射命丸のせいで魔理沙が自殺して射命丸が苛められる話 アイデアを頂いたスレ:ウフフ板 幻想郷のキャラをいぢめるスレ2 543氏 ---------------------------------------------------------------------------------------------- 霧雨魔理沙が自殺した。 その衝撃的なニュースは、2、3日のうちに幻想郷に伝わった。 遺体の第一発見者はアリスだった。 魔理沙は布団の中で亡くなっていたので、最初はただ寝ているものと思ったらしい。 だが、魔理沙から生体反応、魔力反応共に0なのを感じ取ったアリスは、 すぐさま魔理沙を永遠亭に運んだ。その身体はすでに冷たくなっていたのだが…。 いかに月の頭脳・永琳といえど、1度死んでしまった者を生きかえらせる事は出来ない。 西行寺幽々子は、生者を死に誘う事は出来ても、魂の抜け殻、既に死んでいる肉体には干渉する事は出来ない。 つまりは、手遅れだったのである。 魔理沙が自殺したという証拠はすぐに見つかった。 魔理沙の家。テーブルの上に毒薬と手紙が見つかったからだ。 毒薬を調べた結果、その毒は服用後数時間以内に、眠るように身体の各部分を低下させ死に至らしめるものだった。 そして手紙には……遺書、というよりは、抗議文のような内容がしたためてあった。 『私、霧雨魔理沙は、文々○新聞の記事の内容に抗議する為、自らの死をもって抗議する』 この一文で、私、射命丸文の生活は一変した。 心当たりは山ほどあった。 記事の面白さを優先して、多少事実と違う事を書いてきた事は自分でも自覚していた。 ただ、それくらいは軽いジョークとして笑い飛ばされる程度のものだと思っていたのだ。 『ペンは剣よりも強し』 誰が言った言葉だったか、私はこの言葉が好きだった。 どんなに強い吸血鬼も、宇宙人も、鬼も、人間も、記事1つで一喜一憂し、幸せにも不幸にも出来る。 だが、不幸になる者が出てこようなどとは夢にも思わなかったのだ。 新聞の購読者から、多少の侮蔑を受ける事くらいは何でもなかった。むしろ優越感を感じたものだ。 しかし、今では、魔理沙を知る者のほぼ全員から、私は『敵』として認識されていた。 本当に、背中の羽をもぎ取られて、一生飛べなくなるくらいの悪意が私に向けられるようになった。 だがそれでも、私は皆に謝罪の言葉を述べに行かなければならなかった。 にとりには石を投げられた。だが悲しいかな、私の身体能力では石が当たる前に身体が反応して避けてしまう。 しかしそれは誠意のない態度だった。 にとりは泣きながら石を投げ続けた。ごめんなさいと言いながら、私は石を避け続けた。 弾幕ごっこにもならない不毛な争いは1時間ほど続いた。 守矢神社では特に変わりがないように見えたが、早苗は明らかにやつれた様子だった。 二柱である神奈子と諏訪子は、一言も発しなかったが、私にかなり苛烈な神気をあててきた。 その場にいるだけで、身体に数トンの重りを付けられているかのようだった。 永遠亭では、輝夜と永琳は普通に応対してくれたのが唯一の救いだった。 さすがに1000年近くも生きている2人にとっては、人間の死は見慣れた光景なのだろう。 鈴仙は納得できない様子だったが、何か口を開こうとする度に永琳に制止されていた。 てゐは、屋敷を出ても最後までついぞ見かけなかった。 ただ、竹林を出るまで、心臓を射抜くような殺気がずっと私に向けられていた。 竹林の出口で、私は誰に言われるでもなく、深々と頭を垂れた。 紅魔館に入る事は出来なかった。 現在は非常事態との事で、外部からの訪問者は、知人であってもしばらく舘に入れないとの事だ。 そう教えてくれたのは、門番・美鈴である。 しかし、美鈴は左腕を骨折していた。 驚いた私は、おそるおそる聞いてみた。 「何が…あったのですか?」 