一緒に冒険しよう!ライトファンタジーTRPGスレ8

1 :Player of ◆666/MyrH6U [sage]:2011/09/23(金) 21:33:21.49 0
組み上げられた新たなる法則、果てなく巡る円環の理。

光と闇と境界の勇者達の活躍により、滅びの定めは免れたかと思われた。

だがしかし。再び世界を作り替え唯一神とならんとする者が彼らの前に立ちはだかる

数多の世界の命運をかけた最終決戦が今、幕を開ける――

―― 一緒に冒険しよう! ライトファンタジーTRPGスレ8 ――

詳細はこちらを参照してください。
まとめウィキ「ぼうけんのしょ~Light Fantasy@ウィキ」
http://www36.atwiki.jp/lightfantasy/pages/1.html

専用掲示板(避難所などがあります)
http://www1.atchs.jp/lightfantasy/

なな板TRP系スレまとめWIKI「なな板TRPG広辞苑」
http://www43.atwiki.jp/narikiriitatrpg/pages/56.html
2 :ルーチカ ◆hATMxiE/qY [sage]:2011/09/24(土) 15:42:16.12 0
>「それじゃ、まずは……薬草チョコもストックが切れてきたし、補充に行こっかな。
> 新製品とか、季節限定品なんてあったらいいなー。
> 他にも、どこかお勧めのお店があったら、案内ヨロシクね!」

「はいっ!チョコのお店ならこっちです!」
ルーチカは元気良く返事をして歩き出した。
「新製品ならメープルものが。
チョコ以外にもクッキーとかコロッケとかバターロールとかタレとか沢山出てます。
魔力を持つ特殊な楓のシロップが、オーシアにも入るようになったんですよ。
学校の調合実習で飴作った事もありますけど、
週末の大掃除の後始末で疲れた時なんか最高で・・・」

元々は生徒達が集団で「ノスタルジィ」や「レクイエム」等の呪歌を歌いながら校内を回り
紛れ込んだ不要な動物やアンデッドを排除するのが“週末の大掃除”だったのだが、
世界の枠組みが変わってから「レクイエム」の効果が超ランダム化してしまい
往々にして更にその後始末が必要になる、とルーチカはテイルに説明した。

「なのに訓練だし研究も兼ねるっていう理由で
ノダメ校長がレクイエムの使用を中止しなくって、
だから後始末が・・・って
世界が変わったんだから当然ですよね。すみません。
シロップ、小売りもしてくれる問屋さん知ってますから、
レオ先生が料理に使うなら後でそちらにご案内します」

「それから、季節限定なら・・・あっ、季節じゃないですけど期間限定で、
ちょっと前に凄く流行った“巨象印の缶コーヒー”のコラボで
チョコとアイスとドーナツとヨウカンとキャンディーとウイロウが出てますよ。
パッケージの象の絵が十何種類もあってかわいいんです!
でももしお昼まだでしたら、デパートで日剣物産展やってるんで
“うどん”とか“餅”なんか食べるのもいいと思いますし・・・」

(世界を揺るがす戦いの準備をしている神様に、
自分が出来る事といったら食べ物の紹介・・・現実ってそういうもの、か・・・)

テイルの求めに応じて店を巡りながら、ちょっと考えるルーチカだった。
3 :テイル[sage]:2011/09/24(土) 22:50:56.80 0
>前スレ244
>「石化したのか男がか?…瓜二つの顔を持った奴か
>もしかしたらその人物は平行世界のもう一人の男だったりしてな…
>あくまでも可能性の話だがな」
ビャクさんが提示した一つの可能性。
そういえばさっき見えた妖精、ボクに似ていたような気がするぞ。
ここと紙一重の平行世界があって、その世界の者達がこちらに干渉を仕掛けている・・・?
・・・まさかね。

>2
ルーチカちゃんが、世界が変わった後のちょっとした変化を語る。
端からみたらちょっとした変化でも、端から見れば一大事だ。
「あ、あはは・・・アンデッドが暴れ出しちゃうんだね・・・」
形而下レベルでは元通りになるように再編したはずなのに、そんな所にまで影響が出ているなんて。
これだから突貫工事はよくない。

まずは魔力補充用チョコを買い込む。
「ふふっ、魔風の森のシロップが入るようになったか~」
光と闇の勢力が対立していた少し前まではあり得なかった事だ。
これも光と闇の融和のおかげ。

続いて、期間限定お菓子や日剣物産展を案内される。
「餅って美味しいけど気を付けないととっても危険なんだよ。
日剣に行った時に、仲間が喉に詰まらせて大変だったんだから!」

店が立ち並ぶ賑やかな通り。人々の笑い声。
隣には懐かしい友達。思わず当初の目的を忘れそう。
とても世界の命運を決める大決戦が迫っているようには思えない。
それでいい。この人達は何も知らなくていいのだ。

「寄ってらっしゃい見てらっしゃい! バラグ&グラムフィギュアだよ~」
そんな掛け声が、感傷的な気分をぶち壊す。
「バラグ&グラムフィギュア!? なんじゃそれ」
「知らないのかい? 伝説の魔導士ロランドが作ったと言われるガイア最高峰のゴーレムだよ」
知らないも何も二人とも知り合いです。バラグさんに至っては一時期フツーにパーティーにいたぞ!
そういえば、控えメンバー達は、世界改変後は何処に待機してるんだ。
「もしかして魔法学校にうじゃうじゃ匿われてたりして・・・」
何が飛び出すか分からない後援団体だけに、その可能性は否定できない。

一通り買い出しを終えたボク達は、オーシア魔法学校方面へと向かう。
4 :アヤソフィア ◆666/MyrH6U [sage]:2011/09/25(日) 22:22:32.69 0
>>2-3
陽が西に傾き始める時刻に入り、正午近くは混雑を見た広場も、やや人を散じた感がある。
瞳を彷徨わせて人の流れを眺めていたアヤソフィアは、大通りから広場に入って来た妖精に気づいて目を止めた。
オーシア魔法学校の生徒らしき少女を伴ったテイルに。
テイルの横で歩く少女は、容姿が見た目通りであるならば十を少し超えたくらいの歳だろうか。
連れ立った妖精と親しげに雑談する表情は柔らかく、魔術師然とした雰囲気は感じられない。

「フェアリー=テイル。そちらの方は……オーシア魔法学校の方のようですが?」

噴水の縁から立ち上がったアヤソフィアは、初対面の少女に顔を向ける。
この少女は制服からしてオーシア魔法学校の生徒であろう。
オーシア魔法学校は、ガイアの勇者を後援する団体であるらしい。
ならば戦士への支援を行う自分とは、立場的にはそう違わないのかもしれない。

「初めまして。私はアヤソフィア=エヴレン。
 次元律の均衡を保つ戦士達の補佐を任務としております」

アヤソフィアが簡潔に自己紹介を終えると、オーシアの校舎から鐘の音が響く。
授業の終了を報せる為の鐘の音は、音程の異なる鐘が同時に鳴る仕掛けが施され、多声的な美しさを感じさせた。
聞いていると、鬱積した感情が何処かに溶けて消えてしまう気もして来る。
しかし、それがアヤソフィアには緊張感を失い、浮ついた気持ちになっているかのように感じられた。
今は自分に出来るだけの事を、出来る限りの努力で行わなければならないのに……。
アヤソフィアは、消え去ろうとする鬱積した感情を敢えて呼び戻す。
己が死に瀕した地下洞窟を思い起こすと、彼女の表情には再び石の硬さが戻った。

「……そろそろ集合の刻限ですね。鐘の音はこの付近にいるのなら聞こえるはずですが」

【>>ルーチカ オーシア魔法学校の前の中央広場にて挨拶】
5 :テイル◇6nXELe5RK6[sage]:2011/09/25(日) 23:42:59.49 0
ビャクがリーフと話を終えて後、しばらく街中を歩いていると、通りの端から水色の髪をした妖精が現れる。
朗らかな声を持つ見慣れた姿は、フェアリー=テイルのものだ。

「あっ、ビャクさん。
 そうだ、せっかくだから少し話さない? 少し暇になっちゃってさ。
 まだ少し時間もあるし、ジュース一杯分くらいの時間なら良いよね?」

そのように声を掛けると、妖精は笑顔を浮かべ、歩道にせり出したカフェのテラス席を差した。
小さな指の先には、十三の瀟洒な椅子が白いパラソルの下に置かれている。
妖精が席に着くと十二の席が埋まった。
椅子に座って楽しげに足を揺らす妖精は、十三番目の席をビャクに勧めて注文を述べる。

「オーシアン・トロピカルミックスジュースお願いしまーす!」

現在、ルーチカは日剣物産展でテイルを案内している。
今、此処に居るのは二人目……別のテイルとも言うべき存在であった。
鏡から抜けだした如く瓜二つで、まるで双子のよう。
容姿も声も魔力の波形、手に持つソフィアの宝珠すらも全くの同型。
テイル当人を除けば、何者にも区別は付けられないであろう。

「ボクたち随分一緒に旅を続けてきたけど、ビャクさんにも一度聞いてみたい事があったんだよね。
 勇者……って、どんな存在だと思うのかって。
 昔はガイアでは死霊皇帝と戦う戦士たちは、みんな光の勇者って呼んでたんだ。
 光と闇の融和でカオスの勇者に改名して、ボクはガイアの力を継いで……。
 今は何て呼べばいいのか、よく分からないんだけどさ」

そこで言葉を切った妖精は、ストローで青と黄色のグラデーションを持つ液体を掻き混ぜる。
海と砂浜をイメージしたジュースは撹拌されると、複雑な色彩を持つ緑となった。
それを妖精は音も無く吸い込み、ビャクの話を聞く様子を見せる。

――――。

グラス一杯分のジュースが消えるだけの僅かな時間が流れる。

「……ジュース一杯の時間って早いね。
 まだ集合時間にはちょっと早いけど、先に広場の方に行ってるよ。
 じゃっ、また後でね!」

そう言い残すと、妖精は空になったグラスを残して、跳ねるように走り去ってゆく。
6 :火野映司 ◆/m/3H6N1VU [sage]:2011/09/26(月) 04:19:06.08 0
>「そう、ですね。まずは出来る範囲の事から始めなければ……ありがとうございます、ヒノ」

心の中にある迷いに、選択肢を見出したのだろうか。
アヤソフィヤは、映司に礼を言うと自分のすべき事をする為、雑踏の中へ消えていった。

「……あいつに、お前のありがたいお言葉でもご教授してやったのか?」

「アンク……」

アンクは映司とアヤソフィヤの話を盗み聞きしていたと
言わんばかりに、口元を歪める。
しかし、アヤソフィヤの背を見つめるアンクの目には
不遜の色も、怪訝な眼差しも存在していなかった。

そんな2人を、市場の雑踏の中から見つめる緑色のジャケットの男。
異常な雰囲気を身に纏うその男に、アンクがゆっくりと背後を確認する。

「…アンク?どうかした?」

アンクの怪訝な表情に、思わず映司も背後を見つめる。
しかし、2人の視線の先には既に何もいないようだった。

――少しばかりの不安を残し、2人はオーシア魔法学校へ続く広場へ向かった。

「あ、アヤさん。すみません、お待たせしちゃって。」

買い物袋を手にした映司がアヤソフィヤに駆け寄る。
その横で、アンクは何者が自分達を追尾しているような気配を感じていた。

(……気のせいか?いや……この気配は、何処かで感じた事がある。
誰だ……!?チッ……!!)

【広場に到着、アンク:周囲に何者かの気配を感じる】
7 :ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2011/09/27(火) 02:06:43.39 0
定期報告と本部の状態含め様々情報を終えた後、すっきりと晴れぬ気持ちになりながらも
その後はいろんな工房を見て回りながらPDA型COMPと着ている電光被服を再び使えるように完全に修繕できる者達を探し回っていた。
幸い、少々時間が掛かったもののなんとか修繕をしてもらえる事ができた。
完全に使える状態になった被服を取りに行くとすぐに着用したあと、歩きながら灰色の外套を着ていると
目の前にテイルが現れる。

>「あっ、ビャクさん。
 そうだ、せっかくだから少し話さない? 少し暇になっちゃってさ。
 まだ少し時間もあるし、ジュース一杯分くらいの時間なら良いよね?」

こちらもCOMPの修理やら整備に時間が少々かかるので時間を持て余していた。
断る理由も特に無いので

「構わんぞ、こちらも丁度時間が出来たからな」

了承し、指定されたカフェテラスで席についてテイルは飲み物を注文すると
こちらはアイスコーヒーを頼む。
しばらく待っているとテイルが口火を切るように喋る

>「ボクたち随分一緒に旅を続けてきたけど、ビャクさんにも一度聞いてみたい事があったんだよね。
 勇者……って、どんな存在だと思うのかって。
 昔はガイアでは死霊皇帝と戦う戦士たちは、みんな光の勇者って呼んでたんだ。
 光と闇の融和でカオスの勇者に改名して、ボクはガイアの力を継いで……。
 今は何て呼べばいいのか、よく分からないんだけどさ」

話している最中に二人の頼んだ飲み物が届いたので、アイスコーヒーに口を付けながら
自身の思う勇者とは何か、に関してどう答えるべきかほんの一瞬ではあるが思考し己の考えのまま述べる。

「なんと答えるべきか、そうだな…何らかの使命を持ち人々に希望を与える
そんな物が世間一般の持つ考えだろうが、やはりそれは背負わせられる者に寄っては
人々に望まれている伝説の存在にもなるし、所詮は一部の者が自分達に都合が悪い者を排除するテロリストにもなりうる存在だからな
難しいといえば難しい所だが…今目の前にいる連中はどんな状態でも己を貫ける者達―善でも悪でもない
それを超えた何かが君達なのだと思う、うまくは言えんが」

と自分なりの答えを話し終えた後、テイルは席を立ち上がる

>「……ジュース一杯の時間って早いね。
 まだ集合時間にはちょっと早いけど、先に広場の方に行ってるよ。
 じゃっ、また後でね!」

こちらもそう言ってああ、またなと告げて
彼は走り去っていくどこかに走り去ってゆく。
丁度飲み終えた頃に、取りに来るように言われた時間に来たようで。
飲み物の料金を払いながら、取りに行く店に行こうとしたとき
ふと思った事があった。

「テイルの奴―利き手が左手だったか?」

注意深くいちいち観察していたわけではないが、確かグラスを持っている手はいつもは
右手だった気がするが、それもおぼろげの記憶もあり気のせいだという事にしておく
そして目的の物を取りに店に向かった後無事受け取り、広場へと向かった。
8 :ルーチカ ◆hATMxiE/qY [sage]:2011/09/29(木) 00:51:51.23 0
>「寄ってらっしゃい見てらっしゃい! バラグ&グラムフィギュアだよ~」
>「バラグ&グラムフィギュア!? なんじゃそれ」

「あ、それは・・・魔法学校が出してる雑誌で今連載してて。
子供が旅しながら行く先々で魔法の人形を見つけて、それを戦わせる、
みたいな話で、ノダメ校長の企画らしいんですけど・・・」
“バラグ”のモデルの方には、以前の格闘大会で少しだけ会っている。
こんな事をして気を悪くしないだろうか。

待たせておいた雪豹のカランダーシュを連れて、
買い物を済ませたテイルさんと一緒に
皆さんとの待ち合わせ場所という中央広場に向かうと、

>「フェアリー=テイル。そちらの方は……オーシア魔法学校の方のようですが?」

噴水の縁から立ち上がったのは、隙のなさそうな感じの女性。

>「初めまして。私はアヤソフィア=エヴレン。
> 次元律の均衡を保つ戦士達の補佐を任務としております」

(次元律・・・均衡・・・ええと・・・)
「初めまして。私はルーチカ、魔法学校の生徒です」
流れ出た難しい用語に気を取られて、挨拶が外国語の教科書のようだ。

「テイルさんのお仲間の方、ですよね。
ノダメ校長が皆様とお話ししたいとのことで、お迎えに参りました」

「テイルさんには、以前、学校行事でトラブルが起きて、
それでとてもお世話になって・・・」
テイルさんと知り合いな訳をあたふたと説明していると

>「あ、アヤさん。すみません、お待たせしちゃって。」

アヤソフィヤさんに駆け寄ってきたこの人もお仲間のようだ。
容貌も服装も異国風の青年に、ルーチカは同じように挨拶した。
「・・・テイルさんアヤソフィヤさんのお仲間の方、ですよね。
ノダメ校長が皆様とお話ししたいとのことで、お迎えに参りました。
あの、私はルーチカ、魔法学校の生徒です。申し遅れましたが」

徐々に人数が増えてきたので説明を追加する。
「それから・・・不慮の事故で校舎を壊さないため、
ノダメ校長は校庭の実習施設でお待ちするとのことです」

授業終了の鐘以降、一般生徒は校庭立ち入りを禁じられている。
新しい世界の神が率いるパーティーの存在が引き起こすかもしれない“何か”に対し、
一般生徒はあまりに非力なのだ。

「お揃いになりましたらご案内します」

そして一般生徒であるルーチカは、
雑踏に紛れ皆の視野の端をかすめた“誰か”達の存在など気付きもしないのだった。
9 :アヤソフィア ◆666/MyrH6U [sage]:2011/09/29(木) 22:49:59.53 0
>>6-8
火野やビャクも合流すると、ルーチカの案内で全員がオーシア魔法学校の敷地内に足を踏み入れた。
広い校庭を眺めると、端の方には太陽の光を受けて鉛白に輝く石造りの建物が鎮座している。
真珠の鳥籠と形容したくなるような外観。ルーチカが語った校庭の実習施設であった。
人口密集地に存在するオーシア魔法学校は、不測の事態に対応する為、魔術を実践する際には、この建物を使用する。
竜帝山脈から伐り出した石で作られた堅固な壁。常に防護の力場を発生させる魔術結界。
二つの仕掛けが、物理的にも魔術的にも外界への影響を内部へ留めるのだ。
建物の前に着くと、ルーチカの手で押された石の扉が、重く軋んでゆっくりと開く。
円形の部屋は優に二体の竜が戦い合える程の広さを持ち、窓は無かったものの照明として魔術の光球が幾つか中空に浮いていた。

『御苦労さまです、ルーチカ』

澄明な美しさを感じさせる声が、室内の空気を震わせる。
ルーチカに労いの言葉を掛けたのは、歌と詩の神に愛された人ならざる種族……セイレーンだった。
彼女は人に似た姿で、背には鮮やかな翡翠の羽を伸ばし、足元から覗くのは華奢な鳥の脚。
栗色の巻き毛は足にまで届くほど。金色の瞳。細い体は淡い緑色の衣で包まれる。
美貌の異種族は訪問者に向かって微笑みを浮かべると、ふっくらした桜の唇を動かして言葉を紡ぐ。

『ようこそ、オーシア魔法学校へ。
 フェアリー=テイル=アマテラス=ガイア様。それに異世界の方々。
 私はノダメ=カンタービレ。この魔法学校の校長です』

校長の挨拶に続いて、彼女の隣に立っていた浅黒い肌の青年が朗らかな声を出す。

『よっ、久しぶりだなっ!テイル……と、ご新規の勇者さん方。
 オレはレオ・テンペスト。魔法学校の教師だ。
 一時期はテイルと同行してたし、まあ大体の事情は把握してるぜ』

レオは金髪で赤い目をしており、しなやかな動作と格闘家の様な出で立ちも相まって、名前通りに獅子の如き印象を与えた。
続いて、彼の後ろに座り込んでいたエルフ族が銀髪を揺らして立ち上がり、自己紹介する。

『はいはーい!担当科目が精霊魔術のメルディ・ミストグローブでーす!
 レオと同じく勇者のサポートしてたけど、世界の新生後は元の職場に出戻ってました!』

レオもメルディも魔法学校の上位魔導師であり、ここで待機していたのは不測の事態を懸念した校長の差配である。
一通り魔法学校側が各自の紹介を終えると、まずはアヤソフィアが口火を切った。
彼らに対して自らの名前と所属を名乗った後、不躾とも呼べる感じで拙速に要求を述べる。

「さっそくですが、我々はデミウルゴスの一部と言われるシャードを用いる為、魔法機械を求めています。
 シャードからデミウルゴスの情報の一端でも読み取れる事を期待して、です。
 高度な魔法象(ゴーレム)ならば、それが可能かもしれません。
 もしオーシア魔法学校が、その様な魔法象を所有されているのなら提供して頂きたい」

セイレーンの校長はアヤソフィアの余裕の無さを嗜めるよう、じっくりと一呼吸置いてから返答を返す。

『世界樹に巣食い、永らく世界を蝕んできたデミウルゴスは、封印されておらず消え失せた訳でもありません。
 彼の者は狂気の神と同様に、この世界に破滅を齎す負の因子たりえるでしょう。
 我々も来たるべき危機に備える為、闇の眷属も含めた各地の族長と連携してデミウルゴスへの対策を練っていました。
 そしてミルゴのシャードを使えないだろうかとの話は、各族長間の会合でも浮上していました』

セイレーンが片翼を動かして部屋の中央を指し示すと、そこにはレオよりニ回り程大きい鉄色の鎧が置かれていた。
魔法機械で出来た鎧型の魔法象(ゴーレム)が。
その背の装甲の一部は今は開かれ、内部の複雑精緻な機構を見せている。

『自律式のゴーレム、バラグさんです。
 世界新生の後は、勇者の一人としてオーシア魔法学校に招いておりました。
 今回は貴方たちの話を聞いて、是非に協力したいとの要望で、今ここへ来てもらっています。
 すでにレオがバラグさんの背を開いてますので、後は内部の機関に接続すれば、そのシャードは力を発揮する事でしょう』

そう言って、ノダメ=カンタービレは促す様にテイルに微笑む。
10 :テイル[sage]:2011/10/01(土) 00:55:31.48 0
>4
>6-8
>「フェアリー=テイル。そちらの方は……オーシア魔法学校の方のようですが?」
「うん、ルーチカちゃんって言うんだ! 
前に死霊皇帝軍とキーアイテム争奪戦をやった時にすごく助けてくれたんだよ」

>「テイルさんには、以前、学校行事でトラブルが起きて、
>それでとてもお世話になって・・・」
ボク達のせいで危険な目にあったのに、そう言ってくれるなんて。

「・・・?」
不意に、誰かに見られているような視線を感じる。
平行世界のもう一人の自分・・・ビャクさんの言葉を思い返す。

>「あ、アヤさん。すみません、お待たせしちゃって。」
な~んだ、ヒノさんか。
程なくしてビャクさんも合流し、いざオーシア魔法学校の訓練施設へ。
11 :テイル[sage]:2011/10/01(土) 01:01:31.35 0
>9
懐かしい面々がボク達を出迎える。
「ノダメ校長、レオ君、メルちゃん・・・!」
「よっ、元気にしてたか!?」
「うん、世界改変後はどう? 色々影響が出てる?」
「普段はそう感じないけど魔法の授業をやってると色々ねー」

久しぶりの再会で危うく会話が弾みそうになるところを、アヤさんが、単刀直入に用件を述べる。
ノダメ校長は、その内容を予想していたかのように、適格に答えを返す。
と言うより、最初から準備万端整っていた。部屋の真ん中に彼はいた。
「バラグさん、バラグさんじゃないかあ!」

バラグさんの装甲の一部は開かれていて、校長がシャードをはめこむように促す。
「ここかな?」
それらしき隙間にシャードをはめ、接続する。
バラグさんの目から光が発せられ、空中に映像を映し出した。

長い金髪をなびかせる美しい女性の姿が現れる。
「私はデミウルゴス、全ての始まりたる創造主にして、終焉の機械仕掛けの神――
今語っている私は、ミルゴ、とあなた達が呼んでいる創造主の側面です」

大地はひび割れ、草木一つ生えない荒れ果てた世界の光景が映し出される。
「遥か古、古という表現が適切なのかは分かりませんが、とにかく宇宙がただ一つだった頃。
人々はそれはそれは高度な文明に到達した。しかしそれを扱うには、精神性はあまりに未熟だった。
戦乱の果てに荒廃しきった世界。そこに生き残った人々の最後の希望として、私は作られた。
私に課せられた使命は、何の争いも無い、搾取する者も搾取される者もない、何の悲しみも生まれない完璧な世界を作り上げる事」

続いて映し出されるのは、緑溢れる森、どこまでも広がる草原、人々が行き交う賑やかな街道。
『私は自らに刻まれた使命に従い、完璧な世界を作り上げようとした。
でもどんなに手を尽くそうとも完璧とは遠く離れていく――だから全てを無に帰した――』

平和な世界の光景が、一瞬にして崩れ去る。
『完璧な世界を作り上げる事が不可能だと判断した場合、その世界を終わらせる終焉の神としてのプログラム。
それがデウス――デウス・エクスマキナと呼ばれる側面です。
以来、何度も何度も、気の遠くなる程の数多に渡って、世界を創り、終わらせて来ました。
完璧な世界など最初から不可能だったのです。いえ、唯一可能な方法は、何も存在させない事。
所詮私は世界樹に巣食い世界を破滅に導く邪神だった――』

ミルゴの瞳が哀しみに揺れ、そして意を決したように投げかけた、ように見えた。
『私・・・デミウルゴスは、世界改変の際に、ここと鏡面となっている平行世界に逃げ込みました。
この機械人形に、デミウルゴスの居場所への門を開く力を与えます。
勇者達よ、どうか、私の存在を消し去ってください――』
そこまで言うと、映像が消えていく。

『どうか今の世界を守って。一度だけでいい、終焉ではなく創造の神になりたい』

最後の言葉は、紛れもなく切なる懇願だった。
「・・・」
暫しの放心状態の後、はっとして問いかける。
「バラグさん、大丈夫だった!?」
12 :火野映司 ◆/m/3H6N1VU [sage]:2011/10/01(土) 01:54:02.64 0
>>8
>「・・・テイルさんアヤソフィヤさんのお仲間の方、ですよね。
ノダメ校長が皆様とお話ししたいとのことで、お迎えに参りました。
あの、私はルーチカ、魔法学校の生徒です。申し遅れましたが」


学園からの出迎えは、まだ幼さの見える少年だった。
しかし、その眼差しや態度から見るに幼さを抑えて余りある
余裕も感じられる。

「あ、どうも!俺は火野映司、こいつはアンクです。」

会釈をし、アンクを指差しながら挨拶をする。
しかしアンクは先程の異常な気配を、未だに気にし
それどころではなさそうだ。
校舎内を舐めるように睨み付けながら、気配の正体を探っている。

そして、校長のいる場所へ招かれるように校舎内を歩いていく。
幻想的な風景を感じさせるその部屋の扉を開ける。

>『ようこそ、オーシア魔法学校へ。
 フェアリー=テイル=アマテラス=ガイア様。それに異世界の方々。
 私はノダメ=カンタービレ。この魔法学校の校長です』

「お、つっ!!あ、どうも……!!」

セイレーンを初めて見た映司は言葉を詰まらせながらも
会釈をする。
そしてその隣にいた青年や少女にも、挨拶を済ませ
シャードに関する説明を受けることにした。

「なるほど……」

説明を聞きながらメモをする映司。
そんな姿を見つめ、アンクはにやついた口元で映司に声をかける。

「そのシャードとやらが、奴らの手に渡ればどうなるんだろうなぁ。」

赤い異形の腕が、シャードへと伸びようとする。
しかし、それを映司が制しバラグと呼ばれたゴーレムの装甲の中へ入っていった。

>『どうか今の世界を守って。一度だけでいい、終焉ではなく創造の神になりたい』

シャードからのメッセージを聞き、映司は小さく頷いた。
それは消え入りそうなその声に対する、確かなただ1つの答えだ。

「分かりました。――終わりじゃなくて、始まりを。
明日も、明後日もみんなに朝は来ますよ。絶対。」



13 :アヤソフィア ◆666/MyrH6U [sage]:2011/10/02(日) 12:59:20.97 0
>>11
魔法象(ゴーレム)の内部に挿入された神の残滓たるシャードは、女神の幻像を生じさせるとの形で力の一端を示す。
宙に映じられた幻影の女神は、デミウルゴスが太古に造られた破壊と創造を繰り返す機械神である事を語った。
デウス・エクスマキナとは破壊のプログラムであり、ミルゴである自らは創造を担当しているのだと。
彼女は哀切の声音で訴える……邪神でしか在れなかった己を、デミウルゴスを滅ぼして欲しいと。
そう言葉を残して、ミルゴは吹き消される炎の如くフッと姿を消す。

「……完璧な世界でなければ破壊する……」

自らの理解を越えた話にアヤソフィアは短く頭を振り、そのまま黙ってしまう。
聞いたままを受け入れるならば、今の世界は前の世界を屍として創られた事となる。
ミルゴも遥かな過去に造られた人工の機械神であるはずだが、心を持ち合わせていたのだろうか。
或いは透徹した機械の知性が、このメッセージを残す事が再度の創世に最適と判断して行動しただけなのだろうか……?
もしもミルゴに心が在ったならば、今までにどれほどの苦悩を感じ続けてきたのか……想像すら及ばない。
しかし、その切なる願いすら、デミウルゴスの奸計ではないかとの疑惑が拭えなかった。
デミウルゴスは、この世界の主神格であるガイアすら手玉に取っているのだ。可能性としては捨て切れない。
アヤソフィアの沈思はテイルがバラグを案じて発した言葉と、すぐさま彼が返した音声で破られた。

『ああ、とりあえず俺の視覚と聴覚機能に問題は無いようだ。
 各種動作の稼働にも支障は無い。ミルゴの台詞も把握している。
 おまけに……あまり望ましくない情報までシャードから流れて来た。
 直接ミルゴに創られた原初神達では、デミウルゴスを倒すという結果に至らない……ってな。
 ミルゴは創造の際にデミウルゴスの終焉を妨げない為、原初神をそう創るらしい。
 アマテラスが乗っ取られたのも、ソフィアの一部が狂ったのも、それが原因だったわけだ』

>>12
火野は創造神として自らを終えたいとのミルゴの意思を受け止め、了解の意志を虚空に残す。
彼の口調に気負いは無く、アヤソフィアには自然な事として受け入れた様にも聞こえた。

「ヒノの言う通りです。この世界を崩壊などさせません。
 ……バラグ、貴方には並行世界に移動する鍵が与えられたそうですが、それはどのようなものですか?」

アヤソフィアがバラグに並行世界への移動方法を問う。

『そうだ、並行世界に行く方法について説明した方が良いな。
 まずは五元素の均衡を崩して、安定力の弱まった空間を作り出す。
 金属には火を、火には水を、水には土、土には木、木には金属の力をぶつけるわけだ。
 次にシャードの力で相転移の力場を発生させて、不安定になった建物内部の空間だけを並行する世界と入れ替える。
 要は並行世界に向かう人物はこの建物に残って、今の世界に留まる人は建物の外に出ていれば良いわけだ』

「私は行きます。悔恨の涙で溺れるつもりはありません」

アヤソフィアは迷うことなく即答した。
校長のノダメ=カンタービレは残る事を伝えた。
向こう側にも自分と同じ存在がいるだろうとの理由と、この世界で自分が不在となる影響を鑑みての事だ。

「では、残る方々には今のうちに謝意を伝えておきます。我々に御協力頂き、深く感謝の意を表します」

そう、簡素にアヤソフィアが述べた。
全員の意思が明らかになれば、バラグは床に描いた魔法円の中央に立ち、並行世界への移動準備を始める。
接触する大気を変質させる金属の饗宴。天井を舐める勢いの火炎。異界の湧水。噴き出る土塊。瞬く間に群生する樹木。
魔術で生じた五種の力が順に相殺される度に空気が震え、やがて床に描かれた紋様が発光して周囲を空色の光で満たす。
ミルゴの力、神の摂理を内に宿したシャードが空間を歪ませ、隣接する鏡面世界を近づける。
時間にして僅か数瞬……目眩を伴う空間の振動が起こった。
アヤソフィアは他に大規模な変化が起こるかと身構えたが、それ以上は何も起こらない。
全く変化を見せない室内の様子に、アヤソフィアが当惑を滲ませて言った。

「……何も変わった様には見えませんが、すでに世界を移動したのでしょうか。
 そうですね、まずは外に出て確認してみましょう。
 三ヶ月前の世界新生で分岐した並行世界なら、僅かな違いはあるにせよ、ほぼ先程と同じ世界のはずですが」
14 :ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2011/10/02(日) 18:17:33.35 0
合流の場所である広場にて無事全員と合流し、アンクの様子が少しおかしい事に気づきながらも
その場に居た案内役の生徒らしき人物を確認しルーチカと名乗った後
自己紹介する。

「始めまして、俺はビャク=ミキストリ
一応簡単に言えばアヤソフィアの言う世界を守る戦士の一人だ
よろしく頼む」

一通り自己紹介を終えてそのままオーシア魔法学校の敷地内に入る。
それなりに歴史があることを見受けられると思いながら内部に足を踏み入れた。
案内されるがままに石の扉の先までに足を進めると何人かのこの学園のや教師やら学園長やらがそこに居た。

>『ようこそ、オーシア魔法学校へ。
 フェアリー=テイル=アマテラス=ガイア様。それに異世界の方々。
 私はノダメ=カンタービレ。この魔法学校の校長です』
>オレはレオ・テンペスト。魔法学校の教師だ。
>『はいはーい!担当科目が精霊魔術のメルディ・ミストグローブでーす!

「ここまで歓迎してくれるとはな…これもテイルの人徳とやらか」

そんな事を呟きながらシャードの話を火野たちと同じく聞く態勢を取りながら
聞いていくうちにある言葉に対してどうも嫌な予感というより先ほどの守護者委員会の超広域情報収集部門の葉―リーフ―から
提供されたとある情報が頭を過りそれが正しいのならば既に相手は行動を起こしている事となる。

(やはり本当の話なのか…?本部壊滅は疑いようはなくても平行世界からの彼らと同位存在と
幾つかの存在がこの世界に刺客を放ち紛れ込んでいるのというのは)

先ほどテイルと話していた時に利き腕が違って見えたこともその事に関して
それが事実だと言う事に思えてくる。

>『どうか今の世界を守って。一度だけでいい、終焉ではなく創造の神になりたい』

悔恨と真摯なる心からの願いの言葉を最後に説明を終える。
完璧な世界など何処にもないそれを気づくのに時間が掛かりすぎたが
こうして見ると彼女も憐れな被害者に思えてくる。
枷を外すために必死になっている自分とは大違いだと自嘲の笑みを心の中で浮べながら

「気づくのは遅すぎたなお前も俺と同じく罪を重ねすぎた…だが
言われなくてもそうするつもりだ。その時はゆっくりと眠れ
もう二度と過ちを犯さぬように」
15 :ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2011/10/02(日) 18:46:09.78 0
アヤソフィアが平行世界に移動すべくバラグに尋ね
バラグからは平行世界移動に関しての説明を受ける。それによれば
どうやらこの部屋に居れば此処に残れと言う訳だ。もちろん答えは決まっている。

「既に俺達は後手に周っている可能性が高い、これ以上の先延ばしを理由など何処にも無い
俺は向かう、一刻も早く居くべきだ」

そう主張して残るべく意思を表示するとこの世界に残る彼らに警告する。

「俺達は向かうが、そこから先何が起こるかわからない
何があっても冷静な目で自分を感じたことを信じろ、いいな?」

あちら側に逃げ込んだデミウルゴスは既に復活し、刺客を送り込んでいる可能性が非常に高いため
注意を呼びかける。
そして残る側の人達は退室し、平行世界移動の儀式を始めると
あっと言う間に辿り着いたらしい。しかし何処も変わっていないように見える。
これに関してアヤソフィアが発言する。

>「……何も変わった様には見えませんが、すでに世界を移動したのでしょうか。
 そうですね、まずは外に出て確認してみましょう。
 三ヶ月前の世界新生で分岐した並行世界なら、僅かな違いはあるにせよ、ほぼ先程と同じ世界のはずですが」

「平行世界は身近ですぐ隣にある場所だ、何も変わっていない可能性は高いが
無限に分岐する物だ、ほんの少しの誤差もあればまったく真逆の事になっている事もある
例えば…この世界の同一人物が自分達にとっては敵だったりな」

もしたらればの話は幾らしても仕方ないが、こちらも予知能力者ではないし
あらゆる事態が起きてもおかしくないのだ、だからこそ油断や警戒はとても重要なことである。

「では確認の為に外に出てみようか、とりあえず俺が先に出る
後に続くのは誰でもいいが不測の事態に備えていつでも戦える準備はしておけ、いいな?」

そう言って片手に無命剣フツノミタマを召喚し、部屋から出て学園内から出るための通路から
敷地内に入る入り口を目指し歩き続けて、敷地内入り口に出てから外を見てみる―がそこは
何もない世界が広がっていた。否―太陽とこの学園と敷地内はそっくりある
しかし見渡す限り先ほど在った広場もなければ活気賑わう市場も無い
まさに全てまっさらで何も残っていない世界だった。

「…最悪だな、核戦争で滅んだ世界にも行った事があるがアレでも多少は残骸があったが
本当に何もない―ディストピアの可能性が高いが、この地だけかもしれん
もっと他のところも見てみよう」

敷地内に入る入り口からまっさらの土地に続く敷地に最初の一歩を踏み入れて
辺りを見回した。
16 :テイル[sage]:2011/10/03(月) 23:32:14.26 0
>12-13
>「分かりました。――終わりじゃなくて、始まりを。
明日も、明後日もみんなに朝は来ますよ。絶対。」
形が改変されたとはいえ、今の世界もまた、デミウルゴスが幾度目かに作った世界をベースに作られている。
デミウルゴスを倒し今の世界を守り抜けば、ミルゴは今度こそ創造神になると言えるだろう。
「約束する。あなたの願い――叶えてみせるよ」

>「ヒノの言う通りです。この世界を崩壊などさせません。
 ……バラグ、貴方には並行世界に移動する鍵が与えられたそうですが、それはどのようなものですか?」
バラグさんが、平行世界に行く方法を述べる。この建物ごと向こうに行ってしまうらしい。
魔法学校の授業で困らないだろうか。なーんて、また建物ごと帰ってくれば大丈夫だよね!

「みんな、本当に行く? 次元転移の時に酔っちゃうかもよ~?」
>「私は行きます。悔恨の涙で溺れるつもりはありません」
>「既に俺達は後手に周っている可能性が高い、これ以上の先延ばしを理由など何処にも無い
俺は向かう、一刻も早く居くべきだ」
わざとおどけた調子で念押しすると、アヤさんが力強く頷き、ビャクさんが出発を促した。
今更聞く必要なんて無かったのだ。

>「では、残る方々には今のうちに謝意を伝えておきます。我々に御協力頂き、深く感謝の意を表します」
>「俺達は向かうが、そこから先何が起こるかわからない
>何があっても冷静な目で自分を感じたことを信じろ、いいな?」
「ノダメ校長、みんな、ありがとうね!
・・・やだなー、そんな顔してどうしたの。すぐ帰ってくるに決まってるでしょ!」
ボクはいつものこの調子でいい。本当のことはビャクさんが言ってくれたから。

残る者達が建物から出たのを確認し、バラグさんがついに平行世界への転移を始める。
神秘的な光景が展開され、思わずそれに見とれている間に、転移は完成し、空間が揺れる。

>「では確認の為に外に出てみようか、とりあえず俺が先に出る
後に続くのは誰でもいいが不測の事態に備えていつでも戦える準備はしておけ、いいな?」

見たところ何も変わっていない周囲に戸惑いながら、恐る恐る外に出る。
「ここが・・・平行世界?」
外に出ると、何もかもが変わっていた。何も無かった。

>「…最悪だな、核戦争で滅んだ世界にも行った事があるがアレでも多少は残骸があったが
>本当に何もない―ディストピアの可能性が高いが、この地だけかもしれん
>もっと他のところも見てみよう」

「どういう事・・・? まさか、もうデミウルゴスに消されたの!?」
その時、目の端に妖精の姿が映ったような気がした。
「・・・!?」
その方向を振り向いて見ても、すでに姿を消している。
「こっちの世界でのボク達がいる・・・。男さんを石化させた奴みたいに、敵かもしれない!」
17 :火野映司 ◆/m/3H6N1VU [sage]:2011/10/04(火) 23:25:44.94 0
>>13>>14
>「私は行きます。悔恨の涙で溺れるつもりはありません」

アヤソフィヤの言葉に続くように、映司もその場に留まる。
この先に、何が待っているかは分からない。
しかし、立ち止まっているわけにはいかない。
アンクも渋々、映司の後ろに立つ。

>「平行世界は身近ですぐ隣にある場所だ、何も変わっていない可能性は高いが
無限に分岐する物だ、ほんの少しの誤差もあればまったく真逆の事になっている事もある
例えば…この世界の同一人物が自分達にとっては敵だったりな」

目の前に広がっていたのは、先程と同じようでまるで違う世界。
そこには何も無く、ただ「無」の世界が広がっていた。
ビャクの言った、すぐ隣にある場所。その言葉に何か引っかかりを感じたのはアンクだった。
以前から感じていた謎の視線。あれは、研ぎ澄ました直感でも捉えられない
ものだった。
異次元からの視線。そう考えるとあの違和感にも合点がいく。

「気をつけろ……映司。さっきから妙な気配がうろついている。
――こいつは、まさか。」

>「こっちの世界でのボク達がいる・・・。男さんを石化させた奴みたいに、敵かもしれない!」

ティルも同時に警告を告げる。この世界には何も無いように見える。
しかし、確実に「何者か」はいる。

「まさかって……何だよ。え?これは……!?」

映司の足元に転がるのは銀色のコイン。よく見ていけば、点々とそれらは
散らばっている。
手に取り見つめると、それは禍々しい力に満ちている事を直感出来た。
それは半分に割られた、欲望の「根源」たるセルメダルそのもの。
アンクは舌打ちをしながら、周囲の気配を探る。
感じるのは、無の中にありながらも確かに存在する「欲望」の力。

「どうやら――1手、いや2手以上遅れたらしいなぁ……!!」

【平行世界にて、謎の気配。半分に割れたセルメダルが大量に散乱している】
18 :ルーチカ ◆hATMxiE/qY [sage]:2011/10/05(水) 22:33:03.14 0
「では、皆様どうぞお気を付けて・・・お帰りを待ってます!」
神や異世界からの来訪者に『この世界を守って』と安易に頼む資格は、
この世界に住む当事者でありながらまるで無力な自分には、無い。
ただ深々と一礼して、ルーチカはノダメ校長と共に“この世界”に残るため外に出た。

振り返ると、実習施設は平行世界の残像なのか、靄を纏ったように姿を霞ませていた。
(テイルさん、皆さん、どうか無事で・・・でも、何に祈ればいいんだろう・・・)
ルーチカの指が、無意識に傍らのカランダーシュの毛並みを追っていた。
19 :アヤソフィア ◆666/MyrH6U [sage]:2011/10/05(水) 23:04:49.67 0
>>15-17
ビャクに続いて建物から出たアヤソフィアは異様な光景に絶句する。
魔法学校の敷地から先は、茫漠とした荒野の如き姿を晒していた。
ビャクがそれを見て、最悪のディストピアと化した世界との可能性を示唆した。
彼がそう思うのも、無理からぬことであろう。
大地はまるで途方も無い程の大きさの巨人が、途方も無く巨大な剣で島を水平に薙ぎ、平らに削り取ったかの如く。
一面の更地の上に残るのは、オーシア魔法学校だけであったから。

「ディストピア……阻害された場所、ですか。
 確かに此処の他は何もありません。
 地平線が見えると言う事は、私の身長とガイアの大きさから勘案して、約4.5km四方には何も無いようです。
 オーシア魔法学校だけは、防護魔術で異変の影響を逃れたのでしょうか?」

何度か感じたビャクに威圧された感覚が、今は無い。
自分に出来る事に専心していれば、悪戯に胸に痞えを感じる事もないのだろうか……と、思い浮かべる。

「それでは、私は校舎内を捜索してみます。
 建物が無事に残っている以上、生存者がいるかも知れません」

ビャクに向かってそう言ったアヤソフィアが、校舎に向かい始めて数歩。テイルが警告の声を発した。
敵かも知れない並行世界の存在を告げて。
間を置かずにアヤソフィアがテイルの視線の先を追うと、先んじて火野が異変を感じたようだった。
地面にばら撒かれた夥しい数の割れたメダルに。
アヤソフィアが姿無き何者かの気配を探る為に耳を澄ますと、メダルの一枚がチャリ……と音を鳴らした。
透明化の魔術で姿を隠した者が、散乱するメダルを踏んだのかもしれない。
そう判断したアヤソフィアは真視の魔術を唱えた。

「我が視線は虚像を貫き、真実を映す。
 無限なる円環を満たす不可視の力よ、この両眼に魔力を宿らせ、真視の力を与えよ――gram sight」

魔術に依って可視帯域を広げられた網膜が、見えざる何者かの姿を映す。
術者の視界の中で透明な大気が色を宿し、背に翅を持った人の形を描く……テイルと瓜二つの妖精の姿を。

「フェアリー=テイル……いえ、姿を隠して潜んでいるのは並行世界のフェアリー=テイルの様です」

『あーあ、見つかっちゃったよ。どうする?イョーベールさん?』

悪戯の仕掛けを見破られた時の様な無邪気な声を上げ、姿隠しの魔術を解いた妖精が全員の前に姿を現す。
水色の髪、虹色の翅、尖った耳、青い瞳、子供の様な肢体。
現れた妖精の特徴は、全てが完全にテイルと一致していた。
20 :イョーベール@NPC ◆666/MyrH6U [sage]:2011/10/05(水) 23:09:45.89 0
自分の名前を呼ぶ妖精の声を受けて、魔法学校の校舎屋上から小屋程もある巨大な蟹が顔を覗かせた。
以前、テイルやビャクと行動を共にしていた黄金の巨蟹、イョーベールである。
魔物としか形容出来ない巨大な異形の出現に、アヤソフィアが小さく呻きを上げた。

「むう……もう少し隠れて様子を窺おうと思ったのだが、見つかっては仕方あるまい。
 ちなみに私は単なる魔物では無く、アルコーンのイョーベールだ」

黄金の大蟹はイョーベールと名乗り、校舎の屋上から飛び降りた。
その巨体にも関わらず、大蟹は器用に用いた節足で衝撃を殺して、派手な着地音をさせない。
イョーベールはテイルを見ると、訝しむような口調で訊ねる。

「お前たちはいったい何者だ? 何故テイルそっくりの姿をした者がいる?
 いや……その前に自分から名乗った方が良いな。
 我々は見た目はアレだが勇者たらんとする者たちだ。
 そこで十柱のアルコーンに対抗する力を探して、勇者支援組織のあるオーシアに来たわけだ。
 しかしオーシアは荒野。さらにテイルそっくりの者が校舎から出てくるではないか。
 とても怪しいので、我々は隠れて様子を窺っていたというわけだ。
 信頼できるサムシングが欲しいなら、センス・ライ(嘘感知)の魔術でも唱えて調べるといい。
 私が微塵も嘘を言って無い事が、お手軽に分かるはずだ」

大蟹は隠れていた理由を一息に語った。
アヤソフィアは大蟹の中の聞き慣れない単語に眉を顰めて、アルコーンとは何なのかを問い返す。
対してイョーベールは、表情の無い球形の瞳を質問者に向けて応えた。

「うむ、解説しよう。アルコーンとはデミウルゴスが世界を崩壊させる際に使う十一の天使。
 このオーシアを破壊したのも、おそらくはアルコーンの仕業だろう。
 ガイアでは、私以外の十柱のアルコーンが枝切りを行っている最中だからな。
 おっと、今の世界は樹形の枝分かれはしていないから枝切りとは言わなかったが
 まあ用語はともあれ、要するに世界を破壊する作業だ。
 さて、それでは改めてお前たちが何者で、目的は何かを問わせてもらおうか?」
21 :テイル[sage]:2011/10/09(日) 23:56:19.21 0
>17
>「どうやら――1手、いや2手以上遅れたらしいなぁ……!!」
「あっちゃー! 早くデミウルゴスを見つけよう。
せめて被害がこっちの世界だけに収まってるうちに!」

>19-20
>「フェアリー=テイル……いえ、姿を隠して潜んでいるのは並行世界のフェアリー=テイルの様です」
アヤさんの魔法によって、もう一人のボクが姿を現した。
『あーあ、見つかっちゃったよ。どうする?イョーベールさん?』
校舎の屋上から、巨大な蟹が飛び降りてくる。確かにイョーベールさんだ。
「イョーベールさん? こっちでは男さんの鎧になってないの?」

このイョーベールさんの話が本当なら、彼らは味方。
そして、イョーベールさん以外の10柱のアルコーンが世界の破壊を行っている最中らしい。
彼は一通り自分達の事を説明すると、今度はこっちに問いかけてきた。

「ボク達は……この世界と鏡面になっている平行世界の勇者。
この世界に潜むデミウルゴスを仕留めるために、向こうの世界からやってきたんだ。
向こうの世界の勇者支援組織であるオーシアの力を借りて、ね。
つまり君たちと目的は同じって事。この際協力しない?」

もう一人のボクとイョーベールさんに、共闘を持ちかける。
彼らが彼らの言う通り味方なら、何の問題も無い。
仮に敵の罠でも、これでデミウルゴスに至る手掛かりが得られるなら好都合だ。
22 :アヤソフィア ◆666/MyrH6U [sage]:2011/10/10(月) 04:53:50.35 0
>>20
「では失礼ながら……嘘感知の魔術を使用させて頂きます」

『ああ、一思いにやってくれ。魔法防御も今はオフにしておくぞ』

「我が耳は真実を聴き、虚偽を明らかとする。
 無限なる円環を満たす不可視の力よ、この両耳に魔力を宿らせ、真偽を聴き分ける力を与えよ――sense lie」

アヤソフィアの唱えた嘘感知の魔術は、尋問などに使われる魔術。
その成否は被術者の魔法抵抗力に依存するが、相手の同意さえあれば術者は絶対に吐かれた嘘を聴き分ける事が出来る。
イョーベールが同意している以上、彼の持つ絶対的な魔法防御能力も今は発揮されない。
全く同じ台詞を復唱させた結果、下記の点には一つの嘘も混じっていない事が示された。

 ○私はアルコーンのイョーベールである。
 △我々は勇者たらんとする者たちである。
 ○十柱のアルコーンに対抗する力を探して、勇者支援組織のあるオーシアに来た。
 △オーシアを破壊したのは、アルコーンの仕業だろう。
 ○テイルそっくりの者を警戒して、様子を窺っていた。
 ○アルコーンとはデミウルゴスが世界を崩壊させる際に使う十一の天使。
 △ガイアでは、私以外の十柱のアルコーンが枝切りを行っている最中。

幾つかには、嘘ではないが真実とも言えないと言う結果が出る。
嘘感知の魔術は、微妙な言い回しや、推測に基づいた発言も意味を厳密に捉えて、真実では無いとの結果を示してしまうのだ。
アヤソフィアは、魔術で得られた結果を小声で仲間たちに伝えた。

「――――以上の結果から、イョーベールの発言に嘘は無いようです」

>>21
黄金色の大蟹が自らの素性を語り終えると、次には此方が何者であるかを問い掛けてくる。
それに対し、テイルは自分たちが並行世界の勇者である事を告げて、自分たちとの共闘を持ちかけた。
大蟹も傍らの妖精も口を差し挟まずに興味深げな様子で、テイルの話を聴き入っていたが、一呼吸の思案の後、最初に大蟹が口を開く。

『フム、そうか……ところで、嘘感知の魔術はもう良いな?
 いつまでも心を覗かれているのは気持ち良いものじゃないのでな。そろそろ無効化させてもらおう』

如何なる原理の能力を使ったのだろうか。
黄金の巨蟹が口から黒い霧を放つと、それは周囲の大気に薄く拡散して魔術伝達を阻害し、感知の魔術の効果を掻き消す。

『これで、子供にどうやって赤ちゃんが生まれるのかを聞かれても困らないな。
 もちろんキャベツ畑から生まれる!そうだろう?ハッハッハ!』

豪快に笑ったイョーベールは、思い出したように言葉を続けた。

『おっと……それで、さっきの答えだったな。良かろう!我々も喜んで協力させてもらおうではないか!
 世界は違えども、私は真の勇者になる事を望んでいる!共に力を合わせてデミウルゴスを打ち倒してやろう!』
23 :アヤソフィア ◆666/MyrH6U [sage]:2011/10/10(月) 04:59:13.88 0
巨蟹に続いて、今度は妖精が口を開く。

『……敵が来るよ。ううん、攻撃が来るって言った方がいいかな?』

「攻撃……どこからですか?」

テイルに酷似した妖精が唐突に発した言葉を聞き、アヤソフィアが周囲を見回す。
吹き渡る風の他には、荒涼とした風景の中に動くものは何も無く、敵らしき者を見つける事は出来ない。
攻撃を予告した妖精に視線を移せば、足元に散らばるセルメダルの一枚を摘み上げて、それを鑑定するかのように眺めていた。
こんなものは今までこの世界に無かった筈なんだけどなあ……と、小さく呟いて。
一しきり眺め終わると、妖精は鈍色に曇ったメダルへの興味を失ったようで、小さな親指に乗せて宙に弾いた。

『残念ながら、どこから来るのか、どんな攻撃なのかまでは分からないよ。
 この世界の神族としての力で予知しただけだからね。
 なんとなくだけど攻撃が来る方向は……あっちかなー?』

妖精は弾いたメダルが転がった方向を指差す。
それが、まるで今転がったメダルで攻撃が来るらしき方角を決めたようにも見え、先程の予言めいた言葉から信憑性を著しく削ぐ。
真贋のはっきりとしない断片的な情報に、アヤソフィアは眉を顰めて妖精の顔を睨む。

「……予感との断りが入った以上、全幅の信頼は置けませんが、攻撃が来るのなら今のうちに対応策を講じた方が良いでしょう」

『そうだね。この島を荒野に変えた様な攻撃だったら一溜まりも無いだろうけど。
 うーん……そういえば、この壊滅したオーシアで魔法学校だけ無傷で残ってるってのも不自然だよね。
 もしかしたら何かの強力な結界が機能しているのかもしれないし、中に籠ってれば多少はマシだったりして。
 まあボクの予言を信頼出来ないのなら、無理にとは言わないんだけどさ。
 でも、そうだねぇ。この建物の中にそんな結界を生み出す様な物があるのなら――――』

妖精は何かを面白がるような表情で囁く。

『――――デミウルゴスと戦うのに役立つかもね』

その言葉はアヤソフィアに思案させる。
アヤソフィアにもオーシア魔法学校だけが無傷で残っているのには、何らかの理由がありそうだと感じられた。
もしも中に生存者がいればオーシアで何が起こったのかも、聞く事が出来るかも知れない。

「……そうですね。まずは生存者の有無を確かめましょう。
 オーシアは古代遺跡が至る所に残っています。
 地上はこの有様ですが、地下には広い空間があってもおかしくありません。
 他の区画の住人たちも、その様な場所に逃れていれば良いのですが……」

そう口にした事で、今更ながらオーシアの住人たちの行方が案じられた。
世界は違えども、ここには同じ町並みが有った筈である。
街を巡り、名物らしき食べ物を屋台で頼み、何人かの人物とは話もした……それが今は跡形も無く、変わり果てた姿を晒す。
オーシアで起きた破壊の瞬間を想像したアヤソフィアは、肺の中の空気が濁ったかの様に気分が悪くなった。
彼女は街を変えた原因を検討したが、脳裏に浮かぶ幾つかの可能性は、どれも暗い想像しか齎さなかったから。

微かに怒りの感情を滲ませる足音を立て、アヤソフィアは校舎の中へと向かってゆく。
魔法学校の外観は貴族の邸宅の如きカントリーハウス風で、石造りの外壁からは城館と言う言葉を連想させる。
入口の玄関から大広間へと入ると、何時間も人の呼気が混じわらなかったであろう冷えた空気が出迎えた。
ごくありふれた調度品の並ぶ大広間は、外との対比を思えば聖域のようにも感じられる。

「一般的な学舎の構造としては教室、寮、図書館、食堂、浴室、倉庫……などでしょうか。
 魔法学校ともなると、他にも色々な施設が在るかもしれませんが。
 一応、敵からの攻撃を予言されていますし、校内の捜索は全員で行動した方が安全かもしれません」

アヤソフィアは大広間の幾つもの廊下や、扉や、階段を見回しながら言った。

【>>ALL 生存者の捜索に校舎の中へ】
24 :火野映司 ◆/m/3H6N1VU [sage]:2011/10/10(月) 23:13:32.62 0
>>19
>『あーあ、見つかっちゃったよ。どうする?イョーベールさん?』

「え?ティルさんが2人……。」

姿を現したティルに瓜二つの妖精に驚きながらも、映司は
つとめて冷静に呟く。
その時、屋上から声が響くと同時に大きな影が映司達の
視界から降りていく。

>「むう……もう少し隠れて様子を窺おうと思ったのだが、見つかっては仕方あるまい。
 ちなみに私は単なる魔物では無く、アルコーンのイョーベールだ」

「……おい映司!!」

巨大な魔物に見えるイョーベールに対し、警戒心をむき出しにする
アンクが叫ぶ。
しかし、彼の語る言葉に耳を傾けるべきだと判断した映司はそれを制止する。

> さて、それでは改めてお前たちが何者で、目的は何かを問わせてもらおうか?」

彼の問いかけに対し、映司達と共に来た方のティルが答える。

>向こうの世界の勇者支援組織であるオーシアの力を借りて、ね。
つまり君たちと目的は同じって事。この際協力しない?」

それに賛同するように映司も言葉を続ける。

「俺は、火野映司。ティルさん達と住む世界は違うけど……俺達も
これ以上世界を壊させたくないんです。」

>>22
アヤソフィヤがイョーベールの言葉に嘘が無いかどうか
呪文を唱え確認しているようだ。
アンクは慎重そうにそれを見つめ、彼女の返答を待った。

>「――――以上の結果から、イョーベールの発言に嘘は無いようです」

「嘘がないか。まぁ、それでも協力するにせよ用心するに越した事は
ないようだがなぁ……」

アンクの手には半分に割られた銀色のメダルがあった。
――その瞬間、アンクの背後で何かの影がゆっくりと揺らめく。

「……ッ!!」

瞬時に振り返るも、そこには誰もいない。
しかし確かに感じた気配は、彼がよく知る者のそれに似ていた。

――アヤソフィヤの案により、校内に生存者がいるかどうか調べることになった。
映司もそれに続くように校舎の廊下を見渡していく。

「……誰か――!!誰かいませんか!?俺達は、敵じゃありませんから
。いたら出てきて下さい!!」

映司の背後に、緑色のジャケットが霞む。
その影は、全てが消し去られた世界で狼狽する彼らを笑っているかのように見えた。

【校舎内で謎の影。映司に接近。】
25 :ビャク ◆1LbV.WkN1I [sage]:2011/10/11(火) 01:38:57.88 0
>「ディストピア……阻害された場所、ですか。
 確かに此処の他は何もありません。
 地平線が見えると言う事は、私の身長とガイアの大きさから勘案して、約4.5km四方には何も無いようです。
 オーシア魔法学校だけは、防護魔術で異変の影響を逃れたのでしょうか?」

「恐らくそうだろうな、此処は相当の防護魔術を誇っているようだ
ならば人が居ない事には不自然さを感じる事だが」

学園から出る入り口に足を踏み入れようとしたととき、一気に意識を持っていかれそうになり
一歩を踏み止め学園の内側に急いで戻る。
平行世界といえどこの学園から外に出れば恐らく俺は問答無用で永久闘争存在と化すだろう
この土地に刻み込まれている防護魔法か特別な何かが自分の理性をようやく留めている
それほどまでにこの世界は追い詰められている事を肌で感じていた

>「どうやら――1手、いや2手以上遅れたらしいなぁ……!!」

「だがどう巻き返すかが今後重要になるな、今更どうこう言ってもこの状況は変わらん」

アンクの示す言葉は本当の事ではあるが、それを理解した上で行動することが現在重要である。

>「こっちの世界でのボク達がいる・・・。男さんを石化させた奴みたいに、敵かもしれない!」
>「フェアリー=テイル……いえ、姿を隠して潜んでいるのは並行世界のフェアリー=テイルの様です」
>『あーあ、見つかっちゃったよ。どうする?イョーベールさん?』

テイルの警告と同時にアヤソフィアが魔術を使って見つけた者それはこの世界のもう一人のテイルであった。
しかし、同じ世界の自分に会えば同じ世界には矛盾が起きて同じ人間が存在できないはずのタイムパラドックスが働くはずなのだが
それが生じていないこれはどう言う事なのだろうか?
この世界の法則がそれを認めているからか、あるいはこちら側(自分達)のテイルを別人と認識したのか

>「むう……もう少し隠れて様子を窺おうと思ったのだが、見つかっては仕方あるまい。
 ちなみに私は単なる魔物では無く、アルコーンのイョーベールだ」

「ほう、この世界ではまだ勇者側に付いて居たんだな…」

少し意外だと思っていたが、一応は顔見知りではあったがこの世界では余計な混乱や騒動を招かぬために自分の事について詳しく聞かれるまで黙っておく。
案の定あちら側のイョーベールもこっちに対しても正体を尋ねてくるがテイルが返し
アヤソフィアによる尋問に使用する魔術によりイョーベールの言っている事の裏取りを取った。
そして信用できると判断したこちら側のテイルの共闘を持ちかけてあちら側も了承する。
反対する理由も無いが、何かが引っかかる言いようの無い違和感があった。
26 :ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2011/10/11(火) 02:12:43.15 0
>『……敵が来るよ。ううん、攻撃が来るって言った方がいいかな?』

>『残念ながら、どこから来るのか、どんな攻撃なのかまでは分からないよ。
 この世界の神族としての力で予知しただけだからね。
 なんとなくだけど攻撃が来る方向は……あっちかなー?』

「ふうむ、それならば対策のしようがあるまい…
いや一つだけあるか」

ボソッと最後の言葉を呟く
自分がこの結界を踏み越えればこの世界の全てを破壊し尽くすまで辞めない殺戮機械になるだろうが
それは本当の最悪の選択肢だろうが

>全幅の信頼は置けませんが、攻撃が来るのなら今のうちに対応策を講じた方が良いでしょう」
>うーん……そういえば、この壊滅したオーシアで魔法学校だけ無傷で残ってるってのも不自然だよね。
 もしかしたら何かの強力な結界が機能しているのかもしれないし、中に籠ってれば多少はマシだったりして。
 まあボクの予言を信頼出来ないのなら、無理にとは言わないんだけどさ。
 でも、そうだねぇ。この建物の中にそんな結界を生み出す様な物があるのなら――――』
>『――――デミウルゴスと戦うのに役立つかもね』

あちら側のテイルの最後の言葉とその言葉に考えたアヤソフィアが学園の探索を提案する。
確かに役立つ物であればありがたいが、こいつ等に乗せられている気がしなくもない。
だがどの道この地から出れば永久闘争存在化するのは明白なので選択肢は限られていた。

「今はそれが今後響く重要な事だろうな、判断として間違ってない決まりだ」

アヤソフィアや火野達の後ろ側に連ねる形で校内の生存者を探しながら
近くに居るこの世界のテイルに尋ねてみる。

「お前はあの時話したテイルだな?お前には聞きたいことがある
この世界ではお前達以外の仲間はいるのか?それと
お前がしたあの時質問に俺が答えた事にどう思った?それを聞かせて欲し――」

『そうだけど、そうだねじゃあまず最初の質問を他の仲間たちは―』



>「……誰か――!!誰かいませんか!?俺達は、敵じゃありませんから
。いたら出てきて下さい!!」

会話の答えを聞こうとした矢先
生存者を探すために叫んでいる火野の姿が目に入った時
その背後に蠢く影のような何かを見つけるが、良い存在には到底見えず
それが襲い掛かるように見えた。

「ッ!!させん、無双剣!」

魔力で作られた十字の剣がそれに突き刺し指を鳴らすとそれのみを爆破した。

「気をつけろ!何か居るぞ!」

無命剣を召喚し、周囲に関して警戒し始める。


それは何か
27 :アヤソフィア ◆666/MyrH6U [sage]:2011/10/13(木) 20:30:47.79 0
意気揚々と校舎に入ろうとした黄金の巨蟹は口惜しげに叫ぶ。

『むう、さすがにこの巨体では人間用の建物の中には入れん!
 私は此処に留まるしかあるまいな……別に結界とやらを恐れているわけではないぞ!』

イョーベールが外に留まった事に依って、オーシア魔法学校内部に入るのは七名。
テイル、テイルに酷似する妖精、ビャク、火野、アンク、アヤソフィア、バラグ、宝珠化したソフィア。




>>24-26
アヤソフィアは同行する仲間と共に、夕暮れの陽で暗い橙色に染まった廊下を歩く。
人の姿を探し求めるも、幾つかの小部屋には誰の姿も無い。
採光の窓から漏れる光は徐々に弱く、頼りなくなっていき、夜に差し掛かると感じた瞬間、廊下が突然蒼白い光で満たされた。
校舎内の各所に備え付けられた魔術の角灯が一斉に点灯して、魔法学校の内部に夜が到来する事を拒んだのだ。

「……校内の機能は生きているようですね。
 あちらに講堂が在るようですので、向かってみましょう」

大勢の生徒たちが授業を聴講する大講堂へ入ると、火野は人を求めて叫ぶ……敵ではないから出て来て下さいと。
果たして、その火野の叫びに応えて現れたものだろうか。
幾つもの長椅子の置かれた部屋を歩く火野の背後には、朧な緑の影が生じていた。
灯りを厭い、薄闇を求める幽鬼が、彼の落とす影を住みかとして定めたかのように。

「ヒノ、背後に何者かがいますッ!」

アヤソフィアの言葉と同時に、ビャクが魔力の剣を緑の靄に向かって放ち、標的付近で爆発させた。
舞い散る粉塵と共に、火野の背後に揺らめく緑の靄は霧散したかのように見える。
アヤソフィアも、今の一撃で謎の影は倒れたのだろうか……と考えた。
あり得ない事ではないが楽観はできない。常に最悪の自体を考えながら慎重に行動しなければ。

「今の靄のようなものは……敵だったのでしょうか?
 生存者が此方を警戒して、魔術の探査を行っていた可能性も無いとも言い切れませんが。
 いずれにしても、ここは完全な無人では無いようです。
 あれが何者かは分かりませんが、此方に警戒される状況が発生した以上、次は何らかのアクションを取ってくるでしょう」

アヤソフィアが言葉を切ると、空々しい仮初の静寂が講堂を満たす。
この空間は最初から無人であると言わんばかりに……。
その静寂を破って、アヤソフィアは二人のテイルに向かって訊く。

「そう言えば、オーシア魔法学校は勇者の支援組織と聞きました。
 フェアリー=テイルは、内部構造に付いて思い当たる点などはありませんか?
 重要な物を安置する場所や、大勢の人間が隠れらそうな場所などに」
28 :テイル◇6nXELe5RK6[sage]:2011/10/13(木) 20:42:09.41 0
アヤソフィアが魔法学校の構造に付いて訊くと、テイル……に似た妖精が小首を傾げる仕草をする。
あまりに相似した二人の妖精は、少し目を離してしまうと、どちらが元のテイルなのか外見での判別はできない。
その一方の妖精は、自分と全く同じ姿をした妖精を見て口を開いた。

「うーんボクは知らないなー。もう一人のボクに聞いてみてよ」

肩を竦める動作をした妖精はビャクへと近寄り、先程自らに問われた事に応える。

「勇者とは何か? あの時のビャクさんの答えを簡単に表せば……英雄と殺戮者は表裏一体って所かな?
 うん、そうだね……英雄としての偶像なら、まずは自分以外の誰かの承認を受けなくちゃいけない。
 光の勇者なら、光の眷属たちのね。
 ガイアには自称もいるけど、魔物と戦ってれば、一応街の人たちもそれなりに勇者として認めてくれる。
 そして闇の眷属や魔物にとっては……まあ殺戮者って方の印象かな。
 ビャクさんの考えは、役割としての勇者を的確に表していると思うよ。
 でも、ボクは勇者って存在に対して、もっと抽象的な考えを持ってるんだ」

妖精が視線を向ける先は、無人の大講堂。
まるで無数の椅子に見えざる観客が座っているかのように。

「そうだね……ボクが承認する勇者とは、物語の最後のページを閉じられた者たちさ。
 最後の選択を誤らずに物語を終えた者、それが勇者。だから別に戦士である必要は無い。
 だけど、竜の王に“世界の半分をやろう”なんて誘われて、エンディングに至れなかった者は勇者失格だ。
 きっと彼が、ううん、彼ら偽勇者がやり直すにはリセットしなきゃいけないだろうね……世界を」

声音には何処となく冷たい響き。
言い終えると、妖精はクルリと踵を返して廊下へと出てゆく。

「さぁて……此処は置いといて、ボクはあっちの方を探してみようかなー?」
29 :テイル[sage]:2011/10/14(金) 00:38:08.80 0
>22-23
アヤさんが、嘘感知の魔術をかけ、彼らが概ね真実を言っている事を証明してくれた。

>『これで、子供にどうやって赤ちゃんが生まれるのかを聞かれても困らないな。
 もちろんキャベツ畑から生まれる!そうだろう?ハッハッハ!』

「さっすがイョーベールさん! よく分かってるじゃ~ん!」

イョーベールさんと一緒になって笑う。世界が違っても、向こうのイョーベールさんにそっくりだ。

>『……敵が来るよ。ううん、攻撃が来るって言った方がいいかな?』

もう一人のボクが発した言葉に、一瞬緩んだ場の空気が再び張り詰める。
その提案により、ボク達は魔法学校の校舎に入っていく。

>24
>「……誰か――!!誰かいませんか!?俺達は、敵じゃありませんから
。いたら出てきて下さい!!」

ヒノさんが呼びかけると、影のような存在が一瞬姿を見せた。
ビャクさんがいち早く反応し、それを攻撃する。

「生存者の人だったら出てきて! 敵じゃないからさ」

当然反応は無く、静寂が辺りを支配する。

>「そう言えば、オーシア魔法学校は勇者の支援組織と聞きました。
 フェアリー=テイルは、内部構造に付いて思い当たる点などはありませんか?
 重要な物を安置する場所や、大勢の人間が隠れらそうな場所などに」

