1 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/12/26(土) 01:23:37 0
世界観:変身ヒーロー、異能者が街で悪を裁いたり
逆に悪となったり…そんな話。

舞台:架空の大都市

2 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/12/26(土) 01:26:48 0
名前:
職業:
勢力:正義(ヒーロー)、悪(ヴィラン)、中立など
性別:
年齢:
身長:
体重:
性格:
外見:(変身前)
外見2:(変身後の姿)
特殊能力:
備考:

3 名前:ジェームス・フロイド ◆rA.taCR/oc [sage] 投稿日:2009/12/26(土) 02:00:26 0
名前:ジェームス・フロイド
職業:大企業CEO
勢力:ヒーロー
性別:男
年齢:35歳
身長:190cm
体重:80kg
性格:飄々としている
外見:高級スーツ
外見2:強化スーツを身に纏う。漆黒の翼と各種武器を持つ。
特殊能力:戦闘技術を高めた人間(超人ではない)
備考:大企業のCEO

4 名前:花ヶ崎愛華 ◆MEQXZHNW2k [] 投稿日:2009/12/27(日) 17:54:29 0
へぇ、こんなところがあったなんて。
参加させてもらいます。

名前:花ヶ崎愛華(はながさきまなか)
職業:高校生
勢力:ヒーロー
性別:女
年齢:18歳
身長:160cm
体重:47kg
性格:呑気なほどおっとりとしている。
外見:黒のロングに眼鏡、ひざ下丈のセーラー服姿。
外見2:ポニーテールとなり眼鏡がなくなる。赤の着物と袴姿になる。
特殊能力:薔薇を武器化する
備考:運動が苦手で休み時間も席で読書をしているようなクラスでは目立たない存在だが、
    変身すると性格が大胆になり抜群の身体能力を発揮するようになる。

5 名前:花ヶ崎愛華 ◆peF6F8Lm5c [sage] 投稿日:2009/12/27(日) 17:59:25 0
トリップが違ってました。こちらに変えます。

6 名前:旋風院 雷羽 ◆zYCuy2/gkI [] 投稿日:2009/12/27(日) 20:10:54 0
テンプレ投下

名前:旋風院 雷羽(せんぷういん らいは) 
職業:戦闘員
勢力:悪
性別:男
年齢:23歳
身長:177cm
体重:64kg
性格:自信家、やや馬鹿
外見:黒い服に黒いズボン、黒い服、黒いコートと、全身黒づくめ。
   髪型はやや長めの黒いつんつん頭で、八重歯がある。
外見2:黒い金属で出来た刺々しいアーマーを纏った姿に変身する。
    そのボディには様々な機能が付いている。
特殊能力:改造人間。身体能力と回復能力が高い。
備考:悪の組織の幹部の一人である。立ち位置的には中間管理職に当たる

7 名前:ジェームス・フロイド ◆rA.taCR/oc [sage] 投稿日:2009/12/27(日) 20:15:01 0
皆さんよろしく。
参加者の方絶賛募集中です。
市内を色々と歩き回るもよし、悪事を働くもよしです。
架空の大都市ですが、東京(繁華街は新宿歌舞伎町など)などを思い浮かべてもらえればOKです。

8 名前:本舘 ◆SGue2uUfkw [sage] 投稿日:2009/12/28(月) 09:11:14 O
名前:本舘 梁(もとだて りょう)
職業:学生
勢力:ヒーロー
性別:男
年齢:18歳
身長:175cm
体重:63kg
性格:強気
外見:銀髪、目に軽くかかるぐらいの長さ。鋭い目つき。
外見2:黒を基調としたダークな雰囲気の強化スーツ。
特殊能力:特に無し。
備考:愛華とクラスメート。
だが、学校で話す事はほとんど無い。
というより人とあまり関わりを持たない。
変身中は某仮面ライダーのようにベルト部分にカードを差し込む事で様々な能力を使う事が出来る。

9 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/12/28(月) 11:56:05 O
世界観はアメコミ+ライダーみたいな感じ?
参加したいけど単なる勧善懲悪ならちょっと…

10 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/12/28(月) 12:46:39 O
え?アメコミなの?

11 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/12/28(月) 12:59:31 O



12 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/12/28(月) 13:12:31 0
正義=ヒーロー、悪=ヴィランという表現はアメコミが大元だからねぇ

ジェームス氏なんかバットマンやアイアンマンなイメージ匂いがするね

13 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/12/28(月) 13:21:03 O
アメコミは勧善懲悪じゃないよ。
最近の仮面ライダーもだが。


14 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/12/28(月) 13:29:20 0
ダークヒーローやアンチヒーロー系が最近は増えているからねぇ

ウルヴァリンやハルクもヒーローでありながら敵を殺す事に躊躇しなかったり
(他のヒーローは敵でも極力殺さない。フルボッコにはするけど基本的に警察か病院送り)

スポーン、ゴーストライダー、パニッシャーとかは純粋に正義とは言えないだろうしね
結果的に人助けになっていたりするけど、基本動機が復讐とだしね

15 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/12/28(月) 13:42:50 0
ウルヴァリンは悪くないだろ!

16 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/12/28(月) 14:32:25 0
別に俺はウルヴィーを悪とは言っていないが?
ウルヴィーは4軸表記だとChaotic-Neutralなのは誰の目にも明確かと

勧善懲悪だとGood VS Evilの構図だけど
そういう訳じゃないのはアメコミでは割と昔からだわな

ヒーロー=人々を守る、ヴィラン=人々を苦しめる という訳ではない訳だし


17 名前:星 真一 ◆70PGVgAHKQ [sage] 投稿日:2009/12/28(月) 18:27:49 0
名前:星  真一(ほし しんいち)
職業:探偵
勢力:ヒーロー
性別:男
年齢:25歳
身長:179cm
体重:76kg
性格: 怠惰だが根は熱い
外見:帽子によれよれのトレンチコート
外見2:銀髪の長髪に青い外套に包まれている
    手には二挺の銃と背中には剣を装備
    外套には魔術の様々な機能が付いている
特殊能力:魔術師。魔法や魔術など様々な体系が扱える。
備考:旧神に星の戦士として選ばれた魔術師。
探偵としては優秀なのだが、怠惰な面もあり仕事があまり来ない
日頃はとある大学で臨時講師をしながら糊口を凌いでいる。



18 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/12/28(月) 22:37:56 0
自分の欲望のままに生きよ


19 名前:本舘 ◇SGue2uUfkw [sage 代理投稿gt;gt;378] 投稿日:2009/12/29(火) 10:23:15 0
バランスが悪そうなので少しテンプレを変更します。

名前:本舘 梁(もとだて りょう)
職業:学生
勢力:中立
性別:男
年齢:18歳
身長:175cm
体重:63kg
性格:強気
外見:銀髪、目に軽くかかるぐらいの長さ。鋭い目つき。
外見2:黒を基調としたダークな雰囲気の強化スーツ。
特殊能力:特に無し。
備考:愛華とクラスメート。
だが、学校で話す事はほとんど無い。
というより人とあまり関わりを持たない。
変身中は某仮面ライダーのようにベルト部分にカードを差し込む事で様々な能力を使う事が出来る。
ヒーローにもヴィランにも所属せず、自分の気の赴くままに闘っている。


20 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/12/29(火) 22:25:33 0
郊外の町外れの洋館。
灰泥質の敷地は折からの雷雨で人を寄せ付けぬ雰囲気をかもし出す。
その地下室で行われる狂気の実験を邪魔させないかのように!

地下室に並ぶ二つのガラスケース。
それは物質転送機。
これを有効利用すれば世界の流通は一変し、様々な問題を解決できるだろう。
富も名声も思いのまま。
しかしそれは負の一面も持つ。
新たなる技術は過去に築き上げてきたものを全て打ち崩す力を持つ。
運送業界の崩壊による市場経済への打撃。
軍事、テロ利用による被害は計り知れない。

しかし!物質転送機を作った狂気の科学者ドクターナムルにそのような常人的発想はない!ありえない!!
物質転送機を作ったのならばやる事は一つ!
最早口に出すまでもない。
蟻の入った瓶を片手に物質転送機の上に起立するその姿が全てを物語っている!


そしてそれは実行された!!

ドクターナムルの実験は人間と蟻との融合!
自身が蟻の能力を持った超人になることなのだ!

まずは人間大の身体!全てのベースとなるのだ!
そして蟻の外骨格はライフル弾を容易く弾き、爆弾の衝撃にも耐える!
当然のように蟻の筋肉は自重の数百倍の重さを持ち上げ、鉄骨すらも簡単にへし折る。
更には蟻の触角は人では判りえぬ感覚を持って不可視のものを見る!
トドメは蟻酸!隠された奥の手はあらゆるものを溶かす酸を吐き出すのだ!

ここに蟻の能力を持った超人が生まれ、今第一歩を・・・踏み出さなかった・・・
なぜならば、蟻のの腕は複雑な超人の体を動かすにはあまりにも原始的過ぎたのだ。
悲しい事にガラスの心はその事実に耐えることができなかった。

こうして狂気の科学者ドクターナムル(博士号を持っていないのでドクターは詐称)の狂気の実験は誰にも知られることなく終わった・・・
いくら強力なキャラクターが数を揃えても実際に動き出せなくては単なる標本と同じなのだ。
このような悲しい失敗をしないようにと願わずにはいられない。

21 名前:本舘 ◇SGue2uUfkw [sage 代理投稿gt;gt;384] 投稿日:2009/12/29(火) 23:41:14 0
「さて…帰るか。」
僕の名前は本舘梁。
いわゆる普通の高校生…とは少し違う。
いきなりだが僕は…変身する事が出来る。
ふっ…未だに僕だって信じられんさ。
だが、出来るんだから仕方が無い。
どうやら僕以外にも変身できる輩は居るらしく、2つの勢力に別れて対立している状態だ。
しかし僕はそのどちらにも所属していない。
それは何故か?
簡単だ。
どちらにも所属する理由が無いから。
せっかく手に入れた変身能力だ。
僕は僕の為に使わせてもらう。
とはいえ、僕も特に闘う理由は持ち合わせていない。
理由を挙げるとするならば、まあ純粋に闘いが楽しいから、かな。
さて、僕の自己紹介も終えたところでそろそろ帰宅しようか。
終礼を終えた学校に居残る意味は無い。
さっさと帰って…いや、少し街中をぶらついてみるか。
もしかしたらまた奴等がやり合っているかもしれない。
僕はバックを片手に街中へと向かった。

22 名前:花ヶ崎愛華 ◆peF6F8Lm5c [sage] 投稿日:2009/12/30(水) 00:21:32 0
雲が無ければ風もない、良く晴れた穏やかな夜の空を満点の星が席巻している。
だが、数百万ともいわれる人々が住んでいるこの都市の中に、
今この時夜空を眺めている者はどれだけいるのだろうか?
10万だろうか? それとも1万? あるいは1000人?
いずれにしても夜空に関心を持つのは少数派には違いないだろう。

四六時中人の波でごった返している市の中心部から北に外れること数キロ。
町外れのとある住宅街の中の一軒家のベランダに、一人の少女がいた。
少女はいつにもまして星が目立つ空に物珍しさでも感じたのだろうか、
先程から寝支度を整えたパジャマ姿のままじっと夜空を見つめている。
だが、どうしたことかその眼はどこか退屈そうで、
腰の辺りまで垂れ下がった長い髪の毛を摘み、指でくるくると巻きつける仕草も見せている。
どうやら星空に魅了されて観賞している少数派の一人ではないらしい。
実はそれもそのはずで、少女は星座といえばオリオン座くらいしか知らず、
どれが何座かどれが何の大三角形なのかその知識もなければ興味もないのだ。

……この少女の名は花ヶ崎愛華。市内の高校に通う、現役の女子高生である。
運動は「超」がつくほど苦手。かといって学業で力を発揮する才女かといえばそうでもない。
明るい笑顔を振り撒くクラスの人気者でなければ学級委員をこなすような仕切り役でもないし、
悪名高い問題児というわけでもない。つまり良くも悪くも目立たない存在なのだ。
体育の時だけはその壊滅的な運動能力を発揮して別な意味で注目はされるが、
多くの人間が持つ彼女の印象としては精々「大人しい」「運動音痴」というものしかないだろう。
だが……そんな愛華に、他人にはない秘密の力があることを皆は知らない。
そしてそれを人知れず発揮するのが愛華にとって密かな自慢であったし楽しみでもあった。

(お父さんもお母さんも寝静まったようだし……。よし、そろそろ行こうかな)

愛華は首に巻かれた金属糸を手繰り寄せ、
その先端にある薔薇の花を燃した装飾品を胸元から取り出し手に取った。
数ヶ月前、フリーマーケットで手に入れたペンダントだ。
見た感じから相当の年代物であるらしいということは分かるのだが、
いつ創られたものなのか、誰が使っていたものなのかは分からない。
誰も見向きもしていないのに買ってしまったのは、何となく惹かれたからとしか言いようがない。
でも、汚いし、飽きたら直ぐ捨ててもいいかな、などと初めは考えてもいた。
しかし、いつしかそのペンダントは、手放せないものになっていた。
他人にはない特殊能力。ペンダントを持っているだけで、それが使えることが分かったからだ。

「──私に力を与えたまえ──!!」

愛華の掛け声に答えるようにペンダントが輝きを放ち出す。
その光は赤く、一瞬の内に愛華の全身を覆いつくした。
だが驚くべきはここからで、光が止んだ時、愛華は真っ赤な着物と袴という出で立ちとなっていた。
常識では考えられない奇怪な現象だが、愛華はこの姿になった時に発揮できる力を知ると、
いつしかペンダントが持つ不思議な力を受け入れて夜な夜なある遊びに興じるようになった。
それは悪党を倒し正義の使者を気取る゛ヒーローごっこ"とでも言おうか。
パッとしない学校生活送り続け、どこかで自分を卑下する気持ちすらあった愛華には、
自分の人生を劇的に変えてくれるこの遊びは楽しくて仕方が無かったのだ。

「ウフフフ。さってとー、今夜はどんな悪党に遇えるかな〜♪」

今夜も、愛華は街の守護神になりきって、夜の大都会へ向かう。

23 名前:旋風院 雷羽 ◆zYCuy2/gkI [sage] 投稿日:2009/12/30(水) 00:32:36 0
夜。都内の道路を一台の幼稚園バスが走っている。様々な動物を
可愛らしくデフォルメしたキャラクターが側面に描かれたそのバスは、
明るく騒ぐ園児達を家へと送り返し、幼稚園の車庫に向かっている

――――筈だった。

「なーっはっは!このバスは俺様達が乗っ取った!!
 喜べガキ共!これからお前等は、俺様達の組織で洗脳と改造をされ、
 立派な戦闘員となるのだ!!」

夜間の道路を走る幼稚園バスの中は今、異常事態と化していた。
全身に黒いタイツを着た様な奇妙な数人の人間と、馬鹿笑いを
する全身黒のファンションに身を固めた一人のツンツン頭。
彼らにより、園児全てを乗せた幼稚園バスのジャックが行われているからだ。

黒タイツの集団は5人。それぞれが銃を持ち、
先頭にいる一人は、運転手のこみかめに銃を押し付けている。
園児達も、騒いだ園児は暴力で黙らされ、普段賑やかなバスの中は
黒タイツの妙な声と、最後尾の席の中央に偉そうに座るツンツン頭の
馬鹿笑いだけが響く異様な空間となっていた。

この世界にヒーローはいる。しかし悪の組織という物も実在する。
だからこそヒーローが、悪の手から全ての人間を守れるという事は有り得ない。

バスはもう暫く走り指定のポイントに到達すると、狂気の科学者ドクターナムルの
遺産である物質転送機の改造品によって、その本部へと転送されるだろう。
その時が、悪の勝利である。

24 名前:ジェームス・フロイド ◆rA.taCR/oc [sage] 投稿日:2009/12/30(水) 00:35:38 0
「坊ちゃま、今日も”朝帰り”ですか?」
執事風の好々爺が背広を脱ぎエレベーターへ向う紳士に問う。

巨大な都市の”中央区”に位置する場所に立つジェームスタワー。
その最上階に位置する部屋に大富豪にして巨大企業ジェームスエンタープライズの
社長であるジェームス・フロイドはいた。
「心配しないでいい。昼の会議には間に合うさ。」
執事はいつものように笑いかけてそれを見送った。
「幸運を。」

−−華やかな繁華街に漆黒の闇を纏った戦士が立つ。
町にはヒーローが溢れている。
かつては自分以外に街を守ろうとするものなどいないと思っていた。
ヒーローといっても、楽しい仕事ではない。
誰に頼まれたわけでもない。だが、自分の信念からそうしているだけだ。
犯罪者を捕まえ、警察に引き渡す。狂った悪漢を叩きのめす。
時にそれを人々は崇拝し、時には侮蔑の目で見る。

今日も彼は闇を纏い街を行く。
何も変わらない、狂った街がただそこにあるだけだ。

―ヒーロー TRPG―



25 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/12/30(水) 00:59:32 0
ヴィランとヒーロー両方に武器を売れば二倍儲かるぜ

26 名前:星 真一 ◆gdItqyWvZU [sage] 投稿日:2009/12/30(水) 02:08:52 0
「あーダリィ…つーかもうアーカム大学に行く時間か…」
事務所のソファーで寝ていた男が起きる。
ハードボイルドとはとても無縁な人がここに一人居た。
俺の名は星 真一、この都市で探偵事務所を営むしがない探偵だ。
「遅れるぞ!さっさと起きんか!」
助手兼相棒の電子妖精が俺をはやし立てる。
「はいはい……」
冷蔵庫から適当に漁って牛乳を飲み干し、パンを齧り一気に牛乳で押し流す。
立て掛けてある帽子をかぶり、コートを着ると事務所を出る。
今宵もいつもの様にアーカム大学まで夜の講義をするために向かう。
10時間以上眠って置いてこれで遅れるとは良い笑い者にされてしまうため
多少、人目を気にしながら蒼い魔導衣を纏いながら人々の頭上を駆け抜ける。






27 名前:麗源新貴 ◆S00N9pbnYw [sage] 投稿日:2009/12/30(水) 13:01:05 0
名前:麗源新貴
職業:ニート
勢力:中立
性別:男
年齢:21歳
身長:172cm
体重:61kg
性格:卑屈な上理屈くさい。周囲に流されやすいところもある。
外見:スウェット
外見2:白い仮面に黒いトーガとフード。体色まで極端なモノクロに分けられている
特殊能力:『占術』雑誌の星座、血液型などの占いの結果を宣託することで、
     自己や相手に強い暗示をかける事が可能。
     なお、自分で勝手な占いの結果を導くことは不可能。
備考:どこにでもいるただのスネカジリさん
   占いの結果に後押しされなければ変身すらできないヘタレ
   ニートであることに後ろめたさを感じてはいるが
   夜な夜な悪人狩りをすることで、辛うじて自尊心を保っている
   ちなみに通り名は『ホルスタイン』

28 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/12/30(水) 13:25:36 0
人助けをしても化け物として罵られるならいっそ本物の化け物になってしまえばいい
彼はかつてはヒーローであった。しかし彼の異様な姿は人々を恐れさせ・・・・

異能者は非能力者を弱者と嘲り、非能力者は異能者を化け物だと罵る
そして異能者と非能力者との戦争が起こり人類が全滅した
そんな未来を変えるため一人の非能力者の科学者が異能者(奇形共)を滅ぼそうと未来からやってきて・・・

そんなわけありのヴィラン投入で雰囲気をダークにもって行く

29 名前:麗源新貴 ◆S00N9pbnYw [sage] 投稿日:2009/12/30(水) 13:39:15 0
究極を述べてしまえば、占いには根拠も技術も考察も必要ない。
ただ必要とされているのは結果ばかりで、
それに対する一般人が傀儡的に動き、偏的に考える。
無論、占い師と言う職業は確かに存在している。
しかし、液晶や紙面を通じて『結果』だけを脳に残すことと、
実際に彼らが目の前でカードや棒切れ遊びを披露する、
『過程』を目の当たりにすることとを比べてみたところ、
果たして信憑性に僅かでもブレが生じてくるものであろうか。
占術に何の知識も経験もない一般人が、いくら過程を吟味したところで、
結局は結果のみに惹かれることは決まりきっている。

