名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/04(日) 08:16:43 ID:6nPGgkQk<> ここは、ヤンデレの小説を書いて投稿するためのスレッドです。

○小説以外にも、ヤンデレ系のネタなら大歓迎。(プロット投下、ニュースネタなど)
○ぶつ切りでの作品投下もアリ。

■ヤンデレとは?
 ・主人公が好きだが(デレ)、愛するあまりに心を病んでしまった(ヤン)状態、またその状態のヒロインの事をさします。
  →(別名:黒化、黒姫化など)
 ・転じて、病ん(ヤン)だ愛情表現(デレ)、またそれを行うヒロイン全般も含みます。

■関連サイト
ヤンデレの小説を書こう!SS保管庫 @ ウィキ
http://www42.atwiki.jp/i_am_a_yandere/

■前スレ
ヤンデレの小説を書こう!Part28
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1266068286/

■お約束
 ・sage進行でお願いします。
 ・荒らしはスルーしましょう。
  削除対象ですが、もし反応した場合削除人に「荒らしにかまっている」と判断され、
  削除されない場合があります。必ずスルーでお願いします。
 ・趣味嗜好に合わない作品は読み飛ばすようにしてください。
 ・作者さんへの意見は実になるものを。罵倒、バッシングはお門違いです。議論にならないよう、控えめに。

■投稿のお約束
 ・名前欄にはなるべく作品タイトルを。
 ・長編になる場合は見分けやすくするためトリップ使用推奨。
 ・投稿の前後には、「投稿します」「投稿終わりです」の一言をお願いします。(投稿への割り込み防止のため)
 ・苦手な人がいるかな、と思うような表現がある場合は、投稿のはじめに宣言してください。お願いします。
 ・作品はできるだけ完結させるようにしてください。
 ・版権モノは専用スレでお願いします。
 ・男のヤンデレは基本的にNGです。 <>ヤンデレの小説を書こう!Part29 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/04(日) 08:20:28 ID:0YgWbFMt<> ヤンデレのぬるぽ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/04(日) 13:23:51 ID:DF/QM7yR<> ちょいとはやくないかい <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/04(日) 14:56:48 ID:t7GznwRm<> でも前スレ499kbだぞ? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/04(日) 15:34:28 ID:x6ZLFtbP<> スレたて乙 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/04(日) 21:14:35 ID:dh5UhN9X<> ぽけ黒こないね <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/04(日) 22:39:33 ID:p4V693o8<> 不安なマリアが… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/04(日) 23:26:18 ID:2B5cwGcd<> ヤンデレ家族まだ? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/05(月) 05:07:36 ID:8ORTROeV<> 前スレの>>708の安否が心配 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/05(月) 12:20:21 ID:7HxbfFG8<> 元気に監禁されている>>708の姿が! <> ◆/JZvv6pDUV8b <>sage<>2010/04/05(月) 12:33:26 ID:o9Rjb4dh<> 反省してま〜す
……いや本当に
ペースも遅くなるばかりで

ぽけもん 黒 20話投下します <> ぽけもん 黒 20話
◆/JZvv6pDUV8b <>sage<>2010/04/05(月) 12:34:26 ID:o9Rjb4dh<> 「か、くささん」
 僕の口から出た声はかすれていた。
 背後からポポが翼を広げる音が聞こえる。
「ど、どうしたの? 変なゴールド」
 どうしたのと問うておきながら、当の香草さん自身にも動揺が見える。
 というか、挙動が不審といった方がいいのか?
 目はあからさまに泳いでいるし、手は落ち着きなく、所在なさげに体の前を彷徨っている。
 動揺している香草さんを見ることで、反対に僕は少し落ち着きを取り戻した。
「香草さんこそ、どうしたの、その服。まるで病院から抜け出してきたみたいじゃないか」
 僕がそう言うと、香草さんは慌てた様子で患者衣の上に手を走らせた。
「ち、違うの、これは急いでいたから……」
「何か急ぐことでもあったの?」
「な、何も! あ、あはは、そうよね。何を慌ててたんだろ、私……」
 彼女はそう言って息を漏らした。
 そうして、僕から視線を外し、僕から見て右下の辺りを見た。彼女の視線の先を辿ってみたが、そこには地面以外のものは特にない。
 おかしい。
 香草さんは確実におかしい。
 僕はすぐにそう思った。
 いや、このおかしいっていうのは今までと違うって意味のおかしいで、決して頭がおかしいとかそういうことでは……
 とにかく、患者衣だとかそんな些細なことではない、もっと根本的なずれのようなものを感じた。

 周りの景色は動いていくけど、僕たちは誰一人動かない。
 まるで僕達だけ世界から取り残されたような、そんな気分だ。
「と、とりあえず、中に入ろうよ」
 道行く人の視線でそのことに気づいた僕は、皆を促す。
 後ろを向くと、ポポはまだ険しい表情をして翼を振り上げたままだった。
 いつでも飛びかかれるようにしているのだろうか。
 やどりさんは相変わらずぼーっと……いや、やどりさんも厳しい表情をしていた。
 これも進化の賜物か。
 ポポは僕と目が合うと、すぐに視線を逸らし、翼を下げた。
 僕はポポの頭にポンと手を置く。
 やどりさんは香草さんを睨みつけたままだ。
 睨みつけられた香草さんはおどおどと地面を見る。
「やどりさんも、ね?」
 僕はやどりさんの手をとり、笑顔を作った。
 彼女はしぶしぶ、といった様子で僕に随った。
 しかしまだ後ろの香草さんを警戒している。
 並んで歩く僕達の後ろを、五メートルくらい遅れて香草さんがついてくる。
 その動作にはどこか遠慮が見て取れた。
 僕達が部屋に入っても、彼女は入り口の扉の前でオロオロするばかりで、部屋に入ろうとしない。
「そ、そんなところにいないで入ってきなよ」
 彼女があまりにも挙動不審なので、僕も若干動揺しながら声をかけた。
「う、うん」
 相変わらずぎこちない動きで、僕(右にポポ、左にやどりさんが座っている)と向かい合う形でベッドの縁に腰掛けた。
「あ、ええっと、体はもう大丈夫なの?」
「え、ええ」
「それならよかった」
「よかったですねえ。なら、もうどっかいってくれないですか?」
 僕達のぎこちない会話に、ポポが割って入った。それもとんでもない暴言で。
「ポポ!」
「忘れたとは言わせないです? チコは確かに言ったです。『負けたら契約を解除しろ』です」
 ぽ、ポポーー!!
「そ、そもそも僕はそれにうんと言った覚えはないよ!」
 何とかポポを止めようと僕は使い古された言い訳を繰り返す。
 僕を見たポポは、急に弱気というか、儚げな感じになって言う。
「ゴールド……ポポ達じゃ不満です?」
「う、な、何を言って……」
「ポポ、チコみたいにわがまま言わないです。ゴールドを傷つけたりもしないです。ただゴールドがポポを好きだと言ってくれるなら、いや、大切に思ってくれるなら、それだけでいいです。それだけで何でもするです。どんなことでも……たとえそれが悪いことでも……」
 ポポの言葉で僕の心臓は跳ねた。 <> ぽけもん 黒 20話
◆/JZvv6pDUV8b <>sage<>2010/04/05(月) 12:35:08 ID:o9Rjb4dh<> 「どうしてそれを!」
 その言葉を発した瞬間、彼女達は一様に不思議そうな顔をした。
 しまった。
 誰にも話してないんだ、誰も知っているわけがない。
 悪いことっていうのはただの一般論だ。
 墓穴を掘った。
「あ、いや、なんでもない」
 慌てて取り繕うが、皆、僕が何かを隠していることに気づいてしまっただろう。
 白々しいと思いつつも、慌てて話を逸らす。
「そ、そんなことより……」
「私も、ポポと同じ。ゴールド、私……ゴールドと出会わなかったら……一生進化も出来なかった。ゴールドは大切な人。私にとっては、この世界の……すべてよりも」
 僕の言葉に被せるように、やどりさんが凛とした調子で言った。
 な、やどりさんまで!
 そもそも一生進化できなかったとか、大げさだよ!
 僕が口を開く前に、やどりさんは香草さんに向き直り、言葉を続けた。
「あなたは……どう?」
「わ、私は……」
 問いかけられ、言いよどむ香草さん。
 そんな彼女を、ポポは鼻で笑った。
「決まりです。ゴールド、はっきりしたですよ。あんなの……」

「あんなのいらないです」

 瞬間的に、室内は静寂に包まれた。
 何の音もしない。誰も口を開かない。
 フォローの言葉も考え付かない。頭が真っ白だ。
 ポポはこんな大それたことを言ったにも関わらず平然と香草さんを見ている。やどりさんも、無機質な瞳で香草さんを見ていた。
 香草さんは俯き、肩をブルブルと震わせている。
 今の彼女の内面に渦巻くのは、屈辱か、混乱か、それとも、もっと別の何かか。
「ふ……」
 香草さんの口から、息のようなものが漏れた。
 何だろう、嫌な予感しかしない。
 僕は体を固くした。
「ふざけるなこの下等生物が! さっきから黙って聞いてればいい気になりやがって!」
 香草さんが、きれた。それも今までで最悪だ。
 顔を上げた香草さんから、荒々しい罵倒の言葉が飛び出した。
 怒りで彼女の顔は鬼灯のように赤く、発せられたその声はもはや絶叫に近い。
 嫌な予感は見事的中だ。
 外れてくれても何も困らないって言うのに。
 僕の顔が恐怖で引き攣る。
「大体、ゴールドも何でさっきから言うがままにさせてるのよ! 私のことなんかどうでもいいっていうの!?」
 決してそのようなことはないと言いたいけど、余計な弁明は彼女の怒りをさらに燃え上がらせそうだ。
 というかそもそも会話が可能な状態に思えない。
 彼女は僕の沈黙(と言ってもコンマ数秒にも満たないわずかな間だった)を肯定の意思と受け取ったようだ。理不尽だ。
「そう、そういうこと。自分の思い通りになる女を二人も侍られて、アンタはさぞかしいい気分でしょうね!」
 えええ!? なんでそういう話になるんですか!?
「この屑! 変態! ゴミ虫!!」
 どうして僕はこういう方向で罵倒されてるんだろう。意味が分からない。
 香草さんの気に入らないポイントはどこなの?
「香草さん、落ち着いて! 香草さんが何を言いたいのか、僕にはさっぱり分からない。後、ポポもやどりさんも、そんな軽々しく自分の人生を他人に預けるようなこと言っちゃダメだよ」
 僕は出来るだけ角が立たないように、意識して柔和な声で言った。
 しかし予想通り、香草さんは僕の言うことに聞く耳なんか持っていなかった。
 一人で自分の世界を突っ走る。
 進路上にいる僕の意思なんてお構いなしだ。
 このままじゃ彼女という暴走車に轢かれてしまう。
「アンタみたいなゴミ虫、このままでは生かしてはおけないわ。有害生物として駆除されないように、たっぷりと教育する必要があるようね!」
 えええええ!! さっぱり展開が理解できません! 何で僕は命の危機に!?
 な、何を言いたいか理解できなかったのがいけなかったの!? <> ぽけもん 黒 20話
◆/JZvv6pDUV8b <>sage<>2010/04/05(月) 12:35:31 ID:o9Rjb4dh<> 「じょ、冗談でしょ?」
 しかし彼女の言葉は性質の悪い冗談じゃなかったようだ。
 袖口から数十の蔦が飛び出し、部屋を突っ切って僕に襲い掛かる。
 それは僕が道具によって迎撃する前に、すべて地面に叩きつけられた。
 隣を見ると、やどりさんが険しい表情をしながら右手を伸ばしていた。
「もう証拠としては十分。この女の本性は明白。ゴールドを傷つけるなら、排除する」
 やどりさん、排除だなんてそんな。香草さんもやめてくれ。
 僕の頭にそのような言葉が浮かぶか浮かばないかのその時。
 瞬間、世界が混濁した。
 上下左右の区別なく、視界は灰色の渦に包まれた。
 室内の物と言う物がガリガリと音を立てながら壁を削り、自身も粉砕されていく。
 同じく混沌の渦の中にある香草さんの悲鳴がそれに唱和した。
 耳には痛いほどの音が雪崩こんでくる。
 それなのに、どこか静けさすら感じる。
 そんな狂乱の中にあって、僕とポポとやどりさんは平穏に包まれていた。
 台風の目、渦の中心。
 何と言っていいか、とにかく、この室内にあって、ここだけが平常時のような穏やかさだ。
 あまりの騒乱に、僕の思考はすっかり麻痺してしまっていた。
 胃液が胸にこみ上げてくる。
 舌にかすかに酸味を感じた。
「や、やめてよやどりさん!」
 僕がこう言いながらやどりさんに縋ったのは、この光景が生み出されてから優に十秒は過ぎてからのことだった。
 混沌に包まれていた世界は瞬時に静止し、秩序を取り戻した。
 一拍置いて、宙に浮かんだまま固められていたものすべてが部屋に降り注ぐ。
 原型を留めているものはただの一つたりともなかった。
 壁には猛獣が暴れ狂ったかのような荒々しい傷跡が無数に刻まれている。
 そして、室内は朱で染め上げられていた。
 埃っぽい部屋の空気に、鉄の臭いが確かに混じってるのが感じられる。
「か、香草さん!!」
 真っ赤に染まった瓦礫の中からかろうじてそれを識別した僕は、すぐさま彼女に駆け寄ろうとする。
 しかし体が動かない。
 まるで金縛りにでもあったかのように……ってこれやどりさんの金縛りだ。
 やどりさんに抗議を行おうとしたが首どころか瞼すら動かせない。
 瞬きすら許されていない。
 そのせいで部屋を舞いまくっている埃が目に入りまくって結構痛い。
 しかし声も出せないのでそのことを伝えることも出来ない。
 相当に強い金縛りだ。
 進化によって増したのは行動の速度や活発さだけではなかった。
 彼女の念動力は今までとは比べ物にならないくらい強くなっている。
 あの香草さんが抵抗一つできず、襤褸切れのように扱われるなんて。
「起きろ。息があることは分かっている」
 彼女はこんな凄惨な光景を作り出しておきながら、眉一つ動かさず、冷淡に血まみれの塊に呼びかける。
 う、と呻き声を漏らした香草さんは上から吊り上げられたように不自然に立ち上がった。
 いや、事実香草さんは立ち上がったのではなく、やどりさんの念力で吊られたんだろう。
 吊られた香草さんは、乾いた咳とともに赤いものを口から吐いた。
 香草さん!
 声を出そうとしても口を動かすことすら出来ない。
 涙が出てきた。
 こ、これは埃が目にしみただけなんだからね! 勘違いしないでよね!
 精一杯の虚勢を張らなければ、まともな思考すら保てそうにない。
 吊られた彼女はゆっくりとねじれていく。
 ギシギシという何かが軋む鈍い音とともに、床に血がポタポタと滴っていく。
 落ちた血はすぐに厚く積もった埃に吸い込まれていった。
 やめろ。もうやめてくれ。
 僕は心の中で絶叫する。
 目を背けたくても背けることすら出来ない。
 圧倒的なまでの無力。 <> ぽけもん 黒 20話
◆/JZvv6pDUV8b <>sage<>2010/04/05(月) 12:36:18 ID:o9Rjb4dh<>  絶望感に打ちひしがれ、自分の意識を手放してしまおうかと思ったそのとき。
 突然視界が閃光に包まれた。
 ぎゃああああああ!!
 瞼が閉じれないから目を瞑れない。
 あまりの眩しさに脳が焼きつきそうだ。
 意識ごと半ば白く塗り込められたところで、僕はガラスの蹴散らされる音を聞いた。
 突然金縛りが解かれ、僕はそのまま崩れ落ちた。
 のどの辺りまで酸っぱい物が競りあがってくる。
 僕の思考まで白く染めたあの閃光。
 香草さん渾身のフラッシュは見事全員の視界を塞ぎ、やどりさんを怯ませた。
 それで念力が弱まった隙に窓から逃亡、ということだろう。
 まだ目が見えないので憶測でしかないけど。
「逃げられたです……」
 ポポの残念そうな呟きが聞こえる。
 やはり僕の想像は間違っていないようだ。
 先ほどの衝撃的な映像のショックだろうか、それとも強光をもろに受けたせいだろうか。酷い吐き気がする。
 目が碌に見えないので手探りで、思うように動かない体を引き摺りながら窓際まで行く。
 しかし僕の手に伝わってきたのは冷たくて固い壁の感触ではなく、暖かで柔らかい人の感触だった。
 未だ回復しきらぬ僕の目に、ぼんやりとシルエットが映る。
 僕はその影に呼びかけた。
「ポポ? 僕を窓まで案内してくれ。香草さんはどうなった?」
「あの女ならもう見えないです。案外余力を残してたみたいですねぇ。血の跡を追えば追いかけられないこともなさそうですけど」
 ポポはこともなげに言った。
「ポポ、どうしてポポはそんなに平然としてられるんだ? 一緒に旅をしてきた仲間じゃないか。それがこんな……」
「仲間じゃないです。チコがそう言ってたじゃないです?」
「それは……」
「それにしても、チコは酷いことするです。最後の最後までゴールドを傷つけたです。でももう大丈夫です。もうチコはいないですよ」
 ポポはそう言って、僕を胸に抱いた。
 視力の戻ってきた視界に映ったのは、ポポの溢れるような笑顔だった。
 何より恐怖を覚えながら、僕は上体だけ後ろに向けた。
「やどりさんだって、物には限度ってものがあるよ! これは明らかにやりすぎだ! それに最後、まともに抵抗も出来なくなった香草さんに何をしようとしたんだ!」
「……だって」
「だってじゃありません!」
 僕がこういうと、やどりさんはまるで親に叱られた子供みたいな表情をした。
 ああ、どうしてそんな困った顔をするのさ。
 まるで本気で僕がどうして怒っているのか理解できていないみたいじゃないか。
 みたいじゃなく、本当にできていないんじゃないか。
 一瞬そんなよくない考えが脳裏をよぎったが、僕はそれをすぐにかき消した。
 だって普通の人間なら当たり前に分かっているはずだ。
 だから彼女達だって分からないはずがない。そうさ、そうに決まってる。
 つまり、これはただの思い違いだ。
 視力も戻ってきたし、今は説教を行っている場合じゃない。
 一刻も早く、香草さんを見つけないと。
 彼女の怪我は見るからに深刻だった。かなり動けるとはいえ、お医者さんに見せないと命に関わるんじゃないか?
 僕はリュックを掴むと窓から飛び出した。
「とにかく、香草さんを連れ戻してくるよ!」
 着地した僕は、地面に点々と付いた血の跡を辿って走り出した。


 結局、これは無駄足に終わった。
 あの重症、この短時間でどれだけ遠くに移動したのかと不思議になるくらい、血痕は長く遠くまで続いていて、そしてそれは街の外れで唐突に消えた。
 街中ならともかく、この辺は殆ど人通りもない。目撃者は望めなさそうだ。
 どうしてここで突然途絶えたのか。
 僕は検討も付かず、出来ることも思いつかず、ただただ途方にくれた。 <> ぽけもん 黒 20話
◆/JZvv6pDUV8b <>sage<>2010/04/05(月) 12:37:02 ID:o9Rjb4dh<>  日が暮れたあとの道を、警察に届け出ようか迷いながらポケモンセンターに戻ると、ポポとやどりさんが事情聴取されていた。
 激しく動揺したが、すぐに自分の浅慮に気づいた。
 あれだけの破壊を行ったんだ、騒ぎにならないはずがない。
 それなのに、気が動転した僕はそんなことにも気づかず飛び出してしまった。
 婦警さんに話しかけた僕は、さらに驚愕することになる。
 香草さんが指名手配されそうだ。
 どうも、彼女達はあの惨状を香草さんが引き起こしたものだと説明したらしい。
 確かに半ば間違ってはいないのだけれど、彼女達の説明は香草さんを一方的に悪に仕立て上げるような捏造だった。
 その結果、重要参考人として指名手配されることになりそうなのだ。
 僕は必死の説明を行ったけど、何せ二対一である。
 しかも、他の人によって見つけられたときに僕は現場にいなかった。
 いまいち証明として弱い。
 婦警さんからはパートナーを不当に庇ってるんじゃないかと言わんばかりの目で見られ、責められた。
 迂闊だった。慌てて香草さんを追いかけたりせずに、ちゃんと真っ先に周囲に説明しておけば。
 もしかして彼女達が僕を止めなかったのはそのため?
 そんな疑念が生まれた。
 結局、僕の必死の弁明が通じたのか、それとも彼女達の証言が証拠として不十分だと見なされたのか、とにかく、指名手配は免れた。
 とはいえ、事件の参考人ではあるし、このままにしておくわけにはいかないので僕も捜索願を出した。
 とりあえず責任の所在はうやむやになり、修繕費は保険屋さんからでるということで落ち着いたようだ。
 どうやら多少設備が壊れることくらい日常茶飯事らしい。
 尤も、ここまで酷いのは滅多にないけど、と苦笑いを浮かべながら言われたが。
「はあ……」
 新たにあてがわれた部屋で、僕は深い溜息を吐いた。
 ポポに気遣ってここ最近は吐かないようにしてたんだけど、もう我慢出来ない。
 このままじゃ、僕の胃に穴が開いてしまう。
 深く溜息を吐いた僕を、二人は困ったように見ている。
 部屋に入るなり、そこに直れと僕が命じたため、彼女達は棒立ちすることしかできないのだ。
 だからいつもの過剰なスキンシップを喰らう恐れはない。
「さて、色々言いたいことはあるけど、とりあえず……」
 ここで一旦区切り、息を吐いた後、続ける。
「どうして嘘を吐いて、香草さんを犯人に仕立て上げたんだ?」
 僕は成る丈険しい表情を作り、二人を睨む。
 射竦められた二人は、慌てた様子で同時に弁明を始めた。
 当然、僕は同時に話されても理解できないので、二人を制止する。
「言い訳は一人ずつ聞こう。まずはポポから」
「あの、ゴールド……怒ってるです?」
「ああ」
 僕は出来るだけぞんざいにそう言い捨てた。
 事実、僕はこの旅を始めて以来、最大の苛立ちを感じていた。
 それが少々八つ当たり的に彼女達に向けられていることに少しばかり心が痛まなくもなかったが、しかし、彼女達には怒られるだけの正当な理由があった。
「で、どうしてこんな嘘を吐いたんだ」
 あぅぅと涙ぐむポポに、僕は容赦なく言う。
「や、やどりがそうしようって言ったです! だって、そうするしかなかったんです!」
 やどりさんが何か言おうとしたけど、僕はそれを遮って話を促す。
「そうするしかなかったってどういうことだよ」
「だって、喧嘩して、部屋を滅茶苦茶にして、相手に大怪我させたなんて言えないです……」
 確かに、その通りに証言すれば、問題になるのは避けられない。
「だからって、誤魔化していい問題じゃないだろ!」
「ゴールドだって、いつもそうしてるじゃないですか!」
 うぐっ!
 ポポの言葉が僕の胸に突き刺さる。
 普段の僕はそういう意図で物事を大事にならないようにしていたわけじゃないんだけど、そうか、ポポにはそう見えていたのか。 <> ぽけもん 黒 20話
◆/JZvv6pDUV8b <>sage<>2010/04/05(月) 12:38:06 ID:o9Rjb4dh<> 「つまり、誤魔化そうって発案したのはポポなのか」
「そ、それは……」
 言いよどんだのは肯定の代わりと思っていいだろう。
 親の背中を見て子は育つという。
 つまりポポは僕の普段の行動から学んだ結果、事件になるのを避けようとして、それにやどりさんが知恵を貸したということか。
 ははははは。笑えない。
 つまりなんだ、結局責任は僕にあるってことなのか?
「それに、これは証明」
 真実が暴かれたので、弁明の必要がなくなったやどりさんが口を開いた。
「証明って何の?」
「ゴールドのためなら、私は罪を厭わないことの」
「なっ……」
 言葉が出なかった。
 ポポの、「ぽ、ポポもです!」という言葉が遠くに聞こえる。
 僕はひょっとして、とんでもない場所にいるんじゃないだろうか。
 僕の信用を得るためだけに人一人を殺しかけた。
 さらに全ての罪をその無実の……無実のというのは言いすぎかもしれないけど、とにかく、その被害者に着せようとしている。
 そしてそんな行為をなんとも思わない、強大な戦闘力を持つ者がこの狭い部屋に二人もいるのだ。
 ロケット団のアジトだって、もう少し空間辺りの危険人物密度は低い気がする。
 僕はどうするべきなんだろうか。
 二人に対して、懇々と説教しても、それが効果あるとはとても思えない。
 ならしかるべき機関や人物に訴えるか?
 いや、ダメだ。そんなことになれば二人ともただじゃ済まない。
 僕は二人を罰したいんじゃなくて助けたいんだ。そんなことは本末転倒だ。
 それに、警察は物事を混迷させるばかりで、よい方向に運ぶことはない。
 僕はシルバーのときのことのせいで、根本的に警察不信なのだ。
 それに、この状況は僕にとって必ずしも不都合ではない。むしろ好都合なくらいだ。
 二人を僕の共犯者に仕立て上げる。
 もちろんそのことに抵抗がないとは言わないけど、僕にはそれが最良の方法のように思えた。
 むしろ、共犯者にすることが彼女達の危険な行動の抑止にも働くはずだ。
 溜息を一つ吐いた後、意を決して僕は話し始めた。
「二人の気持ちはよく分かった。だから言うよ。最後まで落ち着いて聞いて欲しい。僕は、一人の友人を救うために、一人の元友人を殺すつもりなんだ」
 少し気取った言い回しだと思う。
 でも、咄嗟に出た言葉がこれだった。
 僕は今まで、シルバーが自分の友人だったことを否定していたのだと思う。
 どこか、彼を直視したくない気持ちがあった。
 しかし、自分の殺意を告白することが、かえって僕を冷静にした。
 口に出した以上、後戻りは出来ない。
 僕は、昔からずっとシルバーを恨んでいた。それも、殺してやりたいくらいに。
 ランの父親を殺し、僕やランの幸せな生活を奪ったシルバー。そのとき僕が感じた無力感。
 僕はシルバーが、何よりも何も出来なかった自分が許せなかった。
 だから、僕は僕の手でシルバーを裁く。
 ずっとそう思っていた。
 時間の経過とともにその感情は冷め、火はすっかり消えたと思っていた。
 ところが、それはただ灰に埋もれて隠れていただけだったらしい。
 再びシルバーにあったとき。
 僕の中にあったその燠火が再び激しく燃え上がった。
 僕はもう、この気持ちを無視することは出来なかった。
 今度こそ、シルバーに罰を与える。
 そしてランを助け出す。
 もちろん、ポポややどりさんには関係のない話だ。
 だから二人を巻き込むことに抵抗がないとは言わない。
 それにいくらシルバーが悪人だからと言って、殺せば人殺しだ。なんらかの罪に問われる可能性は高い。 <> ぽけもん 黒 20話
◆/JZvv6pDUV8b <>sage<>2010/04/05(月) 12:39:11 ID:o9Rjb4dh<>  だけど、僕は。
 親を殺し、その娘を洗脳して悪の手先として利用する。
 こんな非道が他にあるだろうか。
 仮に逮捕されたところで、事件当時の年齢を省みると、何か他の事件でも立件できない限り、死刑なんて到底望めない。
 更生の余地だのなんだの言って大した刑にならないに決まってる。
 あのシルバーに更生の余地なんてあるわけがない。
 善良な心を持っていれば、最初からこんな悪事を働くわけがないじゃないか。
 僕はシルバーを許せない。
「初めに言っておく。僕は決して殺人を肯定するわけじゃない。裁いていいのは法であってお前じゃないって何も知らない人たちは言うと思う。
 けれど、この十年、警察は何も出来なかった。でも、僕達なら出来る。なら、僕達がシルバーを殺し、一人の女の子を救うことは正しいことだと、僕は思う。
 だから、この一度だけ、僕に力を貸して欲しい。……こんなことに巻き込んでおいてなんだけど、君達には出来るだけ迷惑をかけないように努力するよ」
 彼女達は黙って僕の口上を聞いていた。
「もし警察に訴えるなら今だ。今なら君達は余計なリスクを負わなくてすむ」
 ポポはくすりと、柔らかな笑みを作った。
 そして、幸せそうに言う。
「ゴールド。ポポの答えは最初から決まってるです。ポポは……」
 ポポがそこまで言いかけたところで、言葉を奪うようにやどりさんが割って入った。
「……私のすべては、あなたの望みのままに」
 そうして、僕に傅くように、僕の前に跪いた。
 隣のポポは信じられないと言った様子だ。今にも悲鳴が聞こえてきそうだ。
「……っ!! 大事なところで割り込むなです! 折角ポポが……」

 やどりさんに食って掛かるポポのギャアギャアという声の裏で。
 卑怯者。あなたはそれで満足?
 僕は香草さんの罵りの声を聞いた気がした。
 僕が計画を打ち明ければ、彼女達は僕に従う。
 そんなことは最初から分かっていたんじゃないか?
 分かっていたからこそ、彼女達に打ち明けたんじゃないか?
 そんな声が僕の脳内に木霊する。
 分かっていて、それでも良心の呵責も背負えない、卑怯者の僕は、あえて僕が強要するんじゃなく、彼女達に選ばせる形式を取った。
 自分の罪悪感を誤魔化す、ただそれだけのために。
 彼女達を引きずり込んだ。
 彼女達に、背負わなくていい罪を背負わせるために。
 卑怯者。
 僕はそんな声々から耳を背け、二人にこれからの計画を話した。
 大雑把に言えばこうだ。
 ロケット団は再結成した。
 つまり、このまま旅を続けていれば、いつかロケット団の情報が舞い込んでくるだろう。
 今までのことから言っても、そこにシルバーもいる可能性は高い。
 だから、僕達は今までどおり旅を続ければいい。
 もちろん、絶対に騒ぎを起こしてはダメだ。
 そのときが来るまで、できるだけおとなしくしているべきだ。
 同時に、僕は君達が殿堂入り出来るように全力を尽くす。
 シルバーに会えなければそのまま殿堂入り出来るように。
 そうなった場合は、僕はメディアを通して大々的にシルバーの非道を訴えることが出来る。
 世論が動けば、警察も優先して動かざるを得ない。厳罰を科さざるを得ない。
 そうなれば、彼女達は人殺しなんて誹りなんかとは無縁の、保障された素晴らしい生活が送れることだろう。
 僕がつまらない意地を通さなければ、これ以外の選択なんかあるはずもないのだけれど。
 だけど、僕は……。

 そうして、僕達はこの街を後にした。


 あ、古賀根ジムは秒殺で勝ちました。
 古賀根ジムは相手方のおっぱいがすごくおっぱいなこと以外、特筆すべきことはなかったです。 <>
◆/JZvv6pDUV8b <>sage<>2010/04/05(月) 12:43:25 ID:o9Rjb4dh<> 投下終了です
次は比較的すぐに投下できると思います
その次は分かりません <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/05(月) 14:17:43 ID:IcXD5Cnt<> 待ってました!
GJです! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/05(月) 14:37:06 ID:w8zY/bKb<> 香草さんがどうなるか気になるな、乙 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/05(月) 17:00:19 ID:TTF/cxGN<> やっときてくれたよぽけ黒
GJです <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/05(月) 20:56:49 ID:aQxuDulz<> この自演感想さえなければ、それなりにいい作品なんだがなあorz <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/05(月) 21:01:25 ID:fFwrNtUd<> >>19
おおおおおお!!

待ちしておりました!!

GJです <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/05(月) 22:00:00 ID:EjcNFPnO<> >>19
GJ
ツンデレにヤンデレって組み合わせは色々危険だなw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/05(月) 22:48:16 ID:guV7DT6z<> gj
次を待ってます <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/05(月) 23:38:52 ID:uu4QQwN8<> >>23
催促するやつらのせいでこういうのが沸くんだ、おまえら自重しろ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/06(火) 00:43:14 ID:dHPrL0MD<> GJ
待ってました!
香草さん教育ってなにするつもりだったんだw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/06(火) 02:10:36 ID:BtiC4qBu<> GJです
ポポは黒くなったなぁ
昔の純粋さが懐かしい <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/06(火) 08:42:42 ID:WKlZxDwE<> GJ!
今後の新キャラにも期待 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/06(火) 15:08:23 ID:zx24qIvb<> >>23って前スレの>>315だろ。毎回レス多い作品に絡むなよ <>
◆AW8HpW0FVA <>sage<>2010/04/06(火) 19:02:13 ID:fM2KC+El<> test <> ◆AW8HpW0FVA <>sage<>2010/04/06(火) 19:06:59 ID:fM2KC+El<> 変歴伝の外伝が出来たので投稿します。ネタばれはありません。
内容は、大体17から20の間の頃です。
少しグロが入ります。 <> 変歴外伝 
◆AW8HpW0FVA <>sage<>2010/04/06(火) 19:07:59 ID:fM2KC+El<> まだ蝉達が狂騒する中秋の頃、六波羅の周りを一人の男がうろついていた。
男は目が窪み、頬はこけ、無精髭は生やし放題という形であった。
それだけならば、町中をうろついている浮浪者となんら変わりないが、
腰に差した大小の刀と、存在しない右腕が、その男を凡百の浮浪者と隔絶させた。
この男、実は清盛に仕えていた家宰であり、
その実力は、平家家中随一の使い手(清盛の兄弟親族を除く)と言われていた人物である。
しかし、初秋の初め頃に行われた武術大会で、いびり続けていた天田業盛と戦って惨敗し、
その時の戦いで右腕をへし折られ、使い物にならなくなってしまい、
武士としての人生に終止符を打たざるを得なくなってしまったのだ。
だらりとぶら下がっているだけの右腕を見ていると、その時の事を思い出す家宰は、
怒りに任せて右腕を斬り落し、今に到るのである。
最早来る必要のない屋敷の周りを彼がうろつく理由は、
業盛に復讐したいという一心からだった。
自尊心が異常に強い家宰は、傷が完治する一月の間、
業盛に腕をへし折られる悪夢を見続け、目を覚ますたびに業盛に対する恨みを思い返し、
いかにして業盛に恥辱を与えながら甚振る事が出来るのかと考える事で、
自らの復讐の炎を絶やさない様にしていたのである。
新手の臥薪嘗胆ともいえるが、その規模のいかに小さき事か。
まるで、そこらにいる小悪党の下っ端の仕返し程度の規模である。
おそらく、クズとはこの男のためにある言葉であろう。
そんな家宰が六波羅に張り付いて、七日目の昼、
業盛が門から出てくるのを、家宰は目視した。
相変わらずの中性的な優男面は、
家宰の嫉妬と復讐の炎を燃え上がらせる事など造作もなかった。
そんな家宰の負の感情をさらに増大させたのが、業盛の横に侍っている女だった。
目付きのきつさや貧乳を考慮しても、その女は間違いなく美人であった。
今まで女にもてた例のない家宰は、口から血を滴らせるほど歯を食いしばった。
この手の男の嫉妬ほど薄汚く、手に負えないものはないであろう。
過去の栄光に縋り付く家宰に、自分の顔でも見てみろと言いたくなる。
嫉妬の炎を燃やす家宰は、その女を見ながら、醜い面をさらに歪めた。
なにがなんでも業盛に恥辱を与えたい家宰は、二人を後を追った。
女を人質に取り、業盛をたっぷりと甚振ってやろうと考えたのだ。
これが名案だと思ったのだから、家宰には、もう武士の矜持もなかった。
<> 変歴外伝 
◆AW8HpW0FVA <>sage<>2010/04/06(火) 19:08:43 ID:fM2KC+El<> なにもかも地に墜ちた家宰は、しばらくの間は二人を後ろから眺め、機会を窺っていた。
その機会はすぐに訪れた。業盛がごろつき達と喧嘩を始めたのである。
喧嘩と聞き付けた町民達が、業盛とごろつき達の周りで人集りができ、
辺りはあっという間に喧騒に包まれた。
攫うなら、今が好機である。
家宰は人ごみを掻き分け進み、業盛の戦闘を潤んだ瞳で見つめている女の口に手を当てた。
「声を出すな……。出したらお前の首をへし折るぞ」
利き腕を失ったとはいえ、それぐらいの事なら今の家宰でも出来る。
そのどすの聞いた声が利いたのか、女は静々と家宰の言う事を聞き、
難なく路地裏まで連れて来る事に成功した。
「ふひひひ……、これで作戦の第一段階は完了だ。
後はあのクソ生意気な三郎を呼び出して、徹底的に甚振ってやるだけだ。
へっへっへっ……、女ぁ……、その後はお前もたっぷりと犯してやるよ……。
それもお前の大好きな三郎の前でなぁ。ありがたく思いなぁ!
恨むんだったら、こうなる原因を作った三郎を恨むんだなぁ!!!」
三流以下のごろつきの言う様な台詞を垂れ流す家宰は、
最早武士としても、一人の人間としても終わっていた。
今その顔は、復讐と性欲で染まり尽くされ、豚の如き醜悪さを醸し出していた。
女はこの耳障りな声を聞いてもまったく声など出さず、身体を身震いさせるだけであった。
家宰は、それは恐怖で震えているのだと思い、ふとその顔を見てみたくなった。
恐怖に染まる人の顔を見る事ほど、面白いものはないからである。
しかし、女の顔を覗いた家宰は、歓喜ではなく、言い知れない恐怖を感じた。
女は、恐怖で震えていたのではなかった。笑いを堪えていたのだ。全身で。
この時、家宰は自らが女に誘い出されたのだという事にやっと気付いた。
慌てて家宰は離れようとしたが、それよりも早く、凄まじい衝撃が腹部を襲った。
「馬鹿な奴……」
意識が飛ぶ瞬間、家宰は、底冷えする様な女の声を聞いた。
<> 変歴外伝 
◆AW8HpW0FVA <>sage<>2010/04/06(火) 19:10:15 ID:fM2KC+El<> 家宰の目覚めた場所は、路地裏ではなく、仄暗く黴臭い部屋だった。
さらに服は全て脱がされており、左腕は吊るし上げられ、
両足は開脚の状態で鎖に繋がれ、身体を動かす事が出来なかった。
家宰は焦った。あの女から感じたものは、家宰が今まで感じた事のないものだったのだ。
このままでは殺されてしまう。家宰はそれをはっきりと自覚できた。
そんな時、少し遠くから足音がこちらに向かってきていた。
足音の数からして、人数は三人ぐらいだろう。
足音が近くなると同時に、仄かな光が辺りを照らし出した。
「こんにちは、愚かなゴキブリさん……」
灯りに照らされて、業盛の傍にいた女が、他の女二人を侍らせ、鉄格子越しに立っていた。
それで家宰は、自分が牢屋の中にいるのだと理解できた。
「なんなんだよ、お前は……。ここはいったいどこなんだ!」
「ゴキブリに教える名前なんてないわ。
それに、見れば分かるでしょ。ここは土牢よ。……これから地獄と化すけどね……」
女はそう言うと、鉄格子を開け、中に入ってきた。
「あんたは二つの罪を犯したわ。一つはこの私に汚い手で触れた事。
そしてもう一つは……」
女はそう言って一旦区切ると、家宰の無防備な股間を思いっきり踏み付けた。
「この私を出しにして、三郎に危害を加えようとした事よ!!!」
女は、何度も何度も、さらに捻りを加えて家宰の一物を踏み続けた。
家宰の声にならない悲鳴が、牢屋に響く。
「あらあら、気持ち良くておしっこ漏らしちゃったの?
こんな事で感じるなんて、あんた、ゴキブリ以下のクズね」
「ちっ……違う……、気持ち良くなど……」
「あらっ……、じゃあなんであんたの汚いこれはこんなに勃起しているのかしら?」
女の言う通り、家宰の股間は失禁で濡れていながらも、
自らの一物は、まるでもっと蹴られる事を望んでいるかの様に固く怒張していたのだ。
「まさかあんた、痛い事をされるのが好きなのかしら。
だとしたら、これからやる事は、あんたにとっては極楽浄土かもね……」
女がそう言って、鉄格子越しで待機している二人の女を土牢の中に招き入れた。
女の一人が家宰に目隠しをし、口には猿轡を噛ませた。
「楽しみだわぁ……。これはいつも吐かせるためだけにやっていたから、
最後までやった事がないのよ。それを今日は最後までする事が出来るなんて、
私、嬉しくてたまらないわ……。……さぁ……、後学のためにも、
あんたが何刀目で逝くのか、じっくりと見させてもらうわよ……」
女の艶やかな声と共に、狂宴の幕が切って落とされた。
<> 変歴外伝 
◆AW8HpW0FVA <>sage<>2010/04/06(火) 19:11:00 ID:fM2KC+El<> 薄暗い土牢の中は、噎せ返る様な臭いと金属音が響いていた。
「気持ちいいかしら……、ゴキブリさん?……まぁ……、当然よね。
目隠しされて、次はどこをやられるのか予測が付かないのだもの。
変態のあんたにはたまらない趣向でしょ?」
ねっとりとした口調で、女は家宰に問い掛けた。
家宰は身体に入れられるたびに、唸り声を上げ、身体を震わせた。
「なかなか、いいものでしょ……?……自分の身体が削られていくというのは……」
それは凄惨としか言い様がなかった。
家宰の身体は、至る所が削がれ、骨や内臓が露出していたのだ。
骨や内臓が露出しているというのに、出血があまり見られないのは、
重要な血管を切らない様に肉を削いでいるからである。
噎せ返る様な臭いは、家宰が垂れ流した糞尿と削がれた血肉の混ざった臭いであり、
女は、その臭いに眉を顰める事なく、むしろ悦楽に浸った様な表情を浮かべていた。
「あぁ……、この臭い、この感覚、たまらないわ。
本当はこれに悶え苦しむ声があれば文句なしなんだけれど、
そんな事をしたら、あんた舌噛んで自害しちゃいそうだから、
それが出来ないのが心残りだけど……」
女は両手で自分の身体を抱き締めながら、快楽に震えていた。
その声を聞いて、家宰は恐怖を感じたのか、激しく身体を揺さぶり始めた。
しかし、身体を鎖で繋がれ、さらには腕や足の肉を削がれて脆くなっているため、
家宰が身体を激しく動かすたびに、金属音と骨の砕ける音が響き、
それは結局、女の快楽を増長させるだけに過ぎなかった。
「ふふふ……、私の要望に応えてくれるなんて、頭のいいゴキブリだこと……。
ご褒美に、もっといい事をしてあげるわ……」
女はそう言うと、一本の鉄の棒を取り出した。
棒の先端には無数の小さな鉤が付いており、それはまるで昆虫の足の様であった。
女はその棒を家宰の肛門に宛がうと、躊躇することなく突っ込んだ。
家宰の腹部は既に削がれており、
そのため、棒が腸の中を押し進んでいく様をじっくりと見る事が出来た。
女が棒をぐりぐりと回すと、ぐちゅぐちゅと音を立て、丸見えの腸が大きく隆起した。
肛門からは腸液と血が溢れ出て、既に漂っている臭いと合わさり、
土牢の中はさらに筆舌し難い臭いに包まれた。
一通りそれが終わると、ゆっくりと棒が引きずり出された。
すると、棒に引っ掛かった腸が、肛門から引きずり出された。
「あっははは……、ほ〜ら、元気な赤ちゃんが生まれたわよ。
黄ばんでて、細長くて、臭い所なんて、あんたにそっくりじゃないの」
引きずり出した腸を、家宰に擦り付けながら、女は笑った。
だが、家宰は呻き声も身動きを取る事もなかった。家宰は、死んでしまったのである。
「あぁ〜あ、死んじゃったか……。もう少し楽しめると思ったのに……。
戯れも、これにて終幕……か……」
女の家宰への興味は、この溜息を以って消え失せてしまった。
女は家宰であったものを見つめながら、
「それを適当に始末しておきなさい。
それと、刻んだ肉は乾燥させてから石臼で挽いて粉にしておいて頂戴」
と、横に侍っている女二人に新たな命令を告げると、その場を立ち去った。
<> 変歴外伝 
◆AW8HpW0FVA <>sage<>2010/04/06(火) 19:11:36 ID:fM2KC+El<> それからしばらくして、家宰を惨殺した女は、とある屋敷を訪れていた。
屋敷には人の気配が感じられず、閑散としてる様は、あたかも幽霊屋敷の様であった。
しかし、女が拍子を取ると、いつの間にか目の前に一人の女が現れた。
女が無言で手を差し出すと、その手に一つの袋が乗せられた。
中を確認すると、そこには赤黒い砂の様なものが入っており、
それは薄っすらと血の臭いを放っていた。
女が視線を戻すと、そこには既に誰もいなかった。
女は驚くも事なく、そのまま何事もなかったかの様に屋敷から出た。
「よかったわね、あんたみたいな薄汚いクズが、最初で最後の舞台に立てて。
正直、保険のつもりだったから使いたくなかったけど、まぁ……、いいわ。
精々、私と三郎の幸せを繋ぐ礎となりなさい」
人気のない道を歩いていた女は、まもなく都の喧騒に飲み込まれ、
どこに行ってしまったのかも分からなくなった。
<>
◆AW8HpW0FVA <>sage<>2010/04/06(火) 19:12:21 ID:fM2KC+El<> 投稿終了です。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/06(火) 20:12:52 ID:888PSGI/<> ご苦労様です <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/07(水) 00:51:22 ID:pS8mRpYp<> ぐじょぶ <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/07(水) 03:56:03 ID:YanK46Ce<> GJ
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/07(水) 08:42:35 ID:AHtGYZUU<> 18 名前: Nice@名無し 2010/04/06(火) 23:32:47 ID:PiIRY1uI0

「動き出す時」を書いている者です。すみません、また規制中です。
また規制が長いので生存報告をさせて頂きます。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/07(水) 09:16:33 ID:+ZtPBst2<> >>43
他にもこんな感じで規制が長いだけで
長いこと投下してないけど実は生きてますって職人さんいるのかね? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/07(水) 21:04:18 ID:siX0sP6L<> >>44
そうなら、ほととぎすの作者も生きていることを願う <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/07(水) 21:18:06 ID:6tvm606O<> 真夜中のよづりの作者も… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/08(木) 23:37:50 ID:AVn8TZ3X<> >>45俺もだぜ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/09(金) 13:34:35 ID:pEnPXNBY<> 本当にポケモン黒が出ることになるとは
正確にはブラックだが <>
◆lSx6T.AFVo <>sage<>2010/04/09(金) 16:36:23 ID:TmKKkU8J<> 投稿します。長編です <> 私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo <>sage<>2010/04/09(金) 16:37:27 ID:TmKKkU8J<>  人の居なくなった放課後の教室で、私はひとり自分の席に座っていた。
 開け放たれた窓からは、冬特有の冷気を帯びた暖かい風がカーテンを揺らしていて、とても心地が良い。
 今日は休みなのか、いつも聞こえる運動部の喧騒も、グラウンドからは聞こえない。教室内にはカーテンがはためく音が聞こえるだけで、不気味なほどに静かだった。
 この世界で自分しか居ないみたいだ、なんてありふれた言葉が頭に浮かぶ。こういう言葉は嫌いじゃない。
 私はそこで思い出したように、ポケットに入っている便箋を取り出した。
 いつもなら、授業が終わると真っ直ぐに帰宅してしまうようなこの私が、こんな誰も居ない教室にひとりで残っているのには理由がある。この一通の手紙が原因だ。
 今朝、いつものように登校してきた私は自分の下駄箱にこの便箋が入っているのを発見した。便箋は上履きの上に丁寧に置かれていて、まるで私のことを待っているかのようだった。
 昨日下校した時はこんな手紙を見ていない。ということは昨日私が帰った後に入れたか、それとも今日の早朝に私が来る前にでも忍ばせたのだろう。
 どちらにしろ、無視する訳にはいかない。
 私はそれをポケットに入れて、そのまま教室には向かわず、人気が少ない非常階段で一人便箋を確認した。
 便箋は青色の可愛らしい花の模様がついたもので、宛先のところに“鳥島くんへ”と私の名字が書かれていた。
 中に入っている手紙も同様に、青色の四方に花がプリントされているものであり便箋とセットであるのがわかった。
 手紙には私に放課後、教室に残っていて欲しい事が簡素に書かれていて、刻まれている丸っこい筆跡から、差出人が女子であることが推測出来た。
 一体、何の用なのだろう。そんな疑問が頭に浮かぶが、私はこれを無視する理由も無かったので、結局こうやって放課後に待つことにしたのだ。
 風がいっそう強く吹いた。
 私は取り出した便箋の中から手紙を抜き出し、書かれている女子特有の丸っこい文字の羅列を眺めながら、手紙の差出人について考える。
<> 私は人がわからない
◆lSx6T.AFVo <>sage<>2010/04/09(金) 16:38:27 ID:TmKKkU8J<>  手紙には差出人の名前が書かれていない。それが書き忘れなのか、故意にやっているのかはわからない。しかし、私はそれが一番に知りたい情報だったので少し残念だった。
 名前の有無は重要だ。名前が無いということは差出人がわからないということなのだから。
 差出人がわからないと呼び出した理由についても全く予想が出来ない。名前が無いせいで、朝からずっと何故呼び出されたのかを考えているのに私に全くわからなかったのである。
 何故、私を呼び出したのだろう。
 相手が誰なのかがわからない。なので予想しようにも出来ないのだが、それを差し引いても私には、誰かに呼び出されるような理由なんて全くなかった。
 私はクラスではあまり目立つほうではない。友人は居るが、どれも皆浅い関係に留まっており、親友と呼べるような存在も居ないのだ。
 特に女子とは全く会話をしていない。
 高校生というものはクラスではあまり男女が仲良くしないものだ。仲良くするのはあくまで学校外である。私もその暗黙の了解にきちんと倣っていたので、高校で女子と話をしたことなど、斎藤ヨシヱを除いて数えるほどしかなかった。
 だから、今日私を呼び出した相手も、おそらく男子なのだろう。
 私以外誰も居ない、空になった教室を見渡した。誰もいないということは、呼び出されたのは私だけということになる。つまり、私個人に用があるということだ。
 教師に放課後呼び出されるのとは勝手が違う、つい幾らか警戒してしまう。
 私は黒板の上に設置されている時計を見る。短針はもうじき6を指そうとしていた。そういえば、いつの間にかカーテンの隙間から差し込む夕日も黒みを帯び始めていた。あまり遅くなって欲しくないな、と私は思った。
 それから、廊下からぱたぱたと誰かが歩く音が聞こえてきた。
 私は手紙を再びポケットにしまうと、じっと教室のドアを見つめ、来訪者を待った。
 ドアがカラカラとローラー音と共に開く。
 現れたのは随分と身体の小さい、小動物を連想させるような少女だった。髪は肩程までに短く切られていて、その小さな顔には不釣り合いな程の、大きな黒縁眼鏡をかけられている。
 彼女には見覚えがあった。確か、同じクラスの田中キリエだ。
「ご……ごめんなさい。いきなり呼び出したりしちゃって」
 田中キリエは申し訳なさそうにそう言った。
<> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/09(金) 16:39:41 ID:TmKKkU8J<>  謝罪したその声は、彼女の印象に違わないとても小さな声だった。注意深く聞いていないと、聞き逃してしまいそうなほどである。その口ぶりからするに、どうやら呼び出したのは彼女で間違いないようだ。
 彼女は後ろ手でドアを閉めると、私の近くまでとことこと歩いて来た。
 そして、そのまま彼女は黙りこくってしまう。時折私の顔をちらちら見たりはしているが、何も話さない。 彼女は指を弄ったりしていて、どうにも落ち着きがなかった。それに、顔も少し熱気を帯びているようにも見えた。もしかしたら風邪気味なのかもしれない。
 当の私はまさか差出人が女子だとは思っていなかったので、田中キリエの登場にかなり困惑していた。
 それから疑問に思う。何故田中キリエは私を呼び出したのだろう。彼女と私はあまりに共通点がなかったのだ。
 田中キリエに限らず女子全般に対してそのことが言えるのだが、彼女とはせいぜいクラスが同じというだけで、今まで話をしたこともなかったはずだ。決して、放課後に呼び出されるような関係では無い。
 それに、田中キリエは自己主張の少ない、友人の話に微笑んで相槌を打っているような静かな少女である。そのためか、人を呼び出すという行為自体が、私にはどこか不自然に感じた。
「あっ……あの、もしかして……迷惑でしたか?」
 無意識の内に難しい顔をしていたのかもしれない、田中キリエは怖々といった感じでそう尋ねた。
「いえ、そんなことはありませんよ」
 私は即座に笑顔で応じる。この手の性格は不安や緊張感を抱かせてしまうと話が円滑に進まない場合があるので、彼女を不安にさせるのはあまり得策ではなかった。
「……よかった」
 田中キリエは安堵したようにそう言うと、また黙ってしまった。
 カーテンの音がうるさいと感じるくらい、静かだった。
 このままでは拉致があかない、そう思った私は仕方がないので自分から話し掛けることにした。斎藤ヨシヱを除いて、女子と話をするのは得意ではなかった。
「田中さん……でしたよね?」
「はっ……はい」
「どうして私を呼び出したのでしょうか?呼び出すということは、何か私に用があるはずでしょう」
 流石に用もないのに人を呼び出したりはしない筈だ。
「えっ、あの、それは……」
 本題に入ろうとすると、田中キリエは明らかに動揺してしまい吃ってしまった。
<> 私は人がわからない
◆lSx6T.AFVo <>sage<>2010/04/09(金) 16:42:22 ID:TmKKkU8J<>  人には言いにくい話なのかもしれない。ここは下手に話し掛けたりせずに、黙って彼女の言葉を待った方がいいな、と私は思った。
 黙って彼女の言葉を待つことにする。
「…………」
 長い沈黙が流れた。
 ふと時計を見ると、短針は6と7の間にまで移動していた。体感しているよりも時間が経っているようだった。
 いつの間にか夕日も既に消え、漆黒の闇が徐々に教室を侵食し始めている。
 教室も暗くなってきたので、私は電気をつけようと思い、一歩、足を踏み出した。
 その行動が彼女に、私が帰ってしまう、と感じさせたのかもしれない。
 とにかくその一歩が彼女が話し出すきっかけになったのだろう、唐突に田中キリエが言った。
「……好きです」
 呟くような声だった。あまりにも小さい声だったので今のは独白ではないかと思い、私は再び尋ねた。
「今、好きだと言いましたよね?」
 無言で頷く。どうやら独白ではないらしい。
「誰が、好きなのですか?」
 私が再び尋ねると、田中キリエの身体が一際大きく震えた。それから彼女は搾り出すように言う。
「……あ、あなたです。……鳥島くんです」
 私はびっくりした。
「私がですか?」
「……はい」
「……」
「だから、その……良かったら、私と、あの、付き合ってください……」
 言いたいことは言い終えたのか、田中キリエは顔を真っ赤にして、これで終わりだと言うように俯いてしまった。
 そんな彼女に告白された私は、素直に驚いていた。
<> 私は人がわからない
◆lSx6T.AFVo <>sage<>2010/04/09(金) 16:43:23 ID:TmKKkU8J<>  彼女が私の事を好きだという事実が頭の中でぐるぐるしている。まさか告白されるとは思っていなかった。
 いや、冷静に考えてみれば今朝の手紙といい今までの彼女の態度といい、確かに告白するための伏線はしっかり張られていたのだ。気づかない私のほうが鈍感だったのだろう。
 しかし、そんな私を責める者はひとりもいない筈だ。私は先程も述べたように女子とは交流の全くない、地味な一介の男子学生なのだ。
 そんな者が、誰かに告白されるなんて普通は考えもしないだろう。勿論、異性から告白されるのも、私はこれが初めてだった。
 ――しかし、どうして。
 私は目の前の田中キリエを見る。彼女の背はとても小さいので自然と見下ろす形になってしまう。
 室内は既に暗くなっているため、その表情までは伺えないが、赤くなっているのだろうと私は勝手に考えた。
 顎に手を当てて逡巡する。今まで、恋愛沙汰からは程遠い存在だと思っていた自分は、そういう恋愛事について真面目に考えたことはなかった。
 正直、田中キリエのことはよく知らない。彼女は私のことを知っているのかもしれないが、私は知らないのだ。
 相思相愛など、今時の恋愛事情からすると夢物語になりつつある。
 基 <> 私は人がわからない
◆lSx6T.AFVo <>sage<>2010/04/09(金) 16:46:08 ID:TmKKkU8J<>  基本的に恋愛というものはどちらか片方が好きになって、片方は大して好きでもないが、とりあえずオーケーして付き合ってから相手のことを徐々に知っていく、といったスタンスになっている。そんな風に付き合う友人達を私は多く見てきた。
 そのことについてとやかく言うつもりはない。相思相愛など、今でも昔でもそれこそ稀なのだから、寧ろそういうほうが普通なのだろう。
 だから今、私もとりあえず付き合うといった選択肢をとれるのだ。
 けれど、私の答えは告白された時から、ずっと決まっていた。
 私は居住まいを直し、きちんと彼女向き直ってから言った。
「御気持ちは凄く嬉しいです。」
 田中キリエは黙っている。
「誰かに告白されるなんてことは初めての体験でしたからね。正直、夢のようです。ですが、すいません。私は貴女とは付き合えません」
 私は、彼女の告白を断ることにした。
 第一の理由としては、私はまだそういう恋愛事をうまく理解していなかったからだろう。第二に、私は誰かに好かれるような人間ではない、と思ったからだ。彼女はあまりに私を知らない。
<> 私は人がわからない
◆lSx6T.AFVo <>sage<>2010/04/09(金) 16:47:05 ID:TmKKkU8J<>  返事を言い終えると、彼女はハッと息を呑んで私を見上げた。その顔はまるで世界の終わりみたいに絶望に歪んでいる。本当に、今にでも死んでしまいそうな表情だった。
 罪悪感がちくりと私の胸を刺す。
 そんな罪悪感と同時に、私は少し彼女に対して違和感を感じた。なんとも形容し難い、微妙な違和感が。
 しかし、大して気にもならなかったので無視することにする。
 しばしの沈黙の後、田中キリエは無理矢理口端を上げて、力なく笑ってみせた。それは随分と痛々しい笑顔だった。
「ははは……そう、ですよね。あの、本当にごめんなさい。勝手に鳥島くんのこと好きになっちゃって……ほんと……わたし、迷惑ですよね……はは」
 みるみる彼女の目に涙が溜まっていく。私の心もちくちくと痛む。
「迷惑なんかじゃなかったですよ。先程も言いましたが、お気持ちは凄く嬉しかったです」
 なら、なんで断るんだ。などと彼女は当然言わない。
 暫くの間、田中キリエの嗚咽だけが教室に響いた。私は只、彼女のことを見ていた。
 それからして、漸く落ち着いたのか、彼女はその大きな黒縁眼鏡を外し、涙を拭ってから静かに言った。
「ほんとっ……ごめんなさい。今日のことは、その、忘れちゃっていいですから。……これからも特に、私のことは、意識しないで、普段通りに、接してくださいね」
 接するも何も、貴女とは接したこともないだろう、とまず思った。それに、忘れてしまっていいというのも、何とも奇妙に感じた。今のは彼女にとっては忘れてしまってもいいような行為だったのだろうか。
 そして、軽く私に会釈してから、彼女は逃げるように教室を出て行ってしまった。
 結局、田中キリエは私が断った理由を聞かなかった。
 彼女の足音が聞こえなくなってから、私は時計を見た。暗闇のせいで見えにくくなっていたが、短針が7を指しているのをなんとか確認した。
 この時間ではもう斎藤ヨシヱは帰ってしまっただろう。彼女に今日の事を相談したいと思っていたが仕方がない。明日にしよう、と私は思った。
 私は机の上の鞄を取り、教室を出た。そこで思い出し、教室に戻るとポケットから田中キリエの手紙を取り出す。
 私は手紙をドア近くに設置されていたごみ箱に捨てると、今度こそ教室を出た。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/09(金) 16:52:02 ID:9fPBmrz3<> 私怨 <>
◆lSx6T.AFVo <>sage<>2010/04/09(金) 16:54:37 ID:TmKKkU8J<> 投稿おわりです
途中投稿ミスしました。………すんません <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/09(金) 16:59:28 ID:Z9aeT+kW<> GJ!

続きに期待 <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/09(金) 17:19:25 ID:6h5h3tCi<> >>58
GJです

そして他作品も早く来てほしい <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/10(土) 11:47:25 ID:h67WiIRH<> GJ。
何だか好きな雰囲気だ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/10(土) 17:21:23 ID:6AGeNEuX<> あら素敵 <>
softbank220059200028.bbtec.net<>sage<>2010/04/10(土) 21:00:51 ID:xLoE6SmS<> tst <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/10(土) 21:04:10 ID:xLoE6SmS<> 規制されてると早トチって・・・tstごめんorz
>>58
いいセンスだ・・・ <> 名無しさん@ピンキー<>Sage<>2010/04/10(土) 21:19:14 ID:seg8frX5<> 乙です

このお話は、主人公の両親のお話です

投下します <> キモオタと彼女 2、5話<>Sage<>2010/04/10(土) 21:24:55 ID:seg8frX5<> 自分と優羽(ゆう)が出会ったのは、高校1年の時だった。
同じクラスの彼女は、その可愛らしい外見からたちまち、人気者になった。
彼女の容姿は、髪がセミロングで身長は152センチと小柄で、顔の方は大きく綺麗な瞳に小さめな鼻、プルプルとした唇。
そして、何といっても重要なのが胸!!!
制服の上からでもわかる特盛り!!
と、容姿もスタイルも恵まれている彼女だが、性格もどんなに外見が悪い奴にも、笑顔で話しかけるという優しさも持っている。
だって、俺なんかにも笑顔で「隣同士よろしくね!」と言ってくれた。
15年間、外見の悪さに(不細工的な意味で)定評がある俺にも話かけてくれたのは、自分には衝撃的だった。
電車では、絶対隣には女子が座らないし、店員が女性の時は必ず手の平から5センチ離してお釣りを渡されるなど・・・。
あ、ヤバい、泣きそう・・・。
まぁ、そんな彼女と同じ美術部になった時も驚いた。
彼女は、運動神経も抜群なので文化部に入るのは、誰もが意外に思ったらしい。
彼女に釣られて入ってきた男共も多かったが、流石に興味のない部活に飽きてしまったのかすぐに辞めていってしまった。
自分は、小さい頃から絵が好きだったし、辞める理由はなかった。
ちなみに、美術部は俺と彼女だけになってしまった。
普通なら、男と女が2人きりになるのを防ぐ輩が出てきそうなものだが・・・。
周りの奴らは、「お前と優羽ちゃんが付き合うのは、ありえねーし。」 とのことだ。
いやね、わかっていたことだけどさ・・・。
一応、自分の事は自分が一番分かっているつもりだ。
俺だって、身の程わきまえているつもりなんで。
彼女とは、友達付き合いが出来たらいいなぁとは思っている。
とはいえ、女子との関わりあいが皆無な俺は、5月の半ばまでは会話は全然なかった。
理由が、恥ずかしいから。
後、俺なんかが彼女に話かけていいのかという劣等感から話しかけることは、出来なかった。
そんなある日、彼女と喋ることが出来た。
<> キモオタと彼女 2、5話<>Sage<>2010/04/10(土) 21:27:11 ID:seg8frX5<> 「君、絵は好きなの?。」
「ああぁ、う、うん、すすす好きだよ。 うん。」
・・・どもってしまうのは仕方ないんだ。
自分みたいなのが、美少女に話しかけられて平静でいられるわけがない。
うん、無理。
そんな、みっともなく狼狽える俺に優しく話かけてくれる彼女は女神に見えた・・・。
その後も「いつから、絵は書き続けているの?」とか、「今度、美術館に行かない?」などと、自分に言ってくれた。
社交辞令でも美術館に誘ってくれたのは嬉しかった。
もちろん、丁重にお断りしたが。
その後の彼女の表情がとても残念そうだったが、それも俺に気を使っているんだろう。
そこまで、気にしなくてもいいのに。
本当に彼女はいい子だなぁと思っていた。
でも、彼女の俺に対する優しさは気遣いではなく、好意だとその時に気付けたら俺の人生は変わっていたかもしれない。 <> 名無しさん@ピンキー<>Sage<>2010/04/10(土) 21:29:26 ID:seg8frX5<> 投下終わります

見てくれた方は、お疲れ様です。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/10(土) 21:31:51 ID:4UPvdnn8<> 短いよぉぉぉGJ


全裸待機しとく <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/10(土) 21:39:37 ID:dm/7cllw<> GJ!!

しかしできれば最後までぇぇぇぇぇ

まぁ最後は知っている訳ですが

しかしそこが知りたい。

もしかして脳内補完? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/10(土) 23:24:43 ID:4ngv8HK6<> もうちょっと続きを見たかった <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/10(土) 23:29:43 ID:YUMK1gUO<> 派手 濃い  <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/10(土) 23:59:55 ID:QUJBO2Kl<> >>68
GJ!

焦らしてなんだな?!焦らしているんだな?! <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/11(日) 02:48:21 ID:hv89C7RD<> 初投稿です。   一応、長編です。 
  <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/11(日) 02:49:10 ID:hv89C7RD<> 初投稿です。   一応、長編です。 
  <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/11(日) 02:52:00 ID:hv89C7RD<> 小さい頃に観た特撮ヒーローに憧れる子供は、きっと正常だ。
 親にねだってヒーローの扱う武器を模した玩具を欲しがるのも、本能的に強くなりたいと、子供心に思うからだろう。
 そして小学校に入り、3,4年くらいに入る頃には憧れは消え、「格好よくありたい」に変わるんだろう。別に物理的な強さが必要とされていないのを知るからだと思う。
 
 久しく観なかった特撮ヒーロー番組を観ながら、向坂修二(コウサカ シュウジ)は物思いに没頭していた。
 視界に映るプロテクターに身を包んだ異能のライダーが怪人の突進に弾き飛ばされていた。
 数年前まで、特撮ライダーの戦闘では火花でなく血飛沫に見立てた血のりが散っていたが、CG技術の成長と報道規制の変化のよって火花が採用されている。
 起き上がったライダーが、ベルトのバックルに付属したスイッチを押すと、突如としてライダーが発光し、光が消えるとともにプロテクターの色が変化していた。
 どうやら、この異能のライダーのもつ強化形態のようで、残像を伴う素早い動きであっという間に怪人を撃退してのけた。
 
 以前よりも派手になったCG演出に驚きつつ、テレビの電源を切る。
 ヒーローに憧れた事はなかったと思う。
 強さには惹かれるものがあった。
 しかし、俺は「武器」の恐ろしさを知っていた。
 最近のヒーローは武装もメインだ。
 だから玩具ですら、武器を敬遠した。
 ようやく会話が成り立ちはじめたような幼い頃、剣道場を仕切っていた父親に山へ連れて行ってもらった。
 熊がうろつき始める季節で、熊避けの鈴無しでは・・・あっても危険な山だった。
 父親は、「五月蝿いから」と言って付けていかなかったと覚えている。
 そして、生まれて初めて野生の熊に遭遇した。
 父親は・・・法律違反と知ってるだろうが・・・持ち込んだ太刀で一閃の下に熊を斬り殺した。 <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/11(日) 02:52:36 ID:hv89C7RD<> その頃だけ、最初で最期。武器に憧れた。
 最期は、早かった。
 次の年、夏を迎える頃。
 父親の部屋から太刀を持ち出そうとして、重くて持てず、脇差を持ち出した。半分くらいしかない脇差でも結構重かった。
 「本物の質感」ってヤツは子供心にも感じられ、友達に自慢して一同興奮した。
 近所に在る公園の雑木林の奥、人通りも希薄で仲間の間では「秘密基地」となっている場所。
 深い池があり、気を付ければ溺れることも無い。実際、溺れたヤツはいなかった。
 秘密基地で自慢げに披露し、ヒーローごっこな感覚で友達の一人に切りかかる。
 
 父親はしっかり者で、刃の外観どころか切れ味まで「完璧」の一言に尽きた。
 先端がかする程度の接触で、友達の小さな手に切り傷が出来上がった。
 突然の痛み。子供には激痛と言っても過言ではないほどの痛み。
 パニックになった友達は、池に落ち、溺れた。
 数十分後親に囲まれ、俺は説教と非難と後悔に包まれていた。
 表向きは「事故死」となった友達。
 社会的に居場所を失った我が家は引っ越した。
 それ以来俺は、刃物や鋭い物にひどく恐怖と嫌悪を抱くようになった。
 心労で、母は急死。
 父親は太刀と脇差をどこかに売ったらしい。
 全てを隠し、遠い街へ逃げた。 <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/11(日) 02:53:21 ID:hv89C7RD<> ・・・・トラウマ思い出したら気分悪くなってきた。
 何故に日曜の朝から憂鬱にならねばいけないのか。
 八つ当たり気味に原因を特撮ヒーローのせいにして、もう二度と観ないと誓う。
 気分転換に何かしようと思ったが、やることが思いつかずに思考は立ち往生。
 散歩もいいが、生憎の本降り。無駄に風邪を引きにいくようなものだ。
 ゲームもあるが、昨夜遅くまで起きてフルコンプを果たしたりしたので、いまいち気乗りしない。
 短絡的に漫画で暇を潰すことにした。
 自室の前に立つと、人の気配を感じる。
 県内でも治安状態は上位にあるこの街で、泥棒や強盗の類はほぼ無い。
 しかし、海外赴任の父親に代わって家を管理する立場にある俺としては泥棒など洒落にならない。
 気が気でない・・とも言う。 <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/11(日) 02:54:06 ID:hv89C7RD<>  さらに我が自室には父親の仕送りを中核とした、現在この家にある財産が全て保管されている。
 自衛用に去年購入したスタンガン(改造済み)を手に、部屋へと入る。
 そして、俺の部屋を物色する怪しい人物を打ち倒す・・・・
 はずだったが、そこにいたのは見知った顔。
 隣の家の住人 三国綾(ミクニ アヤ)だった。
 数年前に破損し、有って無いような状態のロックをはずして窓から侵入したであろう(一応)幼馴染は、勝手に俺の携帯ゲーム機を操作して何故か笑いをこらえて震えていた。
 どうやら、ゲームではなくダウンロードした動画を見ているらしい。 
 物語後半のグロシーンが過激なのに対し、前半のコメディ要素が笑わせてくれる人気のアニメを編集してMAD動画として出ていたヤツだ。
 主人公による『萌え』談義には何度も笑ったものだ。
 夢中になっているらしく、俺の存在に気づいていないらしい。
 「・・・・・・・・・・おい。」
 声を掛けるが反応は無い。上等だ。不法侵入者にかける情けなど無いのだよ。
 かつて特に意味も無く習得した消音移動で、忍者のようにしのび寄り・・・
 
 ゴッ・・・・
 
 遠慮容赦なく拳骨を叩き込んだ。 <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/11(日) 02:55:06 ID:hv89C7RD<> 「ツッッ!?・・・・うぐぅ・・」
 綾は突然の鈍痛に反応を遅らせて、数秒遅れで痛みに頭を抑えている。
 容姿自体は美少女に分類されるが、起伏に乏しい体格や長い付き合いから男友達といった感覚が根付いてて、「女だから手加減する」とかいう概念が適用されなかった。
 「っ!?・・・修二ぃ・・・いたの?」
 痛みが引かないようで、声が途切れがちになっている。
 「さっきからな。それよりまた不法侵入かよ?俺のプライベートは侵害されまくりだよ。」
 「いいじゃん、いいじゃん。お隣だし。」
 「お隣って理由で俺の自由は侵害されまくってるのかよ!?」
 「気にしない、気にしない。昔は一緒にお風呂にも入った仲でしょ?」
 ・・・・・お前に女性としての恥じらいは無いのか?
 と、問いただしたくなるが、無駄だと判ってるのでそこは流しておく。
 
 「それは昔の話であって、俺らは今を生きているんだからそんな幼き日の思い出などどうでもいいんだよ。」
 「ねぇ・・・なら今から一緒にお風呂に入る?」
 「ッッ!!?」
 突然のトンデモ発言に思考が一瞬、フリーズする。
 体が熱い。多分、羞恥で体がオーバーヒートしたんだろう。脳は凍結、体は炎上。正反対の反応を示す。顔は真っ赤に違いない。
 体つきはともかく綾は女なのである。そんなこと言われたら意識してしまう。
 「ぷっ・・・・アハハハハハッ 何本気にしてんの?もしかして想像とかしちゃった?」
 「バカ!そんなワケねぇだろっ!!」
 反論としては不合格。
 これでは意地の悪い解釈をされてしまう。実際ニヤついてやがる。
 最近ではこいつに勝てた験(ため)しがない。
 そりゃぁ、俺だって男だ。喧嘩すれば楽に勝てるくらいの自身はある。
 男尊女卑じゃないが、身体的な差があるから。
 同い年でもやはり力は男の方が強いはずだ。
 ただ、綾から見たら俺が初心過ぎるだけだという。
 いつかは逆に言葉でのしてやろうと、密かに心に誓った。

 本日は、他愛もない雑談に終始し、勝負(?)の第二ラウンドもあった。
 結果は敗北。やっぱり勝てないと再認識させられる。泣きたくなってきた。
<> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/11(日) 02:55:40 ID:hv89C7RD<> 修二は居間にいるようだ。
 自室の窓を開けて、修二の部屋の窓に手を伸ばす。
 子供の頃のいたずらで、ロックが壊れたまま修理なされない窓をガタガタと上下に揺すり、窓のロックをはずす。
 幸い、居間までは少し間隔があるし、壁も厚いので音が修二に届くことはなかった。
 早速、ザ・抜き打ちチェック!
 大人の読み物がないか厳重に検査してやる。
 定番のベッドの下。
 本棚の裏。
 勉強机の引き出しのその奥  etc etc・・・・・
 
 一通り探すても秘蔵書物は見当たらなかった。
 やっぱり修二は仕事で裸を晒すようなビッチには欲情しないもんね!
 ついでにS●NY社製の携帯ゲーム機もチェックしよう。修二を疑うワケじゃないけど、気になるからね。
 ・・・・むぅ・・なんかコスプレっぽいのが多いなぁ。しかもちょっと露出多いヤツだ。
 修二ってばこういうのが好みなのかなぁ・・・?
 こういうのは正さなきゃ。修二にはちゃんとした性癖に戻ってもらわないと!
 こんなのは不健全だよ!
 人として二次元じゃなくて三次元に欲情しなくちゃ!
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/11(日) 02:56:15 ID:+GeFzDxp<> 支援 <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/11(日) 02:56:18 ID:hv89C7RD<> 若干の憤りに身を震わせていると、不意に頭頂部から衝撃が駆け抜けた。
 鈍い音と鈍痛。ジワジワと痛みが頭部全体に広がる。
 頭に拳骨をされたようだ。
 目線を上げるとそこに居たのは呆れ顔の、この部屋の主。
 不覚にも気づかなかった。かつての消音移動がレベルUPしてる。
 「さっきからな。それよりまた不法侵入かよ?俺のプライベートは侵害されまくりだよ。」
 「いいじゃん、いいじゃん。お隣だし。」
 「お隣って理由で俺の自由は侵害されまくってるのかよ!?」
 「気にしない、気にしない。昔は一緒にお風呂にも入った仲でしょ?」
 修二の顔に呆れの色が深まった。
 この辺でからかってやる。
 「ねぇ・・・なら今から一緒にお風呂に入る?」
 「ッッ!!?」
 アハハ真っ赤になったねぇ。修二は可愛いなぁ♪
 追い討ちもかけてやるか。
 「ぷっ・・・・アハハハハハッ 何本気にしてんの?もしかして想像とかしちゃった?」
 「バカ!そんなワケねぇだろっ!!」
 む・・・・そんな真っ向から否定しなくてもいいじゃんか。
 お仕置きに、あとでまたからかってやる。
 でも・・しゅ・・修二となら、いつでも・・お風呂も、本番も・・OKなんだよ?
 
