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青春探偵小説『グランドスラムの少女達』
1青春探偵小説『グランドスラムの少女達』 投稿者:リリー  投稿日:2008年01月14日(月)21時35分44秒
『グランドスラムの少女達』

CAST

藤本七海 
細川藍
一木有海  

『R&G探偵社』第3弾
『表バージョン』と『裏バージョン』の二つの小説が交互に展開し、お互いに影響し合います
『表』…聖テレジア女子学園中等部と、その野球部のメンバーを中心とした青春スポコン小説
『裏』…『R&G探偵社』の少女探偵達が、悪と戦うアクション小説
第一試合(第一話)から第三試合(第三話)までの三話構成です
2
☆レス1400までを見る☆
1401投稿者:リリー  投稿日:2008年04月18日(金)21時28分10秒
「そら」
中村有沙は、ちょんと、ランナーの胸にミットで触れた。
「アウトー!!」
少し遅れて、審判の声…。
そして…更に遅れて、球場全体がどよめきに包まれた。
「うわあああ〜〜〜!!!すげえ〜〜〜!!!」
マンボウズは歓声をあげた。
「あの、変な女、すげえええ〜〜〜!!!」
「いいぞ!!変な女〜〜〜!!!」
「変な女、言うな!!」
七海が、ライトから怒鳴り声をあげる。
聖テレのメンバーも、まるで試合に勝ったかの様に、はしゃぎまわった。
「は…あはは…」
藍は、ヘナヘナとマウンド上で腰を降ろした。
「あみ〜ご…!これは、ななみんと、あい〜んと、ありりんと、あんたの4人で掴んだファインプレイだよ…!」
あすみは、有海の肩を叩いた。
有海は…やはり泣いていた…。
1402投稿者:リリー  投稿日:2008年04月18日(金)21時29分20秒
今日は、これでおちます

1397さん…あの人とは?
1403投稿者:117  投稿日:2008年04月18日(金)21時32分05秒
有海、相当苦労して,野球の知識を身につけたんですね・・・。
「変な女」とか散々言われていますが、その光景を思い浮かべると,何だか微笑ましいです(笑)。

第2話では梨生奈の新しい彼氏が登場するんですか?
一体誰なのか、どこまで行くのか!?そして第1話の結末も気になります!
1404投稿者: 投稿日:2008年04月19日(土)13時23分30秒
高橋光臣君と鈴木亮平君はイケメンじゃないね・・・・・
私はその3人とあとNEWSの小山君が好き★

う〜早く梨生奈の彼氏がみた〜い!!!

実は昨日大ハプニングがありました
私中学の私のクラスの男子の代議員を嫌ってて(相手も嫌ってる)
緊急学年集会が掃除のあとにあり選択授業と部活動が多いのがあり言われた物にかぶる人は残りなさいと言われクラスの鍵を管理する男の子(別の子)がそれにかぶり残ってたんですけどそのせいで鍵をいつも入れてるところになくむこうの窓が開いてたんですけどそしたらその代議員が3組(うちら2組)の窓から入ってこっちのうちらのクラスの窓を開けてくれたんで入れたんだけど後で先生の雷が・・・・・
でもそんなことをする代議員いけないのに勇気あるなーって思います☆★

元天テレの岩井七世引退するんですって!!!!!
1405投稿者:七世ちゃん  投稿日:2008年04月19日(土)14時38分31秒
がやめちゃうらしいですね
1406投稿者:あげ  投稿日:2008年04月19日(土)15時56分03秒

1407投稿者:リリー  投稿日:2008年04月19日(土)20時33分57秒
七世のことは、Yahoo!のニュースでもやってましたね
瑠璃もそうですが、それぞれの考えがあるのでしょうね

117さん、霊さん、すみません
梨生奈の彼氏って、千秋のことです…
別れましたけどね

代議員?学級委員のことですか?
その人、人の為に先生に怒られたんでしょうか?
漢(おとこ)ですねぇ…

では、更新します
1408投稿者:リリー  投稿日:2008年04月19日(土)20時34分57秒
「お、俺は見た…。レ、レーザービームだ…」
呆然と七海を眺める、内村。
「ふん!どうだ!私達の守備も、捨てたもんじゃなかろう!」
中村有沙は、そう言って、内村にボールを、ヒョイと軽く投げた。
そのボールは、内村の胸に当たって、地面を転がった。
この、イチロー級のファインプレイで、聖テレ野球部は生き返った。
ラッキー7の攻撃…逆転に向けて、チームは一丸となった。
今まで、聖テレ野球部は全回三者凡退だったので、打順は一番の梨生奈からだ。
「あれ…?もしかして…俺、ノーヒットノーラン?」
ピーナッツのピッチャー、三村は、今頃気がついた様だ。
だが、本当の大切な試合が、この後に控えている。
できるだけ、省エネピッチングをしなければならない身だ。
「ちょっと待って!り〜な!」
バッターボックスへ向かう梨生奈に、あすみは駆け寄って耳うちをする。
梨生奈は一瞬驚くが、すぐに緊張した面持ちとなり、力強く頷いた。
「うおお〜〜〜!!いけ〜!!ホームランだ〜〜〜!!梨生奈〜〜〜!!!」
メロディーが吹く、ヘタクソなトランペットの音と共に、羅夢の声が耳に届く。
(ふふふ…。もしかしたら…羅夢、怒るかも…)
梨生奈は、バットを構えた。
1409投稿者:リリー  投稿日:2008年04月19日(土)20時35分29秒
「よし!目指せ!!ノーヒットノーラン!!」
自身でも、人生初となる快挙に、三村は胸が高鳴った。
そして、第一球…。
梨生奈は、バットを水平にする。
バットの僅か下にボールを当て、地面にバウンドさせた。
そう…あすみが梨生奈に授けた策は、セーフティーバントだ。
ボールは三塁線でなく、ピッチャーとキャッチャーの間を点々と転がる。
三村は、慌てふためきながら、ドタドタとボールに駆け寄った。
結局、キャッチャーがボールを拾い、一塁へ…。
しかし、梨生奈の俊足で楽々セーフ。
聖テレメンバーは、まるでホームランを打ったかの様に盛り上がった。
これであっさりと、三村のノーヒットノーランの夢は消えた。
その途端、三村にどっと疲れが押し寄せてきた。
一塁上の梨生奈は、羅夢の方を見る。
羅夢は、飛び上がって喜んでいる。
どうやら、ホームランでなくとも、塁に出れれば羅夢も満足らしい。
1410投稿者:リリー  投稿日:2008年04月19日(土)20時35分51秒
次のバッターは、二番の愛美だ。
当然、送りバント。
あすみのサインがなくとも、愛美はバットを水平に持つ。
三村は、自分でも大人気ないと思いつつも、ノーヒットノーランの夢が打ち砕かれて、苛ついていた。
そんな苛立ちは、三村にとんでもない速球を投げ込ませた。
「ひゃ…!」
愛美は、内角に来た球を避ける。
その拍子に、バットにボールが当たる。
結果はキャッチャーフライ。
愛美は、意気消沈してベンチへ戻った。
皆は、愛美の肩を優しく叩いて慰める。
「おっとなげない!!おっとなげない!!」
マンボウズから、『大人気ないコール』の大合唱が、三村に送られる。
「だって、俺は『いつまでも少年の心を忘れない大人』だもん!!」
三村は吐き捨てるように、マンボウスへ言い放った。
「おっとなげない!!おっとなげない!!」
ピーナッツのメンバーからも、三村は野次を送られた。
1411投稿者:リリー  投稿日:2008年04月19日(土)20時36分20秒
「よし!絶対にり〜なを二塁に送るぞ!!」
藍は、バットでヘルメットを被った頭を、二、三回叩く。
気合充分で、バッターボックスに立つ。
そして、あすみを見る。
あすみのサインを見て…藍は目を疑った。
「…え…?」
あすみは、何も言わず、ただ黙って頷くのみ。
藍も、力強く頷いた。
そして、バットを構える。
「ふん!どうせ、送りバントだろ?」
三村は、全く球威を落とすことなく、ボールを放った。
藍はバットをフルスイングした。
打球は、サード…内村の頭上…。
内村も、当然送りバントを予想していた為、膝を落とし、前へ駆け出していた。
ジャンプをしながら、思いっきり手を伸ばしたが、間に合わない…!
ボールは、レフトとセンターの間を、点々と抜けた。
1412投稿者:リリー  投稿日:2008年04月19日(土)20時36分54秒
打球音と共に、梨生奈は走り出していた。
二塁を抜け三塁へ…レフトはようやくボールに追い着くと、三塁の方を向く。
「違う!!ホームだ!!」
内村の声…。
「え?」
一瞬、レフトは自分の聞き間違いかと思った。
しかし、既に梨生奈は三塁を抜けてホームへと駆け出していた。
「ウソだろ!?」
しかし、もう既に三塁に投げてしまった後だった。
内村がボールを受け止めた時には、既に梨生奈はホームを駆け抜けていた。
「ち…!」
内村は、二塁に投げた。
藍は二塁に滑り込む。
「セーフ!!」
藍は、味方ベンチに向かって雄叫びをあげた。
やっと、聖テレ野球部は、一点をもぎ取った。
記念すべき、聖テレ野球部初打点を記録したのは、細川藍だった。
1413投稿者:リリー  投稿日:2008年04月19日(土)20時37分56秒
今日は、これでおちます
1414投稿者:今までの分  投稿日:2008年04月19日(土)20時57分43秒
やっと全部読めた…
これでまだ第一試合が終わってないって言うんだからすごく長いね!
アクションシーンも迫力のある描写だし、笑いも取り入れていてすごくおもしろいです
ここまで長い小説を書けるなんて、尊敬します
これからも応援しますので、頑張ってください!
1415投稿者:117  投稿日:2008年04月19日(土)21時19分25秒
聖テレ野球部はこつこつと繋げて、ついに初打点。野球部みんなが一つになってきましたね。
>「だって、俺は『いつまでも少年の心を忘れない大人』だもん!!」
確かにいかにも三村さんが言いそうなセリフですね(笑)。

彼氏は千秋のことですか。こちらこそ勘違いしてしまって、すいません。
ちょうど今はどの辺りの話なんでしょうか?千秋と出会う前でしたっけ?
何か2人に進展があるのか、少々気になるところです。

1416投稿者:やったー!  投稿日:2008年04月20日(日)00時10分33秒
SAMURAIDRIVEの過去ログが見れるようになりました!
http://221.254.11.189/log/tentele/070222214415a.html
http://221.254.11.189/log/tentele/070222214415b.html
http://221.254.11.189/log/tentele/070222214415c.html
http://221.254.11.189/log/tentele/070222214415d.html
あめぞうがちょっと復旧したみたいなんでもしかしてと思い試してみたら見事開けましたv
1417投稿者:らりるれろも期待したんですけどまだ全部は見れませんね  投稿日:2008年04月20日(日)00時19分27秒
070923205005a.htmlだけは見れますけど
まだ全部過去ログ化されてないからでしょうか
そもそも過去ログ化されることはあるのでしょうか
もしログ化されそうもなくなったらその時こそお願いします
ちなみにスレ立てもできるようになったみたいですよ
1418投稿者:そういえばスレ整理されてますね  投稿日:2008年04月20日(日)00時37分31秒
そのままでは見れませんけど
これもアドレスを変えると見れますよ↓
http://221.254.11.189/log/tentele/080114213544a.html
1419投稿者:自分もリリーさんの過去作  投稿日:2008年04月20日(日)11時09分26秒
よみたいです!


もっと早くから読んでいれば…
後悔しています

どうかお願いします!
1420投稿者:月鮫  投稿日:2008年04月20日(日)16時21分52秒
お久しぶりです;

随分と進んだようですね。
おお!聖テレも試合ですか!!
そういえば、リリーさんはアクションシーンもなのですが、野球のシーンもかくの上手いですよね。
とても分かりやすいですし…。

これからも頑張ってください。
1421投稿者:あげ  投稿日:2008年04月20日(日)16時26分29秒

1422投稿者:過去ログ  投稿日:2008年04月20日(日)16時31分08秒
ツグラム
http://221.254.11.189/log/tentele/061024210839a.html
http://221.254.11.189/log/tentele/061024210839.html

一七同盟
http://221.254.11.189/log/tentele/061209235614a.html
http://221.254.11.189/log/tentele/061209235614b.html
http://221.254.11.189/log/tentele/061209235614.html

うまくなったなぁ
1423投稿者:らりるれろも  投稿日:2008年04月20日(日)16時33分46秒
お願いします
1424投稿者:あげ  投稿日:2008年04月20日(日)16時48分43秒

1425投稿者:らりるれろ  投稿日:2008年04月20日(日)16時51分39秒
http://221.254.11.189/log/tentele/070923205005a.html
今のところはこれだけ
1426投稿者:あげ  投稿日:2008年04月20日(日)17時08分17秒

1427投稿者: 投稿日:2008年04月20日(日)17時14分58秒
さあ・・人のためかな?
そうです!代議員は学級委員のこと(中学がそうなので・・・・)
代議員だからこそじゃない??

ところで瑠璃もそうですがって・・・・?

藍は経験者ですからねえ〜
このまま聖テレは勝てるのでしょうか??
1428投稿者:あげ  投稿日:2008年04月20日(日)17時21分39秒

1429投稿者:あか  投稿日:2008年04月20日(日)17時45分55秒
・・・
1430投稿者:マジ!?  投稿日:2008年04月20日(日)20時33分26秒
もう過去ログ見れるようになったの!?
1431投稿者:つぐラム懐かしい  投稿日:2008年04月20日(日)20時37分03秒
てかつぐラムは最後、怖い
1432投稿者:リリー  投稿日:2008年04月20日(日)20時49分15秒
おお、過去ログが見られるようになったんですか?
「サムドラ」、「らりるれろ」だけでなく、「ツグラム」と「一七」まで読めるようになるとは思いませんでした
で、「ツグラム」を久しぶりに読みましたが…酷いですねぇ…
1422さんの仰る通り、あれから少しは上手くなったのかもしれません
「ツグラム」の冒頭、「道の悪い田舎道」…て…言葉の重複です…
「馬から落馬」、「頭痛が痛い」、「上を見上げた」…
でも、「グラスラ」の前身の「サムドラ」を読んで頂けたら、世界観がよくわかると思います
117さん、今の話しは6月の9日です
「らりるれろ」…梨生奈が千秋と原村で出会うのは8月2日なので、これより2ヵ月後に、梨生奈は千秋と恋に落ちます
で、その恋が終わるのはそれから僅か一週間後です
1414さん、ありがとうございます
これだけ長かったら、飽きられてしまうのかも、と不安でしたが、まだお付き合い下さるということで、嬉しく思います
月鮫さん、お久しぶりです
スポーツの描写は、「一七」のソフトボール以来ですが、難しいですね
しかも、打順の関係もありますし…
月鮫さんも、小説がんばって下さい
霊さん、瑠璃も芸能界を引退してしまったんですよ
残念なことですが…
聖テレの攻撃は、まだまだ続きます

それでは、更新します
1433投稿者:リリー  投稿日:2008年04月20日(日)20時50分23秒
これは、監督あすみの頭脳采配だった。
一回裏と全く同じ状況…梨生奈が一塁に…愛美が送りバント失敗…1アウト一塁…。
藍が送りバントのサインを無視して、結局はダブルプレイ…あすみに引っ叩かれて、酷く叱られた。
そう…誰もが、今度こそは送りバントをしてくると思っていた。
ピーナッツのメンバーだけでなく、聖テレ野球部の皆もそう思っていたはずだ。
それが、強引にヒッティング…虚を突かれたピーナッツは、守備体型を乱され、後手に回った。
梨生奈の俊足でホームイン…藍も抜け目泣く二塁を落とし入れた。
これこそが、あすみの目指している、頭脳野球…全員野球だ。
聖テレ野球部の士気は、最高値に達していた。
誰もが、勝利以外考えていない。
1アウトランナー二塁…まだまだ追加点のチャンス…!
次のバッターは、四番の七海である。
「ななみん!ホームランだ!」
あすみは、叫んだ。
サインもヘッタクレもない。
ここで一気に逆転しなければ…この試合、勝利はない…そんな覚悟で、七海はバッターボックスに向かった。
1434投稿者:リリー  投稿日:2008年04月20日(日)20時51分25秒
しかし、七海はクルリと身体を切り返すと、堤防へ…いや、羅夢とメロディーの方へ歩いて行った。
「ひぃ…。恐い…」
メロディーは、羅夢の後ろに隠れた。
「何だよ?何の用だ?コラ!!」
羅夢は、七海に対して凄んだ。
「オノレに用なんかないわ!!おい、コラ!そこのヘタクソなラッパ吹き!!」
七海は、羅夢の後ろ…メロディーを指差した。
「え…?わ、私?」
メロディーは、ますます羅夢の後ろに小さくなって隠れた。
「ウチがリクエストしたる!!山本リンダの『狙いうち』を吹け!!」
「…え?」
メロディーは目をパチクリさせる。
1435投稿者:リリー  投稿日:2008年04月20日(日)20時51分41秒
「『となりのトトロ』なん吹かれたら、打てるモンも打たれへんわ!!」
「で、でも…メロディー、その歌、知らない…」
「ち…!知らへんのかい!!『ちびまる子ちゃん』見てへんのか!?」
「メロディー、3月までカナダに居たから…」
「『トトロ』は知ってんのにか?」
「『トトロ』は、カナダでも有名だもん…」
「他に何、吹ける?」
「う〜ん…『さんぽ』かな…?」
「それも『トトロ』かい…!ま、それでええわ…。景気良く吹けや!?」
そう…『さんぽ』…七海は、走るつもりなどない…。
ホームランを打って、ゆっくりとダイヤモンドを一周するのだ。
1436投稿者:リリー  投稿日:2008年04月20日(日)20時52分20秒
相変わらず、音の外れたトランペットの音…それでも、辛うじて『さんぽ』とわかる。
七海はバッターボックスに立つ。
そして、バットの先で、センター頭上を指した。
「予告ホームランかよ!?」
ピッチャーの三村は、不機嫌に、そう突っ込んだ。
「ケケケ…。敬遠してもええで?」
「誰がするかよ!!」
40近い男が、12歳の少女と同レベルで言い合いをしている。
三村の、渾身のストレートが迫る。
七海は、初球から迷わず、フルスイングする。
打球はファールとなる。
三村は、またストレート…七海のフルスイング…そしてファール…。
これが、3回繰り返された。
「おい、おい…。変化球でタイミングを外せよ」
内村が、苦笑いで三村に助言する。
「あんな、ガキにナメられてたまるかよ!!カミさんと娘、見てんだぞ!?」
現に、キャッチャーの飯尾(クリーニング店経営の三兄弟の長男)が送るカーブのサインを、ことごとく無視しているのだ。
1437投稿者:リリー  投稿日:2008年04月20日(日)20時53分40秒
「オッチャン、野球はチームプレイやで?個人的な見栄は捨てといた方がええで?」
「やかましい!!黙って打て!!」
「え?打ってええの?」
「いや、ダメ!黙って三振しろ!!」
そして、真っ向ストレート、ファールの繰り返し…まるで、藍との対決の再現だ…。
しかし、三村は藍ほど若くはない。
疲労が溜まり、肩で息をしている。
「だから、無理すんなって…!」
内村は、もう呆れ果てている。
「ええい、この!!」
三村の何度か目の、渾身のストレート…と言っても、もう、それ程球威はない…。
七海の何度か目の、フルスイング…こちらは、衰えてはない。
スタンドのある球場ならば…バックスクリーン直撃の…特大ホームランになる弧を、打球は描いた。
2点、追加…3対2…とうとう、聖テレ野球部は、この試合をひっくり返した。
七海は、歓声の湧き上がる味方ベンチとマンボウズの方へ拳を突き出し、メロディーの吹く『さんぽ』に合わせて、ゆっくりとダイヤモンドを一周した。
1438投稿者:リリー  投稿日:2008年04月20日(日)20時54分26秒
藍がホームに帰り、そして七海も…。
みんな、滅茶苦茶に七海の頭を叩き捲くる。
まるで、サヨナラホームランを打ったかの様な騒ぎである。
「藍!どうや!!これで、一回のチョンボを帳消しや!!」
「ありがとう!!ありがとう!!ななみん!!」
藍は、七海に抱きついて泣いた。
まったく…藍がこんなに泣き虫だとは…でも、嬉し泣きならどんなに泣いても構わない…七海はそう思った。
それに比べてピーナッツは…まさか、野球初心者の女子中学生のチームに逆転されるとは…呆然と、まだ打球が飛んで行った空を見上げていた。
三村は、マウンドで正座をして、がっくりと首を垂れている。
自分なりに、無茶な勝負に行ったことを反省しているようだ。
あの、七回表のレーザービームを見ていれば、あの少女が只者ではないことぐらい、感づいていたハズなのに…。
興奮が冷めないまま、五番バッターのジョアンが、右バッターボックスに立つ。
そして、初球を強打、ライト前ヒット。
続いて六番エリーは、ストレートのフォアボールで一塁へ…。
あきらかに、ピッチャーの三村は、疲労で思うようなピッチングができないようだ。
1439投稿者:リリー  投稿日:2008年04月20日(日)20時54分58秒
ピーナッツのメンバーは、マウンドの三村の元に集まった。
「おい、三村…無理すんなよ?この後の試合あるの、覚えてるか?」
「あ…!忘れてた…!」
皆は、やれやれと言う風に、首を横に振った。
「どうする?誰かピッチャーやるか?」
「ウッチャンは?」
「ダメだ。サードの守備が手薄になる」
ピーナッツには、絶対的なエースが存在するのだが、彼は今、音信不通となっている…。
三村は、控えピッチャーとしては、よく投げている方なのだ。
「いいよ…。俺、このまま投げる」
三村は、続投を志願したが、皆は一斉に止めた。
「おい、三村はこの後の試合の為に、少し休んでおけ…。しかたがない…。ここは、みんなで一イニングずつ投げて、なんとかしのいで行こう…」
「それにしても…あんな女の子達に…ここまで苦戦するなんてな…。リーグ優勝どころじゃないぞ?」
皆は、意気消沈してしまった。
1440投稿者:リリー  投稿日:2008年04月20日(日)20時56分39秒
1438さん
そうですね…
「ツグラム」は、最初はその予定はなかったおですが、最後はホラー小説になってしまいました
グロ表現もいきすぎだと言われましたし…

では、これでおちます
1441投稿者: 投稿日:2008年04月20日(日)21時31分07秒
え〜瑠璃も????
そんな〜以外!!!

消沈てなんて読むんでしょうか?
中1の私には・・・・・

梨生奈、結局、元彼と恋に落ちるんですね
う〜ん!どきどき★

聖テレの攻撃はいつまで??
あかりなどの2年目で新人じゃない戦士は?

ヒートアイランド見ててうなりました★☆
城田優、女扱いひどいそうで・・・・
1442投稿者: 投稿日:2008年04月20日(日)21時34分10秒
さっき瑠璃のホームページ見てたら瑠璃、芸能活動引退じゃなくて休止みたいですよ???

まあどちらにしろ同じでしょうが・・・
1443投稿者:「狙いうち」とは  投稿日:2008年04月20日(日)21時40分47秒
さすがドラゴンズファンですね。

毎回楽しませてもらってます
1444投稿者:117  投稿日:2008年04月20日(日)22時02分54秒
メロディーの下手な「さんぽ」の演奏で、ホームイン(笑)。
「狙いうち」、そういえばドラゴンズの応援であったような・・・なるほどですね。
ピーナッツの伝説のエース・・・一体、誰なんでしょうか?

梨生奈と千秋、2ヶ月後ですか・・・その場面がどう描かれるのか、楽しみです。
どうやら過去の作品が読めるようになったんですね!ホントに嬉しいです。
1445投稿者:伝説のエースって  投稿日:2008年04月21日(月)01時20分19秒
まさかw
1446投稿者:u  投稿日:2008年04月21日(月)04時03分46秒
リリーさんの小説おもしろいです。
これからの展開が楽しみです。

ほかに、リリーさんの作品はありますか?
あったら教えてください。
1447投稿者:u  投稿日:2008年04月21日(月)04時06分20秒
リリーさんの小説おもしろいです。
これから展開が楽しみです。

ほかに、リリーさんの作品ありますか?
あったら教えてください。
1448投稿者:戦士の名前を  投稿日:2008年04月21日(月)08時01分23秒
使わずに書いたら?
1449投稿者:あげ  投稿日:2008年04月21日(月)16時30分36秒
オモロー
1450投稿者:リリー  投稿日:2008年04月21日(月)21時09分45秒
霊さん、「意気消沈(いきしょうちん)」と読みます
いいですよ、これからいろいろ覚えていきましょう
聖テレの攻撃はまだ続きます
城田優と言えば2年位前、ドラマで藤田ライアンが彼の少年時代を演じたことがありますよ
1443さん、117さん、「狙いうち」は、中日の応援団もやってますが、高校野球のブラバンの定番にもなってます
甲子園ということで、七海は高校野球のイメージで言ったのですが、お二人の指摘で、中日のことも思い出しました
「ツグラム」を見て気が付いたのですが、117さんは、この時からコメントを書いて下さったのですね
長い間、応援してくださってありがとうございます
1445さん、映画見ました?
ならば、正解です
uさん、初めましてでしょうか?
お恥ずかしいのですが、少し上のレスで、過去の作品の過去ログが張られています
1448さん、たしかにそうですね
まったくのオリジナルで小説を書くのは、とても難しいです
1449さん、ありがとうございます
ナベアツ、私も好きですよ

では、更新します
1451投稿者:リリー  投稿日:2008年04月21日(月)21時11分10秒
「ん?向こう、どうしたんだろ?」
藍は、長々とマウンド上で話し合っているピーナッツのメンバーを不思議そうに眺める。
「もう、ピッチャーが限界なのだそうだ。それで、誰がピッチャーをやるかで、なかなか決まらないようだな…」
中村有沙は、得意の地獄耳で、彼等の会話が聞こえるのだ。
「ええ!?ありりん先輩…聞こえるの!?あそこの会話が?」
「い、いや…おおかた、そんな所なのだろう…」
中村有沙は、そそくさと藍の側から離れた。
「ちょっと、いいですか!?」
いきなり吉田が叫んで、マウンドへ走って行った。
「な、何や?レッドさん、どないしたん?」
皆、怪訝な顔をして、吉田を遠目で見た。
1452投稿者:リリー  投稿日:2008年04月21日(月)21時11分30秒
「あの…私、投げましょうか?」
吉田の申し出に、ピーナッツの面々は驚いた。
「な、投げるって…あなた、あの子達の保護者なんじゃ…?」
「それは、お気になさらずに…。実は私、甲子園経験者なんですよ…!」
「そ、それは、よくある…アルプススタンドで応援してたとか言う…?」
内村は、半信半疑な表情で吉田を見る。
「いいえ!ちゃんとベンチにいました!控えピッチャーでしたが…」
おお〜と、一同はどよめいた。
「すげぇな…!ウッチャンですら、地方予選の決勝止まりだったろ?」
「どうする?後にリーグ戦が控えてるし…ここは…え〜と…すいません…」
「あ、吉田…レッド吉田と申します…」
「レ、レッド…?じゃあ、レッドさんにお願いしようか?」
皆は、何度も頷いた。
「でも、いいんですか?あの子達の敵になって…」
「いいんです!!あいつ等、私が甲子園に出たということを、全然、信用しないんです!!それに、あいつ等にはまず、勝利よりも敗北を経験させるべきなんです!!」
吉田は、握り拳をつくって、力説した。
1453投稿者:リリー  投稿日:2008年04月21日(月)21時11分53秒
「ち…!あの男…!」
中村有沙は、マウンド上の吉田に向かって、舌打ちをした。
「な、何考えてんねん!!あの、オッサン…!」
七海も、険しい表情で睨みつける。
「裏切り者!!」
エマも怒鳴った。
「え?何?何…?」
藍も、有海も、愛美も、梓彩も、何が何だかわからない…。
そう…『R&G』の探偵…いや、元『TTK』の『戦士』なら、あの距離の会話程度は、充分聞くことができる。
「うふふ…。いいじゃない…。おもしろそうね…」
あすみは、そう呟いた。
梨生奈は、咄嗟にあすみに聞いた。
「か、監督…?き、聞こえたんですか?あの会話が…」
あすみは、一瞬黙り込んだが、急に大袈裟に笑い出した。
「あはは!!いや、何を話してるか、大体わかるわよ!!どうせ、自分に投げさせろって言ってんでしょ?吉田さん、さっきから試合を見てソワソワしてたもん!!」
マウンド上の、ピーナッツのメンバーは散り散りになる。
マウンドに立っていたのは…三村のピーナッツの帽子を借りて被っている…『R&G探偵社』社長、レッドこと…吉田永憲だった。
1454投稿者:リリー  投稿日:2008年04月21日(月)21時12分16秒
「何で、レッドさんが敵のピッチャーになってんだよ!!」
二塁上で、ずっと会話を聞いていたジョアンは、堪りかねて叫んだ。
「ええやないか!!敵は強い方がええやろ!?」
「強ければいいよ?でも、逆に弱体化してんじゃないの?」
「やかましい!!」
エリーの言葉に、吉田は怒鳴った。
「ええか?ワシはな…京都予選の準決勝、先発ピッチャーとしてマウンドに上がり、見事チームを勝利に導き、甲子園出場の原動力となったんや!!今、それを証明したる!!」
「京都予選の準決勝…?こらまた、微妙やな…」
七海は、ムキになっている吉田を見て、失笑した。
「ふん!まあ、いい…。早いところ打ち崩して、マウンドから引き摺り下ろそう…」
中村有沙は、金属バットを握った。
彼女は九番バッター…エマか梓彩が塁に出れば、打順が回ってくる。
しかし、吉田の言葉にウソはなかった。
さっきまで投げていた三村の球より、はるかに速い。
エマ、梓彩と連続三振に打ち取り、追加点を許さなかった。
「ち…!何で、こういう時だけ、ウソをつかへんのや!!あのオッサン!!」
七海は、憎々しげに吉田を睨み、ライトの守備位置に走って行った。
1455投稿者:リリー  投稿日:2008年04月21日(月)21時12分55秒
この後、八回表、裏と両チーム無失点のまま、最終回に入る。
九回表、ピーナッツの攻撃。
ここで最低でも一点入れなければ、ピーナッツの負けが決定する。
最初は、試合前の肩慣らしのつもりだった…。
しかし、気がついてみれば、3対2とリードを許し、まさかの敗戦濃厚な展開…。
ここは、男として、大人として、絶対に負ける訳にはいかなかった。
打順は、三村の代わりに七番打者となる、吉田からだ。
「ふぅ…!ななみん達のおじさんか…」
藍は、深呼吸して、吉田を迎える。
180センチの長身である吉田は、立っているだけで威圧感がある。
ピッチャーマウンド上でも、迫力があった。
八回の裏の攻撃でも、藍は吉田相手に三振にとられた。
「でも、絶対にピッチングでは負けないから!!」
藍は、自分に言いか聞かせるように呟いた。
1456投稿者:リリー  投稿日:2008年04月21日(月)21時13分21秒
「ふん…!無理をすると、身体に毒だぞ?」
中村有沙は、右バッターボックスに立つ吉田に向けて、囁いた。
「無理なんか、してへんよ…。有沙…」
そう強がった吉田だが、既に肩が痛くなってきた。
8回裏…無失点に抑えたものの、満塁のピンチを背負ってしまったからだ。
中村有沙にシングルヒット、梨生奈はフォアボールを選んで、ノーアウト一、二塁。
愛美の一塁線を転がるバントで、それぞれ進塁。
続く藍は、三振…しかし、次の七海にデッドボール…乱闘になりかけ、吉田は一目散に逃げ出す。
これでツーアウト満塁。
しかし、ジョアンをファーストフライに打ち取り、このピンチを乗り越えた。
やはり、久しぶりに急激な運動をすると、どこかで無理が祟るものだ。
それでも『R&G』の探偵達に、自分の実力を見せ付けることができて、満足だった。
そして吉田の打席は…敢え無く三振…。
1457投稿者:リリー  投稿日:2008年04月21日(月)21時13分52秒
今日は、これでおちます
1458投稿者:117  投稿日:2008年04月21日(月)21時22分02秒
レッドさんがピーナッツの選手として、登場ですか。なんて大人気無い(苦笑)。
一応実力を見せつけることができたから、それだけ満足・・・なんと虚しい(笑)。
七海にレッドボールとは、ある意味空気を読んでいるかも(笑)。続きも楽しみです!
1459投稿者:レッドはまだピーナッツに入ってなかったのですね  投稿日:2008年04月21日(月)21時44分39秒
登場人物表に書いてあるのになかったことにされてるのかと思ってましたよ
1460投稿者:あすみん  投稿日:2008年04月21日(月)23時44分48秒
戦士と同じように会話が聞こえるのか…
1461投稿者:リリー  投稿日:2008年04月22日(火)20時43分45秒
ここで、レッドさんがピーナッツに加入です
最初からチームに居たという設定も考えたのですが、少しエピソードを膨らませてみたかったので…
レッドさんは、本当に甲子園出場経験者ですからね
ゴルゴさんもそうですが

あすみも会話が聞こえているとなると…これは伏線ですので、覚えていて下さいね

では、更新します
1462投稿者:リリー  投稿日:2008年04月22日(火)20時44分41秒
藍は、続くバッターも三振に斬って落とす。
そう…あと一人…最終打者、府川を迎える。
府川は、まったく藍の球にタイミングが合わず、全打席で三振している。
慶応大学出のインテリらしいが、野球のセンスはあまりないようだ。
実家の経営しているCD屋で毎日中高生の万引きを捕まえている為、足はやたらと速いらしいが、塁に出ないのでその得意技を披露する機会もない。
そして、もう既に、バッターボックスで腰が退けている。
ここでピンチヒッターを出せないのが、人数ギリギリの草野球チームの苦しいところだ。
「あっとひとり!!あっとひとり!!」
マンボウズが声援を送る。
「う、うるさいよ!!」
裏返りそうな声で、府川は少年達に怒鳴った。
「うるせぇ!!オカマ!!」
「オ、オカマじゃないよ!!」
「ヘルメット、二つも被るな!!」
「こ、これは髪の毛!!」
おそらく、この府川を三振に打ち取り、聖テレ野球部のデビュー戦初勝利…皆は、そう確信していた。
1463投稿者:リリー  投稿日:2008年04月22日(火)20時45分05秒
あっと言う間に、ツーストライク…。
「あっと一球!!あっと一球!!」
少年達の掛け声が、変った。
「すごい、すごい、すごい…!!ウチら、勝ってまうで!!」
七海はライトの守備位置で、バタバタと足を踏み鳴らした。
エマもエリーも棒立ちで、構えても居ない。
梨生奈、ジョアン、愛美も梓彩も、僅かに膝の角度が浅い。
誰も、府川がバットにボールを当てるなど、万が一も考えていない…。
「不味いね…」
あすみは呟いた。
「…え?」
今まで笑顔だった有海も、あすみの深刻な横顔を見て、不思議に思った。
「あみ〜ご…。あんた、この試合、もう勝ったつもりでいるでしょ?」
「え…は、はい…。あの府川さん…まったく、細川さんの球を打ててませんもん…」
「うん。あい〜んも、ありりんも、三振で終えようと考えてるみたい…。でも、こういう時ね…予想もしてないことが起るものなのよ…」
「よ、予想もしてない…?」
有海は、あすみの言葉に不安になった。
1464投稿者:リリー  投稿日:2008年04月22日(火)20時45分25秒
マンボウズの少年達も、聖テレ野球部、勝利の瞬間を固唾を飲んで見守っている。
「おじいちゃん、あい〜ん達の、大勝利やな?」
笑顔で寛平を見る帆乃香。
しかし、寛平は静かに首を振ると、ポケットから、一枚のタロットカードを取り出した。
逆向きの…『塔』のカード…。
「へ?」
「帆乃香…。この意味は、な〜んや?」
「ア、アクシデント…?」
寛平は、ニヤリと笑って頷いた。
「な、何が起るん?」
「ま、黙って見とき…」
寛平は、帆乃香の頬を挟んで、首をマウンドに向けさせた。
1465投稿者:リリー  投稿日:2008年04月22日(火)20時45分48秒
藍は、これが最後の投球になるだろうと確信する。
受ける、中村有沙も同様だった。
「せめて、思いっきり振って、華々しく散れ!!」
ピーナッツのベンチから、半ばヤケクソ気味のアドバイスが飛ぶ。
そして、府川もヤケクソ気味にバットを振った。
「ティン!!」
意味不明な奇声と共に、バットはボールの遥か上を通過する。
「やったぁ!!」
聖テレベンチ側の者達は、一斉に飛び上がった。
「走れ!!」
ピーナッツベンチ側の者達は、一斉に叫んだ。
試合終了を告げる、審判の声がかからない。
「…!?」
中村有沙の後方を、ボールがコロコロと転がっていた。
痛恨のパスボールだ…。
1466投稿者:リリー  投稿日:2008年04月22日(火)20時46分12秒
「走れ!!走れ!!」
もう、ピーナッツの面々は、顔を真っ赤にし、喉をからして叫んでいる。
「…!!振り逃げだ!!ありりん!!ボールを拾って、一塁に投げて!!」
あすみの声が、球場中に響き渡る。
「く…!」
中村有沙は、ボールを追い駆けて掴むと、一塁を振り返る。
「…は、速い!?」
府川は、もう既に一塁を駆け抜けていた。
毎日、万引き少年とチェイスをしている成果が、ここで出たのだ。
ピーナッツのベンチは、歓声で湧きあがった。
そう…次のバッターは、一番に戻って内村である。
「くぅ…!最後の最後で、この私のヘマか…!」
中村有沙は、悔しそうに足でグラウンドの土を蹴っ飛ばした。
そして、一番嫌なバッター…内村がバッターボックスに入った。
1467投稿者:リリー  投稿日:2008年04月22日(火)20時46分37秒
「嫌な予感がするな…」
そう呟くあすみに、有海は心配そうに話しかけた。
「い、嫌な予感…て…?」
「うん…。藍はさ、今ので完全に打ち取った、という安心感に、一瞬でも浸っちゃったんだよね…。また、ジリジリとするような緊張感を心に取り戻すのは…少し難しいと思うよ…」
「あ…!!」
有海は突然、声をあげた。
府川が、二塁へ盗塁したのだ。
「ね…?私の言った通りだろ?藍、まったく盗塁を警戒してなかった。これで、得点圏内にランナーが居て、今日、猛打賞の内村さん…。藍の頭の中は、おそらくネガティブなイメージしかないだろうね…」
「そ…それじゃあ…」
「うん…。ま、良くてランナー、一、三塁…。最悪のケースで、逆転ホームラン…」
あすみの言葉が終わらないうちに…打球音が響き渡る。
そして、マンボウズの少年達の悲鳴…。
藍は、打球の行方を目で追おうともしない。
七海は、懸命に走るが、諦めた。
その最悪なケース…逆転ツーランホームランを、内村は放ったのだ。
九回表…4対3…ピーナッツは再びこの試合をひっくり返した。
1468投稿者:リリー  投稿日:2008年04月22日(火)20時47分06秒
今日は、これでおちます
1469投稿者:117  投稿日:2008年04月22日(火)21時23分40秒
あすみ監督の鋭い勘、そして前回触れられていた耳の良さ・・・
今後の伏線ですか。一体どういう人物なのか?続きも楽しみです!
1470投稿者:ふかわ〜www  投稿日:2008年04月22日(火)22時03分55秒
 
1471投稿者:82  投稿日:2008年04月22日(火)22時10分26秒
1425の続きよみたい
1472投稿者:せやねん  投稿日:2008年04月22日(火)22時23分52秒
あとあれだけやねん
1473投稿者:あげ  投稿日:2008年04月22日(火)22時48分20秒

1474投稿者:あげ  投稿日:2008年04月23日(水)10時17分06秒
↓らりるれろの1350まで
http://221.254.11.189/log/tentele/070923205005b.html

誰か見れるようにしてくれ〜
1475投稿者:あげ  投稿日:2008年04月23日(水)12時54分23秒
昨日初めてサムドラ読ましていただきました。
あまりに面白いので、徹夜して読んじゃいました。
グラスラも読んでますのでがんばってください。応援しています。
1476投稿者:リリー  投稿日:2008年04月23日(水)20時58分54秒
『らりるれろ』の続きだけ、何故か読めませんね
もし直らないようなら、まだ生きているスレッドに続きを書いてみましょうか?第二試合が始まる前に、未読の方は読まれた方がわかりやすいと思います

1475さん、ありがとうございます
徹夜とは、光栄です
学校(?)は大丈夫でしたか?

あすみの伏線が活きてくるのは、実はまだまだ先なのですが…
それでは、更新します
1477投稿者:リリー  投稿日:2008年04月23日(水)21時00分07秒
「くそ!!トニーめ!!」
中村有沙は、ミットを地面に叩きつけた。
藍は、ガックリとマウンド上に膝を着く。
愛美と梓彩は、そんな藍に駆け寄った。
そんな中、内村は両手を上げて、チームメイトの歓声に応えていた。
「あい〜ん…。ドンマイ…!」
梓彩は、藍の背中を叩いた。
「ご…ごめん…なさい…」
藍は、咽び泣いていた。
まるで、甲子園出場を逃してしまった球児の様に…。
「まだ、試合は終わってないよ!!さ、まずスリーアウトを取って、最終回、サヨナラ勝ちを目指そう!!」
愛美は、藍を無理矢理立たせた。
ジョアンも、梨生奈も、エマもエリーも七海も皆、マウンドに集まった。
そして…ゆっくりと中村有沙が近づいてくる。
険しい表情で…。
1478投稿者:リリー  投稿日:2008年04月23日(水)21時00分28秒
「ひ…!」
藍の顔に、怯えの色が走った。
肩をすくませ、小刻みに震わせている。
「あ、ありりん先輩!あい〜んを許してやって!」
愛美は、藍の肩を抱きしめて引き寄せた。
「どけ!!」
中村有沙は怒鳴った。
そして、その前に七海が躍り出る。
「おい、コラ!!元はと言えば、オノレのパスボールが引き鉄になったんとちゃうんかい!?」
中村有沙は、歩みを止めた。
「その通りだ…。だから、七海…そこをどけ…」
「へ…?」
呆然とする皆を尻目に、藍の目の前に進む、中村有沙。
「あ…ありりん…先輩…。私…」
ビクビクと怯えながら、それでも唇を噛み締め、自らも前に進み出る藍。
「藍…。私を殴れ!」
「え!?」
その、中村有沙の意外な言葉に、一同は呆気に取られた。
1479投稿者:リリー  投稿日:2008年04月23日(水)21時00分47秒
「今の逆転…完全に私の責任だ。このままでは私自身、ケジメがつかない。さあ、殴れ!」
「…そ、そんな…」
てっきり、自分が殴られるのかと覚悟をしていた藍だけに、そんな行動はとれるはずもない。
「さあ、遠慮するな!!殴れ!!」
「で、できません!!」
激しく首を横に振る、藍。
「私達は戦友だ!!仲良しクラブで野球をやっているわけではない!!」
「え?仲良しクラブじゃなかったの?」
エマとエリーは、顔を見合わせた。
「せやったら、ウチが代わりに殴ったるわ!!」
「貴様が殴ったら、私は10倍にして返す!!」
中村有沙は、拳を振り上げる七海を牽制する。
1480投稿者:リリー  投稿日:2008年04月23日(水)21時01分17秒
「ありりん先輩を殴るなんて…私にはできません!!」
藍は、涙をポロポロと落としながら叫んだ。
「このまま、何事もなかったように済ませて、次のプレイに移ったら、また同じ事の繰り返しになるぞ?最終回の逆転の為にも…さあ、私を殴れ!!」
「…う…」
藍が、まだ躊躇をしていると…パシン…と乾いた音が響いた。
キャプテンの愛美が…中村有沙の頬を引っ叩いたのだ。
「…ま…まにゃ先輩…?」
皆は、信じられない、という表情で、キャプテンを見た。
「…さ、これでいいでしょ?ありりん先輩…。あとアウト一つ…気合入れて取ろう!!」
童顔の愛美が…とても勇ましく見える…。
「お、おう!!」
一瞬、気後れしたが、皆は闘志をみなぎらせ、それぞれの守備位置に散った。
「…ふん…!全然効いてないぞ、愛美…。ビンタをする時は、もっと腰を入れるのだ…」
中村有沙も、走ってホームの守備位置に着いた。
「ま…まにゃ先輩…。あの…」
藍が、声をかけた時、愛美はヘナヘナとしゃがみ込んでしまった。
1481投稿者:リリー  投稿日:2008年04月23日(水)21時01分40秒
「は…初めて人を殴っちゃった…。しかも…先輩を…」
「だ、大丈夫?」
愛美は梓彩に抱き起こされた。
「あ、ありがとうございます!!まにゃ先輩!!」
藍は帽子を取って、深く頭を下げた。
「わ、私は平気…。それより…絶対に勝とうね、あい〜ん…」
潤んだ目で微笑みながら、愛美も守備位置に戻って行った。
「凄い!愛美!!私、信じられないよ!!愛美がこんなことできるなんて…」
梓彩は走りながら、愛美の肩に手を置いた。
「わ、私が一番、信じられないわ…!ほ、本当に大変だ…。キャプテンって…」
愛美の走る足は、まだ覚束ない。
そして、藍はすっかり立ち直り、続く打者を三球三振に打ち取った。
藍は、この試合…10奪三振を記録した。
1482投稿者:リリー  投稿日:2008年04月23日(水)21時02分06秒
それでは、これでおちます
1483投稿者:117  投稿日:2008年04月23日(水)21時36分15秒
「私を殴れ!」とは・・・まさに「走れメロス」の世界ですね。
藍が殴るのかなと思ったら、予想を反して,愛美ですか・・・意外な展開に思わず笑っちゃいました。

「らりるれろ」の続き、ボクも改めて見たいです。なんとか方法はあるんですかね?
1484投稿者:ありりんも愛美もかっこいいな  投稿日:2008年04月23日(水)22時05分34秒
試合の結果が楽しみ
1485投稿者:らりるれろー  投稿日:2008年04月24日(木)20時49分32秒
夜みたいです
1474見れない泣
この続き楽しみ♪
1486投稿者:リリー  投稿日:2008年04月24日(木)21時06分19秒
らりるれろの再掲載は、この小説の第一試合が終わってからでいいですか?

