名無しさん@ピンキー<><>2007/12/02(日) 12:57:28 ID:0oW1eNWv<> ここは、ヤンデレの小説を書いて投稿するためのスレッドです。

○小説以外にも、ヤンデレ系のネタなら大歓迎。(プロット投下、ニュースネタなど)
○ぶつ切りでの作品投下もアリ。

■ヤンデレとは?
 ・主人公が好きだが(デレ)、愛するあまりに心を病んでしまった(ヤン)状態、またその状態のヒロインの事をさします。
  →(別名:黒化、黒姫化など)
 ・ヒロインは、ライバルがいてもいなくても主人公を思っていくうちに少しずつだが確実に病んでいく。
 ・トラウマ・精神の不安定さから覚醒することもある。

■関連サイト
ヤンデレの小説を書こう!SS保管庫(本保管庫)
http://yandere.web.fc2.com/

ヤンデレ臨時保管庫 @ ウィキ(臨時保管庫)
http://www42.atwiki.jp/i_am_a_yandere/

■前スレ
ヤンデレの小説を書こう!Part11
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1192890392/

■お約束
 ・sage進行でお願いします。
 ・荒らしはスルーしましょう。
  削除対象ですが、もし反応した場合削除人に「荒らしにかまっている」と判断され、
  削除されない場合があります。必ずスルーでお願いします。
 ・趣味嗜好に合わない作品は読み飛ばすようにしてください。
 ・作者さんへの意見は実になるものを。罵倒、バッシングはお門違いです。議論にならないよう、控えめに。

■投稿のお約束
 ・名前欄にはなるべく作品タイトルを。
 ・長編になる場合は見分けやすくするためトリップ使用推奨。
 ・投稿の前後には、「投稿します」「投稿終わりです」の一言をお願いします。(投稿への割り込み防止のため)
 ・苦手な人がいるかな、と思うような表現がある場合は、投稿のはじめに宣言してください。お願いします。
 ・作品はできるだけ完結させるようにしてください。 <>ヤンデレの小説を書こう!Part12 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/02(日) 13:02:08 ID:DSTE3Y0E<> >>1
神速で2get <> 3ゲトー<>sage<>2007/12/02(日) 13:07:23 ID:sMTf3PYX<> >>1
乙 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/02(日) 13:57:37 ID:hFeXMIuz<> 乙 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/02(日) 15:00:15 ID:KdEHznFc<> >>1
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/02(日) 19:51:21 ID:EY/AN0IZ<> >>1乙かれーチョコレートを分けてあげよう <> 名無しさん@ピンキー<><>2007/12/03(月) 00:54:06 ID:sGbJQqQv<> 乙 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/03(月) 07:58:42 ID:a103DU/b<>
「ふぅ、終わったぁ〜」
 一通り綺麗になった部室を見渡して、擦立一(すれたて はじめ)は仕事をやり終えた満足感に浸る
 陸上部の部室は、部員たちが砂を運ぶので汚れやすく、誰かが定期的に掃除する必要がある
 3年が引退し部長となった彼は、その仕事を後輩にやらせる事はできたし、
 実際に彼の先輩はそうして来た
 しかし、彼は陸上をしに来ている後輩にそういう事まで押し付けるのはおかしいと思ったし、また、
 自分に厳しくする傾向もあってそうすることを良しとしなかった
(つくづく損な性格だな)
 そう思ったものの、自分はそういう性分なのだから仕方がない、と心の中で苦笑する
 彼は再度備品などの点検をした後、部室のドアを開く
「もう終わったよ」
 自分を待ってくれているであろう、まだ幼さの残る幼馴染みに声をかけながら



 季節がら、暗く肌寒い風が吹く道を2人は帰る
 擦立一と病坂理玖(やみさか りく)は歩いていく
「それにしてもおそーい! 凍え死ぬかと思ったよ」
「ごめんね、でも思ったより部室が汚れていたからさ」
 実際に両手で自分の体を抱いて寒がってみせる理玖に、一は申し訳なさそうに言う
 一はふと少女の手を掴んだ 
「ななな何やってんの!?」
「いや、こうすれば少しは温かくなるかなって」
 理玖は一がとった突然の行動にどぎまぎする
「もしかして、嫌だった?」 
 彼は手を繋いだ事が相手を不愉快にさせたかもしれないと、手を握る力を少し緩めようとする
(あ……手を放さないで)
「嫌、じゃない……」
 頬を赤く染めた少女は俯きながら離れようとする手をぎゅっと掴む
 一はその様子を見て、安心を得たと同時に少し恥ずかしくなって視線を理玖から逸らす
 目を合せないまま二人は暗い道を歩く <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/03(月) 07:59:34 ID:a103DU/b<>
 空腹だった一は答えを言い終える前にはチョコを口に放り込んでいた
 口の中にとろける様な、しかし甘すぎない味が広がる
「美味しい」
 自然と口から漏れた。
「ふふ〜ん、私が作ったんだから当たり前だよ。さあ、私に感謝したまえ〜」
「うん、ありがとう」



 ドタドタッ ガタン
 理玖は慌しく階段を上り自分の部屋に入ると、制服から着替えぬままベッドに飛び込んだ
 そしてそこにある熊のぬいぐるみに抱きつき、激しく身もだえする
「やった!やったやった! 一が美味しいって言ってくれたよぅ」
 よほど美味しかったのか、あれから一は一言も喋る事無く全てのチョコを平らげてしまった
 それに呆れたような顔をしては見せたが、この幸せが表に出ないかどうか内心ヒヤヒヤしたものだ
「それに私に、ありがとうって……。っ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
 その顔が、声が、頭に焼き付いて離れない
 理玖は声無き声をあげる
「あっ……でも……」
 声のトーンが急に下がったものとなる。
「どうしよう……もしかして気づかれたかも」
 一は食べ終わった後聞いたのだ。「市販のチョコには無い不思議な感じがする。隠し味に何か入れたの

 か」と
 理玖は制服の袖をめくる
 そこには赤い一本の筋が走っていた
「どうしよう、こんな事したってばれたらいくら一が優しいからって嫌われる……」
 
 心に一滴の黒い水が落ちる

「そもそも自分の血を食べさせようなんて思う事自体がおかしいんだ。そうか、私はおかしいんだ。こん

 な私は一の優しさに触れる資格はないんだ。ううん、そう思う事すらおこがましい」 
 
 その小さな影はその領域を広げ、全てを黒く染め上げていく

「じゃあ私は一に置いてかれるの? ……そんなのはイヤ!!絶対イヤ!!」
 
 そこに陽の光が射すことは無い

「一くん捨てないで下さい私を捨てないでなんでもするから許してごめんなさいごめんなさい
 ごめんなさいゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」
 理玖は体を丸め、ぬいぐるみを強く抱きしめる
「私を1人にしないで……、はじめぇ」
  <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/03(月) 08:08:39 ID:a103DU/b<> すいません、3つ目のブロックはこうでした 

「そーだ!忘れてた!一、手を出して」
 先ほどの恥じらいなどなかったように再び元気良く振舞いはじめる理玖
 一はそれにほっとして、だけど少し残念に思いながら素直に従う
「頑張っている君にはコレをあげよう」
 小さな胸を張りながら、仰々しくピンクのリボンでラッピングされた包みを差し出された手の上に
 乗せる
 一がそれを空けると星型やハートの形をしたチョコが無数に詰まっていた
「へぇ、チョコか〜。食べていい?」
「モチロンだとも」
 空腹だった一は答えを言い終える前にはチョコを口に放り込んでいた
 口の中にとろける様な、しかし甘すぎない味が広がる
「美味しい」
 自然と口から漏れた。
「ふふ〜ん、私が作ったんだから当たり前だよ。さあ、私に感謝したまえ〜」
「うん、ありがとう」

>>6 ネタにしてゴメンナサイ
結局何が言いたいかというと、>>1乙 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/03(月) 09:32:17 ID:Os24RyBN<> GJ!

ところでヤンデレ同士が付き合ったら究極のバカップルが誕生しそう… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/03(月) 10:02:41 ID:yDRpN7bg<> 「男君があの女と手を繋げないように、手を切り落としましょう」
「そんな!それじゃあ女さんの頭をナデナデ出来ないじゃないか!」
「!」
「抱きしめることもできないし、あそこを指でいj(ry

男のバカ分を上げると
フツーのバカップルになりそう。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/03(月) 18:31:24 ID:z6aLVTco<> >>11-12
高い確立でそんな感じになる。
実際ウチがそうだし…。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/03(月) 19:02:36 ID:/z/b4Mgj<> はい突っ込んだら負け! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/04(火) 13:35:57 ID:haNbN0r3<> ソフトヤンデレ ハードヤンデレ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/04(火) 19:33:15 ID:PXP7NpQ5<> >>10
続き(´・ω・`) <> きゃの十三 ◆DT08VUwMk2 <>sage<>2007/12/05(水) 00:24:30 ID:D3UEbsz4<> 以前、書いた【お見舞い】の続きを投下します。 <> 【続・お見舞い】 ◆DT08VUwMk2 <>sage<>2007/12/05(水) 00:26:01 ID:D3UEbsz4<> 「ぶぁっくしょん!!」
昨日、風邪引いた高島さんと一緒に布団に入ったせいか僕も風邪を引いてたみたいだ
身体がダルくとても学校に行けそうにないので母さんに頼んで学校に休みの電話をかけてもらった。
風邪を引いた時、母さんはとてもやさしい
なにより一人静かに過ごせるのがいい(ここ最近は、高島さんに振り回されっぱなしだったからなぁ)
とにかく今日はゆっくり休んで風邪を治そう

ピンポ〜ン

インターホンが鳴る
なんかとっても嫌な予感がする……
「努ぅ〜、詩織ちゃんがお見舞いに来てくれたわよぉ〜」
あぁ〜やっぱり来ると思ったよ
元気いっぱいに階段を駆け上がってくる高島さん。昨日まで風邪だったのに
「大丈夫?今日、努くんが学校、来なかったから私とっても寂しかったんですよ」
多分、風邪の原因は、高島さんのせいなのだろうが高島さんの事だ
あぁ見えて結構、繊細だからきっと大声で泣きながら謝ってくるに違いない
女の子の泣く姿は見たくない(っというか近所迷惑になりかねない)

「今日は、私をいっぱい心配させたからいっぱいハグハグしてますからね」
お仕置きって僕に何をする気だ高島さん!!
って、なんで高島さん、服脱ぐの?で、なんで風邪で無抵抗の僕のズボンを脱がせるの?
「うぅ〜本当に独りぼっちで寂しかったんだからね」
高島さんは、僕を強く抱きしめてると泣き出した。
もともと高島さんは、人見知りだからか学校では幼馴染の僕としか話す人がいない(奴隷として担任の前田がいるけど)
最近、ようやく他のクラスメイトと話ができるようになったが
それは、僕が側にいてやっと話せるレベルである
僕は、いつか僕がいなくても人と話ができるようにさせなきゃっと
思いつつ高島さんの頭を撫でると猫のように目を細めてこちらを見ている

あぁ〜もう可愛いなぁ〜
…っと思った瞬間、布団の中に潜って行き
「寂しくした努くんは、エッチなお仕置きをしちゃうんだからね」とお仕置き宣言をした。
あぁ〜ん高島さん、あんまり僕のアレを見つめないで顔を近づけないで息をかけないで(感じちゃうからビクンビクン)
「これ私のお口に入れたら努くんのオチンチンどうなっちゃうかなぁ?」
「ちょっ!そんな汚いもの口に入れたらお腹壊しちゃうから辞めてよ…アメあげるから」
「そんな事ないよぉ〜えへへ今、お口に努くんのオチンチン入れた気持ちよくしてあげるね」
万事休す!!高島さんが僕のアレを口に含もうとしたその瞬間―――

「詩織ちゃん、ケーキ作ったから食べてってちょうだい」
一番来て欲しくないタイミングで母さんが部屋に入って来た。 <> 【続・お見舞い】
◆DT08VUwMk2 <>sage<>2007/12/05(水) 00:26:51 ID:D3UEbsz4<> ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 

努の母・森野夕は、息子の部屋の惨状に唖然とした。
実の息子がお見舞いに来た幼馴染に口を犯している(ように見えた)からである 

――さて、普通の母親ならばここで息子の行動を辞めさせるだろう
しかし、夕は、違う
なぜならば彼女は、日頃『愛とは、力づくに手に入れる』ものだと考えているからである
それが証拠に彼女は、努の父を逆レイプの形で長女・涼子を妊娠し、責任を取らせる形で結婚させたのだ
なので一瞬、唖然としたがすぐに立ち直り息子と未来の嫁に『がんばってね』とウインクすると
「ごゆるりと」と言いながらドアをゆっくりと閉めた。 <> 【続・お見舞い】
◆DT08VUwMk2 <>sage<>2007/12/05(水) 00:27:53 ID:D3UEbsz4<> ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ちょっと待てぃ!
もっとツッコむところがあるだろう!!
母さんは、いつもそうやって面倒な事から目を背ける
もし僕が高島さんを性欲のあまりに犯してたらどうするんだ(本当は逆だけど)
母さんは、父さんの事ばかりじゃなくもう少し僕の事にも関心を持って欲しい

「ハァハァ…義母様から…ハァハァ…お許しがでたみたいですね…ではさっそく………」
あぁ〜本当に万事休す!!
しかし、高島さんは、後ろに倒れこみそのまま寝てしまった。
顔を見ると顔を真っ赤にしてとても苦しそうにしている 
どうやらまだ風邪が治ってないのだろう
僕は、高島さんに服を着せ布団をかけて一緒に寝る事にした。





(3時間後)
私が目を覚ますと脱いだはずの服を着ていた。
きっと横で寝ている努くんが着せてくれたのだろう
あぁこの人は、本当になんてやさしいのだろうか
小学生の頃、人見知りだった私に声をかけ一緒に遊んでくれたのが努くんだ
他の子は、私なんて見向きもしなかったのに
それから同じ中学に入り人見知りだった私に友達を紹介してくれたよね
そのおかげで小学校の時、学校にいるのが憂鬱だったけど中学では、そんな事微塵にも思わなかった。
きっとこれからも私は努くんにお世話になるのだろう
いつか絶対に恩返しするねっと思いながら私は、寝ている努くんのほっぺに約束のキスをする

「さてと」
私は、無造作に努くんのベッドから女の人に裸が写っている本を数冊を取り出した
「夜はコレを見てするんだ…こんなもの見て一人でするなら私とすればいいのに…」
とりあえずこんなエッチな本は、努くんに悪影響ですので屋敷に帰ってゆっくり処分します。
私は、バッグに努くんの使ったであろうエッチな本を入れた。

あっそうそう忘れるところだった。
努くんの部屋を見渡しちょうどいい物を…っとあった。
私は、机に置いてあった玩具を手に取った。
努くんのお父さん…つまり私の義父さんになる人は、
こういう玩具を集めるのが好きでよくダブった玩具を努くんにあげるらしい
私は、玩具の中に盗聴器を仕込む
途中、サウンドギミックが作動し『あばばばばば』と鳴った。(努くん曰く『Im OptimusPrime』と言ってるらしい)
一瞬、驚いたが………努くんは、まだ寝ているようだ
さてと、盗聴器も取り付けた事だし帰るか
私は、もう一度、努くんの寝顔を見つめる あぁなんて可愛い寝顔なの
襲いたくなってしまうが今日は、我慢しよう

いつか君から襲ってくるのを待ってるよっと努くんに囁くと
今度は、唇にキスをして私は、努くんの家を後にするのであった――― <> きゃの十三
◆DT08VUwMk2 <>sage<>2007/12/05(水) 00:34:43 ID:D3UEbsz4<> 投下終了です。
またヤン分が少ない作品になってしまった。

ついでに高島さんが盗聴器を仕込んだ玩具は、
G2期にアメリカで再販されたコンボイ(アメリカでは『オプティマスプライム』)です。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/05(水) 02:07:34 ID:OBbcPU9/<> >>21
GJ
高島さんかわいいよ高島さん <> 名無しさん@ピンキー<>age<>2007/12/05(水) 03:09:44 ID:ZOXe+YXY<> >>21ライトヤンデレGJ!!!
そしてお母さんに吹いたwwwwwwww

こうゆうほのぼのヤンデレ好きだから楽しみにしてる <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/05(水) 06:48:52 ID:e5xjjRIR<> >>20

サイバトロン総司令に敬礼!
(・ω・)ゝGJ! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/05(水) 07:50:09 ID:uztMaZCj<> GJ。
持って帰ったエロ本を見て学習し、次に会う時に
「あの本みたいなのが好きなんですよね」と言って迫る高島さんを想像した。

あと細かいことだが、句点を打ってもらえるともっと読みやすくなると思った。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/05(水) 11:36:17 ID:0JNnIq+C<> ソフトヤンデレですな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/05(水) 12:00:03 ID:ka6tLFWa<> GJ <> 合わせ鏡
◆GGVULrPJKw <>sage<>2007/12/05(水) 22:01:00 ID:bpwQF8ee<> 合わせ鏡・第2話です。 <> 合わせ鏡 ◆GGVULrPJKw <>sage<>2007/12/05(水) 22:01:43 ID:bpwQF8ee<> 鏡の向こうの自分は、自分と同じ顔をして、自分と同じ行動をする。
私が笑えば笑うし、私が泣けば泣いて、私が怒れば怒る。
私と同じ顔をした私は、やっぱり私。

「水樹!」
「瑞希!」
胸が熱いものでいっぱいになって、はじけた。頬を涙が滑り落ちる。
そう、3歳まで、私たちはいつだって一緒だった。半身だった。
瑞希も私を見て、しゃくりあげて泣いている。ゆっくり、二人とも同じタイミングで近づき、
しっかりと抱き合う。
「瑞希、瑞希、瑞希…」
「水樹、水樹、水樹…」
こーたのこともあり、母親は高崎家との繋がりを完全に絶っていた。
高崎家も、祖母が蛇蝎の如く母親を嫌っていたため、出て行った私達を完全に無視していた。
瑞希のことを忘れたことはなかった。本当に、記憶もないくらい小さな頃に別れた私達だけれども、
鏡に映る影のように、いつも気にしなくても自分の側に相手の存在を感じていた。
瑞希の顔を見た時に、瑞希もそうなのだとわかった。
涙と鼻水でぐしょぐしょの顔を見合わせて、照れくさそうに笑う。私も同じ仕草をしているのだろう。
私は、21年ぶりに再会した姉の顔を右手で自分の肩に抱きかかえると、玄関先でもらい泣きを
しているこーたに笑いかけた。
その時、私は確かに幸せだった。
瑞希は私の半身だし、愛していた。自分のように愛していた。

信じて欲しい。それは、まごうことなく、本当の気持ちだった。 <> 合わせ鏡
◆GGVULrPJKw <>sage<>2007/12/05(水) 22:02:50 ID:bpwQF8ee<> 私達は、21年の時間を埋めるように、一緒の時を過ごした。
二人でショッピングに行って、必ず一瞬驚いたような顔をする店員さんに笑って、同じ服を買った。
映画の話をして、お互いに好きな美味しいお店を教えあった。
3歳の時には同じだった私達は、しかし、今では別人であることもわかった。
研究発表以外の場で主張するのが苦手な私と違って、瑞希はどんな時でも臆さずに自分を主張した。
母親と倹約生活をしていた私と違って、お金持ちのお嬢様の瑞希は、金遣いが荒かった。
こーたのバイト先で正社員をしているけど、きっと、稼いでいるお金より、使っているお金の方が
多い。
瑞希のいつもの格好は、雑誌に出ているような流行の服や、芸能人が持っているようなブランド物で
飾られていた。
研究のために、いつも動きやすい簡素な服装で、黒髪を伸ばしっぱなしで、パーマもかけていない
私とは違った。


そのうち、瑞希は私達の家によく来るようになった。
こーたのバイトが終わったら、仕事先からこーたと一緒に家に来て、私の料理を三人で食べる。
そして、瑞希はこーたにべったりとくっつくようになった。
バイトの帰りでなくても、私達の家に来る頻度が増えた。
私を見る目に疎ましさが走るようになった。
私ではなくこーたにばかり話しかけるようになった。
ただ、実家住まいの瑞希が、泊まっていかないのが救いだった。


違うところもあったけど、私達はやっぱり同じだった。
だから、瑞希がこーたに恋しているのもすぐわかった。
でも、私達は、大きな違いがあった。瑞希はこーたが弟であることを知らない。
瑞希は、私と同じなのに、私と違って、何も苦しまず、こーたに恋している。


許せない。
そんなの許せない。
私は、こーたのために、「優しいお姉さん」でいるつもりだった。
こーたに恋人ができたって、こーたが結婚したって、ちょっと泣いて喜んであげる、普通のお姉さん
でいるつもりだった。
でも、瑞希だけは許せない。瑞希がそこにいるのは許せない。
だって、瑞希なら、どうして私じゃないの?
瑞希が良くて、私が駄目なんて、そんなことはあるわけがない。

そうよ。瑞希だって、こーたのお姉さんなの。こーたに触れてはいけないの。お姉さんは、こーたを
そんな風に見てはいけないの。恋しては、いけないの。
だから、言わなきゃ。
瑞希ハこーたノお姉サンダカラソンナコトヲシテハイケナイノデス。

「駄目だよ」
<> 合わせ鏡
◆GGVULrPJKw <>sage<>2007/12/05(水) 22:03:55 ID:bpwQF8ee<> 瑞希にも姉弟だと言うべきだ、という私の提案は、しかし、思いもよらず、こーたの強い拒絶に
あった。
「どうして?!だって、瑞希は…私と同じ、なのよ、だから、瑞希にも本当のことを」
「駄目だ!水樹、加奈子さん…俺達の母親がどれだけ苦労して、俺のことを隠したと思ってる?
 本当のことを知っていいのは、俺と父さんと母さんと水樹だけだ」
「でも…!」
「確かに、もう、俺達の母親を苦しめたババアは死んだ。でも、俺が息子だって知ったら、
 高崎家は俺を息子として迎えようとするはずだ」
こーたは、下を向いた。
「そんなことになったら、俺を本当の息子として育ててくれた父さんと母さんに、つらい思いを
 させることになる…」
「あ…」
こーたは、暗い顔をして、膝の上に置いた手を、ぎゅっと握り締めた。
そんな顔をさせたのが自分だと思うと、死にたくなる。
なんてことを私は言ったのだろう。母さんの願いも、伯父さんと伯母さんの恩も、こーたの思いも
無視して、自分の邪な思いだけを貫こうとしてしまうなんて。
「ごめん…こーた、ごめんね」
ゆっくりと俯いた。泣きたい。でも、泣いたら、同情してほしいみたいで、すごくイヤな女になって
しまう。悪いのは私なんだから、こーたに気を使わせてはいけない。
でも、それならば、言わなきゃいけないことがある。
こーたは、ひょっとしたら、瑞希の思いに気づいてないのかもしれないから。

…もし、気づいてたら、どうする?
その可能性に思い当たって、私は体をこわばらせた。
もし、気づいていて、こーたも、瑞希を、…だとしたら。
瑞希は、姉だけど、ずっと一緒にいた私と違って、ずっと二人は会ってなかったから、だから、
こーたも、瑞希を姉として見られないかもしれない。
だから、瑞希に姉弟だと言いたくないのだとしたら?
駄目。許せない。そんなの許せない!
私と瑞希は同じなのに、どうして私じゃないの。私じゃないの?!そんなの駄目。
だって、こーたと瑞希は姉弟なんだもの。姉と弟は恋をしちゃいけません。そう、しちゃいけない
のです。だからこーたと瑞希は離れなければいけません恋をしてはいけません。
瑞希に言えないのならば、こーたを、何をしてでもこーたを瑞希に近づけちゃいけない。
…もし、こーたが嫌がったって、そんなの駄目だ。
そう、これは正しいことなのだから、私はこーたに言ってもいい。
こんなことを知ったら、伯父さんと伯母さんだっていっぱい悲しむはず。
私はこーたのお姉さんなんだから、注意しなきゃ、注意していいはずだ。
震える指を、ぎゅっと握り締める。

<> 合わせ鏡
◆GGVULrPJKw <>sage<>2007/12/05(水) 22:04:54 ID:bpwQF8ee<> 「こーた、私、こんなこと言いたくなかったんだけど…瑞希は、多分、こーたのことが好きなんだと
 思う」
言ってしまって、後悔した。こーたの顔から、一瞬で表情がなくなった。
軽蔑…された?変なことを言ってると思われてる?
…でも、もう言ってしまった。だから、こーたに笑われても嫌われても、言わなきゃ。
瑞希ガこーたト一緒ニイルヨリハ、自分ガ嫌ワレタ方ガズットイイ。
「瑞希はこーたのこと、弟だって知らないから…ほら、こーた、カッコいいでしょ。私もさ、自慢の
 弟ーってやつで、皆にうらやましがられるくらい…ってまあ、皆、従弟だって思ってるんだけど。
 でも、ほら、瑞希は知らないから、お姉さんだって知らないから、だから、駄目だって、知らない
 だけなんだと思う」
こーたは、変わらず、私をじっと見ている。真剣な目で私を見ている。怯みそうになって、ぐっと
こらえる。
そうよ、だって私が言ってるのは『正しいこと』なんだから。
「こーたが瑞希のことをどう思ってるかは知らないけど、瑞希…は私と同じだし、顔も似てるし、
 そりゃ、雰囲気とかは全然違うけど、でも、お姉さんなんだから、わかるよね。姉弟だって
 わかってたらいいけど、このままじゃ、駄目だよ」
私は、ただ、瑞希が駄目で、私がこーたと一緒にいて良い理由を言っているだけなのかもしれない。
私をまっすぐ見ているこーたにそれを見透かされているのではないか、それだけが怖かった。
<> 合わせ鏡
◆GGVULrPJKw <>sage<>2007/12/05(水) 22:05:26 ID:bpwQF8ee<> こーたは、ふっと私から視線を外した。そのまま、言う。
「水樹、心配させて、ごめん」
「あ…ううん、私も、変なこと言って、ごめん」
どうしてだろう、こーたは、本当に苦しそうな顔をしている。
「俺はただ、水樹が瑞希と会いたいのかと思ってたから。別に俺が瑞希と会いたかったわけじゃ
 ない」
「…ごめん、気をつかってくれてたのに、私…」
こーたは、本当にいい子だ。私がこんなに汚い思いを抱いているのに、私のために気をつかって
くれていたなんて。
なのに、私が、こーたの気遣いを無にしてしまった。
こーたは、私のためにと思ってしたことが、私を苦しめていたと知って、こんなにつらそうな顔を
している。こーたに、こんな顔をさせてしまうなんて。


…いや、違う。
私じゃない。瑞希だ。瑞希さえこーたに恋なんかしなかったら、こーたにつらい思いをさせることは
なかったのに。私がこんなことを言う必要も、こんな思いをする必要もなかったのに。
姉で、いられたのに。
瑞希さえ、いなければ。


こーたは、私から目を逸らしたまま、搾り出すように言った。
「俺は瑞希のことを好きじゃないよ。瑞希とは、できるだけ距離を置く。バイトもやめる。
 彼女ができたことにしてもいい。瑞希は、姉でしかないから、女としてなんて、見られない」
それは、待っていた言葉のはずだった。こーたが瑞希に恋していないのなら、許せるはずだった。
なのに、その言葉は、私を完全に打ちのめした。

瑞希のことを好きじゃないよ。瑞希は、姉でしかないから、女としてなんて、見られない。
水樹のことを好きじゃないよ。水樹は、姉でしかないから、女としてなんて、見られない。

わかっていたはずなのに、そんなこと、最初からわかっていたはずなのに。
どうやって、話をうちきったのか覚えていない。
どうやって、自分の部屋に戻ったのか、覚えていない。
ふらふらと平衡感覚をなくす三半規管。ベッドに崩れ落ちて、私は、声を殺して泣いた。
<> 合わせ鏡
◆GGVULrPJKw <>sage<>2007/12/05(水) 22:07:19 ID:bpwQF8ee<> こーたは、「彼女ができて、誤解されるから遊べなくなった」と言ったらしい。
瑞希は、その日以来、家に来ない。あれから1週間、瑞希からは何の連絡もない。
元々、私は世間話やメールが得意でなく、研究で忙しい。私達の連絡は、基本的に瑞希からだった。
瑞希のことを忘れることはなかったが、会いたくないのも事実だったので、嬉しかった。
こーたに失恋して、ショックなのだろう。こーたと一緒に住んでいる私に会うのがつらいのだろう、
そんな風に思っていた。
いや、思おうとしていた。


私は理系で、実験が多いので、実験棟に泊り込んだり、そこまでしなくても帰りが遅くなることは
よくある。私の家は大学から徒歩10分だけど、研究がたてこむと、ちょっと家に帰ってこーたに
ご飯を作って一緒に食べるのも難しくなる時がある。
それはとても寂しい。でも私が忙しい時は、逆にこーたが夜食を作って残しておいてくれたり、
ちょっとしたおやつを冷蔵庫に入れておいてくれることがある。
もちろん「お疲れ様」のメモつきで。
それも、すごく嬉しいから、たまにはそういうのもいいかなって、頑張れる。
その日も最後まで残り、研究室に泊まろうか迷って、やっぱり帰ることにした。
ちょっとしんどいけど、やっぱり朝ごはんはこーたと食べたい、なんて理由だったりする。
夜中2時過ぎの大学は、閑散として恐ろしい。近くに住んでいる学生などの姿がないわけではないが、
基本的に、誰もいない。
廊下を歩いていると、いくつかの研究室から光が漏れていたので、まだ人がいるのだろう。
でも、扉の向こうは別世界。誰がいるのか、ただの電気の付け忘れかわからない。
大学ですごして6年目、最初は怖かった。今は、全く怖くないわけではないが、少し慣れた。
と言うか、慣れないとやっていけない。
最近改修されたばかりのエントランスホールは、闇に沈んでいる。
ただ、実験棟には不似合いなほどお洒落な照明が発する淡い橙色の光だけが、ぼうっと浮かび上が
っていて。

その照明の下に、私がいた。

<> 合わせ鏡
◆GGVULrPJKw <>sage<>2007/12/05(水) 22:08:29 ID:bpwQF8ee<> 「水樹」

人影は、生気のない顔をあげ、私と同じ顔で私の名前を呼んだ。雑誌のモデルのように綺麗に
かかっていたパーマは見る影もなく、長い髪はすっかり乱れてしまっている。
まだ、たった1週間しか経ってないのに。
ごくり、と唾を飲む。瑞希は、この大学の学生ではない。実家だって、大分遠い。
それに今は、夜中の2時だ。
「瑞希…こんなところで、何をしているの?」
瑞希は、私の質問に答えなかった。瑞希の顔が、歪む。
瑞希が、ゆっくりと近づいてくる。
「水樹…ねえ、私達、双子だよね」
体中が震える。頭の中で、赤いアラームが点滅する。キケン、キケン、と。
「生まれる時に、ちょっと順番が違っただけだよね。だから、私が水樹でも、よかったんだよね」
コツン、コツン、と瑞希のヒールと床が不吉なリズムを刻み、私に近づいてくる。
「ねえ、水樹、私と変わって?私だって水樹なんだから、こーたくんと一緒に住んで、こーたくん
 にご飯を作ってあげるの。水樹じゃ、こーたくんを誑かす女からこーたくんを守れないでしょ?
 だから、私が水樹になって守ってあげるの」
どうして、私は逃げられないのだろう。ひたり、と私を見据える瑞希の目から、視線を外せない。
瑞希は私の肩を、突き飛ばした。受身もとれず、硬いエントランスの床で背中を強打する。
「…っ!」
一瞬、痛みに息ができなくなる。
瑞希が私に馬乗りになる。慌てて瑞希の体のあちこちを掴んで抵抗したけれども、恐怖のあまりか、
力が入らない。
なんて、情けない私。
「私が水樹になるんだから、水樹は二人いらないよね」
瑞希の手が何かを私に翳す。その手を掴んで、必死に防ぐ。


大きな衝撃と小さな音と共に、「私」の意識は、闇に沈んだ。
<> 合わせ鏡
◆GGVULrPJKw <>sage<>2007/12/05(水) 22:10:16 ID:bpwQF8ee<> 私は、目を開けた。

荷物は全てなくなっていた→Aルート
荷物はなくなっていなかった→Bルート

以上です。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/05(水) 22:29:55 ID:pl/F1/yf<> ここで選択か!?
どっちも気になるが何となくBで!! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/05(水) 22:37:06 ID:KsYkhhVa<> ルート分岐かね。
Aのほうは何となく展開が予想しやすい気がするのでBで。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/05(水) 22:43:28 ID:lRNyD25n<> うへぇ血は争えないなぁ。
もちろんどっちも書いてくれますよね?ね?
そしたらA→Bが良いです。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/05(水) 23:32:12 ID:KNsWHMmx<> >>36
ちょw瑞希怖いお(´;ω;`)
彼女が先に病むとは思わなかった、でも姉スキーとしては主人公テラウラヤマシス。

とりあえず選択肢は
rァA <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/06(木) 17:19:46 ID:ExS0krN7<> これは期待。一気に加速しましたな。
自分としてはAで、その後にBを願いたいです。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/06(木) 22:25:44 ID:2U/WHIfF<> 清姫はヤンデレ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/08(土) 11:17:22 ID:tG+LNY3E<> 古い方埋めようぜよ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/08(土) 14:08:05 ID:QL0h+uVA<> ヤンデレ分が随分補給できました
これでまた頑張って生きていけそうです

ルート分岐は片方しか書かないならB、両方書くならA→Bでお願いします <>
◆GGVULrPJKw <>sage<>2007/12/09(日) 00:05:04 ID:tW5I5qGT<> 皆様ありがとう。A→Bで書くことにします。
頑張ります。 <> 名無しさん@ピンキー<><>2007/12/09(日) 06:47:59 ID:OUAE9Ea5<> <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/09(日) 12:31:50 ID:XIArW4QP<> まだ前スレ落ちてないよ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/09(日) 13:27:24 ID:vm528EvP<> >>45
ガンガレ。
ただ一つルートを書き終えると燃え尽きちゃったりしがちだから気をつけてくり。まあそれはそれでありなんだけど。


前スレは埋めネタ待ちか。
雑談で埋めてもいいんだけどね。 <> タカシくんの好きなもの!<>sage<>2007/12/10(月) 20:13:24 ID:Gq+nQ0PF<>
 すんすん鼻を啜り上げる音が、すぐ隣から聞こえてくる。
「タカシくん、タカシくん」
 恋人の名前を呼びながら泣いているのは、親友の愛美だった。長く艶やかな黒髪に包まれた穏やか
な美貌が、今は涙と鼻水で台無しになっている。
「いい加減泣きやめよなー」
 あんまり陳腐な言葉だとは思ったが、今まで散々慰めの言葉をかけてもなお泣き止まないので、も
はやこうでも言うしかない。
 案の定、愛美は「でも、でも」とぐずって、またわっと泣き出した。
(いつかはこうなると思ってたけど)
 愛美の泣き声を成す術もなく聞きながら、わたしはぬるくなった缶コーヒーをちびちび啜る。コー
ヒーは苦いからあまり好きじゃないが、こうでもしないと間が持たない。
 件のタカシくんと愛美が付き合いだしたのは、およそ三ヶ月ほど前のことである。
 タカシくんと言ったら、わたしの学年でも有名な遊び人だ。程よく染めた茶髪とそこそこ整った顔
立ち、ノリがよくて話題が豊富で、笑うと口元から覗く白い歯がチャームポイント……という、まあ
結構典型的なモテ男である。
 そんなモテ男が、何を思ったのか唐突に愛美に告白したらしい。理由なんて「たまには初心な子を
食ってみてえなあ」程度のもんだろう。で、男に全く耐性のなかった夢見るお嬢さんは、あっさりと
彼の求愛を受け入れてしまったわけで。
「あのねきゅーちゃん、タカシくんがね、タカシくんがね」
 そんな風に、愛美が無闇に嬉しそうな顔でタカシくんとの甘い一時をわたしに報告してきたのは、
大体一週間ぐらい前までだっただろうか。
 その辺りから急に雲行きが怪しくなった。なんとなく表情が暗いなあと思っていたら、三日前ぐら
いに沈んだ声で、
「あのねきゅーちゃん、タカシくん、浮気してるかもしれない……」
 と打ち明けてきたのである。どうやらそれは真実だったらしく、わたしは今朝校門をくぐるなり愛
美に捕まって、人気のない体育館裏で泣き言を聞かされているのだ。
「だからあいつはやめとけって言ったじゃん。タカシくんは遊び人だって有名だったんだからさー」
「違うもん、タカシくん真面目だしとっても優しいもん、遊び人じゃないもん」
 泣きじゃくりながらタカシくんを庇う辺り、これは相当重傷だなあと頭が痛くなった。
 元々思い込みの強い愛美のこと、タカシくんの表面上の態度に騙されて、「真面目で優しいタカシ
くん」像を勝手に作り上げてしまったんだろう。実際、愛美の口からタカシ君の悪口を聞いたことは
ない。今でもそうだ。
「きっと、わたしの愛情が足りなかったんだよ」
「そりゃどうかなあ」
 口ではそう言いつつも、内心では「そりゃ逆だよ」と呟いていた。
 愛情は足りないどころではなく、むしろ足りすぎていた。はっきり言って過剰だった。愛美が惚気
ながら言っていたのだ。
「あのねー、わたしねー、タカシくん一人暮らしで大変だと思ってねー、毎朝起こしに行って毎朝ご
飯作ってあげて、毎朝……」
 要するに一日中休むことなく甲斐甲斐しくタカシくんのお世話をしてあげたわけである。いかに愛
美が大和撫子的な奥ゆかしい魅力を持った美少女だと言っても、これでは鬱陶しくなってもしかたが
ない。それに、ちょっとでも迷惑そうな素振りを見せれば、
「ごめんね、わたし、タカシくんのこと何も考えないで……」
 とか何とか言って、涙ぐんでいたに違いない。長い付き合いだからこそ分かる。愛美はそういう女だ。
(あんたの愛情は重いんだよなー。多分、タカシくんが他の女に走ったのもそれが原因だろ)
 わたしはそう睨んでいる。無論、遊び人タカシくんのことだからいつかはこうなっただろうが、こ
こまで早いのは愛美の愛情の重さにうんざりしたからだろう、と。
(だからって、本人に直接言うのもなー。親友は辛いぜ)
 そもそも恋人にタカシくんなんてのを選ぶのが間違いなのだ。ドラマや恋愛小説を見てみるがいい。
「恋人のタカシくん」なんて大抵ロクな男じゃないだろうが。つまり、恋人にタカシくんを選んでは
いけないのは日本人全体の共通認識なのである――。
 などとわたしが一人現実逃避していると、不意に愛美がぽつりと言った。 <> タカシくんの好きなもの!<>sage<>2007/12/10(月) 20:14:29 ID:Gq+nQ0PF<>
「やっぱりタカシくん、ああいう子の方が好きなのかな」
「あん? どういうこった、『ああいう子』って」
 涙の痕が残る愛美の横顔が、思いつめたように硬くなっていた。
「あのね、昨日、タカシくんが本当に浮気してるかどうか確かめようと思って、後をついていったの
……あ、それで本当に浮気してるってことが分かったんだけど」
「はぁ。直接確かめるとは、やるねえあんたも。ってか、やっぱあんたもタカシくんは遊び人なん
じゃないかって疑ってたわけね」
「違うよ!」
 愛美は勢いよく首を振った。
「タカシくんは真面目で優しいもん。浮気なんかしちゃったのは、きっとわたしが、わたしが……」
 また愛美の目に涙が滲んでくる。せっかく収まったのにまた爆発しては大変だ、と思って、わたし
は慌てて話題を戻す。
「で、その『ああいう子』ってのはどんなだったんだよ?」
「えっとね」
 愛美は泣くのをやめて、少し考え込んだ。
「髪の毛が茶色くてね、お化粧が上手でね、すっごく短いジーパン履いてて、耳に大きなわっかつけ
てて、元気で明るくて」
 わたしの頭に、茶髪、ギャルメイク、ショーパン、キャミソール、ロングブーツ……という、いか
にも遊んでそうな外見の女がギャーギャー喚きながらクチャクチャガムを噛んでいる姿が浮かぶ。
(うっわー、見事に正反対の女選んだな、タカシくん)
 よほど愛美のことがうざかったんだろうなあ、としみじみ考えてしまう。愛美もある種似たような
結論に達したようで、また涙ぐんでいた。
「やっぱり、わたしなんかじゃダメだったんだ。ああいう明るい子の方が好きだったんだ、タカシくん」
 で、また「タカシくん、タカシくん」とすんすん泣き出してしまう。その様子があんまり悲しそう
だったので、さすがにちょっと可哀想になってしまった。
(……わたしがもっと強く止めてれば、っていうのも、ないワケじゃないしなあ)
 わたしはボリボリと頭を掻いた。ちょうど缶コーヒーを飲み終わってタイミングも良かったので、
ため息を吐きながら立ち上がる。
「よし、じゃ、アドバイスしてあげるよ」
 振り向きながら言うと、愛美が「え?」ときょとんとした顔でこちらを見上げてくる。
「え? じゃないよ。アドバイスだよアドバイス。タカシくんの心を愛美に戻すためのアドバイス」
「でも」
 愛美は暗い顔で俯いた。
「タカシくん、わたしのことなんて……」
「それがよくないっての。いい? そもそも告白してきたのはタカシくんだったんだから、何かしら
好かれる要素があったのは確かなのよ。そうでしょ?」
「う、うん、そうかも……」
「だったら、あんた自身の魅力で勝負しなくちゃ。ね、タカシくん、何をしたとき一番喜んでくれた?」
「えっと」
 愛美はもじもじと指をすり合わせた。何かを思い出したのか、少し頬を染めながら躊躇いがちに言う。
「お料理作ってあげたとき、かな」
「お料理。そっかー、あんた、メシ作るのうまいもんなー」
「それほどでもないけど」
 愛美は謙遜したが、これは実際大きなアドバンテージだろう。偏見ではあるが、チャラチャラ遊ん
でる女に、愛美ほど旨い料理が作れるとは思えない。
(とは言え、タカシくんは愛美にうんざりしてるわけだからなー。今更普通に料理作ったって、新鮮
味が薄いだろうし……)
 わたしは少し頭の中で戦略を練った。
「よっし、愛美、あんた、タカシくんとしばらく距離を置きな」
「え? どういうこと?」
「いいからわたしの言う通りにする。しばらく会わずにおいて、愛美のことを忘れかけた頃に、メ
チャクチャうまい料理をご馳走してやんのさ。そうすりゃ『ああ、この子はこんな素晴らしい子だっ
たんだなあ。忘れていたよ!』みたいに感動するはずさ!」
 多少大袈裟に言ったが、こうでもしないと今の愛美は動かないだろう。案の定、
「そ、そうかなあ……」
 と戸惑うように呟きつつも、その顔には希望と期待が戻りつつあるように見える。 <> タカシくんの好きなもの!<>sage<>2007/12/10(月) 20:15:32 ID:Gq+nQ0PF<>
(よっし、ひとまずは安心だな)
 わたしは心の中でガッツポーズを作りながら、具体的な作戦を愛美に告げる。
「じゃ、勝負は一ヵ月後だ。それまでは、タカシくんとはなるべく話をしないこと。あっちだって浮
気してるぐらいなんだ、愛美が静かなのはむしろ好都合だと思うだろ。で、その間にあんたはタカシ
くんにご馳走するものを考えて、準備しておく、と」
「うん。でも、何を作ってあげたらいいのかなあ」
「そんなん、タカシくんの好きなものでいいじゃん」
「それはそうだけど、そういうのは大体作ってあげちゃったし……新鮮味がないんじゃないかな?」
「あー、そっか。確かにそうだな……じゃ、材料を豪華にするとかさ」
「材料……タカシくんの好きなもの、豪華な材料……」
 愛美は口元に手をやってブツブツ呟いていたが、やがてぱっと顔を輝かせた。
「そうだ、これならきっと喜んでもらえる!」
「おお、何作ることにしたん?」
「えへ、秘密。あのね、豪華な材料っていうの、思いついたの。絶対絶対、ぜーったい、大丈夫だよ」
 普段控え目な愛美に似合わず、えらく自信満々な様子である。わたしは意外に思いつつも、同時に
頼もしさも感じた。
「よっし、それならきっとうまくいくね。ところで、その材料ってのは、普通に手に入るもんなの?
豪華だって言ってたけど」
「うーん……どうかな。多分、一ヶ月もあれば十分、だと思うけど」
「なんだか、不安そうだね」
「わたしも、今まで扱ったことない材料だから……でも大丈夫、タカシくんのためだもの! 絶対成
功させてみせる!」
 ぐっと拳を握りしめながら、愛美が立ち上がる。その背に炎が見えるような気がした。
(これなら大丈夫だろう)
 自分の案のおかげでこうなったのだから、わたしは実にいい気分だった。

 その日以降、愛美はあまり授業に出なくなった。
 「あんな真面目な子に何が」と周囲が騒ぐ中、わたしは一人落ち着いていた。
 愛美が一生懸命「豪華な材料」を用意しようとしている姿が、目に浮かんだからである。

 そして一ヵ月後。
「上手くいったよ、きゅーちゃん!」
 わたしの部屋の真ん中でVサインを決めてみせる愛美に、わたしは苦笑いしか返せなかった。
 興奮して我が家に飛び込んできた愛美をどうどうとなだめながら、自室につれてきたところである。
「テンションたけーな、あんた」
 呆れて言うと、愛美は両手を組んでうっとりと目を閉じた。
「だってね、タカシくん、震えるぐらい喜んでくれたんだよ!」
「震えるって……そんなに?」
「うん。震えながら、おいしいおいしいって涙流して笑ってた」
「どこの料理漫画だよそりゃ」
 さすがに呆れてしまう。だが、愛美のはちきれんばかりの喜びオーラを見る限り、少なくとも嘘で
はないようだ。
(あの遊び人タカシくんが、震えながら涙流して、ねえ)
 ちょっと想像できない光景だが、そうなってしまうぐらい愛美の料理が旨かったということなのだろう。
 そう思うと、俄然興味が沸いてきた。 <> タカシくんの好きなもの!<>sage<>2007/12/10(月) 20:16:50 ID:Gq+nQ0PF<>
「ねえ愛美。あんた、一体なに作ってあげたの?」
「ん? いろいろだよ。タカシくんの好きなものは、大体作ってあげたかなあ」
「それだけ? ああ、そういや、なんか豪華な材料を使ったんだっけ?」
「うん」
 愛美がにっこり笑う。
「ありがとねきゅーちゃん、きゅーちゃんのアドバイスのおかげで、その材料使おうって思いついたんだ」
「そりゃどうも。で、実際なんだったんだよ、その豪華な材料っていうのは」
「それはひみつー」
 愛美が人差し指を唇に当てて片目を閉じる。
「あー、ずるいぞあんた。わたしのおかげで上手くいったのにさー」
「えへへ、ごめんね。でもね、それはわたしとタカシくんだけの秘密なのよ」
「へん、そうかいそうかい。せいぜい二人の世界に浸ってろよバカ」
 そっぽ向いてしっし、と手を振ってやると、愛美は困ったように笑った。
「拗ねないでよー。じゃあね、ヒントあげるね」
「おう、くれくれ」
「えっとねー、その材料はねー」
 愛美は指を折って何かを数え始めた。
「切ってもいいし焼いてもいいし炒めてもいいし煮てもいいし……あ、あとね、ミキサーにかけて
ジュースにしてもいいんだよ。でも、凄く臭いから、それをどうするかが調理のポイントかなあ。ち
なみに、わたしは今挙げた調理法を、今回全部使いました!」
「なんだそりゃ」
 ミキサーにかけてジュースにしてもいいって辺りは野菜や果物を連想させるが、凄く臭いっていう
のはどういうことだろう。
(大体、あのチャラチャラしたタカシくんがそんなもん好きだとは思えないんだけど)
 悩むわたしの前で、愛美は少し眉をくもらせた。
「でもね、ちょっと心配なんだけど」
「なにが?」
「タカシくんね、途中で吐いちゃったの」
「吐いたって、……え、なに、ゲロッたのあいつ?」
「うん」
「うわー、きったねー! っつーか恋人の料理吐くとか最悪じゃん」
「仕方ないよ」
 愛美は穏やかに笑った。
「それにね、吐いちゃったタカシくんに駆け寄って、『大丈夫?』って声かけたら、必死に『大丈夫、
ごめん、許してくれ』って謝ってくれたんだよ」
 許してくれ、というのは、つまり『折角作ってくれたものゲロっちゃってごめん』ということだろう。
「はー、あのタカシくんがねー。ずいぶん愛美に惚れ直したもんだ」
 わたしは感心すると同時に安心した。これなら愛美とタカシくんも上手くいくだろう。自然と楽し
い気分になって、冗談の一つも飛ばしたくなった。
「そのゲロッたってのも、案外『好きなものだからいっぱい食べ過ぎちゃった!』なんて、幸せな理
由なんじゃねーの?」
「そうかも」
 愛美は嬉しそうに笑った。
「だってね、タカシくんが、とっても、とっても、とーっても、好きなものを使って作ってあげたから」
「へー、そんなにねー……まだ余ってんの、それ?」
「うん。あ、そうだ、きゅーちゃん」
「なんだ?」
「あのね」
 愛美は首を傾げた。 <> タカシくんの好きなもの!<>sage<>2007/12/10(月) 20:17:59 ID:Gq+nQ0PF<>
「目玉って、どう調理したらいいと思う?」
 一瞬何を言われているのか分からず、わたしは間抜けにもポカンと口を開けてしまった。
「なにを、調理するって?」
「だから、目玉。ああ、あと、脳味噌も残ってたかな。どうしたらおいしくなるかなあ」
 何の話をしているんだか、分からなくなった。
(目玉? 脳味噌? 調理? えーと、どういうことだ……?)
 必死に考えて、わたしはある結論に思い至った。
「分かったぞ、愛美!」
「え、なにが?」
 驚く愛美に、指を一つ立てて言ってやる。
「お前が使った材料って、マグロだろ!」
「……マグロ?」
 訝しげに鸚鵡返しする愛美に、頷いてやる。
「そう、魚の。目玉とか脳味噌とか使えるって言うし、魚だから多分臭みもあんだろ? 切っても焼
いても食えるし……まあジュースにするってのは気持ち悪いけど」
 タカシくんはひょっとしたらゲテモノ好きなのかもしれない。もしくは、吐いたのはそんな気色悪
いジュースを無理して飲んだせいだろうか。
 少し考え込むわたしの前で、愛美は首を傾げた。
「うーん、マグロ、マグロ……ちょっと、いやかなり違うけど……」
 呟いたあと、軽く首を振る。
「まあ、どうでもいいか。食材になっちゃえば大体みんな一緒だって分かったし」
「あ? なんか言ったか?」
「ううん、なんでもないよ。それでねきゅーちゃん、タカシくんがねー」
 愛美は床にぺたんと座り、楽しげにタカシくんのことを話し始める。わたしも背もたれを前にして
椅子に座って、呆れ半分にのろけ話を聞く。
「タカシくんね、『俺が悪かった、許してくれ、もうお前以外の女は見ないから』って言ってくれた
んだよ」
「へえ。調子いいこと言うねえ。そんなこと言って、また浮気すんじゃないの?」
「そんなことないよー。だってタカシくん、もう外に出ないって言ってたもん」
「外に出ない? どうして」
「外に出ると他の女の人見ちゃって、迷惑かけるからだって」
「うひゃー、驚いた。あのタカシくんがね。こりゃあんたにぞっこんほれ込んじまったんだね」
「えへへ、そうかなあ?」
 まあさすがに外に出ないというのは冗談だろうが、幸せそうに笑う愛美を見ていると、茶化す気に
はなれなかった。
(何にせよ、これにて一件落着ですかねえ)
 深く息を吐きつつ、わたしはふと、窓に目を向ける。
 狭い家の外は、春らしい暖かな日差しで柔らかく輝いている。
(外に出ない、なんて、勿体無いと思うけどねえ、タカシくん?)
 肩をすくめるわたしを見て、愛美が文句を言った。
「ねー、きゅーちゃん、聞いてるー?」
「はいはい聞いてますよ」
「そう? あ、でねでね、きゅーちゃん、タカシくんがねー」
 際限なく続く愛美の惚気話を聞きながら、わたしはようやく訪れた平和を一人噛み締めるのだった。

 HAPPY END! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/10(月) 20:19:25 ID:Gq+nQ0PF<> ヤンデレもいいけどたまには普通の話も読みなよってことさ! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/10(月) 20:24:21 ID:/XhNErsM<> だが断る\(^o^)\ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/10(月) 21:41:23 ID:xAyK9HM4<> HAPPY! d(^o^) <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/10(月) 21:52:33 ID:7dBO99VV<> >>53
GJ
こういうホラーチックな話は、好きだな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/10(月) 22:49:33 ID:eLCwaClu<> >>53
GJ!!
レクター・ハンニバルを思い出した。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/10(月) 23:25:06 ID:vg+lwlYY<> ハードヤンデレはきつい…
ソフトヤンデレがいいな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/11(火) 00:38:17 ID:iGJirhDP<> 59を見て「そうか?」とか思ってしまった俺は既に…\(^o^)/ <> リッサ
◆v0Z8Q0837k <>sage <>2007/12/11(火) 00:45:55 ID:mLomD40f<> またまた投稿します、今回は一応男役がショタなのと…カブトボーグを見ながらノリノリで
書いたので、そこらへん注意です。

 「爆走!!逆転シューターダイノボーグ!!」

 「はあ〜…なんでこんな仕事引き受けちゃったんだろう…」
 二日酔いでふらふらする頭を押さえて私、小鳩 あずさはバスに乗り込んだ、目的地は海岸沿いにある
イベント会場、舞浜アリーナだ。
 勿論遊びに行くのではない、大切な仕事のためにその会場に向かうのだが…どうしても気乗りしなかった。
その理由はただ一つ…私の仕事が漫画家で…よりにもよって編集者から受けた新しい仕事の依頼が児童向け雑誌で
大人気のおもちゃ、ダイノボーグの漫画を描くことで…更に何故か今日開かれる全国大会に選手として出場する事が決定していたからだ。
 「ノリで行けばいいのさ、会場で取材がてらに少し遊んで来いって」
 何がノリだ、そう思った。
 しかしせっかくもらった仕事な分、きっちりこなさないとプロとして恥ずかしいのも事実だ…必死に
改造マニュアルを読んで勉強し、何とか昨日酒で勇気を付けて…今日、二日酔いしながらもここまでたどり着いた…そんな感じだ。
 「何が悪かったのかなあ」
 そんなことを呟いて窓から見える景色を眺める。数年前、初めて原稿を持ち込んだときに、他に何が書けるのかと聞かれて某ミニ四駆同人誌を
もって行ったのが今にしてみればもの凄くまずかったのかもしれない。
 「おねえさん、どうかしたの?」
 ふと、自分の横から聞こえた声に振り返る、そこには一人の少年がいた…その子はくりくりした目と少年特有の可愛らしさ
そして元気いっぱいな表情をした…まるで私の理想を体現したかのような少年だった…そしてその腰には、ダイノボーグの
ホルスターが装着されている。
 「あ?ううん…ちよっと気分が悪くて…何しろ初めて大会に参加するから…」
 「え!お姉さんもダイノボーグするんですか!?すごーい!かっこいい!!」
 彼はまるでヒーローでも見ているかのようなきらきらした目で私を見つけてきた…その表情の可愛らしさに私の二日酔いは吹き飛んだ
…可愛いなあ、話をふって正解だったなあ…こんな子に会えてよかった、と私は少しだけ担当に感謝した。
 「うん、でももう大丈夫、会場も見えてきたし、お姉さんも緊張してられないもんね!!」
 そう、もうバスはアリーナのすぐ近くまで迫っているのだ、おちおち二日酔いはしていられない。
 「そういえば…君の名前はなんて言うのかな?同じボーグバトラー、小鳩 あずさとして知っておきたいんだけど」
 「僕は流星、三剣 流星!小学四年生です!」
 自信満々にその子…流星君は名乗りを上げた、その表情に私の心はとても癒された…ついでにこの子をモデルにして漫画の主人公を
描こうと、ついでにそんな打算的なことも考えた。 <> リッサ
◆v0Z8Q0837k <>sage <>2007/12/11(火) 00:47:25 ID:mLomD40f<> 「爆走!!逆転シューターダイノボーグ!!」A

 会場に入って小学生学生達の軍団の中でゼッケンを付けると凄まじく恥ずかしかったが
それでも取材をしなければしかたない、そう考えて、私は恥を忍んで会場で絶叫した。
 「行きなさい!!ゾルダートメガテリウマー!!」
 「いっけー!!ステゴライザー!!」
 何でいちいちぶつかるたびに叫ぶんだろう、そんなことを考える…そもそもこのオモチャ
ダイノボーグは紙相撲にモーターを付けたようなものだ…いちいち叫ぶな子供よ、そもそも
何で私の機体はメガテリウムなんだ、ようはナマケモノの先祖だぞ…。
 そんなことを考えつつも相手の子供のダイノボーグを土俵から押し出して、リーグ戦で順調
に勝ち進んでいく…気がつけば私はブロック戦に突入して、Aブロックの代表として勝ち残っていた。
 (あー、流星君にあいたいなあ、お話したいなあ…) 
 そんなことを考えながら会場をうろつく。
 「何だよあのお姉ちゃん、つよすぎるよ…」
 「でも次の試合の相手…チャンピオンだから…」
 そんな呟きが会場のあちこちから聞こえる、チャンピオンが相手とは運がないが…まあ
相手は子供だ、きっと簡単に勝てるだろう。
 そう考えながらリングに上がる…その先には。
 「お姉…ちゃん?」
 「え…流星…くん?」
 驚いた顔の流星君がいた、どうやら彼がチャンピオンだったらしい…私も同じように驚く
…しかし、驚く彼の顔を見るとある考えがわいてきた。
 (この子…泣いたらどんな顔するんだろう?)
 そんな思いを抱きつつも、ゴングの音と同時に私はリングにダイノボーグを放った。
 「…くっ!!いけえ!ゾルダートメガテリウマー!!」
 「…負けない!行くよ!!ティラノロート!!」
 流星君はそう言うと同時にダイノボーグを放った、彼の使う機体はバランス型だ
一直線で私に向かってくればパワー型のこの機体の力には押し出しで勝てるはずがない…そう思っていた、が。
 「いまだ!!レジェンドロジカルサイコストーム!!!」
 どがあん!!と。
 私のダイノボーグはあえなくリングアウトした…さすがチャンピオン、必殺技を持っているとは思いも寄らなかった…。
 「お姉さんゴメンね…」
 「ううん、大丈夫だよ…それよりさ、今度もっと勝てるような方法…私にも教えてくれるかな?」 
 「うん!いいよ!!教えてあげる、お姉さん強いからすぐに僕を追い越せるよ!!」
 とりあえず試合には負けたが取材結果は上出来だったのでよしとしよう、それに…こんな可愛い少年とも知り合えたのだ、
きっとこれがいい出会いになるに違いない…。
 そんなことを考え、私はできるだけ汚くないような、さわやかな笑顔を浮かべた。それに合わせるかのように流星君も
にっこりと笑顔を浮かべた。
<> リッサ
◆v0Z8Q0837k <>sage <>2007/12/11(火) 00:48:22 ID:mLomD40f<> 「爆走!!逆転シューターダイノボーグ!!」B
 
 「それでね、今日学校でね…もぐもぐもぐ…」
 「こーら!あわてないの!食べたかったらまた頼んであげるからね」
 それから一月が過ぎた、その後流星君とケータイの番号を交換するまでの
関係にこじつけた結果、彼は意外にも私の近所に住んでいる事が判明、原稿が終わった
あとや暇なときはこうしてしょっちゅう遊べるような関係にまで進展していった。
 喫茶店で無邪気に好物のチョコパフェを食べる彼を見るだけで心が癒された、更に普段
の生活がどうだ、あの先生が嫌いだなんて話をしてくれているといったあたりは本当にたまらなかった…。
 可愛い、もう食べてしまいたいくらいに可愛い…ああでも、この子にとっては、私はただのやさしい
お姉さんどまりなんだろうなあ…なんて、そんなことを考えると寂しくなった。
 「ねえねえ、あずさお姉さんのほうはどうなの?漫画のほうは終わったの?」
 「うん!今日早速原稿を上げてきたんだ!だからこうして流星くんと遊べるんだよ」
 「やった、じゃあまたボーグバトルしよう!」
 こうしていつまでこの子は私と遊んでくれるのか、それが一番心配だった、だから漫画の連載の方も
頑張った…そう、この唯一の、二人の接点を切らないために…そしてこのオモチャの人気を出来るだけ
長く続けるために…そして。
 「じゃあさっそくお店に行こう!あずさお姉ちゃん!」
 この、彼の笑顔を見続けるために…。 <> リッサ
◆v0Z8Q0837k <>sage <>2007/12/11(火) 00:49:31 ID:mLomD40f<> 「爆走!!逆転シューターダイノボーグ!!」C

 しかし、二人の関係に終わりが来るのも実に早かった、理由は簡単だった…私がバトラーとして目立てば目立つ
ほどに雑誌上での扱いは大きくなり、それが流星君のプライドを…小学生特有の女の子と仲良くすると言う事に対
する抵抗を強めたのだ。
 「お姉ちゃんと流星君はつきあってるんだって」
 まあきっとそんな感じで語られたのだろう、噂は次第に大きくなり、彼は気恥ずかしさとチャンピオンのプライド
から私を避け始めたのだ。
 「お姉ちゃんとはもう会いたくないです、僕にもう話しかけないでください」
 そんな手紙をもらっても、必死にそう解釈して自分の気持ちを抑えた、でももうそんな気持ちは長く続かなかった
今まで一緒にいすぎた分、猛彼がいないことに自分が耐えられなくなっていたのだ。
 りゅうせいくんりゅうせいくんりゅうせいくん…あいたいあいたいあいたいあいたい…おねえちゃんはもう限界だよ
君がいなくなってから気づいたんだよ、もうお姉ちゃんは君がいなくちゃ駄目なんだよ…お願いだから、何でもするから…戻ってきてよ、流星君…。
 「あ…んん…あああ!」
 最後に流星君が遊びに来たときに置き忘れていったジャンパー、その臭いをかいで、私は締め切った部屋でオナニーを繰り返していた。
 
 それから数ヵ月後、とうとうダイノボーグのアニメ化も決定したとき、担当からある話が持ちかけられた。
 「敵がおなじ小学生じゃつまらないからさ、こう、もっと強い敵を出そうよ、ダイノエンペラーとかそんなかんじの奴、本当の試合の方
にも逆シードで登場させてさ…きっと盛り上がるって…」
 ストレス性の不眠のために、目の舌に大きな隈をつくりながらも担当の話を聞いていた私は…ふと、あることに気づいた。
 …そうだ、それを使えばいいのだ、そうすれば嫌でも流星くんは…また私を…。
 「担当さん!了解しました!!ただし…その企画、私に預けてくれませんか?」
 「へ…まあいいけど、どうしたの?」
 このとき私はきっと…ものすごい下卑た笑顔を浮かべていたのだろう、でも構うもんか。
 わたしは流星くんと一緒にいたいんだ。ずっとそのそばにいたいんだ。
<> リッサ
◆v0Z8Q0837k <>sage <>2007/12/11(火) 00:50:45 ID:mLomD40f<> 「爆走!!逆転シューターダイノボーグ!!」D

 「ホーッホッホッホッホ!この程度、この程度なのかしら!」
 「うわーん、ぼくのディノレックスパーダが〜!!」
 泣き叫ぶ少年に対して、私、小鳩 あずさ…もとい、ダークネス
レックスクイーンは容赦なく勝利、少年のダイノボーグをハイヒールで踏み潰した。
 ダークネスレックスクイーン…それが今回私が提案した悪役だった、負けたダイノ
ボーグを容赦なくハイヒールで砕く、ダイノボーグで世界征服をたくらむちゃっちい大人…
もとい恐怖の女王、それが私の流星くんともう一度…このオモチャで遊ぶために考えた配役だった。

 「許さないぞ!クイーンめ!!今日こそ僕が倒してやる!!」
 「ホーホホホ!そんなことができるのかしら、君みたいな可愛い坊やに!?」
 やっぱり子供だ、仮面とボンテージアーマーで隠しているせいもあるのだろうが、意外に彼は
私の正体に気づかずにノリノリで宣戦布告をしてくれた。
 しかし、そこに予定外が一つ。
 「大丈夫だよ流星、アンタは決勝で私と戦うんだから!」
 天乃川姫香…なんだか私が傷心で一月ほど大会に出ない間に現れた、流星くんのクラスの転校生
らしい…年相応にツインテールを結い、流星くんのそばにいながらツンデレな態度をとる姿は…正直スゲエムかついた。
 「言うじゃない…じゃあさっそく、行きなさい!ジャックザレオン!!」
 とりあえず彼女の一回戦相手の四天王の一人に命令をする、正体は担当な分ある程度命令できるのが
今回の肝だ。
 (容赦なくやってよね!)担当に冷たく言い放つ。
 「な!何で俺がそんな事!?」
 「…あ?…てめえ逆らうのか?ぶっ殺すぞ!!」
 「は…はい!!」
 多分普段を軽く超えるような気迫がこもっていたのだろう、担当は息を呑んでそう答えた。
 その結果、彼女の使うビューティフルスミロダーは担当の獣装甲ダイノボーグ、ビルゲマスター
による捨て身攻撃によってモーター部及び敵を押し出す部分に大ダメージを受け…結果、捨て身で
勝利するも、二回戦の私との対戦であっけなく敗退する羽目になった。
 「いやあ!!やめてえ!!わたしの!私のダイノボーグが…いやあ!あああああああ!!!!!」
 グシャリ!と音を立てて彼女のダイノボーグは砕け散った、私はこれ見よがしにそれを何度も砕く
!砕く砕く砕く砕く!!!!よくもお前は…よくもお前は流星くんを!!許せない許せない許せない!!!
そうやって流星くんのことを敵視するフリして!知ってるんだぞ!しってるんだぞ!!!ゆるさないゆるさないゆるさない!!!!。
 「いやあー!!!いやあー!!!」
 そう叫ぶと同時に彼女はがくりと倒れた、その空ろな表情を見て私はにっこりと笑う、だって…だって…また流星君が…。
 「もう…絶対に許さない!!お前を絶対に倒してやるからな!!クイーン!!」
 おこったかおでも、ソウヤッテワタシヲ、ワタシヲ…ミツメテクレルンダカラ。

  <> リッサ
◆v0Z8Q0837k <>sage <>2007/12/11(火) 00:51:58 ID:mLomD40f<> 「爆走!!逆転シューターダイノボーグ!!」E

 それから数試合後、足が痛くなるほどにダイノボーグを踏み潰した後、ようやく決勝戦が始まった。
 相手側はもちろん流星くんだ、たった二人でリングに上がるとまるで結婚式か何かのようで胸が躍った
しかしまあ…怒った顔も、こんなにも可愛いんだね、大好きだよ、いや、余計好きになりそうだよ…流星くん、大好きだよ。
 「僕はお前を許さないぞ!クイーン!食らえ!クレイジージュラシック!狂い咲きサンダーダーロード!!!」
 「許さないの、酷いなあ?りゅうせいくん?」
 「え…あずさ…おねえちゃん!?」
 流星君が必殺技を放つ瞬間、私は仮面を落として彼の気を一気にそらした、そしてその瞬間、一直線で向かってきた彼の
マキシマムティラノロートは私のクリムラウザーを一気に場外に押し出した。
 「決まりましたあ!!勝者!三剣流星ー!!!」
 場内から歓声が響き渡る、私は悔しそうに捨て台詞をはいて自分のダイノボーグを踏み潰すと、会場を後にした…もちろん
流星くんには飛び切りの笑顔を浮かべて…だ。
 勿論そのあと会場にはチャンピオンの勝利を怪しむ声が響き渡った…まあ大人ならある程度試合にもホンがあるのかと思うのだろうが
子供の世界ではそれは許されないのだろう…そして派手派手なメイクを落とし、地味な顔で流星くんの様子を見に行ってみることにすると
…チャンピオンの控え室ではぱちいん!と派手な音を立てて、彼があの子…姫香ちゃんに顔をはたかれているのが見えた。
 すかさず私はそれを止める、空ろな顔で涙を流し、裏切り者と叫んで流星くんをにらみつける彼女は…見ていてとても愉快だった。
 「負けを認められないのは恥ずかしい事よ…そんなんじゃあ誰かを好きになる資格はないわ」
 「…う…うわあああああああ!!!」
 そういって泣き叫ぶと、彼女はどこかにむかって走り去っていった。
 そして今にも泣き出しそうな顔の流星君を見つめる、その顔は私の心の中の加虐心を十分に満たしてくれた…。
 そう、ここまでは計画通りだ、後はどうことが運ぶのか…うふふふふ、あははははははは!!!
<> リッサ
◆v0Z8Q0837k <>sage <>2007/12/11(火) 00:53:12 ID:mLomD40f<> 「爆走!!逆転シューターダイノボーグ!!」F

 その夜、打ち上げもそこそこにマンションに帰って原稿のラフを書いていると流星くんからのメールが届いた
…よかった、私のアドレス消してなかったんだ…おねえちゃんは嬉しいなあ…。
 「今夜、公園で決着を付ける」
 簡素な言葉だけのメールだけど、それでも凄く嬉しかった…彼からもらった初メール、いや、人生で始めて
自分に好意を向けてくれた男性からのメールだ、しっかり保存して大切に取っておこう。