オーシア格闘大会の時の記憶を呼び覚まして考える。

「魔道具技術室……。
色んな魔導装置があって、バラグさんの魔力補充も出来たはずだ」

>28
もう一人のボクが、勇者とは何かを語る。物語の最後のページを閉じられた者。
勇者の導き手であるボク達妖精が、物語の語り手となるための条件。
それは、勇者達が最後の選択を誤らずに物語を終える事だ。
不意に、背筋が凍るような恐怖を覚える。
世界を滅ぼそうとする者達は皆、成り損ないの元勇者と言えるのではないだろうか。
ボク達も最後の選択を誤れば、そうなってしまうのかもしれない。

>「さぁて……此処は置いといて、ボクはあっちの方を探してみようかなー?」

「おっと、こんな時に一人になるのは死亡フラグだ」

もう一人のボクを追いかけて廊下に出る。
30 :!ninjn[sage]:2011/10/14(金) 01:51:41.66 O
宇宙力猛吹雪ユニバースフォースブリザード。
31 :火野映司 ◆/m/3H6N1VU [sage]:2011/10/14(金) 17:57:26.59 0
>>26
>「気をつけろ!何か居るぞ!」

「え……!?」

ビャクの声に動揺し、思わず周囲を見渡す。
しかし映司の視界には何も映らない。

>「ヒノ、背後に何者かがいますッ!」

その最中、アンクにはビャクの放った剣が影に当たったかのように見えた。
しかしそれは霧のように一瞬で消え去り跡形も無くなってしまう。

「……やはりな。やはり”あいつ”か……コソコソと隠れる卑怯者の
ヤツらしい。」

アンクは口元を歪めて校舎を見渡す。
確実にまだいるであろうその影の主を見つける為に。
そのアンクの耳元で声が聞こえる。

「……アンク、いつまでそんな連中に手を貸している?
俺達の目的を思い出せ……力を取り戻し、世界を喰らう。
そう、この何も無くなってしまった世界のようにな……!!」

アンクは思わず1人廊下に駆け出し、声の主を探る。
「やはりなぁ……!!貴様がこの世界を潰したのか?
チッ、隠れてないで出て来い……ウヴァ!!」

叫んだアンクの足元に割れたコインが転がってくる。
それは黒煙を上げると同時に全身を包帯でくるまれたような
異形の怪物へ変化する。それは欲望の半身、クズヤミーと呼ばれる怪物である。

「……チッ!!この雑魚が!!……は、離せぇええ!!
おい、俺のメダルを返せ!!返せぇええええ!!」

次々に出現するクズヤミーに飲み込まれるようにアンクは
その身を封じられようとしていた。
その背後では緑色のジャケットを着た長身の男が
アンクから奪ったメダルを手にほくそ笑んでいた。

「フッ、情けないぞアンク。これでオーズには変身出来ない、
この世界で野垂れ死ぬがいい。」

【アンク、クズヤミーによりメダルを奪われ体を封じられる】

32 : 忍法帖【Lv=2,xxxP】 [sage]:2011/10/14(金) 19:45:53.74 O
エターナルフォースフレイム。
33 :アヤソフィア ◆666/MyrH6U [sage]:2011/10/15(土) 05:54:08.52 0
>>29-31
重要な物が安置されていそうな部屋は何所かとの質問に、テイルは魔道具技術室と応えた。
では、まずそこに向かいましょうと言いかけて、アヤソフィアが違和感に気付く。
広めの講堂内を見回すと、一人姿が欠けている……アンクの姿が。
二人のテイルが室内から出る前、すでに何者かに囁きを受けたアンクは講堂から廊下へと出ていたのだ。

「また……ヒノ、アンクの個人行動癖は治らないのですか。
 彼は未知の場所での単独行動が生存確率を著しく下げる事を、一度良く思い知るべきです」

アヤソフィアが部屋の出入口を目で追った時、其処からは激昂とも呼ぶべきアンクの叫び声が流れてくる。
誰かが外にいるのだろう……彼に声を上げさせた何者か。おそらくは先刻の緑の影の正体が。

「……急ぎましょう。今回は彼も宝探しに興じているわけではないようです」

アヤソフィアが外に出ると、待ち受けていたのは全身に白い布を巻いたような者たち。
特定の地域では死者に包帯を巻いて保存する慣習が存在する。
彼らの風体は、まるでそれらの屍たちが棺の中から蘇ったかのようだった。
しかし包帯の覆われていない部分を見れば黒く、さらには顔の中心にも単眼にも似た漆黒の大きな円。
アンクは……その人とも魔物とも判別出来ない者たちに、腕を、足を、胴を掴まれて、身動きを封じられていた。

「貴方がたは何者ですか?オーシアの関係者なら我々は敵ではありません。アンクを解放してください」

アヤソフィアが屑ヤミー達の背後に陣取る男へアンクの解放を要求するが、その応えは攻撃と言う形で返って来た。
屑ヤミーの一匹が、アヤソフィアに向かって大振りに腕を振るう。
この正体不明の怪人達は頭が良くないようで、攻撃を試みる際の動きを冷静に見極めれば、楽に攻撃を躱す事が出来た。
上体を捻じって相手の攻撃を躱すと、アヤソフィアは短剣を抜いて屑ヤミーの左肩に渾身の突きを入れる。
刃は水面から跳ねる小魚の如く。刃を受けた相手は壁へと叩きつけられた。

「……敵対的行動と認識しました。ならば実力行使で彼を解放して貰いますが宜しいですか?」

倒れた相手を視界に収めて警戒したまま、緑のジャケットの男に切っ先を向ける。
謎の人物はガイア風の格好では無い。異世界人なのだろうか。
アヤソフィアは浮かびかけた疑問を振り払う。
相手の正体を測るより、まずはアンクを戒めから解放するのが先決と思えた。
接敵しての交戦はビャク、ヒノに任せて、後方での援護に努めるべきと数歩後退する。
剣を交えて屑ヤミーの戦闘力を測った結果、彼らなら容易に制圧するだろうとの感触を得ていたから。

「えっ……あ……ッ!」

彼女には理論で全てを計ろうとする傾向があり、計算外の事態には弱かった。
だから……壁に叩きつけられて倒れた屑ヤミーが、咄嗟に手近な魔術灯(ランプ)を投げつけるのを避けられない。
無様な転倒。辛うじて頭部を守れたものの背を強かに打った。
再び緑のジャケットの男に視線を向けると、彼は人では無い姿へと変じていた。
鍬形虫の鋏を思わせる一対の角、腕には鎌、緑の複眼と胸部。印象は何処か変身した火野の姿にも似ている。

アンクにウヴァと呼ばれた魔物が激しいスパーク音を立て、頭部に太い光の束を生んだ。
次の瞬間、そこから放たれた光条が無数に枝分かれして、廊下全体を駆け巡る。
遮蔽物の無い廊下で、幅いっぱいの空間に撃たれた雷撃は回避困難。
今から防御魔術を詠唱しても間に合わないだろう。

「……これを最初から狙っていたなら、たいしたものですッ!」

アヤソフィアは目を強く閉じて、迫りくる電の嵐に耐える準備をする。
34 :ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2011/10/17(月) 20:54:05.71 0
かなり広い上に教室やら様々な部屋が多いので探索に時間がかかると思った矢先
アヤソフィアの目星を付ける重要な質問によりこの世界側のテイルは知らないと答え
こちら側のテイルは魔道具技術室という場所があることを思い出したようだ。

>「勇者とは何か? あの時のビャクさんの答えを簡単に表せば……英雄と殺戮者は表裏一体って所かな?
 うん、そうだね……英雄としての偶像なら、まずは自分以外の誰かの承認を受けなくちゃいけない。
 ビャクさんの考えは、役割としての勇者を的確に表していると思うよ。
 でも、ボクは勇者って存在に対して、もっと抽象的な考えを持ってるんだ」

自身が述べた答えを的確と言ってのけたこの世界のテイルは更に自分は抽象的な認識だと答える
しかし、ここでも言いようの無い疑念が浮かぶこの感覚は説明のしようが無いが
まったく異なる世界軸の者は此処まで変わるのは不思議ではないのだが

>「そうだね……ボクが承認する勇者とは、物語の最後のページを閉じられた者たちさ。
 最後の選択を誤らずに物語を終えた者、それが勇者。だから別に戦士である必要は無い。
 きっと彼が、ううん、彼ら偽勇者がやり直すにはリセットしなきゃいけないだろうね……世界を」

その答えを聞いて思わず自虐の意味を込めた笑みを浮かべた
己自身が至った判断も優先順位いや自分の中で勝る物が上で違えば必ず辿っていた道であるからだ
それを否定する事は出来なかった。なぜならば自身も既に幾つもの世界を滅ぼしている者だから
しかし、この言葉は世界を滅ぼす者だけに向けられているのか?他にも向けられる存在にも言っているようにも聞こえなくも無いが

「ふふ…確かにその通りかもしれんなあながち否定が出来んな
完璧な強者なんて者は存在しない―全てを貫く事ができる者なんて本当に一握りだがな」

結末に至るには様々な事がありそれを綺麗にまとめようなんてのがそれこそだれかに仕組まれたことだ
愛する人と世界を天秤に賭けた時、それこそ綺麗な結末ではなかったが。

>「さぁて……此処は置いといて、ボクはあっちの方を探してみようかなー?」
>「おっと、こんな時に一人になるのは死亡フラグだ」

二人のテイルの内一人が廊下に探索に出て、単独行動を危ぶんだこちら側のテイルが追いかける。
さすがにこのまま二人を放っておく事も出来ない。

「待て、一人で追跡するにも危ないぞ!」

追いかけたこちら側のテイルの方を追い、その背を追いかける
廊下に出た時追ったはずのこの世界のテイルが消えてしまった。
それも忽然と

「居なくなった…?こんな短時間にか!?」

当たりを見回してもすぐに音もなく消える場所などありもしない
神隠しにあったように消えてしまった。

「どう言う事だ…?何か居るのか?」

暫し呆然としそうになったが、警戒するように無命剣を構えて
周囲を確認するように見通していた。
35 :テイル[sage]:2011/10/19(水) 00:20:42.77 0
>34
廊下に出るも、こちらの世界のボクの姿は見当たらない。
ややこしいので、こちらの世界のボクを以後テイルBと呼ぶ事にする。

「どこー? ふざけて隠れんぼなんかしてる場合じゃないんだから」

>「居なくなった…?こんな短時間にか!?」

しかし、テイルBの捜索は、突如聞こえてきた叫び声によって後回しになる事になった。

>31
>「……チッ!!この雑魚が!!……は、離せぇええ!!
おい、俺のメダルを返せ!!返せぇええええ!!」

「この声は……アンクさん!?」

>33
声が聞こえた場所に駆けつけた時、先に駆けつけていたアヤさんがすでに戦いを繰り広げていた。
アンクさんは、ミイラ男のような者達に全身を拘束されている。
それを助けに行こうとしたアヤさんが、ランプを投げつけられて転倒する。

「アヤさん!? 今行くよ!」

ボクが駆け出した一瞬後。
ミイラ男達のボスのような長身の男が、異形の姿へと変身し廊下いっぱいの幅の雷撃を放つ。

「頼んだよ、ソフィア――!」

アヤさんの所まで走り、エレメントセプターの魔法防御結界を展開する。
36 :火野映司 ◆/m/3H6N1VU [sage]:2011/10/19(水) 02:01:41.04 0
「アヤさん!?アンク……それにお前は!!」

廊下に出た映司は、突然訪れた脅威に身構える余裕すら無かった。
アヤソフィヤの目前に、異形に変化した長身の男の放つ雷撃が
降りかからんと迫る。
その刹那、ソフィヤの防御結界がその攻撃を間一髪、さえぎった。

「お前は……グリードの、ウヴァ……!!そんな、封印した筈なのに。」

驚きを禁じえない映司の言葉に、ウヴァがその禍々しい右腕を突き出し
高らかに叫ぶ。

「俺は、蘇ったのだ。今度は、封印されるようなヤワな存在ではなく
世界すら喰らう存在として!!アンクからメダルは貰った……
最早貴様らなど脅威でもないわ!!」

ウヴァの放つ雷撃が映司の足元をかすめる。
倒れこんだアンクを守るように立つと、その手でウヴァの胴体を押し上げて
タックルを喰らわせるようにぶち当たる。

「俺やアンクを恨むのは勝手だけど……みんなが住む世界だけは!!
うぉおおおおお!!」

必死のタックルを放つ映司だが、ウヴァは身じろぎもせず
せせら笑う。
そしてその禍々しい両腕の鎌で映司の体を切り裂いた。
赤い血と、銀色のメダルが映司の体から飛び散る。
それを見たアンクは、映司が徐々にグリードになっているという
事実を改めて知るのだった。

「がっ……がはっ……ア…アンク」

それでも尚、アンクを守ろうとする映司。
しかしウヴァはその身を踏みつけ、前進する。
その全身に強力な雷撃を溜め込み周囲のクズヤミーを弾丸のように
ソフィヤの結界へ飛び込ませていく。

「……異世界人ども。そんな結界など、ぶち壊してくれるわ!!
やれ!!」

【ウヴァ、結界を突破して雷撃を放つべく突撃。攻撃を受け映司重傷】
37 :アヤソフィア ◆666/MyrH6U [sage]:2011/10/20(木) 07:51:45.77 0
12世紀から13世紀に掛けて、西欧の錬金術師達は人工生命を創造しようと、様々な生物の属性を凝縮させたメダルを作り上げた。
錬金の秘術が生み出したメダルは、意図して不完全な状態に置かれた事で、完全な状態を渇望するようになる。
やがて飢餓的に高まった欲望が自律した意志へと進化を始め、メダルを核とした肉体を構成するに至った。
誕生した生命体は強い欲望を持っていたが、それが満たされたとしても精神の充足を感じない。
従って際限なく何かを欲し続ける。己に足りない物を満たそうと人間や世界を喰らう。
欲望から生まれ、他者の欲望を糧とするが故に、彼らには相応の名前が付けられた……グリード≪強欲≫と。

この世界に現れたウヴァなる怪人は、昆虫の属性を織り込んだメダルを核とするグリード。
虫の外骨格に似た強靭な肉体を備え、腕の鎌と頭部から作り出す雷を武器とする。
過去に火野に封印されたらしきウヴァは、何らかの要因で蘇り、彼の持つメダルを狙って異世界まで追って来たのだろう。

>>34-36
ウヴァの攻撃範囲内には、一瞬にして枝状の紫電が張り巡らされた。
迸る電光は雷神が腕を一振りしたかの如く。それがアヤソフィアの手前の空間で弾けて霧散する。
電撃を阻んだのは虹色に揺らめく半透明の壁。駆けつけたテイルが咄嗟に張った魔術障壁であった。
目を開いたアヤソフィアが己の身を確認すると無傷であり、髪の毛一本すら失ってはいない。

「この障壁は……フェアリー=テイルですか。感謝します。
 フェアリー=テイルは、引き続き魔術障壁の展開をお願いします!
 ビャクは敵の迎撃を、ヒノはアンクの救助を!」

アヤソフィアが振り返って言うと、テイルの背後では火野が驚愕の色を表情に浮かべていた。
続いて口から発された、お前はグリードのウヴァ。そんな……封印した筈なのに。との二つの言葉からアヤソフィアも理解する。
講堂内で火野の背後に現れた緑の影こそが、ウヴァと呼ばれた者であり、虫の魔人が明確に火野映司を狙っていた事も。
火野は捕らわれのアンクを見ると、即座に張られた結界を越えて彼の元へと駆けていた。
受ければ無事で済むとは思えない閃雷の鞭を紙一重で躱しながら。

「……ヒノ!? 生身では危険です!」

アヤソフィアの制止にも火野は止まらない。
アンクがメダルを奪われた事で変身できなくなった火野は、己の体を武器として体当たりするという信じ難い行動に出た。
当然の如く、常人の力では錬金術が生みだした超生命に抗するべくもない。
ウヴァの鎌が宙に躍ると、火野は傷痕から銀の破片と赤い飛沫を散らせて地に倒れ伏す。
アンクの持っていたメダルを奪い、火野を打ち倒し、ウヴァの標的は此方に移ったようだった。
防御結界を弱めるべく、無数の屑ヤミーに生きた徹甲弾となる事を命じ、ウヴァ自身は再び電撃を生成する。

『喰らえ!虫けらどもが!』

荷電した空間が耳障りな音を鳴らす。
直後、頭部を眩く輝かせて昆虫のグリードがプラズマの砲撃を放った。
結界で防がれた最初の一撃に倍する雷の奔流が、結界を貫いて此方側にまで幾本もの枝を伸ばす。

「ぅ……くっ……!」

アヤソフィアが表情を歪めて苦痛の声を上げる。
結界は雷を完全に防ぐには至らないまでも、威力を減じさせ、即死の破壊力には届かせないようだった。
しかし屑ヤミーを用いて弱められれば結界の消滅も時間の問題。その前にウヴァの電撃を止めなければならないだろう。
38 :アヤソフィア ◆666/MyrH6U [sage]:2011/10/20(木) 07:56:01.16 0
結界手前に近づいて来るビャクとテイルに向かって、アヤソフィアは敵に視線を向けたまま手短に戦況を説明する。

「あの怪物が火野やアンクを狙っていたようです。推定の名称はウヴァ。見ての通り雷の力を自在に操ります。
 ヒノとアンクは両名とも結界の向こう側で負傷。ヒノには……早急な救護が必要でしょう」

血溜まりに倒れる火野の姿を見てアヤソフィアには焦りが生じていた。
彼を失ってしまうのではないかとの……。
火野が言っていた、自分に出来る無理をすれば良い、との言葉には自己の死も内包されていたのだろうか。
今にも恐怖や悲嘆に転じて混乱しようとする感情を抑えて、アヤソフィアは敵の攻撃を観察した結果を小声で伝える。

「魔物の雷は間断無く放たれる訳ではなく、僅かに止む瞬間が有ります。
 どうやら雷を溜めてから放つという行程には、一呼吸程度の時間を擁するのでしょう。
 雷が途絶えた瞬間に全員で一時に攻撃すれば、かなりのダメージを与えられると思われます」

何をするのか細かく打ち合わせるだけの余裕は無い。
各自が最適の判断で行動するだろうと判断して、アヤソフィアは敵を攻撃すべきタイミングだけを伝えた。

『ふん……内緒話は終わったか? 何をしようと貴様らなどコアメダルの力を得た俺の前には無力だがな!』

高圧的に言い放ったウヴァが、頭部に纏わせた雷を発射する。
浴びれば一瞬で火柱と化すような雷柱が、七色に輝く魔術障壁に叩きつけられた。
それが結界の最後……そして此方側が攻撃に移る瞬間。

「我が記憶の海より、欺きの色と形を掬い上げる。
 無限なる円環を満たす不可視の力よ、偽りの姿を世界に映し出せ――illusion」

広範囲の攻撃魔術や投擲攻撃を使用すれば、魔物が回避した際に背後の火野達まで傷つけてしまうだろう。
従って、アヤソフィアは敵の目的につけ込む事にした。
彼女が魔術で作り出したのは、今までに見た事が有る十数枚のセルメダルの幻影。
相手の狙いがこれであるならば、瞬間的な判断を鈍らせる可能性が有ると踏んだのだ

「貴方が欲しいのはこれですか? ならば受け取りなさい!」

アヤソフィアは、触れれば消える幻影のメダルをウヴァの足元に投げつける。
それを無視できずに思わず手を伸ばしたウヴァは、掴んだ瞬間に消えた事でセルメダルが幻影である事に気付く。
攻撃を掛けるのに充分なだけの隙を晒して。
39 :ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2011/10/21(金) 02:50:39.22 0
結局、この世界のテイルは忽然と姿を消したときアンクの叫び声が聞こえた事に対し
テイルと共に向かうとそこにはクワガタのような火野が変身するよう物に近いベルトを持った異形の存在が
その周囲にはミイラ男のような者達が居り、アンクを拘束していた。
アヤソフィアにクワガタの怪人による電撃を間一髪テイルの魔法障壁により防がれるが

>「お前は……グリードの、ウヴァ……!!そんな、封印した筈なのに。」

「顔見知りか?味方だったというわけでもなさそうだが」

火野は奴の事について知っているようだ恐らくアンクも知っているだろう。

>「俺は、蘇ったのだ。今度は、封印されるようなヤワな存在ではなく
世界すら喰らう存在として!!アンクからメダルは貰った……
最早貴様らなど脅威でもないわ!!」
「俺やアンクを恨むのは勝手だけど……みんなが住む世界だけは!!
うぉおおおおお!!」

そう言った後、オーズの力も使わないままウヴァに体当たりを仕掛けた瞬間
ウヴァの攻撃により、身体から赤い血と本来の人間ならば決して出るはずの無い銀色のメダルが同時に流出する
その光景を見た時、この男は人を半ば辞めてでも誰かを救い続けてきたことを身を持って知ることとなり
自分の胸の中に激情が湧き上がる。
そんな時、二撃目の電撃が一回目と違い貫通し威力を弱めているもののアヤソフィアにダメージを与えてしまう。

>「あの怪物が火野やアンクを狙っていたようです。推定の名称はウヴァ。見ての通り雷の力を自在に操ります。
 ヒノとアンクは両名とも結界の向こう側で負傷。ヒノには……早急な救護が必要でしょう」

 どうやら雷を溜めてから放つという行程には、一呼吸程度の時間を擁するのでしょう。
 雷が途絶えた瞬間に全員で一時に攻撃すれば、かなりのダメージを与えられると思われます」

現状と彼女の相手の攻撃に対する分析を聞いて攻撃の隙を突いて相手を倒す一撃を加えれば良いようだ
彼女はその隙を作るべく、幻影魔術を唱える。
そして同時に一瞬で無命剣から杖の状態に変えてからその先を向けて
同時に詠唱する。常人が使えば魔族と呼ばれる最悪の存在の者を生み出す可能性がある
この世界ではないどこか別の発展しながらもとても強力な魔法を

「我・法を破り・理を超え・破軍の力・ここに得んとする者なり・・・爆炎よ・猛炎よ・荒ぶる火炎よ・焼却し・滅殺し・駆逐せよ・我の戦意を以って
・敵に等しく滅びを与えよ・・・我求めるは完璧なる殲滅!」

>「貴方が欲しいのはこれですか? ならば受け取りなさい!」

幻影を投げつけた瞬間、狙点周辺の気流も制御する事で制御力を上げ、より遠くに、威力を集中して、精密に攻撃できる技を
アンクに極力傷つけぬようにヤミー達を巻き込むように

「<マキシ・ブラスト>イグジストッ!」

ウヴァやヤミー達に向かうように
杖の先から放たれる熱と衝撃が触れるもの全てを完膚なきまでに破壊し、目標領域を徹底的に殲滅する一撃が放たれる。
40 :ウヴァ(NPC ◆/m/3H6N1VU [sage]:2011/10/22(土) 01:25:14.18 0
>「我が記憶の海より、欺きの色と形を掬い上げる。
 無限なる円環を満たす不可視の力よ、偽りの姿を世界に映し出せ――illusion」

「フン!!何をしようが無駄だ!!」
ウヴァはアヤソフィヤの唱える言葉を鼻で笑うと
接近戦にて確実に倒すべく更に前進する。

>「貴方が欲しいのはこれですか? ならば受け取りなさい!」
>アヤソフィアは、触れれば消える幻影のメダルをウヴァの足元に投げつける。

その刹那、ウヴァの目の前に大量のセルメダルの幻影が出現する。
欲望の権化であり、単純な気質を持つウヴァにとってはそれは気を削がれるのに
充分過ぎるものだった。

「こいつは……!!俺の、俺のものだぁあ!!」

セルメダルを手に掴もうとした瞬間、予測し得なかった
声と衝撃がウヴァの目前に現れた。

>「<マキシ・ブラスト>イグジストッ!」

周囲のクズヤミーを掻き消しながら、その鮮烈な一撃は
ウヴァの全身にも直撃する。
「う、うがぁああああああ!!だ、誰だキサマァ!!」
大量のセルメダルを撒き散らしながら、 後退しふらつく
ウヴァの隙を倒れこんでいたアンクは見逃さなかった。
すぐさま、ウヴァの懐へ飛び込むとその胸部から数枚のメダルを抜き取る。

「や、やめろ……そ、それを返せ……」

アンクの手にあるのは、緑色のメダルが3枚。
ウヴァの体と、力を形成する最も重要な「コアメダル」に違いなかった。

「映司、お前のお陰だな。礼くらいは言っておいてやってもいい。」

地に伏せる映司を横目に、アンクは逃げようとするウヴァを睨みつける。

『逃げるだなんてさぁ、赦さないよ。ウヴァ。』

這いずるウヴァの背中に、数枚のコアメダルが突き刺さる。
謎の影が消え去ると同時にウヴァの体が小刻みに震えながら
校舎の壁を突き破る。

「よせ……暴走はいやだ。やめろ、やめろぉおおおおおお!!」
41 :ウヴァ(NPC ◆/m/3H6N1VU [sage]:2011/10/22(土) 01:36:34.10 0
「ガァァアアアアア!!」

校舎の上空に浮かぶのは大量のコアメダルを飲み込み
暴走状態となったウヴァが巨大な触手で地面を破壊しながら
突き進んでくる。

「チッ……暴走したか。」

――「アンク、そのメダル。使うしかないでしょ。」

舌打ちをし、焦るアンクの横で地に伏せていたはずの
映司が立ち上がる。
既に血の気は無く、手からは数枚のセルメダルがこぼれ落ちていた。
そして、アンクの手元にある緑のコア3枚を指差す。

「お前……その体でこいつを使うつもりか?
どうなっても知らないぞ。」

意外にも映司を気遣うようなアンクの言葉に映司は
少しだけ微笑み、オーズのベルトを巻く。
アンクは渋々ながらも、3枚のコアを投げつける。

「――変、身!!」 ―『クワガタ・カマキリ・バッタ!! ガータガタキリバ・ガタキリバ♪』

映司の全身を緑色のオーラドライブが包んでいく。
頭部にクワガタの力、胸にカマキリの力、そして脚部にバッタの力を
宿した昆虫のコンボ『ガタキリバコンボ』へ変身したのだった。

「皆さん……俺が奴を引き付けます!!その間に総攻撃を!!」

そう言うと、オーズの姿が幻影の如く数体に分離し
暴走ウヴァへと突撃していく。

【ウヴァ暴走→重症の映司ガタキリバに変身し突撃】
42 :テイル[sage]:2011/10/22(土) 03:03:39.95 0
>36
>「お前は……グリードの、ウヴァ……!!そんな、封印した筈なのに。」

他の世界で封印された筈の、世界の脅威となる存在が、今ここに立ちはだかっているらしかった。
レヴィアタンの仕業か――それともデミウルゴスの差し金か?

>「俺やアンクを恨むのは勝手だけど……みんなが住む世界だけは!!
うぉおおおおお!!」

止める間もなく、ヒノさんは生身で突撃していった。
切り裂かれた傷口から、銀色のメダルが散る。
彼は、自分を犠牲にして戦うあまり、人間では無い物になりつつある。
完全な状態を渇望する魔物になりつつある――!
この世に、完全なもの以外認めない事ほど恐ろしい物はないのだ。

「もうやめて……ボクには分かる、キミは物語の最後のページを閉じるべき人だ。だから……」

こんなに頑張ったら駄目だ。
適度に適当な位じゃないと、息切れして物語の最後まで走れない。

>「……異世界人ども。そんな結界など、ぶち壊してくれるわ!!
やれ!!」
43 :テイル[sage]:2011/10/22(土) 03:04:48.82 0
>38-39
クズヤミー達が結界の力を弱めていく。

「結界が……!」

だが、結界が消えた瞬間、アヤさんが反撃のチャンスを作り出す。

>「貴方が欲しいのはこれですか? ならば受け取りなさい!」

唱えるは、全てを焼き尽くす火炎の魔法。
敵を一人残らず殲滅する灼熱の獄炎。

「ファイアストーム!」

>「<マキシ・ブラスト>イグジストッ!」

奇しくも、ビャクさんの渾身の一撃と同属性だった。
ウヴァは、ひとたまりもなく息も絶え絶えになって逃走を開始する――。

>40-41
勝利は確実かと思われた。だが。追いつめられたウヴァが暴走した!
ヒノさんが、重症の状態で、我が身を省みず変身する。

>「――変、身!!」 ―『クワガタ・カマキリ・バッタ!! ガータガタキリバ・ガタキリバ♪』

「ああもう! 頼むから怪我人は大人しくして!」

彼にはいくら言っても無駄だ。こうなったら早くウヴァを倒すしか選択肢はない。
エレメントセプターを構えて狙いを定める。

「完全になんかならなくたっていい、在りのままでいい――」

これは、ウヴァに対しての言葉と見せかけて、ヒノさんに対しての言葉。

「――プリズミックレイ!!」

虹色の魔法の光がウヴァに照射される。
これは、アンデッド化や洗脳された者達を本来の姿に戻す魔法だ。
ウヴァに対しては、彼を元のメダルに戻す力が作用するだろう。
44 :アヤソフィア ◆666/MyrH6U [sage]:2011/10/23(日) 07:16:26.82 0
>>39-43
ビャクとテイル、両者から放たれた魔力が赫灼たる紅蓮の檻を作り出す。
ウヴァを中心とした円柱状の空間は、今や地上に現出する焦熱地獄が如く。
灼熱の内なる者は、輝ける火焔の舌に全身を嘗められ、苦痛が生じる間も無く灰塵に帰した。
灼熱が生じる境目に居た者は、半身から火を噴いて転げ回り、絶叫を残しながら焼失した。
アヤソフィアは魔術の威力に、畏怖が入り混じった嘆賞を漏らす。

「なんと凄まじい……竜の炎すら上回るのではないでしょうか。
 ヒノやアンクに、余波が及んでいなければ良いのですが……」

ビャクが気流制御で攻撃範囲を限定していなければ、猛り狂う火精の輪舞は、火野達まで灰に変えたかも知れない。
そう思わせるに足るだけの痕跡も、床の上には残されていた。
真紅の魔炎が消え去ると、溶融した石材の一部は赤熱する溶岩と化していたのだ。
その沸々と音を立てる火色の石畳の上では、黒い影が宙を掻き毟っていた。
炎に呑まれ、緑の外骨格を黒く焦げ付かせながらも、強靭な生命力で辛うじて命を保った昆虫のグリードが。
苦悶するウヴァが声を上げて後ずさると、その隙を突いて走り寄ったアンクが掴めるだけのメダルを胸から抜く。
狂騒の向こう側に火野の姿を確認すると、アヤソフィアの心はようやく安堵を得た。

「どうやら巻き込まれてはいないようですね……。
 まずは火野の治療を優先し、衰弱している敵を捕獲して情報を得ましょう」

力の源を失ったウヴァは倒れ、這いずり、そのまま力尽きるかと思われた。
不意に現れた黒く凝る半透明の腕が、幾枚ものメダルを瀕死のグリードの背に突き刺し、暴走に導くまでは。
錬金の秘術から生まれた超生命であるが故に、暴走に依って元の金属としての性質が強められたのだろう。
手足を備える肉体を失ったウヴァは、無機質な鉄色の正八面体に変質してゆくと、要塞の如き姿を天空へ浮かべる。
自身の体から発する光の帯で、周囲の空間にセフィロトの樹の如き、円と線で構成された図形を描いて。
異様な物体の出現に、アンクが暴走したか、と吐き捨てていた。

「暴走とは……いったい何故……?」

訊き返す声は掻き消される。地響きの唸りにも似た破壊と崩落の轟音で。
オーシア魔法学校の二階から上は、ウヴァが姿を変えた瞬間に巨体に押し潰され、半壊してしまっていた。
砕け散った大量の瓦礫は、無数の銀色のメダルに変化し、ウヴァであった物体に吸い込まれて巨大化を加速させてゆく。
暴走するウヴァの能力をガイア世界の何かに喩えるなら、かつて天空都市エリュシオンに存在した破壊装置が近いだろう。
地上の命全てと引き換えに、魔を滅ぼすという魔導機械に。
今のウヴァも周囲の物質全てをセルメダルへと変化させて吸収し、世界を無に還すまで動き続けるのだから。
45 :アヤソフィア ◆666/MyrH6U [sage]:2011/10/23(日) 07:27:13.02 0
>>41
無差別破壊を行う巨大飛行物体を見た火野は、アンクが奪ったメダルで変身するとアヤソフィア達を向いて言った。

>「皆さん……俺が奴を引き付けます!!その間に総攻撃を!!」

「分かりました。ですがヒノ、一つだけ言わせてもらいます。
 一人が出来る無理には限界が有りますが、皆で力を合わせれば、その限界も広がります。
 私は貴方に死んで欲しくない……死ぬつもりの無理ならば許しません!」

アヤソフィアの言葉を背に、分身したオーズが跳躍する。
全身に包まれた装甲で、彼の表情は誰にも窺い知れない。
アヤソフィアは味方全員に向けて、物理的な防御力を向上させる魔術を唱え始めた。
相手の巨体を考えれば、気休め程度の効果しか上げないと知りながら。

「我、作りしは見えざる鋼の障壁。
 無限なる円環を満たす不可視の力よ、彼の者を守る盾となれ――――protection」

この戦いで自分は何が出来るのだろうか……先刻、ウヴァに浴びせられた炎の半分すらも作り出せない自分に。
防護魔術を仲間に掛け、後は歯噛みするだけなんて情けなさすぎる。
アヤソフィアの胸に自らへの憤りの炎が灯った瞬間、虹色に煌めく光線がテイルの杖から伸びて空に放射された。
テイルは暴走するウヴァに対して、何らかの魔術を唱えていたようだった。
しかし、巨大な多面体の周囲に描かれた光の図形が盾となって地上から投射された光線を阻み、蒼穹へと拡散する。
アヤソフィアの見た感じでは、宙に浮く物体に変化の兆候は見られない。

「フェアリー=テイル、今のは何を……?」

アヤソフィアの疑問には、宝珠の姿を取ってテイルの手中に収まる竜が答えた。
精神と肉体に生じた異常を元の状態に戻す、状態解除の魔法を使ったのだと。

「暴走状態を解除して元の状態に戻す……考え方は間違っていないと思います。
 ですが、周囲に光の力場を張り巡らせているアレに魔術を通すには、魔力の絶対量が足りなかったのでしょう。
 魔力の集積場を作る魔術か、内部に膨大な魔力を蓄えている物があれば……」

言い掛けて、アヤソフィアは先刻のテイルの言葉を思い出す。
魔道具技術室には色んな魔導装置があって、バラグさんの魔力補充も出来た筈、との言葉を。
この魔法学校の内部には、他者に魔力を供給できるような代物があるのだ。

「フェアリー=テイル、魔道具技術室に魔力を供給できる物があるのは確かですね?
 今の術は魔力を増幅して撃てば通るかもしれません。貴方も一緒に付いて来て下さいっ」

そうテイルに言葉を掛ける。有無を言わせずに引き摺って行かんばかりの剣幕で。
上方から長く伸びる触手に蹂躙され始める校舎を見て、アヤソフィアは切迫した表情でビャクに言葉を残す。
天井を失って瓦礫に満ちた廊下を駆け始めながら。

「ビャク、しばらく火野をお願いしますっ。
 無論、破壊が可能なら私たちに遠慮する事なく、あの物体を破壊してしまっても構いません!」

【>>テイル 共に来るよう促し、魔道具技術室に向かって疾駆】
46 :テイル[sage]:2011/10/25(火) 00:08:29.11 0
>44-45
「デミウルゴス……お前の思うようにはさせない!」

周囲をセルメダルと化しながら吸収していくウヴァ。
さながら、世界を喰らう無の化身。
暴走ウヴァは、ボクが放った究極の純化の魔法を、いとも容易く阻んだ。
奴が纏う光の図形が、強力な魔法結界になっているようだ。

「くそっ、効かない……どうすれば!?」

重傷且つ存在までも不安定になっているヒノさんや
同じく力を発揮しすぎると危ないビャクさんに頼るしかないのか?
そう思った時、アヤさんが、名案を出した。

>「フェアリー=テイル、魔道具技術室に魔力を供給できる物があるのは確かですね?
 今の術は魔力を増幅して撃てば通るかもしれません。貴方も一緒に付いて来て下さいっ」

今はそれに賭けるしかない以上、そうする以外の選択肢はない。

「お願い、少しの間だから持ちこたえて!」

アヤさんと一緒に、魔道具技術室に向かって駆け出す。

校舎の中央部に位置する、魔道具技術室に到着する。
校舎自体が巨大な五芒星結界になっていて、ここはその中心に位置すると聞いた事がある。
部屋の真ん中に、魔法陣のような装置がある。これが魔力増幅装置だろうか。
雑然と各種マジックアイテムが置かれているので、アヤさんにも役に立つものがあるかもしれない。

『しかし奴の防御結界は並大抵の魔力では突き破れぬ……
テイルが最大限まで魔力を蓄えたとしても足りるかどうか』

『いいから早く乗りなよ』

ソフィアがぼやいていると、不意に、さっき消えたはずのテイルBが現れた。
しかも7頭身の戦闘形態になっていて、すでにかなりの魔力を蓄えているように見える。

「今までどこに!?」

『こんな事もあろうかと”向こう”に行って魔力を蓄えてきた』

元の世界にいた時に見えたような気がした妖精はやっぱり彼だったのか?
そんな事を思いながら、魔法陣のような装置に乗る。

「君は世界を渡る手段を持っている。そうでしょ?」

魔力充填完了して、装置から降りながら問う。
テイルBはそれには答えず、代わりに念を押した。

『行くよ、チャンスは1回きりだ。同時に当てなきゃ突破できない!』

「大丈夫だよ、ボクはキミだもの」

その言葉通り、魔力の充填によってボクも戦闘形態になったから、やっぱり瓜二つ。
アヤさんとテイルBと共に、ウヴァと戦っているヒノさんやビャクさんの元へ向かう。

「今行くよ、みんな無事でいて――」
47 :半永久闘争化ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2011/10/26(水) 02:22:47.07 0
テイルの放つファイヤーストームとの相乗効果を含め自分達に立ちはだかる
敵対者を焼き払う紅蓮の灼熱地獄により火野やアンクを除き全てを焼き払ったに見えたが
そんな業火の中を?い潜り這い蹲る虫の如く辛うじて生き延びた者がいた。

>「う、うがぁああああああ!!だ、誰だキサマァ!!」

「不運だな、そのまま焼けていればこれ以上苦しまずに済んだ物を
楽に死ねないというのも考え物だな」

醜くもそんな状態になっても逃げようとするウヴァを憐れみながらも
アンクにコアメダルを引き抜かれた時に、動きが這い蹲ったまま停止した。
戦闘が無事終わり杖の切っ先を地面に置こうとしたとき、突如現れた黒い腕により
事態は一変する。背中に数枚のメダルが入った直後、ウヴァの叫ぶ

>「よせ……暴走はいやだ。やめろ、やめろぉおおおおおお!!」

その言葉が断末魔のように聞こえた後、その姿は先ほどとは違う形に変異して行き
あっと言う間にその姿は姿形状を留めずに奇妙な正八面体の要塞のような形になる。

>「チッ……暴走したか。」

その状態を見てアンクはそう呟く。周囲のものを破壊しながら大量のセルメダルへと変えていった。
しかしそれと同時に抑えられていた永久闘争存在の力が意志が泉から湧き上がるように溢れ始める
だがまだこの地に施された何らかの術か仕掛けのお陰なのか奇跡的にギリギリだが自我を保つ事が出来ていた。
気づいた直後に周囲を見ていたら、オーズが傍に居た事に気づき重傷であったことを思い出し
自分の身の事など棚に置いて湧き上がる感情をぶつける

「馬鹿者が!!下手をしたら死ぬぞ!命を少しぐらい惜しめ!」

火野にこのようなことを言っても無駄なのは百も承知だが
少し自分の命の執着のなさに危なさをかなり感じているが
もう起きてしまった事はどうしようもない。
テイルがなにやら魔法を掛けたようだが恐らくは何らかのこちらに有利にする物のようだと推測した
そんな状態の中、アヤソフィアがこちらに声を掛けてくる
既に永久闘争存在化しつつある証で半ば自由意志が消失している証である虚ろな緑の瞳を隠し
向き直る。
48 :半永久闘争化ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2011/10/26(水) 03:24:57.04 0
>「ビャク、しばらく火野をお願いしますっ。
 無論、破壊が可能なら私たちに遠慮する事なく、あの物体を破壊してしまっても構いません!」

「引き受けた…!せいぜいお前達が見せ場がある所まで
取って置けるまでかは分からんがな」

意志を保つので精一杯でも皮肉を込めた笑みを自然に出来るように意識しながら
悟られぬよう、テイルやアヤソフィアの背を見届けた後
再度目の前に居る無差別に破壊を繰り返す正八面体を向き直ると同時に
杖の状態から無命剣フツノミタマに戻し変身したオーズに向かって

「無命剣よ!我が命の輝きで病を癒せ!!」

オーズに光り輝く暖かい光りが周囲を包む
病など内面の治癒をしそして負ったはずの傷を当人の身体に無理の無い程度の回復速度を促進させた。
フツノミタマは本来治療に関することにも高い能力を発揮するが代償として己の全ての力を使い果たす
敵を屠る技と治療する技は同時には滅多に使えないが、今は永久闘争存在化により力が有り余るほどの力が湧きあがるため
回復速度を速めることも可能だが、それは当人の本来の治癒速度を早めてしまい負荷を掛けて寿命を減らすことになってしまう。

「オーズ、お前は此処で死ぬべき存在ではない…
無理をするな生き残る事を考えろ」

閉じていた目を開けてから告げてから問題は目の前のウヴァの暴走体は
あいも変わらず周囲の物をセルメダルに変えているこのままでは意識を完全に失うのも時間の問題かもしれない
自分を今でも繋ぎとめている存在がこの校舎という建物に施された物ならばいつ効力が消えてもおかしくない。
なんとか自分が意識のある間には倒したいと考えていたが
とある事が思い浮かび、無に返す正八面体を恐れぬように素早く近づき迫ってくる触手と落ちたセルによって出現する
立ち塞がる屑ヤミー達を最初に尋常ではない数の黒い十字剣を突き刺してから大規模な爆破によって薙ぎ払い、次々と湧き上がるヤミーを
炎が纏った無命剣により斬り捨てながら既に常人を遥かに超えた速度で上手く場所を確保しながら
ようやく間近まで来る事には成功するが正八面体を全て無に返す力を加え防護するエネルギーシールドらしき物と発動していると思われる
物理・魔法の種を問わず、またどれほど凶悪な破壊力であろうと、お構いなしに外部からの攻撃の一切を無効化するという反則的な代物
無敵結界が発動し、反発するように力と力がぶつかり合うしかし
特性的に次第に中和するように成って来ていた。永久闘争存在化の力を確認出来た時作戦を実行する。

「互いに反発している所に更に別の膨大な力をぶつけそれごと食い破る!
オーズ!!共に打ち込むぞ!無命剣よ!我が命の輝きで道を照らせ!」

オーズにタイミングを教えて指示した後
その言葉と共に剣から強大な炎の嵐が巻き起こり、それは自身に押し留まる事の無い流れる力をそのまま流し続けながら
バリアを突き破ったが、その炎の流れは治まらず寧ろ勢いを増していき触手やヤミー達の攻撃は絶え間なく続いていたが
彼らを焼き尽くすほどの業火が彼の周りに渦巻き広がっていった。
49 :オーズ ◆/m/3H6N1VU [sage]:2011/10/26(水) 23:32:19.19 0
>>45>>46
>「分かりました。ですがヒノ、一つだけ言わせてもらいます。
 一人が出来る無理には限界が有りますが、皆で力を合わせれば、その限界も広がります。
 私は貴方に死んで欲しくない……死ぬつもりの無理ならば許しません!」


無理を押し通す映司に、アヤソフィヤの言葉が重く響く。
しかし、目の前にある危機を止めれるかもしれない力が自分にある以上
戦わずにいられなかった。

「はい……!!必ず、戻ってきます!!」

勢いよく飛び上がると、分身能力で増えたガタキリバコンボの
軍勢が一気呵成に触手を切り裂いていく。
カマキリのメダルの力が、コンボの特質により極限にまで研ぎ澄まされ
次々に触手を撃破していく。

「やったか……!?いや……」

アンクが目にしたのは、破壊された触手すら瞬時に再生してみせる
暴走ウヴァの脅威だった。
周囲の物体をセルメダルに変え、受けたダメージを瞬時に回復しているのだろう。
アンクはアヤソフィヤとティルが一計を得たと感じ、オーズへ時間稼ぎを促す。

「映司ぃ!!あいつらが戻ってくるまで何とか持ちこたえろ!!」

>>48
>「オーズ、お前は此処で死ぬべき存在ではない…
無理をするな生き残る事を考えろ」

ビャクが映司を諭すような声で呟く。
しかし、その周囲では信じられない程の力を感じさせている。
彼自身にも、重大な異変が起きていることを映司が気付くには
充分なものだった。

「ビャクさんも無理をしているんです……俺も、出来るだけ。
出来るだけをやるだけですよ。――ウォオオオ!!」

降りかかる光弾を弾きながら、オーズは暴走ウヴァの本体へと迫る。
しかし、1体また1体と触手に吹き飛ばされ地面に叩きつけられる
ガタキリバコンボ。
劣勢に傾きかけたその時、ビャクの声が悠然と轟いた。

>「互いに反発している所に更に別の膨大な力をぶつけそれごと食い破る!
オーズ!!共に打ち込むぞ!無命剣よ!我が命の輝きで道を照らせ!」

「ビャクさん……!!はい!今……行きます!!」

その瞬間、アンクは地上に叩きつけられたオーズの元へ駆け寄り
その手に握られた朱色の3枚のメダルを見せる。

「炎か……確かにウヴァにはいい作戦だな。ヤツは炎に弱い。
再生能力も弱るかもしれないな。ガタキリバは負担がでか過ぎる。
――こいつを使え。」
50 :オーズ ◆/m/3H6N1VU [sage]:2011/10/26(水) 23:51:29.72 0
「これは……クジャク、コンドルのメダル。それに、タカ?
お前、どうして……」

アンクの手からこぼれ落ちたのは、自身の体を形成する
タカのメダルだった。
このメダルはいわば彼自身。これをオーズに預けるという事は
自らの命運を託すという意味になる。

「映司、お前を信用してるわけじゃない。ただ、借りを返してやりたいだけだ。
あのクズどもで、俺を甚振った借りをな。
――アヤソフィヤ達が動いた。奴らに考えがあるはずだ。」

オーズは躊躇無くそのメダルを手にし、オーズドライバーへ装填する。
「分かってるって。お前、お前の意思があるなら…少しは体への負担が
減るってくらい。」

アンクはしばし空を見上げると、少しだけ口元を歪める。
そして、セルメダルの山を残し消えていく。
その目には欺瞞も、悪意も存在しなかったように見えた。

「変身ッ!!」 ―タカ・クジャク・コンドル!! タージャ~ドル♪―

オーズの体が、真紅のタジャドルコンボへと変貌する。
炎と飛行能力を操る鳥類のコンボである。
ビャクの放った炎が周囲のヤミーや触手を焼き尽くさんばかりの
力を持ちながら本体へ迫る。
「うぉおおお!!セイヤァァァ!!」
それと同時にオーズが背中から発生させた翼で飛び上がり、腕に
装備した盾「タジャスピナー」にメダルを装填し、極大のエネルギーを充填する。

『ギ・ギ・ギガスキャン!!』
オースキャナーから電子音声が流れ出し、真紅のエネルギーがビャクの攻撃に
加勢するように撃ち放たれる!
『映司!!拙い……避けろ!!』
しかしその刹那――同時に暴走態の本体から放たれた光が、攻撃により硬直したタジャドルコンボの
身を打ち落とした。

『アヤソフィヤ……!!』

アンクは祈るように言葉を吐いた。次に託すべき者の名として。

【タジャドルに変身、ビャクと同時にウヴァへ攻撃するが
反撃を受け相手には直撃せず】
51 :アヤソフィア ◆666/MyrH6U [sage]:2011/10/28(金) 19:05:49.51 0
>>46
アヤソフィアはテイルを伴って振動する廊下を走り抜け、幾多の魔道の品を収蔵する保管庫に辿り着いた。
最初に目に飛び込むのは入口近くの粉末、丸薬、塗膏の類、禍々しい色彩の魔石。金器銀器の煌びやかな骨董。
次に鳥や獣の姿を模した魔法象に、円柱型の水槽で手足を掻くホムンクルス。万色の液体で口までを満たす瓶の林。
それらの奇態な品々を差し置いて、一際目を惹くものがあった。
室内の中央部に置かれた装置。表面に無数の魔昌石が埋め込まれ、盤上に複雑精緻な魔法陣が構築される台座だ。
そして、その魔導機械の前には、テイルの戦闘形態と同様の姿をした長身の妖精が待ち構えていた。

「アナタは……今までどこに?」

最前の戦闘中に姿を消した妖精を見て、アヤソフィアの口調が責めるような響きを持つ。
虹の羽を持つ妖精は、そんな質問を興味なさげに撥ね付け、テイルへ向かって魔力の供給を促がす。
己に相似する妖精に促がされ、テイルは魔法陣に乗って魔力の供給を受け始めた。
微細な魔力の電光が魔法円を駆け抜け、テイルに魔力が注がれてゆく。
その間に、アヤソフィアは荒らす様にして室内を探し始めた。

「魔導機械そのものを持って行く事は……無理ですね。
 魔昌石のような魔力変換を可能とする魔道具があれば良いのですが……それも出来るだけ高出力の」

魔術や物理的手段を用いて、解錠と破壊を繰り返す姿は、知らぬ者が見れば災害に乗じた賊にも見えただろう。
アヤソフィアが、厳重に施錠された箱の中から蒼い真球の宝石、ブループラネットを見つけるのは容易かった。
強烈な生命の波動が、閉じた箱を通してでも伝わって来たから。
宝石を手に掴んだアヤソフィアは、箱のプレートに書かれた簡素な説明文を口に出す。

「ブループラネット、触媒を使わずに莫大な生命力を紡ぎ出せる水の魔石。
 生贄を用いる魔術では代用品と為りそうですが、これを魔力に変換する事は可能なのでしょうか……?」

三柱の神が作った魔石の内、これだけは複数存在しており、オーシア魔法学校でも一つを確保していたようだった。
アヤソフィアが、さらに他の魔道具を探そうとした時、テイルが魔法機械の台座から降りた。
もう他を探す時間など無い。止むなくアヤソフィアも二人の妖精に続いて部屋を出て走った。
疾駆する左右では轟音が響く。背後でも建物の倒壊が進んで、幾つかの部屋が崩れる天井に呑まれていった。
52 :アヤソフィア ◆666/MyrH6U [sage]:2011/10/28(金) 19:11:40.22 0
>>47-50
アヤソフィアは恐るべき破壊を耳に聞き、臭いを鼻で嗅ぎ、舌の上にも味わい、次いで目に映す。
再び戦場へ戻ると、荒野だった大地には無数の炎が踊り、空は瘴煙の薄布で覆われていた。
まずは煙の中で浮揚する巨大な立方体が目に留まり、続いて溢れる魔物の群れと、それに斬りかかる戦士達が映った。
瞳に緑の焔を宿したビャクは、燃え盛る霊剣を振るって道を切り開く。

火野は肉体を覆う甲冑の色を、昆虫の緑から、不死鳥の炎色に代えていた。
自在に宙を舞い、盾から真紅の光弾を撃ち出し、彼はウヴァの作る光の力場の表面に赤熱する大きな痣を作り出す。
ビャクは負荷の掛かった一点を狙い澄ますと、霊剣から噴き出す火焔を突き刺して光の力場を相殺した。
火焔は嵐となって大きく燃え広がり、浮遊するウヴァを紅蓮の海に沈没させる。
轟く重い金属音。ウヴァの接地した大地が無数のセルメダルに変じた音のようだった。
直後、鳥の力を宿したオーズが反撃の光を浴びて高く打ち上げられ、大地への滑落を始めてゆく。

>『アヤソフィヤ……!!』

アンクの姿はどこにも見えなかったが、アヤソフィアは彼の声を遠音に聞いた。
その言葉に込められた意味を察して、二人のテイルに向かって叫ぶ。

「フェアリー=テイル、術の用意を!狙うのはヒノとビャクで開けた光の力場の穴です!」

アヤソフィアは標的の動きを止めるべく、自分も呪文の詠唱を始めた。
今さら火球の魔術程度で、何かの足しになるとも思えない。
やるべきなのは確実に切り札を切らせて、無駄撃ちをさせない事である。

「全てを奈落の底へ引く力。万物を大地に繋ぎ止める力。
 無限なる円環を満たす不可視の力よ、重力を強めて見えざる重き枷となれ――――gravity」

見えざる不可視の力が、空に浮かぼうとするウヴァの動きを鈍らせ、重力操作の有効範囲に留める。
重力場なら敵の体内に向かう必要が無く、力場を突き破る必要も無い。
さらには巨大な相手にも、小さき者にも、相応の力として働く。
双児の如き妖精の一方は、動きを鈍らせた標的に杖を向け、無邪気とも言える微笑みを浮かべて言った。

『それじゃ、どこまでやれるか見せてもらおっか。
 奇跡の起こらない世界での奇跡の起こしっぷり。勇者達の力をね』

アヤソフィアはテイルの術の発動を見届けることなく、自らの魔術の完成と同時に疾走する。
そして、疾走しながら更なる魔術の詠唱を始めた。
ウヴァを地に繋ぎ止めたのとは逆の力。重力を弱めてヒノの落下を遅らせる術を。
激しい動作の最中に、魔術が必要とするだけの精神集中を行うのは、極めて至難である。
しかし狂的なまでの集中力が、アヤソフィアに走りながらの呪文詠唱を可能とさせた。

「全てを奈落の底へ引く力。万物を大地に繋ぎ止める力。
 無限なる円環を満たす不可視の力よ、重力を弱めて我が意のままに落下を制御せよ――――falling control」

重力制御の魔術はオーズを効果範囲に捉え、大地へ墜落せんとする勢いを弱める。
墜ちて来るオーズの真下で、アヤソフィアは彼を受け止めるべく腕を伸ばす。

「ヒノッ……!」

【>>火野 重力制御の魔術で大地へ滑落する勢いを緩め……受け止める】
53 :名無しになりきれ:2011/10/30(日) 17:40:11.90 0
age
54 :テイル[sage]:2011/10/30(日) 23:57:01.05 0
>52
ヒノさんとビャクさんが、必死でウヴァを食い止めていた。
二人とも人間では無くなりつつあるのが分かる。

>「フェアリー=テイル、術の用意を!狙うのはヒノとビャクで開けた光の力場の穴です!」

アヤさんの声を受け、呪文の詠唱を始める。プリズミックレイとは別の魔法。
これで、ウヴァを倒すだけでなく、ヒノさんとビャクさんも救ってみせる。

「――生きとし生けるものに あまねく降り注ぐ光よ」

アヤさんが、重力の魔法でウヴァの動きを止める。準備は整った。
テイルBと目配せし、呪文を発動させる。

「―― 呪縛の枷を解き放ち 万物を無縫の姿へ還せ」

『プリズミックレイ!』

テイルBの光線が、ウヴァの力場の穴を射抜く。
力場にひびが走るが、破壊するまでには至らない。

「――オーロラオーラ!」

その瞬間、虹色の光のカーテンが降り注ぐ。
オーロラオーラ――プリズミックレイの範囲魔法。
それはその場にいる全ての者に、あまねく注がれる。

「みんな見て、綺麗でしょ。これが、ソフィアが抱く生命の色――」

光は、力場に走る隙間からウヴァの本体に到達する。
断末魔のような、高音の金属音が響いた。
砂の城が風化するように、ウヴァは端からメダルとなって崩れていく――。
55 :アヤソフィア@レヴィア ◆666/MyrH6U [sage]:2011/11/03(木) 13:57:40.31 0
>>54
テイルは両手で握りしめた杖の先端をウヴァの巨体に向け、柔らかな唇で呪文の韻律を力強く紡いだ。
杖を飾る宝石からは七色の極光(オーロラ)が噴水の如く溢れ出し、周囲一帯に幻想的な色彩を付与しながら広がってゆく。
虹で織られた光の垂れ幕は“その場にいる全ての者”に降り注いだ。
それは暴走するウヴァをコアメダルへと戻し、要塞の如き巨躯を無数のセルメダルとして砕け散らせた。
一分にも満たない間、虹色に染まった空間を銀円の雨が降り続ける。
テイルの言葉通り、それはとても綺麗で、とても美しかった。

しかし、極大の解除魔術とて必ずしも万物を元の状態に戻すわけではない。
無数のセルメダルは無生物故にか、元の瓦礫には戻らず、紛い物の銀雪として地面を覆い隠してゆく。
ビャクの手の甲に施された魔術印は解除される事無く、極彩色の光の中でも変わらずに残されたままである。
人ならざる者になりつつある火野も、強い意志で人間の肉体に戻る事を拒めば、解除魔術は完全な効果を上げないかも知れない。
彼が全てを掴める手を求めて強き力を欲し、内へ潜む魔物が去らぬように呼びかけてしまえば……。

さらに、予期せぬ変化を現す者もいた。
アヤソフィアが光の中で力無き呻きを漏らし、オーズから腕を離して両膝を突く。
水で満ちたグラスに針の穴が穿たれたように、アヤソフィアからは生命力が抜けていた。
体に傷が付いたわけではない。血を流しているわけでもない。生命力だけが失われているのだ。
彼女の纏った魔術を阻むケープは、極光の中で千々に崩れると跡形も無く消えてしまっていた。

「くっ……ぅ……」

胸を押さえるアヤソフィアの表情は苦しげで、呼吸すらも労力を要する様だった。
そして……絡みつくような忍び笑いが漏れてくる。
アヤソフィアの右腕に描かれていた虹蛇の呪的紋様が、彼女の全身の皮膚上を泳ぐが如く這う。
くすくすと漏れる笑い声の主は、極光を浴びて命を得たかのような、この虹色の蛇だった。
白い肌に刻印として描かれていた虹蛇は蠢き、アヤソフィアの細い首筋に頭部を落ちつけると女の声で語り始める。

【「うふふっ、お久しぶり。私の声は忘れてなぁい? 私? 私は……」】

止められた言葉は、処刑台の冷たさを孕んで続けられる――――レヴィアの声にて。

【「アヤソフィア=エヴレンのPlayerよ」】
56 :アヤソフィア@レヴィア ◆666/MyrH6U [sage]:2011/11/03(木) 13:59:50.14 0
【「火野映司にアンクは初耳だったはずよねえ? Playerについては?」】
【「Playerは創造主とか、神、と言い換えても良いかしらぁ?」】
【「そう、このレヴィタンこそがアヤソフィアの神。彼女を創造し、自由意志に干渉し、その人生全てを観劇する者」】
【「でもアヤソフィアの側は私を視る事も、声を聴く事も、存在を識る事も、他の如何なる手段でも観測は出来ないわ」】
【「被造物が創造主を観測するのは僭越だもの」】

異世界に座すレヴィアは、アヤソフィアに描かれた蛇の紋様を通して語る。自らこそが創造主であると。
しかし、音無き静寂の裡に沈むアヤソフィアは、一句たりとも呪わしい狂君主の言葉を聞かなかった。
レヴィアに関わる一切の真実は、知る事が許されない故に。

【「私ね、水のソフィアを食べちゃったの……心臓も脳漿も」】
【「それは竜との同化を促がして、私にソフィアの力を得させたわ」】
【「ガイア人を創造した力でアヤソフィアを創り、境界を操る力で、新生した世界に存在を滑り込ませたってわけよ」】

朦朧とした様子のアヤソフィアを感じ取ってか、レヴィアの声に楽しげな響きが加わる

【「あらぁ、オーロラオーラでとっても苦しそう」】
【「狂気の神との戦いで、“男”さんに掛けた全治の魔術なら即死だったのに……なかなか上手くいかないわねぇ」】
【「前に治癒魔法を掛けたのに、ダメージを受けちゃった事があるでしょう?」】
【「アヤソフィアは、アナタの力そのものを受け付けない……そういう風に創造したの」】
【「何のためにそう創ったのかですって? それはね……」】
【「クモの巣に掛かった蝶を助けようとしたのに、誤って翅をもいでしまう時の……素敵な表情を見たかったからよ!」】

【「アナタ自身の手で誰かの物語を終わらせる! これが一度は神への道を閉ざしたアナタへの報復!」】
【「絶対殺されない、決して殺しもしないって宣言したアナタへの回答!」】
【「その衰弱は決して癒えないわ……アヤソフィアは、このまま真綿で首を絞められる様に緩やかな死を迎える」】
【「蘇生しようにも無理よぉ。だってアヤソフィアの生も死も、私が所有しているもの」】
【「これが本物のPlayer。そして駒は駒。自覚なき奴隷。超越者を気取った狐仮面とアズリアにも見せてあげたかったわぁ」】
【「うふふっ、せっかく即死じゃなかったんだから、デミウルゴスとの決戦まで持つといいわねえ?」】
【「くっ……うっ、ふっ……あはははははははははははははっ!!】

爆発する様な哄笑を最後に、レヴィアの声が異界に遠ざかって消えてゆく。
アヤソフィアの全身を這いずっていた蛇の紋様は、位置に寸分の狂いも無く元の右腕に収まっていた。
やがて魔術の極光も完全に消え、荒れ狂う猛火が鎮まれば、残るのは大地を埋め尽くす銀色の海。
オーシアの校舎は数本の太い柱だけが地上に形を留め、その他殆どの建築素材はセルメダルに形を変えて残された。
粗く息を突くアヤソフィアは膝を押さえ、さらに一呼吸置いてから、ようやく立ち上がって、疲労の色濃い声音を洩らす。

「申し訳、ありません……急に疲労が出たようです……私は走った程度しか、していないというのに。
 それに……どうやら、校舎の中は、最初から生徒も教師もいなかった……ようですね」

アヤソフィアは、精神にも疲労を滲ませたようで再び座り込む。
レヴィアの声を聞けなかった彼女は、数分の休息で体力を戻すつもりでいた。
流れる時間が敵となった今、それが全くの無駄である事も知らずに。
57 :火野映司 ◆/m/3H6N1VU [sage]:2011/11/04(金) 01:21:10.58 0
墜落していく中で、映司は不思議と痛みを感じれずにいた。
本当は怖かったのだ。自分が怪物になる事が、誰かを傷付ける存在になってしまうことを
恐れていたのだ。
今は、その恐怖が不思議と遠ざかったように思える。
映司は目を閉じ、運命を受け入れるように「死」を待ち構えた。

―「ヒノッ……!」

その時、アヤソフィヤの声が聞こえた。
同時にその暖かな光に包まれるように、映司は死の瀬戸際から
救われたのだった。

「……ッ、ア……アヤさん。」

変身が強制解除され、振り絞るような声が映司は声を漏らす。
その視界の中では、苦しげにしかし懸命に彼を救おうとした彼女の
顔が浮かんでいるように見えた。

>【「うふふっ、お久しぶり。私の声は忘れてなぁい? 私? 私は……」】

「……まさか。」

映司は薄れ行く意識の中で、声の主を記憶から探し出す。
彼女の名前は、レヴィア。世界を作り変えると宣言した神の如き存在。

>【「火野映司にアンクは初耳だったはずよねえ? Playerについては?」】
【「Playerは創造主とか、神、と言い換えても良いかしらぁ?」】
【「そう、このレヴィタンこそがアヤソフィアの神。彼女を創造し、自由意志に干渉し、その人生全てを観劇する者」】

アヤソフィヤのレヴィアの関係。その真実を聞いた映司の全身を撃ち抜くような
重い痛みが走る。
気を失っていく映司の手から零れ落ちたタカのメダルが再び再構成され
アンクの姿を象っていく。

「なるほどなぁ……アヤソフィヤの創造主。
つまりは操り人形ってわけか。」

>【「その衰弱は決して癒えないわ……アヤソフィアは、このまま真綿で首を絞められる様に緩やかな死を迎える」】
【「蘇生しようにも無理よぉ。だってアヤソフィアの生も死も、私が所有しているもの」】

>「申し訳、ありません……急に疲労が出たようです……私は走った程度しか、していないというのに。
 それに……どうやら、校舎の中は、最初から生徒も教師もいなかった……ようですね」

座り込んでしまうアヤソフィヤの肩に、アンクの手が伸びる。
そしてそのまま肩車をすると、姿無き声の主に小さく言葉を漏らす。

「お前も、俺も……作られた存在だってわけだ。
だが、このまま終わらせるなんてのはこの俺が許さないからな。
俺もお前も……生きているんだ。どんな姿でも、どんな世界でもなぁ……!!」

58 :テイル[sage]:2011/11/07(月) 22:54:38.19 0
>55-57
>「くっ……ぅ……」

極光のもとで、アヤさんが苦しげな声をあげる。
解除魔法であるこの魔法が、誰かを傷つけることなんてあるはずがないのに。

>【「うふふっ、お久しぶり。私の声は忘れてなぁい? 私? 私は……」】

忘れもしない、この世界を消し去り、唯一神とならんとする者。
完璧な世界を作り上げようとする者。
――きっと、どこかで少しだけ道を踏み外した、勇者の成れの果て。

「レヴィアタン……!」

>【「アヤソフィア=エヴレンのPlayerよ」】

「なんだって!?」

彼女によると、アヤさんは、レヴィアタンが作って世界に滑り込ませた被造物。
そして、ボクの力が必滅の毒となるように作られた存在。
レヴィアタンがボクに仕返しをするためだけにこの世に生を受けた手駒……。

「うそだ……嘘だ嘘だ嘘だああああああ!!」

レヴィアタンの言う通り、この事実に気付くチャンスはあったのに。
気付いていれば、こうはならなかったのに。

>【「くっ……うっ、ふっ……あはははははははははははははっ!!】

勝ち誇ったような哄笑がいつまでも耳にこびりついて離れなかった。
アヤさんが目を覚ます。自らの正体も、残酷な運命も知らずに。
59 :テイル[sage]:2011/11/07(月) 22:57:24.00 0
>「申し訳、ありません……急に疲労が出たようです……私は走った程度しか、していないというのに。
 それに……どうやら、校舎の中は、最初から生徒も教師もいなかった……ようですね」

テイルBがボクを物陰まで引っ張って行って囁く。

「終わってしまった事を今更悔やんだって仕方ないでしょ? 大事なのはこれからの事だ。Playerがいなくなっても被造物は死ぬわけではない。
アヤさんの命が尽きる前にレヴィアタンを倒せば、アヤさんはPlayerが課した特殊ルールから解放される……かもしれない」

Playerがいなくなったら被造物は勝手に生きていく。
そんな事をアズリアさんのPlayerが言っていたのを思い出した。
ボクの力を受け付けない事は、言わばレヴィアタンの恣意によって課せられた特殊ルール。
テイルBの言う事に賭けてみる価値はある。

>「申し訳、ありません……急に疲労が出たようです……私は走った程度しか、していないというのに。
 それに……どうやら、校舎の中は、最初から生徒も教師もいなかった……ようですね」

>「お前も、俺も……作られた存在だってわけだ。
だが、このまま終わらせるなんてのはこの俺が許さないからな。
俺もお前も……生きているんだ。どんな姿でも、どんな世界でもなぁ……!!」

戻ってみると、アンクさんがアヤさんを励ましていた。
自分も、出来る限りの笑顔で声をかける。

「ううん。あれを倒せたのはアヤさんのお蔭だよ。本当に助かった。
大丈夫、きっと全てがうまくいくから――」

『良ければ私の中で休んでおくか?』

宝珠化しているソフィアがアヤさんに、自分の中で休むように促す。
60 :アヤソフィア ◆666/MyrH6U [sage]:2011/11/09(水) 18:22:41.61 0
>>57-59
生気が抜けてゆく感覚は、いつまでもアヤソフィアに残ったままだった。
動けぬ彼女を見かねたかのように、アンクが細い腕を掴んで自分の首に回す。
そのまま担がれそうになると、アヤソフィアは身を捩って、それほど体調は酷くありませんと言い掛けた。
しかし、胸の悪心が言い掛けた言葉を止めさせ、アンクの背に体を預ける事を余儀なくさせる。

>「お前も、俺も……“      ”だってわけだ。
>だが、このまま終わらせるなんてのはこの俺が許さないからな。
>俺もお前も……生きているんだ。どんな姿でも、どんな世界でもなぁ……!!」

すぐ傍では、怒りの感情を滲ませたアンクの声。
アヤソフィアの鈍った頭では、その耳元近くで語られた内容すら上手く聞き取れない。

「……アンク。無事でしたか。姿が見えなかったので心配しましたが。
 申し訳ありません……しばらくの間、背中を貸してもらいます。
 まずは……今までに得られた情報を篩に掛け、今後の行動の指針を決めなければ……」

虚脱するアヤソフィアは、頭を振って夢魔の誘いを跳ねのけ、意識を覚醒の世界に引き戻す。
行動の指針を決めるに当たって再確認するべきは、敵の目的と動機と手段であった。
デミウルゴスが遂行するべき目的は、古代人の倫理観に基づく理想の世界を創造できなければ、全てを壊す事である。
敵対者の動機は重要度が低い。法廷で裁判を行うわけではない。情状を斟酌する必要も無い。だから言及しない。
最も重要なのは手段。デミウルゴスが世界を破壊する為の手段を知り、此方が相手を破壊する手段を知る事。
大きく息を吸い込むと、アヤソフィアは一息に喋る。