 今日は修二とお話できて楽しかった。進展ないのが少し残念。
 でも・・・いつかは修二から求めてくれるよね?
 気は長くないけど・・・待ってるよ。
<> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/11(日) 02:57:33 ID:hv89C7RD<> 投稿終了します。
素人な文でスミマセン。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/11(日) 02:58:11 ID:+GeFzDxp<> GJ

続くんか? あとsageような <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/11(日) 12:06:50 ID:77DcsXOg<> GJ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/11(日) 13:22:14 ID:BGfcc4EP<> 最近サトラレをみて勢いで書きました。
初投稿です。
誤字脱字があるかもしれません。 <> サトリビト<>sage<>2010/04/11(日) 13:23:01 ID:BGfcc4EP<> 僕の名前は早川慶太。高校2年生。
容姿は普通、勉強は数学が平均より少し上、運動は少し下といった所謂一般層にあたる人間だ。
「いってきま〜す」
今日も学校だ。
僕の学校は家から遠いので、いつも電車を使って通学している。
・・・本当はあんまり人の多いところは行きたくないんだけどな
電車に乗ってしばらくすると今日もアイツに声をかけられた。
「おはよ〜」
同じクラスの岡田結衣。ちなみに中学からの同級生だ。
「おはよ」
「ねぇねぇ、昨日の数学の宿題やった?」
「まぁ一応は・・・」
「お願いっ!学校行ったら写させて!」
両手を合わせてお願いのポーズをしている。
岡田は数学の宿題をしてきたことがほとんどなく、いつも僕に見せてとお願いをしてくる。
今こうして岡田と気軽に話している僕が言うのもアレだが、岡田はとても人気がある。
男女問わず岡田と話したがっている人は多いし、岡田が宿題を見せてと頼めば、ほとんどの人は快く了承するだろう。
にもかかわらずいつも岡田は僕にしか頼まない。
・・・まぁ理由はしってるんだけど。
目的の駅に着き、僕たちは電車を降りる。
「じゃあ学校で」
僕は駅を出ると学校とは違う方向に向かって歩き出す。親友の大田大和を呼びに行くためだ。
「・・・うん、じゃあ宿題の件お願いね」
少しさびしそうな顔の岡田。若干気が引けるがそのまま歩き出す。
そのとき例の声が頭に響いた。
(くそ、また大田かよ!アイツもアタシと慶太の事を思って朝の登校譲れよな!)
・・・は〜・・・
頭の中にまるで呪詛のような叫び声が鳴り響く。岡田の声で。
一般層にいる僕にはたった一つだけ普通じゃないことがある。
人間の思考が分かる。 <> サトリビト<>sage<>2010/04/11(日) 13:24:12 ID:BGfcc4EP<> 思考が分かるといってもすべての考えが分かるわけではない。というかわからない時の方が多い。
今日の電車でも心の声が聞こえたことはほとんどなかった。
長年の経験から、どうやら僕のこの能力は強い感情のみに反応するらしい。
そうでなければ今頃発狂しているところだ。 
そんなこんなで大和の家に着いた。
「毎日ごくろうさん、慶太」
「おはよ」
大和と学校に向かう。
「・・・ところで本日のお姫さまはなんと?」
「・・・朝の登校譲れだって」
「またか・・・そろそろまずいかもな・・・」
大和は僕の秘密を知っている数少ない人だ。
「よし!明日は俺んち来なくていいから岡田と一緒に登校しろよ」
「え!?そんなことしたら学校中の噂に・・・」
「後で根掘り葉掘り聞かれても付き合っていないってキッパリ言えば大丈夫だろ。それに例の陽菜ちゃんにも出くわすこともないだろうしな」
佐藤陽菜。僕が岡田の思いを受け取れない理由。僕の幼馴染かつ好きな人だ。
中学2年のとき県外の中学校に転校していったが・・・
大和は高校からの友達なので陽菜のことは名前しか知らない。
「大和、頼むから岡田の前でだけは陽菜の名前はださないでくれよ」
「分ってるって」
別に岡田と陽菜の仲が悪いわけではない。
中学校でクラスが一緒になったこともあるし、友達グループは違えどお互い結衣ちゃん陽菜ちゃんと呼び合っていた仲だ。
しかし岡田としゃべっているときに陽菜の名前を出すと例の声がいつもの倍以上の大音量で頭に響く。

(なんでアタシとしゃべっているときにあの女の名前をだすの!?)
(なんでアタシは岡田でアイツは陽菜なの!?)
(ナンデアイツノナマエヲダストキハソンナニウレシソウナノ・・・) 

訂正、岡田に関しては陽菜のことを嫌っているかもしれない。
学校に着くと待ってましたと言わんばかりに岡田がつめ寄ってきた。
「遅い!もうちょっとでHRが始まるところじゃない!」
まったくもって理不尽な文句を言われた。
「なんで俺が怒られてんの!?」
「宿題写させてくれるって約束したじゃない!約束わすれてたの!?」
ちなみに数学の授業は午後からである。まったく理不尽だ。
さらに文句を言おうとしたが、クラス中(特に野郎ども)の嫉妬と羨望の目に僕は抵抗するのをやめた。
僕はため息をついて「ほらよ」と宿題をしたノートを岡田に渡した。
「ありがと♪」
岡田はついさっきまでの怒りはどこへやらご機嫌スマイルを浮かべて席に着いた。
なにがそんなにうれしいのやら。
(はぁ〜・・・慶太のノート、慶太の書いた字・・・見てるだけでドキドキする///)
あ〜、そういうことね・・・
僕は岡田の横の席に座った。ここが僕の席なのだ。 <> サトリビト<>sage<>2010/04/11(日) 13:24:41 ID:BGfcc4EP<> チャイムが鳴りクラス全員が席に着いた。
担任の先生が入ってくる。
「え〜、HRを始める前に転校生を紹介する。入ってきていいぞ」
先生の掛け声とともに一人の女の子が入ってきた。
その女の子を見た瞬間、僕は一瞬呼吸するのを忘れてしまった。
「皆さんはじめまして。○○県からきました佐藤陽菜です。よろしくお願いします」
転校してきたのは陽菜だった。
僕は夢かと思い、手をおもいっきりつねって見たが・・・どうやら現実らしい。
でもなんで?
僕は陽菜とは離ればなれになった後も何回か遊びにいったりしていたし、電話やメールも頻繁にやり取りしていた。だが陽菜からは一度もこの学校に来るなんて聞いていない。いやそれ以前に転校の話すらも。
岡田の方を見ても目を見開かせて驚いている。多分岡田も聞かされていなかったのだろう。
「席は窓側の一番後ろだ」
僕の真後ろの席だ。
陽菜は少し恥ずかしそうに席と席の間を通ってくる。
僕の席の近くに来た時陽菜と目が合った。その瞬間・・・
(ふざけんなっっ!!)
今まで聞いたこともないくらいの怒声が頭に響いた。
(帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!)
あまりの怒涛の響きに僕は頭を押さえた。
その様子に気付いた陽菜が心配して声をかけてきた。
「大丈夫?慶太」 
その瞬間僕の頭痛は三倍になった。
(慶太ってあの二人知り合いなのか!?)
(早川君の知り合い!?)
(下の名前で呼んだ!?)
まぁ県外から来た転校生がいきなりクラスメイトの名前を知っていたら驚くだろうな。しかもいきなり慶太って。
頭痛がする頭を押さえつつも、僕はなんとか返事を返した。
「あぁ、大丈夫。ちょっと頭痛がしただけ」
「保健室行ってきた方が・・・」
「いや、本当に大丈夫だから」
陽菜はあまり納得していない顔をしながらも、諦めたように席に着いた。
「早川の友達か?ま、みんなも早川のように仲良くするんだぞ」
先生はそう言って教室を出て行った。
クラスの大半はいきなり転校生に話しかけるのに戸惑っているのかチラチラこっちの方を振り返るが、動こうとする者は誰一人いなかった。
そんな中、一人の女子生徒が陽菜に話しかけた。
「陽菜ちゃん久しぶりー!!なんでこっち来ること教えてくれなかったの!?」
岡田だ。
「えへへ、実は驚かせようと思って」
「ひど〜い、罰としてジュースおごってもらおうかな〜」
「普通歓迎ってことで私がおごってもらうんじゃないの?」
二人は終始笑みを浮かべてしゃべっている。
この場面を見る限りクラス全員が二人は仲がいいと思うだろう。
僕もそう思う。さっきから頭に響いている岡田ボイスのふざけんな、帰れコールさえなければ。
「・・・ってことで早川もくるでしょ?」
頭の方に意識を集中させていたせいで、二人の会話の内容を全然聞いていなかった。
「あ、ごめん。何の話?」 
「だから私と陽菜ちゃんと早川の三人・・・まぁ女の子二人に対して男一人が気まずいのなら大田君も入れて帰りにカラオケでもいこーかって話」 
「あ、ああ・・・分かった。大和にも声かけとくわ」
「んじゃ決定ってことで♪」 
雰囲気に任せてOKを出してしまい少し後悔した。今日一日は頭痛がすごそうだ・・・ <> サトリビト<>sage<>2010/04/11(日) 13:28:36 ID:BGfcc4EP<> 以上投下終了です。
一応続けていくつもりですので、よろしくお願いします。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/11(日) 14:53:46 ID:va9carWc<> 乙。主人公は妖怪の末裔かなんかか、それとも超能力者か
しかし、これなら好意に気づかないであぼーんってパターンにはならんな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/11(日) 18:28:38 ID:H2t43TsA<> >>91
GJ!ヤンデレとサトリの関係にwktkしてる <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/11(日) 19:26:46 ID:eYU7FQTN<> 新しいな。サトラレは俺の一番好きな映画です。 GJ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/11(日) 20:17:17 ID:OmpDBih1<> >>92
GJ

そして他作品カモーン <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/11(日) 23:09:44 ID:7kUA8ND1<> なんだなんだこの投下ラッシュは
皆様GJ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/12(月) 00:13:57 ID:RpYzMafL<> 日曜日も終わったけど傍観者の兄の続きが来ないなあ。
サイトの更新も最近ないようだし作者になにかあったのかな。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/12(月) 01:04:21 ID:au0+PYwn<> 小説全然関係ないが、ヤンデレお嬢様に監禁されてニーソを履かせたり脱がせたりする仕事をさせられる夢を見た。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/12(月) 03:54:14 ID:NO7q5jX4<> 心が読める主人公か。あっちのスレの沃野を思い出すな
ヤンデレの地雷を回避しながら突き進む主人公に期待 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/12(月) 12:49:29 ID:7PsjAp83<> ぽけもん来てて良かった……未完で終わらなくて本当に良かった <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/12(月) 13:48:50 ID:oRqg7NsD<> >>100
しつこい。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/12(月) 13:54:48 ID:7PsjAp83<> >>101
ニヤニヤ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/12(月) 15:34:41 ID:5TpzZ2eu<> 最近の保管庫の素早い更新乙です <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/13(火) 19:58:03 ID:O0FYgNsB<> 頭が下がります <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/13(火) 20:06:41 ID:iZOxnAsn<> 「どう?私専用のペットになったのは?」
「何を言い出すんですかお嬢様。早くこの手錠を解いてください!」

どうしてこうなったのだろうか?未だに失治(しつじ)はよく分からないでいた。
事の発端は確か・・・

「美里お嬢様、はやく身支度をなさらないと学校に遅刻しますよ?」
「そんなこと分かってるわよ!うっさいわねー・・・」
そういいながら美里(みさと)お嬢様は支度をする。その間に僕はお弁当などの準備を済ませる。
「あー!もうっ!失冶、ニーソを履くのを手伝いなさい!」
失冶はため息をつきながら
「お嬢様・・・なんでこれぐらいのことができないんですか・・・」
「うっさい!早くしてよ!」
お嬢様は顔を赤らめながら頼んでくる。こうなると断ることはできない
仕方無しにニーソックスを履かせて差し上げた。しかしそのときに
「やっ、くすぐったい!」
「ちょっ!お嬢様?!」
急にお嬢様が暴れだした。どうもふとももに手が当たっただけらしい
「なにすんのよ!ヘンタイ!」
「お嬢様が履かせてと頼んだんですから、その言い方は無いと思いますよ。」
「だからって・・・!」
そういってる間に僕はもう片方のニーソックスを履かせた
「もう・・・!」
お嬢様は顔が真っ赤だ。どうしたのだろうか、熱でも出たのだろうか?ここはお世話係として聞かねばならない
「お嬢様?顔が赤いようですが・・・熱でもあるのですか?」
「違うわよっ!バカ!」
「ですが・・・」
「違うっていってんでしょ?!バカ失冶!」
「左様ですか・・・でしたら学校まで送っていきましょう。」
「・・・」
真っ赤にしたまま顔を伏せて僕についてくる。ホントに風邪とかじゃないならいいんだけど
とにかくお屋敷を出て車にお嬢様を乗せ、運転する。
学校につくまで珍しくお嬢様は黙ったままだった。ホントに大丈夫かな?
心配をよそにお嬢様はそそくさと学校へ行ってしまった。
さて、学校が終わるまでお屋敷のお手伝いに行かなくては。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/13(火) 20:07:09 ID:iZOxnAsn<> お屋敷に戻ってあらかたお手伝いを済ませると、お嬢様から迎えに来いとの連絡が入った。
すぐに学校まで向かうと、お嬢様が校門で誰かとお話をしているのが見えた。
待っておくべきか迷ったが、お嬢様を待たせるとまたうるさい。声を掛けることにした
「お話の途中失礼します、お嬢様方」
「あら、失冶君じゃないですか!ご無沙汰してます」
「おや、由香お嬢様、お久しぶりです」
「やっぱりいつみても失冶君は見栄えがいいわ、侍童にはもってこい・・・美里なんか置いて私のところに来ませんか?」
「お褒めに戴いて光栄です」
お嬢様が眉間にしわを寄せた。
「フフッ、怒らないの美里、冗談よ」
クスクス笑いながら由香お嬢様は美里お嬢様を見た、が
美里お嬢様はいつのまにか無表情になって
「そうね、早く帰りましょう失冶」
「え、ええ・・かしこまりました」
なんだろうか、美里お嬢様の態度があかさらまに怪しい。なんというか怖い
「ホホホ・・・ごきげんよう美里」
美里お嬢様はそれを無視して車へ行ってしまった。
僕もそれを追いかけようとしたのだが、後ろから由香お嬢様に肩を叩かれて振り返る
「あの子のどこがいいの・・・?私のところへ来ればいいのに・・・」
それだけ言うと口付けされた。僕が何か言おうとしたときに唇に人差し指を立てて黙らされた。
そして由香様は学校へ戻っていった。

ハッとなって美里お嬢様を待たせてることに気づいて素早く車に戻った <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/13(火) 20:19:44 ID:iZOxnAsn<> 行きと同じように美里お嬢様は黙ったままだった。一体どうしたんだろうか?

お屋敷につくとお部屋まで珍しく自分で部屋まで戻られた。
「入りなさい」
いつもなら「さっさと入りなさい!」とかなのに珍しい。しつこいようだけど一体どうしたのだろうか?
「さっき、由香と何してたの」
ドスの効いた声で言われて一瞬驚きと焦りが出た。なんだろうかこの得体の知れない感情は
「先ほど・・と言われても」
「さっきって言ったらさっきでしょ!あんたふざけないでよ!」
大声で怒鳴られた。普段お嬢様は怒鳴ることはあるけどここまで怖い怒鳴り声は初めてだ
「言う気が無いなら言わなくていいわ、反吐が出る」
怒気の目から一転して冷徹な目をしたお嬢様。なんでここまで怒っているのだろうか
「いいわ、失冶、こっちにきなさい」
そう言われる制服のまま部屋を出られた。仕方無しについてゆくことにした
ついてゆくとお屋敷の外に出た。どうやら庭に向かわれるらしい
このお屋敷は割と広く、僕ですらまだ行ったことの無い場所がある
「こっちよ」
そういうとお嬢様はコンクリでできた小屋に僕を手招きした。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/13(火) 20:31:11 ID:iZOxnAsn<> 小屋に入るとどうも湿気が気になる。窓を見てみれば鉄格子でできている
この小屋だけが隔離された場所のようだ

「あの鉄柱の側に行って」
そういわれる。断れる雰囲気ではない
わかりましたと一言言って鉄柱の側に行く。側にいってどうしろと
鉄柱の側に立つとお嬢様が側に来て抱きついてきた。なんだろうかこの展開
「失冶、あなたは私のことが好き?」
「何を言い出すんですかお嬢様」
「あんたは私に飼われてるのよ、自覚が足りないみたいね」
「飼われてるって・・・」
「私のペットのくせに他の犬と・・・」
まるで話が通じてない
「逃げられないようにしなくちゃいけないわ、ペットはね・・・」
「お嬢様、話を―」
ガッ! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/13(火) 20:47:18 ID:iZOxnAsn<> ああそうだ、最後にお嬢様に鈍器的なもので殴られて気を失ったんだ
それで目を覚まして、手錠がかかって、鉄柱に縛り付けられて・・・

「そうだ、こうして晴れて私のペットになったんだから、言うことを聞いてもらわないと!」
「言うことなら今まで通り聞いて差し上げます。ですから手錠を解いてください」
「んー・・・やっぱり一番してもらって嬉しいことをさせたいわよね」
「話聞いてます?」
「決めた!私が朝学校へ行くときと帰ってきたときにニーソ履かせたり脱がしてよ!」
「・・・は?」
「それがいいわ!」
「ちょっと待ってください、それは僕がニーソックスを脱がせるためだけに存在するのですか?」
「そうよ?」
今はじめて話が通じた気がした失冶は少し安心したが
内容を思い返しすぐに反駁した
「それはなりません。僕にはまだ仕事があります。ただニーソックスを脱がせるためだけにいるなんておかしいです」
「それじゃあお屋敷に私は戻るけど、おとなしく待っててね!私のペット!」
「だから話を―」
ガチャン―


ごめんすげえgdgdだわ
練らないと日本語にならない俺に賛辞の言葉を、ちなみに>>98宛てですサーセン <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/13(火) 21:06:03 ID:C8EIejmg<> 乙 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/13(火) 22:51:28 ID:ZP7s8waV<> お金払ってでもしたい仕事だ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/14(水) 00:29:10 ID:9SpxKpbN<> ある有名な心霊スポットへ、深夜に車で行ってみたんです。
トンネルを抜けると、そこが有名な心霊スポット。と、そこに目の前にふっと女の人の白い影が。
あ! と思って、慌ててブレーキを踏んで降りてみたところ、そこに人影はなく、目の前は崖。
ガードレールが壊れていて、ブレーキを踏んでなかったら落ちてしまっていたかもしれない。
「あの幽霊は助けてくれたんだ」
そう思って、そこで手を合わせ、お祈りして帰路についた。
トンネルを引き返す途中、ふとミラーを見ると、後部座席に先ほど目の前を横切った女の人の姿が……。
その女の人は、こう呟いた。
「…死ねばよかったのに」

「いや、でもホント助かったよ。ありがと」
「ば…ばかっ、あんたなんか死んじゃえばよかったのよ!」
「お礼しないとな。また来週きてもいいかな」
「ダ、ダメっ! また落ちそうになったら危ないわっ!!!」
翌週、なんか弁当用意して待っててくれました。
作りすぎただけで、決して僕のために用意したんじゃないそうです。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/14(水) 01:07:37 ID:oDmzfrU+<> どんどん病んでいって最後には憑き殺してあの世で結ばれるんですねわかります <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/14(水) 02:16:15 ID:4vGDvxd/<> ツンデ霊ってまとめサイトがあったような
そしてそこの作品の中にあったような <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/14(水) 02:17:40 ID:fSgGQarH<> 摺醴霾醴髏蠶蠶鸛躔か                    ベ∃壮鎧醴蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
勺儲靄靄醴醴醴蠶體酌偵Auru山∴          ベヨ迢鋸醴蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
∃儲霾ヲ露繍蠶髏騾臥猶鬱h  ご笵此∴        ∃f謳廱躔騾蔑薺薺體髏蠶蠶蠶蠶蠶蠶
ヨ儲諸隴躇醴蠶歎勺尓俎赴  f蠶蠶蠢レ      ∴f醴蠶鬪扠川ジ⊇氾衒鑵醴蠶蠶蠶蠶蠶  
ヨ鐘諸薩讒蠢欟厂  ベ状抃  傭蠶蠶髏厂      .ヨ繍蠶蠶臥べ泣澁価価櫑蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶   
f罐諸醴蠶蠶歎      マシ‥…ヲ冖        .∴瀦醴蠶襲jJ鶴門門攤蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶    
加罐讒蠶蠶欟厂        ヘ              ∴f醴醴蠶甑欄鬮°f蠢蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶    
溷霾醴蠶蠶勸                        ∴ヨ繍醴蠶蠶鬮狡圷し醴蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶     
醴蠶蠶蠶蠶髟                        ベ湖醴醴蠶蠶蠶庇⊇⊇體髏髏蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶蠶欟                          f繍蠶蠶蠶蠶蠶曲三三巛憫髏蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶蠶歉                  澁畄_迢艪蠶蠶蠶蠶蠶蠶甜川⊇川川衍捫軆髏髏蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶蠶髟                コ醴蠶奴繍蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶齡辷シジ⊇川介堀醴醴蠶蠶蠶蠶       
蠶蠶蠶鬮か                .ベ苛ザベ繍蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶醯己に⊇三介f繙醴蠶蠶蠶蠶蠶       
蠶蠶髏鬮シ                        尽慵蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶自辷三沿滋鐘醴蠶蠶蠶蠶蠶蠶       
蠶蠶醴勸                            氾隅髏蠶蠶蠶蠶蠶靦鉱琺雄躍蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶醴訃                      ∴∴∴沿滋溷醴髏蠶髏髏韲譴躇醴蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶髟              _山辷ムf蠡舐鑓躍醯罎體體體驩讎櫑蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶a            f躍蠶蠶J蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶醯註珀雄醴醴蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶廴          f醴蠶欟閇憊體醴蠶蠶蠶蠶蠶蠶靦錐讒醴蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶欟シ          禰蠶蠶蠢螽螽蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶躍蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶監シ          ∵ヴ門夢曠髏蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶a                ∴シ∃愬嚶髏蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶診            ベ沿u旦以迢u讒醴髏曠醴蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶髏蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶甑シ            .げ隅艪蠶蠶蠶蠶蠶蠢J蠶髏蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶鬮ヒ               ベ状隅髏蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶蠢テ∴              ベ川捍軆髏蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶蠶ルシ              ∴∃氾据醴蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶蠶蠢此            ∴⊇以f繙醴蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶蠶蠶ル∠∴  .∴∴∠ヨ旦滋躍蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶蠶蠶蠶醢山ム沿当u錙躍蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/14(水) 06:33:51 ID:FyU/raNn<> 死ね <> サトリビト<>sage<>2010/04/14(水) 21:46:24 ID:KnfIAlzI<> 2話目ができたので投稿します


誤字脱字等があるかもしれませんがご了承してください。 <> サトリビト<>sage<>2010/04/14(水) 21:46:51 ID:KnfIAlzI<> 人の思考が分かる。
聞いたところとても便利な能力に見えるが実際はそうではない。
僕の場合は強い感情にしか反応しないし、人間にとって強い感情というのはほとんどが負の感情である。
憤慨、慟哭、焦慮・・・
そんな感情がいちいち頭の中に入ってくるのである。
この能力に目覚めたとき僕は一時期引きこもりになった。
来る日も来る日も人間の嫌な部分ばかりが見えて、人と接することが怖くなったのだ。
そのときは本当に追いやられていて、小学校の時だったが自殺まで考えた。
そんな僕を救ってくれたのが陽菜だった。
陽菜は僕が休んだ日からずっと家に来てくれた。
今日の算数の宿題は〜、今日りさちゃんがね〜、今日掃除中にね〜・・・
毎日毎日家に来ては今日の出来事などを嬉しそうに話してくれた。
そしてきまって帰り際に、「慶太が学校に来ればもっと楽しいのに」と言ってくれた。
その言葉を聞くたびに僕は人の心が分かる苦しみよりも、陽菜が悲しんでいることの方がつらいと感じるようになってきた。
陽菜は僕が学校に行けば楽しくなると言ってくれた。
僕は陽菜をもっと楽しくさせてあげたい一心で再び学校に行くことにした。
その事を陽菜に伝えると、陽菜は涙を流して喜んだ。明日からもっと楽しくなるね、と言いながら。
人の心が分かるようになっても、陽菜は僕に対して一度も負の感情をぶつけた事はなかった。
今回もそうだ。頭の中には何も響かない。つまりこれは本心で言っているのだろう。
そのことがとても嬉しかった。
ところが次の日の朝になると、昨日の嬉しかった気持ちよりも不安の方が大きくなっていた。
何週間も学校を休んだ僕のことをみんなどう思うだろうか?
なまじみんなの心が分かる分、恐怖は何倍にも膨れ上がった。
だがそんな僕を察してか、陽菜は微笑みながら「大丈夫!みんなも慶太が戻ってくるのを待ってるから!」と言ってくれた。
陽菜はまた僕を救ってくれた。その一言が学校に向かう歩みを軽くする。
学校に着き教室のドアをおそるおそる開けとみんなの目が僕に向かった。想像どうりの反応だった。
「お、おはよ・・・」
不安になった僕にみんなが駆け寄ってきた。
「おい慶太ひさしぶりだな!」
「病気治ったのか!?よかった〜」
「早川君元気になったんだ!」
陽菜の行った通りみんなは僕のことを心配してくれていた。いつもは負の感情ばかりが響いているこの頭も、この日はみんなの

喜悦の声が頭を駆け巡っていた。
陽菜の方を見る。すると陽菜は声を出さずに唇でよかったね、と言ってくれた。
その瞬間僕は涙を流した。みんなが心から僕の登校を喜んでくれているのがうれしかったのだ。
このことをきっかけに、僕はこの能力を受け入れる事が出来た。
すべては陽菜のおかげ。
これが陽菜のことを好きになったきっかけだ。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/14(水) 21:47:23 ID:il7i+4q1<> 支援 <> サトリビト<>sage<>2010/04/14(水) 21:47:34 ID:KnfIAlzI<> 懸念された今日の学校生活は思ったほど不快なものにはならなかった。時より頭に響いた岡田の声を除けばだが・・・
放課後になりみんながそれぞれ散っていく中、僕と岡田と大和は陽菜の席に集まっていた。
「ごめん、さっき先生に呼ばれちゃって・・・先に行っててくれる?」
陽菜は申し訳なさそうに言った。
「後で場所と部屋番号だけ教えてくれない?」
「でも佐藤さん、この辺の地理とか分かる?」
「それは・・・」
「んじゃあ慶太、お前ここに残って後で佐藤さんと一緒にこいよ」
大和がニヤニヤしながらそんな提案をした瞬間、僕の頭に岡田ボイスが鳴り響いた。
(黙れ大田!!慶太とコイツを二人っきりになんかさせれるか!!)
「それならみんなで陽菜ちゃんを待ってようよ〜」
頭に響く声と耳に聞こえる声のあまりのギャップに、僕は岡田は将来女優になれるんじゃないかと思った。ルックスもいいしな

、うん。
「そうだな、みんなで待ってよう」
それが一番危険がなさそうだ。いや陽菜と岡田の二人がいる時点ですでに危険か・・・
「そういうことで陽菜ちゃん、早く用事すませて帰ってきてね〜」
(このまま二度と戻ってこなければいいのに!)
「じゃあできるだけ早く戻ってくるから!」
そう言って陽菜は教室を飛び出していった。
もし陽菜が岡田の本心を知ったらどうするのだろうか?
僕は漠然とそんなことを考えた。
「よかったわね早川、陽菜ちゃんが戻ってきて」
陽菜がいなくなった瞬間、岡田が僕に話しかけてきた。
「・・・今でも好きなんでしょ?陽菜ちゃんのこと」
(お願い、昔のことだって言って!!)
陽菜の必死の叫びが聴こえてくる。
実は僕が陽菜のことが好きだという事を岡田は知っている。というか以前僕かカミングアウトしたのだ。
その頃の岡田は僕のことをなんとも思っていなかったし、それに・・・そうするのが最善の策だったからだ。
「あぁ・・・陽菜には絶対に言うなよ?」
本当は曖昧に濁したかったが、正直に言った方が岡田のためだと思い僕は肯定した。
「・・・うん・・・約束・・・だもんね」
岡田の声は耳からしか聞こえてこない。それが僕にとって何よりもつらかった。
大和は空気を察したのか先ほどから一言も発していない。
静まり返る教室。
そのとき教室のドアが突然開いた。
「・・・ハァハァ・・・みんなおまた・・・せ・・・?」
元気よく陽菜が帰ってきたが、教室中に充満している空気に違和感を感じたようだ。
「どうかしたの?」
「陽菜ちゃんには秘密の話してたの〜」
岡田が明るい声で答えたが、岡田の気持ちを知っている以上、無理に明るくしているんだと分かる。
「先生の用事終わったの?」
「え?あ、うん、終わったけど・・・」
「ならカラオケいくよー!!」
岡田の掛け声とともに僕たちは教室を出て、カラオケに向かった。 <> サトリビト<>sage<>2010/04/14(水) 21:48:40 ID:KnfIAlzI<> カラオケに行く道中、陽菜は岡田にさっきのことをずっと聞いていた。
「私に秘密の話って何?」
「秘密って言えば秘密〜」
「え〜教えてよー!!」
いつもなら岡田ボイスの罵倒が始まっているころなのに何も聴こえない。
岡田からは教室での出来事以降心の声が途絶えている。たぶん焦燥しているんだろう。
そのことを思うといくら事情を知らないとはいえ、しつこく岡田に食いついている陽菜に少し腹が立った。
「陽菜、さっきはくだらない話をしていただけだから」
「じゃあ何の話していたのか慶太が教えてよ」
「今日カラオケで何歌おうかって話」
「絶対ウソだー!」
陽菜ってこんなにしつこいやつだったっけ?
僕はイライラしながら陽菜に言った。
「なんでそんなことで嘘つくんだよ」
「だって嘘っぽいもん!」
「あー、もう、うるさいな!そんなに俺の言う事が信じられないのかよ!」
僕は怒鳴ってからしまった、と思った。今日は久しぶりに陽菜に会ってこれから楽しく遊ぶはずだったのに・・・
陽菜の方を見ると、陽菜はわずかに震えていた。
「・・・なんで慶太に怒られないといけないの・・・?」
聞こえるか聞こえないか程度の小さな声だ。と思った途端に陽菜が叫んだ。
「ウソつく慶太が悪いんでしょ!?」
「っ!?だから嘘じゃないって・・・分かった、もういい・・・」
「え?」
みんながキョトンとしている。
そんなことはお構いなしに僕は空気をぶち壊すことを言った。
「俺、今日はもういい、帰るわ。ごめんな、大和、岡田。また明日」
そう言って来た道を戻り駅に向かう。
せっかくのみんなの気分をぶち壊しにしてしまった。そう思うと少し自己嫌悪に陥ったが、それでも駅に向かう足は止められな
かった。
頭の中には(このあと俺はどうすればいいんだー!!)という大和の叫び声がこだました。 <> サトリビト<>sage<>2010/04/14(水) 21:49:21 ID:KnfIAlzI<> 「ただいま・・・」
僕は暗い気分で家に着いた。
家に帰ると少しの自己嫌悪が肥大化していた。
なんで俺あんなことぐらいで怒ったりしたんだろ・・・
とぼとぼとリビングに向かって歩く。なにやら中が騒がしい。
「ただいま〜」
リビングに入ると二人の女性がこっちを見た。
「おかえり」
一人は母さん。そして・・・
「久しぶり、慶太」
東京の企業に勤めているはずの姉ちゃんがそこにいた。
「姉ちゃん!?なんでここに!?」
「この家にいたら悪いのかよ」
姉ちゃんが睨みを利かせてこっちを見た。
姉ちゃんは高校時代、そっち系のグループに所属していた。姉弟なのに全くの正反対だ。
でも勉強ができたので東京の有名大学に合格し、今年の春から東京の企業に就職した・・・はずだ。
「それがね〜来週からこっちの支店に配属になって今日から家に帰ってきたのよ」
母さんが嬉しそうに僕の疑問を解決してくれた。
「でもなんで俺に帰ってくること教えてくれなかったの!?」
なぜか姉ちゃんが帰ってくることを教えてもらえなかったことがおもしろくない。
「なんでいちいちお前に言わなきゃいけないんだよ」
(そんなん慶太の驚く顔が見たかったからに決まってんだろ///)
・・・左様ですか。
ちなみに僕の姉ちゃんは真正のツンデレだ。だが一度もデレたことはない。正直、この能力がなければ姉ちゃんに嫌われている
と悩んでいたことだろう。
「ま、何はともあれ姉ちゃんが帰ってきてくれてうれしいよ」
ブルーだった気分が少しだけ緩和された。
「ウチはずっと東京に住んでいたかったけどな」
(慶太が嬉しいだって!嬉しいだって!ここの支店に希望出しといてよかったー!!)
訂正、岡田だけでなく姉ちゃんも女優に向いてるんじゃね?
僕はそんなことを考えながら姉ちゃんに近よる。
ちょうど母さんがご飯を作るために席を立ったので、空いたその席に座った。
「それで、いつまでこっちにいられるの?」
「半年くらいかな」
「そっか、また東京に戻るんだ」
なんとなくさみしい。
「なんださみしいのか?」
姉ちゃんがニヤニヤしている。
「なっ!?違ーよ!ただ聞いただけだろ!!」
僕は顔を真っ赤にしながら叫んだ。めちゃくちゃ恥ずかしい。
(あーん、もう!!慶太は本っっっっっ当にかわいいな!!!!!)
姉ちゃんは終始にニヤけているが、さっきとは違い目が恍惚としている。
リアルに身の危険を感じた僕は話題を変えた。
「ところで姉ちゃん、ちょっと相談したい事があるんだけど・・・」
「・・・陽菜の事か?」
「うっ・・・」
す、するどい!まさか姉ちゃんも僕の心が読めるのか!?
「・・・図星・・・か」
さっきまでの楽しい雰囲気が一瞬にして失われた。心の声も聴こえてこない。
しかしここまできたらもう引けない。
「実は今日陽菜と喧嘩してしまって・・・ど、どうしたらいいかな?」
僕がそう言った途端、姉ちゃんは急に立ち上がった。目つきが怖い。
「それくらい自分で考えろ!」
(なんでウチがアイツと慶太の仲直りに助言しなきゃなんないんだ!そのまま喧嘩別れしてしまえ!!)
姉ちゃんはそういうと自分の部屋に戻って行った。
それを台所の陰から見ていたのか、母さんがタイミングよく戻ってきた。
「あの子どうだった?東京に4年半いて何か変わった?」
「・・・症状が悪化していました」
「・・・我が娘ながら同情するわ」
あ、言い忘れていたけど母さんは家族で唯一僕の能力のことを知っている人です。 <> サトリビト<>sage<>2010/04/14(水) 21:49:59 ID:KnfIAlzI<> 家族との些細な団欒を終え、僕は自分の部屋に行き大和と岡田にお詫びのメールを送った。
[おい!あの後どんだけ大変だったと思ってんだ!よりにも寄ってあの二人と一緒に俺を置き去りにするとは!]
[気にしないで!また今度遊びに行こ♪]
岡田はともかく大和には明日ジュースでもおごってあげるか・・・
二人の返信メールを見ながら僕はあることで悩んでいた。もちろん陽菜の事だ。
僕が完全に悪かったので謝るのが筋なんだけど戸惑ってしまう。なぜならサトリの能力に目覚めてから一度も陽菜と喧嘩したこ

とはなかったのだ。ゆえに悩んでいた。
ご飯も食べ終わり、悩んだ挙句、僕は直接謝りに行くことにした。やはりそれが一番だろう。
そう思って重たい腰を浮かせた瞬間、玄関からインターホンが鳴る音がした。
特に気にもせず玄関に向かいドアを開けると、今から会いに行くつもりだった人がそこにいた。
「あ・・・」
「あ、あの・・・今日はごめんなさい!久しぶりに慶太や結衣ちゃんにあって、私興奮しちゃって・・・」
陽菜は僕が出るとすぐに謝ってきた。
「いや、こっちこそ!突然怒ったりしてごめん!」
僕はあわてた。陽菜は悪くないのに謝らせてしまうなんて。
「結衣ちゃんや大田君にはすぐに謝ったんだけど・・・慶太にはあんまり謝ったことなかったから・・・こんな時間に」
「俺も!陽菜に謝ろうと思ったんだけど・・・その・・・」
言葉に詰まった僕に対し、陽菜はおそるおそる訊ねてきた。
「もう怒ってない?許してくれる?」
「怒ってないよ!こっちこそ本当にごめん・・・」
僕の言葉を聞いて陽菜はようやく表情が明るくなった。
「よかった〜」
安堵した様子とその言葉を聞いて僕は自分を責めた。なぜ僕はあんなにもイラついたのだろうか・・・
「じゃあ改めて、これからよろしくね、慶太!」
「よろしく、陽菜」
これでやっと家に帰ってから続いていたブルーな気分が完全に消し飛んだ。
陽菜と仲直りができた。そう思うと陽菜が帰ってきたことが実感され、明日からの学校生活が楽しみでしょうがない。
「そうだ、家に上がって行きなよ!母さんも喜ぶと思うし」
家が隣同士で同学年の子供がいたおかげで、陽菜の家と僕の家は家族ぐるみの付き合いをしていた。なので母さんにとって陽菜
は娘みたいなものなのだ。
「・・・でもこんな遅くに迷惑じゃない?」
「全然迷惑じゃないよ、むしろ歓迎!そっちの親がOK出せばの話だけど・・・」
昔馴染みの家だとは言っても、年頃の娘を夜遅くに同年代の男のいる場所にやるのは親として複雑な気分だろう。
「それは大丈夫。お父さんもお母さんもいないから」
「それなら尚更マズくないか?さすがにもう帰ってくるだろう?」
両親が遅くに帰宅して、いるはずの娘がいなかったら大事になるはずだ。
「あ、いやそう意味じゃなくて・・・実は私だけがこの町に帰ってきたの」
・・・なんですと?
「俗に言う一人暮らしってやつ?」
<> サトリビト<>sage<>2010/04/14(水) 21:51:17 ID:KnfIAlzI<> 陽菜を家に招き入れてリビングに案内する。
陽菜は久しぶりに我が家に入ったことで少し緊張しているようだ。
そんな陽菜がとてもかわいらしく見えて僕は思わず見とれてしまった。
「あらあら、何見とれてんのよ〜」
母さんがニヤニヤしながらこっちを見ている。
「ち、違っ///!!」
恥ずかしさのあまり言葉を失ってしまった。思春期の男の子にとってこれはかなり拷問である。
おそるおそる陽菜の方を見ると陽菜も顔を真っ赤にして俯いている。
完全に母さんの言葉を聞いてしまったらしい。母さん、僕は初めて人を恨みましたよ・・・
母さんはからかいすぎたと思ったのか話題を変えた。
「ところで陽菜ちゃん、ご両親は今おうちにいるの?」
「いえ、私ひとりがこの町に帰ってきたので家には誰もいません」
「え!?じゃあ一人暮らしってこと!?」
「そうなりますね」
一人暮らし・・・
そういわれればおかしな点がいくつかあった。家族全員の引っ越しとなるとかなりの手間と時間がかかる。それなら隣に住んで
いる僕は必ず気付いたはずだ。それに陽菜のお母さんの場合、引っ越したらすぐにでも家に顔を出すはずなのに今回は連絡すらこなかった。
ある予感が頭をよぎる。
「もしかして家出・・・とか?」
「まさか、違うよ!私がお父さんとお母さんにこっちに戻りたいってお願いしたの。そうしたらOKしてくれたんだ〜」
そんな簡単に娘の一人暮らし認めていいの?
「あら〜よかったわね〜」
母さんもよかったわね〜、じゃないだろ!?ちょっとはおかしいと思えよ!・・・まぁ実際よかったけどさ。
そんなかんだで僕たち三人がしゃべっていると、廊下の方から足音が聞こえた。
「お客さんでもきてんのか・・・よ・・・」
僕は今日姉ちゃんが帰ってきてたことを思いだした。
姉ちゃんは陽菜を見て唖然としている。
正反対に陽菜の方は顔を輝かせていた。
「久しぶりー祥姉ぇ!!」
そのまま姉ちゃんに飛びつき顔をすりすりさせている。
ちなみに僕の姉の名前は祥子だ。
「あ・・・あぁ、久しぶりだな陽菜・・・」
(なんでここにいんだよ!お前確か三年前に転校したはずだろ!)
「あ〜、5年ぶりの祥姉ぇだ〜♪」
陽菜は姉ちゃんの心の声に気付くこともなく、ごろごろとじゃれついている。
陽菜さん、僕と会った時との温度差が違いすぎませんか?
少しセンチメンタルな気分になった。
「祥姉ぇ今週の土曜の夜暇〜?もしも暇だったら神社で行われる秋祭り、一緒にいこ〜?」
「秋祭りぃ?」
(テメーの血祭りだったらいつでも付き合ってやるよ!)
「うん!慶太も誘って一緒にいこ〜よ〜」
「なんでコイツも・・・ったくしょうがねぇな・・・わかったよ・・・」
(気安く慶太なんて呼ぶんじゃねーよ!・・・でも慶太と一緒に祭りかぁ・・・っ!!これってデートじゃね!?)
姉ちゃんが二つの意味で怖いです。それに陽菜もいるんでデートとは言えません。
「慶太も行くでしょ?」
陽菜がこっちを見る。
「別にいいけど」
陽菜と祭りか〜、ってこれはまさかデート!?いよっっしゃぁぁぁぁぁ!!!!!!!
僕は心の中で会心のガッツポーズを決めた。
「あっ!もうこんな時間!?それじゃ私帰るね!」
陽菜はそのまま帰って行ってしまった。
僕はあまりの高揚に「送って行くよ」という定番のセリフを言い忘れて後悔した。まぁ家が隣だし危険なことはないだろう。
あぁ、土曜日が楽しみだ。 <> サトリビト<>sage<>2010/04/14(水) 21:51:57 ID:KnfIAlzI<> 僕はルンルン気分で階段を駆け上がる。
子供ならかわいいのだが、高校生が踊りながら階段を上っていく様は正直キモかった。
(あの子、人の心の声を聴きすぎて頭がおかしくなったんじゃないかしら!?)
(慶太の奴、そんなにウチと祭り行くのがうれしいのか!?くーっ、かわいすぎるぜ!!)
二人の声によって僕は冷静さを取り戻す。
そうだよな、階段はゆっくり登らないと危ないよな。
自分の部屋に戻ると、陽菜とのやり取りを再び思い出してニヤけてしまう。重症だ。
すると突然携帯がなった。
ディスプレイを見ると恭子ちゃんと書かれた電子文字。
「もしもし」
「あ、・・・恭子です・・・」
中島恭子ちゃん。今年中学に上がったばかりの内気な子だ。
恭子ちゃんは病院で出会ったのをきっかけに、時々こうして連絡してくる。
僕にすごく懐いており、月に一回くらいは遊んだりもしている仲だ。
「こんな時間にどうかしたの?」
「す、すいません!!やっぱり迷惑でした!?」
急に謝りだす恭子ちゃん。この通り内気(?)な子なのだ。
「迷惑なんかじゃないよ。それより何か用件があって電話してきたんじゃないの?」
「は、はい!・・・実は・・・その・・・」
言い出しにくいのかそのまま無言になった。
恭子ちゃんがこういう態度を取るときは決まって僕にお願い事があるときだ。サトリの僕が言うのだから間違いない。
「じ、実はですね・・・慶太さんに・・・その・・・お願いがありまして・・・」
「何?」
「わ、私と一緒に・・・その・・・あ、秋祭り一緒に行ってくれませんか!!」
最後の方は恭子ちゃんとは思えないほどの絶叫だった。
「秋祭り?って今度の土曜の夜に神社でやるやつのこと?」
「そ、そうです!!」
・・・マジっすか。陽菜とデートの約束があるのに・・・どうしよう?
「やっぱり・・・私と行くのはイヤですか・・・?」
僕のだんまりを否定の意味にとったのか、恭子ちゃんの声が泣きそうになっている。
その様子にあわてた僕は「そ、そんなことないよ!じゃあ一緒に行こうか!」と返してしまった。
「ほ、本当ですかっ!?やたーっ!!」
心から嬉しそう声でそんなことを言われたら、「あ、ごめん、今のはナシ」なんて口が裂けても言えない。
「も、もちろんだよ!お、俺が嘘つくはずないだろ?」
ごめんなさい、この発言がすでに嘘です。
「ごめんなさい!慶太さんを信じていないわけではなく、あまりに嬉しくて夢なんじゃないかなと思ってしまって・・・。そうですよね!!慶太さんが嘘つくはずなんてないですよね!!」
恭子ちゃんの言葉が次々と僕の胸に突き刺さっていく。ハハ、こうなったらとことん堕ちてやるぜ!
「それじゃあ詳しい話はまた明日電話するんで!!おやすみなさい、慶太さん!!」
そういって恭子ちゃんは電話を切ってしまった。
さてと、どうしましょ?
まさかこの年でダブルブッキングを経験する羽目になろうとは・・・姉ちゃんにも相談できないしな・・・
姉ちゃんのことを考えた瞬間、大事なことを思い出した。今回の祭りは陽菜と僕と姉ちゃんの3人で行く予定だったはずだ。
そうだ!ここに恭子ちゃんも加えればどっちとの約束も破らないで済むじゃないか!
いいアイデアのはずたったが、これには大きな欠点がある。
陽菜と姉ちゃんは恭子ちゃんのことを知らないのだ。
僕が中学一年生の女の子を連れていったら二人はどんな反応をするだろうか?
まさか通報するとは思わないが・・・
あぁ、土曜日が憂鬱だ。 <> サトリビト<>sage<>2010/04/14(水) 21:54:17 ID:KnfIAlzI<> 以上投下終了です。
投下してから文が変なところで切れているのに気付きました。
申し訳ありません。

3話目は一応半分くらいできているので、また近いうちに投下したいと思います。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/14(水) 22:09:57 ID:LpovvEzV<> >>126
GJ
慌てず自分のペースで。
続くとわかっていれば、このスレで待つのは慣れっこ。 <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/14(水) 22:25:11 ID:spSOb4EM<> >>99
沃野の最後で感動した、まさかあのスレで感動するとは思わなかった。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/14(水) 22:27:48 ID:PZ1rDwNG<> 乙

……アレ、地雷回避に役立つ能力かと思ってたが
今のところこの主人公、出てくる地雷をことごとく踏んでね? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/14(水) 23:00:51 ID:spSOb4EM<> >>129
地雷踏むのも主人公の能力だからしかたない <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/14(水) 23:04:32 ID:I2uCDdiI<> 姉貴gjすぐる

投稿乙した <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/14(水) 23:24:51 ID:DEUY3jv8<> >>129
地雷を踏んでこそヤンデレ能力が開放されるんだろJK? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/14(水) 23:58:47 ID:1UlfJDZv<> くっこの主人公、自分がどれだけリア充な状況に置かれているのか分かっていないのか・・・GJ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/15(木) 00:10:12 ID:LEZLLk9a<> 地雷が見えるからこそ逆に踏むまいとして身動き取れなくなって最後にはバランス崩してドカンだろうな
最後にちょっとにじみ出たヘタレ臭がそれを予感させる <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/15(木) 00:11:21 ID:SM0B529Z<> どっかのドワーフみたいに、罠は嵌って踏みつぶすの精神で行けば良いのか <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/15(木) 00:24:54 ID:eXvpOT5Y<> gj
にしても陽菜の声が全く聞こえてないのが不気味というか、率直に言えばオラワクワクしてきたぞ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/15(木) 01:05:24 ID:Pc8H8Eyp<> >>129
地雷は足をあげた時に爆発するときいたことがある。
ガセかもしれない。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/15(木) 01:50:48 ID:mhxcU4Pv<> GJ!

陽菜はとても優しい子だと思ったんだが、違うのだろうか。
なんにせよ次回が楽しみだ。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/15(木) 02:07:56 ID:al9QCL9a<>  俺の彼女だった三原由真の背中に足を乗せ、そいつは言った――
「良かったね、ケータおにいちゃん。これでまた2人だけで映画観たり出来るね」
 後はもう、冷たくなっていくばかりの死体の上で笑う少女。
 それは俺の実の妹だった。

 2つ年の離れた妹――沙希は感情表現がどうも苦手なようで、いつも周りから少しだけ浮いていた。
 そんな沙希がまともに話せるのは兄である俺――永島啓太だけだったようだ。
 沙希は物心つく前からいつも俺にくっ付いて遊んでいた。
 煩わしく思うことも度々あったが、それ以上に沙希が可愛くて可愛くて仕方がなかったのだ。
 そしてそれは俺が高校に入ってからも変わらなかった、ただそこに1人の人間が加わった事以外は。

「ケータおにいちゃん?どうしたの?」
 沙希は心配した風で俺の顔をのぞき込んでくる。
「どうしたもこうしたも……、お前こそどうすんだよ……」
 沙希はパッと笑顔になると、
「あのね、それはもう決まってて!」
そう言い、中学の通学用バッグから子供っぽいメモ帳を取り出す。
そしてメモ帳のページを捲りながら嬉しそうな声で言う。
「んーと、やっぱりまずは映画観てー、久しぶりに動物園行ってー、ウサギ触ってー、プレーリードッグを見ますねー」
この笑顔も、弾んだ声音も、俺にしか向けられないものだ。
「そうじゃなくてさ、これだよ、この死体」
俺は俺の自室に転がった死体を指差しながら言った。
「どう処理するつもりだよ?」
彼女が死んだことは別に悲しくない。
それよりもこの肉が夏の暑さですぐに腐って臭いだすだろう、という事に頭が痛む。
なんと、俺の部屋には巨大冷凍庫はもちろんだがエアコンすら設置されていないのだ。
放っておけば、3日もせずに臭い出すのではないか?
あー、考えれば考えるだけ頭が痛くなる。
「……それは考えてなかったよー……」
フッと沈んだ表情になる妹。
沈んで身体ごと頭を冷やしたいのは俺の方である。
「とりあえず……、風呂場で血抜きだけでもやっとくか?水分が少なけりゃ腐りにくくもなるだろうし」
「うむむむむー、そーだねー」
妹は、いかにも『私、考えてます!』といったポーズで悩む。
そんな妹を見ていると自然と頬がゆるんでしまう。
 と――
「キス……したいな」
 いきなりぶっ飛んだ事を呟いてくれやがりました。
 話が変わりすぎだろう。
「……うん、この女の前で見せつけてやりたいんだ、ケータおにいちゃんは私のなんだよって」
「見せつけるもなにも、もう死んでんだぜ?」
「関係ないよ、だって私ならたとえ死んでてもケータおにいちゃんと誰かがキスしてたら悔しいもん!絶対!」
珍しく大きな声を出す妹。
 それに驚きつつも、
「わかったわかった、だけどさ、俺たち血のつながった兄妹なんだぞ?」
――と、当たり前の確認をしてみる。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/15(木) 02:10:50 ID:al9QCL9a<> 「むしろお互い好きあっているのに何もしないほうが不健全だったんだよ」
真剣な顔で言う沙希。
「好きあっているって……、俺の気持ちの確認はまだだろ?」
俺は出来る限りあきれた顔をしようと努力をしたが、果たしてどんな顔になっているのやら。
「……ケータおにいちゃん、顔真っ赤だよ?」
そうですか、赤くなってましたか。
恥ずかしくなり下をむくと、床の上にうつ伏せで倒れている由真に睨まれたような気がした。
〈もう!また妹相手に赤くなって!バッカみたい!〉
よく通る良い声だったな……、ふとそんな事を思い出す。
「あ、今、この女のこと考えてたでしょ」
兄妹の絆か、はたまた俺が顔に出やすいのか、それを察知した沙希が由真の死体を蹴り上げる。
ぐにゃりと由真は仰向けになった。
その暗い眼がこちらに向く。
〈異常よ!異常!妹とキス!?有り得ないわよ!〉
あぁ、そうだな、でも、
「わかった、しよう。丁度由真もこっちを見ているしな」
 それを聞くと沙希は泣き出しそうなほどの優しい笑顔になった。
〈……なに考えてるのよ、今はまだ私と付き合ってるのに……〉
死人と付き合えるほど特殊な性癖ではないんだよ、残念ながら。
〈呪ってやる、……みてなさい、幸せになんか絶対にさせないわ〉
 月並みなセリフだな。
「どうしよう、き、緊張してきた」
笑顔のままそう言うと、唇にスティック型のリップクリームを塗りたくる妹。
こちらも由真に負けず劣らずのテンプレっぷりだ。
必死で唇をもごもごとさせる姿が非常に愛くるしい。
俺はそんな妹の両肩にそれぞれ左右の手を置くと、ゆっくりと顔を近づけていった。



――続くような気がする。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/15(木) 10:41:59 ID:N1E7t/gH<> 非常にツボった
GJ

続くような気がする?
それは気のせいじゃないのよ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/15(木) 19:27:56 ID:mUkI80s1<> >>140
GJ

いつか自分も作品を出したい <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/15(木) 19:49:32 ID:ZOETT3Sn<> キモウトスレにどうぞ

歓迎します <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/15(木) 23:11:32 ID:nk+LRASt<> 別にこのスレでもヤンデレなんだから何の問題も無いだろ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/15(木) 23:15:45 ID:LEZLLk9a<> 誰がメインかによるんじゃねーの?
キモウト中心の話だったら分からなくもないけど <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/16(金) 00:47:11 ID:kBAQIeIQ<> 優秀な人材を引き抜こうとしてるんだろ

…渡すもんですか <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/16(金) 05:25:32 ID:zCklDVHs<> 書き手にヤンデレとか、誰得 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/16(金) 11:22:13 ID:cqOYsEJM<> 俺得 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/16(金) 16:39:39 ID:mwPBWGMU<> スレ得 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/16(金) 20:18:25 ID:fLLbqWIz<> はいはい、ワロスワロス <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/16(金) 21:15:39 ID:ndZ7gwlJ<> 最低スレで小説家になろうってサイト知って「ヤンデレ」でタグ検索 → あばばばば

感想欄で「真のヤンデレを書くあなたはすばらしい」とか書き散らしてあるのとかあって思わず失笑した <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/16(金) 23:41:35 ID:kAKjMUkm<> 初投稿です。
誤字脱字や文法が変かもしれませんが、大目に見て下さい。

投稿します。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/16(金) 23:48:24 ID:kAKjMUkm<>
ヤンデレ症候群

馬鹿げた名前だが、世界中のどこをまわってもこいつから逃れられることができない質の悪い病だ。

そもそもヤンデレとは、女性が好きな奴のことを愛するあまりに心を病んでしまった状態、またはその状態の女性のこと。

こんな妄想紛いな病気が発生したのは今から20年程前のこと。突如、日本の首都である東京で、数十件の殺人、誘拐事件が起きた。


<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/16(金) 23:54:15 ID:kAKjMUkm<> さらに、殺人を犯した者は全て女性だった。被害者は性別関係なしに殺められているが、それでも女性の方が多い。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/16(金) 23:55:38 ID:kAKjMUkm<> そして逮捕して犯人に殺しの動機を述べさせると、“〇〇に近寄る雌豚を排除しただけ”“〇〇に邪魔なゴミを綺麗にしただけ”“〇〇君が私の気持ちに気づかないから”など“想い人のため”にという動機がほとんど…いや全てだった。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/16(金) 23:57:28 ID:kAKjMUkm<> 次に誘拐の方は男性だけが被害の対象だった。
これらの事件を初め、どんどん日本中で起き、3ヶ月も経たないうちに日本中でそのような事件が多発していくようになった。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/16(金) 23:58:18 ID:kAKjMUkm<> それだけでは収まらず世界各地でも発生し、たった1年で世界に広がっていった。そして政府はこのような事件を起こす女性達の病状を『ヤンデレ症候群』と発表した。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/16(金) 23:59:09 ID:kAKjMUkm<> そしてヤンデレ症候群が発表された翌週、政府は男性女性を20歳になるまで隔離して教育を行うという案を出したが、10人以上ヤンデレ症候群の女性らに暗殺されすぐに永久保留に。

そのような事が続き、20年後である現在ではヤンデレ症候群に好かれてしまった男性に手助けしない暗黙の了解が出来てしまうのもまた時の流れ。




「全く嫌な世の中に生まれたもんだよ…。」

今朝の新聞の記事を読みながら、僕 佐藤 瀧斗(さとう たきと)は今日も朝から憂鬱である。

「ぉはよぅ。」

「うん、おはよう。」
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/17(土) 00:00:15 ID:kAKjMUkm<>
我が家の大黒柱である僕の父親が寝室から大きな隈を作り、だるそうに朝の挨拶をしてきた。

「随分眠そうだね」

「あ?…ああ、まあな。」

「おはよーたきと☆」

「おはよう。」

続いて我が母が朝から元気いっぱいお肌つるつるでやって来た。

「酷いよ〜カズキ〜、起きる時はいつも一緒って言ったじゃない。」

もう30後半であるに限らず、20代前半の容姿をする母が甘ったるい声で父に抱きついた。

<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/17(土) 00:01:27 ID:KTu3/r1i<>
「香織!?もう起きたのか!?」

「何で? 私が起きたら何かまずい事でもあるの?」

驚愕した父に対して母は感情が込めていない返答をした。

<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/17(土) 00:02:05 ID:KTu3/r1i<> 「いやっ、違う!香織があまりにも可愛くキスをしてしまいそうになるぐらい寝顔だったから起こすのをためらったんだ!!」

必死な表情に変わり朝から甘い事を叫ぶ父。僕をお忘れですか?

「ふーん………じゃあキスしてくれた?」

感情を取り戻し拗ねた風に言う母。
あなたは僕がいるのがわからないの?

「いや。」

「じゃあ今して。」

「今って!?瀧斗の目の前でやるのか!?」

「別にいいじゃない。瀧斗だって年頃よ?」

「年頃だからko!?「んんっー!!」
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/17(土) 00:03:08 ID:KTu3/r1i<>
僕の母である佐藤 香織はズバリヤンデレだ。ヤンデレ症候群が一番流行?していた時に僕の父、佐藤和樹に恋をし、ヤンデレ化してしまった。…ちなみに二人が結婚したのは19の時できっかけは母が父に痺れ&媚薬を食事に混入し、既成事実を作ったから。

「もぐもぐ……御馳走様でした。」

朝食を済ませ荷物を持ち、玄関へ。

「行ってきまーす。」

「ぷはっ…はあはあ…カズキのあそこ食べていい?」

「はあ…はあ…お前、夜あんだけしといてまたやるのか?」



さて、学校に向かうか。

以上朝の出来事でした。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/17(土) 00:06:29 ID:KTu3/r1i<> 投稿終了です。

<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/17(土) 01:01:38 ID:pJG09kSF<> 乙です
ギョエー、近親相姦だ!
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/17(土) 02:18:49 ID:lvygQgq4<> こんなに細かく切って投下しなくても良いんだけど……

とりあえずGJ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/17(土) 02:21:13 ID:9yFBO6p8<> 乙なんだが、もうちょい纏めて投下した方がいいぜ。
確か
1レス:4096バイト・全角2048字、60行まで
一行:全角128字(256バイト)まで
じゃなかったか <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/17(土) 07:30:05 ID:KTu3/r1i<> すいません。以後気をつけます。


題名入れ忘れました。

『ヤンデレ世紀』でお願いします。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/17(土) 13:54:35 ID:EE1wNvhO<> 今更だけどポケモン投下されたと聞いて
本当に応援してます いつまでも待ってます <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/17(土) 15:51:50 ID:w//C14Cs<> 題名の無い長編集・・・十五でしたっけ?
続きを投稿します。
相変わらずの素人ですが、1分、2分の暇潰しにできたら光栄です。 <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/17(土) 15:52:27 ID:w//C14Cs<> 翌日

 日は落ちかけていた。
 教室は薄暗く、窓から聞こえていた運動部の喧騒も小さいものになっていた。
 ポケットに突っ込んだ左手が紙切れに触れる。
 今朝になって突如としてロッカーに現れた身に覚えのない手紙。
 『放課後に 多目的教室へ 来て下さい。』
 内容は以上の通り。
 手書きでなくワープロ文字で書かれていて、なにより、差出人不明だ。
 教室棟の最奥の一室。
 心当たりは皆無。
 綾を除けば女友達はいない。
 よって青春の王道イベント・恋の告白の可能性は無し。
 仮に綾だったら家か電話で言うだろうし、ヤツとはどちらかというと兄妹か姉弟って感じの関係だ。
 ならば、我が友が秘蔵の品を密に渡すために呼び出したとか?
 ・・・・そんな回りくどい友人はいねぇ。
 もしかしたら「綾に惚れた」とかいう物好きがいて、比較的近しい男(だろう)俺に協力を仰ぐべく折り入っての相談が?
 ・・・・これが一番現実的かもな。

 自問自答は続く。
 なぜなら差出人がいつまで待っても来ないからだ。
 教室を間違えたワケではない筈だ。
 「多目的教室」と言ったらココだ。
 他は「美術多目的教室」とか「総合多目的教室」と、個別の学科名がつくからだ。
 待ちぼうけ・・なんて虚しく、悲哀に満ちた響きだ・・・。

 マジで来ない・・・なんて事になったらまたトラウマか嫌悪症が出来てしまいそうだ。
 そろそろ帰るか。
 あとで差出人が来ても文句は言われないさ。
 遅れてくるヤツが悪いんだ。
 教室のドアを開け、出ようとした瞬間・・
 胴体、主に胸部へと衝撃が突き抜けた。
 「うぐぉっ・・・」
 衝突したであろう何かと肋骨に挟まれて、胸部の痛覚神経が信号を発する。
 痛みに俺の口からうめきが漏れる。
 走ってた女子生徒が頭から突っ込んできた。
  <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/17(土) 15:53:04 ID:w//C14Cs<> 「あっ!・・す・・すすす・・すいませんっ!!」
 「・・・あぁ、今度から気をつけろよ。放課後でも人はいるからな。」
 わざわざ怒るほどでもない。単なる事故だ。
 衝突した女子生徒はちゃんと謝罪してるから良しとする。
 軽く注意したし、さっさと帰ろう。
 「あ・・あのっ!向坂さん!」
 「ん?なんで俺の名前を?」
 話したことも無く、ましてや会った記憶すら無い女子生徒。
 「て・・手紙は読んで・・くれましたか?」
 「手紙?・・あぁ」
 合点がいった。今朝の手紙の差出人はこの女子生徒で、手紙を出す以上は相手の名前を知っているって事だな。
 「・・・・で、用件は何?」
 ストレートに切り出してみた。
 まさか決闘の果たし状ってことはないだろう。
 「・・・え・・と・・ええ・・うぅ・・・その・・・・・」
 よほど言い出しにくいのか。
 
 もしかしたら我が友の八島(ヤツシマ)との仲を取り持って欲しいとか?
 確かにヤツはイヤミにならない才色兼備という完璧超人だったな。
 だけど最近はヤツも疲れが表面化してるからなぁ。
 少し平穏を持ってやりたいトコだが・・・
 しかし、ここでこっちから話しかけたら追い討ちになって話せなくなりそうだ。
 ここは沈黙を通そうじゃないか。
 そして女子生徒がしどろもどろに、
 「ええ・・と・・す・・好き・・で・・・好きです!・・つ・・付き合ってください!」
 少しばかりの予感もあったが本当に驚いた。
 マジかよ。
 
 落ち着きを取り戻すべく深呼吸。
 日没前の涼しい空気が絶賛炎上中の体細胞を冷ます。
 理性が戦線復帰し、感覚器官が正常化した。
 女子生徒の姿を見る。
 顔は立派に美少女の部類。
 体型は細身。出るとこは出てる体型だ。綾とは大違いだな。
 肩まで伸びた黒髪が印象的で、きっと周囲の男子からもそれなりの人気を持つだろう。
 女子生徒の瞳には期待と怯えが入り混じっている。
 さぁ、返答はいかに?
 「・・・・えっと、さっきのは交際をするという意味の告白と思っていいんだよな?」
 確認。あぁ確認だってするさ。
 チキン野郎とでも何とでも言うがいい。
 もしドッキリだったら今度は人間不信になってしまう。
 俺は心が弱いんだよ。
 「はい!」
 確認はとれた。
 「付き合う分には文句は無いってか大歓迎だ。・・・だけど全く知らない相手と付き合うってのは・・」
 「すっ・・すみません!私、川上咲良(カワカミ サクラ)といいます!」
 女子生徒改め川上はすごく動揺していた。
 「え・・と、君の事は名前以外何も知らない。そんな男でもいいのか?」
 「はい!・・私の方が一方的に知ってるだけです。・・中学校の頃から・・好きでした。」
 ・・中学から!?ヤバイ。俺全く川上のこと知らねぇ。
  <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/17(土) 15:53:33 ID:w//C14Cs<> なんて返したらいいんだろうか。
 付き合ってから始まる恋愛もあるはずだ。
 据え膳は関係無いが、コレを断る理由は無い。
 つまり、YESなのだが、
 なにしろ生まれて初めてのイベント。
 気恥ずかし過ぎてなんと言ったらいいかわからない。
 とりあえず当たり障り無く・・
 「え・・えぇ・・と・・よろしくお願いします。」
 うわぁ・・男らしさのカケラも無いな。
 「え・・あ・・こちらこそ・・よろしくお願いします。」
 緊張ガチガチな俺に対して川上は喜色満面。
 
 帰りは川上を送ってやり、意外と家が近いことを知った。
 今日は珍しく綾の姿を見なかった。

<> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/17(土) 15:54:54 ID:w//C14Cs<> 放課後  教室棟の向かい側 特別教科棟

 電波環境は良好。
 ペンを握る手に力がこもる。樹脂製のボディがミシミシと軋む音をたてている。
 今朝、修二の鞄に仕込んだ盗聴器が周囲の会話を拾う。
 イヤホン越しに聞こえる声は修二だ。
 あんまり遅いから盗聴してやる。
 隠し事なんてできないんだよ?
 窓を見やると向い側の教室から修二がでてきた。
 いったい何してたんだろう?
 会話が無かったから一人だったんだろう。
 すると一人の女子が向こうの廊下を駆け抜け、教室から出た修二に衝突した。
 イヤホンを通してノイズ混じりの修二のうめき声が聞こえる。
 ・・事故とはいえ修二にぶつかるなんて、うらやm・・・許さないよ?
 周りの見えてない愚鈍な雌ネコには制裁があるんだからね。
 『あ・・あのっ!向坂さん!』
 雌ネコの分際で修二の名前を呼ぶなんて・・・苗字だから許すけど名前で呼んだら殺してやる。 
 『て・・手紙は読んで・・くれましたか?』
 手紙?・・・今朝は盗聴器仕掛けるのにいっぱいでそこまで手がつかなかった!
 後悔と怒りが湧き上がる。
 手の中で軋み続けているペンに更なる負荷がかかり、ビキビキと本格的にヒビが入る。
 『ええ・・と・・す・・好き・・で・・・好きです!・・つ・・付き合ってください!』
 
 ミシ・・・バキャッ!