いよいよ九回裏…最終回ですが…

では、更新します
1487投稿者:リリー  投稿日:2008年04月24日(木)21時07分54秒
「よし!!じゃあ、泣いても笑っても最終回!!絶対に2点以上獲って、この試合、勝つぞ!!」
「おう!!!」
聖テレ野球部は、皆、円陣を組んで雄叫びをあげた。
この回、一人目の打者は…まだ無安打のエリーだ。
エリーは金属バットを握り締め、バッターボックスへと向かって行く。
その時だった…。
「ゲームセット!!試合終了!!」
ふくよかな顔の審判が、そう叫んだ。
「…え?」
聖テレ野球部のメンバーは、皆その場で固まった。
「…な、な、何でやねん!?まだ、ウチ等の攻撃が残ってるやん!!」
七海は、掴みかからん勢いで、審判に向かって突進して行く。
しかし、審判は冷静に七海をいなして、こう告げた。
「だって、もう9時だから…」
「…へ…?」
すっかり忘れていた…。
この試合、9時を過ぎたら、自動的に試合を終了する…そういうルールだったのだ…。
何と言う、あっけない結末…。
1488投稿者:リリー  投稿日:2008年04月24日(木)21時08分16秒
気がついて見ると、堤防にはピーナッツの本日の正式な対戦相手…『天歳ビッツ』の面々が勢揃いしていた。
「あれ…?ピーナッツ、何やってんだ?」
「うん?女の子のチームとやってんのか?」
「え?4対3…?おいおい、なかなかいい試合やってんじゃないの…」
「俺達とやる体力、残ってんだろうな?」
ビッツの皆は、口々にはやし立てた。
彼等は知らない。
藍の気迫の篭ったピッチングを…七海のレーザービーム、そしてホームランを…聖テレ野球部の少女達の、懸命のプレイを…。
聖テレ野球部は…暗く沈んでいた。
藍は、また涙に濡れていた。
九回表…あの時、試合を終えていれば…。
その無念は、中村有沙も同じだった。
あのパスボールがなければ…それに…このまま終わっては、殴られ損だ。
「仕方がない…。そういうルールで承知したのは私達なんだから…。ルールに従う…これは、アスリートの第一条件だよ…」
監督のあすみは、一人一人の肩を叩いて回った。
1489投稿者:リリー  投稿日:2008年04月24日(木)21時08分39秒
しかし、聖テレのベンチに、ピーナッツの内村が近づいて来た。
「む…!!トニーめ!!何しに来た!?」
中村有沙は、ありったけの殺気を内村にぶつけた。
さすがに表の住人である内村にも、その凄まじい殺気は届いている。
「ちょ、ちょっと、恐いな…。ま、待ってよ…。とりあえず、話しを聞いて…」
内村は、少し後退りした。
「何ですか?」
あすみの方から、内村に歩み寄る。
内村は、その大きな鼻の頭を掻きながら、照れくさそうに言った。
「ええ…。その…とても女の子とは思えない…素晴らしいチームだったなと…まず、そう伝えたくて…」
「ああ…。ありがとうございます!!そう、言って頂いて、部員達も喜びます!」
あすみはそう言って、皆の方を振り返る。
「何や!?コラ!!ウチ等に勝ったからって、いい気になんなや!?」
「いいか?今度、貴様等と対戦する時は、完膚なきまで叩きのめす!!首を洗って待っていろ!!」
七海と中村有沙は、内村を睨み付けて恫喝した。
「あ…あの…。全然、そんな感じではないんですけど…」
「おほほほ…。この子達、素直じゃないから…」
冷や汗を流しながら、あすみは、乾いた笑い声をあげる。
1490投稿者:リリー  投稿日:2008年04月24日(木)21時09分06秒
内村は、顔を引き締めて、あすみに向き直って言う。
「で…その、本題に入りますが…やりませんか?九回裏…」
「………え?」
あすみは、一瞬、皆の方を向いた。
皆も、あすみと同じ顔をしている。
「あ…あの…いいんですか…?」
「はい…。そちらさえ良ければ…」
そして、もう一度皆の方を向く。
「わああああ〜〜〜!!!」
皆は、もう既に叫んでいた。
「い、いや…その…今から大事な試合なんでしょ?」
あすみは、慌てふためきながら、内村に確認をとる。
「大事な試合?これだって、大事な試合ですよ。そうじゃないんですか?」
「は…はい…。そう…ですが…」
「それにね…あいつ等…『ビッツ』の連中に見せてやりたいんですよ…!我々が、どんなに素晴らしい試合をしていたのかってね…」
思わぬ逆転のチャンス…もう、絶対に逃してはならない…。
あすみは当初、部員に負け試合を経験させたかったのだが…今は、何が何でも勝利を掴み獲らせたい、と、そう思っていた。
1491投稿者:リリー  投稿日:2008年04月24日(木)21時09分34秒
「いや〜、良かったな、みんな。これも、ピーナッツの皆さんのご好意によるものや。感謝せなあかんな」
吉田は、爽やかな笑顔で、聖テレメンバーの側にやって来た。
「あ!!裏切り者や!!」
七海の声を合図に、『R&G』の探偵達は、一斉に、グローブやボール、ヘルメット等を、吉田にぶつけた。
「いたたた!!痛い!!」
頭を抱えて、しゃがみ込む吉田。
「こら!!やめなさい!!」
あすみは、七海達を怒鳴る。
「野球を志す者なら、道具は大切に扱いなさい!!」
「な、何や…。そっちかい…」
吉田は、寂しそうに、トボトボとピーナッツベンチに戻って行った。
「でも…ななみん達のオジサン…野球上手いね…」
藍が、七海に囁いた。
「うん。そうやな…。甲子園出場って…あながちウソやないんやな…」
実は七海は、少し吉田を見直していた。
「レッドソックスに、岡島っておるやん。岡島、レッドさんの高校時代の後輩らしいで」
「ええ!?ウソ!?マジ!?じゃ、じゃあ、あのオジサンに頼めば、岡島のサイン、貰えるんじゃ…」
「コラ!!後にせぇ!!」
七海は、藍の袖を引っ張った。
1492投稿者:リリー  投稿日:2008年04月24日(木)21時10分09秒
今日は、これでおちます
1493投稿者:117  投稿日:2008年04月24日(木)21時16分29秒
約束の時間の9時で試合終了・・・と思いきや、裏もやる気になったんですね。とりあえず一安心。
あすみ監督の「(レッドさんより)道具は大切にしろ」とか「岡島のサインが貰えるかも?」とか、かなりウケました。
続きも楽しみです!
1494投稿者:リリー  投稿日:2008年04月25日(金)18時28分55秒
今日は、出かける用事がありますので、早めに更新します
1495投稿者:リリー  投稿日:2008年04月25日(金)18時30分15秒
内村が、ビッツの面々に何度も頭を下げている。
どうやらビッツは、この試合が終わるまで待っていてくれるそうだ。
ピーナッツのメンバーが守備位置に着いて、試合再開。
まずは、最終回の先頭打者、エリーから。
「かっ飛ばせよ!!エリー!!」
ネクスト・バッターズサークルから、エマが声を掛けた。
エリーは緊張した面持ちで頷くと、バットを構え、キッと吉田を睨む。
「何やねん…。エリーまで、恐い顔して…」
吉田は溜息をついたが、絶妙なコントロールで、エリーをツーストライクと追い込んだ。
「えりりん!落ち着いて!球を良く見て!!」
藍が、大声でアドバイスを送る。
しかし、これまでノーヒットのエリーは、何としてでも塁に出たかった。
そして、明らかなボール球に、手を出してしまう。
ファーストの大竹(店が潰れ、借金を抱えて首が回らず、野球どころではない身なのだが…)が、前進して捕球し、そのまま走ってくるエリーに駆け寄ってタッチしようとする。
が、エリーは身体を後ろに反らせると、そのままブリッジをし、大竹のタッチを避けた。
「おお!?」
一瞬、大竹は何が起きたのかわからず、二歩三歩、よろける様に前につんのめった。
エリーはそのままペタンと地面に背中を着けると、腹筋の力で跳ね起きて、一塁を駆け抜けた。
「やったぁ〜!!」
聖テレベンチは…特にエマは大喜びだ。
これで、ノーアウトで同点のランナーが出た。
1496投稿者:リリー  投稿日:2008年04月25日(金)18時30分40秒
次の打者、エマに対し、あすみのサインは送りバント。
エマの後の八番打者、梓彩の方が送りバントは上手いのだが、ソフトボール経験者の梓彩のバットに、同点打を期待する。
エマは、最初から送りバントの状態で構えた。
一塁から僅かにリードを取るエリーに、大竹が声を掛けた。
「布団が吹っ飛んだ…。死んだお爺ちゃんの…」
「…え…?」
一瞬、エリーは頭が空白になった。
「へい!!」
大竹は、マウンド上の吉田に声を掛ける。
無意識に、大竹に送球する吉田。
「あ…!」
エリーは慌てて、滑り込みの状態で一塁に戻るが遅かった。
「アウト!」
痛恨の牽制死…。
「わああああ〜〜〜!!!」
エリーは、一塁上で、突っ伏したまま号泣してしまった。
1497投稿者:リリー  投稿日:2008年04月25日(金)18時31分06秒
「ああ…」
一気に、ムードが沈滞してしまった、聖テレベンチ…。
「仕方がない…。これも野球の恐さだよ…」
あすみは、静かな口調で言った。
「監督、私、行きます!」
愛美は、まだ一塁上で泣いているエリーの元に駆け寄った。
顔を隠して咽び泣くエリーを、愛美は優しく抱き抱える。
大竹は愛想笑いをしているが、その笑顔には半分、罪悪感が交じっている。
ベンチに戻って来たエリーを、皆は優しく出え迎えた。
あすみのエマへのサインは、ヒッティングに変わる。
「くそ…!よくもエリーを泣かしたな!?」
怒りに燃えたエマは、一、二塁間を破る、根性のヒットを放った。
「ドンマイ!あと、2人!」
内村は、焦りの出始めた吉田に、声を掛けた。
次の梓彩に送ったあすみのサインは、送りバント…しかし、自分も生き残るバントだ。
もう、一つたりともアウトを無駄にはできないのだ。
1498投稿者:リリー  投稿日:2008年04月25日(金)18時31分49秒
梓彩も、この試合ではノーヒットだ。
何としてでも、エマを得点圏内の二塁まで送らねばならない。
しかも、自分も生き残る…。
梓彩にとっては、重すぎる課題だ。
しかし、成功させればまたチームは息を吹き返す。
そして何より、エリーに笑顔が戻るはずだ。
横目で、エリーを見る梓彩。
まだ、顔を覆って泣いている…。
(絶対に、失敗しないぞ!!)
全集中力を、マウンド上の吉田にぶつけた。
吉田の球は、内角に来た。
「…!?」
一瞬、身を退く梓彩だが、それでもバットの真ん中より下に、狙ってボールを当てた。
1499投稿者:リリー  投稿日:2008年04月25日(金)18時32分01秒
三塁線、ギリギリにボールは転がる。
一回裏の愛美のバントを捕った時と同様、内村は前進して捕球しようとする。
(切れるか…!?)
内村は、今回の球は見送った。
だが、ボールは、三塁の白い石灰の上に乗ったまま、その動きを止めた。
「あちゃ〜〜〜…」
内村は、思わずその場にしゃがみ込んだ。
ワンアウト、一塁、二塁…聖テレのチャンスが広がった。
そして、ようやくエリーが泣き止んだ。
1500投稿者:リリー  投稿日:2008年04月25日(金)18時33分25秒
今日は、これでおちます
1501投稿者:あげ  投稿日:2008年04月25日(金)18時41分27秒

1502投稿者:117  投稿日:2008年04月25日(金)21時32分54秒
エリーのブリッジ・・・懐かしいですね。エマの執念のヒットもすごいですね。
>ボールは、三塁の白い石灰の上に乗ったまま、その動きを止めた。
プロ野球でもよくありますよね。息を吹き返した「聖テレ」、続きも楽しみです!
1503投稿者: 投稿日:2008年04月25日(金)21時41分16秒
うお〜意外と楽しみ〜☆
エリー泣くのなが!
117さんくわしいんデスね・・・・

聖テレガンバレ!!!!
1504投稿者:大事な試合?これだって、大事な試合ですよ。そうじゃないんです  投稿日:2008年04月25日(金)23時11分57秒
ウッチャン、かっこええ・・・

大竹の悲しいダジャレw
懐かしい!
1505投稿者:あげ  投稿日:2008年04月26日(土)11時03分31秒
 
1506投稿者:デジ  投稿日:2008年04月26日(土)13時24分17秒
四月間ずっとこれなくてすいません
聖テレがんばれ!
続きもがんばってください
ところでこれってまだ1試合ですか?
1507投稿者:リリー  投稿日:2008年04月26日(土)17時48分40秒
エリーは、やたらと泣いていた記憶があります
あと、柔軟な身体
両方、いっぺんに表現してみました
大竹さんの「悲しいダジャレ」、大好きだったんですよね

117さん、霊さん、いつもコメントありがとうございます
デジさん、おひさしぶりです
まだ、お話しは第一試合(第一話)です
でも、この九回表と九回裏を残すのみとなりました
試合は、いよいよクライマックスに入ります

では、更新します

1508投稿者:リリー  投稿日:2008年04月26日(土)17時50分27秒
次は、先ほどの回で吉田からヒットを放っている中村有沙だ。
上手くいけば、同点に追い着くかもしれない。
吉田の顔は、緊張感でこわばっている。
「ふん…!仕事の時も、それぐらい緊張して欲しいものだ…」
中村有沙は、皮肉気味に呟いた。
ヒットを打たれているため、どうしてもボールが先行してしまう。
それでも吉田は、何とかフルカウントまでこぎつけた。
「よし!!これで決めや!!」
吉田は、渾身のストレートを放った。
中村有沙の膝元に、ボールが来る。
「む!?」
中村有沙は、一瞬打ちかけたが、バットを止める。
「ボール!!フォアボール!!」
「ええ〜〜〜!?」
審判の声に、吉田はマウンド上でひっくり返った。
ワンアウト、満塁…そして、打順は上位に戻る…!
1509投稿者:あげ  投稿日:2008年04月26日(土)17時50分46秒

1510投稿者:リリー  投稿日:2008年04月26日(土)17時50分49秒
「あれ…?おかしい…」
湧き返るベンチの中、有海だけが首を傾げた。
「どうした?あみ〜ご?」
あすみは、何の気なしに聞いた。
「今の…ストライクです!本来なら、これでツーアウトです」
「え…?」
普段、大人しく、自信のなさげな有海が、随分はっきりとモノを言う…。
「だって、前の回の中村先輩の打席の時、さっきと同じ球を、審判は『ストライク』って言いました」
「…な、何だって?」
「はい。全く同じ高さ、同じ角度からのボールです。さっきは『ストライク』って言ったのに、今度は『ボール』って言ったんです」
「…お、覚えてるの?」
「はい」
当然の様に、言ってのける有海。
1511投稿者:リリー  投稿日:2008年04月26日(土)17時51分23秒
あすみは、慌てて有海の抱えているスコア表を取り上げた。
「あみ〜ご…!四回裏のり〜なの打席の三球目…どんなボールだった?」
「四回裏の木内さんの打席ですか?…う〜…んと…内角高めのストレート…ですか…?」
スコア表を確認する、あすみ…。
「…!!…じゃ、じゃあ…五回裏のじょわんの打席…初球は?」
「ええと…たしかカーブで詰まらされて、セカンドフライです」
「………。七回裏のななみんのホームラン、何球目で打った?」
「う〜んと………11…いや、12球目ですね…」
「うん…。正解…」
一体、この子は何なのだろう…?
確か、僅かな期間で野球のルールブックを丸暗記してしまった前例もある…。
記憶力が良い、というレベルではないような気がする。
「でもね、あみ〜ご…。こういうのも野球だから…。これは『儲け』ってことでいいんだよ…」
「そういうものなんですか?」
あすみは、有海にスコア表を返す。
おそらく、彼女にはスコア表など、要らないだろうが…。
1512投稿者:リリー  投稿日:2008年04月26日(土)17時52分06秒
梨生奈が、意気揚々と打席に立つ。
長打が出れば、一気に逆転、サヨナラの場面だ。
「行け〜!!梨生奈〜〜〜!!!かっ飛ばせ〜〜〜!!!」
羅夢の声と共に、メロディーの、何が何だかわからないトランペットの音…。
しかし、自分から名乗り出ておいて、敗戦投手になるつもりは、吉田にはなかった。
ここで逆転を許したら、自分の『R&G』での立場は、ますます危うくなる予感がした。
ここは、全力投球で梨生奈に挑んだ。
そう…高校時代でも、こんな速球は投げなかっただろう…。
結局、梨生奈は三振を喫した。
マウンド上で雄叫びをあげる吉田。
梨生奈は、悔しそうにバットで地面を叩いた。
これでツーアウト満塁…キャプテンの愛美に、打順は回ってきた。
愛美は、不安げな顔で、監督にサインを仰ぐ。
あすみは、腕組みをして頷くだけだった。
そう…もう、ツーアウトなのだ。
送りバントもスクイズもない。
愛美が三塁のエマをホームに帰さなければ、聖テレ野球部の敗戦が決まってしまうのだ。
1513投稿者:リリー  投稿日:2008年04月26日(土)17時53分04秒
愛美は緊張感で口をカラカラにしながら、バッターボックスに向かう。
すると、愛美の背中に聞き覚えのある声が、投げかけられた。
「愛美…!リラックス!落ち着いて行け!!」
「…!?」
愛美は、思わず後ろを振り向いた。
堤防の芝の上に…愛美の父親…なすびこと、浜津智明が立っていた。
「お、お父ちゃん!?」
愛美は、思わず叫んでしまった。
そして、無意識に浜津の所へ駆け出した。
これには、七海達、『R&G』の探偵も驚いた。
「げ…!な、なすびや…!」
梨生奈も、手を口に当てる。
「ちょ、ちょっと…!マズイわ!!もし、こんな所を加藤組に見つかったら…!」
梨生奈は、バットを握り締めると、一気に堤防を駆け上がった。
加藤組の者に着けられていないか、確かめる為だ。
羅夢も梨生奈の考えがわかったのだろう…反対側の堤防へ駆け出して行った。
「あ、羅夢ちゃん!どこに行くの?」
「メロチュー!着いてくんな!!」
羅夢は、後ろを振り向くことなく怒鳴りつけた。
「で、でも、何でいきなり現れたん?」
七海は唖然とするが、浜津に顔を見られないよう、帽子を目深に被った。
1514投稿者:リリー  投稿日:2008年04月26日(土)17時53分32秒
「お父ちゃん!!何で、ここに…?」
愛美は、半ば怒っているかのように、浜津に詰め寄った。
「な、何でって…。お義母さんに手紙をもらったんだ…。おまえが、今度野球の試合をするって…」
「だ、だから、何で来たのよ!!」
「だ、だって…見たかったんだ…。おまえが頑張ってる姿…」
「え…?」
「お父ちゃんな…頑張ってる愛美を…バカになんかしてないから…。応援してるから…。それを…知ってもらいたかったんだ…」
「…お父ちゃん…」
その為に…?ヤクザに見つかってしまうリスクを抱えたまま…?
父にとって、それは随分勇気の要った決断だっただろう…。
愛美は、はにかみながら、答えた。
「うん…ありがと…。お父ちゃん…。見ててよ…。私達…絶対に勝つから…!!」
愛美は、右手を差し出す。
浜津は、愛しそうに、両手でその手を包み込む。
暖かい…。
力を…少し分け与えてもらったような気がする…。
自分は絶対に打てる…!
どこからともなく、そんな自信が湧き上った。
1515投稿者:リリー  投稿日:2008年04月26日(土)17時53分53秒
もう、余計な緊張も気負いもない。
しっかりとした足取りで、バッターボックスに立った。
さっきは、吉田相手に送りバントを成功させた。
しかし、今度は最低でもヒットを打たなければならない。
フォアボールを選ぶ、という手もあるが、そんな消極的な態度では、絶対に三振してしまうような気がする。
自分が、ソフトボールで繰り返した失敗だ。
だが、この試合だけは失敗するわけにはいかない。
どうせ失敗するなら、前向きな失敗を…練習の時、あすみからそう言われたのを思い出す。
吉田の球は速かった。
梨生奈を三振にした、あの球よりも速い。
いつもの自分なら、ここで気後れしてしまうところだが、今の愛美は違う。
そう…自分はキャプテンなのだ。
自分は、人から頼られることはあっても、自分から頼り込んでしまうことは許されない…!
立場が人を成長させる…これも、あすみの言葉だ。
あすみの言葉は、一つ一つが勇気を与える。
自分も、この打席で…皆に勇気を与えよう…。
そして…父親にも…。
1516投稿者:リリー  投稿日:2008年04月26日(土)17時54分16秒
愛美は、バットを懸命に振った。
どんなボールだったか、おそらく後で思い出そうとしても、思い出せないだろう…。
かなりの球威のあるボールだった。
かなり、手が痺れている。
(つまった…?)
セカンドフライ?いや…ライトフライ…?
ふらふらと上がった打球は…セカンドとライトがお見合いをする結果を引き起こした。
テキサスヒット…そう、エアポケットに落ちるヒット…。
三塁のエマは、その必要はなかったが、頭から滑り込んでホームに帰った。
愛美のタイムリーヒットで…4対4…同点!!
聖テレベンチ…そしてマンボウス…高見の見物のビッツでさえ、お祭り騒ぎとなった。
浜津は、空高く、そのひょろ長い両腕を突き上げている。
愛美は、一塁上で、父親に向かって手を振った。
遠い昔、こんな風に、何かにつけて得意気に、父親に向かって自分を誇らしげにアピールしていたことを…愛美は思い出していた。
これで、聖テレ野球部の敗戦はなくなった。
もう、目指すは逆転サヨナラ勝利しかない…!
1517投稿者:リリー  投稿日:2008年04月26日(土)17時55分48秒
今日は、これでおちます
1518投稿者:あげ  投稿日:2008年04月26日(土)17時55分51秒

1519投稿者:おもろ  投稿日:2008年04月26日(土)18時07分17秒

1520投稿者:亜美  投稿日:2008年04月26日(土)18時22分15秒
オモロー
1521投稿者:あげ  投稿日:2008年04月26日(土)18時24分38秒

1522投稿者:あげ  投稿日:2008年04月26日(土)21時14分00秒
今日も更新早かったですね
1523投稿者:117  投稿日:2008年04月26日(土)21時39分41秒
リスクを持った上で、なすびさんが再び登場ですか。
文章で読んでいるととても感動しますが、実際になすびさんの顔を思い浮かべたら(笑)!?
どうにか敗戦だけは阻止、聖テレ頑張れ!
1524投稿者:サムドラに出てたなすびは  投稿日:2008年04月26日(土)22時34分33秒
随分、しょーもない役だったけど(七海に金属バットでどつかれる役)、今回はいい役だなw
1525投稿者:デジ  投稿日:2008年04月27日(日)04時35分11秒
なすび3再登場!いい役してますね
敗戦阻止。こうなりゃ目指すは逆転ホームラン!!
聖テレがんばれ!
1526投稿者: 投稿日:2008年04月27日(日)11時20分54秒
うほっ!目指すは逆転サヨナラ勝利!!とは大胆な・・・・・
でもがんばれがんばれ!!

なすびええの?こんな所に来て・・・余計愛美が悲しむだけとちがうん?
あの加藤組に見つかってもたらやばいやろ?
今回は、まあ、なすびええ役やンな!

ファイト!!
1527投稿者:あげ  投稿日:2008年04月27日(日)12時13分02秒

1528投稿者:リリー  投稿日:2008年04月27日(日)21時02分34秒
なすびと愛美の親子の物語が中途半端に終わってしまったので、ここらで完結あせたかったんです
サムドラでは、そんなに考えなしで出したキャラクターだったので、いい場面が書けてよかったです

霊さん、関西の人ですか?
七海や帆乃香の関西弁でおかしな所があったら教えて下さい
私、お笑い芸人の関西弁しか知らないものですから…

聖テレvsピーナッツ、今夜決着がつきます

では、更新します
1529投稿者:リリー  投稿日:2008年04月27日(日)21時03分35秒
「申し訳ない!!」
「いや、私こそ…!」
「いや、僕が悪い!!」
吉田とセカンドとライトの府川が、頭を下げて謝り合っている。
そんな大人のやりとりなど眼中に入れず、藍がバッターボックスに立つ。
「今こそ…!あの、一回裏の大チョンボを…帳消しにしてみせる!!」
この試合、最後の打者になるであろう…藍…。
藍は、あすみの方を振り向いた。
「監督…!私、実はヒーローになりたくて、スポーツをやってました…!」
「ん?」
あすみは、耳を傾ける。
「みんなにチヤホヤされて、気持ちよくて…それが…私がスポーツをやってきた理由だったと思います…」
藍は、真っ直ぐにあすみを…そして、チームメイトを見た。
「でも…今は違う!!私、皆をヒーローにしたい!!まにゃ先輩も、あず〜先輩も…ありりん先輩、じょわん先輩、ななみん、り〜な、えまちん、えりりん、そして…あみ〜ご…私の一振りで…みんなをヒーローにします!!」
「こら!!藍!!」
あすみは怒鳴った。
「私は…?監督の私が抜けてるよ!!」
そして、にっこりと微笑んだ。
1530投稿者:リリー  投稿日:2008年04月27日(日)21時03分54秒
吉田も、これ以上、点を許すわけにはいかなかった。
いや、点を許したら、それでサヨナラ負けだ。
絶対に、藍を打ち取らなければならない…。
で、なければ、ピーナッツのみんなに申し訳ない…。
そんな決意が、吉田の肩を、ガチガチに硬くしている。
すると、誰かがその吉田の肩を、ポンと叩いた。
「?」
内村だった。
「レッドさん…。今度の日曜日…また試合があります…」
「へ?」
「よかったら…入団しません?ピーナッツ…」
「え?わ、私を…?」
「背番号の希望、後で聞きますね…」
内村は、サードに戻って行った。
そう…野球はチームプレイなのだ…。
そして…自分は、間違いなく、このチームの中に居るのだ。
吉田の、肩の力が抜けた。
1531投稿者:リリー  投稿日:2008年04月27日(日)21時04分12秒
逆に、肩に力が入っているのは、藍の方かもしれない。
吉田の繰り出す球に、どんどん喰らいついて行く。
あと少しでホームラン…という打球もあった。
まるで七海の様に、ファールで粘る。
こうなったら、根競べだ…。
どちらが、先に力尽きるか…。
しかし、結末は呆気ないものだった。
藍がフルスイングして当てたボールが、聖テレベンチの方へ、高く上がった。
「…お?」
皆は、ボールの落下地点から離れた。
いや、一人だけボールに向かっている者がいる。
『伝説のサード』内村だ。
横っ飛びで、グローブをはめた左手を伸ばした。
内村は、ベンチに肩を激突させた。
「ぐぇ…!」
内村の呻き声が聞こえた…。
皆は、呆然と内村を見下ろす…。
彼のグローブには、しっかりとボールが納まっていた。
1532投稿者:リリー  投稿日:2008年04月27日(日)21時04分32秒
内村は、痛みに顔をしかめながらも、ゆっくりと立ち上がり、高々とグローブをはめた左手を掲げた。
「ゲームセット!!」
審判の声が響く。
「うおおお〜〜〜!!!」
球場に散っていたピーナッツのメンバーは、内村に目がけて駆け出した。
内村も、肩を押さえながら、チームメイトに向かって走り出した。
聖テレのメンバーは、呆然と内村を見送った。
結局…4対4の引き分け…。
聖テレジア女子学園中等部・軟式野球部のデビュー戦は、引き分けに終わった。
1533投稿者:リリー  投稿日:2008年04月27日(日)21時04分53秒
藍は、頭を垂れながら、重い足取りで皆の元に戻る。
もしかしたら…藍は泣いているのかもしれない…。
どう、言葉を掛ければいいのか…皆は顔を見合わせた。
すると、藍はその顔を上げた。
「へへへ…。ゴメン…!」
満面の笑顔で、両手を合わせた。
「………」
一瞬の沈黙の後…。
「オノレ!何を笑うとんねん!!」
皆は、藍を取り囲んで、滅茶苦茶に頭を叩いた。
「…え!?ウソ!!勝ったの?」
遠くの堤防から眺めていた梨生奈は、そう勘違いをした。
まるで、満塁ホームランを打った仲間を、迎えているように見えたからだ。
1534投稿者:リリー  投稿日:2008年04月27日(日)21時07分07秒
聖テレの初戦は、引き分けで終わりました
ここまで長く引っ張っておいて、すみません…
でも、こうやって段々と強くなっていく姿を描いていきたいと思ってます

長かった九回表も、次回で終了です
第一試合は、もうすぐ終わります

では、これでおちます
1535投稿者:疑問  投稿日:2008年04月27日(日)21時11分57秒
>遠くの堤防から眺めていた梨生奈は、そう勘違いをした。

とあるけど、梨生奈は、ベンチにいるのでは?
1536投稿者:1513で  投稿日:2008年04月27日(日)21時31分23秒
>梨生奈は、バットを握り締めると、一気に堤防を駆け上がった。
だね
1537投稿者:117  投稿日:2008年04月27日(日)21時41分41秒
「自分がヒーローになりたかった」けど、今は「みんなをヒーローにしたい」藍・・・今はみんな一致団結して、チームプレイですよね。
こんな場面で「入団勧誘」とは(笑)。
9回の表もまもなく終了ですか・・・続きも楽しみです!
1538投稿者:いいねえ  投稿日:2008年04月28日(月)13時41分33秒

1539投稿者:リリー  投稿日:2008年04月28日(月)20時43分09秒
はい、長かった九回表は、今日で終わります
あの元帥と対決した七回裏と同じ容量がありました

では、更新します
1540投稿者:リリー  投稿日:2008年04月28日(月)20時44分00秒
聖テレ野球部とピーナッツは、一列に並んで礼をした。
そして握手。
藍は、左利きなので、左手を差し出した。
内村も左手で握手をしたが、痛みに顔をしかめた。
「あ…!ごめんなさい!」
藍は、すぐに握手を右手に切り替えた。
「大丈夫ですか?」
「うん…。大丈夫、大丈夫…」
相変わらず、屈託のない笑顔を向ける内村。
「本当は…準備運動のつもりだった…」
「え?」
「それが、これから、まさかのダブルヘッダーだもんな…。正直、もう家に帰って寝たいよ…」
内村と藍は、笑い合った。
「ええ試合やったなぁ〜。七海…」
吉田は、手を差し出した。
「ほんまや…。レッドさんも、案外やるもんやな…」
七海は、力いっぱい、吉田の手を握った。
「憎らしいくらい、凄かったで?」
そして、吉田は悲鳴をあげた。
1541投稿者:リリー  投稿日:2008年04月28日(月)20時44分22秒
聖テレ野球部は、皆と健闘を讃えあう。
ただ、中村有沙だけは、引き分けで終わった結果に、納得がいってないようだが…。
「ほんと、今日、試合ができて良かった…」
藍は、しみじみとそう、呟いた。
「だって…みんなの、まったく知らなかった一面が…見れたような気がする…」
それに、七海が応える。
「そやな…。意外な一面が見れたわ…」
「意外な一面?」
「例えば…藍は、意外と泣き虫やってこと…」
「もう!!ななみん!!」
藍は、七海を追い掛け回す。
そこに、マンボウズの皆も駆け寄ってきた。
「惜しかったな、あい〜ん!!でも、ほとんど勝ちみたいなもんだよ!」
「そうそう、だって、相手は大人だぜ?」
「あいつ等、大人気なかったよな〜」
そう口々に言いながら、藍を取り囲む少年達。
1542投稿者:リリー  投稿日:2008年04月28日(月)20時44分43秒
「おい、コラ!!ウチなんか、ホームラン打ってんで?レーザービームも出したやないか!!」
藍ばかりに群がる少年達に、七海が怒鳴った。
「うちは、ちゃんと見てたよ!!ななみんの活躍!!」
「ん?」
七海は、後ろを振り返る。
そこには、帆乃香と、マンボウズの監督、寛平が立っていた。
「あ…。確か…帆乃香…やったっけ…?」
「うちの名前、覚えてくれてたん?うれしい!!」
帆乃香は、七海に抱きついた。
「な、何や?」
「うち、ななみんのこと、憧れるわ!!ななみんのファンになってしもうた!!」
「そ、そうか…?おおきに…」
帆乃香は、瞳を輝かせて、七海を見上げた。
「うち、絶対に聖テレに入る!!そして、ななみんと一緒に野球すんねん!!」
帆乃香が、もし聖テレに入って来たら…帆乃香が中1の時に、七海は中3…。
「ああ、ギリギリやな…。うん、待ってるよ」
「うん!!待ってて!!ななみん!!」
帆乃香は、再び七海に抱きついた。
1543投稿者:リリー  投稿日:2008年04月28日(月)20時45分09秒
「なぁ…。あの人…」
寛平は、堤防を杖で指した。
そこには、娘に抱きついて喜ぶ浜津と、とても迷惑そうな、キャプテンの愛美がいた。
「ん?ああ…。ウチのキャプテンと、そのおとんや…」
「ふ〜ん…。仲良さそうな親子やね…」
「でも、中々、複雑な事情があるらしいで…。何?あの親子がどうかしたん?」
「いや…。何でもないよ…。ただ、微笑ましい親子やなぁ…て…」
そして、寛平は、帆乃香の頭を、杖でチョンと触れた。
「さ、帆乃香…。わし等もそろそろ試合やで…」
「あ、うん!ねぇ、ななみん…!うち等の試合も見てくれる?」
帆乃香は、甘えるように、七海の袖を引っ張った。
「あ、ごめん!ウチ等、今から学校に戻ってミーティングがあんねん!」
手を合わせて謝る七海に、帆乃香は口を尖らせた。
「な〜んや…。つまらん…。今度、絶対見てな?約束やで?」
帆乃香は、帽子を振って、隣の球場へと駆け出して行った。
1544投稿者:リリー  投稿日:2008年04月28日(月)20時45分34秒
「内村さん…。その…ピーナッツ入団のことなんですが…」
「ん?ああ…はい、はい」
内村は、痛めた肩を気にしながら、吉田の方を振り向いた。
「もし…私なんかで良ければ…お仲間に入れて下さいますか…?」
「ええ、喜んで!!いや〜、助かるな…!吉田さんなら、強力な戦力になりますよ!!」
内村と吉田は、固い握手を交わす。
「で…吉田さん…ご職業は…?」
「はい、探偵です!」
「た、探偵…?」
意外な答えに、内村は目を丸くした。
「で、では、早速ユニフォームを調達したいと思いますんで…背番号のご希望は…?」
「あ、では、『18』をお願いします…」
「あ…!ごめんなさい…。『18』は、もう既にいるんですよ」
「え?いるんですか?」
「はい…。もう、ここ2、3年、姿を見せてないんですが…本来なら、そいつがエースピッチャーだったんですよ。速い球投げるんだ…これが…」
内村は、遠い目で空を見た。
1545投稿者:リリー  投稿日:2008年04月28日(月)20時45分53秒
「で…いつでも俺達は待っているぞ、って意味で、一応欠番になってるんです。だから…すみません…」
「そうですか…。では…『1』を…」
「ごめんなさい。『1』もいるんです…」
「じゃあ…『2』…」
「『2』ですか?ああ、はい、空いてます!それでは、『2』ってことで…」
内村は、再び球場へ足を向ける。
「あ、そう言えば、今から本当の試合でしたね…。大丈夫ですか?なんか、肩も痛めてるみたいですし…」
「え…?ああ、大丈夫、大丈夫…。この試合、優勝争いも絡んできますんで…。何としてでも勝ちますよ!」
内村は、吉田に向けて握り拳をつくった。
もう既に、ピーナッツとビッツの両チームは、整列を終えている。
内村は、小走りでチームメイトの元へ向かった。
今から、怒涛の連戦である。
「いや〜…。おそらくワシより年上やろうけど…気持ちは若いなぁ〜…」
吉田は、眩しそうに内村の背中を眺めた。
しかし、聖テレ野球部との試合で全ての力を出し尽くしたピーナッツは、続く第二戦、ビッツ相手に、ウソのようにボロ負けした。

(『九回・表』・・・終了)
1546投稿者:リリー  投稿日:2008年04月28日(月)20時50分29秒
最後の一文は、『スラムダンク』最終回のパクリです…

まるまる野球の試合でしたが、野球に興味ない方はどうだったのでしょうか?
スポーツを文章にするのは、思ったより難しいです
打順とか、イニングとか考えなければならないし、それぞれの見せ場もつくっていかなければならない…
手を抜く時は、どうしても投手戦なってしまうし…
『ドカベン』の作者、水島新司って偉大ですよね…

次で、第一試合(第一話)最終回になる、九回裏です
おそらく、今週中には、終わるかもしれません

では、今日はこれでおちます


1547投稿者:あげ  投稿日:2008年04月28日(月)21時04分31秒
面白かった〜
裏も期待してます
1548投稿者:117  投稿日:2008年04月28日(月)21時19分03秒
熱戦が繰り広げられた9回表も終わりですか・・・いやぁ、ホントに良かった!
七海と帆乃香の絡み・・・大阪っ子同士、関西人の僕としては、なんか微笑ましい。
一方、寛平さんがなすびさんと愛美を気にしていること・・・何かの伏線でもあるんでしょうか?
次は久々の裏,しかも第1試合の最終回!続きも楽しみです!
1549投稿者: 投稿日:2008年04月28日(月)21時24分10秒
はい。関西の隣の兵庫県の中のさらに田舎ですけど・・・・・?
リリーさんは?
ああ実は七海の何を笑うとんねんは漢字が分からないから平仮名ですけど「何わろとんねん」でもいけますよ!

あの〜ドカベンって何ですか??
知らない物でつい言ってしもたんやけど!

今週中に終わった場合次の小説書いてください!!
待ってます!!

第一試合て謙二郎や勇気らのチームとの試合のことですか?
1550投稿者:35  投稿日:2008年04月28日(月)21時46分00秒
>36さん
ありがとうございます。
1551投稿者:>49  投稿日:2008年04月28日(月)22時00分42秒
簡単に言うと、長い歴史を持つ野球漫画
昭和47年に第一巻が発売されて、いまだに続いてる
↓参考に
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%82%AB%E3%83%99%E3%83%B3
1552投稿者:スラダンは  投稿日:2008年04月28日(月)23時15分28秒
スポーツ漫画で初めて泣いたぜ
野球部なのに
1553投稿者:リリー  投稿日:2008年04月29日(火)21時00分09秒
スラムダンクは凄いですよね
最初はヤンキー漫画にするのか、ラブコメにするのか方向性を見失ってたみたいですけど、バスケ一色になってからは、どんどん面白くなっていって…
スラムダンクが成功してから、マイナースポーツの漫画化が流行しましたが、作者がそのスポーツを愛してなかったら、まったくの駄作になりますね
「ダイスキング」とかいうハンドボール漫画が、まさにそれで…

117さんも、霊さんも、関西の人なんですね
私は、東京です
お爺ちゃんの代よりもずっと前だから、いわゆる江戸っ子ってやつです
近所に、雷門があります
それなりに故郷に愛着はありますが、関西でうどんを食べてから、東京のうどんが食べれなくなりました
東京のうどん、醤油の味しかしないんだもん…よく、今まで食べてたなぁ…

今日から九回裏です
もうすぐ、第一試合(第一話)が終わります
勇気や謙二郎は、第二試合(第二話)に出る予定です

では、更新します
1554投稿者:リリー  投稿日:2008年04月29日(火)21時02分17秒
『九回・裏』

≪2007年6/9(土)≫
「ちょっと、いいかしら?有紗…」
ジャスミン・アレンは、ダーブロウ有紗の部屋のドアをノックをしながら声をかけた。
「何だ?」
素っ気無い返事が、ドアの向こうから聞こえてきた。
「相談したいことがあって…」
「ほう…。そりゃ、奇遇だな。私もだ」
「入ってもいい?」
「おう、入れよ」
ジャスミンは、ある程度覚悟をして部屋に入る。
「………」
やはりだ…。
菓子の袋、今週発行された全ての漫画雑誌、DVDやCDが、ケースに入れられることなく散乱している。
服も脱ぎ散らかされ、ダンベルやハンドグリップ、エキスパンダーやバランスボールも無造作に置かれている。
そして、部屋の中にある4台のパソコンは全て起動されており、それによって、部屋の中は凄い熱気だ。
床にはこんがらがったコードが、散らかる様に伸びている。
ダーブロウ有紗はパンティ一枚の姿で、ベッドの上でうつ伏せに寝転がってノートパソコンをいじっていた。
1555投稿者:リリー  投稿日:2008年04月29日(火)21時02分31秒
ジャスミンは、呆れ果てて言葉を失っている。
ダーブロウ有紗は、典型的な『片付けられない女』であった。
今年の四月までは、チームのパートナー、中村有沙がせっせと片付けていたのだろうが、チームを解散してから一人部屋になって、こんな有様になったのだ。
一月前に来た時は、ここまで酷くはなかった…。
1556投稿者:リリー  投稿日:2008年04月29日(火)21時02分58秒
「何だよ?相談したいことって…」
いつまで経っても話を切り出さないジャスミンに対し、ダーブロウ有紗はパソコン画面から目を離さず聞いた。
「………場所を変えない?」
「いや、めんどくせぇ…。ここでいい…」
「私の部屋に、美味しいチーズケーキがあるんだけど…」
「今、ハバネロ食ったから、腹減ってねぇ…」
彼女の指を見ると、ハバネロチップスの粉で真っ赤に染まっている。
そんな手で、パソコンをいじっている。
「お!?アメリカの特殊部隊と同じ仕様のアーミーナイフがオークションにかけられてる!!こりゃ、買いだな!!」
ジャスミンとの会話を放り出して、ダーブロウ有紗は高速のブラインドタッチでキーボードを打つ。
ふと見ると、散らかり放題散らかった部屋の片隅に、綺麗に整頓された空間があった。
透明のガラスケースの中に、整然と並べられた大小長短、様々なナイフ…75本…。
ダーブロウ有紗の商売道具だ。
しかし、ここ半年間、この刃は人の血を吸っていない。
1557投稿者:リリー  投稿日:2008年04月29日(火)21時03分18秒
ダーブロウ有紗は電源を切らずにパソコンを閉じ、身体を起こして胡坐をかくと、初めてジャスミンの方を見た。
「で…何だよ?ジャスミン」
「あ…うん…」
「そんな所で突っ立ってないで、座れよ」
「…座る所がない…」
「ち…!しょうがねぇな…」
ダーブロウ有紗は、ベッドのすぐ下の床を占領している、むき出しのDVD、CDのディスクを、足で蹴散らした。
「さ、できたぞ。座れ」
「…どうも…」
遠慮がちに、いや、恐る恐るジャスミンはその場に正座した。
パリ…。
「う…」
どうやら、床に落ちていたポテトチップスの欠片を、割ってしまったらしい…。
「で、相談したいことがあるんだろ?」
「…ええ、そうよ」
「電話があったんだろ?『元帥』から…」
「!?」
ダーブロウ有紗は、既に承知のようだった。
1558投稿者:リリー  投稿日:2008年04月29日(火)21時03分36秒
「どうやって、私の携帯の番号を知ったのかわからないけど…つい、さっき電話があったの。新しいホストクラブを開店したから、招待したいって…」
「ふ〜ん…。私の所には、そろそろ弁償するロレックスを届けに来いってさ…。代わりに、今晩は飲み代は御馳走してくれるって…」
『元帥』…楠本柊生が、ダーブロウ有紗、ジャスミン・アレンといった、『R&G探偵社』?1、?2に接触をしてきた。
「有紗に電話するのはわかるわよ?でも、何で私にも?」
「う〜ん…。ここでこうやって考えてるよりも、実際に行った方が早くねぇか?」
「…!!行くの?」
「どっちみち、私は行かなきゃいけないだろ?ロレックスを弁償してやるって約束を破ったら、加藤組と…いや、楠本って男と全面戦争だ」
「そんなに…手強い相手?楠本って…。私達が全員でかかれば勝てるんじゃないの?」
「ああ。勝つのは容易いな。でも…」
「でも?」
「私達の中に死人が出る。少なくとも、デッパリンダ、パッツン、ダッチャの3人は確実に死ぬな」
「猪突猛進トリオね…」
「ああ…。電話で話しただけだが、楠本みたいなタイプと、あの『猪突猛進トリオ』とは無茶苦茶相性が悪い」
「なるほど…。でも、有紗。あなたを入れれば、『猪突猛進カルテット』よ」
「ははは…!私は、そんじょそこらの猪じゃねぇよ?簡単には死なねぇさ…。でも…私達の中に一人でも死人が出たら…こっちの負けだ…」
ダーブロウ有紗は、真剣な顔になって、そう呟いた。
1559投稿者:リリー  投稿日:2008年04月29日(火)21時04分11秒
「今、何時だ?」
「時計ないの?携帯とかは?」
「どっかに埋もれてる。探すのがめんどくせぇ」
「もう…。私は手首に跡がつくのが嫌だから、腕時計はしないのよ…。あ、そのパソコンで確認したら?」
「お…!そうだった…」
ダーブロウ有紗は、ベッドに寝っ転がると、パソコンを開く。
「ふ〜ん…。もうすぐ6時か…。じゃ、行くか!ジャスミン、おまえも付き合え!」
「そうね…。行くんなら、2人で行きましょって相談をしたかったから…」
ジャスミンは、そう言って立ち上がると、膝に張り付いている粉々になったポテトチップスの欠片を手で払った。
「おい!人の部屋、散らかしてんじゃねぇよ!!」
「………悪かったわね…」
ジャスミンは、納得のいかない謝罪をする。
バスルームに駆け込んだダーブロウ有紗は、丁寧に手を洗う。
そして、ガラスケースの戸を開けると、二本のアーミーナイフを取り出した。
「ほい!ジャスミン」
普通の人間だったら刺さってしまうんじゃないのか、というくらいの速さで、ダーブロウ有紗はジャスミンに一本ナイフを投げつけた。
それを、難なく受け止めるジャスミン。
「これは?」
「おまえに貸してやる。まさか、あんなバカみたいな恰好でホストクラブに行くつもりじゃあるまい?」
西洋の甲冑を左腕と両足に装着する、ジャスミンの戦闘スタイルのことを、ダーブロウ有紗は言っているようだ。
パンツ一丁の女に言われたくない…と、ジャスミンは思った。
1560投稿者:リリー  投稿日:2008年04月29日(火)21時06分15秒
酒を飲むかもしれないので、ダーブロウ有紗とジャスミンは、ポルシェで天歳駅前まで送って貰った。
運転するのは、俵姉妹の姉、有希子だ。
「サンキュー、ミミー。帰りは電車で帰るからいいや」
ダーブロウ有紗とジャスミンは、ドアを開けて、降り立とうとするが、有希子に呼び止められる。
「ダーさん…。ジャスミン…。どうか…お気をつけて…」
ダーブロウ有紗は、穏やかな笑顔を有希子に向ける。
「ああ…。気をつけるよ…。心配すんな…」
そして、掌は有希子の頬へ…。
「ミミー。歯、見せてみな」
有希子は、恥ずかしそうに、イッと前歯を見せる。
「うん、うん。キレイになった…。前より可愛くなったぞ?」
「じゃあ、ダーさんも、一回、歯を折られてみます?」
「へへへ…。逆だよ。何か、ふざけたことを抜かしやがったら、あの楠本って野郎の歯を、総入れ歯にしてやる!!」
「じゃあね、有希子。気をつけて帰ってね」
ダーブロウ有紗とジャスミンを降ろすと、銀のポルシェは天歳駅から走り去って行った。
1561投稿者:リリー  投稿日:2008年04月29日(火)21時06分43秒
その走り去る、有希子のポルシェを見詰めながら、ジャスミンは言う。
「もう、元気を取り戻したみたいね…」
しかし、ダーブロウ有紗は、静かに首を横に振る。
「いや…。まだ、ジョーが退院してねぇんだ…。まだ、心に傷を持ってる…」
「そんな有希子に、送らせたのは、ちょっと気の毒だったわね…」
「本当は、レッドさんに送ってもらおうと思ったんだけどな…」
「ああ…。今日、ベースボールで張り切ったみたいね…。身体中、湿布貼りまくってたけど…」
「肝心な時に、役に立たねぇオッサンだぜ!!」
2人は、肩を並べて繁華街に向けて歩き出した。
行き先は…天歳市内最大のデパート、テレヴィア横の新設ビル。
その三階にある、ホストクラブ『箱舟(アーク)』。
そう…梨生奈と羅夢の『チームR』が拷問を受け、中村有沙と七海の『チームN』が激闘を繰り広げた…あの部屋だ…。
そこに、楠本はちゃっかりと店を出したのだ。
1562投稿者:リリー  投稿日:2008年04月29日(火)21時07分06秒
今日は、これでおちます
1563投稿者:117  投稿日:2008年04月29日(火)21時26分21秒
久々の「裏」ですね。
楠本さんが再びRGと接触ですか・・・これは2話に繋がるのでしょうか?
「箱舟」で「アーク」ですか・・・深いですね(笑)。
1564投稿者:片付けられない女www  投稿日:2008年04月29日(火)22時59分53秒
 
1565投稿者: 投稿日:2008年04月29日(火)23時45分08秒

1566投稿者:デジ  投稿日:2008年04月30日(水)04時07分34秒
前半...そうなると有沙は、一応片付けられるのか―(笑)
後半...楠本さんさりげないですね。
これはまた、一悶着ありそうですね
1567投稿者:あげえ  投稿日:2008年04月30日(水)16時57分26秒
何この小説www
私の小説のほうが百万倍上手い

http://ame.x0.com/tentele/080218184429.html
1568投稿者:あげ  投稿日:2008年04月30日(水)17時19分12秒

1569投稿者:あげえ  投稿日:2008年04月30日(水)17時45分01秒
感想どしどしどうぞ!

http://ame.x0.com/tentele/080218184429.html
1570投稿者:リリーさんの書く  投稿日:2008年04月30日(水)20時26分49秒
ダーさんのキャラが大好きだ
1571投稿者:あげ  投稿日:2008年04月30日(水)20時35分11秒

