:今回の  投稿日:2008年01月20日(日)18時43分09秒
敵は誰なんだろうね
129投稿者:リリーさんの小説おもしろいです!  投稿日:2008年01月20日(日)18時50分07秒
自分、小説に興味なかったんですが
らりるれろ探偵団を読んでみたらすごくおもしろくてはまってしまいました。
でも過去ログが見れないので、途中からしか読めなくてショックです…
サムライドライブも読みたい!と思ったのですが、やっぱり過去ログが見れなくて(;-;)
今となってはすごく後悔しています↓↓

だから『グランドスラムの少女達』は毎日読んでいます。

リリーさん、応援しています!
大好きです。頑張ってください!
130投稿者:だからこそ  投稿日:2008年01月20日(日)18時56分47秒
だからこそ・・
131投稿者:リリー  投稿日:2008年01月20日(日)20時16分58秒
>>129さん
どうもありがとうございます
まだ、旧二作品のスレが残ってるみたいなんですけど、まだ過去ログは見れないようですね
古いスレにまた書き込んであげてしまったら、迷惑ですかね?
一応、データは残ってるんですが…

117さん
『表』は、しばらく有海の可哀そうな場面が続きます
126さん
ダーさんは、今回は大活躍する予定です(第二話あたりから)
『裏』のみの出演になりそうですが

128さん
今回の敵は、まだ明かせませんが、登場人物表の中に出ています
当面の敵は、加藤組となります

では、更新します


132投稿者:リリー  投稿日:2008年01月20日(日)20時18分53秒
『二回・表』

≪2007年4/25(水)≫
放課後。
1年C組の教室には、七海と有海しかいなかった。
2人は机を向かい合わせにし、おびただしい数の折り紙と格闘している。
いや、格闘しているのは七海だけだ。
2人は鶴を折っているのだ。
七海は眉間にシワを寄せ、折り紙を小さく折り畳んでいる。
有海はと言うと、精密機械のように、同じリズムでテキパキと鶴を折りあげる。
有海が10羽折る間、七海は一羽折るのに精一杯だった。
133投稿者:リリー  投稿日:2008年01月20日(日)20時19分07秒
そして、とうとう…。
「ああ!!もう、ヤメや!!」
七海は、半分折りかけた鶴を床に叩きつけた。
有海は、じっと七海の顔を見詰めている。
「なんや?なんか文句でもあんのかい?」
七海は、八つ当たり気味に有海に凄む。
「う、ううん…。文句なんて…。ただ、いつキレるかヒヤヒヤしてた…」
「あん?」
「意外と…長くもったな…って…」
「…ふん!そりゃ、どうも!」
七海は、自分が折った鶴を改めて見る。
鶴と言うよりも…ただの屑になっている…。
134投稿者:リリー  投稿日:2008年01月20日(日)20時20分50秒
「しかし…ホンマにウチのクラスって、薄情なヤツが多いな…。だ〜れも、協力せぇへんやん!!」
何で2人が放課後に教室に残り、鶴などを折っているのか…。
一人のクラスメイトが、新年度早々、肝炎で入院した。
学級委員として、有海がクラス全員に、快気を願って千羽鶴を折って送ろう、と提案。
しかし、誰も折るものはおらず、それで副委員の七海と共に2人で千羽折るハメになってしまったのだ。
「なぁ…一木さん…。やめようや…。鶴折ったかて、病気が治るわけやないやろ?」
「そんな…。こういうのは、気持ちなんだから…」
「気持ちって…。だって、入院したヤツ…一木さんを学級委員に推薦したヤツやん!そない義理ないやろ!?」
「で、でも…。病気で入院してるんだから…可哀そうだよ…」
「まったく…!!ホンマ、お人好しやな…」
七海は、また折り紙に手を伸ばす。
そして、また悪戦苦闘…。
「ええい!!ヤメや!!」
今度は、早い。
「藤本さん、もういいよ…。後は私一人でやるから…」
有海の精一杯気を使った言葉だが、七海はカチンときた。
135投稿者:リリー  投稿日:2008年01月20日(日)20時22分00秒
「何や?コラ!ウチのことが足手纏い…そう言いたいんかい?」
「え…?そ、そんなこと…」
「今、溜息つきながら言うたやろ!?ウチがジャマなんやろ!?」
「え…?あ…ご、ごめんなさい…」
「お!?今、謝ったな!?つぅことは、やっぱウチがジャマなんやな!?」
「ち、違うよぉ…」
有海は涙目になる。
「あ、2人とも仲良くやってるなぁ〜?」
担任の珠緒が2人の様子を見に教室に入ってきた。
「あ…。せ、先生…」
「仲良くって…。今、ごっつケンカしてたとこやん…」
「ケンカするほど仲が良いって言うじゃない」
にこやかに2人の側に座る珠緒。
(この先生…悪い人やないんやけど…。やっぱ、アカンわ…)
七海は、少し珠緒から離れようと椅子をずらした。
136投稿者:リリー  投稿日:2008年01月20日(日)20時23分07秒
「うん、うん。だいぶ折れたねぇ…。何羽折れた?」
「はい、ええと…100羽です」
「おお〜!凄い凄い!2人で協力すれば、こんな短時間で100羽折れるんだぁ〜」
まるで、幼稚園児を褒めるように、珠緒はパチパチと拍手をする。
しかし、その内訳は、有海90羽に、七海10羽なのだが…。
「後、900羽だね…。よし、じゃあ先生も手伝っちゃう!」
珠緒も、薄手のカーディガンを腕まくりして、折り紙に手を伸ばす。
「あ…。た、助かります…先生…」
有海は心底ほっとした。
しかし、その安堵の気持ちは儚く消える。
珠緒の折る鶴は、七海の折ったものよりも…酷かった…。
折るスピードが遅ければまだいいのだが、珠緒のペースは恐ろしく速い。
みるみるうちに、奇形の鶴が量産されていく。
有海は焦った。
「せ、先生…!も、もっとゆっくり折ってくれても構いませんよ?」
「え?そう?でもぉ〜、早く折らないと…。もう、来週には退院するって言うしぃ〜」
その珠緒の言葉に、七海は思わず、折っていた鶴を破ってしまう。
「な、何やって!?退院する日、決まっとるん?せやったら、ますます鶴折る意味なんて、あらへんやん!!」
「だから…こういうのは気持ちだから…」
有海という少女…気弱なくせに、変なところでガンコである…。
137投稿者:リリー  投稿日:2008年01月20日(日)20時24分31秒
そこに、一人の少女が、慌しく教室に駆け込む。
中等部カラーの緑色のジャージを身に纏った、細川藍だった。
「ごめん!ちょっと、ここにかくまわせて!!」
藍は、顔の前で両手を合わせると、教卓の陰に隠れる。
「んん?あなた…A組の…細川さん?どうしたの?」
珠緒は、細川の側まで来る。
「しー!しー!そのまま!何事もなく座ってて!珠緒ちゃん!!」
珠緒は、首を傾げながら椅子に戻る。
「おい、コラ!ワケを話さんかい!!勝手に人の教室、入って来んな!!」
七海が代わりに立ち上がる。
「ん…?ここ、あんたの家?違うよね?担任の珠緒ちゃんが出てけって言うんなら、わかるけど…」
この藍の屁理屈に、七海の苛々は募る。
「先生!出てけって言うて!!」
七海に、そう詰め寄られた珠緒は、困ったような顔で笑う。
「まあ、いいじゃない…。話しだけでも聞いてあげようよ…」
「ち…!」と舌打ちして、七海は椅子に座る。
藍は、満面の笑みを浮かべる。
「さすが、珠緒ちゃん!話しがわかる!ああ…私もC組が良かったなぁ〜」
138投稿者:リリー  投稿日:2008年01月20日(日)20時25分56秒
すると、廊下から怒鳴り声が響く。
「コラ〜!!細川藍〜!!どこ行った〜!!」
細川藍は、ますます身を縮ませる。
「ゲ…!!こんどんだ!!お願い!私はいないって…」
「な、何をしたの?細川さん…」
珠緒は、落ち着かない様子だ。
「決して、校則を破ったとか、中学生らしくないことをしたとか…そんなんじゃないですから…!」
藍は、人差し指を口の前に持ってくる。
そこへ、A組担任の角野卓造…もとい、近藤春菜が教室に入って来た。
ピンクのシャツに、赤いパンツのジャージ姿…部活の指導の最中だったのだろうか?
肥満体の近藤の顔は汗だくで、メガネは雲っている。
「あ、佐藤先生!うちの細川藍、来てませんでしたか?」
困った顔で、ちらりと教卓の陰を見る珠緒。
藍は、口を思いっきり横に広げ、人差し指を立てている。
「え〜とぉ〜…見てませんね…」
「…そうですか…」
近藤は、メガネをとり、首にかけてあったタオルで汗を拭う。
139投稿者:リリー  投稿日:2008年01月20日(日)20時27分18秒
「あのぉ〜…細川さんが…何か?」
恐る恐る、珠緒は訊ねる。
「部活の最中に、いなくなったんですよ!」
「部活?確か、近藤先生…ソフトボール部でしたっけ?」
「はい!あの細川が入って、我が部は市内大会…いや、都大会…いや、全国大会優勝だって夢ではないってのに…」
近藤は、悔しそうに足を踏み鳴らす。
藍は教卓の陰で、窮屈そうに、その長身を小さくさせる。
七海は、藍の存在を近藤に教えてやりたくて、ウズウズした。
「でもぉ〜、細川さん、どうして部活を抜け出したんですか?」
珠緒の質問に、近藤は腹立たしげに答える。
「うちは、どんなに能力のある子でも、一年生は球拾いからさせるんですよ。今までスター選手としてやってきた細川は、球拾いなんかやってられないんでしょうね!」
七海は、教卓に隠れている藍を、横目で見る。
「でも、先生…。よう探してみたらどうです?意外な所に隠れてるかもしれへんよ?」
「意外な所?」
もの凄く恐い目で、七海を睨む藍。
「た、例えば…トイレとか…」
有海が、慌てて口を挟んだ。
「ああ、トイレね…。それは思いつかなかったわ…」
七海は、ちっと舌打ちをした。
藍は、冷や汗を拭いている。
140投稿者:リリー  投稿日:2008年01月20日(日)20時28分23秒
「お?君達は何をやっているの?」
メガネのズレを直しながら、近藤は机の上の鶴を見る。
「あ…これ…クラスの友達が入院しちゃって…。で、千羽鶴を折って、贈ってあげようって…」
「ほぉぉ〜。それは、感心、感心!先生、そういう思いやりのある子って、好きだぞ!」
そう言って近藤は、有海の額をつんっと突いた。
「じゃあ、私は細川を探します。君達はがんばって鶴、折ってね」
そう言う近藤に、七海は手を挙げて答える。
「はい、ありがとさん!角野先生!」
「卓造じゃねぇよ!!」
一言、怒声を残し、近藤は教室を後にした。
近藤が去ると、すぐに藍は七海に詰め寄った。
「ちょっと!あんた今、こんどんに私を売ろうとしたでしょ?」
「はぁ?何の事?言いがかりつけんといてよ」
「…あんた…名前は?」
「七海…。藤本七海や。七つの海て書いて七海…。ええ名前やろ?」
「七海…ね…。あんたのこと、覚えておくわ!」
「おお、こわ…!」
七海は、鼻で笑いながら鶴を折り始める。
141投稿者:リリー  投稿日:2008年01月20日(日)20時32分54秒
今日は、これでおちます

アマノガワさん
すみません、返事が遅れました
今日、久しぶりにこのスレを読み返していたら、アマノガワさんの激励のレスを見かけました
『一七同盟』から読んでくださっているみたいで、本当に嬉しいです
また、この作品もよろしくお願いします
142投稿者:117  投稿日:2008年01月20日(日)21時31分05秒
ここで、藍との接点がまた一つ増えましたね。今後どう絡んでいくのか?
それにしても、『卓造』ことこんどん先生、面白いですね(笑)。続きも頑張ってください!
143投稿者:先生達のキャラいいな  投稿日:2008年01月20日(日)22時05分06秒
藍のキャラも一七の時より藍っぽい
144投稿者:みるみるうちに、奇形の鶴が量産されていく。  投稿日:2008年01月20日(日)22時36分43秒
ここ、ワラた
145投稿者:デジ  投稿日:2008年01月20日(日)22時45分34秒
久々に見ました。
裏ではかっこいいイメージがあり、(前回)
表はユニークな一面があって面白いです。(今回)
146投稿者:先生のキャラが何か好き  投稿日:2008年01月21日(月)10時36分11秒
こんどんが『らりるれろ』のクロちゃんと被って見える。
リリーさんはハリセンボンが好きなの?
147投稿者:リリー  投稿日:2008年01月21日(月)21時08分36秒
117さん、143さん、146さん
あめぞうで言われてるほど、ハリセンのことは悪くは思ってませんよ
クラスメイトに恵まれていない分、先生はマシな人にしないと…と思いまして
藍は、一七ではあまり出番がなかったものですから、今回はたくさん書きたいと思いました

144さん、ありがとうございます

デジさん
ありがとうございます
『表』と『裏』は、違う雰囲気な展開になっていきますが、そのうちに、交じり合っていきます

では、更新します
148投稿者:リリー  投稿日:2008年01月21日(月)21時09分35秒
「でも、あんたはナイスフォローだったよ!ありがと!」
藍は、有海に手を差し出す。
「…え?」
有海は、少し面喰ってしまった。
「あんた、名前は?」
「は…はい…。一木…と言います…」
有海は、遠慮がちに、藍と握手する。
「下の方は?」
「有海です…」
「有海?だったら、あんたのあだ名は、あみ〜ごだ!」
「あ、あみ〜ご…?」
「へへ!私、あだ名つけるの得意なんだ!」
そう笑う藍を、横目で見て顔をしかめる七海。
(ホンマに…こいつ、『あの女』に似てるわ…)
そう…誰彼構わず、勝手にあだ名をつける…『あの女』…。
149投稿者:リリー  投稿日:2008年01月21日(月)21時10分14秒
「はぁ…。あみ〜ご…ですか…」
気の無い返事をする有海だが、内心は嬉しくて仕方がなかった。
あだ名をつけられた…。
この12年間の有海の人生の中で、それは初めてのことだった。
まるで…友達ができたみたいだ…と、有海は思った。
「でもね、あんたには、あだ名をつけてやんないから!」
藍は、七海の方を厳しい眼差しで見る。
「私はね、気に入った人間にしかあだ名をつけないんだ!」
七海は、思わず頭に血が昇った。
「い、要らんわ!!あだ名なんか!!」
これ以上、変なあだ名をつけられてたまるか…七海はそう言い掛けてやめた。
「でもね、細川さん…」
ケンカになりそうな雰囲気を察して、珠緒が口を挟んだ。
「いくら球拾いがつまらないからって…部活を抜け出すのは良くないぞ?」
藍は、顔の前で思いっきり手を振る。
「ち、違いますって!球拾いが気に入らないってわけじゃないんです!私だって、体育会系の中で生きてきましたから、そういうのは平気なんです。ただ…」
「ただ?」
「ここの学校には…私のやりたいスポーツの部活が、ないんですよねぇ〜…」
藍は、そう言いながら頭を掻く。
150投稿者:リリー  投稿日:2008年01月21日(月)21時11分28秒
「やりたいスポーツ?」
「はい。ソフトボールだったら、近いかなぁ〜って思って入ってみたけど…。やっぱ違うんだよなぁ〜…」
「細川さんは、どんなスポーツがやりたいの?」
藍は、真っ直ぐに珠緒の顔を見て、答える。
「野球です!」
「野球…?」
七海は、鶴を折る手をピタリと止める。
「あんた…野球やりたいんや」
七海は、藍の顔を初めてまともに見た。
「何よ?バカにする気?女のクセにって…」
藍は、思わずケンカ腰になる。
「へぇ〜!細川さん、野球やったことあるの?」
珠緒は、興味津々に聞く…と、言っても野球のルールは知らない…。
ただ、また七海とケンカになりそうだったので、思わず口にしただけだった。
「やったことあるどころか…やってました!少年野球で…」
「少年野球?男の子とやってたの?」
「はい!エースで四番でした!」
藍は、誇らしげに答えた。
「エースで四番!?」
七海は、藍の話に…珠緒とは違い、正真正銘、興味津々となった。
151投稿者:リリー  投稿日:2008年01月21日(月)21時12分56秒
「ちょっと、何よ!?ウソだと思ってる?ホントなんだから!!」
藍は、また七海に詰め寄った。
「凄いじゃない!男の子のチームで、そんなに活躍できるなんて!!」
珠緒は、『四番』という数字の、どこが凄いのかわからなかったが、『エース』という単語だけは理解できた。
「でもね…私、追い出されちゃった…そのチームから…」
「追い出された?どうして?」
「やっぱり、女の私がチームの大黒柱ってのが、男子のプライドを傷つたらしくて…監督からも『バッティングピッチャーだったら、チームに置いてやる』って言われて…」
藍は、昨日のことの様に悔しそうに言う。
「そして挙句の果ては『女は、ソフトボールでもやってろ』って…。私、腹が立って、腹が立って…」
「何じゃ、そら!!」
七海は、机を激しく叩いて立ち上がった。
「わ!ビックリした!!な、何よ?」
藍は、七海を見る。
「なんちゅう差別や!!何で女が野球やったらアカンのよ!!」
七海は自分のことの様に、怒り心頭になった。
152投稿者:リリー  投稿日:2008年01月21日(月)21時17分12秒
「しかも、『女はソフトボール』ってのが、また許せん!!何で、あない野球の亜流みたいなもん、与えられなアカンの!?」
「へ…?あ、あんたも…野球やってたの?」
「ううん!やったことない!でも、野球は好きやで!!」
「へぇ〜!!ホント?プロ野球、どこのファン?やっぱり阪神?」
「当たり前や!!野球と言うたら阪神やろ?あんたは?まさか、巨人なんて言うんやないやろな?」
「違う、違う!私、中日ドラゴンズ!」
「中日?あんた、名古屋の人?」
「ううん!落合監督が大好きなの!!私の理想の男だね!!オレ流、最高!!」
「ホンマに?変った趣味やね?ウチは金本が理想のタイプや!!骨折しててもホームラン打つんやで?アニキ、最高!!」
「金本かぁ〜!!是非欲しいね、中日に!!」
「そっちこそ、ピッチャー、一人くらい阪神にちょうだいよ!羨まし過ぎや!あの豊富な投手陣!!」
「何で?阪神は藤川とか、JFKの3人とか、いいのいっぱいいるじゃん!!」
「ほなら、福留ちょうだい!!」
「ダメだよ!福留は名古屋に骨を埋めなきゃ!!中日から阪神に流れるのは、星野さんで最後だよ!!」
「う〜ん…星野はアカン!!あの男は短期決戦の戦い方を知らん!」
「ちょっと!!ダメ虎を立て直したのは星野さんでしょ?何よ?その恩知らずな発言!!」
「ダメ虎言うな!!半世紀も日本一になったことのない、中日ファンのクセして!!」
「ちょっと!それはドラファンには禁句だよ!!」
153投稿者:リリー  投稿日:2008年01月21日(月)21時19分31秒
珠緒と有海は、すっかり話しから置いていかれている…。
2人の会話が、まったくわからない…。
しょうがないので、2人はいそいそと鶴を折り始める。
そして、有海は悲しかった。
藍にあだ名をつけてもらえたのに…。
友達になれると思ったのに…。
今、あんなに楽しそうに七海と野球の話しをしている…。
もし、自分だったら、藍はあんなに楽しそうにお喋りをするだろうか…?
その前に、自分の趣味って何だろう…?
そう考えてるうちに、有海は目に涙が溜まってきた。
有海は、涙を見せる前に、この場から離れたかった。
「せ、先生…。私、今日はこれで帰ります…」
「そ、そう?鶴は…どうしようっか…?」
「あ…私、家で折ってきます」
有海は、慌てて鶴を、紙袋に掻き集めて入れた。
「え〜?大変だよぉ〜。あと900羽なんだから、私と藤本さんで300羽ずつ、3等分しよう?」
3等分…つまり、3分の2は、まともな鶴ではなくなる…ということ…。
「は…はい…。では、お願いします…」
有海は、帰り支度をする。
「じゃ、じゃあ、藤本さん、細川さん…さよなら…」
有海の消え入りそうな、か細い声は、当然、野球談話に夢中な二人には届かない。
154投稿者:リリー  投稿日:2008年01月21日(月)21時20分51秒
「WBCは感動したな!!ウチ、泣いたで!!」
「私も!優勝するなんて思わなかったもん!アメリカ戦の誤審とか、韓国に二回負けたとか…いろいろ波瀾があったのに…ほんと、奇跡だよね!!」
「そう、そう!イチローが、あない熱い男だとは知らなんだな〜」
「イチロー、松坂、上原…監督が王さん…あんな豪華メンバー、二度と揃わないかも…」
「松坂か…。あいつも今年からメジャーに行ってもうた…」
「何で、誰も彼もメジャーに行くんだろう?日本の野球が世界一って、WBCで証明したハズなのに…!」
「やっぱ…金やな…」
「いくらだっけ?60億?桁が違うよね!!」
「そうや…!井川がヤンキースに行ってもうたぁ〜!!」
「井川に30億は払い過ぎだって…。松坂をレッドソックスに取られて、ヤンキース、ムキになったね…」
「井川を悪ぅ言うな!!ウチ、アイツのこと買ってんで!?顔は全然好みやないけど…」
「顔で言うなら、断然、ダルビッシュだよねぇ〜」
「ケッ!!何や!所詮、あんたも軟弱なミーハーなんかい!?」
「いいじゃん!!私、イケメン好きだもん!!」
「イケメン言うたら…ハンカチ王子は、阪神が貰うた!!」
「ダメ、ダメ!!祐ちゃんは、中日に入るの!!」
「これ以上、ピッチャー集めてどないするんや!!」
2人は、有海が悲しげに帰ってしまったことなど、知る由もない。

(『二回・表』・・・終了)
155投稿者:リリー  投稿日:2008年01月21日(月)21時22分42秒
明日から『二回・裏』です
では、今日はこれでおちます
156投稿者:月鮫  投稿日:2008年01月21日(月)21時30分05秒
なんか、こんどんがでてきたところが、個人的に好きですね。
佐藤珠緒やこんどんのキャラがイイですね。
157投稿者:117  投稿日:2008年01月21日(月)21時48分06秒
なんか、「野球」の話で藍と仲良く?なった七海。
藍が「ドラゴンズファン」なのは,リリーさんの好みだからですか?
具体的な野球の話が出てきて,「プロ野球」に興味のあるボクにはとても面白いです(笑)。
158投稿者:すいません…  投稿日:2008年01月22日(火)08時41分22秒
野球のことあまりしらないのであたしも有海と同じように置いてきぼりでした…w

なんだか有海がかわいそうすぎですね…。
159投稿者:デジ  投稿日:2008年01月22日(火)16時41分08秒
野球のことはあまりわかりませんが
有名な選手が多かったので筋はつかめました。
すると2のメンバー表は……
160投稿者:有海が  投稿日:2008年01月22日(火)16時49分40秒
早く誰かと仲良くなれれば良いなあ
161投稿者:リリー  投稿日:2008年01月22日(火)20時34分20秒
野球の会話については、すみません
158さんの言われる通り、野球をあまりご存じない方には有海と同じ気持ちになってしまうんじゃないか、と思ってました
この後、あまりこういうことのないようにしたいと思います
おちる時に、サムドラのサッカーの時の様に用語解説したいと思います

デジさんの仰る通り、野球部のメンバー表の中に有海の名前がありますが、まだ一波乱あります

先生達の件が好評なようで、嬉しいです
先生達の出番は、『表』で度々あります

あと、117さんの言うとおり、藍がドラゴンズファンとは聞いたことありません
こちらで勝手に設定してしまいました
その前に、七海も本当に阪神ファンなのかもわかりませんが…

では、更新します
162投稿者:リリー  投稿日:2008年01月22日(火)20時35分54秒
『二回・裏』

≪2007年4/25(水)≫
「ふ〜ん…。よかったじゃないの…。お友達ができて…」
「お友達って程のもんやないよ。ただ、野球の話しで盛り上がっただけや」
「でも、女の子でそんなに野球が好きって、珍しいんじゃない?」
「まあな…。初めてなんとちゃうかな?」
「だったら…このご縁を大切にしなくっちゃね…」
七世は、そういうと最後の鶴を折り終えた。
「はい、これでお終いよ。300羽完成!」
「ホンマ、助かったわ…。七世が手伝うてくれて…」
七海は、後ろから七世に抱きついた。
163投稿者:リリー  投稿日:2008年01月22日(火)20時36分15秒
今は、午後11時。
七世は17歳にしては大人っぽい、セクシーなネグリジェ、七海は12歳にしては幼い、虎の着ぐるみのようなパジャマを着ている。
「もう…!手伝ったって言うより、ほとんど私が折ったようなものじゃない!」
そう言って、七海の頭をポンと軽く叩いた。
「ウチかて、一生懸命折ったやん!」
「でも…何で鶴に交じって、やっこさんとか、手裏剣があるの?」
「う〜ん…鶴ばっかやと、つまらんやんか…。こういう遊びを入れんと…」
「七海さんは、遊びばっかりでしょ?」
もう一度、七世は七海の頭を軽く叩いた。
164投稿者:リリー  投稿日:2008年01月22日(火)20時37分25秒
二人は、天歳市虹守町の、駅前の一等地に建っている、『R&G探偵社』の自社ビルの一室にいる。
このビルに、七海達は住んでいる。
そして、七海と七世はルームメイトなのだ。
『R&G探偵社』…レッドこと、吉田永憲を社長に置く、業界ナンバー1の探偵社である。
つい半年前は、冴えない探偵事務所だった『R&G』だったが、ある日を境に、大きく急成長することとなる。
ある日とは…多くの美しい少女達が、探偵として雇われた日のことだ。
そう…七海もその少女の中の一人だ。
七海だけではない。
七世も、梨生奈も、エマも、エリーも…そしてジョアンに中村有沙…電話で話したダーブロウ有紗、その話題に出てきた細田羅夢…他にも俵有希子、小百合の姉妹、ジャスミン・アレンという金髪の白人女性…。
彼女等は、とある裏の組織に身を置いていたのだが、『R&G探偵社』との戦いを通じて、組織は壊滅。
行き場を失い、『R&G』に身を寄せることになった。
中学生になったばかりの七海が、探偵などという仕事をしている理由は、こういうわけだ。
ちなみに、今、聖テレジアに通っている少女のうち、七海、エマ、ジョアン、羅夢の4人は、学力不足の為、裏金を渡して裏口入学で入った。
その少女達には家族はいない。
父、母という存在がいないのだ。
彼女達は、『R&G』の自社ビルに住んでいる。
そして、二人で1チームという編成でコンビを組み、ルームメイトとして同じ部屋で過ごしている。
七海と七世は『チーム7』。いつも二人は一緒である。
七世は、七海にとって、かけがえのない存在なのだ。
165投稿者:リリー  投稿日:2008年01月22日(火)20時39分04秒
「さてと…鶴ばかり折ってたら、肩が凝ってしゃあないわ…。もう、寝るとしよか…」
七海は、肩を回しながらベッドに向かう。
「そうね…。だけど…」
七世は七海に声をかける。
「七海さん…」
「ん?」
「今夜…どう?」
「へ?」
「でも…明日も学校あるし…やっぱり、やめようか?」
「え?あ…ううん!!しよ!いっぱいしよ!!」
七海の顔が明るくなる。
そしてベッドに直行すると、素早く潜り込む。
モゾモゾと蠢いたかと思うと、掛け布団とマットレスの合間から、虎のパジャマをポイと放る。
対象的に七世は、ゆっくりとネグリジェを脱ぐ。
まるで、七海をじらすかのように…。
「はよ!はよ!はよ!」
七海は、ベッドの中でバタバタと暴れる。
パンティ一枚の姿になり、そのスレンダーな裸体をさらした七世は、前屈みになって、七海の前髪を掻き揚げて軽くキスをした。
七海は、それだけで嬉しそうに笑い声を堪える。
七世もベッドの中に入ってきた。
166投稿者:リリー  投稿日:2008年01月22日(火)20時41分55秒
「でも、珍しいやん…。七世の方から誘ってくるなんて…。いつもはウチがしよ、って誘うても、なんやかんや言うて断るクセに…」
「そうね。でも、たまには、私から誘ってもいいんじゃない?」
「うん!ええよ!!全然、ええよ!!」
七海は、七世の細い身体に抱きついた。
七世は、優しく七海の背中を擦る。
「あはは!!くすぐったい!!」
「大人しくしなさい!」
暴れる七海の身体を、そっと抱きしめる七世。
そして、その右手は背中を撫でながら、下半身へと移動し、七海のパンティに手をかける。
七世は、そのまま七海のパンティを脱がす。
七海も、七世のパンティを脱がした。
ベッドの中で、二人は全裸になって愛撫しあう。
そして、キス…。
七世は、七海の唇、目、鼻、頬、と軽く唇で触れていく。
七海は、笑みを浮かべて目を閉じ、七世のキスを感じる。
167投稿者:リリー  投稿日:2008年01月22日(火)20時42分45秒
「もっと!」
「え?」
「もっと、キスしてよ!」
七海は唇をキュっとすぼめて、七世のキスを待つ。
「もう…この、甘えん坊さん!」
「ええやん!ウチ、七世以外には甘えることないもん!」
いつもは肩肘張って、至る所で、至る者に噛み付くような態度を見せる七海が、こんなに幼く甘えるのは、七世の前だけである。
「そうね…。こんな可愛い七海さんを見ることができるのは…私だけよね…」
「七世以外には、絶対に見せん!!もし、見られたら、ウチ、舌噛んで死ぬわ!」
「舌…出して…。噛んであげる…」
「ん…」
七世は、七海の小さな舌を軽く咥え、口の中で絡ませる。
「うん…。んん…」
七海の全身の力が抜ける。
七世の唇は、七海の首から下へと移動する。
まだ、充分膨らんでいない、未熟に尖った胸は、今はとても敏感な時だ。
「あ…ん…」
七海は、思わず声を上げる。
168投稿者:リリー  投稿日:2008年01月22日(火)20時45分11秒
「ふふ…。私もそうだったけど…このくらいの時が、一番感じるのよね…。七海さん、そろそろブラジャーいるんじゃない?」
「要らん!あないなモン、邪魔や!」
「う〜ん…。まだまだ子供ね…」
「七世の前なら、ずっとウチは子供でええわ!」
そう言うと、七海は七世の乳首を口に含んだ。
くすぐったそうに身をよじる七世だが、そのまま七海の頭を抱え込む。
そして、七海の長い髪を掻き分け、小さな耳を捜し当てる。
耳たぶをあま噛みする。
二人は口数が少なくなっていき、お互いの身体を唇で触れ合う。
七世の唇は、七海の下腹部へと向かう。
「七海さん…。力抜いて…。リラックス…」
「…うん…」
首を起こし、じっと七世を見ていた七海だが、突然襲ってきた快楽に、視線は天井に向く。
「…あ…!」
七海は、思わず身体を逃げるようにずらす。
「だぁ〜め…!七海さん、好きなんでしょ?」
七世は意地悪そうに笑って、七海の太ももを掴んで放さない。
169投稿者:リリー  投稿日:2008年01月22日(火)20時46分02秒
「は…ぁあ…!な、七世…」
「ん?なぁに?七海さん?やめて欲しい?」
七海は、歯を食い縛って首を横に振る。
「どうして欲しいの?」
「あ…うん…」
七海は真っ赤になって、黙り込む。
「あれ?お口が利けなくなっちゃった?じゃあ…やめちゃおうか?」
七海は泣き出しそうな顔で、激しく首を横に振る。
七世は、いつもこういう時に、意地悪をして七海をいじめるのだ。
基本的には、七海はサディストで、七世はマゾヒストなのだが、こういう場面ではしばしば立場が逆転する。
それがまた、七海を興奮させる。
プライドの高い七海が、人前で涙を見せることを極端に嫌う。
人前で泣くことはあっても、それは大抵、目薬だ。
彼女は、いじめなど、自分に悪意を向ける者には、容赦をしない。
しかし、七世になら、いじめられることも許容してしまう。
逆に、こんな自分も悪くない、と思うこともある。
170投稿者:リリー  投稿日:2008年01月22日(火)20時47分20秒
「ウソよ…。可愛い、可愛い、七海さん…」
七世は、また七海の股間に顔を埋める。
無毛の幼い性器を、愛しそうに舐める。
「あん…!あん…!」
その度に、七海の身体はピクン、ピクンと反応する。
時に優しく、時に激しく、強弱の波をつけて、七海を責める。
「あん!はぁぁ…!!くぅ…!」
ベッドの上で悶える七海。
「う…う…うう…ああ…」
顔を手で覆って隠してしまう。
「あああ〜ん!あああ〜ん!…」
とうとう、七海は赤ん坊の様に泣き出してしまう。
しかし、七世は一向にやめる気配はない。
七海がこういう泣き声を上げた時、それは最頂点に達している証なのだ。
今、やめてしまったら、後でますます大泣きされてしまう。
一度拗ねた七海の機嫌を直すのは、とても骨が折れるのだ。
それは、七世が一番よく知っている。
171投稿者:リリー  投稿日:2008年01月22日(火)20時48分34秒
「あぐ!あぐぅ!!ひぃ…!あああん!!!」
七海の身体が小刻みに震える。
「イった?イっちゃったの?」
七世が顔を上げる。
「あああ〜ん…あああ〜ん…あああ〜…」
七海は、顔を隠して泣き続けている。
しかし、声は僅かに低くなっている。
どうやら絶頂は越えたようだ。
「ひ…!ひ…!ひっく…!ひっく…!」
しゃくり上げながら泣く七海を、優しく抱く七世。
「はい、はい…。泣かない、泣かない…。いい子、いい子…」
七世は、七海の涙をそっと指で拭ってやる。
目と目が合う。
「えへへ…」
照れくさそうに、笑う七海。
そして、また七世に強く抱きついた。
172投稿者:リリー  投稿日:2008年01月22日(火)21時16分19秒
今日はこれでおちます

それでは前回の野球雑談の解説です
『JFK』・・・阪神の強力な中継ぎ投手、ジェフ・ウィリアムス、藤川球児、久保田智之の総称
『星野はアカン!!あの男は短期決戦の戦い方を知らん!』・・・星野は長期に渡るリーグ戦の優勝は何度も経験しているが、短期の日本シリーズに勝ったことがない。今回、オリンピックチームを率いて戦うが、是非この不名誉なジンクスを覆してもらいたい
『ダメ虎を立て直したのは星野さんでしょ?』・・・中日ドラゴンズの監督だった星野仙一が阪神タイガースの監督に就任してから、阪神は優勝争いの常連チームとなった
『半世紀も日本一になったことのない、中日』・・・1954年の初優勝以来、53年間日本一から遠ざかっていたが、今年日本一の座に就く(この七海のセリフは2007年4月25日現在のもので、まだ日本一は決定していない)
『WBC』・・・野球のワールドカップ、『ワールド・ベースボール・クラシック』の略で、記念すべき第一回優勝チームは日本
『アメリカ戦の誤審とか』・・・アメリカvs日本の試合にも関わらず、審判がアメリカ人で、その審判の誤審で日本が負けてしまったことがあり、大会運営に関しては主催国のアメリカ偏重の感が否めない。
『韓国に二回負けたとか』・・・アジア予選、本戦のリーグ戦で、日本は韓国に二度敗れたが、準決勝で三度両国は激突し、その試合で日本が勝ってそのまま優勝、韓国は「優勝国の日本相手に2勝1敗だから、真の優勝は韓国だ。日本の優勝は恥ずかしいものだ」と韓国チームの幹部が発言し、バッドルーザーぶりを見せつけた
『イチローが、あない熱い男だとは知らなんだな〜』・・・一度目に続き、二度目の韓国戦での敗北に「FUCK!!」と叫んだり、優勝した時に、まるで子供のようにはしゃぎまわったことから
『井川に30億は払い過ぎだって…』・・・藍の言うとおり、松阪を60億でレッドソックスに獲られたヤンキースが、半ばヤケクソで井川を30億の高額で獲った(私個人でも、井川は買ってるんですが、やはり30億は払いすぎです。松阪の60億だって払いすぎです)


173投稿者:117  投稿日:2008年01月22日(火)21時24分10秒
これが例の「エロシーン」なんでしょうか。まだ「TTK」でのことが抜け切っていないのでしょうか?七海が豹変しているのが、面白いです。

おぉ、詳しい「野球解説」ですね。
例の審判は、ボブ・デービットソンでしたっけ?ハンドボールでも「中東の笛」というものが存在しているようですが・・・どうなることやら?

174投稿者:松坂投手の60億の払いすぎのこと  投稿日:2008年01月22日(火)21時37分29秒
私も多いと思ったんですよ。
でも、周りは妥当だと言うんです。
共感してる人がいて、嬉しいです!

あと私も女ですが野球大好きなんです。
自分自身はしませんが親戚の男は野球好きでして、その影響をうけて
好きなんです。
だから、この話、すっごくすきです。
175投稿者:なんだかんだ言いながら  投稿日:2008年01月22日(火)22時42分00秒
ちゃんと家で鶴を仕上げようとしてる七海がかわいいですねぇ
176投稿者:自分は松坂は払いすぎだと思わないけど  投稿日:2008年01月22日(火)23時04分55秒
井川は払いすぎ。
177投稿者:中日ドラゴンズが倒せない  投稿日:2008年01月22日(火)23時26分52秒
http://www.youtube.com/watch?v=7gufEdAsofM
178投稿者:リリー  投稿日:2008年01月23日(水)21時14分36秒
174さん、176さん
松坂の評価が分かれていますが、レッドソックスがワールドチャンピオンになれたので、松坂の評判も辛うじて保たれましたね
それよりも、儲けものだったのが岡島でしょうね
岡島はレッド吉田の高校の野球部での後輩らしいですね
174さん
女性で野球好きっていうのが嬉しいです
これからもよろしくお願いします
117さん
次回からはもう少し、大会運営はマシになるでしょうね
ハンドボールに関しては、この件で注目されるようになりましたね
注目されれば、不正もやりにくくなるでしょう
175さん
ほとんどは、七世に折らせたことになってるんですけどね
117さん
お気に入りに入れました
何度も聞いてます

それでは、更新します
179投稿者:リリー  投稿日:2008年01月23日(水)21時15分32秒
二人は、抱き合いながら横たわり、語り合う。
「可愛い…七海さん…。大好きよ…」
「ウチも…」
「でも…七海さん、学校じゃ突っ張ってるんでしょ?」
「うん?」
「本当は…こんなに可愛いのに…。学校のクラスメイトや先生は、知らないんでしょ?七海さんのこういう姿…」
「当たり前やん!!」
「もし、他の人達にも甘えられたら…七海さん、もっとお友達が増えるのに…」
「やめてぇな!!友達なん、要らへんよ!それに、あんな学校、本当の友達なんできへん!」
「そうなの?」
「七世…ウチ、高等部には進学せぇへんから!」
「そんな…」
「ウチ、アホやし、これ以上裏金使わせるんも悪いし…て、言うか、借りつくってるみたいで気分悪いし…」
「つまらないの?学校…」
「…つまらん…。毎日、学校が終わって、即行で帰って、七世の顔を見るんだけが楽しみや…」
この七海の言葉に、七世はとても悲しそうな顔をする。
180投稿者:リリー  投稿日:2008年01月23日(水)21時16分17秒
「でも…ほら…さっきの野球の好きな子…あの子と一緒に野球やったり…」
「聖テレには、野球部はあらへんよ!藍もそれで苦労しとるんや!」
「別に、部活じゃなくても…放課後にやったり…」
「二人じゃ精々、キャッチボールしかできん!ウチも藍も、試合がしたいんや!」
「じゃあ、野球部を創っちゃうとか?」
「あんなお嬢様学校…野球やろうなんて奇特なヤツ、おらへんって…」
「いるでしょ?奇特な人達…」
「あん?」
「梨生奈さん…エマさん…エリーさん…ジョアンさん…中村有沙さん…」
「はは…!それでも人数足りんわ!それに、あの連中が部活なん、やる思う?」
「でも…部活を通じて、新しいお友達ができるかも…」
「…もう…!何で、そない話しをするん?」
七世は困ったような顔をした。
そんな七世の表情を見て、七海は首を傾げる。
「…?なんか…今夜の七世、おかしいで…。どないしたん?」
「え…?そ、そんなこと、ないわよ…」
「だって、今日は七世の方から誘うてきたし…学校の友達のことなん、聞いてきたこともないやん!」
七海は、身体を起き上がらせ、七世を見下ろす。
「言うて!何があったん?」
181投稿者:リリー  投稿日:2008年01月23日(水)21時18分03秒
七世は溜息をつくと、自分も身体を起こし、ベッドの上で正座し、七海と正対する。
七海も、倣って正座した。
「あのね…その…シンプルに言うわ…。私達、『チーム7』のことなんだけど…」
「…うん…?まさか…」
「解散することになったわ…」
「はぁ!?」
七海は眉間にシワを寄せ、腹の底から怒りを吐き出すように声を出した。
「か…解散…て…。な、何で!?」
チームの解散…。つい最近、他のチームも、その悲劇に見舞われた。
中等部3年のジョアン・ヤマザキと、ジャスミン・アレンの『チームJ』だ。
『R&G探偵社』は、大量の依頼を捌くために、探偵の中でも実力がある、ジャスミン・アレンを単独で行動させることにした。
その為、『チームJ』は解散、ジョアンは別の者とチームを組むことになった。
その、別の者とは…村田ちひろ…。
聖テレジア女子学園高等部の1年生で、『R&G』の探偵の一人だ。
182投稿者:リリー  投稿日:2008年01月23日(水)21時18分50秒
ちひろは、七海達とは違い、裏組織の人間ではない。
実は、社長の吉田は二代目で、ちひろの父親が、この探偵社を興した初代社長なのだ。
そして、ちひろが二十歳になった時に、彼女が三代目社長としてこの探偵社に君臨することになる。
ちひろも藍と同じく、スポーツ推薦で高等部に入ったクチだ。
その種目は、剣道…。
ちひろは中学生の時、全国大会で優勝する程の腕前の持ち主で、その腕に目をつけた聖テレの高等部は、彼女をスポーツ推薦で入学させた。
だが、その剣道の腕は、健全な大会に納まるものではない。
七海達が所属していた暗殺組織…『TTK』を壊滅に追いやったのは、実はちひろなのだ。
そう、七海も…ジョアンも梨生奈も…このちひろと死闘を繰り広げたのだ。
ジョアンは、その、ちひろと『チームS』を組まされることになった。
ちなみに、『S』とは、ちひろのコードネームの元にもなっている『SAMURAI(侍)』の『S』と、ジョアンの持つ武器、鞭を元にした『SADIST(サディスト)』の『S』らしい。
随分、無理矢理なこじつけが、このチームを急造したことを物語る。
ジャスミンを慕っていたジョアンは、この人事に激怒。
ジョアン以上にパートナーを慕っている…いや、パートナーに甘えている七海の怒りは、それ以上だ。
183投稿者:リリー  投稿日:2008年01月23日(水)21時20分03秒
「私もジャスミンさんと同じように、単独で行動することになったの…」
七世は、今にも怒りで噴火しそうな七海に説明を再開するが、どんな説明をしようとも、その噴火を抑えることは不可能だろう…。
「でね…その…チームの解散と同時に…私達の部屋も別々に…」
「な、な、何やとぉ〜〜〜!!!」
だから…七世は、珍しく自分から誘ってきたのだ…。
そう…もう当分、あんなことはできないと知って…。
「…で…その…ここが肝心なんだけど…。その…」
「新しい、ウチのパートナーのことやろ!?そのパートナーが、ウチの新しいルームメイトなんやろ!?誰や!?」
まずい…これでは、誰の名前を挙げようと、七海の噴火は免れない…。
「な、七海さんも探偵なら、推理してみてはどう?」
他人から知らされるより、自分で答えを導き出した方が、怒りを和らげることができるかも…。
184投稿者:リリー  投稿日:2008年01月23日(水)21時20分57秒
「………単独で行動することになったんは…ジャスミンに七世…つまり…『R&G』の上位実力ナンバー2とナンバー3やな…」
険しい顔で、考えを巡らせる七海。
「と、いうことは…ナンバー1であるデカアリも、単独行動するんは明白や…。で…そのパートナーと言えば…」
七世を睨みつける七海。
「チビアリやんけ!!」
「そう…正解…」
チビアリとは、入学式に仏頂面で紅白のバッジを渡していた、あの美少女…中村有沙のことである。
「あのチビアリがパートナー!?ルームメイト!?有り得へん!!」
「でも…もう、決まったことだし…」
「デカアリやな…?」
「え?」
「『チーム7』の解散、決めたんは、デカアリやな!?」
七海は立ち上がった。
「あの、クソガキ!!」
「ちょ、ちょっと、七海さん!有紗さんは年上でしょ!クソガキって…」
しかし七海は、七世の言葉を無視し、全裸のまま部屋を飛び出した。
「…やれやれ…」
七世は、疲れきったように髪を掻き揚げた。
185投稿者:リリー  投稿日:2008年01月23日(水)21時21分43秒
「ゴルァァ!!デカアリ、開けんかい!!ゴルァァ!!」
自分達の部屋の上の階に住む、デカアリこと…ダーブロウ有紗の部屋のドアを叩く七海。
ダーブロウ有紗…あの入学式の夜、仕事終わりに電話をかけた…あの人物である。
一向にドアは開かない。
七海は、金属バットを持ってくるべきだったと思った。
「開けぃ!!開けんかい!!眠っとんのかい!!ゴルァ!!」
出し抜けに、ドアが開く。
七海は、叩き付けた拳が空振りし、前のめりになる。
その拳を掴む者がいる。
この部屋の住人、ダーブロウ有紗だ。
「うるせぇなぁ…。何だってんだよ…。パッツン!」
そのダーブロウ有紗の姿は…七海と同じく、全裸だった。
「ん?パッツン、何でマッパなんだ?」
「オノレも素っ裸やんけ!!」
「あん?ああ、私は寝る時はいつもマッパって決めてんだよ」
「知るかい!!そんなん!!それよりも…」
「『チームN』のことか?七世に聞いたんだな?」
「あん!?『チームN』!?」
「おう、七海の『N』と、中村有沙の『N』で、『チームN』!一応、年上のチビアリがリーダーな」
中村有沙と組まされるだけではなく、チームの主導権まで渡さなければならない…?
七海の怒りは倍増した。
186投稿者:リリー  投稿日:2008年01月23日(水)21時22分48秒

「何で、ウチの断りもなく、こういうことを勝手に決めんねん!!」
「あ?何でおまえの断りがいるの?」
七海は、歯軋りする。
「ウチはな、七世以外のモンとチームを組む気はあらへんで!!」
「ふ〜ん…。つまり…おまえは、私の命令に逆らおうってんだな?」
「逆らうも何も、何でおまえ、そんなに偉そうやねん!!」
「偉そうなんじゃなくて、偉いんだよ!!」
ダーブロウ有紗は、取り付く島を与えない。
それでも七海は、訴え続ける。
「それに、そのパートナーがチビアリって、どないやねん!!ウチとアイツが合うと思うか!?」
「う〜ん…合わねぇよな…」
「やろ!?」
「て、言うか…アイツと合うヤツなんているか?」
「おるやん!!サムガー!!」
サムガーとは、サムライガールの略…村田ちひろのあだ名のことである。
187投稿者:リリー  投稿日:2008年01月23日(水)21時23分25秒
「ん?サムガーはダメだよ。だってデッパリンダと『チームS』を組んでる」
デッパリンダ…ジョアンのあだ名だ。
「解散させい!!」
「まだ、一月も経ってねぇよ!それに、デッパリンダとサムガー、意外と合ってるぜ、あの二人…」
ジョアンは、ちひろと一度闘ったことがある。
様々な幸運も重なって、ちひろの勝利ということになっている。
「基本的に、デッパリンダはサムガーの力を認めてるしな…。リーダーの座だけは頑として譲らなかったけど…」
ちひろは、そういうことにはこだわらない。
将来、社長になって、誰よりも偉くなる立場だからだ。
「それにな…チビアリとサムガーを組ませるわけにはいかない…」
「何でやねん!?チビアリ、サムガーのこと大好きやん!!」
「その、『大好き』ってのがダメなの!おまえと出っ歯ちゃんを離すのも、そういう理由だ!」
「あ!?何や?ソレ!?」
「私達は、好き嫌いで行動してたらダメなんだ!チームの中で頼り合い、甘えが生まれる…。出っ歯ちゃんに対する、おまえがそうだ…」
「う…」
「逆に、馬が合わない者同士の方がいい。いざという時に、冷静な判断ができる。相手のことを考えすぎて、共倒れってことを避けられる」
「共倒れって…!ウチと七世は、そないなことにならへんよ!!」
「ふん!違うね!!危なっかしくてしょうがねぇよ、『チーム7』!デコッパチとダッチャの『チームR』よりもな…」
デコッパチとは梨生奈の、ダッチャとは羅夢のあだ名である。
188投稿者:リリー  投稿日:2008年01月23日(水)21時24分39秒
「な、何やと!?」
「『チームR』は、まだあいつ等の年齢が近いからいいが…おまえと出っ歯ちゃんのコンビは、あまりにも依存が強すぎる!パッツン、おまえの一方的な依存がな!」
人差し指を七海の目の前に突きつける、ダーブロウ有紗。
「く…!オ、オノレ…」
「はっきり言ってやらあ!!今回の『チームJ』を含めたチーム解散、全部、おまえの為に仕組んだことなんだよ!!」
「ウ、ウチの…?」
「『チーム7』だけ解散したら、おまえがヘソ曲げるだろ?で、『チームJ』も巻き込んでのチーム解散ってことに決めたんだ!」
「て…ことは…つまり…」
「ああ。デッパリンダにも、ジャスミンにも、出っ歯ちゃんにも、サムガーにも、チビアリにも、そして私にも…まんべんなく迷惑かけてんだ!この甘ったれ!!」
「う…!せ、せやったら…そんな回りくどいことせんで、はっきりウチに言ったらんかい!!」
「ふん…!言ったらどうなった?今だって、素っ裸で人の部屋を叩きまくって怒鳴り込みじゃねぇか!!」
「う…く…き、気に入らん!!そういう、人のことコケにする、オノレの考え方が気に入らん!!」
「別に、気に入ってもらおうなんて、思ってねぇよ!!」
七海は、何も言えなくなった。
悔しかった…。自分はまだまだ子供で…自分の与り知らない所で、大切なことが決まってしまう…。
「わかったら、とっとと自分の部屋に帰れ!!風邪ひくぞ?明日からチビアリと同室だ。精々、出っ歯ちゃんに可愛がってもらいな…おっと、その最中だったか?」
ダーブロウ有紗は、部屋のドアを閉める。
「く…!オノレ…。ウチは…。ウチは…」
七世の前でしか流さないと決めた涙が、こぼれ落ちた。

(『二回・裏』・・・終了)
189投稿者:リリー  投稿日:2008年01月23日(水)21時25分46秒
今日はこれでおちます
190投稿者:117  投稿日:2008年01月23日(水)21時30分59秒
なかなか厳しい世界なんですね。
七海と有沙の「チームN」・・・果たして、二人の相性はどうなのか?楽しみです。
191投稿者:チームSの謎が  投稿日:2008年01月23日(水)21時33分38秒
やっと解けた
192投稿者:アマノガワ  投稿日:2008年01月23日(水)22時43分20秒
こんばんは。今日も更新お疲れ様です。
『チーム7』、解散してしまうのですか。
お母さんと娘のような関係のチーム7が気に入っていたのですが、
しばらく見れなくなりそうですね。
七海の悔しさもよく伝わります…。
次回更新も楽しみにしています。
193投稿者:デジ  投稿日:2008年01月23日(水)23時47分01秒
面白そうなチームがまた出来ましたね。
どんな活躍をするのか楽しみです。
194投稿者:そういえば  投稿日:2008年01月24日(木)08時47分08秒
「混ぜるな危険!」(この表現気に入ってますw)の羅夢七海エピソードは出てこないの?
195投稿者:キラ  投稿日:2008年01月24日(木)09時07分14秒
藍の書き込みに来て。
196投稿者:リリー  投稿日:2008年01月24日(木)21時20分51秒
『チームN』と『混ぜるなキケン』コンビの描写は、『3回・裏』からです

藍の書き込みとは、応援サイトのことでしょうか?

では、更新します
197投稿者:エリーとリリー  投稿日:2008年01月24日(木)21時21分54秒
名前が似てる
198投稿者:リリー  投稿日:2008年01月24日(木)21時21分58秒
『三回・表』

≪2007年4/26(木)≫
七海は朝から不機嫌だった。
教室に入り、有海の姿を確認するなり、自宅で折った鶴300羽の入った紙袋を放り投げた。
「あ…。折ってきてくれたの?藤本さん…」
「何や?そういう話しやなかったんかい?自分、いつの間にか帰ってもうて…」
「う、うん…。ごめんなさい…」
「謝んなって言うてるやろ!?ホンマ…めんどくさい…」
「ごめん…あ…!謝って、ごめんなさい…」
「あ、いや…もう、ワケわからんくなった…」
七海は、自分の席に戻りかける。
紙袋の中を覗く有海は、思わず声を上げた。
「わ、藤本さん、凄い!上手に折れたねぇ…」
「何や?誰かに折ってもろうたって思ってるやろ?」
「う、ううん…。そんなんじゃ…」
「その通りや!折ってもろうた…」
「…そうなんだ…。で、今日の放課後、これ届けに一緒に病院に行く?」
「あん?ああ、それはあんたに頼むわ。めんどくさいわ」
「うん…。わかった…」
有海は、悲しそうに呟いた。
199投稿者:リリー  投稿日:2008年01月24日(木)21時24分10秒
有海と七海と珠緒の3人…正確に言うと、七海が手伝ってもらった者を入れて4人で折りあげた千羽の鶴を、有海は糸でつなげる。
珠緒には悪いが、彼女の折った鶴は中央に使い、周りのまともな鶴で覆って隠した。
5人のグループの少女達が、遠巻きに有海を見てコソコソと話し始める。
いや、確実に有海に聞こえるように話しているのだが…。
「有海、何やってるの?」
「ああ、アレじゃない?お見舞いの千羽鶴…」
「アレ、一人で折ったの?」
「なんか、七海と珠緒ちゃんの3人でやったんだってさ」
「うわ…めんどくせぇ〜」
「ね〜。私、学級委員なんかにならなくて、本当に良かった」
「だったら、後期も有海にやってもらおうよ」
「これから、中学3年間、ずっと有海にやってもらったら?」
「いいねぇ〜、それ!」
勝手に盛り上がっている、少女達…。
入院している生徒は、あのグループの仲間だったはず。
何で、一羽だけでも鶴を折ってやろうとは思わないのだろう?
有海は、自分が馬鹿にされていることよりも、そのことの方が悲しくて仕方がなかった。
200投稿者:リリー  投稿日:2008年01月24日(木)21時25分13秒
そして、そのグループの少女達は、入院している生徒の陰口をたたき始めた。
「でもさぁ〜、アイツ、来週には退院するらしいよ?」
「マジ?帰ってこなくたっていいって…」
「むしろ、このまま死んでくれないかな?」
「うわ!ひでぇ〜!!」
「何よ、あんただってそう言ってたじゃん!」
お嬢様学校の生徒とは思えないような、品性を欠いた会話に、有海は耳を塞ぎたかった。
いつも、一緒にお喋りしたり、給食を食べたり、帰ったりしている仲のはずなのに…。
「健康って…それだけで素晴らしいもんやねぇ〜」
突然、七海がそのグループの中の会話に入り込んできた。
「…?」
彼女達は、怪訝な顔をして七海を見る。
201投稿者:リリー  投稿日:2008年01月24日(木)21時26分00秒
「あんた等も、健康には充分気ぃつけといた方がええで…」
「…え?」
「だって、もし入院したら、こうやって悪口のネタになるんやで?おちおちベッドで寝てられへんのとちゃう?」
「………」
顔を見合わせるグループの者達…。
「あ…。いつもみんなでトイレ行くんは…もし、自分だけ離れたら、悪口言われるかもって不安で、みんなで見張る為?」
彼女達は、あからさまに不愉快な顔をする。
「一木さん、ウチ等、良かったな。面と向かって悪口言われて…」
「…え?」
有海は、振り向いて七海を見る。
「ほな、ウチは一人でゆっくりとトイレに行ってくるわ。悪口言うてくれても構わへんよ」
七海は、堂々と教室を出て行く。
グループの少女達は、無言でそれぞれの席に着いた。
有海は、七海の後姿を惚れ惚れとした目で見送った。
202投稿者:リリー  投稿日:2008年01月24日(木)21時27分04秒
七海は、苛ついていた。
自分は怒りっぽい…。
しかし、自分の『怒り』は、『他人の為の怒り』だとダーブロウ有紗に言われたことがある。
自分は、今、誰の為に怒ったのだろう…?
千羽鶴を馬鹿にされたこと?
有海がいじめられたこと?
それとも、入院している仲間でさえ、陰口の対象にしていたこと?
違う…。
すべて、自分の苛々を他人にぶつけただけだ。
つまり、今、自分の都合で怒っていただけなのだ。
そんなことを考えながら廊下を歩いていると、何者かが背後から近づいて来る気配を感じた。
その人物は右手を振り上げ、自分の頭を叩こうとしている。
(誰や?)
先ほどの足音から割り当てた、推定身長…160センチ以上…中一の女子にしては、かなりの長身だ。
ゴム底の上履きの音がするので、教師ではない。
梨生奈やエマにしては高すぎる。
エリーか?
いや、彼女達なら、気配すら殺すだろう。
203投稿者:リリー  投稿日:2008年01月24日(木)21時28分16秒
(ま、ええわ…。振り向いた方が早いわ…)
七海は、振り向きざま、自分の頭を叩こうとした手を受け止める。
「おお!?凄い!!どうしてわかったの?」
細川藍だった。
「何や…。あんたか…」
「ねえ、何でわかったの?」
「気配や…。気配を察知してな…」
「凄い!!お侍みたい!!」
侍…サムライガール…『あの女』を思い出した…。
「ウチは侍やない…。虎や…」
「え?」
「いや…何でもない」
「そうそう、昨日、お互い勝ったね。中日と阪神」
「…そうやね…」
「どうしたの?元気ないじゃん!」
「うん?そないなことないよ…」
「私はね、ちょっとブルーなんだよね…」
とてもそうは見えないが…。
204投稿者:リリー  投稿日:2008年01月24日(木)21時29分03秒
「ブルー?ドラゴンズカラーでええやん」
「何、言ってるのよ!こんどんに退部届け出そうかと思ってさ…。ああ…メチャクチャ怒られるだろうなぁ…」
「辞めるん?ソフトボール部…」
「うん…。でもね、私ってスポーツ推薦で入ってんじゃん?部活に入らなかったら、私、この学校に居られないんだよね」
そう…運動部に所属し、それなりの結果を出すことが、細川藍の使命なのだ。
「だったら、何部に入るん?」
「う〜ん…バスケやバレーなら、地域のチームに所属してたこともあったけど…。でも、野球がしたいんだよねぇ〜…」
昨夜の、七世の言葉を思い出す。
岩井七世…七海にとっては、姉のような…母のような…そんなかけがえの無い存在だ。
そして、今朝からの七海の苛々は、その七世が関係しているのだが…。
七世の言葉…「野球部を創っちゃうとか?」
その言葉、そのままを、七海は口にした。
「ほなら…野球部を創ってまったら…?」
「え?」
「はは…。冗談や…。ウチ等の学校で、野球やろうなんて、奇特な…」
「それだ!!」
途端に、藍の顔は明るくなる。
「そ、それって…?」
「創ろう!!野球部!!」
「へ?」
七海は、藍が何を言っているのか、理解が遅れた。
205投稿者:リリー  投稿日:2008年01月24日(木)21時29分57秒
今日は、これでおちます
206投稿者:キター  投稿日:2008年01月24日(木)22時02分36秒
野球部!
207投稿者:tatu  投稿日:2008年01月24日(木)22時04分57秒
なんか勢いで突っ走りそうなところが、藍らしいですね。
ところで、リリーさんは野球ゲームの「実況パワフルプロ野球」をご存知だと思うのですが。自分はそのオープニングで鳥肌が立つほど気に入っています。自分が好きなのが9,10,11,13,14のOPなんですが、特に13のOPが気に入っています。(主人公がライトですし、アラ、イバの連携や、JFKもあります)youtubeですが視聴してみると参考になると思うのでぜひ見てください。
MAD パワプロ13 オープニング(曲変更)
ttp://jp.youtube.com/watch?v=kt7X6ZomZQU&feature=related
208投稿者:117  投稿日:2008年01月24日(木)22時51分57秒
有海から見て、七海はとてもカッコ良く見えているんでしょうね。
ついに「野球部」立ち上げでしょうか。苦労もありそうですが・・・続きも楽しみです。+
209投稿者:女子生徒らへの  投稿日:2008年01月24日(木)23時01分46秒
七海のセリフが気持ち良いですね
210投稿者:デジ  投稿日:2008年01月25日(金)00時24分43秒
遂に結成 野球部!!
R&Gの人は、判る気もしますが
愛美と梓彩ってどうやって部員にしていくのでしょうか。
211投稿者:デジ  投稿日:2008年01月25日(金)00時30分39秒
遂に結成 野球部
R&Gの人はわかりますが、
梓彩や愛美ってどう部員にしていくのでしょうか。
次回も楽しみです。
212投稿者:すいません  投稿日:2008年01月25日(金)00時31分59秒
二重になってしまいました
213投稿者:逆に  投稿日:2008年01月25日(金)00時38分32秒
R&Gが野球部に入ることの方が意外
ありりんとかエマとか、絶対に入らないような気がする
214投稿者:監督の名前と職業を見て欲しい  投稿日:2008年01月25日(金)00時45分57秒
中田あすみ【体育教師】

何か見えてきませんか
215投稿者:つか、みんな聞きすぎ  投稿日:2008年01月25日(金)12時18分48秒
あまりにも先の話の催促しすぎ
216投稿者:あすみをあすみんと呼ぶ  投稿日:2008年01月25日(金)14時10分15秒
リリーさんはビットもチェックしてるんだ
217投稿者:いやいや  投稿日:2008年01月25日(金)20時26分56秒
あすみん天てれ出てたから
218投稿者:あすみんといいう呼び方が  投稿日:2008年01月25日(金)20時28分17秒
ビットだって言いたいんでしょ
219投稿者:リリー  投稿日:2008年01月25日(金)20時48分25秒
皆が部員になっていく様子は、『四回・表』に出てくる予定です
これからも先の展開を聞いて下さっても構いませんが、肝心な部分は誤魔化すことになるかもしれません

実は、『サムドラ』、『らりるれろ』、『グラスラ』(こう略させてもらいます)の3作品は2001年の中一トリオ(ダーさん、モニーク、あすみ)を懐かしんで書いたものです
この3人が一編に天てれを辞めてしまった2002は少し辛かったです

takuさん
見させてもらいました
実は、スポーツのゲームはあまりやらないんですよ
でも、キャラクターが可愛くて気に入りました
やはり、中日は荒木と井端の2人が象徴ですね
全然別な話しになりますが、私は「星野ジャパン」とか「岡田ジャパン」とか、監督名+チーム名という表現が好きではないです
やはり、主役は選手だと思うので…
こういう言い方って、日本独特なんでしょうか?
だから、あえて「W杯代表」とか「オリンピック代表」という言い方を心がけてます
サッカーで、イマイチ日本が突き抜けないのは、コレが原因なんじゃないか…と思ってしまいます
監督は、あくまでも選手の状態を見て、一番上手くいく戦術を考える『軍師』的役割だと思うんです
でも、なんか『御館様』のような、扱いになってしまってますね
長々とすみません

では、更新します
220投稿者:リリー  投稿日:2008年01月25日(金)20時50分18秒
『求む!!野球部員!!』
放課後、急造したプラカードを持って昇降口に立つ、七海と藍。
しかし生徒達は、物珍しそうに二人を見るだけで、そそくさと立ち去って行く。
「あれ?細川さん、野球部創るの?」
A組の生徒達が、わらわらと藍のもとに駆け寄って来た。
「おう!一緒に白球を追いかけようぜ!!」
藍はそう呼びかけるが、彼女達は苦笑いをする。
「だって…ねぇ…。私達、野球やったことないし…」
「最初は誰でも初心者だよ!」
「野球のルールとか…知らないし…」
「大丈夫!私達が教えてあげるから!」
その藍の言葉に、七海が素早く反応する。
「達?達って何やねん!!それに、野球のルールも知らんヤツを入れて、どないすんねん!!」
「いいじゃん!それに、野球のルール知ってる女の子の方が珍しいんだって!」
「じゃ、じゃあ、頑張ってね、細川さん」
二人が言い争いをしている隙に、彼女達は逃げて行ってしまう。
「ああ!もう!行っちゃった…」
「ええやん、あないなヤツ等、要らん、要らん!」
七海は、野球部などできるわけがない…と決めつけていた。
221投稿者:リリー  投稿日:2008年01月25日(金)20時51分45秒
そこに、3年生の中村有沙が通りかかる。
「う…!チビアリ…!」
七海は、中村有沙を睨みつける。
そう…今朝からの…いや、昨夜からの苛々の直接的な原因…それが彼女、中村有沙だ。
「野球部?創るのか?おまえ達が?」
中村有沙は、冷めた目でプラカードを見上げる。
「何か、文句でもあるんかい!?」
ケンカ腰の七海。
「別に…。おまえのやることに、興味などない」
「せやったら、とっとと…」
七海の怒鳴り声に、藍が割り込んだ。
「先輩!一緒にどうですか?野球部!中等部、最後の思い出に!」
そのまま冷たい目で、藍を見る中村有沙。
「悪いが…考えられない…」
「そこを、考えてみましょうよ!」
「考えない…」
中村有沙は去りかけたが立ち止まり、七海の方を振り向くことなく話した。
「そうだ。これだけは言っておく。私達は今日から同じ部屋に住むことになるわけだが…お互い干渉することは禁止する…。それでいいか?」
「ああ、それでええわ!境界線から一歩も中に入って来んなや!?もし入ってきたら、ドタマかち割るで!!」
「それは、こちらのセリフだ」
中村有沙は、そのまま顔を見せることなく立ち去った。
222投稿者:リリー  投稿日:2008年01月25日(金)20時53分16秒
そんな中村有沙の後姿を、見送る藍。
「へぇ〜…キレイな人だねぇ…」
「性格は最悪やで!!あのアマ!!」
「あんた達…一緒に住んでるの?」
「うん…。ま、複雑な事情でな…」
「そう言えば、うちのクラスのエマも、B組の梨生奈も、D組のエリーも、みんな一所に住んでるんだって?何で?」
「それも…複雑な事情や…」
「いいなぁ…みんなと住んでるなんて、賑やかで…。私、一人暮らしだもん…」
その藍の言葉に、驚く七海。
「一人暮らし?中学生やのに?」
「だって、私、スポーツ推薦でこの学校に入って来たから…。実家は神奈川県にあるんだ」
「都内に住んでるんやなかったの?」
「お父さんは心配してるけどね。私の伯母さんが虹守町でマンション経営してるから、そこの部屋で住まわせてもらってる。将来、アスリートになるんだったら、自己管理は一人でしっかりしとかないと…」
「はぁ〜…。大人やねぇ…」
七海は、素直に感心した。
自分は…昨夜、自立を促されてケンカをした…。
少し、恥ずかしくなった。
223投稿者:リリー  投稿日:2008年01月25日(金)20時54分46秒
そこに、慌しく駆け寄ってくる者がいた。
藍は、途端に勧誘スマイルをつくる。
「あ…!何?野球部に入り………何だ…まにゃ先輩に、あず〜先輩か…」
まにゃ先輩とは、2年生の伊倉愛美、あず〜先輩とは、同じく2年生の大木梓彩のことである。
どちらも、藍が勝手につけたあだ名だ。
そして、藍が昨日まで在籍していた、ソフトボール部の部員である。
2人とも、聖テレ・ソフトボール部の、練習用の赤いTシャツを着ている。
「ちょっと!細川さん!こんな所で何やってるの?」
「こんどん、カンカンに怒ってるよ!」
どうやら、2人は、顧問の近藤に命じられて、藍を探しに来たようだ。
「あ…!しまった!こんどんに退部届けを出すの、忘れてた!!」
藍は、顔を青くして叫んだ。
「え…?細川さん…ソフトボール部、辞めるの?」
「はい…。実は…」
藍は、ばつが悪そうな笑顔を浮かべ、頭に手を置いて、ペコリと愛美に礼をした。
「で…何?これ…。『求む!!野球部員!!』…?」
梓彩は、プラカードを見上げ、首を傾げた。
「はい!私、ソフトボール部を辞めて、野球部を創ります!!」
「は…あ…?」
2人は、藍が何を言っているのか、わからなかった。
224投稿者:リリー  投稿日:2008年01月25日(金)20時56分24秒
「野球部を創るって…本気で言ってるの…?」
「はい!バリバリ本気です!!」
元気良く、握り拳をつくる藍。
「野球をやりたいんなら…ソフトボールやろうよ!似たようなもんじゃん!!」
愛美が、藍の両肩を掴んで揺さぶった。
「おう!!コラ!!そこのガキ!!」
七海は、愛美を指差して怒鳴った。
「ガ、ガキって…私のこと?て、いうか、あなた1年生でしょ?2年生に向かってガキって…」
「じゃかしい!!野球とソフトボールは全然違うんじゃ!!」
あまりの七海の剣幕に、愛美は一歩後退りした。
225投稿者:リリー  投稿日:2008年01月25日(金)20時56分39秒
「あない、下から投げるヘナチョコのでっかいボールを、これまたブットいバットで打つヘタレ競技の、どこが野球と似とんねん!!」
「ヘ、ヘタレ競技…?」
「そうやないかい!!しかも、バットでボールを打つ、あの『パコ〜ン』いう音が気に食わん!!そこは『カキーン』やろ?『カキーン』!!」
「ちょ、ちょっと…!あなたねぇ、さっきからソフトボールのこと、バカにして…」
「何や!?コラ!?ウチにケンカ売るんか!?オウ!?今すぐやったんぞ?かかってこんかい!!泣かすぞ、ゴルアァァ!!」
愛美と梓彩は、涙目になりながら肩を抱き寄せ合う。
「ちょ、ちょっと…細川さん…。この子、一体何?こ、恐いよぉ〜」
「ご、ごめんなさい!!先輩!!ごめんなさい!!こいつ、こういうヤツなんです!!」
藍は、コメツキバッタのようにペコペコと頭を深く下げる。
「あはは!!おもろ!!バネ仕掛けのオモチャみたいやで?自分…」
藍は、七海の目の前まで、憤怒に染まった顔を突きつける。
「誰のせいで謝ってると思ってんのよ!?」
226投稿者:リリー  投稿日:2008年01月25日(金)20時57分53秒
そして、すぐさま愛美と梓彩の方を向き直る。
「私は、ソフトボールのこと、バカにしたりしてませんよ。ソフトボールはそれなりに独自の進化を遂げたスポーツだと思ってます」
「進化?退化やろ?」
「あんたは、黙ってて!!」
今度は、七海の額に人差し指を突き当てた。
そして、また2人の先輩に向き直る。
「でも…なまじっか野球と似てるもんだから…やってて辛くなるんです…」
「辛くなる?」
「はい。例えるなら、本当はロックが歌いたいのに、ヘヴィメタを歌ってる歌手って感じです…」
「ロックがヘヴィメタ…?同じようなもんじゃないの?」
「とりあえず、歌わせてもらえるんなら、それでいいんじゃない?」
その例えが、あまり相手に伝わっていない。
「と、とにかく、私、野球がしたいんです!!ごめんなさい!!」
必死な表情で頭を下げる藍を見て、愛美と梓彩は、困ったように顔を見合わせる。
「と、とりあえず、頭を上げようか?細川さん…」
「で…その…部員は今、何人いるの?」
気まずそうな表情で、頭を上げる藍。
「ええと…その…私と…この藤本さんで…2人だけです…」
227投稿者:リリー  投稿日:2008年01月25日(金)20時58分53秒
愛美は、藍と七海を交互に見る。
七海がもの凄い形相で睨み付けているので、まともに目を見ることができないが…。
「でも…細川さん…。あなた、スポーツ推薦でこの学校に入ったんでしょ?」
「…はい…」
「部活やんなきゃ…たぶん、この学校、追い出されちゃうよ?」
「…はい…。よく、わかってます…」
「このまま、部員も集まらない野球部に居たって、学校側は納得しないと思う…」
「…そう…ですよねぇ…」
藍は、その長身の身体を、どんどんちぢ込ませていく。
そこに、七海が口を挟む。
「ええやん。そん時は、学校に裏金掴ませとけば…」
「う、裏金…?」
「な、何!?ソレ!?」
愛美と梓彩は、驚愕の声をあげる。
藍も、七海に向かって叫ぶ。
「裏金なんて…!私の親が払えるわけないじゃん!!今にも潰れそうなお寿司屋だよ?」
だが、梓彩が別の提案をする。
「だったら勉強をがんばって、奨学金を貰うってのは、どう?」
「べ、勉強すか…?」
藍の顔が曇る。
228投稿者:リリー  投稿日:2008年01月25日(金)20時59分42秒
「ほら、愛美だって、奨学金貰って、この学校に通ってるんだよ?この前の実力テストだって、学年1位だもん!」
「よ、余計なこと言わないでよ!梓彩!!」
愛美は、梓彩の口を塞いだ。
「へぇ〜…。まにゃ先輩、頭良いんだ!!」
羨望の目で、愛美を見る藍。
愛美は、顔を赤くさせる。
「う、家も、今にも潰れそうな団子屋なんだよね…。お婆ちゃんのお店なんだけど…。お父ちゃんが…あ、こんな話しはいいんだ!ね、細川さん!部活に入った方が楽だよ?」
「私、楽な道と困難な道があったら、困難な道を選ぶ性質なんです!」
「だったら、勉強がんばる?」
「そ…それは、ちょっと…」
顔を見合わせ、溜息をつく愛美と梓彩。
「とにかく…こんどんには、私達から言っておくから…」
「あの、こんどんが承知するとは思えないけど…」
立ち去りかける2人に、藍は声をかけた。
「そ、そうだ!!先輩!!先輩達が、野球部に入って下さいよぉ!!」
何を言い出すんだ、こいつは…と言いたげな顔で振り返る2人。
229投稿者:リリー  投稿日:2008年01月25日(金)21時01分06秒
「わ、私達が…野球部に…?」
「そ、それじゃあ、ミイラ取りがミイラになっちゃうじゃん!!」
藍は2人に駆け寄って、右手は愛美の手を、左手は梓彩の手を握る。
「この前、3年生と2年生で紅白戦やったでしょ?その時の、まにゃ先輩とあず〜先輩、凄かったです!!」
「す、凄かった…?」
「だって…私達、守備固めで最終回に出ただけだよ?」
「その時の守備が、凄くカッコよかったんです!!」
困ったように顔を見合わせる2人。
「先輩達の、あの二遊間…ステキだったぁ〜…。まにゃ先輩とあず〜先輩の二遊間は、中日の荒木と井端に匹敵します!!」
「あ、荒木…?」
「井端…?」
「そう!!お二人は、聖テレの荒木と井端と言っても過言ではありません!!」
「か、過言よ!!それは…」
ソフトボールをやっている二人…荒木と井端の名は、何とか知っていた。
230投稿者:リリー  投稿日:2008年01月25日(金)21時01分54秒
「こんどんは、攻撃力重視のパワーベース…もとい、パワーソフトボールを目指してるみたいだから、バッティングセンスのないお二人には、レギュラーの可能性は少ないと思いますよ?」
「バッティングセンスがないって…失礼ね!!」
「それは、ごめんなさい!でも、私は、先輩達の美技に惚れました!!是非、野球部に欲しい逸材です!!」
「ダ、ダメよ!!私達まで部を辞めたら、こんどんに殺されちゃう!!」
「私達、野球部には協力できないから…!」
2人は、逃げるように走り去って行った。
「とにかく、考えてみてください!!」
藍は、大声で叫んで見送った。
「う〜ん…望み薄やな…」
七海は、腰に手を当てて呟いた。
「だって、ウチが散々にビビらせたったしな…」
「そうよ!!あんた、先輩に対して、何て口の利き方してんのよ!?」
「あいつ等が悪いねん!!野球とソフトボールを同じや、抜かすもんやから…」
「いい?ソフトボールの、あの変則的な投球は、プロ野球選手だって、空振りするくらいなんだよ?」
「はぁ?プロ野球選手が?ソフトボールに?冗談やろ!!」
「本当だって!!巨人のファン感謝デーで、ソフトボールのオリンピック代表と巨人の選手が戦って、三振してたもん」
「それは、巨人の選手やからや!!阪神の選手なら、そないなことあれへん!!」
231投稿者:リリー  投稿日:2008年01月25日(金)21時03分11秒
荒木と井端の名前が出てきましたが、これは偶然です

今日は、これでおちます
232投稿者:117  投稿日:2008年01月25日(金)22時07分57秒
藍のソフトボール部の先輩、愛美と梓彩。なんかイイコンビですね。
そんな二人を恐がらせる七海、恐るべし(笑)。
毎回、何気に「野球」の話が出てくるのが面白いです。
233投稿者:アマノガワ  投稿日:2008年01月25日(金)22時29分50秒
こんばんは、更新お疲れ様です。
愛美のお父ちゃんが団子屋、懐かしいですね。
あの時は確かありりんに一喝されてましたが、今回はどうなることやら…。
自分は野球は詳しくないんですが、気にせず読めてしまうのは文才のなす業でしょうか。
これからも頑張ってください。
234投稿者: 投稿日:2008年01月26日(土)02時28分12秒

235投稿者:一七の時も  投稿日:2008年01月26日(土)10時49分36秒
ソフトと野球の違いについて書かれていたよね。

運動音痴のあたしにはどっちも「サウスポーはやや優利」って思えるけど(ゴメンなさい…)
236投稿者:リリー  投稿日:2008年01月26日(土)17時59分17秒
やはり、この小説を書いてて一番の不安は、野球のことを詳しく知らない方が置いていかれるんじゃないか…ということでした
ですので、野球部のメンバーの殆どを野球初心者にして、ルールやポジションなど、一から解説していくような展開にしてます
ですので、わかりにくい描写とか用語がありましたら、遠慮なく言って下さい

今日はこれから出かけなければならないので、今のうちに更新します
237投稿者:リリー  投稿日:2008年01月26日(土)18時00分03秒
「あ…あの…」
消え入りそうな声…七海と藍は、ようやく気がついた。
後ろを振り向くと…そこにいたのは、一木有海だった。
「ん?何や?一木さん…」
有海は、緊張した面持ちで口を開く。
「う、うん…。あのね…今から、病院に行こうかな…て…」
「あ、そ…。ウチは行かへんよ」
「あ…うん…。それは、わかってるんだけど…」
「何やねん?」
「うん…あのね…その…」
中々、有海は話しを切り出さない。
七海は、苛つくあまり、足を小刻みに揺らす。
「一体、何やねん!!ハッキリ言わんかい!!キンタマついとんのかい!?」
「い、いや…ついてません…」
有海は、顔を真っ赤にして否定した。
238投稿者:リリー  投稿日:2008年01月26日(土)18時00分28秒
「あ、わかった!!あみ〜ご、野球部に入りたいんでしょ?」
藍が、助け船を出した。
「はぁ?一木さんが野球部に?ない、ない!!」
七海は鼻で笑った。
「あ…その…はい…」
「へ?」
「あの…私を…野球部に…入れて下さい…」
有海は、か細い声を振り絞って出した。
「マ、マジで…?」
七海は、二の句が継げなかった。
「やったぁ!!これで3人だ!!あと6人!!あと6人!!」
藍は有海の手を取って、はしゃぎまわった。
有海は困惑しながらも笑顔を見せた。
「で、でも…私…野球のこと、全然知らないから…」
「いいよ、いいよ!!教えてあげる!!面白いよ〜!!ハマるよ〜!?」
「で、でも…私…運動神経、全然ないから…」
「いいよ、いいよ!!最初は、外野で突っ立ってるだけでいいから!!」
「だ、だから…私…マネージャーならできるかな…て…」
「へ?マネージャー?」
239投稿者:リリー  投稿日:2008年01月26日(土)18時00分56秒
「はい…。私、雑用でも何でもしますから…。是非、マネージャーとして…」
「ええ〜?そんな雑用なんて、みんなでやるからいいよ!!それよりも、一緒にプレーしようよ!!」
「そ、そんな…私…プレーなんて…とても…」
「チョイ待ち!!」
七海の怒鳴り声が、2人の会話をシャットダウンした。
「な、何よ?七海…」
少し驚いてる藍をよそに、七海はズンズンと有海の前まで歩み寄る。
「な、何?藤本さん…」
七海は、厳しい目で有海を睨んでいる。
「あんた…ホンマに野球がしたいんか?」
「え…?わ、私は…マネージャーとして…」
「せやから、野球がしたくて入るんかって聞いとんねん!!」
ビクンと、有海は肩を震わす。
「な、何言ってんのよ?野球がしたいから入るんじゃない!!」
藍は、有海をかばうように、間に立つ。
「あんたは黙っとき!!ウチは一木さんに聞いとんねん!!」
七海は、藍を押しどけた。
240投稿者:リリー  投稿日:2008年01月26日(土)18時01分20秒
「さあ、答えんかい!!野球がしたくて入るんやろ?」
七海にじっと睨まれて、有海は目を伏せている。
その目には、涙が溜まっていた。
「わ…私…」
「ウチが言ってあげよか?」
七海は、冷たい目で有海を見下ろしながら言う。
「ウチ等と一緒にいれば…特に、人気者で皆から一目置かれてる細川さんと一緒にいれば、いじめられることはない…。そう考えて、野球部に入ろう、思うてんのやろ!?」
「ち、違う…!そ、そんなこと…」
「だったら、マネージャーになって、何をしたいんや?言うてみい!!」
「そ、それは…ユニフォームを洗濯したり…ボールやグローブを手入れしたり…」
「マネージャーは、世話焼き係とちゃうで!!」
「ご、ごめんなさい!」
頭ごなしに怒鳴りつけられ、思わず有海は謝った。
「マネージャーはな…試合のスコアやデータを記録したり、相手の戦力を分析したり、チームメイトの健康状態を把握したり…野球の専門知識がないと務まらんねん!!」
「…は、はい…」
「マネージャー、なめんなや!?」
「ご、ごめんなさい…」
有海は、とうとう泣き出してしまった。
241投稿者:bb  投稿日:2008年01月26日(土)18時01分38秒
○このレスを見た人はめっちゃ?幸運です○
えっと、このレスを、違う掲示板3つに貼り付けてください!
そうすると下記のよぅなことが起きますヨ♪
◆好きな人に告られる!!
◆告ったらOKもらえる!!
◆彼カノがいるコゎめっちゃLOVE?になれる!!
◆勉強、学年トップ!!
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◆お小遣いが上がる!!
上記のことが起きます。
あたしの友達Mが、これをやったら、上記全て起きて、今は彼氏とめっちゃラブ×2です♡
先生からも好かれ、男子に8人から告られました。
女子も友達がたっくさんいます!!
この魔法のようなパヮーを信じて、貼り付けてください!!
コレを信じなくて、貼り付けなかったKは、3日後に彼氏にフられて、5日後に告ったらフられて、一週間後に家族が死にました。
そして一ヵ月後にはKが死んで、クラス全員でお葬式に出ています。
さぁ、あなたはMかKかどちらになりたいですか
242投稿者:リリー  投稿日:2008年01月26日(土)18時01分51秒
「とにかく…いじめの隠れ蓑に野球を利用するようなヤツ、入部は認めん!!顔を洗ぅて、出直してき!!」
「…はい…。ごめんなさい…」
「謝んなって、言うとるやろ!?」
「…ごめんなさい…」
頭を下げっぱなしの有海。
涙がポロポロとこぼれている。
「一木さん…ウチな…いじめは嫌いや…。いじめっ子はもっと嫌いや…。でもな…一番嫌いなんは、自分を変えようとせぇへん、いじめられっ子や!!」
「…!!」
有海は、思わず涙で濡れた顔を上げた。
「あんたが一番、気に食わんわ!!ウチは!!」
「………」
有海は、両手で顔を覆うと一目散に駆け出した。
「あ、あみ〜ご!!」
藍が追いかけて、有海の肩を掴む。
しかし、有海は小さな声で「ごめんなさい…」と呟くと、肩を掴む手を振り切って走り去って行った。
243投稿者:リリー  投稿日:2008年01月26日(土)18時02分32秒
藍は、振り返ると同時に、七海を怒鳴った。
「ちょっと!!あんた、朝から何イライラしてんのよ!?」
「はぁ!?ウチがイライラしてるって!?」
正解だった。
クラスメイトにも、愛美や梓彩にも、そして有海にも…今日、何人にそのイライラをぶつけてきたのだろう…。
「あんな言い方、しなくたっていいじゃん!!いじめは嫌いって…あんたが、あみ〜ごをいじめてんじゃん!!」
「ウチがいじめた!?言いたいこと言うただけや!!しかも、間違ぅたこと、言うてへんで!!」
「それに…自分を変えようとしないなんて…。あみ〜ごは自分を変えようとしたんだよ!!野球部に入って…」
「ちゃう!!強いモンにくっついて、自分を守ろうとしただけや!!弱いウサギが守ってもらおうと虎の側に近づいて、そのままその虎に噛みつかれたってだけのことや!!」
2人の言い争いは、日の沈みかけた校庭に、響き渡った。
しかし、この喧騒は、ある人物の言葉によって遮られた。
「ふ〜ん…。野球部ねぇ…。部員も大事だけど…もっと大事なもの、忘れてない?」
七海と藍は、不意に後ろを振り向いた。
244投稿者:リリー  投稿日:2008年01月26日(土)18時03分35秒
背の高い…藍よりも背が高い女が、地面にうっちゃられていたプラカードを拾って、しげしげと眺めていた。
「もっと…大事な…もの?」
藍が、恐る恐るその女に聞く。
七海は、その女に語りかけることすらできなかった。
気配を感じなかった…。
藍との口ゲンカに夢中になってたから…?
違う…!そんなやわな『訓練』は受けていない…!!
245投稿者:リリー  投稿日:2008年01月26日(土)18時03分54秒
女は、ゆっくりと口を開く。
「そうだよ…。大事なもの…。それは…」
「それは?」
「顧問」
「…顧問?」
「顧問の先生がいなけりゃ、部活としては認められないんじゃない?」
「あ…!そうか…」
藍は、ポンと手を叩く。
「私が…なってあげようか?」
「…あんたが…?」
やっと、七海は口を利いた。
そんな七海に、ニヤリと、その女は笑いかけた。
「中田あすみ…。今日からこの学校に来た、体育の非常勤講師…。よろしくね」

(『三回・表』・・・終了)
246投稿者:リリー  投稿日:2008年01月26日(土)18時04分19秒
それでは、今日はこれでおちます
247投稿者:おお!  投稿日:2008年01月26日(土)18時21分22秒
更新されてる!!
248投稿者:117  投稿日:2008年01月26日(土)21時19分09秒
今日は更新早かったんですね。
有海がマネジャーか・・・プロでいえば、「スコアラー」みたいな仕事ですね。
普通「野球部」のマネジャーといえば、「カッコイイ男子と一緒にいたいから」とかが理由ですが、今回は女子ですからね。
突然現われた、体育の非常勤講師・あすみ。なんかカッコイイ・・・この後どうなるのか、楽しみです。
249投稿者:有海  投稿日:2008年01月26日(土)23時35分02秒
かわいそう・・・
250投稿者:昨日  投稿日:2008年01月27日(日)13時13分02秒
更新されてたんだ
251投稿者:更新そろそろ?  投稿日:2008年01月27日(日)21時11分32秒
 
252投稿者:リリー  投稿日:2008年01月27日(日)21時13分31秒
今日は、定時に更新できます
いよいよ、あすみも登場しメインキャストが揃いました
野球部が発足するのはもう少し先です

では、更新します
253投稿者:リリー  投稿日:2008年01月27日(日)21時14分53秒
『三回・裏』

≪2007年4/26(木)≫
「よっしゃ〜!!さすがアニキや!!まずは先制点!!」
七海は、自室のテレビで野球観戦をしている。
阪神vsヤクルト戦だ。
まずは1回裏、金本のタイムリーツーベースで一点を先制する。
ケーブルテレビで見ているので、七海は、他球場の情報もチェックする。
中日vs広島戦にチャンネルを合わせる。
「お!?ケケケ…!中日、負けとるがな!!藍め、今頃悔しがってるんとちゃう?」
そして次は、巨人vs広島戦…。
「む…。巨人、いきなり二点先制やんか…。それにしても、あの女…」
顧問を買って出た、非常勤講師、中田あすみ…。
巨人ファンだと言っていた…。
254投稿者:リリー  投稿日:2008年01月27日(日)21時15分10秒
「おい…」
部屋の中央の二段ベッドの下の階から、七海に声が投げかけられた。
「そや!阪神戦や!!今岡〜!!アニキに続け〜!!」
七海は、その声を無視し、黄色と黒のメガフォンをバンバンと叩く。
「おい…」
「何や〜!!ショートゴロかい!!チェンジやな!よっしゃ、よっしゃ、ドンマイ!!まずは一点を守っていこう!!」
「おい…!」
「先発は…ボーグルソンか…。コイツ、この前の中日戦で、川上からツーランホームラン打ったヤツやな?まずは、本業のピッチングを頑張らんかい!!」
「おい…!!」
「よっしゃ!よっしゃ!まずは、1アウト!!イタ…!!」
その時、分厚い本が、七海の頭を直撃した。
本のタイトルは…埴谷雄高・著『死靈』第二章 《死の理論》 …。
255投稿者:リリー  投稿日:2008年01月27日(日)21時17分30秒
「何や!!コラ!!今、完全に気配を殺して投げつけたやろ!?」
「貴様が、迂闊なだけだ…。バカめ…」
二段ベッドの下に寝そべっている少女…中村有沙は、冷たい目で七海を眺めながら言った。
彼女とは、今日からルームメイトになったのだ。
「さっきから、うるさくてかなわん…。イヤホンをつけて観戦しろ」
「断る!!野球観戦は、大音量で楽しむもんや!!」
七海は、リモコンでボリュームを上げる。
部屋中に、ヘタクソな応援ラッパが鳴り響く。
「………。それから…このヤクザのような男のポスターも、目障りだ。外せ」
「おおい!!ゴルァ!!アニキをヤクザ言うな!!殺すぞ!?」
「まったく…。おまえの男の趣味は、理解できん…」
中村有沙は、ベッドから起き上がると、フローリングの床の上に足を乗せようとする。
256投稿者:リリー  投稿日:2008年01月27日(日)21時17分49秒
「おおっと!!何する気や!?」
「何をする?本を拾うだけだが?」
「アカン!!そのベッドから先は、ウチの領地や!!不法侵入は死刑やで!!」
およそ16畳の2人の部屋の中央には、境界線として、二段ベッドが置かれている。
部屋はそこから二分されていて、ドア側は七海、ベランダ側は中村有沙とキッチリ居住区域が決められていた。
2人の交渉によって、テレビは七海が取り、ベランダは中村有沙が取った。
境界線のベッドの上は七海、下は中村有沙。
ただ、入り口のドアだけは、2人が共同で使わなければならない。
しかし、ドアは七海の領地内にある。
その為、入り口からベッドまで赤絨毯が敷かれ、その上以外を、中村有沙は歩けないことになっている。
257投稿者:リリー  投稿日:2008年01月27日(日)21時19分15秒
そして、さっき中村有沙は七海に本を投げつけてしまった。
つまり、七海の領地に本はあるのだ。
「だったら、その本をこちらに渡せ」
「ん?ええよ」
七海は、素直にさっき自分の頭を直撃した本を、中村有沙に投げた。
しかし、本は彼女の手元に届かず、途中で落下した。
「あ〜あ…。少し届かんかったみたいやねぇ〜。いや〜残念…」
「おい…。ふざけてるのか?こっちに渡せ」
七海は、ゆっくり歩いて本を拾う。
「これ、そんなにおもろい本なん?」
「貴様に理解できる内容ではない。貴様が持っていても無駄だ。返せ」
「それが人にモノを頼む態度?」
「頼んではいない。命令している。返せ」
「せやったら、ウチも命令したる!返して欲しかったら、土下座せい!!」
「くだらんことを言うな。返せ」
「ふん!気が変った。返して欲しかったら、素っ裸になって大股広げて鼻の穴に指突っ込んで…それから…」
中村有沙は、ベッドから降りると、ベランダ側の自分の領地の奥に行ってしまう。
「おやぁ〜?諦めたん?これ、返してほしないの?」
七海は、本を高く掲げた。
258投稿者:リリー  投稿日:2008年01月27日(日)21時20分05秒
すると…鎖が飛んできて、本を絡め取る。
「…!?」
本は、七海の手を離れ、中村有沙の手元に戻った。
中村有沙の手には…鎖鎌が握られていた。
鎖鎌…それが、彼女の専門武器…。
「オノレェ〜…!!よくもウチの領地に踏み入りよったな…!?」
七海は金属バットを引っ掴んで、境界線のベッドまで歩み寄る。
金属バット…これが、七海の専門武器だ。
「領地に入った…?私は一歩も足を踏み入れてはおらんぞ?」
「その鎖じゃ!!領空ってもんがあるんや!!今、その鎖が領空を侵したんや!!」
「領空を侵したのなら、本が飛んで来た時点で領空権侵犯ではないか…。バカめ」
「じゃかあしい!!ウチは今日、イライラしとんねん!!屁理屈言っとったら、ブチ殺すぞ!?」
「ふん!屁理屈を言う頭もないくせに…」
「何やとう!?ゴルアァァ!!」
そこに、ノックの音が響いた。
ノックの音の位置から察するに、身長155センチ以上…160センチ以下。
2人は、同時にドアを見て、同時に声を出した。
「何や?(何だ?)梨生奈…」
259投稿者:リリー  投稿日:2008年01月27日(日)21時21分31秒
恐る恐る、梨生奈はドアを開ける。
「ケンカの最中、ごめんね…。いい?」
「だから、何や?梨生奈。はよ、してや!今からチビアリ、ブチ殺すねん」
「ふざけるな。それはこちらのセリフだ」
「もう…!ダーさんが呼んでるよ!!仕事だよ!!」
七海と中村有沙は、お互いの武器を降ろした。
「何や…いきなり初仕事かい…。『チームN』の…」
「何が悲しくて、貴様とチームなど組まなければならんのだ…」
あからさまな溜息をつく中村有沙。
しかし、梨生奈は首を横に振る。
「違うよ…。今回の仕事…大きいの…」
「大きい?」
「どういうことだ?」
「共同チームでやるんだってさ…」
「共同チーム!?」
七海と中村有沙は、同時に声を上げた。
「そう…。私と羅夢の『チームR』と、エマとエリーの『チームE』、そして…あなた達『チームN』の3チーム共同作戦…。さ、早く行こう」
260投稿者:リリー  投稿日:2008年01月27日(日)21時27分37秒
今日はこれでおちます

あと、巨人vs広島と書いてしまいましたが、正しくは巨人vs横浜です

有沙が読んでいた『死靈』は、私が途中で読むのを断念した小説です
それ以来、私の中では難解な小説の代名詞みたいになりました
お祖父ちゃんの書庫の中に入っていたんですが、誰もこの本を読んでません
お祖父ちゃんも、なんでこんな本が家にあるのかわからない…と言ってます
ちょっと、恐いです
261投稿者:初仕事!  投稿日:2008年01月27日(日)21時44分12秒
七海と有沙が少しでも協力し合えるようになって欲しいです
262投稿者:117  投稿日:2008年01月27日(日)21時49分57秒
また出てきた「プロ野球」の話。七海、熱いですね!
合同チームとは・・・一体、どんな戦いが始まるのか、楽しみです!
263投稿者:死霊…  投稿日:2008年01月27日(日)22時01分20秒
タイトルも恐い
264投稿者:デジ  投稿日:2008年01月28日(月)00時24分13秒
元TTK戦士が六人も必要な仕事とはいったい。
次回も楽しみです!
265投稿者:あすみは巨人ファンww  投稿日:2008年01月28日(月)09時05分04秒
なんでこう趣味が合うような合わないようなな野球ファンばっかり集まるの?www