麗源新貴青年も、つまりは、その程度の人間である。

夜中のフローリングはひどく冷えている。直に座ると痔の餌食になりかねない。
しかし彼は、そんな現実など丸で知らぬので全く頓着せず、
先程から通算10分ほどは、根気良くカードの山をシャッフルし続けていた。
夜の闇が部屋の中にまで浸透して、安っぽい紙が擦れ合う音ばかりが聞こえた。

「ああ!」

しゅらしゅらという小気味よい音の連続が、ばらりと砕けた。
しばしの後、電灯が点ると当時に、音の精霊は何処かへ蒸発してしまった。
床に散らばる厚紙は、計22枚。太陽だとか教皇だとか、それぞれ胡散臭い言葉が書かれている。
自作のタロットカードであった。稚拙なできだが、彼はそれを不遜と思わない。

「全く!」

目を瞑って四つん這いになる麗源。別に血の繋がらない兄を受け入れようとしているわけではない。
右手をあちこちに伸ばしてカードを拾い上げ、光の届かない眼前に持ってきながら、
ううんと唸って、またその場に置くなり放るなりしていた。
やがて運命の一枚を摘み上げて、例の如く鼻先へ構える。今度は大丈夫、目を開けていた。
が、何も書かれていない。疑いもなく裏面である。少々不吉な気もする。苦笑しながらカードを翻した。

「……魔術師。」

親指と人差し指で摘み上げたそれには、上から下へ、正の順で魔術師と、本当に文字ばかり書かれていた。
彼の自前の占いと言うのは、つまりは、この程度の手順である。

「ま、悪くはないな。……狩に、行くか。」

魔術師の正位置――物事の起源。

レイゲンアラタカ・Prologue

30 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/12/30(水) 15:48:48 0
伝説のヒーロースパーマンはマントを自動ドアに引っ掛け悪人に銃で撃たれ死亡
派手なだけの格好は大変危険だ

31 名前:麗源新貴 ◆S00N9pbnYw [sage] 投稿日:2009/12/30(水) 20:12:07 0
ヒーローだって腹は減る。ヒーローだって催す。
そういうわけで麗源は、獲物を捜索する中途に、
一先ずは近場のコンビニに立ち寄っていた。
上下ともねずみ色のスウェットに身を包んではいるが、
印象としては、柄が悪いというより、だらしがないという方が勝りがちな彼であった。

菓子パンを購入して化粧室へ入り、その中で食事と排泄と言う、
到底両立しそうもない二行動を器用に天秤に掛けた後、
またしばらくは、店内をうろつくことに決めた。
雑誌置き場の前をしぶとく往復しながら、やがてある女性向けの雑誌を選ぶ。
男性ものよりも女性ものの方が、占いに関する情報は得やすい。
何と言うともなく手にとって、頁を一枚一枚、しっかと捲りながら、
占いコーナーを見逃さんとして、半ば血眼になっている。
コンビニの外からは、スウェット男が女性向け雑誌に夢中になっている様がよく分かった。
平和と言えば確かにそうだが、見る人によっては実に気味が悪い。
そうして不穏を撒き散らしてようやく、目当てに辿り着いた。

今月の占い。
さそり座のアナタ。何やら大転換の予感!
大きな試練、課題にぶつかりそう。物怖じせずそれを乗り越え、成功を掴もう!
ラッキーカラー:ピンク

生憎、彼は仕事上の試練、ひいては責任や義務だとかを強いられる生活を営んではいない。
あるいは、それらから最も離れた位置に居を占めているのかもしれない。
本日二回目の苦笑を零しながら、ふと、ガラス張りを透かして夜景を見た。
夜に埋まる、ヘッドライトとテールライトの列。それに伴う、エンジンの地団駄。
そして更に、彼らを頭上から嘲るネオンの嬌声。つまらない。
雑誌を畳んで店を出ようとする、ところに、
突如として、彼の頭部を思考能力ごと吹き飛ばすような、クラクションの群発!

「(な)んだァ!」

再び窓の向こうにピントを合わせると、闇に埋まる光の群れを掻き分けるようにして、
大型車――否、奇妙な落書きを施されたバスらしきものが、
周囲の乗用車の間に身を滑り込ませ、強引に通過して行った。
明らかに怪しく、あからさまに不自然で、確実に異常事態の体である。

32 名前:麗源新貴 ◆S00N9pbnYw [sage] 投稿日:2009/12/30(水) 20:13:41 0
ヒーローだって腹は減る。ヒーローだって催す。
意外と人間臭い彼らに、それでもこれぞと求められているものがある。
悪に対する、嗅覚!そして行動!
考えるより、感じるより疾く、彼は駆け出していた!
自動ドアを潜ると同時に、肢体へ纏わる夜気を切り裂き、走る!追う!

と、いくら格好を付けたところで、一般人としての体のままで、
何十馬力もの威力を発揮する通園バスに追いつくはずもない。
変身してでも追ってみるか。しかしそれは、彼自身の決めるところではない。
走りながらポケットを探って、例のタロットカードの内の一枚を取り出した。
今度は裏返しではない。示すところは、正義の正位置!
お誂え向きと言うより、何者かの意思を感じて、秘かに身震いした。
街頭の光を避けて暗がりを選びながら、顔前に二の腕をクロスさせる。

「グローリアッ(栄光あれ)!!」

闇から紡ぎだされた繊維は、トーガやフード、スカーフ状に形を変え、
疾駆を続ける肢体に撒き付き、彼の存在を漆黒に染め抜いてゆく。
次第に脚には力が漲って、一足ごとにぐいぐいと、目標への距離を縮めていった。
そうして勢い良く両腕を解き放った彼の顔には、月光を寸借したかのような純白の仮面があった。
注視が集まるのが、皮膚の感覚で分かった。

「あの白黒は……」「ホルスタインだ!」「チチくれ!」
「誰が乳牛だコラァ!」

どこかから擲たれた嘲笑に怒声を返す。
と、概ねこういった応答を含めて、彼の変身プロセスは完了する。

そろそろバスは射程圏内に近づいてくる。
よし来たと、緩やかな跳躍で中空に身を躍らせ、音も立てず、天井に飛び乗った。

「えー、そこの暴走バス。止まりなさい!止まりなさい!
 すでに君等の行動は……えー、ヒーローに把握されているのだからッ!」

高らかに挑発しながらも、ふとバランスを崩して、ゴキブリみたように這いつくばってしまった。
ともかくも、狂った街の三流ヒーロー、登場と相成る。

33 名前:麗源新貴 ◆S00N9pbnYw [sage] 投稿日:2009/12/30(水) 20:14:25 0
※開始早々ですが、勢力はやはりヒーロー寄りというところでお願いします

34 名前:本舘 ◇SGue2uUfkwの代理投稿[sage] 投稿日:2009/12/30(水) 23:43:55 0
僕は暫くの間街中をぶらついていたが、戦闘しているような連中は見当たらなかった。
時間を無駄にしてしまったな。
「そろそろ帰るか…。」
と、ポツリと呟いた時、幼稚園バスが目の前を横切る。
「あれは…!!」
中に乗っていたのは園児と先生達の他に、黒タイツの男達とツンツン頭の男。
運転手の頭には拳銃が突き付けられていた、ヴィランの連中の可能性大だ。
僕は早速バックからベルトを取り出し変身すると、先程の幼稚園バスを追い掛ける。

>>31-32するとどこからか一人のヒーローが現れ、バスの天井に飛び乗った。
「ホルスタインのご登場か…。」
ホルスタインに続き、僕もバスの天井に飛び乗る。
「相変わらず目立つね、君。ところで、君はヒーローだったっけ?」
僕の頭の中ではヒーローというより僕と同じ中立的な立場の人間って認識だったんだけど。
「ま、君がヒーローだろうがヴィランだろうがどっちでも良いけどさ。」
僕はホルスタインから視線を外し、窓を割って車内に侵入する。
「やあ、雷羽。君の邪魔をしに来た。」
雷羽の手下Aがすぐに襲いかかって来る。
手下Aを窓から投げ捨て、雷羽を見ながら話を続ける。
「君達に恨みは無いんだけど、暇で暇でしょうがなくてね。
 僕はヒーローじゃない、でも君達の仲間でもない。
 だから僕の暇潰しに付き合ってもらう。
 もちろん拒否権は無いよ。…さ、ゲーム開始だ。」

35 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/12/31(木) 00:54:24 0
サイドキックの男の子が性的すぎて困る
サイドキック:ヒーローの相棒
代表例:ロビン、バッキー等

36 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/12/31(木) 02:36:17 O
>>35
国内だと確実に801本がでるなw

37 名前:星 真一 ◆gdItqyWvZU [sage] 投稿日:2009/12/31(木) 18:54:27 0
ちょっと飛ばし過ぎたのかあと10分くらいで大学までたどり着けそうだった。
まぁ別に構わないだろうたまには余裕があるというのも。
「まぁどうせ行っても自習だけどな…」
とその時、偶然幼稚園のバスに見覚えがある奴等がいた事に気づく。
そしてそれに気づき、阻止しようとする二人の姿を確認する。
「あの二人が居れば大丈夫だろう…」
そう思い先を急ごうとした時、旧支配者との戦いのために与えられた魔導衣により常人よりも遥かに上昇した身体能力の一つ
聴覚で>>34の最後の言葉にある男の悲劇を思い出してしまう。
「……アイツの悲劇を引き起こすつもりなのか…回りの一般人を自己満足の為の顔の無い庇護対象としか見ていないのか」
このままではまたあの悲劇が再び繰り返される可能性があった。
「ふざけるんじゃねぇ!あんな思い二度とさせてたまるか!」
そんな思いが彼を支配し、バスの後を追うこととする。
この時彼には自分の大学をクビになるかも知れないという考えはなかった。
悲劇を見過ごしてのうのうと仕事を優先できるほどの神経は持ち合わせていなかった。


38 名前:テラシ ◇vCpQPGCxWE [sage] 投稿日:2009/12/31(木) 22:50:01 0
参加しまーす!

名前:テラシ(本名不明)
職業:不明
勢力:悪
性別:男
年齢:20歳前半
身長:185cm
体重:75kg
性格:繊細
外見:白いシャツにボロボロのフィルターのような黒い巾着を身にまとっている。スキンヘッド。
   大きな人懐っこそうな目玉に聡明そうな広がった額。慇懃かつ冷酷そうな薄い唇も持つ。
   相反する二つの特性が、まとまった顔立ちのなかに席巻している。変身はしない。
特殊能力:手から催眠ガスを出す。ガスの効能は、浴びた者の精神は脅かす。
     その者の最も恐怖する幻覚を現出させ、過去のトラウマを心の底から引き摺りだす。
     皮膚に付着しただけで効果を発揮するため、逃げるのは困難だ。
備考:精神病の恋人を持っており、彼女の研究をしているうちに、自分もまた病んでしまった。


39 名前:テラシ ◇vCpQPGCxWE [sage] 投稿日:2009/12/31(木) 22:50:45 0
 屋敷から抜け出すと、地球の全てのような午後の芝生が広がった。
澄んだ闇と、それと仲良くなろうと奮闘してそよぐ草原が、テラシを異様に興奮させる。
樹冠が核爆発によって出来る雲のように際立っている。
界隈の雑木林に身を投じ、そこで寝転ぶ。完結しきった無限の闇が、これ以上ない程彼に恐怖をもたらしてくる。
俺は人生そのものに恐怖しているんだ、とテラシは思う。
標的は森のなかに逃げ込み、自身の錯綜した運命を呪いながら走り続けている。
その無意味さに思わず感嘆しながら、テラシもまた驚異的な速度で駆け出す。
テラシはスキンヘッドだ。冷涼な夜気が後頭部に心地よい。大きな人懐っこそうな目玉と、聡明そうな広がった額を持つ。
非情そうな薄い唇がそこに相反した冷酷な特性を持たせ、見るものに深遠を覗き込ませる。
屈強な肉体を打ち振りながら、横転した巨木を軽々と跳躍して上空へと身を移し、そこから更に逃げ惑う虫ケラのような相手に飛び掛る。
戦慄した相手は雄たけび声を上げ、テラシの胸板を引っかくが、既に遅い。
手から噴出した催眠の香気によって標的の男は幻覚を見、自らの目玉を掻き毟りながら悶えた。
やがてナスカの地上絵のような特殊な姿勢で倒れこみ、そこで沈黙した。
テラシは落胆の表情を浮かべ、肩をすくめる。

 一度やって来た道を引き返すのは心が折れるものだ。テラシはなるべく過去のイメージをしないことで均衡を保ちながら、
屋敷への道を辿った。車庫へと入り、そこで扉を開けて運転席に着く。機械を操作することに慣れない反面、それに対する好奇心、
稼動する鉄のシステムへの愛着は計り知れない。アクセルを踏み、山道の凹凸を乗り上げる。
ミラーに映った自分の姿を見る。そこに吸い込まれるような淡い愛着を覚えながら、車は森林地帯を抜け、街の中心へと向かう。
繁華街を通過し、油とにんにくの臭気のなかを突っ切って車が行き交う大通りに出る。いくつもの華美な電飾の施された看板と、その下を
洞窟の入り口のような背広を着たサラリーマン達が歩いている。
テラシは鼻歌を歌いながら、車のハンドルを回す。何人かの通行人が怪訝な表情でこちらを見る。子供が思わず手にしていた風船を宙に放してしまう。
彼の跨った車は、そのままなんの狂いもなく、車道を逆走し始めた。

状況・車で逆走し始める。

40 名前:旋風院 雷羽 ◆zYCuy2/gkI [sage] 投稿日:2010/01/01(金) 00:48:30 0
>>32,>>33
>「えー、そこの暴走バス。止まりなさい!止まりなさい!
 すでに君等の行動は……えー、ヒーローに把握されているのだからッ!」

「!? この声、まさかヒーr」
突如窓の外から聞こえてきた謎の声にツンツン頭の男が返事を返す間もなく、
バスの中に一つの影が転がり込み、黒タイツAを窓から放り投げた。

「せ、戦闘員1129号ーっ!?」

道路をバウンドしながら転がっていく自分の部下を、ツンツン頭の男
――――悪の組織の幹部、「旋風院 雷羽」が驚嘆しながらとして見ていると、
先に転がり込んできた人影がすっくと立ち上がり、雷羽を真っ直ぐに見つめ宣言した。

>「やあ、雷羽。君の邪魔をしに来た。」

「――――なあっ!?貴様は!!」

見ればその人影は、以前雷羽の作戦を盛大に邪魔し、
失敗させたヒーロー(?)ではないか。
その姿を確認した雷羽は、拳を前に出し握り、憤慨した様子を見せる。

「おのれぇ!!まーた俺様の華麗なる作戦を邪魔しに来やがったのか!!
 ……というか、貴様が質問したから俺様がわざわざ返事してやってたのに
 それを途中で遮るんじゃねぇ!!」

だが、その怒りはほんの僅かの間の事だった。
直後に、雷羽は何かを思い出した様にその顔を余裕に変える。

「……へっ!なぁに気取ってやがる。『ヒーローじゃない』?『暇つぶし』だぁ?
 いいぜ。俺様はテメェみたいなゆとりがだぁぁぁ――――い嫌いなんだ!!
 
 おい戦闘員! ガキ共の頭に銃向けろ!もしそいつが動いたら、ガキ共を撃ち殺せ!!」

4人の戦闘員達は雷羽の指示に従い、一瞬で一糸乱れず近くの園児の頭に銃口を押し付ける。
もし本館が動けば、間違いなく園児の頭に風穴が開くだろう。
また、仮に大規模な技でこの場を切り抜けようなどとしても、
走行中のバスに乗った生身の人間である園児が無事で済む可能性は、限りなく低い。

人質という物の力は大きい。
もしこの場で園児が死にでもしたら、本館は世間から悪以下の存在として認識されてしまうに違いない。
何故なら、他でもない悪の組織がその情報を利用する為、世間にばら撒くからだ。
正義でも悪でもないただの異常者の立ち位置は、それだけで崩れてしまう程に危うい。

「なーっはっはっは!! 頭を使わないからこうなるのだバカめ!!
 さあ、ガキ共を殺されたくなかったら大人しく俺様に殺されるんだな!!」

そして、座ったままの雷羽が黒いコートの懐から取り出した
ごついマグナムの銃口が本館へと向けられ、その引き金が引かれた―――――

41 名前:麗源新貴 ◆S00N9pbnYw [sage] 投稿日:2010/01/01(金) 04:26:26 0
それにしてもと、麗源は慎重な匍匐姿勢のまま、カビの生えた頭脳を回転させる。
悪人、即ち概ねヴィランと呼称される者共が、
わざわざ人目につきやすい外観の移動手段を使うとは思えない。
あるいは、己の足下に運転されるこの大型車は、
何らか特殊物の輸送に奔走していたところを、たまたまジャックしたのかもしれない。
特殊物――闇にちらついた、車体の珍妙なペイント――通園バス?
つまるところ、幼稚園児を乗せたままの通園バスをジャックしたのだろうか。
またもしかすれば、それらは全くのブラフであり、
己のようなヒーローもどきをおびき寄せる、一種の罠なのでは。
飛び乗る前に、車内を良く見回すべきだったと今更悔い始める。
ただ一つ確実に近いこととしては、大型車である以上、搭乗者や貨物は多数と見る。
『罠』でも『ジャック』でも、迂闊な行動は危うい。
しかし、なるたけ事態は早々の回収を迫られるだろうし、何より、
このままではバス内部から、車上に潜む彼に向けて、銃撃と言った攻撃を仕掛けられかけない。
腐りかけた思索を放り出して、またもカードに頼ろうとしたところ、背後より、声。

>「相変わらず目立つね、君。ところで、君はヒーローだったっけ?」
「どわあっちゃ!!」

気配も感じさせずに参上した漆黒の珍客に驚き、
匍匐から海老反り姿勢で飛び上がるという、過剰なサービス心を込めて対応する。
ヒーロー、そのフレーズに対して安々と返せる文句は持ち合わせていない。
どもるでもなく、取り繕うでもなく、ただ沈黙で、仮面の奥の唇を封じていた。

>「ま、君がヒーローだろうがヴィランだろうがどっちでも良いけどさ。」

そう残した珍客――本舘は、闇に溶けるようにして身を翻すと、
通園バスの窓を蹴り砕き、鮮やかにバス内部への侵入を果たした。

「お、お前……もうちょっと状況ってヤツをだなあ!」

口では言いつつ、僅かばかりは、その行動力が羨ましくある。
麗源はというと、本舘に対する呆然と、バスの正体に関する憂慮とで、
結局いつまで経ってもバスの上に陣取って足踏みをしていた。
やがて、本舘が砕いたガラスからは、黒ずくめの、
恐らくはヴィラン側の一般戦闘員らしき人体が、
アスファルトに短いバウンドを残して転がっていった。
『罠』ならば、怒号やどよめきが発散されるだが、それはない。
『ジャック』とすれば、悲鳴や歓声が聞こえるだろうが、それもない。
乗組員らが拘束や猿轡をされ、沈黙を強制されているとすれば――『ジャック』説が持ち上がってくる。
とすれば、速やかな乗員の救出が最優先とされる。
なめくじすら眠気を催す程の思索を経て、ようやく麗源は、バス内部への侵入を決断する。
本舘の突破してくれた臨時通行口に頭をさげて、またゴキブリ然と、気付かれぬようこっそりお邪魔した。

42 名前:麗源新貴 ◆S00N9pbnYw [sage] 投稿日:2010/01/01(金) 04:29:19 0
>「なーっはっはっは!! 頭を使わないからこうなるのだバカめ!!
 さあ、ガキ共を殺されたくなかったら大人しく俺様に殺されるんだな!!」