「敵の居場所と能力、ついては倒すべき方策を検討する必要があります。
 居場所については、ミルゴの言葉だけでは鏡面世界の何処かとは知れても、正確な位置までは特定出来ませんが。
 能力は現時点で分かっているものは三点。アルコーンの使役、他者への憑依、異世界への移動能力。
 半身のシャードを欠いて本来の力を失っているのか、いずれも直接的に破壊を為す能力ではありません。
 ガイア神ですら抗しえなかった憑依は、何らかの対策が必要であると思われます……」

その対抗手段が存在しそうだった校舎は、杭の様に大地を突き刺す太い石柱の残骸を残すだけであった。
目に映る校舎は全壊と言っても遜色無い状態だったが、地下空間は破壊を免れて保持されている可能性が高い。
この地下空間を改めて捜索するべきか。未だ姿を見せぬデミウルゴスを求めて別の地に移るべきか。
方針を決めようにも、睡魔の群れがアヤソフィアの頭の中を踊り、思考を散じさせてしまう……。
縺れる思索の内で沈黙するアヤソフィアは、ビャクと視線が合った。

「……ビャク、この世界の守護者委員会とは連絡を取れませんか?
 元の世界では壊滅させられた本部も、並行世界では無事に残っている可能性が有ります。
 もし無事ならば、これ程の切迫した事態……すでに彼らも行動を起こした、と考えてもおかしくありません。
 異界から来た我々を、すんなり信用してくれるかは別として、連携を取れるなら協力を仰ぎたいものです。
 対価として、デミウルゴスのシャードを譲渡すれば、それも可能なのでは。
 私は……残念ながら、通信に必要な精神集中すら困難な状態です……」

絞り出す様な声で、アヤソフィアは提案した。
その会話の切れ目を窺うようにして、テイルがアヤソフィアに声を掛けてくる。
微笑みを浮かべ、きっと全てがうまくいくから……と。
続いて妖精の手に宝珠として収まる竜神が、私の中で休むかとアヤソフィアに問う。
竜の声音には、粘りつくように甘く、不快な響きが混じっていた。
絶好の獲物を見かけ、どうやって罠に嵌めたものかを思案する猟師、とすら感じられる程の。

「いえ……重傷を負った訳でも無いので、すぐに回復すると思います……」

アヤソフィアは明確に拒む。宝珠が自らを閉ざす檻と感じて。
話題を逸らしたかった。だからアンクと火野に聞く。ウヴァが暴走する直前の事を。
アヤソフィアは囁くような弱い声で問い掛けた。

「そう言えば……虫の魔人が姿を変じる直前、陽炎のように揺れる影が見えました……。
 あれは空間操作の魔術か、それに類した能力で何者かが遠隔からの干渉をしたと思われます。
 心辺りはありませんか……? あの魔物の背後で暗躍しそうな者などに。
 アンクはウヴァとの名前を知る程度には、魔物とも面識があったようですが……」
61 :アンク ◆/m/3H6N1VU [sage]:2011/11/11(金) 16:54:35.68 0
>>60
>「そう言えば……虫の魔人が姿を変じる直前、陽炎のように揺れる影が見えました……。
 あれは空間操作の魔術か、それに類した能力で何者かが遠隔からの干渉をしたと思われます。
 心辺りはありませんか……? あの魔物の背後で暗躍しそうな者などに。
 アンクはウヴァとの名前を知る程度には、魔物とも面識があったようですが……」


レヴィアにより何らかの影響を受けたアヤソフィヤが振り絞るように
アンクへ問いかける。
アンクには、あの声に確かに聞き覚えがあった。
それも、その声の主とはずっと前から傍にいた。

「あぁ……知っているさ。だが、あいつはあいつであって
あいつではない。俺も自分で何を言っているのか分からなくなるが、
確かにあの声は――」

アンクの背後の空間が歪み、その背中を黒色の手が触れようと迫る。
異変を察知したアンクが、その手を掴みあげ震えるような声で叫ぶ。

「やはり――貴様だったか。―――映司。」

空間から現れたのは、火野映司。
アンク達と共に旅をしてきた映司はまだ意識を失くしてその場に倒れている。
ならば、目の前に現れたこの男は誰なのか。
アンクは1つの可能性を考えた。

「お前は、もう1つの世界の映司だな。”メダル”の力に支配され、
自分を失くしたグリード。それが未来の映司。
つまり、こいつは――」

空間から姿を現した映司の両腕と両足は、既にグリードへと変貌していた。
漆黒の、邪悪な恐竜を思わせるその表皮と少しばかりは
残っているであろう人間としての上半身。
そのアンバランスさが不気味さを表している。

「「ウヴァもたいしたことないなぁ。俺がせっかく蘇らせてやったのにさ。」」

映司は邪悪な笑みを浮かべ、倒れこんでいるもう1人の
自分を見つめた。

「「アンク、お前の言う事は正しかったよ。人間なんて、守る価値なんてないんだ。
お前も、こっちに来いよ。楽しいよ、力を使うのは。」」

映司の言葉に対し、アンクは愕然とした表情を浮かべる。
別の世界の彼とはいえ、これは映司自身の未来を暗示しているからだ。

「……アヤソフィヤ、こいつが影の正体だ。
そして、世界を破壊したのもおそらくこいつだろう。」

【グリード化した映司と対峙】
62 :テイル[sage]:2011/11/13(日) 03:35:36.41 0
>60
>「いえ……重傷を負った訳でも無いので、すぐに回復すると思います……」

アヤさんは、ソフィアの申し出を断る。
その声音の中に、ソフィアに怯えているような、警戒しているような気配を感じたような気がした。

「ソフィア――?」

宝珠と化したソフィアを見つめる。
このソフィアは、水のシャードを欠いた不完全なソフィア。
まさかアヤさんを取り込むことで、水のソフィアを取り込んだレヴィアタンを間接的に取り込もうとしているとしたら?
ソフィアの宝珠は相変わらず美しい輝きを放っている。

「――なーんてね」

一瞬とはいえボクは何を考えてしまったのだ。そんな事があるわけがない。
63 :テイル[sage]:2011/11/13(日) 03:40:59.12 0
>61
ウヴァを背後で操る者について尋ねたアヤさんに、アンクさんが答える。

>「やはり――貴様だったか。―――映司。」

もう一人のヒノさんが現れた。

>「……アヤソフィヤ、こいつが影の正体だ。
そして、世界を破壊したのもおそらくこいつだろう。」

信じられないけど、納得は出来てしまう。
私利私欲を捨て世界を救う勇者と、自らの欲望のままに世界を滅ぼす破壊者は表裏一体の存在。
ヒノさんのように純粋に誰かを助けたいと思っていればいるほど――
何かの拍子に世界を滅ぼす者へと転身してしまう。

>「お前は、もう1つの世界の映司だな。”メダル”の力に支配され、
自分を失くしたグリード。それが未来の映司。
つまり、こいつは――」

ボクは、倒れているヒノさんをかばうように立った。
すぐに回復魔法をかけてあげたいところだが、今は気絶したままの方がいいのかもしれない、とも思う。

>「「アンク、お前の言う事は正しかったよ。人間なんて、守る価値なんてないんだ。
お前も、こっちに来いよ。楽しいよ、力を使うのは。」」

「確かに……自分を犠牲にしてまで守る価値なんてないのかもしれない。
そうすればあなたみたいになってしまうのなら――。
でも! お前の欲望のために踏みにじられていい程度の価値では絶対ない!」

>「……アヤソフィヤ、こいつが影の正体だ。
そして、世界を破壊したのもおそらくこいつだろう。」

間違いない。こいつに憑依しているのは――

「”デミウルゴス”! 貴方様を頂戴しにはせ参じた!」

デミウルゴスだけでも世界を滅ぼす存在だが、これは最終目的のための通過点でもあるのだ。
レヴィアタンに対抗するには、破壊神としてのデミウルゴスを倒し、創造主としてのデミウルゴスの助力を手にする事が必須。

「こいつにデミウルゴスが乗り移ってるのだとしたら、まずはデミウルゴスを引きずりださなきゃね。
一番手っ取り早い方法は憑依先の精神力を根こそぎ奪い尽くす事――かな」

と、テイルB。

「それなら――シェイド!」

当たった者の精神力を奪う闇の球を、大量に作り出してぶつける。
64 :アヤソフィア ◆666/MyrH6U [sage]:2011/11/17(木) 06:46:51.57 0
>>61
アヤソフィアに問い掛けられたアンクは、何かを確信しながらも、それを信じられないと言った態であった。
その背後では揺れる陽炎が現れ、影の色で宙に輪郭を象ってゆく。
原始の生物が持つ膂力を備え、薄闇を切り取ったかのように昏い腕を。
その異様な気配を感じ取ったのか、素速く振り返ったアンクが己の背を翳らせる昏黒の腕を掴み上げた。
やはり――貴様だったかと語り、未だ明瞭としない影に向かって名を呼び掛ける……映司と。
アンクに名を呼ばれた事で、黒き腕の持ち主が姿を現す。
黒竜を無理やり人の姿に似せたような半身を持つ……火野映司が。

「……ヒノ……この世界の……ですか?」

アヤソフィアは火野に眼を凝らしたが、僅かな間に視力が衰えたのか、彼の輪郭は陽炎を纏っているかの如く滲む。
しかし、其処から発される声は紛れも無く聞き慣れた火野のものである。
ならば、彼はこの世界での火野なのだろうか……。
違う。明らかに。霞む目でも彼の精神に棲むモノは視える。
異形の半身を持つ者は、人に守るべき価値などない、力を使うのは楽しい、此方に来いと、暈けた視界の中で謳う。
あれが火野である筈が無い!アヤソフィアはそう叫びそうになる。
しかし、アヤソフィアが叫び出す前にアンクが続けた。
彼がメダルの力に支配された未来の火野であり、この世界を破壊したのも彼であろううと。

「あれが未来のヒノ……私には、とても信じられません……」

確かに時は人を変える。白糸も墨の中に沈め続ければ、流水に晒しても色の落ちぬ黒糸に変わり果てるだろう。
それでも彼が此処までの変貌を遂げるとは、アヤソフィアには受け入れ難かった。
身を捨てて戦い続け、得られる未来がこれでは……あまりに報われない。
何とか終点を変える事はできないのか……そんな思案に沈む暇は無かった。
65 :アヤソフィア ◆666/MyrH6U [sage]:2011/11/17(木) 06:53:18.50 0
>>62-63
アンクの言葉を受けたテイルは、未来の火野こそがデミウルゴスの器であると判断して、すぐさま動いた。
精霊魔術にも長けた妖精がシェイド、と呼びかけると、闇の精霊たちは四方八方に球形の黒として現れる。
この闇の精霊たちは、生物に取り付いて精神力を奪う。
墨を吸った筆を振り散らしたような無数の黒点は、弾薬として使うには充分な量と思える。

戦いは開始された。即座に無数の暗黒の球は雨と放たれ、未来の火野たるグリードを漆黒の檻に閉じ込めた。
そこだけが暗く、昏く、冥く、闇い。一切の光なき魔力の闇が標的の精神を削る。
百を超えるシェイドを一時にぶつけたならば、竜すらも昏倒させるだろう。
が、グリード化した火野は禍々しき爬虫類の皮膚から眩き紫の光を発すると、難無く暗黒の檻を消滅させた。
テイルの視線の先には蔑むような化け物の姿。彼は口元に勝ち誇った愉悦を浮かべて嘲笑する。

『傷つくなぁ。デミウルゴスの前座扱いなんてのは』

千切られた闇の破片の後には、代わって吹き荒れる氷雪が現れる。
次の瞬間、幾つもの鋭き氷槍が凍てつく大地から伸びた。
アンクが蹠からの奇襲を躱そうとした拍子に、アヤソフィアは彼の背から投げ出される。
大地に打ちつけられたのに痛みも冷たさも無い。すでに彼女は触覚も鈍っていた故に。
周囲を見渡せば、僅か数瞬の間で何も無い大地に樹氷の森が出来上がっていた。
グリード化した火野が持つ、強力な冷気を操る力の一端である。
最初に攻撃を仕掛けたテイルから仕留めるつもりなのか、彼は細い妖精の体躯を凝眸すると腕を一振りした。
凍結した地肌からは、次々と新たな氷柱の槍が作り出されて地表の空間を抉る。穿つ。突き立てる。刺し貫く。
間断なく生成される氷柱の勢いはテイルの付近が最も激しく、自ら誘いを掛けたばかりのアンクの周辺は最も少ない。
だから、アンクの近くにいたアヤソフィアは一撃を受けるだけで済んだ。
冷たき樹氷の槍が蒼褪めた肌を掠めて血を流させる。決壊する堤防の如く生命力の流出を加速させる。
全身の感覚が鈍っていたのが幸いした。痛覚が生きていれば苦痛に蹲って呻くしか無かっただろうから。

未来の火野が完全な破滅を求める存在ならば、全員が滅ぼすべき対象に入っているはずである。
別の時間軸の火野を殺しても、この世界での火野の未来は消えない。
同じ存在だから、とりあえず彼だけは助ける、と言う事もないだろう。
アヤソフィアは上体を起こして周囲を見た。
氷の爆発とでも呼ぶべき現象が、そこかしこで起きている。
絶え間もなく地から出ずる氷槍は、しばらくすると砕け、千の破片と化して白霧の濃さを一層に増す
白濁する無明の世界でも何故か火野の姿だけは明瞭に視えた。荒い呼吸に胸が上下している。生きているようだ。
ヒノに治癒を……そう言い掛けて気付く。
短身の妖精も、灰色の戦士も、すぐ傍に居た筈の青年も、複雑に絡む樹氷の格子と、白き闇に溶けて見えない。

その白霧の中で蒼白い灯火として輝く物があった。
先程の攻撃の際に懐から転がりでもしたのか、生命力を発する蒼きブループラネットが凍てつく地面に鎮座している。
これは今の自分には恩恵を与えない無用の長物。使うべき人物は他に居る……火野だ。
自分に僅かの治癒も齎さない生命の石が、火野を目覚めさせるのに役立つのだろうか?
当然の疑問は、心室に掛かった霧が考える事を止めさせる。
いや……自分に出来る無理をするべく、考える事より行動する事を選ばせた。
アヤソフィアが力を込めて手足を動かす。

「ヒノ、己の未来ならば……その未来の己を目に焼き付け……己の手で……」

言葉は続かない。口を塞いでしまったから。
アヤソフィアは蒼い宝石を咥え、口中に収めたまま、倒れた火野に近づかんと、萎えた手足を使って這い進む。
治癒の魔術が使えぬ自分が癒し手となるには、これより他に手は無い。
氷の破片が舞い散る中を這い続ける内に、アヤソフィアの世界から音が消える。
無音の世界の終点では火野の顔が見えた。
ブループラネットに依る治癒効果を最大にするには、直接彼の体内に取り込ませるのが一番だろうと思える。
アヤソフィアは僅かに開いた火野の口に己の唇を近づけると、口移しにて口中に含んだ宝石を呑ませた。

「……己の未来を変えてください」

それが最後の言葉となる――――もはや、アヤソフィアは舌を動かすのも困難であったから。

【>>火野 強い生命力を与える宝石を呑ませる】
66 :Player of ◆666/MyrH6U [sage]:2011/11/24(木) 18:39:15.21 0
【一応、生存確認を取らせてもらうわ】
【予定、要望、質問、その他不明な点があれば遠慮無く言って頂戴ね】
67 :テイル[sage]:2011/11/27(日) 01:22:01.09 0
>65
大量の闇球は、相手を飲み込み漆黒の魔力の檻となる。
だが、まるで吹き散らされる塵のように、あっさりと霧消した。

>『傷つくなぁ。デミウルゴスの前座扱いなんてのは』

「さすがに一筋縄ではいかないか……」

敵が攻撃に移った。氷の柱が次々と地面から生えてくる。
程なくして周囲が見えなくなり、相手がどこにいるのかも把握できなくなった。

「ファイアボール!」

火炎球の魔法を連射して防ぐ。
が、容赦ない氷柱の生成速度に追いつかなくなり、間一髪で避ける。
避けるのも追いつかなくなり、氷の槍が肌を掠める。

「うあっ……」

足を滑らせて転んだ。間もなく終わりの瞬間がやってくる。
本当に強大な敵の前に屈する時って、ドラマチックな盛り上がりも無く、こんなにもあっけないものなのか――。

「うおおおおおおおおおお!! ――ライオディアス!!」

聞こえたのは、ヒノさんの咆哮。感じたのは、身を焦がすような熱気。
だけどそれも一瞬。
何事かと目を開けた時には、樹氷の森が跡形も無く消え去っていた。
そして、ヒノさんが、グリード化した自分自身と対峙していた。

『ラトラーターコンボの熱線か――貴様、どうして動ける!?』

「アヤさんが俺に命を託してくれたんだ――だから、絶対負けない!!
お前を倒して未来を変えてみせる!」

アヤさんは、地面に力尽きて倒れていた。
普通の意味の力尽きたじゃない。最後の力を振り絞って、それすらも尽きたという感じで。

「アヤさん……アヤさん!?」

彼女にとっては生命を司る力が毒になる。
ボクに出来る事は、彼女がした事が無駄にならないよう、ヒノさんを精一杯手助けする事だ。
今までの攻撃パターンから、相手は氷属性。ならば炎系の大魔法で焼き尽くすまでだ。

「放霊の時は来たりて此へ集う――朕の眷属、幾千が放つ漆黒の炎――カラミティブラスト!!」

幾百、いや、幾千の炎の槍が未来のヒノへ殺到する。
68 :虚無の王・映司グリード@NPC ◆666/MyrH6U [sage]:2011/12/02(金) 22:13:10.31 0
霧に煙る世界の中で独特の旋律が響いた。

≪LION・TORA・CHEETHA≫ ≪LATA・LATA!LATORARTAR!≫

直後、烈しい灼熱感を孕んだ声と共に、黄金の火線が氷霧を縦横無尽に貫いて溶かす。
凍れる大地を光を纏った何者かが駆け、白い闇の世界を一片も残さずに破砕していた。
明瞭さを取り戻した大地に立ち、青い複眼で凝然と映司グリードを睨めつけるのは、黒き装甲に金色の手足を備えた戦士。
ウヴァから取り戻したセルメダルで、火野は獅子や虎豹の力を備えるラトラーターコンボの形態に変身していた。

オーズが使ったのは、一瞬で河川をも干上がらせる熱線。
それを映司グリードはすぐさま看破した。彼は未来の火野映司である。
過去の火野が取れる戦術全ては、映司グリードの想像の範疇を越える物では無い。
未来を変えて見せると叫ぶ火野に、映司グリードは告げた。

「お前が味わう懊悩も失意も絶望も、全て俺が一度通って来た道だよ。
 つまり……今抱いている希望が、決意が、どれほど虚しいものかも俺は知っているわけだ。
 お前は磔刑に処されたキリストの如く、最後には自分が守ろうとする者たちに裏切られるのさ。
 侮蔑の言葉を矢と投げられ、理解はされず、僅かな友も無惨に奪われる。
 度し難い愚者達を泥の海から引き上げようとして、その重さに耐えかねて、最後には自分も泥の海に沈んでゆく」

火野映司とは別の未来を辿った映司グリードも、世界の平穏を望んで戦った。
その中で幾度も人間の醜さを知り、果ての無い欲望を見せられ、神の存在意義を何度も問い続ける。
やがて途方も無い時の流れに心を蝕まれ、彼は安息の渇望にも疲れてしまう。

異形に変化する肉体を持った彼は、怪物とさえ呼ばれた。
生きれば生きるほど世界に幻滅し、死を望むようになった。
ああ、俺はこのまま狂ってしまうのだろうか。誰にも知られず。孤独に。
かつて葬ったグリード達すら恋しく感じ始めている。
自分と他者を繋いで広がってゆく無限の絆を望んだのに、戦えば戦うほどに絆は失われてゆく。

「泥寧の中で俺は悟った……グリードを生み出した人間こそが真のグリード、救われるには値しないって。
 この世界も同じさ。神やら悪魔やらを生み出したのも結局は人の作り出したガラクタだっただろう?
 人間こそが最も醜悪な化け物、無窮に魔物を生み出し続ける魔物の根源なのさ。
 その開悟が俺に新しい力を覚醒させた……時の螺旋を遡り、過去を変える力をね」
69 :虚無の王・映司グリード@NPC ◆666/MyrH6U [sage]:2011/12/02(金) 22:15:56.18 0
>>67
不意に鈴の音の如き軽やかな韻律が耳に障り、映司グリードが言葉を切る。
彼が針の如き眼差しを詠唱の主に向けると、複雑な印を結んだ妖精が火霊に働きかけていた。
テイルの周囲には紅蓮の塊が幾つも躍っている。

>「放霊の時は来たりて此へ集う――朕の眷属、幾千が放つ漆黒の炎――カラミティブラスト!!」

力ある音節が妖精の口から流れると、幾百の燃え盛る炎が嵐と放たれ、映司グリードに火色の穂先を突き立てた。
灼熱の炎塊が映司グリードを包んだ瞬間、オーズが大地を蹴って疾駆する。
火野の狙いは、両腕のトラクローで映司グリードの体内から恐竜系メダルを奪取する事。
しかし、獲物を狙う豹の如く迫るオーズの突進も、未来を生きる映司グリードには想像の内。
今のオーズは最速の形態を取っているが、急停止や転回は不得手。
いかに雷速の動きであっても、攻撃位置と仕掛けるタイミングさえ判っていれば止められる。
オーズが仕掛けるであろうタイミングは、妖精が放った魔術の援護が教えてくれた。
テイルの攻撃を無駄にしないように、オーズは必ず連携して攻撃を仕掛けるはずだ。

体勢、軌道、過去の戦いの記憶が映司グリードに火野の動きを正確に読ませる。
映司グリードは、唸りを上げて胸を抉らんとしたオーズの片腕を掴み、冷波の咆哮を上げて身を覆う炎を吹き払った。
オーズの金色の腕が、掴まれた場所から霜を噴いて凍結し始める。

「過去の世界には、未来では破壊されて失われたセルメダルも揃っていた。
 恐竜系のメダルも9枚全てがね……。
 この凍気は放っておけば肺腑まで伝わって、最後には魂までも凍らせる」

怪力でオーズの腕を絞め上げるグリードは、力の作用する方向を変え、オーズを肉体ごと吊り上げると無造作に投げつけた。
暴君竜の力で投げられたオーズは軽々と宙を飛び、学園跡に聳える柱に一切の加減無く背中から叩きつけられた。
そして……重力に引かれて垂直に落ちると、未だ無数のセルメダルが散らばる大地の上に倒れ込む。
セルメダルは緩衝材としては、さして上等な物では無かったようで、甚大な衝撃を与えたオーズから変身を解除させる。

「俺はメダルに支配されているわけじゃない……自ら求めたんだよ、アンク。
 今度は世界の滅亡まで一緒に旅をするってのは、どうだい? 俺達のゴールまでさ」

極寒の瘴煙を背負うグリードは、再び氷霧の薄布を張り巡らさんとしていた。
表情を歪めたアンクが答えの代わりに炎を撃つと、映司グリードの姿は氷片となって砕け散る。
それは、映司グリードが超常の力で作り出した氷の幻像であった。
氷で作られた虚像は、グリードの体から噴き出す瘴煙と共に無数に姿を増やしてゆく。
先程テイルが放った火炎魔術の集中打は、映司グリードの表皮を爛れさせていた。
氷の幻像は再度攻撃される事を厭って、攻撃を分散する囮として作り出されたものであろう。

「アンクなら、最後まで付き合ってくれるかと思ったんだけどなぁ……。
 言っておくが、お前はグリードだ。人間に近づけば近づく程、両者に厳然と横たわる溝に苦しむ事になる」

背後から掛けられた声に向かって、アンクが鳥類の赤腕を振るう。
宙に紅蓮の孤月を描く一撃を、映司グリードは己の腕で鍔迫り合い、残った腕でアンクの額に掌底を返す。
勢いで数歩後ろに下がったアンクは、脳を揺らされた衝撃に膝を突いて前のめりに倒れた。
同時にアンクの体から何かが罅割れる時の硬質音が鳴る。彼の本体であるコアメダルが損傷したのだ。

「……メダルだけ連れてってやるよ。過去の俺が持ってる奴も一緒にね」

ビャクに、テイルに、自分に闘気を向ける火野に、映司グリードは紫の陰火を灯した視線を向ける。
物質を無に還す紫の波動こそが、映司グリードの真なる武器。
その虚無の力を掌に宿して、映司グリードは無数に作り出した氷の幻像の一つに紛れた。

「あのシールドは厄介そうだから、お前から殺らせてもらうよ」

戦場を駆け巡る無数の映司グリードの一体がビャクの背後に迫り、その肩口目掛けて掌底を叩き込む。
その掌には紫の光を伴った虚無の波動。
強烈な負の力は、容易に接触した箇所を分解して致命傷を与えるだろう。

【>>ALL 氷の幻像に紛れつつ、接近して虚無の波動で攻撃】
70 :テイル[sage]:2011/12/07(水) 00:47:57.08 0
>68
>「泥寧の中で俺は悟った……グリードを生み出した人間こそが真のグリード、救われるには値しないって。
 この世界も同じさ。神やら悪魔やらを生み出したのも結局は人の作り出したガラクタだっただろう?
 人間こそが最も醜悪な化け物、無窮に魔物を生み出し続ける魔物の根源なのさ。
 その開悟が俺に新しい力を覚醒させた……時の螺旋を遡り、過去を変える力をね」

「過去を変える力を手に入れたなら――どうして滅ぼすためにそれを使う!?
時を螺旋に例えるなら……同じことを繰り返すように見えて、少しずつ前に進んでいるはずだ!」

>69
>「過去の世界には、未来では破壊されて失われたセルメダルも揃っていた。
 恐竜系のメダルも9枚全てがね……。
 この凍気は放っておけば肺腑まで伝わって、最後には魂までも凍らせる」

「ああ……! ――ヒールライト」

変身を解除させられたヒノさんに駆け寄り、気休めの回復魔法をかける。
グリードを睨み付ける、と、グリードの姿がどんどん増えていくではないか。

>「……メダルだけ連れてってやるよ。過去の俺が持ってる奴も一緒にね」

どれが本物か分からずに翻弄されているうちに、アンクさんもやられた。

>「あのシールドは厄介そうだから、お前から殺らせてもらうよ」

どこかにいる本物のグリードから告げられる、容赦無き死の宣告。
次の標的は――強力な防御技を持つビャクさん!?

――その時。

「――フラッシュ!」

呪文を唱えたのはテイルB。ただ強烈な光で辺りを照らすだけの魔法だ。
しかし、氷の氷像の表面に被せられていた幻影が破れ、どう見ても氷の氷像である事が顕になる。

「ビンゴ! 氷の幻影なら強い光を当てれば破れる――!」

本物のグリードが、ビャクさんに掌底を叩き込もうとしているのが見えた。
71 :テイル[sage]:2011/12/07(水) 00:48:21.87 0
「見切ったあ、――プロテクション!!」

間一髪で割り込んで、エレメントセプターの防御障壁を展開する。
エレメントセプターにあしらわれたデュープリズムは、物質界を司るソフィアの象徴石。
光や闇の力を打ち消す、というイメージが強いが、それは概念的なものの干渉の阻止という事が出来る。
揺らぐ事なく確かに存在する物質界の象徴なら、虚無の力に対抗できるはずだ。

衝突の瞬間――二つの力は相殺しあい、凄まじい反動となって襲い掛かってきた。

「うわああああ!!」

衝撃にさらされ、派手に飛ばされる。
が、見ればグリードの方も少なからず衝撃を受けて体勢を崩しているようだ。
ビャクさんの口から、聞き覚えのある呪文が紡がれる。

『我・法を破り・理を超え・破軍の力・ここに得んとする者なり・・・爆炎よ・猛炎よ・荒ぶる火炎よ・焼却し・滅殺し・駆逐せよ・我の戦意を以って
・敵に等しく滅びを与えよ・・・我求めるは完璧なる殲滅!』

「ビャクさん、それは……」

感覚的に分かる、立て続けに何度も使っていいような技じゃない。
だからと言って彼を止めたところで他に手段はあるのか?
逡巡している間に、呪文は完成する。

「<マキシ・ブラスト>イグジストッ!」

呪文は解き放たれ、煉獄の炎が巻き起こる――!
72 :半永久闘争化ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2011/12/12(月) 03:10:23.11 0
「先ほどから聞いていれば貴様があの火野と同じ存在とはな…」

テイルの防護障壁とグリードの一撃で激しい衝突に吹き飛ばされた後
何事もなかったかのようにその手に剣を持ったまま少しずつ近づいていく
その言葉に対して鼻で笑いながらも決してグリードの目を離さぬように睨みながら。

「俺は貴様の言った道を何千、何万と嫌というほど味わい通ってきた
確かに救いようの無いどうしようもない輩もいるのは事実だな
俺も幾度と無く後一歩で沈みかけたが悪足掻きが性根に染み付いてるお陰で
なんとか最近持ち直したがなそれがどうしてかわかるか?」

だが目の前にいるのが立場が異なった上で一歩間違えたら目の前の怪物と同じようになっていただろう
しかしそれでも自身の心に焼き付き、そして信じる者達の笑顔が昨日の出来事のように浮かぶ
それに対する高ぶる感情を抑えられずに叫ぶように

「それと同じように人の温もりや優しさに助けられたからだ!そしてそれを輪のように広げて行こうとする
者達がいることも、周囲を変えていく子供達がいる事も俺は知っている!
人とは負の一面だけが全てじゃない己を省み考え成長していく生き物だ
貴様のそれは諦めでしかない!」

己が手を差し伸べ救い幾度なく裏切られ報われず醜さのみを見せ付けられ絶望に囚われていた
しかし死ぬことも許されず戦い続けていた
そんな自分を救ってくれたのも優しい人たちがいた
人とはとうに理を違え、この手は多くの人達を忘我とはいえ決して許されぬ殺戮の限りを尽くす
その腕を持つ自身にどうしようもないくらいお人好しで気にしていないくらいの笑顔でその身の危険を厭わず
手を差し伸べてくれた。
そんな俺に家族同然に慕ってくれる子供達も

そうした人達のお陰で胸の内には失望や諦めや絶望だけではなく
忘れかけていた優しい気持ちや思いやりの暖かさが残っている
己を奮い立たせ、己の全てを投げ打ってでも救いたい存在が
この場の者によっては今の彼の周囲には支えるように幻影が立っているように見えるだろう。
今この世界に存在しえぬ者達だが、どこの場所に居ても見守っていると言わんばかりに

「彼らがいるから今の俺がいる…だから
かけがえの無いを彼らのいる場所を守るためなら
俺は喜んで悪魔に魂を売り渡してだって見せるさ!!」

周囲からは風が巻き起こりカッと目を見開く
その身に背負った想いが起こすように

73 :神人ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2011/12/12(月) 03:51:55.09 0
渦のように発生した風は次第に勢いを増していく
彼の発する言葉に反応するが如く激しく

『全てには創造から開拓に始まり終焉ならば灰燼に終わる
 死と生は同一なりゆえに相克する
 死は生を求め生は死を求める
 無限と虚無に囚われる者よ求める物はと問えば
 解答せし言葉それは―――』

その言葉はまさしく創られた意義を持つ超人にとっては与えられた特性にして方向
解放者達にその力とあり方の膨大な奔流の内ほんの一部を扱う鍵を与えられる
超人刻印(ツァラトゥストラコード)
しかし今回は腕の魔術刻印及び永久闘争化の根源的な力が加わり
比較にならないほどの奔流と化していたがしかしそこに己を見失わず
その流れさえも己の全てへと変えていった―――

肌が赤く染まり、髪は白髪に変わる
オッドアイだったその瞳は黄金の瞳に統一されていた姿から
以前の時よりもさらに増した異様な雰囲気と神々しさの光を纏った
超人―否創造と破壊、無限と虚無を秘めた神人が現れた。

「超人刻印――解放(ブースト)、固有名『無限』『虚無』―維持結合完了(ダブルネームチェンジ)構築完了
真名『全能』超越解放(オーバーブースト)」

それを押し止め、己という存在の中で至ったすべての力を制御し循環させる。
双方の力を上手く放出するために背中には幾何学模様の魔法陣が浮かび上がり
白い翼と黒い翼という形で力が流出されている
本来ならばその力は神のみが持つ事が許される力
人が持つには強大すぎる力だが双方の力を持った『全能』の力はとてもとても均衡が崩れやすいため極めてバランスが危うい。
しかし、今は完全に自らの物としており雰囲気と相俟って身体からエネルギーが溢れ出るのが視覚面にはっきりと現れていた。

「お前と俺は似ては居ても決して相容れない存在だ、野放しにしていれば
俺の守るべき大切な人達に滅びが向かうだろう
だから今この場で貴様には消えてもらう永久にな!!」

金色の炎が宿った霊剣をかつての己に一瞬重ね、人に絶望してしまった異形の存在に
時空操作で一瞬で背後に周り剣先を突き付けた。
74 :虚無の王・映司グリード@NPC ◆666/MyrH6U [sage]:2011/12/14(水) 02:44:47.43 0
>>70-73
連携する二人の妖精が、戦況に変化を与えてゆく。
氷晶の幻像は鏡面世界のテイルが生み出した閃光で、全てが氷塊である事を明らかとされた。
もう一方のテイルは光の索敵で映司グリード本体の位置を知ると、即戦の構えを取ったまま、半ば飛ぶ様に駆ける。
写し身の妖精はグリードに向かうテイルを瞳に映しながら、誰にも聞こえざる呟きを口中に響かせていた。

『人工の光源を作り出すだけなら、ボクでも容易い。
 でも……世界が必要としているのは、こんな光じゃない。
 ミルゴが創造できず、デウスも破壊できない光。
 あの光を得られなければ、ガイアは波が訪れる度に崩れ去る砂上の楼閣だ』

映司グリードの動きが、ビャクの背に向けて左腕を突き出したままの姿勢で唐突に止まる。
紫の光を宿した掌を止めたのは、テイルの詠唱で築かれた魔術障壁。
虹色に輝く防護壁は即座に用を為した。虚無の波動と衝突して互いの存在を相殺する事で。
テイルとグリードの攻防は両者を衝撃で弾き、その間隙をビャクが詰めてゆく。
歩きながら彼は語る。人の温もりや優しさに助けられた事が自らを絶望に堕とさなかった理由であると。
そして、人は成長してゆく生き物だと続け、映司グリードの言葉を諦念と断じる。

「子供達が周囲を変えてゆく……人間が己を省み、考えて成長していく……?
 ああ、悪いね。俺は未来には興味が無いんだ。
 そもそも、未来を変える為に過去に来たわけじゃない。俺が変えるのは過去だけだ。
 今を飲みこんだら過去へ。過去も飲み込めば、さらに過去へ。何度でも欲望を喰らい尽くす。
 最後には遡れないほどの過去で最初の欲望を喰らって、全ての欲望を無に還す。それが旅の目的さ。
 慌ててゴールまで行かないのは……楽しいからだよ、力を振るうのが」
 
楽しいだって? 嘘をつけ、グリードの欲望は決して満たされない……。
ビャクに返された虚無王の言葉を聞き咎める様に、喪神から意識を取り戻したアンクが吐き捨てた。

『あいつと同じ顔してグリード気取りってのが、余計にムカつかせるなァ。
 おい、映司……いつまで寝てやがる! 使える馬鹿なら、あの使えねえ馬鹿を何とかしてみせろ!
 もう一度だけ、こいつを貸してやるからよ!』

アンクは己の胸から真紅のコアメダルを抜くと、火野に向かって投擲した。
もう一度だけ、との言葉を付け加えたのは、その次が無い事をアンクも覚悟していたからである。

≪TAKA・KUZYAKU・CONDER≫ ≪TAJADOR!≫

火野が紅蓮の輝きに包まれ、背中からは真緋の色で燃焼する三対の翼が出現し、彼は再び鳥の力を宿すオーズとなった。
同時にビャクの姿も一変する。魔人の如き鮮血色の肌にも関わらず、神々しさを感じさせる異貌へと。
必然、映司グリードの意識は目前のビャクに向けられる。

「へえ……それだけの力を振るうのは楽しいだろう? 正義やら救済やら未来の為って肩書きが有れば猶の事にな」

映司グリードが冷笑しながら紫の光を両手に灯した。
その虚無なる輝きを烈火の視線で射抜き、ビャクは火と燃える言葉で宣告を下す。

>「お前と俺は似ては居ても決して相容れない存在だ、野放しにしていれば
>俺の守るべき大切な人達に滅びが向かうだろう
>だから今この場で貴様には消えてもらう永久にな!!」

「消えるのはお前だ。その巨大な力と欲望……俺が喰らってやる!」

咆哮する獣の叫びを上げた映司グリードが、ビャクの頭部目がけて破壊の光を帯びた腕を横薙ぎに振るう。
死神の鎌は紫の残滓を宙に残しながら、標的が存在していた空間を確かに切り裂く。
しかし、映二グリードの攻撃で虚無に還るより早くビャクの姿は掻き消えていた。移動先は攻撃者の背後。
刹那、黄金に輝く霊剣がグリードの胸を貫き、その傷痕から砕けた紫の破片を零させる。

「……やるじゃないか。
 だけどな、一枚でもコアが残っていれば、セルメダルで何度でも肉体を再構成できるのさ。
 無限のセルメダルよ、最も欲望深き者へ集え! 俺の元に来い!」
75 :虚無の王・映司グリード@NPC ◆666/MyrH6U [sage]:2011/12/14(水) 02:49:43.54 0
虚無王の発散する欲望で、大地に散ったセルメダルが動く。
但し―――燦たる太陽の炎を纏うオーズに向かって。

「俺の過去に過ぎないお前が、この俺より……強い欲望だと……何故だッ」

手にした斧に、舞い上がる無数のセルメダルを取り込ませながら、宙を駆けるオーズが虚無王の正面に迫ってゆく。
赤熱した火色の刃は、虚無王の肩口を狙って振り下ろされた。
左右への回避は出来ない。ビャクの霊剣がグリードの胸を縫い止めて動きを封じていたから。
グリードの黒い躰には二本の筋が加わった。右肩から左脇腹までと左肩から右脇腹にかけて。
クロス状に裂けた傷口から、霊剣の炎で金赤に焼かれた金属片が勢い良く噴き出す。

「GAAAAAA―――!!」

灼熱する黄金の飛沫が散る中で、虚無の王が長く尾を引く絶叫を発した。
残響に混じる金属の破砕音が、映司グリードのコアメダルが破壊された事を告げる。
瓦解してゆくグリードの躰は、耳障りな軋みを上げながら歪み始めていた。
虚無の欲望に捕らわれた未来の火野映司が、彼の属すべき時空に還るのだ。
それが虚無なのか、元の時代なのかは知れないが。

虚無王が大地に零した融解金属に目を遣ると、蠢きながら一箇所に集まった金属は、ミルゴのシャードと同型の物体に変じた。
それをテイルと同じ姿をした妖精は無造作に掴み上げ、己が似姿のテイルに向かって放り投げる。

『……それがデウス・エクス・マキナのシャードだろうね。
 ミルゴのシャードと二つ合わせて、デミウルゴスのシャードってわけだ。
 でも、この世界からの持ち出しは彼らが許してくれるかな?
 個人所有するには、ちょっぴり渋い顔されそうな代物だけど』

鏡面世界の妖精は、オーシアの大気を鳴動させる東の空を見上げる。
その視線の行方、雲の無い蒼穹の彼方には、幾つもの点が広がっていた。
76 :アヤソフィア@レヴィア ◆666/MyrH6U [sage]:2011/12/14(水) 02:53:01.47 0
アヤソフィアは眠るように倒れていた。
その肌は血色を失い、心臓も鼓動を止め、すでに躯と称すべき物体である。
彼女は何一つ真実を知る権利を与えられぬまま、生の波動を、物語を途絶させた。
まるで最後を看取らせる事すら許さないかの様に、呆気無く抜け殻となった。

彼女には自由意思が無かった訳ではない。
ただ……それは、レヴィアの考え一つで簡単に揺らぐ脆弱なもの。
オーシアへの道中でビャクを恐れたのも、己の存在が感知される事を恐れたレヴィアの意思。
火野を命を賭して助けたのも、無を操る彼の力をレヴィアが欲したから。
寄せていた好意も紛い物。
少なくとも、レヴィアに取っては虚無を操る力を育てて収穫しようと言う計略の一環。

今のアヤソフィアは、食べ残されて捨てられた葡萄の皮に等しい。
そして、この葡萄の皮は捨てられても所有権までは放棄されなかった。
アヤソフィアの生も死も所有する海魔の女王は、彼女が死に際しても軛を外さない。
テイルに奪わせる為の命と魂。始めから蘇生等できるようには創っていないのだ。

温い潮風が茫漠とした荒れ地を駆け抜ける。
風で髪を揺らすアヤソフィアを、不死鳥の意匠を施されたオーズが見つめていた。
それが幻である事を願っているかのように。
しかし……いくら見つめ続けても、彼は幻の光景が消え去らぬのを知った。

『命があっても意思に干渉される。
 意思が有っても、命の無い俺とは似てる様で正反対だったな……』

アンクが吐き捨てた灰色の声は、アウグルト海から流れる潮風に溶けて消えた。
77 :ロード・ティアマト@NPC ◆666/MyrH6U [sage]:2011/12/14(水) 03:16:43.35 0
オーシア東の洋上には、百を超える船影。
デミウルゴスを含む、全ての脅威を討滅する任を受けた浮遊艦隊フレーデフェルトであった。
全鑑に戦士を搭載した艦隊が進むのは海では無く空。
異世界から持ち込まれた鋼鉄の船体には、幾つもの砲身が備え付けられ、戦艦とも言っても良い外観である。
その船体の中央から長く伸びるメインマストの最上部には灰色の外套を纏い、金色の長髪を潮風に靡かせた男が立っていた。
髪や瞳の色は違えど、顔の造りは何処となくビャク・ミキストリに似ている。

「殲滅の騎士、調律は如何ぁ? まだ弄って欲しい所はあるぅ? 例えば男の人の真ん中でブラブラしてるもの、とかぁ」

竜の仮面を付け、濃紺色の法衣を纏う人物がマスト上の人物に話しかけた。
ねっとりと絡みつくような甘い声で。
彼女は世界守護者委員会の元老院の一人、ロード・ティアマト。
数ヵ月前から超人計画に携わっている人物である。

『今の所、調整に不具合は無い……ネクタイもだ。
 ロード。オーシア跡に例の奴らがいるのは確かだな?』

殲滅の騎士と呼ばれた男は目を眇めて水平線の向こうを見つめながら、甲板に立つロード・ティアマトへと問い返す。

「ええ、いるわよぉ……第一級の封印指定が、ごろごろっと。
 巨蟹のアルコーン。巨大金属生命体……は消失。別時間からの干渉者に正体不明の連中。
 アースランドと同じように祟天の柱だけは残ってるみたいだけど、他は全部更地になったみたい
 現時点でオーシアにいるモノは、もう全部纏めてジェノサイドで良いんじゃないかな」

『島の惨状を見るに、その決定も仕方なかろうな―――金剛杵《ヴァジュラ》よ!』

灰色の外套を纏った戦士が片手を天に翳すと、彼の手の中には先端が三又に分かれた刃を持つ棒状武器が現れた。
金剛杵とも呼ばれる破壊兵器が。
槍にも似たこの武器の能力は着弾した瞬間にスパークし、街数区画分に相当する面積に雷撃の雨を降らせるというもの。
多少の誤差があろうと逃れる事は敵わない、対軍仕様の広範囲攻撃兵器である。

『標的は20キルテ先のオーシア。ゆくぞ……破ッ』

「あ……待って、何か一つ消えてるみたい。ええと観測計器に依れば未来の存在……だって」

制止する女の声は一足遅い。
裂帛の気合と同時に投擲されたヴァジュラは、すでに視認すら出来なかった。
速度は音速。秒速340mで大気を切り裂くヴァジュラは、一分も掛からずオーシアへと到達するだろう。
そして何かに接触すれば、周囲数kmに渡って雷撃の雨を降らせる。
予告なく放たれた雷槍は、耳を劈く風切り音を放ちながらオーシアへと迫っていた。雷そのものの如く。
78 :テイル[sage]:2011/12/17(土) 12:52:20.35 0
>72-75
ボクの足掻きは、無駄ではなかった。二人の戦士が、想いを繋ぐ。

>「お前と俺は似ては居ても決して相容れない存在だ、野放しにしていれば
俺の守るべき大切な人達に滅びが向かうだろう
だから今この場で貴様には消えてもらう永久にな!!」

ビャクさんが突き刺した剣が、グリードの胸を縫いとめる。
だが、グリードはまだ崩れ落ちない。
そこへ、オーズとなったヒノさんが駆ける。その姿は、さながら燃え盛る太陽。
アマテラスの寵愛を受けているみたいだ、と思った。

>「GAAAAAA―――!!」

振り下ろされた炎の剣が止めを刺す。崩れていく虚無の王に告げる。

「安心して、ヒノさんは絶対あなたみたいにはさせないから――!」

後に残った物は、一欠片のシャードのみ――。

「やっぱりデウスに取りつかれてたんだ……」

そう思うと、少しだけ胸が痛んだ。

>『……それがデウス・エクス・マキナのシャードだろうね。
 ミルゴのシャードと二つ合わせて、デミウルゴスのシャードってわけだ。
 でも、この世界からの持ち出しは彼らが許してくれるかな?
 個人所有するには、ちょっぴり渋い顔されそうな代物だけど』

彼等って誰だろう、と思ったが、今はそれどころではない。

「二つ合わせて創造神デミウルゴスのシャード……
バラグさん! 二つはめればアヤさんを生き返らせれない!?」

が、アンクさんがゆっくりと首を横に振る。

『無駄だ、元より蘇生できるようには作られていない』

>76
>『命があっても意思に干渉される。
 意思が有っても、命の無い俺とは似てる様で正反対だったな……』

「……ねえ、この戦いが終わったら、彼女を元いた世界に帰してあげよう?」

例えレヴィアタンの策略のために滑り込まされた結果でも、故郷である事には変わりはないから。

>77
そんな会話は、緊急事態によって中断される事となった。

「――ん? 何か飛んでくるんだけど!」

『あーあ、せっかちな奴らめ。あれは金剛杵《ヴァジュラ》!
着弾した途端に周囲数キロが雷に打たれて黒焦げだ!』

「周囲数キロ!? もう逃げられないじゃん!
みんな集まれ!――ウォーターウォール!!」

皆を周囲へ集め、周りを半球状の水の壁で覆う。
純水は、雷を決して通さない――!
79 :ロード・ティアマト@NPC ◆666/MyrH6U [sage]:2011/12/19(月) 22:23:02.67 0
>>78
大地に突き刺さったヴァジュラは、内包する力を雷の大海嘯と為して噴き出した。
爆裂して広がる閃雷は大気を疾り、地中を穿ち、テイルの張った“水の壁に守られた場所以外の全て”を駆け抜ける。
地上に残る文明の残骸を撃ち砕く。天藍の空に棚引く薄雲すらも千々に引き裂く。
月天(ルナ)にも届かんばかりの勢いで、輝く雷衝の波濤は全てを押し流す。

オーシアには魔術の成果を残す事に生涯を掛けた魔術師がいた。遺跡の財宝を基に壮麗な彫刻を残した盗賊がいた。
翼竜の養殖に励む騎手が。結婚を反対されて島に逃れてきた恋人が。未来を夢見る魔法学校の生徒たちがいた。
しかし……オーシアの人々が紡ぐ物語は、此処に終わってしまった。
いつの日か、虚無なる土塊と化したオーシアに訪れる者達が、荒れ果てた大地に何かの物語を読み取る事は無いだろう。
何処とも知れぬ場所から来た者たちが、何の感慨も愛着も持たず、オーシアそのものを奪い去ってしまったのだから。
残るのは焦げ付いた空虚さ。瓦礫すらも残らない。残るのは一本の柱。それに数名の異邦人。

『テイル、ビャクさん、火野さんにアンクさん、バラグさんにイョーベールさん……やっぱり全員生き残ったね。
 アヤさんは光を持たなかったから仕方無いけれど』

水のドームの中に座り込んだ鏡面世界の妖精は、透明な天蓋の向うに見える艦隊を見ながら呟く。
一方、妖精が瞳に映す浮遊艦隊の旗艦“ベルゼナウ”の甲板では、殲滅の騎士が鷹の如き眼で大地を睨みつけて吐き捨てていた。

『まだ生き残りがいるようだ。巨蟹のアルコーンに加えて、まったく気に入らん奴がな。
 滅するべき存在と馴れ合っているのは……情でも湧いたか』

殲滅の騎士の言葉を受けて、ロード・ティアマトも地上を覗く。

「あら、攻撃に殲滅の属性を付加してても、大物はあっさり消えないってわけねぇ。
 鏡面世界の貴方は死なないから別として、光の神、と分身、境界の神、アルコーン、ゴーレム、ライダー、随分残ったこと。
 破壊者デウス・エクス・マキナの波動が微かに存在するのも感じるわ。
 あれは危険すぎるから滅殺。シャードになってるのなら回収しないと。
 ベルセルクの調整は、完全に出来てるけど……どーするっ?」

『無用だ。それに言っておくが……私とあの男は決して同一の存在などでは無い』

そう言い放つと、灰色の装束に身を包んだ男はオーシアの大地へ飛び降りた。
竜の仮面を身に付けた女は、ベルゼナウを緩やかに降下させて彼に続く。
後続の艦船に先駆け、いち早く大地に降り立った殲滅の騎士は、水のドームが張られた場所に近づいて来る。
彼はビャクに似た面持ちをしていた。冥界で遭遇した時の氷の表情に。
炯々とした光を瞳に宿して、彼はテイルに述べる。

『……私が何体ものアルコーンを始末している間に、首謀者たるデウスは君たちに仕留められたか。
 まずは手間を省いてくれた事に礼を言おう。手に持つそれはデウスのシャードだな? それを渡してもらおうか。
 過ぎたる破壊の力は、君の様な無思慮な者が所有するには危険な代物。我々が管理しよう。安全も保障する』

次いで、殲滅の騎士は水のドームの中で巨体を縮こめるイョーベールに凍てつく視線を投げかけた。
ビャクには視線すら送らなかったが、刃の様な気を彼に向けて発散しているのは、誰にでも容易に感じ取れるだろう。
視線を大蟹からテイルに戻した殲滅の騎士は、抑揚を抑えた感情無き言葉を吐いて続ける。

『そして……そちらの大蟹も引き渡してくれ。アルコーンと我々は共存出来ないからな』
80 :神人ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2011/12/20(火) 02:02:43.41 0
>「消えるのはお前だ。その巨大な力と欲望……俺が喰らってやる!」

だが奴の攻撃は届かない。攻撃がいかに強力であろうとも当らなければ意味は無く
時間よりも早く動く自身の一撃が虚無の王を貫く
そしてもう一人の自身であるオーズはその身に炎を宿し因果を破壊するが如く
終幕の一撃を放った―

>「GAAAAAA―――!!」

消え行く自身がなり得たかも知れない存在に否定した者達の想いの力を込める様に
自然と口からこぼれる言葉があった。

「俺はお前だ、道を違えればそうなっていただろうな…
だがお前が負けたのは力の差じゃない貴様が否定した人間の想いに負けたんだ
お前が否定し諦める最中に俺は進み続けた!それがお前の敗因だ!」

その言葉が完全に終える頃には既に消失し、デウス・エクス・マキナのシャードだけが残る。
自身を信じ、思っている人たちを思い出しながら心のどこかで虚しさも感じていた。

>『……それがデウス・エクス・マキナのシャードだろうね。
 ミルゴのシャードと二つ合わせて、デミウルゴスのシャードってわけだ。
 でも、この世界からの持ち出しは彼らが許してくれるかな?
 個人所有するには、ちょっぴり渋い顔されそうな代物だけど』

彼等――この言葉ですぐにその存在が思い浮かぶと同時にすぐ近くに居ることが分かる。
その予感は当たり、先端が三又に分かれた刃を持つ棒状のそれ金剛杵《ヴァジュラ》がやってくる

>『あーあ、せっかちな奴らめ。あれは金剛杵《ヴァジュラ》!
着弾した途端に周囲数キロが雷に打たれて黒焦げだ!』

この言葉からして間違いなくこの世界の守護者委員会だろう
しかし、すぐ近くから犬の鳴き声がするそちらの方向に目を向けていると
小さな震える子犬と子供を庇う様に身を屈める母親の犬が居ることに気づく

「ッ!!ふざけるなこれ以上―」

必死に生きている者達の命を奪わせてたまるか――
テイル達に居る場所から離れている犬達の場所反射的に一瞬で時間操作で移動し抱き抱える
しかし彼らの元に戻る前にヴァジュラは大地に突き刺さるともう間に合わない
庇う様に抱き抱えたまま、すぐに浮遊し障壁を張って輝く雷衝の波濤を凌いだ。
しかし仮にも神にも達した存在であるゆえ、地を洗い流した雷といえど全力を込めた
障壁を貫くことは不可能である。
そんなビャクの光景を宇宙と大気の狭間から見つめる一つの存在があった。
小さな命に対してでも全力で手を差し伸べた彼に対してその心意気に感心するように
笑みを浮かべて眺めていた。

「さぁて、そろそろ仕事のようだ我ながらこの性格は悩ましいが
今更変えるなんてのは今までの積み重ねの否定だからな」

そう呟いて地上近くの観察を続けていた。
81 :神人ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2011/12/20(火) 03:14:03.55 0
地を洗い流し、全ての物を奪い去った雷が消え去った後障壁を解除する。
腕に抱える犬の親子の無事を確認すると内心ホッとする。
しかしそれも束の間だった。
すぐ近くに感じたことのある存在の気配がこちらに迫ってくる事に
ゆっくりと視線を向けると確かに自身の顔にどことなく似ている男がやってくる。
それに続いて艦隊も降りてくるそれは間違いなく討伐艦隊―世界守護者委員会所属に間違いなかった。
男は間違いなく自身に似て非なる存在、恐らく出自もまったく違うのだろう。
彼に対してそこ等にいる他人の空似―そういった印象しか抱かなかった。

「なるほど、この世界ではどうやら超人計画は次元共生群理想郷(アルカディア)ではない所で
推し進められていたようだな」

自身が生まれた出身世界―国に近いコミュニティ(共通意識の元に集まる組織・集団)についてポツリともらす。
この世界は様々な平行世界のテクノロジーを空間ゲートの行き来により習得し発展させており
軍事・民間問わず流用・改良し使われている。
特徴としては基本方針として人々を新たなる段階に平和的に導き共存することであり。
異能などをを持つ超人を生み出す超人計画やパッチと呼ばれる物をつかったりでなんらかの異能を持っており、
普通の人間がいないのが特徴である。
もしくは完全に他人の空似の可能性も高いが、この際今はどうでもいい事だ。

>『……私が何体ものアルコーンを始末している間に、首謀者たるデウスは君たちに仕留められたか。
 まずは手間を省いてくれた事に礼を言おう。手に持つそれはデウスのシャードだな? それを渡してもらおうか。
 過ぎたる破壊の力は、君の様な無思慮な者が所有するには危険な代物。我々が管理しよう。安全も保障する』
『そして……そちらの大蟹も引き渡してくれ。アルコーンと我々は共存出来ないからな』

何も感じていない自身が殺戮者と同じような目をした奴はテイル達にそう慇懃無礼にデウスのシャードの引渡しを要求する
同時にビャク自身には視線は向けないが明確にそして明らかな威圧感と若干殺気や敵意を交えた気を向けてくる。
こちらとしても下手に事を荒立てる積もりはないが、此方としてもどこか同属嫌悪のような物を胸に抱きつつ
それを自分でも無意識に言葉に込めながら反論する。

「…待て、各世界に置いて世界の自浄存在(勇者等の善勢力などの事)に関して彼らに対しては滅亡瀬戸際以外
極力協力関係が推奨され、自己解決させるのが基本のはずだが?
あまりにも強引過ぎれば過度な世界干渉になるはずだ
このデウスのシャードは此方の世界側の物だ、管理権限はこちらにあるはず」

世界守護者委員会では基本中の基本を述べながら主張する。
多世界に対して大きな出来事があった上でその世界が末期であれば強引に消滅させる権限は確かに持っている。
しかし、追い詰められた末期でなく統治とは言わなくてもその世界に法が通っているのならば
それをある程度遵守はしなくてはならない。
非常にややこしくなるものの別世界に逃げた世界を滅ぼす存在を追ってきた恒久戦士は
その世界にいる世界守護者委員会の構成員は協力する義務がある。
担当・管轄に任された恒久戦士が死ねば権限は逃げた世界側に移るが、
裁量権・権限が大きいのは追ってきた方だ。しかしそれも関わる災厄の大きさで臨機応変にも変わるが
普段はこれが通されている。

「シャードの使用権をよってこちら側にある主張する、このアルコーンに関しては今の状況を見て
観察程度の余地はあると思うが?共存できるか出来ないかは今後の判断で決めろ
知略で我々を嵌めるより世界を滅ぼす方が手っ取り早いはずだそれなのにこちら側に付いたのだ
それ相応のリスクは伴うが使える切り札は例えジョーカーでも持っておいたほうがいいのでは?
この世界の状況を見る限りはな」

既に末期に近いように見えるこの世界を見渡せる限りの視線を向けると
抱き抱えた犬達を撫でた。
82 :イョーベール@NPC ◆666/MyrH6U [sage]:2011/12/23(金) 23:21:50.99 0
>>81
「むう、真名が全能とは実に恐ろしい奴だな!
 もう全部あいつ一人でいいんじゃないかなとか、今にもそこのライダーが言い出しそうだ。
 さらに、あれ程の力を持ちながら、奴はまだ変身を一回分は残しているような気がしてならん」

イョーベールは畏れ入ったという感じで、眩しそうにビャクを見つめた。
この大蟹が今までどこに居たのかと言うと、セルメダルの山に埋もれていたのである。
それをオーズが全部吸い上げた事でようやく動けるようになり、テイルの居る場所まで避難して来たと言うわけだ。
解放一番、自分を引き渡せと言われたイョーベールは、ビャクと一緒になって殲滅の騎士に向かって言い放つ。

「いきなり現れて当事者の意思確認も行わず共存出来ないなどとは、あまりにも排他的で狭量じゃないか。
 しかも、引き渡さなければ暴力に訴えようという気配がぷんぷんする。
 廃墟と言ってもいいオーシアに大規模攻撃を掛けるぐらい無思慮な奴なら、そう思われても仕方はあるまい。
 だが、力づくで言う事を聞かせようとしても、こちらは光の神が二柱に竜神が一柱!神人が一人!
 さらに、仮面ライダーとどんな魔力も破壊するゴーレムまでがいる。
 自分でも、言っていて恐ろしさを感じるぐらいだ。
 断言しても良いが、君ら程度では返り討ちに遭うだけだぞ」

スラキャンサーは相手と戦闘になっても此方側に非が無い事を主張する為、まずは理性的に話し合う事にした。
極力無益な戦いを回避するべく、彼我の戦闘力差も言い含める。
威圧や挑発をしているように感じたのなら、間違いなく気のせいだ。
これで問答無用などと言って攻撃してくれば、間違いなく彼らは三流の悪役と言えよう。

『……安い挑発に乗る気は無い。これは何匹ものアルコーン達と戦った上での結論だ。
 デウスの眷属は終末や結末に属する。己が破壊者である事を躊躇わぬようにな。我々とは根本的に違う』

アバウトな説明だけで大蟹とのやり取りを終えた殲滅の騎士が、ビャクを鋭い鉄槍の視線で射た。
イョーベールは終末の巨人や終末の者について説明しようとしたが、殲滅の騎士は口を挟む余裕を全く与えない。
どうやら、スラキャンサーの意思はお構い無しのようである。

『各世界の自浄存在へ解決を委任する事と、過度な世界干渉の自重……か。
 その両目に嵌る硝子玉で、しっかりとガイアを見渡すが良い。
 海洋の古都オーシアを越え、絢爛たるアースランドの栄華を。日剣の繁栄を。竜帝山脈の峻険さを。
 それが見えるか?いや……見えまい。そんな物は残っていないのだからな。
 此処には、この世界の存在達が自己解決出来なかった結果が広がっている。
 彼らの自己解決能力に関しては、欠如していると判断せざるを得まい。
 天地を廻旋し、乾坤を捏造する程の力を扱わせるには、明らかに知恵も力も不足している。
 そして、過度な世界干渉を問われるのは、他世界の住人であるお前たちも我々と同じ立場ではないかな。
 シャードの所有権の説明は……ロード、任せた』

そう言って、殲滅の騎士は背後の女を見た。
彼の背後には、見るからに悪役然とした仮面を付けた人物が立っている。
83 :ロード・ティアマト@NPC ◆666/MyrH6U [sage]:2011/12/23(金) 23:25:17.36 0
「あらあら、挨拶もしないで喧嘩腰なんて……御免なさい。部下の非礼はお詫びするわ」

それがオーシアに着艦した艦船から、斑に焦げる大地へ降り立ったロード・ティアマトの第一声。
貌を竜の仮面で覆う女は、ソプラノの声域で風のそよぎを駆逐しながら言葉を紡ぐ。

「私はティアマト。そこの無礼な男の上司に当たるわ。
 本名じゃなくて称号だけど、悪く思わないで頂戴ね。
 で、そっちは殲滅の騎士。名前は捨てちゃったって設定らしいから、そう呼んで上げて。
 役割についてはビャク=ミキストリと同じよ。
 此方は、だいたいの事情は把握しているから、改めて聞きたい事があればお好きにどうぞ。
 教えても問題無い範囲なら、何でも教えてあげられるわ」

務めて友好的であるかのように声音は甘い。香水に凝縮された薔薇の芳香の如く。
挨拶を述べた彼女は、シャードを持ち続けるテイルに静かに歩み寄った。
今しがた、殲滅の騎士に促がされた話を続ける為に。

「本題に入るけれど、シャードの管理権については微妙な所ね。
 鏡面である筈の二つの世界に、デウス・エクス・マキナが一体しか居ないんですもの。
 これは、ガイアの世界新生を境に世界が分岐した事を意味するわ。
 デウスが存在する世界と、存在しない世界とにね」

ティアマトは指で霊気の文字を作り出し、宙に三つの円を描きながら。滔々と流れる水の如く説明する。

「Aと言う派生元の世界から、B世界とC世界が生まれたとすれば、私たちはBで貴方たちはCね。
 そしてデミウルゴスと言う存在は、Aの世界に属するわ。
 貴方達の目から見れば、デウスが並行世界に逃げ込んだ様に見えるかもしれないけれど、此方側から見れば違う。
 此処はデウス・エクス・マキナが移動しなかった世界なのよ。
 そして、そちら側と全く同じように私たちもデウスを追跡していたわ。
 だから、どちら側の守護者委員会も管理権は主張できるの。
 あっ、勇者に任せるのが一番って点は異論の余地の無い点ね」

竜仮面の女に言葉を切られ、指を下ろされると、霊気の地図は役を終えた様にさらさらと風に崩れた。

「強いてシャード所有に優先権を付けるなら、このガイアの勇者。次に並行世界のガイアの勇者。最後に守護者委員会の順。
 まずは最優先権を持つ、このガイア世界の存在に意見を窺いたいわね。
 貴方にシャードを持つに足るだけの資格があれば、何も問題は無いんだけれど」

ティアマトが水を向け、鏡面世界のテイルを話に誘う。

『うん……実はボクの選択は、もう定まってるんだ。
 ボクはシャードを所有するつもりも使用するつもりも無くて、相応しい人物に預けるつもりなんだ』

虹色の羽を持つ妖精は、迷いの無い明朗さで言った。
そして、彼はオーシアの大地に立つ全員を順番に見ながら言葉を続ける。一人ひとりに問い掛ける様に。

『この虚無の大地の中に光を見出して欲しい。
 ボクはそれが出来た人にデウス・エクス・マキナのシャードを委ねたい。
 光だけじゃ漫然として掴み所に困るかも知れないけど……まあ、光を感じる様な何かを見つけて欲しいって事だよ。
 雷が落ちる直前に、ビャクさんが子犬を見つけたようにね』
84 :テイル[sage]:2011/12/27(火) 01:55:52.61 0
>79-83
荒れ狂う雷が、オーシアを虚無と化した

>『テイル、ビャクさん、火野さんにアンクさん、バラグさんにイョーベールさん……やっぱり全員生き残ったね。
 アヤさんは光を持たなかったから仕方無いけれど』

「光……?」

艦船から降りてきた男が、デウスのシャード、そしてイョーベールさんの引き渡しを要求してきた。

「イョーベールさんはボク達の仲間だ! 渡せるもんか!」

ビャクさんが、謎の男にシャードの所有権を主張し、男がそれに反論する。
よく見ると、二人は似た顔立ちをしている……。

>83
>「あらあら、挨拶もしないで喧嘩腰なんて……御免なさい。部下の非礼はお詫びするわ」

今度は、竜の仮面を付けた女が出て来た。
彼女によると、デミウルゴスがこちらの世界に逃げ込んだのではなく
二つに分岐したうちのデミウルゴスが存在する方の世界なのだという。
そして、テイルBに話が向けられた。

>『うん……実はボクの選択は、もう定まってるんだ。
 ボクはシャードを所有するつもりも使用するつもりも無くて、相応しい人物に預けるつもりなんだ』
>『この虚無の大地の中に光を見出して欲しい。
 ボクはそれが出来た人にデウス・エクス・マキナのシャードを委ねたい。
 光だけじゃ漫然として掴み所に困るかも知れないけど……まあ、光を感じる様な何かを見つけて欲しいって事だよ。
 雷が落ちる直前に、ビャクさんが子犬を見つけたようにね』

「光を見つけろって……」

そう言われても、この世界に形ある物はもう何もない。
ふと、ボク達をこっちの世界に見送った少女の顔が脳裏に浮かんだ。

―― では、皆様どうぞお気を付けて・・・お帰りを待ってます! ――

思い出す、妙なる旋律に乗せた詩――
セイレーンの血を引く少女の、傷付いた魂さえも癒す歌声――
――旋律――歌声?