1572投稿者:リリー  投稿日:2008年04月30日(水)21時11分14秒
1571さん、ありがとうございます
私も、書いてて楽しいです

117さん、そうです
第一試合は、登場人物の紹介みたいなもので、第二試合から動き始めます
長い紹介でしたが…

デジさん、お久しぶりです
私も、片付けは苦手です…

では、更新します
1573投稿者:リリー  投稿日:2008年04月30日(水)21時12分36秒
ダーブロウ有紗とジャスミンは、店内に入る。
人相の悪い…ホール係の男がまず迎えた。
兼、用心棒なのだろう。
しかし、あの楠本という男がいれば、用心棒などは本当は不要なのだろうが…。
「予約は、されてましたでしょうか?」
人相とは裏腹に、男は丁寧に接客をする。
「ダーブロウ有紗と、ジャスミン・アレンだ。この店のオーナーから、何も聞いちゃいねぇか?」
「…ああ…。窺っております…。VIPルームへどうぞ…」
2人は、VIPルームへ案内される。
新装開店だからか、店内は賑わっている。
前の店、『9×9(クック)』の常連客もいるのだろう。
柱は赤、壁は黒で塗り分けられたVIPルームに通される。
円形テーブルに円形のソファー、そして緩いカーブが掛かった壁に埋め込まれた水槽の中を、優雅に泳ぐ熱帯魚…。
いかがわしそうに、部屋を見回すジャスミン。
「豪華は豪華だけど…何か、落ち着かないわね…」
「そうか?私は結構、気に入ってるぜ?」
若いホストが、水割りを作りに来る。
「よぉ、兄ちゃん。ここのオーナー、楠本って野郎を呼んでくんねぇかな?」
雑魚は引っ込んでろ、と言うような、ダーブロウ有紗の言葉。
若いホストは、少し面喰いながらも頭を下げ、楠本を呼びに退室した。
1574投稿者:リリー  投稿日:2008年04月30日(水)21時12分59秒
広い円形の部屋に、残された二人。
「ジャスミン…。ナイフは…?」
「ハンドバッグの中…」
「ダメだ…!外に出しておけ…!こうやって、ソファーのクッションの隙間に隠しておくんだよ」
「有紗…ソファーに穴が空いてる…」
「構うもんかよ!!デコッパチとダッチャを拷問しやがったお返しだ…!」
「随分、セコいお返しだこと…」
「…!?来るぞ…!!」
ドアが開くと、そこに現れたのは…2人は初めて見る…楠本柊生である。
「どうも、どうも…。ようこそおいで下さいました…。私が当店のオーナー、楠本と申します…」
楠本は、大袈裟に手を広げ、頭を下げた。
1575投稿者:リリー  投稿日:2008年04月30日(水)21時13分32秒
「何だ…。結構、年いってんだな…」
ダーブロウ有紗は、開口一番、先制口撃を放った。
「ははは…。これはどうも…。しかし、お2人はお美しい…!異文化の人種が重なり合うと、何とも言えない麗しい雰囲気を醸し出すものなのですねぇ…」
「言っておくけど…私はハーフじゃないわ。100%アメリカ人よ」
ジャスミンは、いかがわしいものでも見るかのように、楠本にそう言った。
「おお!!グレート・アメリカン!!ハハハ!!」
楠本はそう言いながら、ジャスミンにハグをした。
どうにも、いい加減な男である。
本当にこの男、強いのか?
今、この男の首の骨をへし折れそうだ…。
ジャスミンは、一瞬、そう考えた。
「あんまり、物騒なことはお考えにならないように…」
一段と低い声で、楠本は、ジャスミンの耳元で囁いた。
「…!?」
ソファーのナイフを見られた…?
しかし、楠本はそれには何も気付かなかったのか、ジャスミンの身体から離れた。
1576投稿者:リリー  投稿日:2008年04月30日(水)21時13分54秒
「で…かったるいお喋りなんて後回しだ。ホレ、約束のロレックス…」
ダーブロウ有紗は、剥き出しの箱のまま、楠本に向かって放り投げた。
その箱を開け、中身を確認すると、楠本は感嘆の声をあげた。
「おお!これです、これです…!いや〜良かった。これで、私の手首も、しっくりと落ち着きます」
そう言うと、手首に素早く時計をはめ、愛しそうに眺めた。
「随分、古いタイプだよな?それ…。もっと最新のヤツ、買ってやってもよかったんだぜ?」
「いえ、これで…いや、これがいいんです。私の稼いだお金で、やっと買えた代物でしたから…」
「ふ〜ん…。ホストでか?それとも、暗殺稼業でかい…?」
「…暗殺?いいえ…。私はそんなことしませんよ」
そう言う楠本の顔は、別に煙に撒こうとするものではなかった。
「あん?おまえ、殺しのプロじゃないのか?」
「プロ…?いいえ…アマチュアです」
「アマチュア?」
ダーブロウ有紗とジャスミンは、顔を見合わせた。
1577投稿者:リリー  投稿日:2008年04月30日(水)21時14分16秒
「はい。私にとって、『殺し』は趣味です。人の為にやるのではなく、自分の為にやっている…」
楠本の言葉には、何の罪悪感も、気負いもない。
「野球を仕事にしてるのが、プロ野球選手なら、私は…草野球を楽しんでるようなもんですね…」
「それじゃあ…殺し屋じゃなくて、殺人鬼じゃない!」
ジャスミンの言葉に、楠本は不思議そうに首を捻る。
「はて?何かいけないんでしょうか?殺し屋は…お金を貰って何の縁もゆかりもない人を殺す…。私は、タダで、自分の感情で殺す…。お金を貰わないだけ、私の方がマシなのでは?」
そして…こう続けた。
「あなた達…元『TTK』の『戦士』よりかは…」
次の瞬間、ダーブロウ有紗とジャスミンは、ソファーの隙間からアーミーナイフを抜き取ると、楠本の喉元へ手を伸ばした。
しかし、それは寸前で止まる。
「う…!?」
「貴様…!!」
楠本は、いつの間にか構えていたからだ。
二丁の拳銃を…ダーブロウ有紗、ジャスミンのそれぞれの心臓に…。
「ククク…で…極たまにいるんですよ…。プロ野球選手を凌駕してしまう…草野球選手がね…」
楠本は、低音の声を響かせて笑った。
1578投稿者:リリー  投稿日:2008年04月30日(水)21時14分41秒
「く…!あなたは…」
「動くな!ジャスミン!!」
二本のアーミーナイフは、これから先、1mmも動かない…いや、動かせない。
「ククク…。試してみます?あなたがたのナイフが私の喉を刺し貫くのが速いか…私の人差し指が引き鉄を引くのが速いか…」
余裕の表情を見せる楠本。
2対1というハンデなど、関係ない、とでも言う様に…。
「ジャスミン…。さっき、コイツにハグされたろ?何で拳銃を持ってるって、気が付かなかった…?」
「…いいえ…。この男…拳銃なんて持ってなかった…」
「何…?じゃあ、どこから…?」
楠本は、相変わらず含み笑いをしている。
「何が可笑しい!?」
「いえ…拳銃は…このテーブルに貼り付けてあったんですよ。ガムテープでね…」
「何?」
つまり…最初からこの部屋に仕込んであったと…?
「いや〜…ガムテープが引っ付いて、ベラベラする…なんて、マヌケなことにならなくて良かった、良かった…」
楠本は、今現在、命の取り合いをしているなどという緊張感はまるで感じられない。
まるで、この状況を楽しんでいるようだ。
1579投稿者:リリー  投稿日:2008年04月30日(水)21時15分13秒
「私達を呼んだのは…こうやって、『R&G』の人間を少しずつ殺していく為ね?」
ジャスミンは、楠本を見下ろして言う。
「でも…失敗したな…。どうせなら、一人一人始末していけば良かったんだ。これじゃあ、ジャスミンは殺せても、私は殺せないぜ?」
「ちょ、ちょっと…!私が死ぬって、もう決まってるの?」
「当たり前だろが!!」
2人の女の言い合いに、これまた楠本は、愉快そうに笑った。
「違いますよぉ…。殺すなんて、とんでもない…」
そう言うと、2人の心臓を狙っていた銃口を逸らした。
「…?」
これは…喉を刺し貫いてもいいものか…一瞬、2人に隙ができた。
その一瞬で、楠本は後ろに跳びはねて2人から距離をとる。
「しまった…!!」
「投げろ!!」
ダーブロウ有紗とジャスミンは、アーミーナイフを楠本に投げつけた。
楠本は、拳銃を上に投げ、ナイフを受け止めた。
ダーブロウ有紗とジャスミンは、天井スレスレにジャンプし、楠本の投げた拳銃を、空中で奪った。
楠本は、今度は前方にダイブして、2人の落下地点から避けた。
そして2人はその場に着地すると、楠本に向けて拳銃を構える。
「…!?」
「あ、有紗…!こ、これは…」
持ってみて、わかる違和感…この拳銃…軽い…?
1580投稿者:リリー  投稿日:2008年04月30日(水)21時15分38秒
「ククク…。お見事…!すぐ気が付くとは…。二流の殺し屋なら、撃ってみて初めて気が付きますよ。弾が入ってないってね…」
そう言うと、楠本は二本のアーミーナイフを、クルクルと目まぐるしく回しだす。
「…こいつ…!」
そう、ダーブロウ有紗と、まったく同じことができる…。
「しかし…私が銃口の狙いを外した時、一瞬隙ができましたね?これはいけません…。殺し屋としての感覚が鈍ってますよ?」
「偉そうに抜かすな!!」
ダーブロウ有紗は怒鳴った。
「落ち着いて!有紗!!今、武器は相手の手に渡ってしまった…」
「あん?コッチは丸腰だとでも?違うだろ?」
ダーブロウ有紗は、銃口の方を持ち、グリップを上にすると、ハンマーの様に構えた。
「これで、接近戦はできるぜ?」
「…なるほどね…」
ジャスミンも、それに倣う。
1581投稿者:リリー  投稿日:2008年04月30日(水)21時16分02秒
「ですから…命の取り合いなんてしないんだってば…!その銃が空だというのが、いい証拠でしょ?」
楠本は、二本のナイフをテーブルの上に置くと、柄の方を2人に向け、手を挙げてソファーに座る。
2人は、ほぼ同時にお互いの顔を見る。
「どうする?有紗…」
「気をつけろ…。油断、するなよ…」
ジリジリとナイフの置いてあるテーブルに近づく2人。
そして、一瞬でナイフを奪い取り…再び楠本の喉元へ…。
「だから…!!降参!!降参です!!早く、そのナイフをしまって!!」
楠本は、悲鳴に似た声をあげた。
そんな、楠本を、ダーブロウ有紗は冷めた目で見下ろす。
「…ま…私達が本当に殺そうとしても、おまえは何とか切り抜けるだろうがな…」
「クク…。その前に、あなたがたは私を殺す気なんて、ないんでしょ?」
「………」
サク…ダーブロウ有紗は、本当にノーリアクションで、ナイフを楠本に突き刺した。
咄嗟に腰をずらして、ナイフを避ける楠本。
ナイフはソファーの背もたれに深々と突き刺さる。
「あ、あ、あ、あ、…危ないじゃないですかぁ〜〜〜!!!今、本当に殺そうとしたでしょ〜〜〜!!?」
「ち…!本当に切り抜けやがった…!」
ダーブロウ有紗は、つまらなそうに言った。
「あ…有紗…。あんたねぇ…」
ジャスミンは、もう、言葉を失った。
1582投稿者:リリー  投稿日:2008年04月30日(水)21時16分23秒
それでは、今日はこれでおちます
1583投稿者:リリー  投稿日:2008年04月30日(水)21時21分48秒
1570さんでした…
ありがとうございます
1571さんお、あげありがとうございます
1584投稿者:117  投稿日:2008年04月30日(水)21時27分38秒
今日はいつもより、少し長めの更新でしたね。
ダーさん&ジャスミン対元帥・・・本当に危険な香りがしますね(笑)。
続きも楽しみです!
1585投稿者:楠本  投稿日:2008年04月30日(水)21時31分12秒
やっぱり強いな〜
1586投稿者:あげえ  投稿日:2008年05月01日(木)19時29分10秒
皆さん昨日はすいませんでした。
私は自分のスレでは上手いなどともてはやされ、ついその気なり
ここに自分の小説を貼ってしまいました。
ここの小説の作者さん、あなたの小説を批判したこと
本当に申し訳ありませんでした。
1587投稿者:あげえ  投稿日:2008年05月01日(木)19時43分28秒
な〜んて言うとおもったかバ〜カ!!!!!!!!!!!!!!!!
1588投稿者:リリー  投稿日:2008年05月01日(木)20時53分32秒
117さん
野球の試合は、あまり長く更新すると分りにくくなるかな、と思い、イニングごととか、打席ごとで区切ってましたので、短かったのです
早く、第一試合を終わらせたい(このゴールデンウィーク中に)とも、思ってます
元帥がどれだけ強いか…これから段々と書き表していくつもりです

では、更新します
1589投稿者:リリー  投稿日:2008年05月01日(木)20時54分41秒
「と、とにかく…ソファーに御掛け下さい。あなたがたをお呼びした理由、ゆっくりとお話ししますから…」
ダーブロウ有紗とジャスミンは、とりあえずソファーに腰を降ろす。
「さてと…まず、私の…いや、私達が何者か…正体を明かしたいと思います…」
「…!?」
いきなり、こちらが知りたい情報を…?
思わず2人は、姿勢を前のめりにする。
「まず…私の所属する組織…あなたがたと同じ…探偵です。つまり、私達は同業者なんですよ…」
「探偵だと?」
声が無意識に高くなる、ダーブロウ有紗。
「ええ…。まぁ…裏の人間御用達の探偵…『裏探偵』とでもいいましょうか…。当然、依頼はダーティーなものばかりです…」
「おまえが探偵?あの、誘拐売春ビジネスが、探偵の仕事だと言うのか?ふざけんな!!」
楠本は、ダーブロウ有紗に怒鳴られ、掌を両手とも前に出す。
「そう、興奮しないで…。探偵といっても、まあ、『何でも屋』という趣が強いんですよ、私達の仕事は…」
「じゃあ、あのビジネスは?」
ジャスミンが訊ねる。
「加藤組からの依頼です。裏ビジネスで資金を稼ぐように…」
「資金?何の資金よ?」
「…戦争の資金ですよ…。山本組とのね…」
1590投稿者:リリー  投稿日:2008年05月01日(木)20時55分04秒
山本組…。
加藤組とライバル関係にあり、関東一帯を縄張り争いしている暴力団組織だ。
もともと、加藤組組長の加藤浩次と、山本組組長の山本圭壱は同じ暴力団に所属していたが、加藤が反旗を翻し、加藤組を設立…山本もそれに倣う様に山本組を立ち上げた。
それ以来、両組織はお互いを牽制し合うようになり、度々抗争を繰り返していた。
「なるほど…。加藤組と山本組…。いよいよ決着をつけるわけか…。ま、勝手にやってろって感じだが…」
「それじゃあ…あの…」
「し…!!ジャスミン!!それ以上喋るな!!」
ダーブロウ有紗は、ジャスミンの口を塞いだ。
「いえいえ…。大体、見当はついてました。山本組です。あなた達に、加藤組を壊滅しろという依頼をしたのは…」
つまり…俵姉妹を散々にいたぶった女達は、山本組の者…?
楠本は、構わず言葉を続ける。
「で…その依頼をしたのも…おそらく、私の組織の者ですよ…」
「へ…?」
2人は、迂闊にもマヌケな声をあげてしまった。
「もしかして…後藤理沙とかいう女でしょ?あなたがたに依頼をしたの…」
もう、2人は頷くしかなかった。
「やっぱり…。同士討ちを嫌って、あなたがたと私を戦わせようと…。あの女狐め…」
楠本は、小さく舌打ちをした。
1591投稿者:リリー  投稿日:2008年05月01日(木)20時55分32秒
「あの女は、この間…と言っても、3ヶ月前ですが…私に言ったことあるんですよ…。もしかしたら、今度敵同士になるかもしれない…。その時はよろしく…と…」
「ちょ、ちょっと待て!わ、わけがわからない…」
さすがのダーブロウ有紗も、この話しを聞いて混乱した。
「何で…同じ組織の者が…敵対する暴力団に力を貸してるんだ…?仲間同士で殺し合いになるじゃねぇか…!!」
ちょっとしたパニックに陥っている2人を、楠本は楽しそうに眺めてる。
「ま…疑問はごもっともです…。そこで、私達の組織について詳しく御説明させて頂く必要がありますね…」
楠本は、僅かに前屈みになり、2人を交互に見詰めてから、静かに話した。
「まず…私達の組織の名前は…『TDD』…」
「『TDD』…?」
「何だ?その『TTK』のパチモンみたいな名前は?」
『TDD』等という組織は聞いた事もない…。
「仕方ありません…。『TDD』は、『TTK』が壊滅したのを受けて、大急ぎで設立した組織ですから…」
「じゃあ、やっぱりパチモンじゃねぇか!!」
ダーブロウ有紗の指摘に、楠本は、首を横に振る。
「パチモンというか…やはり、悪が利用する悪の組織っていうのは必要なんですよ…。あと、『TTK』と『TDD』は違います」
「違う?どう違う?」
楠本は、指を一本立てて説明をする。
「最大の違いは…『TTK』は奴隷制度の組織…。『TDD』は自由労働の組織…というとこですかね?」
「自由労働の組織だと?」
『TTK』は、独裁者集団の『ラビ』に全てを牛耳られていたため、奴隷制度の組織と言われても仕方がない…。
しかし、自由労働の組織『TDD』とは、一体、何なのだろう…?
1592投稿者:リリー  投稿日:2008年05月01日(木)20時55分54秒
「『TTK』という組織は…ボスが勝手に依頼を受け、その依頼を『戦士』達が有無を言わさず遂行しなければならない…。しかも、失敗は許されない…」
楠本は、わざとらしく、悲しそうな表情をして、額に手をあてる。
「失敗したら制裁を受け、脱走したら殺される…。それが、年端も行かない少女達に課せられていた…。何とも嘆かわしい話しです…」
「ほっとけ、コンチクショウ!!」
ダーブロウ有紗は、こんな男に同情され、本当に不愉快だった。
「しかし、我々『TDD』は違います。『TDD』の探偵達…『カード』と呼ばれてますが…自分で依頼を受けることができます」
「…何?自分で?」
「はい。自分の納得する依頼を自分で受け、自分で遂行する。報酬の交渉も自分でやります。その代わり、報酬の2分の1を組織に納めます」
…つまり…フリーの探偵と同じというわけではないのか?
ダーブロウ有紗も、ジャスミンも、この『TDD』のシステムがよく理解できない。
「それなら、個人でやった方が儲からねぇか?わざわざ2分の1も組織に持ってかれること、ねぇじゃん…!」
「いえいえ…。組織に属していれば、いろんなメリットがあるんですよ。任務遂行の為の道具とか手続きとか…全部組織が用意してくれます…。つまり、必要経費ってのが無いんです」
「それ…いいかも…」
そう呟いたジャスミンを、ダーブロウ有紗が軽く肘で突いた。
1593投稿者:リリー  投稿日:2008年05月01日(木)20時56分22秒
「でも、困ったことに…今回の加藤組と山本組みたいに、同じ組織の仲間が敵同士になってしまうこともあります…」
「その時は、どうするんだ?殺し合うのか?」
「そうなった場合は、依頼を断るのが普通なんですが…。一度受けた依頼を断った場合、依頼金の二倍を依頼主に払わなければならない…。そういう契約なんです」
「ふ〜ん…。つまり、金が惜しくて…あの女は、私達とおまえを戦わせようとしたってわけか…」
「惜しんだのは『お金』ではなく、『命』でしょうね…。あなたがたに払った依頼金…決して安くなかったでしょ?」
ダーブロウ有紗は、心の底から怒りがこみ上げた。
そんないい加減なシステムの為に、自分の大切な仲間が、命の危険にさらされたのだ。
「それで?私達をここに呼んだ理由は?」
ジャスミンが、もう一つの疑問を投げかけた。
そう…これが本題のはずだ。
「Tarot・Detective・Department…」
流暢な英語で、楠本は言った。
「…何ですって…?」
「いえ、我々『TDD』の正式名称です。『タロット探偵局』…とでも言いましょうか?」
「タロット…?あの…占いとかで使う…あの…?」
「そうです…。そして、私は…こういう者です…」
そう言うと、楠本は懐から一枚のカードを出して、二人の前に提示した。
それは、タロットカードの内の一枚…『皇帝』のカードだった。
1594投稿者:リリー  投稿日:2008年05月01日(木)20時56分44秒
「…?」
ダーブロウ有紗も、ジャスミンも、一瞬考えを巡らせたが、結局わからなかった。
「これが…何…?」
「私のコードネームです。『エンペラー(皇帝)』…」
眉間にシワを寄せて、まだ考えあぐねるダーブロウ有紗。
しかし、少しは占いに関して知識のあるジャスミンは、その意味の真意を知る。
「つまり…あなたの仲間は…あと、21人いる…?」
楠本は、『正解』とでも言う様に微笑んだ。
「どういうことだ?ジャスミン?」
「タロットカードって…大アルカナカードと小アルカナカードと二種類あって、大アルカナカードは、全部で22枚あるのよ…」
「ああ…知ってるけど…その22枚の内の1枚が、こいつ…ってわけか?」
つまり…『TDD』の探偵達は、全部で22人…。
『R&G』の15人より、多い…。
しかも、その内2人…社長の吉田とアルバイトの橋本甜歌は、非戦闘員だ。
「ち…!大所帯だな…」
ダーブロウ有紗は、舌打ちをした。
1595投稿者:リリー  投稿日:2008年05月01日(木)20時57分06秒
「ところが…そういうわけではないんですよ…」
楠本は情けない笑顔を見せて、首を横に振った。
「そう…あなたがたの前に、我々22人がバーンっと漫画みたいに勢揃いしたら、それはそれでカッコいいんですが…」
「あん?どういうことだ?」
「先ほども言った通り、私達の組織は、『TTK』が壊滅してから創立したもの…。つまり、歴史が非常に浅い…たった半年ですから…」
そう言って、楠本は頭を掻いた。
「つまり…その…メンバーが足りないんです…。まだ、22人も揃わないんですね…」
「ふん!わかったぜ!!」
ダーブロウ有紗は、腕組みをしてソファーにふんぞり返った。
「…え?わかったって…?」
ジャスミンは、ダーブロウ有紗に聞く。
「ま、こいつの口から言わせてやろうぜ!」
そう言うと、ダーブロウ有紗は顎で楠本を指し示した。
次の瞬間、楠本は、テーブルの上に乗り、額を擦り付けて土下座した。
「ダーブロウ有紗様、ジャスミン・アレン様、お願いします!!どうか、我々『TDD』のメンバーになってやってください!!」
「え…?わ、私達…が…?『TDD』に…?」
戸惑うジャスミン。
「へへ…。つまり…ヘッドハンティングってやつだ…」
ニヤリと笑うダーブロウ有紗。
1596投稿者:リリー  投稿日:2008年05月01日(木)20時57分29秒
今日は、これでおちます
1597投稿者:117  投稿日:2008年05月01日(木)21時23分04秒
って、オイ(笑)。ヘッドハンティングですか・・・でも、なんか裏がありそう。
加藤組と山本組の抗争・・・そういえば今ごろ、山本さんどうしているんでしょうね?
それに「タロットカード」と聞いて、一瞬寛平さんを思い出したのですが・・・まさか、無いですよね?
1598投稿者:博識って感じですごいな  投稿日:2008年05月01日(木)21時36分34秒
 
1599投稿者:りーな  投稿日:2008年05月01日(木)21時49分08秒
ひょっとして、らりるれろでジャスミンがモニーク捜す?といってR&Gを抜けるとき、
ダーブロウ有紗があいつのとこに行くのかとか言ってたような?
それって、TDDのこだったのかな?
間違ってたらすいません。
1600投稿者:あああああ  投稿日:2008年05月01日(木)22時09分06秒
パソコン壊れて修理に出して早二ヶ月…
読んでいないところが過去ログに…
1601投稿者:TDDって  投稿日:2008年05月01日(木)22時13分35秒
寛平さんの「たまご丼」の歌のユニット名だよね?
1602投稿者:>1600  投稿日:2008年05月01日(木)22時14分36秒
http://221.254.11.189/log/tentele/080114213544a.html
はい、どうぞ
1603投稿者:>1620様  投稿日:2008年05月01日(木)22時19分26秒
ありがとうございます!
助かりました!!
1604投稿者:あげ  投稿日:2008年05月01日(木)22時30分15秒

1605投稿者:楠本さんは憎めない悪役を  投稿日:2008年05月02日(金)00時15分35秒
演じられてホントに凄いと思う
1606投稿者:あげ  投稿日:2008年05月02日(金)16時51分47秒

1607投稿者:タロットカード  投稿日:2008年05月02日(金)18時00分28秒
愚者 魔術師 女教皇 女帝 皇帝 法王 恋人 戦車 力 隠者 運命の輪
正義 吊るされた男 死神 節制 悪魔 塔 星 月 太陽 審判 世界
1608投稿者:小アルカナは何枚あるかな  投稿日:2008年05月02日(金)19時18分27秒
 
1609投稿者:あげ  投稿日:2008年05月02日(金)19時26分02秒

1610投稿者:TDDに  投稿日:2008年05月02日(金)19時36分45秒
ジャスミンが入ったら何のカードかな?
1611投稿者:あげ  投稿日:2008年05月02日(金)20時13分21秒

1612投稿者:age  投稿日:2008年05月02日(金)21時54分04秒
  
1613投稿者:リリー  投稿日:2008年05月02日(金)22時03分58秒
117さん、寛平さんについて、まだ何とも言えませんが、この「九回裏」にも登場します
りーなさん、その通りです
「らりるれろ」でダーさんが言ってた「やつら」とは、「TDD」のことです
その時は、もうすでに「グラスラ」を書き始めていて、「TDD」の伏線を、急遽付け加えました
楠本さんの、とぼけた悪役ぶりは、私は大好きです

1600さん、ごゆっくりお読みください
2ヶ月前というと、七海達と元帥が戦ってる所でしょうか?

1607さん、代わりに書いて下さってありがとうございます
小アルカナは、「剣」「硬貨」「聖杯」「杖」が1〜10、「ペイジ」「ナイト」「クイーン」「キング」の4枚ずつで、14×4で56枚です
この小アルカナからトランプになったという説もあります
ダーさんやジャスミンが入ったとしたら、コードネームとしてカードが与えられます
今のところ判明してるのが、楠本「エンペラー(皇帝)」、理沙「エンプレス(女帝)」、みのぽー「デス(死神)」、恵「ストレングス(力)」です

遅くなりましたが、更新します


1614投稿者:リリー  投稿日:2008年05月02日(金)22時06分15秒
「ヘッドハンティング!?」
つまり…『R&G』から『TDD』へ引き抜こうと言うのか?
「な、何で、私達なの!?」
ジャスミンは、楠本に訊ねた。
「何で?そりゃ、目をつけてないはずないでしょ?お2人とも、あの暗殺組織『TTK』の四天王じゃないですか…」
楠本はそう言って笑った。
驚くジャスミンに対し、ダーブロウ有紗は冷静だ。
「『R&G』の中から、私達だけなのか?他のメンバーは?」
楠本は、ソファーに座ると、目を瞑って首を横に振った。
「確かにメンバーは足りませんが…猫も杓子も…というわけにはいきません…。厳しくメンバーは精選させて頂きます。はっきり言って、あなたがた以外は興味ありませんね…」
「猫も杓子も…?随分、うちの探偵達をナメてくれてんじゃん?」
「ナメてはいませんよ。ただ、公正に実力を測らせて頂いただけです…」
「ふ〜ん…。そんなに使えねぇかねぇ…。あいつ等は…」
「いえ、あのお歳で、随分がんばってるな…という印象です」
「がんばってる…?」
ダーブロウ有紗は、苦笑いをした。
1615投稿者:リリー  投稿日:2008年05月02日(金)22時06分27秒
「あの時、私と戦った娘さん達…木内梨生奈さん、細田羅夢さん…あと、調べさせてもらいましたよ…中村有沙さん、藤本七海さん、近藤エマさん、渡邊エリーさん…。『TDD』の探偵…『カード』としては、まあ合格点は与えられるとは思います。しかし…」
「しかし…?」
「『TDD』は、基本的に未成年はメンバーに入れないんですよ。ですが例外はある。長期的視野から育成する意味で…です。実は一人、小学生の少女もメンバーに入ってます。でも、戦力とはまだ言えない…」
ピクリと眉を動かす、ダーブロウ有紗。
「つまり…あいつ等は、即戦力には…」
「はい。なりませんね」
楠本は、はっきりと言い切った。
1616投稿者:リリー  投稿日:2008年05月02日(金)22時06分47秒
「はっきり言って、その少女も戦闘要員で入れてるわけではないんです。主に、情報収集で役に立ってもらえれば…という感じです」
楠本の話しを聞くに…あの俵姉妹をいたぶった三人組の女は、『R&G』の探偵達よりも強い…と言うのか?
「トランプで例えましょう…。戦闘要員なら、私達は『エース』とか、『絵札』が欲しいんです。『7』だとか『8』だとかは要らないんですよ」
「じゃあ、おまえはトランプで例えるなら何なんだよ?」
「もちろん、『エース』です」
「理沙とかいう女は?」
「まぁ…『クイーン』ですかね…」
「私とジャスミンは?」
「う〜ん…社交辞令も含めて…『キング』ってとこですか?」
その言葉を聞き、ダーブロウ有紗は目を瞑って、静かに笑った。
「へぇ〜…。おまえは『エース』で…私は『キング』…?」
ジャスミンは、ヤバい…と思い、腰をずらして彼女から少し距離を置く。
「…つまり…私は…おまえよりも…弱いって…そう、言いてぇのか…?」
「お気に触りましたか?」
楠本は笑顔で答える。
「当然だ!!コンチクショウ!!」
ダーブロウ有紗は、目の前の円形テーブルを蹴り飛ばした。
テーブルは、天井に当たり、床に落ちて粉々になった。
1617投稿者:リリー  投稿日:2008年05月02日(金)22時07分22秒
「何事です!?」
凄まじい破壊音を聞き、店中の従業員が、VIPルームのドアの外に駆けつけた。
「入って来ない方がいいですよ…。命が惜しかったらね…」
楠本の言葉に、ドアの外は途端に静かになる。
「おい…コラ!!てめぇ!!私とおまえ、どっちが強いのか…今、ここではっきりさせてやろうじゃねぇか!!」
怒り狂うダーブロウ有紗を見上げ、楠本は溜息をつく。
「やめましょう…。意味のないことです…」
「ああ…!?意味がないだとぉ!?」
「はい。どっちが『エース』だろうと『キング』だろうと…『ジョーカー』の前では無力なんです…。悲しいことですが…」
「『ジョーカー』!?何だ?そりゃ!?」
「ボスです…。我々『TDD』の…」
「何者だ?そのボスってのは…」
「紹介して差し上げますよ。『TDD』に入るのならね…」
ダーブロウ有紗は、ふぅ…と息をつくと、ソファーに腰を降ろした。
「じゃあ…。イラネ…」
「つまり…『TDD』には…」
「入らねぇよ!!」
「…そうですか…」
楠本は、肩をすくませる。
1618投稿者:リリー  投稿日:2008年05月02日(金)22時07分42秒
「ジャスミンさん…。あなたは?」
楠本は、ジャスミンに笑顔を向ける。
「嫌よ…。俵…私達の仲間を、あんな酷い目に遭わせたやつ等と仲間になるなんて…」
「おうよ!!理沙って女と面を合わせただけで、たぶん、私達はそいつをぶっ殺すぜ?」
ダーブロウ有紗にもジャスミンにも拒否された楠本は、ソファーにもたれ掛り、天井を仰いだ。
「う〜ん…。これは残念だなぁ…。『キング』を四枚、揃えたかったんだけどなぁ〜…」
「四枚だと?」
楠本の言葉に、ダーブロウ有紗は即座に反応した。
「もしかして…てめぇ…」
じっと睨みつけるダーブロウ有紗の目を、横目でチラリと見て、楠本は答える。
「…ええ…。他の四天王…加藤夏希さん…モニーク・ローズさんにも…オファーをしてみようかと…考えております…」
「…!!??」
加藤夏希…モニーク・ローズ…その名を聞き、ダーブロウ有紗もジャスミン・アレンも再び立ち上がった。
「ゆ…行方を…?あなた達は…2人の行方を知っているの…?」
ジャスミンは、思わず楠本に詰め寄った。
「いえいえ…!知りませんよ!!あなたがたの方が知っていると思ったものですから…」
楠本の言葉にウソはないだろう。
もし2人の行方を知っているのなら、『TDD』入団を拒否された今、それを餌にすることを考えるだろう…この男なら…。
1619投稿者:リリー  投稿日:2008年05月02日(金)22時08分06秒
「しかし、もし探し出すことができれば、あなたがたよりも簡単に仲間になってくれるかもしれませんね…。何しろ、加藤組組長のお嬢さんでしょ?加藤夏希さんは…」
「…こいつ…」
どこまで知っているのだろうか…自分達の過去のことを…。『TTK』のことを…。
「ジャスミン、帰るぜ!!」
ダーブロウ有紗は、出口のドアに向かう。
ジャスミンも、楠本を睨みながら後に続く。
「おやおや…。もう、お帰りですか?ドンペリを用意させているのですが…」
「構うな…。もう、二度とおまえとは会わねぇぜ…。もし、その面を、また私に見せたら…」
「戦争ですか?」
「おうよ…」
「依頼もないのに?」
「依頼?そんなもん、クソ喰らえだ…!」
「う〜ん…。探偵に有るまじき言葉だなぁ…」
「てめぇが言うんじゃねぇ!!」
VIPルームのドアを開けると、大勢の従業員、ホスト達が群がっていた。
「どけぇ!!」
ダーブロウ有紗が一喝すると、男達は、モーゼの前の大海原の如く、左右に大きく分かれた。
1620投稿者:リリー  投稿日:2008年05月02日(金)22時08分36秒
そんなダーブロウ有紗とジャスミンの背に、楠本の声がかかる。
「そう言えば…今日、浜津さん…戻ってみえたそうですね…。この街に…」
「………!何…?」
ゆっくりと、後ろを振り返る。
「娘さんとも…感動の再開をしたようで…」
「てめぇ!!」
ダーブロウ有紗は、一瞬で楠本の目の前まで戻ると、胸座を掴んで押し倒す。
そして、ナイフを首に突きつけた。
僅かに刃先が首に喰い込み、血を滴らせている。
「…落ち着いて!!有紗!!」
ジャスミンは、ダーブロウ有紗のナイフを握る手首を掴んだ。
「放せ!!ジャスミン!!こいつは…なすびを…!!」
楠本は、ダーブロウ有紗の手首を掴んでいる、ジャスミンの手首を掴んだ。
「…その通り…。落ち着いて下さい…。ダーブロウ有紗さん…」
そして、力ずくでナイフを首から放した。
「ぐ…?」
何と言う怪力…?ダーブロウ有紗、ジャスミン、2人分の力を難無く凌駕している。
「何もしてませんよ…。手を出したら、あなたがたと全面戦争でしょ…?ふふ…恐い恐い…」
楠本はニヤリと笑うと、自分の首から滲んでいる血を、親指で拭った。
1621投稿者:リリー  投稿日:2008年05月02日(金)22時09分22秒
あと、もう少しで第一試合は終了です
では、今日はこれでおちます
1622投稿者:りーな  投稿日:2008年05月02日(金)22時49分56秒
まさかあってるとは
もうすぐ第一試合終了ですか
がんばってください。
1623投稿者:1600  投稿日:2008年05月02日(金)23時06分31秒
そうです!
これからゆっくりと読ませていただきますね!
1624投稿者:あげ  投稿日:2008年05月03日(土)08時10分06秒

1625投稿者:TDDに小学生!?  投稿日:2008年05月03日(土)08時20分52秒
誰だ!?
また新たなる伏線がでてきた。
1626投稿者: 投稿日:2008年05月03日(土)08時38分35秒

1627投稿者:うまい  投稿日:2008年05月03日(土)08時47分20秒

1628投稿者: 投稿日:2008年05月03日(土)17時37分46秒
雷門の近くってことは浅草てこと?
一度6年生の夏休みに雷門言って参りました☆
もしその頃だったら会えてたかも〜ぽい

こわい・・・・私は・・・・・
少し恋空見てました
どきどき・・てか、こちらの方がごっい!!
1629投稿者:あげ  投稿日:2008年05月03日(土)17時43分01秒

1630投稿者:リリー  投稿日:2008年05月03日(土)20時47分29秒
伏線は、結構長い間放置されることがありますので、できましたら、覚えてて頂きたいです
1600さん、これからもこの小説、よろしくお願いします
霊さん、そうです
浅草です
修学旅行で来たんですか?
もしかしたら、すれ違ったのかもしれませんね
団子とか、食べました?独特な味がしたでしょう?
味醂というか、甘味が強くなかったですか?
あと、芋羊羹が絶品です
また、いつか来て下さいね
恋空は、ガッキーが出てた映画ですよね?
私、ガッキーのファンなんです

では、更新します
第一試合(第一話)最終回です



1631投稿者:リリー  投稿日:2008年05月03日(土)20時49分03秒
ホストクラブ『箱舟(アーク)』を出たダーブロウ有紗とジャスミンは、繁華街を抜け、天歳駅へと向かう。
「有紗…。あいつ等…このまま放っておいてもいいの?」
「ああ…。もう、私達とやつ等には接点はねぇ!!放っておく!!」
「でも…やつ等、夏希さんとモニークを…」
ダーブロウ有紗は、舌打ちをする。
「…まさかとは思うが…もし、やつ等が夏希達に接触したら…厄介だぞ…」
「モニークは、やつ等の誘いに乗るとは思えないけど…」
「いや…。モニークみたいに、クソが付くくれぇ真面目なやつ程、ああいう男にコロリと転がされる…」
「どうするの…?」
「私達も探してみるか…。2人を…」
「探す?」
「ああ…。で、やつ等に持っていかれる前に、『R&G』に引き込もうぜ!!夏希とモニークを…」
「それも…難しそうだけど…やつ等に獲られるよりはマシね…」
「ジャスミン…」
「何?有紗…」
「絶対に行くなよ?『TDD』なんかに…」
「あ…当たり前じゃない!!怒るわよ!?」
「いや…。だったらいいんだ…。悪ぃ…」
ダーブロウ有紗にしては珍しく、自分の非礼を詫びた。
1632投稿者:リリー  投稿日:2008年05月03日(土)20時49分25秒

「それから、他のみんなには話すなよ?私達がヘッドハンティングされたこと…」
「それも、言われるまでもないわ。余計な混乱を生むだけだもん」
「とにかく、今夜はあいつの所に時計を届けに行ったってことにして…おまえには、ボディーガードとして着いて来てもらった…て、ことでいいな?」
「あんたがボディーガードなんて…不要だと思うけど…。OK…」
「それにしても、あの野郎…!私達が『キング』だと?『TTK』じゃ、私達は『エース』だったのによ…!!」
「あんなの、ハッタリよ…。私達相手に、虚勢を張ってただけ…。確かに…あの男…相当の強さだったけど…」
「敵じゃねぇよ!!私達、『R&G』のよ!!チビアリ達が戦力外だと?ふざけんなってんだ!!」
「ふふふ…。実の妹が不当に低く見られて、腹を立てるなんて…あなたも可愛いところ、あるのね…」
「バカ言うな!!あいつ等を鍛えたのは、私だぜ!?あいつ等をけなされるってことは、私がけなされるのと同じなんだよ!!」
その時だった。
「ちょい、ちょい!ちょい、待ち!外人のお姉ちゃん達…!ちょいと待ちぃな!!」
「あん?」
急に呼び止められ、ダーブロウ有紗とジャスミンは、後ろを振り返る。
そこには…一人の老人が、群青色の布を掛けた小さなテーブルの前に、こじんまりと座っていた。
1633投稿者:リリー  投稿日:2008年05月03日(土)20時49分57秒
「何だよ?おっさん…」
ダーブロウ有紗は機嫌が悪そうに、その老人に近づいた。
「何や知らんけど、ご機嫌斜めやね?何か嫌なことあったん?」
「ああ…!ここ半年間ねぇくらい、ご機嫌斜めだね、私は!!」
「せやったら…ちょいと占ってみぃひん?何やらええヒントが見つかるかも知れへんよ?」
そう言うと、老人はテーブルの上に、年期の入ったタロットカードを並べた。
「あ…!それ…」
ジャスミンは声をあげた。
つい、さっき、それと同じカードを一枚…見せられたばかりだからだ。
「お?占いに興味あるん?」
「い、いえ…。興味あるっていうか…」
ジャスミンが言いよどんでいると、ダーブロウ有紗は会話に割り込んだ。
「ねぇよ!!興味なんてよ!!行こうぜ!!」
そう言うと、ジャスミンの腕を掴んで強引に引き摺って行く。
「だから、ちょいと待ちぃな!!お姉ちゃん達…ぎょうさんの敵に囲まれるで…?これから先…」
「何だと…?」
思わず、ダーブロウ有紗は、歩みを止めた。
1634投稿者:リリー  投稿日:2008年05月03日(土)20時50分27秒
「敵に囲まれる?どういうことだ?」
ダーブロウ有紗は、老人を睨みつけながら、その目の前まで出る。
「ちょ…恐い、恐い…。恐ろしいなぁ…お姉ちゃん…」
老人は、少し身を引いた。
「いいから、話しやがれ!!敵って何だ!?」
「それは…タダや教えられへんなぁ…。こっちも商売やし…」
ダーブロウ有紗の額に、青筋が浮かび上がる。
「ち…!何だよ!?占いなんて、舌先三寸の詐欺みてぇなモンだろ!?誰が金なんか出すかよ!!」
「まぁ…ハズレたら、そりゃ詐欺やなぁ…。でも、本当にこれから起きる運命がわかるんやったら、知ってみたいと思わへん?」
「た…確かに…当たるんなら…」
「思わねぇよ!!運命ってのはな、自分の手で切り開くモンだ!!」
またも、ダーブロウ有紗はジャスミンの声を遮った。
「ほほぉ…。お姉ちゃんの、そのセリフ…どこかで聞いたことがあったような…。ま、ええ…。オッチャンはな、未来に起こる災難を避ける方法を…」
「要らねぇったら、要らねぇんだよ!!それにな…」
ダーブロウ有紗は、拳でタロットカードが乗せられているテーブルを思いっきり叩いた。
「私は占いが…特に、そのワケのわかんねぇカードが、大嫌いなんだよ!!」
テーブルは真っ二つに割れ、タロットカードはタイル貼りの地面に散らばった。
1635投稿者:リリー  投稿日:2008年05月03日(土)20時51分07秒
「あらら…」
老人は、散らばったタロットカードを呆然と眺めた。
「さあ、今度こそ行くぜ!!」
ダーブロウ有紗は、鼻息も荒く、駅の方へ、がに股気味に歩いて行った。
「ご、ごめんなさいね、おじいちゃん…」
ジャスミンは、両手を合わせて深く頭を下げた。
「ええよ、ええよ…。占いの嫌いな人に、しつこぅした、オッチャンが悪いねん…」
「ひ、拾います…」
ジャスミンは、散らばったタロットカードに手を伸ばす。
「ま、待って!!そのまま…そのまま…」
「…え?」
ジャスミンは、不思議そうに老人を見た。
「これ…もう既に、占いは終わってるわ…」
「ええ…!?」
ジャスミンは、地面上のタロットカードに目を移した。
1636投稿者:リリー  投稿日:2008年05月03日(土)20時51分28秒
散らばったタロットカードは…裏向きのものもあれば、表向き…絵柄が見えているものもある…。
「こ、これは…?」
「うん…。絵が見えているカードが…あんた等に立ちはだかる、敵の数や…」
そのカードは…『皇帝』、『女帝』、『塔』、『星』、『死神』、『太陽』、『女教皇』、『審判』、『恋人』、『力』、『悪魔』…そして『愚者』…の、計12枚…。
「こ、こんなにたくさん…?」
しかも…『皇帝』がある…!
あの男…?もしかして、このカードは…『TDD』の探偵達を表している…?
「ちょ、ちょっと…!詳しく教えて頂けません?」
「こっから先は…」
老人は手を差し出した。
「………幾らですか?」
「諭吉、一人でええよ…」
「…高…!」
ジャスミンが、そう言った時、ダーブロウ有紗の呼ぶ声が聞こえる。
「あ…ごめんね、本当に…。私、行くわね…」
「あ、お姉ちゃん!!この夏、『古い友人』に再会…」
ジャスミンは、もう急いで駅へと向かっていた。
1637投稿者:リリー  投稿日:2008年05月03日(土)20時51分49秒
老人は、ジャスミンの背中を見送りながら言う。
「やれやれ…。みんな、占いを軽く見過ぎやな…。せっかく、ええヒントを、特別サービスで教えてやろう言うのに…」
老人は、地面に散らばったタロットカードを集めた。
「せやけど…あのお姉ちゃん達…これから大変なことになるで…」
占い師…間寛平は、溜息をつきながら呟いた。

もう7時過ぎだというのに、まだ西の空は、血のように赤い。
今日もまた、相変わらずの熱帯夜。
今年の夏も、暑くなりそうだ。

(『九回裏』・・・終了  第一試合『VS加藤組』ゲームセット)
1638投稿者:リリー  投稿日:2008年05月03日(土)21時03分38秒
これで、第一試合『VS加藤組』は終わりです
ひとまず、区切りが付きました
今までお付き合いくださった方々、ありがとうございました
次回から、第二試合『VS山本組』が始まります
引き続き読んでくだされば、嬉しいです
第二試合の内容を少し…
『表』
・聖テレ野球部の夏合宿
・虹守中学野球部との試合
・『らりるれろ探偵団』とのリンク
『裏』
・理沙、みのぽー、恵と、山本組との全面対決
・楠本とダーさんの共闘
・『らりるれろ探偵団』とのリンク
など…です
では、今日はこれでおちます

1639投稿者:これで  投稿日:2008年05月03日(土)21時06分21秒
第一試合終了ですか。
お疲れ様でした。
第二試合も楽しみにしてます。
1640投稿者: 投稿日:2008年05月03日(土)21時17分05秒
がんばれ
1641投稿者:117  投稿日:2008年05月03日(土)21時48分31秒
とりあえず第1話、お疲れ様です。昨日今日と意味深長なセリフなどが多数ありましたね。
また、小細工?では・・・戦力外→表とリンク、運命って・・・→2006年の夏イベ・今年の番組テーマ? って、感じですかね?
寛平さんも登場。「古い友人に再会」・・・なるほど、「らりるれろ」とリンクしているわけですね。
第2話も楽しみにしています!これからも頑張ってください!!
1642投稿者: 投稿日:2008年05月03日(土)21時59分13秒
あ・・・・いやちがいます〜☆
家族で!!
修学旅行は奈良と京都↓
さびし〜

いよいよデスね!むちゃくちゃ楽しみ!!
らりるれろ探偵団とは??

先ほどまでごくせんみてました!
むちゃくちゃ感動!感激!

私はガッキーより三浦の方がまあ・・・・
1643投稿者:1600  投稿日:2008年05月03日(土)23時28分15秒
やっと今まで読んでいなかった分を読破しました!
相変わらずリリーさんの文章には何かひきつけられるものと才能が感じられて
素晴らしいと思うばかりです
これからも無理せず頑張って下さいね!
1644投稿者: 投稿日:2008年05月04日(日)14時14分20秒
霊  小説書くことにしました!!