ところで……前から思っていたのですが……

グランドスラムって 何ですか?(オイッ!!)
266投稿者:tatu  投稿日:2008年01月28日(月)18時11分25秒
グランドスラムはメジャーリーグでの満塁ホームランを表す言葉です
267投稿者:リリー  投稿日:2008年01月28日(月)21時01分52秒
今日、その依頼内容が示されます

takuさん、解説ありがとうございました
そうですね、最初から解説を入れておけばよかったですね

では、更新します
268投稿者:リリー  投稿日:2008年01月28日(月)21時02分21秒
依頼人と直接会う応接室は、七階建ての自社ビルの中の二階にある。
七海と中村有沙は、梨生奈に連れられ応接室に向かう。
2人が、またケンカをするのを防ぐ為、梨生奈は常に間に立って歩かなければならない。
応接室には、扉が二つある。
重厚な観音開きの豪華な扉と、ただのアルミ製の安物のドア。
七海達は、安物のアルミドアの方から入る。
そこには既に、『チームR』の細田羅夢、『チームE』の近藤エマと渡邊エリー、そしてダーブロウ有紗の4人が揃っていた。
「おう、来たか」
ダーブロウ有紗は、腕組みをしたまま顎で、入って来い、と指図する。
そこは、僅か6畳程の小さな薄暗い部屋。
そして、まるでテレビ局の放送ブースの様に、幾つものモニターが壁に埋めまれている。
他の3人は、そのモニターをじっと見詰めている。
しかし、七海達が部屋に入った途端、細田羅夢は、こちらを睨みつける。
七海に中村有沙…2人とも、羅夢の気に入らない者だからだ。
「なんや…?コラ…」
七海は、羅夢に歩み寄る。
「んだよ…?オイ…」
羅夢も、七海に歩み寄る。
「はい、やめ、やめ!」
梨生奈は、今度は七海と羅夢の間に立った。
269投稿者:リリー  投稿日:2008年01月28日(月)21時03分31秒
「おい、パッツン!こっち来い」
ダーブロウ有紗が、七海を手招きする。
七海は、羅夢と睨み合いながらも、ダーブロウ有紗のもとに行く。
「なあ、1番モニターを見ろよ」
七海は、言われた通り、そのモニターを見る。
1番モニターは、依頼人の顔が映ることになっている。
そこには…異様に顔の長い、髭面の貧相な男が映し出されている。
「あ…!」
「見覚えあるだろ?」
「なすびのおっちゃんや…」
今から半年前…七海達は暗殺組織『TTK』に所属し、組織を脱走した中村有沙を捕らえるために『R&G探偵社』と戦った。
その戦いで、七海と七世の『チーム7』は、組織を裏切ったダーブロウ有紗と、『R&G』の村田ちひろと死闘を繰り広げた。
その、戦いの舞台となったのが、ラブホテル『アンダー・キャッスル』。
そのフロント係をしてたのが、この顔の長い貧相な男なのだ。
ちなみに七海は、あの時、この男を金属バットで殴った。
270投稿者:リリー  投稿日:2008年01月28日(月)21時04分46秒
「な、何で、なすびのおっちゃんが…?」
「何でって…このなすびが、今回の依頼人だからだよ」
この男が…依頼人…?
「名前は、浜津智明…。ここに来るのは二回目で、大まかな依頼内容は前に窺っている。そして今回は、細かな話し合いをして、いよいよ依頼を受ける…」
「この、おっちゃん…ウチ等3チームも注ぎ込むような、ややこしい依頼を持ってきたんか?」
「うん…。今回は、大きいぞ?何と言っても…相手は『暴力団、加藤組』だからな…」
「加藤組…!?あ、相手はヤクザかい!?」
七海は、つい大きな声を上げた。
「何だよ?ビビってんのかよ?」
羅夢が笑いながら、七海に言い放った。
「あ?コラ…。誰がビビってるって…?」
「おまえだよ…!お・ま・え!!」
「おもろいやんけ…このガキ…。加藤組の前に、オノレを叩き潰したんぞ?オウ!?」
またもや、一触即発になる七海と羅夢。
「あはは!やれやれ!!」
2人を面白がる、エマ。
「やるんなら、外でしてよね」
エリーは、あからさまに迷惑そうな顔をする。
271投稿者:リリー  投稿日:2008年01月28日(月)21時07分31秒
「もう!!やめなさいよ!!」
梨生奈は羅夢の肩を掴んで引き寄せた。
「パッツンも、そのへんにしとけ!!」
ダーブロウ有紗は、七海の頭を鷲掴みにして押さえつけた。
「おい、チビアリ!コイツのリーダーはおまえだろ!?おまえが止めろよ!!」
中村有沙は、めんどくさそうに髪を掻きあげる。
「私が?冗談言うな。むしろ、こいつ等2人が刺し違えてくれたらありがたい…」
「何やと!?コラ!!」
「てめぇ、ぶっ飛ばす!!」
今度は仲良く、中村有沙に掴みかかる、七海と羅夢。
「いい加減にしやがれ!!」
ダーブロウ有紗は、七海、羅夢、中村有沙の順番に頭を張り倒した。
いや、中村有沙だけは、拳で殴った。
「な、なぜ私だけ、グーなのだ!?」
当然、納得しない中村有沙。
「身内は特別だ!!いいから、モニターをちゃんと見てろ!!」
ダーブロウ有紗と中村有沙は、父親…いや、精子違いの姉妹なのだ。
そう…名前が同じ読み方の、姉妹…。
こんな奇妙な境遇を、ここにいる…いや、この探偵社の少女達は送ってきたのだ。
272投稿者:リリー  投稿日:2008年01月28日(月)21時08分25秒
モニターは6台あって、それぞれ別角度から、隣の応接室の様子を窺える。
隣の応接室…ソファは高級の牛皮で、テーブルは大理石、壁には高価な絵画、観葉植物や抽象彫刻などが置かれている。
そして、なすびこと浜津の応対をしているのが、『R&G探偵社』の社長、吉田永憲。
少し離れた所に座っているのが、この探偵社の秘書である、俵姉妹。
姉の俵有希子と、妹の俵小百合。
捕縛専門に能力を特化した、『チームT』を組んでいる。
姉妹は、17歳と16歳とまだ少女だが、シックなグレーのスーツに身を包んでいる。
美しい姉妹だが、2人はあまり顔が似ていない。
姉の有希子は目が大きく、それよりも耳が大きい。
宇宙人的な不思議さを醸し出している。
妹の小百合は、尖った顎が特徴的で、目はキリリと引き締まっている。
どちらかと言うと、姉の方が女性的な性格で、妹の方が男性的な性格をしている。
その姉妹は、依頼人との会話を記録するのが役目だ。
吉田と浜津の会話は、集音マイクで隣のダーブロウ有紗達にも聞こえるようになっている。
273投稿者:リリー  投稿日:2008年01月28日(月)21時09分52秒
『あのぅ…。本当に、私どもの安全は、保障して下さるんでしょうか?』
スピーカーから、なすびこと浜津の重みのない声が聞こえてきた。
『大丈夫です!我々、「R&G探偵社」の探偵達は、みな優秀な者ばかりです!あなたは、とても良い選択をされたのですよ?』
これまた吉田の、何の重みのない声と言葉も聞こえてきた。
『で、でも…相手は、あの加藤組ですよ?や、やっぱり、不安ですよ〜…』
『ご安心下さい!私、探偵業界から「赤い獅子」と呼ばれております!!私に比べれば、ヤクザなど「ハイエナ」か「ハゲタカ」ですよ!ハハハ!!』
隣のモニタールームにいる者は、全員、眉間にシワを寄せて、吉田の声を聞いている。
「ち…!『眠りっぱなしの』が抜けてるぜ!!」
ダーブロウ有紗が、目だけが笑っていない笑顔で言った。
「ま、私達のこと、優秀って言ってくれたから、許すとしましょう…」
梨生奈は、苦笑いして皆に言い聞かせた。
「優秀やないのは、あのオッサンだけやん」
七海の言葉に、羅夢が絡んできた。
「もう一人いるけどな」
「あん?誰や?」
「おまえだよ!!お・ま・え!!」
「何や、この…」
バチーン!!
ダーブロウ有紗の両の平手が、七海と羅夢の後頭部を張り倒した。
274投稿者:リリー  投稿日:2008年01月28日(月)21時11分09秒
『それでは、依頼内容を繰り返します』
有希子は、依頼内容を記録したパソコンの画面を見ながら言う。
これは、隣室にいる探偵達に、依頼内容を説明するのも兼ねている。
ラブホテル『アンダー・キャッスル』のフロント係、浜津智明の依頼は次の通りだ。
彼の勤めるラブホテルは、実は、暴力団・加藤組が経営している。
そして、このホテルがとんでもない犯罪の温床となっていた。
それは…女性利用客の拉致…。
これまた加藤組の経営する、ホストクラブのホスト達が女性客をこのホテルに誘い込む。
その女性客は、大抵、店で借金して首が回らなくなった者達だ。
その弱みに付け込んで、加藤組の組員が、女性客を拉致監禁…そして外国へ売春婦として送り込むのだ。
浜津は、その片棒を担いできた。
しかし最近、未成年の少女までも、加藤組はその毒牙にかけ始めた。
浜津には、中学生の娘がいる。
その良心の呵責に耐え切れず、この裏仕事から足を洗いたがっている。
当然、拉致の秘密を握る浜津を、加藤組は許さないだろう。
娘とともに無事に安全な土地に逃げ出せるよう、力を貸すのが、第一の仕事。
加藤組の拉致・売春の証拠を押さえ、壊滅させるのが、第二の仕事だ。
『R&G探偵社』としては、第二の仕事の方が、莫大な報酬を産むことになる為、浜津の依頼を引き受けた…という事だ。
275投稿者:リリー  投稿日:2008年01月28日(月)21時13分57秒
ここまで聞いた時点で、ダーブロウ有紗は話しをまとめる。
「ま、と言う訳だ…。当然、第二の仕事の方が困難なわけだが…おまえ達、できるか?」
中村有沙、梨生奈、羅夢、エマ、エリー、そして七海…6人もの探偵達をつぎ込む大作戦に、皆は興奮を隠せない。
「なるほどな…。確かに一筋縄ではいかない依頼だ」…と、中村有沙。
「人の為にならない悪の掃除か…。今までの仕事よりは、やり甲斐があるかも…」…と、梨生奈。
「アタイは、暴れまわれるなら何でもいいよ!しかも、相手はヤクザだろ?おもしれぇじゃん!!」…と、羅夢。
「それにしても、許せないね!!女を借金させて、弱みを握って、奴隷にするなんて…!!」…と、エマ。
「あんまり疲れる仕事は好きじゃないけど…。お金がいいんなら、仕方がないわね」…と、エリー。
「よっしゃ!!いっちょ、やったろうやないけ!!」…と、七海。
皆、気後れしている者はいないようだ。
276投稿者:リリー  投稿日:2008年01月28日(月)21時14分10秒
ダーブロウ有紗は、満足そうに頷く。
「うん、うん…。やる気になってくれてるのは、私も嬉しいぜ。でも、今回はチームをシャッフルしようと思ってる」
この言葉に、少女達はざわついた。
「チームを…シャッフル?ダーさん、どういうこと?」
梨生奈は、不可解な顔をする。
「つまり…この6人を、3人2チームに分けようと思ってんだ。だから、既存のチームは一旦解散だ」
「なんか…『モーニング娘。』みたい…」
エリーが呟いた。
その言葉に、ダーブロウ有紗はニヤリと笑った。
「そう、その通り!!今回の作戦名は、名付けて『ハロー・プロジェクト』…!」
「………」
皆、無言になった。
277投稿者:リリー  投稿日:2008年01月28日(月)21時15分10秒
それでは、今日はこれでおちます
278投稿者:ダーさんww  投稿日:2008年01月28日(月)21時17分56秒
カッコイイなR&G
279投稿者:あげ  投稿日:2008年01月28日(月)22時00分07秒
グランドスラムって爆弾のことだと思ってた。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%83%A0_%28%E7%88%86%E5%BC%BE%29
280投稿者:すべてを制覇する  投稿日:2008年01月28日(月)22時12分42秒
という意味らしいね
野球・・・満塁ホームラン
テニス・・・四大大会すべて優勝
ゴルフ・・・四大メジャー大会すべて優勝
他にもサッカー、競馬、囲碁、将棋など、主要な大会を制覇することを言う
その爆弾を使えば、全てを制覇する・・・という意味がこめられてるんだろうね

だとすると、今回、「サムドラ」と「らりるれろ」の登場人物が全て出るから、そういう意味が込められてるんじゃ・・・?
281投稿者:掛かってるかもしれないよ  投稿日:2008年01月28日(月)22時13分27秒
言葉遊びの好きなリリーさんのことだから
282投稿者:117  投稿日:2008年01月28日(月)22時14分20秒
そういえば、「グランドスラム」は満塁ということで、ここでも「野球」とかけているんですね!
今回の相手は、「ヤクザ」ですか。なすびさんが出てくるということは、愛美も絡んでくる、そして「登場人物」を見ていると・・・!?
「野球部」のメンバーも巻き込むことになっていくということでしょうか?続きが楽しみです!
283投稿者:今回も  投稿日:2008年01月28日(月)22時32分11秒
羅夢が出てきて嬉しい
登場人物表を見てたら、チョイ役みたいな扱いぽかったから・・・
284投稿者:デジ  投稿日:2008年01月29日(火)16時10分09秒
117さんとコメントがかぶりますがやっぱりでてくるのでしょうか
チームKの二人
オチが面白いです
285投稿者:期待あげ  投稿日:2008年01月29日(火)19時40分38秒
 
286投稿者:あげます  投稿日:2008年01月29日(火)20時58分20秒
七海と羅夢の絡み好きです!
287投稿者:リリー  投稿日:2008年01月29日(火)21時21分18秒
今回、タイトルを決めるのが、本当に苦労しました
仮タイトルが『燃えろ!!聖テレ野球部』でしたから…
野球用語を片っ端から調べて、『グランドスラムの少女達』に決めました
確かに、『完全制覇』という意味もあるので、『R&G』シリーズの登場人物を全員出す…と決めました
ですから、随分無理矢理な登場をする人もいます
『チームK』の2人も、もちろん登場しますが、ずっと先になります
七海と羅夢の絡みは、私も書いてて楽しいです
ケンカのシーンって、やっぱり書きやすいです

では、更新します

288投稿者:リリー  投稿日:2008年01月29日(火)21時22分48秒
「シャッフルってさ…どういう風に混ぜるの?」
エマは、少し不安げに訊く。
「うん。まずな、お互いのチームメイトは、離れ離れになる」
途端に、エマとエリーは悲しげな顔で、お互いの顔を見詰める。
七海はガッツポーズをとった。
「うぉっしゃあああ!!!チビアリと別れるんやな!?」
中村有沙は、不愉快な感情を押し殺して言う。
「ああ…。お互い、精神衛生上、好都合だな…」
「ん…待てや…。と…いう事は…」
睨み合う、七海と羅夢。
2人が同じチームになる可能性が…?
「んなワケ、ねぇだろ!!てめぇ等を組ませるもんかよ!!『混ぜるな、キケン!!』コンビが!!」
ダーブロウ有紗は、ケンカになる前に2人を怒鳴った。
「よく、聞きな。これが今回のチーム分けだ」
6人は、固唾を飲んで聞く。
289投稿者:リリー  投稿日:2008年01月29日(火)21時24分09秒
「まずは『Aチーム』…デコッパチ、パッツン、ジェリー…。リーダーはデコッパチ」
『デコッパチ』とは梨生奈、『パッツン』とは七海、『ジェリー』とはエマのこと。
エマの『ジェリー』とは、アメリカのカトゥーン『トムとジェリー』に由来する。
学校の同級生の誕生日会に呼ばれた時、その同級生の家の冷蔵庫を勝手に開けて、チーズを全て盗み食いした…というエピソードから、そう呼ばれている。
パートナーのエリーと名前が似ている為、ややこしいことこの上ないが…。
「そして『Bチーム』…ダッチャ、チビアリ、ぷるぷる…。リーダーはチビアリだ」
『ダッチャ』とは羅夢、『チビアリ』とは中村有沙、『ぷるぷる』とはエリーのこと。
エリーの『ぷるぷる』とは、そういうダンスをよく踊る…という単純なもの…。
290投稿者:リリー  投稿日:2008年01月29日(火)21時24分21秒
「私がリーダー?めんどくさいので辞退する」
そう言う中村有沙の胸座を掴む、ダーブロウ有紗。
「てめぇ、一番年上だろ!?ツベコベ言ってねぇで、有り難く引き受けろや!!」
そこに、羅夢の声が飛ぶ。
「じゃあ、アタイがリーダーやるよ!!」
素早く七海が反応。
「オノレがリーダー?冗談は顔だけにせぇや!!」
「んだと!?もう一回、言ってみろよ!!」
「おう、何度でも言ったるわ…」
「やめなさい!!」
梨生奈が、七海に怒鳴った。
七海も負けずに怒鳴る。
「何や、コラ!!何で、オノレに言われな、アカンのや!!」
「言うわよ!!私がリーダーだもの…!でしょ?ダーさん…」
「…おめぇだけだよ、デコッパチ…。頼りになるのはよ…」
ダーブロウ有紗は、しみじみと言った。
291投稿者:リリー  投稿日:2008年01月29日(火)21時25分53秒
「ん…?でも、この組み合わせ…。ああ、こういうことか…」
一人で納得している梨生奈の広い額を、ダーブロウ有紗は愛しそうに撫でた。
「よしよし…。おまえは賢いねぇ…デコッパチ…」
梨生奈は迷惑そうに、その額を前髪で隠す。
「何や?梨生奈…。何が、『ああ、こういうことか』…やねん」
七海は、苛つきを抑えながら訊く。
梨生奈の代わりに、中村有沙が溜息交じりに答える。
「各チーム、近距離攻撃、中距離攻撃、遠距離攻撃…各エキスパートの組み合わせということではないか…。気付け。バカめ」
当然、この中村有沙の言葉に、七海は激怒。
「誰もオノレに聞いて…」
ダーブロウ有紗が、中村有沙の頭を、拳で思いっきり殴った。
「私が代わりに成敗してやったから、もう怒りを抑えろ、パッツン!!」
中村有沙は、殴られた頭を擦りながら、ダーブロウ有紗を睨んでいる。
「そう、チビアリの言う通り、これでどんな局面でも、状況に応じて対応できるな?」
『Aチーム』…トンファーによる、梨生奈の近距離攻撃。金属バットによる、七海の中距離攻撃。鉄球のボウガンによる、エマの遠距離攻撃。
『Bチーム』…ヌンチャクによる、羅夢の近距離攻撃。鎖鎌による、中村有沙の中距離攻撃。矢のボウガンによる、エリーの遠距離攻撃。
近距離の『チームR』、中距離の『チームN』、遠距離の『チームE』…この3チームを呼んだ、ダーブロウ有紗の真意はこういうことなのだ。
七海の金属バットは、もちろん近距離攻撃でも発揮できる。
先の、少年達を仕置きした際でもそうだった。
だが、金属バットは、物を打って飛ばすこともできる。
そして、鉄球のボウガンを使うエマと組ませたということも、そのコンビネーションを期待してのチーム編成なのだ。
292投稿者:リリー  投稿日:2008年01月29日(火)21時27分09秒
「ウチは、バットを中距離攻撃で使うよりも、近距離攻撃で使いたいねん…」
七海は、つまらなそうに呟いた。
「あれ?七海はバットで何かを打ちたいんじゃないの?その為に、学校で野球部を創ったんだろ?」
そう聞いたエマに、余計なことを言うな…とでも言いたそうな顔で睨む七海。
「あん?野球部?何だ、そりゃ?」
予想通り、ダーブロウ有紗は喰い付いた。
「こいつ…聖テレジアで、野球部を立ち上げたそうだ…」
中村有沙が、ポツリと言った。
「ほう…野球部?で、パッツン、部員は集まったか?」
「集まるわけないやん!!無謀なんやって…聖テレで野球なんか…」
「で、今は、おまえ一人だけなのか?野球部…」
「ウチと…あと一人だけや…」
エマが口を挟む。
「私のクラスの細川藍だろ?あいつ、すげぇよ…。スポーツっていうか…身のこなしにセンスがあるよ」
「ふ〜ん…」
ダーブロウ有紗は、腕組みをして、何やら楽しそうに、物思いにふける。
「む…。何やら嫌な予感…」
実の妹で、昨日まで彼女とチームを組んでいた、中村有沙だけが警戒した。
293投稿者:リリー  投稿日:2008年01月29日(火)21時28分24秒
「よし、おまえ等に命令だ!明日から、パッツンの野球部に入れ!」
「はぁ…!?」
七海を含めた…全員が素っ頓狂な声を上げた。
まず、中村有沙が抗議する。
「冗談じゃないぞ!?何故、私が野球など…」
「冗談で言ってんじゃねぇよ!」
次は、梨生奈。
「思いつきでモノを言わないで下さい!!」
「思いつきで言ってるわけでもねぇ!!」
「だったら…何で…」
「私がな…今回の仕事で一番心配してるのは、チームワークだ!」
「チームワーク!?」
6人が同時に声を上げた。
294投稿者:リリー  投稿日:2008年01月29日(火)21時28分41秒
「今までおまえ等を見てたが…もう、てんでバラバラじゃねぇか!!」
ダーブロウ有紗は、一同を睨み回す。
「まず、パッツンとダッチャは、何かある度に衝突するわ、チビアリの一言一言が人を不愉快にさせるわ、ジェリーとぷるぷるは、お互いのこと以外、無関心だわ…」
名指しで怒られた者は、チラリと隣を見合う。
「まともなヤツは、デコッパチだけじゃねぇか!!」
「それは、どうも…」
梨生奈は、表情を崩すことなく礼を言った。
「あ、贔屓や!贔屓や!」
七海は叫んだ。
「やかましい!!」
ダーブロウ有紗の声量は、それ以上だった。
295投稿者:リリー  投稿日:2008年01月29日(火)21時30分00秒
「だからな…おまえ等は野球部に入って、チームワークは何ぞや、ということを学んで来い!!」
エマは、不機嫌そうに頬を膨らませる。
「どうせ部活やるんなら…テニスがしたいよ…」
「テニスじゃダメだ!!精々、ダブルスだろ?おまえのことだ。ぷるぷるとくっ付いて離れやしねぇよ!」
部員が増えることになるのだが、七海も抗議の輪に入る。
「こんなやつ等と野球なんか、できへんわ!!それに、まだ全然メンバー足りんしな!!」
「うん?足りない?だったら、デッパリンダ(ジョアン)も入れさせる。これで、あと一人だろ?」
「待てよ!!アタイは数に入らないだろ?」
羅夢の声が、割り込んできた。
「だって、アタイ、まだ初等部だもん!!」
「ああ…そうか…。じゃあ、あと2人…。まあ、後はおまえ達でなんとか頑張れ」
「何か…私達が野球部に入るって…もう、決まっちゃったみたいね…」
梨生奈は、溜息をつく。
「へへへ…。お気の毒!!頑張って甲子園出ろよ!」
羅夢は、猫背になってしまった梨生奈の背中を叩いた。
「中学生は、甲子園なんぞに行かんわ!!」
七海は、羅夢に怒鳴った。
「どうしよう…。私、野球のルールなんて、知らないよ…」
エリーは、青い顔で呟く。
「ウチに聞いてくんなや?そういうことは、細川藍に聞け!!ええな?」
七海は、うんざりしたように言葉を吐き捨てた。
296投稿者:リリー  投稿日:2008年01月29日(火)21時31分19秒
『私…娘には、まともに育って欲しいんです…。娘は、死んだ女房に似て、頭も良いし、器量も良いし…』
スピーカーから、浜津の声が聞こえてきた。
「なんや?まだ、なすびのおっちゃんとレッドさん、話してんのかい?」
七海は、モニターを見上げた。
「なんか…レッドさん、泣いてない?」
エマは、可笑しそうにモニターを指差す。
『わかります…!わかります…!娘を思う、その気持ち…!父親の愛とは、深く、大きいものですなぁ…』
吉田は、涙で顔をクシャクシャにしている。
「な〜に、言ってんだよ!!未だ独身のクセによ!!」
ダーブロウ有紗は、しらけた目でモニター上の吉田を見る。
そして、こう続けた。
「あんまり、依頼人に情を貰ったらいけないんだけどな…。もう、下町の探偵事務所じゃないんだから…」
「でも…。そのレッドさんの『情』で、私達、裏の世界から抜け出せたのよね…」
梨生奈が、しみじみと言った。
「…うん…そうだな…」
そして、ダーブロウ有紗は、梨生奈の額をクシャクシャと撫でる。
「本当におまえは、いい子だな!!このデコッパチ!!」
「ちょ…!やめてくださいよぉ!!」
梨生奈は、しっかりと両手で額をガードした。
297投稿者:リリー  投稿日:2008年01月29日(火)21時32分09秒
『そう、そう…!これ、私の娘の写真です。見ますか?』
浜津は、そう言うと、定期入れから小さなスナップ写真を取り出す。
『ほほぉ…!これは、可愛らしいお嬢さんですな…』
写真を受け取った吉田は、そう声を漏らした。
「ははは!!レッドさん、またいい加減なこと言ってるよ!あの、おっさんの娘だぜ?可愛いわけないじゃん!!」
羅夢が、そう言って笑った。
「ちょっと、見てみたいな…。小百合に言って、6番モニターを拡大してもらおうよ」
エリーが、ダーブロウ有紗に頼み込んだ。
「うん?そうだな…。おい、ジョー、聞こえるか?ちょいと手元のパソコンで、6番モニターのカメラをズームアップしてくれや」
ダーブロウ有紗は、小型マイクで指示を出す。
『ジョー』とは、小百合のあだ名。『顎』という意味だ。
ちなみに、姉の有希子のあだ名は『ミミー』。そのものずばり、『耳』という意味。
有希子は、依頼内容の記録、小百合はモニターカメラの記録を録っていたのだ。
イヤホンで指示を聞いた小百合は、言われた通り、パソコンを操作する。
6番モニターは、真上からのアングルだ。
主に、資料を見る為に使われる。
確かに、浜津の娘の保護も仕事のうちなので、その顔を確認しておかなければならないのだが、皆は、なすびのように間延びした少女の顔を確認したい、という好奇心で見るつもりなのだ。
298投稿者:リリー  投稿日:2008年01月29日(火)21時33分07秒
6番モニターに、写真が映し出される。
「え…?ウソ…!可愛いじゃん!!」
羅夢は、意外な声を上げた。
「本当だ…。血、つながってんのか!このおっさんと…」
ダーブロウ有紗も、驚いているようだ。
「ま、母親に似て良かったな…と、言ったところか…」
中村有沙は、別段、興味のなさそうに呟いた。
七海、梨生奈、エマ、エリーの4人は、写真の娘を見て、言葉を失っている。
その理由は、その写真の少女が、全く父親に似ていない…という理由ではない。
知っている顔なのだ…。
そう…七海は今日、この少女にケンカを売ってしまった…。
写真の少女は…『伊倉愛美』…。
細川藍を連れ戻しに来た、ソフトボール部の2年生の…一人だった…。

(『三回・裏』・・・終了)
299投稿者:リリー  投稿日:2008年01月29日(火)21時34分27秒
『R&G』の面々が野球部に入る経緯はこうです

今日は、これでおちます
300投稿者:戦士みんな個性的だなー  投稿日:2008年01月29日(火)21時36分10秒
ダーさんのあだ名がいちいち面白い
301投稿者:117  投稿日:2008年01月29日(火)22時38分40秒
それにしても、喧嘩ばかりの6人の絡みがとても面白いです(笑)。
愛美、やっぱり出てきましたね・・・裏編も続きが気になります。
302投稿者:デジ  投稿日:2008年01月30日(水)00時59分00秒
これが仲良くなるきっかけになると面白いかもしれませんね!
意外とすんなり加入しましたね。
表も裏もおもしろい展開になって来ました!
続きも楽しみです!
303投稿者:Aチームよりも  投稿日:2008年01月30日(水)01時14分36秒
Bチームが心配だ
304投稿者:ダーさんの命令だったのねww  投稿日:2008年01月30日(水)09時04分26秒
野球部に入ったのは。
ところでなんで愛美はナスさんと苗字違うの?離婚?

関係ないけど瑠璃が戦士全員にあだ名つけてるのみてこれ思い出したw
305投稿者:リリー  投稿日:2008年01月30日(水)21時05分05秒
304さんの言う通り、なすびと愛美の苗字が違うのは、離婚しているからです
この辺りは、もう少し詳しく描写されます

もうそろそろ、野球部を結成しないと、いつまでも話しが進まないので、少々強引でしたが、皆を野球部に入れました
ほんと、みんな素直に入りましたよね…

ダーさんは、ジャスミンとモニークと夏希にはあだ名をつけてません
ダーさんも、自分の気に入った人にしかあだ名を付けない、という設定です
自分と同等、または格上の人物にはあだ名を付けません

それでは、更新します
306投稿者:リリー  投稿日:2008年01月30日(水)21時07分00秒
『四回・表』

≪2007年5/6(日)≫
ゴールデンウィークの最終日。
七海達は、どこかへ旅行に行くとか、ショッピングに行くとか、映画やライヴを見に行くとか、そういう中学生らしい連休を過ごすことはできなかった。
中学生でありながら、『仕事』を持っている彼女達に、休日はない。
今日も、一緒に『仕事』をすることになる梨生奈とエマと共に、自転車で『現場』の下見に行く。
その途中、天歳川の堤防の公園に寄る。
3人の少女は、青々とした芝生の斜面に腰を降ろし、少年野球の練習を眺めた。
307投稿者:リリー  投稿日:2008年01月30日(水)21時07分15秒
「あ〜あ…。結局、ゴールデンウィークは休めず終いかい…。ストレス溜まるわ〜…」
七海は伸びをして、芝生に転がる。
「それに…明日はいよいよ、野球部始動の日よね…。ダーさんが、私達のグローブとか、スパイクとか買ってはくれたけど…」
梨生奈は、楽しそうに練習している、野球少年達を呆然と見詰める。
「羨ましいわ…。あの子達、本当に楽しそうに野球してる…。私にも、その楽しい気持ちを分けて欲しい…」
そして、寝転がっている七海の顔を覗き込む。
「ねえ、七海…。野球ってそんなに楽しいの?なんか、飛んで来るボールを打つのも捕るのも難しそうだし、ルールも複雑だし…」
「知らん!!」
「え?知らないって…」
「だって、ウチ、野球やったことない」
「え?そうなの?」
意外だった。
つまり、七海の野球好きは、『見る専門』だったのだ。
308投稿者:リリー  投稿日:2008年01月30日(水)21時08分35秒
「七世とキャッチボールとか、バッティングセンターで打ったりとか…そういうことしかやってへん」
「そう…なんだ…。ゲームはやったことないんだね…」
「見るんは、楽しい。これは確実や」
「う〜ん…。私は、楽しいなんて思えないのよね…。まだ、サッカーの方が…」
「ケ…!!どいつもこいつも…。七世も野球観戦、付きおうてくれたけど、サッカーの方が好きってのを知ってたしな…」
すると、エマの顔色が悪いことに、梨生奈は気がついた。
「どうしたの?エマ…?」
エマは、青い顔で、芝生を見詰めながら言った。
「ねぇ…。場所、変えない?」
「どうして?」
「思い出したんだ…」
「何をや?」
七海も、身体を起こしてエマに聞く。
「ここで…私とエリーは…ダーさんに、ブチのめされたんだよね…」
エマは、力なく笑った。
そう…半年前の…出来事…。
「そうね…。場所、変えよう…」
同じく、ダーブロウ有紗にブチのめされたことのある梨生奈は、素早く腰を上げた。
309投稿者:リリー  投稿日:2008年01月30日(水)21時09分38秒
「よっしゃ!!おまえ等、ウチについてこい!!」
七海も、勢い良く立ち上がると、ジーンズの尻についた芝を叩いて払う。
「ついてこいって…?どこに…?」
「あれこれ考える前に、やってみようや!野球!」
「へ?やるって…今?」
「そう!今!!」
そう言うと、七海は野球少年達のいるグラウンドの方へ、歩いて行く。
「ちょ、ちょっと…!七海…!」
梨生奈とエマは、慌てて七海を追い駆ける。
「おう!坊主ども!!ウチ等も混ぜんかい!!」
ボールが行き来する中を、七海は堂々と入って行く。
少年達は、突然割り込んできた七海に戸惑っている。
「誰…?」
「誰かの姉ちゃん…?」
「大阪弁、喋ってるから、おまえの姉ちゃんだろ?」
「ちゃう、ちゃう。ボク、こんな人、知らへん」
ヒソヒソと話し合う少年達を見回す、七海。
「ふ〜ん…。小4〜小6ってとこやな…。よし、お姉ちゃんがノックしたるわ!!全員、守備位置に着けぃ!!」
しかし、少年達は、誰一人動かない。
310投稿者:リリー  投稿日:2008年01月30日(水)21時10分35秒
「何だ?この女?」
「いきなり出てきて、何だよ…」
「変なヤツ!」
「こんな女、無視、無視!!」
また、キャッチボールを始める、少年達。
「おおい!!コラ!!ウチを無視すんなや!!中学生やぞ!?年上やぞ!?目上の人やぞ?人生の先輩やぞ?敬わんかい!!」
一人で虚しく絶叫する、七海。
そんな彼女を見て、悲しい眼差しを送る、梨生奈とエマ。
「ねぇ…梨生奈…。七海を置いて、私達だけで行っちゃおうか?」
「そうね…。そろそろ時間だし…」
2人は、回れ右をすると、芝の斜面を登って行った。
すると遙か遠く、自転車でこちらに駆け降りる少女の人影を見つけた。
「ん…?あの子…確か…」
「細川…?」
梨生奈もエマも、視力はいい。
「お?エマ?おお〜い!!」
その、自転車の少女が、こちらに手を振った。
「確かに…あの声は、細川さんね…」
「あいつの視力も、半端じゃないね…」
311投稿者:リリー  投稿日:2008年01月30日(水)21時11分23秒
自転車に乗った細川藍は、こちらに向かって急降下してくる。
「…?ねぇ…エマ…」
「うん…。もしかして…細川、突っ込んで来ない?」
2人は、ぐんぐんと迫って来る、藍の姿を眺めながら言う。
その藍が叫ぶ。
「うぉぉ〜い!!止めて!!」
「は?」
「止めて?」
「ブレーキ、壊れてるから!!」
顔を見合わせる、梨生奈とエマ。
2人は、腰を低く構え、両手を前に出す。
そして、猛烈なスピードで突っ込んで来た自転車のハンドルを握って止めた。
「おわ!!」
自転車は跳ね上がり、藍は前のめりにつんのめった。
「あ…!!」
「細川…!!」
藍の身体は、宙高く舞い上がった。
「おおお!?」
しかし藍は、空中で二回程縦回転すると、見事、芝生の上に着地した。
312投稿者:リリー  投稿日:2008年01月30日(水)21時12分14秒
藍は、体操選手の様に腕を高く揚げ、上半身をぐらつかせながらも、一歩も足を動かすことはなかった。
地面は水平ではなく、急斜面だというのに…。
梨生奈とエマは、目を点にして、藍の後姿を見た。
「細川選手、10点満点!!」
得意気に、後ろを振り返る藍。
「ん?何て顔してんの?2人とも…」
梨生奈は、ようやく口を開く。
「あ、あなたこそ、何て自転車に乗ってるのよ!!」
「ああ、ありがとね!いや〜、まいった!!急にガクンって、ブレーキがバカになっちゃった!アハハ!!」
あっ気らかんと笑う藍を見て、エマも呆れた。
「笑い事じゃないだろ!?こっちが心臓止まっちまいそうだよ!!」
「ごめん、ごめん、えまちん!ほんとにありがとね!!」
藍は、両手を合わせて、拝むように高く上げた。
「えまちん?な、何だよ、それ?」
「ん?あんたのあだ名。今、つけた!可愛いっしょ?」
「ちょ、ちょっと!勝手に人のあだ名…」
そう、言いかけて、エマは思った。
ダーブロウ有紗につけられた、『ジェリー』よりはマシかな、と…。
313投稿者:リリー  投稿日:2008年01月30日(水)21時13分17秒
「ん〜と…。あんた、名前、何だっけ?」
藍は、梨生奈の方に向き直る。
「梨生奈よ…。木内梨生奈…」
嫌な予感がしたが、梨生奈は素直に名前を教えた。
「ふ〜ん…。よろしくね!り〜な!」
「…り〜な?」
やはり、勝手にあだ名をつけられたが、『デコッパチ』よりは、はるかにマシだ。
314投稿者:リリー  投稿日:2008年01月30日(水)21時13分30秒
藍は、野球のグラウンドの方を、手をかざして見る。
「おお?あそこで何やら少年達ともめてんのは…ななみんじゃないか?」
「ななみん…?ああ…七海のことね…」
七海は、梨生奈達とは違って素直にあだ名を認めたりしないだろうが…。
「なんか、知らないけど、面白そう!!」
藍は、倒れた自転車を起こして跨る。
「ちょ、ちょっと…!また、その自転車に乗る気?」
梨生奈の止める声も聞かずに、また藍は、ブレーキの壊れた自転車で、急斜面を降りていく。
「げ…!そうだった…!ブレーキ、壊れてるんだった!!」
藍の声が、堤防に響いた。
「止めて!止めて!」
藍は叫んだが、野球少年達は、わらわらと自転車から逃げる。
そして、今度は派手に転んで止まった。
「底抜けのバカだ…。あいつ…」
エマは、半笑いで藍を見詰めた。
315投稿者:リリー  投稿日:2008年01月30日(水)21時14分18秒
今日は、これでおちます
316投稿者:117  投稿日:2008年01月30日(水)21時17分15秒
勝手に人の「ニックネーム」をつけるとは、まるで瑠璃みたい(笑)。
さすがにスポーツ万能の藍ですが、また自転車で・・・(笑)。とても面白いです。
今回は表の話ですが、少し裏の話も出てくるのでしょうか?続きも楽しみです!
317投稿者:藍ウケる  投稿日:2008年01月30日(水)21時19分28秒
たしかにちょっとダーさんっぽいかも
318投稿者:七海、悲しいww  投稿日:2008年01月31日(木)00時00分25秒
 
319投稿者:藍普通の人間なのに  投稿日:2008年01月31日(木)10時12分59秒
自転車がつんのめって2回転着地って……R&Gにスカウトしてほしい!!w
320投稿者:リリー  投稿日:2008年01月31日(木)21時27分00秒
そう言えば、瑠璃もあだ名を勝手につけてましたね
瑠璃に「あだ名をつけるの、めんどくさい」とか言われたり、メロディーにクスリともされなかったり、クロちゃんのないがしろにされ具合が気になりましたが…あれはさすがにスタッフの指示ですよね?

藍は、たしかに運動神経のいい設定ですが、あくまでも普通の人間です
実は、裏の人間…という設定ではありません

では、更新します
321投稿者:リリー  投稿日:2008年01月31日(木)21時28分54秒
「いててて…」
擦りむいた肘に、ふー、ふーと息を吹きかけながら、藍は立ち上がった。
「あ!あい〜ん!コンチワ!!」
野球少年達は、七海の脇を通り抜け、藍のもとに集まって来た。
「おう!コンチワ!やってるねぇ!!」
藍も、少年達に笑顔で挨拶をする。
どうやら、藍と少年達は、顔見知りのようだ。
「なぁ、あい〜ん!なんか、変な女が俺達の邪魔するんだよ!追い払ってくれよ!」
一人の少年が、七海を指差して言った。
322投稿者:リリー  投稿日:2008年01月31日(木)21時29分13秒
「誰が、変な女じゃい!!」
七海が、怒鳴り声をあげた。
「う〜ん…。確かに変な女だけど…。あいつ、私の友達なんだ」
藍の言葉に、七海は噛み付く。
「友達?いつからウチ等、友達になったん?」
「ええ?悲しいこと言うなよ〜!ななみん!」
「ななみん?何や、ソレ!?」
「あんたのあだ名。気に入った?」
「勝手に人のあだ名をつけんな!!デカアリかい!?オノレは!!」
「デカアリ?誰よ?それ…」
「………何でもない…。それより、その、ななみんっての、やめてぇや!!いつか、ウチには絶対にあだ名を付けんて、言うてたやんか!!」
「いいじゃん!そんな昔のことは…。私のことは、あい〜んって呼んでいいよ」
「呼ばん!!絶対に呼ばん!!」
七海は、ハッキリと宣言した。
323投稿者:リリー  投稿日:2008年01月31日(木)21時31分25秒
「で、また僕らの練習に付き合ってくれるの?あい〜ん」
そこに、舌足らずな喋り方をする少年が、藍に話しかける。
「うん!そうだよ。ストライク入るようになったか?翔太!」
「なったよ!あい〜んが教えてくれたおかげ!」
他の少年達も、藍のもとに駆け寄って来た。
「俺、外野まで球を飛ばせるようになったよ!!」
「おお!?凄いじゃん!次元!!」
「僕は、トンネルしなくなったよ」
「よかったね、瀬南。この前、エラーしまくりで、あんた泣きまくりだったから…。ベン、どう?そろそろ、グローブで球を捕るの、できるようになった?」
外国人顔の小さな少年は、はにかみながらもコクンと頷いた。
「何や…。チビッコに大人気やな…。藍…」
たしか、藍は神奈川県出身で、天歳市には聖テレ入学に合わせて4月にこの街に来たはず…。
もう、地元の少年達と知り合いになり、馴染んでしまったのか。
社交的というレベルでは、ないような気がする。
それに比べて、自分は「変な女」扱い…。
「よし!じゃあ、ノックしよっか?」
「はい!!」
藍の言葉に、少年達はグランドに散らばった。
「おい!!待たんかい!!」
七海は怒鳴った。
324投稿者:リリー  投稿日:2008年01月31日(木)21時33分39秒
「何よ?ななみん…」
「ななみん言うな!!そこのガキども、ウチがノックしたるって言ったっても、聞く耳持たへんかったクセに…!なんで藍の言うことは素直に聞くねん!!」
「だって、あい〜んは、野球が上手いもん!!」
さっきの舌足らずの少年、吉野翔太が外野から叫んだ。
「ほう…。ほな、野球が上手けりゃ、誰の言うことでも聞くんやな?」
「当たり前じゃん。だって俺ら、野球チームだよ?」
荒木次元が答える。
「ほな、ウチが藍よりも野球が上手かったら、ウチの言うこと聞くんやな?」
七海の側にいた、丸山瀬南は呟く。
「野球が上手いだけじゃ、無理ですよ…。人柄が良くないと…」
「何やと、コラ!!ウチは、人柄がアカンて、言うんか!!オウ!?」
七海に凄まれて、瀬南は涙ぐむ。
藍は、そんな瀬南を抱き寄せて七海に怒鳴る。
「こら!ななみん!!瀬南をいじめるんじゃないよ!この子、すぐに泣いちゃうんだから!!」
「ななみん、言うな、言うとるやろ!?ま、ええわ…。藍、勝負しようや!!」
「勝負…?」
「あんた…こんなチビッコどもと一緒に野球やって、ええ気になっとるけど…ホンマに野球、上手いんか?」
「何よ…。言ったじゃない!私、男の子のチームの中で、エースで四番だったって…」
「それは、あんたの自己申告やしなぁ〜…。確かめようがないしなぁ〜…。言うてるだけかもしれへんしなぁ〜…」
七海は、藍を疑るかのような物言いをする。
325投稿者:リリー  投稿日:2008年01月31日(木)21時35分43秒
「おい、あい〜んをバカにすんな!」
七海は、後ろから足を蹴っ飛ばされた。
「痛!!な、何すんねん!!シバくぞ!!このガキ!!」
七海を蹴っ飛ばした、ミッチェル・ベンジャミンは、藍の後ろに隠れた。
藍は、七海に立ちはだかる。
「だから、いじめんなって!!」
「オノレの目は節穴か!?今、ウチが蹴っ飛ばされてんで!!」
「そんなことより…その勝負って何!?」
「おう!ウチ等交互に、ピッチャーとバッターやって、相手を三振、またはホームランにしたら勝ち!!どや!?」
「………いいよ!私は、エースで四番!どっちも得意なんだ!!」
「おし!!そうと決まれば早速、始めよや!!おい、あんた!!キャッチャーせい!!」
七海は、肥満体の少年を指差した。
「え…?俺…?」
「そうや!はよ、ミット構えて、そこ座り!!」
「あの…俺、キャッチャーじゃないから…」
「あん?そない体格してて、キャッチャーやないんか!?」
そこに、メガネをかけた少年が、挙手した。
「キャッチャーだったら、僕がやります。生捕手ですから…」
「おお、聖斗!お願い!」
藍は、メガネの少年、渡邉聖斗にキャッチャーミットを投げて寄越した。
326投稿者:リリー  投稿日:2008年01月31日(木)21時36分43秒
「何や?あんたがキャッチャーなんか?そんな小さな身体で、球を受けられるんか?」
聖斗は、冷静に答える。
「キャッチャーに身体の大きさは関係ありません」
「だって、『ドカベン』の山田太郎とか、『巨人の星』の伴宙太とか、みんな恰幅ええやんけ」
「僕は、その漫画を読んだことはありませんが、太った人間はキャッチャーには向きません」
「そうなん?」
「だって、ピッチャーの返球や盗塁阻止で、いちいち立ったりしゃがんだりするんですよ?体重の重い者は、すぐに膝を壊してしまいます」
「ああ…。そうなんや…。でも、剛速球を受けるには、身体は大きい方がええで!」
「少年野球ですよ?剛速球を投げる者などいませんよ」
「ここに、おるやん!!超剛速球を投げるで!?怪我するで?ええんかい?」
七海は、聖斗を充分に脅す。
「安心しな!聖斗!あんたのミットに届く前に、私がかっ飛ばすから」
藍は、バットをスイングさせながら言った。
「おもろいやんけ!!まずは、ウチがピッチャーや!!」
七海は、一人の少年から軟式ボールとグローブを毟り取ると、マウンドに上がった。
藍はヘルメットを被り、左のバッターボックスに立ち、聖斗はしゃがんでミットを構える。
「梨生奈…。どうする?この勝負、見てく?」
「しょうがないわね…。でも…ちょっとだけ興味あったりして…」
梨生奈とエマは、芝生に腰を降ろして観戦することに決めた。
327投稿者:リリー  投稿日:2008年01月31日(木)21時40分54秒
今日は、これでおちます
328投稿者:リリーさんが新人男子書いてる  投稿日:2008年01月31日(木)21時42分23秒
なんか新鮮
329投稿者:肥満体って誰のこと?  投稿日:2008年01月31日(木)21時44分51秒

330投稿者:月鮫  投稿日:2008年01月31日(木)21時47分20秒
なんと!野球勝負ですか...
野球少年とは…、男子の新人さん達のことですね。
藍が聖斗に安心しな、というところは藍らしいというかかっこいいですね。
331投稿者:117  投稿日:2008年01月31日(木)23時01分09秒
「野球少年」たちは、新人男子戦士なんですね。瀬南はなかなか鋭いこと言いますね(笑)。
藍と七海の野球対決ですか・・・面白いことになりそうです!
332投稿者:tatu  投稿日:2008年02月01日(金)00時35分11秒
確かに瀬南の言ってることはごもっともだと思います。
聖斗の正捕手らしい回答にも納得ですし、
翔太と聖斗のバッテリーに、内野の要の瀬南、巧打の次元、チームに入ったばかりのベンジャミン(予想ですが)なんとなくそんなイメージが浮かんできます
333投稿者:tatu  投稿日:2008年02月01日(金)00時41分27秒
追記
おそらく、「肥満体の子はファーストなのでは」と予想しています。
それとキャスト漏れしている。拓巳、ライアン、一磨、裕太も出てくれることを祈っています。
その時は、拓巳は左利きなので頭の隅に入れておいてもらえれば幸いです。
334投稿者:瀬南が泣き虫だけど正論を言ったり  投稿日:2008年02月01日(金)09時16分06秒
聖斗がちょっと理論的に話をすすめたりするのがらしい。
しょうもない話だけど裸眼聖斗と望を鉢合わせさせてほしいww

肥満少年ってだれだ?
最初翔太かなって思ったけど…
335投稿者:肥満少年は少年A  投稿日:2008年02月01日(金)11時47分31秒
 
336投稿者:リリーさんって  投稿日:2008年02月01日(金)17時58分18秒
戦士のことはひどく言ったりしないよね
337投稿者:更新そろそろ  投稿日:2008年02月01日(金)21時03分54秒
あげ
338投稿者:リリー  投稿日:2008年02月01日(金)21時10分41秒
肥満少年は、誰でもないんです
その他大勢、という扱いです
たしかに、私が新人男子を書くのは珍しいかもしれませんね
その中で、やはり聖斗が断然、書きやすいです
334さんの言うとおり、私も聖斗と望は似てると思います
キャラクターは全然違いますが…
チャランポランな兄に、しっかり者の弟って感じで話しができそうですね

takuさん、すみません、登場人物表にない戦士の出演は、いまのところ考えてません
たしかに、太った人はキャッチャーよりもファーストをやる場合が多いですよね
動きが緩慢な外国人選手は、皆ファーストですね
基本、ファーストは受身なポジションですからね

では、更新します
339投稿者:リリー  投稿日:2008年02月01日(金)21時12分01秒
「ええか!?メガネ少年!ミット、動かさんとき!そこに向かって投げるさかい!」
七海は、聖斗に向かって叫ぶ。
藍は、七海に対してバットを垂直に向け、右袖をチョイと触れる。
「へん!イチローのマネなんかしても、打てへんで!!」
七海は、大きく振りかぶる。
「がんばれ!!あい〜ん!!」
「ホームラン、打っちゃえ!!」
「そんな変な女、やっつけろ!!」
少年達は、口々に藍に声援を送る。
いや、半分は、七海に対する罵声だった。
「何や…。超、アウェーやんか…」
甲子園球場で投げるハメになった、阪神以外のチームのピッチャーの心境は、こんなだろうか…。
七海は身体中をバネにして、投げた。
決して虚言ではない、剛速球が藍に迫る。
「わ!?」
藍の頭のすぐ上を、球は通過する。
藍は、背中から地面に落ちた。
340投稿者:リリー  投稿日:2008年02月01日(金)21時14分13秒
「し、しもた!!」
七海は、舌を出して、自分の太ももを叩いた。
「わ!大丈夫!?あい〜ん!!」
「ワザとやったな!?きたねぇぞ!!」
少年達は、ビンボールを投げた七海に、ブーイングする。
「何や!!ゴルァ!!文句あんのかい!?」
七海は少年達に向かって怒鳴り散らした。
「か・え・れ!!か・え・れ!!」
七海に対する「帰れコール」…。
七海は、すっかりヒールになった。
「いいよ!みんな、落ち着いて!!」
飛んだヘルメットを、被り直しながら、藍は立ち上がった。
「確かに、剛速球だね…。でも、コントロールに難ありって感じ?もう少し球威を抑えたら?」
藍は、七海にアドバイスを送る余裕を見せる。
「何で、上から目線やねん!!」
七海は、怒り狂った。
「藍さん…。僕、とてもじゃないけどあんな球、受け止めることは…」
聖斗の、キャッチャーマスクの下の顔が青褪めている。
「大丈夫!ストライクゾーンに来たボールは、私がなんとかバットに当てるから…」
藍は聖斗にウィンクすると、また右袖を摘んで、バットを構えた。
341投稿者:リリー  投稿日:2008年02月01日(金)21時16分03秒
「く…!確かに…スピードを追求すると、コントロールがおろそかになるな…」
七海は歯軋りするが、結局は藍のアドバイスを参考にする。
そして、今度は振りかぶることなくセットポジション…一つ息をつく。
「ま、相手は素人や…。スピードを落としても、通用するやろ…」
聖斗の構えるミットに正確に飛ぶように、七海は先ほどの球より少し球威を落として投げ込んだ。
パキーン…!
乾いた音が、鳴り響いた。
「…へ?」
七海は、白球の行方を目で追った。
「やった〜!!」
少年達の歓声が聞こえる…。
「やば…。ウチ、打たれたんか…?」
舐めていた…。エースはともかく、四番と言う言葉に嘘はなかったようだ。
「オノレ!!負けてたまるかい!!」
七海は、その打球の行方を懸命に追い駆けた。
342投稿者:リリー  投稿日:2008年02月01日(金)21時20分39秒
「え…?」
今度は、藍が呆気にとられた。
「何…しようとしてんだ?あの女…」
もの凄い勢いで、打球を追い駆ける七海の背中を見送る少年達。
「うおおおお〜〜〜!!!」
七海は絶叫した。
目測を誤ってはいけない!
打球はゆっくりと落ち始める。
上ばかり見上げていた七海は、人の気配に気付く。
そこは、もう既に隣のグラウンドだった。
大人の草野球チームの、外野守備の者が七海の目の前にいた。
「うわわ!!おっちゃん!!どいて〜〜〜!!!」
「へ?」
中腰で守備体勢をとっていた、30代後半のその男は、思わず振り向いた。
髪の長い少女が、自分の頭の上を飛び越えた。
前転しながら着地する七海。
そして、また全速力で走り出す。
もうすぐ、球は地面に落ちる。
七海は滑り込みながら、目一杯、グローブをはめた左手を伸ばす。
そのグローブに、白球はスッポリと納まった。
343投稿者:リリー  投稿日:2008年02月01日(金)21時23分02秒
「やったで〜〜〜!!!捕ったどぉぉぉ〜〜〜!!!」
七海は、ボールの納まったグローブを高く掲げ、遙か遠くの藍達に向かって雄叫びを上げた。
草野球をやっていた大人達は、自分達の試合をそっちのけで、七海に拍手喝采した。
「………いや…捕っても、あの距離じゃ、ホームランなんだけど…」
藍は、頭を掻いて呟いた。
少年達は、ポカンと口を開けて、七海を見る。
「バカだ…。あの女…」
藍は、ニヤリと笑う。
「でも…凄い!!ななみん…!!」
彼女の胸が、高鳴った。
こんなとてつもない女と、一緒に野球ができるかもしれない…。
「絶対に、立ち上げるぞ!!聖テレ野球部…!!」
梨生奈とエマも、今の勝負を見て少なからず興奮した。
「へぇ〜…。やるじゃん!細川…!それに、七海…」
「これだったら…ちょっと、やってみたいかも…。野球…!」
そして、投打交代…。
今度は、七海が藍の投げる球を迎え打つ。
344投稿者:リリー  投稿日:2008年02月01日(金)21時28分29秒
短いですが、今日はこれでおちます
345投稿者:七海すごい!  投稿日:2008年02月01日(金)21時31分01秒
ところで隣で草野球やってた中にレッドさんがいるのかな?
いたらかなり面白いことになるなww
346投稿者:月鮫  投稿日:2008年02月01日(金)21時33分25秒

七海…、ホームランの球を捕るなんて…。凄いですね、やはり。
試合そっちのけで七海に拍手を送る草野球の大人達…笑
梨生奈とエマも少なからず興奮したということは、少しやる気がでたかなーと思うので、聖テレ野球部、楽しみですね。
347投稿者: 投稿日:2008年02月01日(金)21時33分54秒
  
348投稿者:楽しみだなー野球部  投稿日:2008年02月01日(金)21時52分53秒
有海や他のメンバーもどんな風にかかわってくるのか
349投稿者:117  投稿日:2008年02月01日(金)22時50分47秒
七海、すごいなぁ!打球を取るシーンは、かなり迫力があります。
次は七海の番ですね。藍の実力やいかに・・・?
350投稿者: 投稿日:2008年02月02日(土)16時08分15秒

351投稿者:リリー  投稿日:2008年02月02日(土)20時59分11秒
ホームランの球を捕るというのは、昔のアニメ『アパッチ野球軍』をビデオで見たことがあって、それをヒントにしてます
そのアニメでは何故かアウトになってましたけど

野球対決にも注目して頂いて、嬉しいかぎりです

それでは、更新します
352投稿者:リリー  投稿日:2008年02月02日(土)20時59分59秒
藍はリュックから、自分のグローブを取り出す。
そして、そのグローブを右手にはめた。
「む?サウスポーか?」
七海の呟きに、藍はニッコリ微笑み、ピンクレディーの『サウスポー』を口ずさみながらマウンドへ向かう。
七海は『六甲おろし』を口ずさみながら、ヘルメットを被り、右バッターボックスに入る。
さっきの勝負は、藍のホームランで七海の負けだが、あの打球に追い着いた彼女の瞬発力と運動神経に、野球少年達は驚愕していた。
「なんや?ブーイングはせんのかい?」
七海に挑発された少年達は、思い出したかのように七海に罵声、藍に声援を送る。
「ここでホームランを打たないと…あなたの負け、決定ですよ?」
キャッチャーの聖斗が、七海に話しかけた。
「あん?何言っとんねん!打つに決まっとるやん!ま、打ったとしても、引き分け止まりやけどな…」
「藍さんの球を打つなんて、男でも大変ですよ?あなたに打てますかね?」
「何や?ウチのさっきのスーパーファインプレイ、見てなかったんかい?」
「見てましたよ。まったく、無駄なプレイでしたけど…それなりに驚きました。でも、バッティングはどうでしょうかねぇ…」
「あんた…さっきから、その囁き戦術…ノムさんかい!!」
「ノムさん?楽天の野村監督ですか?僕の尊敬する古田監督の師匠ですよね?」
「あんた…嬉しそうやね…」
七海は、藍の方を向き直る。
藍は、肩をグルグル回している。
本当に楽しそうだ…。
353投稿者:リリー  投稿日:2008年02月02日(土)21時00分27秒
「じゃあ、行くよ!!」
「おう!!来いやぁ!!」
藍は、セットポジションをとる。
(キャッチャーは聖斗だからね…。あんまり、思いっきり投げるわけにもいかないから…80%くらいで…)
藍は、聖斗のミットに向けて、ストレートを投げ込んだ。
パキーン…!
「え?ウソ!?」
藍は、思わず天を仰いだ。
少年達の悲鳴があがる。
しかし、七海の打球は左に反れ、川面に落ちて、波紋を広げた。
「ああ!クソ!!ファールかい!!」
七海は、バットを叩きつけた。
藍は、そんな七海をマジマジと見る。
「う〜ん…。バッティングも…凄いわね…」
そう…彼女と野球ができたら…どんなに素晴らしいことだろう…。
藍は、嬉しくて、嬉しくて、踊りだしたい気持ちになった。
それとは対照的に、聖斗は心配そうにこちらを見詰めている。
「聖斗!!こっち来て!!作戦タイム!!」
藍は、大きな手振りで聖斗を手招きした。
354投稿者:リリー  投稿日:2008年02月02日(土)21時00分56秒
「ケケケ…。あんた等のあい〜ん先生、相当焦ってるみたいやねぇ…」
「まさか…。いつも通りの藍さんですよ…」
そう言いながらも、聖斗は藍の元に全速力で駆けつける。
「藍さん…」
「大丈夫!平気、平気!!ちょっとビックリしたけどね…」
藍は、満面の笑顔を見せる。
「あんたの方が顔色悪いよ?大丈夫?」
そう言って、聖斗の肩に手を置く。
「ぼ、僕は、大丈夫です…」
聖斗は、どぎまぎしながら答えた。
「で…あんたを呼んだのはね…。聖斗、カーブ投げるけど…捕れるかな?」
「え?カ、カーブ…ですか?」
「あんただから、頼んだんだけど…。無理だったら言ってね?」
「だ、大丈夫です!!死ぬ気で捕ります!!」
「別に、死ぬ必要ないから!!」
「いいえ…!!あんな、変な女に、藍さんを負けさせるわけにはいきません!!」
「ちょっと…!変な女って言わないでよ。私の友達なんだから…」
「す、すいません…」
聖斗は、力なく頭を下げて謝った。
355投稿者:リリー  投稿日:2008年02月02日(土)21時01分26秒
「いいよ、いいよ。聖斗、頼りにしてるからね!」
手を差し出す、藍。
聖斗は、遠慮がちにその手を握った。
「お!?何だ!?その、汚いモノに触るような握り方は…!!」
「そ、そんな…!汚いなんて…」
顔を真っ赤にして否定する聖斗。
すると、七海の怒鳴り声が聞こえた。
「おおい!!いつまでコソコソやっとんねん!!はよ、してや!!」
「う〜ん…うるさいヤツめ…!さ、聖斗、戻って、戻って」
「あ…はい…!」
駆け足で戻って来た聖斗は、七海を睨みつけた。
「お?何や?そないな目で睨んだって、ウチは手加減せぇへんよ」
何も言わずに、聖斗は構える。
聖斗は、絶対にこの勝負、藍に勝たせたかった。
初恋の人に…。
356投稿者:リリー  投稿日:2008年02月02日(土)21時01分54秒
バットを構える七海。
今度は大きく振りかぶる藍。
そして、投げる。
先ほどより、球威の落ちた球が迫る。
「お?絶好球や!!」
七海は、バットをフルスイングした。
しかし、球は大きく外角へ逃げる。
「へ?」
七海のバットは、空を斬る。
聖斗は、身体を覆い被さるように、その球を捕る。
「やったぁ〜〜〜!!!」
少年達は、大歓声を上げた。
「まだや!!まだ、ツーストライクやんけ!!」
七海の声も、歓声に掻き消される。
「ナイスカーブ!!藍さん!」
聖斗は、藍に声をかけて、返球した。
「カーブ…?変化球やと?何や!!セコイ手使いおって!!藍のヤツ、キンタマついとんかい!!」
「いえ、いえ…無いですよ…。藍さん、女性ですから…」
「わかっとるわい!!冷静に突っ込まんといてくれる?」
七海は、苛つきながらバットを構える。
357投稿者:リリー  投稿日:2008年02月02日(土)21時02分30秒
(し、しかし、厄介やなぁ…。まさか、カーブを放れるなんて…。追い込まれてしもうた…)
次はストレートが来るのか?それともカーブか?
これでは、どんな球でも喰らいついてバットに当てるしかない。
「あと一球!!あと一球!!」
少年達が声を合わせる。
梨生奈とエマは、遠巻きから勝負を見守っている。
「ねぇ…。これは、つまり…七海が負けそうだって…こと?梨生奈…」
「どうやら、そのようね…」
「でもさぁ…。私達の動体視力だったら、簡単に打てそうだけど…」
「あそこに立ったら…意外と難しいんでしょうね…」
梨生奈は、自分もやってみたくなってしょうがない感情を抑え込んでいる。
「あ…!細川、投げた!」
勝負がつくのか…?
パキーン…!
また、ボールは川の方へ飛んで、ファールになる。
「なんだ…。またかよ…」
エマは、腰を降ろした。
358投稿者:リリー  投稿日:2008年02月02日(土)21時03分14秒
藍が投げる。七海が打つ。…球は川へ…。
藍が投げる。七海が打つ。…球は川へ…。
藍が投げる。七海が打つ。…球は川へ…。
「ねぇ…梨生奈…。これ、いつまで続けるの?」
「………さぁ………」
藍が投げる。七海が打つ。…球は川へ…。
藍が投げる。七海が打つ。…球は川へ…。
藍が投げる。七海が打つ。…球は川へ…。
「なぁ…。もう、仕事の下見に行かない?こんなの見てても、きりが無いし…」
「うん…。野球って…つまんないね…」
梨生奈とエマは、ゆっくり立ち上がると伸びをして、堤防を登っていく。
何回目かの打球の音と川にボールが落ちる音を、2人は背中で聞いた。

(『四回・表』・・・終了)
359投稿者:リリー  投稿日:2008年02月02日(土)21時03分43秒
それでは、今日はこれでおちます
360投稿者:117  投稿日:2008年02月02日(土)21時06分28秒
藍は「サウスポー」を歌うのに対し、七海は「六甲おろし」(笑)。面白いです。
聖斗の初恋相手は藍というのは、なかなか珍しいパターンですね。
野球に少し興味を持ったと思われた梨生奈でしたが・・・結局、勝負はついたのでしょうか?
続いては、「裏」ですね。今後の展開が楽しみです!
361投稿者:聖斗のキャラ  投稿日:2008年02月02日(土)21時21分36秒
クールに見えるけど実は一生懸命な感じがよく描けてるなぁリリーさん
362投稿者:月鮫  投稿日:2008年02月02日(土)21時30分35秒
聖斗の初恋が藍!なんか、いいですね…。
七海もやりますねー。
いい勝負じゃないですか!!
聖斗をはじめ、男子の新人戦士と七海のやりとりが見られるのは、
普通は無いことなので、面白いですね。
363投稿者:七海はテツにちょっと似てますね  投稿日:2008年02月02日(土)23時50分21秒
内心焦ってるところとか
364投稿者:アパッチ野球軍  投稿日:2008年02月03日(日)00時34分03秒
http://www.youtube.com/watch?v=GpnOaGTRa5c
しかし、なんてものまでチェックしてんだww

ホームランの球をキャッチってたしかモンキーでしたっけ?
ウキー!ウキー!って得意気に喜んでたけどホームランだろう・・・と
365投稿者:tatu  投稿日:2008年02月03日(日)02時49分02秒
左投手と右打者の場合、カーブは膝元をえぐる形になります。
今回の表記だと球種的にはスクリュー(右投手のシンカー)になりますのであしからず、
ちなみに、私は大文字でTATUと書いてます。藍みたいにあだ名でTAKUと書いているのかわかりませんが…
366投稿者:惜しいとしか  投稿日:2008年02月03日(日)02時52分11秒
言いようがないんだよな・・
367投稿者:tatu  投稿日:2008年02月03日(日)03時40分02秒
本題をいうのを忘れていました、やはり臨場感があるというか、テレビで見ているみたいな感じでとてもおもしろいです。

368投稿者:詳しい方  投稿日:2008年02月03日(日)03時42分01秒
代表的な球種を投手側から見て内と外に分けてくれませんか
369投稿者:tatu  投稿日:2008年02月03日(日)07時33分03秒
左右共通の変化球、下に落ちるのがフォーク、上に伸びてくるのがジャイロボール
左ピッチャーの場合
右に曲がっていくのがスライダー、右斜め下がカーブ、左に曲がっていくのがシュート、左斜め下がスクリュー(右ピッチャーの場合シンカー)、
右ピッチャーの場合左右が逆になる。
370投稿者:聖斗可愛い!  投稿日:2008年02月03日(日)09時21分03秒
>「お!?何だ!?その、汚いモノに触るような握り方は…!!」
>「そ、そんな…!汚いなんて…」
>顔を真っ赤にして否定する聖斗。

あーぁ 梨生奈とエマまた野球に興味なくなっちゃった……。
371投稿者:左スクリュー右シンカーというのは誤った認識らしいです  投稿日:2008年02月03日(日)10時50分03秒
左投手から
右系がスライダー、カーブ
左系がシュート、スクリュー、シンカー
らしいですよ
372投稿者:左スクリュー右シンカーというのは誤ってませんよ  投稿日:2008年02月03日(日)19時10分44秒
>369
上に伸びてくるのがジャイロボールというのは間違ってます
ジャイロボールも落ちます
373投稿者:左右反対なだけで名前が違うのはおかしい  投稿日:2008年02月03日(日)19時16分15秒
 
374投稿者:リリー  投稿日:2008年02月03日(日)21時18分26秒
tatuさん、すみません、名前間違えてましたね
単純な見間違いです
これからは気をつけます
藍のカーブについても、うっかりしてました
途中で藍が左利きということを思い出し、書き直しましたが、曲がる方向は書き直すのを忘れました
球種って、うろ覚えだったり、思い込みだったりして、間違えることがこれから起こるかもしれません
その時は、ご指摘をお願いします
その他の皆さんの提示してくださった変化球のデータ、大変参考になります
ありがとうございました

364さん、『アパッチ野球軍』、ありがとうございました!!
また、あのOPとEDを見られるとは思いませんでした
網走って、あんなに顔、恐かったんでしたっけ?
『グラスラ』は、『アパッチ野球軍』の美少女版って感じで書いたものなんです

聖斗は、クールに見えて、意外と涙脆かったり、熱くなったりと、そういう所が魅力ですね

では、更新します
375投稿者:リリー  投稿日:2008年02月03日(日)21時19分21秒
『四回・裏』

≪2007年5/6(日)≫
〔オイ、コラ!『ムーン・ライト』!今、どこにおんねん!!よくもウチを置いてったな!?〕
午後5時…七海から梨生奈への、怒りの電話がかかってきた。
「どこって…下ノ国町のラブホテル、『アンダー・キャッスル』の前よ…」
〔ウチを置いて、何で先に行くんや!!〕
「『キラー・タイガー』が悪いのよ。いつまで経っても、勝負が終わらないんだもん…」
エマが、梨生奈の携帯をとる。
「で、どうだった?勝負は勝った?」
〔あん?いいや…ボールがのうなってしもうて…引き分けや…〕
「ボールがなくなった!?一体、どんだけ投げて打ったの?あんた達…」
〔う〜ん…50球までは、数えてたんやけどな…〕
「50球…。よくやるね…あんた等…」
エマは呆れて、携帯を梨生奈に返した。
376投稿者:リリー  投稿日:2008年02月03日(日)21時20分04秒
携帯を受け取る、梨生奈。
「つまり…全部球を川に落とした…て、こと?」
〔そうやな。絶対に負けとうなかったもん!!〕
「負けたくないって…引き分けなら、あなたの負けじゃない?」
〔何で?〕
「だって…あなた、細川さんにホームラン打たれてるんだから…一敗一分けで、あなたの負け越しよ?」
〔………ええねん!!細かいことは!!〕
「…ま、いいけど…。すぐに来れるんでしょ?」
〔う〜ん…。もうチョイ待って!〕
「もう少し?」
〔川に落ちたボール…今、みんなで川をさらって探しとんねん〕
「そ、それはどうでもいいから、早く来なよ!!」
〔そうしたいんやけど…帰ってええか?って聞いたら、藍のやつ、ごっつ怒るんよ…〕
「………ダーさんに怒られるのと、どっちがいい?」
〔………あと30分ほどで、そっち行くわ…〕
七海からの、通話は切れた。
377投稿者:リリー  投稿日:2008年02月03日(日)21時20分52秒
結局七海は、6時に、ラブホテル『アンダー・キャッスル』に到着した。
「いや〜、まいった…。結局、こっそり抜け出してきたわ…。明日、藍に怒られるの、覚悟せんとな…」
その七海の姿だが、膝までジーンズを捲くり上げ、それでも尻まで濡らしていた。
そして、裸足に直接スニーカーを履き、両手には濡れた靴下を持っている。
「仕方ないわよ…。だって、私達が探偵やってるなんて…言えるはずないもの…」
梨生奈は、七海の姿に笑いそうになりながら言う。
「しかも…ヤクザの拉致事件を追ってるなんてな…」
エマは、ラブホテルを見上げる。
12階建ての大きなビル。
これが、ラブホテル『アンダー・キャッスル』。
七海にとっては、苦い思い出の場所だ。
あの堤防の公園を、エマが嫌がっていた気持ちもわかる。
今回の依頼人、浜津の顔を見てから、気分が悪い。
別に、浜津の顔が好みではない、というわけではない。
浜津と会った、このラブホテルで…七海も戦いに敗れたからだ。
しかも、梨生奈やエマの様に、『TTK』最強の四天王の一人、ダーブロウ有紗と戦って敗れたわけではない。
次期社長となる、村田ちひろに敗れた…。
当時、素人の中学生だった、ちひろに…。
七海にとって、初陣でもあり、屈辱にまみれた一戦であった。
しかし、その後ちひろは、同じく四天王のジャスミンや加藤夏希といった『戦士』を分殺している。
だから、決して七海の敗戦は有り得ないことではないのだが…。
378投稿者:リリー  投稿日:2008年02月03日(日)21時22分21秒
「こんばんわ…」
梨生奈とエマ、そして七海の『Aチーム』の3人は、フロントに声をかけた。
「あ…ようこそ、いらっしゃい…あれ?お嬢ちゃん達…何の用かな?」
出てきたのは、今回の依頼人…聖テレジア女子学園中等部2年生、伊倉愛美の父…なすびこと、浜津だった。
娘の愛美と苗字が違うのは、既に2人は親子関係にないことを表している。
「私達…『R&G探偵社』の者です」
梨生奈は名刺を出した。
『R&G探偵社・?11・【TEAM−R】・木内梨生奈』
「…?え?き、君達が…?」
「はい、私もそうです」
エマも名刺を出す。
『R&G探偵社・?10・【TEAM−E】・近藤エマ』
「ウチも…」
七海もそれに倣う。
『R&G探偵社・?14・【TEAM−N】・藤本七海』
浜津は、3枚の名刺を手に取って、少女の顔を見る。
皆、自分の娘と同じ様な年齢の…中学生ではないか…。
「だ…大丈夫なの…?君達みたいな…」
「皆さん、そうおっしゃいます」
梨生奈は、今まで何度となく向けられた、疑いの眼差しをいなしながら言った。
379投稿者:リリー  投稿日:2008年02月03日(日)21時23分10秒
「ご心配はもっともですが、腕は確かですから…。」
「あ…はい…。でも…本当に、私達親子の身の安全は保障してくれるの?」
その言葉に、七海は腹が立った。
「何、言うてんの!!外国に拉致された女の子は、もっと不安な気持ちになってんで!?」
七海は、フロントのテーブルを叩いた。
「…ん?き、君…俺と会ったこと…ない?」
浜津は、七海の顔をマジマジと見る。
「え…?あ…な、無いよ!!ここ、ラブホやろ?ウチ、初めて来たもん!」
七海はそう言ってごまかした。
ダーブロウ有紗は、何で自分をここに寄越したのだろう…。
絶対に、適材じゃない…。
「と、とにかく…私達に一室を貸して下さい…。今日は下見に来たんです」
梨生奈は、七海を隠すように前に立った。
「は、はい…。もうすぐ、例の連絡が入る頃です」
「あったとしても、今日は私達、手を出しません」
「そ、そうなの?」
「悪の大元は加藤組…。ここで末端の小悪党を捕まえても、意味がありませんから…」
「…末端の小悪党…ね…」
この落ち着き払った、少女達の態度を見て、浜津は密かに期待をした。
380投稿者:リリー  投稿日:2008年02月03日(日)21時23分56秒
七海と梨生奈は、7階の2号室に通された。
その隣の7階の1号室が、女性客の拉致に使われている部屋なのだ。
7階の1号室の窓には、隣のビルの屋上が目の前にある。
そこから、女性を運び出し、他所に連れて行くのが、やつ等の手口なのだ。
フロントでジャンケンをして負けたエマは、その隣のビルの屋上に行くことになった。
しかし、七海が負けても、エマに頼み込んで代わってもらうつもりだった。
なぜなら、ボールを探す為に川に入った七海は、部屋にある風呂に入りたかったからだ。
「梨生奈、お風呂入ってもええ?」
「しょうがないわね…。でも、ゆっくりできないわよ?」
「わかってるって!」
七海は、濡れて気持ちが悪いジーパンを素早く脱ぎ、他の衣服もポイポイと絨毯の上に投げる。
そして素っ裸になって、何もかも透明なバスルームへ駆け込んだ。
381投稿者:リリー  投稿日:2008年02月03日(日)21時24分11秒
シャワーを浴びる七海。
この、アクリル張りのバスルーム…。ケバケバしい模様の壁紙…。円形のベッド…。天井のミラーボール…。
何もかもが、あの時と同じだ。
そして…ここで…七海は戦いに負けた…。
恐怖のあまり、失禁した…。
ここの…バスルームで七世に身体を洗ってもらった…。
透明の壁から、梨生奈を見る。
彼女のパートナー…羅夢には、絶対に知られたくない過去だ。
梨生奈は、携帯をかけている。
どうやら、ダーブロウ有紗に経過報告をしているのだろう。
382投稿者:リリー  投稿日:2008年02月03日(日)21時24分39秒
今日は、これでおちます
383投稿者:117  投稿日:2008年02月03日(日)21時26分24秒
『裏』の物語、始まりましたね。
ていうか、「野球対決」・・・50回くらいも、やったんですね(笑)。
いよいよ「ヤクザ」との対決へ・・・?続きも楽しみです。
384投稿者:サムドラ  投稿日:2008年02月03日(日)21時38分59秒
懐かしいなぁ
385投稿者:七海と藍の関係はちょっといいですね  投稿日:2008年02月04日(月)00時49分34秒
好きですこの関係
386投稿者: 投稿日:2008年02月04日(月)02時56分40秒

387投稿者:ありゃりゃりゃ  投稿日:2008年02月04日(月)09時15分17秒
七海達結局引き分けだったんだ……。
でも梨生奈の言うとおりこれじゃ七海の負けだし おまけに球拾いサボったら分が悪いし……。
どーなることやらww
388投稿者: 投稿日:2008年02月04日(月)15時24分12秒

389投稿者:ちひろに負けた屈辱を引きずってるのが  投稿日:2008年02月04日(月)19時58分15秒
気になるです
390投稿者:リリー  投稿日:2008年02月04日(月)21時09分51秒
『一七』での藍と七海の関係を、もっと書いてみたかったんですよね
藍は中盤より意識不明でしたから
2人の関係を好きと言ってくださると嬉しいです
サムドラを未読な方で、エピソードのわからないことがありましたら、遠慮なく言ってください
補足説明させてもらいます

では、更新します
391投稿者:リリー  投稿日:2008年02月04日(月)21時13分19秒
一方…中村有沙、羅夢、エリーの『Bチーム』の3人は、天歳市の中心地の駅前繁華街にある、高級ホストクラブ『9×9(クック)』の下見に来ていた。
店の看板には、ホスト達の顔写真が貼られている。
ここは、何故か『軍曹』、『中尉』、『大佐』など、軍隊の階級がホスト達につけられている。
人気があるホストに、高い階級が与えられるのだろう。
そして…最高位…『元帥』の階級を持つ…楠本柊生…この男こそ、この店の店長であり、最高責任者と紹介されている。
眼光鋭い、この楠本という男…金髪で、ビジュアル系バンドマンのような恰好をしているが、実際は30代半ばくらいの年齢のようだ。
ここは、『アンダー・キャッスル』の浜津のような、内部精通者がいない。
ましてや、未成年の3人は、店内に入るわけにはいかない。
3人の少女は、目の前のバーガーショップの窓際のカウンター席で、店の様子を窺う。
「まったく…。ここは、成人しているジャスミンやデカアリが潜入するべきではないのか?」
中村有紗は、コーヒーをすすりながら文句を言っていた。
「店内に入る必要はないのよ。重要なのは、ここから『アンダー・キャッスル』までの経路だもん」
エリーも、退屈そうに頬杖をつきながら、店を眺めている。
392投稿者:リリー  投稿日:2008年02月04日(月)21時15分04秒
「あ〜あ…。私、一度ホストクラブって所、見学したかったなぁ…」
「エリー、貴様は人に惚れやすい。だから、ホストに貢ぎ捲くって、尻の毛まで毟り取られるのがオチだ」
「お尻に毛なんて、生えてないよ!!」
「比喩表現だ。それから…あまり血気はやるな。今日はやつ等が動き出したとしても、何もしなくていいからな…」
「うん。それはわかってる。武器も持ってないしね…」
「なんだよ…。武器、持って来てないのか?」
ハンバーガーを頬張っている羅夢が、口をモゴモゴさせながら言う。
「ええ?羅夢、ヌンチャク持ってきたの?」
「ああ…。アタイは、いつも持ち歩いているぜ。今もバッグの中に入ってる」
そう言って、足下のバッグを爪先で突いた。
「ふ〜ん…。私のボウガンや、チビアリの鎖鎌と違って、コンパクトに持ち歩けるのが利点よね」
「おい…羅夢…。釘を刺しておくが…今日は、何も手を出すなよ?ただ、見るだけだぞ…」
中村有沙は、睨みつけながら羅夢に忠告した。
393投稿者:リリー  投稿日:2008年02月04日(月)21時15分18秒
「はい、はい…。わかりましたよ…。リーダー様…」
気の無い返事をして、羅夢は席を立つ。
中村有沙は羅夢の方ではなく、ホストクラブを見据えながら聞いた。
「おい。どこへ行く気だ?」
「トイレだよ!」
エリーは、咄嗟に羅夢の袖を掴む。
「ちょっと!もし、今ヤツ等が動き出したら、どうするの?」
「貴様、さっきからバカスカ食っているからだ」
「ウンコじゃねぇよ!!」
羅夢は、エリーの手を振り払い、中村有沙に怒鳴りつけると、トイレへ向かう。
394投稿者:リリー  投稿日:2008年02月04日(月)21時17分40秒
中村有沙は、羅夢の後姿をガラスに映して見ながら、溜息をつく。
「まったく…デカアリめ…。チームシャッフルなどと言い出しおって…!しかも、何で私がリーダーなのだ?」
「一番年上だからでしょ?」
「年功序列か…?だったら歳など、とりたくないものだ…」
「年上だけってわけじゃないでしょ?6人の中では一番強いし…一番頭も良いし…」
中村有沙は、エリーを横目で一瞬見る。
「私がリーダーだからと言って、媚びへつらう必要はない」
「………一番、性格悪いし…」
「よし、それでいい…」
「でもね…。私は、あなたのこと尊敬してるんだよ?」
「尊敬?」
「うん」
「貴様は、尊敬している人間に毒矢を喰らわせるのか?」
「…う…。覚えてる…」
「当然だ!!貴様のおかげで生死を彷徨ったぞ?」
「やっぱり最悪だ…」
エリーは苦笑しながら、天井を仰いだ。
395投稿者:リリー  投稿日:2008年02月04日(月)21時18分39秒
「エリー…。無駄話は終わりだ」
「…!?」
中村有沙の言葉に、エリーは、ホストクラブに視線を戻す。
黒いバンが、店の前に着く。
そう…いつも黒いバンが、借金苦の女性客をラブホテルに連れてくる…これがなすびこと、浜津からの情報だ。
そして、店から長い茶髪のホストと、メガネをかけた地味な女性がその車に乗り込んだ。
「チ、チビアリ…!あ、あれが?」
「行くぞ!!」
中村有沙は、席を立つ。
「ら、羅夢は?」
「置いていく!!」
もう既に、中村有沙はバーガーショップの外に出て行ってしまった。
「もう…!羅夢、怒るだろうな…」
エリーも、後を追って外へ出る。
2人は、駐輪場に止めてあるマウンテンバイクに跨って、バンを追い駆ける。
一台、マウンテンバイクが残されたが、それは羅夢の物だ。
396投稿者:リリー  投稿日:2008年02月04日(月)21時20分00秒
ホストと女性客を乗せたバンは、下ノ国町とは逆方面に向かっている。
自転車で、着かず離れず尾行する中村有沙とエリー。
エリーは、中村有沙のすぐ横に着く。
「チビアリ…!あの車…下ノ国町と全然違う方へ行くよ!」
「うむ…。このままでは、隣の小蓮田市に行ってしまうな…」
「もしかして…勘違い?」
「それか…フェイクかも…。エリー、羅夢に電話をかけろ。引き続きバーガーショップで張り込みをしろ、と」
「うん…!あれ?あ…羅夢からだ…」
エリーの携帯に、羅夢から着信が来る。
397投稿者:リリー  投稿日:2008年02月04日(月)21時20分15秒
自転車に乗りながら、エリーは携帯に出る。
たしか、自転車でも運転中の電話は罰則の対象になるのだが、今はそんなこと、気にしていられない。
「もしもし。『ライトニング・ボルト』?」
〔コラァ!!『ビー・アタック』!!今、どこにいるんだよ!?よくも、アタイを置いていったな!?〕
「置いていったのは、『アンダー・クイーン』だよ!」
〔チ…!やっぱり…。で、今どこだよ?今から全速力で追い着くから!〕
「いい!そこにいて!!引き続き張り込みお願い!!」
〔ああ!?どういうことだ?〕
「もしかしたら、私達、空振りしたのかもしれない…!本命は、まだ店の中かも…」
〔へへへ…!これはリーダーの判断ミスなんじゃないの?〕
勝ち誇った様に笑う羅夢。
「ち…!」
電話の声が聞こえているのか、前方を走る中村有沙が、舌打ちをした。
398投稿者:リリー  投稿日:2008年02月04日(月)21時21分15秒
とりあえず、店の方は羅夢に任せておくことにした。
「しかし…心配だ…。あいつ一人に任せておくなんて…」
そう呟く中村有沙を見て、エリーは横目で見て微笑んだ。
「何だ?」
エリーの表情の変化に、目敏く反応する中村有沙。
「いや…。あなたが羅夢のこと心配するなんて…。リーダーを任されて成長したのかなって…」
「バカを言うな!!あいつが余計なことをすれば、私がデカアリに小言を言われるのだぞ?」
「あ…!チビアリ!車、左折したよ!」
中村有沙が前を向き直った時、既に黒いバンを見失っていた。
「貴様が、くだらんことを言うからだ!」
「はい、はい。すみません…」
2人が急いで左折すると、また標的の車が左折をするところだった。
「む?やつら…どこに行く気だ?」
「これじゃあ、また天歳駅の方に戻っちゃうよね?」
「追い駆けるぞ」
車は狭い道を通ったり、大通りに出たり、一見脈絡の無い経路で進んでいく。
「一体、何をしたいのだ…?あいつら…」
「もしかしたら、私達の尾行がバレたんじゃない?」
「私達?バレたとしたら、それはおまえのヘマだ」
「………その発言…リーダーとして、どうかと思う…」
「だから言ったではないか。私にリーダーなど、ふさわしくない」
399投稿者:リリー  投稿日:2008年02月04日(月)21時22分31秒
今日は、これでおちます
400投稿者:117  投稿日:2008年02月04日(月)21時24分59秒
いよいよ、追跡のスタートですね。
果たして、有沙たちが追い掛けているのは、本物なのか・・・?
それにしても、責任を擦り付け合う2人が面白いです(笑)。
401投稿者:やっぱり  投稿日:2008年02月05日(火)00時23分37秒
Bチームの方が問題多そう・・・
402投稿者:やれやれ  投稿日:2008年02月05日(火)09時11分41秒
エリーとチビアリも問題アリですかw
だけど羅夢がいなくてよかったかも いたら大変な事になっていそうな気がするwww
403投稿者:デジ  投稿日:2008年02月05日(火)19時02分19秒
おひさしぶりです。
少し見ない間にずいぶん進みましたね。
なんか、コントみたいで面白いです。
404投稿者:リリー  投稿日:2008年02月05日(火)20時54分09秒
デジさん、お久しぶりです
また、よろしくお願いします

たしかに、Bチームの方が不安要素は多いですね
でも、梨生奈、エリー、七海と有沙、エマ、羅夢と分けても、やっぱり心配なわけで…

では、更新します
405投稿者:リリー  投稿日:2008年02月05日(火)20時55分34秒
そうこうしているうちに、車は天歳駅に戻ってしまった。
そして、茶髪のホストと女性客は車を降りると、駅へ入って行く。
「あれ?何で?駅に行くんだったら、どうしてあんなややこしい道を…?」
「しかも、電車でどこかに行くのか?う〜む…。アチコチ行ったのは、尾行をまく為だとは思うが…」
「でもさ…あのなすびのおじさんの話しじゃ、車でホテルまで送って行くって話しだよね?」
「………ハズレの臭いがプンプンするが…仕方がない!!2人を追うぞ」
「はい」
彼女達は、後を追う。
406投稿者:リリー  投稿日:2008年02月05日(火)20時55分46秒
追い着いた時は、ホストが切符を買った後だ。
「どこまで買ったんだろう?」
「終着駅まで買えばいい」
「終着駅って…新宿までで、一人1400円だよ?」
「貴様が払っておけ」
「………ほんと…リーダーとして…いや、先輩としてどうかと思う…。年下に払わせる?普通…」
「別に、先輩扱いしてもらわなくて結構だ」
「まったく…」
エリーは文句を言いながらも、券売機に並んだ。
「あ…!新宿方面に行くとは限らないよね?もしかしたら、反対の奥多摩方面に行くかも…」
「奥多摩の終着駅まで買えばいいではないか」
「それだと、一人2500円なんだけど…」
「貴様が払え」
「だよね…」
エリーは、文句を言うのも諦めた。
407投稿者:リリー  投稿日:2008年02月05日(火)20時57分50秒
ホストと女性客は、新宿方面のホームに立っていた。
女性客は、ホストをうっとりとした目で見詰めている。
もし、これから拉致されるとしたら…女性客にとっては、束の間の幸せだろう…。
「エリー…。今、気がついたのだが…」
「何?」
「とりあえず最寄り駅まで買っておいて、降りた駅で超過分を清算すればよかったな」
「………!!今更言わないでよ!!」
「私達は戦闘要員で、尾行は不慣れだからな…。世間を知らないと、損することが多い…」
「一方的に損をしたのは、私だけなんだけど…」
「いや、清算している隙に、やつ等を見失うことも有り得る。だから、これで良かったのだ」
「2人いるんだから、どちらか一方が後をつければいいよね?」
「…そうだな…」
特急電車が来た。
ホストは、その電車には乗らずにやり過ごす。
「特急に乗らないんだったら…やっぱり新宿まで買う必要、なかったじゃん!」
エリーは、地団駄を踏んだ。
特急電車は、虹守駅には止まるが、下ノ国駅には止まらない。
「やはり…やつ等の行き先は、『アンダー・キャッスル』のある、下ノ国町だ!」
「下ノ国駅だったら…一人280円で済んだよね?」
「もう、金のことは忘れろ」
中村有沙は、冷たく突き放した。
408投稿者:リリー  投稿日:2008年02月05日(火)21時00分24秒
結局、ホストと女性客は急行電車に乗って、下ノ国駅で降りた。
そして駅前ロータリーまで行くと、さっきの黒いバンが待っていた。
「あ…!さっきの車だ!」
「なるほど…。用心深い連中だ…」
「でも…!私達、自転車を天歳市に置いてきちゃった…!」
車は、ホストと女性客を乗せて出発する。
「あ!あ!…行っちゃう!!タ、タクシー!!」
慌てて右手を上げるエリーを制する、中村有沙。
「尾行の素人の運転では心もとない!走るぞ!」
「………はい…」
409投稿者:リリー  投稿日:2008年02月05日(火)21時00分37秒
今度は足で追い駆けることになった、中村有沙とエリー。
だが、今度は素直な順路でホテルまで向かうようだ。
「エリー!『Aチーム』に連絡しろ!もうすぐ、やつ等がホテルに着くと!」
「わかった!」
エリーは、走りながら携帯を取り出してかける。
〔もしもし?『ビー・アタック』?〕
「『ムーン・ライト』!今から、やつ等がそっちに行くよ!!」
〔…!わかった!ありがとう〕
「あ、それから…私達、ワケあって自転車を天歳駅に置いてきちゃったの。あなた達の自転車、貸してくれない?」
〔いいわよ。ホテルの裏通りに3台置いてあるから…。じゃあ、また後で〕
手短に通信を切り上げる。
車は、ラブホテル『アンダー・キャッスル』に到着した。
410投稿者:リリー  投稿日:2008年02月05日(火)21時02分26秒
ラブホテル『アンダー・キャッスル』702号室にいる梨生奈は、すぐに隣のビルの屋上で待機しているエマに連絡をする。
「『キャンディー・ボール』!『ムーン・ライト』よ!」
〔来るのか?やつ等が…〕
「そう!いい?そっちにもやつ等の仲間が来るかもしれない!くれぐれも見つからないでね!」
〔わかった!〕
梨生奈は、電話を切ると、バスルームに向かって叫んだ。
「七海!いつまでお風呂に入ってるの!やつ等、来たよ!!」
「…!?おっしゃ!!」
まるで映画女優のように泡風呂で足を突き出して遊んでいた七海は、透明なバスタブから上がると、素早く身体の泡を拭き取り、白いバスローブを羽織って出てきた。
梨生奈は、トランシーバーのスイッチを入れる。
浜津が、あらかじめ拉致の現場…701号室に盗聴器を仕掛けておいたのだ。
「今日、拉致の現場を押さえられたら、ラッキーね」
「なぁ…。梨生奈…」
「何?」
「今日、やつ等を捕まえれたら、それでええと思わん?」
七海は、服を着ながら梨生奈に聞いた。
411投稿者:リリー  投稿日:2008年02月05日(火)21時03分21秒
「………ダーさんの話し、聞いてた?今日は、やつ等がどういう経路でここまで女の人を運んで、どういう手口で拉致をするのか…その確認が任務よ?」
「それはわかっとる!でも、拉致されるんを、みすみす見逃すって…」
「確かに、今日の被害女性は気の毒かもしれないけど…。でも、結果的には後でまとめて助け出せるんだから、同じことよ…」
「………頭のええ、梨生奈に問題や」
「…?な、何よ…?」
「1+1と、4÷2…答えは?」
「どっちも2…。同じじゃないの?」
「ああ…違うな…」
「どこが?」
「経緯が違うやろ?一方は掛けて、一方は割ってるんや…」
「だけど、答えは一緒よ?」
「ちゃう!1が2つ集まるんと、4が真っ二つに割られるんとは、ちゃう!」
梨生奈は、七海の真意がわからない。
「真っ二つに割られるんやで?『4』は、さぞかし痛いやろうな…」
「…話しがよくわかんないんだけど…」
「わからんかい!!」
「『4』は、ただの数字よ?私は、そんな風に考えたことないわ」
「つまり…拉致されて、売春を強要された後で助けるんと、その前で助けるんとは、被害者の心は全然ちゃうわ!心が真っ二つに割られるんやで?痛いんやで?」
「…つまり…被害女性の心を第一に考えれば…今、助け出した方がいいと?」
「そういうことや!!」
412投稿者:リリー  投稿日:2008年02月05日(火)21時04分49秒
「却下!」
梨生奈は、即断した。
「少しは考えんかい!!」
七海は怒鳴るが、梨生奈は、冷静に…いや、冷徹に言い放った。
「考える価値もない」
「価値もない…?どういう意味や!!」
激高する七海を、落ち着いた表情で見詰める梨生奈。
「まず…今回は、依頼人の浜津さんの協力で捜査をしている…。つまり、依頼人に危険が及ぶかもしれない。少しでもそのリスクを回避するには、充分な下見が必要…。これが今日の仕事よ」
「被害女性よりも、あのなすびの方が大事なんかい!?」
「当たり前じゃない。依頼人よ?今日、下見した結果を持ち帰って、充分作戦を練ってから救出作戦をするべきだわ…」
「それじゃあ…今日の被害者には、泣いてくれと?梨生奈はそう言いたいんかい?」
「………七海…あなた、一見、熱血漢に見えるけど…私に言わせれば、もの凄く卑怯よ…」
「卑怯!?ウチが!?ウチのどこが卑怯なんや!!」
七海は、梨生奈の襟首を鷲掴みにした。
413投稿者:リリー  投稿日:2008年02月05日(火)21時05分42秒
それでも、梨生奈は決して感情的にはならず、静かに口を開く。
「だって、今回の仕事で気に入らないことがあれば、ダーさんの説明の段階で意見するべきよ。それを今更、私相手に言うのは卑怯だわ!!」
「オノレ…!ナメた口叩いとったら、シバかれるで!?」
「殴るの?私を?ダーさんは殴れないけど、私なら殴るの?」
「ああん!?」
「いいわ…。殴っても…。それであなたの気が晴れるならね…。でも、私は殴り返さない!だって、私はリーダーだから…」
「………ちっ!!」
七海は、梨生奈の襟首を荒々しく放した。
「ありがとう…。わかってくれて…」
「わかってたまるかい!!」
七海は、梨生奈に背中を向けて、胡坐をかいた。
(やっぱり…ここは嫌いや…!)
七海は、早くこの仕事を解決したくて、仕方がなかった。
414投稿者:リリー  投稿日:2008年02月05日(火)21時07分31秒
「いらっしゃいませ…」
フロント係の浜津は、ぎこちなくホストと女性客を迎え入れる。
「どうも…。例の部屋…お願い」
「はい…。701号室の鍵です…」
浜津とホストは、何度も繰り返したであろう、やりとりをする。
ホストと女性客がエレベーターに乗り込むのを見て、浜津は702号室に内線電話をかける。
〔あ?何やねん!!コラ!!〕
電話に出た少女探偵の声は、何故か怒っていた。
「え…あ…その…今、やつ等、部屋に向かいました…」
〔そんなん、いちいち知らせてくんな、ボケ!!盗聴器があるんやから、ウチ等………あ、はい!!ありがとうございます!また、何かありましたら、よろしくお願いします!!〕
途中で電話の相手が変った。
「あ…いえ…。も、もう…邪魔しませんから…」
浜津は受話器を置くと、溜息をついた。
415投稿者:リリー  投稿日:2008年02月05日(火)21時10分44秒
訂正します
>「経緯が違うやろ?一方は掛けて、一方は割ってるんや…」
一方は足して、…の間違いでした…
いくら聖テレジアに裏口入学した七海でも、足し算と掛け算の区別はつきます…

今回は、まだ千秋と出会って恋をする前の梨生奈を書いてみました
冷たすぎるくらい冷静…これが、普段の梨生奈です

今日は、これでおちます


416投稿者:運賃自腹??  投稿日:2008年02月05日(火)21時16分16秒
 
417投稿者:確かに  投稿日:2008年02月06日(水)00時17分33秒
梨生奈、冷たい…
ありりんも、別の意味で冷たいw
418投稿者:電車代くらいダーさんに出してもらえよ…w  投稿日:2008年02月06日(水)09時46分15秒
らりるれろのときと全然違う梨生奈にちょっとびっくりした。
419投稿者:リリー  投稿日:2008年02月06日(水)20時54分35秒
確かに、尾行の電車代は必要経費でおとせるでしょうね
でも、「なんで電車代で5000円もかかるんだ?」って、怒られるでしょうね
その分、タクシー代は節約しましたが…

『らりるれろ』の時の梨生奈と明確に分ける為、今回のエピソードを書きました
そして、ダーさんには反抗できないけど、梨生奈にならズケズケ物を言える、七海の弱さも表してみました

では、更新します
420投稿者:リリー  投稿日:2008年02月06日(水)20時56分01秒
ホテルの地下の駐車場では、中村有沙とエリーの2人が、別の車の陰に隠れて、引き続き黒いバンを見張っていた。
すると、その黒いバンの横に、黒いベンツが止まった。
バンの運転手のホストは、慌てて降車すると、ベンツのすぐ側で直角に腰を曲げて、頭を下げた。
黒のベンツから、4人の男が降りてきた。
一番最後に降りたのは、あの看板で『元帥』の称号で紹介されていた…楠本柊生という男…。
「『元帥』!!お疲れ様っす!!」
バンを運転していたホストは、駐車場に響き渡る程の大きな挨拶をする。
「バカヤロー!!でけぇ、声出すんじゃねぇ!!この『二等兵』が!!」
ベンツから降りたホストの一人が、その『二等兵』の尻を蹴っ飛ばした。
「す、すいません…!」
よろめきながら、謝る『二等兵』。
「『大佐』…。君の声も、充分大きいと思うんだけどね…」
楠本は、穏やかな声で蹴りを入れた『大佐』をたしなめた。
「は、はい…。すみません」
「いいですよ。でも、細心の注意をして下さい…。私達はこれから、決してお天道様に顔向けできる仕事をするのではないのですから…」
楠本の言葉を聞き、やはり今、女性客を拉致する算段だと、中村有沙は確信した。
421投稿者:リリー  投稿日:2008年02月06日(水)20時57分09秒
「聞いたか…?エリー」
「聞いた…」
「どう思う?」
「渋くて、ステキな声…。惚れちゃう…」
「………貴様に聞いた私が間違っていた…」
中村有沙は、楠本達のいる方を向き直る。
すると…楠本も、こちらの方に視線を向けていた。
「…!?」
中村有沙は、咄嗟に身を隠した。
「どうしたの?」
「気配を消せ!!」
中村有紗は、隣の車のバックミラーで楠本達の姿を目視する。
「どうしました?『元帥』…?」
『大佐』は、突然後ろを振り向いた楠本に訊ねた。
「いや…。今、誰かの声が聞こえたような…」
その言葉に、戦慄する中村有沙とエリー。
「…!!ヤバ…」
「黙ってろ!」
聞こえた…?囁くように話していたはずだ…。
422投稿者:リリー  投稿日:2008年02月06日(水)20時57分54秒
「おい!誰かいるのか!?」
『大佐』と呼ばれたホストが怒鳴った。
「だから、大きな声を出さない…」
『大佐』の口元に、人差し指を持って行く楠本。
「み、見てきましょうか?」
「いえ…。私が行きましょう」
「い、いや…『元帥』が行かなくても…」
「私が、自分の目で確認します…」
楠本が、こちらに向かって歩いてきた。
「…チビアリ…」
「…シッ…」
戦って負けることはないだろうが…これでは計画がぶち壊しになる。
「しかたがない…。エリー…」
「え?」
中村有沙は、エリーに抱きつくと、熱い口づけを交わす。
「う…!」
エリーはもがく。
「大人しくしろ!!カップルの振りをしてやりすごす!」
「だって…私達、女同士…」
「それがどうした?おまえ、エマといつもやっているだろう?」
423投稿者:リリー  投稿日:2008年02月06日(水)20時58分41秒
楠本が、声のした側の、車の陰を覗き込む。
少女が2人、抱擁を交わしキスをしている。
「…!!」
エリーと楠本の目が合った。
楠本は、少なからず動揺しているようだ。
「む…?何だ?」
中村有沙は、あくまでも冷静に振り向いた。
「あ…いや…。君達は…何をしているのかな…?」
「見ての通りだ。愛し合っている」
「うん…。見ての通りだね…。でも…君達…その…」
「いろんな愛の形があっても、いいじゃないですか!!」
潤んだ瞳で、エリーは楠本に訴えた。
潤んでいる理由は、いきなり唇を奪われたからだが…。
「私達は、このホテルを利用しようとしたが、未成年だからと、そして女同士だからと言われて断られた。しかし、一度火の着いた身体と心を沈めることはできなかったのだ」
よくもまあ、ここまでデタラメがスラスラと出るものだ、と…エリーは、中村有沙に感心した。
「うん…わかるよ…。君達の気持ち…。若いからねぇ…」
「それで…貴様…いや、オジサン達こそ、男同士で何をしている?」
「オ、オジサン…?」
楠本は、自分を指差して、悲しそうに自嘲する。
424投稿者:リリー  投稿日:2008年02月06日(水)20時59分36秒
「私達は…ここの従業員の知り合いだよ…。仕事でね…」
「仕事…?何のだ?」
「興味あるの?」
「ない」
「なら、いいだろ?」
「そうだな…」
「邪魔したね…」
楠本は、帰って行く。
「どうでした?『元帥』…」
「いや…。二匹の可愛い仔猫がジャレ合っていただけでした…」
楠本と『大佐』は、従業員用エレベーターに乗り込み、あとの3人はバンに乗り込むと、外へ出て行った。
ふぅ…と息をつく2人。
「あ…危なかった…」
コンクリートの地べたに、平伏すエリー。
「あの男…。ただのホストか…?」
中村有沙は、あの楠本柊生という男に、何か胸騒ぎを感じた。
425投稿者:リリー  投稿日:2008年02月06日(水)21時02分52秒
今日から登場の新キャラクターの楠本ですが、ピンとこない方の為に一応説明しますと、昨年度の『ゆげで〜る物語』の『9×9(クック)』、夏イベの『ワルサー』、今年度の夏イベの『アーク』、ネバネバランドの『フック船長』を演じた人です