「そうか、形がある物じゃなくて形の無い物なら!」

通常の魔法体系からは独立して存在する魔法――呪歌――
形がないゆえに、ミルゴですらも作り出す事が出来ず、デウスも破壊できないもの――

「世界を救う鍵は、形ある物が全て壊れても存在し続けられる光は……呪歌、かもしれない……!」
85 :イョーベール@NPC ◆666/MyrH6U [sage]:2011/12/29(木) 05:42:23.02 0
>>84
殲滅の騎士の引き渡し要求を聞くと、テイルは激昂して叫んだ。

>「イョーベールさんはボク達の仲間だ! 渡せるもんか!」

「何とも嬉しい事を言ってくれるじゃないか!」

さて……スラキャンサーの所有権から、デウスのシャードの所有権に話が変わると何やら雲行きが怪しい。
テイルBが光を探せた者にシャードを譲渡したいなどと言い始めるのだ。
しかし、すでにシャードはテイルの手の中にあるので、負けそうならこのままバックれることも一応は可能である。
この漠然とした課題にはテイルも思案していた様子であったが、しばらくすると何かを閃いた様子で言った。

>「世界を救う鍵は、形ある物が全て壊れても存在し続けられる光は……呪歌、かもしれない……!」

テイルの言葉を聞くと、テイルBは意味深な笑みを浮かべる。

『ふふっ、何が正解かなんて問題じゃないさ。ボクは謎解きを求めてるわけじゃないからね。
 重要なのは、何かを見つけられるか。それとも何も見つけられないのか。
 虚無なる世界で思い描いたものを見つけるのは困難だろうけど……君らなら奇跡を起こせるって、ボクは信じてるよ』

テイルBの笑顔は実に胡散臭い。巷に溢れるトリックスターどもと同じくらい胡散臭い。
この手の連中は、概してロクな事をしないものなのだが。

「ふうむ、呪歌が光となるか。それでは呪歌でも歌うか?
 オーシアの生徒なら、呪歌の一つぐらい歌える奴だっているだろう。
 とりあえず、誰か適当な奴を生き返らせてみるぞ。
 レヴィアの手駒だった女と違って、別にオーシアの人間は蘇生を禁じられていないからな。
 とりあえず、影は薄かったが一応面識のあるメルディとレオに掛けてみよう。
 おっと、掛けるのは鏡面世界の二人にだったな」

イョーベールは鏡面世界のメルディとレオにザオリクを唱えた。
しかし、過去にアズリアを生き返らせた実績ある呪文は、これと言った効果を発揮しない。

「ええい!どういう事だ!」

両手で頭を抱えた拍子に、うっかり体勢を崩したイョーベールが前方のゴーレムに倒れ込む。
完全に過失であって故意では無いのだが、家ほどもある巨体の蟹なので下敷きになった方は堪ったものではない。
バラグは還らぬ人となった。色々と適切な表現ではないかもしれないが。

「これは、いかんな……ザオリクが効くと良いのだが」

蘇生の呪文は効果を発揮してバラグは元通りとなった。
ちなみに、この呪文はゴーレムなどの物質系モンスターにも有効だ。

「む……今度はちゃんと蘇ったぞ。別に蘇生呪文が封じられている訳ではないようだな。
 となると、さっきのザオリクが失敗した理由としては、幾つかの理由が考えられる。
 まずは鏡面世界のメルディとレオに蘇生が効かなくなってる場合。
 そして別の理由としては……最初から二人とも死んで無い場合だな。
 何しろ、オーシアには古代文明の遺跡が多々残っている。導師級の魔術師達もだ。
 それらを使って、奴らが未曾有の危機を回避していたとしても、何ら不思議ではあるまい」

他にも理由はあるかもしれないが、0才3ヶ月の大蟹には、これと言って思い付かない。

「うむむ、しかし呪歌はどうしたものか……。
 ところでティアマトとか言ったな。この柱は何だ?学園跡に一本だけ残っているようだが」

何でも聞け、と言ったのを思い出してイョーベールは竜仮面の不審な女に聞いた。
テイルがこれと言った質問をしなかったので、代わりに何か聞いておく事にしたのだ。
何でも質問してくれと言ったのにスルーしたら、怒り出すかも知れないと思っての事である。
生後三ヶ月の大蟹に気遣われる守護者委員会と言うのも、果たしてどんなものだろうか。
86 :ロード・ティアマト@NPC ◆666/MyrH6U [sage]:2011/12/29(木) 05:48:22.02 0
蒼穹の頂きに座す太陽が、黒く焼き尽くされた焦土を睥睨する。
風の啼泣だけが姦しく流れ続ける無人の荒野は、虚無の世界を象徴しているかのようにも見えた。
吹き抜ける潮風はオーシアに訪れた異邦人達を打って、複雑に音程を歪め、怨嗟にも似た叫びを作り出す。
その風の叫び声を掻き消したのは女。巨蟹のアルコーンに問い掛けられたティアマトの声。

「それは祟天の柱。貴方にはこう言った方が良いかしら……枝伐りした世界樹の枝って。
 ガイア世界は、すでに七回世界樹を枝伐りして枝継ぎをしているわ。世界に活力を与える為にね。
 でもガイアは世界構造を変革した事で、世界樹の一部と言う世界ではなくなってしまったでしょ?
 だから今の枝は起源や由来が不明になって、ガイア人も世界樹の枝とは呼称していないのよ。
 オーシアにこれが在ったのは、古代王国時代に魔術の発展に使われていたからね」

『……ロード、そんな化け物の質問にまで馬鹿丁寧に応える必要は無い。
 シャードの所有権が誰に有ろうと、アルコーンは滅殺しなければならないのだからな。
 己が望まれない存在である事は、その魔物とて既に分かっているはずだ』

殲滅の騎士は、血錆の浮いた声で吐き捨てる。
彼にとってデウスの眷属は滅ぼすべき存在。テイルが仲間だと言った程度で認識が変わる訳も無い。
そのテイルを冷然たる視線で射ながら、身体髪膚から殺伐たる気を放つ騎士は言葉を続けた。

『異界のフェアリー、君の写し身は自分で処する覚悟も責任感も無いようだ。そのシャードは此方に渡せ。
 つまらぬ謎掛けに応じろと言うなら、一足先に光とやらを提示させてもらおう』

灰色の外套を纏った騎士が両手を広げると、彼の正面中空には緑翠の燐光を放つ一振りの剣が現れた。
この練気の剣は、純粋な気を練り上げて鍛えられた剣。
単体でも充分な威力を持つ霊剣ではあるが、その真価は別の所にある。

『無駄無しの弓《フェイルノート》』

広げた彼の右手に弓が現れた。
この魔弓に番えて射られた矢は攻撃者が存命している限り、標的が何処に逃れようと軌道を変えて、命中するまで追う。

『真紅の魔槍《ガ・ジャルグ》』

二つの武器を召喚しながら彼にはどちらの武器も構える様子が無く、さらに左手に真紅の槍を召喚した。
どのような魔法も触れた瞬間に消し去ってしまう魔槍を。

『―――武具練成』

戦士が両手に持った武器を練気の剣へ重ね合わせると、三種の武器は陽炎のように揺らいで新たな形を成す。
練気の剣の真価とは別種の力を取り込み、別の武器へと変化する事である。
創造されたのは、練気の剣にフェイルノートとガ・ジャルグの属性を付与された魔剣。
すなわち投擲されれば命中するまで標的を追いかけ続け、魔術による障壁をも無効化する必中の剣であった。
琥珀の炎を纏う剣を鏡面世界の妖精に突きつけると、殲滅の騎士は無感情に声帯を振動させる。

『下らぬ遊戯に付き合うつもりはないが、一応は答えておくか。
 天には太陽が輝く……光あるものだ。この霊剣にも炎が灯る……これも光。
 二つもあれば、お前にも充分な光を感じられる事だろう』

問われた妖精は特に恐れる様子もなく、ゆっくりと首を振って答えた。
君には何の光も感じない……ビャクさんの抱えた子犬にも劣るくらいだよ、と。
対峙する両者の間で張り詰める空気は、さながら今にも割れんとする一枚の薄氷。

「殲滅の騎士、無用の諍いは控えなさい。
 シャードは……そうね、私達は資格ある者が定まるまで様子見させてもらうわ。
 それまでは、喫茶室でティータイムにでも興じていようかしら」

剣呑な空気を察したティアマトは、軽い叱責の声を出して殲滅の騎士を手元に引き戻す。
同時にベルゼナウに向かって歩きながら、思念の糸を旗艦に伸ばして乗組員に警戒態勢を敷かせた。
ビャクの力量を把握した彼女は、イョーベールに関しては彼預かりでも充分だろうと判断している。
だが……妖精の試す様な態度が気に入らない。従って不測の事態に備えたのだ。
87 :神人ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2011/12/30(金) 03:26:19.23 0
>「むう、真名が全能とは実に恐ろしい奴だな!
 もう全部あいつ一人でいいんじゃないかなとか、今にもそこのライダーが言い出しそうだ。
 さらに、あれ程の力を持ちながら、奴はまだ変身を一回分は残しているような気がしてならん」

この言葉に思わず自虐の笑みを浮かべて

「そうでもないさ…いかに沢山力を持っていても救えない人々が居るんだからな」

力はあれど全ての人々を救う事は出来ない―全てを知る事は出来ないのだからそう答える彼はどこか悲しみを背負っているように見えた。

>しっかりとガイアを見渡すが良い。
 海洋の古都オーシアを越え、絢爛たるアースランドの栄華を。日剣の繁栄を。竜帝山脈の峻険さを。
 それが見えるか?いや……見えまい。そんな物は残っていないのだからな。
 此処には、この世界の存在達が自己解決出来なかった結果が広がっている。
 彼らの自己解決能力に関しては、欠如していると判断せざるを得まい。
 天地を廻旋し、乾坤を捏造する程の力を扱わせるには、明らかに知恵も力も不足している。
 そして、過度な世界干渉を問われるのは、他世界の住人であるお前たちも我々と同じ立場ではないかな。

「まだこの世界に住まう者達は滅んじゃいない、それだけでもこの世界にはやり直す力がある 足りなければ付ければ良いだけの話だ生き残る者にはその権利がある
最初か可能性の否定は部外者がするものじゃない、この世界に生きる者がすることだろ!?」

そんなビャクの言葉に意も解さずに殲滅の騎士と名乗る男は入れ替わりに艦から出てきた女に見覚えがあった。
ロード・ティアマト―ビャクの所属している世界側でも最高権力を持つ元老院の一人である
今の所こっちの世界の彼女はそれなりに優秀な科学者であり水面下では様々なことをやっていたようだ
最近自身の独自の理論で作った艦船を実験航海を行った時に行方不明となったが。
ビャクは彼女に対してはいけ好かない女だと判断していたが、こちらでもその認識は変わりはなさそうだ。

>此処はデウス・エクス・マキナが移動しなかった世界なのよ。
 そして、そちら側と全く同じように私たちもデウスを追跡していたわ。
 だから、どちら側の守護者委員会も管理権は主張できるの。
 あっ、勇者に任せるのが一番って点は異論の余地の無い点ね」
「強いてシャード所有に優先権を付けるなら、このガイアの勇者。次に並行世界のガイアの勇者。最後に守護者委員会の順。
 貴方にシャードを持つに足るだけの資格があれば、何も問題は無いんだけれど」

「なんともややこしい事になっているな…まったく余計な事をしてくれる」

そんな愚痴をこぼしながらも
彼女の説明について無言で聞きながらこの世界側の彼女らの言い分も理解できた
その権利があるテイルBに問いかける
彼の選択は決まっていたが、その答えは安易ではなくとても難しい問題であった

>『この虚無の大地の中に光を見出して欲しい。
 ボクはそれが出来た人にデウス・エクス・マキナのシャードを委ねたい。
 光だけじゃ漫然として掴み所に困るかも知れないけど……まあ、光を感じる様な何かを見つけて欲しいって事だよ。
 雷が落ちる直前に、ビャクさんが子犬を見つけたようにね』

「光か…」
抱きかかえたこの地に生きる新しい命―この暖かさはまだほんの小さい光だ
だがこの光だけではこの世界は救えない
それを如何にして見つけるかを悩んだときテイルが何かを思い出したように
その糸口のきっかけを話す。

>「世界を救う鍵は、形ある物が全て壊れても存在し続けられる光は……呪歌、かもしれない……!」
>『ふふっ、何が正解かなんて問題じゃないさ。ボクは謎解きを求めてるわけじゃないからね。
虚無なる世界で思い描いたものを見つけるのは困難だろうけど……君らなら奇跡を起こせるって、ボクは信じてるよ』

「それを光にするのもしないのも俺達次第だ、ならばその呪歌を詳しく知る者は?」

88 :神人ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2011/12/30(金) 18:36:45.72 0
>「オーシアの生徒なら、呪歌の一つぐらい歌える奴だっているだろう。
 とりあえず、誰か適当な奴を生き返らせてみるぞ。
イョベールはそう言って鏡面世界のメルディとレオに蘇生を試みるが その方法はうまく行かなかった
>「ええい!どういう事だ!」

「既に蘇生できないほど手遅れだと言う事じゃないのか?」
ビャクが見る様子からして既にこの世界の生命サイクルが完全に狂っている可能性がある と指摘した矢先に
イョベールは転んでバラグを壊してしまうが蘇生の呪文は効いたようで元に戻る。
そこで彼は自身とは違う仮説を唱える。しかし上記以外にも別の原因も否定できない。

>「うむむ、しかし呪歌はどうしたものか……。ところでティアマトとか言ったな。この柱は何だ?学園跡に一本だけ残っているようだが」
>「それは祟天の柱。貴方にはこう言った方が良いかしら……枝伐りした世界樹の枝って。
 ガイア世界は、すでに七回世界樹を枝伐りして枝継ぎをしているわ。世界に活力を与える為にね。
 でもガイアは世界構造を変革した事で、世界樹の一部と言う世界ではなくなってしまったでしょ?
 だから今の枝は起源や由来が不明になって、ガイア人も世界樹の枝とは呼称していないのよ。
 オーシアにこれが在ったのは、古代王国時代に魔術の発展に使われていたからね」

「全て無くなった世界で唯一残っている数少ない物―それが世界樹の枝に関係する物
何かあるな、この学園と共に残っているのなら意味は必ずあるはずだ」
もしかしたらこの柱がこの学園を守るための学園と世界を切り分ける装置であったとしたら
この学園が残っているというのも辻褄は合わなくもないが
そんな思考を遮る様に殲滅の騎士は横槍を入れる言葉を吐く。

>シャードの所有権が誰に有ろうと、アルコーンは滅殺しなければならないのだからな。
 己が望まれない存在である事は、その魔物とて既に分かっているはずだ』
『異界のフェアリー、君の写し身は自分で処する覚悟も責任感も無いようだ。そのシャードは此方に渡せ。
 つまらぬ謎掛けに応じろと言うなら、一足先に光とやらを提示させてもらおう』
>『無駄無しの弓《フェイルノート》』
『真紅の魔槍《ガ・ジャルグ》』
『―――武具練成』

「貴様、何を考えている!?」
ついには業を煮やしたのかその手に持った剣に弓と槍の特性を混ぜ込み練成する。
ティアマトとは反対に既に対話ではなく武力で全てを解決しようとする言葉とその姿勢に
ほとほと呆れ果てていた。将来全ての記憶と理性を削り、消耗しきった状態でも
こうはなりたくなかった。だがこれが近い未来の自分なのかもしれないと思うと寒気がしてしょうがない。

>『下らぬ遊戯に付き合うつもりはないが、一応は答えておくか。
 天には太陽が輝く……光あるものだ。この霊剣にも炎が灯る……これも光。
 二つもあれば、お前にも充分な光を感じられる事だろう』

「三下チンピラの考え方が身に染み付いているようだなとても知性のある者とは思えん交渉方法だ
刃物をちらつかせれば解決する事態だと思っているのか?」
あまりにも馬鹿馬鹿し過ぎるもはや殲滅の騎士と名乗る奴とはもはや語る舌はないと等しく考えたほうが良いのかもしれない
もしくはあのティアマトの教育が成っていないのかどちらにしろ状況を悪化させる事だけは避けたかった。

>「殲滅の騎士、無用の諍いは控えなさい。
 シャードは……そうね、私達は資格ある者が定まるまで様子見させてもらうわ。
 それまでは、喫茶室でティータイムにでも興じていようかしら」

彼女は殲滅の騎士に対して叱責し、そう言って艦隊の元に戻っていく。
だが彼女はただ手を拱くような人間ではないのはビャクは分かっていた。
決定的な何かがあればそこを突いて全力で動いてくるだろう。
「現状で呪歌を歌える者をこの鏡面世界で探すかあるいはこっち側の世界で探すか
…個人としてはこの祟天の柱には何かがあるのだとは思っているのだがな
どの道光を見つけられる選択肢はこれしか思い浮かばぬ以上此処から選ぶしかあるまい
他にも道があるのならば聞かせて欲しいがな時間がないことだしな」
柱を見つめて今考えられる選択肢を告げる。
この世界には時間がない既に滅び行く世界では一秒でも貴重なのだ
それを早く決めねば何時消えてなくなってもおかしくないのだから
89 :テイル[sage]:2012/01/02(月) 22:28:55.46 0
>85-88
>『ふふっ、何が正解かなんて問題じゃないさ。ボクは謎解きを求めてるわけじゃないからね。
 重要なのは、何かを見つけられるか。それとも何も見つけられないのか。
 虚無なる世界で思い描いたものを見つけるのは困難だろうけど……君らなら奇跡を起こせるって、ボクは信じてるよ』

意味深な笑みを浮かべるテイルB。
イョーベールさんが、試行錯誤の結果、オーシア魔法学校の人々の一部が死んでいない可能性を示唆する。

>「うむむ、しかし呪歌はどうしたものか……。
 ところでティアマトとか言ったな。この柱は何だ?学園跡に一本だけ残っているようだが」

>「それは祟天の柱。貴方にはこう言った方が良いかしら……枝伐りした世界樹の枝って。
 ガイア世界は、すでに七回世界樹を枝伐りして枝継ぎをしているわ。世界に活力を与える為にね。
 でもガイアは世界構造を変革した事で、世界樹の一部と言う世界ではなくなってしまったでしょ?
 だから今の枝は起源や由来が不明になって、ガイア人も世界樹の枝とは呼称していないのよ。
 オーシアにこれが在ったのは、古代王国時代に魔術の発展に使われていたからね」

「世界樹の枝……!? 今も残ってたのか――!」

前の世界のオーシアの人々は、校内に世界樹の枝があった事を知っていただろうか。
おそらく知らなかった。悠久の時の流れの中で忘れ去られていた。
でも、こっちのオーシアの人々も知らないままだったとは限らない。
デミウルゴスの脅威に直接さらされた世界ゆえ、それに対抗するためにこの存在に気付いていたかもしれない。

「古代王国時代、主要な都市は植樹された世界樹の枝を中心に発展したという――
その枝を通じて都市同士を行き来できたらしい」

殲滅の騎士が光を放つ武器を錬成してテイルBに見せているのを余所に、ボクは祟天の柱に近づく。

>「現状で呪歌を歌える者をこの鏡面世界で探すかあるいはこっち側の世界で探すか
…個人としてはこの祟天の柱には何かがあるのだとは思っているのだがな
どの道光を見つけられる選択肢はこれしか思い浮かばぬ以上此処から選ぶしかあるまい
他にも道があるのならば聞かせて欲しいがな時間がないことだしな」

祟天の柱に手を触れ、主要な都市を思い浮かべていく。
すると、鮮明なイメージが次々と浮かんでは消えていく。アースランド、ロンダニア、日剣――
ただし何処もかしこも、見えるのは荒れ果てた大地ばかり。
荒れ果てた大地――はたと思い出した。それなら、空はどうだろうか。
ボク達の世界ではすでに堕ちた、天空都市エリュシオン。
でも、こちらでも同じ歴史を辿っているとは限らない。祈るような気持ちで、思い浮かべる。
すると――、見えた。かつて天使が住まい、最も発達した魔法文明を持っていた美しき天空の都市が。

「行こう――エリュシオンがまだ残ってる!
もしかしたらこっちの世界の生き残りの人も逃げ込んでるかもしれない!」

ビャクさん達に声をかける。
90 :イョーベール@NPC ◆666/MyrH6U [sage]:2012/01/03(火) 20:29:06.00 0
>>87-89
ビャクとテイルが推理を始めた。何も無い世界だけに思考する事は重要である。何かが有る世界でも重要ではあるが。
推理が導き出したl結論は、世界樹の枝を使ってエリュシオンにワープしようというものだった。
しかし、ティアマトの説明によれば、この世界は三ヶ月前の世界新生で生まれている。
従って三ヶ月前の時点で壊れているエリュシオンも、壊れたままであると考えるのが自然であろう。

「三ヶ月前の時点で派生した世界なら、それ以前の状態はこの世界でも同じ気がするのだが……。
 いや!お前たちの考えに賭けてみる価値はありそうだな!
 そもそも、最初から諦めの道しか見えない奴では、永遠に真の勇者にはなれまい。
 全てをハッピーエンドに納めてこそ真の勇者ってもんだろう?誰かの手駒に過ぎん者でさえもな。
 私は行くぞ、最高の結末を目指して!それがどんなに細くて険しい道でもだ!」

イョーベールは仲間を順番に見回しながら言った。
この言葉は、アヤソフィアの死体を通して、此方を観測しているかも知れない存在にも向けられている。
昂然とした口振りのイョーベールは、側面を向いたまま屹立する柱に向かう。
どんなに勇者っぽい事を言おうとも、やはり蟹なのでカニ歩きせざるを得ない。
しばらく進んだ所で、巨大な蟹は何かに気付いた様子で叫んだ。

「そういえば いにしえのゆうしゃは まるで かにのように あるいていたという。
 もしかしたら わたしは しんのゆうしゃに なりつつあるのかもしれん」

大蟹の喋り方も、どことなく勇者を彷彿とさせるものに変わっていた。
さて……蟹の勇者覚醒はともあれ、柱という構築物を用いて移動する方法としては、どのような物があるだろうか。
答えは複数あれど、魔術的には柱を用いて異境に通じるゲートやサークルを作る事が一般的と言えよう。
古代王国時代に於いては、魔術で複数の柱を立て、その位置や方位で様々な場所に渡る門を形成していたと考えられる。
ガイア人の末裔が地球に存在していた事を鑑みれば、世界樹を用いた魔術門は異世界にまで通じていたのかも知れない。
その魔術を知る者は今は誰も居なさそうなので、イョーベールは新しい門を作る事とした。

「わたしの あるこーんとしてのちから えだきりは せかいじゅも きりわけるぞ」

イョーベールは大ハサミで祟天の柱をジョキンと切って、横に真っ二つにしてしまった。
枝伐りとは、枝葉である小世界を大元の世界樹から分離させる用語である。要するに次元切断なので世界樹も切れるわけだ。
真の勇者に成りつつある実感が生まれた傍から、こんなアルコーンとしての能力を使うのはどうなんだろうか。
それはともあれ、切断した柱をイョーベールがデンと地面に突き刺すと、ニ本の杭でまさしく門と言える物が形作られた。
二本の柱の間は陽炎の様に景色が歪んでおり、そこに空間の綻びが生じた事を示す。

「よし、行くぞ!エリュシオンに!」

カニ歩きの大蟹が門の間を潜ると、その先には消えたはずの街並みが在った。
魔法学校を除く、オーシア全ての街並みが以前と変わらずに在る。
しかし、街の外れから見える眺望は青く澄んだアウグルト海ではなく、白く霞んだ雲海の広がり。
敷き詰められたような雲の彼方は、どこまでも続くような青空である。
この街は、かつてのエリュシオンと同じく、大空に浮遊しているのだ。

「ふむ、ここがエリュシオンか?天空都市にしては屋台が並んでいて俗っぽい感じもするのだが」

イョーベールはエリュシオンもオーシアも知らないので、天空都市に抱いた感想もそんなものだった。
この街の人は、突如として広場のど真ん中に現れたイョーベールに対して魔物を見た時の感想を覚えたようだが。
ぎゃあぎゃあ喚きながら、彼らは一目散に逃げてゆく。
ドラゴン並の大きさを持つ、巨大蟹が現れた時の反応としては実に普通である。

『崩壊したエリュシオンの建築資材として、オーシアを丸ごと使ったのか。
 見た限りでは、アーランドや日剣や他の国々も、アーコロジーの一部を形成しているようだね。
 レジナ、ルダメ、ミト、メルディ、もょもと……ガイア人の殆ども此処に集まってるみたいだし。
 リアン、ルド、ソル、ルーチカ、アース、乱堂武、恐山神威、アズリア……光持つ者たちの多くも。
 デミウルゴスの出した解が結実を結ぶ時は、今を置いて他に無い』

イョーベールに続いて世界樹の門を通って来たテイルBは、エリュシオンを見ると感慨深げに言った。
街の人たちに悪いスラキャンサーではない事を説明しているため、イョーベールは聞いていないのだが。
91 :ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2012/01/05(木) 19:18:21.12 0
テイルが祟天の柱に手を触れ、その後に思ってもいなかった手掛かりを告げる。

>「行こう――エリュシオンがまだ残ってる!
もしかしたらこっちの世界の生き残りの人も逃げ込んでるかもしれない!」

>「三ヶ月前の時点で派生した世界なら、それ以前の状態はこの世界でも同じ気がするのだが……。
 いや!お前たちの考えに賭けてみる価値はありそうだな!

「ようやくこの世界にも希望の光が見えてきたな、可能性があるのならば
それに縋るしかあるまい」

イョベールとテイルの言葉に同意するように自身も賛同の言葉を連ねる。
既に事態は逼迫している以上は現状は予断を許さない状況なのだから。
そして早速イョベールはエリュシオンに行くべくアルコーン特有の枝切の能力を使う。
空間の綻びが出来ると共に告げる。

>「よし、行くぞ!エリュシオンに!」

「さてこの行動が吉と出るか凶と出るか…どうなることやら」

イョベールは真っ先に飛び出して、テイルや他に移動する者達と同じく綻びの中に入る最中
小さく呟いて入っていく。
門を模した空間の綻びから身体を完全に抜け出した先の光景は
先ほどの殺風景な無へと帰った退廃的な場所ではなく、本来ならばありふれた空間であった所だろう。
今この世界ではとても貴重な物なのであろうが。

>「ふむ、ここがエリュシオンか?天空都市にしては屋台が並んでいて俗っぽい感じもするのだが」

「此処は生き残った人々の最後の居場所だ、殺風景なあの学園よりは
幾分かマシな方だ」

そうこれが当たり前の光景なのだ普通ならばだ。
しかし以外にも終末思想溢れるギスギスした光景には到底見えなかった。
そんな事を思っているときに鏡面世界のテイルが復興したことに対して
見解を述べた後意味深な言葉を呟く。

>『崩壊したエリュシオンの建築資材として、オーシアを丸ごと使ったのか。
 見た限りでは、アーランドや日剣や他の国々も、アーコロジーの一部を形成しているようだね
光持つ者たちの多くも。 デミウルゴスの出した解が結実を結ぶ時は、今を置いて他に無い』

「ならば此処はやはり生きとし生けるもの全ての砦と言う言葉が相応しいようだ
…デミウルゴスの解……」

それについて何かを尋ねようとした時、バスケットにパンを沢山入れた少女達が近づいてくると
テイル達にバスケットからパンを取り出して差し出してきた。

「貴方達も避難して来た方達ですか?大変だったでしょう、お兄さん達。
よかったらどうぞ」

差し出したパンを受け取り、女の子の頭を撫でると抱きかかえていた犬達にパンを与えた。

(この世界でもまた負けられない理由が出来たな…)

喜んで食べている犬達を見ながらそんな事を思っていた時、既に謎の集団が自分達を囲っていることに
まだ気がついていなかった。
92 :テイル[sage]:2012/01/09(月) 01:24:16.99 0
>90-91
イョーベールさんが、世界は三か月前に分岐したので、それ以前は同じではないかと指摘する。
では、今見えたエリュシオンは何なのだろうか。とにかく行ってみるしかない。

>「よし、行くぞ!エリュシオンに!」

「おう!」

イョーベールさんが作り出した門をくぐり、エリュシオンに向かう。
そこには、以前のオーシアと同じ街並みが広がっていた。

>「ふむ、ここがエリュシオンか?天空都市にしては屋台が並んでいて俗っぽい感じもするのだが」

「いや、この街並みはオーシアだ――!」

周囲の人々が、悲鳴を上げながら逃げて行っている。

「皆さん、彼は悪い蟹ではありません!」

>『崩壊したエリュシオンの建築資材として、オーシアを丸ごと使ったのか。
 見た限りでは、アーランドや日剣や他の国々も、アーコロジーの一部を形成しているようだね
光持つ者たちの多くも。 デミウルゴスの出した解が結実を結ぶ時は、今を置いて他に無い』

「崩落したエリュシオンの浮遊機構を核に各国の力を結集して再構成したってことか……」

>「ならば此処はやはり生きとし生けるもの全ての砦と言う言葉が相応しいようだ
…デミウルゴスの解……」

「デミウルゴスの解――デミウルゴスが世界を分岐させた事には何か重大な意味が……?」

デミウルゴスは、完全な世界を目指すための創造と破壊のプログラム。
自分以外の者の世界新生の企みを良しとしなかったとしたら……
もしかしたら、レヴィアに対抗するためにこちらの世界を作ったのかもしれない。

>「貴方達も避難して来た方達ですか?大変だったでしょう、お兄さん達。
よかったらどうぞ」

「ありがとう!」

パンを受け取り、お礼を言う。
そして子犬にパンをあげているビャクさんを微笑ましく見ていると……何者かの気配を感じた。

「――ディスペルマジック!」

魔法解除の魔法を使うと突然、人影が現れる。
現れた者達は……ノダメ校長、メルちゃん、レオ君――魔法学校のみんなだった。

「もう、びっくりさせないでよ~!」

『驚かせてすみません、今のは”石ころ帽子の歌・改”という呪歌の効果です。全然気付かなかったでしょう』

『今新しい呪歌を急ピッチで開発中なんだ。
普通の魔法は神の力を借りたものだからいくらでも増やせるものじゃない。
でも呪歌は普通の魔法体系とは違う位置にあるから、いくらでも新種が作れる事を発見した』

「それってつまり……神を超える可能性があるってこと!?」

『ここでは何だから世界防衛作戦本部に行って話そう!』

そう言って、世界防衛作戦本部なるところに案内される。
93 :アナザーテイル@NPC ◆666/MyrH6U [sage]:2012/01/10(火) 03:38:51.19 0
【間章・light fantasy.∞ or light fantasy.death】

夕刻を迎え始めたエリュシオンは、薄紫に照り映える雲海を絨毯に。黄昏に塗られた空を天井としていた。
都市の中心部には、魔法学校に代わって城館程もある石造りの建築物が建つ。
アルコーンの攻撃に晒された鏡面世界の住人たちが、彼らへの対策を練るべく造り上げた魔術的な構造物である。
レオに依れば、現在は魔法学校の導師たちが中心となって、新種の呪歌を開発するべく、此処で研究が行なわれているとの事。
続いてメルディが世界防衛作戦本部に行って話そうと、井戸端会議に誘う様な軽快さで、地上からの訪問者たちを招いた。

「世界防衛作戦本部か……ふふっ、一周したようなハイセンスな名前だね。
 ボクも皆に話したい事があるから丁度良いや。お邪魔させてもらおっかな」

鏡面世界のテイルは足取りも軽やかなメルディに続いて、建物の入り口から廊下の奥へと消えてゆく。
内部の幾つもの広間では、種族や年齢を異にした大勢の者たちが輪を作り、喧々諤々と己が魔術理論について論じていた。
とりわけ人が集まっている広間に着いたメルディは、レジナ様!テイルちゃんを連れて来たよ!と陽気に叫んだ。

『……ぬ、なぜテイルが二人もおるのじゃ?ついに斬られて分裂でもしてしもうたか?
 と言うより、この三ヶ月の間、今の今まで行方を眩ましてどこに雲隠れしておった?』

広間に入って来る二人のテイルを見ると、一人の妖精が不審げな物を見る様に、やや腰を屈めながら上目遣いに二者を見比べる。
小柄な妖精は透き通る様な薄衣を纏い、足首まで伸びる翡翠の髪の中程からは、光の加減で色を変える二枚の羽を突き出していた。
容姿は人間の子供にも似ていたが、深い泉の如く澄んだ瞳には長寿の種族特有の愚と賢を併せ持った光を宿す。
この妖精は、フェアリー族を取り纏める族長フェアリー=レジナ。
鏡面の並行世界に於いても、やはり彼女はテイルを旅立たせた人物である。

「族長!そんな事より、これから重要な会議を始めるので議長になって下さい。
 異世界から来た彼らも交えて、皆に一つの選択をしてもらわなくちゃいけないんです」

故郷を同じくする妖精が堰切った様に発する言葉を聞くと、フェアリー=レジナは呆れた様にフッと笑った。
すぐさま精霊を使った告知に依ってエリュシオン全域に会議の開始が知らしめられ、広間には溢れんばかりの人が集まった。
入り切らぬ者たちは別室から、或いは廊下や庭から、魔術の大鏡や水晶を用いて広間の様子を窺う。

『ようお集まり下されたな、各々方。
 此度はフェアリー=テイル・アマテラス・ガイアから、重要な議題の提案があるそうじゃ』

異種族の群衆を前に、妖精族の族長は少しでも威厳を出そうとするかの様に声を張り上げる。
議長の紹介を受けた者、この世界のフェアリー=テイルは、ふわりと宙空に浮揚して周囲に視線を投げ掛けた。
列席者の最前列近くには光の勇者として同行した者たちや、様々な種族の指導者たちが固まっている。
虹の羽を緩やかに動かす妖精は、彼らを順に眺め渡すと、落ち着いた声音で語り始めた。
94 :アナザーテイル@NPC ◆666/MyrH6U [sage]:2012/01/10(火) 03:48:30.09 0
「まずは皆さんの懸案である世界崩壊の危機について、朗報を持って来たので、お聞きください。
 ガイアに破壊を齎したアルコーンは、一人を除いて世界守護者委員の騎士が全て葬ってしまいました。
 彼らを呼んだデウス・エクス・マキナも、今はシャードとなって、異世界から来た勇者の手にあります。
 デミウルゴスに依るガイア滅亡の危機は去ったのです」

光の神の力と名を受け継いだ妖精の言葉を聞き、聴衆には困惑と歓喜の波が生まれ始めた。
しかし、その波は大きなうねりを持つ前に逆態の言葉で即座に制される。

「ですが……この平和も団結も、当然ながら永遠のものではありません。
 デミウルゴスが居なくなっても、世界を滅亡させようとする者は今後も現れ続けるでしょう。
 今も次元の薄壁一枚隔てた並行世界では、レヴィアタンが魔王として暗躍しているようです。
 いつの世も欲動に憑かれた者たちが平和を壊そうとする。その度に悲劇も繰り返される。
 そして、それを終わらせる為、遥かなる太古にデミウルゴスが造られたのです」

鏡面世界のテイルの口から、デミウルゴスが何者であるかが語られ始める。
彼が創造と破壊を繰り返す機械神である事。先代のガイアに憑依していた事。倒されて二つのシャードを残した事を。
それを既に知る者は黙ったまま聞き続け、まだ知らぬ者たちの間からはざわめきが生まれた。

「破壊と創造は輪舞曲の様に繰り返されましたが、その試みは決して無駄ではありませんでした。
 幾星霜もの長きに渡って創世と滅亡を繰り返した末に、彼は遂に完全なる世界に至る道を発見したのです。
 一人の妖精の旅の始まり。一見ありふれた冒険物語の内に……それは在りました
 魂と肉体の深奥に宿る神秘の光。奇跡と希望の光。万象の根源にも至る光を見つけたのです」

猶も語り続ける妖精は、蒼き瞳に煌々とした明星の輝きを宿しながら己と全き同じ姿を見た。
その網膜の奥の奥まで焼き付けんとするかの如く。

「"光"の存在に気付いたデミウルゴスは、それを論理的に解析する為に様々な障害を作り上げました。
 その結果、"光"は障害を経る度に強くなり、共に旅する仲間たちにも伝播していきました。
 破壊者と化して一度は光を失った超人や、最後の検証として送り込まれた光持たぬアルコーンにすら。
 彼らは破滅した虚無の世界から、エリュシオンと言う希望の光をも見つけ出して見せました。
 この確定と不確定が揺らがない筈の世界に置いてさえも。
 間違いなく"光"には再現性がある。"光"を万人が手にする事は決して不可能ではありません」

妖精が言葉を続ける度に、漣の様なざわめきが広がってゆく。
その意味を理解する者、しない者、どちらの心も数え切れぬ疑問符で埋め尽くされてしまったから。

「完全なる世界とは、普遍的に存在する奇跡が全てをハッピーエンドに導こうとする世界に他なりません。
 それが、何度も創世と破壊を繰り返してデミウルゴスが出した結論です。
 死霊皇帝との融和にソフィアの復活、他者との戦いは無くせずとも最後には大団円で報われた。
 殺して終わりでは無く、諍いを繰り返して来た光と闇の種族たちが互いの傷を受け止めて和解し合ったのです。
 何百年も起こりえなかった奇跡的な事象が、たったの数年で幾度も起こった事でガイアの戦乱を解決に導いた。
 これは偶然の連なりではありません。"光"を持つ者でなければ為し得なかった偉業です。
 もしも……誰もがこの"光"を持てたならば、世界は間違いなく理想郷へと変われるでしょう。
 デミウルゴスが創ろうとしていた最も望ましき世界。全ての者が報われる優しき世界に」

語り続ける妖精の眼差しは、見えざる他界の者にまで語ろうとするかのように、何処までも遠い。
対する聴衆は、その全てが唯一人へと視線を集め続けている。

「卑近な言い方をすれば、デミウルゴスが構築したかったのは、ご都合主義の世界とも言えます。
 ご都合主義……なんて言うと拒否感を覚えるでしょうけれど、それは世界を外側から見る観測者の視点に過ぎません。
 世界の内側で生きる者からの視点から見れば、それは間違いなく幸福な世界と言えるのではありませんか?
 そして、"光"を持つ者たちと創世の力を持つシャード。すでに理想郷に至れる鍵は此処に揃っています」

たっぷりと二呼吸程置いて、この世界のテイルは声の届く者全てに向かって告げた。
いや、意志の届く者全てに向かって問い掛けた。

「お集まりの皆さんに問いたいのは、ボク達はデミウルゴスの計画を継ぐべきか、です」
95 :テイル[sage]:2012/01/14(土) 02:03:27.73 0
>93-94
>『ようお集まり下されたな、各々方。
 此度はフェアリー=テイル・アマテラス・ガイアから、重要な議題の提案があるそうじゃ』

もう一人のテイルの口から、デミウルゴスの解、の正体が明かされる。
ボク達が幾度の困難も乗り越えてここまで来れたのは、未来を切り開く奇跡の光を持っていたからだった――。
完全なる世界など存在しない、だからこの世界を破壊させないでくれ、とミルゴは言っていた。
だけどデミウルゴスは完全なる世界に至る答えを見出していた。
万人が"光"を持つ世界。普遍的に存在する光が全てをハッピーエンドに導こうとする世界……。
そして、すでにその世界に至る鍵は揃っているという。
もう一人のテイルが、全ての者に問いを投げかける。

>「お集まりの皆さんに問いたいのは、ボク達はデミウルゴスの計画を継ぐべきか、です」

誰も虐げられない、誰も悲しまない、全ての者が幸せになれる世界――
普通に考えたら当然継ぐべきだろう。でも……そんな世界が本当に成立するのか?
突然の話に、周囲は騒然としている。それを制するように、テイルBが口を開いた。

「突然の話で俄かには信じがたいのは重々承知です。
明日、もう一度会議を開きましょう。そこで答えをお聞きします。」

―― その夜

ボクは夜空を見上げながら、今までの旅を思い出していた。
族長の軽いノリの指令から始まった、世界を救う旅。前だけを見て駆け抜けてきた日々。
当初の目的は、闇の帝王死霊皇帝の封印だった――しかしそこから、常にボク達の周囲で、歴史は激動していった。
かつて人間の少女だったヴァンパイアのアイリスさんとの出会いと、彼女がもたらした死霊皇帝との和解。
第三の神ソフィアの存在の発覚と、その復活。
世界を滅ぼそうとする存在デウスとの度重なる戦い。そして明かされたその正体――。
空に輝く赤い星を見上げて呟く。

「まめちゃん、あなたが言っていた誰も救わなくていい、誰も倒さなくていい結末、とはこの事だったの……?」

妖精――悠久の時を生き人間に寄り添い、物語語る種族。
世界の内にいる住人でありながら、どこか他人事のような観測者の視点を持つ種ともいえる。
完全なる世界は停滞し、そこに物語は生まれない。だけどそれが何だというのか。
世界の内側で生きる当事者はそんな事は知った事ではない。
端から見て面白くないから完全なる世界は拒否する、というのは観測者の傲慢ではないのか。

「ビャクさん、あなたはどう思う……?」
デミウルゴスの解を受け入れれば、亡くしてしまった大切な人にまた会えるんだよ……?」
96 :ビャク ◆hfVPYZmGRI [age]:2012/01/17(火) 01:54:37.01 0
>>92
テイルの魔法解除により現れた人影はこのエリュシオンに避難した魔法学校側の馴染みの人物達であった。
彼らが突如現れるまで気づかなかったその技術は呪歌の技術にて作られた事そして呪歌には無限の可能性がある事を示唆し
細かい話をするため、世界防衛作戦本部なる場所に案内されることに。

「この世界の希望となるかそれとも新たなる騒乱の始まりか…」

何れにしろそれは今の所は未来にならなければ分からない事を口走りながら
世界防衛本部に向かう彼らの後に突いて行くことに。
>>93-95

そして世界防衛本部なる建物の内部に入り、広間にそのまま行くことになる
其処には様々な世代、種族の者達が大勢話し合っている光景を観察していた。
だがそんな事も瞬く間にある議題の名の下に中断することになるが。

>『ようお集まり下されたな、各々方。
 此度はフェアリー=テイル・アマテラス・ガイアから、重要な議題の提案があるそうじゃ』

議題を提案するこの世界のテイルはまずは滅亡が回避された事を告げるその平和も永遠ではない事も
繰り返される悲劇のためにデミウルゴスが作られた事も。
そのデミウルゴスも創世と滅亡を繰り返した末に完全なる世界に至る道を探し出したこと。
そこからはテイルの旅の始まりから今後の重要な議題の中心である
奇跡と希望、魂と肉体の深奥に宿る神秘の万象への至る可能性の光――
それを自身とイョベールの例に、このエリュシオンを見つけ出したことを前面に押し出す。

「人の生きようとする意思と偶然の重なり起こした結果だと思うが
それを奇跡呼ぶのは自由か」

自身が取り戻した光が招き寄せた結果ではなく、単なる偶然と人の生きようとする意志の結果だと言いながらも
その話に冷静な状態で続けて聞き続ける。
万人が"光"を持つ世界、光が全てを笑顔と幸せに導く世界になりえる鍵についての話をした時
その場にいた全員に投げかけた言葉について自身の過去の因縁に大いに思い悩むことになる
二度と取り戻せないはずの物を取り戻せること
己の行ってきた事を全否定することになる言葉を。
97 :ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2012/01/17(火) 02:53:50.36 0
>「お集まりの皆さんに問いたいのは、ボク達はデミウルゴスの計画を継ぐべきか、です」

全てがある意味ご都合主義と呼ばれ、望むまま
悲劇が無く差別や蹂躙されることの無い世界――
口にすることは簡単だが立ちはだかる物は数え切れないほど神が作った不平等以外の何者でもない
障害が無い世界が成立する―普通ならば戯言と一蹴される理想論が現実になる旨を伝えられる。
嬉しいと思わないわけでもないだが心の内を占めるのは己の全てを否定された気がした―
力が足らず自分を守るために散った苦楽に共にした戦友達、愛する人をこの手に掛けた事がが無くなる
確かに無意識に手を掛けた者達が蘇る可能性がある
もちろん嬉しいはずだろう。しかし素直にはそうは思えなかったのだ。
本来死せるはずでなかったとしても自らの意思で役目を理解し覚悟を決めて死んだ者達の否定・冒涜ではないのかと
そんな考えが浮かんだ。

>「突然の話で俄かには信じがたいのは重々承知です。
明日、もう一度会議を開きましょう。そこで答えをお聞きします。」

騒然とする広間をもう一人のテイルはその言葉で締め括る。
しばらくは己の中での葛藤と疑問に悩み、思考を繰り返す。
抱く想いが正しいとは限らないだが大切な人達が生き返るのは良いことなのか
恐らく彼女が蘇っても僕は――
答えが出ないまま延々と繰り返す羽目になるのかと思われた矢先、テイルが突如問いかけてくる。

>「ビャクさん、あなたはどう思う……?」
デミウルゴスの解を受け入れれば、亡くしてしまった大切な人にまた会えるんだよ……?」

「それは本来この世界の人間が決めることだ、私が口を挟む余地は無い事かも知れん
しかし個人の考えとして許されるのなら正直悩む所だな―
会いたい人に会えるしかしそれは命を掛けて己の使命を果たし散っていた死者達の冒涜とも取れる
俺の最愛の人は蘇ったとしても」

殺し合う事になるだろうな、と告げる。
彼女は既に存在概念として全てに滅びと悪影響を与える者となってしまった。
其処に自己の意識などまったく関わらずにだ。
今の自分と彼女が引き合えば必然的に殺し合わなくてはならないだろう
例えどんなに愛し合い相思相愛でも。

「だがそれをこの世界の大勢が肯定するのならばそれも良しだろう。
ただ…本来死ぬべき人間が死なないのだ多世界に影響を及ぼす可能性は十分にある
そうすれば俺は役割を全うする側でこの世界を滅ぼしに来るだろう」

そんな事態にはなっては欲しくなかったがそれが今の自身の役目になってしまっている。
レヴィアの術で永久闘争存在になっても自我を保てるがそれも何時までかは分からない。
今更犯した咎を恨んだ所でどうしようもないが
98 :テイル[sage]:2012/01/18(水) 02:02:46.78 0
ビャクさんが、ボクの問いに答えた。

>「それは本来この世界の人間が決めることだ、私が口を挟む余地は無い事かも知れん
しかし個人の考えとして許されるのなら正直悩む所だな―
会いたい人に会えるしかしそれは命を掛けて己の使命を果たし散っていた死者達の冒涜とも取れる
俺の最愛の人は蘇ったとしても」

「蘇ったとしても……?」

一瞬の逡巡ののち、殺しあう事になる、とビャクさんは告げた。

>「だがそれをこの世界の大勢が肯定するのならばそれも良しだろう。
ただ…本来死ぬべき人間が死なないのだ多世界に影響を及ぼす可能性は十分にある
そうすれば俺は役割を全うする側でこの世界を滅ぼしに来るだろう」

「そんな……」

そんな事は絶対に嫌だ。だからこそ、迷った。
奇跡の光に満ちた世界……
それは、ビャクさんの愛する人の残酷な運命さえも、彼自身の変えられぬ役目すらも、変えてくれるかもしれない。
いや、きっと変えてくれる――。

「ビャクさん、ボクはデミウルゴスの解を……」

受け入れる、そう言おうとした時。
――どこからか歌声が聞こえてきた。セイレーンの血を引く者だけが持つ、神秘の歌声。

―― 闇を照らす 星明かり 久遠の時の 彼方より
―― 記憶運ぶ 旅人よ 我が腕に 抱かれ眠れ 

「――っ!」

頭を抱え、膝を突く。突如として膨大な情報が流れ込んできた……? いや違う、元々持っていた記憶が甦ったのだ。
一人の妖精として生を受ける以前の、女神と一体だった時の全ての記憶。
アマテラスの全ての記憶、光の眷属が住まう概念世界タカマガハラにいた頃の記憶。そして、神々が織りなす壮大なる神話。
そして、ガイアの持つすべての記憶――”星の記憶”。それは、長い長い生命の物語。
光に満ちた概念世界にいた頃……ボクは確かに幸せだった。
でも当時、その事を認識はしなかった。全てが混然一体としていて、それを認識する自我が無かったのだ。
――神話の果てに、やがて神は人を生み出すに至る。
一方、物質世界の生命たちは、悠久の時をかけて命を紡ぎ続けた。無意味とも思える営みの果てに――概念を操る種、人が生まれた。
やがて、人はその概念を操る力をもって神々を生み出した。
神が人を作ったのか、人が神を作ったのか――議論は無意味。そのどちらも真実なのだ。
創世の記憶は時の彼方となり、光の神と闇の神が対立し、人と神が同時に存在する事が当たり前となって久しくなったこの時代に……
ボクは固有の人格を持つ固体、”フェアリー・テイル”として生まれ落ちた。
花香り水せせらぐ妖精の森にいた数十年間……ボクはやっぱり幸せだった。でもやっぱり、自分が幸せだなんて一度も思った事がなかった。
そして、長い長い記憶の中では本当についこの前。族長の命を受け、世界を救う旅に出た。
ついこの間のはずなのに、もう随分昔の事のように思える。

悠久の記憶の旅を終え、気が付くと、目の前で少女が微笑んでいた。

「ふふっ、新しく覚えた呪歌です。
忘れてしまった遠い昔の事を思い出させる歌――遠い記憶《ロストメモリー》」

ボクは、少女――ルーチカちゃんと、ビャクさんに告げた。

「ルーチカちゃん、ビャクさん、ボク決めたよ――」

その答えが、間違いだったとしても、とんでもない自分勝手だったとしても、ボクは……
99 :テイル[sage]:2012/01/18(水) 02:03:58.99 0
―― 次の日

再び作戦本部に人々が集まり、この世界のテイルが問いかける。
問いかける、というよりは確認する、と言った方が正しいだろうか。

「皆さん、デミウルゴスの解を受け入れる覚悟は出来ましたか?」

「受け入れない――」

そう言い放ったボクに、皆の視線が集まる。

「ボクは知ってる……何の苦しみも悲しみも無い穏やかな世界を。でも、それは何もないのと同然だったんだ。
御存じのように、ボク達はここまで世界を救う旅をしてきた。辛かった、苦しかった、悲しい事もたくさんあった。
でも……どうしてだろう。楽しかった。世界を救う使命を胸に、仲間達と共に駆け抜けた日々が、本当に楽しかったんだよ」

誰も傷つかない穏やかな日々よりも、怪我人も死人も出る冒険が楽しかったとは、よく考えれば不謹慎極まりない発言だ。
とても正しいとは言えない結論だ。それでいい。
ボクにとって重要なのは、正しいか正しくないかじゃない、楽しいか楽しくないかだ。
昔から妖精とは善悪の概念が薄いもので、神様に至ってはやりたい放題するもので。
ボクは妖精で神様なのだ。まともなはずがない。

「ボクは妖精――物語の語り手。だから安心して、世界《物語》をここで終わらせたりはしない。
これは序章の終わりだ。未来へ繋ぐプロローグだ。必ずやレヴィアタンを倒し、未来を切り開く――!
だから……お願い、力を貸して! 光持つ者達よ――!」
100 :アナザーテイル@NPC ◆666/MyrH6U [sage]:2012/01/20(金) 07:58:26.16 0
街の中央部に通じる通りでは、冷涼な風が街路樹の葉を揺らし、時が流れている事を知らしめていた。
この世界は息絶えていないのだと、風に揺れる木々は静やかに謳う。
歩道や石柱に埋め込まれ、淡緑の微光で夜闇を溶かす夜光石は、空が薄紫を帯びた頃には発光を止めていた。
もはや街に魔術の光源など不要なのだ。エリュシオンには朝が訪れたのだから。

吹き流れる夜明けの風は大きな構造物で止まった。世界防衛本部と名付けられた建物の白壁にて。
この建物全体の周囲は人工の貯水路を巡らせており、曙光を浴びる水面には光の微片が煌めき始めていた。
建物の内部は、研究施設や意志決定機関の置かれる外廷。居住空間である内廷。両者を挟む中庭で構成される。
その何処でも誰かが忙しなく行き来し、入口でも屈強な亜人の男と入れ違いに、青白い肌の女が中に入ってゆく。
外廷中核に設えられた大広間では、未だ終わらぬ堂々巡りの議論が繰り返されていた。

『過去の事だけではなく、未来の事も考えれば、私は賛意を表す。
 飢餓や疫病、虐待や暴力、果ての無い争い……今までの世界では不遇の死を遂げた者達にも幸せが約束されるのだ。
 それを……否定できるだろうか? これから無限に生まれてくる"報われぬ者達"に、そうであれと言えるのか?
 例えば、生まれて間もなく死んでしまう罪なき赤子が生まれるとして、彼にそんな世界を選ぶ方が是であると。
 幸福の総量は人生で決まっていると言うが、それを受け取る前に死んでしまう者が出ないなら、実に公平ではないか』

『皆が幸せなんて世界有り得るわけ無いわ。食う者と喰われる者がいれば……両者の幸せをどう成り立たせるの?』

『ハッ、俺は訳の分からん機械の発案ってだけで御免だね。
 必ずハッピーエンドで終わるだって? そんなもん糞喰らえだ』

『ハッピーエンドって事は……要するに、過程で苦労する事が有っても結果は大団円になるって事だろ?
 特にデメリットが無いなら、いいんじゃねえかな?』

『ふむ、理想の世界と言うと、やはりアレフガルドに他なるまい。ドラクエワールドは大団円を保証しよう。
 ロトの子孫の伝説も英雄物語。つまり成長物語として理想的な構図なのだが……むう、しかしここは実に狭いな』

『叶わないはずの無い理想が、いざ実際に叶いそうになるなんて……なんだか怖いですね』

種族も信仰も思想も様々な彼らは、世界の岐路について夜が白むまで話し合った
しかし、同じ種族の間でも意見を違える者は珍しくなく、同じ意見の中ですら動機が異なっていた。
議題が己の尺度で量り知れないだけに、群衆の協議も一向に進む気配を見せない。
弁の立たぬ者は勢い腕力を用いそうになり、それを宥め終われば話は再び振り出しに戻っている。

群衆は皆が皆、異なる理想の世界を心に描く。彼らの心の内で創られた世界に一つとして同じ物は無い。
しかし、完全なる世界で生きた事のない彼らが、本当の意味で完全なる世界を思い描く事など出来ようか。
完全な世界への解釈は、写し身である二人の妖精の間ですら違うのだ。
一方は物語の始まらない傷無き世界。もう一方は誰もが報われる事で物語を終える傷無き世界、といった具合に。
全員の意志統一など、それこそ奇跡でも起きなければ有り得ぬかと見えた。
主張と論述、論駁と反論とで保たれていた大広間の平衡は、議題の主催者が戻った事で破られる。
壇上に上ったこの世界のテイルは昨日の問い掛けを繰り返した。デミウルゴスの出した答えを受け入れるかとの。

>「受け入れない――」

否みの言葉がフェアリー=テイルの口から発され、デミウルゴスの遺志を継ぐ事を撥ねつけた。
101 :アナザーテイル@NPC ◆666/MyrH6U [sage]:2012/01/20(金) 08:01:07.57 0
>>99
テイルが受け入れないと断じた瞬間、彼の所持するシャードは微かな振動音を鳴らす。
もう一人のテイルは、ただ広間の壇上から視線を送り、冒険の楽しさを語り続ける妖精を眺めるのみ。

>「ボクは妖精――物語の語り手。だから安心して、世界《物語》をここで終わらせたりはしない。
>これは序章の終わりだ。未来へ繋ぐプロローグだ。必ずやレヴィアタンを倒し、未来を切り開く――!
>だから……お願い、力を貸して! 光持つ者達よ――!」

大広間の隅々まで届く高らかな宣言を聞き、テイルの写し身たる妖精は思案する素振りを見せた。
そして、漣の喧騒が広がる大広間に向かって、やや砕けた様な口調で語り始める。

「レヴィアタンを倒すのは奇跡に満ちた世界でも出来る。其処ならば彼女が改心すると言う結果も伴うだろう。
 全てが大団円に向かって終熄する世界なら、如何に死闘を繰り広げようと、結末はそうなるはずだからね。
 でも……予め報われる事が約束されるのなら、興趣は削がれるとも言える。
 読む前から、この物語書は万事丸く収まると知らされるに等しいから。
 それを望まないのならそれも良い。だけどこれは全てのガイアの未来だ。
 ボクも少し語らせてもらおう……ガイアでは無く、最後のデミウルゴスとして」

聞き逃せぬ最後の一言は、大広間の中に不信と疑心とを播種して群衆を沈黙させた。
その作られた沈黙の中で静かに声が響く。
蒔かれた混乱の種から敵意が開花する前に、発言者は言葉の鎌を以て、芽の内に取り除かんとする。

「世界を物語として観る神は、自らがデウスの力を持ったままなら、確実に光持つ者と戦いになると見た。
 そして、光ある者の物語を計算した結果、自分が敗北するとの結論を導き出した。
 戦って倒すという方法では"光"を得る事は出来ない。デミウルゴスは絶対に"光"の前に敗北する。
 この予想から彼は今までの戦略を変更した。破壊の力と敵である立場を放棄して、意志をボクに託すってやり方で。
 万人が報われる世界……ボクは、これを拒む為の言葉を見つけられなかった。悪くないと思えた。
 だからデミウルゴスの意志を受け入れた。無限の奇跡に満ちた世界を創る遺志を。
 つまり……ボクはデミウルゴスだとも言える」

熱弁を振るう様に見えて、論者の言葉には重い質量が感じられない。
少なくとも、意見を異とする者に翻意を促す程ではなかった。

「このデミウルゴスは虚無と破壊を齎す敵ではなく、絶対の幸福を約束する味方だ。
 全てが幸福になる世界は目の前にある……世界が新しい命を得れば、ね。
 例えるなら、芋虫が蛹の殻の中で己を美しい蝶の姿へと再構築するのに等しい」

さらに、先程のテイルを真似るようにして結びの言葉を述べる。

「ボクは神―――物語の語り手。救われぬ者は誰ひとり出さない。
 全ての人物たちの生涯《物語》に、報われたと言える結末を約束する。
 だから……お願いだ、力を貸してほしい。光持つ者達よ!」

壇上の妖精が語り終えた瞬間、機械神の力を秘めた二つのシャードには、砕ける薄氷の亀裂が入った。
対なるシャードは見る間に形を失い、千々に砕け、砂の塊となって零れ落ちてゆく。
デミウルゴスを継いだ妖精は、理想郷の扉を開く鍵が失われる様に悲鳴を上げた。

「何故……どうしてっ!」

『どうやら、この世界にはドラクエより共作のRPGツクールの方が、面白いと思う連中が多かったようだな。
 テイルよ……もうガイアにはデミウルゴスの呪縛は必要あるまい。
 いや、デミウルゴスの棋譜上だった光の物語“light fantasy”は、とっくに奴の手を離れていたんだろう』

アルコーンのイョーベール。元はデミウルゴスの眷属であった大蟹が述べる。
声を掛けられた妖精は、大広間の石畳に落ちるニ握りの砂山を見た。
目に見えず、鼻にも嗅げず、精神の魔境に静かに誘っていた毒気の残骸を。

「シャードが砕けたのは、ボクが本当には望んでなかったら、か。
 完全な世界は、ボクも幻想の彼方に置いときたい気持ちが無くは無かったから、ね。
 キミの言葉を聞いた時に、ボクはデミウルゴスを拒む決意を決めてしまったのかも知れない……」
102 :アヤソフィア@レヴィア ◆666/MyrH6U [sage]:2012/01/20(金) 08:07:27.25 0
【「やって……くれるわね。まさか愚かにもシャードを壊す、なんて」】

大広間には死を連想させる香料が加わっていた。死臭を伴う納骨堂の匂いが。
死を香らせるのは火野の手で市街の霊安室に運ばれ、半日を経過させたアヤソフィアの屍。
肌の色を蒼褪めた月とし、シニヨンを解いて金髪を靡かせる彼女は、傀儡の如く此処まで歩かされて群衆に紛れた。
そして声を発する。他者の意志と力で言葉を発せられる。屍に自我は無いのだから。

不帰の人となった彼女を動かすのは、無論レヴィアの他にはいない。
アヤソフィアの遺体を火葬されなかったのは、屍をも観覧席とする者にとっては幸いだった。
彼女は己の敗北を必須とされる世界が創られる事を阻めればと、躯を群衆の中に紛れさせて様子を窺っていたのだ。
しかし、此処には最低でも三柱の神が存在する。一体の屍で状況を変えるのは不可能。言葉で動かす他は無い。
もっとも、テイルは何の干渉を加えずとも、すでにレヴィアにとって望ましい選択を決めている。
ただ、選択自体は望ましくとも、結果までは望ましいものとはならなかった。
複合シャードにデミウルゴスを加える事は、出来なくなってしまったのだから。

【「本当に……アナタは……私の望ましい方に動いてさえ、私の邪魔をする」】
【「エゴで動く。綺麗事で誘い水を向け、相手の口から望む言葉を抽き出そうとする」】
【「すっかり、神様として振る舞えるようになったじゃない?」】
【「それに私を倒して未来を切り開くですって? それなら私もアナタを倒して未来を切り開くわ」】
【「私の世界には、神も奇跡も、魔法も幻想も不用なのよ……妖精もね」】

観劇者たるレヴィアが、観劇を止めて席を立ったのだろう。
言い終えたアヤソフィアの体が、くたりと膝を崩して前のめりに床へと倒れた。

レヴィアタンが居とする場所は、世界が新生する以前、世界樹の種に僅かに生まれた濁りの中である。
他の世界を混沌に還元した後、唯一残る事となる世界であった。
己の居た街を模して造った仮の住まいで、異世界の観測を止めたレヴィアは思案する。
カオスの勇者に世界守護者委員会……時間が経過するごとに、彼らが此処を突き止める可能性も高くなる。
時を掛ければ掛ける程に自らの身は危うくなる。急がねばならなかった。
デミウルゴスのシャードは失われたが、無を操る紫のメダルは、まだ火野の胸に5枚を残していた筈である。
それをたったの1枚でも構わない。最悪でも自分一人を守れるだけの虚無の障壁を張れる様に確保しなければ……。

アヤソフィアを観測するレヴィアには彼女の位置から、エリュシオンの正確な座標も把握できていた。
しかし、直接空間を繋げるような真似をすれば、此方の位置も感知されてしまう。
此処から別の場所を中継として、エリュシオンに繋がる魔法陣を造るには最低でもニ時間。
エリュシオンに渡る準備をする為、レヴィアは無人の教会の一室にて魔法陣を描き、儀式魔術を始める。
103 :テイル[sage]:2012/01/24(火) 21:56:42.86 0
テイルBは、鏡面世界のボクは、デミウルゴスの遺志を継ぐ者だった――。
そして、テイルBの言う、全ての人が光持つ世界は、ボクの思い浮かべたものとは少し違っていた。
ボクが思ったような、物語が生まれない穏やかに停止した、だからこそ絶対的な幸福が約束された世界ではない。
波乱万丈の物語の末に、全ての人が報われる世界。

>「ボクは神―――物語の語り手。救われぬ者は誰ひとり出さない。
 全ての人物たちの生涯《物語》に、報われたと言える結末を約束する。
 だから……お願いだ、力を貸してほしい。光持つ者達よ!」

テイルBが語り終えた瞬間、二つのシャードが砕け散る。

>「何故……どうしてっ!」

動揺するテイルBとは対照的に、ボクは不思議と冷静だった。
せっかく苦労して手に入れたデミウルゴスの力が借りられなくなってしまったというのに。

「これで……良かったんだよ。
キミが思い描いたのは、人生の過程で何があろうとも最後は幸せに終わる世界――。
でも生涯《物語》のハッピーエンドって、何だと思う? 巨万の富も、どんな地位も名誉も関係ない。
そんなの人の数だけある。死ぬときに、心から幸せだったと思えるか、なんじゃないかな。
それならば話は簡単。人生の最期の一瞬、どんな人でも幸せだったと思う法則に支配された世界を作ればいい。
そうすれば全ての人にハッピーエンドが訪れる世界が、何の矛盾も無く実現する。
そんな世界、神が被造物の反逆を許さずに支配し続けるための欺瞞でしかない――」

>『どうやら、この世界にはドラクエより共作のRPGツクールの方が、面白いと思う連中が多かったようだな。
 テイルよ……もうガイアにはデミウルゴスの呪縛は必要あるまい。
 いや、デミウルゴスの棋譜上だった光の物語“light fantasy”は、とっくに奴の手を離れていたんだろう』

今までの冒険が記録された”ぼうけんのしょ”を見返す。
人間界に赴き勇者を探しだし、闇の帝王を打ち倒し世界に平和を取り戻せ――!
絵に描いたような王道から始まった冒険の物語は――
何時の間にやら複数の作者が打ち合わせも無く好き放題したような、行当たりばったりの怪作となっていた――。
ノダメ校長が書籍化して売り出す気満々だったが、とても売れたもんじゃない。
でもボクには――どんなに整った完璧な物語よりも、輝いて見える。
そこには、世界を操る神デミウルゴスの手を易々と離れ、無限の可能性を切り開いていく力《光》があった。

>「シャードが砕けたのは、ボクが本当には望んでなかったら、か。
 完全な世界は、ボクも幻想の彼方に置いときたい気持ちが無くは無かったから、ね。
 キミの言葉を聞いた時に、ボクはデミウルゴスを拒む決意を決めてしまったのかも知れない……」

「断言するよ! 完璧な世界《物語》なんてやっぱり存在しない――。
それは幻想の彼方に置いて永遠に目指し続けるものだ。だって、完璧な物は唯一無二なんだから。
そんなものが本当にあったら全部の《物語》が同じになってしまうでしょ? そんなの詰まらないじゃん!」
104 :テイル[sage]:2012/01/24(火) 22:25:53.86 0
>【「やって……くれるわね。まさか愚かにもシャードを壊す、なんて」】

背筋が凍りつくような声が、場の雰囲気を一変させる。
声を発しているのは、死んだはずのアヤさん、いや違う――!

「レヴィアタン――!」

>【「本当に……アナタは……私の望ましい方に動いてさえ、私の邪魔をする」】

「お生憎様、キミの思う壺にはまってやる気はないんでね」

>【「エゴで動く。綺麗事で誘い水を向け、相手の口から望む言葉を抽き出そうとする」】

「何を今更。ボクは最初からそうだ」

妖精――穢れ無き純粋さの裏に残酷さを、無邪気さの奥にある種の邪悪を隠し持つ。
その心は、どちらが表に出ているかの違いだけで、本質的には妖魔と同じ。
時には世界のために――時には三食昼寝付き――相手に合わせて様々な甘言でもって、善良な人達を過酷な戦いへ誘う。
いたいけな少女を死の戦場へと誘う魔法少女もののマスコットと一緒だ。

>【「すっかり、神様として振る舞えるようになったじゃない?」】

「ふふっ、そうかな?」

言われてはじめて気付く。
以前のボクなら、さっきみたいな事を言われたら、顔真っ赤にして違うと食って掛かっていただろうか。
一介の妖精から神様になっただけのことはある。

>【「それに私を倒して未来を切り開くですって? それなら私もアナタを倒して未来を切り開くわ」】

「望むところ、手加減なしのガチバトルだ――!」

>【「私の世界には、神も奇跡も、魔法も幻想も不用なのよ……妖精もね」】

「ボクの世界には、神も奇跡も、魔法も幻想も必要だからね……もちろん妖精も!」

ボクは神にして妖精、幻想世界の寵児、奇跡と魔法の権化――。
自分の存在を否定して来る者とは、真っ向勝負あるのみだ。
105 :テイル[sage]:2012/01/24(火) 23:57:20.06 0
レヴィアタンが言葉を紡ぎ終えると、アヤさんの体は、糸が切れた操り人形のように倒れた。

「アヤさん、ボクは倒すよ……ボクに殺されるためだけに貴方を作った、あなたの生みの親を」

たとえ殺されるために生まれた生命だったとしても……一瞬でも、幸せだと思える時があっただろうか。
今となっては誰にも分からない。でも、そうであったとボクは信じよう。
人々が騒然とする中、ボクは壇上に登る。

「間もなく、海魔の王レヴィアタンがここに来るだろう。
《光》持つ者達を倒し、この世界を滅ぼし、彼女が王として君臨する新たな世界を作らんがために――
ボク達が《光》を持つように、おそらくは彼女もまた《光》を持つ者だ。
ボク達にとって彼女が倒すべき悪であるのと同じように、彼女にとってはボク達こそが倒すべき悪だ。
だから勝てる保証は、はっきり言って、ない。だからお願いだ、みんなの力を貸して欲しい!
ボクのために、君達自身のために、この世界の未来のために――!」

この期に及んで、自分でも驚くほど小奇麗な演説がスラスラと出てくる。
綺麗事で誘い水を向け、相手の口から望む言葉を描き出そうとする。レヴィアタンの言った通り。
この世界の神の性質上、信仰を集めれば集める程力が増すのだ。要するに、体のいい利用。
それでいい、綺麗事を貫き通して、必ずや真実にする――!