先輩是非来てください!!
1645投稿者:カイ  投稿日:2008年05月04日(日)20時32分17秒
はいども〜初コメでぇす!
自分も小説書かせてもろてる、カイです!
自分も関西人で、知ってる人もいるようないないような・・・・
でも、こっちはドクソやばいほど読んでくれてる人少ないんよぉ〜。
若干、参考にさせてもらってますで!これからもよろしくお願いします!
1646投稿者:リリー  投稿日:2008年05月04日(日)21時12分29秒
今夜から、第二試合(第二話)に入ります
117さん、いつも励ましのコメント、ありがとうございます
これからも、末永くお付き合い下さい
1600さん、もの凄いスピードで読破してくれましたね
光栄です
才能とか、とても恥ずかしいですが、ありがとうございます
霊さん、小説書くんですか?
もし、発表する時、タイトルを教えて下さい
家族旅行で行ったんですね?
ゆっくりできましたか?
三浦君は、カッコいいですね
「ファイト」の時から知ってます
でも、あの人は不良の役よりも、繊細な感じの役の方が似合ってます
カイさんも、初めまして
カイさんの小説も、またタイトルを教えて下さい
参考なんて、恥ずかしいです
お互い、がんばりましょうね
カイさんも関西の人ですか
ドクソやばいって面白い言葉ですね(メチャクチャやばいって意味ですか?)関西ではそう言うんですか?
では、第二試合です
更新します
1647投稿者:リリー  投稿日:2008年05月04日(日)21時13分23秒
【第二試合・・・VS『山本組』】

『一回・表』

≪2007年6/15(金)≫
「みんな!集合!!」
あすみの声が、初等部のグラウンドに響く。
キャッチボールをしていた部員達は、一斉にあすみの元へ集まった。
この前の、草野球チーム『ピーナッツ』との試合から、もうすぐ一週間が経つ。
あの日から、部員達の練習に取り組む姿勢が変わってきた。
大人の男のチーム相手に、4対4の引き分け…。
この結果は、彼女達に自信を与えたし、それと同時に勝利への渇望を引き起こした。
例え、あの試合に負けたとしても、爽快感は感じられただろう。
だが、もし勝利で終わっていたら…自分達の野球に対する意識は、もっと高い所へと昇って行ったに違いない。
そう…彼女達は、勝利に餓えていた。
その思いは、あすみの元へと集まる時間の短さが物語っている。
一分…いや、一秒たりとも練習時間を無駄にしてはならない。
七海、藍、中村有沙、ジョアン、梨生奈、エマ、エリー、愛美、梓彩、そして有海…皆の目は、意欲に燃えている。
あの練習試合は、彼女達にとって、10戦を戦った価値があった。
そんな練習試合を、もっと、もっと、こなしていけば…このチームは途轍もなく強くなる…。
あすみは、これからが楽しみで仕方がなかった。
1648投稿者:リリー  投稿日:2008年05月04日(日)21時13分50秒
「あさっての日曜日…また、練習試合の相手が決まったから…」
「!?」
あすみの言葉に、部員達は色めき立った。
「今度は、どこのチームとですか?」
藍は、思わず一歩前に出た。
「また、あの『ピーナッツ』のオッチャン達とやりたいな!今度は、完璧に勝ったんねん!!」
七海は、今から、武者震いを隠せない。
「今度はね、草野球チームじゃなくて…あんた達と同じ、中学生だよ」
「中学生?」
皆は顔を見合わせる。
「男子ですか?女子ですか?」
キャプテンの愛美が聞く。
「天歳市内に、女子野球部は聖テレジアにしかないよ」
「…と、言う事は…?」
「男子…。中学生男子のチームと対戦するよ!」
「おおお〜〜〜!!!」
少女達は、興奮を隠せない。
まず、同学年の男子との試合…相手にとって、不足はない。
そして、やはり女子校…男との出会いは、滅多にない機会なのだ。
1649投稿者:リリー  投稿日:2008年05月04日(日)21時14分19秒
「しかもね…どこの学校だと思う?」
「ど、どこですか…?」
藍は、興味津々だ。
「虹守中学…。去年の、都大会の優勝校だよ!!」
虹守中学と聞いて、また皆は盛り上がった。
他県から来ている藍にだって、虹守中学のことは知っている。
去年、高校野球、春の選抜大会で、優勝した学校…『叡智大学付属渓岳園高等学校』野球部のエースピッチャー…山元竜一の出身校なのだ。
虹守中学は、公立の学校だが、何故か伝統的に野球部が強く、各名門校の野球部にそれぞれ輩出をしている。
「で…でも…いきなり、虹守中とですか…?レベル、高すぎません?」
少し弱気になる愛美の肩を、七海は思いっきり叩いた。
「何、言うてんの?キャプテン!相手は強い程燃えるやんか!!それに、あの『ピーナッツ』かて、相当な強さやったで?」
「そう、そう!それに同じ中学生だよ?やってやれないこと、ないですって!!」
藍も、七海に続いて、興奮気味に言った。
「虹守中学の野球部…?確か、あの『バカ女』がマネージャーやっているんじゃなかったか?」
中村有沙は、そう梨生奈達に尋ねた。
「『バカ女』…?ああ、甜歌のことね…」
梨生奈は、苦笑いをした。
1650投稿者:リリー  投稿日:2008年05月04日(日)21時15分00秒
中村有沙の言う、『バカ女』とは…橋本甜歌のことである。
一応、『R&G探偵社』の探偵リストに名を連ねている。
コードネームは、『クラッシュ・ノイズ(騒音)』…名付けたのは中村有沙だ。
悪意に満ちて名付けたのだが、甜歌は何故か気に入っている。
ただし、甜歌はアルバイト扱いである。
甜歌は、七海や中村有沙達の様に、元『裏の人間』ではない。
普通すぎるくらいの、普通の中学生だ。
同じ『表の人間』である、村田ちひろの様に、戦闘能力が高いわけではない。
『R&G探偵社』が、『TTK事件』に関わる前に主に手がけていた仕事…浮気調査、いなくなったペット探し、家出少女の捜索等…比較的ソフトな依頼内容を、時々手伝う程度なのだ。
そして、甜歌も中村有沙同様、村田ちひろを敬愛していて、彼女と同じ学校…『聖テレジア女子学園高等部』に入学するため、受験勉強にも励んでいる。
その為、最近は成績の方も上がり始めている。
しかし、それでもまだ『聖テレジア』に入学できるレベルにはないのだが…。
1651投稿者:リリー  投稿日:2008年05月04日(日)21時15分25秒
「甜歌は、驚くでしょうね。私達が野球部を組んで、練習試合に来たら…」
梨生奈の言葉に、エマも答える。
「あいつとは、しばらく会ってないもんな。知らないはずだよ。私達が野球部やってるって…」
一応、探偵社に在籍していても、やはり受験勉強に重きを置いているため、4月からは皆と会っていないのだ。
甜歌が目を丸くひん剥いて、素っ頓狂な声をあげる姿を想像して、『R&G』の探偵達は、思わず吹き出してしまった。
「でも、日曜日って言ったら、明後日だろ?随分急だな?」
ジョアンは腕組みをして、難しい顔をする。
「うん…実はね…。虹守中が予定してた、練習試合の相手が急に都合が悪くなって…。で、そこにタイミング良く、私が捻じ込むようにお願いしたのよ」
「何だよ…。やっぱり、『ピーナッツ』と同じか…。片手間で私達と試合するのかよ…」
あすみの言葉に、ジョアンは、面白く無さそうに呟いた。
「いいじゃないですか!!それに、結局は『ピーナッツ』の人達も、本気にさせたんですよ?私達…」
「そうや!!虹守中も、必死にさせたったらええねん!!」
藍も七海も、早く虹守中との試合に向けて、練習をしたくて仕方がない様子だ。
2人ほど、露骨に態度に表さないが、他の皆も同じ気持ちだ。
1652投稿者:リリー  投稿日:2008年05月04日(日)21時15分53秒
「それでね、今日の練習は、この間のピーナッツ戦で見えた、みんなの長所、そして改善しないといけない短所…明後日の試合に向けて、徹底的に練習するよ」
あすみは、メンバー一人一人に長所、短所を読み上げていく。
一番、梨生奈…長所・足が速い、守備が上手い。短所・一番打者として出塁率はいいが、バッティングに難有り。
二番、愛美…長所・絶妙なバント技術。短所・まだ早い打球には追いつけない守備。(エラーが三つ)
三番、藍…長所・球威があり、球種の豊富なピッチングに、勝負強いバッティング。短所・メンタルの弱さ故、それがプレイに影響されること。
四番、七海…長所・長打力と肩の強さ。短所・そのバッティングにムラがありすぎる。(4打数1安打1死球)
五番、ジョアン…長所・エラー無しの守備、積極的なバッティング。短所・選球眼の無さ。
六番、エリー…長所・高い打球に対する守備の上手さ。短所・バットを振らない、消極的なバッティング。(見逃し三振が二つ)
七番、エマ…長所・バッティングの適応力の速さ。短所・やはり守備。(エラーが五つ。穴として狙われた)
八番、梓彩…長所・野球でも通用する守備の技術。(エラー無し)短所・バッティング。(最終打席でセーフティーバントを成功させたが)
九番、中村有沙…長所・守備、バッティングと、無難にこなす。(唯一のエラーは、痛恨のパスボール)短所・ピッチャーをリードできない。
補欠、有海…試合に出ていない為、長所も短所も不明。ただ、スコアラーとしては超一流。
あすみの分析は、皆が納得できるものだった。
「まあ、打順を入れ替えてどうにかなるって問題じゃないよ。例えば、り〜なとじょわん、あい〜んとななみんが打順を入れ替えたって、大して代わらないからね」
梨生奈とジョアン、藍と七海は、顔を見合わせる。
エースピッチャーの座だけでなく、四番打者の座まで藍に渡ってしまうのではないか、と七海はヒヤヒヤした。
1653投稿者:リリー  投稿日:2008年05月04日(日)21時16分22秒
「で、今日と明日で集中してやらなければならないこと…それは、エラーを一つでも少なくする、守備練習…」
あすみは、二本目の指を立てる。
「そして…バッティングだけど…これは一朝一夕じゃ何ともならないから、全員、送りバントの練習だよ」
「お、送りバント…?」
皆は、前屈みにした上半身を、前に折り曲げた。
「お?何だ?そのリアクション…。あんた達、まだ送りバントの重要性を理解してないみたいね?」
あすみは皆を…特に藍を睨んだ。
「い、いえ…!わかってます!」
藍は、慌てて両手を振った。
「でもね…ななみん、あんただけは別メニュー」
「へ?」
自分だけ名指しされ、七海は、首をヒョコッと前に出した。
「あんたは、徹底的にバッティング…長打力のアップを目指しなさい!!この短期間にね!」
力強く、七海の肩に手を置いて、あすみは言う。
「このチームの四番は、あんた以外にないんだから…頼むよ?」
「お、おう…!言われんでもわかっとるわい!!」
そう強がる七海だが、実は嬉し涙を懸命に堪えていた。
1654投稿者:リリー  投稿日:2008年05月04日(日)21時19分06秒
今日は、これでおちます

あと、復刻版『らりるれろ探偵団』のスレを立てました
第二試合とリンクしてますので、もしまだ未読な方は、どうぞ
http://ame.x0.com/tentele/080504010637.html
1655投稿者:やった〜!  投稿日:2008年05月04日(日)21時21分04秒
リリーさん感謝です!
1656投稿者:117  投稿日:2008年05月04日(日)21時51分05秒
第2話スタートですね!「らりるれろ」の復刻版、感謝です。
山ちゃんの出身校で、甜歌がマネジャーの学校ですか・・・男子チームとあって、気合い十分の「聖テレ」。
愛美や梓彩は、男子たちに興味はあるのでしょうか(笑)。
「聖テレ」のメンバーは長所もあり短所もあるんですね。有海は唯一、非の打ち所があまりないですが。
第2試合も最後まで付き合いますよ!頑張ってくださいね。
1657投稿者:1600  投稿日:2008年05月04日(日)22時40分18秒
ついに第2試合ですね!
この小説に出る子達皆好きですが山ちゃん大好きなんでかなり楽しみです
続きも期待しているので頑張って下さい!
らりるれろも時間があるとき読ませて頂きます

ちなみにかなりくだらない話なので聞き流してくれて結構ですが
私も小説書くことにしました
微妙にパクリっぽいところがありますがかなり昔から温めていたものなんで…
不快感を持たれたくないので念のため報告しておきます
1658投稿者:サムドラの主要人物は  投稿日:2008年05月04日(日)23時01分52秒
ありりん以外は出てないんだな
ちひろも甜歌も卓也も杏奈も・・・
レッドさんは、サムドラでは最初と最後しか出てないし
1659投稿者:ファミコン探偵倶楽部の所長空木俊介なんか  投稿日:2008年05月04日(日)23時09分39秒
一回も出て来おへんかったんやぞ
1660投稿者:七海か〜わ〜い〜♪  投稿日:2008年05月05日(月)01時31分07秒
 
1661投稿者:デジ  投稿日:2008年05月05日(月)02時58分12秒
復刻版のスレありがとうございます。
いつの間にか二話目になっててびっくりしました。
第二話スタートですね!
男子VS女子ですか。これは恋愛関係についても
面白くなってきそうですね!
そうすると、甜歌も敵として登場ですか。懐かしいですね。
さて、聖テレについては...
チーム全体で、それぞれに、長所も短所もあるんですか
2試合目もなるべくきます。がんばってください!
1662投稿者:叡智大学付属渓岳園高等学校  投稿日:2008年05月05日(月)03時41分49秒
「えいち大学付属けいがくえん高等学校」
H・K学園ね…
1663投稿者:117  投稿日:2008年05月05日(月)12時16分40秒
あの、スレ違いで申し訳ないのですが・・・リリーさん、
http://221.254.11.166/log/tentele/070923205005a.html
とかは「過去ログ」のヤツですよね。
「過去ログ」を見れるようにするには、具体的にどうすればいいのでしょうか?
良かったら、教えてもらえませんか?このスレに関係ない話で、申し訳ないです。
1664投稿者:あげ  投稿日:2008年05月05日(月)12時47分10秒

1665投稿者: 投稿日:2008年05月05日(月)14時33分59秒
もう発表してるし書いてます〜
「小説」簡単な題で仲に題名入れてて短編で☆
ところで「ファイト」て?
恋空でしたのが・・・てか、うち、ファイト知らん!!

ゆっくりできたかなあ?人力車に乗り楽しかった!!

でもウチもどくそやばい知らんなあ・・・・

いよいよやなあ!むちゃ虹守との試合楽しみ!!
1666投稿者:あげ  投稿日:2008年05月05日(月)16時39分05秒

1667投稿者:まさか  投稿日:2008年05月05日(月)18時49分16秒
あすみはTDDの一味?
1668投稿者:カイ  投稿日:2008年05月05日(月)20時19分46秒
あぁ・・・まぁこちらも発表してもいいんでしょうが・・・・なんかいまいち・・・・・ってわけで書き直します!後、若干パクリかもしれませんので・・・・

後、ドクソやばいって言葉は使う人もいるかもしれませんが、基本的に自分しか使いません。どっちかというと「メッチャヤバイやん!」とかの方が多いと思います。
1669投稿者:接頭語のド+クソやばい?  投稿日:2008年05月05日(月)20時28分04秒

1670投稿者:リリー  投稿日:2008年05月05日(月)21時02分24秒
霊さんも、カイさんも、1600さんも、小説を書いているんですね
パクリとか、気にしないでいいと思います
私も、いろんな小説や映画や漫画から影響を受けてます
一番影響を受けているのは、映画監督のデヴィッド・リンチです
「ツグラム」や「一七」などの初期の(エロの強い)作品は、全部影響うけてます(「ブルーベルベット」、「マルホランド・ドライブ」など)
ドクソやばいってカイさんの造語だったんですね
でも、「メッチャやばい」よりも切羽詰った感じがしますね
「ファイト」は、NHKの朝の連続テレビ小説のドラマです
「スイング・ガールズ」に出てた女の子(本仮屋ユイカ)が出てたので、見てました
ヒロインに恋する、カメラマン志望の「パッとしない男の子」の役が、三浦君でしたが、イケメンすぎて「パッとしてる」んです
後半、メガネを外して垢抜けた感じで再登場しましたが…
キャスト表に出てたキャラクターは、必ず出る予定です
今後の展開は、言えないこともありますので…ご了承下さい
あと、過去ログの件ですが、私もよくわからないです
いまだに復旧されてない過去ログは、方法がないのかもしれませんね
1662さん、気がついて下さってありがとうございました

では、更新します
1671投稿者:リリー  投稿日:2008年05月05日(月)21時03分35秒
「今から守備練習!あい〜んと、ありりん…!あんた達はバッテリーを組んで!ななみんはバッターボックスに立つ!みんなはそれぞれの守備位置に着いて!!」
藍と中村有沙のバッテリー、七海のバッティング、そして皆の守備の一石三鳥の練習をしようということだ。
「で、でも…先生…」
有海が、恐る恐る尋ねる。
「ふ、藤本さんのライトの守備が空いてしまうんですが…」
「ん?何言ってんの?あみ〜ご…。あんたがライトやるに決まってんじゃん」
「や、やっぱり…」
青い顔で、有海はノロノロとライトへ向かう。
「何をしている!!走れ!!」
中村有沙の怒鳴り声で背中を押される様に、有海はライトへ駆け出した。
「ななみん、大きいのだけ狙わずに…転がしたり、ライナーにしたり…皆の守備練習でもあるんだからね」
「わかってる!」
つまり、イチロー並みのスプレーヒッター(広角打者)になれ…という、あすみの狙いだ。
どうしても打球が左に行ってしまう、七海のクセを矯正する為でもある。
自分に対する、あすみの期待の大きさが、肩に圧し掛かる。
しかし、その重みが、七海には心地良い…。
1672投稿者:リリー  投稿日:2008年05月05日(月)21時03分59秒
七海の打球は速かった。
それに、重い。
皆は、泥だらけ、そして痣だらけになる。
「くっそ…!七海のやつ…!『仕事』並みにガンガン打ってきやがる…!」
それでも尚、エラーは許していないジョアンは唇を噛み締めた。
エラーがないのは、梨生奈も同じだ。
一、三塁の守備については、どうやら、どうにかなりそうだ。
問題は、二遊間。
ソフトボールの打球の速さに慣れてしまった愛美と梓彩は、案の定、苦労している。
「七海〜!!ヒマ〜!!」
センターから、エマが声をかけた。
「わかっとる!!ちょっと待っとけ!!」
外野に向けて七海は打球を飛ばすが、それはホームランになってしまう…。
「ほんま…生きてる球を打つんは、難しい…」
今まで、バッティングセンターや、エマからのボウガン、そしてノックや、止まった物体しか打ったことのない七海は、改めて人間の放つ球を打つことの難しさを感じている。
1673投稿者:リリー  投稿日:2008年05月05日(月)21時04分21秒
季節は夏になり、日もだいぶ長くなった。
皆は、6時半までみっちりと練習をし、家路に着く。
「あい〜んと、ありりん。そしてあみ〜ご。あんた達は残って」
「え?」
あすみに名を呼ばれた、藍、中村有沙、そして有海は、他の皆と別れて部室に残った。
「何ですか?もうすぐ、家に帰らないと…。門限が…」
有海は、心配そうに時計を見る。
「ん?それなら大丈夫。今日、あんたの家に電話を掛けた。帰りは遅くなるから、私が送って行くって」
「え?家に?」
「お父様もお母様も不在で、おばさんみたいな人が出たけど…」
「あ…その人…家政婦さんです…」
有海の言葉に、早速、藍が反応する。
「おお〜!?家政婦さん?凄い!!あみ〜ご!!お嬢様じゃん!!」
「そ、そんな…。お嬢様なんて…」
有海は、顔を真っ赤にして否定した。
1674投稿者:リリー  投稿日:2008年05月05日(月)21時04分43秒
「それから、ありりんの所は、吉田さんに連絡したし…あい〜んは、一人暮らしだからいいよね?」
「で、一体、何なのだ?私達3人を残した理由は?」
中村有沙は、少しイラ着いて聞く。
早く帰らないと、今夜のプロ野球中継を見逃す。
最近、ルームメイトである七海に気付かれることなく、本を読むふりをして聞き耳を立てているのだ。
キャッチャーとして、配球の勉強になる為だ。
藍が、九回にホームランを打たれた原因は、自分がしっかりとリードをできなかったからだ。
いや、そもそも、リードというものを知らなかった。
やはり、プロの試合は、相当参考になる。
投手主体で、剛速球で押さえ込むメジャーリーグより、捕手の頭脳的配球で組み立てている日本のプロ野球の方が、自分達の目指す野球に近いのだ。
「うん。それはね、配球のサインを決めようかなって…」
「!?」
それは、中村有沙が一番求めていたことである。
1675投稿者:リリー  投稿日:2008年05月05日(月)21時05分03秒
「で、でも…。どうして、私まで…?」
有海は、わからなかった。
バッテリーを組んでいる、藍と中村有沙が残るのはわかるのだが…何で自分まで?
「あんたは、全ての打席、一球一球を覚えることができるだろ?」
「何?」
これには、中村有沙も驚いた。
元『TTK』で訓練を受けた自分でさえ、そんな芸当はできないだろう。
「凄い!それができれば…相手が何を投げるか、どんな球を打つのか…結構、見当がつくんじゃない?」
「できれば…じゃ、ないんだよ、あい〜ん…。できるんだよ。ね?あみ〜ご」
あすみは、有海にウィンクをする。
「は…はい…。一応…」
有海は、恥ずかしそうにうつむいた。
「凄い!!凄い!!あみ〜ご、凄い!!」
藍は、有海の手を取ってはしゃぎまわった。
「あ…あの…」
有海は、困った様な顔で、あすみを見た。
1676投稿者:リリー  投稿日:2008年05月05日(月)21時05分25秒
「いいかい?あみ〜ご。あんたは、次の試合から、次にどんな球を投げるか、ありりんにサインで伝えるの。それを、ありりんが、藍に伝える…」
「ふむ…。つまり、私と有海…2人で一人のキャッチャー…と、いうことか?」
中村有沙は、腕組みをして呟く。
「ええ!?わ、私が…?そ、そんな…」
慌てふためく有海の口を、手で塞ぐあすみ。
「だって…今は時間がないんだよ?ありりんも頭はいいけど、急にピッチャーのリードなんか会得できないし、あんたも同様、急に捕球技術が身につくわけがない」
「それから、もう一つ…。あんたは、バッターボックスに立つ仲間に、相手ピッチャーがどんな球を投げるか、予想して伝えるんだ」
「あ、あすみん先生…!そ、それ…サイン盗みなんじゃ…?」
青い顔で進言する藍に、あすみは目をパチクリさせる。
「うん?いや、だって、キャッチャーのサインを見て伝えるわけじゃないんだよ?問題なの?」
「サインを見て伝えるってわけじゃなくても、位置的に、あみーごが何かサインを送ったら…やっぱり問題ですよ…」
「そうか…。じゃ、その時は、あみ〜ごがベンチにいて、時々サインを仰いでよ」
「と…いうことは…有海が監督ってことになってしまうな?」
「あ…」
中村有沙の言葉に、あすみは固まった。
有海は思わぬ大役に、「そんな自信ありません」と言いたげな潤んだ目で、あすみを見上げた。

(『一回・表』・・・終了)
1677投稿者:リリー  投稿日:2008年05月05日(月)21時05分44秒
それでは、これでおちます
1678投稿者:117  投稿日:2008年05月05日(月)21時21分18秒
今後は有海が結構前に出てきそうですね。
エマの方向に打球が飛んでこないのは、これまた「野球対決」ですよね(笑)。
野球に興味の無さそうな有沙も、いろいろ勉強しているんですね。続きも楽しみです!
1679投稿者:カイ  投稿日:2008年05月05日(月)21時47分36秒
あ〜なんかまぎらわしかったですかね?
・・・・小説ですすまへん!
1680投稿者:カイ  投稿日:2008年05月05日(月)21時48分39秒
ミスです。小説がすすまへん!ですね・・・
1681投稿者:デジ  投稿日:2008年05月06日(火)11時48分44秒
今度は、有海が主役的存在になりそうですね。
筋的には、有沙もキーポイントになりそうですね。
その有沙もいろいろと野球を勉強していたんですね。
有沙と七海も別の意味でいいチームなりましたね。(笑)
続きも楽しみです。
1682投稿者:リリー  投稿日:2008年05月06日(火)20時57分26秒
はい、有海はこれから野球でも活躍していきます
「らりるれろ」の8月で梨生奈が大怪我しますので、その穴を埋める為に、有海が借り出されることになります

117さん、あの野球対決、覚えてます
あきらかに野球をやったこと無さそうでしたね、エマ

カイさん、わかります
私も、まったく進まず、3月から4月の中旬まで、まったく書けませんでした

デジさん、キャラクターの微妙な心境の変化を察してくださって、ありがとうございます
野球がきっかけで、仲良くはならなくとも、協力しあうことができるようになるでしょうね

今日、ちちろと里穂がでてましたね
ああいう形で、OBOGだ出てくるんえしょうね

では、更新します
1683投稿者:リリー  投稿日:2008年05月06日(火)20時58分22秒
『一回・裏』

≪2007年6/15(金)≫
山本組に、男は一人しかいない。
組長の、山本圭壱だ。
この男は、とんでもない好色家であり、女は若い程好みであった。
組員は、全て女性で構成されており、暴走族のレディースや、家出娘等をスカウトしては、自分の周りに侍らせていた。
山本の日本家屋の屋敷にある寝室…畳5畳分はあるベッドの上、豹柄のガウンを纏った山本の周りには、裸の女…いや、少女達が寝転がっている。
その中で、山本は至福の表情を浮かべ、自分の雇った用心棒と謁見をしていた。
そう…山本は、裏探偵組織『TDD』から派遣されるメンバーも、当然、女性を所望した。
「組長…。相変わらずお盛んで…」
『TDD』メンバー、コードネーム『エンプレス(女帝)』後藤理沙は、本心は呆れていたが、それを押し殺し笑顔で言う。
「ぐふふ…。おまえもどうだ?服を脱いで、こっちに来い!」
山本は、自分にもたれ掛っている少女達の尻、太もも、乳房を撫で回しながら理沙に言った。
「何度も申し上げたはずです…。私達は、『そういう仕事』は一切しません」
「報酬に、色をつけてやってもいいぞ?」
「…それでも、お断りです」
理沙の顔は、冷たいものになる。
1684投稿者:リリー  投稿日:2008年05月06日(火)20時58分54秒
「ふん…!つまんねえな!!」
山本は、一人の少女の尻を、思いっきり引っ叩いた。
「痛い!!」
少女は叫ぶ。
「お?痛かったか?そうか?」
そう言いながら、山本は何度も尻を、同じ強さで叩き続ける。
みるみるうちに、彼女の尻は赤く腫れ上がっていく。
「痛い!!痛い!!痛い!!や、やめて下さい!!」
少女は、とうとう泣き出した。
他の少女達は、青い顔をして山本から離れた。
「おい!?何だ!?おまえ等!!何、俺を避けてんだよ!?てめぇ等、みんな警察に突き出してやってもいいんだぞ!?おお!?」
少女達は顔を見合わせ、目に涙を浮かべながら山本の側に身を寄せた。
(やれやれ…。恵がこの場に居なくて良かった…。あいつ、怒り狂って暴れまわるだろうな…)
理沙は、溜息を一つついた。
1685投稿者:リリー  投稿日:2008年05月06日(火)20時59分17秒
その溜息に気がついたのか、山本は理沙をジロリと睨む。
「何だ?何か、文句でもあんのか?」
「いえ…。別に…」
理沙は、顔に笑みを戻す。
「そうか?でもな…俺は、あるんだよ!!」
山本は、尻を腫らせて泣きじゃくっている少女の髪の毛を引っ掴み、立ち上がった。
「ぎゃ!!」
少女は叫び声をあげ、腰を浮かした。
「おまえ等、いつになったら加藤組を片付けるんだ!?ええ!?」
「今は…時期が悪くて…。もう少し待った方が、よろしいかと…」
理沙は、興奮気味の山本の気を静めるように、諭した。
「時期が悪い!?何、言ってやがる!!あいつ等、今、組員の半分が病院送りになってるそうじゃねぇか!!今がチャンスだろ!?」
「…数の問題ではありません…」
「じゃあ、何の問題なんだよ!?」
「質…で、ございます…」
理沙は、あくまでも冷静に説明をする。
1686投稿者:リリー  投稿日:2008年05月06日(火)20時59分39秒
「質?何だ?そりゃ…」
山本は、ようやく少女の髪の毛を放した。
白いシーツに、髪の毛が数本落ちた。
「向こうには…とんでもない用心棒がついています…」
「用心棒?誰だ?そりゃ…」
「『エンペラー(皇帝)』…。我々の組織の者です」
「一人か?」
「一人です」
「おまえ等は、3人いるじゃねぇか!!」
「ですから…数の問題ではないんです…」
山本は、苛つきながら、腰を落とした。
少女達は、ビクっと山本から離れた。
「おい!!肩を揉め!!」
怯えながらも、少女達は山本の肩、腕を揉み解していく。
1687投稿者:リリー  投稿日:2008年05月06日(火)21時00分18秒
「情けねぇな…!たしか、身内が敵に回っても、全力をあげて潰すのが『TDD』なんじゃねぇのかい!?」
「もちろん、そうです。しかし、できればお互い怪我をしたくありません。ですから、組長から頂いたの報酬の中から、『R&G探偵社』に依頼を出したのです」
「『R&G』…?たしか、若いお姉ちゃんだけで形成された…探偵社か?」
山本の目が、輝き始める。
「若いというか…若過ぎます。ほとんどのメンバーが、女子中学生でして…」
「女子中学生…?ストライクゾーンだぞ?」
山本は舌なめずりをする。
(チ…!ロリコンめ…!)
理沙は、そんな感情は一切出さず、相変わらず冷静に話しを続ける。
「しかし、その者達も、『エンペラー』と接触をした途端、依頼を断りました。それ程、手強い相手が、向こうに付いている…ということです」
「ケ…!で、どうすんだよ?このまま、指咥えて見てるだけか?」
「『エンペラー』に、匹敵する力の持ち主を、もう一人こちら側に引き込みましょう…」
「誰だ?」
「『チャリオッツ(戦車)』…。戦闘能力だけでみれば、彼は軽く『エンペラー』を凌駕します」
「ちょっと待て…。彼?…そいつ、男か?」
「は…はい…。男ですが…」
「要らねぇ!!男は要らねぇ!!」
山本は、後ろの少女達の身体に、もたれ掛った。
1688投稿者:リリー  投稿日:2008年05月06日(火)21時01分26秒
「他に、誰かいねぇのか?もちろん、女だぞ?」
「『タワー(塔)』に…『ラバーズ(恋人)』がいますが…。やはり、『エンペラー(皇帝)』には…」
「じゃあ、そいつ等でいいや!!5人でかかれば、何とでもなるだろ?」
それでは、こちらに甚大な犠牲が出る…と、理沙は言いかけて、やめた。
それがどうした…と、言われるのがオチだ。
「この2人は、今、別件で動いていまして…。すぐには無理です」
山本は、つまらなそうな半開きの目で、理沙を眺める。
「で…その『チャリオッツ』は…そんなに強いのか?」
「はい…。単純な格闘で彼に勝てるのは、ボスしかいません…」
「格闘?もしかして…そいつ、ボクサーとか空手家とかか?」
「…はい。『チャリオッツ』は、空手を使います」
「もしかして…筋肉マッチョか?」
「…はい…」
「げぇ…!!要らねぇ!!絶対に要らねぇ!!」
山本は、足下にいた少女の頭を蹴っ飛ばした。
1689投稿者:リリー  投稿日:2008年05月06日(火)21時02分27秒
今日は、これでおちます

これだけの描写で、『チャリオッツ(戦車)』の正体がわかりましたでしょうか?
1690投稿者:わかりやすいです  投稿日:2008年05月06日(火)21時08分32秒

1691投稿者:117  投稿日:2008年05月06日(火)21時22分56秒
Yさん、相変わらずの少女好きですか(苦笑)。全裸の女の子がゴロゴロ転がっているとは・・・(苦笑)。
確かにこれだと、「山本組」を裏切る人も出ていくわけだ・・・続きも楽しみです!
1692投稿者:女の子の頭を蹴り飛ばすとは  投稿日:2008年05月06日(火)21時34分27秒
なかなかの非情っぷりですねぇ
彼には哀れな最期が待っていることでしょう
1693投稿者: 投稿日:2008年05月06日(火)21時36分29秒
なに?
1694投稿者:ターボくんですか?  投稿日:2008年05月06日(火)21時38分42秒

1695投稿者:チャリオッツは  投稿日:2008年05月06日(火)22時45分03秒
角田さんでしょ?
筋肉マッチョは、天てれには多いけど、空手使いは角田さんだけ
1696投稿者:ちーちゃん、  投稿日:2008年05月06日(火)22時54分33秒
可愛かったです
1697投稿者:山本ひどいなぁ  投稿日:2008年05月06日(火)23時49分16秒
今後何らかの制裁を受けて欲しい
1698投稿者:デジ  投稿日:2008年05月06日(火)23時56分50秒
本日2度目です。
これだけでもかなりの残虐がありますね。TDD
チャオリッツ...なんとなく判らなくもないですが、
相変わらずネーミング上手いですね。
続きも楽しみです!
(ところで、山本蛍一ってだれでしたっけ...(苦笑))
1699投稿者:どどどどどうしちゃったんですか?!  投稿日:2008年05月07日(水)00時29分54秒
>ちちろ
>OBOGだ出てくるんえしょうね
1700投稿者:リリー  投稿日:2008年05月07日(水)21時00分40秒
ほんと、どうしちゃったんでしょう…
おそらく、ドラマの「絶対彼氏」が始まるまでにレスしようと、急いでたんでしょうね

チャリオッツのこと、皆さんのお察しの通りです
しかし、キャスト表にはないので、出てくる予定はありません
名前のみです

山本さんは、このままでは済まないと思います

それでは、更新します
1701投稿者:リリー  投稿日:2008年05月07日(水)21時02分18秒
「ひぃ…!!」
少女は、ベッドから転げ落ちた。
「ならば…我々だけでどうにかするしか…ないですね…」
転げ落ちた少女を冷たい目で見下ろしながら、理沙は言った。
「へへへ…。あんまり乗り気がしねぇか…?おい…」
山本は、そんな理沙の心情を見透かす様に笑う。
「だったら、その『チャリオッツ』…雇ってやってもいいぞ?」
「…?本当ですか?」
「ただし…」
山本は、豹柄のガウンの前を開け、同じく豹柄のビキニパンツをさらした。
「こっちに来いよ…。へへへ…」
その瞬間、山本の後ろの壁に映った、少女達の影の一つが、ゆらりと揺れた。
1702投稿者:リリー  投稿日:2008年05月07日(水)21時03分19秒
「…!!」
理沙は、それを見逃さなかった。
「わかりました…」
「おお!?それじゃあ…」
山本は、上半身を起こす。
「『エンプレス(女帝)』、『デス(死神)』、『ストレングス(力)』の、我々3人だけで、なんとかしましょう…」
「…んだよ…」
舌打ちをして、山本は、再び少女達にもたれかかった。
「それでは、失礼致します」
理沙は、深々と頭を下げ、このバカバカしい狂宴が行われている寝室を後にした。
長い廊下を歩く理沙の前に、いつの間にか『TDD』コードネーム『デス(死神)』箕輪はるかが立っていた。
「みのぽー…」
理沙は、歩みを止めた。
1703投稿者:リリー  投稿日:2008年05月07日(水)21時03分55秒
「弥勒姉さん…。大丈夫?」
高い擦れ声で、はるかは聞いた。
「大丈夫よ…。それを言いたいのは、私の方だけどね…。みのぽー、あんた、あのブタを殺しそうになったでしょ?」
「だって…あいつ、弥勒姉さんを…」
「大丈夫よ!!あんなブタの言いなりなんかにならない!!それに、依頼主を殺したりしたら、私達がボスから殺されちゃう…」
はるかは、ポツリと言う。
「いっそのこと…ボスを仲間に引き入れちゃうとか…?」
その提案に、理沙は軽く笑い飛ばした。
「無理よ!!ボスは、あくまでも中立!!最強故、誰の依頼も受けない。だからこそ、私達みたいな者を集めてるんでしょ?」
「そうか…。そうだよね…」
はるかも、自分の言ったことなのだが、思わず笑った。
「あ…それから…。はい、弥勒姉さん…できたよ…」
はるかは、細い金の鎖を、理沙に手渡した。
1704投稿者:リリー  投稿日:2008年05月07日(水)21時04分58秒
「あら…!早かったのね?」
とても嬉しそうに、理沙はその鎖を受け取った。
それは、ペンダントだった。
「ねぇ…。みのぽー、着けてくれる?」
一旦、理沙は、はるかにペンダントを返すと、長い後ろ髪を掻き上げてうなじを見せる。
アクセサリー等、滅多に身に着けないはるかは、不慣れな手つきで理沙の首にペンダントを着けた。
「とっても似合うよ…。弥勒姉さん…」
はるかは、一つだけ黒く変色した前歯を見せて笑った。
「ふふふ…ありがと…」
金の鎖に、白い物がぶら下がっている。
その白い物とは…一本の『前歯』…いつか、俵有希子から抜き取った…あの『前歯』だった。
「キレイな歯…。今までで最高のコレクションよ…。うふふふ…」
理沙は、その歯に口づけした。
「それより…恵は?」
「ん?恵なら、歌舞伎町だよ」
「歌舞伎町…?ああ…『エトワール』ね…」
理沙は、携帯電話を取り出した。
1705投稿者:リリー  投稿日:2008年05月07日(水)21時05分52秒
歌舞伎町の雑多の中、通路に人だかりができている。
どうやら、ケンカらしい。
一人の男が、空高く舞い上がり、背中から落ちた。
何やら、中国語の様な言葉が聞こえる。
数人の男が、一人相手に、一斉に飛び掛る。
その男達の手には、割れたビール瓶、バール等が握られている。
しかし、その標的になっている男…いや、女は、次々と男達をなぎ払っていく。
その女は、道に倒れている男達を睨みつけて叫んだ。
「おう!!てめぇ等!!女一人相手に、そんな大勢…しかも、武器持たなきゃ勝てねぇのか!?」
随分、野太い声だが、確かに女だ。
「ま…勝てねぇか…」
女は、後ろを向くと、そのまま歩いていく。
その女のポケットから、携帯の着信音が鳴り響く。
「お?誰からだ?」
女は、ポケットに手を突っ込んで、携帯電話を取り出す。
すると、道に倒れている男の一人が、ナイフを構えて女に突進した。
1706投稿者:リリー  投稿日:2008年05月07日(水)21時06分21秒
「ん?何だ?弥勒姉さんじゃん!」
その女…裏探偵組織『TDD』…コードネーム『ストレングス(力)』の秋山恵は、携帯の通話ボタンを押すと同時に、裏拳でナイフを構えた男の顔を殴り倒した。
「はいよ、こちら『ストレングス』」
〔今、歌舞伎町?〕
「おう。ちょっと、トラブルに巻き込まれちゃってよ…」
今度は、バールの一撃を寸ででかわす。
そして、振り向きざまに膝蹴りを放つ。
「ぐええ…!」
男は、胃の中の物を全て吐きだして前のめりに倒れた。
「げ…!汚ぇ!!ブーツにラーメンがかかっちまった…!」
そう怒鳴りながら、恵は、その男の頭を蹴っ飛ばした。
〔それは…『仕事』に関係あるの?〕
「ん?見事に関係ねぇけど?」
今度は、割れたビール瓶を突き出して来た男に、ラリアートを放つ。
「ありゃ!?今度は首の骨、いっちまったか?」
〔ちょっと!警察沙汰だけはやめなさいよ?後々面倒になるんだから!!〕
「大丈夫だよ!こいつ等、中国人だ。どうせ、不法滞在かなんかだろ?」
恵は、理沙の叱責を軽く受け流す。
1707投稿者:リリー  投稿日:2008年05月07日(水)21時06分43秒
〔とにかく…あんたは、言われた仕事だけをこなしていればいいんだからね?〕
「わかってるよ!!仕事の方は、手抜かり無しだ!!だが…」
恵は、太い鎖を振り回す男の懐に飛び込む。
「降りかかる火の粉は、無視できねぇ性質でね!!」
電話を掛けたまま、その男を抱え上げ、アスファルトに叩き付けた。
〔もう、どうでもいいから、ケンカはやめなさい!!〕
「やめる…?もう、終わったよ!」
恵の周りには、数人の男達が呻きながらのた打ち回っている。
〔つまらないケンカで変に恨みを買って、ややこしい事になっても…私は知らないからね!!〕
「恨み…?うん…そいつはウゼェな…。じゃあ、殺しとくか…」
恵は、まるで小枝を折るように、次々と男達の首を踏み付けていく。
〔ちょっと…!目撃者とか、いないでしょうね?〕
「野次馬がいっぱいいるけど?」
〔あ、あんたねぇ…〕
「大丈夫!!歌舞伎町じゃ、こんなの日常だよ!弥勒姉さんだって、よく知ってるだろ?昔の庭なんだから…!」
〔いいから、早く『エトワール』に戻りなさい!!今日、明日あたり、依頼人が着くはずよ!!〕
「難田門司か…?」
難田門司…麻薬密売組織のボスの名である…。
1708投稿者:リリー  投稿日:2008年05月07日(水)21時07分20秒
〔思わず抱きしめたくなる様な、可愛い顔したオジサマだけど…失礼のないようにね…。『エトワール』のオーナーのお兄さんでもあるんだから…〕
「ふ〜ん…。そうか…維里香さんの兄貴か…。そう言えば、維里香さんの苗字も難田だっけ?で、用件は何なの?」
〔あのブタ…組長に『チャリオッツ』を雇ったらどうかって進言したけど…ダメだった…。覚悟を決めて、私達だけで『エンペラー』と対峙しなきゃならなくなったわ…〕
「あ?それならそれで、いいんじゃね?私は言っただろ?あんな『筋肉ダルマ』の力なんか借りなくたって、私達3人で何とかなるって!!」
〔…それには、あんたの『力』が絶対に必要なんだから…!つまらないことで、戦線離脱はしないこと!!こう、釘を刺しておこうと思った矢先なんだけど…〕
「ははは…!こりゃ、バッドタイミングだったな…!…お?」
恵は、野次馬から這い出てきた男に視線を移す。
その男が、恵に呼びかけた。
「ヤバイっすよ!!早く逃げて!!警察が来ました!!」
「マジかよ?早ぇな…!」
恵は、めんどくさそうに呟いた。
〔どうしたの?〕
「あん?サツが来やがったってさ…」
〔逃げなさい!〕
「言われなくてもわかってるよ!!」
恵は、携帯を切った。
「さあ、こっちです!!」
「おう!!悪ぃな!ゴルゴちゃん!!」
その男…ゴルゴこと、松本政彦と共に、恵は人ごみを掻き分けて逃げ出した。

(『一回・裏』・・・終了)
1709投稿者:リリー  投稿日:2008年05月07日(水)21時09分48秒
「難田門司」とは、CGキャラクターの、「もんじくん」のことです
ナンダーMAXともんじくんで、「なんだもんじ」です
『らりるれろ探偵団』に、名前だけ登場しました
今回も、名前だけですが…

それでは、今日はこれでおちます
1710投稿者:117  投稿日:2008年05月07日(水)21時18分34秒
>少女達の影が揺れた・・・つまり、みのぽ〜のことだったんですね。
ここで、難田門司が登場ですか・・・「らりるれろ」と繋がりつつありますね。
そして、ゴルゴさんも登場。えぇと、ゴルゴさんの役柄は何でしたっけ?
1711投稿者:いりかも出てきたね  投稿日:2008年05月07日(水)21時28分58秒
きっかけはやっぱり
らりるれろのレスから?
1712投稿者:1600  投稿日:2008年05月07日(水)22時08分23秒
ナンダーMAXともんじをかけてなんだもんじなんて
相変わらずリリーさんは言葉遊びなるものが上手ですね!
第2試合も楽しみに待っていますので無理しない程度に頑張って下さい!