しかし残念な事に、本舘、どうやら劣勢の模様。
彼の絶体絶命を、麗源は、幼女の履いているきれいな桃色の靴に足蹴にされながら、身を沈めて観察していた。
幼女の顔には、まだ新しい痣がある。そうして、この状況下で、
善悪どちらの味方とも付かない麗源と接触してなお、嗚咽を噛み締めている。
やはり黙らされていたらしい。しかもその手段は暴力ときた。
紛れもないヴィランの所業――制裁を下す事ができれば、自尊心への良い餌になる。
つまりはそういった不透明な行動原理が、「ヒーローか」という問いに返答を濁らせた所以の一部である。
何はともあれ、この状況を客観視すれば、ヒーローとヴィランという立場の隔たりは歴然。
麗源も、まあ準ヒーローくらいの心持で、事態に臨む事ができようものだ。
しかしたかだか準ヒーローが、現況を打破できるほどの機転も戦力も発揮できるとも思えない。
息を潜めたまま麗源は、四方に視線を飛ばすと、戦闘員が幼児に銃口を向ける様が見て取れる。
更に本舘は、やたらと重力に反抗する頭髪の持ち主と対峙している。
作戦会議と洒落込むには、状況が悪すぎる。
奇跡的に、麗源自身の存在は今だ察知されていないようだが、
状況好転の為の半端な奇策を携え、余り素っ頓狂な行動を取れば、
寸刻の内に蜂の巣ができるハメになる。
変身後から握り締めていた、正義のカードを眺めてみる。
正義の正位置……その暗示を思い出せ。

「……嬢ちゃん、悪いがちょっと借りるぞ。」

蚊の鳴くような声から催された、しばしのやり取りの後、
座席の隙から、白黒コントラストの喧しい配色をした腕が伸び上がる。

「こっちだっ!」

鋭いスナップから擲たれた、とあるカードは、照準過たず、旋風院の構えたマグナムを狙撃し、
戸惑った銃口から離れた弾丸は、バスの天井を貫通し、何処へともなく果てた。
慌てふためく戦闘員は、思わず視線と共に、銃口まで麗源へと向ける。
相当熟練された者でなくては、とっさの場合、別の二方向へ同時に注意を向けることは難しいものだ。
そして両手を広げながら立ち上がる。できるだけ仰々しく、注目を集めるように。

「見よ、俺のなげうったカードを!それがお前らの未来を示す!」

と言ったところで、誰も見るものはいない。
だがカードは、腕を直撃して翻った後、バスのバックガラスに張り付いている。
そこには確かに「戦車」という文字が逆立ちをしていた。

「今日の俺は本当にツイてる……戦車の逆位置は不注意。お前ら、『安全装置は外したか』っ!?」

黒タイツたちは、覚えず一斉に各自の銃の安全装置を確認する。
外していないはずはない。しかし、その意識を完全に塗り替えてしまうのが、麗源の能力である。

「今だ、漆黒紳士ッ!」

後は彼の見せ場、その通りである。

43 名前:本舘 ◇SGue2uUfkwの代理投稿[sage] 投稿日:2010/01/01(金) 15:27:41 P
>>40こいつは少し参ったな…。
人質か…面倒な奴め。
いくらヒーローではないと言えど、流石に園児に銃口を向けられては身動きが取れない。
雷羽はマグナムの銃口を僕に向ける。
クソッ…ふざけるな!
僕はこんな所で君のような中ボスに殺されるわけにはいかないんだ!
そんな僕の願いも虚しく、雷羽はマグナムの引き金を引く。
>>41-42
>「こっちだっ!」
雷羽が引き金を引くとほぼ同時に、どこからかカードが飛んで来た。
――――ホルスタインの仕業か。
「やってくれるね…。」
戦闘員の銃口はホルスタインに向けられている。
だが彼は臆する事なく言葉を続ける。
>「見よ、俺のなげうったカードを!それがお前らの未来を示す!」
>「今日の俺は本当にツイてる……戦車の逆位置は不注意。お前ら、『安全装置は外したか』っ!?」
ホルスタインの言葉に釣られ、戦闘員達は一斉に銃の安全装置を確認し始める。
>「今だ、漆黒紳士ッ!」
「任せろっ!」
ベルトにカードを差し込むと、僕の手に銃が現れる。
そして真っ先に、運転手に銃を突き付けている輩を狙い撃つ。
当たったのを確認し、残りの輩も同様に銃で沈めていく。
僕は最後に残った雷羽に銃口を向ける。
「残念だったなぁ、雷羽。このゲーム、君の敗けのようだ。
 なかなか楽しかったけど、園児を人質にするのはいただけないなぁ。」
銃口を雷羽に向けたままホルスタインに視線を移す。
「正直助かったよ。君が来なければ僕はゲームオーバーだった…。
 君は…本当にヒーローなのかもしれないな。」
そう言って軽く微笑み、再び雷羽に視線を戻す。
「…僕はヒーローじゃないから、君に情けをかけるような真似は一切しないよ?
 何か言い残す事はあるかい?」

44 名前:岡田 ◆f1UBcxNLkXUi [sage] 投稿日:2010/01/03(日) 00:31:41 0
参加します

名前: 岡田 道人
職業: フリーの悪の博士
勢力: 悪
性別: 男
年齢: 23
身長: 176cm
体重: 56kg
性格: 大変自分勝手で人間嫌い
外見: 普段は白衣にウェーブのかかった髪をしていて、丸メガネをかけている。外出時は黒いスーツを着用し、同じく帽子を被っている
特殊能力: 自宅の地下のバイオポットで「人類の後継者」を次々と作り出し、市街地に適当に送り出していく
備考: 過去、ある悪の組織に勤めていたが、「精神強化薬」の乱用で精神が狂い、また、異常な計算能力や記憶能力等を得た
結果、所属していた組織を、自身が「人類の後継者」と呼ぶ怪人兵器「Eデアン(いーであん)」で全滅させ、現在は廃墟と化した基地施設の地下にて怪人を作り続ける日々を過ごしている
最終目標は、自分の作ったEデアンが地球の覇者になる事

名前: Eスケルトン
職業: 怪人
勢力: 悪
性別: 雌雄同体
年齢: 製造されて間もない
身長: 2m
体重: 140kg
性格: 凶暴
外見: 大きな頭蓋骨の口から神経がむき出しの両足が生え、右目から同じく神経質むき出しの太い腕が、左目からは大きく裂けた巨大な口を持つ真っ白い不気味な顔が覗いている
特殊能力: 頭蓋骨の部分はマグナム弾の直撃に耐える、腕力は拳銃をダンボールの様に軽く握りつぶせる、白い顔の口からはコンクリートもどろどろに溶かす溶解液を噴出する
運動能力も常人を凌駕し、ある程度自己再生能力を有する。
単体で繁殖する事ができ、3日に一度のペースで数個の卵を産み、卵から孵った幼生Eスケルトンは小さなどくろから無数の赤い触手が生えた様な外見で、タンパク質を摂取する事で急速に成長し、3日程で成体になってしまう
成体も肉食で、人や動物を襲い、次々と捕食する他、鉄などの金属も食べてしまう
備考: 岡田が自らの目標のために最初に作り上げたEデアン
大変凶暴で、自分と同種以外のあらゆる動物を攻撃し、捕食しようとする
ただし知能は低い


参戦したいんですけどこれでいいですかね?

45 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/01/03(日) 14:13:31 0
ヒーローTRPGは誰でもウェルカムっ……!

46 名前:Eスケルトン ◆f1UBcxNLkXUi [sage] 投稿日:2010/01/03(日) 22:23:02 0
薄暗く、狭い窓のない部屋
その部屋にある安いパイプ椅子に、白衣の男が座っている
男の視線の先には、安いスチール机に乗った、一台の古めかしいテレビがあり
男はテレビに神経を集中していた
『繰り返しお伝えします、本日お昼頃に出現した正体不明の生物は、今なお警官隊と交戦中で…』
報道の内容に、男の口元がわずかに釣り上がる
「いいぞいいぞいいぞいいぞいいぞ…ぃーーースケルトンんんっ…地元警察何ざさっさと蹴散らして、もっと数を増やすんだ」
そして次の瞬間、男は興奮し、パイプ椅子から立ち上がっていた
男の名は、岡田 道人
彼は人類の敵である



防弾装備に身を固め、サブマシンガンで武装した警官の一団が、迫り来る異形の怪物目掛け、一斉に銃口を向けた
身の丈2mはあるだろう怪物は、まるで大きなドクロから足と大きな片腕が生えているような奇怪な姿をしており、敵意と殺意の篭った凶悪な眼差しを向けながら、ゆっくりと警官隊へと向かってくる
「撃てぇ!」
隊長の指示に、警官達の銃が一斉に火を吹く
激しい射撃音と共に放たれた無数の弾丸が怪物へと吸い込まれていくが、弾丸は怪物の硬皮にたやすく弾かれ、全く効果が無い
『ギャグルルルルルルルゥガァアアアアアアアアアアア』
警官隊の攻撃に神経が逆撫でされたのか、怪物は一際大きな叫びを上げると、すさまじい速度で警官隊へと走って向かってきた
「う…撃て!撃て撃てぇ!」
その姿に恐怖に駆られた隊長が再度叫ぶが、次の瞬間、跳躍した怪物の拳の一撃で、ヘルメットの中の顔面を陥没させられてしまう
「ひ」
怪物のすさまじい動きに、隊長の周囲にいた警官が驚く間もなく、怪物は次の一人の頭を鷲掴みにしてヘルメットごと軽く握り潰してしまっ
更に怪物は至近距離での発砲を物ともせずに拳を振るい、一人、また一人と犠牲者を増やしていく
「下がれ!距離をとって集中砲火だ!」
「応援はどうした!?早く応援を要請しろよ!」
「バカヤロウ退避だ!あんなのと戦えるか!」
怪物の圧倒的な力の前に、生き残った警官達も混乱し、次々と倒されてしまう
『ゲゲゲガガガガ』
勝利を確信したのか、笑いの様な声を上げた怪物の口から、白い煙の様な物が噴出され、警官の一人を包み込んだ
「ぐぎ!?が…」
煙に包まれた警官は悶絶して倒れたかと思うと、どろどろと溶けてしまう
『ゲーーーゲガガガ』
更に口から白い煙を噴出しながら怪物は暴れ狂う

47 名前:旋風院 雷羽 ◆zYCuy2/gkI [sage] 投稿日:2010/01/03(日) 23:47:55 0
>>42-43
「んなっ!!?」

声と共に突如放たれた謎のカード。
それは、勝ち誇っていた雷羽が手に持つマグナムの弾道を
大きく逸らし、銃弾の本館への直撃を阻害した。
一瞬呆けた雷羽が、怒りを隠しもせず声の方を向くと――――そこには、白黒のヒーローがいた。

「……おのれぇ!新手のヒーローか!!
 一匹いればうじゃうじゃ沸きやが……んなああああああああっ!!?」

……そして、呆けたその一瞬こそが命取りだった。
何故なら、その一瞬で『何故か』銃の安全装置を確認し始めた雷羽の部下の黒タイツ達は、
本館の銃撃によって全滅。おまけに、雷羽自身も銃口を向けられるという状況になってしまっていたからだ。

>「…僕はヒーローじゃないから、君に情けをかけるような真似は一切しないよ?
 何か言い残す事はあるかい?」

「ぐ、ぎ……」

まさしく、形勢逆転。銃口を向けられた雷羽は、憎々しげに本館と白黒のヒーローを睨みつける。
……本来なら、ここで完全に決着が付くのだろう。
だが、侮るなかれ。これは悪と正義の戦い。故に正義が勝利を確信するには少し早い。
悪<ヴィラン>が悪と呼ばれる理由は、ヒーローと同じく“力”を持っているからこそ。

本館が手に持つ銃の引き金に力を入れるのと同時に、雷羽は小声で何かを呟く。
そして――――雷羽の周囲の空間を一瞬、黒い霧が覆った。

最初に見えたのは、黒い腕。棘々しい黒い金属を纏った腕が、銃弾を握り潰す様に受け止めていた。
そして、完全に黒い霧が晴れると、そこにいたのは先程までの雷羽ではなく……


黒い金属を纏う、悪の怪人だった。



48 名前:テラシ ◇vCpQPGCxWE [sage] 投稿日:2010/01/03(日) 23:49:57 0
テラシの能力について追記です。
催眠ガス以外に、ある一定の条件が出揃っているときのみ
テレポーテーションを行える、ということにします。
また、触れた相手を別の場所に転移させることも可能、とします。

49 名前:旋風院 雷羽 ◆zYCuy2/gkI [sage] 投稿日:2010/01/03(日) 23:51:50 0
異様な雰囲気を持つ変身した雷羽は、目の前の本館に向けて
不意打ちの蹴りを放ち、距離を作ると、後部の窓を拳で殴り破壊した。
そして、声だけは元のままヒーロー二人に告げる。

「……貴様らぁ!!よくも!よくもよくもよくも!
 この俺様の、頭脳的で理知的な作戦を台無しにしてくれやがったなっ!!
 こうなったら、俺様が直々に貴様等をぶっ殺してやる!!」

こうして、ヒーローと悪、異常の力を持つ者達の戦いが始ま――――らなかった。

≪PIPIPIPI……≫
「あ!?……誰だこんな時に……へ? ぼ、ボス!?
 い、いえ!違うんです!これからヒーローを殺……ひっ!す、すみません!
 解りました!直ぐに向かいます!!」

雷羽のボディにあるマークから突如電子音が聞こえた直後、
謎の人物……恐らくは雷羽の上司と会話を始めた雷羽が、撤退を始めたからだ。

「ぐ……運が良かったな貴様等!今回は撤退してやる!!
 だが、覚えておけ!次に会った時は、貴様等をケチョンケチョンのボコボコにして、
 実験動物にして、殺してやるからなっ!!」

そう言うと雷羽は、慌てた様子で先程自分で殴り破ったバスの窓から飛び降り、
したたかにアスファルトに頭をぶつけた後、走って逃げて行った。
室内にいた撃たれた戦闘員も、いつの間にか消えている――――恐らくは、
物質転送装置の応用か何かで回収されたのだろう。

まあ、とにかく……子供達は救われた。
軽傷者はいるが、死人はゼロ。このバスジャック事件は、

問答無用、完全無欠に

           ヒーローの勝利である!


50 名前:星 真一 ◆gdItqyWvZU [sage] 投稿日:2010/01/04(月) 01:08:14 0
「どうなることやらと思ったが今回は無事に済んだな……」
遠くから彼らの動向を伺っていたがどうやら誰も犠牲者が起きなくて済んだようだった。
ここで園児の一人にでも犠牲者が出ていたら…まぁその前に常人の感じる時間間隔を数千倍遅くさせて
すっ飛んで防御壁を張って守るつもりだったが。
なにはともあれ、事が無事に済んだことはなによりも嬉しいことだ。
「子供達を襲うとはな…まぁパターンとはいえちょっと陳腐だよな…」
と不謹慎な事を言いつつ、ある事を思い出して顔が真っ青になった。
「ヤベェ!!あとちょっとで開講の時間じゃねぇか急ぐぜ!」
彼らの事は頭の中からすっかり抜け落ちて、猛ダッシュで駆け抜ける。
もちろん魔導衣の力を使ってだが。

51 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/01/04(月) 10:16:24 0
ダムに毒を流して飲み水を買い占める

52 名前:麗源新貴 ◆S00N9pbnYw [sage] 投稿日:2010/01/04(月) 19:48:49 0
鮮やかな不意打ちに続いて、漆黒の弾丸が交錯し、
必死の瀬戸際かと思われた戦局は一転、攻守交替と相成った。
正義の正位置の示すところはは、不安定な状況の突破、ひいては物事に対する正しい判断――。
麗源は強い自己暗示により、瞬間的な判断力を著しく強化していた。
勿論、普段の野暮ったい彼ならば、こんな機転も行動力も、効くものではない。

目の端で、銃撃を受けた戦闘員らを、一人ずつ垣間見てゆく。
彼らは全員とも、黒いストレッチスーツに身を包んではいるが、
まさか本当に、単なる全身タイツというわけでもなさそうであり、
何かしらの防護力が働いていると見えて、血を流すこともなく、
倒れたまま胸や背を上下させて、己の生命を主張していた。
その有様に、内心では一息つきつつも、僅かな隙さえ漏らさない麗源。

>「正直助かったよ。君が来なければ僕はゲームオーバーだった…。
 君は…本当にヒーローなのかもしれないな。」

とは、旋風院に銃口を向けた本舘の言葉である。
こそばゆい気もする。しかし麗源の表情は、相変わらず仮面の奥に眠るばかりであった。

>「…僕はヒーローじゃないから、君に情けをかけるような真似は一切しないよ?
 何か言い残す事はあるかい?」

「お――おい!何もそこまでやる事ぁ……!」

幼児の前で生血を見せるわけにはいかない。
ヒーローもヴィランもない。身を挺して本舘を止める前に、余りに無慈悲な発砲音。
しかし相手も、ただ酔狂で悪を掲げているわけではなかった。
攻撃を受けて吹き飛ばされたのは本舘の方であり、
図らずも麗源は、その体を受け止めるようにして尻餅をつく。
痛みに半ば開いた瞼の向こうに、黒光りする鎧を身につけた異形が見えた。
蹴り足を戻した旋風院は、バス後部のガラスに拳を放ち、軽々と殴り破る。

53 名前:麗源新貴 ◆S00N9pbnYw [sage] 投稿日:2010/01/04(月) 19:50:38 0
>「……貴様らぁ!!よくも!よくもよくもよくも!
 この俺様の、頭脳的で理知的な作戦を台無しにしてくれやがったなっ!!
 こうなったら、俺様が直々に貴様等をぶっ殺してやる!!」

変身されたとあっては、とても園児たちを守りきれる自信など持ち合わせていない。
バスは本舘に任せ、自分は鎧男にタックルをぶつけて、割れた窓から共々脱出し、
改めて一対一に持ち込むかとも考えるが……そんな勇気もない。
しかし、事件は思いもよらぬ方角へと収束した。

旋風院のボディから電子音が聞こえたかと思うと、
彼は何者かと会話を始め、萎縮した様子を見せる。

>「ぐ……運が良かったな貴様等!今回は撤退してやる!!
 だが、覚えておけ!次に会った時は、貴様等をケチョンケチョンのボコボコにして、
 実験動物にして、殺してやるからなっ!!」

身の毛が中途半端によだつ台詞を残した彼は、
先程己の手で砕いた窓から、ひどく華麗な離脱を遂げた。
その間麗源は、旋風院を追跡してそのまま抹殺しかねない本舘の体を、懸命に押さえつけていた。
相手方の計画は未遂に終わったのだろうから、追討を仕掛けねばならない法はない。
万が一に、彼らが逃走を装いつつ、何らかの罠を用意している可能性も否定できなかった。

「これが、お前にとってのゲームだって言うんなら……、
 簡単にケリをつけるのは、もったいないし、つまらないだろう?
 決着は、もっと高難易度で、もっとエキサイティングな、次のステージに持ち越しだ。
 ここは一先ず、インターバルってことで……。」

麗源の言葉は、説得とも扇動とも付かない。
しかし、暗示効果の薄れ始めた今の彼にとっては、それが精一杯の働きかけである。
戦闘員らが、知らぬ内にその身を消したのを悟り、やがて緩やかに、本舘を解放した。
バスの隣を、青い彗星がすり抜けていったように見えたが、
生憎と、それを確認する余裕も残されていなかった。

「俺は……一応、子供たちが家に着くまで、バスを護衛するよ。お前は?」

54 名前:織田乃助 ◆EHGCl/.tFA [sage] 投稿日:2010/01/04(月) 20:00:38 0
名前:織田万次郎
職業:高校生
勢力:超能力(中立)
性別:男
年齢:18歳
身長:189cm
体重:90kg
性格:クール
外見:黒の学ラン、長髪
外見2:変化なし
特殊能力:
備考:運動が苦手で休み時間も席で読書をしているようなクラスでは目立たない存在だが、
    変身すると性格が大胆になり抜群の身体能力を発揮するようになる。



