<< W A R N I N G >>    全部俺の妄想です。文面は相当気持ち悪いと思います。嫌な方はスルーしてください。  俺×キャラ物です。嫌いな方はスルーしてください。  貴方のキャラの印象を崩す可能性が少なからずあります。嫌いな方はスルーしてください。  エロ、グロ、虐待、陰湿、痛々しい描写はありません。嫌いな方はスルーしてください。  とても都合よく話が進みます。設定を重視される方、嫌いな方はスルーしてください。   「きめぇんだよこの豚!」 ガッシャーン! 腹部につま先がめり込み、僕は辺りの机を巻き添えにして倒れる。 「ひいっ!ゆ、許してくださいよぉ。」 「うわ、何こいつニタニタしやがってきもちわりぃ。」 一人が僕に向かって唾を吐く。 「ねーなんかヘンな臭いしなーい??」 「ねー臭いよねー!」 きゃははと、教室中に僕を嘲る声が響く。 「まったくこんな問題も解けないなんて、お前は死んだほうがいいな。」 「………………。」 「あはははははは!!!死ねよブタ!」 後ろの席のやつが、ガンガンと僕の椅子を蹴る。 「「「死ーね!死ーね!」」」 沸き起こる死ね死ねコール。 やめろ!! やめてくれ!!! ガバッ!! 「はぁ、はぁっ。」 ゆ、ゆめ…………? 嫌な夢見ちゃったよ……。 僕は、暗い部屋で枕元にある付けっぱなしのパソコンを手繰り寄せる。 右下の小さな時計は、午前四時を表示していた。 寝ぼけ眼で、おもむろにパソコンの更新ボタンを押す。 おっ、 僕は「幻想郷のキャラをいぢめるスレ」と表示されたタブをクリックする。      397 名前:名前が無い程度の能力[sage] 投稿日:2007/10/15(月) 23:44:43 ID:sDqviaiA0   >>395   ああ、文はいいイジメ対象だよな・・・   プライド高そうだし、記者としての処世術も持ってて、精神的に成熟してるイメージだからな、   取材対象でもないどうでもいい人間相手には結構居丈高に振る舞いそうだ。   そこらへんの精神的優位をべっこべこに叩き折った挙句、   格下の存在である俺を憎みながらも依存しなければ生きていけないような状態にして、   優しく抱き締めてあやしながら耳元で汚い言葉をささやいてあげたい。   同じようなことをえーきさまやゆうかりんにもしたい俺は間違いなくドS あー、いいよな文ちゃん。 こいつとはいい酒が飲めそうだ。 そう思いながら、パソコンの壁紙の文ちゃんにキスをすると、 僕はまた眠りへと落ちていった。 ねぇ…… ねぇ、おきなさい…… どこかで声がする。 なんだよ、もっと寝かせてくれよ。 「起きなさい。」 「ん……」 誰だようるさいなぁ。 僕は渋々起き上がる。 「ふぁーあ。」 僕は大きく伸びをする。 起き上がってみて僕は違和感に気が付いた。 そこは、僕の部屋ではなかった。 「え……?」 周りが、薄明るいもやもやに包まれている。 「おはよう。」 声のするほうを見ると、ゆかりんが立っていた。 なんだこれ?夢の中か? ……どうせ出るなら文ちゃんの方がよかったな…… 「あなたこれまでいいことなかったでしょ?だからひとつだけ願いをかなえてあげる。」 なんだ?いきなり。 「ほらはやく。」 え、え……?ちょっと待ってよ。 「な、なんでもいいんですか?」 「なんでもいいから早くして、私も忙しいの。」 なぜか僕をせかす。 「えっと、じ、じゃあ……。」 「じゃあ?」 「し、射命丸文ちゃんと、い、いっしょに暮らしたいなぁ……なんちゃって。」 僕は寝ぼけた頭でそう答えた。 どうせ夢の中だ。 キモオタと馬鹿にされることもない。 八雲紫はくすっと笑うと言った。 「分かったわ。よろしくね。」 急に視界がまぶしくなると、僕はまた眠りへと落ちていた。 б ムク…… 僕は起き上がる。 あー、今日もよく寝たなぁ。 外はもう太陽の明かりでだいぶ明るくなっていた。 いま何時だろう……。 時計は午後三時を指していた。 まったく引きこもりニートというのは楽な存在だ。 僕は昨日買った菓子パンを引っつかむと、 とりあえずパソコンに向かって、更新ボタンを連打したり、 IDチェックしたり、お賽銭を入れたりした。 気づくと時計は午後5時を指していた。 部屋がちょっと薄暗くなっている。 あー腹が減ったけど、メシ作るのめんどくさいなぁ。 