1 名前: ◆dHgBvcqH3c [sage] 投稿日:2009/08/08(土) 01:14:18 0
ここはファンタジー世界のとある町、ノースフィリア。
比較的大きな町で、図書館や酒場、傭兵所などなど一通りの施設が揃っています。
ところで、あなたはどちら様でしょうか?
売り上げ倍増を目指す道具屋さん?勇者に憧れる少年戦士?
埋蔵金発掘を夢見るドワーフ?恋に恋する女学生?
どちら様であろうと、私があなたに求めることはただ一つ。
程度や目標は何であれ、何かを目指し何かに燃える住人であってください。
もちろん、ふらっと立ち寄る旅人さんも大歓迎。

是非、このにぎやかな町の暮らしをお楽しみ下さい。


【コンセプト】目的は無く、町の生活をのんびり楽しむTRPG
【スレ主】>>1
【GM】決まった個人は無し。イベントをしたい人がその時限定で名乗り出る
【主人公】全員が脇役。多分その辺で魔王を倒す旅をしている勇者とかが主人公
【待機ルール】3日ルール(72時間経過ルール)
【決定リール・後手キャン】あり

2 名前: ◆dHgBvcqH3c [sage] 投稿日:2009/08/08(土) 01:17:40 0
【特殊ルール】
FOあり。
いつでも気楽な感じで抜けたりFOしたり、また戻ってきたりしてOK。
ここではFOは全く悪い事ではありません。
抜けても気が向いたら何度でも戻ってきて下さい。
もちろん可能なら抜ける宣言をしたり、キャラを誰とも絡んでいない状況にしてからで。
このスレには突然相手がいなくなる事を留意した上で参加して下さい。
参加者は3日経過したら絡んでいる最中の人を動かしてOK。

【参加キャラ】
基本的には町の住人。種族も色々。
応用的には旅人でも近隣町村住人でも何でもOK。
ただし王様と勇者と魔王は遠慮しておいてください。
それと、キャラには大なり小なり必ず目指すもの、目標や目的を持たせて下さい。
どんな下らない事でも構いません。

【ノースフィリアについて】
結構な規模の町です。現代の世界全体で言えば名古屋くらいに当たるでしょうか。
カップルの多い自然公園。人情溢れる商店街。往来で賑わう大通り。
露天商で賑わう裏通り。美人シスターが密かな人気の教会。昔は強かったらしいオイボレの剣術道場。
治安の悪いスラムな部分もあるとか?
あとは、あなたのイマジネーションで地図の空白を埋めていってください。
文明レベルとしては、機械は存在しませんが、それに近い機能を持つアイテムはあったりなかったり。
それ以上の事は参加者の皆さんにお任せします。

【参加について】
避難所へテンプレ投下後、>>1の承認を得て下さい。面倒でごめん。
なお、名無し参加も大歓迎です。
辞めたり離れたりした後復帰する際には、同じキャラであれば再申請は不要。
版権キャラはありですが、必要に応じて世界観にキャラ設定を摺り合わせる形で調整したり、
原作を全く知らなくても大丈夫なキャラ説明と描写を心掛けてください。
越境キャラは、元のスレに迷惑が掛からないのであればここでは歓迎します。

【最後に】
プレイの仕方は自由です。
一人でひたすらSSを投下してもいいし、誰かとガンガン絡んでも構いません。
イベントを起こしても、起こさなくても。参加したり辞めたりまた戻ってきてまた辞めたり。
基本的にはのんびりすればいいスレです。肩筋張らず楽しみましょう。
肩肘だっけ?

3 名前: ◆dHgBvcqH3c [sage] 投稿日:2009/08/08(土) 01:19:19 0


※ 参加の前に避難所へのテンプレ投下をお願いします ※



4 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/08(土) 02:01:15 0
避難所
【避難所】ノースフィリアの風に【TRPG】
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1249662956/

5 名前:ヤラニオ ◆dHgBvcqH3c [sage] 投稿日:2009/08/08(土) 10:04:54 0
町外れ。
活気ある商店街からだいぶ離れた閑所に、小さな店があった。
薄汚れた緑色の看板には、こう書いてある。


『薬屋ヤラナイ』


「はー、客来なさすぎだろ常識的に考えて……」

ヤラナイの店主、ヤラニオはカウンターでため息をついた。
昨日の売り上げは1万G。先月の売り上げは28万G。
尊敬する父ヤラナイが他界してから、その名を世界に轟かせる為に
父の店の全国展開を狙うヤラニオだったが、店は代替わりしてから客が離れる一方だった。
このままでは全国展開どころか生活展望すら危うい。

「かーちゃん!」
ヤラニオは店の奥へ声を上げた。
かあちゃんといっても奥さんではなく、字面通りヤラニオの母である。
「ちょっと商店街の店見て勉強してくるからまた店番頼むよ!」

はい、いってらっしゃーい、と暢気な返事が帰って来る。
小銭をポケットに詰め込み、カウンターから飛び出し、ヤラニオは商店街へ向かって駆け出した。


《薬屋ヤラナイ》
価格   Lv.4
品揃え  Lv.3
接客   Lv.8
店メンテ Lv.2 (掃除や商品の陳列状況)
活気   Lv.1
イベント Lv.1(特売や企画などの集客努力)

6 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/08(土) 15:00:11 O
ウヒッ…ヒヒ…あの薬くれよ!金はあるんだ!あの頭が月まで飛んで行けるいい薬くれよ!
頼むよ…ヒヒッ

7 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/08/09(日) 08:04:37 0
>>1
だから

糞スレは


立てんなって

言っただろ

8 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/08/09(日) 08:07:15 0
ヴォケが











カス

9 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/09(日) 08:44:08 0
クスリィ・・・くすりぃ・・・

10 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/09(日) 09:36:01 0
ノースエアルファリアに
デエゴの花が咲き乱れ
風を呼び嵐がきた

11 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/08/09(日) 10:19:45 0
可愛い男の娘は何処かね

12 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/09(日) 12:30:09 0
>>11

ここにいるじゃない


ウホッ
コテ参加しようかしら…

13 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/08/09(日) 16:57:24 0
ガチムチカマ

14 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/09(日) 17:26:49 0
名前のセンスがないせいで
ホモスレになりつつある

15 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/08/09(日) 18:13:02 0


   ヤラナイカ ヤラナイカ

   ヤーラ ヤーアカイカイ・・・


   ウッホ ウッホ ヤ・ラ・ナ・イ・カ




16 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/09(日) 18:19:56 0
>>14
最初からその方面狙ってたんじゃね?w

17 名前:名無しになりきれ[) * (] 投稿日:2009/08/09(日) 22:41:04 O
ホモスレ発見。

18 名前: ◆DKtKoKOJ/ih. [sage] 投稿日:2009/08/09(日) 22:59:25 0
>>5
そんなヤラニオをトクトクは物陰から見ていた。

「あいつ、なんだっけ。薬屋で店番してるやつだ・・・」

そもそも、この世界の概念がどの程度通じているか怪しい存在だが
薬屋と店番は分かるらしい。

「駆けているというのは急ぎの用事があるのだろう・・・」
「後学のために、ちとあとをつけさせてもらうとするか・・・」

トクトクはヤラニオの駆けていった方角へと物陰伝いにつけていった。

19 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/08/09(日) 23:43:36 0
トクン・・・トクン・・・

ヤラナイカ?

20 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/08/10(月) 07:55:11 0
だがアッー!

21 名前: ◆dHgBvcqH3c [sage] 投稿日:2009/08/10(月) 21:41:25 0
商店街の繁盛店を見れば、自分の店に足りないものが見えてくるはずだ。
その思いを胸に駆けるヤラニオの前に、路地裏からヌッと男が現れた。

「ウヒッ…ヒヒ…あの薬くれよ!金はあるんだ!あの頭が月まで飛んで行けるいい薬くれよ!
 頼むよ…ヒヒッ」
ふらふらとして呂律が回っていない。どうやら正気ではないようだ。
「そ、そんな薬あるわけないだろ常考!」
ヤラニオは怒鳴り、男を押し退けて再び駆け出す。
こういう輩とは関わり合いにならないのが一番だ。

「クスリィ・・・くすりぃ・・・」
駆ける背後で声が遠くなっていく。
「……!」
ヤラニオは思わず足を止めた。

(俺は薬屋として、これでいいのか?)



『いいかヤラニオ?俺みたいな町の薬屋は、怪我を治すんでも病気を治すんでもねぇ』
在りし日の父の声が蘇る。
『町の薬屋で治る程度の病気なんざ、殆どは放っておいても治るんだ。
 放っておいて治らないようなモンなら、それなりの施設で魔法なり専門家の治療を受けないと治らねぇ。
 そんな病気の前にゃあウチの薬なんざ気休めにしかならねぇよ』

なら何で薬屋やってるの?ただお金もうけするため?
幼いヤラニオは訊ねる。
父は豪快に笑ってヤラニオの頭を撫で、そして優しい声で言った。

『俺たち町の薬屋が治すのは、人の心だ。
 痛い辛いって助けを求めてくるお客さんの心に、薬をあげるんだよ』



22 名前:ヤラニオ ◆dHgBvcqH3c [sage] 投稿日:2009/08/10(月) 21:42:29 0
「オッサァァァァァァン!!」

ヤラニオは振り返り、男に向かって駆け出した。
「ヤバい薬なんか辞めるんだ常考!俺が薬が抜けるまできっちりかっちり面倒見てやっから、
 何も心配せず俺についてこいやぁぁぁぁ!!」
ヤラニオは男を引っ張り起こして背負い、がむしゃらに駆け出す。

「うおりゃあぁぁぁぁぁ!!教会はどっちだぁぁぁぁぁ!!
 オッサンを元気にしてやってくれやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

無我夢中で駆けるうちに、急に背中が軽くなった。
「うわっ!」
思わず蹴躓いて転がるヤラニオ。
振り向いて見上げると、薄いモヤのような、キラキラしたものがそこに浮かんでいるのが見える。
目を丸くするヤラニオに、それは薄く笑ったように見えた。


――ありがとうよ――


それはふわりと小さく揺れると、空に向けて溶けるように消えていった。
恐らくは、月まで。

「へへっ」
ヤラニオは鼻を照れたように擦り、埃を払って立ち上がる。
「今の薬代はツケとくよ。ツケはまた返しに来なきゃ駄目なんだぜ?常識的に考えて」
そしてヤラニオは振り返り、再び商店街を目指して歩き出した。

「あれ?」
そこでヤラニオは物陰に何かを見つけた。
小さな影。子供だろうか?


*ヤラニオは接客の心得を掴んだ!
 薬屋ヤラナイの接客Lvが5上がった!

23 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/10(月) 22:25:17 0
いい話になってきた

24 名前:トクトク ◆DKtKoKOJ/ih. [sage] 投稿日:2009/08/10(月) 23:13:27 0
・・・バレテル・・・ なぜ気づかれたのだ。

トクトクは混乱した。やばい、思わず後ずさりつつ、咄嗟に懐から剣呑なドスを抜き出し
ちらつかせる。

こいつ、できるな・・・ニュータイプって奴か。動揺のままにそんな二枚目っぽい
台詞が脳内を駆け巡る。

だが、決意は突然に固まった。

やってやるさ。

トクトクはそう誰ともなくつぶやくなり、きらめく刃を腰で構えてヤラニオ目掛けて駆け出した。

25 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/10(月) 23:24:42 0
そしてつぶやいた



    「やらないか・・・?」




26 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/11(火) 04:08:59 O
あの…すいません短剣が背中に刺さって痛気持ちいいんですけど

27 名前:リミズ ◆v7BSBgiM3Q [sage] 投稿日:2009/08/11(火) 14:46:28 O
リミズはトレジャーハンターである。
今までお宝を見つけたことはないが、俺が俺はトレジャーハンターだと確固たる信念を持って自称している以上、
俺は立派なトレジャーハンターであることは揺るぎない事実である、とリミズは思っている。
ということでリミズはトレジャーハンターである。大事なことなので2回言いました。

そんなリミズが辿り着いたこの町はノースフィリア。それなりに大きな町であることは田舎者のリミズでも知っている。
しかしリミズの顔は新たな町に着いた歓喜でも安堵でもなく、言うなれば蒼白。
誰が見ようと一目に「具合が悪そう」とわかるものだ。
老人のように体をくの字に折り曲げ、よろよろと覚束ない足取りで弱々しく歩を進めている。
こんな頑健そうな少年が、どうしたんだろうか?とすれ違う人々は心配そうな顔を向け通り過ぎていく。
そんなふうにリミズがどうも調子が悪そうなのにはわりと浅い事情がある。

リミズはトレジャーハンターだがお宝は見つけられていない。
当然路銀はすぐに底をつく。物凄い勢いで自業自得である。路銀がなければ何を買うこともできない。
ましてや旅人にとって、保存の利く食料品は町に訪れる度に用意しなくてはならないものだ。
さらに言えばリミズにはサバイバルの技能はあまり備わっていないため、野生の獲物を捕まえたりする技術にも欠ける。
お分かり頂けただろうか。つまりわかりやすく砕けた言い方をするとだ、


空腹で行き倒れ寸前っ☆


しかしリミズは誇り高きトレジャーハンターだ。空腹で倒れそうになっているなど恥にも程がある。
トレジャーハンターが誇り高いかどうかは意見が分かれるところだが、それはそれとして。
だからリミズは元気に振る舞っているのだ。これでも。実は。
傍目から見ると病人にしか見えないながらも精一杯元気な振りをして、
道端になにか食べ物でも落ちていないかと目を皿のようにしてうろついているとだ。

