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青春探偵小説『グランドスラムの少女達』
1青春探偵小説『グランドスラムの少女達』 投稿者:リリー  投稿日:2008年01月14日(月)21時35分44秒
『グランドスラムの少女達』

CAST

藤本七海 
細川藍
一木有海  

『R&G探偵社』第3弾
『表バージョン』と『裏バージョン』の二つの小説が交互に展開し、お互いに影響し合います
『表』…聖テレジア女子学園中等部と、その野球部のメンバーを中心とした青春スポコン小説
『裏』…『R&G探偵社』の少女探偵達が、悪と戦うアクション小説
第一試合(第一話)から第三試合(第三話)までの三話構成です
2
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3
☆レス2000までを見る☆
2001投稿者:リリー  投稿日:2008年05月27日(火)20時57分33秒
その瞬間、アスミ女王様は、強烈な平手打ちをダーブロウ有紗に見舞った。
「…!?」
一瞬、ダーブロウ有紗は、目眩を起こした。
「おまえ…何が目的で、我が組織を嗅ぎまわっている?」
「…へへ…。何?もう、プレイに入ってるの?」
再び、平手打ちが襲う。
「さあ、答えろ!!何が目的だ!?何を嗅ぎまわっている!?」
これは…プレイにかこつけた拷問か?
やはり、難田門司は、この店に…?
いや、あくまでもプレイだと言われれば、それまでだ。
(か、考えやがったな…。このデカ女…)
アスミ女王様は、鞭を選ぶ為、壁際へ歩いて行く。
彼女が選んだのは、細く長い鞭…スタンダードな…シンプルな物だ。
「なあ…。で、おまえは私から何を聞きだすんだ?それを決めてないだろ?」
ダーブロウ有紗の問いに、アスミ女王様は背を向け、鞭のしなり具合を見ながら、答えた。
「それは…おまえが知っているんだろ…?」
(くくく…。本当に、上手いねぇ…)
ダーブロウ有紗は、敵ながら感心するしかなかった。
2002投稿者:リリー  投稿日:2008年05月27日(火)20時57分50秒
「さあ、吐け!!何が目的だ!!吐け!!」
アスミ女王様は、細くしなる鞭で、ダーブロウ有紗を打ち据える。
まるで、刃物で切り裂かれたかのような痛み…。
これに比べれば、さっきのショーコ女王様の鞭など、子供の遊びだ。
このアスミ女王様、手首のスナップが凄く強い。
「ぐ…!うぅ…!」
思わず、呻き声が漏れる。
こちらが聞き出そうと乗り込んだのに、いつの間にかこちらが聞き出されてしまっている。
アスミ女王様は、鞭を、ダーブロウ有紗の首にあてがう。
「ふふ…。少しは必死な顔になってきたじゃないか…。え?」
しかし、これでもまだ耐えられないという痛みではない。
「へ…へへ…。まだまだ…だな…」
「ふん…!減らず口を…」
鞭は、ダーブロウ有紗の頬に炸裂した。
「ぐぅ…!」
顔が、切れてしまったんじゃないか…?
一瞬、ダーブロウ有紗はそう思った。
これは、プレイを超えていないか?
つまり…やはり、拷問か…?
2003投稿者:リリー  投稿日:2008年05月27日(火)20時58分09秒
どうも、アスミ女王様の真意を測りかねる…。
難田門司がここにいる…なんて確信は、どこにもないのだ。
このままダンマリを通しても、プレイということでごまかされる。
もし…絶対に有り得ないが…難田門司を探っているなどと口を割ろうものなら、それで、拷問は成立する。
(う〜ん…。こりゃ、ややこしい罠にはまっちまったかな?)
ダーブロウ有紗は、少し自分の軽率さに反省した。
「ふうん…。中々、口が堅いねぇ…」
アスミ女王様は、ダーブロウ有紗の胸を、乱暴に掴んだ。
「いい身体、してんじゃねぇか…。え?」
もの凄い握力…まるで乳房が千切れそうだ。
「ぐ…!ぐぅ…!!」
「ふふ…。痛いかい?」
今度は、乳首を指で捻り上げた。
「さあ、これはどうだい!?」
「が…!ぐぅぅ!!」
ダーブロウ有紗は、歯を食い縛る。
プレイと言うならば、大袈裟に悲鳴をあげてもいいのだが…拷問であるのなら、絶対に悲鳴などあげるものか…!!
2004投稿者:リリー  投稿日:2008年05月27日(火)20時58分34秒
アスミ女王様は、捻り上げている乳首を見て、そこに小さな穴の様な傷跡を発見する。
「これは…?あんた、乳首にピアスでもしてたのかい?」
これは、『中村有沙捕獲作戦』の時、ジャスミンによって開けられた穴だ。
「ふ〜ん…。おまえ、SM初心者なんて言ってたけど…経験者なんじゃないの?」
アスミ女王様は、懐から太い針を取り出した。
「…!?」
「もう、塞がってるけど…また、私が開けてやるよ…」
そう言って、針の先を、ダーブロウ有紗の乳首に近づける。
「お、おいおい!!これは、ノーマルコースだぜ?こういうのって、ハードコースじゃねぇの?」
アスミ女王様は、ダーブロウ有紗の言葉は無視し、何の躊躇もなく、乳首を針で貫いた。
「ぐ…!!ああああ〜〜〜!!!」
激痛が、走り抜ける。
「ぐぅぅ…!!て、てめぇ…!!ほ、本当に…やりやがったな…!!」
アスミ女王様を睨みつける、ダーブロウ有紗。
「どうだい?喋る気になったかい?」
アスミ女王様は、睨み返して言った。
2005投稿者:リリー  投稿日:2008年05月27日(火)20時59分08秒
今日は、これでおちます
2006投稿者:2000越え!  投稿日:2008年05月27日(火)21時04分34秒
ぐぁぁぁぁ痛そう〜〜〜
2007投稿者:117  投稿日:2008年05月27日(火)21時13分51秒
うわぁ・・・アスミ女王様、鋭い!ダーさんの目的に気づいたのでしょうか?
かなりハードな拷問になりつつありますね。どうなることやら・・・続きも楽しみです!
2008投稿者:あげ  投稿日:2008年05月27日(火)21時20分04秒
 
2009投稿者:そのうち明かされるであろう  投稿日:2008年05月27日(火)21時27分26秒
あすみの正体が気になる
2010投稿者:あげ  投稿日:2008年05月28日(水)01時17分50秒
2011投稿者:1600  投稿日:2008年05月28日(水)12時45分17秒
アスミ女王様、激しいですねえw
ダーさんがどうなるのか心配になってきました
2000越えおめでとうございます!
2012投稿者:あげ  投稿日:2008年05月28日(水)19時14分46秒
 
2013投稿者:デジ  投稿日:2008年05月28日(水)19時42分49秒
3日ぶりです。
アスミ女王様は、ショウコ女王様とは別の意味で迫力ですね。(表の性格と似ているような似てないような。。。(笑))
しかし、ちょっとダーさんの目的を考慮した構成でしょうか?そうだったらアスミ女王様かなり凝ったシチュエーション思いつきますね。
そんなこんなで緊迫した状態(物語)になったとはいえ少しピンチな展開になりましたね。
続きがすごい楽しみです!
(今日の小言)実は僕もこういう筋書きを書くのがすきなのでいずれこの板に小説作書こうと思っているのですが、スレの作り方がわかりません。ちなみに構成も考えていません。(これで大丈夫なのか心配です。)(汗)
あと、スレ2000越えおめでとうございます!
2014投稿者:リリー  投稿日:2008年05月28日(水)20時56分49秒
そう言えば、2000超えたんですね
早いですねぇ…
これも、この小説を読んでくださってる方々のおかげです
応援のコメント、本当に励みになります

ダーさんとアスミ女王様の行く末が気になってらっしゃる方、そして、アスミ女王様の正体は、この三回裏で明らかになります

デジさんも、小説をがんばって下さい
私も応援させてもらいます

では。更新します
2015投稿者:リリー  投稿日:2008年05月28日(水)20時58分12秒
もう片方の乳首も、針で貫かれた。
「がぁ…!!ぐあああ〜〜〜!!!」
この冷徹さ…SMの女王様というのは、こんなことを平然とできるのか?
「ふぅ…!ふぅ…!ふぅ…!」
滝のような汗が、ダーブロウ有紗の身体中から流れ出した。
「ふふふ…。いい声を出すようになったじゃないか…」
アスミ女王様は、ダーブロウ有紗の耳元で囁いた。
「くぅ…!!き、貴様…!!」
「じゃあ、その泣き声のご褒美に、いい物をあげよう…」
「は、はぁ…?な、泣いてねぇんだけど…!!」
アスミ女王様は、また懐から何かを取り出す。
それは、銀色の小さな輪だった。
「な、何だよ…?そりゃ…?」
「ん?穴を開けたら、通す物が必要だろ?」
乳首の穴に、その銀の輪が通された。
2016投稿者:リリー  投稿日:2008年05月28日(水)20時58分33秒

「ケ…!だっせぇ、ピアス、取り付けやがって…!!コンチクショウ!!」
ダーブロウ有紗は、唾をまき散らして怒鳴った。
「それだけじゃないさ…。この輪に、こういう物も、取り付ける…」
次に取り出したのは、掌に収まる様な、小さな南部風鈴。
「これ、一つで200グラムはあるの…」
「あん…?」
輪に、その鉄製の風鈴を取り付ける。
「ぐぅ…!!」
乳房が、下に向かって垂れ下がる。
「ふふふ…。なかなか、可愛いじゃないか…」
アスミ女王様は、指でチリチリと、乳首にぶら下がっている風鈴を揺らした。
「こうやって鞭で叩く度に、いい音で鳴るんだよ!」
そう言って、鞭を振るう。
「ぐあ!!」
激しく揺れる、ダーブロウ有紗の身体。
チリーンという、涼しげな音…。
「ふふふ…。いい音…」
アスミ女王様は、目を閉じてその音色を楽しんだ。
2017投稿者:リリー  投稿日:2008年05月28日(水)20時58分55秒
「ぐあああ…!な、なんて、マヌケな図だよ…!こりゃぁ…!!」
顔をしかめる、ダーブロウ有紗。
「あははは!!可愛いじゃないか!!ええ!?」
高笑いをしながら、鞭で滅多打ちにする、アスミ女王様。
鳴り響く鈴…。
ダーブロウ有紗の呻き声…。
「ちょっと、鞭の振り方を変えてみようか?」
そう言うと、アスミ女王様は、履いていたピンヒールを脱ぐ。
「…!?」
右手に鞭を持ち、左手を添え、その両手を高く上げた。
そして、鞭を胸元に持ってくると、腰を捻りながら左足を上げる。
(な、何だ…?こ、これは…野球…?)
そう…まるで、アスミ女王様の動作は、野球のピッチャーの様だ。
確か、見たことがある…この様にタオルの端を持って、投球の練習をする選手の姿を…。
そして、剛速球を放つかのように、右手がしなり、振り下ろされる。
その鞭の先は、ダーブロウ有紗の身体へ…。
2018投稿者:リリー  投稿日:2008年05月28日(水)20時59分15秒
まるで、落雷のような音が、部屋中に響き渡る。
それは、鞭の叩きつけられた音でもあり、ダーブロウ有紗の叫び声でもある。
そして…鈴の音…。
「ぐはああ…!!」
刀で斬りつけられた…と、錯覚する程の衝撃だった。
アスミ女王様は、再び大きく振りかぶり…両手を胸元に下ろし、腰を捻り、左足を上げ…打ち降ろす!!
それが、何度も何度も繰り返される。
鞭の音と、叫び声、そして鈴の音…これらが1セットで繰り返される。
「さあ、まだ言わないのかい!?こんなにまでされて、まだ言わないのかい!?」
アスミ女王様は、乳首に取り付けられた鈴を握ると、それを上に引っ張り上げる。
それと同時に、乳房は上に伸びる。
「ああああ〜〜〜!!!」
「吐け!!さあ、吐くんだ!!」
「ぎああああ〜〜〜!!!」
「…あくまでも、言わないつもりだね?だったら…」
再び、アスミ女王様は、針を取り出すと、そのまましゃがみ込んだ。
「ふふふ…。今度は、どこに穴を開けてやるか…わかるかい…?」
そう言うと、その針の先を栗色の陰毛に撫で付けた。
2019投稿者:リリー  投稿日:2008年05月28日(水)20時59分46秒
「ま、待った…」
ダーブロウ有紗が、呟いた…。
「待ってくれ…」
アスミ女王様は、ダーブロウ有紗の顔を見上げた。
荒い呼吸で、激しく身体が上下し、汗の雫が滴り落ちている。
虚ろな目だ…。
アスミ女王様は、冷たい表情のまま微笑んだ。
「なぁに?やっと、白状する気になったの…?」
「…時間だ…」
「え?」
「時計を見ろよ…」
「何ですって?」
アスミ女王様は、壁に掛かった時計を見る。
8時を回っている…。
「私は…1時間コースを選んだんだ…。もう…1時間…過ぎてるぜ…」
ダーブロウ有紗は、ニヤリと笑った。
2020投稿者:リリー  投稿日:2008年05月28日(水)21時00分05秒
「なぁ…これは…プレイなんだろ…?アスミ女王様…」
そう…もし、それでもアスミ女王様が拷問を続けたら…これはプレイではない…。
本物の拷問だ。
つまり、難田門司はここにいる…という証明になる。
ならば、ダーブロウ有紗は、このチープな磔を粉々に破壊し、反撃を開始する。
いつでもできたのだ…そんなことは…。
こちらだって、このバカバカしい三文芝居に付き合ってやったのだ。
ただし…1時間だけ…!!
もし、これ以上続けるのなら…やってやる…!!
貴様を…この店『エトワール』を…難田門司ごと、ぶっ潰してやる!!
アスミ女王様は、ゆっくりと立ち上がって、ダーブロウ有紗を見下ろした。
「さあ…どうするんだ?」
2人の睨み合いが続く…。
アスミ女王様は、ニッコリと微笑んで、こう言った。
「お客様…。延長はなさいますか…?」
ふ…と、ダーブロウ有紗は、息をつき…そしてこう答えた。
「いや…。もう、飽きた…」
2021投稿者:リリー  投稿日:2008年05月28日(水)21時01分07秒
次回は、山本組に潜入した七世の場面となります

では、今日はこれでおちます
2022投稿者:あげ  投稿日:2008年05月28日(水)21時07分33秒

2023投稿者:117  投稿日:2008年05月28日(水)21時15分37秒
アスミ女王様、恐い・・・酷すぎる。200グラムの鈴をぶら下げるとは、大変そうですね(笑)。
次回は七世の出番ですか・・・一体どう出るのか、続きも楽しみです!
2024投稿者:一応  投稿日:2008年05月28日(水)22時47分55秒
決着が着いたんでしょうか?
2025投稿者:あげ  投稿日:2008年05月29日(木)20時10分40秒
 
2026投稿者:リリー  投稿日:2008年05月29日(木)21時11分40秒
そうですね
一応、プレーの時間は過ぎたので、大人の遊びはお終い…というノリです

200グラムって、重いですよねぇ…
乳首に穴を開けたことも、200グラムの重りをぶらさげたこともないですが…

では、更新します
2027投稿者:リリー  投稿日:2008年05月29日(木)21時13分51秒
天歳市内の…山本組組長の屋敷。
里穂、愛実、七世…そして他4名の少女達は、浴室につれて来られた。
まるで、温泉宿のように広い湯船…。
多人数で一緒に入る為に、設計されたようだ。
勿論、山本と多数の少女達とで入るのだろう。
浴室には、服を着たままの女性組員達が、少女達を待ち構えていた。
「さあ、皆、服を脱ぐんだ!!」
脅されるように急がされ、7人の少女達は服を脱いだ。
「おまえ達…何日も風呂に入ってなかったから…今から綺麗に洗ってやる!!」
背中を押され、広い浴室に入れられる。
それと同時に、7人はお湯をかけられた。
「ひぃ…!!」
それだけでも、その場にへたり込んでしまう少女もいる。
里穂と愛実は、固く抱き合っていたが、女性組員に無理矢理引き剥がされた。
「あ、姉御!!」
「愛実!!」
そして、強引に座らされ、頭からお湯をかけられた。
七世も同様である。
2028投稿者:リリー  投稿日:2008年05月29日(木)21時14分18秒
まるで家畜を洗うかのように、7人の少女達は、身体を泡だらけにし、擦られ続ける。
女性組員の手が、愛実の股間に伸びる。
「や…!!」
愛実は、身をよじるが、数人掛かりで身体を押さえつけられる。
「つ、愛実に、何すんだ!!」
しかし、里穂もタイル床に押さえつけられて、同様に股間に触れられる。
「な、何すんだよ!!」
叫ぶ里穂に、女性組員は笑いながら言う。
「特に…ここは丹念に洗っておくよ…。意味はわかるだろ…?」
里穂はゾッとした。
あの、ブタのような男に…何をされるのか…。
少女達は、途端に大人しくなってしまった。
「ふふ…。おまえは、最初から素直だね…」
七世の身体を洗う女性組員は、そう耳元で囁いた。
「まあ、おまえは今日来たばっかりだから、そんなに洗う必要もないんだろうけど…」
女性組員の指は、七世の股間に伸びる。
2029投稿者:リリー  投稿日:2008年05月29日(木)21時14分38秒
泡がついている為、指はするりと、七世の中に入っていく。
「ふ…う…」
思わず、声をあげてしまう。
「可愛い声だね…。おまえは、組長のお気に入りになるかもね…」
そう言って、彼女は七世の耳たぶをそっと咥えた。
女性ばかり集められていて、唯一の男が、あの醜悪な山本だ…。
自然と、同性愛に走るのだろうか…?
そう言えば、『TTK』も同じだった…。
七世は、この山本組の組員達も、哀れに思えて仕方がなかった。
「さあ、風呂から上がったら、これを着るんだ」
一通り、身体を洗い終えた7人の少女は、真っ白な薄手の着物を手渡される。
時代劇で見る、大奥の女達が将軍を寝所で迎える様な…そんな姿になるのだろうか。
こんな物を着せる山本は、大奥を所望する将軍気取りなのであろう。
そして、いよいよ7人の少女達は、山本組長の待ち構える寝室へと連れて行かれる。
2030投稿者:リリー  投稿日:2008年05月29日(木)21時15分00秒
「なあ…東奈…」
長い廊下を歩かされながら、七世の偽名を呼ぶ里穂。
「自分一人で組長の相手をするって…本気で言ってんのか?」
「ええ…。そうよ。だから、あなた達は心配しないで…」
「ど、どうして…?あなたは…どうして…私達を…?」
愛実は、今にも泣き出しそうな声で聞く。
「そ、そうだよ…!!私達とあんたは、赤の他人じゃないか!!」
里穂の言葉に、ふっと微笑む七世。
「あなたの…大切なお友達に…頼まれたから…」
「私達の…大切な…友達…?」
「だ、誰…?それは…」
その時、七世達は女性組員に怒鳴られた。
「そこ!!くっちゃべってんじゃない!!」
七世は笑顔だけで、里穂達に答えた。
2031投稿者:リリー  投稿日:2008年05月29日(木)21時15分37秒
大きなベッドの上に…まさに『裸の王様』が…ふんぞり返っている。
異様に肌が白い…肥満体の…この男が…組長の山本…。
「ぐふふふ…。今夜は、また一段と美少女揃いじゃねぇか…?えぇ…?」
だらしなく歪む顔が、7人の少女達を吟味する。
それだけでも、愛実は泣いてしまっている。
「よし、全員、こっちに来い!!」
7人の少女達は、恐る恐る山本に近づく。
七世も、歩調を合わせた。
「いいか?俺が帯を引っ張るから、おまえ等は『あ〜れ〜…お殿様、お戯れを〜〜〜』って、クルクル回るんだぞ?」
その山本の命令に、七世は笑いそうになったが、ぐっと堪えた。
まず、左端の少女の帯を掴む。
「それぇ!!」
思いっきり、帯を引っ張る山本。
「あ、あ、あ〜れ〜…」
少女は、ぎこちない…それでも精一杯の演技をする。
「ヘタクソォ!!」
山本は、思いっきりその少女の腹を蹴っ飛ばした。
2032投稿者:リリー  投稿日:2008年05月29日(木)21時16分10秒
「…!?」
一瞬で、少女達の表情が凍りつく。
「ゲ…ゲホ…!ゲホ…!」
腹を押さえて、うずくまる少女の背中を踏みつける山本。
「いいか?もっと上手い演技をしろ!!俺を興醒めさせんな!!」
少女達は、悲壮な顔になった。
愛実は、ますます震え、里穂にしがみ付いた。
山本は、次の少女の帯を引っ張った。
「あ〜れ〜!!」
あらん限りの声で叫ぶ少女。
「う〜ん…なかなかの熱演だったが…大根!!」
山本は、その少女の腹も蹴っ飛ばした。
そして、次の少女も、次の少女も…。
この男…何かと難癖をつけ、いたぶっているのだ。
そして、とうとう愛実の番になった。
2033投稿者:リリー  投稿日:2008年05月29日(木)21時16分30秒
「さぁて…。おまえは、どんな演技をしてくれるのかな…?」
「ひ…ひぃ…」
愛実は、思わず理穂の後ろに隠れた。
「前に出て来い!!」
山本は、愛実の髪を引っ張った。
「い、痛い!!」
泣き叫ぶ愛実。
「おい!!弱い者いじめしてんじゃねぇよ!!ブタ!!」
里穂は、山本の足を蹴っ飛ばした。
「イテ!!こ、このアマァ!!」
里穂は、山本から平手打ちを喰らい、その場にどっと倒れこむ。
「あ、姉御!!」
愛実は、里穂に覆い被さった。
「無礼者め…!!手打ちにしてくれる…!!」
殺気の篭った目で、2人の少女を見下ろす、山本。
そんな目に、里穂と愛実は恐れおののいた。
2034投稿者:リリー  投稿日:2008年05月29日(木)21時18分49秒
里穂のキャラクターが合ってないと思われる方もいらっしゃると思いますが、これは04年のイベントのイメージからきています

では、これでおちます
2035投稿者:117  投稿日:2008年05月29日(木)21時21分20秒
それにしても、女の子の腹を蹴るとは・・・女性って、お腹を蹴られたりしたら,痛いんじゃないでしょうか?
確かに、「姉御!」っていうのは、あの夏イベですね。イメージはつきます。
大胆な里穂・・・続きも楽しみです!
2036投稿者:二回戦になってから  投稿日:2008年05月29日(木)23時57分37秒
エロが増えましたね
2037投稿者:デジ  投稿日:2008年05月30日(金)01時55分04秒
こっちも酷い状況でしたね。割と新しめの内容で助かります。(僕が、天てれを見始めたのがちょうどこの前の年なので)
里穂の2004年って夏イベでも、本編でも姉御肌っぽい一面を見せていたような気がします(黒いだんご3兄弟として)。
しかし七世ってこういう場面だとMだったような気が…(この小説で)
続きも楽しいです!
(今日の小言)
そういえば樹音って今年で6年でしたね。歴代の最年長に並びましたね。
天てれの在籍期間が一番長い人って全てこの小説に出てますね!(樹音、ちひろ、竜一どの人もこの小説に出演するようなので書いておきました。今の展開に全然関係ない話ですみません。)
2038投稿者:リリー  投稿日:2008年05月30日(金)21時22分55秒
また、過去ログに行きましたね
2800まで行くと思ったので、驚きました

デジさんは、2003年から見始めたのですね
2チーム制になる最後の年ですね、たしか
私も、そのくらいです
2000年くらいからです
樹音は長いですね
すごく小さかったのを覚えてます

お腹は蹴っちゃいかんですよね…
子宮がありますから…

二回戦というよりも、『三回』は、表も裏もそういうシーンが多いですね

では、更新します
2039投稿者:リリー  投稿日:2008年05月30日(金)21時23分56秒
「お、お殿様…!!この者達を、お許し下さいませ!!」
七世が、三つ指をついて、山本の前に正座をし、頭を畳に着けた。
「お?」
まるで、時代劇の女優の様な演技…山本の興味は、一瞬で七世に向いた。
「お主、名は何と申すのじゃ?」
「は、はい…。東奈…と申します…」
「ほほう…。それは愛い名じゃのぅ…。苦しゅうない…顔を上げぃ…」
そう言って、七世の顎に手を添えて、顔を上げさせる。
「ほほぉ〜…。これは、可憐な…」
「勿体無き、お言葉…」
七世は恥ずかしそうに、目を伏せた。
「さ、苦しゅうない。立つのじゃ…」
「はい…」
七世は、完璧な所作で立ち上がる。
2040投稿者:リリー  投稿日:2008年05月30日(金)21時24分23秒
「では、行くぞ?行くぞ?」
山本は、七世の帯に手を掛ける。
「それぇ〜〜〜!!!回れ〜〜〜!!!」
「あ〜れ〜!!お殿様、お戯れを〜〜〜!!!」
七世は、バレリーナの様に回転しながら着物を振り払うと、その場でバッタリと裸体を横たわらせた。
「おお!?」
完璧な演技の上、この華奢な身体…決め細やかな肌…何もかもが、山本の琴線に触れた。
七世は、さめざめと泣きながら、こう叫んだ。
「おっ父ぉ〜!!許してけろ〜!!オラ、身体を汚されちまうだ…。けども、心までは許さねぇ…。オラの心は…津軽の…雪みてぇに…真っ白のままだかんな…」
「おおお〜〜〜!!!」
七世の、このアドリブに、山本は絶叫した。
「す…凄い…」
里穂も、愛実も、他の少女達も…七世の演技に目を見張った。
2041投稿者:リリー  投稿日:2008年05月30日(金)21時24分48秒
「さあ、東奈とやら…。苦しゅうない…。こっちに来るんじゃ…」
山本は、七世だけをベッドに連れて行く。
里穂達、他の少女はほったらかしだ。
「ほ、本当に…一人で相手をする…つもりか…?」
里穂は、呆然と七世を見詰める。
山本の太い身体が、七世の細い身体を抱きしめる。
「ふふふ…。さあ、ワシの名刀を握ってみよ…」
七世の手を取ると、山本は豹柄のビキニパンツの前に持って行く。
(やれやれ…これで、当分、私はこの屋敷に残らなきゃならなくなったわ…)
そう…これから七世は、ずっと一人で、この山本の相手をしなければならなくなる。
いや、そう仕向けるのだ。
山本を自分の虜にして…。
2042投稿者:リリー  投稿日:2008年05月30日(金)21時25分10秒
「失礼します」
その時、寝室の襖の奥で声がした。
後藤理沙の声だ。
「何だ?」
これから、と言う時に邪魔をされ、山本は不機嫌に答えた。
「あの…維里香からの伝言なのですが…」
「維里香?維里香がどうかしたのか!?」
維里香…難田門司の妹の名前…同時に、山本組の組員でもある。
もしかしたら、難田門司の居場所がわかるかもしれない…。
七世は、目を輝かせた。
「そろそろビジネスを再開したい…と、あのお方が申しておりまして…」
「あのお方…?兄貴の難田門司か?」
難田門司…!!ビンゴ…!!
七世は、心の中で叫んだ。
2043投稿者:リリー  投稿日:2008年05月30日(金)21時25分35秒
襖の奥で、理沙が慌てふためく。
「く、組長…!あまり、その名は口にしないで頂きたいです…。どこに警察が張っているか…」
「うるせぇ!!てめぇが俺に指図すんな!!難田門司!!難田門司!!いくらでも言ってやらぁ!!」
「は、話しを元に戻します…。それで…ブツを運ぶ為、部下をまたジャカルタに飛ばしたいと…」
「ふん、ふん…。それで?」
「で、あのお方の銀行口座が、警察に押さえられていて使えない状態でして…」
「ふん、ふん…」
「その渡航費用を、組長からお借りしたいと…」
「はぁ…?何で、俺がそんな面倒みてやんなきゃ、いけねぇんだよ!!」
「しかし、組長もあのお方のお蔭で、随分、甘い汁をお吸いになったわけでしょう…?」
山本は、憮然として黙り込んだ。
「しかも、あのお方は、そのお金をちゃんとお返しする…と、おっしゃってます」
「どうやって返すんだ?」
「長野県に原村という所がありまして…そこに、あのお方の隠し財産があるそうです…」
「隠し財産…?」
「8月頃、ジャカルタから日本に戻ってくる部下を、その村に向かわせるそうです…。そこで、その財産を…」
(『長野県』…『原村』…『8月』に…『難田門司の部下』が…?)
七世は、キーワードを暗記した。
2044投稿者:リリー  投稿日:2008年05月30日(金)21時25分57秒
「で…その難田門司は、どこにいるんだよ?」
「それは…申し上げられません…」
「ケ…!金を借りたいなら、てめぇが直接来て、頼みやがれってんだ!!」
「あのお方は…滅多に人前に姿を現さないのです…」
七世は知っている…難田門司が、人前に姿を…いや、顔をさらさない理由を…。
「わかったよ!!これで、でっけぇ、貸しが作れるってもんだ!!まてよ…?その隠し財産…この俺がまるごと…」
「組長…!あのお方を、甘く見ない方がよろしいかと…」
理沙の声が、厳しいものに変った。
「何だぁ!?てめぇ、俺に指図すんじゃねぇぞ!!何度言ったらわかんだ!?こら!!」
山本は、顔を真っ赤にしてがなりたてた。
「も、申し訳…ございません…」
「もういい…!!てめぇは、今日は、俺の前に面、出すな!!」
「え?」
「俺に、その面を見せるなって言ってんだ!!わかったな!?」
「…はい…」
襖の奥で、足音が遠ざかっていく。
2045投稿者:リリー  投稿日:2008年05月30日(金)21時26分25秒
「ち…!とんだ邪魔が入ったぜ…。さあ、東奈よ…。今から、存分に楽しもうぞ…」
山本は、七世にその醜くにやけた顔を寄せた。
難田門司の部下が、8月に長野県の原村という所に潜伏する…この情報が手に入れば、こんな所に用はない。
しかし、このまま逃げるわけにはいかなかった…。
里穂と愛実…ダーブロウ有紗の大切な友人を…見捨てることなど…。
その時だった。
理沙のいた襖とは、反対側の襖が開き、何者かが倒れ込んだ。
「何だ!?何だ!?今度は何だ!?」
山本は激怒して、ベッドの上に立ち上がった。
「組長!!怪しいヤツが、この屋敷に忍びこんでいましたので…!!」
女性組員によって、何者かが押さえつけられている。
その者は…剣道の面に胴を着け、右手に竹刀を持ち、左手にボクシンググローブをはめた…何とも奇妙な恰好をしている。
「誰だ!?そいつは!?」
女性組員は、剣道の面を、無理矢理取った。
日本人離れした、高い鼻の、端正な顔が現れた。
「あ…!!の、望…!?」
愛実は、思わず声をあげた。
その男は…スーパーナルシストのフランス人ハーフ…ド・ランクザン望…だった。
2046投稿者:リリー  投稿日:2008年05月30日(金)21時27分16秒
また、懐かしい人が登場したところで、今日は、おちます
2047投稿者:117  投稿日:2008年05月30日(金)21時29分39秒
七世の演技力、すごいですね。望まで登場するとは、まさに「KIZZ」、懐かしい!
ここでまた「らりるれろ」と繋がってきましたね。続きも楽しみです!
2048投稿者:安田大サーカスは  投稿日:2008年05月30日(金)21時40分04秒
難田門司の隠し財産を取りに原村まで来たんですね
2049投稿者:777  投稿日:2008年05月30日(金)23時24分07秒
リリーさんって成人?大学生?高校生?
謎めいている
2050投稿者:たしか大学生ぐらい  投稿日:2008年05月30日(金)23時43分52秒

2051投稿者:age  投稿日:2008年05月31日(土)00時08分36秒
しばらく来てなかったら読めなくなってる・・・(泣)
2052投稿者:そんなあわてんぼさんにはこれ  投稿日:2008年05月31日(土)00時14分04秒
http://221.254.11.166/log/tentele/080114213544a.html
http://221.254.11.166/log/tentele/080114213544b.html
2053投稿者:あげ  投稿日:2008年05月31日(土)00時51分45秒
2054投稿者:女性に歳を聞くのは  投稿日:2008年05月31日(土)01時17分46秒
失礼でないかい?
2055投稿者:デジ  投稿日:2008年05月31日(土)03時00分19秒
さすが七世ですね。かなり上級の演技力
そして、やっぱり着ましたね望。(この展開なら出るだろうと思いました。)
来たにしても竹刀にボクシンググローブはミスマッチなのでは(笑)
展開が、らりるれろにまた一歩近づきましたね。
続きも楽しみです!
(今日の小言)3003年から見始めたとはいえ当時のことはうろ覚えです。
望もまたMTK結構多いですよね!何れお笑いでテレビに出ますかね?(まあ、出たとしたらかなりの爆笑ものになりますが)
               〜以上〜
先日の小言で書いたことですが一応出演する人は一部決まりました。
リリーさんの内容と少し被る部分もあるかと思いますがご了承ください。一応内容はこういう事件性を絡んだ小説です。
後は文面を考察していくだけです。(汗)この場を借りて宣伝していることをお詫び申し上げます。では今日はこの辺で
2056投稿者:デジさんは未来の住人ですか?  投稿日:2008年05月31日(土)07時54分25秒
3003年って…w
すみません、あげ足とっちゃって
2057投稿者:2051  投稿日:2008年05月31日(土)17時32分10秒
>2052s
ありがとうございます!!
おかげでようやく話が追いつきました!
2058投稿者: 投稿日:2008年05月31日(土)18時07分01秒
http://img195.echo.cx/img195/5809/11141117518992oa.jpg
2059投稿者:ああ  投稿日:2008年05月31日(土)18時07分08秒
http://img195.echo.cx/img195/5809/11141117518992oa.jpg
2060投稿者:リリー  投稿日:2008年05月31日(土)21時14分00秒
ここから、けっこう『らりるれろ』とリンクし始めます
後付け設定が、かなりありますが…
安田大サーカス、隠し財産のことなんて一言も言ってませんでしたし…

デジさんも、いよいよ書きはじめますか?
頑張って下さい
もし、発表したら教えて下さい
応援させていただきます

過去ログに行ったぶん、またアドレスを貼って頂きまして、感謝します

今は学生です
これ以上は、申し上げられませんが…

では、更新します

2061投稿者:リリー  投稿日:2008年05月31日(土)21時15分20秒
ド・ランクザン望…私立本巻城高等学校1年生の15歳。
里穂や愛実と同じく、下ノ国中学時代、『スクラッチ』という不良グループに所属していた。
そして、同じく『中村有沙捕獲作戦』に巻き込まれた男…。
父がフランス人、母が日本人のハーフであり、父方の家系は、なんと貴族…。
フランスには、城を所有しているそうだ。(本人談)
金持ちのお坊ちゃんで、かなり成績が悪いのにも関わらず忠律高校の次に難関と言われた本巻城高校に入学できたのも…はっきり言って、金の力だ。
ちなみにケンカは、からっきし弱い。
「や、やあ…。ハニー…」
望は、畳に顔を押し付けられながら微笑んだ。
「の、望!!ど、どうして、こんな所に…!?」
愛実は、望の元に駆け寄ろうとするが、女性組員に行く手を阻まれる。
「どうして…?それは…君を助け出す為に決まってるじゃないか…!」
「の…望…」
「君が不安で、震えている…。そんな時に、駆けつけてやるのが…騎士道精神ってものさ…!」
望は、愛実をじっと見上げた。
「望…」
愛実は、望をじっと見詰める。
「あんた…バカじゃない?」
「…へ?」
望は、その端正な顔を、だらしなく間延びさせた。
2062投稿者:リリー  投稿日:2008年05月31日(土)21時15分44秒
「助けに来たって…あんた…捕まってるじゃない!!」
「そ、そうだけどさ…」
「あんた、何にも、役に立ってないじゃない!!」
「で、でも、役に立てなくても、僕は君のそばに…」
「これで、3人も捕まっちゃったじゃない!!事態は最悪な状況になったって言ってるのよ!!」
「いいや…違うな…」
山本は、ゆっくりとベッドから降り立った。
「3人捕まった…?いいや…。捕まえるのは2人だけだ…」
そう言いながら山本は、望の目の前に立ちはだかった。
「この屋敷には…俺以外の男は…一歩たりとも入れないことになってるんだ…」
冷たい視線を、望に向ける、山本。
「もし、その禁を破れば…どうなるか知ってるか?」
「い…いえ…」
望は、生唾を飲み込んだ。
「おい…」
山本は、後ろにいる女性組員に、左手を差し出す。
絶妙のタイミングで、その左手に日本刀が乗せられた。
2063投稿者:リリー  投稿日:2008年05月31日(土)21時16分29秒
ゆっくりと、鞘から刀身を抜く、山本…。
「ひ…ひぇぇ…!!」
望は、身震いした。
「きゃあ!!」
愛実は、顔を覆ってしゃがみ込んでしまう。
「の、望!!」
里穂は望を庇おうと駆け出すが、女性組員に取り押さえられる。
(ま、まずい…!!もう…!!あのフランス人ハーフ君…!!事態をややこしくしてくれたわね!!)
七世は、もう行くしかなかった。
今、一人でこの山本組を相手に戦わざるを得ない…!
武器も持っていないが…仕方がない!!
何とか、生きて帰って、『原村』のことを、仲間に伝えなければ…!!
「望!!逃げてぇ!!」
愛実が叫んだ。
「に、逃げない!!僕は、逃げない!!」
そう、勇ましく言う望…『逃げない』のではなく、『逃げられない』のだが…。
2064投稿者:リリー  投稿日:2008年05月31日(土)21時17分06秒
愛実は、もう泣き叫ぶしかなかった。
「バカ!!カッコつけてんじゃないわよ!!早く逃げなさいよ!!」
「僕、一人じゃ逃げない!!逃げる時は…君と一緒だ!!僕は…そう、約束する!!」
「男は、死ね〜〜〜!!!」
山本は、日本刀を振り上げて、望、目がけて振り下ろそうとする。
「く…!!」
七世が、後ろから飛び掛ろうとした時だった。
「その『約束』…。しかと聞き届けましたよ…」
低く響く、聞きなれない声…?
山本、望、里穂、愛実、その他の少女、女性組員達…そして七世…。
皆、声の主を探す。
「こっちです」
後ろを振り返ると…高級スーツに身を包んだ、金髪の男が…立っていた。
2065投稿者:リリー  投稿日:2008年05月31日(土)21時18分02秒
何だ…?この男は…?
いつからいた…?
何故、気がつかなかった?
望の方に気を取られたから?
いや、自分のすぐ後ろだ…。
そんな、やわな『訓練』は受けていない…!
そもそも、いつからこの部屋にいた…?
外は、土砂降りの雨だというのに…この男、服が全く濡れていない。
山本は、しばらく呆然としていたが、すぐに顔を険しくさせる。
「あん…?誰だ…!?てめぇは!!俺以外の男が、この屋敷に入ったら…」
「殺されるんでしょ?さっき、そうおっしゃいました」
その男は、畳に落ちている、七世が脱ぎ捨てた白い着物を手に取った。
「しかし…問題は…はたして、この私を殺すことができるのか…どうか…です…」
そう言いながら、男はその着物を、ベッドの上で固まっている、裸の七世に掛けた。
そして、耳元でこう囁いた。
「さ…。逃がす準備をしておきなさい…」
「…え…?」
今、この男は何と言った?
『逃げる準備』…ではなく…『逃がす準備』…?
2066投稿者:リリー  投稿日:2008年05月31日(土)21時18分31秒
「殺すことができるか?だとぉ!?当たり前だろうが!!てめぇ一人、殺すぐれぇ…」
「『約束』しますか?」
「あん?」
「『この私を殺す』と…『約束』できますか…?」
「何、言ってんだ?てめぇ…。約束も何も…」
その瞬間、銃声が轟いた。
そして、ポケットに手を突っ込んでいる男の側で、火花が…。
そして…ポトリ…という音…。
「…!?」
この場の者は、皆、何が起きたのかわからなかった。
いや…この中で…七世だけが、辛うじて理解できた…。
銃を撃ったのは、男の後方にいた女性組員。
火花の正体は…この男が、ナイフで銃弾を叩き落したもの。
ズボンのポケットから右手を出し、懐に入れると、ナイフを取り出し…そして、銃弾を払い、再び懐にナイフを納め、右手はズボンのポケットに…。
一瞬で、先の動作を行った。
ナイフの形状まで、七世にははっきりと見えた。
鉤状に曲がった刃先…間違いない…中村有沙、七海、梨生奈、羅夢、エマ、エリー…そして、ダーブロウ有紗から聞いた男…『元帥』…楠本柊生…!!
2067投稿者:リリー  投稿日:2008年05月31日(土)21時19分05秒
今日は、これでおちます
2068投稿者:117  投稿日:2008年05月31日(土)21時38分39秒
冒頭、望の本人談に爆笑(笑)。望と愛実の関係は、まさに2005年度の夏イベですね。
ちょっと久々登場、アーク様来た〜!謎のベールに包まれ、クールな元帥。カッコイイですね。続きも楽しみです!
2069投稿者:1600  投稿日:2008年05月31日(土)23時08分35秒
意外(?)なところで元帥登場となりましたね〜。
しかも助けに着たのに結局捕まっている所が望君らしいと言えば望君らしい;
この後山本さんがどうなるのか続きが楽しみです!

そういえば、デジ様のコメントを見て思い出したのですが、小説の構想が大分出来上がってきたのでもうそろそろ小説を書き始めようと思います。
リリー様ほど上手くはないし、ストーリーもくだらないとは存じ上げますが;
2070投稿者:元帥  投稿日:2008年05月31日(土)23時20分06秒
山本をボコボコにしてくれないかな
2071投稿者:何で  投稿日:2008年06月01日(日)03時35分14秒
元帥が助けに来たんだろ?
2072投稿者:デジ  投稿日:2008年06月01日(日)03時56分24秒
望はやっぱりキザですねまあ、それがお似合いですが(笑)
そして楠本さん、再登場ですか!しかもアークとして。クールでカッコよすぎです。しかし元帥もみのぽーと似たような力を持っているとは。ある意味凄いです。では、続きも楽しみです!(今日の文章読みにくくてすみません。小説核時もこうならないといいのですが…)
(今日の小言)
貴族といえば、やっぱり髭男爵でしょうか?(僕的にかなりネタが面白いです。(お笑いに精通しているわけでもないのに、何でもお笑いに例えてしまう僕って一体(苦笑))そういえば、去年の奈津イベ(アークの名が出たときにふと思った。)の脚本作ったのも楠本さんでしたっけ。
補足で今年の物語(日付変更線ぷっカリーノ)も楠本さんの脚本らしいです。            〜以上〜
期待してくださってありがとうございます。文章については一日一日ずつ頭の中で考えることにしました。(普段あんまり構成に費やせる時間が少ないので。これだとすぐにネタ切れになりそうなこと受けあいですが。)
あと、来襲火水曜にテストがあるので、感想は少しの間お休みします。次書くときに、まとめてコメントします。
2073投稿者:望の高校  投稿日:2008年06月01日(日)10時52分15秒
本巻城→ホンマキジョー→ジョーキ・マホーンズ・・・?
2074投稿者:なるほど  投稿日:2008年06月01日(日)10時55分13秒

2075投稿者:あげ  投稿日:2008年06月01日(日)11時01分27秒

2076投稿者:あげ  投稿日:2008年06月01日(日)20時11分39秒
 
2077投稿者:がんばってください  投稿日:2008年06月01日(日)20時13分53秒

2078投稿者:リリー  投稿日:2008年06月01日(日)20時59分28秒
あげと、激励のコメント、ありがとうございます
元帥が助けに来た理由は、この三回裏の中で語られます
117さんやデジさんの仰る通り、去年の夏イベを意識してます
去年の夏イベは、本当に面白かったと思います

2073さんのご指摘通り、本巻城はジョーキ・マホーンズです
少し、わかりにくいかな、と思いましたが…

では、更新します
2079投稿者:あげ  投稿日:2008年06月01日(日)20時59分43秒

2080投稿者:リリー  投稿日:2008年06月01日(日)21時03分06秒
畳の上から、煙が立ち昇る…。
ひしゃげた形で落ちている銃弾から、立ち昇っているのだ。
「お…おまえ…今…?」
山本は、その銃弾を見下ろしながら、力なく訊ねる。
「『約束』するんですか?」
「な…何…?」
また銃声…そして…火花…また同じ結果に…。
「や…約束…?」
山本の顔は…もう既に、ヤクザの組長という威厳はなかった。
顔面蒼白で…目は真っ赤に充血している。
「言っておきますが…私…『約束』を破る者は…許しません…。断じて…許しません…」
今までのにやけた顔を、無表情に変える、楠本。
凄んだ表情で睨みつけるよりも…恐怖を与える…。
2081投稿者:リリー  投稿日:2008年06月01日(日)21時03分29秒
「う…。う…。う…。」
山本は、後退りした。
女性組員も、望から離れる。
「そこのナイスガイなイケメン君…。立てますか?」
「イ、イケメン…?僕のこと?」
ボクシンググローブで自分を指差す、望。
「この屋敷の中で、私以外のイケメンと言ったら…君しかいません…」
そう言って、楠本は、涙目でたたずむ山本を意地悪そうに眺めた。
「は、はい…。た、立てます…」
もう、身体を押さえつけている女性組員はいない。
望は、剣道の防具の所為で手間取ったが、何とか立ち上がった。
「君は、『約束』したね…?この可憐な美少女と一緒に逃げると…」
「は、はい…」
「男に二言はないね?」
「はい…!」
「じゃあ、逃げなさい…」
2082投稿者:リリー  投稿日:2008年06月01日(日)21時04分51秒
楠本の言葉に、望は反応が遅れた。
「はい…?」
楠本は、今度は望の目を見て同じ事を言った。
「逃げなさい…」
「………はい!!」
望は、愛実を抱え上げ、駆け出した。
「ま、待て!!待て!!待てぇ〜〜〜!!」
我に帰った山本は、ベッドに飛び乗ると、七世を抱き寄せ、日本刀の切っ先を突きつけた。
「に、逃げやがったら…この女を…」
「やあああ〜〜〜!!!」
その瞬間、七世の掌底が、山本の横面に炸裂した。
「ぶええええ!!!」
山本は、顔をひしゃげさせながら、ベッドから転げ落ちた。
そして、七世はベッドから飛び降りて、女性組員を蹴散らして、押さえつけられている里穂を抱える。
「GO!!」
楠本の声と共に、七世、里穂、愛実、望の4人は、寝室から逃げ出した。
2083投稿者:リリー  投稿日:2008年06月01日(日)21時05分17秒
「く…!!」
女性組員は、4人に向かって拳銃を構える。
「はい、やめ」
冷たい刃先が、首にあてがわれる。
「さあ、拳銃を降ろして…。『約束』できます?」
「くぅ…」
楠本の言う通りにするしかない…。
「て、てめぇ…!な、何者だ…!か、加藤組の…回し者かぁ〜!?」
ベッドの上に、顔を腫らした山本は這い上がって訊いた。
「加藤組?いいえ…違います…。今日の所は…」
「きょ、今日…だと…?」
「ふふふ…。いや〜、良かった、良かった…。今日は一人も人を殺すことがなくて…」
楠本は、またもや無表情の顔を、山本に向ける。
「本当に…良かった…」
「ひ…ひぃぃ…!!」
山本は、再びベッドから転げ落ちた。
「では…これにて失礼…」
悠々と、寝室を…いや、この屋敷を出て行く、楠本柊生…。
2084投稿者:リリー  投稿日:2008年06月01日(日)21時06分16秒
「ち…畜生…!!歯が…歯が折れちまった…!!」
山本は、畳の上に、血と一緒に奥歯の欠片を吐き出した。
「こ、こら〜!!後藤〜〜〜!!!どこだ〜〜〜!!!出て来い〜〜〜!!!」
有りっ丈の声で叫ぶ、山本。
「はい…。何でございましょう?」
しばらく遅れて、理沙が到着する。
「て、て、てめぇ…!!何で、来なかった!!銃声、聞こえただろ!!」
「組長に…今日は顔を出すな…と、命じられましたので…」
理沙は、何の悪気もない、という風に答えた。
「てめぇ…ワザと来なかっただろ…?あの…男に…敵わねぇからって…」
「彼が『エンペラー(皇帝)』です」
「な…何…?だ、だったら…やっぱり…加藤組が…」
「いえ…。今日は、加藤組の仕事で来たわけではないでしょう…。彼も、複数契約していますから…」
「ふ、複数…契約…?」
「私達もそうでしょう?山本組長…。そして、難田門司様…」
「くぅ…!」
「その、難田門司様から私達に渡る報酬は、原村にある隠し財産から支払われます。ですから…『原村の隠し財産』を奪おうなどと…ゆめゆめ、お考えになられぬよう…」
理沙も、無表情で山本を睨む…まるで、楠本の様に…。
2085投稿者:リリー  投稿日:2008年06月01日(日)21時06分39秒
「く…!わ、わかったよ!!」
山本は、もう一度、血を畳の上に吐き出した。
そして、途端に青い顔になる。
「お、おい…。きょ、今日は、加藤組の依頼じゃないって…あいつ、言ってたな…?も、もし…これから…加藤組の依頼でやって来たら…」
「おそらく…組長の命を狙うかも…」
「お、おい…。な、何て言ったっけ…?空手を使う…筋肉マッチョ…」
「『チャリオッツ(戦車)』…ですか?」
「そ、そう!!そいつ!!そいつなら、あの男に勝てるんだろ!?」
「はい…。今日のような、密室での接近戦なら…十中八九、『チャリオッツ』が勝つでしょう…」
「そいつを雇うぞ!!早く、こっちへ寄越せ!!」
「残念ですが…『チャリオッツ』は、宝石密輸組織壊滅の依頼を受け、今日、南米に旅立ちました」
「な、南米…?」
「勿論、複数契約はできますが…日本に戻ってくるのは…来年の春先です…。あの時…契約をしておくべきでしたね…」
「そ、それじゃ、意味がねぇだろ!!待ってくれるわけ、ねぇだろ!!加藤が…来年までよぉ…!!」
山本は、半狂乱で喚き散らした。
2086投稿者:リリー  投稿日:2008年06月01日(日)21時07分56秒
狼狽する山本を、しばらく眺めて楽しんだ後、理沙は進言する。
「難田門司様との契約は…8月15日をもって、終了します」
「…何?」
「今回のビジネスで、ある程度財を稼いだ後、難田門司様は外国へ逃亡します。それまで私達が身の安全を保証する、それが、私達への依頼内容です」
「で…どうするんだ…?」
「その後…私『エンプレス(女帝)』、『デス(死神)』、『ストレングス(力)』の3名は、山本組長との契約一本に集中します」
「で、でも…!おまえ等3人でも、あの男には…」
「あと、2人いるんです…。難田門司様と契約している者が…」
「何…?」
「『タワー(塔)』と、『ラバーズ(恋人)』…この2人と、契約するといいでしょう…」
「そ、その2人…。前にも、言ってたな…」
「はい。ただ、彼女達は、午前8時から午後6時までは、別件の依頼を抱えています。ですから、夜間からでしか、こちらの方には来られませんが…」
「いい…!それでもいい!!そ、その2人と…契約する!!」
「わかりました…。では、2人には、私から連絡しておきましょう…」
理沙は、そう言い残し山本の寝室を出て行く。
2087投稿者:リリー  投稿日:2008年06月01日(日)21時16分18秒
今日はこれでおちます
2088投稿者:117  投稿日:2008年06月01日(日)21時18分58秒
それにしても、元帥カッコイイ!元帥と望たち、七世のコラボが見事に決まりましたね。
タワーとラバースって、誰でしょうか(誰でしたっけ)?続きも楽しみです!
2089投稿者:あげ  投稿日:2008年06月01日(日)21時25分30秒
2090投稿者:あげ  投稿日:2008年06月01日(日)22時24分22秒

2091投稿者:う〜ん  投稿日:2008年06月02日(月)00時22分03秒
歯が折れただけか…
もうちょっと、ボコってほしかったな
2092投稿者: 投稿日:2008年06月02日(月)00時38分59秒

2093投稿者:デジ  投稿日:2008年06月02日(月)01時21分00秒
昨日は、ああ言いましたが、今日は書くことにします。水曜から再開です。
それにしても、元帥凄いです。暴力団相手に、ここまで拮抗するとは。
そして稀にみないスーパーコラボ炸裂しましたね。
タワーというと2004年の物語の灯台守で、ラバーズは、その灯台の子(確かそのコに卓也が彫れてたような記憶が)から)ただ、誰が演じてたかまでは、覚えてません)でしょうか?
…続きも楽しみです。
(今日の小言)
2994年度の点てれは、ヒマで学校から帰ったらよくみていたものです。(その由縁なのか結構覚えてます)僕は、結構好きですよ2004年度特にそれの物語が面白くて、今でもyou tubeなんかで見て笑ってます。(笑)
ただ、その次の年度は塾が入ってたり、部活(剣道)の時間が長引いたりで、ほとんど見てません。      〜以上〜
2094投稿者:デジ  投稿日:2008年06月02日(月)02時20分16秒
小説作ってみました。
その名も「探偵たちのイベントフル」
水曜日まで更新はないですが、がんばってみます。
2095投稿者:あげ  投稿日:2008年06月02日(月)21時10分58秒
2096投稿者:あげ  投稿日:2008年06月02日(月)22時41分15秒
2097投稿者:リリー  投稿日:2008年06月02日(月)23時13分49秒
とても、遅くなりました
今、更新したいと思います

デジさん、小説書き始めたんですね
タイトル、覚えました
よろしければ、キャストを教えて下さい
楽しみにしてます

灯台守のお爺さんは、名脇役、梅津栄さんです
必殺仕事人(再放送で見ましたが)で、毎回出てくる変なオカマのおじさんの役が印象的でした
その頃は、とても若かったので、天てれい出てた頃は凄くお爺さんになったなぁ、という印象です
『タワー』と『ラバーズ』は、この三回裏のうちに、出てきます

では、更新します

2098投稿者:リリー  投稿日:2008年06月02日(月)23時16分00秒
降りしきる雨の中、七世、里穂、愛実、そして望の4人は、懸命に走る。
そして、近くの公園の、土管が埋め込まれているコンクリートの遊具の中に隠れた。
「た、た、助かった…」
里穂は、やっと息をついた。
「あ、ありがとう…東奈…。助けてくれて…」
「七世…」
「え?」
「岩井七世…。私の本当の名前よ…」
「七世…?」
自分の知り合いに、そんな名はいない。
里穂は首を傾げた。
「『R&G』探偵社の者です…。私…」
「あ、ああ…。ちひろの…」
ようやく、里穂は納得がいった。
2099投稿者:リリー  投稿日:2008年06月02日(月)23時16分22秒
「でも…何で、こんな無茶をしたんですか?ダーさんの友達だったんでしょ?どうして私達、『R&G』に助けを求めなかったんですか?」
「だって…」
七世に問い詰められ、里穂は悔しそうに唇を噛み締める。
「癪じゃないか…。あのダーブロウに…また、助けを求めるなんて…」
「そ、そんな意地で…?」
「だって…!愛実は、私と一緒の高校に行きたいって、親に反抗して、家を出たんだ!!私には…責任があるんだ…」
「ううん…。姉御…。私が悪いの…。本当に…ごめんね…」
愛実は、里穂にしがみ付いて、震えながら泣いた。
「大丈夫?ハニー…。寒くない?」
そう言いながら、望は愛実の顔を覗き込む。
「ちょっと!!見ないでよ!!」
愛実は自分の拳を、望の顔面に炸裂させた。
薄手の白い着物が、雨に濡れて透けてしまっているからだ。
「ぎゃ…!」
望は、土管の外に転げ出た。
2100投稿者:リリー  投稿日:2008年06月02日(月)23時16分45秒
「哀れな…。決死の思いで救出に来た、勇気溢れる騎士なのに…」
高級革靴が、望の頭の側に…。
そこには、傘を差した楠本が…。
「あ…!わ、わぁ…!!」
望は、急いで立ち上がった。
「あ、あんた…!一体…」
里穂も、土管を出ようとするが、楠本はそれを制した。
「濡れますよ。もう少し雨宿りをしておきなさい」
しかし七世はその言葉を無視し、土管から這い出ると、楠本の前に歩み寄った。
「あなた…楠本さんですね…?」
「はい。お仲間から聞きました?私のこと…」
「何で…助けたんですか…?」
「何で…?それは、依頼だからです」
「誰から…?」
「言えるわけないでしょ?守秘義務ですよ…」
七世は、愚問を言ったと額に手を当てた。
2101投稿者:リリー  投稿日:2008年06月02日(月)23時17分11秒
「だったら…!まだ、あの屋敷には女の子達が囚われています!!あの子達は…助けないんですか?」
「え…?助けませんよ…」
「な、何故…?」
「だって、依頼を受けていない…」
「え…?ええ…?じゃ、じゃあ、里穂さんと愛実さんだけを…助けに来たの…?」
「はい。こちらのナイスガイは助ける義務はなかったのですが…愛実さんと一緒に逃げると『約束』したから、仕方がないですね…」
「え…?お、俺…見捨てられるところだったの…?」
望は、今更ながらに、身震いした。
「ま、待って…!もしかして…この2人を助ける依頼をしたのって…ダーさん…?」
「え…?ダ、ダーさんが…?」
里穂も、愛実も、望も、一斉に楠本の顔を見た。
「何度も申しました通り、守秘義務がございますので…。何とも言えません…」
あくまでも楠本は、しらを切る。
2102投稿者:リリー  投稿日:2008年06月02日(月)23時17分34秒
「い、一体…依頼料は…いくら?」
「守秘義務です」
「いつ、あなたに依頼を?」
「守秘義務です」
「答えて下さい!!」
「『拷問』でもしますか?それとも『誘惑』?この私を相手に…?」
楠本は、懐に手を入れる…。
あの、鉤型に曲がった、ナイフを取り出すのか…。
「は…う…」
七世は、恐怖で立ちすくんだ。
しかし、楠本が取り出したのは、携帯電話だった。
「これ…お使い下さい。これでお仲間に連絡して、迎えに来てもらうように…」
そう言って、携帯電話を七世に渡す。
「あ、これ、プリペイド式の携帯なんで、使った後は、ポイして下さって構いません…」
七世は振り返ったが…もう既に、楠本の姿は、そこにはなかった。
2103投稿者:リリー  投稿日:2008年06月02日(月)23時18分50秒
次回で、長かった三回裏は終わります

では、これでおちます
2104投稿者:『タワー』と『ラバーズ』は  投稿日:2008年06月03日(火)09時53分53秒
流れ的にはあすみとしょこたんっぽい気がする
2105投稿者:そうっぽいよね  投稿日:2008年06月03日(火)15時50分09秒
午前8時から午後6時までの別件って聖テレでの仕事かな?
「タワー」は塔のように背が高いあすみで、
「ラバーズ」はしょこたんかな?
2106投稿者:あげ  投稿日:2008年06月03日(火)16時24分46秒

2107投稿者:あげ  投稿日:2008年06月03日(火)19時56分32秒
   
2108投稿者:リリー  投稿日:2008年06月03日(火)21時03分04秒
はい、『タワー』と『ラバーズ』の正体は、今回わかります
そして、長かった三回裏も終わりです

では、更新します
2109投稿者:リリー  投稿日:2008年06月03日(火)21時04分16秒
歌舞伎町『SM倶楽部エトワール』。
ダーブロウ有紗は、ノーマルコース60分のコースをたっぷりと『堪能』し、ようやくX字型の磔台から解放された。
「いってぇ〜…。コンチクショウ…!誰が乳首に穴開けろって言ったよ…」
ダーブロウ有紗は、穴の開いた自分の乳首を、苦々しい思いで眺めた。
アスミ女王様は、両手を合わせて謝った。
「ごめんなさいね。だって、穴の跡があったんですもの…。経験者なら、いいかなって…」
「ま、確かに、『一回目』よりかは、痛くはなかったけどよ…。血も出てねぇし…」
「ね?凄いでしょ?血管とか神経とか避けて針を通すの…。一種の職人技よ?」
そう言って、アスミ女王様は得意気に笑う。
そもそも『一回目』は、ジャスミンに剣で突き刺された…プレイではなく、殺し合いだった…。
「それでも、一応、消毒しておくよ?感染症とか恐いから…」
アスミ女王様は、ガーゼに消毒液を染み込ませる。
「おい…。しみるんじゃねぇか?」
「少しね…」
「プレイは終わりだろ?」
「ふふふ…。さあ、白状しな…!!」
アスミ女王様はふざけながら、ダーブロウ有紗の乳首の穴を治療した。
2110投稿者:リリー  投稿日:2008年06月03日(火)21時05分04秒

「じゃあな。ま、なかなか楽しかったぜ」
服を着たダーブロウ有紗は、帰り仕度をする。
「また、ご来店下さい」
アスミ女王様は、ソファーに座ったまま見送る。
「やなこった!!」
「あ、そうだ…。ねぇ…。教えてくれる?」
「あん?」
ドアを開けかけたダーブロウ有紗は、振り返る。
「何で、従業員用のドアを開けようとしてたの?フランス人っていうの…ウソでしょ?」
「何だよ?延長はしねぇぞ?」
「そんなんじゃないわよ…。答えたくなかったら、答えなくていいから…」
ダーブロウ有紗は、しばらく黙り、じっとアスミ女王様を見詰め、ようやく口を開いた。
「ライターなんだ。私。フリーのね」
「ライター?記者さん?」
「私みたいな、セクシーな外国人女性が、体当たりで風俗に挑戦する企画ってのがあって…それで、舞台裏も覗いておこうかなって…」
「…なるほどね…」
「信じてねぇな?」
「うん。拷問はしないけど…」
2111投稿者:リリー  投稿日:2008年06月03日(火)21時05分28秒
ダーブロウ有紗は、へへへ、と笑うと、手を振ってドアを開け、そのまま退室した。
「いやん!!いやん!!あん!!あん!!」
まだ、きんどーさんの声が聞こえる…。
「きんどーさん…120分コースで遊んでんのか?」
ダーブロウ有紗は、思わず笑ってしまった。
帰りがけに、待合室を覗いてみる。
すると、まだハート様は、菓子を貪り食っていた。
「まだ、食ってやがんのか…」
どうやら菓子の籠を、おかわりしたらしい。
ハート様には、あきれ返る。
「ありがとうございます…。またのお越しをお待ち申し上げます」
蝶の仮面の女性店員は、そう言ってダーブロウ有紗に頭を下げた。
2112投稿者:リリー  投稿日:2008年06月03日(火)21時06分06秒
今までダーブロウ有紗が遊んでいた部屋に、ショーコ女王様が入って来た。
そして、アスミ女王様に話しかける。
「凄いね…アイツ…。あすみの拷問に耐え切ったよ…」
「うん?耐え切ったって言うなら…そうだろうねぇ…」
アスミ女王様は、ソファーから立ち上がる。
「よく、キレずに耐えたよ…。私、ヒヤヒヤもんだったからさ…」
X字型の磔台にぶら下がる、鎖の拘束ベルトを手にとって見る。
鎖の一部が伸びきっている…。
もう少しで引き千切られていただろう…。
「まったく…甘いんだよ…。『タワー(塔)』も、『ラバーズ(恋人)』も…。私だったら、あのまま帰さねぇぜ!?」
また、ドアが開き、女が入って来た。
その女は…黒のタンクトップにアーミーパンツ、アーミーブーツ姿で、筋肉の張った肉体の…秋山恵だった。
2113投稿者:リリー  投稿日:2008年06月03日(火)21時06分27秒
「『ストレングス(力)』…。難田門司様の警護はどうしたの?」
アスミ女王様は、ドアの外を指差した。
戻れ、と言っているのだ。
「あん?ゴルゴちゃんに任せたよ。安田もいるしな」
「ダメじゃない!!弥勒姉さんに怒られるよ!!」
「おまえ等が黙ってりゃ、問題ないよ!それに…コッチの方が面白そうだったし…」
恵は、楽しそう鞭を手に取り、振って遊んだ。
「ダメ、ダメ!!恵ちゃんは、すぐ殺しちゃうじゃん!!」
ショーコ女王様は、慌てて恵から鞭を取り上げた。
「そうだよ。あんた程、拷問のヘタクソなヤツ、他にいないよ…。でも…」
アスミは、一瞬、考えをめぐらす。
「でも?」
「ダーブロウ有紗…アイツなら、死なないかもね…」
「ははは!!もし、アイツがまた来やがったら、私が拷問してやる!!そして、口を割らしてやるさ!!」
そう言うと、恵はX字型の磔台に付いている鎖の拘束を、まるで糸を切るように引き千切った。
2114投稿者:リリー  投稿日:2008年06月03日(火)21時06分46秒
すると、恵のアーミーパンツのポケットに入っている携帯が鳴り出した。
「あん?何だ?弥勒姉さんからだ…」
携帯に出る、恵。
「おう!弥勒姉さん…。ん?ちゃんとやってるよ!安田達も来たぜ。あ、そうそう…さっき、『R&G』の…あん?」
恵は、アスミ女王様と、ショーコ女王様の方を見る。
「何?」
「弥勒姉さん、おまえ達に話しがあるって…」
恵は、アスミ女王様に携帯を投げる。
「弥勒姉さんが?私達に?」
アスミ女王様は、とりあえず電話に出る。
「はい?『タワー』よ。うん。『ラバーズ』もいる。…え?………うん。………うん………へぇ………わかった…。じゃあ…」
長い会話の後、アスミ女王様は、ショーコ女王様に、手短に報告する。
「翔子…。私達も、山本組の依頼を受けるよ」
「え…?私達も?何で?」
「加藤組についた『エンペラー(皇帝)』が…いよいよ、乗り込んできたんだって…」
「へ!?『エンペラー』!?楠本さんが!?」
2115投稿者:リリー  投稿日:2008年06月03日(火)21時07分04秒
その時、凄まじい破壊音が部屋に響き渡る。
「!?」
見ると、恵が、X字型の磔台を粉々に壊していた。
「恵…!!」
「あ〜あ…。壊しちゃった…。維里香さんに、怒られる〜」
2人の声は、恵には届いていない。
「楠本の野郎〜〜〜…!!上等じゃねぇか…!!やってやるぜ!!」
その目は、野獣の様に獰猛に輝く。
「楠本にダーブロウ…2人まとめて、あの世に送ってやるよ…!!」
その時…ダーブロウ有紗は…。
「ふぇ…!雨、強くなってやがる…」
ダーブロウ有紗は、軍用レインコートのフードを被り、足早に歌舞伎町の雑踏を駆け抜けていく。
「さてと…ジャスミンや出っ歯ちゃんは、どうなったかな…?それから…」
そして…少し苛立たしげに呟く。
「楠本の野郎…。ちゃんと依頼通り、リッピーとツンツンを助けたんだろうな…」

(『三回・裏』・・・終了)
2116投稿者:リリー  投稿日:2008年06月03日(火)21時10分29秒
はい、2104、2105さんの予想通り、『タワー』はあすみ、『ラバーズ』はしょこたんでした

次回から、久しぶりに七海、藍達、野球部のメンバーが出てきます
第二試合の七海達の出番は、『表』に限られます
『裏』は、ダーさんや七世といった、『お姉さん組』のみの活躍となります

では、今日はこれでおちます

2117投稿者:117  投稿日:2008年06月03日(火)21時16分41秒
ダーさん、拷問に耐えましたね。さすが!それにしても、元帥はナゾなキャラ・・・。
そういえば次回は、なんか久々の「表」ですね。前回、どんな展開でしたっけ?続きも楽しみです!
2118投稿者:楠本とダーさん  投稿日:2008年06月04日(水)19時43分28秒
同盟結んだのか
2119投稿者:あげ  投稿日:2008年06月04日(水)19時47分36秒
  
2120投稿者:リリー  投稿日:2008年06月04日(水)21時13分11秒
今日から、四回表です
日付けは8月1日、つまり、『らりるれろ探偵団』とここで重なります
まだ、未読な方は、よろしかったらどうぞ
http://ame.x0.com/tentele/080504010637.html

聖テレは、夏休みに入りました

それでは、更新します
2121投稿者:リリー  投稿日:2008年06月04日(水)21時13分56秒
『四回・表』

≪2007年8/1(水)≫
出校日…と言っても、七海達、野球部のメンバーは、夏休みに入ってから毎日学校に足を運んでいる。
野球部の練習の為だ。
ただ、クラスメイトと教室で過ごすのは、10日ぶりとなる。
相変わらず、底意地の悪いいじめグループは、有海をあからさまにからかうし、七海のことも陰口を叩く。
しかし、有海はもう、少しのことぐらいでは気にしなくなったようだ。
もっと、気にしなければならないことができたから…。
どうすれば、チームが勝てるのか…藍にどんな投球をさせたらいいのか…。
キャッチャーの中村有沙が、リードを習得してしまえば、その役目は有海の手元から離れてしまうのだが、スコアラーとしての仕事もある。
有海は、皆のプレイの長所と短所、特徴を把握し、どう試合に活かすか…それを考えるのが、楽しくて仕方がない。
それに、監督のあすみと一番近い距離にいる様な気がする。
みんなも、自分にアドバイスを求めてくるようになった。
有海は、野球部に入って、本当に良かった…と、心からそう思う。
2122投稿者:リリー  投稿日:2008年06月04日(水)21時14分14秒
出校日は、特別な授業があるわけではなく、日程は、宿題の提出と、夏休みの過ごし方に対する注意、ミニテスト…そして、礼拝堂でのお祈り(キリスト教の学校なので)ぐらいだ。
当然の如く、全日程は午前中で終わる。
あとは、野球部の練習…七海にとっては、これがメインだ。
今日は、3時から職員会議があるらしく、練習時間が二時間程度しかないらしいが…。
だが、七海は帰りがけに、担任の佐藤珠緒から声をかけられる。
「藤本さん、今からA組に行ってくれるかな?」
「A組?何で?」
「え〜とね、今から補習授業があるの」
「補習!?」
「藤本さん…成績、悪かったでしょ?前期が終わる前に、勉強の遅れを取り戻さないと…」
「今から、部活なんやけど…」
「藤本さん…!勉強の方が大事!」
「部活の方が大事やろ〜…」
「学生は、勉強が仕事でしょ?」
「勉強が仕事やったら、給料ちょうだい!!」
「勉強が仕事だったら、藤本さん、とっくにクビよ?」
「そりゃ、そうやわ…」
労働経験のある七海は、観念してA組に向かうことになった。
2123投稿者:リリー  投稿日:2008年06月04日(水)21時14分32秒
今から、特に成績の悪い者が、A組に集まって補習を受けさせられるらしい。
教科は、国語、数学、英語の三教科…。
今日は、国語のみで、明日が数学、明後日が英語。
どれも、七海の苦手な教科で、教科担任も七海の苦手な者ばかりだ。
国語の教科担任は『こんどん』こと、近藤春奈…。
七海は『角野先生』と呼ぶ。
最近は、この呼び名の方が生徒達に浸透してしまっていて、近藤はいたる時、いたる場所で「卓造じゃねぇよ!!」と、叫ぶはめになっている。
七海は、A組の教室の扉を開ける。
「遅くなりました…。角…」
「卓造じゃ、ねぇから!!」
先手を打たれた…。
七海は教室を見渡した。
広い教室に…たった2人…。
近藤エマと…細川藍…。
「よ!ななみん!」
照れ笑いをしながら、藍は七海に手を挙げた。
2124投稿者:リリー  投稿日:2008年06月04日(水)21時14分54秒
「え…?補習って…これだけ?」
「これだけだよ!!」
近藤春奈は、ぶっきら棒に答えた。
藍は、へへへ…と頭を掻く。
エマは、不機嫌そうに、頬杖をついて外のグラウンドを眺めている。
七海…藍…エマ…彼女らが、聖テレ中等部成績ボトム3のようだ…。
さすがは、お嬢様校…性格は悪くても、皆、勉強は良く出来る…。
しかも補習を受けるのが、全員野球部員…。
七海は悲しさのあまり、笑ってしまった。
近藤は、教室の窓側のカーテンを閉めた。
「あ!!何すんのよ!!」
エマは、立ち上がって抗議する。
「うるせぇ!!補習に集中させる為だよ!!」
『教師の方の近藤』のあまりの迫力に、『生徒の方の近藤』は、仕方なく椅子に座る。
2125投稿者:リリー  投稿日:2008年06月04日(水)21時15分16秒
「さあ、そんな後ろに座ってないで、前に座りな!前に!!」
近藤は、教卓の方に歩きながら言った。
「だって、私の席、ここだもん」
エマは、ふくれっ面で答える。
「関係ないよ!前に座りな!」
近藤は、教卓前の席の椅子を引く。
「座りたくない!そこの席のヤツ、エマ、嫌い!」
「言う事聞け!!エマ!!」
そこの席の机を、思い切り叩く近藤。
生徒を苗字で呼ぶ近藤は、苗字が同じエマだけ特別に名前で呼ぶ。
「もう…!何で、補習なんて受けなくちゃいけないの…?エマ、野球がしたいのに…」
エマは、涙目になりながら、席を移動する。
2126投稿者:リリー  投稿日:2008年06月04日(水)21時15分39秒
近藤は、そんなエマに、少し口調を優しくして言う。
「いいかい?エマ…。あんたはまだマシな方だよ?英語の成績だけは合格だったんだから…。今日と明日で終わりなんだからね」
そう…エマはオーストラリア人と日本人のハーフだ。
勿論、『R&G』の…いや、『TTK』の『戦士』であるエマや七海やその他の者達は、『両親』という者はいない。
ただ、ハーフという容貌を活かす意味で、『TTK』時代から英会話だけは完璧に教え込まれていた。
純日本人の七海は、その訓練を受けていない。
英会話は、元パートナーの七世に任せていたこともある。
今は、中村有沙に任せている。
七海は、ふと気がつく。
そう言えば…七世と七海、中村有沙とダーブロウ有紗、梨生奈と羅夢、エリーとエマ、ジャスミンとジョアン…頭の良い者と悪い者が、見事にチームを組んでいる…?
そして今は、中村有沙と七海、ちひろとジョアン…よく考えられている…。
七海と羅夢…等という組み合わせは、相性以前に有り得ない組み合わせだったのだ。
2127投稿者:リリー  投稿日:2008年06月04日(水)21時16分19秒
今日は、これでおちます
2128投稿者:デジ  投稿日:2008年06月04日(水)22時07分40秒
3回裏終わりましたか。
これは、新たな展開ですね。
4回...藍も頭悪かったんですか。
そしてかなり久しぶりに出ましたね、こんどん。
TTKのチームそれぞれに、頭の良し悪しでもパートナーを選んでいたとは...続きも楽しみです!
(今日の小言)
チームEって、両方の名前とそれぞれの出身も同じだったんですね。
             〜以上〜
小説の登場人物については...多すぎて書ききれません。
ただ、メインは、R&G、翔太探偵団、キューティー探偵団、...といった天てれの探偵ドラマの人です。(少し人物を変えたり、加えたりしています。)
小説のほうは、深夜に書きます。
2129投稿者:ひさしぶりだ  投稿日:2008年06月04日(水)23時14分50秒
聖テレ野球部メンバー
2130投稿者:あげ  投稿日:2008年06月05日(木)11時39分32秒
 