周囲を見回すと、今まで一緒に旅をしてきた仲間たちと、戦ってきたライバル達がみんないる。
打倒死霊皇帝に燃えていた、初期の頃の皆に向かって――。

「世界を喰らう魔王を倒す、異世界の勇者の冒険――初めて森を出て、人間の世界に触れて楽しかったよ!
これはやっぱり、魔王を倒す、勇者の冒険譚だったんだ。王道で始まった冒険、最後ぐらいは王道で締めよう!」

第三の神ソフィアを探し求めた、中期の頃の皆に向かって――。

「第三の神を探し求め、世界の秘密を解き明かす冒険――明かされていく世界の真実にワクワクしたよ!
この世界にはきっと、まだまだ謎がある。ここで潰されちゃ勿体ない!」

デミウルゴスとの戦いを繰り広げた、後期の頃の皆に向かって――。

「世界を滅ぼそうとする神との戦い――彼の野望を阻止する度に、今まさにボク達は世界の滅亡を阻止したんだって思えた!
でも、全ては、この世界の全ての人がハッピーエンドを迎えられるようにするためだったんだ。
どんな形であれこの世界の事を考えてくれた人の想い、無駄にしたくない!」

そして――ここまで共に来てくれた仲間達に向かって――

「ここまでついてきてくれて本当にありがとう――。君達のお蔭で、ボクはここまで来れた……。
もう一つだけ、お願いを聞いてほしい。……折角だから、もう少しだけ、付き合ってくれるかな――?」
106 :ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2012/01/25(水) 02:46:07.51 0
テイルに己が導き出したいや恐らくはそうなってほしくは事を告げる。
その言葉に対して明らかに迷いを見せた。
しばし間を置いて決断を切り出した。

>「ビャクさん、ボクはデミウルゴスの解を……」

その答えを真剣な表情で聞いていたその時、どこからか神秘的で懐かしい物を感じる
歌声が耳に入ってくる。
かつて超人計画の名の下に名も無き『』(無銘)の超人として生まれた時、そして後の最愛の人、シスターであったイリューシャ・ブリュンヒルトとの出会い
彼女を守るために理想郷郡―アルカディア軍に入った事、そこから戦友である虫使いの少女ルーファ、サンジェルマンを名乗る錬金術師と自分に対して絶対の忠誠をそれ以上の愛情を持ち慕ってくれていたくの一静葉との出会い
数々の出会いと別れを経験し、幾多もの冒険、戦いの先の果てに迫られる自身の選択世界と愛する人を天秤にかけた結果、一つの世界の崩壊―仲間との決別
失われた世界の生命達にかけられた怨嗟と怒りが込められた自身を縛る呪い―己の咎から逃避、贖いのための永遠の戦い
恒久戦士として始めての仕事から現在今に至るまでの記憶が蘇る。既に語り尽くすには多くの時間を費やすが
それは一瞬で逡巡し、歌が終わるまでに全て振り返ることが出来た。
忘れていた、とても大切な事を思い出せたのかもしれない。

「これは一体―」

>「ふふっ、新しく覚えた呪歌です。
忘れてしまった遠い昔の事を思い出させる歌――遠い記憶《ロストメモリー》」

遠い昔―既に失って久しい取り戻せない物も多くあるしかしそれも己の全てを振り返ることが出来た
もう戻ってこないが、最初に抱いていた大事なこと思い出すことが出来た。
この呪歌を聞いたテイルは先ほどとは打って変った清々しい表情で答えを決めたようだ
それでこそ本当の答えを。

>「ルーチカちゃん、ビャクさん、ボク決めたよ――」

「お前が後悔しない選択肢を取れば良い。俺とは違いお前は縛られていないんだ
好きに決めればいい、最後までは付いては行けないがな
その責任は全うしろよ」

もはやその答えは聞くまい、奴の中で決まっているのならば
立ち上がり、すぐさまにその場から立ち去った。
107 :ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2012/01/25(水) 03:21:27.92 0
翌日、答えを言う刻限がやってくる。
様々な人たちはいろいろ話し合い、答えは定まらない
作戦本部の入り口から腕を組んでテイルの動向を見守っていた。
その答えは―

>「皆さん、デミウルゴスの解を受け入れる覚悟は出来ましたか?」
 「受け入れない――」

>「ボクは妖精――物語の語り手。だから安心して、世界《物語》をここで終わらせたりはしない。
これは序章の終わりだ。未来へ繋ぐプロローグだ。必ずやレヴィアタンを倒し、未来を切り開く――!
だから……お願い、力を貸して! 光持つ者達よ――!」

人々はこの答えにざわめき始めるが、もう一人のテイルは此処で騒ぐ周囲にかけて話しかける。

>「レヴィアタンを倒すのは奇跡に満ちた世界でも出来る。其処ならば彼女が改心すると言う結果も伴うだろう。
 全てが大団円に向かって終熄する世界なら、如何に死闘を繰り広げようと、結末はそうなるはずだからね。
 それを望まないのならそれも良い。だけどこれは全てのガイアの未来だ。
 ボクも少し語らせてもらおう……ガイアでは無く、最後のデミウルゴスとして」

最後の言葉にアナザーテイルに対して視線を向ける
薄々何か彼にはあるのではないかと思っていたが、自分としても予想を上回る物のようだ。
話をさらに吟味するため聞き続ける。
テイルと言っていることは違うが、万人が救われる世界を目指している
それは間違いない。そしてテイルと同じようにもう一人のテイルはシャードに求める答えを届ける。
彼の言葉にシャードが答えた反応は亀裂が粉々に砕けた後、砂となって消えていった。
悲鳴を上げたデミウルゴスを付いた妖精に、かつてのアルコーンが述べた言葉に対して
皮肉をその場にいる全ての人物に呟く。

「答えは最初から決まっていたではないか、人はそれぞれの物語を持っている
それは最初は面白いかもしれん。しかし決まり切った結果に満足できない輩もいる
完璧ではないからこそ無限の可能性を秘めている―それこそ完璧のその先を行くこともできる
そうは思わんか?」

この言葉を最後に、防衛本部から出ようと扉に向かう。
間違いなくレヴィアタンはこの事を何処からか見聞きしているはずだ
それまでには自分の所属していてた側の世界守護者委員会の生き残りを乗せた弩級戦艦が来るかも懸けに近い
故に自身も行動を起こしたほうが良いと判断したその矢先
予感が正しかった事ようだった――


108 :ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2012/01/26(木) 02:04:52.90 0
>【「やって……くれるわね。まさか愚かにもシャードを壊す、なんて」】

聞き覚えのある声はこの話し合いの中にいつの間にか混じっていた死んだはずのアヤソフィア・レヴレンの骸から発される声。
この事にすぐに胸の内に詰まっていた怒りという感情を爆発させる。

「レヴィアタン、貴様!死者を冒涜する真似を!!」

既に死した者を利用してまでもいや例え作られた存在だとしても生まれた一個の生命が宿っていた者に対して
それを無視する彼女の遣り方に言いようのない怒りが燃え盛る。
テイルとのやり取りの最後に吐いた言葉―宣戦布告
>【「それに私を倒して未来を切り開くですって? それなら私もアナタを倒して未来を切り開くわ」】
【「私の世界には、神も奇跡も、魔法も幻想も不用なのよ……妖精もね」】

「不要は貴様の方だ、レヴィアタン!!貴様に掛けられたこの呪いは貴様に返すとしよう
合間見えたその時が貴様の命日だ!そのようにアヤソフィアの身体を弄んだ罪は万死を持って償わせる!」

その宣戦布告を受け取ったと同時にこの身に掛けられた奴の術式が奴の命取りとならん事を告げる。
宣言が終わった後、あたかも不要とばかりに捨てられたように倒れるがすぐさまに駆け寄り
その身体を抱きかかえる恐ろしく軽いその身体を持ちながら、彼女にテイルは語りかける。

>「アヤさん、ボクは倒すよ……ボクに殺されるためだけに貴方を作った、あなたの生みの親を」

「命を弄ぶ存在は我々の敵だ―そうだろうアヤ、お前の仇は俺が取る。
最後まで信じてやれなくてすまなかったなお前の意思ではなかったというのに…」

彼女を最後まで信じ切る事が出来なかったことを心から謝罪しながら、壇上に登るテイルに視線を向けた。
まもなくレヴィアタンはこの世界にやってくること、皆の力を借りたいこと
王道を貫き、この世界を思ってくれた人達の想いを無駄にしないためにも
役目など関係ない、男にも言ったはずだ己の信じる道を貫けと言った本人が貫けなくてどうする

>「ここまでついてきてくれて本当にありがとう――。君達のお蔭で、ボクはここまで来れた……。
もう一つだけ、お願いを聞いてほしい。……折角だから、もう少しだけ、付き合ってくれるかな――?」

「乗りかかった船ということもあるが、男にも言った己の信じる道を行けとそして守るべき者を違えるなと
今のお前達は守るべきものだ、俺はお前達の為に戦おう。地獄だって笑って見せると男が言ったんだ――
俺もこの戦いの先が地獄になるとしても笑って進もう、この戦いはそうすると俺は決めた。
此処で足掻いて見せろ!無様でも笑われたって構わん、己の全力を出すには相応しい戦いだ
そうは思わんか!?」

此処までの旅は紆余曲折はあったし、全てが楽しかったわけでもないしかし
この世界の生きる者全ての戦いがやって来る事は明白なのだから。
しばし空気的には間があっただが

「やろう!せめて散るのならば何もしないで死ぬよりはマシだ!」
「ああ!俺達でも役に立つ事は少しぐらいでもあるはずだ!」
「そうだな、今こそ皆が力を合わせるべき時だ!」

その言葉に賛成する者達の輪は波のように広がっていく
この世界に生きる者達は何も書かれていない白紙の明日を生きる事を選んだ
ならば此方も最後まで役目を全うしようではないか。
109 :レヴィア ◆666/MyrH6U [sage]:2012/01/26(木) 06:28:05.45 0
会堂(ユダヤ教会)を模した建築物では、白皙の女が床に魔法陣を描きながら、その脳裏では同時に指針となる術策をも描く。
永遠に失われてしまったデミウルゴスのシャードを如何にして補うかの。
世界を創造して破壊する程の力の結晶には代替が無い。何か別の術で補うしか無かった。

(偽神たちが信仰で糧を得るなら、私は別の術で糧を得るわ……彼らの好む様式で)

計略を巡らせる悪魔は、悪魔に相応しい力の獲方を容易く思い付く。
幻想で幻想を埋葬する為の巨大な墓標にして、陥穽として働く舞台装置を。
この魔的なる建造物を竣工させるには、まずエリュシオンに赴かねばならない。

「lvjtn mkhtyb kbjs ptvx(レヴィアタンが命ずる。道よ、開け)」

呪的な韻律を口に乗せたレヴィアが、輝く魔法陣に向かって歩みを進める。
刹那―――場面は転換した。

悪魔は忽然と現れる。空間で道程を隔てられたエリュシオンに。
高所に位置する都市は寒冷であり、風の息吹も強い。
冷涼な風を背に受けながら、レヴィアは足取りも軽やかに白壁の建物へ向かって歩を進める。
悲鳴の様に軋む扉から建物の中に入れば、何千もの聴衆を集める大会議は、今まさに終わりを迎えた所であった。

「あら、御機嫌よう……皆様方。私が先程ご紹介に預かったレヴィアタンよ。
 今日はお土産を二つばかり求めに来たの。近々完成を見る宮殿の告知も兼ねて。
 そちらの様式に則れば魔王の城を建設中……とでも言おうかしら。
 明日には此処にもガイアにも、全ての世界に向けて招待状を出すわ」

観衆を割りながら滑るように歩むレヴィアが足を止める。群衆が即席の隊伍を組んで臨戦の体勢で応じたから。
立ち止まったレヴィアは壇上のテイルを視界に収め、口元を艶美な形へ歪める。

「ごめんなさいね。私には高尚過ぎてよく分からなかったわ。
 つまり……貴方は世界を永遠に未完の状態として置きたいのかしら。
 世界樹の種で、すでにガイアは始まりも終わりも無い世界になってしまったと言うのに?
 貴方と同じ様に世界を物語と見なすなら、これは起承転結の無い、承と転の中で、無限に伸張と破綻を繰り返す物語よ。
 語り手たる貴方から、聞き手の側に視点を移せば、永遠に終わらない物語なんて倦むだけなんじゃなくて?
 そう、時は全てを倦ませるわ。永遠に未完であり続ける物語なんて求められるとは思えないけれど」

レヴィアはビャクに視線を移す。彼は真正面に陣取ってアヤソフィアの亡骸を抱く
その隣には火野映司。彼も彼で遺体を衆目の眼に晒されぬ場所にでも移そうとしたのだろう。
目付きを婀娜なものに変えたレヴィアがビャクに向けて言う。

「貴方も長い時間に倦んでそうね。時間は心に澱を溜めるもの。
 超人に眠りは必要無いなんて言わずに、少しは眠りに着いて、夢の中で心の澱を浄化してはどう?
 何なら……心地良く眠れる様にお手伝いしてあげても良いわよ。うふふっ」

ビャクの視線を此方に向けた所で、レヴィアの口からは常人の耳には聞き取れない程、高音の口笛が発せられた。
屍が再び道具として用いられる。玲瓏とした表情を変えぬまま、アヤソフィアが二度目の動きを見せた。
抱えられていたビャクの腕から弾かれたように起き上り、即座に鞘に収められた短剣を抜いて火野に飛びつく。
直後、短い呻きと共に赤い飛沫が散る。予期せぬ襲撃者は大広間の中に叫喚と怒号とを生んだ。
一筋の真紅の滝の源には、すぐさま指が捻じ込まれ、鮮血で塗られた一枚のメダルが引き抜かれる。

火野の創傷は心臓こそ外れていたが、軽傷とも見えない。
彼の首を左手に抱え、右手の短剣を首筋に宛がいながら、人質を得たアヤソフィアはビャクを警戒する様に離れてゆく。
顎の骨を損傷でもしているのか、血の通わぬ紫の唇はアヤソフィアが身動きする度に揺れる。
それは自ら口の利けぬ彼女が、無声を持って話している様にも見えた。

『…………(ビャク、私に、火を、付けて、ください。どうか、灰も残さず。貴方にしか、頼めません)』と。

完全にレヴィアの支配下に置かれている躯には、意志も魂も残らず、レヴィア以外は絶対に動かせない。
故に、アヤソフィアが自ら声ならぬ声を発した様に見えても、それは何千分の一かの偶然が感じさせた錯誤なのだろう。
充分に距離を取ると、傀儡の屍が火野を突き飛ばして、その身を翻す。
剣を一閃させながら床を駆けるアヤソフィアは、己が造物主に血塗られたメダルを手渡した。
110 :ルーチカ ◆hATMxiE/qY [sage]:2012/01/28(土) 14:18:22.21 0
「実は・・・私もう、自分がどの世界の何なのかわからないんですよね」

平凡を絵に描いたような少女が壇上のテイルに小さく答えた。

「学校帰りに友達とお茶してたら世界が消えた。
ノダメ校長に呼ばれて気が付いたらここにいた。
緊急転送された情報から復元複製体として改造再構築された。
掃除当番として世界守護者委員会の排除に向かい街ごと塵になった。
このバラバラな記憶のどれが元々の私なのか・・・」

目の前でレヴィアに操られたアヤソフィアが演じる惨劇をよそに
少女は淡々と続けた。

「大事件の影で適当に処理される“その他大勢”なんて、そんなものですよね。
だったら、何かが約束された世界になったら、
それがどんなに善い事でも、尚更私達はただの辻褄合わせの駒。
いつか必ず誰かの都合で書き換えられてしまうもの。だから・・・」

テイルとレヴィアを交互に見て、少女は唱うように宣言した。

「“全てが決まってない事”を、私は世界に望みます。
そして、世界の在り方を決めてしまおうとする存在の全てに対し
“その他大勢”として否を言い続けます」
111 :テイル[sage]:2012/01/29(日) 15:32:21.12 0
ボクの問いかけに、ビャクさんが応える。

>「乗りかかった船ということもあるが、男にも言った己の信じる道を行けとそして守るべき者を違えるなと
今のお前達は守るべきものだ、俺はお前達の為に戦おう。地獄だって笑って見せると男が言ったんだ――
俺もこの戦いの先が地獄になるとしても笑って進もう、この戦いはそうすると俺は決めた。
此処で足掻いて見せろ!無様でも笑われたって構わん、己の全力を出すには相応しい戦いだ
そうは思わんか!?」

「ビャクさん……」

>「やろう!せめて散るのならば何もしないで死ぬよりはマシだ!」
>「ああ!俺達でも役に立つ事は少しぐらいでもあるはずだ!」
>「そうだな、今こそ皆が力を合わせるべき時だ!」

「みんな……ありがとう――。
でもさ、せめて散るのならば、は違うよ! 絶対に勝ってみせる!」

皆が奮起の声を上げる中、小さく呟く少女がいた。

>「実は・・・私もう、自分がどの世界の何なのかわからないんですよね」

「どういう……意味?」

>「学校帰りに友達とお茶してたら世界が消えた。
ノダメ校長に呼ばれて気が付いたらここにいた。
緊急転送された情報から復元複製体として改造再構築された。
掃除当番として世界守護者委員会の排除に向かい街ごと塵になった。
このバラバラな記憶のどれが元々の私なのか・・・」

記憶が、混在している――!?
B世界の人物とC世界の人物は、世界が分岐した時点から別の存在ではなかったのか。
あまりにも目まぐるしく世界が動乱したため、事件の中心人物以外の処理が出来ていないのかもしれない。
が、思考はそこで中断を余儀なくされた。
予期していたより早く、海魔の女王レヴィアが現れたのだ――。

>「あら、御機嫌よう……皆様方。私が先程ご紹介に預かったレヴィアタンよ。
 今日はお土産を二つばかり求めに来たの。近々完成を見る宮殿の告知も兼ねて。
 そちらの様式に則れば魔王の城を建設中……とでも言おうかしら。
 明日には此処にもガイアにも、全ての世界に向けて招待状を出すわ」

ボクは壇上から杖を突きつける。
112 :テイル[sage]:2012/01/29(日) 15:33:01.40 0
「その必要は無い。
まだ歓迎の準備も整ってなくて悪いけどね、折角来てくれたんだ。
ここで盛大にもてなすよ!」

レヴィアは、永遠に未完の物語なんて求められるとは思えないと言った。
突如としてアヤさんがヒノさんに襲い掛かり、首からメダルを引き抜く。

「よくも……っ!」

ヒノさんが人質に取られているため、迂闊に動けない。おそらくメダルを持ち帰るつもりだ――!
膠着状態の中、ルーチカちゃんが淡々と述べる。

>「“全てが決まってない事”を、私は世界に望みます。
そして、世界の在り方を決めてしまおうとする存在の全てに対し
“その他大勢”として否を言い続けます」

「物語の完結とは、世界の在り方が確定することだ――
ルーチカちゃん……ボクは世界を支配する気はない。
でも、世界の在り方を決めてしまおうとする者が現れた時は全力で立ち向かうよ!
それが世界を滅ぼす者であれ、永遠の平穏を約束する者であれ、ね。
だって、決まっていない方が……面白いもの!」

アヤさんの体がヒノさんを突き飛ばし、レヴィアにメダルを手渡す。
メダルめがけて魔法の真空刃を飛ばす。

「渡すかッ! ――エアリアルスラッシュ!」
113 :名無しになりきれ[sage]:2012/01/30(月) 20:55:15.19 0
保守
114 :ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2012/02/02(木) 02:23:24.75 0
>「実は・・・私もう、自分がどの世界の何なのかわからないんですよね」

「ッ!!認識障害が起きているのか?」

その言葉にいち早く反応する。話を聞く限りどうやら本来ならばありえない平行世界では分裂している意識の重複だ。
数々の世界にいる数奇な人生を送る者達ですら認識できぬはずなのだが
彼女が平行世界の自身と繋がる事が出来たのかはたまたこの世界というPCが処理能力にバグを起こしている事なのか
与り知らぬが

>「みんな……ありがとう――。
でもさ、せめて散るのならば、は違うよ! 絶対に勝ってみせる!」

この場の皆の想いが一致団結し、この戦いは最終局面に向けて動き出す―
だがこの時を見過ごすほど余裕はなかったらしい。
そして我らの怨敵―レヴィアタンが堂々と現れた
第一声は最終決戦への舞台への誘致と宣戦布告だった。
視線はビャクに向けられると天使いや悪魔の甘美の囁きにも等しい言葉

>「貴方も長い時間に倦んでそうね。時間は心に澱を溜めるもの。
 超人に眠りは必要無いなんて言わずに、少しは眠りに着いて、夢の中で心の澱を浄化してはどう?
 何なら……心地良く眠れる様にお手伝いしてあげても良いわよ。うふふっ」

絶対に勝って見せると宣言したテイルを見て、心の内でこの戦いに勝たねば未来はないだろう
影から見守る事しかできないがこの世界の未来は我々の手に掛かっている事を思い強く手を握り締める。
抱き止めていたアヤソフィアを片手で持ち上げて決意を込めて握り拳を向ける。

「結構だ…俺は寝ても夢は見ないんだよもう望んだ物は失われてしまったから
見る物は救えなかった悪夢ばかりだ…だから眠っても嫌な事しか思い出せやしない
だがこれも俺が解決する事だ、お断りするよ」

自分なりの皮肉を言いながら、明白な拒絶を言い放った瞬間死したはずのアヤソフィアが動き出したので
緩めていた力が仇となり、離れる事を許してしまう。短剣を取り出して火野から瞬く間に埋め込まれた紫のメダルを取り出す。
火野に短剣を突きつけて、人質にしてレヴィアタンの元にゆっくり向かう。

「(下手に動けんな…!)っ?」

その動きを慎重に警戒していたがしかし、屍と化し喋れぬ筈のアヤソフィアの口が動いているように見えた
目を凝らして確認する、確かにそして一度だけその言葉が分かった。

>『…………(ビャク、私に、火を、付けて、ください。どうか、灰も残さず。貴方にしか、頼めません)』

それがレヴィアタンが隙を作り出す行動には見えなかったやる意味などはないからだ
だとしたら答えは一つだ、死した彼女が発する傀儡として出なく一人の人としての最期の願いだ。
ならば最期の手向けとして、示せねばならない。

(分かった、聞き届けよう)

レヴィアタンの方向に近づくと火野を突き飛ばし、メダルをレヴィアタンに渡す
このタイミングを見逃さなかった。

「お前を縛る鎖を俺が断ち切ってやる!お前が本来居るべき所へ返そう!」

その手には既に幾何学模様状に集う炎―宇理炎。本来の物より遥かに劣化したものだが
相手の生命エネルギーを媒介に不死の者といえど廃人にするまで焼き続けるギラ並みの威力しかない炎。
それを目にも止まらぬ速さで、アヤソフィアに向けて放たれる。
本物に及ばなくても、彷徨える死者として捕らえている肉体を焼くには十分であった。

115 :レヴィア ◆666/MyrH6U [sage]:2012/02/03(金) 05:05:05.72 0
>>110-114
数多の種族に充ちた大広間でルーチカは語る。
何かが約束された世界である事を拒み、世界の在り方全てが決まらぬ事を望むと。
しかし、彼女に返されたのは凍てつく石の応え。

「千の千乗の否を重ねても私には無駄よ。私は神に……世界となるのに誰の同意も必要としないもの」

レヴィアは考える。その他大勢の一人としてルーチカが世界に根源的な不確定性を望む理由を。
そして、ルーチカは自らに代替不可能性を求めているのだと捉えた。
ルーチカは自分が交換可能な部品かも知れない事に、自尊の感情を損なっているのだろうと。
故に偶然の唯一無二性を求めた。本質的には、その他大勢の一人である事に否を述べた。
ならば……彼女たちを揺り動かすには、駒としての自己を認識した点を突くのが良いだろう。

「自分が何者か分からないのなら、私が決めつけてあげるわ。貴女は砂の塊だって。
 いいえ、エリュシオンに居る人間は、その全てが歴史の砂で象られた砂像の群れ。
 貴女たちはデミウルゴスのシャードを持つ者が、心で思い浮かべた瞬間に創られた。記憶も、肉体も。
 複製された存在だって言うなら、世界樹の枝から元の情報を引き出されたんでしょうね。
 あれには、ガイアの過去の記憶と歴史の全てが刻まれているもの。
 デミウルゴスのシャードを手にして、最初にエリュシオンと言い出したのは誰だったかしら……うふっ。
 そして、生き残りがいたって優しい嘘は、デミウルゴスの世界でなら崩れぬ真実として存在するはずだった。
 推論を確証に変える時間は無いけれど……こんな在り方はお気に召して?
 辻褄を合わせるまでも無く、此処には助かっていた者なんて、最初から一人もいなかったって結論は?」

さらに言葉を加えようとしたレヴィアが、妖精の口から流れる呪句を聞き咎めて口を噤む。
瞬間、迸る魔力が見えざる刃と化してテイルの手から放たれた。その標的はメダルを掌中とするレヴィアの腕。
対するレヴィアは魔術の防御も回避も行わない。アヤソフィアを一歩横に動かしてテイルの射線上に配しただけ。
人の密集する場所で広範囲の攻撃は不可能と見て、即席の盾で防ぐ事としたのだ。

「あら、可哀そう。まるで壊れた玩具」

大気に微かな悲鳴を上げさせる不可視の刃は、アヤソフィアの後背を切り裂く。
レヴィアの目論見通りに魔術の第一波が防がれた。
続く魔術の第二波……それは、盾自身を標的とする。
ビャクの手から噴き上がった緋色の印が、アヤソフィアを包んで同色の柩となって彼女を納めた。
火群が金の髪を、白い膚を、身に纏う服を、青い瞳に映る光景を焔の色に塗り潰す。
己の手を離れゆく被造物に向かって、創造主は最後の言葉を掛けた。

「良かったわね……醜い女の面を知られる前に死ねて。私には観えてたけど」

眼前で躍る炎が誰から放たれたものかを確認すると、レヴィアは火柱の中に左手を突き出す。
ビャクの攻撃を受ける事が、自ら封じた複合シャードの解除条件だったから。
デミウルゴスを発見させる為に、手持ちの複合シャードを封じていた以上、もはや封印を続ける意味も無いのだ。
定められた条件が満たされた事で、レヴィアの手に描かれた封じの魔法印が霊火の熱で溶けてゆく。

「これで用事は全部終わったから、そろそろお暇するわ」

レヴィアの手元に忽然と黒色の天球儀が現れる。数多の魔王を内部に封じた複合シャードが。
それは表面から妖気を溢れ出させ、レヴィアの左手から全身にまで燃え広がろうとする火を鎮めた。

「―――シャローム」

別れの挨拶を告げた瞬間、レヴィアは己の姿を陽炎と揺らめかせて大広間の中から消えた。二つの炎を残して。
第一の炎は物理的な炎であり、アヤソフィアを灰も残さず焼き尽くすと程なく消えた。
第二の炎は心理的な炎であり、無意識にルーチカと同様の感覚を持っていた者たちの心を焼く。
ルーチカの言葉が火種となり、レヴィアの燃え広げた炎が。
しかし、その炎が誰に向くのか、誰に向ける様に仕向けるのかまでは、レヴィアは関知しない。
炎の流れに指向性を持たせる適任者が、他に居ると考えて。
116 :レヴィア ◆666/MyrH6U [sage]:2012/02/03(金) 05:09:53.28 0
エリュシオンから去ったレヴィアは、己が居とする世界に戻るや、直ちに地下宮殿の造営を開始する。
建設には超自然的な労力が用いられ、人間に感得される時間にすれば、一昼夜にして完成を見た。

招きの準備が万端整うと、レヴィアは外の世界に向けて己の意志を発信する。起きている者に夢を視せる。
自らの力が及ぶ範囲全てに青黒い水底の幻夢を。
揺らめく青い幻影の中には、白磁の肌に海の翳りを纏った女が映った。人の姿を取った海魔が。
これは神託の亜種で、幻想に属する者たちへ語りかける魔法である。

「シャローム、色々な場所にお住まいの皆様方。
 そちらは神の愛と恩沢ある薔薇の朝? それとも悲しみも凍りつく冬の夜明け?
 ごめんなさいね、詩才に欠けてて気の利いた挨拶が出来ないの。
 私はレヴィアタン……肩書きを付けるなら魔王と言う呼称が適当かしら」

魔王を名乗った女は、紫の着物を潮の流れに棚引かせて水中に漂う。
その足元では、海床から伸びる暗緑の海藻林も潮に揺れていた。
周囲には群棲する小魚が一匹の大魚を模して泳ぐ。
黒と藍と群青が混じる間色の白昼夢の中で、幻視の女は猶も語り続ける。

「さて、ご挨拶が済んだ所で本題に入るわ。魔王としての宣旨を。
 私は神になりたいのよ。人間に理解されてしまう程度の偽神じゃなくて、不可知なる真の神に。
 その為に、今からアナタたちの世界を滅ぼしちゃおうと思うんだけど良いかしら?
 ダメって言っても滅ぼしちゃうんだけど。幻想に惑わされない完結した宇宙を創る為に。
 もしも、ご不満の方がいれば、遠慮なく私の所まで来てちょうだいね。
 異論など滅相も無いって方は、新しい世界の住人に迎えてあげるから、不心得者を成敗して下さる?
 私の声が届いた世界には、魔術で此処に通じる扉を設えてあるから、どっちの人も来てちょうだいねっ」

幻視の海は色と形を失って跡形もなく消え、代わって各々の目が別々の光景を映す。
魔王の住まう世界への扉が。その扉までの道筋が。
扉が何処に在るかは、各々の世界で違う。
最後に幻視する光景と現実の光景が重なり、レヴィアタンの宣旨が終わる。
魔王が存在する世界への扉は開かれた。
117 :レヴィア ◆666/MyrH6U [sage]:2012/02/03(金) 05:11:11.77 0
【無銘の都市】
縹渺たる海に浮かぶ無銘都市が、レヴィアタンの所在地。
蜘蛛の巣の如く張り巡らされた運河を持つ水上都市の眺望は、水の都と形容する他は無い。
繊細な青、大胆な青、絢爛な青、宝石の青。空と海は多種多様な青で塗り潰され、それに潮の音彩が加わる。
悪夢の臓腑とも言える世界は、青を主題として精緻に装飾されていた。

欧州風の街並みはヴェネツィアを思わせる。
旅籠や武器屋、鍛冶屋に薬品店、寺院や書店などが、水路に面した通りに軒を連ねていた。
住民の全ては人間で構成されており、彼らは他界の騒乱とは無縁に都市を成り立たせる為の生業に従事する。
誰かに街の由来を聞けば、此処は一千年の昔から海上の要衝として発展して来た街だ、とでも答えるだろう。

橋と水路を越え、市街の中央に位置する無人の会堂に行けば、その地下には広大な空間が広がる。
礼拝室中央の階段を入り口として、海底の闇に向って伸びる迷宮じみた万魔殿が。
この魔宮は、一夜にして超自然的な手段で築かれた建造物であり、同時に昨夜発見された古代遺跡でもある。
街の人間は様々に語る。これは千年の昔に魔王が造った宮殿だと。或いは古の邪神を祭祁する神殿だと。
そして、地下では魔物の王が復活しており、このままでは街に災いが齎されるに違いないとも。

魔殿の内部は幾何学と魔術で粋を凝らされ、角度と曲線が、あらゆる建築の美と人間の認識に叛く。
前に進もうとすれば後退し、右に曲がれば左へ向い、上に登ろうとして知らずに下へ下へと降りてしまう。
至る所に鍵の掛かった扉があり、石室の広間と階段とが配置され、複雑な通路がそれらを繋ぐ。
ある階層では多種多様な稚樹や老木で構成された果樹の森があり、別の階層では湖沼に囲まれた島が広がる。
霊柩を備えた玄室が各所に有り、貴石や財貨を溜め込んだ宝物殿が全ての階層に設えられた。
永劫に燃え盛る灼熱。毒蛇が群れる陥穽。闇に閉ざされた回廊。多種多様な罠も、また。

瘴気の吹き溜まりとなった場所には、渾沌が形と為り、恐怖が具現化する。
出自の禍々しさから、人類に魔物と名付けられた存在として。
獣を真似た妖獣。人を真似た魔妖。地水火風の元素を肉体とする種族。不死なる死霊。魔界の眷属。
各々の姿と名前は違えど、全ての魔物は人類にとって恐るべき脅威であるとの一点で共通していた。
魔物の中で、強き者は瘴気深き万魔殿の下層を棲息域に定め、力弱き魔物は地上に近い階層を徘徊する。
そして、地下に無数の魔物が跳梁する魔窟を擁しながら、地上の都市は魔的な不浄さとは一切の無縁を装う。
さながら、ゲーム的な冒険者の街とダンジョンを模すかのように。
全てが万端整っていた。訪れる者たちを地下迷宮へ誘う為の手筈が。

再び地上に目を転じれば、出島にも似た都市辺縁部では、異界へ通じる無数の門が次々に口を開く。
材質も形状も様々な門は、他界からの旅人を招き寄せる為に設置されたもの。
そのアーチの中には異世界の風景が垣間見えていた。ガイアを含めた何処とも知れぬ幻想世界たちが。
都市辺縁部と市内を繋ぐ橋には、通行審査の詰所が設けられており、中では審査官が受付として業務に就く。
無銘都市への訪問者は、詰所で以下の文書に身分を書けば、如何なる者であろうと直ちに入国査証が発行される。


【>>終章参加希望者 入国書類として下記の事項を記入して頂戴ね。新規も復帰も歓迎するわ】


名前:
職業:
種族:
性別:
年齢:
身長/体重:
容姿特徴:
性格特徴:
技能/魔法:
装備:
所持品:
備考:
118 :レヴィア ◆666/MyrH6U [sage]:2012/02/03(金) 05:14:25.24 0
入国の際に登録された身分履歴は展示され、詰所にて誰もが閲覧する事が出来る。
一番古いのは都市創設者の物の様で、額に入れられた古紙の文書が、手狭な詰所の壁に掛けられていた。
それは四隅が腐食し、紙魚の食害を受けた跡を見せ、いかにも長い歳月を経たかの様に見える。
入国査証は何語で書いても発行されるのか、都市創設者の文書は奇怪な文字で書かれていた。
ただし、後から来る者たちに読ませる事を意図してか、文書にはガイア世界の公用語も補足として書かれている。


名前:レヴィア・メルビレイ
職業:魔王
種族:レヴィアタン
性別:女
年齢:17
身長/体重:やや高め/軽い
容姿特徴:長い銀髪に暗青色の瞳、白皙の皮膚を持った若い女
性格特徴:嫉妬深く、ひたすらに神となる事を望む
技能/魔法:ヘブライ系統の魔術、レヴィアタンの伝承に準じた能力
装備:紫を基調としたブレザーにスカート
所持品:666の魔王を封じた天球儀型の複合シャード(シャードとは神や魔の力の残滓)
備考:私は万魔殿の城主にして、海魔の女王レヴィアタン。
   真の神となる為に、私は全ての世界を狂奔する力の海嘯で押し流す。
   阻みたいのなら、市街中央部に設えた階段から万魔殿に降りて、この世界の底まで御出でなさい。
   魔物が貯め込む財貨を獲得したい、神の権能が妬ましい、自分勝手でとにかく腹立たしい。
   物見遊山の食彩紀行、死にたい、私を組み伏せたい、英雄と呼ばれたい……高邁な理由が無くても歓迎するわ。
119 :テイル[sage]:2012/02/04(土) 23:33:27.96 0
レヴィアが、ルーチカちゃんに、エリュシオンの生き残りたちは全員が虚像だという意味合いの言葉を投げかける。
そして、ボクが放った不可視の刃は、アヤさんの体を盾にする事で防がれた。

「どこまでアヤさんを弄ぶ気だッ!」

>「お前を縛る鎖を俺が断ち切ってやる!お前が本来居るべき所へ返そう!」

ビャクさんが、魔法でアヤさんの体に火を放つ。
これが、アヤさんがレヴィアの手から逃れる唯一の方法――。
レヴィアは火柱の中に自ら手を入れ、その手元に禍々しき複合シャードを顕現させた。

>「これで用事は全部終わったから、そろそろお暇するわ」

「待て!」

>「―――シャローム」

ボクが攻撃を仕掛けるより早く、レヴィアは陽炎のようにかき消えた。

それにしても――レヴィアの奴、とんだ置き土産を残してくれた。
明らかに皆の士気が落ちている。
当たり前だ、レヴィアときたら、もはやルーチカちゃんに対してだけでは無い。
皆に向かってお前達は偽りの虚像の群れだと言い放ってくれたのだから。
そして更に困った事に、そんなの嘘八百だ、と自信を持って言いきることもできない。
困惑しているルーチカちゃんに歩み寄り、訥々と話す。

「ルーチカちゃん……
あいつが言った事が本当なのか、嘘っぱちなのか、ボクにも分からない……
でも、君がどんな存在であっても、ボクにとっては大事な友達のルーチカちゃんだ。
それ以上でもそれ以下でもない。だから、友達として今から無茶な頼みごとをするよ」

そこでいったん言葉を切り、あえて軽い口調に変える。
まるで、オーシアの武闘大会で同盟を組まないかと誘った時のように。

「一つだけ確実な事は、レヴィアを倒さなければこの世界は終わりだ。
多分もうすぐ彼女の城に招待を受ける事になる。
ボク達の事を全面的に信じてくれるのなら、ここで信じて待っているのもいい。
でも、正直イマイチ信用ならないよね? だったら……一緒に来てほしい!
あんな事言ったレヴィアに一矢報いてやりたくはない?
歴史に流されるだけの虚像の砂じゃないって証明してやろうよ!
……ううん、話はもっと単純だ。
あの時みたいにキミともう一度一緒に冒険したい―― 一緒に冒険しよう!」

出てきたのはやっぱり、最初からずっと使ってきた、仲間を増やす魔法の言葉。
こんな陳腐な言葉をきっかけに、たくさんの仲間が出来てきたのは、きっと《光》が導いてくれたから。

「……今は何も言わなくていい。ボク達が出発する時までに決めてくれればいい。
キミがどっちの答えを出したって、ずっと友達だから、それだけは忘れないで」

その答えは――来るべき出発の時に。
言葉で聞くまでも無い。その時に彼女が共に行く姿勢を見せるかどうか、それ自体が答えだ。
120 :ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2012/02/05(日) 03:53:02.46 0
「安らかに眠れ―アヤソフィア=レヴレン…輪廻の円環に則り、幸在らんことを」

例え敵のスパイとして送り込まれた彼女とはいえ、仲間でありかつ哀れな操り人形として自らの意思での行動表示をした一人の人として
再び生まれる事があるのならば幸せに溢れた人生である事を祈りながら、その最後を看取る。

>「良かったわね……醜い女の面を知られる前に死ねて。私には観えてたけど」

「命を弄びし神を気取る愚者よ…貴様が語るな」

燃え盛るアヤソフィアを包む炎の中に手を入れてから自身の手にあるレヴィアタンの術式が徐々に消えていくのが分かる。
彼女の目的はやはりこれだったのだろう。奴の目的は果たされたのだから枷などは必要ない。
そのまま宇理炎はその身を焼き続けるように見えた。しかし、複合シャードの出現と共に炎は掻き消される。
同時に、それは明確に脅威になる事を宣言した事により自身の身体に、世界が防衛する意思の力が湧き上がって来る。
そうだ目の前にいるのは全ての世界の天敵なのだから。

「くっ…この様子じゃ俺の意思は持ったまま倒せるかわからんな」

>「これで用事は全部終わったから、そろそろお暇するわ」

>「待て!」

「慌てるな、奴との戦いは避けては通れない―何れ合間見える近いうちにな
刃を交えるとき全ての決着が付く時だ…首を洗っておけ多世界の天敵よ
死して命を弄んだ罪を贖わせる。」

怒りが発露せず、そのかわり言葉には怒りが込められた低くドスが効いた声で宣戦布告する。

>「―――シャローム」

レヴィアタンは意も返さずにこの場から消え去る。
上等ではないか、死すら生ぬるい。輪廻転生すら許さん
その魂を砕くときまで―この戦争は終わらないだろう。
彼女が残した言葉―全員が虚像という事に対して全員が意気消沈している。
その言葉はどこまで真実が入っているか知れた物ではない。
テイルはルーチカに歩み寄り、話しかけて再び自分達の仲間に勧誘していた。
こちらもこの場の者達に話しかける。

「虚像の群れか…真実かもしれんしそうではないかも知れん否定の材料がなんとも言えんからな
だがお前達は今生きているだろう?それをまさしくそのまま虚像として受け入れ生きていく事を望むか
否定し、虚像から離れた本物に生きていくかはお前達次第だ。
俺はレヴィアタンを全世界の生命体の天敵として討伐しにいく、お前たちはお前達の出来る事しろ
せめて足掻くだけ足掻くのが生きた証だと思うからな」

最後にそれだけ言うと、この場から素早く立ち去る。
通路を歩くその途中に足元に保護した子犬と母親がいる事に気づくと両方共に抱き上げる
近くに居た此処に来た時にパンをくれた少女の目線に合わせてしゃがむ。

「この子達を頼む…拾った希望なんだ最後まで絶やさないようにして欲しい」

とても優しい瞳でゆっくり渡すと頷いて受け取ってくれた後再び歩みを進める。
子犬がこちらに向かって元気に吠えると振り向かずに手を振ってそのまま外に出て行った。
121 :勇者としあき ◆xGm30uXs7M [sage]:2012/02/05(日) 05:15:37.24 0
参加希望!!宜しくお願いします!!

名前:としあき
職業:勇者
種族:人間
性別:男
年齢:20歳後半
身長/体重:170cm 70kg
容姿特徴:短髪、童顔、やや筋肉質
性格特徴:生真面目
技能/魔法:剣技&魔法全般
装備:安物の鎧、安物の剣、安物の兜、トロの盾
所持品:きびだんご
備考:ライトファンタジーの世界に落ちてきた謎の青年。
   数々の修行を経て、魔王打倒の為に仲間を探しているようだ。

122 :ルーチカ ◆hATMxiE/qY [sage]:2012/02/05(日) 21:52:39.14 0
「まったく・・・魔王とか神とかいう方々は・・・
存在が虚にされる可能性くらい、力無い者にはあたりまえなのに・・・」

少し経って、ルーチカが呟いた。

「“その他大勢”は力無い代わりに、数に限りが無い。
どんなに完全に作られた世界でも、どんなに力ある神が支配しても、
目の届かぬところ、見る価値もない些事、チラシの裏、一瞬の空想、
どこかでほんの少しだけ“これ”ではない世界を夢見る。
それが世界の小さな小さなほころびとなり、遠いいつか、その在り方が変わる・・・」

ルーチカの言葉が、集まっていた名も無き人々に
彼らが始めから良く知っていた事を思い出させていった。

「・・・特別な事は必要無いんです。いつもと同じ」
123 :ルーチカ ◆hATMxiE/qY [sage]:2012/02/05(日) 22:27:12.17 0
「ところで」

名も無き人々に向かって語り終えたルーチカが、
寄って来たテイルに不思議な笑みを浮かべた。

「ここで呪歌の研究をしてるうちに、
いろんな世界のいろんな人の記憶を見ちゃいました。
それを踏まえてレヴィアタンにも聞かせてみたい事と訊いてみたい事があるんです。
だから、行きますよ。戦いに、じゃないかもしれませんけど」

「因みに」

次いで、自身の背後をそっとなぞるような素振りをみせる。

「私このままでは通常戦闘に対してすら薄過ぎて話にならないからって、
友達が適宜ついて来てくれるそうです」

ルーチカの背後に、いろいろな人影がわさわさする気配が現れた。
124 :テイル[sage]:2012/02/06(月) 23:00:19.28 0
>「この子達を頼む…拾った希望なんだ最後まで絶やさないようにして欲しい」

ビャクさんが、親子の犬を少女に託し、外に出ていく。
続いて出て行こうとした時――ルーチカちゃんが呟く。

>「まったく・・・魔王とか神とかいう方々は・・・
存在が虚にされる可能性くらい、力無い者にはあたりまえなのに・・・」

「――え?」

>「“その他大勢”は力無い代わりに、数に限りが無い。
どんなに完全に作られた世界でも、どんなに力ある神が支配しても、
目の届かぬところ、見る価値もない些事、チラシの裏、一瞬の空想、
どこかでほんの少しだけ“これ”ではない世界を夢見る。
それが世界の小さな小さなほころびとなり、遠いいつか、その在り方が変わる・・・」

ルーチカちゃんの言葉が思い出させてくれた。
全ての者が世界を変えていく力を持つ――それが多かれ少なかれ。
ボクはそんな世界を願ったのではなかったか。

>「ここで呪歌の研究をしてるうちに、
いろんな世界のいろんな人の記憶を見ちゃいました。
それを踏まえてレヴィアタンにも聞かせてみたい事と訊いてみたい事があるんです。
だから、行きますよ。戦いに、じゃないかもしれませんけど」

「聞かせてみたい事と訊いてみたいこと……」

ルーチカちゃんの言葉がまた、大事な事を思い出させてくれた。
倒して滅する、意外の終わり方もある事を――。少し前までずっとそのつもりだったのに、すっかり忘れていた。
もちろんこれはそんなに甘い戦いではない。
本来は、勝てる保証も無い戦いでそんな事を言っている場合ではないのだ。
この戦いの結末がどうなるのか、それはまだ誰にも分からない……。

>「因みに」
>「私このままでは通常戦闘に対してすら薄過ぎて話にならないからって、
友達が適宜ついて来てくれるそうです」

ルーチカちゃんと、背後でわさわさする人影達に、ボクは満面の笑みで応えた。

「ありがとう……一緒に冒険しよう!」
125 :テイル[sage]:2012/02/07(火) 00:16:00.90 0
「いよいよ――か」

「妖精さん妖精さん! これあなた達の冒険のテーマ曲にピッタリじゃない?」

来たるべき最終決戦に思いをはせていると――
今の状況にとても似つかわしくない、あっけらかんとした声がかけられた。

「ヨウちゃん……! キミもいたの!?」

彼女は一言で言うなら、地球人でありながらガイアのような世界に造詣の深い研究者である。
画面のついた小さい板(スマホというらしい)を見せてくる。
そこに書かれていた題名は――終端の王と異世界の騎士~The Endia & The Knights~

「これは、終端の王と異世界の騎士達との、壮大な戦いの序曲である――か」

――世界を喰らう《終端の王》(Endia)
――継ぎ接ぎされた《偉大な可能性》(Grandia)
――太陽の《狂詩曲》(Rhapsodia)騎士の名を呼ぶ・・・

新たな世界の創世のため、今の世界を押し流さんとする海魔の女王――
それに立ち向かうは、打ち合わせも何もない共作RPGの制作者達のような一団、《光》の勇者達――
騎士を呼び集めるのは、太陽の女神アマテラスの名を継いだ妖精――

――刻を孕む《終端の王》(Endia)
――調整された《偉大な可能性》(Grandia)
――生命の《譚詩曲》(Balladia)騎士の名を呼ぶ・・・

数多の魔王の力を統べ、時をも支配する終端の魔王――
遠大な計画の元に、デミウルゴスによって操作されていた、世界の運命――
この世界、否、この多元世界群に生きる全ての生命のために、ボクは《光》の勇者を集め、魔王に立ち向かう――!

――願ったこと全てが叶う世界ではない 
――だからこそ  少年は大きく翔たくだろう・・・
――嗚呼…希望も絶望も両手で抱きしめて 
――それでこそ  少年は大きく翔たくだろう・・・

ボクは――ボク達は、願った事全てが叶うわけではない世界を自らの意思で選んだ。
だから、絶望も希望も全て受け入れる覚悟はある。でも――悪戯っぽい笑みを浮かべて言う。

「でもさ、ヨウちゃん! ボクもビャクさんも……少年じゃないんだよ!
少年限定なんて酷いと思わない?」

「それもそうですね、じゃあ中年に変えときます?」

二人で顔を見合わせて爆笑した。
一しきり笑った後、自分に言い聞かせるように呟く。

「大丈夫――いつもと一緒だよ」
126 :テイル[sage]:2012/02/07(火) 00:30:25.82 0
そしてついに――その時は来た。レヴィアタンが、あらゆる世界へ思念を発信する。

>「シャローム、色々な場所にお住まいの皆様方。
 そちらは神の愛と恩沢ある薔薇の朝? それとも悲しみも凍りつく冬の夜明け?
 ごめんなさいね、詩才に欠けてて気の利いた挨拶が出来ないの。
 私はレヴィアタン……肩書きを付けるなら魔王と言う呼称が適当かしら」

「えらく気合いの入った招待だ……。こっちも気合い入れて招かれなきゃね!」

数多の世界へばら撒かれた、魔王の城への招待状。どう考えても罠だが、今更行くも行かないも無い――!
魔王の住む世界への扉は、大胆不敵にもこのエリュシオンのオーシア広場の真ん中に当たる場所に開いていた――。
もはや誘っているとしか思えない。
圧倒的な存在感を放つ扉の前で、暫し息を飲む。

「さあ――行くよッ!!」

意を決して、異界への門を潜る――!

―― Light Fantasy 終章 開始! ――
127 :テイル[sage]:2012/02/07(火) 01:00:31.34 0
どんなおどろおどろしい魔境に出るかと思いきや――出た場所は、美しい海上都市、といった風情だった。
港の代わりに異世界への扉がある出島のようになっていて、周囲にも似たような出島がたくさんある。
橋を渡る途中に、詰所のような物があった。

「油断は禁物だ、何が出るか分からない……」

恐る恐る詰所の扉を開け、中をのぞく。
すると職員が、意外とフツーに、この書類を書いてねなどと言ってくる。
見れば、壁に身分履歴のようなものがいくつか展示されている。
一番古い物は、他でもない海魔の女王の物――

「ふふっ、参考にしてやれ!」

名前: フェアリー=テイル=アマテラス=ガイア
職業: (自称)物語の語り手
種族: 神格妖精
性別: 性別は無いが、女神としての神格を持つ
年齢: 50歳程度とも言えるし悠久の長い時間とも言える
身長/体重: 通常時:10程度の子どもの体格/戦闘形態:165㎝ぐらいの細身
容姿特徴: 淡い青銀の髪に青い瞳、虹色の羽根。典型的な妖精
性格特徴: 典型的な妖精と多神教の神そのまんまの性格
技能/魔法: あらゆる自然現象を操る妖精族の魔法、星凛魔法《エレメンタルスペル》
装備: 聖杖エレメントセプター
所持品: 魔法のハープ『セレネストリングス』
(適任者に適宜貸し出します。というか勝手に借りてもらってOK)
備考:
ボクはテイル、物語の語り手。
海魔の女王レヴィアタンの野望を打ち砕くため、《光》の勇者を集めラストダンジョンの最深奥を目指す!
同じ場所を目指す人は、一緒に冒険しよう!
ダンジョンアタックで大金持ちになりたい、ムカつく魔王をぶっ飛ばしたい
遠足気分の観光旅行、現実逃避、魔王様に惚れた、英雄になりたい、世界を救ってみたい!
高尚な理由が無くても誰でも歓迎!

書き終ると、それはやはりすぐに壁に展示された。
ボクの直前には、>>121の身分履歴が展示されている。

「勇者としあき……変わった名前。きっとガイアとは違う世界から来たんだ!」

職員の人が、親切に教えてくれた。

「その人ならついさっき来ましたよ。まだすぐその辺にいるんじゃないですかね」
128 :evil eye@レヴィア ◆666/MyrH6U [sage]:2012/02/07(火) 01:32:19.86 0
レヴィアの瞳から放たれた“眼差し”が何重もの石壁を突き抜け、地上に起こる変化を見つめる。

>>121
街の入口近くに位置する詰所付近では、入国審査官が都市訪問者たちに複雑な異国文字の書かれた紙片を渡していた。
都市への訪問者には武装する者も多かったが、審査官は何らの身辺調査を行うことも無い。

『次はええと……としあきさんですね。どうぞ入国査証をお受け取りください。それでは次の方―――』

入国の審査官は武装した青年に紙片を渡すと、早々と次の訪問者を迎える為に査証発行の事務へ戻った。
都市周縁部の詰所でやり取りを終え、中央部の盛り上がった石橋を越えれば、水路の張り巡らされた街の中に至る。
大小の水路を流れるのは海水であり、街全体には潮の香気が溶け込んでいた。
陸地部分にある小広場のそれぞれでは、街の女たちが集まって、海鳥の群れよりも姦しく噂話に興じている。

『ああ、長生きなんぞするもんじゃないねえ。よりにもよって家の下にあんなものがあったなんて。
 アタシの腰が痛いのも、亭主が昼から飲んでるのも、なんもかんも呪われた遺跡のせいだったに違いないよ。
 まったく忌々しいったらありゃしない!』

『ちょいと姐さん、そんな訳は無いじゃあないの。
 でもまあ、街の地下に魔物がいるなんて気味の悪いこと!誰か魔物を退治してくれないもんかねえ』

『そうそう……魔物退治って言えば、どこから聞きつけたのやら。
 勇者でござい!なんて墓荒らしや盗人たちも現れたそうよ。
 何とかの騎士とか名乗った、お強そうな騎士様と竜の仮面の魔術師だったかね?
 夜も明けない内に何千人ものお供を連れて、街の下に潜って行った連中までいたんだとか』

『それじゃあ、街のすぐ近く、アタシらの足元辺りは魔物がいなくなったのかい?』

『いーや、それが全然。ついさっきもロクデナシの一人が墓荒らしに入って行って、すぐ逃げ帰って来たからね』

酒場やら喫茶店が並ぶ界隈では、彼女らの夫たちが陽も高い内から飲んだくれている姿が散見できる。
澱粉でとろみをつけた温かいミルクに、砕いたナッツとシナモンを振り掛けた飲物。
または、カルダモンの香りに満ちた黄褐色の珈琲や、淡い金色に透き通る白葡萄酒を。
彼らは小さな円卓を囲み、仲間の一人の武勇伝を邪魔しない様に、そっと陶器の杯に口を運ぶ。

『……棍棒片手に階段を降りてみたら豚面の獣人が襲って来たわけだ。
 えいやっ!と横薙ぎに振るって撃退すれば、やつばらが落としたるは一袋の薄汚れた布包み。
 開いて仰天、見よ!この金貨の大きさと複雑な彫りを。これぞ謎めいた古の王国の金貨に違いあるまいて!』

戦利品の金貨を人差し指と親指で挟んで仲間内に自慢していた男は、円卓近くを横切るとしあきの姿に気付く。

『おや、武器に鎧とは、もしやお前さんも例の遺跡に入ろうってのかい?
 それはお勧めできないよ。今の話は聞こえただろう? この街の地下には恐ろしい魔物が棲んでいるのさ。
 伝説の中でしか聞いた事も無い、奇怪な奴らがうようよね!
 俺みたいに豪胆な男でなければ、とてもとても!生きて帰るのすら難しかろうよ!
 だが、そうだな……強そうな仲間を集めれば、財宝発掘も、魔物退治も少しは楽に出来るかもしれん。
 お前さんも一つ、気の合いそうな奴を探してみちゃどうだい?
 今日は、遺跡の噂を聞いて集まって来た荒くれ共が至る所に溢れてるからね。そう難しくは無かろうよ』

としあきに忠告したのは、好奇心に駆られて遺跡に入り込んだ住人の一人。
彼は旅籠や酒場で形成されつつある人溜まりを指差しながら、そう言った。
確かに人溜まりを見れば、その中には剣を持ち、槍を持ち、美々しく鎧を着込んで武装する者達も少なくはない。
街の入り口を振り返って見れば、そちらからは常に新しい旅人達がやって来る。
騎士風の者もいれば、魔術師風の者もおり、格闘家とも見える者があり、同じ服装に統一された一団もあった。

そして、陽光に色を変え続ける羽を持つ、妖精の姿も。
129 :ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2012/02/08(水) 02:36:05.45 0
先に外に出ていたビャク=ミキストリは丁度オーシア広場に立ち止まっていた―否待っていた。
そして待っていたフェアリー=テイル=アマテラス=ガイアとルーチカ達がやって来る。

「最後の戦いのパーティにしては上出来とは言えんが、良い眼をしている
未来を前に向いている姿勢のな」

覚悟を決めた戦友に笑みを向けたその時、レヴィアタンの思念が聞こえてくる。
大胆にも全世界に向けた

>「シャローム、色々な場所にお住まいの皆様方。
 そちらは神の愛と恩沢ある薔薇の朝? それとも悲しみも凍りつく冬の夜明け?
 ごめんなさいね、詩才に欠けてて気の利いた挨拶が出来ないの。
 私はレヴィアタン……肩書きを付けるなら魔王と言う呼称が適当かしら」

>「えらく気合いの入った招待だ……。こっちも気合い入れて招かれなきゃね!」

「そうだな、対したおめかしも出来てないが行ってやろうではないか。招待した事を後悔させてやるさ」

レヴィアタンが招待する世界の扉は目前に出現する罠だろうがなんだろうが構わない。
その挑戦を受け取ってやろう、喉元に刃を貫くまでは死んでやるつもりはない

>「さあ――行くよッ!!」

「言われるまでもない、此処から先は進むのみ」

テイルと戦う友と共に長かったこの世界での最後の戦いの地へと足を踏み入れた。
130 :ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2012/02/08(水) 03:55:17.88 0
歩んだ先は人外魔境―かに思えたが、実際は違っていた。
大海を思わせる場所に出来た一つの人工都市のようだ。
おそらくは様々な多世界に繋がる門によって対応しているようだ。
テイルたちと共に橋を渡ると、立ち寄る者達を管理・監視をする入国部門を司る都市入り口に辿り着く。

>「油断は禁物だ、何が出るか分からない……」

そう言って慎重に扉を開けるも普通の職員が居て、何事もなく書類を渡される。

「ほう…意外に普通だな」

壁に張っている書類の一部に目を通し、我らが宿敵のレヴィアタンの者もある。
周りは海に囲まれているのだ、奴にかなり有利な地形なのは確かだ。
だが邪魔になるならばそれごと蒸発させるだけだ。罠ならば食い破るのみ

「皮肉だな、貴様が踏み躙った者達の力が俺を駆り立てる」

名前:ビャク・ミキストリ
職業:恒久戦士(永久転生者)
種族:超人(守護者的概念存在)
性別:男
年齢:10代後半~20代後半(外見年齢)時間が止まったその時から年を数えるのは辞めた。
身長/体重:170cm 64kg
容姿特徴:中肉中背、朱色の髪 緑色の瞳(右目)オレンジの瞳(左目)のオッドアイ
灰色の外套に詰襟付きの緑色の背広型チュニック、黒いズボン
性格特徴:皮肉屋で厭世的どこか諦観している部分がある。根は善人 当人は忘れたと思っていたが
当時のお人好しで他人想いお節介な面も残っている
技能/魔法:ナイトウィザードの月衣のような物、空司
その世界に存在する力(魔法・気等特別な力等)に(使う際特別な才能が必要あれば)適合し操れる技法根源操法
個の意識がなくなり完全に世界の異物(敵)を排除する殺戮モード永久闘争存在化
笛魔法、不幸パワー
装備:封印武器召喚、封印武器無命剣フツノミタマ(召喚時のメイン武器)
所持品:笛、銀のネックレス、紫メダルの破片(虚無の王を倒した際にこっそり回収した物)
備考:恒久戦士ナンバーXXXビャク=ミキストリ。異世界を周って移動し数多くの世界を揺るがす戦い・出来事を阻止するあるいはその世界に住む大多数もしくは全生命体に天敵と判断された
その存在を滅ぼす恒久戦士(永遠に戦い続ける火消し)。
全世界の災厄と判断されたレヴィアタンの討伐に来た。
既に幾多の命を手に掛けながらも、そんな自身を家族同然に支えてくれた人達の世界を影から守るため
踏み躙られた命の無念を晴らすため自分の犯した罪の贖罪のために今日も戦い続ける。

テイルの身分履歴と共に自分の物を張ろうとした時、同じく>>121に目が入る。

>「勇者としあき……変わった名前。きっとガイアとは違う世界から来たんだ!」

>「その人ならついさっき来ましたよ。まだすぐその辺にいるんじゃないですかね」

「利害は一致している…ならば誘わない手はないな」

目的を共にする者が居れば今後ともどんな戦いも乗り越えるだろう
どんな人格の持ち主だろうと力が必要なのだから。
この勇者としあきと名乗る人物を探すべく周囲に神経を集中する。
131 :ルーチカ ◆hATMxiE/qY [sage]:2012/02/09(木) 03:04:19.64 0
「魔王の城というのは、あの水上都市のどこにあるんでしょうか・・・」

橋の向こうの街のきらめきを眺めながら、テイルやビャクの後についてルーチカは詰所に入った。
指示に従い、展示された入国書類のいくつかに目を通しつつ自分の書類を書き上げる。

名前:ルーチカ
職業:呪歌唱い
種族:人間
性別:女
年齢:10代半ば
身長/体重:中肉中背
容姿特徴:平凡
性格特徴:マイペース
技能/魔法:呪歌、友達による手助け
装備:オーシア魔法学校の制服、60cmステンレス定規、友達(歴代NPCの皆様を適宜)
所持品:カバン(学用品一式入り)
備考:
先祖にセイレーンの血が混じっているとかいないとかの、
オーシアでは珍しくもない噂がある家系。
特徴に乏しく音楽以外は何をやっても中の中という平凡な生徒だったが
エリュシオンで校長と共に呪歌の研究を進める過程で
いろいろな世界のいろいろな人の記憶を見て少し変わったかもしれない。
冒険者としては超低スペックで、友達の手助けがあってどうにか人並み。

「お願いします」
132 :evil eye@レヴィア ◆666/MyrH6U [sage]:2012/02/11(土) 19:18:10.18 0
地下宮殿の最下層に居ながら、レヴィアは遠視の魔力で地上を俯瞰する。
無銘の都市を上空から眺めれば、海面の大渦潮が一点に収束する様に、人の群れが中央へと流れるのが見えた。
各所で滞留しながらも、地底の入り口に向かって緩やかに墜ちてゆく者たちが。

【万魔殿・最上層の通廊】
レヴィアは新しい侵入者が齎した血の気配を感じ、魔力の視線を迷宮最上層に移す。
堅牢な石材で構成される通廊には、何人かの人影があった。
その周囲には灯火の魔術で作られた浅紅色の光球が舞い、暖色の光を生み出して闇を駆逐している。
魔物の巣窟たる地下空間に姿を浮かび上がらせたのは、数種族の人間や亜人で構成されている武装集団だった。
彼らは魔物退治と遺跡からの財宝発掘を生業とする者であり、一般的な語句で表現するなら冒険者である。

『今の所、ゴブリンやコボルドしか見かけないが、ここは本当に魔王の棲みかなのか?
 こんな低級な魔物を使っているようなら、大層な称号に力量が吊り合ってないのかも知れんな』

役目を終えた長剣から血を拭き取った剣士が、石畳に転がる魔物を見ながら呟く。
それは、ゴブリンと呼ばれる赤茶けた矮躯の小鬼であった。
この低級な魔物を屠った剣士の言葉からは、その端々から勝利の余韻が含まれているのを感じさせる。
冒険者の一人として同行する魔術師は、慢心するような剣士の言葉に危険を感じて応えを返した。

『逃げ帰った奴らから聞く所によれば、更なる地下にはかなり強い魔物もいるらしい。
 少なくとも異界への門を開けられるだけの魔術師だ。油断は禁物だろう』

『ああ、充分に分かっているさ。命第一、金第二。目的は魔王じゃない』

『……有ったよ、隠し扉が。細工はとっても巧妙。その逃げ帰った奴らに金貨十枚払った価値はあったね』

剣士と魔術師のやり取りに、話題を変えた第三の声が混じる。
先程から通廊の壁をコツコツと丹念に叩いていた冒険者の一人が、石壁に塗り込められていた扉を発見したのだ。
表面を石壁で偽装した扉は極めて巧妙な細工を施されており、少し見ただけでは付近の石壁と見分けがつかない。

『それじゃあ、行くか』

剣士の手で扉が開けられて、冒険者たち全員が通廊から姿を消す。
彼らが去ると同時に、放置されていたゴブリンの死骸が、猛然と腐臭を吐き出しながら肉の形を崩していった。
やがて溶けた肉の中から、形を定めていない様々な魔物の幼生が顔を出して来る。
獣の牙を備えたもの。鳥の嘴を持ったもの。這いずる粘液。様々な特徴を持つ奇態な生物たちが。
これこそ冒険者が魔物を倒し続けても、決して魔宮から化け物を狩り尽くせない仕掛けであった。

レヴィアの宣旨と万魔殿への招待は、冒険者だけでは無く、魔物に対しても向けられていたのだ。
苦悶する魂と死肉が何よりの大好物と言う魔妖たちにも。
彼らは朽ちた屍などの不浄を入り口として、次々と万魔殿の闇に堕ちて来る。
猖獗が猖獗を呼ぶ。魔物を狩り尽くそうと殺す程に、流血に惹かれる魔物たちも数を増すのだ。
人間の散布する恐怖は魔物を生育させ、絶叫と戦慄が養殖し、この地下宮殿をさらに魔的な領域へと育ててゆく。

そして、迷宮内の全ての死者は魔王への生贄であった。
人が魔物を殺しても、魔物が人を殺しても、全ての魂は等しく迷宮の主へと捧げられる。
神ならぬ悪魔は人々の信仰では無く、犠牲の生贄に依って己の力を高めるのだ。

「財宝を求めて冒険者は魔物を殺し続け、魔物は恐怖と絶望に惹かれて人を屠り続ける。
 万魔殿は、人にも魔物にも望ましい素敵な永久機関ね……うふふっ」

全てが恙なく運んでゆく様にレヴィアは微笑した。
133 :evil eye@レヴィア ◆666/MyrH6U [sage]:2012/02/11(土) 19:21:45.92 0
【無銘の都市・詰所】
魔力あるレヴィアの視線が、再び分厚い石壁を貫いて地上へ戻り、観劇の対象を求めて宙を彷徨う。
人の群れを移ろう魔眼の視界は、時を分かたずして探していた者たちを捉えた。
都市周縁部の詰所では、見慣れた顔が連なっている。
その一人、ルーチカは疑問混じりの声で入国審査官にレヴィアの居場所を問うていた。
此処を訪れたルーチカが、エリュシオンで見た物なのか、或いはオーシアで観た者なのか。
外見だけではレヴィアにも判別はできなかった。

>「魔王の城というのは、あの水上都市のどこにあるんでしょうか・・・」

詰所の審査官は、ルーチカの唇から発された台詞を聞き咎めて片眉を吊り上げる。
眼には困惑があり、唇の形には不安が含まれ、あまり歓迎しない話題のようにも見えた。

『魔王の城? ああ……貴方がたも魔物の棲みついた古代遺跡が目当てですか。
 まあ発見されてすぐ、掌ほどのルビーを見つけただの、古代の金貨を拾っただのと噂になってますからね。
 それでしたら、街の中央にある古びた会堂から行けますよ。
 私は直接見ていませんが、礼拝堂の床に描かれた巨大な六芒星の印字の中に、地下へ続く階段が設えてあったとか。
 しかし、兵力も保有しないような街の地下に恐るべき魔物の群れが棲んでるなんて……』

ルーチカに入国査証を渡しながら、審査官は渋い声で古代遺跡に関する話を続ける。

『早くも遺跡の情報を持ち寄って、組合を作る連中も現れ出したようですね。
 何やら金で情報を売り買いしたり、魔法を有料で教えたり、抜け目なく商売に勤しんでいるようで。
 何はともあれ、我々としては魔物どもを退治してくれれば、それに越した事はありませんが』

そう言って、審査官はルーチカの後ろに続く大勢の雑多な種族に書類を渡し始めた。
134 :テイル[sage]:2012/02/11(土) 19:45:02.76 0
>「利害は一致している…ならば誘わない手はないな」

「うん、探してみよう!」

>「魔王の城というのは、あの水上都市のどこにあるんでしょうか・・・」

「とてもそんな物騒な物があるようには見えないよね……」

それを聞いた審査官は、魔物の住み着いた古代遺跡の事を教えてくれた。
出来たばかりの魔王の城なのに古代遺跡というのも変だが、レヴィアタンは時の法則さえも歪める事が出来る魔王。

>『早くも遺跡の情報を持ち寄って、組合を作る連中も現れ出したようですね。
 何やら金で情報を売り買いしたり、魔法を有料で教えたり、抜け目なく商売に勤しんでいるようで。
 何はともあれ、我々としては魔物どもを退治してくれれば、それに越した事はありませんが』

そしてこの街自体も、魔王の住まうラストランジョンとして突貫工事で作られながら
同時に古い歴史を持ち、街の人々はずっと昔からここに住んでいるのだ。
レヴィアが何のためにこんな凝った事をしたのかはまだ分からない。
一つ確かな事は、この街の人々はレヴィアの目的のために作られた存在でありながら、個としての意思を持った存在であること。
そう、アヤさんと同じように――。
ボクは審査官に言った。

「安心して下さい。必ず、この街に平和を取り戻しますから――」

平和な街に突如現れた魔の遺跡に挑む。狙ったように、駆け出し冒険者の典型的なクエストのよう。
詰所を出たボク達は、すぐ近くにあった典型的な冒険者の店に入る。
まるでこのためにお膳立てされたような好立地。
マスターの所に行き、単刀直入に尋ねる。

「魔王打倒の仲間を募集中の人はいませんか?」
135 :ナイトガンダム ◆xGm30uXs7M [sage]:2012/02/11(土) 23:10:47.41 0
それはどこかの世界。邪悪な魔人、ブラックドラゴンを倒す為に修行をしていた
1人の勇者は突然巨大な光に包まれこの世界へとやって来た。

「……ここは、いったい何処なのだ?」

彼の名前はナイトガンダム。ラクロアと呼ばれる世界からやってきた
騎士である。
この世界の人々は、突然落ちてきたこの騎士を奇異の目で見つめている。
何故なのかは明白である。彼の体は良くて3頭身、酷く見積もると2頭身程度しかないのだ。
そしてその体はまるで機械のように、無機質に出来ている。
http://dk-0429-devgel.tea-nifty.com/photos/uncategorized/2008/09/01/photo_2.jpg

「むっ……何やら此処の人々は私の事が珍しいのだろうか。
しかしラクロアとは随分と風景が違って見える。」

とりあえず、ナイトガンダムは近くにあった冒険者の店に行く事にした。
「随分と変わった鎧を着ているな……君は何の用だい?」
マスターにミルクを差し出されたナイトガンダムは鋭い眼光で
返答する。

「私はナイトガンダム!!ラクロアより、世界を脅かす邪悪と戦う
為にやって来ました。どうぞ宜しく!!」

136 :ナイトガンダム ◆xGm30uXs7M [sage]:2012/02/11(土) 23:18:42.30 0
名前:ナイトガンダム
職業:騎士
種族:ガンダム族
性別:男
年齢:20代
身長/体重:2頭身
容姿特徴:ガンダム顔、2頭身
性格特徴:真面目だが天然気質
技能/魔法:剣技、魔法(ガンダム世界)
装備:バーサルソード、電磁ランス、バーサルナイトの鎧、ナイトフライヤー(空戦用の翼)
所持品:回復の薬(小・中2個)
備考:
記憶を失ったガンダム族の騎士。偶然フラウ姫を助け、その名が伝説の勇者と同じであったことからサタンガンダム討伐を任されることになる。
手に入れた三種の神器を纏って魔王を倒し、王国を救う。その後伝説の巨人討伐や数々の修行の経てレビル王から「バーサル騎士」の称号を与えられる
137 :テイル[sage]:2012/02/14(火) 21:06:32.11 0
マスターは答えた。

「魔王打倒なんて酔狂な奴らだ。分かってるぜ、お前らも金目当てだろ?
……と言いたいところだがあそこにも似たようなのがいるな。
世界を脅かす邪悪と戦うためにやって来たんだってさ」

マスターが示した先には、二頭身の変わったゴーレムのような人物がいた。
机の上にはミルクが置いてあるのが、どことなく微笑ましい。
自分もマスターからミルクを受け取り、その人物の隣に座る。

「ボクはテイル。ガイアという世界から魔王打倒のためにやってきたんだ。
あなたもそうなんだよね? それなら一緒に冒険しよう!」
138 :evil eye@レヴィア ◆666/MyrH6U [sage]:2012/02/15(水) 00:03:51.57 0
レヴィアは、最も幽世に近い万魔殿の深層から地上を遠望する。
路地と水路で構成される、地表に顕在した迷路を。
複雑な香りが入り混じる香料店と、料理や酒を提供する店々が立ち並んで、大きな通路を造る。
支路に分け入って進めば、鉄の音を響かせる鍛冶屋の壁と、瀟洒な木造橋が小さな通路を造る。
さらには何十もの給水塔と民家の壁が、あちらこちらで迷路の行き止まりを形作っていた。

二階を旅籠とする各種の店の中は、街を訪れた旅人たちで密集している。
魔王を打ち滅ぼせるとの自負に憑かれた剣士に、豪放無類の老練な騎士。
異境を遍歴する魔術師と、利潤を追及する商人連中。
財宝に目の眩んだ盗賊や墓荒らしもいれば、人ならざる者の姿も珍しくない。
店の入り口に近づけば、事実とも虚報とも知れない彼らの話が漏れ聞こえてくる。

『罠やら階段の位置を何層分もだ。金貨で二百枚は貰わんと』

『高い!暴利だ!別の奴は半値で売っていたぞ!』

『おっと、値切ろうったってそうはいかん。情報ってのは新しい程に価値がある。
 旦那が買わないんなら、別の奴に売っても良いんだがね』

>>134-137
冒険者の集まる区域を見れば、酒場を兼業する旅籠の一つが唐突に喧騒を失っていた。
沈黙の帳が降りる理由は、雑踏の合間から紛れ込んで来た異様な風体の人物にあるようだった。
衆人が環視する中には異装の甲冑を纏った騎士が立ち、店主に向かって大声で名乗りを上げている。

>「私はナイトガンダム!!ラクロアより、世界を脅かす邪悪と戦う
>為にやって来ました。どうぞ宜しく!!」

『邪悪と戦うとは実に勇ましい。そんな勇者は大歓迎だ!
 何せ、昨日から街の地下が邪悪の巣窟になってしまったからね。
 ああ……邪悪の巣窟ってのは、街の中心で見つかった奥津城とも神殿とも知れない古代遺址さ。
 中には妖鬼や魔霊の類が無数に潜み、底には魔物の王が棲んでるってのが専らの噂だよ』