 そして私は公園にたどり着いた、そこには簡素なステージをセットして、ダイノボーグを持って待ち構える流星君がいた。
 「お姉ちゃん…僕が勝ったら姫香に謝って…そしてもう、僕の前に現れないで!!」
 「相変わらず可愛いねえ、流星くんは…じやあね、もしお姉ちゃんが勝ったら…一生、お姉ちゃんの言う事…
聞いてくれるかな?」
 そういって彼を見つめて笑顔を浮かべる…やっぱり、お子様はそんな事いわれたら怖いのかなあ?流星くんは
唇まで青ざめている…寒いのかな?ならはやく暖めてあげなくちゃ…うふふ。
 「ボーグファイト!ゴー!!」
 二人が叫ぶと同時に、二体のダイノボーグが投げ込まれた、マキシマムティラノロートは一気に私の新型ダイノ
ボーグ、レプテライダーに衝突して…そのまま横転、一気に場外に押し出された。
 突然のことに何が起こったのかわからず、流星くんは立ち尽くす…そして数分後、彼は絶叫した。
 「…うそだ、うそだ…うわあ、ああああああああああ!!!!!嫌だ!嫌だあああああああああ!!!」
 「嘘じゃないよ…うふふ、うふふふふ…君はもう無敵のチャンピオンじゃないんだよ…じゃあまず最初のお願いは…」
 ぐしゃり、と小気味いい音を立てながら私は彼のダイノボーグを踏み潰した。
 「もうこのへんなオモチャで遊ぶのやめて…おねえちゃんの犬になってもらおうかなあ?」
 「う…うわあああああああ!!!」
 今までの栄光を奪われた分、敗北と言う現実を直視できないのか…逃げ出そうとした流星くんの足に足払いを決めると
私は彼を押し倒した、いやしかし簡単なものだな、パーツを鉛で重くしておけばこうも押し出しづらくなるとは…でもコレ
ばれたら一気に人気も下がるだろうなあ。
 「いやだよ、嫌だよお姉ちゃん!!止めてよ!おねがいだから!!!」
 「やだよ…やだやだやだやだやだやだ…もうおねえちゃんは我慢しないんだよ、君が欲しいんだよ…ん…ちゅ…」
 流星くんの体をがっちりと押さえ込んで、私はその唇を奪った。
 「ん…むう…ぷはあ…」
 すっかり抵抗する力を失った彼を縛り上げると、私は彼をそのまま担ぎ上げて家に持ち帰った。そうだ、彼をじっくり
家で暖めてあげなくてはいけないのだ…そう、じっくりと。うふふふふふふ…。
   <> リッサ
◆v0Z8Q0837k <>sage <>2007/12/11(火) 00:54:27 ID:mLomD40f<> 爆走!!逆転シューターダイノボーグ!!」G

 「いひぃ!や!ああああああ!!!!もう許してぇ!おねえちゃああん!!」
 「ん…だーめ、りゅうくんがちゃーんと誓ってくれない限り…やめないんだからね…ぷはあ!」
 持ち帰った流星、いや、りゅー君の服を全部剥ぎ取ると媚薬をたっぷり飲ませて…そのままフェラ攻め
を繰り返した…そう、誓いの言葉を言わせるために…。
 「でもぉ…怖いよぉ…奴隷なんて…むち打ちとか…いやだよお…」
 「大丈夫、お姉ちゃんが可愛いりゅーくんにそんなことするはずないでしょう?お姉ちゃんはりゅーくんが
可愛くて仕方ないから…もしも言う事聞いて…誓ってくれるのなら、もうこんなふうには苛めないよ?欲しいものは
なんでも買ってあげるよ?行きたいところに連れて行ってあげるよ…だから…」
 りゅーくんは渋った挙句、ついに快感に耐え切れなくなったのか…ようやくその言葉を口にした。
 「ん…は、はいい…僕は…三剣流星は…もうダイノボーグなんかで遊びません…僕は…ぼくは、もうずーっと、いっしょうがい…
あずさおねえちゃんの…奴隷として生きていきますぅ…だからあ…」
 「はい、よく言えました…それじゃあさっそく…んん!ん!!」
 私はりゅうくんのモノを手であそこにあてがって…一気に騎上位でのしかかる。
 「ひい!あ!!!あああああああああ!!!」
 彼はためにためていた精液を一気に放出して…私にしがみつくと、そのまま果てた。
 「ふふふ…愛してるよ、愛してるからね…もうずっと、放さないからね…流星くん…ふふふ
ふふふふふ…」
 彼の寝顔にキスをして、私は笑った。

 その後日、流星と共に失踪してしまったあずさのマンションで最終話の原稿を発見した担当は
泡を吹いて失神したと言う。
 最終回では主人公が敵…クイーンに負けて制奴隷にされるまでの過程が全てねちっこく、という
かリアルそのものな内容で書かれていたという。

 fin
<> リッサ
◆v0Z8Q0837k <>sage <>2007/12/11(火) 00:56:36 ID:mLomD40f<>  以上です、ノリで書きました、後悔はしておりません、それでは。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/11(火) 08:26:41 ID:JRh/pXcs<> ttp://www.edge-records.jp/title/nemurenai/02yandere.php <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/11(火) 08:45:36 ID:cSDaspeL<> >>70
俺の不眠症もようやく治りそうだ。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/11(火) 09:13:56 ID:p/XJ06zZ<> 流星と聞いてメタルダーしかでてこないわ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/11(火) 09:15:16 ID:tz7Xr0f9<> >>69
GJっす

このお姉さんに犯されたい俺は異端 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/11(火) 10:22:37 ID:JRh/pXcs<> 流星と聞いてスパロボのリュウセイ・ダテを思い出す俺は異端 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/11(火) 10:42:22 ID:CwLLoKIq<> このスレって既存小説のキャラクターを使った小説でも投稿おk?
(具体的にはハルヒの朝倉涼子) <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/11(火) 10:55:57 ID:tLR1oZeH<> 二次創作はそのキャラのスレに投稿した方がいいぞ
ハルヒのスレならある <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/11(火) 10:56:34 ID:CwLLoKIq<> >>76

あり。そっちにいってみる。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/11(火) 13:04:01 ID:Q8IMpLTd<> >>74
ロックマンを(ry <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/11(火) 16:38:35 ID:au5dcblj<> VIPの新ジャンル「独占されたい欲」ってのがいい感じ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/11(火) 22:08:09 ID:Qg1NFOHH<> VIPナツカシス。最近は厨房の出会い系掲示板になってしまってみてないな〜。 <> 名無しさん@ピンキー<><>2007/12/12(水) 02:28:09 ID:NuCZcnMd<> <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/12(水) 04:40:09 ID:buAg1Gep<> この会話も十分厨臭い <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/12(水) 12:17:07 ID:hUh19mew<> お姉さんに犯される流星くんうらやましいなぁ… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/12(水) 12:38:59 ID:zEWlfgDu<> 流星と聞いて、剣(ツルギ)流星を思い出す俺はもっと異端 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/12(水) 13:40:19 ID:H5YFd3Vp<> >>82
って指摘してる時点でおまいも厨臭い

以下∞ループ <> 合わせ鏡
◆GGVULrPJKw <>sage<>2007/12/12(水) 19:21:03 ID:Fph0owpB<> 鏡の向こうの自分は、自分と同じ顔をして、自分と同じ行動をする。
私が笑えば笑うし、私が泣けば泣いて、私が怒れば怒る。
私と同じ顔をした私は、私のようで、私ではない。


エントランスで倒れていた私を助けてくれたのは、同じ棟のポスドクの先輩。
私もよく知っている人で、こーたと先輩は、同じ少林寺拳法のクラブで先輩とOBの間柄でもある。
女性の悲鳴を聞いて駆けつけてきたところ、争っていた二人のうち一人が自分に気づき、荷物を
持って逃げたのだと聞かされた。
確かに、私の荷物は、全て、なくなっていた。
突き飛ばされた時に打ち付けた体が、ズキズキと痛む。

慌てて先輩に事情を話し、先輩の携帯で家に電話をかけてもらう。私達の家が徒歩10分だった
としても、その10分が惜しかった。
なのに、電話の呼び出し音はむなしく鳴り響くだけ。時間から考えて、瑞希はもう家についている
はず。そして、彼女は家の鍵を持っているから家に入れるはずだ。
「水樹ちゃん、行こう。もしどういう状況だったとしても、電話に誰かが出る確率は低いかも
 しれない」
「でも、先輩、うちはオートロックなんです。鍵は瑞希にとられたし、もし、こーたが開けて
 くれなかったら、私達、入れません。管理会社もこんな時間じゃ連絡とれないし」
瑞希。もし、こーたに何かしたら。許さない。
でも、どうしたらいいの。私に何ができるの。こんなにも無力でどうしようもなく馬鹿な私。
声が震える。体がガタガタを音を立てて揺れる。焦燥感と恐怖で立っていられない。
そんな私の肩を、先輩は強く掴んだ。


「じゃあ、警察だ」

<> 合わせ鏡
◆GGVULrPJKw <>sage<>2007/12/12(水) 19:22:13 ID:Fph0owpB<> 「え?」
……警察?先輩の言葉が一瞬理解できなくて、思考が停止し、体の震えまで
止まった。
呆然と、先輩を見上げる。
「先輩、そんな、警察なんて、そんなオオゴト」
「水樹ちゃん、何を言ってるんだ。これはオオゴトだぞ」
先輩は、私の肩を掴んだまま、もう一つの手で私が握り締めている携帯をゆっくりはがした。
低い声で、子供に言い聞かせるように諭す。
「身内のことだからためらうのはわかる。でも、君は襲われて荷物を奪われているんだ。これは立派な 犯罪だぞ。それに、君の妹さんは、鍵を使って家に侵入するだろう。凶器だって持っている。
 もしかしたら浩太に危害を加える可能性だってあるんだ」
「あ…でも、でも…」
「いきなりのことでパニックになるのはわかる。俺が連絡するよ。待っててくれ」
先輩は、携帯を操作すると、耳に当てる。そして、安心させるように笑って、余計なことを言った。
「浩太だってうちのクラブの主力だ。殺されることはないだろう」
「こ。ころ…」
こーたが、瑞希に、殺される。そうだ。例えこーたが武術をやっていても、寝ている間に縛られて
しまったら、叶わない。
違う。瑞希はこーたに恋しているのだから殺さない。絶対に。

本当に?
当たり前だ。瑞希は私と同じなのだから、私と同じように考えるはず。私はこーたを殺そうと思った
ことなど…。

先輩が警察としているのであろう緊迫した会話が、すうっと遠くなった。
自分のものにならないのなら、殺してしまえばよいと、思ったことは、本当に、なかったか。
ソファーで無防備に眠っているこーたを自分だけのものにするために、二度と目をさましてほしく
ないと願ったことは、本当に、なかったか。
二人共に生まれ直せるよう、全てをリセットしたいと思ったことは、本当に、なかったか。
<> 合わせ鏡
◆GGVULrPJKw <>sage<>2007/12/12(水) 19:23:09 ID:Fph0owpB<> 「あ…あああっ!」
体を衝撃が駆け抜ける。見たくない悪夢と認めたくない記憶、二つが入り混じって私を突き動かした。
行かなきゃ!こーたを助けなきゃ!こーたが殺される!
私は、はじけるように駆け出す。
「はい…あああ、こらっ!」
しかし、警察と話している途中だった先輩が、私の体をつかんで止めた。
必死でもがくけれども、瑞希一人でさえ跳ね除けられなかった私が、体育会系の先輩の腕から逃れ
られるわけがない。
「は、はい。できるだけ早くお願いします。たちの悪いストーカーなので。はい。…水樹ちゃんっ!」
電話を切った先輩が、空いた腕で、私の頬を張り飛ばした。痛みと苦しみとぐちゃぐちゃの感情が、
出口なく私の中で吹き荒れる。わけのわからなくなった私は、立ってさえいられなくなり、
その場に崩折れた。
勝手に目から涙が出てきて、たまらずしゃくりあげる。
「もう少し冷静になってくれ。君が行ったところで、一体何ができるんだ?」
「あ…あ…ごめんなさ…」
先輩は、私から離れ自転車にまたがると、厳しい声で私に言った。
「わかったら、ここでおとなしく待っていてくれ。男二人なら、女性一人を取り押さえられる。
 でも、君がいたら、邪魔だ。守らなければならないだけ、邪魔になる。本当に浩太のことが
 心配なら、このままここで無事なままでいてくれ。…A204に刈屋がいる。そこで待って
 るんだ」

私の返事を聞かず、先輩はそのまま自転車で走り去った。
私はただ、何もできず、その場にしゃがみこんで、先輩を見送った。
<> 合わせ鏡
◆GGVULrPJKw <>sage<>2007/12/12(水) 19:23:53 ID:Fph0owpB<> 警察が素早く動いてくれたのは、はっきりと先輩が言った訳ではないが、クラブのOBが警察に
いたのと関係あるかもしれない。警察が家に入るにあたっては、私の承諾があったから、早かった。
こーたは、警官二人と先輩が家に入るまで、眠っていたというのだから、大物と言うか、なんと
いうか。
瑞希は、こーたのベッドに入って一緒に眠っていたらしい。あっさりと取り押さえられ、高崎家
へと帰されたという。
先輩の冷静な判断のおかげで、大事に至らず、素早く事件は解決した。


「水樹、心配、かけたね」
俺はなにもしてないけど…。と照れくさそうに笑いながら、こーたは私に言った。
私は、ただうつむいて、何も言えなかった。
私が何もできなかったせいで、瑞希に荷物を奪われて、こーたを危険にさらした。
こーたの身に何もなかったのは、先輩の冷静な判断のおかげで、私一人だったらどうなっていたか
わからない。
こーたを守るどころか、ただ、蚊帳の外で、泣いていただけ。
なんて無力で馬鹿でどうしようもない私。こんな私なんて、いない方がこーたのためかもしれない。

「でも、水樹に何もなくてよかった。これからは遅くなったら俺を呼ぶとかしてくれ。迎えに行く
 から。研究室に一人で残る時は、鍵をしっかりかけてくれ」
涙が出てくる。こーたが心配した様子で私を見る。ああ、今ショックを受けて大変なのはこーた
なのに、私のことを第一に心配してくれるなんて。なんて幸せなんだろう。
「ありがとう。本当にこーたは優しいね…。ごめんね、お姉ちゃんなのに、こーたを守れなくて」
「水樹のせいじゃないよ。水樹が無事でいてくれることが一番大事なんだから」
こーたの笑顔。部屋に戻っても、一日中私は幸せなままだった。
あまりに幸福を感じすぎて、卒倒しそうになる。
<> 合わせ鏡
◆GGVULrPJKw <>sage<>2007/12/12(水) 19:24:37 ID:Fph0owpB<> でも、瑞希のことを思い出した瞬間に、その感情は逆のベクトルへと噴出した。
どろどろと渦巻く怒りと憎しみが、臓腑を焼く。
私と、代わる?こーたを、守る?なんて馬鹿なことを言うのだろう、あの子は。
しかも、こーたと一緒に寝ていたなんて、何を考えているのだろう。
そんな方法でこーたが守れるものか。
瑞希は、こーたと一緒になりたいだけだ。でも、こーたは瑞希なんか、姉なんかと一緒になる
わけがない。
こーたは、普通に恋をして、普通に結婚して、普通にお父さんになって、普通の幸せを掴むの。
それを見守るのが、姉ってものでしょう。それを望むのが、姉ってものでしょう!!
私はそれを望むことができる。瑞希にはできない。だから瑞希はこーたの側にいてはいけない。

本当に?
あの日、私を襲った悪寒が、もう一度背筋を駆け抜けた。首を振る。
当たり前じゃない。私は姉。こーたの姉なんだから。
こーたの幸福こそ、私の望み。


私は役立たず。私は無力。でも、今度こそ、絶対に、何があっても、こーたを守り抜く。
どんなことをしてでも。
そう、どんなことをしてでも。
<> 合わせ鏡
◆GGVULrPJKw <>sage<>2007/12/12(水) 19:25:27 ID:Fph0owpB<> でも、私一人がどんな決心をしても、世界は何も変わらないのだ。
そう、私一人の願いなんて現実の前には無力で、誰一人動かせないと言うことを、私はすぐに
知ることになる。


「水樹、父さんと母さんがこっちに来ることになった」
「え?どうしたの?」
「昨日、電話で相談した」
「…何を?」
夜ご飯を食べる間中、こーたはずっと暗い顔をしていた。頑張って盛り上げてみたけれども
嫌な予感はしていた。
食べ終わり、ごちそうさまを言った後、言いにくそうにこーたが切り出した。いい話であるわけ
がない。
こーたの顔が強張っている。私の顔も強張っていく。


「昨日、高崎家から、俺を瑞希の婿に、という申し出があった」


宙に浮いていた手を膝に置こうとして、距離感をどうして間違えたのだろう、机の角に思い切り
手をぶつけてしまった。
派手な音を立てて机の上の皿が一瞬、踊り、その後はただ、静寂だけがその場を支配した。 <> 合わせ鏡
◆GGVULrPJKw <>sage<>2007/12/12(水) 19:26:08 ID:Fph0owpB<> 以上です。
今回はつなぎなので、ヤンデレ分が少なくてごめんなさい。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/12(水) 19:28:49 ID:H5YFd3Vp<> GJ! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/12(水) 19:31:36 ID:hUh19mew<> ダイノボーグの健全な展開

三剣少年敗れる 貞操の危機! その時

「待て!俺が相手だ!」

そこに謎の少年登場
少年の使うドラゴンロートが重りをつけたレプテライダーに圧勝
少年「アントラースラッシュ!」
あずさ「そんな!重りをつけ…んぐ…!」

「やっぱりな…ぐらついていたからまさかと思ってたが…
大人のくせにちゃんとばれないようにできないのか?
このショタコンババァ!」

あずさ「…!!覚えておいで!」
お決まりの台詞をはいて去っていくあずさ
流星「兄さん…そうでしょ!舞雷兄さんなんでしょ!…助けてくれてありがとう…」

舞雷「勘違いするな…
俺はお前を倒すために日本に帰って来たんだ!」

流星「そ、そんな…」

続く <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/12(水) 19:32:43 ID:hUh19mew<> 次の日、近くのおもちゃ屋で流星と舞雷の兄弟対決

流星「兄さんのドラゴンロートはパワー型!
バランス型のマキシマムティラノロートが圧倒的に有利なはず!」

舞雷「甘いな…流星…
これを見ろ!」

流星「!ドラゴンロートに鎧が…!」

舞雷「見たか!このドラゴンロートは鎧を装着して
アーマードドラゴンロートになり超バランス型なる!

いけ!アーマードドラゴンロート!アントラースプラッシュ!」

流星「そんな…!僕のマキシマムティラノロートが…!」

舞雷「これはまだほんのお遊びだ…
世界大会で待っているぞ流星…!」

続く <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/12(水) 19:35:38 ID:hUh19mew<> 世界大会で舞雷がアメリカ代表だと知る流星は日本代表になり
決勝でなんとか勝利
しかしそこにレプテライダーゾンビを持ったクイーン登場流星を圧倒

クイーン「さぁ…りゅーくん…私のものになってぇぇぇ!」

舞雷「流星これを使え!」
舞雷がアーマーパーツを投げる
アーマードティラノロートになりレプテライダーゾンビに勝利

兄弟は和解するのだった
続く <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/12(水) 19:36:29 ID:hUh19mew<> orzマジですんません… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/12(水) 19:47:26 ID:hUh19mew<> 舞雷が不治の病に冒されているのを知った流星は
兄と失った時間を埋めるように過ごすがそこに三度クイーン登場

舞雷がドラゴンロートでまたも新型のサタンレプテライダーに負ける
そして舞雷は無理をして死亡

流星「にいさぁぁぁぁん!」

怒り狂う流星はアーマードティラノロートで挑むが負ける

そして失意の流星は仲間の励ましにより
大破したドラゴンロート ティラノロートを合体させたダイノロートでクイーンもといあずさとの最後の決戦に挑むのだった

続く <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/12(水) 19:48:24 ID:hUh19mew<> あずさとの最後の決戦

流星「もうこんなことやめてよ!あずさお姉ちゃん!」

全員「な、なんだってぇ!」

あずさのサタンレプテライダータロスに究極のダイノボーグ
アルティメットダイノロートの必殺技グランストライカーが命中、勝利

あずさ「どうして!?ど
うしてりゅーくんは私のものになってくれないのぉ…」
流星「ごめん…お姉ちゃん…
僕が避けるようにしたばっかりこんな…!」
流星の必死の説得であずさヤンデレ浄化
姫香とハーレムエンド

終わり <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/12(水) 19:49:56 ID:hUh19mew<> すいません すいません…
どうしても書きたかった…勝手に話作って許して下さいorz

もはやヤンデレSSでもないし… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/12(水) 20:00:16 ID:9TGs/xJO<> 本物のカブトボーグばりに読んでて頭痛くなったわ!!wwww(誉め言葉)
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/12(水) 20:02:37 ID:hw0TBWGF<> >>92
こ……これはテラGJ!
wktkが止まらないぜ、水樹ガンガレ!



   アータタタタタタタタタタタタタタタタタタ!!!!!!
        .:∧_∧:ハゥアゥアゥアゥアゥアゥアゥアゥアゥアゥ
   ∧剛∧ :(Д`;iill)←>>100
  ( ・∀・)σσσ   つ:
  (っ  三σσσσそ ヽ: チンチンチンチンチンチンチンチン
  して_)σσ:(_,ノw(_):

   独  指  百  烈  点


ネタはいいがタイミング悪すぎだろw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/12(水) 20:13:30 ID:hw0TBWGF<> >>100
てかよく考えたら勝手に改変はマズいだろ。
せめて作者さんに許可取ってから書きなさい(`・ω・´) <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/12(水) 20:53:19 ID:hUh19mew<> そうっすねorz
すみませんでした… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/12(水) 21:20:24 ID:hw0TBWGF<> >>104
次はその才能をいかしてオリジナル作品を書けばいいのさ! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/12(水) 21:49:51 ID:Ze6NPKjf<> ヤンドジってこのスレだっけ? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/13(木) 00:06:13 ID:llb0U9qX<> >>106
前スレて゛投下されてるから多分合ってる




リッサ氏の埋めネタは寸止めでしょうか?
できるなら完結させて欲しいです。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/13(木) 00:22:17 ID:gx42wXL2<> 今日会社の先輩に「ヤンデレって知ってる?」聞かれた
咄嗟に知らないって答えたけどヤンデレもメジャーになったな… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/13(木) 01:04:33 ID:g1Qhb9Ww<> >>100
無雷www あんたロックマンやってるなww <> リッサ
◆v0Z8Q0837k <>sage <>2007/12/13(木) 01:43:39 ID:Ehhjl25M<>  >100
 拝見させていただきましたがものすごく面白かったです。殆どノリと
勢いで作ったような作品だったのに、このような番外編を作っていただけて
うれしかったです。本当に感謝します、どうもありがとうございました。
 …とまあそんな感じなのでお気になさらないでくださいね、ちなみにロックマン
はよく解らないですが、自分の大好きなジュウレンジャーネタが出たときは同人の相方か
知り合いの仕業かと思ってかたっぱしから聞いてみたくらいです。
 >107
 自分もそろそろ貼らなくてはなと思ったので、今から残り分を貼らせていただきますね
<> リッサ
◆v0Z8Q0837k <>sage <>2007/12/13(木) 01:55:35 ID:Ehhjl25M<> それでは貼らせていただきます、ダイノボーグとはノリが違いますがあしからず。

ヤンデレ観測者B

 やはり世の中は金と地位なんだろうか…暗がりでもよく生える聡明そうな顔のメイドさん…こんな人を
そんな簡単にも雇えるなんて…なんてうらやましいんだ、と私は不謹慎にもそんなことを考えていた…。
 「二人でいるときは本当に幸せでした、私ってドン臭いからよく先輩メイドさんに苛められたりもしましたけど
…そんなのも全然苦にならなくて…でも」
 少し彼女の声のトーンが落ちる、どうやら話は核心に迫ってきたようだ。
 「幸せは長くは…続かなかったんです」
「あの日、私が雇われて一年ぐらいして…ようやくご主人様は私を…夜に、部屋に呼んでくれたんです…私…うれしくて
…初めては、とても痛かったですけど…それでも、私…嬉しかったんです」
 話終わると同時にぐう、と彼女のお腹がなった、恥ずかしがる彼女に私は無言で夕飯用に買っておいたタマゴサンドを差し出した。
 「…はむ…ありがとうございます…」
 「いえいえ、お気になさらずどうぞ…」
 しばし彼女は食事を続け、一息をつくと話を続けた。
 「でも、その日からだんだんご主人様はやつれ始めて…日に日に痩せこけていったんです…元々病弱な人だった分、心配はしていた
のですが…最後には仕事も出来なくなって、山奥のお屋敷で、私と数人の使用人を引き連れて隠居生活をするようになって…」
 彼女はぽろぽろと涙を流す、散々世知辛い人生を生きていた分、せっかく手に入れた幸せが壊れたと言う事は…未を引き裂かれる事
よりも辛かったのだろう。
 「最後に彼はずっとわたしに謝ってました、妹と君を重ねてしまってすまなかった、って……ご主人様の初恋の人は血の繋がっていない
妹さんで…禁断の恋が妹さんの早逝で実らなかった分、容姿の似た私を、せめてもと思って、抱いていたって…ふふふ、あはははは、そんなこと
言わなくても、よかったのに……はははははは」
 聞いていてとても辛い話だった、久々に胃が痛くなる…しかし、多分彼女がここまで私にこの話をしてくれていると言う事は…私にこのことを
話すことでなにかをはらす事になるのかもしれない…そう、私が一生好かれることはないであろう。人を愛する事で一線を飛び越えた少女たちの…
その叫びを聞いてあげることで彼女たちが癒されるのなら、何かの踏ん切りがつくのなら…ある意味この観測も意味があるのではないか…なら、ここで
更にその話しの続きを聞いてあげるべきだ、胃の痛みをこらえて私は必死にそう思った。  <> リッサ
◆v0Z8Q0837k <>sage <>2007/12/13(木) 01:58:55 ID:Ehhjl25M<>  ヤンデレ観測者C 
「それでその後は…どうしたんですか?」
「色々調べました…ご主人様の死因と、ご主人様の周りを取り囲む状況を…結果、死因は毒殺で…
犯人はメイド長と…ご主人様の両親と、ご主人様の遺産と保険金目当ての親戚筋である事が解りまして…
私、やるせなくなって…ご主人様の、いいえ…彼の墓を掘り起こしたんです…だって酷いじゃないですか?
そんな人たちが作った墓の中で、偽りの涙を流されて冷たい土の中に閉じ込められてるんですよ?そんなところ
にいるのなら…私が助けなくちゃ、って…私と同じ、あんな金ごときで…家族に捨てられて、命も奪われた
可愛そうな彼を、せめて私が助けなくちゃって…」
 「そうして彼を助け出して…今はこうして、きちんと防腐処理して、剥製にした彼と二人で復讐の旅に出てるんです…
うふふ…もうこれで、永遠に、墓穴の中でも二人は一緒なんですよ」
 そう言うと彼女はいとおしそうに…その、彼の入っているであろう死体袋を撫で回した。 <> リッサ
◆v0Z8Q0837k <>sage <>2007/12/13(木) 02:08:16 ID:Ehhjl25M<> ヤンデレ観測者E

そうか、それで血まみれだったのか…私は頷くと、自分の分である缶コーヒーを飲んで一息ついた。
 「それで…首尾の方は」
 「ええ…もうそれは、常にできるだけ急所ををはずして、苦しめて惨めに殺してやったのですが…
あと残り一人がどうにも…警戒を強めているようで…」
 そういうと彼女はポケットに入れていたものを見せた。彼女の手に握られていたのは古びたコルト
ウッズマンのロングバレルバージョンだった…。
 「大勢のボディーガードを相手に…これ一丁でどこまでいけるのか…」
 装備は拳銃一つのみ…確かにそれのみで大勢のボディーガードに囲まれた復讐相手を殺すのは大変
なうえに、精神的にも不安なのだろう。
 …なら仕方ないな、協力してあげるとするか。
 「コレ、少ないですけど使ってください…」
 そういうと私はバッグのポケットから柄付手榴弾を二つほど取り出して渡した、この前やはりここで
知り合った「魔物と戦える、彼氏を食べてしまった少女」が私にくれたものだ。
 何でくれたのかわからない上にちょうど持て余していたのだが、必要な人がいるのならその人にあげ
るのが一番だろう。
 「…いいん、ですか?」
 「ええ…これはあなたにとって必要なものでしょうし…それに、貴方が死んでしまったら…またその
彼氏と…今度こそ永遠に引き剥がされてしまいますからね」
 「…ありがとうございます、ありがとうございます…」
 彼女はぽろぽろと涙を零すと何度も何度もお辞儀をした。
 僕の手を握る彼女の手は冷たく、血なまぐさく…そしてかさかさに荒れていた。
 本来ならとめてあげたかった、引き止めてあげたかった。
 でも彼女はもうその未来を、死体袋に入った剥製と、握った拳銃と共に放棄し
てしまったんだろう…それが何より悲しかった。
 僕はそれからもう少し彼女と話をすると、その場所を後にした。
 彼女は僕の姿が見えなくなるまで、手を振っていてくれるような気がした。 <> リッサ
◆v0Z8Q0837k <>sage <>2007/12/13(木) 02:21:24 ID:Ehhjl25M<> ヤンデレ観測者F

 数日後、急いでアパートに帰ると玄関先に彼女の持っていたウッズマンが、ホールドオープンしたままの状態で置いてあった。
きっともう、使う必要はなくなったから…多分そういう意味なのだと僕は思った。
 文鎮代わりのそれの下に置かれた…南の島の写真と、ありがとう、二人はここにいます…そのうち、生きていればまた…と書かれた
文を見て、私は…そこまで思われているそのご主人様がとてもうらやましかった…。
 ああ、いつか私もそんな目にあってみたいものだと。
 そして、彼とやっと安住の地にたどり着いて、幸せそうに微笑む彼女の姿を想像して…私は少しだけ泣いた。

 そしてそれから一年が過ぎたが、まだ私の前に私を愛してくれる素敵な女性は現れてはいない、しかし相変わらず
アパートの前のバス亭には、一線を越えた女性達が現れて続けていた…。
 「と、いうわけで…あの人を振り向かせるために、このバトルロワイアルゲームに参加したんです…なのに
ゆーくんは振り向いてくれなくて…大変だったんですよ、40メートルもあるロボットに乗ってエイリアンと、ほかの子達と
戦うのって…しかもあと二人倒せば全ては終わるっていうのに…あの妹、あの妹…絶対いつか殺してやる殺してやる殺して
やる!!!」
 「あなたは…そう、とっても素敵ですねえ…自分の命も、人の命もかけて彼のために戦えるなんて…その彼氏がうらやま
しいくらいだ…」
 たとえそのロボットの攻撃で、私のアパートがぶち壊されても…バス停だけは偶然に残り…そして何故か、そこに私が住み
着いていても…彼女たちが途絶える事はなかった。
 ああ誰か、早く素敵なヤンデレ女性に出会いたい…。

 FIN
  <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/13(木) 07:04:26 ID:gOVOOWV3<> GJ!
まさか感想もらえるとは…
全くヤンデレSSでもなかったのに寛大さに感謝です… <> 名無しさん@ピンキー<>saga<>2007/12/13(木) 08:19:34 ID:A6Hojqiy<> GJっす!

この傍観者にヤンデレの神の御加護と幸あれ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/13(木) 12:24:21 ID:LGoO6KuO<> 遅ればせながら
>>92GJ!
水樹と瑞希、全く引く気がなさそうな二人の戦いがイイ。

>>114乙です
前スレが中途半端だったんで気になってましたw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/13(木) 15:20:04 ID:JipJiSAf<> >>92
 今回も面白かったです。タイトルの通り合わせ鏡のような二人のヒロインが、主人公を
取り合う……ヤンデレ好きには堪らないシチュです。
それにしても瑞希は今回の一件でほぼ確実に前科者になっただろうに、彼女の両親の意図は……? <> きゃの十三
◆DT08VUwMk2 <>sage<>2007/12/14(金) 01:30:54 ID:FFoatSrY<> 投下します。

※本作は、『男のヤンデレ』が登場します。
お気になさる方は、NGワードをお使いください <> 【後・お見舞い】
◆DT08VUwMk2 <>sage<>2007/12/14(金) 01:32:32 ID:FFoatSrY<> 「ふぅ〜ん、誰かの視線を感じるねぇ」
放課後の帰り道、同じクラスの南条が『最近、誰かに見られてる気がする』という相談してきた。
なるほど最近、南条が顔色が悪いはそのせいだったのか
「お前、疲れてるんだよ きっと休めばその視線を感じないさ」
僕は、月並みなアドバイスをした。
「…俺もそう思ったんだけど、どうやらストレスとかとは違うみたいなんだ」
そうだろうな。その視線の主は、ストレスから来る幻覚などではない。
なぜそう確信できるかというと僕は、その視線の主を知っているからだ
僕がその視線の主を知ったのは、2ヶ月前のことである―――


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「森野くん、ちょっと次の時間に使うボール持ってきてくれる」
っと僕は、休み時間が始まると同時に逃げ出した体育委員の南条の役割を後藤さんに押し付けられた。
やさしい僕は、後藤さんの命令に従い、ボールのある倉庫の鍵を取りに体育教務室へ向かった。
「ちわーっす、倉庫の鍵を取りに来ました」
…誰もいないようだ。っと中に入ろうとしたら机の影に人影があった。
「誰かいるんですか?」
「も・森野じゃないか!どうしてここに!?」
そこにいたのは、科学の大月先生だった。科学の先生がなんで体育教務室にいるんだろう?
「先生こそなんでここにいるんですか?」僕は、大月先生に近寄った。
よくみると大月先生は、片手にジャージを持っている。
さらによくみるとそのジャージは、新任の女教師・山村先生のものだった。
僕は、豚を見るような目で大月を見ると大月は、
「も・森野、これは…あれだ、世の中には色々な愛し方があってな…」っと痛々しい言い訳を言い出した。
こんな変態が学校の教師になれるなんて世も末だ
これ以上、この男の見苦しい言い訳など聞きたくないので
「わかりました…その行為もまた人を愛す方法なんですね」
「わかってくれたか森野!!お前は、本当にいい奴だな!!」
僕は、「では、ごゆっくり」っと大月に言ってドアを閉めた。
体育教務室の中で何かをしゃぶるような音が聞こえるが聞かなかった事にしよう <> 【後・お見舞い】
◆DT08VUwMk2 <>sage<>2007/12/14(金) 01:33:19 ID:FFoatSrY<> …さてと、
僕は、生徒会室に立ち寄った。
「た・大変です!!体育教務室で大月先生が山村先生のジャージであんな事やこんな事を!!」
「何!やっぱりまたやらかしたかあの変態教師め!!」
そのセリフからするとどうやら大月は、何度かあぁいう事をしてたらしい
「直ちに風紀委員を呼べ!今日こそあの変態を学園から追放してやる」
これでよし!っと生徒会を立ち去ろうとすると
「えぇ〜っと、森野くんだっけ?情報ありがとう」っと生徒会長であり、
さっき僕にボールを持って来いと命令した後藤さんのお姉さんの後藤真理子先輩が話しかけてきた。
「いやいや、僕は当然の事をしたまでっスよ」っと僕は、頭をかいて答えた。

10分して体育教務室は、風紀委員に取り囲まれた。委員長が委員達の真ん中に立った。
「正直なところ、事態は最悪だ。厳しい戦いになるだろう…
君らの多くは退学されるかもしれん だからと言って考えを変える君達でない事は百も承知している
君達は最高の風紀委員だ。その勇気を疑うべくもない。
あの狂人が我々の学園の風紀を乱すのであれば 『風紀』の本当の意味を教えてやろう!」
うわぁ〜まるでハリウッド映画を見てるようだ。
そして、委員長の合図で一斉に体育教務室に入っていく風紀委員の皆さん
「御用だ!御用だ!」っという声が木霊し、数分が経つとボロボロになった大月が風紀委員と一緒に出てきた。
大月は、小さな声で「もっと…もっと…して」と何かを風紀委員長に催促していた。この真性の変態め!!
このようにうちの学園は、少しでも風紀を乱すような変態行為をすると
教師だろうと生徒だろうと(理事長の孫娘である高島さん以外)、
あのようにボロボロになって学園の晒し者になる。あぁいう風にはなりたくない………

さて、大月のせいで遅れてしまったが次の時間は、体育だ。
僕は、着替えようと教室に戻るとなにやら窓ガラスに衣類に顔を埋める人影が見えた。……また高島さんか
例え、風紀委員長が許しても被害者である僕は、許さないのだ
僕は、勢いよく教室のドアを開けた。しかし、そこにいたのは高島さんではなかった。

そこにいたのは、後藤さんだった。
後藤さんは、南条の制服を着て中の匂いを嗅いでいたのだ。
後藤さんは、僕に気づくと顔を真っ赤にして
「も・森野くん、これは…あれよ、世の中には色々な愛し方があってね…」っと
どこかで聞いたようなセリフを吐いて教室を逃げるように出ていった。 <> 【後・お見舞い】
◆DT08VUwMk2 <>sage<>2007/12/14(金) 01:35:40 ID:FFoatSrY<> その日以来、学校を彼女は欠席するようになった。
欠席して1週間が経った頃、僕は先生から後藤さんと高島さんにプリントを渡すよう言われた。
「後藤さん家は、近いからいいけどなんで自分ん家と逆方向の高島さん家にまで行かないと行けないんですか!!」っと
先生に文句を言うと先生は、「お願いだ森野、俺には、養う家族がいるんだ」っと土下座をしてきた。
あぁ〜教師って大変だなぁっと思いながら僕は、後藤さん家と高島さん家にプリントを渡す仕事を引き受けた。

1週間前の事もあるし、まず最初に後藤さん家に行く事にした。
僕は、後藤さん家のインターホンを鳴らした。数十秒してインターホンから
「…はい、どちら様でしょう?」っといつも聞く声とは違う弱弱しい後藤さんの声が聞こえた。
「えぇ〜っと、森野だけどプリント渡しに来ました」
「…そう」っと無愛想に答えると数秒して家の玄関からボサボサな長い髪で顔色の悪い後藤さんが出て来た。
「えぇ〜っと、これが今日渡されたプリントね」僕は、後藤さんにプリントを渡した。
後藤さんは、プリントを受け取ると「ねぇ、森野くん」っと話してきた。
「はい、なんでしょう」
「あの時の事…南雲先輩に話した」南雲先輩というのは、風紀委員長の事だ
「大丈夫、あの事は誰にも言ってないから」
「ねぇ…アイツって私の事、どう思ってるんだろう?」
アイツ…というのは多分、南条の事だろう。
僕は、「アイツから後藤さんの評価は、聞いてないなぁ」っと答えた。
「じゃ・じゃあ、アイツは、どんな女の子がタイプなんだ?」
「えっ?え〜っと、あっ!そういえば修学旅行ん時に
『恥かしがり屋でいつも影で自分を見ている一途な女の子』にグっと来るって言ってたよ」
「そ・そうか、『恥かしがり屋さんでいつも影でジロジロと好きな男子を見つめる一途な女の子』だなアリガトウ!!」
う〜ん、なんか違う気もするけど元気になったみたいだしいいか
「今日は、ありがとう」っと後藤さんは、僕に礼を言い家に入っていった。

さてと、次は、高島さんか…


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

それからというもの南条は、気づかないようだが後藤さんは、
暇さえあれば南条をジロジロと凝視するようになった。

そうそう、南条。
お前、気付いてないみたいだけど今もお前の後ろの席で後藤さんがお前を見てるんだぜ



【後・お見舞い】・終 <> きゃの十三
◆DT08VUwMk2 <>sage<>2007/12/14(金) 01:39:17 ID:FFoatSrY<> 投下終了です。

今回は、ちょっとホラーチックに書いてみました。
ついでに『制服を着ながら匂いを嗅ぐ』というシチュは、キミキスのパク…オマージュです <> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/14(金) 03:41:48 ID:NdS3V1VX<> 投下します(13レス使用)。第五話です。

NGワード無し。 <> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/14(金) 03:43:10 ID:NdS3V1VX<>  今このときの俺が追い詰められているのだとすれば、それはどれほどのものだと言えるだろうか。
 ちょっとだけ、考えてみる。
 夏休みの宿題が終わらず、膝ががくがくと貧乏揺すりをするほどか?
 違う。あれはただ、時間に追われているというのにいつまで経っても終わらずイライラしているだけだ。
 今の俺はぐらぐらしてはいるが、がくがくもイライラもしていない。
 では、修学旅行のバスの中で尿意をもよおした時、次の目的地まであと三十分はかかると知らされたときか?
 これも違う。さすがにあそこまで絶体絶命のピンチの状態にまでは至っていない。
 中学の修学旅行で実際にそんな目に遭ったが、今の俺はあの時のように白い便器と四角のタイルを恋しく
思っているわけでもないし、周囲に異常を悟らせないように苦心しているわけでもない。
 時間に追われているわけでも、危機的状況に置かれているわけでもない。
 それなのに追い詰められていると言えるのか? と問われたら、イエスと答えよう。
 なぜなら、今の俺はとても眠いのである。

 昨今の秋と冬の混じり合った季節においては、日光の暖かさがとてもありがたく感じられる。
 自分から陽の当たる方向へと向かっていって、両腕を目一杯広げて幸せを噛みしめたくなる。
 今の俺には陽が射しているわけではない。
 しかし、それを浴びているときと同じ恍惚状態に置かれている。
 うっとりとしつつ、ぼんやりとしている。とでも言えばわかりやすい。
 ずっと前から眠気を覚まそうと、背筋を伸ばしたり目を強くつぶったりしているが、効果無し。
 ものの十秒もしないうちに、意識が抜け落ちて倒れそうになる。
 睡眠というのは人間の本能的な欲求であり、古代より金をかけずに人を幸福にさせてくれるものだ。
 もしかしたら寝ることを趣味にしている人もいるかもしれない。
 そんなに素晴らしい、眠りへの誘いを俺がなぜ断り続けているのか。
 それはもちろん、眠る以上に大事なことがあるからだ。
 眠いのに、大事な用がある。大事な用があるから、眠れない。
 だから、いくら眠たくても我慢するしかないのである。
 以上を踏まえ、俺がどれほど追い詰められているかを喩えて言うならば、決して赤点をとってはならない
学期末テストにおいて一夜漬けのツケによる睡眠不足で眠りたくて仕方なくなってしまった状態、ということになる。

「お……お待たせ……」
 衝動と理性による苛烈な意識の縄張り争いを脳内にて繰り広げていると、控えめな声が耳に入った。
 声の主は葉月さん。彼女が風邪をひきでもして声に曇りがあらわれてしまわないか、時々俺は心配になる。
「目、開けてもいいよ……でも恥ずかしいから、その、……あんまりじろじろ見ちゃ、やだよ?」
 ずるい。そんな台詞を言って俺の男心をくすぐるのもずるいし、じろじろ見るなというお願いもずるい。
 そんなことを言われたら、まだ活動していない俺の目玉に向けて、反骨精神をむき出しにして葉月さんを
見つめ続けろ、という命令を下したくなるじゃないか。
 俺は、同化してしまったようにくっついていた上下のまぶたをゆっくりと開いた。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/14(金) 03:44:34 ID:NdS3V1VX<> 「! う……、むぅぅ……」
 そして、目の前にいる葉月さんの、制服姿とは違う装いを目にして、目がはっきりと覚め、感嘆に呻いた。
 葉月さんが身に纏っているのは、二年D組が文化祭の出し物として行う純文学喫茶の女性用衣装である、
振袖と袴、それに草履という組み合わせであった。
 淡い紫色の振袖には白いカトレアの花が咲いている。
 胸の下の辺りで着付けられた袴。こちらは濃厚な紫色に染まっている。
 足下を飾るのは真っ白い足袋と鼻緒のついた草履である。
 とどめと言わんばかりに強いインパクトを与えるのは葉月さんの髪型だ。
 ポニーテール。髪留めは濃紺のリボン。
 しかも葉月さんたら黒のロングをそのまま後ろに流すのではなく、両肩にちょっとだけ乗せている。
 そんなさりげないところが小粋で、いやなんともお美しい。
「どう? 似合うかな? ちょっと地味じゃ、ないかな?」
 決してそんなことはない。
 もし袴姿の葉月さんを目の前にして似合わないなどという暴言を吐く人間がいるなら、そいつの美的センスは
著しく劣化していると言っても大袈裟ではない。
 総じて地味な色の組み合わせではあるが、素材のいい葉月さんのような人が着ると、紫の着物が瀟洒なものに見えてくる。
 ビバ、着物。
 日本の文化、万歳。
「うん、とってもよく似合ってるよ。葉月さん」
 言った後で、なんだか陳腐な褒め言葉だな、と思ったが他に言い様が無かったのでどうしようもない。
「そ、そう? えへへ、ありがと」
 はにかんだ笑顔を葉月さんが見せた。
 いつもより数段魅力が増しているように感じるのは、着物の魔力のせいだろうか。
 それとも、二人きりの状態で着物姿を拝ませてもらっているという特殊な状況によるものなのか。
 
「ところでさ、葉月さん」
「ん? なあに?」
 葉月さんが手を後ろに回して前傾姿勢を取り、上目遣いで覗き込んでくる。
 抱きしめたい誘惑を問答無用で殴り飛ばし、努めて冷静な気持ちで問う。
「どうして、俺をこんなところに連れ出したの?」
「えっと……それは、そのね」
 俺の喉元の辺りに視線を送りながら、葉月さんが答える。
「あなたに、最初に着物姿を見てもらいたかったんだ。クラスの、他の誰よりも先に」
 ――しゃっくりが出そうになった。びっくらこいた。
 どうして葉月さんは、俺の心の純な部分をピンポイントに責めてくるのだろう。
 これが葉月さん流のアプローチなのか。回りくどい部分の一切無い、正攻法。
 してやられた。この場が決闘場であったならば、間違いなく俺は絶命している。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/14(金) 03:45:45 ID:NdS3V1VX<>  熱くなった心を抑えるため、状況を整理・確認してみる。
 まず、俺がいる場所は校舎二階の女子トイレの前である。隣接して、男子トイレが設置してある。
 俺をここまで連れ出したのは葉月さんだ。……と、葉月さんが言っていた。
 なんと、葉月さんは教室からここまで、眠りこけていた俺の手を引っ張ってきたのである。
 教室から連れ出されたときのことを、俺はまったく覚えていない。
 だから、目を覚ましたときトイレの前に立っていたから驚いた。
 そして、葉月さんがすぐ目の前にいたのにはそれ以上に驚かされた。
 俺がなぜ教室で眠っていたのかというと、単純に寝不足だから。
 なぜ寝不足かというと、昨日の夜から今朝の五時まで眠っていないからだ。
 俺は、学校で一晩過ごしたのである。
 今日から明日にかけて催される、文化祭の準備を終わらせるために。

 文化祭の準備と言っても、俺のクラスであるD組はとっくに準備を終わらせている。
 俺が準備していたのは、自分のクラスの出し物ではなく、弟のクラスの出し物だ。
 コスチュームプレイ喫茶。略してコスプレ喫茶。それが弟のクラスの催し物である。
 なぜ学年の違う弟のクラスを俺が手伝ったのかというと、その出し物に魅力を感じたからだ。
 別にメイドさんや巫女さん、婦警さんや女騎士が好きなわけではない。
 多種多様な衣装作りを楽しみたかった。ただそれだけの理由で弟の同胞に力を貸したのだ。

 プラモデル作りを趣味にしている俺であるが、作りたいものも、作れるものもプラモデルだけではない。
 小学校時代に家庭科の授業で裁縫の技術を身につけて以来、服の修繕などは自力でできるようになった。
 それだけでなく、作成可能なもので、必要な材料さえ揃っていれば衣装だって作れる。
 弟もそのことを分かっているから、安心して俺に任せたのだろう。そしてその判断は正解だった。
 俺が弟のクラスを手伝いに行った時点では、衣装作成の作業は三割、よくて四割といったところまでしか
済んでいなかった。当然だ。裁縫に慣れている人間が片手で数えられる人数しかいなかったのだから。
 おまけに段取りも悪かった。女子の中に一人だけ明らかに裁縫に手慣れている人がいたのだが、
彼女にばかり負担が強くかかっていた。
 他の生徒は、彼女からの指示を聞いてから動いていたのだ。衣装作成の段取りを掴めていなかったからだろう。
 その結果、彼女の作業も遅れてしまい、いつまで経っても作業が進まなかったのだ。

 そこで登場したのが俺である。
 初めのうちはそれこそ腫れ物扱いだったが、クラスメイト(弟)の兄であると知り、俺のミシン捌きや針捌きを
見ていくうちに考えが変わったらしく、いつのまにか頼ってくるようになった。
 その後は簡単だった。俺が難しい作業を請け負い、代わりに手空きになった裁縫上手な女子生徒に
クラスメイトへの指示を出してもらった。
 力を合わせた甲斐があり、見事に文化祭前日の昨日の夕方、全ての衣装作りを終わらせた。
 後輩の男女にお礼を言われる経験をしたのは昨日が初めてだった。
 自分の欲求不満を解消することが目的で始めた手伝いだったが、昨日の後輩たちの泣きそうな笑い顔を
見ていると、ああ手伝って良かったな、という感想を抱いた。柄にもなく、心と目頭にジンときた。
 まあ、そんなわけで衣装作成は終わったわけである。

 が、どうしても俺には我慢できないことがあった。
 顎の下にあるほくろから生えた毛が気になるくらいに、どうしても看過できないものがあった。
 衣装作成班とは別の班が作った、鎧やブーツなどの金属系の小道具の出来が非常に悪かったのだ。
 銀色のスプレーを吹くだけの仕上げなど、俺は認めない。
 新品の鎧を着ている歴戦の騎士や、砂にまみれた痕の無いプロテクターを着たヒーローがいるわけがない。
 俺は、あいつらを汚さずにはいられなかったのだ。

 放課後に家へ帰り愛用のツールをひっつかみ、学校へ引き返して、一人で黙々と作業を進めていくうちに、
次第にハイなテンションになってしまい、気づけば日付が変わっていた。
 家に帰るのも面倒になったので、そのまま作業を続行。
 宿直の教師に小言を言われ、後になって夜食の差し入れを頂き、途中で何度か記憶を失いつつ、朝を迎えた。
 納得のいく出来になった作品を眺めていたら弟がやってきて、強制的に二年D組に連行された。
 自分の席に着くなり俺は眠った。そして次に目を覚ましたとき、トイレの前に居て、葉月さんに見つめられていたのである。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/14(金) 03:50:37 ID:NdS3V1VX<>  葉月さんの着物姿を視覚で堪能していると、次第に眠くなってきた。
 劣情を催すほどに美しいものでも、睡眠欲求をゼロにしてしまうのはさすがに難しいらしい。
 葉月さんに教室へ戻る旨を伝え、一路教室へ向かう。
 教室内では、着物を纏ったクラスメイトがちらほらと居り、室内を喫茶店として改装すべく動いていた。
 クラスメイト――主に男子が、葉月さんの姿を確認して視線を向けてくる。

 ……まあ、なんだ。気持ちはわかる。
 今日の葉月さんは着物姿だし、それに普段はしていない化粧までしている。
 近づいたらいい匂いもする。いや、俺が匂いフェチ、もしくは変態なわけではなくて、香水の匂いがするという意味。
 他の女子も普段より綺麗になっているが、葉月さんは頭一つ飛び抜けて煌びやかだ。
 しかし、だからといってじろじろ見ていいわけではないのだぞ、男子諸君。
 葉月さんに失礼だ。それに、君たちの反応は周りにいる女子達に対する侮辱も同然だぞ。
 ほら、我がクラスきってのイケメンである西田君を見ろ。
 いつまでも葉月さんをじっと見つめているから、彼の恋人(を自称している)の三越さんがやきもちを妬いて
西田君の足を机の脚で踏みにじっているじゃないか。
 西田君が悲鳴をあげてうずくまったところに、無言で後ろからケリまで入れている。
 総員、即刻葉月さんを観賞することをやめたまえ。このままではクラス崩壊の危機だ。

 それに、だ。他の女子だっていつもよりイイじゃないか。
 袴姿というのは人をおしとやかに見せる効果があるらしい。
 小うるさい女子グループでさえも、今日ばかりはその姿を拝みたい気分になってくる。
 こうやって見回してみると、うちのクラスの女子って結構容姿のレベルが高い――――?
「ん……んん?」
 おかしなものを見つけてしまった。教壇の上に立って、クラスメイトに指示を出している女。
 誰だろう。女子が身につけている振袖とは違い、普段着のような印象を思わせる地味なものを身につけている。
 日常を思わせる、数世代前の女学生のような着物姿である。
 ただ、細いフレームの眼鏡をかけたその顔、どこかで見たことがあるような。……誰だろう?

 教室の入り口近くで立ち止まっていると、クラスメイトの一人がやってきた。
 他人に人畜無害な印象を与えるスキルにおいては俺以上のレベルを誇る、友人の高橋だ。
 だがその印象は、話をしているうちに得体の知れない違和感と共に変わっていく。
 もちろん、悪い方向にである。
「やあ、戻ったのか。モテ男」
「誰がモテ男だ。俺はいまだかつて彼女を作ったことさえないんだぞ」
 ごく短い期間だけ似たような相手はいたが、あれはノーカウントだ。
「ほお……たった今まで葉月嬢とこそこそ逢引していたくせに、よく言えたな」
「ぐっ……」
「自分のいる位置というものをしっかり把握しておくべきだな、君は。自分のためにも、大事な人のためにも」
 この男の台詞の中に毒は含まれていない。スーパーで売られている果物以上に毒素が薄い。
 悪意がないのだ。からかっているだけなのだ。そして、だからこそ性質が悪い。
 心に思い当たるもの――ちょっとした罪悪感とか――を自覚させる台詞を口にする。
 しかも言っていることが正論だったり、時には荒唐無稽なものだったりする。
 どの場合も同じ表情、平坦な口調で言うから、心が読めない。
 本気か冗談か、喜んでいるか怒っているのか、ということさえわからない。 
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/14(金) 03:52:11 ID:NdS3V1VX<> 「聞きたいことがある。あそこにいる眼鏡の――」
「それよりも、だ。こっちの質問に先に答えるんだ。今まで、どこに行っていた?」
「どこと言われても……」
 一瞬隠した方がいいと思ったが、やはり正直に答えることにする。
「葉月さんに連れられて」
「ふんふん」
「トイレに」
「あーあー、もういいよ。皆まで言わずとも、わかった。つまり、そういうことか」
「何がわかったってんだ」
 高橋は目をつぶりながら右手を自分の頭に当て、左手の掌を俺に向けてくる。
 そこで止まれ、と言いたげな動作であった。
「朝から盛んだな、君は」
「……何を誤解しているのかわからんが、盛るようなことは何一つなかったと言えるぞ」
 葉月さんの着物姿に心を震わされたが、あれは興奮したのとは違うだろう。

 眼鏡をかけた勘違い高橋君は、俺に耳打ちしてきた。
「いいんだよ。僕は君の味方だ。それに僕は、他の皆みたいに葉月さんに執着しているわけじゃない。
 だから、君と葉月さんがどこに行こうが、どこに逃避しようが、どこで心中しようが看過しよう」
 最後のひとつは看過したら駄目だろう。クラスメイトというより、人として。
「だが、他の皆はどうだろう。君が葉月さんとどこかに行ったとき、葉月さんが君を連れ出したところは
 皆が見ているが、そこは問題じゃない。
 問題になるのは、葉月さんに連れ去られるほど思われている君の身の安全が、皆の手によって脅かされる
 かもしれない、というところにある」
 脅しか、この野郎。いや……違うな。こいつの言っていることは――。
「脅しじゃなくて、事実と状況を踏まえたうえで僕が君に厚意で行う、警告だよ。
 気をつけた方がいい。不幸にも今日は学校内に人があふれる一日だ。……と、明日もか。
 とにかく、一人で行動するのは避けた方がいい」
 どこぞのサバイバルゲームでは、危険な状況でも一人で立ち向かっているが、やっぱり真似したら駄目か。
 俺の場合、あのゲームではあえて行動しやすくするために、敵を消しているのだが。
 ――無理か。俺を取り巻く環境では誰が敵かわからないし、敵になりそうな奴が多すぎる。

「そうだ。君の今日の運勢を占ってあげよう」
「要らん」
 お前の占いは占術に頼って出したものじゃない。状況を把握したうえで割り出した推測だろう。
「そう言うな。今日の僕は冴えているんだ。機嫌がいいからね」
 人差し指の先を額の中心に当て、エセ占い師は答えを紡ぐ。
「――君は今日、危機的な状況に陥る」
「……」
 当たるも八卦当たらぬも八卦って、便利な言葉だよな。何を言ったってごまかせる。
 言い訳に使える言葉の中では、ランクの最上級に位置するんじゃないか。
「黒い……場所。夕方だな。君は、男……女? に、凶器をつきつけられている」
「夕方、気をつけていればいいんだな?」
「うん、そうだ。けど、けれど……多分君は、自分からその状況に関わっていく。そう、出ているよ」
「はあ……?」
「僕に言えるのはここまでだ。あとは君次第で、状況は変わっていく。君の無事を祈っているよ」
「ああ、そうかい。ありがとさん」
 不吉なことを言い残し、高橋は俺の前から立ち去ろうとする――って、おい。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/14(金) 03:53:45 ID:NdS3V1VX<> 「ちょっと待て。聞きたいことがあったんだ」
 肩を掴み、強制的に動きを止める。
 振り向いたときの男は、なんだか意外そうな表情をしていた。
「何だ? 君から俺に話を持ちかけてくるなんて珍しい。事件か? いつぞや口にしていた弟と妹が、
 とうとう一線を越えてしまったのか?」
「違う。そっちじゃない」
 仮にそうだったとしたら、今頃俺は学校になんて来ていない。
 妹と弟を前にして、今からでも間に合うから普通の兄弟に戻ろう、とか言っているはずだ。
 その後、妹によってどんな目に合わされるかはわからないけど。
 俺の身――いや、命の安全も保証できないけど。

「ほれ、あそこにいる女の人」
 教壇の上に立ち、クラスメイトの動きを見守っている女を指す。
「あの人、誰だ?」
 極めて単純に、的確に質問したつもりだった。
 だが、どうやら俺の問いかけは、珍しいことに高橋の逆鱗の袖に触れてしまったようだ。
 高橋の不機嫌は隠されもせず、眉間に皺となってあらわれた。
「君は馬鹿なのか?」
 いきなりそれかよ。
「……どうだろうな。馬鹿にならないために日々頭を使っているつもりだけど」
「いいや。君は馬鹿だ。君が馬鹿じゃなければ僕はなんだ? なんだと思う?」
 なんだかその質問変だぞ、という言葉は飲み込む。咄嗟に浮かんだ台詞を口にする。
「知らねえ」
「そんなこともわからないのか。やはり君は馬鹿だ」

 嘆息。
 やっぱり飲み込まずに言っておけばよかった。たぶん聞いてきたこいつもわかっていないに違いない。
 高橋はこうやってわけのわからない台詞を吐いて煙に巻くのだ。
 シュールなギャグ漫画のネタみたいな喋りをする野郎だ。
 でたらめな方向に会話を持っていってなんとか生き残ってやがる。
 あえてこっちもペースに合わせてやっていいんだが、高橋はどうやら怒っている様子なので、下手に出る。
「すまん。お前の言う通り俺は馬鹿だ。謝る」
「気にするな。それに……僕はそんな馬鹿が嫌いじゃない」
「そいつは光栄だ。で、すまんのだが」
「ああ、さっきの質問の答えだな。教えてあげよう。
 あそこにいるのは我が二年D組の担任にして守護女神――篤子先生だ」
 ……とうとう女神にまで昇格したか、篤子女史。
 昨日までなんたらエルとかいう天使の一人娘だったように記憶しているが。
 ちなみに担任はれっきとした人間だ。全ては高橋の妄想である。
 俺としては、担任が天使でも悪魔でも神でも魔界の王でも構うところはない。
 美人だったらそれでいい。見ているだけなら目の保養になる。

「そうか、先生だったのか。見違えたよ」
「だろう。今日は眼鏡までかけている。あれは僕が貸したものだ」
 流石、普段から「篤子先生には眼鏡が似合う。かけてくれないかな。かけさせたいなあ」とか言っているだけのことはある。
 ばっちり担任の細面に似合うフレームを選んでいる。
 あの眼鏡、今日のために高橋が特注したんだろうな。こいつならそこまでやりそうだ。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/14(金) 03:55:35 ID:NdS3V1VX<> 「お前としては、あれで満足か?」
「……八十七点というところかな。あとは髪の毛を肩の辺りで切りそろえてくれれば完璧だ。
 いつもの髪型も決して悪くはないが、僕の好みをジャストミートしていないんだ。
 もちろん、どんな髪型であっても僕の気持ちは変わらないが」
「言ってみたらどうだ? 髪の毛を少し短くしたらもっと綺麗になりますよ、とか」
「既に言っている」
 あ、言ってるんだ。いや、言っていないはずもないか。
「でも先生は……これぐらいの長さがいいと言っていたから、と断った」
「そうなのか?」
「いったい、誰に言われたんだ。もしかして……心に決めた男が居て、そいつに言われたのでは……」
 断言してもいい。それはない。
 おおかた、小説に出てくる好きな主人公が「髪の長い女が好きだ」と言っていたから、みたいなオチだろう。
 そりゃ、担任のプライベートまで知らないし知りたくもないから、恋人の有無なんてわからない。
 だけど、担任の身に纏うあの空気を見ているとわかる。
 彼女は、恋人とのラブロマンスより、文字の群れが紡ぐ恋愛模様の方が好きだ。
 なぜわかるのかというと、俺が担任と似ているから。
 葉月さんと出会ってからは考えが変わってしまったが、昔の俺は恋人と乳繰り合うよりニッパーを繰っている方が
ずっと楽しいんだ、それ以外に幸せなんてあり得ない、とまで考えていたのだ。
 おそらく、数ヶ月前の俺みたいな奴が成長し進化を遂げたら篤子女史のようになるのだろう。
 担任と俺は、趣味に生きる人間という点に於いて同類なのである。

 ちなみに、高橋がここまで担任に執心しているのは、話を聞いていればわかるように、恋をしているからだ。
 俺には、担任のどこが魅力的なのかが理解できない。
 年はずっと離れているし、純文学オタクだし、口の滑りがちょっとばかし良すぎるし――良すぎて滑って転んでいるし。
 だが、人が恋をするのは自由だ。相手が異性である限り、俺としては友人の恋を応援してやりたい。
 もちろんエールを送るだけ。エールさえ邪魔かな。生暖かい視線を送るだけにしておこう。
  
 ぶつぶつ言いながら立ち尽くしている高橋を置き去りにして、クラスメイトの元へ。
 教室の後ろ側はカーテンで仕切られている。そこが店員の控え室になっているようだ。
 薄布のカーテンの向こうからは、準備に追われている女子の声が飛んでくる。
 そこまで急がなくても、今日学校に来るような人間の年齢層の好みにかすりもしない喫茶店が忙しくなりは
しないと思うのだが。やる気を出しているのはいいことだけど。
 いくら美麗な衣装を身に纏った女子がいるにしても、古本屋のしけった本の匂いがする店に入ってきてまで
見物しようとする物好きな男もいないだろう。もし居たら、そいつはどうしようもない女好きだ。
 ナンパ目的の男が入りそうにないものを選んだという点では、担任の出し物のチョイスを評価してもいい。
 しかし、利益をあげそうにない喫茶店であることは否めない。
 茶と菓子を出すところ以外、小説のみを扱う図書館みたいなもんじゃないか。
 担任はどんな客層をターゲットにしているつもりだ。

 もしかして……純文学喫茶を経営するのが担任の夢、なんだろうか。
 二日間だけでもいい、夢を叶えたい。そんな想いで、この出し物をやらせたのか。
 夢を追う大人ってかっこいい――――なんて思わないぞ。やはり担任の行いは許し難いものだ。
 ……今更だな。文化祭当日になって、許すも許さないもない。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/14(金) 03:58:10 ID:NdS3V1VX<>  しかし、喫茶店業務の各担当はどのように割り振られているのだろう。
 弟のクラスを手伝い始めた日から、ずっと自分のクラスのミーティングをさぼっていたからさっぱりわからない。
 確定しているのは、葉月さんがウェイトレスだということ、担任が窓際の席を占領して本を読みふける迷惑な客の役
だということ、だな。だとすると、高橋も教室に入り浸るだろう。
 俺は何を任されているんだろう。壁に貼ってある、担当者の割り振りが書かれたプリントを見る。
 ウェイター……はやっぱりないか。臨むところだ。
 お茶を沸かす役、菓子を皿に盛る役……でもない。
 消耗品の買い出し役……ですらない?
 おいおい、俺の名前がどこにも書かれていないぞ。
 名前と役がずらりと書かれた一覧表を、上から下、下から上へと何度も見る。……が、俺の名前はない。
 とうとう皆は一致団結して、俺に対してスルーで対応することにしてしまったのか?
 いや、それも違う気がする。
 高橋と話した時もだったが、クラスメイトから感じる気配に不快なものを覚えない。
 では、なぜ俺に何の役も任せていないのだ?
 やめてくれよ。なんか、こう――家にいるときみたいに、のけ者になった気分になるじゃないか。

「どうかされましたか?」
 切なさのあまり、心の中の雪原で粉雪を浴びていたら、担任に声をかけられた。
 ポーカーフェイスの篤子先生がパン屋の優しいおばさんに見えてしまった俺は、寂しがり屋なんだろうか。
 そろそろカウンセリングでも受けた方がいいのかもしれない。
「先生、黄昏れたい気分になったこと、ありますか……?」
「ええ。ほぼ毎日です。なぜ私は、あれほど美しい小説の登場人物ではないのだろう。
 私が着の身着のまま列車に飛び乗り、車窓から遠い故郷を思っても、彼らのように様にはならない。
 所詮、私は現実に生きる人間でしかないのだ、と思うと……切なくなりますね」
 ……なんか違う。むしろこっちが切ない気分にさせられた。
 この三十路が担任だったという経験は、俺の人生にとってなんらかのプラスになるんだろうか。
 反面教師にせよ、という天啓が俺の知らぬ間に下っていたとでもいうのか。聞いていないぞ、天の人。

「先生、これ、見てください」
「はい……皆さんの役割分担が書いてありますね。でも、あなたの名前はどこにも書かれていない。
 なるほど。それで、沈んでおられるのですね」
「なんで俺の名前が書かれてないんですかね……」
 ああ、ため息、また一つ。
「……まじめですね。準備期間中は毎日熱心に相談を持ちかけてこられましたし。
 他の皆さんもそうです。出し物が決まったときは不満そうだったのに、今では全員で協力して喫茶店を
 成功させようという気概が感じられます」
「当日になってまでごねる奴なんていませんよ。当日になって暇になる男はいますけど」
 ちくしょう。なんで俺は担任を相手に弱音なんて吐いているんだ。情けない。
「時間があるのはよいことではないですか。今日と明日は文化祭です。退屈はせずに済むはずですよ」
「一人で回っても面白くないですよ」
「一人もそれほど悪いものではないですよ。自分の時間を、他人に邪魔されずに自分のペースで楽しめます」
「そう、ですかね……」
 ええ、と言って担任は頷いた。
 俺は一人。これから、一人で生きていくんだ。
 目の前にいる独身、三十路、オタクの三拍子そろった担任みたいに。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/14(金) 04:00:00 ID:NdS3V1VX<> 「先生、俺は――」
 口を開こうとしたら、かざされた右手によって言葉を遮られた。
 担任は俺の顔を見ていない。今まで目につかなかったところに貼ってあるもう一枚のプリントに目を向けている。
「……なんです、一体?」
「あなたの役は、きちんとあるじゃないですか」
「えっ!」
「ほら、あそこのプリントに、書いてありますよ。大事な仕事です。しっかりやり遂げてくださいね」
 返事をせずにもう一枚のプリントの元へ向かう。

 皆、疑って悪かった。俺のことをしっかり覚えていてくれたんだな。
 どんな仕事だろう。なんでもやるぞ。客引きだって、店の用心棒だって喜んでやってやる。
 福沢諭吉の印刷されてある紙幣よりも輝いて見える文書の元へ、俺はたどり着いた。
 そして、そこに書かれている四行の文字の羅列を見て――へけっ、と笑った。
 頬がひきつっている。初めこそ笑い顔だったが、不意打ちでがっくりさせられて表情をへし曲げられた。
 プリントの一行目には、俺の名前が書かれていた。このプリントが俺のために作られたものだと一目でわかった。
 だが、それはいい。問題は二行目から。次のように書いてある。

『上の者、文化祭一日目二日目共に、教室にて座して過ごすことを命ずる。
 教室から出ることは一切許可しない。この命に背いた場合、”あのこと”を公開する。
 なお、クラスメイトは上の者を教室から出さぬよう、全力を尽くすこと。 以上』

 つまり、何もせずに座っていろ、と言いたいのか。こんな理不尽な命令なんか聞きたくない。
 それに”あのこと”ってなんだよ。わざわざダブルクォーテーションでくくるんじゃねえ。
 俺は、何もやましいことなんか――――あるじゃねえか! ちくしょうめ!
 両親のことは一言も漏らしたことなんかないけど、こんな文章書かれたら自信がなくなるよ!
 誰だ、これ書いた奴! お前なんか仲間じゃない――敵だ! 
 くそったれ――こんなことなら弟のクラスにいればよかった。教室に戻ってくるんじゃなかった……。

 右手を黒板に当て、よりかかる。すぐに腕から力が抜けた。体重を壁に預ける。
 このまま床に座り込みたい気分だったが、クラスメイト(不特定の一名を除く)の前だから、自重する。
 そのまま目を閉じて眠ろうとしていたら、お盆を手にした葉月さんがやってきた。
「大丈夫? プリント、私も見たけど……残念だったね」
「う……ん、い、いや。別に大したことないよ。きっとヘルプ要員として待機してろ、っていう意味だから」
 よりによって葉月さんの前で弱音を吐くわけにはいかない。
 プリントに書かれた文章を読んだ程度で落胆しているなんて、思われたくないのだ。
「んー……たしかに、そう読めなくもないけど。前向きだね」
「そんなことないって」
 ただの虚勢だからね。
「……まさかそんな反応をするなんて。落ち込んだところで声をかけたのに……」
「あれ、俺、落ち込んで見えた?」
「え! あ、ま、まあね。いつもより元気がないのは一目でわかったよ」
 バレバレじゃないか。しっかりしろ、俺。
 しかし、さっきから葉月さんの挙動がおかしい。一体どうしたというのだろう。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/14(金) 04:01:26 ID:NdS3V1VX<> 「葉月さん、緊張してる?」
「そりゃそうだよ。バレちゃったらどうしようか、とか……」
「え? バレるって……?」
「ううん! なんでもないよ。あー、ちゃんと接客できるかなー。緊張するなー。
 誰か、励ましてくれないかな。誰でも……じゃなくて、誰かに応援してもらいたいなー」
 ちらちらと俺の顔を見ながら葉月さんが言う。
 そこまで露骨に誘われると躊躇ってしまうな。周囲の男女からの視線もあるからなおやりにくい。
 だが――時には気合いを入れて一歩踏み込むことも必要だ。
 俺と葉月さんの距離も、強引にでも詰めなければいけないんだから。

「葉月さん」
「は、……はい」
「葉月さんがいれば、売り上げが校内で一番になるのも夢じゃないよ、きっと」
「ほっ、ホント!?」
「俺はそう思う。出し物が出し物だからハンデありまくりだけど」
「それは、その……どういう意味……?」
 思っていることを言うのが恥ずかしい。でも、顔を紅くした今の葉月さんを抱きしめるよりは恥ずかしくない。
 ちゃっちゃと言ってしまおう。
 葉月さんに近寄り、耳打ちする。
「……今日の葉月さん、すっごく可愛いから」
「か、可愛い……ど、どれぐらい……」
「惚れてしまいそうな程に」
「あ! ……あう、あぅ……ありがとうございます! が、がんばります! 見ててください!」
 右手に持ったお盆で敬礼し、葉月さんは教室の外へ向かっていった。

 クラスメイトの白い目と、火傷しそうな熱視線と、舌打ちの音が遠いもののように感じられる。
 『可愛い』。『惚れてしまいそう』。
 言うのは簡単なのに――どうして、こんなに心が重くなるんだろう。罪悪感を覚えるんだろう。
 眠すぎて頭がいかれてしまったのか?
 自分の言葉に、自分の気持ちに自信が持てないなんて。本当に、俺はどうなってしまったんだ。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/14(金) 04:02:54 ID:NdS3V1VX<> *****

 彼がいる。先輩――お兄さんに作ってもらった衣装に着替え、仮面を被ったヒーローになりきって接客している。
 彼は他の皆と違い、今日一日だけしかクラスを手伝わない。
 その代わり、今日だけで二日分の働きをする、と彼は言っている。
 なんでも、二日目を丸一日自由行動に使いたいらしい。
 理由を聞いても、彼は困った笑みを見せるだけだった。何かを隠していることは明白だ。
 一体それがなんなのか、アタシにはわからない。少しだけならわかるけど。
 自分が許せない。誰よりも愛しい彼のことを、全て把握できない自分なんて、違う。そんなのアタシじゃない。
 アタシは彼の世界なんだ――これから、そうなるんだ。
 だから、今の彼に関することは全て知らないといけない。だけど、今のアタシは彼のことを知らなすぎる。
 アタシの器が彼を受け止めきれるほど大きくないのか、彼の存在規模が大きすぎるのか、アタシが彼のことを
過大評価しているのか。あるいは、それら全てが理由なのかもしれない。

 ――いけない。
 また、彼と会う前の自分の気持ちを思い出してしまった。
 忘れなければいけない。アタシは、自分を卑下していた頃とは違うんだ。
 彼はアタシを救ってくれた。彼はアタシに自信をくれた。
 『アレ』を人より上手く扱えるなんて、特技でも何でもないのに、彼は褒めてくれた。
 目を輝かせながら、すごいすごいすごい、と言ってくれたのだ。
 根暗なアタシは、それだけで自信が持てた。彼と会う回数を重ねていくうちに、声が大きくなった。
 でも、純粋な気持ちでいられたのは数ヶ月だけ。
 その後は、恋しい気持ちと、それからくる独占欲――以上に醜い支配欲で、心の中がドロドロだった。
 アタシは、ちょっとだけ彼と会う機会を減らした。
 だって、彼が心の中に踏み込んできたら、アリジゴクのように引きずり込んでしまいそうだったから。
 その甲斐あって、アタシは彼に危害を加えずに済んだ。
 代わりにやってきたのは、息を詰まらせそうなほどの切なさ。
 彼の存在は、既にアタシにとってなくてはならないものになっていたのだ。

 毎日、彼と一緒に登校したかった。
 一日中ずっと、彼の机とアタシの机をくっつけて授業を受けたかった。
 昼休み、彼の口にアタシの箸であーんしてあげたかった。
 放課後、部活動に励む彼を見続け、一緒に帰りたかった。
 そして、アタシの家に来てもらい、甘い台詞を囁きながら抱いてほしかった。
 毎日毎日そんな妄想ばかりが浮かぶ。止めようがなかった。
 止めてしまったら、現実の彼に想いをぶつけそうだったから。
 思いの丈をぶつけてしまおうと思ったことは幾度もあった。でも、実行していない。
 彼がアタシを受け止めてくれないだろうことは明白だった。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/14(金) 04:04:32 ID:NdS3V1VX<>  ――あなたが好きな人は、あの人だから。
 あなたがどれほど彼女を思っているのか、アタシは知っている。
 彼女の姿を確認するためだけに、彼女の教室の前を通り過ぎていること。
 体育の時間や部活中、校庭から彼女の教室を見上げていること。
 その時に見せるあなたの目が、最初からアタシに向いていてくれればよかったのに。
 そうすれば、強引な真似をする必要なんかなかった。

 わかってる。悪いのはアタシ。純粋なあなたを自分の色に染めたくて仕方なくなっているアタシ。
 あなたは悪くない。悪いところがあるとするなら、誰にでも優しい、八方美人ともとれるその性格ぐらいのもの。
 この想いがどこまでいくのか、どんな結末を望んでいるのか、アタシにはまったく見えてこない。
 はっきり言えるのは、アタシがあなたを支配したいと強く願っていること。
 あと、もう一つ――――目的のために具体的に行動すると決定したこと。その二つ。

 明日、あなたはあの人に会うつもりでしょう? だから今日頑張ろうって、決めたんでしょう?
 あの人には、絶対に会わせない。二人きりでデートするなんて許せない。
 本当は、あの人をあなたの前から消したいけど、あなたはきっと悲しむよね。
 あなたの悲しみは、アタシに会えないときだけ湧いてくれればいいの。無駄遣いしちゃいけないわ。
 先にあなたを手に入れれば、あの人を消さずに済む。あなたも悲しまずに済む。
 一石二鳥でしょう?

