1 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/11/08(日) 21:33:40 0
一つの物語が終焉を向かえる。
されど死者は起き上がり、恐怖は永劫に終わる事無く――

前スレ: バイオハザードLEVEL19
ttp://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1223827775/
事件記録
バイオハザードLEVEL18
ttp://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1210329267/
バイオハザードLEVEL17
ttp://etc7.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1196602823/
バイオハザードLEVEL15(実質16)
ttp://etc6.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1185199935/
バイオハザードLEVEL15
ttp://etc6.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1168761968/
バイオハザードLEVEL13(実質14)
ttp://etc5.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1155459155/
バイオハザードLEVEL13
ttp://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1148827033/
バイオハザードLEVEL12
ttp://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1140017281/
バイオハザードLEVEL11
ttp://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1134481456/
バイオハザードLEVEL10
ttp://yy32.kakiko.com/test/read.cgi/trpg/1127133199
バイオハザードLEVEL9
ttp://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1125492687/
バイオハザードLEVEL8
ttp://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1123596356/
バイオハザード:LEVEL7
ttp://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1115544611/
バイオハザード:LEVEL6
ttp://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1112377111/
バイオハザード:LEVEL5
ttp://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1109768811/
【聖なる死?】バイオハザード発生4【苦痛の生?】
ttp://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1106439258/
バイオハザード:LEVEL3
ttp://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1101242999/
【感染】バイオハザード:LEVEL2【拡大】
ttp://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1097602917/
【スレッド名】バイオハザードが発生したら
ttp://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1092878452/

2 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/11/08(日) 21:35:52 0
※参加したい方は、名無し、コテハンを問わず
 避難所に向かわれる事をお勧めします

暫定避難所:なりきりネタ板総合避難所
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1240221186/


バイオハザードまとめサイト分室
(舞台説明、状況、現在地など)
ttp://blog.goo.ne.jp/trpg2ch_001/

TRPG系全般のHP(過去ログ
PC:ttp://verger.sakura.ne.jp/
携帯:ttp://verger.sakura.ne.jp/top/top.htm


3 名前:森村 彩 ◇gnJnZEDBsY [sage] 投稿日:2009/11/08(日) 21:40:31 0
>286−289
>「残念だが、これは政治的決定なんだ。民主主義に基いて皆が決めた事なんだ。
> 君達を殺す。人々は直ぐに忘れる。安心して眠れる。」
目の前の男の人と私との間に、見えない壁があるみたいだった。
「・・・・・・皆って誰?」
>「そちらの被検体が要求に応じれば、とも考えたんだよ。私もね。
> だが、それでは不公平だ。」
男性が空を見上げた。そしてこう言った。
>「世界は残酷なんだよ、お嬢さん。」 と。
そんなの、言われなくても分かってる。
だから私はここにいて、あなたはこうして私を見下ろす。

男が銃を抜いた。山田さんが私を庇った。銃声が鳴り響く。どさりと何かが投げ出された。
>「突撃!」
そこから、状況が一変した。

>「彩ちゃん!こっちだ!」
「おじいちゃん!・・・・・おじいちゃん!よかった!」
私は、飯田のおじいちゃんにしがみ付いた。
「無事で良かった・・・彼らは、私の戦友だから心配しなくていい。」
「戦友・・・・・・」
私は知ってる。彼らは宿舎の中にいた、大昔の軍人さん達だ。
そうか、飯田のおじいちゃん達は、あの軍人さん達のことを・・・・・・。

大宮のおじいちゃんと軍人さん達は、村人達を守ってくれた。
おじいちゃん達の攻撃は、ヘリがいっぱい来て、攻撃命令が撤回されたと聞かされるまで続いた。
その後、軍人さんもおじいちゃんも逝ってしまった。

私が泣いている間にも、めまぐるしく事態は動いていく。
テントが張られ、村人達は医師の診察を受けている。
ルー達は缶詰を振舞われて(パッ缶で良かった)すっかり安心しているみたいだ。

>「無事で良かった。あの後、分校へ村人達を迎えにいったんだ。
> 地下に移動した方が安全だと思ってね。」
ヘリの近くで飯田老人が少女に向かって話しかける。
>「途中で道に迷ったが・・・この子のお陰で無事に追いつく事が出来たんだ。」
>トイプードルが老人の足元で吼えた。
「モフ!ああ、良かった!お前も無事だったのね!」
私はモフを抱きしめた。
>「ミヒャエル君が隠れていたんで、何かあると思ってね。
> それで・・・戦友たちの・・・戦友たちの力を借りたんだ・・・」
私は、おじいちゃんの肩におでこを押し当てた。
「死んだ後も、私達を守ってくれたんだね」
水野のおじいちゃんも戻ってこなかった。・・・・・・・犠牲は決して少なくなかった。

4 名前:森村 彩 ◇gnJnZEDBsY [sage] 投稿日:2009/11/08(日) 21:47:32 0
>「貴方も助けに来てくれたんですね?ありがとう。
>君も、よく頑張ったわね。もう大丈夫よ。」
「あ、ありがとうございます」
まっすぐな目をした、綺麗な人だ。
すんなり受け入れられたのは、彼女もまた同じ痛みを知っている気がしたから、かもしれない。
彼らは大人と一言二言会話を交わした後、自衛隊の人達の方へ歩いていった。
多分、彼らはまだ彷徨っている亡霊たちを眠らせに行くんだろう。

「ルー達は、これからどうするの?」
私はルー達の頭を撫でながら、返ってくるはずの無い質問をした。
また地下の、過酷で不思議な世界に戻るのかな。
願わくば、どこかで静かに暮らさせてあげたい。

>「いよぉー!英雄ミヒャエル様ただいま到着ー!」
ミヒャエルさんの明るさにはいつも救われる。
>「あのよぉ?タバコねぇか?ずっと吸ってねぇからニコチンが切れちまったよ!」
「おかえりなさい。よかった、チビちゃん達も一緒だったんだね。
 ミヒャエルさん、ヒーローの約束、ちゃんと守ってくれたんだね」
>「そーら帰るぞー。お前らも新しい家連れてってやっからなっ!」
チビ猫達は首を振って移動する事を拒んだ。
「ミヒャエルさん、連れ帰った後、この子達は安全に暮らせるの?最後まで守ってくれるの?」

>「先ほどのヘリは良いとして・・・君は一体誰なんだね?」
指揮官らしい男が尋ねた。
>「酒は無いが、煙草でも吸いながら少し話を聞かせてくれないか?
>歩く猫達を運ぶ手伝いも出来るかもしれない。」
「運ぶって、どこへ運ぶの?」
私は不安にかられて、大人の会話に割り込んだ。
私には何の力も無い。
だけど、そんな私でも慕ってくらた猫さんたちの力になりたい。
「この子達は私の友達なの。
 彼らが見世物にされたり、実験動物みたいに扱われたりするのだけは嫌!
 指揮官さん、お願いです。歩く猫さんたちを、見なかったことには出来ませんか?」

言うべきことは言った。
後は、力を持つ大人に任せるしかないだろう。
「ルー、フォード。猫さんたち。多分私は、ここでお別れになると思うの。
 ・・・・・・・守ってくれてありがとう。元気でね」
抱きしめた毛皮はふわふわで、暖かかった。
地上に出た彼らが、なんとか幸せになれるよう祈るしか出来ない自分が歯がゆい。