55 名前:織田万次郎 ◆EHGCl/.tFA [sage] 投稿日:2010/01/04(月) 20:03:23 0
名前:織田万次郎
職業:高校生
勢力:超能力(中立)
性別:男
年齢:18歳
身長:189cm
体重:90kg
性格:クール
外見:黒の学ラン、長髪
外見2:変化なし
特殊能力:拳の連打、ひたすら力に頼った攻撃
備考:大都市学園の番長。最強の男。

56 名前:本舘 ◇SGue2uUfkw [sage 代理投稿gt;gt;419] 投稿日:2010/01/04(月) 20:21:38 0
>>47>「ぐ、ぎ……」
「あまりの悔しさに言葉も出ないか…。まあ良い、さよならだ。」
雷羽との別れを少々惜しみつつも、引き金を引く。
「―――!!」
黒い霧が雷羽を覆い、棘々しい金属を纏った腕が銃弾を握り潰すように受け止めていた。
霧が完全にはれるとそこに居たのは…
「それが君の変身か…。」
悪の怪人と呼ぶに相応しい、黒い金属を身に纏う雷羽だった。
「ぐっ…!」
雷羽から蹴りを放たれる…右腕でガードするが、重い。
銃を落としてしまうだけでなく、距離を取られてしまった。
>「……貴様らぁ!!よくも!よくもよくもよくも!
 この俺様の、頭脳的で理知的な作戦を台無しにしてくれやがったなっ!!
 こうなったら、俺様が直々に貴様等をぶっ殺してやる!!」
「良いねぇ。僕も遊び足りなかったところだよ。」
あんな雑魚を少し倒したぐらいじゃ、満足出来ないからね。
こっちにとっては好都合だ。
「こっちから行かせてもr」
先制攻撃を仕掛けようとカードを出そうとした時―――
>≪PIPIPIPI……≫
>「あ!?……誰だこんな時に……へ? ぼ、ボス!?
 い、いえ!違うんです!これからヒーローを殺……ひっ!す、すみません!
 解りました!直ぐに向かいます!!」
おい待て、このパターンは…
>「ぐ……運が良かったな貴様等!今回は撤退してやる!!
 だが、覚えておけ!次に会った時は、貴様等をケチョンケチョンのボコボコにして、
 実験動物にして、殺してやるからなっ!!」
悪役らしい捨て台詞を吐くと、自分で破ったバスの窓から飛び降りた。
「……ちっ。所詮ヤツも飼い犬か。」
不愉快だ…せっかくこれからが本番だと思ったのに…。


57 名前:本舘 ◇SGue2uUfkw [sage 代理投稿gt;gt;420] 投稿日:2010/01/04(月) 20:22:28 0
>>53「これが、お前にとってのゲームだって言うんなら……、
 簡単にケリをつけるのは、もったいないし、つまらないだろう?
 決着は、もっと高難易度で、もっとエキサイティングな、次のステージに持ち越しだ。
 ここは一先ず、インターバルってことで……。」
ふんっ…確かに言ってる事は最もだ…。
あっさり決着を着けるのもつまらないしな。
>「俺は……一応、子供たちが家に着くまで、バスを護衛するよ。お前は?」
「雷羽も消えたし、僕はもう行くよ。
 そういう仕事は、゙ヒーロー゙がする事だ。
 僕は誰かと戦えれば、それで満足。
 ……ホルスタイン、今回助けてくれた事は感謝する。
 だが、次も君と共闘するとは限らないからな?
 昨日の仲間は今日の敵、だよ。
 せいぜい人の為に死ぬような真似はしないようにね。」

捨て台詞を吐き、僕も窓から飛び降りる。
「いまいち消化不良だな…。」
あと30分。
30分街を歩いて何も無かったら大人しく帰ろう。

58 名前:テラシ ◇vCpQPGCxWE [sage 代理投稿gt;gt;430] 投稿日:2010/01/05(火) 19:36:34 0
何台かの車と擦れ違いながら、原罪のようなオリジナルの闇に突き進んでいく。その果てへの挑戦は男にとって
憧れであり、畏怖であり、シンプルなストラテジーである。他の車との衝突を避けながら、バックミラーが消し飛ぶ。
接触した車は立ち止まり、中の人間は携帯電話のボタンを押し始めた。

「警官は趣味じゃなぁーいんだ」

テラシは車を停車させ、窓をゆっくりと開ける。
耳鳴りのような開閉の稼動音に、通報しようとしていた人間も振り返って反応する。
窓から空中にかざされた手から、白い煙幕が噴出され、辺りを真っ白に包んだ。
まるで虚空に亀裂が走り、異次元の彼方から土砂降りに元気な吹雪が雪崩れ込んできたいみたいに、それは圧倒的な攻撃だった。
反対の車は白い煙に包まれ、中かから鳥の首を絞めたような悲鳴が木霊する。
テラシは無言のままドアを閉め、再び車を出発させる。無論車線とは逆の方向に。
テラシは車のハンドルを器用に滑らせながら、今自分が殺した女のことを考えていた。
あるいは死んでいないかも知れないが、病院に搬送することが出来ないだろうから、どの道助か見込みはない。。
救急隊員が着ても、暫くあの周辺にはガスが体積しているだろうから、少しでも肌に触れれば
救助に来た人間も、彼女の姿を見ようと集まってきた野次馬も、ありとあらゆる毛穴から狂気の種子を吸い込み、発狂死するだろう。

テラシはこの街に住み始めてからこの行為を始めた。
しかし彼が手を下すのは肉体ではなく精神のほうだから、あくまでも生死の選択は対象者にあるというのが彼の考えだ。
だから厳密には殺しとは言えないかも知れない。
最初は街の郊外の路地裏でホームレスの男にこれを行った。催眠ガスを吸わせ、彼が現出した自分のトラウマの幻影に恐怖し、悶え、
野垂れ死ぬのを見ていた。当たり前の話だが、それは美しさを欠いた死だった。
テラシが求めいたのはもっと強硬な、頑なな、死ぬ直前の生命の塊だった。
彼はそれが見たかったのだ。今まで何人もの人間にガスを吸わせてきたが、いずれも彼の望みどおりにはいかなかった。
それらは一切人間の底は獰猛な恐怖に汚染されているということを誇示していた。テラシは自分の求めているものと対極のものを見つめ続けていた。
誰しもが恐怖に人間としての品位を欠いた姿を見せ、泣き叫び、目玉を潰し、そして死んでいった。

先ほどの年配の女性はどうだっただろうか?白い惑星のような美しい肌と、若さを保持するための、惑星を周縁を結ぶ輪のようなボブ。
サングラスをしている為に表情までは見てとれなかったが、テラシは少しばかり彼女のことを考えてみた。
女にあれをするのはなしだったかも知れないな、と彼は思った。警察に遭遇しない為とはいえ、手間をかければ他にいくらでも方法はあった筈だ。
彼女が最期に見た恐怖の幻影は何だったのだろうか?人並みに闇でも見たのか、それとも獣に暴力的に食い殺されるのに怯えたのか。
あるいは彼女は家庭を持っているかも知れない。年配で、既に子供もいる。人の良さそうなマダムに、慈愛にあふれた夫。
子供に蜂蜜パイなんかを作ってくれたりして、安楽そうなシャンデリアの下には牧歌的な平和な家庭が根付いている。
妻の死に際の声を夫は聞けないだろう。あるいは聞けたとしても聞かないほうがいいとテラシは思う。それは完全なゾンビの断末魔であり、肉を裂かれる豚の断末魔なのだから。

車は信号を無視し、交差点を横切り、歩道へと乗り上げる。テラシは人を轢き殺すつもりはない。
ただ単に車道と歩道の区別がつかないのと、そこに人影が見当たらなかったからだ。
そのまま車体を滑空するように坂を下り、やがて街の外れへと辿りついた。

59 名前:トリッシュ ◇.H4UqpaW3Y [sage 代理投稿gt;gt;429] 投稿日:2010/01/05(火) 19:42:54 0
名前:トリッシュ・スティール(アイアンメイデン)
職業:スティールインダストリアル代表取締役
勢力:正義
性別:女
年齢:26
身長:165cm
体重:54g
性格:冷静沈着、気分屋
外見:黒いスーツに鋭角的なメガネと所謂キャリアウーマン風、オフの時はツナギにTシャツ
外見2:金と赤のメタルアーマー、顔のアーマーのデザインは機械的ではあるが女性らしい
特殊能力:天才的な科学知識及び技術
それ以外は普通の人間と変わらない
備考:巨大軍事企業の社長にして天才発明家
ある時、テロリストに拉致され、自社製品が不正に流されていたことを知る
その時、自身の発明により、心臓に致命的な傷を負うも、自身の肉体に「リアクターコア」なる次世代エネルギー装置を装着することにより一命を取り留める。
また、その時、開発したアーマーを装着し、テロリストから逃げることに成功

その後、なんやかんやあり
ある事件の記者会見で自身が「アイアンメイデン」であることを発表
不正流通された自社製品の回収(破壊)とテロの撲滅を誓った
因みにアイアンメイデンという名はマスコミがつけた名前である
本人は処女の部分以外は大体合っているとのこと

参加します

60 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/01/05(火) 22:09:09 O
アイアンマンが二人かよ…

しかも映画版

61 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/01/05(火) 22:31:13 0
アイアンマンとバットマンだろ?

62 名前:Eスケルトン ◆f1UBcxNLkXUi [sage] 投稿日:2010/01/06(水) 04:05:15 0
『たった今、怪物に関する続報が入りました!警官隊が壊滅し、それに伴い、怪物の所在が完全にわからなくなったという事です。怪物が最後に警官隊と交戦したのは、XX市XX町のXXXで、警察は、怪物の所在を探ると共に、新たな討伐隊の編成を行っていますが…』
「素晴らしい!じっつに、素晴らしい!最高だ、Eスケルトンそう来なくては!」
パイプ椅子の上の男が、テレビからの報道に狂喜乱舞する。
テレビは先ほどから「怪物の襲来が予想される地区に戒厳令が敷かれた」だとか「警察の指示に従い、迂闊に外を出歩かないで欲しい」と言ったメッセージを流し続け、その一言一言に、男はうんうんと頷き、喜びの声を上げていたが
ふと静かになると、テレビをビッと指差し、不気味な笑みを浮かべた
「だが!だがだがだ〜、まだ、こんな物は序章に過ぎんのだ」
誰もいない部屋で、報道特別番組を流すテレビに向かって、男は真剣な口調で語りかける
「今にEスケルトンは更に数を増し、1週間で100体以上に増え〜…やがてこの都市は、いやこの国は……」
先ほどよりも一際不気味な笑みを浮かべ、男は叫んだ
「私の理想郷となるのだ!!」


『繰り返し、お伝えします、本日午後1時13分XX県XX市XX町に出現した正体不明の生命体は、殲滅に当たった警官隊を逆に壊滅させ、依然逃亡中です、周辺住民の皆様は外出を控え、警察、消防の指示に…』
怪物出現と、避難勧告を報じていた街頭ビジョンのアナウンサーに、新たなニュースが渡された
既に、街のどこかから新たな銃声が響き渡ってきている
『たった今、新たな情報が入りました。怪物がXX町XX丁目に出現し、現在警官隊と交戦中です、付近住民の皆様は…』

63 名前:本舘 ◇SGue2uUfkw [sage] 投稿日:2010/01/06(水) 23:43:17 0
ふっ…ふふふっ…。
今日の僕はラッキーだ。
1日に2回も闘えるなんて、なかなか無いぞ。

そう、あれは約30分前…
今日はもう諦めて帰ろうとしていたその時。
街頭ビジョンに映っていたアナウンサーが怪物に関する情報を流した。
そして怪物が出現した場所は走って行けば5分程で着く所だった。
僕は即座にベルトを取り出し、変身する。

そして現在、僕の目の前では警官隊と怪物の闘いが繰り広げられている。
いや…これは闘いと呼べる代物じゃないな…。
警官隊の攻撃がまるで通用していない。
これじゃただの、怪物による殺戮ショーじゃないか。
警官隊も応援を呼んでいるが、これ以上応援を呼んでも死体が増えるだけだと思うぞ…?

僕は目の前の警官の肩を掴み、後ろに退ける。
「退け。君達じゃアレには勝てない。分かるだろ?
 死体を増やしたくなかったら警官隊と野次馬を少しでもここから遠ざけろ。」
と、僕が言ったところでそう簡単に納得しない警官は僕の後ろで何やらギャーギャー騒いでいるが、気にせず怪物に歩み寄る。
「やあ。君も雑魚相手でヒマしてたんだろ?
 僕が君の暇潰しに付き合ってあげるよ。」
多分、コイツに銃は効かないな…。
「銃がダメなら…剣ならどうだい?」
僕は大剣を手に、怪物に斬りかかった。

64 名前:星 真一 ◆fSS4JmCGEk [sage] 投稿日:2010/01/07(木) 01:12:09 0
「今日の講義は終了っと」
あれから猛ダッシュしてギリギリだったが何とかたどり着くことが出来た。
俺が担当するのは普通の科目ではなく一般には秘密にしなければならない科目
―――つまりは魔術なのだが、それを担当する教授のサポートとして雇われている。
その事を知っているのは選ばれた者つまりどこからか知り、入学し専攻している者達のみである。
理数科で卒業していることにされているが、俺もその一人だった。
その話は置いておき、表向きは卒業して無関係になった卒業生が決まった日に
決まった時間に居ることが怪しまれそこから魔術科目が一般に知られる可能性があるため、
表向きには普通の科目担当の臨時講師という肩書きになっている。
肩書きだけとは言え、魔術科目の臨時講師にも就業規則があるため
契約上、出なくては行けない一般科目の授業をしてきたわけだ。
もっともほとんど自習なのだが、学生の大半は喜んでいるらしい。

今日は魔術科目通称、隠秘学科の授業はないのでこのまま帰る帰ることとした。
「いや〜今日は楽な日でよかったぜ」
帰りにドーナッツ屋を買ってそれを晩飯にしよう。
余ったら朝飯に回せばいいやと考えながら。

それから10分後……
帰り道を歩いている時、
ストリートの電気屋のショーウィンドウに飾ってあるテレビから怪物が暴れまわっている映像を偶然見た。
「シスターの…教会がある場所じゃねぇか!?」
顔見知りのシスターと子供達がが居る教会のいる地区とぴったりであった。
「……考えてる暇なんかねぇシスター、ガキ共が心配だ急がねぇと!」
人前で魔導衣は纏えないため、自分の足でシスター達がいる地区へと走り出す。


65 名前:Eスケルトン ◆f1UBcxNLkXUi [sage] 投稿日:2010/01/07(木) 19:16:17 0
警官隊相手に圧倒的な強さを発揮しているEスケルトンの前に、大剣で武装した本舘が切りかかってきた
放たれた大剣の一撃はEスケルトンの体のドクロを左から斬りつけ、Eスケルトンを数歩後ろに後退させ、警官隊の銃撃で傷一つつかなかった外皮に大きな傷を入れる
始めて受けたダメージに、Eスケルトンは怒りのままに本舘に高速の鉄拳を振るうが、本舘は素早い身のこなしで鉄拳をかわし、反撃の構えを取った、その時
Eスケルトンの口から警官を一瞬で溶かしたコンクリートもどろどろに溶かす煙が本舘目掛けて放たれ、更に煙に怯んだ本舘にEスケルトンの鉄拳が真正面から炸裂した
雪駄に防御した本舘だったが、鉄拳を喰らった反動で吹き飛び、近くにあった教会の扉を弾き飛ばして、教会内に叩きつけられる
『グゥウゥウゥウゥウゥウゥ』
Eスケルトンは更に追い討ちをかけるべく教会内へ悠々と侵入していく
背後から警官隊が銃撃を見舞うが、Eスケルトンはまるで意に介さない
「キャアアアア」
「わぁああああああ」
不意に、教会の隅から子供と女の悲鳴が聞こえてきた
そこには急なEスケルトンの襲撃に逃げそびれたのか、尼僧姿の女性と大勢の子供達の姿がある
『ゥウゥ』
悲鳴に反応したEスケルトンは一瞬シスター等の方を向き、再び視線を本舘へと戻した
恐らく、本舘の次の獲物を決定したのだろう

66 名前:門矢士 ◆f80ibf2q32 [sage] 投稿日:2010/01/07(木) 19:29:49 0
名前:門矢士(ディケイド)
職業:通りすがりの仮面ライダー
勢力:正義
性別:男
年齢:21歳
性格:男
外見:ピンクのカメラ、黒のジャケット、シャツとジーンズ
外見2:マゼンタと黒を基調とした色合いの戦士。頭部にライドプレートが刺さっている。
特殊能力:各世界のヒーローの能力をカードに封じ込めてそれを使用する。
備考:様々な世界を旅する男。口癖は【だいたい分かった】





67 名前:門矢士 ◆f80ibf2q32 [sage] 投稿日:2010/01/07(木) 19:36:17 0
大都市の片隅に存在する写真館。
―光写真館(都バス三毛猫茶屋町バス停下車2分〜)

「この世界での私達のやるべきことって何なんですかね、士君」
コーヒーを淹れながら光夏海が問う。
しかしテーブルにふんぞり返る男、門矢士は答えない。
いや、答えが見つからないのが現状だ。
「夏みかん。それが俺に分かってれば、こんなところで新聞なんて
読んでないだろ。」

この世界に来て数週間。士は自分の役割に関して見失っていた。
本来ならば自分が怪人を倒して世界を救うのが筋だろう。
しかし、この世界にはヒーローという存在が溢れている。
士は気を紛らわすつもりで街へ歩き出していく。

「俺のやるべき事か。まぁ、そのうち分かるだろう。」



68 名前:門矢士 ◆f80ibf2q32 [sage] 投稿日:2010/01/07(木) 19:46:17 0
沼袋カメラ 茶屋駅前店―

士は液晶テレビに映る惨状に釘付けになった。
『たった今、怪物に関する続報が入りました!警官隊が壊滅し、それに伴い、怪物の所在が完全にわからなくなったという事です。怪物が最後に警官隊と交戦したのは、XX市XX町のXXXで、警察は、
怪物の所在を探ると共に、新たな討伐隊の編成を行っていますが…』
自分のカメラで空を写す。やはり、被写体は歪んでみえる。
「暇つぶしってわけでもないが、行ってみる価値はありそうだな」

>>65
「せんせぇ…どこなのぉ?ヒックッ…」
泣き叫ぶ少女の歩く先に、1人の男が立つ。
「折角の可愛い顔が台無しだな…だが安心しろ、俺がいる。」
カメラをぶら下げ悠然と怪物を見据えるその男。
門矢士は少女を抱き上げシスター達の元へ預ける。
「どうやら、この世界でも俺の出番とやらはあるらしい。」

1枚のカードを懐から取り出す。
【KAMEN RIDE……!!】
ベルトにカードを装填し、バックルを回転させ高らかに叫ぶ。
「変身!!」
【D E C A D E !!】
幾重にも重なるカードがマゼンタと黒のオーラと同化し士の体と同化する。
世界を旅し、全てを繋ぐ戦士が姿を現した。
1人の男が怪物に立ち向かうのを確認し、歩き出す。
「お前もヒーローって奴か?もしそうなら手を貸すぜ。」


69 名前:真性 ◆8SWM8niap6 [sage] 投稿日:2010/01/07(木) 22:52:36 0
名前:真性 道程 (まさが みちのり)
職業:童貞
勢力:悪(個人)
性別:男
年齢:22
身長:175cm
体重:57cm
性格:小市民、小悪党
外見:中肉中背もみあげ長し
外見2:――――

特殊能力:『フラスコの中の神様《パラダイムボトル》』
       物体を自在に透過・浸透し、浸透した領域に望んだ事象を励起する流動状の思念体"神様"を生み出す能力
       ただし生み出し・操作できる"神様"の体積は500mlのペットボトルと同量であり、動かす速度もシャボン玉のように遅く不安定
       500mlの範囲内ならばいくらでも分割して別個操作や細く引き伸ばして動かしたりできるが精密性は反比例していく
       何か物体を作り出す場合は別途材料になる物が必要