そう思って布団にごろんとなったそのときである。 ガチャ 「ただいまー。」 え……? 玄関の方で女の子の声がした。 もちろん同棲している彼女など、僕にはいない。 というより僕には生まれて今まで彼女というものと、 いや、女友達と呼べる存在もいたことなど無かった。 では誰だ? 女の子?隣に住んでる子だろうか。 部屋間違えちゃったのだろうか。 それとも…… 泥棒!!? 僕はとっさに身構えると、漫画に載っていた護身の型を思い出す。 だ、大丈夫、まず相手の眼をつぶし、それから……… そうこう考えているうちに、玄関と居間を隔てたドアがガラッと開く。 来た! 人間は不測の事態が起こっても、考える時間さえ少しでもあれば、 何通りかはその先の出来事を予想することが出来る。 僕が予想したのは、女の子の声は隣の住人。 又は近所の人、もしくは侵入者のどれかだった。 だが、実際はそのどれでもなかった。 僕は眼を見張った。 だってそこに立っていたのは、射命丸文ちゃんだったのだから。 б 「なにしてるんです?」 文ちゃんはきょとんとした顔で僕を見つめる。 いや、何って………え?? 「あ、あーーっ!!!!」 びく 文ちゃんは突然大きな声を出す。 え?なになに?なに!? 混乱の上にさらに混乱した僕は後ずさりをする。 「もー!私の場所には入んないでって言ったじゃないですか!!」 「え?」 足元を見ると、僕の部屋はいつの間にか赤いビニールテープで真ん中を二つに分けられていた。 ………どういことだ? 私の……場所?? 「私はこっち、あなたはそっちでしょう!?もー、勝手に入らないでください!」 わけの分からぬまま文ちゃんは怒ると、おもむろにたんすを開ける。 「ぎょ!」 なんと文ちゃんは、昨日まで僕のユニクロで買った着ないTシャツやらが入っていたたんすから、 昨日まで無い筈だったバスタオルと女の子の下着を取り出すと(!?)、 よっ、よっと僕の雑誌やら漫画を踏みつけながら、 僕の部屋の玄関のそばに申し訳程度についている風呂場へと向かった。 ざーー ドアの向こうから、シャワーを浴びる音がする。 僕はまだ状況がよく飲み込めなかった。 これはどういうこと? ゆ、夢をみてるのか? 周りを見渡すと、僕の8畳しかない小さな部屋は、昨日までとまるで違っていた。 部屋を二つに割った入り口側の半分は汚いままで、 窓のある奥の半分は、この部屋に置いたはずの無い机や、 新聞やら写真やらが沢山あった。 全体的にこざっぱりとして綺麗だった。 「………………。」 僕は周囲を確認すると、さっき文ちゃんが開けたたんすへと近づく。 すっ 「……………!!」 中には、僕の部屋にはありえない黄色やピンクの明るい下着やシャツなどが入っていた。 そう、そこはまるで秘密の花園。 ただの布切れであろうが、穢れなきエデンの園は、僕の薄汚れた眼をくらませるには充分だった。 僕が、それに手を伸ばそうとした瞬間 ガラッ 「ちょっと!!」 びくっ! 文ちゃんはマッハでドアからたんすまで移動し、たんすを思い切り閉める。 「何してるんですか!!」 「い、いや、あああの、」 文ちゃんは、顔を真っ赤にして怒る。 すげえ…… ほんとに、射命丸文が、俺の部屋に…… いや、20cm手前で…… 俺を怒ってる……!? 何年かぶりに、本当に心臓が裂けるくらいにときめいた。 б 「いただきまーす。」 僕達は部屋の真ん中に置かれた小さいちゃぶ台を囲っている。 机の上には文ちゃんが作ったと思しきシチュー。 端っこにパセリが乗ってるところや、皿が綺麗なところ、 にんじんが星型に切り抜かれているところが、女の子が作ったんだということを、 そんな経験がない僕にとっては、生々しいほどに物語っていた。 文ちゃんの顔をちょっと見ると、満足そうにうなずき、 手を広げて薬指で唇をなぞっていた。 おお、こんなしぐさドラマでしか見たことなかったけど、 女の子ってホントにこんな風に動くんだ……! 何もかもが新鮮だった。 僕がへんに感動していると、文ちゃんがこっちに気づいた。 「なんです?」 「あ、ああ、あいや……」 あ、なんか言わなきゃ言わなきゃ……。 文ちゃんは、どもっている僕を見てよく分からないといった表情をすると、 「へんな子。」 と一言いい、新聞を片手にじゃがいもをほお張った。 