 ついにペンが折れた。
 ここまで言われても気づけない修二も修二だけど、なにより許せないのは雌ネコだ。
 殺してやる・・・刺して抉って貫いて・・擦って潰して日本海に撒いてやる。
 
<> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/17(土) 15:55:25 ID:w//C14Cs<> 『え・・えぇ・・と・・よろしくお願いします。』
 修二!?
 『え・・あ・・こちらこそ・・よろしくお願いします。』
 え?何で?嘘だよね?・・・修二?・・アハハハハ・・きっと盗聴器に気づいてたんだ。
 ・・だからこんな事言って困らせようとしてるんだよね?
 ・・・修二って子供の頃から時々意地悪だったもんね。
 ・・・・盗聴器の仕返しか何かだよね?
 ・・・・・雌ネコなんかの告白を受けるのも打ち合わせなんだよね?
 ・・・・・・嘘だよね?アハハ・・修二も人が悪いよ・・・
 ・・・嘘だ・・嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だウソだウソだウソだ・・・
 「修・・二ぃ・・・・ぅぅっ・・ぅうぅぅ・・うあああああああああああぁぁぁぁあああぁぁぁぁああぁぁAAAAAAAAAああぁぁぁああああぁぁ!!!」

 どれくらい経っただろうか。
 周りは既に暗く、学校の怪談な雰囲気をかもし出している。
 校内に居るのは宿直の教員くらいだろう。
 修二は雌ネコと帰っただろう。
 修二の隣に私は居ない。代わりに雌ネコが居る。
 悪いネコに取られないように頑張ったのに。
 アハハ・・取られちゃったねぇ・・・
 
 ゴッ・・・ガッ・・・ゴンッ・・・
 
 怒りのままに空っぽの机を殴る。
 何度も何度も。
 鈍い音が反響して夜の教室の空気を激しく震わす。
 「何でっ!何でっ!何でっ!!・・振り向いてくれないっ!!横取りされたっ!!隣に居たのは私だけなのにっ!!何でっ!どうしてっ!!」
 息を荒げ、机の振動が教室中に余韻を残す。
 荒い呼吸を繰り返し静まる。 
 そうだよ・・・雌ネコを消せばいいんだ・・。
 そしたら・・修二も振り向いてくれる。
 今までに戻るよ・・・。
 修二は恥ずかしがりだもんね・・・。
 草食系ってヤツだもんね・・・・。
 だから悪い雌ネコやハイエナから守ってあげないとダメなんだよ。
 だから修二に手を出したネコは・・・消さないと・・ね。
<> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/17(土) 15:57:02 ID:w//C14Cs<> 以上、投稿終了です。
続きますが、一話が少し短くなります。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/17(土) 16:38:28 ID:lvygQgq4<> 雌猫が……俺の修二に手を出しやがって <> 質問いいですか?<><>2010/04/17(土) 18:39:23 ID:IZXxfjIl<> ニコ動で有名なロミオとシンデレラとヤンデレストーカーな僕
の、シンデレラもヤンデレの歌詞を考えたのですが、此処に投稿していいですか?
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/17(土) 18:43:33 ID:3VijAu5C<> ダメ
そしてsageろカス <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/17(土) 20:03:57 ID:o4dUDt8O<> >>175
GJです
短くなっても構わないので、続きを待ってます。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/17(土) 21:10:10 ID:QpQWpeN4<> GJ!
続き頑張って <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/18(日) 00:32:58 ID:+nO8vtXc<> ここはSSを書くスレであって
ポエムやら歌詞やらはスレチだからな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/18(日) 00:37:05 ID:UQKU6oxl<> 全ては、ヤンデレで始まり、ヤンデレで終わる。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/18(日) 01:54:35 ID:LepO7/vN<> >>177
ねぇぼく、なんねんせい?
ここは18禁だからとらぶるでも読んでマスかいてろガキ <>
◆/JZvv6pDUV8b <>sage<>2010/04/18(日) 01:55:32 ID:ReNKNHut<> ぽけもん 黒  21話投下します
<> ぽけもん 黒  21話
◆/JZvv6pDUV8b <>sage<>2010/04/18(日) 01:56:55 ID:ReNKNHut<> 「ゴールドもおっぱい大きいほうが好きです?」
「突然何をっ!?」
 槐市に向かう道中。
 少し休憩していると、ポポが突然そんな爆弾発言をした。
「だってゴールド……前のジムで、相手の胸ばかり……」
「そ、そそそそそそんなことはないよ! 何を言うんだポポ!」
 慌てる僕の横で、なぜかやどりさんが自慢げに胸を張っていた。
 いや、着ぐるみのせいで体のラインなんてさっぱり分かりません。
 なんて言ったらいいか分からず、僕は苦笑いを浮かべるばかりだ。

 てなわけで、僕達は槐市にやってきた。
 香草さんが帰ってくるまで古賀根市に留まりたかったけど、槐市でロケット団の目撃証言があったのだ。
 だから僕は古賀根市のポケモンセンターで、受付のお姉さんに頼んで香草さんへの言伝を残し、槐市を目指した。
 香草さんがいないことに対する道中の不安は無くはなかったんだけど、その不安はすぐに掻き消えた。
 ポポとやどりさんの相性の良さは香草さんとのそれをはるかに上回っていたのだ。
 ポポが空から敵の座標を捕捉すると、やどりさんはそこに念力や金縛りを使い、相手に気取られることなく、迅速に敵を行動不能にした。
 まさに無敵。ポポの視界が届く範囲、やどりさんの念動力が届く範囲は完全に彼女達の領域だった。
 これなら、シルバー戦だって、ランを傷つけず、シルバーを身動きが取れなくすることだって簡単だ。
 シルバー、次に会うときがお前の最期だ。
 僕は心の中でそう呟いた。
 それと、道中でポポが進化した。
 空を飛んでいたら突然体が光だし、フラフラと落ちてきて……と最初の進化とほぼ同じ光景だった。
 進化したと言っても、髪が伸びたことと翼が大きくなったことくらいしか大きな違いは無いように思えた。
 そのことをポポに言ったら、
「それならゴールド、試してみるです?」
 といたずらっぽく笑いながら言われたので、試しにどれだけ高く飛べるか見せてもらった。
 速度、高度共にかなりのもので、やどりさんも、あそこまでは念力が届かないと感心したほどだ。
 また、力も強くなったようで、道具を使えば僕達を空を飛んで運ぶことができそうだ。
 こうなることを見越して、古賀根デバートで固定ベルトを買っておいたのは正解だったな。
 普段は使わないけど、飛んで移動する必要があるときや速く移動したい時に役に立つだろう。
 問題はポポと大分密着する形になってしまうということだけど。
 ともかく、これでポポは最終進化。実に頼もしい。 <> ぽけもん 黒  21話
◆/JZvv6pDUV8b <>sage<>2010/04/18(日) 01:57:40 ID:ReNKNHut<>
 そして槐市。
 槐市は古くはこの国の首都でもあった場所であり、現在も古都として風光明媚な景観を守っている。
 一方、かつては数多の謀略が渦巻き、幾度となく戦乱の舞台にもなったこともあり、魑魅魍魎が渦巻く魔都として語られることもある地だ。
 尤も、シルフカンパニーがシルフスコープを開発し、『ゴースト』という種類のポケモンが研究、一般化されたことによって幽霊の正体が暴かれ、魔都としての色は薄れつつある。
 そうは言ってもこれだけの古い寺社仏閣に囲まれると、なんとなく厳かな気持ちにさせられる。

 ポケモンセンターに宿を取った僕達は、早々に警察署へ行き、ロケット団の情報を聞くことにした。
 僕はトレーナーだから、今後の旅の進路に危険がないようにロケット団の動向を聞きたいといえば、目撃情報くらいならすんなり教えてくれると踏んだのだ。
 この予想は果たして正解だった。
 行く先の安全のためとあれば、教えないわけにも行かないらしい。
 ロケット団という理不尽な理由で旅が終わってしまえば、ロケット団による犯罪の防止率が思わしくない自分達の体面が立たないというのもあるのだろう。
 巡査さんのくれぐれも目撃のあった場所には近付かないように、決して変な好奇心なんかを起こすんじゃないという言葉に、僕はもっともらしい顔をして応対した。
 どうも目撃されたのは槐市の東の外れ、槐市というより隣の丁子町に近いところらしい。
 本来の順路では丁子町より先に浅葱市に行くべきだから、丁子町に入る前に捕捉したい。
 仮に丁子町に入られてしまった場合、順路をはずれるだけでなく、確か丁子町の手前にはチェックポイントの役割を果たしている通行所があったから、ここを何とか潜り抜ける方法も考えなきゃならなくなる。
 とにかく色々と面倒になる。
 というわけで、とりあえず丁子町のほうに向かうことにした。
 ポケモンジムは後回しでも問題ないだろう。
 僕は数日振りにおいしい食事、暖かいお風呂と柔らかいベッドにありつけてご満悦だ。
 道中は警戒のためだのなんだの理屈をつけられて息がかかる距離で三人一緒に寝ることになってしまったが、今日はきつく言ったので久々に一人でベッドを使える。
 僕は先行きの不安に悩まされながらも、ベッドのお陰ですぐに眠りに着くことが出来た。

「おはよう……ってなんで二人ともボロボロなの?」
 翌朝目を覚ました僕の目に飛び込んできたのは、妙に散らかった部屋と、着衣が乱れたポポときぐるみが解れ、中から綿が覗いているやどりさんだった。
 二人とも長い髪がぼさぼさなのは寝起きのせいだけじゃない気がする。
「お、おはようです!」
 慌てた様子でポポが答える。
 一方のやどりさんは無言で目を閉じ、唇を突き出している。
「……何?」
「おはようの……ちゅー」
 やどりさんがそう答えた瞬間、ポポの翼が強かにやどりさんの後頭部を打った。
「いきなり何言ってるです! まったく、油断も隙もないです」
 険悪な様子で二人はにらみ合う。まったく、どうして二人共こう……まともじゃないんだ。
「はいはい、騒ぎを起こさないって約束しただろ? 丁子町は遠いんだから、早く出発の準備して」
 二人を諌め、僕も自分の準備をする。
 二人は途端におとなしくなり、いそいそと自分達のベッドに戻った。
 やはり彼女達をこの計画に引き入れたのは正解だった。
 以前のままじゃ、どの道事件を起こして警察のご厄介になるのは目に見えていた。
 仕度を終え、一緒に朝食をとった僕達は(現在ポポの食事の世話はやどりさんがしている。念動力のお陰で食事をしながら並行してポポに食べさせることが出来る。ポポは激しく不服そうだけど、僕は見ない振りをした)、早速丁子町目指して出発した。
 しばらくすると市街地を抜け、街道にでる。
 点在する寺社を横目に、一心不乱に歩き続け、そして野宿。
 翌日もまた歩き続け、昼頃にようやく通行所の辺りに着いた。
 そこで僕は驚愕することになる。
「ゴールド、煙が見えるです」
 初めに気づいたのはポポだった。
 空を飛んで哨戒に当たってもらっていたんだけど、どうも行く手に煙が上がってるらしい。
 僕にはさっぱり見えないんだけど、前例もあるし、多分ポポの言うことは事実なんだろう。
 怪訝に思いながらも進んでいくと、再びポポが声を上げた。
「ゴールド、燃えてる、燃えてるです!」
「燃えてるってなにがさ?」
「通行所です!」
 な、なんだって! <> ぽけもん 黒  21話
◆/JZvv6pDUV8b <>sage<>2010/04/18(日) 01:58:43 ID:ReNKNHut<> 「ポポ、本当なのか!?」
「間違いないです!」
 通行所が燃えてるなんてただ事じゃない。
 特に、近くでロケット団の目撃情報があったばかりの今は。
「ポポ、僕を抱いてくれ! やどりさんも飛んで欲しい」
 僕は鞄から飛行用のベルトを取り出しながら指示を出す。
 自分で走るよりポポに掴んでもらって飛んだほうが遥かに速い。それに、やどりさんも走るより念動力で飛んでもらったほうが速い。
 本当は無駄に体力を浪費するべきじゃないんだろうけど、一刻も早く通行所に駆けつけたかった。
「だ、抱いてなんて、ポポ恥ずかしいです」
「……ゴールド、そんなことは許さない」
 この子達はどうしてそうお約束のボケをするかな。
 僕も言葉が足りなかったかもしれないけど、器具を取り出したんだから分かるだろ。
 二人と漫才している暇が無かったので、手早く器具を組み立て、ポポと僕を固定する。
 こうやって密着すると、ポポの胸が僕の背中に当たる。
 見ても分からないくらい慎ましやかなんだけど、こうやって見ると確かにあるんだなあ。
 そんな邪念が頭をよぎる。
 というか、この背中に当たる二つの突起はもしかして……
「やっとゴールドと繋がれたです……。ポポ、幸せです」
「……殺す。後で絶対殺す」
「ああもう、ポポはちょっと黙って! やどりさんも、早く補助お願い!」
 二人のお陰で邪心は見事に吹き飛んだ。
 どう考えても楽しめる状況じゃない。
 体勢の制約上、ポポ一人で飛び上がるのは難しい。そのため、やどりさんの念動力によって離陸の補助をしてもらう。
 やどりさんはブツブツいいがならも、僕達を宙に上げてくれた。
 すぐにポポは自分の翼で力強く羽ばたく。
 やどりさんも浮かんできたのを確認すると、ポポに進んでもらった。もちろん、やどりさんの速さにあわせてもらって。
「ああ、ポポ、ゴールドと一つになってるですよ。すごく気持ちいいです」
 うん、気持ちいいね、風が。
「……殺す。後で絶対殺す。焼き鳥にして殺す」
 一方やどりさんは呪詛のように殺す殺す呟き続けてる。
「にしても、本当にやどりはのろまです。わざわざゆっくり飛ばなきゃいけないなんておかしいです」
「……殺す。後で必ず殺す。その手羽もいで殺す」
 背中に暖かくて柔らかいものが当たってるはずなのに、背筋に悪寒が走るのは、風を切って進んでるからなだけで無いことは確かだ。
 もしかして煙云々っていうのも、僕と抱きつきたいがためだけの狂言なんじゃないか。
 そんな疑惑が胸に浮かんだ。
 しかし、しばらく飛んでると、僕の目にも、地平線の向こうに煙が見えてきた。
 狂言ならそれはそれでよかったんだけど、どうやら本当に何かあったらしい。
「ポポ、通行所の状況はどんな感じ? 建物は見える?」
「建物なんて無いです。黒こげになって崩れてるです!」
 ポポの報告は、僕の予想より遥かに深刻な状況を伝えるものだった。
 もちろん、何の事件性も無い火事かもしれない。
 しかしそんな希望は、ポポの次の言葉によって打ち砕かれる。
「赤い……赤い髪の人間が火を噴いてるです! 人も燃やされてるです!」
 赤い髪。火。
 まさか、そんなまさか。 <> ぽけもん 黒  21話
◆/JZvv6pDUV8b <>sage<>2010/04/18(日) 01:59:49 ID:ReNKNHut<> 「……ポポ、その赤い髪の人間の近くに、もう一人赤い髪をした人間がいないか?」
 僕は震える声で、何とかそれだけ聞いた。
 赤い髪なんて炎ポケモンじゃ珍しくも無い。
 だから、まだそれがランだと決まったわけじゃない。
 シルバーと共にいる以上、命じれられてそういう行為に手を染めていても不思議は無い。
 でも、僕はランが人殺しの道具にされているなんて、信じたくなかった。
「……よく分からないです。帽子……みたいなのを被ってる人が多いです」
 帽子……そういえば、前に見たときもシルバーはフードを被っていたな。
 それに、ロケット団もRと書かれていた黒い帽子を被っていたような……
「もしかしてその帽子を被ってる奴らは、赤字でRが書かれた黒い服を着てない?」
「あーる、です?」
 そうか、ポポにRっていっても分かんないよな。
「うーん、なんか文字が書いてある?」
「赤で何か書かれた黒い服を着てるです!」
 やっぱり、ロケット団が関わっているのか。
 当然といえば当然だけど、衝撃といえば衝撃だ。
 僕は軽く身構える。
「で、でも、燃やされてるの、その人達ですよ!?」
「えっ!?」
 そんな馬鹿な。
 その黒い服の人達はロケット団の団員なはずだ。
 それが燃やされてるって。
 通行所を燃やしたのと、ロケット団員を燃やしてるのは違う人なのか?
 ロケット団に焼き討ちにあった通行所の人間が応戦しているってことか?
 事態がさっぱり把握できない。
 通行所ではいったい何が起こってるんだ?
 ポポがランやシルバーを見たことが無いのが悔やまれる。
 どんどん近付いていくにつれ、ようやく僕の目にも、通行所の成れの果てと思われる黒い塊が見えてきた。
 その塊はドンドン大きくなり、全景が少しずつ見えてくる。
 焼け落ちた通行所を背に、追い詰められているロケット団の集団。
 地面に転がった、血を流して倒れているロケット団員と、黒い塊。
 そして……
「シルバー!」
 やはりというか、驚くべきというか、そこにはシルバーがいた。
 ポポの羽ばたく音で気づいたのだろう、向こうもこちらを見ている。
 僕達は見る見る彼らに近付き、そして……あっという間に通り過ぎた。
「ってええええええ!?」
 僕の声に驚いたのか、ポポがビクリと震えた。
「ど、どうしたですっ!?」
「な、なんで通り過ぎてんのさ!!」
「ええっ!? 通り過ぎちゃいけなかったですか!?」
「いけないに決まってるだろ! 何しに僕達は急いで飛んできたのさ!」
 少なくとも、全力でスルーするためじゃないはずだ。
 ポポは急減速し、止まる。
 やどりさんもそれにあわせて止まった。
「二人とも、疲労はない?」
 これからほぼ確実にシルバーとの戦闘だ。
 疲れがあって勝てるような相手じゃない。
「大丈夫です!」
「……むしろ力は有り余っている」
 やどりさんの言葉に恐怖を感じなくも無いけど、戦うには問題なさそうだ。
 当然、ポポは僕と繋がったままでは戦えないから、地面まで降りてもらって金具を外す。
 ポポは思いっきり不服そうだけど、今はそんなのに構ってる場合ではない。
 器具を外すと、急いで通行所の残骸まで寄る。
 通行所はほぼ完全に崩れ落ち、未だに濛々と黒い煙が上がっている。
 元々重厚なつくりではないとはいえ、ここまで酷い有様を見せられると驚かざるをえない。
 近寄ると、明らかに熱気を感じる。 <> ぽけもん 黒  21話
◆/JZvv6pDUV8b <>sage<>2010/04/18(日) 02:00:45 ID:ReNKNHut<> 「やどりさん」
「……了解」
 僕が何も言わないうちに、やどりさんは僕の意を察してくれたようだ。
 触れてもいないのに瓦礫が動き出し、僕達の前に道が出来る。
 同時に、熱を下げるために水をまく。
 水は一瞬のうちに蒸発し、眼前は蒸気に包まれる。
 瓦礫を割り、白煙の中から現れるなんて随分と凝った登場シーンだ。
 そんな場違いなことが思考の端をよぎる。
 当然、向こうもこちらのことを把握してるのだろう、最後の瓦礫の壁の前で、僕は唾を飲んだ。
 しかしやどりさんはまったくためらい無く、最後の瓦礫を打ち砕いた。
 瞬間、瓦礫の向こうから火炎が飛来する。
 それを予期していたのだろう、やどりさんは瞬時に念動力で僕達を火炎から避けた。……ただしポポを除く。
 ポポは持ち前の身体能力で飛び上がり、かろうじて回避する。
「やどりぃぃぃぃぃ!!」
 ポポの怒声が降ってきた。
「あれ、いた……の?」
 それを受けるやどりさんは不敵な笑みを浮かべている。
 なるほど、焼き鳥。宣言どおりか。
 そんなことを思ったことはおくびにも出さず、二人を叱る。
「二人とも、仲間割れなんかしてる場合じゃないだろ!」
 そう言っている間にも次々と火炎は飛来する。
 瓦礫に阻まれるとはいえ、その向こうからでも十分な熱気が伝わってくる。
 やどりさんが噴きかけた水が一瞬で蒸発していく。
 ポポは一応回避は出来ているものの、言葉を発する余裕すらない。しかも遠めで見ても、近くを通る炎の熱気で表面が焦がされているのが分かる。
「やどりさん、とりあえずポポをここまで引き寄せてくれ。ちゃんと炎は避けるように」
「私だけでも……」
「いいから!」
「……はい」
 ポポがこちらに近寄ったときを狙って、一気にポポを引き寄せた。
 ポポは息も絶え絶えで僕達のところに落ちてくる。
 そのままやどりさんに飛びかかろうとするポポを抑えて、尋ねる。
「ポポ、ランはどの辺りにいた?」
 壁のせいでこちらからでは相手の位置は分からない。しかし炎を避けるために、今は壁を壊すわけにはいかなかった。
「あの辺り、です」
 ポポは翼で壁の向こうを指す。
「やどりさん、瓦礫を使ってポポの指したほうを攻撃してくれ」
 僕達の周りの瓦礫が次々を浮き、左右に避けて壁の向こうを攻撃する。
 壁から伝わる熱がわずかに弱まった。
「このまま壁を破って攻撃!」
 僕の命を受けると同時に、やどりさんは壁をそのまま向こうに飛ばした。
 それを回避するランが見えた。
 久々に見たランは少し姿が変わっていた。彼女も進化したのだろうか。
「ラン!」
 僕は叫ぶが、彼女はそれをまったく意に介さず、こちら目掛けて火炎放射を行った。
 僕が何も言わないうちに、やどりさんはそれを水を操って相殺する。
 両者の衝突点から激しく水蒸気が立ち上る。
 壁がなくなったことで、槐市側の通行所の様子が詳しく見える。
 あたりには通行所や木々の残骸だと思われる燃えカスや、現在もまだ燃えているものが散乱し、地面は所々煤で黒く彩られている。
 血を流した人間や、人だったものと思われる黒い塊がいくつもも倒れていた。
 通行所の傍は特に酷い。
 炭化した人間が山済みになっていた。
 来るときに通行所を背に追い詰められていたロケット団員達が見えた。
 そして先ほどまで容赦の無い火炎放射が降り注いでいたということは、彼らごと僕達に攻撃を行ったことを証明している。
 今までかいだことの無い嫌な臭いと、今まで聞いたことも無いような阿鼻叫喚で満ち満ちている。
 酷い有様だった。
 そんな地獄絵図の中に、シルバーは泰然と佇んでいた。 <> ぽけもん 黒  21話
◆/JZvv6pDUV8b <>sage<>2010/04/18(日) 02:01:24 ID:ReNKNHut<>  僕はすぐにナイフに手をかける。
「二人とも、しばらくランを抑えてて欲しい。倒してもいいけど、殺さないように」
 それだけ命令すると、僕はシルバーを睨みつけた。
 シルバーは不敵な笑みを浮かべ、僕を見る。
「また会ったな、ゴールド」
「ああ、シルバー」
「どうやらお前はよほど死にたいと見える」
「違うよ。僕は死にたいんじゃなく、殺したいんだ、お前を!」
 そう言うと同時に、僕はナイフを放った。
 シルバーはそれを手に持ったナイフで弾いた。
 しかしこれはただの牽制。僕はすぐにリュックからナイフを取り出し、カバーを外した。
「どうしてこんなことをしたんだ!?」
 僕はそういいながら、シルバーとの距離をつめる。
「こんなこと? こんなことって何だ」
 シルバーはそういいつつ、二本のナイフを抜き、放った。
 狙いは僕ではない。
 突然の事態に対応できず、棒立ちとなっているロケット団員の生き残りだ。
 短い悲鳴をあげ、二人のロケット団員が地に伏した。
「シルバー!!」
 僕はナイフをしっかりと握り、シルバーに襲い掛かる。
「俺は昔言ったよなあ? 弱い奴は生きてる価値が無いんだと」
 彼はナイフで僕のナイフをいなし、そのまま僕に切りかかる。
 僕は何とかそれを交わし、数歩距離をとった。
 黒く焼かれ、地面に転がっている何人ものロケット団員が視界に入る。
 憎いはずのロケット団員が、何故だか哀れに見えた。
「……お前は狂っている」
「俺は狂ってなんかいない。狂っているのは……」
 そう言いかけたところでシルバーは飛んできた瓦礫に倒された。
 視線を向けると、彼女達はランに対して有利に戦いを進めているようだった。
 さすがに二対一.ランといえど二人を相手にするのは厳しいと見える。
「シルバー!」
 ランが叫ぶのが聞こえた。
 ランが負けなくても、二人を完全に抑えなくてはその分シルバーが狙われることとなる。
 シルバーはいまや彼女の弱点となっていた。
 ここぞとばかりに、僕はよろめくシルバーに切りかかる。
 しかしシルバーも然る者で、強撃を受けたばかりにもかかわらず、わずかに斬られるだけで僕の攻撃から逃れた。
 ランと合流しようとするが、それをやどりさんが念力で抑えた。
 それに気をとられたランを、ポポが強襲しようとする。

 勝った。

 そう思った次の瞬間、ランの体は白い炎に包まれた。
 体に火を纏ったくらいではポポの攻撃を止めることはできないはずだ。
 それなのに、僕は恐怖を覚えた。
 ポポ、攻撃を中止してくれ!
 しかし僕の思いはポポには届かず、ポポはそのままランを翼で弾き飛ばす。
 悲鳴が響き渡った。
「ポポ!?」
 ランに一瞬ぶつかっただけのはずのポポが地面に落ち、悲鳴を上げて地面をのた打ち回っている。
 地面に倒され、むくりと立ち上がるランの立つ周囲の地面は、熱によって泡立っていた。
 彼女の纏っている、おそらくは耐火性の高いはずの服が見る見るうちに焼け落ち、消えていく。
 彼女はポポには目もくれず、生まれたままの姿でシルバーの下に駆け寄る。
 やどりさんは水鉄砲を放つが、それはもはやランに届く前に蒸発して消えた。
 ランはやどりさんのほうを向き、揺らめいた。 <> ぽけもん 黒  21話
◆/JZvv6pDUV8b <>sage<>2010/04/18(日) 02:01:51 ID:ReNKNHut<>  いや、揺らめいたんじゃない。熱によって揺らめいて見えたんだ。
 迫り来る熱の波を見た僕は、すぐに顔を覆って地面に伏した。
 やどりさんの悲鳴が聞こえ、次いで熱波が到来した。
 これだけ離れているのに、全身が電熱線で焼かれたかのような熱を感じている。
「やどりさん!」
 顔を上げた僕の目に映るのは、きぐるみから煙を噴き上げ、膝から崩れ落ちるやどりさんの姿だった。
 ランの体を包む炎はすでに消えていた。
 彼女を中心に地面は黒ずみ、熱波を浴びた木々は発火を通り越して炭化していた。
 僕達と同様に、熱風をもろに受けたロケット団員の何人かが悲鳴を上げながら地面をのた打ち回っている。
 まるで焼夷弾でも落とされたようだ。
 そんな地獄絵図と化した辺りを一望すると、ランは満足げに微笑んだ。
「やりすぎだ、ラン」
 いつの間にか伏していたシルバーは平然と立ち上がり、ランに近付く。
 シルバーは耐火服を身にまとっている上、僕に次いでランと離れていた。ダメージはほとんどないだろう。
 戦闘不能のポポとやどりさん、満身創痍な僕に対して、まだまだ余力のありそうなランと、しばらくは動けるだろうシルバー。
 形勢は一気に逆転した。
「ごめんなさい、マスター」
 寄り添うように近付いてきたランに、シルバーは上着を脱いでかけてやった。
「ら、ラン……」
 手を伸ばす僕に、ランから思いもよらない言葉がかけられた。
「……なんだ、まだ生きてたの?」
 そう言い放ったランには少しもオドオドとした様子はない。
 極めて落ち着き払っていた。
「ラン、もういいだろ」
「いいえマスター。マスターを傷つけたアイツをこのまま放っておくわけにはいきません」
 ランはそういいながら、愛おしそうにシルバーの傷口をツ、となぞる。
 顔をしかめるシルバーをみて、ランは実に幸福そうだった。
 そんな様子を見てられなくて、僕は叫ぶ。
「ラン! 君はシルバーに洗脳されてるだけなんだ! 正気に戻ってくれ!」
 が、それに対する二人の反応は思いもよらないものだった。
 なぜか二人ともキョトンとしている。まるで僕がおかしなことでも言ったかのように。
 しかし、すぐに堪えきれないといった様子でランが笑い出した。
「……っあっはははは! ゴールド、アンタどこまでめでたいのよ! 私がマスターに従っているのは私が洗脳されているからだとでも思ったわけ?」
 ランがこんな風に笑ったことがあっただろうか。
「え、だって……」
「そんなわけないでしょ! 私がマスターと一緒にいるのは、私がマスターを愛しているからよ!」
「な、なにを……」
「ラン、もう黙れ」
「だ、だってその男は、君の父親を殺したんだぞ! 君の人生を台無しに……」
「何を勘違いしてるのよ。パパを殺したのは、マスターじゃなくて私よ」
「……えっ?」
 意味が分からない。シルバーは顔をしかめていた。
「ラン……」
「そんなわけない! ぼ、僕は見たんだ! 僕だけじゃない、みんな見たんだ! シルバーが君の父親を刺した後、君にナイフを突きつけて人質にしたのを!」
「ああそう、皆そう思ってたんだ。どうりで、何時までたっても私が指名手配されないわけだわ」
「ラン、もうやめろ」
「皆勘違いしてるの。パパを殺したのも、その後私を人質にとったように見せかけてシルバーを逃がしたのも、全部わ、た、し」
「ラン!」
 鈍器で思いっきり殴られたような衝撃を頭に感じた。
 視界に行く筋かの細かい閃光が走る。
 誰かが照明を弱めたように、急に視界が暗くなった。
 信じられない。そんな訳が……
 僕はもう言葉を作ることができなかった。
 燃える、崩れた家を背景に、倒れたランの父親と、ランにナイフを持った腕を向けるシルバーと、その腕を必死で掴むラン。
 あの時の光景が鮮明に眼前に蘇る。
 確かに、直前の爆発のせいで、誰もランの父親が刺されたところを見ていない。
 だって、だれが考える? この土壇場で実の娘が父親を刺すなんて。
 ロケット団の幹部の息子を庇って人質の振りをするなんて。 <> ぽけもん 黒  21話
◆/JZvv6pDUV8b <>sage<>2010/04/18(日) 02:02:17 ID:ReNKNHut<>  僕が見た、つまり皆が見たのはランにナイフを突きつけるシルバーじゃなく、腕ごとナイフを自分に手繰り寄せようとするランを必死に止めようとするシルバーだった?
 そんな、そんなことがあるはずがない。
 だって、それじゃおかしい。
 もしそうなら、全てがひっくり返ってしまう。
 シルバーは本当は何も悪くなかった?
 悪いのはランだった?
 そんなこと、あるはずが無い。
 そんなこと、考えられるはずも無い。

 ランは一歩、僕のほうに歩を進めた。
「ラン、何を」
「殺さなきゃ、アイツ。シルバーを傷つけたんだもの。生かしてはおけないわ」
 一歩、また一歩とランは僕に近寄ってくる。
 ランはそこに絶望的な一言を付け加える。
「パパと同じよ」
 彼女はこともなげに言う。
「君の父親がシルバーに何をした?」
 自分の口からでた声は、まるで自分のものとは思えないくらい掠れていた。
「家に火をつけたの、あれ、パパよ」
「……そんな!」
「ちゃんと考えなさいよ。パパは炎ポケモンよ、炎ポケモン相手に誰が火で対抗しようと思うのよ。ましてマスターだもの、そんな愚行を犯すはずがないでしょ」
「ラン、やめろ、命令だ」
 険しい表情を浮かべるシルバーに、ランは寂しげに微笑んで答える。
「ごめんなさいマスター。でもずっと分かってたの。マスターはまだアイツに未練があるってことに。三人で楽しくすごしたあの頃を忘れられないってことを。でも、ダメよマスター」
「何がいけないんだ。それのどこが駄目なんだ!」
「だってマスター、それじゃ私だけを見てくれることにならないもの」
 いつの間にか、ランは僕の目の前に立っていた。
 僕を見下ろすランの目はどこまでも無慈悲で。
 その瞳の冷たさが、どんな言葉より何より彼女の告白が真実であることを物語っていた。
「ラン、それは嘘だ。君はシルバーにそう信じ込まされているだけなんだ……」
「バイバイ、ゴールド。天国で私とマスターの幸せを願っててね」
 うわ言を言う僕の頭部に、ランは笑顔で爪を振り下ろした。
 絶叫。 <>
◆/JZvv6pDUV8b <>sage<>2010/04/18(日) 02:02:50 ID:ReNKNHut<> 投下終了です <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/18(日) 02:45:49 ID:kzzYMWjS<> GJ
次回も楽しみにしてます <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/18(日) 03:07:54 ID:Tlteorh/<> 二番槍GJ!! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/18(日) 06:17:21 ID:Vkt2oQNk<> 次回を全裸で待つ
楽しみにしてるので、なるべくはやく… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/18(日) 10:07:05 ID:m0H8IH30<> GJ!!!
やっぱりいい作品だ!
古賀根ジムでなにがあったのか詳しく知りたいなw

>>196
まぁそういうなよww
あんまり急かすとプレッシャーうんぬんだぜ? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/18(日) 10:21:05 ID:PovETyqK<> GJ


ランはヤンデレだったのか!! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/18(日) 11:11:32 ID:TAJgYqu+<> GJ!! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/18(日) 12:06:03 ID:KcjHLxrU<> クソ女が!死ねば良いのに

GJ! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/18(日) 13:18:17 ID:5/MZpUR5<> 乙

あれ、シルバー超良い人じゃね? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/18(日) 14:05:41 ID:svAfMyWm<> シルバーもゴールドと同じくヤンデレに囚われていたのか・・・

GJ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/18(日) 14:14:25 ID:7RcsdVxs<> GJ!
ラン怖いよ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/18(日) 15:37:57 ID:vDw+Z72S<> また作者の自演感想かorz べた褒めな感想ばかりが不自然だといい加減気付いて欲しい。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/18(日) 15:48:07 ID:KcjHLxrU<> >>204
それ言うのはテンプレみたいな感じなの? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/18(日) 16:03:56 ID:eMoVXt3H<> >>205
まぁそんな奴もいるだろ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/18(日) 16:34:31 ID:KcjHLxrU<> 最近◆/JZvv6pDUV8b君が私に構ってくれない。
どうやら学校から急いで帰ってはネット掲示板に書き込んでいるらしい。
頑張って◆/JZvv6pDUV8b君のパソコンから出てくるパケットを解析して掲示板を突き止めることが出来た。
掲示板を除いてみるとやはり◆/JZvv6pDUV8b君の書き込みを褒め讃える返信ばかりだった(私の◆/JZvv6pDUV8b君が書いたのだから褒められるのは当然だが)。
でもこういうやつらがいるから◆/JZvv6pDUV8b君がこんな肥溜めにハマってしまうんだ。
どうにかして◆/JZvv6pDUV8b君のやる気を削がないと……

204 名前:名無しさん@ピンキー [sage] :2010/04/18(日) 15:37:57 ID:vDw+Z72S
また作者の自演感想かorz べた褒めな感想ばかりが不自然だといい加減気付いて欲しい。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/18(日) 16:35:34 ID:KcjHLxrU<> ごめんね、頑張って見たんだけどiPhoneからじゃ限界みたいだ。
誰か続きは任せた <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/18(日) 16:40:35 ID:hUv6EOXv<> 気にスンナ とにかくgj! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/18(日) 20:01:35 ID:XssNrRWe<> 上でも同じ感想あったけどこれはいいクソ女www
予想外の展開に楽しくなってきたぞ! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/18(日) 20:37:38 ID:1dFiCctI<> やはりランはヤンデレだったか…

にしても香草さんが何をしてるのか気になる <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/18(日) 21:08:04 ID:e65hdyUR<> 続きキターーーーーー!!

香草さんがいなくなった途端ポポとやどりさんが仲悪くなってて吹いたwww <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/19(月) 00:23:23 ID:4aE4fD5b<> 急展開だなgj <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/19(月) 06:35:23 ID:J53cZVsV<> 香草さんなんて始めからいなかったんや…… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/19(月) 07:16:10 ID:16/ow4S2<> GJ
ラン強すぎだろ
香草さんでも勝てなくね <> 私は人がわからない
◆lSx6T.AFVo <>sage<>2010/04/19(月) 07:38:37 ID:kVeCnTh+<> 投稿します <> 私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo <>sage<>2010/04/19(月) 07:40:10 ID:kVeCnTh+<>  昼休みを告げるチャイムが鳴り、教室の空気は一気に弛緩した。
 教卓に立っていた教師が去ると、クラスメイト達は弁当を片手にそれぞれのグループで集まり始める。それから、各々が楽しい昼食の時間を過ごす。いつも通りの昼の光景だった。
 そんな中、弁当を持参していない私はひとり購買部へと赴く。
 教室のドアを開けると、冷気を帯びた空気が室内へ流れ込んできた。一歩先は別世界のように冷え切っている。近くで弁当箱を広げていた女子が非難するように見てくるので、慌てて後ろ手でドアを閉めた。
 廊下に出ると、教室の暖房に慣れていた身体が一瞬で粟立った。吐いた息も白い。
 そこで私は今朝のニュース番組で、今日は今年一番の冷え込みになります、と女性アナウンサーが言っていたのを思い出した。
 昔から、寒いのはあまり得意じゃない。私は両の手で身体を擦りながら、廊下の温度へ適応させるようにゆっくり歩いて行く。
 私の横を男子生徒が二人駆けて行った。方向からして、同じ購買部を目指しているのだろう。
 元気だなあ、と私は若い子を見て微笑む老人のような気持ちになった。
 我が校の購買部は公立学校にしては珍しく数や種類もそれなりに豊富なので、今のようにゆったりと歩いていても、買いそびれるなんてことはまずなかった。
 なので、三年生による売買ラッシュを嫌う私はゆっくりと歩いて行くのが常であった。
 賑わっている別クラスの教室を横目で眺めながら、のんびりと購買部を目指して行く。
 購買部に着いた。いつものように混み合っている部内に三年生の姿は既に無く、二年生と一年生がレジの前に、何重にも折り返した長い列を作っていた。
 少し、ゆっくりし過ぎたみたいだ。私はうんざりする。
 行き遅れすぎてしまうと、目の前のような、主に二年生による第二波がきてしまい、遊園地よろしく長蛇の列が出来る。混雑の原因としてはやはり、レジがひとつしかないからだろう。
 その上、レジは入口付近に設けられているため、部内の商品を買うためには嫌でもこの人工運河を踏破しなくてはならない。
 しかたがない、と私は面倒くさそうに息を吐くと、列に割り込んで行った。

<> 私は人がわからない
◆lSx6T.AFVo <>sage<>2010/04/19(月) 07:41:12 ID:kVeCnTh+<>  右手で列を切り裂くようにして中を進んで行く。身体をぎゅうぎゅうと押され息苦しい、窒息しそうだ。
 道程、男子生徒が迷惑そうに私を睨み舌打ちをしてきたので、すいませんと謝罪する。なんだか割り込みをしているみたいで、もの凄く申し訳ない気持ちになってくる。早くレジを増設して欲しいな、と私は人波に揉まれながら思った。
 元々人込みが苦手な私は、人工運河を渡り切った時には、もうぐったりとしてしまった。一息ついてから、ふらふらとした足取りで菓子パンコーナーを目指す。
 昼食にはいつも菓子パンかサンドイッチを購入していた。二つとも数だけは豊富なので売り切ることがないからだ。
 今日もそのはずだった。
 しかし道中、視界の隅に何かを捉え、思わず足が止まった。余分に進めていた右足を一歩下げる。
 そこは、惣菜パンが売っているコーナーだった。惣菜パンコーナーは様々な商品が置いてある購買部でも最も人気がある場所だ。
 先程、私は購買部では買いそびれることはないと言ったが、人気がある商品に関しては例外だった。
 購買部は一階にある。校舎は四階建てで上から、一年、二年、三年と続くため、必然的に階下にいる三年生達に地の利があり、人気がある商品についてはさっさと買われていってしまう。
 我が校は厳格な年功序列制度を採っているのである。
 なので、私のような二年生はいつも中堅の商品しか買えない。一年生にしてはそれこそ余り物のような物しか買えないから悲惨だ。
 だから、その惣菜パンコーナーにひとつだけ、学内で不動のナンバーワン人気を誇るカレーパンがひとつだけ残っているのは、随分と珍しいことだった。
 いつもなら真っ先に無くなってしまうのに、どうしてか今日はひとつだけ残っている。
 私は、ぽつんと誰かの手に取られるのを待っているそれをまじまじと眺める。
 昔、一度だけ斎藤ヨシヱに頼んでこのカレーパンを購入して貰ったことがあった。その時は、人気のあるミュージシャンの新譜でも聞くような、そんな軽い気持ちで食べたのだが、正直あの時の衝撃は今でも忘れられない。
 それから、何度かカレーパンを狙って三年生達と競ってみたりしたが、結局買えたことは一度もなかった。

<> 私は人がわからない
◆lSx6T.AFVo <>sage<>2010/04/19(月) 07:42:27 ID:kVeCnTh+<>  次に食べられるのは進級してからだと思っていたけれど、意外とその時は早かったみたいだ。どちらにしろ、取らない訳にはいかない。
 今日はついてるなあ、と私はカレーパンに手を伸ばした。
 しかし、その伸ばした手は、突然現れた横合いの手に掴まれた。
 私は驚いて、反射的に手を掴んだ人物へと視線を滑らせる。そして、さらに驚くことになった。
 腕を掴んだのは、恐ろしい風体の女子生徒だった。軽く巻いた髪は金色に染め上げており、厳つい形をしたシルバーピアスが所狭しと耳を飾っている。
 身長は女子にしてはかなり高く、平均的な男子生徒の私と大して変わらなかった。服の上からでもわかるプロポーションの良さが、やけに目につく。
 私は突然の出来事に困惑してしまった。
 彼女とは面識がない上に、その、私を見る、金色の髪とは対照的な真っ黒な瞳に、明らかに憤怒を感じるからだ。
 その瞳は、そこらの野良犬ぐらいなら簡単に殺せそうなほど強いものだった。
 自然と腰が引けてしまう。
 彼女が怒っているのは一目でわかった。いつもの私なら何故怒っているのかが分からず、小一時間は悩んでしまうものだが、その日は運よく直ぐに彼女の怒りの原因を理解出来た。
 私は柔和な笑顔で、彼女に言う。
「これ、食べたいのならどうぞ。私はそこのメロンパンでいいんで」
 私のほうが早かったけれど、そんな目で見られては仕方ない。こういう時は女性に譲るのが紳士というものだろう。
 空いた手でカレーパンを薦める。
 しかし、金髪の彼女はそんなカレーパンには一瞥もくれずに、まだ私のことを睨んでいた。
 カレーパンではないのだろうか。途端に不安になる。
 その時だった。漸く、金髪の彼女が口を開いた。
「お前、鳥島タロウだな」
 突然発したその声は、かすれたようなハスキーな声質だった。
 私は軽く頷いて肯定する。
「ちょっと来い」
 そう言って彼女はぐいぐいと私を引っ張ろうとした。
「ちょ、ちょっと待ってくださいっ」
 慌てて抵抗しようとするが、彼女の勢いはこれっぽっちも止まらない。女子とは思えない凄い力だった。彼女の中指についている指輪が手首に刺さって非常に痛い。
<> 私は人がわからない
◆lSx6T.AFVo <>sage<>2010/04/19(月) 07:43:40 ID:kVeCnTh+<>  最初こそ踏ん張ったりして抵抗してみたりした私だが、それが無意味だとわかると、さっさと諦めて彼女のなすがままになった。無駄な抵抗こそが一番の無駄なのは知っている。私はずるずると引っ張られていく。
 彼女に連れ去られる途中、少し驚くことが起きた。
 レジ前に形成されていたあの人工運河が、金髪の彼女が通ろうとした途端に、蜘蛛の子を散らしたように真っ二つに割れたのだ。
 みんな、私同様に彼女が恐いのだろう。
 昔、“十戒”という映画で主人公のモーセが海を割り、信者を連れて進んで行くシーンを見たことがあったが、今がちょうどそんな感じだった。
 私達は割れた海の中を進んで行く。
 左右からひそひそ声がサラウンドのように聞こえてくる。金髪の彼女には恐怖を、私には憐憫の念を帯びた視線をそれぞれ送ってくる。
 道中、先程私のことを睨んでいた男子生徒が目に入った。さっきの不快感丸だしの目とは打って変わって、気の毒そうな視線を私に送ってきた。
 それを眺めながら、私は金髪の彼女に拉致されていった。

 連れて来られたのは、体育館近くに設けられている自動販売機群の前だった。
 夏ならともかく、冬場で此処を利用する生徒は少ない。校舎内にも自販機があるからだ。
 そのためか、幸か不幸かはわからないが、この場には私と金髪の彼女しか居なかった。
 誰も居ない場所で女子生徒とふたりっきり。
 なんだろう。つい最近そんなシチュエーションがあった気がする。
 そんなことを考えていると、突然私の腕が引っ張られた。そのまま身体ごと自販機のひとつに押し付けられる。背中を強打し、ぐえっと情けない呻き声が漏れた。
 金髪の彼女は私のネクタイを掴んで、先程のように睨めつけると、短く言った。
「どうして、キリエをフッたんだ?」
「キリエ?」
 と、問い返した私に金髪の彼女が激昂した。
「惚けんなっ!」
 噛み付かんばかりの剣幕で叫び立てる。背後にある自販機のガラス板が震えたのを、背中で感じた。
「お前が昨日、キリエのことをフッたんだろうがっ」
「……ああ」

<> 私は人がわからない
◆lSx6T.AFVo <>sage<>2010/04/19(月) 07:44:49 ID:kVeCnTh+<>  そこでやっと思い出した。彼女が言うキリエとは、どうやら田中キリエのことらしい。昨日、という言葉で思い出した。
 確かに私は昨日、田中キリエに放課後の教室で告白された。彼女の気弱そうな姿態が瞬時に脳内に再生される。あまり関心がなかったのですっかり忘れていた。
 それはさておき。まさか金髪の彼女の口から田中キリエの名が出るとは思わなかった。口ぶりからして、おそらく彼女は田中キリエの友人かなにかなのだろうけど。それにしたって、性格も体格も随分と正反対なものだ。一体どういう経緯で友情関係を結んだのだろうか。
 ネクタイを締める力が一段と強くなった。早く話せと言うことなのだろう。それにしても苦しい、呼吸するのが難しいくらいだ。これじゃあ話す云々以前の問題である。
 私は懇願するように言った。
「わかりましたわかりました。話しますから、まずそのネクタイを締めるのを止めてもらえませんか?苦しくて仕方がないですよ」
「…………」
 しかしこれを完全にスルー。
 マズイ。早めに会話を切り上げなくては、自分はこのままでは生命の危機に直面することになってしまう。
 私は彼女の瞳を見据えて話す体勢に整えると、切れ切れの声で言った。
「私が田中さんの告白を断ったのは、彼女があまりに私のことを知らないからですよ。私は本来、人と付き合えるような人間じゃあないんです。それを田中さんは知らない。彼女は上辺の私しか見ていない、だからです」
「それだけか?」
 それだけ、というのは随分と引っ掛かる言い方だが、一刻も早く解放してもらいたい私はすぐに首肯した。
「……そうか」
 ネクタイを締める力が一気に弱められた。瞬く間に身体に酸素が供給される。 やっと解放された、と思った時だった。
 油断したのがいけなかったのだろう。
 金髪の彼女が、空いたほうの手で私の無防備な腹を殴り上げるのに、私は反応出来なかった。
 腹部に激痛が走り、数秒の間息が出来ない。口元を手で押さえて、胃から逆流してくるものを慌てて飲み込む。何も食べていなくてよかった。
<> 私は人がわからない
◆lSx6T.AFVo <>sage<>2010/04/19(月) 07:46:13 ID:kVeCnTh+<>  体も崩れ落ちそうになったけれど、そんなことをしたら本当に脈が締まってしまうので、自販機に寄り掛かるようにしてなんとか体勢を保つ。
 突然、何をやるんだこの人は。
 私は金髪の彼女を見た。
「そんな理由で……キリエは」
 そんな私のことには気にもかけず、金髪の彼女は独り言のようにごちていた。
 そして、キッと視線を上げると言った。
「キリエはなあ、ずっとお前のことが好きだったんだよっ。それこそ高校に入る前からずっと、それをなんだ?そんなくだらない理由でキリエの気持ちを無下にしやがって何様だお前はっ」
 彼女は私を責めるように言った。
 しかし、怒る彼女をよそ目に、私は今の言葉に違和感を感じていた。
「……ずっと前?」
 それはおかしい。
 私が初めて田中キリエと出会ったのは二年で同じクラスになった時からである。それ以前は、少なくとも私は、彼女とは面識がないと思っていた。
 田中キリエとは中学校、小学校共に違っていた。なので、一年からならまだしも、入学以前から好いているというのは絶対におかしいのだ。彼女が私のことを知っているはずがない。
「あの……」
 と、金髪の彼女に質問してみようと思ったが、とてもそんな雰囲気ではないので諦める。触らぬ神になんとやらだ。
 それから、長い沈黙が流れた。
 私も彼女も何も言わない。
 そして金髪の彼女が唐突に、今まで掴んでいたネクタイを離した。
 突然のことで驚いたが、やっと訪れた自由に私は内心喜んだ。
 金髪の彼女はスカートのポケットからタバコを取り出すと、慣れた動作で火を点け、紫煙をはきだす。
 未成年の喫煙は法律で禁じられていることを伝える勇気は、勿論ない。
「キリエと付き合え」
 彼女が口を開く。
「お前が人と付き合えるような奴じゃないって言うのには同意するよ。ひ弱だし、何考えてるかわかんないし、確かにどう見たってクズ野郎にしか見えない」
 ひどい言われようだ。
<> 私は人がわからない
◆lSx6T.AFVo <>sage<>2010/04/19(月) 07:49:23 ID:kVeCnTh+<> 「けど」
 彼女は短くなったタバコを地面に落とし、踏みにじって火を消した。
「私はキリエに結果をあげたいんだ」
「結果?」
「そう、結果だ」
 金髪の彼女は続ける。
「キリエはお前が思っているよりも、本当に長い間お前のことを想ってきたんだ。本当に、ひたすら一途に。それが、必死の思いで告白したのに、断られてハイ終わりじゃいくらなんでも悲しすぎる。私だって納得がいかない
「変な言い方になるが、正直私はお前がクズならクズで構わないんだ。それでキリエが、ああ私が好きになった人はクズだったんだなって分かれば、キリエだって納得するさ。それならそれで、さっさと別れちまえばいいんだからな。
「お前は、キリエが自分のことを知らないから断ったって言ってたけど、お互いのことを知らないなら付き合ってからお互いのことを知っていけばいいだけの話だろーが。それぐらい気づけ馬鹿。
「とにかく、私はこのままキリエの恋が終わるのは絶対に嫌だ。これは、アイツが初めてした恋だから」
 金髪の彼女は悲痛な表情のまま、新しいタバコに火を点けた。どうやらもう話は終わりらしい。
 私は彼女の言葉を頭の中で反芻し、吟味し始めた。
 つまり、金髪の彼女が言いたいのは、田中キリエは長年私のことを想ってきたのにもかかわらず、私が自分勝手な理由で拒絶してしまったので、このままでは田中キリエも金髪の彼女も納得しない形で終わってしまう。
 だから、とりあえず付き合って何らかの結果を出せ、ということなのだ。
 確かに、その通りなのかもしれない。
 現に私は昨日、田中キリエの告白を断った時、彼女の想いなど全く考慮に入れていなかった。自分は人と付き合える筈が無いと身勝手な結論を振りかざしていただけだ。
 言うまでもなく、それは不誠実なのだろう。
 お互いを知らないなら、付き合ってから知っていけばいい。
 金髪の彼女はそう言った。その発想は私の中になかったが、確かにそれもひとつの恋愛の形なのかもしれない。
<> 私は人がわからない
◆lSx6T.AFVo <>sage<>2010/04/19(月) 07:51:00 ID:kVeCnTh+<>  二本目のタバコも吸い終わった彼女は、イラついた目で私を見た。早く返事をしろと目で促している。
 そんな彼女を見て、私は思う。
 羨ましいなあ。
 私は田中キリエに対して素直にそう思った。
 目の前の彼女のように、これほどまでに友人のことで、熱心に悩んでくれる人間は、現代の日本にはそういない。皆、どこかで自分を優先してしまうからだ。しかし、彼女にそれがない。
 私には親友と呼べるような存在がいない。なので、それがより一層羨ましいと思えた。
 けれど、そこに妬みは無い。言うならば、希少な宝石でも見るような気持ちだった。
「わかりました、彼女に再度、交際を申し込みましょう」
 私は幾分か愉快な気持ちになれたので、快く彼女の提案を受け入れることにした。
「今日の放課後にでも、田中さんに告白します」
「放課後?」
 金髪の彼女は怪訝そうに聞いた。
「お前、キリエの家知ってるのか?アイツ今日学校休んでんだろ」
「そういえば、そうでしたね」
 全く知らなかった。
「それじゃあ明日にします」
 と私が言うと
「いや、今日行け」
 金髪の彼女はきっぱりと言った。
「私はキリエの悲しんでいる顔を一秒でも長く見たくない」
 彼女は本当に田中キリエのことが好きなんだな、と私は益々嬉しくなる。
「わかりました。それじゃあ田中さんの住所を教えてもらえますか?」
 そう言うと、金髪の彼女は田中キリエの住所を述べた。口頭だったので大変だったが、なんとか覚えた。
「今日、絶対にキリエに告白しろよ。わかったな」
「ええ、わかりました」
 金髪の彼女は最後にそう念を押すと、私に背を向けて歩き出した。これで本当におしまいらしい。
「あっ、そうだ」
 しかし、そこで彼女は思い出しように呟くと、私の近くまで戻ってから言った。
「あと、これは個人的な感情」
 そう言って彼女は、右足を軸にくるりと一回転した。回し蹴り、と頭が認知した時には、彼女の左足が私の右側頭部を貫いていた。
<> 私は人がわからない
◆lSx6T.AFVo <>sage<>2010/04/19(月) 07:52:09 ID:kVeCnTh+<>  白い光が眼前にはじけ、世界は一回転する。
 地面にたたき付けられた。口内で血の味が広がる、少し切ったようだ。
 まだ回り続けている視界の中で、金髪の彼女は私の髪を引っ張り、無理矢理顔を上げさせた。
「色々と言ったが、はっきり言って、私はお前みたいな野郎がキリエと付き合うのは堪らなく嫌なんだよ。本当、腸が煮え繰り返そうだ」
 真っ黒な瞳が、私を見る。
「いいか、覚えとけよ。もしこの先、お前がキリエを悲しませるようなことをしたなら、私はお前を――」
 彼女は一拍置いて
「――殺す」
 髪から手を離され、私の顔は再び地面に戻った。そして、憮然とした態度で去って行く金髪の彼女を見上げる。短いプリーツスカートから、下着が見えた気がした。
 そして冬空の下、私だけが残った。
 帰ろう。そう思って立ち上がろうとするが、膝ががくがくと震えて立ち上がれない。おそらく、脳震盪だろう。
 仕方がないので、そのまま冷たい地面に横たわった。
 脳震盪は安静により短時間で回復できることを、私は知っていた。短く逆立った雑草が、頬をちくちくと刺して不快だったが我慢する。
 ――それにしても。
 殺すと言った時の、金髪の彼女のあの真っ黒な瞳を思い出す。
 心底、震えた。びっくりした。さっきのは脅しでも冗談でもない、間違いなく本気だった。
 私は本気で殺すと言った人を見るのは始めてだった。遅れて、冷や汗がどっと吹き出す。
 どうやら私はひとつ思い違いをしてたみたいだ。
 金髪の彼女が田中キリエに対して抱いていたのは、友情ではなく、異常なまでの愛情だった。いや、依存心かもしれない。いずれにせよ、普通ではない。
 ひとつ、確信する。もし、私が本当に田中キリエのことを悲しませるようなことをしたならば、彼女は間違いなく、私を殺すだろう。
「困ったな」
 これから先、田中キリエと付き合っていくことを考えると、うんざりした。これからは死と隣り合わせである。
 その時になって、漸く私は自分が面倒な事態に巻き込まれているのだと、自覚した。
「くわばらくわばら」
 そんな独り言と共に、私はゆっくりと瞳を閉じる。
 近くの体育館から、バスケットボールを楽しむ生徒の声と上履きの摩擦音が響いていた。 <> 私は人がわからない
◆lSx6T.AFVo <>sage<>2010/04/19(月) 07:52:55 ID:kVeCnTh+<>  結局、教室に戻った頃には、もう昼休みも終盤を迎えていた。
 私は制服についた汚れを落とし、水道水で口をゆすいでから教室へと向かった。
 何だか、今日は散々な昼休みだった気がする。体中が痛むし、胃袋も先程から食物を切望して、悲しく鳴いていた。
 まあこんな日もあるさ、と切り替える。
 変わったことが起きた。
 教室に着いて、ドアを開けるとクラス中の人間が一斉に私のことを見た。
 視線の矢が何本も突き刺さり、思わずどぎまぎしてしまう。けど、人気者になったみたいでちょっと嬉しい。
 比較的仲の良い男子生徒の何人かが、私のほうに寄ってきた。そうでないものも皆、私に注目している。
「おいタロウ、お前昼休みにマエダカンコに拉致されたって本当かよ」
 取り巻きのひとりが口を開く。
「聞いたぜ、マエダに購買部で引っ張られてって、どっかに連れてかれたんだろ?ウチのクラスにも何人か見たって奴いるぞ」
 マエダカンコというのが、あの金髪の彼女の名前だというのにはすぐに気付いた。
「はい、本当ですよ」
「マジかよっ」
 クラスが一段とざわつく。
「お前、一体マエダに何されたんだっ」
「それはもう、ヒドイ目にあいましたよ」
 ふて腐れるように言う。
 本当にヒドイ目にあった、彼女のせいでカレーパンどころか昼食もとれなかったのだから。
 私がマエダカンコに連れ去られたとわかった途端に次々と質問がとんできた。
「具体的には何されたんだよ」
「一体、マエダとはどういう関係なんだ?」
「なんでお前生きてるんだ?」
 某太子と違って一度に多数の質問を聞けない私は、矢継ぎ早の質問に目を回してしまう。
 そんな私に助け舟を出すように、予鈴のチャイムが鳴った。皆、まだ聞き足りないといった感じだったが、渋々席についていく。私もほっとして自分の席に戻っていった。
<> 私は人がわからない
◆lSx6T.AFVo <>sage<>2010/04/19(月) 07:54:48 ID:kVeCnTh+<>  教師はまだ来ないようだった。次の授業を担当する数学教師は時間にルーズなことで有名であり、いつも遅れてやってくる。
 暇を持て余した私は、せっかくなので隣の席の男子生徒にマエダカンコについて聞いてみることにした。
「マエダカンコ?タロウ、お前マエダも知らないのかよ。アイツほどの有名人、この学年じゃ知らない奴はいないと思うぞ」
「すいません、無知なもので」
 私は苦笑する。そんなに有名人だったのかあの人。
「まあ仕方ないか、アイツが本格的に有名になりだしたのも、つい先月からだしな」
 話す気が起きたのか、男子生徒は椅子を私の眼前にまで寄せた。それから、マエダカンコについての情報を耳打ちする。
「マエダカンコ、二年一組所属。素行はかなり悪い。学校では誰ともつるまずに一匹狼を貫いている。元々、アイツもあんなナリしてるから学内ではそこそこ有名だったんだ。平然と教室でタバコ吸い出したりするしな。
「まあ、それだけなら何処の学校にでも居る不良ちゃんで終わるんだが、先月にある事件が起きてから知名度が一気に撥ね上がった」
「ある事件、ですか?」
 私は繰り返す。
「ああ。ほら、マエダって中身はともかく、顔とかスタイルとかはスゲエいいじゃん?だから、前々から三年生の先輩達、あっちなみにこれも中々のワルね、が結構ナンパまがいのことをしてたわけよ」
 関係ないが、彼が話す度に耳元に生暖かい息が吹きかかって、なんともこそばゆい。背筋がぞくっとする。
「けど、マエダはそんな先輩達を全く相手にしなかったんだ。そりゃもうガン無視。で、先輩達も遂に怒りが天に達しちまって、ある日の放課後、マエダをどこかへと連れさったらしいんだ。それが、ちょうど先月のこと」
「それで、マエダさんはどうなったんですか?」
 男子生徒は待ってましたと言わんばかりにニヤリと笑った。
「それで、マエダカンコがどうなったかというと――」
<> 私は人がわからない
◆lSx6T.AFVo <>sage<>2010/04/19(月) 07:56:20 ID:kVeCnTh+<>  勿体振るように長い間を置いてから、芝居がかった口調で言った。
「――全治ニヶ月。それもマエダじゃなくて先輩達のほうがな。みんな病院送りだよ。まあ流石にやったのはマエダじゃなくて、アイツの知り合いかなんかだろうけど、それにしたってやり過ぎだ。
「だからそれ以来、マエダカンコはキレたら何するかわからない奴だって言われて、みんなびびっちまってるのさ」
 これで終わりだと言うように、男子生徒はパンと手を叩いた。
 ちょうどその時、黒板側のドアが開き、数学教師が入って来た。狙ったようなタイミングの良さだ。
「また後でな」
 男子生徒はそそくさと自分の席へと戻っていく。私も机の中から教科書とノートを取り出した。

 授業が始まり、黒板にチョークを走らせる音が室内に響く。授業に集中している者はノートをとり、そうでない者は腕を枕に眠っていた。
 そんな中、私はマエダカンコのことを考えていた。
 三年生の先輩方を病院送りにしたのは、間違いなくマエダカンコだろう。それはゆるぎのない確信だ。
 あの回し蹴りが脳裏をかすめ、思わず身震いする。
 男子生徒の話を聞いて、ますます私が殺される確率が上がった気がする。
 嫌だなあ、と思いながらノートをとる。まあ悩んだって仕方はない。今は、田中キリエへの告白について考えよう。
 そして、私は自身の初告白の言葉を思い浮かべていく。
 この時、私はひとつ見落としていることがあるのに気づいていない。
 私は、田中キリエがどんな人間なのかを全く理解していなかったったのだ。
<> 私は人がわからない
◆lSx6T.AFVo <>sage<>2010/04/19(月) 07:56:46 ID:kVeCnTh+<> 投稿おわりです。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/19(月) 18:17:15 ID:28sN564z<> GT <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/19(月) 18:35:20 ID:4aE4fD5b<> gj <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/19(月) 18:40:58 ID:YUXM36Mz<> 題名の無い長編 十五 続きます。
あと、よろしければ「sage」のやりかた教えてください。
<> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/19(月) 18:41:30 ID:YUXM36Mz<> 月曜日・夜中

 やった! やった! やったよ!
 修二くんの彼女になれた!
 ベッドに寝転び、ひたすら歓喜する。
 彼女がいないことは知っていた。
 危険因子はいたけど、手を出してないことも調べはついていた。
 略奪も考えたけど、そんなこと無いほうが良いよね!
 あの女はいいけど修二くんが傷ついたらダメだから。
 むしろあの女は死んでもいいくらいだよ。
 邪魔だし。
 でも、修二くんはあの女と仲良かったからなぁ・・・
 多分修二くんはあの女が死んだら悲しむだろう。
 修二くんは優しいから知り合いが死んだら誰だろうと悲しむんだろう。
 やっぱり事故に見せかけないとダメかなぁ。
 私が殺すとこ見たら修二くんに怖がられちゃう。
 もしかしたら嫌われるかもしれない。
 そんなのは本末転倒だ。
 じっくりと計画立てないと。
<> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/19(月) 18:42:07 ID:YUXM36Mz<>  木曜日・日没
 
 修二くんは優し過ぎる。
 私にはあの女の気持ちは解かる。
 修二くんとは離れたくない。
 でも修二くんは判ってないらしい。
 同情しないけど、修二くんの優しさは死刑宣告より残酷だ。
 優しさを向けられるのは嬉しい。けど気持ちに気づいてもらえない。
 同情したらきりがない。
 修二くんは私のものだ。
 ほかの女は諦めて他の男とくっつけばいい。
 修二くんに手を出したら消してやる。
 修二くんもあの女のことから早く解放してあげないと。
  <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/19(月) 18:42:37 ID:QniK1HYN<> GJ <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/19(月) 18:42:41 ID:YUXM36Mz<> 金曜日・早朝

 通話料・・そう聞いて真っ先に連想するのは携帯電話。
 俺に限らず、高校生以上の日本人の9割り以上が同じ事を思う筈だ。
 月も半分を過ぎ、日付が20に差し掛かる。
 そんな段階から今月の通話料が心配になってきた。
 何故と申せば答えよう。
 先日に告白を受けた川上・・他人行儀もアレなので以下、咲良とする。
 そして咲良からの通話・メール件数が日中平均30から多いと50を越える。
 一回の料金は微々たる物だろう・・・だとしても!
 平均30回って多すぎるだろ!!
 一人暮らし + 現在バイト無し + 父親の仕送り なんて生活の人間にはキツいものがありますよ!?
 しかもそのことで咲良に言うと、
 「わ・・私のこと・・なんて嫌いになったんで・・・すか・・?」
 とか誤差があってもそんなニュアンスのことを言われる。
 加えて、暗く濁った虚ろな眼に、喪失感だけで構成されたような表情になる。
 少し怖いってのもあるが、嫌いなんてことは断じて無い。
 金銭面の問題である。
 そして説得にとても時間がかかる。
 バイト始めようかなぁ・・・
 ある意味、人生の岐路に着いた。
  <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/19(月) 18:43:06 ID:YUXM36Mz<> ついでに、綾が以前とうって変わって異様にくっつくようになった。
 はっきり言って訳が判らない。
 で、少しでも離れるように言うと(彼女持ちとしての節度であるが)これまた判る範囲でも、絶望+喪失+悲嘆+恐怖+憎悪といった、一個人でも破滅の兵器を起動できそうな強い負の感情を覗かせる。
 こっちは落ち着くのが早いので割りと平気だが、気が気でない。
 恋人がいるという環境は男として喜ぶべきなのだろうが、今は重圧が勝っている。
 いつかは(ってか今すぐにでも)綾とは離れるべきだろう。
 だけどあの表情を見ると放って置けなくなる。 
 脇差の一件で異常なほど内向的になっていた俺を救ってくれたのは幼き日の綾だ。
 あの時鏡で見た自分の目つきに、綾の眼はよく似ていた。
 「借りを返す」それだけだと思う。
 綾と違い、俺では救えないかもしれない。 
 それでも放って置けなくなった。
 しかし問題点がある。
 家が近いということは当然として咲良と一緒に登下校することになる。
 そして「放って置かない」ということは綾も同行する。
 すると感覚的に半径2メートル圏内がグラヴィティエリアに変わる。
 咲良としては快くないはずだし、俺も心苦しい。
 綾のためじゃなければ絶対にそんな事はしない。が、決心が揺らぎそうだ。
 心は重くなる一方である。 <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/19(月) 18:43:41 ID:YUXM36Mz<>  「おはようございます!」
 澄んだ声が響いた。
 今日も朝から咲良が来たようだ。
 ちなみに俺は朝食を済ませ、登校時間まで一息ついていたとこだ。
 咲良が駆け寄ってきて、
 「はい、これ今日のお弁当です!」
 ドラマやマンガでしか存在し得ないモノと思っていたが、俺が体験する事になるとは。
 「あぁ、ありがと。」  
 弁当を受け取るが、嬉しさよりも今後の先行き不安のほうが強く、笑顔になれない。
 「・・修二くん、やっぱり私なんかの作ったお弁当なんて・・食べたくないんですか?」
 例の表情で迫られる。
 朝から拝まされるとは思わなかった。
 「いや、少し考え事をしててな。結構、家庭に関わるヘヴィな内容だったから気分良くないだけだ。咲良の作ってくれる弁当は大好きだよ。」
 我ながらふざけたことをのたまったものだ。
 顔が熱くなる。最後のとこが自分で恥ずかしくなってきた。
 当の咲良は表情を変え、頬を赤らめながら、愛玩動物を愛でるような眼差しを向けてくる。
 「修二くん、顔が赤くなってて可愛いですよ。」
 「ぅああ、支度するから待ってろ」
 心底恥ずかしくなってきたので強引に話を切り上げる。
 鞄を掴み、制服を整える。
 咲良をつれて玄関先へ。
  <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/19(月) 18:45:28 ID:YUXM36Mz<> 投稿終了です。
中途半端な切りになってしまいました。(投稿直後 後悔)
あと、だれかsageかたを教えてください。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/19(月) 18:50:25 ID:4aE4fD5b<> メール欄にsageと入力する <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/19(月) 20:40:10 ID:HS9T8GNJ<> >>229

GJっす

ヤンキーコワス <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/19(月) 20:45:23 ID:WDxjoWVA<> GJ


ぶっちゃけ、sageの意味って何? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/19(月) 22:05:45 ID:4BcdYHD/<> GJ!!
玄関先に綾が待っていることに期待

<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/19(月) 22:29:20 ID:28sN564z<> >>242
違う意味で病んでる人から身を隠すため。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/20(火) 00:48:55 ID:nVq773lP<> いつのまにか香ばしいスレになったな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/20(火) 01:12:31 ID:ppPk++jV<> 乙だぜ。
だけどな。
わからない事は、まず自分で調べる癖を付けた方がいいぜ。
ここに来てるって事は、子供じゃねぇんだから <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/20(火) 04:19:59 ID:gxrqIGiW<> >>246
その気持ち悪い文章を何とかしろ <> 真野 司
◆Thmxzr/sD.HF <>sage<>2010/04/20(火) 05:35:31 ID:mjRXjmEu<> 前スレの終わり頃に投下したものの続きです。

投下開始。









第一話 「目覚め」









<> 第一話 「目覚め」 1/11 
◆Thmxzr/sD.HF <>sage<>2010/04/20(火) 05:36:22 ID:mjRXjmEu<>
何度、この窓からこの景色を見ているのだろうか。

確かに素晴らしい眺めだし、少しずつ変化もある。
季節や時間で徐々に景色は移ろっていくし、
その中でここからではとても小さくゆっくりと動く
遠くの車、人、小舟などが見える。
この窓からの眺めは好きだ。
好きではあるのだが――

もう、とうの昔に見飽きてしまっている。
毎日これを見ているのだ。

でも他に時間を潰し、気を紛らわせるいい方法が無い。
時間があるなら本当は勉強などもした方が良いのかもしれない。
でも、やる気など起きるはずもない。
やりがいがない。
どうせ無駄になるのだから。

だから結局、窓の外を眺める。
特別な喜びなど何もないが、
それでもこの空だけは常に自分の傍に居てくれるから。
ほんのささやかだが確かに慰めてくれるから。

でも、本当は――

「――っ。」

そうしているうちにふと、気付いた。
何時しか身体の中を徐々に満たし始めた悪寒に。

まただ。
また、アレがやってくる。
寒くて、熱くて、息が出来なくて、押しつぶされる、あの地獄が。
生きている筈なのに死者しか行けない地獄の底に、
しかも永遠にも思える永い時の流れるあの場所に、
さらには悪夢と違い生きた感覚を残したまま無慈悲に沈められ続ける。

今まで何度、何十、何百と、数え切れない繰り返しを耐えきってきた。
そのために今日も薬を飲んでいる。
でも、それはこの体を治してくれる訳じゃない。

命を繋ぎ、ようやく地獄の底から這い上がれた後に待っているのは、
また次に地獄が訪れるのを待つだけの時間だ。
治療はただ今を、苦しみを維持するだけだ。
時間は苦しみだけを届け、そこに未来はどこにも無い。

それでも耐えられたのは、一縷の望みがあったから。
一人で沈められ、絶望の中で永い時を過ごす内、
芽生えていったその願い。
治らなくてもいいし、助からなくてもいい。
だから――

でも、そんな都合の良いことあるわけがない。

この命はただ永遠に死に続けるためだけにある。
治る事も無いだろう。
そしてせめてもの望みも叶う筈もない。
それならもう、いっそのこと――
<> 第一話 「目覚め」 2/11 
◆Thmxzr/sD.HF <>sage<>2010/04/20(火) 05:39:33 ID:mjRXjmEu<>


     *      *      *      *     *



深夜に程近い時刻、中橋駅周辺。
駅前にはこの時間にはとっくに閉店している幾つかの大きな百貨店があり、
さらに五階建て前後の様々なテナントの入った商業ビルが立ち並ぶ繁華街が
駅周辺の大通り200m圏内に渡って続いている。
まだこの時間でも駅からは通勤帰りの人間が吐き出されていき、
それらの客を目当てに居酒屋、飲食店、カラオケ、
ビルに掛かった様々な店舗の看板はネオンを放ち続ける。
街には光と活気があった。

だがその中心から少し離れただけでも、人気の消える場所はある。
ここ、手旛経済大学と鉄道線路の間もそのひとつだった。
この大学は繁華街と線路を隔てた隣の立地に、
それなりに広い敷地を持っているのだが、
その一辺がちょうど4本のレールの敷かれた広い線路に面しているのだ。
夜間に大学に出入りするものもほとんどいなければ、
まさか線路に用事があって来る者がいるはずもない。
道の両側とも人の訪れる要素は皆無だった。
そのため大通りと大通りに挟まれていながら、
人通り、車通りの欠けた、まばらな街灯だけがある暗く長い道が
100メートル近く続いていた。
繁華街の光の影に隠れたビルの谷間である。