――声を、かけられた。

28 名前:リミズ ◆v7BSBgiM3Q [sage] 投稿日:2009/08/11(火) 14:48:52 O
>26
(これやばくね?)
率直な感想である。
リミズに声をかけた人物の背中には、短剣が突き立っていた。滴り落ちる血液が、その場を赤に染めていく。
「えぇー……ちょっちょっちょっちょっちょっ」
ちょっと待て。
背中に短剣が突き刺さっている。普通に考えれば、それは致命傷だ。
しかしどうもこの人は全く危機感を感じているようには見えない。
ていうか痛気持ちいいらしい。どこまでドMなんだ。ていうか他に何か告げるべきことはないのかよ。
心の中でツッコんだあと、なんだか妙に冷静になれたのでとりあえず対処をするべきだろう。

「えーっと……とりあえず医者のところ行かない?」
痛気持ちいいらしいがそんなこと言われても「あぁそうなの」で済ますしかないわけで、
かといって声をかけられてしまった以上我関せずで通り過ぎてしまうほどリミズは人の道を外れてはいない。
医療の知識など何一つ持っていないリミズが出来るのは、医者か何かのところへ連れていくことぐらいだ。

(とりあえず、刺さってる短剣は抜かない方がいいよな……)
おそらくだが抜いたらかなりの勢いで血が流れ出してくるだろう。そのまま出血多量死。リアルな結末が浮かんでくる。
しかし抜かないとしても、刺さった短剣の隙間から血液は少しずつ流れ出していく。一刻を争う状況である。
この人は痛気持ちよさに恍惚の表情を浮かべているが、そのままポックリ逝きそうな気がしてリミズは慌てる。
「ほら、僕の肩に掴まって。医者のトコまで、連れてくから」
半ば強引にその人物の肩を担ぐと、リミズは医者を探し小走りに急ぐ。
身長があまり高くないため、どうも引きずっているようにしか見えないのはご容赦頂きたい。
『成長期はこれから』とは本人の弁。

(この人を無事に助ければ……)
自分は当然、命の恩人だ。
もしかしたらお礼として、ずっと求めていた食事にやっとありつけるかもしれない――、
そんな打算も、心に浮かべながら。

問題があるとしたら、リミズはこの町に着いたばかりであることだろうか。
「……医者ってドコにいんの?」

29 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/11(火) 15:16:55 O
バカ野郎!何がトレジャーハンターだ
この世で一番価値がある宝ってのはなあ…
友達なんだよ!

30 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/11(火) 16:17:46 0
空気を読め
避難所に書けよ
カス

31 名前:リミズ ◆v7BSBgiM3Q [sage] 投稿日:2009/08/12(水) 16:49:06 O
医者はいまだ見つかっていない。かといって「行こう」と自分から言った以上、人に聞くのも忍びない。
実際はそんな些細なプライドにこだわっている場合ではないように見えるが、リミズはその辺り考えない。
『いつか見つかるだろう』という安易な希望的観測のもと、あてもなく縦横無尽に右往左往。
どうにも緊張感を持つことができないのは、この背中に短剣刺さった人物が妙に元気なことだろう。
第一声が『痛気持ちいい』である時点で推して知るべきかではあるのだが、
担いで……ではなく引きずっているリミズと普通に世間話ができるほどに、健勝なのである。
血色も悪くなく……実は空腹で倒れそうなリミズの方がよほど具合が悪そうだ。
(……医者、必要あるのかな?)
思うが、あえて口には出さないでおく。

ともかくも軽いノリで会話をしながら路道を急ぐリミズ。
やや遅くなったが話の流れで自己紹介することになり、トレジャーハンター(自称)であることを名乗ると――、
>>29
怒られた。

「……」
リミズは沈黙する。珍しく真面目な顔で。
「……友達……、か。俺には、そんな大したものは……」
俯くリミズ。こぼれるため息。この人物は地雷を踏んだ。リミズのトラウマを抉ったのだ。
もしリミズのことをしっかり考えてくれる友人が居たのなら、トレジャーハンターなどやめるよう説得したことだろう。
そもそもトレジャーハンターを志しても1人で旅立つことはなかったのかもしれない。
……リミズには、友達が居なかった。

短剣が背中に刺さった人物も悟ったのか、口を噤む。あまりにも重くなった空気に、リミズは慌てて口を開く。
「も、もうすぐ着くんじゃないかな?あんた結構大丈夫そうだけど、一応診てもらった方がいいよね?」
背中から伝わるこの人の体温は、少しずつ着実にその値を下げていく……はずなのだが、どうもそれがない。
とはいえ連れて行くと決めたのだ、しっかりと連れて行く。男として、やり遂げたいとリミズは思う。
医者っぽい人を見落とさぬようにと、道行く人にガン付けながらリミズは尚も急ぐのだった。

リミズは何も考えていないが……
そもそもこの人物は何故刺されたのだ?
背中。自分で刺すことなど出来ない。
人に刺されたと言うことだ。……街中で。公衆の、面前で。
リミズは知る由もないが……実はこれが、ノースフィリアを半年に渡って恐怖の渦に陥れる
連続通り魔殺人事件の序曲なのだった――。



なんてことは、別になかったりする。

32 名前:トクトク ◆DKtKoKOJ/ih. [sage] 投稿日:2009/08/12(水) 17:08:37 0
土手っ腹を目掛けて一撃食らわせれば片はつく。造作もないことだ。
相手はにこやかに手を振り、無警戒に近づいてくるじゃないか。

だが、迂闊にもヤラニオは、悪意というより害意に気づかなかった。
それもトクトクのものではなく、第三者のものに。そして、その害意は速やかに
形となりヤラニオを襲う。

トクトクのドスが腹につきたてられる直前、ヤラニオのそれなりに広い背中に
いつの間にか短剣が根元まで埋まっていたのだ。まるで、以前からそこに生えていたか
のように。

突き立てられた短剣の衝撃は大きく、ヤラニオは歩調を崩し、目測を誤ったトクトクは
背後へと流れて、柄まで埋まった初めて気づいたくらいだ。

自分が驚いていると自覚するより早く、そのまま遁走に転じる彼であった。

33 名前:ヤラニオ ◆dHgBvcqH3c [sage] 投稿日:2009/08/13(木) 02:26:29 0
>>24>>32
物陰に見える影。
あまり綺麗な格好をしているとは言えない。あれはスラム街の子供だろうか?
「おーい、どうした坊主。迷子か?」
手を振り近付くヤラニオ。
今しがたヤク中の霊?を救えて気分の良いヤラニオとしては、
貧しい子供に飲み物を奢ってやるくらいの善行の追加は吝かではない。

しかし、子供は何やら不穏な雰囲気を放っていた。
その手に光るのは……刃物?
「え?」
ヤラニオがそれを確認した時、自らの背中の違和感に気付いた。
目で見えずとも、その感触がヤラニオの脳髄に自らの体に起こった出来事を数秒掛けて伝達する。
目の前の子供のものでもない刃物が、いつの間にか背中に深々と突き立てられている!
「な、何じゃこりゃぁーっ!!」
ジョジョ顔で絶叫するヤラニオ。
新手のスタンド使いの攻撃を受けているッ!?

そしてふらりと倒れるヤラニオ。
(い、痛気持ち…いい…?)
薄れ行く意識の中で、目の前にいた子供が走り去っていく気配だけを感じていた…






ヤラニオが次に目を覚ましたのは、一面に広がる美しい花畑の中だった。
「ここは…?」
「ここはあの世。お前は死んだのだ」
背後から返ってきた返事に振り向くと、深々とローブのフードを被った男が佇んでいた。

「あ、あの世!?どういうことだ?アンタ一体誰だ?俺は一体何で死んだんだ?」
男のローブを掴み、捲くし立てるヤラニオ。
しかし、男はヤラニオの質問を全て無視し、一言だけ尋ねた。
「…遣り残した事はないか?」
「え?」

34 名前:ヤラニオ ◆dHgBvcqH3c [sage] 投稿日:2009/08/13(木) 02:27:45 0
ヤラニオの脳裏を色んな事が過ぎる。
偉大な父の店の繁栄。やっと気付けた薬屋としての生き様。一人遺される母。
友達のこと。遊びのこと。商売のこと。いまだ捨てていないDT☆のこと。
大切なものはたくさん、あの町に残っているのだ。
「…んなもん、決まってるだろ常識的に考えて」
ヤラニオはローブから手を離し、万感の想いを込めて、言う。


「遣り残してない事なんか、ひとつもねえよ」


「では町に帰るが良い」
「え?」
男は事も無げに言うと、ヤラニオの頭に手を翳した。
途端に、ヤラニオの体が光に包まれる。
「え?な、なんだ?」
「ここは遣り終えた者の集う場所。お前が来るのはまだ早い」
浮遊感とともに、体がこの世界から消えていく。
「お、おい、あんたは一体…?」
「私は最賢者スカロト。……さっきの薬代は、これで払ったことにさせてもらおう」

ピカッ!
激しくフラッシュしたかと思うと、途端にヤラニオの視界は地面で満たされた。
「はっ!」
一瞬平衡感覚がおかしくなったが、どうやらうつ伏せで倒れているらしい。
ヤラニオは体を起こし、辺りを見回した。
そこにはいつもの風景。ノースフィリアの変わらぬ町並みがある。
次に、自分の体を検分してみた。お腹にも背中にも短剣は刺さっておらず、傷痕も血の跡すらない。

「…………」
店を出て今まで、時間にしてどれだけなのだろうか。
色んな不思議現象が起こりすぎて頭も働かない。
「これを常識的に考えるのは、さすがに無理だなぁ。常識的に考えて」
しかし、不思議と爽やかな気分だった。
遣り残したこと。何十年も掛けてそれを全て精算したら、またあの賢者に会いに行こう。
その時は、果たして何を言ってくれるだろうか?それを思えば、死ぬのも悪くない。
でもその前に、まずは精一杯生きよう。
それを全うしないうちは、死ぬ資格はないのだから。

「待ってよ、最賢者…」
ヤラニオは拳を天に突き上げ、高らかにその名を呼んだ。

「スカトロ!!」


35 名前:トクトク ◆DKtKoKOJ/ih. [sage] 投稿日:2009/08/13(木) 10:52:17 0
「ちっ、撤退信号か。あと少しだってところだったのに」 なぜかそんな台詞をつぶやきながら
未遂の現場から遁走しつつあったトクトク。

なんだっていうんだ、この不愉快な感じは、まるで俺が負けたみたいじゃないか。

と振り返ると、見知らぬ風体の者がヤラニオを抱え込み介抱しつつ歩いているのが見える。

「あいつが守ったっていうのか」

いつも決断は一瞬で来る。悲しいけどこれって戦争って奴なのよね、そう自分をごまかし
ながらトクトクは再びドスを構えリミズの背中に迫る。無警戒な相手など据物切りに等しい。
そのはずだった。全身の体重を刃先に載せてドス”レーザーピック”は鈍く光を放ちながら
リミズの服を切り裂き、筋肉の堅い反発を受けつつも進み、やがて皮膚が裂け始め・・・

スカトロ!!

薬屋が急に拳を突き上げ、ガバっと身を起こし叫んだ。つられてリミズも大きく身を逸らし
刃先はまたしても宙を泳ぎ、虚空をむなしく切り裂いた。

「幸運なやつめ。今日は命を預けといてやる」 再び、遁走に転じるトクトクであった。


36 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/13(木) 12:18:24 O
リミズが介抱してるのはヤラニオじゃなくてモブだぞ

37 名前:マリー ◆HfZPTbLTxU [sage] 投稿日:2009/08/14(金) 06:14:45 O
――暗転――
太陽が高く上った昼下がり。
北のスラム街にその教会はある。
礼拝する人は多いのだがお布施は少ないので教会の修繕はままならくて、随分昔からボロボロなんだ。
それでも美人と専ら噂のシスターが切り盛りして暮らしてる。
そんな場所に実家へ帰れねー俺、マリー=ルイーゼ・ヴァーリア・ヴァイゼンボルンは身を寄せている。
「さあ、メシメシ〜♪」
昼飯時。食堂へ向かうといつも作りたての料理が並べられているテーブルに向かう。
だが俺の前には何時までたっても料理が来ない。チラリと横目で食事当番に目をやってみる。
キッチンを念入りに掃除している様だが、そんな事は俺の知った事じゃないんだぜ!
「おいおいレミー、何か忘れてるんじゃないか?」
わざと遠回しに言ってみる。
「……」
無視。振り向く様子がないことはメシが用意されることもないな。
「レミー、聞こえてるのか?」
「……」
俺に視線だけ向けられるがメシを用意する様子はまたもないぜ。
「俺のメシの用意がまだなんだぜ!」
バンッ!両手をテーブルに叩きつけて音をたてるとレミーは手を止め、俺に向き直り睨む。

38 名前:マリー ◆HfZPTbLTxU [sage] 投稿日:2009/08/14(金) 06:16:04 O
そりゃもう凄い、般若の様な表情で。レミーさんマジぱねぇっす。だが俺も負けちゃいないんだぜ!
「ようやく気付いたようだね、レミー君。私の食事の用意を頼むよフフン」
胸を張り、名門の余裕ってヤツをありったけ見せ付けてみたぜ。するとレミーはしばらくしてから深くため息を吐いて呆れ顔になったぜ。
俺は諦めてメシの用意をするものと思ったが、次に奴の口から飛び出してきたのは最終宣告だった……!
「おめーのメシねぇから!」
「!!!」
レミーがさっきよりも険しい表情で一喝した。当たりにしばらく静寂がおとずれる。
「そりゃないぜシスター!仮にも俺たち幼なじみだろ?親友だろ?夫婦だろ?夫婦なら扶養義務があるってもんだぜ」
泣きつく俺。一人で食っていけない俺にはプライドなんてないんだぜ。
「金もない、仕事もない、ついでにち〇こもない奴と夫婦になった覚えはないわ!」
引き剥がそうとするレミー。不意に、一際大きい腹の虫が鳴る。
俺の物ではなく、レミーの物だ。
「……お前、いつから食べてないんだよ」
レミーを解放して向き合う。
「別に。アンタには関係ないわ」
プイと振り返り掃除に戻るレミー。良く見れば肌の色も悪く、やつれている気がした。