б 夕食をとっとと食べ終えると、文ちゃんはさっさと皿を洗い、 腕まくりをすると机に向かってカリカリと何か書き始めた。 ……………… 何してんだろ。 あ! そうか新聞だ、文ちゃんは記者だもんね。 へー、なにかいてんだろ。 僕はそーっと後ろから覗き込む。 でも、机においてあった鏡に、僕の顔が映ってしまい、文ちゃんと眼が合ってしまう。 文ちゃんはとっさに書いていたものを後ろに隠す。 「ちょっとなに見てんです!!」 「あ、あうあ、ご、ごめんなさい!!」 まったくもーと文ちゃんはため息をつくと、またカリカリと作業に戻っていった。 う、うん。仕事の邪魔されちゃ誰だって怒るよね……。 しかたない、アニメでもみーよおっと。 「……………。」 僕はテレビの電源を入れたが、アニメなどまったく見ず、 ずっと文ちゃんの後姿をまじまじと見つめていた。 ぼけーっと文ちゃんのふくらはぎを見ていたのだ。 あー、いいなぁ。文ちゃんの脚。健康的だなぁ。 たまにつま先で足をくいくいと掻く。 あああ、かわいいなぁ。録画しちゃおうかなぁ。 そんなことを考えていると、文ちゃんがイライラした顔で振り返る。 え、なに?俺なんかした!?見てるのばれた!? あ、テレビの音か! 僕はすばやくヘッドフォンを取り出し、ジャックに差し込む。 文ちゃんはまた振り返ると作業に戻った。 文ちゃんてもしかして怒りっぽい? もっと優しくて活発な女の子だと思ってたけど…… やっぱ僕って人をイライラさせるのかな? でも怒りっぽい文ちゃんもいいなぁ……。 文ちゃんを眺めることをなんとなくためらわれた僕は、 次第にアニメに集中していった。 「ありえねぇだろこれ、ウヒヒヒヒ!」 ばんっ! 後ろで机を叩く音がする。 「あ!」 文ちゃんが僕の頭からヘッドフォンを引き剥す。 「うるさいです!!」 「ひ、ごごごめんなさい………」 もーっと文ちゃんは頭をくしゃくしゃかくと、布団に入った。 「あ、あの……」 「なに。」 文ちゃんは僕の顔をキッと睨みつける。 ヒイッ! 「あ、あいや……な、なんでも………」 文ちゃんは僕に一瞥をくれると、布団にもぐりこむ。 あーまた怒られちゃった。 嫌われちゃったかな、はぁ。 ………………。 でも、これで僕は文ちゃんの隣で寝てもいいわけだよね? うふ、うふふふ! むくっ びく! 突然文ちゃんが起き上がる。 何かと思えば机の上に置いてあった書きかけの記事を引き出しの中に入れ、 バン!と引き出しを閉めると、鍵をかけてまた布団の中へと入っていった。 …………。 あー、怖いなぁ文ちゃんって。 あんま怒らせると殺されちゃうかも……。 いやでも、………これほんとに射命丸文ちゃんなんだよね? その文ちゃんがいま僕の部屋で寝てる…… 僕って……すっげえ幸せもんじゃん!? すーすーと寝息を立てている文ちゃんの顔をこっそり覗き込む。 かっ、かわいい!! し、しかもっ!! いいにおいする!!! いままで近くで女の子の顔なんか見たことなかった僕は、 女の子の肌が、こんなに綺麗で白くて柔らかそうなんだって事、 女の子の髪は、こんなにさらさらで細くて繊細だって事 女の子のあごは耳は鼻は顔は、こんなに小さいんだって事を、今知った。 「んん……」 僕はびくっと文ちゃんから離れる。 あぶねー寝こみを襲ったとかばれたら僕の首が飛んじゃうよ……。 仕方ない、僕も寝よう。 フヒヒ、文ちゃんと一緒に。 すぅー、すぅー。 「…………。」 すぅー、すぅー。 「………………………。」 すぅー、すぅー。 寝れないよ! 隣でそんなかわいい寝息立てられちゃったらさぁ!! 興奮するよ!!! しかもまだ九時半じゃん! 寝られないっつーの!! と、トイレに行こう。うん。 がちゃ トイレの中も別世界だった。 昨日までのトイレットペーパーが散乱した汚い臭いトイレじゃなかった。 ふっと香る芳香剤、真っ白な便器、ふかふかの便座カバーにスリッパ。 ここは本当に僕の家なんだろうか?? その晩はすっかり変わってしまった家の中を、あれやこれや探ったり、 文ちゃんの寝顔を眺めたりして明け方まで眠れなかった。 б 「もう邪魔!!」 「ぐへえっ!!」 僕の腹に鈍い衝撃が走る。 気づくと文ちゃんがばたばたと忙しそうに走り回っている。 えー時計時計。 げ!まだ6時じゃん! いいや、もう一眠りもう一眠り……。 