「……めえ! ……たばれ!」

そこで今、人の怒声が響いていた。
もつれあう三人の高校生くらいの少年。
喧嘩――。
というよりも二人組が一人を一方的に暴行していると言った方が近い。
一応やられている方も抵抗はしているようだったが、
二人組に掴まれ、殴られ、蹴られ、どうにもならないようだ。
その二人組は絵に描いたような不良少年だ。
やたらサイズの大きな服をだぶらせた格好をしていて、
髪型はそれぞれ、パンチパーマと、スキンヘッド。
彼らは仮に自分が何をしても決して後悔しないだろう――
そんなことがわかる野卑な顔をしている。

やられている方の不幸な少年――
パーカーを着ている彼が因縁をつけられたのだろう。
たまたま通りかかり、この道の入り口から様子を遠巻きに眺める
とある通行人の目にはそうとしか見えなかった。

しかし、やられていたかに見えたパーカーの少年が弾かれたように動いた。
その途端、二人組の片割れのスキンヘッドの少年が悲鳴を上げた。
「ぐああっっ!」
彼は目を押さえて後ろにのけぞる。
その隙にパーカーの少年は二人組から逃れるようとするかのように、
足をよろめかせながら二、三歩分走ったが、
そこで独楽のように鋭く回転し振り向く。
振り向いた時には既にパンチパーマの少年を向いて構えていた。 <> 第一話 「目覚め」 3/11 
◆Thmxzr/sD.HF <>sage<>2010/04/20(火) 05:41:22 ID:mjRXjmEu<>
右拳を胸の中央に当てるよう腕ごと体に付け、
左拳を若干前に突き出している。
体は相手に対し斜めにし、足を肩幅より少し広く開いている。
そして荒い息づかいをしながら、眼光鋭く睨み付ける。

「……っ!」

睨み付けられたパンチパーマの少年は気圧され、
ちらりと横を見た。

「あーっ、目があー! 目がぁー!」

くそったれが。
パンチパーマの少年は舌打ちをした。
仲間のスキンヘッドの少年、彼は目を押さえて悲鳴を上げている。
もう戦力外だ。
ここは自分の力だけで切り抜けなくてはならない。
しかし、自ら仕掛けに行く勇気も無く、その代わりに吼える。
「てめえ! よくも金田をやりやがったな!
 こんなことしてどうなるか、わかってんだろうな! ああ!?」
恥も外聞もなく、下劣さをぶちまけるのをためらうことなく、
パンチパーマの少年は喚く。
するとパーカーの少年が小声で何かを呟いた。
「……せえ。」
「何?」
「……うるせえ。ゴミが人間みたいに口を聞くんじゃねえ。」

そう言った瞬間、パーカーの少年が地を蹴って間合いを詰めた。
それがパンチパーマの少年にも切っ掛けとなり、
前に出ながら、拳を振りかぶる。

影と影が街灯の下、交錯する。
次の瞬間、一方の影が体を反らせながら大きくのけぞり、
もう一方の影がそれを追ったかと思うと二つの影は組み合い、
一つになったまま地に転がった。
そして組み合った影が静止すると、一瞬の間を置き、呻き声が上がった。

声を出したのは下になったパンチパーマの少年の方だ。
上をとったパーカーの少年の膝が、
横向きに地面に寝ている彼の鳩尾(みぞおち)にめり込んでいる。

パンチパーマの少年は体を丸めて、
見えない器具で固定されているかのように口を開いたままの状態で、
虫の音のようにか細く震える呻き声を上げ始めた。

「ぁ……が……ぁぁ……ぇえ……ぉぁ……ぁ……」

鳩尾に対する打撃が完全にしっかりと決まったなら、
その衝撃は腹部を走るのではない。
腹部に"注入"され、異物として滞留する。
気付くと突然、自分の腹に決して有るはずのない
ボーリングの玉よりも重い重量物をねじ込まれているのだ。
すると何一つ出来なくなる。
声を出すことも、立っていることも、体を動かすことも。
腹を拡張する異物感に、重量に、ひたすら苛まれ、のたうち苦しむのだ。 <> 第一話 「目覚め」 4/11 
◆Thmxzr/sD.HF <>sage<>2010/04/20(火) 05:43:15 ID:mjRXjmEu<>
そうしてパンチパーマの少年も何一つ身動き出来ず、
そうした地獄の苦しみを味わっていたが、
その最中、胸の上に何かが乗しかかる衝撃を感じた。

「ぁあ……ぁ……ぇ……?」

自分の上にあるのは、パーカーの少年らしき姿。
らしきと言うのは、ちょうど街灯の下に居るため
自分の上に乗るパーカーの少年はその眩しい光の逆光となり、
彼の姿がよく見えないのだ。
顔の表情も窺い知ることが出来ず、まるでのっぺらぼうのようだった。
ただその顔に、殺意の塊のような目のぎらぎらした輝きだけが、
浮かんでいて、こちらを見ていた。
そして顔の横には、何かがある。
腹部を苛む苦しみの中でも、目だけは唯一動かすことが出来る。
その目を頼り、必死に目を凝らす。
振り上げられた肘だ。
気付いた瞬間、パーカーの少年の顔の下半分が動いた。
それが何なのかパンチパーマの少年は見た。
左頬を思い切り吊り上げて、嗤ったのだ。

まさかこいつ――

パンチパーマの少年が意図に気付いた時には、
それは彼の顔面めがけて振り下ろされた。

一発。
二発。
三発。
四発。

歯がへし折れたのだろうか。
頬骨が砕けたのだろうか。
わからない。
何もわからない。
ただ、しっかりと体重の載せられた肘が一発一発丹念に打ち下ろされ、
自分の顔より遥かに硬い骨の槌が一つ当たる度に
顔が壊れていくことは感じとれた。
だが体が動かせないため全く何も出来ない。
やめてくれと哀願する事も、手で顔を庇おうとする事も何一つ。
何も出来ないまま骨をも砕きかねない攻撃をただ無防備に受け続けるという、
いつ終わるとも知れぬ地獄の時間を、ただ味わい続ける。
とうに戦意は折れ、パニックを起こしていた。

五発。
六発――

やめてくれ。
やめてくれ。
そう、心の中で叫び続けてどれほど経ったか。
気付くいた時には既に攻撃は止んでおり、
自分の上にはもう誰も乗っていなかった。 <> 第一話 「目覚め」 5/11 
◆Thmxzr/sD.HF <>sage<>2010/04/20(火) 05:44:17 ID:mjRXjmEu<>
パンチパーマの少年は苦しみながらも心の中では安堵したが、
その代わりに少し離れた所、彼の視界の後ろの方から声が聞こえた。
「や……やめっ……ぎゃ!」
仲間のスキンヘッドの少年の声だ。
何かが他の何かにぶつかる音もした。

そしてそれから約10秒後。
やっと鳩尾に打ち込まれた打撃の効果が薄れて
体が動かせるようになった時には、
既に仲間の悲鳴も聞こえなくなっていた。
パンチパーマの少年は地面に横たえた体を何とか転がし、
恐る恐る悲鳴や音の聞こえていた方向を確認した。
そこでは自分と同じように、スキンヘッドの少年が地面に転がって呻いている。
その更に先に、ここから走り去る背が見えた。

この暗い道から大通りに向かって徐々に彼の背は小さくなり、
道の入り口で遠巻きにこちらを眺めているいくばくかの見物人の間を抜け、
光を放つ大通りに消えた。



     *      *      *      *     *



一帯は比較的最近に高台の山と森を切り開いて作ったばかりの
新興住宅地だった。
ここはその端の方に位置しており、宅地もまだ建っておらず、
先に作られた無駄に広い歩道を備えた新しい道路だけが有り、うら寂しい。
周辺には自然が残っているのでここからは下の方に広がっている
田園風景も見ることが出来る。
その歩道に彼は――
パーカーの少年はもたれるように座り込んだ。
隣にはきちんとスタンドを立てて止めることもせずに放り出したために、
音を立てて倒れてしまった彼の自転車がある。
先程二人組の不良を倒してのけた後、
喧嘩の現場の近くに駐輪しておいた自転車に乗り、
繁華街から相当離れたここまで逃げて来て、やっと自転車を降りたのだ。

嫌に肌寒い夜だ。
三月の月末で、もうじき春に差し掛かろうというのに、
まるで一ヶ月ほど前のように冷たい風が吹く。
そんな中、少年はおもむろに着ている服をめくり、腹を出した。
そして自分の脇腹が今までに全く経験のない腫れ方を
しているのを見て、少年は呟く。

「まずいな――」

今まで感じたことのない激痛が、脇腹に走っている。
冷や汗、脂汗のようなものが止まらない。
先程の喧嘩の際の怪我によるものだが、明らかにただごとではなかった。
怪我を受けた直後、大量のアドレナリンが分泌され痛みが気にならない筈の
喧嘩の最中から既におかしな痛みが走っていた。
興奮状態が収まりつつある今、
その痛みはもう無視など出来ないほどに増していた。 <> 第一話 「目覚め」 6/11 
◆Thmxzr/sD.HF <>sage<>2010/04/20(火) 05:47:05 ID:mjRXjmEu<>
怪我をした箇所には心当たりがあった。

第十、第十一肋骨――
肋骨の下部二つの骨である。
他の肋骨は全て胸骨と繋がるように輪になって
支え合うような構造になっているのだが、
これらの骨はそこまで繋がっていない上、しかも細い。
更には先細りして尖った先端で終わっている。
強度の低い構造をしたおまけのような肋骨のため折れやすく、
しかもその場合尖った先端部分が内臓、血管などに突き刺さる可能性もある。
危険な怪我だ。

病院に行かなくてはならない。
しかし――

少年は躊躇していた。
先程の喧嘩のことが頭をよぎったのだ。
顔にも傷があるだろうし、拳も腫れている。
医者に診てもらえば、喧嘩での怪我であることを
容易に察っせられてしまうだろう。
そうなれば警察に連絡が行きかねない。

簡単に決められることではない。
少年は悩んだ。
そうして思い悩む内、弱気になった少年の心に後悔が入り込み彼自身を苛む。

どうしてこんなことになった。
何故俺は、こんな災難に遭うんだ?
決まっている。
それは、俺がこんな性格をしてるからだ。
だから僅かなものを得るためだけに、
こんな危険な目に遭わなくちゃならない。

本当は楽に生きていきたいのに、なんでこんなことに。

そうだ。
俺の望むものなんて、結局は見つかりっこない。
ただの妄想だ。
こんなことして何になる。

それよりも世の中には楽しいことなんて幾らでもある。
こんなことと比べれば遥かに簡単なことが。
誰もが行っているのと同じように、
ただ普通に日々を暮らせばそれでいいんだ。
そうすれば俺だって――

なんて、な。

それには受け入れてくれる人間が必要なんだ。
だから、そんな当たり前のことが俺には―― <> 第一話 「目覚め」 7/11 
◆Thmxzr/sD.HF <>sage<>2010/04/20(火) 05:48:56 ID:mjRXjmEu<>




一体どのくらいの間、そうして少年はそこで俯いていただろうか。
時間の経過で落ち着いたのか。
それとも怪我の弱気ゆえか。
ともかく、やっと病院に行くかどうかの結論を出しつつあった。

一体何を迷っていたんだ。
よく考えてみろ。
俺はあの二人組に確かに重傷を負わせただろうが、
俺の脇腹が折れていたら怪我の程度は同じなんだ。
条件は五分。
警察に通報されたら、その時はその時だ。
病院に行こう。

何はともあれ少年はやっと意を決し、
どこの病院に向かえばよいか考えた。
すると心当たりが浮かび、顔を上げた。
田園を隔てた向こうの山の森の上に、
突き出るように光を放つ病院の建物が見えた。

近いし、大きいし、あそこにするか。
自転車でかなりの距離を逃げたんだから、
あのゴミ達はこの辺の病院送りにはならない筈だ。

決まったなら、いつまでも座り込んでいるわけにも行かない。
下手に動いて脇腹に更なる激痛を味わいたくないが、
少年は歯を食いしばって強引に立ち上がる。
「っ……! …………ふぅ。」
何とか激痛に耐え、声は出さずに息を吐くだけで済んだ。
そうして俯いていた顔を上げた時、少年の目が止まった。

「――っ。」

すぐ目の前の車道。
車の通り道のど真ん中に、少女が立っていた。
もちろんここに来た時は誰も居なかった筈だ。
少年からは八メートル程の距離があり、
歩道に居るこちらの存在に気付いていないのか、
少女は道路の彼方をただ見つめている。

あまりにおかしな様子だ。

何故、車道の真ん中に呆然と立ち尽くしているのか。
まるで車が自分を轢くのを待っているかのようであり、
もしくは交通事故で亡くなってしまい夜ごと現場を彷徨う
幽霊が現れたようにも見える。
だが彷徨う幽鬼にしてはあまりに姿がはっきりしていて、
得体の知れない気味悪さのようなものはない。
その代わり、鮮明に窺えてしまうのだ。

その肩から、腕から、指の先から、立ち方から。
そして何より、道路の彼方どころか更に遠くを見つめるような細められた目。
それが一体何を見ているのか何となく気付いた時、全てが伝わってきた。
得も言われぬ彼女の悲しみが。 <> 第一話 「目覚め」 8/11 
◆Thmxzr/sD.HF <>sage<>2010/04/20(火) 05:52:03 ID:mjRXjmEu<>
唐突に胸がずきりと痛んだ。

その時、道路の彼方を眺めていた少女が
何気ない仕草でくるりと体の向きを変えた。
それは少年の方向である。
こちらには気付いていなかったのか少女の視線は一瞬通り過ぎた後、
はっとした顔をしてすぐに視線をこちらに戻した。
その瞬間目と目が合う。
驚いたのか、少女は細めていた目を見開いた。

やはり少女は先に来ていた少年の存在に気がついていなかったのだ。
ちょうど歩道に座り込んでいた少年の姿を覆い隠すように、
道路側の植え込みには膝丈より少し上くらいの低木が植えられていた。
立ち上がるまで気付かなくても無理はないかもしれない。

少女にとっては間違いなくまずい所を見られてしまったに違いない。
少年に気付いた少女は怯えた様子を見せ、前にも後ろにも行けずに
その場に立ったまま、目だけが少年に釘付けになっている。
少年も彼女を見つめたままだ。
その脳裏には、何も考えや言葉など浮かばない。
ただ、ほんの僅かな時間がとても長く感じられた。

だがその長い間は、秒数にして二秒と持たなかった。
噴火のように突如上がったエンジン排気音が、
二人の静寂を切り裂いた。

――車!?

少年は咄嗟に音源の右方向を振り向きかけたが、
少女から目が離れたその瞬間
「きゃっ!」
小さな悲鳴を聞き、首を戻した。
先程の場所で少女は尻餅をついていた。
その間にも右の方から車の排気音の哮りがぐんぐんと距離を詰めて――













<> 第一話 「目覚め」 9/11 
◆Thmxzr/sD.HF <>sage<>2010/04/20(火) 05:53:21 ID:mjRXjmEu<>

























































<> 第一話 「目覚め」 10/11 
◆Thmxzr/sD.HF <>sage<>2010/04/20(火) 06:04:23 ID:mjRXjmEu<>

























































<> 第一話 「目覚め」 11/11 
◆Thmxzr/sD.HF <>sage<>2010/04/20(火) 06:05:33 ID:mjRXjmEu<>














――――声。

「この…が慎……んだ……」

額に何かがフれ……動イテ……

アレ。

ナンダっけ。

今日は、起きナキャ活けない日?

計算スるト……眠った解きハ……

なかナか、うまく考エられ……


そうだ。
この体を包むもの、布団、だ。
この、感覚。
は、起きる時の。
そして、これ、何だ。
額を這う、この感触は――

少年の額を柔らかな指が撫でる。
思考が纏まりを持たず、全てが曖昧な目覚めのまどろみの中、
その感覚だけは少年に鮮明に届いた。
まるで天から伸びてきた手に腕引かれるように。
そのいざないのままに、少年は眼をゆっくり開いた。

白い。
瞬時にまばゆい光が視界を覆い、目が眩む。
そしてそれがゆっくり引いてゆくと、
目の前に何かが浮かび上がっていく。

誰かが、居る。
俺を見ている。
あれは――

「――っ。」

少年が目にしたもの。
それは午後の暖かな日差しの中、
日の光を受けてほのかに輝く少女だった。
<> 真野 司 
◆Thmxzr/sD.HF <>sage<>2010/04/20(火) 06:08:53 ID:mjRXjmEu<> 投下終了。

さっさとタイトルを決めないと、何の作品だかわかりづらいですよね。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/20(火) 11:12:17 ID:gsdZUg9u<> GJ!
しかし、2レス分の空白ってアリなのか?1ページ空白になっている本を読んでる気分だった <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/20(火) 11:14:32 ID:7QDLV7f2<> GJ

まぁ俺はそれも表現の仕方ではあると思うよ
一瞬ん?とはなったけど <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/20(火) 11:59:22 ID:0ss2Eac9<> よくよく考えるとヤンデレによる監禁って、元は内気で大人しくて優しい女の子だから
監禁されると甘いお菓子よりも甘い生活が待っているわけだよね <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/20(火) 12:58:55 ID:DNPPOodr<> まったく違うな。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/20(火) 13:08:35 ID:Hy2CHgBC<> 彼女によるとしか
が、場合によっては甘々ヒモ生活ができそう <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/20(火) 16:56:36 ID:n8KR3Mg5<> 彼女の家から外に出ようとしないこと
外部と一切の連絡を取らないこと
この先ずっと彼女を愛し続けること

これだけ守ってれば案外幸せな生活なのかもしれん
ネット環境が無いと結構地獄だが <> サトリビト<>sage<>2010/04/20(火) 18:05:12 ID:0HSRQJj6<> サトリビト3話ができましたので投下します <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/20(火) 18:06:02 ID:YOa6rGlO<> 四円 <> サトリビト<>sage<>2010/04/20(火) 18:06:46 ID:0HSRQJj6<> 私の名前は佐藤陽菜。
私にはみんなには言えない秘密がある。
人の思考が分かるのだ。
科学者たちの間ではこの能力の事やそれを持っている人を総称してサトリと呼んでいるらしい。
このサトリと呼ばれる能力には先天性と後天性の二種類が存在し、後者の方は主にこの能力が未発達で強い感情にのみ力を発揮するようだ。
サトリの多くはこの後天性の方を指している。
だが稀に生まれたときからこの能力を発揮できるものがいる。先天性だ。
先天性には後天性と違う3つの特徴がある。
集中さえすれば頭に響いてくる声の音量を調節できること、感情の起伏に関係なく、頭をよぎった程度の思考さえも聴きとれること、そしてサトリでさえも心を悟ることができないことだ。
これだけを聞くと先天性として生まれた人たちは幸せと思うだろう。実際私も普通の人間として生まれてきたらそう思ったに違いない。
しかし先天性には先天性ならではの大きな悩みがある。
もし自分が先天性のサトリだと周囲に知られたら、人が自分から離れていく。
当たり前だ。誰が好き好んで自分の頭の中がさらけ出されることを良しとしようか・・・
幼稚園の頃はそんな悩みなんてほとんどなかったが、物心がついてからは毎日が絶望だった。
すこしでも能力制御の気を緩めて男の子と話しただけで、その子のことが好きな女子から死ねっ、と言われた。もちろん頭の中でだが。
それから私は人の心に気を使うようにした。
そのせいで私に付けられた印象は根暗。日に日にクラスで空気になっていく私。
泣きたくて、誰かにすがりつきたかったがそんなことはできない。
「私は人の心が分かるせいでつらいです」って言えるわけないじゃない。
そんなことを言った日には私の居場所はこの世界から消えてなくなる。
どんなにつらくても誰にも助けを求めないで生きていくしかなかった。
そんな私の心情なんか知りもしないで今日もアイツは笑っている。
早川慶太。
一応私の幼馴染だ。一応というのはアイツのことを幼馴染だと認めたくないからだ。毎日一緒にいるのに私のことを知ろうともしない。
それに・・・私とは違い普通の・・・幸せな人間だ。
そんなある日、風邪で学校を休んだアイツの家にプリントを持っていけと先生に言われた。
はっきりいってイヤだったが、人に嫌われることを恐れている私に拒否権はない。
プリントを渡してすぐに帰ろうと思い、アイツの家の前までやって来た。そのとき・・・
(消えろ!消えろ!消えろ!消えろ!消えろ!消えろ!消えろ!消えろ!消えろ!消えろ!消えろ!消えろ!)
突然頭のなかに大きな声が響いてきた。
そのあまりの音量に私は頭を押さえてその場に座り込んだ。
意識を集中させる。徐々に頭の中の声は静かになっていく。
もう少しで消えると思った瞬間、ある言葉が頭に響いた。
(なんで聴こえるんだ!?)
聴こえる?
普段なら気にも留めずに聴き流す言葉だ。しかしこのときはなぜかひっかかった。
試しに心の中で叫ぶ。
(慶太ー!!)
しかし慶太のパニックになっている声は聴こえるものの、私の心の声に反応した様子はない。
やっぱり勘違いか・・・
慶太の家に入り、プリントを玄関に置いて帰ろうとした時だった。
「キャー!!」
(ゴ、ゴキブリー!!)
隣の家からお母さんの絶叫が聴こえた。まったく、ゴキブリくらいで。
私は最後に慶太の苦しんでいる顔でも見ようと、慶太の部屋に向かった。
慶太の部屋に入った瞬間、私はビックリした。慶太の顔が真っ青になっていたからだ。
さすがに心配になって声をかける。
「ちょっと慶太、大丈夫!?」
慶太は私に気付いていない。
しかたなく慶太の心の声に頼ることにした。
(また聴こえた!陽菜のお母さんの声が!ゴキブリって!)
呼吸が止まる。
お母さんは叫び声しか上げていない。ゴキブリなんて一言も口にしていない。
私はあまりの歓喜に体の震えが止まらなくなった。
仲間を見つけた事。
そして慶太がこれから私と同じ苦しみを味わっていくことに・・・ <> サトリビト<>sage<>2010/04/20(火) 18:07:14 ID:0HSRQJj6<> それから慶太は学校を休み続けた。そして私は毎日慶太の家に通った。
別に慶太のことが心配だったわけではない。自分と同じ苦しみを慶太も味わっているのが嬉しかったからだ。
慶太の顔には覇気がなく、頭の中は絶望でいっぱいになっていた。
その様子がたまらない。
私はあることないこと慶太に話した。
「今日学校でリサちゃんが〜」
「今日休み時間に田中君が〜」
私に友達なんかいない。こんな嘘をいっても虚しいだけだ。
分かってはいるのだが、口が止まらない。いつも私がしてきた思いを慶太にも味わってほしい。
ところが効果は逆だった。
慶太の頭の中には私に対する感謝の気持ちと好意ばかりが募っていったのだ。
なんで?
私は躍起になって毎日毎日慶太の家に通い詰め嘘をつき続けた。
このとき私の心の中では、慶太の絶望を感じたいという気持ちに混ざってもうひとつの思いが生まれていた。
慶太が私の秘密を知ったらどうするのだろうか?それでもこうして好意を寄せてくれる?それとも・・・
そこまで考えたとき、私は恐怖で胸が張り裂けそうになった。
今まで色々な人で想像した事はあったが、ここまで怖いと感じたのは初めてだ。
勝手なのは分かっている。それでも慶太にだけは離れて行ってほしくなかった。
慶太は私のことを全然理解してくれない。みんなと同じだ。
だが一つだけみんなと違う事がある。いつも私の味方だった。
私の悪口を考えたこともなかったし、私に何かあるといつも心配してくれた。
なぜ気付かなかったんだろう?
その日私は慶太の家からは帰った後、部屋に閉じこもり泣き続けた。罪悪感と恐怖感に苛まれながら・・・
どのくらいの時間泣いたのだろうか。
私はインターホンが鳴る音で今が夜だと気付いた。
家には誰もいない。しかたなく玄関のドアを開けると、そこには引きこもっていたはずの慶太がいた。
そして私を見るなり明日から学校に行くと言ってきた。
私は涙を流した。
今慶太が言った言葉に対してではない。私の頭の中でささやかれている、私のことが好きという言葉。
嬉しかった。
こんな私の事を好きになってくれるなんて。
私はやっと自分の思いに気付いた。
慶太が憎かったのではない。好きだったのだ。好きだから・・・同じ思いを共有してほしかったんだ・・・
それからというもの、私の世界は見違えるほど変わっていった。
人に嫌われる事をそれほど怖いと思わなくなったのだ。
慶太は絶対に私のことを嫌ったりはしない。いつも味方でいてくれる。
それで十分だった。
そう思うとクラスの人に対する振る舞いも自然になり、小学校を卒業するころにはクラスの中心になっていた。
<> サトリビト<>sage<>2010/04/20(火) 18:07:42 ID:0HSRQJj6<> 順風満帆な生活が続くと思った矢先、私は中学2年の途中で転校する羽目になった。
正直慶太のそばを離れるなんて耐えがたいことだったが、当時14才の私にはどうすることもできなかった。
毎日を無気力に過ごし、転校した先でも考えるのは慶太の事だけ。
電話やメール、数ケ月に一度の遊びだけではものたりない。
そんな折、一本の電話が鳴った。慶太からだ。
いつものように無駄話を永遠としていたとき、ふと慶太の口からある名前が出た。
「〜でさ、岡田と一緒に・・・」
私は驚いた。慶太の口から私以外の女の子の名前が出たのはこれが初めてだったからだ。
結衣は美人でクラスの人気者でみんなの憧れの的だった。
「ねぇ慶太、いつから結衣ちゃんとそんなに仲良くなったの?」
声が震えているのが分かる。電話だと心が読めない分、怖い。
「ん〜と、確か同じ高校に入学したときくらいかな?あ、でも初めて話したのは中学2年の時の運動会で・・・」
運動会は確か10月。私が転校した一ヶ月後だ。
そんなことを考えていたとき、ふとある疑問が浮かぶ。
「あれ?今同じ高校っていった?」
「ああ、岡田も同じ高校だな」
慶太が通う学校は家から遠い。確か電車でも40分かかる距離だ。
そんなところに結衣もいったの?
嫌な予感がしてならない。
「まさか結衣ちゃんがいるからその高校に行ったんじゃないの〜?」
私は冗談っぽくおちゃらけた声で聞いた。しかし本心では真剣だ。
「・・・いや、そんなんじゃないよ」
なんで即答しないの?
分かっている。即答しなかった理由は・・・嘘をついたからだ。
嫌な予感が確信になった瞬間だった。
慶太は小学校のことがあってから私一筋だ。これは絶対に変わらない。
となると他に思い当たる可能性は二つ。たまたまそこの高校の偏差値が二人に合っていたか・・・あるいは慶太の同情心を煽ったかだ。
慶太の頭の良さは数学以外は普通。それに比べて結衣は全教科優秀な方だ。
そうすると前者は考えにくい。
中学の友達が誰もないような遠くの学校へ通っている二人・・・
可能性から考えると確実に後者だ。
ふ〜ん、そういうこと・・・私がいなくなった瞬間に慶太に近づいて悲劇のヒロインか何かを演じたってわけ?
私の心に感じたことのない思いが沸々と湧きあがってくる。
ここまで慶太の心に他の女が侵食していたなんて。
私は絶対に使うつもりがなかった切り札を取りだすことに決めた。しかしこれには大きなリスクが伴う。
だがこれからの私と慶太の将来を考えると、ガンは早めに取り除かないといけない。
私はその日両親と家族会議を行った。
「実は二人にお願いがあるの。私、あの家に戻りたい。それも今すぐに。いいでしょ?」
突然の私の発言に両親は唖然としたが、すぐに気を取り戻し反対した。予想どうりの反応だ。
しかたがない、やはり切り札を使うことにしよう。
「お父さん、そんなに部長さんのこと嫌い?毎日毎日悪口言って〜」
「お母さんもそんなに和田君のお母さんが嫌い?顔合わせるたびに悪態ついてるし〜」
私の言葉に両親は言葉を失った。当然だ。なんせ二人とも私どころか誰にもそのことを漏らしていないはずだから。
「もう一度きくね?私、あの家に帰りたいの。いいでしょ?」
今度こそ両親は首を縦に振った。
<> サトリビト<>sage<>2010/04/20(火) 18:09:26 ID:0HSRQJj6<> 転校した初日、私は笑いが止まらなかった。
なんせあの美人でみんなの憧れだった結衣が、私が戻ってきたことに対して怒りを顕著に表していたからだ。
いい気味だった。だがこれくらいで私の慶太に手を出した罪を許すつもりはない。
私はあえて授業中や休み時間は慶太以外の人と話をした。大好物は最後までとっておく。これが私の流儀なのだ。
放課後になったところで私は大好物をいただくことにした。
「ごめん、さっき先生に呼ばれちゃって・・・先に行っててくれる?」
先生に呼ばれたなんて嘘だ。
私は先生のところに行くふりをして、誰もいなくなっていた隣の教室に入った。そして心の声に集中する。
それにしてもさっきの結衣の心の声は傑作だった。
私と慶太を二人っきりにさせたくないの?でもざ〜んねん。私と慶太は幼稚園の頃からずぅぅぅっっと一緒だったんだよ?転校した後も慶太とは何度も二人っきりで遊んだんだよ?それに戻ってこないわけないじゃん!大好きな私が戻ってこないと慶太が悲しむでしょ?
思わず笑いそうになったところで、結衣の悲痛の叫びが聴こえてきた。どうやら慶太が私のことが好きだと言ったらしい。
そろそろいいかな?
私はあたかも職員室から走ってきたように、息を切らせながら教室に戻った。
教室に入った瞬間空気が重いことに気付く。
理由は分かっていたがあえてとぼけてみる。
「どうかしたの?」
「陽菜ちゃんには秘密の話してたの〜」
結衣が明るく答えた。
すごいね〜結衣ちゃん。フラれたくせにまだ笑っていられるんだ?
私はカラオケに行く道中もしつこくそのことを聞き続けた。
私が質問するたびに結衣の心の声は次第に小さくなっていく。いっそのことそのまま心が壊れてしまえばいいのに・・・
「陽菜、さっきはくだらない話をしていただけだから」
慶太が突然話しかけてきた。
そうだ!慶太にこの女のとどめを刺してもらおう!
「じゃあ何の話していたのか慶太が教えてよ」
「今日カラオケで何歌おうかって話」
「絶対ウソだー!」
もう・・・じれったいな〜。早く言わないとあの女の心が回復するかもしれないでしょ?
この時私は結衣の心の声に気を取られ、慶太の心の声にはまったく気付かなかった。
「なんでそんなことで嘘つくんだよ」
「だって嘘っぽいもん!」
「あー、もう、うるさいな!そんなに俺の言う事が信じられないのかよ!」
辺りが静寂に包まれた。
・・・慶太が怒っている?私に?
そんなはずはない。それに・・・怒るなら私の方だ。そもそも慶太がこの女に関わりさえしなければ何事もなかったのに。
そう思うと慶太に対して怒りが込みあがってきた。
「・・・なんで慶太に怒られないといけないの・・・?」
そうだよ・・・あの女が一番悪いけど、慶太にだって非があるんだよ?・・・私以外の女に好かれるなんて!!
「ウソつく慶太が悪いんでしょ!?」
「っ!?だから嘘じゃないって・・・分かった、もういい・・・」
慶太が押し黙った。
マズい。これは慶太が本気で怒ったときの態度だ。
冷静になって慶太の頭の中に集中する。
(陽菜がこんなわからず屋だったなんて・・・)
慶太が初めて私のことを不快に思っていた。
呼吸が止まる。息ができない。あれ、息ってどうやって吸うんだっけ?
ようやく呼吸のやり方を思い出したときには慶太はいなくなっていた。
どこに行ったんだろう?トイレかな?
(け、慶太のやろーっっ!!こんな危険コンビを置いて帰りやがってっっ!!)
コイツは何を言っているんだろう?慶太が私を置いて帰るわけないじゃない。
(そっか!この手があったわ!慶太がこの女のことを嫌いになれば、私が繰り上がって慶太の好きな人に・・・)
ふざけんな!慶太が私のことを嫌うはずがない!それに私の次なんていない!慶太が好きなのは私だけなんだ!
しかし心のどこかではいつも恐れていた。もし慶太が私のことを・・・ <> サトリビト<>sage<>2010/04/20(火) 18:10:56 ID:0HSRQJj6<> 「ごめんね、私急に用事思い出したから帰らなきゃいけないの。今日は誘ってくれてありがと〜!」
慶太には悪いと思ったけど私は家に帰ることにした。なんせ準備がいろいろと必要だからだ。
9時まで家にいよう。その間に慶太が謝りに来たらすべて許して元通りだ。
9時を過ぎてもこない場合、私が直接慶太の家に行こう。そのときは不本意だが・・・私から謝ることにしよう。それで元通り。
でも謝っても許してくれなかったら?もし私のことを・・・嫌っていたら?そのときは・・・
ふと時計を見る。もう8時半だ。しかし慶太はまだ来ていない。
・・・あと20分。慶太がまだ来ない・・・
・・・あと10分。慶太が・・・来ない・・・
そして9時になった。慶太はついに現れなかった。
私は台所であるものを手に取る。帰ってから念入りに準備していたものだ。
もし・・・慶太が私を裏切ったなら・・・これを使って永遠に二人だけの世界へ行こう・・・
それをポーチの中にしまい、私は慶太の家に向かった。
慶太の家に行き、インターホンを鳴らす。
少ししてドアが開けられた。慶太だ。
慶太と目があった瞬間、私はすぐに謝った。
「あ、あの・・・今日はごめんなさい!久しぶりに慶太や結衣ちゃんにあって、私興奮しちゃって・・・」
「いや、こっちこそ!突然怒ったりしてごめん!」
慶太も私に謝る。私と仲直りができてホッとしているのが分かった。
そうだ、慶太が私を裏切るはずがない。
私はいったい何に不安がっていたんだろう?慶太は私のことが大好きに決まっている。
慶太と仲直りをした後、私は早川宅に招かれた。何も変わらない玄関がひどく懐かしく感じられる。
やはり3年も慶太のそばを離れたのは思いのほか大きかったようだ。
靴を脱ごうと視線を下した先にあるものが映った。
ブランド物のブーツ。
これが慶太の家にあるってことはアイツが5年ぶりに戻ってきた証拠だ。
そっか、祥姉も動きだしたんだ。私は臨戦態勢に入った。
ところがリビングに行くと、そんな物騒な事を忘れるほどの楽しい時間が待っていた。
慶太と慶太のお母さんとの会話。昔から好きだった時間。
慶太のお母さんは慶太以外の人間で私が唯一心から大好きと言える人だ。
私のことを本当の娘のように可愛がってくれたし、私の悪口を言っているのを一度も聴いたことがない。心が読めると分かった瞬間に娘を見捨てるような奴らよりもよっぽど母親らしい。
私は久しぶりに心から楽しい時間を過ごした。 <> サトリビト<>sage<>2010/04/20(火) 18:11:27 ID:0HSRQJj6<> (誰だよ、うっせーな)
だがそんな時間も頭の中に聴こえた声によって終わりが訪れた。本当に私の邪魔ばかりをしてくれる。
「お客さんでもきてんのか・・・よ・・・」
奴の声が耳に届いた瞬間、私は先手を打った。
「久しぶりー祥姉ぇ!!」
そのまま飛びついたのだ。
本当はこんな香水臭いやつに顔をこすりつけるなんて吐き気がするが、これも作戦のうちだ。
自分にとって嫌いな人間が抱きついてきたら普通は嫌だろう。悪態もつきたくなるはずだ。
慶太には罵倒を受けながらも健気に愛情を示している私は哀れに映っているに違いない。
そうするとね、慶太は優しいから私に同情するでしょ?つまり同情という点でも私は慶太の一番になれるの!これで同情だけで慶太のそばにいられる結衣の居場所がなくなっちゃえばいいのに♪
私が今日結衣や祥姉の罵倒に無関心を貫いた理由がこれだ。
まぁ私も言いたい放題言われて黙っているほどお人好しではないが・・・
「祥姉ぇ今週の土曜の夜暇〜?もしも暇だったら神社で行われる秋祭り、一緒にいこ〜?」
「秋祭りぃ?」
「うん!慶太も誘って一緒にいこ〜よ〜」
「なんでコイツも・・・ったくしょうがねぇな・・・わかったよ・・・」
なんて単純な人間なのだろう。おもわず笑いがこみ上げてくる。
秋祭りに誘ったのはそこで反撃をするためだ。
慶太と手をつないでみようかな?腕を組むのもいいかもしれない。
その時の祥姉を想像する。
嫉妬に駆られた祥姉は、どんな醜い言葉を吐くのだろうか?慶太が聴いているとも知らずに―――
そもそも血のつながった弟に対してそんな感情抱くなんて気持ち悪すぎ。姉なら姉らしく、弟の初恋の成就でも見守っていなさいよ。
「あっ!もうこんな時間!?それじゃ私帰るね!」
馬鹿の相手に疲れた私は帰ることにする。
そういえば帰り際に慶太が私とのデートだと言って興奮していた。
そんなに私とデートがしたいなら告白してくれればいいのに。
私は慶太が告白してくるまでは何もしないつもりだったが・・・まぁキスくらいは許してあげよう。
もちろん、祥姉の・・・いや『二人』の目の前で♪
あぁ土曜日がたのしみ〜。
私は携帯を取り出し結衣に電話をかけた。 <> サトリビト<>sage<>2010/04/20(火) 18:13:00 ID:0HSRQJj6<> 以上投下終了です。
読んでくださった方、ありがとうございました。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/20(火) 18:30:05 ID:VNCbM/H/<> GJ!!
すごく期待して次回を待つ。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/20(火) 20:30:21 ID:GgKaHgwh<> >>275
GJ
慶太がこの先生きのこるにはどうすればいいんだw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/20(火) 20:37:37 ID:AvK6dPLZ<> GJ!



主人公の名前を見ると早稲田と慶応が浮かんでくるのは何故? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/20(火) 21:28:29 ID:V9XCWddD<> まさか陽菜も能力者だったとは・・・
これはこれで面白い超展開だ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/20(火) 21:35:14 ID:8UA3ZTnW<> なあもしかしたらヤンデレって三次現に存在しないんじゃね…? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/20(火) 22:14:56 ID:+XDzWaul<> いないかもね
ヤンデルならいっぱいいそうだけども
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/20(火) 22:22:34 ID:gsdZUg9u<> 一流のヤンデレは周囲にバレるようなヘマはしない
またヤンデレだと気づかれたら逃げられるかもしれないから気づかせない
>>280の彼女も、実はヤンデレだけど>>280が知らないだけかもしれない <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/20(火) 22:30:19 ID:u42CO1W1<> 気付いた時には左手薬指に指輪してたりするんだぜ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/20(火) 22:31:39 ID:gcb3DKnC<> 一流のヤンデレって何ぞwww <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/20(火) 22:40:09 ID:4S9Tw0d9<> その異常性を表に出すことなく、誰かを排除しなければならない状況に陥ることもなく
じわじわとアリ地獄のように引き込み、気づけば愛する人と結ばれている

多分そんなのだろう <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/20(火) 22:58:18 ID:n8KR3Mg5<> それって普通の恋愛なんじゃぁ…
あるいは中国医学用語の「未病」ってやつか <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/20(火) 23:32:31 ID:4S9Tw0d9<> それもそうか(´・ω・`) んじゃ追加して

相手の意思は関係なく(というか必ず自分に向くように仕向ける)
泥棒猫に手を出す隙を一切与えない(物理的排除は必要にならない)

でも、こんなんじゃ物語に仕立て上げるのが難しいな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/20(火) 23:35:11 ID:UwcoQBX4<> >>281
まんまじゃねーかwww

一流のヤンデレ・・・?お前等なってないな、まったくなってない
ヤンデレに一流も何も無いんだよ、常軌を逸した愛情に基づいた行動。これに尽きる。いやこれさえあればヤンデレだ

俺のヤンデレの定義は
「愛するが故」これさえ守れればいいんだ。
1.2.3...え?何をしてるかって?あなたに近寄った虫を潰してたの。あなたのことが好きだから汚したくないもん♪
あなたが大好きだから・・・だから逃げないでね?いや、逃がさないよ♪
あなたのことが大好き・・・だからあなただけ居ればいい、だから周りはいらない!イラナイノ!
あなたのために・・・あいつを殺すからね・・・もう大丈夫だよ・・・あははっ!
ねぇ、何を見てるの?あの女?それともそっちの女?......大丈夫、なにもしないよ。だって、あなたは私を好きなんだから。
いい声で鳴くよねぇ・・・痛い?仕方ないじゃない、あなたがあの豚と喋るからいけないんだよ?

ごめん俺の脳内フルバした。反省はしてない
共感できる奴が果たしているのか?・・・愚問だな、さぁ、お前等俺について来い! <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/20(火) 23:58:42 ID:lVyPMsKi<>                        ヘ(^o^)ヘ いいぜ
                         |∧  
                     /  /
                 (^o^)/ てめえがヤンデレの
                /(  )    定義を決定出来るってなら
       (^o^) 三  / / >
 \     (\\ 三
 (/o^)  < \ 三 
 ( /
 / く  まずはそのふざけた
       幻想をぶち殺す <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/21(水) 00:30:34 ID:3XzUb0e2<> 静的ヤンデレ

流れに逆らわずにさりげなく周囲に影響を与え、愛しの彼に近づこうとする塵蟲女を精神的に排除
許さぬ死なせぬ楽させぬ
洗脳系



・剛的ヤンデレ

自らの流れに従わぬものを力づくで従わせる
愛しの彼に近づこうとする塵蟲女には死あるのみ
許さぬ生かさぬ顧みぬ
凌辱系
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/21(水) 01:43:37 ID:11xeXRa1<> <<275
GJ!
次も楽しみにしてます!


皆に聞きたいんだがいいか?

一昨日、友達から聞いたのだがこれはヤンデレなんだろうか?


まぁAさんとB君としよう。2人は付き合ってるんだが、B君はAさんがあまりにベタベタしてくるし言動が時たまおかしい?らしく最近冷めぎみだったんだと。だから息抜きでメル友のCさんと2人きりで遊んだらしいんだよね。もちろんAさんには秘密にしてな。

で、Cさんと遊んだ夜B君は疲れて早く寝てしまったんだが、ふと夜中に目が覚めたらしい。
そしたら枕元に包丁持ったAさんが立ってたんだと。さらにB君が口を開くより早くAさんが「あの女だれ?」とB君に尋ねたんだとよ…。

友達の話によるとB君は1人暮らしで鍵も戸締まりもちゃんとしてたらしいんだがAさんがどこから侵入してきたか全くの不明。さらになぜB君とCさんが遊んだことを知ってたかも不明。知ってるというか言動からB君とCさんが遊んでるのを見てたようだな…。


これってマヂで危なくないか?俺話聞いたとき鳥肌がたった。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/21(水) 02:04:50 ID:rzBNCyBt<> どうでもいい <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/21(水) 02:32:59 ID:xC8V9YJZ<> >>292
そうだな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/21(水) 07:23:23 ID:i8FdCPkS<> >>290
なんでこのスレはちょくちょく世紀末臭がするんだwww <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/21(水) 07:57:07 ID:hfNV/HSI<> つまりは俺に彼女がいないのもヤンデレが悪いってことか!
よしぶっ殺す! <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/21(水) 09:15:16 ID:NFiXxjQV<> ヤンデレ喫茶の話があったんだからヤンデレ病院の話があってもいいよね <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/21(水) 11:24:07 ID:NDM3MnGn<> はい <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/21(水) 16:43:35 ID:/LEzWB9m<> 退院できないな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/21(水) 16:55:15 ID:SJ9pNlcE<> 退院出来ないように、階段から
突き落とされたり変な薬飲まされたり
するわけですね、解らないように <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/21(水) 20:15:53 ID:avMTR23T<> 俺が巡回するスレに限って変なテンションの奴がいる
そしてこれもどうでもいいことなのだ
俺にもサトリ能力くれよ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/21(水) 20:20:10 ID:Zw62EJLA<> 病んだ娘にお金を借りたら大変なことになる……
返すまで“取り立て”が来て、中々返せない。返した後も…
人、それを病み金(ヤンデレ金融)という。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/21(水) 20:33:58 ID:i3eoISZJ<> >>301の設定で誰か書いて <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/21(水) 20:58:40 ID:FTPTBGBw<> モテる 踏破 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/21(水) 22:04:57 ID:wvY1Um7D<> 悪の女帝的なヤンデレがいいな
想像してるのはヤンマゾだけど

女「はいと言わねばお前の村を焼き討ちにしてやるぞ!」
男「!? あ、あなたという人は…!」
女(…やはりいい… あの憎しみと冷たさを含んだ槍のような目! 私の胸を締め付けて放さない!)
男「分かりました、貴女に従います・・・」
女「ククク、そうか。では早速私の尻を叩け!」
男「そ、そんな事…」
女「できないのか? それなら…」
男「分かりました…」

ありなのか無しなのかとりあえず聞いておきたい <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/21(水) 22:40:19 ID:vYfUaABi<> 「強気なマゾ女」と言うスレがあってな、
そこも巡回先だったりするんだ。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/21(水) 23:40:45 ID:xPWPSzU4<> 消防士の息子の活躍を見たい為に山火事を起こす母ってのを仰天ニュースでやってたがちょっと萌えた <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/21(水) 23:41:34 ID:qhYA3rHM<> ヤンデレ家族と傍観者の兄弟の作者の方生存されてますか?単二忙しいだけならいいけど… <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/21(水) 23:45:25 ID:FTPTBGBw<> 目立つ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/21(水) 23:50:22 ID:blmqjq4k<> サトリビトを書いているものです。
実は4話ができていて投稿したいのですが、やはり2日連続の投下は迷惑になるのでしょうか?
日をあけて投下した方がよろしいですか? <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/21(水) 23:50:26 ID:FTPTBGBw<> 派手 <>
◆AW8HpW0FVA <>sage<>2010/04/21(水) 23:51:41 ID:Atd4aiHV<> 規制が解けたので、また規制される前に投稿します。 <> 変歴伝 24 ◆AW8HpW0FVA <>sage<>2010/04/21(水) 23:52:49 ID:Atd4aiHV<> 「暇だなぁ……」
ここの所、やる事がまったくなく、業盛は身体を持て余していた。
鍛錬をやっても、この屋敷で業盛に敵う者はおらず、
部屋には果物が十分にあり、都に買いに行く必要もない。
だからといって、ごろつき潰しをしようにも、
最近になって、清盛の嫡子の重盛に説教される様になり出来なくなった。
どうやら、前にやってしまったごろつき潰しだけでなく、
それ以前にもそんな事をやっていたという事がばれてしまったらしい。
これが頭ごなしに怒鳴り付けるだけならば、重盛が嫡子であろうと、
業盛は逆らっていただろうが、重盛の場合、その事をまったく誇らず、
懇々と諭す様に言ってくるのである。
殺さなかっただけいいではないですか、と業盛が言った所、
説教だけでなく、武士の倫理についても追加され、半時も正座する羽目になった。
どうやら、重盛は説教好きの様である。
結局、看過出来ない事態に出くわす、または身を守る以外は戦わないで話が着いたが、
やはり業盛は大いに不満だった。
こうなったら、ごろつきではなく暇を潰す算段を考えなければならない。
なにか面白そうな事はないだろうか、と業盛は辺りを探す事にした。
まずは水城と彩奈が目に留まった。相変わらず口喧嘩をしている。
いつも通りの事なので、新鮮味も面白味もない。
「三郎、なにしてんの?」
「兄様、なにをしているのですか?」
二人が業盛に気付き、こちらに駆け寄ってきた。
「ただの暇潰し探しだ」
駆け寄ると同時に、抱き着いてきた二人に、業盛はそう言った。
この二人なら、なにか面白い事でも知っているのではないかと期待したのであるが、
「だったら、私とまぐわえばいいじゃない」
「でしたら、私と契りを結べばいいではないですか」
返ってきたのは、真昼間に話す以前の話題だった。
「丁重にお断りさせていただこうか。それと、彩奈。
前にも言ったが、俺とお前は義理とはいえ兄妹なんだから、契りとか言っちゃ駄目だろ」
業盛がそう言うと、彩奈は心外だと言わんばかりの表情になり、
「兄様、人を愛するのに兄だとか妹だとかは関係ありません!
世間体を気にするのなら、そんなの勝手に言わせておけばいいではないですか!
それに、私達はあくまで義理の兄妹!契るのにはなんの障害はないはずです!」
と、凄まじい勢いで反論してきた。
「義理だからこそ、余計に駄目なのだ。俺はお前を妹として迎え入れたのに、
契りなど結んだら、所詮は女の身体に目が眩んだだけだろう、と周りは言うに違いない。
それは俺の矜持に反する。頼む、分かってくれ」
業盛は必死に諭そうとしたが、彩奈はまったく気にする事なく、
「兄様の高潔な御心は大いに理解できました!ですがこれだけは譲れません!
兄様がそう言うのなら、不束ですが、私は今を以って義兄妹の契りを破棄します!
私と兄様の仲を裂く様な契りならば、そんなもの必要ありません!
そうと決まれば善は急げです!
私達の関係を誤認している馬……ケフン……人達に、この事を伝えてきますね!
それが終わったら、お互いに本当の契りを結びましょう!」
と、とんでもない事をぶちまけ、部屋を飛び出した。業盛は止める事が出来なかった。
<> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/21(水) 23:53:25 ID:FTPTBGBw<> 好かれてる モテる <> 変歴伝 24
◆AW8HpW0FVA <>sage<>2010/04/21(水) 23:53:36 ID:Atd4aiHV<> 「自分から兄妹の誓いを破るなんて、やっぱりあいつは山育ちの野蛮人ね」
未だに右腕から抱き着いて離れない水城は、冷えた口調でそう言った。
「水城、だからそういう事は言うなと言ってるだろ」
業盛はそう咎めたが、水城はまったく悪びれる様子もなく、
「でも三郎、あっちが一方的に兄妹の契りを結んできたのに、
それを一方的に破るなんて、人としてどうかと思うけど……」
と、事もなげに言った。
確かに水城の言う事にも一理あった。
しかし、彩奈を信じた以上、業盛は彩奈の事を信じたい。
人を裏切れば、いずれそれは自分に帰ってくる事を業盛は知っている。
「だからといって、それが彩奈を晒しめる事にはならないだろう。
人を信じた以上、その人を信じ続ける。それが親友というものだろ」
「三郎、あんたは私の夫になるんだから、彩奈はともかく、私は親友じゃないわ」
業盛の言に、水城が素早く突っ込んできた。
突っ込む所はそこではないだろう、と言いたかったが、業盛はあえて聞き流した。
彩奈の事を止めようかとも思ったが、ここまでくると止める事も不可能なので、
諦めて暇潰し探しを再開する事にした。ちなみに水城も誘った所、
「なに馬鹿な事言ってんのよ!私があんたの誘いを断る訳ないじゃない!」
と、快く快諾してくれた。
次に行く所といえば、弥太郎の部屋ぐらいしかなかった。
他の奴の部屋に行っても、対して面白そうなものなどなさそうである。
むしろ行けば、彼女持ちという事で、余計なやっかみを受ける事は請け合いだろう。
行くならば、知らない間に妻帯し、
同じく周りからやっかみを受けている弥太郎の所に行くのが妥当だろう。
そんな考えで、業盛は弥太郎の部屋の前まで来た。
「弥太、入る……ぞ……」
戸を開けた業盛の声が強張った。
業盛が見たのは、上半身裸になっている弥太郎と、その上に跨っている鈴鹿の、
どう見ても事に及ぼうとしている図だった。
「さっ……三郎……、姉上……、こっ……これは……」
「あっ……、あんたは鈴鹿!」
「たっ……水城様、こんな所でなにをしているのですか!?」
三者三様の言が飛び交った。
弥太郎の事はともかく、水城と鈴鹿が知り合いである事に、業盛は驚いた。
その事を聞いてみると、水城は、
「私が別宅にいた時の侍女よ」
と、答えてくれた。
鈴鹿は弥太郎から離れ、水城の方に向き直った。
「久し振りね、鈴鹿。まさか、あんたと弟がくっ付くなんて思わなかったわ」
「水城様こそ、あんなに男嫌いだったのに、いつの間にそんな可愛らしい旦那様を?」
「三郎は特別よ」
二人のおしゃべりの中、鈴鹿が不穏な事を口走ったが、そんな事はどうでもよかった。
<> 変歴伝 24
◆AW8HpW0FVA <>sage<>2010/04/21(水) 23:54:10 ID:Atd4aiHV<> 「……なにしに来たんだ……」
なかば放置されている弥太郎が、業盛に歩み寄ってきた。
弥太郎は顔が火照っており、どことなくお預けを食らった犬の様に思えた。
「ただの暇潰し探しだ」
「暇潰し探し?」
呆けている弥太郎に、業盛はそれをせざるを得ない状況になった理由をざっと説明した。
説明が終わった頃には、弥太郎の表情はいつものものに戻っていた。
お前も暇だな、と軽口を叩かれたが、業盛はクスリともしなかった。
結局、ここにも暇を潰せそうなものはなかった。
部屋に帰って大人しくしていようかと考えている業盛に、
「業盛様、暇潰しでしたら、私がいい方法を知っていますよ」
と、いつの間にか水城とのおしゃべりを止めていた鈴鹿が提案してきた。
面白みに飢えている業盛は、すぐにこの提案に食いついた。
どのようなものかと聞いてみると、鈴鹿は、
「これは少し時間が掛かりますので、しばらくその辺りで時間を潰していてください。
それと、出来れば水城様もお借りたいのですが、よろしいでしょうか?」
と、言ってきたので、業盛は快く了承した。
鈴鹿と水城が準備を終えるまで、業盛と弥太郎は屋敷をうろつく事にした。
「なんなんだろうな〜、すっごく楽しみだな」
「…………………………………………」
浮き浮きとしている業盛とは対照的に、弥太郎はあれからまったくしゃべらなかった。
パッと見は無表情だが、どこかそわそわしているように業盛は見えた。
それを見ていると、今までの乗りのいいお調子者という印象だったのが、
軽口を叩いていたのが演技で、今の無表情が素であるように思えてきた。
そんな視線に気付いたのか、弥太郎は業盛の方に振り向き、
「まったく、あいつの横暴にも困ったもんだ!
いきなり押し倒した挙句、あんな恥ずかしい所を見られるなんて!」
と、大声を張り上げて言った。
別に聞いてもいないのに、わざわざ掘り返す弥太郎に、業盛は再び違和感を持った。
いったい、鈴鹿と弥太郎の間になにがあったのだろう。
弥太郎を見なくなった一月の期間だけだが、
その間になにかがあったと考えるのが妥当だろう。
業盛は気になり、弥太郎にそれを聞こうとしたが、
「業盛様、義家様、準備が整いましたよ」
と、いう鈴鹿の声に制せられてしまった。
鈴鹿の手前、業盛は弥太郎に話を聞く事が出来なかった。
「それでは、私は先に部屋に戻っていますね。………………それと……、業盛様……」
去り際に足を止めた鈴鹿は、振り返って業盛の事を見つめた。
その目は、まるで死んだ魚の目の様に濁りきっていた。
「…………あまり人の家庭に介入しすぎるのも、程々にした方がいいですよ……。
水城様の旦那様とはいえ、私達の邪魔をするなら、容赦はしませんよ…………」
小さいが、それでいて辺りを震わす様な鈴鹿の声に、業盛は言い知れぬ恐怖を感じた。
<> 変歴伝 24
◆AW8HpW0FVA <>sage<>2010/04/21(水) 23:54:45 ID:Atd4aiHV<> 部屋に入った業盛と弥太郎は、その奇天烈空間に驚いた。
なにせ床一面に、紅、白、黒、藍、橙、紫、六色の円が不規則に描かれていたからだ。
度肝を抜かれた体の二人を余所に、鈴鹿は顔を絵具で汚しながらも、
「これこそが、我が家に伝わる伝説の宴……ケフン……暇潰し遊戯、
六色組解陣(りくしきそかいのじん)です!」
と、誇らしげに言った。
「あぁ……、今日から俺はこんな部屋で寝るのかよ……」
それとは対照的に弥太郎は、激変した自分の部屋を見て酷く落ち込んでいるが、
鈴鹿はまったく気にする様子でもなかった。今日の弥太郎は放置されっぱなしである。
「これの遊び方は簡単です。まずは男女二人が床の上に立ちます。
次に指示された色の円に、指示された手足を置いていきます。
相手が地面に身体を付いたり、降参したら終了、というものです。
ちなみに、色や手足の指示は、私と水城様がさっき作った特製さいころで決めます」
そう言って、鈴鹿は二つのさいころを取り出した。
一つには紅や藍と書かれており、もう一つには右手や左手と書かれていた。
ふと、身体の指示用のさいころを見てみると、一、六と書かれるはずである場所に、
両手、両足、という文字が書かれていた。
こんなのが終盤で出てきたらおしまいだな、と業盛は思った。
「それでは、ご理解頂けた所で六色組解陣、始めましょう!!!」
鈴鹿は右腕を天高くに突き上げた。
業盛も感化され、鈴鹿と同じ事をやってみたが、やっているのが自分だけだと気付き、
ゆっくりと腕を下ろした。横にいた水城が鼻を押さえて悶えていた。
笑うな、と顔を紅くしながら業盛は抗議の声を上げた。
それはそれとして、こうして鈴鹿の家に伝わる伝説の暇潰し、六色組解陣が開始された。
<> 変歴伝 24
◆AW8HpW0FVA <>sage<>2010/04/21(水) 23:55:17 ID:Atd4aiHV<> 栄えある先攻は、業盛、水城の組だった。
「三郎、このまま普通にやっても面白くないから勝負をしましょ。
この試合で勝った方は、敗者になんでも命令出来るというのはどう。面白そうでしょ?」
六色組解陣が始まる直前、水城が業盛にそう提案してきた。
以前にも、これと同じ様な展開があったのに、
業盛はその事を見事に忘れ、一つ返事で賛成した。
この返事がこの後どうなるのか。それは天とさいころのみが知る所となった。
「三郎、右足、紅。姉上、左手、藍」
弥太郎の指示が飛んだ。二人共、指定された手足を円に置き始めた。
四巡目を過ぎた時の二人の体勢は、業盛が立ち前屈、水城は橋だった。




黙々と試合は進み、始まってから十二巡目。
「弥太ぁ……、つぁ……、早くぅ……しなさいよ……」
部屋には水城の艶っぽい……ではなく、痛々しい声が響いていた。
水城は、橋の体勢そのままに、両腕が交差し、
両足はピンと伸びて交差しているという、かなり辛い体勢を取っていた。
それに対して、業盛は四巡目と同じ立ち前屈の体勢のままだった。
「姉上、右足、黒」
水城の苦悶の声に気にも留める風でもなく、弥太郎は水城に指示を飛ばす。
水城は憎々しい目付きで弥太郎を睨み付けたが、
無駄な事だと思ったのか、黒の円を探し始めた。
黒の円はあった。ただし、それは水城の左肩辺りにあり、
水城の体勢からでは、そこに足を置くのは不可能であった。
これで詰みかと思われたが、肝心の水城は、不敵にも笑っていた。
笑ったかと思うと、水城は右足を上げ、叩き付けるかの様にその円に足を置いてみせた。
なんと、水城は右股関節を外すという荒業を使ったのだ。
なにがなんでも勝者のご褒美が欲しい水城にとって、
関節が外れた痛みや全身の軋みなど、まったく苦でもなかった、
「姉上、両足、白」
のだが、それをぶち壊すかの様に、弥太郎の非情な指示が飛んだ。
それも、鬼門である両足。挙句の果てには、自らの近くにはない白と来たのである。
「あっ……、あはは…………、あっははははははは!!!」
水城は、壊れた様に笑いながら、地面に身体を付けた。
水城は泣いていた。笑いながら泣いていた。それはまさしく、悔恨の涙だった。
こうして、想像を絶する死闘の末、業盛は水城との六色組解陣に勝利したのだ。
<> 変歴伝 24
◆AW8HpW0FVA <>sage<>2010/04/21(水) 23:55:51 ID:Atd4aiHV<> 勝者は与えられる褒賞に歓喜し、敗者は与えられる絶望に嗚咽する。
数刻前に決められた約束により、そうなるはずだった光景は、
業盛により変わろうとしていた。というより、勝者が業盛の時点で変わってしまった。
少なくとも、水城が考えていた事よりは軽くて優しいものであるのは間違いない。
未だに笑い泣いている水城の頭を撫でながら、業盛はさいころを手に取った。
これより第二回戦、弥太郎と鈴鹿の勝負が始まるのだ。
二つのさいころを手に、業盛は少なからずわくわくした。
なにせ、自分が六色組解陣をやった時は、どういう訳かずっと立ち前屈の体勢ばかりで、
まったく面白くなかったからだ。
しかし、今は違う。これから二人の一挙手一投足を操る事が出来るのだ。
これでわくわくしない方がおかしいだろう。
さいころの目がなにになるのか、それは誰にも分からない。
だが、それを口頭で伝えるのは自分であり、伝えた事が指示となり、二人を動かすのだ。
業盛は、その瞬間だけ神になれる事を心の底から喜んだ。さいころを握る手に力が入る。
既に弥太郎も鈴鹿も準備は出来ている。
一息入れると、業盛はさいころを振るった。からからという音が部屋中に響く。
八巡目終了後、業盛が顔を上げると、始めた位置が悪かったのか、
弥太郎は橋の体勢に、鈴鹿は弥太郎に覆いかぶさる様な体勢になっていた。
これはすぐに勝負が着くな、と業盛は思った。
そう思った業盛は、再び下を向いてさいころを振り、指示を飛ばした。
「ひゃっ!」
すると、その場に相応しくない嬌声が響いた。
再び顔を上げてみて、業盛は少し唖然とした。
鈴鹿の胸が、弥太郎の顔面を圧迫していたのだ。
服の上からでは気付かなかったが、鈴鹿は胸が大きかったのだ。
弥太郎のくぐもった唸り声が聞こえてきた。
早くしろ、と言わんばかりのその声を聞いた業盛は、気を取り直してさいころを振るった。
十六巡目になると、さいころの目がよかったのか、弥太郎は鈴鹿の胸を脱出し、
少しずつ下に移動を始め、逆に鈴鹿は、上に移動をし始めた。
このまま二人が離れれば、勝負は振り出しに戻る。
そう思った業盛は、勝負の一部始終を見ようと、顔を上げてさいころを振った。
節目となる二十巡目、順調に進んでいたはずだった試合は、
弥太郎の顔が鈴鹿の股間辺りに来た所で停滞し始めた。
服一枚で隔てているとはいえ、弥太郎の鼻息が掛かる度に鈴鹿が嬌声を上げた。
勝負を見届けようと思った業盛であったが、だんだん小っ恥ずかしくなってきて、
ついに二人を見ないように下を向いてさいころを振る事にした。
「やぁ……、義家様ぁ……、あそこに……んぁ……なにか当たってますぅ……」
「すっ……鈴鹿、腰を動かすな……。ぬるぬるしたのが鼻に……」
「だってぇ……、だってぇ……、気持ちいいのが……あっ……止まらないんですぅ……」
さいころを振れば振るほど状況が酷くなっていく。
二人の声を聞いていると、業盛はそれを嫌でも感じ、だんだん居た堪れなくなってきた。
さっさと勝負を終わらせたくなった業盛は、さいころに気を強く込め、勢いよく振るった。
そんな業盛の願いが通じたのか、奇跡は起きた。
「弥太、両手、橙。鈴鹿、両足、紫」
自分で言ってみて、それが福音の様に業盛は感じられた。
これでこの淫らな勝負は終わる、と業盛は思った、
「ひぁあああああああ!!!」
が、鈴鹿の絶叫と倒れる音を聞いた時、これから本当の第二回戦が始まる予感した。
業盛は、水城を抱きかかえると、倒れている二人を無視し、部屋から退出した。
<> 変歴伝 24
◆AW8HpW0FVA <>sage<>2010/04/21(水) 23:57:03 ID:Atd4aiHV<> 僅か一時という短い時間であったが、業盛は三日分の苦労を溜め込んだ気分だった。
自分の部屋に着くと、それがはっきりと実感できた。
抱きかかえていた水城を床に下ろし、自身も床に腰を下ろした所、
無意識の内に横になってしまっていたのがその証左である。
このまま目を瞑れば眠れそうだったが、
「ちょっと、寝るんじゃないわよ、三郎!」
それよりも先に、復活した水城に身体を起こされてしまった。
「なんだよ……、せっかく眠れそうだったのに……」
「あっ……あんた、さっきの勝負に勝ったんだから……、早く私に命令しなさいよ……」
水城はそう言うと、顔を紅くして業盛を見つめた。
その表情からは、不安と期待の二つの感情が滲み出ていた。
元より、業盛は水城に命令するつもりはない。
だが、ここでそんな事を言えば、水城に怒鳴られてしまうだろう。
なにかいい方法はないだろうかと考えた業盛は、一つの命令を思い付いた。
それは、平常時の業盛であれば絶対に思い付かない様な命令であった。
少なくともその時、業盛は鈴鹿と弥太郎の淫行を見て、少し理性が緩んでいたのだ。
「分かった。じゃあ目を瞑ってくれ」
「えっ……、まぁ……、いいけど……」
業盛の命令に、水城はなんの抵抗もなく目を瞑った。
それを見た業盛は、ゆっくりと水城に近付き、軽い口付けをした。
今まで業盛は、水城に二度も口付けをされているので、
今回は今までのお返しも兼ねてのものだった。
業盛がゆっくりと離れると、水城は驚いた様な目でこちらを見つめていた。
「さっ……三郎、あっ……あんた、いったい……なにを……?」
水城の顔が、面白いほど真っ赤になっていった。
「なにって、お前が前にしていた事をちょっと真似してみただけだが……」
「三郎が……、私に……、口付けしてくれた……。三郎から……、私に……」
「お〜い、水城、戻ってこ〜い」
自分の世界に入り込んでしまった水城に、業盛は声を掛け、こちらに引き戻した。
我に返った水城は、目を細めて、業盛に擦り寄ってきた。
その仕草には、今までにも見た色っぽさがありありと見えていた。
「三郎、もしかして、鈴鹿と弥太の淫香にやられちゃったの?」
水城は、業盛の胸に手を置きながら、猫撫で声で聞いてきた。
そう言われ、業盛は水城から顔を逸らしてしまった。
ここに来て、やっと自分のした事の重大さに気付いたからである。
業盛は、気恥ずかしさのあまり、その場から逃げ出したくなった。
しかし、追い討ちを掛けるように水城が業盛の胸に顔を埋めてきた。
「三郎……、口付けだけで、本当に満足なの?」
それは、水城の明らかな誘いだった。
なんだかんだで頭の鈍くない業盛は、欲望に流される事を嫌い、
「これ以上やると、戻ってこれなさそうだから、今日はこれくらいでいいよ」
と、言って、水城の頭を撫でてやった。
それを聞いて水城は、微かに表情を歪め、
「戻ってこれなくてもいいのに……」
と、小さく呟いた。

ちなみに、弥太郎と鈴鹿の部屋では、業盛達が出て行った後、
色々あったらしく、なんともいえない臭いが漂っていた。
水城が伯母さんになる日も、それほど遠くはないかもしれない。
<>
◆AW8HpW0FVA <>sage<>2010/04/21(水) 23:59:39 ID:Atd4aiHV<> 投稿終了です。
ちなみに、いまさらですが、登場女性の胸の大きさは、
彩奈>鈴鹿>菊乃>水城の順です。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/22(木) 00:01:01 ID:t1jwoHjj<> GJ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/22(木) 00:07:28 ID:946/fIYE<> GJ!!!
はじめてリアルタイムに遭遇した
水城がかわいすぎるぜ・・・ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/22(木) 00:18:06 ID:GK+lNAGX<> GJ
水城最貧か…チッ

>>309
俺は構わんと思うが、それは別として他の人の投下があった直後だから今日は自重しようぜ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/22(木) 00:19:08 ID:TnLvwgNA<> 自治とかうぜー <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/22(木) 00:25:54 ID:Pw5sHdRP<> >>309
 時間を置いてから投下した方がいいよ。
他の作者さんも感想読みたいだろうし。
サトリ応援してます。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/22(木) 00:30:25 ID:eIJfiLL5<> >>324
けど自治してくれる人いないとルールが崩れていくのも事実 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/22(木) 00:42:25 ID:kiCU1xVd<> つい最近まで閑古鳥だったってのに、そんなことを心配する必要が出てくるとは。
3、4人くらいは新しい常駐の書き手が来たんだっけ? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/22(木) 01:33:49 ID:10jvNRah<> 自治房うぜー→スレが荒れる→居心地が悪くなり住人と書き手が離れる→スレ廃墟化

大人なら最低限のルールとマナーは守るべき。それを知らぬ者には諭し示すのが良識ある先人の努め
つーか大人限定の板で自治がうぜーとかぬかす子供のほうがうぜーよ文句あんなら消えろよ誰とは言わんけどさ

スレが閑古鳥だろうが盛況だろうが秩序とは最低限守るべきもの。>>327もそこら辺理解しとけよ

殺伐となりそうで申し訳ないが、こういう問題はハッキリ言わないといけないと思うのです <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/22(木) 02:09:10 ID:fQ3gVfHg<> >>328
意見が違うからと言って消えろというのはダメだろ。
意見が違うならとことん話し合いなさい。ここでも別の場所でもいいけどさ。
違う意見を切り捨てて聞く耳も持たないのは堕落への道だと思うよ。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/22(木) 03:38:20 ID:LcTepWxk<> まぁもちつけおまいら
スルースキルを持とうぜ
自治だとか置いといてさ・・・

さてSSを書くのが苦手な人に対するネタを出そう
ヤンデレに言って欲しいセリフ。名台詞など挙げてみようず <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/22(木) 03:57:06 ID:3763OXFH<> 2日連続で投下でもいいけど投下された後なら4時間くらいは間隔あけるべきだとは思う <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/22(木) 04:09:34 ID:vyNf2CxZ<> >>320
GJ!
菊乃さん懐かしいなw
彩奈と同じ様に再登場するだろうか <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/22(木) 06:40:09 ID:sljxKCSM<> 菊乃さんなら俺の隣に寝てるよ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/22(木) 07:56:21 ID:DzgDD2X0<> 残念ながらそれは残像だ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/22(木) 12:18:36 ID:zNirR+KJ<> 残念ながらその残像はサガットだ。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/22(木) 12:32:34 ID:10jvNRah<> >>329
自治房うぜーって一言だけのわがまま坊や相手にとことん話し合えって難易度高いな
そりゃ密室で鉈持ったヤンデレと素手で戦えってくらい無茶な注文だぞ