鷹揚な笑みを湛えた店主が、ナイトガンダムと名乗った騎士に応えていた。
そして、一人の妖精が異装の騎士に近づいてゆくのを見ると、レヴィアは店から眼を離す。
妖精種の……テイルの声を聞きたくなかったから。
精神に傷を付けた筈なのに、堪えた素振りを見せないのが許せない。
ああ、アヤソフィアは失敗だったのかも知れない。体では無く心を壊してやれば良かった。
ガイアでは蘇生や転生が実在する。死は軽い。報復は彼らの感性に合わせたやり方を取るべきだったのだ。
瞋恚の炎を宿らせたまま、再び海魔の女王の視線は路地と水路の迷宮に戻ってゆく。
139 :ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2012/02/15(水) 20:20:15.80 0
>「魔王の城というのは、あの水上都市のどこにあるんでしょうか・・・」

>「とてもそんな物騒な物があるようには見えないよね……」

この言葉に審査官が反応する
返ってきた答えは魔物の棲みついた古代遺跡という事だ
神気取りのレヴィアタンの奴からすればそう仕向けるように言わせているか
あるいは介して直接言葉を語りかけているかだが

「人々の意識を捩じ曲げるか…どんな手品を使ったのか
歪とは言え神の真似事をしているつもりか」

なんにせよ本来ならば存在しえぬ奴が介入しているのは事実だ。

>『早くも遺跡の情報を持ち寄って、組合を作る連中も現れ出したようですね。
 何やら金で情報を売り買いしたり、魔法を有料で教えたり、抜け目なく商売に勤しんでいるようで。

「…どうやらその情報を買うには資金が居るみたいだ稼ぐしか無いな」

当然だが、この世界の貨幣などは持っていないのならば手っ取り早く稼ぐには
どの道古代遺跡で稼がねばならない。

「(この世界の歪みは断ち切らねばなるまい…仲間達の仇を取らねば)」

だが、此方にも人数が足りない仕込まれている気がしなくもないがすぐ近くにどこかで見たことがあるようなギルドの建物に向かう事になる。

>「魔王打倒の仲間を募集中の人はいませんか?」

>「私はナイトガンダム!!ラクロアより、世界を脅かす邪悪と戦う
為にやって来ました。どうぞ宜しく!!」

マスターのお呼びが掛かる以前に反応した如く、此方に近づいてくる存在をどこかで見たことがある気がした。
特にその顔に

「ガンダム…?いやそれにしては」

見知っているのは兵器だが、なぜか自分の意思で歩いて喋っているのだ
少し動揺していた。
140 :ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2012/02/15(水) 20:49:42.12 0
>「ボクはテイル。ガイアという世界から魔王打倒のためにやってきたんだ。
あなたもそうなんだよね? それなら一緒に冒険しよう!」

そんな若干動揺しているビャクを他所に仲間に加える事を決めたらしいテイル
まぁ此方としても断る理由はない。

「仲間が居るのは悪くはない…か、俺はビャク=ミキストリ。そこのテイルと行動を共にする者だ
しばしよろしく頼む」

本当ならば組織は無きに等しくもはや等級ではなく、真の名を名乗ってもいいのだが
既にその名は捨てたに近い、ならば今のまま名乗るべきだろう。

>『罠やら階段の位置を何層分もだ。金貨で二百枚は貰わんと』
『高い!暴利だ!別の奴は半値で売っていたぞ!』
『おっと、値切ろうったってそうはいかん。情報ってのは新しい程に価値がある。
 旦那が買わないんなら、別の奴に売っても良いんだがね』

二階から古代遺跡に関する情報の売り買いの喧騒が聞こえる。
既に常人とは比べ物にならない感覚を駆使して二階の喧騒の会話の殆ど現状を踏まえて
冷静な判断で思考する。

「……とりあえずテイルよ、古代遺跡とやらに行って見る見るとしようか
今の我々にはこの世界での貨幣が無い、幸い遺跡の情報の売買出来るのだある程度まで行った後は見聞きして得た情報を売り
我々が行った更に先の階の情報を買う…というのはどうだ?
もちろん見つけた物品を売ってでも構わんが」

見聞きした大体の憶測で此処での情報価値は五割は偽者、四割はまとも、一割がレアな情報が精々だろうと内心思いながら
これからの事を提案する。
一度の探索で到達できるほど甘い物ではないだろう。
もちろんこの状況を奴が見ていて、何らかの罠を張ってくるのも十分警戒し考えているが。
141 :テイル[sage]:2012/02/19(日) 00:15:19.79 0
>「……とりあえずテイルよ、古代遺跡とやらに行って見る見るとしようか
今の我々にはこの世界での貨幣が無い、幸い遺跡の情報の売買出来るのだある程度まで行った後は見聞きして得た情報を売り
我々が行った更に先の階の情報を買う…というのはどうだ?
もちろん見つけた物品を売ってでも構わんが」

「数えきれないぐらい何層もあるようだね……。
ラストダンジョンは普通のRPG仕様ではなくダンジョンRPG仕様みたいだ。
一筋縄ではいきそうにないしそれが妥当だな」

ライトダンジョン、そんな言葉が思い浮かんだ!
ガンダムさんを仲間に加え、古代遺跡なる所の入り口があるという、古びた会堂に赴く。

それは、街の中央にあまりにも堂々と立っていた。
なぜに今の今まで発見されなかったのか、という疑問は無粋だ。
この時にはなんとなく気付き始めていた。
これは、レヴィアがいかにもなラストダンジョンとして、いかにもな配置で作り上げた街――。
何の神を祀る会堂かは決まっている、遺跡の最深部でボク達を待つ海魔の女王レヴィアタンだ。
ボクは、まるで祈りを捧げるように宣言した。

「レヴィア、必ず貴方の元に辿りつく――」

打倒レヴィアを堅く誓うビャクさんと、彼女に聞かせたいことがあるというルーチカちゃん。
実のところパーティー内ですら、辿りついた後の目的は一致してはいない。
ボクはというと、辿りついた後にどのような結末を望むのか、実はまだ決めきれていない――。
床に描かれているのは、巨大な六芒星。一見何もある様には見えないが――

はなす
→しらべる
アイテム

ボクは 床を しらべた! 巧妙に床に擬態してある板をカタッとずらす。
なんと 地下への 階段が みつかった!
142 :ルーチカ ◆hATMxiE/qY [sage]:2012/02/20(月) 01:16:49.13 0
「ふふっ攻略wikiを立ち上げましたよ!パーティーメンバーは自由に編集可能です。
あっ、サーバーどこに置いたのとかダンジョン内で通信できるのとか
そういう野暮な突っ込みは無しで!」
高度な科学文明世界の住人だというヨウさんが、
さっそくその技術で街とダンジョンの情報をまとめる準備をしている。

「さーて食材の品揃えを拝見といくか・・・この立地だ、独特の海産物くらいあるよな?」
とは、魔法学校のレオ先生。
ソル先輩やテイルさん達と冒険の旅に出てからは、格闘や魔法の技よりも
料理の腕が一番買われている、というのも納得。

「酒場に情報収集に行ったらね、主人公クラスの強者達が数人で、
100人の突入パーティー作ろうと人を募ってるらしいって。
んで彼らの冒険は近々雑誌連載される予定だとか。こっちも負けてられないねっ」
とは、レオ先生と一緒に冒険の旅に出ていたメルディ先生。

「・・・それ、情報収集に行ったんじゃなくて普通に飲んでただけでしょ」
「そ、そうとも言うけど!情報収集できたんだから同じ事じゃない!」

友達の皆様も私も、本当は一度どころではなく消滅していて、
どこかに残った情報から再構築された存在なのかもしれない。
でも、そんな事はどうでもいい。
わいわい冒険するこの雰囲気も、
確かにとても懐かしいけど、いつ失っても構わない。

テイルさんが階段を見つけた。
ビャクさんの言う通り、調べながら少しずつ進むことになるんだろう。
でも、最終的には。

「・・・行きます・・・レヴィアタンのところへ」
143 :evil eye@レヴィア ◆666/MyrH6U [sage]:2012/02/20(月) 21:32:51.91 0
「あら……また新しい生贄がやってきたのかしら?」

街の各所を観劇していたレヴィアが、万魔殿に侵入しようとする者の気配を感じ取った。
魔眼の視線を会堂内に移せば、全能感に浸っていた彼女の表情には、明らかに不快と嫌悪の翳りが宿る。
万魔殿の内部に入り込もうとするのは、テイルを先頭とする一団だったのだ。

彼らとは幾ら言葉を重ねた所で、決して交わる事は無い。
いや……神を望むレヴィアは誰とも交わらない。理解者は必要無い。
神を理解する者など在ってはならないのだから。


【無銘の都市・会堂】
数多の人間を呑み込んで多種多様な魔物を孕み続ける万魔殿は、さながら暗黒の大母神であった。
彼女の胎内に至る開口部は、街の会堂内に設えられた六芒星の印字と、樫材の薄膜とで塞がれている。
先行する冒険者たちが何度も破り、その度に閉め直される封印の壁板で。
地下への入口を開いて階段を降りた者は、最初に東西南北に伸びた十字形の通廊に至るだろう。
世界の四方に向かう通廊は、光で照らされれば、それぞれに異なった懐疑の色を落とす。
石壁の継ぎ目は複雑な陰影で侵入者への敵意を表し、迫り出した柱の影は死する者の運命を冷笑して。

この万魔殿には罠と魔物が無数に潜んでいるが、最初の階層に棲むのは低級な魔物のみである。
力有る者なら単独でも踏破できる程で、冒険者の中には手分けして探索する者も少なくない。
従って、レヴィアは探索者の様子を余す所無く窺う為に、迷宮の四方へと意識を散じた。


【万魔殿最上層・北部】
通廊を進み続けた者が奥に嵌めこまれた扉を開ければ、小さな石室の中に四匹の小人が屯している姿を見るだろう。
彼らは赤茶色の肌と、疣だらけの醜悪な顔を持つ。
矮躯の亜人達はゴブリンと呼ばれる妖魔の一種族である。
そして此処に居るのは、いずれも万魔殿の住人と成り得るだけの邪悪さを備えた個体。
華奢な体格の者を見れば、蹂躙する喜悦を想像し、妖魔たちの口元には嗤いが浮かぶだろう。

『ギィェェ!!』

開けられた扉に気付いて、石室の魔物たちが口々に怪鳥にも似た雄叫びを上げた。
無知蒙昧なゴブリンたちは彼我の力の差など理解もせず、人の姿を見れば襲いかかる。
妖魔たちの装備は粗末な腰布だけを纏って、錆びた短剣や棍棒を手にしているだけ。
彼らには統制も無く、四匹ともが闇雲に武器を振るう。
戦闘に熟達した者ならば、さして苦戦もせずにゴブリンを全滅させられるだろう。


【万魔殿最上層・南部】
南側の通廊には溶けた肉片が転がっており、その周りには鮮やかな緑の粘液が蠢めく。
眼を凝らして観察すれば、粘液は徐々に肉片を溶かしており、どうやら消化しているようだった。
このアメーバや菌類とも知れない原生生物の正体はスライム。
酸性の体液で有機物を吸収して同化し、金属類を腐食させてしまう魔物である。
スライムは食事の最中なので、付近を生物が通り掛かっても襲う事は無い。
しかし、肉片を溶かし終えるまで周辺に留まっていれば、スライムも次の獲物を求めて襲いかかって来るだろう。

南側の通廊は溶解する肉の異臭に紛れてはいるが、周辺よりも微かに濃度の高さを増した瘴気が漂う。
それは紫と菫色程度の僅かな違いで、感覚の鋭い者ならば気付けると言う程度の差。
瘴気の元を追って丹念に通廊を調べる者がいれば、石壁の隙間に隠された下階への入り口を発見できるかも知れない。
144 :evil eye@レヴィア ◆666/MyrH6U [sage]:2012/02/20(月) 21:34:58.21 0
【万魔殿最上層・東部】
最上層東域の入り組んだ迷路では、饐えた空気に薄く引き延ばされた死臭が溶け込む。
地下墓地の気配を醸成するのは、徘徊する亡者達が振り撒く死の波動であった。
瘴気の吹き溜まりから湧き出した死霊が様々な屍に取り憑き、すでに死の現出した肉体を動かしているのだ。
取り憑かれた屍は、古代の殉死者や、千年の間に密かに古代遺跡に入り込んだ盗掘者など。
蒼白い肌に腐敗した手足を持つ者もいれば、白骨に黒い眼窩を覗かせた者もいる。
いずれも低級な死霊や獣の霊であり、出来る事と言えば屍を酩酊者の足取りで歩かせ、生者に噛みつかせる事だけ。

不幸にも盗掘に成功した帰り道で骸となった墓荒らし。古代の副葬品を備えた殉死者。
行進する亡者の群れの中には、金品を所持している死霊の姿も確認できる。
彼らの動きは鈍く、魔術でも物理攻撃でも容易に撃破可能だ。
無論、広範囲の破壊魔術を用いれば、鮮麗な副葬品は粉々に砕け散って価値が減じるのは言うまでも無い。


【万魔殿最上層・西部】
西区域の通廊は埃の上に真新しい足跡が幾つも残され、既に多くの先行者に荒らされた事が見て取れる。
通廊に仕掛けられていた陥穽は口を開けたまま残り、矢仕掛けの矢も尽き、鍵の掛かった扉まで破られていた。
歩き続けた者が三方に扉を備えた広間に至れば、その扉が全て同時に開く。
扉の奥から現れるのは、武装した三人のドワーフであった。
彼らは口元に薄笑いを浮かべて、新しい冒険者に向けて言い放つ。

『アンタも一足遅かったようだな。もたもたしてた後発組はこのザマさ。
 宝蔵はあったようなんだが、もはや銅貨の一枚も残されていないぞ』

『こちらも無駄足。あのホビットに一杯喰わされたようじゃ。
 なぁにが、まだ何処かに隠し扉があるに違い無い、だ。
 見つかるのは鼠や大ナメクジばかりじゃ』

『ハッハ、鼠や大ナメクジの肉では換金すら出来まいな!
 尤も不浄の遺跡に棲みついた生き物など、儂ですら食いたくないわい』

ドワーフ達は揃って豪放に笑い声を上げ、広間を出ると通廊の向こうへ去ってゆく。
後に残されるのは、すでに掠奪者の手で空とされた宝物庫のみである。
145 :ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2012/02/23(木) 19:25:55.94 0
>「数えきれないぐらい何層もあるようだね……。
ラストダンジョンは普通のRPG仕様ではなくダンジョンRPG仕様みたいだ。
一筋縄ではいきそうにないしそれが妥当だな」

テイルのこの言葉に異議は無く、それどころか各々のやり取りが始まる
せっせとこの古代遺跡に向かうための準備やらの話が聞こえる
こうした光景や雰囲気は悪くはない―何時まで続くかは分からないが考えるのは野暮かもしれない。

「悪くはない…か、昔を思い出すな」

かつてアルカディア郡の軍部先行調査隊に居た事を懐かしくも思いながらも
もう戻れない過去を悔いる事に無意味なことは分かっているがそれでも思い出さずには居られなかった。

仲間がもう一人加わった一行は古びた会堂に向かう。
出口らしいものが見つからなかったが、床にある巨大な六芒星を調べると
細工が施してあったらしく、地下へと続く階段が出現する。

>「レヴィア、必ず貴方の元に辿りつく――」

>「・・・行きます・・・レヴィアタンのところへ」

「レヴィアタン―首を洗っていろ」

地下へと続く階段をゆっくりと下りていく。
146 :テイル[sage]:2012/02/24(金) 23:39:47.26 0
ルーチカちゃんが引き連れる友達たちの賑やかな雰囲気を見て、ビャクさんが呟く。

>「悪くはない…か、昔を思い出すな」

「ビャクさんの昔の仲間達ってどんな人たちだったの? ……やっぱいいや。
全てが終わってから、もしよければ聞かせてほしいな! みんなも興味あるでしょ?」

この質問自体にそれ程大した意味はない。呪――名は体を表し、言葉は力を持つ。
必ず全員で生還するためのおまじないのようなものだ。死亡フラグとか縁起でもない事を言ってはいけない。

>「・・・行きます・・・レヴィアタンのところへ」

>「レヴィアタン―首を洗っていろ」

それぞれの決意を胸に、ボク達は、魔の巣食う暗澹の遺跡へと足を踏み入れる。
階段を下りて行き、出た場所は、十字路の真ん中。左右前後に道が伸びている。
ボクはこのような場合にどちらに進むか決める古典的な方法、棒倒しを決行した。

【いきなり当たりの南は除外して一番右の数字で判定
0~2 北部 3~5 東部 6~9 西部】
147 :ナイトガンダム ◆xGm30uXs7M [sage]:2012/02/25(土) 13:58:13.66 0
「遅れて申し訳ない!」

ナイトガンダムは2頭身の体ですばやく駆けながらティル達の
後を追ってやってきた。
ビャク達にも挨拶をしながら、ナイトガンダムは周囲の警戒を怠らぬように
剣を構えている。

(遅れてすみません・・・)
148 :evil eye@レヴィア ◆666/MyrH6U [sage]:2012/02/26(日) 19:59:07.26 0
>>145-147
万魔殿は全域に冒険者の視覚と聴覚を狭める瘴気の靄を漂わせ、暗黒の帳の中に幾多の魔性の存在を養う。
その魔性の空間に、新しい侵入者たちが降りて来る。
彼らは最初の十字路で滞留していた。動かない。暗黒に満ちた迷宮を警戒する様に。

ビャクは階段を降りたばかりである。
テイルは棒杖(ワンド)を床に垂直に立て、棒倒しの呪いで行くべき方角を占う。
ナイトガンダムは刀身に星を刻印された秋水を構え、瘴煙に満ちた通路の先を鋭く睨みつけている。
最初に動くのは、ルーチカが背後に連れる大勢の人物の一人だった。
テイルの倒した棒を見て、抜き身の剣を床に垂らす剣士が足早に反対側へと歩を進める。

『テイルの棒倒しは西か。よし、じゃあ俺たちは東の方を調べてみるぞ。
 これだけいるんだし、手分けした方が早いだろう。
 実力に不安がある奴は、強そうな奴にくっついて行けば問題無い!』

大勢の冒険者の中から赤い服を来た魔術師が進み出て、ナイトガンダムに声を掛ける。

『貴方みたいな剣士系の人は、テイルちゃんみたいな魔術師っぽい人と組むのが良いかも。
 剣士、魔術師、僧侶、盗賊がダンジョン攻略にはベストらしいし。
 そうね、じゃあ何か見つけたら、私たちはいったん此処に戻って戦果を報告するわ。
 とりあえず、トンヌラは松明係をお願い』

『ええっ、また?』

先行する青服の剣士に、緑の衣装の軽戦士と、赤い服の魔術師が続いた。
三人組の冒険者が十字路から離れ、赤々と燃える灯火で通廊を照らしながら迷宮の奥へと進んでゆく。
しかし、灯りを備えていようと百歩も進めば十字路からは見えない。迷宮の薄闇に姿を消されて。
彼らは、程無くして暗がりの中を彷徨う亡者の群れに出会った。

『うわっ、ここでもゾンビかよ! サマンサ、呪文!』

『大気に宿る始原の素。何人も視る事能わぬ万物を構成する粒子よ。
 軽きものは魔力に依って引き合い、一つの重きものとなりて砕けよ―――Kaboom!』

低級なる死霊の群れは、魔術師が唱えた爆発の呪文で四散した。
形あるものは弾け、形なき霊体も魔力の爆風で怨念を断ち切られて雲散霧消。
呪文の攻撃範囲から逃れた死霊は剣士が一匹残らず葬って、魔物の群れを全滅させた。
東の通廊から地下宮殿一階の北東部に入った彼らは、迷路の先に半円の石室"木の根の部屋"を見出す。
天井から伸びた幾筋もの太い根が、絡み合う杭となって頑丈な岩盤と石壁を貫き、迷宮下層にまで達している部屋を。

『この木の根っこ、下の階まで続いてるな。ぶち折れば下の階まで行けるんじゃないのか?』

『そうね。まずは下の階へ繋がってるかを調べて、それから戻りましょう』

再度唱えられる爆発の呪文が、石畳を穿つ根を標的とする。
死霊の群れを退けた魔術は容易く樹木の障壁を伐り開いた。木杭の浸食で緩んだ石床をも砕いて。
瞬間、"木の根の部屋"全体が崩落して、巨大な闇の口腔が足元に現出する。
しかし、迷宮の靄は失踪劇を遮る緞帳となって轟音を室内に封じ、別の区画まで崩落の気配を届かせない。

地面を失った三人の冒険者は迷宮に呑まれ、最初の犠牲者となった。
一階層下の瘴気の塊に転落した彼らは、邪気と妖霊に憑かれて……同じ冒険者を襲い始める。
正気を失った狂戦士。万魔殿を構成する魔物の一匹として。
149 :レヴィア ◆666/MyrH6U [sage]:2012/02/26(日) 20:03:06.39 0
【万魔殿・深層】
万魔殿は冒険者たちの手で、余す所無く征服されるだろう。
魔物と罠の配置が知れ渡り、無明のヴェールが降ろされる。
正確な地図が描かれ、暗黒のドレスを一枚一枚剥がされる。
最後には全容が暴かれ、為す術もなく迷宮は屈服するのだ。

「あら、思ったより早かったわね。
 もう深層に入り込んで来たのが居るなんて」

レヴィアは近くから強烈な殺気の迸りを感じて、最上層の観劇を止めた。
従って、しばらくの間は邪視の外で誰が何をしていても、彼女には感知できない。
代わって、レヴィアは迷宮の奥まで入り込んだ者に眼を凝らす。
魔王の視界が捉えたのは、鏡面のガイア世界に現れた世界守護者委員会であった。
彼らは砕けた天井から、続々と最下層まで降りて来る。

「迷宮を壊して突破なんて風情が無いこと。
 まあ良いわ……彼らの命で償ってもらうから。
 そう言えば、まだ複合シャードの力を試した事は無かったわね」

漆黒の天球儀を手にしたレヴィアは、天井に穴の穿たれた一角へ向かって歩いてゆく。

「人外境にようこそ。貴方達は祭祁の贄よ。血の一滴も残さず私に食べられて頂戴」

魔宮最下層への侵入者は視る。灰色の迷宮が青色の夢幻に浸食される様を。
水の蒼さが瘴気の薄闇を呑み込んで広がり、百万の黒と青で眼に映る全てを塗り潰しゆく。
巨魚と稚魚で作られた魚群は星屑となって散らばり、海獣や大亀は旋回する惑星となって、蒼い宇宙卵を構成し始める。
群生する珊瑚の森では蛸と烏賊がうねり、遊泳する甲殻類が喰われる恐怖と、捕食する巨鯨の歓喜が実体を具えた。
天上で砕ける波と氷壁の溶ける音は混じり合って、それを暖流と寒流が水圧の中で複雑な音色に織り成す。
澄み切った重い虚夢が、この階層を覆って、塞いで、海の幻想に閉じ込める。

レヴィアタンが地球で視た数千年の光景は一瞬の間に迷宮へ溢れ出て、万魔殿に王の間を造営した。
その奥、深い青で編まれた御簾が開かれて、亀裂から一千の水妖と、七首の巨蛇リーターンを従えた白皙の女が現れる。
海原の魔女。迷宮の全てを支配する悪魔。レヴィアタンが。
万魔殿の底の底まで足を踏み入れた騎士の一団を、一人残らず生贄とするべく。

>147 無理を感じない程度。自分のペースでも充分よ】
150 :ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2012/02/27(月) 00:27:44.13 0
階段を下りながら、考察していた。
この都市の名そしてこの遺跡に遭った六芒星―旧き神の印を模した物
それは間違いなく自身が対峙した彼自身が確実に敵対し倒さねばならぬ邪神に関わる物ばかりだ
レヴィアタンとこの遺跡に潜む者が自分の頭に浮かぶそれならば最悪の神話生物共が居る事になる
果たして彼等全員が生き残る事が出来るかは

(いやそれも承知で此処に来ているのだろうが、教えた所でどうも出来んかもな)

眷属はともかく邪神のそれは対処はどうしようもないだろうそんな事を考えていると

>「ビャクさんの昔の仲間達ってどんな人たちだったの? ……やっぱいいや。
全てが終わってから、もしよければ聞かせてほしいな! みんなも興味あるでしょ?」

「聞いたところで面白いものだとは思わんがな……良いだろう
全員が生き残り時間があればそれもいいのかもしれん」

自分の事を語ったところでそれが面白いとは思っては居ないが
それで彼等が生き残れるのならそんな約束の一つや二つはしても良いと
珍しくそう思ったのだった。
自身が降りる事を終えた後、十字路に立ち止まる。
此処から先の方向を決めるため、テイルは棒倒しでその行き先を決めた。
どの道に行けば正解等とわかるわけもなく、それに任せることに関して異議はなかった。
落とされた棒が指し示すのは西だった。

>『テイルの棒倒しは西か。よし、じゃあ俺たちは東の方を調べてみるぞ。
 これだけいるんだし、手分けした方が早いだろう。
 実力に不安がある奴は、強そうな奴にくっついて行けば問題無い!』

同行していた他の冒険者達が手分けして探す事を調べる旨を告げる。
確かにこれだけ居れば手分けして探す方がいいのかもしれない。

「気を抜くなよ、何があるか分からん健闘を祈る」

別れることになった彼等を見送った後、西側の通路に視線を向けてから

「覚悟を決めたか?此処から先はどんな有象無象が存在していても不思議じゃない
気を引き締めろ、こんな所でくたばるつもりなど毛頭ないからな」

油断だけはしないように警告し、西側の方に歩いていった。
151 :テイル[sage]:2012/02/29(水) 01:28:46.76 0
>「聞いたところで面白いものだとは思わんがな……良いだろう
全員が生き残り時間があればそれもいいのかもしれん」

ボクの申し出を快諾したビャクさんに、笑って返す。

「時間ならたくさんあるよ、終わったら平和になった世界をみんなで観光旅行するんだ!」

>「遅れて申し訳ない!」

「個人行動は危ないからね、はぐれないように付いてきて~」

棒倒しが西に出たのをみて、冒険者3人組が東の探索を申し出る。
なぜだろう、嫌な予感がする。

>『テイルの棒倒しは西か。よし、じゃあ俺たちは東の方を調べてみるぞ。
 これだけいるんだし、手分けした方が早いだろう。
 実力に不安がある奴は、強そうな奴にくっついて行けば問題無い!』

「分かれて大丈夫?」

そう問いかけるも、3人組は自信満々だ。
特に断る理由も無いので、とりたてて反対もせずに見送る。

>『貴方みたいな剣士系の人は、テイルちゃんみたいな魔術師っぽい人と組むのが良いかも。
 剣士、魔術師、僧侶、盗賊がダンジョン攻略にはベストらしいし。
 そうね、じゃあ何か見つけたら、私たちはいったん此処に戻って戦果を報告するわ。
 とりあえず、トンヌラは松明係をお願い』

「くれぐれも気を付けて……」

>「覚悟を決めたか?此処から先はどんな有象無象が存在していても不思議じゃない
気を引き締めろ、こんな所でくたばるつもりなど毛頭ないからな」

「――もちろん!」

さて、西の通路は、珍しくお約束とは違って、明らかに誰かが通った後、といった感じだった。
おかげで罠は全て破られており、つつがなく順調に進む。

>『アンタも一足遅かったようだな。もたもたしてた後発組はこのザマさ。
 宝蔵はあったようなんだが、もはや銅貨の一枚も残されていないぞ』

「えぇ~、そんな~!?」

一応宝物庫を見てみるが、もぬけの殻。
パーティーにダンジョン踏破の要の盗賊でもいればいいんだけど……。

「ソル君、キミに決めた!」

ボクは、ルーチカちゃんの友達軍団の中からソル君(盗賊/魔術師)を召喚した!
彼は冒険初期の主力メンバーだ。何かすごく懐かしい気がする。

「お願いがあるんだ、宝箱が二重底になってたりしないか調べてくれる?」

>147 良かった~。ゆっくりで全然いいから一緒に完走しようね!】
152 :ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2012/03/01(木) 22:09:11.37 0
>「時間ならたくさんあるよ、終わったら平和になった世界をみんなで観光旅行するんだ!」

「……だといいがな」

此処で全てが解決した所で自身は新たな危機に陥った世界へと飛ばされるだけだ
そんな水を差す事を言って空気を悪くするつもりはないが
頭をそれが過ぎり、口を閉ざす。

それからしばらく西側の通路を歩き続ける。見た限り既に探索者の手が回っているらしく
罠や徘徊する怪物達も余り見かけなかった。
正直に言えば拍子抜けだったものの順調に進んだその先は
既にその場にはあったはずの宝や財宝全てがごっそりと持ってかれたようだ。

>『アンタも一足遅かったようだな。もたもたしてた後発組はこのザマさ。
 宝蔵はあったようなんだが、もはや銅貨の一枚も残されていないぞ』

>『こちらも無駄足。あのホビットに一杯喰わされたようじゃ。
 なぁにが、まだ何処かに隠し扉があるに違い無い、だ。
 見つかるのは鼠や大ナメクジばかりじゃ』

先に来ていたドワーフたちがそんな台詞を吐き捨てて元の通路に戻って言った。
だが、彼等の内一人が言っていた言葉がどうも引っ掛かった

「隠し扉―か…」

此処はどうも唯の宝物庫ではないように見えた
いやそもそも、本当に宝があったのか
そんな事を幾ら気にした所で仕方が無いので、ある手段を思いつき
無想剣を大量に出現させ、前方に一気に突き立ててから盛大に爆破させる。

「…やはりな、力技だったが間違いなかったか」

宝物庫の奥の壁全てを爆破し破壊して見ると其処には巨大な扉が出現する。
此処にあったお宝とやらはこれより先に進ませないダミーだったのかもしれない。

「目の前のお宝に目を向けさせて重要な物から目を逸らさせる…
中々頭を使っているじゃないか、此処から先はどうなるやら」

此処にあったお宝以上の財宝が眠っているのかそれとも地獄への始まりの扉か
まったくの予想がつかない。
153 :名無しになりきれ[sage]:2012/03/03(土) 06:36:27.98 0
>>151-152
ビャクに砕かれた壁の奥から"死せる年代記の部屋"の扉が姿を現す。
ソルは破壊された石壁を見て肩を竦めると、今度は出現した扉に近づいて罠の有無を確かめ始めた。
研ぎ澄まされたダガーの刀身に扉の錠前を写し、右手の針金を鍵穴に突き刺して弄る。
千年に渡って部屋を封印していた錠前は、ソルの指先の前に一分も堪え切れず、ガチャリと断末魔の叫びを上げた。

長久の時を経て開かれた室内からは、寂しげな重苦い空気が漏れ出て来る。
闖入者の目に映るのは、膨大な書物の陳列された書棚の群れ。
此処は過去の蔵書が蒐集された図書室であった。
しかし、収蔵された書物達に描かれた物語は、千年に渡る虫喰いと湿気の腐食で死に絶えている。
全ての書物が死に絶えているのかは誰にも分からない。
今、この瞬間に迷宮の全てを観劇できる者はいないのだから。

夥しい蔵書の中には、極美に彩色された典籍も存在していたようだった。
扉に風信子石や紅玉を嵌め込まれ、美術的価値を高めた稀書である。
これらの死蔵されて朽ちた書物は、外側の貴石だけが往時の華麗さを偲ばせていた。

ある種の霊感を備えた著述者達は、書物は意志を備え、自らと出逢うべき人物の前に現れると語る。
ならば、室内に金品を期待したソルが、装飾希書と出逢ったのも必然だったのかも知れない。
彼は宝石の嵌った本の扉や外箱を見つけると、さっそく入手した戦利品の鑑定を始めた。
それが終わる頃には、室内の探索もあらかた終わっているだろう。
引き返して、再び十字の交差路に戻る事となるのだ。
無論、其処に先程別れた三人組の冒険者の姿は無い。
154 :レヴィア ◆666/MyrH6U [sage]:2012/03/03(土) 06:52:53.88 0
『竜治の聖剣《Ascaion》』

殲滅の騎士が発した音節と共に海の幻想が淡い色を帯びた。
彼の左手に召喚された剣が七彩の輝きを放ち、深海の青で塗り潰された空間を輝かせている。
攻撃者に選択された武器は、竜種への攻撃に特化した剣。ドラゴンスレイヤー。
竜殺しの剣が獲物と狙うのは、巨大なる多頭蛇リーターンであった。
横薙ぎに一振りされた剣は無限の閉鎖空間を微かに綻ばせ、切り裂かれた軌跡の痕に石壁の空間を見せる。

『物語は不死では無い。存在するのは語られる間のみ。
 しかし、語るべき者は消える……故に物語も消える。
 貴様の騙る物語の題名は"幻想を呑み込む始原の海"と言ったところか。
 その表題、私が"呪わしき海魔の最後"に書き替えてやろう。貴様の血を以てな』

無感情に死を宣告した殲滅の騎士が駆けると、背後の兵団も怒涛の勢いで続く。
彼らの一人ひとりが修羅。無慈悲なる殺戮の化身である。
散開して侵入者を迎え撃つ魔妖を、剣で斬り付け、槍で突き刺し、矢を射かけ、大槌を以て屠殺する。

魔物の軍勢も、王領から異物を排除するべく猛襲を開始した。
妖魚の群れが噛みつき、海馬に乗る魚人が手槍を投げ、血色の海蛇が纏わり付いて、魔霊の哭声が虐殺する。
巨蛇リーターンは、七本の高楼とも思える長大な首を殲滅の騎士へ伸ばした。
一つの首は口腔から黒い液体を吐きかけ、別の首は杭とも思える巨大な牙で噛みつく。

『不敗なる光輝《Claidheamh Soluis》』

瞬間、殲滅の騎士の手元に光り輝く剣が現れ、刀身から太陽が爆発したかの如き白光が放たれた。
光の剣の幻惑の魔力で、殲滅の騎士を中心とした周囲一帯が白色に染まる。
目を開けば、数秒も経たないうちに網膜が灼かれて完全に使いものになる程の強烈な眩光。
それが間近で炸裂してリーターンの眼球を直射した。

『Guaaaaa!』

眼球の機能を破壊された七首の巨蛇は、敵の姿を完全に見失って惑う。
殲滅の騎士は蛇魔の怪物に首を退く隙を与えず、竜殺しの刃を一閃!
跳躍しながら、藤壺を纏わり付かせた青黒い鱗を易々と裂き、襲い来る七首に次々と血の泡を吹かせた。
魔力に翳るレヴィアの瞳に、リーターンの崩れゆく様が映される。

「予想はしてたけど強いわね……まずは、例の無敵結界が破れるかを試させてもらうわ。
 あれが発動しただけで封殺される様なら、戦術を練り直さなければいけないもの」

レヴィアは黒い天球儀を媒介として、幻想と魔力を否定する意志を殲滅の騎士に向けて投影した。
複合シャードは所有者の意志に感応して、"何か"を迸らせる。
その結果は、使用した張本人ですら予測の付かないものとなった。
幻想否定の意志が周囲の空間を食んで、無差別に広がってゆく結果に。
神秘に満ちた青い空間が色を失い始め、代わって別のものが戦場に現れる。

“魔法と神霊が駆逐された地球”の物理法則が。

途端に蒼の幻影は露と消え、水域の魔物は残らず水域の動物に姿を変えられた。
殲滅の騎士に守護者委員会の戦士、海魔の女王までが人間に。周囲全ての者が魔力無き存在に、変わる。
神秘無き世界での常識に反さない存在達に。
残るのは死体と死骸が散乱した石壁の大広間。

「……シャードまでが、魔力を失ったのッ!?」

魔力消失現象の張本人であるレヴィアは、真っ先に戦術の錯誤を悟った。
複合シャードの力は、万魔殿の最下層自体を魔力の消失した空間へ変化させてしまったのだ。
目論見通り相手の魔力も消えた様だったが、残る敵は複数の成人男性。自分は小さな模型を握り締める少女。
正面から残敵に当たるのは愚行だった。ただ嬲られて殺されるだけなのは目に見えている。
戦況を覆すには万魔殿の構造を理解する有利を生かして、一切の神秘に頼らず彼らを殺すしか無い。
即座に踵を翻したレヴィアは逃走する。迷宮の奥に向かって。
155 :テイル[sage]:2012/03/07(水) 01:10:01.22 0
ビャクさんが、突然宝物庫を爆破する。

「お宝がぁああああああ……あっ!」

なんと! 前方に隠し扉が現れた!

>「…やはりな、力技だったが間違いなかったか」

「ビャクさん……?」

>「目の前のお宝に目を向けさせて重要な物から目を逸らさせる…
中々頭を使っているじゃないか、此処から先はどうなるやら」

まんまと策に嵌ってしまっていた。扉の先は、巨大な書庫だった。
本の中身は、時の流れにすっかり朽ち果てている。
ソル君が、早速高そうな装飾の本の物色を始める。
その横で、ボクは一つの本に気付いた。色あせた本の中で、その本だけは、奇跡的に綺麗さを保っていた。
取り出してみると腐食しておらず、読める状態になっている。

その本の題名は――

「……光の勇者の伝説」

そこに描かれていたのは、先代の勇者達の旅――
死霊皇帝封印には、強き心を持つ人間を犠牲にしなければならない事を知った族長の苦悩
ロランドとノウェの悲恋、竜騎士ノウェを犠牲にしての死霊皇帝封印――
更には、死霊皇帝が最期に放った忌まわしき呪い――

ノダメ校長が出版している物と違って、お世辞にもハッピーエンドとは言えない物語だった。
真実がどうなのかは知らないが、おそらくこれが真実の歴史なのだろう。

「テイル、行くよ? ……どうしたの?」

ソル君に声をかけられて我に返る。思わず読みふけっていた。

「ううん、何でもない。
ねえソル君。ボク達は、先代が成し遂げられなかったことを成し遂げるんだ――」

大丈夫、今まで全てを乗り越えて来たじゃないか――。
決意をこめて、本をしまう。

そして、最初の十字路に戻ってきた。

「もょもとさん達はまだ戻ってないのかな……? 先に他の方向を探索しとこうか」

再び棒倒しをする。

【一番右の数字で判定。 0~4 北  5~9 南】
156 :ルーチカ ◆hATMxiE/qY [sage]:2012/03/07(水) 23:11:45.43 0
棒倒しで進路を決め、通路や部屋を調べ、進み、戻り、
価値あるものを見つけたら売って装備や情報に変えるという
ダンジョン攻略のパターンにもみんなある程度慣れてきた。

私の役割は、呪歌で魔物を追い払ったり、
害意や戦意をなくさせること。
力ある魔物には通用しない事も多いけど、
今のところ友達が助けてくれている・・・

「じゃルーチカ君そこに立ってー。うん、そこ。
《ノスタルジィ》の呪歌の効果範囲測定するよー。
念の為エメロちゃんスイーパーお願いねっ」

棒倒しに従って扉のある奥まで進む途中、小動物やゼリー状の魔物が点在する通廊で、
メルディ先生はいきなり実技試験を始めた。

「承知しました」
聖騎士エメロさんが私の横に立ってがちゃりと大剣と盾を構えるのを見ながら、
私は姿勢と呼吸を整え、唱い始める。
・・・ねぐらにお帰り、小さき物達よ、と・・・

「ふむふむ。ネズミと大ナメクジに顕著な動きがみられたのは半径10mですね・・・
あっ、仮称“ぷ○○よ”の反応消失!
てことはアレは私達と同じように別の世界から来た魔物と推測されます。
アレらが入国書類に記入できるとは思えませんがっ」

唱い始めてしばらくの後、ヨウさんが手にした装置を操作しながら教えてくれた。

「本日の効果範囲半径10m。達成値制御は優」
メルディ先生が手帳に成績を記録した後、淡々と続けた。
「魔物も異世界からご招待ありか・・・こりゃ絶対に尽きないね」

悲観も楽観もせず、目指すは通廊の奥。扉の前で私達はみんなに追い付いた。
157 :labyrinth ◆666/MyrH6U [sage]:2012/03/09(金) 19:23:40.17 0
>>155-156
>「もょもとさん達はまだ戻ってないのかな……? 先に他の方向を探索しとこうか」

最初の十字路に戻ったテイルは、未踏区画の探索を口にして、再びエレメントセプターで棒倒しを行なう。
魔法の杖は使い手たる妖精の指から離れると、乾いた音を響かせながら先端を北に向けた。

『あいつらが帰って来ない? 心配いらねーだろ。
 ダンジョンの一階でおっ死ぬ奴なんて、トンヌラぐらいじゃねーの。
 そんじゃ、俺はちょっくら地上で情報集めして来るよ』

東の通廊に目を向けた天使族の少年、ソルが闊達に言い放つ。
視線の先で蟠る暗澹とした闇を吹き飛ばす様に。
直後、彼は跳ねる様に駆けて地上への階段を登り、隔壁の扉から地下の迷宮を抜け、地上の迷宮へと向かう。
夕映えの赤に染まる世界。歴史の捏造された水の都へと。
冒険者が集まる店に入ったソルは、情報を売り買いするホビット族の男を見つけ、早速とばかりに交渉を始めた。

『地下二階は南の通廊に隠されてる。これで金貨五枚だ』

『おい、おっさん。たった二十ニ文字で金貨五枚とか、ぼったりくりじゃねーの?
 ここじゃ一日の食事代が銀貨十枚だろ。ほぼ二ヶ月分の食費に近いんだけど。
 情報屋もアンタだけじゃねーし、もっと良心的な奴を探してもいーんだぜ?』

『まあ待て、まだ行くな。もうちょっと続きがある』

―――……。

地上で行われた彼らのやり取りから、数刻の時が過ぎる。
情報収集を終わらせたソルは地下迷宮に降り、別れた冒険者達が戻って来るのを待っていた。
ホビットの情報屋に依れば、北の区画には低級な魔物が棲むばかりで、地下への階段は無い。
直に仲間も探索を終えて、十字路に戻って来るはずだった。

階段に腰掛けるソルは手持ち無沙汰にダガーを弄り、時折北と南へ交互に視線を向ける。
気持ちはすでに此処に無く、先刻話を聞いたばかりの下の階に在った。
その間にも、地下には何組かの冒険者が降りて来る。
三組目の冒険者が東の通廊に消えた後、ソルは帰還する仲間の姿を確認して、石段から立ち上がった。

『よっ、北は空振りのようだぜ。地下への階段は南の通路に隠されてるんだって。
 しっかしさ、四つも選択肢が有るのに、最後まで当たりを引けないなんて棒倒し意味無くね?』

ソルは迷宮の案内役となって南の通廊へ進むと、石壁の中に封じられた隠し扉を明らかとした。
開けられた扉の先は階段となって迷宮の下層に続いており、やがて一つの扉を備えた広めの空間に行き当たる。
その中央には墓石を思わせる漆黒の石碑が立ち、青白い光で滲む文字を用いて文章が刻まれていた。

 ”この階層は、扉から先の空間に下記の禁忌が存在する”
 ”発する言葉を、α(ア・あ・α・阿・A・~あらゆる言語でアに属する一音)から始めねばならない”
 ”定められた禁忌。αの禁忌を破った者は魔物に魂を貪り喰われる”

碑文の文字には言語読解の魔術が掛かっており、いかなる者でも読む事が出来る。
タブーを利用した呪術は、破らせるべき禁忌を周知させねば、呪いが起動しない故に。

『ダンジョン第二層には、“あ”から言葉を発さないと魂が喰われる呪いが掛かってるらしーぜ。
 まあ、呪いとか神クラスの奴には効かねー気もするけどな』

石碑の奥には幾何学的な装飾をされた扉が設えられ、灯りを受けた表面の浮き彫りが不気味な陰影を作っていた。
その奥の呪的空間は、壁面全てに呪的な文様を施されてはいるが、一つ上の階と同様に石造りの迷宮である。
158 :もょもと@NPC ◆666/MyrH6U [sage]:2012/03/09(金) 19:30:52.96 0
【万魔殿・第二層】

狂える戦士が迷宮を彷徨う。

『ウ、ガァァァァ!』

獣の咆哮を発したのはガイア世界で勇者を名乗っていた戦士、もょもと。
迷宮第一階層の十字路で、東の通廊へ消えた冒険者の一人である。
もょもとは紅顔の青年で、身には重い鉄鎧と青を基調とした服。右手には武骨な造りの長剣を帯びていた。
この奇妙な名前を持つ戦士は、迷宮第二層で三人のドワーフを相手として戦闘を行っていた。

ドワーフ族は人間の胸板ほどの背丈の種族で、筋肉の発達は人に類する異種族の中でも屈指。
それ故に彼らは傑出した戦士を多数排出する。このドワーフらも並の戦士では無い。
狂戦士の動きを慎重に見極めて剛剣を躱わし、得物とする大斧に渾身の力を乗せて振るう。
歴戦の戦士をして、会心の一撃と思わせる攻撃だった。

しかし、思わぬ転倒が斧の軌道を逸らす。
受け身を取ったドワーフの戦士は、体勢を立て直す為に地面に膝を立て、思わず自らの目を疑った。
凄まじい剣圧を受けた石畳の床が、擂り鉢状に大きな穴を空けていたのだ。
これが果たして人の手でなるものか!?
驚・恐・怯、三種の感情に動きを止められた事が命取りとなる。
狂戦士の剛剣が唸り、ドワーフは驚愕する表情のまま、作られたばかりの墓穴に納められた。

『何ッ!』

仲間が倒れるのを見て別のドワーフが思わず声を上げてしまった。凶事を呼ぶ言葉。αの禁忌を破る短音節を。
瞬間、今までに彼が発した悪しき言霊達が、魔霊に姿を変えた。
大病を得た時に出した呻きが、悍ましい鬼相を浮かべた疫神に。
傭兵として赴いた戦場で発した雄叫びは、血走った眼の戦鬼に。
旱魃の際に漏らした暑さを忌む声は、全身の燃え盛った火霊に。
たった一言が、無数とも思える禍き霊を呼ぶ。

禁忌を破ったドワーフの目には、迷宮の暗がりから数多の幽鬼が集まって来る様に見えた。
天井の壁を抜け、不意に床から現れ、柱の中から、目前の虚空から、悪しき霊が滾々と湧いて来る様に。
今や禁忌を破ったドワーフの心こそが魔霊を生む源。彼だけを苛む魔物を際限無く生み出し続ける巣。
闇雲に斧を振っても、己が発した言葉から生まれる魔物たちを払う事は出来ず、刃は虚しく空を斬るだけ。
数え切れない程の悪しき言霊に魂魄を喰われ、二人目のドワーフも斃れた。

『ウォォォォォォ!』

返す刃で三人目のドワーフをも屠った狂戦士は、人ならざる叫びを上げ、血塗られた剣を手に再び迷宮の中を彷徨う。
視界に映った現実の迷宮では無く、自らの心奥に存在する迷宮を。
159 :ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2012/03/10(土) 17:37:24.01 0
古ぼけたようで重々しい扉をソルが相当の年月に封印されていた封を解く。
その扉は開かれると書物が視覚いっぱいに溢れる巨大な書庫のようだ。
しかも空気の流れはその年月に比例して重苦しい物があるが
やはりこの中にはその時代の隔たりの内に意思を持った希少書の影響もあるのだろうと感じていた。
ソルは真っ先に置いてある本の鑑定に入る。
本を適当に見回しているが、当然虫食いや手入れなどがされず風化した本もあるため読めない物もあった。

「ふうむ、これで当分は資金面では問題ないようにはなったか」

たまたま手に取った旧約聖書に目を向けてパラパラと捲りレヴィアタンの項目を発見する
様々な事が書かれていたが、一つの事が引っ掛かり思い出す。
なぜかティアマトという名前の元になった存在に対する類似性だ。だから思い出した訳じゃないがあの女は艦隊を率いてこの世界に来ているのは明白だろう
あの女については自身が元々知っている時点で謎が多すぎる、ちゃんと職務は遂行しているだろうが。
というより名を持った者と存在がその物の者がこの世界に来ている―偶然か?

「…まさかな」

いくらなんでも名前だけで考えすぎだと思い旧約聖書を置く。
この辺りで切り上げてテイル達の居る場所に行こうとしたとき
<死霊秘法>写本の隣にあったある本が目に入る
災厄聖女と無銘の超人という名の本だ。それを手に取り燃やそうとも考えたがすぐに辞める。
今更そんな事を慰みにもなりやしないと考えて元に戻してテイル達の下に戻る。

>「……光の勇者の伝説」

そんな事を呟いて読み耽っているテイルを見かける。
内容は分からないし読んでいる様子から声を掛けるのもどうかと思ったが
表情はえらく真剣な物に見えた。

>「テイル、行くよ? ……どうしたの?」

ソルの声にようやく気づいたテイルは彼に対して

>「ううん、何でもない。
ねえソル君。ボク達は、先代が成し遂げられなかったことを成し遂げるんだ――」

そう本を返して元の最初の十字路に戻っていった。

「………この戦いは何処へ向かいそして何処に終るんだろうな」

そんな事を一人呟いて同じように元の十字路に足を向けた。
160 :ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2012/03/10(土) 18:23:47.49 0
>「もょもとさん達はまだ戻ってないのかな……? 先に他の方向を探索しとこうか」

十字路に戻るともょもと達の姿が見えない。
この場合はまさに最悪の事が真っ先に思い浮かぶ
此処は何が起きてもおかしくない魔宮なのだから。
いや考えの斜めの上を行く事もありうる

>『あいつらが帰って来ない? 心配いらねーだろ。
 ダンジョンの一階でおっ死ぬ奴なんて、トンヌラぐらいじゃねーの。
 そんじゃ、俺はちょっくら地上で情報集めして来るよ』

「…此処は何が起きてもおかしくない場所真っ先にそれが当てはまる
これはいつも最悪の場合をいつも想定しておいたほうがいいありやしないものに足を引っ張られる事になる」

少々冷たい言い方になるがなにも彼等には死んで欲しいわけじゃない
心配はしているし、出来れば怪我で動けない程度なら最低ならば良いと。
だがこの迷宮については初心者に近い、今回はたまたま運が良かっただけだ
こう毎度同じ展開になってくれるとは限らない

「今度は北か…よし行くぞ」
棒倒しをし示したのは北側の方向、そのままその方向に歩いてゆくが余り対した罠などなくそのまま進み続けると
少し悪臭がするそして血の臭いも。

「……(シッ)」
指を口にやり、静かにするように指示する。
北部最終部と思われる扉を開けてみると
其処には四人の矮躯の亜人達が居た。

>『ギィェェ!!』

我等に真っ先に気づくと何も考えも無のように襲い掛かってくる。
「私達は外れたが、お前達は当ててしまったようだな 死出行きの片道切符への道を!」
襲い掛かってきた一匹を出現させた無命剣の一撃で叩き斬る。
そんな時間の合間にあっという間にゴブリンの掃討は完了したようだった。
細かく探索したが何も出てこなかった

「本当の外れだな、戻ろうか」
対して期待していたものは出てこなかったのでこのまままた十字路に戻っていく。
戻る頃には情報収集をしに離脱していたソルと再び合流した。

161 :ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2012/03/10(土) 18:25:07.67 0
>『よっ、北は空振りのようだぜ。地下への階段は南の通路に隠されてるんだって。
 しっかしさ、四つも選択肢が有るのに、最後まで当たりを引けないなんて棒倒し意味無くね?』

「そうでもない、寧ろいきなり宝を確保できたのは幸運だろう
これから先それすらもない者達もいるかもしれん」

幸先が良いのは良い事で此方は恵まれている方だろう
ソルは買ってきた情報通りの道の案内するようで南側の通路を歩いていく。
その道中、買った情報のお陰で壁の中に封じられた隠し扉に入り階段で次の階に向かっていった。
上り終わると広めの空間になっていた。
その中央には墓石のよう石版が置いてある事に気づく。
 
 >”この階層は、扉から先の空間に下記の禁忌が存在する”
 ”発する言葉を、α(ア・あ・α・阿・A・~あらゆる言語でアに属する一音)から始めねばならない”
 ”定められた禁忌。αの禁忌を破った者は魔物に魂を貪り喰われる”
>『ダンジョン第二層には、“あ”から言葉を発さないと魂が喰われる呪いが掛かってるらしーぜ。
 まあ、呪いとか神クラスの奴には効かねー気もするけどな』

「なら基本喋らなければ良い、会話も基本手話か言葉を発しなければ筆談でも伝わる手段で良いではないか?」
というより此処にいる皆が同じCOMPを持っていてくれればそれも可能だが

持ってない人間にそれを問うても仕方ない。
此処から先の迷宮はどうやら厳しくなりそうだ。
162 :ルーチカ ◆hATMxiE/qY [sage]:2012/03/12(月) 00:44:39.17 0
北の扉の先に待ち構えていた妖魔は、ビャクさんが一瞬で葬り去った。
ご都合と言われようと、こういう場合は下手に動かず存在感を消して石になっているに限る。
その後、ソル先輩の案内で通路を反対の端まで歩いて隠し扉から階段へ。
更に、前方にはおどろおどろしい石碑。
呪いを説明するソルさんの言葉に、すかさずビャクさんから注意が飛ぶ。
格段に危険な気配に、60cmステンレス定規を握る手に力が・・・

「ねえねえ、ここんとこ可愛くない?ほら、
>ア・あ・α・阿
の次の
>・A・~
ってとこ!尻尾生えた毛玉っぽい生き物に見えるよねっ!」

・・・メルディ先生は全く動じていなかった。

『その顔はイから始まる言葉を喋る筈なので、もう魂食われてますよ?』

手元の装置で空間に文字を投射してみせるヨウさんも、この雰囲気をまるで気にしていないみたい。

「あー、あー、只今マイクのテスト中。これでいいな」

レオ先生はいつの間にか朝礼マイクを握ってポーズを決めていた。
怯えていたのは私だけだったようだ。

「・・・・・・。
じゃあ、私ずっと唱ってます。普通の歌ですけど。
♪あーれーまーつーむーしーがーーー(ry」

日剣に伝わるこの歌は全節“あ”で始まる。何となく思い出して唱うと少し落ち着いた。

「呪歌は母音唱にしますね。効果は特に変わらない筈ですが、
強いて言うなら笛の演奏に近くなるかもしれません」

次に進むべき奥の扉を見ながら、自分に言い聞かせる意味も含めてみんなに声をかけた。
163 :テイル[sage]:2012/03/13(火) 01:48:21.68 0
>『あいつらが帰って来ない? 心配いらねーだろ。
 ダンジョンの一階でおっ死ぬ奴なんて、トンヌラぐらいじゃねーの。
 そんじゃ、俺はちょっくら地上で情報集めして来るよ』

「トンヌラ一人でも死んだらヤバイっしょ!
ここでザオリク使っても多分 不思議なちからによりかきけされた ってなっちゃうよ!」

>「今度は北か…よし行くぞ」

ソル君が地上に行っている間に、ボク達はダンジョンの北を探索することした。

>『ギィェェ!!』

>「私達は外れたが、お前達は当ててしまったようだな 死出行きの片道切符への道を!」

「はいファイアボール!」

ゴブリンは一瞬で吹っ飛ばされた。
ゴブリンといえば、よく駆け出し冒険者の前に立ちはだかる典型的なザコモンスターだ。
ボク達の敵ではない。
そして、北には雑魚モンスター以外にはなにも無かった。
164 :テイル[sage]:2012/03/13(火) 01:48:46.38 0
>「本当の外れだな、戻ろうか」

「むー……宝箱の一つでもあればねえ」

すごすごと戻ると、ソル君がボク達の心中を見透かしたように待っていた。

>『よっ、北は空振りのようだぜ。地下への階段は南の通路に隠されてるんだって。
 しっかしさ、四つも選択肢が有るのに、最後まで当たりを引けないなんて棒倒し意味無くね?』

「いや、ぶっちゃけそうなんだけど……。
どっちに行ったらいいか手がかりが無い時に迷う時間を節約する意味はあるよ」

ソル君の先導で、第二層への道を進む。

>『ダンジョン第二層には、“あ”から言葉を発さないと魂が喰われる呪いが掛かってるらしーぜ。
 まあ、呪いとか神クラスの奴には効かねー気もするけどな』

>「なら基本喋らなければ良い、会話も基本手話か言葉を発しなければ筆談でも伝わる手段で良いではないか?」

「そうだね、なら念のためにいっそ全員ミュートかけようか?
あっ、でも呪文や呪歌が使えなくなる……!」

>「あー、あー、只今マイクのテスト中。これでいいな」

「それだ! 常にマイクテスト口調にすればいい。
普段からあー、って言わなきゃ話し出せないおじさんとかいるしね」

>「呪歌は母音唱にしますね。効果は特に変わらない筈ですが、
強いて言うなら笛の演奏に近くなるかもしれません」

「うん! もう全部あで歌う勢いでいいよ」

そして足を踏み入れた迷宮第二層。
ルーチカちゃんの露払いの歌のお蔭で、順調に進む。第一階層と違う事と言えば、皆無口になった事だ。
しかし、すぐに今までとは違う緊迫感に包まれることになる。
3人のドワーフの血まみれの死体が転がっていたのだ。

「あー、あー、只今ドワーフの死体を発見いたしました。あー近くに強敵がいる可能性あり。
あー気を付けてください」

マイクテストのせいで何とも緊迫感の無いように見えるが、至って大真面目である。
165 :labyrinth ◆666/MyrH6U [sage]:2012/03/14(水) 20:03:06.33 0
【万魔殿・ニ層】
浅い橙色の光に晒され、黒一色で塗られていた迷宮が色彩を得る。
まずは通廊の壁面が灰色に浮かび上がり、続いて玄室との境である金属製の扉が鉄色に輝く。
視界を明瞭とする光源を作り出すのは、レヴィアタン打倒を目的とする一団だった。

数多の冒険者は、このニ階層で落命する。
ある冒険者達は強さと種類を増した魔物の餌食となり、別の冒険者達は罠で斃れた。
玄室や偽物の通路に仕掛けられた数々の罠は実に多く、磔刑に轢刑、火刑に串刺しと冒険者の末路は様々。

ありとあらゆる虐殺者の中で、最も冒険者を屠ったのは、やはり悪しき言霊である。
この禁忌は、実に多くの者に命を落とさせる発端ともなった。
掛け声や呻き声すら許されない重圧は、戦士の剣を鈍らせ、戦闘に於ける連携をも阻害する。
さらには呪文詠唱に制限を掛けられた事が、冒険者の戦闘力低下に拍車を掛けた。
魔術は極度の集中と正確な発音が必要であり、禁忌を破らない呪文は数も限られるのだ。
従って戦力を削がれた冒険者達は、分岐する無数の通路と大小の石室の中で次々に倒れて、累々と屍を作る。

『GAAAAAA……!』

暗黒の世界で唐突に奇声が響いた。禁忌の戒めを破る声が。
声はテイルが大地の妖精族の屍を見つけた先、三叉路の一方から聞こえるものだった。
発声者の正体は通廊の奥から現れた三人の冒険者。迷宮の上層で別れた者たちである。
一人は"もょもと"、鋼の剣を床に引き摺って歩く重装備の青年剣士。
一人は"トンヌラ"、緑を基調とした軽装に身を包み、槍を振り回す少年戦士。
一人は"サマンサ"、赤いローブを纏った無手の女魔術師。

三者とも狂気に寵遇されている故に禁忌の存在を知らず、制約の範囲を外れ、言霊の呪いを受けていない。
彼らはテイルを含む一団を目撃すると、獣じみた咆哮を上げた。
その怒声からは凶悪な想念が明瞭に感得され、これが敵対的な邂逅である事を如実に示す。

『ウ、ガァァアアッ!』

もょもとはビャクを攻撃対象として定めたようだった。
殺意の閃光を放つ瞳を彼に向け、鉄鎧を着込んでいるとは思えないほど俊敏な動きで疾駆する。
手にした剣は妖気を帯びているのか、刀身は宵を映す明鏡さながらの暗い青。
速度を落さないままビャクの眼前に至った狂戦士は、人を超えた怪力で横薙ぎに剣を振るう。
軌道の先は左の脇腹付近。丸太の様に膨れ上がった狂戦士の腕は、岩をも砕く破壊力を剣に与えている。

『わぁぁっ!』

槍を構えたトンヌラも、雄叫びを上げながらナイトガンダムに突進した。
錯乱した心のまま、槍を持つ戦士は相手の心臓付近を狙う。
少年戦士に憑いた魔霊は彼に筋肉の限界を超えさせ、分不相応な破壊の力を持たせている。
無造作に突かれた一撃ではあるが、まともに受けてしまえば鉄の体と言えど無傷では済まないだろう。
魔霊に憑依された三人の冒険者は痛覚を遮断されているため、彼らを生半可な攻撃で止める事はできない。
さらに迷宮二層に存在する禁忌が魔霊の即時解呪を困難として、殺傷は容易くとも救助の難い状況を作っていた。

『くうっ……』

寒気がする様な、甘く濡れぼそった声が通廊の先から漏れて来る。
狂える冒険者の一人、サマンサは唾液で濡らした指先を顎に、首元に、胸に滑り下ろし始めていた。
そこで、しばらく円を描いた指先は、さらに下を目指し、臍を過ぎ、やがて掻き混ぜる様な動きに変わる。
彼女が行うのは恍惚を利用して離脱させた魂を異界に飛ばし、見つけた精霊を己の肉体へ導く霊媒術。
自失する魔術師は、呪文詠唱を用いた高等魔術ではなく、原始的な脱魂の魔術を用いた。
不意に虚空に向けられた女の瞳が虚ろとなる。短き死。魂が肉体を離れた証左。同時に精霊たちが招かれる。
万魔殿に降りたのは火精と雷精の二種。複数の精霊がサマンサの身体に群がって、彼女に超自然の力を齎す。

攻撃の意志を持つ精霊達は二種の光となって迷宮の通廊に具現し、薄暗い迷宮を鮮やかに輝かせた。
雷精は紫電に輝く蛇の大群となり、迷宮の饐えた空気を焼きながら四方八方に散る。
もう一方の精霊は狂える憑依者の直感に導かれたのか、攻撃対象を明確に決めたようだった。
火の精霊は紅蓮に燃え盛る一対の巨大な腕と化して、テイル・ルーチカの両名を握り潰さんと迫り寄る。
166 :レヴィア=メルビレイ ◆666/MyrH6U [sage]:2012/03/19(月) 02:33:46.64 0
【万魔殿・最下層】
大広間の敵に背を向けて、私は半ば飛び込む様にして通廊の一つに駆け込む。
間髪入れず振り向いて背後の扉を閉め、身体で抑え込みながら掛金を下ろす。
カタンと金属の音が鳴った。途端に両眼が眼隠しで覆われる。濃密な闇。深海の色で。
今の私には魔術の灯りも暗視の魔力も無く、視線を彷徨わせても壁の輪郭すら捉えられない。
先へ進むには、脳中の地図と触覚だけを頼みとするしかなかった。

「不自由ね……光が無いって」

扉の裂ける音が闇に響く。
最下層全ての扉に内蔵された鉄格子が、木製扉の上げた悲鳴に微かな異音を混じえている。
私の追討者は、事態の把握に長い時間を掛けるつもりは無いようだった。

耳障りな打突音は、暗闇を進む事に逡巡する私を突き動かす。
魔力的な加護の無い扉は、いつまで役目を果たしてくれるか分からない。
少なくとも、破壊を試みられている以上、放っておけば壊れるのは明白。
一刻も早く、扉から距離を取らなくてはならなかった。

私は指先で確認しながら、扉から壁伝いに歩く。
十歩ほど進むと、足の爪先が進行方向の壁を軽く蹴った。
そこで身体の向きを変え、長く伸びている筈の通廊へと歩き出す。
右手にシャードを掴み、逆の手で石壁を触れながら。
少しでも速度を上げたいのに、一度でも転べば方向を見失う。全速力では走れない。
離れても一向に小さくならない背後の破壊音は、圧倒的な質量を伴って私の胸を押し潰そうとする。

一条の光も差さない空間を進むと、左手の壁が切れて虚空に触れた。
私は左の靴を脱いで曲がり角に置く。方向が分からなくなってしまった時の道標として。
目印が置かれ、方向を見失う危険が軽減した事で、私は移動の速度を上げ始める。
早足を疾走と呼べる速度まで上げて、ひたすらに射干玉の様な闇を突き破った。
次第に壁で擦れる指先が、不快な疼きと熱を持つ。

「はあっ……ぁ……っ……はぁ……」

すぐに息が切れる。早鐘を打つ心臓は私に人の肉体の脆弱さを実感させた。
それでも足を止めない。歩きながら呼吸を整えて、肺が新しい空気で満たされたら再び走り始める。
次の角では右の靴、その次はニーソックス、丸めて形を変えたもう片足、ジャケット、ブラウス、リボンにボタン。
メソポタミアの神話。イシュタルの冥府下りの如く、身に付けている物を一枚ずつ脱いで曲がり角に置く。

全身の肌に湿った空気を感じる頃、私の左手は最後の扉に触れた。
地上への脱出口が設置された玄室の扉に。

「古代人の宮殿……って設定が生きるとは思わなかったわ。
 無意味な様式美に拘って造られた領主の脱出口。
 背景の小道具に過ぎないものが、本来の役目を果たすなんて、ね」

私は長い通廊の側面に設置された扉を開ける事無く、通廊をさらに進む。
歩幅と正確な歩数を頭に刻みながら前進すると、宙空に伸ばした指先が扉を確認した。
追跡者に開けさせるべき罠を。

その瞬間、私は自分の喉から漏れる音を聞く。壊れた笛にも似た音を。
今、これが何かの拍子に開いてしまえば、私は確実に死ぬ。
海魔レヴィアタンでは無く、人間のレヴィア=メルビレイとして。

そこで、私は引き返す。
足先を立て、今度は記憶の中に刻んだ足跡を踏み、後戻りを始める。
此処まで歩いたのは、死が満ちる扉の先へ逃れたと追跡者を誤認させる為の詭計。
埃が積もる通廊に足跡を付け、それを追わせようとの意図。
目論見が半ばまで至った所で、私は帰路の六十五歩を進む時以上の慎重さで歩く。
再び、レヴィアタンに戻る為……。
167 :テイル[sage]:2012/03/20(火) 03:29:37.81 0
暗い通路を進んでいく。
第一階層とは違い、多くの冒険者達が倒れているのを見て息を飲む。
ドワーフの遺体を見つけて少し行った時だった――

>『GAAAAAA……!』

禁忌を破る唸り声。其れが意味するものは――

「――!!」

その声の主たちの姿を見て、すんでのところで声を上げそうになった。
もょもとがビャクさんに、トンヌラがガンダムさんに襲い掛かり、交戦を始めた。
となると必然、魔術師のサマンサの相手は魔法使い系のボクとルーチカちゃんになるだろうか――

>『くうっ……』

何をしているのだろう――と怪訝に思ったのも束の間。
原始的な霊媒術だろう、と思い当たる。そして、必ずしも原始的なものは高等なものより弱いとは限らない。
案の定、二種複数の精霊達が招かれ、攻撃の意思を顕にした。
呪文詠唱までマイクテストするわけにはいかないので、使える魔法が限られる。
とっさに選び出したのは、水ではなく氷の魔法。

「――アイスストーム!!」

氷雪の嵐が炎の腕を迎え撃つ!
168 :テイル[sage]:2012/03/20(火) 03:31:30.99 0
暗い通路を進んでいく。
第一階層とは違い、多くの冒険者達が倒れているのを見て息を飲む。
ドワーフの遺体を見つけて少し行った時だった――

>『GAAAAAA……!』

禁忌を破る唸り声。其れが意味するものは――

「――!!」

その声の主たちの姿を見て、すんでのところで声を上げそうになった。
もょもとがビャクさんに、トンヌラがガンダムさんに襲い掛かり、交戦を始めた。
となると必然、魔術師のサマンサの相手は魔法使い系のボクとルーチカちゃんになるだろうか――

>『くうっ……』

何をしているのだろう――と怪訝に思ったのも束の間。
原始的な霊媒術だろう、と思い当たる。そして、必ずしも原始的なものは高等なものより弱いとは限らない。
案の定、二種複数の精霊達が招かれ、攻撃の意思を顕にした。
呪文詠唱までマイクテストするわけにはいかないので、使える魔法が限られる。
とっさに選び出したのは、水ではなく氷の魔法。

「――アイスストーム!!」

氷雪の嵐が炎の腕を迎え撃つ!
169 :ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2012/03/21(水) 00:14:49.75 0
>「あー、あー、只今マイクのテスト中。これでいいな」

>「それだ! 常にマイクテスト口調にすればいい。
普段からあー、って言わなきゃ話し出せないおじさんとかいるしね」

>「呪歌は母音唱にしますね。効果は特に変わらない筈ですが、
強いて言うなら笛の演奏に近くなるかもしれません」

>「うん! もう全部あで歌う勢いでいいよ」

「何もしないよりはマシだろう、仕方あるまい
それで会話を統一するより他はあるまい」

この状況では致し方なく、同意をする。
このまま何も会話が無いというのもさすがに気まずい物もあるかも知れないが、
彼個人としてはそれでも良かったのだが。
それからしばらくしてニ層目の探索に本格的に入り、歩みを進め始める。
やはり此処からは油断が一瞬の命取りとなるため自然と口数も少なくなる。
しばらくそんな状態が続いた中、ある物を発見した事で事態が大きく変わる

>「あー、あー、只今ドワーフの死体を発見いたしました。あー近くに強敵がいる可能性あり。
あー気を付けてください」

「あーあー、了解周囲の警戒を続ける」

返事を返した後、少し移動した後すぐに警戒を解かずに周囲を確認する
やはり多くの冒険最中に脱落した者達の姿が見えた。
彼等に関しては運が悪かったのだと何の感慨も無く見つめていた
その時――

>『GAAAAAA……!』

静寂を打ち破る存在は三人、明らかに正気を失った存在そのものである。
その姿を目の前に現した時、わずかに心が揺らいだがすぐに収まる。
あの場に現れなかった三人だった。やはり最悪の予想が当ってしまったようだ

>『ウ、ガァァアアッ!』

その内の一人もょもとの剣が予想以上の速さで脇腹に迫る
しかし、油断も隙も無く警戒していたビャクは瞬く間に反応し
刀身が接触寸前にハルバートを出現させて剣の刀身をハルバートの刃部分で防ぎ切る。

「あの場に現れなかったという事は、こういう事だったのだな非常に残念だ」

そして鋼の剣を力の限り弾いて、距離を取り再び身構える。

「あれから何があったのかは分からないが、君たちのその姿を見続けるのは忍びない
あの世に連れて行こう―悪く思うな」

そして駆け出して、自身の重心を精一杯込めてハルバートの刀身を全力で振り下ろす。
170 :ルーチカ ◆hATMxiE/qY [sage]:2012/03/21(水) 00:26:13.59 0
>「――アイスストーム!!」
「アクエリア!」

テイルさんの呪文とほぼ同時に、
メルディ先生がいつの間にか手にしていた長ネギを振ると、
硬直する私に迫っていた炎の掌の前に水のスクリーンが立ち現れ、
炎とぶつかり混ざり合って蒸気の白煙となった。

「ああああ・・・」

止めてしまっていた戦意低下の呪歌の続きを中途半端に口にしながら、
私はもたもたと白煙から距離を置いた。

『“悪霊の神々”がサブタイトルではありますが
彼らは“しに”ならシンプルに王様説教コース一択、
こんな闇落ちっぽいのは仕様に無い筈ですが』

白煙にヨウさんの言葉が投射される。

『あと・・・あの、あんまりそっち系の描写に走るとイシハラが化けて出ますよ?
念の為自主規制しときますねっ』

正気を失っているサマンサさんの体にドット絵が投射された。

『ところでこういう場合はですねー、
まず動作を拘束してから正気に戻すのが定法な気がしますよっ』

・・・どうしよう。
仲間に対してこういう事を考えるのは嫌だけど、
死んでいないなら鎮魂曲は効かない。
何が効くのかわからない、なら、一番基本的なララバイの旋律を母音唱。
本来聞く人全てに無差別に効く呪歌だけど、
こちら側は神や超人だらけなのでまず影響ない。
少し様子を見て効果が出ていなければ他の手段を。

・・・こういう判断は学校にいた頃より随分早くなった、と
通路の奥に声を投げながら思った。
まだまだ、その判断が失敗な事も多いのだけど。
171 :labyrinth ◆666/MyrH6U [sage]:2012/03/22(木) 01:22:56.32 0
>>167
呪文を武器とする者同士の戦いが始まった。
一方は人、脱魂のガンド魔術で呼んだ炎雷の精霊を放つ。
一方は神、短音節の呪文詠唱で氷の嵐を作り出して迎撃する。

ガイアは天山の木々を樹氷と変え、大湖の水面に銀盤を張らせる、真白き冬の神と化していた。
テイルの棒杖から放たれた凍結する嵐は、瞬時に迷宮の大気を氷の温度として、燃え盛る火霊の片腕を覆う。
紅蓮の腕は氷雪に皮膚を剥がされ、真皮を削がれ、火群に輝く肉も露。根幹たる灼熱の骨すら溶かされた。
万魔殿に呼ばれた火霊は、完膚無きまでに衰えさせられ、微かな残り火を最後に精霊界へと帰される。
直後、サマンサの喉から獣の声が漏れた。

『……グッ、ウォォォォ……!』

火術で敵を撃ち滅ぼせない事を悟り、狂える女魔術師は別種の霊を呼んだのだ。
獣を。狼の霊を。己に獣の力を与えるべく異界から呼び寄せる。
今も無数の狼霊が群れるロンダニアの大渓谷から。
狂気の神が作り出していた獣化現象が、この異界の迷宮にて再現された。
サマンサは牛よりも大きい鈍色の狼へ姿を変えると、太い四肢を躍動させてテイルへの突進を始める。
目論見は最初に体当たり。次には動きを止めさせた所で喉笛を喰らう狼の戦術。
巨狼は間合いが半分になった所で石床を蹴り、両の爪を前面に突き出して飛びかかった。

>>169
狂戦士の魔剣はビャクの斧槍(ハルバード)と撃ち合って、硬質の音色と飛び散る火花を生む。
大岩を無数の砂礫と変える一撃はビャクの召喚武器に寸前で止めらた。衝撃に互いの刃が離れる。
が、狂戦士に有るのは攻撃の二文字のみ。鬨の声と共に剛剣が再度閃く。稲妻の如く縦一文字に。

『ガァァッ!』

ビャクは即座に背後に飛んで距離を取り、撃ち降ろされた剣を避けた。
目標を失った剣は雷の速度で石床を撃ち、今度は飛び散る石片が先程の火花を模す。

その瞬間、ビャクが反撃に動いた。
悪く思うな、と呟きを発するや、疾風の速度で駆けて斧槍を渾身の力で振り下ろす。
狂戦士に防御の二文字は無かった。痛みを知らず、退却を知らず、従って攻撃を回避する事も無い。
斧槍の一撃は狂戦士の鉄鎧を切り裂き、左の肩口から胸上にまで達して鮮烈な赤を散らせた。
通常の人間なら痛みで動けない筈の致命傷。
それでも思った程には刃が通らない。体内を満たす魔の霊気が一種の鎧となって身体の両断を阻んだのだ。

そして岩山の肉体が動く。盛り上がった腕の瘤が。狂戦士の握る剣が。
ビャクが斧槍を振り下ろし切った瞬間、その刃が引き戻される前に、もょもとの攻撃が放たれた。

『ウラァァッ!』

異形の魔物とは異なった威圧感。
狂戦士は人型の存在だけが放つ極大の存在感を伴い、ビャクに刺突の嵐を撃ち込んだ。
斧槍を引き抜こうとも、狂戦士の筋肉は膨張して刃を留め、容易に引き抜かれる事を拒む。
斧槍から手を離して退けば、胸へ斧槍を埋め込んだままに追撃する。
戦士の中の戦士。狂戦士は容易に止まらない。
172 :labyrinth ◆666/MyrH6U [sage]:2012/03/22(木) 01:26:34.67 0
>>170
メルディが虚空に生じさせた水壁が、今一方の火霊からも現世に顕現する力を失わせた。
濛々と立ち込める白煙の中で、ルーチカは眠りの呪歌を歌う。
生物に催眠作用を及ぼして眠りへ誘う調べを。
この三人の冒険者は、彼女が“その他大勢”と称した存在と本質的には同質。
故に“その他大勢”の本質に触れ、その助力を得たルーチカの歌は、体内に巣食う魔霊の群れを押し退け、直接彼らに作用する。

狂える冒険者の精神に渦巻くのは、甲高い魔性の呻き。
憎悪の叫びで合唱する魔霊が、幾重にも木霊する呪いの旋律を作り出す。
憑依した者から、正気を失わせている狂気の淵源を。
この阿鼻叫喚の世界に、柔らかな異音が混じった。
幼子を抱く母。その様な印象を持った歌が。

『……眠い』

トンヌラの口から意味を持つ言葉が発せられ、眠りの呪歌は効果を為した。
ナイトガンダムに槍の一撃を放った少年が、不意に渋面を作り、力無く柄から手を離す。
憑依する魔霊が最も弱かったからか、或いは元の資質からか。
狂える冒険者の一人、トンヌラが真っ先に倒れた。
他の二人は、独力にて睡魔の影響を逃れたのか、瞼を垂れる事無く、眼前の敵に向かい続けている。

言霊の禁則に捕らわれるのは、禁則の内容を知った瞬間。
従って、仰向けに倒れたトンヌラは言霊の魔物にも喰われず、静かに寝息を立て始めた。
173 :冴島鋼牙 ◆lt9oBdBLXY [sage]:2012/03/24(土) 23:07:07.86 0
「黄金騎士に命令します。この世界に影響を与えようとする
強大な力を持った者を倒す事を。」

神官の命令により、魔戒騎士・冴島鋼牙は
特殊なゲートを通過しガイアへとやって来た。
「ザルバ、ここがガイアと呼ばれる世界か。」

精悍な顔付きの青年、鋼牙は指輪に語りかけるように呟く。
それに応じるかのように髑髏の意匠が施された指輪「ザルバ」も
その口を開く。

「あぁ、そうだが……奴さん達は既にやり合ってるようだぜ。」

鋼牙は戦闘の最中の真っ只中へ現れてしまったようだ。

「仕方ない……ここは様子を見るか。」
剣を引き抜く構えのまま、警戒を怠らぬように鋼牙は周囲の様子を探った。

名前: 冴島鋼牙
職業:魔戒騎士「牙狼」
種族:人
性別:男
年齢:20代後半
身長/体重:184cm/75kg
容姿特徴:精悍な顔付き、茶色の髪
性格特徴:冷静、無愛想
技能/魔法:魔戒剣を使用した戦闘法、鎧の召還術
装備:魔戒剣
所持品:「魔導具」 ザルバ
備考:魔獣「ホラー」を狩る魔戒騎士の1人であり騎士の最高位である
「牙狼」の名を継ぐ男。
自らの住む世界にも訪れた異変を正す為、神官の命によりガイア世界に
現れた。


174 :テイル[sage]:2012/03/26(月) 20:32:50.16 0
>『……グッ、ウォォォォ……!』

氷の魔法で火の精霊を撃退すると、サマンサは今度は獣のような唸り声をあげはじめた。

「あーっと、今度は何だ!?」

さて、サマンサは、もょもと達の仲間になる前に犬に変えられていたのは有名な所だ。
小さくて可愛い犬、というのはドット絵から来る人々の勝手な想像で、実は獰猛な狼だったのかもしれない。
丁度目の前に迫っているような!

