提供:門板「幻想郷の女の子をいぢめるスレ」 ・・・ みんなからハブられて、いじめにいじめぬかれた結果 魔理沙は鬱と対人恐怖で家から出られなくなってしまいました。 なんてことを花のある場所を巡って移動を続ける幽香が知ったのは ごく最近のこと、いじめっ子な幽香は落ちてた新聞を読んでピンときたのである。 ある日、魔理沙がいつものように自己嫌悪と倦怠感でベッドにうずくまっていると ドアがノックされる音が響いた。 魔理沙はかなり沈んだ状態であったので、ノックなど耳に入らず死んだように ベッドに横たわっていたが、ノックは繰り返され止むことはなく、だんだんと ノックの音は連続的に、大きくなっていった。 誰かが自分の名前を呼んでいる。いるんでしょ、開けなさいよ。 魔理沙は思った。いまさら誰だろう、うるだいな、放っておいてくれ。 どうせ私はもう誰からも必要とされていないんだ。 魔理沙が枕で顔を覆って耳を塞いだのと同時に、ドアが暴力的に破られた。 誰かが家の中に入ってくる。魔理沙は恐怖した。 誰だよ、いやだ、もういやだ、私に干渉しないで、私の中に入ってこないで! それが昔は魔理沙自身が他人に対して行っていたことであるにもかかわらず 魔理沙はそのように思考停止してしまうのであった。 「霧雨魔理沙?一体どうしたのよ。みんなから無視されて落ち込んだの?」 枕をどけるとそこには緑色の髪をした少女。 「幽香かよ・・・なんだよ・・・何しに来たんだよ・・・」 魔理沙は怯えた声でそう言うと、幽香を避けるようにベッドの反対側に移動する。 それを見た幽香は溜息をつきながら言った。 「いじめられて落ち込んで、そんな泣きべそで寝込んでるわけ?全く意気地無しね」 「うるさいな・・・お前に何がわかるんだよ、お前も私をいじめにきたのか?」 魔理沙はその発言をするにあたって涙をぼろぼろこぼし、顔を歪ませて 半泣きで幽香に抗った。快活で横暴な魔理沙の面影は、そこには無い。 「馬鹿。貴方それでも魔理沙なの?苛めた奴らの思う壺よ、もっとしゃんとしなさい」 励ましの言葉であった。だが、強い口調は今の魔理沙には高圧的なものとして伝わり 魔理沙はシーツにくるまって泣き、「だって・・・だって・・・」と言葉にならない言い訳を 行いながらしゃくりあげるばかりである。 取り付くしまもないな、幽香はそう思って説得を諦め、手にしたアタッシュケースを ベッドの上にドカンと置くと、施錠を解き、中身を取り出しはじめた。 「見なさい、魔理沙」 魔理沙がおそるおそる、目を覆っていたシーツを下げて目の前にあるものを見やった。 そこに広げられているのはメイド服であった。だが、あの紅魔館の超時空メイド長や 妖精メイドが装着しているそれとは一見してデザインの違うものだった。 青いワンピースにフリルのついた薄くピンクがかった白いエプロン、同じ色彩のホワイトプリムに 胸には大きな赤いリボンがついている。魔理沙はそれをどこかで見かけた覚えがあった。 「さぁ、これに着替えなさい。大丈夫、絶対魔理沙だってバレないから」 幽香はとんでもないことをさらっと言ってのけ、更にアタッシュケースから散髪道具一式を 取り出すと、メイド服を持って魔理沙に迫った。 「な・・・な、何するんだよ、なんなんだよそれ」 「覚えてないの?昔夢月が着てたメイド服、あれと同じのを持ってきたのよ」 「そんなものを私に着せて・・・どうするんだ」 「決まってるじゃない?変装よ、変装。これから貴方は夢月になるの。髪も切って揃えて  柔軟剤でさらさらヘアにしてあげる。きっと似合うし、絶対ばれないわ」 魔理沙は幽香が何をたくらんでいるのかよくわからなかった。絶対裏があるに違いない。 連れ出して皆の見世物にして笑いものにする気だ。絶対そうだ。そうにきまってる。 「いやだ、夢月はショートだったろ、私は髪切るのやだ」 幽香は魔理沙の反対に耳を貸さず、ベッドにあがりこみ、魔理沙を壁の端まで追い詰めて びくつき何か言おうとするも声が出ず怯えすくむ魔理沙の背中に手を回し、抱きかかえると 「魔理沙、私はね、貴方が他の連中に苛められるのが我慢できないだけ」 「・・・え?」 「魔理沙を苛めていいのは私だけ。幻想郷の苛めっ子はこの私。違う?」 無茶苦茶である。魔理沙はその無謀な論理についていくことができなかった。 何か反論せねばならないのだろうが、喉から言葉が出てこない。久しぶりの人肌の温もりが 混乱とあわせて、魔理沙から正常な思考力を奪っていた。 「魔理沙、貴方は今日から夢月になるの。