2131投稿者:あげ  投稿日:2008年06月05日(木)16時34分15秒



2132投稿者:リリー  投稿日:2008年06月05日(木)21時27分00秒
デジさん、小説書き始めましたね
とても登場人物が多く、どんな物語になるのかとても楽しみです
お互い、励ましあいながら面白くしていきましょう

チームの相性は、気がついたらこうなってました
やはり直情型二人が組んだら危なっかしい、というか、アクセルとブレーキの組み合わせを無意識のうちに考えたのだと思います
まだ、ボトム3&こんどんの補習風景が続きます

2129さん、私自身も聖テレ野球部員は久しぶりです

それでは、更新します
2133投稿者:リリー  投稿日:2008年06月05日(木)21時27分55秒
そして、三日連続で補習を受けなければならないのは、七海と藍だ。
2人とも、近藤に怒鳴られる前に、前の席に移動する。
「ねぇ、私とななみん、どっちが成績いいのかな?」
「は?どっちもどん底やん。比べても虚しいだけや」
「でもさぁ…。私達2人のうち、どちらかが最下位なんだよねぇ…。なんか…気になっちゃうよ…」
「気にせん方が、ええんとちゃう?」
「細川…。断トツであんたが最下位だよ」
近藤は、あっさりと答えた。
「え…?マジ…?」
藍の顔から、血の気が退いた。
「ウソやん…。絶対にウチや、思うた…」
七海も、この結果が意外だった。
2134投稿者:リリー  投稿日:2008年06月05日(木)21時28分17秒
「わ、私が…最下位かよ〜…」
藍は、机に頭をぶつけて突っ伏した。
「藤本は、数学が笑っちゃうくらいダメだけど、細川、あんたはどれも笑っちゃうくらいダメなんだよ…」
「は…ははは…」
藍は、机に突っ伏したまま笑っちゃっている。
聖テレジアは進学校で、ただでさえ、普通の学校よりも習っている内容は高度で難解だ。
「ほんと…あんた達、野球部はどうなってんだろうね…。トップ3も、ボトム3も、野球部なんだから…」
ちなみに、成績トップ3は、上から梨生奈、エリー、そして有海だ。
梨生奈は四月から全教科で100点をマーク、エリーも英語は全100点、有海は苦手な数学が足を引っ張って3位となった。
しかし有海は、野球部に入ってから数学の成績も上がり始めた。
野球は、数学的なスポーツとあすみは言ったが…それでは、数学が惨たんたる自分はどうなるんだ…と、七海は思った。
「だとしたら…ありりん、まにゃ先輩、り〜な…各学年の成績トップって、皆、野球部なんだ…!凄い!」
エマは、まるで我がことの様に喜んでいる。
「おい、おい!伊倉は、ソフトボール部でもあるんだよ?それから、細川!あんたもね…。さあ、シャキっとしな!!」
近藤は、国語の教科書の角で、机に突っ伏している藍の頭を殴った。
2135投稿者:リリー  投稿日:2008年06月05日(木)21時28分40秒
「痛い!先生、体罰です!」
藍は、かばっと上半身を起こして、近藤を睨む。
「ほぉ〜…。じゃあ、本物の体罰ってやつを…おまえに教えてやろうか?」
「…いえ…。すみません…」
藍は、ノロノロと筆箱からシャープペンシルと消しゴム、各種蛍光ペン等を出す。
「細川!その蛍光ペン、必要ないから仕舞いな」
「え?何でですか?」
「おまえがせっせと蛍光ペンでノートや教科書をキレイに飾ってる間に、授業はどんどん先に進んで、おまえは置いていかれるんだよ!」
「あ…そうか…」
「シャーペンと赤ペンと消しゴム!それだけでいい!!それから、その消しゴムも明日から持ってきちゃダメ!!」
「何で?これ、ハーブの香りで集中力がアップする消しゴムですよ?」
「おまえがその消しゴムの匂いを嗅いでトロ〜ンとしている間に、授業はどんどん先に進んで…」
「わかりました…」
さすが、藍の担任…この言葉だけで、七海にも藍の授業の様子が手に取るようにわかる…。
2136投稿者:リリー  投稿日:2008年06月05日(木)21時29分00秒
藍は、口を尖らせて呟く。
「私…別に勉強なんかできなくたって…スポーツだけで大学に行くもん…」
「甘い!!もし、怪我をしてスポーツができなくなったら、どうするんだ?そうやって、ドロップアウトしてった人間、何人も見てきたよ、先生は!!」
「う…」
「もし、スポーツができなくなっても、ちゃんと勉強しとけば、大学や高校で指導者もできるし、スポーツ医学を学んでドクターもできる。国語をしっかり勉強していれば、スポーツライターにもなれる」
スポーツライター…たしか、この前試合をした『ピーナッツ』の内村も、スポーツライターだった。
その仕事に就く前は、塾の先生だったそうだ。
甲子園の夢が絶たれた後、内村は大学進学に集中したと言う…。
『R&G』社長の吉田も、甲子園敗退後、警察学校に入り、刑事になった。
勉強は、充分に保険になる…。
「『野球バカにはなりたくない』…これは、おまえの好きな、ハンカチ王子の言葉だよ」
「でも…。私…本当にバカだもん…。スポーツ以外…自慢できるものが…」
「細川…。おまえはやればできる子なんだよ?だって、おまえの伯母さんは…」
「あ〜!!言わないで!!私の伯母さんのことは、言わないで下さい!!」
藍は立ち上がって、近藤の言葉を制した。
「あん?何?細川さんの伯母さんって…誰なん?」
「ななみん、気にしなくていいから…!先生、早く授業を始めましょう!!」
急に、優等生の様な口を利く藍。
七海は首を傾げながら、教科書を開いた。
2137投稿者:リリー  投稿日:2008年06月05日(木)21時29分25秒
補習が終わり、七海も藍もエマも、初等部のグラウンドに向かって、ダッシュする。
「こら〜!!廊下を走るんじゃない!!」
近藤の怒鳴り声を背中で聞きながら、3人は昇降口を目指して階段を駆け降りる。
まずは、中等部のグラウンドの片隅にあるクラブハウスに入る。
そこには、ジョアンがいた。
「あ!じょわん先輩!忘れ物ですか?」
「え?あ、そう…!ちょっと忘れ物しちゃってさ…」
慌てふためいているジョアンの姿に、七海は思わず吹き出した。
「んなわけあるかい!ジョアンも補習やろ?」
「え…?そうなんですか?」
「うるさいよ!!おまえ等も補習なんだろ?」
ジョアンは、一足先に、クラブハウスを出て行った。
3人も大急ぎで練習用ユニフォームに着替え、スパイクを履き、グローブを抱えて初等部のグラウンドへ…。
2138投稿者:リリー  投稿日:2008年06月05日(木)21時30分11秒
あげの方も、ありがとうございます

今日は、これでおちます
2139投稿者: 投稿日:2008年06月05日(木)23時07分00秒

2140投稿者:伯母さん  投稿日:2008年06月05日(木)23時11分25秒
誰だろう
2141投稿者: 投稿日:2008年06月05日(木)23時21分44秒
おバカで可愛い
2142投稿者:117  投稿日:2008年06月06日(金)11時57分15秒
インターネットに接続できない状態が続いていたので、久々の閲覧です。
久々の「聖テレ野球部」登場ですね。野球部にはいろんな人がいるみたいで・・・
なるほど、「TTK」のコンビはバランス良く考えられていたんですね。
それにしても、藍の伯母さんとは・・・?続きも楽しみです。
2143投稿者:リリー  投稿日:2008年06月06日(金)22時16分06秒
更新、遅くなりました
今、古畑任三郎見てました。
やっぱり、おもしろいですね

藍のおばさんは、相当長い間放置される伏線となりますので…忘れないでいて下さい…

117さん、お久しぶりです
また、よろしくお願いします

では、更新します
2144投稿者:リリー  投稿日:2008年06月06日(金)22時17分36秒
初等部のグラウンドには、愛美、梨生奈、エリー、中村有沙、そして有海…優等生5人による、なんとも寂しい練習風景だ。
遅れてきたジョアンは、黙々とランニングをしている。
「あれ?あず〜先輩は?」
そう言えば、梓彩の姿がない。
「ん?梓彩先輩も補習なんか?」
「まさか!あず〜先輩は頭いいよ!」
そう話しあっている3人に、中村有沙が遠くから怒鳴る。
「おい!そこの三馬鹿!!さっさとランニングを済ませて来い!!」
「何や?コラ!!オノレ、キャプテンかい!?偉そうにぬかすな!!」
七海は怒鳴り返した。
「何?上級生の言うことが聞けないのか!?」
「はぁ?上級生?まさか、チビアリの口から、そない言葉を聞くとは思わへんかったなぁ〜!!」
「く…!生意気な…!!」
中村有沙は、足を踏み鳴らしながら歩み寄って来る。
「あ…!ありりん、怒った…!」
エマは、面白がって七海の顔を見る。
「上等や…!やったんぞ、コラ!!」
2145投稿者:リリー  投稿日:2008年06月06日(金)22時17分57秒
七海と中村有沙の接触寸前に、愛美が身体を投げ出して止めた。
「はい、ストップ!ななみんも、ありりん先輩も!!ななみん、あい〜んもえまちんも、早くランニングして来て!!」
「は〜い!キャプテン、わかりました。キャプテンの言うことやったら、聞かへんわけにはいかんなぁ〜」
「く!!貴様!!」
七海に掴みかかる中村有沙を、愛美と藍の2人掛りで止める。
「はい、落ち着いて!ありりん先輩!!ななみん!早く、ランニング!!」
七海は、舌を出しながらランニングに向かった。
「あのガキ…!いつかまた、しっかりと躾てやる!!」
中村有沙は、忌々しそうに七海を睨みつけている。
そんな彼女に、藍は言う。
「でも、ありりん先輩も変りましたね?」
「何?どういう意味だ?」
「上級生だなんて…。今までは『先輩とか後輩とか関係ない』みたいなこと、言ってたじゃないですか」
「そ、そうだったか?」
「何て言うか…ありりん先輩も、上級生としての責任感がついてきた…て、感じですかね?」
「…!!貴様まで、生意気なことぬかすな!!」
中村有沙は、不機嫌極まりない、という風に、元いた場所に戻って行く。
2146投稿者:リリー  投稿日:2008年06月06日(金)22時18分23秒
「もう…!あい〜んまで、ありりん先輩を怒らせないでよ!」
愛美は、藍の肩を突いた。
「ごめんね、まにゃ先輩…。あ、そうだ。あず〜先輩、いませんね?今日はどうしたんですか?」
「梓彩?ああ…。お父さんが迎えに来たのよ。今日は、練習を早めに切り上げてったわ」
「お父さん?」
「うん。何か離婚して、今は一緒に暮らしてないみたいなんだけど…。梓彩のお父さん、初めて見たけど…なんか、恐そうな人だった」
「恐そう?」
「うん。顔が全然、梓彩に似てないの。もの凄く、濃い顔してた」
「顔が似てないって言うなら、まにゃ先輩のお父さんも、そうでしたね」
「ああ…。人のこと、言えないか…。でね、奇妙なことに…」
「奇妙?何?」
「あすみん先生と、梓彩のお父さん…知り合いだったみたいで…」
「知り合い?」
「それが、梓彩のお父さん、あすみん先生が聖テレの先生だったって、知らなかったみたい。もの凄く驚いてた」
「あすみんは?」
「あすみんも…。驚いてた…」
あすみと、梓彩の父が、知り合い…?
どんな縁で知り合ったのだろうか…?
2147投稿者:リリー  投稿日:2008年06月06日(金)22時18分41秒
しばらくして、あすみがグラウンドに戻って来た。
今まで、梓彩の父と話し込んでいたらしい。
あすみは、皆を集めた。
「うん、これで、あず〜以外、皆揃ったね…。時間がきたから、今日の練習はこれで終わり」
七海、藍、エマ、ジョアンは不満顔だ。
ランニングしかしていないからだ。
「でね…7日から12日まで、予定のある者、いる?」
『R&G』の者達は、顔を見合わせる。
「あの…私達は…今の所ありません…」
梨生奈が代表して答えた。
「何か、あるんですか?」
愛美が聞いた。
「うん。この日に、合宿に行こうかと思ってね…」
「合宿!?」
皆の顔が、明るくなった。
「うん。静岡の方の私立中学校にね、私達みたいに女子の野球部があるそうなの。で、私達の方が出向いて行って、一緒に練習しようってことになって…」
皆は、わ〜っと、盛り上がる。
みんなで宿泊し、おまけに同じく女子で野球を頑張っている同士と会えるのだ。
今から、楽しみで仕方がない。
2148投稿者:リリー  投稿日:2008年06月06日(金)22時19分04秒
「日程はね…7日〜9日までの3日間、静岡の学校と合同練習、10日〜11日の2日間は静岡の市民球場を借りて我々だけで練習、で、12日最終日…」
あすみは、間を溜める。
また、愛美が聞く。
「最終日、何があるんですか?」
「名古屋に行くよ!」
「名古屋?」
「名古屋ドーム!!」
「ドーム!?」
「プロの試合、見に行くから!!」
うおおお〜〜〜と、皆は叫んだ。
「名古屋、言うたら、中日戦やない?」
七海は、藍の肩を叩いた。
「うん!!そうだよねぇ…!!」
中日ファンの藍は、目に涙を浮かべている。
「生で見れるんだ〜!!落合監督!!」
「落合、見たいの…?そんなに…?」
七海は、少し気分が醒める。
2149投稿者:リリー  投稿日:2008年06月06日(金)22時20分03秒
「そうや!!対戦相手はどこなん?」
七海にとっては、そっちの方が重要だ。
「どこだと思う?」
思わせぶりに、あすみは七海の顔を覗き込む。
「ま、まさか…!!阪神…?」
「巨人だよ〜ん!!」
「ああ!?ぬか喜びさせんな!!ゴルァ!!」
七海は、本気で怒って立ち上がった。
「いいじゃん、ななみん。プロの試合だよ?例え、中日戦じゃなくても私は見たいもん」
藍は、七海の袖を引っ張って座らせた。
「でも、入場料って、高いんじゃ?」
奨学金で聖テレに通っている愛美は、心配そうに、あすみに聞いた。
2150投稿者:リリー  投稿日:2008年06月06日(金)22時20分24秒
「大丈夫!!ある筋から、タダでチケットを貰えるから!!」
「タダ?」
「そう、しかも内野席!!」
皆は、また歓喜の声を上げる。
「とある筋…?まさか、ヤクザではあるまいな?」
あすみは、一瞬、ギクリとしたが、それは表情に出さない。
「失礼なこと言わないの!実は、あず〜のお父さんからご好意で譲ってもらったのよ」
「ええ!?あず〜先輩の?」
驚きの声を上げる一同。
「ふ〜ん…。ま、聖テレに通えるだけのことあるわ…。随分、金周りがええんやね」
「本当に、ヤクザだったりしてな…」
ジョアンの言葉に、あすみは、また内心ドキリとする。
「じょ、じょわんまで…!失礼なこと、言わないように!!」

(『四回・表』・・・終了)
2151投稿者:リリー  投稿日:2008年06月06日(金)22時21分32秒
今日は、これでおちます

四回裏は、『らりるれろ探偵団』の一部となります
2152投稿者:あげ  投稿日:2008年06月07日(土)00時39分21秒

2153投稿者:ほんとに  投稿日:2008年06月07日(土)00時53分12秒
中日、好きだな
リリーさん
2154投稿者:あげ  投稿日:2008年06月07日(土)09時10分49秒

2155投稿者:本当に、ヤクザ  投稿日:2008年06月07日(土)16時46分41秒
2156投稿者:あげ  投稿日:2008年06月07日(土)16時51分35秒

2157投稿者:おもしろい  投稿日:2008年06月07日(土)17時13分05秒

2158投稿者: 投稿日:2008年06月07日(土)17時27分25秒

2159投稿者: 投稿日:2008年06月07日(土)17時44分05秒

2160投稿者:リリー  投稿日:2008年06月07日(土)20時47分41秒
2153さん
実際に名古屋まで見に行った試合なんですよ、その日…
ちなみに試合は、中日が勝ちました

コメント、あげ、有り難うございます
今日から四回裏です
一部、『らりるれろ』と重なっています

では、更新します


2161投稿者:リリー  投稿日:2008年06月07日(土)20時48分48秒
『四回・裏』

≪2007年8/1(水)≫
『R&G探偵社』の社長室…そこに居るのは、社長の吉田、ダーブロウ有紗、そして梨生奈に羅夢。
「レッドさんと親子なんて…アタイはゴメンだ…」
「だから、設定だって言ってるだろ?設定って…。相変わらず人の話しを聞いてねぇんだもん…ダッチャ…」
「設定でも、アタイは嫌だ!!レッドさんに向かって『お父さん』って呼ぶなんて…!!」
羅夢が何やらごねている。
理由は、こうだ…。
七世が、山本組組長の屋敷で仕入れた…麻薬組織のボス『難田門司』の部下が、今、長野県の『原村』という所に潜伏している…という情報。
その部下達を捕まえ、難田門司の居場所を聞き出す…この任務に白羽の矢が立ったのが、梨生奈と羅夢の『チームR』だ。
そして、社長の吉田も同行することになった。
3人は、『親子』という設定で、原村を訪れることになる。
羅夢がごねているのが、この点だ。
例え芝居でも、吉田を父に持つのが不満らしい。
「ん?そう言えば、ダッチャとデコッパチ…随分、髪が伸びたんじゃないか?これから夏本番だし…。また、私が切ってやろうか?」
ダーブロウ有紗の『笑顔の脅迫』により、梨生奈と羅夢は、渋々承諾することとなった。
2162投稿者:リリー  投稿日:2008年06月07日(土)20時49分16秒
「わかりました…。行きます、行きますよ…。ね、羅夢、いいでしょ?」
「………梨生奈と一緒ってところがまだ救いだな…。あ〜あ…。何が悲しくて、レッドさんのおもりをしなきゃいけないんだよ…」
「羅夢!『おもり』なんて、失礼なこと言わないの!レッドさんは年上なんだから、ちゃんと『介護』って言いなさい!!」
「ホンマに…この、クソガキども…」
吉田も、先が思いやられる。
「でも、大人が一緒に行かなきゃいけないんなら、別にジャスミンでもいいんじゃねぇの…?」
「どういう設定でだよ?」
「だから…親子じゃ無理でも…歳の離れた姉妹とかさ…」
「ジャスミン、金髪、碧眼の外人さんだぞ?おまえ等、純日本人顔じゃん。姉妹なんて設定、無理があるだろ?」
「だからよ…ジャスミンは昔、アメリカ人夫婦の子として育ったが、小さい頃母親と死別して、しばらく父子家庭で育ったが、アタイ等を連れ子にしてる女とその父親が再婚して…」
「そんな、ややこしい設定いちいち説明するのか?いいから、レッドさんを『お父さん』って呼んでやれ!」
吉田は、思い切り顔をニヤケさせながら、羅夢に呼びかけた。
「なあ、羅夢…。『パパ』って呼んでくれてもええで…」
羅夢は吉田を睨み付けながら、梨生奈に言う。
「梨生奈…。アタイの部屋にあるヌンチャク…取ってきてくんない?」
2163投稿者:リリー  投稿日:2008年06月07日(土)20時49分34秒
「ん?たしか、机の引き出しにあったよね?」
「うん…。三番目…」
ソファーから腰を浮かせる梨生奈に、吉田は慌てた。
「ちょ、ちょっと、梨生奈!!ほんまに取りに行かんでも…」
「冗談です」
「なんや…。冗談かいな…。梨生奈も人が悪いなぁ…」
安堵の息をつく吉田に、羅夢は言う。
「アタイは、冗談じゃなかったんだけど…」
そんな3人に、ダーブロウ有紗は溜息をついた。
「まったく…おまえ等、仮にもこれから親子なんだからな?仲良くしろよ?特に、デコッパチ!ダッチャ!」
「はい」
梨生奈は、背筋を伸ばす。
「おまえ等…私の命令に背いて…加藤組にとっ捕まった大チョンボ…忘れてねぇよな…?」
「は、はい…」
「ち…!過ぎたことを、ネチネチと…」
その原因をつくった羅夢の方が、反省の色がない。
「これは、おまえ等『チームR』の汚名返上の機会でもあるんだからな?しっかりお勤めを果たせよ?」
2164投稿者:リリー  投稿日:2008年06月07日(土)20時49分57秒
そして、今度は吉田の方を向く。
「それから、レッドさんも…!ここ最近、野球で遊び呆けた分、キッチリと働いてもらうからな!!」
「はい!おかげ様で、我々『ピーナッツ』、リーグ優勝することができました!!」
吉田も、背筋を伸ばして答えた。
「そこで…その…お願いが…」
「あん?何だよ?」
「今月の20日から22日まで…チームの皆と優勝旅行に行きたいんやけど…」
「ふざけんな!!」
「はい!すみません!!」
吉田は、あっさりと諦めた。
「じゃ、じゃあ…その…今から、断りに行ってきます…」
そう言うと、吉田は社長室を退室した。
「そうだ…。なあ、デコッパチ、ダッチャ…加藤組に捕まった時、おまえ等を拷問したヤツ…覚えてるか?」
ダーブロウ有紗の質問に、梨生奈と羅夢の顔色が変った。
「ええ…。よく覚えてます…」
「あいつと、もし今度会ったら…おまえ等、どうする?」
その瞬間、大理石のテーブルが、激しく叩かれた。
2165投稿者:リリー  投稿日:2008年06月07日(土)20時50分31秒
「どうするだぁ…!?ぶっ殺してやるに決まってんだろ!!」
羅夢の顔が、逆上した血で真っ赤に染まっている。
「あの変態野郎、アタイを吊るして、解体しようとしやがった!!見ろよ!!あの時の傷が残ってるんだ!!」
羅夢はセーラー服を捲り上げて、腹を見せる。
僅かな傷跡が見える。
「ふふん…!その程度で済んで良かったじゃん…!」
ダーブロウ有紗は、ふんぞり返って羅夢を見上げる。
そして、梨生奈に顔を向ける。
「で、デコッパチは、どうすんだよ?」
羅夢も、梨生奈の方を向く。
梨生奈は、顔を青褪め、小刻みに震えている。
「お、おい…梨生奈…」
羅夢の声を遮るように、梨生奈は言う。
「私は…もう…あの男に会いたくない…」
「な、何、言ってんだ?」
「こ、恐い…」
「お、おいおい!!」
羅夢は、梨生奈の肩を掴んだ。
2166投稿者:リリー  投稿日:2008年06月07日(土)20時50分52秒
「へへへ…。だからこそ、私は、おまえ等を原村にやるんだ」
ダーブロウ有紗は、2人を真っ直ぐに見る。
「ど、どういう…ことですか…?」
「いいか?裏の世界ってのは…闇へと続く、螺旋階段みたいなもんで…どこまでも深く続いている…」
ダーブロウ有紗の指は、ゆっくりと旋回しながら下へと向かう。
「私達、『TTK』の元『戦士』も、相当深い所にいたわけだが…もっと…もっと深い所に住んでるヤツもいる…」
「そ、それが…」
「ああ…。楠本だ…」
梨生奈も羅夢も、顔を険しくさせる。
「もしかしたら…これから向かう原村に、楠本みてぇな…いや、それ程でもなくても、一筋縄ではいかないヤツが待ち構えているかもしれねぇ…」
梨生奈は、生唾を飲み込んだ。
「そんな時、そういうヤツの恐ろしさに鈍感で、猪みてぇに突っ込んでいくことがあってはならねぇ!!」
ダーブロウ有紗の指は、羅夢を捕らえる。
「な、何を!!」
その人差し指を、唇に持って行く、ダーブロウ有紗。
「そして、そんなヤツを目の前にして、ただ怯えて立ちすくむことも…あってはならねぇ…」
今度は梨生奈に、指は向く。
2167投稿者:リリー  投稿日:2008年06月07日(土)20時51分14秒
「いいチームだぜ、おまえ等は…。お互いに無いものを補うことができる」
梨生奈と羅夢は、お互いの顔を見る。
「『チームN』も、『チームE』も、『チームS』も…その点はおまえ等の足下にも及ばねぇ…」
「え?そ、そんな…」
「チビアリはな…あれでなかなか熱くなりやすいヤツでよ、しかもパッツンと仲が悪すぎる。いや、おまえ等みたいに良すぎるのもどうかと思うが、まだアクセルとブレーキの関係になれねぇ…」
今日も、2人は一触即発の危機があった。
「ジェリーとぷるぷるは、悪い意味で仲が良すぎる。しかも、2人ともかなりの慎重派だ。だからこそ、遠距離攻撃に向いてるんだが…」
そう…エリーは、用もないのにエマの補習に付き合おうとして、近藤に締め出されたくらいだ。
「サムガーとデッパリンダは、まだお互いに関心が無さ過ぎる。真の意味のチームワークは、まだまだこれからだ」
その前に、ちひろは今、剣道の全国大会出場に集中していて、探偵の仕事をしているヒマがない。
ちひろも、スポーツ推薦で聖テレ高等部に入学した身…剣道が仕事の様なものなのだ。
それならジャスミンとの『チームJ』を復活させろ、と言うジョアンだが、その申し出は却下されている。
「だから、チームとしての完成度で言えば、おまえ等『チームR』が一番だ」
ダーブロウ有紗にそう言われ、梨生奈は嬉しそうにうつむいた。
「へ…!褒めて伸ばすってか…?いつから教育方針、変えたんだ?」
そう言う羅夢も、正直、悪い気がしなかった。
2168投稿者:リリー  投稿日:2008年06月07日(土)20時52分04秒
梨生奈と羅夢は、今夜吉田と一緒に原村に出発する為、部屋に戻って準備をしている。
ダーブロウ有紗は、ソファーに背中をもたれて、天井に設置されたカメラの方を向く。
「おい、こっちへ来いよ!!2人はもう、行ったからよ…。見えてんだろ?」
しばらくして…社長室のドアが開く。
そこに現れたのは…闇探偵『TDD』、コードネーム『エンペラー(皇帝)』…楠本柊生だった。
今まで、隣のモニタールームに身を潜めて中の様子を窺っていたのだ。
2169投稿者:リリー  投稿日:2008年06月07日(土)20時52分22秒
それでは、今日はこれでおちます
2170投稿者:117  投稿日:2008年06月07日(土)21時30分24秒
1日空いてしまいました。まずは「表」の話から。
梓彩のお父さんは顔の黒い・・・あぁ、新人紹介の時にあったヤツですよね(笑)。複雑な家系なのでしょうか?
そして、今回。まさに「らりるれろ」の設定に合ってきましたね。
ここで前回は出てこなかった、ダーさんと元帥のやり取り・・・どんな裏があったのか。続きが気になります!
2171投稿者:ヌンチャク取ってきてくんない?  投稿日:2008年06月07日(土)21時51分06秒
の後の展開があったとは・・・
こういうの、好きです
2172投稿者:らしいぜw  投稿日:2008年06月07日(土)21時52分50秒
有海が嫌い → 羅夢、エリー、藍、梨生奈、遼希、次元、瀬南、千秋、一磨、翔太

有海に興味がない → あかり、千帆、帆乃香、メロディー、裕太、聖斗、ベンジャミン

有海と関わりたくない → 樹音、滉一、ライアン

有海としゃべったことがない → 拓巳

有海の名前を知らない → ジーナ

有海の存在を知らない → 瑠璃
2173投稿者:うおお  投稿日:2008年06月08日(日)00時07分55秒
らりるれろだ
2174投稿者: 投稿日:2008年06月08日(日)01時16分18秒

2175投稿者:あげ  投稿日:2008年06月08日(日)21時00分38秒
2176投稿者:リリー  投稿日:2008年06月08日(日)21時34分43秒
はい、『らりるれろ』で書かれた部分の裏側ですが、当然、あの時はこんな展開は考えてませんでした

117さん
梓彩のお父さんが、ゴルゴさんにそっくりということを思い出しまして、二人を親子にしました
おかげで、愛美といい、梓彩といい、片親になってしまいました

では、更新します
2177投稿者:リリー  投稿日:2008年06月08日(日)21時35分33秒
「くくく…。梨生奈さん、この私に、もう二度と会いたくない…ですか…」
「ダッチャも、本心はそうだろうぜ。威勢のいいことを言ってはいたが…」
「随分、嫌われたもんですね…。この私も…」
楠本は、ダーブロウ有紗に正対する位置で、ソファーに腰掛けた。
「当たり前だろ?素っ裸にひん剥いて、吊るし首の拷問…挙句の果てはバラバラに解剖しようとして…どうやったら好かれるんだよ?」
「それも、そうですね…」
楠本は、タバコを取り出した。
「おっと、タバコは遠慮してくれねぇか?」
「何故…?ここ、禁煙じゃないんでしょ?灰皿ありますよ?」
「バレるじゃねぇか!おまえが来たって…。レッドさんだって、タバコを吸わねぇんだ」
「吸殻は始末しますよ。携帯灰皿、持ってますから…」
「臭いでバレる!!てめぇ、うちの探偵、ナメてんじゃねぇ!!」
2178投稿者:リリー  投稿日:2008年06月08日(日)21時36分12秒
「ふ〜ん…。わかりました…」
楠本は、素直にタバコを仕舞う。
「でもねぇ…。私だって、依頼人なのに…」
「ふざけんな。おまえは、『R&G』の依頼人じゃねぇ。あくまでも、私個人、『ダーブロウ有紗』の依頼人だ」
「いいんでしょうかねぇ…。会社に黙って、勝手に個人で依頼を受けちゃっても…。『TDD』でそれをやったら、間違いなくボスにぶっ殺されます…」
「ほっとけよ。『R&G』で、私をぶっ殺せるヤツなんて、いねぇよ。だからこそ、取り引きは金以外でやるんだ」
「はい。私もボスを説得するのに、苦労しました。何せ、あなたもご存知の通り、私達は、報酬の半分を組織に納めないといけませんから…」
「で、どうやって説得したんだよ?その恐いボスを…」
「内緒です」
「ま、いいや…。で…今度は、私がおまえの依頼を受ける番なんだよな?」
「はい」
「言えよ。どんな依頼だ?ただし…」
「わかってますよ。『殺し』はしない…。でしたね?でも…勿体無い…」
「あん?」
「殺しをしない、ダーブロウ有紗さんなど…フリーキックをしない中村俊輔と一緒です」
「その例え…光栄の極みだね…」
2179投稿者:リリー  投稿日:2008年06月08日(日)21時36分46秒
「あ、そうそう…私からの依頼ですが…」
「おう、何だよ?」
「まだ、言いません」
「はぁ?ナメてんのか!?」
「い、いえ…正確に言うと、言えないんです…」
「てめぇ、言えない依頼ってなんだよ?わけわかんねぇぞ!?」
「もっと、正確に言うと…まだ決めてないんです…」
「は?」
「まだ、あなたの力を借りるほどの壁にぶち当たってないんですね。だって私、大抵のことは自分一人でできてしまいますから…」
「ふん!『ひとりでできるもん!』てか?自惚れやがって!!」
「しかし、私一人では難しい仕事は、必ず来るはずです。その時の為に…とっておきます…」
「切り札ってヤツか?」
「はい…。あ、『札』で思い出しました。これ、渡しておきます…」
楠本は、懐から一枚のカードを出した。
2180投稿者:リリー  投稿日:2008年06月08日(日)21時37分09秒
「何だ?こりゃ…」
ダーブロウ有紗は、そのカードを手にとって見る。
それは…中央に裸の女性…そして、四隅に天使、鷲、獅子、牛が描かれた絵柄… ???・Le Monde …と書かれた『世界』のカードだった。
「『ワールド(世界)』…。あなたのコードネームです」
ダーブロウ有紗は、カードを楠本に投げ返す。
「おい!!私は、てめぇ等の仲間にならねぇぞ!!しかも『ワールド』って…DIOじゃねぇか!!」
「はい?DIO?」
「いや、知らねぇんだったら、いい…。とにかく、そんなコードネームは要らねぇ!!」
「いえ…あくまでも、仕事上は、コードネームが必要でしょ?本名で呼び合うわけにはいかないし…」
「だったら、私のことは『マッド・エッジ』と呼べ!!」
「『マッド・エッジ』ね…」
「それから、おまえのことも、『エンペラー』なんて呼ばねぇぞ?」
「え?」
「当然だ!私は『TDD』の仲間じゃねぇんだ!!」
「そんなこと言うんなら、私だって『R&G』の探偵じゃないんだから、あなたを『マッド・エッジ』なんて呼べない!」
2人は、初めて対立し合った。
2181投稿者:リリー  投稿日:2008年06月08日(日)21時37分47秒
ダーブロウ有紗は、溜息をついて、頷いた。
「じゃあ、新しいコードネームをつけてくれよ。その仕事限定のよ…」
「そうですねぇ…。じゃあ、『ビッグ・スマイル・ベイビー』なんてどうです?」
「『ビッグ・スマイル・ベイビー』?」
「あなたの笑顔…私、大好きですから…」
「ケ…!!ホスト野郎が!!キザなヤツだぜ!!」
「では、あなたも私にコードネームを…」
「あ?じゃあ、『元帥』でいいよ、『元帥』で」
「そ、それは、私のホスト時の呼び名ですよ?」
「あん?じゃあ、てめぇで決めろよ!!」
「じゃあ………『フィールド・マーシャル』で…」
「『フィールド・マーシャル』?」
「英国式で、『元帥』という意味です。陸軍のね。米国式では『ジェネラル・オブ・アーミー』って言って…ちょっと長ったらしいんでやめました」
「『ビッグ・スマイル・ベイビー』だって、長ったらしいじゃねぇか!!コンチクショウ!!」
「じゃあ、あなたの方で変えて下さって結構です」
「めんどくせぇな…。『ビッグ・ノーズ』でいいや」
2182投稿者:リリー  投稿日:2008年06月08日(日)21時38分11秒
楠本は、静かに笑う。
「『ビッグ・ノーズ』?でかっ鼻…?くくく…いや、これは、失礼…。で、この密約…当然、他の皆さんには内緒なんでしょ?」
「ああ…。でも、出っ歯ちゃんにバレちまったぞ?」
「出っ歯ちゃん?」
「七世のことだよ!山本の屋敷で会っただろ?」
「ああ、あの子…て、別に出っ歯じゃなかったですよ?」
「昔は出っ歯だったんだよ!矯正して治したんだ…て、そんなことはどうでもいい!!おまえ、余計なこと言ったな?」
「言ってませんよ。守秘義務は守ります!裏世界でも、探偵は探偵ですから」
「あの夜、出っ歯ちゃんに問い詰められて、大変だったんだぞ!?」
「だって、あの里穂という子と愛実という子だけを助けた時点で…誰が依頼したかバレバレですよ」
「だから、あそこに囚われてる子、全員助け出せって言ったんだよ!!」
「それなら、依頼はお金で支払って頂きたい…と、申しましたよね?で、あなたは、あの2人だけでいいと、おっしゃった。もう、やめましょう…済んだ話しですから…」
「勝手に済んだ話しにすんじゃねぇ!!ま、出っ歯ちゃんには口止めしてもらったけど…」
ダーブロウ有紗は、怒りの矛先をとりあえず納めた。
2183投稿者:リリー  投稿日:2008年06月08日(日)21時38分33秒
「では、そのお詫びと言ってはなんですが…あなた達、今、政界スキャンダルで失踪した議員秘書の行方、追ってるでしょ?」
「あん?、何で、知ってやがる!?」
「まあ、まあ…私も探偵ですから…」
「どういう意味だ?」
「あなた、民主党から依頼を受けたでしょ?何が何でも選挙までに探し出せって…」
「だから、何で知ってやがる!!」
「私は、自民党から依頼を受けたんです。何が何でも選挙までは隠し通せ…と…」
「な、何…?じゃ、じゃあ…今まで、ジャスミンがいくら探しても見つからなかったのは…」
「はい。私が隠してました」
「てめぇ…」
「おっと…逆恨みはやめてください…。私だって、仕事なんですから…」
「で、それが何でお詫びになるんだよ?」
「その議員秘書…名古屋に居ますよ…」
「何?」
「名古屋にいます…。これが、私のお詫びです…」
楠本は、ソファーから立ち上がると、ドアの方に歩いて行く。
2184投稿者:リリー  投稿日:2008年06月08日(日)21時39分08秒
「何で、今になって言うんだ?」
「だって…契約が切れましたから…。まあ、あのスキャンダルがバレなくても自民党、大敗でしたね。安倍政権も風前の灯火…」
「それが…お詫びのつもりか?」
「不服ですか?」
「当たり前だ!!選挙前に探し出せなかったんだ!!1千万のボーナスが、ふいになっちなったぞ!?」
「それでも、依頼は完遂しないと…。信用問題になりますよ?」
「わかってるよ…!それぐらい…」
しかし、ダーブロウ有紗は、ある考えに至る…。
「おい…おまえ…その依頼受けたの…いつだ?」
「はい?」
「もしかして…うちが民主党の依頼を受けたのを知った上で…自民党の依頼を受けたな?」
「…教えません…」
「…いや………もしかして………自分から自民党に売り込みやがったんじゃねぇだろうな…?自分だったら、その議員秘書を隠し通せるって…」
「いやはや…想像力の豊かな方だ…」
とぼける楠本に、それでもダーブロウ有紗は、食い下がった。
2185投稿者:リリー  投稿日:2008年06月08日(日)21時39分35秒
「おまえのことだ…何かの取り引きに使えると思って…ワザと、私達の邪魔をするような依頼を…」
「取り引き?取り引きって何です?」
「私とジャスミンを『TDD』に引き込む為のだよ!!」
「まさか…!あの依頼は、そこまでの価値はないでしょ?あなた達にとって…!」
「ああ…。あのスキャンダルがなくても、大方、選挙は自民の大敗だったからな…。だから、おまえにとっても、この情報は、大したことのないモノとして、こんな形で提供するハメになった…」
「何か…それが本当なら、私、メチャクチャ腹黒いヤツみたいじゃないですか…」
「メチャクチャ腹黒いヤツだろ?おまえ…」
「まぁ、何にしても…『約束』…忘れないでくださいね…?『ビッグ・ノーズ』…」
「ああ…。早く、依頼を持って来い!!はやく、おまえと縁を切りてぇからな…。『フィールド・マーシャル』…」
「悲しいことをおっしゃる…」
楠本は、そのまま社長室を出て行った。
部屋には、ダーブロウ有紗、一人が残る。
「あの野郎…このまま依頼を先延ばしにして、何かと私に付きまとうつもりだな…。『TDD』に引き込む為に…」
そして、携帯電話を取り出した。
「おう、ジャスか?『マッド・エッジ』だ。今、どこにいる?…そんな所を探したって無駄だぜ。ヤツは、名古屋にいる。………ああ、名古屋だ。今すぐ向かえ!!ポルシェ?そのまま乗って行っていいから…」
ダーブロウ有紗は、携帯を仕舞い、溜息混じりに呟く。
「ジャスミンは名古屋…レッドさんと『チームR』は原村…チビアリ達は野球の合宿で静岡…サムガーも剣道の合宿で広島…ジョーはまだ入院中…ここに残るの、私と出っ歯ちゃんとミミーだけかよ…。この夏、手薄になるなぁ…」

(『四回・裏』・・・終了)
2186投稿者:リリー  投稿日:2008年06月08日(日)21時42分36秒
少し多めでしたが、切りのいい所まで更新しました

「フリーキックをしない中村俊輔」のところは、今は「コロコロPKをしない遠藤」と言いかえることもできます

では、おちます

2187投稿者:ダーさん&元帥  投稿日:2008年06月08日(日)22時23分10秒
このコンビの戦い、楽しみです!
2188投稿者:あげ  投稿日:2008年06月09日(月)20時11分02秒
 
2189投稿者: 投稿日:2008年06月09日(月)20時37分46秒

2190投稿者: 投稿日:2008年06月09日(月)20時37分56秒

2191投稿者:リリー  投稿日:2008年06月09日(月)21時05分01秒
今日から『五回・表』です
第二試合も半分くらいになりました
でも、『五回・裏』、『九回・表』がムチャクチャ長いんですが…
ダーさんと元帥の共闘も描かれる予定です

では、更新します
2192投稿者:リリー  投稿日:2008年06月09日(月)21時06分01秒
『五回・表』

≪2007年8/4(土)≫
大嫌いな補習を終え、この日から七海と藍は、野球部一本に集中できるようになった。
ジョアンはというと、来年の高等部進学に向けて、土曜日にも関わらず、理科と社会の補習を受けている。
だが、ジョアンは高等部に進むつもりはない。
中等部を卒業すれば義務教育は終わる為、それでジョアンは聖テレジアを辞め、『R&G探偵社』に正式入社しようと言うのだ。
そうすれば、またジャスミンと一緒に『チームJ』を組めるかもしれない…そう考えている。
友達の多いジョアンにとって、このまま学校を辞めるのは寂しい気持ちもあったが、ジャスミンと天秤にかければ、答えはおのずと決まる。
朝の9時から、七海達は汗を流す。
梨生奈が、『R&G』の任務で原村に行って不在のため、サードの守備が空いている。(もちろん、あすみや藍達には任務のことは言っていない)
そこで、この間だけファーストのジョアンがサードへ、センターのエマがファーストへコンバートした。
そして、その空いたセンターには、有海が入ることになった。
ライトの七海、レフトのエリーが、有海を挟む様にフォローをする。
打順は、ジョアンが一番へ、中村有沙が五番へ、エマが六番、エリーが七番、そして、有海が九番。
もし梨生奈と羅夢が7日までに任務を終えなかったら、静岡での練習試合は、このオーダーでいくことになる。
当然の如く、有海は猛特訓を受けることとなった。
2193投稿者:リリー  投稿日:2008年06月09日(月)21時06分23秒
あすみは有海に、バントを手取り足取り教えている。
「いいかい?あみ〜ご。あんたはバント!バントだけでいいから…」
「は、はい…。でも…」
「でも?」
「ランナーがいない場合はどうします?」
「セーフティーバント!だから、いつでも三塁線に転がすバントの練習!わかった?」
「わ、わかりました…。でも…」
「何?」
「木内さんが戻って来た場合は…その…」
「あみ〜ご!あんた、早くり〜なに帰って来てもらいたがってるね?」
「…だって…」
有海は、うつむいた。
2194投稿者:リリー  投稿日:2008年06月09日(月)21時06分47秒
「そりゃ、り〜なが戻って来た方がいいに決まってるよ?でも、戻って来たとしても、他の誰かが怪我をしたりして、試合に出れなくなってしまうかもしれない…」
あすみは、有海の肩に手を置く。
「その時は、助け合いだろ?あんただって、今までスコアラーとしてみんなを助けてきたじゃないか…」
誕生日に、酷い仕打ちをされて…もう、学校になんか行きたくない…そう、思っていた…。
だけど、みんなはそんな自分を勇気づけてくれた…。
慰めの言葉はなかったが…ユニフォームを…自分のデザインを採用してくれた…。
それだけで、充分だった。
今度は、自分が返す番…。
「で…でも…」
「何?まだ、何か?」
「私が…プレイで、みんなを助けることなんか…」
「だから!!助け合いだって言ってるでしょ?学年3位でも、頭の悪い子だね?」
「す、すいません…!」
「まず、あんたが人に助けてもらいな!!あんたがプレイで人を助けようなんて、10年早いよ!!」
「で、でも…」
「何?まだ、何かあるの!?」
「10年早いって…それじゃあ、卒業まで間に合いません…」
「………あんた…本当に…勉強はできるけど、頭は悪いんだね…」
2195投稿者:リリー  投稿日:2008年06月09日(月)21時07分37秒
有海への特訓は、指導する方も根気が要った。
まず、ボールを恐がってバットを出すこともできない。
しかも、バットにボールが当たると同時に、手を放してしまう。
あすみが、至近距離で下手投げをしてやっても、そうなのだ。
あすみは、ガリガリと激しく頭を掻く。
「あみ〜ご…。取り合えず、バットを放り投げるのやめようか…。ホームランで放り投げる人はいるけど、バントで放り投げる人は、初めて見たよ…」
「だ、だって…指に当たるんじゃないかって…恐くて…」
「大丈夫!バットの先で当てるの!」
「バ、バットの先ですね?」
「行くよ!!」
「は、はい…」
そして、有海は本当に指に当ててしまった。
30分間、有海はシクシク泣いた。
2196投稿者:リリー  投稿日:2008年06月09日(月)21時08分14秒
いつまでも泣いている有海に、いい加減、中村有沙がキレ始めたので、今度は守備練習に取り掛かる。
丁度、ジョアンも補習を終えて、練習にかけつけた。
皆は、守備位置について、あすみのノックを受けることとなる。
まずは、ジョアン、エマ、有海のコンバート組から優先して打ち込んでいく。
さすが、エラー無しのジョアン、サードの守りも完璧だ。
フライの守備に不安のあったエマだが、ゴロの守備は無難にこなす。
しかも、直線的な打球には、めっぽう強い。
これは、嬉しい発見だった。
ジョアン、エマ、そして梨生奈…愛美に梓彩…このチームの内野守備は、大丈夫だ。
問題は、やはり有海である。
いきなりフライを捕るというのは、さすがに無理だ。
つまり、有海の守備範囲を、七海とエリーがフォローする…という練習になる。
しかし、有海がセンターの位置にいることが都合のいい場合もある。
キャッチャーの中村有沙の視線の方向に、常に有海がいるからだ。
『TTK』で視力を鍛えられた中村有沙は、遥か外野からの有海のサインを、確認することができる。
そう、有海も守備で、チームの力になることができるのだ。
2197投稿者:リリー  投稿日:2008年06月09日(月)21時08分52秒
今日は、これでおちます
2198投稿者:今日は短い…  投稿日:2008年06月09日(月)21時10分13秒
調整?
2199投稿者:あげ  投稿日:2008年06月09日(月)21時23分36秒
     
2200投稿者:117  投稿日:2008年06月09日(月)21時57分44秒
この回の裏は長いんですか・・・そちらも楽しみなところです。
さて、特にエマの守備には不安があったのですが、意外と上手いんですね(笑)。
守備はもちろん,バントすら上手くない有海はサインでチームを支える・・・なんか良いですね。続きも楽しみです!
2201投稿者:あげ  投稿日:2008年06月09日(月)22時10分16秒
2202投稿者:有海  投稿日:2008年06月09日(月)22時15分20秒
かわゆすw
2203投稿者: 投稿日:2008年06月09日(月)23時06分38秒

2204投稿者:あげ  投稿日:2008年06月10日(火)01時04分12秒
 
2205投稿者:リリー  投稿日:2008年06月10日(火)21時09分33秒
2198さん
昨日は、切りの良い所で終わらせたので、少し短くなりました
すみません

117さん
この後、梨生奈は原村で全治6ヶ月の大怪我を負うので、有海には上手くなってもらわなくてはヤバイんですよね
ちなみに、8月4日は『らりるれろ』では安田大サーカスがチームRに捕まった日です

2202さん
シクシクって所ですか?

では、更新します
2206投稿者:リリー  投稿日:2008年06月10日(火)21時11分27秒
野球部は、5時までたっぷりと汗を流した。
あすみは、最後に皆を集める。
「で…今日の練習はこれで終わりだけど…これからある人にお話しをして頂きます。有り難く聞くように」
「へ?話し…?」
「誰の…?」
「それでは、お願いします」
あすみが、校舎の陰に向かって声をかけた。
「やあ、やあ!!聖テレ野球部のみなさん!!がんばってるなぁ!!」
手を振りながら軽快なステップで登場してきたのは、色黒の、やたらと濃い顔立ちの、男性ホルモンのみなぎった…小男だった。
「誰…?」
七海は、その小男を凝視する。
見たこともない男だ。
「パ、パパ…!?」
梓彩が、素っ頓狂な声を上げて立ち上がった。
2207投稿者:リリー  投稿日:2008年06月10日(火)21時11分57秒
「パパ?」
皆は、梓彩とその小男の顔を交互に見た。
これが…梓彩の父親…?
藍は、3日前に愛美の話しで聞いたとおりだと、思い出す。
梓彩は色白で頬の赤い童顔…東北系の顔だ。
対する、この父親は色黒で日本人離れした…南方系の顔立ちだ。
たしかに、まったく似ていない。
「ど、どうして、パパが来てるのよ!!恥ずかしい!!」
まあ、この年頃の娘がする、当然な反応だろう。
「どうしてって…おまえががんばってるっていう、野球部のみんなの顔を見たかったんだよ」
梓彩の父親は、満足そうな笑みで、皆の顔を見た。
白いテンガロンハットに、白の長袖シャツ、紺のジーパンという…カウボーイの様な恰好…どう見ても、会社勤めという風には見えない。
「みんな!この方が、12日の野球の試合のチケットを譲って頂いた、松本政彦さん…あず〜のお父様よ」
「どうも!いつも梓彩がお世話になってます!!私が梓彩の父でございます!!」
やたらとハイテンションな男である。
2208投稿者:リリー  投稿日:2008年06月10日(火)21時12分21秒
「何だ?おまえ。学校では、あず〜って呼ばれてるのか?」
「うるさいな!そんなの、どうでもいいじゃん!!」
「だって、おまえが学校のこと、全然パパに教えてくれないんだから…」
「私のこと、『おまえ』って言わないでよ!私はママじゃないんだから!!」
そう言って、はっと顔を赤らめて、梓彩はその場に座った。
たしか、梓彩の両親は離婚して、梓彩と松本は別々に暮らしているらしい。
何か、複雑な事情があるようだが…。
そんな中、愛美は立ち上がって松本に頭を下げる。
「私達のために、野球のチケットを譲って頂いて…ありがとうございます!」
皆は、慌てて愛美に倣って立ち上がり、頭を下げて礼を言う。
「いや、いや…こんな物は、知り合いからいつでも、いくらでも貰えるもんだから…気にしないで下さい…」
そして、おもむろに愛美の前に歩み寄る。
「でも、梓彩は部活のことならいっぱい話してくれるんです。君がキャプテンの愛美さんですね?梓彩からいつも、あなたの名前が出ますよ。親友だって…」
「は、はぁ…。それはどうも…」
そう言いながら、愛美は嬉しそうに梓彩の顔を見た。
2209投稿者:リリー  投稿日:2008年06月10日(火)21時12分48秒
「そして、藍さん…細川藍さんは…?」
「あ…私です!」
藍は、手を挙げた。
「あなたが!スーパールーキーの!!いや〜!!会いたかったぁ〜!!」
松本は、握手を求めた。
「ス、スーパールーキー?私が?」
藍は、すっかりと気分を良くして、松本と握手する。
「ええ、一緒にプレイできて、嬉しいって、梓彩が言ってました」
「え?あず〜先輩、そんなことを?」
「もう…。お願いだから…カンベンしてよぉ…」
藍の熱い視線を受け、梓彩は顔を真っ赤にしてうつむいている。
「それから…あなたとあなたが、エマさんにエリーさん?」
「はい。私がエマで、この子がエリーです」
「ほほぉ〜…やっぱり、梓彩の言ってた通りだ…。フランス人形みたいに、可愛らしい…いや、美しい〜!!」
「ええ〜!!そんな〜!!どうしよう〜〜〜!!」
エマとエリーは、抱き合って喜んだ。
2210投稿者:リリー  投稿日:2008年06月10日(火)21時13分09秒
「ラテン系だな…。おまえの父は…」
中村有沙は、梓彩の背中を突いて言った。
「…はい…。誰に対しても、大袈裟に褒めるんです…」
梓彩は、もう顔を上げることもできない。
「あなた…!もしかして、中村有沙さん?」
いきなり声をかけられて、中村有沙は少し驚く。
「そ、そうだが…なぜ、私と…?」
「だって、梓彩があなたに敬語を使ってました。3年生は中村有沙さんとジョアン・ヤマザキさんの2人しかいないでしょ?そちらのエキゾチックな方がジョアンさんでしょ?ならば、あなたが中村有沙さんですね」
「うむ…。たしかに…」
この男、なかなかの洞察力だ…。
「いやいや…有沙さんは、容姿端麗、頭脳明晰、運動神経抜群…完璧な人だって…梓彩の憧れだそうですよ…」
「そうなのか?」
中村有沙は、梓彩に尋ねる。
もう、梓彩は返事もしない。
2211投稿者:リリー  投稿日:2008年06月10日(火)21時13分35秒
「そして、ジョアンさん?あなたは学校では人気者だそうで?」
「え?アタシ?そ、そんなでもないよ…!」
「いやいや、梓彩が言うには、あなたの周りにはいつも友達に囲まれていて…とても羨ましいと…」
「そ、そう…?」
ジョアンは、このまま学校を辞めてしまうのが、急に寂しくなった。
「それから…残るは………」
「ああ、ウチとこの子!!ウチが七海で、有海がこの子や」
「ほほう…君達が?有海さん、すごく記憶力がいいって聞きました。なんでも、野球のルール、全部覚えてしまったとか?」
「い、いえ…そんな…」
「それに配球とか、なかなか的確な所をついてくると…一生懸命、勉強してるって…梓彩は感心してました…」
「あ、あの…す、すいません…」
有海は褒められたのに、謝った。
2212投稿者:リリー  投稿日:2008年06月10日(火)21時14分07秒
「ウチは?ウチのことは、何て言っとったん?」
七海は目を輝かせ、自分を指差す。
「うん。おっかない子だって…」
「はぁ?おっかない…?」
みんなには褒め殺しなのに、自分だけ「おっかない」?
「だけど…」
「だけど?」
「本当は、素直で…純粋で…とっても可愛いと…」
「可愛い?」
「妹にしたいって…梓彩は言ってました…」
「妹…?」
梓彩が…?そんなことを…?意外だ…。
「何や〜!!梓彩先輩〜〜〜!!!照れるわ〜〜〜!!!恥ずかしいやん〜〜〜!!!」
七海は、バシバシと梓彩の丸まった背中を叩きまくった。
「…痛い…。痛いよ…ななみん…」
梓彩は、消え入りそうな声で呟く。
2213投稿者:リリー  投稿日:2008年06月10日(火)21時14分52秒
「あず〜先輩!良い、お父さんですね!」
藍の言葉に、梓彩は、驚いた様に振り向いた。
「良いお父さん?パパが?」
「こんなに野球部のことに詳しいなんて…。あず〜先輩の話していること、ちゃんと聞いて、覚えてるってことじゃないですか!」
「で、でも…」
「うむ。良い父親ではないか。恥じるな、梓彩」
中村有沙も、そう声をかけた。
「みんなは…パパのこと、知らないから…」
梓彩は、またもうつむいて黙りこんでしまった。
「あれ?もう一人…いませんね…。たしか…木内梨生奈さん…」
松本は、皆の顔を見回して言う。
「ああ…。彼女は今、旅行中でして…。今日はいません…」
あすみは、そう、松本に伝える。
「そうですか…。いや〜、梨生奈さんにも会いたかったですねぇ…。なかなかの俊足の持ち主だと聞きまして…。私も、足だけは速かったですから…」
「もしかしたら、明日くらいには帰れるんとちゃう?原村から…」
七海の言葉に、松本は一瞬、固まり…ぎこちなく七海の方へ首を向ける。
「原…村…?」
2214投稿者:リリー  投稿日:2008年06月10日(火)21時15分24秒
「へ…?うん…原村…」
七海は、松本が何故、原村に反応したのか、不思議だった。
「もしかして…長野県の…原村…?」
「うん。長野の…。何?オッチャンも、原村、知っとるん?」
「あ…ああ…!!知ってるさ!!いい、所だよねぇ〜、あそこ…!!」
「行ったこと、あるん?」
「うん、うん!!行ったこと、ある、ある!!」
松本の声が裏返っている。
七海をはじめ、『R&G』の者は、松本の様子が変ったことに疑問を感じた。
「ん…!んん!!」
あすみの咳払いに、松本はハッとする。
「あ、ど、どうも…つまらないことを言いまして…。どうぞ、先生!」
松本は、頭を低く垂れて一歩下がった。
「ええと…実は、この松本さんも学生時代に野球をやってらして、甲子園に出場経験がおありなのよ」
それを聞き、皆は、おおお〜と、どよめく。
2215投稿者:リリー  投稿日:2008年06月10日(火)21時15分52秒
「いや、いや…!それほどでも…」
松本は、色黒な顔を赤くして、手を振って謙遜する。
「それって確か…代走で出ただけなんでしょ!!」
梓彩が、口を挟んだ。
「こら!あず〜!あんた、レギュラーだけが偉いと思ってるの?一体、私のもとで何を学んできたの!?」
「い…いえ…。そ、そういうわけでは…」
あすみに、たしなめられた梓彩は、しゅんとうなだれた。
松本は、あすみに頭を下げた。
「先生…例え私の前でも、娘を叱って頂いて有り難うございます…。私はどうも、娘を甘やかして育ててしまったみたいで…」
「別に…パパに育てられた覚えはない…」
梓彩の呟きに、その場の者は気まずい雰囲気になる。
松本は、横目であすみを見ている…まるで、助けを求めている様に…。
「あ、そ、それじゃあ、松本さんに、甲子園に出た時のこと、詳しくお話しして頂きましょう!!」
あすみは、慌てながら、この場の空気を変えようと必死になる。
松本は、まるで講演会の持ちネタの様に、よどみなく話した。
その話しの内容の大部分は、暑苦しい精神論だったが…。
2216投稿者:リリー  投稿日:2008年06月10日(火)21時16分09秒
では、これでおちます
2217投稿者:117  投稿日:2008年06月10日(火)21時18分34秒
ここで「聖テレ野球部」とゴルゴさんが繋がりました。梓彩とゴルゴさんの複雑な関係とは・・・?
それにしても、「原村」とは危ない発言。かなりドキドキしました。続きも楽しみです!
2218投稿者:梓彩かわいそw  投稿日:2008年06月10日(火)22時36分48秒
 
2219投稿者:R&G野球部メンツ  投稿日:2008年06月10日(火)23時33分55秒
あすみとゴルゴに正体ばれなければいいが
2220投稿者:たしか  投稿日:2008年06月11日(水)19時33分34秒
ゴルゴはダーさんとしか面識はないはず

あすみは、七海達が『R&G』で、元帥と戦ったことを知ってるんじゃないか?
2221投稿者:ww  投稿日:2008年06月11日(水)19時36分54秒
 
2222投稿者:あげ  投稿日:2008年06月11日(水)20時47分19秒
2223投稿者:てか有紗のこと元々知ってたんだから  投稿日:2008年06月11日(水)20時48分51秒
TTKぐらい知ってるだろ
2224投稿者:リリー  投稿日:2008年06月11日(水)21時09分01秒
ゴルゴさんとあすみの関係は、もう少し後でわかってくると思います
あすみが七海達が『R&G』ということを知っているかも、後にわかります

ゴルゴさんにとって、原村と言ったら難田門司の隠し財産なんです

では、更新します

2225投稿者:リリー  投稿日:2008年06月11日(水)21時10分45秒
長い松本の話しを聞き終え、クラブハウスに戻って来た、野球部一同。
「あ〜ん!!もう、最悪!!恥ずかしい!!パパのバカ!!」
梓彩は、長机に突っ伏した。
「そ、そんなことないですよ!私、ちょっと感動して泣いちゃいました!」
藍は、顔を伏せている梓彩の耳元に語りかけた。
「あくびで、涙出てたね」
そう言ったエマに、藍は掴みかからん勢いで迫る。
「もう!!ほんと、えまちんって『K・Y』だね!!」
「いや、でも、あのオッチャンの言うことは、どれも正しい!!梓彩先輩、そんなに恥ずかしがらんでもええやん!」
七海は、そう言って梓彩の肩を叩いたが、その瞬間、梓彩は上半身を起こし、七海をじっと睨む。
「ななみんだったらどう?自分の親が、友達の前であんなに調子に乗って喋ってたら…恥ずかしいでしょ?」
「…う…」
梓彩にそう言われた七海は、困ってしまった。
七海には…いや、『R&G』の探偵達には…親という存在はいないから…。
2226投稿者:リリー  投稿日:2008年06月11日(水)21時11分13秒
「梓彩!いい加減にしろ」
中村有沙が、静かに…だが、厳しく言い放った。
「な、何ですか?ありりん先輩…!」
あの大人しい梓彩が、中村有沙に突っかかる。
皆は、少し戸惑った。
だが、中村有沙は、あくまでも穏やかな口調で梓彩に言う。
「貴様の父親は…貴様が可愛いのだ…。それだけだ…。だから…もう、これ以上、自分の父親を恥じるな…」
「何よ!何にも知らないクセに!!」
梓彩は、また机に顔を伏せた。
その場の空気が、重く圧し掛かる。
案の定、有海が泣き出した。
「あ、ありりん先輩!梓彩には、私からよく、言い聞かせますから…」
愛美が、中村有沙に頭を下げた。
「別に…私は怒ってはいない…。少し…悲しいだけだ…」
そう言って、中村有沙は制服に着替え始める。
2227投稿者:リリー  投稿日:2008年06月11日(水)21時11分33秒
「さ、さてと…ウチも着替えよ〜…」
七海は、バッグを開ける。
その中の携帯を見ると、『着信アリ』の表示が…。
「あ!!り、梨生奈からや!!」
七海の声に、その場の空気はガラリと変わる。
「な、何て?り〜な、合宿に間に合いそう?」
藍も、食い入るように携帯を見る。
しかし、画面には『ムーン・ライト』というコードネームが…。
七海は、慌てて携帯を隠す。
「ま、待って!今、梨生奈に電話かけるから…」
すがる様な目で、有海が見ている。
しばらくコール音が鳴り、ようやく梨生奈は電話に出た。
〔もしもし、『キラー・タイガー』?〕
「お、おいおい!その呼び名はやめえ!!今、クラブハウスやぞ?」
〔あ、ゴ、ゴメン!!〕
「で、どうや?合宿…来れそう?」
〔う、う〜ん…それも…ゴメン!!〕
梨生奈は、再び謝った。
2228投稿者:リリー  投稿日:2008年06月11日(水)21時11分54秒
「は?ど、どういうことや?ま、まだ…なん?」
〔ん…?い、いや…その…任務は…完了したけど…〕
「せ、せやったら、はよ帰ってき!」
〔それがね…レッドさんが…大怪我しちゃって…〕
「は!?レッドさんが…大怪我!?」
『R&G』の者だけでなく、その場にいる者、全てが七海に注目する。
吉田のことは、『ピーナッツ』戦で知っているから…。
〔しばらく…病院で看病してあげなくちゃいけなくなって…で、帰れそうにないの…〕
「な、何、やっとんねん!!オノレ等がついておきながら!!」
〔ゴ、ゴメン!本当に、ゴメンね!!〕
「そんなん、羅夢にでも任せとけばええねん!!はよ、帰って来んかい!!」
すると…電話口の相手が代わった。
〔おい、コラ!!帰れねぇって言ってんだろ!!人間の言葉、理解できねぇのか!!このサル!!〕
羅夢だった…。
2229投稿者:リリー  投稿日:2008年06月11日(水)21時12分14秒
羅夢の声を聞いた途端、七海の怒りは沸点を越えた。
「何や!!ゴルァ!!オノレは出て来んでもええねん!!梨生奈に代われや!!」
〔梨生奈は疲れてんだよ!!それにアタイも気が立ってんだ!!あんまりしつこいことぬかすと、殺っちまうぞ!?〕
「ああん!?何や?笑わせよんのぅ?おう!?電話やから、そないデカい口叩くんか?オイ、コラ!!」
〔おう!!これが電話で良かったな?でなかったら、今頃、おまえ、アタイに殺されてるぜ?〕
「寝ぼけとんのかい!!コラ!!オノレ、今からコッチ来いや!!ぶっ殺したるさかい!!」
〔だから、帰れねぇって言ってんだろ?タコ!!おまえがコッチ来いよ!!〕
「ビビっとるんかい!?おう?自分、ションベン、チビっとるんとちゃうん!?」
〔ああ!?誰が、チビってるって?バカじゃねぇの!?誰がてめぇなんかにビビるかよ!!〕
一通り罵り合いが続き、ようやく梨生奈は羅夢から携帯を奪い返した。
〔と、とにかく、そっちに帰れそうにないの…!本当に、ゴメン!帰り次第、練習はしっかりやるから…!本当に、ゴメンね!!〕
「ほ、ほんまに、帰れへんの?なぁ…」
その時だった。
〔ほんと…相変わらず、仲が悪いねぇ…〕
遠くから聞こえてきた…小さな声…。
「…誰や?」
2230投稿者:リリー  投稿日:2008年06月11日(水)21時12分33秒
〔え?誰って…?〕
「誰か、おるん?梨生奈と…羅夢の他に…」
〔だ、誰も、いないわよ…〕
「ウソやん…だって、今…」
〔ゴメン!本当にゴメンね!!みんなにも…そう伝えておいて…!じゃあ…〕
「あ…!梨生奈!!ふざけんなや!!ゴルァ!!」
電話は、一方的に切られた。
「何やねん…ほんま…」
しかし、あの声…冷め切った声…聞き覚えがある声だった…が…今は、梨生奈が合宿に合流できないことを皆に伝えなければ…。
「なあ、みんな、聞いて…。梨生奈な…ん?」
皆、黙ってこっちを見ている。
『R&G』の者は呆れて…そうではない者達は恐れおののきながら…。
有海は、大泣きしている…。
「ど、どないしたん…?みんな…」
「ななみん…。こ、恐いよ…」
愛美は、ロッカーに背中を着けて、震えながら言った。

(『五回・表』・・・終了)
2231投稿者:リリー  投稿日:2008年06月11日(水)21時14分09秒
羅夢の気が立っていたのは、ライオンや虎達を、虐殺してしまった直後だからです

そして、あの冷めきった声の主は、モニーク先生です

では、これでおちます
2232投稿者:あげ  投稿日:2008年06月11日(水)21時19分22秒
 
2233投稿者:117  投稿日:2008年06月11日(水)21時19分50秒
ますます「らりるれろ」と絡み合ってきましたね。
なるほど、あのサーカスの場面ですか。結構、時間は経過しているようで。
七海がどれほど恐いか・・・その場で聞いてみたい(笑)。続きも楽しみです!
2234投稿者:モニーク先生  投稿日:2008年06月11日(水)21時55分18秒
久しぶりw
2235投稿者:モニークのことも  投稿日:2008年06月11日(水)21時58分54秒
グラスラで解決するんだよな
2236投稿者:あげ  投稿日:2008年06月11日(水)22時10分19秒
2237投稿者:リリー  投稿日:2008年06月12日(木)20時58分26秒
そうですね
『らりるれろ探偵団』のその後も、書かれていく予定です

七海と羅夢のケンカ、久しぶりに書きました

今日から『五回・裏』です
少々長めです
『らりるれろ』で描写されなかった、難田門司逮捕のエピソードです
では、更新します
2238投稿者:リリー  投稿日:2008年06月12日(木)20時59分41秒
『五回・裏』