ちなみに小説の件はありがとうございます
これからは安心して書き進めていこうと思います
1713投稿者:デジ  投稿日:2008年05月08日(木)02時15分35秒
最初からだったんですね「らりるれろ」との関係は。
ゴルゴさん、サムドラぶりの出演ですね。この小説にいたの忘れてました。
難田門司登場!それにしてもナンダーMAXにいるもんじだから難田門司だとは!そしてイリカ(維里香)...妹役ですか(笑)

1714投稿者:あげ  投稿日:2008年05月08日(木)14時24分33秒
 
1715投稿者:あげ  投稿日:2008年05月08日(木)18時04分41秒


1716投稿者:リリー  投稿日:2008年05月08日(木)20時52分39秒
ゴルゴさんは、サムドラでは情けない役でした
今回も似たようなものですが…

難田門司の妹、維里香はイリカのことです
これを書いた後、イリカが伊東ぁみに変身したので、女性にして正解だったと思います

117さん、1600さん、デジさん、そして、その他のみなさん、継続して読んで下さるので、書く手も力が入ります
これからも、末永くお付き合い下さい

では、更新します
1717投稿者:リリー  投稿日:2008年05月08日(木)20時53分28秒
『二回・表』

≪2007年6/17(日)≫
聖テレジア野球部のメンバー達の落胆は、如何ほどだったか…。
この日の為に、この二日間、特別訓練をしてきたと言うのに…。
虹守中学野球部のマネージャー、2年生の木内江莉は、両手を合わせて謝った。
「本当にごめんなさい…!」
目と鼻が随分大きいが、可愛らしい顔をしている。
ダーブロウ有紗の日本人版といった感じだ。
「ごめんなさいで済むかい!!ゴルァ!!」
怒りをぶつける七海。
「ひぃ!!」
江莉は、一歩、後ろに跳んだ。
「やめなさい、ななみん!この子に怒ったって、仕方がないでしょ?」
あすみは、七海を江莉から遠ざけた。
「ごめんなさいね…。でも、一体、どういうことなの?」
物腰は柔らかだが、長身のあすみに迫られて、江莉は、また一歩退いた。
「それが…その…。昨日、急に連絡があったんです。叡智大渓岳園から…」
叡智大付属渓岳園高校…甲子園常連の、強豪校である。
「叡智大渓岳園…?エースの山元竜一君が、この中学のOBだったっけ?」
「はい…。その叡智大渓岳園から…練習試合が流れたんなら、一緒に合同練習しないか?って…」
1718投稿者:リリー  投稿日:2008年05月08日(木)20時53分47秒
あすみは、溜息をついて頭を掻いた。
「ま、しょうがないよね〜…。春の選抜甲子園優勝校との合同練習と…今年発足したばかりの女子野球部との練習試合…。そりゃ、反故にされるか…」
しかし、七海は納得がいかない。
「それでもやな、先に約束したんは、コッチやろ?すっぽかすってのは、どうかと思うで!?」
「そうだ!そうだ!ふざけんなよ!!」
ジョアンやエマも、口々に不満を言った。
江莉は、慌てて否定した。
「い、いえ…!すっぽかしたわけじゃありません!!聖テレさんとの練習試合をする為に…一部の部員は残しておきました」
江莉の指す方向に、20人程の部員達が、集まっていた。
「…?あの子達は?」
「はい。今日は、このメンバーが、聖テレさんの試合相手となります」
あすみは、その少年達を見回した。
「で…エースピッチャーの、バーンズ君ってどの子?」
「あ…。勇気先輩ですか?…叡智大渓岳園との合同練習に…」
「バッテリーを組んでる、2年の高橋君は?」
「郁哉も…叡智大渓岳園に…」
「リリーフの永島君は?」
「謙二郎も…叡智大渓岳園に…」
「スーパールーキーって噂の、木村君と日向君も…?」
「はい…。叡智大渓岳園に…。レギュラー選手と3年生は…みんなムコウに…」
あすみは、再び溜息をついた。
1719投稿者:リリー  投稿日:2008年05月08日(木)20時54分09秒
「つまり…ここに残ってるのは…二軍ってこと…?」
藍は、キャプテンの愛美に耳うちをする。
「し…!くれぐれも、失礼なこと、言わないでね?」
「………あ〜あ…。エースピッチャーのバーンズ君…見たかったのに…」
藍は、つまらなさそうに呟いた。
「それは、彼が強いから?それともイケメンだから?」
梨生奈が、藍に尋ねる。
「両方よ!両方!」
「え?そんなにイケメンなんだ!?今から、叡智大渓岳園に行こうよ!!」
それを聞いて、エリーがはしゃいだ。
「やかましい!!そんな腑抜けたことを言っていると、また牽制でアウトになるぞ!?」
中村有沙が、エリーに怒鳴った。
「うぅ…。それ、言わないでよ…!!」
エリーは途端に涙ぐんで、エマにもたれ掛かる。
1720投稿者:リリー  投稿日:2008年05月08日(木)20時54分29秒
「おい、おい…!さすが聖テレだよ…!みんな、可愛い〜!!」
「監督も、背が高くて美人だな〜」
「バカ!俺は、叡智大渓岳園の合同練習に行きたかったよ!!何で、こんな女共の相手をしなきゃ、いけねぇんだよ!!」
「俺も!!山元先輩に教えて貰いたかったし…久しぶりに、前田先輩に会いたかったよ!!」
「ち…!1年の木村、日向までムコウに行ってんだぞ?2年の俺達の立場は、どうなるんだよ!!」
「仕方ねぇよ…。実力がねぇんだもん…!俺達なんて、お嬢様の野球ごっこのお付き合いがお似合いなんだよ!」
『R&G』の探偵達には、虹守中の二軍の者達の声が、地獄耳でバッチリと聞こえている。
「あのクソガキ共〜…。言いたい放題、言っとんな…」
七海は、怒りに打ち震えた。
「ああ…。目に物見せてやろうじゃん…!二軍坊主共め…!!」
ジョアンも、指をボキボキ鳴らす。
「み、みんな、恐い…」
有海は、愛美と梓彩の影に隠れた。
「ひゃぁ〜…みんな、気合入ってるね…。愛美…」
梓彩の言葉に、愛美も頷いた。
「でも…私は少し安心した…。いきなり、虹守中の一軍と対戦するよりかは…」
1721投稿者:リリー  投稿日:2008年05月08日(木)20時54分55秒
あすみは、それでも精一杯の笑顔をつくり、江莉に話しかける。
「じゃあ、顧問の井上先生を呼んで下さる?まずはご挨拶を…」
それに対しても、江莉は気まずそうな顔をする。
「ええと…マーさん…いや、井上先生も…」
あすみの顔から、微笑みが消える。
「ま、まさか…」
「はい…。叡智大渓岳園へ…」
あすみは、その長身をよろめかせた。
「じゃ、じゃあ…監督は…誰が…?」
「か、監督ですか…?そ、そう言えば…聞いてませんでした…」
あすみは、思わず皆の方を振り向く。
そして、力のない笑い…。
「おい!!あのバカ女を呼べや!!」
七海は、声を荒げた。
「バカ女?」
「もう一人、マネージャーがおるやろ!?」
「て、甜歌のことですか!?」
「そう!!甜歌や!!あいつに一言、文句言ったる!!」
一マネージャーに文句を言っても始まらないのだが、知り合いが甜歌しかいないので、怒りをぶつけるのも当然、彼女しかいない。
1722投稿者:リリー  投稿日:2008年05月08日(木)20時55分19秒
「あ、あの…甜歌も…」
「はぁ…!?あいつも…?」
「はい…。叡智大渓岳園に…」
「一体、何やねん!!ナメるんも、ええ加減にせぇや!!」
とうとう、七海の怒りは爆発した。
「そんなこと言われたって…知りませんよ!!」
江莉も、怒鳴り声をあげた。
「お!?何や?何、逆ギレしとんねん?ワレ!?」
七海は、江莉ににじり寄る。
「あ…!す、すいません!つ、つい…」
咄嗟に謝る江莉だったが、彼女の怒りは、もっともだった。
甜歌を一人残したら心配だから…と、井上に留守番を申し付けられたのだから…。
(甜歌のやつ…!今頃、私の勇気先輩に…!!あの女、レズのクセして…!!)
江莉は、この場に取り残され、気が気ではないのだ。
あすみは、七海の肩を後ろから押さえつけてなだめる。
「ななみん、やめなって…!仕方がないよ。まずは挨拶!」
聖テレ野球部と虹守中野球部(二軍)は、整列し、お互い帽子を取って挨拶した。
1723投稿者:リリー  投稿日:2008年05月08日(木)20時55分49秒
「あ…!七海!!背番号!!」
先に頭を上げたジョアンは、隣にいる七海の背番号に気がついた。
「な、何や?」
ジョアンは、ププっと吹き出した。
「い、いや…何でもねぇ…」
「は?何や?」
「何でもねぇったら…!」
ジョアンは、隣のエリーにもたれ掛かって笑う。
「な、何やねん?背番号がどうしたん?ま、まさか、また『6』に?」
藍が、七海の背中に回りこむ。
「ち、違うよ…ななみん…。背番号…『の』になってる…。平仮名の…」
「はぁ?『の』?『の』って…平仮名って、何やねん!?」
七海は、急いでユニフォームを脱いだ。
背中には…『9』が横に縫い付けられていた…。
「ゴルァ!!一木!!オノレ、ワザとやっとんな!?」
「ひ、ひぃ!!」
七海に、鬼の形相で睨みつけられ、有海は思わず後退りした。
「『ひぃ!!』や、あらへん!!コラ!!オノレのユニフォーム、寄越さんかい!!」
同学年の男子の前で、花も恥らう思春期の少女が、ユニフォームを無理矢理脱がされた。
もちろん、虹守中のメンバーは、大爆笑である。
1724投稿者:リリー  投稿日:2008年05月08日(木)20時56分28秒
江莉が、あすみに駆け寄ってきた。
「それでは、これから練習試合を始めたいと思いますが…。二、三確認したいことが…」
「ん?何?」
「この試合の審判…うちの部員から出してもいいでしょうか?フェアなジャッジを心がけますので…」
「うん。問題ないよ。よろしくお願いします」
「あと…回数ですが…七回にします?それとも、九回に?」
「え…?野球は九回まででしょ?」
「…ああ…。はい。九回制ですね?」
どうやら、女子には体力的に七回が限度と、勝手に思われたらしい。
「それから…5回までに10点差がついたら…コールドでいいですか?」
「…ん?」
あすみは、少し目を細めた。
「こ、この…!やっぱりウチ等をナメ…」
あすみは、大きな掌で、七海を制した。
「はい…。そうですね。それでいいです」
それを聞いて、虹守中野球部は歓声をあげた。
1725投稿者:リリー  投稿日:2008年05月08日(木)20時56分49秒
「やった〜!!これで叡智大渓岳園に、俺達も行けるぜ?」
「おう!さっさと終わらせて、早く行こうぜ!!」
「聖テレの女の子を見れて、叡智大渓岳園の合同練習も参加できる俺達って…超、ラッキーじゃね?」
勝手なことを、大声ではしゃぎまわる、部員達。
監督がいなければ、こうまで礼儀に欠くものだろうか…。
「ま、礼儀に関しては、うち等も大きなことは言えないんだけど…」
あすみは、そう言いながら、我がチームを見た。
皆、怒りの炎で燃えている。
「うん…。こりゃ、向こうの望む結果になりそうだ…。早いとこ終わるね…。この試合…」
とにかく、聖テレ野球部と、監督不在の虹守中二軍との練習試合が始まった。
今回も、聖テレ野球部は後攻を選んだ。
『守備の練習』もしたい…。
それが、あすみの理由だった。
1726投稿者:リリー  投稿日:2008年05月08日(木)20時58分57秒
今日は、これでおちます

ひとまず、虹守中で登場したのは、江莉だけでした
勇気や山ちゃん、甜歌などは、だいぶ後になります
1727投稿者:117  投稿日:2008年05月08日(木)21時22分02秒
>目と鼻が随分大きいが、可愛らしい顔をしている・・・うぅん、まぁ確かに(笑)。
>甜歌のやつ…!今頃、私の勇気先輩に…!!あの女、レズのクセして…!!
そういえば江莉って、「R&G」のメンバーでしたっけ?レズって、ナゼ知っているんでしょう・・・(笑)?
それにしても、みんな「叡智大渓岳園」に行ってしまっているんですね。次々に「叡智大渓岳園に」・・・思わず笑ってしまいました。
続きも楽しみです!
1728投稿者: 投稿日:2008年05月08日(木)21時44分37秒
すみませ〜ん何学園なんですか?読めませ〜ん!
だいぶ後ってう〜はやく〜

お久しぶりです!小栗旬と山田優ラブラブですね
1729投稿者:えいちだいけいがくえん  投稿日:2008年05月08日(木)21時48分28秒
2003年の設定『HK学園』のこと
1730投稿者:1600  投稿日:2008年05月08日(木)21時50分07秒
9を横に縫い付けてしまう有海に笑っちゃいました!
リリーさんの作品はただストーリー性があるだけではなく
戦士同士の絡み合いがとても自然で面白くていくらでも読めちゃいます
とりあえず聖テレと虹守(1軍)の試合が楽しみで仕方ない1600でした!
1731投稿者:阪神ファン  投稿日:2008年05月08日(木)22時19分45秒
めっちゃ久々の書き込みです。(覚えていないと思いますが)
毎日わくわくしながら読んでいます。

1つ知識として、中学校の場合、軟式野球は、7回までで、延長に入ると無死満塁から始まります。(少なくとも3年半前までは)
あと、例外があるかもしれませんが、公立中学の部活動で硬式野球をやっているというのは今まで聞いたことがありません。

これからも、よろしくお願いします。
1732投稿者: 投稿日:2008年05月08日(木)23時41分51秒

1733投稿者:リリー  投稿日:2008年05月09日(金)20時52分36秒
阪神ファンさん、そうなんです
書いてる途中で、部活野球を調べてたら、中学の部活って七回までなんですよね
でも、野球というと、九回というイメージがあって、そのまま書いていってしまいました
あと、硬式ボールを使う高校野球と、軟式ボールを使う中学野球が合同練習をするってこともないんでしょうかね
この場合、中学生が硬式ボールも経験してみるって感じなんでしょうか

117さん、江莉は至って普通の中学生です
甜歌のことを「レズ」と言っているのは、甜歌がちひろのことを好きだ知っているからでしょう
でも、甜歌は「なんちゃってレズ」なんですが
虹守1軍との試合は、本当に後…「九回表」です…
すみません

では、更新します
1734投稿者:リリー  投稿日:2008年05月09日(金)20時54分39秒
ピッチャーの細川藍は、初球から全力で投げ込む。
「へ?」
弾けるような捕球音が響き渡るまで、相手の一番バッターは、球が通り過ぎたのに気がつかなかった。
虹守中の二軍が、どよめいた。
「ナイスピッチングだ。藍!!」
中村有沙は、座ったままの姿勢で返球する。
続けて第二球…またもやストレートでストライク。
バッターは、バットを振ることもできない。
「あみ〜ご…」
あすみは、有海に耳うちする。
「え…?そ、それは…どういう…?」
「いいから…。これは、あんたとありりんのサインの連携の練習でもあるんだからね…」
「…はい…」
有海は、中村有沙の視界まで歩くと、ベルトを指差した。
「む?」
ベルト…belt…つまり、『B』…ボール球。
1735投稿者:リリー  投稿日:2008年05月09日(金)20時55分05秒
しかも、四角い金具の右下を指差している。
バッターは左打者なので、外角低めのボール球…?
(どういうつもりだ?こやつ…まったく藍の球に追い着けていない…。次で三振がとれるというのに…)
しかしサイン無視は、このチームでは御法度…藍のように、みすみす殴られはしないが、チームの勝利の為だ。
中村有沙は、有海の言う通りのコースに、ミットを構える。
(ん?そこに放れってこと?様子見?)
藍は、中村有沙の要求通り、ボール球を放った。
それが、二回続く。
これでツーストライク、スリーボール。
「へい、へい!!ピッチャー、ストライク入んねぇぞ!!」
「ピッチャー、ノーコンだけど可愛い!!」
「僕と付き合ってくださ〜い!!」
頭の悪そうな野次が、藍に浴びせられる。
「もう…!うざいなぁ…」
しかし、中村有沙は、次もボール球を要求してきた。
「え?」
藍は思わず、あすみの顔を見る。
あすみは、ただ頷くのみ。
結局藍は、先頭打者をファーボールで歩かせた。
1736投稿者:リリー  投稿日:2008年05月09日(金)20時55分35秒
「なるほどね…。女にしては速いけど、コントロールが全然ダメってことだな、あのピッチャー…」
そう呟く一番打者の少年に、一塁を守るジョアンは思わず声をかけた。
「え?マジ?」
「…何が?」
「気付いてないの…?」
「だから、何が…?」
本当に、藍がワザとフォアボールを与えたことに、気付いていないらしい。
「ま、いいや…」
「それにしても、日本語上手いね、君…。日本は長いの?それともハーフ?」
ジョアンは、軽口を叩く少年に対し、無視を決め込む。
「ねえ、やっぱ音楽とかヒップホップとか聞く?日本のヒップホップは何か笑っちゃうでしょ?アメリカ人が演歌歌ってるようなもんだよね?やっぱ…」
構わず少年は、喋り続ける。
こういう態度一つとっても、彼等がまだ真剣にこの試合に打ち込んでいないと見て取れる。
「どうでもいいけど…。リードとらないの?」
「ん?ああ…。それもそうだな…」
少年は、ジョアンに指摘されて、初めて一塁ベースから離れた。
「こりゃ、絶対に負けるわけにはいかないね…」
ジョアンは、帽子を被り直して気合を入れた。
1737投稿者:リリー  投稿日:2008年05月09日(金)20時56分09秒
続く二番バッター。
「なあ、俺、送りバントした方がいい?」
彼は、にやけ顔で味方ベンチを見る。
「いいよ、いいよ!打っちまえ!!」
「マーがいねぇんだから…。自分の好きなようにやっていいんじゃね?」
「そうだ!そうだ!青春は一度きりだぞ!」
虹守中二軍は、緊張感の欠片もない。
中村有沙は、有海の方を見る。
有海のサインは、ベルトの穴を指す指を三つ横に移動させ、金具の真ん中、やや下寄り…。
つまり…ストライクゾーンの下へ、緩い球…。
おそらく、二遊間を抜けるゴロになる…?
(ああ…なるほどな…)
中村有沙は、あすみの考えを理解した。
ちなみに有海は、あすみから「二遊間を抜けるようなゴロになる球」としか伝えられていない。
コースや球威は、有海が独自で考えたものだ。
そして予想通り、打球はピッチャー返し気味に藍の側をゴロで抜ける。
1738投稿者:リリー  投稿日:2008年05月09日(金)20時56分51秒
かなり速い打球だ。
二遊間を抜ける、センター前ヒット…虹守中の皆は、誰もがそう思った。
しかし、セカンドのキャプテン伊倉愛美が二塁寄りに走りながら球を捕球する。
そして、ショートの梓彩と交差する瞬間、そのままグラブトス。
梓彩がその球を素手で捕り、二塁を踏み、一塁へ送球。
少し、低めにボールが行くが、ジョアンが驚異の柔軟性で開脚し、それを難無く捕る。
ダブルプレイ…一気にツーアウト…。
虹守中のベンチは、しんと静まり返っている…。
「カッコいい…」
江莉は、思わず呟いた。
「ツーアウト!!」
中村有沙が立ち上がって、チームメイトに声をかける。
やっと、虹守中二軍は、目の前で起こった事に気がついた。
「な、な、な…何だ、こりゃ〜!!」
騒然とする虹守中の少年達に、中村有沙が呟く。
「何だこれは…だと?…『野球』であろう?」
1739投稿者:リリー  投稿日:2008年05月09日(金)20時57分29秒
今日は、これでおちます
1740投稿者:リリー  投稿日:2008年05月09日(金)21時02分28秒
それから…「アメリカ人が演歌歌ってるようなもんだよね?」の件…ここを書いている時期、まだ私は「ジェロ」の存在を知りませんでした

一応、ことわっておきます
では、今度こそおちます
1741投稿者: 投稿日:2008年05月09日(金)21時11分57秒
あげ
1742投稿者:117  投稿日:2008年05月09日(金)21時27分58秒
緊張感もあまり無く、「聖テレ」の乙女たちにしか,興味の無いようですね(笑)。
有海のサインも上手く伝わり、良い感じになってきましたね。続きも楽しみです!
1743投稿者:4→6→3  投稿日:2008年05月10日(土)11時03分28秒
カッケ〜!!
1744投稿者: 投稿日:2008年05月10日(土)11時07分17秒
あめぞう久し振りだ〜(^^♪
知らない人ばかり・・・
1745投稿者:カイ  投稿日:2008年05月10日(土)20時12分37秒
お久しゅうごぜぃまさぁ!
・・・やっぱリリーさんの小説ってすごいな・・・・
1746投稿者:リリー  投稿日:2008年05月10日(土)21時21分29秒
カッコいい野球のプレイの描写を、文章で表すのは難しいですがとても楽しいです
カイさん、お久しぶりです
来て下さって、嬉しいです
雅さん、初めまして、でしょうか?
よろしかったら、また来て下さい

では、更新します
1747投稿者:リリー  投稿日:2008年05月10日(土)21時21分57秒
一気に相手チームの、この試合に対する姿勢が変化した。
何故なら、あんなプレイ、テレビの中の野球中継でしか見たことがなかったからだ。
それが、あんな女の子達に…しかも、お嬢様学校の生徒にやられてしまった。
だが、その思いは気負いとなって、ますます彼等の動きを硬くした。
続く三番バッターは、センターフライ。
エマは、落ち着いて打球を処理して、スリーアウトチェンジ。
結局、3人で初回の攻撃を終えた。
前回の試合で、エラーの多かった愛美とエマ…とりあえず、短期特訓の成果が実を結んだ。
守備は確かに上手かった。
しかし、バッティングは、そうはいかないだろう…と、まだ虹守中の二軍は、高を括っていた。
そして…一回裏、聖テレ野球部の攻撃…。
ここからは、詳しく書くのは忍びない…。
有海が記録したスコア表から、簡略に説明をする。
1748投稿者:リリー  投稿日:2008年05月10日(土)21時22分29秒
一番、木内梨生奈…ライト前ヒット。
ノーアウト一塁。
二番、伊倉愛美…セーフティーバント。
ノーアウト一塁、二塁。
三番、細川藍…センター前ヒット。
二塁ランナー梨生奈がホームに生還。
1対0。
ノーアウト一塁、二塁。
四番、藤本七海…スリーランホームラン。
4対0。
五番、ジョアン・ヤマザキ…ソロホームラン。
5対0。
六番、渡邊エリー…内野安打。
ノーアウト一塁。
七番、近藤エマ…センター前ヒット。
ノーアウト一塁、二塁。
八番、大木梓彩…送りバント。
ワンアウト二塁、三塁。
九番、中村有沙…セーフティスクイズ。
6対0。
ワンアウト一塁、三塁。
1749投稿者:リリー  投稿日:2008年05月10日(土)21時22分50秒
打順戻って…。
一番、木内梨生奈…フォアボール。
ワンアウト満塁。
二番、伊倉愛美…セーフティースクイズ。
7対0。
ワンアウト満塁。
三番、細川藍。
レフトフライ。
三塁ランナー、エマがタッチアップで生還。
8対0。
ツーアウト一塁、二塁。
四番、藤本七海…スリーランホームラン。
11対0。
五回を前に10点以上の差がつき、試合前に取り決めたルールによりコールド試合。
聖テレ野球部の初勝利となった。
「それじゃあ、私達、これで帰ります。皆さん、今日はありがとうございました」
「ありあとやしたーーー!!!」
あすみに合わせ、皆は帽子を取って深く礼をする。
1750投稿者:リリー  投稿日:2008年05月10日(土)21時23分21秒
聖テレ野球部の皆は、帰りの仕度をする。
「まったく…!七海、二本もホームラン打つなんて、欲張りすぎだよ!!アタシに打順が回らなかったじゃん!!」
「ジョアンも、ホームラン打ったんやから、ええやないか」
「でも、打点がたったの『1』だよ?おまえなんて、『6』だろ?獲り過ぎだっつぅの!!」
「それにしても、まにゃ先輩とあず〜先輩、すごいコンビプレイでしたね!!やっぱり、聖テレのアライバコンビです!!」
「もう…!言い過ぎだってば!あい〜ん…」
「ちょっと!私のセンターフライには、触れてくれないの?」
「ふん…!あれぐらい、捕れて普通だ!!それよりも、有海のリードは完璧だった。褒めてやる」
「あ…ありがとう…ございます…。中村先輩…」
「そうや!!今度、背番号、間違えて縫い付けてみ!!ドツキまわすで!?」
「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!」
皆は、口々にお喋りをしながら、帰路に着く。
あすみは、意気消沈している少年達に、声をかけた。
「じゃあ…もし、これから叡智大渓岳園に行くんなら…車に気をつけて行ってね…。井上先生によろしく…」
しかし、誰も叡智大渓岳園に行く者はいなかった。
それどころか大部分の者は、翌日、顧問の井上に退部届けを提出した。

(『二回・表』・・・終了)
1751投稿者:リリー  投稿日:2008年05月10日(土)21時26分36秒
こうして、あっという間に虹守2軍との試合は終わりました

今夜は短めでしたが、きりのいい所でおちます
1752投稿者:117  投稿日:2008年05月10日(土)21時29分40秒
なんか、省略されたなぁと思ったら・・・凄まじい「聖テレ」の攻撃でしたね(笑)。
しかも、虹守中の部員たちは次々と辞めるとは・・・続きも楽しみです!
1753投稿者:強いなあ  投稿日:2008年05月10日(土)21時30分42秒

1754投稿者:おここここおこおこおこおこおこおこおこおこおこおこお  投稿日:2008年05月10日(土)21時37分20秒
sosなのら〜(^v^)
1755投稿者:野球も好き  投稿日:2008年05月10日(土)22時13分42秒
聖テレのアライバコンビという藍の発言にくすりとしちゃいました。
さすが中日ファンの藍とリリーさんですね。
1756投稿者: 投稿日:2008年05月10日(土)23時42分35秒

1757投稿者: 投稿日:2008年05月11日(日)01時01分23秒
  
1758投稿者: 投稿日:2008年05月11日(日)01時01分57秒
 
1759投稿者: 投稿日:2008年05月11日(日)01時02分17秒
 
1760投稿者:ゆうううう  投稿日:2008年05月11日(日)01時03分38秒
    
1761投稿者:えっととりあえず5回コールドは10点さがついても5回まではや  投稿日:2008年05月11日(日)01時05分15秒
なんかすんません
1762投稿者: 投稿日:2008年05月11日(日)01時09分26秒
 
1763投稿者: 投稿日:2008年05月11日(日)01時32分37秒
 
1764投稿者:>1761  投稿日:2008年05月11日(日)02時06分38秒
ただの練習試合で独自の取り決めだからいいんです
1765投稿者:デジ  投稿日:2008年05月11日(日)03時43分07秒
恐ろしや聖テレ野球軍団
1766投稿者:デジ  投稿日:2008年05月11日(日)04時05分51秒
前の無しにしてください、ミスです(汗)
すごい早く終わりましたね。半分どころか、一回裏だけで10点以上も取るとは、さすが。(よっぽど弱かったのでしょうか虹守中の2軍...)
第一軍との試合が9回表となるとそれまで、練習あるのみになるんでしょうか?続きも楽しみです!
1767投稿者:リリー  投稿日:2008年05月11日(日)04時13分39秒
どうも、デジさん
深夜のコメント、恐れ入ります
今、『復刻版・らりるれろ探偵団』の更新をしていました
『グラスラ』で難田門司の名前が出てきたばかりですが、早くも『らりるれろ』で難田門司がダーさんに捕まってしまいました

そうですね、九回表までは、聖テレ野球部の夏合宿などのエピソードが入ります
九回表まで、ずいぶん先ですが、その時までよろしくお願いします

もう、虹守の2軍程度では太刀打ちできないくらい、彼女等は急成長しているという設定です

あと、コールドの件ですが、1764さんの仰る通り、渓岳園に早く行きたい2軍の要望もあり、特別ルールとなっています

では、おちます
1768投稿者:リリー  投稿日:2008年05月11日(日)20時52分20秒
それでは、更新します
1769投稿者:リリー  投稿日:2008年05月11日(日)20時53分24秒
『二回・裏』

≪2007年6/17(日)≫
「ダーさん、ダーさん…。ちょっと頼みごとがあるんやけど…」
『R&G探偵社』の社長、吉田はダーブロウ有紗の部屋のドア前で声をかけた。
「あん?何だよ?レッドさん?用があるんなら、入ったらどうだ?」
しかし吉田は、ドアノブにも手を掛けない。
理由は二つ。
おそらく、凄まじい散らかり方をしているだろう、彼女の部屋…。
もう一つは…。
「ダーさん、ちなみに今の恰好は?」
「あん?恰好?真っ赤でセクシーなTバック一丁だけど…?」
やっぱり…パンツ一枚で乳を放り出している…。
「じゃ、じゃあ、社長室で待ってるから…後で来てな?」
「え〜!?めんどくせぇ!!」
「ええから、社長室で待っとるから!ほな!!」
いくらなんでも、そのままの恰好で社長室に来ることはないだろう…という、吉田の考えが甘かった。
ダーブロウ有紗は、真っ赤でセクシーなTバックのパンティ一枚で、社長室を訪れた。
1770投稿者:リリー  投稿日:2008年05月11日(日)20時53分44秒
「ダーさん…あのなぁ…。何で、平気なん?その恰好で…」
「だって、暑ぃんだもん!!別にいいじゃん!人に見られてるわけじゃないし…」
「ワ、ワシがおるがな!!」
「ん?レッドさんは、身内だろ?」
「ワシかて、男やで?もしかしたら、変な気ぃ、起こさんとも限らへんで!?」
「………」
沈黙が続く…。
そして…。
「ぶわ〜ははは〜〜〜!!!」
ダーブロウ有紗は、その豊満な胸を揺らして、大笑いをした。
「な、何が可笑しいのん?」
「いや〜、笑った、笑った…!今までのレッドさんのギャグの中で、一番、笑った…!」
ダーブロウ有紗は、涙を拭いた。
そう言えば、吉田がダーブロウ有紗の涙を見たのは、これが初めてだったような気がする。
1771投稿者:リリー  投稿日:2008年05月11日(日)20時54分04秒
「で…頼みごとって…何?」
「ああ…。今度の日曜日な、『ピーナッツ』の試合があんねん…。行ってもええ?」
それを聞いて、ダーブロウ有紗は、勢い良く立ち上がった。
「ああん!?またかよ!?今日も草野球に行ったんだろ?仕事が溜まってんじゃん!!」
吉田は、絨毯の上に正座して、両手を合わせて拝み倒す。
「いや、ほんま、リーグ優勝がかかっとんねん!!頼むわ!!」
「…リーグ優勝って…プロじゃねぇんだし…!」
「お願いします!!ワシ、あのチームに無くてはならん存在になっとるんよ…!」
ダーブロウ有紗は、ジロリと吉田を睨む。
「で…優勝は、いつ頃決まるの?」
「う〜ん…。まあ、7月中には決まるとは思うんやけど…」
ダーブロウ有紗は、大股でソファーに腰を降ろす。
「う〜ん…。もともと私は、大の大人がそうやって遊びに夢中になる姿に、キュンときちまう性質なんだよなぁ〜…」
「し、失礼な!!遊びやないで!?真剣やで!?」
そういう、遊びを真剣に遊ぶ大人の姿は、もっと好きだ。
1772投稿者:リリー  投稿日:2008年05月11日(日)20時54分26秒
「いいよ!その代わり…」
「その代わり…?」
「リーグ戦が終わったら、仕事漬けになってもらうからな!?デスクワークだけじゃなく、地方に出張とか…そういう仕事もしてもらう!」
「ああ、ええよ、ええよ…それで…」
「それから、もう一つ!!」
「もう一つ?」
「ほら、私、胸でかいじゃん?」
そう言って、ダーブロウ有紗は、両手で自分の乳房を持ち上げた。
「はぁ…」
吉田は、だらしなく口を開け、その巨乳を眺める。
「最近、肩凝ってしょうがねぇ…!!肩揉んでくれ!!」
「へ?それでええの?」
吉田は、正座の姿勢から立ち上がると、恐る恐るダーブロウ有紗の後ろに回りこみ、肩に手を触れる。
「相当、強くやってくれて構わねぇからな…!!」
「ああ…はい、はい…」
吉田は、なるべくダーブロウ有紗の胸を視界に入れない様に、肩を揉み始める。
1773投稿者:リリー  投稿日:2008年05月11日(日)20時54分50秒
「ん?本当に力、入れてるか?」
「入れてますよ!」
「全然、効かねぇんだけど…」
「ほんまに?」
「肘でグリグリやってみ?」
「こ、こう…?」
「もっと、全体重かけて!!」
「は、はい、はい!!」
「おお…!ちょっと効いてきた…!」
「うわ…ダーさん、だいぶ凝ってるね…」
「おうよ!私だって、苦労してんだからな!!まったく、レッドさんはいいよな!草野球で肩が凝れてよ…!」
「す…すんません…」
「ああ、肩はもういいや。今度は、胸」
「む、胸!?」
「こうやって、持ち上げては降ろし、持ち上げては降ろし…繰り返すんだよ」
「な、何で、そんなこと?」
「胸と肩は直結してるからな!!自分でやっても、イマイチ気持ちよくねぇ…」
「そ、そりゃ、七世とか有希子にやってもらった方が…」
「いいから、やれよ!野球、やらせてやんねぇぞ!?」
「はい…」
吉田は、掌に汗をいっぱい掻きながら、言われた通り、後ろから胸を持ち上げた。
1774投稿者:リリー  投稿日:2008年05月11日(日)20時55分15秒
「そ…それから…ダーさん…。も、もう一つ…頼みごとが…あんねんけど…」
「あん?何だよ…?って…息が荒いな!?レッドさん…」
「あ、すんません…!で、その頼みなんですが…」
「うん?」
「ワシの昔の知り合いが、依頼を…持ってきたんやけど…。受けてくれる?」
「依頼?昔の知り合い?…もしかして、警察関係?」
「はい…」
「どんな依頼?」
「それが…麻薬関係の組織を捕まえるって…内容で…詳しい話しは、会ってから直接…」
「ふ〜ん…。麻薬関係ねぇ…。ま、いいんじゃねぇの?話しくらいは聞いてやらあ!!」
「ほ、ほんまに?いや〜、ありがとう!」
「レッドさんの顔も立ててやんねぇとな…!それに、警察からの依頼ってのは、受けといた方がいい…。貸しをつくっておけば、後々役に立つ…」
「いや、いや…。ほんまに助かった。ワシも昔の後輩に泣きつかれて、どうしようって思っとったところや…」
吉田は、安堵の息をついた。
1775投稿者:リリー  投稿日:2008年05月11日(日)20時55分57秒
「で…いつ来るの?依頼人の警察は…」
「へ?今日の6時やけど?」
「6時…?今日…?」
時計を見る、ダーブロウ有紗。
現在、午後5時45分…。
「お、おい!!あと、15分じゃねぇか!!」
「あ…。ほんまや…」
「バ、バカ!!早く言えよ!!こんな恰好…恥ずかしいだろ!?」
「…へ…?」
パンツ一枚の姿で、男に胸を触らせておいて、今頃、何を言ってるんだろう…?
大慌てで社長室を出て行くダーブロウ有紗の後姿を、吉田は呆然と見送った。
「ほんまに…ワシを…男として見てへんのやな…」
そう、吉田は呟いた。
1776投稿者:リリー  投稿日:2008年05月11日(日)20時56分30秒
それでは、今日はこれでおちます
1777投稿者:阪神ファン  投稿日:2008年05月11日(日)21時06分32秒
ご存じでしたか。失礼しました。
同じボールを使っていれば、中高間での合同練習・練習試合はあり得ると思います。
やっぱり、違うボールを使っていると厳しいです。
ただ、高校側に体験入部という形はよくあります。

それにしても、有海と有沙には感服です。
自分なんて6年やってようやくプロの配級の意図がわかってきたというのに・・・
1778投稿者:過去ログに行ってしまった1400まで  投稿日:2008年05月11日(日)21時19分21秒
http://221.254.11.166/log/tentele/080114213544a.html

アドレス変わったみたいです
1779投稿者:117  投稿日:2008年05月11日(日)21時43分32秒
あらら、ダーさんもなかなかの度胸、ありますね(笑)。
裸姿を見せておいて、胸まで触らせるとは・・・(笑)。
「ピーナッツ」の試合に夢中になっているんですね。一方で「麻薬」とは、門司たちの話でしょうか?続きも楽しみです!
それと「らりるれろ」の復刻版の更新、助かります。あちらもよろしくお願いしますね。
1780投稿者:デジ  投稿日:2008年05月12日(月)02時01分00秒
レッドさんが活発的になってますね。野球といい、事件への取り組みといい
コメントが短いですがこれだけでおちます。続きも楽しみです!
1781投稿者:リリー  投稿日:2008年05月12日(月)21時04分38秒
レッドさんも、「らりるれろ」以降、出番が減りますので…
いまのうちに、活躍(?)させておこうと思いました

ダーさんも、じわじわと性格設定をしていこうかと…

では、更新します
1782投稿者:リリー  投稿日:2008年05月12日(月)21時07分43秒
天歳警察署から、吉田の刑事時代の後輩、テルこと菊池輝一と、ケンキこと中尾賢樹は、6時丁度に『R&G探偵社』を訪ねてきた。
「どうも、お久しぶりです!レッドさん!」
2人は、まず吉田と、今はしっかりと服を着たダーブロウ有紗(それでも、だいぶ露出度は高いが)に礼をし、社長室の奥にある仏壇に手を合わせる。
そこには、初代社長である、村田ちひろの父の位牌が置かれているのだ。
ちひろの父は、元刑事で、吉田も、菊池も、中尾も彼の部下だったのだ。
警察内の、ある犯罪組織との癒着を明るみにし、結局は警察を追われたのだ。
そして、一緒に警察を辞めたのが、吉田一人…。
菊池も中尾も、その踏ん切りがつかなかった。
今でも、2人は負い目に感じているのだ。
ちなみに、ちひろの父の死因は交通事故…。
事件性はない。
「ちひろさん、今、聖テレの学生寮にいるんですってね?」
「ここからでも充分通えるのに…。何で、寮生活を?」
2人とも、ちひろの小さい頃から知っている。
彼等も、ちひろの成長を楽しみにしているのだ。
「ん?まあ、自立心旺盛やからなぁ…。ちひろは…」
吉田は、何とかごまかした。
実は、毎夜、一緒にここで住んでいる中村有沙という少女が、ちひろの貞操を狙っているから…などと言えるわけがない。
1783投稿者:リリー  投稿日:2008年05月12日(月)21時08分18秒
「相変わらず、剣道一筋ですか?」
「ああ、ちひろは、剣道で聖テレに入れたようなもんやから…。せやなかったら、とてもやないけど、あない、お嬢様学校に入られへんやろ?」
「まあ、ちひろさんには、お嬢様っぽくなってもらわないと…嫁の貰い手がありませんからね」
笑い合う大人達に、ダーブロウ有紗が口を挟む。
「嫁じゃなくて、婿…ですね?」
「はい?」
「これから、サム…ちひろお嬢様は、この『R&G』の三代目社長になられるのですから…」
その言葉を聞き、菊池も中尾も、顔を見合わせた。
「あの…やっぱり…ちひろさん…ここを継ぐんですか?」
「本人がそう申している以上…そうなりますね…」
2人の刑事は溜息をつく。
「う〜ん…ちひろさんには、このまま警察に入ってもらって、有望なキャリアと結婚して幸せな家庭を築いて欲しいなぁ…」
「ほほほ…。ご冗談を…」
「冗談?」
2人は、高笑いするダーブロウ有紗を見た。
「そんな勿体無いこと…。東大出のキャリアごときにくれてやるなんて、できませんわ…。ほほほ…」
「ご、ごとき…?」
「は…ははは…」
2人の刑事は、力なく笑った。
1784投稿者:リリー  投稿日:2008年05月12日(月)21時08分59秒
そこに、秘書の俵有希子がコーヒーを運んできた。
記録係の彼女の登場で、話しは本題に入る。
ちなみに妹の小百合は、まだ入院中である。
「で…今回、我々警察の、そちらに依頼したい内容が…これです…」
一枚の写真が、テーブルに乗せられる。
この前、ダーブロウ有紗が叩き壊してしまったので、新しいテーブルに換えられているが。
「この男の行方を、探して欲しいのです…」
その写真を見た途端、有希子は呟いた。
「あら…。可愛い…」
「ほんとだ…。思わず抱きしめたくなるような、可愛い顔したオッサンだな?」
ダーブロウ有紗も、同じコメントだ。
「童顔に騙されてはいけませんよ?この男の名前は、『難田門司』…。おそらく名前だけは聞いたことがあるでしょう?」
「…!?この男が…?」
「難田…門司…?」
日本で、五本の指に入ると言われている麻薬密売組織の首領…難田門司の素顔が…こんなに可愛らしいものだったとは…。
(て…いうか…『TTK』の時は、お得意様だったよな…?難田門司…)
もちろん、ダーブロウ有紗は、そんなことは声に出して言うことはない。
1785投稿者:リリー  投稿日:2008年05月12日(月)21時09分23秒
「実は、この春、難田門司の組織の?2を、捕らえたのです。で、やっと今まで謎だった難田門司の素顔を手に入れることができたのです」
吉田は、マジマジと写真を見ながら言う。
「しかしやな…50近いオッサンで、こない可愛らしい顔してんのやろ?これは目立つんとちゃう?すぐに見つかるやろ?」
「いや…そこは、大きな麻薬組織のボス…。?2が捕まってから、地下に潜ってしまったのです」
「で、今…この男を、警察が全総力をあげて捜索しているのですが…」
「何や?」
菊池も中尾も、困ったような…いや、恥ずかしそうな顔で言いよどんでいる。
「どないしたんや?」
吉田は、もう一度聞いた。
「レッドさん…。警察にいたにしては…鈍いなぁ…」
「へ?」
腕組みをして、じっと話を聞いていたダーブロウ有紗は、溜息混じりに言った。
「つまり…縄張り争い…だろ?」
「…はい…」
2人の刑事は、頭をうな垂れて答えた。
1786投稿者:リリー  投稿日:2008年05月12日(月)21時10分13秒
「難田門司の潜伏先の地域で、どこが捜査本部を建てるか決まってくる…。その見えない綱引きで、お互いの情報を隠してる…。こんなとこかな?」
「…!は、はい…!その通りです!!」
その話しを聞き、吉田は頭を抱える。
「何やっとんのや…。相変わらず…。一番重要なんは、麻薬で苦しむ人を、これ以上増やさへんことなんやないのか!?」
「違うだろ…?一番大切なのは…自分達の出世…。警察のお偉いさんにとっては、犯罪者も被害者も、出世の道具ってとこさ…」
ダーブロウ有紗の解説に、菊池、中尾の両刑事は、赤面するしかなかった。
「でも…このままやったら、いたずらに、ヤツに逃げる時間を与えるだけやで?」
「一応、潜伏場所は予想できてるんです」
「三ヶ所ですが…全部、東京都内です!」
菊池は、都内の地図を広げる。
「まずは…難田門司の組織本部があると言われてる、池袋付近…。難田門司の妹、難田維里香がオーナーをしている店のある、歌舞伎町…。そして、山本組の事務所のある、天歳市内…です…」
「山本組…?」
ダーブロウ有紗は、眉を僅かに上げた。
「はい…。難田門司の妹、維里香は、山本組の組員です。おそらく、身を寄せているのではないかと…」
「せやったら、その三ヶ所同時に強行捜査をしたらええ…!」
「し、しかし…」
言い難そうな刑事達の代わりに、ダーブロウ有紗が答える。
「もしかしたら、三ヶ所ともハズレって場合もある…。いや、そのパターンが一番恐いんだろ?」
「…はい…」
またも頭を垂れて、中尾は答えた。
1787投稿者:リリー  投稿日:2008年05月12日(月)21時10分39秒
「つまり、三ヶ所とも外れた場合、難田門司はその隙を突いて、東京から…いや、日本から姿を消す…。そして、失敗の責任を…池袋、新宿、天歳市の各警察署が被ることになる…」
ダーブロウ有紗は、大きく鼻の穴で息をつきながら、ソファーに仰け反る。
「ここに、必ずいる…という、確信がなきゃ、警察は動かねぇ…。だから…」
「そ、そうです!だから、あなたがた『R&G』に、難田門司の居場所を特定して欲しいんです!!」
2人の刑事は、同時にテーブルに手を乗せ、吉田とダーブロウ有紗に迫った。
「で…天歳署の刑事である、おたく等の依頼ということは…天歳市内にいた場合のみ、私達はそちらに情報を流す…。他の所にいたら…?」
ダーブロウ有紗は、意地悪そうに2人を横目で見る。
「…はい…。そのまま、捕らえてもらって結構です…」
「ぎゃははは!!」
ダーブロウ有紗は、哄笑した。
「つまり…自分達は手柄が欲しいが、相手には手柄は寄越さない…。こりゃ、いい!わかりやすい!正直だ!!」
「い、いえ…。別に、我々は、上から…その…」
2人は、慌てて取り繕うとするが、どう申し開きをしても彼女の言う通りなので、黙ってしまった。
「ええよ…。わかった…。テル、ケンキ…おまえ等、ほんまは嫌やったろ?こんな依頼…」
吉田は、静かに言う。
1788投稿者:リリー  投稿日:2008年05月12日(月)21時11分06秒
「ダーさん…。笑わんで下さい…。こいつ等を…」
吉田は、寂しそうな目で、ダーブロウ有紗を見詰めた。
「………」
ダーブロウ有紗は、素直に従った。
「ワシは…村さんと一緒に警察を辞めた…。でも、おまえ等は辞めへんかった…。勇気がないて、おまえ等は自分を責めたが…それはちゃう…」
「え…?」
「レッド…さん…?」
吉田は、2人の目をじっと見据えたまま、言葉を続ける。
「ワシの方こそ…勇気がなかったんや…。組織の歯車に徹する勇気が…。まだ、村さんと一緒やから、何とかなるて…気楽に警察を辞めたんや…。結婚もしとらへんかったしな…」
そして、目を伏せて笑った。
「おまえ等は…まだ刑事に成り立てやったし…ケンキは結婚を控えとったしな…。辞めれるわけ、あれへんやん…。おまえ等は、今もこんな嫌な役目を、立派に果たしとる…」
菊池も、中尾も、ダーブロウ有紗も…吉田を黙って見詰めた。
「ワシにはないわ…。そんな勇気…。せやから…」
吉田は、顔を上げた。
「この依頼…受けるわ…。おまえ等の勇気に応えたる…!」
菊池と中尾は、立ち上がると、深々と頭を下げた。
1789投稿者:リリー  投稿日:2008年05月12日(月)21時11分30秒
2人の刑事は、帰って行った。
「ミミー…。ジャスミンと出っ歯ちゃんを呼んできてくんねぇか?」
「はい…」
有希子が社長室を出て行き、ここには吉田とダーブロウ有紗が残された。
「レッドさん…」
ダーブロウ有紗は、懐から、万札を数枚取り出して、吉田に差し出した。
「な…何?これは…?」
「ん?小遣い」
「こ、小遣い?」
「今から、あの2人追い駆けてって、飲みに行けよ」
「へ…?ええのん?」
「いいよ。今夜は、ベロベロに酔っ払っちまえ!!」
「で…でも…」
「だったら、この金、やんねぇ!!」
「あー!!行く!!行きます!!」
吉田は、その金を毟り取ると、大急ぎで社長室を出て行く。
1790投稿者:リリー  投稿日:2008年05月12日(月)21時11分52秒
「レッドさん!」
そんな吉田の背中に、ダーブロウ有紗は、咄嗟に声をかけた。
「ん?」
部屋を出掛けた吉田は、振り向いた。
「………」
呼び止めた関わらず、ダーブロウ有紗は沈黙した。
「な、何…?ダーさん…?」
しばらく黙っていたが、意を決したように、彼女は言葉にした。
「…警察を辞めたレッドさんも…勇気はあったと思うけどね…。私は…」
ダーブロウ有紗は、吉田の顔を見ることなく言った。
「それに…行く宛てもなかった私達、『TTK』の『戦士』達を…一手に引き受けるなんて…並みの勇気じゃ…いや…並みのバカじゃできねぇよ…!」
「ありがとう!ダーさん!!」
吉田は、満面の笑みで答えた。
「あ〜〜〜!!無茶苦茶、恥ずかしいじゃねぇかよ!!早く、飲みに行っちまえ!!」
耳まで真っ赤にしたダーブロウ有紗は、テーブルの上に置いてある、クリスタルガラスの灰皿を引っ掴むと、吉田に向けて振り上げた。
「わ、わ、わ〜〜〜!!行きます!!すぐ、飲みに行きます!!」
吉田は、慌てて部屋から出て行った。
1791投稿者:リリー  投稿日:2008年05月12日(月)21時12分18秒
それでは、今日はこれでおちます
1792投稿者:たしかに  投稿日:2008年05月12日(月)23時43分22秒
カッコいいな、レッドさん
1793投稿者:あげ  投稿日:2008年05月13日(火)00時22分52秒
  
1794投稿者:あげ  投稿日:2008年05月13日(火)00時37分16秒
         
1795投稿者:リリー  投稿日:2008年05月13日(火)21時05分11秒
少しくらいは、見せ場を作らなければ、と思いまして…

では、更新します
1796投稿者:リリー  投稿日:2008年05月13日(火)21時06分30秒
吉田と入れ替わるように、ジャスミンと七世が有希子に連れられて社長室に入ってきた。
「…?レッドさん、嬉しそうに跳びはねて行きましたけど…どうしたんですか?」
首を傾げながら、七世はダーブロウ有紗に尋ねる。
「ああ…。今から、かつての後輩と飲みに行くそうだ」
「また?今日、一日中、ベースボールをやってたんでしょ?最近、遊んでばかりじゃない!」
ジャスミンは、呆れ顔で言った。
「まあ、そう言ってやんな。それに、後であのオッサンには、仕事を山ほど押し付けてやるから…」
そう言いながら、ダーブロウ有紗は、二人にソファーを勧める。
「で…また、新しい仕事ね?」
ジャスミンはソファーに腰を降ろしながら、テーブルに並べられた写真に目を通す。
「あら?プリティーなオジサマね…」
難田門司の顔写真を見ながら、ジャスミンは呟く。
「あ、ほんとだ!可愛い…」
七世もそう言いながら、その写真を覗き込んだ。
「みんな、そう言うな…」
ダーブロウ有紗は、改めて難田門司の顔写真を見る。
「こんな顔をして…何の因果で、こんなヤクザな稼業をしてんだ…?難田門司…」
1797投稿者:リリー  投稿日:2008年05月13日(火)21時06分57秒
この男が、悪名轟く麻薬組織の首領、難田門司と聞き、ジャスミンも七世も驚いた。
「何で、表に一切顔を見せずに、闇の男として君臨してたか…わかる気がするわ…」
「ナメられますもんねぇ…。こんな顔じゃ…」
2人の表情には、少々同情じみたものが窺える。
有希子は、天歳署からの依頼を一通り説明する。
警察の裏事情に、ジャスミンは失笑し、七世は溜息をついた。
「で…難田門司の潜伏先として…有力な候補に挙がっているのが、この三ヶ所だ」
A・難田門司の組織のアジトがあった、池袋駅周辺。
B・難田門司の妹、難田維里香がオーナーを務める『SM倶楽部エトワール』のある、新宿歌舞伎町。
C・その妹、難田維里香が所属する山本組の事務所のある、天歳市内。
「この中で、一番潜伏の確率が低い所は、どこだ?」
ダーブロウ有紗の質問に、間髪入れず、ジャスミンが答える。
「そりゃ、当然、『A』の池袋でしょ?一度警察の捜査が入った所に、わざわざ戻ってくるとは思えないもの…」
「そう…!て、ことで、池袋にはジャスミンが行ってくれ」
「…?どうして?」
別に自惚れているわけではないが、ジャスミンは、自分の実力なら難田門司の潜伏している確率の高い方に、寄越されるものとばかり思っていた。
1798投稿者:リリー  投稿日:2008年05月13日(火)21時07分24秒
「だっておまえは、例の失踪した議員秘書の捜索も抱えてるだろ?7月29日の参院選までには、見つけてくれってせっつかれてるからな。できれば、そっちの方に集中してもらいたい」
「ああ…。たしか、29日までに見つけられれば、ボーナスとして一千万だっけ?」
「あの、スキャンダルが明るみにでれば、自民党は大打撃だからな…」
「でも今度の選挙、どっちみち、自民党は負けるんじゃない?私、個人的に安倍さん好きだけど、周りの連中が、足ひっぱりまくりだもん…」
「ああ…。組織というのは、支える周りの人間が如何に大事かってことだな。その点、『R&G』は大丈夫だ。皆、優秀だから…」
そう言って、ダーブロウ有紗は、皆の顔を順番に見回した。
ジャスミンは、僅かに微笑む。
「おだてるのが上手いわね、有紗…。選挙に出てみる?」
「あはは…!いいね、それ!!私が選挙に出るなら、日本の核武装を公約にしてやるよ!」
そう笑う、ダーブロウ有紗に、七世は冷静に言う。
「ダーさん…。衆議院は25歳以上、参議院は30歳以上じゃなきゃ、立候補はできません…」
「………知ってるよ!それぐらい…」
…知らなかった…。
1799投稿者:リリー  投稿日:2008年05月13日(火)21時08分05秒
「う〜ん…。じゃあ、私とダーさん、どっちが歌舞伎町に?」
「ん?出っ歯ちゃん、歌舞伎町歩きたいの?」
青い顔をして、高速で首を横に振る七世。
「じゃあ、歌舞伎町は私が行くよ。どっから見てもお嬢様って感じの出っ歯ちゃんが行くより、怪しげな外国人って感じの私が行く方が怪しまれねぇしな…」
「そうですね」
「オイ、コラ!!そういう時は、『そんなこと、ないですよ』って言うもんだぞ!?コンチクショウ!!」
七世の顔に、アイアンクローをするダーブロウ有紗。
1800投稿者:リリー  投稿日:2008年05月13日(火)21時08分36秒
そんな中、有希子は事務的に話しをまとめる。
「それでは、『A・池袋』にジャスミンさん、『B・歌舞伎町』にダーさん、『C・天歳市』に七世…。これでいいですね?」
「じゃあ、さっそく明日にでも池袋に行くわ…」
「ちょっと、待った」
ジャスミンは、ソファーから腰を浮かしたが、それをダーブロウ有紗は制した。
「動くのは、一ヵ月後な…」
「何で?」
「今、天歳署は、加藤組関係で大きなヤマを抱えてて、とてもじゃないけど、難田門司に人員を割けないそうだ…」
「………ふ〜ん…。それで、その件が終わるまで、動かれたら都合が悪いと…?」
「ああ…。だから、それまでは議員秘書の捜索を頼む」
「どこまで利己的なのよ…警察は…」
ジャスミンは、心底呆れて社長室を出て行った。
「ま…そう、言ってやんなよ…」
ダーブロウ有紗は、吉田が繰り出したであろう、夜の街を窓から見降ろしながら、そう呟いた。

(『二回・裏』・・・終了)
1801投稿者:リリー  投稿日:2008年05月13日(火)21時08分57秒
それでは、今日はこれでおちます
1802投稿者:117  投稿日:2008年05月13日(火)21時26分25秒
1日ぶりのコメントです。
プリティな顔の難田門司・・・いかにも、「もんじくん」みたいな顔なんでしょうか(笑)?
ちょうど,この時期は安倍さんだったんでしょうか?なんか、リアルですね(笑)。続きも楽しみです!
1803投稿者:俺も  投稿日:2008年05月14日(水)20時02分31秒
安倍ちゃん、好きだったよ〜
1804投稿者:あげ  投稿日:2008年05月14日(水)20時06分42秒