遠く遠雷のような音が、村の方角から聞こえてくる。
猫さん達のつぶらな目を見ていたら、涙が出てきた。
私は、ルー達とその仲間に囲まれながら、私のパパとママを射殺した自衛官のことを考えていた。
あの人を憎んだことも、もう遠い昔のことのように思える。
今はもう怒りはない。たたただ悲しいだけ。
パパもママも死んで、私も一人ぼっちだ。
何か察したのか、足元でモフがワンと鳴いた。
「・・・・・・そうだね、お前がいたね」


5 名前:森村 彩 ◇gnJnZEDBsY [sage] 投稿日:2009/11/08(日) 21:56:11 0
自衛官を率いていた男は、こう言っていた。
村を封鎖したことも、助けが来なかったことも、逃げ出す村人を殺すことも。
全てが、皆で決めたことなんだと。
そしてその「皆」の中に、殺される村の人達入っていなかったことも。
それが結果的に、村を襲った悲劇を助長した。
死ななくても済んだ人が、大勢死んだ。
分別のある大人が皆、正しいと決めたことなのに。

朝日に輝く冬山の景色は、昨日と同じ景色で。
だけどもう二度と、パパとママと過ごした「あの日」が戻ってくることは無い。
私は、ポケットの中の形見をぎゅっと握り締め、目を閉じた。
――――ああ、本当に。
なんて世界は美しくて、こうも不公平なんだろう。

だけど、と思う。
理由はさまざまであっても、私達を助けに来てくれた人達もいた。
総理や、ミヒャエルさんや鈴木さんや、ジェイファーさんやヘリのあの人達だけじゃない。
おじいちゃん達のように、村の皆を守るために命がけで戦ってくれた人も。
逃げる途中ではぐれてしまったけど、柴さんやロバートさん、滝沢のお兄ちゃんに・・・。
他にもたくさん、たくさん。
彼らがいてくれたから、この先何があっても、私は人を信じていける。

確かに、夜は明けていた。

6 名前:九武村包囲部隊 ◆K3F.1.DICE [sage] 投稿日:2009/11/08(日) 22:18:48 0
「えーと、失礼。山田あすかさんは此方に?」
医務官らしき人物が猫の群れを掻き分けてやってくる。
隣には、白衣姿の白人女性が立っていた。
黒い髪をショートカットにしており、日差しの強い地域に住んでいるのか日焼けしている。
「こちらはドクター・コンツェビッチです。
 iRNA治療の専門家で、貴方のようなウィルスによって変異した症状の治療を専門としております。」
ハイ、と照れるように笑うコンツェビッチの歯は義歯なのではないか、と思うほど白い。
まぁ、実際ある事情で義歯となったのだが。
>「で、一体何をしようって言うの?」
「えーと、ですね。」
医務官が説明を始める。
山田あすかの現在の状態は、ウィルスによって書き換えられた遺伝子の産物だ。
外見的特長である金色の瞳も同様である。
RNA干渉治療では、設計図である遺伝子を読み取って工場に運ぶメッセンジャーRNAに干渉する事で、
実際に作られるタンパク質を限定する事が可能、と言う話だった。
元々は遺伝病の治療を念頭に研究が進められているが、
この技術を使えば山田あすかの症状を治療する事も可能だった。
>「でも、まだ精々治験レベルなんじゃないの?」
「ええ、今後も実験が必要になると思われますが、スパコンを使ったシミュレートは殆ど終っています。」
>「またモルモットにしようって訳?」
山田あすかの表情が険しくなる。
「いえ、そういう訳ではなく・・・」
>「研究に付き合っても良いけど、条件があるわ。
  あたしの体の抗体を研究してウィルスの治療薬に出来るようにして頂戴。
  それからなら研究に付き合ってあげる。」
医務官がコンツェビッチに英語で囁きかける。
コンツェビッチは彼女の決意に答えるように右手を差し出す。
山田あすかが答えるように右手を強く握り返した。


7 名前:九武村救助部隊 ◆K3F.1.DICE [sage] 投稿日:2009/11/08(日) 22:28:51 0
>3−5
>「死んだ後も、私達を守ってくれたんだね」
「いや、彼らは生きていたんだ。
 ずっと地の底で生きていた。最期まで兵士らしく戦って死んだんだよ。
 彼等の事を忘れないでやってくれ。」
宿舎で遭遇した竹沢金夫中尉とは違い、彼らは明確な意思を持っていた。
年を取った飯田老人を人目で見抜いた目には、知性が宿っていた。
人として年を重ねた飯田少佐に対する怒りも嫉妬も無く、義務を果たそうとする意思だけがあった。

彼らは人間だった。
人間以外の一体何が、あのような地下深くで人間らしい知性を保ったまま、生き延びられるというのだ?
そして人間で無くなった後も、一体何が国家を守る為に、人々を守る為に銃を取れるというのか?
人として家族を作り、戦後の平和の中で年を重ねた飯田少佐を許せる連中が、人間以外の何だというのだ?
「伝える事は出来なくとも、忘れないでやってくれ。」
ようやく第531連隊の戦争が終った。
60年前のあの日、決して流れる事の無かった涙が流れる。
記憶の中の玉音放送が甦り、頭の中で大音量で流れている。
決して伝える事の出来ない活躍は、時代の流れと共に忘れ去られるだろう。
「ミヒャエル君、君にも礼を言う必要があったな。有難う。」
生き延びた老兵たちが背筋を伸ばし、敬礼をする。
周囲にいた自衛官たちが釣られるように敬礼し、感謝の気持ちの篭った目でミヒャエルを見た。

>「この子達は私の友達なの。
  彼らが見世物にされたり、実験動物みたいに扱われたりするのだけは嫌!
  指揮官さん、お願いです。歩く猫さんたちを、見なかったことには出来ませんか?」
「見なかった事には出来ない。」
自衛官の後ろから声がする。
血で濡れていたスーツの上に防寒ジャケットを着た総理だった。
振り返った自衛官の顔付きが険しくなる。
「目撃者が多過ぎて放って置く事は出来ない。
 かと言って見世物にするのは、昨今の情勢から宜しくない。
 貴重な生き物だからこそ、実験で使い捨てにする訳にもいかない。
 となると、復興予算を増額して希少動物保護費を捻り出すとしよう。」
短いセンテンスを繰り返す独特のしゃべり方で反論を許さない口調だった。
「予算を出す以上、政府が責任を持って管理者と協議。
 我が国独自の希少な生物の生物の保護を求める。
 見たまえ、保護された猫達は尻尾が短い。
 これは我が国の猫全般の特徴だ。」
総理が自衛官の肩を叩いて頷き掛ける。
「それでどうかな?」
総理がミヒャエルと少女に向かって言った。

8 名前:ルーとフォード[sage] 投稿日:2009/11/08(日) 22:40:17 0
>4−7
>「ルー達は、これからどうするの?」
ルーとフォードは首を傾げる。
落ちていた小枝を拾って、地面に絵を描き始める。
まず最初に少女、次にウルタール達。最後にサカナが現れる。
ここは伝説に伝わる約束の地「地上」だ。
言い伝えでは、地下世界よりも安全で人間たちが気紛れにサカナをくれると言う。
しかし、今の所サカナは貰っていない。
>「この子達は私の友達なの。
 彼らが見世物にされたり、実験動物みたいに扱われたりするのだけは嫌!
 指揮官さん、お願いです。歩く猫さんたちを、見なかったことには出来ませんか?」
>「予算を出す以上、政府が責任を持って管理者と協議。
 我が国独自の希少な生物の生物の保護を求める。
 見たまえ、保護された猫達は尻尾が短い。
 これは我が国の猫全般の特徴だ。」
フォードが指差された尻尾をクルクルと回してみせる。

>「ルー、フォード。猫さんたち。多分私は、ここでお別れになると思うの。
  ・・・・・・・守ってくれてありがとう。元気でね」
抱きしめられたルーとフォードは気持ち良さそうに笑い、少女を抱きしめ返した。
地上にやって来て初めて解った。
少女は神様でもなんでもなくて子供だった。
チビ猫達と変わらない存在で、大人であるルーやフォードよりも弱い存在なのだ。
だから、二匹は笑ってお別れを言う事にした。
ミヒャエルに連れられるまま、手を振って笑ってお別れをするのだ。
あの地獄のような旅の果てに一族は再会を果たした。
きっと少女と再会する事も出来る筈だ。
何時かきっと。

シナリオクリア

9 名前:ミヒャエル ◇lV/QWYBPUU [sage] 投稿日:2009/11/08(日) 22:47:11 0
1人の自衛官から謝辞を述べられる。周囲の兵も同様に視線を向け敬礼をする。
「あーあーよせよせ。ガラじゃねぇよ!爺さんにいい所もってかれたしな」

生き残った猫達の今後についての話を静かに聞く。沈黙の後、口を開く。
「小難しい話は分かんねぇーけどよ。やっぱ猫は野良より旨い魚のある家の方がしっくりくると思うんだ」
「無駄にでけー敷地でよぉ、1人・・・いや2人ひっそり暮らしてやがる寂しい奴が居るんだわ」

子猫達の眉間をそっと撫でると総理の方へ向き直る。
「あんたはまだやる事沢山あんだろ?それまでの間俺が預かってやらぁ」
「本当ならこのガキんちょも連れて行く所だが・・・まぁ落ち着いた頃にでも遊びにコイや」

煙草の煙をくゆらせ、空を見上げる。
「・・・いい天気だなぁ」
1機のヘリが視界に飛び込む。前頭部の髪が寂しい人物が手を振る姿を捉えた。
「って人が感傷に浸ってるっつーのに」

猫達と子供に語りかける。
「おぅ。あの禿げ散らかってるのが新しい家の持ち主だ。名前はしばらく呼んでないから忘れた。ドクで大丈夫だぞ」

着陸したヘリに乗り込み、新しい上着を羽織る。
「おーい、糞ガキ!ちょっとこーい!」
「ドク、ペン貸せ。あと紙。髪じゃねぇから安心しろw」

ヘリの窓に紙をあてがい何かを書き記す。
「まだ開けるんじゃねぇぞ?落ち着いて外出て遊べるようになったら見ろ」



――――ヒーローから弱っちいチビへ
俺様の助けが必要になったら連絡する事。チビ共や勇敢な猫達に会いたくなっても同じ。
あと美人歓迎。酒も歓迎。
連絡先は0xxx-7xx6xxxxxx Email ????????@XXX??.com
住所 悪ぃ事情があって書けねぇ。
            最強のヒーロー様より――――


10 名前:ミヒャエル ◇lV/QWYBPUU [sage] 投稿日:2009/11/08(日) 22:54:21 0
少女に手紙を渡し、足早にヘリに乗り込む。
「さ、ドク帰ろうぜ。去り際のタイミング逃すと帰り辛ぇからな」
「じゃーなー諸君!ヒーロー様はこれで帰るぜ!」

大きく手を振り離陸する。
ヘリの中、小さくなった村を見下ろす。
「そういやぁ仕事忘れてたわ。骨折り損ってやつだぜ」
『お前以外に無事だったやつらも一緒さ。やつらも今頃ベッドでダウンしてるさ』
「そっかぁー。全滅したかと思ってたぜ」

村から離れ、その姿が見えなくなった。
「話てぇこといっぱいあったのになぁ。何だか忘れちまった」
『・・・ほぉ。で、このさっきから俺の貴重な毛を毟ってるこの獣はなんだぁ!コラァ!』
「おいおい、俺様の貴重な客だぜ?つまりドクの客でもある訳。お分かり?」
『てめぇ勝手に何決めてんだコラ!ぶっ殺すぞ!』
「面白ぇ上等だコラ!帰ったら絶対ぇーぶっ殺す!」


賑やかなヘリが空の彼方へ消えてゆく。


                  シナリオクリア...

epilogue
--------------------------------------
「間違いねぇ。あいつの他に―――
『・・・そりゃ本当の話か?―――
--------------------------------------

11 名前:森村 彩 ◆gnJnZEDBsY [sage] 投稿日:2009/11/13(金) 00:55:16 0
ドクター・コンツェビッチという人は、山田さんの病気(?)を治せるらしい。
私は、はらはらしながら2人の会話を盗み聞きしていたけど・・・・・何度かのやり取りの後、2人は握手している。
交渉はうまくいったようだ。
ドクターの後ろには、毛布を肩にかけた見慣れない女性が立っていた。
齢の頃は20代後半か30代くらいかな?
泣きボクロが印象的なその人は、山田さんに軽く会釈している。
どうやら2人は知り合いみたいだ。

「色々ありがとう、山田さん」
山田さんはドクターと一緒に行く。私とはここでお別れだ。
「・・・・・・元気で」
あんなにお世話になったのに、いざとなると、本当にありきたりの言葉しか出てこなかった。

>7
>「いや、彼らは生きていたんだ。
> ずっと地の底で生きていた。最期まで兵士らしく戦って死んだんだよ。
> 彼等の事を忘れないでやってくれ。」
「うん」
それがどれ程重い意味を持つか、そのときの私にはまだ気づけなかった。
>「伝える事は出来なくとも、忘れないでやってくれ。」
「うん」
飯田のおじいちゃんの流した涙の、本当の意味も。

「見なかった事には出来ない。」
自衛官の後ろから声がする。
血で濡れていたスーツの上に防寒ジャケットを着た総理だった。
総理の話を要約すると、猫さん達を希少動物として保護・・・・・・するらしい。
ルー達は短いしっぽをくるくる回している。
それを見ながら、私は、非常食の中に魚の缶詰が無かったことを残念に思った。

>「それでどうかな?」
総理がミヒャエルと少女に向かって言った。
有無を言わせない言い方に、私は唇をかみ締めた。
大人は勝手だ。本当に。私もはやく大人になりたい。
「政府の方針とやらが変わっても、猫さん達は変わらず大事にしてもらえるんでしょうか?」
私は精一杯の皮肉を言った。
だけどミヒャエルさんは、やっぱり大人だった。
>「小難しい話は分かんねぇーけどよ。やっぱ猫は野良より旨い魚のある家の方がしっくりくると思うんだ」
>「無駄にでけー敷地でよぉ、1人・・・いや2人ひっそり暮らしてやがる寂しい奴が居るんだわ」
>「あんたはまだやる事沢山あんだろ?それまでの間俺が預かってやらぁ」
>「本当ならこのガキんちょも連れて行く所だが・・・まぁ落ち着いた頃にでも遊びにコイや」
「・・・・・・・ほんとに?」
ミヒャエルさんの表情を見た私は、こくこく、と何度も首を縦に振った。
「・・・・・・嬉しい。じゃあ、何着ていこうかな?」
未来の話は楽しい。
たとえそれが、これっきりの口約束でも。

猫さん達と一緒にヒーローを囲んでいると、新たなヘリがやってきた。
どうやらミヒャエルさんとも、ここでお別れみたいだ。
ヘリで新しい上着を来たミヒャエルさんは、なぜか私を手招きした。
ドクって人と早口で何か会話してるみたいだけど、外国語なのでよく分からない。

12 名前:森村 彩 ◆gnJnZEDBsY [sage 楽しかったです。ありがとう。] 投稿日:2009/11/13(金) 00:56:39 0

>「まだ開けるんじゃねぇぞ?落ち着いて外出て遊べるようになったら見ろ」
「う、うん」
>少女に手紙を渡し、足早にヘリに乗り込む。
その後に猫さん達がぞろぞろと続いた。
もう二度と合えないかもしれない。だから、笑顔でお別れするんだ。
>「さ、ドク帰ろうぜ。去り際のタイミング逃すと帰り辛ぇからな」
>「じゃーなー諸君!ヒーロー様はこれで帰るぜ!」
「うん。色々ありがとう。
 猫さん達のこと、どうかよろしくね!サカナ!サカナを食べさせてあげてね!
 それと、今度会えた時には、あのきれいな花火、また見せてね!」
手の中には未来。
精一杯の笑顔で送り出そうとしたけれど、記憶があふれて、涙は自然と零れてしまった。
また、逢う日まで。
私はいつまでもいつまでも手を振りつづけた。

シナリオクリア。

13 名前:九武村救助部隊 ◆K3F.1.DICE [sage] 投稿日:2009/11/13(金) 23:06:20 0
>11
>「色々ありがとう、山田さん」
「いいのよ、彩ちゃんが無事で良かった。」
それにファンシーな猫達も、と山田あすかが笑顔で言った。
>「・・・・・・元気で」
山田あすかが驚いた顔をした。
「何言ってんの、あたしはまだ暫く此処にいるわ。」
看護師の手が必要な人はまだ居る。
目の前の怪我人を救わないで、世界を救える筈など無い。
まぁ、彼女は白衣の天使だったわけだ。
ちょっぴり乱暴で気が強いけど、それでも天使に見えない事も無い。
天使ってのは天の使いで、何かをする為に遣わされるのだから。

>「政府の方針とやらが変わっても、猫さん達は変わらず大事にしてもらえるんでしょうか?」
「その批判精神は素晴らしい。
 但し、人に意見する時は、自分なりの解決策を言うべきだ。」
総理が笑いながら斬り捨てる。
「だから一度にまとめて予算を出すのさ。
 その金で彼に面倒を見てもらえば、方針なんて関係無い。」
総理は少なくとも徹底している。
妥協をせず、やり遂げる訳だ。
時に間違う事はあるが、その時は国民が間違いを正せばいい。
まぁ、それだけの話だ。


14 名前:九武村救助部隊 ◆K3F.1.DICE [sage] 投稿日:2009/11/13(金) 23:08:48 0
事件から3日が経つ。
地下研究所から発見された遺体は、鈴木と名乗る工作員だと見做された。
警察はFBIを通じて傘社に資料提供を求めるも、
データベースが破壊された為、不可能だと断られた。

事件から一週間が経つ。
マクナブが病院で目を覚ます。
起き上がろうとしてバランスを崩した。左手が無い。
思わず絶叫した。
駆けつけた医者が鎮痛剤を打つと、マクナブはベッドに倒れこむ。
目を覚ました途端、ブコウスキーと秘書が一方的に話を始める。
24時間眠っていた患者に対する仕打ちという訳か。
「契約を破棄し、貴方には退職して頂きます。
 この箇所にサインを。」
書類の内容にマクナブが驚く。サインをせざるを得なかった。
彼はその日の内に病院を追い出された。

ブコウスキーはその足で記者会見に向かい、生物災害対策組織の必要性を訴えた。
まだ設立準備中だが、その基礎は出来ていると言った。
その後、総理官邸にて会談を行い、復旧協力を約束した。

事件から二週間が経過する。
連日の報道は一段落し、徐々に人々が日常へと戻り始めた。
被災者を除いてだが。
ブコウスキーは帰国し、書類仕事に忙殺されていた。
ノックと共に秘書が新たな書類を持ってきた。
「あの人、面白いですね。
 何時山登りが出来るんだ、リハビリをさっさと始めてくれってスタッフを困らせてます。」
「それよりもメールのチェックを手伝ってくれんか?」

15 名前:終幕 ◆K3F.1.DICE [sage] 投稿日:2009/11/13(金) 23:14:16 0
事件から二十日が経つ。
マクナブは退職金代わりに株を譲渡され、ヒューストンに居た。
低価格で高性能な義肢の研究開発を行っているベンチャー企業の本社だ。
近々株式公開を行う予定で、アナリスト達からは高値が期待されている。
つまり、彼は生身と遜色の無い義手と大金を手にする訳だ。
運が良ければナイトの称号が貰えるかも知れない。
まぁ、運が悪くとも日本への片道チケット位は買えるだろう。
その前にカエルのキーホルダーを無くさなければ良いのだが。


事件から一ヶ月が経つ。
傘社内でブコウスキー派が株主総会に備えた資料作りを始める。
スペンサー卿への言い訳。リストアップされた問題点。対策は無し。
ブコウスキーは日本での記者会見に連日出席していた。
彼は傘社の良心として振舞った。
B.S.A.A.による生物災害防止構想への参加企業の数を増やす事を約束した。


事件から三ヵ月が過ぎた。
ブコウスキー部長は、早期退職者の募集を開始した。
沈み掛けた船から多くの人々が逃げ出そうとした。
こういったケースは株価に影響を与えるから表立って募集はしないものだ。
それでも市場はデータと思い込みで成り立っている。
結局、逆に株価を上げる結果となった。
それだけ思い込みたい人間が居た訳だ。


そして事件から半年が過ぎた。
彼は再び来日し、B.S.A.A.構想の進捗を説明した。
こっそりと製薬企業連盟を脅し、宥め、冷徹な視線で再び脅し、金を掻き集めた。
その一方でスペンサーの影響力を封じるべく、やはり製薬企業連盟に相手に暗躍していた。
倒産に備えて技術を優先的に譲渡するプランを提示し、更に研究員の再就職を約束した。
それでもまぁ、世間の連中は彼が良心だと信じていた。
その日、FBIが傘社への強制捜査に踏み切ったにも拘らず。

16 名前:終幕 ◆K3F.1.DICE [sage] 投稿日:2009/11/13(金) 23:19:59 0
8ヵ月後。
総理は靖国神社へと参拝した。
彼の真意を知っている人間は数少ない。
だから、当然批判は集中した。
中国へのメッセージと言う側面もあったのだろうが、彼は約束を守ったのだ。
8月末になると事後処理が終った事を宣言し、総理を辞職した。

そして同日、ブコウスキーが退職を決意する。
傘社を潰す準備は殆ど終えていた。
後は政府が動き出すのを待ち、見守るだけだ。
日本国内のマスコミは、暫くの間は総理を叩くだろう。
不思議な話だとブコウスキーは思う。
どうしてあれだけの事件を引きこした傘社の問題を追及しないのか?
そして星の王子様の一節を思い出す。
『大切なものは、目に見えない。』
ブコウスキーは、一度もサン・テグジュペリの本を読んだ事が無い。
それでも、彼はサン・テグジュペリと一度会って話した事がある。
だから間違った引用だと理解出来る。

17 名前:ブコウスキー ◆K3F.1.DICE [sage] 投稿日:2009/11/13(金) 23:28:21 0
ブコウスキーの朝は早い。
それが退職を明日に控えていても、だ。
毎朝7時半にはオフィスに到着し、ぶっ通しで書類に目を通す。
語るべき事実からブコウスキーの名前や部下の名前を慎重に削除する。
探すべき名前を見つける度に関連する書類が新たに4通、つまり報告書、議事録、指令書、コピーが出て来る。
その上、日に2度のミーティングが待っている。
日によっては政府の役人相手に予定外のミーティングが発生する。
時間が幾ら合っても足りない。

その日は特に酷かった。
3時半からのミテーィングは絶望的だった。
参加していたマットとクレイ――彼らは狭戸市のオペレーターだ――がラップトップの操作ミスをした。
聞いた事も無い歌手の、とびきりホットなヴィデオ・クリップがモニター一面に映し出される。
彼らがどんな努力をしても、そんな筈は無いのだが、どういう訳か延々と一曲流れ続けてしまう。
自分に対する敬意が無くなりつつある。
好かれる為に仕事をしている訳ではないし、自分が無理をして来た事実も認めよう。
だが、幾らなんでも酷過ぎる。
夜中に3度、トイレに向かって萎びた代物に相応しい勢いで小便をする年寄りなのだ。
近頃の唯一の楽しみといえばスペンサー一族をもう少しでトイレットペーパーと一緒に流せる事だけだ。
アメリカ人らしくホームパーティーに部下達を誘う事無く、家族も居ない孤独なドイツ系移民。
貧乏な生活にうんざりして年齢を偽って軍隊に入って、ようやく一人前のアメリカ人として認められ、
機転とヤバければヤバい程、クールになるドイツ野郎の魂で生き延びてきた年寄りに過ぎない。
アーカンソーの貧乏白人の軍曹風に言えば、とびっきりタフなドイツ野郎は死に掛けていた。
死に損ないと言う表現の方が正しいのかもしれない。
自分の過去を振り返れば、死んでしまった方が世の中の為なんだろう。
だが、死を恐れながら業務を遂行してきたお陰で完璧なセキュリティを生み出してしまった。
くそ、あれほど死に近づく事を愛するメイド・イン・USAの兵隊だったと言うのに!
間抜けだから、死にたいだけの狂人だから、と死後に噂されるのを恐れたのが間違いだった。

18 名前:ブコウスキー ◆K3F.1.DICE [sage] 投稿日:2009/11/13(金) 23:34:34 0
性質が悪い事に、失敗はそれだけじゃない。
夜の10時半に業務を終らせ、運転手に目的地を告げる直前に渡された資料も最悪だ。
部下にすぐさま資料を出すように言ったのが間違いだった。
これもブコウスキーのミスだ。
頼むから眠らせて欲しかった。
死ねば充分に眠れるなんてジョークを飛ばせる歳じゃない。涙が出そうだ。
それでも資料を読まねばならない。
幸運だったのは、単なるコピーであって修正の必要性がゼロと言う事だけだった。

運転手に礼を言いそうになるのを堪え、メイドが週に3回掃除する屋敷へと帰る。
冷蔵庫のビールが数本無くなっているのに気が付いたが、まぁ特に言う事は無い。
寝室に入ってビールを片手にテレビを付ける。
なぁ、親父。大したもんじゃないか、俺も。
テレビの中で俺の勤務する会社の工作員がインタビューに匿名で答えてるよ。
上手い事逃げ切ったタフな野郎だと思わないか、親父。
ドイツ語はすっかり忘れちまったが、タフの意味は解るだろう?
ぼやけて見えない資料を睨みつけ、老眼鏡をジャケットから引っ張り出す。

19 名前:地下実験場併設研究所から発見された死体に関して[sage] 投稿日:2009/11/13(金) 23:40:49 0
発見された死体は、目撃者の情報を元に鈴木と名乗る工作員の遺体と見做す。
大口径の拳銃弾によって大脳及び小脳を破壊されており、
自殺後の火災によって遺体が損傷したものと考えられる。
上顎及び下顎の損傷が酷く、原因はやはり大口径の拳銃による損傷と思われる。
損傷した顎の周辺からは少量ながら火薬の燃焼に伴い発生するカーボンが検出された。

1.肺の中に煤煙が含まれていない点と頭部の弾痕から拳銃自殺と思われる。
2.銃器に付着した拳銃の指紋からの特定を図るも、指紋は一切検出出来なかった。
  恐らく薬品で定期的に指紋を焼いていたと思われる。
  (活動拠点と思しき廃寺からは酢酸が発見されており、指紋を焼いていたと思われる。)
3.同じく廃寺から発見された故障した機械式腕時計や写真から身元の特定を図るも、
  盗品である事が判明した。
4.上顎と下顎の損傷により、歯科治療記録からの身元特定は不可能である。
  (周辺に落ちていた空薬莢から、上顎・下顎に自ら銃弾を打ち込んだと思われる。)
5.生存者の証言では身元不明の遺体は、生前に重度の感染症を引き起こしていた。
  麻酔無しで自身の顎への発砲、その後頭部への発砲は可能と推測する。
  
注意・・・傘社の工作員を名乗っていた為、傘社のデータベースを押収したFBIに協力を依頼するも、
     工作員に関するデータベースが破壊されていた事を理由に協力を断られている。

20 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/11/13(金) 23:44:47 0
紫煙

21 名前:地下実験場併設研究所から発見された死体に関して[sage] 投稿日:2009/11/13(金) 23:48:55 0
暫くコピーを睨め、たっぷり残ったビールを流しに捨て、暫く黙祷した。
逃げ延びた男のコメントがテレビから聞える。
連邦法に違反してが、俺たちは下っ端だったんだと言い訳する。
インタビュアーが質問する。
「貴方達の名簿、若しくはそれに順ずるリストがあるのでは?」
「それは無いな。そのリストが破壊されたんだ。
 FBIが追跡しようにも証拠が無いんでね。
 ある男が逃げようとしたのか、俺たちを救おうとしたのか・・・
 理由はどうあれデータベースを破壊しやがった。」
あの名無しは、と逮捕を免れた工作員は最後にこう言った。
「最後の最後で誰かの役に立ったんだ。
 無名戦士は俺達を救ったんだ。」
ブコウスキーが鼻で笑う。
世の中推測ばかりで事実なんて何処に転がっているか解ったもんじゃない。
確かに傘社のレッドクィーンはクラッキングされ、データベースは破壊されていた。
逮捕を免れた工作員達の数は、かなりの数に登っていた。

22 名前:ブコウスキー ◆K3F.1.DICE [sage] 投稿日:2009/11/13(金) 23:52:40 0
ブクの退職の日が訪れる。幾つかの書類にサインする。荷物は驚くほど少ない。
机の上に写真を置いた事も無かった。
万年筆とセイコーの電波時計、愛用のマグカップ。
時代の流れに合わせてカスタムされた45口径と予備のマガジン。
それとコーヒーカップと壁にかけられた感謝状が十数枚。
ダンボール箱一つ分の人生だった訳だ。
まぁ、花束をくれるような部下も居ないし、これで充分だろう。
オフィスを後に出ようとした所で、秘書がドアを開けた。
そのままブコウスキーを部屋に押し戻し、ドアの鍵を掛ける。
その様子は、隠しカメラを通して別の部屋のモニターに映し出されていた。

23 名前:ブコウスキー ◆K3F.1.DICE [sage] 投稿日:2009/11/13(金) 23:58:01 0
いきなり部屋に入ってきた秘書とブコウスキーの付き合いは、10年程度と言ったところか。
つまり、どういう訳か人事課のミスで面接にやって来た痩せっぽちの17歳の面接をしたのだ。
ドラッグに嵌って薬漬けになった少女だったが、面接でもそうだった。
「お爺ちゃん、あんたの隣のバァサンよりは良い仕事をすると思うよ。
 それにさ、お爺ちゃん。
 何か気に喰わないって顔しているけど、何かあったの?」
下着を脱ごうとした所で、隣の女性役員が呼んだ警備員に追い出された。
が、話は終らない。
結局、彼は彼女――名前はマリサだ――のソーシャルワーカーを呼び出した。
そうして心底怯えていたソーシャルワーカーに多額の寄付をして、ある意味で彼女を買った。
マリサは施設に放り込まれた挙句、ブコウスキーの嫌味にたっぷりと付き合わされた。
フレンチフライとハンバーガーを運んで一生を過すだろうとか、どうせHIVでくたばるだろうとか、
終いには混ざり物たっぷりのドラッグの為に浮浪者の相手をするだろう、と言った訳だ。
ブコウスキーは挑戦的な笑顔で最後にこう囁いた。
「私もあの女役員は嫌いだし、君にあの女の尻を蹴っ飛ばすチャンスをくれてやろうと思う。
 どうせ墓の下には金は持って行けん。だったら金を使うに限る。
 それにこの顔はな、生まれ付きの顔なんだよ、お嬢さん。」
と言う訳で、ブコウスキーはマリサに優秀な家庭教師を付けて、大学に進学をさせた。
彼女にはそれなりの才能があったようで、見事な成績で大学を卒業し、
改めて女役員の面接をパスし、彼の秘書となった。

採用から数年後、マリサは麻薬中毒者の社会復帰を目指すNGOを設立した。
彼女は平日を秘書として過す一方、土日や帰宅後に精力的にNGOの業務に打ち込んだ。
その話を聞いた女性役員は、傘社主催の寄付金集めのパーティーを開いた。
こういう社会貢献を果たす人材は、企業に取ってもプラスになる。
世に言う社会貢献、利益の還元、税金逃れと言うやつだ。

パーティーで挨拶を終えたマリサは、その女性役員の耳元でこっそり囁いた。
「今回は下着を脱がずに済みましたよ、お婆ちゃん。」
女性役員は始めて面接にやって来たマリサを思い出し、卒倒した。
ブコウスキーの目論見どおり、マリサは彼女の尻を蹴っ飛ばした訳だ。

24 名前:ブコウスキー ◆K3F.1.DICE [sage] 投稿日:2009/11/14(土) 00:03:50 0
そんな彼女に部屋の鍵を閉められ、監禁状態となったブコウスキーは焦った。
拳銃は弾を抜いた状態でダンボールの中だ。
ステッキを振り回すと言う手段もあったが、マリサが銃を持っていれば一瞬でケリが着く。
「ねぇ、部長。」
彼女がシャツを脱ぎ始めた。
ブコウスキーの無表情な顔の下に、焦りが浮かぶ。
監禁され、射殺されるよりも酷い。
リタイアした人生をスキャンダル塗れにするつもりなのか?
シャツの下からぴっちりとしたレザーか何かの衣装が現れる。
「私はこれから家に帰るんだ。」
部屋の電気が消え、真っ暗になる。
ドアが開き、体のラインを隠すようなブカブカの服に身を包んだマットが現れる。
そして最近流行の喋るように歌い方が始まった。
ああ、くそ。この曲は。

http://www.youtube.com/watch?v=-JchxJuK-CE
http://www.nicovideo.jp/watch/sm6460795

25 名前:ブコウスキー ◆K3F.1.DICE [sage] 投稿日:2009/11/14(土) 00:20:10 0
3日前のミーティングで流れた曲じゃないか!
マットが喋り、いや、歌い終えるとマリサが傘を片手に歌い始める。
悪くない曲だった。今となってみれば。
女役員が現れる前までの話だが。
>「ミスタ・ブコウスキー!」
「ああ、これは部下が・・・」
比喩的表現を使えば、マリサに尻を蹴っ飛ばされた
「ええ。これが驚かされるという事です。パーティーでの一件、私は忘れていませんよ。」
女役員が笑った。それが合図だった。
彼の部下が花束を片手に部屋へと雪崩れ込んで来た。
退職した部下も結構な数で、平日だと言うのに仕事を休んで面会に来ていた。
「あー、諸君。こんな形での見送りは予想していなかった。」
威厳たっぷりに話そうとするブコウスキーの目に微かに涙が浮かんでいた。
やって来た彼の部下達は、花束の代わりにブコウスキーの許可入りのDVDを持って帰った。
少なくとも・・・部下に好かれるような仕事をして来たと言う訳だ。


私が悪人だったら良かったと思うかね?
でも、物事が見掛け通りとは限らない。
そして物語は――もう少しだけ続く。

http://www.nicovideo.jp/watch/nm4058248
http://www.youtube.com/watch?v=N5ss4awsKv4

26 名前:小川平蔵 ◆K3F.1.DICE [sage] 投稿日:2009/11/14(土) 00:28:41 0

夢。

あの日以来、繰り返し見る。
バースディ・パーティ。誰かに祝ってもらうのは初めてだ。
招かれた客達達――シノザキ。マクナブ。森村彩。ファリントン。桜子。大宮大佐。飯田老人。

皆一様に同じ態度を取っている。俺を無視している。
沢山の人々――ミヒャエル。希望。車椅子の老人。雑賀。布施。名も思い出せない沢山の人々。
俺には理解出来ない。何故無視されるのか理解出来ない。
周囲を見回す/人々は談笑している/鈴木しか知らない/理解する/誰も俺を知らない。

そして俺は、見回すのを止めて正面を見る。
山田あすかが座っていた。

声を掛けようとする――声が出ない。山田あすかが立ち上がる。
手を伸ばそうとする――手が動かない。山田あすかと一瞬だけ目が合う。
立ち上がろうとする――体が動かない。山田あすかは何処かへ行ってしまう。
気を静めようとして深呼吸をする。Judasが居てくれればと考える。

目が覚める。
夢の意味を考える。悲しみは無い。苦悩も無し。
ただ、現実が横たわっている。
そして突如、俺は思い出す。

あの椅子に座っていたのは、俺が初めて殺した女だった。
愛らしい顔を思い出すことが出来ない。
残酷な声を思い出す事が出来ない。
殺した事実以外、思い出す事が出来ない。

今では山田あすかが座っている。
これからも山田あすかが座り続けるだろう。
俺の人生が続く限り。

27 名前:小川平蔵 ◆K3F.1.DICE [sage] 投稿日:2009/11/14(土) 00:38:13 0
傘社の倒産から3ヶ月が経っていた。
株式保有数に比例した悪夢と失業者分の悲劇があった。
ブコウスキーは、取材をシャットアウトしていた。
海岸に面した屋敷でブコウスキーは暮している。

ある日電話が掛かってくる。
男はシノザキと名乗り、小川と言う工作員に関して知りたい、と言った。
留学生活の傍ら、ブコウスキーの面倒を見ている女性の声が詰まった。
彼女は迷った末に、オーケイのサインを出した。
全ては彼女に任せられていた。
彼女は傘社重役の娘だった。過去に不幸な実験を受けているけれども。

約束の時間、男が尋ねてくる。
彼女の表情が固まった。
シノザキではない。別人だった。
彼女よりも背が低く、シノザキよりも痩せていて、死人のような顔をしている。
つまり、彼女がビルで出会ったシノザキでは無かった。
「約束通りの筈だ。案内して欲しい。」
男が言った。声は硬い。恐怖も怒りも無い。
感情が欠落しているように見える。
彼女が瞬きをする。死者は消えない。死者が口を開く。
「やぁ、部長。」
彼女が振り返る。
ブコウスキーが立っていた。
「・・・まぁ、そんな気がしていた。
 今は部長じゃない。ブクと読んでくれ。」
砂浜を歩きながら話そう、とブクが言った。

28 名前:小川平蔵 ◆K3F.1.DICE [sage] 投稿日:2009/11/14(土) 00:43:44 0
小川とブコウスキーが歩いている。
ワイルドカードとプレイヤーの組み合わせ。間抜けと利口者の組み合わせ。
乱れた歩調。お互いに相手のペースに合わせようとする。試みは失敗する。
失敗し続ける。

寒々しい東海岸の浜辺。
木々と茂みは夏の日差しに焼かれて茶色になって随分と経つ。
それでも生命を内包し、再生の春を待ち侘びている。
「ここのロケーションも悪くないですね。」
小川は顔を上げずに言った。
>「さてさて。年寄りに止めを刺しに来たのかね?」
「今の貴方は脅威じゃない。失礼?」
小川が携帯を取り出す。蒼ざめた顔。確信に満ちた声。死者に見える。
通話ボタンを押すと、崖の上から複数の赤い煙が吹き上がった。
全て絶好の狙撃ポイント。
煙に耐え切れず、狙撃手たちが飛び出してくる。
>「失礼。」
ブコウスキーが襟の裏に貼り付けておいたマイクに向かって撤収しろと呟いた。
>「ま、確かにこれで脅威は無くなった訳だ。
  あれは赤外線も遮断するタイプかね?」
小川が頷く。ブコウスキーが溜め息を吐く。
>「あれだな。M1エイブラムスに搭載されているタイプだな。」
小川が微笑む。
正確には顔の筋肉を動かしただけ、と言うべきか。
「部長、いや、ブク。貴方には借りがあります。
 今は貸し借りゼロですかね?」

あの日を思い出す。
脱出したダクトの出口に用意されていたガンケースの中には、狙撃銃と拳銃が入っていた。
その狙撃用スコープ越しに見える山田あすかと生存者達。
傘社のエージェントと包囲部隊。

夜明け前には、全てが終わる筈だった。
政権は奪還され、包囲網は解除される筈だった。
小川はその直前に生存者達から離脱したが、彼は約束に固執した。
安全が確認されるまで逃げ出す訳には行かなかった。
しかし、予定は遅れ、包囲部隊のAH-1攻撃ヘリが攻撃を始めようとしていた。
即座に狙撃準備に入る。標的は指揮官であるエージェント。
射殺すれば、士気の低い包囲部隊は方針を変えるだろう。
時間稼ぎになる筈だ。

狙いを定め、息を短く吐いた瞬間、予想外の援軍がやって来た。
大宮大佐率いる死者の軍勢だ。
小川が手にする338ラプア・マグナムなら戦闘ヘリを無力化出来る。
そして彼は、ロケットポッドを撃ち抜いた。
誰かが事前に用意していたAW338のお陰で、コブラの攻撃を妨害する事が出来た。
だとすれば、一体誰が用意した?
小川が思いつくのはたった一人。
その男が今、目の前に居る。

29 名前:小川平蔵 ◆K3F.1.DICE [sage] 投稿日:2009/11/14(土) 00:54:05 0
>「まぁ、予想は着くからな。」
ブコウスキーが満更でも無さそうに笑う。
過去に多数の陰謀を実行し、成功させてきた男の笑顔。
>「そうそう、感染していたと聞いたが・・・芝居だった訳か。
  それとダミーの死体は、一体どんな手口を使ったんだね?」
感染は芝居だった。
分校の体育館でワクチンを打っていたので、抗体が出来ていた。
その気になれば死者になる事も難しくない。
「運良く死体が見つかったので、顎を吹っ飛ばして拳銃自殺に見せかけましてね。
 データベースが破壊される話は聞いていたから・・・まぁ、運が良かったんですよ。」
部屋を満たす炎と水蒸気に紛れ、天井のダクトを通じて警備室へ向かった。
入り口の監視カメラのデータを破壊する為だ。
それだけではなく村人の脱出を確認し、ゲートのロック解除を行った。
「ま、運が良かったとしか言えませんね。
 全部、貴方の筋書き通りだった訳ですが。」
予想外の出来事も合ったが、最悪を想定すれば事前に解決策を用意する事は出来る。
>「言ったろう、予想は着く、と。
  死体に関しては予測出来なかった。
  君が死んだか、生き延びていたか結論は出せなかった。
  だから、生き延びたのだろうと考えていた。」
銃が空っぽになるまで銃弾を撃ち込んで死体を確認しろ、と言う訳だ。
「ドイツでの一件も、貴方の計画の一部だった?
 少々希望的観測過ぎますが・・・貴方の倒産間際の行動を見るとね。」
>「・・・まぁ、これで貸し借りはゼロだな。
  ただ、君が非合理的な人間だとは思わなかったが。」

30 名前:小川平蔵 ◆K3F.1.DICE [sage] 投稿日:2009/11/14(土) 01:05:05 0
ブコウスキーが続ける。
>「彼女とは残念だったな。あの時、君が振り返りさえしなければ、恐らく。」
ブコウスキーが言う。口調は穏やか。極めて観念論的なトーン。
>「迷宮を正当化するのは、最終的に其処に住むミノタウルス・・・即ち化け物だ。
  あの迷宮では、君自身が怪物だった。」
ブコウスキーの笑顔――どこか寂しげ。過去を見ている。過去を振り返っている。
小川が過去を振り返る。理解する。小川が言う。一言一言を区切りながら。
「確かに、俺は、あの時、死者を、見た。」
冥府からの脱出――ギリシャ神話風の味付け。振り返れば最愛の人を失う。永遠に。永久に。
小川は死んでいた。虚無と対峙していた。せめて彼女を見ていれば。
自然と手が胸の傷跡に重なる。
「それで殺意が湧けば、私も幸せなんですが。」
>「ボルヘスの引用だよ、迷宮云々と言うのはね。
  私を殺さないのなら結構。
  単に顔を見せに来たのかね?」
「いや、幾つか聞きたい事がある。」
小川が目を細める。
「ずっと考えていた事があった。一体、誰があの晩、データベースを破壊したのか。
 結局、アライアンスの黒幕は貴方なんじゃないか?」
ブコウスキーが足を止め、小川の顔を見た。
>「その通りだよ。気が付いたのは君が最初で最後だろうに!」
ブクが大笑いをする。無邪気な目をしている。
>「どうして解ったんだね?」
「レッドクィーンにアクセスする権限を持っている事。
 事件で損失を被らない立場に居る事。
 この二つは、一見矛盾する。
 だが、世の中には非合理的な考え方をして、実行してしまう人間が居る。」
>「九武村の一件の様にかね?」

31 名前:小川平蔵 ◆K3F.1.DICE [sage] 投稿日:2009/11/14(土) 01:16:59 0
小川の表情が硬くなる。ブコウスキーは笑っている。小川が口を開く。
「・・・不可解な部分が多過ぎたんです。
 貴方が非合理的な行動を取る人間なのか・・・俺には断定出来ません。
 世の中には殺される為に戦う一方で、自らの死を願う人間が居る。
 彼らは死後に名声を汚される事を嫌い、自殺も出来ない。
 その臆病さ故に・・・中途半端に戦う事が出来ない。
 結果として生き延びて、運が悪ければ最期の瞬間まで自問自答する。」
小川は微笑を浮かべる。ブクが無視する。
>「それとも愛かね?あれこそ非合理的思考そのものだ。」
全ては芝居だった。けれども俺は彼女を本当に愛していたのか?
俺があの時に見た幻覚は、俺の欲望そのものだったのではないか。
つまり、俺は・・・自覚が無い訳じゃない。何とか欲望をコントロールしてきた。
して来たつもりだったんだ。
直視するのを避けながら。
だって、認めるのは辛過ぎる。俺が・・・つまり・・・俺は――

>「もう一つは?」
ブコウスキーが思考を遮る。
適切な助け舟――訳が解らなくなったらニッコリ笑って別の方を見ろ。有名なマジシャンの言葉。
「アフリカに関して。
 コンゴの情勢には、貴方が一枚噛んでいる気がする。」
小川は今、中東のヨルダンで生活をしている。
ヨルダンでも有名な一族の一人とは傘へ入社する以前からの友人だった。
彼の助けを借りてヨルダンへ脱出し、今ではアフリカ情勢のアナリストとして生活をしていた。
>「君に怪物と迷宮を用意しよう。」
ブコウスキーが言った。微笑を浮かべている。思いやりに満ちた目をしている。

32 名前:小川平蔵 ◆K3F.1.DICE [sage] 投稿日:2009/11/14(土) 01:23:50 0
「私が知りたいのは、情報だ。」
>「その情報をくれてやるのさ。」
ブコウスキーが封筒を取り出す。小川が受け取り、封を開く。
2枚の写真。怪物が写っている。青年が写っている。
超望遠レンズ――驚くほどシャープ。フォトショップ・マジック。ぼやけた輪郭は画像処理済み。
死んだ筈のJudasが居る。死んだ筈のブラッドネバードライが居る。
全ての糸が繋がる。
新たな悪夢/忘れさせてくれ/古い悪夢/忘れさせないでくれ。
写真の意味を理解する。内乱悪化の原因を完璧に把握する。
>「シエラレオネで活動している民兵組織鎮圧を目的に、我々はB.O.W.を派遣した。」
事件の後、ブコウスキー派は日本政府の許可を得て、対バイオハザード部隊を派遣した。
その過程で発見されたのがユダ達だった。
多数の犠牲を出したが捕獲は出来ず、取引をする事になった。
「大方、Judasは狩場を要求したんだろう?」
 それに貴方が所有するサージカル・ストライク・サービスの動きを調査した。
 傘社の倒産に伴い業務停止。だが、取引先には社名変更の通達をしたんだろ?」
小川が笑う。
PMC業界ではよく有る事だ。
悪名名高き南アフリカのエグゼクティブ・アウトカムズ社は批判が集中すると社名を変えた。
治安維持業務を請け負っていたブラックウォーター社もバクダットでの発砲事件後、社名を変更した。
社名を変えてイメージを一新し、批判されれば社名を変える。
それだけで随分と仕事がし易くなる。
>「派遣したB.O.W.が成果を挙げていたのは、最初の数週間だけだった。
  以後、民兵組織が再び盛り返して首都へと迫っている。
  民兵組織は、分隊レベルで狙撃銃の配備。
  君の好みだ。違うかね?」
精密射撃で敵指揮官を射殺。敵部隊が混乱する。優位に立つ。
精密射撃で機関銃手を射殺。敵の火力が落ちる。優位に立つ。

33 名前:小川平蔵 ◆K3F.1.DICE [sage] 投稿日:2009/11/14(土) 01:36:29 0
ブラッド・ネバー・ドライ達の目の前で実演した戦術だった。
そして小川が知る限り、あれをアフリカの少年兵に教える連中は居ない。
少年兵は使い捨ての消耗品で、人口爆発が起きている土地では代替品の入手には困らない。
精密射撃を教えるよりも、死を前提に銃弾をばら撒かせた方が効率が良い。

ブコウスキーが小川の目を見る。小川が写真から顔を上げて頷く。
二人が同時に右足を踏み出す。
>「そうだ、一つ聞かせてくれ。」
すっかり忘れていた、とブコウスキーが呟く。
>「ドクター・コンツェビッチの経営する製薬企業に多額の投資があった。
  その金額は我々が君に支払った給与と・・・ほぼ同じ額だった。
  彼女は・・・君がLAで殺害した我が社の研究員に良く似ているが?
  結局、彼女の死体は見つからなかったな。
  君の好みの手口じゃないかね?」
「他人の空似でしょう。」
小川は断言する。即座に、容赦無く無関心に吐き捨てた。
>「解った。で、現地で私の部下であるJudasは、一体どうなってしまったんだ?」
ブコウスキーが問い掛ける。悪戯っぽい笑顔。小川の口から答えを聞きたがっている。
小川が言った。口の端が徐々にせり上がって行く。
「ユダが彼らと合流したんでしょう。」
小川には説明出来ない。感じる事を言葉に変える事が出来ない。
Judasと俺のささやかな王国。
非合理的過ぎる。愚かなロマンティズムにも程がある。
慎重に言葉を選ぼうとする。言葉では不充分過ぎる。
半分も意味を伝えられない。
抑えきれない欲望。小川が口を開く。擦れた声。
「貴方も理解出来るはずだ。で、俺にどうしろと?」
>「簡単な話だ。金を払う。君はするべき事をする。私は信頼を回復する。
  全てが終れば君は自由になれるかもしれない。」
「一体、何から自由になれと仰る?」
小川が可笑しくて仕方が無いと笑った。

――甦った瞬間だった。

34 名前:小川平蔵 ◆K3F.1.DICE [sage] 投稿日:2009/11/14(土) 01:37:34 0
俺は約束を果すつもりだ。薄汚い血で大地を汚してくれ。決して乾かぬ血の大河を生み出してくれ。

断る理由は無かった。

全てを焼き尽くすつもりだ。輝くほどの炎で俺を灰にしてくれ。その灰で空を汚してくれ。

答えはイエス。

次は上手くやるつもりだ。俺の魂を理解してくれ。君の目で見つめてくれ。

再会を。

俺は目を逸らさない。向日葵色の瞳で見てくれ。抱きしめてくれ。

死を。


了。

バイオハザード LEVEL20

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