 もうすぐ、今日の一般公開の時間は終わる。
 それからはアタシの時間。あなたを狩るための時間。
 少し骨が折れそうだけど、アタシはしっかりやり遂げる。
 覚悟はもう済ませている。一線を越えることに、もはや躊躇はない。
 さあ、行こう。アタシと彼だけが存在する世界で生きるために、最初の命令を下そう。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/14(金) 04:06:32 ID:NdS3V1VX<> *****

「ありがとう! また明日も来てくれ!」
 マスクをしているせいなのか、いつもよりテンションの高い声で彼が最後の客を見送った。
 教室を改装した喫茶店の中にいるのはコスプレしたクラスメイトだけだ。
 皆、お互いの衣装を笑いあったり褒めあったりしている。
 アタシは彼が誰かに話しかけるより早く、誰かが彼に話しかけるより早く、彼の肩を掴んだ。
 振り向いた彼に向かって、労いの言葉をかける。
「お疲れ様」
「あ、お疲れ。いやー、マスクを被ってると疲れるね。動きづらいったらないよ。
 スーツアクターの人の苦労がほんのちょっとだけわかった。君の格好もそうじゃない?」
「ん……そうでもないよ。ちゃんとアタシの体型に合わせて作ってあるから」
 彼の着ているボディスーツはお兄さんの手作りだけど、アタシの衣装は違う。
 今日の目的を達するために、実用性を重視した作りになっている。
 喫茶店のウェイトレスとしての実用性ではなく、荒事に対応するためのそれだ。
 動きやすく、軽装で――武器を隠し持てるように作っている。
 実際、今も身につけている。けれど、ナイフとかメリケンサックみたいにわかりやすいものじゃない。
 学校に通う生徒なら、誰でも手にできて、持ち運んでいても不自然じゃないもの。
 仮にアタシが警察からボディチェックを受けても、絶対に引っかからない。
 ――だけど、上手く使えば命を奪うことだって不可能じゃない。
 どうやればいいのか、それもアタシには想像できる。

「いいなあ。僕も兄さんに頼んでおけばよかった」
「時間がなかったんだから仕方がないよ。今日家に帰ってから頼んでみたらどう?」
 ――君は今夜から死ぬまで、家族の住む家には帰れないけどね。
「そうしてみようかな。でもなんだか兄さん、最近僕を部屋に入れたがらないんだよね……。どうしたらいいと思う?」
「アタシは一人っ子だからわかんない。でも、きっと大丈夫よ。いい人そうだから」
「そうだね。兄さんは本当、優しいから。僕と妹には……昔から」
 彼に物憂げな表情をさせるお兄さんにちょっとだけ妬いてしまう。
 お兄さんと妹さん、彼が居なくなったらきっと悲しむだろうな。
 ……でも、予定は変更しない。今日こそ、彼の全てを手にするんだから。

「そろそろ帰ろうかな。じゃあ、僕、着替えてくるから」
「あ……ちょっと、待って」
「ん? 何か用?」
「うん。……あのね、今から、ちょっとだけ……」
 やっぱり、いざ本番となると緊張する。けど、それを乗り越えないと目的は達成できないんだ。
「ちょっとだけ、この格好で歩かない? ほら、なんだかハロウィンみたいで楽しいじゃない」
 練習してきた台詞をそのまま口にする。動揺を表に出すことなく、口にできたはず。
 彼はアタシの顔を見ているみたいだ。どんな表情かはわからない。だってマスクを被っているんだもの。
「……ねえ、どう?」
 アタシの催促に対し、少しの間を空けて、彼は頷いた。
 それがこれからの人生の行く先を決定づける行動だとは知らずに。

 続けて彼は、「いいよ、ちょっと歩こうか」と、言った。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/14(金) 04:10:05 ID:NdS3V1VX<> 投下終了です。

24日までに、文化祭編を終わらせるつもりです(後2回)。
なので、次回は早めに投下します。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/14(金) 05:21:43 ID:mzQSBM+k<> >>138
超GJ!次回投下を全裸で待つぜ!
ってか24日までって…もしやクリスマスは
ヤンデレ彼女と監禁デートか!? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/14(金) 05:27:58 ID:yOFKxKp9<> 来てた!
眼鏡をかけた勘違い高橋君のキャラがけっこう好きだww <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/14(金) 06:13:15 ID:bNu+7UVV<> 素朴な疑問でスマソ。






監禁デートってデートなのか? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/14(金) 07:23:19 ID:WW3Vg5j8<> 123、124〉二人共GJ

次回を楽しみに待たせてもらう <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/14(金) 08:48:22 ID:iR8oZShW<> 二人でいればデートだろう。
一日中デート!なんて素敵なんだ。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/14(金) 09:04:28 ID:+uB+kGM2<> >>123
やはり男のヤンデレはただの変態にしか見えないのだなあ、と思ったり。
>>138
犯人の女子や葉月さんも可愛いが篤子女史に一番萌えてしまった俺はやはり異端。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/14(金) 09:19:26 ID:mzQSBM+k<> 二人きりの空間でイチャイチャするんだな。
両手両足縛られて監禁されているから
彼女がチキンやらシャンパンやらケーキを口うつしで食べさせてくれたり
抱きあいながら借りてきた映画見たり
クリスマスソングを口ずさんだり合体したり包丁で刺されたりと
甘いデートをするに違えねぇ!


く、悔しくなんかないんだからね!(包丁を背中に隠しながら) <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/14(金) 11:36:31 ID:HRmYnIMk<> 体の弱い吸血鬼の彼氏に惚れたヤンデレな娘が彼の為に人を刈るとゆう電波を受信した。
書けないけどな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/14(金) 15:25:41 ID:zsx5xo15<> >>146
諦めるな!がんばるんだ! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/14(金) 16:04:34 ID:iw/evy86<> 男勝りな女の子が毎日毎日好きな男に愛を語るのだが、男はそれを毎回受け流して無視をする。
そしてある日、転校してきた女の子が昔の男と隣同士の幼馴染だった。しかも、結婚する約束をしたから付き合ってと言いだす。
男は律儀にじゃあ付き合うかってなり、2人は付き合いだすが、男勝りの女の子はそれを快く思わず、ついつい男を監禁・・・
っていう、ベタな話の電波を受信した。
書きたいが面倒だな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/14(金) 17:05:29 ID:k4R95RTI<> 面倒ですませるなよ・・・
ヤンデレは愛を得るためにどんな努力も惜しまないものだぜ? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/14(金) 23:12:38 ID:a7krkGqP<> やあ(´・ω・`)
臨時保管庫の中の人だよ。
実は今度メニューに投下イラストを追加してみたんだ。
そこでお願いがあるんだが




本保管庫に未収録の伊南屋氏の絵、誰かうpしてくれないか(´;ω;`)
まさかと思って保存してなかったんだ(´;ω;`) <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/15(土) 00:24:32 ID:xo4ZSDV1<> >>138
出遅れたけどGJ!
へけって笑いで某ラノベのヤンデレ素質持ちの幼馴染みを思い出しちまったぜ。
続きお待ちしております。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/15(土) 11:16:17 ID:IEIlcPuZ<> >>151
まーちゃんの事か!?
まあ今俺の一番のお気に入りだがな。
 
嘘つきみーくんと壊れたまーちゃんのSSてスレ違い? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/15(土) 11:46:11 ID:JTMg1bS5<> >>152
>>1 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/15(土) 11:53:35 ID:+BTI7ubJ<> ヤンデレならなんでもおkだとは思うが
このスレ的にというか
ヤンデレズキーの間ではまーちゃんがヤンデレか否かで層がわかれてたりするからな
あんま荒れるような内容は避けてほしいところ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/15(土) 11:53:40 ID:9IxAvsad<> まーちゃんはヤンデレじゃないからな。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/15(土) 11:57:16 ID:NZpz5eyE<> なんだかんだでレナもヤンデレ四天王とかいわれちゃってるしな
エセヤンデレだらけのこんな世の中じゃ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/15(土) 12:22:13 ID:xo4ZSDV1<> >>152
違うよ。もっとマイナーだろう作品。みーまーは読んでないっす。
今月新刊が出て有名エロゲンガーが絵描いてるやつ。
あとヤンデレ的に意見が分かれるようなのならラノベスレでいいんじゃない? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/15(土) 12:48:10 ID:m/n+louB<> まーちゃんは由乃タイプだからな
ただ、みーまーシリーズは各種ヤンデレを取り揃えてるから
普通の(!?)ヤンデレも登場するし
スレ違いって事も、無いっちゃあ無いと思うが <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/15(土) 13:01:46 ID:EJReW775<> 由乃タイプじゃないよ・・・
本質がまったく違うよ・・・
あんなのと由乃様を一緒にしないでくれまじで・・・
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/15(土) 13:18:56 ID:m/n+louB<> いや方向性の話さ
そんなムキにならんでも <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/15(土) 14:37:40 ID:d/TP36rt<> 方向性も違うしあの作品にヤンデレなんてでてこねぇよ
ヤンデレっぽくみせてるだけ
読むならちゃんと読もうぜ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/15(土) 14:40:10 ID:bt+PcfR1<> そのラノベ知らんのだが、>>158的にはどんなとこがヤンデレだと思ったんだ?
具体的に特徴を書けば、知らん人間も「それはヤンデレだ」「それはヤンデレじゃねえ」と判断しやすいんだが。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/15(土) 15:44:10 ID:ZQotSCCo<> デレすぎて病むのがヤンデレ

病んだ人がデレるのはただの狂気系 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/15(土) 16:17:38 ID:l48AYiQj<> >>163のおかげでヤンデレが何かを思い出した。

書いているSSの方向修正を実施。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/15(土) 16:30:53 ID:IafieciR<> ■ヤンデレとは
好きな男のために狂気に走る(黒化、黒姫化)事、またそういったヒロインを指す。
  狭義のヤンデレ:愛(デレ)ゆえに病ん(ヤン)でしまった状態、ヒロイン。
  広義のヤンデレ:病ん(ヤン)だ愛情表現(デレ)、またそれを行うヒロイン全般。

角煮のヤンデレスレは延々議論した結果↑に落ち着いた……のかなあ? <> 158<>sage<>2007/12/15(土) 19:40:18 ID:106fplSV<> >>162
俺的には>>163の解釈だよ
まーちゃんも由乃も「病んだ人がデレる」だからヤンデレ違うんじゃないかと考えてる
こだわる人には怒られたけどw

さっきいった「普通のヤンデレ」なキャラは
同じ女に男を二度も寝取られた女が寝取った女を鈍器で殴ったりする感じだけど
これくらいだとインパクト足りないかな? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/15(土) 20:40:34 ID:O5KPosxo<> もう狂人デレとかのジャンルを作った方がいいのかな

イヤ、スレ立てとは別にして
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/15(土) 20:42:21 ID:bt+PcfR1<> >>165
なるほど、前者の解釈の人と後者の解釈の人がいて、話が噛み合わないわけだな。
この場合、いつまでも前者の解釈だけに限定して話をする人を保守的と見るべきか、
それとも後者の解釈だけしか知らない人を適当すぎと見るべきか、どっちなんだろう。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/15(土) 20:52:41 ID:d/TP36rt<> >>166
真面目にもう一回ちゃんと読み直せ・・・
作品としては俺もあの作品は好きだし今のところ全巻読んでるが
ヤンデレとかじゃないだろ、なんていうか読むときに「ヤンデレフィルター」みたいなのをかけすぎだよ
ちゃんと地の文読んでしっかり理解してればあれがヤンデレだとは思わないはず

>>162
部分的にそれっぽい行動はとるんだけどその行動にいたる経緯とか原因とかが所謂「恋愛感情」からくるものじゃなかったりする
下手に説明するとネタばれになるし、中途半端に説明すると「ヤンデレっぽく」見えてしまう
正直歯痒い <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/15(土) 21:09:22 ID:106fplSV<> >>169
「このキャラはヤンデレじゃないな、どっちかと言うとあっちの方が…」
くらいの考えなんで、そんな強く主張するつもりも無いし、取り下げるけど
そのレスの下半分の
>行動にいたる経緯とか原因とかが所謂「恋愛感情」からくるものじゃない
に対する疑問を最後に聞きたい
ネタバレに配慮しているようなのでyesかnoくらいで良いので頼む

寝取られた方の彼女の凶行は「恋愛感情からきた行動ではない」と言いたいの?
他の理由でヤンデレじゃないと言うなら引くけど、この理由なら、うーん… <> 名無しさん@ピンキー<><>2007/12/15(土) 21:16:47 ID:Xm8SBRoJ<> >>163
でもそれってヤンデレ候補の過去話とかがないとわからなくね?
ヤンデレの頂点の楓さまですらその判定だと病んだ後にデレたからヤンデレじゃなくなってしまうのだが
言葉さまはたぶん狭義でもクリアしてるだろうけど過去話がないだけに断言できんしな <> 名無しさん@ピンキー<><>2007/12/15(土) 21:23:01 ID:RtJu6cND<> >>171
言葉様の愛(デレ)を信じられん奴なぞ、カレーの食えないインド人と同じだ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/15(土) 21:27:46 ID:IafieciR<> こんな感じで角煮は画像も貼らんとひたすら議論していたなあ……
まあ皆茶飲め( ´・ω・)つ旦~~
あと、sageような <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/16(日) 02:29:26 ID:bVo8Olaq<> 言葉様はサマイズを見ると、mと付き合わない限り病まないので、狭義クリアと
思う。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/16(日) 07:31:38 ID:Rd+br2jD<> 百合ヤンデレって無いのな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/16(日) 09:37:15 ID:0GEAYpB6<> ひぐらしスクデイ未プレイで泣く泣くアニメもスルーした俺にはおまえらの話がわからん
自重しろ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/16(日) 12:04:17 ID:f6tfpR7z<> まーちゃんはな病む前からみーくんが好きで病んでからも恋愛感情が残ってるんだよ。いくらかは嘘だけど <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/16(日) 21:02:10 ID:/TTR8rFG<> 今さらだが、どこからが「ヤン」なんだ? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/16(日) 21:06:52 ID:V5T6Cj27<> 日本国の法律に引っかかったら <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/16(日) 21:22:00 ID:5Hxh9BWB<> とりあえずストーカー行為ぐらいからじゃないか <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/16(日) 21:44:54 ID:L8AdknLi<> 無理に定義付ける必要はないだろ
他人がどう思おうと、
このキャラはヤンデレだと思えば、
それは自分の中ではヤンデレだよ


俺も法律を気にしない行動をする位から
ヤンデレだと思ってるかな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/16(日) 22:12:30 ID:qI0r+ZS8<> まあ逆に法律に触れない病み方とか考えると

・告白で渡すラブレターが便箋二十枚
・キスの時、常に目を開けてガン見してくる


……やっぱりなにか違うな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/16(日) 22:18:42 ID:24VDMyb1<> キスの時、常に目を開けてガン見してくるは、なかなか好いと思う <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/17(月) 00:17:20 ID:NAB5GJgR<> 食事中に
愛しの彼が使う箸にこれでもかという位に
殺意を送るとか <> キミノシアワセ<>sage<>2007/12/17(月) 01:47:47 ID:Rd1S27f/<>
 遠見の舌が僕の唇を押し割った、と思うや否や、彼女の口の中で咀嚼された食べ物が、僕の口の中に押し込まれてきた。
 遠見が唇を離したので、僕は改めて、その食べ物を自分で咀嚼する。
 目の前のテーブルに載っているのは肉料理なのだが、他人が咀嚼した後のものを口に入れられても、正直味がよく分からない。
「ねえ、おいしい?」
 テーブルに頬杖をつき、かすかに顔を上気させた遠見が聞いてくる。その潤んだ瞳を見つめ返し、僕は微笑んで頷いた。
 嘘ではない。確かに食べ物の味はよく分からないが、代わりに遠見の口の中の熱と、唾液の味を感じる。
 それだけで、僕は十分に興奮していた。
 遠見がこんなことをするようになったのは、同棲を始めて一週間ほどした頃のことだっただろうか。
 同棲する前からも多少兆候はあったが、遠見は実に嫉妬深い女性だった。
 他の女と僕が話をするだけで、相手を睨み殺さんばかりの凄まじい視線を送ってくる、ぐらいはまだいい。
 同棲を始めるようになってから、彼女の嫉妬は空想の存在や無機物にまで向けられるようになっていた。
「隆明君。このマンガ、ヒロインが気に入らないから破いちゃった。いいよね?」
「隆明君。チラシに載ってる女、見てたでしょ? もう新聞取るのやめてね?」
「隆明君。あのニュースキャスター、そんなに美人だった? ごめんね、テレビ壊しちゃって」
「隆明君。他の女の歌声が、そんなにいい? iPod壊しちゃってごめんね。代わりに、これからはわたしが好きな歌を歌ってあげる」
 異常な独占欲である。僕の関わるありとあらゆるものが、彼女にとっては嫉妬の対象になるのだ。
 そして、極めつけ。
「隆明君。そのお箸、ずいぶん大事に使ってるのね? わたし以外のものが、隆明君の唾液に濡れるなんて許せない。
これからは、飲み物も食べ物も、全部わたしが口移しにしてあげるね?」
 こうして、僕は自分の手で物を食べることを禁じられた。
 今では、物を食べるのはもちろん、歯を磨くのまで全て遠見の口移しだ。
 正直言ってかなり不便だが、僕は非常に満足している。
 自分でも少し驚いているが、どうやら僕は、こういう風に独占欲を露わにされるほど、相手の愛情を実感できる性質だったらしいのだ。
「隆明君。そろそろ寝ましょ?」
 遠見の誘いに、僕は一つ頷いた。お互い黙って服を脱ぎ、裸で地べたに横たわり、抱き合って眠る。
「隆明君。毛布が隆明君を暖めてるのが気に入らないの。枕が隆明君の頭を支えてるのがたまらないの」
 そんな遠見の言葉がきっかけになって始まった眠り方だった。
 互いの温もりを感じられるし、いろいろと面倒がないので、個人的には凄く気に入っている。
 暖房代がかさむのが少し厄介といえば厄介だが、幸せに対する代価だと思えば安いものだと、僕は思っている。

 数日経って、遠見が言った。
「隆明君。隆明君の脳味噌を、頭蓋骨が包んでるのが気に入らないの。だから壊しちゃうね」
 遠見は微笑みながら、僕に向かってハンマーを振り下ろす。
 彼女はきっと、この後は僕の脳味噌に話しかけ、微笑みかけながら生きていくのだろう。
 自分の頭蓋骨が砕けるのを認識しながら、僕の幸福感はその瞬間に絶頂を迎えたのだった。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/17(月) 01:50:00 ID:Rd1S27f/<> >>184からヒントをもらって書いてみた……が、ヤンデレの定義の話の後だと正直迷う。
これってヤンデレなんだろうか? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/17(月) 02:00:09 ID:FbrPacHD<> 遠見は隆明のではなく、隆明の脳味噌を病むほどに愛しているということ? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/17(月) 02:01:07 ID:RYJjrOpf<> >>186
ヤンデレだと思う

二人とも <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/17(月) 02:03:58 ID:nwLYyqXK<> 最後はちょっと微妙だったな、頭蓋骨も彼自身の体なんだから

ともあれGJです <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/17(月) 02:25:44 ID:biZdzSFy<> 同じく最後が微妙。これだと脳味噌大好きなサイコさんという感じがする。 <> 名無しさん@ピンキー<>age<>2007/12/17(月) 03:45:14 ID:IfmbAJk9<> <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/17(月) 03:59:46 ID:7owSQrJB<> 「わたしと隆明君が、別々に存在していることが気に入らないの」とか言い出して、
隆明君の手首切って血を飲んだり、隆明君に自分の肉を食べさせようとする……辺りがこの場合よくあるパターンだろうか。

でもこれでも充分ヤンデレだと思うよ。お話のテンポも読みやすくていい。
隆明君にはもう一度蘇生してもらって、長編SSの形で遠見の物語を是非! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/17(月) 07:25:26 ID:NAB5GJgR<> うお
よくプロットを書いている人達の気持ちが初めて分かった


自分が言った事から作品が生まれると
かなり嬉しいものなをだな

凄くGJ!

<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/17(月) 07:36:52 ID:qdrw7xQc<> >>183
恐えってwww <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/17(月) 09:41:14 ID:dk96yvFh<> 理知的なヤンデレとかいいかも <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/17(月) 10:37:16 ID:qdrw7xQc<> ヤンデレをWikiってみた
http://www21.big.jp/~wiki7/ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/17(月) 15:16:52 ID:s6wjt2zr<> 画像検索の三番目、ドラえもんはヤンデレを予見していたのか…。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/17(月) 16:00:37 ID:dk96yvFh<> やはりロボ子はヤンデレに分類されるのか… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/17(月) 20:03:53 ID:hhf8Wu7g<> 私見で良ければ発言させていただきますがが、要は相手に精神的に依存してしまい、
相手から拒否されると自分の未来や将来をすべて擲ってでも、相手に依存する状態
をつくりだすことを行う、もしくはつくりだそうとあがく状態をヤンデレだと思って
おりました。
血でまみれたり、死人が出たりするのはその状態を作り出そうとした結果起こったこと
なのではと思いながら空鍋や学校の日々を見ていたのですが。
住民の皆さんはどう思いますでしょうか。

<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/17(月) 21:47:26 ID:/z4YnT6a<> いまから投下
<> ヤンデレ臣下とヤ○チャ王<>sage<>2007/12/17(月) 21:49:12 ID:/z4YnT6a<>
「陛下、ご聖断を」
侍従長の東雲がさっきから僕を催促する。
会議に出席している連中の中で、紅一点しかも唯一20代の彼女だが
出席中のメンバーの中で一番、僕に対する視線がキツイ。
その怜悧な美貌もあいまってなおさらキツク感じる。
対する僕はそれに視線を合わせれない。
いい加減にしてくれと思う。
好き好んで皇家に生まれたわけでもないのに皆が僕に責任を押し付ける。
本当にうんざりだ。いい加減全てを放り出してコメリカにでも亡命しようか。
流石に戦争相手の国に亡命したら東雲も追いかけてはこれないだろう。

王紀3075年
70年前に始まった戦争は今では所々で戦闘を思い出したかのように始め
そしてまたいつの間にか終わることを繰り返しながら未だに終わりを迎えない。
御爺様が始めたはずの戦争なのに、御爺様とその側近は皆死んでしまった。
だが、それでも5年前父上が一部の反発を押し切ってコメリカと休戦条約を結び
一応武力衝突は終わりを告げることが出来た。
そしてその父上も崩御し今では僕がこの国の皇王になってしまった。


そもそもの始まりは、御爺様が亜細亜国家の開放とか言ってはじめた小さな戦争だ。
結果、亜細亜は開放されたけど植民地を持っていた国々は再植民地化を目指して本格的な戦争が始まった。
休戦条約のお陰で、いまでこそ小さな小競り合い程度は起きているがそれでも戦闘はおこなっていない。
その間に世界はそれぞれの国の利害の為大きく4つに分かれてしまった。
コメリカ自由連邦、人民解放者共同体、欧州連盟、そして僕の国が所属している亜細亜統合評議会。
この4者が未だに覇権を争っている。そして亜細亜統合評議会の議長は僕だったりする。
だけど、正直言って僕は覇権なんかまるっきり興味が無い。
さらにぶっちゃけて言えば、狭い部屋に閉じこもって好きなアニメを見ている時が一番幸せだったりする。
宮殿の物置をこっそり一人で改造した隠れ家だけが僕の世界だ。
その世界が安寧ならあとは知ったことではない。 <> ヤンデレ臣下とヤ○チャ王<>sage<>2007/12/17(月) 21:50:07 ID:/z4YnT6a<> だけど先月そんな小さな世界の安寧もあっという間に終わりを告げた。
東雲だ。
彼女はどうやったかは知らないが鍵をかけていた僕の隠れ家に侵入していた。
その日の公務を終えて溜まっていたアニメの鑑賞に勤しもうと部屋の戸を開けた瞬間の僕の驚きは
言葉に出来ないものがあった。
驚いて固まっている僕に対し、東雲はその手に秘蔵萌えDVDを持ち、酷く冷たい表情で
「陛下。陛下はこのような下賎の者が見るようなモノは見てはなりません。
この表紙に載っている破廉恥な二次元の汚物など御目に入れては穢れてしまいます。
この汚物の声などお聞きになっては御耳が駄目になってしまいます。
陛下は私だけを見て、私の言葉だけを聞いていればよろしいのです。」
と一気にまくし立てて握力だけでDVDを潰してしまった。
それから僕がコツコツ小遣いをためて買ったDVD・フィギア・漫画・情報誌全て捨てられてしまった。
その夜の床で密かに涙したのは今でも記憶に生々しい。

だけど、それからも僕は暇を見つけてはコツコツと新しい隠れ家作りに勤しんで
ようやく一昨日、隠れ家2号が完成した。まだソフトは無いがとりあえずハードは完成した。
そして次こそ東雲に見つからないようにしようと固く心に誓ったのだ。

そんな日々を送っていた僕だが、いきなり今日
東雲から「御前会議を開きたい」と言われ少々面食らった。
そもそも御前会議は政務、ことさら国体に関することで開かれる。
侍従長の東雲にはそもそも関係の無いことだ。
しかも父上が休戦条約を結んだ時を最後に開かれていない。
そんなことを考えているとその様子を見た彼女は
「国体に関する緊急事態です。陛下お願いいたします。」
と、どう見てもお願いしている感じには見えないが、とにかくお願いされてしまった。
彼女が僕にお願いなど天変地異の前触れか。とも思ったがそれほど急を要する自体なんだろうと
納得し政務官・軍務官・内閣閣僚、軍部それに加え特別に侍従長の東雲・集めた会議を開くことにした。
そして会議の冒頭、東雲はいきなり僕の前に座っている皆に対して
「軍の情報局からの情報だが、コメリカの情報部が陛下の誘拐を計画している。」
と爆弾を投下してきたのだ。
一気に会議はざわつき始めた。
それはそうだ。
いくら僕の側近とはいえ一介の侍従がこんな発言をすればそうなる。
だがあっけに取られている僕達を他所に東雲は言葉を続けた。
「ついては陛下の御身を害そうとしたコメリカにも、それ相応の対価を支払わせる必要がある。
コメリカに対し正式に休戦条約の終了ならびに宣戦布告することを発議する」
それだけ言うと東雲は場を見渡す。
軍の将軍連中はしたり顔をして黙り、内閣の面々は顔を真っ青にしてざわめいている。

その様子を見てなんとなく僕にも状況が分かってきた。
元々戦争をしたがっていた軍は内閣に休戦条約の破棄を迫ってたんだろう。
だけど内閣としては5年前に結んだばかりの条約を破棄したくない。
それで業を煮やした軍が直接僕に発言できる東雲を使って会議を開かせた。
多分そんなところだと思う。

僕としてはもちろん戦争は避けたい。
というか僕にそんな重い決断なんて、とてもじゃないが出来るはずもない。
そう僕はヘタレなんだ。ヤ○チャ並なんだ。ほっといてくれ。
僕は自分の小さな世界の安寧だけあれば十分なんだ。
<> ヤンデレ臣下とヤ○チャ王<>sage<>2007/12/17(月) 21:51:23 ID:/z4YnT6a<> act.1

昔、陛下は私にべったりだった。

父が先帝の侍従を務めていた関係で私は昔から宮中に参上することを許されていた。
だが幼い私にはそんな大人の決めた難しいことなどまったく分からず
ただ仲のいい年下の少し頼りない小さな男の子と遊ぶことが何より楽しかった。
だが、そんな関係もいつしか終わりを迎えた。当時小学生だった私はてっきりその子も
同じ学校に通うものとばかり思っていた。だがその子は選ばれた子だったのだ。
王太子、つまり現人神の子。
もちろん普通の小学校になど通うはずも無く、
私たちは離れ離れにされた。たまに父に連れられ宮中に行っても昔のように遊ぶことは中々出来ない。
あの子と離れ離れになることが我慢できず父にかなり我儘を言った記憶がある。
そんな時、父は決まって「殿下はお忙しいのだ。」とたしなめられた。
中学校に上がると流石に殿下がどういうお方か分かってきた。
我々とはまったく異なる世界に住まわれるお方。
その頃にははっきりと自分の持つ殿下にたいする気持ちが恋心だと気づいていたが
それはある種の諦観も併せ持ったものだった。
そうやって無為に3年間は過ぎ、ただただ惰性で通っていたようなものだ。
だが再び転機は訪れた。父が宮中に上がらないかと言ってきたのだ。
曰く「殿下の御傍用人に空きができた。花嫁修業のつもりで仕えてみないか?」と
その言葉を聞き、私は産まれて初めて天に感謝した。

やっと殿下の傍へ近づくことが出来る!

まず可能性は無いに等しいが0ではなくなった。そのことに狂喜乱舞した。
それからの私は必死で宮中のしきたり、儀典のしきたり、政務・軍務、さらには閨中術まで勉強した。
今まで自分の外観など気にしたことなど無かったが必死で化粧も覚えた。
そうして殿下の傍用人として仕え始めてしばらくしての頃。
延々と続いていた戦争も休戦条約を結ぶことになった。
私はただ戦争が終われば殿下と過ごす時間が増えるかもしれない、とその程度にしか考えていなかったが
殿下が帰国された時どこか様子がおかしかった。
日中公務にも身が入らない様子で夜は深夜まで何か考え事をされている。
何か向こうであったのかと思い同行した侍従に問いただすとコメリカ産メス豚が殿下に色目を使っていたらしい。
思わず、その侍従に掴み掛かりそうになるが何とか押さえ、
さらに詳しい話を聞いてみるが、それ以上のことは分からないと返事が返ってきた。
それを聞き今度は激情ではなく、妙にすっきりとした冷静な考えが浮かんだ。

このままでは殿下を取られてしまう。もっと殿下のそばに居ないと他のメス豚どもが近づいてきてしまう。
ならばもっと偉くなればいい。そうして殿下に近づくメス豚を排除する。
その為ならどんなことでもする。

その後は必死で勉強し大学を出た。父のコネを使い正式に宮内省の東宮侍従になる。
さらに殿下が帝位に付かれた時には侍従長となるよう念入りに裏工作をした。
あとは殿下が即位するだけ。
そんな時、帝がたまたま崩御した。さっさと帝位から降りてもらう為に毒まで用意したのに無駄になってしまった。
だがこれで殿下の御世だ。その傍には常に私が居る・・・
そんなことを即位の礼の時考えていたのは誰にも明かせない秘密だ。 <> ヤンデレ臣下とヤ○チャ王<>sage<>2007/12/17(月) 21:51:58 ID:/z4YnT6a<> 殿下から陛下と呼び方が代わって暫くすると、再び陛下の様子がおかしいことに気づく。
またどこかのメス豚が色目を使ってきたのか、といぶかしむがどうやらその様子も無い。
とりあえず宮中の保安所の監視カメラで暫くご様子を見ることにした。
そこには一人こそこそと宮殿の片隅にある倉庫へと入る陛下が写っていた。
あんなところに何が・・・?もしやどこかのメス豚との逢引か?
一瞬そんな不安がよぎるが、まさかと思い直す。
宮内の女官連中は私が取り仕切っているといってもいい。そんなメス豚が現れたらすぐさま分かるはずだ。
では一体何故?そんなことを考えているうちに再び殿下が出てきた。またも周囲を窺いつつこそこそとしている。
とりあえず考えることを止め私は陛下が出てきた倉庫へとやってきた。
鍵を開け中に入ろうとするが開かない。
おかしいこの鍵で合っているはずだ。まさか陛下が鍵を変えられているのか?
私に隠しごとなんてありえない。私は陛下の全てを知っていなければならないのに!
奇妙な高揚感を体に感じると気づいた時にはドアを力任せに破っていた。

中に広がっていた世界は私の知らない世界だった。
最近TVでよく特集されている所謂オタクの部屋だ。
何故こんなものが、そもそも何故陛下がこの部屋から出てきたのか。
何もかも分からなかった。

とりあえずその辺にある箱を手に取るとそこには半裸の女が描かれている。
やたらとデフォルメされた目や異常なほど巨大な胸がやけに癇に障る。
なるほど。
陛下も年頃だ。もちろん性に興味をもたれてもおかしくはない。
いや、そもそも英雄色を好むとも言うからあたりまえだ。
なのに私ときたら未だに陛下に夜伽をして差し上げていなかった。
そうか。
だから陛下はこんな破廉恥なモノを見て御自分をお慰めになっていたのだ。
私が気が利かないばかりに陛下はこんなキタナイモノを使わなければならなかった。
そう考えると世界が真っ白になる。
それにしても、、、陛下も私を求めてくださればいつでもどんな時でもこの体を献上するのに。
いや体だけじゃないそもそも私の体も心も魂も全て陛下の所有物だ。
それともシャイな陛下のことだから、私から行ったほうが良いのか。
そうだそのほうが良いに決まっている。
そう決めると自然に私の口から笑いが零れてくる。
「あは・・アハハは・・ハハハアハハハハハハハハハはあハハハはははあははははああはあああああああああ」
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/17(月) 21:54:18 ID:/z4YnT6a<> 異常っす

ヤンデレおねぇちゃんとガチレンジャーパンツの続きが書けない。
ヤンデレは難しい。。。 <> ヤンデレ臣下とヤ○チャ王<>sage<>2007/12/17(月) 21:55:58 ID:/z4YnT6a<> 以上だった・・・

スマソ俺が異常だわ。。。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/17(月) 22:03:14 ID:NAB5GJgR<> 一番槍GJは俺が頂く
続きが楽しみだわ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/17(月) 22:04:05 ID:oEF8SGXg<> GJだから落ち着けよw
読みやすいし感情の流れも分かりやすいしで好み。
こういう、キツい感じの人が実は狂的な愛情を持ってるってのはいいもんだよな。
男側もいい感じにヘタレでヨス。今後どう変化していくのか楽しみだ。

あと、東雲って「しののめ」って読み方でいいんだよな? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/17(月) 22:15:29 ID:/z4YnT6a<> >>208
うぃむっしゅ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/17(月) 23:35:24 ID:YA22ATQP<> グッジョブお疲れ
続きに期待 <> 傷が消えぬ日まで<>sage<>2007/12/18(火) 01:02:42 ID:guwR8E1H<>
 深い闇の中に音もなく銀色の刃が走って、僕の右腕が薄く切り裂かれる。
 滲む血に赤く染まった肌を見て、八重子は微笑を零した。
「瞬君の血、とってもきれい」
 うっとりとした声だ。八重子は鼻歌を歌いながら、果物ナイフの切っ先を、また僕の肌に軽く押しつける。
 痛みと共に、また新たな傷が刻まれた。滲み出す血を、八重子は瞬きもせずにじっと見つめている。
「これはわたしがつけた傷。わたしが瞬君につけた傷。どれだけときが経っても、決して消えないわ
たしの傷」
 呪文のように呟きながら、八重子は僕の腕に傷を刻み続ける。
 赤い血と絶え間ない痛みと、呪文のような八重子の声。
 僕は耐えられなくなって、低く嗚咽を漏らしてしまった。八重子が弾かれたように顔を上げる。
「どうしたの、瞬君」
 なんでもない、とくぐもった声で言っても、八重子は信用してくれない。
 心配そうに僕の頬を撫で、それからふと、自分が持っている果物ナイフに目を落とす。
 その瞬間、
「あ、ああ――!」
 八重子は目を見開き、果物ナイフを取り落とした。銀色の刃が床に跳ねて、耳障りな音を立てる。
「ごめ、わた、わたし、なんてこと――!」
 八重子はすっかり取り乱して、無数の傷が刻まれた僕の腕を手に取り、涙を流し始めた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、わたし、また瞬君にこんなこと。痛かったでしょ、ごめんなさい、
ごめんなさい!」
 頬を伝う涙を指で拭ってやりながら、僕は「いいんだよ」と囁き、彼女の体を抱きしめる。
 どんなに慰めても八重子は泣きやまず、やがて疲れたように眠ってしまった。僕は彼女の体をベッ
ドに運び、そっと毛布をかけてやる。
 涙の痕が痛々しい八重子の寝顔は、苦しむように歪んでいた。
 それをじっと見下ろしながら、僕はため息を吐く。
 八重子と僕が付き合い始めてから、もう一年ほどになる。
 最初からこんな風だったわけではない。快活で明るい彼女は、生来内気で何かと沈みがちな僕を、
いつでも楽しい気分にさせてくれた。
 彼女がこんな風になったのは、半年ほど前のこと。
 彼女自身が変わってしまったのではない、と思う。変わってしまったのは、周囲の環境だ。
 彼女の父親が、ある種の病気にかかってしまったのだ。
 ずっと昔に妻と離縁した八重子の父は、男手一つで大切に娘を育ててきた。八重子の方も父の愛情
を素直に受け取り、二人で支えあって生きてきたのだ。
 そんな、深い愛情で結ばれていたはずの親子の絆は、病魔によってあっけなく壊されてしまった。
 一言で言えば、心が壊れてしまう病気だ。まだまだ働き盛りと言ってもいい八重子の父親は、今は
病院のベッドの上で、一日中何もせずに口を開けたままぼんやり窓の外ばかり眺めている。愛娘の八
重子がどんなに必死に呼びかけても、全く反応を示さない。
「お父さん、忘れちゃった。わたしのこと忘れちゃった」
 当時、八重子は狂乱状態で泣き喚いた。もともと情が豊かな女性だったから、最愛の父親に忘れら
れたという衝撃は、彼女の心を粉々に打ち砕くのに十分だったらしい。
 一日をほとんど嘆き悲しむことに費やす彼女を、僕は必死に慰め続けた。だが、八重子の父親が娘
のことを忘れてしまったという現実を変えることは出来なかった。 <> 傷が消えぬ日まで<>sage<>2007/12/18(火) 01:03:45 ID:guwR8E1H<>
 そうして一ヶ月ほどの時間が過ぎたころ、彼女の奇行は始まったのだ。
「ねえ瞬君、俊君は、わたしのこと忘れちゃったりしないよねえ?」
 うつろな微笑を浮かべながら八重子が聞いてきたのに、僕は「当たり前だろ」と答えることしか出
来なかった。
 八重子は一瞬嬉しそうに微笑んだあと、すぐに顔を曇らせた。
「でも、お父さんも、きっと昔はそう言ってくれたと思う。それなのに、わたしのこと忘れちゃった」
 八重子の瞳から涙が溢れ、ぽろぽろと零れ落ちる。
「だから、ね」
 不意に、彼女の唇が笑みを形作った。
「わたしのこと、忘れないようにしてあげる。俊君の体に、わたしのこと刻み付けてあげる。そうし
たら、わたしのこと忘れないでいてくれるでしょう?」
 一体何をするのだろう、と不思議に思っていると、八重子は黙って果物ナイフを取り出し、僕の腕
に冷たく光る刃を押し付けた。
「何するんだ、八重子!?」
 僕は驚き、彼女の手を振り解いた。「動かないで!」と彼女は悲痛な叫びを上げた。
「これは儀式なの。俊君にわたしの存在を刻み付けるための儀式なの。こうしないと、俊君はわたし
のこと忘れてしまう。わたし、瞬君にも忘れられちゃったら、もう生きていけない!」
 暗い部屋に響き渡るその叫びが、僕の胸を深く抉った。
 僕が黙って差し出した腕を手に取り、八重子は嬉しそうに果物ナイフを握り締めた。
「ありがとう、瞬君。今から、わたしのこと、俊君の体に刻み付けてあげるからね……」
 そして、彼女は「これはわたしがつけた傷。わたしが瞬君につけた傷」と呟きながら、僕の体に傷
を刻み始めたのだ。
 この儀式は傷が癒えるたびに幾度も繰り返され、いつも唐突に終わった。
 僕が泣いたり八重子が急に正気づいたり、切欠は様々だったが、いつだって終わり方自体は一緒だ。
「ごめん、ごめんね瞬君、わたし、なんてこと――!」
 自分のしたことに初めて気付いたように取り乱す八重子を、僕が必死で慰める。しかし彼女は泣き
やまず、やがて疲れ果てたように眠ってしまう――その繰り返し。
 眠る八重子の顔を見つめながら、僕はときどき考える。彼女は狂っているのだろうか、と。
 そのたび、すぐに否定する。
(違う、彼女は狂ってなんかいない。お父さんのことで、少し疲れているだけなんだ)
 だから、彼女を気違い扱いして病院に押し込もうだなんて、一度たりとも考えたことはない。
 状況に終わりが見えないことは事実だ。彼女はこんな状態でも優しさを失っていないらしく、僕の
皮膚は本当に薄く切り裂かれるだけ。一生消えない傷跡なんていつまで経っても刻まれないし、それ
故すぐに消えて、元通りになってしまう。
 僕の腕に傷がついている間は、八重子は落ち着いていた。だが、傷が消えるとすぐに不安定になり、
また僕の腕を取って儀式をやり直すのだ。
 そんなことを、もうずっと繰り返している。終わりなんて、見えない。
「やだ、瞬君」
 不意に、八重子の閉じられた目蓋から涙が零れ落ちた。
「忘れないで。わたしのこと、忘れないで、お願い」
 僕は眠りながら苦しむ八重子の手を、ぎゅっと握り締める。その腕には、八重子が刻んだ無数の薄
い傷跡がある。おそらく、一週間も経つころにはすっかり消えてしまう切り傷だ。
(僕は大丈夫だよ、八重子)
 声には出さずに、語りかける。
(もっと深い傷を刻んでくれたって、大丈夫だ。それで君が安心できるって言うなら、いくらでも痛
みを受け入れる)
 言えば逆に八重子を躊躇わせ、苦しめることになるだろう。
 だから僕は、この思いを押し込めたまま、ただ時を待つのだ。
 彼女が本当に僕の腕を深く抉り、傷と共に自分の存在をも刻み付けられたと確信できる、そのときまで。
 窓の向こうに目を向ける。闇は深く暗く、夜明けはまだ遠いようだった。
  <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/18(火) 01:05:24 ID:guwR8E1H<> 昨日の>>186ッス。指摘受けて、脳味噌の部分は確かに違ったなあ、と
反省しつつ、また別の話思いついたんで書いてみました。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/18(火) 06:40:04 ID:WvYrEz1M<> >>205
テラGJ
東雲のキャラも陛下との関係もメチャクチャ俺の好み。
続きに激しく期待

>>213
難しいなあ……
病んだキッカケが主人公じゃなく父親への愛って所が、評価分かれそうというか。
個人的にはただのメンヘラに見えてしまう <> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/18(火) 06:48:11 ID:L0TLbg72<> 投下します。第六回目です。
長いです。15レス使用します。

-----

*****

 俺と妹と着物姿の葉月さんが、ほとんどの生徒が帰ってしまった放課後、蛍光灯の明かりのない廊下で、
向かうところ敵なしのはずの覆面ヒーローを引きずっている女忍者と出会った。
 つい今し方、俺が遭遇した状況を端的に言い表すとそうなる。
 昨日こんなことがあったんだ、と他人に言っても決して信じてもらえそうにない光景である。
 しかし、今日は学校内で文化祭が行われている。中にはコスプレ喫茶を営むクラスも存在する。
 よって、覆面ヒーローがいようと女忍者がいようと、俺は驚かない。
 だが、コスプレ喫茶の存在を知らない、俺以外の人間はそうでもないようだ。
 俺と行動を共にしていた葉月さんと妹は、何度も目をしばたたかせている。
 葉月さんは一日中、自分のクラスのウェイトレスをやっていた。
 妹は一般公開の終わった時刻になってこの学校へやってきた。
 弟のクラスの出し物がコスプレ喫茶だということを知らなくても仕方ない。
 
 揃って覆面を被った二人のうち、一人は弟だ。
 あの仮面も、黒いボディスーツも、薄く汚れたプロテクターも、俺が手を加えて作ったものだ。
 弟の細かい注文を聞いて作った特注品である。着ている本人よりも詳しく知っている。
 弟に平和を守るヒーローになって欲しいという願いを込めて作ったわけではないのだが、弟よ、ヒーローが
気絶して、あまつさえ連れ去られたらさすがにまずいだろう。
 第一話で主人公が悪の組織のアジトに連れ去られる展開はある。
 が、変身できるようになってからは悪の首領を成敗する目的で乗り込むのが王道だ。
 強くなってからさらわれちゃ格好がつかないぞ。
 お前が理想とする英雄たちはそんなへたれた存在じゃないはずだ。しっかりしやがれ。

 俺たちがやってきたことに気づいたくノ一は、引きずる動作をやめてこちらを向いた。
 校舎の窓ガラス四枚分の距離を開けて、俺たちは対峙した。
「……ねえ」
 葉月さんが小声で話しかけてきた。
「あれ、何? なんで忍者が居るの? しかも……なんか引きずってるし」
 まったく、その通りだ。運ぶのならもっと効率のいい手段もあるだろうに。
 それに、まだ生徒がいるかもしれないこの時間に動かなくてもいいじゃないか。
 もしかしてこの忍者――要領が悪いのか? それとも頭が回らないのか?
 どちらにせよ、そのドジ振りはありがたい。おかげで弟誘拐の憂き目を回避できた。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/18(火) 06:49:10 ID:L0TLbg72<> 「お兄さん」
 今度は妹が声を出す番だった。妹の声は静かで冷たい。
 しかしそれは妹が俺と話す際のデフォルトであり、この状況に影響されたわけではない。
「もしかしてあの倒れた仮面の方、お兄ちゃんじゃないの?」
 ――え? なんでわかるんだ?
 愛の力でわかったとか、間違っても口にするなよ。
 妹の気持ちはくどさを感じるほどわかっている。こんな時まで聞きたくない。
「昨日の夜、話をしているときにはしゃいでたから、もしかしたらと思って。
 やっぱりこういうことだったんだ。でも……こんなことだったら内緒にしなくてもいいのに」
 なんだ。妹は弟がヒーローのコスプレをすることをとっくに知っていたのか。
 妹は弟の変化に敏感だ。前日にはしゃいでいれば、何かあると勘づくのは当然のことだ。
 弟から文化祭の出し物でコスプレ喫茶を開くと聞いていたのだろう。隠すことでもない。
 戦うヒーロー大好きの弟が、仮装パーティの衣装を選んだらどんな格好を選ぶか。
 我が家に住んでいる人間なら誰でもわかる。
 日曜の朝、特撮番組を見る弟がリビングのテレビを独占するのが慣例だから。
 今回はそのわかりやすい習性が裏目にでた。

 連れ去られそうになっているのが弟だとは悟られたくなかった。
 妹がどんな反応をするかなんて、たやすく予想できる。予想が百パーセント的中することも保証できる。
 また修羅場が発生する。前回は対葉月さんだったが、今回の相手はくノ一だ。
 女忍者の実力が未知数だから、妹の勝率はわからない。
 妹の戦闘能力はどれほどか知らないが、以前葉月さんに怒りの勢いで特攻した点、そしてその後為す術もなく
投げ飛ばされ着地し咳き込んだ点から考えて、対人戦術を身につけているわけではないとわかる。
 戦わずに済んでくれればなによりなんだが……そうはならないだろう。断言できる。
 場に妹がいなければ弟を取り返して終わりだ。女忍者はその後で追い払えばいい。
 しかし妹がいると、問答無用で殴りかかるだろう。
 妹には悪いが、やっかいな奴がもう一人いるような気さえする。
 夕方になってから、妹が学校に来なければよかったのに。

 さて、なぜ俺たち三人がこの場にいるのかを説明するとなると、今日の四時頃まで時を遡らなくてはならない。

*****

 今日の四時、つまり文化祭一日目の一般公開の時間が終了する頃。
 二年D組の教室内に、寝ぼけ眼で周囲の状況を確認している男が居た。俺のことだ。
 ふて寝していたのだ。昨日の夜から今朝までずっと眠っていなかったから。
 また、誰かの下した命令のせいで半拘束状態に置かれていたからでもある。
 普段ならば、後日白い目で見られることを覚悟した後に、甲高い奇声を上げて脱走するところである。
 絶対に従いたくない類の命令だったのだ。被緊縛嗜好は持ち合わせていない。精神的にも肉体的にも。
 あえて従ったのは、しかめっ面をつくりながらもなんとか許容できる程度の理由があったからだ。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/18(火) 06:50:07 ID:L0TLbg72<>  さらに時間を遡り、午前中。純文学喫茶開店前。

 控え室の隅っこに設えられた俺専用の席に座っていると、高橋から話しかけられた。
「不満そうな顔だね、色男」
「お前は相変わらず地味な顔つきをしているな」
「ありがとう。僕は自分が地味な容姿をしていることにも、地味な性格をしていることにも誇りを持っているから、
 君が抱く僕の印象がそうであってとても嬉しいよ」
「……少しは堪える素振りを見せろってんだ」
「ところで、君はあのプリントを見て、それに書かれていた内容に腹を立てているようだが、それはよくない。
 あの命令は、クラスメイト全員の総意と言ってもいいものだよ」
「お前らは、俺に窓際族でいてほしいのか……?」
「そういう意味じゃない。君がこの教室にいてくれないと、喫茶店の利益が上がらないからだ」
「俺が居たところで客がくるわけでもないだろ」
「違うんだな、これが。確かに、君がウェイターをしたところで売れ行きは伸びないだろう。
 しかし、君が居てくれないと売り上げが落ちるのは結果として起こりうることなんだ」
「……なんだそりゃ?」
「要約すると、君が教室にいれば葉月さんがウェイトレスをやり続けてくれるから、
 君には教室に居てもらわなければいけない、ということだ。
 もし君が居なくなれば、葉月さんは君を捜しにどこかへ行ってしまうだろう。それは非常によろしくない」
「そんなわけないだろ? 給仕役は交代制のはずだし、勝手にどこかに行ったりは……」
「葉月さんが何を目的にしてウェイトレスをやっていると思っているんだね、君は」
「……さあ? ウェイトレスをやると取り分が増えるから、とかか?」
「この鈍感め。彼女は君に見て欲し………………ふ、言わないでおこう。言うほどのことじゃない。
 それに、僕が言うべきことでもない」
「気持ち悪いところで止めるなよ。俺に、なんだってんだ?」
「自分で考えるんだな。ここまで言ってもわからないんだったら、今日から君と言葉を交わすとき、
 僕は自分の台詞の後ろに(鈍)をつける。そうなりたくなかったら、脳の血の巡りを良くすることだ」

 高橋に「おはよう、今日も元気そうだな(鈍)」とか、
「悪い、忙しくて宿題をやってくるのを忘れてしまった(鈍)。写させてくれ(鈍)」とか言われようと
かまわなかったのだが、あそこまで馬鹿にされて放っておくのも癪である。黙って沈思することにした。
 机の上で腕を枕にして伏せる。体勢を維持したまま、窓から差し込む陽光に微睡んでいると、答えが浮かんだ。
 葉月さんは、自分の着物姿をクラスの誰よりも早く俺に見て欲しいと言っていた。
 男冥利に尽きる殺し文句を、俺だけに見て欲しかった、という意味で勝手に解釈するとしよう。
 すると、俺が見ていなければ葉月さんが着物姿でいる理由は消失してしまう。
 結果、葉月さんはウェイトレスをしなくなる。またひとつ、日本から美が失われる。
 導かれる結末として、我がクラスの総力を結集した喫茶店の売り上げは落ち、打ち上げ会場のテーブルの
上に並べられるピッツァがスナック菓子の偽物ピッツァに変わってしまう。
 高橋の言葉をそのまま借りよう。それは非常によろしくない。

 葉月さんが袴姿の給仕役を請け負った理由を悟ったことにより、友人から括弧綴じしてまで鈍感さを
強調されることはなくなったわけだが、それこそ蛇足というべき余計な効果である。
 一番大事なのは、俺が今日明日ともに教室に立て籠もらなければいけない理由が正当なものであると気づいたこと、
そしてクラスメイトから軟禁状態に置かれているのはやむなくのことである、と知れたことだ。
 そりゃそうだ。いくらなんでも謂れなくあんな命令をクラスメイトが下すはずがない。
 理不尽ともとれる命令は二年D組全体のためを思ってのことだったのだ。
 すまなかった、皆。
 皆はあそこまで陰湿なやり口で俺を追い詰めたりしないもんな。――俺、信じているよ、うん。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/18(火) 06:51:39 ID:L0TLbg72<>  納得したところで、目をつぶり、意識のベクトルを体の外から内へ変更する。
 首の後ろから背中にかけて人肌の温度に保たれたタオルを乗せられているような陽光の中、ああもし自分の魂を
今のままに生物種を変えられるなら猫になりたい、と荒唐無稽なことを考えているうちに、眠ってしまったらしい。
 らしい、という持って回った言い方をしたのは、いつの間に睡眠状態に移行したのかわからなかったから。
 あと、もう一つ。それが睡眠ではなく、昏睡だったのかもしれなかったからである。

 目を覚ましたとき、カーテンで仕切られた簡易控え室の中にクラスメイトの姿はなかった。
 眠りの余韻を残した瞳で床を見る。俺の影がなかった。リノリウムの床が灰色に染まっていた。
 振り向いて、窓の向こうの空を見上げる。
 すでに太陽は沈んでいた。青くて暗いパノラマには置いてきぼりにされたように雲が点々としていた。
 デジタル式で表示された携帯電話の時刻表示を確認する。
 午前中を最初のコーナーでパスし、昼食時間をあっさり周回遅れにし、午後の時間のすべてをラストの直線で
置き去りにして、トップでゴールしていたことに気づいた。
 優勝カップの携帯電話には、PM4:40の文字が表示されている。
 どうりでクラスメイトの姿がないわけだ。
 明日のことは明日すればいいや、程度にしか喫茶店の成功について考えていないのだろう。
 担任は臨時従業員の意識変革を図る必要がある。
 もっとも、明後日になれば教え子に戻るわけだからあえて説き伏せる必要性は感じられない。

 既に営業が終了している以上、教室にいても仕方がない。教室を後にする。
 二年の教室をC、B、Aの順に通り過ぎる。校舎の設計上、先には上下階への昇降を可能にする階段が存在している。
 三階へ行く用事は差し当たってないため、階段を降りていく。
 踊り場にて階段を折り返し、さらに下へ向かおうとしたときである。
「きゃっ!」
 という可愛らしい悲鳴を、俺とは逆に階段を昇ってきた女性が言った。
 彼女は俺と顔を合わせることなく、頭を下げた。
「ご、ごめんなさいっ。ちょっと急いでいたので、つい!」
「いえ、別にいいですよ」
「本当すみません、それじゃ!」
 言い残し、俺の左側を過ぎようとしたその瞬間だった。
 日が沈み、薄暗くなった階段の空気の中、俺と彼女の視線がぶつかった。
 俺はなんとなく、本当に理由もなく彼女の顔を確認しようとしていた。
 彼女はきっと、俺以上に理由なんかなかったんだろうけど、俺の顔に目を向けていた。
 偶然により引き起こされた視線の邂逅。

 そして、彼女が眉を顰める。
 なんという失礼な反応であろうか。こっちだって目を合わせたくなんかなかったんだぞ。
 そう思っても、俺は表情を変えない。
 彼女から――既知の相手である彼女から今のような顔で見つめられることには慣れているのだ。
 むしろ、温いくらい。目があったらオプションで舌打ちをされるくらいが普段の対応だ。
 彼女があらぬ方向へ視線を逸らし、口を開く。口調に嫌悪感が滲んでいるのは(以下略)。
「お兄さん、まだ学校に残ってたんだ」
「ああ、ちょっと色々あってな」
「そう」
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/18(火) 06:52:51 ID:L0TLbg72<>  短いやりとりの後、沈黙が場を支配する。
 まあ、これもいつも通り。彼女――二つ歳の離れた妹と一分以上会話を継続させたことなど記憶に無い。
 悲しくはある。だが、高橋みたいに饒舌になられてもむしろ俺が困ってしまうので、今の方がやりやすい。
 妹の冷たい態度の中に暖かみを探すのが俺側の対応である。
 妹がデレを見せたのは葉月さんが家にやってきた日に起こった、朝食を作ってもらった事件(誤用ではない)が最後。
 以来、妹の態度は改まることもなく、弟に勉強を教えているときは憎悪の視線を向けてくるし、風呂上がりの俺の
格好を見てはさりげなさを演じず顔を背けるようになった。
 ……なんだろうな。朝食事件があまりにも暖かすぎたから、妹の態度がさらに冷え込んだように感じられる。
 だけど、妹が俺と弟を勘違いして優しさを見せてくれないかなとか、つい期待してしまう。
 いくらムチで叩かれようと、アメがもらえそうな気がするから離れられない。
 こうやって世の男は調教されていくのだろうか。
 俺がそうならないとも限らない。注意しておこう。

「お兄さん、お兄ちゃんを見なかった?」
 兄弟以外が聞けば誤解を招くこと必至の問いかけだった。
 『お兄さん』は俺。『お兄ちゃん』は弟。明らかに片方だけに親しみが込められている。
 まだ『お兄さん』と呼ばれているからいい。いつか『兄さん』になったら、俺はどうしたらいいのだ。
 ――という内心の葛藤はこの場ではさて置いて、妹に返事する。
「見てないな。というか、朝見てから弟の顔は見てない。弟を迎えに来たのか?」
 妹が頷く。
「本当は明るいうちに喫茶店に様子を見に行きたかったんだけど、お兄ちゃんが土曜日でも学校はさぼったら
 ダメだって言うから、こんな時間になったの」
 なるほどね。弟の言うことは素直に聞くからな、こいつ。
「一般公開が終わったのが四時頃だから、もう着替え終わって、明日の準備でもしてるんじゃないか」
「お兄ちゃんの教室に行って来たけど、お兄ちゃんはいなかった」
「同じクラスの人に聞いてみたか?」
「聞いてみたけど、知らない、としか。だから自分の足で探しているの」
「……ん? そりゃおかしいな」
 まじめで、誰に対しても優しい弟がクラスメイトに黙って帰るとは思えない。
 それに、「知らない」? 
 知らないなんてことないだろ。本人の与り知らないところでハーレムが形成されるほど人気者の弟が、
女子からの視線をかいくぐってどこかに行けるなんて考えられない。
 こそこそ隠れてなら不可能ではないだろう。でも、隠れる必要があるほどの用事が弟にあったのか?
「お兄さんはお兄ちゃんがどこに行ったか……知らないよね」
「ああ。いちいち弟の行動を把握するほど俺も暇じゃないからな」
「あっ、そう」
 使えねえなコイツ、というニュアンスを含んだ返事である。
 だが、この程度でへこたれるほど俺だって弱くない。ちと反撃してやろう。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/18(火) 06:54:41 ID:L0TLbg72<> 「お前こそ、まだ弟を見つけてないんだろ?」
「……ええ」
「いかんな、それじゃ。もしかしたら弟のやつ、今頃女の子と……」
「はぁ? …………なんですって?」
 妹が距離を一歩詰めた。見上げる格好だが、上目遣いではない。
「お兄ちゃんに近寄る女がいるっていうの?」
「いや、いるというか……いないというか……」
「はっきりしなさいよ。いるの? いないの? ……どっち?」
 可愛らしさをアピールしない女の子の目って、どうして男を不安な気持ちにさせるんだろう。
 疑問の答えを出さぬまま、妹の迫力に押された臆病な長兄は正直に答える。
「いる。たくさん」
「……何人?」
「正確にはわからん。だが十名は下らない。安心しろ。あの子たちは弟の特定の相手じゃないから」
「そんなことわかってるのよ!」
 いや、吼えなくても、いいんじゃない? お兄さん結構怖がってるんだよ?