今日は、これでおちます
426投稿者:117  投稿日:2008年02月06日(水)21時37分28秒
1日ぶりに来ました。
まず昨日分。確かに、梨生奈がとても冷静ですね。「らりるれろ」の前の話なんですね。
そして本日分。女同士のキスでやり過ごすとは、かなりすごいですね(笑)。
新キャラのクック(楠本)様の正体は・・・続きも楽しみです。
427投稿者:おおクック様だ  投稿日:2008年02月06日(水)21時54分56秒
ありりん凄いやり過ごし方だな…w
428投稿者:いま  投稿日:2008年02月06日(水)22時08分16秒
二週間分一気に読んだ。やっぱリリーさんの小説は量も内容も多く濃く感じる。
野球部員募集のところ読んでたら愛美と梓彩のレズが見たくなった。
429投稿者:はいそれ採用>428  投稿日:2008年02月06日(水)22時09分42秒
 
430投稿者:ホストの  投稿日:2008年02月07日(木)00時03分14秒
上下関係の凄さがよく描かれてます

でも、何でホストって体育会系なんでしょうか?
431投稿者:デジ  投稿日:2008年02月07日(木)00時52分18秒
1日ぶりにきました。
前作前の日付だったことすっかり忘れてました。
そういえば合宿として遠征してましたね。
今日の分……切り抜け方は笑えましたが、
相手を一瞬見ただけで、普通のホストじゃない
と気づく有沙の洞察力もすごいですね。
次回も楽しみにしています。

432投稿者:楠本さんボケキャラかと思ってたら  投稿日:2008年02月07日(木)09時01分40秒
闇戦士並みの感覚……
気になる!!
433投稿者:リリー  投稿日:2008年02月07日(木)20時48分28秒
皆さん、楠本さんのことは解説なしでも充分わかてらっしゃるようですね

愛美と梓彩は、表の世界の普通の人なので、レズシーンは用意してないです
でも、友達同士でやる、冗談みたいなレズは、やってるかもしれません

117さん、デジさんの言う通り、時間軸が少し前となってます
ですから、『らりるれろ』の時の梨生奈を思い出して頂けると嬉しいです

では、更新します
434投稿者:リリー  投稿日:2008年02月07日(木)20時49分28秒
702号室の梨生奈と七海は、トランシーバーから流れるホストと女性客の会話を盗聴していた。
甘い言葉で、女性客をいい気持ちにさせるホスト。
その言葉は、七海を益々苛立たせる。
「アホやなぁ…。こんな見え透いたウソで…何を舞い上がってんねん…!」
「私もよくは知らないけど…こういう遊びは、ウソと充分わかっていながら、それでもそのウソを楽しめる人間にしか遊ぶ資格がないんでしょうね…」
「梨生奈、おまえなら上手に遊べそうやな?」
「何よ…?どういう意味?」
「お?怒ったか?」
「………別に…」
梨生奈は、それでも不愉快そうにトランシーバーに耳を傾ける。
435投稿者:リリー  投稿日:2008年02月07日(木)20時50分06秒
〔でも…私…相当、お店に借金してるわよね?返そうとは思ってるんだけど…〕
〔そんなこと…気にしなくていいよ…〕
〔そ、そんな…!返します!絶対に返しますから…〕
〔うん…まぁ…。こっちも慈善事業じゃないから…返して欲しいけど…〕
〔お願い!!必ず返すから…!私のこと、嫌いにならないで!!〕
〔ならないよ…。愛してる…〕
すると、ノックの音が聞こえてきた。
〔『元帥』!どうぞ!!〕
ホストは、相手を確かめることなく、ノックをした者を招き入れた。
〔『中尉』…。ご苦労様…〕
『元帥』と呼ばれた者の声。
〔え…?ど、どういうこと?〕
女性客の戸惑う声。
〔ああ…。気にしないで…。楽にして下さい…〕
『元帥』は、あくまでも紳士的な態度で、女性客と接する。
〔今、店の借金のことで、その胸を痛めてらした…。そうですね?〕
〔はい…。そうですけど…〕
〔それで…その借金を返す、良いアルバイトを紹介したいんですが…〕
〔アルバイト…ですか…?〕
〔ちょっと、メガネをとってみてくれますか?………うん、うん…ま、磨けば光る顔立ちをしていらっしゃる…〕
436投稿者:リリー  投稿日:2008年02月07日(木)20時50分58秒
その時、梨生奈の携帯がバイブで震えた。
着信名は『キャンディー・ボール』…エマだ。
「もしもし?『キャンディー・ボール』?」
〔『ムーン・ライト』!今、ホスト風の男が、屋上に上がってきた!!〕
「いよいよね!?」
それと同時に、隣の部屋が騒がしくなる。
〔え?ちょっと!何するんですか!?やめて…〕
女性客の声が、突然途切れた。
そして、倒れる音…。
「どうやら、薬を嗅がされたみたいね…」
「く…!!」
「七海…!堪えて!!」
〔よし。窓から彼女を連れて行って下さい〕
『元帥』の言葉と共に、窓の開く音…。
女性客が、連れて行かれる…!
437投稿者:リリー  投稿日:2008年02月07日(木)20時51分39秒
「やっぱり…!!ウチは、放っておけん!!」
七海は、ドアへと走る。
「七海!!」
梨生奈は、スライディングで七海の足を払った。
「おお!?」
七海は、派手に前のめりに転んだ。
「落ち着いて…!今、あなたが飛び込んだら…」
「邪魔すんなや!!」
七海の後ろ蹴りが、梨生奈の胸板に炸裂する。
「ぐ…!」
梨生奈は、その場で尻餅を着いた。
その隙に、七海はドアを開けて、部屋の外へ駆け出した。
438投稿者:リリー  投稿日:2008年02月07日(木)20時52分20秒
廊下に出ると、701号室のドアノブに手をかける。
しかし、その手首を掴まれる。
梨生奈だった。
「七海…!いい加減に…」
「殴るんか?ウチを?」
「…え?」
「リーダーやのに、殴るんか?」
「ええ!作戦を壊されるくらいなら…!」
「ほな…オノレはリーダー失格じゃ!!」
梨生奈の広い額に、頭突きをする七海。
「ぎゃ!!」
後ろに仰け反る梨生奈。
「い…つ…!石頭やな?梨生奈!」
七海は、ドアを開けた。
439投稿者:リリー  投稿日:2008年02月07日(木)20時53分03秒
部屋には誰もいなかった。
隣の屋上に続く窓も締められている。
七海は、窓に駆け寄って開けると、隣のビルの屋上に降り立った。
「七海…?どうしたの?」
物陰から、エマが出てきた。
「やつらは!?」
「気絶した女の人を抱えて、エレベーターで下に行ったよ。チビアリ達がやつ等の尾行をする手筈になってるけど…」
「よし、わかった!!」
「ちょ、ちょっと!どこ行くの?」
「やつ等を捕まえる!!」
「ええ!?今日は下見だけのハズじゃ…」
「作戦変更や!!」
「変更!?それはダーさんからの指示?」
「ちゃう!ウチや!!」
「へ?」
そこに、ラブホテルの窓から梨生奈が叫ぶ。
「エマ!!七海を捕まえて!!絶対に下に行かしたらダメ!!」
「え?…ど、どういう…」
「早く!!」
しかし、七海は既に外に設置された階段で、下に駆け降りていた。
440投稿者:リリー  投稿日:2008年02月07日(木)20時56分49秒
楠本さんが、『元帥』と呼ばれてる理由は、楠本さんがリーダーをしている『第14帝國』という劇団で、そう呼ばれていることからです
かなりの多才でカリスマな様です

では、今日はこれでおちます
441投稿者:七海!  投稿日:2008年02月07日(木)21時33分26秒
どうなるんだ
続きが気になる…
442投稿者:「元帥」の話  投稿日:2008年02月07日(木)21時34分31秒
はじめて知った
443投稿者:うんこあげ  投稿日:2008年02月07日(木)21時35分32秒
 
444投稿者:117  投稿日:2008年02月07日(木)22時59分13秒
クック様、なかなかのキャラですね。
428さんの言うように、梓彩と愛美,藍とかのレズも見てみたいですね。
また機会があったら、書いてほしいです。
445投稿者:七海どうなる?!  投稿日:2008年02月08日(金)09時11分46秒
成功してほしいし したら大変な事になりそうだし……汗
446投稿者:リリー  投稿日:2008年02月08日(金)20時48分00秒
今日で、『四回・裏』は終了します
七海のわだかまりも、一応決着がつきます
117さんの言うとおり、いろんなキャラクターが出てきますので、意外な組み合わせがあるかもしれません

では、更新します
447投稿者:リリー  投稿日:2008年02月08日(金)20時48分43秒
ラブホテルの隣のビルの裏に、黒いバンがエンジンをかけて止まっている。
中村有沙とエリーは、梨生奈達の自転車に跨って、尾行の準備をしていた。
そこに、中村有沙の携帯がバイブで揺れた。
送信主は、『ムーン・ライト』。
中村有沙は携帯に出る。
「もしもし。『アンダー・クイーン』だ」
〔お願い!!『キラー・タイガー』を止めて!!〕
「………それは、私達の任務ではない」
〔何言ってるの!?『キラー・タイガー』が暴走したの!!作戦がぶち壊しになるのよ!!〕
「『何を言っている』という貴様の問いに、私は『おまえ達は何をやっている』と返そう」
〔批判は甘んじて受けるから…とにかく『キラー・タイガー』を止めて!!〕
「わかった。尾行は『ビー・アタック』にやらせる」
中村有沙は携帯を切った。
「ど、どういうこと?」
エリーにも、電話の会話は聞こえていた。
「聞いての通りだ。貴様はこのままやつ等の尾行だ。私は、七海を足止めする」
「わ、私一人で、行くの!?」
「後でエマを向かわせてやる」
「う…うん…。それなら安心だけど…」
「しかし…結局『チームE』の尾行ではないか…。これでは、チームシャッフルの意味がない…!」
中村有沙は、腹立ち紛れに呟いた。
448投稿者:リリー  投稿日:2008年02月08日(金)20時49分38秒
その直後、誰かが地面に飛び降りた。
七海だ。
「七海。梨生奈から聞いたぞ…」
中村有沙は、携帯を胸ポケットに仕舞いながら七海に近づく。
「そこをどかんかい!!チビアリ!!ウチはやつ等を捕まえる!!」
「それを止めてくれ、と泣きつかれたところだ」
「そうか?ほな、しゃあない!!」
七海は、中村有沙に殴りかかる。
しかし、その攻撃を上半身を動かすだけで交わす。
「エリー、やつ等の動きを見張っていろ」
「…う、うん…」
泣き出しそうな表情で、黒いバンを見張るエリー。
そこは、まさに眠らされた女性客が、バンに乗せられ、出発するところだった。
「チ…チビアリ…!やつ等が…」
「行け!!」
「は、はい!!」
エリーは、自転車でバンを追う。
449投稿者:リリー  投稿日:2008年02月08日(金)20時50分59秒
「どけや!!このぉ!!」
七海の凄まじい拳のラッシュを、涼しい顔で避ける中村有沙。
そこに、ようやく梨生奈とエマが追い着いた。
「チ、チビアリ…!七海…!」
梨生奈とエマが、七海を止めようと駆け寄った。
「エマ!エリーがやつ等の尾行に行った!!おまえも後を追い駆けろ!!」
「わ、わかった…!」
エマは、自転車に跨ると、エリーに携帯をかけながら出発した。
450投稿者:リリー  投稿日:2008年02月08日(金)20時51分12秒
「落ち着いて!!七海!!」
梨生奈は、七海の肩を掴む。
「放さんかい!!」
七海は、腕を振って払う。
「ウチは、あの女の人を見捨てたくないだけや!!」
「で、でも…作戦は…」
「作戦なん、クソ喰らえや!!ウチは間違ってへんで!!」
「そうだ…。七海。貴様は間違っていない」
「へ?」
中村有沙の言葉に、七海は拍子抜けした。
「貴様の言う通りだ。今からあの女を助けに行こう!」
「チ…チビアリ…」
その瞬間、強烈なパンチが、七海の腹に食い込んだ。
「ぐ…!」
「そんなわけあるか!」
腹を抱えてうずくまる七海に、中村有沙は冷たい視線を落とした。
451投稿者:リリー  投稿日:2008年02月08日(金)20時51分59秒
「ぐ…!オ…オノレ…」
胃液を吐きながら、七海は中村有沙の足首を掴む。
「私に触るな」
爪先が、七海の額に炸裂する。
「ぐわ!!」
七海は、アスファルトの上に大の字になって倒れた。
「な、七海!!」
梨生奈は、七海に駆け寄る。
「触んな!!」
差し出された梨生奈の手を振り払うと、七海は、よろめきながら立ち上がった。
「七海…!も、もう、諦めて…」
「やかましい!!」
真っ直ぐに、中村有沙を睨む七海。
「梨生奈…。コイツの飼い慣らし方を教えてやる…」
中村有沙は、指を鳴らしながら七海に歩み寄る。
452投稿者:リリー  投稿日:2008年02月08日(金)20時53分03秒
「ゴルァァァ!!」
七海は、拳を中村有沙に叩き込む。
中村有沙は、身体を半回転させて拳を回避すると、裏拳を七海の顔面に叩き込む。
「ぎゃ!!」
七海は、思わず仰け反った。
その胸座を掴み引き寄せると、今度は頭突きを喰らわせる。
「ぐ…う…」
顔をしかめて呻く七海。
そして、膝で腹蹴り。
「う…ぷ…」
七海は、もう出尽くしたはずの胃液を、また搾り出す。
最後は、後頭部に肘打ち。
「う…ぅ…」
七海は、アスファルトを舐めるように倒れた。
「これで終わりだ…」
中村有沙は、手をパンパンと叩いた。
453投稿者:リリー  投稿日:2008年02月08日(金)20時53分44秒
「チ…チビアリ…」
梨生奈は、青い顔で中村有沙の背後を指差す。
「ん?」
後ろを振り向くと…あのホスト…楠本柊生が…立っていた。
(い、いつからいた!?)
七海と戦っていたから気がつかなかった?
そんなわけはない!!そんなやわな『訓練』は受けていない!!
しかし、その楠本も青い顔でこちらを見ていた。
「な…何をしてるの…?」
心配そうに、倒れた七海を見ている。
しかし、中村有沙は眉一つ動かさず、例のウソ、デタラメをつらつらと口から出した。
「こいつは、さっき私とキスをしていた娘の元カノだ。取り返しに来たのを、私が返り討ちにしたところだ」
「ああ…そうなんだ…」
「で、そっちの女は、この倒れている女と一緒に私をブチのめしに来たそうだが…。貴様、今のを見て、この私とやり合うつもりか?」
梨生奈は、首を横にブンブン振る。
「と、言うわけだ…。何か文句でもあるのか?」
454投稿者:リリー  投稿日:2008年02月08日(金)20時54分34秒
楠本は、引きつった笑顔で応える。
「文句というか…その…女の子なんだから…顔はあんまり殴らないであげてね…」
「貴様…いつから見ていた?」
「き、君が裏拳を放った所から…だけど…」
つまり、「女を助ける」というやり取りは見られていない…?
「その子、大丈夫?救急車呼ぼうか?」
「余計なお世話だ。はやく仕事に戻ったらどうだ?」
「仕事は終わったよ」
「早いな…」
「慣れてるからね…」
中村有沙は、眉間にシワをよせかけて、止めた。
「君達、中学生だろ?早くお家に帰った方がいいよ?」
「それも余計なお世話だ」
「はい、はい…。申し訳ありませんでした…」
楠本は、ゆっくりと立ち去って行く。
455投稿者:リリー  投稿日:2008年02月08日(金)20時55分21秒
「チ、チビアリ…!」
「梨生奈、あいつはいつからいた?」
「あ、あの男の言う通り…あなたと七海がやりあっている所から…」
「そうか…」
一応、安心していいのか…。
中村有沙は、携帯を取り出し、エマにかける。
〔もしもし。こちら『キャンディー・ボール』〕
「『アンダー・クイーン』だ。『ビー・アタック』には追い着いたか?」
〔うん。今、一緒にバンを追い駆けてる〕
「一応、逆尾行に気をつけろ」
〔逆尾行?〕
「やつ等の仲間が、まだ現場に残っているんだ」
〔了解し…〕
エマの言葉は、まだ続くようだったが、中村有沙は携帯を切った。
「あ…チビアリ…」
「何だ?梨生奈…?」
「羅夢は?羅夢は、どこにいるの?」
「………」
すっかり忘れていた…。

(『四回・裏』・・・終了)
456投稿者:リリー  投稿日:2008年02月08日(金)20時57分28秒
もうすぐ、過去ログ行きになりそうですね
序盤部分は、今のうちに読んで頂きたいと思います

では、今日はこれでおちます
457投稿者:元帥気になるな  投稿日:2008年02月08日(金)21時04分27秒
それにしても七海可哀相だ…
胃液吐くなんて
458投稿者:117  投稿日:2008年02月08日(金)21時35分01秒
七海たちは、ちょっと無茶な幕引きですね(苦笑)。
一癖ありそうな、クック様。一体どんな裏があるのか、続きも楽しみです。
459投稿者:>373  投稿日:2008年02月08日(金)21時55分52秒
おかしいと思うならいい加減自分で調べろ
460投稿者:メモ帳ワードに  投稿日:2008年02月08日(金)23時09分58秒
もしくはhtmlを保存しましょう
461投稿者:ありりん>>>七海  投稿日:2008年02月09日(土)12時20分59秒
という感じか…
462投稿者:ありりん=フランス七海=ポーランド  投稿日:2008年02月09日(土)18時22分41秒
サムドラでダーさんがみんなの強さをサッカー代表で例えてた

羅夢w忘れられてるw
463投稿者:羅夢絶対鬼神光臨する。。。ww  投稿日:2008年02月09日(土)20時00分27秒
楠本さんとダーさんを合わせたら面白いかもって思ったりw
464投稿者:らりるれろで活躍した分  投稿日:2008年02月09日(土)20時16分33秒
グラスラで夢の出番が減らされてるのかな?
それでも
465投稿者:↑失礼  投稿日:2008年02月09日(土)20時17分45秒
らりるれろで活躍した分、グラスラで羅夢の出番が減らされてるのかな?
それでも 梨生奈の出番は多いけど
と、書くつもりでした
 
466投稿者:リリー  投稿日:2008年02月09日(土)21時03分46秒
まだ、誰が誰とどうなるって話しはできませんが、いろんな登場人物の組み合わせを用意しています

楠本さんは、結構、話しの中心にきます

梨生奈は、『らりるれろ』で全治半年の重傷を負ってしまうので、どうしても8月以降から出番は減ってしまうんですよね

今日から『5回・表』です
では、更新します
467投稿者:リリー  投稿日:2008年02月09日(土)21時05分59秒
『五回・表』

≪2007年5/7(月)≫
ゴールデンウィークも終わり、普段通りの学校生活が始まる。
「ななみん!ななみん!」
学校の、荘厳な校門に入りかけた時、七海は藍に声をかけられた。
藍の声は、怒りに満ちている。
「ちょっと!ななみん!昨日、黙って帰ったでしょ?結局、ボール、全部見つからなかったん…」
振り向いた七海の顔を見て、藍は言葉が続けられなかった。
「朝からうるさいねん!!『細川さん』!!」
七海は、腫れて半分ふさがった左眼で、藍を睨みつけた。
「な…ななみん…。どうしたの?お岩さんみたいだよ…?」
心配そうに、七海の顔を覗き込む藍。
七海の左眼のまぶたは大きく腫れ、ガーゼが覆っている。
額にも、湿布が貼ってある。
「どうもしてへんよ…。階段で転んだだけや」
階段で転んだ…何者かに殴られたことをごまかす、言い訳ベスト1である。
「階段…?もしかして、お岩さんの出てくる『怪談』とかけてある?」
「………それは、気がつかへんかったわ…」
七海は、再び歩き出した。
468投稿者:リリー  投稿日:2008年02月09日(土)21時07分17秒
「あ!!ありりん先輩!!おはようございます!!」
大きな声で挨拶する藍の声を聞き、七海は思わず振り返った。
中村有沙だ…。
「チ…チビアリ…!!」
今朝は、初めて彼女と会う。
結局、寝る部屋も、朝食の時間も、電車の時間も意識的に合わせることなく、ここまで来たのだが…。
「ありりん先輩…?何だ?それは?」
中村有沙は、相変わらず冷たい視線で藍を見た。
「私のつけたあだ名ですけど…。気に入らなかったら、別のを考えます…」
藍は、冷や汗を掻きながら笑顔を見せる。
「…いや…。気に入った…。そのあだ名で呼ぶのを許してやる…」
「ほ、本当ですか?」
藍は、意外な返事を貰い、心底嬉しそうだった。
「今日から、野球部始動です!必ず来て下さいね!」
それには返事をせず、七海の側を通り抜ける、中村有沙。
七海が、今にも飛び掛らんと殺気立つ。
469投稿者:リリー  投稿日:2008年02月09日(土)21時08分14秒
「何だ?まだ殴られ足りないのか?」
「オノレ…。いつか、必ず殺したるからな…」
「不可能なことを言うな」
七海は、額を湿布の上からピンと弾かれた。
「痛…!」
仰け反る七海。
その隙に、中村有沙はその場から立ち去る。
「ゴルァァァ!!」
彼女は、七海の叫びが聞こえないかのように、昇降口へ歩いて行く。
藍が、七海に駆け寄って来た。
「もしかして…その怪我、ありりん先輩とケンカして…?」
何も答えず、七海は中村有沙の後姿を睨み続ける。
「でもさ…ありりん先輩、まったくキレイな顔してたよね?ななみん、一方的にやられたの?」
「アホいいな!!アイツの身体は痣だらけや。女やから、顔は殴らんといたったんや!!」
「ふ〜ん…。でも、仲直りしなよ?」
「仲直り?直るような仲なんかないわ!!」
その七海の返答を、藍は待たずに、また上級生に挨拶に行く。
470投稿者:リリー  投稿日:2008年02月09日(土)21時09分35秒
「おはようございます!!じょわん先輩!!」
今度は、ジョアンに挨拶する藍。
「じょ、じょわん?アタシの名前はジョアンだよ!『わ』じゃ、なくて『ア』!!」
ジョアンは、困惑しながら怒鳴った。
中村有沙とは違い、ジョアンは多くの同級生と並んで登校している。
底抜けに明るい性格のジョアンには、彼女を慕う友達が大勢いる。
「あだ名ですよ!じょわん先輩!!」
中村有沙の時は、幾分緊張していた藍だが、ジョアンの時は遠慮がない。
それが、ジョアンの魅力なのか、それとも、ただ単にナメられてるだけなのか…。
「いいじゃん!じょわんって…可愛いじゃん!」
「じょわん!」
「じょわん!」
一緒にいる友人は、そう言ってジョアンをからかった。
「や、やめろよ!!ふざけんな!!ホラ!!定着しちゃったじゃないか!!」
ジョアンは、藍に拳を振り上げた。
471投稿者:リリー  投稿日:2008年02月09日(土)21時10分31秒
「あ、気に入らなかったら、また考えますけど…」
頭を抱えながら、藍は笑顔で言う。
ジョアンは、振り上げた拳をゆっくり降ろす。
「う〜ん…。でも、『あいつ』につけられたあだ名に比べれば、全然いいよな…。いいよ、じょわんで…」
「本当ですか?でも…エマも、梨生奈も、エリーも、皆そう言うんですよ…。一体、どんなあだ名つけられてたんですか?」
「それは教えない!!絶対に!!」
教えたら、今度は友人達の間に『デッパリンダ』が定着してしまう…。
「で、今日から野球部が始動するんですが…」
「野球部?それはいいんだけど…。私も嫌いじゃないからね。でもやったことないよ?」
「いいです!!私が教えてさしあげます!!じょわん先輩、運動神経抜群だって聞きました。すぐに上手になりますよ!」
「あと…3年だからって、キャプテンはやんないよ?」
「え?そ、そうなんですか?」
「チビアリだって引き受けないよ、多分…」
「でも…やっぱり、キャプテンは最上級生が…」
「いいよ、あんたで」
「え…?そ、そういうワケには…」
「じゃあ、アタシ、今日、日直だから…」
ジョアンは大勢の友人と一緒に、賑やかに昇降口に向かう。
「ねえ、じょわん!部活やるんなら、バスケ部に入ってよ!今からでも遅くないからさ!」
「そうだよ!何でよりによって野球なの?じょわん!!」
ジョアンのあだ名は、もう既に、じょわんに決定したようだ。
472投稿者:リリー  投稿日:2008年02月09日(土)21時13分42秒
ジョアンは、七海を横目で見る。
「よう…!ひでぇ面だな?」
「やかまし!!」
七海はぶっきら棒に答える。
「わ〜…どうしたの?その顔…」
「可哀そう〜…。可愛い顔してるのに…」
ジョアンの友人が、七海の顔を見て、口々に言う。
「チビアリ…中村有沙にやられたんだ。な?七海?」
「うっさい!!」
中村有沙の名前が出た途端、ジョアンの友人達は、ざわつき始めた。
「中村さんって…B組の?」
「うん。凄く綺麗な子だけど…凄く取っ付き難い子…」
「あの子、暴力とか振るうんだ…」
「恐いよねぇ…」
暴力に関しては、実はジョアンの方が激しいのだが…。
「でも、ありゃ、おまえが悪いよ。アタシでも同じことをしたね」
「ウザイねん!!もう、あっち行けや!!」
「ふふん…。わかったよ。今日から野球、がんばろうな」
ジョアンはまた、友達と談笑しながら歩いて行った。
473投稿者:リリー  投稿日:2008年02月09日(土)21時16分24秒
今日はこれでおちます
474投稿者:愛星  投稿日:2008年02月09日(土)21時56分30秒
エマからエリーの
お仕置きのえちが見たいです
475投稿者:愛星  投稿日:2008年02月09日(土)21時56分50秒
エマとエリーの
えちが見たいです
476投稿者:じょわんってなんか可愛いな  投稿日:2008年02月09日(土)22時01分27秒
ありりんはやっぱりありりんか
477投稿者:117  投稿日:2008年02月09日(土)22時43分41秒
藍のつけた「ニックネーム」が、次々と認められていく(笑)。
七海と絡む時の豹変ぶりがまた面白いです(笑)。
「野球部」がついに始動ですか。続きも楽しみです。
478投稿者:ジョアン  投稿日:2008年02月10日(日)08時31分09秒
いい先輩って感じ
友達も多いし
479投稿者:野球部始動!  投稿日:2008年02月10日(日)09時26分14秒
面白いことになりそうww
480投稿者:リリー  投稿日:2008年02月10日(日)20時55分14秒
野球部始動には、もう少し時間がかかります
それでも、『五回・表』中には始動しますが
『五回・表』は少し長くなります

藍のあだ名は、名前の一部を変えたりする、悪意にないものですからね
ダーさんの場合は、相手が不愉快になる様なあだ名をつけますが、それは上下関係を示すものです
ですから、自分よりは格上、同等の者にはあだ名をつけないんですね
例・・・夏希、ジャスミン、モニーク
あと、レッドさんも、前からついていたあだ名ですから、それを使っているって感じです
一応、社長なので『目上』の存在として扱ってるんですね

では、更新します
481投稿者:リリー  投稿日:2008年02月10日(日)20時56分48秒
七海の背後で、また藍の挨拶が聞こえた。
「あ、おはよう!!あみ〜ご!!」
(あみ〜ご?)
七海は振り返る。
そこには…一木有海がいた。
彼女は、本を読みながら登校している。
花柄の、手製のブックカバーで覆っているので、何の本なのかわからないが。
ここ最近、有海はこの本ばかりを読んでいるようだ。
七海は、あの有海を泣かした日以来、まともに話したことがなかった。
学級委員の仕事も、有海一人に押し付けている。
有海は一人で、クラス全員の悪意と孤独に戦っていた。
時には泣きそうになりながらも、何とか健気に務めている。
482投稿者:リリー  投稿日:2008年02月10日(日)20時57分32秒
「お、おはよう…。細川さん…」
蚊の鳴くような声で、挨拶をする有海。
「またぁ…。あい〜んだってば!!」
「ご、ごめんなさい…」
「ねぇ…。今日から野球部が始まるんだけど…」
「ごめんなさい…」
「まだ、2人くらい足りないんだよね…」
「ごめんなさい…」
「マネージャーでも、いいよ?」
「だから…ごめんなさい…」
有海は、藍から逃げるように、小走りで昇降口に向かう。
483投稿者:リリー  投稿日:2008年02月10日(日)20時58分02秒
そこで、七海の姿に気がつく。
七海の腫れた顔を見て、有海は思わず足を止めた。
「何や?」
七海は有海を睨みつけた。
「…う…ううん…。何も…」
「笑える顔やろ?」
「そ…そんなこと…」
有海は、急いで七海の側を通り過ぎる。
その時、有海は転んでしまった。
手に持っていた本が、七海の足下に落ちる。
「おはよう!有海ちゃん!!」
「朝からオッチョコチョイだねぇ〜!!」
「もしかして、ドジッ娘、意識してない?」
同じC組のクラスメイトのグループが、有海を指差して笑っている。
有海は、膝を押さえて、うずくまっている。
「ゴルァ!!」
七海は、そのグループのリーダー格の胸座を掴んだ。
484投稿者:リリー  投稿日:2008年02月10日(日)20時58分36秒
「な、何よ?」
途端に、そのグループの者達は、青褪めた。
「今、一木さんを転ばしたやろ?」
「しょ、証拠はあるの?」
「証拠?そんなもん、クソ喰らえや!!」
「な、何よ!!あんた達、ケンカしてるんじゃなかったの?」
「…!?」
その言葉に、七海は思わず胸座から手を放した。
グループの者達は、急ぎ足で立ち去った。
有海も、慌てながら立ち上がると、駆け足で立ち去ろうとする。
「一木さん!チョイ待ち!!」
七海の声に、有海はビクンと背中を震わせて、立ち止まった。
七海は、地面に落ちている花柄のブックカバーで覆われた本を拾う。
「これ、要らんの?」
本が差し出される。
有海は、駆け足で戻ってくると、本を七海から受け取り、深く頭を下げると、再び昇降口へと走って行く。
485投稿者:リリー  投稿日:2008年02月10日(日)20時59分47秒
「何よ…。あんた達、まだ仲直りしてないの?」
藍が、有海の背中を切なそうに眺めながら言った。
「仲直り?直るような仲なんかないわ」
「その言葉、さっきも言ったね。でも、あみ〜ご、今、一人ぼっちなんじゃない?」
「初等部の頃から一人ぼっちや…。慣れっこなんちゃうん?」
「………ななみんって…人情に熱いのか、薄情なのか、わかんない人だね…」
「薄情なんやないの?」
七海も、昇降口に向けて歩き出す。
「あ、そうだ!今度の日曜日、野球の試合、見に来ない?」
「野球?プロ野球?」
「違う、違う!少年野球!昨日の…」
「…ああ…。ええよ。ウチ、あいつ等に嫌われてるもん…」
それに、その日は大事な仕事がある…。
絶対に、失敗できない、大事な『仕事』が…。
「そんなことないよ!あいつ等、あんたのこと気に入ったみたいだよ?」
「気に入った?まさか、やろ!!」
そう言いながらも、七海は心のどこかで嬉しかった。
自分が誰かに好かれている…それだけで…。
同時に、有海のことが気になった。
七海と一緒に学級委員をやることになった時…有海は、どれほど嬉しかっただろうか…と…。
486投稿者:リリー  投稿日:2008年02月10日(日)21時01分26秒
少し短いですが、きりのいい所で、これでおちます
487投稿者:有海頑張れ  投稿日:2008年02月10日(日)21時18分05秒
野球部結成楽しみだな
488投稿者:117  投稿日:2008年02月10日(日)21時23分54秒
七海の腫れ上がったその顔に、キレられるとなると、とんでもなく恐ろしそうですね(苦笑)。
『大事な仕事』とは、裏の世界の話でしょうか?続きも楽しみです。
489投稿者:あげ  投稿日:2008年02月10日(日)22時01分40秒

490投稿者: 投稿日:2008年02月10日(日)22時28分01秒

491投稿者:デジ  投稿日:2008年02月11日(月)01時39分32秒
久しぶりです。最近忙しくて、見る時間がありませんでした。
もうすぐ高校生なので、これからそんなに見られないと思います。
あだ名の定着は簡単についたのが、以外でした。
藍は、心情を理解するのが早いですね。
というか、単に七海が鈍いだけでしょうか……
さいごの部分は、七海の心の変化でしょうか
津好きも楽しみです。
492投稿者:藍は違うクラスなのに  投稿日:2008年02月11日(月)10時41分03秒
七海たちのことよく見てるねw
493投稿者: 投稿日:2008年02月11日(月)10時41分25秒
494投稿者: 投稿日:2008年02月11日(月)12時01分01秒
http://pr.cgiboy.com/05004921
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495投稿者:イジメの連中とか  投稿日:2008年02月11日(月)12時02分36秒
ヤクザとかホストとか小物の悪党に戦士や関係者をキャスティングしないのがリリー作品の特徴だね
あすみとか楠本さんは大物のような感じがする


496投稿者:あげ  投稿日:2008年02月11日(月)21時22分51秒
 
497投稿者:リリーさんの小説は  投稿日:2008年02月11日(月)21時25分33秒
戦士を大事に扱っているところが好き
天てれへの愛を感じる
498投稿者:あめぞう小説で珍しい  投稿日:2008年02月11日(月)21時27分57秒
笑いを取り入れるのも天てれの流れを壊さないよさがある
499投稿者:リリー  投稿日:2008年02月11日(月)22時21分18秒
すみません、今帰ってきました

みなさん、ありがとうございます
大切に扱ってるといっても、随分エロいことさせてるんですが…
そう言って頂いて嬉しいです

117さんの言う通り、「大切な仕事」とは加藤組の拉致売春事件の解決です
デジさん、受験はうまくいったのでしょうか?
とりあえず、進学おめでとうございます
時間のある時に、たまに思い出してくださるだけで結構です
でも、今読める部分は、もうすぐ過去ログに行ってしまいそうですが…

それでは更新します

500投稿者:リリー  投稿日:2008年02月11日(月)22時22分23秒
聖テレジア女子学園中等部・軟式野球部は、今日が初日となる。
グラウンドの片隅に集まったメンバーの顔ぶれは次の通り。
3年生…ジョアン・ヤマザキ、中村有沙。
1年生…細川藍、藤本七海、木内梨生奈、近藤エマ、渡邊エリー。
計、7名。
全員、緑色の体育時のジャージ姿だ。
あと2人いれば、一応、公式戦が組める。
しかしこのままでは、まだ部活として学校には認められないだろう。
しかも、まだ顧問の中田あすみが来ていない。
501投稿者:リリー  投稿日:2008年02月11日(月)22時23分05秒
藍は校舎の方を眺めながら言う。
「あすみん、遅いねぇ…」
「なぁ…。そのあすみんってのは…?」
わかりきったことだが、七海は聞いてみる。
「うん?中田先生のあだ名。了解はとってあるよ」
「あ…そ…」
中々現れそうに無い、顧問のあすみに、中村有沙は腕組みをして小刻みに身体を揺らす。
「なあ、ありりん…。貧乏揺すりはやめときなよ?」
ジョアンはそう、声をかける。
「私は別に、貧乏ではない。それから…貴様まで、ありりんと言うな」
「いいじゃん。『チビアリ』よりマシだろ?そもそも『デカアリ』ありきって感じのあだ名だったんだし…」
「貴様の『デッパリンダ』も、七世の『出っ歯ちゃん』とカブってたしな」
その言葉に、藍が反応する。
「デッパリンダ?じょわん先輩のつけられたあだ名って、デッパリンダだったんですか?」
「おい!!その名を言うな!!特に、アタシの連れの前で言うなよ!!」
ジョアンは、藍の目の前まで迫ってきた。
「りょ、了解…!」
藍は、顔を引きつらせながら敬礼した。
考えてみれば、今現在の野球部のメンバーは、藍以外、全員『R&G探偵社』の人間である。
502投稿者:リリー  投稿日:2008年02月11日(月)22時23分56秒
「それにしても、遅い!!何をやっているのだ!!その顧問とやらは!!そいつが志願してきたのではないのか!!」
中村有沙は、とうとう怒声をあげた。
「も、もう少しで来ると思いますけど…」
藍は、何とか怒りを静めようとする。
「もういい!帰る!!」
中村有沙は、校舎に向かって歩き始めた。
「そ、そんなぁ〜…。ありりん先輩…」
藍が追い駆けようと歩みだした瞬間…背後から声が聞こえた。
「何言ってるの?さっきからここにいるでしょ?」
「!!?」
全員が、後ろを振り返った。
そこに…本当に長身の…黒のジャージ姿の、体育の非常勤講師、中田あすみが立っていた。
「あ…!そんな所にいたんだ、あすみん!声、かけてくれればよかったのに…」
藍は無邪気に、あすみの元へ駆け寄った。
しかし、七海、中村有沙、ジョアン、梨生奈、エマ、エリーの6人は…とてもじゃないが、藍のように能天気ではいられなかった。
七海は、握り拳をつくる。
あの時と…初対面の時と同じだ…。
また、気配を感じなかった。
「何者だ…?あいつ…」
中村有沙が、そう呟いた。
503投稿者:リリー  投稿日:2008年02月11日(月)22時25分41秒
「さっきから、じっと隠れてたんだよ。いつ見つけてくれるかと思ってたんだけど…。案外、鈍感だね、君達…」
「…!!」
鈍感と言われて、藍以外の6人は、プライドが傷つけられた。
そう…6人は、鈍感では、とてもじゃないが生き抜いてはいけない世界に身を置いていたのだから…。
「ま、いいや…。自己紹介するね。1年生は体育の時間で私と会ってるよね?この、軟式野球部の顧問、中田あすみです、よろしく」
「よろしくお願い、しゃーーーす!!」
藍は、そう叫んで直角に腰を折る。
他の6人は、その藍の奇異な行動に、少なからず退いている。
「何やってるの?」
藍は、顔を上げて聞く。
「いや…。あんたこそ…何やってんの…?」
七海が、逆に聞き返す。
「何って…挨拶じゃん!あんた達もやるの!」
「い、いややわ!!そんなん!!」
「いやって…!何言ってんのよ!!挨拶は部活の基本でしょ?」
504投稿者:リリー  投稿日:2008年02月11日(月)22時25分55秒
あすみは、苦笑しながら頭を掻いた。
「いいよ、いいよ。あい〜ん…。ここは、部活というよりも、同好会みたいなノリでいこうよ」
「ど…同好会…ですか?」
藍は、少し不満げな顔をした。
「じゃあ、もう一度挨拶しようか…。普通の挨拶でいいから…。お願いします」
「…お願いします…」
みんな、てんでバラバラに頭を下げる。
合格点をあげられるお辞儀をしたのは、藍と梨生奈だけだった。
中村有沙は、頭を下げもしない。
505投稿者:リリー  投稿日:2008年02月11日(月)22時27分23秒
「ちょっと…ありりん先輩…」
藍は、心底困ったような顔で、中村有沙を見た。
中村有沙は、腕組みをしたまま、中田あすみを見据えている。
あすみは、真っ直ぐに中村有沙の視線を受け止めて言う。
「ま、いいや。次からはちゃんと挨拶できるようにしよう!でね、みんなを驚かせる物があるんだ!」
「え?何ですか?」
藍だけが興味津々である。
「クラブハウスの方に、置いてあるから…誰か持ってきてくれる?」
中村有沙が、すっと手を挙げる。
「あ?ありりん先輩!じゃあ、一緒に行きましょうか?」
藍は、少し安心したような顔をした。
「いや…。私は梨生奈と一緒に行く…」
「え…?私と…?」
梨生奈は、戸惑いを隠せない。
「うん。2人で充分だと思うから…。じゃあ、中村さんに木内さん?お願いね」
あすみにそう言われ、2人は、クラブハウスの方へ向かう。
506投稿者:リリー  投稿日:2008年02月11日(月)22時28分22秒
「おい…。梨生奈…」
小声で、梨生奈に話しかける。
「何?ありりん…」
「………貴様もか…。ま、いい…。あいつ…貴様ら1年の体育の授業をみているのだろう?」
「うん…そうだけど…」
「何か、変った様子はないか?」
「変った様子?う〜ん…運動神経が良すぎるって所だけだよ。それも、素人レベルでね…」
「そうか…。しかし、引っ掛かる…」
「あの…私達に気配を消して、近づいてたこと?」
「ああ…。昨夜のホストを思い出す…」
「あの男?…考えすぎだと思う…」
「そうか?」
「だって…私達だって、しょっちゅう人の気配を読んで生活してるわけじゃないでしょ?たまにはあるよ、そういうこと…」
「しかし…昨夜のホストはともかく、今回はそうはいかん!『TTK』の元『戦士』が6人もいて、誰も気がつかないなんてこと、あるのか!?」
507投稿者:リリー  投稿日:2008年02月11日(月)22時29分55秒
梨生奈は、少し黙り込んで考える。
「…これは…ダーさんに言われたことだけど…私達、表の世界に慣れたおかげで、少しずつそういう力が弱まってるって…」
「弱まっている…?」
「これは、ダーさんやジャスミンも例外じゃないってことだけど…」
「私は、そうは思わん…」
「ほら、スポーツ選手も、現役の時と引退した時では身体能力はガクンと落ちるって言うじゃない…」
「引退…?そうか…私達は、裏の世界から引退したというわけか…」
「うん…。今も探偵をやっているけど、『TTK』のような暗殺術は、もう必要ないでしょ…?」
「ならば…現役バリバリの裏世界の住人に会ったら…私達はひとたまりも無いな…」
「ありりん…」
梨生奈は、中村有沙の言葉に、少し不安を覚えた。
「それはいいとして…梨生奈…」
「何?」
「貴様は…これからずっと、私のことを『ありりん』と呼んでいくのか?」
「そのつもりだけど…。いや?」
「構わん…」
「気に入ったんだ…」
「………」
「気に入ったんでしょ?」
「昨夜の七海を覚えてるか?」
「………ごめんなさい…」
508投稿者:リリー  投稿日:2008年02月11日(月)22時31分10秒
それでは、今日はこれでおちます
509投稿者:ありりん  投稿日:2008年02月11日(月)22時33分53秒
可愛い
510投稿者:体育会系のあいさつ  投稿日:2008年02月11日(月)23時35分12秒
確かにヒクよねw
511投稿者:デジ  投稿日:2008年02月12日(火)05時24分41秒
忘れてました今日は国民の祝日で休みでした。
一応今までのは保存しときました。
遅い時間ですがあげます。
みんな〈藍だけ〉の喜ぶものとは何でしょうか!
続きも楽しみです!


512投稿者:もしかして  投稿日:2008年02月12日(火)13時44分33秒
有海は本を読んで野球のルール、ないしマネージャーの心得を学んでる?
513投稿者:リリー  投稿日:2008年02月12日(火)21時08分18秒
有海の本の正体がわかるのは、もう少し先になります

藍のつけたあだ名を、みんなが許すのは、それだけダーさんにつけられたあだ名に不満があるのでしょう

デジさん、今まで起きてたのでしょうか?
それとも、途轍もなく早起きなのでしょうか?
早朝のコメント、ありがとうございます
さっそく、「喜ぶ物」は登場します

それでは更新します
514投稿者:リリー  投稿日:2008年02月12日(火)21時12分04秒
2人は、クラブハウスから荷物を台車に乗せて運び、戻って来た。
その荷物は、大きなコンテナボックス二つだ。
「ご苦労さま…。さ、みんな見て!!」
あすみは、皆を呼び寄せる。
「わお!!」
藍は、歓喜の声をあげた。
コンテナボックスの中身は、真新しい、野球道具だった。
金属バットが5本、ベース、ヘルメット、キャッチャー・セット、軟式ボールが50個…。
「ほ、ほ、ほ…。気に入りましたか?」
その時、後ろから高級スーツに身を包んだ壮年の男がやって来た。
今回は、みんな…藍すらも気配に気がついた。
その男は、聖テレジア女子学園・総合学園長、武川行秀だった。
そう…新入生歓迎の為に、学園中の桜の木を植え替えた…あの男だ。
もともとは、高等部の音楽教師だったらしい。
武川の指揮する吹奏楽部は、何度も全国大会で金賞を獲っている。
その功績が認められ、高等部の学園長になり、最終的には初等部、中等部、高等部を総括する、総合学園長に登りつめた。
この野球道具は、武川が学園費から買った物だったのだ。
515投稿者:リリー  投稿日:2008年02月12日(火)21時13分13秒
「また…貴重な学費から…。何か、申し訳ないな…」
七海は、頭を掻いた。
エマとエリーは、はしゃぎ回りながら、ヘタクソなキャッチボールを楽しんでいる。
「ほら、ほら!学園長にお礼を言って!」
あすみは武川の前に部員を一列に並ばせ、礼を言わせた。
またしても、中村有沙だけは頭を下げなかったが。
「君達が野球部をやろうとしていると話を聞いてから、私は何とか力になりたいと思っていました。こんな形でしか協力できませんが…」
「いえ、いえ…。本当に感謝しています。ありがとうございます」
あすみは頭を深々と下げた。
藍も、それに倣う。
「でも…練習場はどうすんの?グラウンドは、もう他の部活で塞がってるよね?」
ジョアンが、ポツリと疑問を口にした。
516投稿者:リリー  投稿日:2008年02月12日(火)21時15分06秒
その疑問にも、武川は「ほ、ほ、ほ」と笑いながら、答える。
「それは今、近隣の住人と交渉中です」
「交渉?」
「はい。夏休みまでにはここら一帯、土地を買い上げ、野球場を建てるつもりです。急造なものですが、後期には完成するでしょう」
そのとんでもない計画に、中村有沙以外の者は全員、顔を青褪めながら、手をブンブン振った。
「い、いいです!!そこまでしてもらわなくて!!」
「そうですか?しかし、それでは練習ができませんよ?」
「それなら、初等部のグラウンドを借りられないでしょうか?そこならなんとか、練習はできます」
あすみが、代案を出す。
「初等部の…?ふむふむ…。それでは、初等部の生徒が下校するまで、ボールを使った練習はできませんよ?危ないですから…」
「そ、それで充分です。細川さん以外、素人ですから、基礎訓練からやらせますので…」
「素人?」
あすみの言葉に、カチンときた七海。
「おお、細川さんですか…。あなたには、期待してますよ。これからの聖テレジア…いや、日本のスポーツ界を背負って立つ、大事な宝ですから…」
武川は、藍の前に歩み出て、握手を求める。
「ありがとうございます!!」
藍は、両手で武川の手を握った。
517投稿者:リリー  投稿日:2008年02月12日(火)21時16分04秒
「大事な宝だってさ…。私達は大事じゃないのかな?」
エマは、エリーに耳うちした。
「もちろん、あなた達も大事です。宝石は、石ころと混ざってぶつかり合うことで、丸みを帯び、輝きを増しますから…」
「い、石ころ…?」
武川は、教育者には有るまじき、酷い言葉を言い放った自覚がない。
「この…!ケンカ売っと…」
七海の口を、素早く塞ぐ梨生奈。
「本当に、ありがとうございました。もう、練習に入りますので…」
あすみは、武川を早めに追いやった。
「では、皆さん、がんばって下さい」
武川は、笑顔で手を振って高等部の方へと戻る。
「はへれ!はへれ!(帰れ!帰れ!)」
七海は、梨生奈に口を塞がれたまま怒鳴った。
「ふぅ…。あの人…悪気がないってところが、最悪だわ…」
あすみは、冷や汗を拭いて、武川を見送った。
518投稿者:リリー  投稿日:2008年02月12日(火)21時17分35秒
その時、武川と入れ替わりに、また野球部を訪問に来た者がいる。
「げ…!」
藍は、あすみの後ろに隠れた。
長身の藍だが、更に長身であるあすみの後ろに、すっぽりと隠れてしまう。
その訪問者は、1年A組担任であり、ソフトボール部の顧問、近藤春奈だ。
後ろには、2年生で部員の、伊倉愛美と大木梓彩もいる。
2人とも、心なしか元気が無い。
「あ…近藤先生?どうしたんですか?」
あすみは、軽く会釈をした。
近藤は、まだ9人に満たない野球部のメンバーを見回して、ふんっと鼻で笑った。
「いえ、いえ…。今日が野球部の初日だって聞いたもんですから…やっと公式戦ができるメンバーが揃ったのかと思ったんですが…まだみたいですねぇ…」
嫌みったらしい感情を隠そうともしない、近藤。
それほど、藍を逃したのが惜しかったのだろうか?
当然、七海もいい気はしない。
「何なんですか?ひやかしやったら、お断りやで?角野先生…」
「卓造じゃねぇよ!!」
もう、お約束なやり取りだ。
「で…一体、どういった用件で…?近藤先生…」
あすみも、不可解そうに近藤に尋ねた。
519投稿者:リリー  投稿日:2008年02月12日(火)21時19分01秒
「いえね…実は、細川のことなんですけど…」
藍は、あすみの後ろから、ひょいと顔を出す。
「だから…!退部届けは出したハズです!!」
「退部届け?それって…これのことかな〜?」
近藤は、懐から封筒を出す。
「でもなぁ〜…『退部届け』は受け取ってないんだよなぁ〜…」
そこには、『進部届け』と書いてある。
藍が漢字を間違えたのだ。
「つまりぃ〜、『進んで、部活に参加します』って決意表明と解釈して、いいのかなあ〜?」
「あははは!!バカだねぇ〜!!」
エマも、エリーも、ジョアンも、その封筒の誤字を見て、指を差して笑った。
「うわ…!は、恥ずかしい!!」
藍は、両手で頬を覆うと、顔を真っ赤にさせた。
「つまり…!細川!!おまえはまだ、ソフトボール部に籍を置いているんだ!!」
「だ、出します!!新しい退部届け、出します!!」
「受け取らない、と言ったら?」
「そ、そんなぁ〜」
泣き出しそうな顔になり、藍は、その場にへたり込んだ。
520投稿者:リリー  投稿日:2008年02月12日(火)21時20分02秒
「こ、近藤先生…!藍は、この通り野球部をがんばりたいんです!私からもお願いします!ソフトボール部の退部を認めてあげて下さい!」
あすみも、その長身を折り曲げて、頼み込む。
藍はといえば、土下座をしている。
近藤は、しばらくの間、優越感に浸るが、すぐに渋い顔をする。
「ええと…ここまでソフトボール部に残りたくないとはね…。傷つくわぁ〜…。もういい、ここは、お互い妥協しましょう」
「妥協?」
あすみは、顔を上げる。
藍は、妥協という言葉の意味がわからないので、まだ地面に額を擦り付けている。
「細川…。おまえは、このままソフトボール部に在籍すること…」
「ええ〜!!こんなに頼んでいるのにぃ!!」
藍は、悲鳴にも似た声をあげる。
「まだ、最後まで話しは終わっていない!!」
近藤は一言怒鳴り、また言葉を続ける。
「しかし、野球部の在籍も認めるものとする…」
「え…?」
藍は、近藤の言っている意味がわからない。
521投稿者:リリー  投稿日:2008年02月12日(火)21時21分06秒
「細川…。おまえは、野球部の練習をしてもいいけど、大会一ヶ月前になったら、ソフトボール部にも参加すること!そして、大会に出る!わかる?」
「あ…はい…」
「そして…どうせ、メンバーが揃ってないんでしょ?うちの部から、2人、レンタル移籍させるから…だから、ソフトボール部にも、おまえがレンタル移籍をする!」
近藤に促され、愛美と梓彩が前に出される。
2人とも、溜息をついている。
「つ…つまり…?」
「野球部を認めてやる上に、部員を2人貸し出してやるって言ってんの!!だから、おまえは、ソフトボール部にも残る!!いい加減に、理解する!!」
「………こ、これは…喜んでいいの…?」
藍は、あすみの顔を見る。
あすみは、力強く頷く。
「あ…バ、バ、バンザ〜イ!!」
藍は、ワンテンポ遅れの歓声を上げた。
細川藍、藤本七海、中村有沙、ジョアン・ヤマザキ、木内梨生奈、近藤エマ、渡邊エリー、伊倉愛美、大木梓彩…顧問、中田あすみ…。
これで、メンバーは9人…公式戦ができる人数が揃い、聖テレジア女子学園中等部・軟式野球部が正式に発足したのである。
522投稿者:リリー  投稿日:2008年02月12日(火)21時22分03秒
大喜びの藍は、七海と手を取り合って、踊りはしゃぐ。
七海は、それでも藍ほど楽天的になれなかった。
チームワークが最悪な『R&G探偵社』の者が大半を占める、この野球部…本当にうまくいくのだろうか…不安の方が大きかった。
そして中村有沙は、顧問、中田あすみに疑いの目を向けている。
一方、テンションが低いのは、伊倉愛美と大木梓彩のソフトボールプレーヤーである。
彼女達は藍と正反対で、野球ではなく、ソフトボールがやりたいのだ。
「ちょっと、2人とも来な」
近藤に呼ばれる、愛美と梓彩。
「はい…」
返事に気合が入らない。
「何なの?その腑抜けた声は?」
近藤は、ジロリと2人を睨む。
「だって…」
少し、ふて腐れ気味でもある。
「何で、今回、あんた達を野球部に寄越したと思うの?」
2人は、意気消沈した顔を見合わせる。
「それは…私達が細川さんを部に残留させられなかったから…その罰ゲームですか?」
「それとも…私達、レギュラーの可能性がないから…とか?」
2人には、もう、ネガティブな発想しかできない。
523投稿者:リリー  投稿日:2008年02月12日(火)21時23分16秒
近藤は、メガネの上から手で覆う。
「おバカ!!あんた等が、ソフトボール部に要らない存在だって理由なんかじゃないよ?」
「え…?」
「あんた等は守備は一流、でも、バッティングは三流!!わかるね?」
「はい…よくわかってます…」
愛美は、頭を下げる。
「まず、あんた等はバットスイングが絶望的に遅いんだわ!!」
「はい…その通りです…」
梓彩は、肩をちぢ込ませる。
「野球の速い投球でバッティングを練習すれば、段々スイングが早くなるでしょ?」
「…え?」
愛美は、顔を上げる。
「それに、速い打球の処理を練習すれば、もともと上手かった守備にだって、磨きが掛かるってもんよ!」
「は、はい!」
梓彩の顔が、明るくなる。
「いい?一皮も二皮も剥けて、大きくなって帰っておいで!!来年の主力はあんた達なんだからね!!細川だけで勝てるほど、勝負は甘くないよ!?」
「はい!がんばります!!」
自分達は見捨てられたわけではなかった…それだけで、2人は野球部を懸命に頑張ろうと、思えるようになった。
近藤は、帰り際にも「卓造じゃねぇよ!!」と怒鳴って、ソフトボール部の方へ戻って行った。
524投稿者:リリー  投稿日:2008年02月12日(火)21時24分36秒
今日は少し多くなりましたが、これでおちます

どうやら、まだ過去ログには行かないようで、よかったです
525投稿者:こんどん良い先生だな  投稿日:2008年02月12日(火)21時30分49秒
逆に武川さんはちょっと…
とにかく野球部結成おめでとう!
まだまだ色々問題はありそうだが
526投稿者:117  投稿日:2008年02月12日(火)21時52分28秒
1日ぶりに来ました。だいぶ話が進みましたね。
こんどん先生、口が上手いなぁ(笑)。「卓造じゃねぇよ」がまた面白い(笑)。
一方で、有海の本,そしてあすみん先生の正体?も気になるところです。
527投稿者:あすみん気になるなー  投稿日:2008年02月12日(火)21時57分53秒
どんな風に物語に絡んでくるんだろ
528投稿者:進部届にワロタwww  投稿日:2008年02月13日(水)08時55分36秒
こんどんいろんな意味でいい先生だから何だかうれしい!
だけど大丈夫かいな 野球部はww
529投稿者:ところで  投稿日:2008年02月13日(水)09時01分30秒
武川さんのモデルは誰?
530投稿者:リリー  投稿日:2008年02月13日(水)20時54分10秒
こんどんの評判が良くて嬉しいです
でも、やはりここでフォローを入れておかなければ、愛美と梓彩が可哀そうですものね
藍をソフトボール部につなぎとめる為に、2人を人身御供にしてしまったら、武川学園長と何ら変らないですものね

529さん、武川さんは、昔TTKの面倒を見てくださった、元ゴダイゴのタケカワユキヒデさんです

あすみんは、まだこの段階では普通の教師です
もうしばらく、こんな関係が続くと思います

では、更新します
531投稿者:リリー  投稿日:2008年02月13日(水)20時55分19秒
「さてと…これで9人揃ったね…。誰が、どこを守るか…ポジション決めをしようじゃないの。で、希望があったら聞くけど?」
あすみの言葉に、藍が手を挙げる。
「あい〜ん、何?」
「いえ、私じゃないんですけど…是非、セカンドを、まにゃ先輩、ショートをあず〜先輩にお願いします!!」
「ほう…。ソフトボール部でも、二遊間なの?君達…」
あすみは、興味深げに、愛美と梓彩を見る。
「いえ…その…二軍の補欠ですけど…」
愛美は、恥ずかしそうに呟く。
「近藤先生も言ってたね、守備は一流だって。うん、近藤先生を信じよう!それに、二遊間は、キャッチャーと共に、守備の要だからね。素人には無理だろうから…」
「素人…!?」
またも、あすみの言葉にカチンとくる七海。
しかし、七海は黙っていた。
彼女には、やりたいポジションがあったのだ。
「で、先生、いいですか?」
藍は、引き続き手を挙げる。
「はい。今度こそ、あんたがやりたいポジションだね?」
「はい。私、ピッチャーやります!!」
「ちょっと、待ったらんかい!!」
七海が、間髪入れず立ち上がった。
「ウチがピッチャーや!!あんたは、引っ込んどき!!」
532投稿者:リリー  投稿日:2008年02月13日(水)20時56分18秒
「おや、おや…。ピッチャー候補が2人か…。ま、ピッチャーは何人いても困らないからね。とりあえず、2人ピッチャーということで…」
「それじゃあ、アカン!!」
七海は叫んだ。
「ん?どうして?2人ともやらせてあげるよ…」
「ちゃう!ピッチャーは2人いても、エースナンバー…背番号『1』は、一人しか着けられへんやんか」
「うん…まぁ…そうだね…」
「『1』着けるんは…エースピッチャーは、ウチや!!」
それには、藍も立ち上がる。
「ちょっと!あんた、昨日の勝負、忘れたの?私が勝ったんじゃなかったっけ?」
「ピッチャー対決では、引き分けやったやろ?」
「引き分け!?あんたの球、私、ホームランにしたでしょ?」
「あれは、ウチの実力の半分もないわ!!」
「そんなこと言うんなら、私だって、実力の半分だったわ!」
「ウチは3分の1や!」
「私は、4分の1!」
「5分の1!」
「6分の1!」
「アホらし…」
ジョアンは、寝転んで雲を見上げた。
533投稿者:リリー  投稿日:2008年02月13日(水)20時57分23秒
しばらく、小学生のような2人のやり取りを楽しんで聞いていた、あすみは、2人の間に立って引き離した。
「OK、OK!それじゃあ、100%の力をここで見せてみなよ」
「へ?100%?」
「思いっきり投げてみな!!今、ここで!」
2人は、顔を見合わせる。
「誰が…捕るんですか?」
「そうや!!ウチの100%の直球、捕れるヤツは、そうはおれへんで!?」
「あの、大暴投は、確かに捕れる人はいないよね」
「何やと!?このぉ!!」
「何よ!?」
七海と藍は、またいがみ合った。
「だから、私が受けてあげるよ!!それでいいでしょ?」
「先生が…?」
「できんの?」
2人は、呆然とあすみを見上げた。
「当たり前じゃん!どうして、私が野球部の顧問引き受けたと思ってんの?」
あすみは、プロテクターとレガース、キャッチャーマスクを慣れた手つきで身に着ける。
「先生、野球やったことあるんですか?」
愛美が尋ねた。
「ふふふ…。愚問だね!」
最後に、キャッチャーミットを左手にはめた。
534投稿者:リリー  投稿日:2008年02月13日(水)20時58分22秒
あすみは、しゃがんでミットをバシバシと叩く。
「さあ、5球ずつだよ。先に投げるのはどっち!?」
この対決に、退屈そうだった他のメンバーは、興味津々に食い入るように見る。
「おもしれぇ〜!昨日のリターンマッチじゃん」
「今回ばかりは、七海も連敗ってわけにはいかないわね…」
エマと梨生奈が、一番、この勝負に注目している。
「なあ、どっちが勝つと思う?」
ジョアンは、一番後方にいる中村有沙に問う。
「どっちが勝とうと、興味はない…」
中村有沙の視線の先は、キャッチャー…中田あすみに向けられている。
「私!私が先にやります!!」
藍が、手をブンブンと振った。
七海は、余裕の表情で、腕組みをしてお手並み拝見といった風に構える。
藍は、七海の方を向く。
「いい?この前は聖斗がキャッチャーだったから、手加減して投げたんだよ?」
「そんなん、ウチだって同じや」
そう言い返した七海を、じっと睨んで、藍は投球フォームに入る。
535投稿者:リリー  投稿日:2008年02月13日(水)20時59分08秒
「ちょっと待って」
あすみは、立ち上がって、藍を制する。
「な、何ですか?」
投げる気満々だった藍は、調子が狂ってしまった。
「遠すぎない?もう少し…3歩くらい前で投げなよ」
「…!ほんとだ…」
確かに、今は野球場のマウンドではなく、グラウンドの片隅にいる。
だから、目測でピッチャーとキャッチャーの距離を決めなければならない。
正確な距離は、わからないのだ。
しかし、あすみは僅かに藍の位置が遠いと判断した。
相当、野球のプレイに慣れていると見ていいだろう。
そんな、あすみが顧問を引き受けてくれたことを、藍は頼もしく思った。
あすみの言う通り、藍は3歩前に歩み出る。
そして、今度こそ渾身のストレートをあすみの構えるミットに投げつけた。
「お!?」
気持ちの良い音と共に、ミットにボールが納まった。
藍は、まずは3球、ストレートを投げた。
536投稿者:リリー  投稿日:2008年02月13日(水)21時00分20秒
「先生、カーブ投げます!!」
「カーブ?投げれるの?」
七海の眉がピクンと動く。
そう…昨日はそのカーブに散々苦しまれた…。
やはり、藍は変化球をアピールしてきた。
それに対抗するには…やはり剛速球しかない。
そして藍は、最後の5球目は、なんとシュートを投げた。
「昨日、投げへんかったやん!!」
七海は、思わず声をあげた。
藍は、勝ち誇ったように七海を見る。
「オノレ…。ナメくさって…!」
七海は歯軋りした。
100%ではなかった…藍の言葉に、ウソはなかった。
537投稿者:リリー  投稿日:2008年02月13日(水)21時01分07秒
今日は、これでおちます
538投稿者:117  投稿日:2008年02月13日(水)21時28分31秒
あすみん先生、ますます気になります。
藍と七海の対決再び!なかなか面白い展開になりそうですね。
続きも楽しみです!
539投稿者:シュートってどういうことですか?  投稿日:2008年02月13日(水)21時38分07秒

540投稿者:シュート  投稿日:2008年02月13日(水)22時46分33秒
シュートとは、野球における球種のひとつで、比較的速い球速で投手の利き腕方向に曲がる変化球である。

その球速と初期の球筋は他の変化球と比較しても直球に近く、右投手であれば右打者に対し近づくように変化する。そのため直球であると錯覚しスイングした場合はバットの根元に当たることになり、ゴロを打たせて取るのに非常に有効な球種とされている。

ウィキより・・・
541投稿者:右手で投げると右側に  投稿日:2008年02月13日(水)22時47分54秒
左手で投げると左側に直角に変化するボール
スライダーの逆バージョン
542投稿者:だから  投稿日:2008年02月13日(水)22時52分54秒
シュートを投げられるって、かなり凄い
女子中学生が投げるってのは、もっと凄い
543投稿者:変化球を持っている藍と  投稿日:2008年02月14日(木)08時46分00秒
剛速球一筋の七海……

女の子だけにメジャー以上に面白いかもww(笑)
544投稿者:リリー  投稿日:2008年02月14日(木)20時48分09秒
今、『うたばん』で七海が出てるみたいですね

たしかに、中学生女子にシュートを投げさせるのはやりすぎでしたかね…
高校野球でも、そんなにお目にかかれないですもんね…

ピッチャー対決、まだ続きます

では、更新します
545投稿者:リリー  投稿日:2008年02月14日(木)20時48分58秒
次は七海の番だ。
藍の変化球はもちろん、ストレートだって伸びがあった。
平凡な速球では、このピッチャー対決でも負けてしまうかもしれない。
剛速球を投げることはできるが、問題はコントロールだ。
しかも…忌々しいことに、左の瞼が腫れている。
視界が非常に悪い。
「ねぇ…。その目、大丈夫?ちゃんと見えてる?」
案の定、あすみが心配して声をかけた。
「大丈夫や!何ともない!」
とにかく、構えたミットに向けて、慎重に投げるしかない。
七海は、神経を集中させる。
「タイムだ!」
その集中を、無理矢理断ち切られた。
声の主は、中村有沙だった。
546投稿者:リリー  投稿日:2008年02月14日(木)20時49分39秒
「な、なんじゃい!?」
七海は、思わず怒鳴った。
「七海、こっちに来い」
中村有沙は、犬を呼ぶように、人差し指を動かす。
「用があるんやったら、オノレが来んかい!!」
溜息をついて、ゆっくりと七海の元に歩み寄る、中村有沙。
「一体、何やねん!?」
苛々が募る七海。
中村有沙は、七海の耳元で囁く。
「七海…。ヤツの顔面に向かって、思いっきり投げろ!」
「な、何やって?」
「ヤツがどう球を処理するのか、見てみたい…」
「何で、そないなこと、せなアカンねん!」
「貴様、気にならなかったのか?あの女…完全に気配を消して、私達の裏をとったのだぞ?」
「………!」
それは七海も、あすみとの初対面の時に感じた、不安と恐怖だった。
547投稿者:リリー  投稿日:2008年02月14日(木)20時50分24秒
「もし、これが殺し合いなら、我々は皆殺しになっていた…」
「な、何で、殺し合いに例えるねん!?学校やぞ?ここは…」
「とにかく、あの女の底を知りたい。殺すつもりで投げろ!」
「やかましい!!そないなことよりも、今は勝負や!!邪魔すんな!!」
「勝負?もしかしたら、我々の命に関わることに、なるやもしれんのだぞ?」
「そうや!この勝負が、ウチにとっての命や!!」
「貴様………いや、もういい…」
中村有沙は、諦めて戻って行った。
「おう、帰れ、帰れ!!」
七海は、野良犬を追い返すように、手を振った。
「もう、いいかい?」
あすみは、キャッチャーマスクを被り直す。
「ああ、ごめんな」
七海は、今度こそ大きく振りかぶり、渾身のストレートを放った。
548投稿者:リリー  投稿日:2008年02月14日(木)20時51分10秒
その球は、あすみの遙か上を飛んで行った。
呆然と、立ち上がるあすみ。
「大丈夫…?やっぱり、見えてないだろ?」
「だ、大丈夫やって…!」
ギャハハと笑う、ジョアンの声。
「く…!忌々しい!!」
腫れた目で、ジョアンを睨みつける七海。
しかし、中村有沙は別のことを考えている。
「今のボール…少し飛び上がれば、捕れそうなものだが…」
確かに、普通の人間なら、無理だろう。
しかし、それなりに訓練された者…例えばプロの選手、そして、『TTK』の戦士級ならば、可能だ。
「考えすぎ…か?」
しかし、中村有沙の慎重すぎる性格は、簡単に疑いを晴らすことはない。
549投稿者:リリー  投稿日:2008年02月14日(木)20時51分54秒
七海にとっては、今の投球は大きなマイナスポイントだ。
何せ、藍は5球全てがストライクゾーンに入っている。
しかも、球威はそれなりにあった。
それに比べ、自分はあの大暴投…。
「ねぇ…。怪我が治ってから、改めて勝負しようよ」
藍が、七海に声をかける。
「やかましい!!ナメくさってると、イテまうぞ!?」
「ナ、ナメてないよ!心配してるんでしょ!?」
「大きなお世話や!!ほっとけっちゅうねん!!」
「わかったよ!!ほっとくよ!!」
しかし藍の言う通り、勝負は保留した方が、七海にとっては一番良い選択なのだが…そのプライドの高さと言うか、意固地なところが、彼女をそうさせなかった。
七海は、まず自分がノーコンだという疑いを晴らすことの方が重要だった。
2球目、3球目、4球目と、球威を落とし、なんとかストライクゾーンにボールを投げた。
そこそこ速いが、なんとも平凡なストレート…。
自分の力は、こんなものじゃない…七海は自分が歯がゆかった。
550投稿者:リリー  投稿日:2008年02月14日(木)20時52分47秒
(こうなったら…一か八かや…!)
目では見ず、今まで投げてきた感覚で、全力の球をミット目がけて投げるだけ…!
どうせこのままでは、今回も藍に負けてしまうだろう…。
七海は目を閉じる。
2球目から4球目のフォームは、身体が覚えている。
あとは、自分の全てを出し切るだけだ!
大きく振りかぶり…身体全体を弓なりにして…指先に全ての力を預け…解き放つ!!
「!?」
次の瞬間、あすみは仰向けに倒れた。
「…え?」
藍や愛美、梓彩といった表の人間はもちろん、中村有沙達、元裏の人間ですら何が起こったのかわからなかった。
「せ…先生!!」
皆は、大の字に倒れているあすみに駆け寄った。
中村有沙だけは、ゆっくりと歩むが…。
七海は、周りの騒がしさに、今ようやく目を開けたところだ。
(へ…?みんな、どうしたん?)
七海も、恐る恐る皆が集っている現場へと走る。
551投稿者:リリー  投稿日:2008年02月14日(木)20時53分53秒
あすみの被っているキャッチャーマスクには、楕円形に変形した軟式ボールが、『はまって』いた。
どうやら、球は僅かに上に外れ、あすみの顔面に向かってしまったようだ。
計らずとも、中村有沙の命令を律儀に守ってしまった形になる。
「よくやった。七海…」
中村有沙は、七海の肩を叩いた。
それが、たまらなく悔しい。
「なるほど…。中田あすみ…恐れるに値せず…」
中村有沙は、その場から離れた。
「せ、先生?あすみん?大丈夫?」
藍は、心配そうに覗き込む。
「う…う〜…ん…」
あすみは、ゆっくりと起き上がった。
皆に、安堵の息が漏れる。
あすみは、キャッチャーマスクからボールを外そうと試みるが、それができず、マスクごと顔から外す。
「凄いね…藤本さん…。何?今の球…。全然反応できなかったよ…。あんな球、打てる人、中学生男子でも…いや、高校球児でもなかなかいないよ!」
「ほ…ほんまに!?」
七海の顔が明るくなる。
藍は、悔しそうに唇を噛んでいる。
ピッチャー対決を制した…と、七海は確信した。
552投稿者:リリー  投稿日:2008年02月14日(木)20時55分04秒
「じゃあ、ピッチャーは…あい〜んにやってもらうよ」
その、あすみの言葉に、七海は真面目に、吉本新喜劇の如くコケた。
藍は、信じられない…という表情で、あすみを見た。
「な、何でやねん!!ウチ、ごっつい速い球、投げたやん!!」
七海は、あすみに掴みかからん勢いで抗議した。
「うん…確かに速かったけど…誰が捕るの…?」
「あ…」
そうだ…。誰が捕れるというのだ…。
自分と同じ、『TTK』の『戦士』でも、相当な訓練が必要だろう。
いや、その前に、そんな努力をする連中とは思えない。
「でね、藤本さんにはライトをやってもらおうと思ってる」
「ラ、ライト!?」
あすみの提案に、七海は素っ頓狂な声をあげる。
「な…何で…?」
「まず…その球威、外野からのバックホームに最適だ。外野からなら、その速球も何とか捕ることもできるだろ?」
「う…う〜ん…」
承服しかねる、といった感じの七海。
「あのイチローだって、高校時代はピッチャーだったんだ。良い外野手の条件は、良いピッチャーであることだと思うよ?」
イチローと同列に語られて、七海は悪い気はしなかったが…。
「野球に勝って、勝負に負けたってとこやな…」
これで、藍との野球対決は、連敗となってしまった。
553投稿者:リリー  投稿日:2008年02月14日(木)20時55分59秒
それでは、今日はこれでおちます
554投稿者:あすみんの疑いは一応晴れたのか…?  投稿日:2008年02月14日(木)21時56分27秒
野球対決も気になるが
555投稿者:世界  投稿日:2008年02月15日(金)00時03分58秒
あすみやクックは「らりるれろ」の瑠璃的な感じがするなあ
ともあれこれからの動きが楽しみ
556投稿者:登場人物表に  投稿日:2008年02月15日(金)17時47分58秒
藍がピッチャーで背番号1、七海がライトで背番号9だったから、七海が巻けるとは思っていたけど、こういう負け方だったのね
557投稿者:117  投稿日:2008年02月15日(金)21時48分18秒
七海にとっては、ライトは屈辱でしょうね。
あすみん先生への疑いは解けたということでしょうか・・・?

一方、昨日の「うたばん」に七海が出演していましたが、だいぶ大人っぽくなっていましたね。
558投稿者:あげ  投稿日:2008年02月15日(金)22時12分13秒
 
559投稿者:リリー  投稿日:2008年02月15日(金)22時25分57秒
遅くなりました
今、帰りました

『うたばん』見ました
ずいぶん大きくなりましたね
背が高いし、色も黒くなりましたし、髪形もちがうし…
この小説でイメージしてた七海とはだいぶ違います
この小説では、06年の頃の七海をイメージしてください

ポジション争いはこれにて終了ですが、ノーサイドな感じの、爽やかなものにしたいです

では、更新します
560投稿者:リリー  投稿日:2008年02月15日(金)22時27分13秒
藍は、七海の肩に手を置いた。
「ななみん…凄かったよ、あの球…。昨日、あの球を投げられたら…私の負けだったよ…」
「藍…」
藍は素直に七海の力が、自分より上だということを認めた。
それでも、爽やかに微笑んでいる。
「ううん…。野球はチームプレイや…。ウチは…一度もチームで野球をやらんかった…。せやから、ウチが負けたんや…」
七海は、この敗戦から学ぶべきものを見つけた。
「ふん!!七海め!!素人相手に負けやがって…!『TTK』…じゃ、なかった…『R&G』の恥さらしめ!!」
ジョアンは、つまらなそうに呟いた。
あすみは、改めて野球部のメンバーを見渡す。
「さてと…これで、セカンド、ショート、ピッチャー、ライトが決まったけど…困ったねぇ…」
「困った?何を困ってるんですか?」
後ろ頭を掻くあすみに、藍が聞く。
「キャッチャー、どうしようか…?扇の要のように、重要なポジションだろ?でも、あとは初心者ばかり残っちゃった…」
さっきの、あすみの惨劇を目の当たりにしたエマとエリーは、すっと身を退いた。
梨生奈も、ジョアンも、乗り気はしない。
そんな中、中村有沙が無言で手を挙げた。
561投稿者:リリー  投稿日:2008年02月15日(金)22時28分25秒
「え…?ありりん先輩、キャッチャーやってくれるの?」
藍が、本当に意外そうに叫んだ。
「ああ。私がキャッチャーとやらをやってやろう…」
「わ〜!!感激!!ありりん先輩とバッテリーが組めるなんて…!」
藍は中村有沙に抱きつこうとしたが、さりげなく身をかわされる。
「でも…何でキャッチャーをやろうと思ったんですか?」
「ん?それは…テレビで見たことがあるのだが、キャッチャーというのは、一人だけいつも座っていて、楽そうではないか…」
藍は、ふらり…と目眩を起こした。
「あと、ベンチから一番近いし…。外野のように、長い距離を歩かされるのも嫌いだからな」
「あ…ありりん先輩…。キャッチャーを…ナメすぎです…」
「む?ナメてはいないぞ?ただ、よく知らないだけだ…」
「だったら、教えて差し上げます!!キャッチャーというのは、ピッチャーにどんな球を投げさせるか、バッターによって組み立てなければならないし…」
「どんな球を投げるかは、貴様に任せる」
「…で、でも、塁に出たランナーの盗塁を阻止しなけりゃならないし…」
「貴様が、ランナーを出さなければ済む話しだ」
「わ、私に全試合、完全試合をやれって言うんですか?」
「完全試合というものは、よく知らないが…ソレをやればいい」
「あ、あすみん…。何とか言って下さいよ〜…」
とうとう藍は、あすみに泣きついた。
562投稿者:リリー  投稿日:2008年02月15日(金)22時29分36秒
あすみは、豪快に笑っている。
「OK、OK!いいじゃないか。まずはやってみないと…。だけど…中村さん…」
「何だ?」
「さっき、藤本さんの球、見た?キャッチャーには、時々ああいう事態に陥ることもあると…覚えておいた方がいいよ」
「ふん!貴様と、この私を一緒にするな。私なら、あれぐらいの球、捕ってみせる」
「ちょっと、ちょっと!ありりん先輩!!」
教師に対するものとは思えない、中村有沙の言葉に、藍は顔を青くする。
「ほぉ…。本当に面白い子だね…。中村さん…」
あすみは、微笑みを崩さない。
「じゃあ、後のポジションは、後日決めよう。遠投とかノックとかやってみて、誰がどのポジションが合っているかを決めるから…」
「はい、それがいいです。私達、ポジションとか良く知らないし…」
エマは、ヘラヘラと笑いながら言った。
キャッチャーをやらずに済んだ、ということが、よっぽど嬉しいらしい。
「で…まだ決めることはあるよ…。キャプテン、誰がやる?中村さん?それともヤマザキさん?」
やはり、あすみは3年生にキャプテンをやらせる気でいる。
563投稿者:リリー  投稿日:2008年02月15日(金)22時30分30秒
「私はやらないぞ」
「アタシもパス!キャプテンなんて、柄じゃないよ。あい〜んでいいんじゃない?あい〜んで…」
藍は、ジョアンの提案に慌てた。
「だから…!1年の私がキャプテンなんて、有り得ないんですって!!」
「何で?有り得るだろ?あんたが一番、野球知ってるんだからさぁ…」
ここで、「自分がやる」と立候補するのが、今までの七海だった。
だが、藍との勝負を終えて、彼女の中に何かしらの変化が起きたのだろうか…七海は、推薦をした。
「伊倉さんか…大木さんでええんとちゃう?」
「え…?」と、顔を上げる、愛美と梓彩。
「ダ、ダメだよ!だって、私達、ソフトボール部からのレンタル移籍だよ?」
「本当は、ソフトボール部に在籍してるんだし…!」
しかし、その七海の提案に、藍も賛成した。
「いや、いいと思います!!まにゃ先輩や、あず〜先輩だったら…!」
「だ、だって…野球とソフトボールは違うし…」
「一緒や…」
七海は言った。
「似たようなもんや…。野球とソフトボール…。9人で力を合わせる…一緒やん…」
「藤本…さん…?」
この間、こう言って怒鳴られたのに…何が彼女を変えたのだろう…?
愛美も梓彩も、不思議に思うと同時に、嬉しく思えた。
564投稿者:リリー  投稿日:2008年02月15日(金)22時31分40秒
あすみは、穏やかな笑顔で、愛美と梓彩に語りかける。
「伊倉さん…大木さん…あんた、ソフトボールの武者修行で、この野球部にいるんでしょ?だったら、キャプテンの武者修行もやってみたら?」
「キャプテンの…武者修行…?」
「折角、他の部員ができない経験をしてるんだから…経験できるものは、経験しとかないと損じゃない?」
経験しなければ…損…?
こんな考え、今までの人生でしたことがなかった。
この、あすみの言葉…何か不思議と勇気が湧いてくる…。
話し合いの結果、キャプテンは愛美がやることとなった。
七海は、愛美の側に歩み寄る。
「な、何?藤本さん…?」
少し、愛美に緊張感が走る。
「よろしゅう、お願いします…キャプテン…」
ペコリと頭を下げる七海。
「あ…は、はい…」
愛美も、つられて頭を下げた。
「それと…この前は…失礼しました…」
七海は、2週間遅れの謝罪をした。
565投稿者:リリー  投稿日:2008年02月15日(金)22時33分12秒
「それと…あの…キャプテン…」
「何?」
「………いや…何でもないです…」
伊倉愛美…この少女の身に、もしかしたら危険が迫ることになるかもしれない…。
彼女の父親が…ヤクザの犯罪の内部告発をしたのだ。
それを全力で守るのが…自分の役目なのだ…。
愛美には…そんな危機など毛ほどにも感じさせてはいけないのだ。
昨夜の自分の行動は…彼女を危険にさらすことになったかもしれない。
自分のこの顔の傷は…その戒めとして受け入れよう…。
しかし…。
中村有沙を、睨む七海。
(コイツだけは…許さん…!!いつか倍返ししたる!!絶対に…!!」
中村有沙は、七海から発せられる殺気に気付くが、そよ風にあたるかのように、平然としている。
そんな中村有沙に、梨生奈が話しかける。
「どうやら取り越し苦労だったみたいね…」
「む?何がだ?」
「中田先生…。ただの…いや、普通にいい先生って感じよ…」
「いい先生かどうか知らないが…普通以上の凡人だということがわかった」
「でも、気配を感じなかった謎は残るけど…」
「凡人だから、気配を感じなかったのだ。そういうものだ…」
中村有沙は、もう既に、あすみから興味を失くしてしまったようだ。
566投稿者:リリー  投稿日:2008年02月15日(金)22時34分12秒
今日はこれでおちます
567投稿者:序盤から名シーンキタ  投稿日:2008年02月15日(金)22時54分37秒
心が暖かくなるような名シーンだ

七海の成長、偶然だけど最近の女優として頑張ってる七海と重ねてしまった
568投稿者:また  投稿日:2008年02月15日(金)23時12分17秒
藍と一悶着あるのかと思ったら・・・
大人になったねぇ・・・
569投稿者:ありりんは興味0だけど…  投稿日:2008年02月16日(土)09時27分08秒
あすみの正体はやっぱり気になりますね……。

七海の成長に感激!うたばんは見てないけどw
570投稿者:デジ  投稿日:2008年02月16日(土)12時17分06秒
七海成長しましたね。それとも藍の実力を見抜いたのでしょうか。
続きも楽しみです!

そういえば書き始めからもう一ヶ月がたったんですね!


571投稿者:リリー  投稿日:2008年02月16日(土)21時00分01秒
デジさんの仰るとおり、もう、一ヶ月ですか
でも、一ヶ月で『5回表』までいくとは、少しペースが速いですね
このペースで行くと、夏までにはこの小説は終わりそうです。
でも、まだ先の展開を考えてない状態なんです
ですから、少しペースが落ちるかもしれませんね

羅夢が成長した今、七海も成長しないといけませんからね
この時点では、羅夢はまだ原村に行ってませんが…

今日で、『5回表』は終了します

では、更新します
572投稿者:リリー  投稿日:2008年02月16日(土)21時01分40秒
「よし、これで9人そろったし、キャプテンも決まったし、道具も揃えてもらったし、グラウンドも初等部のを貸してもらえるし…聖テレ野球部、なんとかやっていけそうだね!」
その時、あすみの言葉に埋もれ、誰かの声が重なったような気がした。
「うん?今、誰か、何か言った?」
あすみは、部員を見回した。
「後ろだ」
中村有沙の指差した方向に、一人の少女が立っていた。
573投稿者:リリー  投稿日:2008年02月16日(土)21時01分57秒
藍は、声をあげた。
「あ!あみ〜ご!!」
「一木さん…?」
七海も、中村有沙の指差す方を見る。
その少女は、一木有海だった。
彼女は、体育時のジャージを着ている。
(一木さん…。まだ、野球部に入るつもりなん?あれだけウチに泣かされたのに…)
表情は…まだ何も言っていないのに…何も言われていないのに…今にも泣き出しそうだ。
「どうした?君、野球部に入りたいの?」
長身のあすみが迫ってきたので、有海は思わず後退りする。
「たしか…C組の学級委員の一木さんだよね?よく、体育の予定を聞いてくる…」
「いえ…あの…」
有海は、うつむいたまま黙り込んでしまった。
ジャージ姿なのだ。
部活をしに来たに決まっている。
しかし、有海には、勇気を持ってその一言を言うのが、たまらなく困難なのだ。
574投稿者:リリー  投稿日:2008年02月16日(土)21時04分31秒
「ん?何?はっきり言いなよ?」
あすみは全然そんな気はないのだが、有海をどんどん威圧してしまっている。
有海は、その度に後ろへ下がる。
今にも、逃げ出しそうだ。
「あの………あの………」
有海の声は、段々小さくなる。
「何だ?アイツ…」
ジョアンは、少し苛つきながら有海を見る。
七海は、何も言わず、じっと有海を見詰める。
藍は、たまりかねて有海の側に駆け寄った。
「あみ〜ご、野球部に入りたいんでしょ?そうだよね?私が頼んであげる。あすみん、この子…」
「甘やかすな!」
その一言で、藍は言葉を続けられなくなった。
「…え?」
声のした方向を振り向く。
声の主は、中村有沙だった。
575投稿者:リリー  投稿日:2008年02月16日(土)21時05分13秒
「そいつが伝えたいことを、そいつ自身が言えなければ、意味が無いだろう…」
中村有沙の言葉は、空気を切り裂くように響く。
痛いほど冷たい、その視線を、まともに受けることができない有海。
「言いたいことがあるのなら、今すぐ言え。できなければ、今すぐ消えろ」
中村有沙は、有海とは今が初対面のはず…。
この一瞬で、有海の心の弱さが見えてしまったのだろうか?
(一木さん…)
七海は、ただ黙って、有海を見詰めることしかできない。
そう…それ以上に、何ができるのだろう?
「あ…う…」
有海は、声を絞り出そうとしている。
たった一言でいいのに…。
何故、こんなに苦しまなければならないのだろう…。
声よりも先に、涙が流れ出た。
「一木さん!」
七海が叫んだ。
「!?」
有海は、七海の目を見る。
七海は、ただ頷いた。
そして…有海も頷いた。
576投稿者:リリー  投稿日:2008年02月16日(土)21時06分17秒
「や…や…野球という競技は、9人ずつの選手からなる2チームで、両チームが攻撃と守備を繰り返し、得点を取り合う球技です…」
「へ?」
やっと声を出したと思ったら…一体、何を言い出すのだろう…。
その場にいた者は固まった。
「野球は守備側の選手がボールを投げ、それを攻撃側の選手がバットで打つということが基本となります。バットで決められた範囲内にボールを打ち返すことができればグラウンドに置かれた塁に進むことができます。攻撃側の選手は本塁からスタートし…」
有海は、一気に喋り出した。
涙と一緒に…。
「おい、おい!おまえ、何言ってんの!?」
ジョアンがたまらず声をあげた。
「うるさい。黙っていろ」
中村有沙が、ジョアンの耳元で囁いた。
「一木さん…」
七海だけが、有海が何を言おうとしているか、理解できた。
577投稿者:リリー  投稿日:2008年02月16日(土)21時08分23秒
「本塁から1塁、2塁、3塁と進み…3塁の後で本塁に帰ってくることが出来れば得点となります。…さ、先に攻めるチームを先攻と言い、後から攻める方を後攻と言います…」
有海は、持っている荷物も地面に落とし、一心不乱に喋り続ける。
花柄のブックカバーに覆われた本が、落ちる。
「…?」
藍は、それを拾う。
「『よくわかる、野球のルール』…?あみ〜ご…これで…野球のルールを…覚えたの?」
「攻めているチームは3回『アウト』を取られると攻撃の権利を失い、相手チームの攻撃に変わります。両チームがそれぞれ1回ずつ攻撃し、守備を行うことを『イニング』と言い、先攻チームが攻めている時をその回の表、後攻チームが攻めている時をその回の裏と言います…」
有海は喋る、ひたすら喋る…。
七海に泣かされてから…有海は独学で…自分一人で…野球のルールを覚えたのだ…。
野球部に入る為に…野球部に入れてもらう為に…。
578投稿者:リリー  投稿日:2008年02月16日(土)21時09分31秒
藍は、七海に対して叫んだ。
「ななみん!!あみ〜ごは…自分を変えようとしてるよ!!これは…そういうことじゃないの!?」
七海は、何も言えない…。
「マジかよ!?その本に書いてあること…全部覚えたの?」
エマが驚愕の声をあげた。
他の者も、驚きを隠せない。
それでも尚、有海は『野球のルール』を喋り続ける。
「き、き、基本的に…9イニングでゲームは終了で…その時点で相手チームより得点の多いチームが…か、勝ちとなります。…もし両チームの得点が同じ場合は、延長戦を行うか…もしくは引き分けと…」
有海は、涙で声がつまった。
でも…まだ、まだ、喋り続ける。
こんなものでは、ないのだ…。
自分が今まで覚えてきたこと…自分の思いは…これが全てではないのだ…。
579投稿者:リリー  投稿日:2008年02月16日(土)21時10分46秒
「守備をする側のチームは…9人が…それぞれグラウンド内のある位置について…守ります…」
「もう、いいよ!あみ〜ご!もう、わかったから…!」
藍は、有海を抱きしめた。
しかし、有海は止まらない。
「く、9人のうち、打者に対して投球を行う役割の選手1人をピッチャー…と、投手の投球を受ける役割の選手1人をキャッチャー…」
「何とか言いなよ!!ななみん!!」
藍も、涙を流して訴えた。
七海は、ゆっくりと有海に歩み寄る。
「な…な…内野を守る4人を内野手…が…が…が…外野を守る3人を…外野手…と…」
七海は、有海の頭に手を置く。
「そんなん…本に書いてあること、丸暗記した野球なんて、つまらん…」
そして、こう続けた。
「一緒に…身体を動かそうや…」
有海は、涙で濡れた目で、七海を見詰める。
「ふ…藤本さん…」
七海は、微笑みながら、言った。
「一緒に…野球…やろう…」

(『五回・表』・・・終了)
580投稿者:リリー  投稿日:2008年02月16日(土)21時13分18秒
512さんの言う通り、有海の呼んでいる本は、野球のルールブックでした

それでは、今日はこれでおちます
581投稿者:117  投稿日:2008年02月16日(土)21時15分55秒
1日ぶりの訪問。昨日分、表の話でも,愛美のことを気にかけているんですね。そういえば、どうなっていくのでしょうか?
そして今日分。有海が読んでいたのは「ルールブック」だったんですね。
感動的な「青春物語」だぁ(笑)! 次は裏ですね。続きも楽しみです!
582投稿者:一七大好きだったから  投稿日:2008年02月16日(土)22時06分01秒
あの時とはまた違った二人の交流が見れて嬉しい
どちらの有海も不器用だけど一生懸命だなぁ
野球部がどんな風に展開していくのか楽しみ
583投稿者:特撮王子  投稿日:2008年02月16日(土)22時08分37秒
つまんねーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
584投稿者:なんかいいね  投稿日:2008年02月16日(土)23時22分50秒
ほのぼのする
585投稿者:ドラマとかでこんなシーン超ある笑  投稿日:2008年02月16日(土)23時47分44秒
意図しているのか、リリーさんのこういったにやりとさせるところ
大好きです笑
586投稿者: 投稿日:2008年02月17日(日)15時25分52秒

587投稿者:受験がやっと終わり  投稿日:2008年02月17日(日)15時28分20秒
一週間ぶりにパソコンに触れました
今から続きを読ませていただきますね
588投稿者:あげ  投稿日:2008年02月17日(日)21時14分47秒
 
589投稿者:ドラマにすればいいのにな  投稿日:2008年02月17日(日)21時16分52秒
グラスラ
590投稿者:リリー  投稿日:2008年02月17日(日)21時17分22秒
少し臭かったかもしれませんが、『青春探偵小説』なので…
これで、メンバーが全員揃いました

587さん、受験お疲れ様でした
また、この小説をよろしくお願いします

それでは、更新します
591投稿者:リリー  投稿日:2008年02月17日(日)21時18分21秒
『五回・裏』

≪2007年5/7(月)≫
ダーブロウ有紗が、昨夜の七海の暴走で作戦を壊しかけたことを知ったのは、今日になってからだ。
別件で、大阪に出張していた為だ。
今夜、ダーブロウ有紗は虹守町に戻って来た。
ダーブロウ有紗と、社長の吉田、そして『Aチーム』と『Bチーム』の6人は、最上階の社長室に集まっていた。
もう既に、中村有沙による『お仕置き』を受けた後ということで、別段、ダーブロウ有紗から七海へのの叱責はなかった。
いや、逆に叱責を受けたのは、中村有沙の方であった。
592投稿者:リリー  投稿日:2008年02月17日(日)21時18分37秒
「ちょっと、傷、見せてみ…。パッツン…」
「何ともない!ほっとてんか!」
「いいから、見せろよ!」
ダーブロウ有紗は、乱暴に七海の頭を掴むと、左眼のガーゼを、荒々しく取り去る。
「う〜ん…。だいぶ腫れてるな…」
微かに、指先で腫れた瞼に触る。
「いたたた…」
「痛いか?」
「痛い!」
「これはどうだ?」
今度は、グリグリと指で押された。
「痛い、言うてるやん!!」
七海は、思わずダーブロウ有紗の手を払い除けた。
「あははは…!悪い!」
どうやら、ワザとやっていたようだ。
593投稿者:リリー  投稿日:2008年02月17日(日)21時19分29秒
そして、ダーブロウ有紗は、中村有沙の方を向いて怒鳴りつける。
「こら!!チビアリ!!てめぇ、いくらなんでもやりすぎだろ!!」
「なぜ、私が非難されなければならないのだ?」
中村有沙は、腕組みをしてふて腐れていた。
「私は、壊されそうになった作戦を守ったのだぞ?」
そんな中村有沙に、ダーブロウ有紗は舌打ちをする。
「これだから、体罰慣れしてねぇヤツはダメなんだよ!!体罰ってのはな、その日のうちに治るような怪我で止めておくんだよ!!」
「何を言う!!いつか貴様にやられた傷は、一週間は痛みが消えなかったぞ!?」
「うん?だってあれは『体罰』じゃなくて、『暴力』だもん」
「く…!貴様…!いけしゃあしゃあと…!」
「まあ、まあ…ええやないか…。七海も、有沙も充分反省しとるんやから…」
姉妹喧嘩になりそうなこの雰囲気を、社長の吉田は何とか変えようとする。
「反省なんか、してへんよ!!」
「私が、反省などする必要がどこにある?」
「………すんません…」
七海と中村有沙の怒りの矛先が、吉田に向かっただけだった。
594投稿者:リリー  投稿日:2008年02月17日(日)21時20分15秒
「でも、まぁ…パッツンには反省をしてもらうぜ。今回の仕事は、個人の独断で動かれたら、取り返しのない失敗をすることになるからな!」
そして、ダーブロウ有紗は、梨生奈をジロリと睨む。
「まさか、デコッパチがパッツンを止められねぇとはな…。少し、買いかぶりすぎたか?私は…」
「す…すみません…」
梨生奈は力なくうな垂れた。
「おい!!七海!!てめぇの所為で、なんで梨生奈が責められなきゃならねぇんだよ!!」
羅夢が、七海に向かって怒鳴った。
「あ!?何やコラ!!一人だけ蚊帳の外だったヤツが、何、偉そうなこと言っとんねん!!」
「蚊帳の外!?違うね!!アタイは、敵のフェイクを警戒して、一人でやつ等の店を見張って…」
そんな羅夢に、中村有沙がボソリと呟く。
「貴様が大便なんぞしてたから、私達は置いていったのだ」
「ウ、ウンコなんか、してねぇよ!!殺すぞ!?チビアリ!!」
また、繰り返される罵り合いに、ダーブロウ有紗はコメカミを押さえる。
「もういい、もういい!!今は反省会の場じゃねぇ!!」
そう言いながら、大理石のテーブルに、天歳市内の地図を広げる。
その地図を食い入るように見詰める、七海、中村有沙、梨生奈、羅夢、エマ、エリー…。
「今度の日曜日…13日…。なすびのおっさんの情報によれば…また、女性客を拉致する日が…その日だそうだ…」
ゆっくりとしたダーブロウ有紗の口調は、今度の作戦が如何に重要なのかを物語っている。
595投稿者:リリー  投稿日:2008年02月17日(日)21時21分23秒
「じゃあ、昨日のやつ等の動きをチーム別に報告しな。まずは、『Bチーム』…チビアリ!」
「エリー。貴様が言え」
「私が?」
「私は、めんどくさい」
エリーは、困った顔で、ダーブロウ有紗の顔を見る。
「いいよ。ぷるぷる、言ってくれ」
半分諦めかけた様に、溜息交じりに言う、ダーブロウ有紗。
「はい…」
エリーは、自分の手帳を開いて説明をする。
「まずは…午後8時半…ホストクラブ『9×9(クック)』から、女性客を連れ出します。その時に使われるのは黒いバンです…」
黒いバンは一度、小蓮田町方面に向かうが、それは尾行を警戒する為。
様々な道をアットランダムに走行し、最短距離なら600メートルで到着する距離を、30分程かけて天歳駅に到着。
そこで一度バンを降り、急行電車で下ノ国駅まで行く。
そこで、一度降りたバンに乗り込み、国道を通ってラブホテル『アンダー・キャッスル』に到着。
到着したのが午後9時半。
ここで、一旦、『Bチーム』の報告は終わる。
596投稿者:リリー  投稿日:2008年02月17日(日)21時22分58秒
「ふ〜ん…。それなりにやつ等も用心をしてるってことか…」
ダーブロウ有紗は、赤いマーカーでホストクラブ『9×9』から天歳駅、そして下ノ国駅からラブホテル『アンダー・キャッスル』の経路を書き込んだ。
「じゃあ、ここからは『Aチーム』…デコッパチ!」
「はい」
梨生奈も、手帳を開いて報告を始める。
「私達は、6時にラブホテル『アンダー・キャッスル』に到着。私と七海は拉致現場に使われる701号室の隣、702号室に陣取り、エマは隣の雑居ビルの屋上で待機しました」
黒いバンから降りたホストと女性客は、701号室へ…その間、ベンツで来た別のグループが、到着。
『元帥』と呼ばれる『9×9』の店長『楠本柊生』という男が、701号室へ。
おそらく薬のような物を嗅がされ、女性客は眠らされる。
その時、別のグループの者達が隣の雑居ビルの屋上に上がり、701号室の窓から女性客を運び出す。
雑居ビルの反対側のビルは窓がなく、完全な死角になる為、今まで拉致の現場を目撃されたことはない。
その後、女性客は再び黒いバンに乗せられた。
「それで…その楠本という男ですが、彼はバンには乗らずにベンツで帰っていきましたが…」
梨生奈は、チラリと中村有沙を見る。
「が…?何だ?」
ダーブロウ有紗は、梨生奈の視線の先、中村有沙に聞く。
597投稿者:リリー  投稿日:2008年02月17日(日)21時23分41秒
中村有沙は、溜息を一つついて、話す。
「大したことはない」
「大したことか、ないことかは、私が決める。言え」
「…私が、七海とやり合っている場面を見られた」
「大したことじゃねぇか!!」
いきり立つダーブロウ有紗に、梨生奈が慌てて口添えする。
「でも、ただの喧嘩だとカモフラージュできたと思います。重要な事柄は、漏れてはいないと…」
「思うんだろ?」
「…はい…」
「思う、じゃダメだ!!ちょっと、これは不安要素じゃねぇか?」
そう言いながら、七海を横目で見た。
「…ち!」
七海は、舌打ちをする。
598投稿者:リリー  投稿日:2008年02月17日(日)21時24分14秒
そこに、吉田が意見する。
「もし、その男が、何か不穏な空気を感じたとするなら…次の拉致計画は棚上げにするハズやろ?その時に判断したら、ええんとちゃう?」
「………レッドさんの意見はもっともだけどよ…。そうなると、私達は依頼を果たすことができねぇじゃん…」
ダーブロウ有紗は、気難しそうに頭を掻いた。
「ま、いいや…。その後、やつらは?」
次は、エマが報告する。
「それで…いろいろあって、最終的には私達『チームE』の2人しか尾行はできなかったんだけど…やつ等、新宿方面に走り去って行ったよ」
「走り去った?その後は?」
「ダメ、わかんない…て、いうか、高速道路に入っちゃったもん!いくら『TTK』の元『戦士』でも、時速100キロの車を、自転車で追い駆けるのは無理だよ!」
「ふ〜ん…。まあ、拉致現場さえ抑えれればいいか…。じゃあ、やつ等が新宿方面に行く前に、とっ捕まえればいいな」
ここから具体的に、どうやって拉致される女性を助け出し、実行犯を捕らえるか…作戦会議が始まる。
「まず、私達がこなさなければならない依頼は二つ。やつ等の何人かを捕まえて、拉致犯罪組織を壊滅させること。そして、依頼人のなすびのおっさんを、安全な場所まで保護すること」
なすび…浜津は、野球部のキャプテン、伊倉愛美の父親…。
もしかしたら、愛美自身にも、加藤組の魔の手が伸びるかもしれない。
「で、お前等二つのチームで、役割を分けようかと思う。拉致犯罪組織の連中を捕まえるチームと、なすびのおっさんを保護するチームだ」
「アタイは、拉致実行犯の連中をブチのめしてやりたいね!!」
羅夢は、拳をパンと鳴らして、武者震いをしている。
599投稿者:リリー  投稿日:2008年02月17日(日)21時24分41秒
「そうやな…。ウチは…なすびのおっちゃんを守りたい…」
七海の言葉に、その場にいる者達は、耳を疑った。
七海の性格ならば、より戦闘の可能性の高い方を選ぶと思ったからだ。
「でも、決めるのは、私だけどな…」
ダーブロウ有紗は、釘を刺す。
「で…パッツン…。おまえ、何でなすびのおっさんを助けたいの?」
そう問われたが、七海は黙り込んで、地図をじっと睨んでいる。
梨生奈が、代わりに答える。
「私達の先輩なんです…。浜津さんの娘さん…」
「あ?先輩?」
「野球部の…キャプテンなんです…」
ダーブロウ有紗は視線を宙に彷徨わせ、しばらく考えた後、ようやくあの写真の少女を思い出す。
「ああ…!あの、なすびに全然似てねぇ、あの子か!?小学生みたいな…」
あの写真の愛美は、実際、小学生の頃のものだ。
「ふ〜ん…。そうか…。ま、そういうワケなら、希望を聞いてやるか。デコッパチの『Aチーム』は、なすびのおっさんの保護、チビアリの『Bチーム』は、拉致実行犯の確保だ。いいな?」
「はい…」
「異論はない」
両チームリーダーは、そう言って頷いた。
600投稿者:リリー  投稿日:2008年02月17日(日)21時31分25秒
589さん
ありがとうございます
もちろん、エロ部分はカットですよね
でも、今回はそんなにエロはないんですが…