≪2007年8/4(土)≫
七海と羅夢の口汚い罵り合いの30分前…ダーブロウ有紗は、梨生奈から電話を受けた。
〔もしもし…。こちら『ムーン・ライト』…〕
「おう!デコッパチ!どうした?」
〔難田門司の部下…安田裕己、黒川明人、広瀬康幸の3人を…捕まえました〕
「ほ、本当か!?でかした!!」
待ち構えていた…その報告…!!
これで、難田門司を奇襲することができる。
ジャスミンと七世の報告によれば、池袋、及び天歳市内にいる確率は低いが…。
〔3人の身柄は、長野県警に任せますが…それでいいですか?〕
「ああ、構わねぇよ!そんな雑魚…。コッチのターゲットは、難田門司、一人だからな!で、居場所は?」
〔新宿、歌舞伎町にある『エトワール』ってお店の事務所にかくまわれているそうです。どうやら、山本組が関係しているみたいですが…〕
「山本組…?何だか、最近ヤクザに縁があるな…」
そう、とぼけたダーブロウ有紗だが、やはり歌舞伎町の『SM倶楽部・エトワール』に難田門司は身を隠していたわけだ。
乳首に穴を開けられた甲斐もあった…と言うものだ。
そして…天歳市内にいないのなら…自分達で難田門司を捕まえることができる。
「わかった!出っ歯ちゃんとちょっくら行ってくる!」
2239投稿者:リリー  投稿日:2008年06月12日(木)21時00分42秒
〔そ、それから…あの…〕
「何だ?」
〔モニークのことですが…〕
「ん?」
〔すみません…。やはり、力を借りました…〕
そう…モニーク・ローズ…。
ブラッディ・ローズと異名をとる、『TTK』の元『戦士』で『四天王』の一人…。
偶然かどうか知らないが、そのモニークが『チームR』の梨生奈と羅夢と、原村で出会った。
あんな小さな田舎の村に、日本中…いや、世界中に散らばった『戦士』が、3人も出会った…。
しかもあの、楠本柊生が…『四天王』の自分と、ジャスミン、そして加藤夏希と共に…モニークを『TDD』の仲間にしようと狙っている。
「ち…!折角褒めてやったのによ…。約束だ!スカウトしな!」
『約束』という言葉を使ってしまった…少し、自己嫌悪に陥る。
スカウト…楠本とモニークが接触をする前に…『R&G』に引き込まなければならない。
モニークは、融通のきかない性格だ。
一度、契約を交わせば、必ずそれは守る。
そう…先に契約を交わした方が、モニークを手に入れることができるのだ。
2240投稿者:リリー  投稿日:2008年06月12日(木)21時01分06秒
〔そ、それが…そんなこと言い出せる雰囲気じゃないんですよ…〕
「何だ?そりゃ?…おい、今、もしかしてモニーク、側にいるのか?」
〔は…はい…。いますが…〕
好都合だ…!
確かに、梨生奈ではモニークの説得は難しいだろう。
自分が、直接話して交渉するしかない。
「モニークに代わってくれ…」
〔は、話すんですか…?〕
「ああ…。元『TTK』四天王のビッグ対談だ…。早く代わりな!私は忙しいんだ!」
何としてでも、モニークを『R&G』に引き入れなければ…!
それが無理でも…『TDD』に渡してはならない…!
モニークは、味方にすれば頼もしく、敵に回せば厄介なことこの上ない。
今回、モニークが『チームR』に協力してくれて、本当に助かった。
もし、敵に回ったのなら…とてもではないが、梨生奈と羅夢では相手にならないだろう…。
この件で味方になってくれたのなら、脈はありそうだが…。
2241投稿者:リリー  投稿日:2008年06月12日(木)21時01分34秒
〔もしもし…。ダーブロウ?〕
モニークの声…。
懐かしい声…。
相変わらず、冷め切った声だ…。
「おう!モニーク!久しぶりだな!元気そうじゃねぇか!」
〔ああ…。あんたも、相変わらず元気そうで…て、言うか、あんたの元気の無い日は無かったね…〕
「デコッパチとダッチャが世話になったそうだな?」
〔デコッパチ?ダッチャ?〕
ああ…いきなりあだ名で言っても、わからないか…。
「梨生奈と羅夢のことだよ」
不用意にモニークに梨生奈と羅夢のあだ名を教えてしまったことが、この後、2人を苦境に立たせることになるとは、さすがのダーブロウ有紗も予想できないが…。
〔ああ…。別に…私は…〕
「まったくよぉ!頼んでねぇのに、勝手に首突っ込みやがって!『チームR』の成長の機会を奪った落とし前、どうとってくれるんだ?オイ、コラ!!」
〔………相変わらずだねぇ…ダーブロウ…。普通、お礼を言うもんだろ?」〕
「責任、とってもらうぜ?」
少し、言いがかりっぽいが、今は手段など選んでいるヒマなどない。
2242投稿者:リリー  投稿日:2008年06月12日(木)21時01分57秒
〔責任?〕
「我が、探偵社で働きな!おまえなら、まず手始めに月80万で雇ってやる!」
社長の吉田に無断で給料の話しをするのもどうかと思ったが…くどいようだが、今は手段など選んでいるヒマなどない。
〔80万?〕
「私やジャスや出っ歯ちゃんと同額だぜ?破格の待遇だ!文句はねぇよな?」
また、台所事情が厳しくなるが、仕方がない。
それに、モニークが仲間に入れば、もっと大きな依頼も多く捌けるようになる。
これは、先行投資だ。
〔あるよ…。私には夢があるんだ…。それを諦めろって言うの?〕
「知ってるよ。獣医だろ?じゃあ、『R&G』の自社ビルの一室をおまえの犬猫病院にくれてやる!で、おまえは探偵と獣医の二足のワラジ…それでどうだ!?」
これだけ譲歩するのも…楠本に…『TDD』にモニークを獲られたくないからだ。
〔悪いけど…私は探偵なんかにならないよ…。それに、私の専門は牛や羊といった家畜なんだ。都会じゃ働けないよ〕
…何と言う、頑固なヤツ…しかし、これで引き下がってはダメだ!!
2243投稿者:リリー  投稿日:2008年06月12日(木)21時02分52秒
「悪いけど、私は絶対に諦めねぇ!!おい、原村にずっと居るんだろ?」
〔説得に来るのかい?無駄だって…!諦めな!〕
説得…?それなら、自分よりも、かつてのパートナーだった、ジャスミンが適役だろう。
幸いジャスミンは、長野から比較的近い名古屋にいる。
しかし、今は議員秘書捜索の仕事に集中させねば…。
もし今、ジャスミンにモニークの事を話したら、その仕事を放り出して原村に飛んで行きかねない。
「やだね!絶対に諦めねぇ!諦めてやらねぇ!!」
〔私は、原村が好きなんだよ!もう、梨生奈に代わるよ!?〕
さすがのモニークも、いい加減キレてしまったか…。
まあ、今すぐ説得できるとは思っていなかったが…。
電話の相手は、梨生奈に代わった。
〔『マッド・エッジ』…。モニーク、ダメみたいですね…〕
「ダメ?まだ決まってねぇだろ?」
事情を知らない梨生奈…諦めが早い…。
〔ほ、本当にモニークを『R&G』に引き込むつもりなんですか?〕
「ああ…。だって、おまえ、勿体無いと思わない?このままモニークを逃がすの…」
そして、『TDD』にみすみす渡してしまうのが…たまらなく勿体無い…いや、『R&G』にとって驚異となる。
2244投稿者:リリー  投稿日:2008年06月12日(木)21時03分16秒
〔た、確かに…〕
「それに、モニークが加入すれば、おまえ等も少しは楽できるってもんだぜ?」
〔そ、そうですが…〕
「そうだ、そんなことより、おまえはギョーザとの恋に全力投球しな!」
〔え…?ま、まだそんなことを…〕
ギョーザとは…千秋レイシー…去年の『中村有沙捕獲作戦』で、事件に巻き込まれダーブロウ有紗達に宿を貸すはめになった洸太レイシーの…弟だ。
これも偶然、洸太の弟である千秋が原村に喘息の療養していて、梨生奈と出会い、恋に落ちた。
本来なら、仕事そっちのけで色恋沙汰にうつつをぬかす梨生奈を、怒鳴っているところだ。
しかし、あの堅物の梨生奈が恋をしたのだ。
それが、ダーブロウ有紗には、たまらなく面白い…いや、嬉しい…。
羅夢は正直、いい気はしないだろうが…梨生奈ベッタリという状況を変えられる、いい機会になるだろう。
「じゃあ、私達は今から、歌舞伎町に飛ぶ」
〔お気をつけて…。『マッド・エッジ』…〕
「誰に向かって言ってんだ?おまえは、夏休み中、レッドさんの看病、よろしく頼むな。あと、ダッチャやギョーザにもよろしくって伝えとけ」
〔はい…〕
「なぁに…。今日中には難田門司を捕まえてやらあ!」
ダーブロウ有紗は、電話を切った。
2245投稿者:リリー  投稿日:2008年06月12日(木)21時03分33秒
今日は、これでおちます
2246投稿者:117  投稿日:2008年06月12日(木)21時17分58秒
なるほど、難田門司の逮捕も描くんですね・・・楽しみです。
梨生奈と千秋の恋は・・・この時はまだ続いていたんですよね。
今年度のドラマ「プッカリーノ」同様、時差で混乱している117です(笑)。
2247投稿者:tgfy  投稿日:2008年06月12日(木)21時43分59秒
2248投稿者: 投稿日:2008年06月12日(木)22時26分56秒

2249投稿者:この後、難田門司は捕まった  投稿日:2008年06月12日(木)23時21分45秒
だけだったもんなw前作は
2250投稿者:あげ  投稿日:2008年06月13日(金)00時19分44秒
2251投稿者:あげ  投稿日:2008年06月13日(金)21時05分11秒
2252投稿者:リリー  投稿日:2008年06月13日(金)21時06分44秒
私も、前作は難田門司について全く考えてませんでした

117さん、今年のドラマは面白いですよね
私は、タイムトラベル物は大好きなんです
「ああ、あの時のコレは、こうだったんだ」
もたいな、展開が好きなんです
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』とか、『サマー・タイム・マシン・ブルース』とか、あと、タイムトラベルではないですが、『メメント』とか…

では、更新します
2253投稿者:リリー  投稿日:2008年06月13日(金)21時07分31秒
「さてと…」
ダーブロウ有紗は、自室を出る。
七世の部屋に向かい、ドアをノックする。
「はい?」
返事をする七世に対し、ドアを開けることなく、こう使える。
「出っ歯ちゃん。用意しな。歌舞伎町だ」
「…!?はい!!」
慌しく部屋中を駆け回る音…。
そして、今度は有希子の部屋へ。
同様、ドアを叩き、開けることなく用件を伝える。
「ミミー。今から出っ歯ちゃんと歌舞伎町に出かける」
「え…?と、いう事は…いよいよですか?」
「ああ…いよいよだ」
有希子は、自分からドアを開けた。
ダーブロウ有紗は、優しく微笑む。
「山本組が、関連しているらしい…」
「山本組が…?」
「つまり…おまえら姉妹をいじめたヤツ等も…関係してるかも…」
「あ…あの…?」
有希子の表情が硬くなった。
2254投稿者:リリー  投稿日:2008年06月13日(金)21時07分49秒
「ミミー。歯、見せてみな」
ダーブロウ有紗は、そっと有希子の口を開けさせる。
綺麗な前歯…ただし、右側は人工の物だ。
「この歯の仇…とってやる…。そして…ジョーの分もな」
「ダ、ダーさん!!私も…行きます!!」
有希子は、すがりつきながら訴えた。
「いや…留守番が必要だ。ミミーはここに残ってくれ」
有希子の頭を優しく撫で、自室に戻る。
そして、服を全て脱ぐ。
当然、脱いだ服や下着は、床やベッドに放り出している。
乳首に開いた、穴を見詰める。
アスミ女王様の顔を思い出す。
「アイツも…店にいたらいいな…。こいつのお礼もしてやらなきゃ…」
散らかり放題散らかった部屋だが、仕事に関する物品の管理は行き届いている。
まず、クローゼットを開ける。
オレンジ色の地に、ショッキングピンクのラインのトラックスーツ。
目が痛くなるような配色だが、これがダーブロウ有紗の戦闘服だ。
2255投稿者:リリー  投稿日:2008年06月13日(金)21時08分11秒
トラックスーツに身を包むと、身体中に黒い革のベルトを取り付ける。
まず左足に、そして右足、続いて腰、左肩、右肩…左腕…最後に右腕…このルーティンワークは変らない。
そして、ガラスのショーケースを開ける。
そこに整然と並べられた、大小長短、様々な形状のナイフを装着する。
『TTK』が壊滅して以来、このナイフの刃は、人を殺めたことはない。
しかし…もしかしたら…今日…。
いや、血を吸わせることになろうとも、命は獲るまい…。
できれば一生…表の世界にいたいから…。
準備を済ませ、ドアを開けると…そこには、黄色地に黄緑色のラインのトラックスーツ姿の、七世がいた。
手には、例の日傘だ。
「早いな…。出っ歯ちゃん」
「ダーさんが遅いんです」
「へへ…!女の身支度は、時間がかかるの!」
「ダーさん、女だったんだ…」
この軽口…七世も気負いはしていないようだ。
ダーブロウ有紗は、指で七世の額を弾き(激痛)、いよいよ『難田門司狩り』に出発する。
2256投稿者:リリー  投稿日:2008年06月13日(金)21時08分30秒
銀のポルシェは、ジャスミンが名古屋まで乗って行ってしまったため、もう一台の車、ランドクルーザーで歌舞伎町に向かう。
ダーブロウ有紗は、身体のあちこちにナイフを取り付けているため、運転は七世がする。
勿論、七世は未成年なので、無免許運転だが…。
「ダーさん…。蒸し返すようですが…」
「楠本のことか?いい加減、カンベンしろよ…」
「いいえ…。有耶無耶にはできません。どんな取り引きをしたんですか?」
「おまえ等には迷惑をかけないよ」
「ダーさん、一人だけで何とかしようとしてるんでしょ?私は、それが一番心配なんです」
「へへへ…。この私が心配されるなんてな…。ヤキがまわったかな…こりゃ…」
「あの、楠本さんと2人っきりになるってのが、心配です!!だって…あの男…」
「見たのか?実力を…」
「ダーさん、運転中だから、殴らないでくださいね?あの男…確実に…ダーさんよりも力が上です…」
「………目的地に着いたら、ぶん殴ってやる!!」
小一時間程して、二人の乗る車は新宿に到着する。
2257投稿者:リリー  投稿日:2008年06月13日(金)21時08分49秒
何かイベントをやっている様で、アルタ前が混雑していて、人が車道まで溢れかえっている。
「邪魔だなぁ…」
七世は、クラクションを鳴らす。
「轢いちまえ!!」
「そ、それは…ちょっと…!」
ダーブロウ有紗の貧乏揺すりが激しくなる。
「もう、いい!!ここに車を乗り捨てるぞ!!」
「え?だ、だって…」
「今から、麻薬組織のボスを捕まえるんだ!!レッカー代くらい、負けてもらおうじゃねぇか!!」
ダーブロウ有紗は、そう言い終わらないうちに車から降りて駆け出した。
「もう!!ダーさんったら…!!」
七世も後部座席から日傘を引っ張り出して、後を追い駆けた。
トラックスーツの2人が、歌舞伎町を駆け抜ける。
まだ日没前…本格的な雑多はこれからだ。
比較的スムーズに、目的地『SM倶楽部・エトワール』に到着した。
コマ劇場から離れているので、それほど人通りは多くない。
奇襲をかけるなら、今だ。
2258投稿者:リリー  投稿日:2008年06月13日(金)21時09分31秒
今日は、これでおちます
2259投稿者:117  投稿日:2008年06月13日(金)21時19分45秒
ついに、決戦の時ですね。おっと、いいところで今日はここまで。続きも楽しみです!
「プッカリーノ」、僕も好きです。元帥の脚本は素晴らしいです!
2260投稿者: 投稿日:2008年06月13日(金)22時11分03秒

2261投稿者:リリーさんと  投稿日:2008年06月13日(金)22時21分49秒
映画の趣味が同じですw
2262投稿者:ナイフ、轢いちまえ  投稿日:2008年06月14日(土)01時51分40秒

2263投稿者:タイムリーだな  投稿日:2008年06月14日(土)12時51分50秒
 
2264投稿者:そのうちぜひタイムトラベル物を  投稿日:2008年06月14日(土)13時24分54秒
書いてください
2265投稿者:オレンジにピンク  投稿日:2008年06月14日(土)14時16分04秒
新人時代の衣装ですね
2266投稿者:あげ  投稿日:2008年06月14日(土)14時58分13秒

2267投稿者:あげ  投稿日:2008年06月14日(土)18時04分02秒
あげ
2268投稿者:あげ  投稿日:2008年06月14日(土)19時40分38秒
 
2269投稿者:リリー  投稿日:2008年06月14日(土)21時11分17秒
2265さん
トラックスーツのカラーリングは、衣装の色に合わせてあります
2262、2263さん
たしかに、タイムリーですね
気がつきませんでした
でも、ここの部分を書いたのは、今よりはるか前のことです

117さん
楠本さんの脚本っていいですね
たしか、去年の夏イベの脚本も楠本さんですよね

2264さん
タイムトラベルって完璧にストーリーの構想を決めてからでないと書けないですよね
私には難しいかもしれません
でも、いつか挑戦はしたいですね
『らりるれろ』と『グラスラ』みたいに時間軸がアチコチするのも書いてて面白いですけどね

では、更新します
2270投稿者:リリー  投稿日:2008年06月14日(土)21時13分04秒
『エトワール』と書かれた紫に輝く看板の前に、2人は立つ。
「ダーさん…。どう攻めます?私、裏口に回ります?」
「無駄だよ」
「無駄?」
「裏口ってのが存在しないんだよ。この手のビルは…」
「え?」
「警察のガサ入れ対策で、至る所につながっててな…まるで迷路だ」
「迷路…ですか…」
「入り口が一つで出口が十くらいある迷路…て、考えな」
「なるほど…。先回りは無駄ですね」
「だから、入り口から入って、難田門司の姿を見つけたら、見失うことなく追い込んで、捕まえろ」
「はい。捕まえます。ギュッと抱きしめてね…」
「………ま、それは、おまえに任せるわ…。じゃあ、行くか…!!」
ダーブロウ有紗は、『エトワール』の扉を開けた。
2271投稿者:リリー  投稿日:2008年06月14日(土)21時13分28秒
「いらっ………しゃいませ…」
蝶の仮面の女性店員は、様々なナイフを装着したダーブロウ有紗の姿を見て、さすがに危険を感じたのだろう。
仮面の下からでも、顔色が変ったのがわかる。
「指名…いいか?」
「はい…」
「難田門司…」
「難…?」
「いいよ。こっちから会いに行くから…」
ダーブロウ有紗は、店員を押しのけ、店の奥へと進む。
「た、大変です!!す、すぐに、あの方を逃が…」
「はい、お静かに」
七世が、その店員に当て身を喰らわし、気絶させた。
2人は、ズンズンと『STAFF ONLY』と書かれたドアへ向かう。
そのドアは、ダーブロウ有紗の手によって、粉々に弾け飛んだ。
「難田門司!!出て来や…」
その瞬間、ダーブロウ有紗の身体は、後方に吹っ飛んだ。
そして、店の入り口を突き破って、屋外に消えた。
「………ダーさん…?」
七世は一瞬、何が起こったのかわからなかった。
2272投稿者:リリー  投稿日:2008年06月14日(土)21時13分51秒

「ダーさん?もしかして…今の弱っちいヤツが…ダーブロウ有紗っていうヤツなの?」
「!?」
七世は我に帰り、声のした方を振り向く。
肩までの長さの黒い直毛、細い眉、鋭い眼光…黒のタンクトップ、迷彩のアーミーパンツ…黒光りのアーミーブーツ…。
そして、肩も腕も、筋肉で張っている。
有希子から聞いていた特徴と、完全に一致する…!!
こいつが…この女が…有希子の歯を折った女!!
確か、後藤理沙から、恵…と呼ばれていた女…。
「で…おまえは誰?」
裏探偵『TDD』、コードネーム『ストレングス(力)』…秋山恵の、猛獣の様な目が、七世を捕らえる。
「…!!」
七世は、一瞬反応が遅れた。
「ま、誰でもいいや…」
拳が、七世の顔面に…。
「く!!」
七世は、素早く日傘を広げた。
鋼鉄の繊維で編まれたその日傘の布は、恵のパンチを通さない。
が、七世は凄まじい圧力を受けて後ろに数歩下がった。
2273投稿者:リリー  投稿日:2008年06月14日(土)21時14分47秒
「ん?破れねぇ?」
恵は、今度は蹴りを放つ。
七世はまたも、日傘で受ける。
「ぐぅ…!!」
重い一撃…!また、数歩下がった。
「何だ?その傘…?」
恵は、首を傾げた。
「ま、何でもいいや…」
七世に背中を向ける恵。
これは…隙を見せたのか?
七世は傘を閉じると、恵の背中に向ける。
そして、手元のスイッチを押す。
傘の先端の細い槍が、恵の肩へと向かって発射される。
見事に…いや、あっけなく、その槍は恵の右肩に突き刺さった。
2274投稿者:リリー  投稿日:2008年06月14日(土)21時15分10秒
「いってぇ…!こいつ…!やりやがったな?」
恵は、いとも簡単に肩に突き刺さった槍を片手で抜いて、床に叩きつけた。
そして、七世を睨みつけた。
傷が浅い…?
筋肉が鎧となって、致命傷にならなかったのか?
「ま、いいや…。百億万倍にして返してやるよ」
百億万などという位はない。
あまり、頭の方は良くなさそうだ…。
しかし、力の方は相当なものだ。
あの、ダーブロウ有紗が、一撃で…。
七世は、思わずダーブロウ有紗の吹っ飛んで行った方向を見た。
耐性ガラス製の入り口のドアが、粉々に砕けている。
そこはもう、台風に襲われたかのような有様で、この距離ではダーブロウ有紗の安否を伺えない。
ダーブロウ有紗は、戦線離脱なのか?
まだ、まともに戦ってもいないのに…。
2275投稿者:リリー  投稿日:2008年06月14日(土)21時18分09秒
私も、秋葉原にはよく遊びに行くんです
あの日、行っていたら、もしかしたら私も殺されてたかもしれません
歩行者天国もなくなってしまったし…
お亡くなりになった方々は、本当に無念だったと思います
本当に悲しいし、腹立たしいです


今日は、これでおちます
2276投稿者:117  投稿日:2008年06月14日(土)21時21分28秒
あらら、無常にもダーさん脱落でしょうか?
強敵・秋山さんに対し、かなり効果的な七世の傘、なかなかの代物ですね。続きも楽しみです。
2277投稿者:ageあげ  投稿日:2008年06月14日(土)21時26分20秒
 
2278投稿者:たしか  投稿日:2008年06月14日(土)21時49分53秒
一七同盟でアキバが舞台になってたよね
2279投稿者:リリー  投稿日:2008年06月15日(日)01時53分47秒
七世vs恵
七世が負けそうな予感…
2280投稿者: 投稿日:2008年06月15日(日)02時00分08秒
予告ですか?
2281投稿者:あげ  投稿日:2008年06月15日(日)16時36分45秒
     
2282投稿者: 投稿日:2008年06月15日(日)19時46分47秒

2283投稿者:リリー  投稿日:2008年06月15日(日)20時52分30秒
2280さん
2279は私ではないですよ

2278さん
そう言えば、『一七』で秋葉原のシーンがありましたね
今回の作品の為に、一応、歌舞伎町にも行ってきました
初体験でしたけど
暗くなる前に帰ったんで、イマイチ感じがつかめませんが

117さん
ダーさんも、このままでは終わらないですよ
とりあえず、七世と秋山さんの戦いから…

では、更新します
2284投稿者:リリー  投稿日:2008年06月15日(日)20時53分13秒
そしてすぐに、恵の方を向く。
恵は、床に手を着けている。
まるで、陸上のクラウチング・スタートのような体勢…。
助走をつけて、傘ごと七世を吹っ飛ばそうという腹なのか?
ダーブロウ有紗の様に…。
七世は、再び傘を開くと前面に押し出し、足を踏ん張らせる。
おそらく、自分の体力と体重では、軽く飛ばされてしまうだろう…。
だからこそ、拳(蹴りかもしれないが)と同時に後ろに下がり、一瞬できる隙を突く。
膝から下を、鋭く研ぎ澄まされた傘の骨で切り裂く。
そして、取っ手に仕込んである長い針で、さっき槍の刺さった傷と同じ所を狙って突き刺す。
七世のイメージはこうだ。
しかし、恵の動作は、七世の予想を超えるものだった。
恵は赤い廊下の絨毯に手を掛けると、それを引き剥がし、思いっきり下に叩き付けた。
2285投稿者:リリー  投稿日:2008年06月15日(日)20時53分30秒

「…!?」
まるで、津波のように、たわんだ赤い絨毯が七世を襲う。
衝撃に備えて足を踏ん張っていた七世は、一瞬反応が遅れる。
そして、見事に足下を掬われてしまう。
「う…!」
七世は、背中をまともに床に叩き付けた。
思わず、日傘を手放してしまう。
「…し、しまった…!!」
日傘に手を伸ばした七世だが、手と日傘の間に、無骨な黒光りするブーツが降り立った。
そして、恵の右腕は七世の右腕を掴み、左腕は首を掴む。
「が…!う…」
七世は首根っこを押さえつけられ、腕を捻り上げられた。
「つっかま〜えた!!」
規格外の肉体と腕力…そして、身のこなし…!!
この女…強い!!
楠本といい、この恵といい、『TDD』…一体、どんな集団なのだろう…。
2286投稿者:リリー  投稿日:2008年06月15日(日)20時53分48秒
「へへへ…。おまえ、『R&G』のモンだろ?この前、私が歯を折ってやったヤツ等の仲間だよな?」
七世は、床に顔を押し付けられた。
そして七世の身体の上に馬乗りになって、右腕は後ろに捻られる。
「新しいオモチャが手に入ったぜ…!ひひひ…いっぱい遊んじゃおうかなぁ〜?」
七世の間接が軋む音を立てる。
「ぐ…うぅぅ…!!」
圧倒的な腕力…完全に、身動きがとれない。
「それにしても…ほっそい身体してんなぁ…。え?」
七世の腕は、あらゆる方向に捻くり回される。
「このまま、腕をへし折ってやろうか?それとも引っこ抜いてやろうか?リカちゃん人形をバラバラにするみてぇによ…!!」
「くぅ…」
七世の顔が青褪めた。
「ん?ビビってる?おまえ、ビビってんの?ぎゃははは!!」
七世の耳元で、恵は笑い声をあげた。
「おまえのお仲間、歯を引っこ抜かれただろ?その歯…今、ペンダントになって弥勒姉さんの首に掛かってるぜ…」
そして、低い声でこう囁く。
「おまえからは…幾つ、ペンダントができるかな…?」
2287投稿者:リリー  投稿日:2008年06月15日(日)20時54分08秒
「な…!?」
恐怖の表情を浮かべる七世の首の上に、恵の膝が圧し掛かる。
これで、恵の左手は自由に動かせるようになった。
「へへへ…。おまえも、キレイな歯、してんじゃん…」
無理矢理、七世の唇を捲り上げ、人差し指で歯を撫でた。
そして、指の先でコンコンと叩く。
「うん、丈夫そうな歯だ…。さあ、口、開けな!!」
「ひ…ぎぃ…」
歯を食い縛る七世。
「しょうがねぇな…。拳で叩き折ってやろうか?え?素直に口を開けたら、一本だけでカンベンしてやるよ」
岩の様な拳を目の前に突きつけられた七世は、カタカタと歯を鳴らしながら、口を開く。
「う…うぅ…」
「そうだ、そうだ…。いい子だねぇ…」
恵の指は、七世の上前歯を摘む。
「麻酔はしねぇけど、ちょっとだけ我慢しなよ、お嬢ちゃん…。痛いのは、一瞬だ…」
恵の指が、七世の前歯を揺らす。
ミシミシという音が、頭蓋骨に響く。
「ひぃ…。ひぃぃ…」
七世は、足をバタつかせることしかできない。
「ほ〜ら…。もう少しで抜けるぜ…」
2288投稿者:リリー  投稿日:2008年06月15日(日)20時54分28秒
その時、強烈な膝蹴りが、恵の顔面を襲った。
「ぐあ!!」
恵は、七世の身体から離れ、床に仰向けに倒れこむ。
「せっかく、矯正してキレイな歯になったんだ。引っこ抜かせるもんかよ!!」
七世の頭の上で、声がした。
「なあ?出っ歯ちゃん」
自由になった七世は、自分の目の前に立つ者の顔を見上げる。
「ダ、ダーさん!!」
ダーブロウ有紗が、仁王立ちして七世を見下ろしていた。
顔や身体には、割れたガラスの破片によって、所々小さな傷ができている。
「出っ歯ちゃん!!難田門司を追え!!」
「は、はい!!」
七世は、床に転がっている日傘を掴むと、部屋の奥に向かって駆け出した。
「ち、ちくしょう!!行かせるかよ!!」
恵も立ち上がって、七世の後を追い駆けようとしたが、足下にアーミーナイフが突き刺さったので、止まらざるを得なかった。
「おい、メスゴリラ!!おめぇの相手は、この私だ!!」
ダーブロウ有紗は、余裕の笑みで、上に向けた指を動かす。
かかって来い…とでも言う様に…。
2289投稿者:リリー  投稿日:2008年06月15日(日)20時54分50秒
恵は、ゆっくりとダーブロウ有紗の方を振り向く。
憤怒の表情…血が鬱血し、爆発寸前だ。
「て、てめぇ〜…!!やってくれやがったな…え?おい………あ!!」
恵は、唐突に叫んだ。
「歯が…!!歯がねぇ!!」
恵の上の前歯が一本、なくなっている。
「ぎゃははは!!これで、ミミーの仇は討ったぜ!!」
ダーブロウ有紗は、腹を抱えて笑った。
「こ、このアマァ…!!」
恵の食い縛った口から、唾液混じりの粘り気のある血が、滴り落ちる。
「ん?もしかして、これ、おまえの歯?」
ダーブロウ有紗は、爪先で足下に落ちている血の着いた歯を突いた。
そして次の瞬間、ダーブロウ有紗の足は、その歯を踏みつけた。
「あ、てめぇ…!!」
ゆっくり足を上げると、その歯はもう、エナメル質と象牙質の粉末になっていた。
「あらら…。うっかりして踏んづけちまったぜ…。せっかく家に持ち帰ってペンダントにしようと思ったのによぉ…。残念、残念…」
2290投稿者:リリー  投稿日:2008年06月15日(日)20時55分14秒
今日は、これでおちます
2291投稿者:117  投稿日:2008年06月15日(日)20時57分30秒
ダーさん、復活!それにしても、そんな少しの傷で済むとは、ダーさんもただ者ではない・・・続きも楽しみです!
2292投稿者:かっこええ!!  投稿日:2008年06月15日(日)21時32分35秒
ダーさん
2293投稿者:鬼だ  投稿日:2008年06月15日(日)22時52分38秒
 
2294投稿者:ええ!  投稿日:2008年06月15日(日)23時11分36秒
 
2295投稿者:リリー  投稿日:2008年06月16日(月)20時37分46秒
ダーさんと秋山さんの戦いは、ここから佳境になります
たしかにダーさん、秋山さん以上に非情かもしれませんね

では、更新します
2296投稿者:リリー  投稿日:2008年06月16日(月)20時38分54秒
「殺す!!殺す!!ぶっ殺す!!」
恵は、足を踏み鳴らしながら近づいてくる。
ダーブロウ有紗は、冷めた目で、恵を迎えうつ。
「ふん!!私は、何度もそのセリフを聞かされてきたが…実現できたヤツは、一人もいねぇな…」
「じゃあ、この私が最初で最後だ!!さあ、そのチンケなナイフを抜きやがれ!!」
「おまえの武器は?」
「あ?この肉体だよ!!」
恵は、バシバシと身体を叩いて、気合を入れる。
「ふ〜ん…。じゃあ、私も…」
なんとダーブロウ有紗は、身体中に着けた、ナイフを差したベルトを、すべて取り外した。
「てめぇ…。どういうつもりだ?」
半笑いで、恵が訊ねる。
「将棋の名人が、格下相手にやるだろ?『飛車角落ち』って…」
「あ?誰が、格下だって?」
「あ?おめぇだよ…。さしずめ『飛車角金銀桂香落ち』ってとこだな…」
2297投稿者:リリー  投稿日:2008年06月16日(月)20時39分12秒
「へ…?へへへ…じゃあ、『歩』と『玉』だけで戦おうってか?」
「おいおい…。『玉』はおまえ。私は『王』だよ」
将棋では、上の段の者が『王将』を持つ。
「何だったら、私の捨てた駒…おまえに貸してやろうか?」
ダーブロウ有紗は、床の上の様々なナイフを指差す。
「要らねぇよ!!」
恵の頭突きが、ダーブロウ有紗の額に炸裂した。
ビリビリとした衝撃が、ダーブロウ有紗の脳天から足下に駆け抜ける。
一歩、二歩、ダーブロウ有紗はよろめいた。
「どうだ?効くだろ?」
恵は、睨みつけたまま微笑んだ。
「ふ〜ん…。まあまあかな…」
「やせ我慢すんなよ?」
「してねぇよ…。今度、私がやっていい?」
「あ?おう、やれよ」
「うりゃ!!」
ダーブロウ有紗の右ローキックが、恵の左太ももに炸裂した。
2298投稿者:リリー  投稿日:2008年06月16日(月)20時39分29秒
「何だ?そりゃ?」
恵は、微動だにしなかった。
「お?何ともないの?」
「何ともねぇよ!!」
「凄ぇな…!!並みのヤツなら、大腿骨、真っ二つに折れるんだけど…」
「私を、並みのヤツと一緒にすんじゃねぇよ!!」
「もう一回、やっていい?」
「好きにしろよ」
もう一発、ローキックが炸裂する。
恵は、一歩も動かない。
「おお!?凄ぇ!!本当に、凄ぇ!!」
「へへへ…。これで、どっちが格下か、わかったか?」
2299投稿者:リリー  投稿日:2008年06月16日(月)20時39分49秒
「凄ぇ!!凄ぇ!!凄ぇ!!」
ダーブロウ有紗は、ローキックを打ち続ける。
「ふふふ…」
余裕の笑みの恵。
「凄ぇ!!凄ぇ!!凄ぇ!!」
ローキックを打ち続ける、ダーブロウ有紗。
「ふっふっふ…」
余裕の表情の恵。
「凄ぇ!!凄ぇ!!凄ぇ!!」
ローキックを打ち続ける、ダーブロウ有紗。
「ふ…ふっふっふ…」
余裕の表情の恵。
「凄ぇ!!凄ぇ!!凄ぇ!!」
ローキックを打ち続ける、ダーブロウ有紗。
「痛ぇな!!いい加減にしろ!!」
恵は、ダーブロウ有紗にラリアートを喰らわせた。
2300投稿者:リリー  投稿日:2008年06月16日(月)20時40分11秒
ダーブロウ有紗は、後ろに吹っ飛んで、大の字に倒れた。
「ぐああああ!!いってぇ!!ちくしょう!!いってぇぇぇぇ…!!!」
恵は、片足でピョンピョンとその場を跳びはねた。
「へへへ…。やっぱり、やせ我慢してんじゃん…」
ダーブロウ有紗は、ゆっくりと上半身を起こした。
恵は、左太ももを擦りながら睨みつける。
「もう、遊びは終わりだ!!本気でいくぜ!!」
「遊びは終わり?じゃあ、私の方は、もう少し遊んでやるよ」
ラリアートを喰らった首を少し回しながら、ダーブロウ有紗は立ち上がる。
「ぬかせ!!」
恵は、ダーブロウ有紗めがけて、アメフト選手の様に襲い掛かった。
「む…!?」
ダーブロウ有紗は、迎え撃つように構えた。
激突した2人の身体は、数あるうちの一つのドアをブチ破り、室内になだれ込んで行く。
2301投稿者:リリー  投稿日:2008年06月16日(月)20時40分33秒
部屋の中にいたショーコ女王様は、突然の乱入者に、思わずソファーから飛び上がった。
今、丁度、『薄汚いブタ野郎』に足を舐めさせている所だった。
「ちょ、ちょっと!な、何!?何事?」
「わ、わ、わぁ〜〜〜!!!」
ショーコ女王様の足を舐めていた肥満体の男は、パンツ一枚で部屋から逃げていく。
「け、恵ちゃん!?な、何してるの!?」
「翔子!!手ぇ、出すんじゃねぇ!!」
恵は、立ち上がって、ファイティングポーズをとる。
「手を出すなって言われても…死んでも、出さないわよ…!」
ショーコ女王様は、部屋の隅に身を寄せて、二人から離れる。
「よぉ!!ショーコ女王様!!これは、ご機嫌麗しゅう…」
ダーブロウ有紗は、腹筋の力で跳ね起きると、ショーコ女王様に向かって敬礼した。
「あ、あんた…!い、一体、な、何を…?」
「用があって来たんだよ!!『可愛い顔したオッサン』によ!!」
2302投稿者:リリー  投稿日:2008年06月16日(月)20時40分51秒
「『可愛い顔したオッサン』!?そ、そんなの、知らないわよ!!」
ショーコ女王様は、金切り声で叫んだ。
「あ?いいよ、もう!!ここにいることは、わかってんだ!!」
「だったら、てめぇを、ここから生きて帰すわけにはいかねぇな!!」
恵は、ダーブロウ有紗と、まるでプロレスの力比べのように、両手を組み合わせる。
2人は、部屋の中央で膠着状態になる。
「えい!!この!!」
ショーコ女王様は、力比べをしていて動けないダーブロウ有紗の尻を、鞭で叩いた。
「ああ、悪ぃ、ショーコ女王様…。いま、あんたと遊んでるヒマはねぇんだ!!」
ダーブロウ有紗は、ショーコ女王様の方を向くことなく言う。
恵も、ダーブロウ有紗に視線を向けたままショーコ女王様に命じる。
「おい、翔子!!奥の部屋に行け!!難田門司のダンナを、無事に逃がせ!!」
「う、うん!わかった!!」
ショーコ女王様は、ピンヒールを脱ぎ捨てると、慌てて部屋から出て行った。
2303投稿者:リリー  投稿日:2008年06月16日(月)20時41分34秒
以後、ダーさんと秋山さんの総合格闘技となります

では、今日はこれでおちます
2304投稿者:あげ  投稿日:2008年06月16日(月)20時42分23秒

2305投稿者:おもろ  投稿日:2008年06月16日(月)20時46分02秒

2306投稿者:117  投稿日:2008年06月16日(月)21時17分27秒
ローキックを繰り返すダーさんと、それを受け続ける秋山さん(笑)。最後のオチは「天てれ」でもありそうです。
そんなファイティング中に、鞭を打つショーコ女王様。可愛い(笑)。続きも楽しみです!
2307投稿者:ロー=歩でしょうか  投稿日:2008年06月16日(月)21時30分41秒
後から効いてきそうですね
2308投稿者:ダーさんがナイフを捨てたのは  投稿日:2008年06月16日(月)21時57分00秒
アキバ事件のことで自粛したとか?
2309投稿者:過去ログ行きはコチラ  投稿日:2008年06月16日(月)22時59分56秒
http://221.254.11.166/log/tentele/080114213544a.html
http://221.254.11.166/log/tentele/080114213544b.html
2310投稿者:あげ  投稿日:2008年06月17日(火)21時20分21秒

2311投稿者:ああ  投稿日:2008年06月17日(火)21時27分52秒

2312投稿者: 投稿日:2008年06月17日(火)22時02分50秒

2313投稿者:あげ  投稿日:2008年06月17日(火)22時23分38秒
 
2314投稿者:あげ  投稿日:2008年06月18日(水)00時53分56秒
                
2315投稿者: 投稿日:2008年06月18日(水)13時47分11秒

2316投稿者:リリー  投稿日:2008年06月18日(水)19時58分11秒
昨日は更新できませんでした
すみませんでした

今日は、早めに更新します
2317投稿者:リリー  投稿日:2008年06月18日(水)20時02分47秒
2308さん
将棋で例えるとそうでしょうね
地味な攻撃が後からジワジワ効いてきます

117さん
格闘技もお好きでしょうか?
私は大好きです

秋葉原の事件とは関係ないですが、今の時期、ダーさんがナイフで切り刻むとかいう展開にしなくてよかったです

あげや、激励の言葉、有り難いです

では、更新します
2318投稿者:リリー  投稿日:2008年06月18日(水)20時03分19秒
「へへ…!もう、間に合わねぇよ!!」
「この…!!忌々しいアマだ…!!」
「くくく…!ちょっと、ヤバい…。おまえの顔、歯が抜けてて…笑える…!腹に力が入らねぇ…」
ダーブロウ有紗は、小刻みに震えた。
「てめぇ!!ふざけんじゃねぇ!!」
恵は、一気に全体重をかけて圧し掛かる。
「お…!おお…!!」
ダーブロウ有紗の身体は、海老反りになり、ブリッジの状態で頭に床を着ける。
「お?首ブリッジ?どこまで耐えられる?」
恵は、ますます体重を乗せる。
「ぐぬぉぉぉ〜〜〜!!!」
しばらく重さに耐えるダーブロウ有紗だが、ブリッジを解いて、恵の腹に蹴りを入れた。
「ん?効かねぇな?」
恵は、ダーブロウ有紗の身体の上に馬乗りになり、マウントポジションを取った。
「あ、しまった!」
「へへへ!!さぁ〜てと…」
恵は、指を鳴らした。
2319投稿者:リリー  投稿日:2008年06月18日(水)20時03分58秒
「ちぃ!!」
ダーブロウ有紗は、両腕を顔面の前に出してガードする。
「ふん!!ふん!!ふん!!」
恵は、パンチの雨あられを、ダーブロウ有紗に打ち込む。
必死にガードするのだが、何発かはパンチが顔面を捉える。
その衝撃で、後頭部を床に激しくぶつけてしまう。
「が…はぁ…!!」
脳が、一瞬ぐらりと揺れた。
「ふん!!ふん!!ふん!!」
恵のパンチの連打は、降り止まない。
(く、くそ!!あれほど、総合格闘技を観てたのに…!!)
やすやすと、相手にマウントポジション与えてしまった…!
「ちぃぃ!!」
ダーブロウ有紗は、恵の胸元に抱きついて、上半身を密着させた。
(さてと…これから、どうするんだっけ…?)
ほとんどの場合、このまま膠着状態になり、レフェリーがブレイクをとるか、ラウンド終了のゴングが鳴るが…。
しかし、この戦いに、レフェリーもラウンドもない。
2320投稿者:リリー  投稿日:2008年06月18日(水)20時04分19秒
恵は、コツコツとダーブロウ有紗の後頭部に、拳を小刻みに当てていく。
(う…!こ、これ…思ったより効く…)
一定の力で、コツコツと叩いていく。
(そ、それに…思ったよりムカつく…!!)
さて、どうしたものかと考えている間、頭がぼおっとしてきた。
(や、やべぇ…)
しかし、とある重要なことに気がつく。
そう…この戦いには、レフェリーもラウンドもない…それから…ルールもない…。
ダーブロウ有紗は、思いっきり、恵の乳房に噛み付いた。
「ぎゃあ!!」
恵は、ダーブロウ有紗の頭を掴んで引き離した。
2321投稿者:リリー  投稿日:2008年06月18日(水)20時04分38秒
「てめぇ…顔面の骨、粉々にしてやる…!!」
恵は、頭を仰け反らせた。
頭突きが来る…!?
顔は、固定されている…!!
そうだ…確か…!!
右肩の穴…七世によって、つけられた傷穴に…ダーブロウ有紗は中指を突っ込んだ。
「ぐぎゃあ!!」
恵の、頭を掴む手の力が抜けた。
「モンゴリアンチョップ!!」
恵の両こめかみに、手刀を喰らわす。
「ぐあ!!」
恵は、思わず自分の頭を抱えた。
2322投稿者:リリー  投稿日:2008年06月18日(水)20時04分57秒
微かに、馬乗りになっていた腰が浮く。
「ふん!!」
ダーブロウ有紗は、再びブリッジをして、腹筋の力で恵を持ち上げた。
「うわぁ!!」
まるで、ロデオで振り落とされたカウボーイの様に、恵は床に放り出された。
「よし!!大技決めてやるぜ!!」
ダーブロウ有紗は、恵の首を抱えると、腹下に力を込め持ち上げる。
「喰らえ!!ブレーンバスター!!」
そしてそのまま、後ろの三角木馬に、恵の背中を打ちつけた。
「ぐああああ!!!」
恵は、海老のように背中が反り、勢い余って上半身が跳ね起き、床にバッタリと倒れる。
「とどめだ!!」
ダーブロウ有紗は、三角木馬に乗ると、その上から恵に向けてプランチャーを仕掛ける。
「調子に乗んな!!」
恵は体当たりするダーブロウ有紗を受け止めると、空中でくるりと身体を回し、三角木馬に叩き付けた。
「ぐああああ!!!」
今度は、ダーブロウ有紗が叫んだ。
2323投稿者:リリー  投稿日:2008年06月18日(水)20時05分18秒
「とどめは、私が刺す!!」
恵は、左肘を高々と上げる。
どてっ腹に、エルボーを見舞おうというのか?
「ヤ、ヤバ…!!」
両足を、恵の太い腕に絡ませる。
そして、手首を掴む。
恵の腕が、ピンと伸ばされる。
「…がぁ…!?う、腕ひしぎ逆十字…!?」
恵は、伸ばされてなるものか、と腕を曲げる。
ダーブロウ有紗は、全体重をかけ、腕を伸ばしにいく。
「ぐ…うぅぅ…!!」
恵は、ダーブロウ有紗の身体を、持ち上げた。
「マ、マジかよ!?」
これには、さすがに驚愕の声をあげる、ダーブロウ有紗。
「喰らえ!!」
そして、恵は左腕を振り下ろし、ダーブロウ有紗を再び三角木馬に叩き付けた。
2324投稿者:リリー  投稿日:2008年06月18日(水)20時05分39秒
恵は、それでダーブロウ有紗が手を放すだろうと考えていた。
しかし、ダーブロウ有紗は、意地でも手を放さなかった。
恵の左腕に抱き着いたまま身体を反らせ、遂に腕を伸ばすことに成功した。
「が…!!あああ…!!!」
恵の左腕が、有り得ない方向に曲がった。
苦し紛れに、宙を彷徨う恵の右手は、壁にかかった競馬に使う鞭を掴む。
「くぉのぉ!!」
その鞭で、ダーブロウ有紗の頬を打った。
「うお!?」
反射的に、ダーブロウ有紗は手を放し、顔を覆った。
そして、後転しながら恵から離れる。
「く…くそぉ…!!」
恵の左腕は、伸びきってしまっている。
「はは…!武器は肉体だけなんじゃなかったのか?」
「うるせぇ!!て、てめぇなんか…!!片腕で充分だ!!」
恵は、鞭を床に叩きつけて、ヘシ折った。
2325投稿者:リリー  投稿日:2008年06月18日(水)20時06分01秒
今日は、これでおちます
2326投稿者:あげ  投稿日:2008年06月18日(水)20時18分19秒

2327投稿者:あげます  投稿日:2008年06月18日(水)20時24分27秒

2328投稿者: 投稿日:2008年06月18日(水)20時28分29秒
恵は、それでダーブロウ有紗が手を放すだろうと考えていた。
しかし、ダーブロウ有紗は、意地でも手を放さなかった。
恵の左腕に抱き着いたまま身体を反らせ、遂に腕を伸ばすことに成功した。
「が…!!あああ…!!!」
恵の左腕が、有り得ない方向に曲がった。
苦し紛れに、宙を彷徨う恵の右手は、壁にかかった競馬に使う鞭を掴む。
「くぉのぉ!!」
その鞭で、ダーブロウ有紗の頬を打った。
「うお!?」
反射的に、ダーブロウ有紗は手を放し、顔を覆った。
そして、後転しながら恵から離れる。
「く…くそぉ…!!」
恵の左腕は、伸びきってしまっている。
「はは…!武器は肉体だけなんじゃなかったのか?」
「うるせぇ!!て、てめぇなんか…!!片腕で充分だ!!」
恵は、鞭を床に叩きつけて、ヘシ折った。
2329投稿者:117  投稿日:2008年06月18日(水)21時21分08秒
なんか、すごい戦いですね・・・僕はあまり「格闘技」は好みませんけど、リリーさんの描写はすごいと思います。
「く、くそ!!あれほど、総合格闘技を観てたのに…!!」、あまり関係ないんじゃ(笑)?
それにしても、乳にかぶりつくとは・・・(苦笑)。なんでもありの戦いの行方は?続きも楽しみです!
2330投稿者:>思ったよりムカつく…!!  投稿日:2008年06月18日(水)21時45分24秒
これ、笑った
本当にムカつくんだろうなw
2331投稿者: 投稿日:2008年06月18日(水)22時20分32秒

2332投稿者:デジ  投稿日:2008年06月19日(木)02時30分42秒
かなり久しぶりです。ここ当分、インターネットに接続できなくて大変でした。僕の小説が、落ちていないか心配です。
(表)ゴルゴさんが、表で登場してびっくりしました。人を謙遜するのがうまいですね。梓彩も、意外な一面がありましたね。
(裏)もう戦争状態になってますね(笑)反則だらけの異種格闘技のしょうはいのゆくえは?続きも楽しみです。
             (今日の小言)
確か梓彩の父親ってゴルゴさんに似ているって、本人が言ってましたよね?
もしかしてこの話からですか?
僕も、今年のメインドラマは面白いなと思います。OBのテレビ戦士が多数出演したり、ナンダーMAXが実は、東京に浮かんでた島だったり…
2333投稿者:あげ  投稿日:2008年06月19日(木)15時42分39秒

2334投稿者:リリー  投稿日:2008年06月19日(木)21時15分07秒
デジさん、本当に久しぶりです
私も、インターネットが接続できない状況に陥ったことがあります
原因は何なんでしょうね
デジさんの小説も楽しみにしてます

117さん、格闘技は好きじゃないですか
技の名前とか詳しい解説をしますね
首ブリッジ・・・両手を使わないで、頭で支えてブリッジをすること(首が強くないと、シャレにならないことになる)
マウントポジション・・・寝ている相手に馬乗りになる状態。上の人間は、下の人間に対してやりたい放題になる。絶対、相手にとらせてはいけない姿勢
ブレーンバスター・・・相手を逆さまに肩に乗せた状態で持ち上げ、後頭部を床に叩きつける技
プランチャー・・・トップロープに上って、相手に向かって体当たり気味に落ちる技。作中のダーさんの様に、自爆する技ナンバー1
腕ひしぎ逆十字・・・元々は柔道の技。相手の腕に絡み付いて、腕を逆方向に曲げる技

それでは、更新します

2335投稿者:リリー  投稿日:2008年06月19日(木)21時18分04秒
「ま、待ちなさい!!」
裏探偵『TDD』、コードネーム『ラバーズ(恋人)』の中川翔子は、難田門司を追う七世の後を追っていた。
足の速さには、自信のある翔子。
もう既に、七世の背中が見え始めた。
ここは、依頼主…難田門司を逃がすことが最優先…!!
後を追い駆けながら、懐から蒔きビシを取り出す。
これは、プレイの為に使う物だった。
床にこの蒔きビシをばら撒き、その上を、さっきの客…肥満体の男を裸にして転がそうと…その時に使う物だった。
だが今ここで、意外な時に使えるものだ。
2336投稿者:リリー  投稿日:2008年06月19日(木)21時18分27秒
「やああ!!」
翔子は、七世に向かって、蒔きビシを投げつけた。
足下に散らばる、蒔きビシ…。
これで、足止めができる…。
難田門司を逃がす時間を稼げる。
しかし、七世は当然の如く、ジャンプして避けた。
「あ…!!」
翔子は、根本的な間違いに気がつく。
蒔きビシは、逃げる時に使うのだ………追い駆ける時に使う物ではない…。
当然の如く、翔子は自ら投げた蒔きビシを踏んづけた。
しかも自分は今、走りやすい様に、ピンヒールを脱いでいて裸足だった…。
2337投稿者:リリー  投稿日:2008年06月19日(木)21時18分50秒
「痛い!!痛い!!痛い!!ギザ痛す!!」
翔子は、片足で跳びはねながら、足の裏に刺さった蒔きビシを抜いた。
七世は、思わず立ち止まり、後ろを振り返る。
「あなた…もしかして…戦闘要員じゃ、ないんじゃ…?」
図星だ…。
自分は、怪我をした仲間を治療する為の医療が任務…。
その戦闘スタイルから生傷の絶えない恵の側についていたのも、その為だ。
しかも今、恵は、ダーブロウ有紗によって、左腕を極められてしまった。
翔子の素早く的確な医療技術は、例え恵が戦闘中で身体を動かしていても、テーピング程度は行える。
それができれば、恵はその左腕でラリアートぐらいは放てるはずだ。
最もその能力が発揮できる現場にいないで、最も不適格な戦闘の最前線に出てきてしまっているのが、今の状況だ。
しかし翔子は、その心理を見抜かれないように、気を張って答えた。
2338投稿者:リリー  投稿日:2008年06月19日(木)21時19分19秒
「ふふふ…何を言っているの?私は、組織の中で一番戦闘能力が高いのよ?それが証拠に、難田門司氏を逃がすという、重大な使命を仰せつかったのよ…」
翔子は、腰に手を当てて、しっかりと足を踏みしめ、七世を睨む。
「さあ、この私に立ち向かう度胸が、あなたにあるのなら…かかってらっしゃい!!」
そう言って、人差し指を七世に向ける。
「そんなヒマ、ありません!」
七世は再び踵を返すと、難田門司を追い駆け始めた。
「ぐああ!!しまった!!そうだった!!」
本当に自分は、戦闘には全く役に立たない…。
第一、恵がこの役目を買って出るべきだろう…。
難田門司を逃がすのが優先事項だろうに…!!
ダーブロウ有紗と戦いたいからって…いや…そうなると、自分が、ダーブロウ有紗の相手を…?
翔子は、首を横に振る。
冗談じゃない…。
ダーブロウ有紗なんかと、戦えるものか!!
2339投稿者:リリー  投稿日:2008年06月19日(木)21時19分43秒
「だ、だから…!!待ちなさいって言ってるじゃないのぉ!!」
翔子は七世の背中に向けて、手を伸ばした。
すると、七世は急に立ち止まり、こちらを振り向いた。
「へ…?」
待ちなさいと言ったら…本当に…待った…?
「はああ!!」
七世は、日傘を振り回す。
途中で傘が開き、翔子のすぐ目の前を通過した。
風が、翔子を包む。
「…何…?」
七世は、日傘を閉じた。
すると、その瞬間、翔子の身に纏っている赤いボンデージ衣装が、バラバラと翔子の身体から剥がれ落ちた。
翔子は、丸裸にされてしまったのだ。
2340投稿者:リリー  投稿日:2008年06月19日(木)21時20分07秒
「きゃ、きゃあ!!ギ、ギザ恥ずかしすぅぅぅ〜〜〜!!!」
翔子は身体を隠すと、その場にしゃがみ込んだ。
「あなた、怪我はしてない?」
「…え…?ええ…?」
「かすり傷一つないんでしょ?」
「は、はい…」
「良かったわ…。このまま、そこにいて。次、邪魔したら、怪我をすることになるわよ?」
七世は、難田門司を追う為、再び駆け出した。
翔子は、七世の背中を見送ることしかできない。
「あ〜あ…。私には…向いてないんだよねぇ〜〜〜…。こういうの…。ただ、人の怪我を治すのが生き甲斐なだけ…」
そして、こう呟く。
「あと…美少女も…」
溜息をつく翔子。
「あの子…私に怪我をさせなかった…。少しくらいなら、傷つけてほしかったけど…。優しくて…可愛くて…ステキな子…」
しかし、すぐに頭を横に振る。
「ううん!!私は、ありりん一筋よ…!!浮気は…しないからね…。安心して…ありりん…」
2341投稿者:リリー  投稿日:2008年06月19日(木)21時22分55秒
デジさんも、梓彩のお父さんがゴルゴさんにそっくりっというのを、覚えてましたか
それを利用して、二人を親子にしました
苗字が違う者を親子にするせいで、作中の人物の離婚率が異常に高くなってしまいましたが…

今日は、これでおちます

明日は、もしかしたら更新できないかもしれません
2342投稿者:あげ  投稿日:2008年06月19日(木)21時24分23秒

2343投稿者: 投稿日:2008年06月19日(木)21時51分12秒

2344投稿者:117  投稿日:2008年06月19日(木)21時59分52秒
「しょこたん語」連発ですね。それにしても、しょこたん,無常。終いには、意気消沈(笑)。
七世もクール・ビューティーで、カッコイイですね。続きも楽しみです!
2345投稿者:1600  投稿日:2008年06月19日(木)23時29分00秒
お久しぶりです!
小説には目を通していたものの感想書く時間がありませんでした;
しょこたん、相変わらずです;w
確かにこの小説離婚率やたら高いですよね;
続きも楽しみにしてます
2346投稿者:秋山さんには完敗でも  投稿日:2008年06月19日(木)23時32分34秒
しょこたん相手では楽勝でしたね、七世・・・
2347投稿者:あげ  投稿日:2008年06月20日(金)20時40分16秒
2348投稿者: 投稿日:2008年06月20日(金)20時47分14秒

2349投稿者: 投稿日:2008年06月20日(金)20時48分06秒

2350投稿者: 投稿日:2008年06月20日(金)20時55分44秒

2351投稿者: 投稿日:2008年06月20日(金)20時55分51秒

2352投稿者: 投稿日:2008年06月20日(金)21時03分37秒

2353投稿者:あげ  投稿日:2008年06月21日(土)09時21分35秒
 
2354投稿者:リリー  投稿日:2008年06月21日(土)20時56分33秒
昨日はすみませんでした
1600さん、お久しぶりです
久しぶりのコメントを貰えて、とても嬉しいです
これからも、よろしくお願いします

117さん、クールな女性、私も好きです
なれないんですけどね…

2346さん
相性もあるんでしょうね
ダーさんと秋山さん、一見互角に見えますが、ダーさんは秋山さんの土俵で戦ってます
本来ならば、ナイフを使いますから

では、更新します
2355投稿者:リリー  投稿日:2008年06月21日(土)20時57分38秒
「ぐあああ!!!」
「うりゃあああ!!!」
部屋の中央、ダーブロウ有紗と恵は、もう足を止めてディフェンス無視で殴り合いをしている。
しかし、恵は左腕が使えない。
右腕一本を振り回す。
恵が一発パンチを当てる毎に、ダーブロウ有紗は、5発程打ち込んでくる。
自然と、恵はワンパンチで相手を沈めようと、腕は大振りになる。
そして、案の定、そのパンチは空振りになる。
「うぉ…」
大きく、バランスを崩す恵。
顎ががら空きになった。
「はぁ!!」
ダーブロウ有紗の左フックが、恵の顎を打ち抜いた。
「ぐ…」
一瞬、恵の目が白目になる。
そして、前のめりに倒れる。
2356投稿者:リリー  投稿日:2008年06月21日(土)20時58分05秒
(ヤ、ヤバい…!!)
恵は、寸でで踏み止まった。
しかし、ダーブロウ有紗は恵の頭を抱えると、右膝蹴りを放った。
「あぐぅ!!」
恵の左眉が切れた。
思わず、恵は床に伏せて、亀のように丸まった。
ダーブロウ有紗は、恵の両肩に手を置いて、膝を脳天に向けてぶち込んだ。
「がぁ!!ぐああ!!」
恵は、痛みに呻いた。
「どうだ!?ええ?イジメっ子のてめぇが、イジメられる気分は!?おう!?」
ダーブロウ有紗は、何度も、何度も恵の脳天に膝を叩き込む。
「ぐああ!!て、てめぇ…!!や、やめやが…れ…!!」
「イジメやがって!!ミミーをイジメやがって!!ジョーはまだ、入院中だぞ!!コンチクショウメ!!」
床に、鮮血が撒き散らされた。
2357投稿者:リリー  投稿日:2008年06月21日(土)20時58分22秒
「今、てめぇがイジメられてんだ!!おう!?私が、てめぇをイジメてやってんだ!!コラァ!!!」
「く…!わ、私が…イ、イジメられてる…だとぉ…?」
心の折れかけた恵に、怒りの感情が沸き起こる。
「ふ、ふ、ふざけんなぁぁぁ〜〜〜!!!」
恵は、肩膝を立て、身体を起こした。
しかし、目の前にダーブロウ有紗はいない。
「…?」
「後ろだ!!」
「てめぇ!?」
「ふん!!」
ダーブロウ有紗は、恵の右ひざと腰に手を掛けると、身体中の力を振り絞り、持ち上げた。
「お…お…おお…!!」
「喰らえ!!バックドロップ!!」
ダーブロウ有紗は、ブリッジで恵を後ろに放り投げた。
それと同時に、凄まじい破壊音がおこった。
2358投稿者:リリー  投稿日:2008年06月21日(土)20時58分44秒
ダーブロウ有紗は、しばらく仰向けに、大の字に天井を眺めた…。
「へへへ…。これで…ヤツが、また起き上がってきたら…結構、ヤバいな…」
しかし、その気配は一向にない。
すると、ダーブロウ有紗のトラックスーツのポケットの携帯電話が震えた。
「お?壊れてなかったか?」
『クリムゾン・レイン』…七世からだ。
「もしもし…。出っ歯ちゃんか?」
〔はい。『クリムゾン・レイン』です。『マッド・エッジ』…無事ですか?〕
「ああ…。一応な。で、そっちは?」
〔そ、その…難田門司ですが…〕
「あん?逃がしたのか?」
〔い、いえ…!捕まえました…!!け、けど…〕
「ん?どうした?声がおかしいぞ?」
〔あ、あの…。な、難田門司…凄く…可愛いんですけど…〕
「あん?」
〔あの、写真より…実物はずっと可愛くて…。そ、それが…動いてて…ちょっと…ヤバいんですけど…〕
「………で、おまえはどうしたいの?」
〔け、警察が来るまで…抱きしめてても…いいですか…?〕
「………好きにしろ…」
ダーブロウ有紗は、携帯を切った。
2359投稿者:リリー  投稿日:2008年06月21日(土)20時59分03秒
「さてと…」
ダーブロウ有紗は、ゆっくりと上半身を起こし、立ち上がる。
そして、後ろを振り返る。
三角木馬が壊れている。
その中で、恵が大の字に倒れ、気を失っている。
「『難田門司事件』…これにて終了だ…」
じっと、恵を見下ろす。
「仇は討ったぜ…。ミミー…。ジョー…」
しかし、すぐに首を横に振る。
「いや…まだ、2人いたんだっけ…」
後藤理沙…そして…影の如く、その正体を掴めない…箕輪はるか…。
この2人が、まだいる…。
「ま、取り合えず、デコッパチに連絡するか…。いや、ミミーが先だな…」
ダーブロウ有紗は、携帯を再び取り出した。
「そう言えば…アスミ女王様がいねぇじゃん…!是非、謁見したかったんだけどな…」
2360投稿者:リリー  投稿日:2008年06月21日(土)21時00分11秒
ダーさんと秋山さん、ドSの女同士の戦いは終わりました

今日は、これでおちます
2361投稿者:117  投稿日:2008年06月21日(土)21時13分21秒
門司が可愛くて、抱きしめたいって・・・(笑)。何とも、無常な終わり方ですね。
理沙とみのぽ〜は謎のままですが・・・今後の展開のカギになるのでしょうか?続きも楽しみです!
2362投稿者:ここまで可愛い  投稿日:2008年06月21日(土)23時05分03秒
難田門司が見てみたいw
2363投稿者:デジ  投稿日:2008年06月22日(日)03時49分11秒
(前回のから)瞬間的に終わってしまいましたね七世VSしょこたん戦。
しょこたんの医療技術は、裏にまで使用されるんですね。
そしてあくまで有沙一筋なんですね(笑)
(今日の分)門司の捕獲は呆気なく終わってしまいましたね。
有紗VS恵戦
すさまじい戦いでしたね。そして最後まで格闘一色でしたね。
あと三人。この後もどうなっていくのか楽しみです!
            (今日の小言)
金曜日から日曜日まで、文化祭で昨日も9時から忙しかったです。
ところで、ハリセンボンってどっちがボケでどっちがツッコミでしたっけ?
2364投稿者:みのがボケよ  投稿日:2008年06月22日(日)04時37分25秒
 
2365投稿者: 投稿日:2008年06月22日(日)09時19分26秒

2366投稿者:リリー  投稿日:2008年06月22日(日)20時55分44秒
どうなんでしょうね?難田門司の顔って…
私も、想像つきませんが…
117さんの仰るとおり、あんまり難田門司は懲らしめられてないまま終わりましたね
デジさん、今の時期に文化祭ですか?
私の高校では、文化祭らしい文化祭(店を出したり)がなかったので、羨ましいです
格闘技の描写も、やってみて楽しかったです

では、更新します
2367投稿者:リリー  投稿日:2008年06月22日(日)20時56分44秒
歌舞伎町の通りを、ゴルゴこと松本政彦と、中田あすみが肩を並べて歩いている。
「それにしても長いよ。ゴルゴさんの話し。あず〜、その間、ずっと顔を真っ赤にしてうつむいてたよ。かわいそうに…」
「だって…あいつに伝えたかったんだよ。親父にだって青春時代があって、精一杯がんばってたって…!!」
「でもさ、青春時代をがんばったって、今はヤクザ稼業じゃないか」
「おい、おい!!あくまでも梓彩には、今の仕事のことは内緒なんだからな!間違っても言わないでくれよ!!」
「そっちこそ…!梓彩に…みんなに私のこと、言うんじゃないよ?」
「それはわかってるけど…びっくりしたな…本当に…」
「あんなに、露骨に叫んじゃって…!後であの子達に、私達の関係、しつこく聞かれちゃったんだからね?」
「何て、答えた?」
「私の父親が務めてた会社の部下で…時々家に遊びに来てた人だったって…そう言っておいた」
「そうか…。ちなみに、俺が勤めてたの、『TDK』だから…。一応、伝えておくぜ」
「『TDK』?結構、大きな会社に務めてたね」
あすみは、そう言えば『TDD』に…『TTK』にも名前が似ているな…と、ふと思った。
2368投稿者:リリー  投稿日:2008年06月22日(日)20時57分03秒
松本は、下をうつむきながら、落ちている空き缶を蹴飛ばしながら呟いた。
「それがリストラされて、この通り…。妻も娘も離れていっちまった…。今は、裏社会の代理人ときてる…」
「ちなみに、あず〜には、今の仕事はなんて?」
「流通関係の、小さな会社を経営してるって…そういうことにしてるよ」
「ああ…。だから、野球のチケットのプレゼントなんて、気前の良いカモフラージュをしたってわけか」
「ん?ああ、あれはな…カモフラージュなんかじゃなくて…ほんと、純粋な意味でのプレゼントなんだ…」
「プレゼント?」
「だって、嬉しいじゃないか!!娘が、俺の大好きだった野球をやってくれてたなんて…。その仲間にもさ…」
「ふ〜ん…。そうなのか…。だったら、くれぐれも、あず〜を悲しませるような事は、しないことだね」
「生意気言うじゃないか!!自分だって…!」
「まあ、人のことは言えないけどね…。昼はお嬢様学校の先生、夜はSMの女王様…なんてね…」
「しかし、その実態が…ハンパなく、ヤバいんだけどな…。え?『TDD』の『タワー(塔)』さんよ…」
あすみは、敢えて何も言わず、平然と歩き続ける。
2369投稿者:リリー  投稿日:2008年06月22日(日)20時58分09秒
「それにしても、手広くやってやがんな。『TDD』も…。教育から麻薬組織のボスの警護まで…」
「まあ、聖テレに身を置いているのは…理由があるんだけどね」
「理由?」
「スカウト…。有望な子供達を『TDD』のメンバーにする、青田買いってヤツね…」
「スカウト!?」
「それで、春先に聖テレの体育教師を事故に合わせて、長期入院させて私が非常勤講師として潜り込み…養護教員に毎日少量の毒を飲ませて、また入院させ、翔子を送り込んだ…」
「お、おい!!まさか、梓彩には…」
「まさか!!父親の前で言うのもなんだけど…あず〜は、全く平凡な子よ。ま、聖テレに入れるくらいだから、頭はそれなりに良いけど…」
「そ、そうか…。でも…な、何で…聖テレなんだ…?」
「うん…。噂に聞いたのよね。凄い身体能力を持った子達が、一編にあの学校に入学したって…」
「そ、その子達を…?『TDD』に引き込む為…?」
「そうよ。それが、あの野球部の子達ね…。そして、初等部に一人、高等部にも一人…」
「で、どうするんだ?」
「う〜ん…。まあ、そこそこやるから、私は引き入れてもいいんじゃないかって、ボスに報告したのね。でも、ボスが言うにはダメだって…」
「ダメ?じゃあ、どうするんだ?このまま学校に残ってても、意味ないんじゃ…?」
あすみは微笑むと、ゆっくりと首を横に振った。
「それがね…その子達の大元に…凄いのがいるのよ…。あらゆる面で、アプローチしてかなきゃいけないから…一応、残ってる。戦闘要員として迎え入れる予定よ」
2370投稿者:リリー  投稿日:2008年06月22日(日)20時58分21秒
「でもなぁ…。戦闘要員って言ったら…あの秋山さんがいれば充分だろ?」
「恵?あいつは頭が悪すぎる!!だから、常に私か翔子…または弥勒姉さんが着いててやらなきゃならないし…。それに…」
あすみは、顔を曇らせる。
「あいつ等を…越える逸材を…何としてでも探さなきゃ…」
「あいつ等って?」
「『エンペラー(皇帝)』、『チャリオッツ(戦車)』、『マジシャン(魔術師)』………この、3人よ…」
2371投稿者:リリー  投稿日:2008年06月22日(日)20時59分06秒

「そんなに凄いのか?その3人…」
「あんた、裏の世界に居たら、この名前、聞いたことあるでしょ?角田信朗…」
「か、角田!?あの…去年の9月、アメリカの次期大統領候補って政治家を暗殺したって言う…?あいつ、捕まったんじゃ…?」
「助け出したの…。我が組織が…。そして、角田はコードネーム『チャリオッツ』を与えられて、戦闘要員の中じゃ組織?1になったわ…」
「で、でも…助け出したって…そんなに簡単に…」
「助け出したのが、『エンペラー』…」
「う…」
「『エンプレス(女帝)』…弥勒姉さんも一緒にいたけど…ほとんど、『エンペラー』一人の活躍だったって…弥勒姉さん本人が言ってたわ…」
「で、その最後の一人…『マジシャン』ってのは…?」
「私はまだ…て、言うか、ボス以外、『マジシャン』の姿を見た者はいないの」
「何者だ?それ…」
「この名前も聞いたことあるでしょ?『怪盗ノッポ』…」
「『怪盗ノッポ』?盗み出せない物はないって言われてる…?あれ、都市伝説じゃなかったのか?」
「ううん…。ちゃんと実在してるんだって。それが、『マジシャン』…。ボスと旧知の仲らしいんだけど…。その2人で『TDD』を創ったのよ。」
その『怪盗ノッポ』は絶対に人前に姿を現せない為、ボスの一人二役なのではないか…との説もあるが…。
「都市伝説と言えば、もう一つあるでしょ?あの…『怪人』…」
あすみがそう言い掛けた時、サイレンを鳴らしたパトカーが通り過ぎて行った。
「あ…あれ…『エトワール』の方角じゃないか…?」
松本の言葉に、あすみは嫌な予感を感じた。
2372投稿者:リリー  投稿日:2008年06月22日(日)21時02分33秒
今日は、何ともセリフだらけでした…

では、これでおちます
2373投稿者:117  投稿日:2008年06月22日(日)21時06分33秒
中田さんの正体・目的も明らかになってきましたね。
一応父だから、ゴルゴさんは梓彩のことを心配しているのには、ちょっぴりホッとしました。続きも楽しみです!
2374投稿者:117  投稿日:2008年06月22日(日)21時09分06秒
あれれ、なんか「中田さん」なんて書いちゃいましたが、あすみ先生のことです。
そういえば、この「謎の3人衆」の存在も気になります。
2375投稿者:デジ  投稿日:2008年06月23日(月)02時21分39秒
今日は、今後のなぞだらけで終わってしまいましたね。
女帝と帝王。名コンビですね。
あすみ先生悪者染みてきましたね。↓
今日の「そうよ。それが、あの野球部の子達ね…。そして、初等部に一人、高等部にも一人…」の部分って遠まわしに「TTK」ですよね。
ところで、あすみ先生は、静岡(合宿)に行ってなかったんですか?
マジシャンと怪人とは誰なのか。続きも楽しみです!
            (今日の小言)
文化祭無事終わりました。疲れた+楽しかったです。
明日から新MTKだそうです。期待です。
            〜以上〜
時間帯が悪いのか何なのかわかりませんが、小説に全然コメントがありません。(汗)
そこで、皆さんにこうしたほうがいいよ。とかのアドバイスかなんかを受け付けます。
2376投稿者:あげ  投稿日:2008年06月23日(月)20時25分34秒
あげ
2377投稿者:リリー  投稿日:2008年06月23日(月)20時38分08秒
デジさん、いよいよ始まりましたね
楽しみにしてたんですよ
賑やかな内容になりそうですね
甜歌のピッキングというところ、私の小説を意識して下さったみたいで、嬉しいです
こんなに多くのキャストが織り成す物語、凄いスケールの事件になりそうですね
お互い、がんばりましょう
また、別の名前でコメントさせてもらいます

117さん
ゴルゴさんも、やはり娘が可愛い…という風にしておかないと、梓彩が可哀そうで…
中田さんでも、違和感はないですよ
もう、すっかり大人の女ですもんね

では、更新します

2378投稿者:リリー  投稿日:2008年06月23日(月)20時39分10秒
2人が『エトワール』の前まで来ると、そこはもう、黒山の人だかりだった。
「ど、どうしたの?」
あすみが、長身を思いっきり爪先立ちして伸ばし、店の様子を窺う。
店の前には、パトカーと救急車が…そして、入り口のドアは、メチャクチャに壊れている。
「た、大変だ…」
青い顔をして呟くあすみに、松本は恐る恐る聞いた。
「な、何が…起ったんだ?」
「わからないけど…」
その時、2人の救急隊員が、担架に人を乗せて、ゆっくりと店から出てきた。
担架に乗っているのは…。
「け、恵!?」
小さく呟くあすみに、松本も反応する。
「け、恵って…!!秋山さんが…?」
「ボ、ボコボコにされてる…。だ、誰が…一体、誰が恵をこんなに…」
2379投稿者:リリー  投稿日:2008年06月23日(月)20時39分31秒
その、あすみの疑問は、すぐに解決することになる。
続いて店から出てきたのは…オレンジ色の派手なトラックスーツに身を包んだ…ダーブロウ有紗だからだ。
「ダーブロウ!!」
おもわず、あすみは叫んだ。
「ん?」
その声に、あすみは反応し、辺りを見回す。
あすみは、慌てて人ごみに姿を隠した。
「ど、どうしたんだ!?一体…」
「まずい…。おそらく…難田門司は…捕まった…」
「ええ…!?」
松本の顔も、青褪めた。
「まさか…ダーブロウが、恵をここまで叩きのめすなんて…。だったら、翔子は?まさか、翔子も!?」
「わ、私は大丈夫…」
後ろで声がする。
振り返ると、中川翔子が、バスローブを羽織って、震えながら立っていた。
2380投稿者:リリー  投稿日:2008年06月23日(月)20時40分02秒
「翔子…。あんた…何て恰好してるの?」
「しょうがないでしょ!私、裸なんだから…」
「な、何があったの?」
「『R&G』が…奇襲をかけてきたの。で、恵ちゃんが…ダーブロウ有紗と戦って…」
「負けたのね…。でも、どうやって恵を相手に勝ったんだ?ダーブロウ…」
「さあ…。どうせ、卑怯な手を使ったんじゃないの?身体にクリーム塗ってヌルヌルにしてたとか…。恵ちゃんがガチンコ勝負で負けるなんて、考えられないよ」
「ま、それ以前に、格闘技の試合じゃないんだから、卑怯も何もないんだけどね…。でも…おそらく、恵は警察病院行きになるね…」
「あ〜あ…。恵ちゃん、逮捕かぁ…。いっぱい人殺してるから…死刑になるかも…」
あすみと翔子の会話を聞いていた松本は、裏返った声で叫んだ。
「ダーブロウだって!?ダーブロウ有紗!?」
「こ、声、大きいよ!!ゴルゴさん!!」
翔子は、人差し指を口の前に持って行って、松本を睨む。
2381投稿者:リリー  投稿日:2008年06月23日(月)20時40分44秒
「ダーブロウのこと…知ってるの?ゴルゴさん」
あすみは、何故、松本がダーブロウ有紗の名前に反応したのかが気になった。
「し、知ってるも何も…あの女…去年…」
その時、轟くような怒鳴り声が通り中に響いた。
「こらぁ〜〜〜!!!誰だ!?さっきから、私の名前を呼んでんのは!!」
黒山の人だかりが、真っ二つに割れた。
「…え?」
そこには…傷だらけのダーブロウ有紗が、仁王立ちをしてこちらを睨みつけている。
「あ…あすみ…?しょこたん…?」
松本は2人の姿を探すが…既にあすみと翔子は姿をくらましていた。
「お!?その暑苦しい顔…どこかで見覚えがあるな…」
目を細めて、ダーブロウ有紗は歩み寄って来る。
「い、いえ…。しょ、初対面です…」
松本は、後退りながら手を振って答える。
「ん…!?あ、思い出した!!てめぇ…!!!」
「ひぃ…!!」
松本は、転びそうになりながら逃げ出したが、すぐにダーブロウ有紗に追い着かれ、取り押さえられてしまった。
2382投稿者:リリー  投稿日:2008年06月23日(月)20時41分14秒
「おい、こら!!待て!!おまえ、たしかゴルゴとか言ってたな?ケチなチンピラの…」
「は、はい…。お、お久しぶりですぅ…」
「おまえは、いつかリッピー達を裏の世界に巻き込んで、罠にはめやがった…。今回の件も、おまえが絡んでるな?」
「こ、今回の件?な、何のことですか?」
「リッピーと、ツンツン、山本組のエロ組長の屋敷に監禁されてたんだ!!とぼけんなよ!!」
「い、い、いや…それは、初耳です…」
「それは?それはって何だよ?おまえ、何だと思ってたの?まさか…難田門司と関係してんじゃねぇだろうな?」
松本は、心臓が止まりそうになった。
松本は、もともと『エトワール』のオーナー、難田維里香と知り合いだった。
難田門司は、妹の組の組長である山本に保護を求めたが、山本はこれに難色を示した。
そんな難田門司に、破格の報酬で用心棒として『TDD』を紹介したのが…松本なのだ。
他にも、難田門司の身の回りの世話をしていたので…どっぷりと関係している。
2383投稿者:リリー  投稿日:2008年06月23日(月)20時42分14秒
今日は、これでおちます
2384投稿者:あげ  投稿日:2008年06月23日(月)20時43分02秒