「ええ、妹様が…連日大暴れなさっているんです」 「やっぱり、魔理沙さんの事で…」 「妹様は、魔理沙の事をとても気にいっておられたんです。もちろん、お嬢様もパチュリー様も咲夜さんも、ですが…」 「……」 「妹様は泣きじゃくって地下室を破壊しようとなさいました。お嬢様と咲夜さんと私で妹様をお止めしたんですが」 「それで骨折したんですね。レミリアさん達は大丈夫でしたか?」 「お嬢様達は大丈夫です。私が真っ先に前に出て妹様のパンチを受けましたから」 「フランさんの……全力を?」 「気を防御に集中して、大分妹様の力を受け流したんですけど、それでも左腕は粉々に折られてしまいました。 『美鈴だから、骨折で済んだのよ。並の妖怪だったら、妹様の全力を受けたら骨も残らないわ』って、咲夜さんにちょっと褒められました」 「そ、そうですか。ところで、パチュリーさんはどうしてます?」 「パチュリー様は…相当なショックを受けてしまったようで、しばらくベッドから立ち上がれなかったほどなんです。 小悪魔さんの話によると1日中泣いておられるそうで、食事もあまりお摂りにならない様子です」 「レミリアさんは?」 「お嬢様は冷静に努めていますが、やっぱりショックは隠し切れないみたいで、時々疲れた表情を浮かべて…それから」 「それから?」 「何か、こう、冷たい感じに戻ってしまったというか、霊夢達と出会う前の、無慈悲な感じに戻ってしまったんです。 私は最近の、お優しい感じのお嬢様が良かったのですが…」 「分かりました。では、しばらく紅魔館には寄らない方がいいですね。1、2ヶ月してから、改めて参ります」 と、形式的な会話の途中で、突然美鈴が後ろを振り向いた。 私もその数瞬後気づいた。 レミリア・スカーレットが舘の窓から私を見ていた。 ただ見ているだけなのに、竹林で感じたてゐの殺気の数十倍もの殺気。 私は即座に反応していた。全速力で飛び立ち、湖を5秒で抜け、森を20秒で越え、ようやくスピードを緩めた。 身体中冷や汗をかいていた。会話を切り上げて逃げ出してしまったのは相手に失礼だ。 だが、そんな事を言っていられなかった。後5秒、あの場にいたら、おそらく私はレミリアに殺されていただろう。 さすがに今日はもう家に帰ろう。 そう考えて帰宅した私を待っていたのは、郵便箱に詰めこまれた紙片の山だった。 それは何の変哲もない紙片だったが、そこに書かれていたのは、赤い大文字で、 「死」 だの 「怨」 だの 「 妬 」 だのの一文字が書かれてあるだけだった。 だが、こう毎日大量に届けられては、気が滅入るだけだ。 その呪いの篭っていそうな紙片には、微かな妖気が感じられた。 あれ?この妖気って最近どこかで感じた事があるような…? 天狗ではないし、鬼ではない。もしかしたら、1年前に地底に行った時に感じた妖気かもしれない。 しかし、そんな些末な事を考えている場合じゃなかった。明日も謝罪に廻らなければならない。 この紙は念の為、厄神様に処理してもらおうと思い、床についた。 ---------------------------------------------------------------------------------------------- 夢を、見た。いや、見た気がする。 魔理沙が死んでからずっと同じ夢だ。 真っ暗闇の中、魔理沙が私を見ている夢。 私を怨むでもなく、かといって喜んでいるでもなく、静かに私を見ている。 ごめんなさい、私のせいであなたを死なせてしまった。ごめんなさい。 そう私は、魔理沙に言おうとした。でも、何故か言葉を一言も発する事が出来ない。 がばっ! 私は飛び起きた。汗をいっぱいかいていた。いつもの朝がやってきた。 「今日も、行かないと…」 憂鬱な気持ちで家を出た。郵便箱を空っぽにしたはずなのに、もう新たな呪いの手紙が詰めこまれていた。 これから毎日こうなんだろうか。