では、今日はこれでおちます
601投稿者:117  投稿日:2008年02月17日(日)21時33分35秒
七海がなすびさんの保護の方に回るとは・・・愛美たち、先輩を思っているんですかね?続きも楽しみです!
602投稿者:裏も面白いなあ  投稿日:2008年02月17日(日)22時24分21秒
楠本さんはどう絡んでくるのか
603投稿者:おれは  投稿日:2008年02月17日(日)23時10分16秒
あすみがどうなるか気になってしかたがない
604投稿者:特撮王子  投稿日:2008年02月17日(日)23時11分13秒
つまんねーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
605投稿者:やっぱりリリー小説  投稿日:2008年02月17日(日)23時12分28秒
面白いわ
606投稿者:楠本さんが動出るか  投稿日:2008年02月18日(月)08時40分22秒
楽しみ×2
607投稿者:リリー  投稿日:2008年02月18日(月)21時06分00秒
今日は、楠本さんの再登場です

では、更新します
608投稿者:リリー  投稿日:2008年02月18日(月)21時07分10秒
「で…どうなんだ?野球部の方は?パッツン…」
七海は、地図に視線を落としたまま、素っ気無く答える。
「ま、何とか始めることが、できたな…」
「ん?メンバー、集まったのか?」
「ああ…。全部で10人…」
「10人…?そうか…。だったら一人抜けても9人だから、何とか部活には影響ないな…。よかった、よかった…」
「あん?」
ダーブロウ有紗の言葉に、七海だけでなく、羅夢以外の野球部在籍の者達は疑問に思った。
609投稿者:リリー  投稿日:2008年02月18日(月)21時07分23秒
「9人って…どういうことですか?」
梨生奈の質問に、ダーブロウ有紗は、淡々と答える。
「うん。なすびのおっさんな、自分が逃げる時、娘も一緒に連れて行きたいそうだ…」
「な、何やって!?」
七海は、思わず声をあげた。
「だから、そのキャプテン…次の日曜日で、虹守町を離れるってことだ」
「か、勝手なこと、言いなや!!ウチらの部のキャプテンやぞ!?」
「仕方ねぇだろ?未成年なんてのは、大人の都合でどうとでもなっちまうんだから…。おまえ等だって同じだろ?」
「デカアリ、おまえも未成年やんけ!!」
「四捨五入したら、二十歳!!成人だよ!」
「ぐ…!何、調子のええこと言うとんねん!!せやったら、ウチらも…」
「ダメよ。12歳だから、四捨五入したら10歳になっちゃう」
「わかっとるわい!!」
七海は、そっと耳打ちしてくれた梨生奈に怒鳴ったが、実は四捨五入をわかっていなかった。
610投稿者:リリー  投稿日:2008年02月18日(月)21時08分05秒
やっと、メンバーが集まり、キャプテンまで決まったと言うのに…一週間後には、部員が減ってしまう…。
「で、でも、愛美先輩…浜津さんの娘さんの名前ですが…学年トップの優等生で、奨学金だって貰える程、優秀なんですよ?転校しちゃうなんて…もったいないですよ!!」
愛美の離脱を残念に思うのは、梨生奈も同じだった。
「別に、勉強は聖テレでしかできねぇってワケじゃ、ねぇじゃん!」
「せ、せやけど、野球は、聖テレでしかできん!!」
七海も、梨生奈に同調した。
「でも、愛美先輩、本当はソフトボールやりたいんでしょ?それは別にいいんじゃない?」
「オノレは黙っとけ!!」
平然と答えるエマに、七海は怒鳴りつけた。
「そもそも…あのなすび、一丁前に娘の一生をどうこうできる、甲斐性があんのかい!?」
そう…今、浜津は、愛美に対して親権を失っている。
しかも今現在は、小さな団子屋を営んでいる母方の祖母が、愛美を育てている。
「それは、私達がとやかく言う問題じゃねぇだろ?私達は、あのおっさんの依頼を淡々とこなすだけだ」
「あの…。疑問なんですけど…」
エリーが、手を挙げる。
「うちの探偵社に依頼するってことは…結構な報酬を払わなければなりませんよね?愛美先輩のお父さんに…はたして払えるんですか?」
そう…エリーの疑問はもっともだった。
半年前の『R&G』ならともかく、業界ナンバー1になった今の探偵社に依頼するというのは、相当な経済力がなければ不可能だ。
611投稿者:リリー  投稿日:2008年02月18日(月)21時08分35秒
「現に前金、500万貰ってるぜ…」
「500万!?」
「それに…成功報酬で、更に500万貰えることになってる」
「あ…合わせて、1000万…!?」
あの浜津に、それ程の大金を払えるとは、思えなかった。
そうでなかったら、ラブホテルで拉致の片棒など担がないし、愛美だって奨学金で学校に通う必要もないはずだ。
「な、なんかヤバイ金なんとちゃうん!?ソレ…」
ダーブロウ有紗は、その大きな鼻を掻きながら、呟くように答えた。
「…正直に言うとな…本当の依頼人は、別にいるんだよ…」
「本当の依頼人…?」
少女達は、ざわつき始めた。
「コホン…。ダーさん…」
吉田は、咳払いをした。
「しょうがねぇじゃん…。疑問に思われたならよ…」
ダーブロウ有紗は、顔をしかめながら言い訳をする。
612投稿者:リリー  投稿日:2008年02月18日(月)21時09分00秒
「誰だ…?その、本当の依頼人とは…」
中村有沙は、ダーブロウ有紗と吉田に対し、厳しい視線を向ける。
「女だよ。名前は言わねぇが、身元ははっきりしてる。おそらく、加藤組に敵対している組織か、またはその犯罪を暴きたい連中の使いだと思うが…」
そして、拉致犯罪から足を洗いたがっている浜津を利用する形で、依頼させた…。
「誰やねん!?その女は!?」
七海は、思わず感情的な声になる。
「その女の名前を聞いたって、仕方ねぇだろ?重要なのは、そのバックにいる連中だ」
七海には、何ともきな臭い話しに思えた。
陰でコソコソ蠢く、ワケのわからない連中に、自分達の野球部をいいように弄繰り回されてしまうことが、何とも悔しい。
「依頼人のことなんて、どうでもいいんだよ。それより…おまえ達2チームは、最初から下ノ国町にスタンバイだ。ホストクラブの方は、『チームT』…俵姉妹に張らせる」
その、『チームT』からの連絡を受け、『Bチーム』は拉致実行犯達を迎え撃ち、『Aチーム』はそれと同時に、浜津を安全な場所まで送り届ける。
「それぞれのチームには、近距離、中距離、遠距離と、バランス良く編成してある。どんな状況にも、臨機応変に対応しろ!それから…パッツン!」
「何や?」
「今度こそ、リーダーの言う事を素直に聞けよ?デコッパチは、おまえよりは遥かに頭が良いからな」
「わかっとるわい!!」
七海は、そう言いながら、ふて腐れてソファーに胡坐をかいた。
613投稿者:リリー  投稿日:2008年02月18日(月)21時09分26秒

同時刻…ホストクラブ『9×9』で、オーナーの楠本柊生は、加藤組組長、加藤浩次を迎えていた。
加藤は若くして自分の組を立ち上げ、ヤクザの世界では、その名を知らぬ者はいない。
高級スーツに身を包んでいるが、短く整えられた角刈りが威圧感を与える。
加藤は、VIPルームに通される。
「ホストクラブで接待ってぇのは、いい気はしねぇな…!お姉ちゃんが一人もいねぇじゃねぇかよ!!ええ!?」
擦れているが、大きな声を響かせる加藤。
随分、機嫌が良い時でも、その声は怒っているように聞こえる。
楠本は、高級シャンパンを注ぎ、加藤に差し出す。
「ははは…。それは仕方がありませんよ。本来ならば、女性をおもてなしするのが、我等の役目…。しかし、後でそれなりのお店で接待の準備をさせています。お楽しみ下さい」
「おう、おう!おめぇさんは、いつも気が利くからなぁ…!精々、楽しみにさせてもらうべ?ぶはははは!!」
出身地、北海道訛りを言葉の端々に覗かせ、豪快に笑う加藤。
シャンパングラスを鷲掴みにすると、まるで生ビールを飲むかのように、一気に喉に流し込んだ。
「でもよぉ…。おめぇさんが、俺の組に協力してくれるようになってから、金回りが良くなってきてしょうがねえべ!!」
「私は『依頼』があれば、その能力と才覚を惜しみなく使わせて頂きます。組長の懐が潤えば、私へのギャランティも倍増するわけですから…」
「ぶははは!!シンプルな動機で気に入ったぜ!!ま、お互い、金しか信用するもんはねぇからな!!」
「お金…?いえ、いえ…。私が信用しているのは…『愛』でございます…」
「『愛』だぁ…!?ふざけんのもいい加減にしやがれ、この、ぶぅあ〜かぁ!!ぶはははは!!!」
「はははは…」
楠本の笑いの真意を、加藤は窺い知れないが、お互い悪人同士…それでいい、と、彼は思った。
614投稿者:リリー  投稿日:2008年02月18日(月)21時09分52秒
「で…その…組長にお願いがあるのですが…」
「ン?何だ?言ってみろや」
「組長の所の…若い衆を、何人か貸して頂きたい…」
楠本のこの申し出に、加藤は首を傾げる。
「何でだよ?たかが女をさらうだけだろ?何で、うちの組員がいるんだよ?」
楠本は、ゆっくりと話し始める。
「何か…嫌な予感がするんです…。この前の『仕事』の時…何者かに見張られているような…そんな気がして…」
「サツだってのか?おい、おい!!うちの組員がしょっ引かれたら、コッチだってヤベぇだろ!?」
「いえ…警察では、ないでしょう。警察なら、拉致した時点で動き出します。もっと…小規模な…それでいて、よく訓練された集団かも…」
「誰だって言うんだ!?おう!?」
「もしかしたら、加藤組に対抗しようとする連中かも…」
「うん?だとしたら…山本組か…?おもしれぇじゃん!!返り討ちにしてやんべ!?」
「ははは…。組長の所の血気盛んな若い衆がついて下されば、私も安心です」
「何、言ってやがんだ…。てめぇ…相当、やるんじゃねぇのかい?俺は、そう見てんだけどよぉ…」
「組長こそ、何をおっしゃいます…。私は、ただ、寂しい女性に夢を売るしか能のない、ホスト風情でございます…」
楠本は、上目遣いで…それも不敵に、加藤を見詰めて言った。
615投稿者:リリー  投稿日:2008年02月18日(月)21時10分17秒
加藤は、上機嫌でホストクラブを後にし、楠本がセッティングした高級クラブへ向かった。
その車を、深々と頭を下げて見送る、楠本達。
車が角を曲がり見えなくなって、やっと頭を上げた楠本は、部下達に静かに語りかける。
「『大佐』…。当日の総指揮は、君に任せました…」
「え?『元帥』は、同行されないんですか!?」
「はい…。嫌な予感がします…。私は、店に残って報告を待ちます…」
「わ、わかりました…。精一杯、務めさせて頂きます」
「お願いしましたよ?くれぐれもしくじりのないよう…」
「あ、あの…『元帥』…」
「何でしょう?」
楠本は、『大佐』の方を向くことなく答える。
「『元帥』は…一体、何者なんですか?あの、加藤組ともつながっているなんて…」
楠本は、ふっと笑う。
「私のことは、詮索しない方がいい…。あくまでも、私はホストクラブ『9×9』のオーナーです」
ここで、楠本は『大佐』の顔をじっと見据える。
「店が潰れて、路頭に迷った君達を大量に召抱えてあげている、善意ある実業家です。それより、また路頭に迷うことがないように、任務に励んで下さい」
「は…はい…。そ、そりゃ、俺達は、『元帥』に感謝してます。命令は…必ず成功させます…」
楠本の言葉使いは穏やかだが、そこには「余計なことに気を回さず、こちらの命令を聞いておけはいいんだ」と言う、無言の圧力を感じさせた。

(『五回・裏』・・・終了)
616投稿者:リリー  投稿日:2008年02月18日(月)21時10分50秒
それでは、今日はこれでおちます
617投稿者:楠本さんかなり重要人物っぽいな  投稿日:2008年02月18日(月)21時16分12秒
加藤組や山本組、依頼人の女も気になるし…
今回はラスボスが誰かわからないのもまた楽しい
618投稿者:117  投稿日:2008年02月18日(月)21時23分43秒
今回の事件の依頼者は、別の女性なんですね。一体どんな人なんだろう?
愛美も引っ越してしまうんですね。
加藤組長と元帥・・・なかなか、渋いコンビですね。続きが気になります。
619投稿者:ぶぅあ〜かぁ!!ぶはははは!!!  投稿日:2008年02月19日(火)01時42分12秒
これ、原口あきまさのモノマネじゃんw
620投稿者:登場人物表の加藤姉妹  投稿日:2008年02月19日(火)08時38分28秒
姿をあらわしそうな予感!
621投稿者:藍は  投稿日:2008年02月19日(火)19時57分19秒
おそらく右投げ
622投稿者:リリー  投稿日:2008年02月19日(火)20時56分20秒
実は、私も最後の着地を考えてないんですよね
今までは、終わりを想定しながら書いていたんですが…
自分でも、どうなることか楽しみでもあり、不安でもあります

それでは更新します
623投稿者:リリー  投稿日:2008年02月19日(火)20時57分19秒
『六回・表』

≪2007年5/13(日)≫
朝、10時。
結局、七海と梨生奈は、例の堤防公園に出向いていた。
先週、ここの野球場で会った、野球少年達の試合を見物するためである。
これから、重要な…大切な大仕事が待ち構えている。
その仕事が始まるのは、日が暮れてから。
その時まで、緊張感と戦わなくてはならない。
こうやって外に出て時間を潰していた方が、気が紛れていい。
そして、梨生奈がついて来たのは、リーダーとしての責任感である。
大事な仕事の前に、七海を一人にしておくことは恐かった。
エマも誘ったのだが、エリーと買い物に出かけてしまった。
ついでに羅夢も誘ったのだが、彼女が七海と一緒に外出など、するはずがなかった。
624投稿者:リリー  投稿日:2008年02月19日(火)20時57分42秒
七海と梨生奈が、堤防公園に3つ併設されている野球場のうちの一つに到着した時、もう、既に試合は始まっていた。
「ななみん!り〜な!遅い!!もう、始まってるよ!」
藍が大きく手を振って、ジャンプしながら呼んでいる。
「あら?あみ〜ごもいない?」
梨生奈は、藍の後ろで小さくなってたたずんでいる、一木有海を発見する。
藍は、全ての部員にあだ名をつけ、結局それが部内で浸透してしまっている。
顧問のあすみですら、皆をあだ名で呼ぶ。
それをしないのは、頑固な七海と、内気な有海…そして、言わずもがな、中村有沙の3人である。
625投稿者:リリー  投稿日:2008年02月19日(火)20時58分09秒
梨生奈は、両手を顔の前で合わせながら、小走りで駆けて行く。
「ごめんなさいね、ななみんが、中々仕度しないから…」
「梨生奈まで、ななみんって言うな!!」
七海は、遅刻してきた身分でありながら、ゆっくりとふてぶてしく歩いて行く。
「おはよう、あみ〜ご」
梨生奈は、有海にハイタッチを求める。
「お、おはよう…」
有海は、恐る恐る、ちょんと掌を合わせた。
藍は、梨生奈の掌を、強く叩く。
「もう…!アスリートを志す者は、遅刻厳禁だよ!あみ〜ごを見習いなよ!一時間前からここに来てたんだって!」
「い、一時間前?凄いわね…。普通、5分…10分前に到着するものだけど…」
驚く梨生奈に、有海は顔を赤くして微笑んだ。
「だ、だって…折角、細川さんに誘ってもらったんだもん…。遅刻したら、大変だから…」
「せやけど、1時間前って…一木さん、アホとちゃう?」
七海の言葉に、今度は、顔を青くして俯いた。
「アホって言うか!?遅刻したヤツが!!」
藍の怒声を無視し、七海はスコアボードを見ていた。
626投稿者:リリー  投稿日:2008年02月19日(火)20時58分49秒
「ありゃりゃ…。負けとるがな…」
8対0…現在、3回表、対戦相手、『虹守レインボウ・ガーディアンズ』の攻撃。
2アウト、ランナー2塁、1塁。
既に一回に3点、二回に2点、そして既に、この三回でも3点を加えられている。
そして、藍達が応援する、『茶々山マンボウズ』は、現在0点。
「う〜ん…。ピッチャーの翔太が、なかなかストライクゾーンに入らないんだよね…」
藍は、腕組みして眉を八の字に曲げる。
「何たって、8点のうちの4点は、押し出しだもん」
「もう少し、球威を落として、慎重に投げさせてみたら、どうや?」
そう…コントロールが定まらない時は、七海もそうした。
「うん…。それをやると…」
パコ〜ン…。
鋭い打球が、二遊間を襲う。
ワンテンポ遅れて、セカンドの次元が打球に向けて横っ飛びに倒れるが、既にボールは外野に転がっている。
センターの瀬南がそのボールを捕る為に、腰を低く構える。
しかし…彼は案の定、トンネルをした。
全てのランナーがホームに帰り、これで10点目。
「ありゃりゃ…」
七海は、思わず苦笑した。
ファーボールでランナーを溜め、押し出しを警戒して慎重にボールを投げたら、それが絶好球…。
茶々山マンボウズは、この悪循環を繰り返している。
627投稿者:リリー  投稿日:2008年02月19日(火)20時59分32秒
「第一、名前がアカン!何でマンボウやねん!虎とか竜とか鷹とか…もっと強そうな名前、あるやろ?」
そう呟く七海に、ベンチに腰掛けている、少年達と同じユニフォームを着た老人が、振り向いて言った。
「この名前はな…マンボウみたいにゆっくりと、ゆったりと成長したったらええねん…という意味で、オッチャンがつけたんや…」
「お!?関西弁や!」
七海は、その、猿のような面体をした老人に、少し親近感を抱く。
「そういう、お嬢ちゃんも、関西弁やな…」
老人は、小さな目を、さらに小さくして笑った。
「この人は、このチームの監督さんのカンペーさん。この子は、私と同じ野球部の、ななみんとり〜な」
藍は、それぞれを紹介する。
「おい、こら!本名で紹介せぇや!うちは藤本七海。そこのデコの広いんが、木内梨生奈や」
「ちょっと!オデコのことは、言わないで!」
梨生奈は、七海の肩を小突いた。
「ええやん、ええやん。デコの広いんは、賢い証拠や。オッチャン、アホやから、デコ狭いやろ?」
そう言って、カンペーと紹介された老人は、無理矢理シワをよせて、額を狭くした。
「ど、どうも…」
梨生奈は、とりあえず礼を言った。
628投稿者:リリー  投稿日:2008年02月19日(火)21時00分01秒
「それはそうと、オッチャンも本名、教えてえな」
「ん?オッチャン、本名やで?間寛平。あだ名もカンペーや」
「あ…そうなんや…。藍…手ぇ抜いたな…?」
とは言っても、藍のつけるあだ名は、大抵凝ってはいない。
いや、ダーブロウ有紗が凝りすぎなのだ。
そうこう言っている間に、バッターは球を真上に高く打ち上げた。
キャッチャーの聖斗が、覚束ない足取りでキャッチャーフライに捕った。
長い攻撃が終わり、翔太達は安堵の笑みをこぼした。
そして、マンボウズの選手達は、素早くベンチに戻る。
「うんうん。よう捕ったな、聖斗。翔太もよう投げとる」
寛平は、まずは選手達を褒めた。
「みんな、これから、これから!!反撃だよ!」
藍は手を叩いて、皆を鼓舞する。
それだけでも、選手達の顔からは悲壮感が消える。
629投稿者:リリー  投稿日:2008年02月19日(火)21時01分14秒
今日は、これでおちます

今度こそ、過去ログに行ってしまいそうな予感がします…
630投稿者:117  投稿日:2008年02月19日(火)21時35分05秒
藍のつけた「あだ名」が、どんどん浸透していくのが、面白い(笑)。
「茶々山マンボウズ」に寛平さん・・・なかなか凝ってますね。続きも楽しみです。
631投稿者:少年野球チーム  投稿日:2008年02月19日(火)21時39分21秒
カンペーさんかあ
面白いチームだな
632投稿者:アマノガワ  投稿日:2008年02月19日(火)22時41分38秒
お久しぶりです。
カンペーさん、初対面で分からないはずなのに「おっちゃんアホやろ?」って聞くあたりアホさが滲み出ていて可愛いですな…w
633投稿者:やっぱ  投稿日:2008年02月20日(水)00時49分34秒
おもろい
634投稿者:ベンってさリリーさん、  投稿日:2008年02月20日(水)16時22分24秒
クリケットの方やるんじゃない?
野球より。・・・クリケットしってるかな・・・
635投稿者:リリー  投稿日:2008年02月20日(水)21時01分18秒
634さん、クリケット知ってますよ
野球の原形のスポーツですよね
ピッチャーが棒で打って、転がす以外は、大差ないんでしたっけ?
ベンはスカッシュが上手いらしいですが、スカッシュの場面は出てこないです(スカッシュ、よく知らないんです。『エマニュエル夫人』で初めて知りました…)
カンペーさんもそうですが、関西の人を書くのは好きです
そして、今日もう一人、関西人が登場します

では、行進します
636投稿者:リリー  投稿日:2008年02月20日(水)21時01分59秒
行進じゃなくて、更新ですね…
歩いて、どうするんだと…
637投稿者:リリー  投稿日:2008年02月20日(水)21時02分23秒
「あの…。次のバッターは、僕なんですが…。何か指示はありませんか?」
聖斗が、ネクストバッターサークルの中で、さっきからじっと待っていた。
「おお、聖斗!バコ〜ンっていったれ!!バコ〜ンって…」
寛平は、大袈裟なジェスチャーで叫んだ。
「それは…指示ですか?」
聖斗は、呆れ果てている。
「聖斗!バントよ、バント!とりあえず次元を二塁に送って!できれば、あんたも生き残るようなバントがいいけど…」
「はい!やってみます!」
藍からアドバイスを貰えた聖斗は、張り切ってバッターボックスに向かう。
「なぁ…。あのメガネ少年…あんたのことが好きみたいやで…」
七海は、意地悪そうに、藍に囁いた。
「え?聖斗が?私を?まさか…」
「絶対、そうやって…!先週から、ウチは気がついとったよ」
「ふ〜ん…。そうか…。聖斗まで…。まいったな…」
「へ?聖斗まで?」
「私、モテるもん。男の子からも、女の子からも」
「いけしゃーしゃーと…」
藍は、中村有沙にも似てる…七海は、そう思った。
638投稿者:リリー  投稿日:2008年02月20日(水)21時03分16秒
聖斗は5球ほど粘ると、ピッチャーの足下を転がすようなバントを決める。
ピッチャーは、セカンドに球を投げる。
しかし、次元は足が速かった。
滑り込んで、ギリギリでセーフとなる。
また、ベンチが活気づいた。
ノーアウト、一塁、二塁…。
どうやら、コールド負けは逃れられそうだ。
「ふふん!あのピッチャー、欲張りよったな…。次元は『ウマ次』って呼ばれるくらい、足が速いねん!」
帆乃香は、不敵な笑みを浮かべた。
「おじい…じゃ、なかった、監督!!次はうちを出してください!」
帆乃香は、バットを掴んで、力強く言った。
「アカン」
寛平は、素っ気無く答えた。
「な、何で…?」
「試合に遅刻するようなやつを、出すわけにはいかん!」
「そ、そんな…」
帆乃香は、肩を落とす。
「帆乃香が出てくれなかったら、コールド負けになっちゃうよ?」
「ねぇ、監督!帆乃香を出してよ!」
これには、他の選手達も、寛平に頼み込む。
639投稿者:リリー  投稿日:2008年02月20日(水)21時05分14秒
おおっと…!!
すみません!!
思いっきりすっ飛ばしてしまいました!!

もう一度、更新しなおします
なんか、今日はミスが多いです…

640投稿者:リリー  投稿日:2008年02月20日(水)21時05分42秒
「3回で10失点…。難しいちゃうんかな…」
七海が呟いた。
選手達は、一斉に七海を睨みつける。
「あ…!この間の、変な女!!」
「何で、来たんだよ!!」
「呼んでもいないのに!!」
口々に騒ぎ出す、少年達。
「な、何や!?おい、藍、話しがちゃうぞ!?」
「あはは…。みんな、口ではこう言ってるだけ…」
藍は、笑ってごまかした。
「まあ、まあ、みんな。こうやって応援に来てくれたんやから、感謝せなアカン!ほな、お礼を言うで?」
寛平に諭されて、少年達は、渋々帽子を取って、頭を下げた。
そこに、ふくよかな顔の審判が、寛平に話しかけてきた。
「あの…マンボウズの監督さん…。この回で一点でも獲らないと、コールド負けになりますよ?」
その言葉に、寛平は自分の額をピシャリと叩く。
「ああ、そうや…。すっかり忘れとった…。ま、ええか…。7番バッターは次元やな?思いっきりバット振って来い!!」
「ダメですよ!カンペーさん!ここは、確実に塁に出ることを考えないと…」
「でも…俺、あのピッチャーの球、打つ自信ないよ」
次元は、不安げな表情で藍を見る。
641投稿者:リリー  投稿日:2008年02月20日(水)21時06分02秒
藍も、困った顔で相手ピッチャーを見る。
「う〜ん…。あの子、球が速いからなぁ…。フォアボールを選べればいいんだけど…」
その時、有海が遠慮がちに口を開いた。
「あの…私…ちょっと気がついたんですけど…」
皆が、有海に注目する。
「あ…いえ…その…何でもありません…」
有海は顔を真っ赤にして、うつむいてしまった。
「な、何?何?何でもいいから、言ってみて!!」
藍に言い寄られ、有海は蚊の鳴くような声で言う。
「あの…大したことじゃないんですけど…。あのピッチャーの子…足を低く上げた時、ストライクが入らないんです…」
「へ…?」
皆は、顔を見合わせた。
「そ…そうなの?」
「…はい…。つまり…左足の膝が、直角に曲がった時はストライクで、少し開いた時はボールなんです…」
「いつ、気がついたの?」
「2回の途中から…」
「おおい!!早く言ってよ!!」
「ご…ごめんなさい…!!」
有海は、深く頭を下げた。
642投稿者:リリー  投稿日:2008年02月20日(水)21時06分24秒
「おおおおお〜〜〜!!!」
マンボウズの面々は、一気に盛り上がった。
「ううん!謝らなくていいよ!!凄い!よく気が付いたねぇ…!!」
藍は、有海の両肩を掴み、ガクガクと揺らした。
「ご、ごめんなさい!!ごめんなさい!!」
有海は、謝り続けている。
「すげぇよ!!あみ〜ご、すげぇ!!」
「これで勝てるかも!!」
「ありがとう!あみ〜ご!!」
少年達は、有海を取り囲んだ。
「え…?え…?」
自分がこんなに賞賛を浴びるなんて…有海の人生の中で、初めてのことだった。
「一木さん…」
七海も、梨生奈も、驚きが隠せない。
何と言う洞察力…いや、記憶力か…?
1週間で、本に書いてあった野球のルールを完璧に覚えたという実績が、有海にはある。
643投稿者:リリー  投稿日:2008年02月20日(水)21時06分48秒
寛平が、次元を呼び寄せる。
「よっしゃ!よっしゃ!次元、今の聞いたな?」
「うん!左膝が直角に曲がったらストライク…。それより大きかったらボール…」
「そうや、そうや!で…直角って何なん…?」
次元は、軽く、前のめりにつんのめった。
「90度ってことだよ…」
「90度?あのピッチャーの膝が、メッチャ熱くなるんか?」
「………あの…それ…ネタでボケてんの?」
いや、寛平は、真面目に直角…90度というものをわかっていない。
「とにかく、次元…!ストライクはバットを振っときな!タイミングさえわかれば、当てることはできるでしょ?」
藍は、次元の背中をポンと押した。
「はい…!行ってきます!!」
次元は気力をみなぎらせ、バッターボックスに入っていく。
644投稿者:リリー  投稿日:2008年02月20日(水)21時07分10秒
有海の分析通り、相手ピッチャーの足があまり高く上がらない時には、投球は全てボールになる。
ストライクは、積極的に打ちに出る。
しかし、相手ピッチャーの球威は相当なもので、打球は全てファールとなる。
結局、次元はフォアボールを選び、一塁へ走る。
茶々山マンボウズ、この試合、初めての出塁となる。
それだけでも、ベンチの皆は、得点したかのように盛り上がる。
「いえ〜い!!あみ〜ご!!」
藍は、有海にハイタッチを求める。
今度も、有海は、遠慮がちに手の平を合わせるだけだった。
「お!?何や、何や!えらい大差で負けとるやん。ごっつ盛り上がっとるから、勝ってる、思うたのに…」
また関西弁が聞こえてきた。
みんなは、七海の方を見た。
「…!?ちゃう、ちゃう!ウチ、ちゃうで!!」
「わかってるよ。帆乃香、遅いよ!!」
皆は、七海をすり抜けて、後ろへ駆けて行く。
「へ?」
七海が振り向くと、そこには小さな身体にダボダボの背番号18を付けたユニフォームを着た少女が、少年達に囲まれていた。
645投稿者:リリー  投稿日:2008年02月20日(水)21時07分38秒
帆乃香と呼ばれた少女は、背伸びをしてスコアボードを見た。
「あちゃ〜…。10点って…。獲られすぎやろ?」
「帆乃香がいないから、俺がピッチャーやってたんだよ!」
翔太は、帆乃香の帽子のひさしを掴むと、グイ、と下げた。
「堪忍!おじいちゃんが悪いんや!うちを起こさんと行ってしもうたから…」
「おじいちゃんは、悪ないで。明日が試合やいうのに、夜更かししてた帆乃香が悪い」
寛平は、そっぽを向きながら答えた。
「…おじいちゃん…?誰?」
七海は、藍に聞く。
「ううん…。私も初めて会った…。寛平さん、孫いたんだ」
「おお、そうやった。紹介するわ。この子はワシの孫で、帆乃香言うねん」
寛平は、自分の孫娘を手招きして呼んだ。
「こんにちわ。うち、鍋本帆乃香、いいます。小学校5年生です」
帽子を取って、深く頭を下げる帆乃香。
帽子の中に詰め込まれていた、長い二本の三つ編みが、ぶらんと揺れながら垂れ下がった。
646投稿者:リリー  投稿日:2008年02月20日(水)21時07分59秒
「あなたが、あい〜んさん?噂は聞いてるで。ごっつ野球、上手いんやってね」
藍も帆乃香に頭を下げた。
「こんにちわ。初めて会うね」
「うちな、隣の小蓮田市に住んでて…そっちのチームにも参加してんねん。試合の時だけ、こうやってマンボウズに参加すんねん」
「へぇ〜、そうなんだ。ホノカハンも女の子で野球やってるんだね」
「ホノカハン?」
「あんたの、あだ名!気に入った?」
「ホノカハン…。あはは!おもろ!うん、おおきに!」
帆乃香は、笑顔で答えた。
「ふ〜ん…。同じ関西弁でも、こっちの子は、随分素直で可愛いね…」
梨生奈は、七海の横で囁いた。
「何やと?ウチはひねくれてる、言うんか?」
「別に…」
梨生奈は、そっぽを向いた。
647投稿者:リリー  投稿日:2008年02月20日(水)21時08分19秒
「お!?関西弁やん!こっちに来てから、おじいちゃん以外で初めて聞いた気がするわ!」
帆乃香は、七海の側まで駆け寄った。
「ん?ああ…。ウチもや…」
七海は、余りにも人懐っこい帆乃香に、少し気後れしてしまった。
「うち、帆乃香。よろしゅう」
「ウチ、七海…。藤本七海や。こっちのデコ…」
「木内梨生奈よ!よろしく!」
七海に紹介される前に、梨生奈は慌てて自己紹介する。
「そして、この子は一木有海さん」
梨生奈は、有海を帆乃香の前に押しやった。
「よろしゅう」
「あ…はい…。よろしくお願いします…」
年上の有海は、年下の帆乃香よりも深く、頭を下げた。
「あだ名は、ななみん、り〜な、あみ〜ご!そして、私はあい〜ん!」
「コラ!!あだ名は紹介せんでええ!!」
七海は、藍の背中を軽く押した。
648投稿者:リリー  投稿日:2008年02月20日(水)21時10分38秒
そして、637に戻ります

すみません、ややこしいことになって…
もし、過去ログに行ってしまっったら、また更新しなおします
では、今日は、おちます
649投稿者:はっぴー  投稿日:2008年02月20日(水)21時18分21秒
ぜんぜん大丈夫ですよ
誰だってミスしちゃうときはありますよ
人間だもの
650投稿者:117  投稿日:2008年02月20日(水)21時43分13秒
確かに。誰だって、心配はありますから、それほど気にすることでもないと思いますよ。
有海、すごいところに気づきましたね!相当の努力家とお見受けします(笑)。
帆乃香と七海、このコンビをぜひ「天てれ」でも見たかったです。
実はボク、関西人なんで,「大阪弁」の会話は親近感を感じます。続きも楽しみです!
651投稿者:リリーさんどんまい  投稿日:2008年02月20日(水)21時56分51秒
行進しますには不覚にも笑ってしまったが
有海、この観察力と記憶力生かせばかなりの名マネージャーになれるんじゃ
652投稿者:いらんこといいの七海がかわいいですねぇ  投稿日:2008年02月20日(水)22時00分42秒
 
653投稿者:あげ  投稿日:2008年02月20日(水)22時17分12秒

654投稿者:七海と帆乃香  投稿日:2008年02月20日(水)22時28分56秒
まぁ帆乃香の方が素直かも
655投稿者:あげ  投稿日:2008年02月21日(木)02時40分12秒

656投稿者:七海と帆乃香  投稿日:2008年02月21日(木)08時54分16秒
関西弁だけじゃなくて遅刻も同じww

てのは関係ないかww
657投稿者:アマノガワ  投稿日:2008年02月21日(木)09時58分19秒
まだ誰も気づいてないみたいですね、小蓮田。
まさかこんな形で出てくるとは思いませんでしたけどw
確か今はもう出てませんよね?
リリーさんの作品は、関係物が名を変えて作品内に登場するのも魅力の一つだと思っているだけに嬉しい登場です
658投稿者:小蓮田?  投稿日:2008年02月21日(木)10時00分13秒
何それ?
659投稿者:リリー  投稿日:2008年02月21日(木)21時23分50秒
「小蓮田」…「おはすた」です
すみません…

七海と帆乃香の関西弁の共演がやりたかったんです

有海の能力が、野球部で活かされる予定です

では、更新します
660投稿者:リリー  投稿日:2008年02月21日(木)21時24分30秒
「あの…。次のバッターは、僕なんですが…。何か指示はありませんか?」
聖斗が、ネクストバッターサークルの中で、さっきからじっと待っていた。
「おお、聖斗!バコ〜ンっていったれ!!バコ〜ンって…」
寛平は、大袈裟なジェスチャーで叫んだ。
「それは…指示ですか?」
聖斗は、呆れ果てている。
「聖斗!バントよ、バント!とりあえず次元を二塁に送って!できれば、あんたも生き残るようなバントがいいけど…」
「はい!やってみます!」
藍からアドバイスを貰えた聖斗は、張り切ってバッターボックスに向かう。
「なぁ…。あのメガネ少年…あんたのことが好きみたいやで…」
七海は、意地悪そうに、藍に囁いた。
「え?聖斗が?私を?まさか…」
「絶対、そうやって…!先週から、ウチは気がついとったよ」
「ふ〜ん…。そうか…。聖斗まで…。まいったな…」
「へ?聖斗まで?」
「私、モテるもん。男の子からも、女の子からも」
「いけしゃーしゃーと…」
藍は、中村有沙にも似てる…七海は、そう思った。
661投稿者:リリー  投稿日:2008年02月21日(木)21時24分51秒
聖斗は5球ほど粘ると、ピッチャーの足下を転がすようなバントを決める。
ピッチャーは、セカンドに球を投げる。
しかし、次元は足が速かった。
滑り込んで、ギリギリでセーフとなる。
また、ベンチが活気づいた。
ノーアウト、一塁、二塁…。
どうやら、コールド負けは逃れられそうだ。
「ふふん!あのピッチャー、欲張りよったな…。次元は『ウマ次』って呼ばれるくらい、足が速いねん!」
帆乃香は、不敵な笑みを浮かべた。
「おじい…じゃ、なかった、監督!!次はうちを出してください!」
帆乃香は、バットを掴んで、力強く言った。
「アカン」
寛平は、素っ気無く答えた。
「な、何で…?」
「試合に遅刻するようなやつを、出すわけにはいかん!」
「そ、そんな…」
帆乃香は、肩を落とす。
「帆乃香が出てくれなかったら、コールド負けになっちゃうよ?」
「ねぇ、監督!帆乃香を出してよ!」
これには、他の選手達も、寛平に頼み込む。
662投稿者:リリー  投稿日:2008年02月21日(木)21時25分13秒
「何や?あの子、野球、そんなに上手いんか?」
「…どうやら、そのようね…」
七海と梨生奈は、帆乃香という少女をまじまじと見る。
身体は、本当に小さい。
帆乃香よりも小さいのは、ベンジャミンという少年くらいだ。
「………しゃあないな…。帆乃香、今度からは遅刻したらアカンよ?」
「はい!」
帆乃香は、満面の笑顔を見せると、ヘルメットを被りバッターボックスに立つ。
そんな孫娘の背中を、目を細めて見詰める寛平。
寛平は、始めから帆乃香を出すつもりだったようだ。
「帆乃香〜!!行け〜!!」
マンボウズのベンチからは、大声援が起きる。
しかし、相手チームのベンチからは嘲笑が起きる。
「おい、おい…。何だ?女が出てきたぞ…?」
「そんなに選手がいないのかよ…。アッチのチーム…」
それを聞いて、七海は激怒した。
「いったれ〜!!かっ飛ばせ〜!!」
七海の檄に、帆乃香は手を振って答えた。
663投稿者:リリー  投稿日:2008年02月21日(木)21時25分54秒
相手ピッチャーは、ワザとゆるい、山なりのボールを投げた。
帆乃香は、バットをフルスイングする。
快音と共に、打球は川の方へと飛んで行く。
その打球はファールだったが、相手チームの者達は、一瞬で凍りついた。
「ちょっと、あんた!女やからって、なめんとき!!」
帆乃香は、相手ピッチャーにバットの先を向けた。
相手チームは、騒然となった。
「何や?けっこう、やるやん…。あの帆乃香って子…」
七海の呟きに、寛平は余裕の笑顔で答える。
「当たり前や…。ワシの孫やで…」
相手ピッチャーの顔つきが変った。
今度は、渾身のストレートを投げ込んだ。
「お!?」
帆乃香は、その球を見送った。
これで、カウントは2ストライク、ノーボール。
帆乃香は追い込まれてしまった。
664投稿者:リリー  投稿日:2008年02月21日(木)21時26分41秒
「タイム!!ホノカハン!ホノカハン!」
藍は、帆乃香を呼び寄せる。
「タイムって…監督はワシやぞ?」
「す、すいません…つい…」
藍は、寛平に苦笑いしながら謝ると、帆乃香の元に歩み寄る。
「何?あい〜ん…」
「あのね、あのピッチャー、足を高く上げなかったら、ボールになるよ」
「ほんまに?」
「そう…。あみ〜ごが、クセを見破ったんだ」
「ふ〜ん…。せやったら、あのピッチャーが足を高く上げたら、思いっきりバットを振ったったらええんやな?」
「…え?」
「おおきに!」
帆乃香は、元気良くバッターボックスに走って戻っていく。
藍は、フォアボールを選ぶ秘策を与えたつもりだったのだが…。
「ま、いいか…」
自分も、少年野球で監督から、フォアボールを選べ、とか、バントしろ、と言われた時、反発をしたものだった。
言葉通り、帆乃香は、ストレートの速球を打ち返した。
ライトとセンターの間に、ポトリと球は落ちた。
『ウマ次』の別名を持つ次元が、まずホームに生還。
これで、茶々山マンボウズの3回コールド負けは免れた。
665投稿者:リリー  投稿日:2008年02月21日(木)21時28分13秒
結局、3回裏の攻撃は、帆乃香の打点一で終了した。
そして、帆乃香はピッチャーマウンドに登る。
翔太は、そのままライトの守備につく。
「あの子…ピッチャーもできるんだ…」
梨生奈が呟いた。
七海は、腕組みをして、難しい顔をする。
「どうやろうな…。あない小さな身体で、どんだけボールを放るんや?」
「あなただって、そんなに大きいわけじゃないのに、あれだけ速い球を投げれたでしょ?」
「ウチは元『TTK』やで?ただのガキンチョと一緒にすんなや!」
七海の言葉に、藍が反応する。
「何?『TTK』?それ、どこかの野球チーム?」
「な、何でもない!何でもない!!」
七海と梨生奈は、慌てて大きく横に手を振った。
しかし、帆乃香は最初のバッターを、三振に斬って落とした。
その投球方は、下投げ…ソフトボールの投げ方だった。
666投稿者:リリー  投稿日:2008年02月21日(木)21時28分37秒
「…?何で?何で、あの球が打てへんの?」
続くバッターも、ピッチャーゴロに打ち取られたのを見て、七海は信じられない、といった顔で見ている。
「だから、言ったでしょ?ソフトボールの下投げは、タイミングが取りづらいんだって」
藍は、得意気な顔で言った。
「でも、そのタイミングに慣れたら…」
七海が、そう言いかけた時、帆乃香のボールは、外野に運ばれた。
「ほら…。こうなるやん」
しかし打球は、途中で失速し、翔太のグラブに収まる。
「おろ?」
「ね?もともと球威がないから、そんなに打球も飛ばないの。それにしても、翔太はフライを捕るのは、ほんとうに上手いねぇ…」
「なるほどな…」
これには七海も、渋々納得した。
試合はコールドゲームになることなく、7回の最終回まで続いた。
帆乃香は、この後も、何人かのランナーを出したが、失点することはなかった。
攻撃では、相手ピッチャーのクセを見破ったおかげで、この後3点追加したが、時、既に遅し…7回裏、最終回、ツーアウトランナー無しの局面を迎える。
667投稿者:リリー  投稿日:2008年02月21日(木)21時29分48秒
「ベン!最後や。バッターボックスに行き」
寛平に言われ、チームの中で一番小さい控え選手のベンジャミンは、嬉しそうに頷くと、ブカブカのヘルメットを被ってバッターボックスに向かう。
ベンジャミンは、極端にバットを短く持っている。
バットを振る度に、グリップが腹にかする程だ。
途端に、ベンジャミンはツーストライクを取られる。
「ちょい、待ち!!タイムや!!」
七海は、右手を高く上げた。
「何や、君まで…。監督はワシやっちゅうねん…」
「堪忍な、オッチャン…」
七海は、寛平に軽く手を合わせると、ベンジャミンの元に駆け寄った。
「あんたなぁ…。何でそない短くバットを持っとんねん!!」
「え…?だって、この方が、バットにボールを当てやすいって…」
「アホ!ツーアウトでランナーがおらんのやで?コツコツ当ててもしゃあないやん!」
「でも…」
「デモもストもないわ!!ここは、大きいの一発打って、一矢報いるんや!!」
「お、大きいの?」
「そや!バットはな、こう、ギリッギリまで長く持つねん」
七海は、ベンジャミンの手を、握って、バットのグリップの先まで持たせる。
668投稿者:リリー  投稿日:2008年02月21日(木)21時30分14秒
「でな、砲丸投げや!砲丸投げ…。室伏、見たことある?」
ベンジャミンは、コクンと頷く。
「その、砲丸投げの要領や。バットを放り投げる感じで振ったれ!!ええな?ピッチャーの左足、良う見るんやで?」
ベンジャミンは、もう一度コクンと頷くと、バッターボックスに向かう。
七海の言う通り、ピッチャーの左足を注視したベンジャミンは二つ続けてボールを選ぶ。
そして、次の投球…ピッチャーの膝が、直角に曲がった。
「…!!」
ベンジャミンは、バットをフルスイングすると同時に、放り投げた。
球は、外野へと空高く飛んで行く。
バットは、マンボウズのベンチへ…。
「うわ!危な!!」
寛平は、頭を抱えてベンチからひっくり返った。
「大丈夫です!」
梨生奈が…飛んで来たバットを、右手一本で掴んでいた。
「そんなことよりも…あれ…」
ベンジャミンの放った打球は、隣の球場まで飛んで行った。
669投稿者:リリー  投稿日:2008年02月21日(木)21時32分38秒
今日はこれでおちます

アマノガワさん、お久しぶりです
「小蓮田」に気付いてもらえて嬉しいです
実は、四回裏でもチラとでてました…

670投稿者:野球詳しくないけど  投稿日:2008年02月21日(木)21時34分17秒
丁寧に描写されてるから頭の中にイメージできる
面白い!
671投稿者:まさかベン  投稿日:2008年02月21日(木)21時36分45秒
ホームランか
672投稿者:634  投稿日:2008年02月21日(木)22時36分32秒
ホームランはクリケットだと6点でアウト(6& an out)か4点入る(4)なんですよね。

いやどうもすいませんついついオージーなもんですからクリケットとだぶらしちゃう・・・ごめんよ
673投稿者:デジ  投稿日:2008年02月22日(金)02時10分16秒
お久しぶりです!
さて、この8対4の局面でどう逆転するか、はたまた負けるか
次回も楽しみです。
ところで七海と帆乃香との相性を楽しみにしていた僕ですが
案外合いそうですね!
裏についてもコメントしておきます。
驚きの展開でした。この後どうなる!野球部
そして本当の依頼者は誰なのか!この辺が楽しみです。
加藤組の方は、なんかユニークですね。
表も裏も次回が楽しみです。

674投稿者:>タイムって…監督はワシやぞ  投稿日:2008年02月22日(金)09時15分36秒
首突っ込まれまくりの寛平さんww

でもなんからしくていいw。

藍は千秋みたいにTTKの秘密を知るのかな?
675投稿者:117  投稿日:2008年02月22日(金)22時10分29秒
帆乃香、めっちゃ明るくて,さわやかでカッコイイですね(笑)!
「小蓮田」とは・・・全然気がつきませんでした。
帆乃香と七海、ホントに相性がイイですね。
676投稿者: 投稿日:2008年02月22日(金)23時27分20秒
677投稿者:今日は  投稿日:2008年02月22日(金)23時28分22秒
更新なしかな?
678投稿者:あげ  投稿日:2008年02月23日(土)18時36分02秒

679投稿者:更新期待上げ  投稿日:2008年02月23日(土)21時00分20秒
 
680投稿者:リリー  投稿日:2008年02月23日(土)21時04分34秒
昨日はすみませんでした
結局帰れませんでした

デジさんもお久しぶりです
七海、帆乃香、レッドさん、寛平さんと、関西系のやり取りは書いてて楽しいです
117さんは、関西人なんですね
私は関東の人間なので、もし変な関西弁や不自然なところがあったら、ご指摘下さい
634さん、オージーということは、オーストラリアの人ですか?
それとも、レイシー兄弟の様に、ハーフなのでしょうか?
私、クリケットのこと、全然わかってませんでしたね
野球とはだいぶ違うみたいですね
首を突っ込まれるのは仕方ないですよね
指示が「ばこ〜ん」ですから…

では、更新します
681投稿者:リリー  投稿日:2008年02月23日(土)21時05分15秒
結局、試合は10対5でマンボウスの負けとなった。
しかし、マンボウズのメンバーは、お祭り騒ぎである。
なぜなら、最終回、チームの中で一番小さい控え選手のベンジャミンが、特大ホームランを放ったからだ。
「ほら、みんなでベンを胴上げや!!」
寛平が、ベンジャミンを皆の輪の中に入れる。
ベンジャミンの小さな身体が、宙を舞った。
七海は、この光景を見ながら、自分自身、信じられない気持ちだ。
「あ〜…びっくりした…。まさか、ホームランになるとはな…」
七海の肩を、藍は叩く。
「ななみん、ナイスアドバイスだったね。あのベンにホームランを打たせるなんて…」
「いや…。アドバイスなんてもんや…」
「ベンはね、ああ見えてもスカッシュの世界大会で銀メダル獲るくらいの運動神経の持ち主だから、球を打つタイミングってのは、心得てるんだけどね」
「へぇ〜…。あの、チビがね…」
「あと、あみ〜ご!あんたもお手柄だったよ!」
藍は、有海の両手を握った。
「そ、そんな…私は…」
「あんた、控え選手だけどさ…スコアラーとして、凄い才能持ってるかも…」
「スコアラー…」
有海は、なんとか自分でもチームの役に立てるんだと知って…嬉しかった。
682投稿者:リリー  投稿日:2008年02月23日(土)21時05分50秒
相手チームのピッチャーが、帆乃香に駆け寄ってきた。
「さっきはゴメンな。バカにして…」
そう言って素直に帽子を取り、毬栗頭を下げた。
「ううん。あんたのボールも、凄かったね」
帆乃香はあの後、このピッチャーに、三振、ショートゴロと打ち取られていた。
「でもね、気ぃつけや、自分…。足の上げ方のクセで、ストライクとか、ボールとか、丸わかりやで?」
「…え…!?マ、マジ…?」
「今度、対戦する時まで、そのクセ直しときよ?」
「う…うん…!わかった…」
少年は、ブツブツと呟きながら自分のチームの元に戻って行った。
「あ〜あ…。教えちゃったの?今度は勝てるかもしれないのに…」
梨生奈が、後ろから声をかけた。
「ええねん。相手が強うなった方が、おもろいやん!」
「負けちゃっても、その方がおもしろいの?」
「何、言うてんの?強い相手に勝つのが、おもろいんねん!」
帆乃香の笑顔を見て、梨生奈は自分を振り返る。
自分は、絶対に勝てると確信しなければ戦わなかったということに…。
もちろん、自分の戦いは、負ければ死ぬ…という類のものだったから、慎重になるのは仕方がないのだが…。
683投稿者:リリー  投稿日:2008年02月23日(土)21時06分19秒
「よし!今日はベンのホームラン記念や!!みんなに昼飯おごったる!!」
寛平の言葉に、またもや盛り上がる少年達。
「おう、あい〜ん達も、来い、来い!」
「本当ですか?」
藍は喜ぶが、七海と梨生奈は遠慮した。
「いや…ウチらは…」
「ほんと、おかまいなく…」
「何や…えらい美味い、お好みの店があるんやけどな…」
寛平は、つまらなそうに呟いた。
「お好み焼き?行く!行く!」
関西人の血が混ざっている七海は、お好み焼きと聞いて、態度を180度転換させた。
「ちょっと…七海…」
呆れる梨生奈に、藍は後ろから肩を抱く。
「ね、り〜なも行こうよ!!ほら、あみ〜ごも行くでしょ?」
有海は、小さく、嬉しそうに頷いた。
684投稿者:リリー  投稿日:2008年02月23日(土)21時07分20秒
小さな庶民的なお好み焼き屋の店内に、肩を寄せながら詰め込まれた、野球少年達。
皆、餓鬼の如く、お好み焼きを奪い合って、口に詰め込んでいる。
その中に、七海が同じレベルで争っている。
「おい!おまえ!!試合に出てないだろ?少しは遠慮しろよ!」
「うっさい!!何もしてへんでも、腹は減るんや!!」
ソースと青海苔だらけの口を大きく開け、七海は怒鳴り散らした。
「七海…。お願いだから、大人しく食べて…」
梨生奈は、まるで七海の保護者のようになっている。
「帆乃香。この子ら、みんな聖テレやって。お嬢様やで?」
寛平の言葉に、帆乃香は目を丸くする。
「聖テレ?ほんまに?うち、めっちゃ、あの学校に憧れてんねん!制服、可愛らしいもん!あの、白いセーラー服…」
「聖テレは、頭良うなかったら、入れへんで?帆乃香、体育以外アカンから無理やろ?」
「ええやん!もう…!憧れてるだけやし…」
「ううん!私もバカだけど、聖テレに入れたよ!スポーツ推薦で!」
「ほんまに?せやったら、うちもスポーツ推薦してもらう!」
藍の言葉に、帆乃香は目を輝かせた。
685投稿者:リリー  投稿日:2008年02月23日(土)21時07分50秒

「アカン、アカン!帆乃香くらいの運動神経の持ち主、ぎょうさんいてるわ!!」
「なんや…おじいちゃん…。夢を壊さんといてよ。でも…ななみんも、スポーツ推薦?それとも、ああ見えて頭ええとか?」
「あん?ウチ?ウチは裏金…」
梨生奈は、慌てて七海の口を塞いだ。
「こ、こう見えても、この子、頭いいのよ!!あはは…」
梨生奈は、乾いた笑い声をあげて、ごまかした。
「う…」
そして、ソースと青海苔だらけになった掌を、紙ナプキンで拭いた。
「ん?何や?」
七海は、自分の側に立っている、ベンジャミンに気がついた。
「これ…食べて…」
そう言って、モダン焼きが一切れ乗っている、皿を差し出した。
「おお!うちにくれるん?おおきに!!」
七海は大喜びで、その一切れを一口で食べた。
ベンジャミンは、はにかみながら、自分の席に走って戻って行った。
686投稿者:リリー  投稿日:2008年02月23日(土)21時08分23秒
「ベン…。たぶん、ななみんのことが好きだよ」
藍は、先ほどのお返しとばかりに、七海に囁いた。
「へ?ウチに?まさか、やろ!!」
「絶対、そうだって!」
「せやけど…まいったな〜…」
「え?」
「またウブな少年が一人、ウチの魔性に引っ掛かってしもうた…」
「ええと…ここは、突っ込むところ?」
「うん…。突っ込んでぇな…。メチャ、恥ずいやん…」
そして、2人は顔を見合わせて笑いあった。
すると突然、藍は、寛平の方を向く。
「そうだ!カンペーさん!また占ってよ!」
「またかい?もう…ほんまは、タダやないんやで…」
「え?占い?」
七海は、目をパチクリさせる。
「うん、このカンペーさん、職業、占い師だもん」
687投稿者:リリー  投稿日:2008年02月23日(土)21時08分58秒
「占い師?駅前で虫眼鏡で手相とか見るのん?」
「ちゃう、ちゃう。オッチャンの使う道具は、コレや」
そう言って、寛平がスタジアムジャンパーのポケットから取り出したのは、輪ゴムで留められた、カードだった。
「それ…トランプ?」
トランプにしては、数が少なすぎる。
「その、トランプの元になったモンや。タロットカードって言うねん」
そう言いながら、寛平は畳の上に、随分年季の入った、神秘的な絵の描かれたカードを広げた。
「あ…!それ、私知ってる!」
梨生奈も、占いと聞いて、興味津々で寄って来る。
「り〜な、占い好きなの?」
藍の質問に、梨生奈は二度ほど頷いた。
「ウチは、占いなんて信じいひん!」
七海は、占いに興味がないようだ。
「じゃあ、り〜な、占ってもらいなよ」
「え?わ、私…?」
「で、何を占ってもらいたい?」
寛平は、まるでトランプか花札でも始めようか、とでも言うように、タロットカードをチャッチャと切り始めた。
688投稿者:リリー  投稿日:2008年02月23日(土)21時09分47秒
梨生奈は、困ったような顔で、考えあぐねる。
「う〜ん…そうね…。じゃ、じゃあ…」
梨生奈は、背筋を伸ばして寛平に正対する。
「私達…これから、夜、あるお仕事をしなければならないんですが…そのお仕事…うまくいくかどうか…」
「お仕事?何の?アルバイトか何か?」
「そ…それは…ちょっと、言えないんですけど…」
梨生奈の質問に、七海は少しムッとした。
(何やねん…。どんな手段を使うても、絶対に成功させるんが、ウチらの仕事やろが!!)
「よし!わかった!」
そう言うと、寛平はまるでババ抜きのように扇形に広げ、22枚のカードの裏を梨生奈の方へ向けた。
「一枚、好きなの選んで」
「はい?」
梨生奈は、一枚だけを引き抜いて、裏を向けたまま、寛平に渡した。
「え…?タロットカードって…こんなにお手軽なの?」
梨生奈は、首を傾げた。
689投稿者:リリー  投稿日:2008年02月23日(土)21時10分30秒
今日はこれでおちます
690投稿者:ベンが七海に…  投稿日:2008年02月23日(土)21時14分32秒
藍←聖斗もだけど可愛い恋心だねww

仕事の結果はどう出るのかな?
というかカンペーさんの占いって当たるのかな?人情味はありそうだけどw
691投稿者:挿絵、またはスチールショットつきで読みたいですね、これ  投稿日:2008年02月23日(土)21時15分51秒
もしくはリリーのwebページとかあれば・・・
692投稿者:117  投稿日:2008年02月23日(土)21時45分57秒
試合に負けても、別に良いんだけど、のんきな人たちですね(笑)。
「お好み焼き」につられて、キャラが180度変わる七海(笑)。
リリーさんの大阪弁は大丈夫だと思いますよ。自然に読めますので。
カンペーさんに占ってもらう梨生奈、リアルな結果が出そうな気が・・・?
693投稿者:茶々山マンボウズ可愛いなー  投稿日:2008年02月23日(土)21時52分44秒
聖テレ野球部もどんどん仲良くなっている感じが伝わる
694投稿者:私もリリーさんの関西弁は自然だなといつも感心してます  投稿日:2008年02月23日(土)23時56分52秒
七海も帆乃香もカンペーさんもみんな活き活きとしてるんです
読んでてすごく楽しいですよ
695投稿者: 投稿日:2008年02月24日(日)16時38分21秒

696投稿者:あげ  投稿日:2008年02月24日(日)17時10分51秒

697投稿者:gxh  投稿日:2008年02月24日(日)17時11分09秒
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698投稿者:あげあげ  投稿日:2008年02月24日(日)17時24分20秒

699投稿者:sくぁs  投稿日:2008年02月24日(日)17時27分51秒
■エンディングMTK新曲「コノユビトマレ」
  またまた新エンディングがスタート!歌うのはてれび戦士24人全員だ!
 今度の「春」は、みんなにとってどんな季節かな…?

――あの春の日、きみと出会えた。
 不安もいっぱいあったけど、いつもそばにいてくれたね。
 もうすぐおわかれだけど、またいつか会おうね。
 明日はきっと、すてきなことが待ってるはずだから。
 あの日きみと出会えた、そんなすてきなことがきっと…。

 ちょっぴりさみしいわかれもあるけど、新しいスタートの季節。
 てれび戦士からみんなへの、応援ソングにご期待あれ!!

700投稿者:age  投稿日:2008年02月24日(日)17時34分07秒

701投稿者:aefef  投稿日:2008年02月24日(日)17時35分37秒
■エンディングMTK新曲「コノユビトマレ」
  またまた新エンディングがスタート!歌うのはてれび戦士24人全員だ!
 今度の「春」は、みんなにとってどんな季節かな…?

――あの春の日、きみと出会えた。
 不安もいっぱいあったけど、いつもそばにいてくれたね。
 もうすぐおわかれだけど、またいつか会おうね。
 明日はきっと、すてきなことが待ってるはずだから。
 あの日きみと出会えた、そんなすてきなことがきっと…。

 ちょっぴりさみしいわかれもあるけど、新しいスタートの季節。
 てれび戦士からみんなへの、応援ソングにご期待あれ!!

702投稿者: 投稿日:2008年02月24日(日)17時41分23秒

703投稿者:いかにも逆位置が出てきそうですね〜  投稿日:2008年02月24日(日)20時55分10秒
と、さっき覚えた言葉を使ってみますけれども
カードの各意味を調べるとどれもこれもありそうでワクワクします
704投稿者:リリー  投稿日:2008年02月24日(日)21時13分28秒
そうですか
関西の方からそう言って頂けると、嬉しいです
よく、東京の人間が無理矢理関西弁を使うと、反感を買う、と聞いてたものですから…

寛平さんの占いですが…これが物語の核心に入っていくキッカケとなります

では、更新します
705投稿者:リリー  投稿日:2008年02月24日(日)21時14分08秒
「もっと、いっぱいカード使って、いろんな置き方をしたり…」
寛平は、梨生奈に人差し指を向ける。
「君な、三日間コトコトじっくり煮込んだ、メッチャ不味いカレーと…レトルトで3分でできるけど、メッチャ美味いカレーと、どっち選ぶん?」
「え…?そ、それは…レトルトの美味しいカレーですけど…」
「そうやろ?お手軽でも、良う当たる占いなら、それでええんねや」
そう言いながら、寛平はカードを表に向けた。
それは…王冠を被り、杖を持った男の絵柄… ?・L'Empereur…と書かれた『皇帝』のカードだった。
「あ…!そのカード!確か、仕事運だったら、大成功っていう意味じゃ…」
梨生奈は、そのカードを見て歓喜の声をあげる。
寛平は、顎をさすりながら、このカードをじっと見る。
「うん…。ま、今夜の仕事は大成功やな…」
その言葉に、梨生奈は笑顔で胸を撫で下ろす。
(せやから…!大成功させて、当たり前なんやって…)
そんな梨生奈を、冷めた目で見る七海。
「でもな…コレ…これから君の仕事に立ちはだかる『壁』を暗示してんねん…」
「…え?『壁』…?」
「『壁』というよりか…『敵』やな…」
「『敵』…?」
「圧倒的な支配者…指導者…権力を持った『男』や…」
これから仕事をする…標的の中に…『皇帝』のような『敵』…?
706投稿者:リリー  投稿日:2008年02月24日(日)21時14分45秒
「圧倒的な支配者…指導者…権力…」
梨生奈が真っ先に思い浮かべる人物は、ダーブロウ有紗だが、彼女は『女』だし、『敵』ではない。
「まさか…」
そして次に思い浮かべたのが、あのホスト…楠本柊生の顔…。
たしか、『元帥』と呼ばれ、あのホストクラブの中でも、拉致犯罪の中でも、権力と指導力を発揮していた。
「君の仕事が何なのか、教えてくれれば、もっと詳しく教えられるんやけど…」
「い、いえ…。これで充分です…」
梨生奈は、不安を胸に残し、占いを打ち切った。
「へん!アホらし!」
七海は、吐き捨てるように言った。
「仕事なんやし…そりゃ、何かしら『敵』はおるんやないの?ライバルとか…」
「うん?君は占いを信じてないんやね?」
「そうや!運命は、自分で切り開くもんやろ?」
「気に入った!そうやねん。オッチャンの占いはな、その運命を切り開く、ちょっとしたお手伝い…いや、アドバイスなんよ」
「アドバイス?」
「そや。さっき、君がベンにホームラン打たせたみたいにな、オッチャンも、君の人生、ホームラン打たせてやろうやないの…」
そう言いながら、再び寛平は、チャッチャとタロットカードを切り始めた。
707投稿者:リリー  投稿日:2008年02月24日(日)21時15分11秒
「お?今度は、ななみんが占ってもらうの?」
藍が、楽しそうに見物している。
「せやから、ウチは占いなんて…」
「タダやで?ほんまは、1回、諭吉一人は貰うてるから…」
「諭吉一人って…一万円?ただ、カードを引かせて一万!?ボッタクリやん!!」
「当たるんなら、ボッタクリにならん!何、占うてもらいたい…?」
「う〜ん…せやったら…聖テレ野球部の行く末や!」
「お!?それ、私が占ってもらいたかったんだ!」
藍も、占いの結果が気に掛かる。
七海は、一枚カードを引いて、寛平に渡す。
それは、塔の様な建造物に雷が落ち、そこから瓦礫や人が、まっ逆さまに落ちている絵柄…??・La Maison de Dieu …と書かれた『塔』のカードだった。
「………これ…素人目でもわかるで…。決して、おめでたいカードやないな…」
寛平も、弱ったように頭を掻く。
「ね、ねぇ…。カンペーさん…。これ、どういう意味…?」
藍も、不安になった。
「う〜ん…。素直な見方をすれば…崩壊…空中分解…つまり…解散…」
「ちょ、ちょっと!最悪じゃん!」
藍は、青い顔で、寛平に詰め寄った。
708投稿者:リリー  投稿日:2008年02月24日(日)21時15分43秒
「この塔は、君ら『聖テレ野球部』の象徴や。落っこちてる2人の人物は、『野球部から去っていく人物』、塔を壊す雷は、その『キッカケを与える人物』…」
この寛平の言葉は、七海達の心をざわつかせた。
「でもな、こういう見方もできるで…一度、全部ぶち壊して、解放される…」
「解放?」
「うん。塔…建物が壊れる、言うことは、中の人が外に出るってことや」
そう言って、カードに描かれている、落ちている二人の人物を指差した。
「外に…出る…?」
「そうや…。新しい世界や…」
「新しい…世界…?」
七海、藍、梨生奈、有海は、不安げな顔を見合わせた。
「そういう人物…『雷』が、現れるっちゅうことかな…」
「人物!?そ、そいつが…私達の部を、ぶち壊すってこと?」
「いつ現れるねん!!その『雷』!!ウチがどつき回したる!!」
七海は、いきり立った。
「うん…もしかしたら…もう、現れてるかもよ…?」
「も…もう…?」
「だ…誰…?」
もう一度、顔を見合わせる、4人の少女達…。
「も、もしかしたら…『あいつ』なん、ちゃうかな…」
『雷』と聞いて、思い出すのが『ライトニング・ボルト』…羅夢のコードネームだ。
709投稿者:リリー  投稿日:2008年02月24日(日)21時16分04秒

「カ、カンペーさん!どうしたらいいの?アドバイス!」
「へ?」
「そうや!アドバイスしてくれるんやろ?」
う〜ん…と、寛平は唸ると、ようやく口を開いた。
「気ぃつけや!」
「それだけかい!!」
七海は、思わず立ち上がり、怒鳴った。
「でもな、これは悪いことばかりやないで…。部の中の誰かは、新しい世界が広がるキッカケになるんやから…」
「新しい世界かなんか、知らんけど、部が潰れるんは、最悪やん!やっぱ、信じん!!占いなんて!!」
七海は、荒々しく胡坐を掻いた。
しかし…部のキャプテン、伊倉愛美の離脱は、もう決まってしまっている。
野球部から去っていく2人の人物…のうち、一人は愛美…。
案外、当たるのかも…と、七海は、頭の片隅で思い始めていた。
「ねえ、今度は、あみ〜ごが占ってもらったら…?」
藍は、沈みかけた雰囲気を、盛り上げようとする。
「え…?い、いいよ…。こ、恐い…」
有海は、すっかり怯えてしまった。
710投稿者:リリー  投稿日:2008年02月24日(日)21時16分38秒
「ごちそうさまでした」
昼食を終え、七海と梨生奈は、『R&G探偵社』に戻ることになる。
「うん。楽しかったね。また、応援に来てよ」
藍は、お好み焼き屋の前で、2人を見送った。
少年達も、そしてもちろん帆乃香も手を振って見送った。
「ほな、さいなら!!次は、絶対に勝つんやで!!」
七海と梨生奈は、手を振り返し、自転車に跨った。
「ちょい、待って!!」
寛平が、2人を追い駆けて来た。
「何や?まだ、何か用やの?まさか、お好み代、払えって言うんや…」
「ちゃう、ちゃう!ワシが用あるんは…梨生奈ちゃんや…」
「え?わ、私…?」
梨生奈は戸惑いながら、自らを指差した。
「うん…。君な…ちょっと、気になるんよ…」
「き、気になるって…?」
「それが、ちょっとわからんから…占わせてもらえへん?」
そう言って、寛平は、再びタロットカードを取り出した。
711投稿者:リリー  投稿日:2008年02月24日(日)21時17分01秒
「一枚…引いて…」
「は…はい…」
梨生奈は、恐る恐る、一枚のカードを引いた。
それは、月に向かって吠える二匹の犬、そして、川の中にザリガニが描かれた… ???・La Lune …『月』のカードだった。
「こ、これは…?」
「君…『月』に関係してるってことない?」
「え…!?」
自分のコードネーム…『ムーン・ライト』…。
「あのな…このカードの意味は…嘘、裏切り、疑念…」
「ど、どういうことですか?」
「君は…これから…『嘘』に翻弄され、『裏切られ』、傷つくことになる…。身体も、心も…」
「う、裏切られる…?」
「この二匹の犬は、『君』と、『君を裏切ることになる人物』…。そして、この月は、『懐かしい人物』…と同時に『恐ろしい人物』…そしてザリガニは、君は忘れているけど、相手は『君のことを覚えている人物』…」
梨生奈は、何が何だかわからない。
「い、いつですか!?それは…?」
「もう少し先やな…。そう…夏くらいか…」
「夏…?夏に…嘘で裏切られ、傷つくんですか…?」
梨生奈は、占いだというのに、心底不安になった。
712投稿者:リリー  投稿日:2008年02月24日(日)21時17分27秒
「これは、アドバイスやけど…」
寛平の真剣な顔に、梨生奈は固唾を飲み込む。
「裏切られても…許すことや…。絶対に、裏切った相手を憎んだり、傷つけてはアカン!!自分は傷つけられても、や。そしたら…」
「そしたら…?」
「その、裏切った相手は…きっと、君の元に帰って来るから…」
「帰ってくる…?」
「そうや…。ワシから言えることは…それだけや…。ほな、気ぃつけて帰り…」
寛平は、背中を向けると、ゆっくりと皆の元に戻って行った。
不安な表情を隠さずに、寛平の背中を見詰める梨生奈…。
大事な仕事の前だと言うのに…七海は、無駄に大きな声で、梨生奈に話しかけた。
「気にすんなや!梨生奈!所詮、占いや!占い!!」
「そ…そうね…」
梨生奈は力なく笑うと、七海と共に自転車に跨って、家路につく。
そして…梨生奈は寛平の占いを、しばらくの間、忘れることになる。
それを思い出すのは…8月になってから…とある田舎の病院で…この占いの意味を、全て理解した時だった。

(『六回・表』・・・終了)
713投稿者:リリー  投稿日:2008年02月24日(日)21時20分05秒
前作の『らりるれろ探偵団』を読んで下さった方ならおわかりになると思いますが、寛平さんの占いは、『らりるれろ探偵団』の出来事を予言しています
つまり、寛平さんの占いは『当たる』ということです

では、今日はこれでおちます
714投稿者:117  投稿日:2008年02月24日(日)21時23分05秒
おぉ!なかなか意味深な占い結果ですね。
男の敵=元帥、梨生奈の方は『らりるれろ』の千秋とのコトでしょうか?
今後、この占いがどのようになるのか、楽しみです。次回は裏ですね!
715投稿者:らりるれろの暗示  投稿日:2008年02月24日(日)21時36分52秒
鳥肌が立った
リリーさんタロットにも詳しいのかな?
716投稿者:たぶん  投稿日:2008年02月24日(日)21時43分36秒
狼=梨生奈、羅夢
月=モニ−ク
ザリガニ=瑠璃
リリーさん、合ってますか?
717投稿者:リリーさん  投稿日:2008年02月25日(月)00時34分25秒
ほんまにやばいな
718投稿者:タロットの月  投稿日:2008年02月25日(月)00時43分52秒
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%88_%28%E3%82%BF%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88%29

二匹の犬(梨生奈と羅夢)が、月(モニーク)の方にしか気を取られずに吠えていると、背後からザリガニ(瑠璃)が…
恐い…
719投稿者:むう  投稿日:2008年02月25日(月)00時47分31秒
月は敗北を認めたかのように俯(うつむ)き、雫を大地へと帰す。
720投稿者:聖テレ野球部の空中分解  投稿日:2008年02月25日(月)08時51分24秒
なんだか怖い……
721投稿者:おもしろそうじゃん  投稿日:2008年02月25日(月)14時09分02秒
 
722投稿者:タロットの絵って  投稿日:2008年02月25日(月)19時20分11秒
みんな恐いんだよ
723投稿者:リリー  投稿日:2008年02月25日(月)21時07分39秒
タロットは、昔、はまったんです
凄く神秘的で、占いの結果に一喜一憂したり…
やはり、『死神』や『塔』、『悪魔』、『吊られた男』なんてカードが出たら、凄く不安になります…
ですから、梨生奈の気持ちはリアルな私の気持ちです
一応、私も占いできますよ

では、更新します

724投稿者:リリー  投稿日:2008年02月25日(月)21時08分50秒
『六回・裏』

≪2007年5/13(日)≫
「はい、こちら『ムーン・ライト』。………はい。準備は完了しています。………今、『アンダー・キャッスル』前です。………はい。このまま待機します」
梨生奈は携帯を切る。
「俵姉妹からよ。今…やつ等は、例のホストクラブを出発したらしいわ…」
梨生奈は、側にいるエマに話しかけた。
「OK!聞こえてたよ。七海、そろそろだ!」
七海は、先ほどから無言で金属バットを素振りしていた。
大きく息をつくと、彼女の宝物である、阪神の金本のリストバンドで額の汗を拭う。
「いよいよやな…」
3人の少女は、ラブホテル『アンダー・キャッスル』の隣、雑居ビルの陰に集まっている。
このビルの半数は、既に空き店舗となり、この時間帯は人気がない。
725投稿者:リリー  投稿日:2008年02月25日(月)21時09分16秒
梨生奈、七海、エマの『Aチーム』は…それぞれトラックスーツに身を包んでいる。
梨生奈は、緑地に黒のラインが入ったトラックスーツ、腰のベルトには、両側にトンファーを差している。
七海は、黒地に黄色のラインが入ったトラックスーツ、手には黄金に輝く金属バット。
エマは、マスタードイエローの地にダークグリーンのラインが入ったトラックスーツ、手には、無骨なボウガン。
一番奇妙な恰好をしているのは彼女である。
金属制の細長いケースを両肩に着け、そこには両側に6球ずつ、直径10センチ程のピンク色の鉄球が設置されている。
「エマ、七海…。あなた達、コンビネーションは息ばっちりでしょうね?」
「ああ。大丈夫。私の場合は普段通り、ただボウガンで鉄球を撃つだけだもん。大変なのは七海でしょ?」
「大変なんてことあらへん。バッティングはもともと得意やし、野球の練習にもなって、一石二鳥やわ」
「でも、私達のチームの場合、戦闘にはならない方が理想的よ」
「わかってる。なすびのおっちゃんの、安全確保が第一やろ?」
そう…野球部のキャプテン、愛美の父親を守るのは、七海達の任務なのだ。
726投稿者:リリー  投稿日:2008年02月25日(月)21時09分40秒
梨生奈は、再び携帯を取り出すと、目の前の『アンダー・キャッスル』に電話をかける。
〔はい…。『アンダー・キャッスル』です〕
愛美の父親、浜津の声だ。
「『R&G』です」
〔あ…!た、探偵さん…!いつ、連絡が来るかと、待ってました!!今、どこにるんですか?〕
随分、切羽詰っている様子だ。
無理もない。今日、彼はどこか遠い土地へ、逃亡する。
暴力団、『加藤組』を裏切って…。
「今、ホテル前の雑居ビルにいます」
〔す、すぐ近くじゃないですか…!こちらには来られないんですか?〕
「無理です。まず、浜津さんには普段通り、彼等に701号室の鍵を渡してもらいます」
〔こ、このホテルに着く前に、連中を捕まえることはできないんですか?〕
「ダメです。被害女性が薬で眠らされている所を捕獲しなければ、意味がありません」
〔い、意味がないって…?〕
「ただのデートだったと言い逃れをされたら、こちらが不利になりますから。明らかに、彼等が犯罪をしているという状況でなければ…」
〔わ、わかりますが…〕
「勇気を持って…」
〔で、でも…〕
727投稿者:リリー  投稿日:2008年02月25日(月)21時10分07秒
すると、突然、七海が携帯を梨生奈から毟り取った。
「…七海…!?」
「おい!!コラ!!なすびのおっさん!!」
七海は、携帯の向こうの浜津を怒鳴りつけた。
〔な、なすび…?〕
浜津の声は、驚き戸惑ってる。
「何を今更、グダグダ言うとんねん!!おっさん、一人の問題やないねん!!娘さんと一緒に逃げるんやろ!?」
七海は、浜津のことよりも、愛美のことの方が心配だった。
いや、折角発足した野球部なのに、そのキャプテンを獲られてしまうことが、たまらなく悔しかった。
「今夜のおっさんの命は、ウチ等が守ったる!!せやけどな、明日からはず〜っと…おっさんが娘さんを守らなアカンのやろ!?」
〔そ、それはそうですが…でも…〕
「デモも、ストもあるかい!!父親として、娘を守ったらんかい!!根性見せんかい!!ゴルアァァ!!!」
七海は、携帯を切った。
「な、七海…」
唖然としている梨生奈に、携帯を突き返す七海。
「へへへ…。熱いねぇ…七海…」
エマは、ボウガンの微調節をしながら、七海を横目で見て笑った。
728投稿者:リリー  投稿日:2008年02月25日(月)21時11分02秒
「こちら『アンダー・クイーン』だ。………うむ。準備は完了している。………今、下ノ国駅前にいる。………わかった。このまま待機する」
中村有沙は携帯を切る。
「俵姉妹からだ。今…やつ等は、例のホストクラブを出発したそうだ…」
中村有沙は、後ろにいるエリーに話しかけた。
「うん、聞こえてたよ。羅夢、そろそろよ!」
エリーは、ワゴンの後部座席で仮眠をとっていた羅夢に声をかける。
「…ん…いよいよだな…」
羅夢はゆっくりと起き上がった。
3人の少女は、下ノ国駅のロータリーに停めてある、白いワゴン車に乗っている。
ワゴン車は、大手家電販売店から廃車直前になったのを買い取った物だ。
その会社に迷惑がかからないように、社名は塗りつぶしてある。
729投稿者:リリー  投稿日:2008年02月25日(月)21時11分25秒
中村有沙、エリー、羅夢の『Bチーム』は…それぞれトラックスーツに身を包んでいる。
運転席の中村有沙は、黒地にライトグリーンのラインが入ったトラックスーツ、助手席には鎖鎌が置かれている。
羅夢は、赤地に黒のラインの入ったトラックスーツ、首にはヌンチャクを掛けている。
エリーは、若草色の地に白のラインが入ったトラックスーツ、手には無骨なボウガン。
一番奇妙な恰好をしているのは彼女である。
赤い、西部劇のガンマンの様なベルトを身体中に着け、そこには、無数の長さ10センチ程の黒い矢が差し込まれている。
エリーは、心配そうに中村有沙に語りかける。
「ありりん…安全運転でお願いね。警察に捕まると厄介だから」
「安全運転?それはやつ等次第だ」
「未成年の無免許運転だからな…。捕まったら面倒だな。アタイはそん時は逃げるけど」
羅夢は、せせら笑いながら言った。
「その時は、貴様を轢き殺す」
その中村有沙の言葉に、エリーは青い顔になる。
「思い出しちゃった…。私とエマ、ありりんに車で撥ね飛ばされたことがあったんだった…」
「いい思い出だな、エリー」
「トラウマだよ!!」
エリーは中村有沙に向かって、ヒステリックに怒鳴った。
730投稿者:リリー  投稿日:2008年02月25日(月)21時12分25秒
40分後、3人の乗るワゴンの脇を、例の黒いバンが通り抜けた。
「あ…!あの車…」
「ああ…。やつ等だ…」
息を潜めて、黒いバンを睨み据える3人。
そこに、あの夜とは違うホストが、一人の女性客と一緒に駅から出て来た。
2人は、真っ直ぐにバンに向かうと、後部座席に乗り込んだ。
「ありりん、やつ等、出発するよ…」
しかし、中村有沙はエンジンをかけない。
「どうしたの?」
「おい!何やってんだよ!!やつ等、行っちまうぜ!?」
「うるさい。貴様等、あれに気がつかないのか?」
「あれ…?」
中村有沙の睨む先を見る、エリーと羅夢。
黒いバンが出発してから姿を現したのだが、そこには、黒光りするベンツが二台、停まっていた。
731投稿者:リリー  投稿日:2008年02月25日(月)21時12分58秒
「あ…あれは…?」
「うむ。さっきから気になっていたのだ。やつ等のバンが到着する10分前に、そこに停まっていた。車内を良く見てみろ」
中村有沙に言われるまま、目を凝らして、ベンツの車内を窺うエリーと羅夢。
スキンヘッドに入墨をした男、サングラスで縦に走った傷を隠している男、パンチパーマで眉毛を剃り落としている男…。
「あ、あの人達…」
「堅気の人間じゃねぇな…」
「そう…。おそらく加藤組の者達だろう…。ああやって、尾行する者がいないか、見張っているのだと思う」
「で、でも…あの夜は…」
「ああ…。加藤組の尾行はなかったな…」
「も、もしかして、バレてんのかよ!?アタイ等が動くこと…」
「………」
中村有沙は、何も答えなかった。
やはり、あの男…『元帥』に…勘付かれたのか…?
732投稿者:リリー  投稿日:2008年02月25日(月)21時14分16秒
嵐の前の静けさです
これから、加藤組との激闘が始まります

では、今日はこれでおちます
733投稿者:いよいよですね  投稿日:2008年02月25日(月)21時19分57秒
そういえば、らりるれろで加藤組との戦いについて羅夢と梨生奈が触れてたような
あんまり覚えてないけど
734投稿者:117  投稿日:2008年02月25日(月)21時28分34秒
七海の「デモもストもあるかい!」というのは、毎回面白いです(笑)。
両グループとも同じような展開になっていますね。いよいよ激闘・・・続きも楽しみです!
735投稿者:有沙  投稿日:2008年02月25日(月)23時42分54秒
http://momisage.sakura.ne.jp/u15/src/1203946797505.jpg
736投稿者: 投稿日:2008年02月26日(火)00時44分11秒
どこにあった?・
737投稿者:楠本さんの動きが気になる  投稿日:2008年02月26日(火)08時40分18秒
AチームとBチームが対比して書かれているのが面白い。
738投稿者:リリー  投稿日:2008年02月26日(火)21時07分15秒
加藤組のことは、『らりるれろ』でも少し触れてました
よく覚えてて下さいました

まずは、Bチームの活躍からです

716さん、遅くなりましたが、その通りです

では、更新します
739投稿者:リリー  投稿日:2008年02月26日(火)21時12分24秒
二台のうち、一台のベンツが、黒いバンの後を追う。
もう一台は、その場に残っている。
「あ、ありりん…!」
「むぅ…。慎重なやつ等だ…」
「ど、どうするんだよ!?」
「仕方がない。遠回りになるが、別ルートでホテルに向かおう。やつ等の行き先はわかっているんだ」
中村有沙は、エンジンをかける。
そして、黒いバンの別方向へ走る。
「あ…!そ、そうだ…!ありりん!」
「何だ?エリー…」
「も、もし、あのヤクザ達が、一緒にホテルに向かったら…?依頼人のなすびさんを、保護するの難しくない?」
「………エリー…一応、梨生奈に連絡をしておけ」
「はい!」
エリーは、携帯をかける。
「お、おい!!チビアリ!!」
羅夢が叫んだ。
「わかっている!」
そう…その場に残っていた、もう一台のベンツが、彼女達のワゴンを追跡してきたのだ。
740投稿者:リリー  投稿日:2008年02月26日(火)21時13分31秒
「や、やっぱりバレてんだよ!やっちまおうぜ!?」
「ダメだ!『Aチーム』が、なすびを保護するまで、こちらは動けない!!」
そう…やつ等がホテルに到着するまで、『Aチーム』は浜津の保護はできない。
その拉致実行犯を捕らえるのは『Bチーム』の役目…しかし、今、加藤組に尾行されていて、ホテルに向かうことはできない。
ベンツは、ピッタリと後をつけてきている。
明らかに、マークされている。
「ありりん!今、梨生奈に連絡した!七海は喜んでるみたいだけど…」
「う〜む…。しかし、こちらはどうする?いくら何でも、無目的なドライブを続けてられないぞ…」
「こ、これ以上、ホテルから遠くに行けないよ?」
「やっちゃおうぜ!!なあ!?」
741投稿者:リリー  投稿日:2008年02月26日(火)21時15分11秒
中村有沙は、決心したように、大きく息をつく。
「………エリー、羅夢…。1分以内だ…」
「え?」
「1分以内で、やつ等を倒すことができるか?」
「おう!やってやるぜ!!」
羅夢は、拳をパチンと鳴らした。
「それだけではない!やつ等の命を獲ることなく、電話、メールの通信を一切させない状況で、倒さなければならない!!できるか?」
「やって、やれないことはないけど…」
「楽勝だよ!!」
中村有沙は、室内ミラーでベンツの位置を確認する。
「よし!!やれ!!」
ワゴンの後部扉が、大きく開いた。
742投稿者:リリー  投稿日:2008年02月26日(火)21時15分31秒
一方、ベンツの中…加藤組の組員達は、追跡している白いワゴンに関して、いろいろ思惑を言い合っている。
「なぁ…兄貴…。あのワゴン、ハズレだったらどうするんすか?」
運転をしている、スキンヘッドに入墨の男が、後部座席のサングラスの男に問う。
「ハズレなら、ハズレでいいんじゃねぇのか?もう一台、ホテルに向かってるわけだし…」
「組長も、随分慎重になりやしたね…」
「いや、これは、あの、楠本とかいう、胡散臭いホスト野郎の考えらしい…」
「あの男、何なんすか?本当に、ただのホストですかね?」
助手席のパンチパーマの男が、後ろを振り向いて聞く
「いや…ありゃ、相当ヤバイ人種だぜ。俺達、ヤクザより、もっと悪の根底で生きてきた…そんな感じがする…」
「俺達、ヤクザより…?」
「組長が、直々に雇ってるって聞いたが…。ま、俺達末端の組員が、気にしたってしょうがねぇ…。それより、メールは打ったか?」
サングラスは、パンチパーマに言う。
「はい、後は送信するだけです」
「いいか?あのワゴンが少しでも妙な動きをしたら、そのメールを送信しろ。この計画、嗅ぎつけているヤツがいる…と…」
「もし、そうなったら、内部告発は決定的ですね…」
「ああ…。おそらく、あの、浜津の野郎だ…。とっ捕まえて、白状させてやる!誰にチクったのかをな…」
「たしか、アイツには娘がいましたね?中学生くらいの…」
「娘も捕まえて、痛い目に遭わせりゃ、ヤツは簡単に口を割るだろう………ん!?」
その瞬間、前のワゴンの後部扉が、大きく開いた。
743投稿者:リリー  投稿日:2008年02月26日(火)21時16分02秒
「な、何だ!?」
そのワゴンの中に…少女…?
その少女は、ボウガンの様な物を、こちらに向けている。
「お、おい…!あれ…」
その瞬間、車は大きく横に揺れた。
ボウガンから、黒い矢が発射され、それが車のタイヤを貫いたのだ。
「メールを送信しろ!!」
「ち、畜生!!携帯を落としちまった!!」
「うおおおおお!!!」
スキンヘッドは、何とか車の体勢を持ち直そうとする。
その時だった。
赤いトラックスーツを身に纏った少女が、走行中のワゴン車から、こちらに飛び移ってきたのだ。
その少女が、ベンツのボンネットに降り立った。
「な、何だ!?このガキ!!」
スキンヘッドは、その少女と目が合った。
「オラァァァ!!!」
その少女は、ヌンチャクを振り上げ、フロントガラスを叩き割った。
744投稿者:リリー  投稿日:2008年02月26日(火)21時16分33秒
「うわあ!!」
粉々に砕けたガラスが、車内のヤクザ達に降り注ぐ。
赤い袖の腕が、スキンヘッドのネクタイを掴んだ。
「う、うお!?」
運転席のスキンヘッドは、割れたフロントガラスから、上半身を引きずり出された。
「おやすみ!おっさん!!」
その少女…羅夢は、ヌンチャクでスキンヘッドの頭を殴りつけた。
運転手を失った車は、そのままガードレールを擦り、信号機の柱に激突して止まった。
衝撃で、羅夢とスキンヘッドが後方に飛ばされる。
「オラ!!」
羅夢は、スキンヘッドを抱えたまま、歩道橋の通路に降り立った。
「く、くそったれ…!!は、早く、携帯を…」
パンチパーマは、車の床に落ちた携帯電話を拾い上げる。
その時、分銅のついた鎖が、パンチパーマの額を直撃した。
「ぐえ!!」
パンチパーマは、後ろに仰け反った。
しかしその分銅は、鋼鉄ではなく、硬質ゴムでできている。
パンチパーマは、気を失っただけに留まった。
745投稿者:リリー  投稿日:2008年02月26日(火)21時17分19秒
「く…!な、何だってんだ!!このガキども!!」
サングラスは車外に出ると、拳銃を、今は停車しているワゴンに向けて構える。
狙いは、後部座席にいる、ボウガンを構える少女…エリー。
引き金を引く…直前に、黒い矢が、銃口に突き刺さった。
火花と同時に、粉々に弾け飛ぶ拳銃。
「ぐわあ!!」
サングラスは、そのまま後方に倒れ、アスファルトに頭を打って気絶した。
3人の少女達は、大破したベンツの側に集まる。
一分以内どころか…僅か20秒の出来事だった。
中村有沙は、車内で気を失っているパンチパーマの手中にある携帯電話を取り上げた。
画面を確認する。
送信前のメールが表示されていた。
『計画がバレている。即刻中止しろ』
「…やはりな…。あの、なすびがヤバイ…」
「でも、送信前に止められてよかったね」
エリーが胸を撫で下ろした。
「いや…。そうゆっくりとはしていられないぞ…」
中村有沙は、ワゴン車に向かって走り出した。
エリーと羅夢も、それに続く。
746投稿者:リリー  投稿日:2008年02月26日(火)21時19分19秒
今日は、これでおちます
明日は、Aチームです
747投稿者:リリー  投稿日:2008年02月26日(火)21時47分15秒
735さん、ありがとうございます
久しぶりに、ありりんを見ることができました
大人っぽくなりましたね
少しふっくらしたような気がします
748投稿者:117  投稿日:2008年02月26日(火)22時03分37秒
Bチームの鮮やかな活躍(笑)。計画が少しバレているようで。
Aチームがどう活躍するのか、明日も楽しみです!
749投稿者:あげ  投稿日:2008年02月26日(火)22時45分07秒

750投稿者:ありりんのトラックスーツ  投稿日:2008年02月26日(火)22時57分43秒
UWFカラー
751投稿者:エリーと羅夢のアクション  投稿日:2008年02月27日(水)09時02分57秒
やっぱりカッコいい!!