相変わらず文ちゃんは枕元をばたばた走り回っている。 「えーと、忘れ物は……きゃ!?」 「いた!!」 文ちゃんが僕につまづいて転ぶ。 「もーこんなところに転がって!!邪魔!!」 文ちゃんはいらいらした顔を僕に向ける。 はいはい!と僕は台所へと行く。 あー、眠い。 へんなタイミングで起こされて頭がぐらぐらする。 台所にはサンドイッチの入ったバスケットが置いてあった。 お、朝ごはんか……いただきまーす。 もっとお互いにあーんとか出来たらいいのにな。 行ってきますのキスとか、ウヒヒ! でも文ちゃん優しいとこあるんだな。 ひょっとしてツンデレだったりして……。 そんなことを考えながらサンドイッチをほお張る。 うん、レタスがしゃきしゃきして美味しい。 「ああーーっ!!!」 「え?」 文ちゃんの叫ぶ声がする。 「それー!あたしのお昼ご飯です………!!」 ばっと僕の手からバスケットをひったくると、怒った顔をする。 あ……しまった。 「もう最低!!行ってきますっ!!」 文ちゃんは玄関のドアを慌しく閉めると、風のようにどこかに行ってしまった。 あんな怒らなくたって、……あーあ、文ちゃんあんま優しくないなぁ。 僕はまた布団にもそもそと潜って行った。 б 「あーーっ!!!」 文ちゃんが帰ってきた夕方のことである。 また文ちゃんの声が大きく部屋の中にこだまする。 今まで僕が怒鳴られるって言ったら、なぜ怒鳴れるのか分からない場合が多かったが、 今回は決定的にこちらがまずかった。 なんと僕は文ちゃんの机の引き出しを開け中身を物色しているところを目撃されてしまったのだ。 「……っ!!!」 文ちゃんは僕の耳をぐいとつまむと床の上に正座させ、お説教を始めた。 「まったくあなたは!!いったい何考えて生きてるんですか!!??」 文ちゃんはよほど腹が立ったのか、 かわいい顔に目くじらを立ててガミガミと僕を怒鳴りつけた。 当の僕はというと丸っきりお説教どころではなく、 目の前にある文ちゃんの健康的な太腿に釘付けだった。 「……ちょっと、ちょっとさっきから聞いてるんですか!?」 「あ……」 僕は文ちゃんの言葉で我に帰る。 文ちゃんは僕がお説教も聴かずどこを見ていたのか分かると、ばっと足元を抑える。 「スケベ!!!」 ガーン! 僕の額に筆立てが命中した。 б 「くんくん」 文ちゃんが顔をしかめる。 「臭います。」 そうなんかゴミを見るみたいな眼で見られる。 僕としてもいきなりそんなことを言われれば、 相手がどんなにかわいい子であろうと心外だ。 だが思い当たる節が無いわけではなかった。 あ、そ、そういえば、 ここんとこ全然お風呂はいってなかったな……。 「あ、ああの、僕ぜんぜんお風呂はいってなくて……。」 僕は正直に言う。 文ちゃんの顔がぞぞっと青くなる。 「あ、あでもそんなに汚く……。」 しまったと思ったときには時すでに遅し、 僕は必死で弁明しようとしたが、 僕が文ちゃんに一歩ちかづくと、文ちゃんは一歩後ずさる。 「お風呂入って!」 「え……?」 「今すぐです!!」 「あ、はは、はい!!」 僕は逃げるように風呂場へと逃げた。 б ちゃぷ 「あーあ、嫌われちゃったかなぁ……。」 文ちゃんの顔が思い浮かぶ。一緒に白い太腿も。 次々とまぶたに映し出される文ちゃんの、怒った顔、 怒った顔、怒った顔、不潔なものを見る顔、 かわいい寝顔、怒った顔。 あ、なんか怒った顔しか思い出せないや。 でもなんか、こう、文ちゃんの怒った顔って…… なんかこう、ちょっといい。 あの達観したと言うか、俺みたいなダメ人間には絶対無関心だろうあの文ちゃんが、 僕を見て心を揺るがすっていうのがいい。 僕を見てイライラする文ちゃん。 フヒヒ、かわいいなぁ。 お風呂から上がっていい匂いになった僕はバスタオルで身体を拭きながらふと思う。 あ、このタオルってもしかして、あ、ああ、文ちゃんが使ったことあるやつかも!! そ、そそ、それに、……お風呂場のイスも、石鹸も……。 お、おお、おおおおおおお!!! おおおお落ち着けぼくぅぅぅぅううう!!!! 僕は冷たい水を頭からかぶり、 興奮を抑えながら部屋のドアを開ける。 「あ、お、お風呂はいったよ……」 文ちゃんがこっちを見る。 すすっと近寄って、くんくんと匂いをかぐ。 ドキッ あ、文ちゃんがこんな近くに顔を近づけてる! いい匂ーいとかいって抱きついてきたりしてくんないかなぁ。 