「今日の授業は特別講師の先生のお話です。幻想郷一の新聞記者、射命丸文先生!」 寺子屋の子供たちの憧れの眼差しを浴びて照れくさそうに笑う文。 司会役の慧音に促されるまま自分の記者としての仕事について話し始める 『新聞記者というのは、常に人に興味を持ってもらえる話題を探さなければいけません。  一見派手な印象を持たれがちですが、地道な努力と丹念な取材の成果が輝かしいスクープになるんです』 うどんげ「冷静に聞いてくれ、犬走さん。『文々。新聞』に掲載されたこの記事「氷精天国」には疑わしい点がある。      風邪薬の開発のために人里の医者が冷気を操る妖精と契約したという話だが、我々の情報網でも      全く裏付けが取れないんだ。妖精が人里に下りた事実はないし、医者に至っては実在すら怪しい」 椛「……文さんはひょっとしたら情報元に騙されたのかもしれません。最近何とかしてスクープを取ろうと   焦ってて、疲れていたようですし……文さんの将来のためにも、どうか内密に……」 『ですが気をつけなければならない事があります。記事の内容が間違っていたり、悪意をもって捏造されるようなことがあれば、  新聞はみなさんの信頼とメディアとしての存在意義を失うことになるでしょう』 椛「本当にここで取材をしたんですね?妖精たちの集会を?」 文「……ここで人間と契約した氷精に会ってインタビューしたの。その後一緒にお昼も食べたわ。   なんであなたまで私を疑うの!?あなた私の部下でしょ、私を守ってよ……」 椛「昼食をとったのはそこのお店?」 文「そうよ」 黙って屋台の看板を指差す椛 『営業時間18:00〜26:00 みすちー』 文「……!!」 椛「医学は永遠亭の連中の専門分野です。彼らはすぐに何もかも調べあげて真相を暴き出しますよ!   文さん、私は真実を知りたいんです!教えて下さい。あなたは本当に取材に基づいて記事を書いたんですか?」 「……私の話はこれまでですが、最後に一つだけ。皆さんが私のように新聞記者になれたとしたら、 その時大切なのは初心を忘れないことです。一人でも多くの人に真実を伝えたいという気持ち。 私のような記者になるには、それを常に肝に命じて……」 文は話し続ける。最初から慧音も子供たちも居ない、たった一人の日の暮れかけた教室で。 ──犬走椛の調査により射命丸文の書いた記事のうち27が捏造されたものと確認。   妖怪の山の天狗たちは連名で己の眷族が引き起こした不祥事を公式に謝罪。『文々。新聞』は発行停止となった──