備考:常日頃から平々凡々よりちょっと下の階級を生きてきた非リア充
    ある日突然降って湧いたように異能力に目覚め、いろいろ実験・検証していくうちに悪用してみたいという願望が芽生える
    基本的に小市民なので殺人やテロなどの大それた犯罪ができず、能力でちまちまと小金を偽造して糊口を凌いでいた
    口癖は「悪いことしてぇ」

70 名前:秤乃 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/01/07(木) 22:56:24 0
名前: 秤乃 光(はかりの ひかる)・秤乃 暗楽(はかりの くらら)
職業:各勢力の均衡維持『テンパランス』
勢力:光、ヒーロー・暗楽、ヴィラン
性別:両方女
年齢:見た目13くらい
身長:年相応にちんまい
体重: 年相応に軽い
性格:光、天真爛漫・暗楽、高飛車で高圧的
外見:それぞれ白と黒のゴスロリ
   さらりと流れる淡い金髪と黒髪
   太陽を思わせる瞳と、宇宙のように黒く静かな瞳
   白磁を思わせる肌を除けば、全てがあべこべとなっている
外見2:バイザーと絵筆型のワンドを装備。ゴスロリが宝石でドレスアップ

特殊能力: 『ワンダフルパレット』
      物から『色』を借りて魔法めいた事を起こす。
      ただし光は『暖色』暗楽は『寒色』のみ。
      中間の色はどちらも使える。

備考: 『ヒーロー』がいなければ、当然のように世の中は『ヴィラン』に支配されてしまう
    けれども『ヴィラン』を根絶やしにすればいいかと言われたら、そうではない
    巨悪を失った『ヒーロー』は段々と衰退していくだろう
    ともすれば後にまた生まれるであろう『巨悪』を抑える事は至難となってしまう
    そうでなくとも、何かと物を壊すなど副次的被害を生んでいる『ヒーロー』が社会で許容されているのは、『巨悪がいるから』に他ならない
    故に必要なのは『ヒーロー』と『ヴィラン』の均衡であり拮抗なのだ
    『ヒーロー』『ヴィラン』各々に手を貸す事でそれぞれのバランスを保つ事が『テンパランス』の使命

二人で一人、的な事をやりたかったのです。結構バラバラになりそうだけど。どうぞよろしくお願いします。

71 名前:本舘 ◇SGue2uUfkw [sage] 投稿日:2010/01/07(木) 23:46:43 0
>>65「ゲホッ!ゴホッ!!」
ちっ…油断した…。
教会まで吹っ飛ばされるとはね。
しかしまあ、あの煙をダイレクトに受けなかっただけラッキーだったか。
あの煙はどう見てもただの煙じゃない…。
アレだけはマトモに受けちゃ駄目だな。
それにしても、大したパンチ力だ…。
「やっぱり戦闘はこうじゃないとね…。良いよ、君。
 さ、続きだ。…ん?」
>>68>「お前もヒーローって奴か?もしそうなら手を貸すぜ。」
突如目の前に一人の男が現れた。
さっきどこかからディケイド!って声が聞こえたが、コイツの事か?
見たところ、敵ではなさそうだが…。
「僕がヒーロー?いや…それは間違いだ。
 僕はヒーローでもヴィランでもない。中立的立場の人間だ。
 あの化物と闘ってるのは正義の為じゃなく、ただの暇潰し。」
男に一通り説明をし、再び大剣を構える。
「君も楽しそうな男だね。あの怪物を倒したら僕の相手をしてくれないか?」
男の返事を聞く前に、怪物に向けて垂直に大剣を投げる。
突き刺されば、致命的なダメージになるだろう。

72 名前:星 真一 ◆gdItqyWvZU [sage] 投稿日:2010/01/07(木) 23:50:27 0
教会がある地区までたどり着くと徹底的に家やらなにやら破壊されているという
ひどい有様だった。
「ちくしょう……この状況じゃ…クソ」
と辺りを見回したその時に子供達の悲鳴が聞こえる。
「そこか!」
急いで子供の悲鳴が聞こえた場所に行くとシスターと子供達が居た。
無事な事に安心して、声をかける。
「シスター、ガキ共心配したぜ?ここから一時避難するんだ」
するとシスターが立ち上がり、
「それはできません、ここを失ったらこの子達の家がなくなってしまいます!」
子供達はみんな捨て子でこの教会に拾われて育てられている、その教会がなくなれば住む場所はなくなってしまうのだ。
「あくまで一時避難だ、別に捨てるわけじゃない」
それでも食い下がってくるシスターに少し切れた。
「馬鹿野朗!命の方がずっと大切だろうが!それに生きてればチャンスなんて幾らでもあるんだ!
それを無くすような真似はするんじゃねぇ!」
この言葉にシスターは納得してくれたようですぐに子供達を誘導して教会から出て行く。
「さぁて…ここからは俺の仕事だな…」

誰もいなくなったのを確認して魔導衣の機動詠唱を唱える
『我 この世の理において 邪な存在を 屠る狩人なり』

『その名において 顕現する 汝 その名を――――』

『■▲●■▲―――』

最後の部分のみは人間の言語では発音できない。
唱え終わると蒼い外套を着た長髪の男が存在していた。
そして魔導衣から声がする。
『魔導衣<戦闘形態>に変換完了』
怪物がいる方向にそして全力で駆け抜けて飛び蹴りを叩き込む
「さぁて、俺の大事な物には指1本触れさせねぇぞ覚悟しな!」






73 名前:秤乃 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/01/08(金) 00:21:20 0
「わー、すっごーい! あんな化物作っちゃうなんて、岡田博士ったらとんでもない○○○イなのねー!」

本舘とEスケルトンの邂逅を上空から眺めつつ、少女は両手を叩き嬉々とした表情でそう言った。
地上を見つめる瞳は太陽を沈めたかのように輝いていて、風に揺れる淡い金髪からは光の粒子が振り撒かれている錯覚さえ覚えさせられる。
純白のゴスロリ服を身にまとい無邪気に笑顔を浮かべる彼女の名は、秤乃光。
善悪の二元論で語るならば、所属は一応『ヒーロー』と言う事になる。

彼女の眼下では相変わらず、役に立たない割に騒ぎ立てる警官隊と、死等を繰り広げる一人と一体がいた。
もっとも前者は、彼女にとっては果てしなくどうでもいい。
肝心なのは後者、即ち本舘梁とEスケルトンだ。

「それにしてもあの強化スーツ……ダッサいなあ。ぜーったい変身する前の方がイケメンでカッコいいのにい。
 ……って、あいたっ! うっわ〜……思いっきり殴られちゃって……」

全身を黒で覆うステレオタイプなスーツに頬をむすっと膨らませ、光は胸元から本舘の素顔が映された写真を取り出す。
写真を見つめながら右手を頬に当て、彼女は暫しうっとりとした表情を浮かべた。
けれどもふと我に返った彼女は再び視線を地上へと戻し、金色の瞳を微かに細める。

「うーん、あのお兄ちゃん。ちょっと旗色悪いかも……。お兄ちゃんの剣じゃ、ガイコツオバケを倒しきれないよお」

戦いを見守るに、響き渡る甲高い悲鳴を聞くに、本舘の大剣が投げ放った大剣はEスケルトンに通用しているようだった。
それどころか、致命傷にすら成り得るだろう。
けれどもそれは『致命傷』止まりだ。

Eスケルトンには常軌を逸した再生能力がある。
つまり彼の化物を絶命せしむるには『即死』、最低でも再生能力を上回る速さで傷を負わせ続けるしかない。

「しょうがないなあ、もう。新進きえーのヒーローを死なせる訳にもいかないし、手助けしてあげよっかな!」

言うが早いか、光は地上へ向けて急降下を始める。
地面すれすれまで垂直降下した彼女は、しかし激突の寸前で急停止し、その軌道をEスケルトンへと変更する。
同時に、

「いっくよー! ドレスアーップ!」

言葉と共に、彼女の肢体が光に包まれた。
輝きの尾を棚引かせながら彼女は直進し、

「きゅーてぃー! きぃいいいいいいいいいいいいいいいっく!」

巨大な頭蓋骨の眉間に渾身の蹴りを見舞った。
華奢な小枝のような脚から放たれた蹴りはしかしその外見に見合わぬ威力で、巨躯を誇る化物を転倒せしめた。
それもその筈、異形の髑髏を蹴り飛ばしたのは一人に非ず。
直前で乱入して来た目深のローブを纏った男もまた、怒りを込めた蹴撃を放っていたのだ。

着地と共に変身を終えた光はそのままスカートの裾を翻し、本舘に向き直る。

74 名前:秤乃 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/01/08(金) 00:23:06 0
ドレスアップを終えた彼女は純白のゴスロリはそのままに、けれども顔には淡い黄色のバイザーが。
右手には絵筆を模ったワンドが握られている。
そして彼女の首元は、その白さを際立たせるように三つの宝石に飾られていた。

「助けにきたよ! ……えーっと」

威勢よく声を発したはいいが、果たして彼をどう呼んだものかと光は逡巡する。
本名を呼ぶ訳にもいかず、かと言って他に呼び名もない。
まったく『ヒーロー』ならば、通り名の一つや二つくらい持っていてもいい筈なのだが。
ともかく、彼女は一番違和感の無い呼び方をひとまず選んだ。

即ち「お兄ちゃんっ!」と。

彼女が本舘に声を掛けると時を同じくして、Eスケルトンが立ち上がる。
大剣は治癒によって自然に抜け落ち、虚しい金属音をアスファルトの地面と協奏した。

「っ! 来るよお兄ちゃん! よく聞いてね? あの剣じゃあの化物は倒し切れないの。だから……!」

本舘の反応を待たず、光はワンドを空へと掲げる。

「おひさま! あなたの色を貸して!」

彼女の懇願に応えるように、陽光がワンドへと降り注いだ。
太陽の輝きを宿して、ワンドの絵筆部分が淡い山吹色に染まる。

「お兄ちゃん、何でもいいから新しい武器を出して! 私の『お絵描き』で強くしてあげるから!」

75 名前:秤乃 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/01/08(金) 00:41:05 0
あらら早くもタイプミスしてた…
×本舘の大剣が投げ放った大剣はEスケルトンに通用しているようだった。
○本舘が投げ放った大剣はEスケルトンに通用しているようだった。
脳内修正お願いしまーす

76 名前:テラシ ◇vCpQPGCxWE [sage 代理投稿gt;gt;450 ] 投稿日:2010/01/08(金) 00:51:00 0
郊外では美術館と、巨大な横渡った恐竜の骨のような石段、そこを行き交う帽子と灰色のコートを被った
初老の紳士的人々。寒風に塗れての手の摩りかたも、帽子の被り直し方も、みんな紳士的な人々。
隣接しているコーヒー専門店はテラシの行き着けの場所だ。テラスには狐のような黄金の時計をはめた金持ちの男が
すうっと蜃気楼みたいな息を吐きながら薄そうなコーヒーの味を吟味している。
赤煉瓦の外郭の上に窓ガラスが伸びている。店の名前がペインティングされ、扉を開けるとくりくりと鈴の音が鳴る。
黒々としたコーヒー豆がプラスチックのケースの中に入って陳列され、宇宙時代を思わせる焙煎機が横たわっている。
アットホームな感じの感傷的なオレンジのような照明の明かりが隅々まで行き届いている。
テラシは席に着き、白髪のマスターにコーヒーを注文する。
奥の席では何人かの赤ら顔の男が談笑をしながら、TVに目を向けている。本来静謐なはずの、クリーンなコーヒー専門店だ。
彼らの下品な声はテラシに不愉快に聞こえる。
TVでは教会に現れた化け者が暴挙している様子が流れている。やがて報道はスタジオの中継に変わり、
アナウンサーが緊密した声を張り上げながら文章を読み上げる。
赤ら顔の連中は相変わらず蓄音機みたいに口を広げながら、TVに向けて唾を飛ばしている。
テラシは底なしの悪意のようなコーヒーを覗き込み、それから顔を上げる。
立ち上がり、頭を撫でながらその男達に近づく。
ポケットから長身のリボルバー拳銃を取り出す。呪詛的な魔方陣のようなシャンデリアの明かりを受けて、
それはピサの斜塔のようにそそり立っている。
マスターは何事か飲み込めないらしく、困ったような顔で、テラシを凝視している。
そんな目で見るな、とテラシは思う。そんなよぼよぼの顔で、俺を見るな。
だべっていた男達は視線をテラシに向け、何事かをまくしたてる。それはテラシにとって空間を引っ掻くような、完璧な雑音だ。
注文と違う品物だったことにいちゃもんをつけるように、彼らは何事かを言い、テラシはその場に直立したまま動かない。
疑問を投げかけるように、心配そうな顔でマスターがこちらを見ている。その憂慮がテラシの心の奥底に流れ込んでくる。
しかしテラシには疑念も、疑問もない。
物語が動き出し、テラシは引き金を引く。
短い発砲音と閃光の後、まるで初めからそうしていたように、
海から陸に上げられた巨大なUMAのような肉塊が客席のソファの上に倒れている。
銃弾が弾倉から筒の中に吸い込まれ、やがて脳髄の奥まで行き届いた感覚の余韻に暫く耽溺する。
魂の一服だ。
「電気を消せ」
テラシが命令する。マスターが驚愕の面持ちで、目の前に人参をぶら下げられた馬のような挙動で
ブレーカーに駆け寄り、電源の全てを落とした。

そのコーヒー専門店はテラシの行きつけの場所だった。
しかしどんなに気に入ろうと、そこは安全地帯にはならない。
ましてやこの薄暗い街の中では。

教会の周縁を警官の死体が、まるで巨大な地震がきてみんな一斉に伏せろと命じられたみたいに倒れている。
それはとても奇妙な光景だ。
「情けないったらありゃしねえな。簡単に死にやがって。ま、それが便利でもあるけどな」
一人の若い警官が、泥だらけの地面のなかに倒れている。人間としての意味ある尊厳もない、ただの残骸だ。
その死体は泥そのものだった。目は有り得ない深さまで窪み、口で顎が砕かれたためにひしゃげていた。
その口から、スキンヘッドの小人が登場する。それは猿から人間への進化過程のように除々に
大きくなり、やがて等身大の男の姿を取り戻した。
辺りを見回す。ごちゃごちゃした流星群のような戦争。骸骨の目玉から触手が生えたEスケルトンの禍々しい形相。
街の有名人達。思い思いの人相で化物と対峙している。
テラシは行き交う戦火と喧騒の中に立ち尽くし、ぼうっとしている。

「ま、しばらく待つか……」



77 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/01/08(金) 00:53:41 0
従士きたあぁぁぁ!!!!

78 名前:Eスケルトン ◆f1UBcxNLkXUi [sage] 投稿日:2010/01/08(金) 01:03:21 0
>>68
『ギギギゲゥーーーーーー』
突如現れたディケイドに気づいたEスケルトンは興奮したのか一際大きく叫ぶと、力任せに近くにあった教会の長いすを拳で叩き壊すと、ディケイドと本舘へと殴りかかっていった
>>69>>70
投げられた大剣をEスケルトンは巨大な右手の渾身の裏剣で撃墜し、二人目掛けてあの煙を噴射しようとした、その時
星の放った飛び蹴りがEスケルトンに炸裂し、Eスケルトンは窓を吹き飛ばして教会の裏手の道路に叩きつけられた
『グルルルルルルルル…グォゥゥゥゥゥ』
憎しみの篭った声で鳴きながらEスケルトンは立ち上がると、近くにあった車を巨大な右腕で軽々と持ち上げ、窓から追撃しようと姿を見せた星目掛けて投げつける

79 名前:Eスケルトン ◆f1UBcxNLkXUi [sage] 投稿日:2010/01/08(金) 01:05:46 0
すいません、被ったので上は無かった事にしてください

80 名前:鳴滝[sage] 投稿日:2010/01/08(金) 01:11:36 O
おのれディケイド…お前のせいでこの世界も破壊されてしまったぞ。

81 名前:Eスケルトン ◆f1UBcxNLkXUi [sage] 投稿日:2010/01/08(金) 01:23:47 0
>>74
『グギュルルルルルルルフゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ』
大剣やダブルキックを受け、完全にぶち切れたEスケルトンは、すさまじい雄叫びを上げると
左目の中にある顔から周囲に狂ったように溶解ガスを噴射し、右目の中から生える巨大な右手をぶんぶんとすさまじい勢いで振りかざしながら、ヒーロー等に突っ込んできた
拳を受けた電信柱が簡単に圧し折れ、ガスを喰らった路上駐車の車が一瞬でどろどろに溶けていく

82 名前:秤乃 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/01/08(金) 01:36:03 0
意を決して潜った地下は、とても埃臭かった。
埃と臭気を吸い込んでしまって思わず咳が出そうになったけど、それでバレちゃったら格好が付かない。
仕方なく手で押さえて押し殺すけど、わざわざそんな事をしなくちゃいけないのが胸が焼けるみたいに不愉快だった。
ただでさえこの劣悪な居心地に辟易とさせられいたのに、余計にむかつく。
良く見たらお気に入りの黒いゴスまで舞い上がった埃に塗れていて、もっとむかつきが膨れ上がった。
目が自然に細まるのが分かる。そしてこうも苛々させられているのが更なる苛立ちを生んでいく。

こうなってはもう止まらない。苛立ちは呼気を吹き込まれた風船のように膨れ上がり、胸と心を圧迫する。
私は一度足を止めると目を瞑って、膨張した風船を萎めようと深く息を吐いた。
何回か吸っては吐いてを繰り返す内に、ようやく怒気が静まっていくのを感じる。

そうして再び歩みを進め暫くすると、テレビの前で一人大騒ぎしている男を見つけた。
とっても馬鹿みたいね。あんなのが本当に天才博士なのかしら?
ひとまず胸元から何枚か写真を取り出して、それを一枚ずつめくって確認してみる。
すると一枚が、丁度テレビの前にいる男の顔と合致した。

「……どうやらここで正解みたいね。あーやだやだ、こんなとこさっさとおさらばしたかったのに」

とは言え今更愚痴を零しても始まらないわ。
さてどうやって話しかけようかしら。
そんな事を考えていると、不意に辺りが一際暗くなった。

証明が落ちたのか。ボロっちさもここまでくると大概ね。
そう思ったけど、よく見たら違った。
これは私に『何か大きな影が被さっている』んだわ。

振り返ってみると、そこにはテレビに映っているそれと同じ化物が私を睨んでいた。
侵入者排除の対策かしら? でもどうでもいいの。
むしろ丁度いい、おあつらえ向きだわ。

「いらっしゃい、噛ませ犬さん。私ね、貴方のパパにお目通し願いたいの。だから付いてきてくれるかしら?」

言いながら私は予め手にしておいたワンドを振るう。
一瞬遅れて、私に被さっていた影が命を得たかのように蠢き始めた。

さて。

83 名前:秤乃暗楽 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/01/08(金) 01:37:02 0
「……こんにちは、岡田博士。随分とご機嫌ね? でも残念ながら貴方のエデンは完成しないわよ?」

侵入者の事など予期もしていなかったのか、私の言葉に岡田博士は随分と怪訝な表情を浮かべた。
でもそれも束の間。よっぽど私の言う事が気に食わなかったみたい。
すぐにその表情は怒りに挿げ変わったわ。だからって、別に怖くもなんともないんだけど。

「相手が悪いわ。テレビの中のその子がいる所には、沢山のヒーローがいるの。ちょっと分が悪いわねぇ。
 それにその子は失敗作よ? だって……」

言葉と共に、私はもう一度ワンドで弧を描く。
背後の暗闇に控えさせておいた醜い髑髏が、姿を現す。
自らの影から出で伸びた黒の鎖に、自由の全てを奪われて。

「自分の影に喰べられちゃいなさい? 失敗作ちゃん」

それは死刑宣告。
化物を縛っていた鎖が再び蠕動する。
姿を変え幾多の蛇となった影は主に牙を剥き、食い散らしていく。

そして化物がいたそこには、何もいなくなった。

「だって……こんなか弱い女の子に殺されちゃうんだもの。でも……幾ら失敗作とは言え殺しちゃったのは悪かったわ」

勿論悪かっただなんて微塵も思ってない。
それこそさっきの魔物みたいに、影も形も存在しないわ。
このキ○○○博士もきっとそれは分かってる。肝心なのは、そこから続く言葉なんだって。