いや、ヤンデレと密室で2人きりなんてこの業界では昇天しそうなほどご褒美なんですがね

>>333
節子、それ菊乃さんやない、ダルシムや <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/22(木) 13:12:00 ID:HcTgda/N<> サトリビト、昨日から正座して待ってるけど足が痺れてきた <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/22(木) 15:04:45 ID:Pw5sHdRP<> >>337
 あともう少しの辛抱だ。
ネクタイが緩んでないかチェックするんだ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/22(木) 16:06:01 ID:DzgDD2X0<> 最近病むって言葉を使いまくってる高校生を見かけてなんかイラっとした
どの口がそんな大層なことを言うんだよと <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/22(木) 17:38:16 ID:qlpnV7w2<> 俺が高校生だった頃から使ってる奴いたけど反応に困るんだよなあ <> サトリビト<>sage<>2010/04/22(木) 19:23:12 ID:946/fIYE<> 昨日言っていた第4話投下したいと思います。
よろしくお願いします。
<> サトリビト<>sage<>2010/04/22(木) 19:23:44 ID:946/fIYE<> 今僕は自分の家のリビングにいる。
僕の家のリビングにはL字型の4人掛けソファがあるのだが、僕は地べたに正座していた。別に正座が好きなわけではない。
ただ4人の女性が占領しているからだ。
今日は土曜日。秋祭り当日。
祭りは夜からだがみんなで一緒に行こう、という事でこうして僕の家に集まっていた。
集まって行くのには問題ないのだが・・・人選を間違えたのだろうか、空気が重たく感じる。
ふと隣を見る。大和だ。
大和は気合いを入れているのか髪の毛を立てている。服も昨日僕と街に行ったときに買ったものをさっそく着てきた。2万円のTシャツだ。
(やべー!!写メで見るより実物の方が超きれいだ〜!)
ちなみに大和の熱い視線は真っ正面に座っている姉ちゃんに向けられていた。
大和、悪いことはいわないからその人だけはやめておけ。この能力がないと立ち直れなくなるぞ?
大和の斜め前には友達の山田君がいる。
山田君は眼鏡をかけていて知的なインテリ風男子に見える。
しかも僕と同様正座している。律儀なやつだ。
だが僕にはわかっているぞ、お前の頭の中が!
(恭子ちゃん恭子ちゃん恭子ちゃん恭子ちゃん恭子ちゃん恭子ちゃん恭子ちゃん恭子ちゃん恭子ちゃんっ!!)
・・・最っ低だな、山田。ってか恭子ちゃんに手を出したらお前の秘密を全校生徒にバラしてやるからな!!
山田君の横には太郎君がいる。体育会系のマッチョボーイだ。
実は太郎君とはしゃべったことがほとんどない。
昨日大和と山田君に今日のことについて話しているのを太郎君に聞かれたのだ。
すると急に土下座してきて、「一生のお願いです!どうか私も連れて行って下さい!」とお願いされたのだ。
そういうわけで今ここに太郎君がいる。
彼の目的はただ一つ。
(はぁ〜・・・俺の結衣は今日もかわいいな〜・・・っ!!も、もう少しででミニスカートの中が!!・・・ハァハァ・・・)
こっちは山田君とは違い、興奮が顔ににじみ出ていた。よだれも少しでている。
そんな太郎君の様子に女性陣は完全にドン引きしている。中でも陽菜の引き具合が顕著だ。
太郎君の斜め前には姉ちゃんが座っている。
(・・・なんでこんなにいんだよ・・・まじうぜぇ・・・)
そんなこと言わないで姉ちゃん!せめて・・・せめて、大和には優しくしてあげて・・・
その横には陽菜。
陽菜は恭子ちゃんを食い入るように見ていた。初めて会ったかわいい女の子によくやる陽菜の癖だ。
なぜかは不明だが小学校からよくやってるんだよな〜・・・まさかそっちの趣味・・・なのか?
陽菜の斜め前には恭子ちゃん。
(う・・うぅ・・・知らない人がこんなにいっぱい・・・助けて、慶太さん!)
心配しないで!恭子ちゃんだけはこの命に代えても山田の魔の手から守ってやるからな!
最後は恭子ちゃんの隣、つまり僕の斜め前は岡田。
確かに太郎君の思った通り今日の岡田はいつもよりかわいく感じる。・・・ミニスカートのせいなのか?
(っっ!!今慶太が私の足を見てたっ!?す、少しは意識してくれてるのかな・・・///)
あ、危ない危ない!!思わずじっと見入ってしまっ――――
ガチャン!
突然大きな音がした。 <> サトリビト<>sage<>2010/04/22(木) 19:25:01 ID:946/fIYE<> 何かと思って辺りを見回す。が、どうやら陽菜が机にコップを置いただけのようだ。
「・・・ねぇ慶太・・・私も含めてみんな知らない人がいるみたいだから紹介してよ?」
あ、あれ?陽菜さん、テンションがおかしいくらい低くないですか?
そんな陽菜にチキンな僕は完全にビビってしまった。
「わ、分かりました!で、では時計回りに紹介したいと思います・・・まず彼が大田大和君です」
「どうも〜」
「姉ちゃんはこの大和君に優しくしてあげて下さい」
「!」「ハァ?」
僕は頭が混乱していた。自分でも何を口走ったか分からない。
なにやら大和が心の叫びをあげているが、今の僕には紹介を続けることで精一杯だ。
「その次が山田君です・・・恭子ちゃんは彼と話をしたらダメだからね?」
「な、何を言って!?」「え?は、はい・・・」
「その横が太郎君・・・岡田、今すぐスカートを押さえろ」
「ちょ、おまっ!」「え?・・・キ、キャーッ!!」
女性陣の軽蔑のまなざしが太郎君と・・・僕に向けられた。
「その斜め前が俺の姉ちゃん・・・この中で唯一20を超えて・・・」
ものすごいスピードで携帯が飛んできた。これもツンの一種なのだろうか?
僕はたんこぶのできた額をさすりながら紹介を続ける。
「その横が陽菜・・・陽菜はいつみてもかわいいな」
陽菜の顔が途端に赤くなる。
うん、やっぱりかわいいな。みんなもそう思うだろ?え、違う?ブス?おたふく?
そんなこと言ったら陽菜が悲し・・・あれ?なんだか陽菜さんの顔がおたふくと言うより般若みたいだぞ?
「はん・・・陽菜の斜め前にいるのが恭子ちゃん・・・僕のエンジェルさ!!」
陽菜もかわいいけど、違った意味で恭子ちゃんもかわいい。
(う、うれしいよ〜!!今僕のって・・・僕のエンジェルって・・・!!)
僕のを強調されるとちょっとマズいから訂正するね?みんなのエンジェルさ!
陽菜がニコニコしている。そうか、陽菜も共感してくれたんだな!さすが幼馴染!さっきから恭子ちゃんを罵倒しているそこの二人も少しは陽菜を見習え!
「そしてその横が岡田・・・う〜ん、岡田に関しては特に言う事はないな〜」
次の瞬間ローキックが飛んできた。
僕は正座していたのでローキックがハイキックになる。鼻血が止まらない。
「死ねっ!」
僕の頭の中に蹴られる直前に見えた岡田のパンツが走馬灯のようにループしている。最後にいいものを見れたんだ。悔いはない・・・
「結衣ちゃんもこういってるんだし・・・死んでみる?」
陽菜さん、それは冗談でいってるんですよね?目がマジっぽいんですけど冗談なんですよね?
とりあえずみんなの紹介を終えたところで、僕は冷静さを取り戻した。
なんだか空気が重たい。
男性陣は僕に対して恨み節を唱えているし、僕は額が痛くて鼻血も出ている。
一体なにがおこったんだろうか? <> サトリビト<>sage<>2010/04/22(木) 19:26:07 ID:946/fIYE<> 「ババ抜きでいいか?」
祭りまではまだ時間があったので、みんなでトランプをすることになった。
「それじゃ〜何か賭けようよ〜」
陽菜だ。事ババ抜きに関して陽菜は最強だ。負けた姿を一度も見たことがない。
「賭けるって・・・金はちょっとキツいんだけど・・・」
「それなら1位は最下位と、2位は7位と、3位は6位と、4位は5位と、それぞれ向こうでペア行動するってのはどう?」
岡田の出した意見にみんなが賛成した。というかみんなの目が血走っている。
(絶対に慶太とペアになってやる!)
(慶太さんと・・・一緒に屋台を周りたい!)
(慶太はババを持っているとき、必ず手札の右端に持っていく癖がある。それをうまく利用できればいける!)
(慶太!俺の心の声が聴こえているだろう!なら俺とお姉さんの未来に協力してくれ!)
(恭子ちゃん恭子ちゃん恭子ちゃん恭子ちゃん恭子ちゃん恭子ちゃん恭子ちゃん恭子ちゃん恭子ちゃんっ!!)
(結衣と二人で祭り・・・これで公認のカップルに!!・・・ハァハァ・・・)
みんなの顔は終始穏やかだったが、頭の中は熱い思いがあふれかえっていた。
だが僕にだって熱い思いがある。陽菜が一位なら僕は最下位を目指さなければ!
みんなの熱意がトランプに移ったのか意外な結果になった。
一位太郎君、2位陽菜、3位大和、4位山田君、5位恭子ちゃん、6位僕、7位姉ちゃん、8位岡田―――
「じゃあみんながルールを知っている事が確認できたので本番始めますか」
「「「「賛成」」」」
「「なんでだよっっ!!!」」
多数決により本番が再開された。太郎君と山田君が心の中で号泣しているが関係ない。
泣いても笑ってもこれが最後となるので、誰かがカードを一枚ひくたびに辺りが緊張に包まれた。その結果・・・
一位陽菜、2位姉ちゃん、3位岡田、4位大和、5位恭子ちゃん、6位太郎君、7位山田君、8位僕。
明暗が分かれた結果となった。僕としては陽菜と一緒になれてよかったし、恭子ちゃんも大和となら安心だ。
様々な心の声が聴こえる中、姉ちゃんの声だけがとても小く聴こえた。
(・・・りだった・・・には勝てないのか・・・) <> サトリビト<>sage<>2010/04/22(木) 19:26:33 ID:946/fIYE<> 現在午後8時。すでに祭りが始まっている時間だ。
にもかかわらず今いるのは男4人だけ。
初めはみんなで一緒に来るはずだったのだが、4時間前に僕らが家から追い出されたのだ。
僕は別になんとも思わないけど、他の3人は一緒に行きたかったのかさっきからブーブー言っている。
「なんで野郎だけで・・・」
太郎君が昨日僕に頼んできたときの態度とまったく違う。
「はぁ〜せめて祭りに向かうときだけでも祥子さんと一緒にいたかったのにな・・・」
「それよりも13才の女の子がこんな夜遅くまで・・・しかたがない。僕が責任を持って家まで送り届けるか・・・」
山田、お前はもう帰ってもいいぞ。
男性3人がぐちぐち言っていたとき、後ろから声をかけられた。
「おまたせ〜!」
その声に振り返った僕たちは言葉を失った。
そこにいたのは先ほどの私服とは違い、浴衣を着ている女性陣だった。これには浴衣を着てくる事を知っていた僕でさえ驚いた。
なぜなら4人があまりにも綺麗だったからだ。
「どうかな?似合うかな?」
岡田が上目づかいで僕を見つめながら聞いてきた。正直、理性を保つのに必死だ。
「あ、ああ・・・めちゃくちゃかわいい・・・」
岡田は僕の言葉にこれでもかというくらい嬉しそうだ。
(めちゃくちゃかわいい!?どうしよう・・・嬉しくて死んでしまいそうっ!!)
「・・・のまま・・・ばいいのに・・・」
さっきまで下を向いてぼそぼそと呟いていた陽菜が、急に顔をあげた。ニコニコしている。
「ねぇ慶太〜わたしは〜?」
なぜか陽菜の笑顔が怖い。ここで間違った答えをだしたら大変なことになりそうだ。
「陽菜もめちゃくちゃ似合ってて・・・か、かわいいよ・・・」
岡田の時とは違いものすごく恥ずかしい。好きな人だから?
「・・・も?」
「え?」
「ううん、なんでもない。ありがと〜♪」
なんだろう?答えは間違っていない・・・はずだ。
「慶太さん・・・あの・・・私は・・・」
恭子ちゃんがもじもじとしている。心の声に頼らなくたってこの時の恭子ちゃんの気持ちは分かる。
「かわいいよ。すごく恭子ちゃんに似合っている」
「あ、有難うございますっっ!!」
ここまできて僕は男性陣の嫉妬の叫びに気がついた。そろそろやめたほうがいいな、うん。
「じ、じゃあみんな揃ったんでペアになって祭りを楽しみますか!」
そう言って僕が一歩前に踏み出したとき、聴こえるか聴こえないか程度の声が頭に響いた。
(慶太はウチには何も言ってくれなかった・・・そうだよな、実の姉が浴衣着たところでなんだっていうんだよ・・・)
僕はとっさに振り向くが、姉ちゃんはすでに山田君と歩き出していた。
(・・・馬鹿かウチは・・・慶太にかわいいって言ってもらえるかと思って期待したなんて・・・)
「どうしたの慶太?早くいこ〜よ〜」
「あ、ああ、わかった」
陽菜と二人っきりの祭り。それなのに気分が晴れないのはなんでだろう?
<> サトリビト<>sage<>2010/04/22(木) 19:27:06 ID:946/fIYE<> 「あれおいしそう〜」
今僕は陽菜と屋台巡りをしている。
二人っきりだし、デートといっても過言ではない。
楽しいはずなのに・・・なぜか心から楽しめていない自分がいる。
さっきの姉ちゃんが気になっているのだ。
僕が姉ちゃんの浴衣姿を褒めなかったのは単に聞かれなかったからだ。決してかわいくないと思ったわけではない。
でも他の女の子全員を褒めて一人だけ褒めなかったら?その子はどう思うだろうか?
そこまで考えて僕は自分を責めた。
くそっ、なんであのとき気付かなかったんだ!姉ちゃんだって褒めてほしかったはずのに!
「どうしたの慶太?なんか恐い顔してるよ?」
陽菜の声に僕はハッとなった。そうだ今は陽菜とのデート中だ。
「い、いや別に・・・」
なんでもない、と言おうとしたが口が動きを止めた。
今からでも遅くない。
「悪い陽菜!!ちょっとついてきてくれ!!」
そう言って陽菜の手を引き僕は走った。
しばらく適当に走ったところで目的の人物を捕らえた。そのまま近づいて行く。
「姉ちゃん!!」
僕の叫びに目の前の二人が振り返る。姉ちゃんと山田だ。
神様・・・陽菜とのデート、ツケってことにしてくれませんか?・・・
「悪い陽菜、俺ちょっと姉ちゃんに用事があるから!!山田、陽菜を頼んだぞ!!」
返答する暇さえ与えず、僕は姉ちゃんを連れて走り去った。
「け・・・慶太?」
「ごめん姉ちゃん、今はなにも聞かないで!」
そのまま人気のないところを目指して走る。
勢い余った僕達は神社を抜け出し、近くの公園まで来てしまった。
「ハァハァ・・・ごめん・・姉ちゃん・・・勝手に・・・」
「ハァハァ・・・ったくなんだよ・・・こんなところまで人を走らせやがって・・・」
そのまま二人揃って公園のベンチに座る。
「ウチはまだ全然祭りを満喫してないんだけど?」
「う・・・ごめん」
姉ちゃんが嫌味ったらしい視線を送ってくる。
(でも、ま、いっか・・・こうして慶太と二人きりでいれるんだし・・・)
ものすごく小さい声だったが確かに聴こえた。
「ところで・・・ウチになんの用だよ?」
き、来た!!今が言うタイミングだ・・・恥ずかしいけど・・・
「姉ちゃんにだけは言ってなかったなと思って・・・姉ちゃんの浴衣姿、めちゃくちゃきゃ、綺麗だよ///」
肝心な時に噛んでしまった。情けない・・・。でもこれで姉ちゃんも元気になるはずだ。
(こいつ、わざわざそんなことを言うために?・・・ハハ、慶太のそういうところ変わってないな・・・)
姉ちゃんが見たこともないくらい穏やかな表情になっていた。
「馬鹿かお前?なに実の姉に綺麗とかいってんだよ」
姉ちゃんはそう言うと視線を上に向けた。
心の声はそれ以降聴こえてこなかった。
<> サトリビト<>sage<>2010/04/22(木) 19:30:51 ID:946/fIYE<>
遠くを見つめながらぼんやりしている姉ちゃん。
時々姉ちゃんはこういう表情をするのだ。
しかもこの時にかぎって心の声が聴こえてこない。
なんとなく姉ちゃんの横顔を盗み見る。僕と違って整った顔だ。自分の姉ながら見とれてしまう。
すると突然姉ちゃんがこっちを見た。どこか悲しそうな顔で―――
「なぁ慶太・・・一つだけ聞いてもいいか?」
「え?・・・うん・・・」
なんだろう?心の声は聴こえてこない。
「陽菜のこと・・・好きなのか?」
「っ!?」
予想もしなかった質問に僕は戸惑ってしまった。
「なんでそんなこと・・・」
「いいから・・・まじめに答えろよ」
命令形だがいつものような凄味がまるでない。
こんなに弱々しい姉ちゃんを見たのは初めてだった。男にさえもひるんだことのない姉ちゃんが・・・
僕は悩んだ。でも姉ちゃんはまじめな答えを求めてるんだ。姉ちゃんには残酷かもしれないが本当のことを言おう。
「姉ちゃんの言うとおり、僕は陽菜のことが好きだ」
「・・・そっか・・・」
(・・・やべー・・・まじで泣き・・・ぞ・・・う゛っっ!!)
やっと心の声が聴こえた。だが・・・よりにもよってこんな言葉を聴きとるなんて・・・
でも僕はここで話をやめてはいけない。ここからが本題なのだ。
「・・・でも、だからといって姉ちゃんのことが好きじゃないなんてことはないよ」
姉ちゃんが顔をあげた。驚いている顔にはうっすら涙の跡が見えている。
「姉ちゃんのことも・・・陽菜に思っているのとは少し違うけど・・・大好きだよ」
これが僕の本心だ。別に姉ちゃんに同情して言ったわけではない。
姉ちゃんはいつも僕に対してきつい事を言っていたが、心の底では僕のことを思っていてくれたのだ。
「・・・本当か?本当にウチのことが・・・好き・・・なのか?」
(なんで?いつもお前に対してつらく当たってたのに・・・なんでウチのことが好きだって言えるんだ?)
「姉ちゃんは僕がいじめにあったときも助けてくれたし、いやいや言いながらも勉強を教えてくれたりもした。それに・・・生まれたときから一緒に
暮らしていた仲じゃん!そんな姉ちゃんのこと好きになるのは当然だろ?・・・もし、恋愛感情じゃなくて、一人の人間としてどっちが好きかって
聞かれたら・・・俺は姉ちゃんって答えたかもしれない」
今まで姉ちゃんがため込んできた思いを決壊させる引き金になったのだろう。
「う・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっっっ!!!!」
姉ちゃんが泣きながら僕の胸に飛び込んできた。
「ごめんなさい!今まで慶太に冷たく当たってごめんなさい!慶太に暴力をふるったりしてごめんなさい!」
初めて姉ちゃんが自分から心を開いてくれた。その様子は姉というより妹のようだ。
そっと姉ちゃんの頭をなでる。
「謝らなくてもいいよ。姉ちゃんの気持ち・・・分かっているつもりだから」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!」
(慶太!慶太!慶太!慶太!慶太!慶太!慶太!慶太!慶太!慶太!慶太!慶太!慶太!慶太!慶太!)
姉ちゃんは心の中でずっと僕の名前を叫んでいた。まるで子供が親の名前を呼ぶように。 <> サトリビト<>sage<>2010/04/22(木) 19:31:23 ID:946/fIYE<> 「グズっ・・・もう大丈夫・・・だから・・・」
姉ちゃんがそう言って僕から離れた。
「ごめんな慶太。なんかかっこ悪いところ見せちまって・・・」
驚いた。姉ちゃんが素直になっている。
「これからはお前にできるだけ優しくする。そして・・・」
(慶太のためだ・・・距離を置こう・・・)
そのまま押し黙った姉ちゃん。
僕のために距離を置く。姉ちゃんがこの言葉を使ったということは、もう僕に会わないつもりだ。
やっぱり姉ちゃんと僕は似ていない姉弟のようだ。姉ちゃんは人の気持ちに鈍感すぎる。
「姉ちゃん、これからも今までのままでいてよ。いつもみたいに冷たく・・・はちょっと嫌だけど、ムカついたら怒ったり怒鳴ったりしてよ。それから東京に戻ったとしても・・・俺のために時々でいいから帰ってきてよ」
姉ちゃんは僕の言葉を聞いて驚愕の表情を浮かべた。が、すぐにフワリと笑った。
「本当に慶太は昔から人の心に鋭いな。もしかして人の心が読めるんのか?」
ドキッとした。やばい、心の声に反応しすぎたか?
「まぁそこが慶太の唯一のとりえだけどな」
そう言って姉ちゃんは笑いだした。
なんて失礼な!他にもとりえはあるはず・・・だ・・・よね?
(あのときも・・・こうしてウチが慰められたっけ?そういえばあのときからだな・・・慶太のこと好きになったのは・・・)
あのとき?
僕は必死に記憶の糸をたどったがなにも思いつかない。
「それにしても実の弟に告白されるなんてな〜」
「ち、違っ!!」
「照れんなよ」
く、くっそ!さっきのセリフは取り消しだ!姉ちゃんなんか大嫌いだし、これからは俺にもっと優しくしろよ!
「・・・帰っか」
「・・・うん」
姉ちゃんが手をつないでくる。今日はよく姉ちゃんと手をつなぐ日だ。
・・・たまにはこういうのも悪くないな、うん。
(やっぱり慶太はウチのことを理解してくれる。それならウチは・・・誓う)
穏やかな姉ちゃんの声が僕の頭に届いた。
何を誓うんだ? <> サトリビト<>sage<>2010/04/22(木) 19:31:52 ID:946/fIYE<> 「ねぇ慶太〜一緒にご飯食べよ?」
祭りのあった日から最初の月曜日、陽菜が昼食を誘ってきた。
「ごめん、今日朝起きたらなぜか弁当がなくて・・・今からパンを買いに行かないと・・・」
陽菜の誘いを断腸の思いで断った僕は購買に向かって走った。
「あ、待ってよ・・・」
陽菜の声が聞こえた気がしたが、一刻も早く行かないとパンが売り切れてしまう。
購買に向かう途中、ちょうどパンを買い終えた友達が話しかけてきた。
「おい早川いまからパン買いに行くのか?」
「そうだけど?」
「あきらめろ。今日は何一つ、あのカロ○ーメイトすら残ってないぞ」
「なにっ!?」
早すぎる。いつもならまだ半分くらいは残っているはずだ。
それに高級(の割に腹も膨れない)すぎて誰も買わないカロ○ーメイトすなない・・・だと!?
(それにしても新しく購買に来た人かわいかったな〜・・・よし、もう一回見に行こう!!)
なるほど、どうやら購買に新しく美人が入ったおかげでパンが売り切れたのか。
しかし・・・だからと言ってこのまま何も買わないわけにはいかない。
とりあえず購買に行ってみるとすごい人だかりができていた。
その光景に今日の昼飯を完全にあきらめかけたとき、聞きなれた声が人混みの中から聞こえた。
「あーもううっせーなっ!!ないものはないっつってんだろっっ!!」
なんとその声の主は姉ちゃんだった。
「姉ちゃん!?なんで!?」
「おっ、慶太か!?なにやってんだよ、早くこっちにこい!!」
何が何だかわからなくなった僕は人混みをかき分け、姉ちゃんの元へと近寄った。
「姉ちゃん何やってんのさ!!」
「見て分かんだろ?それより・・・ほら、お前の分な!!」
そう言って売り切れたはずのパンを僕に渡してきた。周囲の目が冷たい。心の声も。
「お前のために一番人気のパンをとっといたんだぞ?感謝しろよ」
「う、うん、ありがとう・・・ってそうじゃなくて!!なんでここにいんの!?」
「なんでって・・・ここがウチの職場だからな」
え?今なんて?
「今日からよろしくな」
姉ちゃんは銀行員だよね!?仕事は学校の購買とまったく関係なかったよね!?
・・・無茶苦茶だ。昨日の今日で転職したのか?一体どうやって・・・
(いままで慶太に冷たくした分、これからは慶太のために生きてやるんだ!)
いや、自分のために生きて下さいよ。
そんなとき、背後に人の気配がした。
「あれ!?祥姉ぇだー!!」
「早川のお姉さん・・・?なんで・・・?」
仲良くやってきた陽菜と岡田。
「今日からここで働くことになったんだ。・・・よろしくな?」
(一昨日の夜誓ったんだ。一生ウチが面倒を見るって。慶太はだれにも渡さないって。だから・・・テメーらはさっさと消えろっっ!!)
「・・・えぇ・・・こちらこそよろしくお願いしますね?」
(この人なんでこの学校に?まさか慶太の事が!?いや、ありえない、だって姉弟だよ?そんなの許されるわけがない!)
「祥姉ぇと一緒〜、やったーっ!!」
陽菜だけがこの状況を喜んでいる・・・んだよね?それは本心で言ったんですよね陽菜さん?
はたして僕は無事にこの学校を卒業できるのだろうか・・・
<> サトリビト<>sage<>2010/04/22(木) 19:36:10 ID:946/fIYE<> 以上投下終了です。
こんな長文を読んでくださった方、ありがとうございます。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/22(木) 20:07:15 ID:YwKOHssR<> 乙です <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/22(木) 20:17:45 ID:LcTepWxk<> >>339
ああいうのはかまってちゃんだからな
疲れた・・・もう嫌だ・・・病んでる・・・
('A`) <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/22(木) 20:32:45 ID:FBi+/ve9<> 姉ちゃんかわいいな
先が気になるぜ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/22(木) 20:36:03 ID:Xm8YxZCT<> こんな地雷原に囲まれた生活は嫌だ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/22(木) 20:39:04 ID:LW83NSYv<> しかもそれをしらみつぶしに踏んでいってるから凄いな
うらやましいようで全くうらやましくないから困る <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/22(木) 20:47:52 ID:sljxKCSM<> 頑張って地雷回避しようとしてるのに…… <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/22(木) 20:55:47 ID:Hv3ybIIc<> モテる 派手 目立つ 1位 良い <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/22(木) 21:02:16 ID:vxy2Ipy7<> サトリビトめっちゃ好きだわ がんばってくださいね!! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/22(木) 21:32:39 ID:+maJO4kO<> >>350
クソ過ぎる、酷い(GJ!!マジ面白い!今後の展開に期待!) <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/22(木) 21:40:35 ID:mxrMTF0Z<> 結局地雷フィーバーwwwww

GJ! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/22(木) 21:52:15 ID:YPTULR8C<> >>341GJ
読んでたら思わずニヤニヤしてしまう不思議 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/22(木) 21:52:30 ID:vyNf2CxZ<> GJ!
地雷が見えてるとそれはそれで大変だな
しかも他の地雷は見えるのに
一番でかい地雷は見えないというw

>>359
姉ちゃん乙 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/22(木) 22:00:50 ID:sljxKCSM<> 姉ちゃんは料理出来なくて弁当作れないけど頑張って考えた作戦だと思うとなぜかよだれが止まらない <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/22(木) 22:33:45 ID:QJkALCJf<> GJ!

次は陽菜のターンかな?
続き待ってるよ

もしかして恭子までもがヤンデレとか…
いやいや、それはない。僕のエンジェルだから <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/23(金) 00:31:24 ID:ZGhuMCZ1<> 姉ちゃんに萌え死ぬ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/23(金) 07:39:00 ID:BS8+PmsA<> 「アンタにはウチがおらんとアカンのや」
関西弁のヤンデレって可愛いと思う

「逃げきれると思っちょるんかいのう…」
広島弁は怖そうだが
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/23(金) 13:18:58 ID:8huDu7Ea<> ヤンデレに狙われる主人公の親友になりたい <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/23(金) 13:35:31 ID:SR6RAUOj<> キモオタと彼女の人来ないかなぁ
好きなんだけどな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/23(金) 17:57:42 ID:0McB394K<> 全然話題にならないけど野獣とアングレカムが好きだった <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/24(土) 00:19:54 ID:aFZw6uUU<> ヤンデレの家族と傍観者の兄の弟が実は女だった話に一番萌えた俺はもうダメかも分からんね <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/24(土) 02:15:41 ID:nxn0uURL<> 厄介な要素を抱えるキャラの友人・サポート役が主人公って話はさ
その要素を楽しみたい、でもそれに伴う責任・負の要素を投影先のキャラが負う描写は読みたくない
みたいな層にばかうけだよね

小説家になろうを掘ってきたらそんなんばっかで萎え萎え
しかも何故か全部ヤンデレを称してるのに中身はただの発狂とか猟奇系 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/24(土) 07:53:47 ID:hXmaKzNq<> ヤンデレ=猟奇だと思ってる人は包丁の錆びになるべき。
俺みたいに監禁タイプのヤンデレが好きで血が出るようなのは苦手な人もいるんだよ <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/24(土) 09:12:01 ID:5XCqMhPd<> まぁ定義が決まってないから何とも言えんのだけどな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/24(土) 09:12:45 ID:5XCqMhPd<> ageちゃったねごめんね <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/24(土) 09:13:59 ID:pKNbM8zA<> 世間一般で流血=ヤンデレになるのがなんだかなぁ
まぁ、好きなんですけどね <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/24(土) 09:29:21 ID:T/z4AlDD<> >>371
自分の理想のヤンデレをこのスレに書き殴ってもいいのよ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/24(土) 09:41:28 ID:5XCqMhPd<> レイプ目でマシンガントークで笑ってるのに目が笑ってない女の子を嫁にしたいれす <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/24(土) 10:12:49 ID:K/HuPonS<> 朝っぱらからお前ら…… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/24(土) 11:58:10 ID:7T96VlJk<> つーかなろうは基本的にゴミばっかり
理想郷のがまだマシな作品にありつける <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/24(土) 18:55:18 ID:9i+s2yDV<> 依存型のヤンデレの地雷原突っ走りたい
監禁とか流血とかよりも、女の子が病んでしまうぐらい愛されたい <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/24(土) 19:03:25 ID:xHB3Fvj0<> ここの事を話したらある奴がいきなり『家に来ない?』と脈絡なしに誘って来たんだが… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/24(土) 19:27:16 ID:jlhMK5Fc<> 野獣と化した知人ですねわかります <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/24(土) 20:04:33 ID:RmIATTMY<>    ,-、             ,.-、
     ./:::::\          /::::::ヽ
    /::::::::::::;ゝ--──-- 、._/::::::::::::::|
    /,.-‐''"´          \:::::::::::|
  /                ヽ、::::|
 /                   ヽ| ぼくはヤンデレ猫
 l                         l
. |    ●                 |
 l  , , ,           ●      l
 ` 、      (__人__丿    、、、   /   
   `ー 、__               /
       /`'''ー‐‐──‐‐‐┬'''""´
       /,          |
      (_/          |  |
        ,         ヽ、_)   ∩
       l           |\  ノ |    
 .       |    ヘ      |`ヽ二 ノ
 .        |   /  \    /
       `ー‐'    `ー‐'
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/24(土) 21:26:00 ID:5XCqMhPd<> メシマズスレ見て思ったんだがヤンデレの料理が激マズだったらどうなるんだろうな
主人公胃に穴開いて死ぬかな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/24(土) 21:56:51 ID:1e0cribT<> >>384
舞ってろ
文才無い漏れが書くけど・・・いいのが出来たらage <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/24(土) 22:08:30 ID:6x/igIzI<> は、八宝菜 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/24(土) 22:32:04 ID:NuM86PzM<> >>385がss完成させるまでずっと能を舞い続ける>>384想像して吹いた。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/24(土) 22:37:49 ID:5XCqMhPd<> ヤンデレお姉さんに教えて貰った剣の舞なら何とかなる <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/24(土) 23:27:39 ID:6BysxoZ+<> 「何でも言うこと聞くから捨てないで」と泣きつくヤンデレに「じゃあ消えろ」と言ったらどうなるだろうか <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/24(土) 23:30:35 ID:+2PmFcxv<> 「やだ」と冷たい声で返される <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/24(土) 23:42:09 ID:aFZw6uUU<> >>389
それは捨てるのと同義になるんじゃないか? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/24(土) 23:52:58 ID:+iN9cfCK<> >>389

男を殺害→ヤンデレは自殺もありそう <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/24(土) 23:55:42 ID:gE1zhK3C<> 巨大 高貴 <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/24(土) 23:57:40 ID:gE1zhK3C<> 抜いた 食った <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/24(土) 23:59:06 ID:MOVtGuSv<> 目と耳と鼻を潰し皮膚を焼き、そうしてヤンデレを認識することが不可能になった彼を笑顔で介護する
字面だけ見るといまいちヤンデレ臭くないな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/24(土) 23:59:52 ID:5XCqMhPd<> 普通に監禁調教でいいやん <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 00:07:07 ID:LLIyymI8<> 痛いのとか血が出るのとかがちよちゃん並に苦手なヤンデレだっているはずだ
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 01:36:52 ID:xMbDUI0l<> ヤンデレものでよくある殺して自分だけのものにするってのが理解出来ない。
自分のものにするなら監禁だよな、殺したらむしろ失ったことになるだろ。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 01:49:20 ID:RaBjLZnR<> ラノベだが、そこに彼の意識が宿るなら石ころだろうと愛していられると宣う依存系がいたなぁ
そのくらい愛されたいなぁ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 02:16:14 ID:pvlK3Hma<> 俺をストーカーしているヤンデレから逃げるために、船で欧米へ逃亡するつもりであったのだが
その船は途中で沈没して俺はどこかの島へと流された。

島に流されたのは、俺と乗客のヤンデレの女の子だけ。

俺は彼女から逃げつつ、島の周囲の様子を探ったが、
誰も住んでいない。どうやら、ここは無人島のようだ

幸いにも、島には食べきれない程の果実など、食料に関しては豊富
水の確保もできたのだが、最大の原因は


どうやって、ヤンデレの女の子から逃げるべきか。


それよりも、ヤンデレの女の子の想いを受け取って、
この島のアダムとイヴになるべきか


どちらがいいでしょうか?


<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 02:52:04 ID:kMjVjvyF<> プリズンブレイクだっけか <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/25(日) 03:05:43 ID:POEgol9+<> プリズンデ(逆)レイプ <> サトリビト<>sage<>2010/04/25(日) 09:38:14 ID:TnpzQatt<> 第五話ができたの投下します
よろしくお願いします <> サトリビト<>sage<>2010/04/25(日) 09:38:47 ID:TnpzQatt<> 最近僕の学校ではある噂が広まっている。
僕と山田と陽菜と購買の美女が4角関係を繰り広げている、大和はシスコン、そして岡田と太郎君が付き合っているの3点だ。
前者は何となく(そういえば陽菜が最近忙しそうだな)、中者は自然に消えていった。
ところが後者は太郎君のノリノリな発言(そういえば陽菜が休み時間の度にいなくなる)から信憑性が増していった。
そんなある日・・・
「あ〜、もう我慢できない!!」
突然岡田が切れた。
「なんで私があんなむさくるしい男性ホルモンの塊みたいなやつと付き合うと思うわけ!?」
(誰だそんな噂をはじめに流した奴は!!ぶっ殺すぞ!!)
この前のローキックといい、なんか最近姉ちゃんに似てきたな・・・
「ねぇ早川、まさかあんたも私がアイツと付き合っているって思ってないでしょうね?」
「お、思っていないであります!!」
「そうよね?じゃあどうすればこんな噂がなくなると思う?」
「えぇ!?・・・あ・・・その・・・や、大和はどう思う!?」
「何ぃ!?俺!?」
すまん大和。今度姉ちゃんの高校時代の写真をやるから許してくれ。
「う、う〜ん・・・そうだな・・・あっ!!」
大和は何かひらめいたようだ。良かった良かった。
(別の奴と一時の彼氏関係になればいいんじゃね?)
待て待てっっ!!その案だと僕が・・・
「そうだ!岡田が誰かと付き合ってるふりすればいいんじゃね?もちろん一時的にだけど」
ってうおぉぉぉぉーーーいぃぃぃ!!
「そっか、なるほど・・・ってえぇぇ!?」
(そ、それって慶太と付き合うってこと!?噂が消えるまで慶太とつ、付き!?)
ちなみに大和は誰かって言ったんですよ?別に僕じゃなくてもいいんですよ?
「分かったわ。でも・・・誰と付き合えばいいと思う?」
頼むから僕の方をチラチラ見ないでくれ。僕には陽菜がいるから無理なんだ。
「まぁ仮の彼氏なんだから知り合いの方がなにかといいだろ。俺は祥子さん一筋だから無理として・・・」
僕の方を見る大和。まさか・・・
「・・・山田辺りはどうだ?」
大和ぉ!!やっぱりお前は最高の親友だ!!
「はぁ、山田!?・・・できればチェンジで・・・」
山田のどこがダメなんだ!そりゃまぁ、かなりの変態で重度のロリコンだけどさ。
「だよな・・・それに岡田と山田じゃ誰も信じないよな・・・」
(すまん慶太・・・もう無理だ・・・)
諦めんな大和!最近の写真もつけるから!
「じゃあ・・・慶太ならどうだ?」
うっ・・・わ・・・
「は、早川!?」
(き、来た!どうしよう、ここでOKしたら私が告白したことになるのかな!?)
岡田が悩んでいるのをみて僕は自己嫌悪した。
僕は自分のことばかりで岡田のことを何一つ考えていなかったのだ。
ならば僕にできる事は一つ。
「俺はかまわないよ。むしろ岡田の彼氏役なんて光栄だ」
・・・でも陽菜には内緒にしてね?
「早川・・・」
(ヤバい・・・慶太がカッコよすぎる・・・)
岡田が潤んだ目で見つめてくる。
「・・・それじゃ早川にお願いするね?」
「まかせとけ!!今日からよろ―――」
「なにがまかせとけなの?」 <> サトリビト<>sage<>2010/04/25(日) 09:39:19 ID:TnpzQatt<> 心臓が止まるかと思った。・・・今日はいつもよりお早いお戻りで。
「よ、陽菜!?」
僕は慌ててしまった。完全に怪しまれている。
「うん、私だよ。それで・・・なにがまかせとけなの?」
陽菜の笑顔が怖い。こういうときこそ僕の能力が役に立つのだが、なぜか陽菜の心の声は一度も聴こえたことがなかった。
そういえばなんでだろう?
「あ〜陽菜ちゃん、実はね・・・」
おい、待て岡田!一体何を言うつもりだ!?
「今日から一時的にだけど早川と付き合うことになったの」
そ・・・そんなストレートに・・・
「ほら、私と太郎が付き合っているって噂が流れてるでしょ?それを払拭しようと思ってね」
(そのままゴールインしたときにはあんたを結婚式によんであげるね?)
岡田が何か勘違いしている。僕たちが付き合うのはあくまで一時的なものだ。結婚なんて・・・ないよな?
「ふ〜ん、そうなんだ・・・それに慶太は賛成したんだ・・・ふ〜ん・・・」
い、いや、僕が本当に付き合いたい人は陽菜ですよ!?信じて下さい!!
「よかったね、慶太!一時的とはいえ結衣ちゃんと付き合えるなんて!あ、もしかして初彼女?」
よかったね・・・か・・・
分かってはいたが嫉妬どころか祝福する陽菜を見て僕は落ち込んだ。そりゃもう徹底的に。
(慶太が落ち込んでる・・・こういうときは私がしっかりしないと!なんたって彼女だもんっ!!)
岡田は優しいな・・・そう言えば僕たち仮にも付き合うんだし、岡田のことは結衣って呼んだ方がいいのかな?
「そうだな、結衣が初彼女だな・・・形だけなんだけど」
僕がそう言った途端、陽菜と岡田は目を丸くした。形だけって言ったのがマズかったんだろうか?
「あ、形だけっていっても、その・・・俺個人としては結衣と付き合えるのはとても嬉しいわけで・・・」
さらに目を丸くする二人。あ、あれれ?
「い・・・今・・・私のこと・・・結衣って・・・」
(呼んだよね!?確かに今私のこと結衣って呼んだよね!?しかも2回!!)
し、しまった!本当に呼んでしまったのか!
「・・・慶太が結衣ちゃんの名前呼ぶの・・・初めてだね・・・彼女だもん、あたりまえか・・・」
陽菜はそのまま自分の席に戻ってしまった。

岡田と付き合って(仮にだけど)から授業に集中できなくなってしまった。
なんせ隣から大声で妄想が聴こえてくるのだ。小さいものは手をつなぐ程度で大きいものは・・・18禁だ。
それになぜだか後ろから突き刺さるような視線を感じるのだ。しかもその視線はとても有害で、浴び続けると食事がのどを通らなくなる、

夜眠れなくなる、禿げるといった症状を誘発する恐れがある。
そんなわけで今日一日は本当に地獄だった。早くお家に帰って眠りたい。
ようやく放課後になり教室を出ようとすると腕を掴まれた。
「どこにいくの?」
岡田だ。
「いや、家に帰るんだけど?」
「何か私に言う事があるでしょ?」
(彼女を置いて帰ろうだなんて!!)
「・・・一緒に帰りませんか?」
「いいわよ♪」
しかたなく二人揃って教室を出る。
(お、おい!早川の野郎岡田さんと・・・!!)
(あれ!?岡田って太郎とつきあってるんじゃ?)
そんな声が響く中、突然ポケットが震えた。
僕はポケットに入っていた携帯を取り出す。メールだ。
[助けて慶太さん]
たった7文字の文章を見た瞬間、僕は走り出した。
「悪い岡田、また今度!!」
最近突然走りだしてばかりだな〜・・・
僕は急いで恭子ちゃんの家に向かった。 <> サトリビト<>sage<>2010/04/25(日) 09:40:29 ID:TnpzQatt<> 恭子ちゃんの家は僕の家から比較的近い距離、つまり僕の通う学校からは遠いわけで、家に着いたのはメールが来てから一時間後だった。
っていうか家にいるのか?
僕は電車の中で何度もメールを送った。しかし返信は一度もなかったのだ。
やっとの思いで家に着いた僕はインターホンを10連打した。
頼む、でてくれー!!
僕の願いが通じたのか、しばらくして恭子ちゃんが出てきた。
「恭子ちゃん!?一体何が・・・」
家から出てきた恭子ちゃんを見た瞬間、僕はメールの意味を悟った。
恭子ちゃんの顔は真っ赤で、パジャマを着ている。前髪だっておでこに張り付いている。
つまりは風邪をひいたのだ。
「ごめんなさい・・・ゴホッ・・・あんなメールを・・・ゴホッ・・・送ってしまって・・・」
恭子ちゃんはつらそうにつぶやいた。
とりあえずこんなところに恭子ちゃんを立たせたままではいけないと思い、恭子ちゃんを家の中に戻す。そして部屋までおんぶしていき、
ベッドに寝かせた。
中学1年生の部屋に17歳の僕がいる事にものすごい抵抗感を覚えたが・・・しかたがない。
ベッドに戻ってから恭子ちゃんは今日のメールについて説明してくれた。
「お父さんもお母さんも今日は帰ってこない日で・・・それなのに・・・熱が上がってきて・・・」
恭子ちゃんのお父さんとお母さんはそれぞれパイロットと客室乗務員だ。
「苦しくなって・・・4時になったら慶太さんが学校終わってると思って・・・それで・・・」
「ダメだよ恭子ちゃん。苦しくなったら時間に関係なく連絡してくれていいんだから」
「・・・ありがとぅ・・・」
そこで会話は終わった。恭子ちゃんが目をつぶったからだ。
さてと・・・どうしようか。
薬と何か食べやすいものを買いに行く。恭子ちゃんに冷えピタを張る。ここまではできる。
しかしその先が問題だ。
さすがにずっと僕がいられるわけがないのだが、この様子だと恭子ちゃんを一人残して帰るのは気が引ける。
しかたがない。なぜか嫌な予感がしないでもないが一人暮らしの陽菜を呼ぶか・・・
そう思い携帯を取り出すと、恭子ちゃんが目を開けてこっちをみていた。
「・・・電話?」
「うん、陽菜にね。僕が帰った後恭子ちゃんの事頼もうかと思って」
その言葉を聞いた恭子ちゃんが悲しそうな顔をした。
「・・・慶太さん・・・帰っちゃうの・・・?」
(いやだ・・・ここにいてよぉ・・・)
うっ!そんなこと言われると・・・
「いや今すぐ帰るわけじゃないよ?それに恭子ちゃんも女の人がいたほうがいいでしょ?」
「・・・」
(やだよぉ・・・慶太さんがいてよぉ・・・ずっとここにいてよぉ・・・)
ギュッと僕の服を掴んでくる。恭子ちゃんがここまで露骨に自分の意思を表現するのは珍しい。
つまりそれほど必死なのだ。
「・・・分かった。でも今日だけだよ?次からは陽菜にお願いするんだよ?」
「・・・うん、わかった・・・」
僕の返事がよっぽど嬉しかったのかこの日初めて笑ってくれた。
しばらくして恭子ちゃんが寝静まった頃、僕は大和に電話して事の説明をした。
<> サトリビト<>sage<>2010/04/25(日) 09:41:39 ID:TnpzQatt<> 「・・・というわけでもし陽菜たちに聞かれた場合、お前の家に泊っていることにしてくれ」
「嫌だ。ばれたら俺の命も危うくなる」
く、くそ・・・ならば仕方無い!!
「・・・姉ちゃんとデート一回分でどうだ?」
「・・・祥子さんの手作り弁当付きならOKだ」
なにっ!?あの姉ちゃんの手作り弁当!?無理に決まっている!!
「無理ならいい。この話はなかった事になるだけだ」
しかし・・・僕に選択肢はない。
「・・・分かった。どんな手を使ってでも姉ちゃんの手作り弁当付きデートを用意してやる。後悔するなよ」
「交渉成立だな」
そのまま電話が切れた。ひとまずこれで安心だ。
「あ、母さん?今日友達の家に泊まりたいんだけどいい?なんか遊んでたらそういう雰囲気になってさ・・・うん、ありがと〜」
その後家にも電話して僕は買い物に向かった。

一通り買い終えた僕は恭子ちゃん宅に戻った。
帰ってすぐに恭子ちゃんの部屋に行くと、そこにはうなされている恭子ちゃんがいた。可哀そうに額には大量の汗。
僕は置いてあったタオルでそれをふき取り、そこに買ってきた冷えピタを張り付けた。
するとおでこに伝わる冷気が刺激になったのか恭子ちゃんが目を覚ました。
「あ、ごめん起しちゃっ・・・」
僕が言い終わらないうちに恭子ちゃんが突然飛びついてきた。
「き、恭子ちゃん!?」
「いやー!!どこにもいかないで!!お父さん!!」
「お、お父さん!?」
恭子ちゃんが今まで見せたこともないような態度だ。それに僕に向かってお父さんと呼んでくる。
「お仕事にいかないで!!どこにもいかないでよぉ!!」
病は人の気を弱くすると言うが・・・おかしい。ここまでのものなのか?
僕の頭に一種の悪い考えが浮かぶ。
まさかあの病気が再発したのか?
恭子ちゃんは3年前鬱病にかかっていた。
原因は両親の仕事。恭子ちゃんの両親は今までは国内便を中心に仕事をしていたようだが、恭子ちゃんが10才になると海外便を多く受け持
つようになったらしい。
両親が家にいるのは月の三分の一以下。当時10才の子はそうとうさびしい思いをしたに違いない。
僕は恭子ちゃんを抱き締めて頭を優しくなでる。
「大丈夫、どこにもいかないよ」
そうすると恭子ちゃんは次第に落ち着きを取り戻していった。
「・・・ごめんなさい・・・私怖い夢を見て、何が何だか分からなくなって・・・あと・・・風邪がうつったらごめんなさい・・・」
そうは言うが僕を抱きしめている手を緩めるそぶりが見当たらない。
僕は仕方なく抱きしめたまま頭をなで続けた。
「・・・」
(慶太さんがこの家にいるのは今日だけ・・・明日になったらいなくなるんだ・・・)
僕を抱きしめる手に力がこもる。
そんな恭子ちゃんを見て僕は決心した。
「明日になったら僕は帰るけど・・・今日は好きなだけお願いしてもいいからね?何でも聞くよ」
しまった・・・なんでもは言いすぎた。もし結婚してとか言われたらどうしよう・・・
「本当ぉ!?」
「あ、ああ・・・俺のできる範囲なら・・・」
なんだこの反応は!?
背中に冷や汗が流れる。 <> サトリビト<>sage<>2010/04/25(日) 09:42:41 ID:TnpzQatt<> 「それじゃあ・・・お兄ちゃんって・・・呼んでもいい?」
(い、いっちゃったっ〜!!)
恭子ちゃんのお願いは結婚とは程遠いかわいらしいいものだった。自分の考えに恥ずかしくなる。
というか女の子の上目使いは禁止にした方がいいな、うん。
「そんなことでいいの?」
「うん・・・ダメ?」
「もちろんOKだよ」
「や、やたーっっ!!」
ち、ちくしょう、なんてかわいさだ・・・悔しいが山田君の気持ちが少しわかったぜ・・・
なんだか恭子ちゃんが元気になったようなので、僕は恭子ちゃんをひきはがした。
ものすごく悲しい顔をされたが、そうでもしないと買ってきたものを食べさせてあげれない。
「ほらヨーグルト!これなら食べられるでしょ?」
恭子ちゃんにヨーグルトを渡すとなにやらもじもじしはじめた。
(さっき何でもお願い聞いてくれるって言ったよね・・・してもいいのかな・・・)
な、なんだ?このタイミングでお願いだと?
「あ・・・あのね・・・た、食べさせてほしいのっ!!」
「な、なんですと!?」
「ダメ・・・?お兄ちゃん・・・」
だから上目使いは禁・・・
「はい、あ〜ん」
「あ〜ん!!」
ヨーグルトを乗せたスプーンを口に運ぶと、恭子ちゃんは嬉しそうにそれを食べた。
「おいしーっ!!今まで食べたヨーグルトの中で一番おいしいっ!!」
よかった。奮発して一個200円もするヨーグルトを買ってきて正解だったぜ!
ヨーグルトを食べて薬を飲んだ後、恭子ちゃんは眠くなったのか目をこすりだした。
「眠いときにはできるだけ眠ったほうが早く良くなるよ?」
「・・・うん・・・そうだね・・・」
(もう少しおしゃべりしていたいのに・・・)
そんなことを言われともこのまま風邪が長引いたら大変だ。・・・主に僕が。
あくまで自然に、しかし強制的に恭子ちゃんを寝かしつける。
「おやすみ、恭子ちゃん」
「・・・おやすみなさい・・・」
(慶太さんのいけずっ!!)
恭子ちゃんが怒るなんてなんて珍しい。
ごめんね?でも僕は今すぐ恭子ちゃんに眠ってほしいんだ。なぜなら・・・
ブ、ブ、ブー、ブブブブブー!!
ほらね?僕のポケットずっと震えてるでしょ?しかもこれは恭子ちゃんが眠った後じゃないと止められないんだぁ・・・
もしこの電話にでたときに恭子ちゃんが声を出したら・・・考えただけで背筋が凍る。
恭子ちゃんは僕をかわいらしく睨んでいたが、薬の効果か眠りについた。
その瞬間、僕は高速で電話を取りだした。
着信30件。
ふぅ、30件か。まぁまぁの数字だ。
とりあえず履歴を見る。
岡田・・・5件、姉ちゃん・・・20件、山田・・・3件、大和・・・1件、陽菜・・・1件。
あのバイブ地獄の真犯人は姉ちゃんだったのか!?母さんはちゃんと説明したんだろうな!!
それよりも・・・大和の後の陽菜1件が気になる。悪い予感しかしない。山田の3件はどうでもいい。
そのときメールが来た。送信者は大和だ。
光速で受信メールを開くと、そこにはとんでもないことが書いてあった。
<> サトリビト<>sage<>2010/04/25(日) 09:43:21 ID:TnpzQatt<> [やっぱり祥子さんとのデートは諦める。そもそも俺なんかが祥子さんに釣り合うわけがない。]
あ、あの野郎っ、僕を裏切りやがったな!!ど、どうしよ―――
ブブブー!!
メールが来た。陽菜からだ。
大好きな人からのメールなのに即刻消したいと思うのはおかしいのだろうか?
しかしそんなことはできるはずもなく、僕はおそるおそるメールを開く。
[今大田君の家で勉強会をしているの。結衣ちゃんや祥姉ぇもいるから慶太もおいで?もちろん、恭子ちゃんもつ・れ・て♪]
この世の中で僕だけじゃないだろうか?大好きな人のメールを返信もせずに削除した。
フフ、恭子ちゃんの寝顔はかわいいな〜。恭子ちゃんはこのまま純粋な人に育ってね?
ブブブブブブーーー!!!
・・・ポチ・・・
[今ね、慶太の家の前にいるんだけど・・・いないのかな?おかしいな〜こんな時間にどこいったのかな〜笑]
なんだ笑いか〜脅かすなよ。そうだよな、大和の家と僕の家はこんな早くつく距離―――
ブブブブブブブブブブブブーーーーーーーー!!!!!!
・・・・・・・・・・・・・ポチ・・・・・・・・・・・・
[あれ?私たち道に迷ったのかな?慶太探してたらなぜか恭子ちゃんの家に着いちゃったんだけど?・・・どうして?]
さぁどうしてかな?僕も知りたいよ。
ピンポーーーーーーン!!
恭子ちゃんの寝顔をもう一度見る。なぜならこれが見納めになるかもしれない。
・・・ごめんな恭子・・・約束・・・守れなくなっちまったようだ・・・でも、恭子のことだけは俺が必ず守ってやるからな・・・
そっとおでこにはりついていた前髪を払った後、僕は玄関に向かった。 <> サトリビト<>sage<>2010/04/25(日) 09:45:46 ID:TnpzQatt<> 以上投下終了です。
今回はあまりにも長くなったため分割しました。
読んでくださった方、ありがとうございます。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 10:04:31 ID:sxHZaY2W<> やべええええ
GJ過ぎるwwww

すげえ楽しみにしてますw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 10:56:35 ID:very9Fgh<> GJだ!

それにしても自業自得すぎる… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 11:06:10 ID:BesaBpBY<> >>なぜか陽菜の心の声は一度も聴こえたことがなかった。
そういえばなんでだろう?

気づくの遅いよWWW
いや〜地雷処理て踏みながらやるんだっけ?WとにかくGJ!! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 11:12:45 ID:kMjVjvyF<> なんかハーレム見てたら死にたくなってくるよな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 11:42:56 ID:xMbDUI0l<> サトリビトは連載間隔が短いから安心して読めて良いな。
内容も面白いし <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 11:47:54 ID:Jyo8HEdy<> 逆に考えるんだ、ヤンデレ達が今お前の独占権をかけて熾烈な争いをしてるんだって
見えないハーレムなんだよ

そのうち夜道を襲われて気が付いたら可愛いヤンデレとの子作りが始まるさ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 12:52:30 ID:FTB/OEFS<> ハーレムどころか小学校以来まともに女の子と話す機会なんかないっていう <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 12:53:11 ID:/mEEOuBY<> サトリビト乙。狙い澄ましたかのように地雷を踏みぬくその精度には驚くばかりだ

>>413
普通は踏まないよう……というか刺激しないように細心の注意を払ってやるもんだと思う
落とし穴に全部落ち、ダメージ床を全部踏み……某ゲームのマッピングみたいだな <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/25(日) 13:00:17 ID:mC5vmjnd<> 生きて帰れるかどうか。そして一人称が僕か俺かはっきりするのか。次回に期待 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 13:59:13 ID:npzul0lx<> GJ!

慶太くん火種撒き散らし過ぎワロタwww

<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 14:10:06 ID:Dlm5QGbB<> GJ!
前々から陽菜の心の声が聞こえない事に疑問を抱かないのだろうかと不思議に思ってたんだけど、ちゃんと疑問に思ってたのね
そして、何かもう恭子ちゃんルートに突入した方が良い気がする。だって他の女性陣が怖過ぎるんだもんw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 16:40:32 ID:xCBXnqvh<> GJ
だが俺の心は誰も読めない(ヤンデレは何故俺のことを好きにならないんだ) <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 18:35:49 ID:l0qOfi2O<> 心読める力を微塵にも良い方に使ってないなw頭悪すぎるだろw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 21:01:52 ID:2NOJDGke<> GJ!心は読めてもバカだとどうしようもないってことだなw
次回も楽しみにしております。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 21:28:05 ID:ZLSXc746<> SS職人の皆様GJ

私も投下したいんだが……携帯は風当たりが強いよねぇ……(規制が激化していて……) <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 22:23:55 ID:shuH750N<> 題名の無い長編十五。続きます。
明らかに見劣りしますが、暇潰しになったら幸いです。
あと、視点が「修二」のみになりました。
了承下さい。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 22:24:57 ID:shuH750N<> 題名の無い長編十五。続きます。
明らかに見劣りしますが、暇潰しになったら幸いです。
あと、視点が「修二」のみになりました。
了承下さい。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 22:26:17 ID:shuH750N<> 題名の無い長編十五。続きます。
明らかに見劣りしますが、暇潰しになったら幸いです。
あと、視点が「修二」のみになりました。
了承下さい。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 22:27:50 ID:shuH750N<> 投下します。
ミスで三回同じこと言ってしまいました。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 22:28:25 ID:shuH750N<>  「修二、おはよう。」
 靴に足を入れようとして驚いた。
 後ろから綾が声をかけてきた。
 通路から玄関まで向かうと死角ができる。
 そこにいた。気配も無く。
 「び・・びっくりさせんなよ・・。心臓に悪いだろ・・」
 心拍数が急上昇し、心音が全身に響いている。
 「三国さん、おはようございます。」
 咲良は全く動じてない。
 それどころか爽やかなあいさつを返す。
 笑顔なのに瞳だけ濁っているのは気になるが。
 対して綾は沈黙する。
 ・・・・咲良よ、もしやお前らグルだった?
 ・・名付けて「朝から修二の度肝を抜こう・作戦」
 ・・・・嫌すぎるぞ両名。
 しかし作戦ならこれだけで終わるまい。
 警戒網を強化せねば・・・
 
 そんな妄想はどうでもいい。
 またグラヴィティエリアが発生する。
 ・・・あれ?
 いつもの精神的にキツい重圧感が全く無い。
 「・・・・・・・・・・・・・」
 咲良もいい加減、諦めたか慣れたのか?
 ・・・前言撤回。
 二人そろって静かな笑みを浮かべてるのに、瞳だけ濁って虚ろな感じになってる。
 すごく怖い。
 慣れるどころか嫌悪が怨嗟にレベルUPしてる。
 重圧から狂気の笑みって感じになってる。
 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い・・・
 トラウマになるのも時間の問題だ。
  <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 22:28:32 ID:2OBXybTi<> GJ!

>>418
最新のは重機みたいなので
わざと爆発させることで処理するらしいぞ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 22:28:50 ID:shuH750N<> 「よぅ、向坂。」
 「あぁ、おはよ。」
 朝からグッタリしてる俺に、崎本(サキモト)が寄ってきた。
 「どうした?やけに疲れてるみたいだが・・」
 「あぁ・・・」
 今日はもう疲れた。
 原因は無論、綾と咲良だ。
 重圧が無い代わりに今度は笑顔。
 表情だけで相手を恐怖のどん底に陥れる人がいるのだと生まれて初めて知った。
 なのに通行人には爽やかにあいさつしてやがる。
 表情豊か・・ってか切り替え速い。
 内心ガタガタと怯えまくってて、外面で平静装うのに全力だった。
 教室に辿り着き、綾と咲良は別クラス。
 やっと開放された・・・
 ・・・・なんて事 言える訳も無く、
 適当に誤魔化した。
 「徹夜でゲームをフルコンプかぁ・・・意外とゲーマーなんだな。」
 フルコンプしたのは嘘ではない。ただ日付が違う。
 徹夜したのは土曜の夜だ。
 「あぁ、だから今日は疲れてるんだ。静かにしてくれ。」
 「Ok 俺もこのあと逃げないといけないのでな。」
 「・・・・健闘を祈る。」
 崎本の逃走劇は結構有名だ。
 体育教師やら時には生徒会。あるときは空手部主将だ。
 最終的に掘られてしまったという噂もある。まぁ、噂だろう。
 ・・・・あれ?主将ってそっちの趣味なの!?
 今更気付いたが、とんでもない事だ。
 で、ヤツは陸上部短距離の生徒とも余裕でタメを張れる人間に成った。
 習慣ってすごいな。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 22:29:27 ID:shuH750N<> 結局、崎本は1〜3時限をサボって担任に大目玉をくらってた。
 そして昼休み、咲良からもらった弁当を広げる。
 咲良は委員会があるので居ない。
 おお・・人前で広げても平気な、男性向け仕様の配色だ・・・
 これで可愛らしいデザインだったら食べるのを本気で躊躇っていたトコだ。
 購買部のパンでも良かったんだけどな。
 某・海賊映画のBGMが鳴り、メール着信を知らせる。
 綾からだった。
 
 『修二、一緒にお昼食べようよ。屋上に来て。』
 ・・・タイミング悪いな。
 返信『スマン。もう済ませた。』
 再び海賊BGM。
 『いいからいいから。来てよ。』
 俺に彼女いるの知っててコレか?
 このまま流されると凄惨な末路をたどりそうだ。
 返信『彼女持ちなので無理です。浮気疑惑は嫌です。』
 またも海賊BGM。
 早いな・・まだ返信してから一分経ってないぞ?
 『なんで来ないの!さっさと来なさいよ!なんで!なんで!なんで来ないの!
  私よりあの女がいいの!?来てよ!来なさいよ!!』
 ・・・声をそのまま文章に変えるプログラムでも使ってるのか?
 そんな事を考えたがどうでもいい。
 文章で恐怖を感じたのは初めてだ。
 まるですぐ目の前に綾本人がいるかのようだ。
 ここは従うか。
 返信『行くから待ってろ。』
 食べかけの弁当を仕舞い込んで屋上へダッシュ!
  <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 22:30:27 ID:shuH750N<> 階段を上っていざ屋上へ。
 錆付いた扉を開いて屋上に出る。
 気持ちの良い風が吹き抜け、直射日光が眼を直撃する。
 手のひらで陰を作り、視界を確保。
 屋上にポツンと一人、綾が居た。
 「待ってたよ。」
 「あぁ。でも本当に腹いっぱいなんだが・・」
 「別にいいでしょ。さ、一緒に食べよ?」
 本当は食べかけだったが、あまり食べ過ぎても午後の授業に支障が出る。
 具体的には眠くなる。
 しかしそんなことはお構いなしに綾は明らかに一人分じゃない弁当を広げていく。
 「修二の好きなメニューだよ。」
 輝かしい笑顔なのに瞳だけは相変わらずだった。
 なし崩しに座らされ、箸をつける。
 旨かったが、そんな事に感心する余裕は無い。
 次第に腹も限界になる。
 「綾、スマンこれ以上は無理。」
 「・・しかたないなぁ。」
 口調だけはいつもの綾だ。
 手際よく片付ける。
 「・・修二ぃ、川上さんのこと、好き?」
 「あぁ。」
 突然だったが冷静に答えることができた。
 「私のことは・・好き?」
 「あぁ。」
 「Love?Like?どっち?」
 「Like」
 風が強くなってきた。
 そろそろ戻らなくちゃいけない。
 淡々と答えることに徹しているが、綾が怖くて気が気じゃない。
 「アハハハハハ・・そっかぁ・・・修二は判ってくれないんだね・・アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
 突然笑いを止め、俯き加減になる。
 綾が動いた・・そう思った時には遅かった。
 一瞬ですぐ目の前まで迫った綾に、俺は反応できず押し倒される。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 22:30:55 ID:shuH750N<> 綾は俺が倒れるのに合わせて馬乗りになる。
 「修二、好きだよ。昔から。小さい頃から。引っ越して来た頃から。」
 綾の顔が近い。
 吐息が顔に当たる。
 「愛してる。あの女よりもずっと修二のことを愛してる。」
 虚ろな瞳に見据えられ、蛇に睨まれた蛙のように瞬き一つできない。
 声が出ない。
 「すぐに答えてって言っても困っちゃうよね?・・アハハ。顔が真っ赤だよ?」
 「ぁ・・な・・何でだ?・・何で・・今更・・・」
 無理やり心を落ち着かせ、声を絞り出す。
 「なんでそんなこと言うの?」
 「無理を・・言うな。・・・・俺には咲良がいる。」
 マウントポジションをとられ、腹部に重圧がかかる。
 息苦しい。
 だがそれ以上に綾のことが怖い。
 何されるか判らない。
 何するか判らない。そんな恐怖。
 「そうなんだ・・・あの女がいるからか・・・いなくなればいいんだよね・・・」
 「綾ッ・・!?」
 立ち上がり、どこかへ向かおうとする綾を呼び止める。
 先行き不安は最高潮だ。
 
 ドスッ・・・

 打ち込まれた場所で言えば、ボディブロー。
 だがそれは拳ではなく、綾の細い足だった。
 つま先を僅かに上に持ち上げ、踵を突き出した状態での強烈なスタンプ。
 的確に俺の鳩尾を捕らえた一撃は十秒足らずで俺の意識を奪い去っていった。
 「待っててね・・・もう少ししたら・・終わるから。」 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 22:31:33 ID:shuH750N<>  夕暮れ・保健室

 目が覚めたのは夕暮れ時。
 真っ白なベッドに横たわり、いまだに痛みの残る腹を押さえながら起き上がる。
 保険医・川内(センダイ)先生の話によると、
 昼休みも逃走中だった崎本が屋上へ逃げ込んだら、俺が倒れていたのを発見。
 で、川内先生に報告し、崎本は再び逃走を再開したらしい。
 今度ジュースでも奢ってやらないと。
 まぁ、それだけで恩を返しきったつもりにはならないが、とりあえずだ。
 「綾のヤツ・・何を『終わらせる』んだよ・・・。」
 「例えばお前の人生を『終わらせる』・・とか?」
 「・・ぅあっ!!?」
 突然誰かが独り言に相槌打ってきた。
 声のした方をみるとそこには、長い髪を後頭部で一纏めにした女子生徒。
 「・・・・・会長でしたか。」
 「声がしたのでな・・。アイツがいるとも期待してたが。」
 「崎本なら一所に留まるワケないじゃないですか。」
 崎本が逃げる対象として生徒会だが、具体的にはこの生徒会長様だ。
 何を怨み買われるようなことしたんだか・・
 一時期、俺は会長に頼まれ(命令)て崎本の事を教えたりした。
 なんでも、「性格などから逃走経路を絞れる」らしい。全く解らない会長様である。
 「まぁ、それもそうだな。向坂、もしアイツが来たらバレないように呼んでくれ。」
 「・・・ハァ、拒否権の行使は?」
 「させないつもりだが?」
 「・・・了解。」
 会長は仕切りのカーテンを閉めてどこかへ行った。
  <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 22:33:29 ID:shuH750N<> 突然、某・海賊BGMが鳴り響く。
 メール着信。咲良だ。
 『・・ねぇ、修二くん。今の女、誰?』
 ・・・どこから見てたの?
 じゃなくて、会長のことか。
 だとしたら完全なる誤解で、こんな昼ドラ的な文章を送られても困る。
 返信『生徒会長のことか?なら誤解だ。あの人はある生徒を探してて、偶然ここに辿り着いただけだ。心配はしなくていい。』
 ふぅ、所要時間9分。メールは慣れないと時間かかる。
 咲良からメールが返ってきた。
 綾もそうだが、早いな。
 『本当に?嘘じゃないよね?嘘ついたらお仕置だよ?』
 ・・・お仕置きがどの程度のものなのか、想像も付かず少し怖い。
  メールを読み終えるタイミングを見計らったかのように、再び携帯が鳴る。
 綾か・・・息継ぐ間もないな。
 「もしもs・・
 『修二ぃ・・・ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい 
ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい・・』 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 22:34:16 ID:shuH750N<> 「えっ?ちょっと待て!何のことか判らん!」
 『ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい
 ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい・・・』
 綾はただひたすらに『ごめんなさい』と繰り返した。
 心当たりは・・・昼休み? 
 「はぁ・・綾、昼休みの事ならもう気にしてないからさ、謝るのやめてくれ。」
 『うん。わかった!』
 「・・・・・・・・・・うわぁ、すごく殴りたくなってきた。」
 『気にしてないって言わなかった!!?・・でも修二になら・・うふふふふふふふふふふふふふふふふふ』
 どうしよう。綾が壊れた。もしくは変なものに目覚めてしまった。
 『ところでさ修二、明日家に来ない?』
 何を言いますかこの電話越しの小娘は。
 男子なら喜ぶべきか、いやしかしここは鉄壁にして不屈の理性と節度を。
 「無理。」
 『やっぱり・・あいつが・・・いるから・・・』
 すごく不穏当なのは気のせいじゃない筈だ。
 「分かった、分かった。行くから。落ち着け。」 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 22:35:07 ID:shuH750N<> アフターサービスが必要か。
 ってか彼女持ちがこんな約束したら刺し殺される覚悟をしないとだな。
 仕方ない。わが生涯を賭して恩義を返す・・・って格好つけすぎか。
 まぁ、覚悟しよう。
 もし刺されたら「わが生涯に一片の悔い無し!」とでも言うか。
 さぁ頑張ろう・・・腹が復活したら。
 うぅぅ・・・腹がまだ痛い。
 メール着信。
 咲良だった。嫌な予感が・・・・
 『明日デートしよう!YesかNoでタイムリミットは一分!』
 予感は当たった。タイミング悪すぎる。
 時間は無くなってゆく。
 カップ麺食べるときは一分が長く思えるのに今は一分がとても速く感じる。
 返信『No。都合が合わない。』
 すぐに咲良から返事が来た。
 『嘘。嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘。あの女のところへ行くの?
私のこと捨てるの?いやだよ嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌』
 バレてる。いや決して浮気ではない。
 それよりアイツらのメール怖いな。未来からの死亡予告と良い勝負だ。
 ヤバイ。危い。怖い。恐い。命の危機だ。
 返信『Yes。やっぱり行ける。安心してくれ。』
 本ッッ当に情けねぇな。俺。クズ男筆頭に名を連ねるな。
 言い訳・・どうしよう・・・
 『11時になったら図書館に来てね!』
 図書館か・・・
 迷子になった嫌な思い出が蘇ってきた・・が、どうでもいい。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 22:35:37 ID:shuH750N<> バイト探すよりも先に、人生の岐路が来たみたい・・だな。
 家路についても考えは纏まらず、夜はろくに眠れなかった。
 ・・・明日、どうしよう。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 22:37:43 ID:shuH750N<> 投稿終了です。駄文ですみません。
選択肢って今でも「あり」ですか?
新参者なので・・もしかして廃止されましたか? <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/25(日) 22:43:32 ID:mC5vmjnd<> 良作乙 しかしものすごく後が気になる。GJ <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/25(日) 23:19:42 ID:YiL7czTO<> GJ


<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/25(日) 23:27:12 ID:LqgposMM<> >>441
GJ!
選択肢はありだと思う。しかし、ルート別に書くつもりなら「ことのはぐるま」みたいに結構長くなると思う


いまだにことのはぐるまの華ルートを待っている俺がいる <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/26(月) 00:10:34 ID:MGhnzJwt<> >>441GJ!

リロードせずに書き込んだら割り込んでしまった
申し訳ない <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/26(月) 01:12:45 ID:5EcrZNdD<> >>441
GJ!
NICEヤンデレ

>>444
よう、同士 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/26(月) 06:49:26 ID:BQcUZ0nl<> 主人公カス過ぎるだろ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/26(月) 06:51:32 ID:xGi5rme0<> GJ


おっ!! 俺にもメールだ


『あなたは今死にます。死にたくなかったらこのメールを10件以上違う人に渡しなさい』



さあ、忙しくなるぞ <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/26(月) 17:32:36 ID:h35HYFQQ<> 主人公<ヤンデレの場合最終的にヤン側が拉致監禁成功!性奴隷ハッピーエンド  となるケースも多いが主人公>ヤンデレの場合主人公の“良識”が勝利したり
泥棒猫が勝利パターンがほとんどである。
やはりヤンデレラブなのでヤンデレが勝たないと欲求不満になる。
何かいい考えは、ないものだろうか?