僕は文ちゃんの満足げな顔を期待したが、 文ちゃんはハッと何かに気づくといきなり僕に向かって怒鳴った。 「あ!わたしのシャンプー使いました!?」 「え!?あ、う……。」 え??あれ使っちゃダメだったの!? 「ひ、ひょっとして……せ、せっけんも………タオルも……」 文ちゃんの顔が青くなる。 そして、何かを諦めたような表情をすると、 眉をしかめてぽつりと言う。 「最低……。」 文ちゃんが汚いものを見るかのような顔をして、 冷めた視線を僕に向けた。 それは、明らかな軽蔑の視線。 ぞくぞくっ あ、あれ?なんだろうこの感じ……。 昔クラスの女子に言われたときはムカついてしょうがなかったのに。 なんなんだろう、この快感とも取れるこの感じは……。 文ちゃんのその顔は、とてもかわいかった。 б 夕食。 僕は文ちゃんの作った夕食を食べている。 いつもならかわいいしぐさを見せてくれたりするのに、 今日は不機嫌そうに食べていた。 文ちゃんのスプーンがカッカッっと皿のそこに当たる。 ご機嫌ななめなのかな? 「ちょっと。」 文ちゃんが僕に顔を向ける。 「え……?」 「音を立てて物をかむの、やめてくれませんか?」 文ちゃんに睨まれる。 自分では気づかなかったが、どうも僕はくちゃくちゃと気味の悪い音を立てて食事をしているらしかった。 そういえば昔親からそんなこと言われたことあるかも。 じ、自重しよう。 あ、な、なんかテレビでも見ようかな。 文ちゃんテレビなんて知らないだろうし、よし、きっと驚くぞ。 えーと新聞はと……。 あ、あった。 僕は近くに落ちてた新聞を拾い上げる。 えーっとテレビ欄テレビ欄……。 あれ?何も載ってないじゃないか。 いいや、適当にチャンネル回せば。 僕はばさっと新聞を放り投げる。 こめかみに青筋を立てて、じとっとこっちを睨んでいる文ちゃんと眼が合った。 「え……」 放り投げた新聞を見る。 あーっ!!しまった!! 文ちゃんの新聞だったんだ!! お、怒ったかなぁ……。 僕はちゃぶ台でもひっくり返されるんじゃないかと警戒したが、 文ちゃんは何も怒鳴らず、 はあっ、っと大きなため息をつくと、 食べ終えた皿を持って台所へと向かった。 がしゃんと、陶器がシンクに当たる乱暴な音がした。 びくっと僕は震えたが、同時に、ある感情が芽生えた。 ほんの反抗心のつもりだったのかも知れない。 もっと、文ちゃんを、困らせたい、怒らせたい。 б 「ふー、気持ちよかったァー。」 お風呂から上がり、しっとりと濡れた黒髪を丁寧にバスタオルで拭きながら 文ちゃんは机に腰掛けると、うちわでパタパタと胸元を涼しげにあおいだ。 お風呂にはいって機嫌が直ったのか、文ちゃんはふんふーん、と鼻歌をうたっていた。 いまならいける。 僕はすっと冷蔵庫に向かうと、昼のうちに買っておいたビールを取り出す。 ぷしっ 小気味よい音を立てて缶を開けると、こぽこぽとおいしそうな音を立てさせて、 なみなみと冷えたグラスに移す。 泡をずずっとすすると、僕は一気に冷えたビールを喉に流し込む。 んぐっ、んぐっ、 わざと喉を鳴らす、文ちゃんに見せ付けるため。 ちらと文ちゃんを見ると、あおぐ手を止めてこちらを物欲しそうに眺めている。 「ぷあーーーっ!」 僕はオーバーな声を出す。 「おいしいなぁ!え、ク、クリーミーな泡!しびれる喉越し!!」 気分はグルメリポーターだ。 またちらと文ちゃんを見ると、自分の表情に気づいたのか、 ハッしてと横を向くと、またぱたぱたとうちわを煽ぐ。 ひょっとして文ちゃんって分かりやすい? 僕はもう一本冷蔵庫からビールを持ってくる。 そして、できる限りのイケメン顔をし、文ちゃんに話しかける。 「ど、どう?飲む?」 よ、よし。 まぁ本当なら「どう?文ちゃんも飲む?」と言いたかったが、 直前で、文ちゃんと言う勇気がなくなってやめた。 でもそんなことは関係なかったようだ。 文ちゃんは僕の手の缶ビールを見つめながら生唾を飲み込んだ。 でも、文ちゃんはぷいっとむこうを向いて、言う。 「ま、まだ仕事が終わってませんから……。」 どうやら文ちゃんがくそ真面目で融通がきかないって言うのは本当みたいだ。 本で読んだとおり。 「じゃ、じゃあ僕が飲んじゃおっかなぁー……。」 あ……、と文ちゃんがすごく残念そうな顔をする。 