2385投稿者:リリー  投稿日:2008年06月23日(月)20時54分36秒
あと…デジさん

野球部は、まだ合宿に行ってません
梨生奈達が、モニークと決着をつけた後で、原村を訪れる予定です
2386投稿者:あげ  投稿日:2008年06月23日(月)20時56分03秒

2387投稿者:117  投稿日:2008年06月23日(月)21時18分50秒
ゴルゴさんとダーさんが再会。確か、以前にも何かで会っていましたね。
意外と呆気なかった(凄い戦いでしたが)門司の逮捕。続きも楽しみです!
2388投稿者:身体にクリーム塗ってヌルヌルにしてたとか  投稿日:2008年06月23日(月)22時14分06秒
ヌル山www

そういえば、恵も「秋山」だな
2389投稿者: 投稿日:2008年06月23日(月)22時20分43秒

2390投稿者:サムドラで  投稿日:2008年06月24日(火)20時40分34秒
ダーさんとゴルゴは接触してるね
2391投稿者:リリー  投稿日:2008年06月24日(火)21時00分55秒
そうですね
『サムドラ』では、ダーさんとゴルゴさんが一瞬だけ絡んでます
貯金通帳を強奪されたシーンです

もう少しで、五回・裏も終わりです

では、更新します
2392投稿者:リリー  投稿日:2008年06月24日(火)21時02分14秒
「い、いえ…難田門司なんてそんな大物…知りませんよ…」
「本当か?だったら、何でこんな所にいるんだ?」
「そ、それは、こっちのセリフですよ!!だって、ここは、私の庭みたいなもんなんですから…。私…ケチなチンピラですから…」
「ん…?ま、それもそうだな」
ダーブロウ有紗は、締め上げていたゴルゴの首を、解放してやった。
咽ながらも、松本は一応、ダーブロウ有紗に尋ねてみる。
「で、その…あの…あなたは…どうしてここに…?」
「あん?私か?その難田門司を捕まえに来たんだよ…」
やっぱり…松本は、どっと汗を掻いた。
難田門司のことだから、自分の名前を警察に言うことはしないだろうが…。
「あ、そうだ…!なあ、難田門司の顔、見たことある?笑っちまうんだ、これが…」
ダーブロウ有紗は松本に、難田門司の顔写真を見せる。
毎日見てきた顔なのだが…松本は無理矢理、腹を抱えて笑った。
2393投稿者:リリー  投稿日:2008年06月24日(火)21時02分49秒
「まあ、私はこれから警察に行って、事情聴取とか報告とかしなきゃならねぇから…おまえの相手をしてるヒマはねぇ」
「そ、そうですか…。いや〜、それは残念…」
「いいか?悪さすんじゃねぇぞ?仕事で私に、会いたくねぇだろ?」
「は、はい…。そ、それは…もちろん…」
ダーブロウ有紗は、パトカーに乗り込んだ。
そのパトカーが行ってしまうと、松本は全身から滝の様に汗を掻いた。
「は、は、はぁぁぁ〜〜〜…。じゅ、寿命が…縮んだ…」
「ゴルゴさん、ダーブロウと知り合いだったの?」
その場でへたり込む松本の後ろに、いつの間にか、あすみと翔子が立っていた。
「あ…!!お、おまえ等…!!逃げやがったな!!俺、一人で…メチャクチャ恐かったんだぞ!!」
松本は、ゴルゴという異名に似合わない、情けない裏声で叫んだ。
「だって、おっかないじゃん…。恵が敵わなかったんなら、私が勝てるわけないもん。でも…」
あすみは、松本をジロリと睨む。
「まさか…ダーブロウに情報を流したの…ゴルゴさんじゃないだろうね…?」
2394投稿者:リリー  投稿日:2008年06月24日(火)21時03分11秒
悲壮な顔で、松本は立ち上がった。
「バ、バカ言うな!!俺だって、難田門司に雇われてたんだ!!報酬だって、貰えず終いなんだぞ!!」
「………確かに…そうだね…。それを言うなら…私達もそうだ…。参ったね…」
「でもさ、ゴルゴさん。どうやって、ダーブロウ有紗なんかと知り合ったの?」
翔子の疑問に、松本は渋々答える。
「あ、あの人…『TTK』とかいう…暗殺組織の人で…俺、去年の9月、その組織に人を探せって依頼を受けたんだ…」
「その依頼をしたのが…ダーブロウ有紗なの?」
「いや…。あの人も、俺が探すことになってた同じ人物を探してたんだ…。その人物ってのが…野球部にもいた中村有沙だが…。で…俺が先に見つけたら…あの人が…」
「なるほど…ダーブロウに脅されて、かっさらわれた…こんなとこか…」
あすみは、溜息をついて言った。
「ちくしょう…あの女…鬼だぜ…。俺の成功報酬…通帳ごとぶん獲って行きやがった…!!あの金で、元かみさんの慰謝料と梓彩の養育費を払おうと思ってたのに…」
それで、まだこんなヤクザ稼業に手を染めなければならないのだ…。
2395投稿者:リリー  投稿日:2008年06月24日(火)21時03分47秒
「でも、今回ばかりはゴルゴさんに感謝だね。あの長い講演会をしてくれたおかげで、店に到着するのが、ほんの僅か遅れたから…」
そう…もし、30分早く店に来ていたら、自分もダーブロウ有紗と鉢合わせになっていた所だ。
恵と2人掛かりで向かっても、大怪我は避けられなかっただろう。
いや、自分も警察に捕まっていたかもしれない…恵の様に…。
その恵を乗せた救急車は、発進する。
「あすみ!!そんなこと言ってる場合じゃ、ないでしょ!!恵ちゃん、どうなるの?もし…組織のこと…私達のこと…白状したら…」
「それはないよ。恵が、仲間を売るはずないよ…。それに…」
そう言い掛けて、あすみは思わず言葉を失った。
3軒先の雑居ビルの屋上に…人を見たからだ…。
とても奇妙な恰好をしている…その人物…。
その奇妙な人物とは………浴衣を着て…顔を白塗りした…『ピエロ』…。
2396投稿者:リリー  投稿日:2008年06月24日(火)21時04分25秒
あすみは、じっとその人物を凝視しながら、言葉を続ける。
「ゴ、ゴルゴさん…。さ、さっきの…話しの続きだけど…」
「は?続き?何の?」
「都市伝説…。『怪盗ノッポ』と…あと一人…」
「ああ…。あと一人?」
「そう…あと一人いるの…。それが…」
「それが?」
「『怪人・浴衣ピエロ』…」
「『浴衣ピエロ』?何だ、そりゃ?」
「『怪盗ノッポ』は、『物』を盗む…。それに対し、『浴衣ピエロ』は、『人』を盗む…」
「『人』を…盗む…?」
「その…『浴衣ピエロ』が…私達のボス…。『フール(愚者)』なの…」
あすみは、いつの間にか…ビルの屋上の『浴衣ピエロ』を…見失っていた。

(『五回・裏』・・・終了)

2397投稿者:リリー  投稿日:2008年06月24日(火)21時06分13秒
「もう少しで終わります」と言っておいて、今日、終わってしまいました

『六回・表』は、原村が舞台となります
2398投稿者:117  投稿日:2008年06月24日(火)21時31分43秒
なるほど、「サムドラ」で絡んでいましたか。
謎の怪人・・・果たして、誰?どんな人物なんでしょうか?気になります。
そして次回は「原村」登場ですか。続きも楽しみです!
2399投稿者:1600  投稿日:2008年06月24日(火)21時56分46秒
ついに原村が舞台なんですか〜
これはもう一度らりるれろを見直さなくては;
それにしても浴衣ピエロって言うのはやっぱ空宙ブランコからですか?
2400投稿者: 投稿日:2008年06月24日(火)22時11分07秒

2401投稿者:あげ  投稿日:2008年06月25日(水)19時26分14秒
 
2402投稿者:リリー  投稿日:2008年06月25日(水)20時57分05秒
117さん
今回から、原村です
少し、『らりるれろ』の冒頭とダブります

1600さん
そうです
『怪人・浴衣ピエロ』のモチーフは、『空宙ブランコ』の一節、『浴衣着た、ピエロが笑う』です
ビジュアルを想像してみると、恐怖ですよね
浴衣姿で顔面白塗りのピエロが夕暮れで笑ってるんですよ…
まあ、この場合、恋愛が上手くいかなかった自分を『ピエロ』の様だ…と揶揄してるんでしょうが…

では、更新します
2403投稿者:リリー  投稿日:2008年06月25日(水)20時59分59秒
『六回・表』

≪2007年8/10(金)≫
長野県の八ヶ岳の西南部に、原村という小さな村がある。
人口は約7500人。
農業と畜産業が盛んな、のどかな村だ。
夏には避暑地として、冬にはスケートやスキーといったウィンタースポーツを楽しむ為、観光客が訪れることもあるが、一年を通して静かな村である。
今は8月。
水田の稲の緑と、空の鮮やかな青のコントラストが美しい。
2404投稿者:リリー  投稿日:2008年06月25日(水)21時00分27秒
「うわぁ…。綺麗な所だねぇ…。原村…!!」
藍は両手を広げ、胸いっぱいに空気を満たした。
「ほんまやな…。静岡の富士山も絶景やったけど…八ヶ岳も中々のもんや!!」
七海も、右手をかざして八ヶ岳を仰ぎ見る。
「あい〜ん、ななみん!!いつまでそこにいるの?早く行くよ!!」
あすみの声が聞こえる。
20メートル程前方に、野球部の仲間達がいた。
いつの間に、あんなに先へ行ってしまったのか?
「ちょっと!!待ってよ〜!!」
「ほんま、せっかちやなぁ…。この、ごっつ綺麗な自然を、ゆっくり堪能しよう思わへんのかいな…」
「ななみんに『せっかち』って言われたら、相当せっかちだね…。みんな…」
藍と七海は、皆に追い着く為、田んぼのあぜ道を走って行く。
2405投稿者:リリー  投稿日:2008年06月25日(水)21時00分57秒
原村に行った梨生奈と吉田が、事故に遭って大怪我をしたという。
吉田は全治3ヶ月、梨生奈は何と、全治6ヵ月。
当初は、静岡に残って練習をする予定だったのだが、梨生奈のお見舞いに行こう、ということで、急遽原村に寄ることになった。
それを提案したのは、あすみだった。
今日と明日、聖テレ野球部は原村に滞在することになった。
「もう…!先にズンズン行かないでよ!!」
藍は、頬を膨らませて皆に言った。
「貴様等がグズグズしているからだ」
相変わらず、ぶっきら棒に言い放つ中村有沙に、七海は噛み付いた。
「心の冷たい人間は、キレイな景色を見ても、何とも思わんもんなんやねぇ…」
「何を?」
「ちょっと!こんな所まで来て、ケンカはよしましょうよ!!」
愛美は、2人の間に割って入る。
いつもなら、梨生奈も仲裁してくれるのだが…梨生奈がいない分、愛美の気苦労は倍増した。
2406投稿者:リリー  投稿日:2008年06月25日(水)21時01分27秒
「そうそう。こんな空気の美味しい所なんだから…くれぐれも不味くしないように…」
あすみは、後ろを振り向くことなく、先へ行ってしまう。
「何で、そんなに急ぐんですか?」
藍の質問に、あすみはやっと振り向いた。
「あんた、病院の面会時間、7時までなの知ってる?」
「まだ、お昼ですよ?」
「り〜なの入院している病院は、諏訪市内にあるの。荷物をペンションに置いたら、すぐに行かないと!!」
今度は、エマがあすみに質問する。
「ねえ、あすみん。泊まる所ってどこなの?」
「『ハセヤンズハウス』って言って…り〜な達が泊まってた所だよ。急だったけど、一部屋に3人ぐらい詰め込めば、部屋はあるそうだから…」
「私とエリー、同室になる?」
「さあね…。ペンションに着いてから考えよう」
今度は、エリーが問う。
「そこ、トイレはウォシュレットですか?プールはありますか?」
「知らないよ。着いてから、自分の目で確かめな」
あすみの返事は、段々めんどくさそうになってきている。
2407投稿者:リリー  投稿日:2008年06月25日(水)21時02分34秒
「じょわん先輩、今朝から元気ないですね。どうしたんですか?」
藍はジョアンの方を振り向いて聞く。
ジョアンは、今日、朝から一言も言葉を発していない。
元気がない…というよりも、生気がない。
あの、饒舌なジョアンが…。
『R&G』の探偵達なら、理由を知っている。
ジョアンは昨日、ダーブロウ有紗から、とてもショッキングな事実を電話で聞かされた。
ショックなのは、皆同じなのだが…やはり、ダメージはジョアンが一番大きい。
今まで…六歳の頃からずっと一緒だった…そしてここ3年間、パートナーだった女性が…どこか遠くに行ってしまったからだ。
自分の前のパートナーを追って…。
つまり、彼女は自分を選んでくれなかったのだ。
「そっとしておいてやれ…」
中村有沙は、藍にそう言うだけだった。
2408投稿者:リリー  投稿日:2008年06月25日(水)21時03分22秒
「私は、田舎とか苦手だったんだけど…来てみると、なかなかいいものね」
そう、エリーに言葉を掛けられたエマだったが、彼女の顔はまだ不機嫌そうだ。
「田舎に来るなら、最初から言ってほしかったよ。私、虫とか超キライだもん。蚊とかに刺されたら、いつまでも跡が残るし…」
「近藤さん…。木内さんが心配じゃないの?」
そんなエマに、有海は少し、悲しげに言う。
「ん?あいつなら、大丈夫でしょ?」
エマは平然と答えるし、エリーも頷く。
「そんな言い方…冷たいと思う…」
有海は、それだけで涙ぐんでしまったが、実は『R&G』の探偵の中に、梨生奈の容態を心配する者はいなかった。
そんな、やわな身体の鍛え方はしていないからだ。
そんなことより、これからの野球の試合はどうしようか…そのことで頭が一杯だった。
案の定、梨生奈の代わりに有海が出た、静岡での練習試合…有海は五打席無安打、エラー7を記録した。
一応、聖テレ野球部が勝利したが…。
2409投稿者:リリー  投稿日:2008年06月25日(水)21時03分59秒
さっきから、梓彩は溜息ばかりをついている。
時々、顔を上げて前を確認し、そしてうつむき、また溜息をつく。
愛美は、そんな梓彩を不憫に思う。
「もう、さ…。気分切り替えて、この原村の景色を楽しもう!ね?」
しかし、梓彩の気分は、ますます沈んでいく。
「楽しめないよ…。だって…余計なオマケがくっ付いて来てるんだもん…」
その時、前方でやたらテンションの高い男の声が聞こえてくる。
「お〜い!!みんな〜!!ペンションが見えてきたぞ〜〜〜!!!」
梓彩に余計なオマケ扱いされた…父、松本政彦が手を振って声をあげている。
「何で…?何で、合宿にまで、パパがついて来てるの?」
「あはは!!よっぽど、ヒマなんじゃないの?」
エマの遠慮のない言葉に、梓彩はまた暗く落ち込む。
「もしかして…パパの会社…ヤバいことになってるんじゃ…?」
2410投稿者:リリー  投稿日:2008年06月25日(水)21時04分23秒
「やあ、やあ…よく来てくれたね。梨生奈ちゃんと羅夢ちゃんのお友達だね?2人とも、凄く喜ぶと思うよ」
『ハセヤンズハウス』に到着した聖テレ野球部は、まずここのオーナーの姿に驚いた。
モジャモジャ頭で髭面で、熊のような風体の男…長谷川豊…通称ハセヤン。
松本は、ハセヤンの姿を見るなり、「わ!ヒバゴンだ!」と叫んだ。
野球部のみんなは、松本の言葉がわからなかったが、ハセヤンを見て、「ヒバゴン」とはUMAの類だというのは辛うじてわかった。
そして、二度目に驚いたのが…ハセヤンの息子…長谷川大樹。
父親とは似ても似つかぬイケメンで、人に惚れやすいエリーは、既に目にハートマークを浮かばせている。
言うまでもなく、そんな彼女にエマは不機嫌な感情を隠そうともしない。
「この時期はお客さんが多くて、部屋が足りなくて…窮屈な思いをすると思うけど、我慢してね」
大樹の言葉に、エリーは即答する。
「いいです!!我慢します!!何だったら、私は、あなたの部屋で寝ても構いません」
エマは、えぐる様な死角からのパンチを、エリーの脇腹に打ち込んだ。
「ははは!!都会から来た子は、ませてるなぁ…」
大樹は笑い飛ばして、エリーの求愛をスルーした。
2411投稿者:リリー  投稿日:2008年06月25日(水)21時04分43秒
部屋は四つ空いていて、一部屋に2〜3人ずつ入ることになった。
まず、あすみと中村有沙、ジョアンが同室になる。
エマ、エリー、有海の3人が同室。
そして、七海、藍、愛美の3人で一つの部屋を使うことになった。
残る一部屋は、梓彩と松本の親子、2人で使う。
当然、梓彩は嫌がったが、部屋が少ないのは仕方のないことなので、渋々承諾した。
皆は部屋に荷物を置くと大食堂に集まり、昼食をとった。
それから電車で、諏訪市まで行くことになる。
「羅夢ちゃんは、梨生奈ちゃんと吉田さんのお見舞いに行ってるから、病院で会えると思うよ」
ハセヤンは、出発する皆にそう言った。
「別に、羅夢に会いに行くわけやないけどな…」
そう呟く七海に、中村有沙が釘を刺す。
「いいか?くれぐれも、面倒なことを起こすなよ?」
「あ?面倒なことって、何や?」
「貴様が羅夢と出会えば、面倒なことしか起こさないだろう?」
梨生奈がいない今、中村有沙が仕方なく気を配るしかない。
「やれやれだ…」
中村有沙は、うんざりと溜息をつく。
2412投稿者:リリー  投稿日:2008年06月25日(水)21時05分06秒
今日は、これでおちます
2413投稿者:あげ  投稿日:2008年06月25日(水)21時11分07秒
 
2414投稿者:117  投稿日:2008年06月25日(水)21時31分45秒
久々の「原村」登場ですね。
ジョアンは元パートナーの裏切り、梓彩は何かと思ったら、ゴルゴさんでしたか(笑)。
同室はマズイのでは・・・(苦笑)。続きも楽しみです!
2415投稿者:千秋と瑠璃も  投稿日:2008年06月26日(木)20時49分55秒
出るんですか?
2416投稿者:リリー  投稿日:2008年06月26日(木)21時16分18秒
117さん
一応、親子という設定ですので、いいかな…と…

2415さん
もちろん、二人も出ます

では、更新します
2417投稿者:リリー  投稿日:2008年06月26日(木)21時17分47秒
電車で30分くらい揺られて、諏訪駅に到着する。
のどかな風景は、眺めているだけで楽しかった。
諏訪市内ともなると、虹守町と変らない光景が広がる。
市民病院には、バスで向かう。
野球部の面々は、三時前に病院に到着することができた。
面会時間はたっぷりとある。
取り合えず、あすみが受付で梨生奈達の病室を尋ねる。
七海達は、待ち合いロビーのソファーに座りながら、大画面のテレビを見る。
甲子園の野球中継をやっている。
丁度、西東京代表の、叡智大付属渓岳園高校の試合が流れていた。
ピッチャーは、虹守町出身の山元竜一。
5回を投げて、いまだ無失点だ。
0対0…投手戦となっている。
「ああ…。ヤマちゃん…カッコいい…。惚れちゃう…」
相変わらずエリーは、惚れやすい。
2418投稿者:リリー  投稿日:2008年06月26日(木)21時18分07秒
しかしこの回、山元は1アウト満塁のピンチを背負う。
そして次の打者を迎えた所で、放送は教育テレビに切り替わってしまった。
「3時のニュースをお伝えします」
画面にはNHKのアナウンサーが映される。
「七海。チャンネルを変えろ」
中村有沙に命令され、案の定七海は反発した。
「何で、ウチが変えなアカンねん…!オノレが変えぇや!!」
「もう一度命令する。チャンネルを変えろ」
「偉そうに命令すんなや!!」
「偉そうではない。偉いのだ。少なくとも貴様よりは…」
「んやと!?コラ!!」
有海は、堪りかねて席を立つ。
「わ、私が変えますから…」
有海は、チャンネルのボタンに指を伸ばす。
その時、テレビ画面には『新宿署の留置場から、女性容疑者消失』の文字が…。
「待て!!有海!!変えるな!!」
中村有沙は叫んだ。
2419投稿者:リリー  投稿日:2008年06月26日(木)21時18分31秒
中村有沙だけではない…七海も、エマもエリーも…そしてジョアンも…そのニュースを食い入るように見詰めている。
「な、何?どうしたの…?」
愛美達は、不思議に思った。
何故、みんなはこんなニュースに関心があるのか。
ニュースの内容はこうだった。
8月4日、新宿歌舞伎町で、風俗店に潜伏していた、『麻薬組織の首領・難田門司』が、逮捕された。
その時、共に逮捕された女性用心棒、秋山恵が、新宿署の留置所から忽然と姿を消したのだ。
当日宿直していた職員によると、秋山恵が姿を消す30分程前、不審な人物を見た…と証言している。
その人物が、この失踪事件に関係していると見て、重要参考人として行方を追っている…。
「その、不審人物言うんが…」
「ああ…。おそらく…あの男だな…」
七海と中村有沙…そしてエマとエリーの脳裏に同時に浮かんだ顔が…楠本柊生…。
あの男なら、警察の施設内からでも簡単に仲間を助け出すことができるだろう。
「なあ…。アタシは、その楠本ってヤツ、実際に見てないんだけど…そんなに、ヤバいヤツなのか?」
「ああ…。相当な…」
中村有沙は、ジョアンに短くそう答えた。
2420投稿者:リリー  投稿日:2008年06月26日(木)21時18分53秒
「あ…あの…。もう、チャンネルを変えても…いいですか…?」
有海が、恐る恐る声をかける。
「む?ああ…。悪い…。変えてくれ…」
有海がチャンネルを変えると…叡智大渓岳園は、一点を失っていた。
「ああ…!ヤマちゃん、打たれちゃった!!」
エリーは、泣き出しそうな声を上げた。
「ううん。押し出しだって…」
ラジオでも中継を聞いていた藍は、言う。
「こういう場面…平常心を失くしたらダメだね…。私も教訓にしなきゃ…」
画面に映る、帽子を取ってユニフォームの袖で汗を拭く山元竜一の姿を見て、藍は自分に言い聞かせた。
しかし、『R&G』の者達は、先ほどの『TDD』秋山恵の失踪事件の方が気になった。
その時、あすみが皆のもとに戻って来た。
「り〜な、七階の一号室だってさ。結構広い病室だから、みんなまとめて入れるらしいよ」
「よっしゃ!!ほんなら、行こか!!」
七海はソファーから立ち上がった。
2421投稿者:リリー  投稿日:2008年06月26日(木)21時19分18秒
「君達…もしかして、梨生奈ちゃんの学校の人…?聖テレの…」
後ろから声を掛けられた。
「…?」
皆は、一斉に振り向く。
そこには、一人の少年が立っていた。
髪の毛は軽く茶色がかったウェーブで、肌は白く、頬は赤い。
目は大きく、少し色がかかっている。
どうやら、エマやエリー、ジョアンの様な、ハーフなのだろう。
「あ…僕、梨生奈ちゃんの病室、行くところです。案内しましょうか?」
「あの…どなた…ですか?」
愛美が代表して聞く。
「ああ、僕、千秋レイシーっていいます。ここで…梨生奈ちゃんや羅夢ちゃんと…知り合いになって…」
「レイシー?洸太と苗字が一緒だが?」
中村有沙が訊く。
「はい!洸太は僕の兄貴です!!」
「………そうか…。貴様が…洸太の…。喘息持ちの弟か…」
2422投稿者:リリー  投稿日:2008年06月26日(木)21時19分47秒
七海は、中村有沙に尋ねる。
「なぁ、洸太って誰やねん?この子、誰?」
「去年のあの件で、私やデカアリ、ちひろをかくまった男が洸太。あの子はその洸太の弟だ」
「何で、その子が梨生奈達と知り合うたん?」
「そんなの、知るか」
あすみは、千秋に歩み寄る。
「ほんと?ありがとう。さっき受付で聞いたんだけど、初めての所だからわかり難いと思うから、案内してくれる?」
「はい、どうぞ、どうぞ」
皆は千秋の後に着いて行くことにした。
一同は、エレベーターに乗り込む。
「あの…。り〜な…梨生奈の容態は、どうですか?」
愛美は心配そうに千秋に尋ねる。
千秋の顔が、曇る。
「ああ…。昨日から入院してるんだけど…しばらくは身体を動かせないですね…。骨折の箇所も多くて…ギプスでガチガチに固められてて…」
それを聞いて、愛美も梓彩も、そして藍も涙ぐんだ。
勿論、有海は顔を覆って泣き出してしまったが…。
2423投稿者:リリー  投稿日:2008年06月26日(木)21時20分19秒
「あ…!ごめんなさい!!」
慌てて謝る千秋に、中村有沙が声をかける。
「気にするな。むしろ、いきなりそんな姿を見せられるより、心の準備ができて、いいかもしれん」
「そ、そうですか…?」
何か落ち着き払った人だなぁ…と、千秋は中村有沙を物珍しそうに見た。
「で、何で梨生奈と知り合うたん?なぁ…。堅物の梨生奈から声をかけるとは思えへんから、あんたがナンパしたんとちゃうん?」
人見知りしない、七海の質問に、千秋は少し戸惑った。
「い、いえ…ナンパなんて…。梨生奈ちゃん達の泊まったペンションに…僕も住んでるんです。喘息の療養の為に…」
「『ハセヤンズハウス』?あの、ヒバゴンとこ?」
「はい。今朝、ハセヤンから梨生奈ちゃんのいる野球部の人達が泊まりに来るって知らされてたから…」
「ああ、せやから、ウチ等が野球部やって思うたん?」
「はい。ロビーで女の子の集団を見て…そうかなって…」
「ははは!凄い洞察力やな、自分。探偵になれるで?」
「そうですか?嬉しいな。だったら、梨生奈ちゃんや羅夢ちゃんと同じだ」
「…へ?」
千秋の言葉に、七海も、中村有沙も、ジョアンも、エマも、エリーも、固まった。
2424投稿者:リリー  投稿日:2008年06月26日(木)21時20分47秒
「え?何?探偵って?り〜なが探偵ってどういうこと?」
藍が、千秋に聞く。
「ああ、知らないんですか?梨生奈ちゃん…」
「うおおお〜〜〜い!!」
七海は、千秋の耳元で怒鳴った。
「うわ!!びっくりした!!」
千秋は目を大きく見張り、七海を見詰める。
あすみは、耳に指を入れて顔をしかめる。
「ちょっと、ななみん!狭い中で騒がない!!」
「す、すんません!ちゃうねん!梨生奈な、将来の夢が探偵なんやって…!笑てまうやろ?」
「え?違いますよ…。ちゃんと、『R&G探偵社』って言う…」
「おおおお〜〜〜い!!!」
再び、七海は怒鳴った。
中村有沙は、千秋の耳元で囁く。
「そのことは口外するな」
「え?ああ…。部内でも内緒なんですか?て、言うか…あなた達も…?」
「そうだ…。私達も…だ…」
エレベーターは、七階に着いた。
2425投稿者:リリー  投稿日:2008年06月26日(木)21時24分16秒
千秋の再登場、そしてテレビの中でヤマちゃん登場です

ミストの3人が、家の近所(雷門)に来てましたね
よく、雷門がロケ地になりますが、見かけたことないですね…

では、今日はこれでおちます
2426投稿者: 投稿日:2008年06月26日(木)22時11分06秒

2427投稿者:あげ  投稿日:2008年06月26日(木)23時09分19秒
             
2428投稿者:デジ  投稿日:2008年06月27日(金)02時45分48秒
四日ぶりです。テストが近いと、眠くて仕方がありません。
裏終わっちゃいましたね。
(表)この話一連がらりるれろの後だから、ジャスミンもうこの組織脱退してるんですね。
楠本さん、また救ってしまいましたね。
千秋危ないですね。危うく、藍たちにもばれるとこでしたね。
続きも楽しみです!
        (今日の小言)
ネタがありません。(汗)
小説の件について
コメントありがとうございます。読みづらい小説ですいません。
実際のところ「」や()の作文で使わなくなって、うまく書きにくいです。
ちなみに、この小説の書いてある時間が空いているのは、日常が、いつも忙しくその日その場で文を考えているからです。
2429投稿者:あげ  投稿日:2008年06月27日(金)17時19分03秒
2430投稿者:117  投稿日:2008年06月27日(金)21時19分24秒
「高校野球」のいい場面で教育テレビに切り替わる・・・リアル過ぎです(笑)。
千秋も久々登場。いきなり危ない発言ですが・・・そろそろ更新でしょうか?続きも楽しみです。
2431投稿者:あげ  投稿日:2008年06月27日(金)21時21分00秒

2432投稿者:あげ  投稿日:2008年06月27日(金)22時12分14秒
2433投稿者: 投稿日:2008年06月28日(土)00時14分45秒
2434投稿者: 投稿日:2008年06月28日(土)00時52分06秒

2435投稿者: 投稿日:2008年06月28日(土)18時38分31秒

2436投稿者:あげ  投稿日:2008年06月28日(土)18時39分23秒

2437投稿者:リリー  投稿日:2008年06月28日(土)19時10分38秒
昨日はすみません
急に出かける用事ができました

今日も、今から出かけるのですが、更新を済ませてから出かけます

デジさん、テストお疲れ様です
私も、書き始めた頃は「読みにくい」と指摘を受けました
デジさんのペースで、ゆっくりと書いていって下さい
117さん、昨日は更新できなくてすみません
少し早いですが、今日の分です
その他「あげ」ありがとうございます

では、更新します
2438投稿者: 投稿日:2008年06月28日(土)19時11分35秒
http://x87.peps.jp/luckyidol
来て下さい!
2439投稿者:リリー  投稿日:2008年06月28日(土)19時11分36秒
「なぁ…。羅夢…。ワシにもリンゴ、剥いてぇな…」
吉田は、退屈そうにベッドに横たわっている。
まだ肋骨を覆うギプスが取れない為、姿勢を横に向けられず、首だけを羅夢の方へ向けている。
「レッドさんは、両手が使えるじゃないか。甘えるんじゃないよ!」
羅夢は、梨生奈の為に、慣れない手つきでリンゴを剥いていた。
梨生奈の方は、両手、両足、肋骨、鎖骨と…全身15箇所も骨折していて、確かに自由に動かせるのは首から上…という状況だ。
「羅夢…。あんまり無理しなくて、いいからね…」
危なっかしい羅夢の皮むきに、梨生奈は冷や冷やしながら見ている。
それだけで、暇つぶしにはなるが…。
「はい、梨生奈…あ〜ん…」
リンゴの皮むきと言うよりもリンゴの虐殺と言う感はあるが、ようやく羅夢は、剥き終ったリンゴの欠片を梨生奈の口に運ぶ。
リンゴに、血が着いている…。
せっかく羅夢が剥いてくれたのだし…梨生奈は満面の笑顔で口を開けた。
その時、病室のドアがノックされた。
「あ、はい」
血まみれのリンゴを口に入れられる前に、梨生奈は返事をした。
2440投稿者:リリー  投稿日:2008年06月28日(土)19時12分11秒
「梨生奈ちゃん、僕…」
「千秋君…」
まだ、梨生奈の胸が痛む。
そう…梨生奈は失恋したのだ。
ふられたのは千秋の方だったが、辛いのは梨生奈の方だった。
もう、しばらくは顔を見せないと思っていたのだが…。
「あの…お客さん…連れて来たから…」
「お客さん?」
誰だろう…?
(まさか…瑠璃?)
松尾瑠璃…千秋と共に『ハセヤンズハウス』に住んでいる…ハセヤンの養女だ。
しかし、梨生奈の大怪我に、彼女は深い部分で関わっている…。
ドアが開けられる。
千秋の後ろ…やたらと大人数?
それらは、見慣れた顔だった。
「み、みんな!!」
野球部のメンバーの訪問に、梨生奈は身動きがとれないまま、驚いた。
2441投稿者:リリー  投稿日:2008年06月28日(土)19時12分30秒
「り〜な…」
藍は、まっさきに駆け寄ろうとしたのだが…ギプスでがんじがらめにされた梨生奈の痛々しい姿に、思わず足を止めた。
「り〜な…。大丈夫…?」
愛美も梓彩も、涙を目に浮かべながら、梨生奈を見詰める。
「はい…。大丈夫…なわけ、ないけど…ちゃんと、生きてますから…」
「わぁ!!」
有海は顔を覆って、しゃがみ込んで泣き出した。
有海は、病室に着く前…病院に到着した時点から、涙腺が限界に達していた。
「そ、そんな…泣かないでよ…あみ〜ご…。生きてるよ?ほら、私、死んでないから…!」
梨生奈は、首を懸命に起こして、有海に呼びかけた。
病室は、しんみりとした雰囲気に包まれる。
(ヤバい…。この空気…何とかせな…)
七海は梨生奈を指差して、大声で笑った。
「ぎゃはははは!!!何や、梨生奈!!その恰好!!真っ白でガチガチやん!オノレはガンダムかっちゅうねん!!」
「おい!!コラァ!!」
羅夢は、ばね仕掛けのオモチャの様に、椅子から立ち上がった。
2442投稿者:リリー  投稿日:2008年06月28日(土)19時12分52秒
「てめぇ、何、笑ってんだよ!!何がそんなに可笑しいんだよ!!」
羅夢は、顔を真っ赤にして七海に詰め寄る。
「…!?」
千秋も、藍も、愛美も、梓彩も、有海も、羅夢と七海をつなぐラインから身を退いた。
「やばい…やばい…やばい…やばい…」
吉田は青い顔で念仏の様に呟く。
「何や?コラ!!やるんかい!!」
七海も、羅夢に歩み寄る。
「え?何?何?」
千秋だけが、これから何が起きるのか、想像がつかない。
いや、見当はつくのだが、まさか…と思う。
「ちょ、ちょっと!誰か、2人を止めてよ!!」
梨生奈が悲痛な声をあげる。
「オラァ!!」
「ゴルァ!!」
羅夢と七海は、お互いの拳を顔面に叩き込んだ。
「う、うわぁ〜…やっぱり…」
千秋は、2人の少女の殴り合いを、呆然と見詰めた。
2443投稿者:リリー  投稿日:2008年06月28日(土)19時13分13秒
「こらあ!!羅夢!!また、あんただね!?病院内では静かにしろって、何度言ったらわかるんだい!?」
吉田が一番恐れていた…看護士長の清水ミチコが怒鳴り込んできた。
そして、羅夢と七海の首根っこを掴むと、病室から引きずり出して行った。
有無を言わせない迫力が、清水にはあった。
彼女には、ダーブロウ有紗だって勝てない。
「さ、あんた達も出るよ。一緒に謝ろう…」
あすみの言葉で、取り合えず他の皆も一旦病室から出ることになった。
「り〜な…ごめんね…。来て早々…。ちょっと待っててね…」
あすみは、そういい残し、病室を後にした。
「おい、貴様は私と、ここに残れ」
中村有沙は、千秋の袖を引っ張った。
「え?」
「まず、詳しい話しを聞きたい。この事件の顛末を…。そして…」
中村有沙は千秋を…そして、梨生奈を睨む。
「この男が…我々のことを、どこまで知っているのか…」
2444投稿者:リリー  投稿日:2008年06月28日(土)19時14分30秒
次回は、『らりるれろ探偵団』のあらすじをまとめた様な展開となります
未読の方もわかるように…
復刻版の方も、更新しなければなりませんね

では、おちます
2445投稿者:あげ  投稿日:2008年06月28日(土)19時49分24秒
あげ
2446投稿者:117  投稿日:2008年06月28日(土)21時08分59秒
更新、ご苦労様です。最近はリリーさんもお忙しいのですね。
なるほど、有沙たちは千秋がどこまで知っているのかを把握していないわけか。
七海もこの空気を変えようとして訳ですが、その考えが思わず方向に・・・(苦笑)。続きも楽しみです!
2447投稿者:ガンダムwww  投稿日:2008年06月29日(日)00時22分33秒
 
2448投稿者:「リンゴ、剥いてぇな」で  投稿日:2008年06月29日(日)00時44分38秒
デーモン閣下が脳裏によぎったのは自分だけの自信がある
2449投稿者: 投稿日:2008年06月29日(日)00時50分32秒
それ、何だっけ?
聞いたことあるけど、思い出せない
2450投稿者:思い出した!!  投稿日:2008年06月29日(日)00時53分07秒
デーモンが、ライブのステージから落っこちて足を骨折して入院、タモリ(だったっけ?)が病院へお見舞いに行った時、病室にデーモンの母親がいて、デーモンが「お母さん、リンゴ剥いて」って甘えてたって話しだった
2451投稿者:あげ  投稿日:2008年06月29日(日)20時18分26秒
        
2452投稿者:リリー  投稿日:2008年06月29日(日)20時26分35秒
117さん
忙しいというか、いろんな所に引っ張り出されてる状態です
私は、人が集まるところが苦手なのですが…

確かに、大ケガの人間に「ガンダム」呼ばわりしたら、キレられますよね

2448、2450さん
デーモン閣下も、可愛いところがあるんですね
当然、お母さんは、普通の顔してたんでしょうね

あと、明日も更新できません
今日は、多目に更新します

では、更新します
2453投稿者:リリー  投稿日:2008年06月29日(日)20時31分40秒
梨生奈と千秋は、お互い青い顔を見合わせた。
そして梨生奈は、言い難そうに口を開く。
「け…結論から言うと…千秋君は…全部知っています…。私達が探偵ということも…暗殺組織『TTK』に所属してたことも…」
「…!?」
中村有沙は、無言で立ち上がった。
「ひぇ…」
千秋は、思わず椅子から腰を浮かした。
吉田は、途端に寝たふりをする。
「こ、この件については…レッドさんも…ダーさんにも、報告済みです…!」
「デカアリは何と?」
「ええ…。それでも逃げないで、私の側にいる千秋君を…褒めてました…」
中村有沙は、千秋をじっと見下ろす。
そして、こう言った。
「私も…同感だ…」
「ど…どうも…」
千秋は、冷や汗を掻きながら椅子に腰を降ろした。
2454投稿者:リリー  投稿日:2008年06月29日(日)20時32分00秒
吉田と梨生奈が重傷を負うこととなった、『難田門司事件』及び『モニーク・ローズ事件』(後に二つ合わせて『らりるれろ事件』と呼ばれる)の全容は、こうだ。
『梨生奈』と『羅夢』の『チームR』と社長の『吉田』が、麻薬組織のボス、『難田門司』の部下、『安田大サーカス』の3人を追って、原村までやって来た。
勿論、『ハセヤンズハウス』のハセヤン、『千秋』、『瑠璃』には、自分達が探偵だということは伏せていたし、3人は家族旅行に来た親子、という設定で通していた。
その時、偶然この村に獣医師志望で、英会話教師として滞在していた『モニーク・ローズ』と再会。
モニークは、梨生奈、羅夢という『R&G』の探偵達が所属していた『TTK』という暗殺組織に身を置いていた人物。
しかも、ダーブロウ有紗、ジャスミン・アレンと共に、『四天王』と呼ばれていた程の実力者だ。
そして、安田大サーカスの興行を、千秋、瑠璃と見に行ったモニークの進言により、そのサーカスの3人組が難田門司と関係があるのでは、と捜査を開始する。

そこまで聞いて、中村有沙は話しの流れを止めた。
「待て。当然のように、モニークが捜査に協力しているのだが、それは貴様等が協力を仰いだのか?」
中村有沙の鋭い眼光に、梨生奈は少し怯む。
「い、いえ…。あくまでも、モニークの鋭い勘によって、私達が麻薬関係の捜査をしてるって、知られたの。私達は、依頼内容を言ってはいないわ」
中村有沙は、目を瞑って腕組みをする。
「そうか…。ならば致し方ないか…」
梨生奈は、安堵の息をつく。
(こ、この人…ダーさんと同じくらい、恐いなぁ…)
千秋は中村有沙に対しそう思ったが、彼女がダーブロウ有紗と姉妹だということは、まだ知らない。
梨生奈は、話しを続ける。
2455投稿者:リリー  投稿日:2008年06月29日(日)20時32分30秒
翌日、サーカスの捜査を開始しようと決めた後、千秋と瑠璃がサーカスのテントへ激励に向かってしまった。
梨生奈と羅夢は、吉田、モニークと共に、千秋と瑠璃を追ってサーカスのテントへ。
サーカスの動物達は、実は麻薬を運ぶ為の『袋』として利用されていて、胃袋に麻薬を入れたゴムチューブを詰め込まれ、海外と日本を往復していた。
食肉用の動物の中に隠すと、検査が厳しいので、サーカスという手段を使ったのだ。
動物の調教などできない安田達は、動物のエサに劣悪で売り物にならない麻薬を混ぜ、麻薬中毒にして調教しやすくしていた。
その為、象が暴れ出し、捜査中だった吉田が巻き込まれ重傷。
梨生奈、羅夢、モニークは、吉田を救出するのに精一杯で、安田大サーカスの3人を逃がしてしまった。

「なるほど…。レッドさんが怪我をした経緯が、そういうことなのだな?」
「面目ない…」
吉田は、頭に手を置いて、申し訳無さげに謝った。
「しかし…梨生奈、おまえと羅夢は何をしていた?なぜ、みすみすレッドさんを…」
中村有沙は、再び厳しい眼差しを梨生奈に向けた。
それに、千秋が慌てて弁解する。
「そ、それは…ぼ、僕と瑠璃が…家に帰らずに、その現場にいつまでも残ってたから…。梨生奈ちゃんは、探偵だという正体を知られないように、僕達と一緒に、吉田さんとモニーク先生を待つ為に残ったんです」
「しかし、結局、貴様は梨生奈達が探偵だと、知ってしまったのだろう?」
「それも…僕が、吉田さんに怪我をさせてしまったのは僕だ…と、必要以上に自分を責めたから…。梨生奈ちゃんは…」
「ち…!話を続けろ!」
中村有沙は、あからさまに舌打ちをした。
「す、すみません…」
梨生奈と千秋は、同時に謝る。
2456投稿者:リリー  投稿日:2008年06月29日(日)20時32分57秒
吉田を入院させて、いよいよ、難田門司の部下…安田大サーカスを捕まえに出動することになった『チームR』。
同時に、サーカスの動物達を、麻薬密輸の為に利用している彼等に、獣医師志望のモニークは激怒…自分も安田大サーカスを捕まえたいと、直訴してきた。
だが、モニークとの共同捜査を拒否した『チームR』は、モニークに抜け駆けして捜査に出かける。
その翌朝、サーカスの団長、安田を見かけた千秋と瑠璃は、独自に尾行をするが、逆に捕まってしまい、誘拐される。
そのことに気がついた、『チームR』とモニークは、2人を救出する為に、原村を駆け回ることになった。

「…また、貴様達か…!」
キッと、千秋を睨む中村有沙。
「す、すみません…」
千秋はもう、中村有沙の顔を見ることもできない…。

そして、何とか千秋達の居場所を突き止めた『チームR』は、安田大サーカスの3人と死闘を繰り広げる。
麻薬によって操られたライオンや虎、豹達とも戦うハメになり、羅夢が不可抗力でその動物達を殺してしまう。
モニークの行動の理由は動物達を救出することにあった為、それが達成できず、彼女は酷く落ち込んだ。
何はともあれ、安田大サーカスの3人組を捕まえた『チームR』は、そのまま千秋と瑠璃を救出し、ダーブロウ有紗に報告した。

「『難田門司事件』は、そこで終わるわけだな?しかし梨生奈、貴様が大怪我をしているのは何故だ?ライオンにかじられたとでも?」
「そうじゃなくて…実は…この後にもっと恐ろしい事件が…」
「話せ…」
引き続き梨生奈は、『モニーク・ローズ事件』を語る。
2457投稿者:リリー  投稿日:2008年06月29日(日)20時33分45秒
翌日、虹守町に帰る仕度をしていると、瑠璃がいなくなったことに気がつく。
警察に届けで、皆も瑠璃の行方を探す。
当然『チームR』も帰る予定を切り上げ、瑠璃の捜索をする。
梨生奈と羅夢は、モニークの助言で二手に別れたが、今度は羅夢が何者かにさらわれてしまった。
梨生奈は千秋、モニークと共に、羅夢と瑠璃の捜索をするが、手掛かりは掴めなかった。

「………その、2人を拉致した犯人は…モニークなのだろう?」
「…そう…」
梨生奈は力なく答えたが、千秋は少々、驚いた。
「な、何で、話しを聞いただけで、モニーク先生が犯人と?」
中村有沙は、淡々とその疑問に答えていく。
「まず、羅夢を拉致できるとしたら、裏の人間だ。この場合、モニークしかおるまい。しかも…」
「しかも?」
「ここに来る途中、モニークの指名手配写真が貼ってあった。駅に…。私以外に、七海もエマもエリーも気付いてる。もちろん、いくらエマでも声には出さなかった。ジョアンはそれどころではなかったが…」
「ああ…。もう、出回ってるんだ…。モニーク先生の写真…」
千秋は、悲しそうに呟いた。
中村有沙は、引き続き梨生奈の説明を求めた。
「興味があるのは、犯人ではなく、動機だ。何故、モニークはそんなことを?」
2458投稿者:リリー  投稿日:2008年06月29日(日)20時34分52秒
実は、瑠璃という少女は、暗殺組織『TTK』の『戦士候補生』であり、モニークの弟子だった。(中村有沙は、この事実に最も驚いた)
今までモニークの『催眠術』によって、記憶を消されて普通の少女としてこの村で暮らしていたのだ。
ボスの『ラビ』が殺害された機に『TTK』が壊滅し、『戦士』達は世界中に散らばった。
梨生奈や羅夢、中村有沙、ダーブロウ有紗達のように、『R&G探偵社』に身を寄せたように、モニークと瑠璃も、身の振り方を考えねばならなかった。
モニークは正体を隠し、偽名で里親を探し、原村のペンションのオーナーのハセヤンに、瑠璃を養子として引き取ってもらい、自分も原村に越してきて、瑠璃を見守る生活を選んだ。

「…そこまでは、モニークも、瑠璃という少女と共に、表の世界で静かに暮らそう…と、していたのだな?」
「そう…。だけど、自分の目の前で動物達が悪人に利用されて殺されたことに憤ったモニークは…また『TTK』を復活させようと…目論んだの…」
「『TTK』の復活?たかが、動物の為にか?モニークの考えていることは、相変わらずわからんな…」
そういう中村有沙に、千秋は大きな声で反論した。
「たかが動物って何ですか!!モニーク先生にとって…それは重要なことなんです!!とっても大事な…」
そう言い掛けて、千秋は気まずそうに「すみません…」と、謝る。
中村有沙は、穏やかな口調で言う。
「いや…気にするな…。私が悪かった…。梨生奈…。続きを…」
2459投稿者:リリー  投稿日:2008年06月29日(日)20時35分21秒
モニークは、拉致した羅夢に対し、自分の仲間になるようにと、拷問を加え続ける。
一方、梨生奈は、この事件の根源はモニークにあると断定、モニークと会う約束をし、その時に彼女と対決をする。
しかし、その現場を千秋に目撃され、梨生奈も羅夢も、モニークも瑠璃も暗殺組織『TTK』に所属していたとバレてしまう。
だが千秋はそれを全て受け止め、梨生奈と2人で羅夢を、そして瑠璃をモニークから救い出そうと決心する。
梨生奈と千秋が、モニーク達のアジト…旧発電所に向かった時には、既に羅夢はモニークの拷問に屈し、催眠術で洗脳され仲間になってしまっていた。
瑠璃は、千秋が命懸けの説得で心を開いたが、羅夢は梨生奈と全面対決することになった。
梨生奈は、羅夢の攻撃を無抵抗で受け入れることによって、羅夢の洗脳を解く事に成功した。

「…で、その結果が…この有様か…?」
中村有沙は冷たい目で、ギプスで全身を固められた梨生奈を見下ろした。
「ご…ごめんなさい…」
梨生奈は、恥ずかしそうにうつむいた。
「なるほど…。『チームメイト同士、仲が悪い方が望ましい』…という、デカアリの自論は正しかったか…」
「え?」
「貴様等、仲良しグループのノリでチームを組んでいるから、こういうことになるんだ。私だったら、羅夢を動けないくらいに半殺しにして拷問し、また洗脳し直す…。これで終わりだ!!」
(こ、恐いよ…。この人…恐いよ…)
情け容赦ない中村有沙の言葉に…千秋はドン引きした。
2460投稿者:あげ  投稿日:2008年06月29日(日)20時39分38秒
       
2461投稿者:リリー  投稿日:2008年06月29日(日)20時40分32秒
洗脳の解けた羅夢は、そのままモニークに果敢に向かっていく。
善戦はしたが、やはりモニークに敵わず、命の危険に陥った。
その時、助太刀に来た『ジャスミン・アレン』に救われる。
『四天王』同士である、モニークとジャスミンの戦いは互角だった。
その戦いに羅夢も加わり、2対1でモニークにかかるが、モニークの方が一枚上手だった。
また窮地に陥る羅夢だったが、瑠璃が土壇場でモニークを裏切った。
そこに羅夢の渾身の一撃がモニークに決まり、この戦いは羅夢達の勝利に終わる。
そのままモニークを『R&G』に引き入れようとしたが、モニークに逃げられてしまった。
その際、モニークは瑠璃を破門…瑠璃は、晴れて表の世界の住人となった…。
そしてジャスミンは、モニークの後を追う為、『R&G探偵社』を辞め、どこかへ旅立って行った。
これが、『らりるれろ事件』の全容である。
2462投稿者:リリー  投稿日:2008年06月29日(日)20時40分57秒
「…これが…この原村で起こった、9日間の全てよ…」
梨生奈の説明は、これで終わる。
しかし、中村有沙は腑に落ちなさそうに、こう言った。
「まて、梨生奈。貴様、全てを話しておらんな?」
「え…?」
梨生奈は、その言葉に心臓が止まりそうになった。
「貴様と千秋とのことだ」
「ええ…!?」
今度は、真っ赤な顔を見合わせる梨生奈と千秋。
「あ…ありりん…!?ど、どうして…?」
「む?元暗殺組織に所属していたとバレたのに、逃げずに側にいるなど…よっぽど好き合っているとしか思えん。バカップルに認定されるがな…」
梨生奈は、真っ赤な顔を更に赤くさせ、弁解をする。
「で、で、でも…私達…」
「別れたのであろう?」
また、顔を見合わせる2人。
「うぐ…!!ど、どうして…?」
「貴様等のよそよそしい態度を見れば、普通、わかる」
もう梨生奈は、泣き出したい気分だった。
2463投稿者:リリー  投稿日:2008年06月29日(日)20時41分19秒
「わかった。それでは、ジョアンにはジャスミンがどういう経緯で『R&G』を去ったのか…私から説明しよう…」
「や、やっぱり…ジョアンは…」
「相当、落ち込んでいる…。やはり、『仲良しグループ』はめんどくさい…!!」
吐き捨てるように言う、中村有沙。
「それから…貴様が大怪我したのは、ハイキング中に足を滑らせて崖から落ちた…として、部の者(あすみ、藍、愛美、梓彩、有海)には伝えよう。レッドさんの怪我は、酔っ払って温泉でコケた…ということでいいな?」
「…はい…。それでええです…」
吉田は、元気なくそう答えた。
中村有沙は、溜息をつきながら、梨生奈を睨んで言う。
「しかし…この事件、私が派遣されたのなら、たった1日で解決できた…!完全にこれは人事のミスだな…!!」
「ご、ごめんなさい…」
梨生奈は、もう、その言葉しか出なかった。
2464投稿者:リリー  投稿日:2008年06月29日(日)20時41分40秒
千秋は、梨生奈にそっと囁く。
「ダーさんといい、この人といい…羅夢ちゃんも、羅夢ちゃんと殴り合ってた人も…『R&G』って、恐い人ばかりだね…」
「だって…。ありりんは…ダーさんの妹よ…?」
「げ…!!そ、そうなの…?」
千秋は、思わず中村有沙を見たら…彼女もこちらを睨んでいた。
「おい!貴様!!私を、デカアリや羅夢や七海と一緒にするな!!」
「ご、ごめんなさい…」
千秋も、もう、その言葉しか出なかった。
2465投稿者:あげ  投稿日:2008年06月29日(日)20時46分55秒
 
2466投稿者:リリー  投稿日:2008年06月29日(日)20時47分37秒
今日は、『らりるれろ探偵団』のあらすじでした
一日で終わらせようとして、こんなに長くなりましたが…
明日、更新を休むので丁度いいと思いまして
未読の方は、このあらすじを参考にして下さい
その内、復刻版も更新したいと思いますが…

では、おちます
2467投稿者:リリー  投稿日:2008年06月29日(日)21時16分04秒
【キャスト】

藤井千帆

武田聖夜

木村遼希
桐谷健太
木内梨生奈
佐藤健
重本ことり

小島よしお(友情出演)

上野樹里

伊藤元太

中村獅童
2468投稿者:117  投稿日:2008年06月29日(日)21時23分44秒
「らりるれろ」の物語の総復習をすることが出来ました・・・あの長い話が9日間の出来事だったんですね。
モニークが指名手配されたこと、ジャスミンが辞めたこと・・・etc.新事実も出てきましたね。
続きも楽しみです!復刻版の復活も期待しています。
2469投稿者:カイ  投稿日:2008年06月30日(月)01時10分27秒
お久しぶりです!やっぱ最高っすねぇ・・・・小説・・・・。
そろそろ俺も動きだしまさァ・・・・・
探偵もので!
2470投稿者:あげ  投稿日:2008年06月30日(月)20時58分22秒
2471投稿者:らりるれろ  投稿日:2008年06月30日(月)23時06分06秒
また読みてぇ〜〜〜
2472投稿者:今夜は更新ありますか?  投稿日:2008年07月01日(火)20時39分10秒
 
2473投稿者:リリー  投稿日:2008年07月01日(火)21時09分05秒
117さん、2471さん
復刻版の方、時間があれば更新したいのですが…
近いうちにやりたいと思います

カイさん、お久しぶりです
カイさんも小説書くんですね
また、教えて下さい

2472さん
昨日はすみませんでした
今から更新します
2474投稿者:リリー  投稿日:2008年07月01日(火)21時10分40秒
あすみ達、野球部が、梨生奈のお見舞いに行っている間、梓彩の父…松本政彦は『ハセヤンズハウス』に残った。
そして気軽に夕食の仕度等を手伝っている。
もともと社交的な性格の松本は、すぐにハセヤンとも打ち解けあった。
しかし、ゴルゴと異名をとるこの松本という男…ハセヤンに近づいた目的は他にあった。
松本はハセヤンと共に、ステーキ用牛肉を叩いて伸ばしながらお喋りをしている。
「いや〜…。ここ、原村って、本当に良い所ですよねぇ〜。しかも、このペンションも最高だって、私、古い友人に聞いて…で、ここに訪れた次第で…」
「へぇ…松本さんのお友達も、ここに?」
「はい。紹介されました。列津祐人(れっつゆうと)って男なんですが…覚えてます?たしか去年の夏、ここに訪れてるはずなんですが…」
「列津祐人…?うん、うん…覚えてるよ。珍しい名前の人だから…。お一人でみえた方ですね」
「ああ、やっぱり覚えてた!?その列津から聞いたんですよ。この村は最高だって!!」
「でも、意外だな…」
隣でタマネギを刻んでいるハセヤンの息子、大樹が呟いた。
2475投稿者:リリー  投稿日:2008年07月01日(火)21時11分06秒
「あの、ちょっと強面の人でしょ?列津さんって…」
「ええ。まあ、人相のいいヤツではないですねぇ…。で、意外なことって?」
「ええ。あの人、終始気難しそうで…あんまりこの村を満喫してなかったような気がしてたから…」
松本は、一瞬顔を強張らせたが、また元の胡散臭い笑顔に戻す。
「ははは!アイツはね、顔で随分損をしてるんですよ。ムチャクチャ楽しいって時でも、顔に出さないヤツでして…私でさえ、アイツの笑顔を見ることは少なかったんです」
「そうなんですか?」
「ええ。アイツの笑顔を見るより、UFOを見た回数の方が、多いくらいです。ははは…」
「あの…。失礼ですが…列津さん…お亡くなりになったんですか?」
「…へ…?な、何で…?」
松本の顔に、一気に汗が噴き出た。
「だって、今『アイツの笑顔を見ることは少なかった』って…過去形でおっしゃったから…」
「あ、ああ…。い、いえ…!そ、その…あいつは、今…海外に派遣されまして…たしか、アフリカのジンバブエ…。もう、会うことはないんじゃないかなぁ…」
そう言う松本の目は、泳いでいた。
「ああ、そうですか…。これは、失礼しました…」
大樹は、再びタマネギを刻むことに集中した。
2476投稿者:リリー  投稿日:2008年07月01日(火)21時11分49秒
(や、やべ〜〜〜…!!こ、こいつ、刑事か探偵か!?列津が死んでるって…モロ、ビンゴじゃねぇかよ…!!)
松本は、焦りすぎた為、牛肉を叩く器具で、自分の手を叩いてしまった。
「あ、あいて〜〜〜!!」
松本は、悲鳴を上げた。
「あ、だ、大丈夫ですか?松本さん!?」
ハセヤンは、慌てて松本の手を見る。
「だ、大丈夫です…。ちょ、ちょっと叩いただけで…」
「ああ…。少し腫れてるな…。もう、お手伝いは結構ですから…のんびりしてて下さい…。だって、お客さんなんだから…」
「は、はい、そうですね。逆に迷惑かけちゃって…すみません…」
「いえいえ…。助かりましたよ。ありがとう…。大樹、救急箱持って来て」
「だ、大丈夫です。ほんと、おかまいなく…」
松本は、そう言ってダイニングから離れた。
そして、こうほくそ笑む。
「ふふふ…。やっぱり、このペンションの敷地内にあるんだな…!!難田門司の…隠し財産!!」
2477投稿者:リリー  投稿日:2008年07月01日(火)21時21分59秒
列津祐人…難田門司の部下だった男…。
難田門司に命じられ、銀行口座にある金のほとんどを『隠し財産』にする手続きをした男である。
その財産は、長野県の原村という所に…しかも、宿泊したペンションの敷地内に隠した…と、列津祐人は難田門司に報告した。
その宿泊したペンションが、『ハセヤンズハウス』だ。
しかし列津祐人は、難田門司の命令によって、口封じの為に殺されてしまう。
これで、隠し財産の有りかは、難田門司のみが知り得ることとなった。
だが、難田門司が警察から指名手配を受けてしまい、自由に動ける身ではなくなってしまった。
そこで、末端の部下、安田達3人に原村に行って取りに行くように命じたのだ。
安田大サーカスが、原村に興行に来たのはその為だ。
だが、隠し財産を取りに行く前に安田達が警察に捕まってしまい、そして、難田門司も警察に捕まった。
つまり、未だにこの『ハセヤンズハウス』の敷地内に埋まっている。
難田門司の潜伏先の『エトワール』で松本は、難田門司が安田にそう命令をするのを盗み聞きしていたのだ。
その『隠し財産』を、松本は狙っているのだ。
2478投稿者:リリー  投稿日:2008年07月01日(火)21時22分36秒
聖テレ野球部が原村に急遽寄るという情報を得た松本は、子煩悩な父親を演じ、合宿に着いてきたのだ。
早く見つけなければ、警察に没収されてしまうかもしれない…。
松本は焦っていた。
「今は『TDD』のあすみも、『R&G』の小娘達もいない…!今のうちに、隠し財産を探し出さないと…!」
松本は、『ハセヤンズハウス』の広い敷地内の中から、隠し財産を見つけ出さなければならない。
列津祐人がここに泊まったという事実が判明した今、のんびりはしていられない。
松本は、部屋に戻るとナップザックを抱え、難田門司の話しを思い出しながら、隠し財産探しに山へ向かう。
蔦の絡まった大きな岩を…南に50メートル…そして、西に30メートル…そこに、宝石という形で埋まっている。
総額、5億は下らない…宝石が…。
2479投稿者:リリー  投稿日:2008年07月01日(火)21時23分08秒
ナップザックから巻尺を取り出す。
きっちり50メートルある巻尺だ。
そして、方位磁石…。
南はどっちだ…?
なんとか、おおよその地点を探し出した。
そして、折り畳み式のシャベルを取り出し、長く伸ばして地面に突き立てる。
おそらく、誤差はあるだろうから…かなりの広範囲を掘り返すことになるだろう。
その時だった。
「おじさん…。何をしてるの?」
「へ?」
不意に後ろから声を掛けられた。
そこには…黒いワンピースを着た、長い髪を頭頂部で丸く結わえた、小柄で可愛らしい少女が、松本をじっと見詰めていた。
2480投稿者:リリー  投稿日:2008年07月01日(火)21時23分38秒
松本は、固まってしまった。
無垢な少女が、欲望に汚れた大人をじっと見詰めている。
その汚れのない瞳が、松本には痛かった。
「何をしてるの?」
少女は、もう一度聞いた。
「お…お嬢ちゃんは…だ、誰かな〜…?」
松本の笑顔は、ビクビクに引きつっていたことだろう…。
「私?私の名前は、松尾瑠璃だよ。ここのペンションに住んでるの」
「あ…!き、君が…?ああ…ハセヤンから聞いてるよ…!」
「おじさん、お客さん?」
「そ、そう!!今日、ここに着いたの!!」
「ふ〜ん…」
瑠璃は、目を細めて松本を見た。
2481投稿者:リリー  投稿日:2008年07月01日(火)21時24分05秒
「で…何をしてるの?」
さっきから、瑠璃は同じことを聞いてくる。
そろそろ答えないと…怪しまれる…!
しかし、何て言い訳をしようか…。
松本は、考えがまとまらないうちに、言葉を発した。
「ひ、ひ、秘密基地…!」
「秘密基地?」
「そ、そう…!!お、おじさん…こ、子供の頃を思い出しちゃってさ…。よ、よく、山に来ると…ひ、秘密基地、造って遊んだんだ!!」
その言葉を聞き、瑠璃は弾けんばかりの笑顔を見せた。
「面白そう!!瑠璃も造る!!」
「へ…?」
松本の声は裏返った。
そして…瑠璃のたっての希望で…明日、みんなで秘密基地造りをすることとなった。
隠し財産の眠る、この土地で…。

(『六回・表』・・・終了)
2482投稿者:リリー  投稿日:2008年07月01日(火)21時25分12秒
瑠璃も再登場したところで、それでは、おちます
2483投稿者:見にくい・  投稿日:2008年07月01日(火)21時26分54秒
  
2484投稿者:117  投稿日:2008年07月01日(火)21時48分55秒
なるほど、門司の隠れ財産は「ハセヤンズハウス」にあったんですか!
瑠璃も普通の女の子に戻って・・・?でも、鋭い!
さて次回は「裏」の話ですか。確か「浴衣ピエロ」がどうとか?続きも楽しみです!
2485投稿者:あげ  投稿日:2008年07月01日(火)21時53分41秒
  
2486投稿者:カイ  投稿日:2008年07月02日(水)00時12分13秒
あぁ・・・また「らりるれろ」が読みたくなってきた。カイです。
ゴルゴさん・・・いろいろ大変だね。

そういえば、自分自身で書いてる小説が今週中にスレ立て出来そうです。
ミスト主人公になっちゃったけど・・・
2487投稿者:列津祐人・・・  投稿日:2008年07月02日(水)00時43分09秒
LetsとUtoか・・・
2488投稿者:千秋も瑠璃も  投稿日:2008年07月02日(水)02時33分32秒
なんか懐かしいなぁ
2489投稿者:あげ  投稿日:2008年07月02日(水)19時09分30秒
       
2490投稿者:あげ  投稿日:2008年07月02日(水)21時13分23秒
2491投稿者:リリー  投稿日:2008年07月02日(水)21時19分30秒
2483さん
説明的な部分が多すぎましたかね…
117さん
今日から六回・裏です
浴衣ピエロのことにも、触れます
瑠璃も、すっかり普通の女の子です
カイさん
ミストが主役ですか?
てれび戦士達と合流してから、あの3人が親しみやすくなりました
聖夜も、イケメンぶってへタレっぽかったし…
ド・ランクザンに通じるものがありそうです
カイさんも小説、がんばって下さい
楽しみにしてます
2487さん
LetsとUtoで、列津祐人です
気付いてもらえて嬉しいです
2488さん
私も書いてて懐かしいです
二人が出てくると、俄然、物語がよく転がっていきます

では、更新します
2492投稿者:リリー  投稿日:2008年07月02日(水)21時20分25秒
『六回・裏』

≪2007年8/10(金)≫
懐かしい者達が、『R&G探偵社』を訪問してきた。
井出卓也と白木杏奈。
天歳市内の…日本屈指の進学校、忠律高等学校の2年生で、卓也は理系クラスのトップ、杏奈は文系クラスのトップを誇っている。
2人とも元『R&G』のメンバーだったことがある。
そして、去年の『中村有沙捕獲作戦』に巻き込まれた身でもある。
ちなみに、2人がダーブロウ有紗につけられたあだ名は…卓也が『フニャオ』、杏奈が『カピバラ』だ。
今は、2人とも大学受験に専念する為、『R&G』には出入りしていない。
しかし、2人はいつか『R&G』に戻って来ると、将来の社長、ちひろに誓った。
特に、卓也の目標は、東大を首席で卒業し警察のキャリアとなり『R&G』を全面バックアップする…というものだ。
そんな2人が昨日、学校の補講を終えたので、久しぶりにちひろや吉田の顔を見に来たのだが、それは叶わなかった。
「あれ〜?なんか、寂しくないですか?ダーさん…」
卓也は、社長室のソファーにゆったりと座りながら、ダーブロウ有紗に言う。
「ああ…。今ここには、私と出っ歯ちゃんとミミーしかいないんだ」
ダーブロウ有紗は社長の席に座り、事務処理をしながら答える。
吉田のいない今、社長代行はダーブロウ有紗がしなけらばならない。
2493投稿者:リリー  投稿日:2008年07月02日(水)21時20分50秒
「ミミーって…あの、姉妹のお姉さんの方よね?妹さんの方はどうしたの?」
杏奈の問いに、ダーブロウ有紗は手短に答える。
「あん?ああ…。今、ちょっと入院…」
「入院?どうしたの?」
「仕事中に、ちょっと、首やっちゃってな。もうすぐ、退院できるが…。それから入院と言えば、レッドさんもそうだ」
「レッドさんが!?て、言うか、また?」
「ああ…。出張中の原村ってところで、事故に巻き込まれて…。それから、デコッパチも怪我してレッドさんと一緒に入院だ」
「な、何で…?」
「うん、まあ…仕事中の事故だな…」
いずれ『R&G』に帰ってくるとはいえ、2人とも今は普通の高校生だ。
あまり、余計なことは言わない方がいい…と、ダーブロウ有紗は考えた。
それ以前に、その顛末を語るには、少々面倒だ。
「で、今、ダッチャはデコッパチとレッドさんの看病で原村に残り、チビアリとデッパリンダとパッツンとジェリーとぷるぷるは、野球部の合宿ついでに原村へお見舞いに行った。私も実は、昨日、原村から帰ってきたばかりなんだ」
「ええと…デコッパチは梨生奈、ダッチャは羅夢、チビアリは有沙…デッパリンダはジョアン、パッツンは七海、ジェリーはエマ、ぷるぷるはエリーだっけ?」
杏奈は、今ひとつ、ダーブロウ有紗の言うあだ名と、探偵達の顔を結びつけるのに時間がかかる。
2494投稿者:リリー  投稿日:2008年07月02日(水)21時21分15秒
「あの…ちーちゃんは、どうしてます?」
卓也の言う、『ちーちゃん』とは、村田ちひろのことだ。
「サムガーか?あいつは今頃、剣道の合宿で広島にいる。もうあいつ、肩書きは『女子高生』じゃなくて『剣道家』だぜ」
「相変わらずね…ちひろは…」
杏奈は、一心不乱に竹刀を打ち込んでいるちひろの姿を想像して、クスリと笑った。
「それだけじゃねぇぞ?あいつ、今度の剣道の世界大会の日本代表メンバーに最年少で選ばれやがった」
「え?す、すごいじゃないですか!!」
卓也は、目を丸くし、自分のことの様に喜んだ。
「だから、夏休み中はずうっと、剣道三昧だってよ。夏休みが終わっても、学校そっちのけでアッチコッチ合宿だ。で、11月から12月にかけて、その世界大会が中国の北京で行われる」
「ということは、ちーちゃん、しばらくは探偵稼業はお休みってことですね?」
「ああ。少なくとも、今年は無理だな」
「じゃあ、有沙、寂しがってるでしょうね…。ちひろに会えなくて…」
杏奈は、あの少女のことを想像し、面白がる。
「まあな。あいつ最近、フラストレーションが溜まって、怒りっぽくなってやがるぜ」
そんな中村有沙の姿を想像し、また杏奈は笑ってしまった。
2495投稿者:リリー  投稿日:2008年07月02日(水)21時21分42秒
だが杏奈は、また気を取り直して質問する。
「あと、もう一人…。金髪の…綺麗な人は…?」
「ジャスミン?あいつは…会社を辞めた」
「辞めた?どうして?」
「一身上の都合だ…」
これも、説明すると長くなる。
「じゃあ、今、『R&G』は手薄なのね」
「ダーさん、疲れてるんじゃないですか?大丈夫ですか?」
卓也は、あまり必要はないだろうと思いながらも、ダーブロウ有紗の身体を気遣った。
「う〜ん…。身体というよりも、脳味噌が限界だ…!こういう事務処理、みんなレッドさんがやってたから…。しかも、あのオヤジ、野球で遊びまくって仕事が溜まってるし…」
そう言ってダーブロウ有紗は、左手で頬杖をつき、右手で頭を掻き毟る。
「この前みたいな、身体を使う仕事は、全然辛くないんだけどなぁ…。こういうのは、苦手だなぁ…」
卓也と杏奈は、顔を見合わせて頷いた。
「ダーさん、よかったら、僕達が事務処理やりましょうか?」
もう、補講は終わったので、塾の夏期講座が始まる20日までは、一応ヒマになる。
「え?ほんとか?頼む!!」
一度は遠慮されると思っていたが、即行で頼まれた…。
2496投稿者:リリー  投稿日:2008年07月02日(水)21時22分10秒
山の様な量の書類が、卓也と杏奈の前に並ぶ。
その一つに一つに目を通す。
「え!?こ、これ、ダーさん達だったんですか?」
卓也が、一枚の書類を手にして声をあげた。
その書類は、新宿署に提出する、歌舞伎町風俗店を破壊したことによって『R&G探偵社』に出された被害届けを免除にする特赦状だった。
「これ…たしか、難田門司って…麻薬組織のボスを捕まえた事件よね…」
「凄い事件に関わってるな…。もしかして、その顔のアザ、その時に…?」
もう、目立たなくなってはいるが、まだ僅かにダーブロウ有紗の目元が赤く腫れている。
「ん?まぁな…。たいしたことはねぇよ」
ダーブロウ有紗は、吉田の椅子に背もたれに全体重を預け、天井を眺めながら平然と答える。
「そうそう…。その捕まったボスの顔が可愛いって、私達のクラスで話題持ちきりよ」
「ああ、背も低かったね、あのオジサン。僕のクラスは男ばかりだったから、可愛いとか、そういうのはなかったな…」
「あ、だとしたらダーさん、あの事件も依頼が来るかもね」
杏奈の言葉に、ダーブロウ有紗の視線は天井から降りる。
「ん?あの依頼?」
「ほら…今日、ニュースでやってたじゃない。難田門司の女用心棒が、留置所から逃げ出したって事件…」
2497投稿者:リリー  投稿日:2008年07月02日(水)21時22分28秒
「ああ…。あの事件か…」
ダーブロウ有紗の目が険しくなった。
あの日、ダーブロウ有紗と死闘を繰り広げた『TDD』のコードネーム『ストレングス(力)』…秋山恵。
彼女が、留置所から忽然と姿を消したのだ。
自分で逃げたのではない。
あの女なら、力ずくで強引に脱獄するだろう。
だが、何の形跡もなく煙の如く消えてしまった…。
誰かが逃がしたのだ…あの女を…。
難田門司ではなく、用心棒の秋山恵を…。
十中八九、『TDD』の手によるものだ。
真っ先に、あの男の顔を思い浮かべる…。
『TDD』、コードネーム『エンペラー(皇帝)』…楠本柊生…。
2498投稿者:リリー  投稿日:2008年07月02日(水)21時23分01秒
「で、その事件も噂があって…」
「杏奈のクラスは、噂が好きだね…」
「どんな噂だ?」
「え?」
ダーブロウ有紗がいきなり会話に入って来たので、杏奈は少し驚いた。
「その女用心棒を逃がしたヤツ…のことだけど…?」
「うん。聞かせてくれ」
すぐに報道規制を敷き、重要性の低い情報を小出しにする警察よりも、女子高生の噂の方がよっぽど価値がある…というのが、ダーブロウ有紗の自論だ。
一応、ここの探偵リストに名を連ねている橋本甜歌の役目も、時々学校で話題になる話しや噂をメールで送る…ことである。
「『浴衣ピエロ』だって、噂よ」
「『浴衣ピエロ』?」
『浴衣ピエロ』については、甜歌から聞いて知っていた。
その名の通り、『浴衣』を着た『ピエロ』だ。
主に西日本、そして夏頃に出没し、明るい夕暮れの通学路で、下校途中の子供をさらうという。
2499投稿者:リリー  投稿日:2008年07月02日(水)21時23分22秒
ピエロと言っても、サーカスに出てくるような、陽気なものではない。
ただ、顔を真っ白に塗りたくっているのだ。
ドーランで…真っ白に…。
その男が地味な柄の浴衣を着て、杖をついて屋根の上でじっと子供達を見詰めているそうだ…。
最近の話しでは、大阪で虐待を受けていた小学生の少女を、その『浴衣ピエロ』がさらっていった…という話しだ。
しかし、その噂に卓也は懐疑的だ。
「でも、その噂は大阪近辺から西でよく聞く噂だろ?僕のクラスでは『怪盗ノッポ』なんじゃないかって…」
『怪盗ノッポ』とは、ありとあらゆる所に出没し、様々な美術品や高価な代物を盗む…という男。
これも、橋本甜歌から聞いた。
姿を見た者はいない。
ただ、背が高く、チューリップハットを被り、サスペンダーをしている…と言う話しだ。
しかも、ずん胴で背が低い言葉の不自由な『ゴン太』という名の下男と共に行動しているらしい…。
姿を見た者はいない…と言っておきながら、身体的特徴が広まっているのも、噂のいい加減な所だが…。
『浴衣ピエロ』が大阪を中心とする西日本で噂になっているのに対し、『怪盗ノッポ』は関東を中心とした東日本で噂になっている。
「でも、その『怪盗ノッポ』ってのは『人さらい』はやらないって話しじゃない?『物』を盗むだけで…」
「そもそも、『浴衣ピエロ』と『怪盗ノッポ』って、同一人物なんじゃないかって…噂もある…。噂の噂だけどね…」
ダーブロウ有紗は、高校生の他愛もない噂話しを、真剣な表情で聞いていた。
2500投稿者:リリー  投稿日:2008年07月02日(水)21時23分42秒
「子供をさらう…?でも…あの女は子供じゃねぇよな…」
「ダーさん…。これは、あくまでも噂なんですから…」
「いや、私は見たんだよ。あの日、パトカーの窓から…ビルの上から浴衣着た男が飛び降りたんだ」
その話しを聞き、杏奈も卓也も驚く。
「み、見たんですか?『浴衣ピエロ』を?」
「いや…見間違いかも…。この季節だからな…浴衣着たジジイがいても、おかしくはない。しかも、飛び降りたって言っても、ビルの向かい側だ。確認しようがねぇし…」
だが、ダーブロウ有紗は、額に手を当てて目を瞑る。
「ただ、その『浴衣ピエロ』の話しは忘れていたぜ…。歌舞伎町で飛び降り自殺があったって話しも聞いてねぇから、もう気にしなかったんだよな…」
「ダーさん…?」
まさか、本当に『浴衣ピエロ』の仕業だと思っているのではなかろうか…。
卓也と杏奈は、不安になった。
「ん?おい、フニャオ、カピバラ!仕事しろ!仕事!!」
ダーブロウ有紗は、再び椅子の背もたれに体重を預け、ふんぞり返った。
2501投稿者:リリー  投稿日:2008年07月02日(水)21時24分29秒
卓也、杏奈と登場人物を大急ぎで出しすぎな感がありますが…