1805投稿者:ガンバ  投稿日:2008年05月14日(水)20時14分03秒

1806投稿者:リリー  投稿日:2008年05月14日(水)21時35分11秒
117さん、コレを書いていた時は、もうすでに安倍さんは退陣してました
私も、安倍さんは好きでしたが、強面だった小泉さんから物腰柔らかな安倍さんになった途端、野党はおろか与党の政治家も、マスコミも、ナメまくってましたね
私は、第一印象は怖いくらいの迫力で押すべきだと、安倍さんを見て学びましたよ…

では、更新します
1807投稿者:リリー  投稿日:2008年05月14日(水)21時37分22秒
『三回・表』

≪2007年7/20(金)≫
「どうした?細川?」
あすみは、左足ふくらはぎを押さえて、プールサイドでうずくまる藍に駆け寄った。
彼女は、授業では藍のことを『あい〜ん』とあだ名では呼ばない。
皆、平等に苗字で呼び捨てだ。
今は4時間目…1年A組は、体育の授業である。
今日は朝から土砂降りの雨なのだが、ここは設備の整っているお嬢様学校…まるでオリンピック会場のような室内プールのおかげで、水泳の授業ができてしまう。
「う〜ん…。ちょっと、足をつっちゃったみたいです…」
藍は、苦笑いであすみに答えた。
「大丈夫?細川さん…」
クラスの人気者だけあって、周りに心配する者が寄って来る。
「大丈夫、大丈夫!皆は、25メートル、三本泳いで!体育係、私の代わりに笛吹いて」
ホイッスルを渡された生徒は、あすみと間接キッスを交わすことになる為、頬を赤らめた。
男勝りな性格のあすみは、生徒達から人気があるのだ。
「ちょっと、ここに座って…足を伸ばして…」
抱える様に藍をベンチに座らせると、あすみは親指を掴み、ゆっくりとふくらはぎを伸ばす。
「あ…!痛たたた…!」
「こむら返りだね。ここ数週間、部活で酷使してたもんね…。疲労が溜まってるんだろう」
あすみは、藍のふくらはぎを優しくマッサージする。
1808投稿者:リリー  投稿日:2008年05月14日(水)21時37分47秒
「私、今までいくら身体を動かしても、こんなことにはならなかったのに…。もう、歳ですかね…?」
藍は、それでも軽口を叩いた。
「何、言ってんの!アスリートなら、誰でもなるよ、これくらい…。近藤!ちょっと来て!」
これから、泳ぐ気満々だったエマは、あすみに呼ばれて、少し不満顔でプールから上がった。
「何?あすみん…」
「授業の時は、中田先生!!」
「あ…。先生の苗字、中田だったっけ?すっかり忘れてた」
「もう…。いいから、細川を保健室に連れてってやって」
「ええ〜!?今から〜?」
エマは、不服そうな顔を、隠そうともしない。
「あんたね、渡邊とばかり親密になってないで、少しは他の子にも目をかけてやりな!細川、同じ部の仲間だろ?」
「あ、いいです!いいです!私、一人で行けますから…」
藍は、覚束ない足取りで、ベンチから立ち上がった。
「え?ほんと?やった〜!じゃあ、私、泳いでくるね!」
エマは、急いでプールの方へ走って行く。
1809投稿者:リリー  投稿日:2008年05月14日(水)21時38分16秒
「コラ!!近藤!!プールサイドは走らない!!………全く…相変わらず、空気読めない子だね…。近藤は…」
「へへ…『K・Y』って言うんですよ、そういうの…。先生、知ってました?」
藍は、ヒョコヒョコとゆっくりと歩く。
「細川、もうあと10分で授業終わるから、そのまま着替えちゃいな」
あすみの言葉に、藍は背中を向けたまま手を挙げて答え、更衣室へ向かった。
水着から制服に着替えた藍は、保健室に向かう。
幾分足の痛みは治まったものの、まだ一歩踏み出す度に、左足が痛む。
「そう言えば…新しい保健の先生になってから、初めて保健室に行くな…」
有海の誕生日の5月25日、中年…いや、壮年に指しかかろうという歳の養護教員(もちろん女性)が体調を崩し、結局、そのまま入院となってから、新しい臨時の養護教員が赴任してきたのだ。
代わりに来た養護教員は、20代の若い女性だった。
しかも、とても可愛らしく、瞬く間に生徒達の人気者になった。
彼女の名前は、中川翔子…。
皆からは、『しょこたん』と呼ばれている。
いや、彼女が呼ばせているのだ。
1810投稿者:リリー  投稿日:2008年05月14日(水)21時39分05秒
「あなたが噂の細川さん?いや〜、かわゆすな〜」
保健室に入って名乗るなり、藍は面喰った。
養護教員の中川翔子…かなりの変わり者だと、クラスのみんなからは噂は聞いていたが…。
ちなみに『かわゆす』とは、翔子の造語で、『可愛い』という意味だ。
「は、はぁ…。どうも…。噂…ですか?」
藍は、遠慮がちに円形の小さな椅子に座って、翔子に正対する。
「うん、うん!スポーツ万能で、尚且つ美少女って聞いてたけど…。噂どおりだねぇ…」
うっとりしたような目で、藍を眺める翔子。
藍は、素直に照れた。
「で、でも…私、バカですよ?たぶん、クラスで…いや、この学年で…いや、この学校で一番バカかも…」
「うふふ…。頭のトロい美少女って所が、またギザかわゆす…」
「ギ…ギザ…?」
「そう…。ギザかわゆす…。メチャクチャ可愛いって意味だよ」
「は、はぁ…。ギザですか…」
普通なら、「先生、そこは『ギガ』なんじゃないですか?」と、突っ込みが入るのだが、藍は『メガ』とか『ギガ』とか『テラ』という言葉を知らない。
おそらく、藍は『ギガ』を『ギザ』と間違えたまま覚えてしまうだろう…。
1811投稿者:リリー  投稿日:2008年05月14日(水)21時39分30秒
「で、どうしたの?」
翔子は、急に養護教員の顔になる。
「あ、はい。水泳の授業で泳いでたら、足がつってしまって…。なかなか、痛みが退かないんです…」
「ふ〜ん…。ちょっと見せて…」
翔子はしゃがみ込むと、藍の左足に履いている、上履きと白のハイソックスを脱がす。
「いたたた…」
藍は、顔をしかめた。
「ん?こんなでも痛いの?…本当だ…少し、筋が硬くなってる…」
翔子は、ふくらはぎを擦る。
あすみのマッサージより、決め細やかだ。
「先生…」
「『しょこたん』」
「へ?」
「私のことは、『しょこたん』って呼んで」
「は、はぁ…。あの…しょこたん…」
「な〜に?『あいたん』?」
「い、いや…『あい〜ん』…」
「ん?」
「私のことは、『あい〜ん』でよろしくお願いします」
「『あい〜ん』?なんか、志村けんのギャグみたい…!おもしろい!」
翔子との会話は、なかなか先に進まない…これも噂通りだ。
1812投稿者:リリー  投稿日:2008年05月14日(水)21時40分00秒
「この痛みって…後、引きますかね?」
「う〜ん…。こむらがえりってのは、筋肉の酷使でなるから…。繰り返すことになるかも…」
「げ…!もし、試合中になったら、どうしよう…?」
不安げな藍の顔を見上げて、翔子は言う。
「そうよねぇ…。ちょっと心配よねぇ…」
翔子は、優しく丁寧に、藍のふくらはぎを撫でていく。
それだけで、不思議と痛みが和らいでいく。
「試合って、確か…あい〜んは、…野球やってるんですって?」
「あ、はい…」
「エースピッチャーなんですって?」
「ええ…。一応…」
「じゃあ、チームの大黒柱だ…」
「い、いえ…。そういうわけでも…。ただ…」
「ただ?」
「チームメイトに、迷惑かけたくない…。こんなことで…試合に負けるようなことになったら…私…」
悲しそうに唇を噛み締める藍の顔を見て、翔子は愛しそうな顔と同時に…微笑んだ。
1813投稿者:リリー  投稿日:2008年05月14日(水)21時40分25秒
「でもね、こういうのは応急処置をしっかりやっておけば、問題ないのよ?」
「応急処置?」
「専門家による、マッサージよ」
「マッサージ?」
「やってあげようか?」
「え?ほんとですか?よろしくお願いします!!」
途端に明るくなる藍の顔。
こういう、わかりやすい性格も、翔子に言わせれば『ギザかわゆす』だ。
「じゃあ、ここで横になって。歩ける?」
黒光りする革の診療台まで、翔子は藍を連れて行く。
「うつ伏せになって。楽にしてね…」
「はい」
素直に…藍は翔子の言う通りにする。
翔子は、また微笑む。
しかし、今度の微笑には何か邪心が見え隠れする…。
そう…こういう、素直で警戒心のない所も…翔子に言わせれば『ギザかわゆす』なのだ。
1814投稿者:リリー  投稿日:2008年05月14日(水)21時41分32秒
第二試合・3回は、表も裏も、少しエロ要素が入ります
今日は、これでおちます
1815投稿者:お待ちしておりました  投稿日:2008年05月14日(水)23時04分08秒
  ○

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1816投稿者:いよいよくるか?  投稿日:2008年05月14日(水)23時34分43秒

1817投稿者:しょこたんキター  投稿日:2008年05月15日(木)00時52分57秒
 
1818投稿者:リリー  投稿日:2008年05月15日(木)21時08分16秒
エロとは言っても、初期作品に比べて、随分ソフトですが…

では、更新します
1819投稿者:リリー  投稿日:2008年05月15日(木)21時09分03秒
「一応…右足もマッサージしておくよ?こういうのは、左右のバランスも大切だから」
「はい」
藍の返事と同時に、翔子は右足に履いてる上履きとハイソックスを慣れた手つきで脱がした。
両の手で、翔子は藍の足首からふくらはぎを、何度も何度も擦りながら揉んでいく。
「どう?」
「はい…。気持ちいいです…」
安らかに目を閉じる藍の横顔を見て、翔子は胸が高鳴る。
「ふくらはぎの筋肉…だいぶ硬くなってるよ?太ももの筋肉もだいぶ疲労が溜まってるね…。こっちもやっておく?」
「はい…。お願いします…」
このまま眠ってしまうのではないか…という藍の返事に、翔子は再び微笑む。
ふらはぎから太ももへ…翔子の手は、ゆっくりと上に移動する。
「少し、スカートが邪魔だから…上に上げるよ?」
そう言うと、翔子は藍の白い制服のスカートを捲り上げた。
「…?え…?え…?」
藍は、目を開けると、上半身を起こしかけた。
1820投稿者:リリー  投稿日:2008年05月15日(木)21時09分29秒
「そのまま寝ていて…」
翔子は、藍の肩を抑えた。
「で、でも…」
「大丈夫よぉ…。あい〜んは、安心して寝ててね…」
「は…はい…」
藍は、再びうつ伏せになる。
翔子の両手は、藍の尻を包み込む。
そして、足と同様、優しく擦りながら揉み解す。
「あ…あの…お尻とか…関係あるんですか?」
「ん?あるわよぉ。だって、筋肉ってのは、全身につながってるんですもの…」
「ぜ、全身…?」
それを聞いて、藍はドキリとした。
その隙に、翔子は藍のパンティに手をかけて、降ろしかける。
「ちょ、ちょ、ちょ〜!!ちょっと待って!!先生!!」
藍は、パンティを引き上げて、身体の正面を翔子に向けた。
1821投稿者:リリー  投稿日:2008年05月15日(木)21時09分48秒
「言ったでしょ?私のことは、しょこたんって…」
「しょ、しょ、しょこたん!!な、何で、パンツまで?」
慌てふためく藍の顔を、楽しそうに眺めながら、翔子は説明をした。
「お尻の筋肉の大臀筋は、太ももの筋肉である、大腿二頭筋と半腱様筋を包み込む様に通ってるのね、つまり、これらの筋肉は非常に密接につながってるのよ」
「は…はぁ…。で、何で、パンツを…?」
「マッサージっていうのは、硬くなってしまった、その筋肉と筋肉のつなぎ目を柔らかく解きほぐさなければ、効き目がないの」
「はぁ…。で…何で、パンツを…?」
「それはとてもデリケートな作業でね、邪魔な物はなるべく取り除いた状態でやらないといけないのよ。それが下着を脱がせる理由よ」
「そ…それは…わかりましたけど…」
「スポーツ医学では、こういうことは当たり前で、一流のアスリートは、皆全裸でマッサージを受けてるの」
「ぜ、全裸って…マッパって…ことですか?」
「別に、丸裸になりなさいって言ってるわけじゃないのよ?あなたの場合、下半身で充分だから…」
「で…でも…か、下半身でも…」
理屈ではわかったつもりだが…藍はそれでも、頬を赤らめ躊躇した。
1822投稿者:リリー  投稿日:2008年05月15日(木)21時10分20秒
そんな藍の顔を、翔子は覗き込む。
「試合中に、また足がつっちゃったら…どうする…?」
「う…。こ、困ります…」
「チームに迷惑かかっちゃうよね?」
「ダ、ダメです!!そんなの!!」
深刻な顔を上げ、藍は翔子に詰め寄る。
「だったら、今のうちにマッサージを受けて、少しでもそのリスクを回避しておかないと…」
「う…ん…。そう…ですね…」
「だったら、早くうつ伏せになって…」
「…はい…」
渋々と藍は、診療台にうつ伏せになる。
「じゃあ、下着、脱がせるからね?」
「は…はい…」
「ちょっと、腰、浮かせてくれる?」
言われるまま、藍は少し膝を曲げて尻を僅かに突き上げた。
するすると、翔子はまたも慣れた手つきで、藍のパンティを降ろし、足首から抜き取った。
(ひぃぃ〜…!さ、寒い…!恥ずかしい…!)
藍は、心の中で悲鳴を上げた。
1823投稿者:リリー  投稿日:2008年05月15日(木)21時10分41秒
翔子は両手で、剥き出しになった藍の尻を包み込むと、寄せたり放したりしながら、揉んでいく。
ぷるぷると、藍の尻が揺れる。
(ひ…ひぃぃぃ〜〜〜…。は、恥ずかしい…)
途端に、涙ぐむ藍。
「あい〜ん、もっとリラックス…!力を抜いて」
「は、はい〜〜〜!!」
涙声で返事をする藍に、翔子は笑いを堪えるのに精一杯だった。
「ふ〜ん…。やっぱりキュッと引き締まって、可愛いお尻…。鍛えてるからかな?」
「せ、先生…じゃなかった、しょこたん…!そういうこと、恥ずかしいから、言わないで…!」
「ん?恥ずかしいの?あい〜ん…?」
「は、恥ずかしいですよぉ…!」
初対面の人間に、いきなり尻を出しているのだから、当然だ。
「大丈夫よぉ…。女同士でしょ?」
「で…でも…」
「でも…恥ずかしい?」
「…はい…」
「恥ずかしいの?」
「は、恥ずかしいです…」
翔子は、無理矢理、藍から「恥ずかしい」という言葉を聞き出そうとしてるようだ。
1824投稿者:リリー  投稿日:2008年05月15日(木)21時11分03秒
「スカート、邪魔だから取っちゃうよ?」
「え?」
藍の了解を得ることなく、翔子はスカートのホックを外し、ファスナーを降ろす。
いとも簡単に、スカートも取り払われた。
今、藍は、下半身を完全に丸裸にされている。
「ひぃぃぃ…」
藍は、耳まで真っ赤にしながら呻いた。
「大丈夫、大丈夫…」
翔子の手は、セーラー服の下にも潜り込み、腰から背中まで擦る。
「あ…あの…」
「つながってるから…腰も、背中も…」
「で…ですよ…ねぇ…」
藍は、もう何も言えなくなってしまった。
このままでは、何だかんだと言い包められ、丸裸にされてしまうのではないか…と怯えてしまう。
1825投稿者:リリー  投稿日:2008年05月15日(木)21時11分59秒
翔子は、藍の両足首を掴むと、股を広げさせた。
「い…?」
藍は、身体をよじって、心配そうな眼差しを翔子に見せる。
今、自分の一番見られたくない…恥ずかしい所が、翔子にバッチリと見られているはずだ。
「ん?どうしたの?」
まったく問題がない…と、言うように、翔子は笑顔で応える。
そして、丹念に片方ずつの足を、足首から太ももまで撫でていく。
スポーツ医学では、こういうことは当たり前なのだろうか…?
世のアスリート達は、こんな風に専門家から身体のケアを受けているのだろうか?
まだ、どんなスポーツを目指すか具体的に決めてはいないが、アスリートを目指す自分は、早くこういうことに慣れていかなければならないのだろうか?
そんなことを考えているうちに、藍は段々眠気に襲われる。
確かに、翔子の施すマッサージは心地が良い。
さっきまでの痛みが、徐々に薄れていく。
つまり…過剰に恥ずかしがっている自分が、おかしいのではないのか…?
猛烈な眠気の中、藍は、そんな風に考えてみる。
翔子の手は、藍のセーラー服の側面についているファスナーも開く。
セーラー服が捲り上げられ、背中もさらされるが、藍は抵抗することもなくなった。
そして、ブラジャーのホックに手がかけられる。
1826投稿者:リリー  投稿日:2008年05月15日(木)21時12分15秒
今日は、これでおちます
1827投稿者:117  投稿日:2008年05月15日(木)21時15分13秒
僕も以前、「水泳」をしている時に足をつったことがありました。
ここで「しょこたん」登場・・・でも、ナゼか怪しげな空気に!?エロストーリーは久々ですね。続きも楽しみです!
1828投稿者:いいなぁ  投稿日:2008年05月15日(木)22時02分41秒
やっぱり、リリーさんのエロは
1829投稿者:あげ  投稿日:2008年05月16日(金)20時07分29秒
 
1830投稿者:エロ  投稿日:2008年05月16日(金)20時25分09秒

1831投稿者:あげ  投稿日:2008年05月16日(金)20時36分29秒

1832投稿者:リリー  投稿日:2008年05月16日(金)21時23分48秒
エロに期待して下さってる方々…少し、肩透かしを喰らうかもしれませんが…

では、更新します
1833投稿者:リリー  投稿日:2008年05月16日(金)21時24分54秒
「具合はどう?あい〜ん?」
いきなり、ノックもせずに保健室のドアが開いた。
「え?」
藍は、咄嗟に出入り口の方を向く。
あすみが、様子を見に入ってきたのだ。
「あら…。中田先生…」
翔子は、藍の身体を撫で擦りながら、笑顔であすみを迎えた。
「………?あい〜ん…あんた…お尻丸出しで、何やってるの…?」
あすみは、背中から足の先まで、剥き出しになった藍の身体を、呆然と見下ろす。
「え…あ…そ、その…」
一気に、藍の顔が赤く染まった。
「何って?マッサージですよ」
翔子は、相変わらず平然と答えた。
「あ…!あ…ありがとう…ございました!!も、もう、大丈夫です!!」
藍は、慌てて身体を起こした。
そして、大慌てで脱がされたスカートとパンティを手に取る。
「あら?まだ途中よ?」
「い、いえ…もう、大丈夫です!平気です!!」
藍は、ものの数秒でパンティを履き、スカートを身に着ける。
1834投稿者:リリー  投稿日:2008年05月16日(金)21時25分29秒
「そ、そ、それじゃあ…。しょこ…いえ、中川先生、どうも、ありがとうございました…!」
藍は、靴下を履かずに手に持って、上履きを突っ掛けたまま、保健室を出て行こうとする。
「あい〜ん…」
翔子は、声をかける。
「…はい?」
「足…良くなったでしょ?」
「…あ…」
もう、痛みはない。
翔子のマッサージは、どうやら本物だったようだ。
「ど、どうも…」
藍は、中途半端に頭を下げた。
「あ、そうだ。あい〜ん…。今日、こんな天気だから、部活は中止ね。ゆっくりと身体を休めておきな」
あすみは、退室しかけた藍に言う。
「はい…。そ、それでは…」
もう一度、藍は頭を下げると、小走りで去って行く。
1835投稿者:リリー  投稿日:2008年05月16日(金)21時25分52秒
「くぅぅぅ〜〜〜!!!かわゆす!!かわゆす!!ギザかわゆす!!ううん、ギガントかわゆす〜〜〜!!!」
翔子は、両の握り拳を胸の前で合わせると、足をバタバタと踏み鳴らす。
呆れ顔で、あすみは翔子を見下ろした。
「あんたねぇ…。ここは学校だよ?自分の趣味を、こんな所に持ち込まないでよ?」
「だってぇ〜〜〜!!だってぇ〜〜〜!!」
まだ、翔子は悶えている。
「だって、何?」
「今のは、正当な医療行為だよ?やましいことは、何もないもん!」
翔子の口調は、途端に幼いものになった。
「正当?どこが?こむら返りの治療で、どうしてパンツまで脱がす必要があるの?」
「うん。普通、おかしいと思うよね?でもあの子、簡単に言い包められるんだもん…。そこが、また、かわゆすのぉぉぉ〜〜〜!!!」
「やっぱり、正当じゃないじゃん…!!」
あすみは、こめかみを指で押さえて、溜息をついた。
1836投稿者:リリー  投稿日:2008年05月16日(金)21時26分37秒
「私、あんたがあい〜んに何かするんじゃないかって…警戒したから、えまちんも着いていくように言ったんだけどなぁ…」
「えまちん?」
あすみの顔を、翔子は見上げて聞く。
「近藤エマ。同じクラスで、同じ部活の…」
「ああ、あのヨーロピアンテイストの可憐な少女?あの子も一緒に来たら、まとめて可愛がってあげるだけよ」
「ふふん…。『あの子』は、そう簡単にはいかないよ…」
あすみは、今まで藍がうつ伏せで寝ていた診療台の上に腰を降ろした。
「それにしても、あすみの部の子達って、美少女揃いよねぇ…」
翔子は、うっとりとした目で天井を見詰めた。
「言っとくけど…うちの部の子達に、手を出さないでよね?」
あすみは、そんな翔子を睨みつける。
「何よ?あすみ…あなた、すっかり『先生』じゃん」
「学校にいる時はね…。だって、それが『プロ』ってもんでしょ?」
「そうか…。私に足りないのは、プロ意識かぁ…」
翔子は、そう呟くが、反省の色は窺えない。
1837投稿者:リリー  投稿日:2008年05月16日(金)21時27分13秒
「いい?本当に野球部の子達に手を出さないでよ?これは、あんたの為に言ってるんだからね?」
「私の為?」
「そう…。さっきの、あい〜んみたいに、お人好しばかりじゃないんだよ…。あんたも知ってるでしょ?」
「ええ…。充分、承知よ…」
翔子は、不敵に笑った。
「あんた…。誰、狙ってるの?」
「ん?」
「あんたのその顔…狙いをもう定めてる顔でしょ…?」
あすみは、じっと翔子の目を見据えている。
「ふふ…。さすが…付き合いが長い…」
そう言うと、翔子は、あすみの耳に口を寄せて、何やら囁いた。
「………!!よりによって…あの子?あんた…チャレンジャーだね…。ボコボコにされるよ?」
「それもまた、一興…」
「そうか…。あんた…ドMだもんね…」
あすみは、溜息をついて立ち上がった。
1838投稿者:リリー  投稿日:2008年05月16日(金)21時27分34秒
「どうでもいいけど、クビになるようなことには、ならないようにね?」
「クビ?なるわけないじゃん。この学校、私にいくらお金を払ってると思って?」
「あんた、知らないの?この学校の総合学園長は、湯水の如く、お金を使うので有名だよ?聞いたことない?『入学式・桜植え替え計画』…」
翔子は、じっと上目遣いで思い出す。
「………ああ…。もう咲いちゃった桜と蕾桜を、全とっかえしちゃったって…やつ?」
「そうよ…。いい加減にしないと、あんたも桜の木と同様、引っこ抜かれるわよ?」
「了解…!あ、そうだ…ねぇ、あすみ…。今夜も行くでしょ?」
「ん?今夜?」
「『エトワール』…」
「ああ…。ま、あれも『仕事』だからね…」
「どうせ、ここの『仕事』は夕方までだし、夜は空いちゃうもんね…。今のうち、稼げるうちに稼いでおかないと…」
「私は、向いてないんだよねぇ…。あの『仕事』には…」
「私だって…向いてないよ…」
「ドMだもんね…。あんた…。でも、本当の『仕事』は、そんなんじゃないって…忘れてないよね?」
「忘れてないわよ…」
そう答える翔子だが、意識の方は、もう、放課後に向かっていた。
1839投稿者:リリー  投稿日:2008年05月16日(金)21時29分16秒
あすみとしょこたんの秘密は、三回裏で、しょこたんの本命は次回、わかります

では、今日はこれでおちます
1840投稿者:117  投稿日:2008年05月16日(金)21時33分22秒
あれ、意外とあっけなく終わりましたね(笑)。しかも、その療法が聞いているとは・・・(苦笑)。
「キザ」とか「ギガント」とか、『しょこたん語』炸裂ですね。
なるほど、「エトワール」の店員なんですか。しょこたん先生と中田先生・・・何か裏がありそう?続きも楽しみです!
1841投稿者:りーな  投稿日:2008年05月16日(金)21時46分53秒
もしかして、しょこたんとあすみんはTDDだったり…
な訳ないか
1842投稿者:あすみが裏の人間ぽい  投稿日:2008年05月16日(金)22時02分38秒
雰囲気をやっと醸し出してくれて
うれしい
そろそろこないかなと思ってたから
1843投稿者:ボコボコにされる  投稿日:2008年05月16日(金)23時37分55秒
という言葉から、しょこたんが狙ってるのは七海?
1844投稿者:個人的に有沙  投稿日:2008年05月16日(金)23時43分06秒

1845投稿者:デジ  投稿日:2008年05月17日(土)03時15分35秒
五日ぶりです。五日分短くコメントしておきます。
(月)久しぶりにちひろが話に出てきましたね。
ダーさんいつもながらに勘が鋭いですね。
そして、レッドさん。そういえばそうだったですねR&Gに「戦士」を引き込んだのは。この回はかっこいい役柄ですね。この依頼ってレッドさんが引き受けたんですか!
(火)この時期はまだ、安部政権のときでしたね。っというか、なぜジャスミンは自民党が大敗することを知っているんでしょうか?
難田門司…どんな顔なのか楽しみです。
リリーさんの小説ってCGキャラが、ボスってことが多いですね。しかも性格が正反対なことがこれまた面白いです。
(水)ついに出ましたか!しょこたん。最初からなんだか怪しいですね。
一七の時から、変わりませんねしょこたん独自の雰囲気は(笑)。
最初から炸裂してますねしょこたん語。次からソフトエロですか。
ちなみに、僕も水泳していて足が攣った経験が、多々ありました。
泳ぐと、70〜80%足が攣るんです。(僕って下手なのでしょうか水泳…)。
(木)エロ来ましたね。今回はエロのみですか。
しかししょこたんは、とことんMですね。
(今日)良いところで来ましたね中田先生。藍がいる前よりテンション上がってますね。しょこたん
出た「エトワール」…やっぱり裏に出てくるのでしょうか?中田先生は。
この先の展開を面白くする意味深な会話ですね。
二人の会話で思いついたんですが、彼女等の名前は、中田あすみ、中川翔子…二人とも名前が、「な」で始まりますよね?なんかTDDで『チームN』かなんかをやっていそうな気がするのは、気のせいでしょうか?
以上です。一週間でこんなにも進むもんなんですね!続きも楽しみです!
1846投稿者:おもろ  投稿日:2008年05月17日(土)10時44分50秒
1847投稿者:リリー  投稿日:2008年05月17日(土)18時39分46秒
今日は、少し早めに更新します

117さん、りーなさん、1842さん、二人については、もう少し待ってて下さいね
そのうち、答えを書くつもりです

1843さんと1844さん、その答えは今回わかると思います

デジさん、多くのコメント、ありがとうございます
一週間分、書いてくださるとは…感謝です
そう言えば、二人とも「中」がつきますね
二人は仲が良いだけでなく、もう一つ、一緒にいる理由があるのですが、それも、その内語られると思います

私も、117さんやデジさんと同じ様に、急に泳ぐと足が攣ります。
普段、使わない筋肉を酷使するからでしょうね

では、更新します


1848投稿者:リリー  投稿日:2008年05月17日(土)18時40分32秒
4時を過ぎ、放課後になってから、外の雨はいよいよ本格的に強くなりだした。
体育館で行われる部活は問題ないのだが、野球部のように外で行われる部活は中止となった。
雨で中止の場合、野球部の面々は各々、自主的に体力づくりをすることになる。
しかし、愛美と梓彩、そして藍のソフトボール部からの派遣組は、本来在籍しているソフトボール部に呼ばれ、視聴覚室で試合のビデオを見ながらミーティングを行うことになった。
有海は、一人教室で、スコア表を見ながら配球の研究をする。
七海、ジョアン、梨生奈、エマ、エリーの『R&G』組は、虹守町にあるバッティングセンターに向かうため、帰ってしまった。
残った中村有沙は…というと、中等部の室内プールで泳いでいる。
今日、水泳部は、高等部の室内プールへ出向いて合同で練習を行う為、プールは空いているのだ。
この折角のチャンスに、七海も泳ぎたかったのだが、今日はプールの授業がなかった為、水着を持って来ていない。
ジョアンと梨生奈とエリーも同様だ。
今日、授業で水着を持ってきたエマは、濡れた水着をまた着るのを嫌がったし、片時もエリーと離れたくない…という理由で、プールには入らなかった。
エマは七海に『着ぃひんのなら、ウチに貸さんかい』と言われたのだが、彼女は、他人に自分の水着を貸すのを断固拒絶した。
と、言うわけで、今は中村有沙が貸し切り状態で、たった一人で広いプールを泳いでいるのだ。
1849投稿者:リリー  投稿日:2008年05月17日(土)18時40分56秒
彼女は、まずは平泳ぎでゆっくりと泳ぐ。
そして50メートルほど泳いだ後、クロールに切り替える。
クロールでは、100メートルほど泳いだだろうか…そして途中で仰向けになり、背泳ぎに移る、
そして、最後はバタフライを50メートル…一通り各種の泳法を練習し、ようやくプールの底に足を着いた。
プールから上がろうとする中村有沙の目の前に、手が差し延べられた。
「む…?」
見上げると、そこに競泳用水着姿の若い女性が立っている。
「たしか…保健の…?」
「ええ…。中川翔子よ。『しょこたん』って呼んでね?」
そして、もう一度手を差し延べる。
「結構だ。中川先生…」
中村有沙は、翔子の手を借りずに、自分でプールから上がる。
「ああん!中川先生だなんて…!しょこたんって、呼んでよ!」
「拒否する」
手短に言うと、ベンチに座り、タオルで身体を拭いた。
翔子は、中村有沙の隣に座る。
ジロリと翔子を睨む、中村有沙。
1850投稿者:あげ  投稿日:2008年05月17日(土)18時41分06秒

1851投稿者:リリー  投稿日:2008年05月17日(土)18時41分27秒
翔子は、そんな中村有沙の視線に気がつかないのか、親しげに彼女に話しかける。
「誰もいないプールで…たった一人で泳ぐなんて、贅沢よねぇ…。セレブにでもなった気分…」
中村有沙は、答えない。
「ねぇ…。私はあなたのこと、『ありりん』って呼んでいい?」
「…?」
怪訝そうな顔で、中村有沙は翔子の顔を見た。
「うふふ…。有名だもん…。中等部、3年B組、出席番号22番、中村有沙…。美人で頭脳明晰でスポーツ万能…非の打ち所無し…ってね…」
「ああ。その通りだ」
何の臆面もなく言ってのける。
「でも…そんなあなたでも、お友達は少ないんですって?」
「それは違う」
「え?」
「少ないのではない。いないのだ」
「いない…?野球部の子達は?」
「あいつらは、ただの同じ部活の部員だ」
「友達じゃないの?」
「馴れ合いはしない」
1852投稿者:リリー  投稿日:2008年05月17日(土)18時41分49秒
「ふ〜ん…。クールね…。承太郎様みたいでステキ…」
「承太郎?」
「知らない?『スタープラチナ・ザ・ワールド!!オラオラオラオラ!!』」
翔子は、両の拳を中村有沙の目の前で連打し、寸止めする。
「そんなヤツは知らん。『オラオラ』うるさい女なら知っているが…」
「漫画、読まないの?」
「読まん。頭がバカになる」
半年前、白木杏奈と井出卓也から借りた三国志漫画を読んだきり、あれから読んでいない。
それなりに面白かったが、漫画漬けになった身近な人物を、中村有沙はよく知っていて、そんなヤツにはなりたくないと思っている。
その人物の名は…ダーブロウ有紗だ。
「うわぁ…!どこの昭和のオヤジだよ!『ゲーム脳』とか、信じてる?」
大袈裟に驚く翔子を無視し、中村有沙は更衣室へと向かう。
「あれ?もう、出ちゃうの?」
「一人っきりで泳ぎたいのだろう?私もそうだ」
「ううん!私は、大勢で泳いで、速さとか競い合った方が楽しいよ。だからさ…」
中川翔子は、声のトーンを少し低くした。
「私と…勝負…しない…?」
1853投稿者:リリー  投稿日:2008年05月17日(土)18時42分29秒
「勝負…だと?」
中村有沙は、ゆっくりと振り向いた。
「さっきのあなたの泳ぎ…凄かったわ…。クロール、ブレスト、バック、バタフライ…全て完璧。水泳部でも、あなたには勝てないかも…」
平泳ぎをブレスト、背泳ぎをバックと呼ぶ翔子は、水泳に詳しいことを窺わせる。
「貴様…いや、中川先生は、水泳の経験があると…?」
「ええ…。全国大会に出たことあるのよ」
そう言えば、競泳水着姿が、様になっている。
「この私は、オタクでありながらアスリートなのよ?」
「何か、自慢にでもなるのか?それは…」
「自慢にしてるわけじゃないけどさ…。あなたは自慢できるわよ?この私に水泳で勝ったら…」
「…ふん…!別に、貴様…先生に勝って、自慢しようなどとは、思っていない」
中村有沙は、再び更衣室に向かって歩き始める。
「もし、私が勝ったら、お友達になりましょ?私達…」
「ふん…!バカバカしい…」
中村有沙は、歩みを止めない。
「あなたが勝ったら、何でも言うことを聞くわ」
その翔子の言葉に、ようやく彼女は足を止めた。
1854投稿者:リリー  投稿日:2008年05月17日(土)18時42分51秒
「何でも…言うことを聞く…だと…?」
「ええ…。何でもね…」
「おもしろい!ならば、『二度と私に近づかない、話しかけない、すぐにここから立ち去る』…。どうだ?」
「………いいけど…。何?私、そんなにあなたに嫌われてるの?」
「そういうことだ」
「何か…ショック…」
「気にするな。私が好きな人物は、この世に一人しかいない」
「誰?それ…」
「誰でもいいだろう?それに…貴様が勝てば、お友達になれるのだから、それでいいではないか」
「う…。とうとう、『先生』って、言い直すこともしなくなった…」
「時間の無駄だ。さっさと終わらせるぞ」
中村有沙は、足早にプールサイドを横切って、スタート台に着く。
1855投稿者:リリー  投稿日:2008年05月17日(土)18時43分30秒
「あら?休憩しないの?」
「要らん。ハンデだ」
「ハンデ?だったら…私もハンデつけてあげようか?」
「何?」
「あなた、どんな泳法で泳ぐの?」
「勿論、自由形だが…?」
「じゃあ、私はブレストで泳いであげる」
「何…!?」
中村有沙は、耳を疑った。
クロールに対して、平泳ぎで対抗する?
勝てるわけがない。
全国大会に出たかどうかは知らないが、所詮、素人の…しかも、学生の大会だろう…?
元『TTK』の『戦士』の自分に、普通にクロールで挑んでも勝てるはずがないのだ。
「しかし…まぁ、いいか…」
自分から勝利の芽を潰すとは、願ったり叶ったりだ。
翔子も、中村有沙の隣のスタート台に着く。
1856投稿者:リリー  投稿日:2008年05月17日(土)18時45分46秒
1844さんの予想が、見事に当たりました

何故、しょこたんが「ジョジョ」の話しを唐突にしたのかと言うと、しょこたんは「ジョジョ」の大ファンだそうです

では、これでおちます
1857投稿者:117  投稿日:2008年05月17日(土)21時32分05秒
何やら、有沙がピンチの予感・・・?
一応僕も元スイマーなので、好きな「野球」だけではなく,「水泳」も出てくるのは嬉しいです。
「ブレスト」・・・懐かしい、いわば「平泳ぎ」を示す、水泳界の「業界用語」というべきものでしょうか。
少々季節は早いかもしれませんが、また「水泳」をしたくなった今日のお話でした。続きも楽しみです!
1858投稿者:あげ  投稿日:2008年05月17日(土)22時03分03秒

1859投稿者:エロシーンもないのに  投稿日:2008年05月18日(日)02時10分04秒
エロく感じてしまうのはナゼ?
1860投稿者:言うなれば  投稿日:2008年05月18日(日)02時39分11秒
アブストラクトエロティシズム
1861投稿者:リリー  投稿日:2008年05月18日(日)21時12分47秒
1860さん、アブストラクトとは…
私は、抽象芸術は好きなので、そう言って頂けて嬉しいです

117さん、スイマーなんですか?
私は、水泳好きですけど、水泳部ではありませんでした
陸上よりも、水中の方が得意でしたね

では、更新します
1862投稿者:リリー  投稿日:2008年05月18日(日)21時13分23秒
「勝負は、折り返し一回の、50メートル…。いい?」
「ああ…。構わん」
「あ…!もし、あなたが私に勝ったら、私は二度とあなたに近づいたらいけないのよね?」
「そうだが?」
「だったら、あなたが怪我したり、病気になったらどうするの?私、あなたを治療できない…」
「………。その時は、貴様の世話にはならん。自力でなんとかする」
「もの凄い大怪我しちゃったら?血が、ドビュー!!って出ちゃったら…?熱も40度くらい出ちゃったら?」
「…普通に考えて、保健室よりも病院に行くだろ?」
「あ…そうか…」
「貴様…足りないのか?」
そう言って、中村有沙は自分の頭を指差した。
「…うん…。かなりね…」
翔子は、悲しそうに頷く。
1863投稿者:リリー  投稿日:2008年05月18日(日)21時13分52秒
翔子は、また思い出した様に顔を上げた。
「あ…!それから…!」
「何だ?」
うんざりした様に、中村有沙は聞く。
「スターター…どうしよう…?それから…着順判定は…?」
「スターターなら…貴様のタイミングでいい」
「着順判定は?」
「必要ない」
やはり、この女、頭が足りない…。
中村有沙はスタートの為に、飛び込みの用意をする。
「では…位置に着いて…」
ピタリと、身体を固定する。
「ヨーイ…」
指先を、水面に定める。
入水角度は、25〜30度くらいか…。
「スタート!!」
翔子の声で、中村有沙は飛び込んだ。
1864投稿者:リリー  投稿日:2008年05月18日(日)21時14分19秒
泡が、水中で舞う。
飛び込みの角度、タイミング…全て完璧だ。
あとは、一心不乱に50メートルを泳ぐだけ…。
前方に、何かが見えた。
(…?)
翔子の姿だ。
さすが、元全国大会の水泳選手…飛び込みでは、一歩、先に抜きん出たか…。
しかし、翔子は足を大きく広げた。
そう…翔子は、平泳ぎで泳ぐと宣言したのだ。
「バカめ…」
先ほどの泳ぎを見て、平泳ぎでも充分勝てると踏んだのだろうが…あんなものは、実力の半分も…いや、三分の一も出してはいない。
体力だって、全く消耗していない。
身体の鍛え方が違うのだ。
中村有沙は、身体を水面近くまで浮上させると、一気に勝負を決めるべく、エンジン全開で水面を掻いた。
1865投稿者:リリー  投稿日:2008年05月18日(日)21時14分47秒
中村有沙は、100メートルくらいなら、息継ぎなしで泳ぐことができる。
そういう訓練を受けてきたのだ。
だから、常に水面下の様子を窺いながら泳ぐことができるのだが…その特技が、彼女の頭を混乱させることになる。
翔子が平泳ぎで一掻きする度に…軽く5メートルは進んでいく…。
二掻き目で、10メートル…。
中村有沙は、思わず息を、全部吐き出した。
(…な…何…!?)
少し水を飲んでしまったか…急いで息継ぎをすると、猛スピードで翔子を追い駆ける。
(な、何なのだ…?あの、速さは…?)
先に、25メートルを折り返したのは翔子の方だった。
すれ違いざま、翔子はこちらを見て…笑ったような気がした。
(…!?)
いや、確実に…ウィンクをした。
(お友達になりましょ…)
そんな翔子の声が、頭の中に響いたような錯覚を起こした。
1866投稿者:リリー  投稿日:2008年05月18日(日)21時15分15秒
(く…!そうはさせるか!!)
中村有沙は、翔子に遅れて、プールの壁面にタッチをする。
そして、水面から顔を出す。
翔子の姿を…位置を確認する。
「いいか…。全国大会だか何だかしらないが…元『TTK』の『戦士』である私との…格の違いを思い知らせてやる!!」
中村有沙は、魚雷になった。
水中を切り裂く、矢の様に、一直線に突き進む。
もう、翔子の姿など、関係ない。
目指すは、ゴールのタイルの壁…!!
このまま頭を激突させても構わない。
それで死んでしまうような、身体の鍛え方はしていない。
そんなことを考えているうちに、頭の中が真っ白になる。
そして、激痛…!
どうやら、本当に頭を激突させてしまったのか…?
(私としたことが…。何と言う…マヌケな…)
薄れ行く意識の中で、中村有沙は自嘲した。
1867投稿者:リリー  投稿日:2008年05月18日(日)21時15分46秒
「ありりん!ありりん!大丈夫?」
誰かが、自分に呼びかけている。
自分を『ありりん』と呼ぶ者は…野球部の者以外、ない…。
今は、部活だったか…?
そう…授業が終わったから…今は部活のはずだ…。
いや…今日は、雨が降って、中止のはず…。
自分は、丁度プールが空いていたので、一人で泳いでいたのだ。
一人で…?違う!!
中村有沙は両の眼を開くと、自分の顔を覗き込んでいる者の首を掴んで押し倒し、馬乗りになった。
「ひ…!!」
養護教員、中川翔子が、青褪めた顔で見詰めている。
2人は、プールサイドにいた。
「だ…大丈夫…?ありりん…?」
「………ふぅ…。大丈夫だ…」
ゆっくりと、翔子の身体から離れる。
「心配したよ…。ありりん…水中で気を失ってたんだもん…」
(く…!!何という醜態!!)
中村有沙は、顔をしかめた。
一瞬たりとも、他人の前で気を失ってしまうとは…。
1868投稿者:リリー  投稿日:2008年05月18日(日)21時16分16秒
「そ、そうだ!!勝負は…!?どっちが勝った!?」
翔子の顔を、じっと見詰める中村有沙。
気を失ったのだ。
着順がどうなったのか、自分は確かめようがない。
仮に自分が勝ったとしても、翔子がウソをつけば、それで終わりだ。
しかし、着順判定は必要ないと言ったのは、他の誰でもない…自分だ。
中村有沙は、二重に顔をしかめた。
翔子は、僅かに微笑んだ。
(まさか…?)
「私の負けよ…。だって、私がゴールした時には、もう、ありりんは水面に浮いていたもん…」
勝った…?勝ったのか…?
しかし…この中川翔子…バカ正直にも程がある…。
自分が翔子に確かめたということは、勝敗の判定を委ねたことになるのに…。
翔子が、自分の勝ちだと言えば、勝ちなのだ。
しかし、向こうが負けを認めたのだ。
それなら、そういうことにしておこう…。
1869投稿者:リリー  投稿日:2008年05月18日(日)21時16分39秒
「ならば、貴様は何故、ここにいる?私が勝ったのだぞ?ここから即刻、消える約束のはずだ」
翔子は、途端に悲しそうな顔をする。
「わかってるわよ…。ただ『あなたの言うことを聞く』って約束でしょ?今、出て行けと言われたから…その通りにするわ…」
翔子は力なく立ち上がると、脱衣所に向けて歩き出した。
「おい…!」
中村有沙に呼び止められた翔子は、思わず振り返る。
「………介抱してくれたことは………感謝する………」
目を伏せて礼を言う中村有沙に、翔子は微笑んだ。
「ありがとう…。あなた、優しいのね…。ほんと…お友達になりたかったわ…」
そしてまた悲しそうな顔に戻し、翔子はプールから出て行った。
「…悪い人間ではないのだな…」
中村有沙は独り言を呟く。
「しかし…友達など、私は要らない。ちひろだけ…。私にはちひろだけだ…」
頭を軽く二、三度振って、中村有沙は再びプールへ飛び込んだ。
1870投稿者:リリー  投稿日:2008年05月18日(日)21時17分34秒
30分くらい泳いだだろうか。
もうすぐ、下校時刻になる。
守衛が、見回りに来る頃だ。
中村有沙はプールから上がり、脱衣所に向かう。
そして、普段は水泳部が使用する、個室のシャワー室へと入った。
その中で水着を脱ぎ、裸になると、暖かいお湯のシャワーを浴びる。
夏とはいえ、少し泳ぎすぎたか…身体がすっかりと冷えてしまった。
髪の毛を、シャワーで塗らす。
「痛…」
さっき、プールの壁面にぶつけた所…僅かにコブができている。
頭にコブなどつくったのは、久しぶりだ。
確か、『TTK』の殺し屋としての訓練中…ダーブロウ有紗に何度ともなくゲンコツを喰らったが…。
その時だった。
背後に、扉が開く、軋む音…。
中村有沙は、思わず振り返った。
そこには…中川翔子が…全裸で立っていた…。
1871投稿者:リリー  投稿日:2008年05月18日(日)21時18分20秒
「………何を………している………?」
中村有沙は、翔子にそう聞いたが、本当に聞きたいのは、そんなことではなかった。
いつから、ここにいる…?
何故、気付かれることなく、自分に近づけた…?
シャワーの音で気が付かなかった…?
考え事をしていたから…?
まさか…!そんなやわな『訓練』は、受けていないはずだ!!
一瞬、中田あすみの顔を思い浮かべた…。
「そのままで…。ありりん…」
翔子は、中村有沙の肩を掴むと、後ろを向かせた。
「そのまま…。そのまま…」
翔子の指は、中村有沙の背中を、ゆっくりと撫でる。
翔子に背を向けたまま、中村有沙は再び問う。
「貴様…何故、ここにいる?」
「え?何が?」
とぼける翔子は、指先を、背中から腰へと移動させていた。
1872投稿者:リリー  投稿日:2008年05月18日(日)21時18分44秒
「貴様は、二度と私の前に姿を現さない、と約束したはずだ」
あくまでも冷静な態度を、中村有沙はとるように心がける。
「約束?何?それ…?」
翔子の指は、更に下…尻を撫で回す…。
「貴様、いくら頭が足りないからといって、もう、忘れたわけではあるまい?」
「ん?うふふ…。覚えてるわよぉ…」
翔子は、中村有沙の尻を、軽く抓った。
「…!!」
咄嗟に翔子の手を掴み、中村有沙は後ろを振り向いた。
「勝負に負けたのであろう…!?即刻、私の前から、姿を消せ!!」
「負けてない…」
「何…?」
「あの勝負…。私が勝ったんですもの…」
睨み合う2人…。
暖かいお湯が、全裸の2人の上に降り注いで、濡らしていく。
1873投稿者:リリー  投稿日:2008年05月18日(日)21時19分01秒
今日は、これでおちます
1874投稿者:117  投稿日:2008年05月18日(日)21時25分34秒
さすが、元「TTK」の有沙。僕は息継ぎなしでは25mが精一杯です(苦笑)。
バックでは頭を壁にぶつけたことがありますが、クロールではあまり無いですよね。
神出鬼没なしょこたん先生・・・有沙はどうなってしまうのか、続きも楽しみです!
1875投稿者:ドキドキするw  投稿日:2008年05月18日(日)22時11分11秒
ひさしぶりに
1876投稿者: 投稿日:2008年05月18日(日)22時40分14秒

1877投稿者:デジ  投稿日:2008年05月19日(月)03時10分22秒
凄いですね有沙。僕は息継ぎなしだと最高でも10mぐらいしか泳げません。学校の授業で25m泳ぎきったときなんか足がつるどころか頭まで真っ白になってました。
さて後半。やっぱり凄い怪しいですねしょこたん先生は。
続きも楽しみです!
毎回うまいタイミングで区切りますね。
1878投稿者:ありりーん  投稿日:2008年05月19日(月)04時06分27秒
しょこたんに何されるんだ
心配だ
1879投稿者:リリーさんのネチエロ  投稿日:2008年05月19日(月)20時05分52秒
…凄く好き
1880投稿者:リリー  投稿日:2008年05月19日(月)21時02分27秒
ネチエロって、ネチっこいエロってことですか?
確かに、ネチっこいかもしれませんね
ネチエロ展開は、今日も続きます

100メートルを無呼吸で泳ぐってのは、ちょっとやり過ぎでしたね…
こういうの、世界記録じゃ何メートルなんでしょう?