今まではこんな気分になった事なんてなかったのに。 森の中にある家、アリス・マーガトロイドの家だ。 意を決して呼び鈴を鳴らそうとした瞬間、弾幕が飛んできた。 そこにはアリスの人形が宙に浮いていた。 「あんたなんか顔もみたくない!帰って!」 その人形を通してアリスの声を聞いた。 「待ってください。私をいくら憎んでもいいです。でも、謝罪を、謝罪をしにきただけなんです。 お願いです、話をき」 「うるさい!うるさい!うるさいっ!あんたに謝られたって魔理沙は帰って来ないのよ! これ以上近寄ったら、本気で弾幕をたたき込むわよ!」 とりつくしまも無かった。私はアリスの家を後にするしかなかった。 「ふぅ」 いろんな所に向かった私は、最後に博麗神社にたどり着いた。 魔理沙と共に、幻想郷の様々な異変を解決した(と本人達が言っていた)、霊夢の家だ。 でも、霊夢に会う前にやっておかないといけない事がある。 神社の裏手に向かった。そこには小さな墓石があった。 魔理沙の墓だ。 私は墓の前にしゃがみ込み、静かに手を合わせていた。 1分…2分・・・ もういいだろうと思っても、身体がなかなか動かない。 「ふぅ」 またため息が出る。分かっているのだ。魔理沙の一番の友人である霊夢に 真っ先に謝罪しなければいけないのに、最後にしてしまったのだから。 でも、なかなか神社に足を運ぶことが出来なかったのは、現実を認めたくなかったから。 自分の新聞で、とりかえしのつかない事態になってしまった事。 魔理沙が死んでしまった事実を、墓石を見る事によって嫌でもつきつけられてしまうから。 ばしゃん。 後ろで水の入った手桶が落ちた音が聞こえた。 振り向いたら、霊夢がそこにいた。 「あ、あの…霊夢…さん」 霊夢の表情は冷ややかだった。『楽園の素敵な巫女』が普段見せた事がない顔。 しかし、その表情もすぐに消えた。いつもの、何も考えていないような彼女の顔。 手桶を片付け、掃除を始めた。そしてぽそっと一言。 「何しに来たの」 「あ、あの…その…今回の事について、謝罪を……」 返答は無かった。 それっきり会話が途絶えてしまった。 ざっざっざっ 霊夢がほうきを掃く音だけが神社に響いた。 5分か、10分が永遠の時に感じられた頃、霊夢が口を開いた。 「帰って」 「でも…」 「帰って」 「でも私の気がすみま」 そこまで言った時だった。 ふっと霊夢の姿が消えた。 え?と思った瞬間、 どがあっ! 私は顔面を殴られ、数メートル吹っ飛ばされた。 私は動けずにいた。霊夢が接近した事にも、パンチを打った事にも反応出来なかった。 それくらい、この紅白の巫女の動きは一瞬で、的確だった。 「帰れって言ってるでしょお!」 霊夢は泣いていた。 私を殴った右手を震わせながら、叫んだ。 「魔理沙は私の一番の親友だった!それが何であんな最後を迎えなきゃなら無かったの!? あんたが、あんたがおもしろ半分に記事を書かなかったら、こんな事にはならなかったのに! 魔理沙を、魔理沙を返せ!返せ!かえせ!かえせー!!」 霊夢は声を上げて泣いた。 私はいたたまれなくなって思わず逃げ出してしまった。 神社の石段をかけ降りても、巫女の悲痛な泣き声が聞こえる。 「私のせいだ。ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」 耳を塞ぎながら飛んだ。飛び続けた。 もう神社から何百メートルも離れたはずなのに、霊夢の泣き声が耳から離れない気がした。 私は完全に憔悴していた。 幻想郷最速のスピードなんかもう出やしない。 帰途に着く頃には、飛ぶのもそこそこに徒歩になってしまっていた。 「新聞を出すのは、もう終わりにしよう・・・」 何度考えても、その答えしか出て来なかった。 家に帰ったら取材道具は全部捨てる。カメラも、取材ノートも。 その時、木々の間からかすかに声がした。 