俺は学校が終わると、どこへも寄らずに真っ直ぐに帰宅した。 そして、自室で今朝の事を何となく考えていた。 俺の思い違いだと考えればそれまでの事だ。 しかし、何かが引っ掛かる…。 そんな事をずっと考えていた。 ふと時計を見ると、時計は真夜中と思われる時間を指していた。 「おっと、こんな時間か…。そろそろ寝るとするか」 そう思い、部屋の明かりを消し、ベットに向かった。 その時、不意に俺の携帯電話が着信音を奏でた。 急いで携帯に手を伸ばす。 画面にはとしあきの表示が出ていた。 「としあき…?何でこんな時間に?」 俺は疑問に思いながらも、携帯の通話ボタンを押した。 「おう!スクル!起きてるかー?」 それが携帯から飛び込んできたとしあきの第一声だった。 「起きてるかー!じゃねーよ!今何時だと思ってるんだよ!」 「いやー悪い、悪い」 「…っで、何の用だよ?」 としあきは一瞬間を置いてから話し出した。 「実は、俺今学校の校門にいるんだよ」 「が、学校だって!?」 俺は耳を疑った。 なぜこんな時間に学校へ…? 驚きが隠せない。 俺は電話越しにとしあきを問いつめた。 「としあき!何でお前こんな時間に学校なんかに来たんだ?」 としあきはひょうひょうとした様子で話し出した。 「ほら、最近変死事件が起こってるじゃん。あれっていつも深夜のプールで起こってるんだろ。 だから、これからその真相を確かめてみようと思ってさ」 あきれた…。 どんだけ馬鹿なんだコイツは…。 「お前も来いよ!きっとおもしろいぜ!そんじゃ!俺、校門で待ってるから!」 「…っておい!何言ってんだお前!おい!お〜い!」 ツーツー 応答はなし。 としあきは電話を切ってしまったようだ。 「全く…しゃーねーな!」 としあきの馬鹿さ加減にあきれていた俺だが、少し変死事件の真相に興味があったのも事実だったので、 両親にバレないように自室の窓からコッソリ脱出し、学校へ向かった。 「スクルー!ここだ!」 校門の前に着いた時、としあきに声を掛けられた。 「それにしても、お前の馬鹿っぷりには驚いたぜ。いきなり今から例のプールに向かうって言うんだからな」 「へへへ、おもろそうだろ?」 「全く…」 「よっしゃ!さっそく行ってみようぜ!俺達が真相解明するんだ!」 「やれやれだぜ」 俺達は閉じられた校門をよじ登り、深夜の学校へと侵入した。 真夜中の学校は予想していた以上に静まりかえっていて不気味だった。 普段から通っている学校のはずが、何だか異世界のようにさえ思えてくる。 俺達は無言であのプールへと向かった。 例のプールが見えてきた。 当然のごとく、プールには誰もいない…っと思っていた。 しかし、そこに一人の少女がいた。 俺は目を疑った。 なんと、プールには真辺ミズキがいた。 美少女だと噂され、学校中の注目を集める少女がそこにはいた。 ミズキはプールサイドに腰掛け、足だけをプールの水につけていた。 「あそこにいるのは真辺ミズキか…?」 としあきも俺同様我が目を疑ったみたいだった。 俺達は衝撃でしばし呆然となった。 なぜ彼女がここに…? 疑問が俺の思考を支配する。 なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ? それの繰り返し。 まともな思考が出来ない。 そんな時、プールサイドから声を掛けられた。 「あら、お二人さん。こんな時間にいかがして?」 ミズキの声だった。 俺達に話し掛けたということは一目瞭然だった。 俺ととしあきは、封鎖されたプールの入り口を乗り越えて、プールサイドに入った。 ミズキはプールサイドに腰掛けたまま、俺達へ微笑みかけた。 月明かりに照らされたミズキの姿は人間とは思えないほどの美しかった。 としあきと俺はしばしミズキの姿に見とれてしまっていた。 「どうなさいまして?」 ミズキに話し掛けられて俺達は我に返った。 俺は少しあたふたしながら答えた。 「な、何というか、夜の学校というのもなかなかいいもんだな」 だーっ!俺はなにアホな事言ってんだよ! そんなトンチンカンな返答にもミズキは特に表情を崩さず、微笑みを浮かべたまま答えた。 「ふふ、そうですわね」 そんな流れの中で、としあきがミズキへ率直な質問をぶつけた。 「なぁ、なぁ、何で真辺はこんな時間にここにいるんだー?」 その質問を聞いた途端、ミズキの微笑みが艶やかなものへと変わった。 「ふふふ、教えて欲しい?」 ミズキは妖艶な表情を浮かべた。 その時だった…! シュバッ!シュバッ!シュバッ!シュバッ! なんと、プールの水面からうねり狂った細長い触手が姿を現した。 「な…!!」 気付いた時には全てが遅かった。 としあきと俺は触手に全身を絡め取られ身動きが出来なくなった。 ギリ…ギリ… 「ぐあ!」 強靱な力で触手は俺達の手足を締めつける。 「ふふふふふ、あっけない」 ミズキはさっき見せた妖艶な表情のままだった。 「真辺!これは一体!!」 俺はミズキに怒鳴りつけるように問いつめる。 それを聞くとミズキは妖しげな笑い声を上げた。 「あはははは!わからない?あなた達は私にされるがままということよ」 「な、な…!」 状況が上手く理解できない…。 目の前に繰り広げられる光景を俺は信じる事が出来なかった。 「ふふふふ、たくさん可愛がってあげるわ」 ミズキは妖艶な笑みを浮かべて俺達に近付いてき、着ていた衣服を脱ぎ捨てる。 そして、ミズキは一糸纏わぬ姿になった。                                           続く