<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/26(月) 17:49:20 ID:JnGB4pJv<> 心理戦に持ち込んで孤立させるんだ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/26(月) 21:08:11 ID:BQcUZ0nl<> 群青が染まるってSSこのスレに載ったものでもないしヤンデレなんて出てこないのになんでまとめwikiに載ってるんだ?
ググったら作者がまとめに載せないでって言ってるみたいだけど <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/26(月) 21:30:52 ID:9B2eerCo<> いくつか前のスレで投下されてただろ
たしかその時作者は、病むのに時間が掛かるから生温かい目で見てくださいとかなんとか言ってた気がする
>ググったら作者がまとめに載せないでって言ってるみたいだけど
そんな事言ってたがどうかは知らないがここに投下した以上保管庫に載るのは当たり前だと思う <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/26(月) 21:34:16 ID:w8/BFevB<> >>451はヤンデレというものを勘違いしてる
このスレで何度も言われてるけど、元来は病んでいく過程を書いていくものだったはず
最近ではヤンデレ=凶器、血、監禁とかの猟奇的なものばかりだと思い込んでる人も多いっぽいから無理もないけど
最初から病んでるのも多いしね <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/26(月) 21:37:33 ID:Y5LUSy7Z<> >>451
載せてるのは改定版のほうだと思うぞ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/26(月) 21:49:49 ID:xGi5rme0<> 起承転結の作者来ないかな… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/26(月) 21:51:39 ID:w8/BFevB<> >>453です
何か誤解させるような言い方になったので、念のために別に猟奇的なのがヤンデレじゃないとは言ってないので
ただ、最初からヤンデレが登場せずにその過程を描くというのもヤンデレの一つだといいたかっただけです <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/26(月) 22:02:16 ID:Ft7ukTwL<> リアルじゃヤンデレはセフレ扱いだろjk <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/26(月) 22:22:11 ID:iHbqe5f5<> 現実は残酷どころか最悪だな
ヤンデレをセフレ扱いとか <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/26(月) 22:33:14 ID:Ft7ukTwL<> セフレだろ
実際まんどくさいことこの上ないわ
俺童貞だけどさ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/26(月) 23:02:37 ID:hWBCd3yJ<> 童貞はそれ言っちゃダメだろw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/26(月) 23:06:10 ID:22Kpdtbq<> 童貞がそんなこと言えるとはw
いや俺もだけどw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/26(月) 23:07:00 ID:BQcUZ0nl<> >>452
最新話はこのスレに投下された話ですらないんだけど <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/26(月) 23:18:21 ID:Y6Vq0DeP<> よくわからないが、そういうことなら消してしまったほうがよくないか
作者がこのスレで直接、事情を言ってくれればありがたいが <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/26(月) 23:35:03 ID:Ft7ukTwL<> どちらにしろもうちょっと裸で待てよ <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/26(月) 23:36:02 ID:wF7zHk7a<> 当たる 主役 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/26(月) 23:48:40 ID:9B2eerCo<> >>462
作者は規制されてるから直接投下してるんじゃない?
不自然が無いようにタイトル等はわざと入れて
まぁ、マジで規制されてたら監禁部屋の方に書き込みぐらいすると思うけど
さすがに勝手に消すのはまずいし作者が現れるまでもう少し待ってみようぜ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/27(火) 00:45:22 ID:vvwmUtor<> 本人が来るまでは下手にいじらず現状維持でいいとおもわれ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/27(火) 08:22:59 ID:UgaMvboM<> GW前にまた大規模規制が来るという噂なので、トリップが見つかる前に書き込みします。
「群青が染まる」を書いたものです。
長く規制に巻き込まれた期間に、トリップを紛失してしまい、本人証明をすることができ
なくなってしまいました。
何度か試したりしてますが、一向に見つかりません。
そのため、人知れずまとめのほうを更新したほうが良いのではないかと、考えた次第です。
一度更新した際に特に問題が起きなかったので、このまま大丈夫だろうと高をくくってま
したが、このような事態を起こしてしまい、

また、前回の粗相のこともこの場を借りて謝りたいと思います。
誠にすみませんでした。

現在、以前使っていたPC等を調べていますのでトリップが見つかり次第、この書き込み
が本人であることの証明を致します。

過程を書く事もヤンデレの一部だと言ってくださり、少しだけ安心できました、ありがと
うございます。 <>
◆ci6GRnf0Mo <>sage<>2010/04/27(火) 18:23:28 ID:UgaMvboM<> お騒がせしました。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/27(火) 18:46:51 ID:Mg8et4v2<> いやいや、お疲れ様です
これからも群青が染まる期待してますよ <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/27(火) 18:52:38 ID:djNLHu13<> 主役 <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/27(火) 18:58:48 ID:djNLHu13<> 当たる 主役 <> サトリビト<>sage<>2010/04/27(火) 20:05:09 ID:RXffyHSx<> サトリビト第六話を投下します

>>468
自分も期待して待っています。
<> サトリビト<>sage<>2010/04/27(火) 20:06:01 ID:RXffyHSx<> 「どうだった?メリーちゃんの電話を真似たんだけど怖かった?」
・・・大変恐ろしゅうございました、ハイ。
今恭子ちゃん家の玄関で修羅場が繰り広げられていた。
目の前には微笑んでる陽菜、睨みつけてくる岡田と姉ちゃん、抜け殻の大和。僕は玄関先で得意の正座をしていた。
「ちょっと早川!急に帰ったかと思ったらなんでここにいるの!?しかも一人で!!こんな時間に!!」
(あのガキ、人の彼氏に手だしやがって!!ふざけんなっ!!)
やっべ・・・岡田さんが半端ないっす・・・っていうか僕は仮の彼氏でしたよね?
「・・・おい慶太・・・ちょっと恭子だせや・・・」
(・・・コロス)
一つ質問してもよろしいですか?お母様からはなんと説明を受けたのですか?
「ふ、二人とも落ち着いて!!何か勘違いしてると思うけどこれには正当な理由が・・・」
「じゃあなんで大田君にアリバイ工作頼んだの?邪な気持ちがないならそんなことしないよね、普通?」
おしゃるとおりです岡田様。
「正当な理由か・・・お前にとっての正当が友達(13才の娘)といい雰囲気になって家に泊ることだったとはな・・・」
ちょっとお母様っ!?なんて誤解をされやすい説明をしたんですか!?
「ところで恭子ちゃんの具合どう?風邪ひいてるんでしょ?」
よ、陽菜〜!!やっぱり君だけは信じていたよ!!
「う、うん!でもさっき薬飲んでだいぶ落ち着いてきたんだ!」
(ちっ・・・もっと苦しめばよかったのに!)
(よかった・・・ならもう慶太は家に帰ってくるんだな)
姉ちゃんはともかく岡田はなんてこと言うんだ!!見そこなったぞ!!
突然陽菜が笑いだした。
「?・・・陽菜?」
「あ、ごめんごめん。お、おかしくって・・・アハハハハハハハッッッ!!」
今までの陽菜からは想像もできないような笑い声だった。一体僕の会話のなにがおもしろかったんだろうか?
「よ、陽菜ちゃん?」
「どうしたんだよ?・・・気持ちわりぃな・・・」
僕にとっては陽菜が何をしても気持ち悪くはないが、さすがにこの陽菜には驚かされる。
「と、とにかく今日いっぱいは恭子ちゃんの看病をしなくちゃいけないので・・・」
このタイミングならあっさり容認してもらえるか?と思った僕は、どさくさにまぎれて今日はここに泊まるという意思を伝えた。
だが僕の考えはどうやら甘かったらしく、その発言で辺りが一瞬にして音を無くした。
「どういう意味、慶太?」
「早川?」
陽菜と岡田が無表情で僕に訊ねてくる。はっきりいて今まで見た中で一番怖い表情だ。
「あの・・・その・・・」
その時急に腕を掴まれた。
「帰るぞ、慶太。二度は言わせんな」
「ちょ!待ってよ!恭子ちゃんが・・・」
僕の反抗を虚しく、そのまま拉致されようとしたときだった。
「え・・・帰っちゃうの?・・・お兄ちゃん・・・」
恭子ちゃんがパジャマ姿で後ろに立っていた。
「「「お兄ちゃん?」」」
<> サトリビト<>sage<>2010/04/27(火) 20:07:10 ID:RXffyHSx<> 「さっき約束したよね?今日一日はそばにいてくれるって・・・帰っちゃ・・・やだよぉ・・・」
恭子ちゃんが泣きそうな表情で僕にすがってきた。
「悪いな恭子・・・でもお前も女の子一人の家に男なんて連れ込むんじゃねーよ。(ウチの慶太が)何されっかわからないだろ?」
だがそんなこともお構いなしにと姉ちゃんが僕の腕を引っ張る。
「やだぁ!!今日はいるって約束したもんっ!!帰っちゃやだぁ!!」
(嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!)
恭子ちゃんが病人とは思えないほどの力で僕にしがみついてくる。
その態度に姉ちゃんがついにキレた。
「っ!!離せよボケェ!!テメーの風邪が慶太にうつんだろっ!!」
「やだぁ!!絶対に離さないもんっっ!!」
お互いに持てる限界の力で僕を引っ張り合う。正座していたせいもあって今の僕はΖ←こんな状態になっている。腰が痛い。
しかし地力の差がでたのか姉ちゃんに軍配が上がった。
僕は姉ちゃんの胸に飛び込んだ形になったが、恭子ちゃんはそのまま前のめりに倒れる。中学生しかも病人相手になんてことを・・・
「お、お前が離さなかったから悪ぃんだろ!!」
(やべー・・・ちょっとやりすぎたか?)
さすがの姉ちゃんも少し心配そうだ。
「恭子ちゃん大丈夫!?」
僕があわてて声をかけると、前のめりになったまま動かなかった恭子ちゃんが次第に震えだした。
「・・・なんで邪魔ばかりするのよぉ・・・グスッ・・・今日は一緒にいるって・・・約束したのにぃ・・・ウワァァァンッッッ!!!」
そのまま恭子ちゃんは大泣きした。
その様子に全員が戸惑っている。そんな中、一人がそっと恭子ちゃんに近づいた。
その人はそのまま恭子ちゃんを抱き上げ、母親のように優しく告げた。
「大丈夫だよ恭子ちゃん!!慶太お兄ちゃんは優しいから今日はここに泊ってくれるよ!!」
「ほ、本当っ!?」
二人がこっちを見た。もちろん僕の答えは決まっている。
「約束したでしょ?今日はなんでもお願いを聞いてあげるって。恭子ちゃんがお願いするなら、俺はここに残るよ」
「お願いっ!!帰らないで!!」
「了解」
僕はそう言って恭子ちゃんの頭をなでた。
「でも恭子ちゃんは風邪なんだから部屋でおとなしくしていること!俺もついて行くから」
「ずっとそばにいる?朝起きても部屋にいてくれる?」
「・・・しかたないな」
「やたー!!」
恭子ちゃんが本日三度目のハグをしてきた。正直、ささやかな胸の感触が・・・って僕は何を考えてるんだ!?
「恭子ちゃん・・・あんまり男の人に抱きついちゃだめだよ?悪いことを考える人だっているんだから。ね、慶太?」
陽菜が恭子ちゃんに注意をした。
「そうだよ恭子ちゃん。山・・・じゃなくて男の人に簡単に抱きついちゃダメだよ?」
確かにこんなかわいい子に抱きつかれたら、普通の人でも悪いことを考えそうだ・・・ってあれ?
「あ、あの陽菜さん?その悪い人の中に俺はもちろん含まれていないですよね?」
「もちろん・・・含まれているよ?」
一体僕が何をした!?ただ恭子ちゃんの胸の感触がちょっと気持ちいいかなって思っただけな―――
「慶太・・・いいかげんにしないと・・・怒るよ?」
「す、すいません!!邪なことを考えてしまいました!!本当申し訳ないです!!」
僕は謝ったあとで自分の発言に後悔した。 <> サトリビト<>sage<>2010/04/27(火) 20:08:26 ID:RXffyHSx<> 只今の時刻は午後9時。場所は恭子ちゃんの部屋。
部屋の主人は現在ベッドの中。その周りに陽菜、岡田、姉ちゃんがいる。4人は楽しそうにおしゃべりをしている。
ちなみに僕と大和は部屋の隅っこにいる。
最初は陽菜たち3人衆が部屋から出ていけオーラを出したが、恭子ちゃんたっての要望ということで何とか部屋にいさせてもらっている。
しかしこれはある意味、事の真相を聞くチャンスだった。
「ボソッ(おい、なんで俺を裏切ったんだ!)」
「ボソッ(しかたないだろ!あのときの岡田と陽菜ちゃんの様子をみたら誰だって裏切るさ!)」
僕は驚いた。今回のことはてっきり僕を探すことに張り切っている岡田に陽菜が手伝っていただけと思ったからだ。まさか陽菜もメインだ
ったとは・・・
「ボソッ(ちなみに姉ちゃんはなんでいたんだ?)」
「ボソッ(・・・みんないるのに祥子さんだけ仲間はずれにはできないだろ!)」
ということはお前が呼んだのか!?なんてことを!!
「ボソッ(ふざけんな!!そのせいでさっき修羅場になっただろ!!)」
「ボソッ(祥子さんとのお泊り・・・そのためなら修羅場の一つや二つ・・・俺は乗り越えて見せる!!)」
全然カッコよくねェよ!!それにさっきの修羅場を乗り越えたのはお前じゃなくて僕だろ!!
「・・・ってかさっきからそこの男子うるさいんですけど?」
岡田が軽蔑めいた目で僕を見てくる。
実はちょっと前の邪なことを考えてました発言から女性陣がこういう視線を僕に送るのだ。
はっきりいって納得がいかない。これは男の生理現象なのだ。
「すいません・・・以後気をつけますんで・・・」
しかし弱肉強食の世界。弱い者は強い者にまかれるのだ。
「おい、そんなこと言ったらかわいそうだろ?・・・大田君が」
「し、祥子さんっ!!」
「お前はウチに連絡してくれたいい奴だからな。なんならこっちに来っか?」
「ハ、ハイっっ!!」
姉ちゃんが僕に冷たい。これもツンデレの一種だと信じたい。照れてるだけだと信じたい。ってか大和、覚えとけよ・・・
唯一の親友に裏切られた僕は壁に向かって座りなおした。
フフ・・・壁さんはいい奴だな・・・僕から離れないでちゃんと話を聞いてくれて・・・大好きだよ、壁さん・・・
壁に向かってぶつぶつ話していた気持ち悪い高校生に対して恭子ちゃんが話しかけてくれた。
「あ・・・あの・・・慶太さんも一緒にお話しませんか?」
「ダメだよ恭子ちゃん。あの人は恭子ちゃんに対して邪なことを考えた変態さんなんだよ?」
う・・・うぅ・・・陽菜さんに嫌われた・・・
「そ・・・それはそうですけど・・・」
否定してよマイエンジェル!!僕は邪なことを考えたけど変態じゃないよ!!
「でも・・・私・・・慶太さんになら・・・う、嬉しいかも///」
恭子ちゃんの大胆発言に場が凍った。
「え?恭子ちゃん・・・?」
「いまなんつった・・・?」
「あ、あれ〜?私聞き間違いしたかな〜?」
僕も聞き間違えたのか?心の声は岡田と姉ちゃんの声ばかりが聴こえて全く頼りにならない。
「実は私・・・け、け、慶太さんの事が好きなんです!!」
「「「「「は?」」」」」 <> サトリビト<>sage<>2010/04/27(火) 20:09:28 ID:RXffyHSx<> 「恭子ちゃん・・・えっと・・・その・・・」
突然の告白に慌てふためく僕。まったくもって情けない。
そんな僕を見て恭子ちゃんは自分の発言の意味に気づいた。
「あ、いや、慶太さんと付き合いとかそういうわけではなくて・・・その・・・お兄ちゃんみたいで・・・」
(どうしよ〜!!絶対誤解されちゃったよ〜!!)
なるほど、恭子ちゃんの好きは異性に対するものではなくて、家族に対する方の好きだったらしい。
「あ、だから今日慶太のことお兄ちゃんって呼んでたの?」
「・・・うん」
どうやら陽菜も理解したようだ。
「そっか・・・悪かったな恭子・・・その・・・さっきは・・・」
(そっか!恭子は慶太のことを好きなわけじゃないんだな!)
「いいな〜早川。ねぇ恭子ちゃん、私のこともお姉ちゃんって呼んで〜」
(慶太の彼女だもん。慶太がお兄ちゃんなら私だってお姉ちゃんだよ!)
恭子ちゃんの大胆告白のおかげで驚くほどの和やかムードになった。
さすが恭子ちゃん、天使・・・いや女神だぜ!!
「でもそれならおかしくない?恭子ちゃんはお兄ちゃんにいやらしい目で見られて嬉しいの?恋人とかじゃなくて?」
さすが陽菜さん、雰囲気をぶち壊すだけじゃあきたらず、さらっと嫌な事を思い出させてくれたぜ!!
「だって山田さんが言ってたの・・・妹にそう言ってもらえるのがお兄ちゃんの幸せだって・・・だから慶太さんが喜んでくれるかなって
・・・」
あれ?今山田って言った?
「・・・ねえ恭子ちゃん。この際だから山田と話をしたことは水に流すけど・・・それ以外で山田と何を話したの?」
「えっとね・・・確か僕のことはお兄ちゃんと呼んでとか、今度家に一人で遊びに来てとか・・・」
僕は無言で携帯電話を取り出す。
「恭子ちゃん一つお願いがあるんだけど・・・聞いてくれる?」
「なに?」
「実は俺、ある人にいじめられていて・・・そいつに嫌いだって言いたいんだけど勇気がなくて・・・だから恭子ちゃん、俺の代わりにそ
いつのこと大嫌いって言ってくれないか?」
「慶太さんをいじめるなんて許せない!!分かりました!!私がその人に嫌いだって言います!!」
僕は心の中でほくそ笑みながら山田に電話した。
「なんだ早川君?」
山田が出たところで恭子ちゃんに変わる。電話をうけとった恭子ちゃんはやる気満々だ。
「いい加減にして下さい!!あなたって人は・・・あんまりです!!私あなたのこと一生軽蔑します!!大っきらいです!!」
そう言ったところで恭子ちゃんから電話をひったくり、切った。これでよし。
「ふぅ・・・恭子ちゃんはもう絶対にどんなことがあっても山田とは話ちゃダメだからね?」
「?・・・うん」
(どうしたんだろ・・・慶太さんが恐い・・・)
ごめんね恭子ちゃん。でもこれも恭子ちゃんのためだからね? <> サトリビト<>sage<>2010/04/27(火) 20:10:21 ID:RXffyHSx<> 「んじゃ、そろそろ寝っか」
時計の針は10を指している。寝るには早い時間だったが、そろそろ恭子ちゃんに寝てもらわないと本末転倒になる。
姉ちゃんの一声に全員が従った。
僕と大和は部屋を出る。さすがに女の子と一緒に寝るのはマズいからだ。
「慶太さん・・・」
(さっきは朝までいてくれるって言ってたのに・・・)
「ごめんね?でも僕は隣の部屋にいるから、なにかあったらすぐに来てね」
後ろ髪を引かれながらも僕は部屋を出た。
大和は疲れたのか、隣の部屋に入るとそのまま恭子ちゃんのお父さんのベッドに倒れこんで眠った。
僕は空いていたお母さんのベッドに入る。ものすごく居心地が悪い。
そういえばこのベッドを僕が使う事を恭子ちゃんのお母さんは知らないんじゃないか?
そう考えると、ますます罪悪感が募ってくる。
僕はそのまま眠れぬ夜を過ごした。

どれくらいの時間がたったのだろうか?突然部屋のドアが開いた。
「あれ、恭子ちゃん?」
ドアを開けたのは恭子ちゃんだった。
「あっ!慶太さん・・・起こしちゃいました?」
(どうしよう・・・迷惑だったかな・・・?)
「いや、ずっと起きてた。なんか眠れなくて・・・ところでこんな時間にどうしたの?」
時計を見ると今は3時らしい。
「私も・・・さっき目が覚めてから眠れなくって・・・」
(慶太さんと一緒に眠りたいって言ったら怒られるのかな・・・)
う〜ん、どうしようか?恭子ちゃんの頼みなら聞いてあげたいのは山々なんだけど、さすがに一緒のベッドは・・・
「じゃあ少しお話しようか?」
「うんっ!!」
とりあえず恭子ちゃんをベッドに入れ、僕が地べたに座ろうとした。
「あ・・・慶太さんもベッドに入ってくれませんか・・・?」
恭子ちゃんのお願いに僕は従った。
これはしかたのないことだ。恭子ちゃんのお願いだからな、うん。決して心の中でガッツポーズをしているわけではない。
「えへへ・・・慶太さん、あったか〜い」
抱き枕を抱くように恭子ちゃんが僕にしがみつく。
訂正、誰か・・・助けて下さい・・・
「今日は・・・有難うございました・・・本当に楽しい一日でした・・・」
僕の胸に顔をうずめている恭子ちゃんがポツリとつぶやいた。表情は見えない。
「それなら僕にじゃなくて陽菜たちに言わないと・・・」
「でも・・・やっぱり慶太さんがいないとこうはならなかったと思います・・・それに・・・」
(私が一番一緒にいたかったのは慶太さんだから・・・)
恭子ちゃんの僕を抱きしめる腕に力がこもる。まるで何処にもいかせないように。
ふと恭子ちゃんの言動に気になる点を見つけた。
「あれ?そういえば俺のこと慶太さんって・・・お兄ちゃんはやめたの?」
僕の言動に恭子ちゃんの呼吸が一瞬止まった気がした。
「・・・覚えていますか?私と慶太さんが出会ったときのこと・・・」 <> サトリビト<>sage<>2010/04/27(火) 20:11:06 ID:RXffyHSx<> 僕と恭子ちゃんが出会ったのは病院。
僕はサトリについて研究している教授の手伝いとして病院に通っていた。その時にある先生から頼まれたのだ。
「実は早川君にお願いがあるの。ある鬱病の患者さんなんだけど、なかなか心を開かなくて・・・そこで早川君にその患者さんが何につい
て悩んでいるのか聴いてほしいの」
そんな難しい問題に関わることは断ろうと思ったが、その子が10歳と聞いて僕は協力した。
10歳といえば僕がサトリの能力に目覚めたころで、僕もそうとう心を病んでいた。だが陽菜によって救われたのだ。
僕は陽菜のようにはできないかもしれないけど、少しくらいならその子の力になれるはずだ。
恭子ちゃんを初めて見たとき、なぜかあの頃の陽菜を思い出した。
実はあの頃の陽菜もこうして悩みを抱えており、誰かに救いを求めていた。
陽菜は毎日が楽しそうだったのに、どうしてかそんな気がした。
だから僕は恭子ちゃんのためというより、陽菜のために頑張ったんだと思う。
恭子ちゃんが毎週土曜の朝に来ると分かり、3か月僕はずっと土曜日の朝は病院に通った。
最初は恭子ちゃんもその両親も怪訝な表情で見てきたが、僕の努力が功を奏し、少しずつだが話をする仲になっていった。
そして僕はサトリの能力で恭子ちゃんの鬱の原因を察知し、それを両親に告げた。
「恭子ちゃんはお父さんお母さんが家にほとんどいないことで悩んでいます」
恭子ちゃんの両親は僕の言葉に思い当たる節があったのか押し黙った。
しかしこれは経済的な問題。なかなか解決方法が見当たらないのが現状だ。
思い悩んだ挙句、僕は一つの案を思いついた。
「ねぇ恭子ちゃんは兄弟がほしいと思ったことある?」
「・・・うん・・・あるけど・・・」
「じゃあ、さ・・・僕が恭子ちゃんのお兄ちゃん替わりやってもいい?」
恭子ちゃんが驚いている。
当たり前だ。知り合って数カ月の他人にいきなりお兄ちゃんて言われても驚き以外なにものでもない。
「別に一緒に住もうなんて言わないよ。ただ・・・暇な時に遊んだり電話したりするだけ」
「それじゃ・・・友達なんじゃ・・・」
「はいこれ」
そう言って僕は家のカギを恭子ちゃんに渡した。
「これ俺んちのカギ。これがあればいつでも家に来られるでしょ?これが友達との違い」
恭子ちゃんは掌に置かれたカギをずっと見つめている。
(いいの?本当にお家にいってもいいの?お父さんやお母さんがいない日はいつでも行っていいの?)
「ただし、来るときは必ずお父さんとお母さんに許可をもらう事!それと電話なら24時間いつでもかけていいからね」
僕がそう言った途端、恭子ちゃんの掌に水滴が落ちた。
「ありがとうございます・・・でも私・・・やっぱりあなたのことお兄ちゃんなんて呼べません・・・」
(この人が本当のお兄ちゃんのように毎日うちにいてくれる日が来たら・・・そのとき呼ぼう!) <> サトリビト<>sage<>2010/04/27(火) 20:12:18 ID:RXffyHSx<> 「あの時思ったんです。この人が家にずっといてくれる日が・・・本当のお兄ちゃんになってくれる日が来たらお兄ちゃんと呼ぼうって。
だから今日泊まっていくと言ってくれたとき、そう呼びたいって思ったんです。今日一日は本当のお兄ちゃんになるんだなって・・・。
でも・・・人がいっぱい来て、私だけのお兄ちゃんじゃなくなって・・・呼ぶのをやめたんです。」
なんてことだろう。楽しそうにしていた中でこんな風に思っていたなんて。サトリの能力は一体何をしていたんだ。
「本当はもう十分だったんですが・・・さっき目を覚ました時に無性に慶太さんに会いたくなって・・・」
(お兄ちゃんって呼びたくて・・・)
「だから・・・せめて朝までは・・・こうしていてもいいですか?もう二度と我がまま言いませんので・・・」
(朝まではお兄ちゃんでいて・・・私だけのお兄ちゃんでいて・・・)
恭子ちゃんはそのまま黙りこんでしまった。
こんな時なんて声をかければいいんだろう?
僕の乏しい人生経験ではなにも思いつかない。
「・・・そういえば恭子ちゃんに渡したカギ、一度も使ってないよね?・・・どうして?」
悩んだ挙句が話題の転化。何をやっているんだ僕は・・・
「・・・だって・・・迷惑だから・・・」
(やっぱり私が家に行っても迷惑に思われる・・・慶太さんにだけは・・・そう思われたくないから・・・)
そこで僕はやっと気がついた。ここで恭子ちゃんが喜ぶ答えを。
「恭子ちゃんのご両親は今どこら辺にいるの?」
「今ですか?・・・今日はフランスで泊るって言っていたので・・・この時間だとホテルかレストランかな?」
それを聞いて僕は携帯を取り出した。
「恭子ちゃんのお父さんの携帯番号教えてくれる?」
「え?いいですけど・・・」
恭子ちゃんから電話番号を聞いた僕はさっそく電話をかけた。うぅ・・・国際電話は高いんだぞ・・・
「もしもし?」
「もしもし恭子ちゃんのお父さんですか?早川慶太です」
「おぉ〜慶太君か!?久しぶりだなぁ!!ところで、私になにか用かね?」
「えぇ、実は・・・」
後は野となれ山となれ。
「恭子ちゃんのお父さんとお母さんが家にいらっしゃらないとき・・・恭子ちゃんを僕の家で預かってはだめですかね?」
「な、何っ!?」
「え、えぇー!!」
あー、恭子ちゃん!!今はしゃべっちゃだめだよ!!
「・・・今恭子の声が聞こえた気が・・・」
「い、今のは姉ちゃんです!!こんな時間にお宅の恭子ちゃんがいるわけないじゃないですかっ!!アハハ・・・」
なんとか恭子ちゃんの口をふさぐことに成功。でももしこの場面を他人が見たら完全に犯罪者に見えるカッコだ。
「ところで・・・さっきのお願いはいかがですかね?」
「・・・恭子がまたさびしがっているのかね?」
「正直に言うとそうです。でも恭子ちゃんはお父さんやお母さんの気持ちを知っていますから、そういう事は一切言っていません。ですか
らこれはあくまで僕の個人的主観によるものです」
「・・・考えても?」
「もちろん、お願いします!!」
そこで電話が切れた。
「ごめんね、勝手に話を進めちゃって・・・でも俺は本気だから。本気で恭子ちゃんに家に来てほしいと思っているから」
僕は恭子ちゃんに真剣なまなざしを送った。恭子ちゃんも僕の目をじっと見ていたが、やがて僕の胸に頬ずりをしてきた。
「慶太さんはズルいです・・・慶太さんのこと、諦めようとしたのに・・・諦めさせてくれないんですね・・・」
(どうしよう・・・やっぱりもっと慶太さんと一緒にいたいよぉ・・・ずっとこうしていたいよぉ・・・)
そのまま恭子ちゃんは眠りについた。
僕は余計に眠れなくなったが・・・まぁたまにはこんな日があってもいいだろう。 <> サトリビト<>sage<>2010/04/27(火) 20:13:37 ID:RXffyHSx<> 「慶太!!」
朝っぱらからうるさいな・・・
「起きろ慶太ぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「うおっ!?」
僕はあまりの大音量に飛び起きた。どうやらいつのまにか眠っていたらしい。
「あれ姉ちゃん?なんで俺の部屋に?」
「ここはテメーの部屋じゃねぇだろっ!!」
そこでやっと思い出した。昨日恭子ちゃん家で泊ったことを。
「まぁまぁ祥姉ぇ落ち着いて。それより・・・なにやってるの慶太?」
ん?眠っていただけですけど?
「さいてー・・・仮にも私の彼氏のくせに・・・」
えっ!?まさかおねしょでもしたのか!?
「・・・慶太・・・歯をくいしばれ・・・」
そ、そんな!!たしかにこの年、しかもよその家でおねしょは最低かもしれませんが、なにもそこまで・・・
「ちょ、まってよ姉―――」
バチーーーーーン!!
僕は体が吹き飛ぶくらいの衝撃を顔に受けた。だが予想と反して僕の体はそれほど動かなかった。
「ひ゛と゛い゛よ゛!!」
「ひどいのはテメーの方だ!!なに13の娘に手をだしてんだよっっ!!」
姉ちゃんは何を言っているんだ?僕が恭子ちゃんに手を出したって言うのか?
「「さいてー」」
陽菜も岡田もなぜ僕にゴキブリでも見るかのような視線をおくるんだ?
そのときぼくの胸のあたりで何かが動いた。
「う、う〜ん・・・むにゃ・・・」
あ、あれ、あれれ?ぼ、僕の胸にいるお方は一体・・・?
「ん・・・ん?あ、あれれ?け、慶太さん!?」
ようやく恭子ちゃんが目を覚ました。
「な、なんで私慶太さんのところに!?」
・・・このタイミングでそういう事言います?まるで僕が君をここに連れてきたみたいに聞こえるんですが?
「慶太・・・もっかい歯ぁ〜くいしばれや・・・」
フフ・・・全く恭子ちゃんは。この小・悪・魔・さ・ん・め♪
それから数分間僕は気を失った。

朝から痛い目にあった日だったが、この日は僕にとってはいいことづくめだった。
まずは朝恭子ちゃんの携帯にお父さんから[粗相のないように]とのメールが入っていたこと。
次にそれを見た恭子ちゃんが今まで見たこともないくらい嬉しがっていたこと。
そして・・・なんとか陽菜にだけは誤解が解けたこと。
そいえば後日談になるのですが、この日を境に恭子ちゃんは両親がいないとき家に泊りに来るようになりました。
恭子ちゃん(の心の声)いわく、やっぱり兄妹は一緒にいるのが当然だとか。
でも出会うたびに泊ったときのことを話すのはやめてね?岡田さんが笑顔で放つ『声』が恐いから。
それと余談ですが、山田君が最近学校に来なくなりました。 <> サトリビト<>sage<>2010/04/27(火) 20:17:10 ID:RXffyHSx<> 以上投下終了です。
現在8話まで書き終えているので、規制がなければGW中には投下したいと思います。
読んでくださった方、ありがとうございました。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/27(火) 20:50:30 ID:0Feb8jYC<> 山田くーんw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/27(火) 20:52:16 ID:MGco0xCA<> GJ! <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/27(火) 20:55:52 ID:XtohVMqI<> GJ! 何か危険な匂いがする。というか地雷踏みまくりだろお前 戦場で真っ先に(ry <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/27(火) 21:00:07 ID:holRWTYc<> 投下乙。山田ァァァァァ!

最近だと重機で一気に踏みつぶすのがセオリーらしいから
これも地雷除去の一環なんだろう……多分

問題なのは主人公が生身だ、というところだけど <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/27(火) 21:31:00 ID:chxTWsek<> >>482今回だけはGJと言えない!酷いじゃないか!!山田君に死刑執行するなんて!!


次回山田君の復帰に期待 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/27(火) 21:33:12 ID:6kvvfLPH<> GJ
ソ連の懲罰部隊では捕虜や撤退した軍人に地雷源を横一列に歩かせて地雷処理していたそえな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/27(火) 22:14:59 ID:rk6TZ3qv<> や、山田ああああああああぁぁぁぁ! GJ!
もう山田君はこのまま可哀相なキャラとして突っ走って欲しいw

>そして・・・なんとか陽菜にだけは誤解が解けたこと。
やっぱり、こういう理解してあげられるって所を見せ付ける事ができるのは有利だな。
恭子ちゃんの純粋さぐらいしか対抗できないんじゃないだろうか
姉ちゃんはまだいいけど岡田さんは心の声でガンガン評価下げてるし <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/27(火) 22:21:22 ID:8gG0TK4n<> 鍵を渡しちゃ駄目だ! <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/27(火) 23:04:31 ID:Bf8A7xVz<> GJ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/27(火) 23:33:12 ID:QzbvWjtH<> そろそろ陽菜視点で今迄のことを見たいな <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/28(水) 00:05:52 ID:jFiYV7Pp<> 今までの話をを山田視点でお願いします <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/28(水) 01:10:49 ID:lP+0uro2<> なんかどの世界でも友人キャラって不遇だよな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/28(水) 02:54:39 ID:2pljgNt5<> だがそれがいい <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/28(水) 03:56:13 ID:Zja666GA<> >>482
GJ! 続き楽しみにしてる!



ところで、ことのはぐるまの続きまだ? <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/28(水) 13:17:10 ID:FsPe3LC3<> 主役 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/28(水) 15:49:46 ID:hHl7Sl4I<> 慶太もヘタレだが大和はそれ以上のクズだな
自分は祥子一筋だから無理とか抜かしときながら同じく陽菜一筋の慶太に偽装彼氏押し付けるわ
呼ぶ必要無いのに祥子を呼んで慶太がピンチになっても知ったこっちゃねーだの
こいつ本当に親友なのか? <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/28(水) 20:14:41 ID:jFiYV7Pp<> 親友って残酷だということはみんな知っているだろう? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/28(水) 20:21:51 ID:38sXvffs<> 親友に告られて拒否ったら既成事実を作らされましたってシチュエーションが頭によぎる <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/28(水) 21:31:37 ID:Il5XVfDf<> さぁそのSSの制作に取り掛かるんだ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/28(水) 23:46:43 ID:YdIIpj6O<> ヤンデレから逃げる際に協力してくれて
一番頼りになる親友だと思ってたら一番病んでたというね <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/29(木) 00:01:06 ID:x9BIbdV2<> >>502
そのアイデア貰った <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/29(木) 00:51:16 ID:gdvCVdd4<> >>503
楽しみにしてる <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/29(木) 00:54:48 ID:xRFi1BL7<> >>503
がんがれ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/29(木) 00:56:21 ID:xRFi1BL7<> >>504
がんばれ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/29(木) 02:55:37 ID:CdrXcCPo<> 百合でヤンデレって最高だと思うんですけど <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/29(木) 03:11:04 ID:PcIq0VaI<> >>507
楽しみにしている <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/29(木) 05:36:53 ID:BibuL/Op<>        ███▄
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            ▀█████
              ▀██▀ <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/29(木) 05:38:31 ID:WkDdo4vc<> いいえ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/29(木) 07:06:36 ID:9N8wgmtz<> >>507
百合板へどうぞ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/29(木) 09:04:08 ID:vDX3wm8O<> 脳内彼女に病まれて、一生眠り続ける(監禁されちゃう)のはあり?なし? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/29(木) 11:58:15 ID:6wvU+hZB<> 絶対にナシ! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/29(木) 13:52:40 ID:+5ual2NY<> 俺はありだと思う <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/29(木) 14:15:09 ID:RZgjKAqZ<> 俺もいいと思う
ゲームのキャラに襲われてギャーなものもあったし <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/29(木) 15:30:19 ID:r86moDx4<> 男が好意を抱いている人物→泥棒ネコめ……排除しなくちゃ
男が敵意を抱いている人物→私が手を下すまでもないわ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/29(木) 15:39:39 ID:9N8wgmtz<> 個人的には
男が敵意を抱いている人物→男君の敵は私の敵 <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/29(木) 19:49:26 ID:PkOYVhsU<> GWネタって無いね。当たり前か <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/29(木) 19:54:49 ID:x9BIbdV2<> GW自体が鉄板なイベントとかなくてネタにしにくいからな
5日間も会えないなんて耐えられない、って感じのテンプレ展開しか思いつかん <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/29(木) 20:10:26 ID:dT9mYUHL<> 5日間も独り占めw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/29(木) 20:31:46 ID:pwiGy7Nt<> 五日間繋がりっぱなしってのがいいな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/29(木) 20:39:01 ID:r86moDx4<> サークルでGW旅行に行くのがダルいから、ヤンデレに監禁されたいです <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/29(木) 21:39:48 ID:2Lq1lwMo<> ファイト <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/29(木) 22:31:45 ID:B3ReKPAv<> 旅行なんて最初から存在しない
さらに言うなら、サークル自体も……

少女の計画がようやく成就する <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/29(木) 23:34:59 ID:2Lq1lwMo<> 解 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/29(木) 23:40:03 ID:Ua0TppMW<> 出会って付きあって結婚するまでは普通の女性だが、
結婚式の誓いの言葉で「こいつヤンデレだー!」と発覚するような <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/29(木) 23:58:53 ID:qP43DCOB<> その後怒濤の回想でこれまであった事件の種明かしをするんですねわかります <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/30(金) 06:48:14 ID:ypnlXsgQ<> 一昨日から良いネタでまくりですな <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/30(金) 20:30:53 ID:nO9d2qR0<> GWって最高にいいイベントありまくりじゃないですか。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/30(金) 22:24:28 ID:YAhJYlCx<> これからが楽しみだなー+(0゚・∀・) + ワクテカ + <>
◆BaopYMYofQ <>sage<>2010/04/30(金) 22:52:42 ID:8gNkLRd5<> 投稿します <> 赤と緑と黒の話 第2話 ◆BaopYMYofQ <>sage<>2010/04/30(金) 22:54:45 ID:8gNkLRd5<> 午後8時。先日の季節外れの雪に始まり、室内ですら少し早い冬の訪れを迎えたような寒さで、暖房器具なしでは辛いだろう。
俺はと言うと、リビングで目玉焼きとトーストをつまみながら緑茶を飲み、ニュースをチェック中。
明日の朝の最低気温は4度と、冷蔵庫内と同じ数値を弾き出す天気予報。それによれば、昼から未明にかけて雨が降り出すらしい。

机の上には皿が二枚。ただし、その両方にトーストと目玉焼きがセットで乗っている。
俺一人ならば1セットで十分なのだ。だが、今朝だけは必要に追われることになり、さらにまだ足りない、というのだ。
その、もうひとつのトーストを必要としてるであろう人物は、現在台所で絶賛料理中なのだ。

「待っててね先生、すぐに作っちゃうから♪」

台所からは陽気な声と何やら香ばしい匂いがし、1LDKの部屋に未だかつてない明るさをもたらす。
その明るさを与えてくれた人物はお察しの通り、朝霧 湊だ。

なぜ湊が俺の部屋にいるのか。そう疑問に思った人はいるだろう。だがこれには深い訳があるのだ。

ついうっかり夜まで寝てしまった俺達は、あの後すぐに施錠して学校を出た。
帰りが遅くなってしまったものだから、湊を俺の車で家まで送って行くことにしたのだ。
だが車内に乗り込んで数分後、重大な問題が発生した。

『あ、家の鍵忘れちゃった……』

本人曰く、親は湊が学校に出かけてから仕事に向かい、いつめ帰りは湊が帰ってくるよりも遅い。
それならまだいいが…湊によると親は今日は泊まりがけで仕事をするらしく、丸一日帰ってこないらしい。
普段なら湊は鍵を常備しているらしいのだが、今日はたまたま鍵を忘れてきたのだとか。
それでもって親は当然、湊は鍵を持って家を出た、と認識しているため、開錠の可能性は絶望的、と湊は語る。
母親はいないのか、と他の皆さんなら尋ねただろう。だが俺は仮にも湊の担任だ。湊の家庭の事情は、必要最小限は把握している。
湊の両親は16年前に職場恋愛の末に結婚。共働きをしながら家族生活を営むが、父親は三年前に病気で他界。
母親は、保健と自身の収入でなんとか湊に苦労をかけることなく養っているのだ。

閑話休題。

そんなわけで、今夜だけ俺の家に泊めることにしたのだ。
俺のせいで遅くなってしまった手前、そう提案せざるを得なかったのだが。
ただ…ついさっき、俺は湊にあんなコトをしてしまったばかり。なのに湊は俺を責めるどころか、自ら進んで晩飯を作ってくれている。俺は内心、針のムシロ状態だった。

「できたよー♪」

料理が完成したようだ。湊は大皿を二枚持って、居間に向かってきた。俺は椅子から立ち上がり、皿を受け取ってテーブルへと運んでやる。
皿の上には、見事な出来映えの肉野菜炒めが盛られている。久方ぶりに見る、最近おろそかにしがちだった野菜のコントラストが食欲をそそった。
さらに湊はいつの間に用意したのか、白米を茶碗に注いでテーブルへと運んできた。
いったいどうやったらそんな綺麗な色つやの米を炊けるのか。気になって仕方がない。
とにかく、湊の料理スキルはおよそ高校生とは思えないほど完成されている、と思った。

料理を並べ、テーブルを挟むように向かい合って座布団に座る。
いただきます、と食前のあいさつをし、いよいよ箸をつけてみた。
しっかりと火の通った肉と野菜の香りと、小気味良い食感。白米の甘みと野菜炒めのスープが見事に絡み合い、絶妙な旨味を演出している。一言でいえば、美味い。
黙々と、箸を進める。次第にそのスピードはアップし、気付けはあっという間に皿の上は空になっていた。

「……湊、お前まじで料理上手だな」
「ほんと!?」
「ああ、これならどこに嫁に行っても問題ないな」

素直な褒め言葉がすらすらと俺の口から出る。それには何の意図も含まれず、本当に正直な感想だった。なのに湊は、

「やったぁ! これでいつでも先生のお嫁さんになれるね!」

などと抜かしたもんだから、折角の肉野菜炒めが変な所に入り、むせてしまった。 <> 赤と緑と黒の話 第2話
◆BaopYMYofQ <>sage<>2010/04/30(金) 22:56:06 ID:8gNkLRd5<> 「げほっ、げほっ…い、いきなり変な冗談を言うな!」
「…冗談だと、思うの?」

じっ、と目と目が合う。だが湊は笑ってはいなかった。唇は一文字に結ばれ、まっすぐに俺を見つめ、そっと手を伸ばす。

「先生は私の事、愛してくれないの?」
「お…俺は教師だぞ。んでもって、お前は生徒だ。そんなの−−−」
「だったら私学校辞める。愛してくれるなら、何でもするよ?」

表情を全く変化させないまま、湊は言葉を紡ぐ。その瞳は、俺を見透かそうとしているようだった。

「愛なんて信じてなかったし、他の誰も、笑顔の下で何を考えてるのか、怖い。でも先生だけは私に優しくしてくれた。だから、先生の事が好き」
「その歳で何をそんなに思い詰めてるんだ」
「…いろいろあったんだよ?」

湊はわざとらしく、含みのあるような言い方をした。
その笑顔の裏にはまだ、俺の知らない真実が潜んでいるのだろう。果たしてそれを知ったところで、俺に何ができるのか。そんなことはわからない。
ただひとつ言えることは…俺は少しずつ、だが確実に湊に心惹かれつつある、ということだけだ。


######

全てが始まったのがあの日なら、全てが壊れはじめたのはいつだろうか。…いや、そんなこと考えるまでもない。
湊とのキスから一週間が経った、11月最初の水曜日。俺はあの日から、湊と目を合わせる事を避けていた。
といっても湊は俺のクラスの生徒なわけで、1年5組で英語の授業があれば、どうしてもそれは完全に回避できない。
だが目が合ったとしても、湊は俺をじっ、と見つめてにこにこ笑うだけだった。
なぜ、何も言わない。まさか本気で思ってるのか? 俺ならば構わない、と。…やめよう。そんな思考は無意味だ。

今日の放課後は、二日前に暴力事件を起こし、現在謹慎中の体育教員、持田の正式な処分を決定するための職員会議が控えている。
ほとんど処分の内容は決定していて、それを通知するだけの、もはや形だけの会議だが。部活に行けないことの口実になるな、と一瞬考えた自分がいた。
自己嫌悪。そんなものは責任逃れに過ぎない。それに、今も部員は湊一人なのだ。
以前湊は、一人で茶を立てても意味がない、と言っていた。ならば俺が行かなければそもそも部活は行われないのだろう。

帰りのホームルーム。

俺はいつものように連絡事項と明日の時間割の確認をし、あっさりと帰りの挨拶を済ませる。生徒たちはそれを受けて、ばらばらと散ってゆく。ただ一人、湊を除いては。
10分ほど経過すると、教室には俺と湊以外は誰もいなくなった。俺は湊に背を向けて、黒板関連の掃除をしている。だがそれも、もう終わる。

がたん、と湊が椅子から立ち上がったであろう音がした。
足音が、徐々に迫る。それと共に、俺の心拍数も段々と早くなるのが自分でわかった。

「…先生」

すぐ真後ろ、ほぼゼロ距離で声がした。

「どうして目を合わせてくれないの?」
「………それは」
「私がいつもにこにこしてたから、何も思ってないと思った?」
「けど俺は、お前に」
「寂しかったよ」

湊は俺の背中にぽすん、と身を傾ける。心地好い体温と、石鹸の良い香り。一週間前の記憶が嫌でも呼び起こされる。
湊の両腕は俺の身体に回され、抱き着いたような恰好になっている。その掌は、服ごしでも暖かい、と感じた。 <> 赤と緑と黒の話 第2話
◆BaopYMYofQ <>sage<>2010/04/30(金) 22:57:21 ID:8gNkLRd5<> 「今日、待ってるから。会議終わったら…来てね?」

湊はそれだけを言い、身体を離す。
とほぼ同時に、3時20分、今日に限っては会議開始10分前を告げる役割を帯びるチャイムが鳴る。
俺は最後まで振り返らず、湊が遠ざかっていく足音だけを見送った。


同日、18時。職員会議がようやく終わりを迎えた頃にはすっかり日が暮れていた。
他の教員方はさくさくと帰宅の支度を始めている。未だ椅子から立ち上がれずにいたのは、俺一人だけだ。
ため息ばかりつくと幸福が逃げる、とはよく言うが。ならば俺の分の幸福はとうにマイナスの値にまで達していることだろう。
だがいつまでもこうしている訳にもいかない。俺は気つけにと、デスクの上のブラックコーヒー缶をあおる。
安いコーヒーならではの、苦さよりも酸っぱさが目立つ味が口の中に広がる。その味は不快だった。こんなもの、湊のお茶に比べたら泥水だ。
そういえば、俺が自販機でブラックコーヒーを買ったのは、約二ヶ月ぶりだ。もう、そんなに経つのか。
初めて茶道部室を二人で訪れた記憶は、まだ新しいような気がするのに。

(一人でお茶なんか立てても、おいしくないですよ)

なぜか俺はその瞬間、湊の寂しそうにする姿が脳裏に浮かんだ。
心が痛む。こうしている今も、湊が待っているとしたら。
けれど、一歩を踏み出せずにいた。湊は俺が昔、心惹かれた人にあまりに似すぎていたから。
容姿の問題ではない。似ていたのはその視線。
俺を見つめるあの瞳が、あの人そっくりだったから。湊に見つめられる度にかつての記憶が蘇るのだ。
その人はいつも綺麗な栗色の髪の毛から石鹸の良い香りを漂わせ、快活で、花のように笑う人だった。
彼女はまだ幼い俺を慈しみ、愛情を注いでくれた。だがその愛情は家族愛の域をけして越えるわけではない、と思っていた。
しかし、そうではなかったのだ。

彼女の名前は十六夜 麻梨亜。俺の実の姉だ。

######

少しだけ、昔話をしよう。

あの頃は姉さんは18、俺は14歳だった。
俺達は昔から何をするにも一緒で、学校以外の時間はほとんど共有していた。
おそらく世間で俗に言う、恋人という関係よりも長い時間を共にする、それは"家族"なら当たり前のことだった。
だが思春期を迎えたばかりの俺にとっては、ただ単に"家族"で片付けることはできなかった。姉さんは他のどの女性よりも綺麗で、優しかったから。
一過性の感情だとわかっていても、俺は姉さんを一人の女性として確かに意識していた。
けれど姉さんはいつも笑顔を絶やさず、俺に対して負の面を見せることはなかったんだ。


だがある日を境に、姉さんは変わった。

−−−14年前の夏。

姉さんへの想いは、抱いてはいけないものだという自覚はあった。だから俺は想いを断つべく、クラスメイトの女子との交際を始めた。
最初に告白してきたのは向こう、それも以前の話。だけど彼女は「いまさら?」などとは言わず、快諾してくれた。
付き合い始めたその日に下校を共にしてみて俺は、"楽しい"と思った。これならきっと上手くいく、と。姉さんを忘れて、一歩前へ踏み出せると。
そして、帰宅してすぐに俺は姉さんに告げた。「彼女ができた」と。
姉さんは喜んでくれるだろうか、などとは考えなかった。ただ、その宣告によって、自分の中の葛藤を消し去ることがようやくできる、と思っていたのだ。
だが、そうはならなかった。 <> 赤と緑と黒の話 第2話
◆BaopYMYofQ <>sage<>2010/04/30(金) 22:59:57 ID:8gNkLRd5<> 「刹那、お姉ちゃんとお出かけしよっか」

微笑みながら手を差し延べ、姉さんはそう言った。
別に、この日に限って特別なわけではない。このやりとりは日常からありふれたものだ。
なのに。この時俺は確かに、胸騒ぎのようなものを感じていた。この手をとったら、後には戻れない、そんな気がする。
しかし俺は、その手を握り返した。大好きな姉さんの誘いを、断れるはずがない。

そうしてやって来たのは、家から少し離れた場所に位置する、自然公園。さらに姉さんは俺の手を引き、木々が鬱蒼とと生い茂る奥部へと進む。
川のせせらぎを逆にたどり、数分歩いてたどり着いたのは、古い水車小屋だった。
水車小屋の扉を開け、俺達は内部に入る。ギギギ、ときしむ音をさせながら扉を閉じる姉さん。

「こんなところで何をするんだ?」と、俺はついに尋ねた。

だが姉さんは何も言わず、俺の両頬に手を添える。

「ねえ、刹那。このままお姉ちゃんとずっと一緒にいよ?」
「…えっ」
「誰にも渡さない。刹那はお姉ちゃんのものなんだから」

どすん、と俺の身体は押し倒された。姉さんはその上に覆いかぶさるような体勢になり、乱暴に唇を重ねてきた。

「な、何すんだ姉さ…んぐっ」

姉さんの舌は咥内でいやらしくうごめく。体温が、匂いが俺の五感を刺激する。
身体中の血液が沸騰するかのような興奮を、確実に感じていた。

その後どうなったかは、言うまでもないだろう。

俺達はずっと身体を絡み合わせ、あらかじめ貯め置かれていたらしい食料で腹を膨らませ、水車の水で身体を洗い…と、繰り返した。
この時の俺は今にして思えば、異常だった。いや、異常を受け入れるために、成るべくしてなのだろう。
夢にまで見た、姉さんとの幸せなひと時。それはどんな麻薬よりも甘美で、いつまでも溺れていたい。それほどまでに俺は幸せを感じていた。

だが九回目の夜を迎えたその日、それは終わりを告げた。

互いの身体を貪りあい、疲れ果てて泥のように眠っていた俺達。
目が覚めたのは、外に物音を感じたからだ。まるで足音のような…
木製の扉が軋む。内側から棒鍵がかけられている為、よほどの事がなければ開く事はない。

『おかしいな…管理人の話だと、鍵はかけられてないはず。まさか、ここか!?』
『よし、ぶち破るぞ!』

男二人の野太い声が外から響く。さらに、扉を破壊せんと、何かで打ち据える音。
その音に姉さんは目を覚まし、身体をがくがく震わせながら、俺を締め付けんとばかりに抱きしめた。

ばきん、とついに扉は破壊され、制服らしきものを着た、レスキュー隊員らしき二人の男が小屋の中に踏み入る。

『いたぞ、行方不明の姉弟だ! "応答せよ、こちら…』
『大丈夫か!? ああ可哀相に、こんなに怯えて。もう安心だからな』

何が"大丈夫か"だ。姉さんが怯えてるのは、オマエたちに対してだ。俺はそんな風に考えていた。

「いやぁ! こないで! 刹那をとらないでぇ!」

姉さんは恐怖で声を震わせ、俺をさらにきつく抱きしめる。"渡さない"と言わんばかりに。

『な、何言ってるんだ君。俺達は君らを助けに…』 <> 赤と緑と黒の話 第2話
◆BaopYMYofQ <>sage<>2010/04/30(金) 23:01:22 ID:8gNkLRd5<> 男の片方が姉さんをなだめに入る。だが姉さんは…すでに錯乱していた。
何を言われようと、俺を離そうとしない。ただ子供のように泣き叫ぶだけだ。
隊員たちはそんな姉さんを見て、全てを察したようだった。俺達を力任せに引き離し、羽交い締めにして運び出す。もっとも、すでに俺には抵抗する気力など残っていなかったが。

「嫌ぁぁぁぁぁ! 刹那ぁ! せつなぁぁぁぁっ!」

俺と姉さんはその後別々の病院に入院した。俺は健康診断と各種検査を受け、二週間ほどで退院した。

だが、姉さんは帰ってこなかった。

後で聞かされた話によると、病室で何度も暴れ、自傷行為を繰り返し、格子付きの病院に転院したとか。
父さんたちはもう姉さんの事を、存在しないものとして扱いだした。時に憤り、悲しんだりもしたが、「十六夜家には最初からお前しかいなかった」と、頑として認めなかった。
そうでもしなければ堪えられなかったのだろう。衰弱し、それでもなお姉さんの名前を呟く俺の、あまりに哀れな姿に。
そんな風に心身共に弱っていた俺も、時が経つにつれて回復はしていった。
だがあの時の、俺の名を死に物狂いで叫び、もがく姉さんの姿は14年経った今でも俺の脳裏に焼き付いて離れない。いや…一生経っても忘れられないだろう。

######

現在。

重い腰を持ち上げ、俺は茶道部室前へとやっては来た。すでに殆どの電灯は消され、足元の非常灯がぼんやりと床を照らす程度。
部室内の電気も、点けられている様子はなかった。帰ったのか? と思い、軽く扉に手をかける。
施錠はされていないようだ。湊は部室の合い鍵を持っている。湊に限って施錠忘れなどしないだろう。
思いきって、扉を最大まで開く。中は先週同様にやはり真っ暗で、足元が見えづらい。
再び躓く、などという失態を犯す気はなかった。俺は携帯電話のフラッシュ機能を使い、足元を照らす。
畳の間に踏み入り、手探りで電気のスイッチをつける。黄色い電灯が室内を瞬く間に明るくした。
床を見ると、湊が横たわっているのがわかった。眠っていたのだろうか。3時間も待たされていては、無理もない。
ただこれでは、先週同様の展開になりかねない。今日こそは自宅の鍵を持って来ているんだろうな、湊?
そう思いながら、俺は湊を起こそうとしゃがみこむ。だが湊の姿を、状態を見てそんな思考は消し飛んだ。
開かれた瞳は虚ろで、何も映してはいないだろう。涙を流し、額は汗でしっとりとしている。呼吸は苦しそうに、ぜえぜえ、と口で息をしている。

「湊…!? しっかりしろ、湊!」

身体を揺さぶり、起こそうと試みる。黒髪がばさばさ、と乱れるが構ってはいられない。5、6回ほど揺さぶるとぱちり、と瞳に光が戻った。

「あ…先生、なの?」
「湊、いったいどうしたんだ!?」
「…また、思い出しちゃった」
「思い出した? 何を?」
「………嫌わないって、約束してくれる?」

俺の腕の中でゆっくりと呼吸を整えながら、弱々しい、涙声で湊はそう尋ねる。

「…ああ、嫌ったりしないから、言ってみろ」対して俺は努めて優しく、湊を安心させようとした。
そうして湊の口から語られた事は、予想だにしていないものだった。
まさか、冗談か? と言いたくても、今の湊を見れば疑うことはできない。

「私、お父さんに犯されたことがあるの」 <>
◆BaopYMYofQ <>sage<>2010/04/30(金) 23:02:50 ID:8gNkLRd5<> 第2話終了です <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/04/30(金) 23:10:00 ID:BsUfqezG<> GJ




よし、湊の父親を消しに行くか……誰か来るかい? <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/04/30(金) 23:25:57 ID:pahKYLva<> 特殊 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/01(土) 00:20:48 ID:HjtUd7m7<> GJ

>>538
私がお供いたしましょう。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/01(土) 01:01:16 ID:dY8o5Ins<> 乙

最近投下無さ過ぎて飢え死にするかと思った <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/01(土) 01:30:47 ID:OTFFef9G<> >>538
俺を忘れてもらっちゃ困るぜい!! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/01(土) 04:53:36 ID:AMDsV6fe<> GJ!

続きを待ってる。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/01(土) 14:37:26 ID:FA6+54dj<> このスレ名作が多数何だが、保管庫見ると未完作品が多い…orz
ヤンデレは奥が深いのか… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/01(土) 14:45:56 ID:Ox19Vr2D<> 単に飽きただけだろ




期待はし続けるけど <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/01(土) 14:53:34 ID:eGW3DIKW<> 作家になる第一条件は完結させること
これが一番ハードルが高いから困る <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/01(土) 15:41:13 ID:3HV9/989<> 作品は完成しているけど、投下したら荒れるので投稿しないという人もいるけどね <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/01(土) 16:04:49 ID:Bv3UAKlh<> そもそも書き始めることができない俺からするとすごい話だ

それはともかくヤンデレの尻に敷かれたい <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/01(土) 16:10:02 ID:FA6+54dj<> >>547 えっ!?それ本当に? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/01(土) 16:19:35 ID:dY8o5Ins<> >>544
書いてる途中でヤンデレに拉致されたに決まってるだろ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/01(土) 16:35:49 ID:pAowUB8f<> GJ!!
>>538俺もOHANASIにいくぜ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/01(土) 19:17:57 ID:AKE0x09b<> 完結できるような人は半分もいないからな
それは期待しちゃいけない <> サトリビト<>sage<>2010/05/01(土) 19:19:22 ID:DUthe+ZN<> サトリビト第7話投下します。
よろしくお願いします。 <> サトリビト<>sage<>2010/05/01(土) 19:20:03 ID:DUthe+ZN<> 「占い?」
「そ!良く当たるって有名なんだよ!だから一緒にいこうよ〜!」
休み時間に岡田と談笑をしていたら、そんな話をされた。
僕は占いなんて信じるたちではないが、やはり岡田も女の子、そういうのが好きらしい。
「でもそれなら友達と行った方がよくないか?」
やっぱり占いなんか信じていない僕と行っても岡田は楽しめないだろう。
そう思って聞いたのに、岡田は怒り始めた。
「・・・私とは行きたくないっていうわけ・・・ふ〜ん・・・彼女にそう言う事言うんだ・・・ふ〜ん」
(このバカ慶太!!慶太と行きたいからこうして話したんじゃない!!)
岡田の言うとおり。一緒に行きたくもない奴にこんな話は普通持ちかけない。
あとできれば彼女ってあんまり強調しないで頂けます?陽菜さんに聞かれると色々と面倒なので。
「・・・ぜひ一緒に行きませんか、岡田さん」
「岡田さん?」
(結衣でしょ!!)
「・・・結衣さん」
「しょうがないな〜」
(やばい・・・慶太をいじめるのクセになりそう・・・)
ヤバイだと!?それはこっちのセリフだ!!
岡田の言動が日に日に姉ちゃん化している。姉ちゃんが二人なんて僕の心が持たない。
こうなったら最近のお勧めリフレッシュ法をするか・・・
僕はある人物にメールを送った。
[俺のこと・・・好き?]
メールは必ず1分以内に返ってくる。今回もだ。
[だだ大好きです!]
く〜、これだよこれ!!このかわいらしさ!!この純粋さ!!やっぱ俺の女神は最高だぜ!!
「・・・誰とメールしてるの?」
(まさか他の女!?浮気!?)
フッ、そう来るのは予想済みだよ岡田さん。
「友達だよ。彼女とラブラブしやがって許さんとかなんとか」
「ち、ちょっと!私たちはあくまで仮の関係でラ、ラブラブとかはないからね!!」
(慶太の彼女・・・慶太とラブラブ・・・ってキャ〜キャ〜キャ〜!!!)
案の定、岡田は僕の言葉にほほを赤らめ、なにやら妄想の世界に入って行った。
これでよし・・・のはず。
でもなぜだろう?なんだか僕が最低の男に近づいている気がするぞ?
「とにかく、今度の日曜でいいか?」
「OK〜!日曜の10時に私の家に迎えに来てね」
占い屋は岡田の家とは反対方向だった。それなのになぜ僕が岡田の家に?
「何?なんか文句あるの?」
「いえ、滅相もございません」
こうして今度の日曜日岡田と初デートに行くことになった。
<> サトリビト<>sage<>2010/05/01(土) 19:20:50 ID:DUthe+ZN<> デート前日、土曜の夜。この日は恭子ちゃんが家に泊りに来る日だった。
恭子ちゃんは家に来るとすぐにかわいいエプロンをつけ、必死にカレーを作りはじめた。
どうやらお世話になるお礼らしい。
「絶対においしいカレーを作るから・・・待っててね///」
そんな恭子ちゃんの様子を見ると、ここが桃源郷のように思えてくる。
しかし・・・絶対に振り返ってはいけない。振り返ると現実に引き戻されるからだ。
「あらあら慶太ったら、モテるのね〜」
お母様、冗談でも今はそのようなことを言わないで頂けます?
「ケッ!!カレーくらいウチでもできるっつーの!」
あれをカレーと呼ぶなんて、あなたの言うカレーの定義が知りたいですね。
「かわいいな〜恭子ちゃんは。男の子が見たら襲いたくなるかわいさだよね、慶太?」
う、う〜んどうでしょうね?す、少なくとも僕は思いませんよ?
そう、今僕の背後には3人の女性がいるのだ。
前と後ろで違う世界。まさに僕がいるのは三途の川だな。
「できたっ!!」
どうやらカレーが完成したようだ。ん〜、見た目といい、香りといい、まさしくカレーだな!!
「いただきま〜す」
一口食べる。うまい。ものすごくおいしい。
(く、くそっ・・・ウチのよりうまいかも・・・)
確実にあなたのよりおいしいです。というか比べるほうが失礼ですよ。
「ど・・・どうですか・・・?お、お兄ちゃん・・・?」
ちなみに恭子ちゃんは僕の家に泊まるときだけお兄ちゃんと呼んできます。
「ものすごくおいしいよ。毎日食べたいくらい」
「そういえば・・・お前たしか先週ウチがカレー作ったとき、実はカレーが苦手って言ってなかったっけ?」
「・・・」
「え!?そうなのお兄ちゃん!?・・・ごめんなさい、苦手なもの作ってしまって・・・」
「っ!!」
なんだこの新しい地獄は!僕は一体なんて答えたらいいんだ!?
僕がだんまりを続けていると陽菜が話しかけてきた。
「ところで・・・今週の日曜暇?」
ん?ま、まさかデートの誘い!?
「ど、どうして?」
「久しぶりに慶太と遊びたいと思ってさ〜」
き、きたー!!僕の時代が来たっーーー!!!暇さ!!とっても暇さ・・・ん?
「・・・ごめん、その日は先約があって・・・」
なんてタイミングの悪さだ・・・うらむぜ神様・・・
「先約?何の用事なの?」
うっ・・・岡田とデートなんて言えないしな―――
僕がそう考えたとき陽菜が豹変した。
「何処にっ!!どこに行くの慶太っ!!早く言いなさいっっ!!」
陽菜の変貌ぶりにみんなが唖然とした。いつも冷静な陽菜がこんなに慌てるなんて。
「どこって・・・」
占い屋なんていったら確実にデートだと思われるだろうし・・・
「・・・あ、ごめんね慶太。私どうかしちゃった・・・もう問い詰めたりしないから・・・」
陽菜は笑顔でそう告げ、それ以降何も聞いてこなかった。 <> サトリビト<>sage<>2010/05/01(土) 19:21:35 ID:DUthe+ZN<> 「遅いっ!!」
今は日曜日の午前9時50分。理不尽すぎる。
「彼女との待ち合わせが10時なら9時半に来なさいよ!」
それは待ち合わせ場所が家以外の場合だろ?家の場合は早く行きすぎたら逆に迷惑だろ。
しかし反発したところで僕が負ける事は明白である。
でもちょっとくらい嫌味をいってもいいよな?
「いや〜朝から恭子ちゃんにひっつかれちゃってさ〜」
「っっ!!」
(あのクソガキまた泊りやがったのか!それになんで慶太は私以外の女を家に泊めるんだ!?今度浮気したら・・・)
ごめんなさい!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!嘘です!!もう言いません!!
なんとかビンタ2発で許してもらった。
「グズッ・・・ところで占いは何時に予約したの?」
ここからの移動時間を考えて11時前後だろうけど。
「5時」
「はぁ!?なんで5時に予約したんだよ!!今から7時間なにすんだよ!!」
「そ、それは・・・そ、それを考えるのが彼氏ってもんでしょ!?」
(今日は一日中慶太といたいから遅めに予約したに決まってるじゃないっっ!!なんでわかってくれないのよっっ!!)
僕は一番大事なことを忘れていた。岡田は僕のことが好きなのだ。
好きな人とずっと一緒にいたいと思うのは当たり前のことだ。
「・・・しかたないな。んじゃあ映画でも見るか?」
「そ、それってデートっぽくない!?」
いまさら何をおっしゃられます?そのつもりで僕を誘ったんじゃないんですか?
「・・・俺はデートのつもりで来たんですけど?」
僕がそう言うと岡田は慌てて家の中に駆け込んだ。
「ち、ちょっとまってて!!」
(今すぐ化粧しなくちゃ!!服も新しいのに着替えて・・・あ、シャワーも!!)
え?い、今からシャワーですと・・・?
結局、岡田が出てきたのは1時間後だった。その間僕はずぅぅぅっと玄関前で立ち尽くした。
でも僕はこれぽっちも怒りがわいてこなかった。
「お、おまたせ?・・・ごめん、怒ってる?」
「怒ってないよ。なら行こうか」
「うんっっ!!」
なぜなら岡田がものすごくかわいかったからだ。

街に来てから僕は思い知らされた。僕と岡田は不釣り合いだ。
二人で街を歩いているといろんな人の声が聴こえてきた。
(今の彼女めちゃかわいくなかったか!?)
(なんであんなかわいい子とあんなさえない奴が一緒に歩いてんだ?)
(すご〜いモデルみたい〜)
今の岡田ははっきり言って芸能人並みだ。
もともと顔のつくりやスタイルはよかったが、今日はうっすら化粧までしているのだ。
そしてなにより心から楽しんでいる表情をしているのが一番の要因だろう。。
(慶太との初デート楽しいな〜)
そんな岡田とは対照的に、今の僕の心の中は暗かった。
やっぱりもっと別の奴が岡田の彼氏役をやったほうがよかったんじゃ・・・ <> サトリビト<>sage<>2010/05/01(土) 19:22:19 ID:DUthe+ZN<> 僕が一人で落ち込み始めると岡田が心配そうに僕の顔を覗き込んできた。
「どうしたの?」
(どうしよう・・・慶太は私とのデート楽しくないのかな・・・)
ダメだ!!僕が暗い表情をしていたら岡田の気持ちを台無しにしてしまう!!
「あ、ごめん!!ちょっと考え事してた!映画何観よっか?」
「あ、えっとね・・・私見たいのがあるの!!」
岡田は僕が笑ったことに安堵したのか、僕の手を引いて映画館に入って行った。
「これ見ようよ!!」
そう言って岡田が指さした方向には、最近話題になっている恋愛映画の看板がある。
「これ一度見てみたかったんだ〜!」
目を輝かせている岡田にその横のSFアクションが見たいなんて言えない。
「俺も気になっていたからそれにしようぜ」
「決定ーっ!!」
という事でその恋愛映画を見ることになった。
内容自体は思っていたよりも楽しいものだった。
しかし最後のシーンで主人公を取り合って女の人同士が罵り合っていたのが・・・他人ごとではない気がした。
「面白かったね!!」
「うん・・・そうだな・・・」
最後のシーン以外はね。
「早川は・・・もし早川のことが好きな女の子が二人いて・・・その二人が喧嘩したらどうする?」
なんてリアルな質問だろう。その答えは僕自身が一番知りたい。
「さぁ・・・どうするかな?」
「なら・・・それが喧嘩じゃなくて・・・殺し合いだったら・・・どうする?」
驚いた。まさか岡田の口からそんな言葉を聞くなんて。
(わからない・・・もし慶太と陽菜ちゃんが付き合ったら・・・私はどうするんだろ・・・)
岡田が本気で悩んでいた。
僕が陽菜のことが好きなのは変わらない。でもこのままでいいのだろうか?
岡田の問いかけに僕は何も答えることができなかった。

映画を見終わった後は少し深刻な雰囲気になったが、その後は楽しく時間が過ぎていった。
お昼を食べたときも、ウインドショッピング(お金がないんです)したときも会話は途切れていない。
陽菜以外の女の子とここまで話したのは初めてだ。
「次プリクラ撮ろ〜!」
女の子と二人っきりのプリクラ。あれ?なんで僕はこんなにドキドキしているんだろう?
プリクラ機に入った途端岡田も緊張し始めた。
「ど、どれにしようかな〜?」
(うわーっ!!個室に慶太と二人っきりなんて緊張する〜!!)
そうやって僕たちは硬い表情のまま写真を撮られる羽目になった。
案の定出てきた写真はお世辞にも楽しそうとは言えない顔だ。
でもその写真を岡田は潤んだ目でずっと眺めていた。
(夢じゃないんだ・・・今日は慶太とデートしたんだ・・・)
「岡田・・・」
「あ、ゴメン。そろそろ占いにいこっか!って、今また岡田って呼んだー!!」
「ゆ、結衣さん・・・」
ニコニコしながら僕の手を引く岡田。もう片方の手にプリクラを貼った携帯を握りしめたまま。
そうして僕と岡田は占い屋に向かった。 <> サトリビト<>sage<>2010/05/01(土) 19:23:17 ID:DUthe+ZN<> 占い屋に入った僕たちは驚愕した。
「あれ!?慶太と結衣ちゃんだ〜!!」
「っ!!なんでお前が結衣と!?」
店の待合室に陽菜と姉ちゃんがいたからだ。
「なんでって・・・それよりなんで二人が!?」
「実は今朝陽菜にここの占い一緒に行こ〜ってせがまれてな」
「一回行ってみたかったんだ!!店の人に聴いたら4時半が空いてるからって!!」
陽菜が使った『きく』という単語がなぜか引っかかる。
「それよりなんで結衣とおまえが一緒にここに来るんだよ!?」
(まさかデートしてやがったのか!?)
姉ちゃんがキレる一歩手前だ。というか岡田もキレる一歩手前の顔をしている。Why?
(慶太の奴〜!!もしかして陽菜にしゃべったの!?最低っ!!)
いや僕は全く、一言もしゃべってませんよ!?
「次のお客様どうぞ〜」
そのとき店員が入場を催促してきた。そうだよな、早く入らないと迷惑だよな。
「・・・って言ってますから、陽菜か姉ちゃんかどうぞ?」
早く二人が占いを終えて出て行ってくれるのが唯一の希望だ。
「慶太が先に行って?」
陽菜がまさかの提案をした。
「そうだ、オメーが先に行け」
「バイバイ、早川」
姉ちゃんどころか岡田までも冷たい。そうとう怒っているようだ。僕はなにも言ってないのに。
「・・・行ってきます」
なんか本当に僕の人生を占ってほしくなった。


「ふ〜む・・・君の恋愛運はいいですな」
「・・・本当ですか?」
なら最近修羅場が多いのはなぜ?
「どうやら近々好きな子と両想いになれそうですぞ?」
「ま、まじっすか〜!!」
や、やったぜ!!あんたは最高の占い師だ!!
「本当じゃ」
(ま、こう言っとけば、こいつもわしの占いが良かったと宣伝してくれるだろう)
・・・・・・
この能力は聴きたくないことのほうが聴きとってしまうのだった。


「どうだった、ここの占い!?」
陽菜が興味津津の顔で聞いてくる。こんな陽菜を地獄に突き落とすことは僕にはできない。
「ど、どうかな〜?」
ごめんなさい陽菜さん。どうかどころか最低なインチキでした・・・ <> サトリビト<>sage<>2010/05/01(土) 19:24:23 ID:DUthe+ZN<> 「ふ〜む・・・あなたは現在前途多難な恋愛をしていますな?」
「!!そ、そのとうりだ・・・一体どうすればウチはそいつと結ばれんだ!?」
「愛しなさい!!その方を愛して愛して愛しつくしなさい!!さすればその方もあなたの気持ちに答える!!・・・かも」
「わかったぜじじいっ!!今以上に愛情を注げばいいんだな!!」