これで、おちます
2502投稿者:浴衣ピエロとか実際居たら  投稿日:2008年07月02日(水)21時37分10秒
もう寝れない
2503投稿者:117  投稿日:2008年07月02日(水)21時51分12秒
おぉ、久々に卓也&杏奈も登場ですね。「浴衣ピエロ」は人さらいですか。でも意外と良い人そう?
「怪盗ノッポ」に「ゴン太」・・・まさに「できるかな」のノッポさんとゴン太くんですね(笑)。
そういえば最近姿見ないけど、どうなっているのかな?続きも楽しみです!
2504投稿者:浴衣ピエロ怖いし  投稿日:2008年07月02日(水)22時06分38秒
もしこんな噂が実際にあったら破壊力抜群のトラウマになりそう
2505投稿者:カイ  投稿日:2008年07月03日(木)00時07分38秒
はい、相変わらずうまい!やばい!まねできない!
最近本当にもぉ・・・・

一応スレ立て出来ました!
タイトルは「秘密探偵事務局ミスト」です。
もし、時間に余裕がございましたら、
読んで下さると幸いです。
2506投稿者:浴衣ピエロ・・・  投稿日:2008年07月03日(木)01時04分32秒
どうして、こう怖いものを考えつくんだろうw
サーカスのピエロのメイクじゃなくて、ただ真っ白に塗ってあるだけなんて・・・

♪明るい夕暮れ 浴衣着たピエロが笑う

もう、空宙ブランコがトラウマになったよw

2507投稿者:あげ  投稿日:2008年07月03日(木)20時50分38秒
2508投稿者:リリー  投稿日:2008年07月03日(木)20時55分05秒
2502さん、2504さん、2506さん
そうですよね
『浴衣ピエロ』のモチーフは、『空宙ブランコ』と、中島らもの小説『白いメリーさん』から頂きました
『白いメリーさん』も、噂に関する話しです
怖いですよ

117さん
ノッポさんは、一度、木生のゲストで出たことがあって、それで名前だけですけど出しました

カイさん、小説読みました
ポチもしっかり出ているところがいですね
続き、楽しみにしてます

では、更新します

2509投稿者:リリー  投稿日:2008年07月03日(木)20時56分00秒
下ノ国町…駅前のファーストフード店に、集まった3人の少年少女。
若者特有な楽しげな雰囲気はない。
誰もが気難しそうに、深く沈んでいる。
その3人とは、飯田里穂、篠原愛実、ド・ランクザン望だ。
「幸生はどうしたの?」
里穂は、望に聞く。
「あいつ、叡智大渓岳園で野球部に入ったんだ。合宿とかいろいろ忙しいらしいよ」
「野球部?あいつ、野球なんてやってた?」
「高校に入ってから始めたらしいよ」
「なんで、よりによってあんな名門に?今から始めたって、ベンチにも入れないんじゃ?」
「それがね、結構、有望らしいよ。バッティングがいいらしい」
「ふ〜ん…。あいつも、夢中になるもの見つけられたんだ…」
里穂は、少し羨ましそうに呟いた。
2510投稿者:リリー  投稿日:2008年07月03日(木)20時56分20秒
「洸太は?」
今度は、愛実に聞く。
「洸太?あいつは受験でそれどころじゃないわよ。それに、今日、弟さんのいる長野の方に行っちゃった」
「長野に?なんで?」
「なんか、弟さん、向こうに事故に遭っちゃって、少しばかり入院したって…。大したことないみたいだけど」
「ふ〜ん…。そうか…。でも、受験と言ったら…愛実もそうなんでしょ?大丈夫?」
「うん…。あれから親とも仲直りして…。やっぱり志望校…聖テレにしたから…」
「聖テレか…。じゃあ、必死に勉強しないとね…。この件に関しては、私と望に任しておいてよ」
「そんな…!だって、もとはと言えば、私が…」
「いいから…!これは…私の問題でもあるし…」
望も、鼻息を荒くして言う。
「そうだよ!ハニーの問題は、僕の問題でもある!!…それでね…」
望は、リュックサックから封筒を出す。
「一応…これだけ持ってきた…」
その封筒の中には、10万円が入っていた。
2511投稿者:リリー  投稿日:2008年07月03日(木)20時56分38秒
「え?たった10万?もう少し何とかならなかったの?あんたの家、貴族なんでしょ?」
里穂は望を責めるように言う。
「これが精一杯だよ!CDとか、エレキギターとか、ビンテージのジーパンとか…いろいろ売って…こんだけ…」
「あんた、貯金はもっとあったでしょ?」
「それが…カードや通帳は親が抑えてて…。ほら、スクラッチやってた時、金遣い荒かったから…」
「バイクは売ったの?」
「ええ!?バイクはカンベン…!」
「何だよ!!愛実の問題は、あんたの問題なんだろ!?」
「そ…そうだけど…姉御はいくら持ってきたんだよ?」
「…5万…」
3人は、溜息をつく。
「合わせて15万…。確か『R&G』の最低ラインって…30万だよね…」
「まだ、半分か…」
愛実は、居た堪れなくなって財布を出した。
「わ、私…今は、これしか出せないけど…」
「いい!!いいから!!愛実は…」
「だって…!」
2512投稿者:リリー  投稿日:2008年07月03日(木)20時57分00秒
3人は、何を話し合っているのか…と言うと、未だに山本組に囚われている少女達のことについてだ。
里穂と愛実は、無事に山本の屋敷から逃げ出すことができた…。
『R&G』に…そして、楠本という、謎の男に助けられて…。
しかし、あの男は里穂と愛実だけしか助け出さなかった。
その気になれば、あの屋敷に居た少女、全員を助け出せたはずのなのに…。
あの後、警察が山本の屋敷を強制捜査したが、少女達はどこかへ移された後で、完全に証拠隠滅を許してしまった。
まだ、あの少女達は山本の慰み者になっているのだろうか…?
それとも、密かに処分されてしまったか…。
里穂達は、自分と同じ境遇を共に体験したあの少女達を、このまま見捨てるわけにはいかなかった。
その為に、『R&G探偵社』に、正式に依頼をしようと、こうやって金を持ち寄ったのだが…。
やはり高校生…簡単に金を揃えられるはずはなかった。
里穂は、意を決したように口を開く。
「こ…こうなったら…『売り』しか…ないかな…」
「な、何言ってんのよ!!姉御!!そんなことしたら、山本の屋敷に居たままと同じ事じゃない!!」
「ほ、本当にするわけじゃないよ!!オヤジがシャワーとか浴びてる隙に、財布をチョロマカして…」
その時、里穂の後ろの席から、声がかけられる。
「よろしければ…私も、そのお話し合い、参加してもよろしいでしょうか…?」
2513投稿者:リリー  投稿日:2008年07月03日(木)20時57分25秒
「………?」
里穂は、後ろを振り向く。
聞き覚えのある声だが…金髪の後頭部しか見えない…。
「あ…あの…。それ…私達に…?」
「はい…。あなたがたに言っているのですよ…」
この、低く響くような…丁寧すぎる口調…。
里穂は、ある男の顔を思い出し…寒気がした。
「今…ゾッとしませんでした…?ま、いいですけど…」
男は立ち上がり、こちらを振り返った。
そう…男は…あの雨の夜、3人を助けた…楠本柊生だった。
「あ…!あんた…!!」
3人とも絶句した。
何で、ここにいるのだろう…?
いや、いつからいたのだろう…?
2514投稿者:リリー  投稿日:2008年07月03日(木)20時57分46秒
楠本は、何の断りもなく、自分のコーヒーを持って、里穂達のテーブルに移動し、望の隣に座った。
「やあ、雨降る夜のナイスなナイト…。相変わらず男前だね…」
「な…何ですか…?」
男に言われても…望はイマイチ嬉しくなかった。
「それに…君達の他人を思いやる気持ち…この国の若者も捨てたモンじゃないですねぇ…」
楠本は、懐からハンカチを出して、わざとらしく涙を拭くふりをする。
「な、なんだよ!?いきなり現れやがって…」
里穂は立ち上がって怒鳴ろうと思ったが、隣の愛実が怯えてしがみ付いていたため、それができなかった。
「まあ、まあ…。落ち着いて…。私は、何もあなたがたにとってマイナスになる存在ではありません。それは、『あの夜』と同じです…」
確かにあの夜、この男がいなければ、里穂達はどうなっていたかわからない。
だが、この男も、充分信用できる…いや、安心できる男ではない…。
「で…何の用で…僕達の話しに割り込んだんですか…?」
望の声は、おっかなびっくりだ。
「はい…。ええと…もちましょうか?」
「え…?」
「だから…足りない分の15万円…私が負担致しましょうか…?」
2515投稿者:リリー  投稿日:2008年07月03日(木)20時58分05秒
「え…?いいの…?って、ちょっと!!な、何で、あんたが、金を払うんだよ!!理由がないじゃないか!!」
「え?理由?それは、あなたがたの優しい心に感動したからですよ…」
里穂は、途端に顔をしかめた。
「うそ臭いよ!!」
楠本は、そんな里穂をジロリと睨む。
「…それに…『援助交際』をしようとしてる…なんて、耳にしたら…止めざるを得ないでしょ?大人として…」
「だ、だから…それは、本当にするんじゃなくて…」
「それでも、法に触れることには変りありません…」
「う…」
里穂は返す言葉がなかった。
「な、何よ!!自分だって、どうせ、まともな仕事をしてる大人じゃないんでしょ!?」
代わりに、愛実が楠本をなじる。
「私?私は…そうですね…『探偵』です…」
「探偵?」
「はい。あなたがたが依頼をしようとしている『R&G』と同業です」
望は、膝を叩いた。
「だったら…!オジサンが依頼を受けて下さいよ!!15万払うくらいなら…」
「私?私は基本、1000万円以下の依頼は受けません」
「い、1000万!?」
望も、里穂も、愛実も、素っ頓狂な声をあげた。
2516投稿者:リリー  投稿日:2008年07月03日(木)20時58分28秒
「な、何だよ!!自分は金の亡者じゃないか!!それで、なんで、15万も私達に…」
里穂の言葉を、楠本は右手を出して遮った。
「お待ちを…。これは、私のボスから厳命されたことなんです。1000万円より安い依頼は受けるな…と…」
「ボス?」
「はい。規則なんです。あなた達の学校でも、校則があるでしょ?」
「校則なんて、関係ないよ!!」
「なるほど…殺されるわけではないですからね…」
「こ、殺される!?」
「ふふ…。話しがそれましたね…。つまり、私はあなたがたの依頼を受けたくても受けられないんです。だから、お金を差し上げてでも協力したい…という、私のせめてもの思いなのです」
3人は、怪訝そうに顔を見合わせる。
楠本は、静かに自嘲気味に笑う。
「仕方がないですねぇ…。私は、只でさえ信用を得にくい性質ですから…。それは、探偵としては致命的なのかもしれませんが…」
楠本は、分厚い財布を懐から取り出すと、ごっそりと札束を掴み取り、里穂達の前に置いた。
ゴクリと生唾を飲む3人…。
「では、このお金をどう使うかは、あなたがたが決めて下さい。ただ…あなたがたの決断が、あの気の毒な少女達の命運を握っている…ということを、お忘れなく…」
楠本が席を立った後、しばらく呆然と札束を眺める3人。
里穂が恐る恐るその札束を手にし、数え始める。
「あ…!!こ、これ…18万円ある!!3万円、多いよ!!」
里穂は後ろを振り返ったが、既に楠本の姿はなかった。

(『六回・裏』・・・終了)
2517投稿者:リリー  投稿日:2008年07月03日(木)20時58分59秒
次回は七回・表
舞台は原村に戻ります

では、おちます
2518投稿者:浴衣ピエロですか  投稿日:2008年07月03日(木)21時05分27秒
自分、大阪に住んでるので
少し恐いです
マジでいたらうかうか外に出れませんよ
2519投稿者:117  投稿日:2008年07月03日(木)21時13分20秒
いきなり10万円が出てきて、ビックリしましたが・・・そういうことだったんですか。
神出鬼没な元帥・・・少女たちを助けたいという優しさなのか、それとももっと深い陰謀が・・・?続きも楽しみです!
2520投稿者:カイ  投稿日:2008年07月04日(金)01時25分41秒
うーん・・・・やっぱなんか違うなぁ・・・
リリーさんは表現も上手なんですね!
俺のなんか・・・・
2521投稿者:リリー  投稿日:2008年07月04日(金)21時04分10秒
カイさん
私も、一作目を読み返してみたら、酷いものでした
今も、上手くいかなくて四苦八苦なんですが…
私はカイさんの小説を読んでみたいと思います
がんばって下さい

117さん
元帥のことですから、陰謀の方ですね

2518さん
噂の出所を大阪にしたのには、理由があるんですが、気味の悪いことを書いてしまいましたね…
すみませんでした

では、更新します

2522投稿者:リリー  投稿日:2008年07月04日(金)21時05分40秒
『七回・表』

≪2007年8/11(土)≫

七海達野球部、そして羅夢、千秋、瑠璃、梓彩の父である松本は…ハセヤンズハウスの敷居地内にある雑木林を更地にするため、朝から草刈りをしていた。
目的は…この地に秘密基地を造ること。
秘密基地と言っても、段ボールをつなぎ合わせたような、お手軽な物ではない。
大木を柱に使う、風雨に耐えうる、本物の家だ。
廃材で家を造る名人である、ハセヤンの指導のもと、行っている。
ハセヤンズハウスの建物も、ハセヤンが廃材から一から造った物なのだ。
2523投稿者:リリー  投稿日:2008年07月04日(金)21時06分07秒
野球部員達も、体力作りの一環として秘密基地造りを手伝うことになった。
秘密基地造りと聞いて、七海は胸が高鳴ったが、第一日目は土地を整備するのみで精一杯なので、草むしりで終わってしまう。
七海はそこが不満だった。
だが、七海以外の者は、すべてが不満だったが…。
特に不満が大きいのが、梓彩だ。
「もう…!パパが余計なことしたおかげで…。なんで、私達がこんなこと…」
「いいよ。あず〜…。これも、やってみると面白いし…」
愛美は、何とか梓彩を元気づけようとする。
そう…この秘密基地造りは、梓彩の父、松本がきっかけとなって始まったのだ。
それに瑠璃が興味を示し、千秋と羅夢が一緒にやろうと言い、ハセヤンが教えることになった。
そこに、あすみと野球部も手伝うことになった。
千秋や羅夢にとっては、モニークが村を去ってからハセヤンズハウスの敷地内での引きこもり状態になった瑠璃が笑顔を見せた…そのことが、嬉しくてたまらなかった。
2524投稿者:リリー  投稿日:2008年07月04日(金)21時06分33秒
雑木林に、七海の声が響く。
「ちょっと!みんな、こっち来て!!ここの切り株がごっつジャマやねん!千秋君!そこの棒、梃子に使ってやってみて!おい、羅夢、オノレはロープを持って来んかい!!」
案の定、羅夢は七海に食ってかかった。
「おい!!何、てめぇが仕切ってんだよ!!」
「何や!!聞こえとんなら、はよ、持って来いや!!」
そんな2人を、野球部の皆は止めようともしない。
瑠璃は、罵り合う2人を楽しそうに眺めた。
「いいねぇ…。瑠璃も、あんな友達が欲しいな…」
「友達?10秒に一回くらいの割合でケンカしてるけど…?」
千秋も二日目ともなれば、もう勝手に2人をケンカさせておく。
「ケンカする程、仲が良いって言うじゃない!」
瑠璃にとっては、七海も羅夢も『TTK』の先輩…。
2人の犬猿の中も充分承知なのだ。
しかし、やはり七海も他の者達も、ただの『戦士候補生』だった自分のことは覚えていない様だった。
それはそれでいい…と、瑠璃も羅夢も千秋も、そう思っていた。
2525投稿者:リリー  投稿日:2008年07月04日(金)21時07分15秒
瑠璃は、他の元『TTK』の『戦士』達を眺める。
ジョアンは…つまらなそうに、大きな木の根元に腰を降ろして呆けていた。
彼女は、ここ、原村に着いてから笑顔を一回も見せてはいない。
かつてのパートナー、ジャスミンが『R&G探偵社』を去って行ったからだ。
昔のパートナー、モニークの後を追って…。
つまり、ジャスミンは自分よりもモニークを選んだ…この事実が、ジョアンには堪らなく寂しかった。
瑠璃も、ジョアンの気持ちがわかる。
今は、こうやって秘密の基地造りをしているお陰で、だいぶ気分が晴れてきたが…。
そして、今度はエマとエリーに目を移す。
「もぉ〜!!やだぁ〜!!いっぱい、蚊に刺されちゃってるぅ〜〜〜!!」
「長袖着ると暑いし…。もう、これだから田舎は嫌い!!」
2人とも涙目でお互いの身体を掻き合っている。
相変わらず、仲が良い。
しかし、この2人…自分やモニーク、ジョアンやジャスミンの様に、離れ離れになってしまったらどうなるのか…。
自分やジョアンよりも、酷く落ち込んでしまいそうだ。
2人の身を案じるのと同時に、大好きな者と一緒にいられることを、羨ましく思う。
そして、あと一人…。
「あれ…?」
中村有沙の姿が見えない…?
2526投稿者:リリー  投稿日:2008年07月04日(金)21時07分43秒
「千秋君…。チビアリ…有沙さん…どこに行ったの?」
瑠璃に問われ、千秋は改めて周りを見回した。
「あれ?いない…。どこ行ったんだろ?」
そこに、有海が声をかける。
「あ、中村先輩なら…木内さんのお見舞いに行くって…」
「え?梨生奈ちゃんのお見舞い?」
「はい…。なんか…木内さんの方からお話があるとか言ってました…」
「梨生奈ちゃんから…?何だろ…」
今回の原村での事件で、真相を知っているのは、野球部員の中だけでは中村有沙だけだ。
おそらく、事件の核心についてまだ伝えたいことがあるのだろうか…。
「あと…あの…」
有海が、遠慮がちに言葉を続ける。
「ん?何?」
「お兄さん…辛そうですけど…。大丈夫でしょうか…?」
有海の視線の先に…両手両膝を着いて、よくネットで見かける_| ̄|○ の恰好で息をゼイゼイと切らしている男がいる。
千秋の兄…洸太レイシーである。
2527投稿者:リリー  投稿日:2008年07月04日(金)21時10分12秒
千秋は、苦笑いの様な表情を浮かべて、汗を拭いた。
「兄貴は…ほっといていいから…。運動不足なんだよな…。いつも勉強ばっかりやっているから…」
洸太は、千秋が原村で怪我をして一日入院した…ということで、家族と共に原村に駆けつけたのだ。
この冬、日本屈指の進学校…卓也や杏奈も通っている忠律高校の受験を控えているのだが、気分転換にと両親に無理矢理連れてこられたのだ。
だが、洸太の体力の無さは深刻だった。
作業を始めて30分の段階で、こうだったのだ。
「でも…やっぱり、ほっとけません…!」
有海は、洸太の元に走って行く。
「大丈夫ですか?」
「ああ…。だ、大丈夫…。ありがとう…」
洸太は、産まれたての小鹿の様に、ガクガクと足を震わせながら立ち上がる。
「ご、ごめんね…。何か、情けないな…」
「わ、私も…あんまり体力ないから…。ちょっとここで待ってて下さいね。お水持ってきます…」
有海は、ウーロン茶のペットボトルの置いてある日陰へと駆け出して行った。
2528投稿者:リリー  投稿日:2008年07月04日(金)21時10分58秒
「ふ〜ん…。何か、あみ〜ごとイイ感じですね」
藍が、洸太の側に寄って来た。
「そ、そんなこと…ないよ…!」
洸太は、顔を真っ赤にして慌てて否定した。
「でも、弟の千秋君は、可愛い彼女を見つけたみたいだから…お兄さんも負けてられないんじゃないですか?」
「…う…」
そうなのだ…洸太には、それがたまらなく悔しい。
横目で千秋を見る洸太。
千秋は、瑠璃にタオルで汗を拭いてもらっている。
ただ救いなのは、その彼女があまりにも幼いことか…。
だが、千秋は既に、年相応の彼女がいた。
今、入院中の梨生奈だ。
しかも、初体験目前まで行ったのだ…。
「ぼ、僕は、受験があるから…。彼女なんて、作ってるヒマなんか…」
「あ…!忠律高校目指してるんでしょ?あそこ、凄く頭良いんですよね〜!!ねえ、お兄さん!!私、メチャクチャバカなんです!勉強、教えて下さいよ〜!!」
藍は洸太の隣に座り、肩に手を置く。
「い、い、いいよ…。お、教えてあげる…」
ドギマギする洸太だが、藍のボディタッチには何の意味も込められていない。
2529投稿者:リリー  投稿日:2008年07月04日(金)21時11分46秒
今日は、これでおちます
2530投稿者:117  投稿日:2008年07月04日(金)21時16分28秒
そうそう、「表」の話は「秘密基地作り」でしたね。
_| ̄|○ 、ウケました(笑)。そして藍と洸太の絡みあり・・・続きも楽しみです!
2531投稿者:有海がクラリス  投稿日:2008年07月04日(金)22時22分37秒
 
2532投稿者:質問です  投稿日:2008年07月04日(金)22時34分02秒
有海と洸太が恋人関係になってしまうのでしょうか?
愛実とでしたっけ?
なんか有海と洸太は今までリリーさんの小説では親子だったから
2533投稿者:千秋  投稿日:2008年07月05日(土)01時44分06秒
兄貴は、大変なものを盗んでいきました・・・・
それは、有海さんの心です。
2534投稿者:_| ̄|○ワロタ  投稿日:2008年07月05日(土)02時26分41秒

2535投稿者: 投稿日:2008年07月05日(土)02時41分44秒
 
2536投稿者:あげ  投稿日:2008年07月05日(土)15時18分47秒
2537投稿者:あげ  投稿日:2008年07月05日(土)19時45分48秒
2538投稿者:リリー  投稿日:2008年07月05日(土)21時00分43秒
117さん、2534さん
_| ̄|○は、文章で表現するのがめんどくさくて…
でも、笑って頂いて嬉しいです
そう言えば、この小説で最初の挿絵ということになりますね

2532さん
洸太と有海が恋人同士になるかはわかりませんが、洸太は有海をバッチリ意識することになるでしょう

2531さん、2533さん
それ、銭形警部の名セリフですね

あげ、ありがとうございます

では、更新します
2539投稿者:リリー  投稿日:2008年07月05日(土)21時02分56秒
先ほどから松本は、一人で、ある一点を掘り起こしている。
あそこに柱を立てる予定は、ないのだが…。
「オジサン。手伝おうか?」
瑠璃が、黙々と穴を掘る松本の背中に声をかける。
松本は、驚異的な速さで振り返る。
「いや、いい!!いいから!!ここは、オジサン一人でできるから…!!ありがと!!」
「…?そう?でも、何でそんな所、穴を掘ってるの?」
「え…?」
「そこ、庭にするんでしょ?何か建てるの?」
「え…と…その…。見晴台…」
「見晴台?」
「そ、そう…!ここら一帯を見渡せるような…見晴台をね…。ブ、ブランコもつけようか?」
「わあ!!凄い!!楽しみ〜!!」
「ね?楽しみでしょ?だから、瑠璃ちゃんは、他を手伝ってきてね」
「は〜い!!」
瑠璃は、スキップで千秋の元に帰って行く。
2540投稿者:リリー  投稿日:2008年07月05日(土)21時03分21秒
「ふぅ…」
松本は、溜息をついて汗を拭いた。
そして再びシャベルを地面に突き刺そうとした時、再び声が投げかけられる。
「見晴台?だったら、もっと狭い範囲を深く掘らなきゃ…」
「…う?」
振り向く、松本…そこには、あすみがいた。
「やっぱり一人じゃ大変でしょ?私が手伝おうか?」
「い、いい!!いいから!!あんたは早く、あの2人のケンカを止めてこいよ!!」
「ん?ああ、ななみんと羅夢?いいよ。殴り疲れたら自然とやめるでしょ…」
「と、とにかく…。ここは俺一人で大丈夫だから…!!」
「ふ〜ん…。なら、いいけど…」
あすみは、ジロリと松本を細目で睨む。
「な、何だよ?」
「あの子、見晴台、楽しみにしてるんだから…。途中で投げ出さないようにね…」
「わ、わかってるよ!!」
あすみは、振り返ると、溜息をつきながら七海達の元に行く。
松本は、シャベルを思いっきり穴の中に差し込んだ。
何か硬い物が、シャベルの先に当たった。
2541投稿者:がんばれ  投稿日:2008年07月05日(土)21時04分05秒

2542投稿者:リリー  投稿日:2008年07月05日(土)21時04分24秒
「…?」
赤土の中から、小さく光る物が…。
「へ…?」
ジャラジャラと、その光る物が流れ出てくる…。
そして、松本の掘った穴を埋めていく…。
ダイヤモンドだ…。
おびただしい量のダイヤモンドが、溢れ出てくる…。
どうやら、シャベルでダイヤの入った袋がすぐ近くで埋まっていて、それを破いてしまったらしい。
「どわわわ〜〜〜!!!」
松本は、思わず叫び声をあげた。
「どうしたの?」
皆は、松本の方を注目する。
「え…?」
松本は、思わず口を押さえた。
「何か、出てきたの?」
ワラワラと皆は駆け寄ってくる。
2543投稿者:リリー  投稿日:2008年07月05日(土)21時05分01秒
(マ、マズイ…!!)
今、ここでダイヤを見られたら、大騒ぎになる。
そして、当然警察に届けよう…ということになる。
このダイヤが難田門司の隠し財産ということがわかれば、もちろん、警察に没収される。
もしそう断定されなくても、ここの土地の持ち主…ハセヤンの手に渡ってしまう…。
「ま、待て!!」
松本は、掌を皆に向ける。
「こ、来ない方がいい!!」
皆は、顔を見合わせて、不思議そうに松本の顔を見る。
「どうしたの?」
「カ、カエルが…」
「カエル?」
「そ、そう…もう、土鍋に溢れるくらいの、でっかいイボガエルが…」
「ひええ!!」
カエルと聞いて、少女達は足を止めた。
「カエル?わぁ…!私、カエル大好き!!」
瑠璃だけが、満面の笑みを浮かべて走り寄って来た。
2544投稿者:リリー  投稿日:2008年07月05日(土)21時05分55秒
松本は焦った。
「だ、だから来ちゃダメだって!!」
今度は、両手の掌を前に突き出す。
「どうして?」
瑠璃は、少し不機嫌そうに聞く。
「だ、だって…。カエル、オジサンがシャベルで真っ二つに…」
「ぎゃあああ〜〜〜!!!」
瑠璃を含む皆は、途端にその場から逃げ出した。
「だ、だから…!ちゃんと埋めておこう!!うん!!そうだ!!お墓を立ててあげよう!!」
松本は大急ぎで、ダイヤで埋まっている穴に土を被せ、大きな石をそこに置いた。
(ふぅ…。女の子は、こういうの苦手だからな…。ここに近付きもしないだろう…)
本当に埋まっていた…難田門司の隠し財産…!!
しかし、こうなった今、ここでダイヤを回収することは不可能だ。
夜、こっそりとペンションを抜け出して、ダイヤを頂こう…!
そう松本が目論んでいたいた時、何やら後ろが騒がしい。
「ん?」
松本が振り向くと、皆が一所に集まっている。
輪になって、誰かを取り囲んでいる様だ。
2545投稿者:リリー  投稿日:2008年07月05日(土)21時06分29秒
「大丈夫!?大丈夫!?」
と、口々に叫んでいる。
「ど、どうした…?」
松本も、その輪の中に入ると…一木有海が、引きつけを起こして倒れていた。
「へ…?ど、どうしたんだ!?」
松本は、素っ頓狂な声をあげた。
七海も、オロオロしながら答える。
「こ、この子、カエルとか…ダメなんよ…!特に、真っ二つって辺りが…」
有海には、カエルに対してトラウマがあった。
クラスのいじめっ子に、誕生日のプレゼントと騙されて、カエルの解剖のホルマリン漬けを寄越されたことがあったのだ。
当然、有海は驚きと恐怖のあまり、そのホルマリン漬けの瓶を放り出してしまう。
その結果、目の前にカエルの内臓がぶちまけられることになった。
だから、大きなカエルがシャベルで真っ二つなど、有海にとっては悪夢意外の何物でもない。
「もう!!パパ!!なんてことするのよ!!あみ〜ご、大変なことになっちゃったじゃない!!」
梓彩が、松本に詰め寄った。
「ご、ごめんよ…」
松本は、シドロモドロになって謝るだけだ。
2546投稿者:リリー  投稿日:2008年07月05日(土)21時07分01秒
「あず〜、お父様を責めてはダメよ。何もワザとやったわけじゃないんだから…」
あすみは、横目で松本を見る。
松本は、まともに顔を上げることができない。
カエルを真っ二つにしたなんて、ダイヤを隠すウソだからだ。
そのウソが、まさかこんな事態を引き起こすとは思ってもいなかった。
「ととにかく、涼しい所…ペンションに戻した方が…」
あすみは、有海の身体を抱き抱えようとする。
「ぼ、僕が背負います!!」
そう言って、有海を背中に負ぶったのは洸太だった。
しかし、体力がない上にへばっていた洸太…悲しいかな、二、三歩進んでその場に潰れた。
結局、ハセヤンが有海を負ぶってペンションに向かった。
松本は罪悪感を抱き、ダイヤの埋まった穴の方を向く。
そこには瑠璃が…。
ギョッとする松本。
「な、何をやってるのかな…?」
そう尋ねられた瑠璃は、悲しそうな顔を振り向かせる。
「お花…供えてあげてるの…。カエルさんに…」
見ると、石の前に数本の花が…。
「そ、そう…。る、瑠璃ちゃんは、優しいねぇ…」
再び、松本の胸はズキズキと痛んだ。
2547投稿者:リリー  投稿日:2008年07月05日(土)21時08分14秒
2541さん、ありがとうございます

では、おちます
2548投稿者:あげ  投稿日:2008年07月05日(土)21時09分28秒

2549投稿者:117  投稿日:2008年07月05日(土)21時10分30秒
何かと「カエル」繋がりでしたね。
瑠璃はカエルが好きで、有海にとってはこの劇中で辛い思い出があって・・・
それにしても、隠れ財産が見つかるのではないかと、ゴルゴさん同様、こちらまでドキドキしました。続きも楽しみです!
2550投稿者:あげ  投稿日:2008年07月05日(土)21時17分26秒

2551投稿者: 投稿日:2008年07月05日(土)21時32分23秒

2552投稿者:ちょっとタンマ!  投稿日:2008年07月05日(土)21時49分22秒
洸太はなぜ千秋が初体験寸前までいったこと知ってるの??
千秋が(まぁ結果が結果だけにww)ばらすわけないし……
2553投稿者: 投稿日:2008年07月05日(土)22時26分59秒

2554投稿者:あげ  投稿日:2008年07月05日(土)23時10分31秒
    
2555投稿者:最初の挿絵が洸太とはw  投稿日:2008年07月05日(土)23時17分05秒
それにしても、ロクでもない親父がやってることがことごとく空回り&裏目にでてるなぁw
2556投稿者:松本が面白すぎるー  投稿日:2008年07月05日(土)23時56分17秒
憎めない悪役ですね
2557投稿者:ゴルゴ  投稿日:2008年07月06日(日)00時21分59秒
不意にカエルの 命! を・・・・ウソだけど・・・・
2558投稿者:これを読むと  投稿日:2008年07月06日(日)01時25分07秒
瑠璃とゴルゴの天てれでの共演を見てみたかった
2559投稿者:あげ  投稿日:2008年07月06日(日)18時54分03秒
 
2560投稿者:リリー  投稿日:2008年07月06日(日)20時50分34秒
たしかに、ゴルゴさんは空回りしてるけど、2556さんが仰る通り、自分でも書いてて憎めないですね
不意についたウソで、大パニックを起こさせてしまうし

117さん
瑠璃がカエルを飼ってることを辛うじて覚えてました
イボガエルではなかったと思いますが
名前、何ていいましたっけ?

2558さん
そうですね、結構合ってたかもしれません

2552さん
ええと、これはですね…「そのことを、洸太は知らないが」という一文を添えなかったので、わかりにくかったですね
すみませんでした

では、更新します


2561投稿者:リリー  投稿日:2008年07月06日(日)20時52分55秒
諏訪市民病院。
中村有沙は、梨生奈の病室に向かう。
何でも、今朝、梨生奈から直接ではないが、彼女の携帯にかかってきたからだ。
話しがあるから、また病院に来て欲しい…と。
それも、一人だけで…。
「あら、来たのね。今、昼食が終わった所だから…」
廊下で、この病院の看護士長、清水ミチコと行き会う。
中村有沙の携帯に電話をかけたのは、彼女なのだ。
「どうも…」
中村有沙は短く礼を言うと、少し頭下げた。
「あのね…」
「ん?」
ミチコは、明らかに梨生奈が巻き込まれた事件のことを知っている。
病院に運ばれた時は、皆気が動転していて口裏合わせをしている時間はなかったからだ。
2562投稿者:リリー  投稿日:2008年07月06日(日)20時53分06秒
「あの子…とんでもない事件に巻き込まれたみたいだけど…そのことと関係あるのかな?」
中村有沙は少しも慌てる素振りは見せないが、言葉を選んでゆっくりと喋る。
「確かに、我々は普通の女子中学生とかけ離れたことに関わっている。だが、心配は無用だ。慣れているからな。こういうことには…」
「心配無用?そういう台詞は、大人になってから言うんだ。大人ってのはね、勝手に子供のことを心配するもんなんだからね」
「そうか…。ならば、私は早く大人になるとしよう…」
ミチコは、溜息をつきながら中村有沙の後姿を見詰める。
「梨生奈といい、あの子といい…全然、子供らしくないんだよねぇ…。羅夢くらいが丁度いいのかな…」
そして、ナースステーションへ戻って行った。
2563投稿者:リリー  投稿日:2008年07月06日(日)20時53分56秒
病室のドアがノックされる。
「…はい?」
何もすることがなく、うつらうつらと眠り始めていた梨生奈は、寝ぼけた頭のまま返事をした。
「私だ」
「あ…!は、はい!入って…」
梨生奈は、中村有沙を室内に招く。
中村有沙の手には、諏訪駅で買ったケーキの入った箱が提げられている。
「土産だ。看護士か羅夢あたりに食べさせてもらえ。あまり日持ちはしないから、早く食べろ」
無造作に、流し台の隅にケーキの箱を置く。
「あ、ありがと…。悪いわね、気を使わせちゃって…」
「気にするな。どうせ、会社の金だ。私達が自由にできる金は…」
「そ、そうね…」
梨生奈は、中村有沙の心遣いが嬉しかったのだが…。
2564投稿者:リリー  投稿日:2008年07月06日(日)20時54分14秒
「まあ、秘密基地造りなどというものから解放されたから、こちらにとっても好都合だったがな…」
「秘密基地?」
「ああ…。梓彩の父親が発端になって、みんなで造ってる」
「へぇ…。楽しそう…」
「梓彩の父親も、変なことを提案するものだ。だが、そのお陰で瑠璃が笑顔を見せたぞ」
「え?ほんと?」
「ああ…。いい、気分転換になったのではないか?」
「そう…。それは良かったわ…」
梨生奈は、心の底から安堵の笑みを浮かべた。
2565投稿者:リリー  投稿日:2008年07月06日(日)20時54分42秒
「レッドさんは?」
「レッドさん?三日ぶりのお風呂に入れてもらってるわ。ここ数日、タオルで身体を拭くだけだったから…」
「梨生奈は、まだ湯船に入れる段階ではないな」
「ええ…。もう、最悪…。髪の毛だけは洗ってもらってるけど…」
「どうやって?」
「水を使わなくても洗えるシャンプーってのがあるのよ。地震の被災地なんかで使われてるやつ…」
「ふ〜ん…。私は、いつぞやの…『TTK』を脱走した時は、五日間、風呂に入らなかった…」
「そ、それも凄いわね…」
「で…早速、本題に入れ。何の用があって、私を呼んだ?」
「あ…。うん…」
梨生奈はうつむいて、言いにくそうに口ごもる。
「どうした…?」
「く、くだらないことで呼ぶなって、怒られそうだけど…」
「本当にくだらないことなら、その時に怒る。早く言え」
「あ、ありりんは…う…占いって…信じる…?」
「…何?」
「だから…占い…」
「占い?」
本当に怒鳴ってやろうかと…中村有沙は思った。
2566投稿者:リリー  投稿日:2008年07月06日(日)20時55分07秒
梨生奈は、中村有沙の眉間のシワを目敏く見つけた。
「あ…や、やっぱり…怒ってる…」
それでも、中村有沙は腕組みをし、足を組んで息をつきながら気分を落ち着かせる。
「その話しには続きがあるのだろう…?」
「う、うん…」
「で…?その話しの真意は…?」
「………寛平さんって…覚えてる?」
「寛平さん…?ああ…マンボウズの監督か?」
「う、うん…。あの人、本業は占い師なんだって…」
「占い師?」
さっぱり、梨生奈の話しが見えない。
「いつも、天歳駅の広場で商売してるらしいわ…。もし、見かけたら、一度占ってもらうといいわ…」
「ちょっと待て。何だ?唐突に…。言っておくが、私は占いなど、信じないぞ」
梨生奈は、溜息をついた。
「やっぱりね…。でも…当たるのよ…。寛平さんの占い…」
「…?貴様…あの老人から、何を言われた…?」
2567投稿者:リリー  投稿日:2008年07月06日(日)20時55分34秒
中村有沙の問いに、梨生奈は真っ直ぐに彼女の目を見て答える。
「当たったの…。今回の事件のこと…。モニークのこと…!!」
「何…!?」
中村有沙は、組んだ足を戻して、身体を前のめりにして耳を傾ける。
「いつか…そう…加藤組の仕事をした日…私と七海で、マンボウズの試合を応援しに行ったの…。そして、お昼をご馳走になって…その時、占ってもらったのね…」
「何をだ?」
「私のことが気になるって…」
「気になる…?」
「私は…この夏…『嘘』に翻弄され、『裏切られ』、身体も、心も、『傷つく』ことになる…て…」
「『嘘』?『裏切り』?それは…つまり…」
「そう…『嘘』はモニークのこと…。『裏切り』は羅夢のこと…。そして、私はこの通り、『傷ついて』いる…」
中村有沙は、しばらく押し黙り、そして静かに口を開く。
「それは…そう言われれば当てはまるが…『嘘』や『裏切り』など、そこら中に転がっているものだ…」
「違うのよ!『懐かしいと同時に、恐ろしい人物』…そして私は忘れているけど、『私のことを覚えている人物』に出会うって…そこまでピッタリと言い当てられたの…」
「それが、つまり…モニークと瑠璃か?」
「ええ…」
「貴様は既に、その占いの暗示にかかってしまっている。…貴様らしくもない…!」
中村有沙は、無理矢理にでも、その占いの因果関係を否定していく。
2568投稿者:リリー  投稿日:2008年07月06日(日)20時56分30秒
「私だって、そう思ってた!そして、その占いのことを、無理矢理頭の中から消し去っていたの!もし、この占いのことを覚えていたら…思い出していたら…今頃、こんな事には…」
「この結果は、あくまでも貴様の力不足が原因だ。そのことを真摯に受け止めろ!」
「聞いて!!…その…『裏切った者』が…つまり…モニークに洗脳された羅夢が、私のもとに戻ってくる方法というものを…教えてもらってて…」
「…む?」
「決して、傷つけるな…と…。私は傷つけられても、その『裏切った者』を…傷つけてはいけないと…。それを守れば…『裏切った者』は、私のもとに帰ってくるって…」
「で…貴様は、律儀にその忠告を守って、羅夢にタコ殴りにされて全治6ヶ月か…?くだらん!!」
中村有沙は、端から梨生奈の話しを信じようとしない。
「でも、そんなことよりも、もっと重要なことが…」
「重要なこと?」
「七海が…野球部のこと…占ってもらったの…」
「野球部のこと…?で、何と?」
中村有沙は、目を伏せたまま苛つきながら聞く。
梨生奈は、言い難そうに口を開く。
「…崩壊…空中分解…つまり…解散…」
中村有沙は、ふん…!と、鼻で息をつく。
梨生奈は、言葉を続ける。
「『ある人物』がキッカケになって、少なくとも…『2人の人物』が野球部から抜ける…」
「『ある人物』?『2人の人物』?誰だ?その、野球部から抜ける『2人』とは…」
「最初、その内の一人は、まにゃ先輩だと思ってた。でも、違った…。まにゃ先輩、浜津さん…お父さんと一緒に行かなかったから…」
「で…今、その『2人』の内の一人は…自分だと思っているのだな?」
梨生奈は、コクンと頷いた。
2569投稿者:リリー  投稿日:2008年07月06日(日)20時57分17秒
「そして、キッカケになる『人物』…。それが…たぶん、羅夢…」
「羅夢?」
「占いでは、その『人物』は『雷』に例えたれてたの…。ほら…羅夢のコードネーム…」
「『ライトニング・ボルト(雷電)』か?」
「ええ…。この私の怪我も…羅夢によるものだし…」
中村有沙は、あからさまに大きな溜息をつく。
「それなら、抜ける『2人』の内のもう一人は七海だな。今頃やつ等、殴り合いをしている頃だろう…」
梨生奈も溜息をついて、そしてこう頼み込む。
「だから…!ありりんには、野球部が解散なんかにならないように…気をつけて見守って欲しいの…」
「わかった。帰ったらすぐに羅夢を半殺しにして長期入院させてやる。それなら、野球部は安泰だ」
「ちょ、ちょっと!!ありりん!!私が言いたいのは、そういうことじゃなくて…」
梨生奈は慌てふためきながら、不自由な身体を目一杯起こす。
2570投稿者:リリー  投稿日:2008年07月06日(日)20時57分30秒
「冗談だ。安心しろ」
「じょ、冗談?」
「その抜ける『2人』とは、貴様のことではない」
「え?」
「貴様は、怪我が治っても野球部には戻りたくないのか?」
「え…?そ、それは…戻りたいけど…」
「ならば、『抜ける』とは少し違うな…。『抜ける』ということは、野球部から心が離れる…と、いうことだろう?」
「ああ…。そ、そうか…」
「そのキッカッケになる『人物』も、羅夢とは違う」
「…だ、だったら…なおの事、野球部を注意して見てほしいの…!私が折角退院したって、野球部がなかったら…」
中村有沙は、少し間を置いて梨生奈を見詰める。
「言われなくても『占い』など抜きで、やつ等の面倒は見ていてやる。だから、安心して養生しろ…」
そして、病室から出て行った。
2571投稿者:リリー  投稿日:2008年07月06日(日)20時57分49秒
今日は、これでおちます
2572投稿者:117  投稿日:2008年07月06日(日)21時10分34秒
確か、瑠璃のカエルの名前は「レイニーちゃん」だったと思いますよ。
一応、ミチコさんが羅夢を普通の子どもっぽいと認識していることに一安心(笑)。
結構当たる寛平さんの「占い」。梨生奈の心配が現実にならないことを祈りますが・・・続きも楽しみです!
2573投稿者:自分の勝手な予想  投稿日:2008年07月06日(日)21時13分52秒
雷関係ないけど
ゴルゴがきっかけで
あすみと梓彩が辞める。
2574投稿者:占いって  投稿日:2008年07月06日(日)21時16分07秒
よくわかんないですけど寛平さん凄いですね
これから何か起こるのかな?

瑠璃ちゃんのカエルはレイニーだったと思います
では
2575投稿者:あげ  投稿日:2008年07月06日(日)21時16分09秒

2576投稿者:リリー  投稿日:2008年07月07日(月)20時51分35秒
117さん、2574さん
レイニーちゃんでしたね
思い出しました
ありがとうございました
寛平さんの占いは、基本的に当たるようにできています
つまり…そういうことになります…

2573さん
今、詳しいことは言えませんが…
そういう展開も面白いかもしれませんね
でも、そうなったら、もうゴルゴさんと梓彩の親子関係は修復不可能になるでしょうね

では、更新します
2577投稿者:リリー  投稿日:2008年07月07日(月)20時52分33秒
その晩、ハセヤンズハウスで夕食を終えた皆は、それぞれ団欒を楽しんでいる。
聖テレ野球部の皆は、今夜がハセヤンズハウスでの宿泊の最終日となる。
洸太は食堂で、藍、七海に数学を教えていた。
藍は、自分の事を「頭が悪い」と言った。
しかし、藍と七海の「頭の悪さ」…「学力の低さ」は、洸太の予想を遥かに超えていた。
聖テレは日本有数のお嬢様学校で、学力もそれなりに高い学校なのに…。
特に、聖テレ高等部と、洸太の目指す忠律高校は、難関大学進学率ではライバル関係にあるのに…。
「き、君達…ど、どうやって聖テレに入ったの?」
「うん?私はスポーツ推薦」
「ウチは裏金や」
「…噂では聞いてたけど…聖テレって…本当にそういうこと、やってんだ…」
洸太は、軽く退いた。
「バカの言う事を、信用するな」
隣のテーブルについている中村有沙は、本を読みながら洸太に言った。
「あ、有沙さん、成績いいんでしょ?七海ちゃん達に勉強を教えてあげないの?」
「動物に勉強を教えるのか?冗談だろ?」
「何や、ゴルァ!!」
七海はすぐさま立ち上がった。
2578投稿者:リリー  投稿日:2008年07月07日(月)20時52分58秒
「本当のこと言われて、何怒ってんだよ!」
瑠璃とオセロをやっている羅夢が、横目で見て笑った。
ちなみに、白が羅夢、黒が瑠璃。
版の上は真っ黒だ。
「オノレは動物以下、ミジンコやんけ!!」
「何だと!?コラ!!」
またもやケンカになりそうな2人の間に、藍が立つ。
「だったらさ、らむりんも一緒に教えてもらおうよ!今、小学校の算数から教えてもらってるところだから」
「ら、らむりん!?な、何だよ、そりゃ!!」
「ん?あんたのあだ名。気に入った?」
「き、気に入るかよ!!勝手に、あだ名を…」
そこに、瑠璃が口を挟んだ。
「ねえ!私には?私にもあだ名つけて!!」
「ん?瑠璃ちゃんも?…じゃあ…るりぽんってどう?」
「るりぽん?可愛い!!」
既に「るりるり」というあだ名のある瑠璃だが、この「るりぽん」も大いに気に入った。
ちなみに千秋は「ちゃっき〜」、洸太は「こ〜たん」と名付けられている。
2579投稿者:リリー  投稿日:2008年07月07日(月)20時53分18秒
藍も七海も、もう既に洸太の勉強を忘れ去って、雑談にケンカに、夢中になっている。
「やれやれ…」
洸太は溜息混じりに勉強道具を仕舞い始める。
「あの…」
後ろから小さな声…。
洸太は後ろを振り返る。
そこには、数学の教科書を胸に抱いた有海が立っていた。
「あ…有海ちゃん…。だ、大丈夫…?もう、平気?」
「は、はい…。大丈夫です…。あの…洸太さんが…私を負ぶってくれたって…聞いて…」
「い、いや…三歩だけだったけど…」
「ううん。どうも、ありがとうございました」
有海は深く頭を下げた。
洸太も、思わず立ち上がり同じく頭を下げた。
「で…その…。洸太さんに…お願いが…」
「な、何?」
「その…私に…勉強を教えてくれませんか?」
「え?で、でも…有海ちゃん、学年で3位なんでしょ?」
「それが…数学が苦手なんです。だから…教えてもらいたくて…」
「あ、うん!うん!いいよ!!教えてあげる!どこがわからないの?」
洸太は慌てて有海の為に椅子を引き出し、膝に椅子の角をぶつけてしまった。
2580投稿者:リリー  投稿日:2008年07月07日(月)20時53分40秒
「証明問題が…わからなくて…」
「証明?一年生でもう、証明を?やっぱり聖テレ、レベルが高いな…。証明はね、まず法則を覚えてから、どの法則が使えそうかって当てはめてみて…」
その時、藍の叫び声が響いた。
「あ〜〜〜!!こ〜たん!!いつの間にか、あみ〜ごとラブラブになってる!!」
洸太は、顔を真っ赤にして立ち上がった。
「そ、そんな…ラブラブなんて…!ただ、勉強を…」
「おい、コラ!!メガネ!!ウチ等の勉強は、ほったらかしかい!!」
七海がズンズンと歩み寄る。
「ほ、ほったらかしって…な、七海ちゃん達が、ほったらかしにしてたんじゃ…」
「あ、ご、ごめんね、藤本さん…。洸太さんも…。私、やっぱり自分で勉強するから…」
有海は慌てて教科書を仕舞うと、大食堂から小走りで去っていった。
「あ、有海ちゃん…!」
有海の背中を追う洸太を、七海は強引に引っ張った。
「さあ、とっとと勉強、教えんかい!!」
洸太は本当に残念そうに椅子に座り直す。
「お?何や?そのやる気のない態度は?オノレも動物に勉強教えても無駄やと思っとるんか?」
「そ、そんなこと、ないから…」
そして、もう一度名残惜しそうに、有海が去っていった廊下を見詰める洸太だった。
2581投稿者:リリー  投稿日:2008年07月07日(月)20時54分00秒
しばらく、自分の部屋で勉強をしていた有海だったが、どうにも集中できない。
「あ、もうそろそろみんな、お風呂を済ませた頃かな?」
有海は、着替えと洗面用具を持って、大浴場に向かう。
入浴に関し、野球部顧問のあすみは、水着の着用を禁止していた。
風呂は全裸で入るべし…あすみは、変な所にこだわりを持っていた。
この御触れに、最も困惑をしたのは有海だった。
『R&G』の者は、お互いの裸を見せ合うことには何の抵抗もなかったし、藍も同じだった。
愛美や梓彩は恥ずかしがったが、それでもあすみに従った。
しかし、有海はどうしてもみんなと一緒に入ることができず、こうやって皆が入浴を終えた後…最後に入るしかなかったのだ。
脱衣所には、誰もいない。
浴場も覗くが、誰も入っていない。
チャンスとばかりに、有海は急いで服を脱ぐ。
しかし、脱衣棚の一番下に、2人分の服が置いてあったのを、有海は見逃した。
最初に身体を洗った有海は、ゆっくりと湯船に入る。
「あ…。そう言えば、外に露天風呂があるって言ってたっけ…」
有海は、外の露天風呂へと続く引き戸を開ける。
下にある温泉を覗くが、人影は見えない。
有海は身体をタオルをキッチリと巻き、ゆっくりと石の階段を降りる。
恥ずかしがり屋の有海は、屋外で風呂に入るなんて滅多にできないが、美しい星空を眺めながらゆっくりとお湯に浸かりたい…という衝動に駆られ、少し気持ちを大胆にさせた。
2582投稿者:リリー  投稿日:2008年07月07日(月)20時54分52秒
今日は、これでおちます
2583投稿者:117  投稿日:2008年07月07日(月)21時17分53秒
そうそう、いろいろとあだ名をつける人っていますよね(笑)?
今夜のオチは何やら、どこかで見覚えがあるような展開ですね。
いるとしたら、やはり千秋と・・・誰だろう?洸太??
千秋にしろ、梨生奈がいるけど・・・続きが楽しみです!
2584投稿者:女湯の脱衣所に服があるんだから  投稿日:2008年07月07日(月)22時01分14秒
千秋や洸太ってことはないであろうと・・・
2585投稿者:もしかして  投稿日:2008年07月07日(月)22時05分43秒
誰かレズってるとか
その現場を有海が・・・
2586投稿者:ただ単に  投稿日:2008年07月07日(月)22時14分17秒
男湯と女湯を間違えたとかドシっていう設定だし
2587投稿者: 投稿日:2008年07月07日(月)22時49分38秒

2588投稿者:洸太w  投稿日:2008年07月07日(月)22時53分44秒
七海にまでメガネって言われてるw
2589投稿者:リリー  投稿日:2008年07月08日(火)20時29分18秒
皆さん、いろいろ予想してくださいましたが…
2585さん、正解です

洸太は、ダーさんにも似たような扱いを受けてましたが、そういう目に遭うのが似合います

では、更新します
2590投稿者:リリー  投稿日:2008年07月08日(火)20時29分29秒
「わぁ…。本当に、星がキレイ…」
有海は上を見ながら階段を降りていたので、足下にいる人物に気がつかなかった。
「…え?」
黒曜石でできた床に、裸体が二つ、横たわっていた。
白く、美しい肌が重なり合っている。
「もう…!本当にエリーは、イイ男を見ると見境がなくなるんだから…」
「安心してよ…。私、エマが一番好きだから…」
「ナンバー1じゃイヤ!!オンリー1じゃなきゃ…」
「オンリー1よ…。エマ、一人だけを…愛してる…」
その2人は…エマとエリーだった。
2人は、お互いの身体をまさぐり合い、熱いキスを交わしている。
「え…?え…?」
有海は、頭が混乱している。
上からでは、岩が死角になって、2人の姿が見えなかった。
何をしているのだろう…この2人は…。
いや、いくらこういうことに疎い有海も、愛し合っていることはわかる。
だが、2人は女同士ではないか…。
2591投稿者:リリー  投稿日:2008年07月08日(火)20時29分50秒
異様に仲の良い2人だが…これは良すぎないか?
有海は、居た堪れなくなって踵を返す。
すると、下にいたエリーが、有海に気付く。
「ん?誰?」
「あ!!あみ〜ご!!」
エマも、身体を起こして小さく叫んだ。
「あ…あの…ごめんなさい…」
有海は、急いで振り返り、頭を下げた。
「私、すぐに出て行くから…」
石段を駆け上がる有海を、エマは呼び止めた。
「待って!!あみ〜ご!!」
「え?」
恐る恐る振り返る、有海。
そこには、恥ずかしげもなく裸体をさらす、エマとエリーの2人の姿が…。
有海は、目のやり場に困った。
「あみ〜ごも…一緒に入ろうよ…」
「え…わ、私も…?」
「昨日だって、静岡の時も、あみ〜ご、一人だけでお風呂に入ったでしょ?たまには、一緒にどう?」
エリーもそう言って、笑顔で誘った。
2592投稿者:リリー  投稿日:2008年07月08日(火)20時30分08秒
「で、でも…私がいたんじゃ…ジャマでしょ?」
「ジャマ?何で?」
有海は、顔を一気に真っ赤にさせて言う。
「だ、だって…さ、さっき…」
2人は裸で抱き合ってキスをしていた…。
「ああ、あれ?あれは気にしないで」
「え?き、気にしないでって…」
「あんなの、仲の良い子達だったら…普通だよね?」
「だよね〜」
エマとエリーは笑顔で顔を見合わせる。
「ふ、普通?あれが…?」
今まで友達のいなかった有海…そんなものなのか、と考え始めた。
「そうだよ。だから、あみ〜ごは、変に気をつかわなくてもいいから…。さ、早く入ろう」
「夏だからって、風邪ひいちゃうよ?」
全裸の2人は、有海に歩み寄ると、強引に温泉へと誘って行った。
2593投稿者:リリー  投稿日:2008年07月08日(火)20時30分30秒
「ん?あみ〜ご、温泉に入るときは、タオルを取らなきゃ!」
「うん。それがマナーだよ」
エマとエリーに言われ、有海はドギマギする。
「え?で、でも…」
「でも?」
「は、恥ずかしい…」
有海は、身体に巻いたバスタオルをギュっと握り締める。
「恥ずかしいって…私達、女同士じゃん!!」
「そ…そうだけど…」
「さ、取っちゃお!取っちゃお!!」
有海は、無理矢理バスタオルを剥ぎ取られてしまった。
「ひゃ…!」
裸にされた有海は、小さく叫ぶと、身体を抱え込んでしゃがみ込んだ。
「ああ、もう!早くお湯に入ろうよ!」
エマとエリーは、有海を両側から抱えると、立たせて温泉へと誘導する。
2人の胸は、中学生にしては大きい。
両側から、有海の肩に2人の乳房が触れる。
それだけでも、有海は恥ずかしくて卒倒してしまいそうだった。
2594投稿者:リリー  投稿日:2008年07月08日(火)20時30分50秒
お湯の中で、有海は両腕と両足で、しっかりと身体をガードするように体操座りをする。
そんな有海を、両側からサンドイッチのように挟む、エマとエリー。
恥ずかしさで緊張している有海の横顔を見て、いたずらっぽく微笑む。
2人のサディスティックな一面が、ムクムクと頭をもたげる。
「あみ〜ご…可愛いね…」
エマは有海の耳元で囁いた。
「…え?」
「可愛い…」
有海の耳たぶに、唇で触れる。
「え…?ええ…?」
有海はエマから身体を遠ざける。
しかし、その反対側にはエリーがいる。
「ふふ…。ビックリしちゃって…」
エリーは後ろから、有海の身体に手を回して抱きしめた。
「あ…あの…」
「そのまま…。そのまま…」
エリーは顎を、有海の肩に乗せる。
エマも、身体を密着させた。
2595投稿者:リリー  投稿日:2008年07月08日(火)20時31分10秒
「あみ〜ご…クラスの中で…いじめられてるんだって…?」
肩に手を回すエマ。
「う、うん…。でも…藤本さんが…何かと助けてくれるから…」
「ななみんが…?ふ〜ん…」
「私達も…こんなに可愛いあみ〜ごを…守ってあげたい…」
エマは、有海の肩に口づけする。
「あ…あの…」
「可愛いあみ〜ご…」
エリーも、有海の首筋に唇を這わせる。
「あ…あ…」
「でもね、あみ〜ごをいじめてる子達の気持ちもわかるよ…」
エマの言葉に、有海は暗く落ち込む…。
「やっぱり…。私、暗いし…。見てて、イライラするのかな…」
「違うよ!あみ〜ごがいじめられる理由は、そんなんじゃない…!」
「え?」
耳元で、エマが囁く。
「可愛いから…」
「か、可愛い…?」
「うん。可愛いから…いじめちゃうんだよ…」
2596投稿者:リリー  投稿日:2008年07月08日(火)20時31分31秒
「え…?ど、どういう意味…?」
エリーは、有海の頬に軽くキスをして答える。
「あみ〜ごは…困った顔とか泣きそうな顔が…凄く興奮させるの…」
「こ、興奮…?」
「今だって…困ってるでしょ…?」
うつむいて、困惑する有海。
「そう、その顔…」
「凄く、可愛い…」
エマとエリーの手は、スルスルと有海の両腕のガードをすり抜ける。
そして、小ぶりな乳房を包み込んだ。
「あ…!」
有海は、立ち上がりかけるが、両肩を2人に押さえつけられる。
熱いお湯の中で、有海はのぼせてしまい、身体に力も入らない。
「可愛いおっぱい…」
エマの親指が、乳首を撫でる。
エリーの手は、有海の閉じられた足を広げさせる。
「ふふ…。まだ生えてないんだ…」
「可愛い…。あみ〜ごの、何もかもが可愛い…」
2597投稿者:リリー  投稿日:2008年07月08日(火)20時31分52秒
2人の手は、有海の太ももの内側を指を立てて撫でる。
「は…ぁぁ…」
有海は、くすぐったさと眠気の同時に襲われる。
段々、力が抜け始める…。
エマの指が、有海の大事な所に…。
「あ…!な、何するの…」
一気に、有海の目が覚める。
「いいから…。身体を楽にして…」
有海は、意識をはっきりと保とうと懸命に頭を振る。
「あ、あなた達は…いつも…こ、こんなことを…?」
「ん?そうだよ…」
「あみ〜ごも、気持ちいいでしょ?」
「そ、そんなこと…」
「ふふ…ウソばっかり…」
エマとエリーは、有海の身体を湯船から上げた。
2598投稿者:リリー  投稿日:2008年07月08日(火)20時32分17秒
「え?何?何?」
「…横になって…」
ヒンヤリとした黒曜石の床に、横にされた有海は、無防備にも身体を2人にさらしてしまっている。
エマとエリーの、美しすぎる顔が、自分の顔と身体を舐めるように見ている。
そして、2人は有海に添い寝をするように横になる。
「可愛い…」
何度もその言葉を囁かれたが…正直、有海は自信がない。
「わ、私なんて…」
「ううん…。可愛いよ…。自信を持って…」
「私達も…あみ〜ごのこと…守ってあげる…」
2人の唇は、有海の身体の至る所に触れていく。
口づけの音と共に、くすぐったい感触が、身体に走る。
どちらかの唇かは、わからなくなってしまったが、下腹部に口づけが迫っていく…。
有海は、目を閉じた。
もう、この2人に身を委ねてしまおうと、思った時だった。
「貴様等、何をしている?」
低く静かな声が響く。
有海は、目を開けた。
そこには、やはり裸体を隠そうともしない、中村有沙が腰に手を当てて有海を見下ろしていた。
2599投稿者:リリー  投稿日:2008年07月08日(火)20時32分46秒
今日は、これでおちます
2600投稿者:レズきた  投稿日:2008年07月08日(火)22時11分50秒
久々
2601投稿者:117  投稿日:2008年07月08日(火)22時17分32秒
なるほど、リリーさんお得意のレズでしたか。久々ですね。
ついに有海が誘惑の味を知ってしまったか・・・しかも有沙が来て、さらに?!続きも楽しみです!
2602投稿者:エマとエリーを追い払い…  投稿日:2008年07月08日(火)22時49分10秒
ふん、全くあいつらときたら

ところで…有海よ
2603投稿者:あげ  投稿日:2008年07月09日(水)20時00分01秒
2604投稿者:リリー  投稿日:2008年07月09日(水)20時49分24秒
117さん、2602さん、レズ展開は有沙の登場で中断となります
そして、七回表も、今日で終わります

では、更新します
2605投稿者:リリー  投稿日:2008年07月09日(水)20時51分25秒
「あ…!な、中村先輩!!」
有海は身体を起こすと、両腕で身体を抱え込むように隠したまま、湯船に飛び込んだ。
「あら…ありりん…」
「ありりんも、一緒にどう?」
エマとエリーは、悪びれる様子もない。
「貴様等が何をしていようと勝手だが、素人である有海を巻き込むな」
そう言うと、ゆっくりと温泉に足を入れる。
「はいはい…。わかりましたよ…」
エマとエリーは、石段を上がって行った。
そして有海の方を振り向くと、笑顔で手を振った。
しかし、それを有海は見ていない。
2606投稿者:リリー  投稿日:2008年07月09日(水)20時51分41秒
有海の離れた所で、中村有沙は肩までお湯に浸かり、目を閉じている。
エマとエリーとの恥ずかしいところを中村有沙に見られたことが、有海を居た堪れなくしている。
そして、出来得る限り音を立てずに温泉から上がろうと、緩慢な動きで移動をしていると、不意に声を掛けられた。
「おい」
「は、はい?」
「今夜…部屋を代わってやろうか?」
「え?」
「貴様は、あの2人と同室なのであろう?」
「あ…。は、はい…」
「また、寝込みを襲われて、悪戯されんとも限らん…」
やはり…あれは普通なことなんかではなかったのだ…。
2607投稿者:リリー  投稿日:2008年07月09日(水)20時52分28秒
「あの2人は、悪気があってやったことではない…。だから、迷惑この上ない」
「は…はい…」
「貴様のようなヤツは…いい餌食だな…」
「え、餌食…?」
「貴様の自信の無さが…あの2人に付け入る隙を与える…」
「そ…そうですね…」
有海は、力なくうつむいた。
2608投稿者:リリー  投稿日:2008年07月09日(水)20時52分41秒
「あ、あの…中村先輩…」
「何だ?」
「ど、どうすれば…中村先輩の様に…自信満々に行動できるんですか…?」
「自信満々?私が…?」
「はい…」
「ふむ…。貴様には、私がそう見えるのか?」
「ち、違うんですか?」
「自信満々とは…少し違う…。ただ…」
「ただ…?」
「どんなことにおいても、私は主導権を相手に渡したくない」
「しゅ、主導権?」
「私は以前、独裁者の様な者達にいいように使われていたことがあってな…」
「独裁者…ですか…?」
「ああ…。随分、そいつ等にいじめられた」
「い、いじめられた…?中村先輩が…?」
なんと言う、意外な言葉だろう…中村有沙がいじめられていた…決してつながることのないキーワードだ。
2609投稿者:リリー  投稿日:2008年07月09日(水)20時53分03秒
「その経験から…私は、自分のことは自分で決められるよう…そう生きていこうと、決心した…」
「そ、それが…中村先輩がカッコよく見える…理由なんですね…」
「カッコいい…?まあ、それはそうだな…」
今度は、否定をしなかった。
「でも…私は…無理です…。そんな生き方…」
中村有沙は、そこで目を開けて有海を見詰める。
「有海…。自分が主導権をとるという生き方…やってみると、けっこうしんどいものだぞ?」
「…え?」
「カッコいいとか、美しいとか…それはそれで疲れるものなのだ…」
「は、はぁ…」
「つまり…主導権をとられるのと、主導権をとるのと…疲れるのと、楽なのと…どちらを選ぶか…いや、どちらを選びたくないかが…貴様の運命を決定させるのだろうな…」
「う、運命ですか…?」
「梨生奈は…一瞬、主導権を失ってしまったのだろうな…妙な占いで…。だから、あんな大怪我をするハメになった…」
「え…?き、木内さんが…?」
「いや…。余計なことを言った…。忘れてくれ…」
中村有沙は、再び目を閉じた。
「あ、あの…。中村先輩と…お話しができて…よかったです…」
有海は、湯船から上がると、石段を上がり始める。
2610投稿者:リリー  投稿日:2008年07月09日(水)20時53分27秒
「有海…」
またもや、有海は声をかけられた。
「はい?」
「貴様も…主導権をとっているではないか…」
「わ、私も…?」
「どんな球種を、どんなコースで投げるか…。私や藍は、おまえに主導権を握られている」
「あ…」
やっと、有海は中村有沙の言う事が理解できた。
「どうだ?貴様が私達にサインを送る時の心境は…」
「そ、それは…もう、ドキドキして…。ほ、本当にこれでいいのか…何度も何度も考えて…それでも不安で…」
「疲れるか?」
「は、はい…。もう…ヘトヘトです…」
「そういう時の有海は…カッコいいぞ…」
「え…?」
「もう、言わない…」
それっきり、中村有沙は黙ってしまった。
有海は、中村有沙に深く頭を下げると、駆け足で石段を上がって行った。
2611投稿者:リリー  投稿日:2008年07月09日(水)20時53分49秒
午前二時…。
皆はもう、寝静まっているが、ハセヤンズハウスをこっそりと抜け出す者がいる。
梓彩の父、松本だ…。
松本は、懐中電灯とシャベル、そしてリュックサックを持ち、雑木林へと入って行く。
昼間、皆で秘密基地を造る為に更地にした土地に…松本は到着する。
そして、その更地の片隅にある大きな石の置物の前に歩み出る。
その石は、カエルの墓と…一応は、そういうことにしてあるが…。
石の前に並べられた花を蹴散らし、石も足で力を入れて押し倒す。
そこには真っ二つに身を切断されたカエルなどなく、大量なダイヤモンドが埋まっているのだ。
松本は、シャベルでその土を掘り返す。
しばらくすると、月明かりに照らされたダイヤモンドが、光り輝きながら現れる。
「かかかかか…。ききききき…。くくくくく…。けけけけけ…。こここここ…」
奇妙な笑い声を押し殺す松本…。
昼間は、つい大きな声をあげてしまったものだから、つまらないウソをついて、有海にひきつけを起こさせてしまった。
松本は、急いでリュックサックにダイヤモンドを詰め込んだ。
一つ一つは小さいが、大量にあるダイヤ…。
5億円相当などという噂だが、おそらくそれ以上はあるだろう…。
2612投稿者:リリー  投稿日:2008年07月09日(水)20時54分18秒
「これで…離婚の慰謝料も梓彩の養育費も、一編に払って、それでもだいぶお釣りがくるぜ…!どうしようかな…。しばらく外国で豪遊するか…」
その時、松本の顔に灯りが差し込む。
「う…!?な、何だ…?」
松本は、左手で光を遮り、右手でリュックサックを身体の後ろに隠した。
「ふ〜ん…。やっぱりね…そういうことか…」
「だ、誰だ…!?」
松本は、逆にその人物に懐中電灯を向ける。
その人物は…中田あすみだった…。
聖テレ野球部の顧問の顔ではない…。
裏探偵『TDD』の『カード』の一人…コードネーム『タワー(塔)』の…顔だった。
「お…おまえ…」
「残念だけど…ゴルゴさん…。『難田門司の隠し財産』…私達『TDD』が頂くよ…」
「な、何を!?こ、これは、俺が見つけたんだ!!俺の物だ!!」
「違うね…。本来なら、私達が報酬として受け取らなければならない物だよ…」
「報酬?難田門司を守りきれなかったクセに…!!」
「それは、あんたも同様だろ?それに、そのダイヤは、まだ誰の物でもないからね…」
「何?」
「これから決まるんだよ…」
その言葉と共に、大きな…20インチのテレビ程の大きさの岩が、松本に向かって放り投げられた。
2613投稿者:リリー  投稿日:2008年07月09日(水)20時54分44秒
「う、うわ!!」
松本は、間一髪避ける。
松本が掘り起こした地面に、その岩はスッポリと収まった。
「な、何しやがんだ!!」
松本は、腰を抜かしながら怒鳴った。
「ほら…。石を置いておかないと…みんな怪しむよ」
この岩を…あすみが投げたのか…?
松本は、背筋が寒くなった。
「た、頼む…。あ、梓彩の養育費も稼がなきゃならねぇんだ…」
「だったら、キレイなお金で払ってあげな…。その方があず〜も喜ぶよ」
「な、なあ…。だったら…山分けしないか?俺とおまえで、半分半分…」
もう一つ、岩が松本に向かって放り投げられた。
「わ、わあ!!」
松本は、転げ回ってそれを避けた。
「さてと…こんな岩を投げるのも、正直しんどいんだよね…。これで終わりにしたいんだ…」
そして、冷たい視線を松本に向ける。
「で…どうするの?そのダイヤ…」