39 名前:マリー ◆HfZPTbLTxU [sage] 投稿日:2009/08/14(金) 06:16:49 O
……もしかしてコイツは俺のメシを優先してたのか?まともに家事もしてなかった俺を?
俺はこのままで良いのか?いや駄目だろうな。
思えば俺はレミーに甘えてばかりだった。その行いは実家に居場所が無くなったからといって赦される物ではないのだろう。
幼くして両親を失い、一人で生きてきたレミー。彼女には帰るべき家庭そのものが無いのだから。俺の下らない家族への悪口でも彼女にとっては羨ましい物であったのではなかろうか?
自然と足が出口へと向かう。俺は振り返らず叫びながら走り出す。
「レミー!俺はクソ不味いお前のメシなんて二度と喰わねー!」
「なんですって!人の気も…
「だから!代わりに美味いメシ喰いに行こうぜ、腹一杯な!一山当てて来るからまってろ!」
「……」
全くゴメンの一言も素直に言えない辺り、我ながらろくでもない奴だ。
そんなこんなで俺は教会を後にした。

40 名前:マリー ◆HfZPTbLTxU [sage] 投稿日:2009/08/14(金) 06:19:03 O
>>31>>34
勢いに任せて取り敢えず商店街までやってきたが、これからどうするべきか。
まあなるようになるさ。そう大通りに出た所だった。
人混みの喧噪にかき消されることなくそれは聞こえたんだ。
「スカトロ!」
こんな場所で隠語羞恥プレイとかありえないだろ、常識的に考えて。
目の前にいた二人組の男のうち、背負われている男が拳を突き上げ錯乱している様だな。
ザワザワ。ひそひそ。一時は静まり返っていた観衆だが、次第に先程までとはまた違うざわめきが生まれてくる。
こりゃあヤバい薬決めてんだろうな。教会に連れて行った方が良いぜ。
善は急げだ。もう一人へ教会へ向かうので一緒に薬中を運ぶようにように話し、俺は来た道を戻った。
「レミー!患者さん連れてきたぞ!」
「よく診療に来てくれた!食事を奢る権利をやろう!さあ受け取りたまえ!」

41 名前:リミズ ◆v7BSBgiM3Q [sage] 投稿日:2009/08/14(金) 13:12:11 O
>>36
リミズはまだ引きずり……もとい運んでいる。医者を目指して。未だ見つかっていないが。
世間話の最中、この人は「モブリビオン」と名乗った。だがリミズはいちいち6文字も口で発するのが億劫だったので
「モブさんでいい?」
と、勝手にあだ名を付けてしまっている。返答はなかったのだが、それで固定してしまうつもりらしい。

ともかく、今リミズが運んでいるのは>>26>>29、短剣が背中に刺さって痛気持ちいいと話すモブリビオンだ。
それにしてもこんな誤解が起きるとはやはり俺の文章は解りにくいのかなとかの話はさておいて。
例えばここではない違う場所で誰かを介抱しているリミズがいるなら、それは同名かドッペルゲンガーである。
少なくとも、ここにいるリミズではない。モブリビオンを運ぶリミズではない。
筈、だった。

「――!?」
一瞬の、立ちくらみ。
人を背負っているのだ、しゃがみこんでしまうわけにはいくまいと堪えるが……目を瞑ってしまう。
その一瞬。一秒にも満たぬ短い時間。たったそれだけで、リミズは背負う物体の質量が変わったことに気付いた。
「……えっ?」
思わず振り向く。
そこにはモブリビオンではない、違う人物の顔があった。

42 名前:リミズ ◆v7BSBgiM3Q [sage] 投稿日:2009/08/14(金) 13:13:24 O
>>34>>35
「え?え?えっ?」
リミズは こんらん している!

さっきまで俺が運んでいたのはモブさんだ。ちょっとドMなところもあるが気のいい普通の人物だった。
何故、俺が立ちくらみした一瞬、その一瞬だけで――全く別の人物に入れ替わっているのだ?

リミズはふと気付く。ここはさっきまで俺が走っていた場所ではない。
ノースフィリアに着いたばかりで地理に明るくないリミズでも、さっき見ていた景色と違うことぐらいすぐわかる。
モブリビオンが入れ替わったのではない。自分が飛ばされたのだろう、と理解する。
何故?誰が?モブさんがか?――何のために?
じっくり考えたいところだったが、それは中断されることになる。背中の男が、拳を突き上げたのだ。4文字の咆哮とともに。

「スカトロ!!」

さすがにリミズも面食らう。
さっきまでのモブさんは少なくともこんな公衆の面前で破廉恥な発言を叫ぶ人ではなかったはずだ。
突然違う場所に飛ばされて背負っていた人物が変わっただけでも驚きなのに、その人物が……こんなとは。
あまりのわけのわからなさになんだか泣きたくなってくる。背中を襲う凶刃を期せず避けたことには、気づきもせず。
ひとつ、その場から逃げるように立ち去る小さな姿が見えただけだった。

リミズは思う。この状況はかなりマズい。
気持ち悪い言葉を全力で叫んだこの背中の男のせいでざわめきが遠巻きにこちらを包んでいる。
どうにかしたいがどうにもならない。むしろこんな状況でどうしろというのか。
背負っている男を下ろせばいいのに、その辺り妙に律儀であるリミズは、考えもしなかった。
しかしだ。リミズが入れ替わっているのに驚いているのと同様に、この男も突然背負われて驚いている筈だ。
不謹慎な言葉が飛び出るその口にはかなり不安があるが、情報を共有できるのは男しかない。
だから。意を決して背中の男に話しかける。
「なんでこんなことに……」
なってるんでしょう、と言いかけた瞬間。

>>40
獣人だ。
こちらに声をかけてきて、よくわからないが教会に行くからそいつを連れてこいと。そう言った。
全く意味がわからなかったがとりあえずこの場所からは立ち去りたかったので指示に従い、獣人の後を付いていく。
長身の男を引きずり……もとい運んでいるのだからどうも遅くなりがちだが何とか獣人を見失わずに、着いた場所。
オンボロの小汚い教会だった。

なんでもこの背中のおっさんは薬中らしい。そして教会で治療するために連れてきた、と。
教会に入り、背負いっぱなしだった男をベッドに下ろしながらリミズは説明を受ける。なーる。
当然ながらその場に居たリミズが状況なり何なりを説明することになるのだが。
「……いやホント、何がなんだか……
 ていうかそもそも俺も何であんなとこにいたのかさえ……」
上手く説明出来ず、口を濁し、のち沈黙。
まぁよくわからないものはよくわからないんだから何も言えないし、と自分を納得させる。

(それにしても)
このシスターえらく美人だな。

43 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/08/14(金) 22:44:40 0
シミオージ!!!!!






スカトロ!!!!!

44 名前:ヤラニオ ◆dHgBvcqH3c [sage] 投稿日:2009/08/14(金) 23:39:10 0
>>40>>42
「あれ?」
ヤラニオはいつの間にか見知らぬ男の背中に乗っていた。
困惑するヤラニオ。下の男も明らかに困惑している。まあ、それはそうだろう。
そしてそこに現れた猫娘。
彼女の指示で、あれよあれよと言う間に教会まで連れ込まれてしまった。

>「レミー!患者さん連れてきたぞ!」
>「よく診療に来てくれた!食事を奢る権利をやろう!さあ受け取りたまえ!」

「は!?」
そして二人のシスターからあまり有難くない権利を戴いた。
なんだこのハイテンションな変人達は。

「ま、待て待て、何で俺が見ず知らずのお前達に飯を奢るんだ常識的に考えて…」
と言いかけた時、ヤラニオは二人のうち片方の血色があまり良くない事に気付いた。
ヤラニオはあくまでただの薬屋に過ぎず診療行為は専門外なのだが、
それでも明らかに良くない健康状態くらいは分かる。
見渡せば、この教会もあまり健全な経営状態にあるようには見えない。そしてここはスラムの真っ只中だ。

食事を奢る権利、か。

「それより待ってくれ。患者とか診療とか、俺はこう見えて至って健康…ああそうか」
ヤラニオは、自分がナイフで刺され絶命していた間のことを把握していない。
魂だけがあの世に飛び、現世で体がそのまま転がっていたのなら、
道行く人からは怪我人、下手すれば死人と思われていたとしてもおかしくはない。
どこからどう説明したものか…そもそも何があったのか。
ヤラニオは自分を背負っていた男に視線で問いかける。

>「……いやホント、何がなんだか……
> ていうかそもそも俺も何であんなとこにいたのかさえ……」

男も状況を把握できていないようだ。
「じゃあ、俺が説明しよう。常識的に考えて嘘みたいな話だが、全て本当なんだ」

45 名前:ヤラニオ ◆dHgBvcqH3c [sage] 投稿日:2009/08/14(金) 23:41:37 0
※偉大な最賢者スカロトについての話ですが、
都合により所々伏字が入っております。ご了承下さい。

「俺は商店街に行こうと歩いていたら、物陰で怪しい影を見掛けたんだ。
 近付いてみるとそれはこちらに突進してきた。
 そして気付くと俺は後ろからすっげえのを挿されて、あっという間に逝っちまった。
 昇天する最中、俺はスカ○ロの神秘に出会ったんだ。
 すげえんだぜ?スカト○。最初は汚くて頭おかしいと思ってたんだが。
 賢者モードだと○カトロはなんか神々しいんだよ。
 ス○トロの技で俺は天国の花畑から光に包まれてふわっと飛び立った。
 今思えばすっげえ気持ち良かったな、あの時は。
 そんなこんなで、俺はスカ○ロのお陰でこうして目覚め、新たな人生を歩む事ができたんだ。
 シミオージ!!スカト○!!って感じだよ」

ヤラニオは誇らしげに語る。
偉大なる最賢者の事を。
しかし本人の知らぬうちに光の速さで銀河の彼方まで変態を極めていっていた。

「そういや、あんたらシスターも○カトロみたいな技ができるのか?
 神の奇跡っつうかさ。あんたらみたいな美人にやってもらえるなら
 俺また逝っちゃおうかな、なんてなハハハ」

冗談を言って笑ったところで、ヤラニオは思い出した。
彼女らに食物という薬を与えなければならない。
薬代代わりには、まあさっきの食事を奢る権利とやらを戴いておくとしよう。

「おっとすまんすまん、ス○トロスカ○ロと話してばっかりでもいかんな。
 ま、ついて来いよ。今日だけは特別だぜ?たっぷり食わせてやるよ」

46 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/15(土) 00:22:47 0
あまりにも良い男すぎる

47 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/15(土) 01:05:45 O
ウホッ

48 名前:マリー ◆HfZPTbLTxU [sage] 投稿日:2009/08/15(土) 21:55:09 O
>>42-47

教会に戻ってきた俺たちは薬中をレミーに任せて一息ついた。
「なあお前、なんであんなの運んでたんだ?見たところ知り合いでもなさそうだし」

>「……いやホント、何がなんだか……
> ていうかそもそも俺も何であんなとこにいたのかさえ……」

ふむ、話が噛み合ってないぜ?
何かむず痒さを感じて頭を捻っていると、薬をキメてた男が話しに割り込んできた。
どうやら現実世界にご帰還なされたらしい。

>「俺は商店街に行こうと歩いていたら、物陰で怪しい影を見掛けたんだ。
>           《中略》
> シミオージ!!スカト○!!って感じだよ」

ダメだコイツ、早く何とかしないと。まだ訳の分からない事を言ってやがる。
しかし一緒にいた男も前後不覚になっているのに、精神に異常をきたした様子がないのはどういうことだ。

「これって薬じゃない、何か外的要因によるものなのか?」
レミーに後ろから声をかける。振り向かずレミーは答える。

「ヤラニオさん自身は健康そのもの。薬を打った痕もないわ。
 後、背中に刃物で刺された痕があるんだけど塞がってるのよね。
 正直説明しようがないことがあったことくらいしか分からないわ」

不思議なこともあるもんだ。取りあえず事件の渦中にいなくて良かったぜ。
それはそれとしてペラペラ患者の事を喋るのは良くないぜ、レミー?まあ聞いたのは俺だけどさ。
ヤラニオとか言う奴が続ける。

>「そういや、あんたらシスターも○カトロみたいな技ができるのか?
> 神の奇跡っつうかさ。あんたらみたいな美人にやってもらえるなら
> 俺また逝っちゃおうかな、なんてなハハハ」

「はい、ある程度は。
 先ず背中の傷跡がありましたのでそれを消させていただきました。
 それと体力までは回復しないので、しばらくの間しっかり養生してくださいね。
 最後にその、もう少し言葉を選んで気を使って喋ってくれると助かります////」

>「おっとすまんすまん、ス○トロスカ○ロと話してばっかりでもいかんな。
> ま、ついて来いよ。今日だけは特別だぜ?たっぷり食わせてやるよ」

ウホッ良い男。思わず犬みたいに尻尾振ってしまいそうだワン。俺猫だけど。

49 名前:マリー ◆HfZPTbLTxU [sage] 投稿日:2009/08/15(土) 21:57:50 O
「じゃあ戸締りしないとな。えーと、お前の名前聞いてなかったな。
 すまないがこの教会は留守になるので出て行ってもらえないか?」

俺はもう一人の男に退出を促して戸締りに向かうため奥の部屋へ翻す。

―――――――― グゥウウ、キュルルルルー。 ――――――――

背面で一際大きい腹の虫が鳴る。俺はレミーと顔を見合わせて目を丸くする。
言っておくが俺たちのものじゃないぜ?もう一人、お腹をすかせた奴がこの場にいたんだ。


50 名前:リミズ ◆v7BSBgiM3Q [sage] 投稿日:2009/08/16(日) 03:38:06 O
スカトロジー【scatology】
糞尿や排泄行為を好んで取り上げる趣味・傾向。また、そうした傾向の、諷刺性の強い文学。糞尿譚。
(岩波書店発行『広辞苑』第六版より)