夢幻館に来ればいいわ。あそこにはもう  エリーしか残っていないけど、ここで周りに怯えながら暮らすのと、私にだけ苛められて  三人で一緒に暮らすのと、どっちがいい?」 究極の選択だった。魔理沙はなかなか答えを出せなかった。 「幽香」 歩いていると、不意に声がかけられた。 「誰?あぁ、さもしい人形遣いじゃない。どうかしたの?」 アリスが人形を従えて幽香を睨んでいた。普段のお洒落で綺麗な彼女からは 想像もつかない、鬼のような形相。伊吹萃香のような顔という意味ではない。 「魔理沙をどこにつれていくつもり?」 「魔理沙?どこに魔理沙がいるって?」 幽香は本気で解らないという顔で答えた。幽香の隣にいるのは、夢月の服を来た、 夢月になることを選んだ金髪の少女であり、もはやこれは霧雨魔理沙ではなかったからだ。 「いくら恰好で誤魔化しても私の目は欺けないわ。もう一度聞く。魔理沙を何処に―」 幽香はアリスの声を遮って言った。 「ねぇ夢月、頭のおかしい子かしら、あれ」 夢月と呼ばれた少女は首を縦に振って答えた。綺麗なさらさらの金髪が揺れ、陽光に煌いた。 そのやり取りにアリスは怒りをさらに募らせ、スペルカードを取り出した。 「夢月は悪魔、そいつは人間よ、貴方も妖怪ならそんなこと解るでしょ」 幽香は首を傾げ、惚けてみせた。 「え?幻想郷縁起では貴方は元人間の魔法使いと書かれていたけど?」 「いい加減にして。魔理沙は赦し難い人間なの」 「人間風情に赦し難いも何も感じないわ。私は強い者にしか興味がないから。それとこの子は―」 幽香は彼女を振り返って言った。 「夢月よ。そうよね?夢月?」 彼女はYesと答えた。 ・・・ 夢幻館にやってきたメイド服の金髪少女。 幽香は時に少女を、時に苛め、時に慰め、時にけなし、時に慈しみ、時に愛した。 朝の紅茶を用意し、幽香の話相手になり、幽香の外出時には見送り、帰ってくれば 浴場で身体を洗うのを手伝い、寝る前にはまた話相手になり、時には一緒に寝た。 それは本物の夢月の行動とはかけ離れていたかもしれないが、メイドらしいといえば メイドらしい生活であった。 もっとも、食事の用意や家事全般はエリーがやっていたのだけれども。 少女は昔と比較すると信じられないくらい寡黙になった。幽香の話相手といっても 受身に聞き手に回ることが多く、それ以外の時間はほとんどを椅子に座ってぼうっとしたり 部屋でベッドに横になったり、リビングに立ち尽くしていたりした。 けして外に出なかった。外は危険で怖いと、そう思っていた。自分がなぜそう思っているのかは 記憶がおぼろげになり、思い出せなくなっていったが、外に出てはいけないと ただそれだけは彼女の頭の中から消えることはなかった。 エリーは家事以外では門番をやり、幽香は昼間は出かけて帰ってこない日も多かったので 夢幻館の中では、彼女だけがポツンといることが少なくなかった。 歩くたびさらさらの毛が揺れた。 外出しなくなって、元来白かった肌がさらに白くなったが、それが病的で 儚く、それでいてエプロンドレスによく映えて、綺麗だった。 ・・・ 「幽香様、お帰りなさいませ」 「只今、エリー。今日は博麗の巫女に勝ったわ」 「それはおめでとうございます」 「当然よ。私を誰だと思ってるの?」 ・・・ まだ頭のおかしい連中がいる。ここには魔理沙なんかいないのに。 魔理沙を渡せっていろんな連中が私に挑戦してくるの。滑稽だと思わない? 夢月は答えなかった。幽香の部屋の大きなベッドの上で、夢月は幽香の隣に寝て スースーと安らかな寝息を立てていた。 幽香はそれを見て至極満足そうな笑みを浮かべ、幸福を噛み締めた。 そうだ、夢幻館に魔理沙などいない。 魔理沙がいるのは私の心の中だけだ。 私はこの少女の名前を、心を、過去を、未来を、現在を、全て掌握した。 全て支配した。幻想郷の他の連中が躍起になって苛めていた少女を、そいつらから取り上げ 私一人のものにした。そう、ひとりじめ。最高だ。私にこそ相応しい。私だけの特権。 幽香は一瞬目に光悦とした何かを浮かべ、そして夢月を見やり、そのさわり心地のよい 金色のストレートショートを優しく撫で、おでこにキスをし、灯りを消して、同じ布団に潜ると 「おやすみ、奴隷ちゃん。ずーっと死ぬまで可愛がってあげるんだから」 そう呟いて、目を瞑った。 きっと明日も楽しい一日になる。頭のおかしい連中が私に勝負を挑んでくる一日になる。 それがたまらなく楽しみだった。幽香はすべてにおいて満たされていた。 OVER END