「――アースブレッド!」

呪文を唱えると同時に一歩飛び退る。
弾けとんだ石畳の無数の破片が、狼の腹に突き刺さる。同時に砂埃が巻き上げられ、目潰しとなる。
それでも、狼の爪が突きたてられたのは、ボクの目の前間一髪だった。
地面から石を一斉投射する、ストーンブラストと同じ効果の魔法だが、こんな形で役に立つは。
似たような効果の魔法でも見境なく覚えておくものである。

「あっ、トンヌラ君が寝た! あーあー、ルーチカちゃんその調子だ!
あとナイトガンダムさんはサマンサさんの相手を!」

眠らせるのが有効と見た。
トンヌラが寝て手が空いたガンダムさんがこっちに来たのを見計らい
セレネストリングスを取り出して、ルーチカちゃんの呪歌に合わせて演奏し始める。
呪歌の達成値の上乗せ程度にはなるだろう。

そこに突然現れる者がいた。

>「仕方ない……ここは様子を見るか。」

あから喋っていないのに平気だとっ!? 何故だ!?
でも今はそんな事よりも、サマンサさんたちをどうにかするのが先決だ。

「危ないよそんなところにいたら!
あーあー、もしくはもし腕に自信があるならこの人たちを出来るだけ穏便に生け捕りにするのを手伝って下さい!」
175 :ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2012/03/26(月) 23:24:11.89 0
>『ガァァッ!』

手応えはあった―がしかし
この魔宮に魂を喰われた者は簡単には死を迎えさせることすら許さないらしい
体内から発される魔の霊気が纏う鎧より強固且つ彼を操る力は強力と言わんばかりに

>『ウラァァッ!』

攻撃は止まず、かなりの手練故に明確で隙の無い剣技の刺突の嵐が襲い掛かる。
その場からはまず動けないまさに万事窮すだろう。
だが彼もその場から考えられる出来る限りの事をするまで
その身を最初の一撃で鋼の剣に身を食い込ませるように前へと進む
深々とその身に突き刺すと口からも吐血するが必死に歯を食いしばる
だが此方も体に食い込ませた為にもょもとの身動きが取れない
そしてその頃にはテイルの演奏が加わりルーチカの呪歌の効力が増していったのか
もょもとにも動きに変化が見られたそして次第に動作がぎこちなく停止していく
そう睡魔からも逃れられぬように

「ああ、ここから君を殺すのは幾らでも術がある
あれ等は君達を生かす事をご所望でね…彼等に感謝するといい」

ごふっ、と更に吐血するやはり多少の事では大丈夫かと思ったが
やはり痛い物は痛いし、上手く見切って差し込むように調整しなければ危なかっただろう
呪歌で彼が眠るかこちらが失血しすぎて死ぬかの根競べになるかと想像すると
やや苦笑気味で

「アイツを…レヴィヤタンをこの手で斬り捨てるまで死ぬつもりはない!」

その言葉と共に身に秘める覚悟を鬼気迫る表情で全身から現し
もはや意識を失ったもょもとがその本能でたじろぎ恐れる動作をしてすぐに
呪歌の効果により強制的に眠りに落ちた。
176 :labyrinth ◆666/MyrH6U [sage]:2012/03/28(水) 19:33:56.56 0
>>174
テイルの魔術が巨躯の狼の眼前で、砂柱を噴き上げさせる。
直後に振り下ろされた魔獣の爪は、砂塵に映った妖精の虚像を裂いたのみ。
しかも、巨狼の着地した場には罠が残されていた。散弾の如き石の斉射が。
獣の脚が床に触れた瞬間、散乱する石畳の破片が千の鏃と化して炸裂した。

『オォォ……オォォ!』

攻撃を受けた獣が、炯々と瞳を輝かせて嚇怒する。
巨狼が体を震わせて咆哮すると、鈍色の腹に埋め込まれた砂礫は、血の粘りを混じえて床に落ちた。

『グルォォオォォ!』

背中の毛を逆立てた巨狼が、再び獲物を求めて前方に躍り掛かる。
如何に物理的な攻撃を仕掛けようとも、魔に憑かれた獣は容易に止まれない。
それこそ、四肢を砕かれでもしなければ。

狂獣の鋭い爪牙を受けたのは、鋼鉄の肉体を備えた騎士だった。
飛び掛かった巨狼がナイトガンダムを押し倒す。
激しい打音の後に短く堅い音。ナイトガンダムの首には魔獣の牙が突き立てられていた。
凄まじい顎の力は鋼鉄の皮膚をも突き破り、じりじりと首筋に牙を食い込ませる。

一方、前列をナイトガンダムに譲って後退したテイルは、魔法の竪琴で演奏を始めていた。
ルーチカの歌に儚げな旋律が加わると、魔力を秘めた歌が深みを増す。
心中に生じさせる眠りの飢餓感も千変万化。
胡蝶に変じる夢魔。沸々と泡立って酩酊を呼ぶ泉。或いは緩やかに吹く睡魔の風。
歌と弦から作られた単調な調べは、聞き手全てを夢の世界に捉えんとする。

>>175
岩をも砕く狂戦士の剣は、ビャクの筋肉と臓腑を以て止められていた。
深く刻まれた創傷からは、拒否の赤が脈打つように流れ出ている。
二人の戦士が争う場にも、魔性の子守唄が流れた。
一騎打ちの最中だと言うのに、理不尽にも狂戦士の瞼が重く垂れる。

『ウ、ム、オォォォォ!!』

恐るべき破壊者は睡魔の虜囚となる事を拒み、人の限界を超えた力で力任せに剣を動かす。
が、いかに力を込めて振るおうとも、ビャクに埋まった剣を動かす事は叶わない。
慄きの表情を残して、もょもとの意識は途絶する。

これで妖霊に憑かれた三人組も最後の一人。魔獣と化した女魔術師のみ。
彼女は眠りの呪歌の影響を逃れたようだった。
剣歯虎の如き太い牙でナイトガンダムに噛みついた獣は、獲物から首の一部を奪っていた。
巨狼は喰らう部位を首から下に移すと、今度は槍持つ腕を強引に喰い千切る。

>>173
そして……万魔殿が唐突に新しい侵入者を迎えた。精悍なる人間の男を。
彼は迷宮を徘徊する幾多の魔物と同様に、石碑の間を通らずして迷宮に現れた。
従って禁則を知らず、呪いにも捕らわれていない。
冴島鋼牙が移動の際の用いた特殊なゲートは、異質な気配を発散して、狂える巨狼の関心を引いた。
魔獣は咥えていた機械の腕を吐き捨てると、剣の柄に手を掛けたままの男に紅玉の双眸を向けて吼える。

『グウォォオオォォゥ!』

轟風を思わせる咆哮が殺戮の合図。
闘いに酔った鈍色の狼は冴島鋼牙が魔物では無く、魔に憑かれた痴者でも無い事を己の嗅覚で認めた。
巨躯を支える四肢で石床を蹴り、魔獣は通廊の天井近くまで高く跳ねると、冴島鋼牙に飛びかかった。
開かれた口腔には鉄をも砕く鋭い牙。
首筋に噛みついて、そのまま食い千切るつもりだろう。
177 :レヴィア=メルビレイ ◆666/MyrH6U [sage]:2012/03/28(水) 19:50:49.70 0
【万魔殿最下層】
私は室内に置かれた寝台の下に隠れて、さながら胎児のように身体を丸めている。
視認こそ出来なかったが、頬を撫でる毛足の長い絨毯は室内に足跡を付けない筈だった。

追跡者に仕掛け扉を開けさせるには、この部屋を素通りさせなければならない。
此処には扉を遠隔で開閉させる装置は無く、従って仕掛け扉は手動で誰かに開けさせねばならないのだ。
通廊の先の奥まった場所に設けられた扉は、古代の領主が配下に開けさせる事を想定して造ったのだろう。
不合理な仕掛けだった。絶対に裏切らない殉教者がいなければ成り立たない。

この世界は外面こそ整っているが、不合理な粗が至る所に残っていた。
それは仕方が無い。全知全能のJHVHでも、創造には六日の期間を掛けたのだ。
私は全知でも全能でもなく、ましてや創造の時間も半日しか設けていない。
世界に微細な綻びが幾つも残っているのならば……己の力で補うのみ

私は自分が潜む部屋の扉に、鍵を掛けていない。
鍵を掛けてしまえば、内側に鍵を掛ける者の存在を疑われる。
追討者に此処を無視させて先へ進ませるには、扉に鍵を掛けてはならないのだ。
見通しの効かない完全な闇の中で隠し扉を探すには、時間が掛かるかも知れない。
私が見つける前に、扉を破られる可能性も有り得た。
追う者達に鍵開けの技術が有れば、さして労を要せずに
それが、私から即座に脱出口を探す意志を奪う。

……。

静穏な闇の中で己の搏動のみを聞いていると、不意に軋む音が鳴った。
ぼんやりとした灯りの気配。近くに室内を窺う気配を感じて体が硬く強張る。
無意識に息が止まり、全身には凍りつく様な空気の冷たさを感じていた。
肌を伝って流れる冷汗が厭わしい。

……。

長く、実に永く感じられる数秒の時が過ぎ、室内を窺っていた者の足音が遠ざかる。
扉は開け放たれたままに放置されたようだった。
近くから人の気配が消えると、私は浅く、小さく、そして静かに安堵の息を吐く。
私の存在を感知されなかったのは、通廊の先に続く足跡を見つけたからなのだろうか。
そのまま、闇の中で息を潜めていると、身体に接する絨毯から振動を感じた。
膨大な海水を引き入れる為の仕掛け扉"破水"が開かれ、万魔殿の底に穴が開いたに違いない。

波濤が駆け抜ける音は壁越しにでも聞き取れる。もう隠れる必要は無かった。
破水の作動を感知すると、最下層全ての扉は閉じられた上に固定され、木製の外装を落とす。
隠し通路の設えられた部屋を除き、全ての扉は内蔵された鉄格子だけとなる。
鉄の格子は海水を引き込むが人は逃さない。水に呑み込まれる追跡者達は一人残らず全滅するだろう。

追跡が無ければ、掩蔽された隠し通路を探す作業に充分な時間を掛けられる。
全き闇に瞳を塞がれてはいるものの、時間さえ有れば捜索の難度も軽減される筈だった。
私は寝台の下から這い出ると、疲労を癒したい誘惑を撥ね退け、最下層からの脱出口を探す為に壁を叩き始める―――。
178 :冴島鋼牙 ◆lt9oBdBLXY [sage]:2012/03/29(木) 21:01:48.19 0
>>174
>「危ないよそんなところにいたら!
あーあー、もしくはもし腕に自信があるならこの人たちを出来るだけ穏便に生け捕りにするのを手伝って下さい!」


「「おい、鋼牙。助けを呼んでる奴らがいるみたいだぜ。
どうする?」」

指輪状の魔導具「ザルバ」が鋼牙にティルの存在を知らせる。
鋼牙はザルバの問いかけに言葉を下さず、朱色の鞘に携えた
剣を握る。

「……この気配。あの魔物は、元は人間だったもののようだな。
俺は冴島鋼牙。所以あって、この世界へ来た。
手助けがいるならば―――行くだけだ。」

>>176
>『グウォォオオォォゥ!』

ティルら一行に助太刀を決意した鋼牙の前に灰色の魔獣が迫る。
その獰猛さが周囲の空気を凍りつかせながら、一心不乱に
血塗られた牙を突き立てようと叫ぶ。
素早く飛び上がった魔獣に、思わず鋼牙の体が押し潰される。
「「鋼牙!!このままじゃ喰い付かれてお仕舞いだぞ!!
って……そんな心配はお前にはいらないな。」」

ザルバの叫びにも鋼牙は言葉を返さず、ただ頷く。
やがて、その牙が鋼牙に突き立てられんと迫ったその時――!!

「(今だ!!)」

巨大な口腔を開いた狼の牙に、鋼牙の魔戒剣が突き立てられる。
更に、鋼牙は飛び上がる力を利用し両足で狼の腹を蹴り上げる。
通常の人間では在り得ない力だが、闇の魔獣・ホラーを
狩る者としては造作もない行動なのだ。
邪悪を切り裂く金の剣、魔戒剣を引き抜き魔戒騎士・冴島鋼牙は
目前の闇を鋭い双眼で睨みつけた。

179 :labyrinth ◆666/MyrH6U [sage]:2012/03/31(土) 22:05:47.23 0
>>178
巨狼の牙を撃剣で止めた冴島鋼牙は、己に圧し掛かろうとする狼の腹を蹴り上げた。
下方から凄まじい圧力を受けた魔獣が、そのまま上へと向かって弾き飛ばされる。

『グルルォォッ!』

雷鳴にも似た獣の低い唸り。
天井に向かって数m近くも跳ね飛ばされた狼が、石壁に背を打ちつける寸前、魔術の如く空中に制止した。
サマンサに取り憑いた獣の霊力が、まるで透明な足場が有るかの様に、巨躯の狼を宙へと浮揚させたのだ。
激しい数瞬の攻防が終わると、呪歌の開始から、ずっと自分の耳を塞いでいたソルが大声で叫ぶ。

『ああっ……ったくもう!
 挨拶済ませてねーから名前も知らない人とビャクさん!
 後で回復魔法を掛けてやっから、あんたら剣士は遠慮なく狼をぶった切ってくれ!
 脚の腱を斬るなり骨をぶち折るなりすれば、あん畜生もさすがに動きを止めんだろ!
 悪態一つも気軽に吐けないよーなこんな場所……足元掬われる前にとっとと抜けてーんだよぉぉっ!』

耳を塞いだままのソルは剣士の応えを聞かず、隣のルーチカに目を向けた。

『アタッカーのサポートに使えそうな呪歌はねーのか、ルーチカ!?
 呆気なくレジストされちまった眠りの歌も、相手が弱ってくれば効果が出て来るかもしんねーけどよ……あっ!』

短い驚嘆の声を上げたソルが、目を大きく見開く。
体を捻った巨狼は、怒りに燃え盛る双眼をルーチカに向けていたのだ。
戦場に流れる呪歌は、理性無き狂獣ですら無視できない程に煩わしいようだった。
その睡魔の音源を源から絶つべく、巨狼が宙を疾駆して、ルーチカに襲いかかる。
呪歌の歌い手に迫るのは、五つの爪を備えた太い前脚。
恐るべき膂力を備えた一撃は、石畳を砕いた狂戦士の剛剣に勝るとも劣らない。
180 :テイル[sage]:2012/04/03(火) 01:21:17.37 0
「ああ、ここから君を殺すのは幾らでも術がある
あれ等は君達を生かす事をご所望でね…彼等に感謝するといい」

ビャクさんは、ボク達の希望を聞き入れて、満身創痍になるのにも構わず相手を殺さないように戦ってくれている。
ハープをひきながら、小さく呟く。

「ありがとうビャクさん……」

やがて、もょもとさんも眠りに落ちる。残るは狼と化したサマンサさんだけだ。
ガンダムさんが狼に食いちぎられている。
助けに入りたいところだが、これ以上の被害を抑えるためには一刻も早く狼を眠らせる事が先決だ。
持ちこたえてくれる事を信じてハープを引き続ける。
そこに、先程突如現れた青年が助太刀に入り、狼を跳ね飛ばす。

>『アタッカーのサポートに使えそうな呪歌はねーのか、ルーチカ!?
 呆気なくレジストされちまった眠りの歌も、相手が弱ってくれば効果が出て来るかもしんねーけどよ……あっ!』

超常の力で空中で体勢を立て直した狼が、ルーチカちゃんに狙いを定めていた。
プロテクションは……発声制限により使えない。
気付いた時には、ハープを投げ出して駆け出していた。

「危ないっ!!」

ルーチカちゃんを突き飛ばすべく、飛びついて体当たりする。
181 :ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2012/04/03(火) 17:51:47.01 0
>「ありがとうビャクさん……」

刺された剣を引き抜き、テイルの感謝の言葉に対して返している余裕は無い
倒れたもょもとにも一瞥もせず、深く突き刺さったハルバートを引き抜くと
突如現れた魔獣の群れに対して、どこからか現れた男―
今はそんなことよりも若干揺らぎ始めている意識を保つために細かい事などを気にしていられなかった。

>『ああっ……ったくもう!
 挨拶済ませてねーから名前も知らない人とビャクさん!
 後で回復魔法を掛けてやっから、あんたら剣士は遠慮なく狼をぶった切ってくれ!
 脚の腱を斬るなり骨をぶち折るなりすれば、あん畜生もさすがに動きを止めんだろ!

言われるまでもない、だが言葉を交わす時間までも今は惜しい
ハルバートから禍々しい和弓変えて、自身の周囲には黒い魔力で生成された剣―夢双剣が出現し

「あと少しだと言うのに邪魔をしてくれるな!!」

第一の弓矢を発射すると同時に周囲にある夢双剣は魔獣に突き刺さると次々と爆発し肉片へと帰っていく
それに続けてまるで爆炎の中が見えるとばかりに姿が残っている獣の肉体を的確かつ必中に近い確立で高速で撃ち抜いていく
しかしそんな時だ、魔獣はそれでも完全には仕留められなかったらしい

>「危ないっ!!」

呪歌を歌っているルーチカに狙いを定めた魔獣から庇うようにテイルが彼女を突き飛ばす
そして身代わりになるばかりにすでにその爪は間近に迫るしかし
今の意識がはっきり感じられる限界の本数を可能な限り魔獣の周囲に夢双剣を出現させると瞬く間に剣山の如く
全身から刃が突き出る

「諦めが悪いな!!お前の終点は此処だ!コイツもお前への手向けに受け取れ魔弾タスラム!」

そして全身から夢双剣を通して爆破させた後、追撃するように放たれたその光の矢―魔弾タスラムは
魔獣の身を滅するには造作も無いその威力で細切れどころか塵一つ残さず消滅させた。

「(残るは、あの女のみか)」

痛みと身体に残るダメージを上手くコントロールし、闘志を剥き出しのまま意識を保つために
必死で己を奮い立たせていた。
182 :labyrinth ◆666/MyrH6U [sage]:2012/04/04(水) 21:01:10.00 0
>>180-181
狼霊を憑依させて巨躯の狼に変じたサマンサは、ルーチカに飛び掛かって、華奢な体を引き裂かんとした。
が、狙われた少女の立っていた空間には、代わって彼女を突き飛ばした妖精が立ち竦む。
魔性の狼に狙われるのは、ルーチカの身代わりとなったテイル。
その肉体に破壊の力が加えられる刹那、迷宮に叫び声が響いた。

>「諦めが悪いな!!お前の終点は此処だ!コイツもお前への手向けに受け取れ魔弾タスラム!」

狂戦士の相手を終えたビャクが、猛禽さながらに空を駆ける巨狼を睨みつけて叫んだ。
発された最後の一音が消え去る前に、ビャクの周囲に幾本もの剣と、白熱の光弾が出現する。
剣は即座に飛翔して魔獣に突き刺さり、追撃のタスラムは通廊を駆け抜け、閃光の中で狼形の魔獣に変じた魔術師を蒸発させた。
しばらくの間、ソルは言葉を忘れた様に巨狼の消え去った辺りを呆然と見ていたが、やがて頼りなさげな呟きを発する。
表情にも、やや狼狽を浮かべて、天使族の少年はテイルの顔を見た。

『あ……えーと……塵一つ残ってないから……俺の回復魔法じゃ……ちょっと無理かも。
 跡形も残ってないけど、あれも神なら何とかなる……の……かな?』

獣化を遂げたサマンサが光の中に消え去り、万魔殿第ニ層での戦いは完全に終わりを告げた。
暗澹とした薄闇を作り出していた通廊も、タスラムの光に瘴気を焼き払われて視界を明瞭としている。
通廊の先で口を覗かせる下層への階段も、位置は明らか。

『改めて謎の人への自己紹介や怪我人の治療と行きたい所だけど……安心してやるには此処の階層を抜けなきゃな。
 足腰に自信が有る奴は、あいつらを下の階まで運んでってくれると、ありがたいんだけど』

ソルが冴島に向かって、石床に転がる二人の少年を指し示す。
もょもとは肩口から胸にまで達する深い裂傷を受けて倒れ、無傷のトンヌラだけが静かに寝息を立てて眠っていた。


【万魔殿・三層】
迷宮の主は、暗黒の通廊に出口を求めて彷徨う。
探索者達が何を見て、何を聞いたか、彼女が観測する事はできない。

【万魔殿・四層】
迷宮の主は、水底の石室で夢寐を貪る。
探索者達が何を見て、何を聞いたか、彼女が観測する事はできない。
183 :レヴィア=メルビレイ ◆666/MyrH6U [sage]:2012/04/04(水) 21:18:06.92 0
【万魔殿・最下層】
充分な時間が過ぎたにも関わらず、私はまだ万魔殿の底にいた。
全ての壁面を叩き、壁の厚さを確かめたにも関わらず、暗黒の室内に存在する筈の脱出口が何処にも見つからない。
個々の玄室の構造を思い出そうにも、曖昧にしか思い出せなかった。
懸命に思い出そうとして、私はようやく幻想否定の力が記憶面にも作用している事を悟る。

「まさか、入るべき部屋を間違えた……いえ、そんな筈は……無い。
 破水から守られるのは脱出路を備えた部屋だけ。脱出路は必ず此処にあるはず、有るはずなのよ……」

万魔殿最下層の大まかな構造は六芒星形。
幾何学的な図形を覚えるのは容易く、それ故に逃走の際には記憶の減衰に違和感を覚える事が無かったのだ。
或いは人間並に落ちた認識力と焦燥が、異変を感じさせなかったのかも知れない。

「無い、無い、何処にも無い……まさか脱出路が無い?
 そんな最悪の展開、有って良い訳が無いわッ。
 脱出路は必ず何処かに有る。まだ探していない場所。そう、壁に無ければ天井か床によ!」

石柱を攀じ登って天井を爪で掻き、絨毯を剥がした床の上を這い回って拳で叩く。
絵画らしき物の裏。寝台の下。クローゼットの中。本棚や机らしき物も動かす。
隠し扉の存在しそうな場所を全て調べ終わった後、私は完全な幽閉の中にいる事を認めた。
憂悶の海に囲まれた棺へ、生きたまま埋葬されたのだと。

「このまま密室の中で餓死? 酸欠? 或いは私を倒しに来た冒険者に救出される?
 助け出されて、ありがとうって言って、そのまま助けた奴らと殺し合い?
 まったく笑えない……気狂いの書いた最低の戯作でも有り得ないわッ」

虚脱する感覚は、私を寝台の上に倒れ込ませて微睡に誘う。
疲労の所為か、やけに身体が重く感じられた。

…………。

どれだけの時間が過ぎたのか分からなかったが、私は目覚める事で自分が眠ってしまっていた事に気付く。
棺の中の世界には、眠りに落ちる前とは違うものが加わっていた。
鉄扉を叩き、打ち、軋ませ、破壊を試みている凄まじい水圧の音が。

「扉が……壊……れる? 水に殺される? 海魔の王が溺死なんて……悪い冗談にも程が有るわッ」

漆黒の闇が潤んで、瞼には熱さが感じられた。
愚図る幼児にも似た呻きは、とても自分が上げた声だとは思えない。
私は次第に間隔を短くする蝶番の悲鳴を聞くと、弾かれた様に寝台から起き上がって逃走経路を探し直す。
残された時間は僅か。夢寐を貪っている間に貴重な時間は浪費されてしまっていた。
探す。探す。必死に。家具や椅子や寝台で構成された棺の闇を彷徨って探す。何も見えない。無明。闇。
すぐに鉄の扉は重い断末魔を上げ始め、微かな綻びから浸水する音すら聞こえて来る。

「た―――」

反射的に漏れそうになった哀訴の祈りを止めた。私が神と認めるものは此処には存在しないのだ。
祈りなど無意味。全ては独力で解決しなければならない。まずは手探りで確かめた室内を脳内に描く事から。
入口の扉、四方の壁、絨毯を剥がしてまで調べた床、柱を攀じ登って調べた天井。何処にも脱出口は無かった。
何処に、何処に、何処に……砕けゆく扉の音に思考を遮られる。
本棚の後ろ、寝台の下にも無い。何処に、何処に、何処に、脱出口は何処に?
他に天井と繋がっている構造物は構造物は……構造物は有った……詳細に調べていない場所は此処しか無い!
目算を付けた場所に駆け寄った瞬間、今まで海水を留めていた鉄扉が断末魔を上げ、海水が瀑布の勢いで室内に入り込む。

「い、嫌ァァァァァァァァァァァァッ!」

悲鳴を上げて何かを思いっきり引っ張ると、戸口らしきものが開いた感触。
私は、そこに身を踊らせようとして……寸前で何か強い力で後ろに引き戻されるのを感じた。
喉が焼ける様に痛い。全身が重い。恐るべき水の力で引き回される。何も見えない。ただ苦しい。
そして私は。“レヴィア=メルビレイ”は水葬される……万魔殿の最奥を棺桶として。
184 :レヴィアタン ◆666/MyrH6U [sage]:2012/04/08(日) 03:03:00.72 0
【隧道内の岩窟】
黒花崗岩で覆われた岩窟で、ロード・ティアマトは足元の岩盤を眺める。
竜頭の仮面から覗く鋭い眼と、見る者を不安にさせずにはいられない微笑みで。
首には発光液体で満ちた小瓶が下げられており、寒色の心細い灯りを発して付近の岩肌を照らす。
彼女の視線の先には、井戸の様な深淵が口を開いている。
この縦穴の隧道こそが、最下層の一室の石柱内から地上へと続く昇降路だった。

『……これで、万魔殿第十層は水底に沈みましたっと。
 万魔殿は下層から順に崩壊。そろそろ八層辺りにも海水が入り込む。
 レヴィアの記憶は此処で途切れるから、複合シャードが壊れてないかは、ちょっと分からないわねぇ』

ティアマトは指揮下の兵団にレヴィアタンへの追討命令を出した後、唯一人で此処に移動していた。
追討令自体が姦計であり、彼女が敢えて戦死者を増やしたと慮る者は何処にもいない。

『もうすぐ全ての因果は砂上の楼閣と崩れ、私は新しい因果の中で―――』

不意にティアマトが口を噤む。
自分の他には誰も居ない筈の岩室に、人の影を認めてしまったから。
蒼白い光が最初に映したのは、裾が大きく広がった深海色のドレス。
次は形の良い顎と、その上で結ばれている唇。
続いて星屑がちりばめられている胸元の刺繍と、緩やかに巻かれた銀雪の髪。
白皙の皮膚は発光瓶の光を受けて同様の蒼白さを持ち、瞳は月に照らされた夜の海。
露わとなった肩の先では、ドレスグローブが光を拒絶する色の天球儀を握っている。
薄闇の元に姿を現したのは、迷宮の下層で死んだ筈の万魔殿の造営者だった。

『なぜ……レヴィアタンは石室の中で溺死したはずよ。だから私が現れた。
 私に石室から先の記憶は無い。絶対にあそこで死んだはず。生きてる筈が……無いわ』

「死んだのはレヴィア=メルビレイ。
 外見は同じままだけど、私はレヴィアタン……判った?」

海魔の女王が左手に持つシャードから黒い陽炎を投影させると、それは瞬時に大鎌の形となって逆の手に収まる。
長大な刃は、真冬の湖面を切り取ったかの様な玲瓏さ。

『待って、話を』

「聞く必要なんて無いわ。
 アナタがレヴィアの終止符から呼ばれたアルコーンだとか、そんな話だったら興味無いもの」

殺戮は一瞬で為された。
魔王の大鎌は即座にティアマトの項に血の一文字を刻み、竜の仮面もろとも首を撥ね飛ばす。
レヴィアタンは己の通って来た暗黒の中に屍を投げ捨てると、魔術で岩盤を崩して縦穴を完全に塞いだ。
事を終えると万魔殿の主は岩床の上を優雅に歩き、さながら霊体であるかの様に、岩盤を透過して迷宮の第五層に至る。
185 :レヴィアタン ◆666/MyrH6U [sage]:2012/04/08(日) 03:19:32.76 0
【万魔殿・第五層】
万魔殿は下層に降りる程に幻想の色調を増し、地上との法則を違えてゆく。
第五層は偽りの空と、瑠璃色に輝く海すらも備える魔術的な異境と化していた。
レヴィアタンの魔力が、三次元世界に心象の空想世界を具現化させているのだ。

悪魔と呼ばれる存在の中には、己を悪と認めない者も少なくない。
己を悪と認めたくないからこそ、彼らは自らを法として世界を定義する。その為に世界を創り変える。
今の世界を拒み、創り変えようとする強靭な意志こそが、悪魔達が行う異界創造法の根源である。
この閉ざされた広大無辺の現象世界は、七海を統べる巨大な神蛇、レヴィアタンの胎内と表現しても良かった。

ティアマトを殺害した後、レヴィアタンは迷宮下層を廃棄。
第五層に創り出した幻想の領土を己の足場とする。

「憑依していた人間の肉体を捨てて、ようやく元に戻れたって所かしら。
 振り返って考えれば、今までは随分と人間的に動き過ぎていた。
 複合シャードが私から人間の要素を排除しようとしたのも……まあ、仕方無いわね」

海魔の女王は、波で揺れ続ける海の上に立つ。
幻想の海を生成し続ける領域は、第四層の階段の下。
設えられた扉を開けば、すぐ其処には迷宮自体の広さを超えて、始原の海原が広がる。
青い空と碧い海と、海底の岩盤だけで創られた宏大な世界が。
第五層の扉が開かれ、自らの世界に何者かが訪れるまで、レヴィアタンは目を瞑る。
迷宮を漂う無数の魂魄たちを吸い上げながら。
186 :テイル[sage]:2012/04/08(日) 23:39:01.91 0
魔獣の爪が身に迫る。
妖精の身では怪我で直接どうこうという事は無いとはいえ
これ程の攻撃を受けたら魔力をごっそり持って行かれてしまう――持つか!?
その時。

>「諦めが悪いな!!お前の終点は此処だ!コイツもお前への手向けに受け取れ魔弾タスラム!」

「あ……」

振り返ると、そこには何もなかった。魔獣は跡形もなく消えていた。

>『あ……えーと……塵一つ残ってないから……俺の回復魔法じゃ……ちょっと無理かも。
 跡形も残ってないけど、あれも神なら何とかなる……の……かな?』

悲しいが、今は立ち止まっている場合ではない。
それに、ボクを守るためにやってくれたビャクさんに気を使わせるわけにもいけない。

「諦めよう……とりあえず今のところは。後でどうにかなるかもしれないし。
ありがとうビャクさん、助かったよ」

『改めて謎の人への自己紹介や怪我人の治療と行きたい所だけど……安心してやるには此処の階層を抜けなきゃな。
 足腰に自信が有る奴は、あいつらを下の階まで運んでってくれると、ありがたいんだけど』

とはいえ、ビャクさんとガンダムさんは重傷。さっき現れた青年一人で二人運ぶのは無理がある。
トンヌラ君にかかっている魔力的なものを見る。ステータス変化、眠り――のみ。
一度気を失った事で、邪霊や瘴気は離れたようだ。

「――アーリィバード」

目覚めの魔法をかけ、目を覚まさせる。

「……わあっ!?」

「後で事情は話すから――歩いて」

残るもょもと君は新入りの青年にお願いし、第三層へと向かう。
187 :ビャク ◆hfVPYZmGRI [age]:2012/04/09(月) 23:33:26.92 0
>>182

>『あ……えーと……塵一つ残ってないから……俺の回復魔法じゃ……ちょっと無理かも。
 跡形も残ってないけど、あれも神なら何とかなる……の……かな?』

「魂を喰われた上に恐らくはあの狂気の神と同じあの人狼化したのならば…もう手遅れだろう
元には戻れまい、だからせめて苦しまずにしたかったが」

自身の手にかけたかつて狂気の神の呪いにより人狼となった一人の少年が自身の脳裏に浮かんでいた。
あの少年の事は忘れようとは思わない、明確に自身が手に掛けた命だ
忘れようも無い。だからこそあの少年と同じ犠牲者は生み出したくなかった。
この手段が正しかったと主張するつもりなどはなかったが

>「諦めよう……とりあえず今のところは。後でどうにかなるかもしれないし。
ありがとうビャクさん、助かったよ」

「俺はあの少年と同じ被害者を楽にしてやりたかった―独善もいい所だな」

自嘲気味にそのお礼に対して笑みを返す。もしかしたら元に戻れる手段はあったかもしれない
今となってはそれも分からないが。

>『改めて謎の人への自己紹介や怪我人の治療と行きたい所だけど……安心してやるには此処の階層を抜けなきゃな。
 足腰に自信が有る奴は、あいつらを下の階まで運んでってくれると、ありがたいんだけど』

「アレくらいの傷で歩けなくなるなど超人の肉体を見くびられても困る」

あっちの第三層までは歩く―そんな言葉を口から出そうとした時
全身から力が湧き上がり始めると同時に負った傷に対して急速に自動治癒を開始する。
自我を蝕み始めたその力は間違いなくこの世界いや全世界に置いて天敵と判断された存在に対する
強制排除させるための世界を守る力―永久闘争存在の力が目覚める事態が起き始めているということだ

(レヴィアタンに何かあったな―いや本格的に目覚めたのか!?)

じゃなければいま全身に駆け巡り始めたこの力はなんだ?
今の彼の中で説明が出来ないだろう。
本格的に彼が彼として居られる時間はそうはないらしい
刻々と世界の天敵を屠る存在としての自身が成り果てるまでは。
歯を食いしばって、己が己である事を忘れぬように

「あのレヴィアタンに何かあったのは明白だな―急がなければな
あちらに階段らしきものがある急ぐぞ!」

時間がない、彼自身で居られる時間もそしてこの世界から世界の災厄が本格的に始動する時間も
とりあえず今はこの場所を抜け切るのが先決であり、一刻も早く奴の下に辿り着かねばならなかった。




188 :テイル[sage]:2012/04/10(火) 00:18:56.56 0
>「魂を
「あああああああああああああああああああああああああ!!」

誰かが言ってはいけない事を言った時にやるようにビャクサンの発言にあを被せる。
無駄な足掻きだがとっさにやってしまったのだ。何が来るかと身構える。

――が、1秒、2秒、3秒経過しても何も起こらない。

「ああー死ぬかと思った」

考えられる事は、迷宮にかかっている呪いの効力が切れたということだ。
迷宮の呪いが力を失ったという事は……迷宮の主たるレヴィアが……死んだ!?
まさか。
勇者達がえっちらおっちら玉座の間に向かっている間にラスボスが事故死なんていうギャグ漫画みたいな事があるはずがない。
しかし見れば、ビャクさんの傷が見る見るうちに治っていく。

>「あのレヴィアタンに何かあったのは明白だな―急がなければな
あちらに階段らしきものがある急ぐぞ!」

レヴィアタンに何かがあったのは確からしい。
ボクの予想も満更100%ハズレでもないのかもしれない。
例えば―― 一度死んで更なる進化を遂げた、とか。
さっきはその狭間の時間だったから助かったのかもしれない。
考えても仕方がない、先に進めば、全てが分かる事だ。第三層への階段を下りていく

―― 2層と3層の狭間・階段の踊り場

3層に入ったらまた何があるか分からない。ここで治療等をすませておいた方がいいだろう。
怪我人に一通り回復魔法をかけ、トンヌラ君ともょもと君に状況を説明する。

「サマンサちゃんはその……助けられなかった……ごめん……」

「何い!?」
「やめてよもょもと!!」

興奮するもょもと君を、トンヌラ君が止めて場は収まる。
ボクは、新しく来た青年に声をかけた。

「さっきは助けてくれてありがとう。
ボクはテイル、この迷宮の主レヴィアタンを倒すためにここに来た勇者の導き手だ。
君は?」
189 :ルーチカ ◆hATMxiE/qY [sage]:2012/04/10(火) 09:13:54.22 0
「!」

衝撃で息が止まった。
背中に当たる固く平らな感触、見慣れない視野、体重のかかる向き。
自分が仰向けに倒れた事をようやく理解しかけたところに、
すぐ側で閃光と爆音。
倒れたままなのでよく見えないけれど、そこで身を伏せているのは
・・・テイルさん?
(あ、危な・・・)

「・・・あらあら、やっぱり状況が分かってないのね。
あなたを襲いかかる狼から庇おうとしたのがテイル、
そのテイルを守ろうと狼を滅したのがビャク。
相変わらずあなたは何をやっても冴えない子ねえ」

ソルさんの天敵の頭巾うさぎに、重圧と放心付きで説教されてしまった。
おかげで自動的に正座し、つまりは起き上がれたので、
それはそれで良かったということにしておこう。

>……安心してやるには此処の階層を抜けなきゃな。

ソル先輩に促されて、みんなの後から階段を踊り場まで下りていく。
怪我らしい怪我などしていないのに、
床に打ち付けた肩や背中、擦りむいた腕の痛みに涙が浮かんでくる。
一般人の体なんて、この程度の強度だ。

>「サマンサちゃんはその……助けられなかった……ごめん……」

目を上げると、自走式棺桶がからからと二人の後で軽い音を立てていた。

「ダンジョン内の祭壇で復活できるシステムだったら良かったのかもですけどね・・・」

ヨウさんが、踊り場の壁に設えられた祭壇を撫でながら呟いた。
特定の異世界出身者だけが使えるものなのだそうだ。
他にも、泉やパソコン等、特定の異世界出身者向けの設備が稀に現れるらしい。
私はそんなヨウさんの説明を聞きながら、階段に坐って休んでいた。
190 :ルーチカ ◆hATMxiE/qY [sage]:2012/04/11(水) 00:43:57.47 0
テイルさんは、治療をし、説明し、挨拶し、と忙しく動き回っている。
階段に坐ってぼんやりその姿を追っていたら、また頭巾うさぎがやってきた。

「挨拶くらいはするものですよ。まったく、あなたって・・・」
「は、はい、すみません」

また重圧と放心が付いては大変なので、急いで立って、
もょもとさんを運んでくれた人のところに行った。

「はじめまして。私はルーチカです。
ほぼ一般人ですが、縁あってこの皆さんとレヴィアタンのところに向かおうとしています。
よろしくお願いします」

テイルさんの横で頭を下げた。
191 :冴島鋼牙 ◆lt9oBdBLXY [sage]:2012/04/11(水) 22:25:44.56 0
>>188>>189
>「さっきは助けてくれてありがとう。
ボクはテイル、この迷宮の主レヴィアタンを倒すためにここに来た勇者の導き手だ。
君は?」
>「はじめまして。私はルーチカです。
ほぼ一般人ですが、縁あってこの皆さんとレヴィアタンのところに向かおうとしています。
よろしくお願いします」



「俺は、魔戒騎士。冴島鋼牙だ、故あってこの場所に来た。
……」

言葉少ない鋼牙に業を煮やしたのか、鋼牙の指にはめられた髑髏の指輪「ザルバ」
がティルらに自己紹介を続ける。

「俺達はこの世界の住人じゃない。だが、別の世界でもこの世界で起きた異変が
影響して少しずつだが破壊され始めている。その原因ってやつを何とかするってのが
俺達の使命だ。俺は、ザルバ。こんな形だが、一応は生きてる。宜しく頼むぜ。」

髑髏の顎を動かしながら、ザルバはティルらへ一通りの説明を終えた。
そしてルーチカが言ったレヴィアタンという名前に鋼牙が鋭い目を光らせる。
今までに経験したどのホラーとも違う異質な力の存在を、既に感じ取っているようだ。

「その、レヴィアタンとやらが敵の根源か。――どころで、あんた。
見たところ剣士のようだが。ザルバ、この気配は。」
ザルバが髑髏の顔を歪ませてレヴィアタンの異変を感じ取る。

「鋼牙、こいつはまずいぜ。どうもよくない……いや、最悪って感じすらするぜ。」

「そうか…あんたの言うとおり、急いだほうがいいかもしれないな。」

>>187剣士に目を向け、鋼牙は
男の目に宿りはじめたであろう強力な力を感じていた。

192 :labyrinth ◆666/MyrH6U [sage]:2012/04/12(木) 19:56:01.97 0
>>187-191
石段途中の踊り場で互いの素性を明らかとした探索者達が、緑の臭気で満ちた迷宮第三層に至る。
此処は大型の獣族と巨人族が徘徊する領域であり、地底にも関わらず鬱蒼とした密林が広がっていた。
枝と枝、幹と幹とが絡み合い、林冠の頂きでは僅かな光を求める葉と葉が獰猛に相争う。
無数の樹木は種類も様々で、針葉樹もあれば、落葉樹もあり、大地は落葉で作られた腐葉土に覆われていた。
各々の枝には、色と形を異とする様々な果実が鈴なりに垂れ下がり、同じく種を異とする様々な虫の餌となっている。

樹木の世界を見下ろす天井には、残照の赤を滲ませる水昌が幾つも備え付けられていた。
植物の生育に必要な自然光は、鏡と水晶を利用した採光設備で採り入れているのだ。

『地上に誰か派遣するなら今のうちかもな。
 もっと深くに潜ったら、マッピングで順路を覚えてても、地上への往復には時間が掛かるだろうし。
 それと今のうちってんなら、雑魚相手に試したい武器や魔法を使うのもだな』

樹間に現れた影を認めて、ソルは言う。
現れたのは、凶暴無比な顔貌を持つ巨人族の群れであった。
成人した男性を六人積み上げた程の高さを持った巨人族。それが五匹。
彼らは粗末な腰布を纏い、暗褐色の皮膚を持つ巨大な手には枝を落した丸太を握っていた。

『こんな壁の無い空間でドンパチやれば、次から次へと新手が寄って来るのは目に見えてる。
 戦闘チームが派手に敵を引きつけてる間に、探索チームが次の階層への入り口を探して、見つけたら合流のサインを出す。
 もしくは全員で移動と要撃を繰り返しつつ、下への入り口を見つけるってのが良いのかね?
 ともあれ、下の階で何か有ったんなら、あんま時間を掛けないのが良さそーだな』

ソルは巨人族が振り下ろした棍棒を軽やかに躱わすと、巨人の一撃で吹き飛んだ枝から果実を毟り取る。
赤々とした林檎は一齧りされると、巨人の頭部に投げつけられ、周囲に甘い果汁を撒き散らした。
193 :ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2012/04/12(木) 22:15:30.25 0
>「俺は、魔戒騎士。冴島鋼牙だ、故あってこの場所に来た。
……」

>「俺達はこの世界の住人じゃない。だが、別の世界でもこの世界で起きた異変が
影響して少しずつだが破壊され始めている。その原因ってやつを何とかするってのが
俺達の使命だ。俺は、ザルバ。こんな形だが、一応は生きてる。宜しく頼むぜ。」



踊り場に早速移動しそれまでには傷もあっという間に完治させていた。
そして先ほど現れた男に対して皆が名乗って居たため
こちらとしても命の恩人には変わりはないため、皆の自己紹介の後できるだけ
この場に居る者たちに此方の異常は悟らせないようにさせながら

「先ほどの加勢は助かった、俺はビャク=ミキストリ
説明が長くなるため大まかにこの世界の異変を多世界に広げないために戦う恒久戦士だ
今後とも宜しく頼むよ冴島鋼牙、ザルバ」

腕を組んで彼等を見据えるが、冴島鋼牙と名乗った男は己の目を見ている
様子から見て何かに感づいたのか、はたまたただ見ているだけか
その表情からは窺い知れない。

(この男気づいたか―それとも)

そんな事を考えていたが、後ろから怒鳴り声が聞こえる
助けた彼等が起きたらしい―怒る理由は分かっていた
俺が仕出かした事なのだから己がけじめをつけねばなるまい

>「サマンサちゃんはその……助けられなかった……ごめん……」

>「何い!?」
>「やめてよもょもと!!」

「それは俺がやった、テイルは悪くない
俺が判断し、決断をを下した」

「なんだと!?お前!」

トンヌラが止め収まりかけていたその時だったが、興奮したもょもとは自身の襟元を掴む
これは俺が受けるべき咎なのだから

「言い訳をするつもりはない―殴りたければ殴れ
救うことを諦めてしまった罰は受けよう―それが今の俺に出来る償いだ」

強く首元を握り締められ、もょもとの目を見て拳を振るわれる時を待つが
それは来なかった。掴んでいた手は離され力が抜けたように地面に崩れ落ちて静かにもょもとは震えていた。
彼も分かっていたようだ、自身があんな状態であのままならば
いつ殺されてもおかしくない状況であり奇跡的に自分達はまた元に戻れたことに
この中で全員死んでいてもおかしくなかった、だがそれが理解できていても感情は処理できない
崩れ落ちたもょもとに近づくトンヌラが来た事で足早に彼の傍から離れる

(どんな事を言っても許されるわけでもあるまい、これでもう一つ俺の咎が増えたか)

そんな思いを胸に秘めながら次の階を目指した。
194 :ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2012/04/12(木) 22:49:36.80 0
魔宮三階にやってくると
ここはどうやら緑に包まれた箱庭の中に出来た大自然の迷宮らしい。
周囲を観察する限りどうも大型の巨獣と巨人族といった
図体が大きい種族が生息しているようだ。

>『地上に誰か派遣するなら今のうちかもな。
 もっと深くに潜ったら、マッピングで順路を覚えてても、地上への往復には時間が掛かるだろうし。
 それと今のうちってんなら、雑魚相手に試したい武器や魔法を使うのもだな』

「なるほどそれもそうだな、此処から先は先ほどとは打って変わるだろうしな。
誰か地上に戻りたければ速めに戻った方がいい、これから先は今以上に厳しくなるかも知れないしな」

ソルの地上に派遣という言葉に賛成の意を示す。
自分は戻る気などはさらさら無いが、今は一気に進もうとは考えていない
誰か地上に居てくれればいろいろと助かることは確かだ。

>『こんな壁の無い空間でドンパチやれば、次から次へと新手が寄って来るのは目に見えてる。
 戦闘チームが派手に敵を引きつけてる間に、探索チームが次の階層への入り口を探して、見つけたら合流のサインを出す。
 もしくは全員で移動と要撃を繰り返しつつ、下への入り口を見つけるってのが良いのかね?
 ともあれ、下の階で何か有ったんなら、あんま時間を掛けないのが良さそーだな』

「あらゆる可能性を考えても、直接の戦闘に入って奴等の攻撃が裁ききれない者が居るのならば
やはり戦闘チームと探索チームに分かれたほうが良い。危険は何処にいても変わらんが
戦える者が危険が向かう幾らかを引き受けてリスクと確立が低くなるのならば、そちらの方がいいと思うが。他に意見はあるか?」

此処まで使っていなかった、悪魔召還器―PDA型COMPを取り出す
再びこの力を使うとは思っていなかった―いや考えないようにしていた。
かつての戦友たちはまた力を貸してくれるだろう、共に駆け抜け共に分かち合い
そして己のために戦ってくれた仲魔達。

「……すまない、不甲斐無い僕にもう一度力を貸してくれ」

かつて他人を思いやる心を忘れず誰に対しても優しさを忘れなかったお人好しで
誰にでも愛された純粋な少年の時代の瞳と心からの想いで手に持つPDA型COMPに呟いた。
195 :テイル[sage]:2012/04/13(金) 00:00:13.84 0
>「ダンジョン内の祭壇で復活できるシステムだったら良かったのかもですけどね・・・」

祭壇を撫でるヨウちゃんの言葉に頷く。

「うーん、例の教会じゃないと無理だね……」

青年とその指輪が、自らの素性を語る。

>「俺は、魔戒騎士。冴島鋼牙だ、故あってこの場所に来た。
……」
>「俺達はこの世界の住人じゃない。だが、別の世界でもこの世界で起きた異変が
影響して少しずつだが破壊され始めている。その原因ってやつを何とかするってのが
俺達の使命だ。俺は、ザルバ。こんな形だが、一応は生きてる。宜しく頼むぜ。」

「それなら目的は一緒だね……! よろしく!」

>「鋼牙、こいつはまずいぜ。どうもよくない……いや、最悪って感じすらするぜ。」
>「そうか…あんたの言うとおり、急いだほうがいいかもしれないな。」

「あなた達も感じる? なんだろう、レヴィアタンの気配がすごく近くなったような……。
ううん、それだけじゃない。さっきまでと質が違う……! 急ごう!」

そしてボク達は、迷宮第三層へと足を踏み入れる。
196 :テイル[sage]:2012/04/13(金) 00:21:01.85 0
第三層、それは密林の迷宮だった。
流石は魔王の作り上げたラストダンジョン、というところか。とても建物の中とは思えない。

>『地上に誰か派遣するなら今のうちかもな。
 もっと深くに潜ったら、マッピングで順路を覚えてても、地上への往復には時間が掛かるだろうし。
 それと今のうちってんなら、雑魚相手に試したい武器や魔法を使うのもだな』

>「なるほどそれもそうだな、此処から先は先ほどとは打って変わるだろうしな。
誰か地上に戻りたければ速めに戻った方がいい、これから先は今以上に厳しくなるかも知れないしな」

「イースさん、君に決めた!」

ボクは友達軍団の中から、商人のイースさんを召喚した。

「地上に戻ってポーションとエリクサーを99本ずつ仕入れてきて!」

また自由に魔法を使えない状況が無いとも限らない。
アイテムを買い込んでの物量戦の備えだ。

「任せときいや!」

イースさんは意気揚々と地上へと向かう。
見れば、ビャクさんも仲間を呼ぼうとしているようだ。
その姿に、彼の本当の姿を垣間見たような気がした。

「チーム分けだけど戦士系の人達が戦闘チーム、ボクとルーチカちゃんが探索チームでどうだろう」
197 :リュウセイ[sage]:2012/04/14(土) 18:58:43.27 0
地球の本棚での検索ではここか 何かの声に突き動かされaizenは何にもない大地にたっていた
そういうことか とおもむろに剣を召還するととaizenは渾身の力で地面に突き刺したすると大地から扉が出てきた 行くか aizenは走りガイアへとその扉をくぐり向かった
名前 aizen
身長180cm
体重72kg
戦闘方法 召還した武器 聖霊召還 ??? 回復魔法 黄泉がえり
職業 フリーのハンター+傭兵
特技 次元移動
もともと傭兵だけだったが最近から魔物退治に手を出し始めた
198 :超新星な騎士アカツキ ◆JryQG.Os1Y [sage]:2012/04/14(土) 19:38:31.39 0
ついたー でも何だろうここ誰もいない って来るな

きたな化け物行くよaizenは化け物に神速を発動し一機に切り裂いた
どう?居合いの威力は?
199 :超新星な騎士 aizen  ◆JryQG.Os1Y [sage]:2012/04/15(日) 14:35:34.10 0
いやー すっきりした でもスッキリし過ぎて 前世とか見ちゃった 
さて、出てきていいぞキバット

キバットは全く、俺様をこんなとこに押し込めるなよといいつつ
ズボンのポケットからひょっこり出てきた
しょうがないだろ衝撃とか有るんだから
でもよー何でこんなところにきたんだ?aizen
頭の中で救いを求める声がした以上だ
ったく、で何すんだ
人を捜せ 俺以外にここのフィールドに呼ばれた奴が入るはずだ
OK、キバっていくぜ
彼処だ!AIZEN 牙浪もいる
そうかじゃあマップを広げるか
そう言いAIZENは精神を集中させ地球の本棚を開きマップを探した
そこには魔宮と書かれていた。
急ごうキバット危ない
そう言い俺は魔宮に向かった…
200 :名無しになりきれ[sage]:2012/04/15(日) 23:04:37.56 0
>197-199
入国管理官「君君、入国書類をこの様式にしたがって書きなさい」

名前:
職業:
種族:
性別:
年齢:
身長/体重:
容姿特徴:
性格特徴:
技能/魔法:
装備:
所持品:
備考:
201 :labyrinth ◆666/MyrH6U [sage]:2012/04/16(月) 07:26:21.56 0
【>>aizen】
万魔殿を探索する冒険者の前にaizenが現れたのは、テイルが探索班と戦闘班の人選を終えた直後だった。
金髪碧眼の天使族、ソルが樹間に佇むaizenに気付いて声を掛ける。

『おーい、誰だ、そこの怪しい奴?』

樹間の薄闇に紛れた人影は、種族も年齢も性別すらも杳として知れない。
ソルは発光の魔術を掛けたダガーを松明代わりに掲げ、その薄闇の布を払おうとした。
aizenが何者なのかを確かめるべく。

『あぁ、そーいや人に名前を聞く時は自分からって言ったっけ。
 オレはソル。そんでガイアの勇者御一行様だ。
 アンタも冒険者かい? まさか魔王の手先ってんじゃねーよな?』

【こんにちは。無理にとは言わないけれど、種族、性別、年齢、容姿が有ると、きっと他の人にも役立つと思うわ】
202 :labyrinth ◆666/MyrH6U [sage]:2012/04/16(月) 07:32:19.24 0
【>>戦闘班】
異形の怪物の多くは、人に数倍する聴覚を持つ。
音を内部に留める静寂の結界でも用いねば、彼らからの察知は逃れられない。
壁の無い空間で発された冒険者の声は四方八方に拡散して、密林に潜む魔物達の耳へも入った。

最初に森の奥から現れたのは、鬼と言う言葉を連想させる五体の巨人。
彼らは暗褐色の肌を持ち、それぞれが大木の化身とも思える様な巨躯だった。
巨人の群は人に倍する木々を雑草の様に薙ぎ倒しながら、森への闖入者を迎え撃つ。

『HoHo! deg lita bash Gigas!(おいおい、赤子の様な小さき者の分際で、俺らとやり合おうってのか?)』

先頭の巨人が彼らの言語で嘲笑の言葉を吐き、ソルに向けて棍棒を振り下ろした。
対するソルは流水の様に滑らかな動きで、横に跳ねてこれを躱わす。
知性の低い巨人の攻撃を単純なものと見切り、落ち着いて孤の横側に後退したのだ。
標的の回避で虚しく宙を切った棍棒は、勢いを微塵も失わぬままに大地を打ち、激しく土飛沫を散らせる。
その粉塵の背後から、第二の巨人が飛び出して来た。
二番目のそれは、全員を纏めて薙ぎ嫌わんと、足元に弧を描くようにして棍棒を振るう。
叩きつけられれば、容易に人間を吹き飛ばす一撃を。

巨人の出現と同時に、左方の闇、腐葉土の下からは一匹の竜蛇(ワーム)が姿を現わした。
泥土色をした竜蛇は背中に腐葉土を厚く積もらせ、無脚無翼の特徴を除けば竜そのものと思える姿。

『クウォォォオオッ!』

巨大な竜蛇が顎を開け、血も凍る様な咆哮と共におぞましい息吹を迸らせる。
生物を腐食させる毒気の息を。
腐葉土を舞い上げて土柱と化した死の息吹は、樹間を走り抜けながら戦場に留まる者達へと向かう。

そして、森の枝々の上にも幾匹かの魔物が姿を現していた。
有翼の黒虎、窮奇と呼ばれる人肉を好む妖獣。
白鷲の姿をした巨人族、屍肉喰らいのフレースヴェルグ。
さらには、得体の知れない魔獣や魔鳥や異形なる怪物の群れが。

彼らは第一波の魔物が全滅すれば、すぐさま弱った犠牲者へ襲いかかる第二波の魔物達。
戦域と化した場所には、魔物の包囲が敷かれつつあるのだ。
本格的に戦闘音が鳴り響けば、集まる魔物達も、さらに数と種類を増すだろう。


【>>探索班】
次第に落ちてゆく陽は、地下世界の照明にも影を交え、昼の残り香を黒色で塗り潰す。
見上げても、そこには煌とした光を放つ月も、夜を彩る星々も見て取る事が出来なかった。
魔術で灯りを作らねば、天井と大地の間を遮る無数の葉の緑さえ知覚できない。

魔宮内部の森には、平穏も静けさも無かった。
肉を裂く音。地面を打つ音。木々が折れる音。遠くから幾つもの異なった音が轟く。
幾重にも織り重なった音は、その全てが戦の庭で編まれていた。
森の探索者は、下層への入り口を見つけるまでの間、それを聞き続ける事となる。

果たして、森林の迷宮を探索するにはどの様な技術が有効なのだろうか。
姿隠しの術、樹木との会話、暗視、消音、観察眼、構造の推測、迅速な連絡手段、人海戦術。

如何なる手段を用いようとも、時さえ掛ければ探索は十全に成るだろう。
しかし、有用な手段は探索に費やす時間を限りなく短くする。
第四層への入り口。巨石を組み上げて造った塚を見つけ出すまでの時間を。
203 :超新星な騎士aizen  ◆JryQG.Os1Y [sage]:2012/04/16(月) 19:33:13.50 0
>>202 >>197に書いたと思う
だがもう一度書いておこう書き忘れた物もあるし
名前aizen
職業フリーハンター フリーの傭兵 時空の本棚管理人 

種族人間(魔皇族とのハーフ)
年齢19歳
身長180 体重72
魔法 還装魔法 再生魔法 黄金の牙の鎧
装備品 ザンバットソード シールドの指輪
所持品 なにも書いてない本
備考 もともとフリーのハンターだったが親が急死し19代目の黄金の牙の鎧と時空の本棚の管理人となる
204 :超新星な騎士aizen  ◆JryQG.Os1Y [sage]:2012/04/16(月) 19:42:51.37 0
まぁここにきた理由をいう前にやばそうだな
>>202 ったく面倒なことになったなでかいしあの武器つかうか
来い ハウリングランチャー
吹き飛べ と思い先頭の奴をねらい打った
だが、無傷だった あーなるほどな並のやつじゃ効かないということね
じゃあこれなら
吠えろ 斬艦刀
という言葉から出てきたのは巨大な刀だった
aizenは先頭の巨人に突っ込みまっふたつに切り裂いた
手応えあり、そう感じた
退いて2秒後先頭の巨人はまっふたつになり消滅した
ふい まだあれを使うわけにはいかないんでね
205 :超新星な騎士aizen  ◆JryQG.Os1Y [sage]:2012/04/16(月) 21:25:08.48 0
ったく もうサビてきやがっただからイヤなんだよこの刀使うのといいながらaizenは砥石を召還し切れ味を元に戻した
さて今の一撃で奴らは引いたがまたくるだろうな
>>202 ああ、名前いうの忘れてたね 僕の名前はaizen時空の管理者だ
こいつはキバットおれのペットだ
よろしくな
ここにきた理由は2つ
一つは時空の本棚が崩壊し始めているからそれの修復と
もう一つは新たなる歴史の登録
それが俺の任務だ
206 :テイル[sage]:2012/04/17(火) 21:46:11.16 0
ソル君が、新たな冒険者らしき人物に気付き、声をかける。

>『あぁ、そーいや人に名前を聞く時は自分からって言ったっけ。
 オレはソル。そんでガイアの勇者御一行様だ。
 アンタも冒険者かい? まさか魔王の手先ってんじゃねーよな?』

「ボクはテイル。あなたもレヴィアタンを倒しに来たの?
それなら一緒に冒険しよう!
この世界のステータス画面の書式に直すとこんな感じになるかな」

名前: aizen
職業: フリーハンター フリーの傭兵 時空の本棚管理人
種族: 人間(魔皇族とのハーフ)
性別:
年齢: 19歳
身長/体重: 180/72
容姿特徴:
性格特徴:
技能/魔法: 還装魔法 再生魔法 黄金の牙の鎧
装備: ザンバットソード シールドの指輪
所持品: なにも書いてない本
備考: もともとフリーのハンターだったが親が急死し19代目の黄金の牙の鎧と時空の本棚の管理人となる

「早速だけど……このステータスなら戦闘班でお願いね。
ボク達は下への階段を探す。見つかったら魔法で花火を打ち上げて知らせるよ」

ボクはルーチカちゃんを伴って、戦闘班から離れる。
207 :超新星な騎士aizen  ◆JryQG.Os1Y [sage]:2012/04/18(水) 19:23:05.53 0
>>206テイル OK任せてくれ
あとこれ使ってくれ
俺はテイルにシールドの指輪を渡す
これは危険を察知して自動的に元素の仕組みを変えあたりにバリアを張るやつだもしもの時に使えるから
208 :ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2012/04/19(木) 04:06:10.88 0
>『あぁ、そーいや人に名前を聞く時は自分からって言ったっけ。
 オレはソル。そんでガイアの勇者御一行様だ。
 アンタも冒険者かい? まさか魔王の手先ってんじゃねーよな?』

突如突如現れた男に対して問いかけるとどうやら新しい冒険者らしい
なにやら雰囲気的に高位の存在として感じるがとりあえず今は仔細を問うている暇は無い。
彼にはその力を存分に使って働いてもらおうではないか

「お前が何であろうと構わん、私達の邪魔さえしなければだがな。一応名乗っておこう、俺の名はビャク=ミキストリだ
此処を出るまでに生きていたら、またよろしく頼む」

簡単に挨拶をして、続々と集まり始める魔物に視線を向けて移動を開始する。現状に置いて敵対している倒さねばならない魔物を把握するため
手に持つPDA型COMPで探知をかけて、戦力分析と対峙する魔物達の位置を観測していた。

>『クウォォォオオッ!』

「オーガ、竜蛇、フレースヴェルグetcなるほどこれは骨が折れそうだが
何、此処が二度と住めない地になったとしても別段困らん連中ならば問題はないか」

現状で把握できた事に関して、まずはいい手応えだと感じその手には無命剣フツノミタマを召喚する。
そして彼等の嘲りの声に不敵な笑みを浮かべる。

>『HoHo! deg lita bash Gigas!(おいおい、赤子の様な小さき者の分際で、俺らとやり合おうってのか?)』

「たかだか図体がデカイだけのでくの棒が中々言うじゃないかむしろ貴様等ぐらいに大きくなると
いろいろ不便だったり隙を突かれ易い事にも気づかん馬鹿に劣るとしたらその間抜けさと力だけか?」

PDA型COMPによって彼等に理解できる言語に翻訳される自身の言葉に青筋立ててを此方に向かってくる
そんな挑発に乗った彼等に対して、依然余裕の笑みを浮かべながらCOMPは既に召喚の形態に移っていた。
サモン―その文字が出たとき、彼のCOMPからまずは一人目の仲魔が現れる。
魔方陣が地面に出現し、その中から出てきたのは一人の男が出てくる。金髪に青い瞳に端正な顔立ちに髭の似合うダンディな雰囲気に
手には黒い杖を持ち帽子と紳士服の似合うまさに紳士という風貌だ
カカカッ!魔人サンジェルマンが現れた!

