※  ご  注  意  ※    グロ、エロ、暴力、陰湿、猟奇的な表現はありません。ご安心ください。    貴方のキャラのイメージを崩す可能性があります。ご注意ください。    中身の無い話です。ご注意ください。 「あら、珍しいわね。てゐが料理?」 「いいじゃん別にー。」 興味深そうにニヤニヤしてくるえーりんを追い払うと、 あたしは最後にもう一度作り方をおさらいし、早速調理にとりかかる。 「よいしょ。」 どんっと台をキッチンの前において乗る。 へへ。 台の上に乗ると、なんだかいつもと違った世界が見える。 キッチンの上には、イキのいいにんじん2本と、卵2つ。 あと塩とか砂糖とかベーキングバウダー。 あたしは腕まくりをすると、にんじんを冷たい水で洗って皮をむく。 おいしそうなにんじん。 皮をむいたらごりごりとすりおろしていく。 型にバターを塗って小麦粉をまぶす。 えーと、次は何するんだっけ。 作る前に何度も予習してイメージトレーニングを重ねたのに、 いざ本番になると忘れちゃう。 両手で型を持ちながら、開いてあった本を覗き込む。 あ、そうだそうだ。 オーブンのスイッチを入れ、 ボールに卵、砂糖、さっきのすりおろした人参、 あと少しのサラダ油を入れて混ぜる。 あとベーキングパウダー、シナモン、塩少々。 おいしそうなオレンジ色になってきた! どれどれちょっと味見……。 うえ…… どろどろしてて、やっぱまだおいしくなかった。 どろどろのできた液体を型に流し込んで、 オーブンに押し込む。 えーと、170℃で30分かぁー。 早く焼き上がらないかなぁ。 ―30分後― チンッ! できた!! 急いでオーブンをあけると、ふわっといい香りが広がる。 にんじんケーキの完成だ! みんなおいしいって言ってくれるかなぁ。 б 「んーー!!」 私はシャーペンを置いてぐいっと伸びをすると、ふいと時計を見る。 3時かぁー。 んー!ちょっと休憩しようかな。 おやつおやつ! 勉強したら糖分取らなきゃね。 私はパタンと参考書とノートを閉じると、 おやつをもとめ台所へと向かった。 廊下を歩くと、ふっといいにおいがする。 あ、なんだろこのにおい。 私はにおいにつられ台所へと向かうと、 なんだかおいしそうに焼けた物を乗せたお皿を持ったてゐを発見した。 「あっ、レイセン!」 てゐが私に気づくと、嬉しそうに駆け寄る。 「ケーキ作ったんだよ!」 てゐが嬉しそうにそう話す。 ふーん、てゐがケーキを…… なるほど、昨日からずっとうちの本棚をあさっていると思ったら、 こういうことだったのか。 へー、でもちょっとおいしそうじゃん。 「おいしそうだね!てゐ!」 私が、食べたいという意味を主成分にそう褒めると、 てゐは嬉しそうな顔をさらにぱっと明るくさせ言う。 「切ってあげる!」 てゐは台所から大きなパンきり包丁を持ってくると、 不器用に包丁をケーキにぐりぐりと押し付ける。 上手く切れないのかふにゃふにゃとケーキは形を変え、 てゐの包丁から逃げる。 あーあー、せっかく綺麗だったのにそんなにしちゃって。 ふふ、かわいいなぁ。 手を取って代わりに切ってあげようかと思ったが、 なんだか仕上げを取っちゃうみたいで悪い気持ちがしたのと、 一生懸命なかわいらしいてゐを見ていたかったので、放っておいた。 「あっ、……わわっ……。」 切りあがる頃にはもうぐちゃぐちゃになっていた。 あーあ、言わんこっちゃない。 言ってないけど……。 残念そうなてゐの顔。 「ご、ごめん……。あんまうまく切れなくて…。」 「いいよいいよ!てゐがせっかく切ってくれたんだから。」 私がそう言うとてゐの顔がぱあっと明るくなる。 てゐが急いで持ってきた銀色のフォークを受け取る。 小さく切ってひとくち。 てゐが不安と期待の織り交じったキラキラ顔でケーキの行く先を見つめる。 もぐもぐ ふわっと口の中に広がる香ばしいかおりと、 甘くてしっとりふわふわのスポンジ。 あ、にんじんはいってる。 うん、いけるいける! ふたくち目。 てゐが耐え切れなくなったのか、私に聞く。 「ね、ねぇレイセン。おいしい……?」 てゐがキラキラした眼を私に向ける。 ちょっと不安で、ちょっと期待、ちょっとドキドキ。 おいしいよって言ったら、飛び上がらんばかりの、そんな顔。 あ……、そんな顔されるとなぁ……。 私はふたくち目をほお張ると、カタ、と皿を机の上に置く。 んぐ、っとケーキを飲み込むと、渋い顔をして言う。 「んー……。イマイチかな……。」 ドキッと、てゐの顔が曇る。 「……え…?」 私は追い討ちをかけるように言う。 「てゐ塩の分量間違ったでしょ。ちょっとしょっぱいよ。」 「え、……っでも、でも、ちゃんと本見て作ったんだよ!?」 「だめだよてゐ。お天気とか気温によって必要な調味料って変わっちゃうんだからさぁ……。」 勿論私の言うことなんて出鱈目だ。 どっかの漫画に書いてあったようなことをそのまま言う。 でもてゐの顔はどんどん残念そうになって、言葉をつまらせる。 「え、でも………でもっ………!」 あ、これ以上やると泣いちゃうかなぁ……。 いいや言っちゃえ。 「あんまおいしくないよ。」 てゐが金槌で打たれたようにガンッと固まる。 そして次第に目にじわじわと涙をためる。 ふふ、せっかく今日てゐが頑張って頑張って作ったのにね。 酷いよねー、そんなふうに言わなくてもいいのにねー、ふふ。 「あら、いい匂いね。」 そうこうしているうちに師匠が匂いをかぎつけたようだ。 小さいイナバたちもわらわらと寄って来る。 師匠が早速ケーキを見つけ言う。 「私にも食べさせて頂戴。」 「え……やだよ、……。……失敗しちゃったもん……。」 てゐは拗ねたようにそう言うが、師匠は諦めない。 「あら、ウドンゲばっかりずるいわ。いいでしょ食べさせなさい。」 がやがやと人が集まってくると、 そんな会話を耳に、私はすっと部屋を抜け出した。 台所から、わいわいと賑やかな声が聞こえた。 ふふ、本当はおいしかったよてゐ。 また作ったら食べさせてね!    Fin レシピはhttp://www.town.shikaoi.hokkaido.jp/square/cooking/n-page/index34.htmlからお借りしました。 ぼろぼろになったけど結構おいしく出来ました。