それにしてもリリーさんが占いできたなんて。
是非リリーさんのレトルト(じゃなかったら失礼;)占い受けてみたいです。
752投稿者:あげ  投稿日:2008年02月27日(水)17時39分02秒

753投稿者:age  投稿日:2008年02月27日(水)17時53分22秒

754投稿者:リリー  投稿日:2008年02月27日(水)21時02分36秒
寛平さんのレトルト・タロット占いは、小説用に簡略化して捜索したものです
私は、ケルト十字法と言う、過去・現在・未来を複合して見る方法を使います
最近、やってませんので、やり方がうろ覚えですが…

トラックスーツの色は、その戦士が着てた衣装のカラーリングで決めてます

今日は、Aチームの活躍です

では、更新します
755投稿者:リリー  投稿日:2008年02月27日(水)21時03分43秒
ホテル『アンダー・キャッスル』を、雑居ビルの陰から見張る、梨生奈、七海、エマの『Aチーム』。
ホストと女性客がフロントの浜津から鍵を受け取り、拉致を実行してから、浜津を保護する手筈になっている。
しかし、そのホスト達が乗るバンを、加藤組の者達が護衛するように着いてきている、という話しだ。
と、なると、そのヤクザ達を相手に一戦交えることになる可能性がある。
七海は、武者震いした。
愛美のことを考えれば、リスクを冒さず浜津を守ることが一番いい。
しかし、自分は根っからの戦闘要員…。
血が騒がずにはいられなかった。
梨生奈の携帯が揺れた。
送信主は、『ビー・アタック』…エリーだ。
「はい、『ムーン・ライト』…。………そう…で、どれくらいで、ここまで来れる?………わかった。でも、できるだけ早くお願い。状況によっては、こっちも戦闘になるから…」
梨生奈は携帯を切ると、七海とエマに向けて、通信内容を伝える。
「『Bチーム』が、尾行してきた加藤組の組員をやっつけたって。今、大急ぎでこちらに向かってる。こっちは、手筈通り、やつ等が拉致を実行したら動き出すわよ」
エマは、ボウガンに鉄球を設置しながら言う。
「でもさ、もし、『Bチーム』が間に合わなかったらどうするの?」
「その時は…仕方がないから、私達で浜津さんの保護と、拉致実行犯の確保の両方をやらなきゃならないわね」
「なすびの保護は、梨生奈がやれや。拉致実行犯の方は、ウチとエマがやる」
「七海…誰が何をするのか…決定するのは、私よ?」
梨生奈は、厳しい目を七海に向ける。
756投稿者:リリー  投稿日:2008年02月27日(水)21時04分25秒
エマは、再び梨生奈に問う。
「でもさ、加藤組も着いてきてるでしょ?その加藤組の相手もしなきゃならないかもしれないよね?」
梨生奈は、溜息をつく。
「その時は…浜津さんの保護は私…。拉致実行犯の確保は七海…。加藤組の相手はエマ…。こうしましょ」
「うわ…!私一人で、ヤクザの相手?」
「加藤組の方は、近づけさせなきゃいい。つまり、遠方から狙撃して、やつ等を牽制して」
「それはいいけどさ…球は12球しかないよ」
「無駄球は、極力抑えてね。そもそも、どんな状況でも臨機応変に対応できるよう、ダーさんがこのチームを編成してくれたんだから…絶対に上手くいく!!」
梨生奈は、力強く言った。
昼間の、寛平の占いを引き摺っている様子はないようだ…。
七海は、少し安心した。
757投稿者:リリー  投稿日:2008年02月27日(水)21時04分49秒
そうこうしているうちに、黒いバンが、ホテル前に到着した。
「来た…!加藤組は…?」
「ベンツが、10メートル程後ろで停まっている…!おそらく、あれがそうだね!」
「…!降りてきたで!!」
派手なシャツを着た男、黒いスーツを身につけた男…堅気の者とは思えない輩が4名…ベンツから降り、バンの方を窺っている。
「どないしょ…?ウチらが、なすびの所に行くんは、ヤバない?」
「………。こちらから電話して、浜津さんに、裏口から出てってもらおう…」
ホストが女性客と共に、ホテルに入る。
今、普段通りのやりとりをしているはずだ。
「エマ…。あなたは加藤組の動きを見張ってて…」
「うん…」
「七海…。あなたは、701号室の様子を聞いていて…」
「わかってる…」
701号室には、盗聴器が仕掛けられている。
そこで、拉致が行われたと確認した瞬間、『Aチーム』は、浜津の保護に移る。
しかし、その拉致実行犯を捕らえる役目の『Bチーム』が、まだ到着していない。
758投稿者:リリー  投稿日:2008年02月27日(水)21時05分16秒
加藤組の様子を窺っていたエマが、声をかける。
「やつ等…携帯で話してる…」
「エマ、読唇術で読んでみて」
梨生奈は、双眼鏡をエマに渡す。
「ここからじゃ、角度が悪くてわかりにくいな…」
すると、梨生奈の携帯が震えた。
浜津からだ。
「もしもし…。浜津さん?」
〔た、探偵さん…。やつ等、今、701号室に入りました。は、早く来て頂けませんか?〕
梨生奈は、トランシーバーで盗聴をしている七海の方を向く。
七海は、首を横に振る。
「アカン…。まだ、拉致はしてへん…」
「浜津さん、もう少し辛抱して下さい」
〔で、でも…〕
その時、エマが声を上げた。
「梨生奈…!!加藤組が動き出した!!」
759投稿者:リリー  投稿日:2008年02月27日(水)21時05分38秒
加藤組のヤクザ達は、運転手を一人車内に残し、3人がホテルに向かう。
「浜津さん…!今…」
梨生奈はそう言いかけて、やめた。
加藤組の者達がそちらに向かっていると伝えた途端、浜津は恐怖のあまり逃げ出すだろう。
そうしたら、計画が成り立たなくなる。
〔え?ど、どうしたんですか?〕
「いえ…。何でもありません。ただ、携帯電話は、そのまま通話状態にしておいて下さい」
〔は、はぁ?ど、どういうことですか?〕
「たいしたことではありません。一般のお客さんが向かってるんです」
ヤクザ達は、ホテル内に入った。
梨生奈は、注意深く、携帯の声に耳を傾ける。
〔おう…!浜津!お勤めご苦労だな…〕
〔あ…!う…!こ、これは…ど、どうも…〕
〔どうしたんだ…?随分、顔色が悪いじゃねぇか…〕
〔い、いえ…ちょっと、お腹の調子が悪くて…〕
〔ふ〜ん…そうか…。何か、胃が痛いことでもあんのか?〕
〔い、い、いえ…別に…〕
この浜津のうろたえ様…もう、既にヤクザ達は勘付いているだろう。
760投稿者:リリー  投稿日:2008年02月27日(水)21時06分01秒
梨生奈は、七海の方を向く。
701号室を盗聴中の七海は、まだ首を横に振る。
再び梨生奈は、携帯に耳を集中させる。
〔あのな、ちょっと事務所まで顔貸してくんねぇか?〕
〔え…?じ、事務所…?な、何でまた…?〕
〔組長が、おまえに聞きたいことがあるそうだ…〕
〔く、組長…さん…が…?〕
〔組長、待たせるんじゃねぇぞ?早く来い!!〕
〔そ、そ、そ、その前に…ト、ト、トイレに…〕
〔ああ!?トイレだぁ!?〕
〔だ、だ、だから…お、お、お腹の調子が…〕
〔別に、車ん中でクソを垂れ流しても構わねぇよ!!早く、来いや!!〕
〔た、た、助けて〜!!た、探偵さ〜ん!!!〕
浜津が携帯に向かって、あらん限りの悲鳴をあげた。
〔探偵だぁ!?おい、その携帯で、誰と話してんだ!!〕
梨生奈が叫んだ。
「仕方がない!!行くよ!!エマ!!」
「OK!!」
エマは、ホテルの入り口、黒いガラス扉に向けて、ボウガンで鉄球を発射した。
761投稿者:リリー  投稿日:2008年02月27日(水)21時06分47秒
エマの発射した鉄球は、入り口のガラスの自動ドアを粉々に粉砕した。
〔げ…!な、何だ!?こりゃ…!!〕
携帯のヤクザの声が、慌てふためいている。
梨生奈は携帯を切ると、両手でトンファーを構え、ホテルに向かって突撃する。
七海もそれに続く。
ホテル内に飛び込む、梨生奈と七海。
「な、なんだ!?てめぇ等!!」
ヤクザが、怒鳴り声をあげる。
「はあああ〜〜〜!!!」
梨生奈はトンファーを、2人のヤクザの身体に連続で叩き込む。
声もなく、崩れ落ちる2人のヤクザ。
「ゴルアァァァ〜〜〜!!!」
七海は、残る一人を、金属バットで思いっきりかっ飛ばした。
「ぎええええ!!!」
七海に殴られたヤクザは、ホテル外まで吹っ飛ばされた。
「うおっと!!」
エマは、飛んで来たヤクザを避けると、最後にホテル内に入った。
762投稿者:リリー  投稿日:2008年02月27日(水)21時07分41秒
「浜津さん!大丈夫ですか!?」
「た、た、探偵さ〜〜〜ん!!」
浜津は泣き叫びながら、梨生奈に抱きついた。
「ちょ、ちょっと!!浜津さん!!」
梨生奈は、露骨に嫌な顔をして背ける。
「コラ!!お触り厳禁や!!」
七海は、浜津の頭をバットで小突いた。
「と、とにかく、安全な場所に逃げましょう!!七海!エマ!あなた達は、拉致実行犯の方を…」
梨生奈がそう言いかけた時、ベンツが数台、ホテルの前に急ブレーキをかけて停まった。
「…え?」
そこに、ワラワラと降りてくる10人以上のヤクザ達…。
「ちょ、ちょっと…何…?」
「ホ、ホテルの近くに…こ、こんなに潜んでたの!?」
「ケケ…!!おもろいやんけ!!」
七海は、金属バットを構え、ヤクザ達に向かっていく。
763投稿者:リリー  投稿日:2008年02月27日(水)21時09分44秒
次回から、なすびの保護、拉致実行犯の捕獲、ヤクザと戦闘…の、3つを同時進行しなければならない、Aチームの活躍(苦労?)を、描いていきます

では、今日はこれでおちます
764投稿者:117  投稿日:2008年02月27日(水)21時38分08秒
あらら、なすびさんやっちゃいましたね(苦笑)。
まさにAチームは一難去って、また一難ですね(笑)。続きも楽しみです!
765投稿者:あげ  投稿日:2008年02月27日(水)21時49分39秒

766投稿者:緊迫感  投稿日:2008年02月27日(水)23時58分10秒
アリですな
767投稿者:コラ!!お触り厳禁や!!  投稿日:2008年02月28日(木)19時30分05秒
ワロタ
768投稿者:リリー  投稿日:2008年02月28日(木)20時48分41秒

なすびさんに、悪気はないんですけどね

では、更新します
769投稿者:リリー  投稿日:2008年02月28日(木)20時49分43秒
しかし、それを梨生奈が止めた。
「ダメよ!!あなたは、盗聴を続けて!!」
「せやけど、このままでは、逃げられんで!?」
「みんなで701号室に行くわ!!」
「701号室!?」
「701号室の窓から、隣の雑居ビルの屋上へ逃げられる!!」
そう…逃走と、拉致実行犯の確保、そしてヤクザ達との戦闘…まさに一石三鳥の戦術…。
しかも、3人が分断されないで戦える。
梨生奈の頭の回転の早さは、相当なものだ。
「『キャンディー・ボール』!!」
梨生奈は、エマをコードネームで呼ぶ。
そう、敵を目の前にしたら、もう本名で呼ばないのが『R&G探偵社』の決まりだ。
それは、身元をわからなくする為…盗聴を警戒して、電話等の通信もコードネームで呼び合っているのと同じ理由だ。
「わかってる!!」
エマは、天窓に向かって鉄球を発射した。
ガラスの破片が、ヤクザ達に降り注ぐ。
「うわ!!」
ヤクザ達は、頭を抱えてしゃがみ込んだ。
770投稿者:リリー  投稿日:2008年02月28日(木)20時50分03秒
「今のうちや!!」
七海は、エレベーターに乗り込んだ。
「ダメ!!階段で行くの!!」
「階段!?」
「もし、7階で待ち伏せされて、エレベーター内に入ってこられたら、近距離の私はともかく、『キャンデイー・ボール』や『キラー・タイガー』は戦えないでしょ?」
「ウチ?戦えるよ!!」
「こんな狭い中で、バットなんて振り回せないでしょ!?」
「で、でもさ…私達はともかく、浜津さんはそんなに早く階段を駆け昇れないよ?」
エマもそう言いながら、エレベーターに乗り込んだ。
「早く昇る必要はないの!!時々追い着かれながら、昇るのよ!」
「何で?」
「途中で戦えば、ヤクザの数を減らせるし、やつ等の拉致実行までの時間稼ぎができるでしょ!?」
「そ、そうか…!やっぱり、『ムーン・ライト』、頭が良い!!」
「先頭は私、次は浜津さん、『キラー・タイガー』は三番目、しんがりは『キャンデイー・ボール』!!ボウガンでやつ等を牽制しながら昇るのよ?追い着かれたら、『キラー・タイガー』が戦って!!」
4人は、階段を駆け上がった。
771投稿者:リリー  投稿日:2008年02月28日(木)20時50分30秒
「ひぃ、ひぃ、ふぅ…」
既に浜津の息は、切れ始めている。
「こら!おっさん!早く昇らんかい!!」
七海が怒鳴る。
「で、で、でも…そ、そ、そんなに早く、昇る必要はないって…」
「いくら何でも遅すぎや!!はよ、昇れ!!」
七海は、浜津の尻を、バットで殴った。
「い、痛い!!」
すると、下から複数の足音と、ヤクザの怒号が聞こえてきた。
「き、来たで!!」
「『キャンデイー・ボール』、お願い!」
エマは、一人踊り場に残り、ボウガンを構える。
先頭のヤクザが、姿を現した。
エマは、鉄球を発射する。
ヤクザの膝に、鉄球は命中した。
「ぎゃああああ!!!」
ヤクザは、悲鳴をあげ、階段を転げ落ちた。
死角になって見えないが、後方のヤクザ達を巻き添えにしたようだ。
772投稿者:リリー  投稿日:2008年02月28日(木)20時50分58秒
どうやらヤクザ達は、エマのボウガンに慎重になっているようだ。
なかなか追い着いて来ない。
その間、なんとか距離を稼いでおきたかったが、如何せん、浜津の体力がなさ過ぎる。
さすがの梨生奈も、これは計算外だった。
すると、追い駆けるヤクザの足音が止まった。
「うん?」
ボウガンを構えるエマは、不思議に思う。
その直後、銃声が響き、階段の照明を粉々に砕いた。
「ひえええ!!!」
浜津は階段の上で、しゃがみ込んだ。
「は、浜津さん!立って!!」
梨生奈は、浜津の腕を掴んで、無理矢理立たせる。
「ち、畜生!!」
エマは、鉄球を発射した。
「『キャンデイー・ボール』!!無駄球は…」
梨生奈が言いかけたが遅かった。
発射された鉄球が、壁に食い込んだ途端、ヤクザは階段を一気に駆け上がって来た。
773投稿者:リリー  投稿日:2008年02月28日(木)20時51分30秒
「げ…!しまった!!」
エマの弱点…それは鉄球を連射できないこと…そして、近距離では戦いようがない…と、言う事…。
「そん時の為に、ウチがおんねん!!」
七海は、階段から踊り場に飛び降りる。
「ゴルァ!!」
七海は、金属バットでヤクザの脛を、思いっきり叩いた。
「ぐあああ!!!」
狭い踊り場で、ヤクザはのたうちまわる。
「いくら『踊り場』言うても、本当に踊んなや!!」
七海は、そのヤクザを蹴っ飛ばして階段から落とした。
「このガキ!!」
二番手のヤクザが、七海に掴みかかる。
「触んな!!」
金属バットの先で、七海はみぞおちを突いた。
「うぐ…!」
顔面蒼白になって、ヤクザは階段を這いつくばる。
774投稿者:リリー  投稿日:2008年02月28日(木)20時52分04秒
その時、階段下の三番手のヤクザが、七海に対し、拳銃を構えていた。
「げ…!しもた!!」
そこに、そのヤクザの肩に、鉄球が命中した。
「ぎゃああ!!」
ヤクザは天井に発砲すると、階段を転げ落ちた。
「そういう時の為に、私がいるんだよねぇ」
エマは、笑顔を七海に向けた。
「ふん!今ので貸し借り無しやで!!」
そう言いながらも、七海とエマはハイタッチを交わし、階段を駆け登った。
「『キラー・タイガー』!!701号室の様子は!?」
梨生奈が、階段上から訊ねた。
「お…忘れとった…!」
七海は、トランシーバーに耳を傾ける。
「まだ、拉致はしてへん!のんびり、女を口説いてるわ…。ん?今、部屋に入って来たヤツ等がおるで!?」
「誰!?もしかして…『元帥』って呼ばれてない?」
「『元帥』…?ちゃうで。『大佐』って呼ばれとるわ」
「『大佐』…?ヤツじゃないの…?」
梨生奈は、不可解に思いながらも階段を駆け昇った。
775投稿者:リリー  投稿日:2008年02月28日(木)20時52分58秒
七海は、トランシーバーで盗聴を続ける。
どうやら、室内にいるのは、ホストと女性客、『大佐』と呼ばれる男と、他2人…計、5人のようだ。
〔おい!『軍曹』!早く、その女をさらっちまうぞ!!〕
〔え、『大佐』…な、何があったんですか?〕
〔今、加藤組の組員に会って、変なやつ等が俺達の計画の邪魔をしてるらしい!〕
〔え…!?け、警察ですか!?〕
〔い、いや…なんか、小さい、女のガキだって言う話しだ…〕
〔お、女のガキ…?一体、何すか?〕
〔知らねぇよ!!何でも、すげぇ、手強いらしい!!おい、てめぇ等!!早くしろ!〕
〔ちょ、ちょっと!や、やめて下さい!!〕
女性客の悲鳴…。
七海は、上を行く梨生奈に向かって叫ぶ。
「きた!!やりよったで!!やつ等!!そして…ウチ等のことも、知られた!!」
「わかった!!もう、七階よ!!やつ等を捕まえる!!」
梨生奈は、半ば強引に浜津を引き摺りながら階段を昇ると、七階の部屋の通路に出た。
776投稿者:リリー  投稿日:2008年02月28日(木)20時53分20秒
今日は、これでおちます
777投稿者:117  投稿日:2008年02月28日(木)22時14分37秒
Aチームの鮮やかな激闘、すごくカッコイイです!
次は拉致事件の方へ・・・チームAの活躍が楽しみです!
778投稿者:連携プレー  投稿日:2008年02月29日(金)00時22分35秒
かっこいい!
779投稿者:かっこいいなー  投稿日:2008年02月29日(金)01時49分46秒
映画みたい
780投稿者:>いくら『踊り場』言うても、本当に踊んなや!!  投稿日:2008年02月29日(金)08時44分28秒
七海よく「踊り場」って言い方知ってたね(笑)
781投稿者:テキパキ指示する梨生奈がカッコいい  投稿日:2008年02月29日(金)18時07分45秒
しかしだからこそ、らりるれろで千秋に初恋をして、その千秋を人質に取られた時、ヒロごときに苦戦して泣きべそをかいていた梨生奈は弱くなったんだな・・・と思う
782投稿者:金曜日は帰れない、と  投稿日:2008年02月29日(金)22時00分18秒
 
783投稿者:リリー  投稿日:2008年02月29日(金)22時35分52秒
すみません、今帰りました
最近、金曜日は遅くなりがちです

117さん、「777」のレス、おめでとうございます
そう言えば、何番から過去ログに行くんでしょうかね?

そうですね
『らりるれろ』の梨生奈は8月の梨生奈ですから、まだ恋を知りません
映画みたい…とは、嬉しいお言葉です
「踊り場」も、何で、「踊り場」って言うんでしょうかね?
「踊り場」で踊ったら、先生から怒られそうなのに…

では、更新します
784投稿者:リリー  投稿日:2008年02月29日(金)22時36分37秒
「…!?」
梨生奈の目の前にいたのは…2人の加藤組の組員だった。
どうやら、エレベーターで先回りをしたらしい。
「お!?こ、こいつ等だ!!」
「撃て!!浜津には当てるなよ!?」
2人のヤクザは、梨生奈に向かって拳銃を構える。
「浜津さん!!この陰に隠れて!!」
梨生奈は、非常扉の陰に、浜津を突き飛ばすと、トンファーを構えて、低い体勢で走り出す。
「こ、このガキ!!」
ヤクザは発砲するが、梨生奈には当たらない。
「はあああ!!!」
梨生奈は、床スレスレに横回転すると、そのままヤクザ達を打ち払った。
羅夢と梨生奈、『チームR』の必殺技、『AVEX』の一人バージョンだ。
「ぎゃああああ!!!」
まるで、竜巻に巻き込まれたかのように、2人のヤクザは回転しながら舞い上がり、床に叩きつけられた。
785投稿者:リリー  投稿日:2008年02月29日(金)22時37分37秒
「お!?『ムーン・ライト』!!平気か!?」
七海も七階に駆け上がって来た。
「『キラー・タイガー』!!行くよ!!今なら、間に合う!!」
その時、キンコ〜ンとエレベーターのチャイムが鳴った。
「…!!ま、また!?」
エレベータのドアが開くと、3人のヤクザがなだれ出て来た。
「はあああ〜〜〜!!!」
梨生奈は、エレベーター前まで滑り込むと、一番前にいるヤクザの脛を打ち払った。
「があああ!!!」
悲鳴を上げて、崩れ落ちるヤクザ。どうやら、足がへし折れたようだ。
「て、てめぇ、コノ…」
残りのヤクザが2人、床の上に寝転がっている梨生奈に向けて、拳銃を構える。
「はぁ!!」
梨生奈は、素早く跳ね起きると、2人の拳銃を、トンファーで下から上へ打ち払う。
右のトンファーをクルリと回して、片方のヤクザの脳天を殴打、そして再びクルリと回して、顎を打ち抜く。
大量の血を口から噴き出し、片方のヤクザは、エレベーター内で仰向けに倒れた。
786投稿者:リリー  投稿日:2008年02月29日(金)22時38分19秒
「こいつ…!」
一人残されたヤクザは、懐から、小さなデリンジャー式の拳銃を取り出して、梨生奈に向ける。
「く…!」
梨生奈は、そのヤクザに体当たりをして、エレベーター内に押し込む。
ヤクザは、梨生奈に拳銃を向けるが、何とかトンファーでその腕を外へ向ける。
「『ムーン・ライト』!!」
七海が、エレベーターに向かって走った。
「私には構わないで!!早く、701号室に!!」
「わ、わかった!!」
その時、足を折られたヤクザが、拳銃をエレベーター内の梨生奈に向けていた。
「ゴルァ!!」
七海は、通り過ぎざま、そのヤクザの頭をバットで殴る。
ヤクザは、そのままバッタリと床に伏せて気絶した。
その瞬間、横目でエレベーター内を見る、七海。
エレベーター内では、梨生奈がヤクザと格闘している。
力強く、頷く梨生奈。
七海は、そのまま駆け抜けると、701号室へ向かう。
787投稿者:リリー  投稿日:2008年02月29日(金)22時39分05秒
エレベーター内では、梨生奈とヤクザの格闘が続く。
身体能力は高くても、腕力は大人の男には敵わない。
ヤクザの腕は、梨生奈の細い首を、後ろから容赦なく締め付ける。
「う…!ぐぅぅぅ…」
デリンジャーの銃口が、こちらに向く。
「うぐ!!」
梨生奈は、右手のトンファーを放すと、その腕を掴んで、銃口を下に向ける。
しかし、その銃口の先は、さっき梨生奈が気絶させて口から血を吐き出しているヤクザが横たわっている…!
「い、いけない!!」
人が死んではいけない!!
これも、『R&G探偵社』のルール…いや、『表の世界』のルールだ。
咄嗟にヤクザの腕を上に向ける。
銃が、発砲された。
エレベーターの照明板が砕け落ちた。
788投稿者:リリー  投稿日:2008年02月29日(金)22時39分51秒
「おお!?」
ヤクザの締め付ける力が、一瞬緩んだ。
「はあ!!」
梨生奈は、左のトンファーで、ヤクザの膝を打つ。
「ぐわ!!」
ヤクザは、激痛で梨生奈を放した。
梨生奈は、そのまま床に落ちた右のトンファーを拾うと、それでヤクザの腹を思いっきり突いた。
「ぐええええ…!!」
ヤクザは、胃液を吐きながら、床に膝を着く。
梨生奈は、エレベーターから廊下に出ると、トンファーの先で上へ行くボタンを押す。
ドアが閉まり始める。
エレベーター内のヤクザは、恨めしそうに梨生奈を睨む。
しかし、そのままドアが閉まり、エレベーターはヤクザを上の階へと送って行った。
「『ムーン・ライト』!大丈夫?」
ようやく、エマが7階まで上がって来た
「わ、私は大丈夫…!それよりも早く、701号室に…!『キラー・タイガー』が向かってる!私は、浜津さんの保護を…」
「わかった!!」
エマは、そのまま701号室へ向かう。
789投稿者:リリー  投稿日:2008年02月29日(金)22時40分54秒
七海は、701号室のドアの前まで辿り着いた。
案の定、インロックされている。
「ゴルァ!!」
金属バットで、ドアノブを叩き壊した。
そして、体当たりをして室内に転げながら入る。
今、まさに…ホスト達が、暴れる女性客を抱えて、窓から隣の雑居ビルの屋上に移る所だった。
「くぉの!!させるかい!!」
七海は、窓に駆け寄ろうとした。
「『上等兵』!!やれ!!」
『大佐』と呼ばれた男の声。
(やれ?やれってなんや?)
『上等兵』と呼ばれたホストは、拳銃を構えている。
「う、うお!?」
七海は、咄嗟に部屋を出た。
銃は発砲される。
七海は、入り口側の壁に身を寄せて、室内に入ることができない。
790投稿者:リリー  投稿日:2008年02月29日(金)22時41分42秒
そこに、遥か七階の端に、エマの姿を確認する。
「『キャンディー・ボール』!!例のコンビネーションや!!」
七海は、叫んだ。
「OK!!」
エマは立ち止まると、肩膝を床に着け、ボウガンの狙いを、七海に向ける。
七海は、バットを構えている。
「ボン・ヴォヤージュ!!」
掛け声と共に、エマは、鉄球を発射する。
「ヨー・ソー、ロー!!」
七海は、「チャー・シュー・メン」と同じタイミングで、飛んで来た鉄球を、金属バットで直角に打ち返した。
鉄球は、室内へ…。
「ぐぎゃああ!!」
悲鳴が聞こえた。
七海は室内に入る。
『上等兵』が、脇腹を押さえて呻いている。
「ケケ!!肋骨、イってもうたかな?」
そう…これがエマと七海のコンビネーション・スキルである。
遠くまで飛ばせるが、直線的な攻撃しかできないエマのボウガンを、七海が中継点として、様々な角度へ打ち返す。
お互いの弱点をカヴァー…プラス・マイナスゼロにする…その名も『ヴォヤージュ±』。
791投稿者:リリー  投稿日:2008年02月29日(金)22時43分35秒
それでは、今日はこれでおちます
792投稿者:アマノガワ  投稿日:2008年02月29日(金)22時50分58秒
ヴォヤージュ±、懐かしいですねー
プラズマ回遊はかなり好きなMTKですね
ヨーソーロー、当時は意味が分からなかったものです…
ともあれ、エマと七海のコンビネーションには驚きました
拳銃相手に一歩も引かない梨生奈も素敵ですがw
793投稿者:117  投稿日:2008年02月29日(金)23時00分43秒
おぉ、気がつけば,777でしたね(笑)。過去ログに行かないのが奇跡ですよね。
大活躍の「チームA」、ホント鮮やかです。「ヴォヤージュ±」、懐かしいです。
794投稿者:ボン・ヴォヤージュ  投稿日:2008年03月01日(土)11時38分12秒
良い旅を・・・という意味
795投稿者:あげ  投稿日:2008年03月01日(土)16時09分52秒

796投稿者:リリー  投稿日:2008年03月01日(土)20時51分08秒
ヴォヤージュも、プラズマ回遊も、七海は関係ないんですが…エマもいることですし、いいかな、と思いました

では、更新します
797投稿者:リリー  投稿日:2008年03月01日(土)20時52分59秒
七海は、そのまま窓に駆け寄った。
すると、窓ガラスが粉々に砕けた。
「うぉっと!!」
今度は、窓の縁に身を寄せる七海。
隣の雑居ビルの屋上から、こちらに向けて発砲してきている。
ホストの下っ端が、女性客を連れ去るまでの時間稼ぎをしているようだ。
七海は、さっき打った鉄球が、足下に転がっているのに気がつく。
それを、咄嗟に拾い上げる。
天井を見ると、鏡張りになっている。
七海は、ノックをするように、天井に向けて鉄球を打ち込んだ。
鏡が、割れながら、下に落ちる。
大きな鏡の破片で、発砲してくるホストの位置を確認する。
そこに、エマが部屋の入り口に着く。
「『キャンディー・ボール』!!もう、1回!!」
エマは、ボウガンを七海に向ける。
「ボン・ヴォヤージュ!!」
掛け声と共に、エマは、再び鉄球を発射する。
「ヨー・ソー、ロー!!」
その鉄球を、窓の外へ打ち返す七海。
798投稿者:リリー  投稿日:2008年03月01日(土)20時53分47秒
「ぐああああ!!!」
窓の外から、悲鳴があがる。
「行くで!!」
七海とエマは、窓から隣のビルの屋上へ、飛び移った。
しかし、もう既に屋上には、激痛に膝を抱えてのたうち回るホスト以外、誰もいなかった。
「く…!!エレベーターで、下に行きよった!!」
「『キラー・タイガー』!!外の階段で追おう!!」
「おう!!」
七海とエマは、外に設置されている階段に向かう。
その階段は、錆びた螺旋階段で、先週の下見の段階で、命令違反を犯した七海が利用したものだ。
この前は、三階の高さから七海は飛び降りたが、膝への衝撃を考えれば、四階から飛び降りても大丈夫そうだ。
七海は、四階の高さで飛び降りようとする。
「げ!!『キラー・タイガー』!!マジ?」
後ろでエマが叫んだ。
「『キャンディー・ボール』!!あんたは無理せんどき!!」
エマは、両肩に金属ケースに収まった鉄球を何球か背負っている。
高所から飛び降りたら、膝への負荷は、窺い知れない。
半年前の、『中村有沙捕獲作戦』でも、鉄球をいくつかぶら提げたまま、マンションの屋上から、5メートル程飛び降りたことがある。
やはり、膝を痛め、思うように走れなかった。
金属バット一本で身軽な七海は、そのまま飛び降りた。
799投稿者:リリー  投稿日:2008年03月01日(土)20時54分42秒
七海は、地面に降り立つ。
「う…!」
少し、足が痺れた。
しばらく、足を前に踏み出せない。
目測を誤ったか…これでは、三階から飛び降りた方が速かったくらいだ。
「オノレ!!何の、これしきぃ!!」
七海は、何とか立ち上がった。
カーブミラーに、黒いバンが映る。
今まさに、『軍曹』と呼ばれた、店から来ているホストが、女性客を押し込もうとする所だ。
位置が確認できる。
「『キャンディー・ボール』!!もう一度、『ヴォヤージュ±』や!!」
七海は、螺旋階段の上のエマに呼びかけた。
「こ、この位置から撃つの!?大丈夫!?」
「ウチを誰や、思うとんねん!!」
「わかった!!」
エマは、階段の上から、七海に向けて、ボウガンを構える。
800投稿者:リリー  投稿日:2008年03月01日(土)20時56分28秒
「ボン・ヴォヤージュ!!」
「ヨー・ソー、ロー!!」
七海は、斜め上から撃ち込まれた鉄球を、体勢を崩しながらも、かっ飛ばした。
今、車に乗り込もうとした『軍曹』の肩に、鉄球が命中する。
「ぎゃあ!!」
『軍曹』は、前のめりでアスファルトに倒れた。
黒いバンは、『軍曹』を置き去りに出発してしまう。
「あ!てめぇ、『二等兵』!!ふざけんな!!」
『軍曹』の怒号も虚しく、バンは走り去った。
「不味い!!」
七海は車を追い駆ける。
まだ、足が痺れている。
七海が、カーブミラーの角を曲がる。
黒いバンは、10メートル程先を走っている。
801投稿者:リリー  投稿日:2008年03月01日(土)20時56分50秒
足が痺れてなければ、追い着けるのだが…。
いや、エマならば、直線上に標的がいるので、『ヴォヤージュ±』を使うまでもなく、仕留められるのだが…。
七海は、倒れている『軍曹』の側の、ピンクの鉄球に気がつく。
「そ、そうや!!これをバットで打って、飛ばしたれ!!」
しかし、飛ばす物は鉄球…ボウガンから発射された鉄球を打つ、『ヴォヤージュ±』とは違い、ノックで飛ばさなければいけない。
射程距離はギリギリだ。
一刻も早く、行動に移さねば…!!
『軍曹』の側まで駆け寄り、ピンクの鉄球を掴む。
しかし、その手を掴む者がいる。
『軍曹』だ。
「こ、このクソガキ!!てめぇ等が…」
「やかましい!!」
七海は、バットで『軍曹』の頭を殴って気絶させた。
標的に視線を戻す。
バンのウィンカーは、左に点滅している。
これから、左折をするのだ。
802投稿者:リリー  投稿日:2008年03月01日(土)20時57分23秒
「し、しもた!!」
七海は、慌ててノックの体勢をとる。
しかし、黒いバンは、左折をしてしまった。
「ち…ちぃ…!!」
足の痺れなど構わず、七海は走り出した。
今から走っても、間に合わないかもしれない…!
「チビアリ達、『Bチーム』は、何しとんねん!!役立たずがぁぁぁ〜〜〜!!!」
七海は叫んだ。
その時、凄まじい衝突音とともに、黒いバンが押し戻された。
前面に、白いワゴンが食い込んでいる。
「あ…!あの車…!!」
中村有沙達、『Bチーム』だ。
今、やっと現場に到着したのだ。
803投稿者:リリー  投稿日:2008年03月01日(土)20時57分46秒
黒いバンから、『二等兵』が転がり出てきた。
そこに、白いワゴンから、羅夢が飛び出す。
「オラ、オラ、オラ、オラ〜〜〜!!!」
『二等兵』は、羅夢にヌンチャクで滅多打ちにされて、その場で敢え無く倒れた。
エリーが黒いバンに乗り込み、女性客の安全を確認する。
最後に、運転席から中村有沙がゆっくりと降りてくる。
そして、七海に気がつく。
「お?『キラー・タイガー』か?何をやっている?」
七海の頭に、一気に血が昇る。
「それはコッチのセリフや!!オノレ等、遅いねん!!何してたんや!!」
「間に合ったのだから、いいだろう?」
中村有沙に、悪びれる様子は一切ない。
804投稿者:リリー  投稿日:2008年03月01日(土)20時58分06秒
今日は、これでおちます
805投稿者:117  投稿日:2008年03月01日(土)22時42分07秒
鉄球をバットで打とうとするとは・・・七海も、すごいですね(笑)。
どうにか「チームB」の強引な攻撃で拉致は食い止めることができましたか。
続きも楽しみです!
806投稿者:Bチーム  投稿日:2008年03月01日(土)23時50分25秒
おいしいとこ取りだなw
807投稿者:つまり  投稿日:2008年03月02日(日)01時28分18秒
ホテルの外→ホテルロビー→階段→七階→701号室→隣ビル屋上→螺旋階段→ホテル外・・・上がって、戦って、降りて、戦って・・・Aチームご苦労様・・・
808投稿者:デジ  投稿日:2008年03月02日(日)03時45分09秒
お久しぶりです
ついに800突入ですね!
チームBジャストタイミングでしたね
何回引っかかっても攻撃をひるまない七海の根性もすごいですね!
続きも楽しみです!
809投稿者:AB合流  投稿日:2008年03月02日(日)09時36分46秒
さぁここからどうなる?!
810投稿者:アクションかっけー  投稿日:2008年03月02日(日)12時51分28秒
続き楽しみすぎる
811投稿者:リリー  投稿日:2008年03月02日(日)20時54分07秒
デジさん、お久しぶりです
まだ第一試合(第一話)が終わってないのに、1000を越えそうです
改めて、この物語が壮大なものになっていくのだなぁ、と感じます

117さんも、毎回のコメント、本当に力になります

アクションシーンは、書いてて楽しいです
とりあえず、六回裏…加藤組との戦いは今日で終わりますが…

では、更新します
812投稿者:リリー  投稿日:2008年03月02日(日)20時54分59秒
少し遅れてエマが到着。
そして梨生奈が、息も絶え絶えな浜津を連れて来る。
ヤクザの追撃はない。
これで、このまま浜津を車で東京湾の有明埠頭まで送れば、任務は無事終了である。
『大佐』と呼ばれたホストの姿が見えないのが気になるが、捕獲するホストは『軍曹』と『二等兵』の2人で充分である。
『R&G探偵社』から、社長の吉田とジャスミン・アレンが銀のポルシェで到着する。
「おお、お疲れさん!!6人とも、ようやったな!!」
吉田は、『Aチーム』と『Bチーム』、両方の労をねぎらった。
「8:2の割合で、ウチ等『Aチーム』が働いたんやけどな」
「んだと!?オラ!!」
七海の言葉に、また羅夢がつっかかる。
「はい、はい。やめ、やめ!」
金髪白人のジャスミン・アレンは、2人の襟首を猫の様に掴んで離した。
白いワゴンで、被害女性と『軍曹』、『二等兵』を縛り上げて積み、警察へ向かう。
しかし、未成年で無免許の中村有沙は、そのまま警察まで運転するわけにはいかない。
成人しているジャスミン・アレンに運転を交代する。
「あらら…。派手にぶつけたわね…。これ、警察につっこまれたら、面倒じゃない…」
ぶつぶつと文句を言ったジャスミンだが、そのままワゴンに乗り込み、天歳署へ出発した。
そして、浜津は社長の吉田が運転する車に乗り、有明埠頭まで連れて行かれる。
813投稿者:リリー  投稿日:2008年03月02日(日)20時55分29秒
「さ、どうぞ、浜津さん。今、当探偵社の者が、娘さんを有明埠頭まで連れて行っております。そこで、そのまま船でお逃げ下さい」
「あ、ありがとうございます!!ありがとうございます!!」
浜津は泣きながら、吉田に何度も礼を言った。
「レッドさんは、何もしてないじゃん!!」
エマは、面白くなかった。
しかし、七海は別のことを考えていた。
有明埠頭に、浜津の娘…野球部のキャプテン、伊倉愛美が向かっている…。
そして、そのままどこか、遠い所に連れて行かれる…。
「ほな、みんなはこれで解散や。お疲れやったな。明日は学校やろ?早く帰って寝えよ」
吉田はポルシェに乗り込む。
「ま、待って!!レッドさん!」
七海は、ポルシェの窓に張り付く。
「何や?どないした?七海?」
吉田は、ウィンドウを降ろす。
「ウ、ウチも!ウチも有明埠頭まで連れてって!!」
「へ?何で?」
吉田は、ポカンとした顔で、必死な形相の七海を見上げる。
814投稿者:リリー  投稿日:2008年03月02日(日)20時55分58秒
梨生奈は、ハッと気付く。
「レッドさん!私も!私も連れてって!」
「な、何や?梨生奈まで…」
そう…。これで、キャプテンの伊倉愛美とはお別れなのだ。
はっきり言って、共に練習した日はたったの5日間だった。
それでも、野球の…彼女の場合はソフトボールだったが…基本を丁寧に優しく教えてくれた。
梨生奈だって、愛美とのお別れは悲しかった。
「エマ、エリー…!あなた達はどうする?」
梨生奈は2人に問うが、2人は首を横に振る。
「今日は汗をいっぱい掻いちゃった…。早く帰ってシャワーを浴びたい…」
「それに、明日、学校だしね…」
「…そう…」
相変わらず、お互いのパートナー以外にはドライな2人である。
「あ、ありりん…」
梨生奈は、無駄だとわかっていても、一応、中村有沙に聞いてみる。
「私が行くと思っているのか?」
「…思わない…」
「だったら、そういうことだ…」
中村有沙は振り返ると、七海と梨生奈に手を振った。
815投稿者:リリー  投稿日:2008年03月02日(日)20時56分24秒
ラブホテル『アンダー・キャッスル』に到着した『元帥』こと、楠本柊生は、その惨状に絶句した。
ホテルのロビー、階段、部屋、至る所に加藤組のヤクザ達が呻き、のた打ち回っている。
「げ、『元帥』!こ、これは…」
「………やられましたねぇ…。見事に…」
楠本は、力ない笑みを浮かべる。
「もうすぐ警察が駆けつけるでしょう…。加藤組の組員の皆さんが警察に捕まったら、加藤組長に顔向けできません。はやく、事務所まで運んで差し上げて下さい」
「は、はい…!」
ホスト達は、手分けして組員を運び出す。
「ふむ…。これは何でしょう…?」
楠本は、足下に転がっているピンク色の鉄球を拾い上げる。
そこに、一人だけ逃げ延びた、今回の拉致計画の責任者、『大佐』が姿を現す。
「『元帥』…!!こ、こんなことになって…も、申し訳ありませんでした!!」
深く頭を下げる『大佐』。
「『大佐』…。あなた、今までどこへ…?」
楠本は、『大佐』の方を向くことなく訊ねる。
「え…?い、いや…その…」
「部下達を見捨て、今まで隠れていたのですか?」
「は…はい…」
「『軍曹』と『二等兵』が、連れて行かれましたよ?」
「ほ、本当に…申し訳…」
『大佐』の顔は、血の気が退いている。
816投稿者:リリー  投稿日:2008年03月02日(日)20時56分47秒
「今回は、『大佐』…あなたに、一任したはずです」
「…はい…」
「あなたは、『必ず成功させる』と約束したはずです…」
「…はい…」
「私は、『約束』を破られることが…一番嫌いです…」
「…ほ、本当に…」
「もう、謝罪は聞き飽きました」
そこで、楠本は初めて『大佐』の方を振り向いた。
「子供じゃないんだから…。謝って許されるなんて世界にいないでしょ?私達は…」
「…は、はい…」
「さてと…どうします?」
「…はい…?」
「わかりませんか?あなたは、今回の失敗をどう捉えてるのですか?」
楠本は、冷たい目で『大佐』を睨みつける。
817投稿者:リリー  投稿日:2008年03月02日(日)20時57分07秒
相変わらず、穏やかな口調だが、それが恐怖を倍増させる。
「せ…責任をとります…!」
「責任?」
「は、はい…!責任を…」
「責任をとるとは、どういう意味ですか?」
「こ、今度こそ、精一杯、任務を…」
「ありませんよ。『今度』なんて…」
その瞬間、楠本は手に持っていたピンクの鉄球で、『大佐』の顔面を殴りつけた。
「ぐ…ぐえぇぇぇぇ…!!!」
大量の血とともに、歯が数本、床に散らばった。
「…!?」
側にいたホスト達は、戦慄し、震え上がった。
「おや、おや…。これでは、商売替えを考えなければいけませんねぇ…。ククク…」
そう、含み笑いをしながら、うずくまっている『大佐』の脳天に、その鉄球を落とした。
「さてと…このふざけたマネをしてくれた可愛い仔猫ちゃん達…。どうしてくれましょうかねぇ…」
楠本は、そのまま、ホテル『アンダー・キャッスル』を後にした。

(『六回・裏』・・・終了)
818投稿者:リリー  投稿日:2008年03月02日(日)20時57分24秒
今日はこれでおちます
819投稿者:117  投稿日:2008年03月02日(日)22時16分54秒
うわぁ!軍曹、なかなか冷やかな性格ですね。今後の展開が怖いです・・・。
愛美とはお別れですか・・・次は『表』。野球部の今後が気になります。
820投稿者:やっぱ  投稿日:2008年03月02日(日)22時40分16秒
うまいなー
821投稿者:元師怖い!  投稿日:2008年03月02日(日)22時44分00秒
大佐は殺されたのかな…
822投稿者:117さん  投稿日:2008年03月02日(日)23時48分03秒
軍曹?元帥ですよね?
軍曹は、警察に捕まっちゃいましたから・・・
823投稿者:なんか・・・  投稿日:2008年03月02日(日)23時51分45秒
七海達が凄い仕返しされそうでコワイ・・・
824投稿者:「約束」か  投稿日:2008年03月02日(日)23時55分43秒
アークだな
825投稿者:824に言われた……!  投稿日:2008年03月03日(月)08時51分25秒
アークは悪魔だから後々怖い……!!
826投稿者:リリー  投稿日:2008年03月03日(月)21時12分05秒
やっぱり、楠本さん恐かったですかね…
私、怒る時に「怒鳴る」人って、優しい人だと思うんです
だって、「自分は今、怒ってるよ」って相手に教えてあげてるわけだから…
楠本さん(この小説の)みたいに、素で行動に起こす人ってメチャクチャ怖い…と、普段思ってたことを書いてみました

そして、もちろん楠本さんは、このまま黙って引き下がることはしません

では、『七回・表』更新します
827投稿者:リリー  投稿日:2008年03月03日(月)21時14分02秒
『七回・表』

≪2007年5/14(月)≫
「ふあああ〜〜〜」
大きな欠伸をしながら登校する七海の肩を、叩く者がいた。
「あ、おはようさん。愛美先輩」
振り向くことなく答える、七海。
「え?な、何でわかったの?」
伊倉愛美は、驚きの声を上げる。
「何でって…足音の歩幅と肩を叩かれた位置から、身長を割り出して…」
「え?…ええ!?」
「あ…!い、いや…!ほ、ほら!!あれ!カーブミラー!!」
七海が指差したカーブミラーには、七海と愛美の姿が、湾曲しながら映っている。
「あ、なるほどね…!」
愛美は、納得したらしく、何度も頷いた。
828投稿者:リリー  投稿日:2008年03月03日(月)21時14分18秒
「ねぇ、ななみん。そろそろ、朝練やってかない?」
「あ、朝練でっか?う〜ん…ウチ、朝は弱いんよ〜…」
「な〜に言ってんのよ!!来週から始めるから!キャプテン命令だよ!!」
愛美は、そう言いながら元気良く駆け抜けて行く。
「あ…!愛美先輩!」
「何?」
「………ソフトボール部に戻っても…野球部は、辞めんといて下さいね!」
「当たり前じゃない!」
愛美は、笑顔で答えた。
829投稿者:リリー  投稿日:2008年03月03日(月)21時15分12秒
七海は嬉しかった。
キャプテンが…伊倉愛美が、野球部に…聖テレに残ってくれたのだ。
七海は、昨夜のことを思い出す。
東京湾…有明埠頭…。
そこに、吉田の運転するポルシェが到着する。
助手席には、依頼人の浜津。
後部座席には、七海と梨生奈。
伊倉愛美との最後の別れをするために、着いてきたのだ。
しかし、直接会って別れを惜しむことはできない。
何故なら、愛美に自分達が探偵だとばれてしまうからだ。
ただ、ポルシェの車内から、愛美の姿を見送ることしかできない。
吉田のポルシェが有明埠頭に到着した時、既に愛美は待ち構えていた。
隣には、ダーブロウ有紗…。
彼女が愛美をここまで連れて来たのだ。
しかし、愛美も充分な説明を受けることなく、半ば強引に連れてこられたらしく、随分不安げな顔をしていた。
830投稿者:リリー  投稿日:2008年03月03日(月)21時15分36秒
浜津は、今は共に住んでいない娘と久しぶりに対面する。
七海達は、車内で地獄耳を立てて、親子の会話を聞いている。
「イヤ!!私、お父ちゃんなんかと、行かないよ!!」
愛美は、キッパリと断った。
「ええ?」
浜津は、心底悲しげな声を上げる。
「何でお父ちゃんは、私の気持ちを何にも考えないで、何事も勝手に決めちゃうの!?私にだって、都合はあるよ!!」
愛美は、浜津に怒りをぶつける。
「まず…私を今、育ててくれてるのは、お婆ちゃんなんだから…。お婆ちゃんを一人置いてなんて、行けない!!」
「で、でも…おまえ、あんな小さな団子屋を継ぐわけじゃないよな?」
「将来のことなんて、まだ、わかんないよ!!でもね、お婆ちゃんとはこれからも一緒に住むつもり!お父ちゃんなんかじゃなくて!」
浜津は、しょんぼりとうつむく。
「それから…私、学校を転校したくない!!今の…聖テレに通いたいの!!」
「ま、まぁ…あそこは有名なお嬢様学校で、奨学金も貰ってるからなぁ…。勿体無いのはわかるけど…」
「違うよ!そんなんじゃない!!私、聖テレの友達と、別れたくない!!しかも、お別れの挨拶もなしなんて…考えられない!!」
愛美は、ここで、一番声を張り上げた。
831投稿者:リリー  投稿日:2008年03月03日(月)21時16分02秒
「それに…」
「それに?」
「部活だって…面白くなってきたところなのに…」
「部活って、ソフトボールだろ?そんなの、どこだってできるじゃないか…」
「そんなことない!!私は、聖テレのソフトボール部で頑張りたいの!!全国大会の常連だし…」
愛美は、うつむく。
そして、顔を上げて、はっきりと言った。
「野球部は…聖テレでしか、できないもん!!」
その言葉を聞いて、車内の七海は、梨生奈と顔を見合わせた。
「野球?…何?おまえ、野球部なんかに入ってるの?」
浜津は、半笑いの声をあげる。
「何よ?『野球部なんか』って…!『なんか』って何よ?」
「え?だ、だって…愛美は女だろ?」
「いいじゃない!!女が野球やったって!!何よ!!バカにして!!」
「べ、別に、バカになんか、してないよ…」
「ううん!!してる!!お父ちゃんは、一生懸命にがんばってる人を、いつもバカにしてる!!」
「え?ええ…?」
「さっきだって、お婆ちゃんの団子屋を、『あんな小さな』ってバカにした!!」
愛美の声は、涙交じりになっている。
832投稿者:リリー  投稿日:2008年03月03日(月)21時16分29秒
「小さな身体で、保険の勧誘をしてたお母ちゃんを…せこせこ働いてるって、バカにした!!」
「そ、そんなこと…」
「自分はお酒飲んで、パチンコとか競馬ばっかりやってたクセに…!!」
浜津は、何も言えなくなった。
「お母ちゃん…お父ちゃんの借金、返す為に…がんばって働いてたのに…」
愛美は、涙を落とした。
吉田とダーブロウ有紗は、お互い、困ったように顔を見合わせた。
「今度は、私のことも、バカにするの!?勝手に転校とか決めちゃって…!!バカにしないでよ!!」
愛美の叫び声は、埠頭に響いた。
七海と梨生奈は、もう、地獄耳をそばだてる必要もない。
「面白くなってきたの…野球…」
愛美は声を、絞り出す。
「最初は…何で、野球なんてやらなくちゃいけないのって…思ってたけど…。後輩達は…失礼で、生意気だけど…」
七海と梨生奈は、再び顔を見合わせた。
梨生奈は、七海を指差す。
七海は、その指を払い除ける。
「私…野球部…辞めたくないよ…」
(ヤ、ヤバイ…!)
七海は、咄嗟に涙を堪えた。
833投稿者:リリー  投稿日:2008年03月03日(月)21時17分01秒
今まで、言われるままになっていた浜津が、口を開く。
「…確かに…お父ちゃん…今まで一生懸命になったことなんて、なかったけど…今日、初めて一生懸命、がんばったんだ…」
「…え?」
愛美が、涙で濡れた顔を上げた。
「い、いや…一生懸命って…ただ、逃げ回ってただけだけど…」
浜津は、顔をにやけさせるが、すぐに真顔に戻す。
「今日な、愛美と同じくらいの歳の女の子に、怒られちゃった…」
「え…?怒られた…?」
「うん…。これから、娘を守っていくんだろ?根性見せろって…」
「それ…女の子が…?」
「うん…。情けない話しだけど…」
車内の梨生奈は、もう一度、七海を指差した。
浜津は、愛美の手を握る。
「お父ちゃん、これから…愛美を守れるように…生まれ変わろうって…死ぬ気でがんばった…」
「お父ちゃん…」
「でも…まだ、まだ…全然ダメだな…お父ちゃんは…」
今度は、浜津が涙を落とした。
834投稿者:リリー  投稿日:2008年03月03日(月)21時17分28秒
「だから…もっと、もっと強いお父ちゃんになって…愛美を迎えに行くから…」
浜津は、愛美を抱きしめた。
「おまえは…お婆ちゃんを…助けてあげな…」
「お父ちゃん…。落ち着いたら…手紙ちょうだいね…」
「うん…。うん…」
「身体に…気をつけて…」
「うん…。うん…」
吉田は、おいおいと泣き出した。
ダーブロウ有紗は、何も言わずに、吉田にハンカチを差し出す。
車内でも、梨生奈がハンカチを七海に差し出した。
七海は、無言でそのハンカチを、払い落とした。
…そういうわけで…伊倉愛美は、聖テレジアに…そして野球部に残ることとなったのだ。
「おはよう!!ななみん!!」
後ろから、細川藍が声をかけてきた。
七海は、藍を横目で見ながら言った。
「何が、解散や!!寛平さんの占いなんて…あてにならんな…」
「へ?」
不思議そうな顔の藍を残し、七海は上機嫌で学校に向かった。
835投稿者:リリー  投稿日:2008年03月03日(月)21時17分45秒
今日はこれでおちます
836投稿者:117  投稿日:2008年03月03日(月)22時02分46秒
822さん、確かに「元帥」でしたね。最近、ホントに勘違いが多いです(苦笑)。
愛美は「聖テレ」に残ることになりましたか。ホント、感動的な「親子愛」です(泣)。
そういえば、カンペーさんの占い、ホントに何も無いのでしょうか・・・?
837投稿者:愛美泣かせるなあ…  投稿日:2008年03月03日(月)22時21分11秒
浜津親子が幸せになれればいいけど
838投稿者:やっぱ  投稿日:2008年03月03日(月)22時53分36秒
いい
839投稿者:月(らりるれろ)→8月  投稿日:2008年03月04日(火)09時17分20秒
皇帝(元帥)→今夜以降から考えて 寛平さんの占いは未来を見すぎてる気がする。
小説のラストかなぁ?

愛美と浜津さんの関係にこっちまでハンカチ必要になりました(苦笑)
840投稿者:リリー  投稿日:2008年03月04日(火)21時10分03秒
愛美となすびさんの関係、皆さんに好評の様で嬉しく思います

117さん、気にしないで下さい
ややこしいですよね、軍人さんの階級は…

カンペーさんの占いには、続きがあります
実は、結構、カンペーさんの占いは、話しの深いところに食い込んでいきます

それでは、更新します


841投稿者:リリー  投稿日:2008年03月04日(火)21時10分59秒
放課後。
初等部のグラウンドに、聖テレ野球部の10人のメンバーは集まった。
部活が始まってから一週間、野球部の噂は初等部の者達にも知れ渡り、下校の時刻になっても練習の見物人が、日に日に増えていく。
「おい、コラ!!邪魔や、邪魔!!用がないんやったら、はよ、帰らんかい!!」
七海は、バットを振り回して見物の人だかりに突進していく。
初等部の生徒達は、キャーキャーと叫びながら散っていった。
「ちょっと!ななみん!未来の後輩達をいじめるんじゃないの!!」
藍が、七海の首根っこを捕まえる。
「未来の後輩?」
「そうだよ!野球に興味があるから、見物してるんでしょ?私達の練習を見て、自分も野球、やってみようって思うかもしれないじゃん!」
「せやけどな、あいつ等が帰らんかったら、いつまで経っても、ボールを使う練習、できへんやん!!」
「いいんだよ!しばらくは基本練習なんだから!」
「基本、基本ってな、ウチは初心者やないんやで?」
「一度も試合をしたことないんでしょ?初心者じゃん!」
「うっさい!!ウチを初心者、言うな!!」
すると、2人の言い争いに、割り込む声…。
「ななみん!基本練習は大切よ!文句を言わないで、黙ってやる!」
キャプテンの愛美だった。
「…は〜い…」
七海は、素直に従った。
昨夜、あんなに涙ながらに「野球部をやめたくない」と言われたら、素直に従うしかないだろう…。
842投稿者:リリー  投稿日:2008年03月04日(火)21時11分27秒
七海達は、初等部のグラウンドを、10週程回る。
トラック脇には、赤いリボンの初等部の生徒達が、群がって声援を送る。
「可愛いね…初等部は…」
エリーは、笑顔で手を振った。
手を振られた生徒達は、まるで芸能人の出待ちのファンのように、騒いでいる。
「コラ!エリー、手ぇ、振んなや!!うっさいねん!!」
七海は、顔をしかめた。
そして、その見物人の中に、羅夢の姿を見つける。
七海は、駆け足をしたまま、その場に留まった。
「おい、コラ!何で、おまえまでおんねん!!」
「あ?何だよ?」
羅夢は、トラックの中まで入り込んできた。
「もしかして、野球部に入りたいんか?」
「んなワケねぇだろ!!梨生奈を待ってるんだよ!!」
「おお、それならええわ。おまえは、ウチら野球部をぶち壊す『雷』かも知れへんからな!!」
「ああ!?何だよ!?それ!!言いがかりつけてんじゃねぇよ!!」
今にも2人は、掴みかからん勢いになる。
843投稿者:リリー  投稿日:2008年03月04日(火)21時12分11秒
梨生奈が駆け足で戻って来る。
「ななみん!昨日、ダーさんから話しは聞いてるでしょ?羅夢、練習は見ててもいいけど、大人しく待ってて…」
「別に、見たかねぇよ!!」
羅夢は、人ごみを掻き分けて去って行った。
中等部の七海と対等に渡り合っていた羅夢を、初等部の生徒達は、恐怖の目で見送る。
「もう…ななみん…!羅夢がなんで待ってるのか、知ってるくせに!」
「あいつの顔を見ると、イラっとくんねん!!」
七海と梨生奈の元に、藍も駆けつける。
「何?何?あの子も知り合い?6年生?来年、野球部に誘おうか?」
「冗談やない!!あいつが入ってきたら、ウチ、野球部辞めたるからな!!」
「どうしたの?あの子と仲が悪いの?」
「ええか?ウチの見解では、あいつが野球部をぶち壊す、『雷』やねん!!」
「は…?何の話?」
「寛平さんの占いで、言ってたやろ?」
「だって、ななみん、占い信じないんでしょ?」
「…う…」
「信じてるの?」
「信じてへんよ!!」
七海は、ランニングの列に追い着く為、全速力で走った。
844投稿者:リリー  投稿日:2008年03月04日(火)21時13分09秒
練習も30分が過ぎた頃、この時間帯になるとそろそろ、初等部の生徒達も練習の見物に飽きたのか、それとも本当に帰らなければならない時間になったのか、姿は減り始める。
そうなると、ようやく、ボールを使う練習に移ることができる。
「本当は、ここからを、よ〜く見てもらいたいんだけどなぁ〜…」
藍は、次々と帰り支度を始める、初等部の生徒達の背中を見詰め、悔しそうに呟く。
「は〜い、みんな集合〜!!」
顧問のあすみが、ようやく到着した。
そろそろ暖かくなってきた、というのに、首から足首までキッチリと覆った、大袈裟なウィンドブレーカーを着ている。
「さ、て、と…メンバーが集まりました〜!!道具も揃いました〜!!練習場も確保しました〜!!あとは、何が必要かな〜!?」
心なしか、あすみのテンションが高い。
顔を見合わせる、部員達。
キャプテンの愛美が手を挙げる。
「技術です…。試合に出ても、恥ずかしくないくらいの…」
「さすが〜!!キャプテンだね〜!!そう!!試合!!じゃあ、試合に必要なモノは、何ですか〜!?」
心なしか、というレベルではなく、異様にあすみのテンションが高い。
今度は、遠慮がちに有海が手を挙げる。
「あの…対戦…相手…ですか…?」
「そう、そう!!対戦相手だよね〜!!でも、今のままでは、対戦相手は持っていても、私達が持っていないものがあるじゃな〜い!?」
梓彩が手を挙げる。
「だったら…やっぱり、野球の実力だと思いますけど…」
「う〜ん…!!また振り出しに戻っちゃったじゃないの〜!!あず〜ったら〜!!」
そろそろ部員達も、あすみのハイテンションクイズがうざったくなる。
845投稿者:リリー  投稿日:2008年03月04日(火)21時14分12秒
梨生奈は、横目で皆の様子をチラリと見る。
膝を小刻みに揺らしている、中村有沙。
眠そうな目で、あすみを睨んでいる、ジョアン。
眉間にシワを寄せている、七海。
もうすっかり興味をなくし、お喋りに忙しい、エマとエリー。
(ダメだ…。限界だ…)
梨生奈が手を挙げる。
「せ、先生!!降参!!教えて下さい!!」
「り〜な!諦めたら、そこで試合終了だぞ〜?」
(うわ…。もう、カンベンしてよ…)
梨生奈はもう、誰かがキレても責任を持たない、と決めた。
「あ…!もしかして…」
藍が手を挙げる。
「ユニフォーム…ですか?」
すっかりだらけきっていた皆は、一斉に藍の方を見る。
そして、あすみの顔を…。
846投稿者:リリー  投稿日:2008年03月04日(火)21時16分03秒
「ピンポン!!ピンポ〜ン!!大正解〜!!」
あすみは、藍の手を、試合に勝ったボクサーのように高々と上げる。
「うわ〜!!やった〜!!当たっちゃった〜!!」
藍も、あすみのハイテンションが乗り移ったようだ。
さっきまで無関心だったエマとエリーも興味津々になり、ジョアンも大きな白い歯を出して、笑顔になっている。
そこは年頃の女子、着る物のことになると、やはり食いつきが違う。
「わ〜!!嬉しい!!そうだよね、ユニフォームって大事だよね!?」
藍は、足でバタバタと地面を踏み、興奮を隠せない。
七海も、とても嬉しそうだ。
そう…聖テレ野球部のような経歴も個性もバラバラなチームにとって、唯一皆が一つになれる物は、ユニフォームなのだ。
847投稿者:リリー  投稿日:2008年03月04日(火)21時16分46秒
「あ…!せやけど…どないなユニフォームになるん?やっぱり、阪神みたいな縦縞がええな〜!!」
「そうだね!ヤンキースみたいな、ピンストライプ!!」
七海と藍は、意気投合する。
「アタシは、赤がいい!!燃えるような、赤いユニフォーム!!」
ジョアンが言う。
「私は、ソフトボール部が赤だから…正反対で青がいいな」
梓彩が言う。
「お!?いいねぇ〜!!青!!ドラゴンズカラー!!」
「何や!!さっき、縦縞がええ、言うてたやん!!」
七海と藍は、途端に意気が離反する。
848投稿者:リリー  投稿日:2008年03月04日(火)21時17分24秒
「私は、可愛いのがいい!!ピンクとか…」
エマが言う。
「ピンクぅ〜!?カンベンしてぇ〜なぁ〜!!そんなモン、着れへんで!?」
七海が、悲鳴にも似た声で言う。
「いいじゃん!!可愛いじゃん!!ピンク!!」
「だったらさ、白はどう?真っ白!!聖テレカラーだよ?」
エリーが言う。
「白?それは聖テレの制服だけで、充分よ」
梨生奈が言う。
「ねえ、あみ〜ごはどんなユニフォームがいい?」
藍が聞く。
「わ…私は…何でも…いいです…」
「ありりん先輩は…?」
「黒…」
途端に、皆は黙った。
そして、再び勝手に意見を飛び交わせる。
849投稿者:リリー  投稿日:2008年03月04日(火)21時18分55秒
「みんな、口々に勝手なことを言ってたら、いつまで経っても決まらないよ」
愛美は、立ち上がって一旦、皆を落ち着かせる。
「で、先生、どうするんですか?もしかして、もう、ユニフォームは決まってるんですか?」
あすみは、うふふ…と含み笑いをする。
「実はぁ〜…この下に着てきちゃいましたあああ〜〜〜!!!」
おおお〜…と盛り上がる、部員達。
「ぬ〜げ!!ぬ〜げ!!」
ジョアンが、まるで下品なストリップ劇場のかぶりつきの客の様に、はやし立てる。
「ちょっと!お客さん!!踊り子さんには手を触れないで下さい!!」
あすみは、教育の場ではどうかと思われるギャグを飛ばす。
「ぬ〜げ!!ぬ〜げ!!ぬ〜げ!!ぬ〜げ!!」
皆も一斉に声を上げる。
もちろん、キャプテンの愛美、大人しい有海、そして中村有沙は、その中に加わらないが…。
あすみは、ゆっくりと…じらしながら…本当にストリップ嬢の様に、ウィンドブレーカーを脱ぐ。
「は〜い!!御開帳〜〜〜!!!」
そして、一気にウィンドブレーカーを脱ぎ捨て、ユニフォームを披露する。
850投稿者:リリー  投稿日:2008年03月04日(火)21時20分18秒
それでは、今日はこれでおちます
あすみがハイテンションだった理由は、次回にわかります
851投稿者:あげ  投稿日:2008年03月04日(火)21時49分26秒

852投稿者:age  投稿日:2008年03月04日(火)22時33分31秒

853投稿者:ありりんの  投稿日:2008年03月04日(火)22時50分04秒
発言でみんなヒくところがおもしろいです
854投稿者:tatu  投稿日:2008年03月04日(火)23時18分56秒
たぶん、ジャイアンツカラーだな
855投稿者:あすみんのハイテンションワロタww  投稿日:2008年03月04日(火)23時43分42秒
野球部のメンツもノリいいなw
856投稿者:あすみんのハイテンションクイズ  投稿日:2008年03月04日(火)23時45分49秒
ワロた
857投稿者:ぬ〜げ!ぬ〜げ!  投稿日:2008年03月05日(水)09時26分18秒
……絶対に天てれじゃできないギャグだねw
858投稿者: 投稿日:2008年03月05日(水)11時09分43秒

859投稿者:あげ  投稿日:2008年03月05日(水)12時01分43秒

860投稿者: 投稿日:2008年03月05日(水)12時58分18秒

861投稿者:あげ  投稿日:2008年03月05日(水)13時14分10秒

862投稿者:age  投稿日:2008年03月05日(水)16時11分43秒

863投稿者:あげ  投稿日:2008年03月05日(水)21時24分35秒
 
864投稿者:リリー  投稿日:2008年03月05日(水)21時37分08秒
凄い数のあげコメントがありますね
ありがとうございます

あすみのハイテンションや、有沙のコメントなど、表の話しは各登場人物の性格を詳しく書くことができるので楽しいです
裏は、アクション中心となりますので…
「ぬ〜げ!ぬ〜げ!」も、勢いで書いてしまいました

tatuさん、ズバリ正解です

では、更新します
865投稿者:リリー  投稿日:2008年03月05日(水)21時38分16秒
「………?」
みんな、黙り込んでしまった。
そのユニフォームは、白を基調としたもので、胸には『St.THERESIA』とアルファベットのロゴデザイン。
その、ロゴデザインは黒色で、周りをオレンジで囲っていた。
袖やパンツの横は、黒とオレンジの細いライン。
アンダーシャツの色も黒である。
「…これって…ジャイアンツのユニフォーム?」
藍は呟いた。
「ううん、別にそういう意味じゃないよ!でも、この黒とオレンジの組み合わせって、いいと思わない?」
あすみは帽子を被る。
帽子も黒。
そして、何故か帽子のマークは、オレンジ色の『Y』と『G』を組み合わせた物だった。
「うおおおお〜〜〜いい!!!ちょっと、待てやあああ〜〜〜!!!!!」
座った姿勢でジャンプして立ち上がり、高等部まで届いてしまいそうな声で絶叫する七海。
「うわ!ビックリした!どうしたの?ななみん?」
あすみは、目を大きく見開いて七海を見詰めた。
「どうしたも、こうしたも、あるかい!!何が悲しゅうて、ウチが巨人のユニフォームなんて着んとアカンのや!!」
七海は顔を真っ赤にし、口から泡状の唾をまき散らしながら怒鳴る。
七海の前に座っていたエリーは、モロにその唾を被ってしまい、慌ててエマの側に批難した。
866投稿者:リリー  投稿日:2008年03月05日(水)21時38分42秒
「何?何?ななみんは、このユニフォームが気に入らない?」
あすみは、ポカンとしたままの表情で聞いた。
「あ・た・り・ま・え・や!!!そんなもん、着るくらいなら、ウチはサッカーのユニフォーム着て、野球するわ!!それも、ガンバ大阪の!!」
他の者は、七海がそこまで、このユニフォームを拒絶する意味がわからない。
「野球することに変わりないんだから、これでもいいんじゃない?」
愛美は立ち上がって、七海をなだめる。
「やかましい!!でしゃばんなや!!殺すぞ!!このガキ!!」
「…う…ま、また、私のこと…ガキって…。キャプテンなのに…」
愛美は涙ぐんでよろめいた。
それを、優しく抱きとめる、梓彩。
「私はこれでいい。私の希望の色も入っていることだしな…」
中村有沙は、ぼそりと言った。
「うん…。私も…。これって、よくテレビで見るもんね」
エリーも同調する。
「それや!!それや!!それや!!それが気に食わん!!メディアを媒体にした悪辣な戦術で、この国の野球ファンは、みな、巨人ファンなんて歪な現象を生むんや!!」
七海は、エリーを指差して怒鳴る。
また、エリーは七海の唾を被ることになった。
「ちょっと…ななみん…落ち着きなよ…。今、ここで読売批判したって、しょうがないじゃん!!」
藍は、七海の肩を抱いて、とにかく座らせようとする。
867投稿者:リリー  投稿日:2008年03月05日(水)21時40分19秒
「ドラキチの藍は、これでええんか!?巨人のユニフォームなん、着れるんか!?」
「いや…私も、そりゃいい気はしないけどさ…」
「やろ?やろ?やろ?せやったら、断固反対せな!!断固拒否せな!!」
さっきまで、ハイテンションだったあすみは、段々意気消沈していく。
「う〜ん…。ここまで毛嫌いされるなんてねぇ…。何が気に入らない?」
「気に入らん、言うか…もの凄ぅ、突っ込みたいところがあんねんけど!!」
「何?」
「その帽子!!何や!?それ!!何で、『Y・G』やねん!!聖テレと関係ないやん!!」
「ん?これ?おかしい?」
「当たり前や!!モロ、巨人やんけ!!」
「違う、違う、この『Y・G』はね、『野球(Y)』・『がんばろう(G)』の『Y・G』だよ」
「何やそりゃ!!苦しいにも、程があるで!!」
いつまで経っても、この言い合いは治まらないと考えた梨生奈は、この場をまとめにかかる。
「ちょっと、みんな落ち着いて!!ななみんも、先生も!」
「私は、落ち着いてるよ?ななみんが勝手に興奮してるだけだもん…」
まるで、あすみは、子供の様にふて腐れる。
868投稿者:リリー  投稿日:2008年03月05日(水)21時40分49秒
梨生奈は、七海とあすみを座らせて、皆に言い聞かせるように話し始める。
「確かに、ユニフォームっていうのは、チームを一つにする重要なものだと思うわ…。一人一人が納得するものでなければ、いけないと思う…」
梨生奈は、あすみに視線を落とす。
「それで…あすみん先生は、自分の好みを押し付けて、ななみんに予想外の反発を喰らったワケだけど…」
「べ、別に、押し付けたワケじゃ…」
あすみは、途端に反論する。
「先生…。そこは認めないと…」
梨生奈は、諭すように囁く。
「…別に…押し付けてないもん…」
あすみは下を向き、口を尖らせた。
どっちが先生なのか、わからない。
869投稿者:リリー  投稿日:2008年03月05日(水)21時41分10秒
「それで…今、あすみん先生が着てるユニフォーム…これでもいいって人は?手を挙げてくれる?」
手を挙げた者は、中村有沙、伊倉愛美、大木梓彩、渡邊エリー、一木有海…。
「10人中、5人…過半数を超えてヘンな…て、おい!!何で、おまえまで手ぇ挙げてんねん!!」
胸を撫で下ろしかけた七海だが、梨生奈も手を挙げているのを見て、また激怒した。
「10人中、6人…!決定じゃん!!」
あすみは、はしゃいだ。
「先生!これは、多数決で決める問題じゃないです!!」
梨生奈に叱られ、またしゅんとする、あすみ。
「で、他に違うユニフォームがいいって言う人は?」
手を挙げた者は、藤本七海、細川藍、ジョアン・ヤマザキ、近藤エマの4人。
「先生は、どうしてもそのユニフォームがいいって言うんなら、今からこの4人を納得させなければならないんです。わかります?」
「わかるよ…」
少し不機嫌な様子で、立ち上がる、あすみ。
梨生奈は、あすみと立ち位置を交代し、皆の中に入って座る。
愛美は、じっと梨生奈を見詰めている。
「な、何?まにゃ先輩?」
「り〜な…。本当は…り〜ながキャプテンやった方が…いいよね…」
愛美は、消え入りそうな声で呟いた。
「な、何言ってんですか!!わ、わたしなんか…野球のこと、何にも知らないし…。ほら、まにゃ先輩、教えるの、上手いし…」
暗く落ち込む愛美を、何とか元気付けようと、梨生奈は必死になる。
870投稿者:リリー  投稿日:2008年03月05日(水)21時41分44秒
「で、あんた等が、気に入るようなユニフォームって何?言ってみな!」
さっき手を挙げた4人に、ぶっきら棒に言い放つ、あすみ。
「何、逆ギレてんねん…」
七海は、苦笑いした。
「ピンク!ピンクと白のツートンカラーの可愛いの!」
真っ先に手を挙げるエマ。
「アタシはイヤだよ!ピンクなんて…。アタシは、赤!ソフトボール部みたいな、真っ赤なヤツじゃなくて…ほら、松坂が行った…レッドソックスみたいな…」
ジョアンの意見に、エリーが食いつく。
「あ!それ!それもいいよね!テレビでよく見るもん!」
「ミーハーは黙っとけ!!」
七海が怒鳴った。
「ウチは、縦縞や!先生みたいに、阪神を押し付けようとはせんよ?ヤンキースも縦縞やし…」
「ヤンキース!!それもテレビで…」
「せやから、テレビはええねん!!」
また、七海はエリーに怒鳴った。
「じゃあ、私は青!うん…まぁ…青だったら、どんなのでもいいよ…」
最後に藍が、希望を述べた。
871投稿者:リリー  投稿日:2008年03月05日(水)21時42分17秒
「う〜ん…。あんた達4人とも、頑固そうな子達だね…。先生は、話し合いじゃ解決しないと思うんだよねぇ…」
あすみは、4人をジロリと睨みつける。
「お?何や?力づくで解決しようと、言うんか?」
七海が立ち上がって、あすみに歩み寄る。
「力づく?面白いねぇ…」
長身のあすみと、小柄な七海が、睨み合う。
「ちょ、ちょっと…!先生!ななみん!」
梨生奈が、青い顔で止めに入る。
「でも、私達は野球部!!だから、野球の力で決めるよ!!」
あすみの言葉に、皆はしばらく固まった。
「野球で…?」
あすみは、グローブとボールを手に持つと、ゆっくりと皆から離れる。
「私の投げるボールを、バットで一番遠くに飛ばした人の希望するユニフォームにしようじゃないか」
「おお?」
4人は、一斉に立ち上がる。
「それで…誰も私の球を、私より後ろに飛ばせなかったら、私の今着ている、ジャイアンツのユニフォームに決定だ!どう?」
「ケ…!とうとう、ジャイアンツて認めよったな?おもろい!受けて立とうやないか!!」
七海以下、他の3人も同意した。
そして他の部員達も、ジャイアンツのユニフォームにそれ程執着はしてないので、その解決方法に賛成する。
872投稿者:リリー  投稿日:2008年03月05日(水)21時43分12秒
あすみは、マウンド…といっても、盛り上がってはいない、ピッチャープレートの前に立つ。
「ありりん!キャッチャーやってちょうだい!!」
「…やれやれ…。ユニフォームなど、どうでもいいではないか…」
中村有沙は、キャッチャーミットを持って、立ち上がる。
そして、所定の位置まで来ると、彼女独特の構えをとる。
それは…しゃがまずに、正座を斜めに崩したような、まるで芸者がお座敷で、しなをつくっているような…そんな構えである。
「………ありりん…。何度も言うようだけどさ…。その、色っぽい構え方、何とかならないの?」
あすみは、溜息交じりに言った。
「何度も言わせるな。私は、あんな大小便をしているような、見っとも無い恰好、死んでもしないぞ」
「…ま、いいけど…」
あすみは諦めた。
確かにこの体勢でも、ピッチャーへの返球や、二塁への盗塁阻止も、彼女ならできてしまうからだ。
「で、プロテクターやキャッチャーマスク、ちゃんと着けなよ?」
「めんどくさい。このままでいい」
「ダメ!これは譲れない!安全の為に着けなさい!」
「まったく…。キャッチャーというのは、めんどくさい…。楽そうだから志願したのだが…」
しかし野球では、キャッチャーというポジションが、一番気苦労が多いのだ。
とある統計では、プロ野球選手のポジション別平均寿命を計ったところ、断トツで早死にするのが、キャッチャーだという結果が出ている。
873投稿者:リリー  投稿日:2008年03月05日(水)21時43分36秒
それでは、今日はこれでおちます
874投稿者:最後の一行  投稿日:2008年03月05日(水)21時56分15秒
ちょっと意味深w
875投稿者:117  投稿日:2008年03月05日(水)22時10分47秒
tatuさんの予想見事的中、すごいですね。「ガンバ大阪」のユニフォームならイイと言う七海。さすが「大阪人」(笑)!
「KY」みたいな「YG」、捕手が早死にするというデータ、ナルホドですね(笑)。
「ユニフォーム」をかけた野球対決、たまにこういう話が入ると面白いです。
876投稿者:ポジション争いで対決w  投稿日:2008年03月06日(木)00時32分56秒
ユニフォーム決めでも対決w
877投稿者:ユニフォームなんて  投稿日:2008年03月06日(木)09時01分41秒
いっそのこと聖テレ野球部無関係者(武川さんとか)が鶴の一声で決めたらいいじゃんと思った人。
ごめんなさい。
878投稿者: 投稿日:2008年03月06日(木)12時46分45秒
俺巨人ファン
879投稿者:リリー  投稿日:2008年03月06日(木)20時58分19秒
女の子ですから、着る物には、こだわるだろうなぁと思って、こんな展開にしてみました

878さん、ごめんなさい
七海の言葉を借りて、読売批判をしてしまいました…

ユニフォーム対決は、今夜中に決着がつきます
880投稿者:リリー  投稿日:2008年03月06日(木)20時58分59秒
ジャンケンで、順番を決める。
勝った者から、好きな打順を選ぶ。
勝った順番は、藍、七海、エマ、ジョアンの順番。
そして打順は、最初は藍、次はジョアン、三番手はエマ、最後は七海だ。
藍は、まだあすみの肩が調子を上げないうちに打ってしまおうという考えだ。
しかし、あすみの全力で投げる球は、これから初めて見ることになる。
七海は、一応警戒して、最後の打順を選んだのだ。
そう…あの…初対面の…気配すら感じさせずに後ろに立った、あの事実が…まだ、記憶の片隅にこびりついて離れない…。
それは、キャッチャーミットを構える、中村有沙でさえ同じである。
この前の、七海の剛速球に反応できなかったことを考えれば、取り越し苦労のように感じるのだが。
あすみは、投球練習をする。
その長身から繰り出される投球は、それなりに速い。
「むぅ…。藍の球よりは、威力があるな…」
いつも、練習で藍の球を受けている中村有沙は、そう言って感心した。
しかし、やはり一般レベルを超える程のものではない。
藍も、その投球に、気後れしている様子はない。
藍は、ゆっくりと左バッターボックスに立つ。
881投稿者:リリー  投稿日:2008年03月06日(木)20時59分53秒
藍への第一球が投じられた。
ど真ん中のストレート。
「!?」
ピクリとも、藍は反応できなかった。
「う…!投球練習より、全然速い!!」
あすみは、マウンドに仁王立ちしている。
「そうそう、言い忘れたけど、私は、ど真ん中のストレートしか投げないから…!」
相当、ピッチングに自信があるようだ。
「と…言う事は…振るタイミングさえ合わせれば、OKってことね…」
藍は、バットを短く持って、バットを構えなおす。
いつか堤防公園でやった七海との対決とは違い、ホームランを打つ必要はない。
あすみよりも後ろに飛ばせばいい。
狙いは、あすみの脇を抜ける低い打球。
第二球…完全に、振り遅れる。
「ヤバ…!」
これで、追い詰められた。
七海ほどではないが、藍だってジャイアンツのユニフォームは、できれば着たくない。
882投稿者:リリー  投稿日:2008年03月06日(木)21時00分44秒
最後の球、今までの投球より、一番速く、伸びのある球だ。
藍は、頭で考えるよりも、身体で反応させた。
キン…!
バットの先に当たった。
鋭い打球は、低くバウンドしながら、あすみの脇を抜けていこうとする。
「…やった!」
しかし、あすみの反応は早かった。
もう、打球の正面に移動し、捕球の体勢に入っていた。
「はは…!残念だったね!あい〜ん!」
しかし、悲しいかな、ここは只の運動場。
整備されていない、デコボコな地面をイレギュラーし、あすみのグローブの土手を弾いた。
「し、しまった…!」
ボールは転々と、あすみの後方を転がった。
「やったぁ〜!!」
「うおっしゃあああ〜〜〜!!!」
打った藍よりも、七海の声の方が大きかった。
「ああ!もう!!今度、学園長に、グランド整備のトンボとローラーも買ってもらわなきゃ!!」
あすみは悔しそうに、ボールがイレギュラーした辺りの地面を、足で乱暴に均した。
これで、あすみの聖テレ野球部、巨人化計画は、早々と頓挫することになった。
883投稿者:リリー  投稿日:2008年03月06日(木)21時01分40秒
続くジョアンは初球をピッチャーフライ、エマは三球三振に打ち取られた。
いくら、元『TTK』で身体能力は高い彼女等でも、一朝一夕でバッティングのコツは掴めないようだ。
そして、最後は七海である。
藍の活躍によって、ジャイアンツタイプのユニフォームという、自分にとっては最悪な事態は免れた。
しかし、だからと言って、ドラゴンズタイプのユニフォームだって、着るつもりはない。
藍は、青ければ何でもいいと言ってはいたが、やはり、七海にとって縦縞のユニフォームは憧れだ。
「私は、巨人のユニフォームが着れなくなった今、青いモノでも縦縞でも、どっちでもいいんだけど…」
あすみは、グローブを、ボールでスパン、スパンと音を立てる。
「ウチは、絶対に縦縞がええ!!」
「そう…。だったら、絶対に縦縞は阻止してやる!!」
振りかぶる、あすみ。
バットを構える七海。
第一球………七海は、風を感じただけだった。
「…痛!」
七海の後ろで、中村有沙の声がした。
「ほら、ほら!ありりん!だから、そういう構え方じゃ、怪我するんだって!」
あすみの言葉に、七海は後ろを振り向いた。
中村有沙は、肩を抑えてうずくまっている。
884投稿者:リリー  投稿日:2008年03月06日(木)21時02分48秒
「ど、どないしたんや?チビアリ…?」
「な、何でもない…。ちょっと、捕球のタイミングを誤っただけだ」
そう言って、膝元に転がったボールを、あすみに返した。
「ね?プロテクターしてて良かったろ?先生の言う事は、聞いておくもんだ」
あすみは、勝ち誇ったように言って、ボールをグローブに納めた。
「く…!忌々しい…!」
中村有沙は、あれ程嫌がっていた、キャッチャー本来の構えをとる。
「屈辱だ…!こんな姿!!七海!私はユニフォームなど、縦縞でも横縞でもどうでもいいが…絶対に、あの女のボールを打て!!」
かなり、頭にきているようだ。
「横縞やったら、囚人やで…。言われるまでもないわ!!絶対に打ったんねん!!」
七海は、いきり立ちながら、バットを構える。
885投稿者:リリー  投稿日:2008年03月06日(木)21時03分34秒
第二球………七海は、バットに当てることはできた。
しかし、打球は真後ろに飛んだ。
「あ、危ない!!」
愛美と梓彩は、頭を抱えてしゃがみ込んだ。
「大丈夫です!」
2人が顔を上げると、梨生奈が素手で、飛んで来たボールを掴んでいた。
「…さすが、ななみん…もう、あのスピードに慣れてきたみたいですね…」
梨生奈は微笑みを浮かべ、2人の対決を見守っている。
愛美と梓彩は、そんな梨生奈に、恐る恐る聞いた。
「り、り〜な…。へ、平気なの…?」
「え?」
「手…。痛くないの?」
「あ…」
梨生奈の顔が、青くなった。
「い…い…いたぁ〜い、いたぁ〜い…」
棒読みで、痛がる梨生奈。
886投稿者:リリー  投稿日:2008年03月06日(木)21時04分16秒
「くっそ〜…追い込まれてしもうた…」
七海は悔しそうに、バットで頭に被っているヘルメットを軽く叩いた。
「いくら速いといっても、エマのボウガン程ではないだろう?」
中村有沙が、ボソリと呟いた。
「へ?」
七海は、中村有沙の言葉の真意を考える。
そう…昨夜のことだ…。
『ヴォヤージュ±』…!!
自分は、ボウガンで撃ち込まれた鉄球を、打つことができるのだ。
あすみのボールがいくら速いと言っても、自分に打てない球ではないはずだ。
「そうや…!『ヨー・ソー、ロー』のタイミングや!!」
そして、バットの端、ギリギリまで握る。
自分が、ベンジャミンに授けた打法である。
どうせ打つなら、どでかいモノを…!
七海は、バットを構えた。
あすみは、一目で七海がホームラン狙いだと察した。
887投稿者:横じまだったら  投稿日:2008年03月06日(木)21時05分22秒
紙フトのマーと千秋のスタイルだねww
だけどあれも好きだけどさw
888投稿者:リリー  投稿日:2008年03月06日(木)21時06分00秒
大きく振りかぶる、あすみ。
ハンマー投げの様に、バットを振り回す、七海。
あすみは、ど真ん中のストレートしか投げない、と宣言した。
エマのボウガンと、条件は同じである。
あすみの投げるフォームから、七海は心の中で呟く。
「ボン・ヴォヤージュ…」
速球が、迫る。
「ヨー…」
バットを止める。
「ソー…」
バットを後ろへ引く。
「ロー!!」
バットを放り投げるように、振る。
バットは………回転しながら宙を舞い、そしてグラウンドに突き刺さった。
ボールは………初等部のグラウンドを越え、高級住宅地へ吸い込まれていった。
今日は、あすみにとって…対決に負けた上に、ガラスを割った住宅へ頭を下げに行くという…踏んだり蹴ったりの一日となった。

(『七回・表・・・終了』)
889投稿者:リリー  投稿日:2008年03月06日(木)21時07分11秒
今日はこれでおちます

次回から、今までで一番長い話しでなるであろう、『七回・裏』です
890投稿者:117  投稿日:2008年03月06日(木)21時33分40秒
梨生奈、普通に取るから,愛美と梓彩は焦りますよね(笑)。
意外にもすんなり決着のついた「ユニフォーム決戦」、次は長い『裏』編ですか。楽しみにしています!
891投稿者:ローラーとは  投稿日:2008年03月06日(木)21時51分09秒
いわゆるコンダラですね
892投稿者:あすみんカワイソス  投稿日:2008年03月06日(木)22時06分18秒
ユニホーム、七海の案が採用されるのか
893投稿者:あげ  投稿日:2008年03月06日(木)22時52分17秒

894投稿者:リリーさんの好きなてれび戦士は誰ですか?  投稿日:2008年03月06日(木)22時55分02秒

895投稿者:そういや  投稿日:2008年03月06日(木)23時46分30秒
去年の今頃リリーさんが失踪したって大騒ぎになってたっけ?
もしかしたら一七がちょうど終わったころかな?
サムドラの更新が滞ったこともあったよね。
もうRG探偵社シリーズが始まってから一年立つのか。早いねえ。
896投稿者:失踪ではなく  投稿日:2008年03月07日(金)18時56分22秒
インド旅行ね
897投稿者:リリー  投稿日:2008年03月07日(金)20時59分59秒
そう言えば、あれからもう、一年ですか…
早いですねぇ
実は、またインド旅行に誘われたのですが、スケジュールとお金の都合で断念しました
また、行きたいですけどね

聖テレのユニフォームは、縦縞に決定しました
それでも、タイガースタイプの物にはなりません

私の好きな戦士は、この小説に出てくる人、全員です
特に、聖テレ野球部と探偵社のメンバーは好きです
OGなら、七海、ちひろ、ありさ、ダーさん、モニーク、あすみ、ジャスミン
現役なら、藍、有海、そして最近エリーが可愛い…いや、美しいと思うようになりました

891さん、『巨人の星』の歌詞ですね

では、更新します
898投稿者:リリー  投稿日:2008年03月07日(金)21時03分44秒
『七回・裏』

≪2007年5/14(月)≫
「お待たせ、羅夢」
「遅いよ!梨生奈」
羅夢は、初等部の正門付近にあるレンガ造りの花壇の縁に、腰を降ろし、足を投げ出し待っていた。
梨生奈は、小走りで羅夢の元へ急いだ。
午後6時…ようやく、野球部の練習が終ったところだ。
随分、日が長くなったため、まだ外はだいぶ明るい。
「まったく…!梨生奈の部のキャプテンの為に、なんでアタイが骨折らなきゃならねぇんだよ!」
羅夢は、制服の白いスカートの後ろをパンパンと払いながら、文句を言った。
「これは、野球部とは関係ないわ。昨夜の仕事の続きなんだから…」
「だからよぉ…サッサとなすびと一緒に連れてっちまえば良かったんだよ!!本当なら、昨日でアタイ等の任務は終わってるはずだろ?」
「まにゃ先輩は、聖テレのみんなと…野球部の仲間ともお別れしたくなかったのよ。羅夢だって、お別れしたくない友達、いるでしょ?」
「いねぇよ!アタイ、この学校に友達いねぇもん!!」
「羅夢…」
梨生奈は、溜息をつきながら、首を横に振った。
899投稿者:リリー  投稿日:2008年03月07日(金)21時04分08秒
話しは昨夜に戻る…。
なすびこと、浜津は有明埠頭から船で、加藤組から遠い地へと逃れた。
浜津と一緒に行くことを拒否した娘の愛美は、社長の吉田の運転する銀のポルシェで、祖母のいる自宅へ送られて行った。
そして、七海と梨生奈は、ダーブロウ有紗の運転するランドクルーザーに乗って、帰路についていた。
七海と梨生奈は、愛美が野球部に残ってくれたことが嬉しくて、車内の後部座席ではしゃぎまわっていた。
「おい…。パッツン…。デコッパチ…。ご機嫌なところ、悪いんだが…」
ダーブロウ有紗は、口を重々しく開く。
「これで、少々、厄介なことになったぞ…」
「…へ…?」
厄介なこと?2人には検討もつかない。
「わからねぇか?あの、愛美って子…やっぱり、なすびのおっさんと一緒に逃げた方が安全だったんだよ」
七海は、キョトンとしている。
「…安全…?何や?そりゃ…」
「つまり…まにゃ先輩は…危険にさらされる…と…?」
梨生奈の顔色が、少し悪くなる。
「ああ…。加藤組は絶対に、なすびのおっさんを許さないだろうぜ。でも、なすびのおっさんの行方を突き止めることは、まずない…」
「せやったら、何も問題ないやん」
「違う!七海!浜津さんの行方がわからなかったら…身内のまにゃ先輩に、やつ等の手は伸びる…!」
梨生奈は、悔しそうに呟いた。
「その通りだ…。おそらく…あの子…加藤組に拉致される可能性、大だな…」
900投稿者:リリー  投稿日:2008年03月07日(金)21時04分42秒
ようやく、七海にも事の重大さが飲み込めた。
「ア…アカン!アカン!!そんな…!愛美先輩が、ヤクザなんかに…!」
「な、何で、ダーさん、まにゃ先輩に、何も言わなかったんですか!?」
2人は、ダーブロウ有紗に詰め寄った。
「ん?おまえ等は、あの子に行って欲しかったのか?残ってもらいたかったんじゃねぇの?」
そう、涼しい顔で尋ねられた2人は、ますます興奮してしまう。
「そら、そうやけど…!せやけど、愛美先輩の身の安全が最優先や!!」
「野球なんて…そんな悠長なこと、言ってられませんよ!!」
ふふん…と鼻で笑うダーブロウ有紗。
「私達は、依頼人の望みを叶えるのが、仕事だぜ?あの子が残りたいって言ったら、私達にはそうして差し上げる義務がある…。そうだろ?」
「…う…」
2人は、返す言葉がない。
「だから…明日から、あの子の身の安全を確保する…新たな任務を、お前等6人に与える」
「私達に…?」
「ああ…。『R&G探偵社』は、アフターケアもバッチリこなすぜ?」
ルームミラー越しに、ダーブロウ有紗の目は、力強く2人を見据えていた。
901投稿者:リリー  投稿日:2008年03月07日(金)21時05分07秒
「明日から、『Aチーム』、『Bチーム』は解散、普段通りのコンビのチームに戻ってくれ」
つまり、梨生奈と羅夢の『チームR』、エマとエリーの『チームE』、中村有沙と七海の『チームN』の再結成である。
「ち…!チビアリとのチームに戻るんかいな…」
七海は顔をしかめた。
「そして、あの子の警護を、チームで、日替わり交代で行う」
「日替わり?」
「月曜日は『チームR』、火曜日は『チームE』、水曜日は『チームN』、そして木曜日は、また『チームR』、金曜日は『チームE』、土曜日は『チームN』…」
「日曜日は?」
「ない。て、言うか、土曜日には、加藤組はなくなっている…」
「え…?ど、どういうこと…?」
「ぶっ潰すんだ…。私と、ジャスミンと、出っ歯ちゃんの3人で…」
『R&G探偵社』の三強が、加藤組殲滅に乗り出す…?
これは、凄まじい戦争になる…。
902投稿者:リリー  投稿日:2008年03月07日(金)21時05分38秒
「こ、これは、どえらいアフターサービスやな…。暴力団、一つ、ぶっ潰すんかい…」
しかし、そうしない限り、愛美に平穏な日々が訪れることはないだろう。
「正直に言うが…今回の依頼は、3つあった」
「3つ?」
「まず一つ目、あの、なすびのおっさんを安全な場所に逃がす依頼…。依頼主はあのおっさん…依頼金額は、30万円…。ま、良心的な値段だよな?」
30万…今の『R&G』は、まずそんな金額では、動くことがない。
「二つ目、借金苦の女性客の拉致組織の壊滅…。依頼主は、被害女性達の家族会。その家族会が出し合った依頼金額は、1000万円」
「そ…それが…メインの依頼なんでしょ?」
「せやけど、依頼主は女やなかったんかい?この前、そう言ったで…?」
「うん…。それは、三つ目の依頼のことだ」
「三つ目…?三つ目の依頼が…その…?」
ダーブロウ有紗は、静かに言う。
「ああ…。加藤組の殲滅…。依頼主は…とある女…」
「とある…女…?」
「誰や!?」
「………聞いたこともねぇ名だ…。後藤理沙…」
903投稿者:リリー  投稿日:2008年03月07日(金)21時06分05秒
「後藤理沙…?聞いたこと、あらへん…」
確かに、主だった裏の人物の名前は、『R&G』の探偵達なら、頭の中に入っている。
「加藤組に個人的恨みがあるとか…?」
「いや…。そうじゃねぇ…。おそらく…大きな集団…組織の依頼だ…」
「何で、わかるんですか?」
「依頼金額は…5000万円…」
「5000万…!?」
七海と梨生奈は息を呑んだ。
「個人で払える、額じゃねぇよな…」
「おい、おい!胡散臭い依頼やな?金に目が眩んで引き受けたんか?」
「そう言われたら、返す言葉もねぇが…。私達も二の足踏んでたんだよ…。でもな、あの子を守る為なら、加藤組をぶっ潰すしかねぇだろ?」
黙り込んでしまう、七海と梨生奈…。
「ま、心配すんな!加藤組の殲滅は、私達の仕事だ。おまえ等は、あの愛美って子の身辺警護だけやってくれればいい…」
梨生奈は、小さな声で…ダーブロウ有紗に訴える。
「ダーさん…。私が心配してるのは…」
「あん?何だ?デコッパチ…?」
「まさか…『殺人』を犯すことにならないでしょうね…?」
梨生奈が、案じているのは、まさしく、それだ…。
「今夜だって…私達…あのヤクザを殺さずに撃退するのは…随分、困難だったんです…!ましてや、加藤組を…殲滅するんでしょ?」
904投稿者:リリー  投稿日:2008年03月07日(金)21時06分29秒
「ギャハハハ!!」
ダーブロウ有紗は、バカ笑いをする。
「てめぇ、私を誰だと思ってんだよ!?しかも、ジャスミンや出っ歯ちゃんも一緒だぜ?殺さずに勝つ?楽勝だよ、楽勝!!それにな…」
いきなりハンドルから手を離して、後ろを振り向いた。
「…!ちょ…!ダ、ダーさん!!ハンドル!ハンドル!!」
「てめぇ等と、私達を、一緒にすんじゃねぇ!!」
凄まじいデコピンが、梨生奈の額を襲った。
………これが、昨夜の顛末である………。
「今から、まにゃ先輩の警護を、私達『チームR』でやるのよ?一応、深夜からは、俵姉妹の『チームT』が代わってくれるから…」
「わかったよ…。まったく…めんどくせぇ………ん?おい、梨生奈…。あれが、その、まにゃ先輩じゃねぇのか?」
その時、初等部の校門の前の通りを、野球部キャプテン、伊倉愛美が通りかかった。
「うん…。いくよ?羅夢…」
「はい、はい…」
『チームR』は、伊倉愛美の尾行を開始した。
905投稿者:リリー  投稿日:2008年03月07日(金)21時09分19秒
『七回』は、『表』・『裏』とも前日のエピソードから入ります
基本的にダーさんは『裏』の話しにしか出てきません
『七回・表』にもチラリと出てきましたが、台詞なしでしたし…

では、今日はこれでおちます
906投稿者:117  投稿日:2008年03月07日(金)21時32分25秒
なるほど、依頼主の女は後藤理沙さんですか・・・懐かしのメンバーが揃ってきました!
愛美に魔の手が及ぶ・・・?「加藤組」の壊滅はすんなり行くのか・・・続きも楽しみです!
907投稿者:キャスト表では  投稿日:2008年03月07日(金)21時50分18秒
理沙は山本組に所属してたから、やはりヤクザの抗争か・・・
908投稿者:今日から1週間見れない  投稿日:2008年03月08日(土)00時47分46秒
次見たとき、縮小されてそうで怖い。
909投稿者:おそがいおそがい  投稿日:2008年03月08日(土)00時50分45秒
 
910投稿者:リリー  投稿日:2008年03月08日(土)20時34分06秒
117さん、907さんのおっしゃる通り、この後、加藤組と愛美が関わってきます

908さん、1000を越えたあたりで過去ログに行きそうですね
少し、更新の量を少なめにしておきましょうか?
それでも過去ログに行ってしまったら、すみません

では、更新します
911投稿者:リリー  投稿日:2008年03月08日(土)20時35分34秒
聖テレジア女子学園は、天歳市の中心にある。
天歳市の中心から離れた虹守町の駅前に建つ、『R&G探偵社』の自社ビルから通っている探偵達は、電車通学をしている。
愛美は、天歳市の中心に近い陽酉出町に住んでいる為、徒歩通学だ。
だから、梨生奈と羅夢の、愛美が自宅へ帰るまでの尾行は、比較的楽なのだ。
しかも、相手は普通の中学生である。
いつもは慎重な梨生奈も、ついつい緊張感を欠いてしまう。
「…そう言えば…羅夢、もうすぐ修学旅行でしょ?」
「うん。今週の木曜日から」
「今週?ちょっと!木曜日は、また、私達がまにゃ先輩を警護する日じゃない!」
「え…?マジ?」
「何で、昨日、ダーさんに何も言わなかったのよ?」
「あ〜…。うっかりしてた」
「もう…。いいわ…。木曜日は、私一人でやるから…」
「いいよ。梨生奈一人でやらせられるかよ。アタイ、修学旅行、休むから…」
「ダメよ!たった一度の思い出なんだから、ちゃんと行きなさい!!」
「いいってば…!どうせ、気の合わねぇ連中となんか、行きたくねぇし…」
学校で、まったく友達を作ろうとしない羅夢が、梨生奈は心配だった。
912投稿者:リリー  投稿日:2008年03月08日(土)20時35分57秒
半年前、梨生奈は、七海やエマやエリーと共に、初等部の6年生から編入した。
だが、梨生奈達が初等部を卒業し、中等部に進学する時、年下の羅夢一人だけが、初等部に取り残されてしまった。
だから、4月に入ってから、羅夢はだれとも接することなく、無頼漢のように初等部で振舞っているのだ。
「私のことなら、心配しないで。その気になればジョアンや、ちひろさんにも協力してもらうから…」
「『チームS』か?あいつら、別件の仕事を抱えてるんじゃないのか?」
「順調に行けば、今日、その仕事が片付くって話しよ。だから、羅夢は、ちゃんと修学旅行に行きなよ?わかった?」
「………うん…。わかったよ」
「で、どこに行くんだっけ?」
「韓国だよ」
「へぇ〜。今年は韓国なんだね」
「ん?梨生奈達も、そうじゃなかったっけ?」
「私達は、香港だったよ。時期も違うしね…」
「香港?香港も韓国も、中国にあるんだろ?」
「………羅夢…。あんた、社会科をもっと勉強しなさい…」
913投稿者:リリー  投稿日:2008年03月08日(土)20時36分19秒
梨生奈は、思い出したかのように、羅夢に聞く。
「あ、そう、そう…。羅夢、水着は用意した?」
「水着?何でだよ?別に海へ行くワケじゃねぇぞ?」
「違うわよ。泳ぐ為に持って行くんじゃなくて、お風呂に入る為に…」
「は?風呂入るのに、何で水着がいるんだよ?バカじゃね?」
「い、いや…その…私達の時はね、みんな…」
「あ…!梨生奈!!」
羅夢の声に、梨生奈は、咄嗟に視線を愛美に戻した。
歩いている愛美のすぐ横に、黒いワゴン車が着き、彼女の姿を隠したのだ。
914投稿者:リリー  投稿日:2008年03月08日(土)20時36分51秒
「ま、まさか…!」
信号でもないのに、車が急に停まるわけがない。
嫌な予感がした。
梨生奈は、すぐに走った。
再び、車は発進した。
そして…梨生奈の予感は的中した。
そこには…愛美の姿はなかった。
そう…拉致されたのだ。
「く…!油断した!!」
いつから、あの黒いワゴンは、愛美を着けていたのだろう?
尾行する相手が、素人だと軽く考えていた…。
昨日や今日のうち、加藤組が行動は起こさないと、勝手に都合の良い考えをしていた…。
後悔するのは、車に追い着いた後だ…と、梨生奈は、懸命に追い駆ける。
羅夢もそれに続く。
梨生奈は、全速力で走りながら、携帯を取り出す。
電話帳のデータを出し、『マッド・エッジ』に掛ける。
915投稿者:リリー  投稿日:2008年03月08日(土)20時37分27秒
梨生奈の心中を察知したかのように、コール音1回でダーブロウ有紗は出た。
〔どうした?デコッパチ?〕
「こちら『ムーン・ライト』!!すみません!まにゃ…愛美先輩が、加藤組に拉致されました!!私の責任です!!」
〔…!!デコッパチ、『すみません』と『私の責任』は余計だ!…で、追跡は?〕
「今、してます!!」
〔よし、そのままだ!!そのまま着けろ!!車が停まって、その愛美って子が降ろされたら、もう一度電話をかけろ!!〕
「はい!了解!!」
一旦、電話を切る梨生奈。
車は、大通りを左折した。
梨生奈は、左折した角の店の陰に隠れて、車の行方を目で追う。
「何やってんだよ!!早く追い駆けろよ!!」
羅夢が、梨生奈を抜いて角を曲がろうとするが、梨生奈は羅夢の肩を掴んで止める。
「な、何だよ!!グズグズしてたら…」
「ダメよ!!猛スピードで車を追い駆ける女子中学生なんて、目立ちすぎる!!連中、目的地に行かないで、グルグルとその辺を回ってやり過ごすわ!」
「で、でも、このままじゃ…」
「この時間帯、あの大通りは、会社帰りの車で渋滞してるの。先回りするわよ!!」
「あ…、なるほど…」
「羅夢、ゆっくり歩いて、あの車がどっち方面に向かうか、携帯で私に教えて!!私が、先の交差点へ行ってるから、今度はあなたが車の行った先の交差点へ先回りをして、私の連絡を待つ…この繰り返し…わかった?」
「わ…わかった…!」
やはり、こんな状況下でも、梨生奈は冷静だ。
羅夢は改めて、自分のパートナーを頼もしく思った。
916投稿者:リリー  投稿日:2008年03月08日(土)20時37分54秒
それでは、今日はこれでおちます
917投稿者:今あめぞうの過去ログは壊れてるみたいだから  投稿日:2008年03月08日(土)20時54分56秒
スレ整理されることはないと思います
ゆえ気にせず更新してください
918投稿者:修学旅行の水着  投稿日:2008年03月08日(土)22時48分59秒
らりるれろにも出てたな
羅夢にも早く友達ができればいいけど
919投稿者:アマノガワ  投稿日:2008年03月09日(日)00時00分29秒
不測の事態にも冷静なりおなはやはり羅夢のパートナーにはうってつけですね

それはそうと、今度はできるもん!な愛美の住んでいる町。
相変わらず言葉巧みで面白く読ませてもらってますw
920投稿者:リアルな羅夢は  投稿日:2008年03月09日(日)01時22分27秒
さすがに韓国と中国をゴッチャにしないと思うけど・・・w
921投稿者:age  投稿日:2008年03月09日(日)10時44分10秒

922投稿者:リリー  投稿日:2008年03月09日(日)21時22分02秒
917さん、そうなんですか?
普通、500を越えたくらいに過去ログに行くんで、おかしいな、とは思ってたんです