「許せない、許せない許せない! どこの雌豚がお兄ちゃんに近寄ってるのよ!」
「あー……近寄ってはいないんだ。女の子たちはお互い牽制しあって、同盟みたいなのを結んでいて」
「同盟……一緒になってお兄ちゃんを犯すつもり? いいえ、そうに違いないわ!」
「すまん、違った。同盟じゃなくって、えっと、見守っているだけだった」
「かっ、はっ…………お兄ちゃんと同じ学校にいるだけじゃ足りず、ずっと見つめているですってぇ!」
 そんな強引な解釈の仕方、アリか?
 今となっては妹に何を言ってもネガティブな意味合いでしか受け取ってくれない気がする。
 嫉妬深い性格をしているとは知っていたが、これほど性質が悪いものとは思わなかった。
 何も言えん。言ったら言った分だけ妹の怒りが根強く浸透していってしまう。
「お兄ちゃんもお兄ちゃんよ! 他の女に隙を見せるなんて、どういうつもりなの!?
 私がお兄ちゃんのそばにいないからって、浮気していいってわけじゃないのに!」
 今気づいたが、俺の台詞ってさりげなく弟を追い詰めてなかったか?
 もちろん追い詰めるつもりなんかさらさら無かったけど。
 フォロー……してももう遅いな。さらに怒りを深刻化させる危険もある。
 すまん、弟よ。藪をつついて蛇を出してしまった。
 俺はこれ以上刺激しないよう逃げる。お前はなんとかして大蛇の怒りを鎮めてくれ。

 妹から離れるべく、右足を引く。回れ右をするためには右足を引かねばならないから。
 だが、今の妹にとってはわずかな動きさえ気に障ってしまうようだ。
 マイシスターが一歩踏み出す。距離を詰める。続けてブラザーである俺に対して詰問する。
「どこに行くつもりなの?」
 目的地なんかない。お前の前から姿を眩ましたかっただけだ。
「いやなに、ちょっと忘れ物をしたから、教室に。ああ、弟のことなら心配するな。
 放っといたら家に帰ってくる。説教するんなら帰ってからでもいいだろ」
「いいえ。もうお兄ちゃんは信じられないわ。今日は意地でも探し出して連れ帰る。
 もしかしたらこれから女の家に行くかもしれない」
「そうか。まあ、そういうことなら止めやしない。あんまり遅くならないうちに帰るんだぞ」
 兄貴っぽい台詞を言い残し、回れ右の動作を続行する。
 体が後ろを向いたところで、妹に動作の完了していない左腕を捕まれて引き戻された。
「……どうか、したのか?」
「協力して。お兄ちゃんを捜すの」
 妹に頼まれごとをされるなんていつ以来だろう。ひょっとしたら初めてのことかも知れない。
 本来なら諸手を挙げて喜んでいるところだが、弟を捜すことに協力するのとは別の問題だ。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/18(火) 06:56:23 ID:L0TLbg72<> 「悪いが、協力することはできない」
「どうして?」
「さっきも言っただろ。忘れ物を取りに教室に行くんだよ。」
「――嘘ね。あの女のところに行くんでしょう、お兄さん」
 ん? 誰のことを言っているんだ? あの女?
 妹が知っている俺の知り合いなんていたか? 今のところ――ひとり、該当しているな。
 忘れるはずもない。なにせ、妹は一回彼女に豪快に投げられたのだから。
「葉月さんのことか? 前にうちに来た」
「そんな名前だったんだ。印象の薄い名字だから覚えるのも一苦労ね」
 葉月って結構いい名字だと思うけどな。響きがいい。
 うちの家族総員の名前にくっついている名字みたいに没個性的ではないぞ。

「あの女に会うのは後回しにして。先にお兄ちゃんを捜すの、手伝って」
「お前、やけに葉月さんには辛辣な態度をとるな」
 俺に対しても辛辣だが。けれど、葉月さんに対してはとりつく島もない。
「当然。あの女、私を思いっきり放り投げたんだから。あれ、下手したら死んでたわよ」
「それについては否定しないが。だからって……」
「私、あの女嫌い」
 にべもない返事だった。俺に対してさえ、嫌いと言ったことはないのに。
 妹は俺を嫌っているだろう。少なくとも、好きよりは嫌いの方に気持ちが偏っているはず。
 嫌われるような真似をした覚えはない。
 だが、俺は昔の出来事の記憶をなくしているらしい。弟の態度から察するとそういうことになる。
 過去の出来事が原因で妹は俺を嫌っているのか、それとも俺の性格容姿その他諸々が気に入らないのか。
 俺にはわからない。聞くこともできない。何を言われるか怖くて、聞くことができないんだ。

 妹は自分の感情を口から吐き出す。まるで対象への嫌悪を再確認するかのように。
「嫌い。私がどれだけ、お兄ちゃんへの想いに苦しんでいるかも知らず、あんなことを言うなんて。大っ嫌い」
 あんなこと。「兄妹は絶対に結ばれない」という葉月さんの台詞か。
「お兄ちゃんのこと諦めようと思って、けど、顔を見ていると気持ちが膨らんで、その繰り返し。
 あの女もだけど、きっとお兄さんにもわからない。上手くいかないってわかっているのに、それでも挑まなきゃ
 ならない人間の気持ちなんかわからないでしょ。わかってくれなくていいよ。私、優しさなんて要らないから。
 お兄ちゃんだけが優しくしてくれたらいい。昔から、私を守ってくれたのはお兄ちゃんだけだったもの」
 また昔話か? なんで弟妹揃ってもやもやさせるんだ。
 全四巻の漫画のうち三巻だけが抜け落ちてるみたいな気分だ。
 俺は、欠けた道を突き進んで、今の場所に辿りついたのか? 本当に通っていないのか?
 いいや。何かの事件があったはずだ。俺ら三人兄妹全員に関わる――暴力的な事件が。

「でも――お兄さん」
 妹が俺の顔を見上げた。何事かを思い出したような様子だ。
「あの女から、お兄さんは私を守ってくれたよね?」
「あ、ああ……」
「どうしてあんなことしたの? どうして、何度投げられても立ち上がって、かばってくれたの?」
 理由なんかなかった。弟と妹を庇わないと、葉月さんを止めないと、という気持ちだけだった。
「長男が弟妹を庇ったらおかしいか? 理由なんかねえよ」
「だって、おかしい。お兄さんが私を庇うなんて、そんなの……」
 妹はそこで言葉を切った。俯いて、黙考している。俺は続きの言葉を待つ。
 やがて、顔を上げた。続きの言葉を口にする。
「お兄さんは昔、私を………………いじめていたのに」
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/18(火) 06:58:31 ID:L0TLbg72<>  妹の小さな声が、氷の固まりになって胃を満たした。
 いじめていた。俺が、妹を傷つけていた。
 「妹をいじめないで」。葉月さんに向けて弟が言った台詞だ。
 思い出すだけで恐怖が沸いてくる。いじめていたのなら、どうして俺が戦く?
 黒いもやが脳に入り込む。明かりのない校舎の空間全体が俺の敵になっている。
 逃げられない。どこに逃げても、俺は捉えられてしまう。
 それに、さっきから、胃が苦しい。破裂しそう。膨らんでいる。内側から貫かれている。
「記憶はおぼろげだからわからないけど、でもたぶんあれは――あ、れ? お兄さん?」
 足が自分のものではないみたいに無様に揺れる。膝が折れる。足首が曲がる。
 目の前には、暗い階段の列がずらりと続いていた。俺を階下へと導いている。
 抵抗する術をなくした俺は、そのまま暗い空間へと身を投げた。

「――――だめ!」
 がくり、と首がうなだれた。そこで気づく。
 俺は踊り場から一階へ向けてダイビングを敢行していた。
 落ちていたら怪我は免れなかっただろう。骨折ぐらいしてもおかしくない段数だ。
 倒れる俺をその場に留めていたのは、葉月さんであった。
 振り袖と袴のコンビネーションが、いっそう魅力を引き立てている。
 ――髪の毛を結んでるリボン、解きたいなあ。
「ねえ! 大丈夫? どうして顔色が悪いのに笑っていられるの?」
 ああ、俺は笑っていたのか。きっと葉月さんのおかげだろう。
 葉月さんは綺麗で、清楚で、まっすぐだ。なのに、俺なんかを好きでいてくれる。
 ちゃんと応えないといけない。

「大丈夫だよ。ちょっと目眩がしただけだからさ」
「そう、なんだ。よかった、話し声を聞いて駆け出さなかったら間に合ってなかったよ」
「ごめん。あと、ありがと。助けてくれて」
「ううん、いいの。当たり前のことだもの。でも、なんで……、ん?」
 葉月さんの視線が俺の顔から、俺の背後へと進路変更。即座に無表情になる。
「妹さん?」
「……どうも」
 妹はぞんざいな返事をする。葉月さんは失礼な態度を気にした様子はなかった。
 だが、妹の顔を見続けているうちに怒りの表情を浮かべた。なぜ。
「あなた、お兄さんに何を言ったの?」
「別に。普段通りの会話よ。家族同士の会話なんだから――部外者は引っ込んでて」
 失礼な態度なんて段階じゃない。あからさまに敵意を放っている。挑発している。
「ぶっ、部外者ですって?! 私は、彼の!」
「……何?」
「か、彼の…………クラスメイトよ。まだ」
「ふうん。まだ、彼女じゃないんだ。人の家で大胆なことはできるくせに、お兄さんには弱いのね」
「なっ……こ、このこ、この小娘…………」
「お兄さん、小娘って言われちゃった。どうしよう?」
 どうしようじゃねえだろ。自分で種を蒔いておいて人を巻き込むな。
 妹の態度にデレ成分を見つけようと思ってはいたさ。だが、俺はデレの演技が見たいわけじゃないんだ。
 ホッチキスの針が切れていて困っているとき、黙って針を取り替えてくれるようなさりげないのがいいんだ。
 いや、そりゃまあ、バレバレな演技も満更ではないけどね。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/18(火) 06:59:49 ID:L0TLbg72<>  妹の台詞を反芻する。頼られるのも悪くないな、うむ。
 今の気分を噛みしめていると、二時の方向にいる葉月さんの方面からうなり声が聞こえた。
 葉月さんが、なんと――頬を膨らまして俺を見つめていた。なんだ、このデレ合戦。
「どうしてそんな優しい顔してるのよぅ……」
 葉月さんがくしゃくしゃに顔を歪ませる。携帯電話のカメラ機能ってこういうときすぐ使えたら便利だよな。
 プリントアウトして額に飾って目覚まし時計のそばに置いておきたい。毎日頑張れること、必至。
 ――さて、不埒な思考はここらで止めておくとしようか。

「ごめんごめん。いいことがあったから、ついね」
「……ふんだ。やっぱり妹さんがいいのね。だからいつまで経っても、してくれないんだ」
「それは……また別の話だよ」
 妹に対して甘いのは認めよう。だけど、葉月さんに告白できないのは、別の理由があるからだ。
 自分の気持ちに自信がないから告白できない、なんてのは告白じゃないもんな。
 葉月さんが言っているのは、恋愛感情を伝える目的でされる告白のことだ。
「謝ってばかりだけど、ごめん。もうちょっとだけ、待ってて」
「…………わかった。でも、ちゃんと白黒はっきりさせてよね」
 返事と、心に誓いを立てる目的を兼ねて、首肯する。
 ふと葉月さんと目が合ったので、見つめ合う。しばらくして、妹の声が脇から割り込んできた。
「ふん……とっとと付き合えばいいのに。バカみたい」

 放課後に着物姿でいる理由を葉月さんに問いただしたら、要領を得ない答えが返ってきた。
 葉月さんは体育館に設置してあるシャワールームで汗を流してきたという。
 それはいい。秋とはいえ動き回れば汗もかく。
 理解しがたかったのは、なぜ着物を着直したのかという点だ。
 今日は喫茶店の営業は終了した。ウェイトレスもお休みの時間である。
 問い詰めているうちに、とうとうしどろもどろになってしまったので、追求をやめる。
 俺に見せるために着直した、とかだったらとても嬉しい。もはや真相を知ることはできないが。

 別の話題として、弟が行方不明になっているという話をしたら、気になることを言われた。
「さっき、って言っても三十分前だけど。変な格好の人がいたよ。
 ちらっとしか見なかったんだけど、二人連れ。一人は頭にかぶり物してて。あ、かぶってるのは二人ともだった。
 えーっとね……一人は、アニメに出てきそうな格好だった。もう一人は僧侶か忍者みたいだった。それがどうかしたの?」
 確定した。葉月さんが目にしたのは間違いなく弟だ。
 喫茶店が終了してから特撮ヒーロー気分を味わおうとでもしたのだろう。
 自分一人では浮いているから、友人をもう一人連れて。

 一年の教室は一階にある。二年の全クラスが並んでいるのは二階。
 二階から校舎の外にある体育館へ向かう際、一年の教室前は通らない。
 つまり、弟はあの格好で校舎の外に出たということになる。
 仮面というのは恐ろしい。普段大胆なことができそうにない人さえはっちゃけさせてしまう。
 弟は人気者だが、派手なことをして目立とうとするタイプではない。
 フラストレーションが溜まっていたんだろうな。作ってやって良かった、コスプレ衣装。
 葉月さんの目撃情報から時間が経っているが、校舎内に弟がいる可能性は低い。
 立ち話していた踊り場から一階へ下り、一路体育館へ向かう。
 妹と話し込んでいる時間は結構長かったらしい。時刻は五時二十分になっていた。
 暗くなっても見えないことはないが、全身ほぼ黒の衣装を纏った弟は発見しにくい。
 校舎へ引き返し、一階の全教室を見回し、二階へと向かう。
 階段を上りきったときに廊下でばったり遭遇したのが、気絶して哀愁漂う姿になった即席ヒーローの弟と、
弟の脇の下に腕を回しずりずりと引きずっていく女忍者だったのである。

 時間軸はここで巻き戻る。ここからは、如何にして事態を収拾すべきかが肝要である。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/18(火) 07:01:04 ID:L0TLbg72<> *****

 校舎に染みこんだ夕方の冷たい空気の中、妹が表情を暗くして、喉から声を絞り出す。
「あいつ、あの黒ずくめ……許さない。よくも、お兄ちゃんを……」
「え、あれって弟くん? 仮面被ってるからわかんなかったよ」
 無理もない。弟のクラスで出し物の準備をしていなかったら俺だってわからなかった。
 しかし、こんなときに不謹慎かもしれないが、遠目に見ると弟の着ているボディスーツとマスク、良い出来だ。
 若干暗闇補正がかかって、黒が映えて見える。空間に同化することなく存在を主張している。
 動きを犠牲にした設計により、ボディスーツは弟の体型をぴったり包んでいる。
 マスクは竹籤を編んで、その上から紙粘土で覆い、プラスチックを流し込んだうえで黒の塗装を施した。
 プロテクターとブーツは自宅にあった玩具に少々手を加えて加工したから、それっぽく見えている。
 正直、今日一日しか見られないのが惜しい。来年も弟のクラスがコスプレ喫茶を開いてくれると嬉しい。

 女忍者は佇んだまま、一向に動く気配を見せない。
 忍装束は職業柄、闇に紛れて行動することに適して作られている。
 それに準じ、目前のくノ一の衣装も濃紺に染まっている。胴体は見えるが、手先足先は確認しづらい。
 何を待っているのだ、この女忍者――いや、この子、というべきだな。俺は彼女の正体を知っているから。
 
 気絶している方の覆面が弟だと知った妹が、その場から動いた。
「お兄ちゃん!」
 叫び、見知らぬ人間の手から兄を救うべく、標的のもとへ向けて駆け出す。
 しかし、妹の手が弟を掴むことはなかった。葉月さんが妹の腕を握ってその場に留めていた。
「離しなさいよ!」
「それはできないわ。みすみす見殺しにするわけにはいかない」
「あんたは関係ないでしょ! ほっといて!」
 やはり妹は冷静さを欠いてしまっている。
 以前葉月さんを相手に同じように突っ込み、投げ捨てられた結果から何も学んでいないらしい。
「関係なくなんか、ないわ。あなたはいずれ私の義妹になる人なんだから」
「……はぁぁっ?! あんたもしかして、まだお兄ちゃんのこと!」
「お兄ちゃんの方じゃないわ。私が言っているのは、あなたのお兄さんの方よ。
 というわけで、ここは私に任せておきなさい。荒事なら、我が家では日常茶飯事だから、慣れっこよ」
「え、でも……あんた」
「気にする必要なんかないわ。戦う女がいたって、別にかまわないでしょう?」
 ね? と言いながら葉月さんが俺を見た。
 ――いかん、惚れてしまいそうだ。格好良すぎ。
 もしも俺が女だったとしても、今の葉月さんには一目惚れしたに違いない。
 
 葉月さんが一歩、二歩、三歩、と前進した。
 俺も、邪魔にならず、いざというとき手助けできそうな位置へ移動する。葉月さんの左斜め後ろだ。
 左手を腰に当て、葉月さんが口を開く。女忍者は動かない。
「何から言ったらいいのかしらね……。とりあえず、こんばんは。私は葉月。あなた、名前は?」
 視線を葉月さんからくノ一へ向ける。やはり動かない。
「答えるわけがないか。なら、態度で示してくれる? そこにいる、さっきまで引きずっていた男の子。
 彼は私たちにとって大事な人なのよ。後ろにいる二人は彼の兄妹。私にとっては弟分なの。
 あなたにもここまでする理由があるんだろうけど、この場は一旦引いてくれないかしら?」
 ようやく、影同然の存在が動きを見せた。
 スタンスを広げる。上体が床と平行になる。両手がだらりとぶらさがる。
 ゆらゆらと体を揺らし始める。引く気配など一切感じ取れない。
「……そう。思ったとおりの反応ね。強引な手を使ってでも、彼が欲しいのね。
 なら、教えてあげましょうか。意地を通したいなら、実力よりも――強固な意志を持たねばならないということを」
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/18(火) 07:03:20 ID:L0TLbg72<>  骨の鳴る軽い音がした。葉月さんの拳が握りしめられ、開かれる。
 左足を半歩前へ踏み出す。左手が腿の上で、右手が胸の前で止まる。
 武道の構えは剣道と空手と柔道ぐらいしか見たことがないけど、いずれとも似ていない構えだ。
 これが葉月さんの身につけた武道の構え。落ち着いていて、構えっぽく見えない。
 対面するくノ一が揺れる。両手と胴体を不規則に揺らしつつも、葉月さんから目を逸らさない。
 止まる葉月さん。揺れるくノ一。見守る俺と妹。気絶したままの弟。

 誰もが足を止まらせる中、最初に動いたのは葉月さんだった。
 力の溜めもなく蹴る音もなく、前進する。一足飛びで瞬時に相手との距離を詰める。あと一メートル。
 葉月さんは次の一歩を踏み出――すことなく、窓際へ向けて跳んだ。
 かろうじて見えた。葉月さんが踏み出したその瞬間、『何か』をくノ一が投げた。腕が素早く一閃していた。
 『何か』は二人の距離を結び、廊下の向こう側へ消えた。
 軽い音が聞こえた。まるで、ボールペンと教室の床が衝突した音のようだった。
 何を投げた? ナイフ――にしては音が軽すぎた。金属音なんかしていない。
「あなた、飛び道具なんか使うのね。いえ……あれは飛び道具とは言えない。本来、武器として使うものでもない」
 え、葉月さんには見えていたのか? 見えたから避けられたんだろうけど、この暗さ、あの刹那で確認したのか?
 でたらめだ。葉月さんも、弟の同級生の――あの子も。

 葉月さんが再度構えをとる。またもや前進。呼応して、くノ一が『何か』を投げる。
 だが、さっきの動きで距離を詰めていた葉月さんには通用しない。
 やすやすとステップで回避し、接近戦に持ち込む。
 くノ一の頭が揺れる。胴に打ち込まれる。足が吹き飛ぶ。……何をやっているかわからない。
 葉月さんの動きが速すぎて見えないのだ。猛ラッシュだった、としか言い表せない。
 ともあれ、連続で打たれたことにより女忍者は後ろへ下がり、床に尻をついた。勝負ありだ。
「葉月さん、もうこれで終わり……ん?」
 構えを解かないまま、葉月さんはくノ一を見下ろしていた。警戒しているのか? 
「葉月さん?」
「静かにして。今、こいつは――」
 くノ一が後ろに跳んだせいで、言葉が遮られた。
 着地の音。続けて襲ってくるのは――殺意混じりの視線だった。

「だめ、逃げてっ!」
 声がスイッチになってくれた。脳が危険を感知する。
 もっとも速い動作として、足の力をまるごと抜いた。尻と床が激突する。
 背後から破砕音。振りむくと、後ろにあったA組の窓ガラスが割れているのが目に入った。
 床にはガラスの残骸と、ボールペンが一本、転がっていた。
 ということは、さっき葉月さんを襲ったものも、俺に向けて飛来したものも、ボールペンだったのか?
 ――いや、甘く見たら駄目だ。
 ボールペンの先で床を打ち付けても、ペン先は潰れない。
 比較的重いボールペンを全力で投げれば、今やったように窓ガラスだって壊せる。
 人間の目に向けて飛んできて、失明せずに済むなんて保証できるか?
 ペンを投擲したのは、当然、女忍者だった。俺の方を向き、右腕を振り切っている。
 このくノ一――この女の子、俺が失明するかもしれないとわかっていて、こんなことをしたのか。
 弟を想っている女の子の中に、ここまで危険な人間が混じっていたなんて。
 妹とこの子。現時点ではこの子の方がずっと危ないじゃないか!
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/18(火) 07:05:21 ID:L0TLbg72<>  どうする。俺にはこの子の狂気に立ち向かう術がない。一体どうすればいい?
「あ………………」
 己の無力さに歯がみしたとき、つぶやき声を耳にした。
 こんな掠れた声は、俺でも妹でも葉月さんでも持っていないはず。
 でも、弟はまだ床に倒れたままだ。じゃあ、今のは誰の声だ?
「ああ、ぁああああああああああああ、おぁああああああああああっ!」
 雄叫びが木霊した。肌が粟立つ。今の声、聞いたことがある。この声は――葉月さんだ。

「お前っ! お前っ! お前っ! お前っ! お前っ! お前っ! お前っ! おまえはあぁぁっ!」
 鈍い音が聞こえ、間髪入れず黒い影がA組のドアに激突した。
 衝撃で、割れた窓に残っていたガラスの破片が落下した。
 くノ一が床に倒れる。激しく咳き込み、酸素を求めている。
 葉月さんの腕が黒い影に向けて伸びた。頭を掴み、床に叩きつける。がつん、がづん、ごづん。
「よくも! こんな、こんな真似をっ! 壊してやる砕いてやる潰してやる、ねじ切ってやるっ!」
 黒い固まりが空を舞う。いつぞや俺も味わった空中回転木馬だ。
 だが俺のときと比べたら――慈悲なんか欠片も感じられない。
 両手で首を掴み、対象を窓や壁や天井にぶつけながら大きく回転する。
 何回、何十回と回転してから壁に放り投げ、叩きつける。
 一度止まってもなお収まらない。このままだと、相手の命を奪うまで止まらないかも知れない。
「だめだ……止まってくれ、葉月さん!」
 回転する嵐の中心へ向けて突っ込む。
 目前を黒い塊が通過する。通り過ぎてから、もう一度挑む。
 とにかく早く止めなければいけなかった。葉月さんを着地点にするつもりで飛びかかる。
 背中から抱きつき、回転の勢いを殺すためシューズでブレーキをかける。
 回転が収まっても、葉月さんは女忍者の首を離さなかった。
 両手の指が強く食い込んでいる。これは――窒息させるつもりだ!
「駄目だ! やめてくれ! 俺なら大丈夫だから!」
「こんな奴がいるから! 私はずっと待たなきゃいけない! びくびくしなきゃいけない!
 なんでここまでおびえなきゃいけないのよ! ただ、願いを叶えたいだけなのにっ!」
「おい、見てないで手伝え! 妹!」
 呆然としていた妹を呼んで、くノ一の首を自由にする。
 自由になった途端、くノ一はあれほど振り回されたダメージを感じさせることなく、立ち去ってしまった。
 一度も振り向かず、どうして弟をさらおうとしたのかも弁解しないままに。

 くノ一が立ち去ってからも、まだ葉月さんの慟哭は続いていた。
「いやだ、やだ、嫌だ! 消えないで! なんでもするから、ずっと守ってあげるから!
 わがままなことはもう言わない! 家に籠もってずっと待っててなんて馬鹿なこと口にしない!
 消えないで……もう、やだよお……う、ぅあ、うぁぁあああああああああああぁん……」
 葉月さんが一体何をここまで恐れているのか、俺にはわからなかった。
 俺が傷つけられそうになったことが、葉月さんのスイッチを入れてしまったのは間違いない。
 消えないで。葉月さんの切実な願い。誰かに消えて欲しくないと望んでいる。
 その誰かは――俺だったりするのだろうか。それとも、俺が知らない他の誰かなんだろうか。
 俺には知らないことが多すぎる。忘れていることも多すぎる。
 でも、今は全てを後回しにする。
 今は、葉月さんの涙を胸で受け止めていればいい。

 粉々に破壊された窓から吹き込んでくる風は、一足早い冬の匂いを一年ぶりに俺の肌に思い出させてくれた。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/18(火) 07:08:02 ID:L0TLbg72<> *****

 文化祭二日目の日曜日、アタシは昨日と同じように学校に登校した。
 昨晩受けた傷は、奇跡的に打撲とかすり傷のみだった。顔に傷はないから、皆に心配されることはない。
 あれだけ振り回されたのに軽傷で済んだのは、彼の先輩が割り込んでくれたからだろう。
 あと三回、いや二回床に叩きつけられていたら、今頃アタシは病院のベッドの上にいるはずだ。
 計何回、床とコンバンハしただろう? ……数えるのも嫌になる。
 あれだけやられてこの程度で済んだ私も頑丈だけど。
 あの女――先輩は葉月さん、とか言っていたっけ。クラスの皆も噂している、評判の女性だ。
 先輩の彼女なのかな? 先輩には悪いけど、容姿は釣り合っていない。でも性格は凶暴だから、トントンかも。

 先輩を狙ったのは、葉月さんの動揺を誘うためだった。
 先輩を怪我させて、一瞬の隙を逃さずに行動不能にする。
 もう一人の女の子は軽く脅しておけば傷つけずに済んだはず。
 でも、誤算があった。葉月さんはあまりにも強すぎた。
 いきなり突っ込んでこられて、次の瞬間には体当たりでドアまではじき飛ばされていた。
 頭を床に打ち付けられて、その後で首を大根でも引き抜くみたいに捕まれて、ブン回された。
 葉月さんのスイッチは、どうやら先輩みたい。
 先輩を傷つけるのは止めた方が賢明だね。

 筋肉痛で痛む足を引きずって階段を上り、屋上の扉を開ける。
 早朝からアタシの靴箱に手紙を入れて呼び出した人物は――だいたい予想通りの人物だった。
「や。おはよう。体の方は大丈夫?」
「おはようございます、先輩。アタシの体はいつだってどんな状況でも準備オーケーですよ」
 先輩がどんな意味で体調を気にかけてきたのかは知ってる。でもあえてとぼけた振りをする。
「何か用事でもあるんですか? 先輩」
 そしてアタシも、呼び出された理由をわかっているのに気づいていない振りをする。
「あ、もしかして先輩……アタシのこと」
「うん。俺にそういうつもりはないし、今日呼び出した用件も全然違うから」
「これから自分の立場を利用して、強引にしようだなんて……」
「悪いけど俺は他に好きな人が……いるから。君に何もするつもりはないよ。今日は君に」
「なるほど、つまり遊びの関係を結ぼうっていうんですね? うーん……いいですよ。
 先輩は彼のお兄さんですから、遊んであげます」
「今日は君に、だ、な……」
「うふふ。この間みたいに、保健室でふたりきりになって、熱い言葉をぶつけあいましょうか?
 ア・タ・シは……体の方でも、いいですよ?」
「……き、昨日のことを言おうと思って、だな……」
 あははっ。照れてる照れてる。もう少し遊んであげよう。

 先輩の体の正面に立つ。身長差があるから、アタシは自然に見上げる格好をとることになる。
 男の人は上目遣いが好きだっていうのは、反応を見ていればわかるんですよ。
「せっかちですね、先輩は。ここ、屋上ですよ? でも、誰も見ていないから好都合ですね」
「ま、待ってくれ! 俺の話を聞いてくれ!」
「もう遅いですよ。アタシの右手も左手も、先輩が欲しい先輩が欲しいって言って、聞かないんですから。
 ねえ、せんぱぁい……とっても早くイカせてくれる右手と、たっぷり楽しませてくれる左手、どっちが好きですか?」
「そうだな、できれば左、いや最初は右も……じゃないって! だから、俺は!」
「あはっ。じゃあ、両手でしてあげますよ。動かないでくださいね。動いたら――――怪我じゃ済まないですよ」
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/18(火) 07:10:05 ID:L0TLbg72<>  両の手首をひねって制服の袖から得物を取り出す。
 右手を先輩のこめかみに、少し遅れて左手を首の付け根に当てる。
 この動き、距離を詰めてさえいれば早ければ秒以下の速さで実行できる。
 もっとも、あんまり役に立ったことがないんだけど。
「……やっぱり、君だったか」
 両手に持ったペン先を先輩の皮膚に軽く当てる。
 心配そうな顔をしなくても。当ててるだけじゃ皮膚は破けませんよ、先輩?
「はい。いつから気づいてました?」
「あの忍装束だよ。あれを着ているのは君だけだ。君と弟のクラスの衣装づくりを手伝った俺にはわかるんだよ。
 木之内……名前はすみこ、だっけ?」
「違います。ちょうこです。木之内澄子、それがアタシのフルネームです」
 初対面の人間は九十九パーセント間違うのよね。ちなみに一パーセントの例外は彼。

「木之内さん、そろそろ手をどけてくれない? 痛くないけどどうしてもむずがゆくなるんだよ」
「澄子ちゃん」
「え?」
「澄子ちゃんって呼んでくれたら解放してあげます」
「……どうしても言わなきゃだめ?」
「はい。言わないとアタシのペンが先輩の顔中を駆け回って面白落書きをしちゃいます。
 安心してください。額には肉じゃなくてHって書いてあげますから」
「わかったよ。その手をどけてくれないかな、澄子ちゃん?」
「はい、よろしい」
 役に立たない特技も脅しには使えるね。
 今度、彼にもやってみよう。彼には澄子ちゃんって呼ばせているから、次は呼び捨てにしてもらおうかな。

 先輩から離れて、ボールペンを袖口に戻す。
 先輩は大仰な動きで飛び退いた。これで、アタシと先輩の距離は一メートル以上空いた。
 アタシは半径五メートル以内なら十中八九ペンを命中させられるから、離れても無意味ですよ。
「それで、先輩。アタシを屋上に呼び出したからには、何か理由があるんじゃないですか?」
「まあね。単刀直入に言うよ」
「俺が作ったメイド服を着て、毎朝行ってらっしゃいと言ってくれ?」
「違う! 俺の理想のプロポーズは、君は俺の部屋に勝手に入らない、けど俺だけは君の心の部屋に勝手に入れさせてくれ、
 ……って、何を言わせるんだ!」
「うわあ……先輩、とっても寒いですよ。その台詞」
「わかってる! 適当に言っただけだよ!」
 先輩が咳払いする。まじめな表情で口を開く。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/18(火) 07:13:12 ID:L0TLbg72<> 「弟のことだ。木之――澄子ちゃんが弟に恋してることに関しては何も言わない。むしろ俺は推奨する」
「はい」
「だけど、昨日みたいに薬で無理矢理眠らせて連れ去ったりするのは、やめてくれ」
「無理ですよ」
「普通に告白してくれればいいんだ。そうすれば弟だってきっと――」

 先輩は言葉を止めた。止めざるを得なかっただろう。 
 アタシの投げた二本のボールペンが、左右の頸動脈を掠めていったから。
「先輩は知らないから、言えるんですよ。弟さんの心がとっくにある女に捕らわれているということに、気づいていましたか?」
「弟の……好きな女の子?」
「はい。アタシは弟さんの傍でずっと見ていたから知っています。どうしようもないほど、強く心を惹かれていますよ。
 アタシが弟さんを想うぐらい――に強いかは知りませんけど」
「そうだったのか……」
 本気で意外そうな反応だった。
 兄弟であまりそういう話はしていないのだろうか。
「先輩だったら、どうします。自分の好きな女性が、自分以外の男を好きになっていたら」
「それは……俺の場合は……」
「今の先輩にはわかりませんよ。あそこまで強く想ってくれる女性がいたら、不安になることなんか無いでしょう?」
「そうでもないよ。こう見えて、わけのわからない理由で悩まされているんだ」
「ふうん……ま、いいですけど。アタシの場合は、絶対に諦めませんよ。
 弟さんがいたから、アタシは今のアタシになれた。助けてくれたんですよ。とっても寒い、一人きりの世界から。
 アタシは弟さん以外の男に幸せにしてほしくない、っていうか、絶対にできませんね。こっちから拒否しますし。
 だからですね、先輩」

 そこまで言って後ろを向く。屋上の出入り口まで歩いてから、振り返る。
 他人に向けて初めて、決意を告げる。
 退路を完全に断って、自分を追い詰めなければ、彼を手に入れることはできない。

「アタシは彼の全てを、根こそぎ奪ってみせます」

----- 

投下終了です。次回は文化祭二日目です。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/18(火) 07:19:37 ID:VMVxc6n5<> 朝からGJであります。
女性陣が強くて男どもが霞むぜww <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/18(火) 07:23:07 ID:WvYrEz1M<> >>229
GJ!
葉月かわいいよ葉月。
そしてあんな態度とられても妹想いの兄カッコヨス <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/18(火) 08:15:48 ID:i7SAf7jT<> 兄の過去に謎深まる

それより兄は微妙にシスコン入ってるなw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/18(火) 12:25:51 ID:B95C69eM<> 真の傍観者は高橋じゃないかw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/18(火) 15:10:41 ID:hnH+JehT<> グッジョブ
弟の好きな人は誰だろね <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/18(火) 15:19:57 ID:/2A4+1OU<> 実はあの夢オチになっちゃったシチュが一番好きだったりする
耐えるヤンデレってのもいい <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/18(火) 16:41:41 ID:UaWf9GoQ<> 真の傍観者は高橋でも、ひょっとしたら兄でもないかもしれないんだぜ。今は傍観してないあの人かもしれない。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/18(火) 18:29:43 ID:B95C69eM<> 兄のピンチに颯爽と登場する高橋を妄想してしまった… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/18(火) 19:32:17 ID:s8lqcnyL<> 葉月も謎のトラウマ持ってるみたいだな。
その内容いかんによっては、兄に対する恋愛感情も本物ではなく、かつて失ったモノへの代替品とかだったら…
兄が可哀想すぎるな。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/18(火) 20:43:08 ID:Zbf4BE+q<> お兄さん、傍観者だからな
って言うか、本来そうあるべきなんだよな、タイトルから考えると <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/18(火) 21:28:46 ID:7sqkkkHV<> >>229
GJ!
兄が何と言おうと妹を応援する

>>239
誰の兄かまでは書いてないじゃないか <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/18(火) 21:35:19 ID:dJJjpd3p<> (´;ω;`)お兄ちゃんがかわいそうですって住人がいうから方針が変わったと記憶している
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/18(火) 21:45:28 ID:YPu4wtuc<> まぁ夢オチの話も住人のレスを再現された話だったしね

ここだけって話じゃないけど住人のレスで展開を変える職人さんって割と結構多いよ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/18(火) 23:43:00 ID:B95C69eM<> 後半は鬱展開の予感…
っていうかヤンデレなんだからそうかorz <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/18(火) 23:54:00 ID:WvYrEz1M<> てか最初の埋めネタの時は鬱どころか兄に死亡フラグ立ってたような。

当時は埋めネタだからかあまり注目されてなかったなあ…… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/19(水) 00:20:37 ID:pyN+pgWG<> そんな鬱々だったのか…
新参だから知らんかった… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/19(水) 00:53:14 ID:BUMjxNih<> >>229
GJ

ていうか
まぁ非常にどうでもいいんだが
ヤンデレおねぇちゃんとガチレンジャーパンツの続きって需要ある? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/19(水) 00:56:42 ID:c9PA0ANK<> >>244
夢オチ、しかも弟とのからみが唯一のエロパートという不思議な事実w <> リッサ
◆v0Z8Q0837k <>sage <>2007/12/19(水) 02:00:10 ID:lUt+bHho<> お話中ですがSS投下します、例によって変化球ですが色々頑張ってみたのでよろしければ是非ご一読ください。
 一応昭和特撮ネタ注意です。

  炸裂超人アルティメットマン 第一話 見よ!炸裂の巨大変身

 登場巨獣 超ゴム巨獣 マノーン
 
 「ああ、寒い寒い・・・ったく、この季節はやってられないなあ本当に」
 僕、東条 光一はそういって今の今まで寝ていたうすっぺらいせんべい布団を折りたたむと顔を洗い
三畳一間の部屋の隅に押し込められたちゃぶ台を引っ張り出して食事の用意を始めた。
 冬のこの季節、暖房もない中で朝早起きするのはとても辛い事だと思う、しかしこうしなければいけ
ないのも事実だ、などと冷蔵庫から取り出した納豆と、炊飯器から取り出した温かいご飯を食べながら思う。
 モルタル張りの三畳一間、狭くてぼろい上にアスベストも使っているようなアパートの中で僕が唯一安らげる
瞬間は食事時だけだった、だってまた今日もあの人たちがここに来るのだ…ほら、さんにい、いち…。
 「後五分で食事を終わらせてください、それからすぐに現場に出発です!」 
 ばあん、と鍵がついているようでついている意味のないドアを開けて、今日もガスマスクを装着した男だか
女だかわからない彼ら…対超常現象特務機関…通称JCMの隊員が僕の元に仕事を持って押しかけてくるからだ。
 「はいはい、了解しました。それではまた七分後に…」 
 「今日もよろしくお願いします、それから窓の落書きの方ですが、今しがた何とかなりましたので」
 「それはどうもありがとうございました…それではまた」
 もう一度ばたん、と大きな音を立ててドアを閉め、隊員は去っていった…僕は急いでご飯を書き込んで食べると
歯を磨き、お茶を急いで飲んで、アパート近くの貸しガレージに向かった。その際に一度アパートの窓を確認する。
 「巨獣に暴力を振るう宇宙人はこの星から出て行け」
 そんな風にかかれた赤い文字は綺麗に消えていた、夜のうちに隊員さんが消してくれたのだろう、ありがたいことだ。
 でもどうせまた放っておけば同じように落書きは書かれる事になる、酷い日なら窓いっぱいに張り紙をされたり、石を
窓に投げつけられることもあるだろう。命がけで守ってあげた人々にそんな事をされるのは悲しい事だった、でもそんな
行為が日常的に行われている事がもっと悲しかった。
 宇宙の銀河のはるかかなたにあるアルティメット星、そこから送り込まれてきた父は裏次元より現れる地球の侵略生物
通称 巨獣と戦い…僕が中学生のときにその大元である裏次元総帥を倒して、たった一人、苦しみながら死んでいった。
 そして後釜である僕はその後すぐに巨獣の残党を狩るべく、二代目あるティメットマンに任命され…こうして日夜人々を
守るために、巨大ヒーローアルティメットマンとして戦っていた。 
 でも、その生活はあまりにも寂しいものだった

<> リッサ
◆v0Z8Q0837k <>sage <>2007/12/19(水) 02:02:09 ID:lUt+bHho<> 炸裂超人アルティメットマン 第一話 見よ!炸裂の巨大変身

 そんなことを考え始めても仕方ない、そう思い直していそいで貸しガレージに向かう、シャッターの
開けられたガレージ内部では僕の愛車…マイティワン号のエンジンが先ほどのガスマスクの隊員さんに
よって掛けられていた、僕は急いで運転席に乗り込む。
 「それではさっそくですが今日の任務を…今回の巨獣の発生場所は吊下市東部の山林で…」
 「はい、わかりました、それじゃあ…テイク!オフ!マイティーワン!!」
 ゴオオオオ!!凄まじい音と共にエンジン部が火を噴く、それと同時にマイティワン号は空中めがけて
飛び出し、内部に搭載された自動ナビゲーションシステムで一直線に巨獣の発生した場所まで飛んでいく…
見た目は古臭い白黒のダッジだが、空を平然と飛んだりするあたりなかなか侮れない、父から譲られた宇宙製の強力な僕の相棒だ。
  「後二十秒で現場に到着します、後は任せてください」
  「はい、言われなくても解っていますよ…アルティメットマン」
 隊員さんとはそれだけ会話をすると、僕はマイティイワン号のドアを開き、タイミングを計って空中からに地面めがけて一気に
飛び降りた。その目下には巨大な黒い烏賊に人間の足が生えたような生物…別名、巨獣が森林をなぎ倒しつつ、今か今かと僕の登場を待っていた。
 「チェーンジ!!アルティメーットオーン!!」
 僕は空中でポーズを決めながら変身の言葉を唱える、アルティメット星人特有の音声認識パスを認識した僕の体は一気に巨大化し。40メートル
の巨体、炸裂超人アルティメットマンへと変化した。
 「二ョー!!」
 「アーッ!!」
 僕は巨獣と正対してファイティングポーズを決めた、じりじりと間合いを詰める僕に対して巨獣はすばやく手の部分に当たる触手を伸ばす、鉄鞭の
ごとく迫るそれを僕は振り払うと一気に間合いをつめ、腰部分にタックルをかました。凄まじい音と共にもんどりうつ二人、しかし僕はすぐさま立ち
上がると巨獣の頭をヘッドロックして強力な拳骨で殴りつける、二ョー!!という絶叫を上げて巨獣は触手で僕の腕を叩くが、攻撃を繰り返すほど
その抵抗は弱まっていく、巨獣の頭部から血が噴出し、力がだいぶ落ちてきたころあいを見計らって僕は一気にヘッドロックをはずして腹部にストレート
パンチを決めると、両手をクロスさせて、必殺技であるアルティメットレーザーを放った。
 「アルティメーット!クロスファイアー!!!」
 「二ョー!!」
 アルティメットレーザーを真正面から食らった巨獣は、ボーン!!と凄まじい爆音を上げて吹き飛んだ、すかさず僕は両手から威力の低いアルティメット
ファイヤーを噴出してその肉片を焼き尽くす、こうして後片付けも終わり、僕の今日の仕事はひとまず終了となった。
 「お疲れ様でした、それではまた」
 人間の姿に戻ってしばらくたたずんでいると、マイティイワン号にのった隊員さんがやってきた、僕は彼を本部に送り届けるとガレージに戻り、そして
また呼び出しがあるまでひとまず休憩を取る事になる。
 一日に最低一回は異次元生物の巨獣と命のやり取りをする、それが僕、アルティメットマンの主な仕事だった。
<> リッサ
◆v0Z8Q0837k <>sage <>2007/12/19(水) 02:03:53 ID:lUt+bHho<> 炸裂超人アルティメットマン 第一話 見よ!炸裂の巨大変身

  マイティワン号をガレージに置くと、僕はその足で商店街へ夕食の買出しに走った。本当は
少ない給金を節約するためにスーパーで買い物をしたかったのだが、人が多いところに行けば畏敬
と恐怖の念をこめた人々の視線にさらされるのはどう考えても明らかだった。
 「はいよ、今日も巨獣をやっつけてくれたお礼だよ!」
 「すいませんね、いつもいつも…」
 それにスーパーに比べれば少し値段は張るが、商店街の八百屋のおじさん達は僕を恐れずに接して
くれるし、たまにおまけをつけてくれたりもする、数少ない優しい人たちだった。 
 「それじゃあな、また来いよ!!ヒーロー!!」
  そんな言葉をかけてもらい、商店街を後にして僕はアパートへと向かった、自分自身でこういうの
もなんだが、人にヒーローと呼ばれる事はとても嬉しい事だった。
  化け物、怪物…子供のころからそう呼ばれていじめられる事は当たり前だった、母さんもそれが嫌
で僕が小さい頃に家を出て行方知れずになった。
  暴力を振るう異星人は脅威に過ぎない、そういわれて日夜監視され、今まで家族二人で住んでいた
小さな家も、脅威に予算を使う事はないと言われて取り上げられた。
 気がつけばアパートと、怪獣退治と、商店街を往復して過ごす日々の繰り返しが…父さんの死んだ日からもう十年も続いていた。 
 …人には言えないけど、もうしんどかった、ボスが死んだというのに毎日最低一体は現れる巨獣に対して、365日も戦い続けなくて
はならないのは苦痛だった。
 せめて腹を割って放せる友人が欲しかった、信頼できる恋人が欲しかった…それでも、それはこんな生活を送る僕には到底かなわない夢だった。
 ふう…と小さくため息をつく、その表紙に買い物袋からオレンジが転げ落ちた、ころころ転がるそれは…一人の女性の足にぶつかって運動を止めた。
 「あ…あの、その…」
 「はい?……あらあら、これですか?」
 困った事に僕は女性と話すことに慣れていない、どうにも話をしようとすると緊張して言葉がどもってしまう…女性の手に握られたオレンジをひったくる
ようにとって、大きくお辞儀をして、できるだけ足早に通り過ぎようとした瞬間…。
 「いえいえ、こちらこそです」
 そういってお辞儀するその女性と目が会った…切れ長の瞳と長いお下げ、地味な服装と、それにマッチングするかのような優しく儚げな表情…一瞬で、彼女を
そこまで認識したくなるぐらいに彼女の事を…僕は好きになった。
 いうなれば一目ぼれという奴だろう、しかしその感情を抑えて、僕は急いでアパートに向かって走り出した。
 「あ…あ、ありがとうございましった!!」
 一応お礼を叫んでみるが、声がどもり、上手く発音が出来なくなる…最悪だ、きっと変な人だと思われるだろう・・・でも、でもそれは状況から言えば仕方の無い
事だった。それに優しそうな人でも、きっと僕の正体を知れば逃げ出すだろう…そんなことは今までにごまんとあった、女性なら余計にだ、だって僕は実の母さん
にも逃げられたんだから…だから良かったんだ、こうして上手く放せずにあそこで別れれば、きっと辛い思いをしなくてもすむんだから…。
 僕は必死にそう考えて、安住の地であるボロアパートに戻った、その目はうっすらと涙でぬれていた。
 
<> リッサ
◆v0Z8Q0837k <>sage <>2007/12/19(水) 02:05:53 ID:lUt+bHho<> 炸裂超人アルティメットマン 第一話 見よ!炸裂の巨大変身

 夕暮れ時、僕は台所に立って夕食を作っていた、今日のメニューは奮発して買った豚コマで作った生姜焼きだ
きっとコレを食べれば元気が出て、今日のことも…。
 どんどん!!と僕の思考をぶった切るようにドアがノックされた、一体こんな時間に誰だろうと僕は考える…
新聞の勧誘、なんてうちには来た事もないし、それに隊員さんだったらもっと一気にドアを開けるはずだ。
 「はーい」
 また変な団体の人とかだったら嫌だなあ…そう考えながらドアを開けた、その先には、昼間であった、あの可愛らしい
女性が笑顔で鍋を持ちながら立っていた。 
 「こんにちは、隣に引っ越してきた亜佐巳というものです、よろしければこれ、食べてください」
 「!!!へあ?あ。あの…あなたは…昼間の?」
 「ああ!あのときのお兄さんでしたか、奇遇ですね」
 言葉が出ない、そして気分が落ち着かない、そもそもなんでこんな安アパートにこんな人が引っ越してくるんだ?もう
わけがわからない?ああでもとりあえず、きちんと挨拶しなくちゃ…取りあえず混乱しながらも何とか声を出した。 
 「あ、は、はい…自分は、自分は東条というものです、こちらこそ何かあったときはよろしくお願いします…それからひ、昼
間はどうもありがとうございました」
 「いえいえ、ああそうそう、これ、特製の肉じゃがです、よかったら食べてください」
 「は…はい、どうもありがとうございます…」
 やっと上手く言えた、嬉しくて涙が出そうになる…ようやくその一言を話すと同時に僕は…ふと疑問に思ったことを聞いてみた。
 「で、でもなんでこんな所に引っ越してきたんですか…僕が、僕が怖くないんですか?」
 「いえ、全然。だって東条さんってヒーローなんでしょう?皆を守るために日夜戦ってるなんて凄いとは思うけど、怖いなんて
全然思えませんよぉ……あ、あれ?玉ねぎでも刻んでたんですか?ハンカチかしますか?」
 「い…いえ…お気になさらずに…ぐず…う、うわあああああああん!!」
 その一言に涙が出た、そういってくれる女性に会ったのは初めてだった…そして僕はそこで崩れ落ちて泣いた、彼女は終始心配そうに
僕を眺め、わざわざ自分の部屋からハンカチまでもって来てくれた…自分が凄くかっこ悪かったけど、それでもそばにいてくれる彼女に
何故か僕は、かすかにだが安息感を覚えた。
  …こうして僕と彼女、阿佐巳 巴は出会った、この出会いが運命だったのか、それとも必然だったのかは、いまだに解らない。
 
 第一話 END
<> リッサ
◆v0Z8Q0837k <>sage <>2007/12/19(水) 02:08:25 ID:lUt+bHho<>  炸裂超人アルティメットマン 第二話 気をつけろ!そのサンタは本物か?

登場巨獣 毒ガス巨獣ワッギア 変身巨獣ザヤッガー

 「デアアアー!!!」
 今日も今日とて僕は一人、アルティメットマンに変身して巨獣と戦っていた
今日の敵は大きな羽根を持った巨獣だ、羽にあいた無数の気孔から毒ガスを吹き
付けてくるが、空気より重い毒ガスは発射されれば下に流れてしまうのがオチだ
僕は出来るだけ距離をとると手を上空にかざした。
 「アルティメット!ジャベリンー!!」
 そう言うと同時に僕の武器であるジャベリンが手のひらの上に召喚された。僕は
それを力いっぱい巨獣めがけて投げつける、まともにそれを顔面に受けた巨獣は毒
ガスを噴出するのを止めて、血を撒き散らして暴れる。僕はお構いなしに跳躍、一気に
敵めがけてドロップキックをお見舞いした。 
「ウゴアアアー!!!」
 ジャベリンごと頭部を打ちぬかれた巨獣はようやく絶命したのか動きを止める、僕は
振り返るとその死骸をアルティメットファイヤーで焼き尽くした。
 今日もまた一日の仕事が終わる、でも今までの日とは…一日を生きる充実感というものが
ここ一週間で大きく変わっている気がした。

 「おかえりなさい!光一さん!」
 家に帰ってみると、そこにはエプロンをした巴ちゃんが昼食を作って待っていた。
 「いつも悪いね巴ちゃん、でも本当によかったのかい?」
 「構いませんよ、だって光一さんはさっきもあんなに怪獣退治を頑張ってたじゃない
ですか?そんな人のお昼を作ることなんて全然わるいことじゃあないですよ」
 「ははは…それじゃあありがたくいただくとするよ…」
 僕はそういって用意された食事を食べるべく、彼女からもらった座布団に座った、彼女が
引っ越してきてもう一週間になるが、ここまで彼女が僕に色々してくれるという事は、ある意味
妄想すら飛び越えていた。
 彼女の前で泣いてしまったあの日から、彼女は僕の世話を焼いてくれた、大変なら…朝ごはん
…作ってあげますよ…その一言がきっかけで、彼女はやたらと僕の周りの世話を焼いてくれる事になり…
気がつけば家事はおろか、朝も早くから朝飯の用意すらしてくれるという始末だった。
 そんな彼女には言い表せないくらい感謝していた、こうして彼女と話すようになってから、だいぶ女性と
話すときにどもる癖も治ってきたのが嬉しかった。
「でも毎日悪いねほんとに…その分今日の午後は暇だから、どこか買い物に連れて行ってあげるよ」
 「ええ!本当ですか?」
 「うん、で、でもあんまり高いものは勘弁してね」
 いつも彼女はご飯を作ってくれた分の代金を受け取らなかったので、お礼に何かを買ってあげよう、僕は
前々から計画していた事をようやく打ち明けた。嬉しそうな彼女の顔を見るだけで僕は本当に幸せな気分になれた。
<> リッサ
◆v0Z8Q0837k <>sage <>2007/12/19(水) 02:09:57 ID:lUt+bHho<>  炸裂超人アルティメットマン 第二話 気をつけろ!そのサンタは本物か?

 それから一時間後、変装した僕と巴ちゃんは大型ショッピングモールで買い物を楽しんだ
といっても予算の都合上あまり彼女が欲しがるものを買ってあげられなかったのが残念だった…
と言うか逆にセーターとコートを買ってもらってしまい、なんだか巴ちゃんに余計悪いような気がした。
 「気にしないでくださいよ、私のわがままですから」
 「ははは、どうもありがとう…」
 その後も色々な店を巡りながら、僕らはくだらない雑談を続けた。彼女は普段在宅でデザイナーの仕事を
しているらしく、自家にこもりがちだったため、環境を変えるために一人暮らしをしようとしてアパートに引っ越してきたと語った。 
 「私…昔から引きこもりがちだったから…憧れだったんです、世界を救う、子供達の誰もが一度はあこがれるヒーローに…」
 「…ごめんね、その憧れが…本当はこんなにかっこ悪くて、貧乏なオジサンでさ…」
 「そんな事有りませんよ!本当にかっこ悪い人間って…そんな風に身を粉にして人を助けたりしませんから!あんまりメソメソして
るとカビはえますよ!!そういうのはよくないです!!」
 「…うん、それもそうだね…よし!!もうめそめそなんかはしないぞ!!僕は!きっと巨獣を全滅させて見せる!!」
 「そうそう、そのイキですよ!!そうしてる方が凄くかっこいいです」
こうして彼女と話していると凄く自分が癒されていく事に気づいたのはいつからだろうか?…心のどこかではいまだに彼女を信用できない
までも、それでも、この幸せな時間が続いて欲しいと、彼女にそばにいて欲しいと願う自分の気持ちは…いままでの暗い日々とはまるで違う
光に満ちたものだった。
 「はいはい押さないでね!はい!メリークリスマス!!」
 そんなことを考えている目の前で、子供達にプレゼントを配って歩くサンタの衣装を着た老人が見えた、何かの宣伝か、それとも試供品の配布か?
プレゼントを配って歩くサンタの周りには子供達が集まっていた。
 「サンタさんかあ…ある意味この時期じゃあ僕なんかよりも…?」
 「…どうしたの?光一さん?」
 おかしい、何かがおかしい…直感的にそう感じた光一は、急いでサンタからプレゼントをもらった子供に近づくと、その手に握られたプレゼントを奪い取った。
 「うわあ!!何するのさ!お兄ちゃん!」
 「あ、アンタ!うちの子に何するのよ!!」
 ヒステリックに声を上げる母子の叫びを無視して光一はプレゼントを踏み潰す、グシャリと音を立ててつぶれる箱の中から這い出してきたのはミミズのような
生物だった。
 「貴様…コレは何だ!!何をたくらんでいる!!」

<> リッサ
◆v0Z8Q0837k <>sage <>2007/12/19(水) 02:11:55 ID:lUt+bHho<> 炸裂超人アルティメットマン 第二話 気をつけろ!そのサンタは本物か?

 老人に詰め寄る光一、老人はにやりと笑うとこう呟いた。
 「やれやれ…せっかくの作戦が台無しだなあ…失礼だと思いますよ、そういうのは」
 老人はそう言うと同時に服を脱ぎ捨てた、その下に隠れていたのは正方形に恐竜の手足が
生えたような姿…間違いない、こいつは巨獣、しかも上級タイプの知能の高い強敵クラスだ
ひい、というと同時に子供達はプレゼントを慌てて投げ捨てようとするが、箱から飛び出た触手が
絡んで手からはなれないらしく、子供達が次々に叫び声をあげた。
 「うわああ!嫌だああ!!」 
  子供達は次々に悲鳴を上げながらぎこちなく歩き出し、巨獣の前に一列に並ばされた。巨獣はにやつき
ながら手に持ったサーベルで子供を威嚇する…どうやらあのミミズ触手は触れた子供を操る力があるらしい。
 「さあ降伏しなさいアルティメットマン!いや東条光一、コレは脅しではありませんよ。もしも下手に動こう
とすればこの子達全員の舌を噛み切らせる事も可能なんですよ!!」
 「……わかった、降伏しよう…」
 「はははは!ちょろいものですね!さあそのまま一気に―」 
ごん!!という鈍い音と共に巨獣の頭部に鈍痛が走る、一瞬にして回り込んだ巴が手に取った鈍器で思いっきり巨獣を
殴りつけたのだ。
「今です!!」
「うおおおおおお!!!チェーンジ!!アルティメットマイティ!!」
 そう叫ぶと同時にマイティワン号がどこからともかく現れて巨獣を弾き飛ばした、轟音を上げて上空に舞い上がる
マイティワン号。頼もしい相棒である彼のことだ、きっと被害を少なくするために敵を山奥にまで運んでくれたのだろう。
 「ごめん巴ちゃん!この埋め合わせは必ずするから…」
 そう言うと同時に光一は変身、一気に空に向かって飛び立った。
 
 「まったくもう!アルティメットマスクだかなんだかしらないけどいい迷惑よ」
 「本当、巨獣の殺し方も残酷だし、早く星にでも帰ってもらいたいわ!!」
 騒然としたショッピングモールの通路は、おばさん達によるアルティメットマンの悪口によって喧騒を取り戻した。
 勝手に地球に来て暴れまわる、核より身近な脅威で迷惑なデカブツ…それがこのおばさん達の大好きな昼のニュースでの
人気キャスターの公式見解だった。
 許せない…あんなにも彼は頑張っていると言うのに、お前ら汚い豚どもの子供を助けるために、本気で命を捨てようとしたと言うのに…。
 巴は怒りで顔が真っ赤になる…のを通り越して、顔が真っ白になっていた。
 巴は一週間近くずっと光一と接してきた…そしてそうしているうちに彼の性格もだいぶ把握してきていた。憧れのヒーロー、アルティメット
マンは酷く人間くさくて、とてもいい奴で…そして、冷たい人間達の仕打ちに対して酷く心を痛めていることもよく解ってきた。
 最初はそんな彼の支えになれるという満足感と、淡い恋心が満たされていく感覚に喜び…そして次第に彼の受けた仕打ちに気づくにつれて
世間一般のアルティメットマンを嫌うものたちが許せなくなってきた。
 …人類の全滅を世界に対して叫んだ異次元の化け物を、頼んだわけでもないのに毎日休みもせずに倒してくれる、謙虚で、やさしくて…
そして唯一の存在に対してここまで彼らは侮蔑の言葉を浴びせる…そんな人間達が許せなかった。 
 「ねえ、おねえちゃん…お姉ちゃんはアルティメットマンの…友達なの」
 怒りに肩を震わせる巴に対して、先ほど助けられた少年がそう聞いてきた。
 「うん、そうだよお…お姉ちゃんはね…アルティメットマンの恋人なんだよ」
 空ろな目で巴はそう答えた。
<> リッサ
◆v0Z8Q0837k <>sage <>2007/12/19(水) 02:13:08 ID:lUt+bHho<>  炸裂超人アルティメットマン 第二話 気をつけろ!そのサンタは本物か?

「…もしも次に会ったら、ありがとうって、皆言ってたって…言ってくれるかな?僕達…お母さん達は皆ああ
言ってるけど…すごく感謝してるって…アルティメットマンの事が大好きだから、頑張って欲しいって…」
 「うん、でも大丈夫だよ…きっとアルティメットマンも、そういってくれる人がいるから、この戦いを頑張れるんだから…」
 巴は笑顔で子供を安心させる、その言葉に安心したのか、子供達は喜ぶと手を振って母親の元に帰っていった。
 「いい子達だな…でも、あの子達の親はどうしようもないんだよねぇ…だったらきっと、あの子達も将来ああなるよねえ…
だったら、処分しなきゃ…」
 濁った眼で巴は笑う、そして近くでアルティメットマンの悪口を繰り返すおばさんを見つけると、そのおばさんの頬を思いっきり叩いた。
 ヒステリックに対応して掴みかかるおばさんに対して、巴はそれを軽くいなすと呟いた。
 「あんた、巨獣より性格悪いよねえ…どうせ今日も暇で暇でここに来て、自分より見下せる相手が欲しいから…あの人の悪口言うんでしょ
…今は許すけど、今意外はないよ」
 そう言うと同時に、まるで獣のような目でおばさんをにらんだ、ひるんだおばさんが逃げ出すと、巴は空中をにらんだ…その瞳はまるでガラス
玉のように透明な色合いを放っていた。
 「あと六匹か…意外にはやいなあ…それにしてもあの馬鹿…どうしてやろう?」
 彼女には行わなければいけない使命があった、それは光一が戦う事と同じぐらい重要なものだと彼女には感じられた。
 「やっぱり…邪魔者は、馬に蹴られて死ななきゃ、ね…うふふ、ははははは」
 そんな言葉を呟きながら彼女の見上げる空は、気持ち悪いくらいに青かった。
<> リッサ
◆v0Z8Q0837k <>sage <>2007/12/19(水) 02:15:38 ID:lUt+bHho<> 炸裂超人アルティメットマン 第二話 気をつけろ!そのサンタは本物か?

「オアアアアー!!!アルティメット!!タイフーン!!」
「だから聞かないといっているでしょうがああ!!」
ところ変わって吊下市郊外の山林、適の巨獣に対してアルティメットマンは珍しく苦戦していた
敵の巨獣はこちらが風で攻撃すれば体から羽を生やして空に逃げ、炎で追い込めば水を出して攻撃をカウンターしてくる
いうなれば変身する巨獣…そのような戦法で徐々にこちらを追い詰めているのだ。
 「ホアアア!!!」「デアア!!?アーッツ!!」
 翼を生やした巨獣は風の力を生かして一気にアルティメットマスクに体当たりを食らわせた、衝撃で吹き飛ばされた上に
アバラがぎしぎしと傷むが、それでも構わずにジャベリンを召還すると、それを槍代わりにして敵に突進した。
 「ウオアアア!!」「無駄アアア!!」
 敵は一瞬で翼を巨大な十手のような武器に変化させる、ジャベリンを一気にへし折る気なのだろう。
 それを狙ってか、アルティメットマン刺突するとみせかけてジャベリンを巨獣の腕めがけて投げつけた、そしてひるんだ隙に
顔面めがけて指二本での目潰しを放つ。
 どしゅ!!という音と共に巨獣の目がつぶれ、巨獣が絶叫と共に倒れこんだその瞬間、突然アルティメットマンの頭の中に声が響いた。
 (動くな)
 少女のような、それでいて凛とした声を聞いた瞬間、アルティメットマスクの体は動かなくなる。
 (まずい、何とかしなくては…)
 そう考えたとき、足元の巨獣が叫びだした。
 「ひいい!!お、お許しを!!総帥さまあ!!!」
 目の前の脅威ではない何かにおびえたような声で、立方体のような巨獣は叫んだ、そしてひときわ叫ぶと同時に、どしゅ!!と血飛沫
を飛ばして巨獣の体はバラバラになった。
 巨獣の体は、内側から無数に生えたウニの棘のような物体で全身を刺し貫かれていた。
 (…なんだ一体?粛清か何かか?)
 全く釈然としない光景、しかも敵は総帥と叫んで死んだと来ている…親父が死んだとき、一緒に倒した裏次元総帥が生きていたとか
そんな感じなのだろうか?しかしそうなるとここ数年のまるで目的の無いままに暴れまわる巨獣は一体なんだったのか…あるいは裏次元で
新たな権力が発生して、こいつのような上級クラスが送り込まれてきたのか…まるで釈然としないまま、アルティメットマスクは巨獣の死体を焼却した。

 「あ、お帰りなさい光一さん、お風呂沸いてますよ?それともご飯がいいですか…」
 「あ、じゃあ先にお風呂に入ろうかなあ…それから今日はごめんね」
 「いいですって、あんまり細かい事を気にしてるとはげちゃいますよ?」
 深夜、疲れ気味でアパートに帰ってきた光一を、巴はまるで本物の家族のように温かく迎えてくれた、母親がいるってこういうことなのかなあ…そんな
ことを考えながら光一は風呂に向かう、巴はそれを笑顔で見送り、バスタオルなどの用意をすると…部屋の隅に置かれたノートに眼をやった。
 「…ふう、気づかれなかったみたいね…」
 ノートに書かれたのは吊下市の略式地図だった、そしてその地図上には…いくつかの、小さな穴がコンパスであけられていた、
そして最も多く穴の開けられた部分は、吊下市の山間部…今日、巨獣が謎の死を遂げた場所だった。
 (動くな)(彼を邪魔したものには、死を与える)その付近にはマジックでそんなことが書かれている、数分ほど
それを眺めた巴は、ポケットから赤いマジックを取り出すと、街の各所煮に次々と丸を書き込み、そして今度は黒い
マジックで文字を書き始めた。
 「あと六体もいるんだから…少しは彼の住みやすい世界に出来るよね…ふふふ…」
 何かを書き込んでいく巴の瞳は空ろで、それでいてとても楽しそうな表情をしていた。
 第二話 END

<> リッサ
◆v0Z8Q0837k <>sage <>2007/12/19(水) 02:17:50 ID:lUt+bHho<> 炸裂超人アルティメットマン 第三話 始まった!吊下壊滅作戦

 登場巨獣 爆泳巨獣マッカタン 空速巨獣ジオンゴ 電波怪獣ミルワー

ごろごろごろごろ…そんな感じの轟音が吊下市全体に響いていた、音の主は勿論巨獣だ
カジキマグロを太らせたようなその体躯を生かしてか、はたまた誰かに操られているのか…ごろごろと転がる
巨獣は、まるで粉砕ローラーのように建物を踏み潰して行く。
だって許せないじゃないか?コイツがあのやさしい彼を苦しめられるのが…そして、眼前に広がる街の住人が
彼を苦しめいているのが。
そう、彼を守るのは私ひとりでいい、そして…彼を愛するのも私ひとりでいいに決まってるんだから。

「どうもおかしいんだよな…そう思いますよね?隊員さん」
 「ええ、でも一体コレとそれに何の関係が…」 
 JCM基地本部作戦司令室、約一年ぶりという久々のブリーフィング会議で、光一とガスマスクの隊員たちは首を
ひねっていた。ここのところ急に強力になった怪獣軍団に対する迎撃のために集まったと言う名目だが…実際の
ところ、敵の行動に関する問題はかなり複雑なものだった。
 第二話での巨獣の謎の爆死にしてもそうだが、それ以上に今回の事件は奇妙だった…さきほどの戦闘では海から
現れた魚型の巨獣がいきなり地面を丸太のように転がって移動し、シヨッピングモールや商店街、さらに住宅街を
転がりながら破壊したあげく、何故か空から現れたミサイル型の巨獣に激突されて死亡してしまったのだ。
 異常だ…一体何が起こっているのかわからない、さらに先日のタンク型巨獣による議事堂襲撃も、時間稼ぎに出動
したJCMのフライングパンケーキのミサイルと隊員の乗ったフライングプラットホームから放たれたロケット砲で簡単に
弱って行動不能になり、あっけなくやられてしまったのだ…普段ならどんな弱い巨獣でもはじき返して時間稼ぎにしかならないような
ロケット弾で重量のありそうな巨獣を行動不能に追い込めると言うこの事態は…一体何が起こっているのか、戦々恐々…彼らの気持ち
を言葉で表すならまさしくそんな感じだった。
 「…やはり、この前殺し損ねた子供達をもう一度殺すために…やったんだと僕は思います」
 がっくりとうなだれる光一、彼の手に握られた死亡確認者のリストには…前回彼と巴が助けた子供達と、その母親達・・・さらに商店街
の面々の名前が書かれていた。
 光一の目に涙は無かった、いや…もう出し尽くしていた、そう言った方が正しいのだろうか、彼の目は真っ赤にはれていた。
 「だとして…敵側の新しい総帥は…いったい何を考えているのか…」
 「それが解れば…っと、失礼」
 そういうなり光一はトイレに向かって駆け出す、原因は彼が最近与えられた携帯電話だ…先の議事堂破壊で、幸か不幸かアルティメット
星人の排除、及びJCMとアルティメット星人に対する予算削減案を出していた政治家が大勢死んだので、その分予算が増えて、光一の生活は
テレビと携帯をもてるまでに豊かなものになっていた。
 けっして最近巴がよく作ってくれる、おいしいけどなんか鉄っぽかったり、ナマっぽい味の弁当で腹を壊したわけではない。
 「お疲れ様でした、今日はお仕事が終わったら大事なお話があるので早めに帰ってきてくださいね」 
 そんな文章を見て、光一は少し緊張すると共に…巨獣が自滅してくれてかなりグッドタイミングだったなあ、とそう感じた。
 「いましばらくお待ちを、もう少しで帰りますよ」
 そんな返事を送ると…光一はそのメールに対して奇妙な違和感に襲われた、言葉では言い表せないが、それはどこか奇妙で…とても見たく
ないものを見せられているような気分だった。
<> リッサ
◆v0Z8Q0837k <>sage <>2007/12/19(水) 02:19:26 ID:lUt+bHho<> 炸裂超人アルティメットマン 第三話 始まった!吊下壊滅作戦

それから一時間後、今後の対策をある程度話し合ってまとめた後にアパートに帰ってみると…
そこには三つ指を突いて、指輪を差し出して頭を下げる巴の姿があった。
 「私の家の、お婿さんになってください…」
 光一はそういわれて、泣くほど嬉しかったが…まだ彼女とは性交どころかキスもしていない
事を思い出して、少し気恥ずかしい気分になった。

 「…あ、あの、それじゃあ…不束者ですが…」
 「よろしくお願いしますね、光一さん」
 
 そんな雰囲気を読み取ったのかどうか、キスしてくれなきゃ嫌だと駄々をこねた巴と、自然に
キスをする雰囲気になった光一は…二人ともその肩に手をかけて、唇を近づけた瞬間。
 ばりいん!!と凄まじい音を立てて窓ガラスが砕け散った。
 投石だ、その石にくくりつけられた布には血文字でこう書かれてあった、私の息子と妻を帰せ、と。
 「ふざけるな!!まるで光一さんが誰かを殺したようなこと言って!この人が誰かを苦しめたのか?この
人がお前の家族を殺したのか!言ってみろ!言ってみろ!!!この!化け物め!!」
 凄いスピードで投石をした犯人を捕まえた巴は、犯人である…巨獣の被害者に猛烈な講義をした、光一は
必死にそれをなだめたが…自分がもっと早くにあの場所についていれば…という考えが頭をよぎってもいたので
心の中はやるせない気持ちでいっぱいだった。
 犯人を、怖がってアパートの中に入ろうとしない警察に突き出して、もう一度二人きりになっても…気まずい
空気が部屋に残っているだけだった。
 「あ、ゴメン…隊員さんから呼び出しだ…今日は遅くなるかもしれない」 
 静寂は隊員さんのコールによって打ち砕かれた、なんでもテレビ局の近くに巨獣が現れたのだと言う…先ほどの
ことがあるため、心の重い状態だったが、それでも急いでマイティワン号目指して光一は走った。
 「うん…あのね、私は―何があっても、貴方の味方だから!覚えておいてね!!貴方が、アルティメットマンでも
東条光一でも、私は貴方が、すっごく大好きだから!!」
 そういって叫ぶ巴の姿が光一には唯一の救いだった。

 光一を見送ると、巴は自分の部屋に戻り…机に置かれたノートに眼をやった。そこには赤い字と黒い字で…吊下
市のあらゆる方向に矢印と、支持が書き込まれていた。
 …生活はよくなってきてけど、それでも、やっぱり彼を苦しめる要因は…豚は多いんだよね…頑張って、恐怖心を
打ち消した振りして偽善で彼に必要以上にべたべたする商店街の連中も、ショッピングモールのクソみたいな母子共も
…消したけど、まだたりないよね…やっぱり、元からそういうのは消さなきゃね…。
 「あと残ってるのは二匹…ふふふ…」
空ろな目でそう呟きながら、巴は次々にノートに書き込みを繰り返した。
自分の行為を知ったら…彼はそれでも自分を好きでいてくれるかなあ?巴はそう思った。
でも…彼を苛める悪い存在は全部いなくなったほうがいいよね?あと偽善で彼に優しくする人間も要らないよね?
彼女はそうも思った。
 理由?…それは決まっている、彼は私を愛していて、私も彼を愛していて…そして、私は彼一人を、世界で彼一人
をただ一人で独占的に愛したいからだ。
 「光一…愛してるよ…だーいすき…」
 巴の声が不気味にアパートに響き渡った。
 
<> リッサ
◆v0Z8Q0837k <>sage <>2007/12/19(水) 02:21:02 ID:lUt+bHho<> 炸裂超人アルティメットマン 第三話 始まった!吊下壊滅作戦

「くそ!!いったいどうすれば…」
 「どうもこうも…敵に人質を取られた以上、君も僕達もどうすることも出来ませんよ…」
 今回現れたハエトリ草型の巨獣は、よりにもよってテレビ局の建物自体に己を絡ませるという暴挙に
出ていた。しかもその状況を面白がってか、建物の内部ではそのまま臨時特番を組み、徹底したJCMと
アルティメットマンの批判を繰り広げていた。
 「見えますかあの姿が、あれこそまさしくわれわれ人間を殺そうとする野蛮な宇宙人の姿です」
 あきらかに私的な感情の発露だった、しかしこのニュースキャスターは、そんなことを公共の電波で嬉しそうにいっていた。

 「…仕方ない、こうなったら僕がマイティワン号で後ろから怪獣の頭部に特攻をかけます…多分重量自体はそれほどないで
しょうから、きっとひるむはずです…その隙に」
 「…わかりました、ご武運を祈っていますよ」
そういって光一を乗せたマイティワン号が飛び立った瞬間、怪獣は発光すると、叫び声を揚げる。なんともいいがたいその声は…
一瞬にしてテレビの電波に乗り…そして。
 ぼん!!という音を立てて、キャスターとスタッフ、それにテレビを見ていた視聴者の頭までもが…まるで針をさした風船のように破裂した。
「う…うああああああああああ!!!!」
 マイティワン号に搭載されたモニターに写った、JCMの作戦会議室の…その光景を見た、光一は叫ぶしかなかった。
 隊員たちの首が吹き飛んだのだ…敵は電波に乗せて破壊音波を送り込む生物なのだろう、そんな冷静な思考が頭をよぎる…しかし、それを
受け入れられるほど光一は冷静でもなかった。
 「…あ、アアアアアアアアー!!!」
 絶叫を上げて光一はマイティワン号から飛び出し、そのままアルティメットマンに変身する。巨獣も負けじと口から消化液のようなものを吐き
つけるが、怒りのあまりに全身から炎を噴出すアルティメットマンの前にそのようなものが通じるわけが無かった。
 アルティメットマンは怪獣の触手を掴みとり、手から噴出す炎でそれを焼ききる、絶叫を上げて逃げようとする怪獣だったがその行為はむなしく
終わった、その体をアルティメットマンが抱きしめたからだ。
 凄まじい温度の抱擁で怪獣が燃やされていく、もがく事も出来ず、怪獣は生き地獄の苦しみを味わって、消し炭へと姿を変えた。
  「ウアアアアアアアー!!!」
 アルティメットマン…光一は、その姿で泣いた。自分が守れなかった命を悔やんで泣いた…自分の力不足が許せなかった、そして怖かった、大切な
人を失うのが怖かった…自分に協力してくれる隊員たちが死んだのも悲しかった…。
 
 (神様…なんで僕は、僕はこんなにも辛い目にあうんですか?僕は一体なんで…存在するだけで目の前でこんなにも悲しい現実を見なくてはいけない
のですか…)
 衝心の光一はそんなふうに己の運命を、人生で初めて呪って…公園のベンチでうなだれていた。アパートに帰れば彼女…巴に泣きつくのは決定していた
だからこそアパートには帰りたくなかった。
 もう、誰かの負担にはなりたくなかった。
 ブブブブブ…と、そんな静寂を打ち砕くようにポケットに入れた携帯電話が鳴った。
 「はい…どうかしましたか…」
 「お疲れ様でした、光一さん…その、気分は、大丈夫ですか…?」
 そこから聞こえるのは可愛らしい、そしてよく聞きなれた巴の声だった…その声色は本気で光一の事を心配しているようだった。
 「うん、大丈夫…でも、今日は…こうして一人で…」
 そう言い掛けて、光一は直感的に…自分の感じていた、巴との違和感の正体に気づいた。 <> リッサ
◆v0Z8Q0837k <>sage <>2007/12/19(水) 02:23:04 ID:lUt+bHho<> 炸裂超人アルティメットマン 第三話 始まった!吊下壊滅作戦

 「ねえ、巴ちゃん…どうして君は、僕が巨獣と戦い終わったっていうことを…しってるの?」
 喋っていて声がかすむ、それにやたらのどが渇く…それでも聞かなければいけなかった。そもそも
僕が巨獣と戦ったことが報道されるのは、原則的に事後一時間と決まっていた。
 さらに言うなれば、僕が戦いを終えて会議室で休んでいる時間は定まっていないし、今日戦い終わった
事が報道される事は…事件の性質上、皆無に等しかったのだ。
 「え…それは、その…テレビで・・・」
 「…そう、それじゃあ…ちょっとそこの公園まで来てくれるかな?」
 怪しい、この子は何かを隠しているんじゃないのか…そう考えた光一は機転を利かせて巴を公園に呼び出すと
そのままアパートの、巴の部屋に向かった。
 「…なんだ、コレは…」
 ついている意味のない鍵をはずして巴の部屋の中に入ると、そこには大量のアルティメットマンと…光一の
写真が貼られていた、そしてその写真のどこかには必ず赤い字で愛、勝利、という書き込みがされていた…インク
のようなどす黒い赤色のそれは、明らかに彼女の血そのものだった。
 しかし一般人から見れば気持ちの悪い行為であるそれも、光一にとっては喜びの対象でしかなかった…自分の事を
ここまで思っていてくれる人がいる、変質的なまでに愛してくれる人がいる…そのことがとても嬉しかった、だから
早く自分の中での彼女の疑いを晴らすためにも、そう考えてちゃぶ台の上のノートに手をかけて開き…そこに書き
込まれた言葉を見て、光一は絶句した。
 (あのキャスターと、あんなクズ番組を見ている奴らの首を吹き飛ばせ!!)
 (彼を馬鹿にする奴らを潰してしまえ)
そこに書かれた言葉と、稚拙な、そして明らかにしっかりしたデティールを持った怪獣のイラスト、さらにあの
時聞いた…動くな、その言葉が…彼の傷つきやすい心にダメージを与えるのは簡単に予想できた。
 「…見ちゃったんだ」
 「へ?」
彼の後ろには巴が立っていた、光一の背後、で巴は笑顔でこう呟いた。
 「私は貴方がだいすきだよ?光一…でも、あなたは私のことが…それを見ても
大好きなのかな?教えて欲しいなあ?」
 彼女の目はガラス玉のように空ろだった、光一はその目から視線がはずせなくなっていた。
 窓からの風で、光一が読んでいたノートがめくれあがる、そのめくれたページにはある文字
がびっしりと書かれていた。
 こういちだいすき、と。
 第三話 END

<> リッサ
◆v0Z8Q0837k <>sage <>2007/12/19(水) 02:26:29 ID:lUt+bHho<> 炸裂超人アルティメットマン 第四話 与えられた選択権、選ぶのは君だ!!君がアルティメットマンだ

登場巨獣 ??? ???