『怨めしい……』 「ひっ…」 私は思わず叫び声をあげてしまった。 まさか、成仏しきれない魔理沙が化けて出てきたのか? いや、さすがに空耳……、 『呪ってやる……』 「いやあああああああああああああああああああああああっ!!」 私は必死に駆け出していた。 普段の私ならば、それは死人の声ではなく、木々の間から 私を睨んでいた地底の妖怪の少女だという事を察知していただろう。 その手には例の呪いの手紙が握られていた事も。 「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」 その言葉だけを発しながら家に辿りついた。 郵便箱からは呪いの手紙が入り切れずに溢れ出し、郵便箱を覆い隠して山になっていた。 「うううう……ひぐっ……」 私は食事も摂らずに布団をひっかぶり、子供のようにみっともなく泣き続けた。 ---------------------------------------------------------------------------------------------- 泣き疲れて寝てしまったのか、いつの間にか朝になっていた。 家を出る時に厄神様が私の郵便箱から手紙を回収していた。 人間の里に厄を及ぼすかもしれない量の厄が、すでにその大量の手紙に溜まっていたそうで、 こちらから頼みにいくまでもなく回収しにきてくれたらしい。 私は頭を下げた。 厄神様は、これも仕事ですからと愛想笑いで答え、高速回転をしながら空に舞い上がっていった。 途中で、白狼天狗の椛に出会った。 椛は、魔理沙が死んだ後も私を邪険にするような事はせず、普段と同じように接してくれた。 それが私の唯一の安らぎだった。 でも。 「射命丸様」 「え?ど、どうしたの、椛。そんな他人行儀じゃなくてもいいのに」 「いえ、そういうわけには参りません」 「どういう事……」 「烏天狗 射命丸文様。あなた様には大天狗裁判所からの出頭命令が出ております」 「えっ!?」 頭が真っ白になった。出頭命令? 私の罪状は、弾幕以外の方法をもって人間に危害を加えた事。 それは直接的にではなく、今回のように間接的なものであっても罪に問われるのだ。 「昨日付けをもって、私は射命丸様付きの部下職から外されてしまいました。 ですので、今までのような関係ではいられないのです。どうかご了承を」 「椛、どうにか…どうにか出来ないの?」 「申し訳、ありません」 椛は力なくうなだれた。 我ながら無駄な質問を投げかけてしまった。 天狗社会は、厳しい組織の掟に縛られている。 天狗の中でも下っ端の哨戒天狗や、たかだか1000年足らずしか生きていない私には、 天狗委員会の決定を覆す力を持っているはずが無かった。 「裁判の日取り等、詳細は別の天狗から追って連絡があると思います。 私は弁護席に立つつもりですが、状況からいって、あなた様を弁護しきれるかどうか…」 「そ、そう…」 「それでは、これでお別れです射命丸様。裁判が終わるまで、 当事者同士があまり密に接触する事は許されません。 裁判の結果次第では、もう2度と会えないかもしれません」 「そ、そんな…椛、私はあなたがいるから頑張ってこられたのに…」 「お許し、ください……」 頭を下げた後、椛は大きく羽ばたき、空に飛び立った。 「待って、待って椛!もう少しだけ私の話を…」 1度も振り返らずに椛は空を行く。 私は一生懸命椛の後を追う。 地上を走りながら。 あまりのショックで、私は空を飛ぶ事も忘れ、地上を無様に走った。 これでは天狗とただの人間。その差は明らかだった。 椛はあっという間に見えなくなった。 私は足を止め、その場に跪いた。 「うっ…ううっ…うううううううう………」 辛い、辛い涙が溢れた。 何もない。知り合いを失い、かけがえのない友を失い、天狗の力も失い。 私はとぼとぼと家路についた。 