水着でお風呂に入るという件は、『らりるれろ』でも言ってました
私の学校では、旅館の人に失礼だから、という理由で水着着て入るのは禁止でした

アマノガワさん、陽酉出町、わかって頂けて嬉しいです
地名でありそうな字で考えたのですが、ちょっと苦しいかな…と思いました

確かに、韓国は『国』ってついてるから、中国の一都市と思うのは、無理がありますね…

では、更新します
923投稿者:リリー  投稿日:2008年03月09日(日)21時22分32秒
『チームR』が、加藤組に気付かれることなく、車を追跡し、やっとその到着地を突き止めた。
天歳駅前の、繁華街だった。
その、開発途中のビルの地下駐車場に、車は入り込んだ。
梨生奈と羅夢は、カバンからそれぞれの武器…トンファーとヌンチャクを取り出す。
そしてカバンは、ビルの裏通りにあるゴミ捨て場に隠す。
生徒手帳等の身分を示すものは、極力、戦闘になりそうな現場には持っていかない…『R&G』の探偵心得だ。
武器と携帯電話、それだけを持って、二人は地下駐車場へと潜入する。
まだ、ビルは一般には開放されていないので、駐車場は広々としており、自分達の追い駆けてきた黒いワゴンを探し出すのは容易だった。
しかし、車から、まだ降りてくる気配はない。
その間に梨生奈はもう一度、ダーブロウ有紗に電話をかける。
1回目のコール音が鳴り終わる前に、彼女は出た。
〔デコッパチ、どうだ?〕
「はい。連中が停まったのは、天歳駅前の繁華街にある、開発途中のビルの地下駐車場です」
〔開発途中…?ああ…。西口の百貨店、テレヴィァのすぐ隣だな?〕
「はい。そこです。まだ、連中は車から降りてきてません…」
〔おそらく…人を待ってるんじゃねぇか?〕
「人を…?」
梨生奈は、あの『元帥』…楠本柊生の顔を連想した。
924投稿者:リリー  投稿日:2008年03月09日(日)21時23分00秒
〔よし、おまえ等は、その後から来る人物が誰なのか見極めろ。そして、応援を待て〕
「応援?」
〔ああ。今から、『チームE』と『チームN』の2チームを、そっちへ向かわせる〕
「も、もう、ありりん達は帰って来たんですか?」
〔まだだ…。おそらく、虹守駅に電車で帰ってる頃だろ。俵姉妹に駅前で待ち構えてもらって、武器とトラックスーツを届けさせる。そして、そのまま車で、そちらのビルに向かわせるからな〕
「はい。わかりました。その間、私達は…」
〔何もするな。『チームE』と『チームN』を待て。さらわれたのは、おまえの先輩でも…くれぐれも焦るなよ?〕
「了解」
梨生奈は、通信を切った。そして、羅夢の方を向く。
「羅夢…今、ダーさんから…」
「聞こえてたよ。このまま待機だろ?」
「うん…。ありりん達の到着を待つからね」
2人は、コンクリートの柱の陰から、黒いワゴン車を見張る。
あの中で、愛美は恐怖で震えているに違いない…一刻も早く救出してやりたい気持ちに、梨生奈は駆られた。
925投稿者:リリー  投稿日:2008年03月09日(日)21時23分24秒
すると、一台のベンツが、地下駐車場に入って来て、黒いワゴンの真横に停まる。
ベンツから、ヤクザ風の男達が、4人降りてきた。
そして、ワゴンからも4人。
しばらくして、そのワゴンの運転手と、もう一人のヤクザが…伊倉愛美と共に、降りてきた。
「…!!まにゃ先輩…!」
愛美は、黒いガムテープで後ろ手に縛られ、目と口も、同じ物で塞がれていた。
表情は窺えないが、身体は小刻みに震えている。
「…く…!」
愛美を、今恐怖のどん底に落とした原因は…しっかりと警護をしていなかった、自分にある…。
梨生奈は、すぐに愛美を助け出してやりたかった。
しかし、ダーブロウ有紗の命令は…仲間が駆けつけるまで待機せよ…である。
ヤクザの数は、10人…。そして、あの男…『元帥』楠本柊生…の、姿がない。
今…愛美を助け出せるのでは…?
梨生奈は、一瞬、そう頭によぎらせた。
926投稿者:リリー  投稿日:2008年03月09日(日)21時23分48秒
「たった10人…。楽勝じゃねぇか…」
羅夢が、そう呟いた。
「…!!」
思わず、羅夢の顔を見る、梨生奈。
「へへ…。梨生奈だって、そう思ったんだろ?」
その通りだ。
しかも、愛美は、目隠しをされている。
今なら、自分達の正体だって、バレることなく救出ができる。
そして…何より、あの『元帥』がこの場にいない今が、最大のチャンスのような気がする。
もちろん、あの男の実力は未知数だ。
ただのホストかもしれない。
しかし、あの男の存在は、やはり不気味だ。
グズグズしてたら、あの男が到着してしまうのではなかろうか?
「なあ、梨生奈!!やっちまおうぜ!?」
羅夢が急かした。
「で、でも…ダーさんが…」
「あいつは、現場にいないんだぜ?アタイ等の方が、状況をよくわかってる!!今、助け出すべきじゃねぇのか?」
…羅夢の言うことにも、一理ある…いや、梨生奈だって、そうしたいのだ。
927投稿者:リリー  投稿日:2008年03月09日(日)21時24分23秒
「わ、わかったわ…。この状況を、ダーさんに電話して、救出を許可してもらうから…」
梨生奈は、携帯を取り出した。
「あ…!梨生奈!やつ等、動き出すぜ!?」
「…え!?」
ヤクザ達は、愛美を引き摺るように、ビルの奥へと連れて行く。
「おい!もし、このビルの中に、もっと多くのヤクザがいたら、どうする?」
そう…もし、ビルの中に、『あの男』がいたら…。
「今!確実に救出できる、今!動くべきじゃねぇのか!?」
「…う…。で、でも…」
「おい!あの人は、おまえの部の先輩だろ!?このまま、見捨てるのかよ!?」
「み、見捨てるわけじゃ…ないわ…。ありりん達を待って、それから助け出せば…」
そう言いかけて、梨生奈は、七海のあの言葉を思い出した。
「1+1と、4÷2…答えは?」
…そう…どっちも2…。
しかし…「1が2つ集まるんと、4が真っ二つに割られるんとは、ちゃう!」
あの時、七海が何を言っているのか、理解ができなかったが…今は違う!!
自分の大切な先輩が…仲間が…悪の手によって、恐怖にさらされている…!!
今すぐに助け出すのと、後で助け出すのとでは、愛美にとって全く違うのだ。
928投稿者:リリー  投稿日:2008年03月09日(日)21時24分52秒
「うぅ…。でも…。でも…」
自分は、チームリーダーだ。
一時の…個人的な感情で、動いてはならない…。
取り返しのつかない、失敗を犯すかもしれない…。
「梨生奈…。アタイは…あんたのことは…尊敬してる…」
「…?羅夢?」
「アタイは、どう逆立ちし立って、あんたみたいに冷静になれないし、頭だって回らない…。でもな…」
「…でも…?」
「あんたみたいに、冷たくもなれない…」
「冷たい…?私が…?」
「目の前で…自分の仲間が…連れ去られようとしているのに…今、確実に助け出せるのに…それでも動かないなんて…」
羅夢の言葉が、梨生奈の心に突き刺さる。
「アタイは…そんな梨生奈、嫌いだ!!尊敬できるけど、嫌いだ!!」
「羅夢…」
「アタイは…今、助け出す!!あんたは、仲間の到着を待ってろよ!!」
「ら…羅夢!!」
羅夢は、ヌンチャクを振り回しながら、ヤクザ達に向かって駆け出した。
929投稿者:リリー  投稿日:2008年03月09日(日)21時25分17秒
「オラ、オラ、オラ、オラ〜〜〜!!!」
凄まじい咆哮に、ヤクザ達は、思わず振り返った。
その瞬間、一番後方にいた2人のヤクザの全身に、ヌンチャクが叩き込まれた。
「ぐえ!!」
「ぐはぁ…!!」
ヤクザ達は、次々に倒れる。
「な、何だ!!このガキ!!」
「…!昨夜の…あのガキ共の仲間だ!!」
一人のヤクザが、拳銃を取り出す。
「オラァ!!」
咄嗟に羅夢は、ヌンチャクで、拳銃を払い落とす。
「く…!!もう、仕方がない!!」
梨生奈も腹を決めた。
トンファーを構えて、羅夢の元へ走り出した。
今、愛美を救出する…!!
930投稿者:リリー  投稿日:2008年03月09日(日)21時25分39秒
それでは、今日はおれでおちます
931投稿者:117  投稿日:2008年03月09日(日)21時32分21秒
ついに愛美が大変な状況に!
目隠しとかをされているとはいえ、二人の正体がばれないか、内心ハラハラしてます。続きも楽しみです!
932投稿者:あげ  投稿日:2008年03月09日(日)21時43分35秒

933投稿者:どうなるんだ  投稿日:2008年03月09日(日)21時52分17秒
なんか嫌な予感がする
934投稿者: 投稿日:2008年03月10日(月)02時23分53秒

935投稿者:なんだか……  投稿日:2008年03月10日(月)08時40分27秒
ヤクザ(元帥?)の目的が愛美じゃなくてR&Gのメンバーな気がする……気のせいならいいけど。

梨生奈の迷いがらりるれろにもつながる?w
936投稿者:梨生奈  投稿日:2008年03月10日(月)09時12分41秒
サイコー
937投稿者:リリー  投稿日:2008年03月10日(月)20時50分48秒
みなさん、予想が鋭いですね…
概ね当たっています

梨生奈が冷静なら、「冷たい」と言われ、恋をしたら「弱くなった」と言われ…ちょっと気の毒ですね…

では、更新します
938投稿者:リリー  投稿日:2008年03月10日(月)20時52分21秒
「はあああ〜〜〜!!!」
梨生奈は、羅夢の頭上を飛び越えて、飛び降りざまに、2人のヤクザの肩を、トンファーで叩き伏せた。
「ぎゃああ!!」
ヤクザ達は、悲鳴をあげて崩れ落ちる。
梨生奈は、羅夢の方を振り向く。
(羅夢、先輩をお願い!!)
アイコンタクトで、そう羅夢に伝える。
羅夢は、愛美を捕まえているヤクザに駆け寄る。
「て、てめぇ…動くな!!動けば、このガキを…」
「オラオラオラオラ〜〜〜!!!」
ヤクザの言葉が終わらないうちに、羅夢はヌンチャクを叩き込んだ。
目隠しをされ、今、どういう状況になっているのか、わからない愛美は、不安な気持ちから、しゃがみ込んだ。
羅夢は、そんな愛美を無理矢理立たせる。
「オラ!!」
ヌンチャクを縦に振り下ろす。
愛美の腕を、後ろ手に縛り付けていたガムテープを、真っ二つに切り裂いた。
そして後ろから、愛美の目と口を覆っていたガムテープを、一気に剥がした。
939投稿者:リリー  投稿日:2008年03月10日(月)20時52分50秒
「ぷはぁ…!!な、何?一体、何なの?」
「振り向くな!!」
「ひ!!」
羅夢に耳元で怒鳴られ、愛美は後ろを振り向くことができない。
愛美の胸ポケットに、銀色の薄型の携帯電話が入れられた。
「いいか?このまま振り向かずに真っ直ぐ走れ!!そして、安全な所まで逃げ出せたら、この携帯の電話帳から『マッド・エッジ』を引き出して、そこに電話しろ!!わかったか?」
「わ…わかり…ました…」
「行け!!」
「は、はい…!」
愛美は、そのまま振り返ることなく走り出した。
「くそ!!浜津のガキ、逃げるぞ!!」
「車で追え!!」
一人のヤクザが、ベンツに乗り込む。
「はああ!!」
梨生奈がトンファーで、ベンツのボンネットを激しく叩いた。
ボン…!
「ぐえ!!」
車内で、エアバックが一気に開き、運転席のヤクザは圧迫された。
940投稿者:リリー  投稿日:2008年03月10日(月)20時54分05秒
「ワ、ワゴンで追え!!」
ヤクザ達は、ワゴンへ走り寄るが、そこには羅夢が立ちはだかっている。
「オラオラオラ〜〜〜!!!」
滅多打ちにされて、次々と倒れるヤクザ達。
「よし!!『ムーン・ライト』!あと、何人だ!?」
羅夢は、梨生奈の方を振り向いた。
「『ライトニング・ボルト』!!」
梨生奈が、青い顔をして、叫んでいる。
「私一人です…」
すぐ後ろで…囁く低い声…。
「…!?」
羅夢は、その声の方を向く。
目の前には…銃口が突きつけられていた。
「はい…。オイタはここまでですよ…。仔猫ちゃん達…」
初めて見る…男が…そこにいた…。
こんな男、今までいなかったはず…。
「て…てめぇ…!い、いつの間に…?」
「いつの間に…?さっきからずっといましたよぉ…。悲しいですねぇ…。私…そんなに存在感、ないですか?」
その男は…『元帥』…楠本柊生だった…。
941投稿者:リリー  投稿日:2008年03月10日(月)20時54分54秒
どうして、簡単に後ろを取られてしまったのか…?
戦いに夢中になって、気がつかなかった…?
まさか…!そんな柔な『訓練』は、うけていない!!
「正直言って…あの、浜津さんの娘さんは…どうでもいいんです…」
楠本は、ゆっくりと言葉を続けた。
「ど…どうでもいい…?どういうことだ!?てめぇ…!!」
「つまり…私達を誘き出す為に…誘拐したのね?」
梨生奈が、じっと楠本を見据えて言った。
「そうです…。あなた方が、あの娘さんを尾行している所を確認しましたから…」
「…!?」
つまり、自分達は逆尾行をされていた…?
まったく気がつかなかった…。
やはり、この楠本という男…只者ではなかった。
「あなた達ですね?昨夜、私達の計画を台無しにし…うちの従業員を警察に突き出したのは…」
梨生奈は、答えない。
「あの夜、大怪我した加藤組の人達がおっしゃってました。トンファーと、金属バットと、ボウガンを持った少女達に襲われたと…。そう…あなた達です…」
「そうよ…。私達よ…」
もう、しらばっくれても意味はないと、梨生奈は観念した。
942投稿者:リリー  投稿日:2008年03月10日(月)20時59分00秒
「さあ…。そのトンファーを捨てて下さい。こちらのお嬢さんも、ヌンチャクを捨てて…」
「『ムーン・ライト』!!構う事ねぇ!!やっちまえ!!」
羅夢が怒鳴った。
その羅夢のこめかみに、銃口が押し付けられる。
「できるわけないですよねぇ…。『ムーン・ライト』さん?」
「そうね…。できるわけないわ…」
梨生奈は、トンファーの構えを解く。
「そっちに…投げるわよ…?」
その瞬間、梨生奈はトンファーを、楠本の顔面に向けて投げつけた。
銃声が響く。
空中で、トンファーは真っ二つに折れた。
羅夢は、ヌンチャクを楠本に叩き込もうと振り返ったが、身動きがとれない。
楠本は…二丁、拳銃を構えていた。
一方は梨生奈のトンファーを撃ち落し、一方は、羅夢の額に向いている。
943投稿者:リリー  投稿日:2008年03月10日(月)20時59分35秒
「…!!」
2人は、指一本、動かすことができなかった。
「ククククク…。もしかしたら、私を倒せると思いましたか?」
「…やっぱり…無理だったわね…」
「やっぱり…?なるほど…私の実力を測る為といった要素が大きかったようですね…。つまり…私は、拳銃で脅してはいるものの、本当に殺すつもりはないと…そう、判断したわけですか…」
楠本は、また含み笑いをする。
「ナメられてるんですかね?この私…」
そう言うと、羅夢の手元に銃口を移し、何の躊躇もなく発砲した。
「痛ぇ!!」
羅夢が叫んだ。
衝撃で、手がビリビリと痺れている。
羅夢の持っていたヌンチャクの鎖が、弾丸で真っ二つに断ち切られ、冷たいコンクリートに転がった。
「さ、もう一本のトンファーも…捨てましょうか…?今度は素直に…」
「………」
梨生奈は、黙って、残り一本のトンファーを地面に転がした。
「さあ、いつまで寝てるんですか?加藤組のみなさん…。早くこのお嬢さん達を連れてきますよ?」
梨生奈達に叩き伏せられていたヤクザ達は、呻きながら、ゆっくりと起き上がってきた。
944投稿者:リリー  投稿日:2008年03月10日(月)21時00分32秒
今日はこれでおちます
945投稿者:あげ  投稿日:2008年03月10日(月)21時09分05秒
  
946投稿者:117  投稿日:2008年03月10日(月)21時18分05秒
元帥の罠にハメられてしまいましたね。「チームR」が大ピンチ!?
ヤグザたちが起き上がる姿は、ゾンビみたいですね(笑)。
二人はどうなるのか・・・続きも楽しみです!
947投稿者:エアバッグがボン!のあたり  投稿日:2008年03月11日(火)00時46分00秒
カッコいい!!
948投稿者:うわっ!!大ピンチ!!  投稿日:2008年03月11日(火)09時04分30秒
これ以上誰か着たらもう大変だよ!!
949投稿者:あげ#age  投稿日:2008年03月11日(火)16時42分50秒
あげ
950投稿者:リリー  投稿日:2008年03月11日(火)21時05分40秒
インターネットにつながらなかったので、少し更新が遅れました

チームRのピンチは続きます

それでは、更新します
951投稿者:リリー  投稿日:2008年03月11日(火)21時07分30秒
梨生奈と羅夢は、その開発途中のビルの中の一室に連れ込まれた。
その空間は、まだ打ちっ放しのコンクリート壁をさらし、天井も、空調パイプや送電コードがむき出しの状態である。
そこには、10人程の、加藤組の組員が居り、地下駐車場で梨生奈達と戦った者と合わせて、20人程にもなる。
その20人ものヤクザに囲まれては、さすがの梨生奈と羅夢でも、どうすることもできない。
しかも、楠本の二丁拳銃がそれぞれ、2人の心臓に狙いを合わせている。
「へん…!アタイ等2人に対して、20人…?ちょっと、ビビリすぎなんじゃねぇの?」
羅夢が、ぐるりと取り囲むヤクザに対し、鼻で笑った。
「んだと?コラ!!」
「なめてんじゃねぇぞ!!ガキ!!」
ヤクザ達は、一斉に怒号を浴びせる。
楠本は、拳銃を持つ手を少し振って、ヤクザ達を静める。
「それは、無理もありませんよ…。昨夜、あれだけ完膚なきまで叩きのめされたんです…。用心に用心を重ねて、こんな人数になってしまいました…」
梨生奈は、そんな楠本をキッと睨みつけながら言う。
「何を言ってるの?あなたなら、一人でも充分対応できるでしょ?」
梨生奈の言葉に、楠本は、肩をすくめる。
「さて…それは、どうでしょう…?この私も、用心に用心を重ねるタイプなのでね…」
そして、再び銃口を、梨生奈達に向けた。
952投稿者:リリー  投稿日:2008年03月11日(火)21時08分16秒
「さあ…。まず、あなた達が何者なのか…。お聞きしたいのですが…」
「………」
梨生奈も羅夢も、ダンマリを決め込む。
「さっき、『ムーン・ライト』とか、『ライトニング・ボルト』とか、呼び合ってましたが…まさか、本名ではないですよね?」
「………」
2人は、答えない。
「答えなければ、どちらか片方を撃ちますよ?」
「そうだよ、本名だ。アタイ達、こんな顔をしてるけど、外人なんだよね〜」
羅夢が答えた。
「てめぇ、このガキ!!ふざけてんのか!!」
「極道、なめんな!!」
ヤクザ達が、一斉にがなりたてる。
「うるせぇ!!この、野良犬共が!!」
羅夢も負けじと、がなりたてた。
「『ライトニング・ボルト』…。あまり、この手の輩は、興奮させないで…」
梨生奈が、羅夢の袖を引っ張った。
「ははは…。これはいい…!まあ、一応答えてくれたので、約束通り撃つのはやめておきましょう…」
ヤクザ達とは対照的に、楠本は落ち着き、紳士的に振舞っている。
弱い犬ほどよく吠える…逆もまた、真…である。
953投稿者:リリー  投稿日:2008年03月11日(火)21時09分06秒
「あなた達の着ている、その制服…聖テレジア女子学園…つまり、浜津さんの娘さんと同じ学校の制服ですね?まさか、あなた達も、聖テレジアの学生なんですか?」
「そうかもしれないし…そうでないかもしれない…」
梨生奈は、否定も肯定もしない。
「ふ〜む…。聖テレジアは、日本有数のお嬢様学校…あなた達みたいに、トンファーやヌンチャクを振り回すような生徒がいるでしょうか…?」
楠本は、拳銃を構えたまま、考え込む。
「もしかしたら…あの、浜津さんのお嬢さんを護衛するのに都合がいいから、聖テレジアの生徒の変装をしていたとか…?」
勝手に、見当ハズレな考えを巡らせる、楠本。
梨生奈の答え方は、コレを見越したものだった。
「生徒手帳などという物は、持ち歩いておりませんよね?いや…その手帳も、偽造ということも有り得る…」
楠本は、梨生奈の胸ポケットに入っている物に注目する。
「…ソレ…携帯電話ですね?ちょっと、見せてもらえますか?」
拳銃を上下に動かし、寄越せという仕草をする。
梨生奈は、携帯を取り出し…楠本に投げて寄越した。
楠本は、右手で持っていた拳銃を左脇の下に挟み、その携帯を受け止める。
「…?これは…?」
画面には、何も映っていなかった。
電源を入れても、何も変らない。
「あなた…。データを消去したのですね…?」
楠本の目は、少し険しいものに変った。
954投稿者:リリー  投稿日:2008年03月11日(火)21時09分28秒
そう…梨生奈は、楠本に投げる直前、隠しボタンを押し、電話帳や着信履歴などデータを全て破棄したのだった。
「ふむ…。これで、あなたがたが何者なのか、わからなくなりました…。と同時に…やはり、あなたがたは重要な秘密を握っている…!」
楠本は、側のヤクザに指図をする。
ヤクザは、梨生奈と羅夢、それぞれの前に段ボール箱を置く。
「………?」
2人は、その箱を、ただ見詰める。
「さて…。あなた達、着ている物…身に着けている物、全てを脱いで、その箱の中に入れて下さい」
「…!?な、何ですって?」
楠本は、ゆっくりと繰り返す。
「着ている物を…身に着けている物を全て脱いで…この箱の中に入れて下さい…と、言っているのです」
「て、てめぇ…ロリコンか!?」
羅夢の言葉に、楠本は悲しそうな顔をして首を横に振る。
「やめて下さい…。私は、成人女性を愛する…至って正常な男です…。用があるのは、脱いだ衣服の方です」
「………つまり…制服フェチ?」
梨生奈の言葉に、今度は苦笑いをする楠本。
「あなたがたが、いけないのですよ?何も喋って下さらないから…あなたがたの所持品を片っ端から調べるしかないんです」
「調べたって、何も出てこないわ…」
「どうでしょう?この携帯…ここに見慣れないボタンがある…。普通、こんな所にボタンはない。データ消去の為のボタンでしょ?つまり…もっと特殊な道具が見つかるかもしれない…」
そして銃口を、ゆっくりと下に二、三度下げる。
早く脱げ…と言っているのだ。
955投稿者:リリー  投稿日:2008年03月11日(火)21時10分39秒
「仕方がない…。言うとおりにしましょう…」
梨生奈は、ベレー帽を脱ぎ、セーラー服の緑色のリボンを解き始める。
「ちくしょう…」
羅夢は、唇を噛み締めながら、梨生奈に倣う。
ベレー帽、セーラー服、スカート、靴、靴下、下着…そして、腕時計からアクセサリー、ヘアピンまで、身に着けている物は全て身体から外し、段ボール箱の中に入れた。
梨生奈も羅夢も、暗殺組織『TTK』の元『戦士』…裸体を隠そうともせず、堂々と直立不動で立っている。
顔を赤らめ、身体を隠すような恥じらいの姿勢を見せれば、ヤクザ達を喜ばせるだけだと思ったからだ。
2人のヤクザが、頭から爪先までジロジロと、裸になった梨生奈と羅夢の身体を舐め回すように眺めながら、段ボール箱を楠本の元に運んだ。
別のヤクザはニヤニヤと笑いながら、側にいる者の耳元に何やら囁いている。
「イヤらしい目で見てんじゃねぇよ!!この、変態!!」
羅夢は怒鳴るが、そんな態度もヤクザ達を楽しませるだけだった。
楠本は宣言通り、2人の裸は一瞥もせずに、脱いだ制服を丹念に調べ始めた。
調べ終った白いセーラー服を、隣のヤクザに渡す。
ヤクザは、ナイフでセーラー服を、ズタズタに切り裂き始める。
「あらら…。勿体ねぇ…。ソレ、その筋のマニアに売れば、いい金になるのに…」
羅夢の言葉に、楠本は少し不機嫌そうに答える。
「いりませんよ…そんなはした金…。あなたがたがブチ壊した私達のビジネスは、そんなお金では埋めることはできません…」
そして、靴や腕時計をもバラバラにして調べた結果、何も手掛かりは見つけられなかった。
「さて…何も出てきませんでした…。もう、あなたがたから直接聞き出すしかなくなりましたねぇ…」
956投稿者:リリー  投稿日:2008年03月11日(火)21時11分29秒
それでは、今日はこれでおちます
957投稿者:117  投稿日:2008年03月11日(火)21時24分53秒
あらら、元帥たちは,二人を裸にしてまで,調べますか(苦笑)。
持ち物からは何も見つからず、二人の証言しかない・・・どうなるのか、続きが楽しみです!
958投稿者:元帥怖すぎる  投稿日:2008年03月11日(火)22時17分29秒
はやく誰かチームRを助けてくれ
959投稿者:らりるれろで  投稿日:2008年03月11日(火)22時23分50秒
千秋に裸を見られたと言って怒る梨生奈に、羅夢が「この前の仕事で何人の男に裸見られたんだ?たいしたことないだろ」みたいな台詞なかったっけ?
このことなのかな?
960投稿者:堂々としているチームRが  投稿日:2008年03月12日(水)08時40分40秒
カッコいい。
961投稿者:らりるれろで  投稿日:2008年03月12日(水)13時34分43秒
2人が全裸で全力疾走した?
というくだりがあったようなきがする?
気のせいかもしれないけど・・・
間違ってたらすいません。
962投稿者:何?これ  投稿日:2008年03月12日(水)13時37分34秒
下手くそ
963投稿者:デジ  投稿日:2008年03月12日(水)13時44分33秒
めっちゃお久しぶりです。昨日は卒業式でした。
緊迫した状態のときに来ちゃいましたね(少し苦笑)
チームRはどんな白状をするか!そしてチームE、チームNはいつ来るか!
続きも楽しみです!
964投稿者:リリー  投稿日:2008年03月12日(水)20時46分23秒
みなさん、細かい所を覚えてますね
『らりるれろ』の時は、何も考えずに勢いで書いてましたんで、辻褄を合わせるのに大変です
このエピソードも、実はそうなんです

チームRの危機は、大きくなります

では、更新します
965投稿者:リリー  投稿日:2008年03月12日(水)20時47分45秒
全裸の2人に、ヤクザ達が近づく。
「おい!何すんだよ!?さわんな!!」
「『ライトニング・ボルト』!大人しくして…!」
梨生奈は、羅夢の肩を抱いた。
梨生奈と羅夢は、黒いガムテープで、後ろ手に、がんじがらめに縛られた。
そして2人は、足を乱暴に払われた。
「うぐ…!」
腕を縛られている為、受身もとれず、冷たいコンクリートの床に転がる、梨生奈と羅夢。
ヤクザ達が2人の身体の上に、足で踏みつける。
身動きがとれない。
「ちくしょう!!足、どかせよ!!」
羅夢は、噛み付かんばかりに、喚き散らすが、虚しくコンクリートの室内に木霊するだけだった。
楠本は、2人の側まで近づき、見下ろした。
「さて…あなたがたを観察してみると…何だか、姉妹のようで微笑ましいです」
楠本の言葉に、羅夢は顔をしかめながら言う。
「へん!!…こんなヤツ、姉貴なんて、ごめんだよ!!」
「私だって、もっと言う事を聞く、素直な妹がいいわ…!」
この期に及んで、まだ2人は言い争いをする。
「ははは…。こういう所も、また、姉妹っぽい…。すると…あなたが、お姉さんなんですかね…?」
楠本は、梨生奈に視線を移す。
966投稿者:リリー  投稿日:2008年03月12日(水)20時48分10秒
「ところで…お姉さん…。あなた、身長は何センチですか?」
「………?」
梨生奈は、楠本の質問の意味がわからない。
「…私は…別に、お姉さんじゃないけど…?私の身長がどうかしたの?」
「どうか、教えて下さい。これは、質問であって、決して拷問ではありません…。あ、そうそう…くれぐれもゴマかさないでくださいね?」
「…ゴマかす…?」
「つまり…158センチなのに、160センチとか言わないように…。大変なことになりますから…」
「………あなたの言ってる意味が、全然わからないけど…160センチもないわ。156センチよ…」
「なるほど…156センチ…。だったら、150センチと、しておきましょうか…」
楠本は、ヤクザに目で合図をする。
ヤクザは脚立を立て、その上に登る。
そして…ドリルで、何やら穴を開け、大型のフックを取り付ける。
「………?」
梨生奈も羅夢も、今から何が始まるのか、わからない。
ただ、嫌な予感だけは感じている。
967投稿者:リリー  投稿日:2008年03月12日(水)20時48分33秒
そこに…そのフックに掛けられた物は…ロープ…。
それは、絞首刑に使うかのように、輪のつくられたロープ…。
そのロープはずずずっと延ばされ、羅夢の首に掛けられた。
「お、おい…!」
羅夢の顔色が変った。
「さあ…。お姉さんというものは…妹さんを、いろいろと助けるものです…」
ヤクザ達は、3人がかりでロープを思いっきり引っ張った。
羅夢の身体は、そのまま宙吊りとなった。
「ぐ…ぐああああ!!!」
後ろ手に縛られた羅夢は、無抵抗のまま、首を括られ、宙で回転する。
足をバタつかせるが、それが余計に羅夢の首に、ロープが食い込む。
「ら…羅夢ぅ!!」
梨生奈は叫んだ。
「り…梨生奈ぁ…ぁ…」
羅夢は呻いた。
「ほほぅ…。お姉さんの方は『梨生奈』…。妹さんの方は『羅夢』と言うんですね?なかなか、可愛い名前だ…」
目の前の地獄の様な光景に似合わない言葉を、楠本は呑気に言い放った。
968投稿者:リリー  投稿日:2008年03月12日(水)20時48分58秒
「ぐはぁ…!が…ぁ…!ぁあ…!!」
顔を真っ赤にさせて苦しがる羅夢を、あくまでも冷静に、楠本は見上げる。
「さ、羅夢さん…。暴れないでくださいね…。今から、高さを調節しますので…」
ヤクザは、羅夢の暴れる足を、乱暴に掴んで宙に固定させる。
もう一人のヤクザは、メジャーで几帳面に、150センチ測る。
ロープを引っ張っているヤクザ達は、ロープを握る力をもう少し緩めると、羅夢の爪先の位置を、丁度床上150センチに微調整する。
「羅夢!!羅夢ぅ!!」
腕を後ろ手に縛られ、床に踏みつかれて身動きがとれない梨生奈は、羅夢の名前を叫ぶことしかできない。
「さて…問題です。床上150センチに吊り上げられた羅夢さんを、身長156センチの梨生奈さんが助け出すには…どうしたらいいでしょう?」
楠本の指を鳴らす合図で、ヤクザは、梨生奈から足をどけた。
「羅夢〜〜〜!!!」
縛られているにも関わらず、梨生奈は跳ね起きる。
助ける方法…一つしかない…!!
梨生奈は、暴れまわる羅夢の足のすぐ下に、頭を潜り込ませる。
「羅夢!!乗って!!私の頭の上に乗るのよ!!」
梨生奈の頭は、バタつく羅夢の足で何度も蹴られた。
それでも、羅夢は何とか、梨生奈の頭の上に、両足を乗せることができた。
969投稿者:リリー  投稿日:2008年03月12日(水)20時49分18秒
「がふ…!げふ…!!ゴホ…ゴホ…!!」
羅夢は、一気に咽た。
「だ、大丈夫!!動かないで!!羅夢!!私が支えるから!!私の頭に乗ってて!!踏み外したら、ダメよ!!」
梨生奈の首は、ぷるぷると震えている。
羅夢の全体重が、そのか細い首に、全て圧し掛かっているからだ。
「ぐ…うぅ…。り…梨生奈…」
「は…あうぅ…!くぅ…!」
梨生奈の足は、ふらついている。
自分が、支えなければ…羅夢は首を吊って死んでしまう。
身体を小刻みに震わせながら、梨生奈は、冷たいコンクリートに足を踏みしめる。
「り…梨生奈ぁぁぁ…」
「が…がんばって…!!羅夢…!!」
お互いの名前を呼ぶことしかできない、2人。
「ははは…!正解です!いいですねぇ…。思った通りの行動をしてくれるんですから…」
楠本は、愉快そうに拍手をした。
「ひゃあっははははぁぁぁ〜〜〜!!!」
「いいぞ!いいぞ!がんばれ〜!!」
ヤクザ達の下品な笑い声が、薄暗い室内に響いた。
970投稿者:リリー  投稿日:2008年03月12日(水)20時49分37秒
今日はこれでおちます
971投稿者:リリー  投稿日:2008年03月12日(水)20時57分49秒
デジさん、ご卒業おめでとうございます
972投稿者:117  投稿日:2008年03月12日(水)21時23分23秒
あらら、二人の名前もバレてしまいましたね。
「チームR」、ますます追い詰められてきました・・・恐るべし、元帥。
二人はどうやって助かるのか(助かることが出来るのか)?続きも楽しみです!
973投稿者:リリーさんの小説はすごい!  投稿日:2008年03月12日(水)21時32分56秒
物語に引き込まれます
続きをもっと読みたいっていつも思う!
974投稿者:元帥ひどすぎる  投稿日:2008年03月12日(水)21時54分25秒
残酷な拷問方法だな
チームRに勝ち目はあるのか
975投稿者:デジ  投稿日:2008年03月12日(水)22時31分56秒
そうきましたか(笑)
拷問のシーンはまだまだ続きそうですね
チームRに迫るピンチはいつまで長引くか?続きも楽しみです!
976投稿者:らりるれろ  投稿日:2008年03月12日(水)22時33分55秒
で生きてるから、助かるんだろうけど・・・
砲丸の球でぶん殴った時点で、元帥は怖いと思ってたけど
想像以上の冷血漢だな
最初は、気のいい兄ちゃんって感じで登場したのに・・・
977投稿者:リリー  投稿日:2008年03月13日(木)20時56分43秒
私は、楠本さん大好きなんですけどね
半端無い悪人にしてみたかったんです

チームRの心配をして下さってますが、今日は、愛美の視点に変わります

では、更新します
978投稿者:リリー  投稿日:2008年03月13日(木)20時57分38秒
梨生奈と羅夢が囚われている開発途中のビルの隣、天歳市内で最大のデパート、テレヴィア百貨店の五階にある女性下着売り場奥の女子トイレの個室に、伊倉愛美はいた。
息も絶え絶え、恐怖のあまり、身体を震わせながら、ただ一人、不安と戦っていた。
「う…う…う…ひっく…ひっく…」
愛美は、次から次へと溢れ出す涙を拭いている。
どうして、自分はこんな目に遭っているのだろう…。
車内でヤクザ達は、父親の行方のことをいろいろ話していた。
父親が逃げ出した翌日のことだ。
一体、何をしでかしたのだろうか。
「もう…!お父ちゃんのバカ!!」
側にいるときも、遠く離れても、結局あの父は、自分にとって迷惑な存在だ。
しかし、今、ここにはいない父親を責めても仕方がない。
たしか、自分を助けてくれた女…いや、女の子?…が、自分に携帯電話を渡したのを思い出す。
胸ポケットから、薄型の携帯電話を取り出す。
愛美は、祖母に育てられている。
老舗の団子屋を営んでいるのだが、決して暮らしは楽ではない。
だから欲しくても、祖母に携帯電話をせがむことはなかったので、愛美は携帯の使い方には詳しくない。
思いつくまま、ボタンを押してみる。
そして、何とか電話帳を引き出し、さっき聞いた名前…『マッド・エッジ』を探し出した。
979投稿者:リリー  投稿日:2008年03月13日(木)20時58分10秒
愛美は、『マッド・エッジ』を画面に出し…おそらくこのボタンだろうか…受話器の上がった絵が描かれたボタンを押す。
初めて使う、携帯電話…緊張しながらコール音を聞いていたが、何と1回で相手は出てしまった。
〔おう!ダッチャか?どうした?〕
女性だが、随分乱暴な印象のある声が出た。
「あ…う…」
〔どうした?デコッパチはどうしてる?〕
「あ…あの…。『マッド・エッジ』さん…ですか…?」
〔…!?誰だ!?てめぇ!!〕
途端に、相手の声は、怒号に変わる。
「ひぃ…!」
〔『ひぃ…!』じゃ、ねぇよ!!名乗りやがれ!!コンチクショウ!!何で、ダッチャの電話で掛けてんだよ!!〕
「あ…あ…あの…。私…伊倉…愛美と…申します…」
〔伊倉!?どこの伊倉だ!!…ん?伊倉?伊倉…?〕
しばらく、沈黙が続く。
〔ああ…!はいはい、昨日の…浜津様のお嬢様ですね?どうも、どうも。ご無事でしたか?〕
途端に、営業喋りになる、『マッド・エッジ』…その声から察するに、昨日、有明埠頭まで自分を連れて行った、あの外国人の女…ダーブロウ有紗。
980投稿者:リリー  投稿日:2008年03月13日(木)20時58分31秒
「い、今…『ご無事でしたか?』って聞きましたね…?と、いうことは…私がさらわれたのを…ご存知なんですか?」
〔はい。存じております。で…教えて頂きたいのですが…お嬢様を助け出したのは…当、探偵社の者なのでしょうか?〕
「よ…よくわからないんですが…何か、『オラ、オラ』言ってました…」
〔…ダッチャだ………アンチクショウ…。やっぱり、命令違反しやがったな…〕
「あ…あの…?」
〔あ、いやいや…!何でもございません。で、当探偵社の者は、一緒ではないのですか?〕
「この携帯を、私に渡して逃がしてくれました。で…おそらく…その探偵さんは…今も、戦っているんだと思います…」
〔つまり…今は、お嬢様一人なのですか?〕
「はい…。私…恐くて…恐くて…」
〔い、今、どこに…?〕
「天歳駅前のデパート、テレヴィア百貨店の五階にある…女性下着売り場の奥の…女子トイレにいます…」
〔女性下着売り場…?ほほう…さすが、お嬢様…聡明でいらっしゃる!!〕
「え…?え…?」
〔ヤクザが下着売り場にウロつくなんて…どう見ても怪しまれますものね。女が隠れるには、最適な場所です〕
「は…はぁ…。あ、ありがとうございます」
愛美は、思いがけず褒められて、頭を下げた。
981投稿者:リリー  投稿日:2008年03月13日(木)20時58分58秒
〔それでは、このままそこを動かないで下さい。当探偵社の者が、すぐにお嬢様を保護致します〕
「は…はい…!お、お願いします!!」
〔あまり大きな声は、お出しにならない方がよろしいかと…〕
ダーブロウ有紗の声は、低くなった。
「あ…そ、そう…ですね…」
〔で…お嬢様…あなたを救出した探偵の顔は…〕
「見てません…。こっちを見るな、と怒鳴られました」
〔そうですか…。それは、失礼致しました…。私の方から、きつくお灸を据えておきますので…〕
「い、いいんです…!私を…助けてくれたのですから…」
〔…お嬢様がそうおっしゃるのなら、いいでしょう…。では、早急にそこへ、人を寄越しますので…。どうか…お気をつけて…〕
電話は切られた。
「はぁ〜…」
一応、安堵の息をつく愛美。
それにしても、自分を助けてくれたのは、一体、誰なのだろう…?
何で、姿を見てはいけなかったのか…?
そして…あと、もう一人いたような…。
982投稿者:リリー  投稿日:2008年03月13日(木)20時59分23秒
「ダッチャのヤツめ〜〜〜!!!あれ程、手を出すな、と言ったのに…。いや、この場合は、デコッパチの責任だな」
この前の七海といい、今回の羅夢といい、梨生奈は暴走を止めることが不得意なのか?
だからと言って、中村有沙のように、完膚なきまで叩きのめすのも褒められた行いではないが…。
梨生奈へ、携帯をかけるダーブロウ有紗だが…。
〔お客様のお掛けになった電話は、電源を切っているか、電波の届かない所にあるため、掛かりません…〕
「あん?」
ダーブロウ有紗は、携帯画面を見る。
そこには、『ムーン・ライト…データ消去』と表示されている。
「データ消去だと!?」
『データ消去』…それは『今、敵に囚われてる』ということである。
敵に捕まった場合、全ての身元を示す物を全部破棄するのが、『R&G探偵社』の掟だ。
あの、透明アクリルの名刺だって、少し力を入れて折り曲げれば、全面真っ白になる程のヒビが入り、読めなくなる。
逆に言えば、身元などの情報を聞き出そうとすれば、その手段は拷問以外にないのだ。
今、『チームR』の2人は、酷い拷問を受けているに違いない。
相手は、ヤクザ…拷問の知識と技術は、かつて自分達が所属していた犯罪組織『TTK』にひけをとらない。
「これは、グズグズしてられねぇ…。さて…どうやって『チームR』を助け出そうか…」
ダーブロウ有紗は3秒程考え込むと、何か閃いたらしく、今まで話していた携帯を出してかけ始めた。
983投稿者:リリー  投稿日:2008年03月13日(木)20時59分52秒
それでは、今日はこれでおちます
984投稿者:117  投稿日:2008年03月13日(木)21時17分26秒
愛美に対し、急に態度を改めるダーさん(笑)。
3秒間で「チームR」を助ける方法を考えたんですか、すごいですね。
ダーさんがどんな行動に出るか、続きも楽しみです!
985投稿者:アマノガワ  投稿日:2008年03月13日(木)21時27分32秒
こんばんは、今回も更新お疲れ様です
ダーさんの変わりようは面白いですねw
3秒で思いつく作戦…ダーさんのことだから、
何も思いつかなかった⇒とりあえず四天王で殲滅。
なんてことになりかねない気がw
986投稿者:>今まで話していた携帯を出してかけ始めた  投稿日:2008年03月14日(金)08時56分33秒
愛美を使ってなにかやろうと??
987投稿者:リリー  投稿日:2008年03月14日(金)20時55分06秒
117さん、アマノガワさん、毎度コメントありがとうございます
本当に毎日、欠かさず読んでくださってると思うたびに、感極まります

986さん、本当に鋭いですね

では、更新します
988投稿者:リリー  投稿日:2008年03月14日(金)20時56分08秒
〔も…もしもし…。探偵さんですか…?〕
ダーブロウ有紗がかけた相手は、ついさっきまで話していた…伊倉愛美だった。
「ええ。あの〜…今から、場所を移動して頂けませんか?」
〔え!?い、今…ですか!?〕
「天歳駅の時計台モニュメントの前に立って、待っていて下さい」
〔そ、そんな、人目につく所にいたら…〕
「大丈夫ですよぉ。考えても見て下さい。やつ等だって、人目につく所で、あなたを誘拐するなんて、できませんから…」
そう言えば、自分が拉致されたのは、人通りの少ない裏通りだった。
〔で、でも…い、今、動き回ったら…〕
「できるだけ人の多い、大通りを通って、駅へ向かって下さい。すぐに、うちの社の者がお嬢様を見つけ出し、保護致します」
〔え、駅前だったら…確か交番が…〕
「あ…!ダメです!交番には行かないで下さい!!必ず、当、探偵社の者の到着を待って下さい」
〔で…でも…急に場所を移動しろ…とか、交番には行くな…とか、理由は何なんですか?〕
「あ…。それは…」
そう…それは全て、梨生奈と羅夢を助け出す為の行為…愛美の保護とは、何の関係もない。
989投稿者:リリー  投稿日:2008年03月14日(金)20時57分04秒
ダーブロウ有紗は、咄嗟に嘘をつく。
「先ほどの電話は、盗聴されている恐れがあります…」
〔え…!?と、盗聴…!?つ、つまり…筒抜けってことですか?〕
「はい!筒抜けです!」
〔あああ…ど、ど、どうしよう…〕
「ですから、早くさっき言った待ち合わせ場所に…」
〔で、で、でも…交番に行ってはダメなんですか?〕
「ダメです!!あそこの交番の警官は、ヤクザとつながっているのです!!」
〔そ…そうなんですか…?〕
「そうなんです!」
ダーブロウ有紗は、駅前交番で働く善良なお巡りさんに、心の中で謝罪した。
〔で、でも…この電話は、盗聴されては…〕
「さっきの携帯とは違う電話でかけているので、大丈夫です」
ダーブロウ有紗は、この嘘をついた途端、思わず舌を出した。
着信履歴を見れば、同じ番号なのは、明白になるからだ。
しかし幸い、愛美は携帯には疎い。バレることはなかった。
何とか愛美を言い包めて、ダーブロウ有紗は携帯を切った。
「さてと…不安なのは、駅に行く途中でやつ等に捕まらないかどうかだ…」
そして、今度は『ダブル・フィッシャーマンズ・ノット・オールド』…俵姉妹の姉、有希子へとかけた。
990投稿者:リリー  投稿日:2008年03月14日(金)20時58分23秒
愛美は、恐怖と不安におののきながら、駅前を目指す。
ダーブロウ有紗の言う通り、できるだけ人に紛れて移動する。
幸い今は夜の7時…帰宅するサラリーマンやOL、買い物客などで、平日と言えども賑わっていた。
できるだけ、スーツを着た真面目そうなビジネスマンの側を歩く愛美。
ノーネクタイの者、派手なシャツを着た者は、ヤクザの可能性がある。
テレヴィア百貨店から、駅前の時計台モニュメントまで、数十メートル程の距離だったが、途轍もなく長い距離に、愛美は感じた。
到着した時には、冷や汗で全身が濡れていた。
「早く…早くぅ〜…。早く来てぇ〜…」
愛美は、泣き出しそうな顔をして待ち続けた。
991投稿者:リリー  投稿日:2008年03月14日(金)20時59分11秒
そんな、愛美の姿を遠く…駅前のロータリーの車内から眺める二人の少女がいた。
それは『R&G探偵社』社長秘書の…『チームT』…俵姉妹だ。
「あ〜あ…。あの子、泣きそうだよ…。可哀そうに…」
妹の…俵小百合が、そう呟いた。
「でも…ダーさんも、鬼畜だよね…。『チームR』を助け出す為に、あの子を利用するなんて…」
姉の…俵有希子は、溜息をつく。
「でも…あの子、雨に濡れて震えてる仔猫みたい…。可愛いから、いつまでも眺めていたい…」
「う…。お姉ちゃんも、負けず劣らず鬼畜だねぇ…」
「あら?今頃気がついた?おほほほ…」
「いえ、いえ…改めて、そう思ったのよ。おほほほ…」
姉妹は、不安の真っ只中にいる愛美をよそに、ふざけ合う。
「あ…!お姉ちゃん!やっぱり、ダーさんの言う通りだったね」
有希子は、小百合の指差す方向を見た。
愛美のいる時計台モニュメントから30メートル程後方から…ヤクザ風の男が二人、じっと彼女を睨んでいるのだ。
992投稿者:リリー  投稿日:2008年03月14日(金)21時01分29秒
「あのガキ…。やっと見つけたと思ったら、何でまた、こんな所でグズグズしてんだ?」
「ああ…。側にはポリ箱(交番)もあるってのによ…。誰か待ってんのか?」
「しかし、こんな所じゃ、さらうのは無理だな…。人目につきすぎる」
「まあ、いい…。あのガキの家はわかってんだ。たしか、ババアが一人いるだけだ。家を襲うこともできるだろう…」
楠本は、愛美のことはどうでもいい、と梨生奈達に言った。
しかし、それは楠本の個人的な意見だ。
楠本の興味は、裏切った浜津の行方よりも、自分達を出し抜いて、ビジネスをオシャカにした、少女達の正体を暴くことに向いている。
相変わらず組長の加藤は、裏切り者の浜津に対して激怒しており、何としてでも行方を追って、制裁を加えたいと思っているのだ。
加藤の命令によって、自分達は、本来余所者である楠本の手足となって動いているが、本来の主人の命令だって聞かなければならない。
「しかし…一体、誰を待ってるんだ…?」
その時だった。
「私達よ…」
彼等の後ろで囁く声がする。
993投稿者:リリー  投稿日:2008年03月14日(金)21時01分51秒
そして、チュイィィーンという、奇妙な音…。
2人の親指に、激痛が走る。
「ぐあ…!!?」
「い、痛てててて!!!」
ヤクザ達は、悲鳴をあげる。
「お静かに!さもないと、あなた達の指を全て切り落とすわよ?」
「…と、言っても、小指は、お2人とも既に無いようですけど…」
後ろには…2人の少女…俵姉妹が、いつの間にか立っている。
親指に…金属でできた極細の『糸』が、巻き付けられていた。
「だ、誰だ…!?て、てめぇ等…!!」
「あ、あの…ヌンチャク振り回してた、ガキの仲間か!?」
姉妹は、そっと囁く小声で、ヤクザ達の耳をくすぐった。
「質問するのは、コッチよ…」
「その、ヌンチャク振り回してたガキ…どこに連れて行ったの?」
キリキリと、親指を締め付ける糸…鋼線は、音を立てた。
994投稿者:リリー  投稿日:2008年03月14日(金)21時02分32秒
今日は、これでおちます
995投稿者:117  投稿日:2008年03月14日(金)22時04分17秒
ダーさんの作戦とは、愛美を利用して,「チームR」を助け出すことだったんですね!
上品な笑い方(!?)にしては,ヤクザたちの後ろから近づいて攻撃する・・・なかなかの作戦ですね。続きも楽しみです!
996投稿者:おっ  投稿日:2008年03月15日(土)02時52分50秒
おもろ〜
997投稿者:世代(?)が違うから顔はなかなか想像できないけど  投稿日:2008年03月15日(土)09時11分33秒
俵姉妹が結構好き。
998投稿者:俵姉妹は  投稿日:2008年03月15日(土)09時46分02秒
こんな感じだよ
2001〜2002まで一緒に出てたけど、姉妹で不思議ワールドをつくってて周りをドンびきさせてたw

>「ダメです!!あそこの交番の警官は、ヤクザとつながっているのです!!」
〔そ…そうなんですか…?〕
「そうなんです!」
ダーブロウ有紗は、駅前交番で働く善良なお巡りさんに、心の中で謝罪した。
ここ、ワロたwww


999投稿者:おもしろ  投稿日:2008年03月15日(土)09時53分28秒
リリーさん頑張れ
1000投稿者:1000  投稿日:2008年03月15日(土)09時53分53秒
ゲット
1001投稿者:兄弟戦士といえば  投稿日:2008年03月15日(土)10時15分36秒
レイシーズオンリーだからなぁ 自分の場合。

1000おめw
1002投稿者:あげ  投稿日:2008年03月15日(土)21時35分36秒

1003投稿者:908  投稿日:2008年03月15日(土)22時17分30秒
無事に見れました。
すみません。
1004投稿者:リリー  投稿日:2008年03月15日(土)23時06分25秒
こんな遅くにすみません
更新します

908さん、よかったです
どうやら、過去ログ行きはなさそうです

俵姉妹の不思議な脱力感は私も好きです

1005投稿者:リリー  投稿日:2008年03月15日(土)23時10分48秒
「ぎゃははは!!がんばれ!がんばれ!」
「ほら、ほら!気合入れろよ!!」
「上のガキ、首吊って死んじまうぞ?」
ヤクザ達は、2人の全裸の少女を取り囲んで野次を飛ばす。
羅夢は、首に絞首刑のロープを掛けられ…顔を真っ赤にうっ血させて、梨生奈の頭の上に足を乗せている。
その梨生奈も、顔を真っ赤にさせながら、両足を踏ん張って羅夢の全体重を、その細い身体…首で支えていた。
楠本だけは、笑わず…冷めた目で、2人を眺める。
「さてと…あなたがたが何者なのか…教えて頂くことはできませんか?」
もう、かれこれ10分も、梨生奈と羅夢は、この非道な拷問に耐えている。
「上の…羅夢さんは、このまま死んでしまっても、私は一向に構わないのですよ?残ったあなた…梨生奈さんを、決して殺さず、真綿で首を締める様に、責め続けるだけです…」
楠本の声は、相変わらず穏やかだが…低く響く声には、非情なものを感じる。
1006投稿者:リリー  投稿日:2008年03月15日(土)23時11分12秒
羅夢は、喉を締め付けられ…消え入りそうな声で、下で懸命に自分を支えている梨生奈に言う。
「り…梨生奈…。に…逃げろ…。ア…アタイに…構うな…」
「な、何、言ってるの…?バカなこと…言わないで…!」
「お…おまえ…だったら…このぐらいの…包囲網…難無く、突破できるだろ…?」
「わ、私が…あなたを…見捨てられると…思うの…?あなただったら…私を…見捨てて逃げる…?」
「み、見捨てろよ…!!こ、こうなったのは…アタイの所為だ…!!アタイが…勝手な行動を…とったから…」
「ち…違うわ…!リーダーの…私の責任よ…!」
「ご…ごめん…梨生奈…。アタイの…アタイの所為で…おまえまで…巻き込んで…」
「喋らないで!!…た、体力を…失うだけだから…」
「くくくく…」
楠本は、口に手をあてて笑った
「いいですねぇ…。こういうやり取り…。お2人の深く、強い友情を感じます。その友情を、こんな所で終わらせては…いけませんよ?」
「う…うるせ…ぐはぁ…!!」
羅夢の身体がよろめき、首にロープが食い込む。
「ら…羅夢!!」
梨生奈は必死に、首の力で、羅夢の身体を押し上げる。
1007投稿者:リリー  投稿日:2008年03月15日(土)23時12分04秒
そんな梨生奈の元に、ヤクザが一人、近づいた。
「お嬢ちゃん…梨生奈ちゃんっていうの…?オジサンのこと、覚えてる?」
「…!?」
そのヤクザは、昨夜、梨生奈とエレベーター内で格闘した男だった。
梨生奈がトンファーで腹を突き、胃液を吐かされた、あの男だ。
「痛かったよぉ〜…。お腹…。ほら、見てよ…」
そう言うと、ワイシャツを捲り上げる。
右脇腹には、直径10センチ程の大きさの、どす黒い痣ができている。
「オジサンのお腹は、ブヨブヨだけど…梨生奈ちゃんのお腹は、カッコよく、引き締まってるねぇ…」
ヤクザは、梨生奈の腹を撫で始める。
「…う…くぅ…」
梨生奈は全身に、悪寒を感じた。
「うん、うん。さすがに若いねぇ…。お肌もスベスベだ…。おへそも…可愛いねぇ…」
梨生奈はへそに、人差し指を入れられる。
ヤクザの指は、梨生奈のへそを、いじくりまわす。
「は…あぅぅ…」
全身の力が抜けてしまう。
思わず、前屈みになる、梨生奈。
当然、羅夢の首に掛けられたロープが締まる。
1008投稿者:リリー  投稿日:2008年03月15日(土)23時12分35秒
「が…あああ…!」
呻き声をあげる羅夢。
「い…いけない…!!」
梨生奈は、背筋を伸ばす。
「そう、そう…。いけない、いけない…」
ヤクザはそう言うと、なおも梨生奈のへそを、いじり続ける。
「うぅ…くぅぅ…」
梨生奈は歯を食い縛り耐え続け、胸を張り、姿勢を保つ。
「梨生奈ちゃん、オジサンのお腹、殴ったでしょ?すごく苦しかったぁ〜…。あの後30分も、のた打ち回ったよ…」
ようやく、梨生奈のへそから指が離れる。
「どんだけ、苦しかったかわかる?」
その瞬間、梨生奈の腹に、強烈なボディーブローが放たれた。
「ぐはぁ…!!!」
梨生奈は、一瞬、身体が崩れた。
「あぐぁぁぁ…!!」
再び、羅夢の首が絞まる。
「そう、そう…。これぐらい、苦しかったんだよ…?」
ヤクザは、ニヤニヤしながら、うずくまる梨生奈を見下ろした。
1009投稿者:リリー  投稿日:2008年03月15日(土)23時13分06秒
「が…はぁ…あぁ…。ら…羅夢…」
梨生奈は、激痛を抑えながら、羅夢の足を、頭で押し上げた。
「ふぅ…ふぅ…ふぅ…」
梨生奈の身体の震えは、大きくなる。
「お?凄いねぇ…。随分我慢強いんだねぇ…」
ヤクザは、梨生奈の腹を、拳で連打する。
「ほれ!ほれ!ほれ!ほれ!」
「ぐぅ…!ぐぅ…!ぐぅ…!うぅ…!」
先ほどの殴打よりも、幾分、弱めではあるが、それでも連打はきつい。
梨生奈は、何とか姿勢を保てている。
「ほら!!」
またも、渾身のボディー・ブロー。
「ぐあぅ…!!あああああ…」
姿勢を崩さない代わりに、叫び声を上げた。
涙が、頬を伝った。
「あら、あら…泣いちゃった…。泣くほど痛かった?」
ヤクザが、梨生奈に顔を近づける。
「美味しそうな涙だ…」
そう呟きながら、タバコのヤニ臭い舌で、梨生奈の頬に流れる涙を、ベロリと舐め取った。
1010投稿者:リリー  投稿日:2008年03月15日(土)23時13分36秒
「ああ…あぁぁ…」
梨生奈は、もう、意識を保つことが困難になってきた。
身体は浮き上がるような感じだが、頭には、羅夢の全体重が圧し掛かる。
自分の身体が、宙に浮かんでいるのか、地面に沈み込んでいるのか、感覚がわからない。
「ち…ちくしょう…!やめろ…!!ア、アタイの梨生奈に…触るんじゃねぇ…!!この、変態どもぉ〜〜〜!!!」
羅夢の泣き声が、微かに聞こえる。
「な…泣いているの…?」
梨生奈は、どこからともなく聞こえる声に、問いかける。
「大丈夫…」
梨生奈は囁いた。
「羅夢は…心配しなくて…大丈夫…」
羅夢が泣いている…。
不安で、苦しくて泣いている…。
「大丈夫だからね…。安心して…」
梨生奈の身体は、ぐらりと揺れる。
「大丈夫…だから…」
そう言いながら、梨生奈の頭の中は、真っ白になった。
1011投稿者:リリー  投稿日:2008年03月15日(土)23時14分04秒
「あらら…。大ピンチじゃない…。り〜なと羅夢…」
テレヴィア百貨店の非常階段の上に、近藤エマと渡邊エリーの、『チームE』はいた。
2人は、例のトラックスーツに身を包み、武器であるボウガンを持っている。
双眼鏡を覗いているエリーに、階段上に鉄球を慎重に置いている、エマは聞く。
「2人は今、どんな風?」
「2人とも丸裸にされて…羅夢は首にロープを掛けられてる…。り〜なは…必死に羅夢を支えてる…。でも…」
「でも…?」
「ヤクザ達が…り〜なの身体を舐めまわしてる…。り〜な…耐えられそうにない…!羅夢が死んじゃう…!」
「…!?それは、大変だ!!」
エマは、ボウガンに鉄球を設置する。
「ありりんと、ななみんから、連絡はないの!?」
「ないよ!!もう、私達だけで、何とかするしかない…!」
「どうか…2人に当たらないように…ヤクザ達だけに、当てなきゃならない…」
「それを、やるのが、『チームE』でしょ?えまちん!!」
「そうだね、えりりん…。やろう!!」
2人は、ボウガンを構える。
狙いは…梨生奈と羅夢が囚われている、三階正面の…部屋の窓…!
1012投稿者:リリー  投稿日:2008年03月15日(土)23時15分00秒
今日はこれでおちます

あと、1000まで到達できたのは皆さんのおかげです
ありがとうございます
前作の『らりるれろ探偵団』は、2000近くで完結しました
この小説は、まだ3分の1も終わってませんので、改めて長編に挑戦してるなぁ、と感じております
これからもよろしくお願いします
1013投稿者:そういや  投稿日:2008年03月16日(日)10時20分48秒
らりるれろで「この間ヤクザと戦って町の中を全裸で走り回る羽目になった」
って話があったけど、これだったのか。
1014投稿者:リリー  投稿日:2008年03月16日(日)20時42分11秒
1013さん、その通りです
よく、覚えて下さいました
ただ、これは完全に後付けですけどね

今日は、早めに更新します
1015投稿者:リリー  投稿日:2008年03月16日(日)20時43分41秒
俵姉妹が捕らえたヤクザ達は、ものの1分で、梨生奈と羅夢の囚われている場所を白状した。
テレヴィア百貨店の隣に建設途中のビル…その西側にある、三階の角部屋…そこに、2人はいる。
俵姉妹から、エマとエリーの『チームE』と、中村有沙と七海の『チームN』へ連絡が行く。
そして、エマとエリーは、テレヴィア百貨店の非常階段から、2人がいる部屋を望んでいたのだ。
中村有沙と七海の合図で、ボウガンで打ち込む手筈になているが、もう、梨生奈が限界だ。
何とか、遠距離攻撃で…つまり、あの部屋に入ることなく…2人を救出しなければならない…。
「えまちん…視界を広くして…。そうすれば、私だったら、何とかできる…!」
「OK!えりりん…。あんたを信じる…」
エマは、正面の部屋の窓ガラスへ、鉄球を乗せたボウガンを向けた。
1016投稿者:リリー  投稿日:2008年03月16日(日)20時44分41秒
「ふむ…。もう、そろそろ、梨生奈さんは限界ですかね…」
楠本は、懸命に命をつなごうと必死な少女達を、退屈そうに眺めて言った。
そして、梨生奈に群がっているヤクザ達を、どけさせた。
意識朦朧としている、梨生奈。
そんな梨生奈の身体を支える、楠本。
「ふふ…。息を吹きかけるだけで、倒れてしまいそうですね…。そうすれば、あなたは死にます…。羅夢さん…」
楠本は、羅夢を見上げる。
「…く…!そ、それで…梨生奈が…この苦しみから解放されれば…本望だ…!」
「解放?」
「ああ…。梨生奈だったら…ここから…逃げ出すのは、ワケねぇさ…。それをしなかったのは…このアタイがいるからだよ…!アタイが死ねば…梨生奈は…」
「残念ながら、私は梨生奈さんを逃がしません。あなたが死んだ後は、最後に残された貴重な情報源…大切に、大切に…生き地獄を味あわせます…」
楠本は、懐からナイフを取り出す。
刃先が、カギ状に曲がっている、特殊な形状のナイフだ。
1017投稿者:リリー  投稿日:2008年03月16日(日)20時45分39秒
「羅夢さん…。『さんたんたる鮟鱇』という詩…ご存知ですか?」
「…?何…?ア、アンコウ…?」
「ええ…。村野四郎という詩人の作品です。アンコウの吊るし切りの様子を詩にしたものです。学生の時、授業で習いました…。何故か、私の心に引っ掛かりましてねぇ…」
「そ、それが…な…何だって…言うんだよ…?」
「ふふ…。人は首を吊るされても、すぐには死にません。何分かは生き続けます。苦しみながらね…。で、その間、あなたは、その詩のアンコウのようになるんです…」
そう言うと、そのカギ状のナイフを、羅夢の前にひけらかす。
「…ぐ…!て、てめぇ…!!」
「あなたは、腹を裂かれ、内臓を引きずり出され、皮を剥がされ、筋肉組織を晒され、眼球をえぐり出され…それは酷い姿になります。その光景を、この梨生奈さんに見てもらいます。果たして耐えれるでしょうか?いや、正気を保てるでしょうか?」
羅夢は、ぞっと背筋が凍る思いがした。
「て、てめぇ…!!異常だ!!く、狂ってやがる!!」
「それは、最高の褒め言葉です…。私達…裏の世界の人間にとってはね…」
ヤクザ達は、途端に青い顔になって、後ろに下がった。
「ん?いかがしました?皆さん…?」
ヤクザの一人は、恐る恐る楠本に聞いた。
「あ…あの…。ほ、本当に…やる…つもりで…?」
「ええ…。もちろんです。ふ〜む…加藤組の皆さん…意外と気弱な方が多いのですね…。少し、見損ないましたよ…?」
楠本にそうなじられ、ヤクザ達は、困ったように顔を見合わせる。
1018投稿者:リリー  投稿日:2008年03月16日(日)20時46分50秒
「では…梨生奈さん…。ご苦労様でした…」
楠本は、梨生奈の広い額を、指で突いた。
梨生奈は、ぐらりと後ろに倒れる。
「が…あああ…!!」
羅夢の喉が、圧迫された。
足を暴れさせないため、楠本は、羅夢の足首を掴んだ。
「では…まずは、一文字にお腹を切り裂きましょうか…」
楠本のナイフが、羅夢の腹にあてがわれる。
「うぐぅぅぅ〜〜〜!!!」
カギ状の刃先が、羅夢の白い肌に食い込み、血が僅かに浮き出た。
羅夢は、あらん限りの声で、叫んだ。
「り、梨生奈ぁぁぁ〜〜〜!!!」
その時だった。
ガシャン…西側の大きなガラス窓の一部が、粉々に砕け散った。
「…!?」
楠本も、ヤクザも、一斉に窓を見た。
足下に…ピンク色の鉄球が転がった。
1019投稿者:リリー  投稿日:2008年03月16日(日)20時47分18秒
呆然と、その鉄球を眺める楠本…。
「こ、これは…確か…」
昨夜、ホテルのアチコチに転がっていた…。
そして、次の瞬間…。
ヒュン…黒い矢が、窓の割れた部分から飛び込んで来た。
ブツリ…と、羅夢を吊るしていたロープが、断ち切られた。
楠本は、床を転がるピンクの鉄球を見詰めていたので、反応が少し遅れた。
視界に、裸足の足が現れる。
「…!?」
思わず、視線を上に向ける。
「オラァァァ!!!」
「…ぐぅ…!!!」
楠本の視界が、ガクンと揺れる。
羅夢が、楠本の顎を蹴り上げたのだ。
楠本は、そのまま大の字に、コンクリートの床に倒れた。
1020投稿者:リリー  投稿日:2008年03月16日(日)20時47分54秒
「く、楠本さん…!!」
「こ、このガキ…!!脱出しやがった!!」
ヤクザ達は、一斉に羅夢に襲い掛かった。
そしてまた、ガラスを突き破って、鉄球がヤクザの背中に命中する。
「ぐあああ!!!」
前のめりに倒れる、ヤクザ。
続いて黒い矢が、ヤクザ達の足や腕に突き刺さる。
「ぎゃあああ!!!」
矢の刺さったヤクザ達は、激痛にのた打ち回った。
「梨生奈!!しっかりしろぉ!!」
羅夢は、倒れている梨生奈の頭を、蹴っ飛ばした。
「う…ん…?」
梨生奈は、何とか目を覚ました。
1021投稿者:リリー  投稿日:2008年03月16日(日)20時48分52秒
今日は、これでおちます
1022投稿者:はつき  投稿日:2008年03月16日(日)20時52分34秒
毎回、リリーさんの博識ぶりには脱帽します
1023投稿者:さんたんたる鮟鱇  投稿日:2008年03月16日(日)21時08分42秒
へんな運命が私をみつめている リルケ

顎を むざんに引っかけられ
逆さに吊りさげられた
うすい膜の中の
くったりした死
これは いかなるもののなれの果だ
見なれない手が寄ってきて
切りさいなみ 削りとり
だんだん稀薄になっていく この実在
しまいには うすい膜まで切り去られ
もう 鮟鱇はどこにも無い
惨劇は終っている

なんにも残らない廂から
まだ ぶら下っているのは
大きく曲った鉄の鉤だけだ
1024投稿者:117  投稿日:2008年03月16日(日)21時15分57秒
相変わらず、元帥は残酷ですね・・・「TTK」元戦士とはいえ、耐えきれない拷問。
一時はどうなるかと思いましたが、とりあえず解放ということでしょうか?
それにしても、まだ「過去ログ」入りしないのは奇跡ですね。続きも楽しみにしています!
1025投稿者:なつかしいな  投稿日:2008年03月16日(日)23時53分17秒
アンコウの詩
1026投稿者:リリー  投稿日:2008年03月17日(月)20時56分27秒
1023さん、詩の掲載、ありがとうございます
村野四郎さんは、こんな不気味な詩を創る傍ら、童謡の「ぶん、ぶん、ぶん、はちがとぶ」の作詞者でもあります
作品の幅の広さがすごいですよね

117さん
とりあえず、『チームR』は、絶体絶命の危機は逃れましたが、まだまだピンチは続きます

では、更新します
1027投稿者:リリー  投稿日:2008年03月17日(月)20時58分21秒
あと、はつきさん
初めてコメントを寄せてもらったんでしたっけ?
ありがとうございます
たまたま、この詩を知っていて、「凄いなぁ…」と思ってて、ふと思い出したんです

では、今度こそ、更新します
1028投稿者:リリー  投稿日:2008年03月17日(月)20時59分18秒
「…?ら、羅夢…?」
「助けが来た!!反撃開始だ!!」
ガラスの割れる音…ヤクザ達の悲鳴…。
爪先に、ピンクの鉄球が触れた。
目の前に倒れたヤクザの肩に、黒い矢が突き刺さっている。
「…!!『チームE』ね!!」
梨生奈は、跳ね起きた。
「梨生奈!!後ろ!!」
羅夢の声と同時に、梨生奈は、背後に迫ったヤクザの腹に、回し蹴りを放った。
「ぐええええ!!!」
その男は…先ほど、梨生奈の腹を殴って散々いたぶった男…。
昨夜に続き、今日もまた、梨生奈に胃液を吐かされた。
「あら…。また、オジサン?でも…さっきの仕返し、ちょっと多く貰っちゃったから、まとめて返したからね!」
梨生奈は、腹を抱えて呻いているヤクザに、冷たい視線を落とした。
「オラ!オラ!オラ!オラァ!!」
羅夢は、高く回転しながら、連続で蹴りを放つ。
が、両手が縛られている為、バランスが上手くとれない。
そして、首からまだ、ロープを掛けている。
羅夢から少し離れた所にいるヤクザが、そのロープを掴んで引っ張った。
「うおお!?」
たまらず羅夢は、仰向けにひっくり返った。
1029投稿者:リリー  投稿日:2008年03月17日(月)20時59分48秒
「このガキ!!」
ヤクザは、倒れている羅夢の首を絞めた。
「ぐ…!!」
羅夢は、腕が使えない状態で馬乗りにされている為、抵抗することができない。
当然、『チームE』の2人は、羅夢のピンチは見えている。
鉄球、矢を放つが、2人の前にいるヤクザに命中してしまう。
「羅夢!!」
梨生奈は、パートナーのピンチを救わんと、駆け寄ろうとしたが、足首を掴まれる。
掴んでいるのは、胃液を吐いている…あの男だ。
「邪魔しないで!!」
梨生奈は、その男の側頭部に蹴りを放った。
今度こそ、男は気を失って倒れた。
しかし、また梨生奈の前に、別のヤクザが立ちはだかる。
そのヤクザの肩越しに、バタつかせている羅夢の足が見える。
「く…!!どいて!!どいてよ!!」
梨生奈は、あらん限りの声で叫んだ。
1030投稿者:リリー  投稿日:2008年03月17日(月)21時00分09秒
その時だった。
「ゴルァァァ!!!」
怒鳴り声と共に、ドアが勢い良く破られた。
同時に一人のトラックスーツ姿の少女が、床を回転しながら入って来る。
そして、羅夢に馬乗りになっているヤクザの背中を、金属バットで思いっきり叩いた。
「ぐはぁ!!」
ヤクザは、前のめりに倒れる。
その少女は、『チームN』の藤本七海だった。
「う…!『キラー・タイガー』…!!」
「へへ!!これはウチに、どえらい借りをつくってしもうたな?え?『ライトニング・ボルト』…」
七海は、優越感に浸った笑顔で、羅夢を見下ろす。
「う、うるせぇ!!てめぇなんかが助けなくってもなぁ、アタイだけで切り抜けられたんだよ!!」
羅夢はすぐに立ち上がって、七海と同じ目線にする。
「何やと?それが命の恩人に言う言葉か!!」
「てめぇに恨みはあっても、恩なんてねぇよ!!」
ジャラァァァ…!!
いがみ合う2人の顔の間…僅か10センチの隙間を、分銅の付いた鎖が通った。
1031投稿者:リリー  投稿日:2008年03月17日(月)21時00分43秒
「うぉ!?」
「わぁ!?」
七海と羅夢は、思わず仰け反る。
「ぎゃあ!!」
その分銅は、今、2人を襲わんとするヤクザの顔面に当たった。
鼻から水道水のように鼻血を流し、そのヤクザは悶絶している。
「まったく…貴様等…どんな状況でもキャンキャン、キャンキャン吠え捲くるのか…」
いつの間にか、もう一人の『チームN』…トラックスーツ姿の中村有沙が、薄暗い部屋の片隅に立っていた。
手には、鎖鎌を持っている。
「『アンダー・クイーン』…!!」
「偉そうに抜かすな!!この、アマ!!」
2人は、今度は中村有沙に向かって吠えた。
「うるさい!まだ倒さなければならないヤクザは、大勢いるのだぞ?」
中村有沙は、うんざりとした表情で、髪を掻き揚げた。
1032投稿者:リリー  投稿日:2008年03月17日(月)21時01分08秒
「…ち!ホレ、こっち来んかい!!ポチ!!」
七海は、羅夢の首に掛かっているロープを掴むと、中村有沙の元に連れて行く。
「だ、誰がポチだ!!てめぇ…!!」
「おまえや!!コロの方がええか?」
七海は、羅夢の鼻を、人差し指でピンと弾いた。
「って…!!てんめぇ〜〜〜!!!」
「やかましい!後にせぇや!!ウチは忙しいねん!!」
七海は、金属バットを振りかざし、ヤクザ達に向かって行く。
「おい!!コラ!!戻って来やがれ!!」
怒鳴りつける羅夢に掛かっているロープを今度は中村有沙が掴んで引き寄せる。
「大人しくしろ!今から、両腕を自由にしてやる!」
そう言うと、鎌の先を重ねられている羅夢の両腕の隙間に当て、がんじがらめに巻き付けられたガムテープを引き裂いた。
「『ムーン・ライト』!!おまえも来い!!」
梨生奈は、間に立つヤクザ2人を蹴り倒しながら、中村有沙の元に急ぐ。
そして、梨生奈の両腕も自由にした。
1033投稿者:リリー  投稿日:2008年03月17日(月)21時01分40秒
それでは、今日はこれでおちます
1034投稿者:117  投稿日:2008年03月17日(月)21時22分48秒
なんか、久々に七海や有沙の名前を聞いたような気がします(笑)。
何度もやられているヤクザたち,ちょっと可哀相(笑)。
梨生奈と羅夢はまだ裸なんですよね?よくやるなぁ・・・続きも楽しみです!
1035投稿者:ハリウッド映画では  投稿日:2008年03月17日(月)23時24分37秒
エイリアンとゾンビとドイツ兵は、何人殺してもOKと言われてるけど
リリー作品では、ヤクザは何人やられてもOKってこと?
1036投稿者:>117  投稿日:2008年03月18日(火)03時44分28秒
だね。
一週間ぶり。
1037投稿者:七海と有沙は  投稿日:2008年03月18日(火)09時22分03秒
何をやってたんだ??
チームEの合図係だったんでしょ??
1038投稿者:デジ  投稿日:2008年03月18日(火)10時57分54秒
1000突破おめでとうございます。
不定期購読みたいですみません。
ここにらりるれろの小説も入ってきそうですね...ってあれ!
これ5月の出来事でした。すいません
ようやく来ましたEとN もうスタンバイしてたんですね。
懲りないなヤクザたち
それにしてもこのあとどうなるだろう梨生奈と羅夢......
愛美のことを含め、続きも楽しみです。
毎度コメント長くてごめんなさい
1039投稿者:HPで書いていく…  投稿日:2008年03月18日(火)17時21分03秒
というのは、無理なお願いでしょうか…
過去ログ行きになってしまった分も、また読みたいな、と思ったので…
HPとかならまた(そういうのも)見れるかな、と…

変なこと聞いてしまっていたら、すみません;
1040投稿者:私も賛成!!  投稿日:2008年03月18日(火)18時09分28秒
それが絶対いいって!!
1041投稿者:とりあえずここで書いてから  投稿日:2008年03月18日(火)18時54分37秒
HPに残してく方法もある
1042投稿者:根性なしのヤクザ  投稿日:2008年03月18日(火)20時41分03秒
梨生奈と羅夢は、殺されそうになっても絶対に白状しなかったのに、ヤクザは一分で口を割りましたかw
そのおかげでチームRは命が助かったんだから、根性なしに感謝ですね
1043投稿者:リリー  投稿日:2008年03月18日(火)20時59分45秒
HPですか?
考えてませんでした…
もし、HPで書くなら、オリジナルキャストで書くことになると思います
天てれのことを知っている人のいる場所で、この小説は続けていきたいと思います
ご期待に副えず、どうもすみません

117さん、そうです
当然のように戦っていますが、二人ともマッパです
『七回・裏』は長いので、この一週間、『チームR』の出番ばっかりでしたね
まるで、『らりるれろ探偵団』に戻ったかのようです
しかし、『らりるれろ』の8月以降、『チームR』の活躍は激減するので、今のうち…という感じです

七海と有沙は何をしていたか、と言うと、遅刻したわけでも道に迷ったわけでもありません
単に、「間に合わなかった」ということです
ただ、もしヤクザに根性があったり、ダーさんの妙案が一分でも遅かったり、愛美がいつまでも携帯に手間取って連絡できなかったり、駅前に行くまでにヤクザに見つかっていたら、本当に羅夢は、『さんたんたる鮟鱇』の様になっていたことでしょう…
自分で書いてて、恐ろしいです

デジさん、時々で構いませんよ
いつも、コメント嬉しいです

では、更新します
1044投稿者:リリー  投稿日:2008年03月18日(火)21時01分25秒
「よし、今のうちだ!早く逃げろ!」
中村有沙の指示に、羅夢は首からロープを抜いて、床に叩き付けた。
「逃げろだぁ!?冗談じゃねぇ!!このまま引き下がれるかよ!!」
中村有沙は、羅夢の顔を片手で鷲掴みにして、自らの顔に引き寄せる。
「ここから消えろ、と言っているのだ!!2度も言わすな!!」
「へ、へめぇ…!!ほのやろう…!!(てめぇ…!!このやろう…!!)」
「武器も持たず、素っ裸の貴様等に戦場をうろつかれたら足手纏いだ!!これ以上、迷惑をかけるな!!バカめ!!」
「ら、られがあひべまほいら!!もういっへん、ひってみやられ!!(だ、誰が足手纏いだ!!もう一編、言ってみやがれ!!)」
「『ムーン・ライト』!!このうるさい仔犬を、さっさと連れて行け!!」
中村有沙は、乱暴に羅夢を梨生奈に押し付けた。
「この…!言わせておけば…」
羅夢は、再び中村有沙に殴りかかる。
「やめなさい!!」
梨生奈は、羅夢の頬を張り倒した。
「…え…?」
羅夢は、打たれた頬を押さえ、呆然と梨生奈を見詰めた。
「そうだ…。そうやって躾けるんだ。私だったら、拳で殴って、鼻っ柱をへし折ってるところだ…!」
中村有沙は、2人を一瞥もせず、七海が暴れている現場へと駆け出して行った。
1045投稿者:リリー  投稿日:2008年03月18日(火)21時02分10秒
「さあ…!逃げるよ!!」
梨生奈は羅夢の肩に手を回して、部屋の出口へと走り出す。
「くそ…!!」
羅夢は唇を噛み締めながら、それに従った。
廊下に出る梨生奈と羅夢だが、そこには、別室で待機していたヤクザも廊下に飛び出ていた。
「おい!!どうなってんだ!!ガキが逃げるぞ!!」
「逃がすんじゃねぇ!!」
廊下の両側から、ヤクザが迫る。
手には、拳銃が握られている。
「く…!ど、どうする…?梨生奈…」
「仕方がない!!ここは…三階でしょ?」
廊下の窓を開ける梨生奈。
「え…?ま、まさか…」
「ここから、飛び降りるよ!!」
「ま、待て…!この下は確か…」
「大丈夫!!三階だったら、私達なら無事よ!!」
「そ、そういうことじゃなくて…」
「グズグズしないで!!」
梨生奈は、窓を乗り越えて飛び降りた。
「マ…マジかよ…!!ええい!!」
羅夢も、その後に続いた。
1046投稿者:リリー  投稿日:2008年03月18日(火)21時02分54秒
2人が飛び降りた所は…人ごみのど真ん中…繁華街の表通りだった。
いきなり上から降ってきた全裸の少女達の出現に、道行く人々は度肝を抜かれ、ざわつき始める。
「え…?ええ…!?」
梨生奈は、驚き、戸惑っている。
「だ、だから言ったんだよぉ…!!」
羅夢は、泣き声にも似た声をあげた。
「ま、まさか、こんな所に逃げ込むのか…!?」
「これじゃぁ、手出しできねぇ!!」
「ここまでして危機を切り抜けるとは…なんてガキ共だ!!し、信じられねぇ!!」
ヤクザ達は、悔しそうに窓から見下ろしている。
「ひ、ひいぃぃ〜〜〜…。ら、羅夢…ど、どうしよう…?」
梨生奈は真っ赤になって、その場でしゃがみ込んだ。
「走れ!!走るんだよぉ〜〜〜!!!」
羅夢は、人ごみを掻き分け、全速力で走り出した。
「ああ…!ま、待って!!待ってよぉ〜〜〜!!!」
梨生奈は転びそうになりながらも、羅夢に着いて行く。
1047投稿者:リリー  投稿日:2008年03月18日(火)21時03分46秒
すれ違う人々が、全裸で駆け抜ける少女2人を、仰天した目で振り返る。
「どけ!!どけ、どけ〜〜〜!!どけったら!!」
羅夢は怒鳴りながら走った。
「は、は、恥ずかしい〜〜〜!!!」
梨生奈は、身体よりも顔を隠して走っている。
「ち、ちくしょう〜〜〜!!!」
羅夢は、もうヤケクソ気味に叫んだ。
チュィィィ〜〜〜ン…。
2人の身体に、細い金属制の糸が絡みつく。
そして、2人は、もの凄い勢いで引っ張られた。
「な…!?こ、これは…?」
「痛てててて…!!」
梨生奈と羅夢は、後方ドアの開いた、ランドクルーザーの中に引き寄せられた。
そして、その車は急発進する。
「あんた達…。そんな姿で…何やってんのよ…」
運転席の俵有希子が、ルームミラー越しに、冷めた目で2人を見ていた。
1048投稿者:リリー  投稿日:2008年03月18日(火)21時04分25秒
「ゆ…有希子さん…!!ま、まにゃ…愛美先輩は…?」
梨生奈は、身体中に絡み付いた鋼線を取り外しながら聞いた。
「安心して…。小百合が送って行ったわ」
そして、有希子は運転しながら、後ろの梨生奈に向かって携帯を投げた。
「それよりも…早くダーさんに、経過報告…!」
「う…」
梨生奈の真っ赤だった顔が、一気に真っ青になった。
羅夢が、梨生奈から携帯を取り上げる。
「ア、アタイが掛ける!!」
「羅夢…」
「アタイの責任だから…!」
羅夢は、止める梨生奈を振り切り、ダーブロウ有紗の番号に掛けた。
例の如く、コール音1回で出る。
〔どうした?ミミー。『チームR』は救出できたか?〕
「…アタイだ…」
〔…!?ダッチャか!?てめぇ、コンチクショウ!!命令を…〕
「スマン!!」
羅夢は、一言だけ叫んで携帯を切ると、一仕事終えた、という表情で安堵の息をつく。
社に戻ってから、改めて謝罪しよう…と、梨生奈は思った。
1049投稿者:リリー  投稿日:2008年03月18日(火)21時07分31秒
とりあえず、『チームR』は、危機を脱しました
今日のエピソードは、『らりるれろ』の中でも書かれています
確かに、羅夢に言わせれば、男一人(千秋)に裸を見られたくらいで、何ツベコベ言ってんだ?…と、なります

今日はこれでおちます
1050投稿者:117  投稿日:2008年03月18日(火)21時13分08秒
梨生奈が羅夢に手をあげる・・・梨生奈の優しさでしょうね。
それにしても、「チームR」の二人は・・・(笑)。なるほど、「らりるれろ」に繋がっているわけですね。
危機は脱したとはいえ・・・(苦笑)。続きも楽しみです!
1051投稿者:おもろい  投稿日:2008年03月19日(水)03時08分34秒
な〜
1052投稿者:チームRの危機はなんとかだけど……  投稿日:2008年03月19日(水)08時56分44秒
さてさてチームNとヤクザの行方は?!

というかダーさんの考えた作戦 やっぱり3秒で考えただけあってリスクありまくりだなぁww
1053投稿者:リリー  投稿日:2008年03月19日(水)20時41分29秒
やっぱり、ダーさんの作戦は強引でしたね
でも、この『七回・裏』は、『らりるれろ』で何の考えもなしに書いたエピソードの辻褄あわせだったので、この話し自体、強引なんです
つまり、『チームR』が全裸で街中を疾走するには、どういう理由が自然か…?と考え、今回の話しとなりました

今日から、『チームN』の戦いです

では、更新します
1054投稿者:リリー  投稿日:2008年03月19日(水)20時42分17秒
「ゴルアアア!!!」
七海は、金属バットをフルスイングしながら、ヤクザ達をかっ飛ばしていく。
梨生奈達が囚われていた部屋は、今度はヤクザ達の修羅場と化した。
「こ、このガキィ…!」
少し離れた所にいたヤクザは、拳銃を七海に向ける。
バキ…!
分銅が、拳銃を持つ手の甲に叩きつけられた。
「が…!?」
分銅に付いた鎖は、そのヤクザの腕に絡みつき、その持ち主…中村有沙の元に引き寄せる。
「こ、この…」
中村有沙は、ヤクザの拳を上半身の動きだけで避け、鎖を首に回し背後をとると、膝を背中に押し当て、思い切りその鎖を引き絞る。
「ぐええええ…!」
窒息死しない程度で、中村有沙はそのヤクザを解放してやった。
すると、彼女の背後から襲いかかる者がいる。
中村有沙は、振り向きざまに鎌を振り下ろす。
鰐皮の黒光りするベルトが切れ、ヤクザの紫色のスラックスがストンと落ちる。
「わ、わぁ…!」
慌てて下がったズボンを引き上げようとヤクザが顔を降ろした途端、強烈な膝蹴りを喰らわせた。
1055投稿者:リリー  投稿日:2008年03月19日(水)20時42分46秒
窓からは、相変わらず次々と鉄球と矢が打ち込まれる。
ヤクザ達は叫び声をあげながら、次々と倒れていく。
「こ、これは…どうなってんだ!!」
先ほど、梨生奈達を逃がした別室のヤクザ達4人が、ようやく応援に駆けつけた。
「ヨー・ソー、ロー!!」
打ち込まれた鉄球を、ドアの方へ飛ばす七海。
「ごふぅ!!」
鉄球を、もろ腹に受けた先頭のヤクザは、前のめりに崩れ落ちる。
「こ、この!!」
拳銃を構える、残りの者達。
しかし、もう既に中村有沙が目前に迫り、鎌で拳銃を払った。
切り落とされた銃口が、コトリと音を立てて床に落ちた。
「げ…!?」
鎌で、金属を断ち切った…?
ヤクザ達は、我が目を疑った。
その隙に、3人の首に、まとめて鎖が巻き付けられた。
そして中村有沙は、グイ、と鎖を引き締めた。
一瞬で3人のヤクザは、締め落とされてしまった。
1056投稿者:リリー  投稿日:2008年03月19日(水)20時43分13秒
残りのヤクザは、七海が一人一人バットで殴って、気絶させていく。
もう、この室内で両の足で立っている者は、七海と中村有沙だけだった。
中村有沙は携帯を取り出す。
「『キャンディー・ボール』。もう、終わった」
窓の向こうからの、鉄球や矢の攻撃は止んだ。
「ふぅ…。これでお終いやな…。『チームR』め…余計な仕事を増やしよって…」
「『キラー・タイガー』!!」
中村有沙は、七海に向かって鎖を投げつけた。
「!?」
あまりの速さに、七海は反応できない。
しかし、分銅の付いた鎖は、七海の顔のすぐ横を通る。
七海の長い髪がふわりと浮いたと同時に、パシ…と何かを受け止めたような、軽い音が…。
振り返ると、そこには…羅夢に蹴り倒された楠本柊生が…鎖の先の分銅を握り締めて立っていた。
「オノレ!!」
七海は、バットを振り下ろす。
楠本は、鎖を頭上にピンと張り、バットの一撃を受け止めた。
そして、素早くバットの先に、鎖を巻きつける。
「う…!」
バットが抜けない…!
1057投稿者:リリー  投稿日:2008年03月19日(水)20時43分48秒
「離れろ!!『キラー・タイガー』!!」
中村有沙は鎖を引き寄せ、バットごと鎖を回収した。
「ちぃ…!!」
七海も、この不気味な男から、飛び退いて安全圏内に逃れる。
…が、その男…楠本柊生は、ピッタリと七海に着いて来ている。
「…へ?」
自分のスピードに着いて来ている…?
楠本の手が、七海の顔面に迫る。
空中で、頭を鷲掴みにされる七海…。
その冷たい体温から、感じられるイメージ…。
自分の頭蓋骨が、グシャリと音を立てて潰れる…。
七海は、自分は死んだ…と、漠然と思った。
しかし次の瞬間、楠本は七海の頭から手を放し、空中で身体をスピンさせ、着地した。
楠本の左手にはピンクの鉄球…右手には黒い矢が握られている。
エマとエリーが、窓の外…テレヴィア百貨店の非常階段から撃ち込んだのだ。
だがその攻撃も、楠本には通用しなかった。
1058投稿者:リリー  投稿日:2008年03月19日(水)20時44分27秒
「もっと!私の側に寄れ!!」
中村有沙は、七海に叫んだ。
七海は、素直に彼女の側まで駆け寄ってきた。
中村有沙は、七海にバットを渡す。
「…お…おう!」
威勢の良い返事をして、バットを受け取った七海だが、その顔は…蒼白になっていた。
呼吸が乱れ、あぶら汗がベッタリと七海の顔面を塗らしている。
一瞬で、圧倒的な恐怖を植えつけられたようだ。
(ち…!もう、ダメだな…コイツ…)
七海はもう、戦力にならない…。
何とか自分と外の『チームE』とで、この男を倒さなければならない…中村有沙は、そう決心した。
「ん?君達…いつぞやの、喧嘩してた子達ですね?やっぱり私達のことを探ってたんですね…。今考えれば…あの逃げた子も一緒に居ましたよねぇ?」
(やはり、この男…!!私の思った通りだ…!!)
中村有沙は、トラックスーツのポケットから、鋼鉄製の分銅を取り出した。
「ほぉ…。いよいよ、本気モードですか?」
楠本は静かに口を開いた。
「何?」
「今、触った感触…その鎖に付いていた分銅…ゴム製でしょ?そちらの鋼鉄製の分銅だったら…掌の骨を、骨折してたでしょう…」
一瞬で全てを悟ってしまう、洞察力…。
手強い相手だと、中村有沙は改めて思った。
1059投稿者:リリー  投稿日:2008年03月19日(水)20時45分35秒
「骨折?その程度で済むか。貴様の手を貫通し、更にその顔面を貫通している…」
中村有沙は、ゴムの分銅から、鋼鉄の分銅に付け替える。
「ほほぉ〜…。それは、恐い、恐い…」
楠本は…ガギ状に曲がったナイフを取り出した。
「先ほどは…このナイフで羅夢さんを解体しそこねました…」
「羅夢…?何故、その名を…?」
「あの2人、名前だけは教えてくれました…。いえ…思わず言っちゃったんですね…」
「ち…!あいつ等…」
梨生奈はともかく、羅夢は思いっきり珍名だ。
簡単に身元を割られてしまうだろう…。
「ですから…代わりにあなたがたを、解体して楽しむことにしますか…」
クルクルと、先の曲がったナイフを回した。
ダーブロウ有紗を、思い出す。
1060投稿者:リリー  投稿日:2008年03月19日(水)20時46分15秒
今日は、これでおちます
1061投稿者:117  投稿日:2008年03月19日(水)21時25分16秒
鮮やかなヤクザたちとの対決・・・しかし、元帥は恐怖の存在ですね。
「チームN」はどう対処するのか・・・続きも楽しみです!
1062投稿者:>梨生奈はともかく、羅夢は思いっきり珍名だ。  投稿日:2008年03月19日(水)21時28分33秒
さり気なく笑わせるなあw
1063投稿者:ありりんVS元帥か  投稿日:2008年03月19日(水)23時05分32秒
七海はもう駄目になっちゃったのかな
1064投稿者:デジ  投稿日:2008年03月20日(木)02時30分42秒
元帥恐ろしいですね。
「チームN」はどう切り抜けるか、「チームE」はどう「チームN」
を援護するか 続きも楽しみです。

ところで七海が天テレ卒業してからテレビに結構出始めたのは
僕の気のせいでしょうか?
1065投稿者:リリー  投稿日:2008年03月20日(木)20時53分22秒
元帥と『チームN』の戦いは、本格的に始まります。
七海も、このまま引き下がらないと思いますが…

羅夢の名前の由来は、「全ての夢を網羅する」…でしたっけ?
でも、やっぱりお父さんが「うる星やつら」の大ファンで、字を当てたんでしょうね
角田さんの長女「ゆりあ」長男「けんしろう」みたいなものでしょう

七海は、仕事が入り始めたので、天てれを辞めたのかな?と思います
甜歌も同じ理由だと思います
しかし、公輝も映画やドラマに出るし、最近のてれび戦士の活躍は凄いですね

では、更新します

1066投稿者:リリー  投稿日:2008年03月20日(木)20時54分20秒
忌々しげに、中村有沙は七海に言う。
「ち…!『キラー・タイガー』!!『チームE』に携帯で連絡をとれ!」
「『チームE』に!?」
「私の合図があったら、鉄球と矢を撃ち込むように…!」
「ウ、ウチは…?ウチは何をしたら…」
「む?貴様は連絡係に専念しろ!」
「れ、連絡係!?ナメんな!!ゴルァ!!何でウチが…」
「ビビリまくっている貴様の力など要らん!!」
「だ、誰がビビってるって…!?」
「まず、何をしたらいいか、と聞いてくるやつなど、役には立たん!!」
「な、何やとぉ…!」
「ならば、貴様が先陣を切って、ヤツとぶつかれ!!その隙を私が突く!!」
「………!お、おう…!やったるわ!!」
「ふん…!一瞬、気後れした…。やはり、貴様は役に立たん!」
「く…!な、何でそれが、オノレにわかんねん!!」
「悪いが…私も、貴様と言い争いをしている余裕はない。後で相手をしてやる!…後があればな…」
「…?チビ…『アンダー・クイーン』…?」
あの中村有沙が…戦いの前に悲壮感を漂わせている…?
中村有沙も、この男の途轍もない恐怖を、感じている…?
1067投稿者:リリー  投稿日:2008年03月20日(木)20時55分06秒
「さあ、わかったのなら…早く『チームE』に電話しろ。…そうだな…『ビー・アタック』がいいだろう…。ヤツは『キャンディー・ボール』と違って連射ができる。電話片手に狙撃ぐらいできるだろう…」
「う…く…!」
屈辱にまみれながら、七海はエリーの携帯にかけた。
〔もしもし…!『キラー・タイガー』?大丈夫?あいつ、只者じゃないよ!!〕
「………大丈夫や…。それよりも…ウチが合図をしたら、『キャンディー・ボール』と一緒に狙撃せぇ…!殺すつもりで…!」
〔殺す!?そ、それはちょっと、ヤバいんじゃ…〕
「アホ!!こいつは…殺すつもりでかからんと…こっちがやられるで!!」
〔う、うん…。わかった!〕
ふと、中村有沙を見ると、楠本と5メートル程離れ、鎖を振り回している。
「『キラー・タイガー』…『アンダー・クイーン』…『キャンディー・ボール』…『ビー・アタック』…なるほど…これは、コードネームか何かですか?」
「…何?」
「梨生奈さんが『ムーン・ライト』…羅夢さんが『ライトニング・ボルト』…あなたがたのお名前も、是非知りたいですね…」
「知ることはない…。知る前に…貴様の命は消える…」
(チ、チビアリ…!『殺し』をやるつもりか!?)
七海は、心がざわついた。
いや、しかし…この男を相手に…殺すつもりで相対する気持ちがなければ…死ぬことになる…自分がエリー言ったばかりだ…。
1068投稿者:リリー  投稿日:2008年03月20日(木)20時55分46秒
中村有沙が先手を打った。
鋼鉄の分銅の付いた鎖を、楠本に投げつける。
楠本は、僅かに身体をずらしただけで、その攻撃を避けた。
中村有沙は手首を返し、後方に飛んだ鎖を手元に戻す。
その際にも、分銅は楠本の後頭部を目がけて飛んだが、首を傾げるだけの動きでそれを避けた。
本来なら、鎖を飛ばした直後に、手元の鎌で切りつけるのが、中村有沙の戦闘パターンだ。
しかし、楠本相手に無闇に接近しない…慎重に戦う、彼女の思考を感じる。
鎖を振り回しながら、中村有沙は七海に囁く。
「私が次に鎖を投げたら、狙撃の合図だ…」
「わ…わかった…」
楠本は、相変わらずナイフをジャグラーの様に回している。
自分が余裕であると伝えると同時に、相手を威圧するパフォーマンスだろう。
中村有沙は、鎖を投げた。
「今や!!」
七海の声と同時に、鉄球と矢が、窓から飛び込んで来た。
そう…鎖、鉄球、矢…三方からの、同時攻撃…!
1069投稿者:リリー  投稿日:2008年03月20日(木)20時56分32秒
しかし、楠本は…まるでバレリーナの様に軽やかに、それぞれの武器の一瞬の隙間を縫って宙を舞う。
七海も…中村有沙も…一瞬…楠本に見惚れていた。
その直後、楠本は、中村有沙と七海の間に降り立った。
「にげろ!!」
「ちぃ…!!」
2人は、左右に飛び退いた。
楠本は…中村有沙の方へ、ぴったりと着く。
「…!!」
楠本はナイフを素早く繰り出してくる。
中村有沙は、鎌でそれを払う。
そして防戦しながらも、右足首に鎖を巻き付ける。
「ふん!!」
蹴りと同時に、鎖が伸びた。
「…お!!」
楠本は、驚きの声をあげて、ブリッジ状態で鎖を避ける。
ゆっくりと腹筋の力で上体を起こす楠本だったが、中村有沙は追撃をしなかった。
更に楠本から距離をとったのだ。
1070投稿者:リリー  投稿日:2008年03月20日(木)20時57分11秒
「あくまでも、この私と接近戦をしない…と、いうことですか?」
楠本は、ナイフを逆手に構える。
「つまり、離れた所で、その鎖の攻撃をし、接近されたら鎌の方で防戦する…。典型的な中距離戦術ですね…。しかし…それは、相手が接近戦しかできない場合にのみ、有効なものです」
楠本は、懐に手を伸ばす。
「銃や!!」
七海は叫んだ。
その直後、銃声…。
中村有沙は、転がりながら避けた。
その上空に、ナイフを振り上げた楠本…。
中村有沙は、楠本ではなく、七海を見ている…合図だ…!
「撃て!!」
七海はエリーに叫ぶ。
鉄球と矢が、楠本の背後に迫る。
1071投稿者:リリー  投稿日:2008年03月20日(木)20時57分54秒
この角度は…鉄球は後頭部に、矢は首筋に命中する。
当たれば、即死だ。
しかし、当たらない。
楠本は、まるで後ろに目がついているかのように、説妙なタイミングで身体をよじり、それらを避ける。
しかし、今度は中村有沙は鎌で楠本に襲い掛かった。
真一文字に鎌を走らせる。
楠本は、着地と同時に後ろに跳んだ。
「撃て!!撃て、撃て!!」
七海は絶叫した。
矢が立て続きに三本飛んで来た。
楠本は、まるで雨でも避けるかの様に、小走りにその場を離れる。
「…あ!」
楠本は、自分のネクタイが半分に切り取られているのに気がついた。
「くぅぅ〜〜〜…。お気に入りのネクタイだったのに…」
無念そうに、プッツリと切れたネクタイを見た。
1072投稿者:リリー  投稿日:2008年03月20日(木)20時58分38秒
切られた先は、中村有沙が手に持っている。
「お気に入り…?随分、悪趣味なネクタイだが…?」
人を食ったような、いつもの中村有沙が戻って来た様だ。
「悪趣味で悪かったね!お客さんから頂いた、最高級品だよ!?」
楠本は、少し不機嫌な顔になり、左手にナイフ、右手に拳銃を構える。
七海は、携帯でエリーと話す。
「今、『ビー・アタック』の矢しか飛んで来なかったで?『キャンディー・ボール』は何しとんねん!!」
〔球切れだよ!もう、一球も残ってないの!!〕
エマの鉄球…12球…全弾使ってしまったのか…。
〔それに…何で、さっきから『アンダー・クイーン』しか戦ってないの?何で『キラー・タイガー』は戦わないの?〕
「じゃかぁしい!!」
七海は怒鳴ったが、虚しかった。
自分は…この場で、一体、何ができるのだろう…。
第一、中村有沙に任せっきりにしてる…というこの状況が、たまらなく腹立たしかった。
1073投稿者:リリー  投稿日:2008年03月20日(木)20時59分38秒
今日は、これでおちます
1074投稿者:何かすげぇ  投稿日:2008年03月20日(木)20時59分57秒
 