なんだろう?部屋から出てきた姉ちゃんが僕にすり寄ってくる。
「おい慶太、なんでも好きなもん買ってやるぜ?」
「・・・恐いのでいりません」
「なっ!!いらねぇだ・・・ゴホン・・・そんなこと言わずに〜なんかいってよ〜」
ちょっと占い師さん!?一体姉ちゃんに何て吹き込んだの!?
「・・・なんて言われたの姉ちゃん?」
「秘密〜」
(慶太にもっと愛情を注げば慶太と結ばれるんだ!!)
どうやらここの占い屋はガチでインチキらしい。


「あなたの恋はどうやら実らないようじゃな・・・」
「ふ〜ん」
「でもこの香水を買えばきっと恋愛運が上昇してくるじゃろう!!」
(フフ・・・このバカ、いいカモだぜ・・・)
「聞いてもいい?バカって私のこと?いいカモって私のこと?」
「え?」
「あなたも大変ね〜。愛人に貢ぐためにこんなバイトまでして」
「な!?」
(コイツ、わしの考えていることが分かるのか!?)
「そうだよ?ねぇこのことみんなにしゃべってもいい?」
「そ・・・それだけは・・・」
「なら次に入ってくる女の子にこう言って?あなたの思い人には今好きな子がいて、将来その人と結婚するからあなたはあきらめなさいっ
て」

陽菜が笑顔で出てきた。
「ここの占いすごかったー!!超あたってたもん!!」
可哀そうな陽菜。あのインチキじじいにだませれたんだ。
でも何占ったのかな?僕との相性・・・とかだったら嬉しいな///


「あ、あなたの思い人には今好きな子がいて、し、将来その人と結婚するからあなたはあきらめなさい・・・」
「ちょ、ちょっと待って!!もう一度占ってよ!!なにかの間違いかもしれないじゃない!!」
「あなたのためにこう言っているんです・・・あなたのライバルはあなたが思っている以上に・・・強敵です・・・」
「そんな・・・だからって・・・何かいい方法はないの!?」
「・・・あきらめなさい。それが一番です」
「・・・」

岡田が暗い表情で出てきた。
(そんな・・・慶太のことを諦めろって・・・他に方法はないって・・・)
なんてこった。確かに僕は陽菜オンリーラブだけど、ここの占い師は自分の店のためにいいことしか言わないはずなのに。
岡田とは対照的にさっきから陽菜は満面の笑みだった。 <> サトリビト<>sage<>2010/05/01(土) 19:24:57 ID:DUthe+ZN<> 占い屋を出た僕たちはそのまま駅に向かった。
(占いはダメだったし、帰りも陽菜とお姉さんまでいるし・・・最悪・・・)
占いに行くまでは楽しそうだった岡田の元気がない。
なんとか元気をつけたいがいい言葉が思いつかない。
肝心な時にダメだな僕は・・・
駅について時刻表を見ると、あと数分で電車が来るようだった。
「お、あとちょっとじゃねぇか」
(帰ったら今日のことをとっちめてやろう!!)
姉ちゃんの心の声に突っ込みを入れる気が起こらない。
「本当だ〜運が良かったね!」
陽菜の笑顔を見ても嬉しくならない。
今は岡田のことで頭がいっぱいなのだ。一体どうすれば・・・
僕がなにも話さないことが気に食わないのか陽菜が顔をしかめる。
「もぅ慶太も結衣ちゃんも占いでなんて言われたか知らないけど落ち込みすぎ!占いなんて当たらぬも八卦だよ!」
場の雰囲気を良くしようと陽菜が励ましてくれた。
「ありがとう陽菜。そうだよな、占いなんて適当だもんな!」
この言葉は岡田に対して言ったものだ。そんな簡単に人の未来なんてわかるわけがないだろ。
「ありがと、陽菜ちゃん。それにあのじいさん、なんかうさんくさかったからね」
そう言って岡田は微笑んだ。
多分僕だけだろう。岡田がさっきからずっと泣いているのに気づいているのは。
電車が来たところで、僕たちは話を中断して乗り込む。
乗り込んだのはいいのだが、あまりの混雑によって僕たちは離ればなれになった。
「あっ・・・」
岡田の声が漏れる。
当然だろう。なんせ無意識に岡田の腕を掴んでしまったのだから。
「・・・離れるなよ」
「・・・うん」
陽菜や姉ちゃんとは離れてしまったが、こうして岡田は僕のそばにいた。
「・・・どうして私の腕をつかんだの?」
(掴むんなら陽菜の腕でしょ・・・私なんかよりそっちのほうを掴めばよかったのに・・・)
電車が動き出してから岡田が僕にしか聞こえないような声でつぶやいた。
「・・・わからない」
「・・・そう」
その言葉を最後に僕たちは黙りこんでしまった。
(どうせ陽菜に取られるなら・・・せめて今だけは・・・)
しかし岡田のわずかな願いは数分間で終わりを告げる。
「次は○○駅〜○○駅〜」
どうやら僕が降りる駅に着くようだ。
「・・・今日はありがとう・・・また明日ね!」
(・・・もうちょっとだけ・・・一緒にいたかったな・・・)
岡田の声を聴いた僕は握っていた手に力を込めた。
陽菜と姉ちゃんを見る。二人とも今日は先に帰ってくれ。
「送ってく」
「え・・・でも・・・」
「家まで送ってく」
そう言って僕は電車を降りなかった。 <> サトリビト<>sage<>2010/05/01(土) 19:27:53 ID:DUthe+ZN<> 2つ向こうの駅で降りた僕たちは岡田の家に向かっている。
「でもまさかあんたから送っていくなんて言葉が出るとわね〜」
岡田は電車を降りた後、こうして話しかけてくるぐらい元気を取り戻していた。
(せっかくの慶太とのデートだもん!最後くらいは楽しまないと!)
そうやって楽しく歩いていると、ふと考えてしまうことがあった。
「そういえば・・・なんで俺には下の名前で呼ぶことを強制するのにそっちは呼ばないんだ?」
僕の質問に岡田の顔が曇る。
「そ、それは・・・」
(だってもしそんなことしたら本当に諦められなくなる!慶太の本当の彼女に・・・無理だけどなりたいと思ってしまうじゃない!)
やってしまった。僕はバカだ。よりにもよってこれ以上岡田を悲しませることを聞いてしまった。
「ど、どうしてかな〜?」
(私だって呼びたい!慶太って呼びたい!慶太の本当の彼女になりたいよぉ!!)
岡田の気持ちに応えてあげたい。けど答えられない。
そんなジレンマが僕の心に渦巻いている。
しばらくの沈黙後、岡田がポツリと話し始めた。
「・・・私ね、本当に好きな人がいるの。自分でも驚くくらいその人が好きなの」
僕はその人を知っている。それに岡田がその人をどれだけ好きかも。
「でもね?その人には好きな人がいるんだって。だから私、最後の望みをかけて今日占いをしてもらったの」
その結果も知っている。
「・・・ダメだって・・・諦めたほうがいいんだって・・・」
(そうだよね・・・慶太は7年も陽菜のことが好きって言ってたもんね・・・もともと私なんかが入り込む隙間なんてなかったもんね)
もういい。もういいから。
「だから私その人のこと諦める!!・・・正直つらいけど・・・諦める事にした!!」
(これ以上頑張っても慶太に迷惑をかけるだけだから・・・)
もういいっていってるだろ!!
「もしその人と付き合うことができたなら、その人のことを名前で呼びたかったの・・・これが早川の名前を呼ばなかった理由っ!!」
(これって告白かな・・・諦めたはずなのに・・・なにやってるんだろ私・・・)
「もういいからっ!!」
僕の大声に岡田がビクッと体を震わせた。
「もういいよ・・・もうわかったから・・・」
「・・・」
僕の言葉に岡田は頭を下げた。多分・・・泣いているのだろう。
「・・・一つ聞いてもいい?」
「・・・何?」
「そいつのこと・・・なんでそんなに好きなの?」
実は僕にもわからない。僕の能力も万能ではないのだ。
「・・・なんでかな?私にもよくわからない・・・」
「・・・そっか」
「気づいたら好きになってた。だけど・・・」
そこで岡田は顔をあげた。やっぱり涙を流していたが・・・笑っていた。
「その人は唯一私のことを信じてくれたの。誰も信じてくれなかった私を。そのときは・・・うれしかったなぁ〜!!」
そう言って岡田は今日一番の笑顔を見せてくれた。 <> サトリビト<>sage<>2010/05/01(土) 19:28:42 ID:DUthe+ZN<> 「そうだ!そこの占い屋さんに占ってもらおうぜ!」
岡田と歩いていると暗い路地裏に占いと書かれた立て札を見つけた。
「でも・・・」
先ほどの悪い占いがまだ尾をひいているのか岡田が渋る。
「いいからいいから!」
しかし気にしても仕方ないと思い僕は強引に岡田を連れていった。
「あの占っていただけませんか?」
僕の言葉に占い屋さんは何も返さずタロットカードを机に並べ始めた。
「・・・あなたの恋ははっきり言って成功する確率が低いようね」
占い師が岡田に向かって開口一番にそう言った。
あれ?僕たちは一言も恋愛運を占ってほしいなんて言ってないぞ?
「・・・そうですか」
マズい。岡田が再び落ち込み始めた。
「・・・12月です。12月の行動次第であなたの恋愛運がガラッと変わります」
「どういうことですか?」
「あなたには今現在強力なライバルがいますね?」
「ハ、ハイ!!その通りです!!」
「今はそのライバルの方が恋愛運が強いです。しかし12月の行動次第ではあなたとその方の運気が逆転します。すなわち、あなた次第で思
い人はあなたのことが好きになるようです」
な、なんと!?
「ほ、本当ですかっ!?」
岡田が占い屋さんの肩をつかんだ。失礼だぞ、岡田。
「えぇ、そうでています」
「あ、ありがとうござい゛ま゛ず〜!!」
(やったー!!まだあきらめなくてもいいんだ!!まだ慶太のことを好きでいてもいいんだ!!)
岡田はそう言って泣き始めた。まったく、僕よりいい男はいっぱいいるのに。
「・・・あなたの方は気をつけなさい」
占い屋さんが唐突に話しかけてきた。
「俺ですか?」
「ここまではっきりと見えた人は初めてです」
な、なんだか恐いな・・・
「あなたは近い将来、究極の選択をせがまれるでしょう」
「きゅ、究極の選択!?」
「それも一つではありません。少なくとも4回は訪れるでしょう」
4回も!?
「一つでも間違えれば・・・最悪の結果を招くかもしれません」
最悪の結果?え?・・・じ、冗談ですよね?
「良く考えて答えを出しなさい。とくに最後の2つは・・・」
そう言って占い屋さんはカードをしまいどこかに出かけた。ってあれ?お金は?
「なんだか不思議な人だったね・・・それだけに本当に未来が見える人だったりして」
やめてくれ!僕は4回中1回でも間違えたら死ぬみたいなことを言われたんだぞ!
でも僕はなぜか嬉しい気持ちになった。
岡田がやっと心から笑ってくれたからだ。 <> サトリビト<>sage<>2010/05/01(土) 19:31:07 ID:DUthe+ZN<> 以上投下終了です。
読んでくださった方、ありがとうございました。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/01(土) 19:40:56 ID:dY8o5Ins<> >>563


サトリビトはペースも安定してるし無事完結してくれるとしんじてる <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/01(土) 20:00:55 ID:iY/RbNak<> 最初の二回は死亡フラグで最後の二つはカタストロフィフラグですね?
わかります。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/01(土) 20:28:14 ID:mUmyJHeQ<> >>563
陽菜が時間帯まで当てられた理由が分からん
慶太は直前まで時間知らなかったわけだし

……と思ったが、岡田から直接読めば良いだけの話か <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/05/01(土) 20:33:51 ID:QHeSYDSV<> 当たる メイン 主役 <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/05/01(土) 20:52:19 ID:Ad+c23OU<> GJ きっちり終わって下さいね。これは期待の裏返し <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/01(土) 21:15:06 ID:TDV7kuAt<> GJ



最後は山田フラグですね!予想通りだ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/01(土) 22:35:18 ID:ASJ+2BpV<> gj!

ていうかみんな「ちゃんと完結してね」ってさ
それ書き手にしてみれば結構失礼じゃないかな
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/01(土) 22:45:57 ID:SoxrNmcI<> >>570
わかっててもそういうことは言うなよ・・・
下手なこと書くとすぐスレなんて荒れるんだぜ

それで作者さんにさらに失礼なことになる <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/01(土) 22:47:04 ID:Dd5tPZRm<> >>570
といっても、完結してない作品が多すぎるからなぁ・・・仕方なくね? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/01(土) 22:54:54 ID:pZwMjuQU<> 時間と目が痛くならないディスプレイをくれ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/01(土) 23:15:10 ID:cN8tNmHO<> >>573
つ【紙に印刷】 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/02(日) 01:19:35 ID:6EFbPhLX<> 現在失業期間半年超面接20社以上玉砕 生活費毎月十万足らず…
どうかヤンデレの女神様どうか私を監禁して下さい?! <> K,A 
◆ZHJ3ved3EQ <>sage<>2010/05/02(日) 01:45:04 ID:66x/lnTc<> この後すぐ、作品投下します。
夏目漱石の『夢十夜 第一夜』の二次創作です。
NGワードは第一夜IFエンド でお願いします。 <> 第一夜IFエンド 
◆ZHJ3ved3EQ <>sage<>2010/05/02(日) 01:47:19 ID:66x/lnTc<> 第一夜IFエンド

こんな夢を見た。
腕組みをして枕もとに座っていると、あお向きに寝た女が、静かな声でもう死にますという。
女は長い髪を枕に敷いて、輪郭の柔らかなうりざね顔をその中に横たえている。
真っ白な頬の底に温かい血の色がほどよく差して、唇の色は無論赤い。
とうてい死にそうには見えない。しかし女は静かな声で、もう死にますとはっきり言った。
自分もたしかにこれは死ぬなと思った。
そこで、そうかね、もう死ぬのかね、と上からのぞき込むようにしてきいてみた。
死にますとも、と言いながら、女はぱっちりと目を開けた。
大きな潤いのある目で、長いまつ毛につつまれた中は、ただ一面に真っ黒であった。
その真っ黒な瞳の奥に、自分の姿が鮮やかに浮かんでいる。
自分は透き通るほど深く見えるこの黒目のつやを眺めて、これでも死ぬのかと思った。
それでねんごろに枕のそばへ口をつけて、死ぬんじゃなかろうね、大丈夫だろうね、とまたきき返した。
すると女は黒い目を眠そうに見張ったまま、やっぱり静かな声で、
でも死ぬんですもの、しかたがないわと言った。
じゃ、私の顔が見えるかいと一心にきくと、見えるかいって、そら、そこに写ってるじゃありませんかと

にこりと笑ってみせた。
自分は黙って顔を枕から離した。腕組みをしながら、どうしても死ぬのかなと思った。
しばらくして、女がまたこう言った。
「死んだら、埋めてください。大きな真珠貝で穴を掘って。そうして天から落ちてくる星の破片(かけ)

を墓標に置いてください。そうして墓のそばに待っていてください。また会いに来ますから。」
自分は、いつ会いに来るかねときいた。
「日が出るでしょう。それから日が沈むでしょう。それからまた出るでしょう、そうしてまた沈むでしょ

う___赤い日が東から西へ、東から西へと落ちてゆくうちに、___あなた、待っていられますか。」
自分は黙ってうなずいた。女は静かな調子を一段張り上げて、「百年待っていてください。」と思い切っ

た声で言った。
「百年、私の墓のそばで私の為だけに待っていてください。きっと会いに来ますから。」
自分はただ待っていると答えた。すると黒い瞳の中に鮮やかに見えた自分の姿が、ぼうっと崩れてきた。
静かな水が動いて写る影を乱したように、流れ出したと思ったら、女の目がぱちりと閉じた。
長いまつ毛の間から涙が頬へ垂れた。
___もう死んでいた。 <> 第一夜IFエンド 
◆ZHJ3ved3EQ <>sage<>2010/05/02(日) 01:52:00 ID:66x/lnTc<> 自分はそれから庭に下りて、真珠貝で穴を掘った。真珠貝は大きな滑らかな縁の鋭い貝であった。
土をすくうたびに、貝の裏に月の光が差してきらきらした。湿った土のにおいもした。
穴はしばらくして掘れた。女をその中に入れた。そうして柔らかい土をそっとかけた。
掛けるたびに真珠貝の裏に月の光が差した。
それから星の破片の落ちたのを拾ってきて、かろく土の上に乗せた。星の破片は丸かった。
長い間大空を落ちている間に、角が取れて滑らかになったんだろうと思った。
抱き上げて土の上に置くうちに、自分の胸と手が少し暖かくなった。
自分は苔の上に座った。これから百年の間こうして待っているんだなと考えながら、腕組みをして、丸い

墓石を眺めていた。
そのうちに女の言ったとおり日が東から出た。大きな赤い日であった。それがまた、女の言ったとおり、

やがて西へ落ちた。赤いまんまでのっと落ちていった。一つと自分は勘定した。
しばらくするとまた唐紅の天道がのそりと登ってきた。そうして黙って沈んでしまった。二つとまた勘定

した。
自分はこういうふうに一つ二つと勘定してゆくうちに、赤い日をいくつ見たかわからない。
勘定しても、勘定しても、し尽くせないほど赤い日が頭の上を通り越していった。
それでも百年はまだ来ない。しまいには、苔の生えた丸い石を眺めて、自分は女にだまされたのではなか

ろうかと思い出した。
それならば、いっそ此処を離れ生きてみるのも悪くない。
私は、昔と変わらぬ容姿で街に出た。そこで女を買った。その女の感触に私は溺れた。
そうして、情事を終えた後、宿から出ようとした時、情婦に腹を刺された。
情婦の顔は女のものへと変わり、死を告げた調子でわたしだけを見て欲しかったと告げ、消えていった。
唐紅の血潮を噴出しながら天を仰いだら、暁の星がたった一つ瞬いていた。
「百年はもう来ていたんだな。」とこの時初めて気がついた。

終わり

もし、待つことを捨てていたらと言うIFを自分なりに考えてみた。
漱石先生・文学ファンの皆様。ごめんなさい。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/02(日) 01:56:55 ID:6EFbPhLX<> …続きに期待。 <> 悪意と好意と敵意<>sage<>2010/05/02(日) 02:02:03 ID:luw5Vc5w<> 俺、篠原勇輝(しのはらゆうき)の幼馴染っである天野寂(あまのじゃく)は占いが好きだ。
どのくらい好きかと言うと「ゆーちゃんとは恋愛の相性最悪だから付き合いたくない」って興奮しながら言っちゃうくらい
だ。占いに負けたよ俺。
まぁ友人関係なら相性最高らしいから今は腐れ縁に近い関係になっている。
そして寂曰く俺は「死の原」らしい。その理由は親しくなった女性が相次いで死亡したから。
しかし寂も俺と親しい女性…なのだが「あたしは…その…バリアみたいなものを張ってるから大丈夫なの!!」らしい。
因みに「死の原」こと篠原勇輝と関わって死んだ女性は6人、全員が俺と同じ高校に通う人間。そのせいか最近女性に避けられてる気がしないでもない。
しかし、まぁ…親しくなった女性を無意識であの世に送るわ、唯一の死なない女性が恋愛の相性最悪、つまりは…「なに難しい顔してんの?」
通学路を歩く俺の隣を歩く悩みの種を植えた女(幼馴染)の寂が話掛けてきた。
「なぁ、寂。俺って一生彼女できないのかね…」
「またその話?いい加減飽きたんだけど」
「あぁ…もう彼氏作ろうかな…」
「ダメ!幼馴染がホモなんて勘弁!」
「じゃあゲイに俺はなる」
「同じよ!」
「じゃあバイ」
「もっとダメ!!」
「じゃあ寂様、私めと付き合って下さい」
「だ、だからあたしとゆーちゃんは恋愛の相性が悪いって何回言えば分かるのよ!」
「んな顔を赤くして怒るなよ…。」
「怒るわよ!大体あんたはいっつもいっつも…」
「はい、ストップ。もう学校着いたから。お前がさっきからデカイ声で喚いてるから周りからの視線が痛い」
「ぐっ…!後で覚えときなさいよ…」
バツの悪そうな顔で逃げる悪役が使いそうな台詞を使い捨てる。
寂をからかうのは本当に楽しいな。と、いつもの日常の喜びを噛みしめていたかった。が、自分の下駄箱の中にあった「物」が日常の喜びを塗りつぶした。
正体はペンキでも画鋲でもなく水色の便箋。裏には1年3組 綾小路美月と書かれている。年下の様だ。
「ラブレター…だよな…」
気が重くなる。女性を無意識にあの世に送る送り人に贈られたラブレターの返事なんて読む前から決まっている。
「まあ、でも読んだ上で断りますか」
せっかく書いてくれたし、読まないと失礼だしね。べ、別に始めて貰ったから嬉しいとかじゃないんだからね!
「遅刻するわよ?バカ勇輝」
「!! あぁ…」
寂がお怒りの様だ…からかい過ぎたかな。教室に着くまでに謝っておこう。
ポケットに便箋を入れて、寂の元へ向かった。 <> 悪意と好意と敵意<>sage<>2010/05/02(日) 02:03:07 ID:luw5Vc5w<> 投下終了。続きます。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/02(日) 02:14:37 ID:6EFbPhLX<> 首を長くして待ってます。 この時間にきてみればリアルタイムの投下と遭遇するとは…
ヤンデレの女神様ありがとう… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/02(日) 02:14:54 ID:bKGtJNgI<> >>576
GJ

>>580
GJ
投稿の前に「投稿します」もお願いしますね
長編ならこれだと短すぎるからなるべく書き溜めてから投下した方がいいですよ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/02(日) 07:45:18 ID:v08+Y9R4<> GJ! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/02(日) 11:10:19 ID:rqsUJyx5<> なんかたくさん投下されてたー皆様GJ! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/02(日) 18:14:18 ID:10w2gXxK<> せっかく作者様が苦労して書き上げてくれた作品に対してGJの一言しかない奴らって何なの?

いかにもとりあえずレスしただけ、って感じで萎えるわ・・・
言っておくが、作者様を大事にしないスレは遠からず過疎るぞ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/02(日) 18:35:55 ID:O219SvDb<> >>586
お前みたいな痛い奴がいるのが
一番過疎る原因だから、速やかに消えてくれ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/02(日) 18:56:52 ID:oIvAheV6<> 見てるやつ全員がGJレスしたら大変なことになるぞ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/02(日) 19:24:50 ID:10w2gXxK<> GJ一言レスなんてしなくてもいいよ、何の意味もない
作者様に感謝をこめて感想を書くのが住人の義務だろ・・・
頑張って書き上げたのに呆気なく「GJ」で済まされたら脱力するね俺なら <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/02(日) 19:32:59 ID:M3oAQnKT<> 辛さとしては

レスがない>>>[越えられない壁]>>>GJ、乙>詳細感想

だと思うんだが。レスって形でしかフィードバック出来ない以上
何か一言でも読んでる意思表示をするのとしないのじゃ天と地ほどの差がある <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/02(日) 19:39:39 ID:xWfhGeFz<> >>590の言う通りだと思うよ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/02(日) 19:40:34 ID:Vnq95yZI<> >>590
そだね、何のレスもないのは辛いよ
俺も別のスレで書いてるけど、レスが全くないと
一人で妄想日記書いてる気分になってくる <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/02(日) 19:42:03 ID:cb8TXGhp<> 作ってる側の立場から言わせてもらうと、
勿論感想は嬉しいが、GJや乙も感想と何ら変わりなく嬉しいです <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/02(日) 19:50:09 ID:10w2gXxK<> だからさー
無反応よりはGJのがいいよ、そりゃあね
だが感想を書いたほうがずっといいだろ
だからちゃんと書けって言ってるの
少しでも作者様に対して感謝の気持ちがあるなら書けるだろ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/02(日) 20:05:43 ID:cS7IwVuR<> お前自分のレスの上の作品には感想書かないんだな
自分のレスよく読みかえそうぜ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/02(日) 22:02:21 ID:bLdeO6uw<> >>595
思わず笑った。
GJなんて、他人に言われて書くもんじゃないよ。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/02(日) 22:22:23 ID:wbN2FUj/<> さすが連休です
春ですし
蟲が湧く季節ですね兄さん <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/02(日) 22:34:53 ID:cb8TXGhp<> そんな連休に出かけることなく家に閉じこもりなのは
ヤンデレに狙われてるせいだと信じ込みたい今日この頃ですw <> 悪意と好意と敵意
◆f7vqmWFAqQ <>sage<>2010/05/02(日) 23:23:12 ID:luw5Vc5w<> 2話の投下をいたします。拙い文章ですが皆様の暇つぶし程度になれば幸いです。 <> 悪意と好意と敵意 ◆f7vqmWFAqQ <>sage<>2010/05/02(日) 23:24:20 ID:luw5Vc5w<> 幼馴染の俺から言わせると寂は美少女だ。
顔は全体的に童顔でパッチリとした目に高い鼻に薄い唇が絶妙にマッチしている。
髪は艶やかな黒でロングヘアーで前髪はパッツン。
体格は全体的に小柄で小動物を連想させる。身長は150cmだと本人は主張しているが本当は149.8なのは皆知ってる。
そして童顔で小柄な割に上半身にはたわわな果実が豊作状態(最近また大きくなって困ってるとか何とか)
さて、そんな美少女が不機嫌な顔をして男と歩いてる状況を想像できるだろうか。いや、してくれ。
「あー登校中は悪かった。悪気が有ってやったけど後悔してる」
「別にもう怒ってないわ。」
「睨みながら言っても説得力ないって。」
「もう許すって!!!だからもう話しかけないで!!!」
廊下で怒号が鳴り響く。と、同時にチャイムが鳴った。
「じゃあ!あたしこっちだから!」
「あ、おい…」
寂の怒り顔を拝める事は無かった。
まあ…放課後になれば寂の機嫌は全回複してるだろうと、いや…してないかもなぁ…。
「とりあえず考えても仕方ないので教室に行きますかね。」とまた足を再起動させた。


まだ教師の姿は教室にはなかった。
遅刻じゃ無いので自分の席に着席する。と左隣の飯田が話しかけてきた。
「よう、随分と景気が悪そうな顔してるな。何か悪いことでもあったか?」
「ああ、実は…」
「いや、昼休みの時に聞かせてくれ。飯が美味くなる。」
「          」
飯田、下の名前は覚えてない。人のプチ不幸を蜜どころかオカズにして白米を食うのが好きなやつ。一応友人…とは思いたくないが周りから見ると友人らしい。
「まぁ、人が死んだ話なら聞きたく無いけど」
飯田は僕から見て右隣りの、瓶の中にささった菊の花が置かれた席を見据えて言い放つ。
僕の右隣に居た生徒、植田美樹は僕と親しくなり死んだ。マンションの通路の柵と一緒に転落して帰らぬ人となった。
「違うよ。寂と喧嘩した。」
「だあああああああ!!!!言うなバカ!!!!昼に言えって言っただろ!!!勇輝のバカ!!!意気地なし!!!」
いや、そんな潤んだ目で怒られても怖くないんだけどね。むしろ哀れだ。というか某アルプスの少女の名台詞を使うな。
「うああああああああああああああああああああああ。」
と叫びながら片山は机に伏せた。特に悪いことしてないのに罪悪感が血液と共に体を駆け巡った。
「はいはーい、朝のホームルームの時間ですよー。」
教壇からの声の主は我らが担任の井上先生(あだ名はいのちゃん先生。本名井上彩子。英語担当の26歳女教師。独身。)
「えーっと、最近通り魔が出没するそうです。我が校でも2人の女生徒が犠牲になったので皆さんも気をつけて下さいね〜。」
通り魔の餌食になった女生徒…橋本加奈と倉田楓…。前者は1年の時のクラスメイトで後者は保健委員の先輩であり、俺と親しかった女性達だ。
殺され方は悲惨で加奈は両腕を折られ腹に指紋のない包丁が刺さっていて、楓さんは首をワイヤーで締められて絞殺、何故か髪をすべて剃られ左の指の関節が全て折られていた。
「じゃあ、授業を始めますよ〜。英語はテキストの56ページから始めます。片山くん、寝ないで下さい。」
「          」
片山は無言だった。というより幽体離脱しているようだった。
「仕方無いですね〜。ほっときますか。」
そして先生は黒板に英文を書き始めた。先生の書いたloveの文字でラブレターを貰ったの事を思い出す。
ポケットから取り出して便箋を開け、手紙を開く。5枚ほどの手紙が入っていた。多くね?
そして手紙を広げ、書かれている綺麗な字を目で追う。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・

疲れた…。端的に言うと好きです付き合って下さい。今日の昼休みと放課後に屋上で待ってます。という内容だった。コンパクト イズ ベスト.
あぁ…どうしたもんかね、と左に視線を落とすと片山が未だに現実からエスケープしていた。 <> 悪意と好意と敵意
◆f7vqmWFAqQ <>sage<>2010/05/02(日) 23:41:20 ID:luw5Vc5w<> 結局、片山は昼休憩まで幽体離脱をしていた。おかげでノートは白紙だった。驚きの白さだった。
「ほら、英語と数学と家庭科と古文のノート。」
「おぉ、ありがとう。心の友よ。」
ジャイアンかお前は。
「じゃあパン買いに行って来る。」
「あ、俺の分も」
「やなこった」
「と言いながら買って来てくれると信じてるよ、心の友よ。」
「はいはい」
俺は購買でパン買ったら教室じゃなくて屋上に行くから買わないけど。あと心の友でも無い。
購買で焼きそばパンとカツサンドとりんごジュースを買って屋上に向かう。。
そうこうしてる内に屋上に通ずる扉の前に着いた。後はドアノブを捻れば良いのだが、何せ愛の告白を断るのだから気が重い。
ガチャとドアノブを捻りドアを押して辺りを見回すと一人の女生徒が居た。膝には弁当箱を二箱乗せている。
うーん、話掛けるべきか否か。そもそも綾小路美月なんて名前の人間を俺は知らない。
そんなことを考えていたらその少女がこちらに気付いたようだった。けれど、話掛けては来ず俯いている。
しばしの沈黙が流れる。とりあえず動かないと事は始まらないようだ。
「君がその…綾小路美月ちゃん?」
少女は顔をあげてパァと明るい笑顔を俺の眼球に焼き付けてきた。
つーか可愛い。なにこの子、寂くらいの黒さを誇るショートヘアーに真珠の様な肌と宝石の様な眼球。すらっとした鼻のコンボ。
「来て下さったんですね!」
「あ、うん」
「あの、お弁当作って来たので良かったら召し上がって下さい!」
「あーいや、告白の件なんだけど」
「それは後でも構いません。あ、パンを購入なされたんですね…」
そんなシュン…てされてもなぁ。まぁせっかく作って来たようだし
「あー、後で友達にでも売りつけるさ。貰えるかな?」
「はい。どうぞ!」
手渡された弁当の中身は…こう、なんていうか凄かった。「伊勢海老を高校生の弁当に入れるとかとか食材の無駄遣いだろ。」なんて作った本人の前では言えなかったのでその言葉を飲み込んだ <> 悪意と好意と敵意
◆f7vqmWFAqQ <>sage<>2010/05/02(日) 23:42:37 ID:luw5Vc5w<> 「す…凄いね。手作りなの?」
「はい、うちの専属シェフに教えて貰って自分で作りました!」
「へぇー…」
普通そこには「専属シェフ」じゃなくて「お母さん」が入ると思うんだけど…。
「もしかして疑ってます?私これでも料理は得意なんですよ…?」
確かに疑ったが疑ってるのはそこじゃねぇ!
「いや、専属シェフって…」
「専属シェフは専属シェフです。」
オーケー。通じてない。それどころか潤んでる。
急いで高級そうな箸で卵焼きを口に運んで咀嚼する。…! なんだろう、このふわふわ感。俺が作る卵焼きより美味い…。
「あの…お口に合いませんでしたか?」
引き続き宝石のような瞳を潤ませて綾小路ちゃん(と呼ばせてもらう)が顔を覗かせて俺に質問する。
「いや、おいしいよ。これまで食べてきたどんな卵焼きよりも。」大袈裟な返答でも嘘でもない。
「本当ですか!?」
「ほんとほんと」
と言いながら伊勢海老に箸を伸ばそうとしたその時に
「嬉しいです…」
と綾小路ちゃんが笑顔になった。…頬に水滴を走らせながら。
「あ、ごめんなさい。嬉しくて、つい…」
普段ハンカチを携帯するのを忘れる自分に嫌気がさした。ハンカチが無いので制服の袖で涙を拭ってやる。
「あ、そんな、汚れちゃいます」
「いいから」
この後に告白を断るなんて残酷な事をしなければならないのに俺は何をしてるんだろう。でも泣いてる女性、それも年下の娘が泣いてる状況ではこうするしかなかったんだと見えない何かに言い訳した。
しばらくして泣きやんだ綾小路ちゃんの横で俺は高級弁当をたいらげた。
「おいしかったよ。ありがとう。」
「いえ…あの…その…返事をお聞かせ下さ『おい、篠原〜探したぞ!』
おい…タイミング悪いにも程があるだろ心の友よ
「お前、女の子といちゃラブしてたのかよ。俺のパン…あぁこれか。」
片山がカツサンドの封を切り、乱暴に自分の口にぶち込む。
「あと次は体育だぞ。遅れるから早く行くぞ。」
口に物を入れながら喋るな。汚い。そして俺の手首を掴むな。
「ほら、ぼさっとすんな。いくぞ」
「えっ…ちょ…。あ、綾小路ちゃんまた!」
「はい…」
綾小路ちゃんの儚げな表情を見て罪悪感がまた血液と共に体を駆け巡る。
「片山、お前空気読めよ。」
「何が?お前みたいなリア充は爆発しろ。そういやお前の幼馴染の天野が無表情で廊下を歩いてたぞ。何か怖いオーラが立ち込めてたし。お前朝喧嘩したとか言ってたけど何したの?」
「マジかよ!!」
怒ってる顔ならまだいいが…無表情の寂は一番怖い。どうやら今日が命日になるかも知れない。 <> 悪意と好意と敵意
◆f7vqmWFAqQ <>sage<>2010/05/02(日) 23:43:29 ID:luw5Vc5w<> 体育が終わり6時間目の世界史が終わり放課後のホームルームが始まり金曜日の学校が終わろうとしていた。時間よ止まれ。ザ・ワールド!無理か。今度は僕が現実逃避していた。
あー明日から土曜日なのに嬉しくない。なんでだろう。理由は簡単!それは寂が覚醒モードだから!
うん、こうなったら寂に見つかる前にダッシュで帰ろう、そうしよう。
「あ、今日の掃除当番は篠原君と武田くんと上杉君と徳川君です。」
いのちゃん先生が俺に死刑を宣告した。だあああああああああああ
「じゃ、通り魔に気をつけて下さいね。じゃあ、挨拶お願いします。」
起立、礼、解散の号令と共に俺も帰ろうとした。が、俺の前にお掃除三銃士が立ちふさがった!

武田があらわれた!▼
上杉があらわれた!▼
徳川があらわれた!▼

どうする?▼
と聞かれても俺の選択肢には逃げるの3文字しか無かった。

篠原は逃げようとした▼

しかしまわりこまれてしまった!▼
ので観念して仲間に成りたそうな顔をしたら箒を投げつけられ、晴れてお掃除四天王が結成された。…早く終わらせる <> 悪意と好意と敵意
◆f7vqmWFAqQ <>sage<>2010/05/02(日) 23:44:11 ID:luw5Vc5w<> 掃除を終えて下駄箱に向かう途中に寂が居た。見つからないように歩行する気分はスネークそのものだった。影の薄さだけが取り柄なのでそれを活か「あ、遅いよ。ゆーちゃん」
オウイエー!ガッテム!バレた!が、寂は普通だった。
「どうしたの?帰ろ?」
「あぁ…」
まぁ助かったみたいだしいいか。
寂とニコニコ肩を並べて帰る。俺にとっては普通で日常的なのだがまだ油断は禁物だ。「一瞬の油断が命取り」という某謙虚なナイトさんが残した名言もあるし。
「ねぇ、昼休みどこに行ってたの?」
「ちょっと自分探しの旅に」
「臭い…」
しかめっ面で言われんでも自分で自覚してるから「自覚してる」と答えておいた。
「そんなことよりさ、もしあたしが最近流行りの通り魔に殺されたら、どう思う?」
「まぁ、腐れ縁の仲だから悲しくはなるかな。」
「好きな女の子だし?」
突然の寂からの爆弾発言に俺の心が被弾した。くぁwせdrftgyふじこlp;@
「もう好きじゃねーよ!フラれたし!」
「そう、まあそんな必死になって反論しても説得力無いけど。」
「うッ…」
「朝の仕返し。いや〜満足満足。」
「おま…」
「んじゃ、あたしこっちだから。」
いつの間にか分かれ道に来てしまった。
「あと、悲しくなるとか言ってくれたのは嬉しかったわ。じゃ、月曜日に!」
と言って走っていく寂の姿を見届けた。そして顔から火が出る程恥ずかしくなった。



家に帰って自室のベットに横たわる。宿題をしながら。
因みに宿題とは「相手を傷付けずに告白を断れる方法の発見」である。マジでどうしよう。












と考えていたけれど、それは無駄になると月曜日に思い知らされる事になった。 <> 悪意と好意と敵意
◆f7vqmWFAqQ <>sage<>2010/05/02(日) 23:48:08 ID:luw5Vc5w<> 投下終了

>>603
最後「か」が抜けてました。申し訳ない

あとラブレターは縦読みで「好きです死ぬほど愛しています」になるような感じにしたかったのですがあきらめますた。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/02(日) 23:51:51 ID:wh5bH9ER<> >>599
GJ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/02(日) 23:52:19 ID:YV+lEokX<> GJ!


よし、俺も今から彼女?の所に




▼警官Aが現れた。
▼警官Bが現れた。
▼警官Cが現れた。



………ゲームオーバー……… <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/05/03(月) 01:13:59 ID:gBmi95Y8<> 596 そういうことじゃなくて、あんなことを言うならまず自分が感想をしっかり書けって事だろ。
だからGJ云々の話じゃない。 586 じゃあまずお前がやれ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/03(月) 01:55:27 ID:5hPx54eb<> >>605
投下お疲れ様です。無理せずマイペースで頑張ってくれ。

>>594
作者が読者にkwsk感想求む!って言うのなら、納得するけど。
読者が読者にkwsk感想書け!って強いるのは、お門違いだろう。
読書感想文じゃあるまいし。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/03(月) 02:33:41 ID:95/OElf1<> 作者様への感謝も忘れて、感想なんぞ書きたくないと駄々をこねるわけか
お客様根性丸出しだな・・・醜い
スレが消えてから後悔しても遅いぞ? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/03(月) 02:42:40 ID:QMsY7gZK<> 媚びるのも醜いぞ
議論になってるし空気も悪くなるからこいつはもうスルーした方がいいぞ
感想は>>609が書いてるように作者が求めれば書けばいいし読者が自ら進んで書くのもいいだろ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/03(月) 05:13:08 ID:cG+AEQaF<> >>610激しく同意嫉妬スレの惨状を知らんのか?ここを二の舞にしたら許さんぞ!! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/03(月) 07:37:17 ID:J4Hg6ELN<> 春だから>>610みたいな変なのが出てきますね <> あさから<>常時age<>2010/05/03(月) 08:34:56 ID:6tOFEeOh<> ちんこかゆい
びょうき? <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/05/03(月) 09:13:47 ID:aTvtBjED<> 感想?GJだってここでは十分な感想だよ。
折角作品を投下してくれた人に「いい仕事した」(Good Job)と言って悪いか? 
確かに感想を詳細に書いてくれるのは作者冥利に尽きるがたった一言でいえる「有り難う」のような言葉が重要だ。作者の皆さん、GJ <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/05/03(月) 11:35:53 ID:aTvtBjED<> というかGJのなにが悪い?俺や名も知らぬほかの読者さん方が万感の思いを込めてこの一言を言っているのにそれを無愛想だの何だの・・・まあ確かにここは字面がものを言うけど
何の感情もなく書かれた感想と感謝の念に溢れたGJあなたはどっちを選ぶ? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/03(月) 11:52:21 ID:rhjY1s+o<> いい加減もうやめようぜ
ただの荒らしに構うのは <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/03(月) 12:12:32 ID:zRL0GEO8<> ヤンデレ家族と傍観者の続きはまだか? <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/05/03(月) 13:46:00 ID:4PTPFncO<> 個人的には題名のない長編12、ほととぎすが気になるところ <> 悪意と好意と敵意
◆f7vqmWFAqQ <>sage<>2010/05/03(月) 13:58:02 ID:AxrLNK1y<> 3話目投下。3レス消費予定。といってもこれと言った進展はございません。 <> 悪意と好意と敵意 ◆f7vqmWFAqQ <>sage<>2010/05/03(月) 13:59:09 ID:AxrLNK1y<> 私の幼馴染の篠原勇輝はモテる。決してクラスの中心って訳じゃ無いけど顔とか性格とか運勢とかその他諸々が良くて。
高校1年生の頃、そんな彼に残酷な嘘をついた。
「ゆーちゃんとは恋愛の相性最悪だから付き合いたくない」だったかしら。
言った後はもの凄く後悔した。もしドラえもんが居たら脅してでもタイムマシーンとタイムふろしきを拝借して1年前に戻りたいと思ってるわ。
それに私とゆーちゃんの相性は最高。もちろん恋愛関係上においても。
けど私の嘘のせいで私たち2人は距離が遠く離れていった。それどころかゆーちゃんは京華院とかいう年増の数学教師と仲良くなっていた。
ダメよゆーちゃん他の女、それも教師にたぶらかされちゃそれに私が居るじゃないでもゆーちゃんは悪くない悪いのは京華院とかいう20過ぎた年増よね。大丈夫私達の世界守って見せるから。
私は駅から帰るクソムシを包丁で背中を刺して殺した。人を殺した後悔とゆーちゃんを守った達成感が私の心を占拠した。
次の日に学校に登校するとゆーちゃんの姿は無かった。次の日もそのまた次の日も。居ない居ない居ない居ない居ない居ない。
ある放課後、私は片山(とかいうゆーちゃんの金魚のフン。)と一緒にゆーちゃんの家に行った。ゆーちゃんのお義母様に案内されて面会したゆーちゃんは虚ろな目で私達を捉えていた。
毎日毎日通い続けた。拒絶されようとも耐え抜いた。努力の甲斐あってゆーちゃんは復帰した。
けれど、またクソムシが現れた。橋本加奈。甘ったるい声で「篠原く〜ん心配したよ〜」と言ってゆーちゃんを侵食しようとする。何よその能登麻美子みたいな声。いっぺん死んでみる?
気が付いたら私の目の前には両腕が折れている橋本加奈がいた。またやっちゃったと後悔して私は凶器を忘れて逃げた。
ゆーちゃんはまた塞ぎこんでいた。私が元気付けようとゆーちゃんの元に行ったら倉田楓がゆーちゃんのそばにいた。邪魔、邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔…!!!!!!!
包丁が無かったからワイヤーで首を絞めてムカついたから左の指を折ってバリカンで禿頭にした。もはや罪悪感なんて感じなくなった。
ゆーちゃんは最早虚ろな目に成っていた。でも大丈夫!私がいるから!だから上原千草と三國香織、要らないよね?上原千草は混んでいた駅のホームから線路に突き飛ばした。三國香織は誘拐して練炭自殺に見せかけて殺した。
けれど、そんな事をしても周りのクソムシを消してもゆーちゃんは私に振り向いてくれないことに気がついた。
2年に上がると別々のクラスになった。そしてゆーちゃんは植田美樹とか言うクソムシに言い寄られていた。殺そうとも考えたけど殺しても仕方がないと思ったので平和的手段にでた。
彼女の自宅マンションで待ってゆーちゃんに近付かないでと交渉したけれど、決裂した。取っ組み合いに発展して私が植田美樹を柵目掛けて突き飛ばすと彼女は柵ごと地上に堕ちた。
あ、あああ…えh3rじghyろいw3hぎjwこ3いqyぎえう!!!!!!違う!これは事故!!事故なの!!!!と見えない何かに言い訳して走った。
そしてゆーちゃんはどん底にまで落ちていた。また引きこもっていた。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!
けれど、私はゆーちゃんのいる部屋の前で馬鹿馬鹿しい発言をのたまった。
「ゆーちゃんと親しくなった女性は不幸になる運命なのよ。篠原…死の原なの!」
「じゃあ寂はどうなんだよ。」
「あたしは…その…バリアみたいなものを張ってるから大丈夫なの!!」
違う、私が死神なだけ。
「だからさ、私以外の女と仲良くならなきゃいいの。」
そうだよそうなのよ私だけを見て。
「また一緒に学校行こ!ね?」
「あぁ…」
「じゃあ…また明日…」


帰る途中に考えた。なんで私の殺人はバレてないのかしら。きっと神の思し召しなのかもね。ウフフ <> 悪意と好意と敵意
◆f7vqmWFAqQ <>sage<>2010/05/03(月) 13:59:48 ID:AxrLNK1y<> しばらく安寧の日々が続いた。けれど長くは無かった。
ゆーちゃんが便箋を自分のポケットに入れているのを見てしまった。
イライラする。新しいクソムシがまた来襲してきた。もういい加減にしてよ!
「あー登校中は悪かった。悪気が有ってやったけど後悔してる」
そんなのはどうでもいい。
「別にもう怒ってないわ。」
本当に
「睨みながら言っても説得力ないって。」
ゆーちゃんが悪い。さっきの便箋なんなの?
「もう許すって!!!だからもう話しかけないで!!!」
あ、またやっちゃた。ゆーちゃんがポカーンとしてる。後悔
しかしチャイムが救ってくれた。
「じゃあ!あたしこっちだから!」
ごめんなさい。
「あ、おい…」
振り向かなかった。いや、振り向けなかった。


午前の授業は頭に入らなかった。ゆーちゃんの事で頭がいっぱいだったから。どうしよう。
昼休みにゆーちゃんとお昼食べよう。そうすれば多少はマシになる。と、思ったのに!!なんで!!屋上で女の子とお弁当食べてるのよ!!
あ…あ…ああああ、ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!
ゆーちゃんがクソムシの涙を拭いている場面をそれ以上自分の目に焼きつけたく無かった私は教室に帰った。
途中、ゆーちゃんの金魚のフン(片岡だったかしら?)に」と目があった。不快感が3倍に膨れ上がった。


午後の授業も頭に入らなかった。ゆーちゃんと話したい。ゆーちゃん、ゆーちゃんゆーちゃん!!
明日は土曜日。ゆーちゃんと2日も会えなくなる。いや、今の状態でそんなの耐えれない。いや、いや!!
ホームルームが終わり廊下でゆーちゃんを待ち伏せる。途中でゆーちゃんの金魚のフン(片桐だったかな?)が私と目が会うなり目を剃らした。不愉快だった。
10分もするとゆーちゃんを発見する。何かに怯えてるようだった。大丈夫!私が守ってあげる!!
「あ、遅いよ。ゆーちゃん」


「ねぇ、昼休みどこに行ってたの?」
「ちょっと自分探しの旅に」
「臭い…」
「自覚してる」
「そんなことよりさ、もしあたしが最近流行りの通り魔に殺されたら、どう思う?」有り得ないけど
「まぁ、腐れ縁の仲だから悲しくはなるかな。」
「好きな女の子だし?」
「もう好きじゃねーよ!フラれたし!」
「そう、まあそんな必死になって反論しても説得力無いけど。」
「うッ…」
「朝の仕返し。いや〜満足満足。」悲しんでくれるって答えてくれて
「おま…」
「んじゃ、あたしこっちだから。 あと、悲しくなるとか言ってくれたのは嬉しかったわ。じゃ、月曜日に!」
と言って走り去ってみた。
だって今すっごく顔が赤くなってると思ったから。見られたら恥ずかしいじゃない。 <> 悪意と好意と敵意
◆f7vqmWFAqQ <>sage<>2010/05/03(月) 14:00:38 ID:AxrLNK1y<> 家に帰って自室のベットに腰掛ける。
「ゆーちゃん…」
自分の指を自分のおまんこに伸ばす。触れる前からお汁がビショビショだった。ゆーちゃんと帰ってる途中からこうなっていて、ばれたらどうしようなんて考えてると余計に濡れてしまった。
「ゆーちゃんが悪いんだからね…」
自慰のしすぎで胸が膨らむのも、胸が膨らんで肩が凝るのも、おまんこがびしょびしょになるのも、そしてなにより胸が締め付けられるのもゆーちゃんの所為。
「はぅ…イク、イッっちゃう!!ゆーちゃん!!」
ビリビリと電流の様なものが体中を駆け巡る。と、同時に後悔してしまう。また幼馴染を、好きな人をズリネタにしてしまった。
私の人生は後悔の連続だわ、ほんと。
ゆーちゃんは私の事をどう思ってるんだろう。
どう思ってるかは分かんないけど私は欲しい物を手に入れるならライバルを蹴落とすくらい残酷でゆーちゃんを想うとおまんこびしょびしょにする淫乱女で何より殺人犯。
だから…「これを最後の殺人にしよう。終わったらゆーちゃんに告白しよう。」
そう思って私は台所の包丁を研ぎに行った。


土曜日は雨だった。勝負服(殺人をする時に着るパーカー、手袋、ジーンズ)を着た私は綾小路美月の家に張り込んでいた。それにしても凄い豪邸だわ…綾小路家…。
綾小路美月は大企業「綾小路グループ」の令嬢らしい。クソムシのくせに。
…張り込むこと2時間、出てきた。傘を差して黒い服に身を包んで…。クソムシからゴキブリと呼ぶことにしようかしら。
後をつけるとゴキブリは墓地に入って行った。何?自分から死にに来たのかしら。お望み通り殺してあげるわ。
墓地から出てきたゴキブリを駆除しようと私は鞄に入れていた包丁の柄を握って距離を詰めてそして…
「こんばんわ、通り魔さん。いえ、天野寂さん」
私は急にゴキブリの口から出た自分の本名が鼓膜に届いた所為で心と手元が狂った。
心は「なんでばれてんのよ!!」という心の声が心臓の音と共に反芻していた。
左胸を刺そうとしていた包丁は軌道がずれて左腕に刺さっていた。
突然の事で尻もちをついて頭に被っていたパーカーの帽子が頭から離れた。
「随分と顔面蒼白ですね。」
「あんたは左腕鮮血ね」という言葉を口にするほどの余裕はなかった。すぐにまたパーカーで頭部を隠す。
「あぁ、安心して下さい。警察には言いませんから。」
は?
「貴女にはもっと苦しんで貰いますから。」
私はゾッとした。殺さないとマズイ!と本能が訴えてくる。近くに有った手頃な石を握って殴ろうとした。
「こら、そこ!何をしている!」
50m程先に国家暴力こと警官が居た。
私はすぐに逃げだした。幸い回り込まれることは無かった。


失敗した。ただその一言に心をハイジャックされて走っていた。 <> 悪意と好意と敵意
◆f7vqmWFAqQ <>sage<>2010/05/03(月) 14:04:04 ID:AxrLNK1y<> 投下終了。
どうでもいいネタバレ。いのちゃん先生は貧乳。
ではみーまー9巻を読む作業に戻ります。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/03(月) 14:28:20 ID:1HYFAIYc<> GJ!

寂ちゃんさっさと告白しちゃえよwww <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/03(月) 14:52:33 ID:fFlRgUAx<> 更新早いな!
俺は美月ちゃんを応援してるぜ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/03(月) 15:01:14 ID:Vk+GyB/O<> GJ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/03(月) 15:03:12 ID:Vk+GyB/O<> ふふふ……寂さんの殺人を隠していたのはこの俺(ry <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/05/03(月) 17:10:37 ID:4PTPFncO<> そしてゆーちゃんにひっつくゴミ蟲(寂)の情報をもらしているのが警官ことこの俺 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/03(月) 17:18:31 ID:l3n1XDsh<> 寂はとっとと不幸になってほしい。
ゆーちゃんはとっとと美月に監禁されて幸せになってほしい <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/03(月) 18:03:51 ID:4D9eja69<> >>526
ちょっと違うが、披露宴で馴れ初めの話をしている時に、「あれ実は私がやったんだよ」とか言って怒涛の暴露ラッシュをするヤンデレが浮かんだ <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/05/03(月) 19:00:19 ID:aTvtBjED<> 話の成り行きはまだ見えないな でも面白い部分が多いね 待ってますよ <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/05/03(月) 19:15:39 ID:aTvtBjED<> この作品に心が、ジャックされた ー悪意と好意と敵意についてー ナナシの男 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/03(月) 19:48:33 ID:cG+AEQaF<> >>632 >>633 ちゃんとsageなさいww <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/03(月) 23:06:07 ID:dK+s2cgZ<> GJ!
寂はそこまで後悔するくらいなら初めから相性悪いとか言うなよとw
個人的には能登麻美子みたいな声らしい橋本加奈さんに興味あったけど <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/04(火) 00:02:56 ID:Ni156bbv<> このスレももう駄目だな
1スレ目から空気が変わりすぎた <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/04(火) 00:29:02 ID:Dj/yhKAY<> >>636
なあ、そんなに荒らしたいのか?挑発的なコメントは控えろよ


気を取り直して、作品投下に期待! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/04(火) 00:33:49 ID:Hh9Z/0NX<> ちなみに1スレ目はどんな空気だったの? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/04(火) 00:40:13 ID:fJpxemcB<> >>632>>633
ハイハイ周りと違う君かっこいいよ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/04(火) 01:15:17 ID:fcayKjNz<> >>638
荒らしがガチホモネタをしつこくやるなか、お茶会の人がずっと書いてくれていた
荒らしがいることと、修羅場スレ全盛期の頃(1日4作品ぐらい)だったからヤンデレスレは最初人は少なかった
それでもお茶会の人は書き続け、人が増えるようになり荒らしはいつの間にかいなくなった
今のヤンデレスレがあるのはお茶会の人のおかげと言っても過言ではない <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/04(火) 01:30:10 ID:RjIYBUq8<> 荒れてきたな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/04(火) 01:34:42 ID:ALvUlYaF<> >>636
見放すのは勝手だけどそうゆうコメントを書くのはよくない
今このスレで書いてる作者にも失礼
>>638
640が書いてくれてるけど自分で知りたいならログ置き場見るといいよ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/04(火) 01:39:43 ID:MHTrekRf<> そう言えばお茶会の人の作品数も多いよな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/04(火) 01:59:13 ID:jW5QTELD<> あの作品群はいくつかのルートが未完のままでバッドエンドでしか完結してないがそれでも良作
願わくばグッドエンドのルートも書き上げてほしかったが…
あと姉妹丼ルートも <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/04(火) 03:37:59 ID:LmZofnxF<> 別ルートって正直何が面白いの? <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/05/04(火) 05:09:02 ID:ylc5KV5J<> 答えとしては、いろんなヒロインのいろんなシチュエーションでの反応を見たいというのがあるだろう。
なにも読み手の望む展開は一つじゃないということだよ
多くの人の期待になるべく沿ったルートを作るというのはとてもありがたいことだと思う。
まぁ、解説しても分からない奴はわからない
別のルートを読む必要がないと思うならそこで終わってもそれも一つの物語として成り立つ。
あって損は無い。そういうことさね坊や <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/04(火) 05:53:47 ID:8v2jvwPb<> >>646
まあsageような? <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/05/04(火) 08:43:35 ID:xGBaQPYs<> 簡単に言えば
「幼馴染」と「妹」がいて、クライマックス場面でどちらかを選ばなければならない。
ここで選択岐を使い、二人の内どちらかを選ばせることでそれぞれ違った結末を見せる
ほかにも行動によってルートが変化して結末が変化する 
みたいなエロゲ出典のシステム これが別ルート制である <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/04(火) 09:37:36 ID:PjSZeLeu<> 何でsageないのか真剣に教えてほしい。
スレのルールぐらい守ろうよ <> 名無しさん@ピンキー<>a-now<>2010/05/04(火) 10:49:41 ID:xGBaQPYs<> きっと君達僕の同級生だろう って思ったね <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/04(火) 11:46:28 ID:ARMTEniU<> そういえばヤンデレ家族ってどうなったの? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/04(火) 12:36:17 ID:3yrmrnLp<> 何このsage厨大行進 <> 名無しさん@ピンキー<>常時age<>2010/05/04(火) 13:25:44 ID:j34dtVC+<> 何でsageるのか真剣に教えて欲しい <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/04(火) 13:28:31 ID:L8aKtzb0<> sageることに意味を求めるよりも
約束を守る意思があるか見る意味が強いんじゃない

まぁ専用ブラ入れてたら何もしなくてもsageになってるもんだけどな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/04(火) 14:30:40 ID:UqT7WCm2<> 携帯厨降臨ッ!
思うに、ここの住人はいつもカッカして他人に噛みついていくからいけない。
世の中大切なことはそういくつもない。気楽にいくのが、いいんだ。
ジャスティスは、僕らにそう教えてくれた! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/04(火) 14:49:27 ID:p3FZB6rS<> >>653
テンプレに書いてあるからだろ。
sageないと怒る人はいるけどsageて怒る人はいないんだから儀式だと思って何も考えずにsageれば良いじゃん <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/04(火) 16:11:54 ID:5O0o1ApW<> >>653
昔は上のスレにぽこぽこ業者が広告を貼り付けるもんだからsageさせていたんだが、
最近はsage何の意味があるのか、正直言って良くわからん部分はある。
強いて言えば荒らしさん対策なんだが、あまりage sage関係無い気もするし。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/04(火) 17:32:40 ID:LmZofnxF<> >>657
意味がどうとか考えずsageればいいんじゃない?
あんまり荒らし防止とか考えてsageしてる人もいないと思うし。
まぁ、小さなルールだと思えばいいよ。 <> 名無しさん@ピンキー<>CKND<>2010/05/04(火) 17:44:24 ID:xGBaQPYs<> ルールっていいもんです。そう思いませんか
でも人をage・sageで叩くのは良くないよ、な <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/04(火) 18:35:17 ID:kh9wj2pL<> ルールだからsageろというより
sageないと怒る奴がいるからsageろって感じだな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/04(火) 18:39:25 ID:CfBLO3+K<> 大体の人が専ブラ入れてるだろうしageるのはただ怒らせたいだけだろ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/04(火) 19:39:29 ID:b3zXkqNs<> 前スレ143からの続き投稿します
題名は「髪の話」に決めました <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/04(火) 19:41:32 ID:b3zXkqNs<> 次の日、木村千華は注目を集めていた。
髪の短くなった彼女に、クラスメイトの全員の視線が集まっていたと言ってもいい。まあそりゃあそうだ、髪の長い奴がばっさり切ったら誰だって気になる。昨日の夜に遭遇していなければ、同じく衝撃的な事件と思ったに違いない。
「髪切ったんだね。理由知ってる?」
当然の疑問をこちらに投げてきたのは、クラスメイトの松本尋。今は真っ黒な肩ほどのソバージュの髪だが、一年くらい前までは見事な金髪だった女。
中学時代に仲の良かった連中の一人だが、その仲間のうち、同じ高校に進んだのは自分を含めて二人だけ。入学して同じクラスになれたので、中学時代そのままに仲良くやっている相手だ。
ただ、この見た目可愛い女子であるところの松本と入学直後から仲が良かったせいで、クラスの男子から若干距離を置かれていた気はする。それも今では別になんてこともなく、みんなと程よく仲がいいわけだが。
前の席の奴がよく遅刻するからか、松本はいつも前の席の椅子に横に座り、正面に陣取って会話を始める。ちなみに木村千華の席は窓際であり、廊下側のここは正反対なので、噂話が彼女に聞こえることはない。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/04(火) 19:42:24 ID:b3zXkqNs<> 「俺が知るわけねーだろ」
そう返したが、本当は少しだけ知っている。長い髪が嫌いになったからだと言っていた。とは言え、肝心の嫌いになった理由のほうがわからないのでは、その他野次馬たちと大差ないのだった。
「まあ、そうだよね。大須賀が知るわけないよね」
にやついた、シニカルな表情を浮かべる松本。こいつはこういう奴なのだ。いつだってローテンションで、いつだって不機嫌そうで、いつだって口が悪い。調子がいいときは人を馬鹿にしてるときとくる。
しかし、嬉しそうなことそれ自体が大変珍しい。普段は馬鹿にしたりさえしない。
「どうしたお前。なんかいいことでもあったのか」
「……ちょっとね。教えないけど」
教えないとはっきり言われたら、聞き返すこともできない。実に会話を切る奴である。
「そういう大須賀こそ、いいことあったでしょう。顔が楽しそうだよ」
「顔が楽しそうて。俺どんな顔してんだよ」
とりあえず乗ってみたが、見てわかるほど露骨に緩んでいたりするんだろうか。いや実際、松本に見破られている以上、間違いないのでは。
「何があったか言いなさい」
やはり、今日の松本は機嫌がいい。いつもはもっとだるそうだし、正面に陣取るくせに特に会話がないなんてのもよくある。
それは置いておくとして、まず昨日の出来事を他人に話していいものか、まったく判断ができない自分がいた。傷心のクラスメイトを慰めただけで、それほど特別なことをしたのではないように思えるし、誰にも教えられない秘密を共有したような気もしていた。
「お前が言ったらな」
今言わなくても別にいいか、と軽く決断し、適当に返答すると、松本はそれについてもう触れず、別の話題に移行した。そうして、ホームルームまで松本とだらだらと過ごす。いつも通りの朝だった。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/04(火) 19:43:35 ID:b3zXkqNs<> そんな感じでよくつるんでいる松本だが、放課後まで一緒なことはあまりない。
話は単純で、松本の交友関係が意外と広いからだ。あの嫌味ばかりのコミュニケーションでよく友達を増やせるもんだと思うが、大事なのは付き合いのよさと聞き上手なことらしい。
今日は友人と遊ぶと言っていた。そういう理由があるときは、突然呼び出され、買い物に付き合わされたりといったことは起こらないので、放課後は完全に暇になりそうだった。
昨日のこともあり、今日は少し店で練習でもしようかな、などと思いながら迎えた帰りのホームルームも終わり、各々ばらけだしたクラスメイトたちと適当に挨拶を交わし、帰路に着く。

バス停は少しだけ学校から離れている。歩いて五分強くらいだろうか。
学校の前にもバス停はあるが、残念ながら路線が違い、自宅の近くを通るバスは学校の裏手の、少し開けた二車線の道路を走っている。ほとんどの生徒が学校前のバス停を使用していて、こちらを使うのは極少数だった。
他の利用者と噛み合わなければ、一人でバスを待つこともたまにある。が、今日は先客がいた。遠くの後姿でも木村千華だとわかるのは、先客がいるときは大体が彼女だからだった。
髪が短くなり、特徴がなくなってもわかるものだな、と思いながら彼女の横に立つと、こちらに気付いた彼女が振り向く。なんと話しかけたものか迷うと、彼女のほうから声を掛けてきた。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/04(火) 19:44:33 ID:b3zXkqNs<> 「大須賀君、今日はこれから、暇?」
「ん?」
完全に暇だ。これから自宅に帰るだけで、帰った後の予定も特に決まっていない。
「暇だよ。帰るだけ」
木村は、と聞き返し、何となく会話を続けようと思ったが、彼女のほうは違った。
「じゃあ、これから私の家に来て」
明確な目的があっての質問だった。自宅に招待するつもりで、予定を聞いてきたのだ。
「……え?」
しかし、その内容にはどう反応していいのかわからなかった。それにしたって突然すぎるだろう。クラスメイトとは言っても、まともな会話をしたのは昨日が初めてなのだ。
「なんで急に」
やっぱり何を考えているのかわからない。戸惑いのままに疑問を口にすると、彼女はまた、昨日の夜のように笑顔を見せる。
「昨日のお礼がしたいから」 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/04(火) 19:45:30 ID:b3zXkqNs<> 投稿終わり
続きはまたで <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/04(火) 20:21:45 ID:H3Ipxhg8<> 皆さん乙です <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/04(火) 20:45:21 ID:T4jrW96f<> >>667

GJです <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/04(火) 21:58:48 ID:ht9cx6GR<> GJ!!
続き待ってます!! <> 悪意と好意と敵意
◆f7vqmWFAqQ <>sage<>2010/05/04(火) 22:12:35 ID:ccjqI0Qc<> 4話投下します。4レス使わせて頂きます。
話が詰まってきてプロットを作らなかった事に後悔。 <> 悪意と好意と敵意
◆f7vqmWFAqQ <>sage<>2010/05/04(火) 22:14:14 ID:ccjqI0Qc<> 月曜日、雨のメロディーが町中に音をたてていた。まぁ今日に限った事では無く三日連続で雨は降り続いている。
授業再開の月曜日が雨とは嫌になる。休みを自作してみようかと考えた。けれど休む訳にもいかなかった。学生が学校に行くのは当たり前なのだから。
カッターシャツを身に纏う。もうそろそろ学ランを出さないとなと考えながら階段を降りる。父と母はもうそれぞれの職場に行った様だ。テーブルの上には家庭環境と比例して冷めていた朝食置かれていた。
3カ月前、父が旧友の連帯保証人になって逃げられてからずっとこの調子だ。
そして両親共々借金を押し付けてきた父の旧友の名前も教えてくれない。そこは2人とも口を揃えて「世の中には知らなくて良いこともある。」と言っている。意味分からん。
時間があまり無いのでテーブルの上に置かれてる冷めた白米と味噌汁と秋刀魚を平らげる。台所に空になった食器を葬って家を後にした。
傘を差して雨から身を守って歩きだす。別れ道に差しかって寂を双瞼に捉えた。
「寂、おはよ」
「     」
寂は俺の存在を理解せずにぼーとしていた。体調でも悪いのだろうか?悪いなら休め。
「おーい、どうした。体調悪いのか?」
「あ、ゆーちゃん…。おはよ。何でも無いよ。考え事してたの。」
「ならいいけどさ。無理すんなよ」
「ありがと。」
笑顔を添付してお礼を言われる。なんかいつもの寂じゃないなーと考えてみたけど無駄だからやめた。今この時俺の脳が考えるのは綾小路ちゃんの件だけで充分だし。
学校に着くまで俺と寂は終始無言だった。やっぱり心配して声を掛けようと思ったがどうせ強がるだけだと思ったからからやめた。だって天邪鬼だし。
目的地を教室に設定して歩行を再開すると寂が俺の元に小走りで駆け寄って来た。
2人で階段を上る。語弊の欠片があるかもしれないから補足するけど大人の階段ではない。
目的の階に到着して寂からの離脱を試みる
「じゃあまた」
「あ、あのさ…」
「ん?」
「今日お昼一緒に食べない?」
「あー…」いや1年の棟に行って綾小路ちゃんとエンカウントして残酷な一撃を加えるという任務が
「ダメ…?」
涙目と上目遣いのコンボで俺のMP(マジックポイント)が0になった。端的に言うと断れない。それに今日の寂は何か変で心配だったのも少なからずある。
「分かったよ。食べよう。昼休みにそっち行くわ。」
「ありがとう。」
寂がその端正な顔で笑顔を咲かせる。朝から眼福で目が胸やけしそうだ。いや、おかしいなこの表現方法。まあいいか。
「じゃ、昼休みに」
「うん。また…」
教室までの数メートルを踏みながら頭で録画していた今朝の寂を再生する。やっぱり変だと思った。あの「対俺用マシンガントーカー」が俺に話題を撃って来ないのは…故障か?
まぁ、あれだ。「女の子には朝から真っ赤な物を見て一日中気が沈む日があるんだよ〜」って橋本が遺言として遺していたし、それだろ。間違いない。根拠もない。


教室に入るとやけに騒がしかった。雨のメロディーがかき消される程だから多分いつも以上に騒がしかった。
「今日はいつも以上に騒がしいな。何かあったのか?いのちゃん先生が入籍でもしたのか?」
片山に疑問と冗談をぶつけてみる。それはすぐに砕けた。
「ちげーよ。知らないのか?うちの1年が例の通り魔に刺されたんだよ。命に別状はないらしいけど」
は?
「あー、まさか死の原ことお前の知り合い?」
は?は?は?は?は?は?は?
「名前は確か」
言うな馬鹿 <> 悪意と好意と敵意
◆f7vqmWFAqQ <>sage<>2010/05/04(火) 22:14:45 ID:ccjqI0Qc<> 「綾小路美月って奴。なんか綾小路グループの令嬢とかなんとか。まぁお前にそんなVIPな知り合い居る訳ないよな。」
居るよ馬鹿。
「おい、どうした。」
僕は片山の声に耳を傾けずに走り出していた。綾小路ちゃんが駅前の病院に居ると仮定して。
「あー…何やってんだかね、あいつ」


駅前の病院に駆け込む。ナースのキョトン顔や老人の迷惑そうな顔が目に入ったが今はどうでも良かった。
ナースセンターの受付に乱暴に到着する。40代と思われるナースの引きつった顔が目の前に有った。
「あのッ…綾小路美月てッ…怪我人…ッここに入院…」学校から病院まで全力で走って来たので上手く発言出来ない。
「あれ?篠原先輩?」
後ろから聞き覚えのある声がした。俺は声のする方へだるまさんが転んだの鬼役の要領で振り返る。
「あ、やっぱり篠原先輩だー!でもなんでですか?学校は…」
元気そうな姿を確認出来てなによりだった。
「いや、刺されたって聞いたから…」
「もしかしてそれでそんなにびしょびしょになってここまで…」
あ、雨に濡れてるの忘れてた。寒ッ!!SAM!!
「あの…よろしければ私の病室まで…」
「あー、いや悪いし良いよ。学校に戻る」
「でももう1時間目始まってます。」
綾小路ちゃんが指を指す先には円形で短い針は9時を、長い針は5分を差すオブジェが見えた。
今日の一時間目は物理か…立山先生(通称ハゲヤマ)遅刻にうるさいからなぁ。あとねちっこい。
「そうだね、お言葉に甘えるよ。話したい話もあるし。」


綾小路ちゃんの病室に入ると付き人と思われる20代くらいのメガネを掛けた女性が居た。
「お嬢様…そちらの方は…」
「えぇ、篠原勇輝先輩よ」
「どうも…」
「美月さまのメイドの黒沢と申します。以後お見知りおきを」
丁寧な自己紹介を受ける。俺もしようと考えたが中身の無い人間に自己紹介なんて無理なので中断した。名前は綾小路ちゃんが言ったしね。
「それでその…お話とは…」
綾小路ちゃんが話すきっかけを作ってくれたので話すことにした。僕のジンクスについて。 <> 悪意と好意と敵意
◆f7vqmWFAqQ <>sage<>2010/05/04(火) 22:15:19 ID:ccjqI0Qc<> 「…という訳なんだ。だから君とは付き合えない。」
黒沢さんから渡されたタオルで体を拭きながら断った。
「…」
綾小路ちゃんは無言だった。無理もないよなー。振られた理由が非現実的なんだし。
沈黙が流れる。あれデジャヴ?
「そ…そんなのどうでも良いです!私…先輩が好きなんです!」
沈黙を破ったのは綾小路ちゃん。よくねーよ。自分の命を金曜日の伊勢海老みたいに無駄遣いする気か。
「君が良くても俺が嫌なんだ。人が死ぬのは見たくない。」
「じゃあ…先輩が守って下さい。」
「無理だ。俺はそんなに有能じゃない。」
いままでも6人無くした。寂に振られて落ち込んでた俺を励ましてくれた先生、1年の時の友人3人、保健委員の先輩、右隣りの友人。
「じゃ…また」
重い腰を上げて席を立って歩いてドアの付近で一時停止。
「失礼しました。」
お辞儀をして廊下にでる。最後に病室で見えたのは俯いた綾小路ちゃんだった。
けど、何か違和感があった。今朝の寂の俯き方とは違い、何故か綾小路ちゃんからは余裕が感じられたというか。
まぁ、良いか。考えるだけ無駄だ。と思って学校に向かった。

