【モスクワ時事】ロシアのメドベージェフ首相は5日、北方領土・国後島訪問を含む4日間の極東連邦管区視察を終え、カムチャツカ半島からモスクワに帰る。北方四島は「ロシア領」と公言しただけでなく、日本の反発には「全く関心がない」と発言。先月の野田佳彦首相とプーチン大統領の初会談による日ロの「リセット」ムードに早くも冷や水を浴びせた。
「一寸たりとも渡さない」。3日午後に訪れた国後島・古釜布(ユジノクリリスク)で、メドベージェフ氏はロシア正教会の建設現場作業員から四島の将来を問われ、記者団の面前で日本の返還要求を明確に拒絶した。
外交はプーチン大統領の専権事項で、首相は内政や経済分野の責任者にすぎない。今回の極東訪問の主目的は、9月にウラジオストクで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の準備状況の視察。閣僚多数を連れて各地を回り、プーチン氏とのポスト交換で首相に「降格」後の権威低下を食い止める狙いもあったと指摘される。
2010年11月に続く2回目の国後島訪問の意思決定にプーチン氏が関与したかは不明だ。プーチン氏は3月の大統領選直前、「日本との領土問題に終止符を打ち、双方に受け入れ可能な形で解決したい」と表明。歯舞、色丹2島の引き渡しを明記した1956年の日ソ共同宣言にも言及している。だが、ロシアでは四島は第2次大戦後に「不可分の領土」になったというのが揺るがぬ公式見解。国内で反プーチン政権デモも続く中、領土問題での譲歩は困難とみられている。
ただ、「冷戦後最悪」とされる関係冷却化を招いたメドベージェフ氏の前回の国後島訪問に比べると、今回は両国とも非難のトーンは抑制的。日ロ両国が最近、「静かな環境」で議論を進めると常に確認していることが背景にある。まずは月末にも開催される日ロ外相会談で、双方が軌道修正を図れるかが焦点だ。(2012/07/05-14:27)
日ロ「リセット」に冷や水=北方領土返還を拒絶−ロシア首相
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