(『七回・表』・・・終了)
2614投稿者:リリー  投稿日:2008年07月09日(水)20時55分06秒
それでは、今日はこれでおちます
2615投稿者:117  投稿日:2008年07月09日(水)21時22分28秒
有沙も入ってきた時,堂々としていましたが、特に絡みなしと。なんか一安心です(笑)。
二つの顔を持つアスミ先生、カッコイイ!次の裏の物語ですね。続きも楽しみです!
2616投稿者:質問!  投稿日:2008年07月09日(水)22時00分49秒
エマとエリーって
エリー×エマですか?それとも
エマ×エリーですか?
2617投稿者:デジ  投稿日:2008年07月10日(木)05時25分10秒
しばらくぶりです。
こうなるとエマとエリーの仲のよさも問題ですね。
滅多にない組合せですね。有沙と有海って。(しかも、意外に優しい。)独裁者のような奴らって、ラビですね。
有沙いいとこありますね。なんだかんだで有沙も有海のこと認めているんでしょうかね。
七回裏は、この続きからでしょうか。七回表は微妙な所で終わりましたね。
それにしてもコードネーム「タワー」ってあすみのことだったんですね。
続きも楽しみです!
         (今日の小言)
ここと同様に小説の方も暫く更新出来ていません。この場を借りてお詫び申し上げます。小説自体を止めた訳ではないのでそこのところ御了承願います。またご声援宜しくお願いします。

ところで「新説日本ミステリー」という番組をご存じですか?
その番組で四獣(青龍、白虎、朱雀、玄武のこと)のうちの二匹がCGででているんですが、どっちか片方の声をゴルゴさんが担当しています。
火曜日の12チャンネルで放送しています。今度見てみては?
2618投稿者:あげ  投稿日:2008年07月10日(木)19時12分38秒
2619投稿者:いいところで終わるな  投稿日:2008年07月10日(木)19時41分39秒
次は裏か
2620投稿者:リリー  投稿日:2008年07月10日(木)21時01分46秒
ありりんの優しい一面と、あすみんの怖い一面を、同時に描きました
117さんも、デジさんもそこのところに注目して頂き、嬉しいかぎりです

デジさん、私も実は、1ヶ月ほど小説が止まってるんです
今、更新している部分は、だいぶ前に書き上げた部分なので、まだ『貯金』はありますが…
いつまでも待っております
焦らず取り組んで下さい

あと、「新日本ミステリー」、知ってます
歴史好きなもので…
ゴルゴさんが、声やってたんですね(おそらく白虎)
今度、注意して聞いてみます

2619さん
はい、次は裏です
しかし、舞台は原村ではなく『R&G探偵社』です

では、更新します
2621投稿者:福山  投稿日:2008年07月10日(木)21時02分23秒
あやお
2622投稿者:リリー  投稿日:2008年07月10日(木)21時03分36秒
『七回・裏』

≪2007年8/11(土)≫
「ダーさん、お客さんがみえました。懐かしい人達ですよ」
今日は、朝から卓也と杏奈が社長室で事務処理をしている。
そこに、里穂と望、そして愛実が訪れた。
ダーブロウ有紗が社長室に来るまで、5人は昔話に花を咲かせる。
半年前、共に『TTK事件』を闘ってきた仲だ。
だが、里穂達の表情は硬い。
今日は、遊びに来たわけではない…以来人としてここに来たのだ。
ダーブロウ有紗は5分程で社長室に来た。
「おう、ひさしぶりだな。リッピー、ド、ツンツン」
敢えて、山本組の件の話しはしない。
卓也や杏奈は、知らないことだから…。
2623投稿者:リリー  投稿日:2008年07月10日(木)21時04分06秒
「フニャオ、カピバラ、ご苦労。昼飯食いに行けよ」
「え?まだ11時だけど…。いいの?」
「おう。そうだな…1時まで休憩していいぜ」
そう言いながら、ダーブロウ有紗は財布から一万円を出す。
「これで、美味いもんでも食えよ」
「わ…!そ、そんなに高価なものなんか食べませんよ!!」
「じゃあ、お釣りはボーナスだ」
卓也と杏奈は、困ったように顔を見合わせるが、最終的には笑顔になり、一万円を持って外へ出かけて行った。
社長室には、ダーブロウ有紗と、里穂、望、愛実の4人だけとなった。
「で…ここに来た理由は…?」
ダーブロウ有紗は、何もかもお見通しのようだ。
里穂は、バッグから茶封筒を出して、テーブルに置く。
「ん?何だ?こりゃ?」
一つ息をつくと、里穂はゆっくりと話しだす。
「依頼を…受けて欲しいの…。私達の…」
2624投稿者:リリー  投稿日:2008年07月10日(木)21時04分55秒
「依頼ねぇ…」
ダーブロウ有紗は、ソファーにふんぞり返り、茶封筒を眺める。
「その封筒の厚さからすると…30万くらいか?」
「33万円です」
望が言う。
「33…?随分半端だな?それに…おまえ等一人11万?随分奮発したな?おい?」
里穂、望、愛実は同時に下を向く。
この内の半分以上は、自分達が工面した金ではないからだ。
「ま、いいや。内容は?」
「内容は…加藤組に捕まっている、女の子達を…助けて欲しい…」
力の入った、里穂の声を聞きながら、ダーブロウ有紗は低く呻く。
「だったら…金が足りない…」
3人は、深い溜息をつく。
やはりだ…。
ヤクザの屋敷に乗り込んで、10人以上の少女を救出する依頼…たった30万強の報酬では吊り合わない。
一文銭で大名を殺す依頼を受けるような、『必殺仕事人』とは違うのだ。
2625投稿者:リリー  投稿日:2008年07月10日(木)21時05分27秒
しかし、ダーブロウ有紗はこう付け加えた。
「でも…本当のことを話せば…考えてやらないわけでもない」
「ほ、本当のこと?」
「依頼人は…リッピー、ド、ツンツン…まだいるだろ?」
「え…?」
3人は、顔を見合わせる。
「正確に言えば、この金の出資者だよ」
「な、何でわかったんですか?」
口を滑らせた望の頭を、里穂と愛実は両側から叩いた。
「やっぱりな…」
ダーブロウ有紗は得意気に笑う。
「何でわかったか…と、言うと…中高生が工面できる金で33万ってのがちと多い。でも、ドは金持ちだから可能かもしれないが…」
そう言いながら、茶封筒から3万円だけ取り出す。
「この半端な3万ってのが、不可解でね…。普通、切りのいい額で提示するはずなんだよ。半端な数字を持ってくるんなら、27万だろ?どうしてもこれだけしか用意できなかったからって…」
もう、素直に認めるしかなかった。
「そうです…。僕等を助けてくれた変なオジサンに…お金を出してもらいました…」
「いくら?」
「18万円…」
ダーブロウ有紗は苦々しく笑い、舌打ちした。
「楠本の野郎…。ワザと私にわかるように…」
2626投稿者:リリー  投稿日:2008年07月10日(木)21時06分05秒
ダーブロウ有紗は、ポケットから携帯とカードを一枚取り出す。
そのカードは、占いに使うタロットカード…『皇帝』だ。
その裏面にはペンで電話番号が書かれている。
「おい、楠本!!ダーブロウ有紗だ!今すぐこっち来い!!………あ?ウソつけ!!近くにいるんだろ?1時までには来るんだぞ?わかったな?」
そして、携帯とカードを仕舞うと、15万円だけを茶封筒に入れ、18万円は3人の前に突き返した。
「え?」
3人は、目を丸くして、ダーブロウ有紗を見る。
「とりあえず、おまえ等が工面した金だけは受け取っておく。この18万は受け取るわけにはいかねぇ!!」
「だ、だったら、私達だって受け取るわけにはいかないよ!」
「今から、あの変なオジサンが来るんでしょ?だったら、ダーさんの方から返して下さいよ」
里穂と望は、口々に言い返す。
「あいつは…たぶん、受け取らねぇと思うぜ…。いいから、貰っちまえ!!」
「イヤだ!!だって、あんな胡散臭いヤツの金なんて…」
「一度受け取っておいて、それはねぇだろ?いいから…おまえ等が工面した15万は、そこから返してやる!!残りの3万は、どこか慈善団体にでも寄付してやれ!」
「で、でも…」
その時、愛実が口を挟む。
「待って!つまり…ダーさん、依頼を受けてくれるの?15万で?」
ダーブロウ有紗は、髪を掻き揚げて溜息混じりに言う。
「おまえ等から…金なんて貰えねぇよ…。仲間だろ?」
2627投稿者:福山  投稿日:2008年07月10日(木)21時07分09秒
短時間でよくそこまで打てますね。
2628投稿者:リリー  投稿日:2008年07月10日(木)21時10分42秒
2616さん
その質問は、どちらがタチで、どちらがネコか?ということですか?
エマが、一方的にエリーに甘えるという関係です

では、おちます
2629投稿者:リリー  投稿日:2008年07月10日(木)21時11分51秒
福山さん
これは、保存してあるのをコピペしてるんです
今後とも、よろしくお願いします
2630投稿者:117  投稿日:2008年07月10日(木)21時12分36秒
そういえば、ダーさん,望のことを「ド」って、呼んでいるんですね(笑)。
15万で山本組の少女たちを救うという過酷なミッションに挑戦でしょうか?続きも楽しみです!
2631投稿者:こんなん言われたらもう  投稿日:2008年07月10日(木)21時28分11秒
滝やん
洪水やん
2632投稿者:いい話だなあ・・・  投稿日:2008年07月10日(木)22時02分26秒

2633投稿者:デジ  投稿日:2008年07月11日(金)02時31分25秒
今度はアジトへ踏み込みますか。(笑)。
これってスクラッチも共に闘うってことですかね?続きも楽しみです!
             (今日の小言)
そうでしたか。ところでこの文は、パソコンが全然使えなくて代わりとしてWiiのインターネットチャンネルで書いているですが、当然Wordとかのソフトがないので少し困ってます。
何かいい案ありませんか?
これから久しぶりに更新します。
2634投稿者:リリー  投稿日:2008年07月11日(金)21時00分02秒
デジさん
いえ、スクラッチは、今回は依頼人として登場しました
彼等は、前の事件で裏の世界には懲り懲りですから
PC使えないんですか?
私は、『一七同盟』の途中まで、直接コメント欄に書き込んでました…
でも、やっぱり一度書いておいて、直したい所や変更点を書き換えたいこともありますからね…
簡単なストーリー展開を決めてから書き込むのはどうでしょう?
がんばってください

117さん
ダーさんは、おそらくタダでも動くでしょうね
正確には、今回の依頼人は元帥ですから

2631さん、2632さん
そう言って頂けると、私も泣きそうです

『ポチタマ』というペット情報番組に、公輝が出てましたね
『ウルルン』でジャングルに行かされて、イモムシを食べさせられる日も近いでしょうね

では、更新します
2635投稿者:リリー  投稿日:2008年07月11日(金)21時01分41秒
里穂達が帰ってから、30分程で、裏探偵『TDD』の『カード』の一人、コードネーム『エンペラー(皇帝)』の楠本柊生は『R&G探偵社』に訪れた。
やはり、すぐ近くにいたらしい。
「こちらから連絡しようと思ってたんですが…」
楠本の言葉が終わらないうちに、ダーブロウ有紗は怒鳴りつけた。
「何言ってやがる!!あからさまなヒントをばら撒いておいて…!!一体、これはどういうことだ!?」
「どういうこと?」
「とぼけんな、コンチクショウ!!リッピー達に、金まで提供して、山本組に囚われた少女達を助ける依頼をさせるなんてよ!!」
「ああ…。そのことでしたか…」
「畜生…!!ぶん殴りてぇ…!!」
ダーブロウ有紗は、握り拳をこれ見よがしにテーブルの上に出す。
「どうもこうも…あの子達が、自分のことだけではなく、まだ救出されていない少女達の身を案じる心意気に惚れたんですよ」
「…ほんと、おまえはウソしか言わねぇのな…。つまんねぇ…」
ダーブロウ有紗は、ソファーに背中を預けた。
「う…女性に『つまらない』と言われたら、ホストとしての沽券に関わる…。いいでしょう、教えて差し上げます」
「お?」
途端に、興味深々と身を乗り出す、ダーブロウ有紗。
2636投稿者:リリー  投稿日:2008年07月11日(金)21時02分05秒
「いよいよです!『ビッグ・ノーズ』!!私の依頼を、受けてもらいます!!」
「へへ…。嬉しいねぇ…。これで、おまえと縁が切れる…!」
だが、ダーブロウ有紗には疑問が残る。
「だとしても…何で、こんな回りくどい方法をとるんだ?借りがあるのは、こっちの方だぜ?」
「何故なら…私の依頼も山本組が関係しているからです」
「山本組!?」
「ええ…。あなたがた『R&G』の皆さんには、私の任務の目くらましとして、少女の救出をしてもらいます」
「あん?目くらましだぁ!?」
「それはあくまでも、あなた以外の探偵さん達にやってもらいます。それが、あの子達に依頼をさせた理由です」
「ふ〜ん…。ま、そりゃそうだな。おまえと契約しているのは『R&G』じゃなく、この私なんだからな…」
「で、あなたにお頼みしたいことが…」
「何だよ?」
「前にも申しました通り、我々『TDD』は自由労働の組織…。自主的に依頼を受けることができます。しかし、そのシステムのおかげで…」
「仲間同士、同士討ちをすることもあると…。加藤組に付いたおまえと、山本組に付いた後藤理沙って女みたいに…」
「はい…ですから…」
「ああ、皆まで言うな。私が、その後藤理沙と戦えばいいんだろ?」
「はい、その通り」
まるで、クイズ番組の司会者の様に軽い乗りで答える楠本。
いちいち、ダーブロウ有紗の癇に障った。
2637投稿者:リリー  投稿日:2008年07月11日(金)21時02分29秒

「ふ〜ん…。でも、そりゃ好都合だ…。いつかあの女をブチのめしたいって思ってたんだ…」
「あなた…。『ストレングス(力)』をブチのめしたばかりでしょう…?」
「ん?あ!!そうだった!!てめぇ、あのメスゴリラを逃がしやがったな!!」
「え?あれは私じゃないですよ。ボスです」
「ボス?てめぇ等のか?」
「はい。世間では、『浴衣ピエロ』って呼ばれてますが…」
やはり、杏奈の言っていた噂は本当だった…?
いや、この男のこと…いい加減なことを言っているのかもしれない…。
「もう一人、『怪盗ノッポ』ってのもいるって話しだが…それもボスか?」
「『怪盗ノッポ』?ああ…『マジシャン(魔術師)』ですか…」
「『マジシャン』?」
「『マジシャン』は、ボスの親友です。2人で『TDD』を創ったんですよ。でも、『マジシャン』はひどい人見知りなので、人前に顔を出さない。それで、『浴衣ピエロ』の方がボスをやることに…」
この話も、どこまで信用したらいいのか…。
2638投稿者:リリー  投稿日:2008年07月11日(金)21時02分48秒
「でもね、そうでなくても『浴衣ピエロ』がボスになっていたでしょうね…。彼は最強ですから…」
「…その『浴衣ピエロ』って…コードネームか?」
「いえいえ…。『浴衣ピエロ』なんてカードはタロットにはありません。『フール(愚者)』です。ボスのコードネームは…」
「『フール』?バカが上に立ってるのか?」
「う〜ん…。ま、確かに彼は『バカ』ですね…。いや、関西系ですから『アホ』と言った方がいいのかな…?」
「関西系の『アホ』?うちで言うなら、パッツンが社長やってるようなもんか…」
「パッツン?藤本七海さん?ははは…。うちのボスは彼女みたいに『可愛く』ないし、彼女みたいに『弱く』ないです…」
「弱い…?パッツンが…?」
ダーブロウ有紗の顔に、怒りの色が…。
「おっと、失礼…。あなたの部下を侮辱してしまいました…。でも、上に立つなら、それなりの理由がある」
「理由だと?」
「本当に強いんです。ボス…『フール』は…。そんなにお気軽に、ボスと比べてはいけない」
「『虎』と『猫』を比べるようなもんか?」
「いいえ…。『虎』と『蟻』です…」
「てめぇ…!またパッツンを侮辱しやがったな…!?」
「今のは、ボスと私を比べたんです…」
「何?」
「はい…。だから…私が『蟻』で、ボスが『虎』です…」
「おまえが…蟻…?謙虚も度が過ぎると、嫌味になるぜ?」
「蟻にもいろいろあります。私は蟻の中でも最強の、軍隊蟻ってとこですね」
2639投稿者:リリー  投稿日:2008年07月11日(金)21時03分33秒
「ま、いいや…。でもおまえ、自分の組織のことベラベラ喋るんだな?」
「ん?ああ…そこの所は私に限らず皆、無頓着ですね。商売ですから、秘密にすることもないでしょう…」
「だったら、ボスの顔と名前を教えな」
「それはできません」
「何で?」
「ボスを紹介するなら、仲間になってからです。仲間意外に姿を見せるとなると、『浴衣ピエロ』バージョンで…ということになります…」
「だったら、いいや…。もう見たから…」
「見た?いつ?」
「教えてやんねぇよ!!」
待ちに待った、楠本からの質問する状況…。
2640投稿者:リリー  投稿日:2008年07月11日(金)21時03分37秒
どうしてこんなことになったのだろう。きっかけなんて覚えていないし、恐らく大したことではないのだと思う。「うわっ、ことりが来たぞ!」おはようの代わりに浴びせられるその言葉。私という個体が認識される数少ない瞬間だ。「窓開けようよ、なんか急に空気悪くなったから」誰かが笑いながら言った。クスクスと笑い声が教室に響いて、別の誰かが窓を開ける
2641投稿者:リリー  投稿日:2008年07月11日(金)21時03分46秒
「何にしても、私以外の探偵が動かなきゃいけねぇんなら…出っ歯ちゃん達にも説明する必要がある。私の方から言っておくよ」
「はい。それはもう、お願いします。しかし…」
「しかし、何だよ?」
「答えてもらえるかどうかわかりませんが、一応、聞いておきます。難田門司の部下を捕まえに行った…梨生奈さんに羅夢さん…帰ってきてないんですか?」
「ケ…!知ってるくせに…!」
ダーブロウ有紗は、吐き捨てるように言った。
「…!?まさか…何かトラブルにでも…?」
「…?」
この楠本の様子…本当に原村でのことを知らない?
と、いうことは…彼が仲間に欲しがっている、モニークと接触したことも知らない…?
ヘタにウソをつけば怪しまれるかもしれない。
ここは、会社の内部事情ということで、教えないことにした。
2642投稿者:リリー  投稿日:2008年07月11日(金)21時05分20秒
楠本が帰った後、卓也と杏奈は昼食から帰って来た。
「どうも…ご馳走さまでした」
社長室に入るなり、お礼を言う卓也と杏奈。
「おう、何食べた?」
「結局…ハンバーガー…」
「何だよ…。もっと高いもん食えよな…」
ダーブロウ有紗は、他人の昼食のことだが、本当にガッカリした様に言う。
「いやいや…1800円の…高級素材を使ったヤツです」
「それでも、3600円かよ…」
「私は、普通のを食べたわ…」
平然と答える杏奈の顔を、マジマジと見る。
「本当に…つまんねぇ女…」
2643投稿者:リリー  投稿日:2008年07月11日(金)21時05分36秒
「いいわよ。別に…。でも、ご馳走様。本当にお釣りは貰っちゃっていいの?」
「ああ、いいよ。じゃ、今度は私が昼飯食いに行くよ」
ダーブロウ有紗は、ソファーから立ち上がる。
「行ってらっしゃい」
「何を食べに行くんですか?」
「ん?牛丼…。ワンコインで食べてくる」
「もっといいもの食べたら?」
「だって…おまえ等に一万円もやっちゃって…金がねぇもん…」
「う…。だったら、お金返しますよ!!」
「へへ…!ウソだよ!!」
そう笑いながら、社長室を出て行った。
2644投稿者:リリー  投稿日:2008年07月11日(金)21時05分56秒
しかし、ダーブロウ有紗は社長室の隣…モニター室へと入る。
そこには、七世と俵姉妹の姉、有希子が待機していた。
「と…まあ、そういうことだ…」
楠本との会話は、全てここから聴いていたのだ。
七世から問い詰められてから、出来得る限り秘密を持ちたくなかったからだ。
すると、『R&G』への思わぬ依頼も舞い込んだ。
そのことについては、七世は不満はなかった。
七世も、山本組に囚われたままの少女達が気になってしかたがなかったからだ。
むしろ、不安なのが…。
「ダーさん…。本当に…大丈夫ですか…?」
ダーブロウ有紗が戦うことになる…『エンプレス(女帝)』後藤理沙…。
「大丈夫?それは、私が相手を殺すかもしれねぇってこと?」
そして、有希子の方を向く。
「へへへ…。これでおまえ等姉妹の仇…また一人とってやることができるぜ…!!」
「ダーさん…」
有希子も不安な表情を隠せない。
「大丈夫だ!何も心配すんな。おまえ等は、2人で何とか少女達の救出を頼む」
2645投稿者:リリー  投稿日:2008年07月11日(金)21時06分40秒
楠本の依頼は、明日の夜7時から。
場所は、静岡の熱海にある、山本の別荘。
警察の捜索が入る前、山本は少女達を別荘に移したのだ。
「つまり…私達が女の子達を救出する間に、楠本は山本の命を獲る…と、いうことね?」
「ああ…。でも、あいつは仲間である後藤理沙と戦いたくない…。で、私が代わりに戦ってやる…と…」
「本当に、殺さないでくださいね?ダーさん…」
有希子は、念を押す。
「殺さないよ。半殺しにしてやるけど…」
「いえ、また恨みを買うようなことをすると、またあいつ等が…」
「そこの所は大丈夫だろ?相手も探偵だ。依頼にないことをやるとは思えねぇ」
そう…『ストレングス』こと、秋山恵を叩きのめしたのも、難田門司を捕まえる過程で起きたことなのだ。
楠本は、復讐の口実を与えてくれたわけだ。
しかし、七世は渋い表情を崩さない。
「何か…また、『TDD』のやつ等に、いいように利用されてるようで…不愉快だわ…。この間は、後藤理沙に…。今度は楠本…」
しかし、その言葉にもダーブロウ有紗は飄々と答える。
「いいさ…。私達は探偵…。利用してもらうのが仕事だろ?それに…」
「それに?」
ダーブロウ有紗は、急に険しい顔になって、こう呟く。
「利用するのは、私達も同じだ…。リッピー達の依頼…キッチリと応えてやろうじゃねぇの…!!」

(『七回・裏』・・・終了)
2646投稿者:リリー  投稿日:2008年07月11日(金)21時08分07秒
今日は、これでおちます
次回は、八回表、原村→名古屋が舞台です

2640は、この小説とは関係ありません
2647投稿者:117  投稿日:2008年07月11日(金)21時20分12秒
七世たちは別室で密談を聞いていたんですね。それに山本組長は、少女たちを別荘に移動させていたわけですか・・・
どんな戦いになるのか・・・次回は「表」。ゴルゴさんとアスミ先生の場面でしたよね?続きも楽しみです!
2648投稿者:あげ  投稿日:2008年07月12日(土)09時09分47秒
 
2649投稿者:恵に続き  投稿日:2008年07月12日(土)15時03分51秒
今度は理沙
第2試合はRGの逆襲ってかんじ?
2650投稿者:リリー  投稿日:2008年07月12日(土)20時53分32秒
117さん
ゴルゴさんとあすみのやりとりは、あの時からすっ飛ばしてしまいました
当然、ゴルゴさんはあすみに逆らえるはずがなく…ということで…

2649さん
第一試合は『R&G』が『TDD』い振り回される展開でしたからね
第二試合も、元帥に振り回されているようなものですが…

では、更新します
2651投稿者:リリー  投稿日:2008年07月12日(土)20時55分26秒
『八回・表』

≪2007年8/12(日)≫
朝の8時。
聖テレ野球部は、ハセヤンズハウスを出立する。
随分早いが、これから梨生奈の入院する病院に寄ってから、名古屋へ向かう。
「それでは、行ってまいります。お世話になりました」
あすみが代表してお礼を言い、皆は一列に並んでハセヤン達に頭を下げた。
「じゃあね。気をつけて行ってらっしゃい。千秋君や瑠璃をお願いします」
千秋、瑠璃、羅夢…そして洸太も、梨生奈のお見舞いの為に聖テレ野球部について行くことになった。
「じゃあ、松本さんも…立派な秘密基地、造ってあげてくださいね」
あすみは、松本を睨みつけながら言った。
「…わかってるよ…」
松本は、難田門司の隠し財産を掘り出そうとしている所を瑠璃に見られ、それをごまかす為に秘密基地造りなどを始めたのだ。
しかし、その隠し財産…5億は下らない大量なダイヤモンドを、あすみに横取りされた。
そのダイヤを、あすみは今、持っていない。
どこかに隠したのか…それとも、どこかに送ったのか…。
どちらにしても、松本は無駄な労働を強要されることになる。
そして、やっと父親から離れられる梓彩も、胸を撫で下ろしていた。
2652投稿者:リリー  投稿日:2008年07月12日(土)20時55分51秒
まず、電車で諏訪駅まで行く。
七海と羅夢は、ケンカを避けるために、遠く離れた座席に座った。
瑠璃は、もうすっかり聖テレ野球部の者達に慣れ親しんだ。
特に、藍と仲が良い。
諏訪駅に着くまで、引っ切り無しにお喋りを楽しんだ。
もう完全に、瑠璃は立ち直った様だ。
梨生奈のお見舞いにも、初めて行くことになる。
羅夢は、千秋と洸太の兄弟と座席を共にした。
洸太は、さっきから有海の方を気にしていた。
有海は、エマとエリーに囲まれて、少し気後れしたように力のない笑みを浮かべている。
千秋の話しに適当に相槌を打ちながらも、洸太の意識はその有海の方に向いている。
羅夢は、そんな洸太を見てじれったくなった。
「ああ!!もう!!しょうがねぇな!!」
「え…?」
荒々しく立ち上がった羅夢を、キョトンとした顔で見上げる洸太。
「アタイが連れて来てやっから!!」
「だ、誰を…?」
洸太の問いには答えず、羅夢は有海のいる座席へと歩いていく。
2653投稿者:リリー  投稿日:2008年07月12日(土)20時56分09秒
「ちょっと!この子、借りるよ!」
羅夢は、いきなり有海の手を掴んで引っ張り上げた。
「え…?な、何ですか?」
年下の羅夢にも、敬語を使う有海。
「ちょっと!何すんのさ!!」
「私達、せっかく楽しく、あみ〜ごとお話ししてたのに…」
口々に抗議するエマとエリーに、羅夢は顔をしかめながら言う。
「へ…!どこが!!この子、ちょっと困ってたじゃん!!」
「い、いえ…。私、別に…」
慌てて有海は否定する。
「はっきり言ってやれよ!!迷惑だって!!」
「で、ですから…迷惑なんて…」
「じゃあ、アタイがはっきり言ってやらぁ!!この2人、あんたの困った顔を眺めて楽しんでんだ!!」
そう言われたエマとエリーは、口を尖らせる。
「人聞きの悪いこと、言わないでよ…。もう…」
そんな2人を無視し、羅夢は洸太の元へ有海を引っ張って行く。
「はい!!思う存分、お喋りしな!!もう、お別れなんだから!!」
そう言うと、有海を洸太の正面の席に座らせた。
2654投稿者:リリー  投稿日:2008年07月12日(土)20時56分28秒
「え…?」
「あ…あの…?」
顔を真っ赤にしながら、羅夢の顔を見上げる洸太と有海。
「さ、千秋君、アタイ達は邪魔だから…」
今度は、千秋の腕を引っ張る羅夢。
千秋も、急のことで目をパチクリさせる。
「え…?な、何で?」
「…もう、千秋君も鈍いなぁ…!」
羅夢は、千秋の耳元に囁く。
「ウソ…!?兄貴、有海ちゃんのこと…?」
「そうなの!!何で、あんたの兄貴が縁も所縁もない梨生奈のお見舞いに着いて来たと思ってんだよ!!」
そして、羅夢と千秋は、少し離れた座席へと移動した。
2人残された洸太と有海は、どうしていいかわからず、まるで初お見合いの様に、頬を赤らめてうつむいた。
勇気を振り絞って声をかけたのは、有海の方である。
「あの…。昨日は…ごめんなさい…。無理なこと、お願いして…」
「そ、そんな…。ぼ、僕の方こそ、ごめんね…。勉強、教えてあげられなくて…」
「は、はい…。ちょっと、残念だったりして…」
有海は、照れ笑いを浮かべた。
そんな有海を見て、洸太の胸がキュンキュンと鳴った。
2655投稿者:リリー  投稿日:2008年07月12日(土)20時56分48秒
「こ、洸太さんは…忠律高校を…受けるんですよね?」
「う、うん…。僕、中学受験に失敗しちゃって…苦労してるんだ。僕の通う、下ノ国中学は、あんまりいい学校じゃなくて…。不良とかいっぱいいるし…」
「わ、私の学校も…。いじめとか…」
「え?ほ、本当に?聖テレって…お嬢様学校じゃないの?」
「うん…。でも…女子校だから…結構、あるんだ…」
「ふ〜ん…」
洸太は、この引っ込み思案な少女も、いじめの標的にされているのかもしれない…と、心を痛めた。
「有海ちゃんは…聖テレに、受験して受かったんでしょ?難しかった?」
「お、覚えてないの…。初等部…あ、小学校のことね…小学校受験で入ったから…」
「そうなんだ…。そんな小さい頃から受験してたんだ。凄いね」
「す、凄いなんて…。本当に、どんなだったか、覚えてないから…」
「僕、忠律だけは絶対に受かりたいんだよね。理数クラスのレベルが高いから…」
「理数クラス?わぁ…凄い!!私、思いっきり文系だから、理数系に強い人、尊敬しちゃう」
そう言われて、今度は、洸太が照れ笑いを浮かべた。
2656投稿者:リリー  投稿日:2008年07月12日(土)20時57分54秒
「ぼ、ぼく、いい大学に入って、科学方面の研究職に就くのが夢なんだ…」
「へぇ〜…。素敵な夢ですね」
「有海ちゃんは?有海ちゃんの夢は?」
「わ、私は…国語が好きだから…国語の先生になれればいいかな…て…でも…私なんか…子供達にナメられて、バカにされて…無理ですね…」
有海の顔が、暗く沈む。
やはり、有海はいじめに遭っているのだろうか…と、洸太は胸が締め付けられる。
2657投稿者:リリー  投稿日:2008年07月12日(土)20時58分07秒
「あ、有海ちゃんは…タイムマシン…創れると思う?」
「タ、タイムマシン…?う〜ん…本当にあったら…素敵だろうな…」
「そ、そう…!?僕ね、絶対に可能だと思う!!高速で移動すれば、『相対的時間進行差』がうまれて、内外で時間の流れる速さが異なる…いわゆる浦島太郎現象が起きるんだ…。だから、高速で移動できる装置を造り出せれば…」
「…?…?…?…?…?」
有海は、笑顔のまま固まっている。
洸太のタイムマシン講座は、有海を置いてきぼりにしたまま進む。
洸太にはあっと言う間の時間でも、有海にはひたすら長く感じられる時間だ。
なるほど…洸太は、見事に『相対的時間進行差』なるものを造り出すことに成功した。
「………で、有海ちゃんはタイムマシンで行きたい時代は、どこ?」
「へ…?」
突然、質問をされて、有海は慌てたが、やがて笑顔でこう答えた。
「私…今…現在…この時間が、いいです…」
「え…!?」
洸太は、胸が高鳴った。
「みんなと…野球ができて…こんなに自然の綺麗な所に来れて…今が、一番楽しいです!!」
「あ…。そ、そうね…。そっちね…」
洸太の笑顔は、少し悲しそうだった。
2658投稿者:リリー  投稿日:2008年07月12日(土)20時58分57秒
今日はこれでおちます

『ホームレス中学生』、これから見ます
2659投稿者:117  投稿日:2008年07月12日(土)21時32分30秒
有海がエリーとエマと話している時点で、ちょっぴり危ない気が・・・!?
洸太の「タイムマシン」論、「天てれ」でもよくありましたね。2人の行方は?続きも楽しみです!
「ホームレス中学生」、僕も見てます。そういえば、七海も出ていますね。
なんか、姉役の夏帆さんが、七海の大きいなったバージョンみたいな雰囲気があります。
それに関西の芸人が出るなど、実に面白いキャストですね。
2660投稿者:七海、女優の鏡だなw  投稿日:2008年07月12日(土)21時52分24秒
http://tvde.web.infoseek.co.jp/cgi-bin/jlab-dat/s/258873.jpg
2661投稿者:うまそう  投稿日:2008年07月12日(土)21時54分40秒

2662投稿者:あげ  投稿日:2008年07月12日(土)21時56分52秒

2663投稿者:あげ  投稿日:2008年07月12日(土)22時52分45秒


2664投稿者:浦島現象って本当に起こるんですかねえ  投稿日:2008年07月12日(土)23時21分54秒
今まで何度も理解してみようと試みてきましたが
私の頭では無理でした
常識的に考えてありえないと思うんですけど・・
2665投稿者:相対的時間進行差  投稿日:2008年07月13日(日)00時13分53秒
ワロタw
2666投稿者:>2660  投稿日:2008年07月13日(日)03時41分57秒
見れない もう消えてる 何その腐ったうpろーだ?
2667投稿者:洸太(リアルな)の理論は  投稿日:2008年07月13日(日)03時52分08秒
時空間の歪みを発見してそれを利用する、だったような・・・
それを見つけることができればタイムトラベルは可能だって言ってたけど、それを見つけることが不可能だってばw
2668投稿者:デジ  投稿日:2008年07月13日(日)03時57分03秒
ここ2日間諸事情で来られませんでした。
有海の心理的にいじめられていた過去には戻りたくないでしょうね。
こうた....無念ですね。今を生きたい有海にとってこうたの「タイムマシン論」は、一生理解できないでしょうね。
こうたの恋の行方は?続きも楽しみです。
            (今日の小言)
今日でしたっけ?「ホームレス中学生」。すっかり見るの忘れてました。
何故だかこうたのこうの字が出てきません。(汗)
今回は野球の事で一つ。
僕は、高校生です。高校生の夏といえば···。そう、甲子園野球大会です。
今日は、それの選手権の一戦目でした。水戸葵陵高校VS日立北高校の一戦で、一応8ー1の八回コールド勝ちのでした。
そうです。これから葵陵高校の長い夏が始まったのです。
見てて、ふと思ったのですがこういうのって勝った方はたしかに、嬉しいと思うのですが、いざ試合に負けた方の立場になってみると····何かね···。(言葉で上手く言い表せない。)
2669投稿者:デジ  投稿日:2008年07月13日(日)04時01分39秒
すいません。何故か文字化けしてます。文字化けしてる部分は...です。
2670投稿者:頭でっかちな  投稿日:2008年07月13日(日)11時17分00秒
洸太の、不器用な恋愛が哀しいw
2671投稿者:洸太……  投稿日:2008年07月13日(日)11時21分03秒
なんともさみしいww

羅夢、もう一発ガツンとぶっ放してやれ!
2672投稿者:カイ  投稿日:2008年07月13日(日)14時18分34秒
カイです。小説の先が全く思いつきませんです。
そういえばホームレス中学生のエンディング?スタッフロール的なあれに
「藤本七海」って書いてた気がするんですけど気のせいでしょうか?
2673投稿者:ってことは  投稿日:2008年07月13日(日)17時17分15秒
デジさんは、遼希とか聖斗とかエリーとかと同じ、茨城県出身ですか?
2674投稿者:まず、小説の5割ほど展開を考えてから  投稿日:2008年07月13日(日)18時50分50秒
発表したら?
リリーさんは、今更新してる部分はだいぶ前に書いたって言ってるし
2675投稿者:>72  投稿日:2008年07月13日(日)19時06分36秒
出てたよ。
見れば分かると思う。
2676投稿者:沖縄は  投稿日:2008年07月13日(日)19時09分10秒
浦添商業に決まりましたね
沖縄尚学は惜しかったですね
2677投稿者:あげ  投稿日:2008年07月13日(日)20時46分31秒
                           
2678投稿者:リリー  投稿日:2008年07月13日(日)20時56分26秒
洸太の恋愛は、こんな感じだろうなぁ…と思って書きました
本当に不器用な気がします
反対に千秋は、のほほんとあっさりと恋愛しそうな気がします

浦島現象は、実は私もよくわかってません
今年のドラマもそうですが、タイムトラベルはフィクションの為にあるものだと思います

2660さん、画像は見れませんが、おそらく『ホームレス中学生』での、田村君が自分の家だと言って巻き糞公園に連れて行った時の、七海の白目を向いて笑顔で固まってる場面でしょうか?
あの変顔でこの役をゲットできたんでしょうね
「大阪弁の可愛い女子中学生」だったら、他にもいっぱい居そうですもんね

カイさん、一回、小説を書くのを離れてみると、そのうちポンとアイデアが浮かんできたりします
私の場合は、まだですが…

高校野球も熱くなってきましたね
ちなみにこの小説に出てくる『叡智大付属渓岳園高校』は、西東京代表です
虹守町などがある天歳市は、新宿と多摩の間にある…という設定ですので…

では、更新します
2679投稿者:リリー  投稿日:2008年07月13日(日)20時59分04秒
諏訪市民病院に着いた、聖テレ野球部と、羅夢、瑠璃、千秋、そして洸太。
この団体が待合室のロビーを通ると、真っ先に看護士長、清水ミチコがすっ飛んできた。
「ちょっと!ちょっと!ちょっと!また、騒ぎを起こすんじゃないだろうね!?」
あすみは、誰よりも素早く頭を下げる。
「いえいえ!!今日は、迷惑はかけません!!り〜…梨生奈に一応、お別れの挨拶を…」
「…お別れ?ああ…。もう、帰るんだね…。いつも騒がしくてうんざりしてたけど…いなくなっちゃうと思うと…なんだか、寂しいね…。羅夢…」
羅夢は、目を丸くひん剥いて怒鳴る。
「おおい!!アタイは、まだここに残るよ!!」
「え…?まだ…?」
前言撤回…とでも言うように、ミチコは顔を歪めた。
あすみは、何度もミチコに頭を下げ、皆でエレベーターで梨生奈達の病室に向かう。
相変わらず、梨生奈は本を読むこともできず、ヘッドフォンでお気に入りのCDを聞きながら眠りかけていた。
皆がお見舞いに来てくれたのが嬉しいのか、あっという間に目が醒めた。
確かに、全身の骨が砕けた重傷患者…まともに動くのは、首から上だけなので、毎日が死ぬほど退屈だろう…。
羅夢は、また目頭が熱くなった。
それは、瑠璃も同じだった。
そして、梨生奈が一層喜んだのは、そんな瑠璃の訪問なのだ。
2680投稿者:リリー  投稿日:2008年07月13日(日)20時59分25秒
「へぇ…。これから、名古屋に行って、野球観戦するんだね…」
梨生奈は、心底羨ましそうに言った。
もし、怪我さえしていなければ、梨生奈にとって初めての野球観戦になるはずだった。
テレビでは感じられない試合の臨場感や、自分のポジションであるサードを注視し、徹底的に研究することを楽しみにしていた。
だが、これではやはり、テレビ観戦をするしかない。
「あ…そう言えば…私が行かないから、チケットが一枚、余っちゃうんじゃない?」
梨生奈の言葉に、皆は初めて気がついた。
「そうか…。り〜なの分のチケット、どうするつもりだったんですか?」
愛美の質問に、あすみは頭を掻く。
「う〜ん…。そう言えば…。ダフ屋に売っぱらっちゃおうかと思ってた…」
「ダ、ダフ屋って…」
「そうだ…!誰か一人、ついて来ない?」
藍は、羅夢、瑠璃、千秋、洸太の4人の方を見て言った。
「え…?」
4人は、顔を見合わせる。
2681投稿者:リリー  投稿日:2008年07月13日(日)20時59分44秒
「おい、羅夢!!オノレはついて来んな!!」
七海が、先制パンチを放った。
「行かねぇよ!!アタイは!!おめぇなんかと!!…あんた等の誰か、行けよ…」
羅夢は、千秋達に視線を移す。
「ぼ、僕達…?」
突然の話しに、3人ともどうしたらいいのかわからない。
「瑠璃…。行ってみる?」
千秋の言葉に、瑠璃も少し尻込みする。
ようやく、気持ちが明るくなり、ハセヤンズハウスの敷地内から出ることができたのだが…。
そう…瑠璃は、『TTK』が壊滅して原村に来てから、長野から出たことはなかった。
いきなり県外…しかも、名古屋という大都市に出るのは、不安があった。
「千秋君が行ったら…?」
しかし、瑠璃の言葉に、千秋は即座に首を横に振る。
「ううん。僕は行かない。毎日、梨生奈ちゃんのお見舞いに行くって決めたから…」
そう言って瑠璃を、そして梨生奈を見て微笑む千秋。
2682投稿者:リリー  投稿日:2008年07月13日(日)21時00分04秒
さっきから、勝手に緊張しているのは洸太だった。
真っ先に、手を挙げたい状況にあったからだ。
正直言って、野球に興味もなければ、ルールも知らない洸太に野球のチケットをやっても猫に小判だ。
だが、洸太が行きたい理由は他にあった。
有海である。
大した進展もなく、有海とお別れすることを嘆いていた洸太だが、まだ一緒に時を過ごせる思わぬチャンスだ。
しかし、羅夢に有海が好きなことを知られてしまった今、自分が積極的に手を挙げ難い。
今まで女の子を好きになることのなかった洸太に、そこまで大胆に行動できない。
有海の横顔を見詰める洸太…。
可愛い…。
このまま、お別れでいいのか?
いや、同じ天歳市内に住んでいるのだ。
これから出会うチャンスは、いくらでもある…。
いや…果たしてそうか?
自分に、わざわざ有海を訪ねに行く勇気や気概があるだろうか?
今、親密になっておかなければ…いつ、チャンスがある?
今だ…!手を挙げろ…!
洸太の右手が、挙がりかけた。
2683投稿者:リリー  投稿日:2008年07月13日(日)21時00分24秒
しかし、その時、梨生奈が口を開いた。
「羅夢…。私の代わりに行って…」
「…え?」
皆は、一斉に声を出した。
一番声が大きかったのは羅夢、二番目に大きかったのは七海、三番目は洸太だった。
「だ、だから…アタイは…」
羅夢は、慌てふためく。
だが、梨生奈は言葉を続ける。
「だって、私が見たいものを、羅夢には見て欲しい…。私が好きなものを…羅夢にも好きになって欲しいの…」
「で、でも…」
「私は大丈夫。退屈しないよ。千秋君もいるし、瑠璃ちゃんだって…」
梨生奈は、2人を見る。
千秋も瑠璃も、笑顔で頷く。
羅夢は、少し眉間にシワを寄せ、七海を見る。
七海は、仕方がない…とでも言いたげに、視線を床に落としている。
「私のチケットは…羅夢に使って欲しい…」
梨生奈は、もう一度羅夢に訴える。
「でも…アタイが…梨生奈を…」
「羅夢…。あなたは私…。あなたが楽しめたら…私も楽しいの…」
羅夢の頬を、大粒の涙が伝った。
一方、洸太は、心の中で泣いていた。
2684投稿者:リリー  投稿日:2008年07月13日(日)21時00分52秒
案の定、洸太の恋は終わりました

では、これでおちます
2685投稿者:117  投稿日:2008年07月13日(日)21時06分26秒
そうそう、確かこの後は「ドラゴンズ」の試合観戦でしたよね?
洸太の心の中での葛藤も虚しく、一夏の恋は終わってしまいましたか(苦笑)。
一方、羅夢は梨生奈に促されて・・・なんか、いいシーンですね。続きも楽しみです!
2686投稿者:心の中で泣いていた  投稿日:2008年07月13日(日)22時02分14秒
ワロタw
2687投稿者:リリーさんも肯定しているわけじゃないようで安心しました  投稿日:2008年07月13日(日)22時41分20秒
実は昨夜も相対性理論の(非常に解りやすく説明しているらしい)サイトを
見に行ったのですが・・気が付いたら寝てました
あれはね、数式に囚われた頭でっかちの思い込みなんです、決めました

洸太の王道とも言えるような自問自答とオチがいい感じですね
2688投稿者:あげ  投稿日:2008年07月14日(月)20時11分30秒
 
2689投稿者:リリー  投稿日:2008年07月14日(月)20時24分58秒
117さん
そう言えば、去年の今頃なんですよね
試合を見に、ナゴヤドームまで行ったのは…
今年も行く予定です

洸太の恋は、こんな感じで終わってしまいましたが、もう少しがんばるかもしれません

タイムトラベルは、しようとは思いませんね
確かに、過去をやりなおしたいと思うことはあります
でも、結構めんどくさいかもしれません

では、更新します
2690投稿者:リリー  投稿日:2008年07月14日(月)20時25分48秒
聖テレ野球部一同と羅夢が名古屋駅に着いたのは、午後5時半。
そこから地下鉄に乗って、ナゴヤドームまで行く。
名古屋という街は、地下街が異常に発達した都市である。
まるでファンタジーRPGの地下迷宮の様に、四方に通路が伸びている。
地下鉄に乗るまで、藍が1回、七海が2回、羅夢が3回、迷子になった。
その為、試合開始直前の6時半に、ナゴヤドームに駆け込むことになった。
雨の多い日本にはドーム球場が数あるが、屋根の形状のシンプルな美しさは、ナゴヤドームが一番だろう。
皆は、間近で見るドームを、はしゃぎながら見上げた。
だが、ナゴヤドームが完成した当初、設計ミスから雨漏りしていたと…あすみが暴露した。
早速、対戦相手の中日に対し、敵対心をむき出しにしている。
昨日、延長の末、巨人が中日にサヨナラ負けをしたので尚更である。
地下鉄車内から、あすみはジャイアンツの背番号『24』、高橋のレプリカユニフォームを着込んでいたし、駅の壁に写し込まれた中日の選手の写真、一人一人に対し、悪意ある突っ込みを入れていた。
もう、藍達は周りの中日ファンの反応を窺いながら、冷や冷やしていた。
「ここが甲子園やったら、半殺しにされてるで…」
七海も、呆れるしかなかった。
2691投稿者:リリー  投稿日:2008年07月14日(月)20時26分11秒
七海達のチケットは、三塁側の内野席だ。
そこには、中日ファン、巨人ファンの双方が、肩を並べながら観戦することになる。
中村有沙の言う、ヘタクソなトランペットが鳴り響くコアなファンのいる席に座ることは、免れることができた。
皆は、横に一列に並んで観戦する。
もちろん、七海と羅夢は両端に座る。
本塁側から七海、藍、あすみ、有海、愛美、梓彩、中村有沙、ジョアン、エリー、エマ、羅夢…という座り方である。
テレビで見たよりも、人工芝のグリーンが鮮明だ。
しかし、七海に言わせれば、人工芝というものが邪道なようだ。
「アカン。目がチカチカするわ…。やっぱり、甲子園に勝る球場はないな」
阪神戦ではないため、七海はイマイチ観戦に気合が入らない。
だが、あすみの悔しがる姿が見たいので、今夜だけは中日を応援するつもりだ。
現に、昨晩のあすみの憤死するのではないか、と思えるくらいの地団駄を踏む姿は、非常に愉快だった。
それに、中日に巨人を叩いてもらい、阪神の援護をしてほしかった。
2692投稿者:リリー  投稿日:2008年07月14日(月)20時26分31秒
中日の先発投手は、中田賢一だ。
杉下茂、権藤博、星野仙一、小松辰雄、宣銅烈…中日ではエース級の者が付ける、背番号『20』を背負う。
若く、イケメンの為、藍の一番のお気に入りだ。
巨人の先発投手は、福田聡志。
彼も若い投手だ。
今回は若手投手の対決となる。
2回の表、早速巨人が阿部、清水の連続安打、そして中田の打球処理の不味さから一点を先取。
あすみは、それだけでも狂喜乱舞だ。
このテンションで、九回続くのだろうか…と、皆は余計な心配をする。
七海は、あすみの喜ぶ姿が気に入らない。
羅夢が買ったポップコーンを、隣へ渡さずに勝手にムシャムシャ食べ出し、間に9人も人を挟んでいるにも関わらずケンカが始まる。
しかし二回の裏に、すぐさま中日が一点を返し、同点とする。
打点を決めたのは、600万円という信じられないお買い得価格で入団した、『フルスイング』の中村紀洋だ。
「あはは!!本当に、いい買い物した!!」
藍のはしゃぐ姿も、七海には気分のいいものではなかった…。
「何で阪神、ノリを取らんかったんや…。600万やで?600万…」
2693投稿者:リリー  投稿日:2008年07月14日(月)20時26分58秒
結局、試合は7対2で中日が勝った。
ウッズの2ホーマーなどで、中盤で勝負は決した感はあった。
しかし、最後の逆転を信じて疑わない、あすみの必死な応援は、七海にとってそれなりに面白かった。
だが七海、あすみ、藍以外のメンバーにとっても、初めての野球観戦だったのだから、得たものは大きかった。
有海は、やはり一回表から全てのスコアを暗記した。
巨人なら阿部の、中日ならば谷繁の思考というものを感じ取ることができた。
もし、洸太がこの野球観戦に着いて来たとしても、お喋りする暇などなかっただろう…。
中村有沙も、それなりに収穫は得た。
とは言っても、中村有沙は両チームの捕手しか見ていなかったが…。
そして、梨生奈の代わりに観戦をした羅夢だったが…正直、野球のルールはわからなかった。
だが、これが今、梨生奈が一生懸命に取り組んでいて、大怪我故に断念せざるを得なかったという…野球というものか…と、感じることはできた。
帰って、梨生奈に自分の抱いた印象を全て話してやろう…と思った。
自分は頭が悪いから…全部忘れてしまわぬうちに…。
はやく原村に帰ろう…と、羅夢は思った。
2694投稿者:リリー  投稿日:2008年07月14日(月)20時27分40秒
「本当に、一人で帰れるの?」
あすみは、羅夢に念を押した。
これから、羅夢だけが、夜行バスで原村まで帰るのだ。
「ああ。どうってことないよ。こんなこと、アタイにとって、珍しくないもん」
「う〜ん…。でも、まだ小学生なんだし…」
あすみは、彼女等が『R&G』の探偵で、元暗殺組織『TTK』の『戦士』だと知っている。
一人きりで帰しても、なんら問題はない。
だが、ここは常識ある大人として、すんなりと一人で帰ることなど承知してはならない。
あすみは、表向きは聖テレジアの教師なのだ。
ここは、やはり一緒に新幹線で東京に帰らせるべきである。
2695投稿者:リリー  投稿日:2008年07月14日(月)20時27分54秒
「ねぇ…。やっぱり、一緒に帰ろうよ。また、誰か大人の人に原村まで連れてってもらえばいいよ…」
愛美も心配しだした。
やはり、これが常識的なものの考え方なのだろう。
中村有沙が、羅夢の耳元で囁いた。
「仕方がない。ここは、一旦、私達と東京へ戻れ。そして、すぐさま夜行バスで原村に向かえばよかろう…」
「ち…!まったく…うぜぇなぁ…」
羅夢は、渋々承知した。
これで、七海達、聖テレ野球部の合宿は終った。
皆にとって、得る物が多かった合宿だった。
しかし、現に物理的に得る物が大きかったのは、難田門司の隠し財産を手に入れた、あすみ…いや、裏探偵『TDD』であることを…皆は知らない…。

(『八回・表』・・・終了)
2696投稿者:リリー  投稿日:2008年07月14日(月)20時29分09秒
この小説で書かれた試合は、実際に私が観戦した試合です
前日の延長サヨナラの試合の方を、見たかったですけど…

今日は、これでおちます
2697投稿者:あげ  投稿日:2008年07月14日(月)20時40分25秒

2698投稿者:117  投稿日:2008年07月14日(月)21時13分20秒
ドームに行くまでと試合展開が非常にリアルですなぁと思ったら・・・実際の試合でしたか。
ノリねぇ、ドラゴンズで結構頑張っていますよね。久々の野球シーンで熱くなった117でした(笑)。
気がつけば、この物語もまもなく9回(クライマックス)なんですね。続きも楽しみです!
2699投稿者:ドラゴンズ  投稿日:2008年07月14日(月)21時16分14秒
いま調子悪いね・・・はぁ・・・
2700投稿者:自分巨人ファンなので  投稿日:2008年07月14日(月)21時20分41秒
あすみの気持ちがわかります
2701投稿者:あげ  投稿日:2008年07月15日(火)20時12分54秒
 
2702投稿者:あげ  投稿日:2008年07月15日(火)20時32分51秒
         
2703投稿者:リリー  投稿日:2008年07月15日(火)20時58分05秒
117さん
そうです
すべて、私が名古屋で見聞きしてきたことです
今年も、夏休みに名古屋へ行きます

2699さん
そうですねぇ…おそらく優勝は阪神でしょう
クライマックスシリーズ、やるんでしょう?
こんなに独走状態なのに…
やっぱり、クライマックスシリーズは興醒めします

2700さん
今年は、共に残念な結果になりそうですね
でも、やっぱり日本シリーズは阪神にがんばってもらいたいです
あれだけ強いんですから…

では、更新します
2704投稿者:リリー  投稿日:2008年07月15日(火)20時58分58秒
『八回・裏』

≪2007年8/12(日)≫
楠本から電話がかかってきた。
舌打ちをしながら、ダーブロウ有紗は携帯をとる。
〔もしもし、『ビッグ・ノーズ(でかっ鼻)』ですか?〕
「何だよ?楠本…」
〔ちょっと、ちょっと!『フィールド・マーシャル(陸軍元帥)』でしょうが!!コードネーム!!〕
「ああ?忘れてたよ、そんなもん…」
〔とにかく、私はもう熱海にいます。あなたがたは、どのくらいでこちらに着きそうですか?〕
「急かすなよ。まだ正午じゃねぇか!!7時までに着けばいいんだろ?」
〔6時半まで到着できるように。打ち合わせとか、いろいろしたいですし…〕
「打ち合わせ?私は後藤と戦う、おまえは山本を殺る、出っ歯ちゃん達は少女達を助ける…それでいいじゃねぇか!!」
〔いや、でも、もうちょっと、細かな動きを…〕
「そんなもん、即興でやれよ!!天才、楠本様なんだからよ!」
〔だから〜!!本名で呼ばない!!〕
「とにかく、6時半にはそちらに着いてやらあ!!それまで、温泉にでも浸かってのんびりしてろよ!!」
〔あ、今、温泉入ってます…〕
「………」
〔いや〜…やっぱり、熱海はいいですねぇ…。海が絶景で…〕
ダーブロウ有紗は、携帯を切った。
2705投稿者:リリー  投稿日:2008年07月15日(火)20時59分17秒
そしてダーブロウ有紗は、社長室に向かう。
そこには、卓也と杏奈が朝から事務処理をしていた。
「おう、フニャオ、カピバラ、ご苦労!!もう、昼飯食ってきてもいいぞ」
「あ、はい。では、行ってきます。でも、もう少しで一区切りつきますんで…」
卓也はまだ書類に目を通しているが、杏奈は早々と仕度をする。
「じゃあ、私は先に行ってるわ」
そんな杏奈に、ダーブロウ有紗は声をかける。
「あ、それから、昼飯食ったら、もうあがっていから…」
「え?」
「今から、私達は出張する。会社は、今日はもう閉めるんだ」
「出張…?ああ、これですか?」
卓也は、今、手にしている書類に注目する。
未成年者誘拐監禁事件・依頼内容は、その未成年者の救出・依頼金は15万円・依頼人は飯田里穂、ド・ランクザン望、篠原愛実・場所は熱海。
「依頼人が…里穂達?しかも、15万なんて大金…」
卓也はそう言うが、15万円の依頼など、この探偵社からしてみれば格安である。
「でも、伊豆までの旅費で半分くらい、かかるんじゃない?」
杏奈の言う通り、割に合わない仕事である。
「ま、リッピー達の仲間が面倒なことに巻き込まれてな、人肌脱いでやろうってこった」
ダーブロウ有紗は、何のことはない…という様に笑った。
2706投稿者:リリー  投稿日:2008年07月15日(火)20時59分34秒
そこに、社長室のドアが開く。
「…!?『ジョー』?おまえ、退院したのか?」
そこに立っていたのは、『TDD』の『ストレングス(力)』こと秋山恵に、ラリアートを喰らって入院していた、俵姉妹の妹、小百合だった。
首には、まだ真っ白なコルセットが巻かれている。
姉の有希子に付き添われているが、しっかりと両の足で立っている。
「退院予定日は、まだ一週間後だったんですが…」
有希子は、困った様な顔で小百合の顔を見る。
しかし、小百合はまっすぐな目でダーブロウ有紗を見詰める。
その目を見るだけで、ダーブロウ有紗は全てを理解する。
「OK…!おまえも来いよ!!ジョー…」
「…!!はい!!」
小百合は、笑顔で応えた。
「ちょっと!ダーさん!!私は、あなたに止めてもらいたくて…」
ダーブロウ有紗は、慌てふためく有希子を見詰め、首を横に振る。
「いや…。ここは連れて行かなくちゃよ…。私だったら、絶対に行くもん」
「でも、まだ小百合は…」
「心配だったら、姉のおまえが充分に注意を払ってやんな。それが、姉の務めだろ?」
そう言われて、有希子も何も言えなくなった。
「ごめんね、お姉ちゃん…」
そう言う小百合に、有希子は笑顔で応えた。
2707投稿者:リリー  投稿日:2008年07月15日(火)21時00分03秒
「あ…!卓也君!!昨日はありがとう!お見舞いに来てくれて…」
小百合は、卓也がいることにようやく気がついた。
「いや…。いいんだよ。そんなこと…」
卓也は、顔を赤くして手を振った。
「何よ?あんた、あれからお見舞いに行ったの?」
「ん?ま、まあね…」
杏奈の冷めた目を、まともに見られない卓也。
「で、でも…。あんまり無理をしないでね…」
「うん。ありがとう。私なら大丈夫。お姉ちゃんがいるから…」
そう言いながら、有希子に顔を向ける。
有希子は、優しく微笑むと、小百合の頬を両手で押さえ、自らの額を妹の額に軽く当てた。
「さてと…じゃあ、早速出かける準備をしておきな。6時半には熱海に着きたいからな」
ダーブロウ有紗は、後ろから姉妹の肩を抱く。
「私と、出っ歯ちゃんと、おまえ等姉妹…今から暴れまわろうぜ。今までチビアリやデコッパチ達ばかり活躍してたからな…」
3人は、顔を向き合わせ、力強く頷いた。
「私達、お姉さん組も、やる時はやらねぇと…」
2708投稿者:リリー  投稿日:2008年07月15日(火)21時00分25秒
ダーブロウ有紗、岩井七世、俵姉妹の4人が新幹線で熱海に着いたのは6時を過ぎた頃だった。
早速、楠本に携帯で電話をかける。
もちろん、本名で名前を呼ぶ。
もはや、嫌がらせに近い。
駅から近い、ホテルのロビーで待ち合わせをする。
そこにある喫茶店で、楠本はホテルの浴衣姿で新聞を読みながらくつろいでいた。
「おい、着いたぜ!元帥殿!!」
ダーブロウ有紗は、楠本の目の前の席に座る。
「はい、ようこそ。熱海へ」
新聞を折り畳みながら、楠本は笑顔を見せる。
そして、ダーブロウ有紗の後ろで立ったままの七世、俵姉妹にも手を振った。
「お久しぶりです、七世さん。やっと、あなたの悲願、叶えられる日がきましたね」
「遅いです!!あれから、どのくらい時間が経ってるとお思いですか?」
「ん…?まぁ…散々、山本組長の毒牙の犠牲になっていることでしょうね…」
わざとらしく、悲しげに目を瞑る楠本。
七世は、この男のこういうところが、一番気に入らない。
「おや?そちらの…たしか、俵姉妹の妹さん…まだ怪我が治っていらっしゃらないようですが…」
「お気遣いなく…。作戦遂行には、なんら問題はございません」
俵姉妹も、冷たい視線を楠本に落として言う。
2709投稿者:リリー  投稿日:2008年07月15日(火)21時01分14秒
ダーブロウ有紗も、この男と長くこの場に居る気はない。
「さ、早いとこ行こうぜ。どこにあるんだよ?山本の別荘は」
「はい。伊東にあります」
「だったら、直接伊東で待ち合わせすりゃぁよかったじゃねぇか!!」
「いえいえ…。伊東の駅にはおそらく山本組の…女性職員が見張りをしているでしょう。警察に睨まれてから、少女達との狂宴をおっかなびっくりでやってますから…」
「だったら、何で行く?まさかタクシーか?」
「車です」
「ん?おまえ、車で来たのか?」
「いいえ。新幹線で。ここのレンタカーでマイクロバスを借りました」
「マイクロバス?」
「だって、救出した少女達を無事に警察まで送り届けなければ…」
意外と、肌理細やかな考えをする男だ。
さすがホストと言ったところか…。
2710投稿者:リリー  投稿日:2008年07月15日(火)21時02分28秒
いよいよ、ダーさん達と元帥が山本組に殴りこみにいきます

では、おちます
2711投稿者:117  投稿日:2008年07月15日(火)22時10分45秒
ダーさんの扱いがひどく、しかもなかなか気楽な元帥(笑)。
「ちょっと!『フィールド・マーシャル(陸軍元帥)』でしょうが!!」って、いかにも「元帥」ですね(笑)。
次回はいよいよ対決ですか・・・続きも楽しみです!
2712投稿者: 投稿日:2008年07月15日(火)22時40分10秒

2713投稿者:あげ  投稿日:2008年07月15日(火)23時15分56秒
              
2714投稿者:あげ  投稿日:2008年07月16日(水)19時34分41秒
2715投稿者:リリー  投稿日:2008年07月16日(水)20時58分15秒
117さん
山本組殴り込みまで、もうしばらくかかりそうですが…

あげ、ありがとうございます

更新します
2716投稿者:リリー  投稿日:2008年07月16日(水)20時59分30秒
「で、今テレビで巨人vs中日戦を見てたんですが…」
親指で、大画面のフラットテレビを指差す。
「何だよ?新聞読んでたんじゃねぇのか?」
「両方見てました」
「器用なヤツだな…。で、野球中継がどうしたんだよ?」
「あなたの探偵さん、今、ナゴヤドームにいません?」
「あん?」
確かに今日は野球部の合宿の最終日で、中村有沙達野球部員は、今日は名古屋で野球観戦をしている。
何故、この男が知っている?
「さっき、テレビに映ってました」
「アップになったのか?」
「いえ。ほら、今も映ってます」
「…!?」
3塁側内野の観客席が、引きで映し出されゆっくりパンしている。
ダーブロウ有紗には、中村有沙達を確認することができなかった。
「何だよ?自分は目がいいって、自慢してんのか?」
それとも、情報をどこからか手に入れ、口から出まかせを言っているのか?
「いえ…。今、他に知った顔が見えまして…」
「は?」
『TDD』の『カード』の一人、『タワー(塔)』こと、中田あすみが、『R&G』の探偵達に挟まれて座っていた。
彼女が、聖テレで野球部なんぞの顧問をしているとは聞いていたが…『R&G』の探偵達と、何をやっているのか…楠本はそれが気になっていた。
2717投稿者:リリー  投稿日:2008年07月16日(水)20時59分51秒
「ま、いいです。では、早速行きましょうか」
楠本は近くのウェイトレスに1000円を握らせると、椅子から立ち上がった。
「じゃあ、さっさと着替えてこいよ」
「いえ。今すぐ行きましょう」
楠本は、浴衣姿で草履履きのまま、ホテルから出ようとする。
ダーブロウ有紗は、思わず声を上げる。
「おい、おい!!待てよ!!その恰好で行くつもりか?」
「…?はい」
「おまえな、街中観光しに行くんじゃねぇんだぞ?仕事、舐めてんのか?」
「だって、返り血を浴びてしまいますから…」
楠本は不敵に笑った。
「………なるほど…。でも、私達は一切の殺しはしないからな…」
ダーブロウ有紗は、身を翻すと、トイレに向かう。
「それから、私達も一応着替えるから、外で車出して待ってろ」
「はい。了解しました。でも、早くしてくださいね」
「ホストのクセに野暮だな。女の身支度は長いもんだよ」
「仕事となれば、別です」
楠本は、本当に浴衣姿のまま外へ出てしまった。
2718投稿者:リリー  投稿日:2008年07月16日(水)21時00分44秒
ダーブロウ有紗達は、真夏だというのにコートを着込んで出てきた。
下には、『R&G』の戦闘服、トラックスーツを着ているのだ。
しかも、ダーブロウ有紗は、20本を越す大小長短様々なナイフを身に着けている。
こんな恰好で、人の集まる観光地を闊歩するわけにはいくまい。
ホテルのドアを抜けたら、真正面に白いマイクロバスが停まっていた。
詰め込めば、20人ぐらいは乗れそうな代物だ。
七世が言うには、あの時は15人くらいの少女が囚われていた。
このバスなら充分全員乗れる。
やはり楠本はあの夜、少女達の人数も確認していたのだろう。
「どうぞ、乗って下さい。今はまだ中は広々としてますんで…」
運転席から楠本が顔を出す。
何も言わずに、ダーブロウ有紗達はバスに乗り込む。
彼女達は、一斉にコートを脱ぎ出した。
俵姉妹のトラックスーツは、グレー地に、有希子はピンク、小百合はオレンジのラインのトラックスーツだ。
真ん中の座席に、黒い鞘に収められた日本刀が無造作に置かれていた。
「…ん?おい、これ…」
「ああ、これが私の商売道具です」
楠本は、ルームミラーで彼女達を窺いながら答えた。
「商売道具?じゃあ、あの変な形したナイフは?」
七世の問いに、楠本はニヤリと笑う。
「ああ…。あのナイフは『遊び用』…。趣味の為のオモチャです」
2719投稿者:リリー  投稿日:2008年07月16日(水)21時01分05秒
「『遊び』?『趣味』?『オモチャ』?あなた、殺人を、何だと思って…」
「ですから、『趣味』ですよ。でも、今回は仕事でも『それ』をしなくちゃならないんですけど…」
「あ、あなたって人は…」
感情的になった七世の肩を、ダーブロウ有紗が掴む。
「やめとけ。こういうヤツなんだよ。この男は…」
そして、座席上の日本刀に視線を落とす。
「おい、この刀、見せてもらっても?」
「どうぞ。でも、もう車を出しますんで、気をつけて下さいね」
ダーブロウ有紗が鞘から刀を抜いた途端、楠本はバスを出した。
怪しく輝く刀身…。
洸太の家にあった刀も随分な代物だったが、楠本の刀はそれ以上だった。
「ふ〜ん…。いい業物じゃないか…。よく斬れそうだ」
「『仕事用』ですから。効率よく『さばけ』ないと…」
「今、出っ歯ちゃんが言った、『趣味』用の変な形したナイフってのは?」
刀身を鞘に納めて、楠本に尋ねる。
「はい」
楠本は、運転をしながら後ろのダーブロウ有紗に投げて寄越した。
それを、難なく受け止める。
2720投稿者:リリー  投稿日:2008年07月16日(水)21時01分30秒
話しに聞いた、先の曲がった形状のナイフ。
ナイフには造詣の深い…いや、ナイフマニアのダーブロウ有紗が気になったのは、エッジの部分の刃こぼれだ。
「ん?ちゃんと手入れしてねぇな?よく砥いでおけよ」
「いえ、それでいいんです」
「何で?斬り難くてしょうがねぇじゃん」
「斬り難くていいんです。斬り難くしてるんですから…」
「はぁ?わけ、わかんねぇぞ?」
「だから、『趣味』用って言ったでしょ?」
しばらく考えて、ダーブロウ有紗は思わず笑った。
「なるほど…。この変態野郎…」
「ダーさん?どういうこと?」
七世と俵姉妹は、まだ意味がわからない。
「だから、使う側が斬り難いってことは、使われる側にとっては、凄ぇ痛いってこと」
つまり…凄まじい激痛を相手に与え、苦しませて殺す…。
楠本の言う、趣味の殺人とは、そういうことなのだ。
七世達は、寒気がした。
「このナイフで、ダッチャを解剖しようとしたのか?」
「『解剖』じゃなくて『解体』ね。『解剖』は医学的な意義があって行われるものでしょ?『解体』は時計とかカメラを興味本位でバラバラにするのと同じですから…」
改めて、ダーブロウ有紗は、楠本を鋭い眼光で睨みつけた。
ルームミラー越しに目が合う2人…。
楠本は、微かに笑顔を見せた。
2721投稿者:リリー  投稿日:2008年07月16日(水)21時03分31秒
今日は、これでおちます
2722投稿者:117  投稿日:2008年07月16日(水)21時07分33秒
いくつもの顔を持っているアスミ先生。元帥はしゃべりませんでしたが、バレたら大変ですよね。
元帥の武器は「日本刀」ですか・・・しかも、浴衣も。結構似合いそうですね(笑)。続きも楽しみです!
2723投稿者:何気ない会話でも  投稿日:2008年07月17日(木)00時04分46秒
一つ一つがおもしろいです
2724投稿者:あげ  投稿日:2008年07月17日(木)21時10分20秒
 
2725投稿者:あげ  投稿日:2008年07月17日(木)21時18分08秒
2726投稿者:あげ  投稿日:2008年07月17日(木)22時49分55秒
2727投稿者:あげ  投稿日:2008年07月18日(金)21時43分24秒
2728投稿者:二日連ちゃんで  投稿日:2008年07月18日(金)22時18分26秒
更新なし?
2729投稿者: 投稿日:2008年07月18日(金)22時31分58秒

2730投稿者: 投稿日:2008年07月18日(金)22時45分33秒

2731投稿者:リリー  投稿日:2008年07月18日(金)23時08分57秒
久しぶりのヵキコだぉ♪
スッゴイおもろです♪優菜なんか、あんなブスに負けたらぁヵんで♪
超ぉもろゃヵらな♪ ずっと期待ゃ☆
更新まってるで
2732投稿者:デジ  投稿日:2008年07月19日(土)04時15分01秒
一週間ぶりです。
8回表もう終わってましたね。
(裏)2つの顔をもつあすみ先生。久々に怖い一面を見せましたね、元帥。
元帥さえも分からないあすみ先生の目的とは。続きも楽しみです!
             (今日の小言)
前回のコメントから一週間がたちましたが、その間にも一戦ありました。
「水戸葵陵VS藤代高校」戦。相手の藤代高校は過去に甲子園に出たこともある強豪らしく一戦目より苦戦し白熱した戦いでした。結果は八回表に決勝点をあげ、3ー2でまた次の試合へとコマを進めました。ただ翌日の新聞を見てみたら、負けた藤代高校の方にスポットがあたってて、ちょっとガックリした記憶が…………。
今日の昼間に三戦目(「水戸葵陵VS佐竹高校」戦)があります。
いつかの人がおっしゃったとおり僕は(東京で生まれた)茨城県居住者です。 
2733投稿者:あげ  投稿日:2008年07月19日(土)14時55分04秒
2734投稿者: 投稿日:2008年07月19日(土)16時44分58秒