あー、いいなそんな顔も。 ほんとにお預けにしちゃおっかなぁ……。 でもそれはダメなのだ。 ある計画を遂行させるためには、ここで折れるわけには行かない。 「飲んじゃいなよ、ほ、ほら誰にも言わないからさぁ!」 僕は声をちょっとひそめて言う。 文ちゃんはすごくすごーく迷ったような顔をして、 二人しかいない部屋の中で、キョロキョロと周囲を確認すると、 すっと僕の近くに来る。 「どうぞ。」 僕は文ちゃんに缶ビールを渡す。 文ちゃんは目を輝かせ両手でビールを受け取ると、 プルタブに細い指をかけ、 そして…… ブシューーーッ!!! 「きゃぁぁっ!!!」 やった!大成功!! みるみるうちに文ちゃんはビールまみれになる。 文ちゃんはぷるぷる肩を震わせ、缶を握りつぶす。 くるぞ、くるぞ! 文ちゃんはキッと僕を睨みつけると怒鳴った。 「……ばっ、ばかぁぁーーーっ!!」 文ちゃんは何気に真剣に怒ったのか、中身のあふれ出た缶を思いっきり僕に向かって投げつけた。 イライラしながら新しいバスタオルを引っつかむと、部屋のドアを思いっきりバンっと閉めた。 б 「あーーっ!!私のプリン食べてるー!!」 文ちゃんが怒る。 「もーっ!!トイレ臭いです!!」 文ちゃんが顔をしかめる。 「私のカメラ勝手に触らないで!!メモ帳も!!!」 文ちゃんが僕の手からひったくる。 「食べ残し汚いです!!ちゃんと食べてください!!」 文ちゃんが怒鳴る。 「話しかけないで!!テレビ消して!!」 怒鳴る。 「洗濯物一緒にしないで!!」 「フケ落とさないで!!」 「羽さわるなヘンタイ!!!」 「ずっと家にいるんですか??」 「毎日何してるんですか??」 「お腹すくんですか??」 「恥ずかしくないんですか??」 「なんかゴミ箱からナマ臭いにおいがするんですけど……」 「口くさいです……」 「なんだか虫みたいですね……」 「こっち見ないでください……」 「汚い……」 「臭い……」 「きもち悪い……」 「最低……」 文ちゃんは、日に日に僕に対してイライラしていった。 僕はだんだんとエスカレートして行った。 文ちゃんを困らせたい、怒らせたい。 僕はだんだんと物足りなくなっていた。 怒られるのはもう飽きちゃった。 次は、文ちゃんを、泣かせたい……。 そして僕は、最低なことをしてしまった。 б 「いってきまーす!」 いつも朝からカリカリしていた文ちゃんだったが、今日は元気よく飛び出す。 いつもなら早朝からたたき起こされた僕は、 中途半端に寝たために頭がぼーっとしているはずだが、 今日は違った。 どきどき。 僕は部屋の半分の、文ちゃんの机に近寄る。 まるで、小さい頃兄貴の部屋に勝手に入ったときのような背徳感。緊張感。 文ちゃんのスペースを探検するのは初めてではい。 いままでに何度も本人に内緒であさったが、あるのは新聞とか写真やメモ文房具だけで、 僕の興味を引くには充分だったが、あさっても特に面白くは無かった。 だが今日は違う。 今日は僕がいつも怒ってばっかりの文ちゃんに、 仕返ししてやる番なんだ。 お、これは……。 僕は、文ちゃんの机のペンたてから、 文ちゃんがいつも使っている羽のついた大きなペンをとる。 ぱたぱた。 羽の部分で僕のニキビだらけの頬を掃く。 文ちゃんのクセだ。 ちょっとアイデアにつまると、羽で頬を撫でたり、羽の先を咥えたりしている。 僕は身体のいろいろな部分を、ペンの羽の部分で撫でる。 こうしていると、なんだか文ちゃんを汚してる気分になる。 はぁー。はぁー。 だんだんと興奮してくる。 年季の入ったペンだ。 宅配便が届いたときに、ちょっと借りて使ったことがある。 なんだか自分がかっこよく見えて気に入った。 しかしそのまま下駄箱の上に置きっぱなしにしてしまい、 帰ってきた文ちゃんに勝手に使ったことがばれてしまった。 あのときはすっごい怒られたなぁ。 何度お世話になったかな、文ちゃんの怒った顔。ひひひ。 そんな大事なペンを無用心に置くなんてだめだなぁ。 僕は、両端を掴んで、折り曲げるように力を入れる。 メキメキッ 文ちゃんの大事なペンは、痛々しいほどに折れ曲がった。 折れた瞬間、電気のような快感と征服感、背徳感が雷のように、 僕の背筋を駆け抜けた。 僕は身震いした。 僕はそっとそのペンを、イスの下に置いた。 