「おや、分霊の僕を呼び出すとはねぇアルカディア時代以来の珍しいことがあるじゃないか
積もる話でもあるのかい?」

かつては理想郷軍で共に戦った自身の分霊までも作り出す伝説的な錬金術師サンジェルマン伯爵は
迫ってくる会話するのに邪魔な巨人を指を鳴らすと一瞬で姿形が圧縮され、みるみる内に小さくなっていくと最終的には完全消滅させる。

「それは時間が出来ればゆっくりとな、だが今はそうしていられん
力を貸してはくれないか?」

その言葉に対して、どこか嬉しそうな表情を浮かべすぐに

「私にとって君はまだまだ英雄としての物語が終っていないと感じたからこそ此処に居る
そんな価値がなければ召喚には応じないよ?それに新たな物語の英雄も居るようだしね」

サンジェルマンはそう言って、遠くの冴島鋼牙を見つめた。
この者は夢を持つ物と確固たる信念を持つ者を好み、介添え人或いは仲間としてその人生を間近で見ることを
生き甲斐と感じている。故に彼はビャクという人間が英雄になる者だと感じた故にその仲間として戦ってきた。
この男はまだどうやらビャクに対して期待をかけているようだった。

「ならば此処にいる魔物達を全て一掃するつもりで構わない頼むぞ」

紳士服の男は笑みを浮かべると、周囲の空中には沢山の魔方陣が展開され始めた。
209 :超新星な騎士 aizen ◆JryQG.Os1Y [sage]:2012/04/19(木) 16:53:06.12 0
>208 ああよろしくヒャグ
俺はaizenだ
ふーん俺がデカぶついったい倒したから怒り狂ってつっこんでくるのかと思ったらそうでもないな。
なら、やることは一つだな。俺は次元を開き武神を光臨させた、出てきたのは俺の武神の一つである勇神メビウスだ 
時の管理人は12の精霊を召還できその一つがメビウスだこいつはサイキックの使い手であの前でホザいている奴なら玉砕できる。
210 :超新星な騎士 aizen ◆JryQG.Os1Y [sage]:2012/04/19(木) 17:00:34.09 0
次に俺の準備だな
aizenはキバットとタツロットを呼びキバットに腕を噛ませた。するとベルトが召還される。
そしてキバットをベルトにつけるすると黄金の鎧初期形態を装備できる。
さらにタツロットを腕につけ黄金の鎧の完全形態に変化させた
そしてガルルセイバーを召還しタツロットを取り付けた
さていつでもきなクズども
211 :超新星な騎士 aizen ◆JryQG.Os1Y [sage]:2012/04/19(木) 17:04:11.34 0
おやおや主人様黄金の鎧を身につけるとはいつぶりですかな
3年ぶりだな
なぜ?
量が多いから力貸してくれるよね
もちろんです
と向かい合わせで言い終わり、魔物を改めて見るといつの間にか魔法印がつけれられていた。
212 :テイル[sage]:2012/04/22(日) 00:16:54.79 0
>「OK任せてくれ、あとこれ使ってくれ」

Aizenさんは、ボクに指輪を渡してくれた。

「これは……?」

>「これは危険を察知して自動的に元素の仕組みを変えあたりにバリアを張るやつだもしもの時に使えるから」

「へぇ、すごい! ありがとう、早く階段を見つけるからね」

集まってきたモンスター達は戦闘班に任せ、早速指輪をはめ探索を始める。
外の昼夜に対応しているのだろうか、森には夜の帳が降り、探索は困難を極めそうだ。

「ウィンドディレクション」

そこで、風の魔法を唱えた。
これは、極微弱な空気の流れを察知する魔法だ。完璧な森に見えても、ここは迷宮内の閉鎖空間。
ならば、唯一の空気の抜け道である階段から階段への空気の流れがあるはずだ。

「こっち……かな? ルーチカちゃんは敵避けの呪歌をお願い」

空気が流れている方向に歩き始める。
213 :labyrinth ◆666/MyrH6U [sage]:2012/04/23(月) 00:50:00.12 0
【>>探索班】
風探知の術を用いたテイルが、無数に魔を内包した森へと足を踏み入れる。
蝶の羽ばたき程に僅かな風を辿って、より奥へ、より深みへと。
密生した葉の下に広がるのは、千に千を重ねた根茎の道。
時折、群棲する巨樹の葉が大気の流れで動き、さやさやと静かに囁く。

己の胎内に押し入ろうとする者に対し、魔性に満ちた森は害意を明確とした。
闇に浮かび上がる艶やかな毒花は肌に紅斑を描かせ、鋭く尖った枝と荊棘は衣を通して腕や足を刺す。
瞳に蛆を植え付けようとする蠅。柔らかな脹脛から血を吸わんとする蛭。大気を撹拌させる蝶と蛾。
小さき棲息者の苛烈さは、巨大な魔物達にも劣らない。

テイルが生温い微風を追って進み続けると、風道の先には堆積する石で築かれた塚が見えた。
腕を伏せた形の塚は周囲の木々よりも低く、空からでは見つけられなかったであろう。
石塚に穿たれた産道を思わせる洞が、微風の発生源であり、万魔殿の第四層へと続く道。
すなわち、合図の火花を打ち上げるべき地点である。

【>>戦闘班】
ビャクの召喚に応じたサンジェルマン伯爵が、空間圧搾の術を為して瞬時に数体の巨人を消す。
さらに秘術の蘊奥を極めた伯爵は、緑の魔境へ無限に増殖するかの様な魔法陣を描いた。
魔術的な幾何学図形が発する光で、墨を流したような森の幽闇には、鮮やかな緑が浮かび上がる。
その光は誘蛾灯の如く、無数の魔物を招き寄せる結果となった。
鱗あるもの、甲羅や針に覆われたもの、牙を持つもの、羽を持つもの。
数え切れない畸形の巨獣達と、火や土を肉体とする巨人の群れを。
貪婪な瞳を輝かせた魔物の群れは、宙空の異変にも構わず、ビャクと傍らの伯爵に突貫する。

『グガァァァァッ!』

『ゲルル……ゲルル……』

『ウォォォォォ!』

混然一体となった魔獣の吠え声の中で、土色の竜蛇(ワーム)も己が餌食とする者を定める。
竜蛇は赫然と燃える双眸を冴島鋼牙に向けるや、朽葉と土塊を巻き上げながら猛然と迫った。
まずは間合いの外から酸の如き毒液を吐き、さらに迫ると頭部を彩る黒曜石の角を突き出す。
剣先が届くまで程の距離まで近づくと、竜蛇は鏃の鋭さを持った牙が立ち並ぶ大口を広げ、冴島の頭部に咬みつきかかった。

そして、煌びやかな黄金の鎧を纏った狩人は、悪しき風の守護獣たる窮奇が狙いを定めた。
荒鷲の翼を動かして樹上を旋回する妖虎は、微小な着地音も立てずにaizenの背後へと降り立つ。
風の魔である妖獣は、完全なる無音の移動を可能とするのだ。
己の音を完全に絶った窮奇は、aizenの首筋を食い千切ぎるべく、一陣の黒い旋風と化して飛びかかった。
214 :超新星な騎士 aizen  ◆JryQG.Os1Y [sage]:2012/04/23(月) 18:33:45.09 0
>>213 マズい! あの男は恐らく俺らの味方、なら救うべきだ
aizenは持っていたガルルセイバーをその男に噛みついているものに投げた
その隙をねらったのか、窮奇は背後から襲いかかってきた。
気づかないとでも思ったか?
甘い、すぐにその魔物から距離をとり、腕のタツロットのしっぽを引いた
ウェイクアップフィーバー!
aizenはエネルギーを足に収束させる、忽ち地下なのに月が出てきた

おらっ、エネルギーを収束させ終わるとaizenは空高く飛びその魔物にけりを加えたと同時に無数の斬撃が足から出てきた、その斬撃を食らわせ終わり
また間隔を空けると忽ち魔物は破壊された
215 :テイル[sage]:2012/04/28(土) 12:22:25.46 0
森の探索は生半可なものではなかった。
けばけばしい色の毒花に、蠢き侵入を拒もうとする枝や棘。襲い掛かってくる無数の蟲達。

「ルーチカちゃん、大丈…ぶ!?」

振り返って言った側から、口の中に虫が飛び込んでくる。
これでは歌うどころではない。

「ウォータースクリーン」

水の防護膜を纏う魔法。本来なら炎への防御魔法だが、虫よけ位にはなるだろう。
風が僅かに強くなってきた。

「もうすぐだ……」

やがて、塚に囲まれた地下への道を見つけた。

「――エクスプロージョン!」

上空に向かって爆発魔法――すなわち花火を打ち上げる。
216 :ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2012/04/29(日) 00:01:58.89 0
魔方陣の光に引かれて集まり始める魔物たちに対しても余裕の笑みは消えず
サンジェルマンはわざとらしく気取った態度を取る

「いい具合に集まってくるじゃないか、ならばよろしい
お代要らないよ―サンジェルマンの奥義の数々お見せしよう
その命と引き換えにね」

魔方陣から巨大な龍の形をした暴風が出現すると
集まり始めた魔物たちを強引に引き寄せる食らいつく強風の内部は
この世にありうるありとあらゆる病原体が存在するそれはまさに災厄の大嵐。
まず生き物であろうとなかろうと病にかかる存在であればまず入った時点で
その身は腐り苦しみの果てに病原体にその身体を食い尽くされる
最凶最悪の場所であり生き物にとっての地獄―ありとあらゆる痛みと苦しみをその身に徹底的に刻む。

「君達は生きているだろう、生きている以上は病気にも掛かる
ならばこの世全ての病気を集め、その空間を作ったらどうなるのか―
その結果は残念ながら、神ですら耐えられなかったがね神も生き物ということなのだろうか」

この世に在り得る病気の詰まった世界の龍の胎内に飲み込まれていく魔物たちを見ながら、一人そんな事を呟く。
そんな光景を見ても襲い掛かってくる魔物を全て切り捨てながら

「またとんでもなくえげつない術式を編み出した物だな…味方としては頼もしいが
敵としては絶対に回したくないな」

ビャク=ミキストリは心から安堵していた反面彼の真理の探究する際に生み出す物に怖気を感じられずには要られなかった。
あの中に入れば自分とて一溜りもない。

「他の者達もこのままならばフォローに回れるか?
……もう少し仲魔の力が必要かも知れんな」

病原体の竜巻が喰らい残した魔物共を始末しながら
まだまだ残っている魔物を追尾している龍の動きを逐一観察しながら

「お前達の元にその竜巻が向かったら絶対に内部に入るなよ!
ありとあらゆる病気に塗れて地獄のような苦しみを味わって死にたく無ければな」

他にも戦い続ける者達に注意を呼びかけ
ルート状安全と竜巻がやってこないと確認できる場所に移動して戦い続ける。

217 :超新星な騎士 aizen  ◆JryQG.Os1Y [sage]:2012/04/30(月) 10:01:01.90 0
>>216
分かった、気をつけるよ
確かに、異様な香りのする竜巻がある。
魔物の数が多いな。じゃあ、あれいってみようか。
そう言うとドッカハンマーを召還して、次々にハンマーで魔物たちを竜巻に放り込んで行く。
楽ちん♪
218 :ルーチカ ◆hATMxiE/qY [sage]:2012/05/01(火) 13:35:13.86 0
>「チーム分けだけど戦士系の人達が戦闘チーム、ボクとルーチカちゃんが探索チームでどうだろう」

「あ、はいっ」
急いでテイルさんに着いていく。
「・・・あの、さっきは、本当にありがとうございました。
戦士系じゃないのにかばって頂いて・・・」
頭を下げていたら、

メルディ「戦士系じゃないけど神だから一般人よりは丈夫だよ」
レオ「つか、ここだけだいぶ進行遅れてるからこの辺の描写カットな」
ヨウ「動き出す前に言っておきますけど、ここの植物・昆虫類は
未知のアルカロイドを含んでいる可能性が非常に高いです。
ええと、つまり、有毒」

・・・止められた。

>「ウォータースクリーン」

テイルさんの魔法に包まれ、凶悪らしい虫や花粉が遠のく。

「・・・あの、本当にありがとうございます」

急いでカバンから防災マントを取り出し、目元だけ残して全身を覆った。
それから。
自分達の存在自体がこの森に元々ある音と同化するよう願いながら
枝葉のざわめきや虫の羽音を真似て、身隠しの歌を唱う。
この森は、ここに住まう生き物達にとっては愛すべきものなんだろう。
私達が故郷の木々の姿を褒め頼り懐かしんで歌うように・・・

レオ「カット」

テイルさんが目的のものを発見し、打ち合わせ通り花火を上げた。

メルディ「一応、戦士組が到着するまで適度にドジ踏んだりツンデレ演じたりしといて」

「え、ええっ!?」
・・・そこは想像にお任せしたいです。
219 :超新星な騎士 aizen ◆JryQG.Os1Y [sage]:2012/05/01(火) 16:14:36.73 0
>>216 花火!合図はあれだな。
「ビャクそこの剣士、ここを正面突破するぞ!」
aizenはマシンキバーを呼び、さらに、
魔法<ディメイテンション>で増やした。
いくぞ!俺はそれに乗り合流地点に向かった。
220 :labyrinth ◆666/MyrH6U [sage]:2012/05/01(火) 19:58:24.25 0
【>>戦闘班】
ビャクの戦友たる伯爵が、魔術の秘奥にて不浄の竜巻を作り出す。
病魔の害毒で満たされた暴風の渦は大地を抉り、森を呑み込み、巨大な魔物達をも貪婪に喰らう。
悪魔的な姿の妖獣も、竜蛇の群れも、武装した巨人族も、生ける妖樹も、死病を齎す殺戮の嵐には数分と持ち堪えられない。
病苦と悪疫が湛えられた壊滅の盃を受ければ、迷宮に巣食う魔物達は一匹残らず爛れて溶けた。
死屍累々の骸も即座に朽ちゆき、大地には腐敗色の汚泥が残されるのみ。

秘術を尽くすサンジェルマンと、残敵を掃討するビャクやaizenを見れば、魔物を駆逐するも容易いかと思えた。
しかし、万魔殿は猖獗が猖獗を呼ぶ悪魔的な装置。
如何に時を費やそうと魔物を根絶する事は不可能。
殺せば殺す程に大気は濁りを増し、化物の増殖劇も終わらない。
万魔の淵源たるレヴィアタンが存在する限り、異界の魔物は瘴気と汚穢を通して呼ばれ続けるのだ。

朽ちた大地の至る所では、早くも溶けた魔物の臓物が沸々と泡立ち始め、不吉な水面からは新しい魔妖が生み出された。
病鬼や疫魔の類。病そのものを具象化した存在たちが。
襤褸を纏っただけの人骨が腐食した沼から這い出し、黒ずんだ肌をした者達がそれに続く。
景観を灰色の沼湖へと変えた戦域には、激変した環境に適応できる別種の魔物が現れ始めていた。

破滅の秘事を繰り広げれば、その度に迷宮の暗がりからは別種の魔物が現れる。
徒労とも思える様な戦いではあったが、探索者が下層への道を見出す時間を作るには充分な役割を果たした。
狂乱する嵐が起こす砂塵と、風に吹き落とされて乱舞する枝葉の中で、テイルの放った火花が輝く。
信号弾である火術の塊は砕け、鮮やかな銀朱の飛散を宙に描いた。


【万魔殿・第四層】
死したる魔物の魂は、迷宮の闇路を墜ちて魔王に捧げられる。
供物の魂を受け取る者は、すでに外界への関心を失い、その経路には一片の関心も持たなかった。
故に第四層に関して著述できる者がいるとすれば、それは迷宮を降りる者以外には存在しない。
221 :レヴィアタン ◆666/MyrH6U [sage]:2012/05/01(火) 20:01:27.21 0
【万魔殿・第五層】
迷宮四層を越えた者の瞳には、海市が浮かび上がるだろう。
現実を侵食する心象世界。万有が残らずレヴィアタンである始原の海原が。
青の極致たる海面、その輝きに奔放に現れる真珠の白波。
紺碧の海は濃艶にして端麗で、澄明な空も色褪せた鏡に過ぎないと思わせる。
下方では迷宮の祭神が呑み込んだ無数の魂が煌々と灯り、海中に異界的な眺望を構築していた。
この世ならざる海は、常識の美の範囲を超えて美しい。

そして、漣に揺れる海上では、深海色のドレスに身を包んだ女が立っていた。
あまりにも禍々しい黒色の天球儀を胸に抱いて。
彼女こそが万魔殿の領主。魔王レヴィアタンである。

迷宮の上層から送られる魂魄を食んでいた魔王は、ゆっくりと瞼を開けた。
視線の先には虚空に浮いた扉があり、扉は魔王を求めて迷宮を降りた勇者の手で開かれている。
深海の彩りを封じた瞳に訪問者を映したレヴィアタンは、甘く潤んだ声を潮風に乗せた。

「ようこそ、私の世界へ。
 私はレヴィアタン。新しい世界での神よ」

どれほど距離が離れていても、距離は会話の支障とならない。
この世界の中では、何処に居てもレヴィアタンの声は聞こえる。

「万魔殿は堪能して頂けたかしら?
 魔物に人間……魂の集積装置として作られた迷宮は」

再び女の唇が細く開き、ぬらりとした真紅の舌が覗く。

「今更、アナタ達が私に組するとは思えないけれど、一応言っておくわ。
 私に従えば、新しい世界に存在する事を許す。
 私を阻めば、三世三界を滅ぼす大海嘯に呑まれて藻屑になる……って」
222 :超新星な騎士 aizen ◆JryQG.Os1Y [sage]:2012/05/02(水) 23:38:50.74 0
>>220 あれ、また出てきてない?
これって、ピンチ?早く合流しねぇと不味くないかい?
>>221 成り上がり神程度が皇帝に勝てるとでも思ってるのか?
223 :ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2012/05/07(月) 21:17:21.82 0
「こういう事か…長時間居ると不味いのは確かだな」

病原の嵐で全てのその場にいる障害を腐り散らしたがしかしそれに対しても早くも驚異的な速度で
またもやその状況で更に適応しうる者として再び現れた怪物達にサンジェルマンは少し溜め息を吐きながら
しかし確実にこの戦いが実った事を杖を向けて指し示す

「長期戦は確実に身を滅ぼすねこの場所は
だが、君の今のお仲間達がどうやらやってくれたようだねほら」

その言葉と同時に信号弾の輝きが起きた方向をすぐさまに振り向き

「もう少し早くても良かったか?いや今はそんなことは言ってられないか」

すぐさまに信号弾が発射された合流地点に持てる全速力で駆け抜ける
途中立ち塞がる、病魔に適合した怪物達を避けて或いは浄化しつつ
背後を追いかけてくる者達を極力無視しつつ
一気に次の階層の出入り口に駆け込む事に成功する。
だが、入った時点で自身の中で意思が少しずつ薄れていく感覚は感じず
世界の敵を排除しようとするその力が漲るど同時に個としての感覚が
あまり感じられずになってきていた。

(やはりこの場にいるか―この圧迫感と力の漲りようは)

「…片目からだんだん君らしい色が消えてきている
やはりそういう事か、今は黙っておこう君の意思を尊重する」

すぐ傍に居るサンジェルマン伯爵はビャクの現在の状態をなんとなく察するが
口に出さないため、彼も黙っていようと口を噤む
その状態で歩き続けた、次の階層までに至る道を。
224 :半永久闘争存在ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2012/05/07(月) 22:11:59.12 0
無銘の超人ビャク=ミキストリは世界を維持し、その障害を阻む全てを排除する力に
己の意思を次の階に近づくたびに己という証が消えていく速度が速くなる
最早正直な所、第四層の風景など眺めていられるほどの余裕などはなくただ道を歩くだけで精一杯だった。
万魔殿・第五層に辿り着くころには彼の左目は既に彼の意思を感じさせない自我が失われた色合いだった。
だがそんな状況でも己を己であるために奮い立たせ、自分が自分である事を決して見失わないようにする
気迫だけは今の彼からは発する己の全てであった。

「ようやく此処まで来た…ようやくだ…!」

自身が滅すべき存在が肌で感じるほどの場所までやってくると
未だに自我を保つ精神状態は類稀なる精神力の一言では片付けられない物を感じさせた。
その状態を理解する者いれば、そうは感じざる得ない。

>「ようこそ、私の世界へ。
 私はレヴィアタン。新しい世界での神よ」

声を聴いた瞬間、意識は一気に奪い去られかけるが
脚を踏ん張りしっかりと歯を食いしばる
もはや既に自身を押し留めていた魔術刻印は奴の契約解除と共に消え去った
今はただ耐えるのみ

「ようやく…お出ましと来たか、世界の怨敵よ
まだ神を名乗るのは早いぞ―」

無命剣を召喚し、握り締める
そして自身の意識が失われつつあることを悟られないように
何時も通りの余裕のある表情で、言葉を発する。


>「万魔殿は堪能して頂けたかしら?
 魔物に人間……魂の集積装置として作られた迷宮は」

「アトラクションとしては悪趣味極まりなかったがな、
得られたものは増えた咎だ、本当にろくな場所じゃないな」

余裕の表情を装うだけでも無理が生じて来たようで、汗が流れるが
今はそんなことすら気にしている時間が惜しすぎる

>「今更、アナタ達が私に組するとは思えないけれど、一応言っておくわ。
 私に従えば、新しい世界に存在する事を許す。
 私を阻めば、三世三界を滅ぼす大海嘯に呑まれて藻屑になる……って」

存在する事を許す、という言葉で精一杯の皮肉な笑みを浮かべて

「貴様に付いてこの身を縛る咎が消えれば苦労はしない
それ以前にお前はいろんな者を踏み躙ったそしてこれからもそれを神の行いと正当化して行こうとしている
笑わせるな、ならば世界防衛機構と化した俺にこんな役回りと世界を守ろうとする力が溢れんばかりに供給される訳がない
貴様は最初から世界の根本からありとあらゆる存在に存在してはいけない者と判断され、その身に宿る本能から相容れない者と思われている
どれだけ力で脅かし書き換え、崇める事を強要した所でお前に刃向かう連中は出てくるだろうさ」

必死で胸の内で大変お世話になった人たち―多世界で平穏で穏やかな生活を送っている
自身を支えてくれた人達を思い出しながら

「お前が三世三界を大海嘯ならば俺はそれ以上を守る大きな防波堤だ
アヤソフィアや世界守護者委員会の連中の仇は取らせてもらう
そしてこれから奪おうとしている俺が守るべき日常を生きる大切な人達は
手出しはさせない!」
225 :テイル[sage]:2012/05/08(火) 02:16:23.32 0
ルーチカちゃんとツンデレしたりドジ踏んだりのコントをしている間に、戦闘班が到着。
第4層へと進む。
買い出しを頼んでいたイースさんも、アイテムを大量に買って来て合流した。
第4層は、罠ではないかと思うぐらい、何もなかった。ひたすら続く一本道。
ビャクさんは、何も言わずに黙々と進んでいる。

「ビャクさん……?」

ビャクさんがビャクさんではなくなっていく気がして、思わず声をかける。
また、彼自身の意思は無いあの時のような状態になってしまうのだろうか……。
やがて、広間のような開けた場所に出る。
向かい側には大きな扉があり、その前で待ち構えている者がいた。
夜の闇より昏い漆黒の髪と、海の色の瞳を持つ少年――

「久しぶりだね、姉さん……」

妖精族の中で末であるボクの事を姉さんと呼ぶのは、一人しかいない。
神格としての弟――スサノオ=タルタロス。
今まで会った時と口調も姿も違うが、あれは他人の体を借りた姿。
今が、魂のままの本来の姿なのかもしれない。
ボクは半ば呆れて答える。

「長らく行方不明だと思ってたらラスボスの前座とは……。
とっくに手を組んだはずなのにどうしてまた……」

「どうもこうも、姉さん…の器のせいじゃないか。
僕と姉さんはあの契約の時、一度融合を果たしていた――。
でもフェアリー=テイルが神格を受け継いだあの時……お前はアマテラス=ガイアの力しか受け継げなかったんだ。
死を……闇を受け入れるだけの器が無かった……」

タルタロスは死を司る暗黒神。
光の寵児である“フェアリー=テイル”は、”スサノオ=タルタロス”を受け継ぐ事は出来なかった――。
スサノオは、悲しげに語りかける。

「どのみちレヴィアタンと戦っても勝ち目はない。
彼女に従って、一緒に新しい世界に生まれ変わろう……
新しい世界で、今度は普通の仲のいい姉弟に……」

「……ごめん、でもそれは出来ない!」

「……分かった」

スサノオは、意外とあっさり納得した。かと思いきや。

「レヴィアタンと戦ったら楽には殺して貰えない。だからせめてこの手で……!」

――とんだヤンデレだった! 闇の帝王の本性を顕にし、呪文を唱える。

「――死の宣告《フィンガーオブデス》」

漆黒の図形がボク達を包み込み、全員の頭上に数字が表れる。
100、かと思ったらすぐに99になった。

「その数字が0になった時、君達は死ぬ。
この扉の先に行きたければそれまでに僕を倒してみるがいい!
我招く無音の衝裂に慈悲は無く 汝に普く厄を逃れる術も無し――メテオスウォーム!!」

……なんか巨大な隕石振って来るし。ンなもんどっから召喚したんだよ!
226 :森島山岡 忍法帖【Lv=3,xxxP】 [sage]:2012/05/08(火) 06:19:48.68 O
デジモンが仲間入りするよ。
227 :超新星な騎士aizen  ◆JryQG.Os1Y [sage]:2012/05/08(火) 16:39:02.97 0
>>225
おーい、置いてくなよ。俺はここにいるんだからな。

やっと、追いついたと思ったら、
なんか変なのきた。どうやら、マジックをかけられたらしいな。
aizenのゲージも98になる。
さっさと決めるよ。
ヤンテレの背後に回り、聖剣フェニックスフェザーで後ろから切り裂く。
すまない、お前の弟なんだろう。だが、みんなが、死ぬよりは………
228 :ルーチカ ◆hATMxiE/qY [sage]:2012/05/13(日) 23:18:55.09 0
戦いの厳しさを表すように表情が一段と険しくなった戦闘班の皆様は、
それでも無事に合流してくれた。

そして塚の中に隠された通路を降りた先の第四層は。
仲間の姿は見えるのに、それ以外は全て
黒く塗りつぶしたかのように何も見ることができない、薄暗い通路だった。
通路を進み、物音の響きが湿った岩のトンネルから広い空間に変わった、と感じた途端。

>「久しぶりだね、姉さん……」

テイルさんの“アマテラス=ガイア”の名に対応するもう一柱の神、
スサノオ=タルタロス。
死霊皇帝の死の宣告は、けれどaizenさんがあっさり切り裂いた。
立ち尽くすスサノオの背中から何かが急速に流れ落ちていく。

(・・・あっ)
気が付いた。
スサノオ=タルタロスは黄泉という一つの世界の神でありながら、
私達の世界ではずっと、死霊皇帝として、討伐されるべき「悪」の看板を背負っていた神。
ちょうど、今、私達を待ち受けている、レヴィアタンのように・・・

急激に存在という色を失って行くスサノオに対して、間に合うのか・・・
そして、そこで垣間見える神の記憶と想いに、私自身が耐えられるのか・・・
少しだけ迷いながら、記憶を甦らせる《ロストメモリー》を歌い始めた。

(・・・・・・)
(スサノオの知ろしめす黄泉は・・・完成した、それは美しい世界だった・・・)
意識に流れ込む光景に圧倒され、防災マントをかき寄せる。
(でも・・・長い年月の後、自らの作ったその美しい世界を出た・・・)
(光と闇と境界がぶつかり合う定めの刻はまだずっと先・・・なのに・・・)
(それでも・・・どうしても・・・だったから・・・)
(・・・・・・)
スサノオの想いは次第に灰色に霞んで消えていった。

「安息を・・・」
呪歌の最後にそれだけ付け加えるのが精一杯で、
私はその場で膝を折・・・

「じゃあ第五層行ってみようか!」

柔らかい少女の声と共に、妙に覚えのある感触で
防災マントつかんでぶら下げられた。

(フィリアさん!?)
今や精霊となった、元死霊皇帝軍の黒蜜きなこのナイトメア氏の妹だ。
で、その、吊るされたら手足を縮めるのが良い子猫でしたっけ・・・?
229 :テイル[sage]:2012/05/14(月) 01:35:23.06 0
ボクは複雑な思いを隠すように、迎え撃つ事を宣言する。
虹色の光が包み、幼い子どもから、青年か娘といえる年代に見える戦闘形態へと姿を変える。

「丁度いい……星の女神ガイアと死霊皇帝タルタロスの姉弟喧嘩に今ここで決着を付けよう!
――ウィンドストーム!!」

紡ぎあげるは人知を超えた風の魔法。頭上で真空刃の渦が巻き起こる。
隕石を、落ちてくる前に粉々に風化させた。

「なかなかやるね、これならどうだ!? 生命吸い取る魔剣――暗黒剣!!」

スサノオが腕を一閃すると、その手に漆黒の魔法剣が現れる。
そして、気付いた時には斬りかかられていた。
しかし身を切り裂かれる痛みは無く、キィン! と硬質の音が響く。

「あれ……?」

漆黒の剣は、魔力のシールドによって阻まれていた。
aizenさんから受け取った指輪の効果だ。再び距離を取り、睨みあう。

「スサノオ! 大地に抱かれ眠るがいい――!」

「大海の波間に永久に夢を見ろ、姉さん……!」

二人同時に大技の詠唱を始めた。
地面の裂け目に相手を呑みこむ魔法【クラック】
スサノオが唱えているのは、巨大な渦潮に相手を呑みこむ魔法【メイルシュトローム】
姉弟神で能力が互角なら、ほんの少しの加減で技が先に決まった方が勝つ――!
230 :テイル[sage]:2012/05/14(月) 01:36:14.12 0
果たして呪文が先に完成したのは――

スサノオの方だった。

「僕の勝ちだ――姉さんに初めて勝つんだ……」

最後の言葉を紡ぐべく、スサノオの唇が開かれる――。
その瞬間、スサノオの胸から刃が突き出した。

aizenさんの持つ聖なる刃が、死霊皇帝を過たず貫いていた。
彼は一瞬の驚愕の表情の後、全てを悟って力なく微笑んだ。

「ああ……まただ……」

「スサノオ……」

美しく切ない歌声が聞こえてくる。
ルーチカちゃんが《ロストメモリー》を歌っていた。
ボクは姉が弟にするように、スサノオを抱きしめた。

「そうだったね。生と死が分かたれる前、ボク達は一つの概念だった……」

スサノオは次第に薄れて消えていき、夜の海のような色をした宝石が残る
神が滅された時に残る力の結晶――シャードだ。

「一度分かれてしまったものが一つになるのは無理だったのかもしれない……。
でも、共に行こう――」

シャードを握りしめて勝利を誓う。
その時、後ろでルーチカちゃんが倒れかけた。

>「安息を・・・」

「ルーチカちゃん!?」

>「じゃあ第五層行ってみようか!」

精霊のフィリアさんが妙に明るい声で登場。ルーチカちゃんは吊るされていた。
とにもかくにも、いよいよ第五層へ足を踏み入れる。

「ああ、行こう!」

扉は、開かれた――!
231 :超新星な騎士aizen  ◆JryQG.Os1Y [sage]:2012/05/14(月) 19:33:15.89 0
きっ、消えた。
こいつは、人ではないのか?

これ以上、強い奴がいるのかな。
ワクワクしてきた。
上等だ、やってやるぜ!!
232 :半永久闘争存在ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2012/05/14(月) 20:42:24.18 0
>「ビャクさん……?」

だが黙っていたのはさすがに気づかれないわけも無く
テイルがどこか心配そうに声を掛ける
当然だろう、彼らと対峙したあの時同じ状態になりつつあるのだから

「……俺にはあまり時間が無いようだ、正直こんな風に会話できるのも
少しずつ辛くなってきている、お前達とも会話できるのがあと少しかもしれない」

それでも精一杯己らしくあろうと胸の内言葉を自身であった証である言葉で
苦笑しつつそのまま伝える。
この後は本当にどうなるか分からない故に

>「久しぶりだね、姉さん……」

突如現れたテイルに向かってその言葉を語りかけた少年
この世界に置いてのスサノオと呼ばれ、死霊皇帝であった者。
そして彼と会話を始めるテイル。
自身はただ黙って意識を保とうとする努力をしていた。
気を抜いたらいつ己を失ってもおかしくない、この二人の会話を悠長に聞いていられるかすら
怪しいものだ。

>「……分かった」

この最後の言葉の時点で身体が半ば無意識で瞬く間に駆け抜ける
意思が失われれば失われるほど彼には半永久闘争存在に近くなってゆくそれは
彼が意識していなくても敵意や殺意、任意だろうが間接的だろうが害をなそうとする存在全てに自動反応する
そして無意識に排除を行おうとする

>「――死の宣告《フィンガーオブデス》」

数字が現れると同時にその手には槍を召喚し、aizenと同じタイミングに
槍の切っ先を心臓に突き立てる。ビャク自身の一文字を話すより早い速度で無意識で行ったのはほんの一瞬
233 :半永久闘争存在ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2012/05/14(月) 21:21:52.70 0
刺し貫いた槍を引き抜こうとしたとき、何処からか歌が聞こえてくる
これが耳に入ってきた時、これが何なのかすぐに分かった。
スサノオに対する手向け―失われた過去の記憶。

(いつか分かたれた故にぶつかり合った―相容れない故にか)

聞くからに彼らは姉弟であった、それこそ遥か大昔から何処の世界でも
血を分けた家族が殺しあった事は数え切れないほどあった。
だがそれでもそれがとても悲しい事だと思う
所詮は他人事で巻き添えを食っただけの事だが
意思がはっきりと感じられる片目から一筋涙が流れる、驚いたまだ他人のために泣けるなんて

「僕も…まだ、見も知らぬ他人のために流す涙があるなんてね」

消え去ってゆくスサノオを見守りながら

>「安息を・・・」

この言葉を最後に後ろで倒れる音が聞こえかけたが
なにやら突然現れた精霊がそれを阻止したらしい
そして最終決戦に至る扉が開かれる

>「じゃあ第五層行ってみようか!」

>「ああ、行こう!」

「……ビャク君、君には話さなければいや聞かなければならないことがある
静葉のことだ、だがそれは今話すべきことではない頑張り給えよ何かあったらまた呼びたまえ」

かつての仲間にして自身を主と慕っていたくの一に関する事を伝えた後COMPの中に帰っていく

「まだ追っていた俺の事を―俺はもうアルカディアの人間でも主でもないというのに」

現在はそんな事を考えている余裕も無いため、すぐに頭の隅に追いやり
今は共に戦う友との最後の戦いに赴こう。

「アヤ、待っていろお前の元にレヴィアタンを連れて行く」

今はいない間違いなく戦友だったと言える彼女に呟いて
奴が待っている地に足を踏み入れた
234 :テイル[sage]:2012/05/15(火) 01:20:34.74 0
>「きっ、消えた。 こいつは、人ではないのか?」

「かつて死霊皇帝と呼ばれ恐れられた神、さ。
神が滅せられた時、力の結晶を残しシャードとなる……」

>「……ビャク君、君には話さなければいや聞かなければならないことがある
静葉のことだ、だがそれは今話すべきことではない頑張り給えよ何かあったらまた呼びたまえ」
>「まだ追っていた俺の事を―俺はもうアルカディアの人間でも主でもないというのに」

詳しい事は分からないが、ビャクさんを慕い探している人がいるというのが、何となくわかった。

「ビャクさん……それなら猶更生きて帰らなきゃ!」

>「アヤ、待っていろお前の元にレヴィアタンを連れて行く」

アヤソフィア……レヴィアタンが作りだし、レヴィアタンの手駒として世界に遣わされ
レヴィアタンの差し金によってこの手で殺された少女。
そして、この街の人々もまた、レヴィアタンによって生み出され利用された挙句、海の藻屑と消されようとしているのだ。

「アヤさん……終わらせるからね……」
もうあなたのような人はこれ以上生み出さない……!」

扉を潜り、目を見張る。美しいとしか言いようがない、始原の大海原が広がっていた。
これが、魔王が作り出す心象世界――。

>「ようこそ、私の世界へ。
 私はレヴィアタン。新しい世界での神よ」

「レヴィアたん、何か前と雰囲気変わった……?」

レヴィア”たん”は、聞いている分には分からない、自分を落ち着かせるためのせめてもの言葉遊び。
以前の、ほんの少しどこか女子高生のような雰囲気は、もう微塵も無い。
優雅でありながら、凄まじい威圧感。新世界の神と言うにふさわしい貫録を纏っていた。

>「万魔殿は堪能して頂けたかしら?
 魔物に人間……魂の集積装置として作られた迷宮は」

「とりあえず退屈だけはしなかったかな!」

そう言いながらビャクさんの方を横目で見る。持ちこたえてくれないと困る。
この戦いが終わったら平和になった世界を見て回って、もっと色々話を聞いて……
そう、ビャクさんの追っかけの人を見て二人を茶化す予定なんだから!
235 :テイル[sage]:2012/05/15(火) 01:21:05.38 0
>「今更、アナタ達が私に組するとは思えないけれど、一応言っておくわ。
 私に従えば、新しい世界に存在する事を許す。
 私を阻めば、三世三界を滅ぼす大海嘯に呑まれて藻屑になる……って」

ビャクさんが格好よく返してくれたので、この街がお約束に則っている事に乗って、わざとおどけてみせた。

「ええい、これだから最近のラスボスはせせこましい!
ラスボスなら大盤振舞で世界の半分をやろう! ぐらい言わんかい!」

>「お前が三世三界を大海嘯ならば俺はそれ以上を守る大きな防波堤だ
アヤソフィアや世界守護者委員会の連中の仇は取らせてもらう
そしてこれから奪おうとしている俺が守るべき日常を生きる大切な人達は
手出しはさせない!」

「さっきのは冗談として……最初の言葉を返すよ。
今更やめろと言ってやめるとは思えないけど……
全てを持っているのは何も持っていないのと同じ事なんじゃないかな。
恩恵を与えても祟っても認識される事はなく、悠久の孤独のうちに存在は消え単なる概念と化していく。
それでも世界を巻き添えに滅びの道を突き進むというのなら……力尽くでも止める!!」

――事実上の開戦宣言だ!
236 :超新星な騎士 aizen  ◆JryQG.Os1Y [sage]:2012/05/15(火) 16:14:57.05 0
>>235

<先に先行する、行くぞ。>
「ザンバット、封印を解除しろ。」
ザンバットが、剣から離れていく。すると、剣から、まがまがしいオーラが出てくる。
「お前に、死の宣告を、」
段々と、魔法陣が発生していく。そして、牙の紋章が、出てくる。それが、魔王の、体に、張り付き、行動を縛る。
「潰えよ。成りそこないの、神よ。」
そして、まがまがしいオーラを、剣を向ける。
すると、魔法陣から先ほどの剣が、大量に出てきて、魔王に向かってくる。
237 :レヴィアタン ◆666/MyrH6U [sage]:2012/05/16(水) 01:30:58.14 0
>222】【>224
レヴィアタンの言葉を受けて最初に言葉を発したのは、金色の鎧を纏った男。aizen。
彼は海原に浮かぶ戸口から、なり上がりの神程度が皇帝に勝てるとでも思うのか、とレヴィアタンに一語を返す。

「神が皇帝に勝てるか……さぁ、どうかしらね?
 アナタの世界での、神と皇帝の関係は知らないけれど、私は万象を発する一つの淵源こそを神と呼ぶ。
 私が生まれた場所ではJHVHと呼ばれ、別の宇宙では異なる名前で呼ばれているであろう万物の創造主をね。
 アナタが此処に至ったのも神意であり、私が此処に至ったのも神意。
 試しの秤がどちらに傾くかは、全てが終わってからでなければ分からないわ」

レヴィアタンは一瞬の沈黙を差し挿み、aizenから視線を横に滑らせた。
永久闘争存在化しつつあるビャクからは、濁流の様な闘気が溢れ、青い世界の大気を鳴動させている。
彼もレヴィアタンに対して、返しの言葉を発した。
仲間の仇を取り、無辜の人々の日常を守るとの宣言を。

「世界は存続と同時に死も望んでいる。
 虚無的な死では無く、自己を永続化する為の死を。
 芋虫が蝶となる過程で、己の細胞を殺すのにも似ているかも知れない。
 それ故に、世界はアナタに力を与えながら、私という破壊の意志をも生じさせた……と言うのはどうかしら。
 ふふっ、神ならぬ私たちが量り難い神意について思い煩っても、答えが得られる訳ではないけれど」

足元に玻璃色の水波を這わせる魔王は、世界の根本から存在を拒まれた者、とのビャクの一節にそう応えた。
微かな笑みに氷の冷たさを添えて。

「アナタが無辜の人間の平穏を守ろうとするのは、自分の人生を他人に復讐してもらう為でしょう?
 自分が幸せになれなかった分、代わりに他者に幸せになってもらう。
 そして、彼らの中へ無自覚に己を投影して、最愛の人を失った自分の人生にを慰めを与える。
 そんな屈折した感情が、アナタが抱く無私の救済願望の正体よ……違って?」

レヴィアタンは撫でる様な囁きで続ける。

「その重ね続けた咎なら、私が全て許すわ。
 最愛の恋人を殺めた事も、守ろうとした人々を力及ばず死なせてしまった事も。
 だから、安心してお眠りなさい。この羊水の海の底で」

海上に浮かぶ扉から魔王レヴィアタンまでは、距離にして三百歩程度。
その遥か遠くで“水平線”が動く。
海の彼方は瘤の様に盛り上がった刹那、豪雨の様な水飛沫と水煙で暗く翳った。
巻き起こる白い嵐の中には、峨々たる山脈と錯覚する程に巨大な影が揺らめいている。
全容を掴めぬ程に長大な肉体と、極北星の如く炯々と光る双眸を持ち、煌めく銀の鱗で覆われた大海蛇が。

「皆様は本来の姿のレヴィアタンと、悪魔としてのレヴィアタン。どちらとお相手して下さる?」

海原の先に現れたのは、伝承そのままの神蛇レヴィアタンであった。
頭部から尾までの長さは千海里。海上に現れた一部分だけでも島に匹敵する大きさである。
巨大な神蛇は海上に現れただけで激しい嵐を生み、海と空の境を無明の白で塗り潰した。

神蛇レヴィアタンから第一波の攻撃として放たれたのは、万里を駆ける大海嘯である。
これは格段に攻撃の意図すら無い。神蛇が泳いだだけで生じる波に過ぎなかった。
が、その破壊の力は岩壁を砕き、巨船を沈める程に強い。
海の彼方の神蛇は周囲に嵐を纏わせながら、先駆けの山波を猛烈な速さで追う。
238 :レヴィアタン ◆666/MyrH6U [sage]:2012/05/16(水) 01:42:14.14 0
>235】【>236
レヴィアタンは、海原の世界に飛び出して来る者を認めた。
虹色の翅を緩やかに動かして浮揚するテイルの姿を。
全身に紺碧の照り映えを受ける妖精も、潮の重奏の中に言葉を投げ掛ける。

>「全てを持っているのは何も持っていないのと同じ事なんじゃないかな。
>恩恵を与えても祟っても認識される事はなく、悠久の孤独のうちに存在は消え単なる概念と化していく。
>それでも世界を巻き添えに滅びの道を突き進むというのなら……力尽くでも止める!!」」

テイルの宣戦布告を聞いた魔王レヴィアタンは、侮蔑と形容できる表情を浮かべた。

「真なる神は恩恵や災禍を与え、その対価として信仰を受け取るものでは無い。
 神は祈りの奴隷に非ず。神は人の振る舞いとは関わらずに神として在る。 
 信仰を糧とする生命体となったアナタには、人を牧羊するものとしての考え方しか出来ていないわ」

そして、魔王は嗜虐の声音で続ける。

「鏡面世界のガイア人は、彼らの世界が機械に創られたものに過ぎないと知ってしまった。
 森羅万象の存在理由を知ってしまった者達は、果たして神に祈る事が出来るのかしら?」

強い潮風が女の体に触れて通り過ぎてゆく。
一瞬遅れて、魔王の長い銀髪が揺れた。

「そして、デミウルゴスが創ろうとした楽園を拒めるのは、一部の超克した者や、透徹した哲学者達だけよ。
 心の移ろいやすい普通の人間は、失意と絶望の淵に立たされた時に、憎悪と言う名の信仰を向けるわ。
 鏡の世界のガイアに。アナタに。手に入ったかも知れない楽園を奪った者の顔を思い返して。
 信仰を糧とするものなら、憎悪を向けられる事が何を意味するかは分かるでしょう?
 姿も心も醜く歪んで、やがては悪魔と呼ばれる存在へ堕ちる事が」

言葉が唐突に切られる。
aizeの放った緊縛の術が、身に纏った深海色のドレスの上から己を縛り始めたから。
しかし、纏わり付いてくる光の曲線を見ても、魔王レヴィアタンは微動だにしない。
虚空に描かれた夥しい魔法陣から剣が射出されても、表情には微塵の怯みも無かった。

「あら、此処は私の世界よ?
 宏大な海の全てが私の武器であり盾。水波を踏み締めて歩く事すら容易いわ。
 陸の生き物であるアナタ達には、私に対面する事すら難しいのではなくて?」

海の一部が遊離して、水の無い世界に向けて跳躍する。
レヴィアタンは膨大な海水から巨鯨の群れを造り出して、aizenの放った無数の剣を喰わせ始めた。
呑み込んだ剣を残らず水圧で砕いた勇魚達は、守護するかの様に海魔の女王の周囲で跳ね続ける。
そして、海魔の中心に君臨する魔王は左手に天球儀を。右手には大鎌を得物として構えた。


【神蛇レヴィアタン・幾つもの大津波を生み出しながら、水平線の向こうから迫って来る】
【魔王レヴィアタン・海水で造られた百の海魔達を従えて、扉から100m先の海上に佇む】
239 :超新星な騎士 aizen  ◆JryQG.Os1Y [sage]:2012/05/16(水) 21:53:58.89 0
「ほう、水で、我が身の、剣を回避したか。面白い。」
水、なら、使いものに、ならなくすればいい。
「アイス、ロック」
aizenが放った衝撃と共に、周りの、水が凍ってくる。
「これで、水は、使えない。さぁどうする?」
240 :テイル[sage]:2012/05/20(日) 23:21:48.87 0
>「皆様は本来の姿のレヴィアタンと、悪魔としてのレヴィアタン。どちらとお相手して下さる?」

海の彼方に、伝承の大海蛇レヴィアタンが姿を現した。
一方、相変わらず人間の姿をしたレヴィアタンは波間に佇んでいる。
同一人物なのに同時に存在できる……だと!?

>「そして、デミウルゴスが創ろうとした楽園を拒めるのは、一部の超克した者や、透徹した哲学者達だけよ。
 心の移ろいやすい普通の人間は、失意と絶望の淵に立たされた時に、憎悪と言う名の信仰を向けるわ。
 鏡の世界のガイアに。アナタに。手に入ったかも知れない楽園を奪った者の顔を思い返して。
 信仰を糧とするものなら、憎悪を向けられる事が何を意味するかは分かるでしょう?
 姿も心も醜く歪んで、やがては悪魔と呼ばれる存在へ堕ちる事が」

スサノオは、闇を統べる王死霊皇帝として
人々の憎悪を一身に受ける役目を気が遠くなるような長い時間に渡り担ってきた。
順当に考えて、今度はボクの番かもしれない。

「悪魔、か。それもいいかもしれない。
元より祟り神と恩恵を与える神は表裏一体、憎悪だって信仰のうちだ。
全ての憎しみを集める闇の化身を世界が必要とするのなら、引き受けよう」

Aizenさんが魔王レヴィアタンに無数の剣を放つ。
しかし、それらは水で出来た巨鯨に食い尽くされた。

>「あら、此処は私の世界よ?
 宏大な海の全てが私の武器であり盾。水波を踏み締めて歩く事すら容易いわ。
 陸の生き物であるアナタ達には、私に対面する事すら難しいのではなくて?」

>「アイス、ロック」
>「これで、水は、使えない。さぁどうする?」

「【ウォーターウォーキング】」

Aizenさんが魔王の周囲の水を凍らせにかかる一方、パーティー全員に魔法をかける。
浮力と表面張力を極限まで引き上げる事によって水上歩行を可能にする魔法だ。

海蛇レヴィアタンが引き起こした大津波が間近に迫ってくる。
このままでは全員押し流されてしまう。
回避するには、逆方向の津波を起こしてぶつけてやればいい!

「タイダルウェーブ!!」

二つの波がぶつかり合った地点で、天にも届こうと思うほどの水の壁がそそり立つ。
241 :レヴィアタン ◆666/MyrH6U [sage]:2012/05/24(木) 21:18:03.42 0
>239
剣での初撃を防がれたaizenは、即座に第二の攻撃を仕掛けた。
魔王レヴィアタンに向けて放たれたのは、凍結の属性を備えた不可視の衝撃波。
直線状に放たれた極寒の冷波は、海上に波の姿を留めた氷盤を造り出す。
意図は明白。レヴィアタンが攻防一体として用いた海水の封印。
しかし、魔王は己の足元に造られた氷原の孤島を一瞥すると、ふっと口元だけで微笑する。

「水が使えない? 海面を凍りつかせただけで?
 私から海の支配権を取り上げたいなら、大海全てを汲み上げる程の器を用意しなさい」

魔王レヴィアタンはlhjalm(消えよ)と呟き、己の身を縛る紋章の戒めを解く。
aizenの接近を誘う目論見を持って、緊縛されたままの態を装っていたのであろう。
そして、aizenの付近に漂う妖精に目を移した。

>240
世界が必要とするならば、闇の化身に堕ちる事も引き受ける。
妖精の口から吐かれた言葉を聞いても、レヴィアタンの貌には何の表情も浮かばない。
まるで、路端に転がる石を見つめるが如く。
魔王の瞳には妖精の姿が映っていたが、見つめているのは彼岸の地であった。

「アナタが人であれば、その言葉に返す言葉も有ったけれど、神と称するものの心奥を推し量るのは止めておくわ。
 神を称するものと悪魔では、存在の距離が天地を無数に重ねた程も離れていて、精神の混淆は微塵も為されない。
 互いに屠殺し合うだけの間柄で、無為に言葉を積み上げるのも虚しいでしょう」

対するテイルは水上歩行の術を詠唱。次いで神蛇レヴィアタンの起こす波には津波の術で対抗しようとする。
しかし、波濤に波濤をぶつけても鎮める事には繋がらない。
打ち合った山波は巨大な水の壁と化すと、瞬く間に崩壊を始めた。
その後は? 崩れた奔流が互いに元の方向に傾れ込む?
否、レヴィアタンは己が創り出した領域に支配権を持ち、海の流れにも影響力を行使する。

「……lsqva(沈め)」

砕けた水の壁は、魔王の呪(かしり)で全てが元の山波に加わった。
タイダルウェイブの破壊力を上乗せして。
逃れる場所は必然的に絞られる。
海魔の領域である水中か、或いは波も届かぬ雲上に。

そして雷鳴の様な呼吸音で空気を震わせながら、神蛇レヴィアタンが到来した。
巨大な海蛇の姿を人間が見れば、感得する印象は象徴としての海。陸を取り巻く大洋の円環である。
神蛇は巨大な波打つ壁と化して東西南北の全てを一匹で断ち塞ぎ、すでに戦場は余す所なく神蛇の掌であった。

(概念トシテノ、レヴィアタンハ、神蛇ト悪魔ノ姿ヲ内包スル。
 ソシテ此ノ姿コソガ、神ノ創リシ最強ノ生物トシテノ、レヴィアタン。
 私ヲ打チ破レル者ハ、唯一ナルJHVHノミ)

示威の思念を轟かせた神蛇は、巨山を収められる程の口腔から焔々たる烈火を吐き出した。
空と海の色とが、紅蓮の一色で塗り潰される灼熱を。

「lhstlt al hmjm」

レヴィアタンの今一つの表象である魔王の姿は、魔術の韻律を紡ぐ。
海面に咲いた大輪の氷花の上で。
直後、遥かな高みから燃え盛る大瀑布が降り注ぐ。
それはaizenが氷結させた海面を再び溶かして、煮え滾らせる程の熱量である。

【神蛇レヴィアタン・上空から周囲数kmの範囲に渡って炎を吐く】
【魔王レヴィアタン・jタイダルウェイブを取り込んで押し返した後、氷盤の上で呪文詠唱】
242 :半永久闘争存在ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2012/05/26(土) 00:17:07.92 0
>「世界は存続と同時に死も望んでいる。
 虚無的な死では無く、自己を永続化する為の死を。
 芋虫が蝶となる過程で、己の細胞を殺すのにも似ているかも知れない。
 それ故に、世界はアナタに力を与えながら、私という破壊の意志をも生じさせた……と言うのはどうかしら。
 ふふっ、神ならぬ私たちが量り難い神意について思い煩っても、答えが得られる訳ではないけれど」

この言葉を聞いて鼻で笑う。だが奴は世界の創生と共に生まれた、世界を終了する者として
そして自身も世界を維持し守るための白血球のような物だ、何れはぶつかり合うのは必定なのかもしれないが

「貴様は世界の自滅因子- アポトーシスとで言うつもりか?
大層な所に出たものだ…だとすれば俺とお前は此処で互いに消滅するのが運命なのかもしれないな
―もっともそれで開放されるのならばある意味では幸運かもしれん。俺もお前もな。
……そうだな、神の気まぐれなんぞに興味も無い答えなんぞも知りたくない
私は私の意志で生きるそれだけの事」

彼女の言葉に人としての自身の答えを必死で伝えながら
次の言葉には動揺しなかったといえば嘘になるし、ある意味では核心を突いていた。

>「アナタが無辜の人間の平穏を守ろうとするのは、自分の人生を他人に復讐してもらう為でしょう?
 自分が幸せになれなかった分、代わりに他者に幸せになってもらう。
 そして、彼らの中へ無自覚に己を投影して、最愛の人を失った自分の人生にを慰めを与える。
 そんな屈折した感情が、アナタが抱く無私の救済願望の正体よ……違って?」

「否定はせんよ…僕とて創られた存在とは言え人の子だ無意識に彼らに自己投影しているかもしれん。
だがな、俺が守ろうとするする世界の人たちは人を想う優しさという誰かを思いやる力と
誰にでも手を差し伸べる事が出来るという力になんかじゃないどんな方法で鍛えても得られない強さを持っているんだよ」

胸の内に秘めていた言葉は最早止まらず滝のように溢れ出す
それは自身の支える寄り代にしてその人たちが紡いでいく思いを繋げ
何処までも伸ばす姿を守ると決めた決意、心底から願う彼の願い。

「全てを知りこんな血塗れの手を持った人間にすら手を差し出してくれる
そんな心に何にも変えがたい強さを持つ人達が突然の不条理に滅ぼされて馬鹿を見るなんて事が
あってはならない許すわけにはいかないんだよ!!力はお前が何倍も強いかもしれんしかしそれ以上に
心のあり方と強さはあの人達が強いんだ!滅ぼす力でしか人を操れないお前には決して負けない!」

243 :半永久闘争存在ビャク ◆hfVPYZmGRI [sage]:2012/05/26(土) 00:19:00.33 0
心の滾りと共に無命剣に炎が宿る失いかけていた瞳にも色の輝き始める

>「その重ね続けた咎なら、私が全て許すわ。
 最愛の恋人を殺めた事も、守ろうとした人々を力及ばず死なせてしまった事も。
 だから、安心してお眠りなさい。この羊水の海の底で」

「二度も言わせるな、貴様程度が許した程度は咎は消えん
これは呪いだ―神ですら解く事のできない罪の鎖と十字架
生きてゆく限りついて回る」

レヴィアタンにも罪を重ねる物特有の鎖が巻き付いているように見える
これは罪が背負った同類の存在ならば自身の目で確認できるほどだ
彼女も数え切れない罪を背負っているのだろう

>「皆様は本来の姿のレヴィアタンと、悪魔としてのレヴィアタン。どちらとお相手して下さる?」

「よろしいならば―始めよう、塩の柱<ネツィヴ・メラー>」

突然周囲に天高く白い光を放つ搭らしき物が出現し周囲にある万物全てを塩に変えてゆく
それはかつて背徳と悪徳に塗れたソドムとゴモラを滅ぼした見るものを塩に変える
塩の柱から発する白き光―不浄なる存在を含む全てを塩に変えて
勢い良く駆け抜けた――
244 :超新星な騎士 aizen  ◆JryQG.Os1Y [sage]:2012/05/26(土) 13:09:05.42 0
『まさかな、予想以上ってとこかな。』
なら、少しヤバいが、あれを
aizenは、タツロットのしっぽを三回連続で引く。
『行くぞ。』
すると、aizenは黄金の鎧飛翔体となり、空を駆ける。
そして、一気に人間の方の奴に突撃し、また変形し
全力の、ダークネスフルムーンを叩き込む。
245 :テイル[sage]:2012/05/30(水) 23:14:08.09 0
>「アナタが人であれば、その言葉に返す言葉も有ったけれど、神と称するものの心奥を推し量るのは止めておくわ。
 神を称するものと悪魔では、存在の距離が天地を無数に重ねた程も離れていて、精神の混淆は微塵も為されない。
 互いに屠殺し合うだけの間柄で、無為に言葉を積み上げるのも虚しいでしょう」

「そうだね、続きは拳で……いや、魔法で語ろうか!」

>「……lsqva(沈め)」

「ヤバッ!」

レヴィアタンの波がこちらが起こした波を取り込み、倍になって迫ってきた。
津波が視界の全てを覆いつくし、深淵の海に呑みこまれる。
そして怒涛の波に振り回され……なかった。

「……!?」

海の中に出来た球状の空間に立っていた。
空間の外には、有象無象の魚のような姿をした海魔たちが見える。
海魔の女王の作り出す海中においてこのような避難地帯を作れる存在は限られている。

「君、なの……?」

見つめるは、スサノオのシャード。それは静かに青い輝きを放っていた。
浮かび上がる、漆黒の髪と青い瞳の少年の幻影。

『言っただろう? 姉さんを海魔の女王なんかに殺させはしない。
共に行こう……! 僕らの愛した世界を守るために……!』

スサノオのシャードが、一振りの剣に変化する。
冠する名は、今度はテュポーンではない。
ガイアとタルタロスの間に生まれた滅びの運命を背負う悲しき怪物では芸がない。
アマテラスとスサノオの間に生まれた八柱の神々こそがふさわしい。

それは、厳し霊《イヅシヒ》と瑞し霊《ミズシヒ》を司る聖剣。
名付けて、――五男三女神《オリジン》。

「行くよ、スサノオ!」

剣を片手に、吹き上がる水の柱に乗って海面から勢いよく飛び出す。
降りかかる炎の大瀑布を突き抜け、遥か上空へ至る。
見据えるはこの領域を取り囲む大円環、海蛇レヴィアタン。

「雷雲よ我が刃となりて敵を貫け――」

呪文詠唱と共に、一天俄かに掻き曇り雷鳴が鳴り響く。

「サンダーストーム!!」

無数の稲妻が海蛇を撃つ。
246 :レヴィアタン ◆666/MyrH6U [sage]:2012/06/01(金) 20:58:33.21 0
神蛇が炎を吐き出してから海面に到達するまでの間にも、戦況は大きく動いた。
まず、狂奔する波濤が巨大な掌を押し広げてテイルを攫う。
妖精の姿が海中の牢獄に没したのを見て、魔王レヴィアタンは無用となった魔術を止めた。
水幕の術(ウォータースクリーン)の支配権を即時に奪う術を。

同時に、レヴィアタンは海の碧が別の色に浸食されるのを認めた。
泡立つ海が白い濁流となって沈み、そこに傾れ込んだ新たな海水も白い流砂に変わり果てて沈む。
ビャクの術法で造られた塩の柱が万物を塩に変質させる光を放ち、海原を乳白に濁らせているのだ。
想像を絶する光景は、まるで海が遺灰と化しているかの様にも見える。

塩の砂漠が広がりゆく海上では、黄金の鎧を纏ったaizenが魔王レヴィアタンに向けて飛翔していた。
海魔の多くは変質した海の表層を抜けられず、超えられた魔物も塩の柱に変わり、迎撃の暇は無い。
電光石火で宙を駆け抜けたaizenは、激甚の限りを尽くした蹴りを放つ。
超音速の爆発音を伴って。

aizenの仕掛けた攻撃が、群青色のドレスを突き破って魔王の胸を貫く。
穿たれた肉体から飛び散ったのは真紅の鮮血ではなく、瀝青の黒さを持った靄であった。

「強いわね……投影された現身を傷付ける程度には。
 だけど、現身を越えて侵食する強さでは無い。
 神や悪魔の戦いは、己の宇宙で相手の宇宙を塗り潰す事に等しいのよ」

直後に神蛇の業火が白塩の世界を嘗め、灼熱の海に溺れた空間は音も匂いも色彩も燃やした。
塩の海、塩の柱、潮に満ちた大気、その全てを劫火で赤熱させて。
溶岩の温度に溶かされた世界の中で、魔王レヴィアタンは禍々しき大鎌を一閃させる。
歪な刃は魔王の肉体にめり込むaizenの片脚を、黄金の装甲ごと裁断した。
そして、断たれた脚は火に投ぜられた枯木の如く燻ぶりながら……魔王の足元に落ちる。
白煙と陽炎を立ち昇らせて沸騰する海に。

そして、大鎌を手にした海魔の女王は、aizenに誘降の言葉を向けながらゆっくりと歩く。
胸の傷痕を僅かずつに塞いで。

「降伏なら、いつでも受け入れてあげるわ……来世への転生も」

魔王レヴィアタンの誘降は、ルーチカと共に訪れた冒険者の一団にも向けられる。
漂う白煙に官能的な声を乗せて。

「そう言えば、迷宮で命を落とした冒険者たちもいたわね。
 彼らの魂を掌握する私が神となれば、死した者を次なる世界で蘇生する事も可能よ。
 神やら超人やらに明確な逆意さえ示せれば、手傷は負わせられなくとも構わないわ……」
247 :レヴィアタン ◆666/MyrH6U [sage]:2012/06/01(金) 20:59:40.23 0
魔炎が吹き荒れる中、一振りの剣を手にした妖精は上天へと駆けていた。
焼けつく空気と蒸発した雲の層を越えて、遥かなる高みへと。
そして、テイルは雲上を越えた先で神蛇たるレヴィアタンの全容を知る。
擡げた鎌首が成層圏にも届き、千海里にも達する銀の鱗に覆われた巨蛇の姿を。

ガイア世界で喩えるならば、長く伸びた日剣の列島が巨蛇の大きさに最も近しい。
妖精との比率は、巨鯨と一粒の細砂である。
仮に剣で切りつけられる程に寄った所で、撒き上がる潮の嵐で吹雪く山脈としか見えないだろう。
顔が顔である事を把握するだけでも、遠く離れなければ見極められないのだ。

テイルは神蛇の全貌を捉えると、魔術で発生させた積乱雲から雷を雨と降らせた。
輝く雷は神蛇に殺到する。幾条もの閃雷は白霧の嵐を紫電に照らした。
電気抵抗に左右されない魔法の雷は電流を拡散させず、大半を海中に沈めた神蛇レヴィアタンの鱗を刺し貫く。
銀の円環も、その内側も地獄の光景。

しかし、レヴィアタンも強固な魔法抵抗力を備えた神獣。生物を越えた生物に常識無し。
列島に匹敵する巨体の前では、個々の雷が与えた損耗も比率としては微々たるもの。
無数の雷が咆哮を上げても絶命には至らない。

神蛇レヴィアタンは、己に攻撃を仕掛けた一粒の細砂を睨みつけた。
爛々と輝く巨湖の様な瞳で。
その視線は、さながら燃え盛る二筋の槍。

そして、神蛇が反撃を開始した。
己との力量差を見せつけるかの様に、神蛇はテイルが仕掛けたのと同様の攻撃を反撃の一手として選ぶ。
視線をなぞった二筋の雷。千雷を束ねた太さを持つ光柱を武器として。
神蛇の巨眼から放たれた山裾の太さを持った雷光は、途中に妖精の姿を呑み込んで世界の端まで貫いた。

さらに神蛇レヴィアタンは、第二の攻撃としてテイルを灼熱の体内に呑み込まんとする。
その漠とした顎を開き、溶岩の唾液を垂らし、彗星の様に輝く双眸を宙に走らせて、音を越えた速さで迫った。
248 :超新星な騎士aizen ◆JryQG.Os1Y [sage]:2012/06/01(金) 23:26:52.97 0
『うっ、』
明らかな、ダメージをaizenは食らった。とみえたが、
『後ろだ!』
実は、飛翔体になり急接近した瞬間、マジックで分身していた。
黄金は散ったが、もう一人の俺闇の鎧はここにいる。
『行くぞ。ハイパートロニウムキャノン発射。』
異空間でチャージしていた。銃を出し発射する。
249 :テイル[sage]:2012/06/04(月) 00:26:47.96 0
雷鳴が鳴り響く中、聖なる剣の刀身に、地上の戦いの様子が映し出される。
魔王レヴィアタンが、仲間達を誘惑していた。

>「そう言えば、迷宮で命を落とした冒険者たちもいたわね。
 彼らの魂を掌握する私が神となれば、死した者を次なる世界で蘇生する事も可能よ。
 神やら超人やらに明確な逆意さえ示せれば、手傷は負わせられなくとも構わないわ……」

「ルーチカちゃん!!」

ボクは魔法の風に声を乗せて叫んだ。

「言ったよね! 訊いてみたい事と聞かせてみたいものがあるって!
考えるのはそれからでも遅くない!!」

彼方から伝わってくる、圧倒的な気配――神蛇が反撃に動き出す。
その双眸から放たれるは雷光。
レーザーというより電撃の巨大な壁が迫ってきたと言った方が正しい。

「――――ッ!!」

神蛇の雷撃をまともに喰らい、力無く堕ちていく。そこに超音速で迫りくるレヴィアタンの顎。
成す術も無く、神蛇の灼熱の体内に取り込まれた――。
250 :テイル[sage]:2012/06/04(月) 00:27:58.91 0
【神蛇レヴィアタンの体内――概念世界――】

何がどうなったのやら。
ボクは、実体化した竜神ソフィアの背に乗って海を漂っていた。
海は海でも、その色は赤。一面、灼熱のマグマの海が広がっていた。

『マグマオーシャン――星の生命の始まり――始原の海だ――』

「始原の海……新たな世界の素……」

向こうから、ソフィアにそっくりなもう一体の竜神が泳いできた。
これもまたソフィア。レヴィアタンに取り込まれた、水のソフィアだ。
水のソフィアは、こちらのソフィアを唆し始めた。

『我が片割れよ、こちらに来るのだ。
この唯一神の中で完全な姿を取り戻そうではないか――』

『何を……!』

断固拒否の姿勢を見せるソフィアに、水のソフィアは荘厳に語り始めた。

『人は誰でも運命を切り開く力を持っている――
それは《知恵》だったり、《勇気》だったり、《愛》だったり、あるいは《強運》だったり……総括して《光》と呼ぼうか。
しかしそのままでは力と力が衝突しあい、醜い争いが始まる。
意味も無く傷つけ合い、奪い合う負の連鎖。万人の万人に対する闘争だ。
それを防ぐための方法はただ一つ。
信託のもとに唯一絶対の神に力を委譲し、世界の全てを委ねる事――!』

『確かに人は愚かな生き物だ……。
しかし、唯一絶対の神とは違って不完全である故に無限の可能性を秘めているのだ!
今愚かだからといって未来永劫愚かだと何故言い切れる!? 我は信じる、人の叡智を――!』

二体のソフィアがぶつかり合う!
【最近見られたスレッド】

 鯖応答 302 unkar ver 5.25