大多数の一般人には、間違いなく受け入れがたい趣味であると思われる。
リミズはそのあたりどうやら多数派であったようで。その趣味の方には大変失礼だが……嫌悪感、しか湧かない。
そもそも誰もその趣味について語っているわけではないのだが――それを表す4文字、聞いてしまえば。
否が応でも、その事象を思い浮かべてしまうのは仕方ないことなのだろう。

>>44-45>>48-49
(へ、変態だ……)
この男――ヤラニオと名乗った――が説明してくれたいきさつは、リミズを数歩後退りさせるのに十分だった。
『後ろから挿された』だの『イっちまった』だの、あげくは『気持ちよかった』からの『新たな人生』……。
どう聞いても変態でしかない。こんな人物と多少なりとも関わりを持ってしまったことを後悔してやまない。
その趣味を持つことまでは認めるとしよう。人の嗜好にとやかく言う権利はない。だが……こんなペラペラと話すことか?
当然リミズはドン引きである。それにここにはあと獣人と美人シスターもいるのだ。女性の前で話すことではないだろう。

>「そういや、あんたらシスターも○カトロみたいな技ができるのか?
> 神の奇跡っつうかさ。あんたらみたいな美人にやってもらえるなら
> 俺また逝っちゃおうかな、なんてなハハハ」

(このおっさんは……)
誰もがドン引くような趣味の話を事細かに話すどころか、なんとセクハラまではじめるとは。
さすがにちょっとやりすぎだろう、とリミズが怒号を上げるより早く、シスターが口を開く。

>「はい、ある程度は。

この肯定の返答があまりにも衝撃的であり、それ以降の語りは全て吹き飛んだ。
(マ、マママママママママジで!?)
なんと言うことだ。こんな場所にそういう特別な傾向を持つ人間が2人も集まるとは。
類は友を呼ぶ、とはこのことなのか。運命の悪戯の驚くべき作用に、リミズは恐怖すら覚える。
それにしてもこんな美人が……と思ったところで、人は見かけで判断してはいけないなと結論づける。
奇しくもこんなところで、リミズは人間的にひとつ成長することになったのだった。

51 名前:リミズ ◆v7BSBgiM3Q [sage] 投稿日:2009/08/16(日) 03:39:03 O
あまりの衝撃的な展開にしばし呆けるリミズ。どれぐらいそうしていただろうか、獣人の呼びかけでようやく覚醒する。

>「じゃあ戸締りしないとな。えーと、お前の名前聞いてなかったな。
> すまないがこの教会は留守になるので出て行ってもらえないか?」

しばし考える。ここで名乗っていいものか。こんな変態どもの目の前で。
それに別にこれから先もう会うことないだろうしなぁなどと思いつつ。
「あぁ、俺はリミズって言うんだけど」
結局名乗り、言われたとおり教会から出ていこうとしたそこで。

盛大な腹の音が響いた。

「え、あ、いや、これは」
視線が自分に集まったのに気づき、リミズは顔を赤くしてただでさえ小さい背をさらに縮める。
一連のゴタゴタですっかり忘れていたがリミズは空腹だった。それこそいつ倒れてもおかしくないほどの。
突然腹一杯食べると体調がおかしくなるのでまずは吸収がいいものを食べなくてはならないレベルで、何も食べていない。
どうやらこの面々は、今からヤラニオの奢りで食事に行くらしい。なんて羨ましいんだ。生唾が溢れる。
(俺もご相伴に……)
預かれるなら幸いだが、診察したこの2人とは違って俺は運んだだけだ。運ぶだけで飯が食えるなら誰だって運んでいる。
ただそれだけの恩義を傘にして食事など奢ってもらうべきではない。そこまで考えて。
「な、なんでもない」
腹を押さえた手を離し、何もなかったふうに見せかける。

むしろそれ以上に、変態が集まる食事会にはたとえ奢ってもらえるとしてもさすがについて行く気にはなれないのだが。

52 名前:リミズ ◆v7BSBgiM3Q [sage] 投稿日:2009/08/16(日) 03:39:40 O
(それに)
ふと何か忘れていたような気がするので、記憶を掘り起こしてみる。この教会に来る前、ヤラニオを背負うことになる前――、

「も、モブさん!」

突然素っ頓狂な声をあげたリミズ。忘れていた。あの人は、背中を刺されてしまっていたじゃないか。
医者に連れてってやるなんて言ったのに、結局放り出す結果になってしまった。そこにリミズの意志はなかったとはいえ。
いまだあの人の背中に短剣は刺さっているはず。もしかしたら、もう既に……。
最悪の場面を考えそうになってあわてて首を振る。そうなっていないように、行動すべきことは何か。
考える、までもない。
たとえ今日初めて会った人でも。医者に連れていくと決めたのだ。ならば必ず連れていく。

「えと、えっと、ここも一応ノースフィリアだよね?」
とりあえずその確認だけするとして。
「と、とりあえず俺はここで失礼!ちょ、ちょっと用があるんで!」
言いながらあわてて教会から一歩出たところで。
「……やっぱダメかも」
倒れた。

限界を超える空腹には勝てなかった。
やがて視界が霞んでいき――

53 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/08/16(日) 07:19:22 0
やがて、スカトロ議員が現れた

54 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/16(日) 14:48:14 O
リミズの夢の中

モブリビオン「リミズ君、残念だけど俺は死んじゃったよ!
でも一応助けてくれたお礼に財宝ありかを示した地図と、昔使っていた槍をあげよう。
ちなみに宝は街の地下にある墓地にあるからね!
怪物だらけだからね!
詳しくはその地図を見てね!
べ、別にあんたの事なんて何とも思ってないんだからねっ!
じゃあな」

55 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/16(日) 16:05:03 0
だな







じゃあの

56 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/08/17(月) 14:25:50 0
ムホッ

57 名前:マリー ◆HfZPTbLTxU [sage] 投稿日:2009/08/17(月) 20:25:08 O
ゴンッ。

血溜まりが円状に広がって行く。
マズい。
力無く倒れ込んだリミズは頭を強打した様だ。

「レミー、治療を。早く!」

俺は胸元にあった清潔なハンカチで患部を押さえながら叫んだ。
無論、首筋を痛めている可能性があるので慎重にだ。

「完売御礼(コンプリートヒール)!!!」

眩い奇跡の光が灯り、そして消える。
レミーの顔に安堵と疲れが見えることから命の危機から脱した様だ。
治療は終わったのだ。

「まさかアイツも空腹だったとはな。」

血まみれになった手とハンカチを洗いつつ考える。あれだけ出血したらメシ喰わせた位じゃ回復しないぜ。
医者にでもかかって栄養剤の注射なり点滴なりして貰った方が良いんじゃないか?
俺はハンカチを洗濯桶につけ終えたので、この場に居合わせた薬師と神官双方に意見求めてみた。
肯定を得られちょうど良い具合にヤラニオの家の付近に病院があるらしいので、
俺たち三人はリミズを早速運び込む事になった。

58 名前:マリー ◆HfZPTbLTxU [sage] 投稿日:2009/08/17(月) 21:43:43 O
「やあ良く来たね、君たち。見たところその抱えてる男が患者のようだね。」
「どこが悪いんだい?口かい?育ちかい?頭かい?」
「頭?頭だね?頭おかしいんだね?頭悪いんだね?」
「残念だけど手遅れだよ。ここには馬鹿に着ける薬は無いからね。馬鹿は死ななきゃ治らないよ。」
「えっ?違う?頭を打ったから見て欲しい?」
「なら問題ないよ。奇跡で治療したんでしょ?」
「でも貧血と栄養失調を起こしてるから点滴を処方するよ。」
「つ・ま・り、1日入院だよ。最新医療だから800Gかかるよ。」
「支払いは月末までだよ。遅れると金融関係から締め上げられるからね。分かったかい?」
診療室に入るなりドクターに矢継ぎ早にまくし立てられた俺は、ついついハイと応え支払い念書にリミズの名前でサインをしたのであった。

59 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/18(火) 03:47:09 O
マッドドク鳴神の人体改造実験室
鳴神「ケェ、今日のクランケは頭を打って空腹で意識不明の健康体カァ」
おもむろに患者の頭部の具合を確かめる
鳴神「ンム、損傷の程度がイマイチ足りないネェ〜これじゃあいい作品にならないナァ」
急に元気を失い患者の手当てを素早く済ませる鳴神
鳴神「アァー今回はハズレダァ、早く新しいクランケ来ないかナァ」

そう言って患者を病室へ戻し立ち去る

60 名前:リミズ ◆v7BSBgiM3Q [sage] 投稿日:2009/08/18(火) 12:19:22 O
――夢を見る。

>>53
夢の中に現れたのは、糞尿にまみれたおっさんだった。
スカトロ議員「はいこんにちは」

「誰だよお前!」


※Take 2※

――夢を見る。

ぼんやりと靄のかかった世界。仄暗さと薄明かりが同居したような、そこにあるのにどこにもない風景。
リミズはそれが夢であると理解していた。何故かはわからないが……これは夢だ。俺は――どうなったんだっけ?
夢の中でこれは夢であると気付けることを『明晰夢』と呼ぶらしい。ならばこれが、そうなのだろう。
明晰夢では夢を自在に構築できるらしい。空を飛んだり、誰でも好きな人物を登場させたり。
リミズはぼんやりしながら、頭の中で会いたい人を形作る。しかし思い出せない。
朧気な記憶を手繰り寄せても、指の隙間からするりと零れ落ちて。何も残らない。
あの人に会えないなら意味はないと夢の構築を諦め、やがて夢の世界が闇に覆われんとする時――、

>>54
「……モブさん?」
夢の中に現れたのは、思い浮かべたあの人ではない。別の、意外な人物だった。

(そっか、モブさん、死んじゃったのかぁ……)
涙は出ない。そこまで関わり合いになった訳ではないのだし……少し、この夢の世界は現実感に乏しい。
(だけど、本当なんだろうなぁ……)
何故かそれをしっかりとした現実としても受け止めてしまう自分がいる。。
あの、ちょっとドMで一番の宝は友達だと言っていたモブリビオンはいない。どこにもいない。
結局、リミズは何も出来なかった。その死を看取ることもなく。その経緯にリミズの意志はなかったと言えどもだ。
自分が決めたことさえ満足に出来ない。ただその場に流されてしまう。後悔だけが、残るだけ。
そんな――そんな自分を変えたくて、旅に出たのではなかったか。トレジャーハンターなどという、大風呂敷を広げてまで。
結局、何も変わっていなかったのだろう。何一つ満足にやりきることすら出来ない、身勝手で矮小な少年のままだ。

「お礼、なんて……」
堰を切る。
「お礼なんて!俺がいったい何をした?あんたにいったい何をした!?
 俺は何も出来やしなかった。『医者に連れてく』なんて言ったのに、満足に連れてってやることも出来ないで。
 ちっぽけなプライドを大事にして、医者の場所を人に聞くなんて簡単なことを怠って。
 あんたが死んだのは俺のせいだとも言えるだろ?俺がちゃんと医者に連れて行っていれば、いれば!
 お礼なんて……やめてくれよ……。俺が、惨めになる、だけじゃないか……」

力なくうなだれたリミズを見て、モブリビオンは少し困ったような顔をした後……
――微笑んだ。

61 名前:リミズ ◆v7BSBgiM3Q [sage] 投稿日:2009/08/18(火) 12:21:12 O
>>57-58
目を覚ます。
ここは、病室のようだ。
頭が少しずつ覚醒していく。
確か俺は、教会から逃げだそうとして……、
そうだ。空腹のあまり倒れて、後頭部を強かに打ちつけたんだ。
しかし頭に違和感はない。これは……?痛みなり何なり感じていなくてはおかしい筈だが。

少し考える。そういえばあそこは教会だった。なら、そうか、なるほど、合点が行った。
病室を見渡す。そういえば体に点滴を打たれているようだ。そりゃあんだけ何も食っていなかったもんな。当たり前だ。
やがて教会にいたあのシスターを視界の隅に捉えると、首から上だけで礼をする。
「ど、ども、ありがとうございました。お手数かけました」
そのまま視線をズラし、獣人と変態にも同じように感謝を述べる。おそらくこの2人のどちらかが、運んでくれたのだろうから。

その後ベッドから身を起こそうとして、驚いた。
おそらくその病室にいた全員が驚いたことだろう。リミズが目覚めるまで、そんなものはなかったのだから。
リミズの左手には何かの地図が。リミズの右手には業物の槍が。
まるで最初からそこにあったかのように、固く握り締められていたのだから。

「そっか……。夢……ではあったんだろうけど」
1人ごちてから、唖然としているであろう面々に向かって説明するように語りかける。
「んーとね、まぁいろいろ話すのめんどくさいから端折るけど、
 この地図、どうやら宝の地図らしいんだ。財宝のありかを表すってさ。
 俺この街に着いたばっかりだからよくわかんないんだけど、この街の地下に墓地ってある?」
俺にお礼など貰う資格はない。だが貰ってしまった。否が応にも貰ってしまったのだ。
ならばどうするか?この宝を見つけてやる。何一つ満足に果たすことのできなかった俺が、初めて何かを果たすときが来たんだ。
これはお礼じゃない、俺の中では。挑戦だ。モブさんからの挑戦だ。なら受けて立ってやるよ。
この地図に書かれた宝を見つけ出し、それを――モブさんへの供養としよう。

「……それにしても、俺っていつまでこの病室に居なきゃいけないのかな」
点滴が打たれている以上すぐ退院というわけにはいかないだろう。
何か分かるものでもないかなと病室の中をもう一度見回してみると、一枚の紙が目に入った。
1日入院、か。すぐ向かいたいところだが仕方ない。とりあえずはこの病室で英気を養うとしよう。
そのまま視線を紙の下にずらしてゆく。800G。ご丁寧にリミズの名でサインしてある。ほうほう。
「……えっ?あれ?」
再確認。リミズは何故空腹だったのか?路銀を使い果たしていたからである。
つまりリミズは800G払える?答えは、当然の結論だ。
リミズの頭に脂汗がにじむ。決して体調が悪いせいではないことを説明しておこう。

「えっと……この槍っていくらぐらいで売れるかな?結構高価そうだよね?」
気をつけろ!こいつ形見の品を売ろうとしているぞ!