では、更新します
1881投稿者:リリー  投稿日:2008年05月19日(月)21時05分11秒
「デタラメを…」
「デタラメ?どうして、あなたにわかるの?ゴールで気を失ってたあなたに…」
「ならば、何故、今更…」
「私の勝ちだって言っても…あなたは認めないでしょ?」
「認めない?その通りだ。証明する者がいない…」
「そう…勝った、負けたは水掛け論…。意味がない…」
「今なら、意味があるとでも?」
「ええ…。意味があるわ…」
「どういう意味だ?」
「あなたの方が…私と…お友達になりたいって…思うようになるってこと…」
翔子は、中村有沙の頬に、唇を寄せた。
「なるほど…。貴様の言う、お友達とは…こういうことか?」
「そう…。こういうこと…」
翔子は、中村有沙の唇に、ねっとりとしたキスをする。
1882投稿者:リリー  投稿日:2008年05月19日(月)21時05分31秒
翔子の舌が、中村有沙の口の中で踊る。
そして、唾液の糸を引きながら、ゆっくりと離した。
「うふふ…。上手でしょ?私…」
「上手も何も…今のが私にとって、ファーストキスだ」
「ウソばっかり…」
再び、翔子はキスをする。
そして、唇は首筋に移動する…。
「気持ちよくしてあげるから…。あなたの中で…この私を一番にしてあげるから…」
翔子の唇は、中村有沙の首筋から胸に…。
冷えた身体に、暖かいお湯を浴びたので、乳首がピンと立っている。
その乳首を、翔子は舌の先で振るわせた。
「どう…?気持ちいい…?」
上目遣いで、中村有沙の顔を眺める翔子。
「………」
中村有沙は、冷たい視線でじっと翔子を見下ろしたまま、答えない。
1883投稿者:リリー  投稿日:2008年05月19日(月)21時06分30秒
「ふふ…。ま、いいわ…。そのうち、あなたは声を上げる様になる…」
そして、再び乳首に吸い付いた。
舌で、乳首を転がす翔子。
手は、中村有沙の全身を撫で回す。
翔子の舌は、中村有沙の乳首から離れ、腹筋で引き締まった腹に…そして、へその周りを、舐め上げる。
中村有沙は、少し、息を吐いた。
「ん?今の、気持ち良かった?」
「………」
相変わらず、中村有沙は答えない。
翔子の舌は、更に下へ…。
薄く柔らかな陰毛に、舌を絡ませた。
お湯で濡れている為、陰毛は下に向かって、小さく尖っている。
その先から滴り落ちる雫を、翔子は舌で受け止める。
「ちょっと、気をつけて…。片足で踏ん張ってね…」
翔子は、中村有沙の右足を持ち上げて、自らの肩に乗せた。
1884投稿者:リリー  投稿日:2008年05月19日(月)21時06分55秒
じっと、中村有沙の顔を見上げる翔子。
じっと、翔子の顔を見下ろす中村有沙。
翔子は、ふふふ…と含み笑いをし、視線を中村有沙の足の間に移す。
柔らかく濡れた陰毛を、掻き分けると、そこに深い筋が現れる。
翔子は、その筋にそって、舌を這わせた。
何度も、何度も舌でなぞる。
舐める度に、中村有沙の表情を確認する。
相変わらず、無表情で翔子を見下ろしている。
翔子は、少し首を傾げた。
「どうしたの?気持ちよかったら、声を出していいのよ?ここには私達以外、誰もいないんだから…」
すると、中村有沙は退屈そうに翔子から視線を逸らした。
1885投稿者:リリー  投稿日:2008年05月19日(月)21時07分36秒
翔子は、途端に焦りだした。
「ちょ、ちょっと待ってね…?今すぐ、気持ちよくしてあげるから…」
翔子は、指で筋を押し広げた。
そして、小さな蕾を見つけ出す。
そこを、執拗に舌で揺らす。
舌で押し、唇で吸い付き、歯で軽く噛む。
しかし、中村有沙は少しも声をあげない。
呼吸も、荒くならない。
翔子は、困惑気味に言葉を投げた。
「な、何で…?あ、あんた…もしかして…不感症…!?」
その時、翔子の髪の毛が鷲掴みにされて、上に引き上げられた。
「い、痛い!!痛い!!」
翔子は、悲鳴をあげた。
1886投稿者:リリー  投稿日:2008年05月19日(月)21時08分03秒
中村有沙は、苦痛に歪む翔子の顔を見下ろして、こう言った。
「不感症…?失礼なことを言うな…!貴様のヘタクソを、人の所為にするんじゃない」
そして、翔子の頬に強烈な張り手を喰らわせた。
「ぎゃあ!!」
翔子の悲痛な叫びが、シャワー室に響き渡る。
無言で、何度も張り手を喰らわせる、中村有沙。
「痛い!痛い!やめて!やめて!」
とうとう翔子は泣き出した。
ようやく、中村有沙は翔子の髪の毛を放した。
翔子は、タイルの床に突っ伏して、オイオイと嗚咽を漏らした。
中村有沙は、翔子の頭に足を乗せる。
「いいか?これに懲りたら、二度と私の前に姿を現すな。約束は守れよ?」
そしてシャワー室を出ようとした時、足首を掴まれた。
「ま、待って!勝負は…本当に私が勝ったのよぉ…!だから…チャンスを…あなたをイカせる、チャンスをちょうだい!!」
「黙れ」
冷徹に、一切の情けをかけずに、中村有沙は翔子の頭を蹴っ飛ばした。
1887投稿者:リリー  投稿日:2008年05月19日(月)21時08分27秒
「あぐぅ…!!」
翔子は、狭い個室の中で、ひっくり返った。
「いいか?私は今から学園長の所に行って、教師である貴様に性的悪戯をされたと申し出て、貴様をクビにすることもできるのだぞ?そうされたくなかったら、もう、私に纏わり着くな!!」
「…いいえ…。あなたは…そんなこと…しない…」
「何?」
「あなたは…学園長に泣きつくなんて…そんなことは…しないわ…。強い人だもの…」
翔子は、中村有沙の右足にしがみ付いた。
「貴様…!まだわからないのか!?」
「ううん…!お友達になんか、なってくれなくてもいい!!」
「…?」
「その代わり…その代わり、もっと…もっと、私を蹴って!!」
「…?な、何だと?」
翔子は、中村有沙の右足にしがみ付き、頬を寄せた。
「うふふ…。ステキな足…。キレイな足…。こんな足に…私はムチャクチャに蹴られたい…」
翔子はぺロリと、舌で脛を舐めた。
「貴様!!」
中村有沙は激高し、何度も翔子の顔を蹴り、頭を踏みつけた。
1888投稿者:リリー  投稿日:2008年05月19日(月)21時08分54秒
「ああ…!もっと!!もっと蹴って!!踏みつけて!!私をムチャクチャにしてぇ〜〜〜!!!」
尚もすがりつく、翔子。
「この、変態め!!」
中村有沙は、翔子の髪の毛を再び掴み、足から引き剥がした。
鼻血で赤く染まった顔面を、にっと歪ませ、翔子は囁く。
「うふふ…。そうよ…。私は…ヘ・ン・タ・イ…」
翔子の手は、するすると中村有沙の足を這い上がって行く。
そして中指が、尻の割れ目に入り込み、肛門に触れた。
「…!?触るな!!」
中村有沙は、拳で翔子の顔面を、思いっきり殴りつけた。
「ぐぎゃ!!」
短く悲鳴を上げると、その場に、翔子はバッタリと倒れた。
翔子は、ピクリとも動かない。
1889投稿者:リリー  投稿日:2008年05月19日(月)21時09分33秒
「ム…?やり過ぎてしまったか…?」
中村有沙は、シャワーの水温を50度に設定する。
その通りに調節されたお湯は、そのまま翔子の身体に降り注いだ。
「あ…!あちゃ、ちゃ、ちゃ、ちゃ…!!」
翔子は、慌てて個室から外に這い出た。
ふう、ふうと息をついている翔子の背に、中村有沙は声をかける。
「貴様がマゾヒストだと言うのなら、これ以上の制裁も無駄だろうな…。ならば、私はこれより、貴様を徹底的に無視をする」
そして、個室の中に脱ぎ捨てた自分の水着を引っ掴むと、その場を足早に立ち去る。
「貴様は…私の中では、存在しないことと同じだ…」
中村有沙の後姿を、翔子は片方が腫れ上がった目で、見送った。
「ふぅ…。ほんと…ステキな子…。私の見る目に…狂いはなかったってことね…」
翔子は、指で鼻血を拭う。
「いつか…絶対に…私のモノにしてみせるから…。ありりん…」
血の赤色が渦を描きながら、排水溝に吸い込まれていった。

(『三回・表』・・・終了)
1890投稿者:リリー  投稿日:2008年05月19日(月)21時09分54秒
今日は、これでおちます
1891投稿者:あっ、これ  投稿日:2008年05月19日(月)21時20分53秒
表だったんだ
1892投稿者:117  投稿日:2008年05月19日(月)21時24分54秒
元「TTK」だから、そのような誘惑にも負けないようにしているんでしょうか?
有沙はどこまでも冷静で、まさに「クールビューティー」って、感じですかね(笑)?
そういえば、「表」でもエロシーンが出ていますね。今でも,愛美と梓彩との絡みを期待している117です(笑)。続きも楽しみです!
1893投稿者:応援してます  投稿日:2008年05月19日(月)21時28分46秒
がんばってください!!
1894投稿者:あげ  投稿日:2008年05月20日(火)10時05分34秒

1895投稿者:リリー  投稿日:2008年05月20日(火)21時13分09秒
1893さん、ありがとうございます
そのコメントが励みです

117さん、1891さん、そう…あんまり、表っぽくない展開ですよね
この第二試合になってから、少しずつ明確に分けられていた表と裏が、混ざり合っていきます
手始めに、三回裏は『表』のゴッド姉ちゃんと『裏』のゴッド姉ちゃんが遭遇します

では、更新します
1896投稿者:リリー  投稿日:2008年05月20日(火)21時14分35秒
『三回・裏』

≪2007年7/20(金)≫
午後6時を過ぎると、雨はますます強くなってきた。
フィリピン付近の洋上に発生した小型で猛烈な台風が、日本列島に迫ってきているからだ。
しかし、それでも歌舞伎町の住人達は関係ないらしく、いつもと同様の賑わいを見せている。
その歌舞伎町の雑踏を、カーキ色の軍用レインコートを被った外国人女性が歩いていく。
今は、パソコンで検索する無料の紹介所がある為、客引きの類は一向に姿を消した。
その所為もあってか、幾分この町も歩きやすくなった。
外国人女性は、とあるペンシルビルの軒下に潜る。
「ん?どうしたの?女の人?外人じゃん。ウチの店で働きたいの?」
蝶ネクタイを締めた、茶髪の軽そうな若者が、彼女に声をかける。
「やかましい!!今から、大事な電話をするんだ!声、かけんじゃねぇ!!」
若者は、怒鳴られたことよりも、その外国人女性の流暢な日本語に驚いた。
「そりゃ、悪かったね…」
若者は、店に引っ込んだ。
外国人女性は、携帯を取り出して、電話を掛けた。
「もしもし…。こちら、『マッド・エッジ』…。『アイアン・メイデン』か?」
1897投稿者:リリー  投稿日:2008年05月20日(火)21時14分54秒
雨の池袋。
ジャスミン・アレンは掛かってきた携帯に応えながら、地下道を歩く。
「はい。こちら、『アイアン・メイデン』。珍しいわね?あなたがコードネームを使うなんて…」
〔ミッション中は、私でも、規律に従うぜ。それよりも、そっちはどうだ?〕
「どうだも何も、今着いたばかりなんだけど…」
〔まあ、そっちは何も見つからないとは思うが…一応、やつ等の元アジトを探ってくれ〕
「そうしたいのは山々だけど…ちょっと面倒なことが起きちゃって…」
〔何だよ?〕
「う〜ん…それはね…」
ジャスミンは、頭を掻きながら後ろを振り返った。
そこには十人程の、チーマーの若者達が、群がって歩いていた。
「よう、日本語のお上手なパツキン姉ちゃん!!無視すんなよぉ!!」
「やっと、俺達と遊んでくれるの?」
「それとも、電話でお友達を呼んでくれるの?」
口々に騒ぎ立てる、チーマー達。
1898投稿者:リリー  投稿日:2008年05月20日(火)21時15分16秒
〔何だ?随分、頭の悪そうな声が聞こえてやがんな?〕
「ま、聞いての通りよ。ねぇ…『遊んで』もいい?」
ジャスミンの言葉に、チーマー達は騒ぎ始めた。
「おい、おい!!遊んでくれるらしいぜ!?」
「ひょ〜!!やったぜ〜!!」
ダーブロウ有紗の溜息が、携帯から聞こえてきた。
〔でもなぁ…。おまえが『遊んだ』ら目立っちまうだろ?もし、難田門司の部下がそこ等に居たら、どうすんだ?〕
「今の所…彼等以外、人はいないわ…」
〔仕方がねぇなぁ…。じゃあ、一分以内で『遊べ』!〕
「OK!じゃ、『マッド・エッジ』も気をつけて。『クリムゾン・レイン』は?」
〔今から掛けるよ。じゃあな、一応…気をつけろよ〕
「うん。ま…一応ね…」
ジャスミンは、携帯を切った。
そして、チーマー達の方を振り返った。
「お待たせ!さ、『遊び』ましょ!!」
「お?何?何?今から、俺達と…」
彼等の声は、その後、悲鳴へと変わる。
1899投稿者:リリー  投稿日:2008年05月20日(火)21時15分46秒
雨の天歳市…。
今日は日傘ではない、雨傘を差した七世は、掛かってきた携帯を取り出す。
「『マッド・エッジ』…。ダーさんね…」
七世は、携帯に出た。
「もしもし…。こちら『クリムゾン・レイン』…。『マッド・エッジ』ですか?」
〔へへへ…。本当に、血の雨を降らせるんじゃねぇのかい?『クリムゾン・レイン(深紅の雨)』…〕
「そうならないことを、祈って下さい。ダーさんの方も…ね…」
〔今、どこだ?〕
「山本組の、事務所の前です」
〔そうか…。いよいよ、おまえの演技力が問われるぜ?がんばれよ、大女優!!〕
「からかわないで下さいよ。私、緊張してるんですから…」
〔ん?じゃあ、今から私と代わる?〕
「嫌です」
〔でもなぁ…。ドSの私より、ドMのおまえの方が、絶対に適役だと思うんだけど…〕
「何事も経験ですよ、『マッド・エッジ』…」
〔言うねぇ…。『クリムゾン・レイン』…〕
1900投稿者:リリー  投稿日:2008年05月20日(火)21時16分07秒
「あ、今、事務所から人が出てきました…!じゃあ、電話、切りますから…」
〔おう、じゃあ、気をつけろよ〕
「『マッド・エッジ』も…。て、言っても、そんな心配は無用ですかね?」
〔いや、心配してくれよ…。私、不安で不安で仕方がねぇんだ…〕
「冗談…!」
〔ち…!こういう時、損だよなぁ…〕
「じゃ、本当に気をつけて…。ダーさん…」
七世は、携帯を切った。
「ちょっと、あんた…!こんな所で何してんだ?」
事務所から出てきたのは、黒いスーツにサングラス姿の女…山本組の女性組員だ。
と、言っても、山本組には、女性しかいない。
「や、山本組の…事務所ですよね?ここ…」
七世の言葉に、女性組員はその場で立ち止まった。
「何者だ?それに…何の用だ?」
七世は、精一杯、『怯える可憐な少女』の演技で、答えた。
「わ、私の…友達…か、か、返して下さい!!」
1901投稿者:リリー  投稿日:2008年05月20日(火)21時16分27秒
「さてと…。ジャスミンも、出っ歯ちゃんも、動き始めた…。私も覚悟を決めて行かなきゃなぁ…」
歌舞伎町のダーブロウ有紗は、携帯を懐に戻し、フードを被る。
「何だ…。あんた、まだ居たの?」
先ほどの、茶髪の若者が、また店から出て来た。
「お?おう、さっきは悪かったな。もう、電話は終わったから…」
「でも…よく見ると、あんた美人だな…」
「ありがとよ。でもな、私はよく見なくても、美人なんだよ、コンチクショウ!!」
「ゴメンよ。でも、ほんと、ウチの店で働かない?」
「いや…。今から、行く所があるんだよ」
「ふ〜ん…。どこ?」
「『SM倶楽部・エトワール』…」
「ああ…!女王様か…!あの店の…」
ダーブロウ有紗は、悲しげにニヤリと笑った。
「いいや…。客として行くんだ…。あの店に…」
1902投稿者:リリー  投稿日:2008年05月20日(火)21時16分58秒
「いらっしゃいませ。当店は、初めてご利用でしょうか?」
黒の革ベストに蝶ネクタイ姿…そして蝶の仮面を着けた女性店員が、ダーブロウ有紗を迎えた。
「ん?ああ…。初めてだ…。私みたいな、女でも、OKだよね?」
「ええ…。『SM倶楽部・エトワール』は、老若男女、どなたでもご利用して頂けます」
別の女性店員が、ダーブロウ有紗の背後に回る。
「レインコート、お預かり致します」
「お?ああ…。サンキュー…」
SM倶楽部なだけあって、暗い雰囲気の店だが、従業員の接客態度も、インテリアも、至って普通だ。
女性店員は、レストランのメニューのような、茶色の革製のボードをを持ってきた。
「では、お客様…。お時間の方は、如何ほどに?60分、80分、100分、120分とありますが…」
別に、遊びに来たわけではないので、長い時間、遊んでも意味がない。
「じゃあ、60分で…」
「かしこまりました。コースの方が、ソフト、ノーマル、ハードと3段階になっておりますが…」
「う〜ん…。初心者なんだけど…」
「では、ソフトの方で…?」
「あ、いや…ノーマルでいいや…」
こんなことがない限り、SM倶楽部で遊ぶことはないので、思い切ってレベルを一段階上げてみた。
1903投稿者:リリー  投稿日:2008年05月20日(火)21時17分51秒
「それでは、お客様にお好みの、女王様をお選び下さい」
ズラリと、ダーブロウ有紗の前に、写真が並べられた。
全身写真の片隅に、顔のアップが添えられている。
皆、セクシーなボンデージの衣装に身を包んでいる。
「う〜ん…。どうしようかな…」
この店のことを探るには、ベテランの女王様を指名するのがいいのだが、逆に警戒心をもたれるかもしれない。
しかも、ここはSM倶楽部…奴隷(客)が勝手にあれこれ女王様に質問することなど、許されないだろう…。
と、いうことは、まだプロ意識の薄い、新人の方が、うっかり口を滑りやすい。
この店の詳しい裏事情は、聞く必要がないのだ。
ただ最近、異様に可愛らしい顔をした中年男性を見なかったか…これだけでいい…。
「なぁ…。この中で、一番最近入った女王様って、誰?」
「ああ、はい。それならば…この2人ですね」
指を指されたのは、『アスミ女王様』と『ショーコ女王様』だった。
1904投稿者:リリー  投稿日:2008年05月20日(火)21時18分10秒
今日は、これでおちます
1905投稿者:117  投稿日:2008年05月20日(火)21時29分42秒
それぞれが動き出しましたね。ジャスミンはある意味で男たちと遊び・・・(笑)。
なるほど、ここで中田先生としょこたん先生登場ですか?これで繋がりましたね。
なかなか口を割らなそうな2人・・・ダーさんはどう出るのか?続きも楽しみです!
1906投稿者:ゴッド姉ちゃんて…w  投稿日:2008年05月21日(水)20時54分23秒
 
1907投稿者:リリー  投稿日:2008年05月21日(水)21時15分13秒
117さんの仰るとおり、表と裏がつながりました

今回は、『らりるれろ』で出たあの人達が登場します

では、更新します
1908投稿者:リリー  投稿日:2008年05月21日(水)21時17分08秒
『アスミ女王様』は、背が高く、いかにも威圧的な雰囲気を持っている。
「でけぇな…この女…。私より、背が高いんじゃないのか?」
思わず呟く、ダーブロウ有紗。
「アスミ女王様ですか?この子はいいですよ〜…。まるで、新人という感じをもたない…威風堂々とした感のある子でして…」
隙が無さそうな感じのする女…しかも、自分よりも背が高い…。
少し、ダーブロウ有紗は、『アスミ女王様』が癪にさわった。
「この、『ショーコ女王様』は?」
「ええ…。この子は、正反対に、ソフト向けですね。初心者の方には、お薦めですが…」
『アスミ女王様』に比べれば、『ショーコ女王様』の方は、付け入る隙が多い様に感じる。
可愛らしい感じのする子で、あまりSMの女王様という感じがしない。
例えるなら、『アスミ女王様』は自分にタイプが似てて、『ショーコ女王様』は、七世にタイプが似てそうだ。
七世のようなタイプに責められるのも、悪い気がしない。
反対に、自分のようなタイプに責められるのは、絶対にゴメンだ。
1909投稿者:リリー  投稿日:2008年05月21日(水)21時17分33秒
「じゃあ、この『ショーコ女王様』で…」
「かしこまりました…。お客様のご希望コースは、60分、ノーマルコース、『ショーコ女王様』でございますね?それでは…お客様は、何とお呼びすればよろしいでしょうか?」
「…は?」
「本名でもよろしいのですが…仮名でも構いません…」
勿論、『ダーブロウ有紗』などという名前は目立ちすぎるし、裏の世界では知れ渡ってしまっている。
当然、偽名を使うつもりだった。
「じゃあ…『リサ・ステッグマイヤー』で…」
今話題の、ノーベル賞候補の日米ハーフの女性生物学者で、有名人…彼女の名前を使うのは、少しも不自然ではないだろう…。
しかも…彼女は、ダーブロウ有紗…及び、中村有沙の、実の母親なのだ…。
「かしこまりました。では、時間になりましたら、リサ・ステッグマイヤー様のお名前を、お呼び致します。それまで、こちらでおくつろぎ下さい…」
前払いで、指名料込みの15000円を払うと、待合室に案内された。
「む…?」
待合室のドアを開けた途端、何ともいえない熱気と、湿気が漂ってきた。
(何だ…?)
中には、3人の男達がソファーに並んで座っていた。
真ん中に、小柄な男。
そして、彼を挟む様に座っている二人の男。
一人は、スキンヘッドで口髭をはやした、一見、ヤクザの様な風貌の男。
そしてもう一人は…まるで、力士の様な大柄な…いや、脂肪の塊りの様な男…。
さっきの熱気と湿気は、彼が原因だったのだ。
1910投稿者:リリー  投稿日:2008年05月21日(水)21時18分03秒
何とも奇妙な3人組の客の、少し離れた所にダーブロウ有紗は座った。
どうして、ダーブロウ有紗は、この一見、共通点の無さそうな3人を『3人組』…つまり、仲間だと確信したのか…。
それは、両端の2人の男の間に、座っている『普通』そうな男…この並び方にある。
一人は、スキンヘッドで口髭の…『ヤクザ』のような風貌の男…。
そして、もう片方は、全身から汗と体温からなる熱気を発している、『巨漢』だ。
もし他人なら、こんな2人に挟まれて座るわけがない。
たとえ先に座っていて、後で『ヤクザ』と『巨漢』に挟まれてしまったとしても、トイレとか何とか言い、席を移動すればいい。
座る場所は、いくらでもあるのだ。
つまり、この3人は『仲間』…。
しかも、真ん中の『普通』そうな男がリーダー格だ。
そう確信した理由は、座っている3人のポーズ。
真ん中の男は、腕組みをして足を広げて座っている。
そして、スキンヘッドの『ヤクザ』風の男は、ピッタリと膝を揃えて座っている。
普通なら、逆の印象を持つ。
この、スキンヘッドの『ヤクザ』風の男は、真ん中の小柄な『普通』そうな男に、頭が上がらない…。
『巨漢』の方も…足を思いっきり広げているが、彼は、この座り方以外できないだろう…。
1911投稿者:リリー  投稿日:2008年05月21日(水)21時18分26秒
(一応、こいつ等にも探りを入れておくか…)
この3人の中で…一番『普通』そうな、真ん中の男…つまり『リーダー』に、声をかける。
「ねぇ…。あんた、ここの常連さん?」
外国人女性に話しかけられた男は、少し緊張した面持ちで、背筋を伸ばして答える。
「いや…。初めてやけど…」
擦れ声の関西弁…吉田を思い出す。
「あれ?関西弁?大阪から来たの?」
「うん。まあ、昨日までは…」
「昨日?何?全国回ってるの?」
「うん。興行でな」
「興行?何、何?オジサン達、お笑い芸人か何か?」
3人は、顔を見合わせた。
何で、自分等が仲間とわかったのか、不思議そうに…。
(ヤバい…。少し、警戒感を持たれたかな…)
ダーブロウ有紗は、もう質問をやめた。
初めてと言うなら、もう彼等から聞き出すことはない。
もし、それがウソでも、それがバレた時に、改めて探りを入れればいいのだ。
1912投稿者:リリー  投稿日:2008年05月21日(水)21時18分47秒
「でも、あなたも珍しいですね。女性でSM倶楽部って…」
「ん!?」
ダーブロウ有紗は、耳を疑った。
一番、強面のスキンヘッドの『ヤクザ』風の男の声が…なんという、甲高い、可愛らしい声なのだろう…。
『マカロニほうれん荘』という昔のギャグ漫画に出てくる『きんどーさん』は、多分、こんな声なんだろうか…と、一瞬、他所事を考えた。
真ん中の男は、キッとその、きんどーさん(今、ダーブロウ有紗が名付けた)を睨んだ。
まるで、「おまえは、喋るな」…とでも言いたげに…。
きんどーさんは、しゅんと、うな垂れた。
やはり…この真ん中の男が『リーダー』だ。
ならば、何としてでもこの、きんどーさんとお話しをしてやろう…。
「今、珍しいって言ったね?何?こういう店って、初めてじゃないの?」
ここでこの、きんどーさんが慌てふためいた素振りで言い訳をしたら、こいつ等はクロだ…。
「いいえ…。『この店』は初めてなんです。SM倶楽部なら、何度も行ったことがありますよ」
平然と答える、きんどーさん。
いや、この場合、きんどーさんよりも、リーダーの反応に気を配る。
これと言って、変った様子はない。
(あれ…?ハズレか…?)
ダーブロウ有紗は、別の切り口で質問を試みる。
1913投稿者:リリー  投稿日:2008年05月21日(水)21時19分07秒
「それにしても…可愛い声してんなぁ…」
「うふふふ…。よく、言われるんです。僕、本当はアイドル歌手になりたかったんですよ…」
「へぇ〜…。じゃあ、今はどんな仕事を?」
「運搬業です」
「運搬?」
ダーブロウ有紗は、リーダーの方を見る。
相変わらず腕組みをして、じっと床を見詰めている。
そして、もう一人…『ハート様』(今、ダーブロウ有紗が名付けた)を見る。
さっきから、テーブルの上にあるお菓子を、ムシャムシャと食べているが…。
しかし、運搬業…?狭いトラックの中で、長時間過ごす職種…こんな体型の男に勤まるのか?
ぐっと、興味が湧いてくる。
「どんな物を運んでるの?」
「動物や」
リーダーが、口を挟んだ。
「動物?」
きんどーさんと話しがしたかったのに…心の中で、舌打ちをした。
「動物園の動物とか、タレント事務所の動物とか…あと、サーカスの動物とかな…」
「ああ…。それで…『興行』…」
ダーブロウ有紗は、納得がいった。
1914投稿者:リリー  投稿日:2008年05月21日(水)21時20分30秒

「で、そん時に、こいつが役に立つんよ。象は無理やけど、熊くらいなら引っ張ってけるんやで」
そう言ってリーダーは、隣のハート様を親指で指した。
「ま、そん時ぐらいしか役には立たんけどな…」
「でも…トラックの中って狭いだろ?こんな大きな身体で、どうやって移動してんの?」
「あ?こいつも動物と一緒に運ぶんよ。動物みたいなもんやろ?」
「あはは!!そりゃそうだ!!」
ダーブロウ有紗は、膝を叩いて笑いながら、3人の様子を注視した。
これと言って、不審な点はない。
その時、蝶の仮面の女性店員がノックをして待合室に入ってきた。
「白川様…。準備が整いました。ご案内致します」
「ほら、おまえのことや!!」
リーダーが、きんどーさんを肘で突いた。
きんどーさんが、一瞬気がつかなかった…どうやら、この『白川』というのも、偽名だろう。
『鈴木』、『佐藤』、『田中』など、ありふれた苗字を使わないあたり、きんどーさんの本名は、『黒川』…あたりか?
1915投稿者:リリー  投稿日:2008年05月21日(水)21時22分00秒
今日は、これでおちます

「マカロニほうれん荘」とか「きんどーさん」とか、一体、どれくらいの方がわかるのか、不安ですが…
1916投稿者:おもしろい!  投稿日:2008年05月21日(水)21時27分02秒
がんばってください。
1917投稿者:117  投稿日:2008年05月21日(水)21時32分25秒
ダーさんの偽名はリサさんですか・・・細かいところまで、凝っている。
SM倶楽部で出会ったのは、「安田大サーカス」ですね。ダーさんの予想、鋭い(笑)!
なんかこの小説を読んでいると、いろんな人が出てくるので、まさに「プッカリーノ」のような感覚です。続きも楽しみです!
1918投稿者:色ちがい!!  投稿日:2008年05月21日(水)21時43分47秒
 
1919投稿者:HIRO  投稿日:2008年05月21日(水)21時45分11秒
羅夢にも「ハート様」ってあだ名つけられてたような
1920投稿者:あげ  投稿日:2008年05月22日(木)13時44分04秒
  
1921投稿者:リリーさんって  投稿日:2008年05月22日(木)20時48分08秒
SM倶楽部に行ったことあるんですか?
1922投稿者:リリー  投稿日:2008年05月22日(木)20時51分11秒
はい、勤めています

では、更新します
1923投稿者:リリー  投稿日:2008年05月22日(木)21時03分37秒
1922はナリですが、思わず笑いました
歌舞伎町は歩いたこと、ありますけどね

117さん、最近、OBOGがゾロゾロ出てきますね
望と東奈が出てきた時は、ひっくりかえった記憶があるんですが…
さすがに、ダーさんやモニークは出てこないですかね

では、更新します

1924投稿者:リリー  投稿日:2008年05月22日(木)21時04分58秒
「は〜い!!」
きんどーさんは高々と手を挙げて、本当にワクワクと、嬉しそうに待合室を出た。
SM倶楽部によく通う…この言葉に、ウソはないようだ。
「ち…!」
苦々しそうに、リーダーはきんどーさんの背中に向けて、舌打ちをした。
「…?」
ダーブロウ有紗は、その行為が気になった。
もしかして、リーダーの自分よりも先に、きんどーさんが呼ばれたからか?
それとも、もっと他の理由が…?
もう少し、探りを入れてみる。
「本当に、可愛い声だねぇ、『白川さん』…」
ダーブロウ有紗は、リーダーに言う。
「最初は、おもろかったけどな…。慣れてくると、少しイラっとくるわ…」
リーダーは、吐き捨てるように言った。
…さっきの舌打ち…案外、そんな理由なのかもしれない…。
1925投稿者:リリー  投稿日:2008年05月22日(木)21時05分29秒
「あんな可愛い声してても、顔で随分、損してねぇか?」
「あん?そうやなぁ…」
「顔の可愛いオッサンだったら、アイドルになれたかも…」
じっくりと、リーダーの顔を見る。
『顔の可愛いオッサン』…これが、キーワードだ。
麻薬組織のボス…難田門司…童顔で可愛らしい顔だ。
全神経、集中力を総動員し、リーダーの様子を窺う。
眉一つ動かせば…クロと断定し、いかなる手段を使ってでも『拷問』し、難田門司の情報を得る…!!
いや、SM倶楽部に通っているなら、『拷問』よりも『誘惑』の方が効果的か…。
「顔の可愛いオッサン?可愛くても、オッサンやろ?アイドルは無理やわ…」
にこやかに答えるリーダー。
(あれ…?スルー?)
ダーブロウ有紗は、肩透かしを喰らった。
「それにしても…あんた、外人さんやろ?日本語上手いね…。日本滞在が長いの?」
逆に質問されてしまう始末…ここは、適当にウソを言っておこう…。
「あ?ああ…それは…」
1926投稿者:リリー  投稿日:2008年05月22日(木)21時05分48秒
その時だった。
またもや蝶の仮面の女性店員がノックの後、待合室のドアを開ける。
「高田様…。準備が整いました。ご案内致します」
リーダーが、顔を上げた。
「おう、案内してぇや!!」
待ちくたびれた…とでも言う様に、リーダーは勢い良く立ち上がった。
「じゃあ、ゴメンな。お姉ちゃん…。もっとお喋りしたかったけど…」
リーダーは、待合室を出て行った。
『高田』…?ならば、あの男の本名は…『安田』あたりか…?
しかし、もう、この男達のことなどどうでもいい。
どうやら、本当にこの店の客のようだ。
そして、ダーブロウ有紗は、一人残ったハート様に目を移す。
一心不乱に菓子を食べ続けている…。
どうやら、人並みのお喋りは、期待できそうもない…。
1927投稿者:リリー  投稿日:2008年05月22日(木)21時06分07秒
『高田』…と名乗った男は、女性店員に、店の奥へ連れられていく。
「さあ、こちらです…」
女性店員は、『STAFF ONLY』と書かれたドアを開ける。
「ありがとさん」
『高田』は、ドアを通り抜ける。
そこに居たのは…短い髪の毛が栗の様に尖がった、この季節、暑苦しくなるような、濃い顔の男…。
「よお、待たせたな…」
その男が、『高田』に声をかける。
「あんたが…難田門司さんの部下…安田か?」
「はい、私が安田です。そういうあなたは…?」
「俺の名前は、闇の代理人、松本…。『ゴルゴ』って呼んでくんな…」
「は、はぁ…。ゴルゴ…さん…?」
どうにも、胡散臭さの漂う男だ…と、高田…いや、安田は思った。
「会うのは、あんただけか?」
「ええ…。私の弟分は…今頃、女王様と遊んでますわ。まったく…仕事そっちのけで…ムカつくわ…クロのやつ…」
これが安田が、きんどーさん、いや、クロこと黒川に対し、舌打ちをした理由だ。
1928投稿者:リリー  投稿日:2008年05月22日(木)21時06分27秒
「難田門司さんがお待ちかねだ。さあ、こっちへ来るんだ」
安田は、ゴルゴに恐る恐る聞く。
「あ、あの…ゴルゴさん…。私、部下と言っても、ボスの顔、見たことないんです…。今日が、初対面でして…」
「ん?見たことないのか?難田門司さんの顔…」
ゴルゴは、安田を壁際に寄せる。
「いいか?これだけは気をつけな…」
「は、はい…」
「難田門司さんの顔のことなんだが…」
「は…はい…」
そんなに、恐い顔なんだろうか…と、安田は生唾を飲み込む。
「相当…可愛い…」
「は?…可愛い?」
「ああ…。可愛い…」
安田は、途端に全身の力が抜けた。
1929投稿者:リリー  投稿日:2008年05月22日(木)21時06分55秒
「おい!今、一瞬、難田門司さんのことを軽く考えたな?」
ゴルゴが、その暑苦しい顔を寄せてくる。
「い、いえ…!軽くなんて…!滅相もない!!」
「いいか?顔は可愛くても、もの凄ぇ、恐い人なんだぞ?麻薬組織のボスなんだからな?そこん所、忘れるな!?」
ゴルゴは、懐から写真を取り出す。
「今から…心の準備の為に、難田門司さんの顔を見せてやる…」
安田は、ゴルゴの差し出した難田門司の顔写真を見て、思わず吹き出した。
「だから…!!そういう態度をとるんじゃない!!マジで殺されるぞ!?」
「あ…は、はい…!気をつけます!!」
何故、難田門司が、一部の幹部にしかその姿を現さなかったのか…合点がいった…。
この顔では、ナメられてしまうだろう…。この世界では…。
そして、主だった部下が皆警察に捕まってしまい、今はこんな下っ端に直接会って、麻薬密輸の指示を出さなければならない…。
難田門司も堕ちたものだ…。
「ん?可愛い顔したオッサン…?」
安田は、先ほどのダーブロウ有紗との会話を、一瞬、思い出した。
1930投稿者:リリー  投稿日:2008年05月22日(木)21時08分16秒
1916さん、返事遅れました
ありがとうございます
これからもよろしくお願いします

では、今日はこれでおちます
1931投稿者:あぶなかったな  投稿日:2008年05月22日(木)22時15分11秒
団長…
1932投稿者:あげ  投稿日:2008年05月22日(木)23時37分49秒
がんばって
1933投稿者:デジ  投稿日:2008年05月23日(金)02時18分01秒
4日ぶりです。
火水で、表と裏がもうつながってたんですか。
1934投稿者:デジ  投稿日:2008年05月23日(金)02時39分25秒
また間違えました。
難田門司の顔って、本当にどんな顔なんでしょうか。
ちなみに、ダーさんの応対した人っててんてれ関係ですか?
続きも楽しみです!
(今日の小言)最近本当にOBの出演多いですよね。
1935投稿者:麦一門  投稿日:2008年05月23日(金)02時41分49秒
 
1936投稿者:117  投稿日:2008年05月23日(金)21時18分53秒
難田門司とクロちゃんの共通点・・・「かわいい顔のおっさん」ですか(笑)。
新旧司会のゴルゴさんと団長のご対面ですね・・・なかなか珍しい組み合わせ。
団長がダーさんの発言の真意に気づいた?続きも楽しみです。
1937投稿者:リリー  投稿日:2008年05月23日(金)22時14分11秒
遅れました

そうですね
団長が難田門司の顔を知らなかったことで、少し逮捕が長引きました
しかし、ここで安田大サーカスが捕まってしまったら、『らりるれろ』の物語もなかったわけで…
ほんと、めぐり合いって不思議です

難田門司の顔は、つまり、もんじくんみたいな顔と、認識して頂ければ…
ちょっと、無理ですかね

それでは、更新します
1938投稿者:リリー  投稿日:2008年05月23日(金)22時18分26秒
待合室には、ダーブロウ有紗と、菓子を貪り食う、ハート様…HIROこと、広瀬康幸の2人が残された。
(それにしても…よく食うなぁ…)
ダーブロウ有紗は、呆れ顔でHIROを眺めている。
籐で編みこまれた籠に山盛りになっていた、エンゼルパイとエリーゼとオールレーズンが、もう、底をつき始めている。
「ん?」
そのHIROが、その視線に気がついた。
「やらへんよ…」
HIROは、籐の籠を抱え込んだ。
「いらねぇよ!!」
ダーブロウ有紗は、待合室を出る。
いつまでも、こんな所に居てもしょうがない。
待っている時間内で、できるだけ情報を集めようと考えた。
まずはトイレを探す振りをして、どこか不審な点を探ることにする。
幾つも連なった赤いドア…この中で、女王様との狂宴が繰り広げられているのだろう。
「いやん!!いやん!!」
先ほどの、きんどーさんの甲高い声が聞こえる。
どうやら、本当に遊んでいるようだ。
1939投稿者:リリー  投稿日:2008年05月23日(金)22時18分50秒
『STAFF ONLY』と書かれたドア…。
従業員以外は立ち入り禁止…つまり、店の裏側だ。
(少し、覗いてやるか…)
ダーブロウ有紗は、ドアに手を掛ける。
その時、三つ後ろの赤いドアが開かれた。
「何してんの?そこは、立ち入り禁止だよ?」
そこから出てきた『女王様』が、こちらに歩み寄って来る。
(ち…!めんどくせぇな…)
ダーブロウ有紗は、そんな本心は表に出さず、ゆっくりと振り返る。
その『女王様』は、先ほど写真で見た、新人のうちの一人…黒いボンデージ姿の『アスミ女王様』だった。
ダーブロウ有紗より、頭一つ、背が高い。
(ほんと…でけぇな…この女…)
少し笑いそうになるのを、ダーブロウ有紗は堪えた。
「ん?何?あんた…。面接に来たの?」
「…いや…違うけど…」
こうまで間違われると、客としてではなく、従業員として潜伏した方が良かったんじゃないか…と、一瞬思ったが、やはり後腐れのない客という立場の方が、動きやすい。
1940投稿者:リリー  投稿日:2008年05月23日(金)22時19分22秒
「何してんの?」
アスミ女王様の質問は続く。
ショーコ女王様を選んでおいて、本当に良かった。
女王様とプレイ前に会ってしまったら、とんだ興醒めだからだ。
「うん?ここ、トイレかな…て…」
「トイレ?そこに『STAFF ONLY』って書いてあるじゃないか」
「だって、英語だもん」
「あんた、外国人だろ?」
「外国人だからって、みんな英語がわかるなんて思うなよ?私は、フランス人だよ」
「フランス人?じゃあ、フランス語ならわかるの?」
「それもわかんない!私、二歳で日本に来て、ずっとこっちだから」
「でも、両親ともフランス語を話すんじゃないの?」
「………なあ…これは、何かのプレイかよ?それに、私は、テメェなんか指名してねぇんだよ!!」
ダーブロウ有紗は、アスミ女王様を、下から睨む。
「ま、それもそうだね…。でも、プレイ中にそんな言葉遣いするんじゃないよ?お仕置きされるから…」
「お仕置きされに来たんだよ!ほっとけよ!!」
尚も、ダーブロウ有紗は、アスミ女王様ににじり寄る。
1941投稿者:リリー  投稿日:2008年05月23日(金)22時20分13秒
アスミ女王様は、溜息をついて目を逸らした。
「わかったよ。お客さんに失礼したね…」
そう言って、もと居た部屋へ戻りかけたが、また、ダーブロウ有紗の方を振り向く。
「ちなみに…誰を指名したの?」
「あん?『ショーコ女王様』だよ!!」
「ショーコ…?ふ〜ん…。ショーコじゃ、物足りないかもね…」
そう言って、ドアを閉めた。
そこに、蝶の仮面の女性店員が、こちらに気がついてやって来た。
「リサ・ステッグマイヤー様…。こちらにおいででしたか…。準備が整いました。ご案内致します」
「おう、案内してくれや!!」
ダーブロウ有紗は、女性店員の後を着いて行く。
そして、赤いドアの一室に入る。
そこには…いろんな拷問器具が並ぶ部屋…そして黒革のソファーに、写真で見た通りの『ショーコ女王様』が足を組んで座っていた。
1942投稿者:リリー  投稿日:2008年05月23日(金)22時20分41秒
赤いボンデージ姿のショーコ女王様は、ダーブロウ有紗を見るなり立ち上がり、手に持っていた鞭を床に叩きつけた。
「遅いんだよ!!このメスブタ!!」
可愛らしい顔に似合わず、ハスキーがかった声…。
なぜか、左眼には眼帯をしている。
「ん?遅い?待たせたのは、そっちの方だろうがよ!!」
ダーブロウ有紗は、ショーコ女王様の方へ歩み寄る。
「何だい!?その口の聞き方は!?奴隷のクセに!!」
ショーコ女王様のビンタが、ダーブロウ有紗に炸裂する。
別段、痛くないが…手首を傷めたのか、ショーコ女王様の方が、右手をぶんぶんと振るっている。
(あ…そうか…。もうプレイに入ってるのか…)
ダーブロウ有紗は、膝を着き、頭を深く垂れる。
「申し訳ありません…」
「女王様!!」
「ん?」
「ショーコ女王様ってお言い!!」
「………申し訳ありません…。ショーコ女王様…」
ダーブロウ有紗は、言われた通りにした。
1943投稿者:リリー  投稿日:2008年05月23日(金)22時21分07秒
「口の利き方を知らない、メスブタだねぇ…。まずは、そこから教えてやらないと、いけないみたいだねぇ…」
膝を着いて頭を垂れるダーブロウ有紗の周りを、ゆっくりと歩き回る、ショーコ女王様。
(く…!ヤ、ヤバイ…!)
ダーブロウ有紗は、笑いを堪えるのに必死だった。
やはり、こういうのは非常に照れる。
観客の居ない、2人芝居…傍から見て、これほど滑稽なものはない…。
「そうだねぇ…。まずは、その臭い服を脱ぎな!!」
「ん?」
「何だい?その目は!!早く、服をお脱ぎ!!全部だよ!!ブタのクセに、服を着てるなんて、生意気なんだよ!!」
「はい、はい…」
ダーブロウ有紗は、溜息をついて立ち上がる。
「返事は一つだよぉ!!」
ダーブロウ有紗の太ももに、鞭が炸裂する。
「いっ…て…!!」
一瞬、頭に血が昇るが、寸でで堪える。
これは、プレイなのだから…。
1944投稿者:リリー  投稿日:2008年05月23日(金)22時21分55秒
「何だい?反抗的な目だねぇ…」
「いえ…。すみません…」
「早く、お脱ぎ!!」
「はい…」
また、二度返事をしそうになったダーブロウ有紗。
黙って、服を全て脱いだ。
「ん?おまえ…随分、胸が大きいじゃないか…」
ショーコ女王様は、ダーブロウ有紗の巨乳を、乱暴に鷲掴みにした。
「生意気だねぇ…」
そう言いながら、乳首をぺロリと舐める。
「すみません…」
「さあ、四つん這いになりな!!ブタのクセに、生意気に二本足で立ってるんじゃないよ!!」
ショーコ女王様に言わせれば、何もかもが生意気らしい…。
「はい…」
言われた通り、ダーブロウ有紗は、床に這いつくばった。
1945投稿者:リリー  投稿日:2008年05月23日(金)22時22分29秒
ショーコ女王様は、ダーブロウ有紗の後ろに回ると、ピンヒールを尻に喰い込ませる。
「お…!」
これは、少し痛いかもしれない…。
「さあ…おまえの欲しいものは、何だい?」
「え?」
ダーブロウ有紗は、思わず振り返る。
「コレかい!?」
鞭が、尻に叩き込まれた。
「…う…」
「どうだい!?こうかい!?こうして欲しいのかい!?」
鞭の連打が、尻や背中を襲う。
(う〜ん…。鞭の使い方が成ってねぇなぁ…。デッパリンダに教えてもらえよ…)
ダーブロウ有紗は、あくびをした。
「ふぅ…!これくらいにしておいてやろう…」
ソファーに身体を投げ出す様に、ショーコ女王様は座った。
(早…!もう、休憩かよ?)
ショーコ女王様は、息も絶え絶えに、ピンヒールを履いた足を、ダーブロウ有紗の顔の前に突き出す。
「さあ…私の足を、お舐め…。メスブタ…」
1946投稿者:リリー  投稿日:2008年05月23日(金)22時25分29秒
ドMのしょこたんが、ドSのダーさんをお仕置きする展開ですが、次からは山本組に潜入した七世の話しに切り替わります

デジさん、ダーさんの対応した人とは、『エトワール』の従業員のことですか?この人は、ただの山本組組員です

では、今日はおちます
1947投稿者: 投稿日:2008年05月23日(金)23時33分48秒

1948投稿者:まさに  投稿日:2008年05月24日(土)00時14分01秒
表と裏のゴッド姉ちゃん、一触即発!!
1949投稿者:デジ  投稿日:2008年05月24日(土)02時53分54秒
そうですか。
ドMはドMでも表と裏じゃぜんぜんキャラちゃいますね。しょこたん
なんか見た瞬間にしおかすみこをイメージしてしまいました。(笑)
ドSのはわかりませんが
あすみとダーさんの方は、やっぱり会わなさそうですね。
続きも楽しみです!
(今日の小言)中田あすみのことについては声だけしかおぼえてません。
(前、アニメの声優をしていたような気がするので。)
昨日から「今日の小言」を始めましたが、普通のコメントだけじゃ、つまらないと思ったのでかきました。(批判があったらやめておきます。)
1950投稿者:カイ  投稿日:2008年05月24日(土)20時39分37秒
お久しぶりでさァ
まったく小説が・・・・
1951投稿者:age  投稿日:2008年05月24日(土)21時19分40秒
・・・・・・・・・・・・・・・神
1952投稿者:あげ  投稿日:2008年05月24日(土)22時50分19秒
 
1953投稿者:あげあげ  投稿日:2008年05月24日(土)23時16分25秒
 
1954投稿者:デジ  投稿日:2008年05月24日(土)23時16分57秒
そうですか。
ドMはドMでも表と裏じゃぜんぜんキャラちゃいますね。しょこたん
なんか見た瞬間にしおかすみこをイメージしてしまいました。(笑)
ドSのはわかりませんが
あすみとダーさんの方は、やっぱり会わなさそうですね。
続きも楽しみです!
(今日の小言)中田あすみのことについては声だけしかおぼえてません。
(前、アニメの声優をしていたような気がするので。)
昨日から「今日の小言」を始めましたが、普通のコメントだけじゃ、つまらないと思ったのでかきました。(批判があったらやめておきます。)
1955投稿者:あげ  投稿日:2008年05月24日(土)23時37分21秒