「う…うわああああああああ!!!」
いきなり叫ぶなり、光一は背後の巴を突き飛ばして、自分の部屋に入って鍵をかけた、あっても無くても
意味のない安物の鍵だけど、それでもわずかながらの心の安心感は与えられた。
光一はそのまま毛布に包まって部屋の隅で震えた、怖かった、とても怖かった。
「巴ちゃんが敵?…嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ!!コレは夢だ…きっと酷く悪い夢なんだ!!!そうに決まってる!!」
光一は必死になって、自分の心を壊さないように今見た事実を否定して…それでも、がちゃがちゃと音を
立てる自分の部屋の扉の向こうにいる、巴の…いや、自分を騙して、篭絡しようとした巨獣の存在に恐怖していた。
がちゃり!音を立ててドアが開いた。
「もう、痛かったですよ!光一さん?」
「ひい!ひいい!来るな!!来るな!!化け物め!!」
光一は顔を伏せて丸くなった、そしてがたがた震える、その姿はまるで子供のそれだった。
「安心してください、酷い事もしませんし…光一さんを殺したりはしませんから」
「嘘だ!!寄るな…もう僕を、お願いだから騙さないでくれ!!頼むから!!!」
「いやですよ、だって私…光一さんの事を愛してますもの」
「うそだ!きっとそうやって、きみもぼくをだますんだ…くるなあああああ!!!うああああああ!!!」
光一は泣いた、その場で子供のように泣き崩れた…そのすぐ側には、彼らが倒すべき敵の、大ボス
が立っているというのに。
「・・・黙っててごめんなさい、でも、あなたが…真実を知って悲しむところを見たくなかったんです」
巴はそう言って光一を抱きしめた。
「…だって、あなたのことがだいすきだから…」
そういう彼女の顔は、寂しげに笑っていた。
その言葉を聞いた光一は、まるで母の胸で抱かれて安堵する子供のごとく、彼女にしがみついて泣いた。

「私の正体は、貴方が察しての通り…巨獣の親玉、異次元からやってきた、裏次元総帥というものです」
落ち着いた光一に、巴はコーヒーを入れて語り始めた。
「本来、私の任務は巨獣に対する操作と、異次元支配のあかつきの統制役でした…でも、あの日あなたの
お父さんによって殆どの巨獣を倒された私は出撃して…結果、敗れた私はわずかな記憶をもって近くに
いた人間の子供の精神に寄生して…こうして一人の人間、阿佐巳 巴として生きてきたんです」
「…僕を殺すために、人になって近づくためにかい?」
目を真っ赤にして光一はそう答える。
「そう思われても仕方ありませんよね…でも、本当のところを言うと、私の体からこの、総帥としての
記憶が起きあがったのはほんの少し前、貴方に出会ってからで…あの日、貴方とであった事は本当に偶然
だったんです…総帥の力が使えて、ノートで支持が出せても…人間としての記憶はそのまま残っている分
あなたが大好きなことには変わりなくて…だからあの、光一さんの事をけなす豚どもにも制裁を加えたんです
馬鹿なザヤッガ―も、他の巨獣も、できるだけ貴方に負担が掛からないように、ノートの力で弱らせていたん
です…だって…私は」
あなたが、こういちさんが、このせかいよりもだいすきだから…それくらいにあなたのことをあいしてたから。
巴はそう言い切った、その言葉に嘘とよどみは一切無かった。
チャンスだった、たぶんここで巨大化してこの子を踏み潰せば、全ては終わって世界は救われるはずだった。
でも、そんなことが…光一には出来るはずは無かった。

<> リッサ
◆v0Z8Q0837k <>sage <>2007/12/19(水) 02:27:49 ID:lUt+bHho<> 炸裂超人アルティメットマン 第三話 与えられた選択権、選ぶのは君だ!!君がアルティメットマンだ

自分自身が生きている意味なんて、自分が起こす行動では一生見いだせないものだと思ってた、そう
君に出会うまでは。
でもそれ以上に自分が生きていることに絶望する羽目になったんだ、そう、君を愛したから。
「…ノートには、あと2匹って書いてあったよね…残り分の巨獣を倒すと君はどうなるのかな?」
「…残り一匹は私の事です…勿論倒せれば世界は救えます」
重苦しい雰囲気の中で巴はそう告げた、コーヒーを飲む光一に対して巴は言葉を続ける。
「取りあえず一匹は私が倒します、そしてそいつの行動を、全力で私に重傷を負わせることにすれば
…きっと光一さんも、私のことを倒しやすい状況になるでしょうから…」
その言葉を聞いて光一はうなだれた、そして数分の後に、巴に話しかけた。
「…どうして、あのときに…もう死ぬことがわかっていて、僕に婚約を申し込んだのかな?」
「…私のこと、忘れて欲しくなかったからですよ、思い出も欲しかったし…本当はもっと、キレイ
な形で貴方の前から消える予定でしたから…」
「怖くはないのかい?よりにもよって自分の愛される人に殺されることになるんだよ?…」 
「それを貴方が望むのなら…受け入れられるのが愛ですよ」
「ごめんね、僕の事を騙して、殺そうとしたなんて疑って…」
「いいんですよ、私が悪かったんですから…ん…」
僕は彼女の肩に手をかけて、そのまま彼女にキスをした…そしてようやく、彼女と結ばれた。
嬉しいはずのその行為は楽しめるわけもなく、とても陰鬱な気分でしかなかった。
「あ…すきい、だいすきぃ…こういちさん…ああ!!ああああっ!!!」
それでもそう言って、自分にキスを繰り返す彼女を見ていると…わずかだが、喜ぶ彼女の顔が最後に
見れて嬉しかったと思えた。

事後…疲れていたのか、眠りこける彼女を横にして僕は悩んでいた、この逃れられない運命を断ち切る
方法は無いものか、せめて彼女の望むように出来ないものかと…。
 
 そして僕は―

1. 彼女を、何があっても一人にしないと決めた。

2. せめて彼女の望む方法で決着を付けてやろう、そう思った。

 第四話 END <> リッサ
◆v0Z8Q0837k <>sage <>2007/12/19(水) 02:31:07 ID:lUt+bHho<>  と、今日はさすがに疲れたので残りは明日にします、選択肢はお好きな方を
お選びください、取りあえず一番最初に答えてくれた人の選択に従う予定ですので
…もしかしたら希望する巨獣イラストと並ぶヒロインを書いたりするかもしれません
 それではおやすみなさい、選択は選んだものによって閲覧注意するものが変わります
のでご注意を…。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/19(水) 02:49:14 ID:13h5Bprj<> GJ!

1で。やっぱり幸せであって欲しいんだ…… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/19(水) 02:49:30 ID:KOOxVsG3<> 1. 彼女を、何があっても一人にしないと決めた。

でおながいします.

愛、あなたとふたり〜 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/19(水) 08:04:44 ID:H7ms4s9C<> 1.で! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/19(水) 08:56:37 ID:IlUIfoJO<> >>246
私ガチレンジャーの話大好きアル

是非書いてたもう <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/19(水) 09:51:59 ID:pyN+pgWG<> アルティメットマン対巨獣35+宇宙人15


忘れてください…orz <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/19(水) 12:24:56 ID:Qc/L5MtK<> 1の真っ赤な誓いエンドで! <> リッサ
◆v0Z8Q0837k <>sage <>2007/12/20(木) 00:30:15 ID:7TzxPuM9<> 住人の皆さんこんばんは、そしてお待たせいたしました。たった今遂行を終えたばかりの最終回
ですが、なんとかできあがったので貼らせていただきます。
 …しかし皆さんは意外にハッピーエンドがお好きなんですね…まあ二番目の選択に地雷を仕掛け
ていた分、正解と言えば正解だったのですが…前置きが長くなりましたが、それでは始めます。

炸裂超人アルティメットマン 第四話 選ばれた結末、さらば、尊き勇者よ

 「グアアアアア!!!」
  断末魔の叫び声をあげて、吊下市山間部の地面に倒れこんだのは金属巨獣 ズガーラだった。
 あらゆる物の力を模倣できるズガーラを、持っていたスピアで一瞬にして葬ったのは、それまで散々
攻撃を受けていたはずの裏次元総帥だった。
 強かったなあ、この子となら本当に世界を滅ぼせたかもなあ、と総帥…巴はそんなことを考えた。
 ノートで行動を操っていたとはいえ、ズガーラはかなりの強敵だった…これだけダメージを受けておけば
きっと彼の必殺技…アルティメットクロスファイヤーを一発食らうだけで死ぬ事ができるだろう。
(もしこれで、今度生まれ変わることがあったら…また会えるよね、光一…)
 気を抜けば薄れそうになる意識のなか、巴はそれでも光一の事を思っていた。
 ブウン…と音を立ててその横をマイティワン号が通り過ぎる…それが戦いの合図だった。

 目の前には巨大化した光一…アルティメットマンが現れる、日差しを背にするその姿は、巴にはどこか神々しく見えた。

 手に持ったスピアを、傷だらけの体でどうにか構える総帥…それに相対するアルティメットマンは静かに両腕を交差させた
必殺技…アルティメットクロスファイヤーの構えだ。
(そうそう…それでいいんだよ、光一)
そんなことを考えながら、総帥が構えていたスピアを落とすと同時に、アルティメットマンは大声で叫んだ。
「アルティメーット!!ブラックホール!!!」
(え…それは!?…)
 それにあわせるかのように、ブウン、と言う音を立てて二人の間に黒い円形の塊が発生した。 
 …アルティメットブラックホールは、先代アルティメットマンが命と引き換えに使った、アルティメット星に
伝わる自爆技だ。巨大な円形の塊はアルティメットマンとその周囲に存在する巨獣を別空間に飛ばして…永久にその
空間に、巨獣とアルティメットマンの意識と肉体を固定するというものだった…先代の場合は総帥を飲み込む前に距離が
足りず、技の反動で命を使い切る寸前に何とかはなったアルティメットクロスファイヤーで総帥を追い詰めるという結果に終わった
のだが…ここまで近い距離では、先代の二の舞になる心配はなさそうだった。
 ゴオオオオ…あたりにすさまじい突風、いや、強力な引力の嵐が吹き、周りにある全てのものを飲み込んで行く…そのなかで、二人
の体が円形の塊…異次元に飲み込まれる中…二人は手に手を取り合い…その体をしっかりと抱きしめて、異次元の底に消えていった。
(ありがとう…ありがとう…一緒に来てくれるんだね…うれしいよ…嬉しいよ光一…)
(ああ、だって巴は…そのくらいの覚悟で俺に殺されようとしたんだろう?だったら俺もそれを返すのが…愛ってこと、だろ?)
(そうだね…うれしいよ、本当に嬉しいよ…光一、大好きだよ…)
 二人はそう言いあって、異次元に消えていった…。

 その世界は真っ暗闇で何も見えず、さらに全く動くことも出来ない…そんな世界だった。このまま永久に死ねず、意識を保つらしい
…しかし、元帥こと…巴はその事を全く後悔していなかった。
(もう、これでずーっと一緒なんだね…うれしいよ、巴…)
(うん、もう離れないで、ずーっと二人で一緒にいようね…光一)
 手に手を取り合って、異次元に飛ばされた二人は、その意識を共有したまま固定されていた。
 そう、二人の中はもう運命すらも引き裂けないくらいに強力なものになったのだ。
 …こうして永遠の愛を誓い合った二人の顔は、とても幸せそうなものだった…。 
FIN <> リッサ
◆v0Z8Q0837k <>sage <>2007/12/20(木) 00:34:32 ID:7TzxPuM9<>  これにて終わります、読んでくれた住人の皆様には本当に感謝しております。
 >268
 ごめんなさい、それはちょっと…取りあえずまた年始のイベントと新人賞の投稿で
忙しくなってしまった為、少しあとになるとは思いますが…そのうちにイラストと
選ばれなかった2エンドの内容を貼ってみようかと思います。
 それでは、また。
  <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/20(木) 04:13:29 ID:mDxz/5sV<> (´・ω・`)

(´・ω・`)つ旦〈完結おめ

| ・ω・`) 〈デモ モノタリナイカラ別スレ逝ッテクル

|ノシ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/20(木) 14:02:42 ID:0GsiAZ0j<> な、長い間来ていなかったらいつのまにか特撮SSスレにナットル・・・・ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/20(木) 20:20:33 ID:zg8Ny2am<> 同意&驚愕
まあ、面白ければ良し。
さあ読むぞー <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/20(木) 22:34:30 ID:KPsXGvS/<> まあ、ちょっと前まで連載していた作者方が来られる頻度が低くなったからね……。
ここに投下したことはないとはいえ、一応自分もSS書きの端くれだからこんなこと言うと急かしているようで嫌なんだけど。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/20(木) 23:14:32 ID:Mx6wMVIf<> 社会人は場合によって年末は忙しいからな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/21(金) 13:47:16 ID:OE/puAyN<> 年末年始はニート学生を除き普通は忙しいもんだ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/21(金) 18:46:21 ID:VBlxPd2V<> コミケもあるし
参加する人は忙しいだろうねえ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/22(土) 00:52:14 ID:UjnPzJ98<> >>277
学生だがバイト納めと実家に帰る準備で忙しいぜ。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/22(土) 01:43:25 ID:tgPq63Jj<> >>278
落選した俺涙目。
まあ知り合いのサークルに同居させてもらうんだけどさ。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/22(土) 19:17:17 ID:OYfzW4xJ<> 新人賞の投稿って、笑うとこですか? <> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/22(土) 19:30:29 ID:Dpu7A0J3<> 投下します。第七回です。
16レス使用します。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/22(土) 19:30:53 ID:kpp0MoUp<> 別に <> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/22(土) 19:31:20 ID:Dpu7A0J3<> *****

「葵? 葵じゃん。何しに来たんだよ、こんなとこに」
 暇をつぶしにやってきた体育館裏には先客がいた。馴れ馴れしく私に呼びかけてくる。
 相手は、二年の愛原とかいう軽薄な男だった。
 入学して一ヶ月ぐらいしてから告白してきたから、かろうじて覚えている。当然、断ってやった。
 この手の下半身男は、たいてい私の体を目当てにして近寄ってくる。
 胸がでかければ誰でもいいんだろう。虫酸が走る。視界の隅に入り込むだけで不快になる。
 今の愛原がやっていることに対してもそう。
 人目につかない場所で一年の女子とじゃれ合っているなんて、変態の最たる行いだ。
 見ると、女子は上の制服を喉元までめくりあげていた。緩んだブラと乳の隙間に愛原の右手が入り込んでいる。
 左手は女子のスカートの中に入り込んでいた。ショーツは膝まで下がっている。
 女子は内股になって膝を寄せ、震わせている。立つこともできないのか、背中を壁に預けている。
 顔は紅潮していて、嫌がっているようにも、興奮しているようにも見える。
 無理矢理連れ込んだのか、それとも恋人なのかは知らないが、こんな奴に捕まった女子は気の毒としか思えない。
 気の毒には思うけど、私はめんどくさいから何も言わない。
 馬鹿二人となるだけ離れ、体育館の壁を背にして座り込む。
 好きにすればいい。愛を語らおうとセックスしようと、どうぞご自由に。

 今日はたまたま用事があって学校にやってきただけだ。
 そうじゃなきゃ、わざわざ日曜日に人がたくさん集まる文化祭になんかくるものか。
 自慢じゃないが、私は学校にまじめに通っていない。
 毎日学校に来ているけど、教室でやる授業なら出るけれど、ほとんど上の空で過ごしている。
 授業なんか聞き流していてもテストで点は取れる。中間テストなんか教科書を読み直しただけで七八割取れた。
 体育の時間は色々と面倒だから全て見学しているか、さぼっている。
 女も男も私の姿を残念そうに見る。胸が揺れるところでも見たいんだろ、思春期まっさかり。
 どだい、私には体育でやる運動なんて準備運動にもなりゃしない。
 自分ちでストレッチでもしている方がずっとマシだ。ぬるすぎてあくびが出る。

 あいつがこの学校に通わなければ、高校だって行くつもりはなかった。
 あいつと一緒に居たかったから、面倒な受験まで受けたんだ。
 なのに、受かってみたらこの通り。
 私とあいつは別のクラスになってしまうし、複雑な相手が一つ上の学年にいるし。
 それ以上に不愉快なのは、あいつが同学年の女子連中から人気があることだ。
 一緒のクラスにいる女子が、あいつの名前の付いたファンクラブに入った、と騒いでいた。
 ――はん。馬鹿馬鹿しい。
 好きならとっとと告っちまえばいいんだ。集まってワーキャー喚きたいだけならあいつに近づくな。
 本当は告白もさせたくないけど、どうせ軒並み断られるんだ。特別に許してやる。

 と、言っても。私も人のことは言えない。
 あいつと学校の中で二人きりになる機会は多いのに、一度も好きだと言ったことがない。
 向き合うと、緊張してどもってしまう。本来の自分とは違うしゃべり方になってしまう。
 そんな感じで接しているのに、あいつが私に会いに来てくれるのは――たぶん、私のことが好きだからじゃないか、と思ってる。
 あいつの方から告白してくれないか、ってのは都合のいい考えなのかな。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/22(土) 19:32:05 ID:Dpu7A0J3<>  なんとなく見ていた目の前の地面に、足が四本乗っかった。
 黒い制服に包まれた足が二本、白い素の肌をさらけ出した足が二本。
 見上げると、愛原と名前の知らない女の顔があった。
 愛原の目線は私の足下に向けられている。もう一人の女は、愛原の腕を抱いてすり寄っている。
 なんだ、こいつら恋人同士か。でもこの男だったら他にも女はいるだろうな。そこな女、ご愁傷様。
 だから私を睨むなよ。睨んだって私の機嫌を損ねるだけで、良いことなんか何一つ起こらないよ?
「おい、葵」
 愛原が何か言っている。あー、聞きたくないけど耳をふさぐのも億劫だ。
「体育座りなんかしてっから、パンツが見えてるぞ。見せてんのか? 誘ってんのか?」
 見せてるつもりはない。あいつが胡座をかくのはやめてくれって言うからこうしてるだけだよ。
 見たければ見ればいい。お前らは頭の中で私を好きにしてるんだろ? オカズになっていいじゃねえか。
 けど、私の体には一切触れさせない。あいつ以外の人間には、絶対に体を許さないと心に誓っている。

 隣に愛原が座ってきた。ヤニくさい臭いが鼻につく。立ち上がり、その場を後にする。
 体育館裏に来たのは、人に会わずに過ごせる場所だったからだ。
 目的に添ってさえいればどこだって構わなかった。この場所にこだわる理由は特になし。
 きっとあいつは、私がどこに行ってもなんのヒントもなしに見つけてくれる。
 たぶん、行動パターンを見切っているんだろう。
 いつも通りに行動してさえいれば、必ず見つけ出してくれる。今日だって、そうに違いない。

「おい、待てって。この間の話、考えてくれたか?」
 何の話かわからない。ついてくる愛原を無視する。ひたすら歩む。
「悪いようにはしないし、後悔もさせねえって。どうせ、いつも暇なんだろ?」
 こういう台詞を吐けば女が落ちるとでも思ってるんだろうか? ……思っているんだろうな。
 悪いのはお前の性格、後悔するのは頭のねじが緩くて腰が軽い女。突っ込みたいけど、余計な手間だからやらない。
 ま、暇っていうのは合ってるけどさ。あいつと一緒じゃない時の私はいつも暇を持て余している。
 ハア、あいつに抱きつくのに一生懸命になりたいなあ。
 しがみつきたい。甘えたい。くっつかれたい。抱かれたい――性的な意味で。
 
 とっとと見つけてくれないかな、あいつ。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/22(土) 19:32:49 ID:Dpu7A0J3<> *****

 純文学喫茶の仕組み、および営業方針、並びに店員の業務内容について触れてみよう。
 まず、純文学喫茶とは、店内に大量の小説本を置き、客自らの手で本を手にとってもらい読んでもらうサービスを
売りにした喫茶店である。喫茶店であるため、軽食を注文することもできる。
 利用料金は六百円で時間は無制限。コーヒーと日本茶を常備している。ジュースは置いていない。
 利用料金とは別に、軽食にはお金を払わなければならない。
 チョコレート、クッキー、ビスケットのいずれかを注文できる。もちろん全て注文してもらっても構わない。

 喫茶店の営業方針は、お客様に快適な読書空間を提供し、一人でも多くの方に文学に興味をもってもらうこと。
 決して、担任の夢を叶えるためであるとか、担任に堂々と一日中読書してもらうためだとかではない。
 現在の客の入りを見ている限り、営業方針に添って喫茶店は稼働している。
 教室内が静かなので、町立の図書館よりも読書することに適している。
 時折ものを食べる音、陶器を机に置く音、ページをめくる音がするだけで、話し声は一切無い。
 客の回転率はすさまじく悪い。一日目もだったが、開店してから閉店するまでずっと入り浸る客までいた。
 中には十分と経たないうちに帰る人間もいる。葉月さんや担任やクラスメイトの袴姿を拝むだけの人間だ。
 ウェイトレス達と、ひたすら読書するだけの責任者がいなければ、赤字になることは間違いなかった。
 高橋と西田くんを始めとする男子が、給仕役は袴を着用してくれ、と頼み込んだおかげだ。
 男子、特に高橋は担任と共に純文学喫茶を正式にオープンしてもやっていけると思う。
 いっそのことそのまま二人でゴールインしてくれ。
 また一つ学校の伝説が生まれる。二人を主人公にしたドラマができてもおかしくないぐらいのサクセスストーリーだ。
 きっと、見晴らしのいい高台に建つ青山に永住しているような人生を送れるよ、高橋、篤子先生。

 給仕役の業務内容は、来店した客を席に案内し、店の仕組みを説明し、たまに注文された菓子を運ぶだけである。
 それ以外の業務はまったくと言っていいほどしない。むしろ、やる機会がないと言える。
 なにせ、トラブルが一切起こらないのだ。気まずさを感じるほどに静かなのだ。
 店内にいる客は誰もがじっと座り込んで本を読んでいる。
 ウェイトレスを呼んで菓子を注文しようにも、空気を震わせることが憚られて言えない、息の詰まる空間。
 控え室にいるクラスメイトも声を漏らさない。喫茶店の利益が黒字になっても、これでは楽しくない。
 文化祭でやる喫茶店って、もっとこう、ワイワイガヤガヤしつつやるもんじゃないのか?
 担任は指示を出さずに窓際の席に座り本で顔を隠しているし、高橋は時折ため息をつきながら担任の姿を
網膜に焼き付ける作業に没頭しているし、振袖姿のウェイトレスは半数以上が姿を消している。
 まじめに喫茶店の営業活動に取り組んでいるのは葉月さんを含んでも五人しかいない。
 かく言う俺は、クラスメイト全員から押しつけられた待機命令を律儀に守り、教室に残っている。
 手伝おうにも、そもそも客からお呼びはかからない。手伝おうとしたらなぜか葉月さんに止められる。
 昨日は皆の望んでいることだと聞かされて納得したが、もう限界である。

 逃げてやる。目指すは弟のクラスだ。
 俺のつくった衣装がいかに着こなされているか、この目で確かめに行かなければならない。
 制作者の一人として、確認する権利も、義務もあるはずだ。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/22(土) 19:34:05 ID:Dpu7A0J3<>  抜足でドアまでたどり着き、こっそりと教室から出ようとしたら、背後にいる男の声に止められた。
「どこに行くのかな、保護監察対象者」
 いちいち気に障る代名詞で呼びかけてくるのは高橋しかいない。
 振り向かずに返事する。もちろんドアに手をかけたまま。
「……トイレに行ってくる」
「それは許可できないな。君がトイレに行く時は私を呼びなさい、という葉月嬢のお達しを破ったら
 一体どんな目に遭うかわからない。彼女が『二番』に行っている以上、君を止めるのは僕の役目なんだ。
 よって、君の身勝手な行動を黙過することはできない。席に戻るんだ」
「我慢できないんだ。ここで間違いを犯すわけにはいかないだろう」
「確かにそうだ。ならば僕がついていこう。僕は男子だから、君がトイレの窓から飛び出さないか監視することもできるしな」
 こいつ、読んでいやがったか。
 変に気の合う友人の存在も考えものだ。裏をかくのが難しい。
 葉月さんが『二番』――トイレに行っている隙に俺が脱走しようとすることまで予測されていた。

 高橋の気を逸らすには、この男の恋愛対象である篤子女史をけしかけるしかない。
 だが、耽読状態にシフトした担任を動かすのは容易ではない。
 現に、ウェイトレスの一人が湯飲みを落っことして割った時も無反応だった。
 高橋が昼飯に誘ったときだって視線を微動だにしなかった。
 もしや、篤子女史は休日も今日のようにじっと本を読んで過ごしているのだろうか。
 俺でさえ模型作りしている最中は腹が減るから食事はとっているというのに。
 担任のエネルギーは無尽蔵か? 本から精気を吸い取って生きているのか?
 世界が食糧不足の危機に陥っても、担任は水と本だけあればつやつやした肌を保っていそうだ。
 なんという珍獣。道理で結婚できないわけだ。
 いや、担任を皮肉っている場合じゃない。
 
「どうしたんだ? トイレに行くんじゃなかったのか?」
 急がねば。葉月さんが戻ってくるまでもう時間がない。
「しょうがないやつだ。ほら、肩を貸してやる。だからここで、溜まっているものを爆発させるなよ?」
 俺に構うのをやめろ、高橋。篤子先生と同じ机に座りながら一方的に愛を語っていろ。
 ――ふむ? 今、何か面白フレーズが浮かんだような。
 高橋と、担任。二人の名字と名前がくっついたら。
 もしそうなったら……俺は面白い。そんな名前になった担任を想像するだけでクスリと笑える。
 高橋の意識を逸らすには弱いような気もするが、駄目もとで言ってみようか。
「なあ、高橋。意見を聞かせてくれないか?」
「うん? 別に構わないぞ。近々高騰するであろうオススメの先物から、君の子供の孫から見た祖父母の名前まで、
 なんでも占ってやろう。」
「そこまで大層なことじゃない。あのさ、高橋篤子っていい名前だと思わないか?」
「…………………………な?」
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/22(土) 19:35:34 ID:Dpu7A0J3<>  高橋の顔が歪んだ。眼鏡の向こうにあるまぶたがいつもより大きく広がっている。
 どうやら、不意打ちは成功だったらしい。
 こいつだって、自分と担任が結婚したらどういう名前になるかを考えなかったわけでもあるまいに。
「な、に、を……言っているんだ。君ってやつは。はは。高橋……あつ、篤子先生。
 僕の後輩達が呼んで、同僚の先生方が呼びかけて、退職の挨拶の時に呼び出される、名前……」
 どこまで空想を飛ばしているのだろう。
 プロポーズのステップをすっ飛ばして名前が変わっているようだ。
 俺からすれば、高橋と担任が恋人同士になった画なんてまったく想像つかない。
 どちらも変人――あえて言えば担任がレベルが上――だから、一般的な恋人のようにはならないのかも。
 非凡な恋人関係ってどんなのだろう。
 わからん。……あ、わからないから非凡と言えるのか。納得した。

「ねえ、ポストにはなんて書こうか? 名字だけ? 僕は二人の名前を入れたいんだけど……」
 あと一分待っていれば子供の名前まで聞かせてくれそうだったが、今は聞いている余裕はない。
 時間に追われている。葉月さんがいつトイレから戻ってきてもおかしくない。
「また本棚を買うのかい? そろそろ床が抜けそうだからやめてもらえると……ああ、ごめん!
 謝るから怒らないでくれ! 出て行かないでくれ! 私にはニャーと鳴く猫がいればいいなんて言わないで!」
 高橋を残し、教室から出て音をたてないようドアを閉める。
 弟のクラスに顔を出すより妄想状態の高橋をからかっている方が面白いかも、と気づいたのは二階の階段を
降りている最中のことだった。

<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/22(土) 19:36:56 ID:Dpu7A0J3<>  一階に降り立つ。弟のクラスへと向かうため、右へ折れる。
 進行方向から、見慣れた人物像を確認した。弟を誰よりも愛していると態度で語る俺の妹である。
「あ、お兄さん。……こんにちは」
「おう。こんにちは」
 兄妹なのに他人行儀な挨拶をする妹。反射的に同じ反応をとってしまった。
 まるで道ばたでばったり会った親戚の従妹との会話みたいだ。喩えがぴったり嵌るのが嫌になる。
 他人行儀な喋りをするな、と説いてやろうかと思ったが、妹の表情を見て改めた。
 一見して不機嫌とわかる表情だった。しかし廊下で俺にばったり会ったことが原因ではなさそうだ。
 向かい合っている最中も、脇を通り抜ける人へと目を泳がせる。
 誰か探してるのか? って、妹が真剣になって探すような相手は一人しかいないな。

「弟と一緒じゃないのか? 向こうから来たってことは、あいつのクラスには行ったんだろ?」
「もちろん。だけどお兄ちゃんはいなかった」
「そういえばあいつ、今日はクラスの手伝いはしないって言ってたっけ」
「私だってそれは知ってる。だから、今日は朝からずっと歩いて探し回ってるのに、見つからない。
 お兄さんも……知らないよね。お兄ちゃんがどこに行ったか」
「予想を裏切れなくて悪いが、イエスだ。知らない」
 最初から期待していなかったのだろう。妹は表情を変えない。
 つい、と顔を逸らし横をすり抜ける。
「お兄ちゃんを見つけたら、ケイタイに電話して。じゃ」
 即座に言うべき台詞が浮かんだのだが、振り向いたときにはすでに妹の姿はなかった。
 頭の中の妹へ向けて告げる。同時に口でも喋る。
「お前は俺にアドレスはおろか番号すら教えていないだろう……」
 先に弟を見つけてしまったとして、また妹に鉢合わせしたら、どうして連絡しなかったのかと責められてしまうのか?
 反論したら、どうして妹の番号も知らないのよ、とか言われそうだ。
 そういや、なんで知ろうと思わなかったんだ。こんなんじゃ妹に冷たくされて当然だ。
 弟を見つけたら、忘れないうちに妹の番号を聞いておかないと。

 弟は今クラスにいない、と妹は言っていた。
 今日一緒に登校した点、学校をエスケープする人間ではない、という要素から鑑みて、弟は校内にいると考えられる。
 妹の弟探知能力を駆使しても見つからないということは、弟はよほど見つかりにくい場所にいるのだろう。
 それか、普段の弟からは考えられない行動パターンをとっている、だ。
 そもそも、今年の文化祭における弟の行動はおかしい。
 一日目だけクラスを手伝い、二日目は自由行動するところから変なのだ。
 何か隠しているのか? もしや、いつぞや口にしていた好きな女の子と逢い引きするつもりか?
 だとすれば、邪魔するのは野暮だな。
 兄として、弟にはノーマルでいてほしいのだ。
 両親のように、ご近所には決して教えられない関係を兄妹間で結んで欲しくない。
 そのためには、弟が妹以外の女の子と交際する必要があるのだ。最後には無事ゴールインまでしてほしい。
 木之内澄子ちゃん。葉月さんの一方的な猛攻を受けても無事だった。しかも今日は学校を休んでいない。
 タフなあの子なら妹を相手にできそうだ。しかも、弟に深く恋している。
 条件のみを見るならば、澄子ちゃん以上の逸材はいない。
 だけど――弟は選ばないだろう。澄子ちゃんはそれをわかっている。弟の真実を受け入れているから。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/22(土) 19:37:56 ID:Dpu7A0J3<>  弟は一体誰に恋しているんだろう?
 ヒントは、年上、同じ学校に通っている、俺の顔見知り、の三つ。
 条件にあてはまる対象は葉月さんか、篤子先生に絞られる。だが、どっちも考えにくい。
 葉月さんを好きだったら、俺と葉月さんの仲を応援しないはず。
 担任に恋していたら、うちのクラスに顔を出すはずだ。
 どちらでもないとすると、もう俺にはお手上げだ。
 俺と弟に共通の知り合いは残りゼロ。弟の同級生は何人か知っているが、中には留年している者はいなかった。
 俺が昔知り合っていて、今では忘れている人間、とかじゃないよな。
 最近、弟妹に揃って自分の健忘ぶりを遠回しに、あるいは直接言われているから有り得る。
 『妹をいじめないで』、という台詞を聞いて恐怖を思い出すこと。
 昔の俺が妹をいじめていた、という妹からの告白。
 でも弟が言うには、昔の俺は弟と妹をかばっていたらしい。
 頭がこんがらがる。弟か妹、どちらかが嘘をついていなければ、つじつまが合わない。
 ――――弟かな。嘘をついているのは。
 あいつは優しい。小さい頃の俺が犯した間違いを悟らせまいと、かばっているのではないか。
 聞かないとわからない。けど、聞ける勇気は俺にはない。
 情けない願いだけど、弟の方から教えてくれないもんかな。
 本当に馬鹿なことをしでかしていたのなら、拳骨で教えてもらいたい……ってのも甘えだな。

 弟のクラスを見るつもりだったが、気が変わった。弟探しに目的を変更する。
 校内の地図を頭に広げ、弟になった気分で行動をトレースする。
 今日は文化祭が開かれている。どこかの教室に入るだけでも身を隠せる。例、二年D組の純文学喫茶。
 だが、ひとところに留まっているならば既に妹が見つけている。
 午前中から探していたのなら全ての出し物を見て回ったはずだ。
 電話をかけても繋がらない。ということはメールを送っても返信しないだろう。
 お手上げじゃないか。校内のどこにもいないってどういうことだ。
 世界的に有名なボーダーを来たおっさんだって本のどこかに隠れているんだぞ。
 妹に見つけられないなら、俺に見つけられるはずがないじゃないか。
 でも意外と、こうやって歩いていると見つかったりして。
 ただ、兄妹が絶妙なニアミスを繰り返していて巡り会っていないだけ、だったりしてな。
「兄さん」
 そうそう。ちょっとコースを変えてみれば、こんな感じに弟に声をかけられたりだって……へ?

 歩きながら思考していたら、校舎と体育館を結ぶ渡り廊下にたどり着いていた。
 正面には妹が血眼の目を剥いて(イメージ)、必死に探し回っている弟がいた。
「兄さんは出し物を見て回っているところ?」
「あー、うん。まあ、そんなところかな。ははは……」
 いいのか、こんなに簡単に見つけてしまって。
 妹の立つ瀬がないじゃないか。あいつ、あんなに弟を好きなのに、かすりもしないだなんて。
 可哀想になってきた。慰めようがないから声もかけられない。
 弟と妹の仲を認めないつもりではいたけど、兄妹で仲良くするのは構わなかったのに。
「お前、もしかして妹のこと嫌いじゃないよな?」
「ううん。全然。嫌いな相手なら一緒にお風呂に入ったりしないよ」
「そういや、そうだよな。いや、すまん。なんとなく聞いただけだったんだ。気にするな」
 思春期を迎えた兄妹で風呂に入るのも変な話だが、仲が良いのは兄として嬉しい事実だ。
 これからも二人でそうやって仲良くして――――欲しくはないな。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/22(土) 19:39:08 ID:Dpu7A0J3<>  仲良く風呂に入るな、風呂に。
 弟は妹を前にして全裸をさらけだしているのか?
 俺には絶対無理だ。高橋と銭湯に行ったとしても局部だけは桶で死守する。
 血の繋がった家族とはいえ、女に見せるなんて恥ずかしくてできん。
 妹も弟と同じだ。ひょっとしたら弟を興奮させるためにやっているのかもしれないが、俺は許さんぞ。
 お前ら二人が風呂に入っているとき、あえぎ声でも聞こえてきたら即飛んでいって止めてやる。
 その後で妹の手によって半殺しの目に遭うかもしれないが、ともかく、駄目だ。
 しかし、弟は何で妹と風呂に入っているんだろうな。強硬に断れば、妹のことだから諦めてくれそうだが。
 あえて自分をさらけだすことで父性をアピールしているつもりか? 逆効果だぞ、弟。

 話題を変える。風呂については別の機会に会議を設けるとしよう。
「どこに行ってたんだ? 妹がずっとお前のこと探してたみたいだぞ」
「ああ、実は人を探していたんだ」
「人、っていうと……」
「今日はその人と一緒に見て回るつもりだったからさ。
 約束もしてたんだけど、会う場所を決めてなくてずっと探していたんだ」
「ははあ……例の、コレか?」
 右手の小指を立てて弟に見せる。弟は平然と答える。
「うん、そうだよ。前に兄さんに聞かれて答えた、僕の好きなひと」
「へ、へえ。そりゃすごい。うん、すごいよ、お前……」
 堂々と好きな人がいるって告白できるって、かっこいい。すごい。
 葉月さんへの気持ちに自信が持てない俺とは大違いだ。
 俺とは違って恋愛経験が豊富なのかも。だから、好きだっていう気持ちに自信が持てるのかもしれない。

 咳払いを一回。声の調子を整え、呼吸を落ち着ける。
「それで、お前の想い人は見つけられたのか?」
「まだ。行きそうなところはあちこち探し回っているんだけどね。あっちこっち行き来してるみたいで見つかんない」
 こういうところ、兄妹そっくりだ。好きな相手は見つからないのに、探すつもりのない俺とは簡単に遭遇する。
 くじびきでハズレたときにもらえるティッシュみたいだな、俺。
「特徴を教えてくれないか? 俺で良ければ一緒に探すよ」
「えっ……兄さん、が?」
「ああ、別に困ったことなんかないだろ? 安心しろ。見つけたらすぐに立ち去るから」
「んー、うーん……」
 弟が悩んでいる。俺の協力を拒むか受け入れるかという問題ごときで悩むのか?
 ポイントがずれてるだろ。もっと別のところで悩め。妹の積極的なアタックをどうやって断ろうか、とか。

「それじゃあ、協力してもらおうかな。でも、見つけたらすぐに僕に教えて。そして脇目もふらずに逃げて。
 絶対に振り向いちゃ駄目だよ。僕のことは置いていっていいから」
 なに、この死亡フラグを立てるような台詞。
「そんな言い方をされるとものすごく気になるんだが。一体どんな化け物なんだ。
 ――あ、すまん。化け物って言い方は失礼だな」
「気にしないでもいいよ。でも、会いたくない相手という意味では同じことなのかもしれない」
「さっきからすっきりしない言い方だな。はっきり言ったらどうだ? 名前は? 髪型とか身長はどんな感じだ?」
「引かないでね、特徴を聞いても」
 ああ、と返事する。弟は静かに口を開く。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/22(土) 19:41:14 ID:Dpu7A0J3<> 「髪は金色。金髪だよ」
 ほうほう、金髪ね――え、黄金色? 
「ああ、欧米からの留学生なのか。地毛で金色なら仕方ないよな」
「違うよ。染めてるんだ。誰がどうひいき目に見ても金色だから、わかりやすいと思うよ。
 身長は兄さんと同じぐらい。あと、無口。話さないとわからないけど」
 つまり、弟の好きな女性は、ふりょ――良くない人? 
 ビッグリーグに所属し、アメリカはニューヨークに本拠地を置くかの有名なチームと同じ名前の属性?
 待て待て、早とちりするな。
 ただ髪を金色に染めることにひとかたならぬこだわりを持っているだけかもしれないじゃないか。
 あれ、そんなタイプの人間を不良とか呼称するんだったっけ?
 いや、弟が好きだというなら、あえて何も言うまい。
 付き合ってみればどんな人間にもいいところが見えてくる、と言う人もいるし。

「それで、名前は?」
「名前、名前は………………やっぱり、言えないよ。ごめん、兄さん」
「なんで言わないんだ? 別に教えてくれてもいいだろ」
「でも、それは。せっかく兄さんは忘れているんだから、思い出さなくてもいいかもって……」
「なあ、いい加減に教えたらどうなんだ。俺が昔のことを忘れているとかなんとかってやつ。
 大事なことならはっきり言え。そういうもやもやした感じ、苦手なんだよ」
「前も言ったとおりだよ。兄さんは忘れたままの方がいい。だから、やっぱり探すのは無しにして。
 お願い。この通りだから」
 弟が両手を合わせて謝った。そこまでして教えたくないのか、昔のことを。
 くそ、謝られたら余計に気になったじゃないか。
 やっぱり、弟が嘘をついているのか? 妹の言っていたことが真実なのか?
 俺が妹をいじめていて、弟が妹をかばっていたのか。
 弟の好きな女の子。彼女はそのとき現場にいて、俺が妹に乱暴するところを見ていたとしたら。
 気を悪くさせないため、俺と彼女を会わせないよう、弟が苦心するのは当たり前だろう。

 弟に問い詰めてまで過去の罪を思い出すべきか悩んでいた、その時だった。
「……見っけ」
 背後から、短いつぶやき声が聞こえた。
 振り向くと、眩しい金色の髪を伸ばした女子生徒が立っていた。
 金髪、俺と同じぐらいの身長。この子が弟の好きな女子に間違いない。
 ただ、弟はひとつだけ伝え忘れていることがあった。
 女子生徒はやけに体の発育がよかった。特に胸部。
 自己主張する胸の膨らみを制服で無理矢理押さえつけている。しかし押さえきれていない。
 むしろ、しわが浮かんでいるせいで二つの円形をはっきりと意識してしまう。
 失礼にならない速度で顔を背ける。見続けていたら下へと目線が移動してしまいそうだった。
 だが、ちらっと見た限りでは胴は細かった。足にはニーソックスを履いていた。
 きっと、未だに一度も目にしたことのない絶対領域がそこにある。
 一歩下がり、弟と並ぶ。この子を相手にするのは俺の役目じゃない。
「どこ行ってた? ずっと」
 女子生徒の台詞は弟には理解できるらしい。快活な声で答える。
「ずっと探してたよ。朝からずっと」
「……そか。なら良い」
 見ていないからわからないが、声から察するに金髪の子は機嫌を直したようだった。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/22(土) 19:43:22 ID:Dpu7A0J3<>  彼女は警戒していたほどの危険人物ではなさそうだ。
 気とられぬうちに立ち去ろうとして、振り向く。
「花火はどこにいたんだ? どこにもいなかったじゃないか」
 そして、弟の声を聞き固まった。
 女子生徒がどんな返事をするか聞きたかったわけじゃない。
 名前だ。花火、と弟は言った。
 何の脈絡もなく夏の風物詩の行方が話題に上るわけがない。女子生徒の名前は花火だ。
 ――花火。
 聞いたことがある、気がする。
 昔、小学校からの帰り道が楽しくて仕方がなかった頃の光景が頭に浮かぶ。
 俺と、弟と、妹と、あともう一人、誰かがいる。一緒に遊んでいる。
 女の子の名前を聞いて、昔を思い出した。
 ということは、この子が俺たち兄妹と遊んでいたもう一人なのか?

「おい、お前」
 不意に、ぶしつけな声によって現実に引き戻された。
「そこの一年、お前の葵の何だ? 彼氏?」
 弟の前に立って睨んでいる男がいる。名前は――愛原だったと拙く記憶している。
 うちのクラスの西田君と並んで女子生徒の間で有名な男だ。
 ただし、西田君は女子全般から好かれているが、愛原は違う。
 悪い方面でよく噂される。愛原に振られたとか、愛原に触られたとか、他にもよくない噂を色々聞く。
 葉月さんも愛原に告白されたことがあるらしい。すぐに振ってやったが、しつこく話しかけてくる、と言っていた。
 まとめると、スケベなところが女子から嫌われている男、ということになる。
 それでも顔が良いので、やはり愛原の周りに女子は集まっている。
 不条理な。男は顔じゃない。どの部位が肝心なのかは知らないが。

 弟は愛原に詰め寄られている。襟を掴まれ、弟が目を細める。
「僕は花火の彼氏じゃありません。花火に聞いたらわかるはずです」
「だったら、なんでこいつのこと呼び捨てにしてんのよ? 俺が言ったらニラんでくるのに」
「それは、僕が……花火と、昔から友達だったからです。小学校に入る前から」
 弟と幼なじみだった。ということは俺、妹両方にとっても幼なじみになる。
 さっきの回想に出てきたもう一人は、やっぱり花火という名の少女だ。
 だが、さっきから愛原は彼女を葵、と呼んでいる。ニックネームか何かか?

「ちっ、面白くねえ。なあ、彼氏じゃないんなら、こいつに近づくのやめてくれねえ?」
「な……っにを」
 愛原と弟の顔が近づく。鼻と鼻が触れそうな距離で、二人の双眸が正面からぶつかり合う。
「俺、こいつのこと狙ってるから、お前みたいなやつがいると邪魔なんだ。だから、諦めてくれよ。な?」
「そんなの……」
「いいから、言えよ。もう二度と近づきません。だから花火もボクに近づかないでくれ、って――――」
 愛原の言葉が最後まで続くことはなかった。
 喉を締め付けられていたのだ。横から割り込んだ手によって。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/22(土) 19:44:45 ID:Dpu7A0J3<> 「名前を呼ぶな」
「お……ぇ、ぅ…………ぁ、ご、ぃ……」
「お前には、許可していない」
 弟の制服が解放された。愛原は首を持って引きずられ、地面にはたき倒された。
 続けて、無防備な腹が踏みつけられる。一回一回の音が重い。手加減無しだ。
「ご、ぐっ、がぁ! おい、や、めぇっ! う゛げ、……が」
「顔だちは普通だな」
 踏みつぶす目的で行われていた蹴りが止んだ。愛原は既に声も出していない。
 腹を両手で押さえ、空を仰いだまま口を開閉する。
 女子生徒が、口を開く。足は愛原の頬を踏みつけている。
「こんな目に遭いたくないだろ。だから台無しにしてやる」
 愛原の顔がまたたく間に焦燥に彩られる。だがもはや、強者の目には映らない。
 何の言葉もなく、膝が上がる。愛原の目が閉じる。
 足が振り下ろされる。踵が直撃する――直前に、動作が止まった。
 弟が彼女を抱いて止めていたのだ。
「やめてくれ、花火! お願いだから、もう……こういうことをするのは」
「この男、お前を掴んだ。襟……」
「平気だって! 制服なんかどうでもいいから。だからやめてよ……ね?」
「わかった」
 あっさりと少女が足を下ろした。腰に巻き付いている弟の手に自らの手を添える。
「…………ん」
 微笑んでいた。ようやく得られた温もりを堪能するように、目を閉じる。

 隙をついて愛原が逃げ出した。ただし、中腰の姿勢で、何度もつまずきながら。
 姿が見えなくなったところで、ようやく俺は周りに意識を向けられた。
 文化祭の最中に起こった暴力沙汰を教師や生徒を始め、来校者に見られてはまずいことになる。
 しかし、幸いにも周りに人の姿はなかった。その場に残されたのは俺と、抱き合った二人の男女だけだった。

 抱擁を解いたのは弟だった。二人揃って名残惜しそうな表情になる。
「もう落ち着いた? 花火」
「ああ。でも、もう少し」
「それは、ちょっと…………」
「遠慮なんか要らないぞ」
「いや、だって……人前じゃちょっと」
 弟が俺を見た。言っているとおり、やはり俺の前で抱きついているのは恥ずかしいようだ。
 揚げ足をとるようで悪いが、俺の前じゃなければまだあの状態でいたのだろうか。
 どうなんだろう。女の子の方も満更ではなさそうな顔だったけど。

「……ああ、確かに」
 金髪の女子が、樹木に向けるような目で俺を見た。本当に忘れていたらしい。
 この子、最初からずっとぽつぽつとしか喋らないな。
 これほど無口な少女を相手に弟は会話を成立させていたのか。
 髪の毛の強い印象のせいで判別できないのかもしれないが、やはりこの子は見たことがない。
 ――あ、今気づいた。女の子の右頬に肌色の絆創膏が貼られている。
 頬全体を覆い隠しているせいで、整った顔の形がどこか不格好に見える。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/22(土) 19:46:00 ID:Dpu7A0J3<>  俺の視線が気になったのか、女子生徒は顔を顰めた。後ろにいる弟に振り返り、短く言う。 
「悪い。ちょっと話がある。二人で。だから」
「……やっぱり、こうなっちゃったのか」
 弟の口からため息が漏れる。
「ごめんね、花火」
「謝るな。悪くなんかない」
「兄さん、ごめん」
 また謝られた。今度は合掌していないが、表情が見える分、より謝罪の念が伝わった。
「なんで謝るんだ? お前にとって幼なじみだっていうなら、俺にとっても幼なじみだろ」
「そう、だけど。いろいろとごめん。これから何が起こるかわかるけど、僕には止めることはできないから。
 花火。君がどうしたいか、僕は知ってる。でも……止めない。止めないから、あんまり」
「大丈夫。軽いから」
「うん。…………兄さん、また家で」
 言い残すと弟はきびすを返した。校舎の方へと向かっていく。
 
 弟の姿を見送って、俺は女子生徒と向き合った。
 そしていきなり、左から殴られた。
 体が傾く。倒れる寸前で膝に力を入れて持ち直す。
 舌で鉄の味を味わわされた。頬の裏を舐めると鋭い痛みが走る。傷が長い線を描いていた。
「お前! 何をす、るんだ………………」
 憎しみの籠もった目は、妹に向けられて慣れているつもりだった。
 だが、俺は甘かったようだ。誰も、目の前の女の子のように、一心に強い負の感情を向けてくることはなかった。
 怨まれている。俺の存在そのものを憎んでいる。彼女の目が俺に、消えろ、消えてしまえ、と叫んでいる。

 ようやく思い出した。
 目がそっくりそのままだ。俺が最後に見た彼女の瞳の色から、少しも翳っていない。
 金髪の女の子の名前は花火。俺が知っている彼女は昔黒髪だった。
 触り心地が良くて、何度もいじった。いじる度にはたかれた。
 右の頬。本当は左頬と同じように、傷一つ無かった。今では絆創膏を貼っている。
 絆創膏の下にあるものが何か、見せてもらわなくても想像がつく。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/22(土) 19:46:52 ID:Dpu7A0J3<>  もう、疑う余地はない。
 昔と違い、かなりイイ感じに体が成長しているが、間違いない。
 ――こいつの名前は、葵紋花火だ。
 弟とは、半身を分けたように仲の良い幼なじみだった。
 俺にとっては、妹以上に可愛く思っていた妹的存在だった。
 すでに過去のことだ。取り返すことも、やり直すことも、修復することもできない。
 過去の俺がやったことは、花火との仲に決定的な亀裂をいれた。
 花火の体と人生を、最悪の形で台無しにしてしまっていた。

 花火の右手が、右頬を完全に覆っていた絆創膏をおもむろに剥がしていく。
 隠されていた肌が、顎から鼻へ向けて少しずつ露わになっていく。
 花火の顔が自由になる。右手が下る。左手が頬に当たる。
 左手の人差し指が、頬の傷痕を撫でた。右目の下から顎へ向けて一直線に伸びている。
 それをやったのは俺だ。花火の頬に残された創は、俺がつけたものだ。

 五寸釘を打ち込まれたように、脳が痛む。あふれだした膨大な情報量に耐えかね、頭が悲鳴をあげた。
 両手に感触が甦る。包丁の柄の感触だ。俺が、――を傷つけるために、持ち出した包丁だ。

 視界が脳裏に浮かんだ光景と切り替わる。
 妹が自らの肩を抱いて震えている。弟が妹を包むように抱きしめている。
 母が口元を両手で覆い床にへたり込んでいる。父はしゃがみ込み、何か叫んで、いや、呼びかけている。
 父が呼びかけている相手は、――だ。小さい頃の俺がもっとも嫌悪していた相手だ。
 ――は倒れたままで、自ら起きる気配を見せない。小さい俺が、ざまあみろ、と呟いた。
 ふと振り返る。視線の先に花火がいた。
 横向きに倒れ、右の頬を両手で押さえている。流れ出す血が絵の具を薄めた水みたいだ。
 花火が泣いている。痛みと、あと、俺が恐ろしかったからなんだろう。
 血と涙と鼻水でぐしゃぐしゃになりながら、花火が呟いた。
 小さな体に沸いた、堪えきれない憎悪を滲ませながら――この、ひとごろし、と。

 包丁を取り落とした。床が急速に近づく。逃れられず、鼻をぶつけた。

 回想から目が覚めた。俺は自分の膝に手をついて、どうにか立っている状態だった。
 吐き気が脳を不安定にさせる。気を緩めたらそこで終わりそうだった。
 たった今思い出した過去の情景。それを血で彩ったのは俺だ。
 どうして包丁を持ち出したのか、なんで妹のように思っていた花火を傷つけたのか、いったい誰を憎んでいたのか、
細部は少しも思い出せない。だけど、俺がやったことだけは間違いない。
 首を持ち上げて、花火の顔を見上げる。
 不自然に浮いた傷痕は、すでに絆創膏によって覆い隠されていた。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/22(土) 19:47:37 ID:Dpu7A0J3<> *****

「久しぶり。アニキ」
 アニキ――本名は口にもしたくない――は、今にも倒れそうなほどふらふらになっている。
 私に殴られたダメージを引きずっているわけじゃなさそうだ。
 昔自分のしでかしたことを思い出したらしい。私の傷を見た途端に体をぐらつかせたのが証拠だ。
「なんとか言いなよ。久しぶりとか、元気だったかとか。喋れないほど口の中、切れてないだろ?」
 アニキは口を少しだけ開けた。けど、半開きのまま固まった。
 何も言いたくないのか、言うべき言葉が無いのか、言うべきか躊躇っているのか。
 じゃあ、こっちから一方的に言わせてもらおう。
「よくも私の前に顔を出せたね。しかも、今更。何年も経って、ようやく会う決心がついた?
 赦されている頃だとでも思っていた? 無いよ。絶対に無い。アニキが赦されることなんか無い。
 私の傷は消えないんだから、それぐらいの仕打ちは当然だろ。歯を根こそぎへし折られないだけマシだと思いなよ。
 それより、まだ兄貴面してアニキの役を演じてるわけ? 気持ち悪いよ――なんで生きていられるの?
 ああ、そういえばあいつ、言ってたっけ。アニキは昔のことを忘れているって。だからまだ生きてんだ」
「俺は――」
 アニキがようやく口を開いた。ただし、顔は俯いたまま。
「お前に傷を負わせた。その、右頬に」
「ようやく思い出したね。じゃあ次は、言い訳してみる? なんで私に傷をつけたのか」
「わからない。俺は……誰かを嫌っていて、それで」
「そのとばっちりで、私の頬を切ったんだ。憎んでもいない女の顔にねえ。
 アニキってさあ……汚いよね。私はあれがあったせいで一年も学校を休んだ。誰にも顔を見せたくなかったから。
 なのに、普通に学校行って、あいつとちっさい妹の兄貴分をやってる。自分が恥ずかしくない?」

 唐突にアニキが頭を下げた。続けて言われるだろう台詞が私の頭に浮かぶ。
「すまない! いや、ごめん!」
 ……ほら、予想通りだった。
 アニキみたいに空っぽな人間の頭なんて、何回下げられても誠意を感じられないよ。
「赦さないって言っただろ。何の真似?」
「謝らせてくれ! 俺は、ひどいことして、ましてや自分でやったことを忘れていて!
 今の今までずっと謝っていなかった。だから……ごめん!」
 ――遅いよ、アニキ。
 なんで今更謝るんだよ? 全部手遅れだよ。
 すぐに謝ってくれていれば、同じ気持ちを持ち続けていられたのに。
 アニキとあいつとちっさい妹と私の四人、ずっと仲良しのままだったはず。

 なんか、馬鹿馬鹿しくなってきた。
 いつまでもアニキなんかにこだわってたら、あいつと遊ぶことができなくなる。
 声をかけず、その場を後にすることにした。
「待ってくれ! 花火!」
 呼び止められた。しかも名前まで呼ばれた。
 ま、いっか。アニキと会うのはこれっきりだ。二度と会うこともないだろう。
 足を止めて、振り向かずに言う。
「……なんか用? 私今から用事があるんだけど」
「俺がお前にできることは何か、ないのか? できることなら、なんでもやる」
「じゃあ、逆に聞くけど、アニキは何ができる? まだ高校生だろ。自立してもいないじゃん。
 できることが限られている人間にそんなこと言われても、私が得することなんかないよ」
 そういう意味では、私だって人のことは言えない立場だけど。
 私があいつにできることは、ずっと傍にいてやること。
 あと、あいつが求めてくることに精一杯応えること。それぐらいだ。
「そうだね、一つだけあるかな。アニキにできそうなこと」
「ホントか?!」
「ああ。――今日を最後に、二度と私の前に姿を見せないでくれ。それだけ。じゃね」
 言い残して、立ち去る。アニキが追ってくるような足音はしない。
 最後のアニキの顔、どんなんだっただろ。
 傑作な泣き顔になっていたら嬉しい。でもむせび泣く声は聞こえなかった。
 声を殺して、涙ぐらいは流してたかもしれない。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/22(土) 19:48:20 ID:Dpu7A0J3<>  校舎の角を曲がったところで、あいつは待っていた。
 私の姿を確認して、複雑な顔をしながら近づき、目の前で止まる。
「花火。…………もう話は終わった?」
「うん」
 声で返事した。でも聞こえなかったかも。一応、頷きもしておく。
 こいつと話すとき、私はどうしても声を張れなくなる。
 だから今のように、言葉を短く切って喋らなければいけない。
 アニキに対して普通に話していたのは、嫌われてもかまわない相手だからだ。
 でも、こいつは違う。こいつに嫌われたら、私はもう生きていけない。
 一年間のひきこもり状態から外に出た日。久しぶりに見たこいつの顔にどれほど癒されたことか。
 あの笑顔を一年間も見ていなかったことは、私の人生にとって大きな損失だった。
 こいつは、それからも事あるごとに世話を焼いてくれた。もはや一生尽くしても恩を返しきれない。
 返しきれないけど、生きているうちはこいつのためだけに動こうと決めている。
 アニキに近づくなと言ったのは、こいつのためでもある。
 いつまでも兄弟だからって一緒にいたら、悪い影響を受けるに決まってる。
 こいつの邪魔になる者や心を汚す者は、すべて排除する。
 奪おうとする人間は消してやる。私は絶対にこいつを放さない。こいつから離れない。

 肩を並べて歩く。こうやってゆっくり過ごすのは久しぶりだ。
 文化祭の準備とかでずっと会えなかったから、もう二週間ぐらいになる。
 だから、二週間分今日は甘えようと思う。と言っても、腕を組んでひたすら歩き続けるだけ。
「いいか? 腕」
「うん。もちろん」
 許可をいただいた。腕をとって、両腕で抱き込む。胸に埋め込むつもりで強く、強く抱きしめる。
 この時だけは、自分でも邪魔に思うくらい大きい胸に感謝したくなる。
 こいつだって表情こそ平静だけど、しっかり反応している。顔は紅くなるし、歩き方もぎこちなくなる。
 可愛いよなあ。私、こいつが好きだよなあ。
 早く私をモノにしてくれないかな。いくらでも汚してくれて構わないからさ。覚悟はとっくに済ませているんだ。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/22(土) 19:49:03 ID:Dpu7A0J3<> 「どこか行きたいところとかある?」
「いいや」
「なら、今から学校を出よう。妹がこんな姿を見たらものすごい剣幕で怒るに決まってる」
「…………わかった。いい」
 ちっさい妹。まだお前はこいつを狙っているのか。
 昔からそうだったな。ずっとこいつにくっついていた。そういや、あの頃はアニキにも懐いていたっけ。
 もう諦めるんだな。私とこいつの間に割り込めるスペースは一切残されていない。
 風呂にも一緒に入っているらしいな。話の最中に口を滑らせたとき、しっかり耳にしたよ。
 何もされていないんだろう? 全裸を見せても、押し倒されたことはないだろう?
 当然だ。所詮、妹。欲情の対象にはならない。
 私の胸の柔らかさを知っているこいつにとっては、ちっさい妹の体など小学生にしか見えない。
 ロリコンだったら話は別だが、これまた残念、こいつの性的嗜好は私の体にマッチしている。
 大きい胸、くびれたウエスト、整った尻、なめらかな足。全てを私は併せ持っている。
 年々成長しているから、まだまだ差はつくぞ。

 誰にも声をかけられることなく、校門を出た。
 これからずっと、制限時間までくっついていられる。
 けれど、時間はあっという間に過ぎていく。こいつといると、いつもこうだ。
 時間が止まってしまえばいいのに。時間制限なんか無視して、くっついていられればいいのに。
 ――制約を強いるやつらなんて、全員いなくなってしまえばいいんだ。

「花火」
「なんだ」
「こんなお願い、ずるいんだけど」
「ん?」
「僕のこと、嫌いにならないでいてくれるかな?」
「……もちろん」
 何があったって、私はお前を嫌ったりしない。命の続く限り、お前を愛する。
 お前が死にそうなときは私の命を分ける。もし死んでしまったときには、自らの命を絶って添い遂げる。
 私はお前と一緒にいたい。いつだって願いは変わらない。
 お前も、もし私を好いていてくれるのなら――ずっと、一緒にいてくれ。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/22(土) 19:53:17 ID:Dpu7A0J3<> 投下終了です。文化祭編はこれで終了です。
<> ヤンデレ家族と傍観者の兄
◆KaE2HRhLms <>sage<>2007/12/22(土) 19:56:31 ID:Dpu7A0J3<> あと、タイトルについてですが。
本当は文化祭編はタイトルを変えるつもりでした。
けどこっちの都合で変えるのもどうかと思ったので、「傍観者」のままにしておきました。

……傍観者とは違うッスね、この兄貴は。
いろんな方に誤解を招いて、申し訳ありませんでした。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/22(土) 20:11:18 ID:K6QvQlqA<> GJ乙!
しかしこの兄貴は理不尽な目に会いっぱなしでかわいそうです(´;ω;`)

長丁場の話になりそうだけど、完結までぜひ付き合わせて下さい <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/22(土) 20:16:23 ID:x//54Y38<> >>301
GJ!
てか過去になにがあったのさ……兄もただ者じゃなかったのか。
ところで兄が殴られてるときいつ葉月さんがすっ飛んでくるかと
wktkしてしまった俺ガイル <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/22(土) 20:23:59 ID:LIGs1s2j<> GJ!!
この後、兄貴の顔を見た葉月さんがどんなリアクションをしたのかが気になるな。

……そして、兄貴は過去にいったい何をやらかしたんだろう。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/22(土) 20:49:38 ID:YW44RO2Y<> じいちゃん殺したのが兄ちゃんだったりしてな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/22(土) 21:07:31 ID:ZMI5rMEU<> グッジョブお疲れ
相変わらず読ませるね <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/22(土) 21:57:54 ID:x//54Y38<> さっきから急に臨時保管庫のカウントが増えてる
皆読み直してるのかな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/22(土) 22:34:12 ID:+NaDaB1r<> グジョーブ

妹や幼なじみが弟を好きなのは勘違いが原因で、
弟はそれを知りながら黙っているというふうでもあるな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/22(土) 22:56:11 ID:K6QvQlqA<> >>305
読み返したけど、じいちゃんが亡くなったのは兄貴の生まれる10ヶ月前だぞ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/22(土) 23:05:51 ID:DjrNgRNS<> 全ては弟の罠だ!!
だって弟視点が出ていない!! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/22(土) 23:17:25 ID:LazT1M9p<> もしかして兄貴はヤンデレ一家に引き取られた子なのか?
両親殺して実の妹の花火を傷つけたとか・・・
それなら色々辻褄が合うんだが・・・ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/23(日) 00:39:47 ID:XLAKUQt6<> 兄は自殺するな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/23(日) 01:10:15 ID:/FVbMOKg<> 主人公が脈絡なく記憶喪失とかになるとその後の展開がどうとでもできるから萎えるってのはオレだけ?

でも読むよ。どんな結末でも良いんでキレイに終わってくれればと願います <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/23(日) 01:18:14 ID:kIMejPI3<> >>311
双子以外で同学年の兄妹なんてありえるのか?
他にも祖父の死の事実を周りが隠してるっていうのもありえるんだよな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/23(日) 01:32:47 ID:GtOgP9wI<> 続きが気になる気持ちはわかるが
予想を書き込むのはやめておいたほうが…… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/23(日) 01:41:51 ID:ZQq7s5/f<> >>314
兄4月生誕→十月十日→妹2月生誕 <> 名無しさん@ピンキー<><>2007/12/23(日) 01:44:21 ID:hZQVBzY0<> >>314
一応四月生まれと三月生まれの兄弟が同じ学年にいたので可能。
<> 名無しさん@ピンキー<><>2007/12/23(日) 01:45:34 ID:hZQVBzY0<> ↑悪い、俺の周りが抜けていた。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/23(日) 01:47:02 ID:CtAeyRRC<> 他人の楽しみを壊してまでダラダラ予想するクズども邪魔。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/23(日) 02:07:02 ID:+8oX6QNr<> 個人的に最後の弟の台詞の、
>「僕のこと、嫌いにならないでいてくれるかな?」
これが気になるな〜
本当は、花火や兄に隠している様な事があるんじゃないかと疑ってしまう
それこそ、それをばらすと花火が兄と復縁して弟を嫌ってしまう事とか <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/23(日) 02:40:56 ID:iU5ry4Pz<> チラシの裏にでも書いとき <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/23(日) 03:17:57 ID:zXhek4/G<> 予想屋ウザ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/23(日) 03:47:30 ID:5q/OG0xi<> もし当たってたら作者さんがやりづらくなるだろ…自重しろ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/23(日) 07:44:59 ID:0PN1cGHi<> なあ、花火ってヤン(キー)デレじゃないか? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/23(日) 07:53:30 ID:D0q4mXTO<> 職人が投下しにくい空気はやめようじゃまいか
予想しても、公言しないで自分の脳内にとどめておこう
(´・ω・`) <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/23(日) 09:36:52 ID:x5Y6DQrx<> >>301
今まで定番みたいな展開にあんまりと思ってた
だけど先が気になる面白い展開になってきたのでwktkしてます、GJ!
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/23(日) 18:27:51 ID:XLAKUQt6<> 兄かわいそうです(´;ω;`)

みんな幸せになるわけにはいかないんだねぇ… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/23(日) 18:51:50 ID:YMxSeT3E<> お兄さん二人に殺される前に早く逃げるんだ!! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/23(日) 19:14:43 ID:aj0v452X<> 葉月さんが守ってくれるさ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/23(日) 20:13:51 ID:pzeTe1RF<> >>301
GJ! 続きが楽しみでしょうがないぜw

というか弟って妹、澄子、花火のヤンデレに取り囲まれてるんだな
何か隠してるっぽいとはいえ羨ま……大変だなw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/23(日) 21:24:17 ID:YMxSeT3E<> ヤンデレは見方のうちは頼もしいが今回は敵だからな・・・。スリルありすぎる。
映画化したら貞子が出てくる映画より怖くなりそうだぜ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/23(日) 23:39:13 ID:dHvw+ula<> ヤンデレは主人公が敵の手にわたると悪魔の手先になる
つまりいいも悪いも主人公次第 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/23(日) 23:56:40 ID:c5kLd4cF<> >>332
ヒロインは闇の軍の将軍でお姫様。主人公は光の軍の弱い一般兵。
主人公は戦場で傷ついたヒロインを見つけて助ける。このときはお互いの立場を知らない。
ヒロインはそこで主人公に惚れちゃう。その後、色々あって闇の軍を裏切り、主人公の下に向かう。
でも主人公はヒロインをあの時助けた女だと気づかず、ただの敵将だと思い込んでヒロインから逃げまくる。
その過程でヒロインがヤンデレ化しちゃって両軍入り乱れたハチャメチャ展開に・・・






っていうファンタジーを思いついた。
まあどうでもいいですね。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/24(月) 01:11:24 ID:8BLUmzFv<> >>333

お約束だが言い出しっぺの法則は守ってくれるのかい?