「だから、貴方の研究に協力してあげる。例えばさっきの蠢く影、貴方なら解析して自分のものに出来るんじゃない?
 そうすれば貴方はもーっと強くておぞましい化物を……ね?」

最後は敢えて言葉にしない。
そして私は提案の是非を問う意を込めて、岡田博士に微笑みを投げ掛けた。

84 名前:秤乃 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/01/08(金) 01:38:41 0
ひぃぃ被せちゃいましたか、申し訳ないのです
そして光も暗楽もそれぞれ絡みに行かせて頂きましたのです
よろしくお願いしますなのです

85 名前:星 真一 ◆gdItqyWvZU [sage] 投稿日:2010/01/08(金) 02:53:01 0
「ありゃりゃ本気になっちまったか…」
拳の攻撃を紙一重で回避して後方に一旦下がる。
目の前で車が溶かされている。もっとも彼は魔術の付与効果で
無害なガスに変換されているので効かない訳だが。
「うーん…とりあえず凍らせて封じちまうか」
『武器選択 魔銃 送信開始<インストール>』
思考トレース機能で、収納空間より二挺の回転式拳銃が両手に一丁ずつ出現する。
『付与魔術弾丸選択 極低温・凍結 送信開始<インストール>』
やはりこの二挺の拳銃を握るときに慣れそうもない暴力の衝動が駆け巡る。
「さぁて知り合いが世話になった分、利子付けてたっぷり返さなきゃなァ!」
目にも止まらぬ速さで弾丸が凶暴な唸り声を上げて真っ直ぐに駆け抜ける。
左目の顔、右目の腕、そして両足を凍らせる。
「お前等、動きは封じ込めたぞあとは必殺技をぶち込んでやれば良い」
その場にいた奴等全員にその事を伝える。


86 名前:岡田 ◆f1UBcxNLkXUi [sage] 投稿日:2010/01/08(金) 02:53:06 0
あっという間にEスケルトンを倒した少女に、しかし、岡田はまるで怯む様子は無い
相変わらずの怒りの形相でじっと秤乃を眺めていたが
やがてふっと口の端に笑みを浮かべると、大きな声でげらげらと笑い出した
「あっはっはっはっはっはっはっはっはっは…はははははははは…き…君は何を言っているんだ?私の研究に協力する?はっはっはっはっはっはっは」
一通り馬鹿笑いした岡田は、ふぅーとため息をつくと、心底陰鬱げな表情になる
「………あのEスケルトンは悪魔で地球の生態系の頂点に立つために作られた存在、いわば市民だ。戦闘用のEデアンはもっともっと強く、そして…短命何だよ…」
そこで岡田は顔を挙上げ、正体不明の少女に視線を向けた
「君の欲しいのはそんな玩具みたいな怪人だろう?ふんっ……ふふふ……つまらんねぇ…つまらないよ……」
そう言うと、岡田は頭を抱えてしまう

自らが述べた通り、岡田にとって戦闘用の怪人を作るなど、つまらない事この上ない作業だった
戦闘用の怪人は戦闘に必要な物以外をできるだけ削って作った方が、強力で強くなる
だから、例え単体で人類を滅ぼせる怪物を作っても、その怪人は長く生きる事はできない
ソレは、岡田の望むものではなかった
彼の望む最強の生物は、恐るべき繁殖力と、単体の強さで人類文明を衰退させ、食物連鎖の頂点に立つ人類を蹴散らしてその頂点に立って、永久に地球の覇者として君臨し続ける、そんな存在だ
そこでウイルスでも作ればいいのではないかと思うかも知れないが、その辺はこの男の美学に反している
悪魔で目に見えて強い存在で無ければならないらしい
奇才とは複雑な物である

しかし、今目の前にいる少女が望んでいる物は、恐らく力ばかり無駄に強い使い捨ての花火の様な怪物だ
そんな物を作るなど、岡田の人生にとって無駄以外の何物でもない
数万年の月日をかけて作られた人類文明を、岡田は一世紀に満たない時間で倒さねばならないのだ
その短い時間の間に、こんなわけのわからない小娘のいたずらの様な怪物作りに付き合っている時間など無い

しかし、残念な事に今岡田の手元に戦える怪人は一体もいない
と言うか、自分の存在が他者に知られているはずの無い現状で、自分の守りなどEスケルトンを作る過程でできたプロトタイプに、洗脳処置を施した即席の護衛で十分なはずだったのだ
そこに、こんな強敵が襲撃してくれば、岡田に彼女の要求を拒む力など無い

(くそう、この場に、この場にEデーモンやEブラックホルスがいれば…)
悔しさに塗れた岡田は、組織を全滅させる際誕生させた戦闘用のEデアン達の勇士を思い出し、拳を握り締める
残念ながら強力な力を持つ彼等は、戦いが終わって間もなく、骨も残さず蒸発してしまっていた
(Eデーモンのレーザー砲でこの娘を百裂きにしてくれたい!Eブラックホルスの槍でこの娘の眉間を串刺しにしてやりたい!)
歯を食いしばり、眉間をしわを寄せながら岡田は妄想の中で秤乃を百裂きにし、焼き払い、更に存在していた地面さえ蒸発させるまで攻撃すると
気が少し落ち着いたらしく、顔を上げ、引きつった笑みを少女に見せる
「ぃ〜いだろう!君の協力を受けようじゃないか!糞ぅ!」
新たなEデアンが出来上がった時の、最初の犠牲者を頭の中で決定した岡田は、机を壊さんばかりに力を入れて叩きながら、言った

87 名前:秤乃 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/01/08(金) 03:20:05 0

>「ぃ〜いだろう!君の協力を受けようじゃないか!糞ぅ!」

ひとまず、私は疑問を抱いた。
何故この男は私の素晴らしい提案を受けて、こうも悔しそうにしているのだろう。
それに凄まじいまでの敵意を感じるのは何故かしら?

……もしかして、妙な勘違いをしてるとか?
あり得るわね、見た所プライドが高い上に気難しそうだし。
やだやだ、研究者ってどれも自己評価の高いナルシ気質持ってたりするのよねぇ。

「……えっとね? 私達の今後の友好的な関係の為に言っておくけど、私は別に化物なんて欲しくないのよ?」

本当ならこう言う時は笑顔の一つでも浮かべておくべきなんだろうけど、
こんな○チ○○の為に私が努力を強いられるなんてあり得ない。
いつも通りの調子で喋らせてもらうわよ。

「だってあんなの、ペットにするには悪趣味過ぎるわ? あれならまだ犬や猫でも飼った方がいいわよ。まあ、一番可愛いのはコアラなんだけどね?
 ……って、そんな事はどうでもいいわ。私の目的はただ一つ。『貴方の手伝い』でしかないのよ。分かるかしら?」

ワンドに自らの影を宿して、虚空をキャンバスに絵を連ねる。
見るからにひ弱そうな髑髏と強大な化物。
その二つを混ぜ合わせて、まったく新しい化物を描き上げる。

「考えてもみて? その……Eデアンだったかしら? それをも上回る強さを秘めた、尚も市民たる生き物。
 私にはどうか分からないけど、芸術的じゃない? 理想的じゃない? ……私は、貴方にそう言う化物を作らせてあげたいのよ」

誤解の種は全て潰しておかなくてはならない。
この男には見せかけだとしても、信頼関係が必要なのだ。
けれども芽吹いた誤解はそこに根付き、段々と皹を広げていき、やがては崩壊にまで導いてしまう。

「別に断ったからと言ってどうこうする訳じゃないわ。……だからもう一度聞くわよ?
 今度はもっとシンプルに。私の協力は『必要』? それとも『不要』かしら?」

88 名前:本舘 ◇SGue2uUfkw 代理[] 投稿日:2010/01/08(金) 11:34:58 0

>>72>>74>>81>『グギュルルルルルルルフゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ』
僕の投げた剣が命中する直前に新たな人物が2人現れ、怪物に蹴りを浴びせる。
そこに追撃する形で剣が化物の体に突き刺さる。
……というより、星さんの方は何度か面識があるのだが…。
>「助けにきたよ! ……えーっと」
>「お兄ちゃんっ!」
………僕は一人っ子だ!
妹?…いや、そんな話は聞いたことが無いぞ。
彼女の素性が気になるところだが、大剣が地面に落ちた音を聞き、再び怪物に視線を戻す。
「…回復力も化物級か…面白い。」
>「っ! 来るよお兄ちゃん! よく聞いてね? あの剣じゃあの化物は倒し切れないの。だから……!」
>「おひさま! あなたの色を貸して!」
>「お兄ちゃん、何でもいいから新しい武器を出して! 私の『お絵描き』で強くしてあげるから!」
一体この子は何者なんだ?
なぜこの化物の事を知っている?
……今は化物を倒す事に専念するか。
新しい武器と言ったな…お絵描きというワードが非常に気になるが…。
>>85
化物はあの煙を噴射し、右手をブンブン振りながらこちらに向かって来ている。
「ちっ!一旦間を取って…」
と思ったが、星さんのサポートにより化物の体が凍り付く。
ナイスだ、星さん。
「今しか無いな…コレで良いか?」
ベルトにカードを差し込む。
手にした武器は…十文字槍。
僕は十文字槍を謎の少女に見せる。
ホントに強くしてくれるのか…?


89 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/01/08(金) 11:44:47 0
仮面ライダーディバイド

90 名前:子供達[sage] 投稿日:2010/01/08(金) 12:32:45 O
「わ〜仮面ライダーだ!サインちょうだい!」
ディケイドの回りに子供達が集まり始めた

91 名前:麗源新貴 ◆S00N9pbnYw [sage] 投稿日:2010/01/08(金) 16:26:01 0
本舘と別れた麗源は、単なるバス付きの護送員ではなく、
平和の使者として、白黒の体色を利用しながら、果敢に牛の物真似に挑戦していた。
彼の心中には、ヒーローという存在に対し、独特の考えが棲み付いている。
それは即ち、笑顔を守る、ということ。
命を守るだけならば、警察や救急隊員、果ては通りすがりの一般人にも可能である。
対してヒーローとは、そういった、極々基本の義務を遂行してなお、
更に被害者達の強張った心を解して、危機が去った事を宣言せねばならない。
だからこそ彼は、こうして道化に徹する事ができようというものである。
成人してまで、そういった青臭い心を大切に守り続けているのは、些か異常かもしれないが、
それは、ニートという、ピーターパンじみた立ち位置に佇む彼ならではの事であるし、
また、こんな狂った街には、麗源のようなひょうきんが、多少は求められているのかもしれない。

しかしながら現実として、危機が去った事は確かではあるが、
園児達はと言うと、平穏の再臨に対して笑うどころか、誰かの嗚咽を発端として、
誘爆現象的に、涙声の永久連鎖を炸裂させている。明らかに、腹に溜めていた恐怖がはち切れた体であった。
同乗していた保母が、あちこち飛び回って慰めにかかるが、まるで功を奏さない。
麗源も援護射撃に、先程から根気良く、愛想の良いモーモーを繰り返しているものの、
園児たちは泣き止むどころか、返ってその珍妙な様に驚かされていた。
全く、ヒーローに対して遥か以前の問題だった。

彼の胸には自然と、バスに飛び乗ってから言い放ったフレーズが、しつこくリフレインしていた。
己はヒーローなのだと、余りに高らかに布告したことを覚えている。
半ば勢いに任せた、相手方の動揺を誘うための、一種の方便だったのではあるが、
今更のように、それに対する負い目が、鎌首をもたげてきている。

実際のところ、彼の性癖は、ヒーロー向きな誠実に違いはない。
ただその誠実は、何度も何度も、恐ろしく濃度の高い漂白剤に漬け込まれて、
ついにはあちこち焼け爛れた挙句、綻びてくたびれきっている。
そうして、彼はその形状を輪状に模りながら、
己の頭の中に拵えた、余りに偉大にして神聖な、ヒーローの虚像に括りつけ、
それに自らの首を吊り上げて、苦しい苦しいと呻いている。
また、彼の足には、自尊心への肥やしや、存在意義の充填と言った、
とてもヒーローとして純粋とは言えない、歪んだ行動原理が、重りとしてぶら下がっていた。
彼の体は、背反する理想と現実によって引き千切られようとしている。
それでいて、自ら創り出した処刑装置に捕らえられて猶、時々は笑うこともある。
余りにテンプレイト的な葛藤に苦しむ己に対する、冷た過ぎる嘲笑……。

92 名前:麗源新貴 ◆S00N9pbnYw [sage] 投稿日:2010/01/08(金) 16:28:37 0
心の内に氷塊を抱いた麗源の、黒いスカーフの裾を引く者がいた。
振り返った視界の底辺に、彼の体長の半にも満たない幼女が佇んでいる。

「あの。」
「え……あ、ああ。俺、ホルスタインって呼ばれて……。」
「靴。」

僅かな期待に浮遊感を覚えた彼だが、重力の鎖は依然、現実として存在していた。
目上の者に叱責されるかのようにうな垂れながら、
懐に忍ばせておいた、小さな桃色の靴を取り出した。
今月の彼のラッキーカラーはピンクだという。
正義の暗示に当てられた彼は、戦闘時において危機に陥った場合、
その靴が何らかの奇跡を運ぶか知れないと判断し、咄嗟に拝借していたのだった。
結果としては天運どころか、幼女からの冷視を受ける嵌めになってしまった。
正義の逆位置はモラルの欠如。児童相手に、自己中心的な勝手を働いてしまった。
確かに正位置を引いた筈なのだが、と思いながら、
幼女が靴をきれいに履きこなして、停止したバスを降りる背を見送った。

バスが園児を送り出したどの家も、玄関には両親が待ち受けており、
この幼女の場合にも例外はなく、二親が彼女を迎えて家へ入る。
幼女と母親は、連れ立ってするりとたたきへ滑り込み、
男親が後のしんがりを務めながら、ふとバスの中の麗源を顧みた。
家に点った灯は眩しい。麗源に、父親の顔は垣間見れなかったが、視線が接触する感覚があった。
たまらず注視を外した麗源は、まだ血色の回復しない保母に促され、
空いた座席に腰を下ろして、落ち着かず、視線を泳がせた。
父親の双眸に込められた意図を、無理に読み聞かされるのが恐ろしい。
発車したバスは、夢に走って、ふと止まり、現に走って、また止まり、
麗源は、この時が早く過ぎれば良いとも、永遠に続けば良いとも思う。
やがて最後の園児を見送って、バスは幼稚園の駐車場へ帰った。
空には満月とも半月ともつかない、半端な月が出ている。

93 名前:麗源新貴 ◆S00N9pbnYw [sage] 投稿日:2010/01/08(金) 16:30:35 0
保母は麗源に、子供の模範らしい慇懃な礼を述べて、
バスを離れ、自家用らしい軽自動車を駆り、走り去る。
麗源は戦車のカードを回収して、続いてバスを降りようとしながらも、
未だハンドルから手を離さない運転手を見て、戸惑う。
彼の顔面はフロントガラスに向かっており、表情は伺い知れない。
二度とこんな事件が起きないよう、肝に銘じます――。
連中に脅されながらも、運転を続けたその勇気、感嘆しました――。
必ず、奴らを見つけ出して制裁を下してやります――。
どれも違う。気の利いた台詞など、そうそう浮かぶものではない。
いっそ無言のまま、適当に頭を下げて帰るかとも考えるが、図らずも、運転手の方から沈黙を破られた。

「あんたさ、ヒーローなんだろう?」
「……一応。」
「窓は……どうにか、ならねえよなあ。」

振り返った彼は、目尻を下げ口角を捻り上げて、
年甲斐もない、媚びるような面持ちを練り固め、割れた窓に視線を注いだ。
麗源はたじろぎながら、尋常な回答を選んだ。

「保険、下りるんじゃあ……。ちょっと、分からないです。」

その瞬間、運転手の表情はそのままにして、
目の奥に浮かぶ色が、素早く流転するのを、麗源は見逃さなかった。

「そうかい。いや、別にどうってことはないんだ。
 それにしても、お疲れさん。いやあ、今日は色々と驚かされちゃったよ。
 それじゃ、あの黒い――鎧じゃない方の彼にも、よろしく言っといてくれ。」

つまるところは、そういうことである。
善良な一般人は、ヒーローがヒーロー足りえぬ場合、
時として――あの『眼』で、ヒーローもどきを殺しにかかる。
靴を取られた少女の眼。娘に完璧な守護を施さなかった事に対する、侮蔑を込めた父親の眼。
破損した窓に、何らか都合を運んできてくれるという期待を、裏切られた眼。
何故貴様は、あのようではではないのかと――、
立派な英雄の像を指差しながら、銃口より怖い、眼光を突きつけて来る。
取りも直さずその像は、麗源が首を括っているヒーローの像と、寸分の狂いもない。

バスを降りた麗源は、風に吹かれるに任せ、何処へともなく歩き去った。

94 名前:秤乃光 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/01/08(金) 18:24:34 0
時を全く同じくして闖入したもう一人のヒーロー。
素顔の見えない彼を、光は何とか思い出そうと腕を組んで苦心する。
たっぷり数秒間首を傾げてようやく、彼の魔道衣からその正体が星真一であると言う結論が導き出された。

そして彼女が思考の海を悠々と遊覧している間に、星はその手に一対の銃を取り魔物の自由を奪い去っていた。

「へぇ〜、あっちのオジちゃんもなかなかやるんだあ。あっちは……あの格好の方がカッコいいかも……」

本舘には聞こえないよう小さく、目を細めた光が零す。
勿論本人にも聞こえてはマズい呟きは誰の耳にも入る事無く、あえなく大気に霧散した。
ともかく、化物は凍り付き一切の身動きを封じられている。
これ以上の好機など望むべくもない。

>「今しか無いな…コレで良いか?」

丁度良く本舘も新たに武器を取り出した。
彼が光に差し出したのは、太陽の光を受けて鋭利に煌く十文字の槍。
けれどもやはり、Eスケルトンを殺しきるだけの力は秘めていそうにない。

「ばっちし! 任せてお兄ちゃん!」

故に光は、その長い柄の先にある小振りな刃に筆を走らせた。
陽光の輝きが尾を引きながら、新たな姿へと描かれていく。
そうして書き加えられたのは光が織り成す巨大な刃。

「まだだよ〜! お花さん! あなたの色も貸してちょうだい!」

教会の傍らに生えていた真っ赤な花を、振り回されたワンドの先端が捉える。
ワンドが赤色を宿し、更に書き足されるのは紅蓮の炎。

「これならきっと……! いくよっ! お兄ちゃん!」

自らも筆に残された赤で炎の剣を描き手に取ると、光は魔物目掛け地を蹴り勢いよく駆け出した。

「くっらえー! きゅーてぃー! すらーっしゅ!」

95 名前:岡田 ◆f1UBcxNLkXUi [sage] 投稿日:2010/01/08(金) 18:35:46 0
(Eスケルトンの方は適当に始末してもらって結構です)

>>87
秤乃の言葉に、岡田の動きがぴたりと止まる
(この娘…おかしいんじゃないのか?)
そして、どうやら自分の目的をしっかりと察し、なおかつ無償で協力してくれようとしている正体不明の少女に、岡田は珍しい虫でも見るような目で彼女を見始めた
(Eデアンが地球の支配者になれば、この娘だって困るはずだがな…、アレか?キチ○○と言う奴なのか?…まさか!!)
やがて自分の事を棚に上げて秤乃をどんどんアレな人に仕立て上げていった岡田は、ある結論にたどりつき、ぽんっと腕を叩くと、机からコピー用紙を取り出し、そこに何事か鉛筆でさらさらと書いていく
「やはり体力面を強化した方がいいだろうな…体つきからして華奢そうであるし…」
何事かぶつぶつ呟きながらやがて何かを書き終えると、岡田はそのコピー用紙を秤乃へと差し出した