62 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/08/18(火) 17:16:02 0
リミズは体を売るべきである

自分を売れ

63 名前:トクトク ◆DKtKoKOJ/ih. [sage] 投稿日:2009/08/18(火) 20:57:24 0
トクトクが気づくと病室にいた。前後のことは知らぬ。だが、病床にいる者が沈んでいることは
一目で見て取れた。

奴は力づけてやらねばならん。トクトクはそう決意した。
そう思った瞬間、奴の肩にトクトクは手を置いていた。

「そのうち、いい目をみせてやるさ」

そう無責任に言い放つなり、驚く一同を尻目にさっさと退出する彼であった。

64 名前:ヤラニオ ◆dHgBvcqH3c [sage] 投稿日:2009/08/18(火) 23:25:51 0
ヤラニオが喋っている間に、シスターの一人がてきぱきと体を診てくれた。
ちょっと照れ臭そうなヤラニオ。
基本的に女性に免疫はあまりない。何せ魔法使いに転職するまであと数年しかないのだ。

> 先ず背中の傷跡がありましたのでそれを消させていただきました。
> それと体力までは回復しないので、しばらくの間しっかり養生してくださいね。
> 最後にその、もう少し言葉を選んで気を使って喋ってくれると助かります////」

「サンキュー」
痛みはないとはいえ、でっかい傷跡が残らないかは気になるところだった。
傷は男の勲章とはいえ、背中の傷は剣士の恥だとどこかの偉い人が言っていた気がするし。
言葉を選んでくれと言いながら照れる理由は今のヤラニオには分からなかったが、
後にある日突然布団の中で思い至って悶絶することとなるのだった。
それはまた別のお話。

そしてシスター達を引き連れて教会を出ようとした時。
>「じゃあ戸締りしないとな。えーと、お前の名前聞いてなかったな。
> すまないがこの教会は留守になるので出て行ってもらえないか?」
>「あぁ、俺はリミズって言うんだけど」
シスターと男の会話。
そうだ、この空間には男がもう一人いたんだった。自分を背負ってくれた男だ。
女の子に夢中ですっかり忘れていたヤラニオだった。
その時。

―――――――― グゥウウ、キュルルルルー。 ――――――――

男の腹が鳴る。
「なんだ、腹が減ってるならお前も行こうぜ。ただし自分の分は自分で出してくれよなハッハッハ」
快活に誘うヤラニオ。
しかし女性と怪我人病人以外に掛ける情けは持たない。
基本的に器の小さい男だった。

が、リミズは急に思い出したように叫ぶ。
>「も、モブさん!」
「モブさん?モブさんってモブリビオンさんの事か?」
昨年末のノースフィリア寒中我慢大会で他の追随を許さないドMっぷりを披露し、
他の候補者全員を棄権させた伝説の男だ。
死ぬ時はそのドMに殉じて死ぬだろうと言われているが、基本的に熱くてイイ男である。
>「えと、えっと、ここも一応ノースフィリアだよね?」
「そうだけど、それがどうかしたのか?」
尋ね返すヤラニオ。
しかしリミズはそれを確認するなり慌てて教会から走り去っていってしまった。

…と思ったら、すぐに倒れた。

「お、おい!?」
倒れた拍子に頭を打ったらしく、血溜まりができ始めている。
そこにシスター二人が駆け寄り、応急処置をかける。
シスターの片方が医者に診せることを提案し、ヤラニオも同意した。
「だな。じゃあの、うちの近くに病院があるからそこに運ぼう」
ボッタクリドクターや変態改造マニアなど変人奇人のすくつ(何故かry)だが、まあ背に腹は変えられない。
まあ、精々腕が多機能包丁に改造されるくらいで済むだろう。

65 名前:ヤラニオ ◆dHgBvcqH3c [sage] 投稿日:2009/08/18(火) 23:26:32 0
病院に着き、ドクターに患者を見せる。
矢継ぎ早に説明を受けるが、入院費用の800Gというところでヤラニオは引っ掛かった。
「ムホッ。おかしいだろ常識的に考えて。一晩の入院と点滴だけならもっと安く…」
しかし抗議の声は途中で打ち切られた。
シスターがすらすらと念書にサインをしてしまっていたのだ。
あの教会に800Gも負担する余裕があるのだろうか?
しかしそのサインは。

『リミズ』

あ、あっれぇ〜?




しばらくして、リミズが目覚めた。
「よう、気分はどうだ?」
そんな感じの良くあるやり取りを交わしたあと。
「ん、それは?」
体を起こそうとしたリミズの手に、槍が握られているのに気付いた。
運ぶときは無かったはずだが…?

>「んーとね、まぁいろいろ話すのめんどくさいから端折るけど、
> この地図、どうやら宝の地図らしいんだ。財宝のありかを表すってさ。
> 俺この街に着いたばっかりだからよくわかんないんだけど、この街の地下に墓地ってある?」
「墓地か」
ヤラニオは少し考えて、言う。
「墓地…かは分からないけど、町の地下に侵入禁止のエリアはあったな。
 でも魔物が出るらしいから近付かない方がいいぞ常考。その財宝とやらはそこにあるのか?」

そしてリミズはベッド脇に置いておいた入院費用の念書に気付いたようだ。
その額に脂汗が滲む。
>「えっと……この槍っていくらぐらいで売れるかな?結構高価そうだよね?」

ああ、やっぱり金が足りないんだ。
そうだろうなぁ。

66 名前:ヤラニオ ◆dHgBvcqH3c [sage] 投稿日:2009/08/18(火) 23:33:02 0
>>63
そこにひょっこりと現れた子供。
「あ!お前は…」
ヤラニオはぎくりとした。
さっき死ぬ直前、ドスを持って襲い掛かってきた子供だ。
しかしどうしていいか分からず絶句するヤラニオを尻目に、
子供はリミズに意味深な言葉を掛けて去っていった。

「…な、なんだったんだ」
それからヤラニオは気を取り直してリミズを見る。
「で、どうするんだ?」

ヤラニオは言う。
入院は今日一日。費用の支払いまでは少し日がある。
そして手には宝の地図。
「槍を売るのも良いが、もっと他に良い手がある気がするぞ常識的に考えて」

67 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/19(水) 01:09:34 O
槍で病院関係者をKill Them Allにして入院自体を無かったことにするんですね


68 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/08/19(水) 18:35:00 0
槍ってチンポのこと?

69 名前:マリー ◆HfZPTbLTxU [sage] 投稿日:2009/08/19(水) 23:00:43 O
取り敢えず支払い念書にサインをしたが、800Gってどれ位の価値だか全く分からんな。
普段は自分で買い物とかしないし、しても親父のツケにするから物の値段なんて気にしたこと無かったぜ。
ヤラニオが高いみたいな事を言ってたが、まあ今回はどうでも良いぜ。

手に持った支払い念書をベッド脇の机の上に置くと、頭を起こしたリミズと目があった。
どうやら意識を取り戻したらしい。
弱々しい声で礼を言ってまわるリミズの顔色は大分良くなっているようだな。

「んん?手に持っているのは何だよ?」

>「んーとね、まぁいろいろ話すのめんどくさいから端折るけど、
> この地図、どうやら宝の地図らしいんだ。財宝のありかを表すってさ。
> 俺この街に着いたばっかりだからよくわかんないんだけど、この街の地下に墓地ってある?」

確かにこの街に地下墓地は存在する。
この街の殆どの教会は地下にある共同墓地への入り口を有しており、
その多くはヤラニオが言うとおりにその教会の管轄部だけをその神官か檀家しか入れないという閉鎖的なものだ。

「あー彼処なら子供の頃に行ったことあるぞ、宝があるかはしらんが。
魔物がでるって話を聞いたから魔術の試し打ちがしたくてさー。
何回か忍び込んでみたんだけど一度も会わなくて……うわっ!!!。」

急に、ベッドの下から目つきの悪い子供だかホビットだかが飛び出して来た。
とっさに身構えて距離を取ると、何やらヤラニオ達に一瞥して部屋から去っていった。
……何だったんだ今の奴は?

そんな事はお構いなしにリミズが真っ青になりながら支払い念書を見ている。
冷や汗を書きながら手に握った槍を売ろうかブツブツ言っててキモい。
業物といった処で魔槍の類でなければ治療費を差し引いたら大した額は残らないだろうし、もったいない限りだ。

>「槍を売るのも良いが、もっと他に良い手がある気がするぞ常識的に考えて」
「それってこの地図で宝探しするって事か?コイツ一人で。」

ソイツは危険だぜ。
魔物がいる居ないに関わらず、
地面を掘り起こすなんて重労働を半病人に遣らすべきじゃない。
「アンタも混ぜて貰ったら?お宝は頭割りで。」
「勘弁しろよ、面倒だぜ。
価値の有るものが埋まってるかも分からんし、
他の教会もうるさい上に犯罪だろ?」

70 名前:マリー ◆HfZPTbLTxU [sage] 投稿日:2009/08/19(水) 23:03:27 O
なにやら横でリミズがバツの悪そうな顔をしているが、レミーの知った事ではないらしい。
「地図の記載が正確なら荒れ放題の無縁仏だから、今更なにも言われないわよ。
それにアンタはうちに一銭も入れたこと無いんだから、いい加減働く姿勢くらい見せなさいよね!」
「………」
ふう。ここは素直に話を合わせた方がよさそうだぜ。

71 名前: ◆v7BSBgiM3Q [sage] 投稿日:2009/08/20(木) 14:38:56 O
>>62-70
>「そのうち、いい目をみせてやるさ」

「……は?」
突然肩に手を置かれてそんなこと言われたとしてもリミズの頭にはクエスチョンマークしか浮かばない。
全く意味がわからないが考えたって仕方ないことなのでさっさとリミズはその思考を除外する。
その言葉をかけてきた子供のような影がさっさと病室から出ていってしまったこともあるが。

>「槍を売るのも良いが、もっと他に良い手がある気がするぞ常識的に考えて」

「……良い手?」
変態――ヤラニオの言葉にリミズは鸚鵡返しのように聞き返した後、自分に言い聞かせるかのごとく反芻する。
良い手、良い手……しかしなかなか思いつかないものである。例えば……
(ここで働いてく、とか?)
自分を売る、体を売る。そのようなもんか、とリミズは考える。
下働き以外にも、リミズのような健康体には新薬のテストなどとしても病院には大きな役に立つことだろう。
宝を見つけに向かうのが当然遅くなってしまうが、それは仕方ないことだ。まずはしっかり借金を返すべきであるし。
しかしそれにはまずこの病院がリミズを雇ってくれるという前提条件を必須とする。雇ってくれなければ、どうしようもない。

(あとは……)
「……」
この病室内にいるのは、リミズを除けばヤラニオ、それにまだ名前を聞いていなかったが獣人とシスターの計3人だ。
武器を持っているのは、見たところではリミズ1人である。隠し持っている可能性も捨てきれないが。
シスターにはあまり戦闘能力があるとは思えない。獣人はよくわからないが、その華奢な体に大層な力があるとは思いがたい。
わからないのはヤラニオだが、今は全く警戒している素振りはない。隙を突いて心の臓を突き刺せば、それで終わりだ。
あとは返す刀――槍だが――で残り2人も屠ってしまえばここにリミズを除いて動く物体はいなくなる。
騒ぎが大きくならない内に医者の居場所を突き止めて息の根を止め、ここにリミズが入院していた「事実」を抹消する。
これでよし。Kill Them Allだ。あとは何らかの足がつく前にさっさと宝を見つけてさっさと街から逃げればいい。
すこし運の要素の比率が大きい気がするが、こんな解決策をとると決めた時点で博打なのだ。
――少しの運ぐらい、この手で引き寄せてみせるさ。
(うんうん)
しかしこのシスターは美人だしすぐに殺してしまうのも勿体ない。
ヤラニオと獣人をバラした後で槍で脅しながら俺はチン、もといこの股間の槍で――

(って、何を考えてるんだ俺はっ!!!)
慌てて首を振る。このまま電波的助言に従っていたら危うく悪の道に足を踏み入れてしまうところだった。
……実際リミズが悪の道に突っ込んでいるかいないかはまた別問題としよう。本人にはその気はないのだから。

72 名前:リミズ ◆v7BSBgiM3Q [sage] 投稿日:2009/08/20(木) 14:40:12 O
>「それってこの地図で宝探しするって事か?コイツ一人で。」

「……ほぇ?」
思わず気の抜けた声がリミズの口から漏れ出る。全く考えていなかった、そんな顔だ。
しばしの逡巡の後やっと理解したのか、開いた左手の掌に右拳を上から下へと叩きつけ、合点のジェスチャーをとる。
「なるほどー」
お宝を見つけることしか考えていなかったが、そりゃそうだ。お宝が手に入るなら当然金になるのだ。
モブリビオンの宝がどれぐらいのものかはわからないが、見つければ当然入院費ぐらいは払えるだろう。払えると思いたい。
払えなかったとしてもそれはその時だし、とりあえず宝を見つけてから考えてもいいではないか。

それは危険だ、とでも言いたげな視線で獣人はこちらを見てくるが。
「大丈夫だいじょぶ、何とかなるって。俺はこれまでも何とかなって来たんだし。
 もしこれで死んじゃうようなら、それは俺がそこまでだったってことさ」
――人はそれを、行き当たりばったりと呼ぶ。