1956投稿者:リリー  投稿日:2008年05月25日(日)00時23分09秒
だいぶ遅くなりました
更新はしておこうと思いまして…

デジさん、にしおかすみこも、ドMなのに女王様やってますもんね
無理して女王様をやってると、似たようなものになるんでしょうか
小言、とても面白いですよ

カイさんもお久しぶりです
お互い、がんばっていきましょうね

あげ、ありがとうございます

では、更新します
1957投稿者:リリー  投稿日:2008年05月25日(日)00時23分37秒
天歳市内。
七世は、黒光りするベンツに乗せられている。
今から、山本組組長山本圭壱の屋敷に、七世は連れて行かれるのだ。
組長の山本が、未成年の少女を…家出や犯罪で警察に追われている少女を、大勢囲っていることを知っていた。
それを利用したのだ。
つまり、山本に囲われている少女の一人の親友…という設定で、七世は山本組に近づいたのだ。
山本は、未成年の美少女が大好きだ。
当然、七世ならば、山本の側に回されるだろうと予想し、現にその通りになっている。
山本の側にいれば、何か難田門司の情報が聞き出せるかもしれない…。
しかし、七世はミッション前、ダーブロウ有紗にこう厳命されていた。
「いいか?出っ歯ちゃん…。もし身に危険を感じたら、構う事ない…。逃げろ。組長の山本ってのは、相当の好き物って噂だからな…」
戦え…ではなく、逃げろ…。
つまり、まだ難田門司を探る余地を残しておかなければならない…と、いうことだ。
七世を乗せた車は、立派な門構えの日本屋敷に到着する。
「さ、降りなさい。あんたのお友達は、この中だよ」
七世は、女性組員に傘を差してもらい、車を降りる。
そして、壮大な造りの屋敷を見渡す。
ここで、毎夜、少女達が山本の慰み者になっているのだ。
1958投稿者:リリー  投稿日:2008年05月25日(日)00時24分29秒
しかし七世は、今日はまったくの別件でここへ訪れた。
難田門司の居場所を特定する為…または、その情報を得る為だ。
確かに、山本のような男に嬲り者にされる少女達は可哀そうだ。
だが、この件に関しては依頼人がいない。
依頼人がいない以上、探偵が動くわけにはいかない。
どんなに悲惨な状況を目の当たりにしても、見捨てざるを得ない。
たしか、『加藤組・女性拉致事件』で、かつてのパートナー、七海が暴走したと聞いた。
自分がもし、その場にいたのなら、絶対に七海を止めていた。
そう…七世は、今日は、動かない。
玄関に、赤いスーツの若い女が立っている。
(…!!後藤…理沙!!)
そう…その若い女は、後藤理沙…。
加藤組を壊滅してくれと『R&G』に依頼をし、それを断りに行った、俵姉妹を散々にいたぶった…あの、後藤理沙だ。
ダーブロウ有紗が、こっちに来なくて、本当に良かった。
彼女なら、途端に怒り狂い、この屋敷ごと山本組を崩壊させてしまうだろう。
1959投稿者:リリー  投稿日:2008年05月25日(日)00時24分57秒
だが、新たな心配事が持ち上がる。
自分は、後藤理沙とは直接会っていないが、顔は知っている。
依頼に来た時、隣のモニタールームで見ていたからだ。
だが、理沙が、七世の顔を知らない…とは限らない。
何故なら…箕輪はるか…影の様に存在感を消し、どこでも侵入し、諜報活動ができる女…。
彼女によって、『R&G』の者は全て顔が割れてしまっている…かもしれない…。
自然と、七世は伏し目がちになる。
「ん?その子は?」
理沙が、七世の前に出る。
女性組員が答える。
「この屋敷にいるガキの、友達だそうです。連れ帰しに来たそうですが…」
「ふ〜ん…」
理沙は、下を向いている七世の顔を覗き込む。
「顔を見せて…」
七世は、ますます顔を伏せた。
「見せなさい!!」
顎を乱暴に掴まれ、無理矢理顔を上げさせられる七世。
「…!」
理沙と目が合う。
1960投稿者:リリー  投稿日:2008年05月25日(日)00時26分25秒
「あら…。あなた…」
理沙は、目を丸くした。
まずい…!やはり、顔が割れていた…?
「可愛い顔してるじゃない…。山本組長…お喜びになるわ…」
安堵の溜息を、心の中でつく。
どうやら、理沙は、自分の顔を知らないようだ。
「あなた…お名前は…?」
「は、はい…村上東奈…と、言います」
この偽名…岩井七世の、『TTK』時代の同期の『戦士』の名前を、勝手に拝借した。
「あ、あの…私の友達は…?」
「ん?ええ。いるわよ。会いたいんでしょ?中にお入りなさい…」
七世は、そのまま屋敷の中へと連れて行かれる。
「そう…。お友達の名前…何て言ったかしら?」
理沙が、後ろを振り向かずに七世に聞いた。
「飯田…里穂さん…です…」
「飯田里穂…?ああ…確か最近来た子ね…。その子も、お友達を取り返しに来たんだったっけ…」
そう…リサーチ済みなのだ。
飯田里穂という少女が、この山本の屋敷に囚われている…ということを…。
1961投稿者:リリー  投稿日:2008年05月25日(日)00時26分45秒
飯田里穂…天歳市立弓削高等学校1年生の15歳。
彼女は、去年、『中村有沙捕獲作戦』の時、『R&G』と『TTK』の戦いに巻き込まれたことがある。
まだ、下ノ国中学校に通っていた頃、不良グループ『スクラッチ』を結成し、闇の代理人、ゴルゴの口車に乗って、裏の住人の凄惨な戦いに首を突っ込んでしまった。
暗殺組織『TTK』を脱走した中村有沙を捕まえる…そんな役目を負わされ、しかもあっさり裏切られ、警察に追われるハメになる。
そして、実の妹である中村有沙を守る為に、『TTK』を脱走したダーブロウ有紗に助けられた…。
ダーブロウ有紗によって、裏の世界から足を洗ったはずなのに…何故、またヤクザの屋敷に囚われてしまったのか…。
それは、その『スクラッチ』でかつて一緒だった、篠原愛実という少女の為だ。
1962投稿者:リリー  投稿日:2008年05月25日(日)00時27分08秒
篠原愛実…下ノ国中学校3年生の14歳。
彼女は不良グループの中にいたとはいえ、成績はトップクラスだった。
愛実は、里穂と同じ弓削高校に進学したかったが、親に反対される。
勉強ができるのだから、もっとレベルの高い高校に進めと言われたのだ。
親の希望する高校は、日本屈指の進学校である忠律高校。
そして、もう一つは聖テレジア女子学園高等部。
しかし、それにはもう少し偏差値を上げる必要がある。
その為、愛実は学校に塾に家庭教師と、息をつくヒマもない程、勉強漬けにされてしまった。
愛実は当然、そんな生活に嫌気がさし、家出…そこを、山本組が保護という形で拉致し、この屋敷に囚われているのだ。
1963投稿者:リリー  投稿日:2008年05月25日(日)00時31分18秒
ここで、唐突にスクラッチの里穂と愛実の再登場です
強引な登場のさせかたでしたが…

では、これでおちます
1964投稿者:1  投稿日:2008年05月25日(日)00時49分35秒
http://s-url.jp/?5843
芸能人整形しまくりんぐ・・
1965投稿者:デジ  投稿日:2008年05月25日(日)03時05分13秒
(今日の小言について)ありがとうございます。
これは驚きました。この場面でスクラッチが出演するとは思いもしませんでした。これって、スクラッチは裏だけの出演ってことですか?
しかし、愛実もテレジア女子学園を志望していたとは。
最後に忠律高校ってクラブチューリッツ(たしかそんなのがあった気がしたので)のことですか?
続きも楽しみです!
(今日の小言)
?わかります。愛実の気持ち。さすがに家出まではなかったですが1年前は、
勉強に嫌気がさしていました。(まあ、やる気もありませんでしたが…(笑)
一応僕は、高校一年生です。
1966投稿者:ひさしぶりだ  投稿日:2008年05月25日(日)17時02分10秒
最近、天てれでも里穂と愛実が出てきたし
1967投稿者:あげ  投稿日:2008年05月25日(日)20時18分09秒
 
1968投稿者:リリー  投稿日:2008年05月25日(日)21時08分38秒
『サムドラ』からの登場人物を全て出すと公言してしまったため、こんな形で登場させました
その為、説明的な文章が多くなったことが残念ですが…
それから、忠律高校は、仰る通り、クラブチューリッツのことです

デジさん、高校1年生ですか
作中のちひろと同じ学年ですね
でもまだ、ちひろは当分出てきませんが…

では、更新します
1969投稿者:リリー  投稿日:2008年05月25日(日)21時09分16秒
当然、愛実の両親は警察に捜索を頼んだが、山本組が、尻尾を掴ませるはずがなかった。
その愛実を助ける為に、里穂は単身山本組に乗り込み、同様に捕まった。
ミイラ取りがミイラに…というわけである。
そして、その里穂を助ける…という名目で七世も乗り込む。
山本組にとって、七世は、『ミイラ取りに来てミイラになったミイラを、また取りに来てミイラになったミイラ』…と言ったところか。
「さあ、お友達はここよ…」
20畳はあろう、広い和室の一角に、15人程の少女達が、押し込められていた。
皆、シクシクと泣いている。
服装や髪の毛の派手な者が多い。
やはり、犯罪を犯した少女や、家出娘が多い。
その中で、一人だけ泣いていない少女を見つける。
飯田里穂である…。
1970投稿者:リリー  投稿日:2008年05月25日(日)21時09分35秒
「じゃあ、ここで大人しくしててちょうだい!!東奈ちゃん!!」
理沙は七世の背中を強く押し、襖を閉めた。
その際、携帯電話などの私物は、取り上げられてしまった。
しかし、没収された携帯電話は、何の変哲もない普通のもの。
先ほど掛かってきたダーブロウ有紗の通信記録も残っていない。
こういう展開は、見越していたのだ。
少女達は、一斉に七世の方を向く。
そして、また新しい生贄が来たのか…と、力なく目を伏せた。
七世は、とりあえず里穂の元に駆け寄った。
里穂は、一人の少女の肩を抱いている。
肩を抱かれた少女は、里穂にしがみ付いて泣きじゃくっている。
その少女は、篠原愛実だった。
1971投稿者:リリー  投稿日:2008年05月25日(日)21時10分04秒
「う、う、う…。ごめんなさい…。私の所為で…。姉御まで…」
「いいんだよ…。愛実…。私こそ、あんたを助けてやれなくて…ゴメン…」
七世は、2人の姿を見て、固まってしまった。
何とかしてあげたい…助けてあげたい…。
しかし、これは、依頼にない仕事…。
勝手に動いてはいけない…。
(ダーさん…)
ダーブロウ有紗は、手を出すな…と言った…。
全く知らない間柄ではない…いや、短い間だったが、彼女達のリーダーだったこともある…。
それなのに、ダーブロウ有紗は、難田門司を捕まえる依頼を優先させた。
そんな彼女は、とても辛そうだった…。
そう…一番、苦しいのは彼女なのだ。
七世は、ダーブロウ有紗の思いを…無駄にしてはいけないのだ。
七世は…この2人を見捨てるべきなのだ…。
1972投稿者:リリー  投稿日:2008年05月25日(日)21時10分22秒
「ん?何?あんた…」
里穂は、七世に目を向ける。
「ううん…何でも…」
かけるべき言葉が見つからない…。
助けに来た…などと、できないこと…いや、やらないことを言ってはいけない。
「あの…。みんな…ここで…何をしてるの?」
七世は、わかりきったことだが、里穂に聞いてみる。
「私達はね…ここのヤクザの親分に、メチャクチャにされるんだよ…」
「メ、メチャクチャ…?」
「凄い、変態なんだよ、ここの組長…。みんなは、その順番待ちってことさ」
「そ、それが…今日…なんでしょ…?」
愛実が、泣き声交じりに言った。
「え?今日?」
里穂は、愛実の代わりに答えた。
「ああ…。いよいよ…今夜が…私達の番なのさ…」
1973投稿者:リリー  投稿日:2008年05月25日(日)21時10分46秒
今夜…この2人の少女が、山本の餌食になる…?
このまま、見過ごしていいのか…?
七海だったら、絶対に見過ごさない…。
自分は、どうだ…?何ができる…?
ミッション前の、ダーブロウ有紗の言葉を思い出した。
「私はね…今から『お仕置き』されに行くよ…」
「『お仕置き』?SM倶楽部のこと…ですか?」
「ああ…。かつての子分を…見殺しにするんだからね…」
『お仕置き』…七世は、心に決めた。
「あの…私…村上東奈といいます…」
「は、東奈…?」
「私達…お友達ってことにしときません?」
「え?」
七世の言葉を、里穂は理解できなかった。
「友達…?私は、あんたなんて、知らないよ…?」
「ええ…。でも、そういうことにして…。あなた達にとって…悪い話しじゃないから…」
1974投稿者:リリー  投稿日:2008年05月25日(日)21時11分06秒
「どういうことだ?」
里穂も愛実も、七世の真意がわからない。
「ここの親分の…相手は、私が全部引き受けるから…」
「ええ!?」
「あなた達は、ただ横で見てるだけでいい…。私に…全部任せて…」
そう…七世は、『TTK』の高等技術…『誘惑』を山本に仕掛けるつもりなのだ。
あの、後藤理沙がいる為、難田門司のことは、あからさまに聞けない。
真の目的は、自分一人で山本を骨抜きにすること…。
里穂や愛実には、指一本触れさせない…。
これが精一杯、七世にできることなのだ。
襖が、再び開いた。
その場にいる全ての少女は、ビクンと肩を震わせた。
後藤理沙だ…。
彼女は、部屋の中央まで歩いてくると、ジロリと少女達を見回す。
「あなた、あなた、あなた、あなた…そして…あなたとあなた…」
理沙の指は、里穂と愛実を指差した。
「さ、用意しなさい。組長がお待ちかねよ…」
1975投稿者:リリー  投稿日:2008年05月25日(日)21時11分31秒
指名された少女達は、一斉にわっと泣き出した。
愛実も同様だ。
里穂は、ぎゅっと愛実を抱きしめる。
すると、七世が立ち上がった。
「わ、私も…!」
「え…?何?」
「私も…!一緒に行きます!!」
理沙は、七世を見詰め、首を傾げた。
「あなた…今から、何が始まるのか…わかってるの…?」
「はい!!里穂さんから聞きました!!」
「あ、あんた!!」
里穂が声をかけるが、七世は目の力だけで、それを制した。
「親友なんです…!私も…一緒に、苦しみを分かち合います!!」
力強く、宣言した七世…。
理沙は、意外そうに微笑んだ。
「いいわ…。あなたも一緒に来なさい…」
1976投稿者:リリー  投稿日:2008年05月25日(日)21時12分43秒
それでは、今日はこれでおちます

次回から、ダーさんとしょこたんの場面に戻ります
1977投稿者:がんばってください。  投稿日:2008年05月25日(日)21時15分03秒

1978投稿者:117  投稿日:2008年05月25日(日)21時18分51秒
里穂&愛実も登場ですか・・・七世も、自らやられに行くんですか?
それにしても、山本組長も悪いヤツだなぁ・・・続きも楽しみです!
1979投稿者:『ミイラ取りに来てミイラになったミイラを、また取りに来てミイ  投稿日:2008年05月25日(日)22時43分55秒
ややこしやw
1980投稿者:あげ  投稿日:2008年05月25日(日)23時04分30秒

1981投稿者:はるな  投稿日:2008年05月26日(月)09時31分44秒
名前だけ登場ですか?
1982投稿者:あげ  投稿日:2008年05月26日(月)17時50分07秒

1983投稿者:実はあかりと千帆をひそかに  投稿日:2008年05月26日(月)19時12分12秒
期待してた
1984投稿者:あげ  投稿日:2008年05月26日(月)20時55分35秒
1985投稿者:リリー  投稿日:2008年05月26日(月)21時26分04秒
東奈とあかりと千帆は、3人とも名前でしか出てません
が、こんなことを今から言ったら鬼が笑い死にしそうですが、次回作に3人とも出したいなぁ、と考えています
その前にこの小説を終わらせないといけませんね

里穂と愛実も、これから少し事件に関わってきます

では、更新します

1986投稿者:リリー  投稿日:2008年05月26日(月)21時27分19秒
歌舞伎町にある、『SM倶楽部エトワール』…そこで、全裸のダーブロウ有紗は、X字型の磔台に手足を鎖で拘束されていた。
彼女の身体に、ショーコ女王様の鞭が容赦なく打ち据えられる。
「どうだい!?この、メスブタ!!泣け!!泣きわめきな!!この!!この!!」
ショーコ女王様は、全身の力を使って鞭を振るうが、ダーブロウ有紗には一向に効かない。
(う〜ん…。こういうのはどうなんだろう…?一応、悲鳴とかあげた方がいいのかな?)
ダーブロウ有紗は、そんなことを考え始めた。
(でもなぁ…。客である私が気を遣うってのもなぁ…)
ショーコ女王様を見ると…全身を汗で濡らし、悲痛な表情になっている。
(あ〜あ…。これじゃあ、どっちが追い詰められてるんだか…)
そんな彼女を楽しそうに観察している自分は、やはり根っからのサディストなのだ…と確信した。
「ふぅ…ふぅ…。もう…やだぁ…」
ショーコ女王様は、とうとう鞭を放り投げ、その場にしゃがみ込んでしまった。
「お、おい、おい!!途中で素に戻るなよ!!」
ダーブロウ有紗は、思わず女王様に怒鳴った。
「だってぇ〜…。あなた、全然、痛がってくれないんだもん…」
「仕方ねぇじゃん…!だって、全然痛くねぇんだから!!」
「あ、あんた…もしかして…不感症?」
「失礼なこと、言うな!!コンチクショウ!!てめぇのヘタクソ、棚に上げて…!!」
1987投稿者:リリー  投稿日:2008年05月26日(月)21時27分48秒
そう怒鳴られたショーコ女王様は、はっと何かを思い出す。
「ああ…。そのセリフ…今日、一度言われたわ…」
「客にか?」
「ううん…。女子中学生に…」
「女子中学生…?何でまた、中学生に…?」
「詳しい話しはできないわ…。でも、あなたに雰囲気似てるのよ…。その子…」
「中学生で、私に似てる…?そりゃ、凄ぇな、その子…」
「最近の中学生って、恐いわぁ…。この目…その子に殴られたの…」
そう言って、ショーコ女王様は、眼帯をずらして、晴れ上がった左眼を見せた。
「何でまた…?」
「それも、言えない…」
ショーコ女王様は、今度は完全に腰を床に降ろしてしまった。
「あんた…本当は、Mじゃないでしょ?」
そう言って、恨めしそうにダーブロウ有紗を見上げた。
「そういうあんたは…Sじゃないな?」
「うん…。私、ドMだもん…」
1988投稿者:リリー  投稿日:2008年05月26日(月)21時28分09秒
それを聞いて、ダーブロウ有紗は失笑気味に言った。
「なんで、ドMのあんたが、女王様なんてやってんだよ!!」
「だって…。頼まれたんだもん…」
「頼まれた?」
「頼まれたら…嫌とは言えないのよねぇ…」
「典型的なMじゃねぇか…。やれやれだ…」
「あ、今のセリフ、承太郎様みたいでステキ…」
「承太郎?『ジョジョ』の?」
「あ、知ってるの?」
「ああ、知ってるぜ!!『スタープラチナ・ザ・ワールド!!オラオラオラオラ』…だろ?」
「そう、そう!!カッコいいよねぇ!!承太郎様!!」
「でも、私はジョセフが好きだね。あの、人を食ったような性格…。私の理想だね…」
「あら?あなたって、お爺さん趣味?」
「若い頃のジョセフだよ!!勿論、老人になってもセクシーだけどよ」
「私はね、承太郎様にオラオラオラって、ぶっ飛ばされるのが夢なんだぁ…」
「骨の髄まで、Mだな、こりゃ…」
1989投稿者:リリー  投稿日:2008年05月26日(月)21時28分48秒
「今日もね、その中学生に漫画は読まないの?って聞いたら、『バカになるから読まない』って言うのよ」
「何だ?その生意気なガキは…!?漫画も読まねぇで、一丁前の大人になれるかって言うんだ!!」
「そうだよねぇ…!!絶対、そうだよねぇ…!!」
「私にも、中学生の妹がいるんだけどよ…!漫画マニアの私に、同じこと言いやがったから、思いっきりぶん殴ってやったぜ!!」
「あら、過激ねぇ…」
「何だったら、その中学生も、私がぶん殴ってやろうか?」
「ダメよ…。可哀そうじゃない…」
「だって、あんた、そいつにぶん殴られてんだろ?」
「いいのよ…。だって、私、Mだもん…」
「ああ…。そうか…」
この何気ないお喋りは、難田門司のことで口を滑らせないか…という、考えからくるものである。
そろそろ、仕掛けても良さそうだ…。
「で…その中学生…相当な美少女だろ?」
「あら?わかる?」
「まるで、恋する乙女みたいな目で言うからさ…」
「私…可愛い子って大好き…」
1990投稿者:リリー  投稿日:2008年05月26日(月)21時29分20秒
ダーブロウ有紗は、ニヤリと笑う。
「可愛い」というキーワードを、会話の中で引き出したからだ。
「私はどうだ?」
「え?」
「可愛くない?」
「う〜ん…可愛いって言うよりも…セクシー…いや、カッコいいって感じ…」
「セクシー?ま、いいや…。私は、セクシーな男が好きだね。あんた、男は?」
「男?趣味じゃないわ」
「承太郎は?」
「漫画だもん。現実世界に、あんなカッコいい男はいないわ」
「可愛いのが好きなんだよな?」
「ええ…」
「可愛い男の子は?」
「オチンチンに毛が生えてなければ…」
「おいおい…。じゃあ、オッサンは?」
「有り得ない!!」
「じゃあ、可愛いオッサンは?」
「可愛いオッサン?」
ショーコ女王様は、ふと顔を上げた。
1991投稿者:リリー  投稿日:2008年05月26日(月)21時30分29秒
「そう…可愛いオッサンだったら…?」
一瞬、ショーコ女王様は、沈黙するが…つくった様な笑顔で答えた。
「可愛いオッサンなんて…いるかしら?」
これは…脈有りだ…。
じっくりと、このショーコ女王様とお話しをしよう…。
「なあ…。これ…自由にしてくんないか?」
ダーブロウ有紗は、全裸で磔に拘束されているのだ。
「もう、終わりなんだろ?プレイは…」
「でも…まだ、30分くらい残ってるわ…」
「いいよ、もう…。だって、私、Sだもん…」
「…そうね…。じゃあ、自由にしてあげる…」
ショーコ女王様は、ダーブロウ有紗に近づいた。
これで自由にされたら…残りの30分で、このショーコ女王様を『拷問』…いや、Mだから『誘惑』で難田門司の情報を得る…。
そう、考えていると、ノックもせずにドアが開いた。
入ってきたのは…アスミ女王様だった。
1992投稿者:リリー  投稿日:2008年05月26日(月)21時30分51秒
「どうしたの?アスミ…?」
ショーコ女王様は、不思議そうに、アスミ女王様の方を向いた。
「ショーコ!!交代だよ!!」
「交代?」
「そんなんじゃ、お客さん、満足しないだろ?『エトワール』の看板に傷がつくよ!!」
「で、でも…」
ショーコ女王様は、ダーブロウ有紗の顔を見た。
「ああ…。もう、いいよ。SMって、どんなもんか経験してみたかっただけだからさ…」
「経験?だったら、尚更よ!『これがSM』なんて、思われたら、たまったもんじゃない!!」
「…おめぇ、何だよ?SMは、おまえにとって、何だ?」
「私は、プロの『女王様』だよ。ショーコとは違う…」
「へぇ…どう違うんだよ?」
「今から…教えてあげようか?」
「だから、別にいいって言ってんだろ?」
「ビビってんの?」
「…あ!?」
ダーブロウ有紗の額に、血管が浮き上がった。
1993投稿者:リリー  投稿日:2008年05月26日(月)21時31分47秒
「誰がビビってるって?」
「あんたよ…」
ダーブロウ有紗は、目を瞑って、静かに笑う。
「くくく…。いいねぇ…。久しぶりに会ったよ…。あんたみたいなヤツ…」
挑発に乗るつもりはない…。
このアスミ女王様…「可愛いオッサン」という言葉のタイミングで、この部屋に入ってきた…。
やはり、この店に難田門司はいる…?
だとしたら、誰から話しを聞いても同じだ。
「教えてもらおうじゃん!!SMってのをよ…」
アスミ女王様は、その言葉を聞いて微笑んだ。
「OK!ショーコ、じゃあ、私がこのお客さん、もらったから…」
「わかったわ…。じゃあ、お願いね、アスミ…」
ショーコは、部屋を出て行った。
部屋には、ダーブロウ有紗と、アスミ女王様が残された。
1994投稿者:リリー  投稿日:2008年05月26日(月)21時32分29秒
今日は、これでおちます
1995投稿者:117  投稿日:2008年05月26日(月)21時34分20秒
うわぁ、ダーさんが難田門司のことを聞き出そうと、詰め寄っていく・・・
ここでアスミ女王が・・・タイミングが良すぎる!
思わず、ハラハラドキドキしちゃいます。続きも楽しみです!
1996投稿者:1600  投稿日:2008年05月26日(月)21時50分46秒
ご無沙汰ぶりです
毎日小説は読んでいましたがコメントする時間がありませんでした;
ついにアスミ女王とダーさんが接触しちゃいましたね
次の更新が楽しみで仕方ありません!
これからも頑張っていってください!
1997投稿者:ダーさんとしょこたんの会話  投稿日:2008年05月26日(月)22時53分21秒
いいテンポです
1998投稿者:あげ  投稿日:2008年05月27日(火)19時33分50秒
 
1999投稿者:リリー  投稿日:2008年05月27日(火)20時55分49秒
1600さん、お久しぶりです
でお、毎日読んでくださってたんですね
ありがとうございます

ダーさんとアスミ女王様の戦い(?)が繰り広げられます

では、更新します
2000投稿者:リリー  投稿日:2008年05月27日(火)20時57分06秒
「で…?本当のSMって…どんなだよ…?」
ダーブロウ有紗は、余裕の笑みで問う。
「そうねぇ…。私はまず、シチュエーションに凝るわ…」
「シチュエーション?」
「そう…。物語を作るのよ…。何で、あなたが責められ、私が責めるのか…」
「物語?どんな?」
「『女王様』と『奴隷』…これじゃ、ダメね。だって、女王様は、奴隷なんか相手にしないし、興味だって持たない…。つまり、『女王様』と『奴隷』は、接点がない…」
「ふ〜ん…。なるほど…」
「だから…私はこういう物語を用意したわ…」
アスミ女王様は、ダーブロウ有紗の鼻先に、自分の鼻先を近づける。
「あなたは、とある犯罪組織のアジトに潜入し、捕らわれた『女スパイ』…。私はその女スパイを拷問する女獄長…。どう?ワクワクしない…?」
(こ…こいつ…)
ダーブロウ有紗は、アスミ女王様を睨みつけた。
「おもしれぇじゃん…。それでいこうぜ…」
2001投稿者:リリー  投稿日:2008年05月27日(火)20時57分33秒
その瞬間、アスミ女王様は、強烈な平手打ちをダーブロウ有紗に見舞った。
「…!?」
一瞬、ダーブロウ有紗は、目眩を起こした。
「おまえ…何が目的で、我が組織を嗅ぎまわっている?」
「…へへ…。何?もう、プレイに入ってるの?」
再び、平手打ちが襲う。
「さあ、答えろ!!何が目的だ!?何を嗅ぎまわっている!?」
これは…プレイにかこつけた拷問か?
やはり、難田門司は、この店に…?
いや、あくまでもプレイだと言われれば、それまでだ。
(か、考えやがったな…。このデカ女…)
アスミ女王様は、鞭を選ぶ為、壁際へ歩いて行く。
彼女が選んだのは、細く長い鞭…スタンダードな…シンプルな物だ。
「なあ…。で、おまえは私から何を聞きだすんだ?それを決めてないだろ?」
ダーブロウ有紗の問いに、アスミ女王様は背を向け、鞭のしなり具合を見ながら、答えた。
「それは…おまえが知っているんだろ…?」
(くくく…。本当に、上手いねぇ…)
ダーブロウ有紗は、敵ながら感心するしかなかった。
2002投稿者:リリー  投稿日:2008年05月27日(火)20時57分50秒
「さあ、吐け!!何が目的だ!!吐け!!」
アスミ女王様は、細くしなる鞭で、ダーブロウ有紗を打ち据える。
まるで、刃物で切り裂かれたかのような痛み…。
これに比べれば、さっきのショーコ女王様の鞭など、子供の遊びだ。
このアスミ女王様、手首のスナップが凄く強い。
「ぐ…!うぅ…!」
思わず、呻き声が漏れる。
こちらが聞き出そうと乗り込んだのに、いつの間にかこちらが聞き出されてしまっている。
アスミ女王様は、鞭を、ダーブロウ有紗の首にあてがう。
「ふふ…。少しは必死な顔になってきたじゃないか…。え?」
しかし、これでもまだ耐えられないという痛みではない。
「へ…へへ…。まだまだ…だな…」
「ふん…!減らず口を…」
鞭は、ダーブロウ有紗の頬に炸裂した。
「ぐぅ…!」
顔が、切れてしまったんじゃないか…?
一瞬、ダーブロウ有紗はそう思った。
これは、プレイを超えていないか?
つまり…やはり、拷問か…?
2003投稿者:リリー  投稿日:2008年05月27日(火)20時58分09秒
どうも、アスミ女王様の真意を測りかねる…。
難田門司がここにいる…なんて確信は、どこにもないのだ。
このままダンマリを通しても、プレイということでごまかされる。
もし…絶対に有り得ないが…難田門司を探っているなどと口を割ろうものなら、それで、拷問は成立する。
(う〜ん…。こりゃ、ややこしい罠にはまっちまったかな?)
ダーブロウ有紗は、少し自分の軽率さに反省した。
「ふうん…。中々、口が堅いねぇ…」
アスミ女王様は、ダーブロウ有紗の胸を、乱暴に掴んだ。
「いい身体、してんじゃねぇか…。え?」
もの凄い握力…まるで乳房が千切れそうだ。
「ぐ…!ぐぅ…!!」
「ふふ…。痛いかい?」
今度は、乳首を指で捻り上げた。
「さあ、これはどうだい!?」
「が…!ぐぅぅ!!」
ダーブロウ有紗は、歯を食い縛る。
プレイと言うならば、大袈裟に悲鳴をあげてもいいのだが…拷問であるのなら、絶対に悲鳴などあげるものか…!!
2004投稿者:リリー  投稿日:2008年05月27日(火)20時58分34秒
アスミ女王様は、捻り上げている乳首を見て、そこに小さな穴の様な傷跡を発見する。
「これは…?あんた、乳首にピアスでもしてたのかい?」
これは、『中村有沙捕獲作戦』の時、ジャスミンによって開けられた穴だ。
「ふ〜ん…。おまえ、SM初心者なんて言ってたけど…経験者なんじゃないの?」
アスミ女王様は、懐から太い針を取り出した。
「…!?」
「もう、塞がってるけど…また、私が開けてやるよ…」
そう言って、針の先を、ダーブロウ有紗の乳首に近づける。
「お、おいおい!!これは、ノーマルコースだぜ?こういうのって、ハードコースじゃねぇの?」
アスミ女王様は、ダーブロウ有紗の言葉は無視し、何の躊躇もなく、乳首を針で貫いた。
「ぐ…!!ああああ〜〜〜!!!」
激痛が、走り抜ける。
「ぐぅぅ…!!て、てめぇ…!!ほ、本当に…やりやがったな…!!」
アスミ女王様を睨みつける、ダーブロウ有紗。
「どうだい?喋る気になったかい?」
アスミ女王様は、睨み返して言った。
2005投稿者:リリー  投稿日:2008年05月27日(火)20時59分08秒
今日は、これでおちます
2006投稿者:2000越え!  投稿日:2008年05月27日(火)21時04分34秒
ぐぁぁぁぁ痛そう〜〜〜
2007投稿者:117  投稿日:2008年05月27日(火)21時13分51秒
うわぁ・・・アスミ女王様、鋭い!ダーさんの目的に気づいたのでしょうか?
かなりハードな拷問になりつつありますね。どうなることやら・・・続きも楽しみです!
2008投稿者:あげ  投稿日:2008年05月27日(火)21時20分04秒
 
2009投稿者:そのうち明かされるであろう  投稿日:2008年05月27日(火)21時27分26秒
あすみの正体が気になる
2010投稿者:あげ  投稿日:2008年05月28日(水)01時17分50秒
2011投稿者:1600  投稿日:2008年05月28日(水)12時45分17秒
アスミ女王様、激しいですねえw
ダーさんがどうなるのか心配になってきました
2000越えおめでとうございます!
2012投稿者:あげ  投稿日:2008年05月28日(水)19時14分46秒
 
2013投稿者:デジ  投稿日:2008年05月28日(水)19時42分49秒
3日ぶりです。
アスミ女王様は、ショウコ女王様とは別の意味で迫力ですね。(表の性格と似ているような似てないような。。。(笑))
しかし、ちょっとダーさんの目的を考慮した構成でしょうか?そうだったらアスミ女王様かなり凝ったシチュエーション思いつきますね。
そんなこんなで緊迫した状態(物語)になったとはいえ少しピンチな展開になりましたね。
続きがすごい楽しみです!
(今日の小言)実は僕もこういう筋書きを書くのがすきなのでいずれこの板に小説作書こうと思っているのですが、スレの作り方がわかりません。ちなみに構成も考えていません。(これで大丈夫なのか心配です。)(汗)
あと、スレ2000越えおめでとうございます!
2014投稿者:リリー  投稿日:2008年05月28日(水)20時56分49秒
そう言えば、2000超えたんですね
早いですねぇ…
これも、この小説を読んでくださってる方々のおかげです
応援のコメント、本当に励みになります

ダーさんとアスミ女王様の行く末が気になってらっしゃる方、そして、アスミ女王様の正体は、この三回裏で明らかになります

デジさんも、小説をがんばって下さい
私も応援させてもらいます

では。更新します
2015投稿者:リリー  投稿日:2008年05月28日(水)20時58分12秒
もう片方の乳首も、針で貫かれた。
「がぁ…!!ぐあああ〜〜〜!!!」
この冷徹さ…SMの女王様というのは、こんなことを平然とできるのか?
「ふぅ…!ふぅ…!ふぅ…!」
滝のような汗が、ダーブロウ有紗の身体中から流れ出した。
「ふふふ…。いい声を出すようになったじゃないか…」
アスミ女王様は、ダーブロウ有紗の耳元で囁いた。
「くぅ…!!き、貴様…!!」
「じゃあ、その泣き声のご褒美に、いい物をあげよう…」
「は、はぁ…?な、泣いてねぇんだけど…!!」
アスミ女王様は、また懐から何かを取り出す。
それは、銀色の小さな輪だった。
「な、何だよ…?そりゃ…?」
「ん?穴を開けたら、通す物が必要だろ?」
乳首の穴に、その銀の輪が通された。
2016投稿者:リリー  投稿日:2008年05月28日(水)20時58分33秒

「ケ…!だっせぇ、ピアス、取り付けやがって…!!コンチクショウ!!」
ダーブロウ有紗は、唾をまき散らして怒鳴った。
「それだけじゃないさ…。この輪に、こういう物も、取り付ける…」
次に取り出したのは、掌に収まる様な、小さな南部風鈴。
「これ、一つで200グラムはあるの…」
「あん…?」
輪に、その鉄製の風鈴を取り付ける。
「ぐぅ…!!」
乳房が、下に向かって垂れ下がる。
「ふふふ…。なかなか、可愛いじゃないか…」
アスミ女王様は、指でチリチリと、乳首にぶら下がっている風鈴を揺らした。
「こうやって鞭で叩く度に、いい音で鳴るんだよ!」
そう言って、鞭を振るう。
「ぐあ!!」
激しく揺れる、ダーブロウ有紗の身体。
チリーンという、涼しげな音…。
「ふふふ…。いい音…」
アスミ女王様は、目を閉じてその音色を楽しんだ。
2017投稿者:リリー  投稿日:2008年05月28日(水)20時58分55秒
「ぐあああ…!な、なんて、マヌケな図だよ…!こりゃぁ…!!」
顔をしかめる、ダーブロウ有紗。
「あははは!!可愛いじゃないか!!ええ!?」
高笑いをしながら、鞭で滅多打ちにする、アスミ女王様。
鳴り響く鈴…。
ダーブロウ有紗の呻き声…。
「ちょっと、鞭の振り方を変えてみようか?」
そう言うと、アスミ女王様は、履いていたピンヒールを脱ぐ。
「…!?」
右手に鞭を持ち、左手を添え、その両手を高く上げた。
そして、鞭を胸元に持ってくると、腰を捻りながら左足を上げる。
(な、何だ…?こ、これは…野球…?)
そう…まるで、アスミ女王様の動作は、野球のピッチャーの様だ。
確か、見たことがある…この様にタオルの端を持って、投球の練習をする選手の姿を…。
そして、剛速球を放つかのように、右手がしなり、振り下ろされる。
その鞭の先は、ダーブロウ有紗の身体へ…。
2018投稿者:リリー  投稿日:2008年05月28日(水)20時59分15秒
まるで、落雷のような音が、部屋中に響き渡る。
それは、鞭の叩きつけられた音でもあり、ダーブロウ有紗の叫び声でもある。
そして…鈴の音…。
「ぐはああ…!!」
刀で斬りつけられた…と、錯覚する程の衝撃だった。
アスミ女王様は、再び大きく振りかぶり…両手を胸元に下ろし、腰を捻り、左足を上げ…打ち降ろす!!
それが、何度も何度も繰り返される。
鞭の音と、叫び声、そして鈴の音…これらが1セットで繰り返される。
「さあ、まだ言わないのかい!?こんなにまでされて、まだ言わないのかい!?」
アスミ女王様は、乳首に取り付けられた鈴を握ると、それを上に引っ張り上げる。
それと同時に、乳房は上に伸びる。
「ああああ〜〜〜!!!」
「吐け!!さあ、吐くんだ!!」
「ぎああああ〜〜〜!!!」
「…あくまでも、言わないつもりだね?だったら…」
再び、アスミ女王様は、針を取り出すと、そのまましゃがみ込んだ。
「ふふふ…。今度は、どこに穴を開けてやるか…わかるかい…?」
そう言うと、その針の先を栗色の陰毛に撫で付けた。
2019投稿者:リリー  投稿日:2008年05月28日(水)20時59分46秒
「ま、待った…」
ダーブロウ有紗が、呟いた…。
「待ってくれ…」
アスミ女王様は、ダーブロウ有紗の顔を見上げた。
荒い呼吸で、激しく身体が上下し、汗の雫が滴り落ちている。
虚ろな目だ…。
アスミ女王様は、冷たい表情のまま微笑んだ。
「なぁに?やっと、白状する気になったの…?」
「…時間だ…」
「え?」
「時計を見ろよ…」
「何ですって?」
アスミ女王様は、壁に掛かった時計を見る。
8時を回っている…。
「私は…1時間コースを選んだんだ…。もう…1時間…過ぎてるぜ…」
ダーブロウ有紗は、ニヤリと笑った。
2020投稿者:リリー  投稿日:2008年05月28日(水)21時00分05秒
「なぁ…これは…プレイなんだろ…?アスミ女王様…」
そう…もし、それでもアスミ女王様が拷問を続けたら…これはプレイではない…。
本物の拷問だ。
つまり、難田門司はここにいる…という証明になる。
ならば、ダーブロウ有紗は、このチープな磔を粉々に破壊し、反撃を開始する。
いつでもできたのだ…そんなことは…。
こちらだって、このバカバカしい三文芝居に付き合ってやったのだ。
ただし…1時間だけ…!!
もし、これ以上続けるのなら…やってやる…!!
貴様を…この店『エトワール』を…難田門司ごと、ぶっ潰してやる!!
アスミ女王様は、ゆっくりと立ち上がって、ダーブロウ有紗を見下ろした。
「さあ…どうするんだ?」
2人の睨み合いが続く…。
アスミ女王様は、ニッコリと微笑んで、こう言った。
「お客様…。延長はなさいますか…?」
ふ…と、ダーブロウ有紗は、息をつき…そしてこう答えた。
「いや…。もう、飽きた…」
2021投稿者:リリー  投稿日:2008年05月28日(水)21時01分07秒
次回は、山本組に潜入した七世の場面となります

では、今日はこれでおちます
2022投稿者:あげ  投稿日:2008年05月28日(水)21時07分33秒

2023投稿者:117  投稿日:2008年05月28日(水)21時15分37秒
アスミ女王様、恐い・・・酷すぎる。200グラムの鈴をぶら下げるとは、大変そうですね(笑)。
次回は七世の出番ですか・・・一体どう出るのか、続きも楽しみです!
2024投稿者:一応  投稿日:2008年05月28日(水)22時47分55秒
決着が着いたんでしょうか?
2025投稿者:あげ  投稿日:2008年05月29日(木)20時10分40秒
 
2026投稿者:リリー  投稿日:2008年05月29日(木)21時11分40秒
そうですね
一応、プレーの時間は過ぎたので、大人の遊びはお終い…というノリです

200グラムって、重いですよねぇ…
乳首に穴を開けたことも、200グラムの重りをぶらさげたこともないですが…

では、更新します
2027投稿者:リリー  投稿日:2008年05月29日(木)21時13分51秒
天歳市内の…山本組組長の屋敷。
里穂、愛実、七世…そして他4名の少女達は、浴室につれて来られた。
まるで、温泉宿のように広い湯船…。
多人数で一緒に入る為に、設計されたようだ。
勿論、山本と多数の少女達とで入るのだろう。
浴室には、服を着たままの女性組員達が、少女達を待ち構えていた。
「さあ、皆、服を脱ぐんだ!!」
脅されるように急がされ、7人の少女達は服を脱いだ。
「おまえ達…何日も風呂に入ってなかったから…今から綺麗に洗ってやる!!」
背中を押され、広い浴室に入れられる。
それと同時に、7人はお湯をかけられた。
「ひぃ…!!」
それだけでも、その場にへたり込んでしまう少女もいる。
里穂と愛実は、固く抱き合っていたが、女性組員に無理矢理引き剥がされた。
「あ、姉御!!」
「愛実!!」
そして、強引に座らされ、頭からお湯をかけられた。
七世も同様である。
2028投稿者:リリー  投稿日:2008年05月29日(木)21時14分18秒
まるで家畜を洗うかのように、7人の少女達は、身体を泡だらけにし、擦られ続ける。
女性組員の手が、愛実の股間に伸びる。
「や…!!」
愛実は、身をよじるが、数人掛かりで身体を押さえつけられる。
「つ、愛実に、何すんだ!!」
しかし、里穂もタイル床に押さえつけられて、同様に股間に触れられる。
「な、何すんだよ!!」
叫ぶ里穂に、女性組員は笑いながら言う。
「特に…ここは丹念に洗っておくよ…。意味はわかるだろ…?」
里穂はゾッとした。
あの、ブタのような男に…何をされるのか…。
少女達は、途端に大人しくなってしまった。
「ふふ…。おまえは、最初から素直だね…」
七世の身体を洗う女性組員は、そう耳元で囁いた。
「まあ、おまえは今日来たばっかりだから、そんなに洗う必要もないんだろうけど…」
女性組員の指は、七世の股間に伸びる。
2029投稿者:リリー  投稿日:2008年05月29日(木)21時14分38秒
泡がついている為、指はするりと、七世の中に入っていく。
「ふ…う…」
思わず、声をあげてしまう。
「可愛い声だね…。おまえは、組長のお気に入りになるかもね…」
そう言って、彼女は七世の耳たぶをそっと咥えた。
女性ばかり集められていて、唯一の男が、あの醜悪な山本だ…。
自然と、同性愛に走るのだろうか…?
そう言えば、『TTK』も同じだった…。
七世は、この山本組の組員達も、哀れに思えて仕方がなかった。
「さあ、風呂から上がったら、これを着るんだ」
一通り、身体を洗い終えた7人の少女は、真っ白な薄手の着物を手渡される。
時代劇で見る、大奥の女達が将軍を寝所で迎える様な…そんな姿になるのだろうか。
こんな物を着せる山本は、大奥を所望する将軍気取りなのであろう。
そして、いよいよ7人の少女達は、山本組長の待ち構える寝室へと連れて行かれる。
2030投稿者:リリー  投稿日:2008年05月29日(木)21時15分00秒
「なあ…東奈…」
長い廊下を歩かされながら、七世の偽名を呼ぶ里穂。
「自分一人で組長の相手をするって…本気で言ってんのか?」
「ええ…。そうよ。だから、あなた達は心配しないで…」
「ど、どうして…?あなたは…どうして…私達を…?」
愛実は、今にも泣き出しそうな声で聞く。
「そ、そうだよ…!!私達とあんたは、赤の他人じゃないか!!」
里穂の言葉に、ふっと微笑む七世。
「あなたの…大切なお友達に…頼まれたから…」
「私達の…大切な…友達…?」
「だ、誰…?それは…」
その時、七世達は女性組員に怒鳴られた。
「そこ!!くっちゃべってんじゃない!!」
七世は笑顔だけで、里穂達に答えた。
2031投稿者:リリー  投稿日:2008年05月29日(木)21時15分37秒
大きなベッドの上に…まさに『裸の王様』が…ふんぞり返っている。
異様に肌が白い…肥満体の…この男が…組長の山本…。
「ぐふふふ…。今夜は、また一段と美少女揃いじゃねぇか…?えぇ…?」
だらしなく歪む顔が、7人の少女達を吟味する。
それだけでも、愛実は泣いてしまっている。
「よし、全員、こっちに来い!!」
7人の少女達は、恐る恐る山本に近づく。
七世も、歩調を合わせた。
「いいか?俺が帯を引っ張るから、おまえ等は『あ〜れ〜…お殿様、お戯れを〜〜〜』って、クルクル回るんだぞ?」
その山本の命令に、七世は笑いそうになったが、ぐっと堪えた。
まず、左端の少女の帯を掴む。
「それぇ!!」
思いっきり、帯を引っ張る山本。
「あ、あ、あ〜れ〜…」
少女は、ぎこちない…それでも精一杯の演技をする。
「ヘタクソォ!!」
山本は、思いっきりその少女の腹を蹴っ飛ばした。
2032投稿者:リリー  投稿日:2008年05月29日(木)21時16分10秒
「…!?」
一瞬で、少女達の表情が凍りつく。
「ゲ…ゲホ…!ゲホ…!」
腹を押さえて、うずくまる少女の背中を踏みつける山本。
「いいか?もっと上手い演技をしろ!!俺を興醒めさせんな!!」
少女達は、悲壮な顔になった。
愛実は、ますます震え、里穂にしがみ付いた。
山本は、次の少女の帯を引っ張った。
「あ〜れ〜!!」
あらん限りの声で叫ぶ少女。
「う〜ん…なかなかの熱演だったが…大根!!」
山本は、その少女の腹も蹴っ飛ばした。
そして、次の少女も、次の少女も…。
この男…何かと難癖をつけ、いたぶっているのだ。
そして、とうとう愛実の番になった。
2033投稿者:リリー  投稿日:2008年05月29日(木)21時16分30秒
「さぁて…。おまえは、どんな演技をしてくれるのかな…?」
「ひ…ひぃ…」
愛実は、思わず理穂の後ろに隠れた。
「前に出て来い!!」
山本は、愛実の髪を引っ張った。
「い、痛い!!」
泣き叫ぶ愛実。
「おい!!弱い者いじめしてんじゃねぇよ!!ブタ!!」
里穂は、山本の足を蹴っ飛ばした。
「イテ!!こ、このアマァ!!」
里穂は、山本から平手打ちを喰らい、その場にどっと倒れこむ。
「あ、姉御!!」
愛実は、里穂に覆い被さった。
「無礼者め…!!手打ちにしてくれる…!!」
殺気の篭った目で、2人の少女を見下ろす、山本。
そんな目に、里穂と愛実は恐れおののいた。
2034投稿者:リリー  投稿日:2008年05月29日(木)21時18分49秒
里穂のキャラクターが合ってないと思われる方もいらっしゃると思いますが、これは04年のイベントのイメージからきています

では、これでおちます
2035投稿者:117  投稿日:2008年05月29日(木)21時21分20秒
それにしても、女の子の腹を蹴るとは・・・女性って、お腹を蹴られたりしたら,痛いんじゃないでしょうか?
確かに、「姉御!」っていうのは、あの夏イベですね。イメージはつきます。
大胆な里穂・・・続きも楽しみです!
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