任務を終えると、深呼吸して、ひたいの汗をぬぐう。 文ちゃん、 いったいどんな顔するんだろう。 待ち遠しくて、いつもなら眠る時間なのに、眼はさえたままだった。 б 日が暮れてきた。 夕方5時。そろそろ文ちゃんが帰ってくる頃だ。 僕は待ち切れずに玄関でずっと文ちゃんの帰りを待っていた。 どんな顔するんだろう。 文ちゃん。 かわいい文ちゃん。 とんとんと、階段を上ってくる音が聞こえる。 キタ!! 足音は玄関のドアの前で止まると、ガチャっとドアをあけて、 夕日に綺麗なさらさらの黒髪を、淡い落ち葉色に染められた文ちゃんが、 帰ってきた。 手には、新聞の束を抱えていた。 「ただい……あっ、」 僕がいることにビックリしたのか、文ちゃんは少し驚いたような顔を見せた。 「……え?」 僕はドキリとした。 文ちゃんの目には、涙が浮かんでいたのだ。 文ちゃん……泣いてる!? どうして!?ま、まさか、ば、ばれてる?? 文ちゃんは横を向いてくっと涙を拭くと、無理して明るい声を出したように言った。 「お、お腹すきました!?あ……カレーパンって食べ物を見つけたんですけど……」 文ちゃんはポケットをごそごそと探ると、 スーパーで買ったような安っぽいカレーパンを取り出した。 「すっごいおいしいんですよ!夕食が出来るまで食べててください。」 そう言った文ちゃんの顔は、 今までどおりの元気な文ちゃんの顔だったが、 どこか無理をしていて、寂しそう、悲しそうだった。 文ちゃんから受け取ったカレーパンは、 文ちゃんの体温で、暖かかった。 文ちゃんが胸に抱えている新聞の束は、 破れ、泥だらけだった。 б なんだか台所から出て行けという風にカレーパンを手渡され、 僕は部屋で夕食を待つまでの間、ずっとさっきのことを思い返していた。 なんで文ちゃんは泣いていたんだ? あのことがばれている訳では無さそうだ。 ひょっとして僕の見間違い? そうこうしているうちに、文ちゃんが夕食を運んできた。 「お待たせしました!」 がちゃと僕の前にカレーライスが置かれる。 いい匂い。 もぐもぐ 「うん、今日もおいしい。」 文ちゃんはいつものように美味しそうに自分の作ったご飯を食べていた。 もぐもぐ…… 僕は、僕がした酷いイタズラのことを、後悔し始めていた。 なんか、やっぱり酷かったかな……。 文ちゃん、……ほんとに泣いちゃうかも……。 ドクン 僕の心の中に、悪魔が生まれた。 文ちゃんが泣く顔、 やっぱ見たい……。 文ちゃんは、いつものように美味しそうに、カレーライスを食べていた。 「おいしくありませんか?」 びくっ いきなり声をかけられて僕はビックリする。 「あんまり食べてないですよね。お腹でも痛いんですか?」 「そ、そんなこと、お、おかわりあるかな……?」 僕は皿に残っていたカレーを思いっきりかっ込む。 文ちゃんは面白そうに笑うと、 待っててくださいと僕の皿を持って台所へ行った。 その隙に、文ちゃんの机のイスの下に置いたペンを、 台所でカレーをよそっている文ちゃんにばれないように、 すばやくポケットの中に入れた。 ………やっぱ、……酷いことしたかな……。 б 文ちゃんがお風呂から上がってくると、僕は文ちゃんのためにビールを出しておいた。 「またイタズラですか?」 文ちゃんがあやしい目を僕に向ける。 僕は慌てて首を振ると、文ちゃんの前でふたを開ける。 文ちゃん満足したような顔をすると、 珍しくすっと僕のむかいに座って、グラスを突きつけてきた。 「いただきます。」 缶を傾けると、こぽこぽと美味しそうな音がする。 文ちゃんはコクコクと、美味そうにビールを飲んだ。 今日は酔わせて寝かせてしまおう。 でも……文ちゃんてどのくらいで酔っ払うんだろ? 天狗だし……お酒強そうだなぁ……。 予想に反して文ちゃんはすぐに酔っ払ってしまった。 「ほらほら!写真撮ってあげますからぁ、笑ってください!」 「あ、ははい。」 「あははは!ヘンな顔ー!」 文ちゃんは眼に涙をためて笑った。 文ちゃんは楽しそうだった。 今まで怒った顔しか見たこと無かったけど、 文ちゃんって、笑うとこんなにかわいいんだ。 頬を赤らめ、楽しそうに僕をつつく文ちゃんは、とってもかわいかった。 でも、必死で悲しみを押し隠したような、 今にも泣き出してしまいそうな、悲しい笑顔だった。 