宝を探しに行くことを決めたリミズの横でシスターと獣人が何か言い合いを始めた。
ついて行く、ついて行かないとかそんな話をしているようだ。おいおいこちらの意志は無視か。
頭割りにしてしまえば当然リミズの取り分も減る。入院費が払えなくなってしまったらどうするんだ、などと思うが。
(……でもなぁ)

「……あんた、昔忍び込んだことあるってさっき言ってたよね?
 なら、やっぱり道案内とかやってもらえると、そりゃ助かる」
これは本音だ。リミズはこの街の地理などとことん疎い。はっきり言って地図が指し示す場所がどこなのかトンと見当がつかない。
地理に明るい道案内が居てくれた方が便利に決まっている。ましてや行ったことがあるなら、尚更だ。
「庇ってあげたりとかそういう余裕はないから、自分の身は自分で守ってもらうことになるけどさ。
 うん、もしお宝見つかったら頭割りでいいよ。なかったらタダ働きになるけど」

しかしこれは俺が譲り受けた地図だ。つまり俺が探すメインであり、他の人物は雇われということになる。
あれ?報酬がお宝頭割りっておかしくね?普通俺の取り分が多くなるべきじゃね?
リミズは思ったが、敢えて言わないことにした。おっとなー。

73 名前:リミズ ◆v7BSBgiM3Q [sage] 投稿日:2009/08/20(木) 14:41:43 O
「まぁ来ないなら来ないでいいけどさ。その分俺の取り分が増えるんだし。
 とりあえず俺は今日一日入院だし、退院、つまり出発は明日の朝になるかな?
 病院の前に来てくれれば、それでいいよ。あんただけじゃない、ヤラニオさんも、そこのシスターさんも」
人数が増えればそれだけ取り分が減ると言えるが、ここでこう言わない訳にもいかない。
入院してる間に、先に宝を取られてしまっては事だ。だからこうして遠回しに根を張っておく。
人数で行った方が、危険少なく確実に宝が手に入るぞ、と。

「とりあえずはこんなとこで。まぁ行くなら行くで今日は十分力を蓄えててよ。
 そんでもって今日はおやすみなさい。……にはちょっと早いか」
リミズはそう告げてから、やがて運ばれてきた食事に箸を付け始めた。
(……食事って、何日振りだろう)
消化のよい、質素で簡易なものではあったが。
無性に感極まって。涙さえ出てきた。

74 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/20(木) 20:20:25 0
清水がバッターボクスに入った

75 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/20(木) 20:28:27 O
「君の愛が欲しいんだ。」
って言えばラブストーリーが始まるよ





当然リミズとヤラニオで

76 名前:ヤラニオ ◆dHgBvcqH3c [sage] 投稿日:2009/08/21(金) 02:52:23 0
ヤラニオも男である以上、心躍る冒険に憧れた時期はある。
目の前の少年はそのためのツールを手にしているのだ。ここで燃えなきゃ男じゃない!
夢だロマンだファンタジーだ!
とはいえ。

>「大丈夫だいじょぶ、何とかなるって。俺はこれまでも何とかなって来たんだし。
> もしこれで死んじゃうようなら、それは俺がそこまでだったってことさ」

しまった、本気にするなんて。
ヤラニオは思った。
夢は現実の否定形。ロマンは叶えるものでなく焦がれるもの。ファンタジーは和訳すると空想。
しかし、まさか本当に宝探しの夢物語に命を掛ける男がいようとは。
とんだバカヤロウだ。気に入ったぜ兄ちゃん。

リミズは地下墓地に訪れた事があるらしいシスター達に助力を求めていた。
ヤラニオもついて行こうか…と一瞬だけ考えたが、生憎あらゆる意味で役に立たない。
ただの民間人にとって、胸の躍るような冒険などやはり手の届く世界の話ではないのだ。
まあ仕方がない。人には分相応というものがある。

たとえば「君の愛が欲しいんだ。」と言ったところで、ラブストーリーは始まらない。
清水のようにバッターボクスに入っても、バットを振るう場面すら描かれないだろう。
それがヤラニオという存在の世界に対する立ち位置である。
しかし。それでも今回は、まだ一つだけ分相応な出番があった。
世界の物語における脇役として、薬屋として。

「よし、まあ今日はいっぱい食べてゆっくり休んでおけよ。明日は体力勝負だろ常識的に考えて。
 付いて行ってはやれんが見送りくらいは来るよ」

ヤラニオは気障っぽくそう言って、ひとり病室を後にしたのだった。
ちなみに飯を奢る約束はすっかり忘れていた。


・・・


帰宅したヤラニオは、皮袋を持って自分の店の商品を漁り始めた。
「どうしたんだい?帰って来るなりバタバタと」
カーチャンが不思議そうにその様子を見ている。
「カーチャン、気にしないでくれ。俺はついに自分のロマンを託せる男を見つけたんだ」
会話が噛み合わない。
カーチャンはふぅん?と首を傾げたが、それ以上は何も言わなかった。
「あれは必須だな、これも便利だし…お、こんなのもあったなぁ」
目をキラキラさせて、商品を袋に詰めていくヤラニオ。

こうしてヤラニオの夜が更けていく…

77 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/21(金) 09:27:52 O
看板「さあ!君も一歩前へ出てみよう!!」






















人生と言う名の落とし穴

78 名前:マリー ◆HfZPTbLTxU [sage] 投稿日:2009/08/21(金) 10:47:41 O
>「……あんた、昔忍び込んだことあるってさっき言ってたよね?
>なら、やっぱり道案内とかやってもらえると、そりゃ助かる」
>「庇ってあげたりとかそういう余裕はないから、自分の身は自分で守ってもらうことになるけどさ。
> うん、もしお宝見つかったら頭割りでいいよ。なかったらタダ働きになるけど」

「アンタじゃない、マリーだ。そう呼んでくれ。
道案内といっても入った場所は微妙に違うし五年以上も前の事だしなぁ・・・
 手助けになるかどうか分からんぞ?」
「でもあんたは盾としては役に立つじゃないの?獣人ってほとんど物理攻撃受けないし」

おいレミー、なんて言葉を口にするんだお前は。そういう事は思ってても口に出すんじゃねー。
確かに獣人は銀をはじめとする一部の金属性の武器、魔法や気功の類でしかダメージを負わないものだが、
一時的に傷つき即座に再生してダメージを無効にするとういう特性である以上、当然痛みや出血も伴うし傷跡も残る。
戦闘訓練をしてない俺が盾役なんてしたら痛みで気が触れてしまうかも知れない。
そんなタンスの角に小指をぶつけ続けるような作業なんて、とっくに壊れてるマゾ野郎にでもやらせておけばいいんだ!

・・・・・・あれ?さっきリミズが倒れる前に町の有名なマゾ野郎の名前を言ってなかったっけ?

「なあ二人とも、リミズが倒れる前にモブとか言ってなかったか?何かこの地図とかに関係あるのかよ。
 それともリミズが最初に背負ってた人がモブなのか?」

リミズによると最初に背負ってた人がモブらしい。
そして気を失っている間に見た夢の中にモブが出てきて、助けようとしてくれたお礼として地図や槍を貰ったようだった。
信じがたい話だが実際に地図や槍がいきなり出現したのは俺も見ている。
それにしても宝の地図を持つ人を刺すなんて、どう考えても追い剥ぎだよなあ・・・。

「ふむ。あくまで私見だが、モブさんは地図目的で刺されたんだと思うぜ。地図に信憑性が出たわけだ。
 リミズも狙われるかもな。戸締りだけはしっかりしとけよ?」

一通り話し終わったらリミズ病院食が運ばれてきた。
そうだ。俺達も食事をおごってもらいに行かなければ!


・・・・・・


辺りを見回してもヤラニオが居ない。

「たしかまだ家の場所を聞いてなかったよな・・・」

俺はヤラニオの家を探すのを探す前から諦め、
耳の穴からへそくりの宝石を取り出しすことにした。

79 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/08/21(金) 22:38:34 0
耳の穴より尻の穴・・・

80 名前:リミズ ◆v7BSBgiM3Q [sage] 投稿日:2009/08/22(土) 12:40:23 O
夜の中。消灯時間もとうに過ぎ、そこは暗闇。
病室の中でリミズは1人、月明かりを頼りに槍を眺めている。暗いからよく見えないが。
(槍……うーん)
リミズは槍が使えない……とは言わないが、それほど扱いが巧いとも言えない。
とはいえやはりせっかく地図と共にこの槍を託されたのだし、探索するにあたって使わないことは失礼に当たるだろう。

(そういえば……)
ヤラニオもマリーもモブリビオンのことは知っているようだった。そりゃまぁそうだろうな、あそこまでドMなら。
なら明日はモブリビオンの家の場所もそれとなく聞いてみるとしよう。知っていれば、だが。
(見つかったら……そりゃやっぱり報告ぐらいは、しておきたいしな)
家内の人にでもいい、遺体に向かってでもいい。託されたものの完遂は、報告をもって終焉となる。
それと――感謝と、謝罪も、伝えなくてはならないしな。

瞼が重くなってきた。リミズは槍を置き、横になる。頭に浮かぶのは明日のことだ。
今までリミズは墓荒らしまがいのことばかりやってきたが、結局何も実入りはなかった。
今回は地図という、宝が手に入るにはうってつけの資材がある。マリーも言っていたが、信憑性はかなり高い。
やっと。やっとのことでリミズはトレジャーハンターとしての人生を一歩踏み出せるのかもしれない。
心臓が高鳴る。鼓動が脈打つ。体中から勢いよく溢れ出す、この高揚感。
あぁ、早く、明日にならないものか――。

半分まどろみの中でリミズは思う。
マリーはどうやら付いてきてくれるようだがヤラニオは見送りで終わるらしい。
変態――未だにリミズは思っている――がいないという安心はあるが、少し不安もある。
はっきり言うとマリーは性格がキツそうなのでヤラニオのような大人の男性がいると楽なんだけどなー……
とかそんな取り留めもないことを考えながらやがてリミズの思考も闇へと落ちていった。

81 名前:リミズ ◆v7BSBgiM3Q [sage] 投稿日:2009/08/22(土) 12:41:09 O
やがて朝は来る。
出立の砌は訪れる。
まるで一日入院していたのが嘘のように、あんなに衰弱していたのが夢のように、リミズは快調な気分で目覚めた。

「お世話になりましたー。んでもって左胸に見覚えのない紋章があるんだけどこれ何?」
「ちょっと知り合いの呪術士に頼んで呪いかけて貰ったから、
 払わずに逃げようとかするととんでもないことになるからね。
 期限は今月末、800Gしっかり耳揃えて払いに来るようにね?じゃ、お大事にー」
そんなやりとりの後、かなりとぼとぼとした足取りで病院を出て行くリミズ。朝焼けが目に眩しい。
これは必ずお宝を見つけて払わなければ命が危なくなった。というか「とんでもないこと」って何だ。
もう一度左胸に刻まれた禍々しい印を確認する。とてもじゃないが堅気のものではないだろう。一体いつの間に。
そりゃ旅人に対して名前だけの念書じゃ街の外に逃げられたりしたら元も子もないだろうが……ここまでするか。
(払わないつもりなんかこれっぽっちもないってのに)
一つ溜め息をつくと、傍目からは見えないように刻印を隠し、病院の前で大きく伸びをする。槍は背中。

朝、と伝えたが細かい時間は言っていなかった。それほど急いでいるわけでもないので、昼頃までは待つことにしようか。
すぐ前にあった看板に目をやったりしながら、リミズはじっくりと待つことにした。

「何だよこの看板……」
人生と言う名の落とし穴には、ある意味自分から落ちたようなものだ。
落ちていなければ、誰もが指をくわえて望む暮らしを今でも続けていたのかもしれないが。
後悔はしていない。何も自分一人で満足に果たせず、親の庇護に甘える生活はもううんざりだったから。
姓を捨て、故郷を捨て、旅に出てからの数年は――なんと輝いていることか!