1075投稿者:117  投稿日:2008年03月20日(木)21時21分50秒
有沙に一瞬,不安の色が・・・?それにしても、「元帥」恐るべしです!
でも,お気に入りの「ネクタイ」を切られた時に、残念がる様は「元帥」(素の本人)らしいような気がします(笑)。続きも楽しみです!
1076投稿者:たしかに・・・  投稿日:2008年03月20日(木)21時59分35秒
連絡係で叫びまくってる七海はなんだか虚しい・・・

1077投稿者:探偵たちに勝ち目はあるの!?  投稿日:2008年03月21日(金)09時08分06秒
ドキドキする……
1078投稿者:リリー  投稿日:2008年03月21日(金)22時20分31秒
すみません、遅くなりました

『チームN』と元帥の戦いの続きです
七海は、相変わらず蚊帳の外ですが…

では、更新します
1079投稿者:リリー  投稿日:2008年03月21日(金)22時21分22秒
楠本も、もう、中村有沙にしか眼中になかった。
鎖を振り回す中村有沙と、ナイフと拳銃を構える楠本柊生…。
もう、七海が入り込む余地がないかのようだ。
「く…くそったれぃ…!!」
七海は、歯軋りした。
何で、この男に恐怖を感じてしまったのだろう…。
このままで終われるか…!
七海は、例え殺されたとしても、このまま終わるよりはマシだ…と思った。
楠本は、発砲した。
「ふん!!」
中村有沙は、鎌で銃弾を叩き落した。
そして、身体を回転させて鎖を放つ。
「よっと!」
今度は楠本が、ナイフで分銅を叩き落す。
「うりゃあ!!」
分銅が床に落ちる前に、七海が滑り込んだ。
バットを水平に構えて…そう…バントの構えだ…。
1080投稿者:リリー  投稿日:2008年03月21日(金)22時21分44秒
分銅は、バットに当たり、跳ね返る。
それは、見事に楠本の額に命中した。
「ぐわ!!」
楠本は、額を押さえて仰け反った。
「ゴルアァァァ!!!」
七海は立ち上がると、楠本の身体を金属バットで滅多打ちにした。
「い、痛い!!痛い!!痛い!!ま、待った!!待った!!いや、ごめんなさい!!マジ、ごめんなさい!!」
楠本は頭を抱えて逃げ回る。
「待たんかい!!ゴルァ!!誰がオノレにビビってるって!?」
「い、言ってないですよぉ!!誰もそんなこと…」
「誰がビビるかい!!オノレなんかに、ビビってたまるかい!!」
「待った!!ストップ!!」
楠本は拳銃を構え、至近距離で発砲した。
「うお!?」
ちゃんと狙ったものではないので、弾は天井に当たったが、七海から逃げ出すくらいの間はできた。
1081投稿者:リリー  投稿日:2008年03月21日(金)22時22分13秒
楠本は、頭から流れる血をハンカチで押さえている。
「あ〜…痛かった…。メチャクチャやるなぁ…君…」
スーツの袖を捲くって、腕にできた痣も確認する。
「あー!!ロレックスの腕時計も壊れてる!!これ、プレゼントじゃない、私が自分で買ったものなのにぃ…!!」
楠本は、泣き出すのではないか、と思われる様な声をあげた。
中村有沙は、まだ興奮状態の七海に近づく。
「『キラー・タイガー』…!貴様、私は何もするなと…」
「じゃかぁしい!!やつに傷一つつけられへんクセに、偉そうなこと抜かすな!!オノレが連絡係しとけや!!ヴォケェ!!」
七海は、中村有沙に携帯を投げつけた。
〔凄い!やったじゃん!!『キラー・タイガー』!!〕
床に落ちた携帯の向こうで、エリーがはしゃいでいる。
「ち…!」
中村有沙は、七海を認めざるを得なかった。
1082投稿者:リリー  投稿日:2008年03月21日(金)22時22分36秒
「しかし…どうせなら、やつにトドメを刺してもらいたかったがな…」
「あん?」
2人は、楠本を見る。
もう既に、彼は精神的痛手から立ち直って、ナイフを構えていた。
拳銃は…床に捨てている…。
「さぁ…これで決着をつけましょう…。私も…どうやら五体満足で済みそうもありませんが…」
楠本も、相当の覚悟を決めている…。
拳銃を捨てたことが、それを物語っている。
負傷を承知で、接近戦を挑んでくる…つまり、ナイフでの戦闘が…楠本の一番自信のある戦法なのだ。
「『キラー・タイガー』…。共に戦う気があるのなら…」
「何抜かしとんねん!!アホか!!戦うに決まっとるやろ!!」
『チームN』の2人は、それぞれの武器を構えた。
1083投稿者:リリー  投稿日:2008年03月21日(金)22時22分58秒
その時、中村有沙の携帯が震えた。
(ち…!こんな時に…!)
中村有沙は、無視を決め込む。
「いいんですか?電話でしょ?私はお待ち致しますので、どうぞ…」
あくまでも、紳士的な態度を貫く楠本。
中村有沙は、携帯を見る。
『マッド・エッジ』…ダーブロウ有紗だ。
「もしもし…。『アンダー・クイーン』だ」
〔チビアリ…。随分、長引いているな…。どんな状況だ?〕
「心配するな。今から、決着をつけるところだ」
〔今、敵は何人だ?〕
「一人だ」
〔例の…『元帥』とかいう、ホストか?〕
「ああ…」
〔代われ〕
「何?」
〔その『元帥』と話したい。代われ〕
中村有沙は、じっと『元帥』…楠本柊生を睨み付けて、携帯電話を投げて寄越した。
1084投稿者:リリー  投稿日:2008年03月21日(金)22時23分35秒
今日は、これでおちます
1085投稿者:うわー  投稿日:2008年03月21日(金)22時35分22秒
元帥vsダーさんか
楽しみ
1086投稿者:アマノガワ  投稿日:2008年03月21日(金)22時47分00秒
分銅を当てられバットで滅多打ちにされたときのセリフが今年の夏イベそのままですねw(痛いとは言ってなかった気はしますけど)
ダーさんと元帥の会話の内容が今から気になりますね…
1087投稿者:あげ  投稿日:2008年03月21日(金)23時42分51秒

1088投稿者:元帥VSダーさん  投稿日:2008年03月22日(土)07時11分57秒
電話だから、口ゲンカになると思うけど・・・
1089投稿者:デキてた  投稿日:2008年03月22日(土)19時24分44秒
  
1090投稿者:ダーさんのあまりの口の悪さにひくか  投稿日:2008年03月22日(土)19時28分26秒
気迫に押されてたじたじになりそう
1091投稿者:リリー  投稿日:2008年03月22日(土)20時39分37秒
今日は七海のドラマがあるため、早めに更新します

そうですね、『らりるれろ』の千秋みたいに、電話での会話となります
夏イベの楠本さんは、本当に良かった
あんなに愛嬌のある悪役をできるというのが、いいです

長かった『七回・裏』は今日で終わります

では、更新します

1092投稿者:リリー  投稿日:2008年03月22日(土)20時40分09秒
不思議そうな顔をして、その電話を受け止める楠本。
「…?何ですか?」
「私の仲間が…貴様と話したいそうだ…」
「ふむ…。この私と…」
楠本は、携帯を耳に当てる。
「はい。代わりました。楠本ですが…」
〔あんたか…?ホストクラブ『9×9』のホスト…『元帥』てのは…〕
「もっとも、もうお店は営業停止処分となりました…。あなたがたのおかげでね…」
〔そりゃ、悪かったな…。私は、『R&G探偵社』のダーブロウ有紗と言う者だ〕
「『R&G探偵社』のダーブロウ有紗さん…?お噂はかねがね…」
楠本の言葉を聞き、中村有沙と七海は驚いた。
「デ…デカアリ…!!名乗ったのか!?」
「ど、どういうつもりや!!」
動揺している2人をよそに、楠本は会話を続ける。
〔うちの探偵が、世話になったようだな…〕
「ええ…。梨生奈さんに羅夢さん…ですね?随分、楽しませて頂きましたよ…」
〔そうかい…。で、何であんたと話しをしようと思ったかというと………休戦協定を結ぼうと思ってな…〕
「休戦協定…ですか!?」
ダーブロウ有紗のこの提案に、楠本はおもわず声が大きくなった。
1093投稿者:リリー  投稿日:2008年03月22日(土)20時40分36秒
「休戦協定だと!?バカな!!」
「今更、何言うてんねん!!」
『チームN』は、今度は電話の向こうに聞こえるくらいの声で叫んだ。
「あなたのお仲間は…承知しかねる…といった感じですが…?」
〔大丈夫だ。私が説得する〕
「しかし、何でまた?」
〔お互い、これ以上被害を出したくないって理由だ…。それは、あんた達だって同じだろ?〕
「同じ?そうではないですね。私達の被害の方が、甚大です。バランスがとれませんよ」
〔だったら、このまま戦争続行だ!!いいか?私は、おまえ等加藤組を、徹底的にぶっ潰すぞ?徹底的に…〕
「それは、私も同じです。『R&G探偵社』…。もう、あなたがたの正体はわかったのです」
〔だから…おまえ等加藤組をぶっ潰すって依頼を、私達は断ってやるってことだ!!〕
「依頼…?それは誰から?」
〔言えるわけねぇだろ?〕
「ま、そうですねぇ…」
1094投稿者:リリー  投稿日:2008年03月22日(土)20時40分58秒
〔その依頼を断るってことは…前金をその依頼人に返すってことだ。こっちだって、損はしてる〕
「ふむ…。なるほど…」
〔そして…あの伊倉愛美って子…もう、金輪際、手を出さないで欲しい…。こっちの頼みは、それだけだ〕
「もし、できない…と言えば?」
〔戦争続行…〕
「なるほどねぇ…」
〔さあ、どうする?〕
楠本は、しばらく考える。
「わかりました。加藤組長には、私から説得します」
〔できるのか?おまえに…〕
「そこは、ご心配なさらずに…。確実に説得できます」
〔なら、いいがな〕
「では、話をまとめましょうか?こちらが伊倉愛美さん…つまり、浜津さんの娘さんに、今後一切、手を出さない代わりに、あなたがたも、加藤組壊滅の依頼を断る…ですね?」
〔ああ…そういうことだ〕
1095投稿者:リリー  投稿日:2008年03月22日(土)20時41分19秒
「ま、この要求を呑んでも、加藤組を狙っている連中は、相変わらず存在するんですけどね…。こちらには、何のメリットもないような気が…」
〔いや…。私達『R&G』が、この依頼を断るってことが、最大のメリットなんだぜ?〕
「なるほどねぇ…。ま、いいでしょう…。加藤組がどうなろうと…私には関係のないことですし…」
〔何だって?〕
「いえ…何でもありません…。そうそう…こちらの要求も、呑んで頂きたいのですが…」
〔要求だと?断ったら?〕
「戦争続行です。伊倉愛美さんの安全も、保障しません」
〔………言ってみな…〕
「あなたの所の探偵さんに…ロレックスの腕時計を壊されました。弁償して下さい」
〔………それで…いいのか?〕
「はい。それでいいんです」
〔わかった。弁償してやる〕
「では、協定は成立…ですね?また後ほど、連絡させて頂きます…」
〔おう…。あんたが、話しがわかる男でよかったぜ…。じゃ、この携帯を、持ち主に返してやってくれ〕
「了解…」
楠本は、ハンカチで携帯に着いた顔の脂を拭きながら、ゆっくりと中村有沙に歩み寄る。
1096投稿者:リリー  投稿日:2008年03月22日(土)20時41分58秒
「はい…。では、確かにお返ししましたよ?」
中村有沙は、仏頂面で携帯を受け取る。
「それから…これ、ダーブロウ有紗さんに、お届け下さい」
そう言うと、ロレックスの腕時計を外し、七海に渡す。
「コレと同じ物で構いません…。いや、コレと同じ物がいいんです…」
睨みつける二人の視線をものともせず、楠本は悠々と部屋から出て行った。
〔ねぇ…!あいつ、部屋から出て行くよ?このまま出してもいいの?〕
エリーの声が、床に落ちた七海の携帯から聞こえる。
「ええねん…」
携帯を拾うと、七海は短く答えた。
中村有沙は、携帯の向こうのダーブロウ有紗に向かって、怒鳴った。
「どういうつもりだ!!何で、休戦などと…」
〔おまえの部のキャプテンを救う為だろ!?〕
「だから、貴様が加藤組を潰せばいいではないか!!」
〔いや…加藤組を潰すという依頼…どうしても断りたかったんだ…。いい機会だと思ってな…〕
断りたかった…?
中村有沙は、ダーブロウ有紗の真意がわからない。
1097投稿者:リリー  投稿日:2008年03月22日(土)20時42分26秒
「デカアリ…貴様…。怖気づいたのか?」
〔怖気づく…?まあ…そうかもしれねぇな…〕
「何…?」
〔加藤組にじゃぁ、ないぜ?依頼人にだ…〕
「依頼人に?」
〔何か…ろくでもねぇ、依頼に感じたんだよ…。ヤクザ組織を潰してくれ、なんて依頼はよ…〕
「ろくでもない?」
〔大金に目が眩んだのが悪かった。あんな依頼人とは…早々と縁を切りたかったんだ…〕
「ふむ…。ま、貴様がそう思ったのなら、相当なものだろう…。もう、加藤組絡みの仕事はないのだな?」
〔ああ…。ご苦労だった。これにて終了だ〕
何か、尻切れトンボのような結末だったが…伊倉愛美の無事が保障されたこと、そして何より、あの楠本柊生という男とこれ以上戦わなくて済んだことに、安心した。
「さあ…帰るか…。七海…」
「おう…!帰るで!!」
そう…そして、中村有沙に、少しは自分を認めさせたことが…この戦いを通して得た収穫だった。
それから、もう一つ…あの、憎き羅夢に、大きな貸しをつくったことも…。

(『七回・裏』・・・終了)
1098投稿者:リリー  投稿日:2008年03月22日(土)20時43分57秒
本当に、尻切れトンボ的に戦いは終わりましたが、この後、楠本さんとは長い付き合いになる予定です

では、今日はこれでおちます
1099投稿者:デジ  投稿日:2008年03月23日(日)02時43分49秒
見ました?七海のドラマ?なんか感動しました!
中途半端にお預けになりましたね
しかし、良かったです。少しは、チームNの間に
チームワークが生まれて。
結局、七海と羅夢は、竜とトラなんですね!(笑)
続きも楽しみです!
1100投稿者:決着つかないまま  投稿日:2008年03月23日(日)08時54分40秒
休戦協定ですか。
これからどうなるか 本気で楽しみです。
1101投稿者:117  投稿日:2008年03月23日(日)14時40分30秒
どうも。いやぁ、7回裏はとても長く,熱かったですね!
ここで「休戦協定」と一応なったわけですが、まだ何か続きそう・・・?
一方でこの小説に対し、すごく優しい「いのちのいろえんぴつ」の七海(笑)。
前回,七海が出演していたドラマでは,「非行少女」の役でしたが、やっぱりどの役も七海に合いますね。
こちらの七海の活躍も楽しみなところです。
1102投稿者:髭男爵  投稿日:2008年03月23日(日)15時40分43秒
頑張れや〜い
1103投稿者:リリー  投稿日:2008年03月23日(日)20時31分27秒
七海のドラマ、見ましたよ
ボロボロ泣きました
天てれで元気な姿を見てる分、余計に悲しくなりました(本当に死んだわけではないのですけど…)
私が泣いたシーンは、まず先生が香純の絵日記を見て泣くシーン
ぽか〜んとした顔で見上げてる七海の顔が悲しくて…
そして、香純の前で泣いたことで「死ぬことを悟られてしまったんじゃないか?」とか「生徒の前で泣くなんてムカつきます」とか、大人達が勝手な憶測でバタバタしてたのに、当の香純は日記に、自分の描いた物で先生が泣いてくれたことが嬉しいから、もっと上手に字を書きたいって書いたこと
先生が泣く前から、自分が死ぬことは薄々感づいてたのかもしれませんね
そして最後、すぐ下の妹が、一番下の妹に、香純と同じ様につくしと四葉のクローバーをあげるシーン…ここがピークでした…

NHKでやってた『フルスイング』もそうですが、最近の闘病ドラマって、死に際を描かないんでしょうかね?
『いちご同盟』という映画では、死に際に、病気の痛みにのたうちまわる少女を父親が必死で押さえつけていて、それを2人の少年が呆然と眺めている…というシーンが、凄く印象的だったんですが…

では、更新します
1104投稿者:リリー  投稿日:2008年03月23日(日)20時33分44秒
『八回・表』

≪2007年5/25(金)≫
昼休み。
羅夢は、聖テレジア女子学園初等部校舎、屋上出入り口の屋根の上に寝転がっていた。
この学校の生徒達は、休み時間になると必ずいくつかのグループに分かれて行動を共にする。
まるで、そういう校則でもあるかのようだ。
羅夢のような無頼漢…わかりやすく言えば、孤高…正直に言えば、友達のいない者にとって、何とも居心地の悪い時間帯だ。
韓国への修学旅行も、別段面白くなかった。
焼肉は美味しかったが、気の合わない者との集団行動は、どこに行っても面白くない。
風呂に入る時も、みんな水着を着ていて、自分だけ素っ裸だった。
そんな自分を見て、他の者はクスクス笑い会っていた。
先週、大勢のヤクザに裸を見られたことのある羅夢だから、どうってことはなかったが、それでも気分が悪い。
1105投稿者:リリー  投稿日:2008年03月23日(日)20時34分23秒
しかも翌日、戦争記念館に連れて行かれ、過去の日本軍の蛮行をこれでもか、と聞かされた。
挙句、「未来を生きていく私達が、日本人を代表して謝りましょう」と教師に促され、全員が土下座させられそうになった所、羅夢は激怒。
「アタイは、何もしちゃいねぇ!!なんで土下座しなきゃならねぇんだ!!」と怒鳴り散らし、元従軍慰安婦のお婆さんと大喧嘩してしまった。
結局、修学旅行の最終日、羅夢はホテルに監禁状態となってしまった。
お土産は、ホテルの中で売られていたキムチしか買えなかった。
これでもかと大量に買い込み、『R&G探偵社』に空輸便で送った。
キムチが大好物のダーブロウ有紗は、大喜びだったが…。
羅夢は、目の前に広がる青空を眺める。
飛行機が横切る。
「そう言えば…中等部の修学旅行は、カナダだって言ってたな…」
今、カナダに行っている中村有沙が、メイプルシロップをこれでもかと大量に送りつけてきた。
酒飲みにも関わらず、大の甘党の吉田は大喜びだが…。
おかげで、今『R&G探偵社』では、激辛のキムチと激甘のメイプルシロップが交互に食卓に並ぶ。
「カナダか…。韓国よりも、飛行時間長いじゃん…。あんなやつ等と長時間、狭い機内で一緒かよ…」
羅夢は、本気で転校を考えた。
1106投稿者:リリー  投稿日:2008年03月23日(日)20時34分49秒
羅夢が五月の爽やかな風に吹かれ、うとうととし始めたところ、奇妙な音で目を覚まされた。
それは、ヘタクソなトランペットの音だった。
「…?何だよ…。気持ちよく寝てたのに…」
羅夢は身体を起こして、下を覗く。
屋上の外側…鉄柵に向かって、小柄な少女が銀色に輝くトランペットを吹いている。
まるで首を絞められて、悲鳴をあげているかの様な音色…。
その少女が、今、何の曲を吹いているつもりなのかもわからない。
「おい!やめろ、やめろ!ヘタクソ!!」
その少女はビクンと身体を震わせ、トランペットを口から離すと、辺りを窺う。
「ここだよ!ここ!」
羅夢は、出入り口の屋根から飛び降りる。
その少女は振り返る。
少し小太りだが、可愛らしい外国人顔の少女だ。
「まったく!少しは練習しろ!」
羅夢の言葉に、その少女は口を尖らせて反論する。
「だから、練習してるんでしょ!」
見慣れない顔…友達のいない羅夢でも、彼女は同級生ではない、とわかる…下級生なのだろう。
1107投稿者:リリー  投稿日:2008年03月23日(日)20時35分19秒
「人に聴かせるんなら、もっと練習しろってこった!」
「あなたが、勝手に聴いてたんじゃない!!」
下級生だが、臆することなく突っかかってくる。
羅夢は少し、面白がった。
すると、少女は首を傾げて羅夢の顔をマジマジと見る。
「あ…!あなた、6年生の羅夢ちゃん?」
「ら…羅夢ちゃんだぁ…?」
何故、この少女は自分のことを知ってるのだろう?
自分は有名人なのだろうか?
「おい!アタイは先輩なんだから、羅夢さん、とか、羅夢先輩って言え!!」
「…なんで?そういうのは、中等部からでしょ?」
「あん?」
「何で日本って、歳が一つしか違わないのに、威張ったり、ペコペコしたりするの?私が去年までいたカナダでは、年上も年下も仲良く遊んだりしてるよ?」
カナダ…?彼女は、カナダ人なのか?
そう言えば、中等部の修学旅行の行き先もカナダだったか…。
1108投稿者:リリー  投稿日:2008年03月23日(日)20時35分53秒
「知るかよ!ここは日本だ!!」
羅夢は、カナダと聞いて、途端に機嫌が悪くなる。
「それに、アタイは年上にペコペコなんてしねぇよ!」
「そうなの?じゃあ、私もペコペコしなくていいよね?」
「おまえは、ペコペコするんだよ!!」
「何で?自分はペコペコしないのに、人にはさせるの?」
「あん?」
「自分がされて嫌なことは、人にもしちゃいけませんって、日本に来てから教えられたことだよ?私、それは、とても素晴らしいことだと思うの…」
「ち…!めんどくせぇ、ガキだな…」
「ガキ?『ガキ』って、『子供』の乱暴な言い方でしょ?だったら、羅夢ちゃんもガキじゃない!」
羅夢は、この手の屁理屈の言い合いは、苦手だった。
案の定、もう怒りの沸点を越えてしまった。
「おい!!さっきから、羅夢ちゃん、羅夢ちゃんって…!おまえの名前は何て言うんだよ!!」
「私?私、メロディー。メロディー・チューバック。友達からは、メロとか、メロチューって呼ばれてるよ」
1109投稿者:リリー  投稿日:2008年03月23日(日)20時36分42秒
今日は、これでおちます
1110投稿者:おもしろい  投稿日:2008年03月23日(日)20時57分10秒
です
1111投稿者:おもしろい  投稿日:2008年03月23日(日)20時57分24秒

1112投稿者: 投稿日:2008年03月23日(日)20時58分59秒
うざい糞固定(ゆこ)を追い出そう
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1113投稿者:荒らすな  投稿日:2008年03月23日(日)20時59分37秒
やめろ
1114投稿者: 投稿日:2008年03月23日(日)21時01分44秒
荒らすの辞めないよ!
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1115投稿者:やめろ  投稿日:2008年03月23日(日)21時07分35秒
ここで荒らすな
1116投稿者:水着って持ってくの?  投稿日:2008年03月23日(日)21時07分52秒
ウチの学校は持ってかなかったから不思議に思った。
1117投稿者:女の子ってお風呂で水着着るものなの?  投稿日:2008年03月23日(日)21時09分36秒
 
1118投稿者:お嬢様学校  投稿日:2008年03月23日(日)21時11分00秒
だからじゃない?
1119投稿者:韓国の習慣に習ってるってことですかね?  投稿日:2008年03月23日(日)21時11分07秒
そんな習慣があるのか知らないけど
1120投稿者:117  投稿日:2008年03月23日(日)21時15分49秒
少し、「らりるれろ」で触れられていた部分も出てきましたね。
韓国とカナダのお土産を前に喜ぶダーさん。なんか、その場面が浮かんできます(笑)。
元従軍慰安婦と喧嘩する羅夢・・・確かに、なかなか難しいところかと思いますが・・・?
ここでメロチューの登場ですか。まさにメロディーらしい性格ですね。

話は変わりますが、他のスレで荒らしをやっているヤツがナゼここでも荒らすのか?
1121投稿者:ホントだよね。  投稿日:2008年03月23日(日)21時21分47秒
そのせいで開けなくなったスレもあるってのに…
何考えてんだか荒らしの奴等は。
1122投稿者:あげ  投稿日:2008年03月23日(日)21時22分06秒

1123投稿者:あたし個人的には  投稿日:2008年03月24日(月)09時05分09秒
>全員が土下座させられそうになった所、羅夢は激怒。
>「アタイは、何もしちゃいねぇ!!なんで土下座しなきゃならねぇんだ!!」と怒鳴り散らし、元従軍慰安婦のお婆さんと大喧嘩してしまった。

羅夢の意見にやや同感ですね。確かにあたし達の上の世代がしたことは許されないのかもしれませんが いつまでもそれを引っ張っているのはどうでしょうか??
まぁ 羅夢の場合KYとも言えますが(笑)

へたくそなトランペットで最初あかりをイメージしてましたww夏イベからwww
1124投稿者:リリー  投稿日:2008年03月24日(月)23時00分51秒
すみません、遅くなりました
羅夢が従軍慰安婦のお婆さんとケンカした件は、結構奥深いものがありまして…
ネットのニュースで、こういう記事が本当にあったんです
日本の高校生が修学旅行先の韓国で、土下座させられたと…
私は、アメリカの高校生に、原爆や空襲のことで謝ってほしくはありません
『蛍の墓』を見て、激しく自分達を責めるアメリカの若者もいますが、あの作品は、「戦争という時代は、人が人として生きられなくなる」という、イラクでもコソボでもソマリアでも通じるメッセージ性があって、決してアメリカだけを悪者にしてるわけではないですもんね
だって、節子が死んだのは、清太の責任ですもん
あの嫌なオバちゃんの家で、我慢して暮らせばよかったんです
みんなが野良仕事で働いてるのに、「節子が寂しがるから、働けません」って、家で寝転んでレコード聴いてた所を、ちゃんと描写してるところが、あの映画の凄い所です
原作者の野坂さんは、「僕が妹の分まで食べ物を取り上げたから、妹は餓死した。この作品は、僕の妹への懺悔だ」って言ってました
ただ、「原爆投下は、戦争を早く終えたから、意義があった」と語るアメリカの若者がいたら、日本人として、その若者と堂々とケンカ(議論)すればいいんだと思います

皆様の暖かいコメント、力になります
ありがとうございます

水着でお風呂は、お嬢様学校だから、お互いの裸を見られるのは恥ずかしいかな…と、勝手に想像しました
私の修学旅行では、みんな素っ裸で入りましたよ
胸までキッチリと隠して、まるで温泉リポーターみたいにしてた子もいましたが…

では、更新します
1125投稿者:リリー  投稿日:2008年03月24日(月)23時03分18秒
「メロディー?名前の割には、音楽の才能、ねえんじゃねぇの?」
「ム…!トランペットは、春から始めたばかりだもん!!歌とかギターは上手いんだよ!!今度、聞かせてあげようか?」
「いいよ、別に…。じゃあな、メロディー・チューバッカ」
「チューバック!チューバッカは、『スターウォーズ』に出てくる、お猿さんじゃん!!」
「どっちでもいいよ…」
羅夢は、出入り口の屋根の上に昇ろうと、パイプ状の鉄梯子を上り始める。
下から見上げているメロディーは、大きな声で叫ぶ。
「羅夢ちゃん!パンツ丸見え!」
「見てんじゃねぇよ!!」
「あ…!そう言えば…羅夢ちゃん、先週の月曜日、駅前の繁華街を…裸で走ってた?」
「え?」
「なんか、羅夢ちゃんに似てたんだよねぇ…。顔も声も…」
羅夢は、メロディーの目の前に飛び降りた。
「お…おまえ…あそこにいたの…?」
1126投稿者:リリー  投稿日:2008年03月24日(月)23時04分02秒
メロディーは、大きな目を、更に大きく見開いた。
「やっぱり…!あれ、羅夢ちゃんだったんだ!!」
「…!!い、いいや…違う!!アタイじゃねぇよ…!」
「やっぱりそうだったんだ…。もう一人いたよね?あれは誰だったの?」
「だから!!アタイじゃねぇって!!」
「その怒鳴り声…!やっぱり、羅夢ちゃんだよぉ…!!」
羅夢は、手を額に当てて、天を仰いだ。
「ねぇ…。何で、裸で走ってたの?」
「………で…何で、おまえは…あそこに…?」
「メロディーね、パパとママとお食事に行ってたの。羅夢ちゃん見たのメロディーだけでね、パパとママに、素っ裸の女の子が走ってったよって教えてあげたんだけど、信じないの」
「………教えてあげなくて、いいから…」
「ねぇ…何で?何で、裸で走ってたの?」
「………アートだよ…」
「アート?」
「うん…。現代人は…物に溢れ、囲まれて育って、すっかりひ弱になっただろ…?野生の頃を思い出すべきだって言う…一種の前衛芸術だな…」
「へ〜…あれ、アートだったんだ…」
「でも、あれはやっぱりアートじゃねぇよなって…後悔してんだ。だから、もう、その事には触れるな!!」
何とも苦しい言い訳だったが…ヤクザに捕まって拷問されてたと正直に言っても、余計に信用されない。
言える訳、ないのだが…。
1127投稿者:リリー  投稿日:2008年03月24日(月)23時05分01秒
「面白いね!!やっぱり、羅夢ちゃんって変人なんだ!」
「へ…変人だと!?」
「うん。だって、いつも友達と離れて、一人でいるでしょ?メロディーもね、友達と一緒にいるの…苦手なんだ」
「だったら、おまえだって変人じゃん!!」
「うん!変人同士、仲良くしよ!」
メロディーは、羅夢の腕に絡み付いた。
「馴れ馴れしくすんじゃねぇよ!!」
羅夢は、思わずその腕を払った。
「あ…!」
メロディーの持っていたトランペットが、地面に落ちた。
「ああ…!トランペットが…!」
大きく広がったラッパの部分が…外側に直角に折れ曲がってしまっている。
メロディーは、膝を落として、トランペットを抱き抱える。
「…な、何だよ!!おまえが悪いんだからな!!」
メロディーの涙が、トランペット落ちた。
「う…」
羅夢の心に、罪悪感が重く圧し掛かる。
1128投稿者:リリー  投稿日:2008年03月24日(月)23時05分54秒
「お、おまえの家も、金持ちなんだろ?また、買ってもらえばいいじゃん…!」
メロディーは、首を何度も横に振る。
「これ…お祖父ちゃんの…形見なの…。去年、亡くなって…。お祖父ちゃん、このトランペット…いつも吹いてて…」
良く見たら、随分な年代物だ…。
またも、羅夢の心は押し潰される。
「な、泣くんじゃねぇ!!直してやるから!!」
「え…?直せるの?」
「ああ。直してやるから、泣き止め!!」
羅夢は、出入り口を戻る。
「そこで待ってろ!」
「え?い、今、直してくれるの?」
「そうだよ!すぐ戻るから!!」
羅夢は、自分の教室に急いだ。
1129投稿者:リリー  投稿日:2008年03月24日(月)23時06分30秒
教室に戻った羅夢は、自分のロッカーからスポーツバッグを引っ掴むと、再び、大急ぎで屋上へと走る。
メロディーは、大切そうに曲がったトランペットを抱いて待っていた。
「な、直すって…どうやって?」
「道具…持って来たから…」
「道具?」
羅夢はスポーツバッグから、例のヌンチャクを取り出した。
「え…?そ、それが…道具?」
メロディーは、初めて見た…という様に、不思議そうにヌンチャクを眺める。
「いいか?それ、こうやって持ってろ!!」
羅夢は、トランペットを、ラッパの部分を上にして垂直に持たせる。
「え?え?何するの?」
「いいから!!動かすんじゃねぇぞ?更に酷くなっちまうかもしれねぇし、おまえも、怪我するかもしれねぇぞ?」
「え?怪我?」
「いいから!動くなよ?」
羅夢は、ヌンチャクをゆっくりと回転させる。
「え?え?」
「動くな!!」
もう一度一喝すると、メロディーはピクリとも動かなくなった。
1130投稿者:リリー  投稿日:2008年03月24日(月)23時06分59秒
「オラ!!」
羅夢は、ヌンチャクの先を、トランペットの曲がった部分に、軽く…素早く当てた。
「ひゃ!!」
メロディーは、思わずトランペットを手放してしまった。
「おっと!」
羅夢は、それは予想済みだったかのように、落ち着いてトランペットを受け止めた。
そして、マジマジと曲がった部分を見る。
「う〜ん…。もう少しかな?」
「ら、羅夢ちゃん…?」
「もう一度だ!もう1回、持ってろ!」
「はい!」
メロディーは、素直に従った。
再びヌンチャクで叩く。
今度は、メロディーは、トランペットをしっかり持って落とさなかった。
「うん…!これで、目立たなくなったんじゃねぇの?」
よくよく見てみなければ、トランペットは元の通りと変わらない形になった。
「わぁ!!羅夢ちゃん!凄い!!ありがとう!!」
メロディーは、羅夢に抱きついた。
「やれやれ…」
さすがに羅夢も、今度は邪険に扱うわけにはいかなかった。
1131投稿者:リリー  投稿日:2008年03月24日(月)23時07分22秒
今日は、これでおちます
1132投稿者:おもろい  投稿日:2008年03月25日(火)04時33分40秒
です
1133投稿者:羅夢とメロディー  投稿日:2008年03月25日(火)09時12分16秒
結構いいコンビになりそう?w
1134投稿者:デジ  投稿日:2008年03月25日(火)11時32分01秒
ようやく出ました初等部!
結構合いそうですね羅夢とメロディー。
しかしトランペットをヌンチャクで直すとは...さすが羅夢
というか学校にまで裏での武器を持ってきてるんですね。
普段は護身用ですか......
とにかく続きも楽しみです!
1135投稿者:>デジさん  投稿日:2008年03月25日(火)11時39分03秒
学校から直接R&Gの仕事に行くこともあるからじゃないでしょうか?
だからトラックスーツ(だったっけ?)も持ってきているとか。
1136投稿者:あげ  投稿日:2008年03月25日(火)16時02分44秒

1137投稿者:リリー  投稿日:2008年03月25日(火)20時44分02秒
羅夢に、友達を…ということでメロディーの登場です
羅夢に絡ませて、一番面白そうだったのが、メロディーだったので…て、言うか、ジーナも帆乃香も瑠璃も出してしまったので、メロディーくらいしか残ってませんね
『らりるれろ』では、メロディーのメの字も出てきませんでしたが…

羅夢の武器は、一番携帯しやすいからでしょうね
梨生奈も『七回・裏』で、武器を持ってましたが、普段から持ち歩いてるのは、羅夢だけなんでしょうね

では、更新します
1138投稿者:リリー  投稿日:2008年03月25日(火)20時45分09秒
同じく昼休み…ただし、中等部である。
藤本七海と一木有海は、学級委員として、人体模型を理科室から教室へと運んでいた。
七海は内臓の、有海は骨の人体模型だ。
有海は、内臓の方は気持ち悪がって持てなかったので、七海に運んでもらっている。
しかし、同じく骨の方も気味が悪い。
「ま、待って…藤本さん…」
有海は、息が切れて階段を昇る前に骨の人体模型を床に降ろした。
「何や?一木さん。体力ないな。骨の方が軽いんやで?」
「そ、そうだけど…」
「もう!先に行くで!!」
七海は、さっさと階段を昇っていった。
「ま、待ってよぉ〜…」
有海は、泣き出しそうな声をあげる。
骨の人体模型なんかと、一人取り残されると考えただけで、体中に鳥肌がたった。
有海は、この手の物が、大の苦手なのだ。
1139投稿者:リリー  投稿日:2008年03月25日(火)20時45分32秒
「ええい!もう、しゃぁないな!!」
七海は内臓の人体模型を抱えたまま階段を降りると、有海から骨の人体模型を奪った。
「え?ふ、藤本さん?」
「骨も臓物もウチが持ったったるから、一木さんは、早く理科室から残りの教材を持って来て!」
「は、はい…」
残りの教材とは、筋肉組織の図表だ。
丸まっているので、筋肉むき出しの男の絵は見なくて済む。
有海は七海に深く頭を下げると、理科室へ急いだ。
そして理科室から残りの教材を持ち出すと、有海は鍵をかけた。
「一木さん」
不意に声をかけられた有海は、思わず教材の図表を落としてしまった。
振り返ると…有海のクラスメイト…いつも、有海をいじめるグループの一人が、そこにいた。
そう、有海と七海と担任の珠緒の3人がかりで折り上げた千羽鶴を、プレゼントされた生徒だ。
「な、何…?」
有海は、また自分をいじめる気ではないか…と、言う予感がし、足が震えた。
1140投稿者:リリー  投稿日:2008年03月25日(火)20時46分01秒
「あのね…一木さん…」
その生徒が、一歩前に歩み寄る。
有海は、一歩さがる。
肩を、理科室のドアにぶつけてしまった。
「お誕生日…おめでとう!」
ファンシーな包装紙で包まれた物が、有海の前に差し出された。
「…え…?」
有海は、目を瞬かせた。
「ほら…今日、5月25日…。一木さんのお誕生日でしょ?」
「…あ…」
自分でも、忘れていた。
今日は、誕生日だったのだ。
商社マンで海外へ出張中の父はもちろん、料理研究家で朝から仕事で忙しい母も、今朝は何も言わなかったし、自分も何も言わなかった。
学校でも、誰も言わなかった。
今…初めて言われたのだ。
おめでとう…と…。
1141投稿者:リリー  投稿日:2008年03月25日(火)20時46分25秒
「あ…あの…」
有海は、何と言ったらいいか、わからない。
突然すぎて、言葉が見つからない。
「あ…!うん…。わかるよ…。私達、今まで散々一木さんをいじめてきたんだし…。でもね…」
相手も、言葉を一つ一つ選んでいる様だ。
「あの…千羽鶴…私、嬉しかったんだ…。だから…その、感謝の気持ち…どうやって伝えようかなって…」
それで、この誕生日プレゼントを…?
「こんなことで…許してもらえるなんて…思ってないけど…」
「そ、そんなこと!そ…そんなこと…」
有海は、言葉に詰まった。
「受け取ってもらえる?」
「…うん…。ありがとう…」
プレゼントは、有海に手渡された。
意外と、ズシリと重い。
その生徒は、走って行ってしまった。
その生徒の姿が見えなくなると、有海は、幸せな気持ちでそのプレゼントを抱きしめた。
1142投稿者:リリー  投稿日:2008年03月25日(火)20時46分59秒
「何だろう…?」
有海は、胸を高鳴らせながら包装紙を丁寧に取る。
何か、透明の瓶が見える。
インテリアか何かだろうか?
しかし、何か黄色く濁った液体が、入っているようだ…。
「…?」
有海は、包装紙を全て取り去る。
それは…腹を開き、内臓を全てさらけ出してしまっている…理科室のカエルのホルマリン漬けだった。
「きゃああああ〜〜〜!!!」
有海は、絶叫して目を覆った。
当然、ホルマリン漬けの瓶は、床に落ちる。
瓶が割れ、ガラス片も、液体も、カエルも、廊下の床に飛び散った。
「きゃはははは…!!」
複数の笑い声が、パタパタと騒々しく階段を駆け上がる音と共に消えていった。
「ひ…ひ…ひ…」
声にならない叫び声をあげ、有海は、その場に腰を抜かしてしまった。
1143投稿者:リリー  投稿日:2008年03月25日(火)20時47分30秒
いつまで経っても教室に帰ってこない有海を心配して、七海は理科室まで来た。
その時は、廊下は黒山の人だかりだった。
しかし、その中の何人かは、青い顔をして走り去って行く。
「な、何や?」
七海は、人の壁を掻き分ける。
その人だかりを抜けると、5メートル程先が理科室のドア…そして、そこには、しゃがみ込んだ有海が、顔を覆って泣いていた。
「い、一木さん!!」
七海は駆け寄ったが、廊下が濡れていることに気が付く。
そして、ガラス片…そして…。
「な、何や!?コレ!!」
くったりと、だらしなく内臓を散らかしている、カエルの死体…?
有海は、顔を覆って泣きじゃくっている。
七海は有海の側に駆け寄った。
「な、何してんの!?一木さん!!カエルのホルマリン漬けなんて、授業では使わへんよ!!」
有海は何度も何度も首を横に振る。
1144投稿者:リリー  投稿日:2008年03月25日(火)20時47分53秒
とにかく有海は、このカエルの死体が恐くて、目が開けられないのだ。
早く、有海の視界から遠ざけてやらねば…。
「誰か!!先生呼んで来て!!あと、ホウキとチリトリ…あと、雑巾や!!」
教師を呼びに行く者はいる。
しかし、掃除道具を持ってくる者はいない。
持ってきたら、それを片付けるのは、当然、持ってきた者だからだ。
「何してんの!!早く、持って来て!!片付けな!!」
誰も動こうとはしない。
「自分でやれば…?」
誰かが、小声で言った。
「…ち!」
七海は、立ち上がると、廊下のカエルを素手で鷲掴みにする。
そして、それを野次馬達に見せた。
野次馬達が、悲鳴をあげた。
「この通り、片付けるんは、ウチがやる!オノレ等は、はよ、掃除道具を持ってこんかい!!それくらいは、できるやろ!!ゴルァァァ!!」
ものの数秒で、廊下からは誰もいなくなった。
1145投稿者:リリー  投稿日:2008年03月25日(火)20時48分20秒
今日は、これでおちます
1146投稿者:蛙のホルマリン漬け……  投稿日:2008年03月25日(火)20時49分46秒
うへぇ〜!!
というかいじめグループ何処から持ってきたんだそんなもの……
1147投稿者:理科室からでしょう  投稿日:2008年03月25日(火)20時57分51秒
有海と七海は人体模型を運ぶ為に理科室を開けっ放しにしてたみたいだから
1148投稿者:117  投稿日:2008年03月25日(火)21時26分16秒
まず昨日の話から・・・さすがの羅夢にも情があるんですね。
それにしても、自分の武器で「トランペット」を直すとは・・・(苦笑)。
せっかく、いじめっ子も改心したと思ったら・・・酷過ぎです!
久々に有海が出てきましたが、まだいじめが続いているとは・・・信じられません!
1149投稿者:新しい友達ができた羅夢と  投稿日:2008年03月25日(火)21時33分30秒
新しい友達ができたと思わせていいめられている有海
この対比を描いたわけですね
1150投稿者:オンドレらの血ぃは何色じゃぁぁ!!  投稿日:2008年03月26日(水)00時39分19秒
な、展開を望みます
1151投稿者:有海ー!  投稿日:2008年03月26日(水)00時52分27秒
不運すぎるぜ
1152投稿者:あげ  投稿日:2008年03月26日(水)08時43分29秒

1153投稿者:あげ  投稿日:2008年03月26日(水)22時08分02秒
リリーさん頑張ってください
1154投稿者:あげ  投稿日:2008年03月26日(水)23時49分31秒
 
1155投稿者:あそこで切ったまま更新ないとか  投稿日:2008年03月27日(木)00時56分47秒
ないし
気になるやん?
1156投稿者:リリーさんにも事情があるんだよ  投稿日:2008年03月27日(木)08時02分04秒
1157投稿者:あげ  投稿日:2008年03月27日(木)08時31分38秒
リリーさん頑張って
1158投稿者:あげ  投稿日:2008年03月27日(木)09時09分48秒

1159投稿者:頑張って  投稿日:2008年03月27日(木)09時29分15秒

1160投稿者:あげ  投稿日:2008年03月27日(木)09時31分57秒
ファイト!
1161投稿者:あげ  投稿日:2008年03月27日(木)09時36分56秒

1162投稿者: 投稿日:2008年03月27日(木)15時14分27秒

1163投稿者:デジ  投稿日:2008年03月27日(木)18時00分40秒
火曜日のコメントから。
和やかな初等部から一変中等部は、荒れてますね(笑)。
1日空いてますが、続きも楽しみにしてますので、頑張ってください。
1164投稿者:リリー  投稿日:2008年03月27日(木)20時50分27秒
昨日は友達の家に泊まりに行ってまして…すみませんでした

ところで、瑠璃の卒業はまったく頭になかったので、ビックリしました
5年生、6年生の瑠璃を見てみたかったんですが…
七海みたいに、どこかで見られることを祈ります

さっきまで、NHKの「バッテリー物語」見てました
これからの、この小説の参考になりますね
私は野球部はおろか、マネージャーだってやったことないですから
高校野球も見てますよ

初等部と中等部では、やはり人間関係とか複雑になっていくんだろうなぁ、ということで、対比させてみました
いきなり、カエルのホルマリン漬けを見せられたら、キツイだろうな…と、書きながら思いましたけど…

では、更新します
1165投稿者:リリー  投稿日:2008年03月27日(木)20時51分43秒
有海は、保健室のベッドの上で寝ている。
養護教員は、身体を悪くして今日から入院しているので、七海がずっと付き添っていた。
有海は、相当ショックだった様で、あれから一言も言葉を発していない。
「誰がやったんや…!誰が…!あの臆病な一木さんが、カエルのホルマリン漬けなんて、自分から持ち出すワケ、あらへん!!」
七海は、有海の寝顔を見詰めながら、低く呻いた。
保健室のドアがノックされる。
「一木さん…。具合、どお〜?」
担任の珠緒が入ってきた。
「せ、先生!!誰がやったか、白状させた?」
七海のクラス、3年C組は、理科の授業から急遽、学級会に変更になったのだ。
珠緒は悲しそうな顔をして、首を横に振る。
いや、最初から期待はしていなかったが…。
「ウチが行ったる!!ウチがあいつ等を一人一人締め上げて、白状させたる!!」
七海は、保健室を飛び出そうと、椅子から立ち上がる。
「待って!!」
珠緒は、保健室のドアに張り付いて通せんぼをする。
「どいてよ!!先生!!」
「ダメだったら!!だから、先生、藤本さんに一木さんの看病を頼んだんだからぁ〜!!」
珠緒は、頑として、ドアから動こうとしない。
1166投稿者:リリー  投稿日:2008年03月27日(木)20時52分15秒
「先生!これ、見て!!」
七海が、ホルマリン液に濡れてクタクタになった包装紙を、珠緒に見せる。
「一木さんの側に、これが落ちてた。おそらく、プレゼントと言って、一木さんを騙したんや!!」
七海は、有海の寝顔を振り返って見る。
「…一木さん…多分、誰にやられたって…言わへんつもりや…。言ったら、いじめがもっと酷うなるもん…」
七海は、握り拳をつくる。
包装紙が、クシャクシャと音を立てる。
「それよりも…この包装紙…破れてへん…。丁寧に…テープの所、剥がしてて…。嬉しかったんや…。一木さん…」
「ふ、藤本…さん…?」
七海が、肩を震わせている。
「この包装紙も…大切に取っておこうって…そういうつもりで、プレゼントを開けて見たんやろうな…」
幸せな気持ちから…どん底を味あわされた…。
ただ、いじめるより…遥かに卑怯で残酷だ…!
「だから!!ウチは絶対に許さん!!」
七海は叫んだ。
「この包装紙、扱うてる店を一軒一軒洗い出して、そこの店員に聞いて証言とったる!所詮、中学生や…そない行動範囲は広ないやろ…。監視カメラも確認して…」
「ふ、藤本さん…何か…探偵みたいよ…?」
「…え…?」
珠緒の言葉に、七海は我に帰った。
1167投稿者:リリー  投稿日:2008年03月27日(木)20時53分05秒
「と、とにかく、先生が、いじめを止められへんなら、ウチが止めたんねん!!力づくで!!どつき回してでも!!」
「そ、それじゃあ、藤本さんがいじめっ子になっちゃうんじゃない?」
「あいつ等のいじめは許せて、ウチのいじめは許さん言うんか!?不公平やん!!」
「許してないよぉ!!どんないじめも!!」
珠緒は、目に涙を浮かべて、七海を怒鳴った。
初めて、珠緒に怒鳴られたような気がする…。
「特に…藤本さんみたいに…優しい子が…いじめなんて…絶対に、ダメ…!」
「優しい…?ウチが…?」
「うん…。優しいよ…。すごく…。だから…藤本さんがいじめなんかしたら…先生…悲しい…」
「せ、先生…」
「だから…許さない…」
珠緒は、涙を流した。
「あ…!あ…!泣かんといてよ!先生!!」
「だって…藤本さんが…。藤本さんが…」
「堪忍!もう、いじめとか、仕返しとか、言わへんから…!泣かんといて!な?」
12歳の七海が、34歳の珠緒をあやしている…何とも奇妙な光景だ。
1168投稿者:リリー  投稿日:2008年03月27日(木)20時53分37秒
ようやく泣き止んで落ち着いた珠緒は、七海の目を真っ直ぐに見据えて言う。
「いい?藤本さんができることは…犯人を見つけて、仕返しすることじゃないの…!もっと他にできることがあるでしょ?」
「できること?」
「そう…。一木さんは、深く心を傷つけられた…。つまり…あなたができること…ううん…しなきゃいけないことは、お薬を塗ってあげること…」
「薬…?」
「今日、用意してるんでしょ?お薬…」
「そ…それ…何で…?」
「聞いたの…。あすみ先生から…」
「あ、あの…デカ女…!!ベラベラと…!」
「だから…あなたは、そのお薬を…塗ってあげるの…一木さんの心に…」
「………せやな…」
七海は、もう一度、有海の寝顔を見詰める。
「効くとええけどな…」
そう呟くと、保健室のドアを開けて退室した。
1169投稿者:リリー  投稿日:2008年03月27日(木)20時54分10秒
放課後。
ノックもせずに、あすみは保健室のドアを開けた。
「ひゃ…!な、中田先生…!」
ベッドの上の有海は、驚いて思わず布団を被った。
「どう?もう、元気になった?」
「…は…はい…。でも…まだ、ちょっと気分が悪いんで…今日の部活は…休んでいいですか?」
「ダメ!」
「へ?」
随分、あっさりと申し出を跳ね返された。
「怪我とか病気じゃないんなら、それはサボりじゃないの?」
「そ、そんな…」
「それにね…。あんたをこのまま帰したら…多分、明日は学校に来なくなるよ…」
「う…」
あすみの言葉通り、有海は明日、学校を休むつもりでいた。
1170投稿者:リリー  投稿日:2008年03月27日(木)20時54分37秒
「だから、私はあんたをこのまま返さない!!」
「せ、先生…」
「みんなと練習して、汗を流しな!!そうすりゃ、嫌なことも忘れるさ!!」
「で…でも…」
「忘れさせてやるよ!!千本ノックで!!」
「せ、千本ノック!?」
「ああ…。嫌なヤツにプレゼントする為に…千羽鶴を折ったんだろ?それに比べれば、千本ノックなんて、軽い、軽い!」
「あ…う…」
あの…カエルのホルマリン漬けをプレゼントした生徒の顔が、浮かび上がる。
途端に、吐き気が込み上げてきた。
「う…うぅ…」
「吐くな!!」
あすみは、有海の肩を鷲掴みにする。
「…!?」
「あんたは…強い子だって…私は言ってるの…」
「う…せ、先生…」
「いいかい?言っとくけど…千本ノックって…ノックする方もキツイんだよ…?」
「…え…?」
「私も…あんたと一緒に、苦しんであげるから…」
有海は目に涙を浮かべ、力強く頷いた。
1171投稿者:リリー  投稿日:2008年03月27日(木)20時55分41秒
今日は、これでおちます
1172投稿者:117  投稿日:2008年03月27日(木)21時30分17秒
僕も瑠璃の卒業はかなり予想外でした。この小説では、また出てくるんですかね?
もし出てくるのならば、こちらで瑠璃を思い出したいと思っています。
ドラマ「バッテリー」、僕は見ようと思っています。

珠緒先生、とても優しい・・・けど、七海にあやされているシーンは少しウケました(笑)。
有海に「千本ノック」ですか(苦笑)。果たして、有海は立ち直れるのか・・・?
1173投稿者:デジ  投稿日:2008年03月27日(木)23時56分19秒
今日2度目です。
僕も瑠璃の卒業にはびっくりでした。
珠緒先生、優しい...けどTTKには似合わなそうですね(笑)

一方のあすみ先生嫌なことをきついことで忘れさせるとは..(笑)
厳しさゆえの優しさがありますね。
では、続きも楽しみです!
1174投稿者:しょこたん  投稿日:2008年03月28日(金)11時11分45秒
休みか
1175投稿者:すいませーん  投稿日:2008年03月28日(金)11時15分45秒
素朴な疑問
千本ノックって何ですか?w
1176投稿者:一人千球  投稿日:2008年03月28日(金)11時17分10秒
ノックを受けること
1177投稿者:リリー  投稿日:2008年03月28日(金)20時45分08秒
瑠璃は、この小説でも出てくる予定です
「第二試合」で出てきます
それにしても、有海、藍、エリーの卒業で、野球部の役の人は、全員OGとなりましたね…

先生によって、対応は違うわけですが、私はこれがいいのではないか?と思います
「先生は、こういう場合、こうしなければならない」などと、変にマニュアル化しないで、「この先生はこうする」で、いいんだと思います

1176さん、代わりに答えてくださって、ありがとうございます

では、更新します

1178投稿者:リリー  投稿日:2008年03月28日(金)20時46分49秒
あすみは、有海と共に初等部のグラウンドに少し遅れてやって来た。
相変わらず、初等部の生徒達が大勢見物に来ている。
野球部のみんなは、まだランニング等の基本練習をしていない。
カナダへ修学旅行中の、中村有沙とジョアン以外は、全員揃っている。
ただ、体育着…いや、冬の時に着る、緑色のウィンドブレーカーを上下に着ている。
もうすぐ、6月…衣替えだと言うのに…何でこんな恰好をしているのだろう?
「遅いよ!あみ〜ご!!」
藍が叫んだ。
「あんまり遅いから、汗ビッショリだよ!」
エマが、頬を膨らます。
「ごめんね、みんな。弱虫あみ〜ごの説得に、手ぇ焼いちゃってさ…」
あすみは、有海の肩を軽く叩いた。
「まったく!一木さんのヘタレ!!」
七海も、有海を睨みつける。
「ご、ごめんなさい…」
有海は、もう、自分の代名詞とも言える言葉しか言えない。
誰か一人でも、気遣いの言葉をかけてくれると思っていた有海は、すっかり気落ちした。
1179投稿者:リリー  投稿日:2008年03月28日(金)20時47分14秒
「さ、みんな!練習開始だよ!」
「おう!!」
皆は、一斉にウィンドブレーカーを脱ぎ、帽子を被った。
「…え?」
有海は、言葉を失った。
皆が着ているのは…縦縞の…聖テレ野球部のユニフォームだった。
白を基調とした、細い黒のストライプ。
左袖には、聖テレジアの校章が縫い付けられている。
そして、大きく目立つのが…左胸の黒いマーク…。
『St.T』のアルファベットが、上から下へ、斜めに並んでいる。
一番大きいのが『S』の文字。
その右斜め下に『t.』…それは、十字架の形をしている。
これは、聖テレジアがキリスト教のミッションスクールであることを示している。
そして最後に『T』の文字。
黒い帽子にも、白い刺繍で、同じマークが付いている。
これは、阪神タイガースと言うよりも、メジャーリーグの、シカゴ・ホワイトソックスのユニフォームのスタイルに似ている。
そう…このマークをデザインしたのは…一木有海だったのだ。
1180投稿者:リリー  投稿日:2008年03月28日(金)20時48分13秒
見物をしている初等部の生徒達は、歓声をあげた。
「こ…これって…」
有海は、呆然とそのユニフォームを眺めている。
たしか、先週の火曜…みんなでユニフォームをデザインしようと、デザイン画を描いた。
つまり…有海の考えたデザインが、採用されたのだ。
「まあね…一応、みんなのデザイン画も目を通したんだけど…あみ〜ごのが、一番良かったよ。て、言うか、他のはほんと、酷くてさ…」
あすみは、苦笑いをしながら言った。
「だって、ななみんのなんて、思いっきり、『T』と『H』で、阪神なんだもん!『T』はわかるけど、『H』って何よ?」
「『テレジア(T)』、『張り切っていくぞ(H)』って意味や!」
「無理矢理にも、程があるよ!?」
「『野球(Y)』、『がんばろう(G)』に、言われたないわ!!」
1181投稿者:リリー  投稿日:2008年03月28日(金)20時49分17秒
七海と罵りあいをしている、あすみに代わって、藍が説明する。
「で、どうせ、あみ〜ごのデザインを採用するんなら、あみ〜ごの誕生日に披露しようって、みんなで決めたんだ!」
愛美が、有海の肩に手を乗せる。
「あみ〜ごが考えたユニフォームで…これから、戦っていくよ?いいよね?」
「…は…はい…」
有海は、早くも涙を落とした。
「ちょっと!泣かないでよ!」
「何言ってんだよ!思いっきり泣かせるつもりだったクセに!」
エマが、愛美にチャチャを入れた。
そんな野球部の傍らを、2人の初等部の生徒が通る。
「わぁ〜!!野球部、ユニフォーム、できたんだ!カッコいいねぇ!!」
メロディーが、羅夢の制服のスカートを引っ張った。
「関係ねぇよ!て、言うか、スカート引っ張んな!!」
羅夢は、怒鳴りながらも、縦縞のユニフォーム姿の梨生奈を見た。
「へぇ〜…。なかなか、似合うじゃん…」
羅夢は、そう呟いて、校門に向かって帰路につく。
1182投稿者:リリー  投稿日:2008年03月28日(金)20時50分03秒
「みんな…ありがとう…。ありがとう…」
有海は、人目もはばからず泣いた。
今日、二回目の号泣だ。
しかし…二回目は…なんて気持ちの良い涙だろう。
初等部の生徒達からは、「カッコいい、カッコいい」と声があがっている。
自分の考えたユニフォームを、皆が着てくれている…。
これで…皆と一緒に戦える…。
こんなに…こんなに嬉しいプレゼントが、他にあるだろうか…。
「こっちこそ、ありがとうね。こんな素敵なユニフォーム…」
愛美は、有海を優しく抱きしめた。
「さ、これ…あみ〜ごのユニフォーム…。着てきなよ」
梓彩が、有海にユニフォームを手渡した。
「…はい…」
有海は、そのユニフォームを、愛しそうに抱きしめた。
「な?部活サボらなくて、良かったろ?」
あすみは、有海の背中を、強めに叩いた。
そして…有海は、早くもこの真新しいユニフォームを、千本ノックで泥だらけにした。

(『八回・表』・・・終了)
1183投稿者:リリー  投稿日:2008年03月28日(金)20時51分04秒
今日は、これでおちます
1184投稿者:リリー  投稿日:2008年03月28日(金)20時56分18秒
あと、1174さん
たしかに、しょこたんは保健の先生として出てきますが、彼女も「第二試合」から登場です
つまり、身体をこわして休んでいる先生の代わりとして、聖テレに赴任します

では、今度こそ、おちます
1185投稿者:いい最終回だった  投稿日:2008年03月28日(金)21時45分26秒
そう言いたい程感動的でした
1186投稿者:あげ  投稿日:2008年03月28日(金)21時53分33秒

1187投稿者:あs  投稿日:2008年03月28日(金)21時59分50秒
これは今までのおまじないなんかじゃありません!!
効果絶大のおまじないなんです!!
ではその効き目を少しお教えしましょう…☆
H・Mちゃんは3か所にはりつけたところ…
◎成績アップ↑↑(324人中298位だったのが17位に!!)
◎運動神経アップ↑↑(記録会などで大活躍!!)
またR・Aちゃんは7か所にはりつけたところ…
◎ダィェット成功!!(45キロから39キロに!!)
◎お小遣いアップ↑↑(500円から2000円に!!)
◎先輩とのデート!!(そのデートで告られてラブラブカップルに!!)
などなど!他にもた〜くさんの人が体験してます☆
ところが…守らなかったT・Tちゃんは…
◎成績ダウン↓↓(573人中41位だったのに453位に…)
◎ダイエット失敗↓↓(41キロから53キロに…)
◎彼氏に振られる↓↓(毎日キスは当たり前の仲だったのに突然…)
などなど…。悲しいことばかり…。
でもこれをたくさんはれば幸せはすぐそこだよ☆☆
さあ!みんなもたくさんはろう!!

1188投稿者:あげ  投稿日:2008年03月28日(金)22時03分14秒

1189投稿者:最高の誕生日プレゼントじゃないですか!!  投稿日:2008年03月29日(土)10時09分55秒
でも……
白と黒の縦縞ストライプでやっぱり紙フトの公式審判衣装をイメージしてしまうんだけどwww。
副審判千秋のコス 最高だったなぁ(笑)
1190投稿者:こんな感じのユニフォーム  投稿日:2008年03月29日(土)11時41分09秒
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/en/9/91/ALC-Uniform-CWS.PNG

紙フトの審判みたいに、線は太くないよ
1191投稿者:あげ  投稿日:2008年03月29日(土)12時12分24秒

1192投稿者:あげ  投稿日:2008年03月29日(土)23時03分12秒
age
1193投稿者:あげ  投稿日:2008年03月30日(日)08時51分04秒


1194投稿者:リリーさん  投稿日:2008年03月30日(日)10時03分15秒
頑張って
1195投稿者:あげ  投稿日:2008年03月30日(日)16時10分48秒
 
1196投稿者:リリー  投稿日:2008年03月30日(日)20時42分01秒
昨日はすみません
なんか、急に出かけなければならないことが、最近多いです

1190さん、資料、ありがとうございます
1189さんがおっしゃる通り、紙フト審判も縦縞でしたね
やぱり、細い線ほどカッコよく見えますね

私は、メジャーではホワイトソックスのユニフォームが一番カッコいいと思います

では、更新します
1197投稿者:リリー  投稿日:2008年03月30日(日)20時43分46秒
『八回・裏』

≪2007年5/25(金)≫
「ちょい、ちょい!ちょい、待ち!お姉ちゃん達…!ちょいと待ちぃな!!」
突然、声をかけられ、グレーのスーツ姿の俵姉妹は、同時に振り返った。
ここは、天歳駅前の広場。
ギターを掻き鳴らす青年、ストリートダンスをするグループ…若い熱気に交じり、随分しょぼくれた老人が、占いのテーブルを出している。
彼は、シアトル・マリナーズのレプリカユニフォームに、ボストン・レッドソックスのスタジアムジャンパー、ニューヨーク・ヤンキースのキャップにサングラス、という、節操の欠片もない恰好をしている。
そして、ズタズタに破れたジーンズに、スタジアム・ジャンパーやキャップには、メジャーリーグの全球団のピンバッジを着けている。
「お姉ちゃん達って…私達のこと?」
人に対して物怖じしない、妹の…俵小百合が、自分と隣の姉を、交互に指差す。
「そう、そうや!あんた達や!ちょいと、こっち来!」
椅子から腰を浮かし、大きな仕草で手招きする老人。
1198投稿者:リリー  投稿日:2008年03月30日(日)20時44分01秒
「どうする?お姉ちゃん…」
小百合は、姉の俵有希子に窺ってみる。
「う〜ん…。無視!無視!行こう!!」
「そうだね、いい年してナンパってのも、ね〜?」
姉妹は、仲良く立ち去ろうとする。
「ちゃう、ちゃう!!ナンパとちゃう!ちょっと、話しを聞いてもらいたいんよ!」
「宗教の勧誘?」
「せやから、ちゃうって…!オッチャン、占い師なんよ」
「占い師?」
占いに多少は興味のある有希子は、少しその老人に歩み寄る。
1199投稿者:リリー  投稿日:2008年03月30日(日)20時44分30秒
「ちょっと…お姉ちゃん達…気をつけた方がええな〜…思ってな…」
姉妹は、顔を見合わせる。
「お姉ちゃん…今から、人に会いに行くやろ?」
得意顔で、自信たっぷりに言う老人。
「そりゃあね…。大抵の人は、人に会う為に出かけているんじゃないの?」
「ああ…そうや!仕事や!仕事しに行くんやろ?」
「そりゃあね…。スーツ姿なんだし、これ見たら、仕事に行くんだなってわかるよね?」
「2人の関係は…姉妹やろ?」
「さっき、私がこの人のこと、『お姉ちゃん』って呼んだじゃん!!」
「ほんま?聞いてへんかったわ…」
「行こう!お姉ちゃん」
「そうね。私達、ヒマじゃないもんね」
姉妹は肩を並べて、老人に背中を向けて行きかける。
「ああ…!!待った!!そうや!今から、あんた達は、謝りに行くんやな?」
ピタリと姉妹の足が止まる。
「…え?」
2人とも、同じタミングで振り向いた。
1200投稿者:リリー  投稿日:2008年03月30日(日)20時45分05秒
「どうして…わかったの?」
小百合が、少し厳しい態度で、老人に詰め寄った。
老人は、サングラスを取った。
意外と、目は小さく、優しげな印象を与える。
「これは、占いとちゃうで…。まず、あんたら、あんまり楽しそうな雰囲気やなかった」
「だって、仕事だもん」
「その仕事でも…お姉ちゃんの方やな…?3歩、歩く度に、一つ溜息ついとった…」
有希子は、思わず口を隠す。
「それから…君は妹さんの方やね?眉間にシワが寄ってたで?」
小百合は、人差し指と親指で、眉間をついっと引っ張る。
「2人の表情から察するに…あんまり気の進まん仕事…つまり、自分の責任やないことで…お得意さんに、頭を下げに行くんやろ?」
有希子は、僅かに笑顔になる。
「うん、うん…。こういう、論理的な切り口…私は好きよ。いきなり、霊感とか言われたら、眉唾モンだけどさ」
「私は、お姉ちゃんの口から『論理的』って言葉を聞けたのが驚きだけど…」
妹の突っ込みは無視して、有希子は、老人のテーブルの前に着く。
「で…占いって…幾ら?」
「諭吉一人」
「高…!!」
俵姉妹は、途端に立ち去りかけた。
1201投稿者:リリー  投稿日:2008年03月30日(日)20時45分40秒
「ああ…!!待ち!!せやったら、2人で諭吉一人でええわ!!」
「高!!高!!」
また二歩、姉妹は老人から遠ざかる。
「ええい!せやったら、2人で一葉一人でええわ!!」
「高!!高!!高!!」
更に、三歩、遠ざかる。
「…ふ〜ん…ま、ええわ…。ワシも慈善事業やないしな…」
老人は、椅子に腰を降ろした。
「え…?ちょ、ちょっと…!気をつけた方がいいって…どういうこと?」
小百合は、一気に老人の元に戻ってくる。
「ん?別に、お客さんやないし…」
「逆に、気になるじゃないですか!!」
有希子も、歩み寄る。
「なら…占いや…。ほんま、2人で一葉一人でええよ。オッチャンが、引き止めたんやさかい…」
そう言うと、老人は輪ゴムで止めた、タロットカードをテーブルの上に置く。
1202投稿者:リリー  投稿日:2008年03月30日(日)20時46分18秒
「占いって…それで…?」
「ん?そうや…」
老人は、カードの輪ゴムを、手首に移すと、トランプのように、タロットカードを切り始める。
「わ…!何か、お手軽な切り方…」
小百合は、失笑した。
「お手軽…?ええことやん」
「でも…何か、安っぽくて、有り難味がないよ…」
有希子も、そう呟く。
「ははは…。ヘボな占い師ほど、演出に凝りよんねん。オッチャンの占いは、シンプル・イズ・ベストや!」
そう言うと、テーブルの上に、ズラリとタロットカードを裏向きに並べた。
その手つきは、まるでマジシャンのようで、老人が、このカードの扱いに慣れていることを物語っている。
よく見ると、カードの模様も、だいぶ擦り切れて、色が禿げている。
「さ…この中から、3枚、選び」
「3枚?」
「これから会う人の数…3人やろ?」
1203投稿者:リリー  投稿日:2008年03月30日(日)20時46分50秒
「ブ・ブ〜!!ハズレ!!一人だよ!」
有希子は、胸の前に、腕で大きくバッテンをかざす。
「一人?そんなはずない…!3人や!!」
老人は、かなり強めに言い切った。
「3人…?何で…?」
「これは、説明のしようがない…。『ロリン的』には、言えへん…」
「『論理的』だよ。『論理』…」
「ああ…。ごめんな。もし、あんた等が一人や、言うんなら、向こうは急遽、3人で会うことにしたんやろ?」
「………ま、いいや。3枚だね?」
1枚目は有希子が選び、2枚目は小百合、最後の3枚目は、相談して、姉妹2人が選んだ。
「これで、ええんやね?ほな、開くで…」
老人は、一枚一枚、順番にカードを表向きにする。
一枚目…王冠を被り、杖を持った女の絵柄… ?・ L'Imperatrice …と書かれた『女帝』のカード。
二枚目…骸骨の様な人物が、大きな鎌を持ち、地面には人の頭、手、足が散らばっている絵柄… ??・ 表記はないが …これは『死神』のカード。
三枚目…王冠を被り、女が獅子の口を押さえつけている絵柄… ??・ La Force…と書かれた『力』のカード。
これら3枚のカードが、姉妹の前に提示された。
1204投稿者:リリー  投稿日:2008年03月30日(日)20時47分15秒
「わ…!お姉ちゃん…!何か、恐いのが出たよ!!」
小百合は、『死神』のカードを指差した。
「これ、あんたが引いたんでしょ?もう!縁起でもない!!」
姉妹が言い争いをしているが、老人は、構わず口を挟む。
「縁起でもないって…これ、3枚とも、厄介なカードやで?」
「…え…?」
「つまり… あんた等がこれから会う3人の人物…それが、このカードや。
つまり、『女帝』と『死神』と『力』…。
「あの〜…意味がわからないんですけど…」
「今から、教えたるわ…と、言うより、『災難』の避け方や…」
「『災難』…?」
「3人言うてもな…最初から3人が揃っとるというワケやない」
「え?」
「『3人そろったら』ヤバい!!…その前に…はよ、帰り」
姉妹は、説明を受けても、まだワケがわからなかった。
1205投稿者:リリー  投稿日:2008年03月30日(日)20時47分36秒
「あの…何が何だか…」
有希子は、明らかに困惑した顔を老人に向ける。
「うん…。ま、しゃあないな…。大抵は、実際に起こってみて、ああ、このことやったんや…と、気付くのがほとんどやし…。とにかく、『女帝』と『死神』と『力』や。気ぃつけぇ…」
「『女帝』に『死神』に『力』…?ほんと、ワケわかんない…。もっと、詳しくわからないんですか?」
「せやって…しゃぁないやん。2人で一葉一人の占いやで?」
「じゃあ、あと5000円払ったら、もっと詳しく占ってくれるの?」
「そうや…」
姉妹は顔を見合わせ、同時に老人の方を見る。
「どうも、ありがとうございました」
老人は、テーブルに頭をぶつけた。
そんな老人のリアクションを無視し、姉妹はサッサと行ってしまった。
「…一葉一人くらい…安いもんやがな…」
老人は、残念そうに姉妹の背中を見送った。
「おじいちゃん!どう?儲かってる?」
一人の少女が、老人の元に駆け寄って来た。
「何や?帆乃香…。家で留守番してるんやなかったんか?」
「一人じゃ、つまらへんもん。おじいちゃんの占い、見とったら、退屈せぇへんやん」
「退屈か…。ま、占いなんて、退屈しのぎの贅沢品や…でも…」
占い師の老人…間寛平は…もう一度、姉妹へ視線を向ける。
「最高の贅沢なんやで…。未来を知る、言うんは…」
姉妹の姿は、人ごみに紛れ、もう見えることはない。
1206投稿者:リリー  投稿日:2008年03月30日(日)20時47分56秒
それでは、今日はこれでおちます
1207投稿者:117  投稿日:2008年03月30日(日)21時15分07秒
久々の登場です。表では、有海も少しは元気になったみたいで良かったです。
そして「裏」。やっぱり占いの老人は寛平さんでしたか。
結構当たる寛平さんの占い・・・果たして、今回の災いは?続きも楽しみです。
1208投稿者:分かりやすい。  投稿日:2008年03月30日(日)21時38分46秒
 
1209投稿者:一葉(5000円)ケチって  投稿日:2008年03月31日(月)08時50分09秒
詳しいことをきかずじまいな俵姉妹……非常に気になります。

でも普通占いって硬貨単位じゃないんですか??
1210投稿者:女帝って  投稿日:2008年03月31日(月)10時11分55秒
まさか、あの女か・・・
1211投稿者:あげ  投稿日:2008年03月31日(月)10時13分39秒

1212投稿者:上手すぎ  投稿日:2008年03月31日(月)10時41分49秒

1213投稿者:札束要求してくる占いもあるよ  投稿日:2008年03月31日(月)10時50分09秒
 
1214投稿者:あげ  投稿日:2008年03月31日(月)10時53分32秒

1215投稿者:>13  投稿日:2008年03月31日(月)11時02分26秒
○木○子のこと?
1216投稿者:デジ  投稿日:2008年03月31日(月)12時56分52秒
こちらも、久々に来ました。
表から...
有海が元気を取り戻してよかったです。
次は裏...
俵姉妹に振りかかる三枚のカードの指す意味(一難)とは何か
続きも楽しみです!
1217投稿者:忙しくて久しぶりに読んだ  投稿日:2008年03月31日(月)14時32分18秒
有海良かったなー!
自分もじーんときた
1218投稿者: 投稿日:2008年03月31日(月)14時56分57秒

1219投稿者:おもろ  投稿日:2008年03月31日(月)16時08分46秒

1220投稿者:今日の天てれの感想を聞かせてください。  投稿日:2008年03月31日(月)20時47分56秒
リリーさん。
1221投稿者:リリー  投稿日:2008年03月31日(月)20時54分37秒
おお、更新しようと思ったら…

感想ですか?
まだ、よくわからないですね
新人の子も、トークとかロケとかゲームとか見て、素の表情を早く見たいです
ミストの3人は、仲間ハズレですか?
イケメンダンスチームということで、女の子の視聴者を狙った、客寄せパンダなんでしょうか?
みんなとワイワイゲームとかロケとかしたいだろうに…

でも、3チーム制というのは新鮮でいいかもしれません
基本は、去年と似たようなものなので、03→04の様なカルチャーショックを受けなくてすみました
04の冒頭、甜歌と愛実だけが延々と出演した時は、「てれび戦士全とっかえか?」と焦りました
杏奈が登場した時、ホッとしたのを覚えています

1222投稿者:そうだよパンダだよ  投稿日:2008年03月31日(月)20時56分48秒
腐女子ひきつけてどーすんだよ
1223投稿者:あと去年の感想もお願いします。  投稿日:2008年03月31日(月)20時59分19秒
 
1224投稿者:リリー  投稿日:2008年03月31日(月)21時05分53秒
今日、『女帝』の正体が明かされます

有海も、少しは幸せな気持ちにしてあげたかったので、誕生日のエピソードを考えました
その為に、凄く可哀そうな目に遭わせてしまいましたが…

では、更新します
1225投稿者:リリー  投稿日:2008年03月31日(月)21時13分50秒
俵姉妹は、天歳市内で最大のホテル、『トゥインクル・ホテル』のスイートルームに向かう。
そこで、依頼人の後藤理沙と会う約束をしている。
最上階に向かうエレベーター内で、まだ、駅前での占いの話題を引っ張っていた。
「お姉ちゃん…。これから会う、依頼人の人って…そんなにヤバそうな人だっけ?」
「ん?この前会った時は…ダーさんやレッドさんと一緒だったし、私達は記録とってただけだったし…よく覚えてないわ」
「だよね…。なんか、お嬢様っぽい、どちらかと言えばトロそうな…感じだった…。そう、お姉ちゃんみたいな…」
「最後の一言は余計よ…!でも…」
「でも…?」
「加藤組を…ヤクザ組織を、ぶっ潰してくれ…なんて依頼をするような人間だもん…。ダーさんじゃないけど、早いとこ縁を切りたいよ」
「…だね…」
エレベーターの扉が開く。
約束の部屋へ向かう。
1226投稿者:リリー  投稿日:2008年03月31日(月)21時14分21秒
「ようこそ、いらっしゃい。さ、お掛けになって…」
真っ赤なスーツにミニのタイトスカートを纏った、依頼人…後藤理沙は、高級ソファーに足を組んで腰掛けたまま、姉妹を招き入れた。
20畳以上はあろう、豪華な部屋。
南側は一面ガラス張りで、天歳市内を一望できるくらいだ。
微かに、虹守駅周辺と、『R&G探偵社』のビルが見える。
今は午後6時だが、日がだいぶ長くなったため、まだ充分景色を眺めることができる。
「失礼します」
姉妹は、理沙の真正面に座った。
「ルームサービスで、シャンパンでも頼みます?」
テーブルの上の電話機に手を伸ばす理沙に、有希子は手を挙げて制した。
「いえ…仕事中ですし…。それに、未成年ですから」
「…そう?じゃあ、私だけ頂くってのも、失礼だから…」
理沙は残念そうに呟く。
「いえ、私達にはお構いなく…」
「いいわ。だって、お酒は一人じゃ飲まない主義なの…。主義と言うより、ただの寂しがり屋なんだけどね」
そう言って、彼女は笑った。
本当に、世間知らずのお嬢さんと話している、という雰囲気だ。
まだ二十代前半の…若く、美しい女性だ。
彼女からは、『女帝』も『死神』も『力』も…連想できない。
1227投稿者:リリー  投稿日:2008年03月31日(月)21時15分25秒
有希子は小百合に目配せする。
小百合は、ブリーフケースから、封筒を取り出す。
「では…さっそく本題に入っても、よろしいでしょうか?」
「ええ…。どうぞ…」
理沙は、再び足を組み、背中を柔らかなソファーに預ける。
「この度は、弊社の勝手な都合により、お客様の御依頼をお断りさせて頂いたこと…誠に申し訳ございません…」
有希子と小百合は立ち上がり、深く、深く頭を下げた。
「それにより、お客様より頂きました、前金、2000万円の小切手を、お返ししたく…」
「いいわ。持ってて…」
理沙は、有希子の謝罪の言葉を断ち切った。
「…え?」
姉妹は、似ていない顔で、まったく同じ表情で聞き返した。
「今…何と…?」
「だから、そのお金は取っておいて下さいな」
「ええ…!?で、でも…」
「また、あなた達にお願いする機会があるかもしれませんものね…」
無邪気にそう語る理沙に対し、姉妹は言葉を失った。
1228投稿者:リリー  投稿日:2008年03月31日(月)21時15分57秒
有希子は、困惑しながら言葉を続ける。
「弊社は、お客様…後藤様の御依頼は、お受けしかねると…つまり、今後もお受けすることはない…と、いうことを、今回はお伝えに参ったわけでして…」
「ふ〜ん…」
理沙は、つまらなそうに口を尖らせた。
大金をつぎ込んで加藤組を潰してくれ、と依頼したに関わらず、何故か反応が軽い…。
まるで、楽しみにしていた行楽が、延期にでもなったような…そんな感じなのだ。
つまり、この依頼は、加藤組への恨みからくるものではない…?
自分の金でないから…もっと大きな組織からの資金なので、こうも簡単に「取っておけ」などと口にできるのだろうか?
恐怖や重圧は感じないが、何か、関わり合いになると厄介なことに巻き込まれそうな気がする。
ここは、早めに退散した方が良さそうだ。
あの、占い師の老人に言われなくても、そう考えただろう。
「お客様のご期待に副えなかったこと…まことに…申し訳ありませんでした…」
姉妹は、再び深く頭を下げた。
そして、部屋から出ようとしたところ…。
「お待ちになって…」
理沙が呼び止めた。
1229投稿者:リリー  投稿日:2008年03月31日(月)21時16分41秒
「…はい?」
早く帰りたい、と心に思っていたことが、顔に出てしまったかもしれない。
そんな姉妹の心境を知ってか知らずか、理沙は、非常にゆったりとした喋り方をする。
「とても…残念です…。業界ナンバー1と言われた、『R&G』にまで断られ…一体、どうしたらいいものか…」
理沙は、マニキュアを気にしながら、言葉とは裏腹に呑気な口調で話す。
「はぁ…。ですから…まことに申し訳ありません、ということで…前金もお返しして…」
「ううん…。お金を返して、それでさよならって…何か、寂しいなって…」
「寂しい?」
「ねぇ、お掛けになって…」
理沙に言われ、姉妹は仕方なく、ソファーに再び腰を降ろす。
そして、理沙は立ち上がり、ゆっくりと姉妹の座るソファーに近づく。
「別にね…今から私が言うことは、お仕事とは関係ないのよ…」
そう言うと、姉妹の…有希子と小百合の間に、強引に捻じ込む様に腰を降ろす。
「…!」
思わず、姉妹は少し腰を横にずらした。
「せっかく、こうやって…私達って出会えたじゃない?」
理沙は、両脇の姉妹の肩に、手を掛けた。
1230投稿者:リリー  投稿日:2008年03月31日(月)21時17分16秒
困惑した顔を、理沙越しに見合う、俵姉妹。
「…あ…あの…?」
不安な顔で、理沙の顔を見詰める有希子。
「ねぇ…。私達、お友達にならない?」
「お…お友達?」
声のトーンが高くなる小百合。
「と…とんでもない…です…!私達は、探偵と依頼人の間柄ですし…」
有希子は、精一杯の営業スマイルで答えた。
「あら?私、もう依頼人じゃないでしょ?」
「そ…そうですが…」
ぎこちなく、視線を理沙から足下に逸らす有希子。
そんな横顔を、楽しそうに眺める理沙。
「うふ…。大きな耳…」
「…え?」
「おいしそう…」
理沙は、有希子の左耳を、唇でそっと挟んだ。
1231投稿者:リリー  投稿日:2008年03月31日(月)21時17分54秒
「ひゃ、ひゃあ!!」
有希子は、唇で触れられた左耳を抑えて、跳び退いた。
「ちょっと!あんた!!お姉ちゃんに何すんのさ!?」
比較的男勝りな性格の小百合が、理沙の肩を掴んだ。
「いや〜ん!!いた〜い!!何するのよ〜!!」
ワザとらしく、悲鳴をあげる理沙。
「あ〜ん…。もう…痣になっちゃったかもしれないじゃない!責任、とってよ!」
頬を膨らませて、小百合を見上げる理沙。
「私達はね、お嬢様のヒマつぶしに付き合う気、ないから!!行こう!お姉ちゃん!!」
「…う…うん…」
怒り心頭な小百合の後に、涙目の有希子が続く。
「ふふん…。こういうことも、得意だったんじゃないの?『前にいた所』じゃ…」
理沙の言葉に、有希子は反応する。
「…?今…何て…?」
「え?私、何か気に触ること言いまして?」
理沙は、小首を傾げながら、笑顔を見せた。
1232投稿者:リリー  投稿日:2008年03月31日(月)21時18分29秒
「あの…。『前にいた所』とは…?」
先ほどまで、涙目だった目をキッと向け、有希子が問い詰める。
「そうねぇ…。続きは…ベッドの上でどう…?」
理沙は、部屋の隅にあるダブルベッドを指差した。
「お姉ちゃん…!帰ろうよ!」
小百合が、有希子の肩を掴んだ。
有希子はその手を振り払うと、理沙の目の前まで歩み寄った。
「続き…?その話の続き、興味があるわ。聞かせてくれないかしら?」
じっと理沙を見下ろす、有希子。
余裕の笑みで見返す、理沙。
「いいけど…先にシャワーを浴びてきてもいいかしら?」
「どうぞ…」
「私がシャワーから上がった時、誰もいなかった…なんて、寂しいこと、嫌よ?」
「安心して…。ちゃんと待っててあげる…」
理沙は、ふふふ…と笑うと、ゆっくりと立ち上がる。
そして、有希子の頬を軽く撫で、小百合にウィンクすると、バスルームへと入っていった。
1233投稿者:リリー  投稿日:2008年03月31日(月)21時24分24秒
今日は、これでおちます

去年の感想ですか?
司会がTIMから安田大サーカスに代わりましたが、すんなりと慣れることができました
設定は変わっても、基本は同じなので安心して見てられました
でも、クロちゃんのないがしろのされ方は、やりすぎかな?お思いましが…
あと、瑠璃が1年で終わりとは、本当にビックリです
去年の今頃、「西遊記」とかビデオのCMで有名な子だったので「この子、てれび戦士になったんだ」と、ビックリしたのですが…瑠璃にビックリで始まり、瑠璃にビックリで終わった一年でした…
1234投稿者:ありがとうございます  投稿日:2008年03月31日(月)21時29分43秒
 
1235投稿者: 投稿日:2008年03月31日(月)23時40分32秒

1236投稿者:アマノガワ  投稿日:2008年04月01日(火)01時59分54秒
更新お疲れ様です。
トゥインクル・ホテル…相変わらず地名や建物の名前には天てれ関係の言葉を使うリリーさんに感服します。
そういえば今回はまだ里穂は出てませんでしたっけ?
それから女帝…先が気になりますね
関係ない話ですが、瑠璃の卒業は予想範囲内だったりしました
理由を聞かれれば、なんとなくとしか言いようがないんですけど
1237投稿者:ミストは……  投稿日:2008年04月01日(火)10時57分52秒
ドラマで最初は浮いてしまっているけれどだんだんみんなとなじむようになったとかいう流れだったらいいなぁ。
もちろん普通のロケとかも。

天てれファンが見たいのは戦士が協力し合い楽しんでいく様子なのにねw
1238投稿者: 投稿日:2008年04月01日(火)14時24分30秒
リリーさんへ
2日ですべて読ませていただきました。
とてもすばらしく心に残り非常によかったです。
リリーさん友達になってくれませんか?
私は天テレの小説大好きです。

P・S2008の新人などは入れないのでしょうか?
1239投稿者:リリー  投稿日:2008年04月01日(火)20時50分00秒
「トゥインクル」は里穂と有沙のユニット名ですが、覚えてくださいましたか
一番、ホテルにありそうな名前は何だろう?と悩みました。

ミストは、EDでそれぞれのチームカラーの服を着ていたように見えたので、最終的には合流するのでしょうね

霊さん、はじめまして
2日で読破したのですか?
凄いですね
でも、一気に読んで頂いて、とても嬉しいです
はい、お友達になりましょう
このスレッド限定でよければ…ですが…

新人は、まだどんな子か分りかねるので小説には出すことができない状況です
大体、半年〜1年はかかります
梓彩の様な1年戦士は、出そうと思ったら卒業…なんてことになりがちですが…
1240投稿者:リリー  投稿日:2008年04月01日(火)20時51分37秒
では、更新します
1241投稿者:リリー  投稿日:2008年04月01日(火)20時54分06秒
理沙がバスルームに入った途端、小百合は血相を変えて、有希子に駆け寄った。
「ちょ、ちょっと!お姉ちゃん!!私は嫌よ!!あんな女の相手するの!」
「小百合…ちょっと…」
有希子は、小百合を部屋の隅に連れて行き、バスルームの中の理沙に聞こえないような声で話し合う。
「大丈夫。あの女の相手をするのは、私一人よ」
「…え?」
「小百合…。あの女も…裏の人間よ…」
「ええ…!?」
「あの女、私達…『R&G』が、元『TTK』だと知っている…!その上で、私達に依頼をしたのよ」
有希子は、水の音と理沙の鼻歌の聞こえる、バスルームを睨みつける。
「で、でも…お姉ちゃん…一人でどうするつもり…?」
「あの女の…正体を探るわ…!」
「だ、だったら…私も…!」
「ダメよ!2人ともここに残ることはないわ!!」
「で、でも…」
「それに…私一人で戦うつもいもないわよ?あんたには、あんたの役目がある」
有希子は、小百合の目をじっと見据える。
1242投稿者:リリー  投稿日:2008年04月01日(火)20時54分40秒
「私の…役目…?」
「あの…占い…覚えてる?」
「え…?占い?」
「『女帝』…『死神』…『力』…。別に、あの占いを信じてるわけじゃないけど、あの女に仲間がいるかもしれない」
「…あ…!」
「あんたは、この部屋を出て、エレベーターの前を張って、出てきた人間を、捕らえるのよ」
「で、でも…他の宿泊客かもしれないし、ルームサービスかも…」
「その時は、ごめんなさい、でいいのよ。『R&G』とダーさんの名前を出しておけば、警察沙汰にはならないわ。それに、やつ等も変装してくるだろうし…」
「そ、そうだね」
「私は、あの女がバスルームから出てきた途端、がんじがらめにして捕らえるわ。そして、『誘惑』でも『拷問』でもして、あいつ等の目的を白状させる」
「気をつけてね…お姉ちゃん…」
「大丈夫…。あの女は、身の動きとか見てても…そんなに手強い相手ではない…。いや、ただの使いね。あんたこそ気をつけてよ?あんたの方に、戦闘要員が来るかもよ?」
「うん…。気をつける…。じゃあ…」
小百合は、出来る限り足音を立てずに、スイートルームを出て行った。
1243投稿者:リリー  投稿日:2008年04月01日(火)20時55分45秒
「ふぅ〜…さっぱりしたわ…。さ、今度はあなた達がシャワーを浴びてきて…」
真っ白なバスローブ姿で、理沙はバスルームから出てきた。
有希子は、ダブルベッドの上に、正座をして待っていた。
「あら?あなただけ…?妹さんは…?」
「帰ったわ…。私一人だけじゃ嫌?」
理沙は、笑顔で首を横に振る。
「いいわ…。どちらかと言うと…あなたの方が好み…」
バスルームの帯に手をかけて、有希子の元へと歩く理沙。
すると、足首に何かが触れた。
チュン…。
「!?」
理沙は、その何かにつまづき、転んでしまう。
咄嗟に手を着く。
「…糸…?」
気がついた時には、遅かった。
柔らかい絨毯に着いた両手には、その極細の鋼線が何重にも絡みついていた。
チュィィィ〜ン…奇妙な音と共に、理沙の身体はダブルベッドに吸い寄せられていく。
「え…?え…?ええ…!?」
理沙の表情は、動揺を隠せない。
「あなたのお望み通り…気持ちよくしてあげる…」
有希子は冷たい微笑みを浮かべ、理沙の身体に馬乗りになる。
1244投稿者:リリー  投稿日:2008年04月01日(火)20時56分46秒
理沙の両手は、共に重ね合わされ、上に絞り上げられている。
そして、両手を縛り付けている鋼線は、ダブルベッドの飾り格子に結び付けられている。
「ちょ、ちょっと…わ、私…こういうの…苦手…」
「あなたの好みはどうでもいい…。素直にしていれば、あなたの望むことをしてあげるから…」
有希子は、理沙のバスローブの帯を解いた。
そして、ゆっくりと前を開ける。
理沙の、形の良い胸が露わになる。
「あ…ちょ…ちょっと…」
戸惑う理沙の唇に、ねっとりとしたキスをする。
「あ…う…ん…」
そして、理沙を黙らせた。
有希子はしばらく、理沙の唇を弄ぶように吸い続けると、ようやく放した。
「あ…あ…」
理沙は、もっと、もっと…と、せがむ様な顔になる。
「ふふ…。慌てないで…。もっと他の所も気持ちよくしてあげるから…」
そう言うと、首筋、胸へと唇を這わせていく。
1245投稿者:リリー  投稿日:2008年04月01日(火)20時57分43秒
有希子は、『TTK』の三大要素、『誘惑』、『拷問』、『殺人』の内、この『誘惑』が一番得意なのだ。
『TTK』の中では、戦闘能力は劣る俵姉妹だが、こうやって捕らえてしまえば無敵になる。
姉妹の場合、捕らえるまでが大変なのだが、こうもいとも容易く捕らえられるとは思わなかった。
あとは、快感を絶頂前で寸止めし、欲望から言いなりになる人形にした後、欲しい情報を手に入れるだけだ。
この、快楽を求める切ない顔が、有希子は大好きだった。
理沙も、同様の顔を見せる。
有希子は、絶妙なタイミングで、快楽をやり過ごしていく。
フラストレーションは、その度、理沙の身体に溜まっていく。
「あ…あ…はぁ…。ど、どうして…?もっと…。もっと…」
「ん?どうしたの?」
「お、お願い…。意地悪しないで…」
「うふふ…。だったら教えなさい…」
「…え…?」
「あなたは…いえ、あなた達は…何者…?何故、私達の過去を知ってるの?」
「だ…だって…あなた達は…裏の世界じゃ…有名…だもの…」
有希子は、理沙の下半身に、指を入れる。
「あ…!!はぁぁぁ!!!」
理沙の身体は、ガクンと跳ねた
1246投稿者:リリー  投稿日:2008年04月01日(火)20時58分19秒
有希子は、理沙の耳元に吐息をかけながら、そっと囁く様に言う。
「ちょいとそこらの雑魚じゃ…『TTK』の存在は知られてないはずよ…。それなりに奥深い…裏の闇に身を置いていないと…」
「で…でも…わ、私は…た、ただ…その話を…聞いただけで…」
指に力を入れる有希子。
「あう…!!」
身体中に、力が入る理沙。
「聞いた…?誰に…?」
「そ…それは…い、言えない…」
有希子は、指を抜いた。
「ああん…!そ、そんなぁ…!!」
理沙は、頭を起こしたが、有希子は顔を乱暴に掴み、柔らかいベッドに押し付ける。
「甘ったれないの!!『快楽』が欲しければ、『情報』と交換よ!!」
「じょ…情報…?」
「そう…。あなたの組織の正体…。そして、加藤組の壊滅を狙う、真の理由…」
「り、理由なんて…わ、私も…た、頼まれただけで…」
再び、理沙の『中』に指を入れる有希子。
「あぐ…ぅ…!!」
「頼まれた?誰に?」
1247投稿者:リリー  投稿日:2008年04月01日(火)20時58分50秒
泣き出しそうな顔で、理沙は、訴える。
「い、言えないわ!!あなただって…依頼人の名前は言えないでしょ?守秘義務よ…!」
「ふ〜ん…。守秘義務と言われれば、私も探偵…弱いわ…。ま、いいか…。加藤組なんて、どうでもいいし…」
有希子は、小さな蕾を指で摘む。
「あ…ぎぃ…!!」
目をしっかりと瞑り、歯を食い縛る理沙。
「あなたの…組織のこと…教えて…」
「そ…組織なんて…そ、そんな大したものじゃ…」
もう一度、有希子は蕾を指で摘んだ。
「ああん!!」
有希子は、体重を理沙の太ももに移す。
理沙は、跳ねることもできなくなった。
「大した組織かどうかは、私が判断するわ…」
有希子は、理沙の身体の横に添い寝をする形になり、朦朧とした表情であえぐ理沙の横顔を、ぺロリと舐めた。
「さぁ…。言いなさい…。あなたの組織の正体は…?仲間の人数は…?ボスの名前は…?」
「い、言えない…!!言えないわ!!」
理沙は、首を横に激しく振った。
1248投稿者:リリー  投稿日:2008年04月01日(火)20時59分16秒
これで、有希子は確信する。
この女の背後にある組織は…相当の規模のものではないのか?
依頼料が5000万円…これだけの資金を用意できる組織…。
「なら、このまま止めてもいいの?こんな中途半端なところで止めちゃっても…」
「い…嫌!!ダ、ダメ!!頭が…おかしくなっちゃう…!!」
「だったら、教えなさい。私…あなたのイク顔…見たい…」
「は…ああああん…!!ダ、ダメ!!ダメェ!!い、言えない!!」
(もう少しか…)
有希子は、フィニッシュへと移る。
激しく指を出し入れする。
「あ…!あ…!!ああ…!!!」
理沙の身体は、ガクガクと揺れる。
「い…い…言います…!!言いますからぁぁぁぁ〜〜〜!!!」
「そう…。いい子ね…。さあ、教えなさい…。あなたの組織は…?」
その時、堅く閉じた理沙の目が開き、有希子の目と合う。
「な〜んちゃって!!」
理沙は、そう言って舌を出した。
1249投稿者:リリー  投稿日:2008年04月01日(火)20時59分46秒
「…え?」
有希子は、一瞬、理沙の行動の意味がわからなかった。
その隙に…理沙は、身体を起こし、ダブルベッドから降りていた。
「…え?…え?」
動けるワケがない…。
だって、鋼線で縛って………ベッドの上を見ると…鋼線が細切れになって散らばっていた。
「…え?…ええ!?」
有希子は、思わず理沙の方を見た。
理沙は…バスローブを脱ぎ捨て、裸の後姿をさらしていた。
有希子は、息を呑んだ。
理沙の背中、一面に…『弥勒菩薩』の入墨が入れられていたからだ。
今までの…理沙の、世間知らずなお嬢様のイメージが崩れ去る。
「どう…?素敵でしょ?これ…私の自慢なの…」
ゆっくりと振り返る理沙の顔は…顔こそ同じだが…全く別の雰囲気を放つ…裏の者となっていた。
1250投稿者:リリー  投稿日:2008年04月01日(火)21時00分53秒
今日は、これでおちます
1251投稿者:あげ  投稿日:2008年04月01日(火)21時04分35秒

1252投稿者:117  投稿日:2008年04月01日(火)21時20分19秒
ゆっこの「誘惑」・・・なんか、すごい濃いですね(笑)。
理沙さんは今まさに裏の「女帝」の顔を出したということでしょうか?
ゆっこたちはどうなるのか、続きが気になります。
1253投稿者:あげ  投稿日:2008年04月02日(水)08時04分38秒

1254投稿者:あげ  投稿日:2008年04月02日(水)08時44分04秒
 
1255投稿者:あげ  投稿日:2008年04月02日(水)17時29分01秒

1256投稿者:ああげ  投稿日:2008年04月02日(水)17時29分41秒

1257投稿者:あげ  投稿日:2008年04月02日(水)17時31分38秒

1258投稿者:ああ  投稿日:2008年04月02日(水)20時24分47秒
369と9x9の最後のやりとりを思い出したわ
1259投稿者:リリー  投稿日:2008年04月02日(水)20時50分50秒
だまし討ちというのが、理沙っぽいのかもしれませんね
理沙も、元帥同様、只者ではありません

今回は、『死神』と『力』も登場します

では、更新します
1260投稿者:だれもみてねーよ  投稿日:2008年04月02日(水)20時51分25秒
 
1261投稿者:リリー  投稿日:2008年04月02日(水)20時51分33秒
「ど…どうして…?逃げられるワケ…ううん…動けるワケ、ないのに…」
有希子は、呆然と目の前の裸の理沙を眺めた。
理沙は、凍りつくような笑顔で、有希子に語りかける。
「どうでもいいけど…あなた、隙だらけよ?」
はっと、目が覚める有希子。
「ええい!!」
有希子は、スーツの袖から鋼線を繰り出した。
チュィィィ〜〜〜ン…ありったけの鋼線は、幾重にも重なって理沙の身体をきつく締め上げる。
これで…もう、脱出不可能だ。
「動かないで!!動いたら、身体中、切り刻まれるわよ!!」
興奮状態となり、つい、声を荒げる有希子に対し、理沙は冷静に答える。
「動く?動かないわよ…。私はね…」
「…?」
理沙の、背面の壁に映っている影が…ゆらり…と揺れた気がした。
1262投稿者:リリー  投稿日:2008年04月02日(水)20時52分16秒
有希子は、自分の目がおかしくなったのかと一、二度大きく瞬きする。
その瞬間、またもや理沙を縛っていた鋼線が、細切れになって絨毯の上に落ちた。
「…ええ…!?」
何故だ…?理沙は、一歩も…いや、指一本動かしてない。
動かしたら、身体中が切り刻まれ、血祭りになっているハズだ…。
いや、理沙はさっき何と言った?
動かない…私は…。
『私は』…?
またも、理沙の影がゆらりと揺れた。
いや…影にしては濃すぎないか…?
いや…黒すぎる…存在感が、ありすぎる!!
その影の頭の部分…ギョロリと目が動く…。
「…!!?」
影ではない…?
その影と思われたものは…理沙の隣に並んだ。
その影は…女だった…。
顔色の悪い…いや、顔色の無い…亡霊のような…女…全身黒ずくめの『死神』のような女だった…。
1263投稿者:リリー  投稿日:2008年04月02日(水)20時52分39秒
一方、妹の小百合は、エレベーターのドアの真ん前に、早撃ちのガンマンの様に構えて立っていた。
このエレベーターのチャイムが鳴り、ドアが開いた途端、ありったけの鋼線を解き放つ…!!
たとえ、誰であろうとも…。
スイートルームの姉の身を、一瞬案じる。
今、丁度あの女から情報を聞き出している頃だろうか?
そう考え、すぐにエレベーターへ注意を向ける。
自分は、自分の役目を果たすだけ…。
すると…エレベーターではない…階段の方から、足音が聞こえてきた。
「…?」
足音の感覚のリズミカルな短さ…階段を昇る者は、走っている?
「誰…?」
このホテルのスタッフか?
しかし、それなら何故、エレベーターを使わない?
足音は、段々、この最上階まで近づいて来ている。
力強い足音…男か女かも、わからない。
一応、小百合は階段の方へ、注意を移した。
1264投稿者:リリー  投稿日:2008年04月02日(水)20時53分56秒
すると、その階段を昇る者は一段一段上がるのではなく、一気に階段を飛び越えてこの階に足を踏み入れた。
「…!?」
その人物は…女だった…。
大柄な女…。
黒い直毛の髪を肩まで伸ばし、上は黒いタンクトップ、下は迷彩のミリタリーパンツ、そしてミリタリーブーツ…。
注目すべきは、その身体…。
女性なのだが…肩はいかり、腕は筋肉でパンパンに膨らんでいる。
おそらく足も同様に張っているのだろう。
それに…まるで肉食動物のように、獲物を狙う獰猛な目…。
小百合の姿を見ると、僅かにその口元を上に歪め、舌で唇を舐めた。
一目で、表の世界の住人ではないと…わかる…。
考える間でもない。
小百合は、スーツの袖口から、ありったけの鋼線をその女に解き放った。
幾重にも、その女の身体に鋼線が絡みつく。
「動かないで…!動いたら…」
「おりゃあああ!!!」
小百合がそう言いかけた時、その女は、鋼線の絡み付いた腕を思いっきり手前に振った。
「え…?」
小百合は、凄まじい力で、その女の元に引き寄せられた。
そして、小百合の首に、強烈なラリアートを喰らわせた。
そう…凄まじい『力』で…。
1265投稿者:リリー  投稿日:2008年04月02日(水)20時55分05秒
有希子は、理沙と…その横に立つ不気味な女を交互に見る。
「あ…あなた…どこから…入って来たの…?」
出入り口のドアは、一度も開かなかった。
ベランダの窓だって…。
第一、外には小百合がいるはずだ…。
それなのに、ここに侵入してきたということは………小百合に身に何か…?
しかし、理沙からの答えは、意外なものだった。
「どこから…?どこからも入って来てないわ…。だって、最初からここに居たもの…」
「え…?」
最初から…?
「ねぇ?はるか…」
はるかと呼ばれた…その女は、無言でコクンと頷く。
「この人、名前は箕輪はるか。こんな不気味な風貌だから、私は『みのぽー』って可愛いあだ名をつけてあげたわ。気に入ってる?」
「うん…。結構ね…」
消え入りそうな、高いかすれ声…箕輪はるかの第一声だった。
1266投稿者:リリー  投稿日:2008年04月02日(水)20時55分52秒
有希子は、この女の名前など、ましてやあだ名など、どうでもよかった。
それよりも…。
「最初から…?嘘よ…!!この部屋に…あなたの気配なんて…なかった…!」
そう…気がつかないはずがない。
そんな、やわな訓練など受けていない!!
「だってさ…。みのぽー…」
「ま…私の存在感の無さは、一種の才能だからね…」
ぼうっとした…つかみ所のない、力の無い声…。
「そうね…。他のメンバーとは違って、あなたは気配を消す努力をしなくていいものね…」
理沙の言葉に、有希子は素早く反応する。
(『他のメンバー』?い、いるの…やっぱり…?)
理沙は、後ろを振り返り、バスローブを羽織って、背中の『弥勒菩薩』を隠した。
「でも…あんな恥ずかしいところを、みのぽーに見られちゃった…」
「気にしないで…。私は、ただの影だったから…」
一体、この女達は何者なのだ?
もう一度…鋼線を放ってみるか…?
その時、スイートルームのドアが、破壊されそうな程、勢い良く開かれた。
1267投稿者:リリー  投稿日:2008年04月02日(水)20時56分47秒
思わず、ドアを見る有希子。
そこには…体つきのたくましい、女が立っていた。
肩に、誰かを担いでいる。
「さ…小百合!!」
そう…担がれているのは、小百合だった。
どうやら、気を失っているようだ。
女は、足音を立てながら荒々しい歩みで、ベッドに近づく。
そして、小百合をダブルベッドの上に投げつけた。
「小百合!!」
有希子は、小百合を揺り動かそうとする。
「待った!!」
その、女が叫んだ。
「…え?」
「もしかしたら、首の骨がずれてるかもしれねぇ…。動かさない方がいい…」
「…な…な…?」
小百合は白目を剥き、小刻みに痙攣している。
1268投稿者:リリー  投稿日:2008年04月02日(水)20時57分41秒
「な…何をしたの!?妹に…何をしたの!?」
有希子は、その女に向かって怒鳴りつけた。
「何をした?ウエスタン・ラリアートだけど?」
女は、悪びれる様子も無くさらりと答えた。
「遅かったわね…。恵…」
理沙は、その女の名前を呼んだ。
「わりぃ!弥勒姉さん!!」
恵と呼ばれたその女は、両手をパンパンと合わせ、理沙に頭を下げる。
「トレーニングの一環でさ、私はエレベーターを使わないようにしてんだ」
「階段でここまで昇って来たの?相変わらずねぇ…あなた…」
理沙は、この女から『弥勒姉さん』と呼ばれている…。
この3人の中で、一番立場が上のようだ。
「3人…?」
そう…あの占い師の老人が言っていた…。
3人そろうと、ヤバいと…。
3人そろう前に、帰れと…。
1269投稿者:リリー  投稿日:2008年04月02日(水)20時57分58秒
今日は、これでおちます
1270投稿者:117  投稿日:2008年04月02日(水)21時05分05秒
なるほど、みのぽーと秋山さんでしたか・・・みのぽー、まさにキャラそのまんま(笑)。
ある意味、すごく恐い3人かもしれません。続きも楽しみです。
1271投稿者:くそー  投稿日:2008年04月02日(水)23時44分31秒
小百合を〜?
1272投稿者:みのぽー  投稿日:2008年04月02日(水)23時51分23秒
真剣なシーンなのにワロタ
俵姉妹大ピンチだな
1273投稿者: 投稿日:2008年04月03日(木)14時00分40秒
ありがとうございます。私は本年度より中1になりますが私の母親は社会人になりそして安定した仕事に就いてから好きな人を作りなさいと言われたので彼氏は当分先になりそうです(>ー<)
なぜかリリーさんの小説読むと探偵っていいですね。
リリーさんの将来は何ですか?私は助産師さんです

恵って私誰か知らないんですよね・・・
意外と私はそういうことはできません
こわ〜いです・・・・
1274投稿者:あげ  投稿日:2008年04月03日(木)17時57分52秒

1275投稿者:リリー  投稿日:2008年04月03日(木)21時21分58秒
山本組側の用心棒は、理沙、みのぽー、秋山さんでした
俵姉妹のピンチは続きます

霊さん、でも、好きになったら年は幾つでも構わないと思いますよ
テレビとか映画とか漫画と違い、探偵って、もっと地味な仕事らしいです
一応、市役所とか警察とかには、無許可で開業できるらしいですし…
私の将来ですか?
おそらく、普通のOLなんじゃないかな…?