敢えて言うなら、主人公の幼馴染み(ヤンデレ)かキモウトをデフォで頼む <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/24(月) 02:15:35 ID:v0gTao16<> >>333
敵将を寝返らせた功で大出世する主人公
将となった以上は主人公付きのメイドも必要になる
しかし主人公の世話をしてきた同僚の幼さんは面白くない・・・

という続きを思いついた <> きゃの十三
◆DT08VUwMk2 <>sage<>2007/12/24(月) 03:38:33 ID:hKyCT3xw<> 投下します。

――近未来。
宇宙から超ロボット生命体やらエイリアンやらが侵略を開始し、
地上では核実験によって生み出されたゴジラなどの 有名怪獣が破壊の限りを尽くし、
地下では爬虫類人間達や古代文明の生き残り達が地上の主導権を我が物にしようと攻めてきた。

そう地球は今、未曾有の危機に苛まれているのである

そして、日本政府は、
この危機を回避すべく徴兵令制度を復活させ20歳の男子は3年間の兵役を課せられた。

迷惑な制度を作ったものだと思いながら今日、俺も訓練生として軍隊に入隊した。

「…っと言う訳で君達は、微兵と言えども軍人だ!規律を守り最後まで戦うように 以上、解散!!」
自分の所属する部隊の教官の挨拶が終わり僕は、自分の部屋に戻ろうとした。
やれやれ、兵役が終わるまでこの長ったらしい挨拶を聞かされると思うと吐き気がするぜ

「さて…、N-UC0079、あなたは残りなさい 他の者は、全員下がりなさい!!」
俺は、軍服に付けたナンバープレートを見る。…あっ!『N-UC0079』!!
…って長官が呼んでるのは俺の事か

しかし、なんで?っと思いながら教官のところに向かう。
さっきの挨拶をマトモに聞いてなかったからだろうか
まともに長官の顔見なかったからわかんなかったが
どうやら俺の所属する部隊の長官は、自分と同い年ぐらいの女らしい

「ふふふ、会えないと思っていたぞ…やはり君と私は、『運命の赤い糸』で結ばれていたんだ」
女教官の妖艶な笑みを浮かべた。俺は、その微笑に見覚えがある…忘れもしない <> 【未曾有の危機】
◆DT08VUwMk2 <>sage<>2007/12/24(月) 03:39:35 ID:hKyCT3xw<> 中学の頃、僕をいつもストーキングしていた星川 双葉(ほしかわ ふたば)だ。
あまりにしつこいので「付きまとうな」っと言って以来、
学校を不登校になってたが、まさか軍に入隊して部隊指揮官になってただなんて…。

「ここでは、君はただの『訓練生』だ。つまり『教官』の私の命令は、絶対という事だ」
双葉は、いきなり俺を抱きしめると無理やり口付けしてきた。
そして、俺の舌を吸いつき舐め、しゃぶりつき、自分の唾液を俺の口内に流し込んだ。
それに満足すると双葉は、唾液の糸を引きながら唇を離していく

「はぁ、はぁ、もう…もう君は、私から逃げられないよ
あの時みたいに『付きまとうな』なんて言わせない、それどころか後悔するぐらい
私の事を好きにさせてあげるね」

それを境に双葉は、俺にセクハラ…いや、公然とレイプするようになった。
「○○くん、歯ブラシが無くなったので変わりに君の舌で私の歯を綺麗にしなさい」
「○○くん、箸がどこかにいったので口移しして下さい。変わりに君の食事の時に私が口移ししてあげます。」
「○○くん、君の事を思っていたら私の毛布がビショビショになったので罰として君がこの毛布の変わりに私を暖めなさい」
「○○くん、マツタケがしゃぶりたくなったので君のチンチンをしゃぶらせなさい」

「○○くん、君の子供が欲しくなりました。」


―――地獄だった。
好きでもない…いや、どちらかといえば毛嫌いしていた女を抱くのはとてつもなく辛かった。
俺は、一度、捨てた男のナニを丁寧にしゃぶり、「愛している」と捨てた男の精を自分の子宮に流し込む
プライドのないあの女が嫌いだった。
しかし、一番嫌だったのは、その毛嫌いにしていた女を抱いている時、その女に『好き』という感情を
一瞬だけだが感じてしまった自分だ。
プライドのないあのストーカー女に一瞬ながら屈服した自分が許せなかった。 <> 【未曾有の危機】
◆DT08VUwMk2 <>sage<>2007/12/24(月) 03:40:09 ID:hKyCT3xw<> ―――半年がたった。
宇宙から来た超ロボット生命体やらエイリアンは、それぞれ勇敢なアメリカ人兵士が倒し、
核実験によって生み出されたゴジラなどの 有名怪獣達は、ウルトラマンと名乗る正義の味方によって倒され、
爬虫類人間達や古代文明の生き残り達は、赤いロボットと鉄の城によって全滅した。

思ったよりあっけなく人類は、未曾有の危機を回避できた。
平和となったのだからもちろん徴兵令制度も廃止され、俺達若者は、晴れて自由となった。

しかし、俺には、自由なんて物などなかった。
――なぜなら星川双葉が俺の子を宿していたからだ。

日本政府は、『徴兵令制度』の代わりに『母子保護法』なるものを発布した。
それは、未曾有の危機によって無くなった人口を取り戻そうというもので
内容は、「子供を設けた者、子供が成人するまで妻と子供を生活面、精神面で保護するべし…できない場合は、死刑」というもの。滅茶苦茶だ。
つまり、俺は、後、20年間も双葉と共にしなければいけないのだ

―――双葉は、お腹を撫でながら微笑んでいる <> きゃの十三
◆DT08VUwMk2 <>sage<>2007/12/24(月) 03:41:05 ID:hKyCT3xw<> 投下終了。 <> きゃの十三 ◆DT08VUwMk2 <>sage<>2007/12/24(月) 03:46:35 ID:hKyCT3xw<> 訂正

主人公の一人称が一部『僕』になってますが正確のは『俺』です。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/24(月) 09:35:25 ID:/+llbecH<> >>339

GJっす
こんな上官にセクハラされたい
(;´Д`)ハァハァ <> 名無しさん@ピンキー<><>2007/12/24(月) 09:57:19 ID:hYGTK0Tz<> GJ
こういう話はツボだわー <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/24(月) 12:07:01 ID:LTpcHg1k<> >>339
いいよおおおお!!!!!!!!(*´Д`*)ハァハァ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/24(月) 12:30:01 ID:HvnDuML9<> マツタケがしゃぶりたくなったのでってなんだよwwwwwwwwwww <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/24(月) 13:26:23 ID:F+RW9TBd<> ゴジラは日本人科学者が新型爆弾を使って
無理心中したんです。

ウルトラマンに倒されたのは、寒がりで
襟巻きしていた恐竜です。




と言う話はおいといて、GJ !! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/24(月) 16:06:17 ID:ogRTpX8X<> 先生!坂の上の雲は純文学に入りますか!?

どうみてもあれは軍オタの妄想文に見えるんですけど! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/24(月) 16:06:50 ID:ogRTpX8X<> 誤爆した・・・・・・

ちょっとヤンデレ娘に挿されてくる <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/24(月) 16:22:36 ID:uD9+acMa<> ヤンデレでもいやヤンデレの彼女欲しい

今日はさみしい… <> 名無しさん@ピンキー<><>2007/12/24(月) 17:05:57 ID:ogRTpX8X<> なんか2chの方が凄いことになってるな
全スレ落ちた <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/24(月) 17:16:26 ID:8mXpU2tG<> うちは母さんがイギリスの人でよかったぜ。
宗教のおかげで家族皆でクリスマス過ごす。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/24(月) 17:19:40 ID:dYO2/kI2<> ヤンデレって、視線を合わせた途端に勝手に向こうが妊娠してそうだな
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/24(月) 17:35:36 ID:fCOEnaJL<> 想像妊娠か。


そして、より強い力を持つヤンデレに腹を引き裂かれる、と。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/24(月) 21:57:24 ID:EAMLiiRN<> ヤンデレ萌え〜(*´Д`)って言いながらこのスレ覗いてたら隣のアパートの奴が
「私だけを見て」
って妨害して来やがった。なんだよ(´・ω・`) <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/24(月) 22:22:21 ID:Sa/8J2mS<> おまww <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/24(月) 22:30:10 ID:eigr0ny2<> なんだよって……フラグだよ!

……ふと思ったんだが、ヤンデレとのフラグって恋愛フラグなのか死亡フラグなのか、どっちなんだ? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/24(月) 22:32:28 ID:MJhvX58T<> シュレディンガーの猫じゃね? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/24(月) 23:07:07 ID:YNOT8x0k<> じゃあ確認してくる <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/24(月) 23:29:45 ID:AVFjfR6f<> >>357
無茶しやがって
彼のことはヤンデレスレの英雄として永く伝えられていくだろう、そう7レスぐらい <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/25(火) 00:17:19 ID:SMj5KyCl<> シュレディンガーの猫か…
きっと何処かの世界の俺はイケメンで鈍感でヤンデレに追い回されるクリスマスを送っているに違いない <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/25(火) 01:44:58 ID:nmBFfSOS<> >>359
中に猫なんていませんよ? <> 独人達のクリスマス・イブ
◆Z.OmhTbrSo <>sage<>2007/12/25(火) 03:07:28 ID:DEL/dzKj<> 投下します。
午前三時。ぎりぎり夜と言える、かな? <> 独人達のクリスマス・イブ
◆Z.OmhTbrSo <>sage<>2007/12/25(火) 03:08:21 ID:DEL/dzKj<>  十二月、二十四日。クリスマス・イブ。
 日本語での「はい」を英訳した名前の聖人が生まれた日――を祝う日だ。
 かの人が生まれた日は、本当はわかっていないらしい。
 なんらかの事情があって師走の二十四日を聖誕祭としたのだろう。
 あえて二十四日を聖誕祭の日付に設定した理由なんか知らない。
 僕はカトリックとは無関係な人生を 送ってきた。これからも、きっとそうなるはずだ。
 だから知っているわけもない。知的好奇心を刺激されることもない。
 今日のこの日は、ただ周りの人間の浮かれた雰囲気に影響されて、ケーキやチキンを食べて過ごす程度のことしかやらない。過去に存在した崇高なる偉人に、誕生日おめでとう、なんて言わない。
 晩ご飯をいつも通り――ちょっと豪勢にケーキ付きだけど――に買って、家に帰ってダラダラして、眠るだけだ。

 僕に彼女はいない。
 僕にとって第一に優先されることは、趣味で毎月行うバイクツーリングだ。
 まだこの歳で、趣味の時間を邪魔されたくない。
 そんなことを言っているうちに三十路を迎えて結婚できなくなっても知らないよ、とは妹の弁。
 僕は今年大学を卒業して新卒で今の会社に就職したから、二十三歳だ。
 あと七年、いや六年と数ヶ月でようやく三十歳になる。
 少しも危機感が沸いてこない、というのが正直な気持ちだ。
 父親も三十歳を過ぎてから結婚したと言っていた。
 三十路を過ぎて独身の人は、職場の先輩の中にも男女問わず数人いる。
 中にはバツイチの人だっている。
 今のうちから結婚できないことに焦っても、なんにもならない。
 それよりも、早く仕事に慣れたいというのが最近の僕の望みだ。
<> 独人達のクリスマス・イブ
◆Z.OmhTbrSo <>sage<>2007/12/25(火) 03:09:17 ID:DEL/dzKj<>  通勤用のスクーターを駐輪場に駐め、鞄を手にし、アパートの二階へ向かう。
 二階には三部屋分の戸が構えてある。僕の部屋は階段から見て一番奥だ。
 そうすると、部屋に着くまでに二つ分ドアを通りすぎることになる。
 冬の季節はこの距離がちょっとだけ恨めしい。

 一番手前の部屋は空き部屋だ。僕が入居した時は髪が茶色で目のきつい、派手めの女性が住んでいた。
 その女性が引っ越したのは五六月ごろだった。
 正確には、引っ越したというより忽然と姿を消してしまった、という感じだ。
 引っ越す前日の夜、彼女はアパートの階段に座って寝ていた。飲み過ぎていたらしい。
 僕が彼女を発見できたのは、その日偶然にも会社で残業していたからだ。
 もし僕が発見していなかったら彼女は危険な目に遭っていたかもしれない。
 部屋に連れて行ってくれと頼まれたので、部屋に運び込み、ベッドに寝かせた。
 その後は、もちろん何もせずに部屋を後にした。
 あの女性と関わったのはその時だけ。
 彼女に関して思い出すことはあの一件だけしかない。
 だから、彼女がいなくなってから数日経ち、彼女の知人を名乗る人や警官に行方を尋ねられても、
僕は助けになりそうなことを言えなかった。
 あれから半年以上が過ぎた。だけど、彼女についての話は何一つ耳にしていない。
 犯罪に巻き込まれてしまったのか、恋人の男性と逃避行しているのか。
 なんにせよ、無事でいてくれたらいいのだけど。

 僕が帰ってくると、必ずと言っていいほど発生するイベントがある。
 二階の真ん中の部屋、つまり僕の部屋の隣だけど、その部屋の前を通り過ぎようとした瞬間に、
タイミングを計ったように部屋から住人が飛び出してくる。
 今日こそはと思い、音を立てないようゆっくり歩いていたというのに、やはりこの日も見つかってしまった。
 鍵を解く音がした。続けて勢いよくドアが開く。
 ドアに押し出された寒風が僕の全身めがけて襲来するから、ゆっくり開いてほしいと毎日思っている。
「お帰りなさい。健太さん」
「ただいま帰りました……です」
「いつも通りの時間にお帰りですね。うふふ…………女性と会う予定は、なかったのですか?」
「……まだ彼女はいませんので。それに誘われることもありませんでした」
 ドアを開いて現れたのは隣人の美濃口さんだ。
 僕が帰宅する時間にはいつもいて、こうやって出迎えをしてくれる。
 仕事は一体何をしているのだろう。時々疑問に思って問うけど、美濃口さんは聞いても教えてくれない。
 おしとやかな容貌をしているうえ、丁寧なしゃべり方をするからどこかのお嬢様じゃないかと密かに疑っている。
<> 独人達のクリスマス・イブ
◆Z.OmhTbrSo <>sage<>2007/12/25(火) 03:10:19 ID:DEL/dzKj<>  美濃口さんは柔和な顔に笑みの成分を加えた。癒しの声で僕に語りかける。
「そうですね。会社に勤めていらっしゃる方はなかなか恋人を作る機会がない、と仰いますもの。
 健太さん、悲観されることはありませんよ」
「悲観はしてませんよ。恋人はまだ欲しくありませんので」
「あら、どうしてですか? 女性とそのような関係を結ぶのはお嫌いですか?」
「いえ、そうじゃなくて。今はバイクの方が好きだし、こんなんじゃ構うこともできないだろうから」
「心配ありませんよ」
 間髪入れず、躊躇いもなく、真顔で断言された。
「女性というのは、本当に好きになった男性に対しては尽くすものです。
 健太さんが忙しくても、構ってあげられなくても、いつだって見ています。
 見ているだけで幸福感を覚える女性だって、世の中にはいるのですよ?」
「そう、なんですか?」
 つい疑ってしまう。だって、会社の同僚は彼女がうるさくて仕方ない、とよくぼやいている。
 女の人と付き合ったことがない僕は、友人との会話でしか恋愛の知識を得ていない。
 だから、美濃口さんの言葉は実のない励ましにしか聞こえない。
「はい。だって私は健太さんを見ているだけで幸せですもの」
「え……ぇ?」
「……あ。もちろん隣の世話焼きお姉さんとして、ですけどね」
「で、ですよね。あは、ははは」
 びっくりした。告白されたかと思ったよ。
 だよね。美濃口さんみたいに綺麗な女の人に男がいないはず、ない。
 これから彼氏と出かけたりするのかもしれない。
 美濃口さんに彼氏がいることについて、まったく名残惜しくないか、と問われればノーだけど。

「ああ、そうそう。はい、これをどうぞ」
「え、あ……どうも」
 美濃口さんに渡されたものは、皿に盛られた鳥の唐揚げだった。
 スーパーで買ったらだいたい四百円ぐらいはする量だ。つまり、パーティーセット並み。
 しかもこんがりきつね色に揚がっていて、美味しそうだ。
「いいんですか? こんなにもらって」
「はい。ご近所の方にも同じようにお裾分けをしていますので」
「ですか。すいません。いつもいつももらってばかりで」
「いえいえ。こちらこそ。……健太さんからは既に十分なほど、色々なものをいただいていますから」
 僕がお礼を言うと、美濃口さんはいつもこうやって切り返す。
 そう言われても、僕は美濃口さんの助けになりそうなことをしていないから、対応に困る。
 だから、いつも通りに応えるしかない。
「それじゃあ、これから困ったことがあったら言ってくださいね」
「はい。もちろんそうします」
 美濃口さんは嬉しそうに笑った。
 一度も頼みごとをされたことがない僕にとっては、ちょっと寂しい返事だった。
<> 独人達のクリスマス・イブ
◆Z.OmhTbrSo <>sage<>2007/12/25(火) 03:11:56 ID:DEL/dzKj<>  美濃口さんと別れ、自分の部屋の前に行く。
 鍵穴に鍵を差し込み、捻る。しかし手応えがない。
 もしかして施錠し忘れたかな、と考えたが、今朝はちゃんと鍵をかけてから出勤した。それは間違いない。
 では、誰かが開けたということになる。
 もしや泥棒か? あまり金は持っていないけど、それでもとられたらまずいものはある。
 ドアを開けるか開けないか逡巡していると、ふと閃いた。
 ――部屋の合鍵を持っている人間はもう一人いる。
 僕が実家から離れてこの町に住み、しばらくしてやってきた肉親に渡していた。
 彼氏が近くに住んでいて、部屋に乗り込んだら女が居てそのことで喧嘩したから泊めさせろ、
と言って僕の城に飛び込んできた。
 そこまで傍若無人な振る舞いをするのは、僕の家族の一員であるアイツしかいない。

 ドアを開ける。玄関を見ると、僕の靴よりサイズは二回り小さい、けど質量は二倍はあるだろうブーツが一組、
出船の形になって置かれていた。
 ため息を短く吐いて居間へと向かう。そこには、予想していた通りの相手がいた。
「あ、健太。おかえり。邪魔してるよ」
 そいつは、可愛げを欠片も見せることなく、缶チューハイを飲みながらテレビを見ている。
 150cmほどの小柄な体に、僕への嗜虐心と不敬の念を抱く、妹の康美だ。
 肩を過ぎるまで伸びた長い髪とは対照的に、前髪は短めに切っている。
 額がよく見えるので性格は明るそうに見える。だが、実は違う。
 明るいというより陰険だ。恋人に対してはどうか知らないが、少なくとも僕に対しては優しいところを見せない。
 僕が自動車学校でバイクの講習を受けていたときのことだ。
 バイクにまったく触れたことのない僕は五時間も遅れたというのに、同じ日に入校してきた康美は
原付を乗り回していた経験もあり、規定の実技講習を受けるだけであっさり試験をパスした。
 僕が欲しいバイクがあると言った時には、メーカーがよくリコールを起こす箇所の情報をこれでもかと
言わんばかりに集めてきた。さらに、バイク盗難がいかに多いかを伝え、購入意志を萎えさせてきた。
 僕のためにわざわざ集めたのではなく、僕の邪魔をするために面白がって集めたのだろう。
 そうに違いない。断じてもいい。康美は天然の意地悪女なのだ。
<> 独人達のクリスマス・イブ
◆Z.OmhTbrSo <>sage<>2007/12/25(火) 03:13:16 ID:DEL/dzKj<>  鞄を壁のフックにかけ、コートを脱ぐ。次いでネクタイピンを外す。
 ネクタイを解いている最中に話しかけられた。
「やっぱ、今日も一人なわけ? テレビじゃ恋人たちのクリスマス、とかやってるのにね」
 声を聞くだけでわかる。康美はにやにやしている。僕に恋人がいないことを心底楽しんでいるのだ。
「それを言わせたらお前も同じだろ。彼氏はどうしたんだよ」
「知らないの? 最近は女同士でクリスマスを過ごすことだってあるんだよ」
「知らない。でも、それならなんでここにいるんだよ。友達はどうした?」
「メールで、明日パーッとやろ、って言ってた。ホントは今日の予定だったんだけどね。パーティ。
 帰るのもめんどくさいから今夜は泊めてよ。どうせ誰も来ないんでしょ?」
「……ああ」

 こいつ、僕のことを兄だと思っているんだろうか?
 昔はお兄ちゃんとか呼んでいたのかもしれないけど、今となっては名前を呼び捨てだ。
 もう過去の康美の表情は、僕には思い出せない。
 成長した今の顔が純粋だったころの康美のそれを塗りつぶしている。侵食している。
 僕、ここまで康美を性悪にさせるほど駄目な兄貴だったのかな。
 そりゃ、大学だっていくつも受けて最後の最後でレベルの低い学校にようやく引っかかった。
 就職も、パソコンがちょっと使えるぐらいで他に技術も資格も持っていなかったから、
給料の安い今の会社に勤めることになった。
 偏差値の高い国公立大学を易々と合格できる頭脳を持った康美からすれば、僕は大層しょぼく見えるんだろう。
 だけど、人格のいい人間ならそんなことは気にしないはずだ。
 康美は頭脳を堅実に構築できた代わりに、人格形成が土台の設計段階から狂っていたに違いない。
 それでも恋人ができる。僕が言うのもなんだけど、まったく男というのは馬鹿だ。
 顔が良ければいいのか。性格は悪くてもいいのか?
 僕は断固、そんな女性とは付き合いたくない。ノーだ!

「健太。一つだけ言っておく」
「なんだよ」
「私が寝てる部屋に入らないでよ。入ったら――クリスマスが来るたびにうなされるような目に遭わせてやるから」
 入らない、絶対に入るもんか、……とは心の弁。口にはしない。
 いたずらに康美の好感度を落とす必要はない。
 康美が結婚して僕の前から消えるまでは、今のままでいたいから。
<> 独人達のクリスマス・イブ
◆Z.OmhTbrSo <>sage<>2007/12/25(火) 03:14:19 ID:DEL/dzKj<>  風呂から上がって居間を覗いたら、康美の姿はなかった。
 康美がいるであろう、居間に隣接している部屋の明かりは消えている。
 昔から康美は早寝早起きの習慣を身につけていた。一時期は新聞配達までしていた。
 もしかしたらだけど、その習慣が康美を秀才と言えるまで成長させたのかもしれない。
 事実だったとしても、真似はしないからどうでもいいや。
 僕は夜更かしするのが好きなんだ。

 テーブルの上にノートパソコンを置いて、スイッチオン。
 毎回聞かないと落ち着かなくなってきた駆動音を立てながら、OSが立ち上がる。
 デスクトップ画面が表示され、アプリケーションが自動実行される。
 室内に設置してあるルータとパソコンが無線接続された、と文字が語る。
 画面に表示されているのはチャットの画面。
 僕はいつも、パソコンの電源を入れる度に数分、場合によって一時間ほどチャットする。
 相手は毎回決まっている。会社の同僚――じゃなくて、会社で知り合った友人だ。
 アイコンをクリックして、相手をコールする。
 腕を組み、目を瞑って待つ。さて、今日もパソコンの前にいるだろうか。

 軽快な音。チャット相手の返信音だ。
 やっぱり今日もいたのか。僕もアイツも似たもの同士だな。暇人ズだ。
 キーボードを指先で叩く。
『メリークリスマス! 調子はどう?』
 打ち終わってから、中指でエンターキーを押し、反動で手が持ち上がる振り。
 もちろん意味は無い。ただの癖だ。
 テーブルに肘をついた途端、応答があった。
『メリー。健と同じだ』
 要約すると、恋人と一緒ではない、の一つに集約させられる。
 嬉しい返事だ。やはりこいつと僕は似ている。付き合い下手でモテない。
 思わず、笑みがこぼれた。

 僕の方から簡単な話題を振ってみる。
『ご飯何食べた?』
『とりあえず鳥。健は?』
『僕も鳥。あとケーキがある(ホールじゃないぞ)』
『ケーキ、買いに行ったけど無かったんだよ。どこを回ってもなかった。昼からだぞ?』
『昼から行ってたのかよ!』
 仕事をする時間帯が全く違う。清掃会社の社員のこの男、凪峰と僕じゃ職種が違うんだから当然か。
 凪峰と僕が会うのは、始業前の数十分だけ。休憩室でコーヒーを飲みきるまで会話する。
 凪峰のシフトは八時より前の時間までらしい。その後で帰ってしまうからだ。
 僕としては、他の社員の人と変わってもらいたいけど、シフトを変更するのは無理らしい。
 凪峰も僕と同じで今年から今の会社で働き始めたというから、自由には振る舞えないのだろう。
『健の買ったケーキはどんなのだ?』
『コンビニで売ってるショートケーキだよ』
『形が崩れてただろ?』
『その通り』
 アルバイト店員の手つきが拙いおかげで、僕の買ったケーキは袋に入る前に何度か横倒しになった。
 文句を言おうと思った時にはすでに袋の中に収まっていたから、キャンセルするのが躊躇われたのだ。
<> 独人達のクリスマス・イブ
◆Z.OmhTbrSo <>sage<>2007/12/25(火) 03:15:39 ID:DEL/dzKj<> 『で、健は一人なわけ?』
『ふふん、聞いて驚け! ……女がいる!』
 羨ましがるがいい、凪峰よ! それが僕にとってのクリスマスプレゼントになる!
 さてどんな返信がくるか、と心待ちにしていたのだが、一分待っても反応がない。
 まさか、これぐらいで怒ったのか? いや、凪峰は冗談の通じない人間じゃない。
 もしや、女の存在に腹を立てた、とか? 
 実は僕の家にいる女は妹でした、ってネタばらしするつもりだったのに、これじゃ気まずい。
 うーん。こっちからバラそうかな。

 ネタばらしの文章を推敲しつつ打っているとき、返信があった。
『相手誰』
 そんな名前の人が凪峰の友人にいるのか、とか最初に思いついた。
 でも、違うだろう。その女は誰よ? という問いのはずだ。
 答えとして、序文のみを送信する。
『昔から俺とずっと一緒にいて』
『いつから』
 返事はしない。文章を続けて打つ。
『一つ屋根の下に暮らして』
『嘘だ嘘だ嘘だ』
 悔しがっている凪峰の表情が浮かぶ。さらに誤解を招く返事を送る。
『時には同じ布団の中で眠ったことのある相手』
『嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘』
『そいつの名は――』
「……康美だよ」
 呟いて、タイピングしようとした時だった。

 まず、コール音が鳴った。続けて、眠りかけたときにだけ鳴らすと決めたはずのパニック音が鳴る。
 凪峰が間違って押したのかも、と最初のうちは思っていた。
 だが、いつまで経っても音が鳴りやまない。
 コール音、パニック音。呼ばれる、混乱する。音が重なる。耳に残響する。
 イライラし始めた。制止の呼びかけをする。
『おい、やめろよ』
『うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいさいううるさいうるさい』
 また、コール音。
『そんなわけないぜったいにおまえにそんなあいてはいないうそをつくな怒るぞ』
『おちつけ』
『みとめんみとめないみとまみとめみとめるわけにいかない』
『変換しろ』
『どこのおんなだいつからだいつからでもかまわないかんけいない どこの女だ』
 一体どうしたんだ、こいつ。
 凪峰がここまで取り乱すなんてこと今まで一度もなかったのに。
<> 独人達のクリスマス・イブ
◆Z.OmhTbrSo <>sage<>2007/12/25(火) 03:16:45 ID:DEL/dzKj<> 『ひとがいないあいだにかってに』
『だれのきょかをとったんだいったいどこのどろぼうねこだ』
『お前に恋人なんかいないそうだろう』
『嘘なんだろう?』
『お前は女に言い寄らない』
『どうせ向こうから近づいてきたんだろ』
『ちくしょう め!』
『おまえもおまえだすきをみせるからそんなことになるんだ』
『はやくおしえろ 待たせるな。名前は?』
『早く答えろ』
 連続の書き込みの後、返事の催促がやってきた。
 せっかちな相手のために、簡潔に返事する。
『妹』
『は』
『妹。実家という一つ屋根の下でずっと暮らしてきた相手』
『なんだそれ』

 突然凪峰がチャットから抜けた。別れの挨拶も何もなしだった。
 いつもならこっちから落ちるまでずっと留まっているのに、今日はやけにあっさりしていた。
 あいつ、彼女がいないことを冷静さを失う程に気にしていたのか。
 悪戯でやったつもりだったけど、結果的に傷つけてしまったかもしれない。
 明日の朝、凪峰に会ったら謝らなくちゃいけないな。

 今日何度目かのため息を吐いて、僕は台所へ向かった。
 冷気ですっかり冷めてしまった美濃口さん特製唐揚げをレンジで温める。
 温め終了後、衣をつまんで少し熱い唐揚げを口に運び、頬張る。
 美味しい。これならいくらでも食べられそうだ。
 それに加えてコンビニで買ってきたケーキもある。
 大量の美味しい唐揚げ、プラス、ダウン経験済みのケーキ。
 幸せだけど、体重増加をどうしても促してしまう組み合わせだ。

 テレビの電源を入れる。
 チャンネルを変えていくと、民放の中にはカップルの姿を熱心に映している番組もあった。
 それを見た、僕の感想。
「あー……バイク乗りたい。新しいバイク、買いたいなあ」
 ぼやいた後、テーブルに突っ伏す。
 クリスマスに恋人の姿を見ても危機感が沸いてこない。焦燥感にかられない。
 むしろ、外国産のバイクが思い浮かび、物欲が首をもたげてくる。
 頭の中に保存済みのバイクカタログを眺めながら、思う。

 本当に僕って恋人が欲しくないんだなあ。……いいんだか、悪いんだか。
<> 独人達のクリスマス・イブ
◆Z.OmhTbrSo <>sage<>2007/12/25(火) 03:17:53 ID:DEL/dzKj<> *****

 机の上に乗っているアナログ時計に目を向ける。午後七時、十分前だ。
 そろそろ、健太の奴は家に帰り着いたころだな。
「……よし」
 パソコンを置いている机の席に着く。この机は、会社の廃品を貰って使っているだけ。安物だ。
 けど、ここはただのパソコンデスクじゃない。
 私と健太を繋ぐための、神聖なる場所だ。

 健太はなにやら勘違いしているようだが、私の性別は女だ。決して男ではない。
 だがしかし、勘違いするのも無理はない。
 私自身、狙って男っぽい格好をしているし、加えて女にしては背も高い。
 会社の健康診断で測ったときは、178cmだった。健太の背は私より下だ。
 残念だ。小学生のころみたいに同じ目線で向き合いたかった。
 時の流れとは残酷だ。そして、人の成長というものも。

 本棚から箱入りのアルバムを取り出す。
 箱からアルバムを引き出し、付箋のついたページを開く。
 六年二組、男子十五名、女子二十一名。
 このページには、卒業した時点でのクラスメイトの顔写真が載っている。
 当然、私と健太も同じクラスだから、同じページに映っている。
 ただし、私の顔写真の下には、赤坂めぐみ、と書いてある。
 今の私の名字は凪峰だ。名字が変わったということは、つまり両親が離婚したということ。

 実は、健太が私の存在を忘れているのには両親の離婚の時期に理由があった。
 小学校卒業時点では、両親は離婚していなかった。
 しかし、私が卒業した後で父と母は離婚した。
 不仲になった原因は何なのか、未だにわからない。
 その頃の私は健太を見つめることだけ考えていて、両親を見ていなかったのだ。
 だから、突然両親が離婚して父親が去っていったときは訳も分からず、呆然としてしまった。
 悲しくなかったかというと、嘘になる。だが、本格的に悲しみに襲われたのはその時ではなかった。

 その後で、私を引き取った母が言った。――遠い場所に引っ越すことになった、と。
 すぐに理解した。この町から引っ越す。健太の居る町から。健太に会えなくなる。
 冗談じゃなかった。健太と別れるぐらいなら家出するとまで言った。
 けれども、当時の私は小学六年生、十二歳。
 一人では生きられないし、捜索する人たちから逃げる手段も持っていない。
 どうしようもなかった。なにもできなかった。母についていく以外、私に生きる道はなかった。

 引っ越し当日は、同じクラスの友達、近所の子供たちとその親、あと、健太が見送りに来てくれた。
 泣いてはいなかったけど、瞳は悲しみの色に染まっていて、私を見ていなかった。
 健太も私と同じ気持ちだった。別れを惜しんでいた。
 だから私は、健太を慰めるため、自分自身に生きる目的を与えるため、健太に約束を持ちかけた。
 ――もう一度会えたら、私をお嫁さんにして。
 健太の真っ赤な顔は、思い出すたびに私の心を温めてくれる。
 私たちは将来を誓い合い、別々の地で暮らしていくことになった。
<> 独人達のクリスマス・イブ
◆Z.OmhTbrSo <>sage<>2007/12/25(火) 03:19:35 ID:DEL/dzKj<>  高校を卒業してから、私は健太を探すことにした。
 しかし、小学生時代に住んでいた町に健太の家族は住んでいなかった。
 健太の父親は仕事柄転勤を繰り返していたのだ。それに合わせ、家族も引っ越していた。
 そうなるともはや探す手がなかった。健太の家族の行方を知っている人に心当たりなんかない。
 消沈し、私は一旦健太のことを諦めた。

 だけど、私は運に見放されてはいなかった。
 清掃会社に勤め、仕事先である会社に行ったとき、成長した健太に再会したのだ。
 その時ほど、会社の制服に帽子が付属していたことに感謝したことはない。
 涙が流れた。嬉しくて、いろんな思い出があふれ出してきて、恋心が再燃した。
 それからの私は先輩から感心されるほど熱心に仕事をするよになった。
 健太と話す時間を作るため、より早く効率的に仕事をこなさねばならない。
 努力の甲斐あって、現在では毎日二十分話せるまでになった。
 まだ緊張して上手く喋れないし、昔の約束も話せていない。
 けれど、必ずや健太を手に入れてみせる。私の将来の夢はお嫁さんだ。
 うん、小学校時代の私の考えでは、二十三になった私は健太と結婚しているはずなんだけどね。
 でも、何歳までに結婚するという設定はしていない。
 健太と二人でゴールインできれば結果オーライだ。

 健太とチャットするようになったのも、二人の距離を埋めるための一環だ。
 チャットするとき、こっちのタイピングのスピードが遅くては相手が飽きてしまう。
 毎日毎日練習して、今では健太と会話するときの速度までには達した。
 あとは、さりげなく私の正体を明かしていくだけ。
 そして、健太を私の手に……ふふふふふ。

 パソコンからコール音。アルバムを急いでしまい、モニタと向き合う。
 私がチャットする相手は後にも先にも健太だけ。
 健太と共に人生を歩んでいくのも、未来永劫私だけしかいない。
 
 マウスを使って健太へ向けて返信の呼びかけをする。
 続けて、何気なさを装って健太への挨拶文を打つ。
『メリークリスマス、健太。さあ、今すぐ家に来て私を抱いてくれ』
 ……何て文を作っているんだ、私は。これじゃ本心丸出しじゃないか。
 だいたい、健太は私のことを男だと思っている。
 健太は同性愛者じゃないだろう。抱いてくれ、と男に言われたら引くに決まっている。
 駄目だ駄目だ。落ち着け。健太を前にしたとき、私はどんな感じにしゃべっている?
 健太のことは健、と呼んでいる。しゃべり方はそっけない。
 そして、男――もとい、恋人がいないということを全面に押し出すべし。

 よし。大人になってから初めて迎える、健太とのクリスマス。
 一発目はこれで行こう。

『メリー。健と同じだ』 
<> 独人達のクリスマス・イブ
◆Z.OmhTbrSo <>sage<>2007/12/25(火) 03:20:39 ID:DEL/dzKj<> *****

「ああっ……健太、さん……。そんな風に微笑まれたら、私は、もう……っ」
 パソコンのモニタには、私の愛するあの人の顔があります。
 誰もが隠したがる鍵をかけた自室での行動。
 私にも知られたくないことがあります。今やっていることもそうです。
 でも、内緒にしていることだからこそ、知りたくなるのです。
 想い人に対しては特にその欲求が強い。
 ごめんなさい、健太さん。
 あなたが部屋にいる時間はいつも心の中に謝意が常駐しています。
 悪いとはわかっています。でも、やめられないんです。
 家事をしていても、仕事をしていても、ご飯を食べていても、自分を慰めても、治まらないんです。 

「健太さん……なんてかわいくて、無防備な笑顔……。
 今夜はケーキなんかより、あなたをひとつ丸ごと食べてみたいです……」
 全身をなめ回し、私のキスで体中にマーキングして、愛液でぐちゃぐちゃに濡らしたい。
 そして、滾るあなたの一物を私の恥ずかしくて、いやらしい部分に挿れてほしい。
 あなたが隣の部屋に引っ越してきたときから、ずっとずっと願っているのに、叶ったことはない。
 ひといです。健太さん。いけずです。
 どうして、私の想いに気づかないんですか? 
 私はあなたを四六時中監視しなければ気が済まないほど愛しているのに。
 あなたのノートパソコンのディスプレイの角。そこから私の目はあなたを見つめているんです。
 それ以外に、各部屋の蛍光灯の傍、浴場の隅、洗面台の鏡を収める枠の中からも。
 さすがにトイレまでは仕掛けていませんけど。

 健太さんが自分で慰めるときの顔は本当にいやらしいです。
 私の『目』では健太さんが何をネタにしているかまではわかりませんが、パソコンのログを見ればわかります。
 どうやら健太さんは、いかがわしい画像をよく収集していらっしゃるようですね。
 嗜好は巨乳、貧乳、制服、水着、獣化、近親相姦、レイプ、逆レイプ、寝取られ、と多岐にわたっています。
 好きなアングルの傾向は右斜め上からの視点。逆に嫌っているのは直上から。
 あと、共通事項として、女性が目を瞑っている方が好みのようです。
 目を瞑って従順になった私を、犯しても構わないんですよ?
 その代わり、といってはなんですが、あの笑顔を見せてください。
 じっと見つめていた画面から顔を逸らし、下を見つめている瞬間の、輝くような笑みを。
 ――ああっ……思い出すだけで、イイ……。

 一目惚れとは恐ろしいです。本当に原因もなく惚れてしまうのですから。
 私、健太さんのどこが一番好きかと聞かれたら、たぶん答えられません。
 全部含めて好きだとしか答えられないのです。
 健太さんのどこに惚れたのか、なんて陳腐な質問です。
 問われたら、こう返すしかありません――――健太さんの全てに惚れました。
<> 独人達のクリスマス・イブ
◆Z.OmhTbrSo <>sage<>2007/12/25(火) 03:21:47 ID:DEL/dzKj<>  健太さんの名前を呼ぶだけで胸が疼きます。
 健太さんの声を聞くだけで倒れてしまいそうです。
 健太さんに目の前で微笑まれたら、人目もはばからず抱きつき、唇を奪うでしょう。
 健太さん、健太さん健太さん、健太さん健太さん健太さん。なんて甘く美しい響き。
「き、てください…………健太さん……二人、一緒にイって、気持ちよくなりましょう……。
 ああ、ああは、ぅうう……もう、我慢できま、せ、……ん! んんっ、んんん…………はぅぅ……」

 絶頂に達し、テーブルの上に体を乗せて脱力してしまいました。
 目前にはケーキがあります。もちろんクリスマスケーキです。私が作りました。
 指でクリームをすくい、舌に運びます……自画自賛したくなる出来です。
 健太さんと二人で食べられたらいいのですが、私は大きな健太さんで我慢します――今日のところは。
「ね、健太さん。来年は一緒に向き合いながら、シャンパンを飲んで、お食事しましょうよ。
 私、腕によりをかけてお料理します。お店で食べる料理よりずっと美味しいです。保証します。
 来年は、スクリーンから飛び出してくださいね。飛び出せ、健太さん! …………なんちゃって」

 頭を動かして、正面の壁を見つめます。広がっているのは白いスクリーン。
 そこに映るのは、リアルタイムで表情を七八変化させる健太さん。
 プロジェクターっていいですね。健太さんが五倍、十倍、いえ二十倍ぐらいになっています。
 でも、やっぱり本物がいいです。体で体を慰めてくれないんですもの。

 ところで健太さんは誰を相手にチャットをしているのでしょう。
 嬉しそうに笑ったり、不機嫌に顔をしかめたり、混乱したり。
 ――もしかして、女でしょうか。
 それはいけませんね。即刻、左側の部屋に住んでいた化粧の濃かった女みたいに消してやらないと。
 健太さんの手をわずらわせたあの女。最期はとってもイイ怯え顔でした。
 ああ、そういえば、今日健太さんのお宅に女が不法侵入していましたね。
 康美、と健太さんは呼んでいました。妹のようですが、油断はできません。
 健太さんの嗜好には近親相姦も含まれています。いけませんよ、健太さん。
 あなたの精液は私の子宮を満たすためにあるんですから。

 だから、そんな小娘なんか放っておいて、私と一緒になりましょう?
 私と、意地悪な妹さん。
 どちらと一緒になれば幸せになれるかなんて、コンマ五秒考えるだけでわかるでしょう?
 ね、健太さん? 返事は、なんですか?
「……康美だよ」

 ……………………。
 …………、………………え?
<> 独人達のクリスマス・イブ
◆Z.OmhTbrSo <>sage<>2007/12/25(火) 03:22:52 ID:DEL/dzKj<> *****

「……ぅぁう、ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ…………あ、……ふぅ。けんた。けんたぁ……」
 ――健太。今、私の名前を呼んだよね。
 不意打ちは、ずるいよ。指が止まんなくなって、潮、吹いちゃった。
 枕を噛んでいなかったらイった時の声を聞き取られていた。
 あ、でも。その方が良かったかも。
 さすがに下着姿で乱れた私を見たら、健太だって盛るはずだもん。
 だいたい健太はおかしいよ。妹が一人暮らしの兄の家に来たんだよ?
 しかも妹は生意気なことを言っているんだよ?
 なんで叱らないのよ。叱ったら――仕返しに、私が健太をいじめながら犯せたのに。

 私に彼氏がいるなんて、嘘。
 健太がこの部屋に引っ越したとき、つい咄嗟に言ってしまっただけ。
 私は男と付き合ったことなんか一度もない。
 なんでかって? ――馬鹿ね、健太。あんたを好きだからに決まってるじゃん。
 一日中あんたのことを考えていても想いが覚めない。熱が引いていかない。
 乳首は硬くなる。あそこは大洪水。足が震えているから立つことも出来ない。
 私をこんな体にしたのは健太。あんたなんだから、倒れないように支えなさいよ。
 お礼として、この私があんたの欲望を全部受け止めてあげる。
 出なくなっても安心なさい。肉がつぶれるまでギチギチに搾り取ってあげる。
 そして一生、私無しでは生きていけない体にしてあげる。

 ああ――――ん、もう、また。
 すぐに健太禁断症状がぶり返してきた。
 治すには健太が私を抱かなきゃいけないってのに。
 なに? チャット? クリスマスイブになに暗いことしてんのよ。
 ここに熟れている女がいるでしょうが。
 いつまで経っても恋人を作らない姿勢は褒めてやってもいいけど、私を抱こうとしないところはマイナスだわ。

 私の言ったことを真に受けてんじゃないわよ。
 部屋に入るな? 入って来ていいよカモン、って解釈しなさい。
 入ってきたら、クリスマスが来る度に私の体を求めて勃起するように調教してやるわ。
 一度狂いそうなほどの快楽に染め上げてイかせて、その後はずっと出させない。
 我慢汁でベトベトになって、惨めな気分で夜を迎え、目の前で私に自慰してるところを見せつけられて。
 手、いや腰だけでも動けば楽になれるのに、縛られているからそれもできない。
 気づいたら、奴隷になってもいいです、だからセックスさせてください、って言うようになっているわ。
 健太、それが正しい姿なのよ。私が女王で、あんたが奴隷。
 あんたは私に絶対服従。嬉しいでしょ? 私は嬉しいわ。すぐに健太も同じ気持ちになる。 

 もし今日、健太が女を連れてきていたら、持ってきたナイフで追い返すつもりだった。
 それか、こちらに圧倒的に有利な状況に追い込み、二度と近づかないよう脅す。
 私は中学校に上がったころから繰り返しているから、ま、甘ちゃんなら百パーセント黙らせることができる。
 それでも口を開くんだったら――そうだね。二度として口とまぶたが開かないようにしてやるよ。
 健太を奪おうとする奴は、万死に値する。健太の意志も体も全て私のもの。
 それが私の思っていることの全てだよ、健太。
<> 独人達のクリスマス・イブ
◆Z.OmhTbrSo <>sage<>2007/12/25(火) 03:24:30 ID:DEL/dzKj<> 「あ……ん、だめよ、ぉ…………健太、けんたぁ」
 好き。世界中に存在するどんな存在よりも健太が好き。
 欲しい。何を犠牲にしても手に入れたい。
「いつまで、耐えろっての、……よ。この無礼者ぉ……、あんたは私の所有物なんだから。
 従い、なさい、よお…………ぅうん……くぅはっ、ああああぁ……ふぅっ、はあぁ……」
 愛液が腕を伝う。腰を上げているから、腕から肩へと流れていく。
 今この状態で健太に突かせてやったら、きっと狂ってしまう。
 ああ、でも。いつか必ずその日はやってくる。
 健太があんな奴で、私が健太に誰も近づかせないようにしたら。
「もう……なんで、このわたしがぁ…………そんなことしなくちゃいけない、のよおぉ……。
 ひくっ、ぃひん…………健太……あんたのこと、好きになる女なんか、いやしない。
 だから、……っあ、ぁ、私のところに、来なさい。幸せってやつを、嫌になるほどに、体験させてあげる」
 今すぐ来なさい。
 人が幸せになれる道なんか、限られて居るんだから。
「やんっ、やん、やあぁぁぁっ、……けん、た……もう、もお…………だ、めえぇぇぇ……」
 枕を噛みしめる。声を絞り、目を強く瞑る。

 想いが爆発した。絶頂に達し、体のあちこちから熱が吐き出される。

 あううううう……。健太の家に来るの久々だから、ついついしすぎてしまった。
 こんなことを繰り返していたら、いい加減にもたなくなる。体も心も。
 私の意志は折れないけど、どうしても重みってものがあるから。

 今日はちょっとはしゃぎすぎた。寝よう。
 おやすみ、健太。
 ちゃんと布団を被って寝なさいよ。あんたは夜更かししては、布団も被らずに眠るんだから。
 風邪なんか引かれたら、私の方が困るんだから――ちゃんとしなさい。

 私の奴隷は、私にふさわしい人間でなくちゃいけないんだからね。


-----

投下終了です。

ちなみに、ヒロインたちの名前の読みは、
美濃口(みのぐち)、康美(やすみ)、凪峰(なぎみね)です。  
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/25(火) 03:46:39 ID:/C+mi5p2<> リアルタイムGJ!
まさしくヤンデレ包囲網!
こんな時間に投下があるとは…
食い過ぎで眠れなかったのが幸いした <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/25(火) 04:35:12 ID:2G60kFWd<> いやーなんというか…GJというもおろかなり、という感じで。すばらしい。
こんなに良質なものが読めるとは、クリスマスとは良いものだ。www <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/25(火) 07:39:01 ID:JMe+VNBr<> 超GJっす!

何と言うヤンデレトライアングル!

そのデルタ地帯の中心に立ってみたいもんだ!


>>375とヤンデレの神よ…朝からのクリスマスプレゼントをありがとう!
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/25(火) 08:57:07 ID:2x+y27H1<> >>375
GJGJ
凪峰の錯乱っぷりに激しく萌えた <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/25(火) 14:16:45 ID:xEmmcFYW<> 主人公死亡確定だな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/25(火) 14:57:42 ID:RD/PwyQj<> GJ! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/25(火) 15:39:58 ID:tyinm+zh<> GJ過ぎる
どうみても助かるルートは残されていません <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/25(火) 16:28:20 ID:nYaYkfTn<> >>375
GJ!
美濃口さんのナイスなタイミングに萌えた <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/25(火) 17:37:13 ID:1aokc+fs<> >>375
神様、続きが読みたいでございます(´・ω・`) <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/25(火) 18:43:03 ID:thNMXkqL<> 一人さびしく店でケーキ食ったあと家でうんこしてたら隣のアパートのやつが
「どこ行ってたの・・・他の女と会うなんて許さない」
ってナイフ持ってトイレのドアをドンドン叩いてきやがった、なんだよ(´・ω・`)

↑こんなやつがいまごろ1人2人居るんだろうな〜。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/25(火) 23:48:23 ID:C22E1wki<> さあお前ら絶望の日が終わろうとしている
今年も職人のクリスマスプレゼントのおかげで乗り切ることが出来そうだ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/26(水) 09:24:47 ID:adNJLq+Y<> 職人に感謝 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/26(水) 12:00:19 ID:yg9l8WxM<> えらい住人が少ないな・・・。
まさかここの住人ども全員ヤンデレに殺されたか? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/26(水) 13:18:11 ID:y1JXk7Rj<> いるお

昨日バイト先に従姉妹が来て奢る羽目になったのは俺だけかもしれんが

フラグ?ねーよwwwwwww <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/26(水) 13:21:19 ID:IX73kyAy<> >>388
奴らはな・・・・、自分の脳内の存在にしか過ぎなかった彼女たちに取り込まれてしまったんだ・・・ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/26(水) 13:55:23 ID:+Cp6Zdjt<> 実家に3年ぶりに帰ってみたら妹が俺よりでかくなってた(身長も体重も)。
完全にキモウトフラグが消えたぜ。妄想に集中しよう。 <> 名無しさん@ピンキー<><>2007/12/26(水) 14:27:27 ID:hqJkxkuE<> ほしゅ <> 名無しさん@ピンキー<><>2007/12/26(水) 16:05:12 ID:eNrdxmvS<> hoshu <> 名無しさん@ピンキー<><>2007/12/26(水) 17:18:15 ID:PlTVnskB<> 保守 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/26(水) 19:56:04 ID:jmYI86k8<> >>391
「れろ、ちゅぷ、ずっと、じゅぶ、ずっとこういう風にしたかったんだよ……」
妹が兄の顔を嘗め回しながらささやいた。
逃げようとしてもその両手首は妹の右手にしっかり握られていて動かせない。
「寝てる間に、じゅる、キスするだけじゃたりなくってぇ……」
驚いて妹をまじまじと見た途端、唇を吸われた。
「じゅるるぅぅぅ……、っぷはぁ。うふふ、驚いたぁ?キスだけじゃなくって、お兄ちゃんのおちんちんの味だって知ってるんだよ」
妹はでもぉ……とささやいて、左手で兄の股間をなでさする。
「やっぱりおきてる時じゃないとお兄ちゃんの泣き顔は見られないモンね」
兄は下腹部の鈍痛にうめき声を上げた。
妹が兄の睾丸を握り締めたのだ。
「んっふふぅ、いたい?くやしい?屈辱的でしょぉ?妹に押さえつけられて身動きも取れないなんて」
淫蕩な微笑を浮かべて兄の怯えた顔をうかがう。
「ずっとこうしてやるつもりで体を鍛えてたんだよ。いつかお兄ちゃんをレイプして泣かせてやろうって」
ゆっくりと兄のズボンをおろしていく。
「そしたらこんなにおっきくなっちゃったんだぁ。ぜぇーんぶ、お兄ちゃんのためなんだよ」
今や兄よりも大きく重くなった妹が、兄の肉体と精神を侵しつつあった。
「だからぁ・・・、いっぱい泣いて、いっぱい射精して、いっぱいいっぱい、私を褒めてね?」
トランクスを引きちぎり、萎縮したままの性器を取り出して指先でもてあそぶ。
「あはぁ、お兄ちゃんのおちんちん、こんなにちっちゃいんじゃ壊れちゃうかもね」 <> 名無しさん@ピンキー<><>2007/12/26(水) 20:32:56 ID:imijhGqI<> ショタ兄、大妹か
最高じゃないか <> 名無しさん@ピンキー<><>2007/12/26(水) 20:44:44 ID:qYpjCtXd<> >>396
大妹ってあの一部の特殊性癖の方々にウケたエロ漫画? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/26(水) 20:59:28 ID:rHGQ5iK+<> それを知る者が3人集まれば、もはや特殊ではない。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/26(水) 21:12:37 ID:l91SyT2T<> >>395
 妹の指先は女のものとは思えないほどに固い。
 >>391より年下の少女ならば、爪にマニキュアなどをしていてもおかしくない年である。
 だが、>>391の上に乗り、彼の動きを支配している少女にその例は当てはまらない。
 砂を詰めた樽に向け、ひたすら指突を繰り返してきた。
 もはや妹は、三年前のかよわい少女とは違う。
 >>391や、彼の家族の生きる場所とは別の世界――人外たちが居る世界に住んでいるのだ。

 鍛え抜かれた指先は>>391の鈴口を不器用に弄る。
「ここから、お兄ちゃんの精子が出てくるんだよね? どびゅどびゅ、って。
 でもこんなに出口が狭かったら出てくる量も少ないんじゃないの? あ……そうだ」
 短く切られた爪先が、尿道に入り込もうとしている。
 妹は人差し指を小刻みに揺らす。>>391が苦痛のあまり悲鳴をあげる。
「出口をおっきくしたら、体が適応しようとして、出てくる量も増えてくるはずだよ。
 私がお兄ちゃんのムスコさんを鍛えてあげる。一人前、ううん十人前ぐらいにしてあげる」
 妹が語っているのは、己が身をもって得た経験に基づき、閃いた論理であった。
 人は環境に慣れる。たとえば腹筋に蹴りを打たれ続ければ、筋繊維がより強固に結びつく。
 >>391の男性器も同じように修練を積めば、より固く、より太く、より強くなるはずだ。

 妹の瞳に嗜虐心とは別の色が宿った。厳しく見守ろうとする、親獅子の瞳。
 彼女の師匠――高地に住まい、修練を呼吸のように行う老師の目と同じである。
 妹は、>>391の肉棒を鍛え抜こうと考えている。
 兄である>>391のために。そして何よりも、己の身を常に蝕む、肉欲からくる疼痛を安らげるために。

 しかし、妹は気づいた。兄の肉棒を鍛えて強くしてやっても、あまり面白くない。
 兄は自分より弱くはなっても、強くなってはならない。
 常に自分が高い位置から見下ろしてこそ、妹の征服欲は満たされるのである。
「やっぱり、こっちの方がいいよね。……お兄ちゃんも、そうでしょう?」

 妹が>>391の股間に身を滑り込ませた。
 そして兄の一物を味わい尽くすため、大口を開けた。
 身を襲う恐怖により、妹が自分の肉棒を食いちぎろうとしたのかと、>>391には見えた。
 しかし、実際はそうではない。
「ん、ちゅ……はぅ、んん……お兄ちゃぁん。美味しいよぅ……すっごい久しぶり。
 なんだか、これだけでイっちゃいそ…………んぷぁ、はぅん……」
 肉棒が、根本から先端へ向けて舐めあげられる。
 >>391は瞳を閉じて耐える。妹が自分の肉棒を舐めるところなど見たくない。
 それに、目を固く瞑って、歯を食いしばっていなければ快楽に負けてしまいそうだった。

 肉棒を口に含みながら、妹は兄の顔を見やる。

 ――お兄ちゃん、可愛い。

 胸の中に暖かな気持ちが湧き起こる。妹は舌の動きをさらに早める。
 三年前に自分より強かった兄は、今の自分に犯されている。
 血反吐を吐くまで取り組んだ修練が実を結んだのだと、妹は初めて実感した。
 
  <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/26(水) 21:50:08 ID:lzNSqjja<> よろしければリレーは勘弁していただけるかしら <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/26(水) 22:22:26 ID:l91SyT2T<> ごめんなさい。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/26(水) 22:43:41 ID:5/dkDKdA<> 保守 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/26(水) 23:31:12 ID:IX73kyAy<> この前のスレもそうだけど、流れ変えないでリレーやるには構わないけど
人外がどうだのみたいな、自分が満足するような奴ばっか書かないでもらえるかな? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/27(木) 01:00:26 ID:X1XOdNB3<> なんでもいいが自分が気に入らないなら黙ってろ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/27(木) 08:03:25 ID:WcZfxW9w<> そういや、ファンタジー系は少ないよな。
やっぱ現代じゃなきゃヤンデレは映えにくいキガス
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/27(木) 08:55:42 ID:ME7vauW4<> >>400>>403
気に入らないなら黙ってろ。嫉妬スレの基地害は帰れ。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/27(木) 09:00:11 ID:i1P65CYE<> >>406
自演と擁護を繰り返すがいるので>>406も怪しい <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/27(木) 09:36:04 ID:PCfs79zH<> 保守 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/27(木) 09:40:47 ID:aegCjSpR<> ヤンデレに掻き回し過ぎでゲル状になった納豆くらいの濃度で愛されたい <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/27(木) 13:35:57 ID:Es6DF5UZ<> >>409
その濃度は一生監禁される可能性があるから危険だ
俺は練りまくった水飴くらいの濃度で愛されたい <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/27(木) 14:54:17 ID:ME7vauW4<> >>409
体臭のひどいヤンデレだなw
>>410
甘いヤンデレか。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/27(木) 14:59:21 ID:PHBnFRcd<> >>410
五十歩百歩でどんぐりの背比べな気がする、があえて続けヨウ

俺は製造機に規定量無視の砂糖を入れて作る、一部とけ切らずに食べるとガチガチいうような甘さで、特大サイズの『わたがし』みたいなヤンデレが欲しい
一口目は甘い人だなと思い、
中頃は喰い辛い(引くor飽きる)と感じ、
終盤は腹いっぱい(勘弁して欲しい)になって、
最後は割り箸が喉に刺さって心中エンド。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/27(木) 16:10:12 ID:1sjqPpIe<> まあ待ちなよ。
好みがあるから何とも言い難いんだが・・・



あっさり味ヤンデレって
今まであったの? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/27(木) 17:17:11 ID:aegCjSpR<> あっさり京風ヤンデレ? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/27(木) 17:29:17 ID:WRLpj29U<> >>413
シャッホ〜の楓とか、わりと薄味だと思うけど
先輩に稟のことを任せずに軟禁やら目の前でリスカするなりして何らかの形で繋ぎ止めるよう足掻いて欲しかったなぁ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/27(木) 19:13:35 ID:Es6DF5UZ<> ヤンデレって大抵は味にクセがあるもんだよな
しかし、途中まで激辛でもラストがサッパリアッサリしてるので挙げるならアニメ版スクデイかな?

誠の首から下がサッパリしてアッサリと二人死んだし
んで後味もスッキリとnice boat
あれ? 違う? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/27(木) 20:10:55 ID:cDWcAWwF<> スッキリしすぎて胃が痛くなったがな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/27(木) 21:10:13 ID:qZ0UEI1N<> 人妻のヤンデレっていそういないなぁ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/27(木) 21:14:28 ID:cPCksmwl<> 夫に執着する妻はむしろ三次のが多そうだな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/27(木) 23:24:17 ID:ME7vauW4<> ヤンデレが母親になると子供に嫉妬するから世間ではDQNになっちゃうよね。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/27(木) 23:28:23 ID:VmOrBFBf<> >>420
『ヤンデレ家族と傍観者の兄』のママとかがいい例だな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/28(金) 00:05:44 ID:ZnAYKbPo<> >>418
むしろ「どうしてよっ!あの女とは離婚するって言ったじゃないっ!」
みたいな感じが萌える。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/28(金) 00:13:40 ID:LjcEbJnM<> 『ただ純粋に愛を求めた。それ故に幾多の悲劇を生んだ』
某レンストの某ライダーのテキストより <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/28(金) 09:56:29 ID:IsejAOoZ<> 未完だが前の保管庫の「夫が隣に住んでいます」が人妻ヤンデレじゃないか?

続き読みたいなあ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/28(金) 17:30:12 ID:BGMYhAR7<> くいずです

さいおんじさんの いちばん たいせつなもの なーんだ

ひんと すでになくなっています <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/28(金) 18:55:56 ID:S3xkcMDn<> そういえば、ま(ryみたいな主人公ってまだこのスレの長編SSにはでてきてないね。
短編ならあったみたいだけど。

みんなは最低主人公が出てくるSSとか、好き? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/28(金) 20:21:46 ID:FRvDcKtf<> 嫉妬スレみたいなSSなら最高なんだが、ヤンデレのSSではタブーだな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/28(金) 20:27:00 ID:HMJ6bKGq<> 嫉妬する主人公はきもすぎて嘔吐しそう <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/28(金) 20:35:26 ID:AjtVvOK+<> ふと思った
主人公が誰かに殺されそうになってる場面に
ヤンデレヒロインが来たら
主人公を殺そうとしてるやつを殺そうとするのか
主人公を助けるのか
どっちなんだろうな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/28(金) 20:45:03 ID:CVHfK+vv<> >>429
殺そうとしてる奴を殺して主人公を助けるだけじゃね?
まあ助けたあと、フィーバーしちゃったヤンデレさんからイロイロ病んだ要求がありそうだが……。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/29(土) 01:27:34 ID:DTQZUZ5z<> ヤンデレに凝った背中を踏んでもらいたい…。
で、わざと他の女の名前を呟いてそのまま調教されたい <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/29(土) 06:03:31 ID:SeV/pyue<> 間違えて殺されたらどうするW <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/29(土) 07:29:28 ID:byAMJ1pq<> 間違えても殺したりはしないだろ。

調教された男が真の意味で生きていると言えるかは知らんが。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/29(土) 07:40:00 ID:AY+8ItfK<> 目は死んでるよな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/29(土) 09:01:13 ID:tcwwq0LE<> 傍観者の方が良いって奴はこの板には少ないのかね
(´・ω・`) <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/29(土) 10:37:20 ID:SeV/pyue<> 傍観者がいいかはわからんが取り敢えずま(ryみたいにはなりたくない。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/29(土) 15:16:09 ID:LP5sDBXP<> >>435
被害者(候補)にはなりたくないね、某SSの兄みたいに。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/29(土) 19:10:31 ID:AY+8ItfK<> >>435
1スレから居るけれど結構多そう。
ただ、主人公をそのポジションに持っていくのが好きってのは少ない。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/29(土) 19:39:50 ID:tcwwq0LE<> 話題を見てると傍観者がいいって奴が少ないのかと思ったが
結構多そうなのか



ID変わってるかもしれんが、気にしたら負けだからな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/29(土) 19:42:37 ID:DTQZUZ5z<> >>439
お前のIDかっこいいな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/29(土) 20:05:09 ID:viWA376p<> 俺は傍観者よりも当事者の方が好きだが <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/29(土) 20:09:11 ID:zqdQrNC0<> ヤンデレに愛されたいから俺も当事者の方が好きだ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/29(土) 20:12:09 ID:tcwwq0LE<> あっ
傍観者だったらヤンデレに愛されない事に今気付いたorz <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/29(土) 20:14:32 ID:GO6W2deD<> 当事者だったら喜んでやっちまうから話にならねえよ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/29(土) 20:15:38 ID:CrgYVPsI<> 愛されもせず場合によっては利用されて不要になったら捨てられる
それぐらいだったら殺されたとしても当事者になりたい <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/29(土) 21:25:35 ID:W/cDpDam<> ヤンデレは告白→奉仕が王道だと思う、ていうか誰か書いてくれ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/29(土) 22:10:34 ID:SeV/pyue<> >>446
告白→奉仕だとヤンデレ要素が無いぞ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/29(土) 22:13:04 ID:tcwwq0LE<> 奉仕→告白→ヤンが個人的に(ry <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/29(土) 22:16:26 ID:Pkyl/kmm<> 友達→告白→病む <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/29(土) 23:36:01 ID:DTQZUZ5z<> 私がヤンデレの告白を辞することで、この混乱に収集をつけると、いうことであります

と、前の総理大臣なら言うかもわからんね <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/30(日) 00:04:01 ID:H1AURB1p<> >>450
死亡フラグの予感 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/31(月) 06:29:53 ID:CEpg3Sr6<> ヤンデレに足コキされたい <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/31(月) 10:27:55 ID:YUPUgmlD<> ヤンデレは好きな人の精子がムダになるようなことはしないと思います <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/31(月) 11:24:14 ID:U8x0PiLG<> 同意 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/31(月) 14:21:01 ID:CEpg3Sr6<> いや、お仕置きとかさ…。

すまん俺が悪かった <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/31(月) 17:32:40 ID:otx3NY0A<> つか、最近ヤンデレが頭のおかしい女とごっちゃにされててなんかピンとこないな… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/31(月) 17:48:57 ID:U8x0PiLG<> レナがとか朝倉がヤンデレとかね……
デレドコー? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/31(月) 17:54:13 ID:9qM/xYKk<> それくらいならまだしも、最近なんてメンヘラ女自称で自分のことがヤンデレだって言うんだぜ?
殺意が沸くわ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/31(月) 18:11:02 ID:CEpg3Sr6<> デレ分が報われずに、少しずつ歪んでいく愛? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/31(月) 19:58:24 ID:9REkz5Y+<> とりあえずヤンデレは二次だから萌える
個人的に芙蓉楓様こそが至高 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/31(月) 20:16:07 ID:U8x0PiLG<> 三次元のヤンデレはどうなんだろうな
貧弱な妄想力じゃ想像出来ないわw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/31(月) 20:51:58 ID:V/eb/Cti<> この前門板の百合スレで「キ○ガイが恋したらヤンデレ」とか言ったやつが居て一悶着起きたな。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/31(月) 23:12:39 ID:otx3NY0A<> 俺はヤンデレ=凶器みたいな認識さえどうかなと思ってるよ
別に包丁とかなくてもヤンデレ足りうるし <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2007/12/31(月) 23:26:25 ID:U8x0PiLG<> 確かに=ではないが

殺人という形が分かりやすいとは言えるだろ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/01(火) 01:13:41 ID:RoJpNKiy<> あけおめ
今年初カキコ

今夜はヤンデレ娘があけおめメールの返事がこないことに狼狽し、
勝手につくった合鍵で男の家に侵入する夢が見られますように。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/01(火) 05:48:38 ID:ttb0PVcU<> あけおめ

>>464
通りすがりだが、殺人がヤンデレだと思ってる君は、勘違いしてる可能性が高い <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/01(火) 09:25:23 ID:FLXYhdBh<> 》466
いや、分かりやすい形ではあると言いたいだけだよ

ヤンデレの「ヤン」の部分は
自分的に異常、狂気みたいなもんだと思ってるんだが……勘違いか?
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/01(火) 09:45:34 ID:XY6+rRBq<> 狂人デレとヤンデレは非なるもの
ヤンデレは愛によって精神的に病んでるのであって、狂人が恋をするのとは別物 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/01(火) 10:49:00 ID:M6ywAIdX<> あけおめ

>>452
こんな感じ?