2735投稿者:リリー  投稿日:2008年07月19日(土)21時06分13秒
すみません
いろいろ忙しくて、この二日更新できませんでした

117さん
今回、いよいよ殴りこみが始まります

デジさん
負けた方の高校が注目されてたんでしょうね
水戸葵陵はデジさんの学校なのですか?
甲子園に出られるといいですね

2736投稿者:リリー  投稿日:2008年07月19日(土)21時07分52秒
「そうだ。これ、私に貸してくれよ」
「え?何故ですか?」
「理沙って女に使ってみてぇ」
「殺しはしないんでしょ?」
「ああ…。しねぇよ…。でも、『痛い目』に合わせてやりたいんでね…」
そう言いながら、有希子を見る。
有希子は、また心配そうな顔でダーブロウ有紗を見詰める。
楠本は溜息混じりに言う。
「ま、いいですけど…。でも、私が余計な恨みを買ってしまいそうですが…」
「いいじゃねぇか…。おまえは、いろんな所で、いろんなヤツから恨みを買ってんだろ?」
「そうですけど…」
悲しそうに頷く楠本だったが、すぐに顔を厳しくさせる。
「しかし、そのナイフは戦闘に向きませんから…。『エンプレス(女帝)』相手に、あまり遊びすぎると取り返しのつかないことになりますよ?」
「ふざけんな!!てめえは、この『趣味』用のナイフで、うちの探偵達と戦ったんだろ!?」
「戦った?いえ、遊んだんです…」
「コンチクショウ!!」
今にも殴りかからんとするダーブロウ有紗。
今度は、苦笑いを浮かべる楠本だった。
2737投稿者:リリー  投稿日:2008年07月19日(土)21時08分16秒
マイクロバスの中で、楠本は段取りを確認する。
「では、仕事の確認しましょう。まずは、七世さんと姉妹さんの3人で、少女達の救出をしてもらいます」
「私達がキッカケになるのね?」
日傘の先に、小さな槍を取り付けながら七世が言った。
「はい。そこで、おそらく山本組の女性組員とうちの『エンプレス』が駆けつけるでしょう」
「その、『エンプレス』…理沙って女と、私が戦えばいいんだろ?」
ダーブロウ有紗は、腕組みをして椅子にふんぞり返って聞く。
「はい。七世さん達は少女の救出を、有紗さんは『エンプレス』との戦闘に集中してください。山本組の組員は、私が一人で応対します」
「本当は、全部おまえ一人でできることなんだよな?ただ、やる気がないだけで…」
「はい。でも、やる気のある、なしは、凄く重要なことですよ。仕事に関しては…」
楠本は、横目で彼女達を眺める。
「少女の救出は、七世さんが一番やる気があり、『エンプレス』との戦闘は、有紗さんが一番やる気がある。仕事は、やる気のある人がやるのが一番です」
「で、殺しは、おまえが一番やる気があるんだろう?」
「ふふ…。どうでしょうね…」
「何だ?違うのかよ?」
「お?もう、目的地に着きましたよ」
ダーブロウ有紗の問いに答えることなく、楠本はマイクロバスを路肩に停めた。
2738投稿者:リリー  投稿日:2008年07月19日(土)21時08分43秒
山本の別荘は、海の見渡せる小高い丘に建っていた。
天歳市にある山本の本低よりは幾分小さいが、やはり立派な構えの日本家屋だ。
大きな門の前に、山本組の黒いスーツ姿の女性組員が2人並んでいる。
「さてと…これから殴りこみに行くわけですが…あの2人の見張りを何とかしなくてはいけませんね…」
「じゃあ、私が何とかしてやるよ」
「いえ…。あなたは、『エンプレス』との戦闘に集中してください」
「あ、そ…」
ダーブロウ有紗は、つまらなそうに呟いた。
「私達がやります」
有希子と小百合が、マイクロバスの中央扉の前に立つ。
「捕縛なら、私達が最適ですから…」
「じゃあ、『捕縛』はあなたがたにお願いしましょう」
楠本は、マイクロバスをノロノロと山本の別荘の門前に着けた。
「…?おい、何だ!?」
見張りの女性組員は、懐から拳銃を取り出そうとする。
中央扉が開いた。
2739投稿者:リリー  投稿日:2008年07月19日(土)21時10分19秒
チュィィィ〜ン…銀色に輝く鋼線が、螺旋を描きながら2人の女性組員に向かって飛んでいく。
幾重にも、鋼線が絡まる。
「ぐ…!うう…!!」
「な、何だ!?貴様等!?」
一人が、拳銃を俵姉妹に向ける。
しかし、その拳銃も、鋼線によって奪われる。
もう、2人の女性組員は身動きがとれない。
ゆっくりとバスから降りる、俵姉妹、七世、ダーブロウ有紗、そして楠本。
楠本は、侍のように浴衣の帯に日本刀を差している。
「こ、この男…!この前の…!?」
「お、おまえら…!!加藤組の者か!?」
「加藤組!?そりゃ、この男だけだ!!」
ダーブロウ有紗は、不愉快そうに怒鳴った。
2740投稿者:リリー  投稿日:2008年07月19日(土)21時10分33秒
「さてと…。この2人、どうします?」
七世は、ダーブロウ有紗に聞く。
「どうする?そうだな…とりあえず気絶させて…」
「はい、はい、はい…。皆さん、下がって、下がって…。もう少し、下がって…」
楠本が、2人の女性組員の前に歩み出る。
「え…?何を…?」
有希子は、楠本の側に一歩進み出た。
「…!?下がれ!!ミミー!!ジョー!!」
ダーブロウ有紗は、姉妹の肩を掴み、後ろに引き寄せた。
その瞬間、楠本は鞘から刀を抜き、真一文字になぎ払った。
2741投稿者:リリー  投稿日:2008年07月19日(土)21時11分23秒
ゴロリ…二つの頭が、道路に転がる。
そして、頭を失った2体の女性組員の身体から、鮮血が噴水のように高く吹き上がる。
「!?」
七世は咄嗟に前に出て、日傘を開いた。
そのお陰で、ダーブロウ有紗、俵姉妹、七世の4人は、雨の様に降り注ぐ大量の血を被らずに済んだ。
楠本だけが、頭からその血を被ってしまったが…。
「あ、あなた…!!」
七世が怒鳴ろうとしたが、ダーブロウ有紗に遮られる。
「よせよ…。私達が『TTK』だった頃…同じ事をしてたんだ…」
楠本は、返り血で真っ赤に染まった笑顔を、ダーブロウ有紗に向ける。
「やはり…あなただけは、わかってくれましたか…」
「ああ…。気絶させる手間と殺す手間を考えれば、殺した方が断然手っ取り早い…」
「ダ、ダーさん…」
そう冷静に呟くダーブロウ有紗が、七世には心配だった。
「だけどな、出っ歯ちゃん…。ミミー…。ジョー…。そのめんどくさい方を選ぶのが『表』の住人だ。こういうことは『裏』の…どす黒く汚れきったヤツに任せておこうぜ…」
そう言って、七世と俵姉妹を、笑顔で見詰める。
「おまえ等のこれからやる仕事は…楠本なんかより、はるかに気高くて意義がある」
「それは、あんまりな御言葉…」
楠本は、悲しそうに笑う。
「ほっとけ!!こんな野郎のすることは…!」
そして、ダーブロウ有紗は、そのまま門を飛び越えて別荘に侵入した。
2742投稿者:リリー  投稿日:2008年07月19日(土)21時11分48秒
今日はこれでおちます
2743投稿者:元帥  投稿日:2008年07月19日(土)23時42分45秒
こえええ〜〜〜
2744投稿者:リリー  投稿日:2008年07月20日(日)00時04分41秒
キモラヲタ馬鹿〜
キモラヲタ馬鹿〜
キモラヲタ馬鹿〜
キモラヲタ馬鹿〜
2745投稿者:二日ぶり  投稿日:2008年07月20日(日)08時19分08秒
祝・復活!
2746投稿者:あげ  投稿日:2008年07月20日(日)15時40分39秒
 
2747投稿者: 投稿日:2008年07月20日(日)15時43分15秒

2748投稿者: 投稿日:2008年07月20日(日)15時51分00秒

2749投稿者:あげ  投稿日:2008年07月20日(日)16時24分40秒
2750投稿者:がんばれ  投稿日:2008年07月20日(日)16時33分28秒

2751投稿者:リリー  投稿日:2008年07月20日(日)20時44分37秒
あげ、励ましのコメントありがとうございます

では、更新します
2752投稿者:リリー  投稿日:2008年07月20日(日)20時47分11秒
本低と変らぬ広さの寝室…いや、本低とは寸分変らない別荘の寝室のベッドの上に…例の豹柄ビキニ一枚だけを纏った山本が、その肥満体を横たわらせている。
そして、いやらしい目で、目の前に並んだ7人の少女達を眺めている。
少女達は、やはり薄手の白い着物を素肌の上から着ているだけだ。
肌が、薄い生地に透けている。
山本は、透けている乳首をじっと眺め、グフフ…と低く呻いている。
「さぁ…。着物を脱げ…」
少女達は、小刻みに震え、涙を浮かべながら言われた通り、着物を脱ぐ。
ただ白い足袋を履いた以外は全裸の少女の姿…山本を一層興奮させる。
「さあ…。全員、近ぅ寄れ…」
手招きをする山本。
少女達は、泣き出しそうな顔を、皆で見詰め合う。
「早く、来い!!」
山本の怒声に、少女達は観念する。
恐る恐る、山本の乗るベッドへと歩み寄る。
七人の若い裸体が、山本の醜く太った身体を囲む。
山本は、本当に気持ち良さそうに、手足を思いっきり伸ばして、少女達の身体を抱き寄せた。
2753投稿者:リリー  投稿日:2008年07月20日(日)20時47分33秒
チュゥゥン…。
何か音がしたような気がするが、山本はすぐに視線を少女達に移す。
七人の少女達の泣き崩れる顔を、満遍なく眺める山本。
だが、いつの間にかその少女達の顔を見下ろすような形になっていく。
「…?」
まるで、自分が立ち上がっているような…いや、自分の身体が浮かび上がっている?
少女達も、驚愕の表情で山本を眺めている。
「な、何だ…?イデ…!!イデデデデ…!!」
何かが、身体にキリキリと食い込んでいる。
針金のような…細い、金属の糸…?
それは、欄間から引っ掛けられて伸びている。
「ぐぁ…!!ぎゃあああ!!!」
山本は、あまりの激痛に悲鳴をあげた。
鋼線が山本の脂肪に包まれた柔らかい身体に食い込み、まるで糸で縛ったお中元のハムの様な姿になって、宙に浮いている。
「ひ、ひぃぃぃ…!!」
少女達は驚きのあまり、ベッドから転げ落ちた。
「さあ、みんな…。着物を着て!!こんな所から、さっさと逃げるよ!!」
少女達は、山本の真下に立っている2人に初めて気がついた。
グレーのトラックスーツに身を包んだ、自分達と同じくらいの年齢の少女だ。
一人は、コルセットを首に巻いている。
2754投稿者:リリー  投稿日:2008年07月20日(日)20時47分55秒
「さあ、早く!!こいつの手下が、もうすぐ来るよ!!」
少女達は、わけがわからぬまま、大急ぎで着物を身に纏う。
そう言えば、いつか、助け出された少女がいると聞いた。
今回は、自分達が救出されるのか…。
希望の光が見えてきた…。
「お、おい!!貴様等!!加藤組のモンか!!」
山本が、あらん限りの声で叫んだ。
「加藤組?違うわよ…。私達をヤクザなんかと一緒にしないで!!」
小百合は、不愉快そうな目で、宙に浮いたままの山本を見上げた。
「い、一度ならずも、二度までも…!!こんなことして、タダで済むと思うなよ!?」
「タダで済まないのは、あなたの方よ…」
有希子は、冷たい視線で山本を見上げる。
「な、何…?ど、どういうことだ!?」
「これから、その加藤組の者が、あなたの命を狙いに来るわ…」
「…な、何だって…?」
山本の脳裏に、この前の金髪の男が浮かび上がる。
「彼…本当に、容赦しないのよ…。あなたは、これから殺される…。ま、全然可哀そうじゃないけどね…」
俵姉妹は、少女達を連れて、寝室から出た。
「ま、待て!!おい、待ってくれ!!せめて、せめて俺をここから降ろしてくれ〜〜〜!!」
山本の悲鳴が、虚しく別荘中に響き渡った。
2755投稿者:リリー  投稿日:2008年07月20日(日)20時48分15秒
「…!?い、今のは…組長の声!?」
別室の大広間を見張っていた女性組員達は、山本の叫び声に、いち早く反応した。
この大広間には、今夜の狂宴に選ばれなかった12人の少女達が押し込められていた。
「み、見てきます!!」
一人が大広間の障子を開けて、部屋の外に出た途端、障子を突き破ってまた転げ入ってきた。
「な、何だ!?」
「ど、どうした!?」
大きく穴が開いた障子から、血で真っ赤に染まった日傘を差した少女が見える。
「誰だ!?おまえは…!!」
「あ、こ、こいつ…この前の…!!」
組員の何人かは、七世の顔を覚えていた。
「そう…。残りの女の子達…返してもらうわ…」
障子の穴から飛び込んできた七世は、一瞬でこの部屋にいる4人の女性組員達を、日傘で叩き伏せて気絶させた。
「さあ、早く逃げて!!他の子達も、もう逃げたから!!」
少女達は血染めの日傘に一瞬怯えたが、逃げ出すチャンスとばかり七世の後に着いていく。
長い廊下の途中、俵姉妹の率いる少女達と鉢合わせになる。
「『クリムゾン・レイン』!それで全員?」
「そうよ!早く敷地内から出ましょう!!他の組員が…」
その時、女性組員達の慌しい足音が聞こえてきた。
2756投稿者:リリー  投稿日:2008年07月20日(日)20時48分35秒
「貴様等!!何をしてんだ!!」
「撃て!!」
組員達は、一斉に拳銃を構えた。
七世は、日傘を開いて前にかざした。
一斉射撃が始まる。
少女達が悲鳴をあげて散り散りに逃げ出す。
「ちょっと!!勝手な行動はとらないで!!」
俵姉妹は、鋼線で少女達を雁字搦めに縛り付けて強引に一箇所に集めた。
「痛い!痛い!痛い!」
少女達は金切り声をあげる。
「『ダブル・フィッシャーマンズ・ノット』!!この子達を連れて逃げて!!早く!!」
七世の日傘は、特殊な金属制の繊維で編まれていて、弾丸を通さない。
日傘で弾丸を弾きながら、じりじりと後退していく。
だが、既に俵姉妹は少女達を連れて、この場から離れていて、この戦場には七世一人だ。
反対側から襲われたら、ひとたまりもない。
このまま攻撃に移せれば楽なのだが、この状況で殺さずにやり過ごすのは難しい。
殺してしまっていいのなら、簡単なのだが…。
めんどくさい方を選ぶのが『表』の住人…ダーブロウ有紗の言葉を思い出す。
2757投稿者:あげ  投稿日:2008年07月20日(日)20時48分53秒

2758投稿者:リリー  投稿日:2008年07月20日(日)20時49分10秒
「貴様等!!何をしてんだ!!」
「撃て!!」
組員達は、一斉に拳銃を構えた。
七世は、日傘を開いて前にかざした。
一斉射撃が始まる。
少女達が悲鳴をあげて散り散りに逃げ出す。
「ちょっと!!勝手な行動はとらないで!!」
俵姉妹は、鋼線で少女達を雁字搦めに縛り付けて強引に一箇所に集めた。
「痛い!痛い!痛い!」
少女達は金切り声をあげる。
「『ダブル・フィッシャーマンズ・ノット』!!この子達を連れて逃げて!!早く!!」
七世の日傘は、特殊な金属制の繊維で編まれていて、弾丸を通さない。
日傘で弾丸を弾きながら、じりじりと後退していく。
だが、既に俵姉妹は少女達を連れて、この場から離れていて、この戦場には七世一人だ。
反対側から襲われたら、ひとたまりもない。
このまま攻撃に移せれば楽なのだが、この状況で殺さずにやり過ごすのは難しい。
殺してしまっていいのなら、簡単なのだが…。
めんどくさい方を選ぶのが『表』の住人…ダーブロウ有紗の言葉を思い出す。
2759投稿者:リリー  投稿日:2008年07月20日(日)20時51分09秒
その時、日傘の向こうで銃声が途絶えた。
「…え?」
日傘の影から顔を出して、前方を確認する。
宙に舞う、腕、足、首…。
その真っ只中に、浴衣姿の金髪の男が日本刀を振るっている。
血と肉塊の真ん中で、真っ赤に染まった男…楠本は、ゆっくりとこちらを振り向いた。
「さあ…。こういう汚いことは、私が引き受けますので…。はやく少女達を連れてお逃げなさい」
「引き受ける…?喜々としてやってるようにしか思えない…」
「喜々として…?いえいえ…。それなら、こんな瞬殺なんかしませんよ…」
現に、女性組員達は、叫び声一つあげないで絶命している。
「さあ、早く少女達と共にお逃げなさい。あとは、私と『ビッグ・ノーズ』で片付けますので…」
「片付ける?散らかしてるくせに…!!」
廊下に散らばった手足、首を、苦々しい思いで一瞥する七世。
もう、彼女等が何人だったのかもわからない。
七世は、その場から駆け出した。
早く、こんな血の池地獄から離れたかった。
自分も、こんな世界に身を置いていたのだ…。
そして、そんな世界にまだ自ら楽しんで身を置いている者もいる…。
2760投稿者:リリー  投稿日:2008年07月20日(日)20時51分49秒
今回も元帥の大虐殺で終わりました

今日は、これでおちます
2761投稿者:117  投稿日:2008年07月20日(日)21時12分57秒
ここ2・3日、リリーさんも忙しかったんですね。
昨日の話から、ハデにさばいちゃう元帥。カッコイイような残酷なような・・・?
とりあえず、奴隷の少女たちは助かったということで?続きも楽しみです!
2762投稿者:血なまぐさい…  投稿日:2008年07月20日(日)22時54分04秒
死人が出なかった第一試合に比べて第二試合はハードだな…
2763投稿者:あげ  投稿日:2008年07月21日(月)07時47分39秒
 
2764投稿者:お中元のハム  投稿日:2008年07月21日(月)18時37分11秒
てw
2765投稿者:リリー  投稿日:2008年07月21日(月)20時57分51秒
2762さん
そうですね
第2試合は、人がバンバン死にますね
楠本さんも、本性を発揮した…ということで…

117さん
少女達は救出されました
この後、ダーさんと理沙の対決がメインとなっていきます

2764さん
ハムのビジュアルが浮かんだもので…

では、更新します
2766投稿者:リリー  投稿日:2008年07月21日(月)20時58分41秒
庭に出ると、少女達はひと固まりになって、身を寄せて震えている。
「…?何をしているの?」
七世は、少女達の間を掻い潜る。
そこには、俵姉妹と…睨み合う様にたたずむ『エンプレス(女帝)』こと、後藤理沙の姿…。
彼女は、楠本と同じく日本刀を持っている。
(ダーさんは?彼女の相手をするはずでしょ?)
七世は、思わず辺りを見回した。
有希子は、ギリギリと歯を噛み締めながら、理沙を睨む。
そう…彼女には借りがあるのだ。
「あら?あなた達は、いつかの可愛い姉妹ね…?あの時はごめんなさいね?妹さん、まだ怪我が完治してないみたいだけど…。大丈夫?」
理沙は、薄ら笑いを浮かべて姉妹に語りかけた。
「うるさい!!大きなお世話よ!!」
小百合は掴みかからん勢いで理沙に迫るが、有希子が止める。
「あなたとは…もう一度、会いたかったわ…」
有希子はあくまでも冷静な口を利くが、沸々と起こる怒りの感情は抑えられない。
「私も…会いたかったわ…」
理沙は、首に提げたペンダントを指でつまみあげる。
「これ…あなたから抜いた前歯で創ったのよ…。素敵でしょ?」
2767投稿者:リリー  投稿日:2008年07月21日(月)20時59分04秒
「このぉ!!」
小百合は、怒りの感情と共に、鋼線を理沙目がけて投げつけた。
しかし、理沙は鞘から刀を抜くと一振りし、また鞘に収める。
細切れになった鋼線が、地面に散らばった。
「…!?」
小百合は、驚愕の表情を隠せない。
「悪いけど…あなた達姉妹の攻撃は…見切らせてもらったから…」
理沙は、余裕の笑みで言う。
有希子は一歩前に出て、小百合と肩を並べる。
「今度は、一緒にやるよ!!」
「OK!!お姉ちゃん!!」
姉妹は、一斉に鋼線を投げつける。
しかし、有希子は投げるタイミングを少し遅らせた。
理沙が刀で振り払った直後を狙う為だ。
だが、理沙は刀を抜かない。
身をよじらせて、鋼線の間を掻い潜ると、姉妹の目の前までにじり寄って来た。
「…!!」
姉妹の目の前で、ゆっくりと刀が抜かれる…。
理沙の冷たい笑み…。
2768投稿者:リリー  投稿日:2008年07月21日(月)20時59分34秒
しかし、理沙は鞘から刀を抜かなかった…いや、抜けなかった。
半分抜いた刀身に、小さな槍が命中したからだ…いや、理沙が刀身で受け止めたのだ。
槍を発射したのは、七世だった。
俵姉妹は、一気に理沙から飛び退いて離れた。
「『クリムゾン・レイン』…!!」
「ここは私に任せて…!あなた達は女の子達を連れてって…」
七世は囁く様に言う。
「で、でも…あの女、やっぱり只者じゃないよ…!」
「大丈夫なの?」
七世は、一層声を小さくして囁く。
「大丈夫…。私達には『ビッグ・ノーズ』があるもの…」
そう…『ビッグ・ノーズ』とはダーブロウ有紗のことだ。
どこかで彼女が見ているはずだ。
七世は、敢えて『ダーさん』とも『マッド・エッジ』とも言わなかった。
おそらく、コードネームの類も、理沙には筒抜けになっているだろう…。
『ビッグ・ノーズ』は、楠本だけに使うコードネームだ。
理沙には、その『ビッグ・ノーズ』なるものが、人なのか、武器なのか、技の名前なのかわからないはすだ。
2769投稿者:リリー  投稿日:2008年07月21日(月)20時59分53秒
「『ビッグ・ノーズ』?」
やはり、理沙は少し警戒したかのように、鞘から刀を抜き、構えた。
鞘は、地面にうち捨てた。
「さあ、早く、逃げて!!」
俵姉妹は、少女達を連れて門へと駆け出した。
「逃がすか!!」
「追わせない!!」
七世は、日傘で振り下ろされた日本刀を受け止めた。
「…!?何なの?その傘…!!それが、『ビッグ・ノーズ』?」
どうやら、理沙はこちらにとって都合のいい勘違いをしてくれた。
理沙と七世の、凄まじい攻防が繰り広げられる。
理沙の武器は日本刀…その戦いの形は正攻法だ。
対して七世の武器は、仕込み日傘…トリッキーな攻撃を繰り広げる。
少なからずも、理沙は戦い難そうだ。
理沙は、自身の刀身を見る。
「く…!!刃こぼれしてるわね…!!」
理沙の表情が変った。
どうやら、次は本気の攻撃を仕掛けてくる…!
2770投稿者:リリー  投稿日:2008年07月21日(月)21時00分18秒
「はああ!!」
真一文字に切りつけた刀は、開いた傘を横に振り払った。
七世のガードが、がら空きになった。
「せやぁぁぁ!!」
理沙の突き…!!
七世は傘を畳むと、真下に振り下ろす。
理沙の刀は、地面に食い込む。
「やああ!!」
七世は閉じた状態で、日傘を理沙に突きつけた。
だが、もう既に先の槍は、発射されて付いていない。
ただ、みぞおちを激しく突くだけに終わった。
もちろん、槍がついていないからこそ、できた攻撃なのだが…。
「ぐ…!やるね!!」
二三歩、後退りした理沙は、不敵な笑みを浮かべる。
そして、今度は下から刀を斬り上げた。
それを、日傘で受ける七世。
傘の骨の一本が、折れたような音がした。
やはり、武器が仕込んであるとはいえ、日本刀とぶつかり合えば、日傘などひとたまりもない。
理沙の乱打に耐え切れず、日傘は一太刀毎に破壊されていく。
2771投稿者:リリー  投稿日:2008年07月21日(月)21時01分13秒
「く…!!」
七世は、傘の取っ手から長さ20センチ程の針を引き抜いて、理沙に向けた。
「何?まだ武器が仕込んであったんだ…。でも、それはいわゆる暗器(暗殺用の隠し武器)でしょ?それでどうやって戦うつもり?」
そう…長さも強度も、とてもじゃないが日本刀には太刀打ちできない。
(ダーさんは…?どこにいるの?)
一瞬、七世は視線を理沙から外してしまった。
「せあああああ!!!」
理沙は、七世に向けて日本刀を振り下ろす。
「…!?」
七世は、寸でで身を退いた。
「やああ!!」
今度は、七世が針を理沙に向けて突き刺す。
「ふん!!」
だがしかし、その細い針は日本刀によって叩き折られた。
そして理沙は、刀を振り下ろした体勢のまま、七世にショルダータックルを喰らわせる。
「あう!!」
地面に背中を着けて、七世はひっくり返った。
「し、しまった…!!」
七世は、素早く立ち上がろうとしたが、目の前に日本刀が突きつけられた。
「はい!!そこまで!!」
パンプスを履いた理沙の足が、七世の肩を踏みつけ、再び地面に背中を着ける。
2772投稿者:リリー  投稿日:2008年07月21日(月)21時01分40秒
日本刀の切っ先は、七世の掌に突きつけられる。
「ふふふ…。あなたの指、細くて白くて綺麗…。一本一本切り落としてあげようか…?」
理沙は、舌でぺロリと唇を舐める。
「うぅ…!」
思わず青褪める七世。
「怯えた顔が、とっても可愛いわ…」
サディスティックな笑みを浮かべる、理沙。
「けど…グズグズしてられないからね…。あの子達を取り返さないといけないし…」
日本刀の切っ先は、七世のトラックスーツのファスナーを引っ掛け、ジジジ…とゆっくり降ろす。
「な、何をするの…!?」
「動かないで!!」
そしてクルリと刀身を返すと、ブラジャーを真ん中から切り裂いた。
「あ…!」
七世の胸がさらされる。
「そのまま…。そのままよ…」
刀の切っ先は、七世のブラジャーやトラックスーツを捲り、胸を肌蹴させた。
2773投稿者:リリー  投稿日:2008年07月21日(月)21時02分05秒
理沙は、七世の肌を舐めるように眺める。
「うふふ…。綺麗な身体…。もっと、あなたで遊びたかったけど…」
刀の先は、七世の裸の上を彷徨うが、やがて左の乳房に止まる。
「はうぅ…」
「心臓を、串刺しにしてあげる…」
七世は、ゴクリと生唾を飲み込む。
(ダ、ダーさん…!!)
目を瞑る七世。
「そうだ…。あなたを殺す前に聞いておくけど…」
刀の先は、七世の左乳房の乳首に触れる。
「結局、『ビッグ・ノーズ』って何だったの?」
「そりゃ、私のことだ」
「…!?」
後ろを振り向く理沙。
ナイフが首に迫る…!!
「うあ…!!」
理沙は、摺り足でその攻撃から逃れた。
そこにいたのは…ダーブロウ有紗だった。
2774投稿者:リリー  投稿日:2008年07月21日(月)21時03分42秒
今日は、これでおちます
2775投稿者:117  投稿日:2008年07月21日(月)21時07分19秒
あらら、俵シスターズまで『ビッグ・ノーズ』って、言いますか(笑)。
間一髪、いいところでダーさんが来ましたね。続きも楽しみです!
2776投稿者:さりげない  投稿日:2008年07月21日(月)21時17分50秒
エロがいい
2777投稿者: 投稿日:2008年07月21日(月)22時19分36秒

2778投稿者:秋山に続き理沙にも  投稿日:2008年07月21日(月)22時44分29秒
七世、完敗じゃない?
もしかしたらRGで秋山にも理沙にも楠本にも勝てるのってダーさんだけなんじゃ?
2779投稿者:七世  投稿日:2008年07月22日(火)08時26分45秒
は、武器が他の人に比べたらちょっと不利だ
俵姉妹も
2780投稿者:あげ  投稿日:2008年07月22日(火)09時55分55秒

2781投稿者:あげ  投稿日:2008年07月22日(火)18時54分30秒
2782投稿者:あげ  投稿日:2008年07月22日(火)19時12分26秒
2783投稿者:あげ  投稿日:2008年07月22日(火)19時59分52秒
                               
2784投稿者:リリー  投稿日:2008年07月22日(火)20時52分57秒
117さん、2778さん
展開が秋山戦とダブってる感がありますが…ご容赦ください
2779さん
七世の場合は、暗殺用の暗器の集合体ですからね
正攻法な相手ほど、相性が悪いのかもしれません
俵姉妹は、相手を『殺す』よりも『捕まえる』武器ですから
でも、使い方によっては殺してしまうこともあります

では、更新します
2785投稿者:リリー  投稿日:2008年07月22日(火)20時54分57秒
「ダーブロウ!!」
理沙は、袈裟斬りに刀を振り下ろす。
「おっと…!」
ダーブロウ有紗は、飛び上がって避けると、七世の側に降り立った。
七世は、肌蹴た胸元を慌てて隠しながら立ち上がる。
「ダーさん!!今までどこに…?」
「ん?ずっと見てた。ごめんな、勿体つけた登場しちまって…。ちょっと、こいつの力量を測らせてもらったんだよ」
理沙は、ゆっくりと振り返り、ダーブロウ有紗を睨みつける。
「ふふ…。力量を測る?ウソばっかり…。隙あれば、私を仕留めようって、ずっとコソコソと隠れてたんでしょ?意外とセコイ女ね…」
そして、日本刀の切っ先を向ける。
「でも、残念…。仕留め損なったわね!!」
「あん?別に仕留め損なったわけじゃねぇよ。目的は果たしたから…」
そう言うと、ダーブロウ有紗はナイフを高く掲げる。
2786投稿者:リリー  投稿日:2008年07月22日(火)20時55分09秒
「あ…!!そ、それは…!?」
ナイフの先に、金色の細い鎖が巻きついていた。
それは、有希子から抜いた前歯のペンダントだった。
「さあ、出っ歯ちゃん。このペンダントを、ミミーに届けてやってくれ」
ダーブロウ有紗は、ペンダントを七世に渡した。
首元を狙ったのは、喉を切り裂く為ではなく、この有希子の歯で出来たペンダントを奪う為だったのだ。
2787投稿者:リリー  投稿日:2008年07月22日(火)20時55分30秒
しかし、それ以上に理沙が驚いたのは、そのペンダントが巻きついていたナイフ…。
先がカギ状に曲がっている…。
「そ…その…ナイフ…。『エンペラー』の…?」
理沙は、しばらく呆然とナイフを眺めていたが、踵を返すと、屋敷に向かって駆け出した。
「おっと!!私に後ろを向けるたぁ、自殺行為だ!!」
ダーブロウ有紗は、無防備な理沙の背中に向けて、楠本のナイフを振り下ろす。
「ふ…!バカめ…」
理沙は、振り向きざまに刀を一文字に斬り払った。
「…?」
しかし、そこには誰もいない…。
2788投稿者:リリー  投稿日:2008年07月22日(火)20時55分58秒
「だから言ったろ…?私に背中を向けるなって…」
「ぐ…!!」
理沙の背中に、激痛が走る。
「うらぁぁぁ!!」
理沙は再び振り向いて刀を振るうが、ダーブロウ有紗は屋敷の縁側に飛び乗って避けた。
「う…?」
背中を触ると、指に血が…。
理沙は、ガラス戸に自らの背中を映して見る。
スーツが大きく切り裂かれ、背中の弥勒菩薩の入墨の上には、大きな赤い×印が走っている…。
「うおおおお!!!き、貴様!!わ、私の自慢の入墨を…!!」
理沙は、怒りの雄叫びをあげた。
2789投稿者:リリー  投稿日:2008年07月22日(火)20時56分20秒
「へへへ…。本当は、ドラえもんみてぇな、6本ヒゲを描いてやろうかと思ったんだが…さすがにそんなヒマはなかったぜ…」
「貴様ぁぁぁ〜〜〜!!!」
「へへへ!!!お嬢様キャラはお終いか?とうとう本性を現しやがったな?」
「殺す!!ぶっ殺す!!」
「いつぞやのメスゴリラも、私に向かってそう言ったけどよ…ボコボコにしてやったぜ!!」
そう言いながらも、ダーブロウ有紗は顔をしかめながら手に握られた楠本のナイフを見る。
「でも、やっぱり、こいつは使い難い…。慣れた物が一番だな…。出っ歯ちゃん!!」
楠本のナイフは、七世に向かって投げつけられた。
それを受け止める、七世。
「そのナイフを持って、早くミミー達と一緒に逃げろ!!」
「イヤです!!」
「ああん?」
思いもかけない、七世の反抗に、ダーブロウ有紗は目を丸くした。
「私、ここで見届けます!!ダーさんの戦いを…!!」
「てめぇ、私のこと、信用しねぇのか!?」
「だったら、信用されるような戦いを、私に見せて!!」
七世は心配だったのだ。
この戦いがキッカケとなって、ダーブロウ有紗が裏の世界に逆戻りしてしまうのではないかと…。
楠本と出会ってから、ダーブロウ有紗が、どんどん『TTK』の頃に戻っていってしまっているように、七世には感じられたのだ。
2790投稿者:リリー  投稿日:2008年07月22日(火)20時56分39秒
ダーブロウ有紗は、目を瞑って頭を掻いた。
「ち…!しょうがねぇなぁ…。ま、先に隠し事をしちまったのは私だからなぁ…」
理沙は、日本刀を七世に向けた。
「そうだ!!おまえも逃げるな!!ダーブロウをぶっ殺した後、おまえを切り刻んでやる!!」
いきり立つ理沙に、ダーブロウ有紗は半笑いで語りかける。
「おいおい、そんなヒマあんのかよ?逃げた女の子達を追い駆けなきゃならねぇし、組長の身の安全も確保しなきゃならねぇんじゃねぇの?」
理沙は、怒りに歪んだ顔を、ダーブロウ有紗に見せる。
「何…?じゃあ、やっぱり…『エンペラー』が…?」
「ああ…。あいつは、私に依頼したんだ。おまえと戦うようにって…」
「ぐ…!その隙に…組長を…?」
「ま、そう怒るなよ。おまえ等もやったことだ。私達と楠本をぶつけただろ?忘れたとは言わせねぇぜ…」
そして、二本のアーミーナイフを両腕を振って抜き、指で高速回転させて、構えた。
「くぅ…!!ならば、ますますのんびりしてられないね…!!」
理沙も、日本刀を構える。
「のんびり?私は、のんびりするつもりだよ。だって、私の役目は時間稼ぎだからね…」
「時間稼ぎ?ふふ…。じゃあ、試してみな!!この私相手に、どれだけ長く戦えるか…」
2人は、一陣の風となって激突する。
火花が、夕闇の庭に散った。
2791投稿者:リリー  投稿日:2008年07月22日(火)20時57分01秒
今日は、これでおちます
2792投稿者:つまんねーの  投稿日:2008年07月22日(火)21時00分59秒
 
2793投稿者:あげ  投稿日:2008年07月22日(火)22時10分26秒

2794投稿者:ドラえもんみてぇな、6本ヒゲ  投稿日:2008年07月22日(火)22時55分44秒
こういうセリフ好きw
2795投稿者:漫画の引用が好きだよね  投稿日:2008年07月23日(水)00時49分41秒
ダーさんが、というかリリーさんが
2796投稿者:野球の歴史  投稿日:2008年07月23日(水)13時11分48秒
http://jp.youtube.com/watch?v=h2OzftK_XoM&feature=related
感動します
2797投稿者:あげ  投稿日:2008年07月23日(水)15時07分15秒
2798投稿者: 投稿日:2008年07月23日(水)15時13分00秒

2799投稿者:デジ  投稿日:2008年07月23日(水)18時19分27秒
ダーさんらしいですね。この荒れようを傍観していたというのは。
「ダーさんVS理沙」また長い長い戦いがはじまりましたね。(なんか序盤はダーさんが押してるような···)
続きも楽しみです!
               (今日の小言)
リリーさん比喩表現うまいですよね。
どうやったらこんな風に上手い表現が出来るんでしょうか。宜しければ教えて下さい。
あと、夏休みになったから小説いっぱいかけるぞ、と思ったら夏期講習とかで暇が全然ありません。そこで皆さんに質問なんですが、、高校時代の休みってどこでも忙しいものなんでしょうか?
2800投稿者:リリー  投稿日:2008年07月23日(水)20時52分56秒
デジさん
私も夏休みは忙しいです
小説も全然書けてません
休みになった方が忙しいって、どうなんでしょうね
でも、お互いがんばりましょう
比喩表現ですか?
私は考える時「どんな風に言ったら、相手が一番怒るかな」という視点で書きます(この場合、理沙を怒らせるにはどうしようか…)
私も、まだ勉強中ですから、探り探りやっている状態です

2794さん、2795さん
私も、手当たり次第、知ってるものをぶち込んでいるって感じです

2796さん
見ました
感動しますね、ありがとうございました
音楽は、パチンコのCMの歌ですね?
でも、落合さんの三冠王がなかったのが寂しかった
最後、WBCの優勝で終わったところが良かったです

では、更新します
2801投稿者:リリー  投稿日:2008年07月23日(水)20時53分32秒
「イデデデ…!!何してる!?早く降ろせ!!」
山本が、悲鳴をあげる。
5人の女性組員達は、なんとか鋼線に縛り上げられ吊るされた山本を降ろそうと、懸命に鋼線を切ろうとするが、ニッパー、ペンチ、何を持って来ても切断することができない。
「そ、その引っ掛けられてる欄間を壊せ!!といかく、俺を下に降ろせ!!」
「わ、わかりました」
女性組員達は、拳銃を欄間に向ける。
その時、何かが寝室の畳を転がってきた。
それは…生首だった。
「う…!?」
「な、何だ!?」
血の一本道の、向こうを見る。
そこには、真っ赤に染まった浴衣姿の男が、血刀を提げて立っていた。
「ひ、ひいいい!?」
山本は、すぐにあの時の男だとわかった。
その金髪は、半分以上、赤く染まってしまっているが…。
「き、貴様…!!」
女性組員達は、楠本に銃口を向ける。
楠本は、構うことなく、ゆらりと寝室に足を踏み入れる。
2802投稿者:リリー  投稿日:2008年07月23日(水)20時53分58秒
一斉に発射される弾丸…。
しかし、一発も楠本には当たらない。
組員達も、恐怖で腕が震えているのだ。
狙いが定まるわけがない。
そんな彼女達の心境も、楠本には手に取るようにわかる。
ヘタに身をかわしたほうが、逆に当たってしまうかもしれない。
楠本は、ゆっくりと刀を構えると、腰を低くして振り下ろす。
拳銃を持った手首が、畳みの上に落ちた。
右手を失くした女性組員は、悲鳴を上げる前にその首を落とした。
宙吊りにされた山本の目の前に、ポンポンと首が飛び交う。
「ひい…!!ひいいい…!!」
山本は、泣き叫ぶことしかできない。
用心棒の後藤理沙は何をしているのだ…。
そう、今日にかぎって、用心棒は理沙しかいない。
加藤組の強襲から身を守る為に雇った『タワー(塔)』の中田あすみと、『ラバーズ(恋人)』の中川翔子もいない…。
『タワー』は、別件の仕事で山本の側を離れている。
『ラバーズ』は、『ストレングス(力)』を治療中…従って、その2人もいない。
『デス(死神)』の箕輪はるかも、なぜか今日は姿が見えない…。
今日、強襲されたら危ないと…漠然と思っていた…。
いや、その不安を理沙に訴えた。
理沙は、命に代えても自分を守ると言ったのに…。
2803投稿者:リリー  投稿日:2008年07月23日(水)20時54分21秒
山本は、この寝室が静寂に包まれたことに気がつく。
「…え?」
急に、身体を縛っていた鋼線が細切れになって離れ、身体が落下した。
ビシャリという音を立てて、畳に顔を叩き付けた。
そこは、血だまりができていて、細切れにされた人の身体が散らばっていた。
「ひえええええ〜〜〜!!!」
山本は、立ち上がって逃げ出そうとしたが、血がヌルヌル滑り、思うように身体が動かない。
何とか、足を踏ん張って、第一歩を踏み出したが、グニャリとした感触が素足に伝わる。
真っ二つに切断された女性組員の胴体から、内臓が飛び出していた…。
「うげぇぇぇぇ…」
山本の吐瀉物と内臓が交じり合う。
何で…何で自分がこんな目に…。
山本は、涙目なって天井を見上げた。
そこには、もう、真っ赤というよりも、どす黒く染まった浴衣姿の男が、じっと見下ろしていた。
山本は、もう死を受け入れるしかなかった。
「も…もう…充分だろ…。こ、殺してくれ…。俺を…」
しかし、楠本は優しく微笑むと、そっと山本に手を差し出した。
「え…?」
思わずその手を握ろうとした山本だが、その瞬間手首を切り落とされるのではないか…と、咄嗟に引っ込めた。
「大丈夫です…。今日は、組長の命を頂きに来たわけじゃないんですよ…」
楠本は、穏やかな口調で語り出した。
2804投稿者:リリー  投稿日:2008年07月23日(水)20時55分23秒
「な、何だって…?」
それでも、山本は楠本の言うことが信じられない。
「加藤組長から…メッセージを承っております…」
「か、加藤からの…メッセージ…?」
「はい。山本組を畳み、加藤組の傘下に入るように…と…」
「な、何だと!?」
「加藤組長は、あなたを殺す為に私を雇ったわけではないのです。何故なら、お2人はもともと血よりも濃い関係だった…。お互い、もっとも信頼しあっていた間柄だった…」
楠本の声は、優しく穏やかに、山本の心に訴えかける。
「加藤組長は、再びあなたと人生を歩んでいきたい…と、願っておられるのです…」
恐怖に震えていた山本だが、その話しを聞き、怒りのボルテージが一気に上がった。
「ふ、ふざけんな!!こんなことしておいて、よくも一緒にやっていこうなんて、言えたもんだな!!」
「それは、仕方ありません。あなたは、加藤組長の誘いを何度も断ってきた。傘下に入るなら弟分だったおまえの方だ、と…。ですから、圧倒的な力の差を見せ付けなければならなくなった…」
そう言って、楠本は転がっている首に刀を突き刺すと、山本の目の前に突きつけた。
「うげぇぇぇぇ…」
また、山本は吐いた。
2805投稿者:リリー  投稿日:2008年07月23日(水)20時55分35秒
「できれば、加藤組長もこんな方法は取りたくなかった…。でも、仕方がないんです…。これが最後の勧告だと思って下さい。この次は…もう、ありません…」
楠本は、刀を振って刺さっていた首を落とすと、山本に背中を向け、寝室から出ようとする。
「く…!ふ、ふざけるな…!!加藤の野郎!!」
山本は、目の前に落ちている拳銃を握り、楠本に向けた。
その瞬間、拳銃は真っ二つになって山本の手から落ちた。
目の前には、日本刀が畳みに刺さっている。
見上げると、そこには凄まじい形相の楠本が…。
「この次は…本当にありませんよ?『約束』します…。この次はない…と…」
2806投稿者:リリー  投稿日:2008年07月23日(水)20時56分21秒
今日はこれでおちます
2807投稿者:117  投稿日:2008年07月23日(水)21時06分07秒
昨日は来れませんでしたが、その間にも凄まじいことになっていますね(苦笑)。
山本組が加藤組の傘下に・・・?元帥は『約束』という言葉に敏感ですね(笑)。続きも楽しみです!
2808投稿者: 投稿日:2008年07月23日(水)22時02分23秒

2809投稿者: 投稿日:2008年07月23日(水)22時21分22秒

2810投稿者:あげ  投稿日:2008年07月24日(木)00時48分19秒
地震怖かった〜
2811投稿者:デジ  投稿日:2008年07月24日(木)03時09分05秒
今回の楠本さんはアークだったんですか。アークだとまた別の凄みがありますね。山本も往生際が悪い。(苦笑)
山本と加藤の二人が手を組んだら……極楽とんぼになりますね。加藤はお笑いとして人生を改変していこうという企みですかね?
続きも楽しみです!
             (今日の小言)
楠本さんの怖さと同時に先程あった地震も怖かったですね。
質問答えてくださってありがとうございます。色々と勉強になります。
2812投稿者:リリー  投稿日:2008年07月24日(木)20時41分33秒
地震なんですが、私は眠っていて全然気がつきませんでした
揺れたんですかね?
楠本さんは、『アーク』やら『クック』やら、いろんなイメージを持たせてあります
山本組と加藤組の行く末は、もう少し後になって決着がつきますが…

では、更新します
2813投稿者:リリー  投稿日:2008年07月24日(木)20時42分31秒
縦横無尽に庭を駆け回る、二つの風。
松の木、石灯籠、全ての物が真っ二つになっていく。
立派な日本庭園が、廃墟に変っていく。
「う…!くぅ…!!」
七世は、暴風の中にたたずんでいるかの様に、目を開けていられない。
やっと、ダーブロウ有紗と理沙は離れた。
「ふぅ…。やるねぇ…。『女帝様』よ…」
「ふん!!私の力量を測ってたんじゃないのかよ!?今更、後悔しても遅いからね!!背中の弥勒菩薩の仇は討たせてもらう!!」
「ん?まぁ、おまえの力量は、まだまだ底を見せてなかったってことだな…。そこは私の目利きの無さと反省しよう…。だから…」
「だから…?」
「今一度、力量を測らせてもらうよ…。私の必殺技でね…」
「必殺技…?」
必殺技という言葉に、理沙は鼻で笑う。
「ああ…。私の必殺技だ…。滅多に見せねぇんだぜ…?」
「必殺技…!?も、もしかして、ダーさん…!!アレを…?」
傍で見ている七世も、心拍数が上がる。
そう、半年前の、ジャスミンとの戦いでも出さなかった。
いや、あの時は頭に血が昇っていて、その必殺技の存在を忘れていたのだが…。
「行くぜ…!!私の必殺技…。名付けて…『ダーさんの福袋』…!!」
2814投稿者:リリー  投稿日:2008年07月24日(木)20時43分00秒
「はぁ…?『ダーさんの福袋』?何?そのダッサイ名前…!!」
思わず、理沙は吹き出した。
「まあ、そう言うな。でも、この必殺技、『福袋』って例えが一番しっくりとくるんだ」
「何が出てくるかわからないってこと?だったら、ビックリ箱でもいいんじゃない?」
「いや…三種類あるんだ…。『松』、『竹』、『梅』ってね…」
「三種類…?」
「そう。今から、『梅』、『竹』、『松』の順番で披露してやる。もちろん、技のレベルが段々強くなっていく…」
「ああ、わかったわ…。つまり、私がどのレベルの技までしのげるか…それで力量を測ろうってわけね?」
「そういうことだ…」
ダーブロウ有紗は、ニヤリと笑う。
「出っ歯ちゃん!!」
「あ、はい?」
不意に名前を呼ばれて、七世は慌てた。
「この姉ちゃん、少しは出来るようだから、もしかしたら見られるかもしれねぇぜ?『竹』の技がよ…!」
そう…七世は、『梅』の技しか見る機会がなかったのだ。
つまり…今までの敵は、『梅』の技で全員絶命していたのだ。
「じゃあ、行くぜ…!!『梅』の技…」
ダーブロウ有紗は、両手に握ってたナイフを両腕のホルスターに納めた。
2815投稿者:リリー  投稿日:2008年07月24日(木)20時43分42秒
「ん…?必殺技を繰り出すんでしょ?ナイフを仕舞ってどうするの?」
理沙は、ニヤニヤしながら聞く。
「へへ…。まあ、慌てるな…。すぐにわかる…」
そう言いながら、ダーブロウ有紗は、身体中に取り付けられたベルトの、ナイフのホルスターの蓋を全て開けた。
「…?もしかして…」
理沙が『梅』の技に対し考えを廻らせていると、ダーブロウ有紗は必殺技の構えをとる。
2816投稿者:リリー  投稿日:2008年07月24日(木)20時43分53秒
「『梅』の技…『JUMP』!!」
その名の通り、ダーブロウ有紗は、空高くジャンプした。
理沙は、日本刀を頭の上にかざし、上からの攻撃を迎え撃つ。
すると…夏の夜空に、キラキラと輝くものが…。
「…?流れ星…?」
いや、ダーブロウ有紗の身に着けていた、20本あまりの全てのナイフが、理沙目がけて降り注いできたのだ。
「ぐ…!!う…!?」
理沙はナイフを全て振り払おうとしたが、とてもじゃないが間に合わないと判断し、後ろに身を退いた。
焼夷弾の様に、ナイフが降り注ぎ、土煙が上がった。
大小長短様々なナイフが、地面に突き刺さっている。
そのおびただしいナイフの数に、一瞬、理沙は呆気にとられた。
いや、一本だけ、ナイフが足りない…?
あの、背中に差していた、一際目立ったあの大きなナイフがない。
「…!?」
上を見る。
ダーブロウ有紗が、その刃渡り40センチの…背中に差していた一番太く長いナイフを頭上に振りかざし、理沙目がけて唐竹割りで叩き付けた。
2817投稿者:リリー  投稿日:2008年07月24日(木)20時44分11秒
「うぐ…!!」
凄まじい、金属のぶつかる音…そして、高い澄んだ音が響く。
地面には、巨大なナイフが深々と突き刺さっている。
そのナイフの側には、真っ二つになった日本刀が転がっていた。
理沙は、縁側の上に飛び乗って、いち早く避難して、苦々しい顔でダーブロウ有紗を睨みつけている。
「ふん…!!何だよ…つまんねぇ…!!てめぇも、『梅』どまりかよ…!!」
ダーブロウ有紗は、地面に深く埋まった刃渡り40センチのナイフを、ぬぅっと引き抜く。
「でも、『JUMP』を喰らって、命を落とさなかったのは、てめぇが初めてだ…」
命を落とさなかった…?
七世は、眉をひそめた。
命を獲るつもりはなかったはずだろう…?そういう手筈だったはずだ…。
それとも、本当に殺すつもりだったのか…。
先ほどの『JUMP』は、今まで見たものと遜色ない程の、凄まじい威力だった。
七世には、疑念が残った。
「だから…!今一度、てめぇにチャンスをやるよ!!」
刃渡り40センチのナイフが、理沙の足下の縁側に突き刺さった。
「それをおまえに貸してやる!!今度は『竹』の技を受けてみな!!」
そう言うと、ダーブロウ有紗は、地面に突き刺さった無数のナイフから二本を抜いて、理沙に向けた。
それは、今まで使っていたアーミーナイフだった。
「な…何…!?」
理沙の美しい顔が、激しく歪んだ。
2818投稿者:リリー  投稿日:2008年07月24日(木)20時46分35秒
ダーさんと言えば、今まで『思いっきりぶん殴る』しか技がなかったわけですが…ちゃんと必殺技を考えてみました
竹や松の技は、また追々…
では、おちます
2819投稿者:れっれれれえ  投稿日:2008年07月24日(木)20時52分46秒
ありがとうと君に言われるとなんだかせつない
2820投稿者:117  投稿日:2008年07月24日(木)21時15分52秒
「ダーさんの福袋」・・・(笑)。しかも、松・竹・梅ですか。
何やら、ダーさんのボルテージがかなり上がってきたような・・・続きも楽しみです!
2821投稿者:「JUMP」か・・・  投稿日:2008年07月24日(木)21時49分30秒
『竹』は分からないけど
『松』にあれが来そうな予感
2822投稿者:あげ  投稿日:2008年07月24日(木)22時31分56秒
2823投稿者: 投稿日:2008年07月24日(木)22時57分09秒

2824投稿者:デジ  投稿日:2008年07月25日(金)01時05分22秒
初公開、ダーさんの必殺技「ダーさんの福袋」。というかレベル1の段階の「梅」だけでもみんな苦戦してるというのにレベル3レベル2の「松」「竹」ってどれだけでしょうか?
段々、ダーさんの攻撃力がすごく思えてきますね。
続きも楽しみです!
           (今日の小言)
妹が言ってた。
「魔王」ってドラマに遼希が出てるらしいです。

高校野球はいつもの二校が決勝で闘うそうです。なんとなくいつも同じ学校が出場していると、つまらないと思うのは、僕だけでしょうか?(技術面とかの事情で仕方ないのでしょうが。)
2825投稿者:カッケー!  投稿日:2008年07月25日(金)18時04分23秒
あげ
2826投稿者:リリー  投稿日:2008年07月25日(金)20時06分07秒
117さん、2821さん、『竹』と『松』は、まだ先になりそうです

デジさん、高校野球の世界は、お金の持ってる学校が強いのは仕方がないみたいですね
私立の学校は、テレビに出て活躍するのが、多大な宣伝効果になりますからね
ですから、私は条件の悪い中、戦ってる公立を応援します
『魔王』のことも知ってます
でも、今は公輝のドラマを見ています
先週の『隠し芸』、笑いました

今日は、少し早めですが更新します
2827投稿者:リリー  投稿日:2008年07月25日(金)20時08分41秒
「ダーさん!!もう、勝負はついたはずです!!」
七世は叫んだ。
「勝負はついただと!?ふざけんじゃねぇ!!」
理沙は、七世を怒鳴りつけた。
「ほら…。あのお姉さんはやる気満々だぜ…?」
ダーブロウ有紗は、横目で七世を見て笑った。
「ダーさん…。戦い足りないの…?」
七世は、愕然となった。
まるで、『TTK』でチームを組んでいた頃の、ギラギラとした刃物の様な闘争心を剥き出しにしている。
「じゃあ…行くぜ…。『竹』の技…」
その時だった。
「はい、もう結構です。ありがとうございました」
低い、落ち着いた男の声…。
2828投稿者:リリー  投稿日:2008年07月25日(金)20時08分59秒
理沙は振り返る。
そこには、赤黒い人影が立っていた。
「『エンペラー』!!」
理沙は、刃渡り40センチのナイフを、怒りと共に、楠本へ叩き付けた。
しかし、楠本は日本刀で軽く合わせると、その大きなナイフは庭の方へ回転しながら飛んで行った。
「随分、凄まじい闘いを繰り広げてきたのですね…。握力が、全然ありませんよ?」
楠本は、理沙の側を通り過ぎ、縁側から庭に降り立つ。
「まあ、この庭の有様を一見すれば、すぐにわかりますけど…」
散々に荒らされた日本庭園を見て、楠本は溜息をつきながら首を横に振った。
2829投稿者:リリー  投稿日:2008年07月25日(金)20時09分51秒
「き、貴様…!もしかして…組長を…」
理沙の呪い殺さんとするような、低い呻き声を、楠本は遮るように口を挟む。
「いえ…。生きておられます。早く、側に行っておあげなさい」
「何!?」
理沙とダーブロウ有紗が、同時に声をあげた。
「貴様…!!組長の命を獲りにきたのではないのか…?」
「はい。組長を殺すつもりなど、毛ほどもありません。しかし、組員さんは随分殺めてしまいましたがね…」
「く…!!組長!!」
理沙は、慌てて別荘の奥の寝室へ向かう為に駆け込んだ。
ダーブロウ有紗は、楠本の姿を改めて眺める。
白かったホテルの浴衣が、もう真っ赤に染まっていた。
…いや、真っ黒と言った方が近い…。
その金髪も真っ赤に…いや、真っ黒に染まっている。
返り血で、楠本の表情さえも窺えない。
「楠本…。随分、殺したな…」
「ええ…。殺しました…。山本組長を殺さない為に、随分殺しました…」
「何で組長を殺さなかったのか…そんなことはどうでもいい…。もう、私は、おまえなんかと面を合わせなくてもいいんだよな?」
「ええ…。もう、あなたは、私からの依頼をやり遂げました」
そう言うと、楠本は右手を差し出す。
2830投稿者:リリー  投稿日:2008年07月25日(金)20時10分16秒
「あん?」
「ナイフ…。私のナイフ…」
「ああ…。出っ歯ちゃんが持ってるよ」
「ん?結局使わなかったんですか?」
「いや、使ったよ。あの女の背中の菩薩様を切り裂いてやった」
「ああ…。あの傷…そうでしたか…」
「結局、使いづらくてやめちまったけどな」
「ま、いいでしょう…」
楠本は、七世の元に歩み寄る。
思わず、七世は一歩下がった。
「ふふ…。恐がらなくていいですよ…」
「こ、恐がってなんか、いません!!」
七世は、ナイフの刃の方を摘み、柄を楠本に差し出す。
それを受け取る楠本。
「では…ごきげんよう…。さようなら…」
「楠本…。その血まみれの浴衣姿を見たら…おまえがあの噂の『浴衣ピエロ』なんじゃねぇかって思えてきたぜ…」
「またまた…。『蟻』を『虎』と呼びなさんな…」
楠本は、ふらふらとした足取りで、別荘の門をくぐった。
2831投稿者:リリー  投稿日:2008年07月25日(金)20時10分40秒
「さてと…。嫌な仕事の片棒を担いじまったぜ…。出っ歯ちゃん、熱海に帰って、温泉にでも入ろう」
「ダーさん…」
七世は、悲しそうな顔で、ダーブロウ有紗を見詰める。
「ん?何て顔してんだよ!」
思わず笑ってしまう、ダーブロウ有紗。
「だって…!」
七世の言いたいことは、わかっていた。
理沙との戦いは、久しぶりにダーブロウ有紗の血を昂ぶらせていた。
だが、そんなことは七世に対して言うことではない。
「だってよ…楠本の野郎、いつまで経っても来ねぇんだもん…。時間を稼ぐのに、ヒヤヒヤだぜ…!」
時間を稼ぐ…?
ならば、何故、『ダーさんの福袋』を披露したのか…?
もっと、ダラダラと緩慢に闘うことができたはずではないか…!!
「ダーさん…。どうか…どこにも行かないで…」
七世は、地面に突き刺さったナイフを一本一本引き抜く、ダーブロウ有紗の後姿を…複雑な思いで見つめた。

(『八回・裏』・・・終了)
2832投稿者:リリー  投稿日:2008年07月25日(金)20時12分28秒
次から、『九回・表』です
内容は、聖テレと虹守中の野球の試合です
無茶苦茶長くなる予定ですが、お付き合い下さい

では、おちます
2833投稿者:楽しみにしてますよ  投稿日:2008年07月25日(金)21時04分52秒
 
2834投稿者:りーな  投稿日:2008年07月25日(金)21時31分35秒
そういえば甲子園もうすぐ開幕ですね。
ウチの高校、地区大会学校総出で応援行って甲子園行き決めてくれたから無料で甲子園行くことにならました。
2835投稿者:あげ  投稿日:2008年07月25日(金)22時53分41秒
        
2836投稿者:竹の技  投稿日:2008年07月25日(金)23時49分24秒
お預けですか…
2837投稿者:あげ  投稿日:2008年07月26日(土)00時44分39秒

2838投稿者:あげ  投稿日:2008年07月26日(土)00時52分15秒
2839投稿者:あげ  投稿日:2008年07月26日(土)15時59分57秒
2840投稿者:あげ  投稿日:2008年07月26日(土)17時18分26秒
2841投稿者:9回か  投稿日:2008年07月26日(土)18時26分43秒

2842投稿者:あげ  投稿日:2008年07月26日(土)18時43分26秒

2843投稿者:あげ  投稿日:2008年07月26日(土)18時59分33秒
            
2844投稿者:リリー  投稿日:2008年07月26日(土)20時30分06秒
りーなさん、お久しぶりです
出身校が甲子園に行く人、結構多いですね
おめでとうございます
私、まだ甲子園には行った事ないので、羨ましいです
来月、ナゴヤドームに行きますが…
また、中日負けてる…

2833さん
ご期待に添えるかどうかわかりませんが、ピーナッツ戦よりも熱い戦いになる予定です
2863さん
『九回・裏』には、竹の技を披露できそうです
2841さん
早いですね
もう、九回です
これからもよろしくお願いします

たくさんのあげ、ありがとうございます

では、更新します
2845投稿者:リリー  投稿日:2008年07月26日(土)20時31分08秒
『九回・表』

≪2007年9/16(日)≫
「おい、いつまで寝ているつもりだ?」
まだ寝ぼけている七海の耳に、声がかけられる。
「ん…?何や…?今、何時や…?」
「もう、6時半だ」
「あん?…まだ、6時半やないけ…」
七海は、ますます布団の奥に潜る。
「おい!いい加減にしろ!!」
中村有沙は、その布団を剥ぎ取った。
中から、虎の気ぐるみの様なパジャマを着た七海が丸まっている。
「何すんねん…。うざったいなぁ…」
剥ぎ取られた布団を、片手で引き寄せ、また頭から被る七海。
「貴様…今日は何の日か忘れたのか?」
「…?」
その時、布団から頭を出し、片目を開けて中村有沙を見る。
二段ベッドの梯子に乗りかけた彼女は、ジャージ姿だ。
「…忘れてへんよ…。ヤツ等と試合する日やろ…?」
「そうだ…!夏休み前、私達との対戦の約束を反故にした、憎き虹守中との練習試合の日だ!!」
2846投稿者:リリー  投稿日:2008年07月26日(土)20時31分28秒
「チビアリ…。走ってきたんか?」
「ああ…。早朝のランニングとは、気持ちのいいものだな…」
「オノレは、サムガーかい…」
サムガーとは、村田ちひろのことである。
「そうだな…。今、思えば、ちひろと一緒に走っていたらよかった…。あいつが、ここを出て行く前に…」
ちひろは今、聖テレジア高等部の学生寮に住んでいる。
お嬢様校なので、まるで高級マンションの様な寮なのだが…。
ちひろを思う中村有沙の目は、懐かしそうに遠くを見詰めている。
夏休み前から、ちひろは剣道の合宿で日本中を飛び回っている。
それに、国際大会の日本代表にも選ばれたので、今は熊本で合宿だ。
中村有沙は、ちひろともう、1ヶ月以上も会っていない。
「是非、今日の試合…見に来て欲しかった…」
「…け…!」
七海は三度、布団を頭から被った。
「それでは、私はもう朝食を済ませて学校に行く!貴様、くれぐれも遅刻するなよ?」
そう言うと中村有沙は、律儀に赤絨毯の上をはみ出すことなくドアに向かい、部屋を出た。
七海は中村有沙が部屋を出て行って5分後、ようやく、大きな伸びをしながら起き上がった。
そして、壁に掛けられたユニフォームを見る。
縦縞のユニフォームの背中に、『9』の背番号…三度目にしてやっと、有海が完璧な仕事をしてくれた。
しばらくそれを見詰めると、「よっしゃ!!」という気合と共に、七海は二段ベッドから飛び降りた。
2847投稿者:リリー  投稿日:2008年07月26日(土)20時32分01秒
部屋と同階にある食堂に行くと、既に中村有沙とエマとエリーが朝食を摂っていた。
並べられているのは、トーストとコーヒーと目玉焼きにサラダ…。
朝、昼、晩と食事には凝るダーブロウ有紗だが、今朝はやけにシンプル且つチープなメニューだ。
「何や?デカアリ…。今朝は随分と手を抜いたな…」
七海はそう言いながら、席に着く。
「悪かったわね…」
七世が、コーヒーを運んできた。
「あれ?七世…?今日は、七世が朝飯作ったん?」
「そうよ。ダーさん、昨日からちょっと元気がないから…」
七世は、そう言いながら、ダーブロウ有紗の部屋のある方向…天井を見詰めた。
「元気がない…?何や?風邪でもひいたんか?珍しいな…。アホやのに…」
「ふん…!『バカは風邪をひかない』…この定説は根拠がないと立証されたわけだな…」
ダーブロウ有紗への悪口に限り、七海と中村有沙の意見は一致する。
「ううん…。風邪とか、病気ではないみたい…。何か、思い悩んでる感じなのよね…」
その七世の言葉に、七海は更に面白おかしくはしゃぎまわる。
「ケケケ…!『アホは悩まへん』ってのも、ええ加減な定説なんやな」
2848投稿者:リリー  投稿日:2008年07月26日(土)20時32分22秒
そんな七海に、エマとエリーはニヤリと笑う。
「ダーさんがいないからって…言いたい放題だね、七海…」
「もし、今、ダーさんが来たら、ヤバイんじゃない?」
七海は、ジロリと2人を睨む。
「アホ言いな!!あないなヤツ、おってもおらんでも関係ないわ!!ウチは、好きな時に好きなこと言うねん!!」
その時、食堂のドアが開く。
七海は、ビクっと、その方向を向いた。
それは、ダーブロウ有紗ではなく、羅夢だった。
「何や!!オノレかい!!ビックリさすなや!!」
いきなり怒鳴られた羅夢は、最初はキョトンとしていたが、次第に顔を赤くする。
「んだよ!?朝からケンカ売る気か!?」
エマとエリーは、七海を指差して笑っている。
「あはは!!やっぱり、ビビってる、ビビってる!!」
「やかましい!!ビビってへんわ!!」
「そうだ、バカの相手をしてるヒマはないんだった」
そんな七海の傍らを通り過ぎた羅夢は、ダイニングに向かう。
そして、冷蔵庫から卵と牛乳を取り出す。
「羅夢?自分で朝ごはん作るの?」
七世が、羅夢の側に行く。
「ううん。梨生奈に…。あいつ、フレンチトースト好きだから…」
2849投稿者:リリー  投稿日:2008年07月26日(土)20時33分04秒
そう…昨日から、梨生奈は自宅で療養することになったのだ。
夏休みが終わると同時に、諏訪市民病院から虹守町の病院に移り、そしてようやく、その病院からも退院したわけだ。
ようやく車椅子で移動できるようになったのだ。
と言っても、まだ両手両足はギプスで固められている。
ちなみに、レッドは夏休みが終わって梨生奈、羅夢と共に、原村から虹守町に帰った時に『R&G』の自社ビルに帰ってきている。
両足骨折だが、右足はもう完治している。
2850投稿者:リリー  投稿日:2008年07月26日(土)20時33分18秒
七世は、羅夢の隣に並ぶ。
「手伝ってあげようか?」
「いい。アタイ、料理は得意なんだよね」
そう言いながら、羅夢は片手で卵を割ってボールに開けた。
「あら…!ほんと、上手いわねぇ…」
七世は、心底感心しているようだ。
「こんなの、朝飯前だよ」
得意気に羅夢は、笑顔を七世に向ける。
「それじゃ、フライパンもう一つ出しておくね」
傍から見ると、まるで七世と羅夢が、仲のいい姉妹のように見える。
当然、こんな光景、七海は面白くない。
「七世!!羅夢は、手伝いは要らんて言うてるやん!!はよ、ウチの目玉焼き、作ってぇな!!」
「もう…!目玉焼きくらい、自分で作れるでしょ?少しは羅夢を見習ったら?」
そう言って、七世は厳しい眼差しを向ける。
羅夢は、勝ち誇った様に七海を見る。
当然、七海は怒った。
「おう!!やったるわい!!ウチかてな、料理の一つや二つ、お茶の子さいさいや!!」
2851投稿者:リリー  投稿日:2008年07月26日(土)20時33分38秒
ズンズンと足音を立てながらダイニングに向かうと、七海は、肩をぶつける様に、羅夢の隣に立つ。
「いて…!何すんだよ!?」
「ジャマや!!ウチかて料理すんねん!!」
七海は卵を掴むと、フライパンの淵にぶつけて割る。
掌の中に、グシャリと卵は潰れ、黄身と白身と殻が、同時にフライパンの上に落ちて、パチパチと音を立てて焼けていく。
「ぎゃはは!!何?おまえ、片手で卵も割れないの?」
爆笑する羅夢を、睨みつける七海。
「うっさい!!ウチはな、これから大事な試合やねん!!カルシウムを多く摂る為に、敢えて殻を入れたんや!!」
「へ〜…。じゃあ、それ、全部食べるんだよな?」
「当たり前やん!!食べる為に作っとんねん!!」
そう言いながら、普段の二倍の量のベーコンを投入する。
これで何とか、殻の食感をごまかせないものだろうか…。
フレンチトーストよりも早く完成させた七海は、その殻入りベーコンエッグを、食卓に運ぶ。
エマが、ゲテモノ料理を見るかのように、その皿を覗く。
「ねぇ…。本当に、それ食べる気?」
「わ〜!!美味しそうやわぁ〜!!いただきま〜す!!」
エマの言葉を無視して、七海はジャリジャリと音を立てながら、ベーコンエッグを食べた。
「バカめ…」
コーヒーをブラックで飲みながら、七海の方を一瞥もせずに中村有沙は呟く。
2852投稿者:リリー  投稿日:2008年07月26日(土)20時34分38秒
七海とは逆に、誰が見ても美味しそうなフレンチトーストを完成させた羅夢は、グレープフルーツジュースとサラダを一緒にトレーに乗せ、食堂から出て行く。
梨生奈の元に持って行くのだ。
「あ、そうだ。今日の試合、梨生奈も見に行くってさ…」
羅夢は、そう言い残して食堂を出る。
「マジ?だったら、余計、負けられないね!!」
エマとエリーは、互いに笑顔を見せ合う。
「それは、向こうも同じ気持ちだろう…」
中村有沙の言葉に、エマもエリーも七海も顔を引き締める。
「そうやな…。ウチ等、ヤツ等の二軍、ボコボコにしたったもんな…」
2853投稿者:リリー  投稿日:2008年07月26日(土)20時35分02秒
虹守中学野球部の二軍を相手に、11対0の一回コールド勝ち…。
この試合をキッカケに、虹守中野球部、二十数名が、ショックから退部してしまった。
その後、虹守中野球部は天歳市内の大会に優勝…そして都大会でも準優勝をしたのだが、例え二軍と言えども、お嬢様校の新設野球部に負けたという事実が汚点と感じているようだった。
一度辞めてしまった部員達をかき集め、今度は虹守中の方から対戦を申し込んできたのだ。
「監督の話しによると、今日の試合にはレギュラーメンバーもスタメンに入っているようだ…」
「ここは、フンドシを引き締めてかからんとあかんな…」
「フンドシなんて、履いてないよ!!」
エリーが悲鳴をあげる。
「例えや、例え!!それくらい、緊張感を持って戦わなあかんってことや!!」
そこに、また食堂のドアが開く。
「おはよ…お?フレンチトーストのイイ匂い…」
ソバージュの髪を爆発させた、寝ぼけまなこのジョアンだった。
「やれやれ…。緊張感の欠片もないヤツがいたぞ…」
中村有沙は、コーヒーカップをテーブルに置くと、席を立った。
2854投稿者:あげ  投稿日:2008年07月26日(土)20時36分15秒

2855投稿者:リリー  投稿日:2008年07月26日(土)20時38分44秒
ダーさんが元気のない理由は『九回・裏』であきらかになりますが、その前の『九回・表』が長いものですから、忘れないでいてください

虹守中との試合なので、勇気、郁哉、謙二郎、遼希、滉一、甜歌、江莉、山ちゃん、公輝、マー…と、虹守中とその関係者の登場人物が一気に出てきます

では、これでおちます
2856投稿者:117  投稿日:2008年07月26日(土)21時35分23秒
うわぁ、あっという間に「グランドスラム」も、9回ですか。懐かしいキャストも多数出るということで・・・
羅夢の「片手で卵を割る」って、「大迷宮冒険記」ですよね?懐かしい〜!
有海も、今度こそ「背番号」をちゃんと縫ったということで!?
「表」が長くなろうが、最後までお付き合いしますよ(笑)!
2857投稿者:あげ  投稿日:2008年07月26日(土)21時42分51秒

2858投稿者:あげ  投稿日:2008年07月26日(土)21時45分39秒
2859投稿者:あげ  投稿日:2008年07月26日(土)22時02分24秒
2860投稿者:メンバーを見てると  投稿日:2008年07月26日(土)23時12分08秒
2006年度同窓会って感じ
2861投稿者:リリーさん  投稿日:2008年07月26日(土)23時14分00秒
今どの辺り書いてます?
もう次の試合に入ってるのかなぁ・・・
2862投稿者:デジ  投稿日:2008年07月27日(日)04時45分01秒
9回表突入!
これは、賑やかでヒートアップしそうですね。
羅夢の「卵片手割り」ありましたね。去年ですね。去年のシリーズから3ヶ月しか経ってないのに、懐かしく思えますね。
今までと同じです。長くなろうが楽しみには変わりありません。かまわず期待し続けますよ!
              (今日の小言)
そういえば、この小説が始まってもう半年になるんですね。ささやかですが祝福します。これからも宜しくお願いします。
2863投稿者:あげ  投稿日:2008年07月27日(日)08時04分27秒

2864投稿者:リリー  投稿日:2008年07月27日(日)20時41分40秒
117さん、デジさん
その通り、「片手割り」は去年のドラマからです
あと、ご期待くださって有り難く思います
2861さんの質問にお答えしますと、今は『第三試合』の『七回』まで書き進んでいます
でも、1ヶ月以上、止まったままです
まだまだ、書き溜めた分はありますが、更新が追いついてしまわないように、それまで何とかしたいと思います