名前: Eフローズンウィッチ
性別: 雌雄同体
年齢: 君(秤乃)と同じ年
身長: 3mを程度を予定
体重: 200kg程度を予定
性格: 恐らく恐怖や苦痛とは無縁
外見:(ここには岡田博士による口裂け女とイソギンチャクとナマコを足して2で割ったような奇怪な怪物の絵が書かれています)
特殊能力:改造手術によって負の感情を取り払い、更に新造細胞の導入で寿命200歳を保障
耐久力は拳銃弾程度では物ともせず、また、脳改造により脳を更に活用する事ができるため、恐らく魔法系の能力は増幅するはず
知力や思考能力は間違いなく動物レベルまで低下するが、まあそれを苦にする事はないと思うから安心して構わない
運動能力はEスケルトンの1,3倍、主食は主にタンパク質で、病気はほしないと言って過言ではないためすくすく育ち、一週間で10体から15体の子供を産み落とす事が可能
子供もライオンなどが生まれてからしばらくすると狩りができる要領で魔法が使えるようになる予定(この辺りは改善の余地アリ)
備考:改造手術はすぐにでも始められる

「こんな感じでどうだね?ん?私の計算ではこれで君は生態系の頂点に立つ存在になれるはずだが?」
絶句する秤乃に、妙に自信満々の笑みを浮かべながら、岡田はうんうんと頷く
どうやら、秤乃の「協力」と言う言葉の意味を盛大に勘違いしたらしい

96 名前:門矢士 ◆f80ibf2q32 [sage] 投稿日:2010/01/08(金) 18:38:37 0
>>71
黒い強化服の男がディケイドに向き直る。
>「僕がヒーロー?いや…それは間違いだ。
 僕はヒーローでもヴィランでもない。中立的立場の人間だ。
 あの化物と闘ってるのは正義の為じゃなく、ただの暇潰し。」

「なるほどな。俺もちょうど暇だったところだ…」
怪物に向き合う間もなく次々にヒーローやらヒロインやらが
現れる。
ディケイドは呆れたように腕組みしてその光景を眺めた。

>>72星真一
「魔法で変身するヒーローか?
マジカルなんとかって名前だな、多分」

>>73>>94
>「きゅーてぃー! きぃいいいいいいいいいいいいいいいっく!」
>「くっらえー! きゅーてぃー! すらーっしゅ!」

「…かなりぶっ飛んだガキだな。流石の俺もこいつには驚いた。」
いつの間にやら怪物は倒され辺りには子供が集まっていた。
さっきの教会の子供達だろう。

>>90
「サインか?まぁ、いいが…おい並べ。
ちゃんと並ばないと…クウガがサインしないぞ。」
いつの間にやら仲間の小野寺ユウスケの変身するクウガをつれてきて
サインさせるディケイド。
「え?あ、ちょ・・・士!!え?サイン!?
うん、いいよ!やるよ、俺!!こんなに俺って人気あったんだなぁ〜」
自分は変身を解き星達の方へ向う。

「あの怪物は自然のもんじゃなさそうだな。
誰だ?あいつの飼い主ってのは。」


97 名前:真性 ◆8SWM8niap6 [sage] 投稿日:2010/01/08(金) 18:41:54 0
>>69

思えば子供の頃から、俺は実にしょぼくれた人生を送ってきた。
鳶が産んだ鷹でもなければ、鷹が産んだ鳶でもない。言うなれば、鳩が産んだ鳩(小物)。そんな人生。
とりたてて愚鈍で不幸で貧乏ってわけじゃあないが、優秀で幸福で裕福だったわけでもない、平々凡々よりちょっと下の階級。

「あ〜〜〜、悪いことしてェ」

小物ここに極まれりといった漠然な願望は口をついて零れ、いつしか二言目にはそう呟く口癖めいた定型句になってしまった。
悪くなりたい。でも悪ってなんだろう?人を傷つける――悪だ、超悪だ。人を騙す――すっげえ悪だ。人から奪う――めちゃくちゃ悪だ。
つまるところ俺の思う悪を実行するには、どうしても、否が応にも、結局のところ、とりもなおさず、

「……人と関わらなきゃなんだよなァ」

人が怖いわけじゃない。傷つけるのが怖い。俺が起こした行動によって、理不尽に涙する人が生まれることを想像するだけで震えがくる。
心臓が真綿で絞殺されるような、罪悪感の縛鎖。叫び声を上げて脳裏に浮かんだイメージを吹き飛ばしたくなるほどの自己嫌悪。
そんな強迫観念めいたものが常に俺の三歩後を影を踏みつつついて周り、振り向けない恐怖は俺の対人関係に致命的な重石を載せる。
三秒毎に他人の顔色を窺わなきゃ不安で息が詰まりそうなしょぼくれた人生を逸脱したくて、俺は悪になりたかった。

閑話休題。拝啓皆さん。
それはそうと、俺は今銀行強盗をしています。

「か、金だせ、金だせよォ!!」
「金、と一口に申されましても金銭に関しましては当店各種様々な種類を取り揃えておりますがっ!?」
「いいから出せってばよぉ!早くしないとこ、殺すぞ!?」
「生殺与奪を疑問系で言われましても!」

緊張のあまり行員と愉快な会話をしてしまう。呂律が回ったのは僥倖と言うほかなかった。
カウンターに載せたバッグに入るだけ、と指定したはいいが、行員がいそいそとジッパーの中に食わせている札束に野口英世が多いのは気のせいか。

「硬貨はどうされますかっ!」
「ええっ!?」

まさか行員のほうから小銭までもっていけなんて言われるとは思ってなかったものだから、思考が固まってしまう。
どうしよう、もらえるなら貰ってったほうがいいのか?でも重くなるし……いや、でも硬貨は足が着きづらいというし。
そんな愚にもつかない逡巡に脳細胞を浪費させていたところ、不意にカウンターに影が落ちた。ひりつく悪寒に肩を押されて横っ飛びに転がる。
丁度俺の後頭部があった空間を貫いて、鉄パイプがカウンターに叩きつけられた。握るのはやたらガタイの良い若者。肩幅広ェ!

「チィッ……!!気付かれたか!」
「え、ええっ、なんだよお前ぇ!死にたいのか!?」
「しくじらなきゃそのままお前に返してたよそのセリフッ!」

やられた。銀行にどうして鉄パイプなんて物騒な代物が常備されているかはおいといて、先ほどの行員の質問は囮だったらしい。
俺が考え込んでる間にあの鉄パイプで後頭部を粉砕玉砕大喝采するつもりだったんだろう。古いか。

「ハッ、どこの世界に特殊警棒一本で銀行強盗するアホがいる?そんな奴に従う銀行員もだ!」

肩幅の広い若者は鉄パイプを握りなおし正中眼の構え。やたらにスキがないのは武道でもやってるからか。
対する俺は片手に握った真鍮製の特殊警棒。リーチも威力も向こうに劣る、致命的な得物の差。
だけれど俺は動じない。当然だ。どこの世界に特殊警棒一本で銀行強盗するアホがいる?そっくりそのままお返ししたい。

「できれば使いたくなかったぞ!ぶっちゃけまだ不安定だし――本気で殺しちゃうからな!?」

警棒を構え、俺の中枢に眠る異能の力を喚起する。得物は手先の延長。イメージする形は細長い蔓状。
巻きつけ巻きつけ、警棒の鍔から先端まで、螺旋を描くように異能の力場で覆っていき――燃えろ。

「<パラダイムボトル>――形状『炎上剣《フランベルジェ》』――!!」

望んだ事象が顕現した。警棒は、否――『警棒の周りの空気』が、劫火もかくやに燃え上がった。

98 名前:真性 ◆8SWM8niap6 [sage] 投稿日:2010/01/08(金) 19:21:06 0
フランベルジェ。『炎状剣』の名を冠す、その名もそのまま燃え盛る炎を象った儀礼長剣。
見た目の美しさもさることながら、その本質は波打つ刃によって治癒困難な創傷を相手に与えることのできる攻撃力だ。
……まあ。正直そんなことは今やってるこれとは微塵も関係ないんだけれど。

「てめェ……異能者だったのか――!!熱ッ!!」
「す、すげえだろ、俺の手の中にはちっこい神様がいるのさ……!熱ッ!!」

鉄パイプをのアドバンテージを無にされ戦闘力の後ろ盾を失った若者は、熱に煽られてか一歩後ずさる。
俺はといえば、自分で出した炎が熱すぎて長ったらしい自慢のモミアゲが導火線のようにじりじりと焦げていくのに内心冷や汗しまくっていた。
やべ、ちょっと火力強くしすぎたか。調節調節。

――ある日突然俺に降って湧いた異能力、流動する力場で覆った空間にだけ自由自在に現実を塗り替えるこの能力を、
その全能性と効果範囲のショボさにちなんで『フラスコの中の神様《パラダイムボトル》』と名付けてみた。俺の邪気眼が共鳴しているッ!
効果範囲と同義の流動力場――"神様"は500mlペットボトルにきっちり一本分。その範囲内ならいくらでも粘土のように伸ばしたり切り離したりできる。

この形状『炎上剣』は細長く伸ばした"神様"をぐるぐると警棒に巻きつけ、『燃やす』ことで炎の剣を製造するという中学生垂涎の必殺技なのだ。
ネーミングは駄洒落である。

「ほ、ほらどうする!下手に近づくと火傷するぞ!?普通の燃料とかと違うからな?異能の炎だからな!?病院で栄養食を食べるハメになるぞ!」

……必殺技といっても、こんなので人を殴ったらそれこそ火傷じゃ済まないし、下手したら命にかかわる障害を負うことだろう。
威嚇に振りかざしこそすれ、本当に当てるつもりはさらさらない。この勇敢な若者は前途ある若者で、そんな彼の未来を背負いたくなんてない。
そもそも炎上剣なんて眼の疼きそうな名前こそあれど、実状は警棒を芯にしたただの火力の強い松明であるからして。ダンジョン攻略には必須だけどさ。

とはいえ膠着状態である。このまま行員が金をバッグに詰め込め終えるのを待ってトンズラこけば任務完了、あとは遊んで暮らすだけ。
それにしても遅いな。たかだか旅行カバンに札束詰めるのになんでそんな慎重なんだよ。札束タワーどこまで積めるかとか新記録狙ってる場合じゃねーよ!

どこまでも小市民的。自分でやってて嫌になる。こんな他人にはない超能力があるんだから、もっと派手に強奪とかやらかせばよかったのだ。
でも最近のATMは叩き壊すとインクで札束駄目にするし、かといって銀行で大立ち回りをやらかせばきっと怪我人や死人も出る。
俺は悪になりたいけれど、人を傷つけるのは嫌なのだ。それは他人に対する思いやりとかそんなんじゃなく、チキンな俺はきっと罪悪感に耐えられないから。

"神様"を使えば色んなことが出来る。遅いけど念力みたいに空中を飛ばせるから、バレないように爆破テロだってできる。
人体にくっ付ければ爆破も切断も炎上も思いのまま。異能であるというのはそのまま手の内がバレてないということで、それは犯罪にとって切り札になり得るカードだ。
だけれど俺にはそんな大それたことは無理で、せいぜい千円札を一万円札に組み替えるぐらいが関の山。それだって大分躊躇した。

「頼むから早く詰め終えてくれよっ……!!」

そんな俺に辟易していた。せっかくの異能なのに、これじゃあまりにもみみっちすぎる。そろそろ俺は、犯罪者として次のステージに上がるべきなのだ。
そう思って、銀行強盗をやってみたんだ。

誰が通報したのか、外からはパトァーのサイレンが聞こえてくる。この町の別区域では謎の怪人が暴れていて、ヒーローが出払っているらしい。
そういうのも考慮して今日ここに仕掛けたのだが、よくよく考えたら俺、警察にも勝てなくね?いや、異能を上手く使えば三人ぐらいは……
焦りに心が上滑りする。心臓が絶賛大活躍中で、一世一代の大仕事とばかりに血管を広げている。ドキドキで死にそうだ。トキメキで死にたかった。

「くるなよヒーロー……頼むから……後生だ……!!」

泥濘の如き思考は、炎上剣の熱も感じないほどに俺の意識の足を掴み沈めていた。

99 名前:秤乃暗楽 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/01/08(金) 19:40:30 0
何をとち狂ったのか、岡田博士は唐突にコピー用紙と鉛筆を手に取ると、
独り言を零しながら物凄い勢いで何かを描き始めた。
いよいよもって○○ガ○の予感が拭いきれないこの男が一体何を書いているのかは、当然私には見当も付かない。
と言うか付いたら嫌だ。
そんなことになったら、自分の影に喰べられて姿形も残さず消えてしまいたくなる衝動が抑えられない自信がある。

と、私の思考を遮るように、眼前に何だか珍妙な生き物が描かれたコピー用紙が突き付けられる。
こんなのが作りたいって事かしら? やっぱりセンスの欠片もないのね、この男。
……って、私と同じ歳ってどう言う事かしらね。もう雛形が出来てて、それを改造していくとか?
だとしても私の歳をこの男が知り得るとは思えないけど、もしかしたら一筋縄ではいかない相手なのかもね。
用心に越した事はないわ。


……って、何か変じゃない? これ。
知能が下がるって、あの化物達には最初から知能なんてなさそうだったわよね。
って事は、これってもしかして。

>「こんな感じでどうだね?ん?私の計算ではこれで君は生態系の頂点に立つ存在になれるはずだが?」

嫌な予感の裏づけは、岡田博士が自らしっかりと証明してくれた。
流石研究者だわ、証明はお手の物ね。
……なんてジョークでさらりと流そうと思ったけど、どうやら無理みたい。
目と唇端が引き攣るのが自分でも分かるし、顔もどんどん熱くなっていく。恐らく真っ赤になってる筈だわ。

内蔵がしっちゃかめっちゃかになってるんじゃないかと思える程の怒りに任せて、
私は目の前でしたりと笑みを浮かべているアホ面目掛けてワンドを投げつけた。

「ばっっっっかじゃないの!? アンタ馬鹿よ! 天才だなんて絶対嘘だわ! 馬鹿! 馬鹿! 大馬鹿!」

我慢の限界。もう思った事がそのまま口から出て、自分でも何を言っているのか分からない。
ついでに見事顔面を殴打して手元に帰ってきたワンドを掴み、倒れ込んだ大馬鹿に追い討ちを掛ける。

「何で私が化物になる算段で話進めてんのよお! 違うの! 私がするのはお、て、つ、だ、い!
 アンタが欲しい物があったら用意したり魔法の解析をさせたり、分かる!? あーもう何で悪の科学者って皆こうなのよお!」

こんなに取り乱して、後で今よりもっと顔を赤くする羽目になるのはほぼ確実なのに。
怒りに身を任せながらも頭の隅っこで、どこか冷静な自分がそんな事を言ってる。
けど今は叫んでこの馬鹿眼鏡を殴ってやらなきゃ、どうにも私の怒りは静められそうになかった。

100 名前:星 真一 ◆gdItqyWvZU [sage] 投稿日:2010/01/08(金) 20:35:09 0
>>96の呟きが耳に入ってきたのですかさず訂正させる
「そんなふざけた名前じゃねぇから!俺には<無垢なる刃に選ばれた者>っていう名前があるから!」
とまぁ半ば本気で言っているのだが

とりあえず動きは止めてやるなどのお膳立てはした。
今の所は誰も仕掛ける気配がないので自ら仕掛けることとする。
「テメェを倒すのは俺だ!ガキ共の家まで壊しやがって…テメェは俺がぶっ潰す!」
背中に装備してある不思議な文字が書いてあり湾曲刀に似ている異形の大剣に持ち替える。
『バルザイの堰月刀 装備<セットアップ> 付与魔術 灼熱 選択開始』
魔法使いの杖でもある剣に持ち主の魂に比例する熱さを持つ炎が宿る。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
大きく飛び上がり、怪人に向かって燃え盛る灼熱の刃を振り下ろす。
「子供達の想いを!お前に大切な物を奪われた人達の悲しみを!そして俺の怒りをこの刃に込めて叩き斬る!」
その一撃は無慈悲にも怪人の胴体を真っ二つにして、刃の熱にて焼き尽くすまで消えない炎に包まれる。
「今日は死ぬのは良い日だろ?」
決め台詞を無意識に吐いてしまう自分に少し自己嫌悪している自分がいた。




101 名前:業務連絡[sage] 投稿日:2010/01/08(金) 20:52:51 0
代理投稿スレ
http://yy44.60.kg/test/read.cgi/figtree/1243456885/

上記は、アクセス規制などで直接投下できない参加者のためのスレ
名前欄の鳥が◆でなく◇の参加者は、上記の代理投稿スレを使って参加している
このスレは規制されている参加者が特に多いので、コテは投稿前に必ずこのスレに目を通して欲しい
(内容が被ってつじつまが合わなくなったため、何回も書き直しているコテもいる。注意してやってくれ)

102 名前:本舘 ◇SGue2uUfkw [sage 代理投稿gt;gt;463] 投稿日:2010/01/08(金) 20:55:17 0
>>94>「ばっちし! 任せてお兄ちゃん!」
僕の十文字槍の刃に少女が筆を走らせる。
「ほう…これは驚きだ…。」
少女が筆を走らせると、刃が大きくなる。
「これなら…」
>「まだだよ〜! お花さん! あなたの色も貸してちょうだい!」
まだ強化出来るのか!?
と、僕が少々驚いている間に、刃に紅蓮の炎が付加された。
>「これならきっと……! いくよっ! お兄ちゃん!」
「ああ……って君も行くのか!?」
少女も炎の剣を片手に、怪物目掛けて走り出す。
>「くっらえー! きゅーてぃー! すらーっしゅ!」
「さよなら、化物く…ん!??」
僕は化物に向けて刃を横に大きく振ろうとした…が。
>>100僕より先に星さんがトドメをさしてしまった。
真っ二つにされた体は紅蓮の炎に焼かれていく。
「あ〜あ…。良いとこ持って行くねぇ星さん。」
化物が完全に消滅するのを確認し、変身を解く。
>>96>「あの怪物は自然のもんじゃなさそうだな。
誰だ?あいつの飼い主ってのは。」
先程のディケイドとかいう男が変身を解き、こちらに向かって来た。
「そんなのこっちが聞きたいくらいだ。
 まあ、あんな気色悪い化物の飼い主なんてロクな奴じゃないだろ。
 というよりだな…。」
僕は再び視線を少女に戻す。
「君は何者だ…?いきなり現れたかと思えば、あんな強力な力を与えたり…。」
この少女、もしかしたら僕より強いんじゃないか?
ふっ…面白い。
世の中にはまだまだ面白そうな奴がゴロゴロ居るみたいだな。

103 名前:岡田 ◆f1UBcxNLkXUi [sage] 投稿日:2010/01/08(金) 21:17:46 0
「な!?こら!まだ改造が終わってないのに何故暴走するんだ」
魔法使いの志願者と言う新たな素材を得て、急速に進歩するはずだった岡田の計画は
改造処理を行う前に披検体が暴走するという予期せぬ事態によりもろくも崩れ去ってしまった
人並みに体力があるものの、魔法少女と渡り合えるわけの無い岡田は一方的にぶちのめされてしまう
>「何で私が化物になる算段で話進めてんのよお! 違うの! 私がするのはお、て、つ、だ、い!
>アンタが欲しい物があったら用意したり魔法の解析をさせたり、分かる!? あーもう何で悪の科学者って皆こうなのよお!」
やがて一通り岡田をぶちのめした魔法少女は、ようやく落ち着くと相変わらず怒った調子で岡田に怒鳴ってきた
腹立たしげに元の席に戻った岡田は、その言葉を聞いて、興味深げに返事する
「手伝い…?欲しいものがあったら用意したり研究の手伝いをしたり…ふん…」
やがてしばらく何事か考えていた岡田は先ほどとは別のコピー紙を取り出し、3っつの大変複雑な方程式を書いて見せた
「この三つの式は私が今まで研究してきた別々の能力を持った超能力者や魔法使い達が各々の能力を発動させた際のデータを数式化したものだ」
そういって、岡田はそれらの数式の最初の最初の部分を指差してみせる
「これら三つの魔法はそれぞれ全く違う効果を発揮しているが、最初のこの部分は全て同じ方程式で現すことができる…簡単に言うと、どんな魔法も私が知るところ発動する瞬間は同じと言う事だ」
次に岡田は、紙に横から見た脳細胞の断面図を鮮明に書く
「この最初の瞬間を発生させている脳細胞の箇所がわかれば、そこを封じる事で『魔法使いに対して絶対に無敵の生物』を作る事ができる」
そう言うと、岡田は秤乃の肩にぽんっと手を置いた
「と言う分で、君の脳細胞を摘出させてくれ」