僕の、心の底は、後ろめたい気持ちでいっぱいだった……。 僕のしたことがばれたら…… 文ちゃんの泣き顔なんて、やっぱり見たくなかった。 文ちゃんはすぐにちゃぶだいに突っ伏して寝てしまった。 すぅすぅとかわいい寝息を立てている。 疲れてたんだろうか。 気づけば5本も開けていた。 僕ももうくらくらだ。ほんとはあまり飲めないのに。 でも飲んだのはほとんど文ちゃんだ。 僕も文ちゃんと同じようにちゃぶ台にもたれかかると、 すぐに眠ってしまった。 б ……ねぇ ………おきなさい うーん、その声は……。 僕は重い頭をもたげる。 「こんばんは。」 目の前には八雲紫がいた。 またまわりがぼやけている。 あの時と同じだ。 「久しぶりね。」 あ、はい…… 「今日はお願いがあってきたの。」 お、お願い……? 八雲紫は少し黙ると、少し声を落として言った。 「あの子を………」 …………。 「あの子を、あまりいじめないであげて。」 どきっ 八雲紫の少し強い声色に、 僕はドキッとしてポケットをまさぐる。 「そう、分かってるわね。褒められることじゃないわ。」 僕は俯いた。 八雲紫は重々しく口を開いた。 「言うべきじゃないと思ってたけど、言うわね。」 何を考えているか分からなかったが、すこし悲しそうに言った。 「あの子ね、もう幻想郷に戻れないの。」 ……え? どういうこと?? よく分からなかった。 八雲紫は僕の表情を見て取ったのか、続ける。 「仲間に裏切られたのよ。」 ど、どうして……!? な、仲間に!? え!? 戸惑う僕に、八雲紫は言った。 「誰かが言い出したのね。あいつが自分の記事を取ったって。」 ………。 「あの子はクソ真面目だから、嫌ってる仲間は多かったんじゃないかしら。」 そんな………。 「毎日毎日痛々しいくらいに虐められてね。あなたなら分かるでしょう?」 ……はい。 「だから助けてあげた。見てられなかったの、毎日傷をさすりながら木の影で一人で泣いてるあの子を。」 ………。 「あなたならあの子のことを分かってあげられると思ったのだけれど。」 ……。 ショックだった。 文ちゃん……。 知らなかった、文ちゃんがそんな目に遭ってるだなんて。 ゆかりんの言う事だから適当なことかもしれないけど、 今日の文ちゃんの見せた寂しそうな顔を思い出すと、 やっぱり嘘とは思えなかった。 心臓が、細い糸で縛られたように、 きゅうっと痛んだ。 「あの子、今日幻想郷に帰して欲しいって私に頼んできたの。」 ………え? 「もちろん私は反対したわ。そういう決まりで逃がしてあげたんだから。」 ……。 「でもあの子、あと一度でいいから自分の書いた新聞をみんなに見せたいって聞かなくてね。」 ハッ 僕は思い出した。 今日文ちゃんが帰ってくる時抱きかかえていた新聞を。 文ちゃんが毎晩遅くまで、一生懸命書いてた新聞。 泥だらけになって、破れた新聞。 「酷いわよね。」 ショックだった。 文ちゃんの話。今までぜんぜん気づかなかったこと。 あんなに元気に振舞ってたのに。 文ちゃんの笑顔を思い出すと、涙が出そうだった。 それなのに、僕は何にも気づかずに、 文ちゃんを怒らせてばっかり。 僕は自分が恥ずかしくてたまらなかった。 八雲紫の言葉は、僕の胸に、重く響いた。 「それじゃあ、お休みなさい。もう会うことも無いかもね。」 遠退く意識の中、僕は思った。 昨日文ちゃんは何を思っていたんだろう。 仲間から裏切られて、 自分のプライドも、心も、ズタズタに引き裂かれて、 家に帰ってもこんな僕しか居なくて、 それなのに元気に笑って、おいしそうに夕食を食べて……。 僕に見せてくれたあの笑顔。今にも泣き出しそうな笑顔だった。 そんな辛くて辛くてたまらないはずの文ちゃんの大事なペンを、 僕はイタズラに、最低な理由で壊してしまった。 僕は、自分が嫌でたまらなかった。 今までそう思ったことなんていくらでもある。 でも、今の僕は、本当に最悪で最低で、醜かった。 僕がだらしないから。 僕がダメだから、 文ちゃんは無理して笑ってたのかな。 僕の眼には涙が溢れていた。 涙が止まらなかった。 目覚めたら、まだ文ちゃん、僕の前に居てくれるかな……。 僕はポケットの中のペンを、ぎゅっと強く握り締めた。    fin    途中>>397氏のレスを無断で引用しましたことお詫び申し上げます。