「○○くん、『私の事嫌い』とか『もう付きまとうな!』とか言ってたよね?さっき
でも○○くん、あたしの足でこんなにオチンチン大きくしちゃって……ふふ、やっぱり私の事が……」

メールでヤン子に呼び出された俺は、学校の体育館倉庫に呼ばれた。
体育館倉庫には、体操着を着用したヤン子が立っていた。
ヤン子にいきなり俺の両手を握り、「ず〜っと好きです付き合ってください」と
今時、エロゲーでもそんなセリフ吐かねぇ〜よっと思うようなとってもベタベタ告白をしてきた。
もちろん俺の答えはNO。なぜならこんな根暗と付き合ったらクラスの笑いものだ。
それに俺には、高島さんという(まだ片思いだけど)愛する人がいるからだ。
ヤン子は、告白を断られるといきなり俺にスタンガンを突きつけた。俺は、ショックで気を失った。
気が付くと俺は、手足を縛られ、ヤン子の足にチンポをシゴかれていた。 <> きゃの十三
◆DT08VUwMk2 <>sage<>2008/01/01(火) 10:51:16 ID:M6ywAIdX<> 「おい!これはずせよ!!聞いてるのか?この狂女!キチガイ!被爆星人!!」
「えへっへへへ、駄目だよぉ〜○○くん それ全部、放送禁止用語だよぉ〜」
「あっ!ゴメン……じゃねぇ〜よ!!その汚い足どけろよ!」
「へへへ、素直じゃないなぁ〜 いいのかなぁ〜?どけちゃって」
確かに今、止めてもらうととっても物寂しい
…が、コイツにいいようにされるのは、もっと嫌だ
「もぉ〜、素直じゃない○○くんは、こうなんだから」
いきなりヤン子の足の上下運動が激しくなる
ヤバイ…このままだと俺は、ヤン子の足でイってしまう
イキそうになった瞬間、ヤン子は、俺のチンポから足を離した。
「え?……なんで?」
「ふふ……ほぉ〜ら、やっぱり○○くん、わたしで感じたんだ
もう嫌がるふりをしても無駄だよ?ほらほらこんなにオチンチン、濡らしちゃって♪」
ヤン子は、妖しく微笑みながら俺のチンポを擦った。
「ふふっ、目が血走ってきたね、○○くんの本心…私の事、本当は好きなんでしょ?
つづきしたいんでしょ?だったら『付き合って』って言ってよ!好きだって言って!
ずっと待ってたんだよ?ほら、この長髪だって君が「高島さんの髪って綺麗だよな」って言ってたから
伸ばしたんだよ?この胸だって「牛島先輩みたいな巨乳っていいよな」って言ったから
嫌いな牛乳飲んで大きくしたんだよ?それなのに君は、私の事、振り向いてくれなくって……
ねぇ?もうこれ以上、我慢させないでよ ほらぁ……早く早くぅ♪」

……意識が朦朧とし、中途半端なもどかしさで俺は…俺は…… <> きゃの十三
◆DT08VUwMk2 <>sage<>2008/01/01(火) 10:52:05 ID:M6ywAIdX<> ※ ※ ※ ※ ※

ずぷっ、ずぷぷぷっ……

「ふふ、○○くんのオチンチンおいしぃ〜♪」


――俺は、あの日、我慢できずヤン子とつづきをする代わりに交際をした。
思った通り、クラスのみんなは、俺を笑いものにした。でもまぁ約束したんだから仕方がない
あれから毎日、俺は、ヤン子の家に招かれてこのようにヤン子の奉仕を受けている

「あぁ、もう2008年か……」
「○○くん、明けましておめでとうございます」
ヤン子は、俺のチンポを頬ずりながら新年の挨拶をした。
俺は、おもむろにヤン子の顔が隠れるぐらい長い前髪をたくし上げた。
「どうしたの?」
「いや……今、気付いたけど、お前意外とかわいかったんだな」

「えへっえへへへへへ」
――ヤン子は、頬を赤く染めた。 <> きゃの十三
◆DT08VUwMk2 <>sage<>2008/01/01(火) 10:56:02 ID:M6ywAIdX<> 投下終了。
途中、トリップ付け忘れた。

>>453
>>454
の意見を聞いて射精させず焦らしプレイにしてみた。

では、良いお年を <>
【大吉】 【1241円】 <>sage<>2008/01/01(火) 13:04:02 ID:WGF5s1p1<> ところでこれってどうなんだろう?
個人的にはすごい興味あるのだが・・・
ttp://www.edge-records.jp/title/nemurenai/02yandere.php <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/01(火) 13:07:26 ID:WGF5s1p1<> >>472
乙です。
今年もよいヤンデレを <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/01(火) 15:15:23 ID:CxA4CMZ9<> >>473
柏木園子が鋸持って惨劇を演じてくれるなら即買う <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/01(火) 15:27:53 ID:KE7nXhbH<> おまいらあけおめことよろ。

>>472
乙です
これはいいヘタレ主人公w <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/01(火) 15:29:33 ID:pIXVwpbG<> あけおめ

ヤンデレと狂人デレの区別がつかなくなってきた俺の今年の目標は、
ヤンデレの見直しで決定だな。
朝倉涼子、ふつーにヤンデレだと思ってた。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/01(火) 17:16:45 ID:BnMGt2eB<> 朝倉にデレがあったっけ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/01(火) 17:37:17 ID:Sw2gIWXO<> 無い
ハルヒ厨の妄想 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/01(火) 18:48:06 ID:CuF1tous<> 愛で俺を殺してほしいんだよ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/01(火) 19:34:30 ID:sHGfno/i<> >>479
つまりデレを脳内で構成していると? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/01(火) 19:37:10 ID:h1Iw7pYn<> ヤンでもいない <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/01(火) 19:41:13 ID:4VJT8VcV<> ( ^ω^)この話題定期的に上がるNE!>ヤンデレの定義とその対象キャラ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/01(火) 20:32:18 ID:QBChip56<> ヤンデレ大好きな俺だがスクールデイズとかまったく興味沸かない <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/01(火) 21:00:47 ID:lkzUPDw4<> 主人公が最低の男ってのはちょっと…
それに惚れるヒロインも… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/01(火) 21:06:48 ID:ACZlPGDO<> あれはヤンデレ以前にキャラのモラルや性格が酷いからな
誠と周辺の言動に寄ってたかって病まされた被害者ヤンデレと思った

アニメしか知らんけど <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/01(火) 21:22:43 ID:UuoB0N0A<> 最低男でもようつべぐらいは見ても損はないよ
鋸とI can flyが有名だけど、果物ナイフ片手に電波力説する場面も十分見る価値あるよ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/01(火) 21:34:58 ID:02M2Rsy7<> 芋ENDを見て少し誠が好きになったw <>
【だん吉】 【975円】 <>sage<>2008/01/01(火) 22:14:36 ID:KDrDfgx9<> >>484
以前別スレにも書いたが吸血姫美夕の「鱗翅の蠱惑」はどうか <>
【小吉】 【291円】 <>sage<>2008/01/01(火) 22:21:32 ID:wPMYvahQ<> オススメのヤンデレラノベとかある?? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/01(火) 22:32:42 ID:UuoB0N0A<> ラノベだから軽いけど、”文学少女“と慟哭の巡礼者の朝倉 美羽とか…… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/01(火) 22:46:15 ID:CuF1tous<> DADDYFACE、まだなりかけだが <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/01(火) 23:45:59 ID:EQbvZ16m<> 明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
みんなに良いヤンデレが手に入りますように。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/01(火) 23:51:55 ID:9MavT7Ic<> アキカン!のなじみんは病むかと思ったら違う方向にキャラがすっ飛んだな… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/02(水) 03:42:43 ID:NH50qYrP<> 成田良悟の本はヤンデレ出現率高めの気がする
ヤンデレメインじゃないけど <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/02(水) 06:41:12 ID:tgYXM4PM<> 最近ヤンデレに二つのタイプがあるんじゃないかと思い始めた

一つは芙蓉楓様のような恋愛至上主義
もう一つは桂言葉様やマナマナや我妻由乃様みたいな環境的要素が絡むとき

前者は意中の人以外にも頼れる人がありながら、それでも病んでいくもの
後者は男以外に依存するものが殆どない若しくは全くない環境、境遇に置かれたもの

しかし楓様は過去の出来事が関係しているし一概に恋愛至上主義とは言えんかもしれん
でもヤンデレって周囲の環境の影響が大きいみたいだな <> 名無しさん@ピンキー<><>2008/01/02(水) 07:18:09 ID:wszZa0lv<> <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/02(水) 07:37:26 ID:cZau1IJy<> 亀レスで悪いんだが、
>>467
俺が思うに、
主人公に言い寄る自分以外の女に嫉妬して、やがて病んでいってしまうのがヤンデレで、いきなり殺人はおかしいと思ってる。
つまり嫉妬しすぎて、主人公を殺すっていうのは、ひとつの方法ではあるんだけど、
いきなり「あなたのこと好き。だから死んで☆」ってなったら、お前が死ね、ってならないか?ってこと。
主人公に近づく女が憎い→邪魔→でも、思うようにいかない、主人公が振り向いてくれない→主人公にストーカー、メール1000通ほど送信、近づく女を威嚇。 っていう方法もあるだろうし。そっちの方が、殺人なんかで表現するより、十分ヤンデレじゃないか?

可愛い女が殺人=ヤンデレは違うと思う。

まぁ、俺が勝手に思ってるだけかもしれんが。


長文、お目汚しスマソ。ウザって思ったらスルー頼む <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/02(水) 09:45:53 ID:huVwzGsP<> 》498
わざわざthks


今思うとかなり言葉が足りなかったorz
勿論殺人だからこれヤンデレね、
なんて微塵にも思ってない

強すぎる嫉妬が起こすのか
はたまた心が病む故の行動なのかはこの際置いて


ヤンデレは何かしらの異常ともとれる行動を取るのが常だろう?

例えば、主人公の家に監視カメラを設置したり
メールを1000件送信したり
空鍋したり
主人公の前で自殺してみたり
泥棒猫を殺したりするその行動の一環として殺人って分かりやすいよね
と言いたかっただけなんだ
泥棒猫を殺したという例を出したが
殺人からくる動機はどうであれ、やってる事を形だけ言うと殺人だろ?
SS全部読んで多い行動でもあったから
分かりやすい形と言ったわけだ

長文すまん
次から自重する <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/02(水) 10:25:43 ID:cZau1IJy<> >>499
なるほど。スマソ、俺が先走った解釈をしてたみたいだな…orz

最近、レナや朝倉がヤンデレって言ってる奴よくみるから過敏になってんのかね、俺 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/02(水) 10:59:54 ID:OR8TQB1d<> ヤンデレ大全の影響か、月姫の秋葉と琥珀がヤンデレだっていってる奴がいて驚愕した <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/02(水) 11:21:23 ID:huVwzGsP<> 型月にヤンデレはないだろ
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/02(水) 11:37:41 ID:+W669WOK<> というか、ヤンデレ大全がないだろ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/02(水) 11:38:27 ID:ZjK1imvW<> 型月(笑) <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/02(水) 12:59:49 ID:xt9XoEn+<> ん?琥珀√の秋葉も違うか?
志貴を監禁しようとしたり、琥珀とくっついたら琥珀もろとも殺す
みたいなこといってなかったっけ?……あれ、俺、地雷? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/02(水) 13:21:43 ID:Z409B1tR<> そーいや前に角煮で叩かれるかなあと思いつつ
ハマーンがヤンデレに見えるって書いたら
賛同してくれる人がいてちょっと嬉しかったなw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/02(水) 15:34:34 ID:n+Tu4O+q<> 若干、古い作品だがエデンズボゥイのパレラはどうだ?

弟に依存しすぎて弟の恋人と殺しあってるし <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/02(水) 18:11:54 ID:cD2n4qjc<> 桜はヤンデレじゃね?
主人公が大怪我したときは、もっと動けなくなるくらいの怪我をすれば……なんて妄想するし。

アンリに毒されてからは邪悪ヒロインだけれど。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/02(水) 22:50:14 ID:5x0/fYDk<> この流れなら言える

ガクトの『Doomsday』は良ヤン曲 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/02(水) 23:29:49 ID:UM0aiNSj<> 狂った果実の美夏はどうだろう <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/02(水) 23:30:54 ID:4jEBPYx4<> 簸川樹里に一票。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/03(木) 01:06:57 ID:U1PwwjuG<> A君とA君にベタ惚れなBさんがいたとして、Cさんのちょっとした悪戯心でA君が女性恐怖症になってBさんすら拒むようになったら、Cさんはどうなると思う?
また、Cさんが作ったトラウマによる恐怖症は同世代の女性にしか発症しなくて、
それが原因で年上/年下のDさんとA君がくっつくようになってしまったらCさんの罪はどのくらいになる? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/03(木) 01:17:59 ID:jxk2gvCK<> Cまでもヤンデレに目覚める <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/03(木) 01:29:34 ID:rGq4XPWH<> Cさんを唆して悪戯をさせた黒幕は、Dさん <> 名無しさん@ピンキー<><>2008/01/03(木) 01:47:19 ID:czSojKlw<> Cの罪は特にないが、Dの罪は重い
そしてBの虐殺の時間が・・・ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/03(木) 05:17:02 ID:TEUbWpgk<> 実はE君(6歳)がA君と突きあいたくてCさんを唆し
さらにBさんにDさんを消させる算段を取って共倒れ狙い <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/03(木) 08:03:33 ID:ZIWza5ra<> お前達の妄想力レベルの高さに吹いたw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/03(木) 10:48:22 ID:1jtKdRoK<> >>473
これニコ動で聴いたぞww

おまえらなら興奮するんじゃないか?
ヤンデレ大好きな俺でもかなり行き過ぎてると思ったwww <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/03(木) 11:01:16 ID:qeMYfttV<> ヤンデレCD怖い…
ゆりしーのだけはよかった <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/03(木) 13:15:57 ID:tCZ5QvOS<> ガチメンヘラがヤンデレキャラやるのか <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/03(木) 14:27:14 ID:7k0oehCA<> >>510
遅レスだが、よう俺 ノシ
ヤンデレ大全は美夏が入っていなかった事が一番残念だったなw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/03(木) 14:53:19 ID:mJywhZWP<> >>518
これ全部聞いたけどさ、ヤンデレとは微妙に違う気がするんだが <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/03(木) 16:37:55 ID:my1UvAA7<> それにしてもこの鬱声優、ノリノリである <> ゲーパロ専用
◆0q9CaywhJ6 <>sage<>2008/01/03(木) 18:35:01 ID:QqWcpa2G<> >>418
やってみます <> 病み妻1/4<>sage<>2008/01/03(木) 18:35:57 ID:QqWcpa2G<> え、出張、ですか?
突然に? あさってから?
そうですか……。一週間。長いですね。
たしかあそこの支店には○○さんが行かれる事になっていたのではありませんか?
ええ。この間、総務の××さんから色々お話聞かせていただきました。
私、今でもあの辺のお局さまと仲がいいのですよ。あなたの社内情報は、とてもよくわかります。
あの娘、最近女子寮出て、マンション借りたそうですね。
……さっそく、いい人と同棲ごっこしてみたいのでしょうか?
……ねえ、あなた。
浮気相手の女の子が可愛いのはわかります。
いいえ、否定してもダメです。私、全部、知ってますから……。
でも、あなたは私ともっと仲良くしておいたほうが、……色々と都合がいいと思いますわ。
そうでないと、あなたも、私も、娘も、あなたのご両親も、
きっとみんな困ったことになる……と、思います。
あなたの可愛い娘に、おいしいご飯をたくさん食べさせてあげられる女は誰でしょう?
あなたの大切なご両親が、不自由なく暮らせるようにできる女は誰でしょう?
……浮気相手の、あの娘ではないですよね?
ひょっとしたら、あなたが「出張」から帰ってきたら、
娘が何日もご飯食べられなくて餓死していた……なんてことが起こってるかも……。
ひょっとしたら、あなたが「出張」から戻ってきたら、
田舎のご両親が救急車の呼び遅れで植物人間に……なんてことも起こってるかも……。
そんなこと、困りますね?
ええ、そんなことになったら、私もとても不幸ですわ。
でも、あなたの奥さんって、あなたがいなければ、それだけで一番不幸になってしまうです。
そうなったら、多分、他の不幸なんてどうでもいいって考えてしまう……かも……。
うふふ、覚えておいてくださいね。
……あなたの人生、私が一番幸せにできるんです。
でも、一番不幸にすることもできるかも……知れませんね。 <> 病み妻2/4<>sage<>2008/01/03(木) 18:36:40 ID:QqWcpa2G<> あら、あなた。
どうしたのですか、急にお倒れてなってしまって。
お布団、すぐに敷きますから、そこに横になってください。
え? 身体が動かない?
大丈夫ですよ。
――後遺症は残らないくらいの量ですから。
さっきの、煮物、美味しかったでしょう?
あなたの大好物。
お義母さんから習った、味付け。
でも、お義母さんのよりも美味しいでしょう?
私のオリジナルレシピですもの。
隠し味はたっぷりの愛情と、素直になるお薬をほんのちょこっと。
ああ、お水、欲しいのですか?
はい、口移しで飲ませてあげますね。
あらあら、しっかりキスしないと、こぼれちゃいますよ。
そうそう、そうやれば、美味しいお水、飲めます。
ふふ、そろそろ「素直」になってきましたね。
あら、何をおびえてるのですか?
これから何をされるのか、わかりませんか?
……ねえ、あなた、知ってます?
あなたの奥さんが、あなたのこと、どれだけ好きか、って?
わからないのなら、これからたっぷり教えてあげます。
うふふ、おち×ちんは正直ですね。
よく飼いならした犬と一緒。
頭のいい犬は、誰がごはんをくれる相手かちゃんとわかって素直に甘えてくれます。
あなたのおち×ちんも、とっても素直で、とっても素敵。
誰がこのおち×ちんを何年も何年も可愛がってあげてるのか、
ちゃあんと分かってくれてます。
誰とセックスしたら自分が一番気持ちいいか、知ってるんです。
ほら、あなたのおちんちん、
「あんな女のより、奥さんの中に精子いっぱい出して気持ちよくなりたい!」
って、言ってますよ? こんなにおツユまでたらして。
あらあら、どうしたのですか、そんな泣きそうな顔して。
こわい?
私が?
まあ。
あなたの奥さんは、全然こわくなんかありませんよ。
あなたに対して世界で一番優しい女ですわ。
そうですとも。
わたしは、
ねえ、あなた。
よぉく、考えてください。
つまらない「出張」に行って、帰ってきたら何もかも失っているのと、
愛する奥さんと気持ちいい一晩過ごして、幸せな家庭がずうっと続くのと、
あなたにとって、どっちがいいでしょう?
うふふ、考えるまでもないですわね?
愛してますわ、あなた。
──たぶん、あなたが思っているよりも、ずっと、ずっと。 <> 病み妻3/4<>sage<>2008/01/03(木) 18:37:11 ID:QqWcpa2G<> はい。ハンカチです。
あ、ネクタイ曲がってますね。
「出張」、とりやめにしてもらうですって?
急に大変ですね。
では、今日ははやく帰ってこられるんですね?
お夕飯……家で食べますよね?
何にしましょうか。
今決まらなかったら、お昼頃にメールください。
じゃあ、いってらっしゃい。
あ、昨日は、「仲良く」して、ありがとう。
私、今朝はとっても幸せですわ。
うふふ、はい。
ちゅう。
それじゃ、いってらっしゃい。

……いってらっしゃい……。
……お出かけのキスは、あなたからはしてくれないんですね。
やっぱりあの女と……。
……ああ、どうしたら、あの人に私の想いが伝わるのでしょう。
恋人になっても。
妻の座に付いても。
子供を産んで、あなたの家を守ってあげても。
あなたは、全然、私だけのものになってくれない。
外堀も、内堀も、二の丸も、三の丸も、城下町も、
時間をかけて、全部、私が埋め尽くして占領したのに、
肝心なあなたの本丸だけが手に入らない。
どうしたらいいのでしょう。
いっそ、全部壊してしまったら……。
外堀も、内堀も、二の丸も、三の丸も、城下町も、全部……。
そうですね。
それが……いいのかも……。
そうすれば、本丸も、きっと無駄な抵抗を止めるでしょう。
そろそろ娘が起きる時間だわ……。
私の可愛い娘。
半分が、あの人でできている、私の二番目の宝物。
でも、一番の宝物が手に入るのなら……手に入るのなら……。 <> 病み妻4/4<>sage<>2008/01/03(木) 18:37:45 ID:QqWcpa2G<> すみません、例の出張の件、どうにかなりませんか。
ええ、……はい、妻が……。
あいつ、まだ、病気治ってないみたいで、
まだあの娘が会社にいて、俺のこと狙っているって思い込んでるんです。
ええ、昨日は、相当やばかったです。
なんでも、××さんから直接聞いたって言い張って。
ええ、ええ、わかってます。
あいつの妄想だって。
今回の件、○○に変わって貰えますか。
ええ、すみません。
仲人してくださった部長には、申し訳なく思ってます。
もう少し、時間を下さい。
必ず、なんとかしますから。
あんないい娘、こんなにしちゃったのは俺のせいですから。
あいつのこと、完璧超人だって、甘え過ぎてたんです。
いや、甘えなさ過ぎだったのか。
あいつが、俺の愛情に不安を感じるようになったのは、俺の責任です。
もっとはやく気がついていれば……。

──え、俺に電話、ですか?
幼稚園から?
なんだろう……。

   fin <> ゲーパロ専用
◆0q9CaywhJ6 <>sage<>2008/01/03(木) 18:41:38 ID:QqWcpa2G<> ヤンデレ奥さんに挑戦してみました。
病み方はライトです。
女の配偶者が本気でヤンデレになったら
社会的にも司法的にも男は逃げようがないですねw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/03(木) 18:48:49 ID:jxk2gvCK<> >>473
今気が付いたがシャーリィがいるじゃないか! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/03(木) 18:51:56 ID:KWN+caou<> >>522
しょうがないさ
ブームになれば誤解と誤用で言葉なんていくらでも変わっていくんだから
それを乗り越えてジャンルとして定着する日を待とうぜ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/03(木) 18:54:55 ID:77zblm7a<> >>529
勃起するほどGJ!
結婚願望ないがヤンデレならありかな、と思っちまったじゃねーか! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/03(木) 18:57:00 ID:7k0oehCA<> >>529
エロくて怖くてテラGJ
ゲーパロ専用氏このスレでは初だっけ? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/03(木) 19:19:49 ID:1IR0CeCR<> >>529
萌え死にそうだ!!
そう言う妻と結婚してぇぇぇぇsぇwふぁwkぇg <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/03(木) 20:05:54 ID:YEf+ryt0<> ゲーパロ氏 乙
貴方が書く妻達はいつも俺のド真ん中ストライクだぜ! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/03(木) 20:59:39 ID:qeMYfttV<> 子供に手をかけるのはちょっと…
あまりにも酷いような…自分がお腹痛めて産んだ子だというのに…

それ以外はいいなぁ…こんな嫁さん欲しい <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/03(木) 23:01:13 ID:y9AgtAZG<> >>536

ヤンデレではよくあること <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/03(木) 23:43:29 ID:LeicVXDj<> ゲーパロ氏GJ!!俺のツボにグッと来たぜ!!

ところで最近ヤンデレ曲に凝ってるんだが、何かおすすめない? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/04(金) 00:00:10 ID:C7yN/DGk<> 歌ならあるが曲は難しい <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/04(金) 00:19:44 ID:6S3thTIb<> リアルヤンデレはやめとけ。洒落にならないから。
友人の奥さんがヤンデレで、友人から話聞いてるだけで唖然とする。
私は、世界と言葉を足して2で割ったようなかんじと評している。
それに対して別の友人は「他人の奥さんに対して失礼だろ」といったが。

>>536
>>自分がお腹痛めて産んだ子だというのに…
そんなの関係ないから。
友人初婚、奥さん再婚で子供は奥さんの連れ子三人なのだが、
昨年、離婚騒動になったとき、
「子供捨てたら別れないでいてくれる?」と言われたといっていた。
そもそも、子供が離婚の争点ではなかったのに、だ。
とりあえず元鞘になったが、友人が離婚することにしたと話に来たときに、
ストーカーになるだろうから、そのための身を隠す対策まで話していったよ。
こんなのはまだまだほんのひとつの話にすぎない。

ヤンデレは架空の中だけにしとけ。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/04(金) 00:26:20 ID:dkTgBgPM<> >>540
リアルヤンデレ奥さんの体験談を聞いてみたいので続きをお願いします
リアルの情報はなかなか手に入らないから貴重だしw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/04(金) 00:28:59 ID:l4+6UsaK<> >>539
すまん、言い方が悪かったな。歌でも曲でもオケなんだぜ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/04(金) 00:33:44 ID:QNHBgmFW<> 特に連れ子に関しては、ヤンデレじゃなくたって
新夫に気に入られるために、連れ子を苛めるなんてよくある話なわけで
虐待事件で夫が捕まって妻が共犯になるような話も年中でてくるしな。

三次は、生活維持のための寄生や
相手への愛情というより自己愛・自分のプライドといった理由が実はほとんどなのもなー。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/04(金) 00:48:10 ID:Ki32tPd0<> >>540
むしろバッチコーイだ。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/04(金) 01:18:35 ID:Lpx1AdBl<> リアル話はスレ違いだろ……
しかも友人夫婦の話を2chのスレなんかで
住人の娯楽のために吹聴するなんて人としてどうかと思うぞ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/04(金) 02:12:49 ID:NmrwwU0V<> だよな…そんな真面目に深刻なリアル話聞きたくないし
しかも、友人の家庭事情を得意気に吹聴してるようにすら見えてむしろ不快 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/04(金) 02:27:06 ID:Ki32tPd0<> だが私はリアルも大歓迎だ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/04(金) 02:30:56 ID:OMYK91yp<> 俺は勘弁だな
そういう事語りたいならVIPでやれってな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/04(金) 03:02:00 ID:+47kvmc4<> >>525
GJすぐる!!
ゲーパロ氏の書くヒロインはみんな可愛いから困る

>>528
GO!GO!7188の「赤いソファー」とかは?
いいヤンデレだと思うんだが…
<> 549 <>sage<>2008/01/04(金) 03:04:34 ID:+47kvmc4<> レス間違えた>>528じゃなくて>>538だな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/04(金) 03:08:03 ID:eABMZsD9<> >>525-528
学校であった怖い話のSS版攻略本に岩下嬢と主人公が孫まで作ってる小説思い出したわ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/04(金) 06:11:33 ID:iswosaot<> ニコニコにヤンデレの女の子に死ぬほど愛されて眠れないCDがうpされてた
これは良すぎる
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1943511
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1943188
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1942961 <> ゲーパロ専用
◆0q9CaywhJ6 <>sage<>2008/01/04(金) 06:18:20 ID:/zZUav0N<> 病み妻さんは、いちおう、娘を前にあやしい行動を取っているところを
迎えに来た幼稚園のおねいさんから父親に連絡……という程度でw
本当に手をかけちゃったら連絡は警察から来るでしょうし。

>>551
どのようなお話ですか?
ま、まさか、
旦那を亡くしたヤンデレ妻が、息子と娘を監禁、
「あなたたちは半分ずつ旦那でできてるのだから、
二人で子供を作ったら、100%の旦那が生まれ直ってくれる」と、
姉弟相姦を迫るようなガクブルなお話ですか? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/04(金) 07:20:23 ID:jeEPf23l<> おねいさんに死亡フラグが(´;ω;`)

と瞬時に思ってしまった俺ガイル <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/04(金) 08:59:23 ID:5Mwfr71S<> >>553
ちょっwそれ病み妻ちと狂いすぎww
それで息子じゃなく娘が産まれたらどーなることやら… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/04(金) 11:00:49 ID:1uAm87oV<> >>552
それ、まだ発売されてないはずなのにな
そのうち消されるんじゃね? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/04(金) 11:44:50 ID:ujIuh2tb<> ヒント:コミケ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/04(金) 15:35:29 ID:O9G7c3UM<> >>536
ヤンデレが母親になると超DQNになるんだよな。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/04(金) 17:51:16 ID:rO+KX9gd<> そういえば話変わるがガンダムWのノインって隠れてヤンデレっぽくないか?
エンドレスワルツの再会シーンで会ってなかった日数を言うんだぞ
最後に会ってから一年ほど経ってたというのに…

本編ではゼクスにノイン以外女の影がなかったからか、覚醒はしてないが <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/04(金) 18:11:37 ID:mtzwjC0R<> 本保管庫の更新ないなと思ってたら臨時が立ってたのか <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/04(金) 19:50:17 ID:8xmsrkOy<> 報われない思いが熟して熟して熟し過ぎてドロドロになって、監禁とか調教とか
たまには暴力になるのがたまらんのです。

で、何が言いたいってヤンデレに監禁されたいってことですよ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/04(金) 20:07:36 ID:1uAm87oV<> 俺は殺人とかまで至らない、行き過ぎてないヤンデレが好きだな。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/04(金) 20:38:51 ID:+vHc/2e8<> やあ、俺 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/04(金) 21:03:19 ID:5Mwfr71S<> 新年早々荒々しいなお前ら… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/04(金) 21:50:55 ID:g4s0dDZ2<> >>562
俺もそっちの方が好みだな

首切りとかあるとウヘァッ('A`)って思うw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/04(金) 22:36:28 ID:fXrKvZ+t<> >>553
なんという可愛い奥さん <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/04(金) 22:40:33 ID:C8Hmh2GR<> >>562
グロはおれもちょっと苦手だな
独占欲が強すぎて心中とかいや <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/04(金) 23:00:49 ID:b+xIHtIM<> 個人的には「見捨てないで!」的なヤンデレが一番ストライク <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/04(金) 23:21:37 ID:j8EpDJU4<> 俺的には「これでずっと一緒だね・・・」とか言って監禁しちゃうヤンデレがストライク <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/04(金) 23:27:21 ID:+47kvmc4<> 話豚切って悪いんだけど、ヤンデレの女の子を受け入れる主人公の話みたいので何かおススメない?
「あなたと握手を」読んでどストライクだったもんで… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/04(金) 23:31:04 ID:PXof3Tr5<> >>569
あれ、俺いつ書き込んだっけ…? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/05(土) 00:34:39 ID:Urlgqy0G<> >570
最近のだと
リッサ氏の短編作品や『ヤンデレ家族と傍観者の兄』かな?
後者は、連載物だから展開によっては、ヒロインを拒否する可能性があるけど <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/05(土) 01:20:00 ID:r7beKh48<> >>568
「おねがい、見捨てないでっ!○○さんの次でいいの…。
 私は□の側にいられるだけで十分だから」
とか言ってた女の子に
「二番目はもう嫌だよぉ…。□の一番になりたいよぉ…」
なんて言われる展開が好き。
これだけでご飯三杯は食える。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/05(土) 01:23:15 ID:IgllYQNd<> なんという俺 <> 気に病む透歌さん<>sage<>2008/01/05(土) 03:03:46 ID:wi0YCo1E<>
(おなかいたいよう……あたまもいたい……)
 女子トイレの個室に閉じこもり、倉井透歌は一人腹を抑えて苦痛に顔を歪めていた。
 トイレの窓から、校庭で生徒たちが騒ぐ賑やかな喧騒が聞こえてくる。その楽しげな響きとは対照
的に、透歌の気分はいつも通り最悪だった。
 胃の辺りがずきずきと痛む。頭の奥で誰かが鐘でも鳴らしているかのように、周期的な頭痛が襲っ
てくる。手は小刻みに震え目は霞み足は痺れ、吐き気も止まなかった。こみ上げる嘔吐感は、吐瀉物
が喉から出る寸前のところまで上ってきているような錯覚を覚えさせる。
(おくすり、のまないと)
 混濁する意識の中、膝の上に置いた鞄に手を伸ばし、中を探る。たくさんの薬が入った専用のプラ
ケースと水の入った水筒を取り出すと、それと一緒にたくさんの小さな物体が飛び出してきて、透歌
の体にまとわりつき始めた。
(ああ、妖精さんだ)
 その物体は、七色に輝く薄い虫の羽を生やした、拳ぐらいの大きさの人間だった。妖精である。
各々が妖しげな、あるいはからかうような笑みを浮かべて、透歌の周囲を好き勝手に飛び回る。
 透歌は自分の耳を引っ張り、目に張り付いて視界を塞ごうとする妖精たちを無視して、様々な形の
錠剤十数個を、水で一気に流し込んだ。
 しばらく目を瞑ったまま身じろぎもせずに待ち、おそるおそる目を開ける。あれほどたくさん飛び
回っていた妖精たちが、影も形もなくなっていた。頭痛や腹痛や吐き気も、かなり和らいだようだ。
(よかった、おくすり、まだちゃんと効いてるみたい)
 ほっと息を吐き、薬と水筒をバッグの中にしまいこむ。
 先程の妖精は、もちろん現実のものではない。全て幻覚である。
 幻覚を見るというのは、大体にして麻薬に手を出しているか精神的な病を患っているかのどちらか
であり、透歌の場合は後者だった。原因もよく分かっている。
(赤塚君……)
 閉ざされた視界の中に、一人の少年の顔が浮かび上がる。意志の強そうな瞳と穏やかな微笑を作る
唇が印象的な、優しい風貌の少年である。
 彼の名は赤塚幸樹と言い、透歌のクラスメイトである。彼のことを思うだけで、普段は今にも止ま
りそうなほど静かな透歌の心臓は、まるで火がついたように激しく鼓動を打ち始めるのだ。
(冗談を言って笑っている顔が好き。
 友達と話してるときの楽しそうな声が好き。
 野球のボールを追いかけるときの、真剣な瞳が好き。
 部活が終わったあと、夕陽を眺める横顔が好き。
 女の子と話すときの、照れくさそうだけど優しい仕草が好き)
 闇の中で、赤塚の顔が次々と移り変わる。
 彼の多彩な表情や、繊細な仕草の細かいところまで、透歌は全て覚えていた。ほとんど会話すらし
たことがないような仲だが、彼のことをずっと遠くから見つめてきた。
 元々、透歌は病気がちな少女だった。小学校中学校と、ほとんどの時間を家で過ごし、同年代の子
供とまともに話した経験など数えるほどしかなかった。
 そんな彼女が、今薬を飲みながらにしても公立の高校に通っているのは、間違いなく赤塚のおかげだった。
 窓際のベッドに身を横たえる彼女の眼下を、毎日のように駆けていく少年がいた。いつもじっと彼
の姿を追い続けている内に、いつしか透歌はその少年の隣に立ってみたいと思うようになっていたのだ。
 幼いころから自分の人生に何の希望も見出せなかった彼女の胸に、生まれて初めて小さな炎が宿っ
たのである。その炎は少しも勢いを衰えさせず、それどころか彼の姿を見るたびにますます激しく燃
え盛った。
 そうして生まれた狂おしいほどの情熱を糧に死に物狂いの努力を重ねた結果、透歌は気がつけば彼
と同じ高校に通っていたのだった。
 入学してすぐに運良く彼と同じクラスになれたこともあり、透歌の体は以前とは比べ物にならない
ほど健康になっていた。
 毎日ちゃんと登校して、彼の姿を遠くから眺めているだけで、世界全体が眩しく輝いているような
錯覚すら覚えたほどである。
 無論、ある程度健康になったとは言え体が弱いのには変わりなかったし、元来内気で引っ込み思案
な上に今までまともに人と話したことがなかったせいで友達も出来なかったが、彼女自身は赤塚を見
つめることさえ出来ればそれで十分に幸せだったのである。
 そんな幸せな日々も、長くは続かなかった。 <> 気に病む透歌さん<>sage<>2008/01/05(土) 03:04:36 ID:wi0YCo1E<>
 破局の兆候はいくつかあった。
 まず、透歌の赤塚への思いが、抑えようもないほどに膨らんできていたこと。
 以前も、彼のことを夢に見たり、ふと「今なにをしているだろう」と想像したりすることはあった。
 それが入学して三ヶ月もする頃には、透歌の頭の中はほとんど全て赤塚だけで占められるように
なっていたのである。
 毎晩夢に見るのはもちろんのこと、路傍の小石から自分とは何の関わりもない海外のニュースに至
るまで、何を見ても彼と関連付けずにはいられないほどである。
 また、赤塚の周囲に多数の少女が存在することも、あまり好ましい要素ではなかった。
 赤塚の穏やかで温かい雰囲気に惹かれているのは透歌だけではなかったようで、彼の周囲はいつも
華やかな少女たちの声に溢れていたのである。
 彼女らはそれぞれ、空っぽの人生を送ってきた透歌とは比べ物にならないほどに魅力的だった。
 愛しい彼の恋人としてその隣に立てたら、という透歌の淡い願いは、最初から叶わぬ夢物語に過ぎ
なかったのだ。
 とは言え、それらが透歌の心に及ぼした影響は、さほど強いものではなかった。
 叶わぬ恋であることなど、初めから頭では理解できていたのだ。
 だから、激しい思いを胸の内だけに仕舞っておくことも、彼の恋人になるのを諦めることも、それ
ほど辛いものではなかった。
(そう、それでいいの。わたしはただ、せめてこの三年間の高校生活の間、ずっと赤塚君を見つめて
いられれば、それで)
 自分の恋慕の情が届かないことを心の底から悟った後も、透歌のその姿勢はほとんど揺るがなかった。
 しかし、それすらも崩れてしまう出来事が起きてしまった。

 彼女がその会話を偶然耳にしたのは、一ヶ月ほども前のことである。
 いつものように校舎の片隅の窓辺から、校庭で練習する野球部(性格に言えばそれに参加する赤
塚)を見つめた後、下校すべく自分の教室の前を通りかかったとき。
「キモいよなー、倉井」
 という、クラスメイトの女子の声が、教室の中から聞こえてきたのである。
 どうやら自分の陰口を耳にしてしまったらしいと気付いて、透歌は身を硬くした。立ち去るべきか
と迷っている間にも、教室から次々と自分の悪口が飛び出してくる。
「あー、キモいね、確かにキモい」
「なんかさー、倉井の席の周りだけやけにじめっとしてるんだよね」
「カビ生えそうだよね、あれ」
「何も喋んねーし、休み時間も石みたいに動かないしさ」
「不気味っつーの? 何考えてんだかさっぱり分かんないよね」
「なんかビョーキっぽいよね。近づいたら感染しそう」
「ちょっとやめてよー、あたしあいつと席近いんだからさー」
「あいつ一人だけ隔離してもらえばいいんじゃね?」
 そんな会話が、下品な笑いと共に耳に飛び込んでくる。かすかに痛む胸を、透歌はぎゅっと押さえた。
(キモい……きもちわるいのかな、わたし)
 今まで、自分のことをそんな風に考えたことはなかったが、人から見ればそうなのかもしれない。
(でも、大丈夫。わたし、きもちわるくてもいい。赤塚君を見つめてさえいられれば、それで)
 そう思いなおして、透歌がその場から立ち去ろうとしたとき。
「幸樹もキモがってんじゃないの、あれ?」
(幸樹……赤塚君!?)
 突然出てきた思い人の名前に、透歌の心臓が激しく脈打ち始める。
 先程とは比べ物にならないほど、教室の中の会話に集中する。
「え、なに、幸樹がどうしたの?」
「あんた気付いてないの? 倉井さー、なんか、いっつも幸樹のこと見てんじゃん」
「うっそ、マジで!? じゃーなに、倉井、幸樹ラブってこと?」
「うっわ、ありえねー! キモすぎだって。マジなんそれ?」
「マジマジ。あの女前髪長くて半分目ぇ隠れてっから分かりにくいけどさー、よーく見ると、いっつ
も幸樹のこと見てんのよ」
「ぎゃー、やめて、マジやめて! なんかあいつの視線ってスゲーねっとりしてそーっ!」
「幸樹かわいそー、呪われてんじゃない?」
「そういう想像しか出来ないよねー。わたしが男だったら、あんなのに好かれてるって知ったら
ショックで自殺するわ」
「だよねー。倉井だよ倉井。マジありえねー」
 透歌はゆっくりとその場から立ち去った。 <> 気に病む透歌さん<>sage<>2008/01/05(土) 03:05:17 ID:wi0YCo1E<>
 転げ落ちるように階段を駆け下り、朦朧とした意識のまま歩き続けて、気がつけば家に帰り着いていた。
 真っ暗な自室の中、電気もつけずに隅っこにしゃがみこみ、先程聞いた会話を何度も何度も頭の中
で繰り返す。
(きもちわるい。わたしはきもちわるい。赤塚君、わたしを見たら嫌な気分になるんだ)
 頭が殴られたように痛み、腹の辺りがずきずきと痛み出す。背中から嫌な汗が滲み出し、全身を悪
寒が襲った。
(どうしよう。赤塚君、わたしが見てたら嫌な気分になるって。ショックで自殺するぐらい嫌だって。
赤塚君が嫌な気分になるのはいやだ。でもわたし、赤塚君をずっと見ていたい。だけどそうすると赤
塚君が嫌な気分になる。赤塚君が嫌な気分になるのは嫌。でもわたし、赤塚君のこと見られない人生
なんて考えられない。だけどわたしに見られると赤塚君が嫌な気分に……ああ、どうしようどうしよ
うどうしようどうしよう)
 思考が堂々巡りし、どんなに努力しても答えが出ない。腹痛と頭痛に加えて吐き気もこみ上げてく
る。気がつくと、混濁する意識の中、視界を覆いつくさんばかりに見たこともない生き物が部屋を飛
び回っている。
 翌日、透歌はベッドから出ることが出来ずに、結局学校を休んでしまった。

(だけど、わたしはここにいる。わたしに見られると、赤塚君が嫌な気分になると知りながら)
 女子トイレの個室の中で、透歌はため息を吐く。
 結局のところ、彼女は進むことも戻ることも出来ずに日々を過ごしている。
 病院で診てもらったところ、頭痛や腹痛、幻覚等の症状は、全て心因性のものと診断された。透歌
にとっては、いちいち言われなくても分かっていたことだったが。
 両親はイジメに遭っているのではないかと勘ぐり、もう学校へは行かなくてもいいと透歌を説得し
た。しかし彼女は絶対に聞き入れなかった。
「わたし、どうしても学校へ行きたいの。こんな風になってしまった理由は言えないけど、またベッ
ドの中で寝るだけの生活に戻るのは絶対に嫌」
 そんな風に強く主張したのは、生まれて初めてのことだった。両親にとってもそれは同様だったよ
うで、とりあえずは透歌の意志を汲んでくれた。服薬しながらの通学を認めてくれたのである。
 だが、頑張れたのはそこまでだった。苦しみに耐えて学校に通いながら、透歌は状況を何も変える
ことが出来ずにいる。
 自分に見つめられると赤塚が嫌な思いをするのなら、せめて近くにいられるだけで満足しよう……
そんな風に思い込もうとするのだが、気がつくと彼の姿を目で追っている自分がいる。
(これじゃダメだ。赤塚君に嫌な思いをさせてしまう)
 透歌は必死に自分を抑えようとしたが、赤塚が近くにいるだけで、理性など簡単に吹き飛んでしまう。
(赤塚君が嫌がるって分かってるのに、自分勝手な感情を抑えられないなんて。わたしはなんて汚い
人間なんだろう)
 自己嫌悪と絶望感は心の病をさらに加速させ、先週更に三錠ほど薬が増えた。
 それでも、透歌は自分の病気の原因を、他人には一言も喋っていない。誰かに話して、それが赤塚
に伝わってしまったらと思うと、怖くてたまらなかった。
(わたしはどうしたらいいんだろう)
 バッグを持って個室のドアを開けながら、透歌はぼんやりと考える。
(近くにいると赤塚君に嫌な思いをさせてしまうのに、彼から離れるのには耐えられないなんて)
 女子トイレから出る直前、壁にかかった鏡の中に自分の姿を見る。
 青白い肌、長い前髪に隠された目元、色素の薄い唇、痩せこけた頬。
(ああ、本当だ、きもちわるい。わたし、墓場から出てきた幽霊みたいだ)
 そんなことを考えて、透歌はふと微笑んだ。
 幽霊。もしも自分が幽霊だったら、どれだけいいだろう。
 そうすれば、誰かに気付かれることなく、本人に悟られて嫌な思いをさせることもなく、ただただ
彼のことを見つめていられるのに。
(幽霊、か。死んだら、幽霊になれるのかな)
 異常な考えだと、理性が警告する。だが、自分でもそうだと理解できるほどに異常な思考は、闇に
差した一筋の光のように、ゆっくりと透歌の心に広がっていく。
(そうだ。死んで幽霊になればいいんだ。大丈夫、わたし、こんなに赤塚君のことが好きなんだもの。
きっと、出来るはず。そうだ、死のう、死のう。今日死のう、今すぐ死のう。屋上から飛び降りれば、すぐだ)
 決心した透歌は、女子トイレの扉を開けて外に出た。
 すぐに屋上に向かおうと踵を返したとき、不意に後ろから声をかけられる。
「倉井さん」
 心臓が大きく脈打った。 <> 気に病む透歌さん<>sage<>2008/01/05(土) 03:06:33 ID:wi0YCo1E<> (この声……! え、でも、そんなはず……)
 かき乱された思考がぐるぐると渦を巻き、透歌は深い混乱の中に叩き落される。
 それでも、体はゆっくりと後ろを向いていた。前髪で半ば塞がれた視界の中に、彼の姿が見える。
(赤塚君……!)
 透歌は目を見開いた。あり得ない事態に、呼吸をすることすら忘れてしまう。
(なに、なんなの、何が起こってるの? ああ、これも幻覚? おくすり、効かなかったのかな?)
 混乱と緊張に身を震わせる透歌に、赤塚は優しく穏やかな微笑を浮かべてみせた。
「ごめんごめん、特に、用があったわけじゃないんだけどさ。あれ、ひょっとして急いでた?」
 近づいてくる赤塚に、必死で首を横に振る。彼は「そっか、よかった」とほっとしたように言いな
がら、透歌から二歩ほどの距離を空けて立ち止まった。
「大丈夫? なんか、いつもより具合が悪そうだけど」
 心配そうな顔でそんなことを言われて、透歌はますます混乱した。
(ああ……わたし、赤塚君にこんな顔させて……あれ? でも、赤塚君、わたしを心配……? うう
ん、そんなはず……でも……)
 とにかく何か言わなければと思い、透歌は必死で口を開く。
「……あの……だ、だいじょぶ、です……」
 小さくか細い声だった。ちっとも大丈夫そうに聞こえない。透歌は心の中で自分を呪う。
 赤塚の方は特に気にした風でもなく、「それならいいんだけど」と困ったように笑った。
「なんか、倉井さんっていっつも元気なさげだからさ」
「……い、いつも……?」
「そうそう。ほらなんか、凄い痩せてるし、今にも倒れそうな感じでさ……やっぱ、気になるんだよね」
「……気に、なる……?」
 透歌の体が、冷水を浴びせられたかのように冷たくなった。
(気になる……! 気になるんだ、やっぱり気になるんだ……! きもちわるいぐらいに痩せてて、
今にも倒れそうな不気味な女がいつも自分のことを見つめてるから気になって、赤塚君いつもわたし
のせいで嫌な気分になってるんだ、わたし、やっぱり赤塚君に嫌な思いを……!)
 そうに違いないと覚悟していたことではあったが、本人から直接事実を突きつけられたときの衝撃
は想像以上のものだった。
「……? 倉井さん?」
 怪訝そうな赤塚の声が、やけに遠くに聞こえる。遠のく意識を、透歌は必死に繋ぎとめた。
(ああ……せめて、せめて、謝らなくちゃ……! 嫌な思いをさせてごめんなさいって、もう二度と
しませんってちゃんと言わないと……!)
 その思いを伝えようと、透歌は必死に口を開く。声の代わりに、涙が出た。
「倉井さん!?」
「……っ……ごめ、ごめんな、さいっ……!」
「お、落ち着いてよ、なんで急に泣いて……っていうか、なに、なんで謝るの? お、俺に謝ってるの?」
「……わ、わたし、赤塚君に嫌な思いを……」
「は? え、俺?」
 困惑したように自分を指差す赤塚に、透歌は無言で頷いた。彼は頭をかきながら、なだめるように言う。
「……よく分からないけど、とりあえず、落ち着いて、話してくれないかな?」
「……は、はい……」
 まだ混乱の渦中にあったが、ほんの少しだけ気持ちが落ち着いてきた。透歌はしゃくり上げながら、
謝罪の続きを口にする。
「……あの、わ、わたし、こんな青白くて骸骨みたいに痩せててきもちわるくて……な、なのに、い
つも赤塚君のこと見てるから……それで、嫌な思いをさせて……」
 人と話すのは苦手だったが、とにかく何とかして謝罪の意志を伝えようと、透歌は思いつくままに
一生懸命喋った。だが案の定上手く伝わらなかったようで、赤塚は眉間に皺を寄せてしきりに首を
捻っている。
「……えーと、まだ、ちょっとよく分からないんだけど……つまり、倉井さんは俺に嫌な思いをさせ
たと思ってて、そのことを謝りたいと思ってる……ってことで、いいんだよね?」
「……は、はい……」
 自分の意志が伝わったことにほっとする透歌の前で、赤塚はまだ首を捻っている。
「……あのさ、なんか、誤解してるみたいなんだけど……」
「……ご、誤解、ですか……?」
「ああ。いや、俺、倉井さんのせいで嫌な思いをしたことなんか、一度もないんだけど……?」
「……え……?」
 今度は透歌が困惑する番だった。
(どうして……? 赤塚君、嫌な思いをしてないって……でも、わたしのせいで……)
 戸惑う彼女をじっと見つめていた赤塚が、不意に声の調子を変えて切り出した。 <> 気に病む透歌さん<>sage<>2008/01/05(土) 03:08:08 ID:wi0YCo1E<> 「それより、聞きたいことがあるんだけど……」
 真剣な声音に驚いて顔を上げると、視界の真ん中に赤塚の瞳があった。透歌が憧れていた、あの
真っ直ぐで意志の強そうな瞳だ。瞬間的に顔が熱くなり、透歌は思わず顔を背けてしまう。だが、赤
塚はそんなことなど気にも留めないかのように言った。
「倉井さんさ。さっき、自分のこと気持ち悪いって言ったよね?」
「……ええと……」
 透歌は思い出そうとしたが、必死過ぎたせいか、先程まで喋っていた内容をほとんど思い出せなかった。
「……誰かに、そう言われたの?」
 どきりとした。おそるおそる顔を前に戻すと、赤塚は相変わらず、馬鹿正直なほどに真っ直ぐな視
線を透歌に注いでいる。
(ああ……赤塚君の顔が、こんなに近くに……!)
 先程とはまた違った意味で、透歌は身動き出来なくなってしまう。
 その肩を、不意に赤塚の両腕がつかんだ。呼吸が止まりそうになる。少年らしい細さを残しながら
もしなやかに鍛え上げられた赤塚の両腕が、自分の肩をつかんでいる。彼の手の平の温もりが制服の
布地越しに感じられて、冗談抜きで失神しそうだった。
 そんな透歌に、赤塚は力強い声で言った。
「俺は、そんなこと思ってないから」
 その声が、透歌の意識を現実に引き戻した。
「確かに倉井さんはちっちゃいし、今にも倒れるんじゃないかって心配になるぐらい痩せてて、いっ
つも元気なく見えるぐらいに青白いけど……」
 透歌の肩を握る手に、力が篭った。
「倉井さんは、気持ち悪くなんかない。絶対に。少なくとも、俺はそう思ってるから」
 強い感情が込められた言葉だった。その一語一語を、透歌は全身で受け止めた。言葉は血潮に宿っ
て透歌の体内を駆け巡り、まるで魔法のように、彼女の冷たい体を温めた。
(お日さまに抱きしめられたみたい)
 心臓が力強く脈打つ音を、透歌は確かに聞いた。赤塚の温もりに、汚い体が浄化されていくのを感
じる。気がつけば、透歌はまた涙を流していた。苦しさや悲しさ以外の理由で涙を流すのは久しぶりだった。
「く、倉井さん? ご、ごめん、俺、なんか変なこと……」
 赤塚が慌てて透歌の肩から手を離す。透歌は頬を伝う涙の温かさを感じながら、ゆっくりと口を開いた。
「……ありがとうございます、赤塚君」
「え?」
「……わたし、赤塚君の言うとおり、あまり元気じゃなかったんですけど……赤塚君のおかげで、す
ごく元気になりました」
「そ、そう……?」
「はい……だから、あの……もう、大丈夫ですから……あ、ありがとうございました!」
 これが本当に自分のものかと疑うほど、自然に大きな声が出た。目の前の赤塚もこれは予想外だっ
たようで、驚いたように目を瞬いている。気のせいか、頬も若干赤くなっている。
 途端に恥ずかしくなってきた。体の熱が顔まで上ってくるのを感じる。
「あ、あの……あの、あの……えええ、えーと……し、失礼しますっ!」
 何を言うべきか分からないまま、透歌は踵を返してその場から逃げ出した。
 昼休みも終わりに近づき、廊下には徐々に人が増え始めている。普段の倉井透歌を知るわずかな生
徒たちが、我が目を疑うような表情を浮かべる中を、透歌は小走りに走り抜ける。もはや、誰に何を
言われようが、どんな目で見られようが、全く気にならない。心の代わりに体が馬鹿になってしまっ
たようで、空も飛べるのではないかと錯覚するほどに、腹の底から訳の分からない力があふれ出してくる。
(そうだ、もう何も気にならない。あの瞬間の思い出があれば、わたしはこれから一生生きていける!)
 確信を抱いて走る透歌のバッグから、薬の入ったプラケースが飛び出し、床に落ちて軽やかな音を立てた。

 こうした次第で、倉井透歌は再び元気を取り戻した。
 とは言え、基本的に内気な彼女のこと、愛しい赤塚との仲は以前とそれほど変わらなかったようで
ある。この後も透歌は周囲にキモいと陰口を叩かれながらも、それを全く意に介さず、幸せな気分で
赤塚のことを見つめ続けた。
 ただ、見つめられる側には若干気持ちの変化があったようで、今度は逆に赤塚の方から透歌を見つ
めることが多くなったらしい。
 互いに「相手の気を散らさないように」と過剰なほど気を遣うせいで、目が合うことは滅多にな
かったそうだが、
「こっちのちょっとした仕草が原因で大袈裟に悩む倉井さんが相手なんだから、これぐらいがちょうど
いいのかもしれないなあ」
 赤塚は、半ば諦め半分にそんなことを考えたりするそうである。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/05(土) 03:11:43 ID:wi0YCo1E<> 刺したり斬ったり殺したりしないヤンデレを目指しつつ、
「自分が相手に迷惑かけてるんじゃないかと気に病みすぎる、とかでもヤンデレになんのかなあ」
だのといろいろ考えた結果、なんだかよく分からんものが出来たのでとりあえず投下してみた。

愛されてもまともにならないのがヤンデレなんだろうか。
ヤンデレでも愛されればまともになるんだろうか。
個人的には病んでた人が浄化されて健康になったときのギャップに萌えるんだが、
そういうのはヤンデレに含んでいいものなのかどうかと(ry

悩みはつきませんなあ。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/05(土) 03:24:38 ID:CU/sUzFr<> >>580
good job.
赤塚くんの優しさに感動。
もし赤塚くんがここまで優しくなかったり、励ましたりしなければ
倉井さんはずるずると病んでいってしまったんだろうなあ、と考える。
事前で食い止めるという展開はこのスレでは貴重な存在だから、参考になったッス。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/05(土) 03:41:06 ID:hPVfcmeS<> >>580良い物が見れた。
例えるなら、キモ姉とキモウトのレズプレイ並に珍しい物だな。

GOD JOB。またこういう暖かいSS書いてくれる事を期待してる。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/05(土) 03:41:41 ID:snBO2NzB<> >>580
なかなか新鮮みがあってヤンデレに対する新たな視点も持てるようになったし実にGJッス
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/05(土) 04:35:07 ID:4wO/f3Hx<> コメント読むまで病気だからヤンデレとかいう洒落かと思ってた <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/05(土) 09:56:21 ID:roRhHr26<> >>580
GJ
こういうの好きだなあ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/05(土) 10:43:26 ID:i++E2zMv<> >>580
GJ

>自分が相手に迷惑かけてるんじゃないかと〜
ヤンデレの代名詞みたいに使われてる楓だって「自分は相手にふさわしくない」から病んでったようなもんだし
十分それもヤンデレだと思う <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/05(土) 10:51:48 ID:hJ6KMA+X<> うむ、いい仕事。
でもやっぱり物足りないと思ってしまったりもする。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/05(土) 12:59:13 ID:UdtzBt2Z<> ならその足りない部分をあんたが書いて補完すればいいじゃない <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/05(土) 14:52:10 ID:IgllYQNd<> >>580
GJです、続きはくるのかな? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/05(土) 17:33:38 ID:zD98KsMj<> 超グッジョブ!
続編期待 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/05(土) 18:06:26 ID:A7NuXFuT<> 新鮮だなぁと思った GJ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/05(土) 22:56:45 ID:nlIZiIOY<> ドラマ見てて思った。
のだめってヤンデレじゃね? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/05(土) 22:59:18 ID:1S8RRNk8<> は? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/05(土) 23:34:30 ID:nKxuZuzq<> お前は何を言っているんだ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/05(土) 23:40:01 ID:J9Mqxn7w<> まあ確かにちょっと情緒不安定なところはあるが。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/05(土) 23:56:38 ID:IgllYQNd<> 芸術家なんてそんなもんだろ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/06(日) 00:55:09 ID:6sQOg6j8<> ヤンデレとメンヘラが区別つかないときはあるよな
散々議論されてると思うがどうなんだろ
暗いメンヘラが恋した場合もヤンデレ扱いになるのかね? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/06(日) 02:17:31 ID:dB+IXdzk<> 全然違うだろ

メンヘラ→頭の中がお花畑
ヤンデレ→頭の中が意中の人だけ
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/06(日) 07:23:09 ID:6sQOg6j8<> メンヘラ→のだめ→ぎゃぼー
ヤンデレ→未来日記→ゆっきーゆっきー

つまりこうだな? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/06(日) 07:26:15 ID:i9Uu0K44<> 少なくとも言えるのは、三次元にヤンデレはいないということだ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/06(日) 10:02:11 ID:l95zkhPw<> 異常に嫉妬深い女とかはたまにいるけどな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/06(日) 15:22:24 ID:t/Y3dtrL<> 「○○君が半身不随になればいいのに」
「そうすれば私が一生面倒見てあげられるのに」

とリアルで言った女の子ならいるぞ。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/06(日) 15:43:40 ID:OeCUS3QL<> 「お兄ちゃんどいて! そいつ殺せない!!」を忘れるわけにはいくまい <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/06(日) 15:56:52 ID:t/Y3dtrL<> あ、よく考えたら本保管庫の「彼が望むなら死んでもいい」
あれの元ネタがまさに三次ヤンデレだったな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/06(日) 19:01:38 ID:bNewDtk5<> >>603
作り話で落ち着いたんじゃなかったか?あれは <> 溶けない雪
◆g8PxigjYm6 <><>2008/01/06(日) 19:05:22 ID:MdISYtqU<> 流れを切りますが投下

かなり今更だけど
トリつけないでの投下すみませぬ <> 溶けない雪
◆g8PxigjYm6 <><>2008/01/06(日) 19:06:13 ID:MdISYtqU<> 9
「そういう水無月さんだって、20分前行動じゃないか」
そう言いながら、振り向く。
視界を変えた先に立っていたのは、水無月さん。
「確かにそうだね」
そう言い、水無月さんは軽く微笑む。
そんな表情に一瞬ドキリとしたが、直ぐにいつも通りに戻る。
「まぁ、二人共しっかりしてるという事でいいか。
それで、何を買いにいくの?
さすがに荷物持ちと言っても、数十キロとかの荷物は持てないからね」
少し冗談を言い、水無月さんの反応を伺う。
さすがに、只の買い物で数十キロなどいくわけがない。
そんな事を聞いた水無月さんは、少し考える様な仕草をして、
「分かった、9キロ位に抑えるね」
「え?」
返ってきた水無月さんの言葉に、思わず驚いてしまった。
「冗談だよ。今日は、少し雑貨屋にでも行こうかと」
冗談か…
力にはそこまで自信がなかったという理由から、
安心してしまった自分が少し情けない。



「うわぁ……案外面白い所だね、ここは」
雑貨屋に入った時、思わずそう言ってしまったのは無理もない。
入った瞬間に視界に写る、見渡す限りの物、物、物。
数えきれない程の物が置いてありながら、
ぬいぐるみ、コップ、お菓子、香水、椅子、etc……と、種類もかなりある。
少し遠くから、音量が高い歌も流れてきて、耳に届いてきている。
少し前に流行った曲で、僕は今でも聞いている。
人の姿も、それなりに居る事も分かる位、入り口からでも人が視界に入る。
雰囲気や、中の様子が想像とはかなり違った。
何故かは分からないが、質素なイメージで、
あまり人がいない様なイメージが自分の中で勝手に定着していたのだ。
「あまりこういった所には来た事ないの?」
「いや、来た事はあるかもしれない。
だけど来た憶えが全然ないかな」
来た事があったとしても、その事を全く憶えていなければ来た事がないのと同義だ。
「へぇ……
やっぱり男の人はこういった物にあまり興味がないのかな?」
そう言いながら、水無月さんは目の前の棚に置いてある少し大きめの、
丸い形の豚のぬいぐるみを手にとり、こちらに差し出す。
「多分そうだと思う……かな?でも僕としては、
とりあえずこの店には興味があるよ」
目の前に差し出された、豚のぬいぐるみを手に取る。
「うわぁ………これで2000円もするものなのか」
<> 溶けない雪
◆g8PxigjYm6 <><>2008/01/06(日) 19:08:09 ID:MdISYtqU<> 「結構ぬいぐるみは高いよ。
だから私は買うとしたら、いつも手の平サイズ位の大きさにしてるよ」
「という事は、これは大体サッカーボール位の大きさだから買わないというのか」
手にあるぬいぐるみを元の棚に戻す。
僕の手によって棚に戻ったぬいぐるみは、
寂しげな目でこちらを見ている気がした。
「残念ながら、ね。
もう少し安かったら買っていたと思うんだけど……」
そういうわけだってさ、と、豚のぬいぐるみに視線を送る。
「なるほどね……
ところで、いつまでも同じ棚の前に居るのもなんだから、奥に進もうか」
「じゃあ、あっちからでいいかな?先に見たい物があったから」
水無月さんは右側を指差した。
指差した方向を見ると、どうやらあっちの方には食器類を主に置いているようだ。
「元々僕は付き添いだから、水無月さんの行く方向についていくよ」
「………うん、そうだね。じゃあ、行こうか」
今の間が少し気になったが、
水無月さんが、先程指差した方向に既に歩きだしていたので、足早に追いかけた。


水無月さんの目的の場所に着いて周りを見ると、
さっきは基本的にぬいぐるみをメインに置いてあったのだが、
ここは食器をメインに置いてあるようだ。
目の前の棚で見かける食器としては、コップやご飯茶碗が一見して多い。
「コップでも買うの?」
そんな棚の前でしきりに品を見ている水無月さんを見て、
疑問に思った事をそのまま口にする。
「うん、その通りだよ。と言っても、なかなかいいのが見つからないんだけどね」
「どんなコップが欲しいの?」
「うーん………マグカップが欲しいかな?」「マグカップねぇ…………」
そう呟きながら、周りの棚を法則性なく見回す。
ふと、棚の一番右、上から3段目の棚にある白いマグカップと、
その右隣に配置されている黒いマグカップに目が止まった。
見ると、そのマグカップの表明には色しか目に写らない。
棚に向いている方に模様があるのかと思い、白いマグカップを手に取ってみる。
手に取ってマグカップを右に回しながら見るが、続くのはただひたすらの白。
何も無い事が分かったので、白いマグカップを元の位置に戻し、
今度は右隣に置いてある黒いマグカップを手に取る。
先程の白いマグカップと同様に、右に回しながら見るが、
今度は白と対象的とされり、黒が続くだけ。
模様があるかもしれない、という事に期待していたわけではない。
なので、何もないと分かると同時に、何の未練もなく、マグカップを元の位置に戻す。
そんな今までの僕の様子を、隣で見ていたらしい水無月さんが、
棚に戻したマグカップに手を伸ばし、白と黒、両方を手に取る。
しばらくそれらをじっと、見つめていた後、「これにしよう」
「ん?それでいいの?」
<> 溶けない雪
◆g8PxigjYm6 <><>2008/01/06(日) 19:08:50 ID:MdISYtqU<> 水無月さんは手に持っているマグカップに視線を落とし、
「うん、私はシンプルな物が結構好きだからね」
そう言いながら、マグカップを手にレジに向かい歩き出す水無月さん。
水無月さんの後に付かず離れずの距離を保ち、後ろからついていく。
後ろから付いていくと、先程の真っ白なマグカップを思わず思い出した。
改めて認識させられるが、水無月さんの髪はそれ位に、真っ白でいて、綺麗だった。
後ろ姿を見ると分かる、雪のような純白。
正面から見ると目立ちすぎない程度に見栄えを飾る髪質。
そんな髪からは、
純粋という雰囲気さえ醸し出している気がする。

と、また人の事をじろじろ見てしまっていた。
失礼極まりない。


「買ってきたよ〜」
僕に見せる様に、水無月さんは、
ビニール袋を持った手を顔の高さ位まで上げて軽く揺らした。
「マグカップなのにビニール袋なの?」
「あぁー……それはね」
結構耳に残る音を発しながら、
ビニール袋の中から薄い黒の箱を取り出した。

「ちゃんと箱に入ってるよ。
でも、箱に入っているからといってビニール袋に入れるのも、
確かに変な感じだね」
割れ物がビニール袋というのは、
どこかにぶつけただけで直ぐに割れてしまう、という不安が生まれる気がする。
「箱が黒いって事は、それは黒いマグカップ?」
「正解〜
正解者には景品としてこのマグカップを贈呈」
僕の両手を掴み、おもむろに水無月さんが手に持っていた箱を、その両手に置く。
「ん?
水無月さんが欲しいから買ったんじゃないの?」
「この黒いやつは違うよ。
これは今日の買い物に付き合ってくれたお礼だよ。
大体、女の子に黒いマグカップは似合わないって」
確かに
「そういうわけだから、遠慮なく貰ってくれると助かるなぁ…」
断られるのを心配しているのか、しきりに貰うように催促してくる。
僕としても、お礼というからには、もらわない方が逆に悪い気がした。
「分かったよ。遠慮なく貰ってく」




<> 溶けない雪
◆g8PxigjYm6 <><>2008/01/06(日) 19:10:15 ID:MdISYtqU<> 「それじゃあ、今日はお開きにしましょうか」
雑貨屋を出た後、直ぐに帰る事になった。
どうやら水無月さんはこれからやる事があるらしい。
しばらく繁華街の街並みをぼんやりと眺めながら、
水無月さんと肩を並べて歩く。

これといった事はなかったと思うが、何故か奇妙な沈黙が生まれていた。
前述した通り、理由は勿論分からない


よく分からない沈黙だった為か
「じゃあ、私はこっちだから」
待ち合わせ場所にいつのまにか着いていた、という事に気付いたのは
僕が帰る方向と違う方向を指さしながら、
僕に話かけた水無月さんの声を聞いてからだった。
「分かった。じゃあまた明後日、学校でね」
「うん、じゃあね」
二人で言うと同時に、各々の帰路に進む。

それにしても、買い物といってもあまり時間がかからなかった。
携帯を開いて時刻を見ると、約3時30分。
水無月さんに会ってから1時間30分位しか経っていない。
用事があったようなので、仕方がないといえば、仕方がないが。

お詫びの様な感じで付き合ったわけでもあるし、同時に親交も深められたと思う。
更に言えば、結構楽しかった。
最後の奇妙な沈黙が気になったけれど。



水無月 雪梨視点より
今日は本当に楽しかった。
隣には健二さんが居て、他愛もない物を二人で探して、
雑貨屋で買った色が違うだけのマグカップを二人で分けて……
これはデートと呼んでも差し支えないと思える。
健二さんはそんな気がなかったみたいだったのが、
残念だったけれど。

本当は、これから喫茶店にでも入って、健二さんと談笑をして、
しばらくしたら景色が綺麗な所にでも行って、
良い雰囲気を作る…………筈だったのに!?


全てがぶち壊された。
楽しくなる、至福の時だっただけに、
それが壊された時に感じる怒りは、相当なものだった。
相当というか、ここまで怒りの感情を持ったのは、
初めての事かもしれない。
<> 溶けない雪
◆g8PxigjYm6 <><>2008/01/06(日) 19:12:10 ID:MdISYtqU<> でもそんな怒りも今は抑えなければ駄目。
これから壊れた元凶………
ううん、壊してくれた人に会うんだから、怒りの感情のままに
アレに会っては駄目だ。
少し冷静になろう。
今日の事は、近いうちにお礼をすればいいだけだ。
私は待つ、あの――――
「ちょっと待ってくれないかなぁ?」
女が話掛けてくる事を―――――






投下終了
書けてはいたけど、色々あって結局こんなに遅くなったorz
次はもう少し早く時間を見つけて投下します <> 名無しさん@ピンキー<><>2008/01/06(日) 19:31:29 ID:yGhd3AuV<> GJ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/06(日) 19:48:43 ID:l95zkhPw<> 投下待ってたよ!GJ! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/06(日) 19:48:44 ID:w6euMmyH<> 続きにも期待
GJ! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/06(日) 20:40:50 ID:cB2YyUiR<> 海外ドラマ[CSI・科学捜査班シーズン3]の話で、父親を愛する余り、自分の母親を殺し、「私はパパを愛しています」と断言し、なおかつ想像妊娠で母乳を垂らし、お腹を膨らました娘にヤンデレを見て萌えた俺に後悔は無い!