82 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/08/24(月) 01:39:58 0
>>81
は?氏ねよ

83 名前:ヤラニオ ◆dHgBvcqH3c [sage] 投稿日:2009/08/24(月) 03:06:33 0
朝。
「かーちゃん、今日も店番頼む!いってきます!」
何かを詰め込んだ袋を背負い、ヤラニオは病院に向かって駆け出した。

病院の前では既にリミズが待っていた。
「よう!体の方は大丈夫か?」
呼吸を整えつつ、リミズに歩み寄るヤラニオ。
背負っていた袋をぼすっと降ろし、その口紐を解いた。

「選別だ、持ってきな少年」
中から出てきたのは、二人分の道具袋だった。
どちらも動きを阻害しない程度に中身が詰まっており、肩掛け用の紐が付いている。
「ヤラニオ印の薬袋、と名付けようか。
 薬剤師のこの俺が、包帯から消毒液、各種医薬品に携帯食料まで厳選してチョイスした。
 これでも邪魔になるようなら減らしても構わないが、俺から見てこの量がミニマムだ。
 ここから減らすと薬袋としての機能が下がる。ま、あとは中を見て自分で判断してくれ。
 なに、代金は宝が見付かったら払ってくれりゃあいい」

そして一枚の地図を取り出し、リミズに開いて見せる。
「ノースフィリアの地図だ。これもやるよ。
 うちの薬屋に印を付けておいたから、薬が足りなくなったら買いに来るといい。
 セーブポイントもあるから活用してくれ。ついでにプレイヤーの名前もここで変えられるぜ」

地図を丸めてリミズに手渡し、その肩に手を置く。
「いいか。お前みたいな若い冒険家はな、俺みたいな普通の大人にしかなれなかった奴らの光だ。
 俺たちの分もしっかりロマンを追っかけてくれよ?朗報を期待してるぜ」
ヤラニオはそう言い、ウインクした。
いい事を言っているがその仕草は若干キモかった。

84 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/24(月) 03:20:00 O
キモニオ

85 名前:黒焔[] 投稿日:2009/08/24(月) 08:34:19 O
「しかし以外と広いなここは。」
ここでは余り見られない刀を腰にささげていた黒焔は町から町へと旅するいわゆる旅人であった。
「…さてまずは小金を稼がないとな。」
取りあえず彼は目の前にいた人に話しかけた。


86 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/24(月) 08:41:21 0

ageんな糞禿

87 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/24(月) 08:47:36 O
こうして黒焔(笑)の旅は終わった

88 名前:リミズ ◆v7BSBgiM3Q [sage] 投稿日:2009/08/24(月) 14:32:40 O
>「よう!体の方は大丈夫か?」
やや暫しの待ちぼうけ、そこに声をかけられたのだから少しだけビクリとする小心者のリミズ。
振り返るとそこには……走ってきたのだろうか?息を切らしている男が立っていた。他でもない、ヤラニオだ。
「あ、おはよう。んー、体はすこぶる快調だよ」

ふと見るとその背には割と大きな荷物。何を持ってきたのだろうか?やはりついてきてくれるのか?
訝しむリミズの前でヤラニオはおもむろにその袋を開け、中身をこちらに渡してきた。

>「選別だ、持ってきな少年」
>「ヤラニオ印の薬袋、と名付けようか。
> 薬剤師のこの俺が、包帯から消毒液、各種医薬品に携帯食料まで厳選してチョイスした。
> これでも邪魔になるようなら減らしても構わないが、俺から見てこの量がミニマムだ。
> ここから減らすと薬袋としての機能が下がる。ま、あとは中を見て自分で判断してくれ。
> なに、代金は宝が見付かったら払ってくれりゃあいい」
まずヤラニオが薬剤師だったことに驚きを覚えたが、それはこの際置いておくとして。
軽く中身を見て、思わずリミズは息を飲む。見た目以上にギッシリ詰まった袋の中には、
それこそ冒険には必須と言える各種医薬品が必要な分だけ、入っていたのだから。

「え……ちょ、えっ、こんな」
こんないいものを。薬剤師と名乗るだけあって、さすが中身にはケチの付けようがない。
代金は宝が見つかったら――などと言うが、見つからない可能性もあるし、逃げてしまうことだってあるだろう。
確かに、とてもありがたい。ありがたいが……本当にいいのか?まだ出逢って2日目でしかないのにか?
あまりにも大きすぎる貸しには尻込みもする。しかし躊躇うリミズを横目に、ヤラニオはまくし立てる。

>「ノースフィリアの地図だ。これもやるよ。
> うちの薬屋に印を付けておいたから、薬が足りなくなったら買いに来るといい。
> セーブポイントもあるから活用してくれ。ついでにプレイヤーの名前もここで変えられるぜ」
地図まで貰ってしまった。確かに地図の一ヶ所に印が付いている。ここがヤラニオの薬屋ということだろう。
ノースフィリアに着いたばかりのリミズにとって地図というのは欲してやまなかったものだ。
知り合いの家も知ることが出来たし、何かこの町で分からないことがあった場合も聞きにいくことも出来るだろう。
何から何まで世話になってしまっている。さすがのリミズも少し引くほどに。
――なぜこの男は、ここまで良くしてくれるのか?

>「いいか。お前みたいな若い冒険家はな、俺みたいな普通の大人にしかなれなかった奴らの光だ。
> 俺たちの分もしっかりロマンを追っかけてくれよ?朗報を期待してるぜ」
その目を見て。そのヤラニオの心には、自分への期待しかないことを知る。
追いかけられなかったヤラニオの分まで、俺は夢を追いかけ続けるとしよう。其れで以て、借りを返す。
ウインクした姿には(キモニオ)と思ってしまったが、それは心に留め置いて。
リミズは精一杯の笑顔で、精一杯の謝辞を述べる。
「ありがとう!大事に使わせてもらう!絶対に宝を見つけ、代金を支払いに来るから!」
――期待して待っててくれ。

1人の男の夢を託された少年は、またその意思を新たにする。
肩に置かれた手は、そっと払いのけつつ。

89 名前:リミズ ◆v7BSBgiM3Q [sage] 投稿日:2009/08/24(月) 14:34:19 O
マリーを待ちつつ――手持ち無沙汰のリミズは閃く。
「そうだ」

数分後。
リミズは立て札を持っていた。

==============================

※※※※※※急 募※※※※※※

『モブリビオンの宝』捜索隊 参加者募集中!

あの故モブリビオン氏の宝の地図を独自ルートで手に入れました!
モブリビオン氏の遺志を継ぐため、宝の捜索を行うことになりました!
年齢性別経験不問!その心に、ロマンがあれば!

募集人数 若干名
宝発見の際には、その1割を謝礼として差し上げます。
しかし何らかの事件・事故、トラブルがあった際の責任は負いかねます。

代表者 リミズ
スポンサー 薬屋ヤラニオ

==============================

マリーはあまり乗り気ではなかったようだし、来ない可能性も考え、募集を出してみることにした。
そうでなくとも2人より3人、3人より4人の方が、安全であることに間違いはないのだから。

とはいえ宝を「頭割り」と書かない当たりにリミズのみみっちさが窺える。
マリーとはもう頭割りという約束をしてしまったので仕方がないが……
増えすぎた場合は頭割りでは割に合わなさすぎる。

「まぁ集まらないなら集まらないで別にいいんだけどさ」
立て札を掲げながらリミズはその場に座り込むのだった。

90 名前:通りすがりのおじいさん[sage] 投稿日:2009/08/24(月) 18:09:20 O
一人の老人がリミズの立てた札を熱心に読んでいる。
一通り読んだのか、老人はうんうん頷いてリミズに尋ねた。

おじいさん「ワシの若い頃はロマンっちゅう物は若い女衆のスカートの中にあたもんじゃわい。そうじゃないかお若いの?
そう言えばワシだれじゃ?ワシはリミズじゃったか?モビモビオン?
そこのお若いの、ワシはモビモビオン?
そうじゃ、帰って婆さんに聞こう。」


そう言って老人は立ち去る。

路地の向こうから、「家はどこじゃー!?」という叫びにも似た問いかけを残して。

91 名前:マリー ◆HfZPTbLTxU [sage] 投稿日:2009/08/24(月) 20:21:21 O
マリーは雑貨屋に来ていた。
昨日売った宝石をあるアイテムに変えるためである。
ウェアキャットのメイジであるマリーは武器や防具の依存度が低く、
道具に金をかけたほうが良いだろうと考慮した上での選択であった。

「おっ!あったあった!いろいろあるけどやっぱ丈夫なごつい奴がいいよな〜」

小さな手に握られたのは鋼製のスコップである。
背の低いマリーの2/3ほどの長さを持つそれは、
洗練された軍隊において首の刎ねる事の出来る武器として扱われる事もあるという。
マリーはスコップを背負うように持ち上げて改めて店内を見回した。

「後はランタンと油だな。もしもの時に両手を開けられないと困るしな」

吊り上げ安いようにフックが付いたランタンを見つけると手に取り、
燃料を3時間分も一緒にレジで決済を終える。

「そろそろ時間かな・・・?」

そう漏らすとマリーは病院へ足を向けるのであった。

病院の前に着くと見知った顔の男が二人でニヤニヤとキモい笑いを浮かべている。

(・・・・・・キメエ。帰ろうかなぁ)

そう思った時にちょうどヤラニオがこちらに顔を向けた。
しかたねえ。そうと呟くとマリーは意を決して二人の下へ歩み出たのである。


92 名前:マントの人物 ◆4F3mf//3G. [sage] 投稿日:2009/08/24(月) 22:17:51 O
男が街に来てから何日だろうか。
見捨てられた狭い路地に、ずっと座り込んで今まで過ごしてきた。

訪問者と言えば、薄汚い犬や猫、ネズミくらいである。
男は傭兵だった。傭兵と言えども、戦が無いときは野盗とさして変わらぬ。
貧しい村を襲ったり、旅人から金品を巻き上げたり。
戦争が仕事の傭兵が、戦場にいない時どう生きるのか?
暴力を生業とする輩はいつの世も何も産み出さない。


男は通りに目を向けていた。
人の流れをぼうっと見つめる。

ふと、ある立て札が目に入る。いつからそこにあったのか。
脇に槍を抱えた少年たちがいる。
どうやら彼らが立てたのだろう。
どこか興味を引かれ、立ち上がる

いい加減ネズミは食い飽きたところだ。

そう思って男は路地から飛び出した。

93 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/08/24(月) 23:25:42 O
キモオナ文章吐き出すだけなら
参加すんな

94 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/25(火) 17:10:34 0
ここは名無しの進行を禁止にしないと
これからどんどん大変な事態になるよ

95 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/25(火) 17:30:20 O
避難所に書けば

96 名前:マリー ◆HfZPTbLTxU [sage] 投稿日:2009/08/27(木) 00:44:51 O
「うー、まだ出発しないのかよ?」

病院の前でイライラを募らせる一行は、既に合流して3時間ばかりになる。
ヤラニオの持ってきた道具を整理し、地図を見て進路を確認し、
魔物などと戦闘になった場合の打ち合わせをして時間をつぶしていたが、もう昼の1時を過ぎている。

もう少し待とうと3人はサンドイッチを頬張りながら人手を募ったのだが、それでも声はかからない。
時たま声を掛けられるとしても好奇心旺盛な子供達だけ。
当然雇うわけにもいかず、ヤラニオがのど飴を握らせて追い帰す。
大人の視線も立て札に刺さってはいるが、殆どの人は立ち止まりもせずそのまま消えて行ってしまう。

「なあ、俺思うんだけどさ。
 モブビリオンさんの名前出してるから引かれてるんじゃないのか?
 赤の他人が遺産の地図っぽい物を持ってたらおかしいだろ。
 それにその地図を持っていたからあのマゾが刺された可能性もあるんだし伏せた方が良いと思うんだぜ」

一行が立て札を書き直すべく引っ込めたその時、30代手前と思われるマントの男に声を掛けられた。

97 名前:リミズ ◆v7BSBgiM3Q [sage] 投稿日:2009/08/27(木) 15:28:10 O
変なボケ老人が話しかけてきたりはしたが、だいたいどうも立て札への食いつきはイマイチだ。
とはいえいつもは短気なくせにおかしなところで気が長いリミズは、
(もう少し待てば来るのかも)
などという楽観的なのかよくわからない理屈で未だにゆったりと待ち続けている。
サンドイッチおいしいです。
だんだんマリーがしびれを切らしてきているのはわかるが、まるでそれを無視するかのように。
もっしゃもっしゃもっしゃもっしゃ。

>「なあ、俺思うんだけどさ。
> モブビリオンさんの名前出してるから引かれてるんじゃないのか?
> 赤の他人が遺産の地図っぽい物を持ってたらおかしいだろ。
> それにその地図を持っていたからあのマゾが刺された可能性もあるんだし伏せた方が良いと思うんだぜ」
「んーひぇほひょへはへ」
口の中に物を入れっぱなしなので何を言っているのかわからない。
ちょっと待ってて、のジェスチャーを送り、口の中の内容物をよく咀嚼して胃へと送り込むと。
「んと、でもそれはね、ほら言うとおりモブさんって宝の地図狙われて刺された可能性もあるわけじゃん?
 だからつまりモブさんが宝の地図持ってるってことはわりと周知の事実だったんじゃないかって思うわけ。
 だったら何も修飾なく『宝の地図』って言うよりは『モブさんの宝の地図』ってした方が食いつきいいかなと」
最後の1つのサンドイッチを口に含み、勢いよく上顎と下顎で噛み砕いていく。
「ひょんなふうに思っひゃんひゃへど」
ゴクリと飲み込んで、立て札を崩す。まぁマリーの発言も確かに一理あるし、書き換えようかと思ったのだ。

「……んー、ていうかもう出発しようか?これ以上待ってて日が暮れちゃうのもバカらしいしね」
書き換えるのがめんどくさくなったわけではないのだろうか、どうもこのリミズの態度では判断がつきかねる。
とはいえ日は既に高々と昇っている。出発には丁度よい時間と言えそうだが――

そこにマント姿の人物が飛び出してきた。チキンのリミズは少しビビるが、何事もなかったかのごとく。
「んと、この立て札見てきてくれた人?よかったよかった、誰も集まらないかなとか思ってたんだ。
 ちょうど出発しようとしていたところなんだけど……どうする?宝探し。参加、する?」
なんだ男か、と思ってしまったリミズがいる。
しょうがないじゃん!年頃の少年なんだから!

98 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/08/28(金) 18:06:53 0
>>95
避難所どこよ?

99 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/08/29(土) 22:29:27 0
>>98は?