本来ならば、新聞の取材で野山や人家を駆けずり回っている時間だが、 被告人の身ではそういった活動は既に禁じられていた。 郵便箱には何も無かった。もう呪いの手紙は入っていなかった。 おそらくこれからは何も届かないだろう。 椅子にもたれかかった。 涙も、感情も、何もかも枯れ果てていた。 魔理沙も、死ぬ前はこんな感じだったのかな…。 空間から女性の手がにゅっと突き出された。 そのまま女性が私の前に現れた。 スキマ妖怪、八雲紫だった。 「返事が無かったので、勝手におじゃまさせてもらったわ」 「……お客様なら、ちゃんとドアから入ってきて下さい」 私はまだ皮肉を言える事が出来た自分に少し驚いた。 「で、何しに来たのですか。私は今疲れているので、用が無ければお引き取り願いたいんですが」 「もちろん用はあるわよ。これをあなたに渡そうと思って」 紅い丸薬と、青い丸薬の2粒をスキマから取り出した。 紅い丸薬の方は見覚えがあった。 誰もが望む楽しい夢を見る事が出来る胡蝶夢丸だった。 だが、青い方は見た事が無い薬だった。 「それ、何です?」 「あなたがこのままでいたいのなら、青い薬を。真実を知りたいなら紅い薬を飲みなさい、アンダーソン君」 「私はアンダーソンなんて名前じゃありませんよ」 「ごめんごめん、冗談よ。こないだ見た『映画』ってやつで似たようなシチュエーションがあってね」 紫は扇子で口元を隠し、ウフフと笑った。こっちは何も面白くないので普通に返した。 つまらなげに紫は話題を戻した。 「紅い薬の方は、あなたも知っているわね。胡蝶夢丸よ。最近ストレスが溜まっていると思ってね。 あの薬師の家からちょっと拝借してきたの」 「青い方は?」 「毒薬」 「そうですか」 「これを飲むと、数時間で眠るように逝けるらしいわ。あの子が飲んだのと同じやつかしらね」 「そうですか」 私はほとんど上の空で聞いていた。 「ふぅ…相当重傷ね。まぁいいわ。この薬は2つとも置いていくから、好きなほうを飲むといいわ。 この世に未練がないのなら、すっぱり死んでみるのもいいかもね。閻魔様にこってり絞られるでしょうけど」 そう言って、スキマ妖怪は入ってきたのと同じようにスキマに消えた。 テーブルの上に2つの薬が転がっている。 私は1つ薬を手に取り、水と一緒に飲み下した。 そしてベッドに入った。 眠気は思ったより早くやってきた。 あ、カメラとかノートを捨ててなかったけど、ま、いいか。 もう、どうでもいいや…。 私の意識は深く沈んでいった。 ---------------------------------------------------------------------------------------------- 次に目を覚ました私は、花畑のまっただ中にいた。 これは夢?それとも現実? いや、おそらく冥界の入り口だろう。 私は青い薬を飲んだのだから。 すなわち、苦しまずに死ねる薬を。 それにしては、三途の川がない。ただ花畑があるだけだ。 ここはどこだろう? まぁ、もう私は時間にあくせくする事もない。のんびり行こう。 そう思って花畑にごろんと寝転んだ。 しばらくして、遠くから誰かの足音が聞こえてきた。 人影ははだんだんと近づいてきて、私をのぞき込むようにして止まった。 「よう」 「!?」 その言葉に、私は思わず飛び起きた。 しばらく見ていなかった少女がそこにいた。 魔理沙だった。 「魔理沙さん…」 「まぁ、ちょっと話でもしようじゃないか」 私と魔理沙は花畑で2人で座っていた。 私は今まで言えなかった言葉を口にした。 「あの…ごめんなさい」 「ん、ああ」 「え」 それだけ?正直、ぶん殴られるとかマスタースパークを撃ち込まれるとか、 何があっても受け入れる覚悟をしていたのに。 「何故…夢の中のあなたは私を見つめるだけだったから、てっきり私を恨んでいたのかと」 「それはお前の中のイメージが作り出した想像の私だろ?」 