<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/06(日) 21:23:27 ID:t/Y3dtrL<> >>611
久しぶりの水無月さん、ほのぼのデート……
と思いきや次回が楽しみになって参りました。
あと、次回の投下ではsageてクリ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/06(日) 21:24:34 ID:dB+IXdzk<> >>615
二次でやってくれたらネ申だったなw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/06(日) 22:11:45 ID:15I4eDD/<> >>615
なつかしい!
去年、その回を元にして一つ書こうって思ったのに結局へたれ根性の俺には書けなかったのを思い出した

あの娘役の女の子は外人の中でも相当な美少女でした <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/06(日) 22:40:08 ID:cB2YyUiR<> >>618
おお!知ってる人がいた

再放送を寝坊して慌てて見たら丁度、娘が母乳を垂らすシーンだったww

ホント、美少女だし良い娘役だった

事情聴取のやり取りはゾクゾクしたww

あの「お腹には赤ちゃんがいるの!」なんかの演技はサイコーだった


これを気に、書いてみない? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/06(日) 23:05:58 ID:+gi+WNmh<> 親子モノは気持ち悪い。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/06(日) 23:20:31 ID:KgwAyo8e<> >>620
許せない!
あたしとパパを引き裂こうとするなんて! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/06(日) 23:30:47 ID:9z5CGot7<> 娘を狂わせるほど良い親父を目指…

さなくていいよな… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/06(日) 23:33:54 ID:xwzgwDtW<> ちょっとTSUTAYA行ってくる <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/06(日) 23:35:19 ID:HV+Auqu4<> >>611
スゲェ楽しみにしてたんだ!!
GJ!!! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/07(月) 01:43:24 ID:TRn5NQTL<> なによ……>>620……ヤンデレまにあじゃ無かったの?
どうしてこんな所でお父さんとふたりで居る邪魔をするの?
お父さんはわたしだけを愛しているの。
わたしだけがお父さんを愛せるし、わたしだけがお父さんに本当の夢を見させてあげられるの。
だって>>620はお父さんのことを愛する資格なんて無かったもの!!
だからわたしがあのとき……あのとき……!
>>620を……>>620の背中を……!! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/07(月) 02:47:18 ID:qQgGRSWP<> 615のは何話目?
その巻を借りようと思って調べてみたんだが、わからないので教えて
ください。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/07(月) 03:04:24 ID:dZn94GdP<> >>620
モルダー…あなた疲れてるのよ……




親子だから良いんじゃないか!! <> ことのはぐるま
◆Z.OmhTbrSo <>sage<>2008/01/07(月) 03:09:13 ID:Dwn9Nfj7<> 流れを切ってすいません。投下します。 <> ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo <>sage<>2008/01/07(月) 03:10:08 ID:Dwn9Nfj7<> 第二十三話〜令嬢の誤解〜

 食事を済ませたあと、俺と華はこの町が建てた図書館へと足を運んだ。
 移動手段は徒歩。実はさっきまで食事をしていたファミレスと自宅、あと自宅から図書館までの距離は
そう遠くはない。自転車に乗らなくても二十分少々歩けば到着する。
 女性に長く歩かせるのは良くないということは経験上知っているのだが、華はどうやら例外であるらしく、
図書館に着くまで疲労を訴えたりすることはなかった。
 それどころか上機嫌ですらあった。弾んだ声音で何度実家の素晴らしさを語られたことか。
 実家に帰りたくない、というわけではない。だが帰りたいわけでもない。ちょうど中間ぐらいだ。
 フリーターとなった今の状況では一旦実家へ戻り態勢を立て直すべきなのだが、退職してからすぐに
実家へ戻らなかったため、すでに悪い方向へ向かってしまっている。
 下手をすればこのままずるずるとフリーターのまま、数年間過ごすことになってしまう。
 切り詰めた生活を送っていくよりは、就職してそれなりの暮らしのほうがずっといい。
 早いところなんとかしなければならない問題だ。
 もっとも、今抱えている問題の方がずっと深刻で、恐ろしく解決困難なのだが。

 平日らしく、図書館の駐車場には軽自動車が二台駐まっているだけだった。
 来館している人間はかなり少ないと見ていいだろう。理想的な状況だ。
 華は、俺の隣で周囲を鋭い目つきで見回していた。
「駐車場、ここだけですか? 近くに車が駐められそうな場所なんかありましたか?」
「ここだけだ。他には……駐めようとすればどこでも駐められる」
 人が居ないわけではないが、かといって昼に散歩しても誰ともすれ違わない程度の大きさの町ではそんなものだ。
 事実、ここに来るまですれ違ったのは車だけだった。
「何でそんなこと聞くんだ?」
「いえ。あの女が来るんなら、車のはずだと思ったので」
「あの女……って、かなこさんか」
「前、一度だけ大学に高級車でやってきたことがあったんですよ。運転手付きでした」
「ああ。あの車ね」
 覚えている。やけに丈が長くて、かすり傷一つ付いていなさそうな程に滑らかなボディをした黒塗りの高級車が
この駐車場に駐まっていた。その時はともかく、今はあれが菊川家のものだとわかる。
 あの車を見た後で俺は首を絞められて意識を失い、かなこさんとの会食の場へ連れて行かれたのだから。
「あれだけでかい車なら、ここに歩いてくるまで嫌でも目に入ってくるだろ。
 それに、このタイミングでかなこさんが図書館に来るはずがない」
 無事なのかどうかも怪しいし。大して筋トレもしていない俺が、どうしてそうすることができたか不明だが、
腹に拳を打ち込んで窓の外に飛ばしてしまった。無事かどうかは確認していない。
 無事だったとしても、俺が図書館にやってきたタイミングで鉢合わせするとも考えにくい。
 俺の身の回りでは考えられないことばかり起こっているが、今だけはそう信じたい。
「来ていたとしても、どうだっていいことですし、ね。私が付いているからには安心ですよ、おにいさん」
「ありがとよ」
 四つ歳の離れた従妹に勇ましく頼り甲斐のある台詞を言われたが、俺は平静を装った。
 図書館では騒がないでほしいが、いざという事態になったら華は約束なんか忘れてしまうだろうから、
注意することもしなかった。
<> ことのはぐるま
◆Z.OmhTbrSo <>sage<>2008/01/07(月) 03:12:37 ID:Dwn9Nfj7<>  自動になっていないドアをくぐり抜け、館内へ足を踏み入れる。土足でもオーケーなのはありがたい。
 中にいる人間はカウンターの向こうで黙々と仕事を進めている職員だけで、
フロアに用意されている席に座って本を読む人間は誰一人としていなかった。
「あの女の姿も見当たりませんね。よっぽどおにいさんのボディブローが効いたみたいです」
「単に来てなかっただけだろ」
 あと、わざと殴ったみたいな言い方をするな。殴ったのは事実だけど、殴るつもりはなかったんだ。
「そうと分かってもゆっくりしてる場合じゃありません。早いところ用事を済ませてきてください」
「お前は? 一緒に行かないのか?」
「私は誰か来ないか警戒しておきます。もしかしたら今から、ってことも考えられますしね」
「わかった。じゃ、行ってくる」
「はい」

 華と別れ、カウンターの前へ。向こう側では女性職員がコンピューターに入力作業を行っていた。
 遠慮するような静けさのタイプ音が止んでから、職員は立ち上がった。
「返却ですか?」
「いえ、ちょっと聞きたいことがあって。今、いいですかね」
 一応確認をとっておく。
 職員は一度パソコンの方へ目をやって、また俺へと戻した。
「構いませんよ。答えられることなら」
 期待通りの返事をもらえた。左手に持っていた二冊の本をカウンターの上に置く。
「この間、だいたい二週間ぐらい前ですけど、このタイトルが無い本のことを聞きに来た女性がいませんでした?」
「んー……ああ! あの長い黒髪の美人さんですか。覚えてますよ。
 いきなりやってきて、これこれこういう本がありませんか、って聞いてきたんです。
 その本は以前さらっと読んでいたので内容は知ってましたから。ありますよ、って答えました」
「それから、この本を借りるんじゃなくて」
「ええ。わたくしにこれをくださいませんか、って言ってきました。
 くださいと言われても、一応町のものだからあげられないですよ、こっちとしては。
 で、何度か問答しているうちに館の責任者が出てきたんで、今度はそっちに聞きに行ったんです。
 断るんだろうなと思って見てたら、二三会話するだけで責任者が頷いて、その女の人は本を持って出ていきました」
「どんな話をしていたかは?」
「名前を聞かれて、それに女の人が答えて。で……いきなり態度が変わったんですよね。
 女の人じゃなくてこっちの人間が。急にぺこぺこ頭を下げて、なんでもお申し付けください、とか言って。
 それから、この本をください、はいどうぞ持っていってください、って感じでした」
「へえ……」
 さすが有力者の娘。図書館の館長クラスにまで名前まで知れ渡っているのか。
「その後は本を持って帰っていきました。私が知っているのはそれぐらいです」
 で、かなこさんは外に出て行って、帰ろうとしている俺を発見して捕まえたわけだ。
 こっち側の本――『無題』をかなこさんが所有することになったのはそこからか。
<> ことのはぐるま
◆Z.OmhTbrSo <>sage<>2008/01/07(月) 03:14:01 ID:Dwn9Nfj7<> 「他には何か?」
「その本なんですけど、昔からここの図書館にあったものなんですか?」
「んー……どうでしょうね。ずっと昔からここに勤めていたわけじゃないですし。
 引き渡した後、関係する書類を見たら館で所有していた期間は不明、って書いてありましたね。
 というか、書類そのものが曖昧で。タイトルの無い本なんか普通こんな場所では扱いませんよ」
「誰が寄贈したかとかも、やっぱり?」
「わからないですね。あ、でも…………」
 ここで、女性職員が背後を振り返り、次いでフロア全体を見回すように視線を泳がせた。
「どうかしました?」
「……上の人に見つかったらちょっとまずいんです。内緒にしてくださいね?」
 そう言って、身を乗り出してきた。俺も少しカウンターへ体を寄せ、耳打ちを聞く態勢を取る。
 自然に、俺の視線は横に向くことになる。視線の先には、入り口付近に立つ華の姿があった。
 そして、不機嫌な効果音を出しそうな顔に貼り付いている瞳と正面からぶつかった。
 なぜ、華の視線が俺に集中しているのだろう。
 警戒しているのはかなこさんに対してではなく、俺の動きに対してなのだろうか。
 女性職員とはしょっちゅうこの図書館に来ているせいで顔見知りではあったが、お互い名前も知らない。
 俺自身、この人と何らかの関わり合いを持とうとは思っていない。華に注意されるようなことはしていないのだ。

 入り口から目を逸らす。見えない重圧がかかっているような気がしたが、気のせいにしておく。
「なんか最近、館の責任者の羽振りがいいんですよね。いっつも上機嫌で。
 車も買い換えてました。役場に行くとか言って今日も出ていったんですけど、たぶん昨日みたいに
 夕方になった頃に帰ってくるはずですよ」
「そりゃ……また、どうしてですか?」
「予想ですけど、さっき話していた女性が来て数日が過ぎた頃からそんなふうなんで、
 女の人からお金をもらったんじゃないかな、って。本を渡したお礼みたいな感じで。
 きっとその本は特別なもので、あの女性はすごい大金持ちだったりして、とか!」
 耳のすぐ傍から弾んだ声音で話しかけられる。顔は見えないが、笑っているような気がした。
 入り口の方から床を踏みならすような音が聞こえてきた。が、無視する。
 今はそれなりに大事な話をしている最中なのだ。

「あの時の美人さん、知り合いですか?」
 女性職員は耳打ちを止め、いつもの貸し出し業務をするときの場所に戻ってそう言った。
「知り合いというか……なんというか。まあ、知り合ってはいるんですけどね」
 かなこさんとの関係は、どう言い表したらいいのかわからない。
 前世からの恋人だったということはない。それだけは認めたくない。
 俺の方は二度と会いたくないと思っているが、かなこさんはその真逆で俺に会いたがっているはず。
 金持ちでそのうえ美人の女性から言い寄られている状況だが、生憎俺に受け入れる気はない。
 俺はもっと平穏な、金はそこまで持っていなくても生活に困ることのない生き方をできればいい。
 欲が深すぎるとろくでもないことになる、ほどほどが一番だ、というのが今まで学んだことだ。
「そうですか。じゃあ、もし今度会うことがあったら私にもちょっとだけ、ほんのちょっとだけでいいから、
 本のお礼をください、って言っておいてください」
 だが、演技でもこの女性みたいに欲深い方が大胆になれていいのかも。
 こんなだから俺は社会的には無職に見える地位にいても平気なんだろうな。
<> ことのはぐるま
◆Z.OmhTbrSo <>sage<>2008/01/07(月) 03:15:45 ID:Dwn9Nfj7<>  職員に礼を言い、カウンターを離れる。
 入り口に向かうと、腕を組んで備え付けの木製の椅子に座っている華がいた。
 左足のつま先がいらいらを物語るかのように床を叩いている。そのたびに、破裂音に似た小さな音が鳴る。
「おにいさん、図書館は静かにしなきゃ駄目ですよ。
 誰もいないからって、仲良くぺちゃくちゃ喋るのはいただけませんね」
「うるさいのはお前だって同じだろうが。バンバン床を鳴らすんじゃない」
「誰のせいだと思っているんですか」
 俺のせいだとお前は思っているんだろう。だがそれは誤解だ。曲解だ。
 女性に話を聞きに行っただけでそこまで怒るお前がおかしい。
「もういいです。何にも無かったみたいだし、許してあげます。……それで、なにかいい話を聞けましたか?」
「あんまり。確信が深くなったのは、この本を作ったのも、図書館に預けたのもかなこさんじゃないってことぐらいか」
「ふうん……そんなところだろうとは思ってましたけど」
「どうしたもんかな、ここから」
 これ以上話を聞きに行っても大した話は聞けそうにない。
 図書館の責任者が戻ってくるのを待ってから話を聞くか?
「帰りましょうおにいさん、実家に」
 そうだな。一旦実家に帰って調べ…………待て。

「いきなり何を言い出すんだ。まだ何にもわかってないんだぞ」
「そろそろ気が済んだかな、と思って提案してみたんですけど。まだ、納得できませんか?」
「ちっとも、だ」
 華が肩をすくめ、こっちに聞こえる大きさのため息をわざとらしく吐いた。
 さらに、指で自分のこめかみを押さえる。
「そんなこと調べたって何にもなりませんよ。今こうしている時間も惜しいぐらいです。
 早くおじさんおばさんの居る家に帰って、就職活動に取り組んだ方がよっぽど今後のためになりますよ」
「だから、なんで香織とかなこさんを殴りたくなるのか、って理由がわかって治るまで実家には帰れないだろ」
「その症状が治るという保証はあるんですか?」
「そりゃ…………」
 反論するのをつい躊躇った。
 治るのか、治らないのか。動くにあたって確認するべきだった要素。
 今の今まで、俺は治すことだけを考えていた。だが、治せるという保証はどこにもない。
 症状のかかり方からして普通じゃなかった。
 今後本に操られないようにする方法なんて、どの医者でもわからないだろう。
 こっちの頭を疑われるのがオチだ。
 だから、自分の力でなんとかしなければならない。
 なにより、俺自身がこんな状態でいるのは嫌だ。これから香織に会えなくなるなんて御免だ。
「治ると信じて動くしかないだろ。治せないという保証はどこにもない」
「その逆の、治せる保証もないですよね」
「確かにそうだが、治せなきゃ俺が困る。お前は困らないんだろうが」
 即、華が無言で頷く。本人以外の反応なんてこんなものだ。
 もっとも、華の場合はこいつなりの特別な理由があるのだろうが。
<> ことのはぐるま
◆Z.OmhTbrSo <>sage<>2008/01/07(月) 03:17:39 ID:Dwn9Nfj7<> 「とにかく、俺はまだ調べる。お前、手伝う気がないんなら帰っていいぞ」
「手伝ってるつもりはありません。私はただ、おにいさんの身に危険が及ばないように動いているだけです。
 あと、実家に帰るよう促すことも、こうしている目的のひとつです」
 なんて不要な存在なんだ。邪魔者兼ボディガードなんて要らん。
「俺の気が変わることはない。そうしているだけ無駄だぞ。今からでも大学に行ってきたらどうだ」
「いえ、大学に通う目的はもう達成しています。
 私があの大学を選んだのは、所在地がおにいさんが住んでいる町にあるから、それだけです。
 おにいさんの近くに居を構えた今となっては、これ以上通う意味なんかありませんね」
「……あっそう」
 そんな調子でいいのか、大学生。
「お前、将来の就きたい仕事とかないのかよ。大学は最後まで通った方がいいぞ。
 高卒の俺が言っても説得力ないだろうけど」
「理想はおにいさんの隣に永久就職することです」
 ……おい。恥ずかしげもなく、しかもこんなときにそういうことを言うな。反応に困る。
「強引な手段をとることも前は考えていましたけど、今となってはその必要もなくなりました。
 だって、このままいけばおにいさんは香織さんのところにも菊川かなこのところにも行けないでしょう」
「……俺がこうなったことを喜んでいるのか」
「いいえ。そこまでは考えてないです。おにいさんが危険にさらされることはまったく望んでいません。
 でもまあ、結果的におにいさんはまだ無事ですし。それにこのまま行けば…………」
 突然そこで言葉を切って、華は固まった。
 目は俺ではなく、俺の右斜め後ろ辺りに向けられている。
 華が立ち上がる。表情は険しく、怒っていることを露骨に表現している。
 その視線を追い、俺も振り返った。

 まず、総毛立った。
 まさかこんな、俺が図書館に来たタイミングでこの人までが来ることはないと、安心していた。
 そう、安心しきっていたのだ。
 だから、振り返ったとき、最初に目にした人物がかなこさんだとわかったとき、いきなり袋小路に追い詰められたような気分になった。
「ようやく、見つけましたわ。雄志様」
 最初に、かなこさんはそう切り出した。
「見つけた、って」
「ずっと探していたのですよ。気がついたら屋敷から居なくなっていて、それに……そこの女も居なくなっておりました。
 これはもう、雄志様が拐かされたのだとすぐに察しましたわ。そして、こうして発見することが叶いました。
 ……現大園華」
 俺の後ろにいる人物に狙いを定め、言う。
「よくもやってくれましたわね。本当に邪魔な存在ですわ、あなたは。いつもいつも邪魔をして」
「それはこっちの台詞です。いつまでもいつまでも、妄想を垂れ流しておにいさんに近づいているくせに」
「妄想、とは?」
「あなたが前世でどこぞのお姫様だった、とかいう虚言ですよ。勝手に思いこむのは構わないんですけど、
 それにおにいさんを巻き込むのはやめてもらえ――いえ、やめなさい」
「……ふふっ」
 かなこさんが目を細め、口元に手を当てて、上品に笑う。
 極上の冗談を言われたときのように、肩まで震わせている。
 嘲るようなその笑みは、止めなければいつまでも続きそうだった。
<> ことのはぐるま
◆Z.OmhTbrSo <>sage<>2008/01/07(月) 03:19:36 ID:Dwn9Nfj7<>  華の大声が後ろから飛んでくる。
「何がおかしい!」
 背にしているから表情はわからないが、怒っているということだけはわかった。
 振り向いて確認する気はない。かなこさんを前にして、その姿を視界から外してしまうのは躊躇われた。
「いえ。予想が大体当たってしまったもので、ついおかしくなってしまいました。失礼を。
 やはり、あなたもそう言うのですね。天野の娘も同じ事を言っておりましたわ。
 前世などあるはずがない、の一点張りでした」
「あなた以外の人間は皆同じ意見ですよ。現に、おにいさんだって信じていませんしね」
 どちらかと言えばな。もしかしたら違うかも、程度には疑いを持っているが。
「そうでございましょうね。雄志様は昔から、正直になれないお方でした」
「ふん……おにいさんの一番古い過去を知っているのは私だけですよ」
「わたくしが言っているのは、その時のことではありませんわ。
 雄志様がわたくしの心と体の両方を守ってくださっていたときのことを言っているのです」
 小さな舌打ちの音が背後から聞こえた。
「あなたに話は通じませんね。いつも平行線です」
「前提が違うのでしょう。前世のことを信じているわたくしと、信じない者とで話が通じるはずがありませんもの」
「ですね。はっきり言って、いくら話したって無意味ですね」
「ええ、無意味です。もともと、わたくしはあなたたちのような人間との会話に意味など見いだしてはおりません。
 雄志様と話をするときだけ、会話が成り立っていれば構いませんでした」
「……とんだお嬢様もいたもんですね」

 華のつぶやきに返事せず、かなこさんは俺に向き直った。
 その穏やかな笑みには狂気が隠されている、と心に言い聞かせなければ、こちらまで流されて頬を弛めてしまいそうだ。
「申し訳ありませんでした」
 ……え。
 謝られるようなことをされた覚えもないのに、頭を下げられた?
 心構えが弛緩した。置いてきぼりをくらったような気分だ。
「わたくしは、今まで誤解しておりました」
 そうでしょうね、とつい言いたくなったが、口には出さない。かなこさんが言葉を繋ぐまで待つ。
「雄志様が望んでおられることを、わたくしは理解していないどころか、今まであのようなことをしてしまって。
 本当に、過去のわたくしに折檻してやりたいところですわ」
 理解しがたいことを言われ、思考が止まった。俺が望んでいることを、かなこさんは知っている?
 望みなんか、俺には特にない。全くないわけではないが、どれも小さな事柄ばかりだ。
 日常で、いいニュースが流れて欲しいとか、夕方スーパーに行ったとき安売りされている総菜が残っていたらいいなとか。
 まさかそんなことをかなこさんが察するはずもない。話題を持ちかけられたことすらないんだ。
 なのに、俺が望んでいることがかなこさんにはわかるっていうのか?
<> ことのはぐるま
◆Z.OmhTbrSo <>sage<>2008/01/07(月) 03:24:00 ID:Dwn9Nfj7<> 「凡なる人間と同じように、平穏に、ただ天寿を全うするまで過ごすことが雄志様の望むことである、と誤解していたのです。
 だからわたくしもそれに合わせ、雄志様の伴侶となり歩む道を進んでいこうと考えておりました」
 それこそが俺の望む人生なんですけど。
 好きな女性と結婚して家庭を持ち、平凡に一生を暮らせたら最高じゃないか。
 先行きの不透明な今の状態、そして現代社会では、そんな人生すら危ういというのに。
「ですが、それは違ったのですね。わたくしの見立て通り、雄志様は愛に生きるお方でした」
 愛って。俺のどこをどう見たらそういう見解に至るんだろう。それこそ誤解だ。
 これは駄目だ。なにか、違う方向にかなこさんは物事を考えている。止めなければ。
「あの、俺は普通の生き方が好きなんですよ。特に夢がなくても、絶望しないで、小さな幸せを感じられるような生き方がいいんです」
「正直ではありませんね。わたくしはそんなところも好きですわ」
 不意に、満面の笑みを浮かべられた。こんな台詞を言われたら胸が熱くなって、言葉が詰まるのは必然だ。
「ですが、もう言葉は要りません。雄志様のお言葉と、行動に矛盾があることに気づきました。
 この時代でのわたくしの父、菊川桂造の誕生日パーティーの翌日、雄志様はわたくしを拒絶しました」
「当たり前じゃないですか」
 と、華が割り込んできた。
「ベッドに体を固定するような女を受け入れるような男じゃないんですよ、おにいさんは」
「黙りなさい。あなたの出る幕は既にありません。
 ……それで、なぜ拒絶されたのか、わたくしには理解できませんでした。雄志様はわたくしを求めているはず。
 体を重ねれば、雄志様は満足してくださると、そう考えていたのです。浅はかな考えでしたわ」
 確かにあの行動は浅はかではあった。その後に首を絞められたこともそう。
「その上、雄志様のお命まで奪おうとしました。あれが、あれこそが、最大の過ちでした。
 雄志様は、わたくしに命を奪われることを望んでなどおりませんものね」
「そりゃあ……だいたいの人間はそうですよ」
 口を開いてわかった。喉の奥が乾いている。なにか飲み物が欲しかった。
 だが、状況は安らぐ暇など与えていない。緩やかな緊張感が俺を縛り続けている。
 かなこさんは目を閉じて可愛らしい笑みを浮かべた。
 次の瞬間に、目を開けて俺に告げる。俺の望みがいったいなんであるかということを。

「命を奪うべきなのはわたくしではなく、雄志様の方ですものね。
 以前、この場所で初めて――いえ、久しぶりに再会したときにわたくしが言った、本のお話に出てくる姫が真に願っていたこと。
 それに応えるように、雄志様も願っておられたのでございましょう?」
「……あなた、何を……?」
 口を開いたのは華だった。
 俺は何も言わない。喉が渇いていたから。
「今朝、雄志様の拳を受けたときに悟りました。わたくしを殺したいと、望んでおられることを。
 命を奪い、最期を看取り、存在の全てをその心に刻みたい。
 ああ、迂闊でしたわ、わたくしは。愛するお方に殺されることこそが望みだったことを忘れ、幸せを押しつけようとして。
 殺されることに怯えていたのかもしれません。許してくださいまし。
 ……さあ、雄志様。あとは望むままになさいませ」
 あと、それよりもなによりも、かなこさんの言っていることが、

「わたくしを、どうぞお好きなように、存分に、望むままに殺し、心に刻み、そして――愛してくださいませ」
 
 最大の誤解だったから。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/07(月) 03:28:31 ID:Dwn9Nfj7<> 23話はここで終わりです。続きは、当たり前ですが24話になります。
ここからは、選択肢でAの『図書館に行って本を作り直した人物を明らかにすることだ。』を選んだ場合の、かなこルートです。

伝え忘れていましたが、かなこルート完結の後、残りの華ルートも香織ルートも投下します。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/07(月) 04:09:14 ID:rEp8F165<> >>636
テラGJ!
華もかなこさんもどちらもカワユスw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/07(月) 12:35:22 ID:3tLy+esm<> かなこルートなのに華に萌えてしまった俺ガイル。
でもこれで全ての謎が解かれる……のか? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/07(月) 13:06:02 ID:rvmp/0bD<> まとめの「ことのはぐるま」、俺のケータイからだとエラーが出る…
寝る前にベッドで読みたいのに…ちきしょー <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/07(月) 13:54:25 ID:/M+IVLFZ<> >>639
ファイルシークで見ろよ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/07(月) 14:28:12 ID:rvmp/0bD<> >>640
あんた最高 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/07(月) 16:30:39 ID:dZn94GdP<> >>640に漢をみた <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/07(月) 17:35:37 ID:IXqbQoMX<> >>640
前から好きでした <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/07(月) 17:50:16 ID:v/AqTOSs<> >>580
気に病む透歌さんを今日読んで描いてしまった。
http://a.pic.to/r4hna
今は後悔してる。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/07(月) 17:53:00 ID:v/AqTOSs<> 流れをぶったぎって申し訳ないorz <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/07(月) 18:00:11 ID:U+JOTtaU<> >>645
とりあえずPC許可を
話はそれからだ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/07(月) 18:00:43 ID:rEp8F165<> >>645
とてもGJだから許してあげよう。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/07(月) 18:07:51 ID:/M+IVLFZ<> >>645
グッジョブ
字が怖くて良いね <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/07(月) 18:08:01 ID:v/AqTOSs<> 許可しました おっちょこちょいですいませんorz <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/07(月) 19:06:13 ID:IXqbQoMX<> >>649
ずっと前から好きでした

しかし、後ろから抱き付いて愛を囁いた後、半年くらい放置したくなるくらいのオーラが出てますなァ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/07(月) 20:34:29 ID:OZzSQoe1<> >>639
PCサイトビューアー使えよ。 <> 580<>sage<>2008/01/07(月) 21:32:07 ID:ILHRPBHr<> >>644
ちょ、おま……今までいくらかSS書いてきたがイラストとかつけてもらったの初めてでしかもこんな可愛いとかどういうこと(ry
リアルで目汁出そうなんですけどw マジでありがとうございました!
やっぱ、目隠れっ娘の前髪の間からぼんやりした(あるいは眠たげな)瞳が垣間見える瞬間が一番可愛いな! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/07(月) 22:33:34 ID:dZn94GdP<> >>652
うらやましいなぁちくしょう……

そりゃそうとCoccoってアーティストの曲なんだがな
なんつーか女の負の情念みたいなのをよく歌うアーティストなのよ
なんかヤンデレ風味のある詞も多いし曲も良いからかなりおすすめ

「首。」って曲があるんだがスクデイ知ってる人にはおすすめ
「けもの道」と「白い狂気」とかヤンデレ風味 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/08(火) 02:31:03 ID:2nPz589u<> あれ、俺いつの間に書き込みしたんだろ

でも個人的には、「My Dear Pig」が最強だと思う
ヤンデレというより気狂い女な気もするけど、その辺はエピソードを脳内補完で
あとは「あなたへの月」あたりもかなぁ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/08(火) 21:29:44 ID:ncnc6mr4<> みんなは、ヤンデレと聞くとどんなイメージをする?
スクールデイズみたいなniceboat展開とかカニバリズム?
それとも愛していたけど結局は結ばれなかった、みたいな悲しい恋?

ググると前者みたいなイメージを持ったサイトが結構ひっかかるけど、このスレの人はどうなのかな? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/08(火) 22:00:10 ID:v+ZR/qAM<> niceboatなあ。俺「こいつを殺せば自分がこの人の一番になれる」という感じの病み具合好きじゃない。
殺しは要素かもしれんけど正直決め手にはならないと思う。除外工作なら大いにアリだが。
自分の中では妄質的なまでの愛情かね。「この人を物にするためなら・・・」というのにゾクゾク来る。
意地汚さ、もしくははかなさがあれば良し。有る程度の理性が残ってるとなお良し。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/08(火) 22:02:53 ID:EvRRD9+g<> 猟奇的とかサイコ的なヤンデレよりも、
淫らでエッロエロのヤンデレちゃんの方が好きなんじゃああああ <> 名無しさん@ピンキー<><>2008/01/08(火) 22:06:45 ID:+ytqCXIi<> ・すごく好きだから不安で仕方ない
・主人公(男)が結構裏切る
・理性が負けて、ひどいことをしてしまう でも我に返るとすごく後悔する・落ち込む

こんなヤンデレが好き <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/08(火) 22:13:48 ID:CdSmibd5<> 某楓状態が一番好き

nice boatはあんまり好きじゃないな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/08(火) 22:31:46 ID:MZQrxVya<> エロス忘れてた。確かにエロスは大事だ。あ、上で殺しについて挙げたがちょっと補足。
殺してくれるならそれはそれで構わない。だがどうせ殺すなら自分だけ殺して欲しいな。
個人的には女が病み男が狂った状態での心中とか最高。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/08(火) 22:35:47 ID:s89l7rAH<> 血はなくてもいいから、主人公が世界の全てという依存ぷりがあればそれで <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/08(火) 22:46:32 ID:4anah/+A<> 好みとか聞くなよ荒れるだろ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/08(火) 22:46:59 ID:EqHZPm53<> 目が濁るのはデフォ? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/08(火) 22:57:07 ID:f52d2UQm<> 依存してくるけど嫉妬しない奴いないの?
主人公の男の子が他の女犯してたら見張りとかしてくれる奴。
調教の助手とかな。
ただし、捨てられそうになると涙目ですがってくるのがいい。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/08(火) 23:07:27 ID:y2y26D14<> それ、そのまんまシィルじゃないか。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/08(火) 23:07:56 ID:7TgDXzJG<> 最近、あからさまに病んでるキャラよりも
主人公からは少し優しすぎるけど普通かな、程度に見えて、実は見えないところで主人公のおパンテュくんかくんかしてた、みたいなキャラの方がいい気がしてきた。
物騒な女の子はねーちんとゆのっちだけで十分だよ…… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/08(火) 23:24:28 ID:x9nYl5Fs<> レイプ目 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/08(火) 23:56:55 ID:7TgDXzJG<> 亀もいいとこだが
>>61-69
今日初めて読んだがかなり引き込まれた。
玩具販促漫画家って視点が素晴らしい。
おもちゃという巣に引っかかった無垢な子供を、原作者権限でいいようにするってのが悶絶ものだ。手のひらの上で操られてた、ってシチュが好きなもので……。
こういうノリのをまた読んでみたい <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/09(水) 03:07:15 ID:lbQyfeL2<> 「ちょろいっ!」と操られてるだけの一般人の頭を鉈で一刀両断する娘は物騒と申すか <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/09(水) 03:36:51 ID:9yygRAnR<> 物騒極まりないだろ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/09(水) 07:23:03 ID:ESMHJRRx<> 物騒だろwwww <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/09(水) 16:48:15 ID:AujfBuw/<> ゆっきー… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/09(水) 17:21:54 ID:CTOgR6cS<> >>665主人公の絶対的な肯定者(善も悪も)キャラは居らんかね?
堕花雨とか桐生メイとかしか思い浮かばん。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/09(水) 23:52:01 ID:g+OZG08r<> 電波的な彼女ってキチガイデレに見せかけたヤンデレだよな
雨も元から電波かと思えば小さい時のジュウ様の影響が原因だったり
美夜もあれ狂ってるけど、人を寄せつけないジュウ様の側に簡単に居続ける雨に焦ったからあんな行動に出たんだろうし
最後の本音っぽいセリフで、やっぱり純粋にジュウ様が好きなんだろうな。って分かるし
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/10(木) 01:06:51 ID:QXkFugVF<> 流れに乗っかるがオレは『電波的な彼女』みたいな感じ結構好きだな

>>674
わかる。美夜が純粋にジュウ様のコト好きだってわかるから二回目以降読む時は何かスゴく悲しくて泣きたくなる。
<> 合わせ鏡
◆GGVULrPJKw <>sage<>2008/01/10(木) 03:37:00 ID:uJlu1Z3v<> Coccoは大好きだ…。

合わせ鏡、続きを投下します。
>>118が疑問に思うのはもっともなんですが…瑞希は前科者にはなっていないという
ことでお願いします。
専門家でないのでわからないのですが、ちょろっと耳にしたところによると、大した
事件でなくて、家族間のゴタゴタと見られたり、初犯だったりすると、警察
(検察)?の裁量で逮捕しなかったり、逮捕されても起訴されなかったりする
らしいと聞いたことがあるので。
被害届や告訴しないと、あまり警察も動きたくないとか。
ほんとかは知りませんが、そんな感じで。 <> 合わせ鏡
◆GGVULrPJKw <>sage<>2008/01/10(木) 03:37:44 ID:uJlu1Z3v<> お母さんは私にいつも言った。ヒトサマにメイワクをかけてはいけません。
お母さんは私にいつも言った。ヒトサマに恥ずかしいことをしてはいけません。
父親がいなくて、祖母に負けて高崎家から追い出された母は、せめて世間に恥ずかしくない
ようにと、私にいつもそう言った。
多分私のためではなく、世間体のため。
でも、考えてみれば、他人に認められるということは、私を守ることでもあった。
親が一人しかいないと言って、とやかく言う輩はどこにでもいるのだ。
私は、いつもいい子でいた。人様に迷惑をかけることもなく、人様に顔向けできないことを
することもない。そして、誰にも感心される優秀な子供。
他人の目にうつる自分こそが全て。その自分は愛される人間でなければならない、排除される
人間であってはならない。
自分の心など、感情などどうでもよいのだ。他人にとって私が何を考えているかなど、何の意味
も持たないのだから。
だから、弟に恋する変態であってはならない。それは、世間に対し、顔向けのできない恥ずか
しいことだから。
でも、瑞希は、そんな私の迷いを一足飛びに飛び越えてきた。
それが例え、無知に基づく誤謬で、完全に間違った行動であっても……羨ましかった。
それは、私がしたいことで、できないことだったから。

そう、鏡の向こうの自分は、自分と同じ顔をして、自分と違う行動をする。
鏡の右は私の左。鏡の左は私の右。私達は鏡像でしかない。同じように見えても、私と瑞希は
真逆だ。
育ってきた環境も、望むものも、見ているものも、真逆なのだ…。
<> 合わせ鏡
◆GGVULrPJKw <>sage<>2008/01/10(木) 03:38:19 ID:uJlu1Z3v<> 自分一人で決めることはできないと、こーたは言った。
話し合って了解をとりたい、両親も、何も言わずにこーたが決めるより、相談して欲しい
と望むだろう、と。
伯父と伯母は、生さぬ仲とはいえ、こーたにとってはかけがえのない、本当の親なのだ。
こーたが望むなら、私が何を言えるだろう。
それに、瑞希がこーたの姉であると、瑞希に知らせるのは、私も望んだことだったのだ。
こーたは、謝ってくれた。水樹が忠告してくれた時に、それを聞いていれば、水樹をあんな
目に合わせることはなかったのに、と。
そんなことを気に病む必要なんてないのに。私に心配される価値なんて、ないのに。


こーたを高崎家の婿にという申し出自体は、もちろん、断るとしても、きっと瑞希は
いろいろな手をこれからもうってくるだろう。
前回の事件で、私もこーたも、瑞希を告訴しなかった。警察も、私と瑞希が姉妹であるという
ことから、穏便な処置をとった。
それは、実の姉を、妹を、犯罪者にしたくないという私達の思いと、高崎家の無言の圧力の
結果だった。
でも、次はあってはならない。それは、私だけの思いではなく、伯父と伯母も同じようだった。
話を聞いた二人は、土日を利用して、すぐに飛んできた。
こーたが本当は「高崎の父」の息子であると、高崎家自体に知らせることは、誰しも
反対だった。
でも、これ以上の彼女の空回りを防ぐためにも、瑞希にだけは伝えるべきではないか。
その思いもまた、誰しも同じだった。

伯父と伯母と瑞希は話し合いの場を持った。
真実を聞かされた瑞希は、想像を裏切り、非常に静かに、現実を受け入れたという。


「水樹、こーたのせいで、いろいろと迷惑をかけたわね」
「…そんな、私はなにもできなかったし、むしろこーたに迷惑をかけたと思う」
伯母さんの料理を久しぶりに堪能した後、私は皿洗いを手伝っていた。伯父さんとこーたは
居間でテレビを見ている。
「そんなこと気にすることないのよ」
伯母さんは、私を元気付けるように笑った。
無力な私。思い出すたびに、胸がちりちりして、黙ってうつむく。
「水樹は女の子だし、なにもなくて良かったわ。こーたのためにも、本当に良かった」
「こーたの、ため?」
「ええ」
伯母さんは意味ありげに笑った。
「こーたは本当に昔から水樹が好きだからね。自分が瑞希ちゃんに付きまとわれるのは
 全然構わなかったくせに、水樹が危ない目にあったら、すぐに行動だもの。あのスカした
 息子が取り乱す様、見せてあげたかったわ」
「…伯母さん」
いたずらっぽくとんでもないことを言い出す伯母さんの言葉に、私は思わず笑った。
伯母さんは、私が笑ってほっとしたのだろう。さらに軽い口調で言葉を続けた。
「なにしろ、こーたにとって、水樹は、初恋の人だったりするんだから」 <> 合わせ鏡
◆GGVULrPJKw <>sage<>2008/01/10(木) 03:43:10 ID:uJlu1Z3v<> 以上です。 <> 合わせ鏡 ◆GGVULrPJKw <>sage<>2008/01/10(木) 03:48:54 ID:uJlu1Z3v<> 「え?」

私は何か聞き間違えたのだろうか。口を薄くあけたまま、呆けたようにかたまる私の心の裡など
伯母は何も気づかないだろう。私の驚きの意味合いを取り違えたまま、冗談のように言葉を紡ぐ。
「まだあの子が中学の時よ。水樹を絶対お嫁さんにするんだって言いだしてね。子供の言うこと
 だし、初恋を無残に摘み取るのもかわいそうだったんだけど……」
まず心配したのは伯父だったのだと。二人で悩んだ上、こーたに私を姉だと告げたのだと、
伯母は言った。
「最初は信じようとしなかったし、あの子、すっかり落ち込んじゃってね。あの大食いの子が
 夜ご飯も食べずに部屋にひきこもっちゃったの。でも、次の日の朝、勢い込んで下に降りて
 きてね、笑顔で言ったのよ」

『お母さん、水樹がお姉さんってことは、俺と水樹は一生家族なんだね。ずっと、一緒に
 いられるんだね!』

その、こーたの笑顔を、私はまざまざと思い描くことができる。
きっと、お母さんが死んだ時に一緒に暮らそうと言ってくれて私が頷いた時の、東京に来る前に
私と一緒に暮らせると知った時の、あの顔に違いないのだ。
私を女としてでなく、一人の家族として案じ、愛し、労わる笑顔。
私を傷つけ、奈落に落とし込む、絶望の笑顔。 <> 合わせ鏡
◆GGVULrPJKw <>sage<>2008/01/10(木) 03:49:47 ID:uJlu1Z3v<> それから後、伯母さんと何を話したかは覚えていない。
でも、きっと上手く切り抜けたのだろう。自分の感情を見せず、他人に不快を与えず、相手に
合わせて話し続けるのは……我を忘れても機能する、私の得意技なのだから。
部屋に入り、電気を消す。ベッドに座る。眠る用意は全て終えたが、床に臥す気にはなれな
かった。
心の中で、今まで感じたことのない暴風が、全てを吹き飛ばし、荒れ狂っている。


伯母さん。どうして、言ったのですか。

いや、どうしても何もない。私とこーたは姉弟で、決して結ばれることなどない。
年上の従姉に対する少年の憧れはそのまま消える可能性は高いけれども、まかり間違って
恋としての形をとってしまえば、どんなに足掻いても待つのは苦しみだけだ。
そんなことは自分が一番よくわかっている。
伯母さんの行動は正しい。私が伯母さんでもそうするだろう。そうしない理由などない。

けれども。

考えてはならないifを私の脳は紡ぎだそうとしている。
もし、こーたが真実を知らず、私への憧れが恋へと変わっていたならば、私はこーたに抱かれて
眠ることができたかもしれない。その先に待っているものがどんな悲劇であろうとも、他人に
顔向けできない禁忌であったとしても……例えこの身が破滅しても、私が本当に望んでいるものが
そこにはあったのではないか。
私は姉でなければならない。弟の幸せを姉として見守ることしか許されない。
それは、半分は私の望みである。誰よりも大切な男性に幸せになって欲しいというのは、誰もが
抱く美しい夢だ。
でも、もう半分は血反吐を吐くような思いで自分につき続ける嘘である。この汚らわしい嘘が
存在する限り、私は決して幸せになどなれない。でも、私がこの世界でまっとうな人間として
生き続けるためには、嘘をつき続けなければならない。
<> 合わせ鏡
◆GGVULrPJKw <>sage<>2008/01/10(木) 03:50:36 ID:uJlu1Z3v<> ああ、そして。
伯母さん、どうして、私にこの話をしたのですか。
選択の余地がないからこそ、何も疑わずに済んだのに。ありもしない希望の光を、夢見ずに
すんだのに。
この大地が針山だと知らなければ、ここが地獄だと知ることはなかっただろうに。

私はその瞬間、伯父を、伯母を、憎んでしまった。
ただ、自分の汚らわしい欲望のために、誰よりも私によくしてくれた恩人の正しい行動を厭って
しまった。
握り締めた右手に、殺意があった。

たとえ、その心を打ち消しても、魂に私の罪は刻まれてしまった。
<> 合わせ鏡
◆GGVULrPJKw <>sage<>2008/01/10(木) 03:51:32 ID:uJlu1Z3v<> マタイ5章

しかし、わたしは言っておく。
みだらな思いで他人の妻を見る者はだれでも、既に心の中でその女を犯したのである。
もし、右の目があなたをつまずかせるなら、えぐり出して捨ててしまいなさい。
体の一部がなくなっても、全身が地獄に投げ込まれない方がましである。
もし、右の手があなたをつまずかせるなら、切り取って捨ててしまいなさい。
体の一部がなくなっても、全身が地獄に落ちない方がましである。


聖書は言う。心の中で姦淫しても罪であると。
大学の授業で聖書を読んだときに、私はうちのめされた。この罪人は私だ。実の弟をみだらな思いで
見ている、許されない罪人。
私は別にキリスト教徒ではない。でも、それいらいこの言葉は私の心に食い込んで離れようとしない。
もう、すっかり覚えてしまった。

そして、今、私は誰よりも恩を受けた人たちを心の中で殺してしまった。
私はどこをえぐり出して捨ててしまえばよいのだろう。
目を?口を?手を?足を?いや、そんなことで私は許されはしない。
私はもう地獄に落ちている。この体の全て、細胞の全て、DNAの螺旋にいたるまでが罪人なのだ。



それからほどなくして、私はそれを、思い知ることになる。
<> 合わせ鏡
◆GGVULrPJKw <>sage<>2008/01/10(木) 03:53:55 ID:uJlu1Z3v<> 途中で間違えてしまいました。

水樹の設定=理屈っぽいヤンデレ。常識寄り。
カタいお姉さんが崩れていくのを書きたいです。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/10(木) 04:25:15 ID:1bEeow00<> >>684
水樹( ´・ω・)カワイソス
でもこれはハラハラドキドキして来た、GJ!
こういう葛藤の描写ってイイね <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/10(木) 07:49:19 ID:1Il9G+q5<> >>684
GJ
次回も楽しみにしています <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/10(木) 13:34:06 ID:Xx7H6fdy<> 水樹には幸せになってほしいと思いつつ、
この先どんな病みが来るのかとwktkしてしまう……

ところでもう474 KBなんだな、次スレ立ててきます <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/10(木) 13:42:14 ID:Xx7H6fdy<> 立てました

ヤンデレの小説を書こう!Part13
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1199940017/ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/10(木) 19:55:43 ID:ejogiSB2<> >>688

乙 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/10(木) 21:32:39 ID:0jW5/URE<> 「みーつけた」

俺はその声を聞いた。2日ぶりだろうか。なんでこんな早く。なんでなんでなんで。
かくれんぼは完敗だ。逃げ切れるどころの話ではなかった。
俺が逃げ始めて2日。彼女が探しはじめて1日だ。有り得ない。
自分の認識が甘かったことを悟ると同時に未来が真っ黒になっていくのが分かった。

「修くんの行くところぐらい分かるよぉ」

後ろの女はころころと笑っている。1日で、東京から長崎に逃げた人間が見つかるか?
そんなバカな。赤い糸ってやつか?もしその馬鹿馬鹿しい話が本当だったとしても
俺とこいつを結んでいるワケがない。そんな筈はない。そんなのは認めない。

「お父様も意地が悪いわ。こんな風に私を試すなんて」

後ろにいる女にストーカー行為を受けていた。ストーカーなんてもんじゃない。
つきまとい、毎日来るメール、電話、部屋にあった盗聴器とカメラ。それだけではない。
俺と接触した女――たかが挨拶でも2、3日は学校に来られないような制裁を与えていた。
ある子は殴られ、ある子はレイプされ、ある子は腕を折られ、ある子は監禁放置された。


そして彼女の父親に呼び出された。
白髪のまじった思ったより年齢を重ねた紳士だった。
娘とかくれんぼをしろ、と。
渡されたアタッシュケースには500万円が入っていた。

5日間逃げ切れば娘は君に二度と接触はさせない。
だが捕まった場合は諦めてくれ。

そう俯きがちの壮年の男性に言われ俺はアタッシュケースをひっつかんでその屋敷飛び出した。


そしてその2日後。
彼女の指が俺の肩にかかる。

「ねえ修くん、これからは幸せに暮らそうね」

実に嬉しそうだ。本当に嬉しそうだ。この上なく嬉しそうだ。
俺は後ろを振り向けないまま、しばらくこの絶望を味わうことにした。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/10(木) 21:33:11 ID:0jW5/URE<> 勢いで書いた
後悔はしている <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/10(木) 21:56:13 ID:3eBdgjbD<> さあ、修くんを捕まえるまでの彼女の行動過程を次スレに書き込む準備に戻るんだ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/10(木) 23:07:20 ID:gXF8+qHR<> 新感覚かくれんぼ
そそられる <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/10(木) 23:14:00 ID:leGMajbU<> 現金のケースに盗聴器か? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/10(木) 23:19:40 ID:0jW5/URE<> >>694
惜しい
事前に誘拐して発信機が体内に <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/10(木) 23:33:35 ID:l+AJErr1<> むしろ超ヤンデレに不可能などない
穏やかな病みを持ちながら修くんへの烈しい愛に目覚めた彼女にとって <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/10(木) 23:53:52 ID:3eBdgjbD<> 10:00 彼女(仮に空子様と名付ける)、行動を解禁される
10:30 昨日、旅立つ修君と偶然会い、公園で2、3言話していた少女を捕獲
11:30 5歳だったが気にせず都内某電車内の吊革に全裸で緊縛して放置
12:00 家でランチ。海鮮ドリアを作る
13:30 学校に到着
14:00 一昨日修君に相談を受けていた同級生に内容を尋問。しかし修君の行き先は聞かず
14:10 箒で性的暴行を加え、屋上に閉め出す
15:00 午後の間食。昨日焼いたクッキー
16:00 偏西風に乗ってくる修君の匂いの方向の変化から、修君の居場所を長崎と特定
18:00 成田空港
20:00 長崎到着
ここまでくれば濃厚な匂いが場所を知らせてくれる

ノリで書いた。反省はしていない <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/10(木) 23:57:26 ID:0jW5/URE<> >>697
すげええええええ
幼女にも容赦ないとは。というかこーいう緻密なこと俺出来ない。 <> 16:00修くんを探す空子<>sage<>2008/01/11(金) 01:19:00 ID:bwshePJs<> 空子は髪をほどいてテラスに出た。緩くウェーブのかかった髪が風に靡く。
白い膝丈のスカートがフワッと舞い上がってまるで一枚絵のようだった。
目をつむって神経を研ぎ澄ませる。どんなに遠く離れていても必ず分かる。
修くんの明るい、こちらまで笑顔になるような気配。
風が運んでくれる筈だ。国内にいるなら分かる自信が空子にはあった。

修くんのことを思い浮かべながら風を探る。
捨てられた猫に憐れみの視線を向ける優しさ、底抜けに明るい笑顔、意外にしっかりとついた筋肉、そしてそこに弾ける水……

「いけないわ」

シャワーシーンを思い出して空子は1人顔を赤らめた。心なしか動悸がする。
乱れてしまっては探すことが出来ない。
深呼吸をして気持ちを落ち着けてからもう一度目をつむりなおし、気配を探すことに集中した。

一瞬風の中にはしる愛しい気配。

空子は見逃さなかった。

「見つけたわ、後藤。この方向は九州……長崎ね。すぐ飛行機を手配して頂戴」
「かしこまりました空子御嬢様」

忠実な執事に指示を飛ばすと空子は愛しい気配の方を向いて微笑んだ。

「待っててね、修くん」


――――――――――――――――――

反省はしていない <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/11(金) 08:05:20 ID:elJgP89e<> いいね〜 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/11(金) 11:30:38 ID:vIdlfV5X<> >>697-699
空子様スゴ過ぎだwwww <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/11(金) 21:09:16 ID:nfUVOaeB<> ドラゴンボールを思い出した
続きキボン <> 埋めネタ<>sage<>2008/01/11(金) 21:37:05 ID:oxt0kF95<>  彼は日々、ブログに日記を書きつづることを習慣にしていた。
 何が楽しいのか、と問われるとなんとも答えがたい。
 それでも、彼は自分の日記をウェブに公開することが楽しかった。

 ブログを書き始めてから数日が経った頃、彼は日記を入力する際に変換ミスをよくすることに気づいた。
 そして、パソコンに最初からインストールされている日本語入力ソフトではなく、市販の入力ソフトを
使えば日記を書くのが楽になるのではないか、と思いついた。
 思い立ったが吉日という格言にならい、彼は市販の日本語入力ソフトを購入した。
 財布の中身がすっと軽くなる錯覚がするほどの金額ではあったが、彼は満足だった。

 そのような感じでブログにこり始めた彼は、次第に日記を書かなくなった。
 日記ではなく、自分の妄想をブログに載せ始めたのだ。
 いわゆる、SSというものだ。
 既存の商業作品の二次創作ではなく、自分の頭の中で一から構築した話だ。
 SSを書き始めてみると、実は日記よりも楽しいことに気づいた。
 日記は、書くに値するネタがなければ書かない、ということを彼は決めていた。
 例えば、朝起きて、学校に出かけて、帰ってきて眠る、という一日では日記を書けない。

 しかし、SSであれば別だ。
 頭の中にふっと思いついた話を書けば、毎日ブログを更新することができた。
 SSの内容は、一話完結の短編作品。いや、短編と呼ぶことすらふさわしくない、掌編だった。
 一編書くにあたって浪費する時間は三十分から一時間程度。
 初日は一時間で二十行程度しか書くことはできなかった。だから、二時間かけてようやく完成させた。
 日を重ねていくうちにSSを書くコツをつかみ始めた彼は、早ければ三十分で書き上げられるようになった。
 そのことを自覚した時は、友人に自慢したくなった。
 しかし、彼がそうすることはなかった。
 自分の書いた文章なんて知り合いには見せたくない、見せられない、という思いがあったのだ。

 話は離れるが、彼には姉がいた。
 一つ年の離れた姉で、自分と同じ大学に通っている。
 姉であるが、初めて彼と彼の姉を見る人々は、彼女の方が年下だと勘違いした。
 それもそのはず、彼の姉の身長は150cmを下回っていたのだ。
 その上、容姿は中学生のように幼かった。
 髪の毛は黒く艶々で、鼻は小振りな大きさで、目はぱっちりと開いていた。
 加えて、姉の声は小学生かと聞き間違うほどにキーが高く、舌足らずだった。
 彼と姉が並んで歩いていると、兄妹というより親子が一緒にいるようだった。
 彼ら二人を見る者は、仲のいい親子が並んで歩いている、と微笑ましく思った。
 それは、彼の容姿が姉とは対照的に大人びていることも一つの要因だっただろう。
 もっとも、当事者である彼と姉は特に気にもしなかった。
 彼にとって姉は姉でしかなく、姉にとっても彼は弟でしかなかった。
 だが、姉の方には少しだけ問題があった。
 見た目は幼いとはいえ、実年齢は二十歳である。とっくに弟離れをしている年齢だ。
 なのに、姉は弟にべったりくっついて離れなかった。
 まるで、肉体が彼女の精神までも幼くしてしまったように、姉の行動は無邪気だった。
 例えば、毎日一緒にお風呂に入ることを弟に要求したり、夜起きた時は一緒にトイレへ行ってくれと頼んできたり。
 まるで妹であるかのような甘えっぷり、頼りっぷりだった。
 彼はというと、そんな姉を微笑ましく思っているだけだった。
 これから先、自分が就職してからも姉がこんな調子では困る、もっとしっかりしてほしい、
と思ってはいたが、それもまだまだ先のことであると気楽に考えていた。 <> 埋めネタ<>sage<>2008/01/11(金) 21:41:04 ID:oxt0kF95<>  話を戻して、彼が管理しているブログについて語ろう。
 彼はSSを書いていたが、次第にネタに詰まるようになってきた。
 書き始めて三ヶ月以上過ぎれば、さすがに彼の妄想も底をつき始める。
 彼の書いている話は、ちょっと心が温まるような小話が多かった。
 だが、そればかり書いていては上手くいかないようになってきた。
 日によってはブログを更新できないこともあった。
 いくらパソコンの前に居ても、今まで書いてきた話ばかりが浮かんできて、一向にキーボードを打てないのだ。
 そんな日は諦めて、話の構成を考えながら布団の中に入る。悔しい思いをしながら。

 今回の話は、そんな人並みの悩みを抱える若者が体験した奇妙な出来事だ。


 ブログを更新できなかった日の翌日、彼が朝食をとるためリビングへ向かうと、香しい匂いが嗅覚をついた。
 テーブルの上には、いつもの朝食よりバリエーションに富んだ料理たちが並んでいた。
 白米、味噌汁、卵焼き、焼き魚、漬け物、それとお茶の入った急須が置かれている。
 彼の家では姉が料理を作っている。おそらく、今日も姉が作ったはずだ。
 だが、いつもならもっと軽めの朝食がテーブルの上にあるはず。
 今日は何かの記念日というわけではない。昨日何かいいことがあったわけでもない。
 ではなぜ? と思い、彼はキッチンに立つ小さな姉に問うた。

「おはよ! え、なんで今日の朝食が豪華なのかって?
 それはね、弟君がなんだか元気なさげに起きてくるんじゃないかな、と思ったからよ」

 彼は特に元気がないわけではない。朝の生理現象も体にあらわれていた。
 自分が元気だと言うことを伝えると、姉は少し首を傾げた。

「ありゃ、そうなの? んー……ま、私の勘も外れることだってあるってことで。
 さ、ご飯食べよ。今日は腕によりをかけて作ったんだから」

 姉に背中を押されて椅子に座る。姉は彼の左隣の椅子に腰掛ける。
 椅子のサイズは同じだが、二人の間に身長差があるせいで、彼の方が頭一つ飛び抜けて高い。
 それでも、姉は彼に向けて箸を差し出して、食べさせようとする。
 彼はいつもやめてくれ、と言っているのだが、姉はどうしても聞かない。

「弟君は、私が面倒を見るの。それがお姉さんのつとめなんだから。
 その見返りに、お姉さんをハグしてくれればいいよ。こう、ぎゅー……って」

 手本を見せるように、自分の腕で体を抱きながら実演する。
 姉の言葉を耳に入れながらも、彼は朝食をつつく手を休めない。
 姉にそんなことをするような年齢ではない。それに、彼はシスコンでもない。
 こんな幼く見える姉に抱きついている様を人に見られたら、彼の評判が下がる。
 ただでさえ、友人の間では彼と姉の仲を疑われているというのに、これ以上悪化させるわけにはいかないのだ。
 彼が味噌汁を飲む。すると姉が彼の脇腹を突いた。脇が敏感な彼は激しくむせる。

「そうやって無視するのはお姉ちゃんどうかと思うな。自分で自分が冷たい人間だと思わない?
 最近は手を繋いでくれないし……私が高校生のころまでは繋いでくれたのに……」

 姉の言っているとおり、姉が高校を卒業するまで、彼は姉と手を繋いで登下校していた。
 しかしそれは、最大限譲歩した結果だ。
 この姉と手を繋いで歩いていても、すでに彼と姉の存在は生徒に知れ渡っているので見られても構わなかった。
 高校生活こそ、そうやっていられたが、大学に通うようになってからはそうはいかない。
 大学という場所はオープンな場所なので、いろんな人間が出入りする。
 そんな場所で、身長差が30cm以上はあろうかという彼と姉が手を繋いで歩いていたら、どんな目で見られるのか。
 さしずめ、大学に妹を連れて行って案内している最中、というところだろう。
 それならまだいい。通学途中で警官に職務質問される可能性も無いとは言えない。
 身分証明書を持っていなかった時、果たして口頭で説明して自分達が姉弟であるということを信じてもらえるのか、
彼には不安でならないのだ。 <> 埋めネタ<>sage<>2008/01/11(金) 21:42:28 ID:oxt0kF95<>  彼は朝食を食べ終わると、両手を合掌させてごちそうさまをした。
 まだ食べ終わっていない姉を置いて、茶碗をひとまとめにしてキッチンの流し台に持って行く。
 水を浸した流し台にお椀を入れていると、後ろから姉のすすり泣く声が聞こえてきた。

「うう……弟君が冷たいよぅ……昔はお姉ちゃん大好き、僕将来お姉ちゃんと結婚する、とか言っていたのに……。
 どうしてこんな子に育っちゃったのかしら。いつのまにか不良さんと付き合ってたりしていたんだわ……」

 姉の言っていることはすべて捏造だと、彼は知っている。
 彼は昔、姉のことをお姉ちゃんと呼んだことがなかった。むしろ、妹扱いしていたぐらいだった。
 そして、大好きとか、結婚するとか言っていたのは姉の方だった。
 彼は小さなころ、お母さんと結婚する、と言っているような人間だった。
 今ではもちろんそんなことは言わない。
 母とは、困ったときに姉よりも先に相談する程度に親しい。
 余談ではあるが、母も弟に色々と相談する。内容は、娘のことに関して。
 娘の弟離れを促すため、彼によく協力を持ちかけるのだ。
 今までやってきた対策は、彼に恋人ができたと伝えることと、一人暮らしをすると伝えること。
 前者に関しては親しい女友達にも協力してもらった。だが、結果は逆効果で、四六時中くっつくようになってしまった。
 後者の場合、姉はむしろ喜んだ。なぜかというと、実家を離れて二人暮らしができると思ったから。
 このように、彼と彼の母の苦労は水泡となってかき消えてしまった。
 今では、母はこの一件に関してあまり触れなくなった。彼はあるがままを受け入れるようになった。
 これから先彼ら姉弟がどうなるかは、ひとえに姉の成長にかかっているのだ。 <> 埋めネタ<>sage<>2008/01/11(金) 21:45:32 ID:oxt0kF95<>  大学から帰ってきて、彼は姉をひっぺがして自室に籠もった。
 何をするかというと、自分のブログの更新作業だ。
 大学で授業を受けている最中に思いついたネタを、まだ暖かいうちに書き記すつもりだったのだ。
 思いついたネタは、今までとは趣を異にするものだった。
 彼が今まで自分自身に課してきた、禁忌とも言えるもの。
 それは、『妹』に関する妄想だった。
 なぜ妹のネタが禁忌であるのかは、言うまでもあるまい、姉のことを思い浮かべてしまうからだ。
 だが彼は今日、その禁忌を破る。全ては、SSを書くため、ブログを更新するため。
 推敲もほどほどにしながら、手慣れた手つきでタイピングしていく。
 帰宅してから二時間ほど経った、午後七時過ぎ。ようやく禁断の妹SSが完成した。
 内容は以下の通り。

『僕の妹はとても背が高い。
 僕の身長は友人と比べても遜色のない高さだ。だけど、妹はそんな僕よりも背が高い。
 正直、自分は同じ家に住んでいる両親から生まれた子供じゃないんじゃないか、とまで思っている。
 戸籍謄本はもちろん確認済み。今の両親は僕の実の親だ。
 それでも、どうしても疑いが晴れない。きっと、僕が妹に対してコンプレックスを持っているからだ。
 弁解しておくと、僕は一般的にイメージの強い、妹を溺愛しているという意味でのシスコンではない。
 劣等感を持っているという意味でのシスターコンプレックスだ。
 妹のことをどう思っているか、と聞かれたら、僕は返答に困る。
 劣等感を持っていますとも、コンプレックスを持っていますとも言えない。
 妹のことは大事に思っています、と答えると妹好きのシスコンと思われそうで嫌だ。
 妹はいつだって僕を悩ませる。今日だって、そうだ。

「アニキ。そろそろ手ぇ繋いで歩こうよ」

 妹様は今日もそうやって僕を困らせることを口にする。
 手を繋ぐのは好きじゃない。
 だって、10cm以上身長差があるということは、手の位置ももちろん違うわけだから、
僕が妹の手を握ろうとしたら少し肘を折り曲げなければならない。
 なんだか、親と手を繋ぐ子供みたいで屈辱なのだ。
 僕が妹を無視しててくてく歩いていると、妹が後ろでぼそっ、と呟いた。

「そんなこと言うんなら、また今日も抱きつくからね。……覚悟しといてよ」

 この台詞だけを聞くと、世の妹好きの男性に羨ましがられそうだが、僕は嬉しくない。落胆する。
 抱きつく、と妹が言った場合、柔道の寝技のような動きでの押さえ込みをするぞ、という意味になる。
 この妹は身長に見合ったのか、運動能力に優れている。僕なんかあっという間に取り押さえてしまう。
 男なのに、兄なのに、妹に負ける。それはかなりの屈辱だ。肘を折り曲げて妹と手を繋ぐ行為以上の屈辱。
 だから、僕は傷の浅い方を選ぶ。その方が、一晩越した翌朝の寝覚めがいいと経験で知っているから。
 妹の右手と、僕の左手を繋ぐ。妹の指が、僕の指の間に入り込む。いわゆる恋人繋ぎだ。

「アニキって、私より手が大きいよね。やっぱ、握り心地がいいよ。最高。ご機嫌だね!」

 僕はご機嫌じゃない。
 ため息を吐いて、学校からの帰り道、同じ方向に向かって歩く人たちに合わせて歩く。
 こんな様子を見て、僕と恋人になろうとする人なんかいないよな。
 だから僕、妹以外の女の子と手を繋いだことがないんだ。
 ブラコンの妹を持つと、本当に苦労する。                                            』

 彼は恥ずかしい想いをしながらSSを書き上げた。
 途中、姉の顔が思い浮かんで来てどうしても上手くいかなかったのだが、奥歯を噛みしめて踏ん張った。
 ブログにSSをアップして、誤字脱字のチェックをする。その後、リビングへ夕食を食べに行く。
 リビングでは、姉が先に夕食をとっていた。
 しかし、いつもなら用意してくれるはずの彼の分の夕食がなかった。
 疑問を顔に出していると、姉が不機嫌そうに口を開いた。

「たまには、自分で夕食を準備したらどう? ……ふん。どうせ、運動オンチで、チビですよ」 <> 埋めネタ<>sage<>2008/01/11(金) 21:48:10 ID:oxt0kF95<>  翌日も、彼は学校から帰って来るなりパソコンの前に腰を下ろした。
 一度妹ネタを書くと、堰を切ったようにネタがあふれ出してくる。
 今日は、そのうちでもっとも危険なものを書こうと決めていた。
 どれほど危険かというと、それこそ、姉への見方が変わってしまうようなものだ。
 彼は、部屋の電気を消してからSSを書き始めた。
 灯りがない方が書きやすいと思ったのだ。これから書くものは。

『小柄な妹の体を抱きしめると、腕の中で軽く抵抗されるのを感じた。
 けれど、僕は抱く力を弱めない。強く、しかし壊してしまわないように、抱きしめる。

「お兄ちゃん、駄目だよ……私たち、兄妹なんだよ? 兄妹でこんなことしちゃいけないよ……」

 もちろん僕だってそれは知っている。だけど、今日はどうしても妹を抱きしめずには居られなかった。
 頭の中が沸騰したみたいに熱い。ジーンズの中にあるペニスが痛いくらいに膨張している。
 夕食を食べ終わってから、ずっとそんな感じだ。
 いつも通りのメニューだったのに、どうしてここまでおかしくなってしまったんだろう。
 妹が風呂上がりにバスタオル一枚で歩いている姿なんて、見飽きているのに。
 今の僕は、小さな妹の体を壊してしまいたくなるほど、妹に興奮している。
 妹に口づける。風呂上がりらしく、唇まで熱っぽかった。

「ぅん、ん……舌、だ、め…………おに、ぃちゃん……んん……ん、ちゅ……」

 身をよじりながら、唇を懸命に離そうとしてくる。だけど、もちろん僕は放さない。逃がさない。

「こんなことしちゃ、私、わたしぃ……、我慢できなくなっちゃうよ。あそこが、もう……濡れ、て……」

 妹の太ももを撫でる。汗で少し湿っているけど、滑らかな感触なのは変わらない。
 手を少しずつ妹の体へと動かしていく。タオルに包まれた体は、風呂上がりだという条件を除いても熱すぎるように思えた。
 僕の手が、妹の股間へとたどり着いた。                                                    』

 ここで、彼の手は止まった。
 無理もない。なにせ、彼は女性経験もなく、官能小説を書いたことさえないのだから。
 時刻を確認すると、七時をとうに過ぎていた。
 昨日よりも書いた量は少なかったが、書いてしまった以上アップしないのももったいない。
 彼はブログに注意書きをしてから、SSを載せた。

 リビングへ向かおうとしたら、携帯電話にメールが着信した。
 送り主は同じ大学に通う友人。内容はこれからボーリングに行こう、というもの。
 断る理由もなかったので、彼はOKだという旨をメールに記し、返信した。
 リビングに顔を出すと、姉といきなり目が合った。
 姉は昨日とうってかわって上機嫌な様子で、すでに夕食を用意して待っていた。
 罪悪感を覚えつつ、夕食はいらない、ということを姉に告げた。
 すると姉は、座っていた椅子を飛び越えて彼の元へやってきた。

「そんな! 今日のはとってもイイものが入っているんだよ!
 この日がくることを一日千秋の思いで待っていたんだから、食べなきゃ駄目!
 え、なんで必死なのか? ……それは、その、ね。あー……変なものは入ってないよ。安心して」

 首を傾けつつ可愛らしい笑みを浮かべる姉を見て、彼の第六感とも言うべき感覚が閃いた。
 今、姉の誘いを断らなければまずいことになるぞ、という警告が脳内に響き渡った。
 それは、今日書いたSSの内容――夕食に媚薬を混入された兄が妹を犯してしまう――が浮かんだせいかもしれない。
 姉を無理矢理引きはがし、愛用の靴の踵を踏みつぶしながら外へと飛び出す。
 門から出ても、姉の引き留める声が聞こえてきた。
 彼がその日に戻らなかったのは、言うまでもない。 <> 埋めネタ<>sage<>2008/01/11(金) 21:58:56 ID:oxt0kF95<>  翌日、彼は朝帰りをしてから大学へ通い、半ば眠りつつ授業を受けきった。
 いつも通りに自宅へ帰り、パソコンの電源を入れる。テキストエディタを前にしながら、彼は腕組みをした。
 最近、姉の行動がおかしい。おかしいのは元からだが、情緒が不安定すぎる。
 そう、一昨日に妹が登場するSSをブログに載せ始めてからこうなった。
 まさか姉がブログを見ているのか、とも思ったが、姉はパソコンを持っていない。ブログを見ているはずがない。
 やはり気のせいだと結論づけ、彼は今日も妹SSを書き始めた。
 ――彼は常識的なことを忘れていた。携帯電話でブログを見ることが可能だということを。
 そして、一番大事なことも忘れていた。姉が、彼のことをどれほど想っているのか。
 彼への依存心が、姉の心にどれだけ強く根付いているのか。
 知ってさえいれば、こんなSSを書くことなどなかったかもしれない。


「私、言ったよね、お兄ちゃん。ずっと私だけを見ていてね、って。
 頷いた? 頷いたよね? ……じゃあ、どうしていきなり転校してきた女と仲良く話していたの?
 いくら昔から知り合いだったって言っても、そんなこと関係ないんだよ?」

 右手の人差し指の爪に、針がさし込まれていく。
 まだ先端が入り込んだだけなんだろうけど、これだけで指先から肘までの神経を傷つけられたように痛む。

 事の発端は、今日、学校に転校生がやってきたことから始まった。
 原田と名乗る女の子は、元気な声で自己紹介をしていた。
 僕はその時、窓の外をずっと見つめていた。だから、転校生の女の子を見ていなかった。
 それがどうやら転校生の目に留まったらしい。
 いきなり僕は抱きつかれた。驚く僕を、転校生は涙目で見つめていた。その顔を、僕は見たことがあった。
 小学校四年生の時に、親の都合で引っ越していった女の子がいた。
 その子と僕は幼なじみで、ほぼ毎日一緒に遊んだ。時には同じ家で寝泊まりすることもあった。
 過去の記憶を思い出してから、僕が彼女のあだ名を呼ぶと、彼女も僕をあだ名で呼んだ。
 それから、僕と転校生はすぐに打ち解け、積もる話に花を咲かせた。
 僕は突然の再会のせいで浮かれて、油断していたのだろう。
 廊下に立って、僕を見つめている妹がいたことに気づけていなかった。
 気づけてさえいれば、あんなことにはならなかったのかもしれない。いや――ならなかった。

 帰宅している途中、僕と一緒に歩いていた転校生は車道に突き出され、ダンプにはねられた。
 呆然とする僕の後ろにいたのは、妹だった。
 僕が誰よりも恐れなければならず、誰よりも優先して相手をしなければならない人間。
 小学校に入る前から拷問と調教をされてきた僕は、妹に逆らえない。
 どうしようもないのだ。妹を前にすると、腰が引けて、脚がすくむ。
 僕は、幼なじみのことを思うならば、彼女を突き放すべきだった。
 そうしていれば、彼女は命を落とすことなどなかった。

「今日はどうしよっか。尿道にロートを差し込んでぇ、ロウを入れてあげようか?
 あは。そんなに怯えなくってもいいよ。痛みをゆっくりじっくり味わわせながらしてあげるから。
 もちろん、あとでちゃんと吸い出してあげる。お兄ちゃんの大好きな、私の口で、ね」

 口、と聞いただけで僕の股間は固くなってしまう。全て、妹の調教によるものだ。
 死にたくなるほどの屈辱と苦痛を与えた後で、慈愛と癒しの心をもって快感を与える。
 それが、妹の調教法。僕をのめり込ませ、抜け出せなくさせた狡猾な罠。
 今夜もまた、僕の口から猿ぐつわは外れない――――。                          』 <> 埋めネタ<>sage<>2008/01/11(金) 22:01:10 ID:oxt0kF95<>  妹が出ている意味のない、特殊なSSを彼は書き上げてしまった。
 自分の姉がやりそうのないことを思い浮かべていると、こんなネタが思い浮かんだのだ。
 ブログにアップして、十分が経った頃、部屋のドアがノックされた。
 
「……弟君、開けてくれるかな……」

 ドアをノックしたのは、彼の姉だった。
 すでに時刻は八時近く。いつまでもリビングに来ないから呼びに来たのだろう。
 パソコンの電源を入れたままにして立ち上がり、こった背中を伸ばす。
 ドアの前にたどり着いた彼は、無防備に開いた。

 翌日、彼のブログは更新されなかった。
 定期的にブログを訪れていた人たちは、たまにはこんな日もあるだろう、とだけ感想を持った。
 管理している彼本人の身を案じている人間など、誰一人としていなかった。


これにて終わり&埋め! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/11(金) 22:23:32 ID:s3HfeAZb<> >>709

GJ!
お姉ちゃんkeeeeee!
弟くんのその後が気になるぅぅぅ!
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/11(金) 22:39:46 ID:pDZMFXVA<> これで500KBかな?
ちび姉やっちまったあwww
ナイス埋めネタ! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2008/01/11(金) 22:51:05 ID:auji+D04<> ちょwwwおまwww

メチャクチャ萌えた! 埋めネタには惜しすぎる! GJ!

では埋めええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ <>