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【TRPG】遊撃左遷小隊レギオン!【オリジナル】  レス置き場

1 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/05/30 01:42:16 ID:???
レベルリセットでろくに投稿もできないので暫定的にレス置き場を用意しました
楽しく使いましょう

2 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/05/30 02:17:16 ID:???
>「……はっ――――どうした、全然軽いぜ「経済力」っ!!!!!!」

クローディアが散財してぶっ放した滑腔砲。巨大質量の一撃が土煙の中に着弾し、大気に一際波を立てる。
果たせるかな、金貨10枚分の攻撃力は牙を向いてはくれなかった。晴れた埃の向こうに立っていたのはフィン=パンプティ。
血だらけで、薄汚れて、無傷とはとても言い難いが、それでも――家屋すら吹き飛ばす滑腔砲を受けて、五体の在るまま立っていた。

「『天鎧』……!!」

奇しくも先立ってクローディアを守った天鎧の防御力が、今度こそ彼女に仇なす結果となった。
舌を打ち、舌を巻く。防御だけに全てを費やした遺才。研ぎ澄まされた絶対の盾は、如何なる矛も通さない無敵の不可侵領域。

>「負けた仲間が情報を漏らしたら、情報持って攻めて来た相手から、それでも味方を全員守りきればいいだけじゃねーか!!
  んでもって捕まった仲間を助ければ、万事解決だろっ!!」

「ばっ……!?」

フィンが搾り出した言葉は、軍人が吐くにはあまりにもお粗末な理想論。
そして――武人が叫ぶならば、この上なく魅力的な提案だった。そしてクローディアは、生粋の文人だった。

「ふざっけんじゃないわよッ!わけわかんない!超弩級の意味不明よ!無責任なセリフでお茶濁そうとしてんのがヨミヨミだわ!!
 語るだけならタダでしょうよええそうよ!実行には責任と費用が掛かるの!安月給のくせにデカいこと言ってんじゃないわよっ!」

だが。
『天鎧』フィン=パンプティは、体現していた。
彼の後ろには文字通り矢の一本も通らず、クローディアが大枚をはたいた大量の攻撃を、一つ残らず無力化し受けきっていた。
これが天才。その異質。この男は、自分の在り方を確定している。大言壮語を、己の全てで肯定している。

>「よーく目に焼きつけやがれクロなんとかっ!!
  ――――俺は、フィン=ハンプティは、お前が捨てる物も全部守り抜いてやるぜ!!!!」

「きぃいいいいいいっ!必ず失わせてやるわ……!このあたしにご足労させた足代は、高くつくわよっ!」

『守れなかった』クローディア=バルケ=メニアーチャには、その男がとても眩しかった。
直視できず、目をそらすように、レイピア女へ視線を移す。

単純な話だ。『天鎧』は防御の遺才で、言い換えれば『守るだけ』の能力。攻撃能力自体は危険視するものではない。
目下の問題はレイピア女だ。将校クラスであろうがなかろうが、先刻の術式連打を悉く躱し尽くした練度は並大抵ではない。
弾数の懸念もある。ただでさえ借金を肩代わりしたばかりで節約モードなのだ。この調子で避け続けられたらあっという間に破産する。
クローディアには、あらゆるルートから品を入手する、『買う』才能こそ恵まれていたが、資産を運用する才には選ばれなかった。
そのあたりが本家の従兄と違うところで、彼はそれに加えて人身を懐柔する術にも恵まれているのである。

そう、才能にも程度の差というものがある。
得てして血族の本家が強力多彩な遺才を得て、血の薄い分家には運良く才能を受け継いでも微々たるものであることなど珍しくない。
本質的なことを言えば、クローディアのそれは厳密な『遺才』ではなかった。
『濃い遺才』とそうではないものを区別する言葉がこの国にはない為に、一絡げに遺才と呼ばれているだけなのだった。

閑話休題。
迎撃するクローディアの硬貨術式をかいくぐりながら、クローディアの胸先まで肉薄したレイピア女が、不意に止まった。
右目から流血している。負傷によるものではない。まるでいつもの如くといった感じで、慣れた手つきで血を拭う。

(なにかの代償、あるいは負荷によるもの――?なにはともあれ、今がチャーンスっ!あたしはチャンスを逃さない女!)

果たして、それはチャンスではなかった。レイピア女は、一部の隙すら生じさせない洗練された所作で剣を閃かせる。
剣先がこちらへ。触れてもいないのに、その刃の冷たさを肉の奥に感じた。
その切れ味が、どのような結果を齎すか、直接的なイメージとなって彼女の脳裏に去来した。

>「さてと、腕?脚?どっちが良いかしら?好きな方を選ばせてあげる――」

一瞬。一瞬だけ、とてつもない気あたりがクローディアを襲った。
いつの間にか流していた汗が全て引き、ぞっとするような圧力が彼女のつま先からつむじまでを貫いた。

3 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/05/30 02:17:42 ID:???
「ひっ――」

瞳孔が開いたまま戻らない。刃の輝きが異様に眩しくて、生々しい痛みの情報が脳内を加速して、剣の動きが酷くうすのろに思える。
そんなはずはないのに。

剣が来る。来る。来る来る来る。回避?防御?間に合わない。間に合うわけがない。
レイピア女は笑っていた。口端だけを緩める、それは平時ならば同性のクローディアですら見惚れるほどの柔和な美笑。
それが、今は、あまりにも凄絶な、獰猛な、猛禽の笑みを思わせた。あぎとを開いた捕食者は、きっとこんな顔をしてるんだろう。
そして、何も見えなくなる――

>「――なーんて、ね。」

景色が開いた。何も見えなかったのは、彼女が恐怖に耐えかねて瞑目していたからだった。
剣は正確に二回繰り出され、針の穴を通すような精密さでクローディアの背負う金庫の、皮の留め具を破壊していた。
右肩と左肩、それぞれをである。動く的の、小さな小さな留め具を、二つ同時に切断する、神業的な斬撃だった。
金庫が石畳に落下して、それを追うようにクローディアが尻餅をついた。目の前で微笑む女の圧力に、完全に屈服していた。

「あ……あ……」

腰が抜けてしまったのか、最早立つことすらままならない。
金庫を落とされた以上、引き出して使うことは不可能。クローディアにとっては、武装を解除されたに等しい事態だった。
命を奪わなかったのは、レイピア女の情けだろう。『泣いて謝るまで許さない』――最初から、そう言っていたではないか。
この気位。この品格。この技量。斜陽を背に立つ姿はまるで、英雄譚に出てくる品位煌々の戦乙女のよう。

「まさか……本当に……?」

この女は。2年前の帝都を救った――
不意に背中を預ける仲間の姿がフラッシュバックし、視線を回す。ナーゼムが、あぎとの中をナイフで蹂躙され、
あまつさえ――テーブルの残骸でタコ殴りにされようとしていた。

「っ!! ナーーーーーーゼムッッッ!!」

クローディアの咄嗟は機敏。袖に仕込んでいた銀貨――ナーゼムの給与の一秒分。掌に滑り落とし、魔術を発動する。
軍属ではないが、傭兵として戦っているクローディアやナーゼムは、『その身柄』こそが商品だ。
故に。

「来なさいっ!!」

離れたところで戦っていたナーゼムが、クローディアのすぐ傍へと召喚されてきた。
クローディアは足と腰に激烈な喝を入れて無理やり尻を上げると、獣のように金庫へと飛びついて金貨を掴めるだけ掴みとった。

「パンプティ!あんたに教えてあげるわ!あたしは仲間想いなんかじゃないけれど――商品は大事にする性質なの。
 どいつもこいつもあたしの大事な商品をーっ!そりゃ傭兵は使い捨てかもしれないけどね!無駄遣いして良い道理もないわ!
 あんたが全てを守るなら、あたしはあたしの財産を守る。天鎧なんかじゃ及ばない、金のかかった守りを実現してやるわ!」

金貨を――両手に抱えた金貨の全てを、魔術で彼女の力に変える。
ひときわ強い輝きのあと、クローディアを包みこむように金色の輝きが波を立てた。
やがて光が終逸したとき、そこにクローディアの姿はなかった。代わりに立っていたのは――馬車ほどもある、岩の巨人。

乙型陸戦ゴーレム、ミドルファイト3(豪華仕様)。インファイトシリーズとは別の設計理念のもと開発されたゴーレムで、
砲術戦に特化したスペックを誇る。両肩から生える二基の大口径魔導砲が主だった特徴であり、かの機を表す全てだ。
クローディアは操縦基に体を収めて、まっすぐと――先ほどまでナーゼムが戦っていた二人を見据えていた。

「イチャついてんじゃないわよーーっ!忌々しいから可及的速やかに、消えてなくなれーーーっ!!」

ミドルファイト3の砲門が開き、衝撃術の魔導砲撃が敵の二人を狙って発射された!


【レイピア二連撃によって金庫を落とされる。丸腰のピンチに、これまたピンチのナーゼムを召喚】
【砲撃戦ゴーレム・ミドルファイトを召喚して搭乗。セフィリアとウィレムへ砲撃】

4 :レイリン ◆lvfvBHCkg. :11/05/30 19:27:28 ID:???
アルテリアの放った矢、いやそれはもう矢と呼べるレベルの大きさではなかった、がまるで稲妻のようにレイリンの投げたゴーレムを完璧に打ち抜く。
一向に衰える気配のない力場装甲にレイリンは一抹の不安を覚えたが、それは杞憂に終わる。
放った矢がわりの避雷塔の性質が力場装甲を拡散させ、ついに耐えきれなくなり教会へとゴーレムはその巨躯を磔にされた。

「――それはあたかもゴルゴタの丘の上で磔にされたイエスを彷彿とさせは流石にしなかった、なんてね。
それは良いとして気分が良くなるほど豪快ね、帰って課長の奢りで飲みましょう」

そういって踵を返そうとした瞬間、あたりを強烈な威圧感が支配する。
素早く振り向くと、そこには一人の男が、レイリン達の前で仲間に指示を出す。
それは『天才』揃いの遊撃課相手にあまりにも愚かな行動であり、殺して下さいと言わんばかり、のはずだが、レイリンは動かなかった。
本能的に察したのだ、これは隙があるわけではない、絶対に負けるわけがないと溢れんばかりの自信、その余裕があるからこその隙だろう。

>『クランク6了解。遺才回収』
>『クランク4了解。遺才回収』
>『クランク7了解。遺才回収』
>「――クランク1。遺才回収」

数人の男女が混じり合った声が響くと、目の前からゴーレムのパーツが消えていく。
分厚い装甲、内部機構、途切れることなく続いていた魔力の供給、そして丸い玉。
どんな馬鹿でも、わざわざ回収しにきたのだ、どれだけ重要なモノか言われずとも察するであろう。

>『そいつを逃がすな!暴走ゴーレムから何か抜いてやがったぞ!』

今まで冷静さを失うことなく、的確に指示を飛ばしていたボルトの声に始めて焦りの色がにじむ。
レイリンは応えるまでもなく了承し、隊長角と思われるクランク1と名乗っていた男に飛びかかろうとする。
しかし、それより前にサフロールが動き出す、今まで遮っていた日光に指向性を持たせ、光線状にしてクランク1へと放つ。
その眩い光を前にレイリンは目が眩む。
吸血鬼は日に弱いというのは有名な話である、しかしレイリンから言わせれば大げさだった。
灰になるだとかはあまりにも馬鹿げていて、吸血鬼は昼に弱いといっても夜ほどの力を出せないだけであってまともに活動するのに何の支障もないどころか一般人何かよりは遙かに動ける。
そして、昼には吸血鬼としての性質が弱くなる代わりに、吸血鬼に対して効くと言われているものでも殆ど効かない。
逆に夜で吸血鬼としての性質が色濃く出ているときは、例えば十字架、銀などのものに対しての耐性が弱くなる、最もたかが十字架程度でどうにかなるものでもないが。
だが、今は夜として動いていた最中にこの強い陽光は、直接当たったものではないと言えレイリンにとっては厳しいものがあった。

「くっ……止め……オブテイン」

その中でどうにか立ち上がり、サフロールを止めようと動き出そうとしたレイリンだったが、そこに新たな刺客が現れた。
なんとプリメーラが今にも倒れそうなレイリンに抱きついてきたのである。
それにより完璧にバランスを失い、みっともなく尻餅をつく。

>「レイリン姉さんと姐さんもご無事で何よりですー!」
「ちょっと……今夜相手してあげるから、退いて……ね?」

息も絶え絶えに、プリメーラを押しのけると、プリメーラはクランク1とサフロールに向かって攻撃を仕掛ける。
レイリンの事情を知ってか知らずかは分からないが、不意を突いたサフロールへの攻撃のおかげで、光線状の攻撃は強制的に終わらせられ、レイリンはようやく立ち上がる。

「さてと、じゃあ一気に終わらせましょう」

一対多の戦いにおいて重要なのは波状攻撃、ゴーレムなどの巨大で固い相手には一斉攻撃も必要だが、相手は人、フットワークの軽い敵に対しては休む暇を与えずに攻撃する波状攻撃が一番適している。
それを分かっていたかどうか定かではないが、結果としてそうなったサフロールとプリメーラの連携攻撃(?)により回避先を潰されたクランク1へと瞬時に肉薄し、その速度を乗せた拳を繰り出す。

5 :ストラトス ◆p2OedqKZik :11/05/30 19:38:31 ID:???
>「………強くねーなぁ。俺。………勇気もねー」
>「情けないよな。……一人じゃこうやって対峙すらできないんだからさ」
彼の身体から一斉に大量の魔力が噴出するだがそれはすぐに手に持った槍へと収束していく

>「でもまあ、頑張って臆病の壁を突き崩してみるか……!」
言うと同時に雷のような速度で駆けたかと思うとG-03の脚の一本を踏み台にして

>「これが臆病者の精一杯の勇気だぁぁぁぁあぁぁああああぁぁぁぁあっ!!!」
敵に彼の必殺の力を持つ一撃が当たりそして・・・

>「ざまーみやがれ! 大・勝・利〜〜!!」
クラッカーの音が鳴り響く
>「何だよ本当は強いんじゃん、ヘタレ君! ん? 強いのにヘタレ君っていうのはあれだよなあ。なんて言うの?
プリメっちゃん気絶しちゃったし早く帰ろう!」

敵は今の彼の一撃で倒されたのだと聞いて場の空気が徐々に張り詰めたものではなくなってくる
「……」
自分も自覚はこそしていなかったが、緊張していたようだ。少し気が楽になる感じがした
背負っていたプリメーラも意識が回復したのか。ほんの少しだが身動きする気配がした
やっと終わったのか、そう思った瞬間である

>『どこを見ているのですか? 私はここですよ』

それは余りにいきなりの事でなんなのか理解できなかった、しかしそれはすぐに驚愕に変わる
「…あの一撃でなぜ倒されてない?」
その声は目の前でルインによって倒されたはずである敵のものであった
敵の声が聞こえたのだろうかプリメーラは身体を強ばらせて自分の背中に強くしがみついていた

>『フフフ……どうやらあなた達を見くびっていたようです。楽しいショーをありがとう!
その命、今しばらく預けておきましょう! あなたたちならもっともっと楽しませてくれそうですからね』

>「勝手な理屈をぬかすなよ!俺は、俺達はおもちゃじゃねーんだぞ!」
起き上った彼が敵に向かって叫ぶ、しかし敵はそれよりも先に消えてしまっていた


>「こ、怖かった〜〜〜〜。………い、いや。これは別に俺がチキンなんじゃなくて
 なんか化け物みたいな姿になって第二ラウンドとかになっても、その、困るしな。
 ホントだぞ!別にあんな変人仮面が怖い訳じゃなくてだな……!あっあっ!今笑ったな!!」

彼の必死の言い訳はやはり彼の嘘のつけない人柄を表しているのか、ユニークなものだ
あれだけのことがあったのに辺りは一気に緩いものになった
「だめ…口元がどうしても笑っちゃう」
ついつい自分も噴き出してしまった

6 :ストラトス ◆p2OedqKZik :11/05/30 19:40:01 ID:???
【司令部/格納庫】

あのあとプリメーラや彼(あとで名前を聞いたところルインというらしい)やほかの人たちをG-03に載せて
再び空中に浮いて一気に司令部まで向かった
今は部隊の隊長であるボルト=ブライヤー 氏の指令があるまで各自待機とのことで司令部にいた
そして自分は格納庫に自分用に列車で運搬しておいた工具や甲型ゴーレム、工作機械などを整理し終えて
G-03以外の運搬する際にバラした乙型を組み直しているところだ

「んーやっぱり隊長にいろいろと申請しようかな…」
辺りに人はいないので普段と違い少し大きめの声になっている
「第二格納庫や地下施設の建造許可とあとは…機材とかって部隊の経費で落ちるかな?他には…」

淡々と独り言をしゃべりつつ、的確に効率よく物凄い勢いでゴーレムが次々組み上げられる
なんとも言えない光景がそこにあった


【司令部の格納庫にて指令がでるまで待機、出されればすぐにでも運搬用の装甲ゴーレムで出発可能】

7 :ナーゼム ◇mod3U1utJw:11/05/30 20:20:50 ID:???
例えるなら、クルミだろうか
ヒトの頭とは魔獣にとって存外柔らかい
鈍く輝く処刑台が罪人の頭を簡単に噛み砕こうとした時だ。鋭い衝撃が襲う
噛めない、口を閉じることができない。
ナニかが引っ掛かっているのか?仮にそうだとしても魔獣の力に打ち勝っているソレはなんだ?

周りを見渡せばあの女はニードルデーモンの屍の上にいた
なるほど、合点がいった。低俗とはいえ同じ魔獣、そこらのモノより固い訳だ。
だが、所詮はその程度

「コノテイドォォォ、、小骨ミタイナモンダロォォォォ!!」
ギチギチと針がしなる。力を込めればソレすら砕くこと、訳無い。
しかし、眼前の相手はそれを悠長に見ていない

>「なぁバケモン。腕一本ぐらいならタダでくれてやるよ。釣りもいらないからさ。
 ついでに口内炎もあげるよ。水さえも飲めなくなるかもな、喜べよ」

口に広がる斬撃、刺突、斬撃!

今まで、どんな攻撃も大した怪我をしなかった。それは堅固な体だったからだ。
しかし、この内からの、まるで無防備な所を着いた闇雲な攻撃
今まで魔獣が出会わなかった
最後まで諦めない者の悪あがき

魔獣は悲鳴を上げた


「アアィ゛アアァ゛ァ゛ア゜ァイ゛ァア゜アアッッ」

8 :ナーゼム ◇mod3U1utJw:11/05/30 20:21:13 ID:???
悶え苦しみ、暴れ回る。
その度に牙が男の腕を傷つける。しかし攻撃が緩まることはない

だが、魔獣の口はいつまでも女々しく悲鳴をだすモノではない、相手を恐怖させる咆哮を上げる為にある

「ガ゛アァ゛ァァア゛゛ア!!ナメンナァアアァァ!!!」

血に塗れた口の中に輝く針がへし折れた。引っ掛かりもなくなり勢いよく牙が落ち

――咬みついた。

さぁまずは腕一本頂くか
完全に切断するために力を更に込め


>「バリントンを……はなせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

られなかった
先程のナイフなど比ではない。巨大なゴーレムで殴られたような衝撃が側頭部を襲う

「ガッハァァッッ!!」

ついに捕えた、という油断が災いした。
呻いてしまった、口を開けてしまった、放してしまった。

少年はすぐさま距離をとる。
腕は重傷だが、とにかく生きている。

トドメを…、させなかった…?このオレが…?

ふがいなさに怒りが込み上げ
悔し紛れに腕を振り回して暴れる
周りの全てを壊し、己の腕の傷が更に広がり、

9 :ナーゼム ◇mod3U1utJw:11/05/30 20:22:01 ID:???
剣が抜け落ちても獣の怒りは収まらない

「ガァ! クソガッ、クソガアァ゛ァ゛!!
ナンナンダテメェラ!オレガ怖クネェノカ!!?
ア゛ァ、痛ェ畜生…、オレハバケモノダゾ…、壊スコトシカデキナイ天才ダ…!」

血を吐き、悲痛に叫ぶ声が響く

彼は、寂れ、そして平和な村の平民の出だった。
天才とは無縁の家系に生まれ、天才として、それも一際悍ましい異才として生まれた
異才を覚醒させてから彼は愛されない、否定されつづけた人生だった
父を殺してしまった。母に否定された。故郷に殺されかけた。

自分のチカラが大嫌いだ。こんなチカラを持ってしまった自分が大嫌いだ。
だが、この組織は、この仕事は、この仲間は…
このチカラを必要としてくれた。
期待に応えたくて、今まで何度血に染まっただろう。
これからも変わらない呪われた人生かもしれない。
だが、必要とされることは「救い」なのだ。
だから…

「ココデ、負ケタラ…、オレノ存在ハ何処ニモ無イ!ソレダケハイヤダッッ!!」


砕けた破片が宙に舞い、鋭い破片が二人を狙う
礫の対処に一手遅れるはずだ。
「っ!! ナーーーーーーゼムッッッ!!」

まるでタイミングを合わせたかのようにクローディアの合いの手が入る
途端に場面は変わり、眼前には別の女がいた。
先程と自分と同じ、勝利を確信し、油断した表情をした…


「! モラッタアアァァァァァ!!!」

腕を横に凪ぐ。既にこちらは限界に近づきつつある
この一撃、例えこの腕ちぎれようと決める!!!




【ウィレムを解放、セフィリアの剣も抜けた】
【二人を礫で牽制後、クローディアによってワープ ノイファに決死の覚悟で攻撃】

10 :リードルフ ◆M0g7zNWq0k :11/05/30 21:21:21 ID:???
「西区連中に言っとけ。軍の部隊と合流して怪我人の救出と手当、それから暴走ゴーレムの『元』になった機体の回収。
 中央区のアレはもう使い物にならねえだろうからな……申し訳程度でいいから適当に成果を掘り当てろ」
「ひ、ひゃい……。失礼しました……。」

痛む鼻を押さえ、涙を堪えながらフローレンスは退室した。
夜の姿は、どうも調子が狂ってしまう。エルフの時のまま振る舞おうとするからだろう。
こればかりは直らないだろうなと何度目になるか判らない嘆息が出た。

「さて、皆さんを集めなければ……。」

差し当たって、まずは医務室に向かうことにする。2人とも、そろそろ目を醒ましている筈だ。
なるべく音を立てぬよう、医務室のドアをゆっくり引く。

「失礼します、遊撃課のフローレンスで……。」

自己紹介しかけて、フローレンスは文字通り凍りついた。
場所を間違えた。その言い訳が通じたらどんなに良かっただろう。
ルインが、プリメーラを押し倒していた。しかも服がはだけている。
フローレンスは迷わず、ルインに大股で歩み寄り、きつい平手をお見舞いした。

「神聖な医務室で、しかも怪我人になんてことを……。恥を知りなさい!」

顔に紅葉を散らしルインを叱りつける。まさか事故だったとは露ほどにも思っていない。
緊迫した空気が張り詰める中、やにわにロキによって豪快に扉が開かれた。
その場で瞬時に空気を読んだかは分からないが、ロキは手を打って呑気そうに笑った。

「東方の格闘技ジュードーってやつだね! 面白そう! 今度ワタシも誘ってよ!」
「……じゅ、じゅーどー?かくとーぎ?」
「あ、あの、ペンダントを探してて…おにいさんが持ってるんじゃないかって…その……」

追い打ちをかけるように、プリメーラ自身が事故であることを説明した。
何てことだ。とんでもない勘違いをしていた事を諭され、更に顔が朱に染まる。
形容し難い空気が流れ、フローレンスはおろおろとするばかりで。

「ご、ごめんなさい……」
「す、すみませんでした……。」

結局二人は揃って、ルインに頭を下げるのだった。

11 :リードルフ ◆M0g7zNWq0k :11/05/30 21:21:47 ID:???
【格納庫→中央区】

「ストラトスさん、いらっしゃいますか?」

格納庫に入室すると、ストラトスが訝しげにフローレンスを見る。
まさか目の前の女性がリードルフである事を知らない。頭を下げて自己紹介する。

「初めまして、遊撃課非常勤のフローレンスです、リードルフの姉ですわ。どうぞお見知りおきを。」

早速ですが、と西区に集っていたメンバー達を見回し、任務の概要に入る。
中央区に向かい、怪我人の救出を最優先する事を説明し、リードルフとは後で合流すると流しておいた。
そしてストラトスの運搬用ゴーレムに乗り、面々は中央区へ向かう。

「あれは……遊撃課の方でしょうか?」

フローレンスの視界に、背中に羽を生やした少年が映る。腕章は遊撃課のものだ。
少年は戦っているらしい。戦いは既に収束したものと思われたが、どうやらまだ終わりではないらしい。
一足早く降り立ったのはプリメーラだった。しかし方向は遊撃課の腕章をつけた女性たちの元だ。
金髪の女性に抱きついて甘えたかと思いきや、今度は敵と思わしき男と少年に瓦礫を放っている。
敵は彼らに任せよう。何より『今』は人間であるフローレンスは判断し、ルイン達へと振り向く。

「これより戦線の渦中の人達を避難させます。ストラトスさん、私を緊急避難所まで!
 皆さんは怪我人を運んできてください。治療も手伝ってくれると助かります……ルインさん貴方もですよ?
 スイさん、貴方はその鳩で東区や西区の怪我人も運ぶよう伝えてください。では……状況開始です!」

ロキ達もゴーレムから飛び降り、フローレンスは中央区の緊急避難所に降り立つ。
怪我人が皆、治療を待っていた。両頬を叩いて緊張をほぐし、集まった怪我人に大声で伝える。

「皆さん、応急手当をしますので一列に並んで下さい!重傷人を最優先に!」


【中央区に到着。緊急避難所で手当てを開始】

12 :スイ ◆nulVwXAKKU :11/05/30 22:57:26 ID:???
鼻歌を歌いつつ、窓から窓へと飛び移る。
スイは鍵の開いた窓を探していた。

「このあたりにありそうなんだがな…」

現在ブラピ号は優雅に空を滑空中。
ほどよく開いた窓を見つけ、もう一つ上の窓辺にずり落ちつつぶら下がる。
その体勢のまま軽く窓を蹴って部屋に着地した。
そこには…なんとも言えない光景が広がっていた。
ルインが、プリメーラを押し倒している奇妙な事態を、スイは冷静に対処しようとした。

「…発情期か。」

…冷静すぎた。

「子作りはいいことだが…場所は選べよ。」

フローレンスに張り倒されたルインを見ながら言った。
そしてしどろもどろになっている二人を見て一言。

「そんなこともあるさ。」

そしてロキに向かって言った。

「是非その格闘技、今度教えてくれないか。」

じゅーどー、という響きに魅力を感じたスイだった。

【中央区】

光の一線が、ゴーレムの上にいた人物を射抜こうとする。
続いて瓦礫が飛ぶ。

「……。あー、と。」

状況から見て、この戦闘状況は問題なさそうだと判断する。
そこにフローレンスの声が聞こえた。

>「スイさん、貴方はその鳩で東区や西区の怪我人も運ぶように伝えてください」

13 :XC ◆nulVwXAKKU :11/05/30 23:08:07 ID:???
>「では…状況開始です!」
「了解。それと」

スイは鳩を指さし、言った。

「こいつにはブラッディピース号という立派な名前があるんだ」

それだけ言うと満足したので、ブラピ号に話しかけた。

「おまえの仲間たちにも力を貸してくれと言ってくれ。」

わかったと言うように、ブラピ号は羽を広げ、そのまま飛び立つ。
近くの森からは、何羽もの鳩が、西区と東区に向かって飛び立っていく。
きっと鳩たちは怪我人を誘導してくれるはずだ。
空に飛び立ったのを確認すると、スイは、フローレンスを補助するために、緊急避難所へと足を向けた。

【鳩たちが西区と東区へゴー。怪我人を誘導します。】
【スイはフローレンスの手当の補助にまわります。】

14 :ルイン ◆5q.yyAvL6. :11/05/31 22:20:50 ID:???
(……………ん…………ん?)

違和感を覚えたのは眠り始めてしばらくしてからだった。自分の上で何かが動いている。
寝起きでまともに働かない頭で何があったのかと億劫そうに首を動かすと

人が上にいた。

目があった。

思考が停止した。

叫ぶより早く口と鼻を塞がれる。息苦しさと寝起きの視界のぼやけで相手の顔がはっきり見えない。
何もわからない、という事実がルインの中を焦りと恐怖で満たしていく。

>「お願い騒がないで!これにはワケが……!」

(ま、まさか取立人が俺の内臓を売り払うつもりで…!?)

ルインにとって心当たりはそれしかない。
実際そんなことはまずありえない。が、突然の出来事で冷静さを欠いていた。
故に考えるより先に反射的に身体を動かし激しく抵抗していた。
足を動かし、相手の手を掴み、力任せに押す。結果───ベッドから落下。

「うおわぁぁぁっ!?」

しかしルインとて素人ではない。
情けない声を上げつつも、反撃を食らわぬよう相手を抑え込むことに成功した。
押さえ込んだ状態で恐怖からか呼気を荒げるその姿は色々とアブナイ。本当にアブナイ。
ふと相手の顔を覗き見る。え、と目が丸くなった。何故ならば不可解な行動を起こした人物が

>「あいたたたた…… !」

小さい娘もといプリメーラだったからだ。

「なななななななな何してんんんんんのっ!?何でっ!?意味がわかんない!」

「何故」とか「どうしてなんだ」といった疑問の台詞しか頭には浮かばず考えがまとまらない。
起きたばかりで頭がまだぼうっとしていたのもあったのかも知れない。

>「失礼します、遊撃課のフローレンスで……。」

二度のノックと共に現れたのは淑やかな女性だった。
女性は遊撃課の人間らしく丁寧に自己紹介を始めるが、場の惨状を見て瞬時に固まった。
そこで漸くルインも状況を飲み込みはじめたのか顔を引き攣らせる。

>「神聖な医務室で、しかも怪我人になんてことを……。恥を知りなさい!」

「え?え?い、いや、これは違うんです!これはただの事故といいますか……!違いますって!ちが」

果たせるかな、必死の説明はフローレンスの心に響くことなくばちんの快音と共に情けなく崩れ落ちる。
好感度が底を割る情景を垣間見た気がした。泣きたくなった。
そもそもパンツ丸出しの男の説明に耳を傾ける人間などいない。説得力なぞ全くない。

「うっ…ぐぐ……なんで俺が叩かれなきゃいけないんだ……」

初対面の女性にいきなり平手を貰ったのがショックだったらしく目の端には涙が溜まっていた。

15 :ルイン ◆5q.yyAvL6. :11/05/31 22:25:25 ID:???
涙目になりながら窓に目をやると影が見えた。
人かどうかは判然としなかったが今のルインにそれを確かめる余裕はない。

>「子作りはいいことだが…場所は選べよ。」

そよ風が医務室に吹いた同時に窓から華麗に床へ着地。窓の外にいたのはスイだったらしい。
窓から入ってくるというスイの奇行は現在の緊迫した空気の中ではよくある日常の風景に感じられた。

「知らん!一生涯童貞の俺にそんなアドバイスいら……いやそんな話をしてるんじゃない!」

いよいよをもってルインも調子がおかしくなってきたらしい。
緊張した雰囲気の中で時間はただただ過ぎていく。ロキはそれを崩すように絶妙なタイミングで現れた。

>「プリメっちゃんにルインく〜ん、次の依頼だよーん!」

ばんとノックもなしに扉が豪快に開く。しかし異常なまでの温度差に誰も言葉を発しなかった。
ロキもしばし沈黙し、やがて考えがまとまったとでもいうように手をぽんと叩いた。

>「東方の格闘技ジュードーってやつだね! 面白そう! 今度ワタシも誘ってよ!」
>「……じゅ、じゅーどー?かくとーぎ?」

やった、とルインは心の中で救いの手を差し伸べてくれたロキに心から感謝した。
意図的であるのか偶然のものであるのかは判然としなかったが。多分後者だ。
畳み掛けるように間髪入れずプリメーラの説明が入り、事態は全て丸く収まった。

>「ご、ごめんなさい……」
>「す、すみませんでした……。」

「い、いや……いいですよ、勘違いってよくあることだし………」

頭を下げる二人にどこか申し訳なさそうな顔をする。
しかし一つだけ腑に落ちないことがあった。

(何で俺の口塞いだんだろー……あ、後服とかどうしてあんなことに?)

未だ納得がいかず頭には疑問符が浮かんだまま。
言ってはいけないような気がしたのでルインは心の奥にしまっておくことにした。


【中央区】

ストラトスの運搬用ゴーレムから降りると、遠くにいる他の遊撃課の人達に恐る恐る一瞥をくれる。

(筋骨隆々のおっさん……傷だらけのおっさん………やばいおっさんだらけ…ひいいい!!)

───がそんなことはあるはずもなく。
むしろルインが想像していたようなむさ苦しいおっさんだらけではなく、むしろその逆。
女性率の多いことにようやっと気付きほっと胸を撫で下ろす。
そしてプリメーラが節操なく課員の女の子達に抱きつくのをみて思わず苦笑い。

(………甘えてんのかな。まあ、子供だし。)

まさか同性愛者だとは夢にも思わない。

16 :ルイン ◆5q.yyAvL6. :11/05/31 22:32:01 ID:???
「い、いや……安心しちゃいけない……もしかしたら戦うかも知れないんだぞ……!」

ルインは怪我人の救出とゴーレム回収優先だから、と半ば強引に連れて来られたが全く信用していなかった。
訝しそうに敵がいないか周囲を何度見回す。一体誰と戦っているんだろう。
向こうとは大分距離があったが、まだ戦闘が終わっていないらしいことが一層ルインを不安にさせる。

>「これより戦線の渦中の人達を避難させます。ストラトスさん、私を緊急避難所まで!
> 皆さんは怪我人を運んできてください。治療も手伝ってくれると助かります……ルインさん貴方もですよ?
> スイさん、貴方はその鳩で東区や西区の怪我人も運ぶよう伝えてください。では……状況開始です!」

「ほっ………良かった……嘘じゃなかったのね………」

随分と大きな安堵の声を漏らす。理由は勿論救助優先だからだ。
勿論そんな浮かれた気分で何故自分だけ釘を刺されたのかなど考えもしない。
早速与えられた任務をこなそうと足を動かす。負傷者はすぐに見つかった。

「ここにゴーレムの飛翔機雷に巻き込まれて怪我した奴がいる!重症だ!」
「任せてくれ!今行くぞぉぉおーーー!!」

喜び勇んで味方の帝国兵のところへ一直線。今までとは別人のようである。
勇気は欠片もないが人を助けようとする優しさくらいはルインも持ち合わせていた。

「俺は応急手当くらいしか出来ないから、止血して避難所連れて行こう」

てきぱきと応急手当を済ませ怪我人を乗せる即席の担架を作り上げた。

「って、担架は二人いないと使えないや。どうしよう………」
「俺が一緒に運ぶよ。だから大丈……いたっ!」
「肩を怪我してるんだから無理しない方がいいですよ。あ〜〜〜困ったな…どうしよう……」

くだらない事で途方に暮れる帝国兵とヘタレ。そこには天才のての字もない。
思わぬところで立ち往生を食らっていると一人の筋肉質の男が担架の端を掴んだ。

「あ、アンタは……?」
「“あんた”?あんたってェのは俺のことかいッ!?俺の名はたてぶえのジョセフ!
 ロキさんの命令で救助活動中だ!初対面でぶしつけだがねェ〜〜〜ッ!手伝ってやるぜ!」

軍装ではない、民間人の出で立ちをした男が加わる事により解決した。
普通ならば訝しむがロキさんならありえるな、と一人で納得した。

いざ担架を持とうとしたところで、瓦礫に山に足を滑らせ綺麗に転んだ。

「ちょっ………大丈夫か!?」
「だ………大丈夫れふ……さあ避難所へ急ぎましょう。すぐ近くじゃまだ戦闘やってますから……」

と、爽やかな笑顔で答えるルインの額から赤色の液体がだらだらと皮膚を伝っていた。
破片で頭を切ったらしい。切り傷は少し深いらしく虚ろな目で明後日の方向を見つめている。
これには流石のお調子者のジョセフも焦った。

「全然大丈夫じゃねーだろうが!!ロキさーん!怪我人が増えてます!」
「ははは、いや大丈夫ですから本当に……ほら、俺って髪の毛が赤茶色だから……血っぽいから」

ルインは至極真面目な顔で言葉を搾り出しているがどう見てもまともではない。
ついでにその気概を戦闘中に見せるべきだ。


【負傷者が一名増えました】

17 :フィン=ハンプティ ◆yHpyvmxBJw :11/06/01 23:11:11 ID:???

レイピアと共にクローディアへと向けて疾駆するノイファ。
血を流すフィンは腕を組み、快活な微笑を浮かべながらそれを見送る。
その瞳に有るのは、ノイファが負ける事は無いであろうという一種の「信頼」であった。
防御の遺才である『天鎧』の血を色濃く受け継いでいるフィンだからこそ、判るのだ。
ノイファの「攻撃」面での強さと厄介さが。知識ではなく、本能的な部分で。

だから、周囲を見渡す程の余裕が出来た
そして、見てしまった。

「……な、っ、ウィレムっ!!?」

魔獣に腕を喰らわれんとしているウィレムの姿を

無事ではある様だが、その腕は鮮血に染まり、失血のせいで肌の色は蒼白と化している。
遠目にも判る。それが深い傷であるという事が。

「――――てっ、めえええええええっ!!!!!
 ウィレムに……俺の後輩に何してやがるんだッッ!!!!!!」

ウィレムの速度を持ってすれば、攻撃を喰らう事は無い。
そう思って魔獣へと向かわなかった。その判断が、裏目に出てしまったのかもしれない。
そしてその結果、ウィレムは傷ついた。

理解した瞬間、仲間を傷つけられたという事実への激怒か、
フィンは明朗な彼には珍しく、強い怒気を孕んだ声を出した。
傷ついた自身の傷の事など忘れたかの用に魔獣へと駆け出そうとしたが

>「パンプティ!あんたに教えてあげるわ!あたしは仲間想いなんかじゃないけれど――商品は大事にする性質なの。
>どいつもこいつもあたしの大事な商品をーっ!そりゃ傭兵は使い捨てかもしれないけどね!無駄遣いして良い道理もないわ!
>あんたが全てを守るなら、あたしはあたしの財産を守る。天鎧なんかじゃ及ばない、金のかかった守りを実現してやるわ!」

だが、期せずしてその必要は無くなった
クローディアが叫んだその言葉と共に、魔獣ナーゼムがフィンとノイファの前に突如として君臨したからだ。
恐らくは召喚と似たような現象なのだろう。
そして、呼び出された魔獣は、ダメージを負ってはいる様だが、未だその凶悪な力は健在している。
それは見る者に恐怖と絶望を味わわせるには十分な迫力であった。

>「! モラッタアアァァァァァ!!!」

そうして、薙ぎ払う様な豪腕、命を叩き折るかの如き一撃が繰り出される
先程の砲撃と同じく……否、その攻撃面積を考えれば、それをも上回るかもしれない
まさしく破壊に特化した一撃。それは容赦無くノイファへと襲い掛かり

18 :【変幻承腕】wiki:11/06/01 23:13:15 ID:???
「――――させる、かよっ!!俺は言った! ノイファっちをどんな攻撃からでも守るって!!
 んでもって、これ以上、仲間は傷つけさせねぇ――――例え、俺の命にかけても、だっ!!」

「よく見とけクロなんとかっ!!
 テメェには、金よりも大切なモンを、俺が気付かせてやるっ!!!!」

刹那の後の交錯の後――――

その腕を、爪を、フィンが受け止めていた。
負傷した足で走ったからだろう。右足は鮮血で赤色へと変色しており、
魔法の雨で負った傷口からも血は流れている。

だが、それでも間に合った。

正に命がいらないかの暴挙だったが、しかし、フィンは魔獣からすれば遥かに脆弱な身体で、
魔獣の渾身の一撃を確かに受け止めていた。
超絶的な技巧を用いて、豪腕の衝撃を地面に逃がしたのだろう。
地面には円形にひび割れが生まれている。爪は――――ノイファには届いていない。
そう、フィンは確かに受け止めたのだ。

――――ただし、その代償は大きかったが。
よく見れば、魔獣の爪の一本がフィンの右脇腹を抉ってていた。
臓器は傷ついていない。致命傷ではないだろうが、それでも夥しい血が流れ出る。
持久戦になれば、失血で最悪命を落とす程の傷だ。

「……今度は、こっちの番だああっ!!!!!!」

だが、フィンはそんな様子はおくびにも出さず、その手甲を即座に魔獣の爪と爪の間に叩きつけた。
指の隙間というのは、どんな動物でも基本的には脆い箇所である。
如何なフィンが攻撃に向いていないとはいえ、頑健な金属を至近から渾身の力で叩きつければ、
それなりのダメージは与えられるかもしれない。

「ノイファ――――っ!!!!!」

膝を付きながら、フィンは背後のノイファに声をかける。
鎧は役目を果たした。次は剣の番だ。

【フィン、全身負傷及び、右足、右脇腹へのダメージ大。
 ナーゼムの一撃を受け止め、一撃反撃を入れる】

19 :フィン=ハンプティ ◆yHpyvmxBJw :11/06/01 23:13:54 ID:???
/わーい、名前間違えたーorz

20 :ロキ・ハティア ◆9pXiBpy0.U :11/06/02 00:42:45 ID:???
>10
フローレンスと名乗る綺麗な女の人が現れた。リーフ君のお姉さんなんだって。
でも姉弟なのになんで種族が違うんだ? もしかしてリーフ君はチェンジリングなのか?

チェンジリング……妖精の取り換え子。ここでの意味は人間の両親から生まれたエルフの事だよ!

>12
>「是非その格闘技、今度教えてくれないか。」
「実はワタシもやった事はないんだけど今度一緒にやってみよう! きっと楽しいよ!」

>11
ストラトスの作ったらしい運搬用ゴーレムで移動する。
「すごいすごーい! 空飛ぶゴーレムが作れるって事はー天空の城も作れちゃうんじゃない?」

>13
>「こいつにはブラッディピース号という立派な名前があるんだ」
「血塗られた和平……多くの犠牲の上に勝ち取った平和……深い!」

>16
空飛ぶ絨毯を使って楽々と怪我人を運んでいると、声がかけられた。
>「全然大丈夫じゃねーだろうが!!ロキさーん!怪我人が増えてます!」
>「ははは、いや大丈夫ですから本当に……ほら、俺って髪の毛が赤茶色だから……血っぽいから」
「おわっ!?」
ルイン君は緊急避難所に強制連行と相成った。

避難所では多くの怪我人が手当を待っていた。とてもリーフ君一人では間に合いそうにない。
とりあえず叫んでみた。
「気合いだ、気合いだ、気合いだ―――ッ!」
「ええっ!? 気合で治ったら苦労しませんよ!」
と、ジョセフさん。

「確かにそうだね。どんなに勇気100倍でも負ける時は負けるし死ぬときは死ぬ。現実は残酷だ。
でもそれが当てはまらない世界があるんだよ。でも彼の地では想いが形になる……。
んでもって今この辺は少しだけその世界に近い状態になってるね」
おそらくは偽りの夜の原因となった何かの大技の余波か。この魔力は堕天使さんのものだろう。

「奇跡の霊薬ポーションだよ! どんな怪我も一瞬で治るよ!」
意味ありげな青い瓶に入った霊薬をルイン君をはじめとする怪我人に配って回る。
と見せかけて本当は何の変哲もない水である。
さてさて、プラシーボ効果の実験です。どれ位の割合の人に効果が出るかな?

【ルインを緊急避難所に担ぎ込んだついでに怪我人相手にプラシーボ効果の実験を始める】

21 :ウィレム ◆uBe66UnnCY :11/06/02 06:16:12 ID:???
>「ガッハァァッッ!!」
浮遊感。
解放されたことに気づくのと、地面に着地するのは、ほぼ同時だった。
本能的に距離を取り、そして気付く。
――走れる?

さっきまで、息も絶え絶えで。いつ気を失ってもおかしくない状態だったのに。
視界ははっきりしている。息も切れていない。上から下まで、違和がない。
左腕が完全に使えずダラリと垂れ下がっていることを除けば、「元気なウィレム」がそこにいる。

理由はわからないが、まだ走れるみたいだ。
ただ、同時に。本能的に理解する。
こんなの、長続きするはずないと。

>「ココデ、負ケタラ…、オレノ存在ハ何処ニモ無イ!ソレダケハイヤダッッ!!」

「……俺たちが勝つことで存在がなくなる?どれだけあんたの存在ってちっぽけなんだよ。
 はっ、なら俺の全身全霊を賭けて、お前のその存在を否定してやるよ!」

――全てを失なったとしても、それでも、何かは残るものなんだよ、絶対に!

飛んできた瓦礫など全く苦にすることはない。避けることなど造作もないのだ。このウィレムには。
いざ反撃に移ろうとしたところで……隣に立つ人物の様子がおかしいことに気付く。

>「目が……! 目が痛い! 頭が……!」

「せ、セフィさん?」

さすがのウィレムも目を丸くする。さっきまであんなに元気だったのに、まさかさっきの礫が?
いや両目を押さえている。いくらなんでも同時に両の瞳に礫が当たるなんてことはないだろう。
頭、も?

>「ああ……あ、あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

いくらウィレムでも焦る。
セフィリアの攻撃力を当てにしていたところが十分ある。ウィレムのナイフは怪物の口の中に置いてきた。
そのセフィリアが戦えない?どうする?どうする?どうすればいい?

ふと気付くと目の前に居たはずの怪物がいない。視線を遠くにやると、さっきまで居なかったゴーレムが。
そして。

>「イチャついてんじゃないわよーーっ!忌々しいから可及的速やかに、消えてなくなれーーーっ!!」

砲撃が向かってくる。こちらに。すぐに逃げろ、だがここには蹲るセフィリアがいるんだぞ。
近づいてくる!着弾する!間に合わない――!

爆発。

22 :ウィレム ◆uBe66UnnCY :11/06/02 06:16:35 ID:???
「はは……遅すぎっスよ」

セフィリアを右手だけで抱え、乾いた笑いを浮かべる。『縮地』に、「間に合わない」は存在しない。
この遺才をもってすら本当に間に合わないのなら、それを認識することすらないからだ。

視界の隅にあの怪物が映る。瞬間移動でもしたのか?あの丸太のような腕でもって、攻撃を仕掛けていた。
そして当然、あちらにはセンパイがいる。重傷のようだが、守り抜いていた。
――嘆息。
もしそこに居たのがウィレムだったらどうだった?2人揃ってぐしゃりと潰れて御臨終。
センパイだからこそ、護れるのだ。どんなに強い力が働いても。
その傷については心配ではあるが、センパイだから大丈夫だろうと考えてしまうほどに。
さっき怪物に拘束されていた時も、センパイの声は聞こえていた。俺のことも、気にかけてくれる。
いつまでも、越えることは出来ないだろう。ウィレムの尊敬する人だ。

そして、考えてしまう。護られている人のこと。その人を護れるのは自分じゃないこと。
少しだけ、ほんの少しだけの嫉妬の炎が、ウィレムの胸を焦がす。


「大丈夫スか?……ただ、あんなのに対抗できるのは、セフィさんだけだから。大丈夫じゃないと、困る」

セフィリアに声をかけつつ転がっていた、眼鏡を拾う。枠に歪みはあるものの、硝子に割れなどはない。
現状ではセフィリアは戦えそうにないが、かといって余裕などウィレムにはないのだ。
ゴーレムに対抗できるのは、おそらくゴーレムだけだろう。セフィリアのゴーレムに目をやる。
ここからそれほど遠くない場所に。ほぼ無傷の状態で聳えている。
逡巡は要らない。セフィリアを抱えたまま、ウィレムはそのゴーレムの側へと走る。

「俺が時間を稼ぐっスから……なんとか、元気になってくれ」

セフィリアを降ろし、眼鏡をかけさせる。目が目がと言っていたので、これで少しはマシになるか?
見渡す。向こうの方。背中合わせのように並ぶゴーレムと怪物。
その近くに、転がっている、物体がある。さっきまでクローディアが背中に担いでいたモノだ。
留め具の部分が破壊されている、さっきの戦いで落とす羽目になったのだろうか。
金庫を守るように並び立つ2つの巨躯。常で考えるのなら、そんなところに近づくのは自殺行為だ。
だが、考える時間すら惜しい。

瞬時に金庫の元へと向かう。気づく頃には、ウィレムはもうそこにいる。
金庫に手を掛ける。予想通りだがむちゃくちゃ重い。ましてやこっちは片腕だ。
だが、それでも力を込める。歯を食いしばる。手から血が出る。
持ち歩こうなんて思わない。少しだけでも持ち上げることさえ出来ればいい。それだけ出来れば――、

――跳べる。

ウィレムの足下からの推進力で、金庫ごと、高くへ。高くへ。遥か上空へ、跳んでいける。

23 :ウィレム ◆uBe66UnnCY :11/06/02 06:17:01 ID:???
跳躍、のちの最終到達地点。
もう避難は完了した、市民は無人のダンブルウィード東区。その上空で、ウィレムは声高々に張り上げる。
この金庫が全財産だとは思わないが、財力を武器としているのなら、少しでも失われると、辛いだろ?

「さぁ皆々様お立会い!ここでとびっきりの良い知らせだ!
 魔物に襲われてこの街、色んな被害が出ちゃっただろう?壊れたモノを直すのだってタダじゃない!
 そんな時だ!なんと!あの大豪商のメニアーチャ家の方が、復興支援をしてくれるって仰せだよ!
 こりゃもう足を向けて寝られやしないね!さぁ早いもの勝ちだ!」

もちろん市民に聞かせている訳ではない。すべては、地上のクローディアへと。
まるで魔導拡声器でも使用したかのように通る声で叫びつつ、ウィレムは金庫の引き出し口に手を掛ける。
何の予備動作もなく金を取り出すのは見ていた。つまりは、そういうこと。予想通りだ、鍵はかかっていない。
体に括り付けていたのならそう盗まれたりはしないし、何度も取り出さなくてはいけないその遺才からか。
常日頃持ち歩く財布にまで鍵を付け、毎回開錠して支払う輩がいるなら、それは心配性の枠を越えている。

銅貨が、銀貨が、金貨が、紙幣が。まるで雨のように、零れ落ちてゆく。
一陣の風が吹いて、つむじを巻いて。四方へ、八方へ、十六方へ。
とてもじゃないが、拾い集めきれやしないだろう。
金をばら撒いて、ばら撒いて、ばら撒いて、金庫の中が空に近づいて。
最後の一掴みでも、遥か遠くに投げようとして。

――そして、糸が切れた。

なぜこんなに動けたのだろうか、とんと見当が付かないが……限界だったのは、ずっと前からだ。
理由など考えても堂々巡りだ。神様が俺に力を与えてくれたということにしよう。無神論者だけどな。
結果として、もう指一本すら動かせない。目の前が霞む。色づいていた世界が、白黒に変わっていく。
俺がやれることはやった。あとはみんなにやれるだけやってもらおう。また笑顔で会えるといいな。

(とりあえず……もう……疲れた……かな……)

ここは空中。叩きつけられたら重傷どころの騒ぎではない高さだ。
それ以前に、ほぼ間違いなくあのゴーレムに撃ち落とされるんじゃないだろうか。
だけど、もう何も出来ないから。
ふらふらと漂いながら、落ちながら。
ウィレムは瞳を閉じる。
満足げな表情を浮かべて。

【気絶】

24 :アルテリア ◆U.mk0VYot6 :11/06/02 07:59:56 ID:???
ゴーレムが沈黙したのを確認するとアルテリアは静かにため息をし、スティレットに視線を移す。
「レイスティンガー…カ」
確認するようにその名をつぶやくと、徐に矢筒に手をつっこみあるものを取り出す。
「いいセンスダ」
そういってスティレットにペロペロキャンディーを渡した。
「さぁテ、あのガチョウがどんな顔をしているか見に行くとしよウ」
そういってアルテリアは意気揚々と先ほどまでいた場所に戻っていった。

しかし、現場の状況は彼女が予想を裏切った。
大胆不敵に現れた敵によって言いようもない緊張感がただよっている。
ボルトの命令を受けすぐに射ろうとするも
>>「レイリン姉さんと姐さんもご無事で何よりですー!」
「離れロ!この豚女ッ!」
状況を省みずにタックルしてきたプリメーラによって邪魔される。
それを口汚く罵り蹴り飛ばし、改めようとするが、
サフロールの放った光、そして、プリメーラが飛ばした岩によって標的が完全に隠れてしまった。
「…チッ!!!」
不愉快そうに舌打ちし、しぶしぶ怪我人の救助にあたる。

敵の増援を発見した以上、この緊急避難所も安全とはいえず
アルテリアはそのまま避難所の警護についた。
>「奇跡の霊薬ポーションだよ! どんな怪我も一瞬で治るよ!」
>意味ありげな青い瓶に入った霊薬をルイン君をはじめとする怪我人に配って回る。
>と見せかけて本当は何の変哲もない水である。
「神も奇跡もないんだヨ!」
すぐさまロキに接近し、渾身の拳骨を落とした。
「どこの世界に酒瓶に薬を入れる医者がいるんダ!」
実は、ロキが渡していた瓶はアルテリアが最近ドハマリしていた酒の瓶だったのだ!
「何をするだぁー!!!」
ジョナサンが吼える。
「黙レ!この第一部捕虜!悔しかったら黄金長方形の回転でもやってみロ!」
先ほどまでのイライラが爆発したのか!怒りが露になり、その矢先がロキではなく
指揮者を殴られ燃え尽きるほどヒートしているジョ(略)ジョに向けられている。
【避難所を警備中、ロキの軽率な態度にキレるが、怒りの矛先はジョジョへ】


25 :セフィリア ◆LGH1NVF4LA :11/06/02 19:54:20 ID:???
激痛が襲う、眼も開けられない
いままでは目が痛くなることはあったが、ここまでの痛みはない
(こんなときに……不甲斐ない!!)
頭の中で毒づいてもしかたがないが、痛みで声に出すことは出来ない

>「イチャついてんじゃないわよーーっ!忌々しいから可及的速やかに、消えてなくなれーーーっ!!」
メニアーチャのお嬢様の声がするがウィレムを連れて逃げないと! その想いに身体応えてはくれない
(不甲斐ない! 不甲斐ない! 不甲斐ない!)
自分は貴族で騎士だ! 民を守る使命がある。友を守る使命がある
……いつもならそんなことも考えていただろう
ゴーレムが近づく……セフィリアは動くこともできない

>「はは……遅すぎっスよ」
身体が急に浮き上がる。ウィレムの声がするのは彼が助けてくれたからだろう
ぎゅっとウィレムの服を掴み、振る落とされないようにする
「あ……り…が…とう、わたし……かるいで……しょう?」
振り絞るように声をだす、痛みが増し思考力が薄れていく、せめての軽口

>「大丈夫スか?……ただ、あんなのに対抗できるのは、セフィさんだけだから。大丈夫じゃないと、困る」
ウィレムが落とした眼鏡をかけてくれる
「これで……大丈夫。ありがとう……ウィレム」
立とうとする……ふらつく足、叩いて奮起させる。やっとゴーレムの足下に立つ
彼の期待に応えたい! その想いだけで彼女はゴーレムに昇る

>「さぁ皆々様お立会い!ここでとびっきりの良い知らせだ!
 魔物に襲われてこの街、色んな被害が出ちゃっただろう?壊れたモノを直すのだってタダじゃない!
 そんな時だ!なんと!あの大豪商のメニアーチャ家の方が、復興支援をしてくれるって仰せだよ!
 こりゃもう足を向けて寝られやしないね!さぁ早いもの勝ちだ!」

始まるウィレムのパフォーマンス、敵の資金を使うその行動はとても滑稽で戦場という超緊張感が漂う空間でさえ
とてもおかしかった

セフィリアは笑うのをこらえながら、操縦櫃に身を埋めた
「さあ、サムちゃん。友達の期待に応えないといけないよ! 私とあなたなら出来る。さあ、悪いゴーレムちゃんを退治しようか!」
自分のゴーレム『サムエルソンmk3』に話しかける。語りながら魔術回路を次々と起動させていく、蒸気圧も問題はない
各部の魔術回路もオールグリーンを示す
さあ、私の時間の始まりだ
(ウィレム……時間稼ぎをありがとう)
彼の姿を探す……空で金庫の中身を投げようとしていた……が、急に糸が切れた人形のように落下し始める
「うそっ!」
ゴーレムを急速で移動させ落下点で待ち構える手のひらで相対速度を合わせ衝撃が内容にキャッチする
「ふう……あぶなかった」
ウィレムを狭い操縦櫃に入れると敵対するゴーレム『ミドルファイト3』に向き直る
「ゴーレムで敵対したのが運の尽き!私のサムちゃんが成敗してあげます!」
セフィリアはゴーレムに乗るとテンションがあがる

26 :ノイファ ◆QxbUHuH.OE :11/06/03 12:35:32 ID:???
ブツリ――と、鋼の剣先は狙い違わず、遣い手の意思を忠実に実行した。
石畳へと落下した金庫が重々しい悲鳴を奏でる。

>「まさか……本当に……?」

地面に腰をつけたままのクローディアが、妙に熱の籠もった視線でノイファを見上げ、声を絞り出す。

「うん?ああ――」

ノイファは笑みを崩さず、しかしレイピアの切先は突き付けたままで、声に応じた。

「――ええ、もちろん。きちんとエミリーちゃんに謝るのなら、キレイさっぱり水に流してあげるわ。」

胸を反らせ、開いてる片手でぽんと叩く。
やや尊大に過ぎる調子かもしれないが、意思が挫けかかっている相手ならば反抗の芽を潰すのに丁度良い筈だ。
だが、そんなノイファの思惑とは裏腹に、クローディアの視線からは音を立てて熱が引いていく。

(え?あれえ?対応を間違いましたかねえ……)

右眼を苛む熱量はいまだ甚大。今日の使用は最早不可能だろう。
だから余裕の態度も、寛大な素振りも、全ては戦闘を回避するための虚勢。
今一度あの物量で攻められたら次を凌げる保障はないからだ。

>「アアィ゛アアァ゛ァ゛ア゜ァイ゛ァア゜アアッッ」
>「っ!! ナーーーーーーゼムッッッ!!」

そして魔獣の咆哮が場を席巻し、その声に気を取られた一瞬の隙をつかれ、止まっていた戦いの刻が再び息を吹き返す。
翻る金色と銀光。貨幣を介した召喚術。
果たして、クローディアは岩の鎧と魔導砲の剣を備えた巨兵を従え――

「こうして睨み合うのは二度目だわね……。」

――ノイファは本日二回目の、そして今度は至近距離で、ナーゼムと対峙するはめとなった。

魔獣の口から滴る夥しい量の血が大地を朱に染める。
ナーゼム自身のものか、それとも戦っていたセフィリアとウィレムのものなのかは判らない。
ただ、目の前の魔獣は激しい怒りに支配されている。その一点だけは確実だった。

>「! モラッタアアァァァァァ!!!」

「ふぅん。アナタ、案外流暢にしゃべれたのね!」

皮肉一つを残してノイファはレイピアを放った。無二の名剣といえども、ナーゼムが相手では荷が勝ちすぎている。
大地を穿つ剣。唸りをあげて迫る巨木の如き魔獣の豪腕。

前髪が揺れ、顔が引き攣る。背筋が粟立ち、口端が歪む。
回避する術も場所もない。ならば――

(――斬り拓くほか道はなし、ですねえ)

半ば捨鉢ともいえる覚悟。歪んだ口の端が釣り上がる。
引き延ばされる時間と知覚。ノイファは襲い掛かる絶死の一撃に対し、迎撃の構えを執った。

27 :ノイファ ◆QxbUHuH.OE :11/06/03 12:37:41 ID:???
魔獣の豪腕がノイファに届くことはなかった。

>「――――させる、かよっ!!俺は言った! ノイファっちをどんな攻撃からでも守るって!!
  んでもって、これ以上、仲間は傷つけさせねぇ――――例え、俺の命にかけても、だっ!!」

「フィン君っ!?」

ノイファとナーゼムの間へ割り入ったフィンが、己の身を盾として阻んだからだ。
五体を血で染め、何時倒れても不思議ではないほどの無数の傷を負いながら、それでもなお駆けつける。
誰もが憧れ、誰もが求める、絶対不滅の英雄像。天の鎧、フィン=ハンプティとはまさにそれだった。

しかし英雄とて不死身ではない。
とりわけ右脇腹を抉る爪痕は深く、早々に傷口を塞がなければ失血死しかねない。

「待ってて、今治療を――」
>「……今度は、こっちの番だああっ!!!!!!」

だが、回復を促すノイファの声は、他ならぬフィンの裂帛でかき消される。
どころか、苦悶の表情を浮かべることもなく、魔獣の爪の隙間へと手甲を叩きつける。
フィンは声に出すことなく、その行動をもって告げているのだ。いまこそ反撃の時なのだと。

>「ノイファ――――っ!!!!!」

「あーもう!貴方といいウィレム君といい無茶ばっかりしてっ、ホント似た者同士だわ!
 倒れたりしたら……許さないからね!」

搾り出されるフィンの声に後押しされ、ノイファは走った。
一歩でフィンを置き去りにし、続く一歩で大地を蹴る。
着地するのは大地ではない。フィンが受け止め、延びきったままのナーゼムの腕。
針のような毛を掴み、甲殻の隙間へ指をかけ、先へ先へと疾走する。
肩口から鼻先へ、なだらかな鼻梁を踏み台に真上へ跳躍。
これ以上ないほど至近距離で、三度。視線と視線が絡み合った。

「流石にもう慣れたかしらね!それに意外と可愛い瞳してるわよ?アナタ。」

空中で姿勢を整え白刀を鞘走らせる。
孤を描いた切っ先が、大上段で静止する。そこまでが跳躍の頂点、あとは落下していくのみ。
限界まで身体を反らし、捩る。
最大威力の斬撃、狙うは魔獣の眉間。甲殻ごと、断ち斬ってみせる。

短い呼気とともに、ノイファは白刀を振り下ろした。


【ナーゼムの腕を駆け上り跳躍。落下速度も加えた斬撃を、眉間へ向けて振り下ろす】

28 :ストラトス ◆p2OedqKZik :11/06/03 21:09:41 ID:???
【格納庫】

>「ストラトスさん、いらっしゃいますか?」

格納庫で黙々と道具や機材の整理していると誰かが入ってきた
声と見た目からして女性であるのはわかったが今本部にいる人達の半分ほどには挨拶をし終えたと思っていたため
誰だろうとしばらく考えていると

>「初めまして、遊撃課非常勤のフローレンスです、リードルフの姉ですわ。どうぞお見知りおきを。」
なるほど、非常勤の…それなら見かけなかったのも納得できる

「こちらこそはじめまして、これからはよろしくお願いします」


それからフローレンスさんは西区メンバーを収集して「早速ですが、」と任務の概要を告げた
大雑把に要約すると「中央区を中心に負傷者の救出活動をする」というものだった

「それなら、自分のゴーレムを使うのはどうでしょうか。運搬用はすでに組み終えましたし、甲型ゴーレムの人形モデルだと50体までなら同時操作可能です。
 といっても、瓦礫撤去にG-03のような乙型を使うので実質30体が限度でしょうが…」
大まかながら任務での役割が決定し早速、中央区へ向かうことになった

【中央区】

現在、運搬用のゴーレムに遊撃課の部隊と医療用の器具、乙型1機、甲型30機をのせて
中央区で戦闘が激しかったに向かって走行している

「やっぱ、これは振動が激しいすぎるからまだ改良が必要かな…」
そう考えていると徐々に建物の破壊が激しくなってきた。
それから更に進むと辺りには破損したゴーレムが見えだしてきた

>「これより戦線の渦中の人達を避難させます。ストラトスさん、私を緊急避難所まで!
 皆さんは怪我人を運んできてください。治療も手伝ってくれると助かります……ルインさん貴方もですよ?
 スイさん、貴方はその鳩で東区や西区の怪我人も運ぶよう伝えてください。では……状況開始です!」

「了解。ですがその前に甲型のゴーレムを10体ほど降ろして手伝わせます、
 さすがにこの範囲でこの人数では時間がかかりそうなので。」


【緊急避難所に向かうことを了解】


29 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/06/04 03:25:09 ID:???
砲塔から円状に広がる蒸気。魔導弾を吐き出した主砲がスライドし、戦闘用の蓄魔シリンダーを排莢する。
クローディアは胸部の操縦基に腰掛けながら、羊皮紙型の情報表示枠に目を通し、動力レベルを『強襲』から『戦闘』に切り替えた。
同時に動作形式をアクターモードからスレイヴモードへ。踵を上げて硬直していたミドルファイト3が緊張を解いた。

ゴーレム――傀儡重機の操縦方法には大別して2通りの種別がある。
中の人の四肢の動きをそのままゴーレムの動きに再現する、まさしく鎧のように動かす『アクターモード』。
操縦基に据え付けられた操作盤を通してゴーレムに命令を送り、奴隷のように動かす『スレイヴモード』。
前者は直感的に操縦できる上に操縦者の身体技能に比例してゴーレムの運動性能も上がる為、武芸者や兵士が好んで使う。
そして文民であるクローディアは、その逆――身体技能を必要としない代わりに操作が複雑な後者を常用していた。

『あーっはっは!勝った、勝ったわっ!!完ッ璧な不意打ち!流石は不意打ち界の麒麟児の名を欲しいままにするあたしだわ!』

わざわざ外部拡声管から外に高い声を響かせてクローディアは勝ち誇る。
敵は未だ砂埃の向こう。何やら頭を抑えていたテーブル女の方を砲撃してやった。ウィレムとやらはあの距離だ。まず間に合わない。

『あたしはやったわ!あとはアンタだけよナーゼム!お給料欲しかったらいいトコ見せなさい、査定は弾むわ――ッ!?』

瞬間、直感が脳裏に接近警報。クローディアの死角、ゴーレムの足元に、ウィレムが立っていた。
いつの間に?あさおこからどうやって?テーブル女は見捨ててきたのか?
――様々な疑念と逡巡がクローディアの右脳と左脳を高速でラリーする。あまりに速く、掴んで検めることもできない情報の嵐。
そうして硬直している間に、ウィレムはゴーレムの足元にあった金庫を担ぎ上げていた。

『なっ、何を――』

問うより疾く。ウィレムは跳んでいた。
金庫を担ぎ上げながら、『天才』の跳躍力で遥か直上の天へと辿りつく。そして彼は、胸いっぱいに息を吸ってから、叫んだ。

>「さぁ皆々様お立会い!ここでとびっきりの良い知らせだ!――

その言動が意味するところを瞬時に理解して、クローディアは顔から色を失った。
何をやろうとしているんだこいつは。マズい。これは絶対にマズい。それをされたら、私はもう戦えなくなってしまう。
止めないと――。ミドルファイトが彼女の意志を反映し、右腕に開いた中口径の連装魔導砲を向ける。
思考が上滑りして上手く魔力が練れない。操縦盤を握る手が泉のように汗を吹出す。努力むなしく、果たしてそれは起こった。
金庫の中身。クローディアが乏しい才で、まさしく爪に火をともす想いで貯めてきた硬貨が、紙幣が――全財産が、風に奪われる。

「あああああああああああああっ!!!」

故郷も後ろ盾も家族も財産も全て失った彼女が、金庫一杯の金額を貯めるのに、どれほど苦渋を啜ってきたことか。
裕福な家庭に生まれた、年頃の娘がするようなお洒落や美食やあらゆる幸せを溝に捨ててでも必死で金を増やしてきた。
最後の賭けの資産運用にも失敗し、『ピニオン』がその借金を肩代わりしてくれなければ、彼女はナーゼムと共に首を括っていたのだ。
傭兵に身をやつしてまで願った故郷・ウルタールの復興と、失った全てを買い戻すという彼女の切願も逃さず、風が再び奪っていく。

絶望が肺を絞めつけて、自然に叫びが漏れていた。怨嗟と、放心の呻き。目玉が眼窩から溢れそうなほどに見開いた。
波濤のように押し寄せる悲しみが、やがて確かな赫怒へ変わる。

30 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/06/04 03:25:43 ID:???
「――――――ッ!!」

焼け付いた感情は、それ以上彼女に何も言わせず、ただ冷徹な動きをクローディアの指先へ喚起した。
レクティルの中央に、意識を失って墜ちていくウィレムを合わせて。せめて一矢とばかりに撃発命令を出した。

射出。閃光。轟音。
果たせるかな――魔導砲の一撃は、ウィレムを砕いてはいなかった。
戦場には、クローディアのものとは別の、もう一人の巨人が佇んでいた。岩肌の巨躯。ゴーレムである。
敵のゴーレムが、ウィレムを庇うようにして、砲撃を防いでいた。対人用の魔導砲ではゴーレムの装甲に傷ひとつ入れられない。

>「ゴーレムで敵対したのが運の尽き!私のサムちゃんが成敗してあげます!」

ご丁寧に、外部拡声器を使って挑発までかけてきた。聞き覚えのある声。あの頭を抱えていたテーブル女だ。生きていた。
ミドルファイトに装備された最新の精査術式が相手の機種を割り出す。乙種、陸戦ゴーレム。製造元・機体名称――

「『サムエルソンmk3』――はんッ!レオンチェフの型落ち旧型安物ワゴンセール品じゃないっ!!
 威勢良い啖呵はケッコーだけど、あたしの『ミドルファイト3』、通称ミドっさんの敵じゃあ、ないわっ!!」

『サムエルソン』シリーズはその進撃能力から軍部での評判こそ良いが、mk3モデルともなると民生品として出回るほどに旧型だ。
帝国軍でも未だに実戦配備されている理由の一番は『安く、タフで、信頼性があるから』であり、まさしく究極の実用モデルと言える。
対するクローディアのミドルファイト3は帝都の老舗メーカー『エクステリア』の最新モデル。
生産性を度外視した高コストに見合う弩級の性能を持ち、進撃力こそサムエルソンに遅れをとるものの、実戦闘能力は桁違いだ。

「所詮は貧乏帝国の軍人ねッ!旧態然な現場主義は往々にして先進的な提案にとって変わられるものなのよっ!!
 温故知新なんて老害どものプロパガンダだって思い知らせてやるわーーーっ!時代の幕開けをその目に刻んで果てなさいっ!!」

これ以上ないほどに勝ち誇りながら、クローディアはサムエルソンから距離をとった。
背面装甲から八基の砲門がせり出し、太陽へ向く花弁のように前方のサムエルソンを捉えた。

「資本主義バスターーーーっ!!」

計八発の大口径装甲貫通魔導弾が、あるものは直進し、あるものは弧を描き、あるものは時間差で、全てがサムエルソンへ殺到する!
着弾すれば装甲を貫通してゴーレム本体に甚大なダメージを与えるだろう。操縦者だって無事では済まない。そういう攻撃。
クローディアの戦力分析は、純然たる事実を紐解いているが故に、寸分の狂いもなかった。
誤算があるとすれば――そう。理屈を無視し物理を超越する現象、『天才』という乱数までは、クローディアにも見立て切れなかった。


【ゴーレムバトル!八門の対装甲魔導弾がサムちゃんへ!】

31 :セフィリア ◆LGH1NVF4LA :11/06/04 23:48:01 ID:???
ゴーレム戦……セフィリアは実戦では初めて戦う。もっとも帝都での警護が主な任務の近衛騎士団がゴーレムを乗って戦うということがまずない
ならセフィリアの実力はたいしたことがない? そんなことはない個人所有のゴーレム、貴族が有する広大な敷地
総操縦時間は有に数千時間をゆうに超える。厳しい父の訓練と趣味の時間が半々
その彼女、自身の技術には絶対の自信を持っている「帝都一のゴーレム乗り』
そんなふうに自負しているほどである。あくまで自称なのだが……
彼女が駆るゴーレム『サムエルソンmk.3』

>「『サムエルソンmk3』――はんッ!レオンチェフの型落ち旧型安物ワゴンセール品じゃないっ!!
 威勢良い啖呵はケッコーだけど、あたしの『ミドルファイト3』、通称ミドっさんの敵じゃあ、ないわっ!!」

クローディアの言う通り型落ちもいいところ、10年ほどまえにガルブレイズ家にやって来たときも、すでに進む新型機と交換のためである
幼いセフィリアの眼にその巨体は畏怖の対象としてではなく羨望の対象としてだった
「私もこんなに大きくてなりたい!!」
幼き日の彼女の願いが叶わなかったのは現在の姿が如実に表していることだった
彼女はこのセムエルソンを大切に扱った。幼い頃から整備を手伝い、拭いてあげることが日課だった
そんな彼女がクローディアの言葉に怒りを覚えないはずが無かった
普段なら……
だがその前にもっと彼女が意識を奪うことがあった

「ミドルファイト3!エクステリアのさ、最新型!まだ軍の一部でしか配備されてないのに!!どうして!
生産性は最悪! 整備性は劣悪! 武器は独自規格の特別製! エースオブエースのための機体!
私のサムちゃんとはカタログスペックが文字通り桁が違う!そんな……そんな……!」

彼女はミドルファイト3の搭載武装、装甲材質、魔力出力、開発者のコメントまですべての情報が彼女の頭に入っている
近衛騎士団の初任給で買おうと思っていた憧れの機体……初任給ではあと1000年分ぐらい足りないのを知った彼女は夜通し泣いたと言う
『出世しよう』彼女がそう心に決めたときだった
だから彼女は頑張った……必死で職務に専念した
頑張りすぎてここへ来た。この目の前の憧れを粉砕して自信の出世の道を開く
この旧式機で最新型のハイエンドモデルを撃破したとなれば噂になるに違いないっと考えている

32 :セフィリア ◆LGH1NVF4LA :11/06/04 23:48:59 ID:???
>「所詮は貧乏帝国の軍人ねッ!旧態然な現場主義は往々にして先進的な提案にとって変わられるものなのよっ!!
 温故知新なんて老害どものプロパガンダだって思い知らせてやるわーーーっ!時代の幕開けをその目に刻んで果てなさいっ!!」
セフィリアの言葉に勢いを増すクローディアの言葉……当のセフィリアは口の端を大いに持ち上げ、歪な笑顔を形成していた
「ええ、まったくその通り。古いことは駄目! ことゴーレム界においては古さがそのまま戦力の差になるといってもいい!
だから!」
ぶつぶつと独り言を呟く
>「資本主義バスターーーーっ!!」
「だからっっ!……」
そこから先は大口径装甲貫通魔導弾の発射音にかき消された
一歩も動かないサムエルソンに誰もがやられたと思うだろう。だが操縦櫃のセフィリアだけが余裕の表情でそれを魔弾を眼で追っていた
着弾寸前に急速後退、脚部の金属車輪のお陰で移動能力は高い、魔弾が地面に突き刺さる
直進してく魔弾が装甲に突き刺さる!寸前に装甲が爆ぜる魔力感知装置が作動し装甲に仕掛けられた『爆』の魔術が発動したのだ
俗にいう爆発反応装甲と呼ばれるもの装甲の破片が魔導弾を撃墜し時間差の魔導弾する巻き込む

「私のサムちゃんは常に最新最強なんです!!」
彼女は家のお金で最新の装備を買い、そのつどパワーアップしていた
だから中身は別物と言ってよかった。これが『サムエルソンmk3』の最大の特徴『拡張性』
古いからこそ改良の余地がある。彼女はサムエルソンの長所をのばす装備を施していた
重装甲と……
「多収束飛翔爆弾発射!」
背部武装コンテナから炎を吹き上げ、二本の中型飛翔機雷がインファイト3に飛ぶ、着弾まで半分といったところで炸裂
中から無数の小型魔導爆弾が殺到していく、周りの被害など考えない
「これはほんの挨拶程度っ!!」
直線運動のエネルギーを華麗に円運動の動きで遠心力に変換し綺麗にコーナーを回る
その動きを止めることはない、常に動き続ける。本来のサムエルソンでは出来ない動き
彼女の整備とアッセンブリーと操縦技術が結集したスペシャル・マニューバといえる

「砲撃機としてもゴーレムとしても操者としても私たちが上であることの証のために!
私はあなた達に勝ちます!」

くるりと半回転しインファイト3を正面に捉える
コンテナから取り出すは大型低反動魔導砲、そこから放たれる砲弾、鉄塊……中にはぎっしりと火薬がつめられている『榴弾』
あたれば大抵の機体は大ダメージを受けるだろう。さきほどの小型魔導弾の是非によっては一発大破も十分ありうる

33 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/06/05 04:55:17 ID:???
「クランク1より各位。件の意味不明小隊と接触した。会話で出来る限り情報を収集したのち離脱する。
 ――つーわけで、こんにちは帝国軍のみなさん。おじさん君たちのこともっと知りたいなあ。一体何者なのk」

>「クソ分かり切った事を何度も抜かしてんじゃねえよ凡人が!
  テメェが言うまでもなく……あのクソ野郎には俺が裁きを下してやらぁ!!」

クランク1が問いを発しかけた刹那、眼下の石畳から極光が迸った。
辛うじて視認できたのは、翼を生やした男がこちらに腕を向けている姿。収束された光の束が砲の如くクランク1へ殺到する。

「うわっと……おいおい、おじさんが話してる最中だぞ。途中で遮っちゃ駄目だろ」

クランク1は掌で応える。極光の矢が着弾する寸前で、ゴーレムに展開されていたのと同じ不可視障壁がそれを阻んだ。
極光は、まるで石に弾かれた雫のように大気中へ散っていく。

>「『逃がしゃしないよ!!』」

その合間を縫うようにして、瓦礫の散弾が飛来してきた。
全ての弾丸が、クランク1に届く前に虚空で停止し、見えざる手に握り潰されて細やかな破片の雨を石畳に降らせた。

「いや、だから、逆に考えてみ?ちょうど舌も回って気持ちよく喋ってる時にそうやって水差されるのは誰だって嫌だよな?
 人が嫌がることをやっちゃ駄目だろ。喋りたがりのガキじゃないんだから。あと年上にはちゃんと敬語を使おうな」

放たれた瓦礫は極光の射手にも及び、熱線の瀑布が中断される。
間断を作らぬように、今度は人の姿が肉迫してきた。鼻先まで近づいたのは、軍では知らぬ者なき『血の戦乙女』。

>「さてと、じゃあ一気に終わらせましょう」

戦場で数多の敵を屠ってきた一撃は、ごく単純なストレートパンチ。ただしそれは、理を超越せし者の一発だった。
極光を防いでいた不可視障壁を正面から殴りつける。それだけで、光によって削られ続けていた障壁が破砕された。
硝子が散るの如く、割られた障壁の破片が放射状に虚空へ広がっていく。形を戻せない。拳は壁を割砕いてなお勢いを止めない。

「おっさんの忠告は聞いとくもんだぜ若人」

瞬間、砕かれた破片の一つ一つが禍々しい形状の刺に変形。その切っ先の全てをレイリンに向け、彼女を針鼠に変えんと殺到する!

34 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/06/05 04:56:16 ID:???
クランク1が攻撃の成功を確信した刹那、彼の背後――教会の壁から刃が生えた。
音もなく突き出した長大な剣先は、濡紙を断つように岩造りの壁面を貫き破って、微塵も勢いを殺さずにクランクへ迫った。
それはまるで、壁の向こうから、壁など意にも介さず無造作に剣を振り抜いただけのようで、そして――事実そうだった。

「お……!」

崩行く壁の中から現れたのはフランベルジェ=スティレット。
口には何故かキャンディーの棒を咥えながら、両手で握った『館崩し』の刃筋を立ててクランク1へと叩きつける。
クランク1は咄嗟に、レイリンを攻撃する為の刺を総動員して館崩しの剣腹を打撃。刃の軌道を変えることに成功した。
振り抜かれた刃は誰を斬ることもなく弧を描いてスティレットの背へと帰っていった。

「やるねえ。真正面から突っ込んできた血の戦乙女は陽動、本命はこっちか!」
「ひゃいひょうひひゃっひょひひほへはひはふ!」
「口にもの入れたまま喋るなよ!そんなキメ顔して大事なセリフだったんじゃねえのか!?」

追撃をかけようと腰を落としたスティレットへ、クランクはただ指先を向けた。

「締まらねえなあ。少し黙ってろ」

ぎょん、と大気の軋む音がして、スティレットが吹っ飛ばされた。
砲撃や打撃を受けたのではない。まるで『後ろから引っ張られた』かのように背後の壁に叩きつけられ、崩れた瓦礫の中へ埋まった。

「あー無理だ。お前ら全然おじさんの話聞いてくれねえなあ。俺はただお前らの所属・規模・資本・現存勢力を
 ちょっと知りたいだけなのに。人間同士のコミュニケーションって奴はさ、やっぱお互いを理解するところから始まるんだよな」

クランク1はぼやきながらレイリンの拳圏から退避し、再び姿を消した。
やがて彼がもといた十字架の上へと忽然と出現する。レイリンやその仲間達が立つ、その遥か直上の場所だった。

「やれやれおっかねえなあ、くわばらくわばら。クランク1、情報の収集に失敗。これ以上の接触は危険と判断。これより帰投する」

念信器の向こうから了解の返答があり、クランク1は懐から手のひらサイズの符を取り出した。
遠隔術式の一種で、これを破ると遠隔地に施術した術式が発動する、一種の撃発信号のようなものだ。
クランク1は躊躇いなくそれを破り捨て、中央区の空を吹く風に紙片を流した。
それは、暴走ゴーレム『マキナ』に仕込まれた最後の機構――自爆機能を起動する撃発符だった。

「それでは諸君、バッハハーイ。連中が軍人なら、もう会うことはないだろうけどな」

きっかり5秒の間があいて、磔になっていたゴーレムの操縦機に起爆の魔方陣が浮かび上がる。
もはや意味を成さない警告の後、教会周辺の全てを焼き尽くす規模の大爆発が中央区を包んだ。


【クランク1撤退。暴走ゴーレムに仕込まれた自爆機能が作動し、付近一帯を丸ごと包む大爆発!】

35 :スイ ◆nulVwXAKKU :11/06/05 17:54:59 ID:???
緊急避難所でフローレンスが重傷者を治療する間、スイは軽傷者を治療していた。
基本的薬草の知識のみ、リードルフにたたき込まれていたスイは、こんなところで役立つとは少し驚いていた。

「次!早く来い!」

だいたいの治療が終わりかけたところで、入り口付近が騒がしいのに気づいた。
そちらに目をやると、見知らぬ男と睨み合っているアルテリアと頭を押さえているロキ、血みどろで立っているルインを見つけた。
彼らに近づきとりあえず、ルインを引っ張って連れていき、避難所のベッドに乱暴に転がした。

「なんだ傷は浅いのか。」

未だ出血し続ける患部を見、ぼそりとそうこぼした。
重傷だったらフローレンスに押しつけて、面白そうなものが見れそうだと思ったのだが。
薬草を傷口に(盛大に)押しつけ、ガーゼを止めて、仕上げに一叩き。

「男なんだから、これぐらい我慢しろ。」

顔に笑みを浮かべながらスイはそう言い放った。
しばらく病人の相手を続けていると、外から激しい警告音。
慌てて窓から屋根に飛び上がった。
光景を見て、スイは引きつった笑みを浮かべた。

「おいおい……。自爆起動か。」

自嘲気味に呟く。

36 :スイ ◆nulVwXAKKU :11/06/05 18:08:09 ID:???

「おい、せめて避難所守るぐらい協力しろ。」

その瞬間スイの目に狂気が浮かんだ。

「うわ。さっきからぜんぜん面白くねぇ!俺は血が見たいの!この盛大に吹き出して流れる血が!!たまには見せろやぁぁあ!」

ひとしきり叫んで落ち着いたのか、俯いていた顔をあげた。

「まぁいいか。感謝しやがれ。俺様の特大級だ。」

ぶわりと風が巻き起こり、一気に、暴風の竜巻と化した。
それと同時に、爆発が起こる。
激しい炎が避難所を襲おうとするが風に遮られ、上へと舞い上がる。
衝撃波に体を震わせながら、スイは恍惚とした笑みを浮かべた。

「いいねぇ。ビリビリくるねぇ!前言撤回だ!これは面白い!」

狂った笑い声をあげながら、風は避難所を守り続けた。

【軽傷者とルインの手当→爆発から避難所を風で守る】

37 :サフロール・オブテイン ◆jKUaosk4aY :11/06/06 03:19:04 ID:???
渾身の殺意を込めて放った陽光の矛は、しかし不可視の障壁によって阻まれた。
だが障壁は削れている。貫く事は可能だ。
サフロールの表情が獰猛な笑みへと変化する。翼を羽ばたかせ、魔力を飛散させた。
陽光の矛をより鋭利に収斂させて、突貫を図る。

>「『逃がしゃしないよ!!』」

が、不意に背後から瓦礫が迫った。
展開した『世界』は全て天蓋へと集中させてしまっている。
やむを得ず、障壁を張って瓦礫を防いだ。
精緻な制御が必要だった陽光の矛は、咄嗟の防御に集中力を割いた為に綻び、四散する。
面持ちを一転、激情の色に染め上げて、サフロールが振り返った。

「……誰だテメェ?」

そして一言、胸の奥で荒ぶる激昂の炎とは相反する冷徹な声色で、吐き捨てた。
プリメーラの事など、まるで記憶にないと言わんばかりに。
彼は、堕天使の末裔だ。彼を嫌う者は数え切れないほど大勢いる。
神を信じる者達は、その信仰心の強さだけ、酷く彼を嫌悪した。
神の作った世界は、神に嫌われた彼を忌み嫌った。

プリメーラがサフロールにどれほどの憎悪を注いでいたとしても、
それは彼にとっては、世界中から突き付けられる悪感情の中の一つでしかない。
振り払いこそすれど、特別な憎悪など抱きはしない。
漆黒の中に潜む一筋の黒など、目に留まる筈がない。
彼は、自分を嫌う世界全てが嫌いなのだから。

「喧嘩なら後で買ってやる。棺桶の準備でもしてろ」

再び教会へと振り返り、『飛翔』の魔術を行使する。
白と黒が同居する翼を広げ、地を蹴るべく足に力を込め――突然、翼が崩れ落ちた。
同時に膝が折れる。
魔力の枯渇、それに伴う疲弊によって、魔力の制御に難が出たのだ。
制御を失った【贋物の夜】も、白昼の光に溶かされるように徐々に崩壊していく。

>「やれやれおっかねえなあ、くわばらくわばら。クランク1、情報の収集に失敗。これ以上の接触は危険と判断。これより帰投する」

「クソが……!だが、テメェが使った魔力は確かに補足したぞ……!」

クランク1の周囲で、幾つかの羽が舞い踊っていた。
弾かれた陽光が含んでいた魔力を分解、再構築して創り出した羽だ。
羽の内側には障壁から削り取った魔力を閉じ込めていた。
これさえあれば、再びクランク1が何かをしでかせば感知出来る。
再犯を封じる抑止力としては十分――最後の最後で手柄を掴んだ。

>「それでは諸君、バッハハーイ。連中が軍人なら、もう会うことはないだろうけどな」

けれども直後に、ゴーレムの操縦基から魔方陣が浮かび上がった。
威圧的に迸る魔力、明滅――分析の遺才が、即座に導かれる効果をサフロールに告げる。
即ち、大規模な『爆発』の魔術。

「……ッ! あの野郎……!」

俄かに生まれる葛藤。
極大威力の爆発を、残る魔力で防ぎ切れるか――不可能。甚大な被害は避けられない。
取れる手段――魔方陣に魔力を注ぎ込み、術式を『分解』する。
だが今から魔力を放ったのでは間に合わない。
切れる手札はある。ゴーレムのすぐ傍で創った、魔力の羽。
しかしそれを使う事は、掴んだクランク1の魔力を、手柄を手放す事を意味する。
――葛藤が極致、臨界点を迎える。

38 :サフロール・オブテイン ◆jKUaosk4aY :11/06/06 03:20:51 ID:???
「俺は……絶対に帝都に帰ってやる……。その為なら……!」

静かに、冷酷に、呟いた。
そして――自爆の術式が発動する。
驚異的な轟音、熱風、衝撃波――残った魔力の全てを費やして、障壁を展開した。
球形の障壁が爆風を逸らし、だが凄まじい風圧に耐え切れず吹き飛ばされる。
逆を言えば、吹き飛ばされるだけで済んだ。
起爆の直前にサフロールは魔方陣に干渉して、威力を抑制していた。
掴んだ手柄を手放し、魔力の羽を用いる事で。
障壁で落下の衝撃を殺し、サフロールは無事に着地する。

「けっ……下んねえ勘違いすんじゃねぇぞ、クソアマ共。
 この俺が、手柄の為に何かを見捨てるなんて凡人臭え真似なんざ出来るかよ。それだけの事だ」

そうして誰にともなく小さく呟いた。
続けて眼を閉じて深く息を吸い込む。
魔力が尽きて失われた翼が、朧気にだが再び兆した。
破壊された障壁や崩壊した天蓋の魔力を掻き集めたのだ。
司令部へと帰還すべく、サフロールは『飛翔』の魔術を行使して飛び立った。

「……アイツ、何であんな高さにまで跳んでんだ?つーか何だこの金貨!痛えなクソ!
 もう障壁も張れねえってのに舐めた真似しやがって!あとで『惨殺』《バラ》す!」

雨霰と降り注ぐ金貨に打たれ、その中を落ちていくウィレムを睨み、サフロールが叫んだ。

「東区も……何とかなりそうだな。にしてもあの化物……ありゃ殆ど降魔じゃねえか。
 死体が手に入りゃ良い実験体になりそうだが……余計な事しでかすアホがいねえとも限らねえ。血だけ先に回収しとくか」

背中の翼から羽を一枚落とす。
羽は地面に飛び散った猛獣の血を吸い、朱に染まった。
それから赤い粒子となり霧散して、サフロールの手元で再び血染めの羽の姿を取り戻す。
最後に小さく、だが大きな収穫を得て、サフロールは口角を吊り上げ、羽を指先で弄んだ。

【爆発の直前に魔方陣に干渉→威力を多少緩和。帰還】

39 :プリメーラ ◆sA3iXghEZU :11/06/06 10:34:55 ID:???
>「おっさんの忠告は聞いとくもんだぜ若人」

刹那、レイリンが砕いた障壁の欠片達が、殺気を帯びた針状の凶器に変わる!

「レイリン姉さん!」

迷わず跳躍し、レイリンの顔を狙った針の幾つかを叩き落とす。
しかし全弾を回避する事は出来ない。しかし、運は彼女らに味方した。

>「お……!」

崩壊し行く壁を、まるで紙を切るように大刀で両断し斬りかかるスティレットの姿。
身の危険を感じた男が針の標的をスティレットに変更する。
「『こっちに来い!!』」

しかし、そうは問屋が卸さない。
スティレットを串刺さんと狙う針の群れは、殆どプリメーラの元へ向かう。
後は待ち構えていればいい。弾道を見極め、一気に全て叩き壊す!
そしてスティレットがとどめとばかりに追撃をかけようとした刹那、

>「締まらねえなあ。少し黙ってろ」

何があったのか理解する頃には、スティレットが頭上を越えて瓦礫の山に叩き落とされていた。
どんな力を行使したかなんて関係なかった。

あ の 男 が ス テ ィ レ ッ ト を 傷 つ け た 。

それだけで、憤激がプリメーラを突き動かすには充分だった。

「きっ…………様ぁぁああああアアア!!」
>「やれやれおっかねえなあ、くわばらくわばら。クランク1、情報の収集に失敗。これ以上の接触は危険と判断。これより帰投する」

レイリンの拳圏もプリメーラの射程圏からも脱し、男は再び教会の上に。
懐から手のひらサイズの符を取り出し、躊躇いもなく破いた。

>「それでは諸君、バッハハーイ。連中が軍人なら、もう会うことはないだろうけどな」

不意に男はプリメーラを一瞥し、――『微笑んだ』。
温かみの感じない、背筋を凍らせるような冷笑的なものに近かった。

「――――――――!?」

刹那、彼女の中から1つの感情が『抜き取られた』かのような、奇妙な感覚に襲われた。
しかし、男に構う余裕は無かった。自爆起動には少しの時間が掛かる。それが大体5秒ほどだ。
けたたましい警告音が鳴る中、跳ぶように瓦礫の上を駆け抜ける。
一際高く跳び上がると、障壁を繰り出そうとしているサフロールとほぼ同じ目線になった。
ペンダントを引きちぎると、片手でそれを翳し、声を有らん限り張り上げる!

「『消えろォォオオオ!!』」



40 :プリメーラ ◆sA3iXghEZU :11/06/06 10:37:20 ID:???
ペンダントが、青く瞬く。プリメーラの髪の色を吸い取るかのようにその輝きは増していく。
行使した催眠は、『爆発を最小限に留める』こと。
浮かび上がる魔法陣、青い閃光、障壁が展開され、爆発――――!!


「きゃぁぁぁあぁあああああっ!?」

サフロールと違い、何の防御も施していないプリメーラの小さな体躯はいとも容易く吹き飛ばされる。
咄嗟に受け身を取ることも出来ず、瓦礫の中に派手にダイブ。

「いっ…………!」

数瞬、意識が飛んだ。気づいた時には男も、マキナも消えていた。
煙を立てるプリメーラの髪は、鮮やかな水色は失せ、くすんだ黒に。瞳も焦げたような黒に変わっていた。

逃がしてしまったのか。朦朧とする意識の中で、ただそうとしか判断出来なかった。
次第に、怒りがこみ上げてきた。それもこれもアイツのせいだ。アイツの――……。

「(アイ、ツ……?ボクは、一体…何を……?)」

飛び去っていくサフロールの背中を見送る。おかしい。何故ボクは彼を憎いと思っていたのだろう。
何度かすれ違うことはあった。ただ、こ憎らしい顔をした奴だなと思った程度だった。
ならば、何故あれ程までに彼に憎悪の念を向けていたのだろう。まるで――――操られていたかのように。
男の冷笑が、それを吸い取ってしまったかのように――――。

「はッ!スティレットちゃん!スティレットちゃん!!」

頭がハッキリとした途端、プリメーラは転けつ転びつしながらもスティレットが落ちた場所へ向かう。
瓦礫を素手でどかし、ようやくその姿を見つけるも、よっぽどの力で吹き飛ばされたのか虫の息だ。

「そんな……!スティレットちゃん!しっかりして!!」

肩を揺さぶっても、彼女が起きる気配はない。焦りがプリメーラの中を駆ける。
彼女が助かる手立ては無いのか。必死に考える脳内回路が、抗うことのない1つの結論を出した。
これだけは使いたくなかった。出来ればこのまま封印させておきたかった、奥の手。



41 :プリメーラ ◆sA3iXghEZU :11/06/06 10:41:03 ID:???
「(構うもんか!スティレットちゃんのためなら……!)」

ズボンをたくし上げ、内股を露わにする。しかし、そこは『人の肌をしていなかった』。
ルインに倒された時、隠したがった理由。光を受けて鮮やかに青く光る魚の鱗が証明していた。
プリメーラは鱗の幾つかに指をかけた。少しの躊躇いの後……勢いよく引き剥がした。

「ッぁあ゛……〜〜〜〜〜〜!」

焼けつくような痛みを堪え、血に染まった鱗の一枚をスティレットの口の中に無理やり押し込み、飲み込ませた。
すると、徐々にスティレットの頬に赤みが差し、意識を取り戻したかのように呻いた。
ほっと安堵の溜め息を吐くと、途端に体中の力が全て抜けてしまったかのように崩れ落ちた。
まだ意識を失ってはいけない。残りの鱗をレイリンに渡し、レイリンの耳元で囁く。

「これを……フローレンスさんに……粉にすれば……良い薬になる……
 でも……ボクのものだってことは……誰にも……言わない……で……」

そして今度こそ、意識は闇に溶けていった。

【爆発の威力を抑える→ギリギリ成功】
【スティレットに不思議な鱗を飲ませる】
【レイリンさんに不思議な鱗×3を託す】
【不思議な鱗:人の生命力を底上げする不思議な鱗。プリメーラの人体から搾取可能】

42 :リードルフ ◆M0g7zNWq0k :11/06/06 22:48:39 ID:???
「ああ忙しい、忙しいったら忙しいです!」

薬と包帯を手に、右へドタバタ、左へドタバタ走るフローレンス。
室内だけでもかなりの人数の負傷者が居るというのに、外にはもっと沢山の負傷者が手当てを待っている。

「次!早く来い!」
「重傷者はこちらです!」

スイに基本的な物ではあるが、薬学の知識を叩き込んでおいて良かったように思う。
心置きなく重傷者に手を回せるし、スムーズに事が進むからだ。
しかし、やにわに表が騒がしく感じられたので、すぐ戻るつもりで外に出る。

「貴方たち、何をしてるんですか!」

そこではアルテリアと一般人(本当はエルトラス兵だが)が小競り合いを始めようとしている所だった。
小走りにアルテリア達の間に割って入り、正義の怒りに燃えた目でキッと睨みつける。

「ここは怪我人を治すための施設です。怪我人を増やすなら私とて許しませんよ!」

フローレンスの凛とした啖呵に場が静まる。それで満足したのか、避難所の中に戻ろうとした。
その時、天を突くような喧しい音が辺りに響き渡り、フローレンスは蒼白した。
「おいおい……。自爆起動か。」
「自爆起動……!?まさか、こんな所で……!」

それを聞いた避難民達はにわかに騒ぎ出し、我先にと逃げ出す。避難所は混乱に包まれた。

「皆さん落ち着いて……きゃあっ!」

混乱した人々を止めようとし、ど突かれて倒れてしまう。悔しい、こんな時に力があれば――……。

「まぁいいか。感謝しやがれ。俺様の特大級だ。」

こんな時だからこそか、遠くにいる筈のスイの声がいやにクリアに聞こえた。
青い閃光が空を走った直後、まるで爆発が合図だったかのように巻き起こる竜巻。
爆風と竜巻が衝突し、衝撃波を起こす。フローレンスは咄嗟に「皆さん固まって!」と叫びアルテリアと吹き飛ばされそうなロキの腕を掴んだ。



実際には十数秒の出来事だっただろうが、永遠のようにも感じた。
竜巻の余韻のつむじ風もようやく収まった頃、恐る恐る立ち上がる。頬が焼けつくように熱い。
爆発があったのは、どうやら教会方面のようだった。教会方面。敵の仕業?だとしたら。
悪寒と焦燥感が体中を巡り抜けた。最悪の事態のパターンが次から次へ脳に浮かび上がる。



43 :リードルフ ◆M0g7zNWq0k :11/06/06 22:50:22 ID:???
「力に自信のある人は私に付いて来て!担架を幾つか運んで下さい!」

避難所に駆け込んで四次元鞄をひっ掴み、教会方面へ向けて駆け抜ける。
彼処では、仲間が戦っていた。もしあの爆発に巻き込まれていたとしたら…………考えたくもない。

「どうか生きてて……無事でいて!」

鞄を握り締める手に、力が籠もった。

【中央区・教会跡地】

「プリメーラさん!シキマさん!スティレットさん!」

瓦礫の山を見て愕然としつつも、彼女らの姿を見つけ、よじ登る。
フローレンスは変わり果てた姿を見て思わず息を呑む。あの爆発で、よく生きていたものだ。
プリメーラに至っては、髪の毛の色すら変わっている。何が起きたのか、予想がつかない。

「私は遊撃課のフローレンス!貴女達の味方です。今から治療しますから……。」

慌てふためいて治療薬や包帯を片っ端から出していると、レイリンに何かを手渡された。
魚の鱗のようである。血に濡れたそれは、てらてらと青い光を放っていた。
これを薬として使ってくれ、という事らしい。半信半疑ながらも、その場で挽いて粉状にする。
果たしてそれを少しレイリンの傷口に塗ってみると、まるで傷口が生き物のように見る見る閉じていく。
その効能に驚きながらも、三人に処置を施し、下にいるメンバーに声をかけた。

「こちらに三人、最優先救助人がいます!早く運んで!」

プリメーラ達が一足早く避難所に運ばれるのを見ながら、手の中の鱗を見つめた。
これは予想以上に使えるものだ。奥の手として、大事に取っておこう。
まだ挽いていない二枚の鱗を大事に鞄に仕舞うと、フローレンスは後を追って避難所に戻るのだった。


【不思議な鱗を入手。三人に処置を施し避難所に戻る】
【鱗の残り枚数2】

44 :レイリン ◆lvfvBHCkg. :11/06/06 23:55:48 ID:???
レイリンの拳は迷いなく、クランク1を捉える。
不可避のタイミング、防御不可の威力、視認してからではどうしようもない速さ。
その全てを兼ね揃えた攻撃だったが、その拳は不可視の壁に防がれクランク1に届くことはなかった。
レイリンの拳を止めた壁は次第に軋みをあげ、破裂音と共に砕け散る。

「いい男が台無しになるけど、ごめんね」

攻撃の成功を確信したレイリンの口元が三日月状に歪む。
刹那、先ほど砕いた不可視の壁が刃となりて、レイリンへと襲いかかる。
だが、レイリンは気にしない、自分への損傷と相手に与える損傷を天秤にかけた結果、相手に討つべくことを優先したのだ。
辺りに影を落としていた天蓋が消失する、そしてレイリンは自信の力が急激に失せていくのを感じる。

「しまっ……」

唐突に陽の光を浴びたことにより、レイリンの拳はその速さを失い、軽い目眩を覚える。
その僅かな隙はクランク1がレイリンの射程圏内から退き、不可視の刃がレイリンを貫くのには充分すぎる隙だった。
絶望がレイリンの体を蝕んでいく、避けられない――。
だが、女神、いや陽光を忌避し、宵闇を糧とするレイリンにおいては悪魔と言うべきか、が微笑んだ。

>「レイリン姉さん!」

プリメーラからの援護により、刃のいくつかが落とされる。
そして、クランク1の背後からフランベルジュが奇襲攻撃を仕掛けた。
それにより、レイリンへと向けられた刃がフランベルジュへとその鋒を代える。
刃はプリメーラにより、標的を更に代えられたが、残った刃がクランク1を両断せんとする大剣の軌道を変える。

>「やるねえ。真正面から突っ込んできた血の戦乙女は陽動、本命はこっちか!」
「ご明察です、スティレット、勝利の宴を邪魔する無粋者は早々にご退場願いましょう」
>「ひゃいひょうひひゃっひょひひほへはひはふ!」

咄嗟に礼を言おうと口を開いたが、すぐに閉じ、口をつきうごかした言葉とはまた違う言葉を紡ぐ。
プリメーラの援護もスティレットの奇襲も完璧なイレギュラーだった、だからこそレイリンはそれを作戦のうちとしたのだ。
何でもこちらの作戦としたほうがこちらの底が見えにくくなり、相手の行動を制限する要因となり得る。
実際、それは見事な連携と言っても差し障りなかったのだ。
だが、クランク1はそれすらも超越する。
休む暇を与えない波状攻撃、それらを全て軽くいなすと、不意にスティレットが引っ張られるように吹き飛ばされる。
そこには間違いなく『何か』が働いていた、超常の力が。

>「それでは諸君、バッハハーイ。連中が軍人なら、もう会うことはないだろうけどな」

『天才』の揃う遊撃課が束になっても傷一つつけられなかった。
まるで、神が人間を弄ぶが如く、それほどの差が確かに存在した。
クランク1が消えると当時に、ゴーレムの操縦基に魔方陣が浮かび上がる。
次第に魔力を増していく魔方陣を見つめるサフロールの目に焦りの色が生まれる。
それだけで何か良くないことが起こるであろう事をレイリンは察知する。
取り敢えず、その場を退避しようとするが、魔力の規模からして爆発圏外に逃げるのは間に合わない。
幸い吸血鬼は生命力も、回復力も常人のそれを遙かに上回る、すこしでも爆風から逃げれば助かる。
そう感じたレイリンは、両足にありったけの力をこめ、少しでも爆発の中心から離れるべく跳躍する。
刹那、爆発の術式が発動する、規格外の爆発は、教会を、中央区を、レイリンを、この場にいる全ての生物を、等しく、そして無慈悲に飲み込んでいく。
しかし、何時まで経っても身を焦がす炎がやってくることは無かった。

>「けっ……下んねえ勘違いすんじゃねぇぞ、クソアマ共。
 この俺が、手柄の為に何かを見捨てるなんて凡人臭え真似なんざ出来るかよ。それだけの事だ」

サフロールの小さなつぶやきは風に乗り、確かにレイリンの耳へと届く。
それでレイリンは何が起こったのか、何故自分が助かったのかを理解する。
その瞬間、レイリンの顔が愉悦に変わる。

45 :レイリン ◆lvfvBHCkg. :11/06/06 23:56:21 ID:???
「アハハハハハハハハ、これは面白い。
孤高を気取る堕天使が、凡人を嫌う貴方が、そんな凡俗な感情で私達を助けるとは。
課長も『天才』を解析するのが貴方の目的と言っていましたし、恐らく貴方はクランク1の情報と引き替えに私達を守ったのでしょう、手柄よりも私達を守ることをとった……と。
馬鹿馬鹿しい、迷惑なんですよ、勝手な押しつけで正義感に浸られては。
翼を折られた天使が、天使の真似事をしても滑稽なだけです」

飛び去るサフロールの背中へと、ありったけの呪詛を叩き込む。
八つ当たりだった、レイリンもそれを自覚していたが、その感情を吐き出さないわけにはいかなかった。
孤高を求め、目的のためなら手段を選ばないだろうサフロールですら、仲間を助けようとしたという事実が、レイリンを惨めな道化へとなり下げたのだ。
誰よりも人でありたいと願ったレイリンの中には仲間を助けるより自分さえ生き残ればいいという怪物的な思考しか生まれなかった。
確かにレイリンには皆を救う術など無かった、自分だけでも助かるのが最適解だったはず。
しかし、レイリンはその選択肢を全く考慮にいれ無いどころか、頭に思い浮かべもしなかった、人に聞けば誰もが畜生だと罵るだろう。
矛盾しているのだ、吸血鬼の血を嫌っているくせに、その中身は立派な吸血鬼。

『人にも魔にもなりきれない、半端者だ』

過去に言われた言葉が脳裏を掠める。
その言葉は今でもレイリンを縛り続けている。
自身の血に雁字搦めに縛られ、身動きすらとれない哀れな吸血鬼。
日々使っている敬語も夜に発動する吸血鬼を封じ込めようとするちっぽけな本当にちっぽけな抵抗だった。

>「ッぁあ゛……〜〜〜〜〜〜!」
>「これを……フローレンスさんに……粉にすれば……良い薬になる……
 でも……ボクのものだってことは……誰にも……言わない……で……」
「フローレンス…?」

辺りに響くプリメーラの叫び声により、その思考は中断される。
内股より鱗状のものを引きはがし、スティレットの口へと持って行くプリメーラ。
すると、まるで死んでいるかのように青白いスティレットの体が、赤みを増し、熱を取り戻す。
そして、レイリンに近づき耳元で最後の言づてを伝えると、3枚の鱗を手渡し静かに目を閉じる。
死んだように動かなくなったプリメーラの首筋に軽く手を当てた、確かな血の鼓動を感じる。
その白魚のような首筋にレイリンの喉が鳴る、口元より白い牙が覗く。
レイリンはプリメーラの首筋へ牙を立てようと顔を近づける。

>「プリメーラさん!シキマさん!スティレットさん!」
>「私は遊撃課のフローレンス!貴女達の味方です。今から治療しますから……。」

弾かれるように、顔を上げる。
見知らぬ女性がレイリンの元へと駆け寄ってくる、名乗りを聞く限り、プリメーラが鱗を渡せと言って人物に違いないだろう。

「フローレンスと言いましたか?
これを、貴方に渡せと、粉状にすると薬になるらしいです。
えっと、あの、お、落ちていたんです」

すっかり動揺しきったレイリンは、まるで意味の分からない言葉を発する。
落ちていた物を粉状にすると薬になることなど分かるわけ無いし、渡せと言われたということは誰かに託されたことに他ならない。
フローレンスは鱗を素早く粉状にすると、レイリンの傷口へと塗り込む。

「触るな!
って、あ、ごめんなさい、今のは違くて……その。
私の怪我は大したことないから、他の人に使ってあげて下さい」

善意でレイリンに治療してくれたフローレンスだったが、レイリンにはその目が自分を責めているように見えたのだ。
何故、お前だけこんなに傷を負っていないのだ、と。

>「こちらに三人、最優先救助人がいます!早く運んで!」
「私は大丈夫」

それだけ言うと、レイリンはフローレンスに背を向け歩き出す。
陽が沈む、吸血鬼の時間がやってこようとしていた。

46 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/06/07 04:37:08 ID:???
>「だからっっ!……」

八門の砲塔から射出された装甲貫通魔導弾。突進力に長け小回りに劣るサムエルソンに、これを躱し切る術はない。
後退し、低軌道の魔導弾が地面を穿つ。回避できるのはそこまでだ。既に次弾迫っている――

「勝ったっ――」

刹那、信じがたい光景が展開された。サムエルソンは、後退するどころか、返す刀で全速前進。
襲い来る魔導弾の群れに、自分から突っ込んだのである。自殺行為か?否!サムエルソンの乗り手には、秘策があった!
最初の弾が着弾した瞬間、サムエルソンの装甲が爆ぜる。表面に刻まれた炸裂術式が発動し、爆風で来る群れを連鎖的に迎撃する!

「ば、爆発反応装甲ーーっ!?なんでサムエルソンの旧型がそんなモン載せてんのよっ!?」

機体制御システムの演算素子を呼び出し、内部に保存されたカタログデータを表示する。
何度見直してもサムエルソンの兵装データにそんなものはなかった。思い当たるフシがあるとすればそれは――

「個人による拡張兵装!?なんで軍属のゴーレムがそんな趣味全開の改造バリバリなのよーーーっ!!」

軍という組織で運用するにおいて、重要なのはワンマンフォースによる秀でた単独勝利ではなく、均等に並行な団体行動だ。
出る杭が打たれるとは言わないが、戦場において尖った性能というのは地雷が多い。信頼性とは対極の位置にある概念だからだ。
ここへ来てクローディアにも、ほんのりとした予感が固まりつつあった。あまりに尖ったこの敵たちは。軍の部隊では、ない?
その疑念に確信を叩き込むように、サムエルソンが爆炎の中からほぼ無傷で飛び出してきた。

>「私のサムちゃんは常に最新最強なんです!!」

「はン!上等ね!あたしもアンタも最新最強。だったら――より高級な方が勝つと相場が決まってんのよっ!!」

前方。サムエルソンの背部コンテナが開いた。クローディアは見逃さず、視覚素子でその兵装が何であるか走査。
中型飛翔機雷が二基。中型にしては少し膨れているのが気になるが、弾速は遅いし十分迎撃できると判断した。

「迎撃システム作動!カウンターメジャー射出!」

ミドルファイトは肩部のポッドからゴーレム本体と同じ魔力波長を発信する紙片を傍の空間へ射出した。
相手の飛翔機雷が誘導式であるならば、これで照準を迷わせることができる。その隙に連射魔導弾で飛翔機雷を撃墜する。
限界まで引きつけて……今!クローディアは兵装操作幹のトリガーを引き絞る。その直前で、飛翔機雷がひとりでに弾けた。
こちらの攻撃によるものではない。何故ならば――弾けた飛翔機雷の中から、無数の小型魔導機雷が吐き出されたのだ。

「ぶどう弾……いや違う、集束機雷!迎撃し切れな――」

ミドルファイトの装甲が爆炎に包まれた。とてつもない衝撃が操縦基内を襲い、操縦者の体も右へ左へ攪拌される。
演算素子が無数の警告と損害報告を吐き出していた。
被弾!被弾!被弾!被弾!腰部装甲内に火災発生。左腕部駆動関節小破。魔導経絡出力低減。胸部装甲中破。

「損傷制御!破損した経絡への魔力供給ストップ、左腕部には代替腱展開!力場装甲を省魔力モードで展開!」

クローディアの指が操縦版の上を忙しく這い回り、機体のダメージをコントロールしていく。
いくつかのパーツは死んだが、まだ戦える。戦いたいとミドルファイトが叫んでいる。その幻聴を、クローディアは肯定した。

「まだまだ!視覚素子もメイン武装もやられちゃいないわ!あたしとミドっさんを止めたかったら一個小隊持ってきなさい!!」

>「これはほんの挨拶程度っ!!」

サムエルソンはここへ来てまだ突進を止めない。最早砲撃戦の距離をとうの昔に超えていた。ほとんど格闘戦の間合いである。
このままでは正面衝突と思った矢先、まるで慣性をものともしないかのように急カーブ。勢いを殺さずにサムエルソンは廻る。

「なんて強引なマニューバ!あんな急機動でどうして平気なのよーーっ!?」

あれだけ強引に機体を振り回せば、当然中の人にかかる圧力は想像を絶するはずである。ミンチになってもおかしくない。
それを、あんな風にある種華麗に踊るようなマニューバ。クローディアは寡聞にして知らない。知れるはずもない。
如何なる無法も可能にする、無理を通して道理を破る。理屈の通じない破滅的な戦闘芸術こそが、本物の『天才』なのだから。

47 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/06/07 04:38:41 ID:???
>「砲撃機としてもゴーレムとしても操者としても私たちが上であることの証のために! 私はあなた達に勝ちます!」

サムエルソンが正面へ。決闘する二人のように、互いが鼻先を合わせ――しかし、イニシアチブをとったのは先を制したサムエルソン。
ミドルファイトが相手を視覚素子に捉えた時には、既にサムエルソンは大口径の魔導砲でこちらを照準済みだった。
来る。魔導弾ではない。実体を持つ、鉄製の砲弾。視覚素子が分析結果を送ってくる。軍用兵器のカタログに該当項目があった。

榴弾。質量物と飛ばしてぶつける通常の実体弾とは比べ物にならない威力を持つ――火薬入りの砲弾である。
集束弾の損傷が小さくない今、まともに喰らえば機体がバラバラになるだけでは済まないだろう。原型すら残らないかもしれない。
対するクローディアの取れる対策はほぼ皆無と言って良い。装甲は破損し、迎撃システムも再装填が住んでいない。

「――ベストセラー無勢がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

悩んでられない八方塞がり。ミドルファイトはタックルするように肩から榴弾へ突進した。
肩部ハッチからせり出している、ミドルファイトを象徴するような左右二基の大口径砲のうち、右の砲塔内へ榴弾が飛び込んだ。

「オンリーワンを舐めんじゃないわよーーーーーっ!!」

そのまま身を捩るようにして機体の上体を逸らす。榴弾を飲み込んだ砲塔の先が上空を向く。
そのまま内部で、榴弾が爆発した。大質量の火薬がその威力を発揮し、鉄塔ほどもある巨大な火柱が東区の空を焦がした。

榴弾の威力は主に『爆風と破片』……そのエネルギーが全方位に牙を向くからこの兵器は凶悪なのだ。
しからば、榴弾に対する最も現実的な対策は、爆風の方向を一方に限定させることである。上空に全てのエネルギーを逃せば良い。
そして彼女はそれを実行した。砲塔内に榴弾を閉じ込め、その開いた口を空に向けることで、榴弾の威力は天へと抜けていった。

無論、こちらも無事というわけにはいかない。ミドルファイトの右の魔導砲と右肩は、ひしゃげて殆ど使い物にならなかった。
右砲部品の大部分を吹き飛ばされたため、無傷な左肩が重くて酷くバランスが悪い。もう長くは戦えないだろう。
つまるところ、次の一手が最後の一矢だ。ミドルファイトに残された時間と手札では、あと一撃が限界だった。

「あたしは負けない……あたしの『お金』は、『天才』なんかに負けないっ!あたしにはもうお金しかないもの!
 全てを買い戻すって決めたあの日から!勝たなきゃ誰も認めてくれなんてしないのよ!――今ここで、あたしの勝利を買い戻す!」

腕部装甲に仕込んだポッドから閃光弾が転がり落ちる。石畳に触れたとたん、付近を染め上げるほどの閃光が走った。一瞬の空白。
ミドルファイトは跳んだ。砲撃型とは思えない軽やかな機動で、住宅地の屋根へと跳び乗った。瓦が割れ、屋根を滑って石畳に落ちる。
『エクステリア』の最新技術が実現した超軽量化。通常のゴーレムならば、住宅の屋根なんかに乗せた日には瓦礫に変えるだけだろう。
腰部に備えられたワイヤーアンカーを併用して、住宅の反対側に降りた。ここ一帯は民家が屋根続きに並んでいる。
その向こう側へ逃げたミドルファイトを追うには、連なっている住宅街を迂回して向こう側に出なければならない。

どんなに状況判断の早い熟練した兵士でさえ、ほんの一瞬逡巡するはずだ。どうやって追うべきか、考える隙。
その隙こそが、クローディアの狙いだった。高性能の演算素子をもつこちらのゴーレムならば、相手の位置を駆動音で推定できる。
そして民家の建材など、対ゴーレム砲の前では紙クズ同然だった。ミドルファイトは、民家ごとその向こうのサムエルソンを砲撃する。
民家を容易く突き抜け、こちらから一方的にフルバーストを浴びせられる寸法である。

「認めるわ。ゴーレムも操縦者もあんたの方が上かもね……でも!勝つのはあたしよ――勝って、全てを黒字にする!」

左の大口径砲を民家の壁に密着させ、演算素子が導き出した相手の推定位置へ向かって装甲貫通魔導弾をフルバーストで発射した。


【各部に深刻な損害。榴弾をどうにか攻略し、閃光弾で隙をついて連なった民家の向こうへ逃げる。民家ごとサムエルソンをフルバースト】

48 :ルイン ◆5q.yyAvL6. :11/06/07 22:00:58 ID:???
虚ろな目で空を眺めるルインに危機感を覚えた面々は怪我人を連れて避難所へ直行。
避難所は負傷者で雑然としていた。
ルインは相変わらずぼけっとその場に佇んでいる。虚ろな目が心配を誘った。

>「次!早く来い!」

くそ真面目に仕事に従事していたスイが頭部血だらけの惨状を見かねたらしい。
千鳥足のルインを強引にベッドへ引っ張って手荒く寝かされる。まるでもの扱いだ。
自身より少し毛の生えた程度の知識しか持ち合わせていなさそうなスイに一抹の不安を覚える。

「えっ!?どうせやってもらうなら専門のフローレンスさんの方が……」

>「なんだ傷は浅いのか。」

無視された。
しかし人手が足りない状況でフローレンスが重症患者を優先的に見るのは当然だった。
丁寧とは言い難い雑な手当てを施され、終いとばかりにガーゼ越しに傷口をぱしんと叩かれる。

>「男なんだから、これぐらい我慢しろ。」

我慢も何も最後の一叩きは蛇足にしか見えない。
それにささやかな抵抗とでも言うようにやや大げさに痛がってみせる。

「いっでえええええ!!……俺にはどうしても許せないのが3つだけあってね!
 それは料理に入ったパイナップルと返せる見込みのない借金と、傷口を………え?なんすかロキさん」

突然肩を叩かれ振り返る。そこには何処から持ってきたのか青い瓶を持ったロキが居た。

>「奇跡の霊薬ポーションだよ! どんな怪我も一瞬で治るよ!」

「ロキさん……それ嘘なんじゃ……それならフローレンスさんも油を売れるんだし……」

止血のお陰か平静を取り戻しはじめたルインは怪訝な表情でロキから配られた青い瓶を見る。
出処不明の怪しい薬を飲むのは自殺行為にしか見えない。
瓶を眺めながら治療の邪魔にならないように外へ出た瞬間、ロキの顔に拳がクリーンヒット。

>「どこの世界に酒瓶に薬を入れる医者がいるんダ!」

「や、やっぱアヤシイクスリなんじゃないすかぁ!!もぉ〜〜ふざけないでください、下戸なんすよ俺……」

アルテリアに殴られるのは自業自得と言わんばかりに顔を歪ませてロキのおふざけに辟易した。
直後指揮者を殴られたジョナサンが愛犬を蹴られたかのように怒る。

「今は推定無罪だが……次何かしでかしたなら…即!楽器で殴ってやる……」

奇妙な音楽隊一の過激派ボーカルのジョニーも怒りを露にしている。

「あー…あんま喧嘩とかは……ほら、怪我人がたくさんいるし……」

ひと悶着ありそうな雰囲気におっかなびっくり仲裁に入る。
が両者の一睨みであっさり引き下がった。

>「貴方たち、何をしてるんですか!」
>「ここは怪我人を治すための施設です。怪我人を増やすなら私とて許しませんよ!」

正義の炎を燃やすフローレンスにルインはおお、と尊敬の眼差しで見つめる。
今にそこに痺れる憧れるなどと言いたげな表情だ。

49 :ルイン ◆5q.yyAvL6. :11/06/07 22:05:49 ID:???
>「おいおい……。自爆起動か。」
>「自爆起動……!?まさか、こんな所で……!」

思考が停止した。時間が止まったかと錯覚した。
そして訪れる混乱の津波。恐怖の嵐。

「うぇぇぇえええええええええええぇ!!!?逃げなきゃ逃げねば逃げ出さねば逃げる必要がある逃げるべきだ!
 ハリーハリーハリー!ああああああ怪我人連れて逃げる時間なんかないし俺達もう死んだあーあ死んだっ!!」

その場にしゃがみこんで頭を掻きむしりながら諦めの現実逃避モードに突入。
ルインがそうして世界で最も無駄かつ非効率的な作業を躊躇なく行っていた頃
避難所は我先と言わんばかりに逃げ出す負傷者が殺到し混乱状態に包まれていた。

>「皆さん落ち着いて……きゃあっ!」

しかしボンクラヘタレが動く気配なし。

>「うわ。さっきからぜんぜん面白くねぇ!俺は血が見たいの!この盛大に吹き出して流れる血が!!たまには見せろやぁぁあ!」

神妙な顔をしながらもうすぐお前の血が辺り一面に飛び散るから安心しろ、爆発でな。と心の中で呟いた。
おまけで内臓と脳漿もね、とも。

>「まぁいいか。感謝しやがれ。俺様の特大級だ。」

「え!?マジでッ!!?」

反応した。
希望で頬が緩む。まってました、と言わんばかりの顔だ。
不遜な態度など全く気にならない。

「よしきた!やれ!今すぐやれ!はやくしねーと末代まで呪うからな!!
 それかあれだ!お前が男なのか女なのか白黒はっきりつけさせる!」

爆発と竜巻の正面衝突。その衝撃に身体が数センチ地面から浮く。
枯れ葉のように中空に放り投げられそうになったが、槍を引っ掴んで地面に突き刺すことで難を逃れた。
爆発が息を潜め気まぐれな風が去った後。全員の無事を何気なく確認して立ち上がる。

「あぁぁぁぁぁああ………生きてるって幸せなんだなあ………うん………!ぐすっ」

21年間生きて通算100万回目の生きている幸福を実感したところで、一日の出来事が走馬灯のように駆ける。
思えば何もしていないのに蹴られたり平手を貰ったり理不尽な暴力には事欠かなかった。

「………なんか頭痛くなってきた………………」

げんなりした表情でその場に座り込む。
結局、逡巡の結果戦場に飛び出したものの終わってみれば儲けたのはくたびれだけであった。


【終始ビビッてただけです】

50 :ロキ・ハティア ◆9pXiBpy0.U :11/06/08 00:05:17 ID:???
>48
>「ロキさん……それ嘘なんじゃ……それならフローレンスさんも油を売れるんだし……」
「信じれば夢も現実も同じさ」
無限の魔力に満ちた条件下では、我らの眷属は森羅万象を思いのままにする力を持っていたという。
今はただ束の間の夢を見せるだけ……。

>24
>「神も奇跡もないんだヨ!」
姉御の鉄拳制裁が炸裂する!

「そうさ、所詮我らは神に見捨てられた一族……
魔の世界の住民でありながら光に焦がれた愚かな道化。
だが謝れ、ノイファちゃんに謝れ!」
たとえ我が眷属には手を差し伸べぬとしても、神も奇跡も存在するのだ。
強さと優しさを兼ね備えた美貌の神官戦士。誰からも愛され慕われる、光輝く太陽神の寵児。
ワタシには少し眩しすぎる。

>35
>「おいおい……。自爆起動か。」
「マジっすか?」


51 :ロキ・ハティア ◆9pXiBpy0.U :11/06/08 00:06:18 ID:???
>36
>「まぁいいか。感謝しやがれ。俺様の特大級だ。」
風の防壁に守られる避難所。これでここには被害は及ばないわけだし一件落着。
……なんだけど。

―― ここは俺に任せて先に行け!
―― 嫌だ……君を置いていけるわけないだろ! 芸人にとって相方は魂の片割れなんだ!
―― 俺を信じられないのか? 必ず後から追いかける! 俺がお前を置いて死ぬわけないだろ!
―― 嘘つき―――ッ! 死なないって約束したのに!

おーっと、ナレーションに変な漫才が混入したことをお詫びいたします。
爆発、暴風、台風の目ときたらこの際もっとド派手にしなきゃね!
周囲に凄い魔力が漂っている。これならば……
「汝、世界を取り巻くミズガルズの守護者、7つの海統べる円環の海蛇……我が祈りを聞き届けたまえ!」

>「いいねぇ。ビリビリくるねぇ!前言撤回だ!これは面白い!」
「もっと面白くしてあげよう! 出でよ、大海の王者ヨルムンガント!!」
ワタシが祈りを捧げるのは神ではない。いつだって彼の地に住まう魔性の存在。
上空に浮かび上がるは巨大な海蛇の幻影。

自在に空中を泳ぎ、爆風を遮るかのように爆心地を取り巻く。
爆発による業火を鎮めるかのように、暫し一帯に豪雨を降らせる。
爆発がおさまると同時に、あるべき場所に還るかのように姿を消す。
全てが幻だったかのように雨がやむ。

>43
>「どうか生きてて……無事でいて!」
フローレンスさんの手を握って微笑む。
「大丈夫、生きてる。ワタシが保証する!」

>「こちらに三人、最優先救助人がいます!早く運んで!」
「ゆっくりおやすみ、目覚めたら次の戦いが待ってる」
こんな世の中だから、せめて幸せな夢を見せてあげよう。
具体的には美少女に取り囲まれる夢と、食べきれないほどのお菓子に囲まれる夢。

>49
>「………なんか頭痛くなってきた………………」
「明日があるさ、次も張り切っていこー!」
「わんわんわん!」

【ヨルムンガント召喚、爆発の被害を抑える。ロキ編第一章完!】

52 :ストラトス ◆p2OedqKZik :11/06/08 19:28:34 ID:???
【避難所周辺】

「一体どんな戦闘があったらここまで壊れるのやら…」

フローレンスさんを送った後、自分は運搬してきたゴーレムを使って瓦礫の除去作業やけが人の搬送をしていた

「取りあえず、けが人は全員避難所に運んだし全機を除去作業に専念させようか」

そう、次の作業を考えた時であった。突如、けたたましい警告音が周囲に鳴り響いた

「この警告音の鳴り方は…!!」

警告音の意味することを理解した瞬間、血の気がサッと引くのを感じた
さらには音の大きさからすれば音源から程遠くないことも、もう物陰に隠れるだけの一刻の余裕もないことも分かってしまった

「G-03!最大出力で力場装甲を前方に展開!!」

展開とほぼ同時に閃光が周囲を支配し、続いて爆風の渦が力場装甲越しでも分かるぐらいに叩きつけてきた


しばらくすると閃光はおさまり、強烈な爆風も止み始めた
周囲を見渡せば残っていた家屋もほとんど今の爆風で吹き飛んだのかきれいさっぱり元々あった瓦礫ごと吹き飛ばされていた

「なんという…」

しばらく茫然としていたが他の自分の甲型ゴーレムらが飛ばされていたのを思い出し
捜索することにした。このままでは一層忙しくなったであろう避難所の手助けもままならないからだ

【ゴーレム探し中、見つかり次第避難所へ手助けに行く予定】

53 :セフィリア ◆LGH1NVF4LA :11/06/09 16:45:44 ID:???
>「――ベストセラー風情がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
相手の声が拡声器を……空気を通じて、セフィリアの身体を震わす。
圧倒的な充実感が彼女の身体を駆け巡る。彼女の乗るゴーレムも彼女の高揚感が伝わったのかその身を震わせたような気がした
目の前の『インファイト3』と自分の『サムエルソンmk3』いくら拡張していると言ってもその性能差が縮まっただけで凌駕したわけではない
だからこそ戦闘の主導権の握れたのは大きい
榴弾の一撃で勝負が決まるかと思ったとき、クローディアはセフィリアの度肝を抜く行動に出る
大口径砲の砲塔で榴弾を受け止め、爆発を制御し砲塔一本を犠牲に被害を最小限に抑えたのだ
東区の空に火柱が上がる。激しくなる戦闘の激化を告げる狼煙

「そんなこと普通は考えてもやらないよ!」

賞賛、敵の動きが彼女の予測を上回った
一瞬、ほんの一瞬だが意識から戦いを忘れる
瞬間の閃光!閃光弾が辺り一面を包み込み、セフィリアの視界を容赦なく潰す。機体に乗せられた閃光遮断術式を超える光量
視覚素子が機能を回復するのに数瞬、セフィリアの目が回復するのにさらに数瞬
その間に住宅地を挟んで反対側に跳んだミドルファイト3
「跳んだ!!」
通常、ゴーレムが飛ぶようなことはない。住宅街を迂回したらこちらが狙撃される
おそらくそうであろう土ぼこりでおおよその位置がわかる。この乾燥したタンブルウィードの地理条件が幸いした
普通なら砲撃戦だ!と思うかも知れない、そうならおそらくセフィリアの命はここまでだ
先ほどの機動戦まがいのゼロ距離砲撃戦ならパイロットの腕でどうにでもなる
しかし、現代の演算素子、光術装置の影響で操者は引き金を引くだけ、そうなると最新型とはいささか分が悪い
おおよそのミドルファイト3の位置はわかる……だから

「一度火がついた私の心は……あとはかっ飛んでいくだけ!!」

余分な大砲、武装コンテナをパージする
ゴーレムをフルスロットルで民家に突撃する。瓦礫が飛ぶ、砂塵が舞い上がる

>「認めるわ。ゴーレムも操縦者もあんたの方が上かもね……でも!勝つのはあたしよ――勝って、全てを黒字にする!」
「いいえ、勝つのは私!我がガルブレイズ家に敗北は許されない!なにより負けた『天才』にどれほどの価値があるっ!」

セフィリアの叫びと同時に殺到する魔導弾の数々、装甲に刺さっては爆ぜる
残りの反応装甲が無くなるのが先か……蜂の巣にされるのが先か……

「分が悪い賭けは嫌いじゃない!!」
ペダルを最大まで踏み込み、最高速にまで達するここに来てサムエルソンmk3の突進が生きたことに彼女は最大の賛辞と謝罪の気持ちでいっぱいだった
帰ったら綺麗にしてあげるから……距離は僅か、あともう一踏ん張りだよ
愛機に語りかけ腰に刺した対ゴーレム用高熱剣を取り出す刀身に術式を施し敵機を溶断する
多量に魔力を消費するとして長時間しようすることが出来ない
もはやこの一撃に賭けるしかない、外せば蜂の巣、ついに反応装甲を貫通し操縦櫃を穿つ
視覚素子越しではない、ミドルファイト3が見える、刃は届く
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
狙うは魔動炉……刃が突き刺さる……
――静寂が空間を支配する。
勝者はどちらか……?

動いたのはサムエルソン……勝ったのはセフィリアだった
「クローディア=バルケ=メニアーチャ……あなたを拘束します。私たちは軍隊でも騎士でもないですし、ただの左遷の私にはこの言葉にどれほどの法的拘束力が
あるかはわかりませんが、とにかく私の言葉に従ってもらいます」

落ち着いて丁寧な言葉でクローディアに優しく語りかける

54 :アルテリア ◆U.mk0VYot6 :11/06/10 02:39:28 ID:???
「なんで殴られたか理解していないようだナ」
反省の色など毛ほど見せず、それどころか噛み付いてくるロキの態度に
激怒に歪む視線を再びロキへ移すも割って入ってきた音楽団に阻まれる。
「ほウ?捕虜の癖にやる気カ?そこのバカと一緒に牢屋に放りこんでやル」
お互い完全に火がつき、状況は一触即発といっていいぐらい緊迫した空気がただよう

そんな中、その火中に割り込む人間が一人
>「貴方たち、何をしてるんですか!」
そういって正義に燃える瞳で彼女は両者を睨みつけた。
>「ここは怪我人を治すための施設です。怪我人を増やすなら私とて許しませんよ!」
そのとき、アルテリアは少し戸惑っていた。いや、困惑といったほうが正しい。
先ほどまで世話しなく避難所内を駆け回り、治療を行っていた彼女
てっきり現地の兵かと思っていたのだが、よく見ていると自分と同じ
『厄介者』の証がついていたのだが、全く見覚えがなかった。
「…チッ」
軽く舌打ちをし、もう一度ロキを睨む
一言だけ忌み言を言おうかと思った瞬間、轟音が鳴り響き
その次の瞬間、抗う間も持たせず爆風が、衝撃波が襲い掛かってくる
「ぐぅ…」
飛ばされそうになった瞬間、か細いフローレンスの手がアルテリアを掴む


しばらくして、暴風は止み、静寂が戻った。
「…助かっタ」
ボソリとそうフローレンスに呟くように感謝し、念信機に手を伸ばす
「課長!何があっタ?」
態々連絡を取らなくとも、だいたい何があったか予想はつく
残骸となっていても、それは遺才によって既存のゴーレムを超えた超兵器
のおそらくサンプルであることは変わりなく
だからこそ、それの回収のためにあの男が現れたのは自明の理だ。
しかし、問題はその後だ。
仮に回収が困難となった場合、その手の人間は躊躇なくそれを破棄することを選ぶ
つまり、そういうことだ。
「なるほド、今、こちらから救助隊が向っタ。私は先にそっちへ戻ることにしよウ」

55 :ノイファ ◆QxbUHuH.OE :11/06/10 19:58:05 ID:???
「せえええええええええいっ!!」

斬撃。咆哮。純白の刃が奔り、眉間を甲殻ごと断ち斬る。

『ィ゛アアアァ゛アアァア゛ァァァアア゛ァァ――』

衝撃。断末。白光が煌き、飛び散る血流と共に魔獣の頭が垂れる。

「よいしょっと。」

膝を折り曲げ、落下の衝撃を余すことなく逃がし、ノイファは着地。
視線はナーゼムから外さず白刀を打ち払う。
刀身を濡らす血がこそげ落ち、大地に赤い影が落ちた。

『――ァアアァ゛アァ゛ッ!!』

だが額を割られ、零れる鮮血が頭部を染めても、ナーゼムは沈まない。
鋼の如き四肢は大地を穿ち、双眸はより鋭利な敵意を孕みノイファを射抜く。

「その頑丈なおでこのせいで……少し、浅かったかしらね。」

油断なく、しかし強ばらず、ノイファは切先をゆるりと地へ落とす。
防御に偏重しそこからの返す刃で攻撃を行う構え。
二人の体格差を考慮すれば、ノイファから仕掛た場合に有効打を狙うことは非常に難しい。
それ程、こと接近戦において体格が持つ重要性は大きいということだ。

『――マデ……此処マデ、追イ詰メラレタノハ……本当ニ久シブリダ。
 ダガ、手負イノ獣ハ手ニ負エナイモンダゼ。腕ノ一本ヤ二本ハ覚悟シテモラオウ……。』

さりとてナーゼムにも油断の色は微塵も無い。
たわんだ四肢は襲い掛かるための力を蓄え、牙も爪も来るべき交錯の一瞬を待ち構える。
魔獣の持つ生命力だけが可能にする持久戦術。

ゆえに、どちらも先んじて仕掛けない。泰然と不動。
ノイファは集中力を、ナーゼムは体力を。互いの掛札を限界まで積み上げ、先に切らした方の負け。
そういう戦いなのだ。

「――――っ」

歯の根を噛み締め、舌打ちするのはノイファ。
状況は俄然ノイファに不利だからだ。
熱を帯びて疼く右目と、連戦で磨耗した体力。
そしてそれ以上に、時が経てば経つほどフィンの命が危うい。

「……此方も、形振り構ってられません……ねえ。」

ノイファの眦が険しさを増す。

56 :ノイファ ◆QxbUHuH.OE :11/06/10 19:58:36 ID:???
二度に渡り、それこそ命を盾にして、己を絶死の危機から救ったフィン。
その借りを、否、恩を、返せなかったのでは――女としての矜持が廃る。

二つの戦場が交錯し、一方の戦場の刻が再動を始める。
セフィリアが駆る"サムエルソン"と、クローディアの駆る"ミドルファイト3"の決着が付いたのだ。

「ナーゼムッ――」

構えの利を捨てノイファが仕掛ける。

『クロ゛ーディア゛ッ!?』

先に動いたのはノイファ、しかし先に動揺を見せたのはナーゼムだった。
ノイファはその隙を逃さない。

『――ッガァアア゛アァア゛ァァッ!』

ノイファの刃圏がナーゼムの前腕を捉える。
深々と刃が食い込み、それでも両断までは至らない。

「かふっ――」

傷つき真紅に染まる腕をナーゼムが打ち振るい、ノイファの体が弾かれる。
腕と脚を差し入れ、受身をとってもなお足りない。消し飛びそうになる意識を口端を噛む事で回避。
避けた口唇から血が伝って落ちる。
だが、この距離こそがノイファの欲した間合い。

「"光の裁き"に――灼かれなさい!」

突き出す腕と、奏でる詠唱。魔力を集めて導線を作りあげる。
遍く降り注ぐ陽光を、束ね連ねて一条の槍と為す。
太陽神を信奉する神官のみが行使する"白光"と呼ばれる神聖魔術。
一直線に突き刺さった光の槍が、ナーゼムの背中で爆ぜた。

『クロ゛ーディア゛ァアァッ!!』

ぶすぶすと煙を上げナーゼムが吼える。
ノイファの持つ最大威力の攻性魔術"白光"は並の魔物であれば塵一つ残さず死滅させるだけの威力を誇る。
だというのに、僅かに動きを止めただけで、ナーゼムは前身を止めることはなかった。

最早敵であるノイファも、フィンも、殺害対象であるエミリーすらもナーゼムの眼中にない。
引きずっていた脚は次第に軽さを増し、鈍かった歩幅は地を駆けるに至り――跳躍。
地響きと砂埃を上げ、勝者として剣を突きつけるゴーレムと、敗者として屈するゴーレムとの間に自身を割り込ませた。

『シッカリ……掴ッテロヨ……』

クローディアの襟首を起用に口で咥え、頭を振り上げ、背中へ。
そのまま高く、遠く、咆哮を上げるとナーゼムは再び大地を蹴る。

「そう、それがアナタにとって一番大切な――」

化け物などと嘯いていたが、ナーゼムが最後に取捨択一したのはクローディアだった。
張り詰めていた緊張の糸が切れ、残っていた体力も尽きた。
最後まで言葉にすることなく、やれやれといった調子で頭を振ると、ノイファはその場に腰を下ろし空を見上げた。


【ナーゼム、クローディアを背中に乗せて離脱。ノイファ追討を放棄。】

57 :ファミア ◆mCdqLO6Z6k :11/06/11 04:47:22 ID:???
ダンブルウィードは格別大きな街というわけではありませんが、
それでも一つの避難所に住民総てを収められるほどに人口が少ない街でもありません。
各地区ごとに中心となる避難所はありますが、そこまで辿り着く前に戦闘や災害が激化してしまったり時のために、
より小規模なものがいくつか存在しています。

その中でも比較的大人数を収容している、外壁付きの宿屋の門前に、頭の消し飛んだニードルデーモンの死骸が二つ、
そして、仁王立ちしているファミア・アルフートの姿がありました。
人の頭程もある転経器を先端に載せた、身の丈を大きく超える(ファミアの背はそれほど大きくないのですが)錫杖を握り締め、
口を引き結んで身じろぎ一つせず戦の喧騒に満ちた空を睨んでいます。
傍らで同じように長槍を握りしめる兵士達の目にはその小さな背がやたらと頼もしく見えましたが、
実のところはそうやって全身に力を入れていないと叫んで逃げ出しそうになるからそうしているだけですし、
『そうしている』理由も使命感などではありません。

逃げれば帝都に――ひいては家に――帰れなくなる。
ファミアの両の足を今この地に繋いでいるのはそんな思いでした。
意にそまぬ結婚から逃れて幼年学校へ。幼年学校での競争から逃れて落ちこぼれ、遊撃課へ。
ここで逃げれば次は何かといえば、家には帰れるでしょうが間違いなく待っているのは政略結婚で、つまり振出しに戻るわけです。
さりとて先陣切って戦線へ突っ込むなどということが生来怯懦なファミアに出来るはずもなく、
結果として、少なくとも除隊にならない程度になにか任務をこなすという、かえって面倒な事態に立ち至っているのでした。
なお、ここに至るまでに、そもそも列車での第一陣として到着したにもかかわらず
なぜだか誰にも認識されていないようなのでこれ幸いと離脱しようかとも考えたものの、
それで帝都に帰ったところで照会されれば1日経たずにばれてしまうので思いとどまるという段階を踏まえています。

58 :ファミア ◆mCdqLO6Z6k :11/06/11 04:49:57 ID:???
さて多額の現金がばらまかれるという騒ぎもあっという間に収束し、それから暫し。
見上げる空の下でひときわ大きな衝突音が響き、さらに一瞬の後、日が翳りました。
首を傾げるファミアの視界で影は急速に大きさを増し、水平に回転しながらまっすぐに向かってきます。
セフィリアの吶喊の際に吹き飛ばされた、ミドルファイトの装甲の一部だとはもちろんファミアには判別できませんが、
とりあえず決して小さくなく、したがって重量もそれなりであろう何かが自分めがけて突っ込んできているのは十分に理解できました。
即座に逃げようとして、踏みとどまります。

――ここで逃げたら査定に響く!
避難所内の住民がどう、とかではなくあくまでも自分が中心ですが、とにかく事態を収拾する意思を固めたファミアは、
下がろうとした足を半歩前へ、装甲の破片に対し体勢を開き、その時にはもはや眼前まで迫った破片に、即座に錫杖を叩きつけます。
「……っわああああああああっ!!」
盛大に土埃が上がり、周辺一帯を包みます。
それが収まったとき、そこにはひどく咳き込んでいるファミアの姿がありました。

「げほっ……、うえぇぇ、もうやだ、お風呂入りたい……」
言いながらローブの袖で顔を拭うファミアの動きが、はたと止まりました。
なんだか酷くぬるりとした液体が顔についていた為で、思わず袖を見やります。
土の混じった、しかし明らかにそれとわかる血のりが白い布地にべっとりと付着していました。
よせばいいのに周囲を見渡し、地面に半ば以上埋まった装甲の破片の下にひしゃげたニードルデーモンの死骸を発見。
血はそこから飛び散ったものだと理解した次の瞬間、ファミアは泡でも吹きそうな体で卒倒してしまいました。

そもそもこのニードルデーモンはファミアが(近くの壁を文字通り叩いて壊して作った)石ころを投げて倒したものですが、
その後、門前で仁王立ちしつつ空を見ていたのも、この自分でこしらえた凄惨な死体を見るのが嫌だったからでした。
それが更にグロい様相になって転がってるんだからそりゃあ気も失おうというものです。
結局、ファミアは気のきかない兵士たちの手によってしばらくそこに安置されることになりました。

【登場→気絶】

59 :フィン=ハンプティ ◆yHpyvmxBJw :11/06/12 00:51:49 ID:???
比類無き剣技は確かに魔獣の額を断ち切った。
が、それでも敵は倒れない。その身に宿す人外の硬度で、そして生命力で、
致死の一撃を耐え抜いた……いや、それどころか、その肉体は未だ健在。
十全の戦闘力は失っているにせよ、戦う事自体は可能なままである。
それに対するノイファは、見た目こそ万全な状態。傷一つ見当たらないが、
しかし、精神力とでも呼ぶべきモノが急速に消耗しているのであろう事を
彼女に流れる汗が証明している。

不動。勝利がどちらに転ぶか予測できない消耗戦。
運命の天秤がどう傾くか、その結末は神のみぞ知るといった所か。

……そんな中、先程半ば自殺的な行動を持ってノイファへの攻撃を
阻んだ青年、フィン=ハンプティは、立ちすくんだままその場を
一歩も動かないで――――いや、動けないでいた。

(……く、そ……まだ、だろ……守らないと、いけねーのに……
 誰かを傷つけない、為に、その為だけに、俺は生きてるんだ、ろ……なのに、
 どうして動かねー、んだよ、俺の身体……っ!!)

 四肢から零れ落ちる失血は地へと流れ出て、赤い水溜を形成していた。
だらりと下がった腕は、もはや指一本動かす事すら叶わない。
頭を垂れたその表情は、青を過ぎてもはや白の域に入りつつある。
恐らくは先ほどのナーゼムへの反撃で残った力を使い切ってしまったのだろう。
脳内ではその呪いの如く四肢に動けと命が出され続けているが、
生憎それに応えるには生命力は存在しない。
……否、そもそも現在こうして立っているだけでも奇跡的なのだ。
普通の人間であれば、これだけの怪我と失血と痛みを架されれば、
とうの昔に命を失っている事だろう。
『天鎧』という遺才を保有しているからこそ、生命を保ち、かろうじで
意識すら保有していられるのだ。
……そして、そんな意識と無意識の狭間だったからだろうか

60 :フィン=ハンプティ ◆yHpyvmxBJw :11/06/12 00:53:33 ID:???
(……あ)

――――焼け落ちる世界と、自身に纏わり付く無数の死体、響く数多の絶望の声

一瞬、そんな情景がフィンの脳裏に思い浮かんだ
とても懐かしく、叫び狂いたくなる様な地獄の如き情景。
記憶から滲み出るその光景が何だったのかフィンが思い出そうとした時

>『クロ゛ーディア゛ァアァッ!!』

フィンの意識を叩き起こす様に響いたのは「ナーゼム」の咆哮。
一瞬意識が飛んでいたのだろう。そしてその間に、不動の勝負は決着を迎えつつあった。
眼前に広がっていたのは、破壊しか出来ないと嘯く魔獣が、背中に凄絶なる光の槍を
受けて尚選んだ、仲間を「助ける」為の選択。
その姿を認識したフィンは、ナーゼムのその背中を、無様だが気高く眩しいその背中を見て、
何故だか、何故だか叫ばずにはいられなかった。

「――――ナーゼム!クローディアっ!!
 次は、お前達も、守ってやるぜっ!! だから――――」

出せない声を、振り絞る。膝を付き、血を吐くようにして叫ぶが、
やはりそれでも、最後まで言葉を吐き続ける体力は残っていなかった。
或いは、フィン本人が何を言えば言いたかったか、分かっていなかったのかもしれない。

去り行く二人の背中を、フィンは見送る。
ボロボロで動けない身体だが、それでも尚、倒れる事無く。
まるで、鎧の様に。

【フィン、行動不能。逃走する二人を妨害する体力無し】

61 :フィン=ハンプティ ◆yHpyvmxBJw :11/06/12 00:56:39 ID:???
・訂正
/脳内ではその呪いの如く四肢に動けと命が出され続けているが、
生憎それに応えるには生命力は存在しない。

 ↓

脳内では呪いの如く四肢に動けと命が出され続けているが、
生憎それに応える生命力が存在しない。

62 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/06/13 00:16:04 ID:???
連射。連射連射連射再装填連射連射――!
視覚素子一杯を瓦礫と土埃が埋め尽くす。聴覚素子を使わなくても、装甲越しに響く轟音は彼女に確かな手応えを伝えてくれる。
いける。がら空きの横っ面に徹甲魔導弾をしこたまぶち込んでやった。いかに爆発反応装甲と言えど、索敵範囲外からの砲撃なら――

>「いいえ、勝つのは私!我がガルブレイズ家に敗北は許されない!なにより負けた『天才』にどれほどの価値があるっ!」

瞬間、土埃のカーテンを突き破って、機影が目の前に現れた。
あろうことかこちらの弾幕に真正面から突っ込んで、装甲頼みの強引な進撃を捻り込んできたのだ。
サムエルソンの手には格闘武装の装甲溶断剣。単純なマニューバだ。近づいて、一撃を叩き込む。それだけで自機は沈む。

「しょ、正気なの――?ほんの少しでも装甲を突破されたら、即!操縦基が蜂の巣なのよっ!?」

とりわけ強靭な前面装甲と言えど、裏をかえせば分厚い装甲が守っているのは『絶対に守りたい所』――操縦者そのものなのだ。
捨て身も良いところの、常軌を逸したノーガード戦法。のるかそるかの、掛け値なく命をチップにした大博打。

>「分が悪い賭けは嫌いじゃない!!」

「だからってこんなやり方する!?フツー!」

言って、それがあまりに的外れな指摘だと気付いた。普通じゃないに決まってる。相手は正真正銘の、戦いだけを極めた天才なのだ。
クローディアが勝つことで自分を肯定しようとするのと同じように――サムエルソンの乗り手もまた、勝利こそが求める全て。
この勝負、躊躇った方が負ける。トリガーにかける指が熱を持つ。頬を伝った汗を舌で掬いとって、唇を噛んだ。

>「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「ふざっけんじゃないわよおおおおおおおおおおおおお!!!」

接触。凄まじい衝撃が操縦基を揺らして、クローディアは胃の中身が逆流する気配を感じた。必死に嚥下し、前を見る。
視覚素子の鼻先に、サムエルソンが停止していた。
勝った、こちらの砲は生きている。あとはトリガーを引いて、こいつを瓦礫に変えるだけ――

「――あ、あれ?」

何度トリガーを引いても魔導弾は発射されなかった。代わりに羊皮紙型の表示端末に、警告文のインク文字が一つだけ走った。

『魔導炉停止。出力低下――戦闘レベルの維持不可能』

クローディアの乗る操縦基の、すぐ下……腰部に鎮座する魔導炉が、巨大な直剣によって貫かれ、魔力漏れの火花を小さく上げていた。
魔力をゴーレムの動力に変換する装置――魔導炉を破壊されたミドルファイトは、静かに冷えていくだけの岩人形に成り下がった。

「ミドっさんが……あたしの財力が、負けた……?」

>「クローディア=バルケ=メニアーチャ……あなたを拘束します。」

サムエルソンが停止していたのは、もはや戦闘機動が必要ないと判断したからだった。
放心するクローディアに楔を撃ちこむように、敵機から投降勧告が響く。冷徹なニュアンスではなく、むしろそれは懇願のようだった。
拘束。それはつまり、クローディアを捕虜として帝国軍に連行するという意味で。

「じょーだんじゃないわ」

素早く操縦盤を操作。魔導経絡に残留した魔力で、もう一挙動ぐらいは可能だ。ミドルファイトは両腕で、サムエルソンを抱擁した。
関節をロック。帝国一高級な拘束具がサムエルソンをその場に釘付ける。
同時に、軍用の兵器に例外なく装備されている装置――魔導炉とは独立した自爆機能が起動。内部で爆発術式が膨張する。

「貴族の誇りは重いのよ……命よりも。お金よりもっ!冴えたやり方だなんて思わない。謗りはあの世でたっぷり聞くわ。
 だけど、戦場では結果主義だけがまかり通るの……っ!潔い死に方も、卑怯な心中も、おんなじ"死亡1"なんだからっ――!」

クローディアは傭兵だが、同時に貴族でもある。戦場の美学と、高貴の誇り。二律背反の信条は、しかし彼女の中で矛盾しない。
拘束され、拷問によって自軍の重要な機密を吐くぐらいならば。貴族の銘を持ちながら、敗北者と後ろ指をさされ生きるぐらいなら。
ここで自分の命と引換に、敵の一騎当千を倒せたならば、いっそ魂の尊厳は守られる。そう結論を出した。

63 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/06/13 00:17:13 ID:???
「涅槃で会いましょう……!あたしとあんたが、同じところに行けるならだけど――」

自爆装置の、実行トリガーを、万感の思いを込めて引ききった。

「――!」

起動しない。魔導炉を破損しても動くはずの自爆装置が、実行表示のまま動かなかった。
何度もトリガーを引き、操作盤を叩くが、ミドルファイトの演算素子は反応を返してくれない。

「なんなのよ!どうして動かないの!?あんたまで、あたしを裏切るっていうの!?」

癇癪のように喚く自分を俯瞰するように、もう一つの意識が、半ば絶望のように冷静な諦めを心に蔓延させていた。
人の心は信用できなくても、金の取引で得たものは信頼できる。他ならぬ取引相手が、商品の信頼性を証明してくれるからだ。
金は自分を裏切らない、自分の手元にあるうちは。没落し、メニアーチャから破門同然の扱いを受けても、それだけが拠り所だった。

それが、ああ、最後の最後で、お金まであたしを裏切る。豪邸が買える値段で、自爆装置すらまともに起動しない粗悪品を掴まされた。
ミドルファイト3を購入してから、人の手は信用できないからと整備まで全部自分で行って、最高のコンディションに仕上げたはずだ。
それが、土壇場で機能不全に陥るとすれば、それはもう製造の段階で問題があったとしか思えない。
何が新世代の演算素子だ。何が自己学習型支援知性だ。機体に意志が宿ろうとも、所有者に仇なすのならそんなものないほうが良い。

「こっの……ポンコツ――」

感情に任せ拳を羊皮紙型の表示端末に叩きつけようとした刹那、羊皮紙の表面にインク文字が一列走った。
高性能の演算素子を積んでいるくせに、その一文だけはいやに辿々しい筆跡だった。

『――GoodLuck(幸運を)』

そんな文言より、他に表示するべき機体情報はいくらでもあっただろうにも関わらず。
その文字列は、いかにも最優先事項といった顔で表示端末の中央に陣取っているのだった。

「……なによ」

固めていた拳をほどいて、その手で表示端末の表面を撫でた。
貴族としてのプライドが押さえ込んでいた感情の雫が、やがて二筋頬に川を作った。

「なんなのよ……!」

そのまま操縦基に縋るようにして、彼女は嗚咽を漏らした。

64 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/06/13 00:17:51 ID:???
そのとき、操縦基のハッチが不意に開かれた。クローディアの操作によるものではない。外からこじ開けられたのだ。
拓けた空からこちらを覗き込む影は、血に塗れた獣の姿……ナゼームが、満身創痍で肩を上下させていた。

>『シッカリ……掴ッテロヨ……』
「え、ちょ、きゃっ!?」

襟元を咥え上げられ、クローディアは宙に身を躍らせた。ナーゼムの薄汚れた背中に着地し、気付いたときには彼ごと再び宙にいた。
ゴーレムとは比べ物にならない最悪な乗り心地に胃袋を揺さぶられながら、クローディアを載せたナーゼムは戦域を離脱した。
それはもう疾風もかくやといった速度で、みるみるうちに瓦礫の街を抜け、平原を走り去っていく。

「オ仕置ハ受ケル……デモ、クローディアハ、ココデ死ヌベキジャナイ……死ンデ、欲シクナイ」
「無茶言わないでよ……あたし、もうお金もないのよ?あんたのお給料も払えないのよ?」
「ジャア、クローディアに、オレの給料ヲ貸しテオク。マタ稼いデ、オレに返シテクレ」
「そんなの……!約束できるわけ、ないじゃない……」

ナーゼムは暫し無言で走り続け、悩んで悩んで悩みぬいたといった風で再び口を開いた。

「……クローディアハ、金ニ汚ナイ」
「はあ!?あんたさんざん考えて出てきた言葉がそれ!?」
「アイツラニ金ヲ取ラレテ、泣キ寝入リスルノカ?」

今度はクローディアが黙る番だった。そうだ。あいつらは、クローディアの財産を侵害した。
あんな風にばらまかれてしまっては、もはやクローディアの所有権を主張できない。お金に名前は書けないからだ。
あのあと、きっとこっそり回収して私腹を肥やすつもりなのだろう。あの連中が金貨を両手にほくそ笑む姿を想像したら、
ふつふつとした怒りと、そして何故だかそれを凌駕する活力が胸の底から湧いてくるではないか!

「きぃぃぃぃぃぃぃっ!ムカつくわ!腸が煮えくり返ってポトフを煮込めるぐらいムカつくわ!あたしはね!損するのはイヤだけど、 他人が得するのを見るのはもっとイヤなのよ!俄然腹が立ってきたわ!今のあたしなら妬みで人を呪えるわーーっ!!
 トロトロ走ってんじゃねーわよナーゼム!鞭入れるわよ!?こーなったら絶対、あいつらから債権取り立ててみせるんだからっ!」
「ソノ前に、オレが死ニソウダ……商品は、大事ニ……」

途端に元気になったクローディアの下で、満身創痍のナーゼムは虫の息を溜息に変えた。


【クローディア:撤退。遊撃課へのリベンジを誓う】

65 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/06/13 00:19:13 ID:???
フランベルジェ=スティレットが眼を覚ましたのは、中央区に点在する避難所のベッドの上だった。
隣のベッドには、何故かダンブルウィードへ到着早々どこかへ行っていたファミアが同じように寝かされていた。
ベッドから這い出ようとして、シーツの中に柔らかい塊の存在を認めた。白布をはぐると、そこにはプリメーラが眠っていた。

「なななななななななんででありますか!?」

えらく同様しながら、記憶を辿や、自分が置かれている状況に合点がいった。
そうだ。あのとき、クランク1と名乗るジグザグ髪の男に不可視の何かで吹き飛ばされ、そして意識を手放したのだった。

「死んでてもおかしくない怪我だったんだよ。頭を強く打っててね」

帝国軍の衛生兵がすばやく寄ってきて、スティレットの傷を点検しながらそう言った。
おどろいたことに、あれだけの速度で石壁に叩きつけられていながら、彼女の肢体にはおよそ負傷と呼べるものはなかった。

「より表現に正確を期すなら、傷は『あった』んだよ。そこの子がさ、股間から何かを出して君に飲ませたらあら不思議、
 陥没してた頭蓋骨も、バッキバキだった肋骨も新品に変えたみたいに綺麗になっちゃって」
「こ、股間から出した何を飲まされたのでありますか!?」
「色は綺麗だったよ」
「だから具体的な名称を教えて欲しいのでありますよーーっ!」

ニヤニヤしている衛生兵の視線から逃れるように、未だ眠るプリメーラとファミアを担いでスティレットは避難所を後にした。
『館崩し』がベッドになかったので、おそらく未だ瓦礫の中か、本部に回収されたのだろう。探さなければならない。
作戦本部へ向かうと、そこには既に遊撃課員達が集っていた。到着時には見ていない顔ぶれもある。

「全員揃ったな。それでは現時刻一八二五より、本作戦の反省会を始める」

遊撃課長ボルト=ブライヤーが、サフロールの給料袋から抜く紙幣の枚数を勘定しながら言った。
背後のブリーフィングボードには、今回の戦果、損害、地図に記された実況見分、そしてクランク1の念写画が貼ってあった。

「蓋開けてみれば、本作戦は失敗もいいとこだ。ゴーレムは使い物にならないレベルの瓦礫に変わっちまったし、
 ダンブルウィードの街並みもずいぶんとすっきりしちまった。軍の連中が血の涙を流してたぞ。お前ら本当ダメだな」

これは明らかな戦災であるため、その復興予算は軍が支払わなければならない。
余分な出費が増えて、いの一番に経済的な打撃を喰らう場所があるとすれば、それは軍で働く兵士達の給料だ。

66 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/06/13 00:20:43 ID:???
「だが、色々と有用な情報も入った。とりわけ教会で会った『クランク1』とかいう男は、叩けば埃よりも良いモンが出てくるぞ。
 『クランク』ってのは多分、コールサインだ。エルトラスの特務部隊……軍の連中が涎たらして喜びそうなネタだ」

遊撃課の任務によって得られた事物の有用性は、そのまま遊撃課そのものの有用性と同義だ。
とりわけ今回は『遊撃課でなければ得難かった戦果』――暴走ゴーレムの撃破によって、内部的な評価もされるはずである。
曲者ぞろいの遊撃課の面々が、また一歩社会復帰に近づいたと捉えれば、これほど喜ばしいこともない。

「まあ、どっちにしろこの件はもうおれ達の手からは離れることになる。あとは軍の仕事だ。おれたちは戦争屋じゃねえからな。
 おれからは以上だ。あと軍の方から二三、ありがたいお小言があるらしいから心して謹聴しろ」

ボルトは言葉を切ると、それまで傍に控えて静聴していた司令支部の中隊長に席を譲った。

「はっきり言って大赤字だ。もう君らには頼まんよ」

中隊長は、今回の復興予算の見積書を会議机に滑らせた。
そこには、軽くゴーレムが10機は買えるほどの莫大な金額が記されていた。ゴーレム3機のためにこれだけの被害が出たのである。

「カネがないからゴーレムの回収を頼んだのに、ゴーレム以上の被害と、そして肝心のゴーレムは大破!なんだそりゃ!
 中央区はわかる。だが何故、東区や西区までこんなに荒れてるんだ!?お前ら敵国の工作員とかじゃないだろうな!?」

ぜえぜえと肩で息をする中隊長は、今年の暮れまでに帝都へ戻れるはずが来年までこの街に釘付けになったことで、
軍人にはよくあることだが――かねてより冷戦状態にあった夫婦仲が決定的な亀裂を迎えてしまった理不尽な怒りも含んでいた。

「もっと言っていいぞ」

ボルトが煽る。中隊長は、だが。と前置きして表情を変えた。

「驚いたことに、一般市民の死者が一人も出なかった。これは何にも代えがたい尊い成果だ。
 我々が戦ったのでは、こうはいかなかっただろう。君たちよりも被害は抑えられただろうが、市民の蹂躙を座視するほかなかった」

もとより、戦争とはそういうものなのだ。
指揮官をやっていれば、死ぬ人間の数と質を勘案して、天秤が傾いた方を生かすという選択は幾度も経験する。
そうすることでもっと救える命はあるし、そうしなければ壊滅してしまうような選択の余地がない場合もあった。
それが間違っているとは思わないし、そういう選択を超えてきた自分たちに誇りをもっている。それでも。

「――薄っぺらな倫理だって、貫き通せば確かな信念だ。世にあまねくあらゆる理不尽を座視せず、打ち砕ける者がいるとすれば、
 それは君たちのようなはみ出し者なのかもしれないな。若さというのもあるが、我々には君たちが眩しく見えるよ」

着席した中隊長の言葉を継ぐように、ボルトがまとめに入る。

「社会不適合者の集まりが、初めて社会の役に立ったってわけだ。誇っていいぞお前ら、これは人類が空を飛ぶような快挙だ。
 ……睨むんじゃねえよ。こいつは本心だぜ。ここは否定の最果てだ。お前らを肯定するのは俺じゃない、お前ら自身だ。
 肯定の土塁を積み上げろ。ヒト以下の、最底辺の生き物が、ヒトと肩を並べたいなら身長を鯖読んじまえばいいんだ。俺が――」

柏手を打った。

「お前らの背伸びを支えてやる。総員、ご苦労だった。機材を回収して撤収する。鉄道は二〇〇〇時発だ。遅れんなよ。
 ――状況終了だ」

斜陽が瓦礫を照らす夕暮れの街で、静かに戦闘状況が終了した。
エルトラス兵は既に撤退し、再びもとの均衡状態へと移行しつつある。遊撃課の成果も、宵と共に闇へ紛れていく。
かわりゆく時代の、変わらない一時。掃き溜めの英雄たちが生み出した安寧は、穏やかに街を包んでいた。


【任務完了。ダンブルウィードを撤収】

67 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/06/13 00:21:34 ID:???
――次回予告――

観光協会の依頼で帝国領の中央に開いた巨大湖へと向かった遊撃課!
湖底に眠る、とある富豪の残した伝説の隠し財産を捜索し、引き上げて欲しいという依頼ガン無視でビーチに繰り出す遊撃課!
彼らが賑わう仄蒼い水の底には、湖に伝わるもう一つの伝説・謎の巨大水龍の不鮮明な存在が静かに鼓動を打っていた――!

次回、遊撃左遷小隊レギオン! 第承章『人は変わってゆくものだから』

状況開始だ!

68 :リードルフ ◆M0g7zNWq0k :11/06/13 14:14:14 ID:???
「なななななななななんででありますか!?」
「ふぇえっ!?」

驚いて薬瓶を落とす所だった。先程、蒼い鱗の薬の残りで東区の課員達の治療を終えたところだった。
ベッドの一つに目をやると、スティレットが一緒に眠っているプリメーラを凝視している。
素早く衛生兵が近寄って傷の点検、異常はないと判断した。

「お早う(?)ございます。それにしてもあれだけの惨状の中、よく無傷で……。」
「より表現に正確を期すなら、傷は『あった』んだよ。そこの子がさ、股間から何かを出して君に飲ませたらあら不思議、
 陥没してた頭蓋骨も、バッキバキだった肋骨も新品に変えたみたいに綺麗になっちゃって」

衛生兵からすれば何気ない一言を放ったつもりだろうが、フローレンスは眉を顰めた。
そんな話は聞いていなかった。彼女が駆けつけた時は既に傷は完治していたから当たり前なのだが。
衛生兵にからかわれたスティレットがプリメーラ達を抱えて去っていくのを眺めながら、さり気なく質問した。
「もしかして、彼女が飲まされた物って……これ、ですか?」
「おーそうそうコレコレ!遠目からじゃハッキリとは見えなかったんだけどね。」

やっぱり。おかしいとは思っていたのだ。レイリンのあの不自然な態度や嘘、きっと彼女は人を騙せないタイプだ。
誰かに口止めされたのだろう。予想はつくが。

「(後で、みっちり問い詰める必要がありそうですね。)」

フローレンスは嘘が嫌いだ。だからこそ、嘘を吐く理由が知りたい。そう思う。
スティレットの後を追って本部に戻ると、お説教の真っ最中だった。遅刻したことには気づかれなかった。

「鉄道は二〇〇〇時発だ。遅れんなよ。 ――状況終了だ」
話が終わり、フローレンスは人知れず嘆息を漏らす。そしてボルトの話の内容を反芻する内に、ハッと思い立ち彼の後を追いかける。

「たっ隊ちょあふぅん!?」

転けた。しかも変な声が出た。耳まで真っ赤にしながら立ち上がる。
「隊長、折り入ってお願いがあるんですが……。その、隊長と同じ車両で良いですかっ!?
 ほら、寝てる間にリードルフに戻ったりしたら大パニックですから。お願いします!」

一気にそう捲し立てると、フローレンスは勢いよく頭を下げ、下げすぎて頭からつんのめって転んだ。

【東区の治療完了→隊長と同じ車両を希望する】


69 :セフィリア ◆LGH1NVF4LA :11/06/13 22:34:01 ID:???
>「じょーだんじゃないわ」

勝敗は決した……ミドルファイト3の魔動炉に深々と剣が突き立て、根源を絶ったからだ
だが少女はまだ諦めない、貴族の意地と誇りのため……

>>潔い死に方も、卑怯な心中も、おんなじ"死亡1"なんだからっ――!」
そこに戦士の矜持が加えられる。さまざまな想いが彼女に最後の選択を迫る

「????まさか、自爆!!」
とっさにゴーレムを動かそうと指に力を込める……動かない!
クローディア最後の意地がサムエルソンmk3を捕まえる。執念、幸運、油断、信頼…
>>「涅槃で会いましょう……!あたしとあんたが、同じところに行けるならだけど――」
様々な要素が結実し彼女に華を咲かせようと働いた……が、最後の最後に――不幸
作動するはずの自爆装置が作動しなかった。不良品か戦闘中に故障したか、関係ない
『運』たったこれだけの差、これだけで彼女達の明暗を分け、勝敗を今度こそ決定づけた
「……見事です」
もはやそれ以上の言葉を不要だった

セフィリアは彼女を拘束しようとゴーレムを降りようと操縦櫃を開けたとき
漆黒の暴風がクローディアを吹き飛ばすかのように連れ去った
「なっ!」
ナーゼムが瀕死の身でありながらクローディアを伴って駆けていく、追いつくことは誰も出来なかった
「これでは……これじゃ私の勝ちじゃない!次は必ず……!」
悔しさで最後は言葉にならなかった。セフィリアは新たな決意を胸に初任務を負えた……

「で、ウィレムはいつまで寝てるの?」
ちなみに中破したサムちゃんを帝都にまで運ぶ料金と修理代を課長につけておいた

【帰りは皆と一緒に列車で帰還】

70 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/06/15 19:45:05 ID:???
物事には、失われるべきときがある。

新しい、便利なものが社会に受け入れられたなら、古くて不便な下位互換が社会から退くべきなのだ。
それをしないでいると、古い者が新しい者と対等になる為に、煩雑な規則や制度を整備しなければならなくなる。
組織全体の意思決定や新陳代謝が鈍重になる。足を引っ張っていることに気づかず、古い者は自分が必要とされていると錯覚する。
やがて社会の重い枷となった者たちのことを、人は『老害』と呼ぶのである。

人は適度に失わなければならない。いらないものを捨てねばならない。
だが、そうして『いらないもの』とされた者達は、ただ路傍で朽ちていかなければならないのだろうか。
激動の時代が英雄を否定し、変遷する社会が天才を拒絶して――彼らには、ただ、居場所がなかった。


【遊撃左遷小隊レギオン! 第承章 『人は変わっていくものだから』】

71 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/06/15 19:45:31 ID:???
遊撃課課長、ボルト=ブライヤーは研究院から上がってきた書類に目を通しながら低く唸った。
帝都王立研究院。帝都エストアリアは6番ハードルに屹立する、帝国最大の学術施設。その威容は、白磁の巨塔と形容される。
ダンブルウィードの事件で、辛うじて回収できた暴走ゴーレムの残骸をここで調査に出したのだが――

「これだけか?」

ボルトが指で弾いた書面には、暴走ゴーレムの元となった『インファイト2』の基本的なデータが乗っているのみである。
対面で、今回の調査の現場監督をしていた魔導師の女性が憮然とした表情で鼻を鳴らした。

「ほぼ消し炭の残骸持ってこられるとは思ってなかったよ。むしろここまでデータを復元できたことが快挙だね。
 ったく、うちの名機をよりによって戦争相手の作戦に使うなんて……軍に睨まれでもしたら商売上がったりだよ」

インファイトの残骸を横目に見遣るこの女は、軍用ゴーレムの老舗メーカー『エクステリア』の魔導技術主任だった。
魔術の名門であるエクステリア家の三女であり、とりわけ優れた才を持つ者が賜る鬼銘・『才鬼』の次期後継者と目される才媛だ。

「鹵獲対策が足りないっていう実証がとれて良かったじゃねえか。あんなモンが三つも四つも出てきたらリコールじゃ済まねえぞ」
「ぞっとしないね。一応操縦基の暗号化も最新のを使ってるはずなんだけど……
 それにこのゴーレム、ただ鹵獲されたにしては、妙に小奇麗なんだよね。兵装も殆ど弄られてないし」
「ああ?んなわけあるか。インファイトにゃ積めないような兵装がいくつも載ってたって話だぞ」
「だから、そういう無茶苦茶な改造を施した痕跡がないんだよ。『不自然なほどに』……巧妙に、隠匿されてる」

敵の兵器を奪って使うにせよ、部品だけを持って行くにせよ、ろくな整備もできない戦場でそんなことをすれば何かしらの痕跡が残る。
工具を使って無理にこじ開けたひっかき傷だったり、バルブやネジの歪みだったり……そういうものが、一つもないのだ。
そこから導きだされるのは、敵がこのゴーレムを、『通常以外の方法で操っていた』というただ一つの解。
無論、常人にはさらさら不可能な所業である。遊撃課員のストラトスのような、機巧弄りに長けた者。
それも、並ならぬ技術の持ち主でなければならないわけで。

「あっち側にも『天才』がいる、ってわけか……」

ボルトからしてみれば、およそ暗澹とした気分にもなるのであった。
ただでさえ手綱の効かない遊撃課員達の面倒を見なければならないというのに、敵にまで天才がいると来た。
いかなり運命の采配か、彼の周りに天才が集まりすぎている。彼自身はまったくの凡才であるにも関わらずだ。

「まあいい、どちらにせよあとは軍任せだ。それよりガルブレイズの機体の整備進捗はどうだ」
「ああ、サムエルソンね、はいはい、使い物にならならないよあんなポンコツ」
「ちょっと待て。装甲は中破したが中身はそこまで傷ついてないはずだぞ。ちゃんと診たのか?」
「よりもによってレオンチェフの……あんな突撃専用の走る棺桶より、ウチのゴーレムのが絶対いいのに……」

怨嗟の篭った声でブツクサ言い始めたエクステリアを半目で睨め付け、整備に取り掛かるよう無言の圧力をかける。
ボルトは溜息をついた。あの女は優秀だが、技術局員のくせしてことあるごとに自社製品を推したがるのが玉に瑕だった。
本来ならば傷ついたサムエルソンをメーカー送りにしても良かったのだが、ボルトのコネでこちらで格安で引き受けて貰えたのだ。

「じゃあ、可及的速やかに頼むぞ。おれはそろそろ隊舎に顔出さなきゃならねえから」

そう言ってボルトが研究院を辞した。貰った書類は暴走ゴーレムの分析結果と、整備の見積もりと、従士隊宛の領収証。
それから『ガルブレイズさんに』と書かれた封筒があった。中身を検めると、『エクステリア』の分厚いカタログが出てきた。
ご丁寧に直筆の、セフィリア宛の手紙まで入っている。

"これを読んでいる、ゴーレムを愛する貴女に!弊社では様々な用途に合わせた多彩なゴーレムを取り扱っています。
 格闘戦なら『インファイト』シリーズ、砲撃戦なら『ミドルファイト』、軽快な動作を約束する『クローム』、
 無限の拡張性を誇る『ファイア・フォックス』、信頼性抜群の『スレイプニル』、……各種品々取り揃えております!
 現在のゴーレムに不満がある、そろそろ買い換えようかと思っている、そんなときはいつでもご相談ください!
 無料見積りから企業様向けの納品サービス、古いゴーレムはメーカー問わず下取りいたします!"

72 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/06/15 19:48:04 ID:???
 * * * * * * 

従士隊の本拠の傍には、勤務明けの従士御用達の酒場『落陽庵』がその軒を構えている。
『たっぷりの酒と美味しい料理がジャンクな幸せを提供する』という看板文句に偽りなしの、典型的な安酒場だ。
それなりに高給取りであるボルトはもっと上等な酒場へも通えるのだが、教導院時代からの愛着もあっていつもここを選んでいた。
肉と豆の煮込みを注文して、水みたいに薄い酒をちびちびやっていると、隣に男が一人座った。

「よお、やってるな」

従士隊制式の防刃帽を目深に被った、精悍な顔つきをした男だ。
ボルトの同期であり、二年前の帝都大強襲を生き残った数少ない従士の一人である。

「リフレクティア。お前よくおれの居所がわかったな」
「はっは、お前がお仕事してねー時は、大体ここでひとり寂しくひとり酒してるか娼館だろ」
「まあ、独り身はそうだわな。座れよ」

リフレクティアは店で一番強い酒を注文して、それをお冷で割りながら喉に流し込んだ。あまり長居するつもりがないときの飲み方だ。
そしてボルトは、この友人がそういう飲み方をするときにどういう話を持ってくるか、よく知っていた。

「ご下命か」
「おうよ、元老院から新しいお仕事の紹介だ。今度は帝都の観光協会から、財源確保の為の公共事業をだな」

ご下命。遊撃課が受ける依頼は通常の従士隊の職務ではなく、帝都の政治機関である元老院からの直属命令として下されている。
リフレクティアは、元老院からの命令で遊撃課向けの仕事を受けてくる訪問営業的な職務についているのだった。

「ウルタール湖ってわかるか?二年前の、『例の事件』で出来た。あの湖底に、なんでも滅亡前の貴族が隠した財産が眠ってるとか」
「つまりアレか、ドブ浚いしてそのお宝を引き上げてこいと」
「そうなるな。所有者の貴族は滅亡しちまってるし、拾得物扱いってことは最初に拾った奴に所有権が発生する。
 そんなら公務員である従士隊が、先んじて拾っちまえばその拾得物は国庫に返還されるってわけだ。豪邸が100は立つ額らしいぜ」

ウルタール湖で漁業を営む漁師が、素潜りの最中に湖底に光るものを見たという噂から露呈したという眉唾ものの話だが、
税金対策に財産を隠しておくというのはどの金持ちもやっていることなので、この依頼には真偽を確かめる意味もある。

「元老院もロクなこと考えねえな。一人で一部隊に匹敵する天才どもを、そんなアホの極みみてえな仕事に就かせんのかよ」
「いいことじゃねーか、そんだけ平和ってことだろーよ」
「そうだな、平和だ。ここ二年はでかい戦争も起こらねえし、軍も前線以外は暇こいてる始末だ。
 だったら――戦争以外に能がねえ化物連中を今でも飼ってやる意味はあんのか?こんな、誂えたような仕事までやらせて」

ボルトの目は据わっていた。天才相手に気を張って押さえ込んでいた悪態が零れてきたような喋り方だった。
遊撃課員達に対して一線は引いていても、ボルトはその長として最低限の誠実さで対応してきたつもりだ。
知らず知らずのうちに蓄積していた、劣等感やらやっかみやらも含んだフラストレーションの発露でもあった。
リフレクティアは煮豆と肉をフォークで突き刺して口の中に放り込むと、目を細めて答えた。

「この二年間、俺が何してたかって言うと、帝国領の色んな街を旅して、色んなものを見てきた」

そのとき築いたコネクションがあるおかげで、官民問わずあらゆる組織から人員を引っ張ってくる遊撃課が実現したのだ。
リフレクティアは、遊撃課設立の具体的なシステムを提案した発起人の一人だった。

「遊撃課に求められてるのは、本質的に言っちまえば『戦力』じゃねえんだよ。そんなもん、十倍の凡人が入れば上回れる。
 俺が帝国中を巡って見てきたのは、縦割り行政や部署間のいがみ合いのせいで物資が行き渡らずに飢える人たちや、
 上層部の意地の張り合いで動くに動けず硬直したまま敵の的にされる軍の部隊だった。大きくなりすぎた組織の弊害ってやつだな」

73 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/06/15 19:48:34 ID:???
だから遊撃課なのだ。あらゆる組織と繋がりを持ち、それゆえにあらゆるしがらみから解放された新時代の『遊撃手』。
遊撃課というシステムが、人を助け続け、評価され続ければ、やがて国家に巣食う組織主義の病巣を追い出せる。
そういう理想と理念を大前提にして、まずは試験的運用ということで元老院直属の機関という扱いを受けているのだ。
今は元老院の後ろ盾であらゆる機関に優先する権利を持っているが、ゆくゆくは独立する野心もある。
そのために、人々の評価が必要なのだった。戦いだけではない、それ以上の『有用性』を立証する材料を。

「んなご大層な理念は知ったこっちゃねえよ。おれはただ、認めたくねえだけだ」

ボルトは吐き捨てた。

「――遊撃課(ここ)は、否定の最果てなんだ」

* * * * * * 

ウルタール湖。帝都の総面積にも匹敵する、国内最大級の内陸湖である。
二年前まで、ここは湖などではなく、砂漠に栄える街だった。『享楽都市ウルタール』というのが、この地のかつての名前である。
優秀な商人の家系をいくつも輩出した、オアシスと金融商業の盛んな都市だったが、二年前に龍型の魔族に襲撃され、そして滅んだ。
そのときに魔族が使ったとされる戦略術式によって、栄えていた都市がオアシスごと一晩にしてえぐり取られ、巨大な穴ができた。
砂漠の真ん中にぽっかり開いたその穴に、オアシスの地下水と雨水が二年かけて溜り、ここは湖になったのである。

辛気臭い話はここまで。ウルタールは滅亡したが、そこで逞しいのは商人たち。
帝都有数の巨大湖という宣伝文句を引っさげて、ウルタール跡の湖を観光地にしてしまったのだ!
今は観光業と、湖を横断する渡し賃、それから漁業を中心に、近隣の経済活動の中心地として活躍しているのだった。

「とまあ、この湖の成り立ちはこんな感じだ」

ウルタール湖の観光事務所に集まった遊撃課員達の前で、ボルトは一刻に渡る講義の舌を閉じた。
彼の背後の伝言板には、チョークを使って書かれたウルタール史の年表や、湖についての情報がごちゃごちゃと密集している。

「質問であります!」
「言って良し」
「内陸部で突然的に発生した湖で、どうして漁業ができるのでありますかっ!魚はどこから?」
「良い質問だ。ここがこのウルタール湖の特異なところでな、この湖は地下水脈からの注水で出来上がってるんだが、
 湖底にもう一本水脈がぶつかってるらしい。この水脈がどこかで海に繋がってるらしくて、海水が湖に流れ込んでるんだ」

だから正確に言えばこの湖は淡水湖ではなく、海水と入り交じった『汽水湖』ということになる。
湖の容積のだいたい半分ぐらいで水が2層になっていて、上層が淡水、下層が比重の重い海水といったように分かれているのだ。
漁獲される魚類も、大半は海から流れ着いてそこで繁殖したものである。天敵のいないウルタール湖は、被食者にとっては理想郷だ。

「お前らにはこれから湖に潜って、底にある怪しいブツを片っ端から引き上げて貰う。場合によっちゃ湖底探索も必要になるな。
 支給される装備についてだが、観光協会から水中活動セットとして吸気管と水中眼鏡を貸してもらえることになった」

吸気管は掌ほどのサイズの管で、圧縮術式を施された空気が三日分充填されている。
これさえつけていれば、あとは食糧問題さえどうにかすれば三日間ずっと水中にいることすら可能な優れものだ。

「とりあえず、いきなり作業開始ってのも酷な話だ。泳いだことないって奴もいるだろうから、まずは水に慣れるだけ慣れとけ。
 これより一刻を自由時間とする。おれはあそこの『湖の家』にいるから、何か問題があったら報告するように」

ボルトは拍手を打った。

「――状況開始だ」

74 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/06/15 19:49:12 ID:???
* * * * * *

「スイカ割りするひとこの指とーまれっ!」

スティレットが湖の家で購入した西瓜を片手に浜を駆ける。
水脈に影響で水に流れがあるこの湖は、波によって砂浜が形成されているのだ。
彼女はいつもの軽鎧と長大剣を放り出して、遮水布で織られた肌着型の衣服を着用していた。
水を吸わないので水中での活動をなるべく阻害しないつくりになっている。

「スイカ撃ちでもスイカ燃やしでも良いでありますよっ!目隠しで!」

言って、スティレットは抱えていた大量のスイカを、見もせずに宙に投擲しまくった。


【任務内容:ウルタール湖の底に眠る財宝を回収せよ】
【現時刻より1ターンを自由行動とします。泳ぎの練習もよし魚を捕ってよし普通に遊んでよし索敵に入ってよしです】
【現在公開できる湖の情報
 ・魚はわりかし大量にいます。最近は漁師たちが頭を悩ませる凶暴な鮫型の魔物がいるとか
 ・湖底は非常にごちゃついており、海藻や骨のみならず家の瓦礫や道路の破片なんかも。街だったころの名残
 ・ある程度の深さまで潜ると水圧がかかります。水を避けられる術式持ちは有利】

 * * * * * * 

「なんっ……で!あいつらがここにいるのよーーーっ!?」

望遠眼鏡を覗きながら湖の家で買った焼き唐黍を齧っていたクローディアは、驚きのあまりそれを砂の上に落としてしまった。

「ああ、私が奢ったのに……」

それを見てナーゼムが陰気なうめき声を上げる。今の彼は、既に人間の姿に戻っており、陰鬱な表情の紳士そのものだった。
クローディアは砂まみれの唐黍を拾って、湖から汲んできた水で洗って再び齧り始めた。

「なんと御労しい食べ方……」
「な、なによ!勿体無いでしょうが!あんたこれ食べるっていうの!?……あ、やっぱダメ。これはあたしのよ」

正真正銘の一文無しになってから、二人はナーゼムの乏しい貯金を切り崩しながら旅を続けてきた。
すっかり貧乏生活が板についてきたクローディアは、亜麻色のカールしていた髪を一つ縛りにして、服も質素なものを着ている。
前まで来ていた装飾蘭美な貴族服は、汚れてくる前に売り払って金に変えた。何故か買値より高く売れた。

「はン……まあいいわ。さしずめあいつらもこの湖に眠る『謎の水龍』を捕まえにやってきたんでしょ!
 湖の奥深くに静かに泳いでいるという超弩級の龍……これを逃す手はないわ!捕獲して見世物にして巨額の富を築くのよっ!」
「しかし、連中と競り合いになってはこちらが不利なのでは……?」
「問題ないわ。もとは水龍対策の為だったんだけど、あたしのツテで協力な助っ人を呼んであるのよっ!」

貴族時代と傭兵時代の両方のコネクションを使って、クローディアは独自の私兵団を集めていた。
雇う金はなかったので、自分の身柄を担保に帝都の奴隷商で金を作った。もしも水龍捕獲に失敗すれば、哀れ彼女は奴隷の身分だ。

「もうすぐ合流のはずよ……あーっはっは!見てなさい帝国軍(?)!あんたたちの野望はあたしが打ち砕くっ!」


【クローディア:湖の家で雇った兵員の到着を待つ。目的はウルタール湖の水龍捕獲】

75 :ロキ・ハティア ◆9pXiBpy0.U :11/06/15 21:08:38 ID:???
>73-74
>「――状況開始だ」
「ウェミダ――――!」
ワタシは虫取り網を携えて走り出した。
「海じゃなくて湖です! 虫取り網で何を捕まえるんすか!?」
と、ジョ(中略)ジョの奇妙な音楽隊。(なんかついてきた)
「んー? 小さいおっさんとか」
「意味分かんねーよ!」

「そーい!」
虫取り網の反対側にくっついたルアーを水面に投げ入れる。
片方が網、もう片方が釣竿という奇跡のコラボである。
「ひゃっはー! 入れ食い入れ食い!」
冗談みたいによく釣れる。猿股をはいた猫の姿をかたどった特製ルアーのおかげだろうか。

「なんか絶対食べたくない魚ばっかり釣れてるんですけど――! 人面魚みたいなのとか!」
「それはシーマン、そっちはモケケピロピロ、これは破壊神ポニョと命名しよう!
そーれ、キャッチアンドリリ――ス!」
「破壊神の幼生を解き放つんじゃね――! 永遠に滅却しる!」
「そんなルアーを使ってるから変なのばっかり釣れるんですよ! 変えましょう!?」

その時、なぜかスイカが近くに転がってきた。
「おおっ、これはスイカを餌に使えということだな!」
スイカをくっつけて釣り糸を垂らした途端。
「……おっ」
「大物がかかったんですか!?」
水面に揺らめく影! 強烈な引きに、水辺のほうに引きずられていく。
慌てて音楽隊の5人が加勢する。
「これはすげーぞ!」
「誰か手伝ってくれ――!」

【釣りを始めたら大物がかかった! 協力要請!】

76 :プリメーラ ◆sA3iXghEZU :11/06/15 22:34:38 ID:???

《…………イデ …………………戻ッテオイデ…………》


何時も、必ず夢に見る。
歌とも、語りとも、呻き声ともとれぬ何かの声。

《戻ッテオイデ…… ココニ…………泡ニナッテ……シマワヌ内ニ…………》

まるで子守歌のような、

《オイデ……オイデ…………戻ッテオイデ…………》

暗く、深い、海の底―――――――――――。


「キャッホーーーーーーイ!!」
>「ウェミダ――――!」

青い空、白い雲、そして輝く海!……ではなく、汽水湖・ウルタール湖。
ボルト率いる遊撃課メンバーは、ここ、観光地ウルタール湖へ赴いていた。
勿論、慰安旅行だとかそういうのではない。何でも、湖底に眠る宝を回収するのが目的なのだそうだ。
なのだそうだが…………。


「いやっほぉぉい!いっちばーん!」

砂浜を駆け、その身を湖に踊らせる。
ドボン、と小さな躯は透き通った湖面に波を立て、緩やかに沈んで行く。
空を飛ぶ鳥のように、プリメーラは水中遊泳を楽しんでいた。

「(んー……泳ぐのって何年振りだろ。気持ち良いー)」

胸のペンダントも、湖に差す光を浴びて嬉しそうにキラキラと輝く。
水中に身を委ねながら、プリメーラはそっと目を閉じる。

「(……そういえば、久しぶりにあの夢、見たな……)」

あの後。スティレットに処置を施し、気絶してしまった後、気づけば列車の中で涎を垂らして寝ていた時。
もう10年来だろうか。暗い海の底のようなどこか、耳元で誰かが囁くあの夢。


《…………イデ …………………戻ッテオイデ…………》

「(戻るって……どこに戻れってのさ…)」
《戻ッテオイデ…… ココニ…………泡ニナッテ……シマワヌ内ニ…………》

「(泡になる? 馬鹿みたい)」

所詮は、夢。
そうは分かっていても、どこか薄ら寒さと、例えようもない感情に捕らわれる。
思わず、内股に手をやる。
鱗が引き剥がされたそこに鱗はもうなく、のっぺりとした青い肌だけが残っている。

《忘れろ。帰る場所なんて、何処にもない》
《生まれた時から、帰る家も家族も無い。そうだろう?》


脳に流れてくる幻聴を振り払うかのように、水を蹴る。
その時ふと、プリメーラの視界に何か見えた気がした。

77 :プリメーラ ◆sA3iXghEZU :11/06/15 22:36:28 ID:???

「(? 何……今の?)」

しかし、直ぐにそれから興味は削がれる。何故なら、何の前触れもなく、頭部に何かが直撃したからだ。

「〜〜〜〜〜〜ッ!?」

痛い。痛いなんてレベルではない。頭がかち割れそうだ。
スイカには釣り糸が繋がっている。どうやら誰かがスイカを餌に釣りをしているようだ。
痛みとともに、怒りが沸いてきた。どこの誰だか知らないが、水中に引きずりこんでやる!

グイっとスイカを引っ張ると、獲物が掛かったと勘違いしたのか、向こうも引っ張り返す。
ならばと催眠術で魚達を呼び寄せ、引っ張り返す。
すると向こうも助っ人を呼んだようで、お互いに大きな蕪取り合戦状態。

「(しまった、息が……!)」

何十秒か続いた引っ張り合いは、プリメーラの限界により終わる。
引っ張る力がほんの少し弱まった一瞬……プリメーラの体が、宙に放り出された!

「きゃぁぁああああああ〜っ!?」

ドッシーーーーン!とロキ達の真上に落下したプリメーラ。
そして数秒の時間差の後、沢山の魚達が雨あられと降り注ぐ。

「もーっ!何すんのさっ、このバカーッ!」

思いきり腰を打ちつけた事で、更に怒りは炸裂。
ロキは勿論、加わったメンバー達にまで怒りをぶつける。

>「スイカ割りするひとこの指とーまれっ!」
「はーーいっ!」

しかし、スティレットの声が聞こえた途端、大鉈を手に機嫌を直して駆けていくのだった。


【プリメーラと愉快なお魚さん達が釣れました】
【水中で何か見つけるもすぐに忘れたようです】

78 :サフロール・オブテイン ◆jKUaosk4aY :11/06/15 23:46:12 ID:???
「――暑い」

燦々と降り注ぐ陽光を浴びて、忌々しげにサフロールは呟いた。
前髪の裏で熱と湿気が汗を滝のように呼び、これ以上ない自己主張を続けている。
だがそれでもサフロールはいつもの通りの服装を崩さずにいた。
幾重もの純金製の腕輪が、イヤリングが、聖銀の首飾りが、熱を帯びて不快感を煽り立てる。
そしてマテリアルである装飾品はまだしも、彼は臙脂色のローブまで脱がずにいた。
ローブの内側には熱が篭もり、止め処なく汗が流れ出る。
剣呑に研ぎ澄まされた視線を、他の男性陣に向けた。
元護衛官が二人、元傭兵が一人、元騎士が一人、揃いも揃って肉体労働者。
ローブの袖口から覗く自分の手首を見て沈黙――奥歯が軋みを上げる。

「……あぁ、クソうぜえ」

何が悲しくて浜辺の男を注視しなくてはならないのだと、視線を逸らす。

>「スイカ割りするひとこの指とーまれっ!」

「黄色い声できゃいきゃいと……うるせえな。余計暑苦しくなるだろうが」

八つ当たりに等しい悪言を吐く。

「……それにしてもまぁ、なんだ。随分と泳ぎ易そうな体型の連中が集まったもんだな。えぇ?」

一部の女を、顎を軽く上げて見下すようにして嘲笑する。

「後は……牛が一匹に、歳の割りにババ臭えのが一人か。精々、景観を損ねて商人共に訴えられねえように気を付けるんだな」

手当たり次第に皮肉を撒き散らし、サフロールは湖面に向かう。
水辺に近付くと、暑さが多少はましになった。
思考に被さっていた靄が晴れて――ふと、先日のダンブルウィードでの一件を思い出した。
レイリンの嘲笑。

「頭の足りてねえクソアマが……。テメェらは単に、手近で手頃な観察対象だ。
 失うのは惜しい。死体も残らねえような死に方は困る。それだけの事を……思い上がりやがって」

中隊長の言葉。ボルトの皮肉。

「信念?背伸び?……下らねえ。凡人ごときが……テメェらの尺度で俺を測ってんじゃねえぞ……!」

先ほどよりも強く、奥歯を噛み締めた。

「どいつもこいつも……俺を何だと思ってやがる……!」

吐き捨てて、思考を切り替えるべく湖面を睨む。
――再び、暫くの沈黙。
ローブの袖口から覗く自分の手首を見てから、再び視線を湖面へ。

「……いや、まさか泳げねえなんて事はねえだろ。こんなもん、要は浮力と、抵抗力の流れさえ計算出来りゃいいんだ……。
 ローブとマテリアルは……外せねえな。まあ魔術で何とでも……」

口元に右手を添えて、サフロールは湖面を睨んだまま、ぶつぶつと独り言を始めていた。

【女性陣を罵倒→ローブと貴金属フル装備で水辺に】

79 :フィン=ハンプティ ◆yHpyvmxBJw :11/06/16 00:29:01 ID:???


「魔物に滅ぼされた街、か……」

列車の屋根で、とある青年が少し寂しそうに呟いたその言葉は、
風に流されたかの様に消えていった。




「  海、だ――――っ !!!!  」


海じゃない。

が、そんな事を気にする様子も無く、青年――フィン=ハンプティは
両手を一杯に広げ、太陽の如き満面の笑みを浮かべると、湖面に向かって子供の様に叫んだ。
その服装は、まるでそうあるのが当然であるとでも言うかの様に、海水浴用に作られた
遮水布の下着一枚であり、常時装着している蒼の手甲『剣砕き』も今は手にしていない。
何故か、赤いバンダナは巻いたままである。
ダンブルフィードでの事件から時が経ったとはいえ、その肉体に負傷が無いのは、
『天鎧』というフィンの持つ遺才の成せる技か、或いは医療班のスタッフが優秀だったのか。
細く引き締まり、数多の古傷を刻んだその肉体は今、陽光の下で存分にその存在感を示していた。

とにかく――――ウルタール湖に来てからのフィンは、まるで水を得た魚の如くいつも以上に快活であった。
何せフィン=ハンプティという青年は冒険的な物事を好む性質である。
そんな青年にボルトが言い放った任務は宝探しと探索。これで燃えない筈が無い。

だからこそ、真剣な瞳でボルトの話を聞き、話が終わるや否や服を脱ぎ、
こうして子供の様にはしゃいでいるのは必然と言えるだろう。

「いよーし、まずなにすっかなっ!! ウィレムと何かで勝負でもするか、
 それとも店で何か食うか―――――いや、折角だから俺は泳ぐぜっ!!いやっほーっ!!」

即断即決。言うやいなや、フィンは湖に飛び込み泳ぎ出す。
水面を掻き分け進むその姿は海の神を彷彿とさせる程に安定しており、力強い。
それは見る者が見れば、水泳に慣れている者の動きだと判断出来るだろう。
と、そんな感じでフィンが泳ぎを満喫していると

80 :フィン=ハンプティ ◆yHpyvmxBJw :11/06/16 00:30:39 ID:???
>「スイカ撃ちでもスイカ燃やしでも良いでありますよっ!目隠しで!」

「うおっとっと!!」

空からスイカが降ってきた。背泳をしていたフィンは、咄嗟に右手でスイカを受け止める。
見ればそこにはスティレットや他の遊撃課の面々。聞こえた声から判断すると、どうやら
スイカを使ってなにやら遊んでいるらしい。その事に気がついたフィンは、自身も混ざるべく岸辺に移動し、

「あーっ!!お前ら俺を置いて遊ぶなんてずるいぞー!!俺も混ぜ……ん?」

>「……いや、まさか泳げねえなんて事はねえだろ。こんなもん、要は浮力と、抵抗力の流れさえ計算出来りゃいいんだ……。
>ローブとマテリアルは……外せねえな。まあ魔術で何とでも……」

その途中で視界に留めたのは同じく遊撃課の隊員サフロール・オブテイン。
先の戦闘では地域が違った為話す機会は少なかったが、生憎フィンはその様な事を
気にする様な性格ではない。歯が白く光る様な笑顔を浮かべ、絶妙なバランスで
頭に先程のスイカを乗せながら、サフロールに近づいていった。

「いよっ、サフ……えーと……そうだ!サフロール!お前、そんな暑そうな服着て何してんだ!?
 する事無いなら泳ごうぜ!冷たくて気持ちいいし、ついでに、俺の編み出した必殺泳法とか教えてやるよっ!!
 もしくはスイカ食おうぜ!!」

馴れ馴れしい……が、フィンという青年にとってはこれが普通なのだろう。
邪気も敵意も悪意も無く、カラカラと快活に笑い、少年の様に遊びに誘う
言葉をかけると、陸に上がって一度大きく伸びをした。

【泳いだ後、サフロールのいる水辺に上陸】

81 :ウィレム ◆uBe66UnnCY :11/06/16 02:44:42 ID:???
目覚めたら、ベッドの上だった。
いの一番に、一緒に戦ったみんなの無事を聞いた。
無事だった。
それでいい。
また笑顔で、会えるなら。
次会う時には俺が気絶していた間の武勇伝
を聞かせてもらおう。
そう思って、ウィレムはもう一度目を閉じた。

【ウルタール湖】

「飲み物買ってあるっスよー!喉かわいたらどうぞー!」

『湖の家』から走って戻ってきたウィレムが抱えているのは、少し大きめの箱。
開けてみれば、その中にはこれでもかという量の保冷剤と、瓶詰めの果物の果汁が人数分。
それを地面に無造作に置いて、汗を軽く拭った後、さらに声を張る。

「あと小腹減ったらいつでも言って下さいねー!ひとっ走り、買ってきまスんで!」

人に奉仕するのが好きだから、と言えば聞こえはいいかもしれない。だが現実問題そこにいるのは走る財布である。
当然それには代金を頑なに受け取らないウィレムにも原因がある。器の大きい人間に見せたいらしいのだが。

要求されたらいつでも渡せるよう瓶が入った保冷箱の横に腰を降ろし、ウィレムは浜辺で戯れる同僚達を眺める。
正直なところ女性陣はわざと視界に入れないようにしている。少しウィレムには刺激が強すぎるのだ。
とはいえ残念ながら首を傾げたくなる体型を持つ人もいるにはいるが、それはそれとして。

長ったらしくて名前を忘れたがなんか語尾がおかしい崩剣の人が西瓜を大量に投げてるのが見える。
体型が残念なので直視出来るが、正直近くでやられなくてよかったと思う。直撃したら死ぬぞアレ。
その近くではロキと言っただろうか、魚釣りをしている人の姿が見える。
と思ったら崩剣の人が投げた西瓜を餌に釣りをやりはじめた。その発想はなかったわ。
しかも掛かったらしい。すごいなこの湖。複数人で引っ張る。それをぼけーっと眺めるウィレム。
釣り上げられたのは同じく遊撃課の、確かプリメーラという名前だったと思う。一体何が起きてるんだよ。
理解を諦めて視線を移すと、別の水辺ではフィンがサフロールに話しかけているのが見える。
ウィレムが知る限り正反対の2人だ、関わるとどうなるのかワクワク……もとい、ハラハラ。

82 :ウィレム ◆uBe66UnnCY :11/06/16 02:45:12 ID:???
楽しそうだな、とは思う。そりゃウィレムだって遊びたい盛りの年頃である訳で、そこに参加するのも吝かではない。
ただ、参加するには当然水に入らなければならない。時折泳ぐ必要も出て来るだろう。そこだ。そこなんだ。
ウィレムは思い出す。いつだったか、強い日差しが照りつける暑い日だった。そこは海だったと思う。
その景色が朧気なのは、知らず知らずのうちに脳が記憶に鍵でもかけているのだろうか。思い出さないようにと。
たった1つはっきりと覚えていること。ウィレムに向けられた、問いかけ。

――そんなに早く走れるならさ、水の上でも走れんの?

失敗し、パニックになって足が攣り。ますます溺れるウィレムを見る失望の瞳。嘲笑の声。
勝手に期待して勝手に失望したのはそっちだろ、いくら遺才持ちだって人間が水上走れるかよ。
もう嫌だ。もう水になんか二度と入らない。薄れゆく意識の中で、そう決めたのだ。
だからウィレムは入らない。実際のところ、泳げもしない。

とはいえ流石に仕事は仕事だ、湖底に行けと言われたら渋々ながらもそりゃ行こう。
水に慣れておけと言われたし、この時間中ずっと水に全く入らない訳にもいかないから。
この自由時間の終わりがけに、ちょびっとだけ水に入ればいっかとか考えている。
だけどそもそも本当に俺も水に入らなければいけないのだろうか。はっきり言って役に立たない自信があるぞ。
どうせ俺に求められてるのは足の速さだし、みんなが湖底から引き上げたものを運ぶ仕事とかでいいんじゃないのかな。

とりあえず、今回の任務はそれほど危険が伴う訳ではなさそうだ。少なくとも戦いは起きない、と思う。
もし水に入らなければならないなら当然だが走れなどしないし、そもそも今日のウィレムに戦闘力はまるでない。
鋸刃ナイフは前回のダンブルウィードのゴタゴタで失くしてしまった。愛着のあった武器なので、かなり落ち込んだ。
何度が刃物屋には行ったはいいもののこれと言ってしっくりくる得物は見つからず、ウィレムは今回、武器無しである。

「湖底探索、かぁ。こう、伝説の武器とか見つかったりしないっスかねぇ……」

そんな都合のいいことはあるはずない。もしそんなものが見つかったとしてもだ、
まず間違いなく国の重要な保護資料となってウィレムに恩賜されることなどないだろうけれども。
夢見事、考えるぐらいは、いいだろう?

【泳げないので飲み物係しながら待機(体操座り)】
【女性陣は見ないようにしています視線超外しますただし残念体型は除く】

83 :ファミア ◆mCdqLO6Z6k :11/06/16 14:34:21 ID:???
ダンブルウィードでの一幕を終え、帰りついたエストアリア。
つかの間の休暇(というか次にお呼びがかかるまでの待機です)は、
改めてそこが「自分のいるべき場所」ではないという事に気付かされただけで終わってしまいました。
いねがての夜を幾つか越えて、ファミアは「日常」へと戻ってゆくのでした。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ウルタールの成り立ちとそこでの任務についての簡単な講義を終えた隊長が手を一つ打ち鳴らすと、
指についていた白墨の粉がぱっと舞い上がりました。
湖畔の空に浮かんでいる雲はそれと同じくらい薄く小さなもので、強い日差しはほぼ遮られることなく浜辺に突き刺さっています。

その日差しを避けた木陰にて、ファミアは濡れても透けないように裏布の付いたパフスリーブのブラウスとドロワーズという古めかしい水着姿で、
これから拳闘の試合にでも出るのかというくらい入念にストレッチをしていました。
周辺では早くも小さな騒ぎが持ち上がり始めていますが、幸いにして「砲撃」は届かず、
何に邪魔されることもなく準備運動を終えたファミアは立ち上がって額に浮いた汗をぬぐいました。
それから木陰を出て、湖畔へ歩み寄ります。

さすがに海と見まごう程、というほどには大きくありませんが、打ち寄せる波はそれと差はありません。
その波に足を洗われない程度のところに、サフオールが立っていました。
遊撃課に配属されたことに対して最も強い不満を抱いている一人で、
それを隠そうとしないどころかことさらに表に出しているようなところがあるのでファミアは少し苦手に感じていました。
そんな人物が難しい顔で湖面を睨みつけてしきりになにやら呟いています。

(――まさかっ)
ファミアの脳裏に「入水」という文字が去来しました。
咄嗟に声をかけようとしますが、どもるばかりで意味のある言葉が出てきません。
(っ引きずり倒してでも……!)
自分に業を煮やしたファミアは砂を蹴立てて駈け出しました。

走り寄る間に、スイカを頭に載せたフィンが近寄ってサフオールに笑いかけるのが見え少し安堵しましたが、
そのまま振りきって入水を敢行しないとも考えたファミアは、一切足運びを緩めず箱の脇に座り込む人影の横を駆け抜け、
「ダメぇーっ!」
サフオールの横手からその腰にしがみついて押し倒しました。

「確かにっ!帝都はもう私たちの場所じゃないけど!でもいつか絶対に戻れます!だから、死ぬとか……、
 そんなこと絶対考えちゃダメです!……ダメです」
馬乗りになったままでそんなことを言っているうちに気が昂ぶり過ぎたのか、涙がぼろぼろこぼれ落ちていました。
この炎天下であれだけしっかり着込んでいるのもおよそ「自殺的な行為」と言えますが、
それにしても泣きたいのは地べたに叩きつけられた挙句、身に覚えのないことで説教されているサフオールの方でしょう。

【スピアーからのテイクダウン】

84 :レイリン ◆lvfvBHCkg. :11/06/16 16:43:01 ID:???
ダンブルウィードでの作戦活動を終え、次の任務へと移った遊撃課。
次の任務は、かつてオアシスとして砂漠に栄えた都市ウルタールの成れの果てである観光地ウルタール湖での活動だった。
ウルタール湖に到着した遊撃課の面々はボルトに、ウルタール湖の歴史講座と今回の作戦の概要を聞かされると、まずは水に慣れるため自由行動の時間を与えられた。

>「――状況開始だ」

ボルトの拍手によって、作戦の開始が告げられると、元気なものでフランベルジュやフィンなどはさっさと湖へと向かう。
それとは裏腹にレイリンの気持ちはあまり晴れやかとは言えなかった。
前の作戦時にサフロールに対しての暴言は冷静になって思い返すと、あまりに愚かだったと、子供じみた行為だったと思ってしまうのだ。
サフロール自身はどうせ忘れてしまっているだろうがレイリンにとっては中々忘れられるものではなかった。

「謝りたいですが、完璧にタイミング逃しちゃいましたね……」

ただ、レイリンの心に暗雲が立ちこめている原因はそれだけではなく、この場所での活動というのも要因の一つだった。
まず眩いばかりに照りつける太陽、海面や砂浜による陽光の照り返し。
この二つは肌が白磁のように白く、日光に弱いレイリンにとってはこの上なく辛いものだった。
かといって、日光を浴びないように肌を覆うとあまりにも暑い、それこそ、髪の先にまで汗を滴らせて、呻いているサフロールの二の舞だ。
そこでレイリンは白のワンピース型の水着を着用した、それは動きやすさも考慮してハイレグになっており、涼しさと機動力を兼ね揃えていると言えた。
話は変わるが、吸血鬼にとって、最たる馳走は異性の血である。
そして異性の血を効率よく吸うために、大多数の吸血鬼は所謂異性受けする体つきをしている。
レイリンもその例に漏れず、女性にしては高身長ながら大きすぎず小さすぎず、出るところは出るという整った体つきであった。
レイリンは吸血鬼の血による男を誘うための身体を嫌っていたため、露出が多い服装は意図的に避けていた。
しかし、湖の家によるレンタルでは、レイリンの身体に合う水着が少なく、泣く泣く一番露出が少ない水着を選んだ結果がこれであった。

「はぁ、なんでこんな……。
有るのか無いのか分からない紐よりはましですけど、あんまりです」

深くため息をつくと、湖の家から水着と一緒に借りてきたビーチパラソルとデッキチェアを組み立て、腰掛ける。
レイリンは遊ぶこと自体嫌いではなかった、それに遊撃課の人たちと一緒に遊び親好を深めたくもあった。
しかし、ある程度年の離れた自分が皆と交じって遊ぶと気後れしたりしないだろうかという懸念や、そもそも何て話しかければいいのかが分からない。
そんな気持ちもあってか、レイリンは皆のはしゃぐ声を聞きながら、先ほど拾った西瓜を拳で叩き割り、口元を赤く染めながら頬張っていた。
教導院では勉強一筋、軍では仕事一筋を貫いてきたレイリンは、戦場なら気高く振る舞えるが、このような場では尻込みしがちだった。

「美味しい……」

甘酸っぱい西瓜の味に一抹の寂しさを覚えつつ、一人黙々と西瓜を食べ続けるレイリンであった。

85 :ダニー ◆/LWSXHlfE2 :11/06/16 17:47:48 ID:???
何時からが、何からが始まりだったのかは分からない。施設を認識した時からか、それともドーキッドの両親に
引き取られた時か、はたまた死別した時か、分からない。分かっているのは終わりの時だけだった。貧しい上に
人と違えば攻撃されない方がどうかしている。いじめや差別に合う方にも問題があると言うが確かに生まれは
どうにもできない問題だ。

それでもダニーは耐えた。両親が死んでも、施設に出戻って一層冷たくされても、彼女は耐えた。
しかし耐えられなかったことが一つだけあった。教導院時代にいじめにあっていたとき、たった一人の友だちが
暴力に屈して自分を裏切ったことだ。恨んではいなかった。決して。

だが彼女は間違えた、友達の心を救いたい一心での事だった。ダニーは友達は間違ってはいないと証明した。
暴力を振るい返してみればそれはとても呆気なかった。あっさりといじめをしていたグループを傷めつけて、
許しを請う彼らに、助かりたければ身代わりを選ぶように告げるといとも簡単に、醜く互いを売り出し始めた。

友達は間違っていないことを確認すると、彼女は満足して残った頭を一つ一つ潰していった。
これでもう脅されることも、気に病むこともないだろうと、そう思っていた。大して未練もなくお縄になった後は
法定では全て正直に答えた。これでいいと思った。しかし友達は自分に詫びるばかりで顔を曇らせたままで
ずっと、こちらを見ようとしなかった。何となく、心のどこかで間違えた、終わったというのが分かった。

15になった日に収監されて、僅かしかない自分の荷物を送り届けられると両親の指輪を確かめた。
売られたり捨てられたりしていないか心配だったのだ。それを大事に抱えた時に初めて力に目覚めた。
力は便利だった。投げられる石も押し付けられる火も、どんどん平気になっていった。

月日が過ぎて大きくなった彼女に通達が入る。ウルタール湖へ移れと、そこが新しい収容先だ、と
ただそれだけが。

手枷を付けられたまま貨物列車に雑に突っ込まれると目的地へ運ばれた。現地で回収されるらしく
人気のない砂浜で係の者を待った。服が囚人服からメイド服になっているのは出向の際に予算内で
自分の着られる服がこれしかなかったのだ。一見すると暑苦しいが彼女は汗ひとつかいていない。

(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
そろそろの筈だがと彼女、ダニーは手持ちの時計をちらりと見た。珍しい純木製の懐中時計、
普通なら経年劣化や変形で使えないが何故か動いている。実を言えば彼女は態良く売り飛ばされたのだ。
労役の名目で何も知らない囚人を横流しし、バレれば脱走の濡れ衣を着せるというお定まりの話。

86 :ダニー ◆/LWSXHlfE2 :11/06/16 17:50:02 ID:???
時間に遅れてはいない。しかし合流を言い渡された辺りに居るのは少女とお付きのような青年のみ、
大女ダニーは他の者が来るまでしばらく様子を見る事にした。

しかし待てど暮らせどそれらしい人影は来ない。こんな観光地のような所でどんな
仕事をさせられるのか見当が付かない。あるのは離れた所に出店と、トウモロコシを齧る女の子が一人。

もしかするとあの少女が係の者だろうか。有りうる、と思った。
ダニー自身、相当世間一般からは諸々がかけ離れている為、そういった場合もあるかと考えていた。

少女だが自分と同じく前科者で、実は別の収容所からここに送られてきたとか、
少女の皮を被った高齢者とか童顔の中年女の監視とか、そういった可能性に漸く気づくと
クローディア達二人組に歩み寄る。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

話かけようとしてはたと止まる。人違いだったらどうするか、もし自分が単純に場所を
間違えていただけだったとしたら・・・
そんな考えが頭をよぎる。これで人違いでしたで口封じをしたなら完全に通り魔である。

どうしたものかと思案していると下を見ると自分の服装が目に留まる。メイド服、使用人、観光地。
順に単語の灯りが一つずつ点灯していく。これだ、ダニはー閃く。

待ち合わせには違いないのだから、使用人の振りをして聞けばなんの問題もない。
幸い自分の背格好なら女給というよりSPだと思われるだろう。やはり普通に聞いて問題はない。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ダニはー、すいませんがお嬢さん、〇〇というのはここでいいのでしょうかとクローディアに聞いた。
手にはメモの通知を持って、あたかも道に迷った様子で。睨んだ訳ではないが仏頂面なので
ひょっとしたら怖がらせてしまったかも知れないが、顔のことは言っても仕方がない。

ここで人と待ち合わせをしているのだが、それらしい人がいないのだと簡単な説明だけした。
【ダニー、クローディアと接触。クローディアが雇い主だとはまだ知らない】

87 :ノイファ ◆QxbUHuH.OE :11/06/16 22:51:25 ID:???
「――ええ、それを二つ。え?あはは、違う違う。うーん……まあ、観光ってところかしら?
 あら、ありがとう。それじゃあ、お代は此処に置いとくから。」

毎度、という威勢の良い声にひらひらと手を振り返し、ノイファは立て掛けておいた白刀の下げ紐を掴んで肩にかける。
もう片方の手には、購入したばかりの果物の絞り汁がたっぷりかかった『削り氷』を載せた木製の盆。

「んー、それにしても良い天気。今日も神はご闊達で在らせられる、と。」

空を見上げて恵の光に感謝を一つ。

「……もっとも、この格好でも暑いのだから結構な日差しかしら?」

言葉通り。遊撃課の面々は、一部の課員を除いて皆、普段の格好よりもかなり肌色成分の多い出で立ちをしていた。
ノイファ自身も、胸元と腰間を覆う遮水布の肌着、その上にいつも着用している娼館支給のジャケットのみ、と極めて軽装。

それもその筈、本日の任務はウルタール湖の水底に沈む"財宝"の引き上げ作業である。
二年前、たった一晩で地図から姿を消すことになった『享楽都市』の、街と運命を共にした貴族が隠した財産だというのだ。
金額にして実に豪邸百軒分。そこそこ上層のハードルを丸ごと買い上げられる額である。

幾分眉唾モノの話ではあるが、ウルタールといえば大豪商中の大豪商メニアーチャの経済基盤ともなった土地だ。
それゆえ、まるっきり嘘と断定も出来ないといったところなのだろう。


「はい、どうぞ。」

『湖の家』に設えられた椅子に、体を預るボルトの背後から、ノイファは氷が盛られた器を差し出す。
返ってくる胡乱気な視線を受け流し了承も得ずに対面の椅子を引くと、腰を滑り込ませた。
脚を組み、テーブルの上に身を乗り出し、ボルトを正面から見据え、

「別に査定を甘くしろ、なんて言いませんわ。ただ――」

両手の人差し指で、両目の端を押し上げる。

「――こんな難しい顔して唸ってたんじゃ、余計な苦労を背負い込みますよ?」

そう言って、ノイファはボルトへ目配せを送る。
傍らに太刀を置いているノイファが言えたものではないが、観光地にも関わらず剣呑な雰囲気を纏った者達が幾人か見受けられる。
そんな中、さながら地廻りの侠客のような目付きで、宙を睨んでいたのではあらぬ誤解を受けかねない。
目的がかち合えば、妨害を仕掛けてくることもあるだろう。

「それともう一つ。」

笑顔を繕い、不自然にならない程度に声のトーンを落とす。
氷を商っていた露店商が話した、ウルタール湖にまつわるもう一つの噂。

「あの湖には"主"と呼ばれる何かが居るらしいわ。」

『アンタも"財宝"探しに来たクチかい?それともその格好じゃあ"主"退治の方か?』と、ノイファは商人から聞かれていた。
観光だと応えはしたものの、主とやらが本当に居るのであれば、遊撃課の任務の障害になる可能性は高い。

「ふふっ、鬼が出るか蛇が出るか……ちょっとわくわくしませんか?」

にも関わらず、先程までとは違い、ノイファは作ったのではない笑みを浮かべていた。


【湖の中に何か居るみたいですよ、という噂】

88 :アルテリア ◆U.mk0VYot6 :11/06/17 04:03:56 ID:???
「ほウ、いい波ダ、湖とはいえバカには出来ないナ」
身の丈のほどの木の葉形の板を片手にアルテリアは眼を輝かせてそう言った。

実のところ、アルテリアは湖の様子を確認するまで始めから最後まで仕事のつもりでいた。
何故なら、享楽都市としてのウルタールの印象が強く、消失のいう事実から来る哀愁と
自身が持つ湖のイメージが気持ちを静めていたからだ。
しかし、実物を見ればどうだろうか、逞しく生きる商人の姿とその中で回る金の動き
そして、イメージを払拭するかのようなウルタール湖の姿を目の当たりにしたなら
気が変わり、すぐさま水着等を買いにいったのは当然のことだといえる。

そうして、帝国旗柄のビキニに身を包み、遅れながらも浜辺に到着する。
「さてト、泳ぐ…前にっト」
ビーチを見回した際に、目に付いた二つの姿のうちの一つを見る。
一つは相変わらず暑苦しい格好のままのサフロールと
そしてもう一つは
>「湖底探索、かぁ。こう、伝説の武器とか見つかったりしないっスかねぇ……」
いじけたように他の課員の様子を眺めているウィレムの姿だった。
「伝説の武器カ…あるのなら是非浪費したいものダ」
背後からウィレムに声をかけた。
この間の一件をまだ引きずっているのか、他の理由があってかは知らないが
皆が楽しんでいるなか、一人だけ沈んでいるのが気になってしまったからだ。
一方、相変わらず不機嫌そうなサフロールに関してはほっとくつもりでいる。
今感じる不快感が暑苦しそうな服装と一緒にこびり付いたプライドから来てること
を理解した上であぁしているのならば、下手に手を出さず根をあげるまでほっといたほうが得策

「だガ、あったとしても期待出来ないだろうナ、この湖の下層は海と変わらなイ
 良い武器が沈んでいたとしてもとっくに錆びだらけだろうナ、まぁそんな環境にも屈せず
 錆びずにいたのならバ、それは伝説の武器だと断言してもいいだろうガ」
自身の見解を述べたあと、砂浜に板を置き、その上に座る。
「まぁあろうがなかろうガ、そうやって塞ぎこんでいる奴の手にそういう代物は収まらないだろうナ
 欲しいのならバ、老人のようにそうするよりも動いたらどうダ?
 これから波乗りついでに湖を調べようと思っているガ、ついて来るカ?
 もしこの湖の水質が最高なラ、湖底の様子も把握することも出来るゾ?」
ノリ気でなさそうなウィレムを活気付けようと誘いをかけてみたが、
肝心のウィレムはそっぽを向いている。
「泳げないのなら板なリ、なんなり買ってきたらどうダ?
 生憎、これは特注でナ、中に弓と矢筒が入っているから貸せン
 …いい加減こっち向いたらどうダ?」
そう尋ねてもウィレムの態度は相変わらず
その対応がアルテリアの女のプライドを傷つけた。
「……コッチ向けヨベィビィィィィィ!!!」
頭にきたアルテリアはウィレムの頭を鷲づかみにし強引に自身のほうへ向かせようとする。
残念なことにこんな自体を引き起こしたのは自身のスタイルだということをアルテリアは知らない

【ウィレムを波乗りに誘う
 眼を背けられてキレて、頭を鷲づかみにする】


89 :ルイン ◆5q.yyAvL6. :11/06/17 19:22:47 ID:???
「皆楽しそうに遊んでるなぁ〜。まあ、泳ぐ事なんて滅多にないしね」

赤茶色の髪を風で揺らし、ルインは遊撃課の面々を見つめながら頬を緩ませた。
見ればサングラスまでかけているではないか。
───思っくそ観光気分だ。

「それより重要なのは財宝……財宝だよな………何て美しい響きなんだろうか!」

爽やかさと気持ち悪さを矛盾なく成立させた顔でにやにやと笑う。

そのヘタレさばかりが目に付いて忘れがちであるが、ルインは借金を抱えていたりする。
賭博ジャンキーの父が財産を博打につぎ込み多額の借金を作った挙句死んだといったいきさつである。
お陰で借金の返済の為に給与の良い騎士団に入隊したものの怖くて堪らず逃亡、左遷されて現在に至る。

つまり、ウルタール湖に眠る財宝はルインにとって好機だった。
任務につき財宝をくすねるという訳にはいかないがそれ以外に金目のモノが水没している公算が高い。
何せ元は享楽都市だった場所なのだから。金目のものを売り払えば借金の返済に使える。

極めつけに今回は『財宝の回収』が目的で『戦闘』はほとんどない。
これがルインをにやにやさせる一番の理由で、いつもの余裕がない態度も失せていた。

「っと、そんな生々しいこと考えてないで釣りでもしよう、釣り釣り」

湖の家から借りてきた木製の椅子に腰を下ろす。余談だが釣竿もこれまた湖の家で貸してもらえた。
なんと無料である。店長はさぞ大物になるだろう、とルインが頼りにならない太鼓判を押した。

「こんな豊潤なひと時を過ごしたかったんだよお〜〜〜俺は。
 待ってろよ母さん、弟、妹ーーーーー!俺が大漁の二重奏を奏でてやるぜーーーっ!」

レッツフィッシング。しかしこの湖、釣りの女神でもツイているのだろうか。
異常な入れ食い状態で休む暇がない。

「やっほーーーい!すげーー!今までの不運を取り返すくらい釣れるぞ!」

この感動を誰かに伝えたい、と思わず特に親しい人間がいないにも関わらずきょろきょろと周囲に視線を移す。
そこでぴたりと視線が一点に止まった。幻覚だろうかと何度も目をこする。いや、違う。これは現実だ。
やたら暑そうな格好をした──誰だったか──ロキに便所飯君などと酷いことを言われてた気もするが──
を見るからに同属(ヘタレ)の匂いがプンプンするぜェーーーッな女の子が押し倒している。

押し倒して……いるッッ!?

(どうしたーーーーーーーーーッ!?職場恋愛は父さん絶対許さないぞーーーーーーー!?
 というか公の場でなんつーことを〜〜〜〜〜〜!?いやいやいや待て落ち着け素数を数えて落ち着け
 3.14………ああそれは円周率だバカ!俺が経験乏しいだけで最近はオープンが主流なのかッ!!?)

なんと傍から見ると誤解を招く危うい状況を目撃してしまったのだ。端的に言うと若さ故の夜の過ち。
ルインが女性経験ゼロの真性野郎であるのにも誤解を後押しした。
ちなみに近くにいたもう一人の男の子は最新鋭の脳内補正機能によって消去されているので
尚更二人水辺で愛の巣を作っているようにしか見えないだろう。

「あれッ!?急に太陽光線に目がやられたッ!見えないぞッ何があったのかよくわからないぞッ!」
(見ていない!俺は見てないぞなぁーーーんにも見てないッ!)

結局。どうしていいかわからず知らんぷり(?)を決め込んだ。
しかしサングラスを掛けているのに眩しさで前が見えないのはありえないだろうに。
ルインという男、薄々と感じていたが嘘が死ぬほどヘタクソである。


【俺は見てないぞなぁーーんにも見てない状態】

90 :リードルフ ◆M0g7zNWq0k :11/06/17 20:02:24 ID:???

「うわぁー、おっきいですねー。」

――観光地、ウルタール湖。二年前までは街があったとされる場所だ。
今回の任務は湖底に眠る富豪の財宝の回収とのことだった。
リードルフも噂だけは聞いていたので、少し期待していたりもする。

「さて、と。」

辺りを見回す。皆思い思いにウルタール湖を楽しんでいる。
だが一点、気になる人を見つけた。驚かせないように近づき、にっこり微笑む。

「お隣、失礼しますね。レイリンさん。」

スイカを一人、背中から哀愁をただよわせて黙々と食べるレイリンの隣に座る。
誰だ、と訝しげなレイリンに、簡単ながら自己紹介させてもらう。

「リードルフです、フローレンスの弟の。宜しく、これ、お近づきの印です。」

四次元鞄から取り出したのは、日焼け止め液の入った瓶。
レイリンは日の光に弱いとボルトが言っていたのを思い出したからだ。
ずっと木陰にいるのもつまらないでしょう?等と笑いながら、レイリンの横顔を見つめて尋ねた。
あの事を聞くなら、今だろうか。彼女が吐いた、ダンブルウィードでの嘘を。

「あの、レイリンさ「あれッ!?急に太陽光線に目がやられたッ!見えないぞッ何があったのかよくわからないぞッ!」

ルインが唐突に何か叫んだ。煩いなと思いながら見るとまあ、端から見ればちょっと危ない光景。
若いっていいですね、とぼやきながら、スタスタとルインに近づき、その頭を蹴飛ばした。
話しかけようとしたタイミングをずらされたのが癪に障ったからだ。
何をするんだと騒ぐルインに、リードルフは虐めっ子も裸足で逃げ出す笑顔で言い放つ。

「ギャーギャー騒いでみっともない。あれしきの事、君だってダンブルウィードで経験済みでしょう?」

姉が言ってましたよ、と付け加え、さっさとその場を去る。ルインを苛め=楽しいという事を覚え、レイリンの元へ。
しかし彼女がさっさと遊びにいったのを空のデッキチェアを見て悟り、途方にくれるのだった。

【レイリンさんに日焼け止めクリームを譲渡。これで日中でも活動しやすくなります】
【リードルフ は ルインいじめ を おぼえた !】

91 :スイ ◆nulVwXAKKU :11/06/17 22:38:42 ID:???
『いいかスイ。絶対にこれは手放すなよ。お守りだ』
記憶の中の彼の声。
首にかけられた、ネックレス。
剣の形をした、ペンダントが、ぶら下がっている。
お守り、そう呟いたときには彼は――――――。




>「うわぁー、おっきいですねー。」
「……でかい…」

湖と聞いたから、いつも通りの小さなものを想像していたら、意外と大きかった。
現在スイは上着を脱いだ状態で、上着の下に来ていた、半袖姿だった。
ちなみに下側はふだんとかわらない、ズボンの裾をブーツに突っ込んだ状態。

>「  海、だ――――っ !!!!  」

遠くから、フィンの声が聞こえる。
そのまま泳ぎに行くのをみて、元気だな、と思った。
皆、三者三様に動いているのを見ながら、どうしようかと思う。
泳ぎは、基本のみ心得ている…つもりだ。
しかしまだ泳ぐ気もしないし、かといって、この炎天下の中にいるのもごめんだ。
いそいそと日陰に移動し、スイは湖を眺めた。

「…なんだ、はしゃいで出てくるかと思ったのに、今日はやけにおとなしいんだな。」
「(うるせー。俺だって体力は温存しときたいんだよ)」

裏に話しかけてみれば、うんざりしたような声が返ってくる。
ルインが騒ぐ声が聞こえて、ルインに何かやったらしいリードルフに近付いた。

>「ギャーギャー騒いでみっともない。あれしきの事、君だってダンブルウィードで経験済みでしょう?」
「…リードルフ、あれは後から不可抗力だと、言っていたような気がするんだが。」

静かに突っ込みを入れてみて、その時、ふと疑問を思い出した。
ちょうどあの時、ルインが言っていた言葉だ。
リードルフの後についていって、スイは疑問を投げ掛けた。

「なあリードルフ。『どうてい』ってなんだ?」

スイにとってはちょっとした、他の者から聞けば爆弾発言を、スイは言い放った。

【ちょっとした(?)爆弾発言投下。】

92 :シヴァ ◆3oqrAy1Ql2 :11/06/17 23:36:47 ID:???
ウルタール湖到着を告げる車掌の声が聞こえる
短髪の筋肉質な大男はそれを聞くと立ち上がり車両の上から飛び降りる。

大男の名はシヴァ・ビートルズ。雇われ傭兵だ
眩しい日差しに目を細めながら目的地を目指す。今回クローディアと名乗る少女から雇われここに来た。
クローディアの特徴は事前に聞いていたので探す。すると貧相な男とメイド服の大女と一緒にいた。
きっとあれだと歩み寄りクローディア達と対峙する。
お互いに何も言わない。クローディアが口を開きかけたときシヴァは深々と頭を下げる

「シヴァ・ビートルズだ。遅れてすまない」

頭を上げナーゼムとダニーを交互にみる。シヴァは仲間だと判断した
シヴァはしげしげとダニーを見ると突然手を掴んだ。視線が熱っぽい

「貴女、美しい・・・」

手に力が入る。シヴァは強そうな筋肉質な女性が好きなのだ。
怒っているらしいクローディアに向き直る、クローディアが怒る理由が分からないからだ

「何故怒る、腹でも減ったか?」

きっとそうだと判断し唯一の荷物の小袋から西瓜を出す。
手に少し力をこめると綺麗に西瓜は均等に割れた
それをクローディア達に差し出した

「腹が減っては戦は出来ぬ。これを食って腹を満たせ」

シヴァは美味しそうに西瓜を頬張る
無表情だがその顔は幸せそうである

【ウルタール湖に到着し自己紹介 西瓜をプレゼント】

93 :セフィリア ◆LGH1NVF4LA :11/06/18 19:24:15 ID:???
燦々と照る太陽にセフィリアは目を細めて見上げる

「……熱い……なぁ……」

体が溶けてしまうかと錯覚するほど日差しに心底うんざりしながら砂浜に立つセフィリア・ガルブレイズ
空を憎たらしそうにみつめたあと眼前で遊ぶ遊撃課の面々をうらやましそうにみつめる

「みんな楽しそうだな〜私は熱いの苦手だしな〜水着にもなりたくないし……」

自分の貧相な体、特に胸をじっとみつめる
はあ……自然とため息がでる
水着も着ないで木陰で先日送られてきたゴーレムのカタログを読もうと腰を下ろした
さすがに武装してはいない、白いワンピースに大きな帽子と貴族の令嬢らしいといえばらしい格好だ

>「あと小腹減ったらいつでも言って下さいねー!ひとっ走り、買ってきまスんで!」
「なら麦麺の果汁ソース和えを買ってきて」
いわゆる焼きそばを買ってきてと頼んだ。貴族の性か人に何かをしてもらうのは彼女には自然なこと

「はあ……サジタリウスさん、アイレルさんの体がうらやましい……」
再び大きなため息、自分のちんまい体を心から憎らしく思えた。
「力は出ないし、軽いし、いいことなんてなんにもないんだ!」
1人で憤慨していると目の前にスイカが飛んできた
>「スイカ割りするひとこの指とーまれっ!」
自分のほうに飛んできたスイカを空中で綺麗に切り分ける
ウィレムが帰ってきたらあげようと考えていた
スイカが飛んできた方向をみるとフランベルジェ=スティレットの楽しそうな姿がある
「スティレット先輩だ……剣鬼の称号か……いいなぁ」
セフィリアは昔からフランベルジュを尊敬していた自分にはない破壊力のある剣に憧れていたのだ
「スティレット先輩、先輩はどうしてここにきたのですか?左遷ですか?」

失礼なことをずけずけと聞いてしまう

94 :ジョナサン ◆gynXZcVm6c :11/06/18 20:34:03 ID:???
「帝都か。二年振りだねぇー」

ハァーイ始めまして美男美女の諸君!僕の名前はジョナサン・ナルキッソス!
かの有名な画家ムーサ・ナルキッソスの一人息子だよ!知らないって?黙って教科書引け。

今回はとある事情でウルタール湖まで来てまーす。日差し暑いマジヤバい。
事情っていうよりかはお金貰って雇われただけなんだけどね!
何と雇い主はあのメニアーチャ家のクローディア嬢ときたよ!これは行かない手はないよね!お金貰ったし。

とまあ一人でボーっと突っ立ってるのも何なので早速目的地に向かって歩くことにする。
ところで目の前をガチムチ大女メイドさんが同じ方向に歩いてる気がするけどきっと僕の思い違いだと信じたい。
更に後ろからむくつけき大男さんが歩いてくる。筋肉ヤベェ。バランスいい筋肉だけど顔怖い。なんだこの筋肉祭り。新手の嫌がらせか。
あれ何かこっち見てない?気のせい?気のせいだよね?ついでに歩く方向が一緒なのもきっと気のせいだ絶対そうだ。
それよか気まずい。隣歩いてるけど凄まじく気まずい。空気重いしここだけ少し気温低くなったように感じるよ。

そろそろ軽く涙目になりそうになった僕に救いが訪れる。クローディア嬢の姿が確かに見える。
声をかけようとしたけどすぐに喉の奥に引っ込んでしまった。あのガチムチメイドに話し掛けられてる。
どうしよう関わりたくない。どう回避しようかとか考えてたら隣の大男君がスタスタ歩いていく。えちょっそっちはクローディア嬢g

>「シヴァ・ビートルズだ。遅れてすまない」

シィィィィィィット!君仲間かよ!これは流石の僕も予想GUYだわ!僕の他にも何人か来るって聞いてたけどさぁ!
あーしかも何だよ!ここでラブコメしないでよ!イケメンの筈なのにモテない僕への嫌がらせ!?
あ、スイカくれるの?有り難う……って添うじゃなくて!顔を引き締めてクローディア嬢に話しかける。

「初めましてミス・メニアーチャ。ジョナサン・ナルキッソスです。それで、今回は一体何の作戦でしょうか?」

【メンバーと合流】

95 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/06/19 05:59:36 ID:???
「ピニオンからクランク6へ。"クラーケン"の進捗はどうだ?」
「委細良好。上――湖面のほうがちぃとばかり騒がしいが、シカトできるレベルじゃ。上手く行きすぎて怖いくらいですけえ」
「けっこう。ダンブルウィードでの失敗は痛かったからな、今度は頼むぞ」
「いらん心配ですわ。今回は軍が介入してくる気配もなしに、バレた頃には帝国地図の塗り替えが終わっちょります。
 ほいでもって自分は本来陸の人間じゃないですけえ、ここがホームグラウンドですな」
「水の中だがな。よし、それでは念信終わる。ビーチで会おう、――GoodLuck(健闘を)」

 * * * * * *

>「スティレット先輩、先輩はどうしてここにきたのですか?左遷ですか?」

遊撃課員であり、スティレットと同じく帝国騎士団から出向してきたセフィリアから不躾な質問が飛んできた。
内勤のスティレットとは部署こそ違うものの、同じ剣術で身を立てた貴族の出として彼女のことは知っていた。

「左遷でありますよー。わたしは少しばかり、独断専行の気が強すぎるきらいにあるらしくてですね」

スティレットは、朴訥とした人当たりとは裏腹に、名誉欲と功名心の塊だった。
なまじ強すぎる剣力と、剣鬼という称号を賜ったばかりに彼女は増長し、次第に律を乱す行動が多くなっていった。
自分一人に任せてもらえれば、もっと上手くやってみせるのに。
高すぎる自己評価と、それを実現してしまう偉才は、思春期の少女には毒にしかならなかった。

「ま、まあ!そんなことはこの際言いっこなしでありますよ、ガルブレイズちゃん!
 我々は、『認め直させる』為にここにいるのでありますから!――そういうガルブレイズちゃんは、どうして遊撃課に?」

遠い目から意識を戻したスティレットは、これ以上の追求を避けるようにセフィリアへ話を振り返した。

* * * * * *

湖の家の軒下の置かれた細脚の席に腰掛けながら、ボルトは遊撃課員たちが思い思いに水辺を満喫するのを眺めていた。
暖期を終えたばかりの太陽は、迫る熱期に向けてますますはりきる盛り。照りつける陽光は、重みでもあるかと錯覚するほどに激しい。
無論ボルトとて、日差しを逃れて隠遁するほど老成しているわけでもないし、非番の日は欠かさず娼館に通うほど精強ではあるが、
若輩者ぞろいの遊撃課員たちの手前、はしゃぐわけにもいかず所在なさげに軒先の置物と化すばかりであった。

>「はい、どうぞ。」

物憂げに嘆息しようとした鼻先に、削った氷を山のように盛った器が置かれた。
果汁が雪解け水のように雪山の頂を穿つその向こうに、遊撃課員ノイファ・アイレルの柔和な笑みがあった。

「……こいつは何のつもりだ?」

>「別に査定を甘くしろ、なんて言いませんわ。ただ――」

ボルトの非礼な問いにも、特に気分を害した様子なく、しかしノイファは目尻を吊り上げた。
自分の両指で。

>「――こんな難しい顔して唸ってたんじゃ、余計な苦労を背負い込みますよ?」

それは実際のところ、彼女自身の端正な顔立ちとのアンバランスさも相まって、実に愛嬌のある表情だった。
ボルトは小さく鼻を鳴らして、ノイファから目を逸らした。吸い込まれそうな、飲み込まれそうな、そんな魔性を秘めた女だ。
最近知ったことだが、ボルトはご贔屓にしている娼館で何度かノイファを見かけたことがある。
お代を踏み倒したり『マナー』のなってない客をボコボコにして裏口に放置する、そういうお仕事に就いてるお方だった。
何度かその現場を目の当たりにしたことがあるため、ヘヴィユーザーのボルトとしてはどうにも彼女が苦手だった。

「社会人ってのは色々悩みに尽きねえんだよ。特にあいつらみてえな、のほほんと遊んでる連中見てると頭痛がするぜ」

削り氷を銀匙でザクザクやる。掘り出された氷を口に含むと、脳みそが絞めつけられるような鈍痛を感じた。

96 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/06/19 06:01:28 ID:???
>「それともう一つ。」
>「あの湖には"主"と呼ばれる何かが居るらしいわ。」

「主ィ?」

出来て二年そこそこの内陸湖に、何の主が居るというのか。
海から紛れ込んだにしても、地下水脈を抜けられる大きさから主と呼ばれるまで成長するのに二年という歳月はあまりに短い。
湖底の埋没金よりずっと、眉に唾して聞かねばならない話だった。――だが、ロマンはある。巨大怪獣は男の夢だ。

>「ふふっ、鬼が出るか蛇が出るか……ちょっとわくわくしませんか?」

「つくづく武闘派だよなあんた……」

 * * * * * *

「チームを三つに分ける。総員ボードに注目」

一刻ののち、海の家に再び召集された遊撃課の面々を前に、ボルトはブリーフィングボードを叩いた。
ボードには『掃討組』、『探索組』、『潜水組』の三つの見出しがあり、その下に課員達の名前が割り振られている。

【掃討組……アルテリア、プリメーラ、ウィレム、スイ、ストラトス
 探索組……サフロール、フィン、ノイファ、リードルフ、ルイン
 潜水組……セフィリア、ロキ、ファミア、レイリン、スティレット】

「割り当ては以上だ。次に各チームの任務説明に入る」

ボルトはチームごとに課員達を固まらせ、まず探索チームに防水松明と野戦ポーチを渡した。

「探索組には、歩いて湖底を目指してもらう。水に直接入るわけじゃない、砂漠にはよくあることだが鍾乳洞を利用した地下通路が
 あってな、元は貴族が夜襲に備えて創った避難経路だったようだが……隠し財産の保管場所にも通じてるらしい」

湖底に沈んでいるとはいえ、元は人の手によって作られた保管庫である。
オアシスの下に通じているなら、浸水しないように頑丈な作りの通路が残っている公算は高い。
実際そのような鍾乳洞がウルタール湖に一つだけあるのだが、魔物の巣になっている為に詳しい調査は行われていなかった。

「何年も手付かずだった地下通路……そいつは既に天然のダンジョンだ。高度な制圧作戦になるかも知れねえから、心してかかれ」

次に、潜水組の面々へ箒型の魔導具を投げ渡す。飛翔魔法を付与した『箒』に形は良く似ていたが、若干ディティールが異なった。
これは『水中箒』と呼ばれる魔導具である。噴射術式によって水中を素早く泳ぎ回れる乗物で、しがみつくようにして使う。

「探索組には実際に水中から湖底へ降りてもらう。沈んでるものを片っ端から浚って、目ぼしいものを引き揚げてこい」

吸気管と水中箒があれば、かなり効率良く水中での作戦を進められる。問題は水圧だが、ゴーレムや身体強化ならば耐えられる程度だ。
湖の家の傍に、防水布に包まれた数機のゴーレムが暖機を済ませて置いてあった。
技術局から帰ってきたばかりのセフィリアの『サムエルソン』や、ボルトの『スレイプニル』の他に『ファイア・フォックス』が数機。
いずれも水中仕様の改造を施してあり、ある程度の塩気にも耐えられる特殊な兵装を装備していた。

「あとガルブレイズ、こいつはお前宛だ」

言ってボルトはセフィリアへカタログと手紙を投げる。
彼女が受け取ったと同時、最後に残った掃討組へと向き直った。

97 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/06/19 06:02:23 ID:???
「掃討組には前述した2チームの援護を行ってもらう。湖内にくまなく目を光らせ、水棲魔獣など任務の邪魔になるような
 敵性存在を排除しろ。潜水組もだが、ゴーレムに乗りたい奴はもってけ、元老院からの奢りだ、大事に使えよ」

平和だと言っても広い湖内だ。商船や漁船を狙う海賊紛いの野盗は散発的に出るし、魔物も広く存在する。
戦闘に集中できない他のチームを護る役目が掃討組だ。彼らの戦果如何では、作戦成功は愚か部隊の生存率にも関わる問題である。

「作戦概要は以上だ。全員念信器を携行しろ。今回は軍も関わってないから、チャンネルは常時開いとけ。
 特に探索組は万一落盤したら外から助けにいかなきゃならなくなるからな、念信器はなくすなよ。何か質問はあるか?ないなら―」

再びボルトは柏手を打つ。いつもの所作。

「――状況開始だ!」


【メンバーを三つに分ける。それぞれに水中箒とバックパック、念信器を支給】

98 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/06/19 06:03:18 ID:???
* * * * * *

>「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

クローディアの前に、身長六尺はあろうかという巨人が立ちはだかった。
彼女は最初、自分の遠近感がついにおかしくなったかと疑った。それほどに、途方も無い存在感を示す人間だった。
何より驚いたのは、その巨人が、女給服を纏いし女性だったということである。

「な、なによぅ……」

流石のクローディアもこれにはビビらざるを得ない。頭三つ分は高いところからこちらを見下ろす眼光は、正直言って恐ろしかった。
なによりメイド服がはち切れんばかりに自己主張するその筋肉が、そこから繰り出されるパンチの威力を容易に想像させた。
ナーゼムが間に割って入る。滑るような違和なき所作だったが、彼の背中にもクローディアと同種の緊張が走っていた。
紳士服の袖を握っている。この手を離せば人間時の彼の得物――二振りの手斧が袖から滑り出てくる寸法だ。

>「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

果たして。偉丈婦は口を開いた。驚いたことに、彼女はクローディアの募集した傭兵の一人であるようだ。
というか、まあ。こんなナリをしている人間が、ただの湖の家の従業員だったらば、それこそ人材の無駄遣いというものだ。
なにしろこの筋肉メイドの筋肉ときたら、傍目にも分かるほどに相手を殴ることを目的とした発達のしかたをしているのである。

>「シヴァ・ビートルズだ。遅れてすまない」

そのとき、巨人がもう一人現れた。小柄なクローディアの視点では、巨大な人間が目の前に二人並ばれるともう前が見えなくなる。
シヴァと名乗った男は、熱を帯びた視線で彼女たちを眺めると、なめらかな動作で求愛のポーズをとった。

>「貴女、美しい・・・」

筋肉メイドの方に。

「なんでよーーーっ!?」

だって、だって、明らかに性別的なアピールに欠けた女である。クローディアを差し置いて、何故この女に!
クローディアは自分を過大評価しているつもりはないが、それにしたってあんまりだ。自信をなくす。

>「何故怒る、腹でも減ったか?」

「朴念仁ってレベルじゃねーわよ!でも西瓜はいただくわ、どーも!」

シヴァから西瓜を引ったくり、代わりに食べつくした唐黍の芯を投げる。
ナーゼムがゴミ箱を抱えて待機していた。放られた芯は放物線を描いてゴミ箱に吸い込まれていった。

>「初めましてミス・メニアーチャ。ジョナサン・ナルキッソスです。それで、今回は一体何の作戦でしょうか?」

いつのまにかもうひとり、目鼻立ちの整った美丈夫が西瓜片手に立っていた。
どうやら彼もクローディアの招集に応じた一人らしい。

「オッケ、とりあえずはこれで行くわっ!」

クローディアは西瓜にかぶり付き、種を吐いて椅子から腰を剥がした。
頭の後ろで結った亜麻色の巻き毛が揺れる。集った三人の傭兵たちを俯瞰する彼女の目には、年相応の瑞々しい輝きがあった。

「あたしが今回のクライアント、クローディア=バルケ=メニアーチャよ!名前は覚えなくていいわ、そのうち帝国史に載るから!
 さて!今回あんたたちを呼んだのは他でもない、この湖に眠る『主』、謎の水龍をとっつかまえるのよっ!」

クローディアはテーブルの上に広げてあった号外の新聞をバシっと手で叩いた。
ウルタール地区の非常にローカルな情報誌であるが、その分中身は速くて正確な情報で詰まっている。
そこには、湖内に揺らめく巨大な影を念写した画が載せられていた。その巨大さたるや半端ではない。家屋が50軒はゆうに入るだろう。

99 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/06/19 06:03:47 ID:???
「こいつはつい最近湖の中で発見された謎の水龍そのものよ!でも不思議なのは、これだけの図体なのに今、
 こうやって湖を見回してもそれらしい影は見当たらないってこと。こっから導きだされる推論はひとつ!
 『とんでもない深さに居る』か、『どこかに隠れられるねぐらがある』ってことに他ならないのよ!」
「二つじゃないですか、推論」
「おだまり!あたしは後者の説を推すわ。龍って生物は水棲でも鰓で呼吸してるわけじゃないの。定期的に水面に呼吸器を出して、
 外気を取り込まなきゃいけない。ならねぐらは水上になきゃいけないわ。湖の端の岩場のあたりがクサいわね」

クローディアは湖の地図を出す。広大な面積を誇る湖の外周に、岩が集まってちょっとした岩山を形成している部分がある。
彼女は前日までの調査で、ここに不自然な洞窟が開いているのを発見している。中は鍾乳洞になっていた。

「あたしたちはここを攻めるわ。魔物の巣になってるだろうけど、掃除しながら進んでって……龍の寝床を押さえる!」

そして――クローディア達はそこへ到着した。
湖の家の待ち合わせ場所には、先に向かっている旨と向かった先を暗号で記してある。後から追う物がいても大丈夫なようにだ。
洞窟は峻厳な岩場の奥に開いており、外のじりじりとした熱気とは裏腹に冷ややかな風が奥から吹きつけていた。

「えーっと……ほら、そこの筋肉二名!あんた達が壁にならないでどうすんの!その筋肉はあたしを護る為に存在すんのよ!」

先程のやり取りのやっかみを多分に含みながら、クローディアは偉丈夫と偉丈婦の背中を蹴った。
刹那、クローディアの声に反応したのかコウモリ型の魔物――強靭な翼と吸血牙もつドラクルバットの大群が飛来してきた!

【クローディア:岩場の洞窟へ私兵達を率いて向かう。ドラクルバットの大群に襲われる】

 * * * * * *

【掃討組・潜水組+ボルト】

掃討組と潜水組を乗せた漁船は湖の沖へ向かって帆を張っていた。風を孕んだセイルが順調に船を進め、沖合で錨を下ろす。
潜水組はここから水中へ入り、掃討組は船上で戦闘準備を行うことになる。
そのとき、漁船の索敵手が水平線の向こうに影を見つけた。船影だ。念信器で交信を試みるが反応はなし。
望遠眼鏡越しに見えた船の外観には、帝国の国土管理局が発行する認識番号のペイントがなかった。

「賊だ――!」

漁船の中がやにわに慌ただしくなる。最低限の自衛手段はあるが、賊と正面から殺り合うだけの装備も人員もない。
同乗していたボルトはすばやく課員たちに指示を出した。

「潜水組、すぐに入水しろ!賊に目的を悟らせるな!掃討組出番だ、熱烈な歓迎を浴びせてやれ!」

敵船――賊を満載した船が戦闘距離まで近づいてきた。船首に備えられた魔導砲がこちらを捉える。

「戦闘艦じゃねえか!全員耐衝撃体勢をとれ――!」

魔導砲が瞬いた。

【潜水組に入水指示。海賊戦と交戦開始・敵船が魔導砲を発射】

* * * * * *

【探索組】

湖の家からほど近い鍾乳洞。
ウルタールが都市であった頃に、金持ち達が金にあかせて改修したこの地下通路は、二年前の大災厄にも見事に耐えていた。
しかし二年という歳月は、鍾乳洞が闇を好む魔物の巣に変わるのには十分すぎる時間だった。

ドラクルバット、洞窟バッタ、汚泥スライム……いずれも人間並の体躯と、人間以上の殺傷性を持つ魔物たちである。
鍾乳洞内部へと入った遊撃課員達を歓迎するように、洞窟内の生物の気配が咆哮した。
ドラクルバットがその牙を、洞窟バッタがその脚力による突進を、汚泥スライムが腐臭のする触手を侵入者へ伸ばす!

【雑魚モンスターたちが歓迎してくれるようです】

100 :レイリン ◆lvfvBHCkg. :11/06/19 19:47:54 ID:???
>「チームを三つに分ける。総員ボードに注目」

ボルトの声を引き金に遊撃課の視線がボードに集まる。
ボードには掃討組、探索組、潜水組と3つの組分けとその後に課員達の名前が振り分けられている。
その組分け毎にメンバーが集まる、レイリンのグループは潜水組でメンバーはセフィリア、ロキ、ファミア、スティレットとなっていた。
集まった面子は性別不詳の一人を除いて軒並み女だった、しかも明らかに十代、その中の一人に至っては幼さが全く抜けていなく、
このような場に居て良いのか?と疑問を抱かずにはいられない風貌をしていた。
恐らくレイリンが一番年長だろう。

>「潜水組には実際に水中から湖底へ降りてもらう。沈んでるものを片っ端から浚って、目ぼしいものを引き揚げてこい」

そう言いつつ、ボルトは箒型の魔導具と水中で呼吸をするための吸気管を手渡してくる。
『水中箒』と言われるその魔導具は噴射術式によって水中での高速移動を可能としたものである。

>「作戦概要は以上だ。全員念信器を携行しろ。今回は軍も関わってないから、チャンネルは常時開いとけ。
 特に探索組は万一落盤したら外から助けにいかなきゃならなくなるからな、念信器はなくすなよ。何か質問はあるか?ないなら―」
>「――状況開始だ!」

いくら異能者とは言え、水中では喋ることは出来ない。
潜水組であるレイリン達は常時この念信器で互いに連絡を取り合うことになるだろう、
レイリンは念信器がきちんと作動するかを確認すると、同じ組の面子へと顔を向ける。

「皆さん、一応初めましてでいいですよね?
シキマ=レイリンです、今回はあまり危険とか無さそうですが無事に帰還しましょう!
湖底から海面までは距離があって、頻繁には上がれないと思うのであまりふざけたものを拾わないように。
っとすみません、私ちょっと仕切り癖があって、子供じゃないし分かっていますよね」

レイリンはそう言葉を切ると苦笑いと共に謝罪をする。
ただ、遊びではないことが分かっているのか分かっていないのか甚だ疑問を覚える人物が居ることも確かであった。

「綺麗な金髪ねアルフート、私とお揃い」

その中で少し居づらそうにしているファミアに対し、腰をかがめ、目線を同じにする。
そして、そのしなやかな髪に指を滑らせ、軽く微笑みながら話しかける。
レイリンとファミア、髪の長さこそ違うが、差し込む日の光を受けて黄金色に輝く姿は同じであった。
家族には兄しかいないレイリンは年下が大好きで、例え迷惑だったとしてもついお節介を焼いてしまうのだ。

101 :レイリン ◆lvfvBHCkg. :11/06/19 19:48:34 ID:???
【船上】
早速探索組とは別れ、船に乗り沖合へと繰り出した潜水組と掃討組。
ある程度進むと錨を降ろし、潜水組は潜水の準備、掃討組は戦闘の準備へと入る。
水平線を見ると、小さな船影が見えた。
その船影は一直線にこちらをめざし、次第にその影を大きく、はっきりと形づけていく。

>「賊だ――!」
>「潜水組、すぐに入水しろ!賊に目的を悟らせるな!掃討組出番だ、熱烈な歓迎を浴びせてやれ!」

素早く水中箒を手に取り、吸気管をつけると、長い髪を紐で一つに束ねる。

「大丈夫よ、あの人達凄く強いから。
私達は私達の仕事をやりましょう、恐かったら私と一緒に飛び込む?」

ここでもファミアへ、嫌がっているかどうかなど完全無視のお節介ぶりを発揮し、撫で心地が良いのかファミアの髪を梳くようにして指を動かしていた。
そして、ボルトに急かされると、掃討組の激しい迎撃をバックに湖へと飛び込んだ。
冷たい水が火照った身体に触れる、それは非常に心地よいものであった。

「急いで湖底まで潜りましょう」

水上の激しい戦闘とは裏腹に穏やかな水中ではあるが、ここが戦場になる可能性は十二分にある。
すぐさま水中箒を抱きかかえると、術式を発動させる、おびただしい量の泡をうみだし、湖底へと加速を始めるレイリン。
その速度により身体にかかる負担は並大抵のものではなく、とても目を開けていられるものではない。
色とりどりの魚が創り出す湖の景色は神秘的だろうが、残念ながらそれを楽しんでいる余裕は無かった。



102 :ウィレム ◆uBe66UnnCY :11/06/19 23:08:01 ID:???
>「伝説の武器カ…あるのなら是非浪費したいものダ」

かけられたその声にウィレムの体が一瞬跳ねたのは決してビビりだからという訳ではなく、
どんな人間でも突然背後から声をかけられたら少しぐらいは驚くだろう、とウィレムの名誉のために記す。

振り向く。そこに立っていたのはアルテリア、と言っただろうか。同じ遊撃課の一員であるおっぱい。
この女性、実のところ下から見上げるとそれはそれはすごいことになっていたおっぱい。
何事かを言いながらウィレムの横に座り、更にウィレムに何かを提案しているようだおっぱい。
だがウィレムは全く話を聞いていない。アルテリアの方を見ようともしていないおっぱい。
いくら思春期真っ只中であるとはいえいくらなんでも初心すぎるその反応は異常とも言えるおっぱい。

>「……コッチ向けヨベィビィィィィィ!!!」

そりゃ怒りを向けられても当然のことだろう。頭を鷲掴みにされ、強制的に顔の方向を変えられる。
同時に視線も変わる。向けられたその先に待っていたのは、帝国の旗に隠された高く聳える双巨塔。
だがウィレムはそれを気にする暇がない。突然頭を掴まれて。ウィレムの心に去来する感情はただひとつ。
――恐怖心。

「ち、ちょっとセフィさんに頼まれてるのがあるんで失礼させて頂きまっス!」

掴まれた頭を強引に振りほどくと湖の家に向かって走り出した。実は半泣きである。
何あの人。本気で怖いんだけど。同じおっぱいでもノイファしゃんとは大違いだ。
無理無理無理無理無理無理無理無理怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。

その後はふつーに焼いた麦麺を購入し、ふつーにセフィリアに渡した。
水着ではないとはいえ、その揺れない震源地にウィレムは相当安心する。
自由時間終了とともに、結局水に入り忘れたことをウィレムが気付くのももうじきのことだ。

***

「あれっ?」

ボードを確認。ウィレムの名前がある。そりゃそうだ、もし載ってなかったらそれは虐めだろう。
問題があるとすればウィレムが属することになった班。視線を左にずらして行くと、そこには『掃討組』とある。

「あれっ?」

掃討。言葉の意味は残らず打ち倒して払い除くこと。その単語に関係するのは戦闘の二文字。
おさらい。ウィレムは今回戦いなどないだろうとたかを括っていて、武器も持たずにやってきた。
戦闘能力はないに等しい。ただ走り回るだけの、地を這いずる虫けらにも近いような。

「あれっ?」

しかも同じ掃討組の面々が。話をしたこともないような人ら3人、まぁこれは別にいいとしてだ。
問題は先刻のことですっかりウィレムの中に苦手意識が芽生えてしまったアルテリア。よりによって、よりによった。
それを含め、前回の作戦で一緒だった人が1人も居ないのもウィレムにとって辛い。
別に新しい組の4人の力を過小評価しているつもりはないが、やはり目の前でその強さを知っていると。
それに何より、ちょっと淋しい。

「あれっ?」

まるで壊れた蓄音機のように、同じ単語を執拗に繰り返す。
自分の置かれた状況を理解できないのか理解したくないのか、頭上には無数の疑問符が浮かんでいた。

「あれーっ……」

言葉は波に消えていく。

103 :ウィレム ◆uBe66UnnCY :11/06/19 23:09:29 ID:???
***

沖へ向かう漁船。
ウィレムは先程と同じ水着。変わっているのは二箇所程だろうか。
まず手に持った角材。おおよそウィレムの身長の半分程度だろうか。握り締めるに程よい太さもある。
武器持ってきてないんですけど――そう正直に話した時の冷たい視線、一生忘れられないかもしれない。
湖の家の人に頼み込んで倉庫に入れてもらい、なんとか見つけてきた。十分、武器にはなるだろう。
いくらなんでもゴーレムには乗れない。ウィレムにそんな技能はない。

そして目立つのはその顔だ。流線型の黒く染色された眼鏡を掛けている。先程までは付けていなかったはずだ。
湖の家で買ってきた遮光眼鏡。陽射しの元で戦うから……という訳ではなく、女性陣の姿をはっきり見ないように。
実際の効果のほどは微妙ではあるが、結局のところ気持ちの問題であるわけで、かなりウィレムは落ち着けている。

先程からそうだが、履いているのはいつもの魔靴ではない。このは汽水湖、大事な遺産が潮水で劣化しては非常に困る。
ということで今回は水に濡れても構わないような革の靴。裸足になる訳にはいかないからだ。
あんな大ジャンプは今回出来ないが、走ることには何も制約はないだろう。

>「賊だ――!」
>「潜水組、すぐに入水しろ!賊に目的を悟らせるな!掃討組出番だ、熱烈な歓迎を浴びせてやれ!」

「了解っスよ!潜水組の方らは行ってらっしゃい!後顧の憂いは、俺達に任せて!」

角材を構える。敵艦が近づくにつれ、その船影が少しずつ確実に露わになっていく。

>「戦闘艦じゃねえか!全員耐衝撃体勢をとれ――!」

すぐに船のへりにしがみつく。直後の衝撃。揺れる。視界が回る。何度も続いたら吐きそうだ。
だけど大丈夫。まだ大丈夫。この船も、沈まない。だけどいつ沈むか。何発も食らっては、保たないだろう。

「……でも海賊なんだろ?沈めちゃったら元も子もないし……」

おそらくは、もう撃ってこない。
一発当てて抵抗する気持ちを消失させ、あとは横付け、乗り込んで略奪、という流れだろうか。
だが……生憎、それぐらいで戦意が消失するような心は持ち合わせていない!
掃討組――『掃討』する役目を担ったのだ。これぐらい、軽々と、払い除こう!

こちらに近づく海賊船。ウィレムは縁から少し下がる。下がって、下がって、前を向く。助走を付けて。
跳んだ。
魔靴は履いていなくとも、この助走のスピードなら常人よりは十分長い滞空時間を記録出来る。
放物線を描き、既のところで海賊船の舳先に片手でしがみつく。ちょっと目測誤った、危うく落ちるとこだった。
ぶら下がってる状態から、勢い付けて海賊船の甲板へ。着地し、立ち上がる。
突然現れた角材を持った遮光眼鏡の少年。少し面食らっているであろう海賊達。

「……でも海賊じゃないっスよね。湖賊?あんたらこぞく?こ・ぞ・く?かっこ悪っ。
 とりあえず、本当にあんたら運が悪かったっスね。よりによって、俺達が乗ってる船を襲っちゃうとか……」

角材を構え、その場から消える。いつものことだ、本当に消えちゃいない。消えたように見えるだけだ。
とりあえず、1番近くにいた賊の脳天に向けて思いっきり角材を振り降ろした。
ゆっくりと倒れる。

「襲われるのも、経験っスよ」

走り回り、角材を振り回すだけの。至極簡単なお仕事です。

【敵艦に飛び乗り、あばれる】

104 :ロキ・ハティア ◆9pXiBpy0.U :11/06/20 02:35:00 ID:???
>77
>「きゃぁぁああああああ〜っ!?」
「うわあああああああああ!?」
いきなり釣竿がすっこぬけ、愉快な仲間達もろとも尻もちをつく。
そこに落っこちてきたのは、我らがプリメーラ嬢だった!
>「もーっ!何すんのさっ、このバカーッ!」
「釣れた釣れた、人魚が釣れた――――――!!」

>「スイカ割りするひとこの指とーまれっ!」
>「はーーいっ!」

照りつける太陽。飛び交うスイカ。響きあう笑い声。
見つめながら、誰に言うまでもなく呟く。
「心行くまで楽しむがいい、間もなく運命の歯車は回り出す……」

「ロキさん……?」
怪訝そうな顔のジョセフさんに向かってぺろっと舌を出す。
「今の雰囲気出てたっしょ!? なんとなく言ってみたかったんだよね!」
「おいい! 今それっぽく影までついてましたよ!?」
一斉にずっこける音楽隊。

「ワタシも混ぜて〜〜!!」
スイカ投げに混ざる。楽しい時間はあっという間に過ぎていくのであった。

105 :ロキ・ハティア ◆9pXiBpy0.U :11/06/20 02:36:16 ID:???
>96
>「チームを三つに分ける。総員ボードに注目」
「……わお」
プリメっちゃんやパシリ君やヘタレ君や堕天使君はおらず、真面目っ娘4人に包囲された。

>「皆さん、一応初めましてでいいですよね?
シキマ=レイリンです、今回はあまり危険とか無さそうですが無事に帰還しましょう!
湖底から海面までは距離があって、頻繁には上がれないと思うのであまりふざけたものを拾わないように。
っとすみません、私ちょっと仕切り癖があって、子供じゃないし分かっていますよね」

誰だ〜? そんなしょうもない事をしそうな奴は!
辺りをぐるりと見回し、ありますちゃんで視線がぴたっと止まった。
「了解であります!」

>「――状況開始だ!」
開始の号令が出次第、ゴーレムのところに歩いていく。
選んだ機種は、スレイプニル。
三千世界を駆ける8脚の神馬がモチーフ……のはずである。が、普通の乙種のゴーレムだ。
寄り添ってそっと足をなでる。
「やれやれ、本当は超かっこいいのにね〜」
それもそのはず、モチーフといっても外見そのものではなく魔術的な意味でのモチーフである。
だからこそこのスレイプニルだけは操縦できるのだ。

>99
入水地点が近づいてきたので、いそいそとスレイプニルに乗り込む。
このスレイプニル、多くの機能が搭載されており、搭乗者が必要に応じて有効・無効の切り替えをできるのが特徴。
スレイヴモードの中でも一際特殊なオプションにセットする。
この方式でしか使われない特殊な操縦器を手に取る。
左側に十字キー、右側に○×△□の4つのボタン。その内側左右にぐるぐる回すやつが一個ずつ。
真ん中に小さいのが二つ並んでて縁に左右2それぞれ2個ずつ。

>「賊だ――!」
「何ィ!? 海賊か山賊かはたまた裸族かあ!? まあ優秀な掃除班に任せとけばいいっしょ」
操縦器のStartというボタンを力いっぱい押す。
>「潜水組、すぐに入水しろ!賊に目的を悟らせるな!掃討組出番だ、熱烈な歓迎を浴びせてやれ!」
「フハハハハ!! 待ってろよ財宝め! 一網打尽にしてやるわあ!」
漁船に置いてあった大きい網をひっつかみ、湖に飛び込んだ。

【財宝一網打尽作戦! スレイプニルに搭乗して湖に飛び込む。】

106 :サフロール・オブテイン ◆jKUaosk4aY :11/06/20 12:08:18 ID:???
>「いよっ、サフ……えーと……そうだ!サフロール!お前、そんな暑そうな服着て何してんだ!?
  する事無いなら泳ごうぜ!冷たくて気持ちいいし、ついでに、俺の編み出した必殺泳法とか教えてやるよっ!!
  もしくはスイカ食おうぜ!!」

「テメェは……『天鎧』か。俺が何を着て、何をしようが俺の勝手だ。つーか必殺泳法って、一体何を殺すんだよ」

冷ややかな声と態度を返す。
だが直後――サフロールの脇腹に鈍い衝撃が突き刺さった。
そのまま地面へと叩き付けられる。砂浜とは言え鈍痛と、地面が帯びた熱は免れない。
痛みと熱が、思考を蝕む。悪意を助長させていく。

「クソ下らねえ戯言は終わったかクソアマ。この暑さで頭をやられたか?だったら……好きなだけ涼んでやがれ」

零れる涙などお構いなしに、ファミアの外耳を掴んだ。
手前に捻りながら、強く引っ張った。無理に抵抗すれば耳が引き千切れる。
人間の防衛本能を利用した技術――腰が浮いた所を放り投げ、湖に落とす。
立ち上がり、魔力の翼を開いて砂と熱を払い飛ばした。

「……どいつもこいつも、馴れ馴れしいんだよ」

表情を憎悪の一色で塗り潰して、サフロールは小さく零した。



そして――状況開始。
陽の光が届かない鍾乳洞の中は、外とは打って変わって涼しかった。
汗が引いていく。身体が冷え過ぎないよう、魔術で汗を散らし、体温調節を行う。
松明に火を灯し、持つのが億劫だと『浮遊』の魔術を施し、探索組の面々を振り返った。

「さて……まぁ、期待はしてねえが役割くらいは決めとくか。『天鎧』、テメェは前……」

遺才の事を考えれば間違いなく適役。
だが『分析』の遺才が微かな懸念をサフロールに告げた。
振り返る。視線の先にいるのは、ルインだ。
遊撃課で一二を争う臆病者――サフロールの口元が邪悪に歪む。

「やめだ。おいビビリ、テメェが前だ。逃げようなんて思うんじゃねえぞ」

嫌味な音律で役目を突き付ける。
が、完全な嫌がらせと言う訳でもなかった。
臆病者だからこその警戒心は、魔の潜む陰に満ちた洞窟で大いに役立つだろう。

「『天鎧』、テメェは一番後ろだ。洞窟の中じゃ、物陰全てを警戒なんて出来ねえからな。
 足りねえ頭で余計な事考えず、後ろだけ見てろ。分かったな」

すなわち、背中を突き刺す殺意を防ぐ盾。
口汚い罵倒は付き纏うが、遺才に限っては『信用』していた。

107 :サフロール・オブテイン ◆jKUaosk4aY :11/06/20 12:09:11 ID:???
「ババ臭えのは……神様に愛されてんだって?だったら神託でも使ってろ。
 どこから誰が襲われようと援護出来んだろ。大安売りの慈愛にどんだけの価値があるかは知らねえがな。
 それとも、神殿みてえに金でも取るのか?え?」

殊更に濃度を増す悪意、滲み出る神官への憎悪。
神を裏切りし者の血統故に受け続けてきた悪感情の裏返し。

「エルフ、テメェと俺は左右の警戒だ……っと」

不意に言葉を切り、立ち止まる。
前方に魔物の影。周囲に響く羽ばたき、躙り寄る不快な臭気と粘着質な音。

「ハッ……出迎えたぁ結構じゃねえか」

魔力の翼を生やした。同時に想起する。
ダンブルウィードでの観察、つまり天才性の分析結果を。

――弓矢とは本来、一射必殺を最上とするものだ。
多人数、広範囲を制圧するような矢の雨は、大勢が集まって初めて可能な戦術でしかない。
精緻と強烈を極める狙撃こそが弓矢の原点。
にも関わらず、アルテリア・サジタリウスはたった一人で戦術的な弾幕を実現してのけた。
何故か――彼女特有の浪費癖が、より多くの矢を放ちたいと渇望したからだ。
つまり人格が、才能を引き上げた。

――吸血鬼、レイリン・シキマはその対極に当たる。
人狼、吸血鬼、門、月を力の源泉とする存在は、狂気と共に力を高める。
にも関わらず、レイリンは狂気を抑え込んだ。
それでは吸血鬼の真髄など、到底発揮出来ないと言うのに。
彼女の軍人気質が、吸血鬼としての力を阻害している。
つまり人格が、才能を抑圧した。

人格が才能に影響を及ぼす。
ならばと、サフロール・オブテインは考えた。
自分が、自分の才能が最大限の力を発揮するには――自分はどんな人格になればいいのか。

「……そんなモン、考えるまでもねえよなぁ」

神を憎み、世界を憎み、全てに忌み嫌われた堕天使の末裔。

「お誂え向きに……嫌われる事も、憎む事も、慣れてんだよ」

微かに、言葉を零した。そして――更に想起。
これまで受け続けてきた、背中に突き刺され続けた憎悪を、嫉妬を、嫌悪を。
胸の奥で漆黒の感情が加速する。渦を巻く。世界の全てを憎しみで貫く。
憎悪で塗り潰されていく心とは裏腹に、思考は凄絶に研ぎ澄まされていく。

「……オイ、ババア。その剣、貸してみな」

言葉と同時、サフロールはフィオナの剣を掴んだ。
素手で、抜身の刃を。当然のように皮膚が裂け、血が流れる。
しかし流れた血は重力には従わず、剣に纏わり付く。
そうして血管を思わせる模様が描かれた。
魔力と術式を帯びた血は、斬撃に際して刃の角度と威力を適切に干渉する。
結果、平時よりも遥かに鋭く重い斬撃が導かれる――『崩剣』の擬似的再現。

108 :サフロール・オブテイン ◆jKUaosk4aY :11/06/20 12:09:50 ID:???
「ビビリ、テメェもだ」

槍の穂先を掴んだ。更に血が溢れ、先ほどと同じく血管模様に走る。

「よう、テメェらも欲しかったらくれてやるぜ?」

血の滴る右手をフィンとリードルフに見せて、サフロールが薄笑いを浮かべた。

「それにしても……ククッ、こりゃいいぜ」

笑みが凄絶に変貌する。
無防備に佇むサフロールに、魔物達が襲い掛かった。
だが、叶わない。
ドラクルバットには索敵に用いる超音波を再現、掻き乱し、
洞窟バッタは足元を泥濘に変えて、自慢の脚力を封じ、
汚泥スライムは高熱で表面を硬化させ、一時的に行動を禁じていた。

「残念……そこは既に、俺の世界だ」

散布した魔力が、神の創造した世界を否定する。
分析、分解、再構築を経て、世界を上書きした。

「ほら、さっさと戦えよ天才共。精々いい実験台になるんだな」

サフロールの背中に兆した翼が、変色していく。
黒が白を侵食して、翼の大部分を塗り潰そうとしていた。
仄暗い洞窟に、何枚もの黒い羽が踊っていた。

【役割分担はぶっちゃけそんな気にしないで下さい
 血のエンチャント、効果は擬似崩剣、威力強化
 魔物達の動きを封じる。サフロールに襲い掛かった一部の魔物か、全体かは指定しませんので都合いいように】

109 :プリメーラ ◆sA3iXghEZU :11/06/20 20:13:59 ID:???
「んーっ!スイカうーまーしー」

ご機嫌に西瓜を頬張りながら、果汁で真っ赤に染まった鉈を振り回すプリメーラ。
空中で西瓜を破壊していたので、頭部にもべったりついている。ちょっとしたホラーだ。

さてまだ時間はあるがどうしようかと考えた矢先、見覚えのある三人を発見。
共に西区で戦った、スイ、ルイン、リードルフだ。

「(いししっ、驚かしてやろっと〜)」

途端に浮かんだ邪な発想。
思い立ったらばと背後からそうっと回り、タイミングを見計らって近づくと――……。

>「なあリードルフ。『どうてい』ってなんだ?」

その場の空気が、一瞬だけ氷結した。プリメーラも例外なく凍った。
だが直ぐに驚きで我に帰ると、ルイン達を驚かすという目的さえ忘れて叫んだ。

「えーッ!スイってば『どーてー』の意味しらないのー!?」

おっくれてるぅー!と漏れなく付け足す。やれやれと首を振ると、唐突にスイの両肩をがっしと掴んだ。

「『どーてー』はね、30歳までにこじらせると死んじゃう、こわーい病気なんだよ!」

思いっきり間違えている。しかし本人は本気だと信じているのだ。

「大丈夫だよ!30歳までに『そつぎょー』すれば大丈夫だtt」

割愛。



果汁を洗い流し、メンバー発表と作戦内容が伝えられた。
メンバーは一部を除いて知り合いということで少しほっとした。

「わぁーい!姐さんやストラトスやスイと一緒だぁー!」

ぴょんぴょん跳ね回って喜ぶ。お幸せな奴である。

【船上】

「うーみーはー広いーなー大きーいーなー」

再度言うが海ではない。湖だ。しかし気にすることなく、プリメーラは調子外れに歌う。
背後でレイリンが同じメンバーに挨拶しているのが聞こえる。
ものの見事に女子ばかりのメンバーだ。ちょっと羨ましいだなんて考えてない。断じて、決して。


110 :プリメーラ ◆sA3iXghEZU :11/06/20 20:14:39 ID:???

>「賊だ――!」
>「潜水組、すぐに入水しろ!賊に目的を悟らせるな!掃討組出番だ、熱烈な歓迎を浴びせてやれ!」
「イエッサー!」

突然告げられる敵襲。プリメーラは鉈を手に、敵影を見つめる。

「大丈夫だよみんな!賊なんかボクがボッコボコに……」
>「戦闘艦じゃねえか!全員耐衝撃体勢をとれ――!」
「へ?」

皆船べりなどに掴まるが、プリメーラは女性陣に意識を向けていた為反応が一瞬遅れた。
砲撃、直後、揺れる船体。何にも掴まっていないプリメーラは、

「へ、」

湖に、落ちた。

「(がぼっ……にゃろぉっ!)」

波にもまれながらも、水中で体制を立て直す。
プリメーラの憤怒に反応するように、ペンダントが輝く。
その青白い光に誘われたように、水中から泡が生まれ、黒い一頭の馬が現れた。
水魔、グリンデロー。本来なら水の中に哀れな犠牲者を引きずり込む魔物だ。
だが、普通は赤い筈の瞳は、ペンダントと同じ青白い光に包まれている。

プリメーラはそれに跨ると、足でその腹を蹴った。
グリンデローは、まるで空を飛ぶように水中を駆ける。

「ハイヨ、シルバー!」

間もなく、一人と一匹は湖面を飛び出し、敵船の看板に飛び降りる!

「プリメーラ=レズィビアン、遅れて登場!賊共かくごー!」

グリンデローの鬣を掴み、プリメーラは鉈を振り回して暴れ回る!

【水魔を仲間にし甲板で大暴れ】

111 :ダニー ◆/LWSXHlfE2 :11/06/20 20:59:36 ID:???
照りつける太陽の下、白い浜辺の上に集まった三人はどうやら同じ理由を持っているらしかった。
目の前の少女が今回の「労働」における主な対象のようだ。今回はどんな仕事をさせられるのか
と考えていると、隣にいたダニーと変わらぬ背格好の、顔は美男に入れてもいい部類の男が
手を取っている。自分を美しいと言って来る。流石にビーチは開放的だなと思った。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
男にそう言われたのは初めてだ、と言うと余った手を頬に当て表情を全く変えないまましなを作る。
この仕事の間なら付き合ってもいいと思える。久しぶりにいい目が見られそうだ。

そんなやり取りが気に触ったのか今回の主人が嫉妬混じりに怒鳴り散らしてくる。
確かに子どもの前ですることではなかった様な気もする。そっと手を外すのと入れ替わりに彼、
シヴァといったか、は荷物からスイカを取り出し振舞ってくれる。

「・・・・・・」
一言礼を述べてからダニーもスイカをご馳走になる。切り身を口に軽く頬張ると
次の瞬間には口からずるりと身だけ無くなったスイカをだして捨てる。美味い。

余った分に手をつけようとすると、同じくスイカを食べていた男、ジョナサンがクローディアに
挨拶をする。そういえば自分は探りを入れただけでちゃんと挨拶をしていなかったことに気づく。
後でしておこうと彼女は思った。

今回の仕事内容を聞きながら、彼女達は場所を浜から洞窟へと移していた。
場所柄を考えれば自分も水着の一つも持ってきたほうが良かったのだろうが生憎このサイズの
バストに合う物がなかったのだ。サイズで言えば大きい方だがカップで言えば小さい方だ。

およそ女性的な丸みや脂肪はこの数年ですっかり落ちてしまった為に普通の水着を着ようとすると
丸みを予め織り込んで製造された水着は布が変なあまり方をする。流石に付けずに歩くという
考えはないのでこの服のまま洞窟まで来てしまったのだ。

案内されるまま歩いているとクローディアが背中を蹴る。頑張って届かせる辺りが微笑ましい。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

さっきのは刺激が強かったようだとシヴァに目配せをし肩をすくめると、言われたとおり洞窟の先を
行くことにする。まさかこの年でUMA探しをするとは思わなかった。

112 :ダニー ◆/LWSXHlfE2 :11/06/20 21:00:58 ID:???
外の熱気を寄せ付けない洞窟の中で、こちらの物音に気付いたのか早速の出迎えにダニーは目を遣る。
やって来たのは血吸コウモリの類のようだ。良く病気を持ってるだの悪魔の使いだの言われる
動物だが、彼ら以上に甲斐甲斐しく子守をする動物をダニーは知らない。

コウモリたちは徒に傷つけるのに気が引ける相手だった。さりとてこのまま群がられて
血を取られる訳にも行かない。適当に筋肉を締めて腕を振るいコウモリを払う。辺りを見回すと
岩場の間に大型の魚がゆうゆうと泳いでいる水場を見つける。

ダニーはぐっと足に力を込めて一足でそちらに駆け寄ると、爪を伸ばし鮭を採る熊の要領で
水面から弾く。するとコウモリ達は魚に一斉に群がり我先にと魚の血を吸う。

同じように何匹かの魚を弾いてコウモリの注意を剥がしていく。流石に全部とまでは
行かなかったし、後ろの方で怒鳴り声が聞こえたような気がしたが気のせいだろう。

天に星、地に花、人に罰、それだけあれば十分だと彼女は考える。
だいたい善い思い出と悪い思い出を比べると前者が圧倒的に少ないのだからこれでいいのだ。
少なくとも彼女にとっては。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
コウモリじゃ、スイカの礼にはならないな、とシヴァに言うと悪びれない様子で小さく笑って見せる。
まだ残ったコウモリが後ろの方に群がっているのだが彼女にとってはもう済んだことのようである。

洞窟の静けさとは裏腹に、彼女の気持ちは「怪獣探し」に少しづつだが乗って来ていた。
久しぶりの気晴らしになりそうな予感がした。

【ダニー、コウモリの一部に魚を放って気を逸らす】

113 :シヴァ ◆3oqrAy1Ql2 :11/06/20 22:55:51 ID:???
「水龍探しだ」とクローディアに連れられ洞窟に一歩入る
正直あまり乗り気はしない。龍は神聖な生き物だと教わった事があった
シヴァが育った国では龍は神の使いともされており捕まえるなんて罰当たりだ。
けども反面、龍の姿を見た事がないのでその姿が見れるのかと思うと少し心が弾む。

「えーっと……ほら、そこの筋肉二名!あんた達が壁にならないでどうすんの!その筋肉はあたしを護る為に存在すんのよ!」

背中を蹴飛ばされるがシヴァには効かない、しかし進めと言われたからには足を一歩踏み出す
するとクローディアの声に反応したのか吸血蝙蝠達が我先にと襲いかかる
ダニーはその逞しい筋肉で悠然と蝙蝠達を追い払う
シヴァもこれ位の蝙蝠如き敵ではない
軽く何度か薙ぎ払っただけでドラクルバット達は洞窟の壁に叩きつけられる

(手ごたえはないが丁度いいか)

隣のダニーに視線を向ける。彼女は追い払う仕草をするだけで倒そうとはしない
倒そうとすることに躊躇っているようにも見える、きっと優しいのだ。
彼女は何を思ったかいきなり水場に向かって走り出し水面を蹴って魚を弾く
我先にと蝙蝠は魚の血を奪い始めこちらから意識を逸らす

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ダニーがこちらを見て小さく笑ったのを見て不覚にも胸が一際高鳴る
後方にある入り口から差す光がダニーの笑顔を照らし夢幻のような美しさにも見えた

惚けている間にもダニーはどんどん先へ進んでいく
急いで後を追おうとしたが呼び止められた
まだ残っている吸血蝙蝠達を軽く振り払い、壁に叩きつけてやる

「待て。俺が先にいく。」

ダニーを呼び止め、守るように先頭を突っ切って進む
これから先どんな敵が現れるか分からない、警戒はしておこう
シヴァの右腕は気づかない内に昆虫類独特の光沢を持つ群青色に変化していた

【コウモリを薙ぎ払い先頭を進む 硬化開始】

114 :フィン=ハンプティ ◆yHpyvmxBJw :11/06/21 01:16:22 ID:???


「殺すのは、自分の弱い心だぜ!! なんてなっ!!」

サフロールの冷淡な態度にもフィンはまるで動じる事無く、
それどころかニッと悪戯小僧の様な笑みを浮かべ、右手の拳を握り、
その親指を天に向けて見せた。
どうやらフィン=ハンプティという青年は、
この上なく悪意への耐性が高いか――――アホであるらしい。

と、そんなやりとりの最中、謎の発言と共に突如としてサフロールに
突撃を放った人物が一人。見ればその女性も遊撃課の隊員の一人だった。
女性は何故か涙を流しながらサフロールを押し倒していたが……

>「クソ下らねえ戯言は終わったかクソアマ。この暑さで頭をやられたか?だったら……好きなだけ涼んでやがれ」

その相手は、これまで遊撃課の中でも際立って人付き合いを嫌う様子を見せているサフロール。
行為の先に恋愛奇譚の如く甘い展開が待つ筈も無い。
サフロールは容赦なく女性の耳を掴むと、水に放り投げた。
地面に叩きつけなかったのは慈悲か、それとも趣味か。
とにかく、このままでは女性は間違いなく濡れ鼠と化してしまうだろう。

「――――よっと!」

そうして、水に人間大の何かが落ちる音……が、それはサフロールが投げた女性ではなかった。

「あっはっは!!いやー、やっぱ手甲がねーとバランス取り辛いなっ!!」

濡れ鼠と化したのは、フィン=ハンプティ。
女性が正に湖へと向かい投げられ、浮かび上がったした瞬間、その背中を逆に押し陸地に押しとどめたのだ。
もちろんそんな事をしてバランスが取れるはずも無く、フィンは湖へと落下したという訳である。
ただ、フィンはそんな事をおくびにも出さず、後頭部に手を当て、水を滴らせながらキラリと笑う。
まるでその行為が当然の事であるかの様に。

――――かくして束の間の急速は終わり、此処に状況は開始する。

115 :フィン=ハンプティ ◆yHpyvmxBJw :11/06/21 01:19:50 ID:???
「よっしゃ、探索とかなんかワクワクしてきたぜっ!!
 同行は……サフロールに、ノイファっち、リードルフ、ルインか。
 ――――俺はフィン!お前らの事は俺が守る、よろしく頼むぜっ!!」

腕を組み、太陽の様に快活に言い放った後、フィンは鍾乳洞に入る。
湿気こそ多いものの、太陽光が遮られ水が熱を吸収する鍾乳洞は氷室の如く
冷涼であった。そんな鍾乳洞に入った直後、サフロールが提案をした。
それは人員配置、即ち陣形に関する提案であった。
……最も、提案というには少なからず言葉に棘があるが。

>「『天鎧』、テメェは一番後ろだ。洞窟の中じゃ、物陰全てを警戒なんて出来ねえからな。
>足りねえ頭で余計な事考えず、後ろだけ見てろ。分かったな」

「あーっ!! ずるいぞー、サフロール!俺、先頭がよかったのに!!」

そんな言葉に対し、不満げに口を尖らせるフィン。
どうやら、生来の冒険好きから、自身が先頭でない事に不満があるらしい。
ただ、それでも集団の最後尾に付くのは、彼自身の護衛としての経験から
その提案にさほどの落ち度が無いのを理解しているからだろう。
手甲「剣砕き」を装備した両手を頭の後ろで組み、フィンは鼻歌を歌いながら歩く。

そうして歩を進めてから暫くの後、脅威が訪れた。
即ち、魔物の出現。
ドラクルバット、洞窟バッタ、汚泥スライム。
どの魔物もよく見かける類の魔物で単体では脅威は無いが、なに分その数が多い。
並みの兵士では数に押されて負けかねない。

「懐かしい魔物だなー、いよいよ冒険っぽくなってきたぜっ!!」

が、この状況においてフィンはまるで脅威を感じていない様だった。
それもその筈である。これらの魔物たちに、冒険好きのフィンは何度も遭遇しているのだ。
時に財宝があると噂の廃屋で、或いは子供達に伝説の生き物がいると噂される様な深い森の中で。
故に、この魔物たちの扱いは熟知している。
手甲をぶつける事で発生する金属音で、後方から襲ってきたドラクルバットの認識を阻害し壁に激突させ、
汚泥スライムは攻撃面積を広げる為に平手で叩き、その身体を散らし、或いは中にある小さな核を破壊する。
洞窟バッタに至っては、片手でその突進を受け止め、いなし、そのまま相手の力を利用して
地面に叩きつける事によって破壊する。

そんな事をして後方の魔物を撃滅していたフィンだが、前方の変化に振り返る。

「ん?……おおっ!!なんだそれ、カッコいいなっ!!」

116 :フィン=ハンプティ ◆yHpyvmxBJw :11/06/21 01:20:33 ID:???
見ればそこには黒い羽を舞い散らすサフロール。
彼が魔法を用いて魔物を殲滅していた。今回のフィンの魔物への攻撃を
経験則によるものとすれば、さながらこれは物理法則を駆使した効率的な魔物への対応。
最も――――それを成しているのは神に仇名す存在の技法なのだが。

>「よう、テメェらも欲しかったらくれてやるぜ?」

「欲しいけど、多分俺にそういうの効果ねーぞ?」

しかしながら、別段信心深い訳でもないフィンはそんな事を気にする事も無く、
正面からその皮肉気に歪んだ表情に少々残念そうに受け答える。
よく観察してみると、確かにサフロールの散布した魔力の粒子は、
まるで見えない壁でも在るかの如くフィンの身体を避けていた。

これもまた、鎧の眷属『天鎧』という遺才の力。
元よりフィンは魔力に対しての高い抵抗力を持っており、その力で
状態を変化させる類の他者の魔法の影響を、ある程度跳ね除けてしまうのだ。
例えそれが強化や回復の魔法であろうとも、強力にレジストをしてしまうのである。
それこそ、意識が酩酊する程に弱ってでもいない限り、
他人がフィンに強化魔法をかけるのは困難を極める。

故に、サフロールの世界の中でも「一個」として在りつつ、
フィンは後方の魔物の数を着実に減らしていった

【後方にいた何匹かの魔物を撃破。エンチャントは効果が無かったようだ!】

117 :ノイファ ◆QxbUHuH.OE :11/06/21 11:28:35 ID:???
陽の光の射さない仄暗い洞の中を、揺らめく炎が照らし出す。
長短様々な影が洞窟の壁にゆらゆらと歪に伸びる。
ごつごつとした岩肌が層を連ね、長い年月を経て侵食された天井が切先を地へと向け、氷柱のように垂れ下がっている。

ウルタール湖の底へと続く鍾乳洞。
だが反して足場となる岩肌は、人の手が入っているのか所々削られ、歩く分にはさして苦にはならない。

「これが湖の底までずうっと続いてるって言うんだから……財宝を隠したっていう貴族様も大したものねえ。」

探索組として割り振られたノイファは、同じく割り振られた他の四人と洞窟内をひた歩いていた。

>「さて……まぁ、期待はしてねえが役割くらいは決めとくか。『天鎧』、テメェは前……」

先頭を行くサフロールが振り返る。些か口の悪さが目立つものの魔術師としての腕はかなりの物らしい。
頭の切れも同様。過日の中央区において、ゴーレム撃破にこぎつけたのは彼の"分析"に依るものだというのだから推して知るべし。

そして名を呼ばれたのはフィン。今回探索組として割り振られた中では一番面識があるだろう。
ダンブルウィードでは数度、危うい所を救われた。実力も人柄も良く判っている、つもりだ。
残るのは二人。一人は帝国全土でもほとんど目にすることのない、エルフの血を継く薬師のリードルフ。そしてもう一人は――

>「やめだ。おいビビリ、テメェが前だ。逃げようなんて思うんじゃねえぞ」

――帝国騎士団から遊撃課員となったルイン・ラウファーダである。
帝都に住む者でラウファーダの家名を知らぬ者はそうは居まい。なにせ帝国騎士の本領たる"槍"を司る一族なのだ。
"崩剣"のスティレット家や"双剣"のガルブレイズ家と比べても、格式では一歩譲るとして知名度で引けをとるものではない。

(それにしても……流石と言うか、やっぱり良く視てますねえ)

うんうん、とノイファは独り勝手に合点し関心すること頻り。
というのも防御特化のフィンを先頭にした場合、物陰の多い洞窟内では敵との遭遇時後手に回ってしまう目算が高い。
ならば先んじて斬り込めるルインか自分が先頭に立って、殿をフィンに任せた方が良い。
そう進言するつもりだったのだが杞憂だったようだ。

「と、なれば私は――」

即座に対応が出来るよう隊列の真ん中で。そう告げようとして――

>「ババ臭えのは……神様に愛されてんだって?だったら神託でも使ってろ。」

――空気が凍った。

「うん?サフロール君。今何て言ったのかな?お姉さん聞き逃しちゃったよ。」

口端を微かにひくつかせ、問う。
ババ臭い、そう言われたか。いやいや、事前に閲覧した考課表によれば五歳しか違わないはずだ。たったの五歳しか。
確かに娼館のオーナーにも言動が年寄りじみてきた、などと言われたことはある。
あるが、年上から言われた場合、大人の落ち着きが出てきたのかな、などと少し誇らしくも思ったものだ。
しかし年下から言われるとどうだろう、悪口と言うよりも、何か物凄く女としての沽券に関わる、そんな気がしてならない。

>「エルフ、テメェと俺は左右の警戒だ……っと」

だが当のサフロールは素知らぬ顔で指示を出し、途中で言葉を濁す。自分の聞き間違いだったのかもしれない。

「……さっそくお出ましかしら?」

思考を切り替えノイファも臨戦態勢をとる。前方の通路から複数――と言うには幾らか多過ぎる――魔物が姿を現したのだ。

118 :ノイファ ◆QxbUHuH.OE :11/06/21 11:29:01 ID:???
>「懐かしい魔物だなー、いよいよ冒険っぽくなってきたぜっ!!」

嬉々とするフィンの言葉通り、遭遇した魔物は、湿った洞窟や鬱蒼と茂る大森林、打ち捨てられた遺跡など生息場所の枚挙に事欠かない。
人間の子供くらいなら掴んだまま飛べる程肥大した血吸い蝙蝠。
体躯が、取り分け脚部が異常発達し、その強靭なバネを武器に飛びかかってくる飛蝗。
黒く濁った汚泥で出来た触手で獲物を絡め獲り、体内で窒息させ養分として吸収する粘体生物。

一体一体は駆け出しの戦士でもどうにか倒せる程度の相手なのだが、いかんせん数が多い。
それでも負ける要素は皆無とはいえ、まだまだ先は長いというのに最初からこれでは辟易もするというものだ。

>「……オイ、ババア。その剣、貸してみな」

「やっぱりババアって言いやがったですわね!?……って、ちょっと、そんな掴み方したら危な――」

ノイファの静止も聞かず、サフロールは躊躇なく白刀に手を伸ばす。
それも直に刃へと。そのまま刃を握り締めた手が滑り、当然のように血が飛沫いた。

「あん、もうっ!だから言ったじゃな――え?」

だが血は地面へ零れない。
それどころか、まるで意思を持っているかのように刃の表面を躍り、血管の如き模様を刀身に描きだす。

(これは、血液を介した魔術の発現?……いや、彼の血、そのものに意味がある?)

力場に包まれた愛刀を矯めつ眇めつ、ノイファは改めてサフロールの手腕に舌を巻いた。
血を介した術行使は数度試したことがある。だが、ここまでの精度はとても見込めたものではない。
口と性格は超絶に捩れ曲がっているが、卓越した実力の裏返しと思えば対処のしようはまだある、と思いたい。

>「ほら、さっさと戦えよ天才共。精々いい実験台になるんだな」

背の翼から黒色の羽を舞い散らせ、襲い掛かる魔物を封じるサフロール。
何処までも尊大な態度は微塵も崩さない。

「さてと、じゃあ試し斬りといこうかしらね。ああ、それと――」

上着の袖を捲くりながら白刀を一振り。そして首から上だけをサフロールへ回す。

「――ツギニ、ババアッテ、イッタラ…………ムシル。」

満面の笑顔で宣言した後、魔物の只中へと躍り込む。

119 :ノイファ ◆QxbUHuH.OE :11/06/21 11:29:33 ID:???
「よいっしょー!」

この掛け声がいけないのかしら、などとちらと思いつつ、手近なドラクルバットを一閃。
手ごたえに微細な違和感。刃先がまるで導かれるように、するりと肉へ喰い込んでいく。
刃の鋭さを増した、というのとはおそらく違う。刃筋を最適な進入角へ軌道修正している。多分そんな感じだ。

(なるほど……翁の下で研磨し直したつもりでしたけど、まだまだ無駄があるってことですねえ)

自身の未熟さを思い知らされ溜息を一つ。皮肉気に口端を吊り上げ、再び魔物を睨む。
左手できつく柄頭を握り締め、右手は鍔下へ、卵を包むように添える。学び倣った、基本にして最強の構え。

「まあ折角の機会だし、今のうちにコツを掴んでおくとしましょう。
 幸い、ちょうど良い練習相手もたっぷり居ることだしね!」

続く一太刀で強靭な外骨格を持つ洞窟バッタを縦に両断。
返す刃の先には汚泥スライム。その体表を中の核ごと斬り飛ばす。乾酪を切り分けるより遥かに容易い。

一閃、また一閃と白刀を振るい、同じ数だけ魔物が地に伏せる。
自分が思った通り、いやそれ以上に刃が奔る――それが純粋に楽しい。
もしかしたら、"剣"の偉才を持つ者たちはこういう世界を観ているのだろうか。

「は――」

いつの間にか笑い声が漏れていた。
斬る手を休め、慌てて口を引き結ぶ。しかし、その間隙を魔物は見逃さなかった。
窮鼠の如く、ドラクルバットが数体、塊となって飛来。首を捻って回避。だが体は崩れてしまっている。

「ルイン君!リーフ君!数体そっちに抜けたわ!」

ノイファは背後で戦う二人へと、警告の声を発した。


【ルインとリードルフに向かってドラクルバットが複数体突撃。バックアタックだ!】

120 :ファミア ◆mCdqLO6Z6k :11/06/22 13:26:07 ID:???
一人盛り上がるファミアをよそに、サフロールは仏頂面です。
いきなりテイクダウンされてマウントを取られて、笑顔でいる人間というのも、それはそれで問題が有る気はしますが。
そのサフロールの手がす、とファミアの顔に伸びました。
>「クソ下らねえ戯言は終わったかクソアマ。この暑さで頭をやられたか?だったら……好きなだけ涼んでやがれ」
言うなり耳をひっつかんで引っ張ります。
「あ痛い痛い痛い痛い」
前のめりになったファミアのお腹に足が当てられ、そのまま投げ飛ばされてしまいました。

予定とは違う方法で遊泳開始となりそうなところ、湖面へ向かう放物線軌道は即座にねじ曲げられ、
体が浮いたのを認識した一瞬の後には両の足で立っていてちょっと混乱したファミアの背後で水音が一つ。
振り返るとフィンが波打ち際を超えたあたりで倒れこんで、頭を掻いていました。
>「あっはっは!!いやー、やっぱ手甲がねーとバランス取り辛いなっ!!」
快活に笑いながら立ち上がって、それからどこへやらと歩み去って行きます。
サフロールの姿もすでにそこにはなく、どうやら思いとどまってくれたらしいと知った(そもそもそういった事実が存在していないとは考えません)ファミアは、
召集がかかるまでの残りの時間を泳いで過ごしました。慣らしは十分にしておくに越したことはありません。
ただし、サフロールにはあまり近づかないように。
なにぶん、ちょっと怖かったので。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

さて一刻はままたくまに過ぎ、湖畔の事務所内にて。
お腹に靴跡を残したままのファミアは、任務内容を請け賜わって胸をなでおろしていました。
基本的には他の課員が戦闘を受け持ってくれるということで、一番危険が少なそうに思えたからです。

問題は分隊のメンバーで、近衛に佐官に上位騎士、それと名状しがたい人物。
一応は軍事教育を受けていたファミアですから、上官の前での口の聞き方歩き方は心得ていますし、
元がなんであれ今では平課員同士。それほど気を使うことも無いはずなのですが、どうにも萎縮してしまうのも事実です。
ロキに関しては素性がわからなすぎて、どう接していいかもわかりません。
所在なさ気に手袋の具合を改めていると、装備品の動作を確認していたレイリンが訓示を始めました。
今作戦においては分隊長格ということになりそうです。

>「綺麗な金髪ねアルフート、私とお揃い」
訓示を終えたレイリンが、ファミアの前に屈んで顔に手を伸ばしました。
ファミアは先のサフロールとの一件があったので思わず体を硬直させたものの、
髪を撫でようとしたのだとわかって緊張を解き、されるがままになっていました。
他人に髪を梳かれるというのは意外と気持ちがいいものです。

121 :ファミア ◆mCdqLO6Z6k :11/06/22 13:26:39 ID:???
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

装具点検、機材の積み込みが終わり、掃討組、潜水組はここからは船上の人。
三角帆が風を受けて膨らみ、竜骨が波を裂いて、船は沖へと進んでいきます。
そしておもむろに投錨。特に目印になりそうなものもなく、見晴らしのいい湖面です。
その湖面を滑るように接近してくる船影が一つ。応答なし、船番なし。
>「賊だ――!」
「ですよね!」
完全に油断しきっていたファミアは慌てて課長の指示に従って潜水の準備を始めます。

>「大丈夫よ、あの人達凄く強いから。
>私達は私達の仕事をやりましょう、恐かったら私と一緒に飛び込む?」
手際よく支度を終えたレイリンが、やはり髪を撫でながらファミアへ問いかけました。
目を細めて撫でられるがままになっていたファミアですが一瞬で我に帰って、
「いえっ、大丈夫です!」
元気よく断りました。
さすがにお姉さんに手を引いてもらう歳でもありません。見た目はともかく。
それを聞いたレイリンは水中箒を抱えて船縁を飛び越え、湖面へと身を躍らせました。
ファミアは後を追うまでもなく敵船の砲撃に尻っぺたを蹴飛ばされて湖に叩き落とされます。

水中にはレイリンの他、ゴーレムが数機(人数より多いのは誰も搭乗していない機体が落っこちたせいでしょう)、そして、
(馬……馬!?)
二度見したファミアの視線の先で、それは水面へと駆け上がってゆきました。
見間違いだったのかと首をひねるファミアに、レイリンからの念信が届きます。
>「急いで湖底まで潜りましょう」
言葉通りにまっすぐ下へ向けて加速するその背を追って、ファミアも箒を起動しました。
首にかけっぱなしの水中眼鏡が水の抵抗を受けてすごく首に食い込みました。
慌てて眼鏡を装着します。レンズの中に水が入っているので色々と台無しですが、変に暴れられるよりはこのほうがましでしょう。
前途多難だなあ、とファミアは考えましたが、その"多難"の大部分が自分の粗忽さから来ていることには気がついていませんでした。

122 :リードルフ ◆M0g7zNWq0k :11/06/22 20:58:33 ID:???
ルインを苛めて、もとい弄くり回して遊んでいると、いつの間にか脇にスイが立っていた。

「なあリードルフ。『どうてい』ってなんだ?」

いきなりの爆弾発言。その場の空気が凍り、ひび割れさえ聞こえるかのよう。
リードルフは取り敢えず夢だと信じたいので近場にいたルインの頬をひっぱたく。痛がっているのでどうやら現実のようだ。

「ええっと……スイ、言っている意味がよく……」
「えーッ!スイってば『どーてー』の意味しらないのー!?」
「わっ!?」

まるで初めからいたかのように背後から叫ぶプリメーラ。
年端もいかない女子が童貞童貞と叫ぶこの現実を信じたくなくてルインの頬をひっぱたく。痛がっていた。

「大丈夫だよ!30歳までに『そつぎょー』すれば大丈夫だtt」
「スイ聞いちゃいけません!何してるんですかルイン早くプリメーラ女史を抑えてっ!」


【洞窟内】

「全く!総ての責任は君にあるんですよ、ルイン=ラウファーダ!」

まるで悪事をしでかした子供を叱りつける母のように小言を並べる。
話題は先程の童貞発言についてだ。

「君が妙な事を言って、あの子達が変な知識をつけたらどう責任を取るつもりなんですか!」

怒り任せに足を踏み鳴らしながらも、しっかりルインの歩幅に合わせてネチネチネチネチ。
嫌気が差すレベルまでに小言を並べ続ける。サフロールの指示も耳に入らない程に怒っていた。
しかし、流石に敵が現れてからはリードルフも戦闘に入る。

「やれやれ、魔物ってそんなに暇なんですかね…。」

眉を顰めながらも、笑みは崩さず一体一体を倒していく。それなりのチームワークを取りながら、先へ、先へ――――。

「ん?……あれは……。」

リードルフが捉えた影。蝙蝠とも飛蝗ともスライムとも違う、人に近い形をとっている。
それはゆっくりとこちらに近づいてくる。襲ってくる気配はない。
形は人、女性だった。肌は青く、湖の色彩を吸い取ったかのようだ。
耳の代わりに鰭のようなものがあり、魚のような双眸がこちらを見ている。
敵意はないようだ。攻撃しようとするメンバーを手で制する。


123 :リードルフ ◆M0g7zNWq0k :11/06/22 20:59:14 ID:???

「エル、リエルル?」
『リルエル、リエル。エアリルエリル、リルル。』

会話のようなものを交わした後、リードルフは振り返る。

「彼女は二年前、此処に流れ住み着いたエルフだそうです。
 …彼女曰く、引き返せ。さもなくば『かの方』の怒りを買う、と。」
『リリエル、リウル!エリリリ、ウェリアリ!』

湖のエルフが喚く。
深く立ち入れば只では済まない、命が惜しければ去れと言っていると通訳する。

「……リアタルル、アルエル。」
『アル!アンエリルエリ、イリ!』

メンバーの言葉をエルフに伝えると、怒りに満ちたように肩をいからせ、水のように溶けて消えた。
何と言われたのかと問われると、リードルフは肩を竦め、苦笑いで答えた。

「……勝手にしろ、死にたがりの【自主規制】共、だそうです。
 最近の女性って皆ああなんでしょうか…?」

気にせず行きましょうか、と気を取り直し、再び一行は洞窟の奥へ……。


【湖のエルフに忠告される。何やら何かがいるようです】

124 :セフィリア ◆LGH1NVF4LA :11/06/22 23:20:58 ID:???
セフィリアは湖に入るのはあまり乗り気ではなかった
なぜならゴーレムが汚れてしまうから……
ここに自分のサムエルソンが運び込まれたことで薄々予感はしていたが

>「探索組には実際に水中から湖底へ降りてもらう。沈んでるものを片っ端から浚って、目ぼしいものを引き揚げてこい」

勝手に付けられた対水装備にも少しご不満のようで船の上ではゴーレムのなかでふて腐れていた
任務上必要なものということは頭ではわかっているが気持ちは不満でいっぱい
手渡されたカタログと手紙を読んで最新式のインファイト5に赤い印をつけて父のもとに速達で送ってしまうほど不機嫌だ

「サムちゃん……帰ったら新しい体を用意しておくからね……」
操縦櫃の壁を撫でながら語りかける
「そうだね。この体じゃそろそろ窮屈だもんね」
端から見ればゴーレムと会話するなど精神に異常がきたしたと思われるがセフィリアは大真面目にゴーレムと話す
その彼女にしか聞こえない声との会話は
>「賊だ――!」
船員の慌ただしい声で中断される

セフィリアは賊と戦う仲間を信じて湖に嫌々ゴーレムを入水させた

「うわ〜」

眼前に広がる色とりどりの魚と綺麗で透き通る水、なにより太陽光がもたらす幻想的な光景に目を奪われる
ゴーレムが湖底につくと、すぐに仕事モードに切り替え、レイリンに指示を仰ぐ

「シキマさん、どの当たりを探索しましょうか?そこは瓦礫だらけで闇雲に探すのは得策ではないようです
ハティアさんが網を持ってきてくれたのでそれでごそっといきますか?」

財宝に興味がないセフィリアは速く仕事を終わらせて陸に上がりたいという気持ちが言葉のはしはしから伝わってくる

125 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/06/23 03:08:22 ID:???
背後に砲撃が生み出す風を感じながら、スティレットは波打つ湖面に溶け込んだ。
遮水布でカバーされてない部分に湖水の冷たさが走る。毛穴が縮み、筋肉が強張るのがわかる。
しがみついていた水中箒の術式を起動。束草部分から迸る噴流によって、搭乗者は水中の風となる。
水面から差し込む光でどうにか天地を判別し、下方向へと舵をきった。

剣術以外は常人であるスティレットにとって、湖底の水圧は十分脅威に値するものだった。
だがゴーレムに乗れば、彼女の『崩剣』は使えない。そもそも彼女は、ゴーレムをまともに動かすことができない。
傀儡重機として軍から労働者層まで広く普及しているゴーレムだが、スティレットのような貴族階級の人間にとりその限りではない。
そしてなにより、当代の『剣鬼』たる彼女は、生身でゴーレムを相手にすることができた。

>「シキマさん、どの当たりを探索しましょうか?そこは瓦礫だらけで闇雲に探すのは得策ではないようです
  ハティアさんが網を持ってきてくれたのでそれでごそっといきますか?」

レイリンの指示によりひとところに集まった潜水組は、瓦礫の実る畑と化した湖底にいた。
見回す。セフィリアのサムエルソン、ロキのスレイプニル、生身のレイリンとファミア。そしてスティレットを加えた5人だ。

『地引網でごっそり行くにしても、この規模はちょっと扱いきれないでありますよ……?』

スティレットも念信器で介入する。
見渡すかぎりの瓦礫平野。そもそもこれだけの重量物を網でどうこうできるかどうかも怪しい。
スティレットは尋常ならざる頭の悪さを誇るが、根は真面目なので物事を建設的に考えようとする傾向があった。
そこに結果が伴わない故の馬鹿なのだが。

『例えばこうやって、瓦礫の山をブロックごとに区分けして引き上げるみたいな……』

館崩しを瓦礫に突き立てる。『崩剣』の遺才が、二年間の年月と多大な水圧で圧縮された礫塊を容易く粉砕する。
すると、水中に鈍く響くような音が断続して聞こえた。

「?」

繰り返すが、スティレットは真面目であり極力建設的に行動しようとする。
結果が伴わないどころか、更に事態を悪化させるからこその、左遷なのであった。
高度に圧縮された瓦礫の海は、それ自体が巨大な一枚岩に等しい状態になっている。
極めて不安定なバランスでかたちを保っていた瓦礫達に、一箇所でも穴を開けようものなら、たちまち均衡が崩れるのは自明の理。
結果引き起こされるのは――

「瓦礫の雪崩でありますーーーっ!」

スリバチ状に抉られてできたウルタール湖の、半円状の中心に集まっていた潜水組たちへ向けて、津波の如き大量の瓦礫が殺到する!


【一部を崩したせいで瓦礫が雪崩を起こす。逃げるか止めるかしないと生き埋めになります】

126 :アルテリア ◆U.mk0VYot6 :11/06/23 03:20:27 ID:???
「…なんだ元気じゃないカ」
半ベソで逃げるウィレムの姿を睨みつつ、そう呟くと
アルテリアは立ち上がり、予定通り波乗りに興じることした。

「…」
ブリーフィングを終え、沖へ向う漁船の上
アルテリアは不思議そうな顔で水面を見ていた。
「水は澄んでいるんだがナ…湖底が全く見えン」
先ほどから湖底の様子を伺おうと眼を光らせているのだが
ある程度の水深から濁度が急激に上がり、それを阻んでいる。
恐らくこの湖特有の二層構造のせいか、もしくは、別の理由があるのかも知れない
そんなことを考えていると船上が慌しくなり始めた。
>「賊だ――!」
「丁度退屈していた所ダ」
即座に弓と矢筒を手に取り戦闘態勢を取る。
その次の瞬間、魔導砲による衝撃で船は大きく揺れる。
バランスを崩し、思わずマストにもたれ掛かった。

>「……でも海賊なんだろ?沈めちゃったら元も子もないし……」
ウィレムがそう仮説を立て、距離を取る。
話に聞いたとおりの脚力ならば飛び移ることも可能なのだろう。
その様子を見たアルテリアはすぐさま、マストを登り始めた。
遺才持ちとはいえ、一対多の戦いにはリスクが生じる。
まして、ウィレムの得物はただの角材、アクシデントが起こってもおかしくはない
ならば、自身に出来ることは一つ、高所からのアルテリア流援護それだけである。
「浪費した武器はくれてやル、好きに使エ」
念信機でそのことを伝え、甲板上の賊に対し、遠慮なく弾幕を浴びせる。
「あぁそうダ、課長、一つ聞き忘れていたことがある。」
援護射撃をしながら、アルテリアはボルトに尋ねた。
「あの船を奪い取っても構わないカ?ついでに船長をとっ捕まえて
 知っていることを洗いざらい吐かせるのも悪くなイ」
【マストの上から援護射撃、ボルトに敵船強奪の許可を貰おうとする】 


127 :ストラトス ◆p2OedqKZik :11/06/23 19:58:20 ID:???
【ウルタール湖】

「ここが海ならきっと皆さんそろって『海だぁ!』とか言ってたんでしょうね」

湖の砂地の所より少し離れた場所で他の遊撃課のメンバーを眺めながら
自分は今回の作戦のために耐水と耐圧などの機能をさらに付け加えたゴーレムの微調整をしていた
ちなみにG-03は今回の任務ではお休みだ
あれは護衛機であり浮遊術式の試験的使用も目的に開発したもので正直戦闘には向いていない
しかしそれにしても見る限り今は任務内容の湖底の財宝を回収を忘れているのではないかと思うぐらい
水慣れという名の自由時間を満喫してるようだ

「本当に皆さん楽しそうですね」

ちなみに今の自分の姿を説明すると頭と手足の先端以外を覆うような遮水布でできた水着を着ていて
その上から普段は火薬やゴーレム用の魔法物質などを調合する際に使っている
遮熱と耐魔法の機能をもつ白い布で出来たコートを着ている

「さて、一通りの微調整は済みましたしこれに乗り込んでちょっと驚かせてみようかな?」

目の前のゴーレムは形式番号G-07、通称『シュヴァルツァーフォーゲル』としていた機体で
偵察などを主眼においてに開発したものだ
大抵の人間がこれを見たとき"薄い"とか"細い"とかと思うだろう。実際に前から見た時、
四肢は通常のゴーレムのおよそ1/3腰部においては1/4という厚さしかない

ちなみになぜ過去形なのかというともともとは軍に売り込んだのだが
とある理由により数機しか受注してもらえず、さらに整備などが困難なことからおよそ一年で運用が中止された
あと、とある理由というのがこの機体の最大の特徴なのだが…

「そろそろ集合の時間っぽいですね…驚かせれなくて残念です」

128 :ストラトス ◆p2OedqKZik :11/06/23 20:00:28 ID:???
【ウルタール湖/予定地点近辺】

出航してからしばらくして予定地点に近づいた時だ

>「賊だ――!」
>「潜水組、すぐに入水しろ!賊に目的を悟らせるな!掃討組出番だ、熱烈な歓迎を浴びせてやれ!」

「さっそく敵ですか!」

意外に早かった敵襲に少し驚く、しかし準備は万端なのでむしろ相手がどんなものか気になってしかたがない
そうしてる間に敵が近付いて来たことにより船影が露わになってきた

>「戦闘艦じゃねえか!全員耐衝撃体勢をとれ――!」

とっさにマストにしがみつくが弾は乗っている漁船に直撃したのか激しい衝撃が船体を襲う
揺れが収まるのには少し時間がかかった

>「……でも海賊なんだろ?沈めちゃったら元も子もないし……」

「んーてことは威嚇攻撃ですか?まあいいです、これで明確な攻撃の理由ができましたし。やっちゃってもいいですよね
 てな訳で潜水護衛艦『シルトデアイージス』 浮上」

左後方の湖面が持ち上がり水中から人工物が浮上する
軍部に採用させた艦で本来は漁船より大きい設計だが個人所有のものをそこまで大きくする必要はないので
サイズを小型にして武器とゴーレム輸送用の空間、制御室、機関室などを除いた
船室のほとんどをなくし代わりに装甲と演算能力を向上させた艦に仕上がっている
ちなみに今回の作戦場所が観光地なのにも考慮し噴流術式は使わず
水上では蒸気機関で水中だと魔力供給で魔導機関を使って推進させている

「まあ…全力で攻撃するのはなんかアレですしメンバーの方々に危険があるかもしれないので
 沈まない程度に攻撃しますね」

漁船から移動して艦に乗り移り船橋へ近づいた

「目標、敵戦闘艦。垂直発射型飛翔機雷、1番から10番まで発射」

シルトデアイージスの甲板にある飛翔機雷管の扉が次々と開かれ
順々に飛翔機雷が発射され目標に向かっていく
10発のうち9発は発煙、1発は対艦仕様のものを発射する


【潜水護衛艦で沈めない程度で敵艦を攻撃、発煙が7発もあるが
 帆が張るぐらいの風があるので煙幕は長時間はもたない。】

129 :ルイン ◆5q.yyAvL6. :11/06/24 20:42:55 ID:???
それは突然のことだった。突拍子も、何もない出来事だ。
内容は酷く単純で、薄っぺらい。理頭を背後から蹴られた。それだけで事足りる。

「あっだがぁぁあああーーーーーーーーーーっっっっっ!!??」

ただ、それはルインに悲痛な叫び声を上げさせるには十分過ぎた。
後頭部を押さえながら振り返れば、悪びれた様子もなく佇むリードルフの姿。
ルインは挨拶代わりに人様を蹴るのが習慣なのかと純粋に質問したくなった。

>「なあリードルフ。『どうてい』ってなんだ?」

随分と奇行の目立つスイだが今回は殊更珍妙だった。
脈絡なしに頭に疑問符を浮かべつつ、対応に困る質問をぶつけている。

「清らかさが必要ってことなんいっでえええええええええ!!??」

どうにかしてお茶を濁そうと口を開いた瞬間、平手が視界に飛び込み、快音。痛い。

>「えーッ!スイってば『どーてー』の意味しらないのー!?」

プリメーラの言葉が引き鉄となり、続いてもう一発。超痛い。
ルインはその場に音もなく一人崩れ落ちる。赤く腫れた頬を押さえながら自分の落ち度を必死で探した。

いや。俺は何もしてないぞ。何も悪いことしてないぞ。それなのになんだって二度もぶたれたんだ?
自問してみたが、答えが返ってくることはなかった。

※    ※    ※

貴族の隠し財産があるとされる鍾乳洞をルインは意気消沈した様子で進む。
覇気という覇気を全てウルタール湖に不法投棄したのだろうか、その姿はまるで幽鬼。
防水松明が照らす灯りを虚ろな目で眺めながら横に一瞥くれた。

>「全く!総ての責任は君にあるんですよ、ルイン=ラウファーダ!」

(ま……またかよぉ………いい加減にしてくれよぉ………)

確かにこう理不尽にキツく当たられては気力もそりゃ失うだろう。
ご丁寧に歩幅を合わせてネチネチネチネチと粘着質でしつこい。

>――――俺はフィン!お前らの事は俺が守る、よろしく頼むぜっ!!」

初めて見る少年はフィンと名乗った。自分が汚物に見えてくるほど晴朗の二文字が似合う。
あ、ども、よろしくと適当に返事をしつつも、ルインの胸中にあるとすればたった一つ。

(できれば今すぐ守ってください。スーパー弾除けマン…………)

虚しいだけで届く事はない心の中のSOS(当たり前)。依然続くリードルフの粘着攻撃。
いい加減精神の限界が訪れたルインに一つの結論がはじき出される。

そうだ。今すぐここから逃げ出せばいいんだ!

逃走本能に従って歩くペースを少しずつ落とし、他の課員達から少しずつ離れていく。
それは一見して微妙な変化でしかないが、離れるタイミングは絶妙にして巧妙。
21年間で成熟させた技能の賜物だった。

全くか細い神経の持ち主だが、図太い神経をしていれば逃走癖なんて迷惑な癖はなかったはずだ。

130 :ルイン ◆5q.yyAvL6. :11/06/24 20:46:00 ID:???
>「やめだ。おいビビリ、テメェが前だ。逃げようなんて思うんじゃねえぞ」

順調に距離を離す中で、不意にかけられた声に体が怪しく跳ねる。

「へ?あっ、え?え、えーーーーっ……」

逃げることに集中しすぎて話をほとんど聞いていなかったルインは当然、反応が遅れる。
語調に程よく嫌味な感じがミックスしているあたり、嫌がらせの類だろう。

「い、いや………その……俺が前に行っても……なんていうか……え、え〜〜〜〜………」

子供のように駄々をこねることも、やろうと思えばできた。
しかし周囲の尋常ではない“前はルインが担当”の雰囲気に負け、顔を歪めてみせた後で渋々前へ移動した。
事実不服そうなのはフィンただ一人だった上に、その実納得している様子だった。


ルインの足が哄笑を始めていたことに後ろからなら理解できるだろう。
心なしか防水松明も左右に激しく揺れている。
しばらくしてルインが前触れなく足を進めるのをやめた。本能的に危険を察知したのだろう。

「で………出た……っ!?」

松明が前方を照らして壁に影を作ると共に現れたのは魔物の群れ。
洞窟バッタ、汚泥スライム、ドラクルバットとおおよそ三種類に分類できる。
大した脅威にはなり得ない魔物ばかりだが数が多いだけに厄介だ。

……逃げるか?
即座に自問。即刻否定。現在の位置は先頭。後ろへ逃げ出すことはまず叶わない。
ただ人間というのは正直なもので、頭で理解はしていても体は逃げたそうにずるずる後退り。

(な、なにしてんだーーーっ!?耐えろ俺の肉体ーーーーーっ!!)

本能と理性の仁義なき戦いが幕が開いた直後だった。

>「ビビリ、テメェもだ」

サフロールが槍の穂先を掴んだのだ。血が溢れ、しかし流れ落ちることなく血管模様を描いた。
説明もなかったためルインは酷く動揺し、手元を滑らせて槍を落としそうになった。
よく理解できないがこれは一応礼を言っておいた方がいいのだろうか。

>「ほら、さっさと戦えよ天才共。精々いい実験台になるんだな」

訂正。そんな必要はないらしい。
ともかく逃走が不可能な以上、対峙しているこの魔物達を片付ける必要がある。

「あーーーッ! もーー! やっぱやるしかないよな!やるっきゃないよなあ!」

腹を括ったというよりは半ば自棄を起こした勢いで、前方の洞窟バッタに向かって槍を振るい、薙ぐ。
即座に違和。いつもよりも容易く切れる───というよりは何かが最適な斬り方へ導いてくれた感覚だ。

「うおぉっ!サフロール…………さん、すげえ!」

切ることよりも突くことが本領の自身にとってこの感覚を得られるのは良い機会と言える。
どうせ逃げるなら必要ない、と思うかも知れないがルインとて死にたくない。
まず逃げることを念頭に置いてはいるが、もしもの為に槍術の練磨ぐらいする。

131 :ルイン ◆5q.yyAvL6. :11/06/24 20:51:34 ID:???
>「ルイン君!リーフ君!数体そっちに抜けたわ!」

「えぇええええっ!そんな殺生なぁ!!」

ノイファの声に反応し翻れば、吸血牙を備えた蝙蝠達。完全に虚を突いた形。
飛来するドラクルバットは確実にルインを捉え、塊となって迫る。
動悸が高まる。慌てて目算。自身の間合いより内にはまだ入られてないことに、少しだけ安堵した。

五度の刺突。針に糸を通すが如く精密に、ドラクルバットの急所を穿った。
突くことならば自分の得意分野。天才性の見せ所だ。
勢い余ってにリードルフの分まで倒しちゃったけど俺なら絶対喜ぶから大丈夫、怒らないだろ。
肥大化した蝙蝠が不時着するのを見届け、再び前方の魔物へ意識を傾ける。

(よし、よし、よし。よし!よしっ!ギリだったけどまだ大丈夫だ!まだいける!
 でも怖い!超怖い!誰か助けてくれえええええええええええええ!!やっぱ無理いいいい!)

注釈しておくがここまで必死なのはルインただ一人である。

どの魔物もルインに対して先手を取ってはいるが、しかし攻撃の手が届くことはなく。
悉く後であるはずの槍の一撃が魔物達を穿ち、裂いた。

そうしておっかなびっくり魔物の数を減らしていき────


「おぼろろろろろろろろろろ。…………お゛え゛えぇ………ぎぼぢわ゛る゛い゛………」

大方魔物を片付けたところで、若干一命の臆病者は通路の隅で胃の内容物を外界に曝け出していた。
いや、無理して頑張った表現をする必要はない。端的に言ってゲロを吐いているのだ。
これでも途中まで我慢してはいたのだ。いた、が………遂に耐え切れなくなったらしい。か細い神経である。

「皆ごめん…………後30秒待ってくれると嬉し………おえ゛え゛ええええええええええ」

醜い音と共に再度昨日の晩飯をイート・アンド・リリース作業へ戻る。
精神衛生上よろしくない場面をようやく終え、戻ってきたところで。

>「……勝手にしろ、死にたがりの【自主規制】共、だそうです。
> 最近の女性って皆ああなんでしょうか…?」

リードルフが穏やかではない単語を発している。
しかも【】←この変な記号で中身見えないし。

「…………どったの皆。なんかあったの?」

ルインは何があったのか全く把握できず、目を点にした。


【こいつァーくせぇーッ ゲロの匂いがプンプンするぜーーッ!】

132 :レイリン ◆lvfvBHCkg. :11/06/25 07:36:29 ID:???
眩い陽光すらも届かない湖の底にレイリン達は辿り着く。
陽光が届かなくなった影響か、レイリンは比較的外にいたときより気分は良かったが、なにせ深い水中、身体にかかる水圧は尋常ではなく、まともに動かすことは無理だった。
それに夜でないと術を使うことも出来ず、ここでのレイリンはあまり戦力にならないだろう。

>「シキマさん、どの当たりを探索しましょうか?そこは瓦礫だらけで闇雲に探すのは得策ではないようです
  ハティアさんが網を持ってきてくれたのでそれでごそっといきますか?」
「そうですね……。
ごそっといくとしても広いですし、崩れる危険性もあるのであまり大がかりには出来ませんし」

ゴーレムにのったセフィリアがレイリンに指示を仰ぐ。
それに答えると、レイリンは顎に手を当て、しばし考え込む。
まず宝と言っても、普通に置いてあっただけでは流石に見つかっているだろう。
探すとしたら瓦礫の下だろうが、むやみやたらにひっくり返すのは危険だし、瓦礫に住み着いている水生生物に迷惑をかけかねない。

>『地引網でごっそり行くにしても、この規模はちょっと扱いきれないでありますよ……?』
>『例えばこうやって、瓦礫の山をブロックごとに区分けして引き上げるみたいな……』

フランベルジュもレイリンと同じ考えらしく、この途方もない量の瓦礫に困惑していた。
そして、レイリン達の真下にある瓦礫に、身の丈ほどもある大剣を突き立てた。
海水の腐食などにより、既にぼろぼろだった瓦礫は容易に崩れる。
すると、その周りの瓦礫が崩れた瓦礫に巻き込まれるようにして崩れていく。
更にその瓦礫の周りを巻き込み、更にその周りの瓦礫をと、連鎖的に瓦礫がどんどん崩れていく。

>「瓦礫の雪崩でありますーーーっ!」
「雪崩でありますーーーっ、じゃない!
前評判に違わず、やってくれますね!
こんなの止められるわけ無いし、すぐ逃げましょう」

幸い水中での出来事だったので、崩れる瓦礫の速度もそこまで速くない、――もっとも、地上であったらこの程度の瓦礫はどうということはないのだが。
水中箒で逃げられないスピードではなかった。
レイリンはすぐさま術式を発動させ、瓦礫の雪崩から回避を試みる。
しかし、焦っていたせいか、箒を持ち変えるのを忘れていた、今までは潜るために噴射術式が発動する方を上にして持っていたのだ。
そのまま術式を発動したら当然の如く、レイリンは下へと向かう。
フランベルジュの事を笑えないほど、愚かなミスである。

「え、逆?!」

確かに始めは逃げられないスピードではなかった。
でも、一度下に向かい、それから箒を持ち直して上に向かうには速すぎるスピードだった。
レイリンは避けられないと悟り、目の前に迫る瓦礫を見ないように固く目を閉じた。
たとえ生き埋めになってもすぐ救助されれば、吸血鬼の血のおかげで助かる可能性はある、レイリンはその可能性に賭けたのだ。

133 :スイ ◆nulVwXAKKU :11/06/25 23:00:54 ID:???
周りの空気が凍る。
何かいけないことでも言ったのだろうかと疑問に思ったとき、リードルフがリードルフをひっぱたく音が聞こえた。

>「清らかさが必要ってことなんいっでえええええええええ!!??」
「………」

言葉を失っていると、リードルフの戸惑う声。

>「ええっと……スイ、言っている意味がよく……」

さらに、後ろからプリメーラの声。

>「えーッ!スイってば『どーてー』の意味しらないのー!?」
>「わっ!?」

遅れてると言われたスイは首をかしげることしか出来ない。

>「『どーてー』はね、30歳までにこじらせると死んじゃう、こわーい病気なんだよ!」
「そ、そうなのか!?恐ろしい病気だな…」

プリメーラの言うことが間違っているなど、これっぽちも考えていない。

>「大丈夫だよ!30歳までに『そつぎょー』すれば大丈夫だtt」
>「スイ聞いちゃいけません!何してるんですかルイン早くプリメーラ女史を抑えてっ!」

さらに言い募ろうとしたプリメーラを、今度はリードルフが遮り、言われたルインは、ただただ、地面に崩れ落ちていたのみだった。
結局何だったのだろうと、周りが大騒ぎの中、スイは一人、首をかしげていた。

◆  ◇  ◆

>「チームを三つに分ける。総員ボードに注目」

言われたとおりに、ボードに目を移す。
自分の名は、掃討組に入っていた。
他の者の名も確認し、一応間違えないように、名前と顔を一致させておく。
といっても、先のダンブルウィードで見知った者がほとんどだったので、それほど苦労はしなかった。
そうこうしているうちに、ボルトがこちらに向く。

>「掃討組には前述した2チームの援護を行ってもらう。湖内にくまなく目を光らせ、水棲魔獣など任務の邪魔になるような
 敵性存在を排除しろ。潜水組もだが、ゴーレムに乗りたい奴はもってけ、元老院からの奢りだ、大事に使えよ」
>「――状況開始だ!」
「…了解」

134 :スイ ◆nulVwXAKKU :11/06/25 23:01:17 ID:???
漁船の上で船の全容を把握しようと、歩いていたらアルテリアの姿が目に入ってきた。

>「水は澄んでいるんだがナ…湖底が全く見えン」

その通りだなと思いつつ、湖に目をやる。
澄んでいながら、全てを呑み込もうとしているかのように深い。

>「賊だ――!」
>「潜水組、すぐに入水しろ!賊に目的を悟らせるな!掃討組出番だ、熱烈な歓迎を浴びせてやれ!」

船員の声とボルトの声が重なる。
ボーガンと矢を手に持ち、船影を見つめる。

>「了解っスよ!潜水組の方らは行ってらっしゃい!後顧の憂いは、俺達に任せて!」

同意するように頷く。
その瞬間。

>「戦闘艦じゃねえか!全員耐衝撃体勢をとれ――!」
「 ―――ッ!!」

体に襲う衝撃。
船の縁を掴み、衝撃を受け流す。
そして、先程のボルトの指示に従い、全員が戦闘態勢を取る。
ウィレムは敵船に飛び乗り、角材で闘う。
プリメーラも同様に、何かの魔物に乗り、敵船に飛び移る。
ストラトスの操るゴーレムは次々と飛翔機雷を発射する。
アルテリアは槍による弾幕を。

「…さすが。」

戦場で戦い続け、戦闘を見つづけたスイも、これには称賛の言葉しか思いつかない。
ボーガンを構え、敵船に飛び移った二人に当たらないよう、敵に矢を当てていく。

>「あの船を奪い取っても構わないカ?ついでに船長をとっ捕まえて
 知っていることを洗いざらい吐かせるのも悪くなイ」
「(姐さんなかなかいいこと言うじゃねぇか。)」
「まったくだ。」

裏の言うことに同意し、矢を撃ち続ける。

「(そろそろ代われ。相手の船を固定するぐらいなら、やってもいいだろ?)」
「…わかった」

ふっと、スイの目が閉じられ、次に開いたときには、いつもの狂気の色。

「課長さんに、姐さん。敵の船なら固定が出来るし、この帆船の速度も上げられる。」

ニヤリと口角をあげ、笑う。

「先の二人で、奴らは気を取られているはずだ。その間に接舷するのはどうだ?」

【アルテリアの敵船強奪の許可に便乗。二人に提案。】

135 :スイ ◆nulVwXAKKU :11/06/25 23:12:38 ID:???
訂正です。
リードルフがリードルフをひっぱたく〜

リードルフがルインをひっぱたく〜
です。


136 :ロキ・ハティア ◆9pXiBpy0.U :11/06/25 23:49:46 ID:???
水中に入ると一瞬、プリメっちゃんが黒馬を駆る姿が見えた。
「水魔を駆る者か……やはり君は……」

瓦礫に覆われた湖底につくと、セフィさんが急いだ様子で話しかけきた。
>「シキマさん、どの当たりを探索しましょうか?そこは瓦礫だらけで闇雲に探すのは得策ではないようです
ハティアさんが網を持ってきてくれたのでそれでごそっといきますか?」
「分かるよ、君のゴーレムは水が嫌いなんだね」
きっとほかのメンバーはこう返した意味が理解できないだろう。
出撃前の様子を見て確信を得ていた。セフィさんはゴーレムの声を聞く事ができるのだ。
>「そうですね……。
ごそっといくとしても広いですし、崩れる危険性もあるのであまり大がかりには出来ませんし」

>『例えばこうやって、瓦礫の山をブロックごとに区分けして引き上げるみたいな……』
その大胆すぎる行動にワタシは歓喜した。
「ヒャッハー! ありますちゃんやるう!」
こんな事をやれば何が起こるかは当然目に見えている。

>「瓦礫の雪崩でありますーーーっ!」
>「雪崩でありますーーーっ、じゃない!
前評判に違わず、やってくれますね!
こんなの止められるわけ無いし、すぐ逃げましょう」
常識人のレイりんが至って正常な判断を下した。

が、そう言った直後、彼女は何を思ったか下に向かって突撃し始めた!
「言う事とやる事が一致してなーい!」
真面目っ娘の集団かと思いきや実のところ常識はずれの破天荒集団だったようだ。
驚嘆すべきはボルト先生の神業的クラス分け技術! オラ、ワクワクしてきたぜ!

ワタシはある事に気づいていた。瓦礫の中にあるものが大量に含まれている!
「フフフ、いいよいいよ! そうこなくっちゃ! 水中のファンタジックショーの始まり始まり〜。
――笑喚世界!!」
展開されるのは、まるで夢の中のような幻想的な光景。
水中を彩るプリズム光。ライトアップされる魚たち。
ゆっくりと水面へと浮かび上がっていく大量の瓦礫。
至るところで明滅する眩い光。その正体は瓦礫の中に埋まっていた無尽蔵の蓄魔オーブだ。
演出に狂気分が足りないって? 綺麗なものを見たときに浮かぶ表情だって笑いだ。
たまにはこんなのもいいだろう。

「浮力を極限まで上げた。対象を意思持たぬ物に限定でね」
笑喚世界とは本来周囲に魔力の素が湯水のごとく存在する場で真価を発揮する異才。
瓦礫の中の大量の蓄魔オーブを消費する事によってそれに近い状態が再現されたのだ。
とりあえずこれで生き埋めは回避。うまくいけば湖底の財宝が姿を現すかもしれない!
「出てくるかな〜、出てくるかな〜? いらんものまで出てきたらどうしよう。
封印されしは古代魔法王国の秘宝! 悠久の昔より宝を守るは伝説の水龍……みたいなさあ!」

【瓦礫を浮かせて生き埋め阻止】

137 :ファミア ◆mCdqLO6Z6k :11/06/27 02:22:48 ID:???
湖の底は暗く、静かでした。
その静寂を、着底した二機のゴーレムが巻き上げた堆積物が乱しました。
投光器の光の中で踊るそれが静まりきらないうちに、セフィリアからの念信が一同へ向けて発せられ、
それを機にこれからの方策について二三言葉がかわされます。

>『例えばこうやって、瓦礫の山をブロックごとに区分けして引き上げるみたいな……』
最後にフランベルジェが発言し、実際に行動に移りました。
瓦礫に長剣を突き立てて、それから横に動かして線を引こうとしたその時。
何かが崩れるとか砕けるとか、とにかくこう言った状況下で聞きたくない類の音が連続して水中を走りぬけ、
ファミアがちょこんと立っている、もとはどこかの邸宅の床だったであろう大理石の板が小刻みに揺れ始めました。
「これは……あれですよねえ」

>「瓦礫の雪崩でありますーーーっ!」
「ですよねえ!」
言うなりファミアは思い切り踏み切ってまっすぐ飛び上がりました。
遺才によって強化された身体能力は床材を砕き割り、水圧と重力をたやすく引きちぎって
その小さな体を一気に湖底から数m上へ運び去ります。
とりあえずの脅威は去ったので下を見ると、レイリンが瓦礫の真ん中で立ち往生していました。
思わず叫ぼうとしたその声は大量の泡になってファミアの視界を塞ぎ、
それが水面へと駆け上がってゆくその一瞬で、状況は文字通りに逆転していました。


>「浮力を極限まで上げた。対象を意思持たぬ物に限定でね」
「……わあ」
見下ろすファミアの視界ほぼ全てを、蓄魔オーブから発せられる光と、それに照らされた瓦礫や魚の鱗の反射が埋めました。
足元に星空を見るようなその景色は、ゆっくりと上昇してきます。
ファミアは任務を忘れて思わず見入ってしまいました。やがて、光の海の中へその身が飲まれて……
「あれ?」
気がついたら360度どこを見ても瓦礫だらけでした。

とりあえず右手側の瓦礫を押しのけます。隙間が浮上してきた別の瓦礫で埋まりました。
左手側も試してみましょう。全く同じ結果になりました。
「あれ?」
生き埋めを避けるために浮上したのに、そこで「下から」生き埋めにされてしまいました。
重量物の下敷きになるわけではないので命の危険はありませんが、ひたすら瓦礫が邪魔で何にもできません。
力があってもまとわりつくものが邪魔なことには変わりがないもので、普通に泳ぐことすらなかなかの難行です。
潜ってきた距離を緩やかに押し戻されつつ、どうすれば良いものか暫し黙考。
あまりよい考えではありませんが、なんとか状況を脱せそうなアイデアが浮かびました。

>「出てくるかな〜、出てくるかな〜? いらんものまで出てきたらどうしよう。
>封印されしは古代魔法王国の秘宝! 悠久の昔より宝を守るは伝説の水龍……みたいなさあ!」
ファミアは、息を極限まで吐いて自分の体の浮力を無くして瓦礫の中を沈降し、
苦しくなったら息を吸ってまたすぐに吐いて……という行為をくりかえしながら、
そんなものが出てきても今の自分は瓦礫の塊として認識されるだろうからとりあえず危険はなさそうだ、
などと考えていました。


138 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/06/27 02:50:36 ID:???
【探索組】

鍾乳洞に住む魔物達の熱烈な歓迎を退け、洞窟の奥へと進む探索組一行。
彼らがやがて辿り着いた先は、運河ほどはあろうかという巨大な地下水道だった。
ごうごうと音を立てて流れていく水は、渡ろうとそこに入ればたちまち闇の向こうへとその者を運んでしまうだろう。

ここが地下通路である以上、水の流れが行く手を阻むなどあってはならないはずなのだが、今は何故か水量が極端に増えていた。
水の出所を辿れば、探索組の居る場所からほど近い天井に人一人分ほどの大きさの穴が穿たれ、そこから大量の水が吐き出されている。
穿たれて間もない、まだ新しい穴だった。

『作戦本部より探索組各位、聞こえるか?』

各員に持たされた念信器にボルトから入電があった。
地盤や塩水も透過する強力な魔力波長によって変換された声は、それでも少しノイズ混じりだ。
それだけこの地下通路が地下深いところにあるということである。

『馬鹿が湖底に穴開けやがった。地盤ごと貫通するアホみたいな剣力だ、そっちにも影響があったと思われる。
 アイレル、課員の点呼とって報告しろ。それから通路の損害状況もだ。全員生きてるな?』

場合によっては探索自体を打ち切り、ルートの選定からやり直さなければならない。
賊による襲撃を受けている今、それは大きなロスである。ややあって、ボルトは損害状況を把握し、そして結論を出した。

『このまま進め。穴の処理は現場の判断に任せる』

地下水路に水の流れがある以上、あの穴を塞げば畢竟水かさは減りここを通行できるようになるはずである。
無論、穴を補修せず別の手段で水路を渡っても良い。緊急用のロープや浮き袋は、バックパックを探れば出てくるはずだ。

松明の覚束無い明かりが拓く闇の向こうで、湖水の急流は今もなおその勢いを増し続けていた。


【クローディア】

ダニーの機転によりドラクルバットの群れをやりすごし、シヴァが率先して道を切り開いている。
ジョナサンは後ろのほうでワーキャー言っているが、この男に戦闘要員的な働きはそもそも求めていない。
端的に言って、適材適所のはっきりした、良いパーティーだった。無駄に環境破壊しないあたり人間もできている。

(ふふふ……あたしの目に狂いはなかったわッ!どうよ、この人選!?)
(大変結構かと)

最後尾でナーゼムとヒソヒソやる。タフな彼にはバックアタック対策のしんがりを努めてもらっている。
クローディアは部下に恵まれていたが、それにも理由があるのだ。彼女の『才能』――モノを買う力は血が薄くとも本物だ。
金銭によって労働力を『購入する』以上、彼女のもとには良質な人材が集まっていく。理屈を超越した、遺才の加護。
ただひとつ、問題があるとすれば……

139 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/06/27 02:51:01 ID:???
>「待て。俺が先にいく。」

シヴァが熱烈な視線でダニーを射抜き、ダニーもまんざらではなさそうだ。端的に言って、イチャつきやがっていた。
クローディアは部下を集める才能こそあったが、それを管理する才には恵まれなかったというわけである。

爛れた痴情とか、もつれた愛情とか、そういう事件には貴族時代から事欠かなかった。
雇い主であるクローディアには見向きもせず、部下同士で乳繰り合うことしばしば。駆け落ちすることそれなりに。
クローディアとて、決して女性的な魅力に欠ける少女というわけでもないのだが、どうにも女性として見られていないフシがあった。

「きぃぃぃっ!別にあの男好みでもなんでもないから羨ましくはないけど、妬ましいわッ!
 なんなのよ!なによなんなのなんなんですのよ!なんで腕テカテカになってんのよ、お洒落のつもりなのッ!?」

シヴァの腕が甲殻質な光沢を放っていた。
雇うにあたって履歴書には目を通していたので、それがどういう意味をもつかクローディアは知っていた。

と、突如洞窟全体が鳴動するように身を震わせた。何か、爆発のようなもの――それも近くで。
続いてごうごうと何かが洞窟内を駆け抜ける……風音?水音?それが、クローディアたちのいるあたりに迫ってくる。
そういえば随分と洞窟を下ってきたが、既にここは水面より下なのではないか。だとすれば、今の爆発は――かなりヤバい!

「引き返――」

引き返すわ。と言葉を完結させるより早く、横合いの壁が崩れ大量の水が瓦礫と共にクローディア達を殴りつけた。
それは鉄砲水というより、ほとんど水の壁だった。意識をそっちに向けるより早く水に脚をとられ、流されていく。

(まず……っ)

すぐに足がつかなくなるまで水高が上がり、溺れそうになったところでナーゼムに後ろから抱えられた。
大きな瓦礫に手斧を突き立て、流されつつも身体の天地を確保している。さりとて、このままではジリ貧だ。
一番問題にすべきは流されてパーティが散り散りになってしまうことだ。念信器のない今、ダンジョンで逸れれば合流の目はない。
クローディアの決断は即座。

「――来なさいっ!」

ダニー、シヴァ、ジョナサンに支払うはずだった金貨をかざし、魔術を発動。
三人がクローディアとナーゼムの傍に出現する。ダニーの分厚い肩に捕まって、ナーゼムが三人と自分とをザイルで繋いだ。

「――!」

眼前、滝があった。否、滝ではない、水路に開いた大穴だ。大量の水はそこへ吸い込まれるようにして集まっている。
穴の上にはまた穴があった。どうやら何か貫通力を持った何かが、いくつもの地盤をまとめてぶち抜いたようだ。
このままあの穴に落ちたら、おそらく湖底の更に下にまで運ばれることだろう。
この速さで下の階層の地盤に叩きつけられたら、屈強な二人とナーゼムはともかく自分とジョナサンはミンチ確定だ。


【探索組:天井に穴が空いてそこから大量の水が。水路が氾濫し渡れない状況に。
 クローディア組:鉄砲水に遭遇。階下へ落ち、探索組の立ち往生している地点へ。クローディアとジョナサンの危険が危ない
 両組の位置関係……探索組が入った鍾乳洞の地下通路と、クローディア達の入った洞窟は本来重なっていませんが、
               スティレットの開けた大穴によって繋がってしまいました。クローディア達は探索組の丁度真上にいました】

140 :ジョナサン ◆gynXZcVm6c :11/06/27 20:55:11 ID:???
拝啓、天国の父上と母親。早くも僕はこのままUターンして帰りたい所存であります。
何あれ、ドラクルバットだのスライムだのバッタだの。魔物の宝庫じゃないか。
二年前のあの日以来、魔物はトラウマだってのに。
取り留めもない事を考えながら前方を見やる。くそ、あの筋肉組イチャイチャしやがって。
こっちは何時殺られるかハラハラドキドキだってのに。畜生羨まけしからん。
けども僕より更に嫉妬を剥き出しにする女性が一人。

「きぃぃぃっ!別にあの男好みでもなんでもないから羨ましくはないけど、妬ましいわッ!
 なんなのよ!なによなんなのなんなんですのよ!なんで腕テカテカになってんのよ、お洒落のつもりなのッ!?」
「まあまあミス・メニアーチャ、落ち着いて…。」

余り大声を出されては困る。さっきみたいにまた魔物が襲来して来られたらたまったもんじゃない。
だけど魔物が来る気配がしない代わりに、爆発めいた音が聞こえた。
最初は驚いただけだけど、次第に近づいてくる別の音に血が失せるのを体感した。
水の壁が押し寄せる。ひょろっちい僕はあっという間に流され、
る事はなく、辛うじてシヴァにしがみつく事に成功した。けど長くは掴まっていられない。
このまま溺れ死ぬのだろうか。嫌だ。そんな死に方だけは。
「――来なさいっ!」

ミス・メニアーチャの声が聞こえたと思ったら、全員メニアーチャ嬢のもとに集合していた。
ナーゼムが僕らをザイルで繋ぐ。これで離れることはない。
ほっと一息つこうとし、たけど、視界に入ったその穴に更に血の気が失せる。
あの穴に落ちたらどうなる。考えたくない。だから考えるより先に動いた。
腰に差した絵筆。それをサッと引き抜き、壁に筆先をつける。
筆先は金色に輝いて、その金色が絵の具の代わりに絵を描く。出来上がったのは網だ。
壁に描かれた網は壁からべりりと剥がれて実体化し、穴を塞ぐ。これで落ちることはないだろう。

「ふぅ、危機一髪ぅ。」

死にたくない。早く帰りたい。こうなったら絶対水龍とやらを見つけてやる。絶対に。

【網を具現化し穴を網で塞ぐことで落下を防ぐ】

141 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/06/28 01:32:04 ID:???
「損害制御!状況を報告しろ!」
「D区画にて火災発生!湖水を汲み上げバケツリレーで消化にあたる!」
「ああクソ、揚陸口が大破!使い物にならなくなっちまった」
「陸に上がるときにちょっと不便になるだけだ、我慢しろ。それより甲板に空いた穴がヤバい」
「船底に浸水確認!俺のベッドが流されちまったぞオイ!」
「補修資材がねえだあ?格納庫にゴーレムがあったろ、あれでも詰めとけ!」

船乗りたちが慌ただしく艦橋を行き来する。オペレータが口角泡を飛ばして揺らいだ船体を立て直す。
漁船vs戦闘艦だ。その結果たるや誰もが予想した通り、深刻な損傷と損害を自船にもたらした。
この船唯一と言って良い戦闘員の遊撃課員達は既に行動を開始し、ウィレムやプリメーラなどは敵船まで乗り込んでいる。
ストラトスの水中機が放った飛翔機雷の束が、敵艦の迎撃システムをくぐり抜けて甲板へと降り注ぐ。

着弾確認。十分な効果あり。
敵船の甲板からこちらへ向けて弓や携行魔導砲を構えていた賊の一部が吹き飛ばされ、湖面へと振り落とされる。

>「あの船を奪い取っても構わないカ?ついでに船長をとっ捕まえて知っていることを洗いざらい吐かせるのも悪くなイ」

マストに昇ってウィレムへの援護射撃に勤しんでいたアルテリアが提案した。
『スレイプニル』に搭乗して感知兵装による戦況把握に務めていたボルトは、鼻を鳴らしながらそれに応えた。

「生けどりにするのは構わねえが――ちゃんと世話はしろよ?」

>「課長さんに、姐さん。敵の船なら固定が出来るし、この帆船の速度も上げられる。」

スイが静かに同調した。風を使役する彼の遺才ならば、帆船を自在に操ることも可能だろう。
目下敵船ではウィレムとプリメーラが暴れているが、敵もさる者、こちらへ乗り込んでくる気でいるのか甲板に賊の群れが見える。

「舐めてやがるな……上等だ」

ボルトは念信器をとり、開放波長帯で課員全員の念信器を呼び出した。
スレイプニルに搭載された高精度な念信装置は、繋がった念信器を持つ課員がどこでどういう動きをしているかまで詳細に把握できる。
ボルトの感知魔術と合わせれば極めて正確な行動指示が出せるようになる。

142 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/06/28 01:32:34 ID:???
「作戦本部より掃討組総員。おれだ、謹聴しろ。漁船の皆様がお怒りだ。どうやらおれたち、開拓都市の件で疫病神扱いらしい。
 あんまりにもこっちの船の居心地が悪いので――賊どもの船に引っ越すことにした。先住民が邪魔だな。排除しろ。
 
 バリントン、操舵室へ行って舵を奪え。お前の今いる区画の階段降りて右の突き当たりだ。戦闘員は出払ってるはずだから安心しろ。
 レズヴィアン、お前はさっきからギャンギャン吠えてる艦砲を黙らせろ。せっかくの新居だ、小洒落たインテリアに変えてやれ。
 サジタリウス、甲板からこっちに乗り移ろうとしてるゴーレムを止めろ。前回より楽な相手だ、方法は任せる。
 ストラトス、左舷から回りこんで迎撃システムを潰せ。間違っても船底に穴空けるんじゃねえぞ、お前の艦を栓にしたくなけりゃな。
 スイ、船の操舵を任せる。この図体の帆船で、敵の砲撃を船ごと躱すなんてアホみたいな芸当は、お前にしかできねえだろうからな。

 総員、行動指示は把握したな?否定され尽くしたお前らの居場所は、自分達の手で切り拓け。
 状況開始だ。――連中のお高く止まった自己評価を、もっと上から叩き潰してやれ」

 * * * * * *

「ギヒヒヒヒィ!なんなんだ奴らは……!?」

操舵手の尻をたたきながら、賊船の船長――キャプテン・カシーニは引きつった悲鳴を上げた。
もとは海戦を主戦場とした傭兵崩れの男であり、左腕の肘から先は十数年前に対艦砲撃に巻き込まれて吹き飛ばされた。
今はそこにジャマダハルと呼ばれる柄のない幅広の剣を接続し、そこに干し肉をぶっさして直接食いちぎるようにして咀嚼する。
砲煙に喉をやられて、ひどく焼けた声をしている。まだ30代そこそことは思えない、老人のような皺声だった。

「あの船ホントに帆船ですかい!?ありえねー機動してますぜ、オヤジィ!」
「帆が不自然な孕み方をしとるなぁ……!甲板に飛び込んできた魔物といい、最近の漁師は常識ってもんがないのだなあ!」

カシーニは有能な艦使いだった。金に正直で、それ故に決して裏切らない。略奪が過ぎるところもあったが、どちらにせよ敵船だ。
問題ない。敵に対する狼藉は、軍に居る限り許される――しかしあるとき、カシーニの部隊が襲ったのは軍船に偽造した商船だった。
海賊に対する威嚇として商船に軍船のガワを被せるというのは、この時代にはよくある話だ。
そしてカシーニは、商船は決して襲わず軍船だけを獲物にする気骨ある傭兵だった。如何なる神の采配か、そして両者は不幸になった。
商船に乗っていたのは軍に多額の出資をしていた貴族で、カシーニは危うく軍法会議にかけられそうになった。
仲間の手引きでどうにか逃げ出して、命はなんとか拾ったものの、カシーニはひとつ大事なものを失った。
気骨。信念。己に課した不文律。軍を追われたカシーニは軍船以外を襲うようになり、やがて湖賊に成り果てた。

「ようやく見つけた絶好の狩場なんだァ……獲物は獲物らしくおとなしく狩られとけぇ……!」


【湖賊の船を奪うため、各員へ行動指示】
【操舵室:キャプテン・カシーニが待ち構えています】

143 :ダニー ◆/LWSXHlfE2 :11/06/28 12:43:40 ID:???
知性というものは貴重である。荒野に生きる獣は、時に己が身を傷つけても知らない物を
調べて、仲間にそれを伝える。群れを作らず生きる者は武器の一つとして集めようとする。
知性は情報と言われるそれらを得ようという気持ちを育む苗床である。

では入れ物であり始まりたる知性は何を持ってして育まれるのか、
それは捉えることのできない蜃気楼のように、未だ確たる答えを人に見せない。

ダニーから魚を貰い、腹を満たした蝙蝠たちは何処かへと飛び去り、シヴァへ向かった方は
惨めな亡骸へと移ろって行った。叶わぬことに気付きもしなければ臆することさえできない。
知性とは貴重なである。ダニーはそう思う。

粗方片付いたので先へ行こうとするとシヴァから声をかけられた、どうやらエスコート役を
買って出てくれるらしい。真っ直ぐに注がれる視線はダニーに何時以来かの人間的な喜びを
想起させる。

彼女は考える。知性は自分を中心として、他者への関心を持つことで育まれるのではないか、と
始まりの感情はどうあれ、相手の反応、他者に反映される自分の反応を得ることでより意識的に
行動し、行動に釣られて知性も伸びて行くのではないかと。

そう考えると他者とは自分にとっての関心を送るアンテナであり、好奇心の多い、つまり多くの他者に多くの
関心を持つものは知性も高まるものなのではないか、と彼女は考える。

もちろんこれはある程度確固たる"自分"があればこそで、ダニーには縁遠いカタチである。
それだけに目の前の男はありがたかった。収容所での労役では基本的に全く疲れなかった
彼女はこういうとりとめのない思考をすることが偶にあった。

シヴァに先を任せてぼんやりと考えているとクローディアが何か喚き出す。
寂しい雇い主の恋模様までは流石にカバーできないと言い返そうとすると続きに気が止まる。
>「なんで腕テカテカになってんのよ、お洒落のつもりなのッ!?」

見れば彼の腕が些か変容している。とたんにダニーの目がすいっと細められる。
(ー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ー)
ーお前もなのかーと、彼女は思った。

自分も彼と同じようなものだ、だが自分が嫌わなかったとして相手もそうとは限らない。
もしもその時になってこの男が幻滅したら、と柄にもない事が頭を過る。

144 :ダニー ◆/LWSXHlfE2 :11/06/28 12:45:59 ID:???
ただそんな風に珍しく思考に没入していたせいか、クローディアが告げた異常に気づくのが遅れてしまう。
地鳴りと共に軋む洞窟の天井に注意していると大量の水が横から吹出す。
洞窟内で鉄砲水に襲われたことはないので警戒する方向を間違えだのだ。

踏み堪えようとするが泥濘んだ足場はあっさりと流される。屈んだまま水勢に押されて
水底を滑走するような姿勢になったしまう。辺りを見回すが既に皆の姿は洞窟の闇に隠されていた。
なんとか体勢を立て直して水面に浮上すると何か聞こえたのと同時に視界にノイズが走る。

直後に背中に誰かが負ぶさってくる。首を向ければそこには逸れた全員が揃っている。
誰かの力なのだろう、何にせよ一安心だとダニーは思った。

それがぬか喜びだと分かったのは体が縦方向に加速していくのを感じた時だ。
明確な浮遊感を覚えた辺りで危機感が一斉に刺激される。直感で今いるこの大穴が危険な域まで
加速するだけの深さを持っていると思うと、最高速に到達する前に彼女は残りの男衆が繋がれている
ザイルを握り左腕は岩肌を掴もうとする。

しかしそれは結果として空振りに終わる。ジョナサンとか言う男が「何か」で「何か」を書くと大穴を防ぐ
網が出現し落下を免れる。ダニーは口笛を一つ吹くと心配は杞憂だったかと内心でその厚い胸を撫で下ろす。
だが再び安堵がぬか喜びになる。網が水と彼女らの重さに耐えかねて徐々にぷちぷちとちぎれて
終いにやはり落下することになる。

「・・・・・・・!・・・・・・・・・!・・・・・・・・・・・・・・・ッ・・・・・・・・・・・・・・・・・・!・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!」
ダニーは男衆のザイルを右手に握り咄嗟に左腕で壁面を掴む。一つ吠えると壁を引っかき続ける
彼女のただでさえ太い腕が更に膨らみ、手に獣のような毛が生え爪も丸く太い、しかし鋭利な物へと変わる。
途中網のお陰で速度が振り出しに戻ったこともあって最小限の加速で大穴を降ることができそうだった。

これで今度こそ何とか成ったかと思ったとき、三度ぬか喜びであることがダニーには分かった。
下に人の気配がする。その数ざっと五人。

まだ人が居ることが分かっただけで、戦うかどうかは分らないはずだが、女の勘とでも言うべき何かが
彼女に戦いを訪れを知らせていた。

「・・・・・・・・・・・・!」
誰かいる!気をつけろ!と仲間に小さく、鋭く知らせるとダニーは暗い縦穴の先にいるであろう
相手に集中した。

【ダニー 網が切れて落下、腕を変化させて壁面を引っかいて落下を減速、下の探索組を察知し皆に知らせる】

145 :シヴァ ◆3oqrAy1Ql2 :11/06/28 17:59:14 ID:???
一歩一歩慎重に進む、魔物が出てくる気配はない。先の攻防の御陰なのか障害はない。
強いていうならクローディアが喧しいことくらいだ

「きぃぃぃっ!別にあの男好みでもなんでもないから羨ましくはないけど、妬ましいわッ!」

シヴァはとりたてて興味もないので聞き流す

「なんで腕テカテカになってんのよ、お洒落のつもりなのッ!?」

だがその一言でダニーの視線を感じ耳まで真っ赤になるのが分かり彼女に見られぬよう腕を隠す
視線の意味に気づかないシヴァはダニーに嫌われたのではないか、という観念に囚われる
だから爆発にも、異常にも気づくのが一歩遅れた
向かい来る鉄砲水、それに足を取られ一気に流される
ダニー達を一瞬で見失うがジョナサンは咄嗟にシヴァに掴まっていた。水面に顔を出し仲間達を探す

「――来なさいっ!」

視界が歪んだ刹那、ダニーとナーゼムの姿を捉えた
クローディアはダニーの背にしがみついている。
間一髪だった、しかし安心する一方流される方向に違和感を覚える
違和感が確信に変わったのは明らかな浮遊感を感じた瞬間。
落下を全身の肌で体感し、何か掴まるものはないかと目を走らせる
するとジョナサンが壁に何かを描き、描かれた網が実体化し大穴を塞ぎ、シヴァ達を受け止める
だが支えていられたのも束の間、網は音を立てて千切れる
だが壁に手を伸ばすより視界に入ったダニーの背から落ちていくクローディアの細い体を捕まえるのが先だった

「これを持て、早く!」

クローディアにザイルを掴ませると、硬化した右腕を壁面に突き立てる
更に群青色の光沢がシヴァの半身を包んだかと思えば横腹から新たな腕が生える
新たに生えた二つの腕が壁を掴み、ようやく身体が完全停止する

「無事か?」

全員に声を掛ける。総員地盤に叩きつけられずに済んだようだ
生えた腕を仕舞い、ダニーを見やる。だがダニーの様子がおかしい、何事かと思ったが人の気配を察知する

「・・・・・・・・・・・・!」
コクリと頷いて息を殺し相手の気配を窺う
どうやら人のようだが敵でないことを祈ろう

(このままやり過ごそう。余計な戦いは不要だ。)

階下の相手に聞こえぬようクローディア達に耳打ちする
ダニーの先の戦いを見て彼女を戦闘に巻き込みたくないが故だった

【クローディアを助け硬化+変身で壁に掴まり地盤に叩きつけられるのを防ぐ
 このままやり過ごせないか提案】

146 :セフィリア ◆LGH1NVF4LA :11/06/28 22:21:09 ID:???
「ああ、サムちゃんにお塩がついちゃう」
いま、セフィリアの頭の中の大半は愛機の心配で埋め尽くされている
レイリンに提案したのも職務に忠実がゆえ、乗り気でなくてもこなさなければならないことはこなす
だから近衛騎士団に配属されたのだが……そんな真面目な彼女だが、いまは仕事なんてどうでもいい
サムエルソンが第一だった。先の提案も頭に思い浮かんだ言葉を審査することなく、そのまま合格させてはなったものだ

それほど彼女のやる気は低い

『例えばこうやって、瓦礫の山をブロックごとに区分けして引き上げるみたいな……』
「うわ〜先輩凄いですね〜」
社交辞令、尊敬する先輩に礼を失するような態度を取ることがないのは貴族の躾か将来の生真面目さか……
ただぼんやりと瓦礫が崩落していくのを眺めていた
湖底にがっしりと足をつけていた巨躯を、急に浮上さすことはサムエルソンの性能ではたとえ彼女の技量でも簡単なことではなかった
「うわわわわわわ」
狼狽する声とは裏腹に手と足はそれぞれ別の生き物かのように動き、なんとか上半身だけを埋没から救うことが精一杯だった
抜け出すことはできない……女性陣は全滅した

>「浮力を極限まで上げた。対象を意思持たぬ物に限定でね」
「おお〜」
ゴーレムの中で驚きの声をあげる。魔法という物が別段珍しいものではないが、瓦礫がゆっくりと浮かんでいく様子は
湖に入ったときとは別の幻想的な風景としてゴーレム内の映像羊皮紙に映し出されていた
「ハティアさん、すごいですね〜私も魔法が扱えたらよかったのに……」
社交辞令その2

>封印されしは古代魔法王国の秘宝! 悠久の昔より宝を守るは伝説の水龍……みたいなさあ!」
「瓦礫に埋まってた水龍さんがかわいそうですね。2年間も瓦礫の下だなんて怒ってないといいんですが」
ごく真面目にそう語るセフィリア、彼女はロキの言葉になんの疑問を抱かず水龍さんがいるものだと思っている
サムエルソンが真の湖底に達したときセフィリアの目に飛び込んできたのは!
「あ、あれはなんですか!」

147 :ウィレム ◆uBe66UnnCY :11/06/29 02:53:08 ID:???
ウィレムは元々早く走れるというだけ。戦闘系の遺才ではない。
その速さを活かした戦い方は人生の中で身につけてきたが、戦闘訓練を受けてきた訳でもない。
縁故とはいえ民間の護衛会社に就職した程だから一応体は鍛えてきたし、体力腕力にはそれなりに自信はあるが。
実戦経験に限れば、それはかなり乏しい。砕けた言い方をすれば、「ケンカ慣れ」していない。

目にも止まらぬ速さで動き、ただひたすらに角材を振るう。風が吹いたその後には倒れこむ賊の姿。
そう表現すれば聞こえはいいが、じっと目を凝らせば全く見えないということは決してない。瞬間移動ではないのだ。
それでも常人が反応出来る速さではない。それが分かっているからウィレムも攻撃の手を緩めない。

だが、そこに甘えが生じる。
スピードを活かそうと、出来るだけ直線で進む。その直線上の賊の脳天に角材の一撃をぶち込む。
つまりは、単調なのだ。
速さに撹乱され混乱する者が大半な中、そんなことに気付くのは少数でしかないが。
その少数は、確かにいる。
ましてやここは賊船。今まで無傷でやってこれたはずはない。ウィレムより明らかに場数を踏んでいる人もいる。
百戦錬磨の、猛者だっている。

例えばの話として。
角材による攻撃を頭に一発食らうぐらいならば平気な、頑強な男が居たとしよう。
男はその一発を食らうことを前提として、姿見えぬ襲撃者をその両手で掴みにかかるのだ。
結果として、少し図に乗っていたウィレムは至極簡単にその身を拘束され。
そして掴まる。捕まる、捉まる。
速さは――そこで止まる。

「――ぐっ、がはっ」

ぎりぎりと締め付けられる。その速さを封じられたウィレムに優位性を見い出す事は無理がある。
さぁどうなる。見せしめとして殺されるか。いくらなんでもかっこ悪すぎるだろう、死にざまとして。
しかし反撃の手立てはない。考え得るこの状況からの脱出策としては――他者の力を当てにする他ない。
ウィレムがその口に笑みを浮かべたのは見間違いではない。見えたのだ、向こうの漁船。マスト。人影。
そして、腰に括り付けた念信器から聞こえる声。

>「浪費した武器はくれてやル、好きに使エ」

『浪費』された武器の弾幕が雨霰と降り注ぐ。しかしこの量でも、ウィレムにはかすりすらすることなく。
それでいてウィレムを拘束していた男を確実に沈めてしまえるのも、やはり遺才の賜物なのだろう。

「あとでちゃんと感謝しないとなー」

そもそも思い返してみれば自由時間でのウィレムの行動も明らかに失礼だったと思う。
それの謝罪もしなければならない。少し時間を置いたらかなり客観的に見る事ができた。
やっぱりまだまだ怖いけどさ。

さっきのピンチは自分の驕りが招いた結果だ、とウィレムは自戒する。速さに自信は持つ。だが決して驕るな。
ひとつ、息を吸う。吐く。前を向く。再び行動を開始する。やることはさっきまでと変わらない。
結局出来ることは1つだけなんだ。全く融通の利かない遺才だな、なんて思うけれど。
少しだけ、慎重になる。

148 :ウィレム ◆uBe66UnnCY :11/06/29 02:59:09 ID:???
「うおっ!?……とと」

足元が揺れる。
この感覚はさっき、乗っていた船が砲撃を食らったのと同じだ。音もした。間違いない。
直後、視界が煙に覆われる。発煙式の飛翔機雷か?あぁ、何ということだ、本当に、何という、
――好都合!

ただでさえ見えないウィレムの速さ。煙幕でさらに視界を妨げられてしまったら、もはや独壇場。
この風だ、煙幕などすぐに晴れてしまう。晴れる前に、少しでも、多くを、減らせ!

>「作戦本部より掃討組総員。おれだ、謹聴しろ。漁船の皆様がお怒りだ。どうやらおれたち、開拓都市の件で疫病神扱いらしい。
> あんまりにもこっちの船の居心地が悪いので――賊どもの船に引っ越すことにした。先住民が邪魔だな。排除しろ。

ボルトからの念信が入ったのは何人倒した所だっただろうか。大分煙も晴れてきて。
角材が酷使によってちょうど二つに割れてしまったのと、ほぼ同じだったような。
どっちが賊だよ、と突っ込みたくなるのをぐっと堪えて、ウィレムは命令に耳を傾ける。

> バリントン、操舵室へ行って舵を奪え。お前の今いる区画の階段降りて右の突き当たりだ。戦闘員は出払ってるはずだから安心しろ。

すぐに周りを確認する。階段はわりと近くにあった。この階段で間違いはないはずだ。
使い物にならなくなった角材を捨て、その場に散乱する浪費された武器群から1つ、手槍を拾い。
ボルトが言い終わる前に、即刻ウィレムは階段を駆け下りていた。

> 総員、行動指示は把握したな?否定され尽くしたお前らの居場所は、自分達の手で切り拓け。
> 状況開始だ。――連中のお高く止まった自己評価を、もっと上から叩き潰してやれ」

「了解っスよ!」

操舵室に乗り込もうとして、止める。一度中を確認する。そこに居たのは、操舵手と思しき輩と、もう1人。
幾つもの修羅場をくぐってきたであろうその姿と会話から判断して、この船の船長に違いない。

>「ようやく見つけた絶好の狩場なんだァ……獲物は獲物らしくおとなしく狩られとけぇ……!」

「戦闘員は出払ってるって言ってませんでしたかーどう見てもバリバリの人がいるんでスけどー」

聞こえないように恨み言を吐く。確かに賊を相手にするならば頭から倒すのが1番効果的だとは思うが、
はっきり言ってウィレムはそんなつもりはなかった。船長は船長らしく船長室にでも居て欲しかったんだ。

149 :ウィレム ◆uBe66UnnCY :11/06/29 02:59:41 ID:???
(さて、と)

内心、ウィレムは舌を巻く。
強そうだ、と思う。戦闘能力はウィレムの比にならないだろう。
ましてやここは室内。狭い場所ではウィレムの足の速さも良い方にばかり働かない。

何より辛いのが、今、ここに1人きりだということ。ダンブルウィードの戦いとは違う。
守ってくれるフィンは居ない。ゴーレムで戦ってくれるセフィリアは居ない。回復してくれるノイファもだ。
甲板での戦いだって、アルテリアの援護射撃があった。視界の隅では魔物に乗って共に戦っていたプリメーラが居た。
操舵室前には、自分しかいない。
それを頭で考えるだけで、重圧に押しつぶされそうになる。

「捕食者だって、またそれよりも大きな捕食者の獲物だろう?
 狩られるのはそっち。狩るのはこっちの方さ」

だから、相変わらず口だけでも自信たっぷりな言葉を吐く。あの怪物との戦いの時と同じだ。
鼓舞という名の自己暗示。効いてはいないだろう、足は震えるし、汗も止まらない。
でも、このまま何もしないなんて訳にはいかないから。
操舵室の扉を開き、手槍を構えて一直線に、船長と思われる男に向けて、突撃する。

「うあああああああああああぁぁぁぁあああああああ!!!!!」

ウィレムの遺才を戦闘で1番有効活用できる方法とは何か?
それは何よりも――先手必勝!

【とつげきー】

150 :サフロール・オブテイン ◆jKUaosk4aY :11/06/29 19:58:27 ID:???
戦闘と探索は何ら――若干一名早くも困窮に喘いでいるが、問題なく進んでいった。
が、不意にサフロールは目を細め、眉を顰める。
『擬似崩剣』を与えたノイファが未だ戦闘に参加せず、立ち止まっていた。

「おい、何やってんだバ……」

>「――ツギニ、ババアッテ、イッタラ…………ムシル。」

瞬間、サフロールの翼が激しくはためいた。
弧を描いた翼は彼の前で交差、羽の一枚一枚が『鉄壁』『拒絶』『分散』――ありとあらゆる防御術式を展開。
更に対物障壁を多重に張り巡らせ、大きく一歩飛び退く。全ては一瞬で完了した。
『分析』の遺才と本能が、為し得る最大限の防御をサフロールに命じていた。

>「よいっしょー!」

ノイファが前に向き直り、魔物の群れに飛び込んでいった。
深く息を吐き出し、サフロールは呼吸を失念していた事に気付いた。
湧き上がる感情は苛立ち、憤慨、そして――期待だった。
あれほどの凄絶な怒気を放てる女に、心の底から憎まれたのなら、きっと自分は更に深い闇へと沈む事が出来る。
己の才能をより強く引き出す事が出来る、と。
思わず、口角を吊り上げた。

>「ん?……おおっ!!なんだそれ、カッコいいなっ!!」

しかしフィンの言葉に、サフロールが硬直した。
同時に翼の根本から、漆黒を押し退けて純白が姿を現す。
黒は再び白を飲み込もうとするが、押し殺せない。
堕天使の血が創り出す黒く汚れた翼――蔑まれる事は幾度となくあった。
だが、「かっこいい」などと言う言葉は、一度たりとも受けた事がなかった。
反応出来ない。何と返せばいいのか分からない。
全身を巡る血が宿した遺才は、胸の奥で渦巻く感情の正体を『分析』出来ずにいた。

「……馬鹿か、テメェは」

衝動的な呟きだった。尚も勢いは損なわれない。
フィンに歩み寄り、眼光の刃を突き刺した。

「いいか、理解出来てねえなら教えてやるよ。俺はな、テメェを用無しにする為に遊撃課にいるんだぜ」

擬似的な『天鎧』の再現、方法論は既にサフロールの頭脳で構築されていた。
『擬似崩剣』の流用。すなわち適切な角度と威力を、付加するのではなく殺す事に方向性を向ける。
そう言った技術体系は、既に存在する。あとはそれを洗練し、術式で再現可能にすればいい。

「こいつだけじゃねえぞ!俺が『分析』《バラ》せねえモンなんてありゃしねえ!
 神の奇跡だろうが何だろうが!俺の手に掛かりゃ代わりが出来ちまうんだよ!」

森羅万象を『分析』し、再現性を創り出す遺才。
本来、凡人の持ち得る最後の刃――故に凡人に嫌われる。
同時に、天才の立場を脅かす――故に天才にも嫌われる。
生まれ落ちて以来、他人に好意を向けられた事などない。
故にサフロールは理解出来ないそれを、ただ跳ね除ける事しか出来なかった。
心を黒い翼で包み込み、自分だけの世界を作り、全てを拒絶して自分を守る事しか。

「分かったら……二度と舐めた口を利くんじゃねえ!ただ俺を、妬んで、憎んで、忌み嫌ってやがれ!」

怒号を撒き散らし終えて、サフロールは深く息を吐く。
燃え上がった感情を冷たい洞窟の空気に吐き出して、ただ悪意だけで胸を満たす。

151 :サフロール・オブテイン ◆jKUaosk4aY :11/06/29 20:00:56 ID:???
>「…………どったの皆。なんかあったの?」

「うるせえ。テメェが先頭だろうが、さっさと進め。
 あの汚泥と虫ケラを朝飯代わりにぶち込まれてえか。」

一変して、冷たく静かで、理不尽を極めた一言。
再び洞窟の奥へと向かう――途中で、水場に住まうエルフが姿を現した。

>「……リアタルル、アルエル。」

「……『さっさと帰れ、そこの半分枯れ木に成り果てた年増女』だとよ」

露骨な嘘と悪意、ただ嫌悪される事だけを望む。
更に進む――不意に、先を行く面々が立ち止まった。
巨大な水流、原因は『崩剣』、指示は依然変わらず前進。
サフロールが一歩前に出た。天井の穴を見上げる。思考を開始。

「錬金術で穴を塞ぐのは……無理だな」

下手に質量の均衡を崩せば、更なる崩壊を呼ぶ可能性がある。

「橋を作ったところで、この流れじゃ崩れちまうのが目に見えてる」

上流からは巨大な岩石が流れてきている。橋や隊員に直撃したら終わりだ。
水流と岩石に耐えられる、届かないほど大きな橋を作れば、今度は足元が崩れかねない。

「『飛翔』の魔術は……若干一名の置いてけぼりに目を瞑るなら、やってやるけどよ」

魔術の通じないフィンが取り残される羽目になる。

そして何より、自分が手を出したのでは天才の観察が出来ない。
更に思索を巡らせて――視線を周囲に巡らせる。
左右、天井、辺り一面に生えた鍾乳石を、不規則な地形を観察した。

「おいビビリ、仕事だぜ。……いつまでウジウジしてやがんだテメェは!
 おいエルフ!テメェも遺才持ちならこの馬鹿に付ける薬くらい出したらどうだ!?えぇ!?」

苛立ちを書くそうともせず叫ぶと、サフロールは手近な鍾乳石に手を伸ばす。
そして錬金術を施す。地を金に輪転、槍を四本創り出した。
穂先の反対側には、石突きの代わりに小さな輪が付いている。
ロープを槍に繋ぎ、鍾乳石にでも括り付けた後で、槍を高い位置から対岸の低い位置へと投擲。
あとは手甲なり剣の鞘なり、所持品をロープの上に通せば、滑り落ちるように対岸へと渡る事が出来るだろう。
帰りも同じ事が出来るような足場があれば、それでよし。
無かったとしても、サフロール以外の面々ならロープを掴んで戻る事は出来るだろう。
サフロールは元々、ロープにもルインにも頼らず、一人『飛翔』するつもりだ。問題は何もない。


【遅くなりまして、すいませんでした
 天鎧がどうのってのは、あくまでウチの子が考える代替物の作り方ですので
 『天鎧』そのものの設定にゃ関連付けたりしませんです
 
 →リードルフ、ウジウジゲロゲロしてるけど、なんかお薬ないの的な
 →ルイン、ようは簡易ロープウェイ作って下さい的な
 クローディア組には気付いてません】

152 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/06/30 02:25:11 ID:???
『バハムート』は水底で静かに揺蕩っていた。
何の因果か二年前に海からこの湖へ流れ着いて、如何なる事態か身体が異常に肥大化し、元きた道を帰れなくなった。
仕方がないからこの湖へ居を構えようにもこの巨体。維持するだけでも大量の食餌を必要とし、それはここでは賄えなかった。

まだ身体が動くうちに、少しでも餌を得んと瓦礫の下へと潜り込み、そこで幸運にも大量の蓄魔オーブを発見した。
もとは、この瓦礫が瓦礫でなかった頃に蓄えていた財の一部だろう。そのような背景は、『バハムート』には無用だった。
魔力を身体維持のエネルギーとして費やし、いつか自分と同じ種がこの湖を訪れるまで、彼はずっと待っていた。

蓄魔オーブを少しずつ切り崩していけば、向こう百年は余裕で持つ。
時間は悠久ほどにあった。住めば都とはよく言ったものだ。静かで、不可侵な水底は彼の聖域だった。

そして平穏は、崩落と魔性の輝きによって瓦解する。

>「あ、あれはなんですか!」

突如として起こった住処の崩壊。安寧の滅亡。水面から降り注ぐ僅かな光がバハムートの眼を照らした。
彼が寝床にしていた瓦礫の全てがまるで浮き袋でもつけたように浮上していく。
その中で、ひとつだけ流れに逆らうようにしてこちらへ降ってくる影があった。岩造りの、それはヒトに似た形をしていた。

「――――っ」

バハムートは口を開き、その奥の牙を見せて、岩の巨影へ突進した。


瓦礫に飲まれそうになったスティレットと、何故か一緒に降ってきたレイリンを救ったのはロキの珍妙魔法だった。
津波のように押し寄せていた瓦礫の波濤は勢いを失い、気泡のように水面へとゆっくり上がっていく。

>「浮力を極限まで上げた。対象を意思持たぬ物に限定でね」

『このタイミングでそのキメ顔、最高にカッコ良いであります!』

スティレットは剣を持たぬほうの腕をぶんぶん振ってロキに応えた。
一帯どれだけの魔力を使ったのか、これだけの重量物をあれだけの範囲で持ち上げれば、並の魔術師ならば生命すら枯渇する。
卓越するのは操魔技術か、出力か。ロキ=ハティア、その出鱈目な実力は正しく遊撃課のそれだった。

「ところでアルフートちゃんはどこへ行ったのでありますか?まさかっこの中に犯人が!?」

>「封印されしは古代魔法王国の秘宝! 悠久の昔より宝を守るは伝説の水龍……みたいなさあ!」

「くっ……アルフートちゃんを殺った犯人は必ずこの手で見つけ出すでありますっ!!」

まるで噛み合ってない会話をしながら、スティレットは新しく拓けた水底へサムエルソンが墜ちていくのを見た。

「あーっ!駄目でありますよガルブレイズちゃん、こういうときの『殺人犯と同じところに居られるか!』的な単独行動は――」

念信器が最後まで伝達する前に、湖底からせり出した巨大なあぎとがサムエルソンを丸呑みにした。

153 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/06/30 02:25:34 ID:???
「流石に回収早すぎでありますぅぅぅーーっ!?」

サムエルソンを呑んだあぎとがその全貌を表す。
湖面からの光に照らされた、巨大で長くて長くて長くて長くて硬質なその影は。

「魚ーーーーっ!」

それは巨大な魚だった。牙の生えた面長の口腔から後ろは、尻尾まで視線が辿りつく頃には頭の形を忘れそうなほど長い。
乙種のゴーレムが軽く収まりそうな鰓や、体表は鋼もかくやといった硬質な輝きをもつ鱗に覆われており、ヒレは刃物のように鋭い。
凶暴で獰猛な眼がギョロリとこちらを捉え、再び口を開けてその奥の細かく連なった牙を見せた。

「こ、こちら潜水組!湖底にて巨大な魚と遭遇、ガルブレイズちゃんが食べられちゃいました!支援要請であります!」

念信器に飛びつき、縋るような思いでボルトを呼び出す。
繋がった先では、剣戟の音と砲撃の断続的な爆音が轟いていた。スレイプニルの掃射砲をフル回転させていると思しきボルトの声。

『ああ?ガルブレイズは死んだのか!』
「うえっ?ま、まだわかんないであります……ゴーレムごとだったので、多分まだ無事かと……」
『じゃあおれより先にあいつに念信しろ!それで、可能な限り交戦して情報収集!こっちから人員送る余裕はねえ――』

轟音。ボルトの乗るゴーレムが被弾したのだろう、それきり念信は途絶えてしまった。
戦闘能力では遊撃課員達より遥かに劣る課長の安否は気になったが、当面は目の前の敵と仲間だ。

「ガルブレイズちゃん、応答するでありますーっ!」

念信器でサムエルソンを呼び出し、呼びかける。そこへ巨魚が身体を捻り鋭利なヒレでこちらを斬りつけてきた。
水中箒をフル起動させて緊急回避。スティレットの背後にあった瓦礫が温野菜のように容易く刻まれた。
本来の彼女であれば、今の攻防でヒレごと巨魚をたたき斬っておしまいだったはずだ。水圧は思った以上の枷となっていた。


【モンスターデータ:『バハムート』
 ウツボ系の巨大な魚。獰猛な性質とデカすぎる体躯、ヤバすぎる牙をもつ。また鱗が硬いので想像以上にタフい】
【瓦礫の下に隠れていた巨大魚と第一種接近遭遇。サムエルソンが食われる。決定リールあり・ワンターンキルなし】

154 :プリメーラ ◆sA3iXghEZU :11/06/30 21:15:38 ID:???
グリンデローと共に甲板で交戦の限りを尽くすプリメーラ。
今回は味方の漁師達を巻き込まない為にも、集団催眠は使わないようにしている。

再び襲う揺れ。今度は咄嗟にグリンデローにしがみついたお陰で湖に落ちずに済んだ。
そして今度は煙幕。甲板がパニックに包まれる。ストラトスの仕業だ。

「(チャーーンス!)」

ここぞとばかりに、グリンデローの鼻を頼りに敵を打ち倒していく。
そう遠くない場所ではウィレムも暴れているようで、まさに優勢というべきか。

>「作戦本部より掃討組総員。おれだ、謹聴しろ。漁船の皆様がお怒りだ。どうやらおれたち、開拓都市の件で疫病神扱いらしい。
 あんまりにもこっちの船の居心地が悪いので――賊どもの船に引っ越すことにした。先住民が邪魔だな。排除しろ。」
「イッシッシッシ!どっちが賊だか分かんないねこりゃ!」

念信オーブに届かない位の小さな声でクスクス笑う。

>「レズヴィアン、お前はさっきからギャンギャン吠えてる艦砲を黙らせろ。せっかくの新居だ、小洒落たインテリアに変えてやれ。」

見れば、幾つもの艦砲が火を噴いている。隊長とはインテリア趣味は合わないな、と小さくぼやく。

>「総員、行動指示は把握したな?否定され尽くしたお前らの居場所は、自分達の手で切り拓け。
 状況開始だ。――連中のお高く止まった自己評価を、もっと上から叩き潰してやれ」
「アイアイサー!」

黒馬を駆り、プリメーラはなんと一度湖へと飛び降りる。
グリンデローは湖面に佇み、プリメーラはサッとペンダントを掲げる。
ペンダントの青い輝きが、湖面に広がっていく。
すると、ブクブクと白い泡が幾つも立ち、数多の魔物達が顔を出す。

「用意――――――打てッ!!」

プリメーラの掛け声と共に、魔物達は艦砲に向けて勢い良く水鉄砲を放つ!
艦砲は大量の水を被った。これでもう砲撃は不可能だ。
更にパニックに陥る賊達を見て、プリメーラは高笑い。

「アーッハッハッハッハッハッハハ!ざまあみさらせー……い?」

どうしたことか、魔物達が戸惑うような表情を見せている。
まるで、湖底の住処に帰ることを躊躇しているようだ。
先程の自由時間のとき一瞬だけ視界に入った何かの事を思い出す。

「――何か、おかしい?」

ざわつく胸を無意識に押さえながら、穴が空きそうなほどに湖底を見つめた。

【魔物を操り水をぶっかけて艦砲を使い物にならなくする】

155 :フィン=ハンプティ ◆yHpyvmxBJw :11/06/30 22:59:14 ID:???

向かい来る有象無象の魔物の群れ。
しかし、少なくとも後方から襲撃を掛けてきた魔物達に関しては、とうとう
フィンの横を抜ける事は叶わなかった。湿気た岩石に体液を流しながら横たわる
無力化させられたそれらの姿は、まるで其処に不可視の壁が
在る事でも示しているかの様であった。
そして、魔物達が抜けられなかった壁は何も二つではない。

研ぎ澄まされた剣撃の雨。吹き荒ぶ風の如き槍。
他にも、天才の名を欲しいがままにする数多の技巧が、魔物達を易々と屠っていく。
数に頼る魑魅魍魎如きでは天に与えられし才に決して届く事が無い。
それは一昔前の世界の縮図を示しているかの様な光景であった。

そして、既に仕事を終え遊撃課の面々が魔物を屠っていくのを
後頭部で腕を組み、見ていたフィンであったが、そんな彼に声を掛ける者があった。
声の主は、同行する遊撃課のメンバーである、サフロール・オブテイン。
その内容は、先の戦闘の最中フィンがサフロールに掛けた言葉への辛辣な返答。

>「いいか、理解出来てねえなら教えてやるよ。俺はな、テメェを用無しにする為に遊撃課にいるんだぜ」
>「分かったら……二度と舐めた口を利くんじゃねえ!ただ俺を、妬んで、憎んで、忌み嫌ってやがれ!」

彼の言動に含まれているのは「何か」に対する強い感情。
深い闇が含有された言葉と視線をフィンへと躊躇い無く向ける。
先ほどのフィンが放った言葉を、拒絶し否定しようとしているかの如く。
そんな害意の刃を正面から突きつけられたフィンは、一瞬驚いたかの様に目を瞬かせると、

「はははっ!そんな事聞いたら嫌えねーって!だってそれ、すげー事じゃねーか!!
 つまり、俺とお前が協力すれば、俺のこの力を誰でも使える様になるって事だろ?
 もしそうなったら、事故とかで傷付く奴が減るって事だよなっ!!」

笑った。
相手の姿が邪悪の存在に酷使している事を認識して尚、
悪意を向けられて尚、自分の唯一性すら否定されて尚。
「それがどうした」とでもいうかの様に白い歯を見せて、フィンは嬉しそうに笑う。
その姿は違いなく、御伽噺の英雄の如く眩しく――――そして、危うい。
全うな神経を持つ人間ならば、自身のアイデンティティを否定されて、
そしてその立ち位置すらも奪われそうになって、そんな状況にあって尚笑える、
そんな事が出来る筈が無いからだ。もしもそんな事が出来る人間がいるとするならば、
それは余程のバカか、或いはそれ以外に自己という物に関する寄る辺をもっているか、
或いは――――

>「皆ごめん…………後30秒待ってくれると嬉し………おえ゛え゛ええええええええええ」

と、対話はルインの言葉によって中断した。
というか、中断させられたという方が御幣が無いだろう。
魔物との戦いの緊張か、それとも別の何かか。ルインが盛大に
【不適切な映像がございます。暫しの間、遊撃課女性陣+αの水着シーンをお楽しみください】

……

156 :フィン=ハンプティ ◆yHpyvmxBJw :11/06/30 22:59:51 ID:???
「おーい、ルイン、大丈夫かー?……なあノイファっち、この状態に回復魔法って効くのか?」

一頻り出す物を出したルインを心配して声をかけたフィンだったが、
直後にその視線の先に現れた者を見て首をかしげる。
見れば、そこにいたのはエルフと呼ばれる種族の女性だった。
エルフはリードルフと会話を交わしていた様だが、当然の事ながらフィンにその言語は分からない。
ただ、どうしてこんな所に住んでいるのだろうか、等と考えつついたのだが――――

地鳴りと轟音。そして襲い掛かる岩石を含んだ瀑布。
天災じみた人災がその場にいる面々を飲み込まんとする。

>「『飛翔』の魔術は……若干一名の置いてけぼりに目を瞑るなら、やってやるけどよ」

「よし、それ」

瀑布を前にサフロールが放ったその言葉に迷い無く無く賛同しようとしたフィンだったが、
その声は轟音にかき消され届くことは無かった。
その間にも、サフロールは魔法を駆使し擬似的な橋を作り出す。
少し距離が離れていて掛けられたサフロールの皮肉気な言葉までは聞き取れないが、
それでも自身のすべきことは理解した。

「……ちっとばかし量が多いけど、やってやるぜっ!!
 お前ら!ここは俺が何とかするから、先に行けっ!!!!」

フィンは自ら列の後方部。最も岩石の落下が激しい箇所へと向かうと、
水によって運ばれてくるそれら岩石群の前に立ちふさがる。
普通ならば命を捨てるだけ、無駄死への序曲――――だが、生憎とフィン=ハンプティは普通ではない。

流れくる岩を、いなし、逸らし、或いはその力を利用して砕き、橋へと直撃しない位置へと誘導する。
神業ともいえるその所作により、本来ならば橋を破壊する筈だった幾つもの
岩の群れが消えていった。無数の凡人がその命を盾にしてようやく成し遂げられる所業を
フィンはたった一人で成し遂げる。それが出来てしまう。

とはいえ――――

「ぐっ……まだ、まだっ!!」

とはいえ、これだけの量の岩を一人で処理するにはやはり限界がある。
砕いた岩の破片や、「何か」に当てなければ軌道を変える事が叶わない小型の岩が
フィンの肉体を叩きつけていく。このままいけば、全員が橋を渡りきれるだろうが、
恐らく、そこにフィンの姿は無いだろう。

【フィン、岩石群の一番激しい箇所で橋の防衛。
 身動きが取れない為、その箇所から外れた場所に落ちる岩には対処困難
 クローディア達の姿には気付かず】

157 :ファミア ◆mCdqLO6Z6k :11/07/02 02:51:49 ID:???
経験がない人は一度試してみるのも悪くはないと思うのですが、
深く吐いて浅く吸うということを繰り返していると割と簡単に頭が朦朧としてきます。
なので、ファミアにはフランベルジェのすっとぼけた言動に取り合う思考的余地がありませんでした。
圧倒的にツッコミが不足する中、ボケだけが加速してゆきます。
なにせ視界の中に瓦礫しかないので念信から状況を想像することしかできません。

>「あーっ!駄目でありますよガルブレイズちゃん、こういうときの『殺人犯と同じところに居られるか!』的な単独行動は――」
>「流石に回収早すぎでありますぅぅぅーーっ!?」
>「こ、こちら潜水組!湖底にて巨大な魚と遭遇、ガルブレイズちゃんが食べられちゃいました!支援要請であります!」
なんだか状況はボケ以上の速度で走りだしているようです。

なお念信が続く中、ファミアは呼吸を整えていました。脳に十分酸素を供給したのち、自分に何が出来るか考えます。
直後、ヒレで斬りかかったバハムートが起こした乱流に、ファミアは周辺の瓦礫ごと呑まれました。
収まったところで視界にヒビ。どうも水中眼鏡に瓦礫がぶつかったようです。
このままかけっぱなしだと何かのはずみで割れたレンズが目に入ったりするかもしれません。即座に外します。
そこで、ファミアと裸眼とバハムートの表情のない眼がお互いを捉えました。

「……こんにちは」
とりあえず念信を一つ。
バハムートは口を開きます。
が、どうも挨拶を返してくれるという雰囲気ではありません。
ゆっくりと口の開きを大きくしながら、巨体からは想像できないほど静かでなめらかな動きで近づいてきます。
(この間合は……まずいッ!)
遺才を一切の加減なく発揮すれば、バハムートと同等以上の速度が出せるかもしれません。
しかし、今からよーいドンで泳ぎ始めたとすれば、方向転換をした上でゼロから加速をはじめなければいけないファミアに勝機は皆無です。

考えている内にも間合いは詰まってゆきます。近づいてくるその口中を目がけ、ファミアは躊躇うことなく水を蹴りました。
バハムートは一瞬の静止ののち、加速しながら顎門を閉じました。
いえ、正確には「閉じようとしました」です。ファミアが牙を押さえて両手両足を突っ張っているので、閉じられなかったのです。
身の安全のためなら火中の栗でも拾いに行くのがファミア・アルフートのやり方。
これで周辺地域一番のデンジャーゾーンが安全この上ないシェルターに早変わりです。
ただし、『体力が持つ限りは』という条件付きですが。

光が良く入らないのであまりはっきりとは見えませんが、それでもサムエルソンがそこにいないことはわかりました。
胃袋の方まで行ってしまったのでしょうか。
さて当面の危機は避けたものの、これからどうしたものかとファミアは頭を捻ります。
なにせ目の前の窮地を脱することだけしか考えていなかったので、その後の展開が全く脳裏にないのです。
「えーと、あの、これどうしたらいいんでしょうか……?」
バハムートの口を押さえたまま、ファミアは周囲に念信を飛ばしました。

【即死回避】

158 :ノイファ ◆QxbUHuH.OE :11/07/02 16:07:54 ID:???
「これでお仕舞い、っと。」

水平に振るった白刀を、手首を返してくるりと回し、ノイファは鞘へと納めた。
ぐるりと周りを見回せば、夥しい数の屍が所狭しと積み重なっている。

負けるなどとは思っていなかったが、数の差はゆうに五倍以上。
洞窟内であることも、挟撃という状況も、全て敵にとって有利に運ぶはずだった。
だったのだが、結果はそれら全ての不利を覆してのワンサイドゲーム。ただの一人として怪我を負った者は居ない。

>「皆ごめん…………後30秒待ってくれると嬉し………おえ゛え゛ええええええええええ」

そう、怪我を負った者は居ない。

>「おーい、ルイン、大丈夫かー?……なあノイファっち、この状態に回復魔法って効くのか?」

「いいえ、無理だわ。あれはあくまで肉体的な傷を治すだけだもの。
 ルイン君のは……精神的なモノでしょう?こればっかりは"慣れる"しか仕様がないかなあ。」

ルインを心配そうに伺うフィンの問いに答えながら、バックパックを拡げる。
作戦行動前に渡されたそれの中には、念信器やロープ、簡易ピックといった道具の他、携行食料や飲水も入っていた筈だ。

(ふむ……実戦経験はあまりない、のでしょうか。その割には家名に違わぬ腕でしたけども)

新兵をはじめ経験の浅い者が、戦闘後に嘔吐するというのは別段珍しいことではない。
戦っている最中の高揚感と、その後の虚脱に体が追いついていかないのだ。
だが、魔物を次々と屠った槍捌きはまさに無双。戦闘経験の未熟さなどは露ほども感じられるものではなかった。

("遺才"を持って生まれる、というのはつまりそういうこと……?)

ノイファは生まれたその時から"遺才"に開花していたわけではない。
未来視『予見』はあくまで後天的なものに過ぎないのだ。ゆえに天才の持つ特異性に対する見識は極めて浅い。
あくまで経験値の蓄積速度の差異、程度にしか思っていなかった。どうやら認識を改める必要がある。

「――うん?」

水の入った皮袋を掴む手が止まる。何時から姿を現していたのだろう、視線の先には透き通るような青い肌を持つ女性。

>「彼女は二年前、此処に流れ住み着いたエルフだそうです――」

姿形は幾分違うものの、言葉が判るのは同族ゆえか。彼女の言葉をリードルフが伝える。
続く伝言。怒気を含んだ警告。曰く――深く立ち入れば只では済まない、命が惜しければ去れ。

「ふうん。ご忠告はありがたいのだけど、こっちも「はい判りました」って帰れる身分でもないのよねえ。
 その辺を柔らかく伝えてみてくれる?あと出来たら『彼の方』とやらの情報も欲しいかな。」

即座にリードルフが湖のエルフに伝え、しかし返ってくるのは更なる怒声。

>「……勝手にしろ、死にたがりの【自主規制】共、だそうです――」
>「……『さっさと帰れ、そこの半分枯れ木に成り果てた年増女』だとよ」
ぼかしたリードルフの言葉を、サフロールが補完。持っていた皮袋が地面に落ちた。

「ふ――」
開いた袋の口から、とぽとぽと水の零れる音が虚しく響く。

「ふふっ、ふふふふ…………良い度胸ですよ!喧嘩売っているんですね?そうに違いないですよね!?
 ちょっ!何処行った!?出ぇぇてぇ来ぉいいぃぃっ!!!
 そうそう、貴方もですよサフロール君。私、二度目はないってちゃんと言いましたものね。やっぱり――皮膚、からかな。」
 
くきーっ、と奇声を発し標的へ躍りかかるノイファ。その狂騒は取り抑えられるまで続いたのだった。

159 :ノイファ ◆QxbUHuH.OE :11/07/02 16:08:56 ID:???
「……何これ。」

ぽかんと口を開き、ノイファは宙を見上げていた。
鍾乳洞の奥へと進んだ先、一行を阻んだのは魔物でも、ましてや人でもなく、途方もない量の"水"だった。

>『作戦本部より探索組各位、聞こえるか?』

図ったかのように、念信器から聞こえる雑音交じりのボルトの声。

>『馬鹿が湖底に穴開けやがった。地盤ごと貫通するアホみたいな剣力だ、そっちにも影響があったと思われる。
  アイレル、課員の点呼とって報告しろ。それから通路の損害状況もだ。全員生きてるな?』

指で頭を抑える。俄かには信じ難い話だ。
場の空気が一段上昇するのを感じる。

『あー……状況は把握しました。とりあえず此方は五名とも無事なのだけど……道が塞がれたわ。水で。
 ええ、どうやら件の穴から送られて来てるみたいね。ちょっとした運河くらいはあるのかしら。』
 
穴の周りには無数の亀裂。塞いだのでは天井そのものの崩壊があり得る。
サフロールの見解も同様のようだ。かといって瓦礫や巨石が落ちてくる状況下、水流の勢いも相まって泳いで渡るのは不可能。
ここまでほぼ一本道だったことから迂回路も見込めそうにない。

>『このまま進め。穴の処理は現場の判断に任せる』

「さてっと、みんな聞いてたわね?"これ"を突っ切るわよ。サフロール君――」

>「橋は作ってやる。だが、流れてくる岩はテメェらがどうにかするんだな。しくじりゃ仲良く濁流の彼方にさよならだぜ。
  ……ま、どこぞの蛆虫みたく怖くてゲロ吐きそうだってんなら、無難に無様にロープでも使えばいいんじゃねえの」

此方の意図を理解して、サフロールが瞬く間に橋を造り上げる。
後は落下物の障害さえ乗り越えればいいのだが、飛沫で濡れる足場は悪く、少しのミスが即座に転落へとつながるだろう。

>「……ちっとばかし量が多いけど、やってやるぜっ!!
 お前ら!ここは俺が何とかするから、先に行けっ!!!!」

だが、そんなことは些細なことだと言わんばかりに、単身落石を迎え撃つべくフィンが飛び出した。
只でさえ悪い足場を滑るように移動し、卓越した体術と研ぎ澄まされた動体視力で落石の軌道を反らし続ける。

「なるほど……そうすれば良いわけね。なら、お言葉に甘えて行かせて貰おうかしら、ねっ――ルイン君!」

有無を言わさずノイファはルインの腕を掴み寄せる。そのまま橋を疾走。

「フィン君っ、もう暫くお願い。合図するから、そうしたら走ってきて!」

言葉を置き去り、さらに先へ。橋の終点でルインを向こう岸へ投げつけ、自身は跳躍――抜刀。
刃圏に捉えるのは鍾乳石。比較的長いものを選んで四本を切断――着地。

「それじゃあ、ルイン君。初めての共同作業に入ろうか。」

一人橋に残ったフィンを助けるためにノイファが目をつけたのは、ルインの持つ遺才。
噂に名高い"ラウファーダの飛槍"。曰く、何処までも届く長き腕。曰く、百発百中の絶死の鏃。
その深奥は預かり知らないところではあるが、話を信じるなら十分有効足りえるだろう。
果たして必要かは判らないが、そのために即席の槍も用意した。

「私がルイン君の"眼"になるから。フィン君が渡る時間を稼ぐために力を貸してちょうだい。」

右眼に赤い光を宿し、ノイファはルインに手を差し出す。

【未来視発動!橋に直撃する軌道の落石をルインに指示します。】

160 :ロキ・ハティア ◆9pXiBpy0.U :11/07/02 16:58:09 ID:???
>146
>152
>「瓦礫に埋まってた水龍さんがかわいそうですね。2年間も瓦礫の下だなんて怒ってないといいんですが」
「そうだね、2年間もたった一人で瓦礫の下なんてどんなに寂しかっただろう……」

>「ところでアルフートちゃんはどこへ行ったのでありますか?まさかっこの中に犯人が!?」
「いや、この短時間での犯行は不可能。外部犯の犯行と見るのが妥当だろう。
まさかっ、湖に住み着いたロリコンの変なおじさんにお持ち帰りされちゃったのか……!?」

>「くっ……アルフートちゃんを殺った犯人は必ずこの手で見つけ出すでありますっ!!」
「勝手に殺るなあ! まだ死んでない! ワタシが保証する!」

>「あーっ!駄目でありますよガルブレイズちゃん、こういうときの『殺人犯と同じところに居られるか!』的な単独行動は――」
「食われた――――っ!」
みたいなさあ! が本当になってしまった。

>157
そこに颯爽と現れる猛者。ファミアちゃんがつっかえ棒と化す。
「ファミアちゃん、無事だったんだね!」
喜んでみたものの、あんまりゆっくりしていると今度こそ本当にやられそうだ!

「楽しい仲間がポポポポーン!」
ふぇんりる軍団を召喚する。今回彼らに課す役目は魔力の運び手。
ふぇんりるが魔力として何かに取り込まれる事が出来るのはダンブルウィード西区戦でも立証済みだ。
「行って! セフィさん達の力になってあげて!」
ふぇんりる達は超高速の犬かきで魚の口の中に入っていく。

セフィさんに明るい声で念声を送る。
「なかなかやるね! 大型のモンスターを手っ取り早く倒す方法はね、中からぶち破ることだよ!」
そんな無茶なと思われる事だろう。でも! 遊撃課の辞書に無茶はあっても無理は無い!
如何なる無法も可能にする。無理を通して道理を破る。
理屈の通じない破滅的な戦闘芸術こそが、本物の『天才』なのだから!
「ワタシの子ども達を送り込んだから使ってやって! 君ならゴーレムの本当の力を引き出せる。
目に見える物ばっかりに捕らわれてると大事な物が見えなくなるんだ。資本主義至上のこの世界じゃ無理もない。
でも君は知ってる、理解してる。ゴーレムが何なのか。
ただの金属装甲のついた石の塊じゃない。心無き殺戮兵器なんかじゃない。
君がいつも話しかけてる”それ”こそがゴーレムの本質。君なら……君"達”ならできるさ!」
それは、スレイヴでもアクティブでもない、遥か高み。
現在その次の段階として考えられている、搭乗者とゴーレムの”器”を直接連結する”コネクト”とは似ているようでまさに正反対。

「名付けて……react(リアクト)だ!!」

【セフィリアにふぇんりるを送り込んで鼓舞する】

161 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/07/03 04:18:55 ID:???
キャプテン・カシーニがその奇襲を躱せたのは、ひとえに彼の、二十余年に渡る歴戦で研磨された知覚によるものだ。
カシーニが並の武芸者ならば、その一撃で心臓を穿たれていた。
奇襲者が並の武芸者ならば、この一瞬の攻防で、命に届く反撃を受けていた。

>「うあああああああああああぁぁぁぁあああああああ!!!!!」

寄生と共に突き出される槍を、捌き、いなし、返す刀でこちらのジャマダハルをぶち当てる、単純な作業。
振り抜いた刃の先に一滴の血が付いてないことにカシーニはまず瞠目し、奇襲者の力量を見誤る愚を反省した。
両者は既に攻防の間合いをはずれている。カシーニは剣と化した左腕を腰だめに構えた。

「おっおっおっ。どうやって入ってきたぁ、若いのぉ……!ただの漁師じゃあ、ないなぁ?」

甲板での戦闘をくぐり抜けて、かつ的確に操舵室を探り当てるなど、指運だけでなし得ることではない。
反撃に出た漁船の従業員にしては、えらく戦闘的な技術の持ち主だ。陸で酔っ払いと殴り合いするのとはワケが違う。
戦うことを生業としている――同業者の匂い。カシーニは、目の前の少年からそれをわずかに嗅ぎとった。

「おおかた、漁業組合あたりに雇われた用心棒ってとこかあ……?いけないなあ、若い命は健全に使えよぉ」
「お、オヤジィ!」
「焦るな、トミィ。相手は一人、それもガキときたぁ……!お前の船の船長は、そんな輩に負けるタマかぁ……!?」

カシーニはジャマダハルの刀身をペロリと舐めた。
食事にも大活躍のこの獲物は、肉の脂で表面を覆われているために切れ味がなかった。
刺突以外は、せいぜいが殴る程度にしか使えない。

「嘆かわしいぃぃ世の中になったもんだぁ。ええ?こんな年端も行ってないようなガキまで、
 生きるために戦わなきゃならないときたぁ。生まれつきそういうのが得意なガキもいるが、お前は違うだろぉ、ええ?」

この少年は叫びながら突っ込んできた。隠密の優位を捨ててまで、自分を鼓舞せねば戦えぬ手合いだろう。
キャプテン・カシーニは愛に生きる男だった。愛に生きる男は、戦士以外の者を手にかけることを良しとはしなかった。
まあそれとこれとは全然関係ない話で、武器持って突っ込んできたこの少年は相違なく戦士なので普通に殺るけれど。

「海の男はおしなべて寛大だぁ、最初の奇襲には目をつぶってやる。二度、俺に刃向かうんならそれなりに相手をしてやる。
 それで懲りたら陸で真面目に働けぇ。好奇心だけでこういうことやってるとなあ、遠からず残酷な結果をもたらすぞぉ。
 だが、三度――三度目、俺にその槍を向けたらぁ……そのときは残酷な死に方でお前に最期の教訓をくれてやる」

言うなり、カシーニはブーツの底で木床を蹴った。
瞬転、裂帛の踏み込みが入る。それまでの、穏やかな動作との落差が緩急となって、実速度以上の速さを相手に錯覚させる。
踏み込んだ先でブーツの踵を捻り、片足を軸にして回転。いきおいを乗せたジャマダハルを滑らせる。
刺突に特化した直剣が、切れ味のない刃で少年へと迫る!


【ウィレムの奇襲を見抜いて対処するも仕留め切れない。間合いをとりつつ踏み込んで横薙ぎの一撃】

162 :アルテリア ◆U.mk0VYot6 :11/07/04 08:01:11 ID:???
>「生けどりにするのは構わねえが――ちゃんと世話はしろよ?」
まるで娘にペットを買い与えるかのようにボルトは答えた。
「あぁ任せロ、ちゃんと責任をもって牢屋に叩き込んでおク」
またそれに応えるかのように自信に満ちた笑みを浮べる。

>「作戦本部より掃討組総員。おれだ、謹聴しろ。漁船の皆様がお怒りだ。どうやらおれたち、開拓都市の件で疫病神扱いらしい。
> あんまりにもこっちの船の居心地が悪いので――賊どもの船に引っ越すことにした。先住民が邪魔だな。排除しろ。
>サジタリウス、甲板からこっちに乗り移ろうとしてるゴーレムを止めろ。前回より楽な相手だ、方法は任せる。
「了解しタ。」
ボルトの指示を受け、アルテリアは行動を開始する。
まず始めに取り出したのは、前回の任務であまり役立たなかったワイヤー細工の槍
すぐさま敵船のマストに狙いを定め、放つ
放たれた槍はマストに突き刺さった。
スイの遺才により、急速に風が強まっていく中、ワイヤーを引っ張りしっかり刺さっているか確認すると
「ハッハァァァァァァァ!!!」
ワイヤーをしっかりと握り躊躇なくマストから飛び降り、振り子のように敵船へ飛び移る
賊の頭を掠めるほど下降し、アルテリアは再び上昇する。
振り子の原理に反せず、その上昇が止まった瞬間、アルテリアはワイヤーから手を離し宙に舞う
「二流メ、後ろがお留守だゾ」
落下の最中、ゴーレムの背後にある操縦席を重点的に狙って弾幕を浴びせる。
2、3機ほど行動不能にすると、またワイヤー槍をマストに放ち、同じことを繰り替えす。
【ターザンジャンプで飛び移り、ゴーレムの背後を取る。
 背後から攻撃を仕掛け、再び宙ブラリン】

163 :レイリン ◆lvfvBHCkg. :11/07/04 19:24:44 ID:???
迫り来る衝撃に備え、身を縮め、目を閉じるレイリン。
しかし、何時まで経っても、衝撃が来ないことに疑問を覚え、恐る恐る目を開ける。

>「フフフ、いいよいいよ! そうこなくっちゃ! 水中のファンタジックショーの始まり始まり〜。
――笑喚世界!!」
>「浮力を極限まで上げた。対象を意思持たぬ物に限定でね」

周りには先ほどまでの勢いを失い、水中に漂う瓦礫。
そして、薄暗い湖底を照らす幻想的な光、その美しい光景にしばしの間目を奪われる。

「あ、ありがとうございます、助かりました」

ロキの魔法により、助けられたことに気付くと、慌ててお礼をした。
そして水中箒の方向を変え、今度こそ上へと上昇する。

>「出てくるかな〜、出てくるかな〜? いらんものまで出てきたらどうしよう。
封印されしは古代魔法王国の秘宝! 悠久の昔より宝を守るは伝説の水龍……みたいなさあ!」
「悠久の昔と言っても、この湖が出来たのは最近ですし、流石にそんな大層なものはいないでしょう」

ロキの隣に並び、何が出てくるかワクワクしているロキに対して苦笑いをしながら答える。
そうは言っても、レイリンが何か出てこないだろうかと僅かに期待しているのも事実だった。

164 :レイリン ◆lvfvBHCkg. :11/07/04 19:25:05 ID:???
>「あ、あれはなんですか!」
「ふふふ、そうやって何もないのに人を脅かしたりすること、私も昔はやっていましたよ」

レイリンの否定的な発言に対して、セフィリアが場を和ませようと言った冗談だと認識し、セフィリアの子供っぽい言動に笑みをこぼす。
ゴーレムに乗り、瓦礫が無くなった湖底へと降り立ったセフィリアの元へ向かうべく水中箒を向ける。
その時、湖底から出てきた巨大な影が、セフィリアをゴーレムごと飲み込んだ。

「え……」

あまりの出来事にしばし呆然とするレイリン。
眼前には、まるで神話から飛び出してきたような巨大な魚、見た目からすれば龍と言う方が正しいだろうが――。
その巨躯を少し動かしただけで瓦礫は容易く砕け、水を切るように鋭いヒレが迫る。
数多もの鱗が連なる身体が、光をうけ淡く光る。
おびただしい数の瓦礫を粉砕して尚全く傷ついていない鱗は相当固いであろう事をうかがわせる。
地上なら兎も角、レイリン含め周りの面子は水中ではあまり戦力にはならないだろう。
唯一魔法が使えるであろうロキも、瓦礫を浮かせ、魔力を使っているはずだ。

「散開しましょう!」

本来ならば、こんな危険な状況は逃げるに限る、だがセフィリアが飲み込まれた今、見捨てて逃げ帰るわけにはいかない。
地上に出るにしても、追ってくる保証は何処にもないし、外には外で一般人が居るはずだ。
この魚の体内がどうなっているかは分からないが、流石にゴーレムをすぐ消化できるとは思えない。
だからこそ、飲み込まれたセフィリアが内部から倒す、レイリンにはこれしか思いつかなかった。

>『じゃあおれより先にあいつに念信しろ!それで、可能な限り交戦して情報収集!こっちから人員送る余裕はねえ――』
>「ガルブレイズちゃん、応答するでありますーっ!」
「情報収集?
こっちもそんな余裕はねえ、ですよ、こんな怪物と戦う時は殺すか、殺されるかの二択しかありませんから。
でも、命令なら私は最大限努力します」

ボルトとの連絡も途絶え、増援も来ない、今の状況はほぼ最悪に近い。
次に魚は近くにいたファミアへと襲いかかる。
食べられる、と思った瞬間、ファミアはその小さい身体をめいいっぱい伸ばし、つっかえ棒のように口を閉じさせなかった。

>「えーと、あの、これどうしたらいいんでしょうか……?」
>「ファミアちゃん、無事だったんだね!」
喜んでみたものの、あんまりゆっくりしていると今度こそ本当にやられそうだ!
>「行って! セフィさん達の力になってあげて!」
>「名付けて……react(リアクト)だ!!」

ロキが魚の中にいるセフィリアに向けて、魔力の運び手たる犬を送り込む。

「ガルブレイズ、応答しなさい、無事ですか?」

どうこの困難を乗り切るか、そのためにはまずセフィリアとの念信が通じなければ始まらない。



165 :トール ◆zH2H/Hi8U2 :11/07/05 02:06:44 ID:???
男は、空からある日落ちてきた。
男は、その馬鹿みたいな力を買われ従士隊へ配属された。
男は、お金が大好きだった。
そして、男は従士隊の活動資金を横領した疑いで左遷された。

そして、今に至る。

「おばちゃん、お代わり頼むわ。」

「あんた、これで30品目だよ……まったく。
腹壊しても知らないからね。」

湖畔の村近くの定食屋でメシをかっ食らう金髪の男を、妙齢の女性が
怪訝な顔で覗き込む。
しかし男は平然とした顔で再び出された料理に手を伸ばす。

「腹が減っては何とかは出来ないとか言っただろ?
あーなんだったけ?ここまで出てるんだけどなぁ。
まぁ、どうでもいいか。
どんな事でも満たしたいモンはとことん満たす。
それが俺のモットーだから。」

合計33品の料理を平らげた男は、領収書を請求すると
そこへこう書くように伝えた。

「請求は、従士隊遊撃課って書いといて。
メシも美味かったし満足、満足。
さぁて……と。お仕事に行きますか。」

男は巨大な鉄槌を片腕で担ぎ上げると湖畔に停泊されていた
船に乗り込みある場所へ向かっていった。


166 :ルイン ◆5q.yyAvL6. :11/07/05 04:14:51 ID:???
>「うるせえ。テメェが先頭だろうが、さっさと進め。
> あの汚泥と虫ケラを朝飯代わりにぶち込まれてえか。」

「はいいいひぃぃぃっっ!ごめんなさい喜んで進ませていただきます!」

理不尽な言葉の暴力に傷つきながら全速前進。
そりゃあ少しは言い返したいけど朝ごはんが虫ケラになるとゲロスパイラルなのでやめておく。
ヘタレには生き辛い時代である。

水場に住み着いているというエルフがお節介とばかりに喚いている。
当然、ルインには理解不能の言語なので内容は分からない。

>「……『さっさと帰れ、そこの半分枯れ木に成り果てた年増女』だとよ」

相変わらずサフロールは嫌味を振りまいているが今回は少々様子が違う。
空気がぴりぴりと殺気立っていた。走る直感────これは怒りの琴線に触れたな。

>「ふふっ、ふふふふ…………良い度胸ですよ!喧嘩売っているんですね?そうに違いないですよね!?
> ちょっ!何処行った!?出ぇぇてぇ来ぉいいぃぃっ!!!
> そうそう、貴方もですよサフロール君。私、二度目はないってちゃんと言いましたものね。やっぱり――皮膚、からかな。」

「ぬわーーー!ここを食肉工場にでもする気ですかーーーっ!?」

と言ってみたものの、怒ったノイファを抑えるのは小便ちびるくらい怖いので何もしない。
それどころかさささっと隅の方へ退避する始末だった。

(そりゃ無事でいて欲しいと思うけども……安全第一!)

ぐっと親指を立て爽やかな笑顔でサフロールに声援を送った。もちろん心の中で。


鍾乳洞の奥へおっかなびっくり突き進むルインの足が、再び止まった。
魔物に行く手を阻まれた訳ではない。単純にこれ以上先に進めないのだ。

「…………こんなのって俺聞いてない」

天井の穴からごうごうと流れる水は最早滝と言っても差し支えない。
半ば河と化した流水は闇へ吸い込まれるように動いている。

>『作戦本部より探索組各位、聞こえるか?』

バックパックに閉まっていた念信機から声。雑音交じりだがそれは確かにボルトのものだった。
ルインは慌てて念信機を取り出し、もしかしたら作戦中止かもと淡い期待を寄せる。
任務より我が身一番。また魔物が襲ってきたら失禁する自信があった。

>『このまま進め。穴の処理は現場の判断に任せる』

「え、えぇ〜〜〜〜〜………」

まあ当然のことながら、そんな都合の良い幻想が現実になるはずもなく。
顔を歪めるルインを合いの手とばかりにリードルフが頬をつねった。

進むにしてもこの行く手を遮る水をどうにかせねばならない。
そこで魔術でサフロールが即座に橋を創りあげた。
なんか蛆虫、とか人間扱いされてなかった気がするが幻聴なのだろう。多分。
ただこのままでは流れる水が運ぶ巨大な岩石群が橋を壊す可能性がある。

167 :ルイン ◆5q.yyAvL6. :11/07/05 04:31:55 ID:???
>「……ちっとばかし量が多いけど、やってやるぜっ!!
> お前ら!ここは俺が何とかするから、先に行けっ!!!!」

「え?そんな無ちゃ………」

反応した時には、既にフィンは落石から橋を守っていた。
その神業的技巧で岩を捌いていくが、何せ物量が違う。逃した岩がフィンの体に降り注いでいく。
いくら防御の天才といえどあのままでは橋から落ちるなりしかねない。

「バカぁーっ!そのまま先に言ったら君はどうすんだ!?」

俺も手伝うから、と飛び出しそうになったが、踏み止まった。
いやいや、下手したら死ぬじゃないか。ここはお言葉に甘えて………
いや!だめだめ、どうにかして手伝わねば……仲間なんだから。
二つの思考がぶつかり、逡巡。答えは纏まらない。

>「なるほど……そうすれば良いわけね。なら、お言葉に甘えて行かせて貰おうかしら、ねっ――ルイン君!」

「えっ?ちょっ、強引な……えっ!?えぇええっ!!」

腕を強引に掴まれると橋を一気に駆け、向こう岸近くでぶん投げられる。
無論そこにルインの意思は挟まれなかったし、着地に失敗して尻餅を打つはめになった。

>「それじゃあ、ルイン君。初めての共同作業に入ろうか。」

「ええっ!?嬉しいような嬉しくないような………!」

痛む尻を押さえながら切断された長い鍾乳石をちらと見やる。
愚鈍なルインも流石にノイファの意図を理解できた。

>「私がルイン君の"眼"になるから。フィン君が渡る時間を稼ぐために力を貸してちょうだい。」

差し出された手を取り、体を持ち上げる。
ルインは生まれつき臆病だが、かといって薄情という訳ではない。

「もちろん手でも足でも貸しますよ!……いや、俺にできるか、わかんないですけど」

及び腰ではあるが首肯した。落石は魔物と違って怖くないからだ。
そして一拍挟んで「あ」と間の抜けた声と同時に、掴んだままだった手を離した。

「うわわ!あわあわ………ごっ、ごめんなさい!」

女性に対して免疫のないルインは急に恥ずかしくなったらしく、見るからに動揺している。
状況が状況なのでそれ以上何も言えず、さっさと高い動悸を落ち着かせることに努めた。

切り取られた鍾乳石を一本手に取り、軽く振ってみる。
当然槍の方が投げやすい。がそれだとマテリアルを失うはめになる。
投擲の際は投げるというよりも腕を伸ばす感覚に近い。突きの動作の延長。
故に投げても外すことはない。いつもと同じ精確精密に、目標を穿つ。

未来予見が橋に直撃する落石を示すと、ルインは構えた鍾乳石を標的へ飛ばした。
貫く為の遺才で放たれたそれは橋へ迫る落石を悉く穿ち、砕き、払って向こう岸の岸壁で刺突音が響く。

「よ、よおし!不安だったけどグッジョブ俺!さあ落石は任せて走れっ!」

緊張のせいで声が少し裏返った。この程度のことで緊張してどうする。


【橋に直撃する落石を即席の槍で撃ち落す】

168 :ウィレム ◆uBe66UnnCY :11/07/05 05:05:08 ID:???
ウィレムには、この遺才の副産物と言うべき代物――類い稀なる動体視力と反応速度がある。
体の前に構えた槍が船長らしき男の肉体に傷を付けられなかったことが網膜に伝わることとほぼ同時。
ウィレムは半歩横にずれる。反撃があるのは猿でも分かる、避けるには半歩で充分のはずだ。
実際、その刃がウィレムの体に何ら影響を与えることはなかった。後ろに飛び跳ね、距離をとる。

先手は、必勝ではなかった。結果的にウィレムの奇襲は不発に終わり、そしてここに対峙することになった。
室内。決して広くはない。走り回っ撹乱することもできない。
戦闘能力は見るからに差がある。くぐった修羅場の数も、実戦の数も。予想でしかないが、ほぼ確信に近い。
考えれば考える程、ウィレムに優位なところが見つからない。

――それでも、絶対に背は向けないけど。

>「嘆かわしいぃぃ世の中になったもんだぁ。ええ?こんな年端も行ってないようなガキまで、
> 生きるために戦わなきゃならないときたぁ。生まれつきそういうのが得意なガキもいるが、お前は違うだろぉ、ええ?」

(俺の何を知ってるんだよ)

そんなことを思ってみたりもしたが、確かにそうだ。基本的にウィレムは戦いには向いていない。
誰かの役には立ちたいと常々思っているけれど、出来ればそれは暴力を伴わない方法の方が嬉しい。
だけど、それでも。戦わなければいけない時はいくらでもある。
たとえば、今、この時間とか。

付けたままだった遮光眼鏡を外し、その場に捨てる。こんなものはもう邪魔でしかない。
この、両の眼で。しっかりと見据える。

>「海の男はおしなべて寛大だぁ、最初の奇襲には目をつぶってやる。二度、俺に刃向かうんならそれなりに相手をしてやる。
> それで懲りたら陸で真面目に働けぇ。好奇心だけでこういうことやってるとなあ、遠からず残酷な結果をもたらすぞぉ。
> だが、三度――三度目、俺にその槍を向けたらぁ……そのときは残酷な死に方でお前に最期の教訓をくれてやる」

「なら、二度目で終わらせてやるよ」

こちらに踏み込んでくる船長の姿を見て、そっと呟く。
ウィレムの動体視力は、こちらに刃が向かっているのを確実に捉えている。このままなら、当然その武器は――。

「……っがぁ!」

だが、避けない。
避けることは出来たかもしれない。いや、出来ただろう。回避する能力に関しては、ウィレムには自負がある。
だが、避けてばかりではどうにもならない。体力にはおそらく差がある、最終的には食らうのに変わりない。
ならば、もう捨てる。結局負けるなら仕方ない、せめて相打ちにまでは持っていく。
こちらに攻撃する瞬間。薙ぎ払うことに集中する瞬間。その動体視力で、その瞬間を確実に狙って。
ウィレムは、手槍を真っ直ぐ前に突き出していた。

ざっくりいかれても仕方ないと思っていたウィレムだから、胴体から血が流れていないことに少し驚く。
どうやらほぼ切れ味というものはなくなっているらしいが、それでも鉄の塊をぶち当てられたようなものだ。
文字通り、血反吐を吐き出す程度にはウィレムの体に確実な衝撃が加わっている。
肋骨は何本いかれてしまっただろうか。血反吐が出たが内臓への被害は如何ほどのものなのだろうか。
だが、あいにくウィレムはそんな自分のことを考えるゆとりはなくて。

とりあえず最初に考えるのはただひとつ。どこまでいけたか。どこまでやれたか。
さぁ、この手には、肉を突き刺す感触はあるだろうか――?

【回避を捨て、カウンター。一撃を食らいながらも突きを確実に当てることを狙う】

169 :セフィリア ◆LGH1NVF4LA :11/07/05 12:09:32 ID:???
ガルブレイズ家の末娘……として貴族として恥ずかしくない教育を受けてきた
それでもこんな巨大な魚のをみたことも聞いたこともない、まるで東方の伝承に出てくる大地を支える巨大魚のよう
これは少し教養をひけらかしてしまったと自省しつつ、目の前の巨大な魚を羊皮紙ごしにみつめるがどう見ても「おばけウツボ」といったほうがしっくり来る
もっとも教養をひけらかすもなにも口に出るまえに口の中に入れられてしまったのだから世話はない

サムエルソンごとウツボの顎、さらにその奥、胃の中にまでエスコートされて
「く、くらい……」
そこは光届かない湖底……その深奥ともいえる主の胃袋のなか、光などはとどこうはずもない
セフィリアは自らの命が絶たれていないことをサムエルソンと神様に感謝して、ライトをつけた
「あれ?広い……それに瓦礫がいっぱい」
彼女が予想していたグロテスクでヌメッとした景色とは少し違う、瓦礫が散乱して……そう洪水の後の町といった
そんな景色が広がっていたのだ、そこに胃の内容物がプラスされた景色、とても筆舌に尽くし難いものであった
セフィリアは目にした景色の異様さに急に不安になってきた

>「ガルブレイズちゃん、応答するでありますーっ!」
「せ、先輩!私は大丈夫です! サムちゃんのお陰で胃で溶かされずにすんでます
中は瓦礫でいっぱいです……財宝はもしかしたらここにあるかもしれません」

予測、いや予感の域を出ない彼女の言葉、案外的を射ているかもしれない
セフィリアの視界には豪邸だったと思われる瓦礫が何カ所か見受けられたからだ
彼女が調査をしてみようとサムエルソンで一歩踏み出すとグニャッとした感触の胃壁に足を取られ、とてもではないがこのままゴーレムで先に進むことはできない
操縦櫃から外に出て、自らの足で調査するというの頭を過ったがすぐにかぶりをふった
外には胃液や瘴気が充満しているかもしれない、目に見えない恐怖を考えると外にでる勇気を出すことが出来ない
さてどうしようかと思考の海に漕ぎだしたが一漕ぎもしないうちに念信のためにいきなり座礁することになる

>「ガルブレイズちゃん、応答するでありますーっ!」
>「ガルブレイズ、応答しなさい、無事ですか?」

「はい、私は大丈夫です。サムちゃんのお陰で魚のご飯にならずにすんでいます
中は瓦礫だらけです。もしかしたら財宝はここにあるかもしれませんよ」

心配する皆の声に明るく応えようと努力する、内心怖い気持ちのほうが大きい
しかし、それよりも皆を不安にしたくはない気持ちのほうが大きい、それ故の明るさだった
もちろん財宝うんぬんは彼女の冗談としていったにすぎない

心配する声が多数を占める中……
>「なかなかやるね! 大型のモンスターを手っ取り早く倒す方法はね、中からぶち破ることだよ!」
ロキだけは明るい声で他とはまったく違うことをいう
「は、はい、そうですね」
彼女はまだロキのことをよく知らない、この言葉を彼女を励ますジョークと受け取って、ロキさんはやさしいなと好意的に受け取る

>「ワタシの子ども達を送り込んだから使ってやって! 君ならゴーレムの本当の力を引き出せる。
だが、次に続いた言葉でロキが本気でそういっているのだとわかった
突如、魔力探知機に反応があったかと思うとすぐにサムエルソンが異常状態に陥った
「オーバーフロウ!!」
魔力が過剰状態になったときに生じる一種の暴走状態、本来なら魔動炉が耐えられなくなって爆散してしまう
「ロ、ロキさん!いったいなにを!」
セフィリアが焦ったのは無理もない魔動炉を暴走させてゴーレムを破壊することはいままで前例がなかったわけではないからだ
だが、彼女の焦りは杞憂に終る

「……あれ?サムちゃんが……私と一緒にいる……私とサムちゃんが一つに……違う!」
襲い来る奇妙な感覚、困惑、理解、その行程は夢のような一瞬
「そうだね!今の私たちに敵はない!!そう!そうなんだよ!」
ゴーレムと一つになった?違う!セフィリアとサムエルソンは別々の個、それ以上でもそれ以下でもない
しかし、それこそが彼女と彼の最高の状態、人とゴーレムの究極のあり方の答え
それがREactなのだ

【セフィリア&サムエルソン覚醒】

170 :スイ ◆nulVwXAKKU :11/07/05 20:37:22 ID:???
音を立てて自分に矢が飛来してくる。
スイは反射的にそれらを掴んだ。

「んだよ。わざわざ自分から武器くれんのか?」

思わず笑いが零れる。
矢を敵方に向け、風に乗せ思いっきり放った。
敵の射手の首を矢が貫く。
噴き出た血を眺めながら、恍惚とした表情になる。

「血っつーのはいいよなぁ。死を知らせてくれるし、綺麗だし。」

その時念信器からボルトの声が流れてきた。

>「作戦本部より掃討組総員。おれだ、謹聴しろ。漁船の皆様がお怒りだ。どうやらおれたち、開拓都市の件で疫病神扱いらしい。
 あんまりにもこっちの船の居心地が悪いので――賊どもの船に引っ越すことにした。先住民が邪魔だな。排除しろ。

 スイ、船の操舵を任せる。この図体の帆船で、敵の砲撃を船ごと躱すなんてアホみたいな芸当は、お前にしかできねえだろうからな。

 総員、行動指示は把握したな?否定され尽くしたお前らの居場所は、自分達の手で切り拓け。
 状況開始だ。――連中のお高く止まった自己評価を、もっと上から叩き潰してやれ」
「了解。」

目を閉じ、精神を集中させる。
周辺の風の動きに気を配る。
物や動物が動くとき、必ず空気が動く。
それは微弱な風となり、スイのもとへ、伝わってきた。

「…うーん。ウィレムさん動き早いなあ。」

人間が動くにしては早すぎる風。
それを伝えてくるのはウィレムの高速移動だ。
スイはゆっくりと、風を動かし始める。

「きた」

砲弾がこちら側に飛んでくる。
それと同時に、一気に船の回りに風が巻き起こった。
帆が不自然に孕み、船が急回転する。

「もういっちょ!」

さらに飛んできた、砲撃を回避した。
何個か近くに飛来し水は被りはしたものの、漁船は、ほぼ最初の一撃で負った損傷以外無傷だった。
唐突に攻撃が止み、敵の戦艦を見る。
どうやらプリメーラがボルトの命令を遂行したらしい。
アルテリアも、敵船に飛び移っている。
しかしスイは、このまま敵船に飛び移るのは得策では無いと判断した。
あのまま遊撃課員達が集まれば、袋叩きにされる可能性がある。
そんなことがあるわけ無い、と思うかもしれないが、可能性は否定しきれない。

「暇だけど、ここで待機しときますかねぇ。課長さん、命令くれたらいつでも動くぜー!」

暴れ足りないのか、どこか期待するような声でスイはボルトに向かって言った。

【砲弾を風で回避→砲撃が止んだため漁船で命令待機】

171 :トール ◆zH2H/Hi8U2 :11/07/06 03:19:38 ID:???
「おかしいなぁ…この辺らしいんだけどな。」

トールを乗せた船はいつまで経っても目的地へ着く様子がない。
仕方ないので地図を眺めてみた。
「こっちが西で、あっちが東だろ?いや、こっちが西か。
いや、逆だな。ん!?」

トールが船の中で見つけたのは1本の釣竿だった。
彼が赤ん坊の頃に空から落ちてきた時、彼を拾ってくれた爺さんが好きだった釣り。
トールは何だかやりたくなってきてしまった。
「爺ちゃんも好きだったよなぁ、釣り。この待つ時間がたまらねぇって言ってたっけな。
俺は辛抱できなくていつも餌食われてたけど。」

釣竿を湖面に垂らす。
この平和なひと時を感じながら、トールは何か大事な事を忘れているような
気がしたがあまり深くは考えない事にした。

「あー平和だ。平和ってのはいいねぇ。心が穏やかになる。
この世に神も仏もあったもんだ。
心が荒んでばかりの毎日にも、こういう自然からの栄養が必要なんだよな。
ありがとう!!自然様!!」

湖面を揺らす波にすら気付かずトールは釣竿を立ててしばし休憩とした。

172 :クローディア ◆N/wTSkX0q6 :11/07/06 17:25:06 ID:???
あわや垂直落下かと目をつぶった刹那、ジョナサンが腰から筆を抜き出し、壁に何やら描き上げた。
それは輝く網。まるで乾燥した油絵が剥がれ落ちるように、網は壁から落ちて穴へと被さった。
ジョナサンの『才能』。厚みを持った、触れることの出来る絵が、クローディア達を穴から救う。

「た、助かっ――」
「ッ! まだです!」

ナーゼムが鋭く注意を促す。如何に強力な網と言えど、それを支える岩壁はそうもいかない。
ブチブチと音を立てて外れていく網は、再びの自由落下を促す片道切符。クローディアは今度こそ悲鳴を上げた。

「っきぇぇぇぇぇぇぇえええ!」

色気もクソもない奇声。負けず劣らず大音声でダニーが咆哮し、間髪入れずに動いていた。
彼女が行ったのは実にシンプルな挙動。『壁を掴み、懸垂して勢いを緩和する』。
がちがちと岩に爪を立てながら――クローディアは、彼女の腕がその過程で毛むくじゃらの獣へと変わっていくのを見た。

>「これを持て、早く!」

シヴァもまたダニーと事を同じくしていた。差異があるとすれば、それは彼の横腹から突き出たもう一対の腕。
まるで甲虫だ。そしてその形容は真実のものとなった。2対の腕はおよそ人間のものとは思えぬ硬質に覆われている。
獣や鳥のそれでもない。ところどころに突き出た突起は、まさしく虫のそれだった。

ジョナサン、ダニー、シヴァの精緻な連携プレーによって緩やかな着水を得たクローディア達。
しかしほっと息つくわけにもいかなかった。ダニーの警告。彼女たちの落下した地点には、先客がいた。

>「・・・・・・・・・・・・!」
数は五人。滝のように流れる水の煙と音で顔まで判別できないが、身のこなしから観光客ではないと判断。
揃いのバックパックを付けているところを見るに、クローディア達と目的を同じくするトレジャーハンターの類だろう。

>(このままやり過ごそう。余計な戦いは不要だ。)
(採用。バレないように身を潜めるわよ)

とはいえ、位置関係的にどこへ逃げられるわけでもない。
流れ落ちる水に身を隠して、そのままじっと連中が消えるのも待つのみである。
数の上では互角だったが、こちらは非戦闘員を二人抱えているのだ。分の悪い賭けは、するべきではなかった。
やがて五人の先客は先へと進み、その場は滝音が支配するのみとなった。

「なんだったのかしらあいつら……ああジョナサン、上の滝塞いどいて。出来るでしょあんたの遺才なら」

渡るにしても引き返すにしてもこのまま浸水を放っておけばマズいことになるだろう。
クローディアは熟考する。進むべきか、退くべきか。退けば、先客達が入ってきたルートを昇って地上に出られるだろう。
進めばあの5人と競り合いになるのは想像に難くない。こんな洞窟で巡りあった同士など、同じ目的を求めているに決まってる。

だが。ここで退いても、おそらく元の道には帰れまい。
あれだけ盛大に浸水していたのだ、排水機能を備えていない洞窟など、とうの昔に水で埋まっているだろう。
おそらくはここが、諦めるか否かの分水嶺だった。そしてクローディアには、諦めるという選択肢はなかった。
自分の身を売約してまで金をつくってきたのだ。赤字になったとすれば、それは彼女が奴隷に堕ちると同義の結果なのである。

「進むわよ。あたしたちに退路はないの。あるのは末路――。
 金は命より重いんだから。綺麗事でその認識を誤魔化した先にあるのは、この穴蔵で暮らすより酷い結末よ」

クローディアは見上げる。穴が塞がるにせよ、水がはけるまで待ってられない。この氾濫した川を進まねばならない。
現状、彼女たちを阻む運河の幅は渡れるもののそれではない。先行の五人は橋を作ったようだったが、それも既に流されていた。
使えるものがあるとすれば、それはザイルと防水松明と――ここに集った部下だけだろう。

「クライミングで行くわ。マッチョ二人が先行して、壁か天井伝いに向こう岸へ渡って。このザイルを持って行きなさい。
 ジョナサン、ボートとか作れる?小さいのでいいわ。向こう岸からロープを渡せば、流れを利用して安全に渡れるはずよ」

【探索組をやり過ごす。
 ダニーとシヴァにザイルをもたせ天井伝いに向こう岸へ渡るよう指示。ジョナサンに天井の穴塞ぎと小舟の手配を指示】

173 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/07/07 01:12:40 ID:???
【探索組】

見事な連携によって難所を突破した探索組一行。そんな彼らの前にさらなる難関が立ちはだかる。
しばらく進んだところで彼らが目にしたものは、通路の先を綺麗にふたつに分かった二叉路だった。
分かれ目のちょうど中央に突き立った立て札にはこう書かれている。

『←メニアーチャ家  |  ギルゴールド家→』

どうやら地下宝物庫は、家ごとに管理しているらしかった。
この先のもろもろのトラップ……侵入者撃退用のそれも含め、全てを相手にした場合この分かれ道の両方を調べる時間はない。
平時ならば虱潰しに探せただろうが、なにせどこかの馬鹿が空けた大穴のせいでこの地下通路自体の存続が危うい。
探索組が取れる選択は二つ。どちらかを諦めるか――パーティを二手に分かつか、である。

立て札には同時に地図も表記してあった。
右・メニアーチャ家の財産庫は目的地までの距離こそ短いもののところどころに頭蓋骨を模した刻印が点在している。
左・ギルゴールド家の財産庫は一族の墓地としても使っていたらしく、広い空間に墓標がズラリと並んでいるようだ。

目を凝らせば、左の通路のずっと奥で、青白い光がふわりと舞ったのが見えたかも知れない。
なにぶんそれは一瞬のことだったので、発見したとしても誰かとその認識を共有することは難しいだろう。


【二手の分かれ道。どちらかを諦めるか、二手に分かれるほかないようです】


【掃討組】

スレイプニルが敵の砲撃を被弾し、搭乗していたボルトは操縦基の中で右に左に攪拌された。
いつものことだ。実家で畑を耕していた頃は、もっと無茶な扱いをして親に殴られたものである。
ボルトはゴーレムが好きだった。搭乗者の動きを巨体に再現してくれるこの岩人形は、熟練した乗り手にとって自分の身体に等しい。
もともと小柄だったのに加えて、小手先の動きを得意としていたボルトは、自分が巨人になったような錯覚をゴーレムから得ていた。

戦闘用を弄る機会にはさほど恵まれなかったが、ゴーレムに乗っているときの全能感は何にも代えがたい快楽物質だ。
セフィリアのように偏執的な愛情があるわけではない。徹底的な道具扱い。外出時に服を選ぶのと変りない。
何より装甲の中にいれば簡単には死なないというのが良い。凡人であるボルトは、死に対する恐れも人並みに持っていた。

「給料減らされてえのかアホ共!お前らに払ってる金の半分は、おれに弾が行かねえようにする御代だぞ」

脳を揺らされて吐きそうになるのを堪えながら念信器に叫ぶ。自分は無事だという報告と激を飛ばすのを同時にやってのける。
情報表示羊皮紙をすばやくチェックし、制御すべき損害がないことを確認してスレイプニルを発進させた。
アクターモードでボルトの動きを再現したスレイプニルは次弾を横っ飛びで回避。
スイが風で船ごと急転機動させ、魔導弾が擦過していく。敵武装に飛翔機雷がなくて良かった。あれを喰らえば流石にヤバい。

こちらに砲弾をかましてきたゴーレムをアルテリアが沈黙させ、艦載砲をプリメーラが黙らせる。
不意打ちによって進退きわまるところまで追い詰められた漁船ではあったが、遊撃課の活躍によって事態は好転しつつあった。

そのとき、先んじて水中へと払い落とされた湖賊の戦闘員がこちらの船底を掴んだ。
そのまま懸垂登攀で船体をよじ登ってくる。彼らは吸着機雷を片手に、漁船の土手っ腹に風穴を開けようとしていた。

「スイ!右舷から何人か張り付いてやがる!振り落とせ!」

同じころ、敵船の甲板を一掃したアルテリアとプリメーラの前に巨大な影が出現した。
フラクタル社の乙種ゴーレム『ハイマウント』の改型だが、通常の戦闘艦が擁するような揚陸艦載機とは違うタイプだ。
足回りに噴射術式を備え、平面での機動性を極度に強化した――甲板を走りまわる為のカスタム。乗り込まれた時用の迎撃機である。
アルテリアの矢も、プリメーラの魔物も回避して反撃するに足るフットワークの軽さを備えていた。

『ハイマウント』は薙刀型の近接兵装を両手で構え、噴射術式を蒸す。
まずは――揚陸機を全滅させかねないアルテリアへ高速で接近して唐竹割りの一閃を繰り出した!