2860さん
2006年、懐かしいですね
同じ学年の戦士を扱うと、そうなってしまいました
でも、まだ虹守中野球部が登場するのは先になります

では、更新します
2865投稿者:リリー  投稿日:2008年07月27日(日)20時43分31秒
皆は一度、聖テレジアに集合し、そのままバスで虹守中学校に向かった。
本当は、『R&G』から直接徒歩で向かった方が早く虹守中学校に着けるのだが…。
現地集合、現地解散にならないのが、未成年の辛いところだ。
虹守中学校の校門を抜ける。
この校門を通るのは二度目だ。
くすんだクリーム色の外壁の、鉄筋の校舎。
聖テレジアに比べれば、まさに普通の公立中学だ。
本当に普通すぎる中学校だが、野球部だけは伝統的に強い。
地域に住む生徒が通う、学校にも関わらず…だ。
大昔に顧問だった教師が残した、『虎の巻』があるらしい。
練習方法から戦略、教育論まで、全てを網羅しているそうだ。
現顧問の井上も、その『虎の巻』に忠実であるのだろう。
「私は、その『虎の巻』を、一から作っていかなきゃならないのよね…」
あすみは、メンバーの顔を見回しながら言った。
「『虎の巻』、第一章…サイン無視をした選手は、ぶん殴るべし…」
藍は、そう呟く。
「ん?何?あい〜ん?」
「いえ!!何でもないです!!」
藍は、無理矢理笑顔をつくってごまかした。
2866投稿者:リリー  投稿日:2008年07月27日(日)20時43分54秒
グラウンドに向かう、聖テレ野球部一同…。
何か、グラウンドが人で賑わっている。
「あれ?何?今日、行事か何か?」
藍はそう言ったが、どうやらそうではないらしい。
そのグラウンドに集まった人々は、こちらの到着と同時に、歓声をあげたのだ。
「え?何?何?」
一瞬、皆はグラウンドから逃げ去りかけた。
「おい、こら!何処へ行く?」
中村有沙の睨みに、皆はまた歓声をあげる人々の方を見る。
運動会の見物…という程でもないが、それでもグラウンドをぐるりと一周、人々が取り囲んでいる。
「つ…つまり…この人達…私達の試合を見に来たってこと…?」
「へへ…!こりゃ、おもろいことになったやん!!」
七海は、手を挙げて観衆に応えた。
「ひええ…。私達、凄い噂になってたんだね…」
愛美は、梓彩に抱きついて弱々しい声をあげた。
「キャプテンがそんなで、どうする?堂々としていろ!!」
中村有沙は、無理矢理2人を引き剥がした。
「そうですよぉ!!ソフトボール天歳市大会に優勝した、まにゃ先輩、あず〜先輩が、何、ビビってんですか!!」
藍も、2人の背中…背番号『4』と『6』を、思いっきり叩いた。
2867投稿者:リリー  投稿日:2008年07月27日(日)20時44分18秒
「い、痛いよ、あい〜ん…。ソフトボールの試合と、男子相手の野球の試合と一緒にしないで!!」
「そ、それに…私達、準決勝の守備固めに出ただけなんだから…」
「それ嫌味ですか?私なんて、一回も投げさせてもらえなかったんですよ?」
そう…藍、愛美、梓彩が在籍しているもう一つの部活、ソフトボール部は、天歳市内の大会に優勝し、そのまま都大会に進出。
だが、都大会では一回戦で敗退した。
藍がピッチャーとして出れば、もう少し勝ち進めたかも…いや、優勝できたかもしれない…。
だが、頑として顧問の近藤は、藍に投げさせなかった。
野球部との掛け持ちで、練習の半分も出てこなかった藍を試合に出すわけにはいかなかったのだ。
この3年間を頑張った3年生を中心に戦う…例え負けたとしても、それは仕方がない…。
「何故、スーパールーキーを使わなかった?」、「宝の持ち腐れじゃないか」、「もっと勝ち上がることができただろう?」と、監督の近藤は、保護者や中等部校長から非難を受けた。
聖テレジアは私立学校…スポーツ大会で勝つことは、学校の宣伝になるのだ。
だが、近藤は揺らぐ事はなかった。
近藤は監督として、教育者として、芯が一本通っていた。
3年生の、3年間頑張った結果をどうして受け入れない?と逆に保護者と校長を怒鳴った。
最終的には、あの、心が広いのか鈍いのかわからない、総合学園長である武川の鶴の一声で、近藤は戦犯にされずに済んだが…。
24歳(とてもそうは見えないが…)という若い教師に関わらず、あまりにも堂々とした教育理念を持っている近藤を、愛美達は改めて尊敬した。
サイン無視で、あすみから張り倒されて、チームで戦う大切さを教わった藍も、近藤が自分を使わなかったことを恨んでいない。
その話しを聞いた、七海も感心した。
もし、自分の担任の珠緒ならば、非難された途端にシクシクと泣き出すだろう…。
2868投稿者:リリー  投稿日:2008年07月27日(日)20時44分50秒
「お〜い!!有沙〜!!ジョアン〜!!七海〜!!エマ〜!!エリ〜!!」
松葉杖をブンブンと振り回している長身の男がいる。
「わ…。レッドさんや…」
まだ左足のギプスが目立つ、社長のレッド吉田も、ちゃっかりと見物に来ていた。
「あ…!り〜なだ!!らむりんもいる!!」
藍は、吉田の側にいる、車椅子の梨生奈と、その後ろに立つ羅夢の元に走り寄った。
「お帰り!!り〜な!!ななみん達から聞いてたよ!!帰って来たんだってね?」
梨生奈は、穏やかな笑顔で頷いた。
「うん…。みんな、がんばって!!私も一生懸命、応援するから…」
「応援?違うでしょ!」
「…え?」
「お〜い!!あみ〜ご!!こっち来て!!」
有海も、大きなスポーツバッグを抱えて走り寄って来る。
途中で転びそうになったりして、危なっかしいが…。
「おはよう。木内さん」
「うん、おはよう。あみ〜ご」
「ほら、挨拶は後!早く出して!」
有海は、スポーツバッグから縦縞のユニフォームを出す。
「はい、木内さん」
「…あ…。それ…」
それは、背番号『5』…梨生奈のユニフォームだった。
2869投稿者:リリー  投稿日:2008年07月27日(日)20時45分54秒
「ね?り〜なも、それ着てベンチに入って!一緒に戦おう!!」
「………うん…」
梨生奈の返事は、涙に詰まった。
野球部を抜けることになる2人の内の一人は、自分かもしれない…そんな疑念は吹き飛んだ。
怪我をしたからって、それはチームから去ることにはならない…中村有沙が言ってくれた言葉を思い出した。
良く見ると、藍の…いや、皆の帽子に白いマーカーで『5』と書かれている。
梨生奈の背番号…一緒に戦おうという、皆の意思の表れだった。
「梨生奈…。アタイが着せてやるよ…」
「うん…。羅夢、お願い…」
羅夢が、ギプスで固められた梨生奈の腕に、そっとユニフォームを通した。
2870投稿者:リリー  投稿日:2008年07月27日(日)20時46分06秒
藍は、帽子を梨生奈に被せてやった。
そして、羅夢の方を向く。
「らむりんも、ベンチに入る?」
「い、いや…アタイはいいよ!どうせ、七海とケンカになるし…」
「え〜!?そんなこと言わずに、おいでよ〜!!来年は部員になるんだし…」
「え?お、おい!!勝手に部員とか決めるなよ!!それから、その『らむりん』っての、やめろ!!」
「気に入らないの?」
梨生奈が羅夢に、そっと囁く。
「でも、『ダッチャ』よりはいいんじゃない?」
その言葉に、藍はいち早く反応する。
「『ダッチャ』?それ、もしかして、『うる星やつら』のラムちゃんのこと?「○○だっちゃ」って言うから?」
「う、うるせぇ!!梨生奈も、余計なこと言うな!!」
結局羅夢は、七海から遠く離れるなら…という条件で、梨生奈と共にベンチに入ることになった。
2871投稿者:リリー  投稿日:2008年07月27日(日)20時46分57秒
今日は、これでおちます

『九回・表』が長い理由は、なかなか試合が始まらないところにありますが…
2872投稿者:117  投稿日:2008年07月27日(日)21時12分26秒
そういえば、2人が抜けるとかいう話、久々ですね。
みんなが梨生奈のことを思って・・・(涙)。帽子に背番号を書く・・・プロでもよくありますよね。
あ、なるほど。「ダッチャ」って、そういう意味でしたか(笑)。続きも楽しみです!
2873投稿者:藍も  投稿日:2008年07月27日(日)22時23分13秒
年齢的によくラムちゃん知ってたな
2874投稿者: 投稿日:2008年07月27日(日)23時04分18秒

2875投稿者:デジ  投稿日:2008年07月28日(月)01時57分19秒
久しぶりの言葉ですね「誰か二人が抜ける。」それだったらあと一人はなんなんだという気ですが(笑)
羅夢は、絶対野球部に入ると予想しています。(多分、梨生奈が誘う。)
なんか感動です。野球は選手がそろってなんぼのスポーツですからね。
今週は漫画の引用多いですね。今度は、『うる星やつら』ですか!(笑)
続きも楽しみです!
             (今日の小言)
甲子園を、生まれて初めて楽しみに思う今日この頃。まあ高校生ですから(爆)
書くことが浮かばないので、  〜 以上 〜
2876投稿者:俺が中学生の時  投稿日:2008年07月28日(月)02時31分40秒
バスケ部だったけど、凄い上手いやつが部にいた。
でも、そいつあんまり練習に来なかったけど、試合の日はしっかり来ていた。
でも、顧問はそいつを試合で使わなかったな。
当時、そいつを試合に出せばいのに・・・て思ってたけど、今なら顧問の気持ちがわかる
こんどんの話で思い出した。
2877投稿者:>2876  投稿日:2008年07月28日(月)10時32分40秒
俺は納得できん
練習に来てないやつより自分がヘタってことは
努力が足りてないからだと思う

批判じゃないんだがつい思ったんで言ってみた
癇に障ったなら申し訳ない
ちなみに自分は元ラグビー部です

良スレにage
2878投稿者:あげ  投稿日:2008年07月28日(月)15時21分16秒
 
2879投稿者:>2877  投稿日:2008年07月28日(月)17時37分38秒
俺も批判じゃないけど…
しかも、俺も上手いヤツは出せばいいじゃんって考えなんだけど…

学生スポーツはプロじゃなくて、それ自体教育だから、やっぱりみんなと一生懸命練習してその中で上手くなったヤツを出すっていうのも、一つの考えだと思う
まあ、そういうヤツを出す出さないは、顧問の判断だと思うよ
でも、この小説の場合は私立なわけで、しかも勝ち進むことが宣伝になるんだから、『経営者』に雇われてる『教育者』として難しい判断だね

2880投稿者:あげ  投稿日:2008年07月28日(月)20時28分27秒
 
2881投稿者:リリー  投稿日:2008年07月28日(月)21時03分07秒
117さん
そうです、「二人抜ける」という伏線、長い間放置されてましたので、時々こうやって出さないと…
もう少し覚えてやってください

デジさん
もうすぐ甲子園ですね
私の関係する学校は、まったく出てきませんが…でも、楽しみです
でも、天てれ視聴者は、高校野球は天敵と思ってる人、多そうですね(番組が不定期に潰れる)
野球部の友情、感動してくださってありがとうございます

2876さん、2877さん、2879さん
この問題は難しいですよね
私だったら、構わず上手い人を出してしまうような気がします
『努力』を認めるのと『勝利』を経験させるのと、どちらを選ぶか…ですよね
でも、いずれにせよ、こんどん並みに強い意志で決めれば委員でしょうけど

藍くらいの年代の子、ギリギリ知ってるんじゃないでしょうか?
中学生の人、『ダッチャ』で『ラムちゃん』とピンと来た人いるでしょうか?

では、更新します
2882投稿者:リリー  投稿日:2008年07月28日(月)21時08分37秒
「お〜い!!あい〜ん!!ななみ〜ん!!見に来たでぇ〜!!」
七海の声でも、ましてや吉田の声とは違う関西弁が響き渡る。
そこには、帆乃香、寛平、そして茶々山マンボウズのメンバーが勢揃いしている。
「あれぇ〜!?ホノカハンやおまへんかぁ?」
藍の中途半端な関西弁に、少しイラっときた七海だが、彼女もマンボウズのみんなが来てくれたことは嬉しかった。
マンボウズのみんなは、バラバラと聖テレ野球部に駆け寄って来た。
「すげぇよ!!あい〜ん!!虹守中相手に、コールド勝ちしたんだろ?」
翔太は、そう叫びながら藍に抱きついた。
2883投稿者:リリー  投稿日:2008年07月28日(月)21時08分54秒
「うわ…!また、セクハラだ!!」
エマが失笑しながらエリーに言った。
「だから、下心ないからいいんだって」
エリーも笑顔で少年達を見詰める。
「ふ〜ん…。下心がないんだったら…私がやってもいいんだよね?」
エマは、いきなり目の前にいる瀬南を、後ろから抱きしめた。
「…え?な、何ですか?」
瀬南は、涙目でうろたえている。
「あはは…!この子、可愛い!!美少年すぎる!」
「エマ、貴様のはセクハラだ」
中村有沙は、エマの頭を後ろから叩いて、瀬南を助けてやった。
「あ…ありがとう…ございます…」
瀬南は、伏し目がちに礼を言った。
「…うむ。礼には及ばん…」
実は中村有沙も、彼には少しキュンと来た。
2884投稿者:リリー  投稿日:2008年07月28日(月)21時09分27秒
「あ…あの…。こんにちは…」
オドオドしながら、ベンジャミンは七海に挨拶した。
「ん?おはようさん」
七海は膝に手をついて、ベンジャミンの視線まで降りた。
「あ…あの…。きょ、今日は…」
「ん?何?何やの?」
ニッコリ微笑みながら、小首を傾げる七海。
年上ながら、彼女が可愛いと、ベンジャミンは思う。
「が…が…がんば…」
その時、後ろから突き飛ばされて、彼は前のめりにつんのめった。
「ななみん!!ななみん!!ななみん!!」
そう言いながら、七海にしがみ付いてきたのは、帆乃香だった。
かなり、きつめのベアハッグ…七海は少し咽た。
「あ〜!!ななみんだ!!ななみんだぁ〜!!」
七海に会えたことが、相当嬉しいらしい。
2885投稿者:リリー  投稿日:2008年07月28日(月)21時09分49秒
「ほ、帆乃香…!く、苦しいって…!」
七海の声に、ようやく帆乃香は身体から手を離して満面の笑顔を上に向けた。
「あのな、うちな、ななみん達が今日の試合に勝てる様に、お守り作ってん!!」
そう言いながら、茶とオレンジのフェルト布で包まれた丸い物を七海に差し出す。
「ん…?それ…」
良く見ると、たこ焼きを模ったお守りだった。
中に、ガチャポンのケースが入っているようだ。
「こ、これ、ウチの為に作ってくれたん?」
「うん!!必勝祈願や!!」
「お、おおきに!!ウチ、絶対に勝ったるで!!」
「絶対に勝ってや!!あ、それから、中は絶対に見たらあかんで!!見たらご利益のうなるから…」
「うん!!わかった!!」
七海は、そう言いながら、自分のスポーツバッグの取っ手に結びつけた。
帆乃香は、本当に七海のことが好きなようだ。
同じ関西人だから、余計に愛着が湧くのだろう。
だが、関西人どころか、外国人の血が入っているベンジャミンも、帆乃香に負けないくら七海のことが好きなのだが…。
ベンジャミンは、寂しそうに2人の側から離れて行った。
2886投稿者:瀬南w  投稿日:2008年07月28日(月)21時10分09秒
可愛いよw
2887投稿者:リリー  投稿日:2008年07月28日(月)21時10分30秒
「あい〜ん!!絶対勝てよ!!」
次元は、藍の尻を思いっきり引っ叩いた。
「いた!!こら!!次元!!」
藍は、次元の脇腹を鷲掴みにして、くすぐった。
くすぐりが大の苦手な次元は、地面に転げ回る。
それでも許さない藍。
「おい!次元!!藍さんは、これから大事な試合なんだぞ!!余計な体力を使わせるんじゃない!!」
次元を怒鳴ったのは、聖斗だった。
「あ、聖斗、いいんだよ。私も面白がってやってるから」
試合前だというのに、藍のユニフォームは砂まみれだ。
「で、でも…こいつら…藍さんの身体、馴れ馴れしく触ったり…」
聖斗は、口をモゴモゴさせる。
「いいって、いいって。聖斗も触る?私のお尻…」
「え…?え…?そ、そんな…!な、な、何を…」
「あはは…!赤くなった!!赤くなった!!」
藍は、聖斗の肩を抱き寄せると、頭を胸に押し付けて乱暴に撫でた。
「よし!!じゃあ、投球練習でもしようか!!ありりん先輩!!」
そう言うと、藍はグローブとボールを持って、グラウンドへ走って行く。
藍の胸に押し付けられた為に曲がったメガネも直さず、聖斗は呆然と、彼女の背番号『1』が付いた背中を見詰めた。
2888投稿者:リリー  投稿日:2008年07月28日(月)21時11分09秒
しかし、中村有沙は、いぶかしげにマンボウズの方を見ている。
いや、彼女が見ているのは、寛平一人だ。
そして、車椅子の梨生奈の側へと向かう。
「おい、梨生奈…」
「何?ありりん?」
「あいつか…?おまえを占ったという、男は…」
占いと聞き、梨生奈の後ろにいる羅夢は興味を持つ。
「え?何?占い?梨生奈、何を占ってもらったんだよ?」
「え…?あ…いや…。や、野球部の…行く末…とか…」
羅夢が自分を裏切ることになる占い…などと、言えるわけがない。
「それで…ありりん…どうするの?」
「む?そうだな…。話しを聞いてみるか…」
「ありりんも、占ってもらうの?」
「占い?そんなもの、私は信じない」
そして、こう言った。
「運命は、自分で切り開くものであろう?」
仲の悪い七海と同じことを言う…と、梨生奈は思ったが、口に出さずにいた。
2889投稿者:リリー  投稿日:2008年07月28日(月)21時11分55秒
「ありりん先輩!!早く、投球練習の相手をして下さいよ〜!!」
マウンドで藍が手を振っている。
「ち…!仕方がない。あの男の話を聞くのは、後にしておくか…」
中村有沙は、キャッチャーマスクを被りながらホームに向かう。
他のメンバーもグラウンドに散らばった。
そして、練習をしながら相手ベンチを見る。
今から対戦する、虹守中学野球部…今夏、都大会で準優勝まで上りつめた強豪チームである。
ユニフォームには、左右の胸に『虹守』という字が、力強い赤い毛筆体で描かれている。
アンダーシャツは赤、帽子は白で『N』と赤いアルファベットが付いている。
シンプルで無骨なデザインだが、それが強豪らしさを醸し出している。
この前の試合は、練習用ユニフォームだったが、今日は公式のユニフォームで、幾分、強そうに見える。
2890投稿者:リリー  投稿日:2008年07月28日(月)21時12分07秒
良く見ると、部員の中に、丸刈りの者と長髪の者といる。
レギュラー選手は、長髪が許されているのだ。
これが、虹守中学野球部の特徴である。
『虎の巻』にも記されていることだ。
レギュラーと補欠選手の徹底的な区別化…これが、部員の中に競争意識とハングリー精神を呼び起こすらしい。
そして、学年による上下関係の廃止。
力があれば、例え一年生でも積極的にレギュラーにする。
ソフトボール部の近藤とは、対極な指導方針である。
しかし、この野球部は、これで都大会の常連になっているのも事実なのだ。
よく見ると、部員達の髪形は、3種類ある。
レギュラー部員の長髪、補欠部員の丸刈り、そして…スキンヘッドに近い、まるで京都の青年修行僧の様な青々とした坊主頭…。
聖テレ野球部に完膚なきまで叩きのめされた、あの部員達である。
2891投稿者:リリー  投稿日:2008年07月28日(月)21時12分31秒
虹守中のユニフォームを着た、30半ばくらいの男が、帽子を取って、あすみの元に歩み寄る。
そして、深々と頭を下げる。
「この間は、どうも申し訳ありませんでした!!」
ガラガラした濁声を精一杯張り上げるこの男は、虹守中野球部顧問、井上雅史である。
「いえいえ、いいんですよ。だって、あの天下の叡智大渓岳園の合同練習ですよ。そちらの方を優先するのは、無理もないですよ」
あすみは、そう言うが、それでも井上は頭を上げない。
「実は、渓岳園の監督は、この虹守中の野球部の元顧問の先生でして…そのお誘いを、どうしても断ることはできませんでした…」
虹守中野球部の『虎の巻』を作成したのが、今の叡智大渓岳園野球部の監督なのである。
「しかし、あいつ等の話しを聞いて、あなたがた聖テレ野球部は、我が校も全力を尽くして戦うべき相手と判断しました」
そう言いながら、井上は青々とした頭の連中を横目で見る。
「いや、あれはマグレというか…。たまたま、勝っただけで…」
「マグレで、コールドはできませんよ。今回、一部レギュラーメンバーも入れたオーダーを組みました」
「一部…レギュラーですか…」
井上の言葉とは裏腹に、まだ尻に火がついていないと、あすみには感じられた。
(ま、いいか…。全員、レギュラーを引っ張り出せば…)
まさか、女子野球部相手に連敗ということは許されないだろうし、ここまでギャラリーに囲まれては、益々負けられないだろう。
「それでは、いい試合をしましょう…」
あすみは、井上と握手を交わすと、ベンチの方へ向かう。
2892投稿者:リリー  投稿日:2008年07月28日(月)21時14分46秒
次回、やっと試合開始となります

では、おちます
2893投稿者:117  投稿日:2008年07月28日(月)21時33分25秒
一応、僕も「高校野球」は「天てれ」の宿敵とは思っていますが、
今年は見に行く機会があって,面白かったので、受け入れますよ(笑)。
「ホノカハンやおまへんかぁ?」、藍がそんなこというとは(笑)。
マンボウズの男子たちのキャラも、面白いですね。藍は意外とそういうことを受け入れるタイプかも?
虹守の野球部レギュラーが長髪とは・・・なんか、「バッテリー」の原田巧が浮かびました。続きも楽しみです!
2894投稿者:虹守中のユニ  投稿日:2008年07月28日(月)21時42分26秒
智弁和歌山と同じタイプ?
2895投稿者:デジ  投稿日:2008年07月29日(火)03時54分19秒
そうしたらNHKの番組すべての宿敵というふうにも取れますね。
(前半)藍と関西弁は、合わないでしょうね。そこが笑えるんですけどね(笑)
あの有沙をもキュンとさせるとは、何気にすごいですね、瀬南。
帆乃香と七海の組み合わせを見ていると和みますね。(僕だけでしょうか?)
次元ってこんなキャラでしたっけ?
(後半)虹守中野球部激しいですね優劣の差。
実質的にこんどんの考え方の方はその分弱くなることがあるけど間違っていなくて、マーさんの考え方の方は、強くはなるけど、いつも練習に出ていた部員は不満がる。結局強さをとるか出欠率で選ぶかどちらをとるかなんですよね。
さあ、明日からプレイボール。明日が楽しみです。
             (今日の小言)
僕は、中学校のときは剣道部だったのですが、その顧問もこんどんの考え方でした。『練習に来ない奴はいくら強くても、怠けてるとみなし、試合には出さない』と言ってました。それで強い人は毎日毎日練習は来て
いました(結果はいつも不甲斐なかったのですが。)今ではいい思い出です。これがあって、高校の部活も連日無休です。でもこれからもこの師の言葉を肝に銘じて休まずやることにしています。
今日も夏期講習と部活です。今日もがんばるぞ!
2896投稿者:あげ  投稿日:2008年07月29日(火)17時47分28秒
 
2897投稿者:リリー  投稿日:2008年07月29日(火)20時56分57秒
117さん
そうですよね
自分自身がそのイベントに参加できると、面白く感じるものですね
でも、この時期は再放送が多いので、潰れてもそう残念な感じはしませんが…
デジさん、剣道部ですか
ちひろと同じですね
頑張って下さい
私は、高校時代は演劇部でした
一応、ミュージカル仕立ての『オズの魔法使い』では、主役のドロシーをやらせて頂きました
でも、再演では『かかし』役に…
それっきり、主演を果たしたことはありませんでしたが、楽しかったです
文化部ですが、踊ったり、跳んだりしなければならないので、筋トレとか体育会ぽかったですよ
その時、脚本とか物語作りに興味があって、こんなことをしてる有様です
2894さん
そうです
智弁和歌山をモデルにしました
ああいう、インパクトのあるユニフォームだと「ああ、またこの高校出てるな」と、宣伝になりますよね

では、更新します
2898投稿者:リリー  投稿日:2008年07月29日(火)20時59分00秒
「あ〜!!みんな!!ひさしぶり〜!!」
ボールのたくさん入った籠を、放り出してこちらに駆け出して来る者がいる。
虹守中野球部のマネージャー…そして『R&G探偵社』の探偵リストにも名を連ねる、コードネーム『クラッシュ・ノイズ(騒音)』…橋本甜歌である。
とは言っても、レッド吉田や村田ちひろと同じく、表の住人である。
そして、やたらと時間のかかるピッキングだけが取り得の、戦闘能力皆無の少女である。
「おい!!マネージャー!!ふざけんな!!」
坊主頭の部員達が、散らばったボールを拾いながら怒鳴る。
しかし、彼女はその声が聞こえていない。
「うわ…。こりゃ、またやかましいのが来よったで…」
七海は、敢えて無視を決め込んで有海とキャッチボールをしていたが、甜歌は構わずに背中を叩く。
弾みで、七海はボールを落としてしまった。
「あはは!!カッコいいね!!ユニフォーム!!結構、似合ってんじゃん!!」
無邪気に笑う甜歌を、睨みつける七海。
「何やねん!!甜歌!!ウチとオノレは敵同士やん!!馴れ馴れしゅうすんな!!」
「敵?何で〜?同じ『R&G』の仲間じゃん!!」
「コラ!!『R&G』の名は出すな!!」
「え?内緒にしてんの?ウチ、バンバンみんなに言ってるよ?」
甜歌は、関西人でもないのに、自分のことを『ウチ』と呼ぶ。
そこにも、七海はいつもカチンとくるのだ。
2899投稿者:あげ  投稿日:2008年07月29日(火)20時59分04秒

2900投稿者:リリー  投稿日:2008年07月29日(火)20時59分51秒
「そうや!!この間、よくもウチ等の約束破って、渓岳園なんぞに行きおったな!?」
甜歌も、その日、虹守中に残らずに、叡智大渓岳園高校との合同練習に行ってしまっていたのだ。
「だってさ、マーさんがウチを残すと心配だからって、連れてってくれたんだもん。お陰で江莉に、散々恨まれたけどさ」
甜歌の言う、『マーさん』とは、顧問の井上のことである。
あの二軍連中も、言っていたような気がする。
「でもさ、でもさ、あいつ等、ボコボコにしたんでしょ?見たかったなぁ〜、試合…」
まるで他人事の様に笑う甜歌に、七海は呆れ顔で言う。
「あんた…。仮にもマネージャーやろ?」
「いいんだって…!あいつ等、野球ヘタなくせに、人使い荒いんだもん!!あの試合のことで、マーさんにメチャクチャ怒られて、涙目になってやんの!!いい気味だよ!!」
「あんたも…ええ性格しとるねぇ…」
「ま、バーンズ様が引退したからウチもいつでもマネージャー辞める気なんだけどね」
「オノレは、マネージャーの風上にもおけんやっちゃな…!!」
2901投稿者:リリー  投稿日:2008年07月29日(火)21時00分12秒
甜歌の言葉に、側で投球練習をしていた藍が反応した。
「え?やっぱり、バーンズ君、今日の試合に出ないの?」
甜歌は、初対面の藍の肩に、気安くボディタッチをする。
「何々?やっぱりあんたも、バーンズ様が目当て?」
「うん、うん!!凄い、イケメンだって話しじゃん!!」
「イケメンだけじゃないよ!!バーンズ様のお父さん、元メジャーリガーだって!!それで今はコーチやってるって!」
「ウソ!?で、どこ?何てチームでコーチやってるって?」
「う〜ん…何てチームだったっけ…?ウチ、あんまりメジャーとかに詳しくないからわかんないけど…広島カープの帽子に似てたような…」
「カープ?だったら、レッズだよ!!へぇ〜、メジャーリーガーの息子かぁ〜…。サラブレッドだぁ〜!!」
「その、バーンズ様も、たぶん来年から叡智大渓岳園に進学だよ。推薦で…」
「あ、あの、山ちゃんこと、山元竜一さんのいる…?」
「そうそう!!今年の甲子園、ベスト8だよ!!そう言えば、今日の試合、見に来るって…」
2902投稿者:雲雀☆  投稿日:2008年07月29日(火)21時00分49秒
まあまあだね
2903投稿者:リリー  投稿日:2008年07月29日(火)21時01分02秒
その時だった。
さっきから、藍の投球がおろそかになっている為、中村有沙が大声で怒鳴った。
「おい!!藍!!試合前だぞ!?何をやっている?そんな女と話したら、バカがうつるぞ!!」
「な、何さ!!相変わらず、ヤな女!!」
甜歌も、中村有沙に怒鳴り返す。
2人は、村田ちひろを好いていて、お互いをライバル視している感があるのだ。
「大丈夫ですって!私、はじめからバカですから!!」
呆気らかんと、藍は言う。
「ち…!!勝手にしろ!!」
中村有沙は、キャッチャーマスクを外して、ベンチに帰ってしまった。
2904投稿者:リリー  投稿日:2008年07月29日(火)21時01分17秒
憎き天敵を追い払った藍に、甜歌は興味を持った。
「あはは!!あんた、面白いね!!名前は?」
「ん?名前?藍。細川藍だよ。あい〜んって呼んでね!!」
「ウチは、橋本甜歌。テンカリンって呼んで!!」
「テンカリン?可愛いあだ名だね」
「あ、そうそう!!ウチ、再来年は聖テレ高等部、受験するから!!絶対に受かるから、その時は友達になろうね?」
すっかり意気投合している2人を、しらけた目で見る七海。
「やれやれやわ…」
七海は、再び有海とのキャッチボールに専念する。
さっきから、有海は極度の緊張で、ポロポロと落球させている。
「一木さん…。リラックスせぇよ…」
「ご、ごめんなさい…。藤本さん…」
「ええか?守備なら、ウチとエリーがあんたをフォローしたる!!せやけど、平凡なフライくらいは、捕れるようにならんとアカンで?」
「は、はい…。がんばります…」
梨生奈が試合に出られない今、有海は9人目のプレイヤーとして、聖テレ野球部の一角を担わなければならないのだ。
2905投稿者:リリー  投稿日:2008年07月29日(火)21時01分54秒
「虹守野球部、整列〜!!」
マーこと、虹守中野球部監督、井上の濁声がグラウンドに響く。
「聖テレ野球部も集合!!」
あすみも叫ぶ。
両チームは、向き合って一列に並ぶ。
七海達は、対戦相手となる虹守中野球部のメンバーを見る。
この前、完膚なきまで叩きのめしたメンバーが4人、あとの5人のうち、長髪…つまりレギュラーメンバーが2人いる。
あすみから聞いている…1年のルーキー、木村遼希と日向滉一だ。
(レギュラーが1年坊主だけ…?おのれ…まだ、ウチ等をナメとるな…)
彼等と同じく1年生の七海は、闘志を燃やす。
「ただ今より、『虹守中学』対『聖テレジア女子学園・中等部』の親善試合を行います!!礼!!」
「おねあいしゃーーーす!!」
両チームは、帽子を取って一斉に礼をした。
今回は、あすみは先攻を選ぶ。
「どうして、今回は先攻なんですか?」
キャプテンの愛美が質問した。
「ん?早く、向こうのエースを引っ張り出したいでしょ?」
つまり…先制パンチを放て…と言っているのだ。
七海達の目が、ギラリと光った。
2906投稿者:リリー  投稿日:2008年07月29日(火)21時02分18秒
プレイボールの合図。
一番バッターは、サードのジョアン・ヤマザキ。
左バッターボックスに入る。
相手チームのピッチャーは、この前の選手とは違う者を先発にしている。
いくら何でも、コールド負けを喫した者に、リベンジのチャンスなど回ってこない。
投球練習を見る限り、この前のピッチャーとは比べ物にならない球威だ。
だが………ジョアンは、その初球を思いっきり叩いた。
ボールは放物線を描き、簡易設置フェンスを越えて防護用ネットに当たった。
つまり…先頭打者ホームランである。
静まり返るグラウンド。
ジョアンが一塁を回り、二塁に向かう途中で、観客達はどよめきを一斉に上げた。
ショートの遼希、サードの滉一が、目を丸くしてジョアンを見送る。
いくら堅守を誇るスーパールーキー・コンビでも、ホームランになる打球は、どうにもならない。
「な…?な…?なんじゃ………?こりゃ………?」
虹守中監督の井上の顎は、もう少しで外れてしまうのではないか…というくらい、あんぐりと開いたままだ。
ホームランを打った当のジョアンは、何のことはない、という風に静かにダイヤモンドを一周すると、ベンチの仲間とハイタッチを交わす。
迎える者も、落ち着き払っている。
「こんなもんだろう」…と、でも言うように…。
梨生奈の側にいる羅夢、吉田、そしてマンボウズのメンバーの方が、狂喜乱舞している。
2907投稿者:リリー  投稿日:2008年07月29日(火)21時03分12秒
ざわつきが治まらない中、続く二番バッター、セカンドの伊倉愛美。
セーフティバントを試みる。
ピッチャーは、先ほどのホームランで浮き足立ったのだろうか?
何でもないゴロをお手玉して、愛美に一塁を陥れられた。
そして、続く三番バッター、ピッチャーの細川藍に、一、二塁間を抜けるヒット。
ランナーは一塁、二塁。
未だノーアウトである。
「ピッチャー、交代!!」
井上の声は、あきらかに動揺している。
2908投稿者:リリー  投稿日:2008年07月29日(火)21時03分27秒
「もう、交代?早いな…」
バッターボックスに向かう、四番バッター、ライトの七海は、そう呟いた。
「と、いうことは…次がエースピッチャーかな?」
あすみは、愉快そうに慌しい相手ベンチを眺める。
背番号『15』の選手の代わりに、今までライトの守備をしていた、背番号『10』の選手がマウンドに上がった。
「いいのかな…?まだエースを出さなくて…」
あすみの言葉通り、七海は代わり端のピッチャーの球を強打した。
センター、ライト間に落ちる、二塁打。
愛美、藍と走者一掃…2点を追加した。
早くも、3対0…。
都大会準優勝の虹守中野球部が、いくらその大会の主力、3年生が抜けたとはいえ、半分以上はレギュラー選手ではないとはいえ、初回で3失点…しかも、女子…しかも、今年発足したばかりのお嬢様学校の野球部を相手に…。
観客達は、ただただ、唖然とするばかりだ。
男の二軍野球部を負けさせたと言う、お嬢様学校の野球部が珍しくて来ていただけなのに、もう、この試合の行く末が気になって仕方がない様子である。
2909投稿者:リリー  投稿日:2008年07月29日(火)21時04分04秒
続く五番バッター、ファーストのエマにストレートのフォアボールを与えた途端、背番号『10』のピッチャーは交代させられた。
「凄いな…。ななみんのチーム…。まだ、ワンアウトも取られてへんのに、2人もピッチャーを交代させたで?」
「ああ…。ここからやな…」
帆乃香のはしゃぐ声に対して、寛平は冷静に答えた。
今度マウンドに上がったピッチャーの背中には、『1』というゼッケンが縫いつけられている。
いよいよ、エースピッチャー…永島謙二郎の出番である。
「遅いよ…。この序盤の3点は、大きいよ…」
あすみは、不敵に笑った。
「はい。しかも、ノーアウトです」
有海も、スコア表を書く手に力が篭る。
次のバッターは、六番、キャッチャーの中村有沙だ。
「さてと…エースの力とやらを、見せてもらおうか…」
様子見、という感でバッターボックスに立つ。
だが、やはり強豪チーム、虹守中のエースピッチャー…きわどいコースを突く。
「…む?中々、コントロールがいい…」
しかも、カーブの切れも良い。
結局、中村有沙は見逃し三振。
続く七番、レフトのエリーも三振、八番、ショートの梓彩も、セーフティーバントの失敗でスリーアウト。
初回からの聖テレ野球部の長い攻撃が、終わった。
2910投稿者:リリー  投稿日:2008年07月29日(火)21時05分45秒
少し長めでしたが、早く試合開始したかったので…

では、おちます
2911投稿者:ドロシーって・・・  投稿日:2008年07月29日(火)21時58分59秒
リリーさんは外見ロリロリなんですか?
2912投稿者: 投稿日:2008年07月29日(火)22時09分18秒

2913投稿者: 投稿日:2008年07月29日(火)22時11分28秒

2914投稿者: 投稿日:2008年07月29日(火)22時20分10秒

2915投稿者:1600  投稿日:2008年07月30日(水)00時08分14秒
久しぶりのコメントで申し訳ないです;
ついに虹守中との試合、始まりましたね〜
いつの間にやら聖テレがパワーアップしていて驚きですw

蛇足かもしれませんが、虹守のエースピッチャーって謙二郎ではなく
勇気ではなかったのでしょうか?
意図的だったとしたらすみませんが気になったので、
一応書いときました;
2916投稿者:あげ  投稿日:2008年07月30日(水)00時35分13秒
         
2917投稿者:主演を張れるなんて  投稿日:2008年07月30日(水)00時52分40秒
リリーさん、相当可愛いのでは?
2918投稿者:117  投稿日:2008年07月30日(水)16時48分06秒
おぉ、ついに試合が始まりましたね。こちらまで、熱くなってきました(笑)。
そういえば、甜歌と藍って,仲良かったですよね?そんな甜歌も、随分変わったようで・・・?
ほぉ、謙二郎がエースですか・・・続きも楽しみです!
2919投稿者:リリー  投稿日:2008年07月30日(水)20時44分29秒
1600さん
お久しぶりです
まだ読み続けてくださったこと、嬉しく思います
あと、虹守のエースピッチャーの件ですが、確かに登場人物表には、『勇気・ピッチャー』、『謙二郎・セカンド』となっています
これは、夏の大会までのオーダーになっております
あと、この後読み続けて頂けたら、納得してくださると思います

117さん
そう、藍、甜歌、江莉の3人組は仲良しだったと記憶しています
時々出てくる、ケバイ女の子、あれ、本当に甜歌なんですかね?
実際の甲子園の試合同様、こちらも楽しんで頂けたら幸いです

2911さん、2917さん、私はロリでも可愛くもありませんが、舞台は衣装とメイクとヘアメイクで、何とかなるもんですよ
実際、かかしの方が適役だったと言われました…

では、更新します

2920投稿者:リリー  投稿日:2008年07月30日(水)20時48分03秒
「よし!虹守中から初回3得点は、予想外の出来だよ!!」
グローブを片手にはめ、円陣を組むメンバーに、あすみは語りかける。
「でも、私達の当面の目標は、虹守中のレギュラーを全員引っ張り出すこと…!そこから、戦いは始まるんだからね!!」
「はい!!」
少女達は、一斉に叫んだ。
そう…この間の、練習試合のすっぽかし…実際にすっぽかした…当事者の連中に勝たなければ、溜飲を下げることができない。
「聖テレー、勝つぞー!!」
「おおー!!」
少女達は、各々の守備位置まで全力疾走する。
観客達は、拍手で迎える。
完全に、こちら側の味方についたようだ。
「一木さん、リラックス!!リラックスやで!!」
ギクシャクと駆ける、背番号『10』の有海の背中を叩く七海。
それだけで、有海は前につんのめって転んでしまった。
「お、おい!!大丈夫かいな!?」
慌てて七海は、有海を助け起こす。
「だ、大丈夫…。ごめんなさい…」
案の定、謝る有海。
おそらく、有海は何回も、この試合中に謝ることになるだろう…。
七海は不安な気持ちと、そして、その分、自分が頑張らなければ…という決意を込めて、ライトの守備位置に着く。
2921投稿者:リリー  投稿日:2008年07月30日(水)20時49分00秒
「監督…」
虹守中の少年達は、皆不安な顔を隠せず、井上の顔を窺っている。
しかし、一番うろたえているのは、井上の様だ。
「い、一体…な、何なんだ?あの子達は…」
「だ、だから言ったじゃないですか!!ムチャクチャ強いんですよ!!あの子達!!」
コテンパンにされた『コールド負け組』が、涙目で井上に訴えた。
「ど、どうやら…その様だな…。ありゃ、もしかしたら都大会出場レベルかもしれん…」
井上は改めて、守備位置に散らばった、聖テレメンバーを眺める。
「だとしたら、俺達が敵わなくても全然不思議じゃないでしょ?」
「それでも…あの子達をナメてたってことには変りないんだろ?」
皆は、声のした方を一斉に振り向く。
そこには、長髪をそよ風になびかせた、目鼻立ちのくっきりした少年が立っていた。
2922投稿者:リリー  投稿日:2008年07月30日(水)20時49分13秒
もう野球部を引退した3年生のエースピッチャー、バーンズ勇気だ。
都大会準優勝の立役者である。
「きゃ〜!!バーンズ様!!いらしてたんですかぁ〜?」
甜歌は、膝にスコア表を乗せているにも関わらず、ベンチから立ち上がった。
当然、スコア表は地面に落ちる。
「やれやれ…」
そのスコア表を拾うのは、同じマネージャーの木内江莉である。
しかし、江莉は甜歌に腹を立てない。
何故なら、江莉は勇気と付き合ってるから…。
それを知らずに、勇気に熱をあげている甜歌が、可笑しくて仕方がなかった。
2923投稿者:リリー  投稿日:2008年07月30日(水)20時49分55秒
「せ、先輩!!今日の試合、見に来ないって…」
そう言う後輩達を、勇気は爽やかな眼差しで見渡す。
「だって、聖テレのお嬢様が来るんだろ?だったら、一目見ておかなくちゃ」
そして、遠目でマウンド上の藍を見る。
「ヒュ〜!!いいねぇ、あの子!!」
「おい、おい、勇気!!ナンパ目的で来たのか?」
そう青筋を立てる井上に、またも爽やかに受け答えする勇気。
「違いますよ。いい球を投げるって言ってるんです」
勇気の指差す方を見る。
藍は、ストレートをバンバン投げ込んでいる。
2924投稿者:リリー  投稿日:2008年07月30日(水)20時50分06秒
「ほ、ほんとだ…」
コールド勝ちをしたということで、打撃面ばかり警戒していたが、守備面もかなりいけると話しには聞いた。
セカンドとショートの連携プレイは、まるでプロ並だったと…。
しかし、投手力においては、あまり話しは聞かなかった。
「よかったぁ〜!!バーンズ様、あい〜んに一目惚れしたのかと思っちゃったぁ〜」
甜歌は安堵の息をつく。
一番、安心しているのは、他ならぬ江莉なのだが…。
だが、勇気はあっさりと答える。
「いや…。確かに可愛いね。あの子…」
「げ!!やっぱり、あい〜んと友達になるの、やめた!!」
甜歌は憤慨した。
一番、憤慨しているのは、他ならぬ江莉なのだが…。
2925投稿者:リリー  投稿日:2008年07月30日(水)20時52分27秒
今日は試合は動きませんでしたが、きりのいいところでおちます
2926投稿者:あげ  投稿日:2008年07月30日(水)21時17分45秒
    
2927投稿者:117  投稿日:2008年07月30日(水)21時21分04秒
セカンドとショートのコンビって、愛美と梓彩でしたよね?
あらら、江莉は勇気とカップルだと・・・
「甜歌は・・・ ・・・しているのは他ならぬ江莉・・・」とやり取りが面白いです(笑)。続きも楽しみです!
2928投稿者: 投稿日:2008年07月30日(水)22時10分44秒

2929投稿者:デジ  投稿日:2008年07月31日(木)04時03分33秒
(昨日)聖テレの攻撃、初回に三点というのは、高を括っていた相手にとってプレッシャーになりますね。
甜歌久々の登場。キャラまったく変わってないですね。
江莉と甜歌仲悪いですね。そういえば、『サムドラ』でも、似たようなこといってましたね。
(今日)あらあら、三つ巴の恋敵対決になっちゃいましたね。モテる勇気もつらいだろな(笑)続きも楽しみです!
            (今日の小言)
今は、剣道部ではなく弓道部です。僕の通っている高校の剣道部は、この小説のちひろのように全国で一位になったこともある実力派の部活で、入る気はおきませんでした。

話は変わるのですが、僕の妹、天てれに出たことがあります。(一応紙フトの相手の応援として)対戦したのは、七海と遼希とライアンのチームでした。
妹を怨み始めたキッカケでもある出来事でした(笑)
2930投稿者:あげ  投稿日:2008年07月31日(木)20時55分44秒
2931投稿者:今日のオールスター  投稿日:2008年07月31日(木)21時06分14秒
巨人ファンのわたしですが
金本選手の活躍には感心します(上からの目線許してください)
だからこそ勝って欲しかった
2932投稿者:つまんねえのー  投稿日:2008年07月31日(木)21時12分21秒
 
2933投稿者:リリー  投稿日:2008年07月31日(木)21時23分40秒
117さん
はい、愛美と梓彩です
特に愛美は前の試合で「守備が短所」となっていたので、努力して克服した、ということで
勇気、甜歌、江莉の関係は、ドロドロしたものにはならない予定ですので…割とあっさりと進みます

デジさん
『サムドラ』の、一文、覚えててくださってたのですか?
ありがとうございます
あの時は、江莉が公輝と付き合ってる…という設定でしたので、結構、関係がややこしいことになってますね
妹さん、生で七海達を見たことがあるんですか?
羨ましい…
いつの放送だったのか、教えて頂けませんか?

2931さん
今日、オールスターだったんですね
今、帰ったところなので、見れませんでしたが…
試合を決めたのは、元中日(現楽天)の山崎だったんですね

では、更新します
2934投稿者:リリー  投稿日:2008年07月31日(木)21時24分46秒
「と、とにかく…初球からバンバン狙っていけ!!」
井上は、一番バッター、ショートの、一年生レギュラー木村遼希の肩を叩いた。
「了解…!」
遼希は、溜息を一つつくと(やたらと溜息をつくのが、彼の癖なのだが…)バッターボックスに向かう。
「お?『ガーディアンズ』の木村君や…。聖斗、覚えてるか?」
寛平の声に、聖斗は頷く。
「覚えてますよ…。木村君のおかげで、毎回、僕達コールド負けだったんですから…」
木村遼希は、去年まで少年野球チーム『虹守レインボー・ガーディアンズ』のエースで四番だった。
やはり、虹守中で早くもレギュラーを獲得したのか…。
聖斗は茶々山中学の野球部に入る予定だが、中学生になっても、またも遼希に煮え湯を飲まされそうだ。
左のバッターボックスに立つ遼希。
(む…?いきなりレギュラーメンバー?しかも左打者か…。どうする?有海?)
センターの有海の指示を仰ぐ、キャッチャーの中村有沙。
(ええと…。木村君は、初球打ちがもの凄く上手いんだったなぁ…)
有海は、あすみと共に、都大会を見に行ったのだ。
改めて、虹守中と試合をする時の為に…。
(まず、細川さんの一番自信のあるストレートで…。でも、高めには行かないように…)
まず、有海は帽子のひさしの真ん中を触る…『ストレート』…。
そして胸のマーク、『St.T』の『S』を触る…『ストライク』…。
ベルトのバックルの金具内ギリギリ左下…『内角低め』…。
2935投稿者:リリー  投稿日:2008年07月31日(木)21時25分27秒
(うむ…。わかった…)
中村有沙は、内角低めにミットを構え、指一本を出す。
(OK!!内角低めのストレートね!!)
藍は、サイン通りの投球をする。
膝元を、速球が通り抜ける。
「…!?」
バットを振りかけた遼希だが、一瞬ボールになると思い、手を止めた。
しかし、球審の判定はストライク。
「あれ…?コントロールは悪いって、先輩が言ってたんだけどな…」
遼希は、ヘルメットを直しながら呟く。
「出来の悪い先輩を持つと、苦労するな?」
中村有沙は、遼希に語りかける。
「え?何?」
動揺しやすい遼希は中村有沙に聞き返すが、彼女から返事はない。
2936投稿者:リリー  投稿日:2008年07月31日(木)21時25分39秒
(よし…。今度は同じ球種で、ボール球を…)
先ほどの球を見逃した遼希だから、今度は振って来るだろう…との、有海の予想だ。
そして、藍の投球。
さっきの球とは、僅かに下に外れる、内角低めのストレート…。
遼希は、果敢に振ってくる。
(よし…!手を出した!!)
中村有沙は、心の中で叫んだが、遼希のバットは、ボールを捕らえる。
ライナーが、エマと愛美の間を抜ける。
「よし!!先頭打者が出た!!」
ガッツポーズをとる井上。
先頭打者ホームランの聖テレには及ばないが、贅沢は言っていられない。
2937投稿者:リリー  投稿日:2008年07月31日(木)21時26分27秒
ボールは、外野のライト七海の前で、ようやくバウンドする。
「…!?遼希!!滑り込め!!」
「…え?」
勇気の声に、遼希は驚く。
そして、勇気の指示の意味を知り、更に驚いた。
ライトの七海が、投球のモーションをしている。
ヒットの当たりを、ワンバウンドで捕球して、ファーストのエマに送ろうとしている…?
つまり…折角のヒットが『ライトゴロ』に終わってしまう?
遼希は、無我夢中で滑り込んだ。
それと同時に、エマのミットが音を立てる。
「セーフ!!」
「あああ〜〜〜!!!」
一塁審判の判定に、七海もエマも、思わずしゃがみ込んだ。
「…ふぅ…。マジ…?」
遼希は、一回裏で早くも泥だらけになって、『虹守』という赤い文字が見えなくなったユニフォームを見詰めた。
「な、何だ…?あのライト…」
また、井上の顎は、外れそうな勢いで開いている。
2938投稿者:リリー  投稿日:2008年07月31日(木)21時26分57秒
「もう…女の子チームだと思って軽く見るのはやめましょう。あれはまさしく、都大会に出られるレベルのチームです」
都大会の激闘を潜り抜けてきた勇気は、そう呟いた。
「そうか…。そうだな…」
井上も、ようやく聖テレ野球部の実力を認めた。
女の子、お嬢様、新設の野球部…全ての色眼鏡を外す。
次の打者が、右バッターボックスに入る。
彼のことは、藍も覚えている。
前の試合に出ていた。
愛美と梓彩の連携プレイのキッカケとなる打球を放った…彼である。
バッターボックスに入るなり、バントの構えをとる。
あの時は、ニヤついて強振したが、今の表情は真剣そのものだ。
そして藍のボールを、確実にバントで前に打ち返す。
ピッチャーの藍とキャッチャーの中村有沙の中間に転がる、球威を殺した良いバントだ。
「私が捕る!!」
中村有沙が、藍を制して捕球した。
「まさか、ありりん先輩…」
藍はそう言い掛けて、咄嗟にしゃがんだ。
中村有沙は、二塁に送球したのだ。
しかし、遼希の二度目の滑り込みで、セーフとなった。
これで、ノーアウト一、二塁…。
2939投稿者:リリー  投稿日:2008年07月31日(木)21時27分16秒
「く…!!私としたことが…判断を誤ったか…」
唇を噛み締める、中村有沙…彼女は尻を、ピシャリと叩かれる。
「欲張りすぎです!ありりん先輩!」
藍だった。
「む…!!何をする!?」
「え…?叩いて欲しかったんじゃないんですか?」
しれっと答える藍を睨みつける中村有沙だが、やがてニヤリと笑う。
「ああ…。その通りだ…。すまんな、藍…」
「いえいえ…ドンマイです!!」
藍も笑顔で返す。
「しかし、あいつめ…良いバントを打つではないか…。やはり、人間、追い詰められなければ中々力を発揮できないか…」
中村有沙は、自らの気持ちも引き締めながら、ホームに戻る。
そして、虹守中の三番バッターは、遼希と同じく一年生レギュラー、サードの日向滉一だ。
「おいおい…。やっぱり、虹守中も強いで…。ノーアウトで一塁、二塁やんか…。そして、三番、四番や…」
吉田は、心配そうに呟いた。
「梨生奈が出てりゃ、あんなヤツ等、簡単にぶっ倒せるのによ!!何やってんだ!!あいつ等…!!」
羅夢は、吐き捨てるように言う。
「そんなことないわ…。やっぱり都大会準優勝は伊達じゃないってことよ…」
梨生奈は、落ち着いた口調で羅夢を諭したが、こんな強いチームと試合ができないことを、悔やんでいた。
だが、それを表に出してしまったら…自分の大怪我の直接的原因になってしまった羅夢が心を痛めるだろう…。
いくらモニークに洗脳されていたからとは言え…。
2940投稿者:リリー  投稿日:2008年07月31日(木)21時27分52秒
今日は、これでおちます
2941投稿者:あげ  投稿日:2008年08月01日(金)00時25分54秒
         
2942投稿者: 投稿日:2008年08月01日(金)00時49分51秒

2943投稿者:デジ  投稿日:2008年08月01日(金)01時50分55秒
[虹守レインボーガーディアンズ]...遼希ってRGでしたっけ?
遼希うまくやりましたね。七海もかっこいいです。有沙もがんばれ!
たしかに一回から激戦になっている自分のチームをただ指を銜えて見てるだけなんてさすがの梨生奈も悔やむでしょうね。パートナーに相談できないとは言えね...。
次回は滉一の登場。果たして彼の実力やいかに!(笑)
続きも楽しみです。

             (今日の小言)
(昨日の続き)オンエアは確か5月31日でした。収録は10日ぐらい前だったと聞いています。ちなみにその小学校は、ぼくの出身校でもあって、在校していたときにも、一回テレビに出てます。(このときはフジテレビで、ホリケンサイズの収録でなんとその企画の一回目だったらしい。ついでにそのときにも妹は写っていたとか。)一生でそうもできないことを10代の内に2回も経験するとは、しかも天てれの収録の話が持ち上がった日にゃ'正気か’と思う僕でした。

2944投稿者:あげ  投稿日:2008年08月01日(金)19時30分49秒
2945投稿者:やたらと溜息をつくのが、彼の癖なのだが…  投稿日:2008年08月01日(金)20時28分18秒
よく見てるなぁw
2946投稿者:リリー  投稿日:2008年08月01日(金)21時26分50秒
デジさん
凄い学校ですね
そんなにロケが来るんですか?
妹さんも天てれファンなんですか?
そうでもなかったら、それは嫉妬ものでしょうね

2945さん
遼希は、新人の頃からそんなイメージでしたよね

では、更新します
2947投稿者:リリー  投稿日:2008年08月01日(金)21時27分26秒
「おや?吉田さんじゃないですか…!こんな所で会えるとは…!」
高級スーツを着こなしている、人相の鋭い男が、吉田に話しかけてきた。
「え…?あ、あなたは…李さんじゃないですか…!!何で、こんな所に…?」
彼の名前は李小牧…中国人である。
彼は、新宿歌舞伎町の案内人をやっている。
探偵という職業柄、吉田は彼と会ったことがあるが、太陽の下で彼を見るのは初めてだ。
いや、吉田が刑事時代から知っている仲だ。
その時と比べて、随分日本語が上手くなった。
「何でって…今、バッターボックスに立ってるの…あれ、私の息子です」
「へ?息子さん?ほ、ほんまですか?」
滉一は、今年の新学期から虹守中に転校してきたのだ。
それは、滉一の両親が離婚した為であるが…。
李の息子の可愛がり方は強く、今でもこうやって息子の様子を見に来るのだ。
当然、都大会にも応援に駆けつけた。
2948投稿者:リリー  投稿日:2008年08月01日(金)21時27分39秒
「それにしても…吉田さんの所の探偵さん…やっぱり凄いですね…」
そう言う李の口を、慌てて塞ぐ吉田。
「ちょ、ちょっと…!それは言わんといて下さい!!一応、内緒なんですから…」
「あ…!そうだ…!この間の、歌舞伎町での騒動…吉田さんの所の探偵さんだって噂が…」
「だ、だから、こんな健全な場所で歌舞伎町の話しはしない!!ほら、息子さん、打ちますよ!!」
吉田が指差した直後、滉一はレフト前ヒットを放った。
「おお!?やっぱり滉ちゃんは天才だ!!」
李は、息子のいる一塁に向かって駆け出した。
「ふぅ…。世間って、狭いもんやなぁ…」
吉田は、李の背中を見送りながら、冷や汗を拭いた。
2949投稿者:リリー  投稿日:2008年08月01日(金)21時28分21秒
梨生奈は、違う意味で冷や汗を掻く。
「まずいわね…。これでノーアウト満塁…。外野フライでも一点入っちゃう…」
しかし、藍はまだ慌ててなかった。
まだ、得意の変化球、カーブとシュートを温存していたからだ。
とは言っても、自慢のストレートを同じ一年生の遼希と滉一に打たれてしまった。
やはり、男子と女子の力の違いか…。
真っ向の力比べでは、やはり不利なのか…。
少し悔しい気持ちがあるが、それでも藍は有海のサイン通り、随所にカーブを散りばめながら四番、五番バッターを三振に斬って落とす。
これでツーアウト満塁…。
「すげぇ…。あんなキレのいいカーブ、中々見れないぜ…」
勇気は、素直に感心する。
井上は、歯軋りをした。
「う〜ん…。この満塁のチャンスをモノにできないと…ちょっと…いや、だいぶ痛いぞ…」
そして、溜息をつくと、ベンチから立ち上がった。
「おい、郁哉…。おまえ、次、行け!!」
「え?お、俺ですか?」
そう言われた高橋郁哉は、戸惑った。
この試合、自分の出番はないと思っていたからだ。
2950投稿者:リリー  投稿日:2008年08月01日(金)21時28分38秒
「て、ことは…」
「ああ。次の回から、おまえがキャッチャーだ」
郁哉は、虹守中の正捕手なのだ。
2年生でありながら、都大会では勇気とバッテリーを組んだ。
本来なら郁哉は四番を打つが、この試合は六番打者として右バッターボックスに立った。
2951投稿者:リリー  投稿日:2008年08月01日(金)21時29分25秒
「うん…。郁哉なら、あのカーブ、何とかしてくれるだろうな…」
勇気はそう言って頷いた。
「もう…!マーさん、コロコロ選手交代しすぎ!!スコア表、ややこしくなっちゃうじゃん!!」
甜歌はそう言いながら、頬を膨らませる。
「こら!!文句言わずに、ちゃんと記録しなさい!!それから、マーさんじゃなくて、監督って呼ぶの!!」
井上は、いつも甜歌には振り回される。
2952投稿者:リリー  投稿日:2008年08月01日(金)21時30分06秒
バッターボックスに立つ郁哉を、中村有沙は横目で見る。
(む?今まで試合に出ていなかったヤツだ…。しかも、丸刈りではない…。レギュラーか?)
有海も、郁哉には当然気付いている。
都大会では、何本もホームランを放っている選手だ。
変化球を中心とした投球のサインを出す。
いくら藍のストレートも強力とはいえ、彼には打たれてしまうかもしれない。
藍は、まずは明らかなボール球を二つ続けて投げる。
さすが郁哉、選球眼が良い。
ピクリともバットを動かさない。
(つまり…小手先は通用しない…と、いうことか…。だとしたら…次は…)
中村有沙の予想通り、有海からのサインはカーブ。
配球のノウハウを、中村有沙も確実に身に着けてきている。
藍はカーブを放つ。
(…!?待ってたぜ!!)
バットを振る郁哉。
彼も、このカーブを予想していたのだ。
2953投稿者:リリー  投稿日:2008年08月01日(金)21時31分03秒
しかし、そのカーブの曲がり具合は、郁哉の予想を超えていた。
「…しまった…!」
完全に、バットの根元に当たってしまった。
打球は高く上がる。
外野フライだ。
「あ〜あ…」
虹守中のベンチは、意気消沈した。
そして、打球はゆっくりと落下するのだが…そこにいるのは、センターの有海だった。
2954投稿者:リリー  投稿日:2008年08月01日(金)21時31分31秒
「ん?ま、待て!!まだ、気を抜くな!!」
井上が怒鳴る。
何故なら、捕球しようとする有海の足が、フラフラして覚束ない。
ライトの七海、レフトのエリーが全速力で有海の元に走って来ている。
「あのセンター、ボールを落とすぞ!!」
さすがに、都大会の決勝までチームを引っ張り上げた井上だ。
こういう洞察力は鋭い。
そして井上の予想通り、有海はボールを落とした。
これで、まずは一点返した…誰もがそう思った。
しかし、またもや勇気の声が響く。
「遼希!!滑り込め!!」
「…え?」
今度は背中を向けていた為、遼希は勇気の言葉の真意がわからなかった。
キャッチャーの中村有沙のミットに、凄まじい勢いのボールが納まった。
「…え?バ、バックホーム?」
思わず遼希は、ホームを目の前にして足を止めた。
2955投稿者:リリー  投稿日:2008年08月01日(金)21時32分19秒
「そら…」
中村有沙は、タッチを兼ねて、遼希にボールを渡した。
「アウトー!!」
球審が、親指を立てて、腕を突き上げた。
「うわあああああ〜〜〜!!!」
グラウンド中が、どよめいた。
「な、何…?何が起きたの?」
遼希は、呆然とした表情で帰ってくる滉一に聞いた。
「レーザービーム…」
「え?何だって?」
「だから…ライトから…キャッチャーへ…レーザービームが…」
「マ…マジ…で…?」
「…マジで…」
2956投稿者:リリー  投稿日:2008年08月01日(金)21時32分37秒
センター有海が落としたボールを、全速力で駆けつけたライト七海が拾い、そのままキャッチャー中村有沙に返球したのだ。
ノーバウンド、当然、中継無しでバックホーム…そのプレイを見ていなかった遼希が、まんまとタッチアウトとなったのだ。
そう聞いても、遼希は未だに信じることができない。
「監督…?監督…!監督…!!」
皆が揺り動かしても、井上は口を開けたまま、微動だにしない。
「マーさん!!」
甜歌が、スコア表を挟んだバインダーで井上の頭を張り倒した。
「…お…!?おお…!!おおおお〜〜〜!!!」
井上は、今更ながらに驚愕の声を上げた。
一体、この少女達は、何なんだ…?
2957投稿者:リリー  投稿日:2008年08月01日(金)21時33分41秒
今日は、これでおちます
2958投稿者: 投稿日:2008年08月01日(金)22時33分09秒

2959投稿者:デジ  投稿日:2008年08月02日(土)04時21分17秒
李小牧って、本当の滉一の父親ですね。
七海すごすぎ!さすがですね。起死回生の三死交代。
次回は2回。今度はどんな攻撃を見せてくれるのか?続きも楽しみです。
              (今日の小言)
妹は天てれファンだと思います。(特にミストのファン)最近ジャニーズに目覚めたらしいです。
あと、あさってから旅行に行くもので、しばらく来れません。

小説更新してみました。そうしたら、テレビ戦士の半数が出るというかなり大きなスケールの小説になってしまいました。それではただ事件を解決するだけではつまらないかなと思って、ちょっぴり恋愛描写とかも入れようかと考えているんですが、どんな風にすればそれっぽい感じが出るか教えていただけないでしょうか。
2960投稿者:遼希  投稿日:2008年08月02日(土)12時50分03秒
緩慢プレーなんだけどね
2961投稿者:あげ  投稿日:2008年08月02日(土)17時48分16秒
 
2962投稿者:あげ  投稿日:2008年08月02日(土)18時45分51秒
2963投稿者: 投稿日:2008年08月02日(土)18時50分36秒

2964投稿者:リリー  投稿日:2008年08月02日(土)21時02分10秒
デジさん
はい、実際の滉一のお父さんです
実は、滉一を知る前から、李さんのことは知ってました
だから、滉一が李さんの息子と知った時は、ビックリしました
妹さんも天てれファンですか
ロケの時、戦士に話しかけることとかできるんですかね
妹さんは、中学生くらいですか?

小説、物語が動き始めましたね
面白くなりそうな予感です
教えるとか、そういうのではないのですが、私の場合、事件をメインにして、トッピングみたいな形で恋愛とかはさんでいます
でも、今作では野球と事件を同等に扱ってますが…
旅行、楽しんでください
お気をつけて

2960さん
そうなんですよね
2アウトなんだから、とりあえずホームに駆け込まないと…

では、更新します
2965投稿者:リリー  投稿日:2008年08月02日(土)21時04分32秒
「や…やっぱり…凄いんだ…。この子達…」
江莉は、二ヶ月前のあの試合は、やはり幻ではなかったと実感する。
「おい、江莉!!江莉!!」
彼女は、そっと肩を叩かれる。
バーンズ勇気だった。
「先輩…?」
「なぁ、まだクラブハウスにユニフォームあったよな?」
「ええ…。ありますけど…」
「で、江莉に頼みがあるんだけど…」
「な、何ですか?」
勇気が自分に頼み事…江莉は胸が高鳴った。
「俺、裁縫とか、できないからさ…」
そう言って、彼女の耳元で囁く。
江莉は始めは驚いたが、やがて笑顔で頷いた。
勇気は江莉の手を引っ張って、皆に気付かれない様にクラブハウスへ向かった。
2966投稿者:リリー  投稿日:2008年08月02日(土)21時04分52秒
「み、みんな!!集まれ!!」
レギュラーも補欠も、全ての選手を井上は集めた。
「ここからは、もう一点もやれないし、一回でも早く得点しなければならない…。それは皆もわかるな?」
「はい!!」
部員達の目も、闘志に漲っていた。
あんなスーパープレイを見せ付けられたのだ。
燃えないわけがない。
「ん?あ、あれ?バーンズ様は?あ〜!!江莉もいなくなってる!!ちょっと、2人ともどこに行ったのよ〜〜〜!!」
甜歌は、一人で大騒ぎをしている。
「ちょっと!!郁哉!!バーンズ様と江莉、どこに行ったのよ!?」
「あ?知らねぇよ!!うるせぇな!!」
ノーアウト満塁から、結局一点も返せなかったことに対するイライラを、郁哉は甜歌にぶつける。
「何さ!!自分のヘマでチャンスを潰したからって、私に当たらないでよ!!」
「う、うるせぇって言ってんだろ!?」
郁哉は、甜歌を軽く押した。
甜歌は、尻餅を着く。
「わあああああ〜〜〜!!!痛ぁ〜〜〜い!!!郁哉にやられたあああああ〜〜〜!!!」
大声で喚き散らす甜歌を、皆はほったらかしにしている。
どうせウソ泣きだと知っているので…。
2967投稿者:リリー  投稿日:2008年08月02日(土)21時05分36秒
それに対し、聖テレベンチは活気に満ち溢れている。
「よくやった!!ななみん!!このピンチを無失点に抑えたのは大きいよ!!」
あすみの大きな掌が、七海の頭をグリグリと撫でる。
「あんなん、朝飯前やって!!」
七海は、あすみの手を払い除けたが、まんざらでもないようだ。
「でも、本当に助かったぁ〜…。私、絶対に失点すると思ったもん…」
「ご…ごめんなさい…」
エマの言葉に、有海は声を小さくして謝った。
「はい!!ワンアウト!!」
藍は、有海の目の前で親指を突き出す。
「え?な、何?細川さん…」
目を瞬かせながら、有海は藍の親指をじっと見詰めた。
「『ごめんなさい』て言ったらアウトだからね!!もう、言っちゃダメだよ?」
「細川さん…」
有海は唇を噛み締め、じっと藍の顔を見詰める。
そんな有海の肩を、愛美は軽く叩いた。
「そうだよ。ミスは誰でもするんだもん。それを助け合うのがチームメイトでしょ?だから、『ごめんなさい』じゃなくて『ありがとう』って言おうよ」
「…はい…そうですね。ありがとう…藤本さん…。みんな…」
七海も、微笑んで有海を見詰めた。
2968投稿者:リリー  投稿日:2008年08月02日(土)21時05分57秒
「あ、そうや!!チビアリ!オノレもウチに『ありがとう』言えや!!」
「何故だ?」
「あん?オノレが欲かいてノーアウト一、二塁のピンチにしたんとちゃうんかい?それをウチが帳消しにしたったんで?」
「どちらに送球しても、あのランナーは二塁にいて、あの三番バッターで三塁に進塁していた。私のミスとは関係ない」
「オノレのミスがなかったら、五番バッターでスリーアウトやったんじゃ!!」
「あの六番バッターのことを言っているのか?あいつはピンチヒッターだから、どのみちツーアウトで出てきていただろう」
「もう、やめなよ!!ななみん!!ありりん先輩も!!折角、いい雰囲気になってたところじゃないですか!!」
藍が堪らず仲裁に入った。
あすみは、七海の頭に手を置く。
「そう。野球はミスのスポーツって、星野監督が言ってたけど…。重要なのは、ミスをした時に周りがどうカバーするか…」
そして、中村有沙を見る。
「あと、同じミスを繰り返さないこと…」
「…わかっている…。そんなことは…」
中村有沙は、七海の方を向き直る。
「何や?」
「七海…。さっきの返球は見事だった。褒めてやる」
「何や!?その偉そうな態度は!!」
また、2人は一触即発となる。
2969投稿者:リリー  投稿日:2008年08月02日(土)21時06分29秒
だが、あすみはもう2人のことは放っておいて、有海の方を向く。
「同じミスを繰り返さない…。だからね…あみ〜ご…」
「は、はい…?」
「今度、凡フライを落としたら…引っ叩くからね?」
「え…ええ…?」
途端に、有海は涙目になる。
「あはは!!ウソウソ!!今のうちに、いっぱい失敗しときなって!!」
あすみは、バシバシと有海の背中を叩く。
かなり痛い…これは既に、引っ叩かれているのではないのだろうか…?
「さあ、次の打順は、あみ〜ごからだよ!!気合いれて行きな!!」
「は…はい…!」
有海は、ヘルメットを被って金属バットを持ち、バッターボックスに向かう。
「あ、あれ?」
「どうした?あみ〜ご?」
「向こうのチーム、誰も出てこないんですけど…」
「ん?」
あすみは、相手ベンチを凝視する。
まだ、監督の井上が選手達に熱っぽく話している。
「ふふん…。今頃、熱くなったってか…?」
あすみは鼻で笑った。
2970投稿者:リリー  投稿日:2008年08月02日(土)21時07分21秒
ようやく、虹守中の選手達がグラウンドに散らばった。
全選手の白いキャップから、長い襟足の髪が出ている。
(つまり…全員レギュラーメンバー?)
有海は記憶力が良いので、よく覚えている。
「か、監督…。ど、どうしよう…」
「どうしようって…。行きなよ…」
「で、でも…全員、レギュラーですよ?私の打順になった途端に…」
「ええやん!!敵が誰になろうと、三振になるんやから!!さっさと行ってき!!」
七海が怒鳴る。
「そ、そうだよねぇ…」
再び涙目になって、バッターボックスに立つ。
そして、敢え無く三球三振…。
「うん。唯一の救いは、フルスイングの三振だってことだね」
「ドンマイや!!一木さん!!」
皆は、笑顔で有海を迎えた。
有海は、目頭が熱くなった。
「ご…ごめんなさい…」
「はい、ツーアウトー!!」
藍は、また親指を有海に突き出した。
2971投稿者:リリー  投稿日:2008年08月02日(土)21時07分51秒
しかし、虹守中のエースピッチャーの永島謙二郎は大したものだった。
続く、先頭打者ホームランのジョアンも三球三振、愛美もセーフティーバントを失敗してスリーアウトチェンジになった。
「やっぱり、さすが虹守中…。でも、レギュラーを引っ張り出したことで、面白くなってきたね…」
有海が選手として出ているので、あすみは自分でスコアをつけながらニヤリと笑った。
「もう一度、円陣組もう!!」
愛美の言葉に、皆は丸くなる。
いち早く守備位置に向かっていた中村有沙も、わざわざ戻ってきて円陣に加わった。
「さあ、ここからが本番だよ!?」
「おおー!!」
「聖テレー、ファイトー!!」
「おおー!!」
二回裏が始まった。
言ってみれば、一回表の3得点はボーナスのようなものだ。
ここから、いかに失点を抑えるか…藍の課題だ。
「よし、行くぞ!!」
バッターボックスの選手を睨む。
藍はストレートとカーブを織り交ぜ、三者凡退にした。
全て、有海の采配に拠るものだ。
守備面では、有海の存在は無くてはならないものになっている。
打撃面では、自分が有海の分までカバーすればいい…。
七海をはじめ、皆が思っていることだった。
2972投稿者:リリー  投稿日:2008年08月02日(土)21時08分20秒
今日は、これでおちます
2973投稿者:あげ  投稿日:2008年08月02日(土)21時29分16秒
2974投稿者:あげ  投稿日:2008年08月02日(土)21時37分33秒
有海がどんな活躍をしてくれるのか楽しみです

ところで甜歌と郁哉のやりとりはもしかして
2005年度(だったっけ?)のこれ→
http://jp.youtube.com/watch?v=WGKOvmg5SCY&feature=related
意識して書いたんですか?
2975投稿者:Sケンだっけ?  投稿日:2008年08月02日(土)21時56分05秒
なつかしい〜
2976投稿者: 投稿日:2008年08月03日(日)00時15分53秒
          
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