「これも夢?」 「うーん…ちょっとうまく説明出来ないんだが、現実であって夢であって、でもどちらでもないというか…」 「じゃああの世なんですか?」 「まぁ、あの世といえばあの世かな?でも、お前はまだ生きてるぜ」 「えっ…だって私は苦しまずに死ねる薬を飲んで…」 「ああ、紫が渡した薬を飲んだのか。あれはどっちも胡蝶夢丸だぜ。あのスキマ妖怪の手の込んだジョークってとこだな」 「はぁ」 私はあっけにとられるしかなかった。 「私はちょっと言付けがあって、お前の夢にお邪魔しにきたんだ。 だから、ここにいる私はお前のイメージじゃなくて、本物の、私だぜ」 「そ、そうなんですか。でも何で私の所に?他に行く所があるんじゃないんですか?」 「皆の所か?それはもう行ってきた。霊夢やアリスやパチュリーの夢枕にも立ったよ。 もちろん紅魔館や永遠亭にも行って来た。 本当は死者がポンポン現実世界に干渉しちゃいけないらしいんだが、今回はあのチビ閻魔の特別な許しが出てな」 魔理沙はとにかく饒舌だった。まぁ元からではあったが。 「もしかしたら、行ってない人の所があるかもしれないが、私も知り合いが多いからな。 何十人も覚えていられないぜ、まぁだいたいは会ってきたと思う。あ、でも地底の奴とは会ってないかな。 地底はまた地上と管轄が違うらしくてな。クモ女や、鬼、猫、さとりとこいし、お空には会えなかった。 あー、後誰だっけ、他にも地底で知り会った奴がような…うーん…パル…思い出せ無いからまぁ、いいや」 「あ…あの…」 「ああ、悪い悪い。ここはお前の夢だったな。まぁとにかく皆と会ってきてな。お礼とお別れを行ってきたよ。 それから、あまり射命丸を虐めないでやってくれってな」 「で、最後は私の所、ですか」 「うん。お前を最後にしたのは、その、なんだ。どうにも会いづらくてな」 「え?」 「私の死で一番迷惑をかけてしまったのは、文、お前だからな」 「そ、そんな!私こそ、私のせいであなたを死なせて…」 「おっと、それ以上はなしだぜ。お前に謝らなきゃならないのは私の方だ」 「でも…」 「私は新聞に抗議するなんて一文を残したけど、それはお前を恨んでるからじゃない。 きちんと真実を書いてほしかったからなんだ」 「でも、何も死ななくても」 ふーっと魔理沙はため息を1つ。 「ただ口で言っても、お前は変わらないと思ってな。私の命を使うしかないと思った」 「私は、もう新聞を辞めようと思っていたんです。そうでなくても、裁判にかけられ、取材活動自体も禁止され」 「おい!」 突然、魔理沙が声を荒げた。 「お前が新聞作りを辞めてしまったら、私の死はどうなるんだ!ただの無駄死にになっちまうじゃないか! お前が私に対して責任を取りたいと思うなら、新聞を書き続けろ!」 私は何も言えなかった。まさか、魔理沙本人からそんな言葉が聞けるとは思えなかった。 魔理沙は私の目を見て優しく言った。 「私の死はお前のせいじゃない。私が、私の意思で決めた事だ。 でも、あの世の掟では、自殺する事は何があっても許されない事だ。私は、多分地獄に行くと思う」 「そんな…」 「そう深刻な顔をするなよ。チビ閻魔に聞いたんだが、今の地獄は昔と比べて大分規制がかかっていてな。 死者に肉体的苦痛、精神的苦痛を与える事は地獄法で禁止されているんだってさ」 「そ、そうなんですか」 「その代わりに労役が課せられるんだってさ。普通に3食食事付きで、地獄からは出られないが多少なりとも自由はある。 勉強して資格を取る事も出来るし、頑張って裁判官の仕事を手伝う死者もいるらしい。 天国なんて、どうせ退屈だろうと思ってたから、私にはちょうどいいぜ」 「へぇー。まるで、外界の『刑務所』みたいですね」 「そうなのか。それにしても」 「はい?」 「今のお前、顔が輝いてるぜ。知識欲と探求心に満ち溢れたその顔。私はその顔が見たかったんだ」 ぎゅっ。 私は優しく抱きしめられた。 はるか昔に味わったような感じ。まるで母に抱かれているかのような。 「うっ…うぇ…うえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!」 自然と涙が出た。恥ずかしげもなく大声で泣いた。 魔理沙は静かに私の頭を撫でてくれた。 私は許された。魔理沙を死なせた。この罪が消えたわけではない。 でも、許されたのだ。 どうやら別れの時が来たらしい。 「じゃあ、元気でな」 「はい。現実に戻ったら、私、記事を書きます。自分の裁判の様子を事細かに。 止められていようが知ったこっちゃありません。真実を読者に読んでもらうために」 「おう、その意気だ。あ、そうそう」 「はい?」 「お前が千数百年後に死んだ時は、私が裁判官として立ってやるから覚悟しとけよ」 「ふふっ…それは強敵ですね。でも私は自分を弁護して、間違いなく天国に行きますのでそのつもりで」 「楽しみにしてるぜ。じゃあ、またな」 「はい」 眠りについた時と同じように意識が遠くなっていった。 ---------------------------------------------------------------------------------------------- 目が醒めたら朝だった。 テーブルの上には残っていたはずの紅い薬は消えていた。 その代わりに手紙が1枚。その文面には、ただ一言だけ。 『いい夢 見れたかしら?』 どうせあのスキマ妖怪の仕業だろう。どこまでも気が利いている。 「ええ、とってもいい夢でした」 家のドアを開けた。そこには意外な人物がいた。 「霊夢、さん」 「全く、何やってんの。せっかく私がわざわざ来てやったのに」 「え?」 「裁判があるんですって?聞いたわよ。私も弁護してやるから、早く新聞を書けるようになってよね。 あれがないと、落ち葉を燃やす火種にする紙がなくて困るんだから」 「は、はい。ちょうどこれから取材に行こうと思ってた所なんです。ところで、あの…」 「ストップ!」 霊夢はバツが悪い感じで。 「魔理沙の事はいいっこなしよ。昨夜魔理沙が夢に出てきてね。『あんたをあまり責めないでくれ』って。 全くあいつめ、死んでてもあっけらかんと笑ってるもんだから、こっちも毒気が抜かれたわ。だから今まで通りでいきましょう」 「でも、アリスさんや紅魔館の人達には挨拶が済んでいないんです」 「じゃあこれから行けばいいじゃない。あいつらも鬼じゃないんだし、きちんと話せばきっと許してくれるわよ。 っと、鬼じゃなくて吸血鬼だっけ」 ぷっと私が思わず吹き出した時、空から飛び降りてきた影があった。 「文様」 椛だった。 「この間は本当に申し訳ありませんでした。上からどう言われようと私は私。そう気づいたんです。 ですから、今まで通り、私を」 「も、み、じぇ…」 最後の方は感極まって言葉にならなかった。私は喜んだ。でも涙が流れた。 思わず椛を抱きしめた。椛も泣いているようだった。 それを見た巫女がぽつりとつぶやいた。 「おお、熱い熱い」 〜〜射命丸文の勇気が世界を救うと信じて!本当にご愛読ありがとうございました!〜〜 END ●あとがき ・誤字、脱字があるかもしれないが、SSを書き慣れてないんで勘弁ね! ・すまん、虐めに徹しきれなくてこんなgdgdな終わり方になってしまった。 ・パルパルさんはこの話のギャグ要員みたいなものです。パルパルファンには謝罪します。すいません。 ・魔理沙が射命丸を恨むのはどうしても描写出来なかったので、こんな形になってしまいました。  DBの悟空みたいに、元気な死人しかイメージが沸かなかったのです。 ・幻想郷の住人は死んでも転生とか出来るんじゃね?とか思ったんですけど、そのへんの設定はよく分からないので無視しました。