秋山恵(『めぐみ』ではなく、『けい』と読みます)さんは、04〜07年と、何だかんだと連続で出演している女子プロレスラーの方です
04年は、ドラマパートで女刑事の役を、05、06は『黒猫』という悪役で、07年は、楠本さんも出てた『ネバネバランド』の話しでも、あかりと戦いました

では、更新します




1276投稿者:リリー  投稿日:2008年04月03日(木)21時23分31秒
理沙、はるか、恵…3人の女達は、ダブルベッドに上がり、有希子を囲んだ。
「うぅ…」
もう、有希子一人では、どうすることもできない。
3人は、ベッドの上で座っている有希子と同じ視線まで降りる。
理沙は、ゆっくりと語りだす。
「この私から、私達の組織のことを聞き出そうと随分がんばったみたいだけど…残念だったわね」
「弥勒姉さんは、不感症だもんね…」
「失礼ね…。みのぽー…。それなりに気持ちよかったわよ」
「で、どうする?コイツ。ボコボコにしてやる?」
恵は、有希子の首根っこを掴んだ。
「ぐ…!う…!」
有希子は、身体を硬直させた。
「へへ…。見ろよ…。コイツ、怯えてやがるぜ…」
恵は、有希子の顔を覗き込んだ。
「恵!ダメよ!いじめたら…。可哀そうじゃない…」
理沙は、恵の手を有希子の首から放すと、有希子の前髪を…そして頬を撫でる。
「私達の組織のことは教えてあげないけど…他のことなら…一つだけ教えてあげるわ…。何が聞きたい?」
1277投稿者:リリー  投稿日:2008年04月03日(木)21時24分29秒
一つだけ…教える?
しかし…それが、本当のことなのか、確かめようがないが…。
「ど…どうして…加藤組を…壊滅させようとしているの…?」
理沙は、少し驚いたような顔になり、首を傾げた。
「そんな、つまらない質問でいいの?ヤクザなんだから…恨みに思っている人は、多いわよ…」
「そ…それなら…もう一つ…いい…?」
「うふふ…。キスしていい…?だったら、もう一つ質問させてあげる…」
「………」
有希子は、黙って頷いた。
「…ふふ…。舌…出して…」
有希子は、警戒しながら、舌先を出した。
「もっと…出して…」
言われるまま、更に舌を押し出した。
次の瞬間、理沙は有希子の舌を、左手で掴んだ。
「…!ひぎ…!」
「もっと、出すのよ!!もっと!!」
理沙の手は、有希子の舌を捻りあげながら引っ張り出す。
「ふぎぃぃぃ〜〜〜!!!」
有希子は、涙を流し、呻き声をあげるしかなかった。
そんな有希子の脇で、はるかと恵は、大笑いをしている。
1278投稿者:リリー  投稿日:2008年04月03日(木)21時25分19秒
「うふふふ…。美味しそうな舌…。きれいなピンク色ね…。みのぽー…」
右手を、はるかに差し出す理沙。
はるかは、手術用のメスを手渡した。
このメスで…鋼線を断ち切ったのだろうか…?
理沙は、そのメスを有希子の舌の根にあてがう。
「切り取って…食べちゃおうかしら…」
刃の冷たさが、有希子の舌に伝わる。
「ひぃ…!ひぃぃぃ…」
有希子は、恐怖に震えた。
「ガハハハ!!コイツ、ビビってやがるぜ!!」
恵は、有希子の髪の毛を乱暴に掴んだ。
有希子の首が、ガクガクと揺れる。
今にも、メスの刃が、有希子の舌を傷つけてしまいそうだ。
「ふふ…。ウソよ…」
理沙は、メスをはるかに返すと、ゆっくりと有希子の舌に、吸い付いた。
1279投稿者:リリー  投稿日:2008年04月03日(木)21時26分02秒
理沙が、有希子の舌から口を放す。
有希子は、涙で濡れた目で彼女を睨んでいた。
「う〜ん…。そんな恐い顔で睨まないで…。何でも、一つだけ答えてあげるから…」
「じゃ、じゃあ…一つだけ…」
有希子は涙を急いで拭き、気を取り直して質問を慎重に選ぶ。
「………どうして…私達に…加藤組の壊滅を依頼したの…?あなた達で…充分できるでしょう…?」
その質問に対し、理沙は微笑むと、ゆっくりと頷いた。
「いいわ…。いい質問ね…」
有希子の大きな耳に、唇を寄せて囁くように語る。
「加藤組だけなら、私達だけでどうとでもなるわ…。でもね…加藤組は、厄介なヤツを用心棒に雇ってるのよ…。はっきり言って、ヤツと一戦を交えるのは…凄く気が進まないのよね…」
「厄介な…ヤツ…?」
「そう…。あなた達、『R&G』には、そいつと戦ってもらいたかったのよ。で…実際、戦ったんでしょ?」
「…え?」
理沙の言う、厄介なヤツ…とは…?
「そ、その、厄介なヤツの名は…楠本…?」
「ち…!」
その名を聞いた途端、恵は面白く無さそうに舌打ちをした。
1280投稿者:リリー  投稿日:2008年04月03日(木)21時27分00秒
「そう…。楠本柊生…。彼と戦った途端、あなた達、この依頼を放り出したわね?」
「な…何故…それを…?」
有希子の驚きの言葉に含み笑いをしながら、理沙は言葉を続ける。
「それにあなたの仲間、彼に捕まって拷問されたでしょ?ヒヤヒヤしたわ。私達の名前を言っちゃうんじゃないかって…」
最近の出来事が、全て筒抜けになっている…?
この、気配の無い女…箕輪はるかなら、諜報活動はお手の物なのだろう…。
「そ、その、楠本って男…一体、何者なの!?」
「おい!!」
不意に怒鳴られた有希子は、恵の方を振り向いた。
その瞬間…凄まじい衝撃と振動…激痛と共に目の前が真っ白になった。
恵が、有希子の顔面に頭突きを喰らわせたのだ。
「あぐぅ…!!ぐぅぅぅ…」
有希子は、鼻と口を押さえて、前屈みになり呻いた。
「質問は一つだけって言っただろ!?何、調子こいてまた質問してんだよ!!てめぇ!!」
「恵!!やめなさい!!」
理沙は恵を怒鳴った。
怒鳴られた恵は、肩をすくませてそっぽを向く。
1281投稿者:リリー  投稿日:2008年04月03日(木)21時28分23秒
「何てことをするの!!可哀そうに…。ほら、見せてごらんなさい…」
理沙は、うずくまって震える有希子の上体を起こすと、優しく顔を包み込み、怪我の状態を診た。
「あ…あ…あ…」
有希子の鼻からは、血が吹き出て、唇から…そして前歯にも血が滲んでいる。
理沙は、有希子の鼻を、そっと摘んだ。
「あぎぃ!!」
痛みに、有希子はビクンと肩を揺らした。
「大丈夫よ。鼻は折れてないわ…。でも…」
今度は、血の滲む上の前歯を軽く親指で押した。
「あ…がぁぁぁ…!!」
有希子の前歯は、グラグラと揺れた。
「あ〜あ…。歯がもう、グラグラよ…。でも、折れる一歩手前ってとこね…」
「…思い切って、抜いちゃった方がいいよ…」
はるかが、ボソリと口を挟む。
「いっそのこと、差し歯にしたら?私みたいに、神経が死んじゃうかもよ…?」
はるかがニヤリと笑うと、一本だけ黒く変色した前歯がさらされた。
「う〜ん…。それもそうね。だったら、歯医者さんで抜く手間を省いてあげましょ。恵、みのぽー、この子。押さえてて」
理沙にそう命じられ、恵は後ろから有希子を羽交い絞めにし、はるかは、足を押さえつけた。
1282投稿者:リリー  投稿日:2008年04月03日(木)21時29分19秒
「さあ…お口を開けて…」
理沙は、身動きがとれない有希子の顎を思いっきり掴み、無理矢理口をこじ開けた。
「あ…ががが…」
理沙は、人差し指と親指で、有希子のぐらついた前歯を摘む。
そして、小刻みに揺らし始めた。
ギリギリとした痛みが、有希子を苛む。
「あ…ひぃ…!や、やめぇ…」
有希子は悲鳴をあげるが、理沙はお構い無しに、指先に力を込める。
「大人しくしなさい…。根元から、きれいに抜いてあげるから…」
「ひぎぃぃぃ…!!んぎぎ…」
目から、滝のように流れる涙…。
身体を押さえつけられている為、有希子は、なす術なくいたぶられる。
「ふふふ…。もうすぐ、抜けるわ…」
「あああ…。あがぁぁぁ…」
理沙も、はるかも、恵も、痛みに泣き叫ぶ有希子を見て、心底楽しんでいるようだ。
バキ…!凄まじい音と共に、激痛が頭を突き抜ける。
「ひぎゃあああああ〜〜〜!!!」
有希子の叫びが、スイートルームに響き渡る。
1283投稿者:リリー  投稿日:2008年04月03日(木)21時30分19秒
「う…う…うぅ…」
有希子は、口を押さえてベッドの上で肩を震わせた。
その押さえた両手から、血が滴り落ち、白いシーツに斑点を残した。
「いいか?今日は、これでカンベンしてやらぁ!!でもな、これ以上私達の正体を嗅ぎまわったら、全部歯を引っこ抜いてやるからな?」
恵は、うずくまる有希子の後頭部を、足で踏みつけた。
柔らかいベッドに、顔を埋められる有希子。
次々とダブルベッドから降りる、3人の女達。
「じゃあね…。あなたは、この程度で済んで良かったわ。それよりも、あなたの妹さんの方が危険な状態よ…」
理沙は、部屋に備え付けてある室内電話の受話器を取った。
「もしもし、フロント?怪我人がでたわ。2人…。ええ…一人は軽傷、もう一人は重傷よ。至急、救急車を呼んで下さいね」
はるかと恵は、既に部屋から出て行った。
理沙は、ベッドの上で、痛みに震える有希子と細かく痙攣をしている小百合の姿を振り返り、声をかける。
「最低限の親切はしてあげたからね…。私達を恨んじゃ嫌よ?」
理沙は、脱いだ自分の服をその場に置いたまま、バスローブ姿で部屋を後にする。
そして、もう一度、俵姉妹を振り返る。
「あなたの歯…。今日の記念に貰っておくわね…」
そう言うと、さっき抜いたばかりの、血の滴る有希子の前歯を、ぺロリと舌で舐めた。
1284投稿者:リリー  投稿日:2008年04月03日(木)21時31分30秒
今日は、これでおちます
1285投稿者:117  投稿日:2008年04月03日(木)21時34分14秒
よく考えてみると、秋山さん・理沙さん・みのぽ〜・・・
それぞれ出ていた主な年が違って、3世代ですね。なかなか珍しい組み合わせです。
ゆっこも小百合も悲惨な状態です・・・なかなか厄介な3人組ですね。今後はどうなるのか?
1286投稿者:小百合  投稿日:2008年04月03日(木)21時37分36秒
をはやくたすけて
1287投稿者:俵姉妹  投稿日:2008年04月03日(木)23時18分36秒
のほほーんとしてるのに
可哀相すぎる…
1288投稿者:リリー  投稿日:2008年04月04日(金)21時08分17秒
姉妹は、少し可哀そうだったかもしれませんが、敵の存在のヤバさは伝わったかと思います

たしかに考えてみれば、3人とも共演はしてませんね
『女帝』、『死神』、『力』のイメージにピッタリだったもので…

今日で、『八回・裏』は終わりです
ここで一気に『第一試合』はクライマックスに向かいます

では、更新します
1289投稿者:リリー  投稿日:2008年04月04日(金)21時09分24秒
「ゆるせねぇ!!やつ等、ぶっ殺してやる!!」
ダーブロウ有紗は、『R&G探偵社』の社長室のドアを打ち破る勢いで開けた。
しかしそこには、ジャスミン・アレンと岩井七世が立ちはだかり、彼女の行く先を塞いでいた。
「落ち着いて…。有紗…」
「どけ!!ジャスミン!!」
ダーブロウ有紗は、ジャスミンの胸座を掴む。
「お願い…。ダーさん…」
七世は、その胸座を掴んだ手を、そっと両手で包み込む。
「出っ歯ちゃん…!おまえもか?」
「と、とにかく…冷静になりましょ?」
僅かに、胸座を掴む手が緩むと、ジャスミンはその手を払い除けた。
そして、社長室に入る。
七世も、ダーブロウ有紗の背中をそっと押して、部屋の中入れると、ドアを閉める。
「今…レッドさんから電話があったわ。有希子さんは、歯を折られただけで済んだけど、小百合さんは首の骨を痛めたみたい…。神経が圧迫されていて、もう少しで半身不随になるところだったって…」
「く…!やっぱり許せねぇ!!」
ダーブロウ有紗は、ドアに向かって突進する。
七世は、ドアを背にし、張り付いて、首を何度も横に振った。
1290投稿者:リリー  投稿日:2008年04月04日(金)21時10分16秒
「どこへ行く気なの?有紗。やつ等の行方もわからないでしょ?」
ジャスミンは、ソファーにくつろいだまま、めんどくさそうに言う。
「ミミーの話しによると、背中に大きな弥勒菩薩の入墨…だろ?それだけ聞けば、探し出すのはわけないぜ!!」
「そいつ…理沙って女、一人だけじゃないでしょ?やつ等は3人…いや、もっと仲間がいるのかもしれないじゃない」
「全員、蹴散らす!!」
「難しいわよ…。いくらあなたでも…」
「何!?」
今度は、ジャスミンの方へ、突進するダーブロウ有紗。
それでも、ジャスミンは微動だにもせず、逆にダーブロウ有紗を睨みつけ、言葉を続ける。
「まず…箕輪はるか…とかいう女…。有希子の話しからすると、まったく気配を感じさせず、侵入することができるって話し…。今も、この部屋の中にいるかもしれない…」
「!?」
ダーブロウ有紗は、思わず部屋の中を見回した。
「それから…恵とか呼ばれてた女…小百合の話しからすると、あの鋼線の束縛を受けても、力ずくで強引に振り切ったって…。有紗、確かあなたでも不可能だったわよね?」
そう…。半年前、ジャスミンと死闘を繰り広げた時、俵姉妹に鋼線で捕らえられたことがある。
あの時は、なす術がなかった…。
1291投稿者:リリー  投稿日:2008年04月04日(金)21時11分19秒
「つまり…てめぇ…。私が、恵とかいう女に敵わねぇ…とでも?」
ダーブロウ有紗の、ジャスミンを見下ろす目に、殺気がこもる。
「パワーは、確実にあなたよりも上ね」
その殺気を軽くいなし、ジャスミンは、尚も冷静に切り返した。
「戦いはパワーだけじゃねぇ!!スピード、テクニック、心理…いろんな要素があらぁな!!」
「でも…その、いろんな要素を持っているやつ等を一編に相手しようって言うんでしょ?あなた一人じゃ、確実に負けるわよ…?」
「何だと!?」
いきり立つダーブロウ有紗の肩に、七世が手を置く。
「それは…半年前に証明されてます…。夏希さんが作戦を立て、ジャスミンさんが戦闘をし、俵姉妹があなたを捕らえる…。ダーさん…見事に、策にはまりましたよね…?」
「む…」
ダーブロウ有紗は、返す言葉がなかった。
そこに、追い討ちをかけるように、ジャスミンが言う。
「このまま、有紗一人がやつ等と戦えば…まず、恵とかいう女が、有紗と互角に戦っている間、はるかとかいう女が、気付かれることなく有紗を暗殺…。その指揮をとるのは、理沙って女…」
「くぅ…」
「つまり、やつ等と一戦を交えるなら、私達も総力戦でいかなければダメってこと…。でも、それ以前に…私達がやつ等と戦う理由がない」
「何だと!?ミミーとジョーがやられたんだぞ!?このまま黙って泣き寝入りしろってのか!?」
七世によって幾分冷静になったダーブロウ有紗だが、ジャスミンの言葉により、また激情に駆られてしまった。
「私達は、何?ヤクザか何か?ちがう!探偵でしょ?この能力を使うのは、依頼人の為だけでしょ?仲間がやられた報復に使うなんて…表の世界ではやってはいけないことよ!!」
ジャスミンの意見は正論だった。
これでは…裏の世界に…『TTK』に身を置いていた頃の自分に…逆戻りしてしまう…。
1292投稿者:リリー  投稿日:2008年04月04日(金)21時12分32秒
「し…しかし…私が一体、何の為に、普段ジャイアンみてぇに威張り散らしてると思ってんだ!!こういう時、真っ先に身を呈してやる為だろうがよ!!」
ダーブロウ有紗は、大理石のテーブルを叩く。
テーブルの表面に、ヒビが入った。
そのヒビを眺めながら、七世は静かに言う。
「私だって、悔しいです…。俵姉妹の仇をとりたい…!でも、それを、あの俵姉妹が望んでいません…」
「何?」
「今回ことは、自分達のミスだ…と…。ただ、依頼の断りを伝え、前金を返す…命令通りにしていれば、こんなことにはならなかったって…」
七世は懐から封筒を取り出す。
「それからこれは、やつ等が置いていった、2000万円の小切手…。おそらく、慰謝料か何かのつもりでしょう…。どうします?」
「どうするだと…?」
七世の問いに、ダーブロウ有紗は、眉間にシワを寄せる。
1293投稿者:リリー  投稿日:2008年04月04日(金)21時13分20秒
ジャスミンがソファーから立ち上がると、七世からその封筒を奪い取った。
「どうするって…当然、こうするんでしょ?」
ジャスミンは、大理石のテーブルに置いてある、ガラス製の置き型ライターを手に取ると、封筒の端に火を着けた。
「うおおおい!!何してんだ!!バカ!やめろ!!」
大慌てでジャスミンから封筒を取り上げると、ダーブロウ有紗は急いで封筒の火を消した。
「あ…有紗…?」
唖然とするジャスミンと七世。
「金を粗末にするんじゃない!!コンチクショウ!!貰えるモンは、病気以外、何でも貰うからな!!私は!!」
怒鳴られたジャスミンは、苦笑いをして七世を見る。
七世も、思わず笑ってしまった。
そして、ダーブロウ有紗は、その封筒を会計処理担当の七世に渡す。
「出っ歯ちゃん…。この金の中から、超一流の歯医者による最高級の差し歯を、ミミーにプレゼントしな。それから…ジョーのお見舞いも…豪勢にな…」

(『八回・裏』・・・終了)
1294投稿者:リリー  投稿日:2008年04月04日(金)21時19分43秒
今日は、これでおちます

次回、『九回・表』は、実はまるごと野球の試合です
聖テレ野球部の初試合の様子を描く予定です
野球のルールを知らない人やわからない人にも、何とかわかりやすく書こうと思います
対戦相手は、『ピーナッツ』です
『ピーナッツ』は、レッドさんやゴルゴさんも出演している、ウッチャンの初監督映画です
TIM、さま〜ず、ふかわりょうと、ウッチャン以外は何かと天てれに関係のある人達が出ています
一度、映画を見てみるとわかりやすいかな、と思います
1295投稿者:怒りと金は別ですかww  投稿日:2008年04月04日(金)21時20分18秒
でもこの依頼……どーなんねや?
楠本さんとは解決したと思ったら余計な厄介事が増えたような……。
1296投稿者:117  投稿日:2008年04月04日(金)22時09分46秒
あぁ、一応「小切手」は残しておくんですね(笑)。

いよいよクライマックスですか・・・次は野球部の初戦、楽しみです!
リリーさんの小説、ロングランですね。これからも頑張ってくださいね!
1297投稿者:ピーナッツキターーー  投稿日:2008年04月04日(金)23時29分51秒
どんな感じなんだろ
楽しみ
1298投稿者:リリーさんは  投稿日:2008年04月05日(土)20時29分34秒
春の高校野球とか見たんでしょうか?
自分は出身の県がでていたのでみました。
しかし、優勝した沖縄尚学とあたり負けました。
でも、野球って楽しいですね、見てて思いました。
1299投稿者:あげ  投稿日:2008年04月05日(土)20時38分28秒

1300投稿者:あげ  投稿日:2008年04月06日(日)16時52分25秒
上手ですね!
1301投稿者:リリー  投稿日:2008年04月06日(日)19時21分39秒
すみません
しばらく更新できそうにありません
少し、遠くに行かなければならないので…
そんなに長くはないと思いますが、待っていて下さればうれしいです
できるだけ早く更新できるようにします

ピーナッツとの試合も、早くお届けしたいです

ダーさんは、結構お金にシビアという設定です
探偵社の台所事情も管理運営してますから…

>1299さん
決勝は見逃しましたが、何試合かは見ました
出身校が出たのですか?
負けてしまって残念でしたね
でも、優勝校と当たったということは、とても意義のあることだと思います

1302投稿者:また天竺か  投稿日:2008年04月06日(日)19時22分59秒
 
1303投稿者: 投稿日:2008年04月06日(日)21時25分44秒
リリーさん
将来OLですか・・・リリーさんなら小説家でも行けません??
私、明後日、実は中学入学なんですよね・・・・・
できちゃった婚だけは避けたいです★
私はストーリーは観たけどドラマは見てません!!
ちょっとしか観れないので今日はさようなら!!
1304投稿者:更新楽しみに待ってます  投稿日:2008年04月06日(日)22時16分31秒
無理しないように頑張ってください
1305投稿者:あげ  投稿日:2008年04月07日(月)22時17分54秒
おもろい
1306投稿者: 投稿日:2008年04月07日(月)23時42分23秒

1307投稿者:頑張って  投稿日:2008年04月07日(月)23時51分28秒

1308投稿者: 投稿日:2008年04月09日(水)14時30分03秒
早く続きが見たい
1309投稿者:117  投稿日:2008年04月10日(木)21時20分38秒
リリーさん、いつ帰ってくるんだろう?
1310投稿者:ageあげ  投稿日:2008年04月11日(金)18時26分06秒
  
1311投稿者:あせ  投稿日:2008年04月11日(金)23時39分06秒
るな
リリーさんにも都合があるだろうし
俺らはいつでも好きな時に読めるけどリリーさんはできないんだし
ゆっくり待ちましょう!作品は逃げたりはしない!
1312投稿者:あげ  投稿日:2008年04月12日(土)11時18分19秒
待ってる!!
1313投稿者:作品は逃げたりはしない!  投稿日:2008年04月12日(土)23時30分28秒
名言登録w
1314投稿者:リリー  投稿日:2008年04月13日(日)09時47分56秒
どうもすみません
今、帰ってきました
旅行ではなかったんですけど…

今までお待たせしてすみませんでした
「作品は逃げたりしない」…このお言葉を胸に刻み、これからも続けていきたいと思います

霊さん、ありがとうございます
でも、やはり気楽に書いていきたいですね
あと、天てれを題材にして書いてるので、イメージが湧きますが、一からキャラクターや設定を考えるのは、やはり難しいと思いますね
霊さんは、しっかりしてますね
できちゃった婚は、避けた方がいいですね
「だったら、結婚しようか」って重要な決断が、安易にされてしまいますもんね

では、更新します
1315投稿者:リリー  投稿日:2008年04月13日(日)09時48分44秒
『九回・表』

≪2007年6/9(土)≫
今日は休日なのだが、聖テレ野球部の面々は、練習の為に朝から天歳川の堤防公園の野球場に集合していた。
ただの練習ではない、『実戦練習』とあって、皆のやる気は最高潮に達している。
朝7時からの集合時間だが、遅刻するものは一人もいない。
中村有沙ですら闘志がみなぎっているようだ。
しかも、あの新しいユニフォームを身に着けての、初めての試合ということも手伝っている。
彼女達が球場に到着した時には、対戦相手のチームは、もう既に集合し、身体を動かしていた。
監督の、中田あすみも同様だ。
「みんな、遅いよ!!早く整列して!」
藍たちは、慌てて緑の堤防を駆け降りた。
相変わらず、七海達『R&G』組はのんびりと堂々と歩いてくる。
「今日の練習相手になって下さる、『ピーナッツ』の皆さんよ。さ、挨拶して」
練習相手は、天歳駅前商店街の人々で結成された草野球チーム『ピーナッツ』。
一応、ここ近辺のチームの中では強豪として名が知れているらしい。
皆、人の良さそうな中年男性達だ。
にこやかに、野球少女達を眺めている。
1316投稿者:リリー  投稿日:2008年04月13日(日)09時49分06秒
「よろしくお願いします!!」
キャプテンの愛美が帽子を取って礼をする。
「よろしくお願いしゃーっす!!」
皆も礼をしたが、藍の声が一番大きかった。
「おう!よろしく!」
「元気いいな!」
「そのユニフォーム、カッコいいね!ホワイトソックス意識した?」
『ピーナッツ』の面々は、本当に嬉しそうだ。
確かに、若くて美少女揃いの聖テレ野球部の面々に野球を教えられるということもある。
しかし何より、野球をがんばる少女達、ということの方が一際嬉しいのだ。
「じゃあ、20分ほど身体を動かして。時間がないからすぐに試合を始めるわよ」
あすみの言葉で、皆は広い球場に散り散りになって、キャッチボールから始める。
『ピーナッツ』の面々は、この可愛らしい少女達がどんな野球をするのか興味津々だ。
藍は、当然その注目を意識しながら、投球練習から飛ばしていく。
「おお!?あの子、いい球投げるなぁ〜」
「80キロはあるんじゃないのか?」
「あのキャッチャーの子も凄いぞ!よく捕れるな…。女の子だろ?」
その声に、藍は気分が良くなる。
ストレートだけではなく、カーブやシュートも披露する。
一球投げるごとに、中年男性の歓声があがった。
1317投稿者:リリー  投稿日:2008年04月13日(日)09時49分41秒
すると、中村有沙が険しい顔をして藍に駆け寄った。
「ん?どうしたの?ありりん先輩?」
「おい!どういうつもりだ?」
「へ?」
藍は、キョトンとした顔で中村有沙を見詰めた。
「投球練習で、自分の実力を全てさらすとは…!敵に情報を教えてどうする!?」
「て、敵って…。あのオジサン達は、今日、私達の練習に付き合ってくれるだけだよ?」
「それでも試合という形である以上、負けることは許さん!!」
「ちょ、ちょっと…。ありりん先輩…。もっと肩の力を抜いていこうよ!」
そこに、藍の背中に七海の声がかけられる。
「いや…。ウチも負けたないな!」
「な、ななみんまで…」
口をへの字に曲げながら、藍は後ろを振り返った。
「せやって、そうやろ?あのオッサン達の顔…。ウチらみたいな女がどないな野球やるんかって、面白がっとるやん!ナメられたないねん!」
「その通りだ!あの男共に、目にもの見せてやる!!」
七海達の勝利にハングリーな面は藍も見習いたい所だが、どうにもギスギスするのは苦手だ。
1318投稿者:リリー  投稿日:2008年04月13日(日)09時50分04秒
「わかったよ。私も全力でやる。って、言うか、全力でやっても勝てないって。相手は大人の男だよ?」
「それが何やねん!!ウチ等はヤクザ相手でも負けへんのやで!?」
「へ?ヤ、ヤクザ…?何、それ?」
中村有沙は、七海の顔をキャッチャーミットで叩いた。
「何でもない!バカの世迷言だ」
「何すんねん!!コラ!!」
つかみ合いをする2人を、呆れた顔で眺める藍。
「こんなんで、ほんと、大丈夫かな…。このチーム…」
すると、藍は七海の背中を見て声をあげた。
「あ!!な、ななみん!背番号!」
「あん?」
「『6』になってるよ!『9』じゃなくて!」
「何やって?」
七海は自分の背中を見ようと首を思いっきり曲げるが、当然見えない。
中村有沙が代わりに確認する。
「本当だ。『6』になっている。梓彩とだぶっているぞ?」
「コ、コラ〜!!一木さん!!何やっとんねん!!」
そう…背番号を縫い付けたのは、控え選手兼マネージャーの有海だったのだ。
1319投稿者:リリー  投稿日:2008年04月13日(日)09時50分24秒
外野でポロポロと、梨生奈からのボールを落球している有海は慌てて七海の元に駆け寄った。
「な、何?藤本さん…?」
ビクビクしながら、有海は尋ねる。
「何?や、あらへん!!背番号!!逆さまや!!」
七海は背中を見せて怒鳴った。
「あ、あれ?あれれ?ご、ごめんなさい!どうしよう…間違えちゃった…」
青い顔をして、オロオロと涙ぐむ有海。
中村有沙は、どうでも良さそうに言う。
「いいではないか。『6』が2人いても…。しかも、おまえの好きな、あのヤクザ顔の男も確か背番号は『6』ではないか」
「せやから、兄貴をヤクザ言うな!!ゴルァ!!」
藍は、七海をなだめながら首を横に振って言う。
「でも、やっぱりまずいよ。同じ背番号が2人って…。あみ〜ご、やり直せる?」
「針と糸、持ってない…」
今にも有海は泣き出しそうだ。
1320投稿者:リリー  投稿日:2008年04月13日(日)09時52分03秒
「もうええ!!一木さん、ユニフォーム脱ぎ!」
「え?」
「ウチと一木さんがユニフォームを交換する!とりあえず、今日のところはそれでええわ!!」
「で…でも…」
「何や?」
「こんな所で脱ぐなんて…。恥ずかしい…」
「アホ!!全とっかえするわけやないで!?上着だけや!!下にアンダーシャツ着てるやろ?はよ、せんか!!」
七海は、半ば追い剥ぎの様に、有海から背番号『10』のユニフォームを奪った。
その様子を見て、『ピーナッツ』の面々はどっと笑い声をあげる。
憎々しげに、中年男達を睨む七海。
「く、くそ〜…!早くもナメられたで…ウチ等…!!」
「ふん!今のうち、余裕ぶっていろ!その名の通り、ピーナッツの様に一口で食ってやる!!」
臨戦態勢の七海と中村有沙に対し、藍は溜息をついた。
1321投稿者:リリー  投稿日:2008年04月13日(日)09時53分01秒
「お〜い!!あい〜ん!!」
元気の良い、少年達の声が聞こえてきた。
その声の方を振り向く藍達。
「あ、マンボウズのみんなだ!!来てくれたんだ!」
藍は、その少年達の一団へ駆け寄って行く。
「お、おい!投球練習は…?」
「大丈夫!もう、肩は出来上がったから…!」
走りながら、中村有沙を振り返る藍。
「く…!試合前だと言うのに、緊張感が足りん!!」
そう言うと、中村有沙はミットを乱暴に拳で叩いた。
「何やったら、ウチがピッチャーになって投球練習したろか?」
「お断りだ!貴様の球など…」
「ケケケ…。そう言うてるけど…自信ないんやろ?ウチの剛速球を捕るんが…」
「貴様のノーコン球で、試合前に怪我をしたくないだけだ」
「誰がノーコンや!!コラ!!」
2人のケンカに、また中年達は笑った。
さすがの2人も、ケンカを中止するしかない。
1322投稿者:リリー  投稿日:2008年04月13日(日)09時53分25秒
「みんな、どうしたの?わざわざ応援しに来てくれたの?」
藍は、笑顔でマンボウズの皆を迎えた。
マンボウズの監督である寛平も、にこやかに答える。
「いや、ワシ等もここで試合やねん。でも、君等が初めての実戦練習をするて聞いてな、少し時間を早めて集合したんや」
「え?聞いたって…誰から?」
「へへ…。うちの情報収集力は並やないで?」
寛平の孫、帆乃香は得意気に答えた。
「藍さん…!絶対勝って下さいね!」
聖斗は握り拳をつくって、藍を激励した。
「おう!ありがと!聖斗!…そうだ、ベン。ななみんもいるよ?呼んできてあげようか?」
藍が、そうベンジャミンに話しかけると、彼は顔を真っ赤にして聖斗の後ろに隠れてしまった。
「あい〜ん、ユニフォーム、カッコいい!!」
少年達は、そう言いながら、藍の身体にベタベタ触る。
その様子を遠目で眺めているエマとエリー。
「わ…!あれ、セクハラじゃない?」
「邪心のない子供達だから、いいのよ。さ、エマ!フライ捕る練習、いくよ!」
高々とボールを上げるエリー。
しかし、そのボールを落球するエマ。
やっぱり…と言う様にピーナッツの男達は、そんな彼女達を見て苦笑いで顔を見合わせた。
1323投稿者:あげ  投稿日:2008年04月13日(日)09時53分41秒

1324投稿者:リリー  投稿日:2008年04月13日(日)09時54分00秒
「それでは、ただ今より『虹守商店街ピーナッツ』対『聖テレジア女子学園中等部軟式野球部』の練習を始めます」
ふくよかな顔の審判の声で、両チームは帽子を取って礼をすると、握手を交わす。
「では、先攻、後攻を決めてもらいますが…」
そこに、あすみが口を挟んだ。
「あ、うちは後攻でお願いします。少しでも多く守備練習をさせたいので…」
その、あすみの言葉に、藍は首を傾げる。
「少しでも多く?九回ずつやるんじゃないの?」
あすみは、頭を掻きながら藍達に説明を始める。
「うん…。実はね…。『ピーナッツ』の皆さん、この後、9時から試合があるんだって…」
「え?」
「だから…その相手チームが来るまでの間しか、うちらの相手はしてもらえないのよ…」
「ええ〜!?そ、そんなぁ〜!!」
落胆の声が、彼女達からあがった。
「何やねん、それ!?つまり、ウチ等とは片手間に試合をやる、言うんか!?」
七海は顔を真っ赤にして、あすみに詰め寄った。
「こら!ななみん!失礼なこと言うんじゃないの!!それでも、快く引き受けて下さったんだから…!!」
あすみに叱られ、七海は、口を尖らせながら黙るしかなかった。
1325投稿者:リリー  投稿日:2008年04月13日(日)09時54分37秒
「ごめんな、お嬢ちゃん達」
「おじさん達も、リーグ戦の優勝が、かかってるんだよ」
中年達の謝罪は、どうにも軽い。
女子中学生の相手は、その9時からの試合の為の肩慣らし…とでも言いたげな態度だ。
「それでいい…」
そう呟いたのは、中村有沙だ。
皆、一斉に彼女の方を見る。
「9時までに終わらせればいいのだろう?コールド試合にしてやればいい…」
一瞬の沈黙の後…大爆笑の嵐。
「OK!OK!コールド試合ね」
「よし、じゃあ、10点差がついた時点でコールドにしよう…」
「それじゃあ、この子達の練習にならないだろ?」
「でも、守備の練習がしたいんだろ?この子達…」
好き勝手に言いたい放題の大人達に、七海は握り拳をつくる。
「今のうち、笑うとけ、笑うとけ…!その内、ほんま笑えんようになるで…」
1326投稿者:リリー  投稿日:2008年04月13日(日)09時55分42秒
それでは、おちます

長い間お休みしたので、また、今日中に更新できたらしたいと思います

1327投稿者:117  投稿日:2008年04月13日(日)18時07分09秒
リリーさん、お帰りなさい!しばらくこの小説がお休みだったんで、生活の一部が抜け落ちていた感じでした。
気がつけば、第1シリーズも終盤ですか・・・草野球のチームに勝利できるか?
この後も更新してくださるのでしょうか?今日は久々に「グランドスラムの少女達」を堪能できそうです。
1328投稿者:あげ  投稿日:2008年04月13日(日)20時39分05秒

1329投稿者:リリー  投稿日:2008年04月13日(日)20時45分00秒
117さん、お待たせしました
すいません、そしてありがとうございます
これからも、なるべく続けて更新したいと思います
本日、二度目の更新です
1330投稿者:リリー  投稿日:2008年04月13日(日)20時46分02秒
先攻は『ピーナッツ』。
迎える後攻の『聖テレ野球部』。
ピッチャーは藍、そのバッテリーを組むキャッチャーは中村有沙。
ソフトボールの経験者でキャプテンの愛美はセカンド、梓彩はショート。
初心者の中では、反射神経の一番良い梨生奈が、守備の花形サード。
捕球の一番上手いジョアンが、ファースト。
センターがエマなのだが、実は彼女が一番守備を苦手としている。
そのエマを挟む様に、レフトがエリー、ライトが七海。
2人がエマのフォローにまわるのだ。
その上、七海の剛速球は本塁へのバックホームに力を発揮するだろう。
そして、有海は控え選手だが、相手の投球パターンやデータを、几帳面に記録する。
監督は中田あすみ。
「ま…あい〜んの球だったら、コールドってことにはならないと思うけど…」
監督のあすみの考えは、初戦で大敗させること…。
生意気で自信家の多いメンバー達に、まずは野球の難しさを徹底的に叩き込みたかった。
同じ中学生の野球部では、どの学校も練習試合に忙しくて、女子中学の野球部などに付き合ってはくれない。
しかし、少年野球相手では、藍の速球を打ち返すのは無理だし、七海にもホームランを打たれてしまうだろう。
それで、草野球とは言えども、大人の男…しかも強豪チームで知られている『ピーナッツ』に対戦を頼み込んだのだ。
1331投稿者:リリー  投稿日:2008年04月13日(日)20時46分28秒
相手チームの一番バッター、サードの内村がバッターボックスに入る。
あすみが言うには、彼が『ピーナッツ』の中で一番野球が上手く、『伝説のサード』と呼ばれているらしい。
普段は都心に住居を構えるスポーツライターで、時々大きな試合になると虹守町に戻って来るのだ。
もちろん、大きな試合とは、この後に控えている9時からの試合のことだが…。
『伝説のサード』と呼ばれている割には、随分温厚そうな顔をしている。
映画スターのジャッキー・チェンに顔が似ている…と、藍は思った。
中村有沙は、トニー・レオンに似てる…と思った。
藍が、第一球を投げる。
「お!?」
内村は、その球を見送った。
「ストライク!!」
審判の声が響く。
「あれ?投球練習よりも速い…?」
彼は、ヘルメットのつばを軽く上げて藍を見た。
1332投稿者:リリー  投稿日:2008年04月13日(日)20時47分46秒
そう…藍は、投球練習で、全てを見せてはいなかった。
第二球…またもや見送る。
またもストライク。
相手ベンチからどよめきが起る。
「あれ〜?ちょっと…待ってよ…」
内村は、顔は相変わらずにやけているが、明らかに動揺している。
「ふん…!どうだ?うちのエースの力は、こんなものではないぞ?」
中村有沙は、内村に対して囁いた。
「本当だ…。こりゃ、手強い…」
それでも彼の声には、まだ深刻さはない。
1333投稿者:リリー  投稿日:2008年04月13日(日)20時48分09秒
第三球…乾いた音が、球場に鳴り響く。
それと同時に、ボールは空高く上がった。
「む?」
中村有沙は、おもわずマスクを取って立ち上がった。
「よっしゃ〜!!まず、ホームラン!」
内村は、両手を挙げて駆け出した。
「大人気ねぇ〜〜〜!!!」
相手ベンチから、笑い声が起きた。
しかし、球は急に失速し、センター、エマの頭上に…。
「あれ?」
何でホームランにならないのだろう…?
内村は、不思議そうに首を傾げながら、その足は走行から歩行に変える。
しかし、センターは有海の次に野球の下手なエマだ。
案の定、その何でもないフライを落球した。
1334投稿者:リリー  投稿日:2008年04月13日(日)20時48分37秒
「お!?ラ、ラッキー!!」
内村は、途端に走り出す。
「走れ!走れ!」
相手ベンチから、声が飛ぶ。
当然、内村は一塁を駆け抜け、二塁へ…。
若い顔立ちをしているが、40過ぎの男…それでも、足は随分速い。
エマは慌てて、転がるボールを追い駆ける。
「触んな!!」
ライトの七海が、怒鳴りながら走ってきた。
そのままボールを拾うと、セカンドの愛美に送球する。
「へ?」
その球の速さに、内村は仰天した。
球は、愛美のグローブに…タイミングは余裕でアウト…だが…。
愛美はその球を、掴みきれず、下に落としていた。
あまりにも、七海の球が速すぎたのだ。
1335投稿者:リリー  投稿日:2008年04月13日(日)20時49分02秒
「ご、ごめん!」
愛美は、七海に…ナインに向けて謝った。
「ドンマイや!ドンマイ!」
七海も、反省しなければいけない。
相手は、いくらソフトボールの経験者とは言え、表の住人の愛美だ。
もっと、緩い球を投げてやらなければならなかった。
「お〜い!この子達を甘く見るな!もしかしたら…もの凄いぞ?」
内村は、ベンチのチームメイト達へ、声を張り上げた。
七海の返球もそうだが、あの、ホームランの手応えだった打球が、平凡なセンターフライになったこと…藍の球も、相当の威力だということだ。
「トニーめ…。今頃気が付いたか…」
と、中村有沙は言いかけたが、すぐに口を噤む。
(いや…。もう、既に我々のチームの力に気付いたとすると…相手は警戒してくる…。案外、やるな?こやつら…)
そう…ナメてもらっていた方が、付け入る隙はあったのだ。
この後、『ピーナッツ』は、二つのエラーと二本のヒットで2点を先取し、一回表の攻撃を終えた。
1336投稿者:リリー  投稿日:2008年04月13日(日)20時53分20秒
今日は、これでおちます
1337投稿者:117  投稿日:2008年04月13日(日)20時56分28秒
今日2回目の更新、お疲れ様でした。
今日の話を読んでいると、2004年の「野球対決」でエマがあまり守備が上手くなかったことを思い出しました。
確かあの時も「大人のズルさ」を見せていた人もいるはず(笑)。今後、登場するのでしょうか?
明日からはいつもの調子で頑張ってくださいね!
1338投稿者: 投稿日:2008年04月13日(日)21時11分11秒
お久しぶりです!リリーさん!
今日は、父の誕生日でケーキ食べたんですが・・・・胃がムカムカです〜
私もできちゃった婚で「だったら結婚しようか」
だったらどうでもいい感じがするんで嫌です!!
やっぱ浮気しない人がいいですね!
相手は芸能人かマラソンランナーがいいですよね〜★
でも私の周りは体の脂肪がたっぷりでイケメンがいるし・・・・・
大半がスポーツ系なんですよね・・・・
私の好みは高橋光臣君とか鈴木亮平君とか・・・・・
すいません!くだらない話を長々と・・・・

天歳市立のチームの試合が楽しみです!!
後、梨生奈の元彼も!!!!!!!!!!

がんばって!聖テレジア女子学園軟式野球部!!!!
1339投稿者:リリー  投稿日:2008年04月14日(月)21時41分19秒
117さん、私もあの野球対決を覚えています
エマ、退屈そうに外野を守ってましたね
ピーナッツの面々も、相当大人気ないという設定です

霊さん
お父さん、お誕生日おめでとうございます
芸能人はわかるのですが、何故、マラソンランナー?
少し気になります
高橋光臣君、鈴木亮平君というのは、芸能人なのでしょうか?
梨生奈の元カレは、第二話に登場する予定です

では、更新します
1340投稿者:リリー  投稿日:2008年04月14日(月)21時42分26秒
聖テレナインは、ベンチへ駆け寄って来る。
あすみは、手を叩いて迎えた。
「うん、うん!2失点で済んだのは上出来だよ!攻撃、気合入れていこう!」
その時だった。
「あれ〜?なんや!先制されとるがな…」
聞き覚えのある、濁声の関西弁。
七海達が堤防を見上げると、そこにはこちらに駆け降りてくる、社長の吉田がいた。
「な、何やねん!レッドさん、何で来るん?」
あからさまに迷惑そうな顔で、七海は言った。
「何でって…おまえらの公式デビュー戦やないか!応援に来たったで!」
「公式なものか…。9時までのタイムレース制だぞ?」
中村有沙は面白くもない、と言う様な顔をする。
「ま…無理矢理にでも、相手を本気にさせてやるがな…」
と、続けた。
1341投稿者:リリー  投稿日:2008年04月14日(月)21時43分14秒
「あれ?おいおい、羅夢までいるぜ?」
ジョアンは、吉田の後ろを覗き込む。
大きな吉田の身体に隠れ、ふて腐れたような顔で羅夢が立っていた。
「おい、コラ…羅夢…。何で、おまえまでおんねん!」
七海が羅夢に詰め寄る。
「あ?んだよ、コラ!!」
険しい目で、にじり寄る羅夢。
「何や…。結局、おまえも野球部に興味あるんとちゃうんか?」
「別に興味はねぇよ!!アタイが興味あるのは、梨生奈だけだ!」
「ケケケ…。素直に土下座して頼めば、来年入部を許可してやってもええで?球拾い専門やけどな…」
「うるせぇ!!別に入りたくねぇって言ってんだろ!!」
今にも殴り合いを始めそうな二人の間に、梨生奈は堪らず入り込む。
「もう、ここまで来てケンカはやめなよ!!」
「だって、梨生奈…!七海が…」
梨生奈は、ポン、と羅夢の頭に手を置く。
「ありがとう、羅夢。応援に来てくれて…。凄く、嬉しい!」
「梨生奈…。ううん…いいよ、お礼なんて…」
「私、がんばるからね!」
1342投稿者:リリー  投稿日:2008年04月14日(月)21時43分37秒
そんな2人に、中村有沙が声をかけた。
「おい!梨生奈!!一番はおまえだろ!早くしろ!9時までしか試合はできないんだぞ?」
「あ…!ごめんなさい!今、行く!!」
梨生奈は慌ててヘルメットを被り、金属バットを手に取ると、羅夢に手を振りながら左のバッターボックスに向かう。
吉田は、監督のあすみの所へ挨拶に行く。
「どうも…。有沙達の保護者の吉田と申します。いつも、こいつ等がお世話になってます…」
吉田は、その長身の身体を、深く折り曲げる。
「生意気でしょ?こいつ等…。私も手を焼いとるんですわ…」
「いいえ…。私も、楽しんでますよ」
あすみも帽子を取り、女性にしては長身の身体を、吉田よりも深く折り曲げた。
「それにしても…吉田さん、お一人でありりん…中村さん達の面倒を?凄いですね…」
「いえいえ!そんな…。まあ、いろいろこいつ等も事情がありまして…。しかし、子供の面倒を見るのは、大人の義務ですから…」
「立派ですねぇ!!吉田さん!」
惚れ惚れする、と言う様な目で、吉田を見詰めるあすみ。
「何、言ってんだよ!アタシ達がレッドさんの面倒を見てるんじゃないか!!」
ジョアンは吉田の尻を、拳で思いっきり捻じ込むように殴りつけた。
1343投稿者:リリー  投稿日:2008年04月14日(月)21時44分25秒
「おい、レッドさん…。ちひろは連れて来てないのか?」
涙目で尻を擦っている吉田に、中村有沙は尋ねた。
「え?ちひろか?ちひろは、今頃剣道の出稽古に行っとるんやないの?」
「ち…!部活以外でも、そんなことを?」
次期社長の村田ちひろは、中村有沙達の様に『R&G探偵社』の自社ビルに住み込んでいない。
聖テレジア高等部の学生寮で生活をしているのだ。
ちひろのことが大好きな中村有沙は、一緒に寮で住み込みたかったが、それができるのは高等部からである。
神奈川に実家のある細川藍だって、親戚の経営するマンションで暮らしているのだ。
充分通える距離にも関わらず、ちひろが寮生活をしている理由は、中村有沙が毎夜毎夜肉体関係を求めてくるから…なのだが…。
ちひろ大好きの中村有沙は、初の練習試合を見に来て欲しかった。
「おい!おまえ等!!試合に集中しろよ!!梨生奈が打つぞ!!」
羅夢が怒鳴った。
「やかまし!おまえが言うな!」
七海も怒鳴り返す。
そして、バッターボックスに目を向ける。
梨生奈は、既にバットを構えて第一球を待っていた。
1344投稿者:リリー  投稿日:2008年04月14日(月)21時44分51秒
相手ピッチャーは、酒屋を経営している三村。
茶髪を短く刈り上げ、随分若づくりをしているが、その体型は中年男のそれだった。
「パパ、がんばって!」
可愛らしい5歳くらいの少女が、三村に対して声援を送っている。
「おう!がんばるぞ!」
セットポジションに入ったにも関わらず、三村は娘と妻に向かって手を振った。
「ボーク!!」
審判の声があがる。
「ええ!?」
三村は目を剥いて、呆然と審判を見詰めた。
ピーナッツの面々は、全員ピッチャーマウンドに駆け寄って、三村に向かってグローブを投げつけた。
今度は、聖テレベンチから笑い声があがった。
梨生奈も笑いを噛み殺しながら、一塁へ向かう。
「おいおい…。大丈夫かいな…。このチーム…」
七海は、失笑を堪えながら呟いた。
「う〜ん…。一応、強いって噂なんだけどね…」
あすみは、そう言って頭を掻いた。
1345投稿者:リリー  投稿日:2008年04月14日(月)21時45分35秒
二番は、キャプテンの愛美。
愛美に対し、あすみはサインを送る。
そう…ここはランナーを二塁へ進める定石…送りバントだ。
しかも、送りバントは愛美の得意とするところだ。
力強く頷いて、右バッターボックスに入る愛美。
そして、最初からバットを水平に構えた。
「それにしても、わかんないな…」
エマは、腕組しながら首を捻った。
「何で、わざわざアウトを一つ相手にやっちゃうの?ガンガン打っていけばいいじゃん!」
そんなエマに対し、七海は人差し指を軽く振る。
「チ、チ、チ…。わかっとらんな…。エマ…」
しかし、吉田が七海の解説を横取りした。
「ええか?野球いうんは、如何に得点できる確率を増やすか…ていうスポーツやねん。一塁より二塁にランナーが居ったら、ホームに近づけるやろ?」
「でも、1アウトよりノーアウトの方がいいじゃん」
「いや、この場合、1アウトになっても、ランナーが二塁に居った方がええねん」
「ノーアウトで、ランナーが一塁と二塁に居た方がいいじゃん」
「いや…せやからな、そうなる可能性は100%ではないやろ?せやったら、アウトを一つ相手に謙譲して…」
「やかまし!黙って見んかい!」
七海の言葉に、吉田もエマも口を押さえた。
1346投稿者:リリー  投稿日:2008年04月14日(月)21時45分59秒
三村は、二番バッターの愛美に初球を投げる。
そこは、三村もわかっている。
山なりの、送りバントをしやすい緩いボールだ。
愛美は膝を落とし、上手にバットにボールを当てると、三塁線上に転がした。
「上手い!!」
七海、藍、あすみ、吉田は同時に声をあげた。
しかしバントと同時に、サードの内村が飛び出していた。
そのまま右手で掴んで、セカンドに送球。
梨生奈は必死に滑り込むが、アウト…。
1アウト一塁…結局、凡退と同じ結果…いや、一塁ランナーが足の速い梨生奈から、平均的な速さの愛美に入れ替わってしまった。
「あ〜あ…。ほら、結局、アウト一つ取られただけじゃん!」
エマは頬を膨らませて、吉田の脇腹を突いた。
「う〜ん…」
吉田は困った様な顔で、グラウンドを眺める。
「ち…!素人にはわからんか…。愛美先輩のバントの見事さと、あのサードのオッチャンの守備の上手さが…」
七海は、舌打ちをしながら言った。
1347投稿者:リリー  投稿日:2008年04月14日(月)21時46分06秒
パケホはしてないとえらいことになります。
下手すりゃ何十万の域に達することがしょっちゅうです。
通話は普通にしますよね。auでもdocomoでも。
softbankは確かに前者に比べれば通話量は多いです。
僕の周りでニコ動やってる人は見たことないですが、モバゲはほぼ100%やってます。
で、そういうのを使ったいじめっていうのも、やっぱりあります。
メールは、100通前後が普通ですね。たぶん。
今は「暇つぶし」=「メール」ですから。

でもこーゆーことって大分前からあったことで、今更騒ぎ出すことでもないのでは。
それよか、最近は物価高騰なんかで共働きに出てて、携帯が必須なんて学生(主に小学生)もザラにいます。
大人や全然関係ない人から見れば意味不明ですが、やってる人から見れば当たり前のことです。
ただ、料金を全部親任せにするのはよろしくないですわな。
どうせ使うんなら自分で出せばいい。
1348投稿者:リリー  投稿日:2008年04月14日(月)21時48分16秒
今日は、これでおちます
1349投稿者:o  投稿日:2008年04月14日(月)22時04分36秒
http://umewakabashi.cocolog-nifty.com/ よし
1350投稿者:リリーさんへ  投稿日:2008年04月14日(月)22時21分38秒
ランナーなしでボークはないです
ランナーなしで投球動作をやめた、止めた、又は、やめざる終えなかった(転ぶ等)場合それはノーカウントつまり仕切り直しです。
しかし手からボールが離れた場合は1ボールとなります。(転んだ時地面に落ちた等)
一応違ったんで
でも作品はとてもおもしろいんで気にしてないです。
ではこれからもよろしくお願いします。
1351投稿者:リリー  投稿日:2008年04月14日(月)22時31分17秒
1350さん、すみません
そして、ご指摘ありがとうございます
そうですよねぇ…
何か違和感があったんですが、しょっぱなから三村さんがヘマをする…という展開を思いついて喜々として書いてしまいました
デッドボールじゃ笑えないし、フォアボールじゃテンポが悪いし…で、ボークにしようと…
ですので、ここは、フォアボールということで…
本当にすみません…
1352投稿者:ちひろと中村有沙  投稿日:2008年04月14日(月)23時24分04秒
懐かしい組み合わせですね。
リリーさん、過去作品をテキストでどこかにパスワードかけてアップできませんか?
やっぱりね読みたいですよ。
1353投稿者:キャプテン翼もやってます  投稿日:2008年04月14日(月)23時35分34秒
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1056630.html
1354投稿者:おお!更新されてる  投稿日:2008年04月14日(月)23時45分15秒
聖テレチームどうなるのかなぁ
楽しみ
1355投稿者:リリー  投稿日:2008年04月15日(火)20時53分26秒
思いつきで書いている為、細かなルールとか矛盾点がいっぱい見つかるかもしれません
1353さんが、キャプテン翼の例をあげて下さいましたが、本当に「スポーツ」を描くというのは難しいですね…
また、間違っている点がありましたら遠慮なく申し出て下さい

1352さん、過去のデータはありますが…
また、別のスレを立てて更新しましょうか?
いつまで経っても、過去ログが復旧しませんもんね…

では、更新します
1356投稿者:リリー  投稿日:2008年04月15日(火)20時58分17秒
1354さん、長い間休んですみませんでした
いきなり再開したものですから、分りづらかったですよね?
これからもよろしくお願いします

あと、1347は何なのでしょう?
私は、あそこまで携帯に詳しくありませんよ…

では、今度こそ…


あと、
1357投稿者:リリー  投稿日:2008年04月15日(火)20時58分53秒
「よし!次は私がいくよ!」
三番バッターは、藍である。
しかし、あすみのサインは、また送りバント。
「え〜?」
そのサインに、顔をしかめる藍。
次は長打力が武器の七海…確かに、愛美を二塁に送った方がいい。
理屈ではわかっているのだが、イマイチ納得できずに左バッターボックスに入る。
そして、バントの構え。
三村は、愛美と同じ山なりのボールを放る。
絶好球だ…!
(う…打ちたい…!)
バントからヒッティングへ…無意識に、身体が動いた。
「バ、バスターかよ!?」
三村は素っ頓狂な声をあげた。
藍は、バットを力強くスイングする。
矢のような打球が、三遊間を抜ける…かに見えたが、サードの内村が横飛びにノーバウンドで捕らえ、ツーアウト…。
両手を着いて地面の着地の衝撃を和らげると、素早く立ち上がり、一塁へ送球…飛び出していた愛美は、戻れずにアウト…スリーアウトチェンジ…。
1358投稿者:リリー  投稿日:2008年04月15日(火)20時59分18秒
「え…?も、もう…?」
ネクスト・バッターズサークルで、七海は呆然とした。
たった二球で、スリーアウト…?
草野球チームと思って相手をナメていたのは、こっちの方だったのかもしれない。
バツの悪そうな顔で、ベンチに戻る藍。
「藍!!」
あすみは、『あい〜ん』ではなく、『藍』と本名で怒鳴った。
そして大きな掌で、ヘルメットの上から思いっきり藍の頭を引っ叩いた。
一瞬で、その場の空気が凍りついた。
ヘルメットの、地面に転がる音が虚しく聞こえる。
「バントのサインでしょ!?どうして言うとおりにしないの!!」
「ご…ごめんなさい…」
藍は、背を小さく丸めて謝る。
聖テレのメンバーも、ピーナッツのメンバーも、マンボウズも、吉田も、羅夢も…ただ黙ってあすみを見詰めていた。
「あなた一人で野球をやってるつもり?だったら、私達は引き上げるわ!!あなたの邪魔はしない!!一人で好きなようにやりなさい!!」
藍の目に、みるみるうちに涙が溜まっていく。
1359投稿者:リリー  投稿日:2008年04月15日(火)20時59分51秒
「ま、まぁ、まぁ…。今のは、相手のファインプレーですよ…。良いヒッティングでしたから…」
吉田は、何とかこの場の空気を和やかにしようと、藍を庇った。
「そういう事では、ないんです!!」
キッと吉田を睨む、あすみ。
「サイン無視は、私は絶対に許しません!!」
「す、すみません…」
吉田も、涙目になりそうだった。
あすみは、藍に向き直る。
「あなたは野球がやりたいの?それとも、ただ、スポーツでヒーローになりたいだけ?どっち!?」
「う…」
とうとう、大きな涙の雫が、藍の頬を流れる。
「あなた、少年野球で冷遇されたって言ってたけど…こういうことが原因じゃないの?私がそのチームの監督でも、あなたなんかを試合に使わないわ!!」
「うぅ…」
もう、藍は号泣している。
野球の本質を…チームプレイというものを…ここまで怒られなければ理解できなかった自分が情けなかった。
1360投稿者:リリー  投稿日:2008年04月15日(火)21時00分14秒
「ご、ごめんなさい…。も、もう…自分勝手なプレイは…しません…」
涙を流しながら、藍は何度も頭を下げた。
「当然よ!今度サイン無視したら、あなたをこの試合から引き摺り下ろすから…」
あすみは背中を向けると、そのままベンチに座った。
そして、隣の有海に声をかけた。
「…ん?あみ〜ご…?何で、あんたまで泣いてるの?」
「…え?ご、ごめんなさい…」
「何で、あんたが謝るの?ま、いいや…。ちゃんとさっきのプレイ、記録しておいてね。今後の教訓にするから…」
「は、はい…」
有海は、『 }』でくくると、『D・P』と記録する。
スコア表に、有海の涙が落ちて、文字が滲んでしまった。
しかし、あすみは、良いタイミングで藍がサイン無視をしてくれた…と内心では思っていた。
これで他の選手にも、自分の方針を早い段階で伝えることができたからだ。
藍には悪いが、今回は怒られ役になってもらった。
しかも、今までチヤホヤされてきた藍は、一度きつくお灸を据えられた方がいいのだ。
今までの少年野球の監督は、女子である藍の扱いに困っていたことだろう…。
同じ女として、これは女性監督としての強みなのだ。
1361投稿者:リリー  投稿日:2008年04月15日(火)21時01分55秒
マンボウズのメンバーも、有海ほどではないが動揺している。
「うわ…。あの、監督…恐ぇ〜…」
翔太と次元は、顔を見合わせる。
「あの、あい〜んが…泣いてるで…」
帆乃香は、祖父の寛平の顔を見上げる。
寛平は、何も言わずにただ頷くだけだった。
「あ、藍さ〜ん!!ファイト〜!!」
聖斗が、あらん限りの声を藍に送った。
1362投稿者:リリー  投稿日:2008年04月15日(火)21時02分08秒
愛美は、藍の背中をポンと叩く。
「ドンマイ!まず、投球でさっきの失敗は取り返そう!私達もサポートするから…」
「うん…!ありがとう…。まにゃ先輩…」
藍は、何とか笑顔を取り戻した。
「何をしている?早くマウンドに向かえ!時間が勿体無い!」
そう言った中村有沙は、既にキャッチャーの守備位置に着いている。
七海は、そんな中村有沙に詰め寄った。
「おい、コラ!チビアリ!!こういう時は、普通、キャッチャーが元気づけるもんやぞ!?」
「ふん…!そんなことは知らん!!それに、監督の言うことはもっともだ!今の藍の自分勝手なプレイ…次の打者の貴様のことを、まったく信用していない…と解釈できるのだぞ?」
「ご…ごめん…!ななみん…」
そんな、情け容赦ない中村有沙の言葉に、また藍は泣き出してしまった。
「コラ!!いちいち蒸し返すな!!また、泣いてしもうたやん!!」
「ふん…!意外とメンタルが弱いのだな…」
中村有沙は、つまらなそうに吐き捨てた。
1363投稿者:リリー  投稿日:2008年04月15日(火)21時02分33秒
「ねぇ…。君…」
泣いている藍の背中に、声をかける者がいる。
さっき、超ファインプレイで三つのアウトを取った、『伝説のサード』、内村だ。
「あの…何か…ごめんね…。大丈夫?」
「だ、大丈夫です!平気です!ありがとうございます!」
藍は、大慌てで涙を拭いて、マウンドへ走った。
「あ〜あ…。ウッチャン、あんな可愛い子を泣かして…悪い野郎だ!!」
相手ベンチが、はしゃいでいる。
藍は、悔しかった。
あの内村の言い方…まるで自分がファインプレイをしたから、泣かしてしまった…かのような印象だ。
つまり、もっと手を抜いてやろうか?とでも言っているのか?
(ジャッキーめ!!私をバカにして…!絶対に負けたくない!!)
これでようやく藍も、七海や中村有沙と同じ様に、この試合に何としてでも勝つ、という気持ちになれた。
そんな藍の本気の投球に、大人達はキリキリ舞いをした。
CDショップに勤めている府川などは、三振と同時に尻餅まで着いた。
それでも、内村には三遊間を破られるヒットを許したが、次のバッターを三振…この回、藍はピーナッツを無失点に抑えた。
あすみは、そんな藍を、無言だが笑顔で迎えた。
1364投稿者:リリー  投稿日:2008年04月15日(火)21時02分56秒
今日は、これでおちます
1365投稿者:117  投稿日:2008年04月15日(火)21時26分19秒
またもや大人のズルさ、いや強さでしょうか?
バントで送るか,サインをミスしてバスターするか・・・野球は本当に難しいスポーツですね。
1366投稿者:1352  投稿日:2008年04月15日(火)22時13分35秒
本当ですか?!
いつでもかまいませんので是非是非お願いします!!
厚かましいですがツグラムからすべてお願いしてもいいですか?
1367投稿者: 投稿日:2008年04月15日(火)23時35分58秒

1368投稿者:ふかわw  投稿日:2008年04月15日(火)23時40分13秒
ピーナッツ何気に面白いな
1369投稿者:リリー  投稿日:2008年04月16日(水)17時52分24秒
ピーナッツは、一応、ウッチャン以外は天てれと縁のある人で構成されています
『九回・表』を書く前に映画を見ておいてよかったです
イメージがしやすかったので
映画も面白かったですよ

1352さん、すみません
『ツグラム』と『一七』はデータを消してしまいました
『サムドラ』と『らりるれろ』はまだ無事です
でも、再更新は『第一試合』が終わってからでいいですか?
『第二試合』の内容を考える場つなぎとして…

今日は、少し早いですが更新します
これから、また出かけなければならないので…

では、更新します
1370投稿者:リリー  投稿日:2008年04月16日(水)17時54分32秒
次は、七海からの打順…。
ここは一発、ホームランを狙いたいところだが、2点ビハインドだ。
二塁打…いや、三塁打を狙おう…。
五番バッターはジョアンだ。
バッティングの勘は相当鋭い。
ここは、ノーアウトで一点を返し、尚且つ得点圏にジョアンがいる…というのが理想だろう。
七海も、チームを中心に考えるようになった。
そうでなければ、さっきの藍は叱られ損だ。
そんなことを考えながら、七海はバッターボックスに向かう。
「ち!七海!!三振しやがれ!!」
羅夢が野次を飛ばした。
「やかまし!!黙って見とれ!!」
七海が、怒鳴り返した。
「こら!!羅夢!!」
梨生奈に叱られ、羅夢はつまらなそうに、堤防の芝に腰を降ろした。
1371投稿者:リリー  投稿日:2008年04月16日(水)17時55分00秒
「羅夢ちゃ〜ん!」
その堤防を駆け降りる者がいる。
勢いがつきすぎてブレーキが利かず、その者は羅夢の背中に膝をぶつけた。
「い、痛!!な、何しやがんだ!?てめぇ!!」
「ごめんね、羅夢ちゃん。痛かった?」
それは、メロディー・チューバックだった。
「メ、メロチュー!?な、何でここに?」
「いつも、休みの日にはここでトランペットの練習してるんだよ。そしたら、羅夢ちゃんがいたから…。で、何やってんの?」
「あん?ああ…うちの学校の野球部が練習試合をやってんだよ」
「わ、すご〜い!!じゃあ、メロディー、応援するね!!」
「え?応援?」
メロディーは、黒いケースからトランペットを取り出した。
1372投稿者:リリー  投稿日:2008年04月16日(水)17時55分25秒
七海は右バッターボックスに入ると、ピッチャーマウンドを睨みつける。
最低限、どんな形でも塁に出る。
そんな七海の思いとは裏腹に、三村は、また緩い山なりボールを投げてきた。
(え…?ウチ、バントやないで?ええのん?打ってまうで?)
そして、フルスイング…打球は、空高く上がる。
「うぇ!?」
ピーナッツの選手達は、一歩も動かず打球を見送った。
誰もがホームランと思ったが、僅かに左に反れてファールとなる。
「ちぃ…!いつも、ウチの打球は左に反れるなぁ…」
あの、藍との対決…50球連続ファールを思い出す。
ファールとなって、残念と思うとともに、少し胸を撫で下ろす。
ホームランでは、一点が返るだけだ。
この回に同点に追い着くことによって、早く、あの藍の失敗を帳消しにしてやりたかった。
反省材料にするならまだしも、後悔という形で残したくないのだ。
「あぶねぇ…」
三村は、前の回と合わせてまだ三球しか投げていないが、帽子を取って汗を拭いた。
「だから、ナメるなって言っただろ?」
サードの内村が、三村に声をかけた。
1373投稿者:リリー  投稿日:2008年04月16日(水)17時55分56秒
二球目…この試合、初めて直線を描く速球が来た。
「うりゃ!」
七海は、僅かに振り遅れ、打球は後ろに反れる。
「わ!あぶねぇ!!」
羅夢の声が聞こえた。
「こら!!七海!!もう少しで、アタイに当たるところだったぞ!!」
「ああ、そら残念!」
七海は、羅夢の方を一瞥もせずに答えた。
「ケケ…。おっちゃん、その気になれば、ええボール放るやん…」
七海は、2ストライクと追い込まれたが、全く焦る様子はない。
タイミングは、今ので把握した。
そして、三球目…絶好球!!
少し、バットの先に合わせて、レフトとセンターの間に落としてやるか…そう考え、スイングしようとした時だった。
突拍子もないトランペットの音が、鳴り響き、七海のスイングが僅かにぶれる。
「な、何や!?」
結局、七海の打球はショートフライとなり、1アウト。
1374投稿者:リリー  投稿日:2008年04月16日(水)17時56分42秒
「だ、誰や!!ヘッタクソなトランペットを吹いたんは!!」
七海はヘルメットを叩きつけ、堤防に向かって怒鳴った。
「ひ…!」
メロディーは、口からトランペットを離し、羅夢の後ろに隠れた。
「おい!!てめぇのヘタクソを棚に上げて、人の所為にしてんじゃねぇよ!!」
羅夢が怒鳴り散らす。
「な、何やと!!コラ!!」
「やるのかよ、てめぇ!!」
ズンズンと歩み寄っていく2人。
羅夢は梨生奈が、七海は中村有沙がそれぞれ止める。
「よせ、七海。ヘタクソなトランペットは、野球に付き物ではないか!おまえが悪い!!」
「く…!」
中村有沙の身も蓋もない言葉に、七海は引き下がらざるを得なかった。
「ら、羅夢ちゃん…。メロディーの応援、迷惑だった?」
メロディーは、涙まじりの声で羅夢に問う。
「いいんだよ。ドンドン吹け。特に、あの前髪パッツンの関西女の時にはな…」
羅夢は、メロディーの頭を撫でた。
続く五番のジョアン、六番のエリー共に三振…この回も、聖テレ野球部の攻撃は淡白に終わった。
1375投稿者:リリー  投稿日:2008年04月16日(水)17時57分43秒
それでは、今日はこれでおちます
1376投稿者:あげ  投稿日:2008年04月16日(水)18時45分43秒
あげ
1377投稿者:117  投稿日:2008年04月16日(水)21時41分54秒
トランペットの応援といえば、球場に行くとよく聞きますね。
最近,球場に見に行っていないなぁ・・・なんかこの話を読んでいると、妙に恋しくなりました。
それにしても、七海・羅夢の喧嘩,恐い2(笑)。「ピーナッツ」のメンバーはどうも思わないのでしょうか?
1378投稿者:1352  投稿日:2008年04月16日(水)21時54分29秒
メロディーかわいいー
ところで新スレで過去作品をあげていただけるのはありがたいのですが
どうもあめぞう全体で新しくスレッドが立てられない状態になってるみたいですね・・・
直るんでしょうか・・・?
最悪の場合今作が完結してからこのスレに更新するっていう形でお願いしてもいいですか?
1379投稿者:ちなみに!  投稿日:2008年04月16日(水)21時58分13秒
ツグラムと一七はウェブアーカイブで見つけました!!
サムドラも一部は見つかったんですけど全部はありませんでした・・・
1380投稿者:怖いのは書き込みさえできなくなった時  投稿日:2008年04月16日(水)23時59分17秒
スレ立てができなくなったのはスレッド数の上限に達したためらしい?
文字数も無限ではないだろうからいつかは限界に達するかもしれないですね
もしそうなった時は天てれ村で続けて頂けると助かります
1381投稿者:リリー  投稿日:2008年04月17日(木)21時20分43秒
117さん、私はトランペットの応援は苦手なんですけどね…
確かに、球場の風物詩になってますね
ピーナッツは、軽くひいてるんだと思います

そうですか…
新しくスレが立てられなくなったんですね
もし、ここが機能しなくなったら、「天てれ村」の方に発表しましょう

では、更新します
1382投稿者:リリー  投稿日:2008年04月17日(木)21時23分53秒
それから、三回、四回、五回、六回…と、スコアボードに『0』が並ぶ。
試合は中盤を終えて2−0…。
思わぬ、聖テレ野球部の善戦である。
大敗を望んでいたあすみは、当初の予定が狂ってしまった。
しかしこの結果は、序盤で藍を叱り飛ばした成果でもある。
七海と中村有沙を除き、どうにもチーム全体に緊張感が足りなかった。
だが、その当の藍の、毎回ランナーは出すものの、気迫の篭ったピッチング…そして、エラーは毎回あるものの、少しずつ上達していく皆の守備。
先ほどの六回の表、2アウトフルベースのピンチ、エマの頭上に上がったフライ…誰もが大量失点を覚悟した。
しかしエマは、そのフライを難無くキャッチ…チームは最高潮に盛り上がった。
それでも2点が途轍もなく遠い、ジレンマもある。
大敗することなく、野球の難しさ、そして楽しさを学べれば、それに越したことはない。
今考えると、あの藍のサイン無視は、思わぬファインプレーだったのだ。
予想外の投手戦で、まだ時間は8時半前…この分だと、九回までやり通せる。
そして7回表、ピーナッツの攻撃…。
初回から全力で飛ばしてきた藍に、疲れが見えてきた。
1アウト満塁…ヒットよりも、フォアボールでランナーを溜めてしまった結果だ。
1383投稿者:リリー  投稿日:2008年04月17日(木)21時24分19秒
「せ、先生…」
有海は、心配そうにあすみの顔を見る。
「何?あみ〜ご…。今は先生ではなく、監督って呼びなさい」
「ごめんなさい…!監督…細川さん、辛そうです…」
「うん。辛そうね…」
「ピッチャー、藤本さんに代えた方が…」
「ダ〜メ!!」
ピシャリと、あすみは言い放った。
「…え?」
「その、辛い思いをさせるのが、今日の練習試合の目的なの」
「ええ…?」
目をパチクリさせている有海を、楽しそうに横目で見るあすみは、こう言葉を続ける。
「細川さん…今までこんなに辛い野球…したことがないんじゃない?いい経験よ…」
目を細めて、マウンド上の…肩で息をする藍を眺める。
1384投稿者:リリー  投稿日:2008年04月17日(木)21時24分41秒
「でも…あのおバカちゃん…まだ、チームプレイが何なのか、わかってないわね…」
あすみは、ベンチから立ち上がる。
「先…監督!ど、どこへ?」
「ん?もう一回、あい〜んを引っ叩いてくるね」
「え…!?そ、それは…」
有海があすみに追いすがろうとした瞬間、「タイム!!」と声が球場に響き渡る。
「?」
声をかけたのは、キャッチャーの中村有沙だった。
ゆっくりと、中村有沙はマウンドに近づく。
他の皆も…外野の者まで、マウンド上の藍の元に駆け寄った。
そして、中村有沙は何も言わずに、キャッチャーミットで藍の頭を叩いた。
藍の帽子が、回転しながらマウンドに落ちる。
「あ、ありりん先輩…?」
あまりの衝撃に、藍は頭をクラクラさせ、中村有沙を呆然と眺める。
1385投稿者:リリー  投稿日:2008年04月17日(木)21時25分13秒
「このバカめ!貴様、まだ監督に言われたことがわからないか!!」
「…え?」
「犬だって、一回殴られれば理解する!二度も殴られる貴様は、犬以下だ!!」
「…う…!」
藍の目には、一気に涙が溜まった。
「泣くな!!」
「は…はい…!」
中村有沙の一喝に、藍は何とか涙を落とさずに済んだ。
「だが、安心しろ…。この世には、何度殴られても理解できない輩もいる」
そう言って、中村有沙は七海をチラリと見る。
「何や!?この…」
七海は、思い留まった。
今は、藍の方が大切だ。
中村有沙のタイムのタイミングは、とても素晴らしいものだったからだ。
1386投稿者:リリー  投稿日:2008年04月17日(木)21時25分43秒
「いいか?貴様が何をビビっているかわからないが…フォアボールばかりでは、私達は何の手助けもしてやれん!!」
中村有沙は、乱暴に藍の首根っこを掴んだ。
「貴様が覚悟を決めてど真ん中に球を放れば、打たれるかもしれない…!でも、アウトになるかもしれん!!」
「…う」
「アウトにするのは誰だ!?私達だろう!?」
再び、藍の目に涙が溜まる。
「貴様はまだ、私達を信用してないのか!?だったら、一人で野球をやってろ!!貴様のマスターベーションを、私達に見せ付けるな!!」
「うぅ…。す、すみません…」
マスターベーションという意味はわからなかったが、結局、藍は涙を落としてしまった。
「ええい!!泣くな!!」
中村有沙は、自分のアンダーシャツで、藍の涙を大雑把に拭いた。
そして、戻り際、一言こう残した。
「どうせ打たれるなら…ライト方向にしろ。七海の球なら、ホームまで届く」
「…!?」
藍だけではなく、七海もハッとした。
「チビアリ…!味なことを…!」
七海はニヤリと微笑み、藍の尻をグローブで叩いて、守備位置に着いた。
1387投稿者:リリー  投稿日:2008年04月17日(木)21時26分17秒
それでは、今日はこれでおちます
1388投稿者:いい  投稿日:2008年04月17日(木)21時30分36秒
1389投稿者:117  投稿日:2008年04月17日(木)21時31分11秒
様々な問題があるものの、一つにまとまりつつありますね。
それにしても、「マスターベーション」って・・・(苦笑)。

一方で「あめぞう」が大変なことになっているんですね。最悪の場合は、「天村」ですか。
過去の作品を読み返せるのは嬉しいことです。ぜひ掲載してくださいね。
1390投稿者:なんだか  投稿日:2008年04月17日(木)21時36分28秒
すごくおもしろいっす
1391投稿者:ありりんw  投稿日:2008年04月17日(木)21時59分03秒
マスターベーションw
1392投稿者: 投稿日:2008年04月17日(木)23時36分54秒

1393投稿者: 投稿日:2008年04月18日(金)20時04分29秒
私は、高橋光臣君、鈴木亮平君を好きになる前花ざかりの君たちへの佐野泉の弟役を演じていた大東俊介君が好きで
実は大東君「リアル鬼ごっこ」に出てたときの話によると陸上派だったそうだし、父、母、姉も陸上部に所属してて小学校の時は上位5位を争う実力なんでたぶんそれが理由・・・・・
ちなみに、高橋光臣君、鈴木亮平君は花ざかりの君たちで第1寮の人を演じてました★
大波乱???楽しみ!!!!てかうちは梨生奈の彼氏が早くみたい!!!!
1394投稿者:リリー  投稿日:2008年04月18日(金)21時20分49秒
たぶん、本物の彼女も「マスターベーション」なる単語は知らないでしょうね
1390さん、ありがとうございます
霊さん、お久しぶりです
高橋君と鈴木君は、いわゆる若手イケメン俳優なのですね?
でも、「花ざかり」は、私は見てないんですよね
陸上部の人の足の筋肉とか、すごくカッコいいですよね
全身バネみたいな…
梨生奈の彼氏は、第二試合をお楽しみに

では、更新します
1395投稿者:リリー  投稿日:2008年04月18日(金)21時24分34秒
「ふふん…。ありりん…監督の仕事を横取りするんじゃないよ…!」
そう呟いたあすみは、振り返ってベンチに戻ると、有海に尋ねる。
「ねぇ、あみ〜ご…。次のバッターは?」
「え…?あ、あの…一番の内村さんです…」
そう…藍に対して、四打数三安打の内村だ。
「へぇ〜…。こりゃ大ピンチだ…」
あすみは、まるで他人事の様に言う。
「で…あみ〜ご…。内村さんのバッティングの特徴…言ってみな…」
「え?ええと…」
有海はスコア表を確認する。
1396投稿者:リリー  投稿日:2008年04月18日(金)21時25分02秒
「そんな物に頼らないで!自分の記憶で言ってごらんよ」
「あ…は、はい…。ええと…みんな、センターより左側に打ってます」
「そう…。じゃあ、その内村さんに、ライト方向に打たせるには、どうしたらいい?」
「う〜ん…。振り抜かさないことが大切だと思います…。いわゆる、つまった当たりに…」
「じゃあ、あい〜んはどこにボールを放ればいい?」
「内村さんは…左打者だから…内角ですか?」
「そうだね。高さは?」
「…高め…ですか?」
「ふふ…。あみ〜ご…そこまでわかってるんだったら、早くあい〜んに伝えておいで!」
「…は、はい!!」
有海は、急いでグラウンドへ駆け出した。
あすみの声が、有海の背中に投げかけられる。
「あみ〜ご!!ダイヤモンドに入る前に、帽子を取って礼!!」
有海は、慌てて白線の外まで戻ると、急いで帽子を取って礼をして、再び藍の元に走って行った。
1397投稿者:残念です  投稿日:2008年04月18日(金)21時25分25秒
あの人に、リリーさんぐらいの言葉が操れたらいいのに
1398投稿者:リリー  投稿日:2008年04月18日(金)21時25分35秒
「ん?な、何?あみ〜ご…」
藍は、急いで涙を拭いた。
「細川さん…。内村さんには、内角高めで投げるといいよ」
「え…?」
「でね、内村さん相手に細川さんは、全部速球で対抗してるの。だから、ゆっくりめの球を投げればいいと思う…。そうすればタイミングがはずれて、藤本さんのいるライトフライになるよ」
「う…うん…。ありがとう…」
「がんばって!細川さん…」
有海はベンチに戻りかけたが、踵を返して藍の元に戻ってくる。
「そ、それから…初めは外角速球のボール球で攻めた方がいいかも…。見せ球ってやつね…」
「う…うん…。わかった…」
藍は、キョトンとした目で、再びベンチに戻る有海を見送った。
「勉強してるんだ…。あみ〜ご…」
内村が、軽くスイングしながらバッターボックスに入る。
「ち…!」
嫌なバッターに、中村有沙は舌打ちをする。
「あれ?もしかして俺、嫌われてる?」
「…誇りに思え。敵に喜ばれる様じゃ、プレイヤーとして失格だ…」
「あはは!そりゃそうだ!!」
内村は、本当に楽しそうな様子で、バットを構える。
1399投稿者:リリー  投稿日:2008年04月18日(金)21時26分35秒
二球続けて、外角のボール球。
球威はあるが、あきらかに内村を避けている投球…。
「ち…!藍のやつめ…!!まだ、わかっとらんな!?」
中村有沙は、力を込めて返球した。
「ま、しょうがないよな…。あの子が安心して投げれるように、君達も、もっと守備を練習しなきゃ…」
「何!?」
内村の言葉に、中村有沙はカチンとくる。
「それに…あの子にどんなボールを投げさせたいのか…君が伝えなきゃ…。サインとか決めてるの?」
「む…?どういう意味だ?」
「やっぱりね…。バッテリー間のコミュニケーションの問題だな、こりゃ…。あの子ばかり責めたら可哀そうだよ…」
相変わらず、内村はニヤケ顔だが、手厳しい意見…。
守備の件はともかく、これには、中村有沙も反省せざるを得ない。
なぜなら、どんな球を投げるか任せる…と、藍に言ったのは、中村有沙だからだ。
そう言った以上、どんな球でも中村有沙は受け止めてやらなければならない…。
「なるほど…。難しいな…キャッチャーというものは…」
中村有沙は、そう呟いた。
1400投稿者:リリー  投稿日:2008年04月18日(金)21時27分10秒
そして三球目…思わぬ緩い球が来た…しかも、ストライクゾーン。
「…お!?」
絶好球に、内村はついバットを振った。
しかし、その球は内角の高め…タイミングが思いっきりずれた。
「しまった…!」
もう、遅い…。
打球は、平凡なライトフライとなる。
「タッチアップ!!」
内村は、叫んだ。
そう…これは、楽々犠牲フライになる。
欲しかった追加点が入る。
三塁ランナーは、じっとライトの七海を注視する。
七海が捕球した。
「よし!!」
三塁ランナーは、ホームに全力で走った。
七海は、身体を弓なりにして力を溜めると、本塁…中村有沙へと力を解き放った。
「ゴルアアア!!」
真っ白な直線が、ダイヤモンドを真っ二つに裂く。
中村有沙は、その凄まじい威力の白球弾をミットで受け止めると、膝を落としてホームベースを隠した。
「へ…?」
三塁ランナーは、思わず足を止めた。
1401投稿者:リリー  投稿日:2008年04月18日(金)21時28分10秒
「そら」
中村有沙は、ちょんと、ランナーの胸にミットで触れた。
「アウトー!!」
少し遅れて、審判の声…。
そして…更に遅れて、球場全体がどよめきに包まれた。
「うわあああ〜〜〜!!!すげえ〜〜〜!!!」
マンボウズは歓声をあげた。
「あの、変な女、すげえええ〜〜〜!!!」
「いいぞ!!変な女〜〜〜!!!」
「変な女、言うな!!」
七海が、ライトから怒鳴り声をあげる。
聖テレのメンバーも、まるで試合に勝ったかの様に、はしゃぎまわった。
「は…あはは…」
藍は、ヘナヘナとマウンド上で腰を降ろした。
「あみ〜ご…!これは、ななみんと、あい〜んと、ありりんと、あんたの4人で掴んだファインプレイだよ…!」
あすみは、有海の肩を叩いた。
有海は…やはり泣いていた…。
1402投稿者:リリー  投稿日:2008年04月18日(金)21時29分20秒
今日は、これでおちます

1397さん…あの人とは?
1403投稿者:117  投稿日:2008年04月18日(金)21時32分05秒
有海、相当苦労して,野球の知識を身につけたんですね・・・。
「変な女」とか散々言われていますが、その光景を思い浮かべると,何だか微笑ましいです(笑)。

第2話では梨生奈の新しい彼氏が登場するんですか?
一体誰なのか、どこまで行くのか!?そして第1話の結末も気になります!
1404投稿者: 投稿日:2008年04月19日(土)13時23分30秒
高橋光臣君と鈴木亮平君はイケメンじゃないね・・・・・
私はその3人とあとNEWSの小山君が好き★

う〜早く梨生奈の彼氏がみた〜い!!!

実は昨日大ハプニングがありました
私中学の私のクラスの男子の代議員を嫌ってて(相手も嫌ってる)
緊急学年集会が掃除のあとにあり選択授業と部活動が多いのがあり言われた物にかぶる人は残りなさいと言われクラスの鍵を管理する男の子(別の子)がそれにかぶり残ってたんですけどそのせいで鍵をいつも入れてるところになくむこうの窓が開いてたんですけどそしたらその代議員が3組(うちら2組)の窓から入ってこっちのうちらのクラスの窓を開けてくれたんで入れたんだけど後で先生の雷が・・・・・
でもそんなことをする代議員いけないのに勇気あるなーって思います☆★

元天テレの岩井七世引退するんですって!!!!!
1405投稿者:七世ちゃん  投稿日:2008年04月19日(土)14時38分31秒
がやめちゃうらしいですね
1406投稿者:あげ  投稿日:2008年04月19日(土)15時56分03秒

1407投稿者:リリー  投稿日:2008年04月19日(土)20時33分57秒
七世のことは、Yahoo!のニュースでもやってましたね
瑠璃もそうですが、それぞれの考えがあるのでしょうね

117さん、霊さん、すみません
梨生奈の彼氏って、千秋のことです…
別れましたけどね

代議員?学級委員のことですか?
その人、人の為に先生に怒られたんでしょうか?
漢(おとこ)ですねぇ…

では、更新します
1408投稿者:リリー  投稿日:2008年04月19日(土)20時34分57秒
「お、俺は見た…。レ、レーザービームだ…」
呆然と七海を眺める、内村。
「ふん!どうだ!私達の守備も、捨てたもんじゃなかろう!」
中村有沙は、そう言って、内村にボールを、ヒョイと軽く投げた。
そのボールは、内村の胸に当たって、地面を転がった。
この、イチロー級のファインプレイで、聖テレ野球部は生き返った。
ラッキー7の攻撃…逆転に向けて、チームは一丸となった。
今まで、聖テレ野球部は全回三者凡退だったので、打順は一番の梨生奈からだ。
「あれ…?もしかして…俺、ノーヒットノーラン?」
ピーナッツのピッチャー、三村は、今頃気がついた様だ。
だが、本当の大切な試合が、この後に控えている。
できるだけ、省エネピッチングをしなければならない身だ。
「ちょっと待って!り〜な!」
バッターボックスへ向かう梨生奈に、あすみは駆け寄って耳うちをする。
梨生奈は一瞬驚くが、すぐに緊張した面持ちとなり、力強く頷いた。
「うおお〜〜〜!!いけ〜!!ホームランだ〜〜〜!!梨生奈〜〜〜!!!」
メロディーが吹く、ヘタクソなトランペットの音と共に、羅夢の声が耳に届く。
(ふふふ…。もしかしたら…羅夢、怒るかも…)
梨生奈は、バットを構えた。
1409投稿者:リリー  投稿日:2008年04月19日(土)20時35分29秒
「よし!目指せ!!ノーヒットノーラン!!」
自身でも、人生初となる快挙に、三村は胸が高鳴った。
そして、第一球…。
梨生奈は、バットを水平にする。
バットの僅か下にボールを当て、地面にバウンドさせた。
そう…あすみが梨生奈に授けた策は、セーフティーバントだ。
ボールは三塁線でなく、ピッチャーとキャッチャーの間を点々と転がる。
三村は、慌てふためきながら、ドタドタとボールに駆け寄った。
結局、キャッチャーがボールを拾い、一塁へ…。
しかし、梨生奈の俊足で楽々セーフ。
聖テレメンバーは、まるでホームランを打ったかの様に盛り上がった。
これであっさりと、三村のノーヒットノーランの夢は消えた。
その途端、三村にどっと疲れが押し寄せてきた。
一塁上の梨生奈は、羅夢の方を見る。
羅夢は、飛び上がって喜んでいる。
どうやら、ホームランでなくとも、塁に出れれば羅夢も満足らしい。
1410投稿者:リリー  投稿日:2008年04月19日(土)20時35分51秒
次のバッターは、二番の愛美だ。
当然、送りバント。
あすみのサインがなくとも、愛美はバットを水平に持つ。
三村は、自分でも大人気ないと思いつつも、ノーヒットノーランの夢が打ち砕かれて、苛ついていた。
そんな苛立ちは、三村にとんでもない速球を投げ込ませた。
「ひゃ…!」
愛美は、内角に来た球を避ける。
その拍子に、バットにボールが当たる。
結果はキャッチャーフライ。
愛美は、意気消沈してベンチへ戻った。
皆は、愛美の肩を優しく叩いて慰める。
「おっとなげない!!おっとなげない!!」
マンボウズから、『大人気ないコール』の大合唱が、三村に送られる。
「だって、俺は『いつまでも少年の心を忘れない大人』だもん!!」
三村は吐き捨てるように、マンボウスへ言い放った。
「おっとなげない!!おっとなげない!!」
ピーナッツのメンバーからも、三村は野次を送られた。
1411投稿者:リリー  投稿日:2008年04月19日(土)20時36分20秒
「よし!絶対にり〜なを二塁に送るぞ!!」
藍は、バットでヘルメットを被った頭を、二、三回叩く。
気合充分で、バッターボックスに立つ。
そして、あすみを見る。
あすみのサインを見て…藍は目を疑った。
「…え…?」
あすみは、何も言わず、ただ黙って頷くのみ。
藍も、力強く頷いた。
そして、バットを構える。
「ふん!どうせ、送りバントだろ?」
三村は、全く球威を落とすことなく、ボールを放った。
藍はバットをフルスイングした。
打球は、サード…内村の頭上…。
内村も、当然送りバントを予想していた為、膝を落とし、前へ駆け出していた。
ジャンプをしながら、思いっきり手を伸ばしたが、間に合わない…!
ボールは、レフトとセンターの間を、点々と抜けた。
1412投稿者:リリー  投稿日:2008年04月19日(土)20時36分54秒
打球音と共に、梨生奈は走り出していた。
二塁を抜け三塁へ…レフトはようやくボールに追い着くと、三塁の方を向く。
「違う!!ホームだ!!」
内村の声…。
「え?」
一瞬、レフトは自分の聞き間違いかと思った。
しかし、既に梨生奈は三塁を抜けてホームへと駆け出していた。
「ウソだろ!?」
しかし、もう既に三塁に投げてしまった後だった。
内村がボールを受け止めた時には、既に梨生奈はホームを駆け抜けていた。
「ち…!」
内村は、二塁に投げた。
藍は二塁に滑り込む。
「セーフ!!」
藍は、味方ベンチに向かって雄叫びをあげた。
やっと、聖テレ野球部は、一点をもぎ取った。
記念すべき、聖テレ野球部初打点を記録したのは、細川藍だった。
1413投稿者:リリー  投稿日:2008年04月19日(土)20時37分56秒
今日は、これでおちます
1414投稿者:今までの分  投稿日:2008年04月19日(土)20時57分43秒
やっと全部読めた…
これでまだ第一試合が終わってないって言うんだからすごく長いね!
アクションシーンも迫力のある描写だし、笑いも取り入れていてすごくおもしろいです
ここまで長い小説を書けるなんて、尊敬します
これからも応援しますので、頑張ってください!
1415投稿者:117  投稿日:2008年04月19日(土)21時19分25秒
聖テレ野球部はこつこつと繋げて、ついに初打点。野球部みんなが一つになってきましたね。
>「だって、俺は『いつまでも少年の心を忘れない大人』だもん!!」
確かにいかにも三村さんが言いそうなセリフですね(笑)。

彼氏は千秋のことですか。こちらこそ勘違いしてしまって、すいません。
ちょうど今はどの辺りの話なんでしょうか?千秋と出会う前でしたっけ?
何か2人に進展があるのか、少々気になるところです。

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