お、ラッキー。雨が止んでる。 <> 悪意と好意と敵意
◆f7vqmWFAqQ <>sage<>2010/05/04(火) 22:15:54 ID:ccjqI0Qc<> 私は客人が病室から出るまで俯いていた。笑いをこらえる為に。
「俺は親しくなった女性を間接的に殺してしまう疫病神なんだ。だから君とは付き合えない」なんて口から紡ぐ篠原勇輝の愚直な顔ときたら…アハハ!
「貴方の幼馴染が殺してるのよ。貴方の女友達や私の大事な人を。そんな事も気付かないの?馬鹿じゃないの?」と大声で言いたかった。けどその台詞を飲み込んでから小さな声で
「道具は道具らしくしてればいいのに。」
と小さく呟いた。多分黒沢にも聞こえてないほどに。
けどあれは道具じゃ無くてキーアイテムね、と道具から2階級特進させた。
でもまぁ、振られるのは予想範囲内。まだ手は有るもの。
「黒沢。次の行動に移すわよ。」
「はい、美月お嬢様。」
黒沢が病室から出る。えぇ、彼女は優秀だから期待してるわ。ウフフ。
そして首に掛けていたペンダントを手繰り寄せて蓋を開けて一人の女性の写真に目をやる。
「お姉様…」と言っても実の姉ではない。京華院涼香(きょうかいん すずか)。私が姉の様に慕っていた女性だ。
彼女は去年殺された。天野寂によって。
天野寂がお姉様を殺した現場は見てはないけれど、私は天野寂が他の女を殺してる現場を見た。なんか殺された女、能登麻美子みたいな声してたわね。どうでもいいけど。
そして私は天野寂をストーキングして…首をワイヤーで締め殺しているのを見て彼女が犯人だと確信した。
それにしてもよくバレないわね。誰かが証拠隠滅でもしてるのかしら。誰よ?神様?彼女のストーカー?まぁどっちもいないでしょうけど。
でも…もうすぐ、もうすぐあの天野寂に復讐できる。でも、まずはキーアイテムをゲットしてから。
知ってるんですよ?篠原先輩。篠原先輩の家が借金まみれなこと。500万だったかしらね。だから
「準備が出来ました。お嬢様。」
「えぇ、今行くわ。」
買い取って差し上げますわ。キーアイテムが500万円でゲット出来るなら安い物よ。

私は病室を後にした。 <> 悪意と好意と敵意
◆f7vqmWFAqQ <>sage<>2010/05/04(火) 22:16:32 ID:ccjqI0Qc<> 投下終了です。 <> 名無しさん@ピンキー<>writing<>2010/05/04(火) 22:32:27 ID:xGBaQPYs<> GJですっ! 因みに道具とキーアイテムの間の階級って何ですか?気にしてます。
能登麻美子声しか特徴がないなんて・・・なんかやだな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/04(火) 22:38:02 ID:2dNQ6bhc<> >>676
GJです
美月さんの黒さにびっくり
道具のはずが、だんだんと主人公を意識し始め…
という展開に期待 <> 悪意と好意と敵意
◆f7vqmWFAqQ <>sage<>2010/05/04(火) 22:49:42 ID:ccjqI0Qc<> >>677
ご想像にお任せします。
因みに私は、キーアイテム>ゲームで言う冒険の仲間(駒)>復活の薬>道具だと思ってます。
はい、そこ「そんなこと指摘されるまで考えて無かっただろアンタ。」とか言わない。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/04(火) 23:49:26 ID:0CbMBdI3<> GJ

ヤバい、面白くなってきたw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/05(水) 06:32:20 ID:qa415ihS<> GJ

次回も楽しみにしてる。 <> 名無しさん@ピンキー<>gjam<>2010/05/05(水) 09:52:12 ID:UjOB7RqW<> 無茶ぶりに答えて頂き、ありがとうございました。期待して五話を待ちます。 <> サトリビト<>sage<>2010/05/05(水) 12:25:16 ID:HLEr4wWp<> サトリビト第8話投下します。
よろしくお願いします。 <> サトリビト<>sage<>2010/05/05(水) 12:25:50 ID:HLEr4wWp<> 「カラオケ?」
「そ、カラオケ!ほら陽菜ちゃんが転校して来た日に行こうとしたけど・・・お前がキレておじゃんになっただろ?」
あ〜そんなこともありましたね。すっかり忘れてました。
今は飯の時間。もちろん、僕は購買で買った(買わされた)パンを食べている。
「だから今週の土曜にカラオケ行こーぜ!!」
(あ〜祥子さんとのカラオケデート!!)
「・・・姉ちゃんは連れて行かんぞ?」
「なんでだよっ!!大勢の方が楽しいだろ!!」
なんでじゃない。これ以上寿命を縮めたくないんだ。
「嫌だ。姉ちゃんだけは誘わない」
できれば岡田さんも遠慮願いたい。
「・・・とおっしゃっていますが?」
は?大和は誰に話しかけてんだ?
「ほぅ・・・ウチだけをのけ者にしようってのか?」
あ、あれれ?そのドヤンキーボイスはお姉さまでしょうか?
「慶太・・・歯くいしばれ・・・」
またそのパターンですか?それについてはすでに対処法を考案していますよ?
僕は姉ちゃんに振り返った。そして・・・
「今日もお美しいですよ、お姉さま☆」
バチーーーーーン!!!
どうやら対処法は失敗だったらしい。できるだけ早く良い案を見つけないと。
「って゛か゛な゛ん゛て゛こ゛こ゛に゛!?」
僕は腫れあがった頬を押さえながらそう訊ねた。
ってか、あれ?秋祭りの時、もう暴力は振るわないって言ってなかったっけ?
「ウチの舎弟からワンコがあってな」
え?舎弟?
「祥子さん実はですね・・・」
き、貴様かぁ!!何度僕を裏切れば気が済むんだぁぁぁぁ!!
「今週の土曜にみんなでカラオケに行かないかと思いまして・・・どうですか?」
「しかたねぇな・・・愚弟のお守も姉の仕事だからな」
(慶太とカラオケか〜!!一緒に何歌おっかな〜♪)
そうだ!!僕が当日行かなければいいだけの話―――
「何の話?」
「あ、陽菜ちゃん!実は今週の土曜に(以下略)どうかな?」
「うわ〜、行きたい!!行きたい!!慶太はどうするの?」
「え?もちろん行くけど?」
陽菜さんは何を言っているんだろ?僕は初めから行く気満々だったのに。
「ふ〜ん・・・その話、彼女は何も聞いてないんだけど?」
わ、バカー!!姉ちゃんの前でそんなこと言っちゃだめー!!
「・・・彼女?」
(そういやぁコイツ前もそんなこと言ってたような・・・まさか慶太と付き合ってるとでもいいたいのか?)
「私早川君とお付き合いしているんですよ、お姉さん♪」
うっ・・・わ・・・終わった・・・
どうやら今日はビンタデーのようだ。
<> サトリビト<>sage<>2010/05/05(水) 12:26:25 ID:HLEr4wWp<> 只今午後7時。
なんとか今日という日を乗り切った僕は疲れた心を癒すことにした。
でもこんなに疲れ切った心ではオススメ1を試しても効果は薄いだろう。ならばオススメ2だ。
しかし、これを使っていいものか?
オススメ2には色々と問題点があるのだ。
一つは中毒性があること。はっきり言って抜けられなくなるのだ。以前試した時にはあまりの中毒性に携帯を破壊するしかなかった。
そして・・・相手に悪影響を及ぼすのだ。これまた以前試した時には1週間僕の家に泊まりに来ては離れなかった。
だが今の心を修復するにはこれしかない!!
僕はある人物に電話をかけた。
「あ、もしもし恭子ちゃん?」
「ハ、ハイ恭子です!!け、慶太さんからの電話うれしいな〜///」
「フフ、ありがとう」
よし、そろそろ始めるか。
「ところで恭子ちゃん・・・俺の事どう思う?」
「え!?どうって・・・だ、大好きです・・・///」
「え?良く聞こえなかったんだけど?」
「だ、大好きですっっ!!」
「頭にお兄ちゃんってつけて?」
「お兄ちゃん大好きですっっ!!」
「もっと言ってほしいな〜」
「お兄ちゃん大好きっっ!!お兄ちゃん大好きっっ!!お兄ちゃん大好きっっ!!」
「ありがと。僕も恭子ちゃんの事、妹みたいで大好きだよ」
そして電話を切った。
最低だ。色々な意味で最低だ・・・
でもおかげで元気が出た。あ、携帯は壊さないとね。
「おい慶太!!早くトイレからでてこいや!!」
ふぅ、せっかく人が心を癒したばっかりだっていうのに。
トイレから出た僕はそのまま部屋に戻ろうとしたが・・・できなかった。
「ちょっとツラかせや」
(あのアマの発言について問い詰めてやる!!)
そのまま姉ちゃんの部屋に拉致される僕。拷問はやめてね?
しかし僕の願いむなしく、姉ちゃんの部屋に入った途端逆エビ反り固めを決められた。
「い、いだだだだだだだだだーーーーー!!!」
「・・・正直に話せば解放してやる・・・結衣とは付き合ってんのか?」
(肯定したら殺すぞっっ!!)
僕の選択肢はどうやら2つあるらしい。このままか死ぬか。どっちも嫌だ・・・
「つ、付き合ってるけど・・・あくまで仮の関係だから!!」
「仮の関係?」
姉ちゃんの力が若干弱まった。いまが攻め時だ!!
「岡田と太郎君が付き合っているって噂が・・・それを失くすために・・・僕と付き合ってるふりをしてるだけ!!」
その言葉を聞いて姉ちゃんは僕を解放してくれた。
「ふ〜ん・・・仮の彼氏役を慶太に頼んだのか・・・」
(それでもウチの慶太に手を出すとはいい度胸じゃねぇか!!カラオケの時覚えてろよ!!)
最近毎週のように修羅場が訪れるのはなんでだろう?
<> サトリビト<>sage<>2010/05/05(水) 12:26:59 ID:HLEr4wWp<> 「それじゃあ遅くなりましたけど陽菜ちゃんの歓迎会ってことで、カンパ〜イっっ!!」
「「「「「「「カンパ〜イ」」」」」」」
今日は土曜日。某カラオケ店。
メンバーは秋祭りに行った時と同じ8人だ。
だけどあの時とはあきらかに雰囲気が違っていた。
「お、お兄ちゃんの横って・・・緊張するな///」
僕の横には恭子ちゃんが座っていた。
恭子ちゃんのセリフだけを聞くとかわいらしい感じがする。だが今の恭子ちゃんは例の中毒症状がでているのだ。
その症状として僕の腕にしがみついている。
「・・・ロリコン」
ちょっと岡田さん!?恭子ちゃんは僕の妹なんだよ!?
「・・・シスコン」
ちょっと陽菜さん!?妹が大好きで何がいけないの!?
「おいマジかよ慶太・・・ウチのことそんな目で・・・キモッ」
(慶太がシスコン!?マジ!?いやったー!!)
・・・あ〜もうめんどくせー。
(慶太の野郎、俺たちを無視して祥子さんとあんなに・・・っ!!)
(恭子ちゃんがあんなにくっついてるなんて・・・なんてうらやましいっ!!)
(結衣だけでなく女性陣全員を・・・おのれ早川っ!!)
お前らはロリコン、シスコン、キモいって言われるのがそんなに羨ましいのか?
「えー!!それでは誰から最初に歌いますかね!?」
殺伐とした中、カラオケ大会が始まった。
「俺がいくぜー!!」
太郎君が曲を入れた。エ○ザイルのl○vers againだ。
何を思ったのかわからないが目をつぶり胸に手を当てて歌っている。ときどき岡田の方を見ながら。
「ふ〜、ちょっと音程を外したかな」
まぁ音程はちょっと外したくらいだったよ。音程は。
「どうだった結衣?」
なぜか岡田に感想を求めている。あれ?そういえば岡田と太郎君の噂はどうなったんだろう?
「ねぇ大田君にリクエストしていい?」
岡田が大和に話しかけた。太郎君の質問に答えてやれよ。
「いいけど」
「じゃあね・・・エ○ザイルのl○vers again!!」
あ、なるほど!これが岡田なりの返答なんだね!
ちなみに大和は歌がめちゃくちゃうまい。岡田もそれを知っている。
大和が歌い終わると拍手喝采が起きた。
「お前うめーじゃんよ」
「あ、ありがとうございます祥子さん!!」
大和が嬉しそうで良かった。幾度となく裏切りられたが、僕の秘密を知っても友達でいてくれたいい奴だ。
「次は僕ですか」
山田だ。山田は普通の歌を普通に歌った。以上終わり。
「次は慶太だな」
大和からデンモクを渡される。ついに僕の番が来たか・・・
「慶太さんの歌、楽しみだなぁ〜」
本当にそう思うなら手を離してもらえます?右手を固定されるとデンモクを押しにくいし、歌いづらいのですが。
「私、久しぶりに慶太の純○歌が聞きたいな〜」
陽菜が僕にリクエスト!?歌っちゃう!!僕、純恋○歌っちゃう!!
ルンルン気分の僕だったが、この一言が本日の修羅場第一ラウンドのゴングとなった。 <> サトリビト<>sage<>2010/05/05(水) 12:27:37 ID:HLEr4wWp<> 「純○歌か。わかっ―――」
「ウチはレゲエが聞きてぇな」
え?
「私は○が大好きなの知ってるでしょ?」
もはや何か分からないのですが?ジャニーズの人気グループですか?
「慶太さん・・・g○eeeenがいいです・・・」
「・・・」
これは一体どういう事だろう。僕が4曲連続で歌えってこと?
とりあえずお茶を一口飲む。ん〜うまい。
「えっと・・・何を歌えばいいのかな?」
「・・・慶太が歌いたいのを歌えばいいんじゃない?」
本当ですか?もし純○歌以外を歌っても怒らないでくれますか?
「・・・別に慶太が何歌ったってどうでもいいしな」
どうでもいいならリクエストを重複させないでください。あなたが最初にかぶせてきたんですよ?
「ズズズ・・・」
岡田さん、ジュースは音を立てて飲まない方がいいよ?なぜかその音が僕の心臓に悪影響を及ぼすからね。
「みなさんが何歌ってもいいって言うなら・・・私のリクエストを歌って下さい!」
あ、違うよ恭子ちゃん。この人たちは私のリクエスト以外を歌ったら殺すよ♪って言ってるんだよ?
「早く決めろや早川!!」
僕がなかなか曲を決めなかった苛立ち(と嫉妬)から太郎君が叫んだ。
しかたがない。ここは一か八かに賭けるしかない!
僕が入れたのは・・・l○vers again。
ごめんなさい。本日三回目でごめんなさい。三回目が一番下手でごめんなさい。
とりあえず歌い終えてみんなの顔を見ると、食べ物のメニューを見ていた。
本当にごめんなさい。
お詫びのしるしとして僕はみんなのためにジュースのおかわりをつぎに行こうと立ち上がった。
「じゃあ俺ジュースつぎに行ってくるけど、だれか他に入れてきてほしい人はいる?」
そう言ってみんなのグラスを見たが、全員のコップにはまだジュースが残っていた。
当たり前だ。まだここに来て4曲、時間にして20分しかたっていない。
「どうしたの慶太?ジュース入れに行くんでしょ?早く行ったら?」
陽菜が冷たい。やっぱり歌いたい曲を歌ったら怒ったらしい。
「そこに立たれると邪魔なんだけど」
姉ちゃん、俺そんなに悪いことしたかな・・・?
「ズズズ・・・」
あ、岡田のジュースは後ちょっとだ!!
「ん?早川まだいたの?」
う・・・うぅ・・・
「ズズズズズズズーーー、ぷはぁ〜!!・・・慶太さん、一緒に飲み物入れに行きませんか!?」
いいよ、分かったよ、認めてやるよ。この瞬間からおれはロリコンでシスコンだ。
「じゃあ行こうか」
そう言って恭子ちゃんと部屋を出ようとしたとき、一瞬岡田と姉ちゃんがものすごい恐い顔をした。
大声が聴こえる!、と身構えた・・・が何も聴こえなかった。
あれ?いつもあの二人が恐い顔をしたときは聴こえたのに?
ま、いっか。
このときはあまり深くこの事を考えなかった。 <> サトリビト<>sage<>2010/05/05(水) 12:28:07 ID:HLEr4wWp<> 「どれにしようかな〜・・・慶太さんは何飲むの?」
「オレンジジュースかな・・・」
店員の視線が痛い。
(あの二人兄妹?でも顔が月とすっぽんだから違うわよね・・・まさか誘拐!?)
ついでに心の声も。ってか客に向かって月とすっぽんとか言うな!それに誘拐したなら堂々とカラオケ店に入るか!
「慶太さん・・・恐い・・・」
「あ、ごめんね恭子ちゃん。ちょっと人間という生き物の道徳さについて考えてただけ」
「?」
「なんでもないよ。それじゃあ戻ろうか」
部屋に戻る道中、恭子ちゃんが僕の顔とジュースを交互に見てきた。
「あ、あのね?え、え〜と・・・」
(慶太さんのジュース一口欲しいって言ったらくれるかな・・・?)
え?ならさっきドリンクコーナーで飲めばよかったのに。
(で、でも目的が間接キスってバレちゃったら・・・キャ〜キャ〜キャ〜!!)
マズい。これは非常にまずい。恭子ちゃんの中毒症状のレベルが以前よりはるかに増している。
「け、慶太さんのジュースひ、一口ほ、ほしいな〜///」
(言っちゃった!!キャ〜キャ〜キャ〜!!)
しかも結局言い放った!!もしこんな場面を勘の鋭い陽菜にでも見つ―――
「ダメだよ恭子ちゃん?このお兄ちゃんは恭子ちゃんに邪な事を考えた変態さんなんだよ?」
なんだか陽菜さんが突然現れるのがお決まり事みたいな感じがするな。それにまだそのネタを引っ張るんですか?
「そんな変態さんのジュースをもらおうなんて・・・変態さんがうつるよ?変態さんもより変態さんになるだろうし」
変態さんと4回も言われた。もう陽菜の中では確実に僕=変態なんだろうな・・・
「・・・私慶太さんと同じなら・・・変態でもいいです!」
あらま。それはお兄ちゃんもビックリしすぎて普段使わないあらまとか使っちゃったよ。
「・・・恭子ちゃん・・・この変態のゴミに何て言われたの?」
つ、ついにさんをつけてくれなくなったぞ!?そして生まれて初めてゴミって言われたぞ!?姉ちゃんにも言われたことないのに!
「大好きって・・・私のこと大好きって!!」
恭子ちゃんが大声でそう叫んだ。もちろん廊下にいた人全員がこっちを見てくる。
・・・お兄ちゃんはいっぱい、い〜っぱい言いたいことがあるんだけど聞いてくれる?まず第一に―――
「慶太・・・」
「・・・聞いてくれ陽菜。これには色々と訂正個所が・・・」
「一つだけ真面目に答えて・・・」
陽菜さんの雰囲気がマジだ。それにかわいらしいポーチに手を入れている。携帯でも鳴っているのか?
「・・・その子のこと・・・愛してるの?」
なんだろう?無性にポーチの中身が気になるのは気のせいなのか?
「・・・答えて・・・」
「・・・好きだけど、それは妹としてです。決して異性としての意味ではありません」
こ、これでどうでしょうか?
「・・・分かった。慶太を信じる事にするわ」
そこでようやく陽菜が笑ってくれた。いや、今までも微笑んではいたけど・・・
「慶太さん・・・私のこと大好きだって言ってたのに・・・嘘だったんですか・・・!?」
え〜!?やっと問題解決したと思ったのに、今度は別の問題が勃発!?
「ち、違うよ恭子ちゃん!恭子ちゃんの事を大好きって言ったのは本心だよ!」
「慶太!本当にそんなこと言ったの!?恭子ちゃんに大好きって言ったの!?」
「だ、だからそれは妹として大好きって言ったんであって・・・」
(なにあそこ修羅場〜?)
(うっそ〜片方の女の子まだ子供じゃない?)
もう嫌だ・・・誰か助けてよ・・・ <> サトリビト<>sage<>2010/05/05(水) 12:28:45 ID:HLEr4wWp<> 周りの様子に気付いたのか、陽菜が冷静になった。
「・・・とにかく部屋に戻るわよ・・・話はそこでするから」
陽菜の口調が若干変わっている。そうとう怒っている証拠だ。
「・・・私も慶太さんに真相を確かめたいです・・」
(私のこと大好きだって言ったくせに!!)
あれ?何気に恭子ちゃんの方も相当お怒りの様だぞ?
二人に連行され僕は部屋まで強制送還された。
「なんかさっきうるさかった・・・」
大和が言葉を切った。みんなも話し声を止めた。。
なぜなら穏やかキャラの陽菜と恭子ちゃんの二人のオーラが禍々しいものになっていたからだ。
「みんなちょっと聞いてくれる?」
な、何を言うおつもりですか陽菜様?
「コイツがさ〜・・・恭子ちゃんに大好きだって告白したらしいんだけど・・・どう思う?」
「「「「「何っー!!」」」」」
「ち、違うって!!だから何度も言うけどあくまで・・・」
「違わないもんっ!!私のこと電話で大好きだって言ったもんっ!!」
お、落ち着け早川慶太!!ひとまずジュースを飲むんだ!!
「おい慶太・・・テメェ13の子に・・っ!!」
「ちょ、聞いてよ姉ちゃん!!」
「彼女がいるのに・・・」
「岡田は仮の彼じ・・・いや、なんでもないです」
みんな言いたい放題だ。確かにあの電話は僕に非が120%あったけど、だからって・・・
場の全員が烈火のごとく怒り始めたとき、ぽつりと恭子ちゃんがつぶやいた。
「・・・私と彼女さんと・・・どっちが好きなんですか?」
その言葉に静寂が訪れた。みんなの視線が僕に集まる。
(慶太、浮気したことは水に流してあげる・・・だからはっきりと私の名前を呼びなさい!!)
(慶太さん、私信じていますからっ!!)
主に岡田と恭子ちゃんの声が聴こえる。
答えられるわけがない。となれば第3の答え。
「・・・俺が好きなのは陽菜だ」
言ってしまった。もっとムードのある場所で言いたかったのに、こんな場面で言ってしまった。
「え・・・?」
恭子ちゃんの顔が絶望に染まる。でも妹として好きなのは変わらないからね。
「・・・っ!」
岡田が苦虫を噛んだような顔をしている。やっぱり僕なんかよりもっといい奴を選べよ。
「・・・認めねぇ」
誰もが静まる中、姉ちゃんがそう言った。
「姉として認められねェな!!慶太にふさわしい女は愛情深い人、つまりウチ以外はいないんだからな!!」
何言ってるんだ姉ちゃん!?告白に聞こえるぞ!?
「何言ってるの!?早川の・・・ううん、慶太の彼女は私なんだから!!私が一番ふさわしいんだから!!」
お・・・おい?お前まで何言ってるんだ?
「黙って聞いてれば・・・慶太さんが一番好きなのは私なんです!!私にだけ大好きって言ってくれるんです!!」
アレ?ミンナノヨウスガオカシイゾ? <> サトリビト<>sage<>2010/05/05(水) 12:29:18 ID:HLEr4wWp<> 「慶太は秋祭りの時にウチのこと大好きだって言ったんだぞ!!」
「私だって占いで12月になったら慶太が私のこと好きになるって言われたんだから!!」
「何度も言わせないでください!!慶太さんは電話で私のこと大好きだって言ってくれたんです!!」
岡田さんの意見だけが相当弱い。それに姉ちゃんも恭子ちゃんも都合のいい部分だけ抜き出さないで。
混沌とした修羅場が続く中、一つの笑い声が聞こえてきた。
「アハハハハハハハッ!!!」
陽菜だ。一体何がおもしろいのかものすごい笑い声だ。
「みんな醜いな〜。慶太がさっき言ったでしょ?好きなのは私だって。あなたたちが喧嘩したところで何の意味もないのよ?」
陽菜の目が今まで見たこともないくらい濁りきっていた。
「それにこの際だからはっきり言うわね?まずは・・・祥姉ぇ」
声をかけられただけだというのに、姉ちゃんが怯え始めた。姉ちゃんが怯えるなんて初めてだ。
「慶太はあんたに同情して好きだって言ったのが分からないの?実の姉のくせして弟を愛しているなんて・・・気持ち悪すぎ」
おかしい。陽菜がおかしい。まるで別人だ。
対する姉ちゃんはいつものように言い返さない。ただ下を向いて何かをこらえているようだ。まさか泣いているのか?
「恭子ちゃんは一体何様のつもりなの?すぐ男の家に転がり込んだりして・・・飢えてんの?」
「ち、違います!!それは慶太さんが―――」
「飢えるの意味分かるの?その年で分かるなんて先が思いやられるわね。言っとくけどビッチは嫌われるわよ?」
陽菜の波状攻撃に恭子ちゃんが泣き始めた。だが陽菜は口撃の手をやめない。
「だいたい他人のくせに妹とか・・・そういうのがマジで男受けすると思ってんの?頭悪いんじゃないの?」
恭子ちゃんの顔が真っ青になっている。心の中で壊れた人形のように、ただ僕の名前だけを呼びながら。
「最後は・・・結衣ちゃん」
「・・・なによ」
岡田は口撃に備えて構えている。僕はただただ見守るしかない。
「正直、言う事は何もないの。結衣ちゃんはかわいいし、みんなの人気者だし、すっごい憧れてるよ?ただね・・・」
陽菜が言葉を切った。多分ここから攻撃に移るのだろう。
「私、結衣ちゃんのこと大っ嫌いっっ!!私だけの慶太を奪おうとするなんて!!顔見るだけでムカつくっ!!」
「は、は〜!?意味分かんないんですけど!?だいたい慶太はあなただけの人じゃないでしょ!!」
「私だけの物よ!!私だけが慶太を理解できるし、慶太だけが私を理解してくれるんだからっっ!!」
「物って・・・慶太は人間でしょ!?それを物扱いするなんて、あなたこそ何様なの!?」
「物だよ!!慶太は人間であって私の所有物でもあるんだから!!だから勝手に人のもの盗もうとしないでよっっ!!」
僕の意思とは無関係に話が飛び交っている。なんだかものすごく怖い。
「ぬ、盗むってあなたね!!大体慶太の彼女はわ・・・ううん、口で言っても分らないなら見せてあげる」
そう言って岡田は僕に近寄ってきた。その行為に対し怪訝な顔をする陽菜。
「ねぇ慶太、私と慶太は彼氏彼女の関係だよね?なら・・・」
言い終わらないうちに僕の口が何かでふさがれた。
なんだろう?今までに感じたことのない温かな感触だ。ただ周りの声がうるさく聞(聴)こえた。
「どうだった?もしかして慶太のファーストキスだった?」
そっか、感触の正体は岡田の唇だったのか。どうりで温かかったわけだ。
そんなことを漠然と考えてしまった。
「アハ、アハハハハッッ!!本当に・・・結衣ちゃんは・・・ムカつくなっっ!!」
生まれて初めて陽菜の激昂した姿を見た気がする。
陽菜はいつも持ち歩いていたポーチに手を入れてあるものを出した。
・・・刃渡り10cmはあろうかというナイフだ。
「ぶっ殺してやるっっ!!」
そのままいきり立った陽菜が岡田に突進した。
<> サトリビト<>sage<>2010/05/05(水) 12:30:07 ID:HLEr4wWp<> 「って、うおぉぉぉぉぉーーーー!!」
そんな叫び声とともに飛び起きた。
なぜか目の前には布団がある。それにどうやらここは僕の部屋のようだ。
あれ?さっきまでカラオケボックスにいたはずじゃあ・・・?
とりあえず携帯を見る。そこには今日が何の変哲もない平日だという事が記されていた。
どうやら今までのことは全部夢だったらしい。
よかった。本当によかった。でもなんてリアルな・・・
「ん〜・・・どうしたのぉ〜、お兄ちゃん?」
隣で眠っていた恭子ちゃんが目を覚ました。
「あ、起しちゃった?ごめんね・・・ってあれ?なんで恭子ちゃんが俺のベッドに?」
「だ、だって・・・お兄ちゃんと一緒に寝るの気持ちいいから///」
そういって僕に抱きついてくる恭子ちゃん。
あれ?なんだか夢のときもこんなに積極的だったような気がするぞ?
「・・・歯、くいしばれや慶太・・・」
あ、あれ?まさかこれも夢なの?
それを確かめるために僕は姉ちゃんに振り返る。そして・・・
「今日はお美しいですよ、お姉さま☆」
「ほぅ・・・いつもは美しくないと?」
フフ、ものの見事に一字言い間違えたみたいだ。
バチーーーーーン!!!!
どうやらこれは夢ではないらしい。そのことが分かっただけよかったよかった。
「お兄ちゃんになんてことするんですか!?」
「これは愚弟に対する制裁だ。ってかオメーも何の気もなしに慶太のベッドで寝てんじゃねーよ!!」
「だって私とお兄ちゃんは兄妹だもん!一緒に寝ててもいいじゃないですか!」
「いいわけあるか!来るたびに毎回慶太のベッドに忍び込みやがって!」
「なんでそんなに怒るんですか!?もしかして・・・あなたもお兄ちゃんと一緒に寝たいとか?」
「そ、そんなわけあるかっっ!!」
姉ちゃんと恭子ちゃんが僕をはさんで討論を繰り広げている中、ふと夢であった気になる点を思い出した。
カラオケのときは聴こえるはずの声が聴こえなかった。
冷静になって考えると、最近サトリの能力が不安定になっている気がする。
そういえば以前は強い感情にしか反応しなかったんじゃないのか?
でも最近は以前は聴こえなかったはずの小さい声もたまに聴こえるぞ?
一度考えだすと疑問がたくさん湧いてきた。
「しかたないな・・・」
僕は昔サトリの研究を手伝わされた教授の元に行くことを決めた。




「え?ち、ちょっと待て!し、しかたないってお前!?」
(え?嘘!?慶太がウチと一緒に・・・一緒に寝るって!?)
「お、お兄ちゃん!?本気なの!?」
(嫌だぁ!!そんなの絶対にダメ!!お兄ちゃんと一緒に寝るのは私だけの特権なんだから!!)
・・・はぁ・・・もう好きにしてくれ・・・
<> サトリビト<>sage<>2010/05/05(水) 12:33:24 ID:HLEr4wWp<> 以上投下終了です。
今回はいろんな意味でひどい回になってしまいました。すいません。。。
それと最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/05(水) 13:05:24 ID:U+Hav7Yt<> 慶太君、カラオケで、C&AのWAIKと、氷室の永遠&ダイアモンドを歌う作業に戻るんだ…。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/05(水) 13:23:59 ID:jsaR20qc<> GJです <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/05(水) 13:28:17 ID:TrSb6apl<> GJ!

夢オチか…
恭子ちゃんカワイイなぁ…
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/05(水) 14:25:07 ID:b/DCbd5s<> GJ
陽菜終わったなと思ったが別にそんな事は無かったぜ
でも夢オチじゃない可能性を模索している俺がいる <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/05(水) 15:29:27 ID:iAZBDblr<> GJ!
恭子ちゃん可愛いな
そして陽菜さんが遂にはっちゃけたw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/05(水) 15:44:56 ID:EPX3Q0Fr<> GJ


慶太のキャラもう最高!!

<> 名無しさん@ピンキー<>かなやわ<>2010/05/05(水) 16:15:44 ID:UjOB7RqW<> そういえば昔々8話まで出来てるといったから遂に新境地に至ったんですね。頑張って下さいGj  <> 悪意と好意と敵意
◆f7vqmWFAqQ <>sage<>2010/05/05(水) 16:52:20 ID:3zvpYvsf<> 5話投下します。 <> 悪意と好意と敵意 ◆f7vqmWFAqQ <>sage<>2010/05/05(水) 16:52:51 ID:3zvpYvsf<> 教室に帰還すると、1時間目が終わって休み時間になっていた。顔の皮脂と性格がねちっこいハゲヤマ(本名忘れた)はもう居なかった。
隣席の片山にノートを借りようと声を掛けたが「あ?物理?嫌いだからノート取って無い。」とか言いやがった。俺はお前が嫌いになりそう。
こうなったら理系脳の寂に昼飯食う時にでも教えてもらうか。こういう時に活用するのが人脈(腐れ縁)なのである。
次は…小遊鳥(たかなし)先生の現代文か。楽だな。とか考えて机に教科書ノート文房具の3点セットを用意した。


待望の昼休みが到来した。ポケットに財布の存在を確認してから物理の3点セットを手に持ち購買に向かう。
焼きそばパンとクリームパンと濃厚きなこオーレDXを買って寂のいる1組に足を運ぶ。
1組の教室に入るとやはり噂の通り魔の話題で持ち切りだった。皆好きだねぇ。お、いた、頼れる理系脳こと寂が。
寂もこちらに気付いたようでパタパタと弁当を持ってこちらへ接近してくる。
「おう。購買行って遅れた」
「いいわ。それよりどこで食べよっか?」
「屋上とか。」
「朝、雨降ってたわよ?」
「いま晴れてるからベンチも乾いてるだろ。」
「まぁ、いいけど。」
「んじゃ、早く行こ!」
パタパタと小動物みたいに小走りで走る寂。朝方とはえらい違いだな。まぁ安心したけど。


屋上に着いた。けれど太陽は休み開けで仕事をさぼっていたかった様でベンチはあまり乾いて無かった。
ポケットからハンカチを出してベンチの水滴を拭き取る。綾小路ちゃんの涙で学習してちゃんと持ってきたぜ!偉いな俺!自画自賛してみた。
「ゆーちゃんにしては上出来ね。」
寂にも誉められたが何か心に刺さる物があるね。うん。
「んじゃ食うか。」
「うん。」
俺は焼きそばパンの封を切り、寂も弁当を開けて箸を伸ばす。そういえばもう一つの目的も言っとくか。
「あーそうそう。実はさ、物理教えて欲しいんだ。」
「え?なんで?ゆーちゃん物理苦手じゃないでしょ?」
「いや、一時間目の物理すっぽかした。」
「え?なんで?」
「あーいや、通り魔に刺された1年の女子が…その…知り合いでさ。お見舞いにいった。まあハゲチャビンの授業サボれたしラッ…キー…」
話してる途中で寂の顔がヤバいように見えた。ん?なんで?
「ねぇ…その子…綾小路美月って名前?」
目が怖い!ハッ!こいつは覚醒モードレベル1!ちなみに最大レベルは5だ。
「ん?ああ。寂も知ってるのか。なんか綾小路グループの令嬢らしいから知ってて当然か。朝までその事知らなかった俺とは違うな!いわゆる人とは違うんです!だよな!」
意味分からん3流以下のジョークで場を和ませようとしたが失敗した。顔怖いよ!特に目!お前の目はメデューサの目か!
作戦その2!濃厚きなこオーレDXを口にして落ち着こう作戦!チュー…なんてこった…隣が怖すぎて味がしねぇ…。
ふむ、人は耐えがたい恐怖に直面すると一時的に味覚が消えるという結論がでた。今度学会に発表しよう(アメリカの学者風)
支離滅裂な思考が頭で回る。更に対俺用マシンガントーカーJYAKUが質問を撃ってくる
「でさ、通り魔についてなんか話してた?」
「いや、なにも。」
ナンデソンナコトキクノ?いや、実は寂は人知れず戦う正義の味方なんだ。スパイダーマンなんだ。いやスパイダーウーメンか。
「そう、ならいいの」
と言うと寂は覚醒モードを終えて再び箸を動かす。あー怖かった。寿命縮んだかと思った。 <> 悪意と好意と敵意
◆f7vqmWFAqQ <>sage<>2010/05/05(水) 16:54:05 ID:3zvpYvsf<> よし、覚醒モードと俺と寂の食事がが終わったから再度交渉してみよう。
「で、物理の件なんだけど…」
「もう時間ないから、放課後私の部屋に来ない?」
なんだってー!!
「今日はお父さんもお母さんも居ないんだ。だから遅くまで教えれるよ。」
ナンダッテー!!これはあれ?いっちゃてイインデスカ?ムハー!!!
「じゃあさ…ついでに保健体育を…」ドゴッ!!おゥフ!!!!!腹を思いっきり殴られた。こうかはばつぐんだ
「あ、あああああ…アンタね!!へ…へへへへ…変態!!」反応が面白い。いやー寂をからかうのは楽しいなぁ。
「いや、マジになんな。」
「馬鹿!!!!」ゾゴッ!脛を蹴られた!ひぎゅん!!
「あ、ご…ごめん!」しゃがみこんだ俺を介抱しようとする。
「おー、大丈夫大丈夫。」2人同時に立ち上がる。風が吹き抜けたのはその時だった。
寂のスカートが重力に逆らった。水色と白のボーダー柄の布が見えた。いや、これは不可抗力なんだ!とか思いながら凝視した。
全国の高校生の男子諸君に女の子に来ていて欲しいパンツと聞かれると純白の「白」、情熱的な「赤」、扇情的な「黒」、可愛らしい「ピンク」、一部に人気の「ウサちゃんパンツ」…
だがッ!今ッ!俺がッ!見ているッ!パンツはッ!その中でも上位に君臨するであろうッ!「縞パン」だアアアアアアッ!それもッ!水色とッ!白のッ!カラーリングッ!
見事だ。ムチムチな下半身と縞パンのハーモニー。割れ目もくっきり見えている。すばらしい。これは100点…いや、200!300!400!1000!!ば…俺のスカウターが…ドゴッ!!!!!
うぎゃあああああああああああああああああ!!頬をグーで殴られた。痛ええええええええええええ!!ゲホッ…ゲホッ!!
寂を見上げると泣きそうな目で顔を赤くしてから自分の弁当箱を回収して走り去った。
罪悪感はあったけど、それよりも目の満腹感が上回った。不謹慎ですね。神様ありがとう。

けれどドアの付近に堕ちていた水滴を見て目の満腹感より罪悪感が勝ってしまった。寂を泣かせてしまったらしい。はぁ、自己嫌悪。 <> 悪意と好意と敵意
◆f7vqmWFAqQ <>sage<>2010/05/05(水) 16:54:37 ID:3zvpYvsf<> 私は屋上のドアをぶち破ると近くの女子トイレに駆け込んだ。好きな人を殴ってしまったから逃げた、それもある。けどもう一つ理由があった。
個室に入ってすぐに太ももとふくらはぎを経由して靴下にまでお汁を垂れているびしょびしょの淫乱おまんこを触る。パンツ越しからでも酷く濡れているのが手に伝わり自己嫌悪を催した。
「ばれちゃったかな。私がパンツ見られておまんこ汁垂らした事。びしょびしょにしてたこと。」
好きな人にパンツを見られて下半身が大洪水なんて…我ながら情けない。
パンツをずらして便器に座る。学校でオナニーするなんて恥ずかしいけど、仕方ない。このまま授業に行っても集中出来ないもの。
ハンカチを噛んでいつものように右手の中指を入れてみる。けれど物足りなかった。
イケない…。グチャグチャとゆっくり丁寧にいやらしくねっとり掻きまわすけど快感の波が来ない。
だから私は初めて薬指をおまんこに挿入した。すると挿れた瞬間に快感のビッグウェーブが押し寄せた。
「ひぐッ!!」声が漏れる。凄く気持ちよかった。誰かにバレるかもしれないスリルと初めての2本指での自慰行為。けど、淫乱のど変態の私は更に快感を求めた。
ふとウォシュレットのコントローラーが視界に入った。私は空いていた左手で操作してみた。そして私は威力を最大に、水温を38度にして放水のボタンを押す。
肛門にウォシュレットのぬるま湯が届き、快感の波が暴走する。
「ングッ!!はう!!んああああ!!!!!!」
そしてその快感の大波は私の中の堤防を決壊させて絶頂に達する。絶頂に達した後、私は蓋にもたれてだらしない体勢になる。そして
ジョボボボボ…。失禁してしまった。誰にも見られてないのに恥ずかしかった。けど生きてきた中で一番気持ち良いおしっこだと感じた。
キーンコーンカーンコーン…しまった!予鈴が鳴ってしまった。あと5分で授業が始まってしまう!
立ち上がろうとしたら快感の余韻の所為で膝が笑ってしまいうまく立ち上がれない。うぅ…早く行かないと…。私は快感で疲れ果てた体に鞭を打って歩き出した。


5時間目の数学の授業には何とか間に合った。けれど、余程しんどそうに見えたのか井上先生から「天野さん…大丈夫〜?保健室で休む〜?」と提案されたのでお言葉に甘える事にして保健室のベットに横たわっていた。
ベットに横たわっている間、考え事をしていた。
ゴキブリ(綾小路美月)がゆーちゃんに接近した事。
ゴキブリ(綾小路美月)に今までの犯行がバレている事。
ゆーちゃんが一時間目の授業をすっぽかしてゴキブリ(綾小路美月)に会いに行ったこと。
そして今日の放課後、ゆーちゃんと私が2人っきりになれる事。
ゆーちゃん、物理と保健体育を教えて欲しかったんだよね?うぅん、私分かってるよ。保健体育が一番したいよね?私も初めてだけど…ゆーちゃんになら良いよ。
そして私はベットの中でしばしの眠りにつくことにした。 <> 悪意と好意と敵意
◆f7vqmWFAqQ <>sage<>2010/05/05(水) 16:55:02 ID:3zvpYvsf<> 5話終了。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/05(水) 17:55:01 ID:iAZBDblr<> gj! 水色と白の縞パンいいよな。
個人的にはピンクと白も好きだ <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/05/05(水) 19:17:35 ID:cXbinkFb<> 好かれてる 中心 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/05(水) 20:11:50 ID:rw7iQngz<> gj!
omosirokaltutaze
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/05(水) 21:11:23 ID:NkRMhDKc<> 早く続きが見たい…
寝よ <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/05/05(水) 22:22:36 ID:cXbinkFb<> 超信じられてる <> 名無しさん@ピンキー<>なされ<>2010/05/06(木) 07:26:59 ID:XY3f6zkd<> gj次も期待です。頑張って下さいね。この作品応援してますので。 <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/05/06(木) 11:13:08 ID:N67gqxjU<> GJ!!
<> 名無しさん@ピンキー<>さなや<>2010/05/06(木) 15:48:05 ID:XY3f6zkd<> 最近ここ2週間で良作が相次いで連載されていますが、これまで投稿の中心だった連載作家さん方(特にポケモン黒や題名のない長編12,14,15の執筆者)がいないのは寂しいですな。また何時でもいいんで最新話出来たなら更新して下さいね   <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/06(木) 17:29:41 ID:EzonXnB5<> だいぶ前にも書いた気がするが、俺はTomorrowと変歴伝をいつまでも待つ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/06(木) 17:30:27 ID:6u6K74EW<> >>712
テンプレ見てから書き込めクズ <> 名無しさん@ピンキー<><>2010/05/06(木) 18:35:36 ID:/0OfmoTq<> 隣の彩さん まだかな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/06(木) 18:35:41 ID:kjBlyC22<> せっかく書いても返ってくるのは素っ気ないGJだけだからな
そりゃあ作者様も離れていくわ・・・ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/06(木) 18:36:26 ID:kc/UaL3F<> まだ居たのかアンタ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/06(木) 19:09:30 ID:TX2tM9tX<> こいつ完全に作者じゃん
そんなに感想書いてほしければ、もっと面白いのを書いてみろよ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/06(木) 19:53:44 ID:9ys3cwtj<> >>716
そうゆう誤解を招く発言は控えなよ

>>718
こっちも作者かどうかなんてわからないのに誤解を招く発言は控えて <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/06(木) 20:10:30 ID:kc/UaL3F<> 作者じゃなくて、前居た面倒くさい子だろ
>>586-596辺り見れば分かる <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/06(木) 20:15:30 ID:+rOTw0UO<> 要するにこのスレを潰したくて仕方ない人、と <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/06(木) 20:46:37 ID:hIdrJrFR<> 当スレでは来るもの拒まず去る者監禁となっております <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/06(木) 20:57:14 ID:hIdrJrFR<> 自分でレスしておいて何だが
間違えてヤンデレスレをクリックしてすぐ閉じようとしたら閉じれなくてどうたらこうたらなる電波が届いた <>
◆ci6GRnf0Mo <>sage<>2010/05/06(木) 21:09:08 ID:4zDbBWIK<> 空気を読まずに、群青が染まる 第八話を投稿します。 <> 群青が染まる 08 ◆ci6GRnf0Mo <>sage<>2010/05/06(木) 21:10:20 ID:4zDbBWIK<>
 ………
 ……
 …

「神々の試練はとても厳しいものでした」
 後半刻ほどもすれば昼時のためか、少しだけ浮ついた空気と、服を絞れば汗が
滲みでるぐらいの日差しの中で、指先の汗が羊皮紙を湿らせても、一枚また一枚
と丁寧に捲っていく。
「とある森にある呪われた人食い屋敷は、人を森に捕らえ惑わせ、そしてその精
神を食べてしまうという恐ろしいものでした。精神の抜けた肉体は屋敷の使用人
としてこき使われるのです」
 ゆだった身体に、風が胸を上から下に撫で下ろすように通り抜けていくのを、
心地よいと思いながら、いつまで経っても水を浴びたぐらい濡れて湿っている背
中に、カビでも生えるのではないかと考えても、そのままにしておくしか他にな
かった。
「“最果ての森”と呼ばれたその森の中心に居座り、屋敷に取り憑かれた男は最
初、素知らぬ顔をして勇者を出迎えました、が、それは罠でした。なんと、勇者
の食事に毒を盛ったのです!」
 口々に「ひきょうだ!」「せいせいどうどうと戦え!」と容赦のない子供達に、
なんだか自分が言われているような気持ちにさせられる。
「身体が痺れて動けなくなった勇者に、男が使用人達を次々と襲い掛らせます。
その中にはそれぞれの手に剣を、斧を槍を握り締めた全身が鉄で出来た中身を持
たない鎧達も混ざっていました」
 そこで一度、海が近いせいで素肌にからみつく若干の塩分を含んだ湿気を飲み
込むように、長い文の読み疲れに水分を求めた喉を我慢させようと深く息を吸い、
二つに分けて吐いた。

「多勢に無勢、勇者はもはやこれまでというところまで追い詰められてしまいま
した……」
「ねぇ、たぜいにぶぜいってなぁに?」
「しっ、今いいところなんだから静かにしろよ!」
 その小さな疑問に、難しい言葉を使いすぎだよ、と内心呟きながら、答える間
もなく続きを待つ子供達のために、若干の痛みを伴い出した口をまた開く。
「追い討ちをかけるように携帯袋にいたはずの猫が、心を許しかけていた大切な
猫が、勇者を置いて一人で逃げてしまっていたのです。これに勇者は、その肉体
の痛みの比にならないぐらい心が打ちのめされてしまいました」

「もうだめか、と勇者はその立とうとしたはずの膝を折りました、しかし!」

「そんな諦めかけていた、絶体絶命の勇者には心強い味方がいたのです。なんと、
逃げたはずの小さな猫が魔法の薬を持ってきたのです! そして猫は言いました
『勇者様! この薬をある老人から授かりました!』、と」
 どこかで聞いた事あるような、見たことあるような、
<> 群青が染まる 08
◆ci6GRnf0Mo <>sage<>2010/05/06(木) 21:11:22 ID:4zDbBWIK<>
「勇者はそれに涙を頬に走らせながら、その強い想いを胸に渾身の力を振り絞っ
て、人々の魂を抜き取る悪い男に投げつけました。すると、途端に正義の心を取
り戻した男が、勇者にこう言いました『これでやっと父と母の下へ謝りに逝ける』、と」
 そんな話に何度か首を捻っても、
「悪い男の両親は、男を助けるための薬を作る途中で、自らの命が絶たれても、
その魂をその想いを受け継ぐ時を待っていたのです。そして、猫が持ってきた薬
こそ、その想いの結晶だったのでした!」
 一向に、漂う雲を掴めないのと同じように、ことごとくすり抜けていく。
「勇者はその全身に痣をつけ、疲れ果て、挙句の果てに息も絶えかけなのに、そ
れでも尚、役割だけ押し付けられ、誰も助けてはくれなかった自分という存在の
ためだけに頑張った猫を、大切に、そして強く優しくその胸に抱き、『ありがと
う、これからは私が君を守ってみせる……』、と言ったのです。こうして、誰か
の想いを知ることにより勇者は、また一つ強くなったのでした」

 区切りの良い頃に、何度読み返してもよく作られているな、と感嘆の念を打ち
ながら、この勇者が“彼女”だったのなら間違いなく、全てを破壊しきっていた
ことは想像に容易かった。
 だからこそ子供用に作られたであろうこの話にある種、拭いきれない違和感を
持ったところで、高らかに響き渡った鐘の音に、座ったまま仰ぐ形で手を天高く
伸ばし倒れこむのではないかというほどに背筋を反らせた。
 ……実際にはほとんど反ることができなかったのだけれど。

 ………
 ……
 …

 いつもより悲しげな空間を見ないようにただ呆然と、そのどちらかといえば村
と呼べる町は、宵闇にそこ一帯だけ照らし出されていて、周囲から切り取られ浮
いていたが、
「ついてるで、丁度いい時間やないか!」
 すりがねの、和太鼓の、篠笛の祭囃子の音がそれらの違和感を和らげている、
陽気さを醸し出す町を見ながら、荷台の横木にもたれかかる。
 耳を通り抜けていく不自然な騒がしさも、その源を視界に収めながらも一切頭
に入ってこず、より不自然な荷車の暖かみの消え失せた空間を横目に、さらに深
くもたれかかった。
 ……たったあれだけのことなのに、なぜ近づけたと思ったんだろうか。
 いつからそんなに空いていたのかと考えて、ついた瞬間、いやつく前から既に
その姿を闇に潜めて消えていた彼女の仕草を何度も想い返す。
 そんな誰もいるはずのなく、所在無げに戸惑っている空間に手を伸ばしかけて、
不意に似たような事が前になかっただろうか、という思考が一寸過ぎった。
「トモヤはん、そんなところで呆けてないで、行くで!」
 まるで思い返す自分を邪魔するかのように、肩に置かれた手に、声に、中へと
入ることができず町の入口近くに停車された馬車に、到着したことを否が応でも
認識させられる。
 手を振りながら喜び急ぐハルに従って頭を不必要に振りながら降りて、
<> 群青が染まる 08
◆ci6GRnf0Mo <>sage<>2010/05/06(木) 21:12:28 ID:4zDbBWIK<>
 やっと気付いた、祭りが行われているという事実に、
「……!」
 辺り一面に垂れ下がっている灯篭に、賑やかな人の騒がしさに、そしてお腹が
空腹感を訴えてくるほど香ってくるタレを焦がす匂いに、焼けた肉の穀物の香り
に反射的に気持ちが上向くと共に口内からあふれ出しそうなほどの涎にも、今何
が起こっているのかと何度か瞼を瞬かせる。
「何してるや? 置いて行くでー」
 幼い頃より空想に描いた祭りに参加できるという嬉しさが瞬時に胸一杯に広が
っても、それでもどこか空虚な、抑えようのない“逃げたさ”を感じたのはどう
してなのだろうか。
「い、今、行くよ!」
 居心地の悪さと、ほんの少しだけの罪悪感を抱えたまま、見失う事のない自分
より一回り大きく、お腹を空かせ今か今かと待ちぼうけした後の少年のように先
を歩く彼の背中を追いかけた。
 ……誰かと一緒にいる嬉しさと、彼女と一緒にいれない寂しさを抱えて。

 そこには、怒声のようにも聞こえるほどの掛け声がひしめきながら立ち並ぶ出
店群、それに子供達がこれもあれもと手にとっては物珍しそうに、また手に取っ
ては小銭を数えたり、座り込んで動かない子供に参ったように頭を抱えた親達も、
次の瞬間には一緒に笑ってたり、この世の楽園とさえ勘違いしそうなほどの光景
があった。
 それは憧れ続けていた祭りで、到底届くことのなかった故郷のあの町よりかは
規模は小さかったが、それでも確かに祭りだった。
「あかん、また負けてもうた! おっさん、もう一回や! 次こそ絶対に勝った
るわ!」
 だから、子供達に混ざって一緒に笑いながら遊んでいる彼を幾分か離れた位置
で眺めながら、祝福するかように通りすぎた雲のない空に見える星達の中で、小
雨が降った後みたいに、頬を拭う事もなく濡らしていた。
「ほら、トモヤはんもやろうや! 今日はとことん暴れまくったるわ!」
 不意に気付けば、旧来からの知り合いのように手招きをしているハルに、思わ
ず嬉しくなって駆け足で近づいていく。
 だからなのだろう、前を全く見ていなかった事で、
「きゃっ!」
「っ!」
 急に現れた人影に、お互いの身体が反発して腰をしたたかに容赦なく打ち付け
るほどに、ぶつかり合ってしまった。
「ご、ごめ……ん……」
 反射的に謝ろうとして、未だに立ち上がろうとせずに倒れたまま、零れた杖を
取ろうと土を、地面を手で何度も擦っている焦点の全く定まっていない少女に、
目が見えてないのではと、居たたまれなくなる。
 同時に、側にあった杖を拾い少女に握らせ有無もなく力に任せて立ち上がらせた。
「あ、あの、ありがとうございます……」
 自分も痛いのだから当然、汗を額に満遍なく湿らせた少女の痛いだろう腰を何
度もさすりながら今にも消え入りそうに感謝するその言葉に、ぶつかってしまっ
た事への罪悪感が一層募っていく。
<> 群青が染まる 08
◆ci6GRnf0Mo <>sage<>2010/05/06(木) 21:13:36 ID:4zDbBWIK<>
「ご、ごめんね!! ま、前を、見てなく、その、と、とりあえず、ごめん!!」
「い、いえ! わ、私は大丈夫ですから、あの、丈夫な身体ですし、その……」
 言葉の終わりに近づくほど聞き取れない大きさになっていく、杖を胸の前に抱
いたまま、何かを探すように見えないだろう視界を下方に落として左右に振りな
がら指同士を擦り合わせている少女
 ふと背筋をはって行く蛇に睨まれたかのような寒気を感じた時に丁度聞こえた、
「トモヤはん! 遅い、ん? なにをやってるんや?」
 ハルの急かす声に、今にも破けそうなほどの麻の服を着た少女に見入ってしま
った事にやっと気付いて、慌てて視線を逸らす。
「あ、トモヤ、さんって言うんですね!! わ、私は、「あー、贄やないか、」」
「に、え……?」
 その突然の声に、思わずハルを凝視するままに出したオウム返しの声に、少女
は身体を竦ませた。
「そうやで、豊穣を祝う生贄に選ばれた孤児や」
「それは、どういう、!!」
 問いただそうと声を張り上げた瞬間、少女が追い詰められた鼠のように肩は一
度大きく震えさせ、定まらなかった視線を固定させる。
 見えない目を上げた顔の先には、きっと少女を追ってきたであろう人達が怒声
をあげながら走ってきていた、その手には鍬を鎌を、斧を抱えている。
 それに反応してか、慌てて逃げだそうとして転んだ少女の手を無意識に、その
到底丈夫とは思えない華奢な身体を無理に、この賑わいの中で独りだけ世界から
取り残された少女を助けたくて、幼い頃の自分を助けようと手を引いた。
「あっ……」
 成すがままに引っ張られるまま何も言わずついてくる彼女に悪いと思いながら、
それでも縦横無尽に、聞こえてくる罵声や悲鳴に耳もくれずに、人波を掻き分け
て駆けていく。
 足が地面を踏むたびに合わせて、所々痛んで跳ねている、後ろで結った少女の
髪は風にたなびいて馬の尻尾ように揺れていた。
 そんな少女が転ばないように、半ば抱きしめるような形で走り続ける。

「はぁ、はぁ……ぜぇ、振り、切った……?」
 どこをどう走ったのか、どこまで来たのかわからない。
 一つだけわかるのは今いるのは境内だということだけ、随分奥地にあるためか
木々に囲われた社には、豊作祝と書かれ、その舌を軽快に伸ばした蛙の像がしめ
縄と共に奉じられていた。
「あれ、ハルは……?」
 大分落ち着いてきた息に、見入っていたその像から視線を外し、知るわけがな
いだろう少女に移しても、
「も、もう走れません……」
 肩で深い呼吸を繰り返しながら、どこかで落としたのだろう、杖も持たずにた
だ座り込んでいた。
「あ、あの、はぁ、ありがとう、はぁ、ござい、ます」
 それに、何と答えていいのかわからなくなる。
 ハルが言ったのは本当のことなのか、助けてよかったのか、聞きたいことはい
くらでもあった、あったのだけれど、どうしても聞くことは躊躇われた。
 ……彼女のように力を持たない自分に何が出来る? この少女をどうしたいんだ?
 今更ながら少女に自己を投影していたことを恥じながら、ならばどうしたら良
かったんだ、という疑問は一向に答えがでなかった。
<> 名無しさん@ピンキー<><>2010/05/06(木) 21:14:17 ID:xVYkfoie<> 解 持つ
<> 群青が染まる 08
◆ci6GRnf0Mo <>sage<>2010/05/06(木) 21:14:45 ID:4zDbBWIK<>
「も、もう大丈夫です、あ、あれ、な、ない……」
「あー、たぶん失くしたの、かなぁ……」
 やっと気付いたのか、杖がないことに狼狽える少女に向けた言葉が最後、お互
いに何もいえなくなってしまった。
 辺りが静まるとより大きく聞こえてくる賑やかな祭囃子のその音が、擦り傷だ
らけの少女の手の平が、いつもより心にささくれをもたらした。
「あの、」
 何分にも満たないほどのわずかな時間だが気落ちしていた少女が、不意に口を
開いた。
「本当にありがとうございました」
「い、いや、こんな事になっちゃって……」
 見えてないだろうけれど手を左右に振りながら、何度も感謝して頭を下げる少
女を放っておくことはやっぱり出来ないな、と思えてくる。
「どうして、追われていたの?」
 その質問に強張った顔で少女が口を開こうとした瞬間、
「いたぞー!!」
 聞こえた声に伸ばしかけた手は、未だ疲労し切って肩を上下に動かす少女を掴
んで走る事は出来ず、どうしようもなく宙ぶらりんに浮かせたまま固まった。
 そんな自分達を尻目に一人また一人と、十数名ほどの人達が手にそれぞれ武器
を抱え、闇を掻き分け押し入ってくる。
「手間かけさせやがって!!」
 苛立ちを露にしながら逃がさないと囲うようにばらける町人達に、成す術なく
固まったままの手を下ろした。
 これが彼女なら、マリンなら……。
「す、すみません!! ご、ご迷惑をおかけしました、あ、あの! トモヤさん
は何もしていないので、関係ないです! わ、私が勝手に逃げただけです! 怖
くて、そ、その……あの、怖くて!」
 “誰か”を庇うようによろめきながら立ち上がろうとする少女に、何も出来な
いとわかっているからこそ、胸が締め付けられる。
 手を伸ばしてもいつも届かす力がなくて、何をしたらいいのか、どうすればい
いのかわからなくて、だから、
「マリン! お願いだ!! 助けてくれ!!」
 ……気がつけば呼んでいた。
 怒っていることもわかっている、都合のいいことのはわかっている、聞こえる
わけが、そして、来てくれるわけがないこともわかっていた
 なのに気がつけば、今では呼ぶ事に違和感を持たないほど馴染んだ彼女の名を
木々が痺れるぐらいに大きな声で呼んでいた。
 だから、まるで待ち構えてたと言わんばかりに突然に出でた、瞬間に悲鳴を漏
らし、尻餅をついてその場でもがく人々を見下ろす彼女に、
「マ、リン……」
「また大変な目に会っているようだな」
 来てくれたことが嬉しくて、そんなことを知ってか知らずか薄い笑みを浮かべ
る彼女に、視界が潤んでぼやけていく。
<> 群青が染まる 08
◆ci6GRnf0Mo <>sage<>2010/05/06(木) 21:15:58 ID:4zDbBWIK<>
「あかんでー、豊穣祭の邪魔したら」
 また一つ割り込んできた声に、狙い済ましたかのように樹木にもたれながら、
彼女とは違い嫌悪さえ含んだ笑みを仮面として携えた男に、旅が始まって以来感
じていた些細な悪意のような感情を、この時ばかりは強烈に実感できた。
「その娘はこの先の湖の主への供え物や、そうせえへんと、主が怒って湖から穀
物のための水が取れなくなる。そうなると、この町はお終いや。毎年人一人の命
で、たったのそれだけで町が助かるんなら、諸手を上げる行うだろう? それに、」
 木々のさらに奥を指差しながら、品定めをするような獲物を捕らえた狩人の目
をしてこちらを向いた彼が笑う。
「孤児が死んでも誰も困らんわ」
「そうだそうだ」と口を濁しながら下を向いて呟く人々はマリンの一挙一動に怯
え戸惑い、動かない足を引きずりながら離れようともがいている。
「わ、わた、し、だ、だい……じょ、う……」
 そんな町人のためにならないのかもしれない、それでも、放心して全身の力が
腰が抜けて立てず、喋る事もままならない少女の力に何とかしてなりたかった。
「お、おれが……」
 代わりに? そんな馬鹿な……!
「せやな、それしか解決策はあらへん」
 次いで、何をわかりきったことを、とばかりにハルが頷いた。
 まるで彼の書いた筋書きそのものに乗っかって進んでいるようで、静まり返っ
たこの場に座り込んで、新鮮な空気を肺一杯に満たしたくなるほど、力が入らな
くなる。
 いらないお前が代わりになればいいんだという彼の感情が、まとわりついて離
れてくれない。

「ならばトモヤ、」
 その沈黙を破ったのは、決まってマリンだった、彼女しかいなかった。
「主が対価を払うというのなら、我が、殺そうぞ」
 暗がりにでも青く輝く彼女の瞳は、どこか影を孕んでいて、蛇に巻きつけられ
たように思考が絡みとられていく。
「あかんでマリンはん!」
 息を殺しても尚、濁り淀んだ大気、それなのに怖いとは感じられなかった。
「たい、かを、対価を払う! だから!!」
 溢れ出した言の葉に、喉を鳴らして、嬉しそうに嬉しそうに、口の両端を吊り
上げ歪めた彼女は――
 人々の口々に喉奥底から漏れる恐怖の声色も、弛緩するあまりにどことなく甘
い臭いを漂わせた尿を漏らしてしまった少女も、驚きに後ずさったハルも、さざ
めいて木の葉を舞わす木々も、そんな空気を和らげることなく押し潰す太鼓の音
も、町を照らし続ける灯篭の明かりも、一つたりとて余すことなく異様だった。

「その願い、確と聞き入れた」
 ――うつし世の別れに迎えに来た、死神のように美しかった。
<>
◆ci6GRnf0Mo <>sage<>2010/05/06(木) 21:16:53 ID:4zDbBWIK<> 以上で投稿を終わります。 <> 名無しさん@ピンキー<>なかあ<>2010/05/06(木) 21:56:24 ID:XY3f6zkd<> gj!良作 <> 悪意と好意と敵意 ◆f7vqmWFAqQ <>sage<>2010/05/06(木) 23:00:51 ID:y2mW5Glk<> 6話投下。3レス消費 <> 悪意と好意と敵意 ◆f7vqmWFAqQ <>sage<>2010/05/06(木) 23:01:53 ID:y2mW5Glk<> 当たり前の話だが時間ってものは止まらない。そしてタイムリープして過去の失敗を揉み消す事も出来ない。助けてドラえもんと言っても未来から猫型ロボットが来る訳でも無い。
偶然だったとしてもパンツを見た事を謝罪すると決めたが気が進まない。時間も進まなきゃ良いのに。
しかし悩んでても仕方ないのもまた事実。苦しい事や辛い事実から逃げてはいけないって誰かが言ってた。誰かは知らん。
重い腰を上げる。処刑台に向かう死刑囚の気分ってこんなのかな。
とりあえず謝って無理なら土下座しよう。最悪記憶無くなるまで鈍器で殴ってもらえれば許して貰えるさ。勘弁してほしいけどな。


3組の教室を後にして寂の在籍する1組へ出頭する。が、被害者の姿は無かった。
もしかして怒って先に帰ったのか?一番最悪なパターンだな。どうしようか。と考えていると1組の保健委員をしている長谷川右京が話し掛けてきた。
「よう、保健委員。なにしに来たんだ?」
「右京か。お前も同じ保健委員だろ。」
「違うよ。お前は2年連続保健委員。そして俺は中学から5年連続保健委員のベテラン保健委員。」
「お前もしかして虐められて保健委員押し付けられてんの?」
「今、怪我人を保健室に連れていく保健委員の職務を全うしたくなった。もちろんお前をぶん殴ってからな。俺って働き者。」
「暴力反対。」
「暴力反対とか言う奴に限って口の暴力が凄まじいとか思うんだけど、この事についてどう思う?」
「口と手の暴力より数の暴力って酷いよな。俺の目の前に数の暴力によって保健委員にさせられた人間が。しくしく」
「貴方が殴られたいのは右手の鞄ですか?左の鞄ですか?」
「お前なんで学校指定の鞄2個も持ってんの?もしかして高等学校指定鞄収集家に目覚めた?」
「いや、右手の鞄はお前の幼馴染の天野の鞄。井上先生の授業の時にしんどそうにしてたから一人で保健室に行った。。」
「おいこらベテラン保健委員。お前保健委員の風上にも置けないな。」
「うるせー。本人の意思を尊重したって言え。ところで井上先生で思い出したけど昨日繁華街で一つ傘の元男の腕にしがみついてた」
「話を逸らすな。…ナンダッテー!!」
「うるさいよ馬鹿。」
「つーかなんで知ってんのさ。ストーカー?」
「ちげーよ。新聞部の新しい新聞のネタにしようと噂の通り魔を探してたら見たんだよ。」
「へー。」
「あ、良い事考えた。お前保健室に行って天野に鞄渡してこい。」
「凄く…行きたく無いです…。」
「俺にはな、井上先生の記事を書くという使命があるんだよ。」
「新聞部からパパラッチ部に進化したな。いや退化だな。というかさっきから台詞ばっかで単調だな。」
「は?なんの話?」
「いや、なんでもない。忘れてくれ。」
「んじゃ、頼んだ。」
勇輝は寂の鞄を手に入れた!(押し付けられた)
俺に鞄を押し付けたパパラッチ部(仮)の右京は俺が呼び止める前に早々に走り去って行った。なんつー速さだ。陸上部に入れよ。
さて、キーアイテムを獲得したしボスが眠るボス部屋に行きますか。 <> 悪意と好意と敵意
◆f7vqmWFAqQ <>sage<>2010/05/06(木) 23:02:25 ID:y2mW5Glk<> 階段を降りて保健室の前に到着した。さて、覚悟を決めるか。ドアの取っ手を握る。
入って開口一番に「じゃくー」と呼んでみる。応答はすぐに帰って来た。
「あら、馬鹿勇輝」
絶賛お怒り中な様だ。
「あー、昼休みは悪かった。ごめん」
お辞儀して謝る。
「いいわよ。それより物理教えてあげるから帰ろ。」
俺の人生初の土下座披露会は中止になったようだ。
「いいのか?お前しんどいって…」
「それは誰かさんにパンツ見られて心に深いダメージを負ったからかしらね。」
ウッ…。良心が疼く。
「冗談よ。早く行きましょ。」
寂はベットから立ち上がった。
「はいよ。」
俺たちは保健室から出ていった。


幼馴染の家に上がるのは何年振りだったかな。と考えながら靴を脱ぐ。
久々の幼馴染宅は昔の記憶と殆ど変って無かった。
「早く私の部屋に行くわよ。」
「おう。」
幼馴染の跡を着いて行き「じゃく」と書かれた可愛らしい木のネームプレートが立て掛けてある部屋に入る。
第一の感想。昔の記憶とはかけ離れていた。なんかいかにも女の子な部屋だった。良い匂いがする。
「じゃあ物理の勉強始めましょうか。」
「ああ、頼む。」
寂が立ち上がって隣に来る。は?
「な…なんでこっちくんのさ!」
「え?いいじゃない。何か不満でも」
不満は無いが落ち着かなさが膨れるする。
「いや、ないけどさ。」
「ならいいじゃない。早く教科書開いて」
「分かった。」教科書を開いてテーブルに置く。
「ここなんだけど…」
「あー…ここは…」ムニュ。ム…ムネガアタッテル!ムネガ!
寂の豊満なおっぱいが俺の右腕に当たる。おまけに寂は離れない。いつもなら離して俺を殴るはずなのに。
「寂…」
「何よ…」
寂を見ると頬を紅潮させていた。いや、待て。寂は俺とは友達のままが良いって言ったじゃないか。これは悪戯なんだ。きっとそうだ。でも…耐えられん…。
「ねぇ」寂に声を掛けられて振り向いた瞬間、寂の手が俺の脇腹に伸びていて指をサワサワさせてくすぐられ俺は思わず笑ってしまう。
「あは、あははははは!!!!ちょ、やめ!!!あははははは!!!!!」
よく昔に寂とはくすぐり合ったな。と思い出す。
「いひ!!!いひいい!!あはははははは!!!!!」
笑い過ぎて力が入らずに抵抗出来ない。それから10分、20分とくすぐりが止む事は無かった。
「もう良いか。」そう言って寂は手を離して自分の衣服を脱ぎ始めた。 <> 悪意と好意と敵意
◆f7vqmWFAqQ <>sage<>2010/05/06(木) 23:03:07 ID:y2mW5Glk<> 寂は一糸纏わぬ姿になる。
「何してんだ…何のために…」
「…きだか…」
「聞こえない。」
「好きだから!好きなの!綾小路美月に取られたくないから!」叫ぶ。
「おい、まて。俺等恋愛の相性最悪なんだろ?」
「あんなの嘘よ!告白されたのが恥ずかしくてついたの!」また叫ぶ。
「あとなんで綾小路ちゃんが出てくる?」
「金曜日に屋上で一緒に昼ご飯食べてるのを見たのよ!あとゆーちゃん物理の授業すっぽかして病院に行ったって言ったじゃない!」先の台詞より大きなの声で叫ぶ。
「だからこうして犯して私しか見れないようにしてあげる。ゆーちゃん初めてだよね?ゆーちゃんの初めて貰うから…私の初めてあげる。」と言って寂は俺の下半身に手を伸ばす。
「やめ…」くそ、笑い過ぎて体に力が入らない。寂は俺のズボンを脱がす。
「やめろと言っても下半身は勃起しているわね。そうだ、パンツでシコシコしてあげる。」寂は自分の縞パンで俺の逸物を包んで上下に運動させる。
「はうッ!!」擦れて少し痛い!!でも自分でするオナニーより気持ち良いのも事実だった。
寂が俺に跨りびしょびしょでグロテスクな女性器を見せつけて「ゆーちゃん、舐めて。」と懇願する。
「い、嫌だ!」俺はそれを拒否した。
「ふーん…」上下運動の速度が速くなる。
「ん、ああ!!」情けない声が出る。
「ヤバい!!出る!!」と声を漏らすと上下運動が停止する。
「な…んで…」
「舐めてくれるまでイカせてあげない。自分だけ気持ち良くなろうとするなんてずるいよ。」
「そんな…はう!!」寂はまた上下運動を再開する。それが5回くらい続いて
「くそ…」舌を出してペロペロと寂の女性器を舐めた。しょっぱい味がした。
「いい、ゆーちゃ…ん。もっと!!!私の淫乱でびちょびちょのおまんこ舐めて!!」寂の口から淫語が紡がれて余計に興奮する。
そして何かが凄い勢いで俺の顔にかかる。これが潮吹きてやつなのだろうか。
「げほ…げほげほ…」
「はぁ、はぁ、良く出来ました。はい」俺の下半身も精液を吐き出した。けれど勃起は収まらなかった。
「ゆーちゃんの元気なおちんぽ…いただきます…」寂が自分の性器に俺の性器を挿入しようとする。
「…」最早抵抗する気が起きなかった。もう好きにしてくれ。
挿入された。妙に温かかった。
「ねぇ!今ゆーちゃんと私、一つだよ!」
「…」狂ったように声をあげる寂に対し俺は声が出ない。
「気持ち良いよねぇ!!あははは!!!私は気持ち良いよ!!ゆーちゃんの童貞ちんぽ気持ち良いのぉ!!」
そう言いながら寂は腰を振る。さっき射精したのにまた出そうだ。ダメだ。中に出す訳には…くそ、やっぱ無理!2度目の射精を寂の膣内に放つ。
「ああ!!」寂の口から奇声が漏れる。
「ゆーひゃん…らいしゅき…」呂律の回って無い声でそう言って寂は俺を下敷きにして倒れて、疲れたのか眠ってしまった。 <> 悪意と好意と敵意
◆f7vqmWFAqQ <>sage<>2010/05/06(木) 23:04:06 ID:y2mW5Glk<> 終了 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2010/05/06(木) 23:10:10 ID:vmg0Ml+w<> ヤンデレっぽくなってきましたね GJです!

ハルは何者なんだろう…? <>