100 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/29(土) 23:10:58 0
100gt
なんか呉

101 名前:リミズ ◆v7BSBgiM3Q [sage] 投稿日:2009/08/30(日) 08:34:53 O
しかし何も考えずにこの人物は立て札を見てきたのだと早合点してしまったが、
何というか、こう……この人、怖い。見た目とか、ほら。あるじゃん?そういう雰囲気。
さっさかさっさと喋りぬいてしまってからであれだが、違うんじゃないか?なんて気持ちすら沸き上がってしまうのだ。
「えっと……もしかして違った?のかな?」
少しオドオドしてるように見えるが実際オドオドしているのだからしょうがない。
身長が低いリミズだからなおさらその動作は滑稽にも矮小にも見える。軽く背を丸めたその姿は、実寸よりもいくらか縮めさせて。

「ご、ごめんねー、勝手にこっちで結論出しちゃったりして。えっと、時間とらせて失礼ー」
かなり軽く謝罪の言葉を口にしながらリミズは両手を合わせつつ浅く一礼し、踵を返す。
怪訝な顔をするマリー達に何でもないよ、とライトな口調でリミズは述べた後。
「んと、じゃあそろそろ出発しよっか?結局2人になるのかな、あんまり心配とか不安とかはないけど」
ていうかヤラニオはどこまで付いてきてくれるのだろう。入り口の前までぐらいなら見送りにきてくれるのだろうか。

いざ出発、という直前、ふと思い立ったようにリミズは先程のマントの男の元へ向かう。
「えと、やっぱり立て札見て来たりしてない?そりゃさすがに突然ペラペラ喋られたら面食らうよね、とか思って」
自分の行動を見返し少し考えるところがあったのだろう、男に伝えて。
「あの、もしやっぱり宝探し参加してくれるんならさ、うん、現地集合でいいや。えっと……」
先程ヤラニオに貰った地図の地下墓地の場所に印を付け、男に渡す。
「ここの墓地のとこだから。準備してから来るでもいいしさ。じゃ!」
そのまま駆け足で男から離れる。

「よし、出発ー!」
意気揚々と先頭切って歩きだして。数分。
「んで、その墓地ってどこにあんの?」
ほら、さっき地図渡しちゃったから。

102 名前:ヤラニオ ◆dHgBvcqH3c [sage] 投稿日:2009/08/31(月) 02:45:01 0
「全く、仕方のない奴だなぁ。案内してやるよ」
ヤラニオはリミズの前に立ち、歩き出した。

「中まで付いていってやりたいのが本心だが、入り口までも行きたくないってのが本音だ」
歩きながらヤラニオは言う。
「あそこには昔勇者様ご一行がおばけ退治に入って行った事があるらしいが、
 しばらくして真っ青な顔をして出てきたらしい。
 で、そのまま何も語らず一目散に町から逃げていってしまったって話だ。おお恐ろしや」
ヤラニオは大袈裟に身を震わせるジェスチャーをしてみせた。

そして、一行は町外れの小さなオンボロ小屋まで辿り着いた。
「ここだ」
キィ…とヤラニオが扉を開ける。途端に嫌悪感を顔に露にした。

中は薄汚く、蜘蛛の巣が張り放題になっている。
壁や床は木材が腐ってあちこち穴が開いており、天井の板が一枚剥がれてぶら下がっている。
足の折れた椅子、黒ずんだ絨毯、ガラスのあらかた割れた戸棚。色の落ちきった肖像画。
よく見るとそれらは昔はそれなりに良い調度だったことが窺えるが、
しかしそれを3世紀は野放しにしたような荒れようだった。

「うわ、ひっでえ荒れようだな。管理人室の成れの果てか。あ、そこじゃないか?」
ヤラニオはが指差す先には、地下への階段があった。
「多分、それが地下墓地への入り口だ」

「俺が案内するのはここまでだ、気をつけて行けよ?絶対無理はするんじゃないぞ。
 マリー、危なくなったらすぐに引き返してくれよ常識的に考えて。それとリミズ」
ヤラニオはリミズの肩にしっかりと両手を乗せた。
「いいか、マリーをしっかり守るんだぞ。
 どんなにロマンがあろうと、女を守れない男はそりゃあ駄目だ常考。
 女を助けられなきゃ、たとえお前の命が助かってもお前の中の男は死ぬ。
 自分の女を守れ。自分の男を守れ。その上でロマンを果たせ。だが、絶対に死ぬんじゃないぞ。
 お前ならできるさ、俺たちの星。朗報を待ってるぜ」

ヤラニオはキラッと歯を光らせて笑んだ。
若干キモかった。

103 名前:マリー ◆HfZPTbLTxU [sage] 投稿日:2009/08/31(月) 17:27:56 O
3人は散々待ったが募集に応じる者はいなかった。
最後の男もたまたまこちらに歩いてきただけのようで、リミズの問いかけへの反応は芳しくない。

>「よし、出発ー!」

「たしかにこれ以上待っても日が暮れて油が余計に必要になるだけだ。さっさと行こうぜ。」

途中にヤラニオが有ること無いことベラベラ喋ったせいかリミズの表情は硬いものになったが、
野良犬の尻尾を踏んで追い掛け回されたせいか洞窟の入り口が見える辺りまでには元に戻っていた。

そして一行は町外れの小さなオンボロ小屋に辿りつき、朽ちかけた扉を開けた。
ヤラニオとリミズが顔を見あわせながら、中の様子を伺っている。
どうやら部屋の中は扉の物語っていた物に違わぬらしい。
マリーはランタンに火を入れると部屋にいる二人に続いた。
二人は地下に続く階段を発見したらしくヤラニオはここで引き返すことを告げ、
男の約束(笑)をすると歯茎を光らせた。

(マジキメェ・・・)

「ヤラニオ。
 日が暮れる前には帰れると思うが、万一夜までに戻れなかったら兵舎なり教会なり駆け込んでくれ。
 無理するつもりはねえが何が起きるか分からねーし。
 魔物がいなくても足元暗きゃ転んで骨くらい折ってもおかしくないしな。」

ヤラニオは三度歯茎を光らすと身を翻し部屋を後にした。

(むやみに光るな!!!)

リミズと先ほどの打ち合わせどおりに隊列を組む。
シーフとメイジは共に前衛職としては二流以下で、ナイトやファイターが欲しいところだが居ない者は仕方がない。
広い場所では二人は横に並んで攻撃を半分ずつ貰う覚悟で魔物とはやり合うことに予め決めてあり、
狭い場所ではリミズを前にマリーを後ろに配して戦えるように、ポーションをマリーに集めておいた。

二人は長い階段をリミズを戦闘にして降りる。
マリーが後方からランタンで照らし、リミズが槍を突き出し魔物がいたら突き倒せる体勢で一段、また一段と。

「・・・鉄製の扉だな。早速、トレジャーハンター様のお手並み拝見と行くか。」

二人の前を幾つもの錠前がぶら下がった、鉄製の扉が立ちふさがった。
マリーはリミズに錠前を任せるとランタンを置いて階段に腰を掛けた。

104 名前:リミズ ◆v7BSBgiM3Q [sage] 投稿日:2009/09/01(火) 16:34:56 O
ヤラニオにああは言われたが、おそらく俺はヤバくなったらマリーを見捨てて逃げるだろうな、とリミズは思う。
ヤラニオが自分に何を投影しているのかはわからないが、考えの押し付けもたいがいにしてほしい。
――リミズが場に流されていたならヤラニオの言葉が胸に響き、マリーを守る、なんて思っていたかもしれないが、
ヤラニオのキモい笑みがリミズの心を氷点下まで落とし込み、急激に素に戻っていた。
ともかくヤラニオに礼を言い、リミズはマリーと共に朽ち果てた管理人小屋から地下へ続く階段へと歩を進めた。
とことん無知なリミズがほぼマリーに決めてもらった隊列で階段を降りてゆくと、扉が目に入る。

>「・・・鉄製の扉だな。早速、トレジャーハンター様のお手並み拝見と行くか。」
「ん、まぁこれぐらいなら」

こう見えてもリミズはいくつもの文化的価値の高い遺跡や古墳、果ては王墓までも忍び込んでは漁ってきた。
当然ながら鍵がかかっている場所だってあった。見つけた宝箱に鍵がかかっていることだってあった。
すでに先達者が中身を手に入れていたり、もしくはただの装飾のためだけの宝箱であることばかりであったが。
ともかくリミズは解錠についてはわりと実力を持っていると言えるだろう。どこで技術を身につけたかはさておいて。

腰に下げた袋には、ある程度の数の解錠ピックも用意してある。フックピックなり、ダイヤピックなり。
「じゃ、いっちょやるかな」
はっきり言ってこんな前時代の鍵など朝飯前以下だ。フックピックを突き刺し、中のシリンダーを回すだけだ。
何個もついていようと、所詮は過去の遺物。魔法による封印でもかかっていない限り、ただの南京錠だ。
見た目だけは厳ついが……コツさえ掴んでいれば、こんな鍵20秒で終わる。
(……でも、管理人小屋があんなんってことは、この墓地が使われなくなってから結構立つんだろ?
 んで昔勇者一行がここに入ったってさっき聞いたし、
 それにマリーさんも昔忍び込んだことがあるって言ってたけど……)

――何故、『鍵』が『掛かって』いるのだ?

リミズに鍵開けを任せるということは、マリーは解錠の術は持っていないと思われる。
つまり過去にマリーが忍び込んだ時には鍵は掛かっていなかったということだ。勇者一行が開けたのだろうか?
こんな永年放置されたような地下墓地に、最近になって再び鍵をかける理由が全く思いつかない。
強いて言うなら、近年ここで何か危ないものが見つかり、秘密裏に封印された、とか――

そんなこと考えているうちに、数個の錠前はその機能を全く発揮しない形で目の前にぶら下がっていた。
思考は当たり前の如く中断し、やがて何を今考えていたのか思い出せないほどに脳の奥底へ沈む。
「終わったよー。休憩しようとしてたなら悪いけどさ」
振り向けばマリーは階段に腰を下ろしていた。見た目だけはゴツい錠前だ、時間掛かると思ったのかなとリミズは苦笑する。

やや錆び付いていた扉を開くが、やはり先は暗闇だった。
「墓地だし……流石に罠とかは仕掛けられてないとは思うけど」
言いながらリミズは、モブリビオンから譲り受けた宝の地図を取り出す。
「さぁ、これからが宝探しのスタートだ。地図の頼りにするなら……ここが入り口で……こっちか」
灯り役はマリーに任せ、リミズは槍を右手に構えつつ、周りを警戒しながら進む。

それにしても、やっぱり槍はやめておけばよかったかもと思い始めてきた。
狭い場所では槍は有利とはお世辞にも言いがたいし、何より使い慣れた短剣の方が安心出来る。
とはいえ、本当にピンチになるまでは槍で何とかするつもりではあるが。

105 名前:マリー ◆HfZPTbLTxU [sage] 投稿日:2009/09/01(火) 21:16:50 O
カタンッ。
最後の南京錠が地面に落ちる。
どうやらリミズは全ての南京錠の解除に成功したらしい。
だがリミズは大事な手順を省いていた。

(コイツ、鍵穴にピックを突っ込む前に一度も毒針とか確認しなかったぜ・・・!
いきなり突っ込んだら針とか刺さるだろっ!)

解錠を終え得意気な表情のリミズに対し、マリーの不安は募るばかりであった。
精神力を消耗を抑えるため、光源や解錠の魔法を使うのは極力避けたいところであるが、罠でリミズが無力化される方が痛手である。

「次から俺がアンロックで開ける。理由は聞くな。」

リミズが頭に?を浮かべているが、無視して先に墓場に入った。
後方から墓場だから罠はないと短絡的な意見を口にしながら地図を広げてリミズが続く。

「お前、良く今日まで生きてこれたな。
 荒れ放題で出入りが自由だった場所に、
 ご丁寧に鍵まで掛けて宝を隠すんだから罠ぐらいあるだろ。」

そう溜め息を吐きながらランタンを掲げると、入り口周辺の様子が浮かび上がった。
灯りが届く範囲の天井や岩肌には蝙蝠が縮こまる姿が窺える。
地表には数の土饅頭。無縁仏らしい質素な墓には、墓石代わりに木の板やら杭やらが挿されていた。
頼りない灯りに照らされて炎に揺らめく墓の影は暗がりに潜む魔物の姿に見えなくもない。

「レミーの話によると死体は全て火葬済みだ。
変なガスや小動物が溜まってたり湧いてたりはしないはずだぜ・・・」

二人は顔を見合わせて息を飲むと意を決し、いくつもある通路の中から宝が隠されている場所へと続くものを選んで歩き始めた。
リミズは槍を、マリーはスコップを使って足元を払いながら注意して進む。
時折、槍とスコップがぶつかり合う音が暗闇に吸い込まれていった。

106 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/09/05(土) 17:52:05 0
わくてか

107 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/09/05(土) 20:54:44 0
スターダストとの合併案が出ているが
どうだろうか?

108 名前: ◆HfZPTbLTxU [sage] 本日のレス 投稿日:2009/09/06(日) 00:13:22 0
それはスレ主が却下したからこのスレ立てたんだろう・・・
取りあえずこの話題するなら避難所で

109 名前:マリー ◆HfZPTbLTxU [sage] 本日のレス 投稿日:2009/09/06(日) 01:19:11 0
いくらも進まぬうちにリミズの槍に何か乾いた物が当たったような音がした。
すかさず、足元に転がっているであろうそれをランタンで照らすとそこにあったのは―――

――それは白骨化した人の頭部、髑髏だった。

「墓が荒らされてるってのはマジだったみたいだな・・・・・・」

真っ青になって顔を背けるリミズを尻目に、マリーは恐る恐るスコップの先で髑髏を転がして調べてみた。
歯の状態が悪くこの者が生前虫歯を患っていた以外に変わった様子は無い。

(まあ本当に変わった様子があったらたまらんぜ・・・)

危険は無いと判断し緊張を緩めて深く息をつくとマリーはリミズに肩を叩かれた。
振り向いた先でリミズが何かを指差しているようである。
リミズの手前にランタンをやると暗闇から先ほどの髑髏の持ち主と思われる亡骸が現れた。

血で赤黒く変色して錆びた鎧は右肩から左脇にかけて背中を大きく切り裂かれており、
それが致命傷であった事を示している。

「ゆがんで形が変わってはいるがこの町の衛兵に支給される鎧だな・・・。
 背中の傷を見る限り、人の手で背後から長物で切り殺されたのは間違いないぜ」

過ぎ去った事とはいえ、この場で衛兵が切り殺されたという出来事が二人に重くのしかかった。
事件から数ヶ月は経っているだろうが、それで犯人による危険が払拭された訳ではない。
犯人は何のために衛兵を殺したのか?または衛兵は何をしていて殺されたのか?
判断材料が少なすぎる。衛兵に聞いておきたいところだが答えてはくれない。

「――先を急ごうぜ。暗くなる前に出ないと会いたくないものに会わなくちゃいけなくなるかも知れないぜ」

そう促すと二人はまた目的の場所へと歩み始めるのであった。



【TRPG】ノースフィリアの風に

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