ここは市立虹裏小学校。どこにでもあるような普通の小学校だ。 しかし、そこはもう普通ではなくなった。 蝉が五月蠅いほどに鳴き、うだるような暑さが続く季節にその事件は起こった。 学校のプールで一人の男子生徒が命を落としたのだ。 男子生徒には目立った外傷もなく、まるで眠っているだけのように見えたと言う。 そのような状態で物言わぬ物体となり、プールの水面をただ浮かんでいた。 死因は完全に不明。司法解剖でも死因は特定出来なかった。 これが全ての始まりだった。 男子生徒の怪死はこの一件だけではなく、次から次へと発生したのである。 最終的に三人の男子生徒が学校のプールで奇妙な死を遂げた。 どの死体も同じ、まるで生きているかのような状態だった。 この連続怪死事件は当然、生徒や保護者を恐怖のどん底に陥れた。 全ての鍵を握るのは一人の少女だという事も知らずに…。 「スクルー!」 教室の自分の席に座ってたら急に友人のとしあきに声を掛けられた。 「何だ?としあき?」 俺がそう聞き返すと、としあきは話したくて話したくてウズウズしている様子だった。 「なぁ!なぁ!聞いたか?またプールで…!」 なんだ…またその話か…。 何となく想像はつく。そんな俺の心境もお構いなしにとしあきは話を続けた。 「…生徒が死んでたんだってさ!」 やっぱりその手の話か…。 「これで三人目の死者か…」 俺はボソっと呟いた。 「スクルー!それにしても変な事件だよなー!」 「あぁ、死因や場所が同じってとこが特にな」 「それだけじゃなくて、みんな死んだのは深夜だったって事もだな」 「あ、そうだったな…」 死亡した三人は全員深夜に家を抜け出して、学校の方へ向かってるのを目撃されている。 そして、プールで死亡したという事らしい。 「それにしても、何で三人とも深夜に学校のプールなんかに行ったんだろうな?」 「おいおい、俺に聞かないでくれよ」 としあきは苦笑しながら答えた。 それにしても奇妙な事件だ。 どの事件も共通点が多すぎる。 まずはさっき上げた場所、死因、時間帯。 それと、死んだのは全て“男”だと言うこと。 これは一体何を意味しているのだろうか…? そんな事に思考を巡らせている時、ふと人の視線を感じた。 視線を感じた方向に注意を向ける。 すると、その先にはクラスメートの女子、真辺ミズキがいた。 俺と目が合うと、ミズキは軽く微笑んだ。 「ん?さっきミズキがお前に向かって笑いかけてなかったか?」 としあきが俺の反応にすぐ気付いたようだ。 「気のせいだろ…」 俺は適当に誤魔化すが、としあきには一目瞭然だったようだ。 「ウソつくなー!てめー!!」 「ついてねーよ!」 「あ!もしや、ミズキはお前に気があるとか!」 「がっ…!」 コ、コイツは…突然何を言い出すかと思えば…。 「なにバカな事言ってんだよ!んなわけねーだろ!」 「なははは!照れるな!照れるな!」 「照れてねーよ!!」 真辺ミズキ。 彼女は今から一週間前にこの学校へ転校してきた。 彼女は誰もが羨む、美しい顔立ちをした少女だった。 なので、転校した当初は学校中が彼女の話題で持ち切りになった。 性格も朗らかで、誰にも好感が持てるような雰囲気を持っていた。 彼女に好意を寄せる男も大勢いるに違いないだろう。 そんな事を思い出していた時、俺はある事に気付いた。 そういえば、あの怪死事件が始まったのも先週からだったか…。 妙な一致だ…。 ミズキが来てから…? 事件が起きた…? 一瞬、そんな事が脳裏をかすめたが、さすがにそれは飛躍のしすぎに思えた。 まさか…な……。 そんな馬鹿な話があるわけがない。 俺はさっき浮かんだ愚かな考えを頭から消し去った。                                                                          続く