【スイ:右舷に何人かの賊が張り付き吸着機雷を仕掛けようとしている。迎撃指令
 アルテリア・プリメーラ:機動性重視の乙種ゴーレム『ハイマウント』出現。アルテリアに接近し薙刀を振り下ろす】

174 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/07/07 02:41:04 ID:???
【掃討組・操舵室】

キャプテン・カシーニが薙いだジャマダハルの刀身が、少年の脇腹へ直撃する。
切れ味のない刃は肉を抉らず、ただ骨と肉に打撃を与えるのみ。切れないことを見抜いていたか――まさか。

>「……っがぁ!」

敵もさるもの、この刃は確実に躱すと踏んでいた。右でも、左でも、スウェーでも、体勢の崩れたところへ、二撃目。
右袖に隠し持っていた小型の魔導砲をぶち込む。カシーニの必勝パターンであった。
それが、あえて避けないことで逆にこちらの挙動が封じられ――連携を崩された。予想外の硬直に身体が反応できない。
少年は、ただ受けるに甘んじているわけではなかった。その手にあるのは……手槍の一閃!
動けない。槍が迫る。五体が満足だったらば、剣を捨て逃げに徹することが出来たろう。しかし剣は左腕と同一化していた。

(避――否――死!!)

槍が肉を穿つ音。操舵室に血液の花弁が散った。

「おいおいぃ……残り一本しかない腕が、オシャカになっちまったぁじゃあねえかぁ……!」

キャプテン・カシーニは生きていた。さりとて右腕には手槍が無残にも突き刺さり、夥しい鮮血を吹いている。
咄嗟に腕を突き出し盾にしたのだが――命の代償はあまりにも大きすぎた。右腕は骨を半ばで断たれ、指先ひとつ動かない。
奥歯を噛む。体幹を捻って膂力を生み出し、ジャマダハルを接続した左腕を、少年に食い込ませたまま振り抜き、吹っ飛ばす。
発火術式で傷口を焼き、強引に血止めしてカシーニは追撃をかけるべく踏み込んだ。

年端もいかぬ小僧だと侮っていたが、なかなかどうして地力がある。土壇場での機転も効く。
そして何より――いざとなれば肉を切らせて骨を断つだけの覚悟があった。彼我の力量差を受け入れ、最も勝算の高い手を選ぶ。
これが、彼ぐらいの歳の戦士には難しいのだ。精神・体力ともに充溢している年頃だから、どうしても自信が過剰になる。
格上を相手にしても、知恵と勇気で渡り合える――そういう幻想に囚われ地を這う羽目になる若年の戦士をカシーニは何人も見てきた。
見てきただけではない。実際にそういう手合いを相対し、殺してきた。歴戦の武勇に恥じぬ戦いを経験してきたのだ。
そのカシーニが、それら屈強な戦士達よりも幾分ひ弱なこの少年を殺せない。それだけで少年には価値があった。

「見込みがあるなあガキィ……!あんなしみったれた船なんか降りて、俺と湖の覇王を目指さんかぁ……?
 湖賊はいいぞぉ……!うまい酒も、女もある。お前さん、見たところ女の一人も抱いたことがなさそうだがぁ……
 ああ、ああ、言わずともわかる。顔を見れば書いてある。海の男にはみーんなお見通しだぁ……!」

肘から生えた剣を自在に操り、連撃の嵐。
これが普通の人間には困難な芸当だ。通常、剣というものは肩と、肘と――手首で振るうものである。
手首を固定して使うジャマダハルという剣は、刺突力こと他の剣の比ではないが、それ以外が致命的に遅れをとる玄人向けの剣だった。
だがカシーニは違う、己の手足として長年使い込んだ結果、普通の剣と遜色ない動きを可能とするに至った。
それでいて、刺突性能は元のままなのだ。これが強くないわけがない。

「湖賊になれぇ、ガキィ!毎晩、極上の女を抱かせてやるぞぉ……!」


【右腕がオシャカに。ジャマダハルの連撃を繰り出しながら湖賊に勧誘】

175 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/07/07 02:41:27 ID:???
【潜水組】

「アルフートちゃん!生きていたのでありますか!」

巨魚の口腔の先端で、その咬合に抗っているファミアを発見した。
まるでつっかえ棒のようにあぎとを押し上げている。巨魚は何が起きたのかわからずいやいやをするように頭を振るばかり。
ファミア・アルフート。『抜山』と呼ばれる剛力無双を誇る遺才の遊撃課員だ。その矮躯からは想像もできない力働きをする。

>「えーと、あの、これどうしたらいいんでしょうか……?」

「いい感じに嫌がってるみたいでありますよ!そのままストレス死にするまで嫌がらせするとかどうでしょう!」

頭の弱い提案をしながら、スティレットは水中箒で湖中を駆ける。
館崩しを抱くようにして構え、ファミアの傍を抜けるようにして巨魚の口腔に飛び込む。いきおいそのまま剣を振り抜いた。

「――!!」

阻まれる。水中故に動きが鈍っているのか、水圧故に身体が上手く機能しないのか――対物破壊の遺才が発動しない。
巨魚の弾力ある上顎に剣を弾かれ、スティレットは痺れる腕を庇いながら距離をとった。

「っくうー!『崩剣』さえまともに使えれば、今のであのお魚を三枚おろしにできたのでありますがっ……!」

スティレットが気付いていない。巨魚の口腔が、しみ出した粘液で構成された薄い膜に覆われていることに。
それは一種のコーティングのような効果をもたらし、『崩剣』が割断したのはその皮膜だけだったということに。
数ある『崩剣』の弱点のひとつ。この遺才が効力を発揮するには破壊対象を術者が正しく認識している必要がある。
見えない膜や壁などを間に置かれると、それのみを破壊して剣が止まってしまうのだった。

>「名付けて……react(リアクト)だ!!」

ロキが巨魚の口中へ何かを送り込んだ刹那、突如として巨魚が暴れだした。
丸呑みにした獲物に胃の中で思い切り噛み付かれた蛇のようだ。のたうち回り、そのたびに周りの瓦礫が切断されていく。
咥えられっぱなしのファミアなんか、そうとう振り回されたはずだが――無事だろうか。

「! ――ガルブレイズちゃんでありますね!? シキマどの、彼女に指示を!!」

攪拌される水中で、スティレットは再び発進した。ファミアを救出しなければならない。
館崩しはいまやナマクラもいいところの鉄塊に成り果てたが、それでもつっかえ棒程度には役立つだろう。

「ハティアどの、援護お願いするであります! アルフートちゃん、手を――!」

暴れる巨魚の隙を縫って、少しずつファミアのもとへと肉迫していく。
そのとき、彼女の背後に鋭利にヒレを搭載した尻尾が振り下ろされた!


【粘膜を認識できず『崩剣』失敗。サムエルソンに中から刺されてバハムート暴れる。振り回されるファミアを助けに駆ける】

176 :ウィレム ◆uBe66UnnCY :11/07/07 14:42:41 ID:???
穿ったのは――腕。
最善の一手は、間違いなく急所。及第点なら胴体部。悪くとも、その足を破壊し動きを阻害。
どれにも一致しない、不合格。決死の一撃ではあったが、その結果はあまり芳しくない。
片腕が使えなくとも、人は動ける。それがどんなに痛みを伴っても、まだ戦える余力は残されているものだ。
ダンブルウィードでの自分が、そうだったように。

>「おいおいぃ……残り一本しかない腕が、オシャカになっちまったぁじゃあねえかぁ……!」

そんな声が聞こえると同時、未だ脇腹に食い込んでいた刃に新たに被さる圧力がかかり、
その力に負けるようにウィレムは吹き飛ばされ、壁へと叩きつけられることになる。
吹き飛ばされながらも槍を握り締める手を緩めなかったのは自分を褒めてやりたいことだろう。
武器を失ってしまえば、詰む。

よろよろと立ち上がる。いっつも俺って満身創痍だな、と我ながら呆れてしまう。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。立ち上がることが出来たのが信じられないぐらいだ。
だが立ち上がれたのは紛れもない事実で。ならば、もう少し無理をするとしよう。
早足で船長の男に近づき、またしても対峙することになる。

>「見込みがあるなあガキィ……!あんなしみったれた船なんか降りて、俺と湖の覇王を目指さんかぁ……?
> 湖賊はいいぞぉ……!うまい酒も、女もある。お前さん、見たところ女の一人も抱いたことがなさそうだがぁ……
> ああ、ああ、言わずともわかる。顔を見れば書いてある。海の男にはみーんなお見通しだぁ……!」

「――っ!?」

そんなに俺って童貞臭がするかなぁ、と少し悲しくなる。だが事実であって、だからウィレムも何も言えない。
しかし、どうやらウィレムを勧誘しているらしい。自分の腕に深刻な被害を与えた奴を誘うとは。
その豪胆さは懐が深いと言えばいいのだろうか。単に口だけなのかもしれないが。

繰り出される連撃、ウィレムは回避に集中する。食らった上での攻撃はもう使えないだろう。
二回も同じ手が通用するほど簡単な相手だとは毛ほどにも思っていない。
後ろに、左右に、半歩。その視力とその脚力で、一撃一撃を確実に回避する。

だが、何度も避けられる筈はない。脇腹の痛みは続いているから、少しずつ、反応速度の遅れが起こる。
その遅れは、やがて避けきれぬ遅れとなって。ウィレムの左の肩口に、刺突性の衝撃。
回避の行動中だったから、思わず足がもつれ。片膝をつくような態勢になってしまった。

>「湖賊になれぇ、ガキィ!毎晩、極上の女を抱かせてやるぞぉ……!」

言いながら、男は一撃を繰り出して来た。それはとどめに近い。この態勢からは、もう避けることなど。
生き延びる術は、あとはこの男の甘言に乗ること。叫べば、突きを既のところで止めてくれるかもしれない。
ならば、当然――。

177 :ウィレム ◆uBe66UnnCY :11/07/07 14:44:43 ID:???
「お・こ・と・わ・り・だ!」

顔を上げ、手槍を突き出す!男に向けて、ではない!こちらに向かってくる、その刃に向けて、だ!
ウィレムには動体視力がある。どんなに早く動く物体でも、その動きを捉え、把握するその視力!
この眼があれば!迫りくる剣先に!この手槍の穂先を!重ねることだって!決して!不可能では!ない!

とはいえウィレムは槍の才能も実力もある訳ではないから、運の割合もかなり高い。
それでも、成功した。槍は当たった。こちらに向かう刃を弾くことに成功した。
これぐらいの奇跡を起こせないのなら、ウィレムは前回の戦いでとっくに死んでいただろう。

「悪いけど、俺の知ってる極上の女は、そう簡単にゃやらせてくれないんだと思うよ!
 それこそ、横っ面でもひっぱたかれるんだろうな!」

突く力が強いほど弾かれた時の反発力も増す。その隙を狙わない訳がない。
片膝ついたその状態から手を地面に付ける。地に付けた膝を上げ、弾丸のように飛び出す、走り出す。
そして、その遺才。男に肉薄し、体の左半身をぶつける。端的に言えば、体当たりだ。
そんなにウィレムの体重は重くないとはいえ、理解できない速さでぶつかってくるのだ。
その衝撃は、重量級の男の体当たりと比しても遜色なく。

左肩はさっき貫かれた場所だ。そこを相手にぶつけたのだから、当然ウィレムの痛みもすごいことになる。
だが、右肩から突っ込まなかった理由はある。右手には、手槍を持っているから!

「何より、名前の響きがだっせぇんだよ!!!」

流れるように、思いっきり、振り抜いた。

【攻撃を槍で弾き、クラウチングスタートからのタックル。バランスを崩させ、手槍での零距離刺突】

178 :プリメーラ ◆sA3iXghEZU :11/07/07 18:28:29 ID:???
勝利は、確実にこちらに傾きつつあった。
艦砲を沈黙させたプリメーラは、物陰に隠れてオーブに耳を当てていた。
繋がっている先はウィレムのオーブ。姿が見当たらないので、勝手に念信を繋げたのだ。恐らくウィレムは気づいてないだろう。

「中々どうして、ヘタレの癖に良いこと言うじゃん」

ニヤニヤ笑いながら盗聴する。端的に言えばやってる事はサボリに等しい。
それを気づかれたかどうかは定かではないが、オーブからボルトの声が割って入ってきた。

>「給料減らされてえのかアホ共!お前らに払ってる金の半分は、おれに弾が行かねえようにする御代だぞ」
「わっ!?分かりましたから大声で叫ばないでよ!」

チェッと舌打ちしつつ、さて一気に片づけましょうかと鉈を構えなおした時。
ゆらりと頭上に影。その大きさと影の濃さ、向けられた殺気に、プリメーラは影の主を見上げる。

「わぁーお、こりゃヤバーい」

乙種ゴーレムだ。外見から判断するに、恐らく『ハイマウント』だ。微妙に差違はあるが。
しかしこちらには魔物の群れという仲間がいる。号令を掛け、魔物達の水砲が発射される。

「っぅええ!?」

しかし、高速で発射されたそれはいとも容易く避けられた。
参ったなあと暢気に頭を掻く。あんな大きいゴーレムと闘う事に慣れてないため、攻略する手段が分からないのだ。
しかし、次の瞬間プリメーラの目の色が変わる。

「ッ姐さんあぶなぁい!!」

『ハイマウント』が近接武装の薙刀を両手に、その刃先をアルテリアに振り下ろそうとしている!
ペンダントが一際青白く輝き、魔物達が思い思いに『ハイマウント』に攻撃を仕掛ける。
避けられる事など知ったことではない。『ハイマウント』の意識をこちらにむけ、アルテリアへ向けた刃先を防御に使わせる事に成功した。

「姐さんご無事ですか!?怪我は?」

甲板に上がった何匹かの魔物達の間をかいくぐり、アルテリアの元に駆け寄る。
無事を確認すると、魔物達の相手をしているゴーレムを見上げ、再びアルテリアへ視線を投げる。

「ボクらが囮になってアイツの注意をひきます!だから姐さん、トドメは頼みましたよ!」

プリメーラは早口にそう言うと、黒馬に乗り『ハイマウント』へと突進していった。

【魔物の攻撃でアルテリアへの注意をこちらに引かせる→自ら囮になり魔物を操ってゴーレムの気を引く】

179 :ダニー ◆/LWSXHlfE2 :11/07/07 22:35:16 ID:???
気配の主である一団が先に進む姿を見たとき、直ぐ様背後から飛び掛るものかと思っていたが
一旦やり過ごそうという結論に至った。女の勘と言っても所詮勘は勘である。外れることもある。
当たり前だが二人の女がいたとしてそれぞれ別方向に勘が働いたなら一方は外れるのだ。

五人は今いる足場から降りて先客がいたであろう地面に降り立つと、そこには
どうやら自分たちが落ちてきたのは後発の支流らしいと分かる、本流と思わしき瀑布
がどうどうと水を落としているのが目に入った。

ダニーは一度警戒を解くとぐっぐっと体を解す。体に掛かる負担や体温の低下から来る
身体能力の悪い変化はこういったストレッチの時に把握しておくよう務めている。平たく言えば
簡単なメンテナンスだ。

軽い体操を終えるとクローディアが次の予定を立てて来る。この場で退路らしきものが
確認できない以上進むしかないという意見には彼女も同意だった。最悪ここから出られない
という事態に陥ったなら先に行った彼らの力も借りなければ行けないかも知れない。

暗い洞窟に不釣合いな程の水の騒音を聞きながら、ダニはーさっきまでの自分の
軽率な考えを反省する。自分よりもずっと小さい体のクローディアを、意外にしっかりしていると
見直した。もっとも次の一言で評価はフラットに戻ったが

>>金は命より重いんだから。綺麗事でその認識を誤魔化した先にあるのは、この穴蔵で暮らすより酷い結末よ

この手の言葉を聞くたびにダニーは思うのだ。金が命より重いのではなく
当人が自分の命より重たくしてしまってるのではないか、と
個人の暮らしていく分に掛かる費用を遙かに上回る金額のやりとりはある。だからお金は命より
重いという説がある。どちらもお金が関わるがその軸に来るものが違う。

いきなり人とゴーレムを比べてどっちがより金が掛かるかを言い出して、ゴーレムのが金掛かるから
人命より大事とか価値があるとか言い出す輩を見るたびに、ダニーは
「ああ、こいつは恐らくX軸が二本に見えているんだな」と思う。

要は人間何人分かの金銭がそのまま人間よりも大事だというのと、それとこれとは違うだろう
という意味である。とは言ってもクローディアは既に自分の身の丈を超えて、自分の命より
重たくなる分の借金をしてる以上は最早どうなるものでもないので黙るしかない。無益だ、と思った。

そんな事を考えながらもダニーは地面に手を付いてゆっくりと目先の川へと身を沈める。
水の深さがどの程度なのかを調べようとしての行動だった。

180 :ダニー ◆/LWSXHlfE2 :11/07/07 22:37:13 ID:???
光の届かぬ水中は見通しが悪く、流れも強い。ダニーの巨躯でさえ厳しい程の力は
流された者を容易にパニックに陥れるだろう、だがその中で一つ僥倖と言える物を見つける。

先程の瀑布ができた際に落ちてきたらしい岩石の群れが、水の中で向こう岸まで一直線に
続いていたのだ。水深自体は五、六メートル程あったが降り積もった岩の絨毯はそれらを
上げ底する形で沈んでいた。

その上を行けば何とかダニーとシヴァぐらいの体格の者なら口から上は水面より上に
出して歩いて行けそうだった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

水から顔を出してシヴァに来てくれと呼ぶと、彼女は体を捻り自分のいた場所の半分を彼に
明け渡す。そして手短に、浅い所を渡って向こうに行くのを手伝ってくれと伝える。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
しっかりと捕まえてといてくれよ、と言って彼の腹から出ている新しい腕に自分の胴体を固定させると
ザイルを持って二人でゆっくりと沈んだ石橋の上を渡り始める。

狭く不安定な足場をこの二人が同時に行くことは一見して無謀だったが、バランスを取るうちに
次第に二人の体勢があるポーズを取り始める。ダニはー左手を、シヴァは右手を前に付き出して握り合い
残った手も後ろで同様に組む、ただこちらは途中で曲げて頭の辺りまで持ち上げていた。

まるでダンスのステップのようにスッスッと岸まで近づいてゆく。
歩調が乱れればバランスを崩し、呼吸が合わねば歩みが止まる。しかし次第にその頻度は
減っていった。

男女は押し寄せる水流の真っ只中を割れよとばかりに突き進む。すぐ真横にシヴァの顔がある、
しかし敢えて前を向く。握り合った手と触れ合う胸の鼓動から繋がっていることは判っているのだ。
後はただ、シヴァを信じて対岸の岸までたどり着くだけだ。

(・・・・・・・・・)
信じる、か
ダニーの心に小さな音が響いた。

181 :ダニー ◆/LWSXHlfE2 :11/07/07 22:39:28 ID:???
信じるという行為は人が一人でする行いの中でも最も不毛な行為であるとダニー思っている。
他者がいなければ成り立たずしかしそれは自分個人の中で終始し、そして完結する。

期待することとは違い、現実が異なる様相を見せてもそれに失望することは無いし、できない。
賭けることとも違い、そこには損得の勘定を差し挟む余地はない。僅かでもこれらのことが入れば
その想いは「信じるに値しない」とさえ言える。

わざわざ他人を用意して自分の中で何かを一つ終わらせる、そうやって安心を得ること、
それが人を信じるということだと彼女は思っていた。まるで恋人との関係が終わった後に
こういう人だったと決めつけることを、理解した言い換えるようなものだと。

合っていようがいまいが終わってるのだ。そう思うが故にダニーには不毛な事に思えた。
彼女だって人を信じたことくらい有る。何度か結果が異なったこともある。そしてその経験は彼女に
とって磨耗した感情を繋ぎ止める楔であり、今もなお胸の内に燻り続ける篝火でもあった。

良くも悪くもない、だからこその不毛。その不毛な行いを久しぶりしようとしている自分がいる。
冷たい水に紛れぬ他人の体温と、自分をしっかりと捕まえる手を感じながら
シヴァと共に一歩一歩を踏み出していく。

気づけば目的地である岸のすぐそこまで来ていた。あっという間の共同作業だ。
予想よりも疲労したのは敢えて不要なことをしたせいだろうか、だが壁登りにも落盤や
壁を掴み壊す危険もあった事を考えれば結果的にだが悪くなかったと思う。

シヴァが先に岸に登るとダニーに手を差し出してくれる。その手を掴むとダニーは
水から上がる前に、目を閉じて感慨深げに、小さく呟いた。

「ファンタスティックだ・・・」

【ダニー、シヴァと共に対岸到着、ロープ確保】

182 :ロキ・ハティア ◆9pXiBpy0.U :11/07/07 22:41:24 ID:???
>169
>「ロ、ロキさん!いったいなにを!」
「大丈夫、君のサムちゃんはそれぐらいで壊れたりしないさあ!」
やると決めたなら迷いはしない。最後まで信じぬく!

>「……あれ?サムちゃんが……私と一緒にいる……私とサムちゃんが一つに……違う!」
果たしてセフィさんは……やってくれた。暖かく力強い魔力が伝わってくる。
「1+1=2、それがこの世の常識だ。でも常識を軽く踏み越えるのが我らなら!
もはや1+1=2じゃない……響きあう魂は無限の力を生み出すんだ!!
今の君達に敵は無いよ!!」
>「そうだね!今の私たちに敵はない!!そう!そうなんだよ!」
スレイプニルの感知兵装越しに、伝説に刻まれた勇者の姿を見た気がした。
セフィさん&サムちゃんが、光輝く魔力の煌めきを胃壁に突き立てる!

>175
まだ安心はできない。
なんとと言うべきか、当然というべきか、巨大魚は激しく暴れ始めた。
>「ハティアどの、援護お願いするであります! アルフートちゃん、手を――!」

ありますちゃんが、ファミアちゃんを救出に向かう。
彼女の背後に巨大魚の尻尾が容赦なくせまる! 
「ありますちゃん、後ろ後ろー!」
後ろ後ろと言われても気付かないのが世の常。今こそ神速の指捌きの見せ所だ。
コマンドを入力。技を発動。

「ロケットパーンチ!!」
スレイプニルの腕がぶっ飛んで魚の尻尾にぶち当たる。
超巨大な魚さんにしてみれば軌道がほんの少しそれるだけだが、それで十分だ!

「さあさあまだまだ行くよー!」
暴れまわる魚君、水圧で思うように移動できない仲間達という問題を一挙に解決するには……。

「来い! ヨルムンガンド! 幸いここは塩水湖、海と同じ……君のホームグラウンドだ!!」
現れしは、7つの海を統べる世界蛇。彼の地に住まう夢幻の海龍。
否、それは単なる幻ではない。夢幻の海龍は縦横無尽の海流として物質界に具現化する!
一方では魚くんに何重にも巻き付いてその動きを封じる。
一方ではありますちゃんを、レイりんを乗せて自在に海を駆ける!
今の彼らは、鳥のように自在に水中を翔ぶ事が出来るだろう。
要するに、中と外から魚くんスーパーフルボッコタイムの始まりである!

「ずっとワタシ達のターンだ、ぶち破れえええええええええええ!!」

183 :ロキ・ハティア ◆9pXiBpy0.U :11/07/07 22:55:56 ID:???
【魚くんの尻尾にロケットパンチ
ヨルムンガンド召喚! 海流で魚君の動きを妨害&味方の移動を補助】

184 :トール ◆zH2H/Hi8U2 :11/07/09 00:36:02 ID:???
「引いた!?引いたぞ!!どん引きだ!!」

釣り針が何かを捉えた、この瞬間だ。
竿がびくんとシェイクするように呻る瞬間、何だかすごく気持ちが良い。
トールは竿を追っ立てながら沈んでいく船に気付きながら、「あぁ、凄く大物だな。これは。」
と思っていた。

「いや、待てよ。……普通、釣りをしてて船が沈んで逝くことなんてあるか?
ないよなぁ、ないって事は……どういう事なの。」

トールの船は湖の巨大な渦の中へ吸い込まれて行く。
もちろん、救命胴衣なんて持ってないだろうしこの世界にはないのかもしれないが
あんまりそこを突っ込んだりしてゴタゴタするのもいけないので触れなかった事にしようか。

「あ、新世界。」

トールは湖の中で繰り広げられている戦いの真っ只中へと放り出されてしまった。
どうなる、どうする俺。

【戦闘の余波で湖の中へ】

185 :スイ ◆nulVwXAKKU :11/07/09 14:14:29 ID:???
くあ、と欠伸を洩らす。
実際欠伸をしているような状況では無いのだが、でるものは仕方が無い。
そんなところにボルトの声。

>「給料減らされてえのかアホ共!お前らに払ってる金の半分は、おれに弾が行かねえようにする御代だぞ」
「うわっ!」

突然の怒鳴り声に驚く。
どうやら被弾したらしい。

>「スイ!右舷から何人か張り付いてやがる!振り落とせ!」
「あいよっ!」

元気よく返事をし、右舷の方へ移動する。
そこには登ってこようとする湖賊の方々。

「どうする?振り落とすだけじゃもの足りねーよな。」
「(先住民は排除しろ、と言っていたが?)」
「じゃあ、そのお言葉通りにしますか。」

矢筒の底を蹴り、飛びだしてきた何本かの矢を掴む。
風がスイの周りに集まってくる。

「そーれ」

その風を、船の側面すれすれに叩き落とした。
突風の威力に登って来ようとしていた湖賊が落ちてゆく。
そんな彼等に向かって、矢を投げた。
風によって威力を上げた矢が、次々と喉や、眉間などの急所に突き刺さる。

「(まだ来てるぞ)」
「鬱陶しいな…。よし」

手をぽん、と打って、念信器を掃討組とボルト全員に繋げる。

「今から、ちょっと強い風が一発吹くから何かに掴まってな!!」

先程よりももっと強い風が、スイの周りに集まってくる。
マテリアルである翠水晶が強く輝く。

「行けえええええ!!」

水面にいる湖賊や、敵船から下りてくる湖賊を吹き飛ばす為の強風が一気に吹き荒れた。

【右舷の湖賊達を風で叩き落とす→数人矢により死亡。まだまだ向かってくる湖賊を吹き飛ばす為、突風が吹きます】

186 :サフロール・オブテイン ◆jKUaosk4aY :11/07/10 18:10:36 ID:???
橋を渡り終え、サフロールは橋に一人残ったフィンを振り返る。
フィンは宣言通りに、瀑布の後押しを得て襲い来る瓦礫群を見事に防いでいた。
暴力的、殺人的なまでの破壊の奔流を砕き、受け流す芸当は、悪意に満ちたサフロールにさえ微かな感嘆を与える。
だが――捌き切れていない。岩の破片や小さな岩が、フィンの体を傷めつけていく。

「……何を焦ってやがる。テメェの遺才は、そう言う代物じゃねえだろうが」

サフロールの主観。
――フィンは何かを焦っている、急いでいるように見えた。
だがサフロールには、その何かが分からない。
精々、橋が崩れてしまわないか、落ちてしまわないか気が気でないのだろうと、
状況からの予想を立てる事しか出来なかった。

思考は分析へと以降する。
フィンの遺才、『天鎧』は迫り来る威力を見切り、受け流す事が本質だ。
その根底にあるのは、運動量を観察して制御する、観察眼と計算能力、そして精密動作。
とすればフィンの人格――活発で前向き、活動的な性質は、遺才にそぐわない物なのかもしれない。
吸血鬼、化物としての狂気を抑圧してしまうレイリンと同じように、
フィンの人格は緻密な計算と動作に、無用な誤りを潜り込ませるだろう。
同様に急ぎ、焦る事もまた、『天鎧』にはマイナスに働くに違いない。

更に分析は発展。
遺才の本質が『防ぐ』事ではなく『いなす』事ならば、
そもそも彼の手甲は『マテリアル』として適切なのか。
単にそれ以上の物を見つけられなかったから、手甲が最適とされただけなのではないか。

>「私がルイン君の"眼"になるから。フィン君が渡る時間を稼ぐために力を貸してちょうだい。」

と、思考を中断する。
ノイファの言動――未来視を示唆する発言が、サフロールの意識を強く引き付けた。
未来を視る力。それはつまり、未来を変える権利を与えられたに等しい。
世界を創り変えるサフロールの芸当の、遥か上を行く力。
ただただ、妬ましかった。どす黒い嫉妬の炎がサフロールの胸中で燃え上がる。
神に愛され、天上の権利の片鱗すら与えられたノイファが、堪らなく憎らしかった。
いっそ殺して、その右眼をえぐり抜き、徹底的に解体してやりたいほどに。
だが出来ない。まだ力が足りない。未来を視るほどの力を分析するには、遺才をより高めなければならない。
より憎み、より憎まれなければならなかった。

「……それがどうした。元から俺は、闇の中にいるんだ。より深い闇に沈んだところで……何も変わりゃしねえ」

小さく呟き、自分に言い聞かせた。
そしてサフロールは胸の奥で不快感を蟠らせたまま、洞窟の深部へと進んでいく。
暫く歩くと、分かれ道があった。
メニアーチャ家の宝物庫、ギルゴールド家の宝物庫、それぞれへ続く分岐路。
サフロールが求めるのは常に最高効率。時間がないから片方は諦めるなど、凡人のする事だ。
となれば、上策は隊の分担。
観察対象が減ってしまうのも、一人に集中出来ると考えれば問題ない。

「……隊を分けるぜ。ほらよ」

バックパックのロープを少し切って、即席のくじを作る。

「俺は……右か」

ギルゴールド家の宝物庫への道。
そちらへ進む前に、サフロールは一度フィンとノイファに振り向いた。

187 :サフロール・オブテイン ◆jKUaosk4aY :11/07/10 18:15:48 ID:???
「おい間抜け、さっきみたく無闇に焦んじゃねえぞ。テメェの遺才はもっと、静かに使うモンだ」

先程の分析結果を紡ぐ。

「いいか、もっと落ち着け。何があろうと冷静さを保て。
 無駄に力むな。そうすりゃもっと、遺才を上手く使えるだろうよ」

命令、とは言えフィンにそのような事は出来そうにもない。
そんな事は、サフロールも十分理解している。

「……それが無理なら、せめて動く前にもう一度、相手をよく見ろ。そんくらいは出来んだろ」

返報性の原理、譲歩の返報性――相手が自分に対して譲歩したのだから、自分も相手に譲歩しなくては。
そう考える人間の心理を利用した誘導術。
無論通用するかどうかは分からないが、しないよりかは、した方がいい。

「あとその手甲、本当にマテリアルとして合ってんのか?
 テメェの遺才は見切って、いなす事が本質だろ?
 もっといいマテリアルが、あるんじゃねえのか?」

最後に単純な疑問を告げた。
続けてノイファを見る。

「テメェも、死ぬんじゃねえぞ」

自分で言っておきながら、その言葉にサフロールは寒気を覚えた。
あくまでも、失われて困るのは彼女の眼に過ぎないのだ。
フィンに対する助言にしても同じ、目の届かない所で死なれては観察も分析も出来ないからだと、自分に言い聞かせる。

「ま、くたばったら墓標くらいは立ててやるよ。
 『化石女、これ以上の老いから逃れるべく水底で眠る』ってな」

皮肉で善意を塗り潰した。
そうして、ギルゴールド家の宝物庫へと向かう。
踏み入ってまず視界に映ったのは、一面に整然と並んだ墓標。

「……おいビビリ、どこ行くつもりだ。テメェが前だって言ってんだろうが」

案の定、即座に萎縮したルインを振り返り、微かな苛立ちを醸す。
そしてそれ故にサフロールは、通路の奥で揺らめいた青白い光を見逃していた。

【遅くなってすいませんでした。
 フィンへの分析やらはあくまでただの予測なので、そう気にしないで下さい。
 使えそうだったら拾って都合よく使ってやる、程度の扱いでお願いします】

188 :ファミア ◆mCdqLO6Z6k :11/07/11 00:05:49 ID:???
>「いい感じに嫌がってるみたいでありますよ!そのままストレス死にするまで嫌がらせするとかどうでしょう!」
フランベルジェからのネジの飛んだ提案に対しファミアは真面目に考えて、
考え抜いて「ご飯が食べられなくて多分こっちが先に衰弱死するから無理」と結論づけました。
そこまで時間をかけずとも普通は即断できるものですが。

そんな事をしている間に、ファミアが押し広げているとはいえそれでもまだまだ狭い牙の間隙を、
フランベルジェが箒に身を伏せて駆け抜けていきました。
そして駆け抜けていった勢いのままに口から弾きだされます。

>「っくうー!『崩剣』さえまともに使えれば、今のであのお魚を三枚おろしにできたのでありますがっ……!」
どうも水中ということで勝手がだいぶ違っているようです。
入れ替わりに、小さい多数の「何か」がファミアの両脇をかすめて口腔へ突進してきました。
ロキが召喚したものだというのは念信で分かりましたが、意図はわかりません。
とりあえず食欲を満足させて攻撃性を抑えにかかったのかと首を捻りつつ考えるファミアの眼前で、
犬のようなシルエットの群れは喉の奥へ(ちょっとした渋滞を起こしながら)潜って行きました。
直後、セフィリアへ向けてと思われるロキの念信。
>「なかなかやるね! 大型のモンスターを手っ取り早く倒す方法はね、中からぶち破ることだよ!」

なるほど、実戦を経験している人は違うものだなあと感心している暇もあらばこそ。
いきなり今まで以上にバハムートが暴れだしました。放り出されてはかなわないとファミアは牙を掴む手に一層力を込めました。
そのまま散々振り回されますが、まだまだ体力には問題がありません。なんだか握っている牙がぐらついてきているような気はしますが。

>「ハティアどの、援護お願いするであります! アルフートちゃん、手を――!」
念信に振り向くと、フランベルジェが航跡を引きながら全速で接近してきています。
その背後に下方から伸びる、漁船に張られていた三角帆よりもなお大きなシルエット。
バハムートの尾ビレでした。鋭利な刺が並んで植わったそれが、音もなくフランベルジェへ振り下ろされます。が、
>「ロケットパーンチ!!」
水着しか付けていない無防備な背に届く前にロキによって迎撃されました。
ロキはそのまま余勢を駆って攻勢を強めます。
>「来い! ヨルムンガンド! 幸いここは塩水湖、海と同じ……君のホームグラウンドだ!!」
しかし、声に応える者は無し。――眼に見える形では、です。

「これは……」
はっきりと水の流れが変わっているのがファミアにもわかります。
暴れていたバハムートが急速にその動きを停滞させ始めました。
そして、ファミアの手にかかる重みが増しました。
「あれ?」
どうもロキの喚び出したヨルムンガンドはバハムートに「頭から尻尾まで」くまなく巻きついたようです。

口から出ようと機を計っているファミアの左手になんだか嫌な感触が伝わって、かかっていた重みが消えました。
しかし牙はしっかりと掴まれたままです。ということは、ついに牙が折れたということでしょう。
さすがに痛かったのか、別の要因か、抑えつけられながらも身を捩るバハムートの動きに合わせて、右手で掴んでいた牙も折れました。
顎門が閉じ合わされる寸前、口内に流れ込んだ水流が、ファミアを喉の奥へ押しやりました。

当たり前ですが、胃袋の中は真っ暗です。
「先客」がいる周辺だけはライトアップされていましたが、
なんだかものすごく真っ赤で、それがなんの色なのか容易に想像できるせいでとても近寄り難い感じになっています。
とはいえ、「一つ屋根の下」にいるわけですからご挨拶くらいはしておくべきでしょう。
「ガルブレイズさん、ご無事ですか?」
尋ねずとも、この上なく無事に見えますが、他に掛ける言葉を思いつかなかったのでしょうがありません。


【折れた牙ごと胃の中へ】

189 :アルテリア ◆U.mk0VYot6 :11/07/11 05:52:16 ID:???
「所詮この程度カ、他愛ないナ」
次々と沈黙するゴーレム達を見下ろしながら、暢気にそういってみせる。
だが、その次の瞬間、独特の駆動音、熱風と共にハイマウントがその姿を現した。
「真打登場のつもりカ、残念ながら遅すぎダ」
すぐさま槍を射るが、ハイマウントは難なく挟撃を交わし
アルテリアの眼前へ迫る。
その瞬間、アルテリアの全身を悪寒が走った。
「死ぬのカ」
僅かな間、震えた声で呟き、直後ハイマウントの薙刀が振り落とされる。

だがハイマウントの放った一閃は、アルテリアではなく、プリメーラが使役する魔物に落された。
「ッ」
隙を見て、アルテリアはワイヤーを手放し、物陰に隠れた。
そこへプリメーラが無事を確認しにやってきた。
「あぁ大丈夫ダ」
呼吸を整え、プリメーラに返す。
>「ボクらが囮になってアイツの注意をひきます!だから姐さん、トドメは頼みましたよ!」
「待テ!考えなしにつっこむ…クソッ」
囮として突っ込もうとするプリメーラを制止しようとしたが、プリメーラが聞く耳もたず行ってしまった。
現状のままでは、囮役がいるだけでは恐らくレイスティンガー級の一撃を放ったとしても
あの機動力をもってかわされるのが関の山、加えていうならば、その一撃を叩き込むための『矢』
も存在しない以上、それを撃つことも叶わない。
「せめて、あの武器がもう1本あれバ」
羨ましそうにハイマウントが振るう薙刀を見る。プリメーラ達にあれを奪える実力はあるだろうか
いや、あまり期待出来ない
アルテリアは難しい顔をしながら、思案している最中、スイからの念信が入る
>「今から、ちょっと強い風が一発吹くから何かに掴まってな!!」
>「行けえええええ!!」
直後、嵐のような突風が吹き荒れる。

そのときだった。
先ほどまで機動力をもってプリメーラを翻弄していたハイマウントがバランスを崩し
思いっきり転倒した。
その様を見たアルテリアに天啓が閃く
「そうカ、あの機動力は風の力を利用していたのカ!
 今の転倒は突風で風の力が暴走した為か」
機動力を防ぐ方法は見つかった。
スイの風が齎したのはそのひらめきだけではなかった。
アルテリアの視線の先にあるのは、ハイマウントが転倒の際に落してしまった『矢』
がそこにあった。
条件は整った。あとは行動に移せばいい
「おいメス豚、死んでもソイツの得物を拾わせるんじゃないゾ」
体勢を立て直そうとするハイマウントを尻目にアルテリアは疾走しながら『矢』へ向かう
「スイ、そよ風だけではまだ足りなイ!もっと強い風をよこセ」

【止めの一撃を撃つ為の下準備】

190 :フィン=ハンプティ ◆yHpyvmxBJw :11/07/11 22:40:30 ID:???

既に遊撃課の面々は橋を渡り終えた。今橋上に残るはフィンただ一人。
彼さえ渡りきればこの局面は切り抜けられるのだが、けれども現実が非情にもそれを許さない。

「くっ……いやー、これはキツイ、な……!」

岩の瀑布は絶え間なくフィンを襲う。
流れる間に砕け、天然の刃と化した石が弓矢の如く降り注ぐ。
それもその数は一個や二個ではない。正に雨の如き物量。
常人では数秒と待たずに挽肉と化しているであろうその猛威をフィンは、
己が遺才を持っていなし、防いでいたが……しかしそこまで。
少しでも岩を見逃せば絶命しかねないこの状況においては、防ぐ事が精一杯で、
とても橋を渡る余裕などは存在しなかった。
更には僅かづつではあるものの、防ぎ切れない岩石がフィンの肉体を撃ち、削る。
文字通り、ジリ貧であった。時間の経過によって自身の死が確定する状況。
……しかしながら、フィンはそんな状況において自身の安否とは全く別の事を考えていた。
橋の向こうに居る面々を一瞬横目で見てから、苦笑に良く似た表情を浮かべ、小さく呟く。

「……皆、無事に渡りきったみてーだな。良かったぜ」

それは、仲間への心配であった。高潔な勇者の如き言葉ではあるのだが、
もし仮にその呟きを耳にした物が居れば、違和感を覚えるかもしれない。
自身から率先して死地へと飛び込み、こんな状況でそんな台詞を吐くなんて、
まるで自身の命を――――ていない様ではないか、と。

そうしている間に、とうとう均衡が崩れる。
特大の岩石が橋に向かって落下してきたのだ。
フィンの位置からではかろうじで届かず、よしんば届いたとしてもその落下の勢いを逃がす先は無い。
どうやっても橋は落ち、自身は崩落に巻き込まれるだろう。
その遺才によっていち早くそれを認識したフィンは、せめてこの岩の破片が仲間達の下へ飛散するのを
防ごうとし――――

瞬間、眼前で岩が砕け散った。

一本の軌跡が落石群をなぎ払い、巨大な落石を貫きその軌道を大きく変化させ、
致死の状況において一つの道を作り出した。
フィンが目を見開いてその原因を知るべく軌跡の基点を見れば
そこには遊撃課のメンバーであるルインとノイファの姿。
槍の担い手と未来の繰り手。
彼らの技巧がこの道を開いたのだと認識させられる。

>「よ、よおし!不安だったけどグッジョブ俺!さあ落石は任せて走れっ!」

そして認識した瞬間、フィンは疾走していた。
そこに言葉を吐く余裕は無い。仲間が作り出した一本の道をフィンは駆け抜ける。
槍の起動は素晴らしく、落ちてくる岩石の群れはフィンが片手間に逸らせる程度の物しかなかった。

「うおおおおおおおおっ!!!!」

繋がらなかった筈の生が、繋がる。
背後で落石と瀑布が橋を崩すのと同時に、フィンは跳躍する
滑り込むように跳んだ事で、手甲が地面の岩を削り金属音を出す。
勢いに任せて数度地面を転がり――――天井を見上げる大の字の姿勢で倒れこむ。

「はぁ、はぁっ……た、助かったぜ……サンキューな、お前ら!!」

浮かぶのは何時も通りの白い歯が輝く笑顔。
息を切らせながら、其処かしこに切り傷と青痣を作りながら、
――――フィンは生を掴んだ。

191 :フィン=ハンプティ ◆yHpyvmxBJw :11/07/11 22:42:27 ID:???
先ほどの天災じみた事故を誰一人掛ける事無く生き残った遊撃課の面々は、
やがて洞窟の深部で足を止める事となる。
眼前に広がるのは二股の分かれ道。

メニアーチャ家 ギルゴールド家

それぞれの財を内包した空間へと続く道。
どちらか片方のみに時間を割く時間的猶予は無い。
そう判断したのかサフロールはくじを作り、メンバーを二手に分ける事を提案する。
そんな中でもフィンは
「皆で行った方が楽しいから全員でどっちか行こうぜ!!」
などと楽しげに主張してたが、やはりそんな提案が通るべくもない。
そもそも生存率を上げるという観点から見ても此処は二手に分かれるほうが得策なのだ。
フィンとしても、趣味として冒険をしている以上それは分かっているのだろう。
二手に分かれる事が決まっても、口を尖らせるだけで強行に反対はしなかった。
そうして、そのくじの結果、集団は
【フィン ノイファ】【サフロール ルイン】
というグループに分けられた。
偶然としては中々に良く振り分けられているといえよう。
攻撃と守備。攻撃と補助というバランスの取れた振り分けだ。

「おおっ!俺はまたノイファっちと一緒だな!!宜しく頼むぜっ!!」

冒険を楽しむ子供のような笑顔を浮かべ、拳を握り親指を上に立てるフィン。
そんなフィンの背中にサフロールが声を掛ける

>「おい間抜け、さっきみたく無闇に焦んじゃねえぞ。テメェの遺才はもっと、静かに使うモンだ」
>「あとその手甲、本当にマテリアルとして合ってんのか?
 テメェの遺才は見切って、いなす事が本質だろ?
 もっといいマテリアルが、あるんじゃねえのか?」

それは、忠告とも勧告とも心配ともとれる言葉だった。
それを聴いたフィンは一瞬キョトンとした表情を浮かべたが、すぐに破顔し、
先ほどノイファに行った様に立てた親指をサフロールに見せる。

「アドバイスサンキューなっ!! いよーし、次は冷静に皆を守ってみせるぜ!!」

が、サフロールののアドバイスは何の躊躇いも無く取り入れられたものの
それが実践されるか怪しいものであるという事は、フィンの脳天気で快活な返事が証明してしまっていた。

「ん?『鎧砕き』で合ってると思うぞ?
 だって、俺の家族は全員鎧の一部を装備してたしな」

そして、マテリアルに関しても新たな事実が判明する。
どうやらフィンは一族が装備していた品=自分の遺才に適した装備だと思っている様だった。
セフィリアの様に、遺才の濃度によっては同じ血族でもマテリアルに差異が出るとは考えていないらしい。
最も、現状でも遺才が発動しているので、マテリアルが間違っていない可能性もあるにはあるが、
……フィンの家族は死に絶えている上、一族の遺才の歴史などの資料も焼失してしまっている以上
送球にただしい答えを導き出すのは困難と言えるだろう

そんな会話の後、フィンは何故か――――恐らくはサフロールの言葉が原因なのだろうが、
怒りの感情を発露するノイファを自身の遺才を駆使して羽交い絞めにして静止したりしつつ
ルイン達とは逆方向の道へと歩を進める。

「じゃあ、今度こそ俺が先頭なっ!!ノイファっち、遅れずに付いて来いよ!!」

ダッシュで。

192 :フィン=ハンプティ ◆yHpyvmxBJw :11/07/11 22:44:24 ID:???
【フィン:無事橋渡り完了の後、メニアーチャルートへ
 設定に関しては色々弄ってもらっていいですよー!
 脳内設定と刷り合わせて出来るだけ反映するつもりですのでっ!!】

193 :レイリン ◆lvfvBHCkg. :11/07/13 18:43:39 ID:???
>「っくうー!『崩剣』さえまともに使えれば、今のであのお魚を三枚おろしにできたのでありますがっ……!」

どんなものにでも等しく破壊を与えてきたスティレットの遺才が発動しない。
実際には発動しているのだが、本人はそれに気付いていないようだった、勿論レイリンにも何故発動しないか、は分からなかった。

>「はい、私は大丈夫です。サムちゃんのお陰で魚のご飯にならずにすんでいます
中は瓦礫だらけです。もしかしたら財宝はここにあるかもしれませんよ」

セフィリアからの応答を確認し、一息つくレイリン。
すると、魚は何か苦しんでいるように暴れ出した。

「何?
苦しんでいる? まさか、ガルブレイズが?」
>「! ――ガルブレイズちゃんでありますね!? シキマどの、彼女に指示を!!」
「そうですね……。
ガルブレイズ、申し訳ないですが、こちらは暴れている魚の攻撃を回避することで手一杯です。
内部から出来るだけ傷つけて下さい、でも、もし危険なようでしたらすぐ脱出をするように、私達も最大限協力します」
>「来い! ヨルムンガンド! 幸いここは塩水湖、海と同じ……君のホームグラウンドだ!!」

身体が軽くなる、ロキの魔法により水圧が殆ど無くなったのだ。
水中で思うように動けないのは変わりないが、水圧の問題が解消されたのは大きい。
先ほどまでは避けるので精一杯だった攻撃も、難なく回避できる。
魚の動きも明らかに鈍くなっている。

「うん、これなら大丈夫」

水中を切り裂き、レイリンに肉薄する尾を、水中箒を噴射させて避ける。
速い、水中箒の出力が上がったのではなく、これもロキの魔法による恩恵だろうか。
そして、小さく弧を描いてターンすると、勢いそのまま魚の鱗に拳を叩き込む。
鱗は容易に砕けるが、所詮一枚の鱗、巨大な体躯を誇る魚にとっては痛くもかゆくもないだろう。

「やっぱり、外からじゃあどうにもなりそうにないですね……」
>「あれ?」

ファミアが魚の口の中に吸い込まれていく。
まるで急に強い流れがきたかのように自然と吸い込まれていった。

「ア、アルフート?!
ガルブレイズ、アルフートも中に行ったみたいです、接触を図って下さい」

中に入ってしまった以上、もうどうしようもない。
助けに行こうにも、生身で入ったら出てこられる保証はない、中にいるセフィリアに何とかしてもらう以外方法はないのだ。


194 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/07/13 22:04:40 ID:???
甲板迎撃戦ゴーレム・ハイマウント改の迎撃手は決して非凡な乗り手ではなかった。
連邦陸軍の強襲揚陸甲機部隊にいた頃の腕をカシーニに買われ湖賊となってからこっち、こと甲板での迎撃戦に負けはなかった。
『ピニオン』なる組織からの資金援助で徹底的にカスタムされた足回りと、甲板での機動特性を熟知したベテランのなせる業。
これで負けるはずがない。自信があり、それを裏付けるだけの根拠があった。

果たせるかな、迎撃手は気付いていなかったのだ。
武装を積めない漁船ばかりを相手にするうち、自分の技能が『狩ること』ばかりに特化していたことを。
効率的な狩り方を覚え食うに困らなくなった肉食獣は、己と比肩しうる者との『戦い』方を忘れていたのだった。

>「ッ姐さんあぶなぁい!!」

弓使いへ薙刀を打ち落とす刹那、端方から声が飛んだ。次いで、先刻から甲板を蹂躙していた魔物の攻撃。
ハイマウントは薙刀の軌道を急転させ、その肉厚の刃を盾に攻撃を凌いだ。
二撃目が来る。迎撃手は優先順位を変更。弓使いの矢は急所狙い、しからば守るべき場所も限定される。
特定部位に哨戒を張り続けるなど、ハイマウントの演算能ならば造作も無いことだ。魔物使いを潰すのが先決。
目標を変更し、噴射機構を蒸かした刹那。

>「行けえええええ!!」

突風が甲板を洗った。敵船に乗り込もうとしていた何人かの戦闘員と一緒に、ハイマウントは大きく滑った。
薙刀を取り落とし、重い刃が甲板を抉る。ハイマウントは甲板の端まで流され、そこでようやく制御を取り戻した。

『…………っ!』

やられた。噴射術式によって甲板を滑るようにし高速機動するハイマウントは、その反面路面を掴むグリップ力が乏しい。
足裏から噴射することによって路面からほんの少し浮上し、摩擦係数を減らしているからこその機動力なのだ。
だから甲板のような平面でしか使えない。完全に船の上だけで運用することに特化したカスタム機なのである。
だから、今のように不意の突風を食らうとハイマウントは笑えるほどに脆弱だ。ウリである機動の軽快さは、バランスを崩す諸刃の剣。
薙刀もどこかへいってしまった。

だが、問題ない。しょせんは自然現象、そう何度も都合よく風が吹くワケがない。
薙刀はないが、ゴーレムはその大きさだけでも生身相手には充分すぎる破壊力を秘める。
このまま魔物使いへ一息に接近し、引き潰してやればいい。

ハイマウントは甲板の壁へ噴射を吹きつけ、その反作用で弾丸のように跳躍。
魔物使いへその右足へ踏み潰さんと迫る!


【突風によってバランスをくずし、薙刀をロスト。風がスイによるものだと知らず、プリメーラを潰しにかかる】

195 :ノイファ ◆QxbUHuH.OE :11/07/14 02:58:52 ID:???

「ふう……、なんとか全員無事に通過できたわね。」

疼痛を覚える右眼を拭い、ノイファは再び滝を見上げた。
天井にぽっかりと空いた大穴からは、相も変わらず大量の水が吐き出されている。

「うん?」

もう一度、右目を擦る。今、穴の付近で何か動かなかっただろうか。
見えたのは僅か一瞬。直ぐに水流に呑まれたものの、人の形をしていたようにも見えた。
じっと、睨むように河を見つめるが、何かが流れてくるような気配もない。

(まあ、いくらなんでも気のせい……ですよねえ)

思考を中断し踵を返す。この流勢の中、人が岸壁にしがみ付くなど到底出来るとは思えなかった。
おそらく、湖底に沈んでいた布切れか何かだったに違いない。

「さて、じゃあこの調子でサクサク進むとしましょうか。」

何事もなかったように、ノイファは通路の奥を指差して出発を告げる。
さしたる魔物の襲撃もなく、なだらかな下り道を黙々と歩き続け、洞窟の深度もかなり深くなった頃それは現われた。

二股に分かれる通路と、それぞれの行き先を告げる立て札。
片方は『メニアーチャ家』、そして――

「これは当たりかもねえ。こっちがメニアーチャ家の財産庫で、こっちは……うわ、ギルゴールドかあ……。」

――もう一方は『ギルゴールド家』。
メニアーチャには及ばないが、こちらもかなりの勢力を誇る商家だ。加えて、悪評の高さならば帝都随一だろう。

二年前の魔物大強襲で"戦死"した先代党首が、守銭奴を絵に描いたような人物だったためらしい。
現党首も今までの悪評を払拭するため東奔西走しているようだが、効果はいまいち上がってなさそうである。
しかしそういった手合いだからこそ、隠し財産の信憑性がいや増すというのも事実。

>「……隊を分けるぜ。ほらよ」

サフロールがロープを切って作った即席のクジを差し出す。

「了解、そっちのが効率良いものね。何かあったら念信器で連絡を取り合いましょう。」

ノイファが引いたのは長めに切られたロープ。
同じく長いのを引いた者と組むというわけだ。

>「おおっ!俺はまたノイファっちと一緒だな!!宜しく頼むぜっ!!」

やんちゃな笑みを浮かべながら、親指を立てた拳を突き出すフィン。

「此方こそよろしくね。」

その拳に、ノイファは自身の拳をこつりと合わせる。

196 :ノイファ ◆QxbUHuH.OE :11/07/14 02:59:20 ID:???
>「テメェも、死ぬんじゃねえぞ」

別れ際、サフロールの言葉。
今までの口の悪さからは想像できないが、確かに此方の身を案じてのものだ。

「あらら?あららら?一体どういう風の吹き回しかにゃー?
 急に借りてきた猫みたいになっちゃって、そんなにお姉さんと別れるのが寂しかったかしら?
 いつもそれくらい素直なら可愛げあるんだけどなー。」

にへらっと相好を崩し、らしくない台詞を口にしたサフロールをここぞとばかりに攻め立てた。
調子にのったツケが直ぐにも返ってくることになることも知らずに。

「ふふっ、冗談よ。そっちこそ気をつけてね。また会いましょう。」

ひらひらと手を振りながら、じゃあねと付け足し踵を返す。

>「ま、くたばったら墓標くらいは立ててやるよ。
 『化石女、これ以上の老いから逃れるべく水底で眠る』ってな」

うち振るう手がぴたっと止まり、返した踵をさらに半回転させ、笑顔のまま元の向きへと戻る。
そのまま姿勢を前傾させ、四肢に力を蓄え、サフロール目掛けて地を蹴った――ところでフィンに止められた。

「離せっ!はーなーせー!今度こそ毟る!絶対毟ってやーるー!」

昏い決意の叫びも虚しく、ノイファはフィンに羽交い絞めにされたまま、引き摺られていった。



「……もう離してくれていいわよ。」

若干言葉に棘を滲ませつつ、ノイファはフィンに拘束を解くよう告げる。
自由になった腕をくるりと一回しし、両頬を張った。

「まったく……ペースを崩されっぱなしだわ。
 それはさて置いておくとして……随分とらしい雰囲気になってきたわねえ。」

立て札の文字通りならば、この場所は既にかつてのメニアーチャ家の敷地内でもあるのだ。
その証拠に、そこかしこに頭蓋骨を模した曰く有り気な刻印が点在している。
今のところ魔力の類は感知していないが、張り詰められた空気は今までの比ではない。
何か出てきてもおかしくは無いし、何が有ったとしても然りだ。

「それじゃあフィン君、先に進みましょう――」

――慎重にね。と続けて口にする前に、フィンが実に嬉しそうに告げる。

>「じゃあ、今度こそ俺が先頭なっ!!ノイファっち、遅れずに付いて来いよ!!」

言い終わるか終わらないかの内には既に駆け足。

「ちょっ、何があるか判らないんだから!?あぁもうっ!はーしーるーなー!」

とは言え、このまま離れるわけにもいかず、ノイファもフィンを追いかけて駆け出すのだった。


【メニアーチャルートへ。警戒しつつフィンを追いかけます。】

197 :ルイン ◆5q.yyAvL6. :11/07/14 20:47:25 ID:???
>「はぁ、はぁっ……た、助かったぜ……サンキューな、お前ら!!」

仲間が助かったことに安堵しつつ、進んでやった訳じゃないから、と心の中で呟く。

ルインという男は正真正銘クズである。
自らを過小評価することで嫌な事、怖い事からひたすら逃げ続ける………
腹の底でやりたいことは決まっているが言い訳を浮かべしょうがない、と保身に走る………

性質が悪い事に、ルインは誰かに強制されたり強引に引っ張られるとと渋々動く。
一見何かを為し時には成長したかのように錯覚するが、本当は何も為せていない。
結局自分からは動かず、他人に甘えているだけなのだから。

そうして時間を無為に過ごし一歩踏み出す勇気を得ることなく今こうしてここにいる。
手を伸ばせば届くのに少しばかりの恐怖に臆し伸ばそうとしない。
自ら『やろうと思えばできること』を捨て去るからクズなのである。

それも全て、遺才という体質がこの歪な構造をつくりだしているのだろう。


難所を突破し更に歩を進めた先。眼前には分かれ道。
必然的に選択されるは二手に分かれての探索。問題は誰と誰で別れるかだが───

「……俺って、ほんと運ないよな…………」

厳選なるクジの結果見事サフロールを引き当て、嫌味に神経を磨耗させる作業が確定した。
この組み分け、能力的にバランスが取れているものの性格的なバランスは偏っている。

「って、は、は、お墓〜〜〜〜〜ッッ!?」

加えてギルゴールド家は墓地と宝物庫を兼ねているらしかった。
並ぶ墓標の群れはどことなく気味が悪い。冷ややかな風が頬を撫でる度に寒気がする。
第六感がここは『出る』だろうと告げ、ルインの中で逃走が可決。即座に回れ右。

>「……おいビビリ、どこ行くつもりだ。テメェが前だって言ってんだろうが」

しかしぼっちが許さない。許してくれない。容赦もない。容赦せん。
はいごめんなさい、とサフロールの機嫌を損ねぬよう前を行こうとした、丁度その時。

「……………あ」

さっと顔が青ざめるのが分かった。肌が粟立ち体が震える。
見てしまったのだ。
通路の奥。松明の灯が届かない闇で青白い光がゆらりと動くのを。

「やっぱり出たあぁあぁああぁぁああぁぁぁあぁぁあ!!光が!が、が、お、お、お、オバケーーーーッ!!」

的中した予感にルインはみっともなく腰を抜かし、通路の奥を震える指で差す。
もっとも青白い光はとうに失せていたが、臆病者に二の足を踏ませるには十分。

「もう先頭は許してください……ホントに限界なんです!俺、ただのビビリだし……弱いし。
 俺がスゴイ奴に見えるか!?………ただの凡人なんだよ!もうかんべんしてくれ!!」

見せるは代々伝わる最後の手段『逃走』と双璧を成す『土下座』。
余談だがこの奥義は汎用性が高く借金を踏み倒す際や借りる際にも応用できる。成功率はともかく。
その場からルインが動く気配は一切ないが嫌味の一言で問題なく歩き出すだろう。……泣きながら。


【青白い光を認識。幽霊だと勝手に思ってます】

198 :セフィリア ◆LGH1NVF4LA :11/07/17 03:34:07 ID:???
剣をバハムートの腹に突き立てると胃袋の中は大いに揺れた
瓦礫が宙を舞い、胃液が飛び散り、胃壁がうねる

「魚さん、ごめんなさい。でも、私も食べられるわけにはいかないから!!」

中で暴れれば吐き出してくれるかも、というのは少々、虫がよすぎた考え方だった
仕方なくセフィリアはどうやったら魚から脱出できるか考える……かわいそうだけど、魚を傷つけずに出る方法が思いつかなかった
それと、もう一つ懸念材料が……
「もしも、この子が暴れ回ったらどうしよう……」
いままではどこにいていたかは知らないが、突如あらわれたこの巨大魚が、もし湖上の船や人を襲ったらどうしようか?ちょ

「かわいそうだけど、殺すしかないよね」
動物愛護の団体が聞いたら猛抗議が来そうだが、この大きさの魚など、人間に取っては害でしかない
しかも、凶暴と来たら残念ながら排除するしかない
人間と魔物との生存競争はこんな観光地でも……いや、こんな観光地だからこそと言えるのか……
セフィリアは意を決して、この巨大魚の抹殺すると決めた

>「ずっとワタシ達のターンだ、ぶち破れえええええええええええ!!」
外からロキの元気な声が聞こえる
「ごめんね……」
剣に魔力を集中させて、熱魔術の剣を出現させる
その光の刀身が当たりを激しく照らし出したとき、聞き覚えのある声が耳に飛び込んできた

>「ガルブレイズさん、ご無事ですか?」
「私は無事です。それよりいまからお腹を切り裂くので、気をつけてくださいね
仕事が終わったら、お刺身が食べれるかもしれませんよ。」

能天気なことをいいながら、剣を振り上げる。刀身の煌めきが増し、当たりをさらに照らす
「ガルブレイズ流 奥義ブレイクスカイシャイニングファングソード!!」
本当はそんな奥義はあるはずもない、セフィリアのアドリブである。そもそもガルブレイズ流は2刀流
ゴーレムの全身の数倍はあろうかという、巨大な光剣でバハムートを両断するために刃を振る


199 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/07/18 02:17:49 ID:???
ダニーとシヴァは充分以上の仕事を為した。
氾濫した河を渡りきり、対岸にザイルを渡す。あとは、渡されたザイル伝いに小舟を誘導していけば渡河はできる。
完了した。

「大変結構よ、二人とも。今だけで銀貨二枚分の働きはしたわ」

穴も塞ぎ、川の流れも弱まり始めている。
クローディア達は無理やりの渡河で得た時間的なアドバンテージを最大限活かすべく、更に先へと足を向けた。
闇の向こうで人の気配が動く。先行した5人が、立ち往生しているようだった。

「どうやらこの先で二叉の分かれ道のようです。連中は、自分たちがどの道を選ぶのか会議しているのでしょう」

夜目の効くナーゼムが、目を細めながらそう伝えた。
そして、どうやら道の数だけパーティを分ける選択をしたようだった。すなわち、二手に分かれて進むということ。
彼らが行き、気配が消えてからクローディアたちは分かれ道へと到達した。

「ギルゴールド家と……メニアーチャ」
「クローディアさん」
「わかってるわナーゼム、わかってる。いまさら遺産目当てでどうこうしようってつもりもないわ。
 ここに本家の財産庫があるなんてことは、今この瞬間まで寡聞にして知らなかったことなんだもの」

クローディアは、メニアーチャの分家の人間だ。
本家が溜め込んだ財産に手をつける権利はないし、それを持つべき人間がいるとすれば――帝都の従兄だけだろう。
実家が文字通り取り潰された今でも、その矜持と不文律は彼女の中に熱を持って生きていた。

「ダニー、ジョナサン。あんたたちは、右。メニアーチャ家の財産庫へ進みなさい。
 先行した連中を遭ったら、できるだけ情報を集めた上で可能ならこれを撃破。締め上げて、目的を聞き出すの」

立て札を指差し、頭蓋骨を模した刻印をなぞる。

「いかにも本家らしい堅牢なトラップの数々よ。あたしやあんたと同じ、遺才持ちが携わってる……。
 財産を『護る』ことに特化した天才がいるのよ、メニアーチャには。そのガタイなら滅多なことはないと思うけど、気をつけて」

財を狙う者の心理を把握し、侵入者を最も効果的に撃退する。
『銭』の眷属の中でもとりわけ防衛技能に秀でた技術を、メニアーチャは擁している。
その天才が設計した財産庫であれば、一筋縄で攻略することままならないだろう。
如何なるダメージも無視して進めるような重装甲でもあれば別だが。

「あたしたちは左。ギルゴールド方面を攻めるわ。こっちは墓場も兼用してるから、参拝客を危険に晒すような仕掛けはないはず。
 懸念があるそすれば――『墓守り』がまだ生きてる可能性ね。だから武闘派二人はあたしの護衛。文句ないでしょ」

ギルゴールド家の墓地には専属の『墓守り』が囲われている。代々墓を管理してきた、一族経営の守り主だ。
彼らは人間であり、これといった血に恵まれているわけでもないが、生まれてから死ぬまでを墓地の中で過ごす生まれついてのプロ。
内部に向こう100年分の食料を溜め込みひたすら墓の中を見廻る存在だ。元は奴隷階級からギルゴールドに引き揚げられた人間である。
二年前の消失によってこの地下通路が破壊されていない以上、外の滅亡を知らぬまま生きていても不思議はなかった。

「仕事の中身は把握したわね。だったら解散、一刻過ぎたらここで合流。――状況開始よ」

ダニー達にささやいて、クローディアは足音を殺しながら右の道へと入っていった。

200 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/07/18 02:18:11 ID:???
* * * * * *

【メニアーチャルート】

疾走するフィンの眉間目がけて一筋の銀光が走る。
それは一本の矢だった。罠である。通路の向こう側から、向かってくる動きに反応してクロスボウが撃発されたのだ。
フィンへ当たるが当たるまいが、それが皮切りだった。通路の向こうから、更に矢が飛んでくる。その数、無数。
細い矢、太い矢、刺さると抜けない形状の狩矢、劈音を曳きながら飛ぶ鏑矢、致死毒の矢、麻痺毒の矢、神経毒の矢。
豪雨の如く降り注ぐ矢列はたちまち通路の幅を全て覆い尽くし、フィンとその後を追うノイファへと襲いかかる!

その最後尾には、先行したあらゆる矢を目隠しにした本命の一撃が控えていた。
バリスタと呼ばれる攻城兵器の一種、人間一人分はあろうかという巨大な矢弾が侵入者を串刺しにすべく発射された。


【ギルゴールドルート】

墓場にしてはやけに小奇麗どころか埃ひとつ落ちていない床に額を擦り付けて許しを乞うルイン。
彼の傍にあった松明が不意に消えた。同時、躍動の気配。青白い光がルインの背後にひとつ灯る。
松明があればよく反射したであろう、分厚い刃をもつ山鉈が、暗闇の中からルインの首を狩りに迫る!

青白い光は、よく見れば暗闇の中に陰影として人の形を描き出すことだろう。
それは小柄で、腰の曲がった老人の姿。髪は薄く頬はこけているのに目の中だけがぎらぎらと輝く容貌は獣じみた雰囲気を想起させる。
灰色の気炎を吐きながら、老人の山鉈が閃いた。


【ダニーにメニアーチャルートへ進むよう指示。
 フィンとノイファに迫る矢の嵐とその奥から打ち出されるバリスタ
 ルインの背後から音もなく抜き放たれた山鉈の刃】

201 :ストラトス ◆p2OedqKZik :11/07/18 17:54:16 ID:???
放った飛翔機雷群は敵艦の迎撃システムを抜け、敵戦闘艦の甲板を中心として濃密な煙幕が展開された

「着弾確認っと」

ひとまずこれで敵艦からしばらくはこちらへの攻撃は来ないだろう
だが、この広い湖の上では風でかき消されるのも時間の問題だ

>「ストラトス、左舷から回りこんで迎撃システムを潰せ。
 間違っても船底に穴空けるんじゃねえぞ、お前の艦を栓にしたくなけりゃな。」

「了解しました、"船底"に穴を空けなければいいんですね。
 では甲板が完全消失しない程度に破壊してきます。」

シルトデアイージスを敵戦闘艦の左舷へ回り込むよう操作する
その間に相手の艦の沈m…っと違いました。迎撃システムの破壊の仕方を考えることにした
単に飛翔機雷を大量に一斉発射して迎撃システムの処理能力を上回ることで破壊できればいいのだが…

「うーん…敵艦を木っ端微塵にしないようにするっていうのがやっぱり難しいですね
 この艦の兵装も、艦載してあるゴーレムもあれくらいなら軽々と沈めてしまえますし…
 というか、"沈めないように"っていう選択肢がほとんど使えないですね」

基本、一対一の対人戦には向かない上にほぼすべての武装が高火力であるので
"沈めないようにする"方法はおのずと限られてくる

「…仕方ないですね、あんまり自分には向いてない方法ですが
 直接乗り込んで、爆発物仕掛けてきましょうか」

思いついたら即実行。早速、最低限の武装をして突入する

「シルトデアイージスで念のため敵艦の周囲を旋回させて敵の注意を引きつけときましょう。」

漁船に被害が及んで沈むようなことがあればまた予算が減らされかねない
そうなればこれらの維持や開発の費用が…!
しかもそれどころか給料まで減らされかねない
幸いこの艦の装甲なら大抵の攻撃はないに等しい。こいの艦を盾代わりにつかうのは
許したくないことだがこの際仕方がない

「まだ煙幕が残ってる今の内に仕掛けましょうか…」

船側を少し近づけて乗り移る
一瞬さっきの煙幕攻撃時に見えたのではたしかこの辺りに…
有った!よし、あとはこの高性能魔導爆弾を仕掛ければ…


「クソ!嘗めやがって!」
後ろから声がしたと思い振り返ると軽魔導砲をこちらに向けてる男がいた
周りを見渡すと他にもちらほらいるのが分かるぐらい
煙幕が薄くなっていたしまった。気づいてなかった。早く逃げないと!
「これでも喰らいやがれ!」

魔導砲からの攻撃が来る。そう理解するとほぼ同時に気づいてギリギリ回避運動をした
なんとか直撃こそしなかったものの"左腕部"に当たってしまった
小さくても魔導砲は強力だから腕など軽々とちぎれる
撃たれた反動で身体は後ろに飛ばされる

202 :ストラトス ◆p2OedqKZik :11/07/18 17:55:48 ID:???
「へへっ、ざまーみやがれ」
しかし湖賊の男はまだ気づいていなかった
甲板にちぎれ飛んだ腕から血液が流れ出ていないことに

「…はぁ、腕が吹き飛ばされた程度で済んだからいいものの
 胴体に当たったらどうするんですか」

「なっ…!!?」
撃った男だけではなくこちらを狙ってきた湖賊全員が絶句する
こいつらは自分が腕の痛みや消失感で泣き叫ぶとでも思っていたのだろうか
そもそも、もう腕も脚も本来のものではない自分が。

「左腕部パージ」
肩から下の残っていた左腕を外す
「はぁ…まだ誰にもメンバーにはどうしようか迷って言ってないのに
 先にこんな奴等知られるなんて」

右腕でポケット中から一枚のカードを取り出し魔力を込める
するとカードが消えて換わって左腕が出現した
「全く…しかもこの腕作るだけでも結構手間がかかるんですよ」
左腕と左腕のあった場所を組み合わせる
「本当はこんなことやるつもりではなかったですけど知られたからには仕方がありませんね。」

立ち上がりさっきの魔導爆弾を迎撃システムの上に投げる
爆発し炎が上がる。本来ならばこれで任務は終わりで一旦、艦にもどるつもりだった
「まだ、メンバーのみなさんには多分バレてないと思います
 なので一部始終を見てコレを知ったのはあなたたちだけ。
よって証拠隠滅のために。あと、暴れれなかった分も含めて…」

新たにカードを1枚取り出して起動させる
すると彼女の手元には重機関魔導砲があった
蒼白になる湖賊たち、しかしもう遅い。

トリガーが引かれ先ほどこちらを攻撃した男の魔導砲に砲弾が殺到する
構えていた魔導砲諸とも男の片腕はなくなり赤黒い断面を覗かせ紅い液体が吹き出る

それをみた瞬間、湖賊たちは恐怖で無我夢中で逃げる者と突撃する者に分かれる
だが突撃した者は一瞬にして者から物へと成り代わるだろう
「毎分250発のこいつを嘗めてるんですか?」

重機関魔導砲から次々と人にとって必殺の威力を持つ弾が出される
これは本来、地面に固定設置し対ゴーレムに使われるもので威力は通常のゴーレムの持つ魔導砲より一発一発は弱い
だがこれは一発一発の弾の威力の減少と砲身を増やした犠牲に
同時装填を可能にしたことで打ち出される弾の発射間隔を大幅に減らしたものだ
ゴーレムに対しては足止めに人に対して使えば逃げる暇も与えず挽き肉にするだろう

続けて逃げた者たちを追う。
銃は今は撃たないこいつは魔力をかなり喰う武器であまり使いすぎたら
いざ使う時に使えなくてはつまらない
魔力を込めて重機関魔導砲を再びカードに換える
続けては別のカードをポケットから取り出し今度は術式処理を施したナイフを出す
「あっ、全ては殺さないですから安心して下さい。後でこの艦のドッグとか色々と聞かなきゃだめなんで」

逃げる湖賊達に向かい言い放つが聞こえてないだろう…
まぁ、実際は脅しで残りにはせいぜい死と生の狭間をさまようぐらいの身体的ダメージと
一生消えないくらいの深いトラウマを与えればいいぐらいの気持ちなので
彼らからすれば安心できないだろうが少なくとも絶対に殺そうという気持ちはない
「あとあまり艦内に逃げないで下さい。潰しちゃダメらしくて。」

【迎撃システム破壊、強制黙秘させるため芝を刈りに行く感覚で湖賊を狩りに出かけました】

203 :スイ ◆nulVwXAKKU :11/07/18 20:22:33 ID:???
漁船に乗り込もうとした湖賊が風によって吹き飛ばされていく。
敵艦にいたゴーレム―たしかハイマウントといったか―がバランスを崩すのが見えた。

>「スイ、そよ風だけではまだ足りなイ!もっと強い風をよこセ」

念信器からアルテリアの声が流れる。

「だってよ、どうする?」
「(あのゴーレムに向かってあれを飛ばせばいい。)」
「あぁ、あれ…かぁ。」

苦手なんだよなーと呟き、頭を軽くかく。
あれ、というのは風の力を一点に集中させて槍や矢のように打つような技のことだ。
ただし、難点がある。
裏のスイは、命中率が低い。
あの矢を湖賊に当てれたのも、実を言えば、ほぼ風任せで送っていた。
しかし、風単体となるとこちら側が調節せねばならず、スイはそれが一番苦手な分野だった。

「んーそうだ、一瞬代わるからさ、お前の目貸してくれよ」
「(…お前と入れ替わった瞬間にどのぐらいの誤差が発生する?)」
「…あのゴーレムが標的だと、あっちに当たるときに大体半径2mぐらいだな」
「(わかった)」

対して表のスイは風はほとんど操れないため、命中率が高い。
感情を映さない目がすぅ、と細められる。
口を僅かに動かし、独り言を呟くような素振りだが、音は発せられてなかった。
スイの目が閉じられ、狂気の色が再び甦る。

「(いいぞ、目の位置を動かさずそのまま打て)」
「いよっしゃぁ!!」

高らかにスイは吼え、マテリアルを付けている右手を前に伸ばす。
その先に徐々に風が集まり、不可視の槍が出来上がっていく。

「姐さん、お望み通りくれてやるぜ!!」

風の槍が、ハイマウントに向かって飛んだ。

【一点集中に特化した風がゴーレムに飛びます】

204 :ダニー ◆/LWSXHlfE2 :11/07/19 17:02:15 ID:???
無事にクローディア達と合流したダニーとシヴァは洞窟の更に先へと進んだ。
途中で岐路に立たされた一行はクローディアの支持により二手に別れて探索することになり、
ダニー、ジョナサンはメニアーチャ家、残りはギルゴールド家へと向かう。

ジョナサンは引きつった笑顔をしていたがこの際仕方ない、贅沢を言っていられない。
片方の姿が見えなくなったのを確認してからダニーはおもむろに服を脱いだ。
後ろで悲鳴が上がった気がするが捨て置く、びしょ濡れのメイド服を絞らないといけなかった。

服の下から暗緑色のタンクトップに黒のスパッツだがその状態は「よく保ってるな」といった有様だ。
大型の爬虫類を思わせる強靭な足首から始まり、大樹のような脚、馬のような腿、
峻厳な渓谷の谷間を思わせる尻から繋がる腰から上のラインは雄大な尾根を連想させるし、
腕も毛こそ生えていないが大型類人猿のソレと言って差し支えない。

かと思えば腹部から首周りは一流の彫刻家の作った男性像と同じなだらかな直線を称え、
皮膚は海洋哺乳類の如きツヤとハリ、そして微少な弾力を保持していた。一言で言えば美しかった。

ダニーとて二十歳を迎える前の花盛りの乙女であり一抹の恥らいを秘める女性でもある。
それ故に男性が不在になるまで自重していたのだ。それにと彼女は自分の手を見た。

傷つき、再生し、変貌を繰り返した自分の手は、他の自分の体のどの部位を比べても不似合いで、
自分らしかった。一箇所だけ浮いている自分の手を見られるのが、何か気恥ずかしいという訳もあった。
美しくない訳ではない、ただ鍛えた自分の肉体の中で拳だけが異彩を放つのが気になったのだ。
気の強い女性ならばそれを自分の「ワンポイント」だと誇るだろう。ダニーは気が弱かった。

小さく息を吐くとさっさと服を着て、水分補給を済ませ先を急ぐ。先程のクローディアの言葉を思い出す。
>>先行した連中を遭ったら、できるだけ情報を集めた上で可能ならこれを撃破。締め上げて、目的を聞き出すの

ついで心配をしてくる少女の顔を思い出して、ダニーの顔は僅かにやに下がる。
ジョナサンにゆっくり付いてくるように言うとそのまま軽く屈伸をして「準備」に入る。息を整えて脚に力を込め、
上半身を脱力させる。ぶおんっという風切り音と共にダニーの体が前方へと跳ねる。

巨体から行われる洗練された無駄のないスキップは、地面にその足跡を轍のように残しながらも、
外見からは嘘くさい程静かに、そして疾く持ち主の体を運んでいき、あっという間に連れの視界から姿を消した。
それから少しして前の方で先行していた気配の主に見つける。何やら取り込み中のようだった。

205 :ダニー ◆/LWSXHlfE2 :11/07/19 17:05:08 ID:???
罠ってこれかと思いながら自分に飛んできた流れ矢を、腹に貯めていたスイカの種を吐き出して撃墜する。
隠し芸の一つだったが思わぬ所で使ってしまったと内心で舌打ちする。
だがそれよりも問題だったのは勢いを付けすぎて止まれないことだった。見通しが悪かったことと、
ここまで意外に曲がり道が多かった為に、直線でちょっと調子に乗ってしまったのだ。

このままでは減速できず二人にぶつかってしまう。これが青春恋愛物の話ならドジな娘がぶつかり、
可愛気をアピールするだけの時間に終わるが、ダニーがやるとぶつかった相手が踏んだ青ナスみたいに
なっちゃう。撃破するだけならそれでもいいがそれでは話が聞けなくなってしまうだろう。

止む無くダニーは彼らの頭上を飛び越えて通路の先に着地する。やれやれと顔を上げると、
額の辺りに圧迫感が走る。尖った物は正面で見ると分かり難いがコレも矢だと分かると、その場で飛び跳ねる。

「・・・・・・・・・・・・・・・!」
後ろの二人に注意すると彼女の足元をバリスタが飛んでいく。二人は果たして無事なのか。
何れにせよ彼女の言う事とやる事は決まっている。この後彼らと二三言葉を交わせば次の事を彼女は言うだろう。

一つ、自分は雇われの身で宝探しに来たこと
二つ、見ない顔だが、そちらも宝探しに来たのかということ
三つ、もし二つ目の問いに是と答えたら、金に困っている風には見えないがと言うこと
四つ、ここにある宝を類は全て持って行く気かどうか
五つ、聞いた答えを無かった物として「何者か」と問う

以上に対する反応から相手を判断して、これを撃破する。命までは別段取らなくても大丈夫だろうが、
およそ常人ではないだろうから気は抜けない。もしも二つ目に否と答えたら、
その時は有りがたく総取りとさせて貰えばいい。会話が終われば、ダニーは荷物を下ろして構えを取るだろう。

「・・・・・・・・・・・・」
お前達は攻めて来てもいいし、守りに徹してもいい。彼女はそう言い放つと相手の出方を見る。

【ダニー登場、フィン、ノイファに接触、質問の後に戦闘態勢へ】

206 :フィン=ハンプティ ◆yHpyvmxBJw :11/07/19 23:12:53 ID:???

「はははは!そんなに心配すんなって、ノイファっち!!
 何かあっても俺がなんとかしてみせるぜっ!!」

ノイファが掛けた静止の言葉を受け取ったフィンは、
少し減速したものの、それでも小走り程度の速度で一本道を駆け抜ける。
その動きには淀みは無い。先ほどの落石である程度ダメージを負った筈なのに、
その事をまるでおくびにもださない普段通りの走り。
浮かぶ笑みは少年の様に眩しく、本当にこの探索を楽しんでいるのであろう事が伺える。
端的に言えば、フィンはこの状況に脅威を感じていないのだ。
それだけの能力を、フィン=ハンプティは所持しているのである。

そして――――罠とは、その油断を目掛けて仕掛けられる物だ。

最初に放たれた矢を掴み取るフィン。そしてそれを皮切りに、財宝を守る竜が吐く炎の如く。
放たれたのは数多の矢。戦場の一場面にでも描かれそうな様な矢の壁が、
フィンとノイファに襲い掛かってきた。
財を持つ物が財を守る為に練り上げた断罪の罠。
遊撃課にも矢を繰る天才は居るが、この罠の持つ恐怖はその天才の掃射とは異なる。
それは単なる物量の恐怖。数多の蟻が肉食動物を食い散らかすかの様な
単純にしてそれ故に強大な威力。

「うおっと!!?なんだこれ、あっぶねーなー!!
 けどまあ、この間のクロなんとかが使った魔法よりは、防ぎやすいぜっと!!」

――――しかし、その矢の壁も結局はあくまで凡夫の領域でしかなかった。

天才とは、油断をしていても尚凡人の群れを凌駕する。そうでなければ天才とは呼べない。
フィンは即座に行動に移った。自身のシャツを破り去り、矢の壁へと投げつける。
当然矢はフィンのシャツ如き簡単に貫くだろうが、フィンの狙いはそれではない。
服に当たることで一瞬だけ速度が揃えられた矢の壁の一部。其処を手甲を嵌めた腕で
下に叩き付ける様にして殴りつけたのだ。

「よっし、俺の後ろでしゃがんでくれノイファっち!!」

当然の如く矢はシャツに絡め取られ、人落ち間一人分程のスペースがそこに出来上がった。
その上でしゃがめば、回避出来る可能性は高くなる。

……一見簡単に見えるが、その実この行為はそれなりの難易度を誇る行為である。
矢の速度へ対応できる動体視力、シャツを投げるタイミング、シャツに掛ける力の総量と、その力の流れ。
全てをある程度以上のレベルで用いないと不可能な行為と言えるだろう。

もっとも、今回に限って言うならば見知らぬ大女が矢の総数を大幅に減らしてくれていたお陰で
それほど難しいものでもなくなっていたにはいたのだが。

「ははは!いやー、危なかったぜ!ノイファっちは大丈夫だったか?
 …………って、あんた、誰だ?」

そんな事も露知らず、矢を払ったフィンはノイファの方へと向き直り、
その安否を気遣う台詞を吐こうとし、そこで近距離に君臨していた大女に目を奪われた。
隆々とした肉体。はちきれんばかりの男……女性的な肉体美。
たった今大きく跳躍し地面に舞い落ちたかの様なその存在に注目するなという方が無理だ

207 :フィン=ハンプティ ◆yHpyvmxBJw :11/07/19 23:13:48 ID:???
そして、奇しくも味方を守る為に、眼前の存在に注意を払い、
目を奪われた事こそが『最終城壁』たるフィンに隙を発生させてしまった。

矢の壁から遅れて放たれたのは、攻城兵器バリスタ。無骨にして巨大にして絶大な威力の「矢」。
そんな矢が、意識の反れたフィンの横腹を目掛けて放たれる。

しかしながら、コンマ数秒の後にはフィンはその矢に気付く筈だ。
何故ならフィンは鎧の眷属。直接的な害意に対しいつまでも気付かぬ筈が無い。
気付く事さえ出来れば、距離の問題で受け流す事は無理でも、かろうじで
致命傷を避けた回避をする程度の事は叶うだろう。
――――が、しかし今回の状況においては、仮に気付いたとしてもフィンという青年は
決して自身でバリスタを回避する事は無いだろう。何故なら、フィンががバリスタを回避すれば

その矢はノイファに向かう事になるかもしれないからだ。

例え自身に矢が直撃しようとも、フィンは決して矢を避ける事はしない。
その代価は、腕一本か、或いは命そのものか、それ程の状況であるというのに。

――――鉄臭い赤を孕んだ未来の影が忍び寄る

【フィン、矢を何とか回避するもダニーに気を取られバリスタに気付くのが遅れる】

208 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/07/20 07:26:39 ID:???
『バハムート』は、自分の裡に熱を感じた。
それは己の運動によってもたらされた体温上昇ではなく――外的要因による攻性熱源。
心当たりは唯一つ、先刻飲み込んだ岩人形。この湖底のいかなる瓦礫も飲み込んできた胃袋が、内側から破られようとしている。

「……!……!……!……!」

悲鳴のように何度も声を上げる。苦痛のあまり眼球が迫り出し、陸に上げられたかのようにのたうち回る。
そして。やがて終わりが来た。
バハムートの中腹のあたりから赤熱した剣が生える。それはぐるりと回転し、彼の肉を抉り、硬骨を断ち切った。
穿たれたのは、バハムート全体からしてみれば小さな穴。しかし太い血管を傷つけられ、夥しい量の魚血が湖水を穢す。

陸ではないのだ。海水の混じったこの湖中では、浸透率の関係でほんの少しの穴からでも血液は漏出し続ける。
止まらない。海魚であるバハムートは、本能で、自分の末路を把握した。
さりとて、己の死までを許容することはできない。それもまた、本能で。バハムートは、最期の抵抗に出た。


 * * * * * * 

「お魚が……!」

ロキの喚び出した海龍に掴まり水中での自由を得たスティレットには、大局を把握する余裕が生まれた。
継承される血の本能が、目の前の状況を検分する。それは分析などではなく、曖昧な概念としてスティレットの認識となる。
腹を裂かれた巨魚の頭が、直上――湖面を向いた。まるで光に惹かれる羽虫のごとく、極光を求めて巨魚は水進する。

海龍を介して巨魚に絡み付いている潜水組の面々も、それに牽引されていく。
もしもロキが水圧を防いでいなければ、それだけで急激な圧の変化に耐えられずスティレットは絶命していたことだろう。

その速度、鉄道もかくや。
全身が筋肉の塊である巨魚は、その身の煽動を、ひれの羽ばたきを、鱗の生み出す揚力を全て一方向に合致。
爆発的な加速を生み出す。遥か湖底から湖面までの距離を、僅か数秒で消化した。

「わ――」

膜のように揺蕩う水面を突き破って、巨魚は大気と邂逅した。
湖上を進む船からは、突如として水面から巨大な塔が生えてきたように視えるだろう。圧巻さは、畏怖を空気に伝染する。
あっという間に尻尾までが水面から出て、巨魚は全身が湖上の空気に晒された格好になる。

滞空は一瞬、重力の鎖に絡め取られて巨魚は自由落下を始めた。

「これは!マズいでありますっ!教導院で習ったことがあります、一部のお魚には、こうやって全身を水面に叩きつけることで、
 寄生虫などの類を叩き落すものがいると――今、同じことがスケールアップで起きようとしてるでありますっ!!」

この高さ、加えて巨魚の体重で水面に叩きつけられれば、その体表や内部に居る者全てに等しく破壊がもたらされるだろう。
ゴーレムや身体強化とて例外ではない。大砲100発だって追いつけない圧倒的な破壊力がそこからは生み出される。
スティレットの警告は迅速だったが、それで事態が好転するかは別問題で。
即死確実の水面が迫る――!


【巨魚撃破!最期のあがきとして水面を飛び出し、身体を水に叩きつけることで潜水組を殺そうとする】

209 :サフロール・オブテイン ◆jKUaosk4aY :11/07/20 21:35:00 ID:???
苛立ちを込めた言葉で突き刺すと、ルインは即座に謝り、渋々と歩き出した。

「ったく、いちいち面倒臭え奴だ。初めからそうすりゃ……」

>「……………あ」

「あぁ?」

サフロールが眉間に皺を寄せ、険悪な一声。

>「やっぱり出たあぁあぁああぁぁああぁぁぁあぁぁあ!!光が!が、が、お、お、お、オバケーーーーッ!!」

けたたましく引き攣った悲鳴に、眉間の皺が更に深まる。
ルインが指差す通路の奥を振り返ってみるものの、何も見えない。
空間に薄く立ち込める魔力のせいで、残滓を追う事も出来なかった。

「……何もいねえよ。おら、さっさと立……」

>「もう先頭は許してください……ホントに限界なんです!俺、ただのビビリだし……弱いし。
  俺がスゴイ奴に見えるか!?………ただの凡人なんだよ!もうかんべんしてくれ!!」

怒涛の泣き言、同時に土下座、猛烈な勢いでルインは泣きつく。
対してサフロールは――露骨に舌を打ち、奥歯を軋ませ、両眼に怒りの色を浮かべた。
衝動に任せて右手の先に魔力を凝縮、振り下ろす。轟音、床が浅く抉れた。
平伏したルインの両手だけを外した、横一線の『切断』の術式。

「甘ったれた事抜かしてんじゃねえぞ!このウジ虫が!テメェがビビりだろうが弱かろうが知った事か!
 そんなに凡人になりてえなら手首を切り落としてやろうか!えぇ!?」

手首を切り落とす、容易く『出来る事』だ。
だが臆病者のルインには、そんな事が出来る筈がない。
それを知った上での怒号、罵倒だ。

「ほら言えよ!俺は遺才なんていりません、だからこの手首を切り落として下さいってよぉ!」

再び右手に魔力を滾らせる。
準備は出来ている。ただ一言呟けばお前の願いを叶えてやる、と。
焦燥を、恐怖を煽り立てるように。

「……言える訳ねえよなぁ?テメェから遺才を取ったら何が残る?精々腐れた家名と借金くらいか?
 遺才が無けりゃ、テメェなんざ正真正銘のクズだ。銅貨三枚で股を開くアバズレにすら相手にされねえよ」

業火の如き怒声から一変、冷ややかな声で罵倒を吐き掛ける。

「テメェはどっち付かずでいてえんだろ?面倒な事は凡人だからと逃げ回って、
 そのくせ自分の価値を、存在を認めてもらいてえんだ。
 女共に囲まれて、嫌だツイてないと言いながらも良い気分でいてえんだよなぁ!?」

過剰な敵意。
サフロールは今、ルインを傷付ける為に口舌の刃を放っている。
ノイファやフィンに向けた、悪意を引き出す為の言葉ではない。

何故か――自分が言いたくても言えない事を、ルインは軽々と言い放ったからだ。
自分だって、好きで嫌われ者の家系に生まれた訳ではない。
遺才さえなければ、どこか違う家系に生まれていれば。
今更サフロールは、その黒く塗り潰された幼い頃の願いを、思い出したりはしない。
もし思い出してしまえば、自分自身のプライドを八つ裂きにしてしまう。
彼は意識しないまま自分の願いから目を逸らし、
だが一方で『分析』の遺才によって、やはり無自覚にその事を理解していた。
その無意識の奥底で蠢く葛藤に、ルインの言葉は触れてしまったのだ。

210 :サフロール・オブテイン ◆jKUaosk4aY :11/07/20 21:35:21 ID:???
尚も燃え上がるサフロールの怒りは、しかし不意に消えた松明の灯りと共に収束する
何が起きたのかと思考する間もなく、ルインの背後に青白い光が現れた。
矮躯の、見窄らしい、だが異様な気配と眼光を放つ老人の姿が描かれる。
分厚い鉈の刃が、獰猛に閃いた。

「クソが――!」

サフロールが瞬時に思考を開始。
振り下ろされる鉈を防ぐか――先の『切断』術式の威力は、平時よりも弱かった。
魔力の加減を誤る事はない。考えられる要因は周囲に満ちた魔力。
障壁も正常に展開されるかどうかは分からない。

ならば吹き飛ばすか――そもそも相手の正体が分からない。
幽霊の類など信じてはいないが、魔力に思念が宿った存在である可能性を危惧。
もしそうだとしたら、通常の術式では効果が薄いかもしれない。

最も確実にルインを助ける術は――

「どけってんだ!この間抜け!」

咆哮、同時に『烈風』の術式、加減なしの風圧で殴り飛ばす。
青白い光だけではなく、確実に術式の通用するルインもまとめて。
ルインにとっては幸いな事に、この空間では術式は正常な威力を発揮出来ない。
精々、全身が隈なく痛む程度で事なきを得るだろう。

「何やってやがる!さっさと立って戦わねえか!」

容赦なくルインを罵倒して、サフロールは背後へと『飛翔』する。
魔力の翼も大きく広がらず、窮屈そうに折れ曲がっていた。

「コイツは……もしかしなくても、ここの墓守だろうな。
 力の源は、この空間に満ちた魔力――つまりこの墓場そのものってとこか?」

分析を開始。

「まぁ、魔力で実体を作り出してんなら、同じ魔力で倒せねえ道理はねえ。
 テメェの『槍』も通じんだろ。……まさかテメェに岩を砕くような腕力があるとも思えねえしな」

意識的にせよ、無意識的にせよ、『遺才』の発動には魔力と術式が伴っている筈だ。
平時の身体能力では明らかに不可能な事でさえ、『遺才』は可能にする。
そこには強化や特性付加、現象喚起などと言った術式が、複雑に働いていなければおかしいのだ。
ならば何故、習ってもいない術式を『遺才』持ちは扱えるのか――疑問は絶えないが、今は考えている暇はない。

【風の魔術で墓守、ルインをまとめて攻撃。戦うよう命令。
 相変わらずですが、予想の類は都合が悪ければ無かった事に】

211 :ロキ・ハティア ◆9pXiBpy0.U :11/07/20 23:50:48 ID:???
>198 >208
セフィさんは魚を殺すのを可哀想に思っているようだった。
彼女はゴーレムとも心を通わせる事が出来る心優しい少女なのだ。
でも一つ言える事は、この怪魚はもはやこの地上の輪廻の円環の中にいる”生物”ではない。
普通の魚がこれ程大きくなるわけはない。何らかの理由で魔にあたって魔性の存在と化したのだ。

>「かわいそうだけど、殺すしかないよね」
「ためらう事はないよ、あらゆるものにはあるべき場所がある。
そいつはもう”生物”じゃない。魔性と化した”魔物”。ここにいるべき者ではないんだ。
君が罪悪感を感じる事なんてないんだよ!」

魔性と化した”魔物”.、地上にいるべきでない者。なんというブーメラン。
思わず一瞬だけ薄く自嘲の笑みが浮かんだ。

>「ごめんね……」
それでも少女は魔物と化した哀れな魚の冥福を祈る。
「……分かった。一緒に送り届けよう、あるべき場所へ。お刺身は食べれなくなるけど、ね!」

>「ガルブレイズ流 奥義ブレイクスカイシャイニングファングソード!!」
やがて放たれる必殺の一撃。怪魚の腹部から剣が突き出る。
水中に鮮血が充満する。魔を孕んだ魔性の血!!
血が拡散してしまっては万事休す。 今この時がチャンスだ!

>「お魚が……!」
怪魚が一路水面を目指す。
「行くよスレイプニル――REACT!!」
凄まじい上昇流の中、全身に浴びた血を媒介にした魔変形。
ゴーレムに内蔵された、魔性の存在を象った魂の姿が顕れる。
呪われし聖なる駿馬、荘厳なる8脚の神馬――その名の通り、スレイプニル。
そして取った行動は……逃走。神馬の俊足をもって真っ先に怪魚の攻撃範囲から離脱する。

>「これは!マズいでありますっ!教導院で習ったことがあります、一部のお魚には、こうやって全身を水面に叩きつけることで、
 寄生虫などの類を叩き落すものがいると――今、同じことがスケールアップで起きようとしてるでありますっ!!」
「これでどうだっ!? 送 還 世 界!」
またしても水中に蔓延している血を媒介に。
水面の一点から、夜の闇より昏き漆黒の空隙が広がっていく。
それは御伽の国への楽園の扉か、狂気の世界への奈落の門か。そのどちらも正解だ。

これでは中に飲み込まれている仲間も一緒に行ってしまうのではないかって?
大丈夫、このゲートを抜ける者は、向こうにいるべき者だけ。裏を返せばこちらにいるべきではない者だけ。
確かに天才とは、魔を色濃く受け継いだ異端だ。
でもいくら人知を超えた力をっていようと、いくら世間から疎まれようと、化け物なんかじゃない。

「セフィさん、ファミアちゃん……君達は魚君のようにずっと一人ぼっちだった? 違うよね!?
何やかんやであんなに楽しい仲間がたくさんいるんだから!
大丈夫、君達は化け物なんかじゃない! もちろんサムちゃんもね!」
この確信が間違っていないならば、魚が門を潜った暁には彼らだけこちらに残るはずだ。

>184
その時何かに気付いた。空、もとい水面から落ちてくる……おっさん!? そんなまさか!

【水面にお魚ボッシュートゲートを開く】

212 :アルテリア ◆U.mk0VYot6 :11/07/22 00:46:20 ID:???
「やり方は間違ってはいなかっタ」
ハイマウントが落とした薙刀を取りに向かう最中、アルテリアはまるで相手を諭すような口調で呟く
「作戦も、対応も、全てにおいて間違いはなかっタ。ただ一つ間違っていたとするなラ
 自分たちの実力を過信しすぎタ…その一点だけだろうナ」
脇目にハイマウントの挙動を確認する。
プリメーラの陽動の効果か、ハイマウントは標的をプリメーラに変更し
アルテリアの挙動には気がついていない。
「もっと謙虚でいたなら、もっと臆病でいたならば、違う結果になっていただろうナ
 加えて言うなラ、そして、二度過信したお前(ハイマウント)はここで死ぬことになル
 これからおきる事態に対シ、いつもどおりの正しい対処をしたとしても…ここで終わル」
念信機からスイの声が漏れ聞こえる。
その時が来ることを察知するのと同時に、ハイマウントの薙刀に手をつけた。
独特の風切り音と共にハイマウントの体が揺れた瞬間、自身の遺才をもって薙刀を引き抜き構える。
しかし、その時、船が大きく揺れ、アルテリアの体が宙へ浮く
だが、狙いはブレなくハイマウントを捕らえている。
「お前の死因は一つ、暴風は『三度』吹かないと過信したことだ」

  ス ト ー ム フ ゙ リ ン ガー
 三 度 穿 つ 風 の 牙

三度目の暴風がハイマウントに向かって放たれる。

213 :ノイファ ◆QxbUHuH.OE :11/07/22 20:46:10 ID:???
その音に気づけたのは敬虔な信徒であるノイファへ神がもたらした奇跡か、それとも単なる偶然か。
どちらにせよ、深い洞窟の中という静寂が支配する此の場所でもなければ気づけなかっただろう。

ほんの僅かに軋んだ駆動音、その後に発せられる風切りの羽音。
飛来するのは一筋の矢。だがそれは即座にフィンによって掴み取られた。

「危ないわねえ……。でも此の程度なら気をつけていれば大丈――えっ?」

安心するのも束の間、直後に鳴り響く無数の風切り音。
通路の幅いっぱい。あたかも戦場で居並ぶ弓兵が斉射したが如き鏃の壁が迫り来る。

「冗談ですよね!?」

頭は混乱し、口は驚愕の声をあげる。しかし、それでも体は即座に反応した。
前方。フィンの下へと駆け様に、飛び来る矢の悉くを斬って捨てる。

(それにしても、この仕掛けを作った人は相当いやらしい性格してますね……)

最初の一本で油断を誘い、直後に絶死の物量で攻め立てる。
事此処に至っては、フィンが先行したことが功を奏したと言っても良い。
そうでなければ豪雨もかくやの物量の前に、為す術も無く矢ぶすまになっていた事だろう。

>「よっし、俺の後ろでしゃがんでくれノイファっち!!」

「お願いします!」

辿り着くのとほぼ同時、群れを成して襲いかかかる第二波。
地の口調に戻っていることに気付かず、慌ててフィンの背後に滑り込む。そして――視た。

「ひゃん!?」

飛ぶ様な足運びで迫り来る人型。冗談じみた巨躯と、それが収まった可憐な女給服。
勢いもそのままに、ノイファがしゃがみ込んだ直後に跳躍。頭上高くを飛び越えていったのだ。

(何?敵!?一体何者ですか!?)

頭を抱え、疑問符を盛大に浮かべたまま、飛んで行った先を注視。
だが見えるのは無数に襲い掛かる矢の雨と、それを涼しげに防ぐフィンの姿のみ。

「消え……た――」

初手から今に至るまで、侵入者へ向けられた妄執染みた殺意も、何処か片手落ちの感が否めない。
例えば石くれの従僕や木偶の人形を先行させるだけで無傷で通過することは可能なのだ。
これ程の布陣を揃えてのけた製作者が、その程度のことを見逃す筈がない。

「――いや……危険を察して避けた!?」

果たして彼女は居た。飛んだ先で再度跳躍し、上空へ逃れたのだろう。
では何から。その疑問に至るのと同時、ノイファは首筋に鋼鉄を差し込まれるかのような焦燥感に襲われた。

214 :ノイファ ◆QxbUHuH.OE :11/07/22 20:46:50 ID:???
「――っ!!」

即座に、右目へ導線をつなげる。赤滅する光とともに予見の発動。
色の無い視界に映る、途方も無い大きさの矢。
最後の最後に用意されていた切り札は攻城戦用の重弩。

元は城壁や、そこに備えられた兵器の破壊。あるいは巨大な魔物を仕留めるために造られた代物だ。
人の身で食らえば待っているのは慈悲の無い確実な死のみだろう。
いかな『天鎧』といえども無傷という訳にはいくまい。

「フィン君!」

しかしフィンは退かない。
避ければ後ろに居る自分が危機に晒されるから、そう考えているに違いない。
まるで物語に登場する勇者や英雄のような、崇高に過ぎる自己犠牲。
それがフィン=ハンプティという男の本質なのだろう。

「まったく貴方って人は――」

冗談ではない。ノイファとて女だ、逞しい男に守られる自分を夢見たことが無いと言えば嘘になる。
しかしそれで死なれたのでは元も子もないのだ。
ふと口元が緩む。此処には居ない何処かの誰かに対しても、良く口にした言葉だった。

「――少しは仲間のことも……私のことも信用して下さい!」

フィンの肩に手をかけて渾身の力で引き付け、瞬時に脚を払って地面に倒す。
いつものフィンならこの程度で崩れはしまい。だが今は、迫る矢の方に意識が向いているためか容易。
入れ替わる立ち位置。矢を迎え撃つのは他の誰でも無い、自分自身。

「さて……お見せするとしましょうか。最高に格好良いところを!」

脚の幅を大きく取って、相対する体勢は半身。白刀は鞘へ収めて、だらりと腕を垂らす。
狙うは一点。鏃の先端。普通ならば高速で飛来する物体に対し、そんなことはほぼ不可能。
しかし、予め来る場所が見えているとしたら、不可能でもなんでもない。

「せええええええええいっ!」

抜刀。交差。
初撃を狙い違わず先端に叩き込む。返す刃を矢箆へ、寸断。更に手首を返し真下から鏃を跳ね上げる。
そのまま四合、五合と矢に刃を奔らせ、都合十合の剣撃をもって微塵に斬り砕く。

"轟剣"と呼ばれる先代剣鬼が振るった光速の刃。劣化とはいえその模倣。
本来なら秒間数十という刃を自在に閃かせる、人外の魔剣だ。しかし剣の才能を持たないノイファでは十回が限界。
そして、技の反動も深刻な負荷として遣い手に戻ってくることになる。

「お待たせいたしました。お話を伺いましょうか?正体不明のメイドさん。」

右眼と利き腕に灼けつく様な痛みを覚えながら、ノイファは巨躯のメイドへ声をかける。

215 :ノイファ ◆QxbUHuH.OE :11/07/22 20:47:18 ID:???
「こんな所まで観光で来た、ってことはないわよね?」

>「・・・・・・・・・・・・・・・!」

聞いた所で、本当のことを話す訳もないかと思ったものの、反してダニーは語りだした。
独特の口調は多少聞き取り辛かったが、彼女の目的とするのは宝探し。
そして自分たちはそれにかち合った相手というところだろう。

「お察しの通り、私たちもこの洞窟に残る財宝を探しに来たのよ。
 そうね、私自身がお金に困っているわけじゃないわ。仲間の中には困ってる人も居るみたいだけどね。」

やれやれと言った調子で肩を竦める。

「全部……か、どの程度かによるかしら?
 見ての通り此方は二人。片方はか弱い乙女ですもの、両手に余る分は持ち出せないわ。」

しれっと応える。
財宝の存在が確認出来次第、念信器で遊撃課の仲間に連絡をとるだけだ。

「私たちも雇われ者よ。もっとも、雇い主は帝都エストアリア。ついでに言えば――」

左手で腰のレイピアを抜き、地面へと突き立てる。

「――この地の所有者、ジース=フォン=メニアーチャ縁の者だけどもね。」

柄頭に刻まれたメニアーチャ家の家紋。
言外に自分たちは財宝荒らしでは無く、正当な依頼を受けたのだと滲ませる。
貴族の家紋を勝手に複製するのは帝国法で重罪である。しかし当然見つかれば、なのだが。
もちろんノイファが所有しているものは本人から受け取った物だ。伝えた言葉にも嘘はない。
だが今までの遣り取りは、これで相手が退けば良し、程度のものに過ぎない。

「まあ、結局そうなる・・・・・・か。」

荷物を降ろし構えを取るダニーを見遣り、ノイファはため息をついた。
彼女の力の一端は先刻見た。尋常ならざる身体能力を持った相手に、手負いの状態でどこまで戦えるものか。

「生憎私たちも手ぶらじゃあ帰れないのよね。
 それに降りかかる火の粉は・・・…こっちから出向いて払いに行くのがモットーなの。」

左手でレイピアを引き抜き、ノイファは構えをとった。


【ダニーの構えを見て、こちらも戦闘態勢へ。】

216 :ファミア ◆mCdqLO6Z6k :11/07/23 01:59:09 ID:???
ファミアが声をかけるのとほぼ同時に、バハムートの胃ぶくろの中が赤々と照らし出されました。
>「私は無事です。それよりいまからお腹を切り裂くので、気をつけてくださいね
>仕事が終わったら、お刺身が食べれるかもしれませんよ。」
関節の駆動音を響かせてサムエルソンが魔導刃を振りかぶると、赤熱した刃は更に長さと輝きを増し、
そして、それはセフィリアの掛け声と共に胃壁へ叩きつけられました。

しゅう、と盛大に液体が蒸発する音がして、しかし他には何もなく。
振り下ろされた刃は吸い込まれるようにバハムートの体内へ(あるいは体外へ?)と消えました。
くぅ、とファミアのお腹が鳴りました。なにせちょっと美味しそうな匂いがするので。

しかし、とファミアは考えます。
(大型のウツボには毒があるはず……。残念だけど多分食べるのは無理だろうなあ)
そもそもがセフィリアのジョークだということに気がついていません。そのかわり、別のことに思い当たりました。
(……これほど大型の生物が通れるような水脈があるのなら事前のミーティングでそれに触れられたはず。
 つまり、水脈を通れる大きさのうちにこの湖まで来て、ここで成長した……。
そして、ウツボの毒はたしか生体濃縮によるもの――
この湖に生息している生物に毒素を持つものが居なければ、十分に食用たり得る……!)

ここまで考えて首を捻ります。
(いや……そもそも何を食べてここまで大きくなれるんだろう?ウルタール湖はたしかに大きいけれど、
 この内部の生態系の循環だけでこれほどの成長はできないだろうし、ましてそれを維持するなんて……)

そこでファミアの脳裏に電流が走りました。
(――魔力!純粋魔力を滋養として取り込むことでここまで大きくなれたんだ!
 恐らく貴族や豪商の邸宅で照明や空調などに使われていたものだと思うけれど、湖底の瓦礫の中には膨大な量の蓄魔オーブがあった。
 ハティアさんがあれほど大規模な術を展開するのにも全く不足ないほどの。二年経ってあれなら、当時湖底に旺溢していた魔力量は……。
 魔力で育ったのであれば中毒は一切気にする必要がない、
 そしてなによもり大事なのは生物の、特に魚介類の味は餌で決まるということ!
 同じ餌で養殖された魚は、別の種類でもほぼ同じ味になるという……
 ならば!ならば魔力で育った魚の味とはどんなものか――味わわずには居られない!
 もしも美味であるならばこれは大きな商機にも……ところでなんだか急にあたりが明るくなっ)
「へぶっ!!」
ロキが創りだしたゲートをバハムートが通り抜けた際に「濾し取られた」ファミアは、結構な高度から水面に叩きつけられてしまいました。
思考に没頭していたために他者の念信も耳を素通りです。

天網恢恢疎にして漏らさずなどといいますが、他にも網目に引っかかったものはたくさんあるようで、
それは状況が飲み込めていないファミアのあとから次々と降ってきます。
「きゃっ!」
鍵のかかった宝石箱が頭に当たって、収まっていたカメオが飛び出ました。
「痛っ!」
間髪入れず大きな鏡台が同じところへ命中、バハムートのお腹の中でも奇跡的に無事だった鏡面がとうとう砕け散りました。
「ちょっ……」
ファミアの実家にあるものよりも立派な天蓋付きのベッドの足が、見上げた額を直撃します。
「無理無理無理無理無理!」
金や宝石で飾られた、いかにも「お金の使い方を知りません」といった風情のゴーレムを泳いで回避。
「あ゛う゛っ」
そして、どこかの邸宅の門前を照らしていたらしい装飾角灯が脳天に屹立。
お刺身がいなくなったことにも気づかないまま、ファミアはうつ伏せで湖面に浮いていました。


【土左衛門へクラスチェンジの真っ最中】

217 :ルイン ◆5q.yyAvL6. :11/07/23 23:05:09 ID:???
(もうやだ………家に帰る……俺は………断固として……!)

固い決意。───といっても豆腐程の固さだが───
思えばルインは人生の岐路、そういう重要な場面で強い信念を持ち決断したことなどなかった。

まあ、百歩譲ってここで帰宅できたとして、待つのはクビで、借金返すアテがなくなってのバッドエンドだが。
しかしゴネずにはいられないという、話にならぬ甘ったれ。

直後に轟音。身の危険を感じはしたが、態勢は土下座。回避は叶わない。
恐る恐ると前を見れば、両手を除いた地が横一文字に抉られていた。

>「甘ったれた事抜かしてんじゃねえぞ!このウジ虫が!テメェがビビりだろうが弱かろうが知った事か!
> そんなに凡人になりてえなら手首を切り落としてやろうか!えぇ!?」

「う、うわっ……なんだよ、いきなり……!な、なにもそこまで怒らんでも……っ!」

ただ臆しただけの者に対して、あまりにも過剰すぎる怒り様。
ゆえに悟る。無意識の内に干渉してはならない部分へ踏み込んだのかもしれない、と。

「ひ………っ」

サフロールが再び魔術を発揮すべく再度右手に魔力を宿らせる。
攻撃されるものと取ったのか、ルインは立ち上がって三歩後退。

>「ほら言えよ!俺は遺才なんていりません、だからこの手首を切り落として下さいってよぉ!」

「お、お前おかしいぞ……?お、おちつけよ……何言ってんだ………!?」

剥き出しの怒りに対し、ルインは羊のように怯え自然と後ずさり。
もしかしたら忌み嫌われる家系と、何か関係があるのかも知れない。

>「……言える訳ねえよなぁ?テメェから遺才を取ったら何が残る?精々腐れた家名と借金くらいか?
> 遺才が無けりゃ、テメェなんざ正真正銘のクズだ。銅貨三枚で股を開くアバズレにすら相手にされねえよ」

噛みつく炎のような勢いが一転、人を嘲るような冷たい口調。

>「テメェはどっち付かずでいてえんだろ?面倒な事は凡人だからと逃げ回って、
> そのくせ自分の価値を、存在を認めてもらいてえんだ。
> 女共に囲まれて、嫌だツイてないと言いながらも良い気分でいてえんだよなぁ!?」

「…………そう……かもな……ははは………俺は……俺は………」

昔から常々疑問だった。どうして俺が遺才など持っているのかと。
俺は、俺自身はどう考えてもちっぽけだ。ただの羊だ。臆病なだけだ。
だから天才だってことに違和感しかなかった。現実味がなかった。

それに戦うのは、嫌いだし。怖いし。痛いし。少しだけ平和に、明日を生きられるならそれで良かった。
けどなんていうか……運命みたいなのは俺を戦う方向へ連れて行く。借金まで背負わせて。
逃げ道なんてない。袋小路だ。俺の今の状況。でも、恐怖に打ち克つなんてできないし。

結局俺は天才って器じゃない。中身は凡人だ……ただの臆病者なんだ。
ああ、でも……でも……

218 :ルイン ◆5q.yyAvL6. :11/07/23 23:10:17 ID:???
サフロールの怒号が飛ぶ中、突如傍に放置したままの松明がその灯を失う。
闇の濃度が増し、状況を把握する間もなく背後に青白い光がふわりと揺らめく。

(て、敵!?や、やば………)

臆病者故に危機には敏感。しかしそれも遅い。
背後には並々ならぬ眼光と殺気を秘めた老人が、鉈を閃かせて肉薄。
槍は間合いより内に入られた時点で即、死に直結すると言っても過言ではない。
既に死んだも同然。この場に、ルインのみが居たならば。

>「どけってんだ!この間抜け!」

「ぶっっっ!?」

サフロールの放った魔術の風がルインを容赦なく吹き飛ばす。
頭をしたたかに打ちつけ、しかしお陰で首を刈り取られずに済んだ。
サービスとして体中が痛いが、アフターケアはないらしい。

>「何やってやがる!さっさと立って戦わねえか!」

(おい…………お前が俺をぶっ飛ばしたんだろ…………?)

理不尽に罵られ、ルインは眉をひそめる。
ただそれを口に出すと余計な軋轢を生む結果になりそうなので、口には出すことは遂になかった。
その間にもサフロールは分析を開始、瞬時に推論をはじき出す。

>「まぁ、魔力で実体を作り出してんなら、同じ魔力で倒せねえ道理はねえ。
> テメェの『槍』も通じんだろ。……まさかテメェに岩を砕くような腕力があるとも思えねえしな」

「もう嫌だ………お家に帰りたい……お腹痛い………」

戦いたくない。怖い。怖い。怖い。怖い。逃げたい。逃げ出したい。
しかしここで逃げると次は本気で『切断』の魔術で真っ二つにされかねない。
そもそも逃げたとして待つのは借金のみ。どれだけゴネようと、結局職務を全うするしか道はない。

「あ゛あ゛あ゛ぁぁああぁぁっ!ちくしょおおぉぉおおおおおぉぉぉおおぉぉおおっっ!!」

遂に、否、いつものように。自棄を起こしたような奇声を発し、身を躍らせた。
分厚い鉈がルインに届くよりも早く槍を持ち替え、石突きの部分で老人の頭を打突。
突きの要領で放つそれは刃物としての攻撃力はないが、人間ならば気絶に追い込むくらいはできるはずだ。たぶん。

(……怖い……苦しい……誰か助けて…………)

仮に、分析通り敵が魔力で実体化していたとして、どう倒したと判断するのだろう。
と言ってもそこはルインの与り知るところではない上、そんな思考を巡らせる余裕もない。
戦いの中に身をおく恐怖に体を震え上がらせて。
逃げるな戦えと容易く折れる心を支えるだけで精一杯だったから。


【謎爺さんに攻撃。遅れて申し訳ございません】

219 :ダニー ◆/LWSXHlfE2 :11/07/24 19:29:01 ID:???
ダニーは見た。降り注ぐ数多の矢を躱し続ける男の姿を、
ダニーは見た。飛び来る巨大な矢を切り伏せる女の姿を、

男が「盾」で女が「剣」、今ではまず見られないような極めてオーソドックスな構成、
未だ呼吸が揃いきってはいないが、揃ってしまえば持久戦でさえ勝ち目が薄い相手、
強者であることは判っていたが、今の一瞬で見た技から彼女は認識を改める、自分が絶対的に
狩る側ではいられない手合いであると。

罠の矢談が尽きた頃、二人組の内の女性の方が会話に応じる。ノイファはこちらの質問に対して、
幾らかの答えを返した来た。戦うことが確定した瞬間だった。仲間がいてこの墓に縁のある者となれば、
それはつまり目当ての場所を探し当てれば仲間を呼ぶし、可能な限り持っていくということだ。即ち総取り。
女の細腕というが人手があるなら関係ない話だ、まあ冗談だろうが。

何にせよクローディアの本家が来たとあれば、うかうかしていられない。
クローディアは本家の財産には興味がないようだったがお金はお金だ、もらっておいて損はない。
この先にある財宝のいくらかでも手に入れなければ彼女は身の破滅だ。
雇い主を守るというなら取られる前に取って置かねばなるまい。

役目を果たせずに地面に敷き詰められた矢の絨毯を踏み割り、ダニーはゆっくりと前に出る。
そんな時、遠方から誰かの息遣いが響きこの場に段々と近づいてきた。ジョナサンだった。
ほうほうの態で二人組の脇を通ると一目散にこちらに走ってくる。
顔は汗だくになっており折角の男前が台無しになっていた。

「シット!シィィィィィィッッット!置いていくなんて酷いじゃないかミス・ダニー!」
彼はこちらを非難しながら息を整えている。水を刺された形だったが丁度いいと思ったのか、
ダニーはジョナサンに例の何か書くやつでこの辺りに灯りを書いて欲しいと頼む。
ノイファ達には気にせず準備でもしておくといいと言っておく。

「へ?灯り?ああそうだね暗いと危ないもんね、寧ろ一刻も早くそうしたほうがいいね!」
そう言うとジョナサンは先程滝を降る時に網を書いたあの筆を取り出すと、手近な壁面に
松明の絵を書きだしていく。浮かび上がった通路は大きな廊下を想起されるくらいの幅はあった。

そして灯りが浮かび上がらせたのは、病的なまでの量の壁に埋め込まれた矢、
いや、矢の射出口が埋め込まれていた壁だった。既に撃ち尽くしたのかどちらの壁面も空っぽだった。

そこで漸く二人組に気付いたジョナサンだったが、ダニーは彼が何かを言い出す前に
彼女たちは商売敵だから、自分が足止めするから先に行って目ぼしいものを取っておいて欲しい、
と言って彼を通路の先に向かわせる。

220 :ダニー ◆/LWSXHlfE2 :11/07/24 19:31:15 ID:???
「ウゥン、なるほど!確かに僕は美しいものは見慣れてるからね、その方がいいと思う、
ミス・ダニー、君もあんまり無理しないようにね、万が一の時は僕を呼ぶといいよ!」

戦闘要員でないことは分かっているのだろう、彼はさっさと奥へと向かう。
少しして背後でシィィィィィィィッッッッッッット!という声が聞こえた気がするが気にしないことにする。

高い天井、湿気を帯びた茶色い地面、不気味な壁、普通の体格なら広く、ダニーには窮屈でない程度の
広さを持った空間、それがジョナサンの描いた灯りによって照らしだされた通路の姿だった。
コロッセオにしては些か殺風景だと思ったが、何分墓地だ、贅沢は言えない。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
待たせて済まない、そろそろ始めよう。そう告げるとダニーは首の後ろに手を入れると高々と髪をかき上げる。
ドクンっと鼓動が大きくなり髪留めが光る。ダニーの体が、正しくはその筋肉が僅かに縮小すると次の瞬間、
筋肉が爆ぜるようにリバウンドし以前よりも微かに大きさを増した体が現れる。
耐久限界を超えたメイド服は胸元を残してびりびりに破けてしまった。

しかしそれよりも奇妙なのは、体の表面に金と銀の体毛を生えていることと、
その体を石灰色の鎧が縁取り、様々な急所を骨のようなパットが守り、腰からは骨のような尻尾が
装着されている。最後にバイザーへと変形した髪留めを変貌した手で被り、瞳孔の縮まった目を隠す。

これが魔導鎧「ダイナスト」と変身したダニーの戦闘形態である。その姿は人間と言うより、
武装した大型の獣人と見たほうが無理がない。

創りだされた灯火によってライトアップされた洞窟内で、骨の鎧を見に纏った大きな獣人が現れる。
「最初に言っておくよ、命まで取るつもりはないから、ああそれと言い忘れてた、俺はダニーって言うんだ」

高揚した気分が普段よりも多分に感情を刺激するせいか、戦う時のダニーはお喋りだ。
当人はあまりそれを好まないが口が勝手に動くのだから仕方ない。
それだけ言うと彼女は勢い良く二人に突っ込むと、フィンに殴りかかり、ノイファには爬虫類のような尻尾で
なぎ払いを繰り出した。

頭の片隅で「自分の目的って宝探しだったっけ」と思ったが、それも目の前の戦いへと集中する中で
徐々に薄れていった。

【ダニー戦闘モードに、ジョナサンに壁に灯りを描かせた後先へ行かせる。
フィンさんとノイファさんに攻撃、戦闘開始】

221 :フィン=ハンプティ ◆yHpyvmxBJw :11/07/26 00:25:01 ID:???

迫りくるは崩壁の槌。凡人の手により生み出された無骨な破壊の鏃。
だが問題はない。フィンにとってこの状況は問題は無い物だった。
例えその腕が?げ落ちようと、更にはその命を失おうと、問題ではなかった。
何故なら、今此処にフィンが居る事によって、確実にノイファの命を守る事が叶うからだ。
フィンに口元には笑みが浮かんでいる。おだやかで、安心したかの様な笑み。
誰かの幸せの為になら、自己の犠牲も厭わない崇高な志――――と言えば聞こえはいいのだろう。

>「フィン君!」

かけられた声に返事をする余裕は無い。
悪質なタイミングで放たれた矢を、自分の何処を犠牲にして防ぐか。
自信の直感を動員して眼前のみに思考をめぐらせる。
だから、故に。
かけられたその言葉を理解が出来なかったし、次の行動に反応も出来なかった。

>「――少しは仲間のことも……私のことも信用して下さい!」

鈍い衝撃とともに天地が入れ替わる。
それがノイファによって成された事に気付くまでに数瞬。
気付いた瞬間フィンは、身体の負荷など気にせずに無理矢理、
筋肉を捻るようにして跳ね上がる。その顔に浮かぶのは、
普段のフィンには似つかわしくない、深く強く暗い焦燥。

「何してんだノイファっちッッ!!やめろ、死んじまうぞ!!!!」

絞り出す様にして出た言葉は、ノイファの身を案ずるもの。
真っ直ぐに叫び、そうして眼前にまるでフィンを守ろうとするかの様に立つその背中に
手を伸ばし、再び自身の背後に戻そうと動き出す。
しかし、もはやバリスタは間近。その動作が間に合う筈もなく……

>「さて……お見せするとしましょうか。最高に格好良いところを!

―――――そして、フィンは見た。

薄暗い空間に奔った銀の線。一息の間に繰り出される事、十度。
フィンは先代剣鬼の事など知らない。仮に過去に邂逅した事があったとしても、覚えていない。
だがそれでも、それがどれだけ強大な力であるかは解った。知識ではなくその遺才によって。
練磨され研鑽された、技巧の極地。天才がその才を鍛え上げて初めて辿り着く領域の一端だと、理解出来た。
そうして銀線が一度奔る度に、巨大な矢が切り裂かれ、砕けていく。
まるで、陽光に晒されたゴーストの如く。或いは心臓に杭打たれた血を吸う鬼の如く。
音すらも遅れたその世界で、「何か」を犠牲にする筈であった巨大な矢はその力を失い、
細かな破片となって中空に散って行った。

舞い散る矢の破片の中、そこに悠然と立つ一人の女性。
その背中は力強く、頼もしく、そして眩しかった。

222 :フィン=ハンプティ ◆yHpyvmxBJw :11/07/26 00:26:53 ID:???

「あ……」

『英雄の様な』その背中に、フィンは先ほどと同じく、手を伸ばしたまま見入っていた。
ノイファの背中に向けて手を伸ばすフィン。
その光景は、まるで何かを象徴するかの様であった。

>「お待たせいたしました。お話を伺いましょうか?正体不明のメイドさん。」
>「――この地の所有者、ジース=フォン=メニアーチャ縁の者だけどもね。」
>「生憎私たちも手ぶらじゃあ帰れないのよね。
 それに降りかかる火の粉は・・・…こっちから出向いて払いに行くのがモットーなの。」


ノイファのその声でフィンは我に返る。
そして、改めて向きなおした。先の罠の最中に自身の視線に入ったその姿を。
それは女だった。ただし、その肉体は女というにはあまりに戦士だった。
勇壮たる体格。歴戦の戦士もかくやという眼に見える筋力。
戦闘という物を経験した事のある人間ならば人目で判る。『強い』と。
先ほどのノイファの行為に対して何か言おうとしたフィンだったが、
軽く頭を振り、一瞬自身の頭に巻いたバンダナを掴み下ろし目元を隠すと、直ぐに前を向く。
その瞳には迷いは無い、いつものフィンであった。

「ふーん、ノイファっちってそんな経歴もってたのか。
 よくわかんねーけど、なんかすげーんだな!
 ……という訳だぜ、そこの女の子!宝は渡せねぇっ!!
 まあ実は、俺は別に冒険さえ出来ればいいんだけどなっ!!」

二人のやり取りを聞いていたフィンは、半分程その内容を頭に入れつつ
目の前の女性――――ダニーに対して少年の如く笑い、ビシッと一刺し指を突きつけた。

と、その直後に再び人の気配。
見ればそれは男だった。その男はダニーと何やら二、三言葉を交わすと
煌々とした明かりを点した後、即座に奥へと向けて走って行く。

「ああっ!!お前、先に行くなんてずりーぞ!!」

その姿を見たフィンは男を追いかけようと一歩踏み出すが

「――――っ!?」

直後、巨大な威圧感を感じ、即座に大きく後ろに跳んでいた。
気配の元に視線を向ければ、其処に居たのは金と銀の体毛を生やし、
鎧の様な物を纏った巨大な「獣人」。
それは、先ほどよりも更に一回り大きくなったダニーの姿であった。

>「最初に言っておくよ、命まで取るつもりはないから、ああそれと言い忘れてた、俺はダニーって言うんだ」

以前戦いを繰り広げたナーゼムを彷彿とさせる変化をしたダニー。
特筆すべきは、ナーゼムが破壊に適した変化をしているのに対し、
ダニーは暴力に適した変化をしているという事か。
彼女が纏う鎧の様な物は、そうそう容易く攻撃を通してくれそうにはない。
フィンは、男を追うのを止め、右腕を前面に出し、人体の急所である正中線を隠した構えを取る。

223 :フィン=ハンプティ ◆yHpyvmxBJw :11/07/26 00:28:24 ID:???
「じゃあ俺も自己紹介するぜ!俺の名前はフィン=ハンプティだ!!
 んでもって、戦う前に言わせて貰う!
 ダニー!女の子が人前でそんなに簡単に服を脱いじゃダメなんだぜっ!?」

キラリと白い歯を見せながらそう言うフィンに放たれたのは大木の如き腕から
放たれる剛の拳。それは真正面からフィンに放たれ――――

「――――はああっ!!!!」

フィンはその拳を避ける事無く、正面から 受け止め た。
ダニーの拳圧は狭いこの空間に風を発生させる程。
破壊力は並みの獣でさえも一撃で地に伏せる事が出来るであろう拳は、
引き締まった肉体とはいえ、今のダニーに比べれば細身とも言えるフィンの右腕によって止められていた。
見れば、以前魔獣ナーゼムの拳を止めた時の比べれば小さいが、フィンの足元の岩にはクレーター状に皹が入っている。
力の流し。フィンは直線的に放たれたその拳の威力を自身の体内を流し、そのまま地面に逃がしたのである。
凡才の中の天才である武道の達人が、生涯かけて辿り着けるかどうかという領域。
その域の技巧を、フィンはこの年にして既に直感のみで体得していた。
恐るべきは遺才。ダニーの攻撃も、フィンの防御も、人の域を飛びぬけている。

が。

「……っ」

一瞬、フィンの身体がよろめく。
そう、ダニーの攻撃の威力を完全に流す事が出来なかったのだ。
正確には、流すわけにはいかなかった、だが。

(……やっべーな。ここの岩、思ったよりも硬くねーぞ。
 ダニーの攻撃を全部流したら、多分崩れちまうぜ)

そう、こことは異なる戦場で遊撃課の一人が行った攻撃。
あれが引き起こした浸水と崩落が、岩盤の強度を下げていたのだ。
数度なら問題ないであろうが、何十回も同じ事が行われれば、恐らく洞窟が一部崩落してしまう。
そうなれば、フィンやダニーは大丈夫かもしれないが、身体強度的には(恐らく)人間離れしていない
ノイファは生き埋めになってしまいかねない。
そう考えたフィンは、拳の威力を全て殺さず、その半分程を自身の肉体を以ってまともに引き受けたのだ。
それが齎したのがこのダメージ。最も、恐るべきはたかが半分の威力でこれほどのダメージを与えるその剛腕か。
だが、それでもフィンは倒れなかった。鎧の眷属。特化してないとはいえ、その耐久力は常人よりも上だ。
フィンは無理矢理崩れかけた足に力を入れ、何事もなかったかの様に再び構えを取る。
そしておそらく尻尾による攻撃を受けているであろうノイファに向けて声を掛ける。


224 :フィン=ハンプティ ◆yHpyvmxBJw :11/07/26 00:28:49 ID:???

「まともに受けるなノイファっち!!このダニーって女の子、すげぇ力だぞ!!
 攻撃がきたら全部俺に回せっ!!俺を盾にして、その間に攻撃を仕掛けてくれっ!!」

そうして、一瞬逡巡したあと、笑いながら更に言葉を続ける。

「俺ならこの攻撃を受けてもダメージは受けない!!
 大丈夫だ、何があってもみんな俺が守るから、
 ノイファっちは攻撃に専念してくれっ!!!!」

攻撃を受けて傷つかない、そんな筈は無いのに。
フィンはそう言うと、地面に落ちていた先ほどの毒薬が塗られた矢の一本を
拾い、投擲の様にダニーに投げつけてから、あえて彼女の真正面に立ちふさがる。
攻撃の注意を引く為に。

【フィン。ダニーの拳を受け止めた後、地面に落ちていた矢を
 適当に投げつけて、注意を引く為に接近する】

225 :ロキ・ハティア ◆9pXiBpy0.U :11/07/26 22:54:41 ID:???
突然、周囲が“影”に包まれた。夜の闇より昏い漆黒の深淵。
『そこまでだ、ロキ』
重々しい声が頭の中に響く。誤魔化すように苦笑する。
「ヤバ、やっちまった?」

淡々と告げる声。
『我々の役目を忘れたか? 
伝説が生まれそうな場に潜り込み、地上の人間に輝かしい”英雄”の物語を紡がせ、心の拠り所を作り上げる。
現世に絶望した地上の人々が再び”門”を開ける事がないように。
それがお前ときたらどうだ? “英雄”を仕立て上げるどころか妨害しているではないか。
具体的には魚を一人で食ったりとか』

「えー、それはその〜、お腹がすいたからついうっかり?」
『言い訳無用! お前はクビだ。案ずるな、我らは元より地上に存在してはいけない一族。
程なくして皆の記憶からも消え去り、忘れ去られるだろう』

そうなのだ。ワタシ達の一族は英雄物語を紡ぐのに失敗すると、この世界においては死ぬ定めにある。
人が本当に死ぬのは人から忘れられたときだからだ。
辛うじて残るとしたら、あいつのせいで刺身を食べられなかったな〜、あいつって誰だっけ、程度の微かな記憶だけ。
認識されなければ存在しないも同じ。そう、全てが夢だったのだ。

もはや抵抗できないと堪忍し、仲間達に別れを告げる。声が届くことはないと分かっていながら。
「さよなら、楽しかったよ。遠い未来で、遥かなる過去で、また会おう。
その時のワタシは今とは違う姿をしているだろうけど……ね」
おもむろに髪飾りを外して微笑む。
「最後に一つ言っておくことがある。この触角は偽物だ――」
それを最後に、全てが闇にのまれた。

―――――
こうして、この世界に存在してはいけない者はあるべき場所へ還った。
スレイプニルは後で誰かが見た時には、元通りになって元の場所に置いてあるだろう。
遊撃課の名簿に名前が書いてあった部分には、もはや他の人の名前が書いてあるかもしれない。
全ては葬り去られた黒の歴史。
英雄の傍らに最後まで寄りそう事すらできなかった愚かな道化の物語はこれでおしまい。

【遅ればせながら出オチキャラ退場】

226 :ノイファ ◆QxbUHuH.OE :11/07/29 00:47:39 ID:???
肌に突き刺さるような威圧感。心なしか空気すら重く感じる。
敵の前進に併せ、ノイファは一歩後退。未だ刃を合わせてはいない。
あるのは如何にして間合いを削るか、保つかという駆け引き。

>「シット!シィィィィィィッッット!置いていくなんて酷いじゃないかミス・ダニー!」

地面に散乱した矢束を踏み抜く音を響かせながら、現れるのは一人の男。
場に張り詰めた一触即発の空気をまるで気にする風もなく、ダニーの下へよたよたと駆けて行く。

(当然仲間……でしょうねえ)

舌打ちを一つ。これで唯一あった利である数の差は失われた。
風雅な容姿と縦にひょろ長い体格は、およそ肉体を駆使して戦う類には見えないが、それだけで戦力の判断は出来ない。

(疲労しきっている今の内に仕掛けるのが得策……でしょうか)

じり、と脚を滑らせる。
だが当の男の方は手にした絵筆を壁に走らせ、一面に眩い明かりを灯すと、脱兎の如く奥へと走り去って行った。

>「ああっ!!お前、先に行くなんてずりーぞ!!」

「問題ないわ。どうせ帰りも此処を通らざるをえないのでしょうからね。」

男を追おうと声を荒げるフィン。それを静止すべくノイファも声をかける。
仮に屋敷へ通じる帰り道があったとしても既にそこは湖の中なのだ。ならば当然来た道を戻るしか方法はない。
それより今は目の前の敵に集中しよう。そう続けようとして――言葉を呑み込む。

「……これはまいったわね。」

ダニーの変貌。いや変身と言った方が正しいだろうか。
一回り以上肥大した体躯に黄金と白銀の体毛。体に纏った石灰色の鎧と急所を覆う骨格。そして腰から伸びた尻尾。
そこに居たのは女給服を着た偉丈婦ではなく装甲に鎧われた獣人。

>「最初に言っておくよ、命まで取るつもりはないから、ああそれと言い忘れてた、俺はダニーって言うんだ」

今までにない饒舌さで、ダニーが告げる。

>「ダニー!女の子が人前でそんなに簡単に服を脱いじゃダメなんだぜっ!?」

「それには同意するけれど、つっこむべき場所はそこではないでしょう……。」

対抗意識を燃やしたのか、それとも彼の性分なのか、律儀に名乗りを上げるフィン。
そして続いた一言にノイファは半ば反射的に返していた。

227 :ノイファ ◆QxbUHuH.OE :11/07/29 00:51:06 ID:???
色の無い世界をダニーが疾走する。フィンに向けて拳打、尻尾での薙ぎ払いをノイファへ。
視界が色を帯びる。寸前に視た映像の繰り返し。
違うのはダニーの速度と威圧感。そして認識出来ない行動の起点。

「くっ――」

自ら後方へ跳躍。続けて襲い掛かる尾撃。
鞭のようにしなやかで、それよりも遥かも硬い一撃に呼吸が詰まる。
着地も満足に出来ぬまま地面を転がった。体のいたる箇所から上がる悲鳴。
まともに受けていたら肋骨の数本は持っていかれたことだろう。

>「まともに受けるなノイファっち!!このダニーって女の子、すげぇ力だぞ!!
  攻撃がきたら全部俺に回せっ!!俺を盾にして、その間に攻撃を仕掛けてくれっ!!」

「ええ、そうね。身をもって理解してるところよ……。」

>「俺ならこの攻撃を受けてもダメージは受けない!!――」

フィンが吼える。しかし顔には笑み。
凄みのある決意を滲ませダニーの前に立ち塞がる。

(どうしようもなく嘘が下手ですね……)

フィンが取る構え。
人体急所を貫かせないことに特化したその構えは、逆を言えば相応の力を相手が持っていることの証明。
加えて初撃を受け止めた際に出来たのだろう、フィンの足元を大きく抉る罅がそれを物語っていた。

「まあ、でも――」

震える脚に活を入れ、突き立てた剣を杖代わりに立ち上がる。

「――それ以外に活路がなさそうだものね。だから……貴方に預けるわ。」

先刻振るった魔剣の代償は、未だ枷として残っていた。
熱を増す右目に、思うように動かせない利き腕。疲労した体。
勝利を掴む最善は持久戦。時間を稼ぐことに他ならない。

「少しの間で良い!彼女の相手をお願い!」

フィンが矢を投擲するのと同時に、ノイファは後方へ退き、ダニーとの間合いを広げた。
剣を納め、両手に聖術の光を灯す。発動するのは"治癒"の術式。
少しでも集中が途切れれば効果は現われない。つまりそれまでの間は全くの無防備。
強大過ぎる相手を前に行うのは自殺行為に等しい。

それでも、ノイファは全てを守ると宣言したフィンを――信じた。


【フィンに任せて回復中】

228 :セフィリア ◆LGH1NVF4LA :11/07/30 03:25:12 ID:???
セフィリアとサムエルソンが放った人機一体の必殺技が巨魚に致命的な一撃を与える
穿った穴から夥しい血液が、胃の中にもその血は容赦なく流れ込んできた
自分で開けた穴から脱出出来ると思っていたセフィリアには大きな誤算
「血の流れが速い……!!」
新たな手段を講じる前に、気付けば水中
巨魚の姿はどこにもなかった

「ロキさん……!」
こんなことができる人物がそうそう居てはたまらない
奇想天外な人物であるが、仲間とあれば心強いかった……

「・・・・・・? どうして外に?」

なにか大切なことが抜け落ちた気がした
だが、それもファミアが危険にさらされたことを目の当たりにしたらどこかに吹き飛んでしまった

「ファミアさん!!」
確実によくはない状態で湖面に向かう彼女を放っておくわけにはいかない
サムエルソンの両手で優しく包む

「シキマさん!シキマさん!」
呼びかけても返事がない……最悪の事態も覚悟して、課長に連絡をとろうとした

「プライヤー課長!プライヤー課長!応答してください!」
ボルトが通信機を取ったかどうか、確かめもせずに早口で話す
焦燥と恐怖で彼女は正常な思考ではなかった

「でっかい魚が出てきて、食べられて、お腹を切り裂いたら割れて、暴れて消えてんです!
そうしたらファミアさんに棒が刺さったんです!!」

もう何が何やらわからない報告
フランベルジュがこの様子をみたらさぞ心配するだろう

229 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/07/30 14:33:39 ID:???
>「お・こ・と・わ・り・だ!」

カシーニの振るった必殺の剣。その刃先は、少年の胴体を袈裟切りに割断する軌道。
決まれば得られる結果は勝利。相手にもたらす災禍は死。剣先空抉り込めば、刃のない剣でも斬撃は容易だ.
それを、少年は真っ向から迎え撃った。振り出された短槍の穂先がジャマダハルの先を捉え、衝突。弾かれる。

「おお――ッ!!」

舌を巻くのは純粋な驚嘆のみで。
カシーニの老練こそが為せる予測不可軌道を、完全に読み切り、読み勝った。
卓越した動体視力と、破滅的なクソ度胸がなければ成し得ぬ所業だ。それを、人を殺したこともなさそうなこの朴訥とした少年が!

>「悪いけど、俺の知ってる極上の女は、そう簡単にゃやらせてくれないんだと思うよ!
  それこそ、横っ面でもひっぱたかれるんだろうな!」

眼前、槍を振り抜いた少年の姿が消えた。間髪入れずに胴へ衝撃。不可視不認識の速力で、少年が体当たりを敢行してきた。
その威力、砲もかくや。体幹へと手ぎつい一撃を入れられ、カシーニはバランスを崩す。その崩れは、致命的な隙を生む。
この体当たりは決めじゃない。武器を持っておきながら、無手の突進をする意味は一つ――

>「何より、名前の響きがだっせぇんだよ!!!」

――刃を合わせた瞬間からの全ての行動が一つに繋がり、少年の振り抜く槍を最良の一撃へと変える!
体制を崩されたカシーニの顔面。加速した手槍の柄が激突した。刃先を回避できただけでも僥倖、命だけ拾ってカシーニは吹っ飛ぶ。

「……っが!」

操舵室を端から端まで吹っ飛び、壁に頭から激突した。後頭部を強打し、四肢もまともに動かない。
対する少年は五体満足。いつでもトドメを刺せる構え。どちらに決定的な優位が存在するか、誰の目にも瞭然だった。

「この……俺たちの誇りの象徴を……!言うに事欠いてダサいだとぉ……!!」

それでも、カシーニは言わねばならなかった。
上手く回らぬ呂律を気力で制御し、痙攣する左腕で宙を掻き、少年を睨み据える。呪詛の如く、枯れた喉から言葉を吐いた。

「――ダサいなら仕方ないな」

言ったきり。カシーニは沈黙した。

 * * * * * * 

230 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/07/30 14:34:05 ID:???
 * * * * * * 

>「姐さん、お望み通りくれてやるぜ!!」

ハイマウントが魔物使いへと一撃くれようとした刹那、三度目の強風。

「!!」

風の塊とでも形容すべき不可視の槍が甲板を洗い、ハイマウントを強烈に煽る。
大きく揺れたゴーレムの中で乗り手は舌を打った。いくらなんでも偶然が重なりすぎる。
ハイマウントはバランスを崩し、それを立て直す為の姿勢制御処理に演算能を奪われた。
そしてその隙こそが、彼の命を生と死に振り分ける分水嶺となった。

>「お前の死因は一つ、暴風は『三度』吹かないと過信したことだ」

右方、無力化したと思っていた弓使いの手に、見覚えのある得物の存在。
薙刀に似たそれはハイマウントに装備されていた近接武装。二度目の風で取り落とした自身の武器だった。
さりとてゴーレムが振るうことを想定して設計された武装である。生身の人間がそんなものを抱えてどうすると言うのか。
現に、あの弓使いは抱えるだけで精一杯で構えることすらできていないではないか。

「……まさか」

抱えているのではない。構えているのでもない。あの弓使いは、『番えている』のだ。
その弓に、薙刀を。そんな出鱈目な使い方があるか。張りの強い弓でも、あのレベルの長物を撃ち出すなど不可能だ。

――『不可能だ』という考え方こそが、遺才持ちを相手取るおいて最も命取りになる愚考だということに、彼は終ぞ気づかなかった。

『  ス ト ー ム フ ゙ リ ン ガー
 三 度 穿 つ 風 の 牙』

薙刀が甲板を駆け抜けるのに一瞬をも要さなかった。薙刀は真っ直ぐ一条の威力となり、ハイマウントの装甲へと突き立った。
レイスティンガーほどの質量がないため周囲の全てを吹き飛ばすことはなかったが、あれはそもそもがオーバーキルである。
ゴーレム相手にゴーレム用の武装ならば、当然の如くそこに破壊が完成する。
操縦者ごと貫かれたハイマウントは、中の人の動きを再現して膝から崩れ落ち、四肢を痙攣させながら沈黙した。

* * * * * *

231 :GM ◆N/wTSkX0q6 :11/07/30 14:36:42 ID:???
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【TRPG】遊撃左遷小隊レギオン!V【オリジナル】
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