104 名前:星 真一 ◆gdItqyWvZU [sage] 投稿日:2010/01/08(金) 22:33:17 0
>「あ〜あ…。良いとこ持って行くねぇ星さん。」
「ああ、悪りぃちょっと熱くなって周り見えてなかったわ」
ハハッと笑いながら謝罪する。
本舘とディケイドという男はともかくあの少女の事が気になった。
恐らくは系統からして魔法に当たる力を使っていると思われるが
俺が極秘裏に所属しているウィルマース・ファウンデーションとアーカム大学の
魔術師・魔法使いの登録名簿を見た限りでは彼女の写真やデータなどには存在しなかったはずだ。
「無所属か?それとも……」
元から闇より暗躍してきた俺達より深い闇より純粋培養された外法使いか?
まぁどっちみち俺の前に立ち塞がなければどうでも良い事なのだが。
「そんな事よりガキ共とシスターが心配だな…」



105 名前:旋風院 雷羽 ◆zYCuy2/gkI [sage] 投稿日:2010/01/08(金) 23:59:49 0

「ぜぇ……ぜぇ……し、死ぬかと思ったぜ……」

都会の端にある極々平凡なアパートの一室。
古めかしい……というよりボロいその部屋で、
黒ずくめにツンツン頭の男、旋風院雷羽は、
上半身をちゃぶ台に預けた状態で息を荒げていた。

幼稚園バスジャックに失敗した後、雷羽は彼が仕える悪の組織の本部に
呼び出され、そこで、彼のボスに作戦失敗による「おしおき」を受けていたのである。
そうして、常人なら3回程死んでいるであろうその罰から驚異的な生命力で
生きて帰った雷羽は、今こうして自分の住処に戻ってきたのだ。

「……畜生、なにもかもあの糞ヒーロー共のせいだ!
 しかも、あいつらのせいでまた俺の給料が減っちまったじゃねーか!うがあああっ!!」

「うるせーぞゴルァ!!」と隣に住んでいるオヤジが薄い壁を叩いて文句を
言うのも気にせず、脱力した状態で雷羽は憎憎しげに吼える。
思い返すのは雷羽の作戦を台無しにしたヒーロー達の顔。
今回も、その前もその前もその前も、雷羽の作戦はヒーロー達に邪魔されてきた。
結果、組織内でも強い改造人間である筈の雷羽の立場はみるみる落ち込んでいき、
おかげで、雷羽の組織内での立ち位置は、戦闘員達には割と慕われているが
同じ幹部には見下されるという、無駄に自信家の雷羽にとって望ましくないものになっていた。

「くそっ、次こそはあいつらヒーロー共をぶっ殺してやる!!」
雷羽は拳を握り決意を込めて呟くと、まだあまり力が入らない足に無理矢理力を込めて立ち上がり、
変装用のぐるぐる眼鏡をかけ、安い木製のドアを開けて外に出て行く。

「……けどまあ、とりあえずは腹ごしらえだ。腹は減っては戦はできねぇしな。
 今日は、むしゃくしゃするからラーメンセット食ってやるぜ!!」

目的地は、行きつけの近所のラーメン屋である。
部屋にテレビも無い雷羽に、今現在他のヴィラン達が何をしているかなど知る術は無かった。

106 名前:ラ〜メン屋店主・鳴滝[sage] 投稿日:2010/01/09(土) 01:52:26 O
>>105
「いらっしゃいませ。ご注文は。…おのれディケイド!」

語尾に何か叫びながら注文を聞く

107 名前:秤乃暗楽 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/01/09(土) 03:56:40 0
殴り、殴り、更に殴り、いけ好かない眼鏡も歪めてやってようやく私の怒りは萎え凋んだ。
とは言えこれだけぶん殴って痛めつけてやったのだ。
私の目的は十二分に、その五体に刻み込まれただろう。

不意に、岡田博士は何やら考え事を始めた。
やっと建設的な話が出来るかもしれないけど、油断は禁物だわ。
この男のどうしようもない脳みそには、出会ってまだ数分だって言うのにほとほと辟易させられてるんだもの。

暫くの沈黙を経て、岡田博士が再び真っ白のコピー用紙を手に取った。
そしてまたその上に鉛筆を走らせる。

もしももう一度下らない事を書いたら頭をかち割ってやろう。
そう思い書いてある事を覗き見たけど、紙に記されているのはやたらと長ったらしい方程式だけだった。
それを私に突きつけて、岡田博士は尊大そうに弁舌を振るう。

>「この三つの式は私が今まで研究してきた別々の能力を持った超能力者や魔法使い達が各々の能力を発動させた際のデータを数式化したものだ」
>「これら三つの魔法はそれぞれ全く違う効果を発揮しているが、最初のこの部分は全て同じ方程式で現すことができる…簡単に言うと、どんな魔法も私が知るところ発動する瞬間は同じと言う事だ」
>「この最初の瞬間を発生させている脳細胞の箇所がわかれば、そこを封じる事で『魔法使いに対して絶対に無敵の生物』を作る事ができる」

ふうん、真面目に話をすればそれなりに賢そうじゃないの。
ようやっと認識を改める事が出来そうで何よりだわ。
って、何を勝手に人の肩に触ってんのよ。少しくらい良いとこ見せたからっていい気に――。

>「と言う分で、君の脳細胞を摘出させてくれ」

……前言撤回。やっぱりこいつはどうしようもなくアホだわ。
ひとまず肩に伸ばされた腕を掴んで、そのまま跳び上がり渾身の膝蹴りを腹に見舞ってやった。
もういい加減怒りも品切れ状態だけど、今度は鬱憤が供給過多だわ。

膝を笑わかして崩れ落ちた岡田博士の頭を掴んで、ワンドの柄をぐりぐりと捻り当てる。
目も口も、もう制御が利かないわ。
多分苦笑いに大さじ一杯くらいの嗜虐心を加えた感じになってると思うんだけど、まあどうでもいいわね。

「アンタの脳みそをこの場でぶち撒けて、世紀の大馬鹿野郎のそれとしてホルマリン保管してあげよっか?」

108 名前:秤乃暗楽 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/01/09(土) 04:04:55 0
ホントにもう要領を得ない会話だわ。
非生産的にも程があるでしょこれ。
社会の底辺ゴミ屑ニートだってもうちょっとまともに会話出来る筈よ?

ああもう、面倒臭いわ。
こいつに会話の主導権を握らせたのがそもそも失敗だったのよ。

「いいわ、だったらアタシ以外の能力者をここに持ってきてあげる。それで文句ないでしょ?」

一応語尾には疑問符を取り付けておいたけど、勿論この大馬鹿博士の是非なんてどうでもいいわ。
ようやくいつもの調子が戻ってきたのを感じながら、私は続きの言葉を紡ぎ出す。

「丁度目星を付けてる奴が何人かいるの。そいつらは私の目的でもあって、貴方の研究にも役立つ。どう? いい事尽くめでしょ?」

そもそも私じゃこの男が言った研究には役立てないしね。
だって私、別に魔法使いじゃないもの。
ま、普段は分かりやすいから魔法少女を名乗ってるんだし、どうでもいいんだけどね。

109 名前:秤乃光 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/01/09(土) 04:42:17 0
秤乃光は頬をむすりと膨らませて、ふて腐れていた。
その原因は星真一、彼にある。
せっかく本舘の武器にお絵かきを施し自身も化物へ向かっていったと言うのに、
ろくな活躍もなしに化物は星にトドメを刺されてしまったのだから。

そんなんだからオジちゃんになっても女にモテないのよと光は内心で毒づき、
ついでに彼が自分に背を向けているのをいい事に舌を出してあかんべをしてのける。

>「君は何者だ…?いきなり現れたかと思えば、あんな強力な力を与えたり…。」

けれども本舘から声を掛けられると一転、光は晴れやかに太陽宛らの笑顔を浮かべて彼に向き直った。
それから手足をもじつかせて焦らす動作をじっくりしてみせると、ようやく彼女の淡い桜色をした唇が開かれる。

「えへへ……私はね」

そこで一度言葉を切り、光は両手を広げてその場でくるりと一回転した。
純白のスカートがふわりと浮き上がり、風に乗って踊る淡い金髪は陽光を受けて煌びやかな輝きを帯びる。
回転を経て再び、彼女と本舘の視線が交わった。

「『ヒーローを護るヒーロー』だよ!」

手を後ろで組み、彼女は浮かべた笑顔を一層眩いものにしてそう言った。

「だって『ヒーロー』は皆を護るけど、でも『ヒーロー』は誰からも護ってもらえないでしょ?
 そんなの可哀想だよ。だから、私は『ヒーローを護るヒーロー』なの!」

言葉を終えて、光は軽く地面を蹴る。
飛び上がった彼女は風に舞い上げられた羽毛のように、そのまま空高くへと浮き上がっていく。

「じゃあねお兄ちゃん! オジちゃん! あと変な人! 
 皆が『ヒーロー』でいれば、またいつか会えるかも! だからお兄ちゃん、頑張ってね!」

地上に向けて力いっぱい手を振ると、光はゴスの衣服を翻し、どこかへと飛び去っていった。

110 名前:海東大樹 ◆f80ibf2q32 [sage] 投稿日:2010/01/09(土) 15:00:45 0
>>105>>106
「やぁ鳴滝さん。僕はチャーハン定食を頼むとするよ。」

茶色のジャケットを着た長身の男が雷羽の隣の席に座る。
水を飲みながら意地悪そうな笑みで鳴滝を見つめた。
「鳴滝さん、またディケイドに手を焼いてるみたいだね。
まぁ、僕には関係の無い事だけどさ。」
鳴滝は麺を湯切りしながら顔をしかめた。
鳴滝「へい、お待ち!!ラーメン定食だ!」
雷羽の席にラーメン定食が置かれる。
海東は水を飲みながらテレビに目を向けた。
『謎の怪物、教会を破壊』
『銀行強盗!?怪人が現れる?』
テレビでは今日起こった事件が次々に報道されていた。

「幼稚園バスジャックか…随分と古臭い手を使う悪党も
いるもんだね」
海東はチャーハンを食しながら笑った。

111 名前:仮面ライダーディエンド ◆f80ibf2q32 [sage] 投稿日:2010/01/09(土) 15:10:55 0
数時間前……ウミネコ銀行支店にて

>「くるなよヒーロー……頼むから……後生だ……!!」

「ATMでお金を下ろしたんだけど、ダメかな?」
1人の青年が通帳を持って現れた。
呆然とする職員達の前を通り過ぎながら悠然と歩いていく。
職員「お、おいあんた!助けてください!
こんなグッドタイミングで来たってことはですね・・・ヒーローでしょぉ?」
1人の銀行員が青年に声をかける。
青年は首を横に振ってATMを操作し始める。
「悪いけど、僕はお宝にしか興味ないんだ。
君達、せいぜい頑張ってくれたまえ」

しかしATMは作動しない。どうやら銀行強盗により
セキュリティがかかっているようだ。
海東は面倒臭そうに懐から拳銃型のアイテムを取り出す。
「やれやれ。ところで、悪さをしてるのは君…かな?」

―カメンライドゥ…

「ついでだし、この銀行にあるお宝も貰うとするか」

―ディ〜エンドゥ!!

「さてと。」
何の前触れも無く拳銃型の武器、ディエンドドライバーを真性に
向け発砲する。
周囲の職員や客は腰を抜かしたり、這いずり回ったり。
警官達も呆然とそれを見ている。


112 名前:仮面ライダーディエンド ◆f80ibf2q32 [sage] 投稿日:2010/01/09(土) 15:15:40 0
名前:仮面ライダーディエンド/海東大樹
職業:通りすがりの怪盗
勢力:中立
性別:男
年齢:20歳
身長:細身
体重:軽い
性格:気まぐれ
外見:茶色のジャケット、長髪
外見2:青と黒を基調にした仮面ライダー。頭部にライドプレートが刺さっている。
特殊能力: 『各種ライドカード』
     様々なカードを使用し、ヒーローを召還したりその特性を自らの
力に活用できる。

備考:世界を飛び回る怪盗。ディケイドと似た能力を持つが
自分の目的以外には能力を使わない為、この世界でも「強盗ライダー」
の異名で通っている。

113 名前:GM[sage] 投稿日:2010/01/09(土) 15:50:43 0
多数の参加感謝します。
下記に避難所を作成しましたのでご活用下さい。
http://jbbs.livedoor.jp/internet/7125/

114 名前:岡田 ◆f1UBcxNLkXUi [sage] 投稿日:2010/01/09(土) 17:18:03 0
「げはらっ!?き…貴様が欲しい物を用意すると言ったから」
再び秤乃の手によってぶちのめされる岡田
既にボロボロになっている
>「いいわ、だったらアタシ以外の能力者をここに持ってきてあげる。それで文句ないでしょ?」
>「丁度目星を付けてる奴が何人かいるの。そいつらは私の目的でもあって、貴方の研究にも役立つ。どう? いい事尽くめでしょ?」
「ん?いや微妙に意味が違うが…、もういい、それで、君と話していても私の生傷が増えるだけだ、さっさと失せろ」
如何なる魔法、超能力にも対応できるEデアンを作るため、様々な種類の魔法使いの脳のサンプルが欲しかった岡田は、珍しい能力を持つ秤乃の脳が欲しかったのだが
どうも本人はそれが嫌らしく、しかし代わりに一般的な魔法使いのサンプルを提供すると言っているので、とりあえず納得しておく事にした

やがて秤乃が完全に帰った事を確認した岡田は、すぐさま研究施設へと降りると、怒りのままにすさまじい勢いでキーボードを叩いてEデアン製造機へとプログラミングを行う
何を作るかなど、決まっている
数日後に戻ってくるだろう秤乃を叩き殺し、脳細胞を奪うための戦闘用のEデアンを作っているのだ
「私の体を面白い位ぶちのめしてくれた礼はしてやろう…成すすべなくぶちのめされて死ぬがいい」
憎しみと怨みの篭った声でそういいながら岡田は一心不乱にキーボードを叩く

115 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2010/01/09(土) 17:23:12 0
>>113
そもそも誰よ?
しかもしたらばはねーよw
コクハじゃあるまいし、まとめサイトか他のところにしてくれ


116 名前:岡田 ◆f1UBcxNLkXUi [sage] 投稿日:2010/01/09(土) 17:25:59 0
名前:Eギロチンリザード
職業:殺し屋
勢力:悪
性別:雌雄同体
年齢:生まれて間もない
身長:2m10cm
体重:300kg
性格:岡田に絶対服従
外見:両手が鋭い刃になっている真っ黒い蜥蜴の怪物
特殊能力:背中にあるタキオン粒子発生器官から体内にタキオン粒子を流し、弾丸がノロノロ進んで見える程のスピードで動く事が可能
簡単に言うとクロックアップできる
両手の刃物は鉄骨を簡単に切り裂く
更に両手の刃物にタキオン粒子を流す事で、更に切れ味を増した切断攻撃を放つことができる
備考:岡田が秤乃に復讐するため(+秤乃の脳細胞を奪うため)に作り出した純戦闘用のEデアン
非常に短命で、誕生後、培養液から出て数日で死亡してしまうが、戦闘能力は上記の通り恐ろしく高い

117 名前:テラシ ◇vCpQPGCxWE [sage 代理投稿gt;gt;466] 投稿日:2010/01/09(土) 17:28:46 0
Eスケルトンが崩れ去り、骸骨が白い欠片となって無数に四散する。それは空から無数に降ってくるウォール街の紙片を想起させる。
教会や周囲の家屋も粉々になって地面に定着し、Eスケルトンの残骸もまたその景観の一部となっている。
ヒーロー達が歩み寄り、互いを称えたり、疑問を投げかけたり、先ほどの化物との戦闘の感想を述べたりしている。
テラシはベンチから両腕を前に挙げて拍手を送る。
そのスキンヘッドの見物人に怪訝な表情を浮かべる街の著名人達。
50m程の距離を隔て、寒風の下で健気に拍手を鳴らす子犬のような、肌の白い男。
まるで互いの間を目に見えない列車が擦り抜けていくように、煩雑さとそれに対抗する白磁のような冷気が際立っている。
辺りには倒壊した家屋に走り寄って自分の荷物を模索する人々や、相変わらず跪いて許しを請うように手を合わせている信心深いシスター達、
小野寺ユウスケにサインを求める子供達が大挙している。人々は混沌のなかで警官の死体を足蹴にして、思い思いの方向に進んでいく。

「おーい、今度は俺と戦ってくれ!」

テラシが喉の奥の繊細な襞のようなものをめくって叫ぶ。
Eスケルトンの遺骨を摘み、それをヒーロー達に向かって投げる。
投擲された骨の欠片は離反していく黄色い絵の具のようなぬめっとした何かと血肉によって、虹のような放物線を描きながら、
僅かな距離を開けて著名人の内の一人の前に落ちる。

「やれやれ、やっぱり俺じゃ届かないか」

テラシは左手で海から隆起した巨大な泡沫のような頭を撫でながら、右手に454カスールを握り締める。
それを大雑把に撃ち鳴らす。スリルを求める猛犬のように、銃弾はでたらめな方向に進んでいく。
一発は精悍な教会の奥へと吸い込まれていき、一発は陥没した噴水を飛び越えて気の毒にも垣根の向こうへ飛び立ち
一発は小野寺ユウスケのサイン色紙を打ち抜いた。

「あれ、弾切れだ……」

テラシは困ったように眉を下げ、自分のテリトリーをとぼとぼと逡巡した。

118 名前:トリッシュ ◇.H4UqpaW3Y[sage 代理投稿gt;gt;470] 投稿日:2010/01/09(土) 17:29:27 0
「ハァ…正体なんて晒すんじゃなかった」
颯爽とフェラーリを運転する彼女は、溜め息をするかのようにそう愚痴った
彼女の名前は、トリッシュ・スティール軍事企業スティールインダストリアルの社長であると同時に、
テロと戦う鋼鉄の淑女アイアンメイデンでもあるその事は、一週間ほど前に記者会見にて自らの口で発表している
そのせいで、今日までマスコミの相手やらなにやらでてんてこ舞いだったのだ
「しかし、そのお陰で下落していた我が社の株も元値に戻りましたが」
中性的な声で話す彼は彼女が自作した自立型OS゛アイヴィス゛だ仕事のサポートから戦闘のサポートまでこなす
有能な部下であり唯一、信頼して話せる話し相手でもある
「軍事から手を引いたウチの株価をあげるにはそれしかなかったんだから、しょうがないでしょ」
「でしたら…」
とそんな日課のような取り留めの無い会話をしている最中
狂ったような速度で対向車線を逆走する車が彼女らを追い抜いて行く
「………」
その異様さに彼女は暫し絶句する。
「明らかな危険行為ですね。追いかけますか?」
「それよりも、警察に連絡したらどう?」
「残念ですが、恐らく只今警察はこのような『小事』に構う暇は無いでしょう」
そういうと、アイヴィスはカーナビにニュースを映す。
「…確かにそうみたいね 困ったわね。目の前の小事を見逃すか…考える必要は無かったみたいね」
何者かが、怪物退治を始めたのが中継のカメラに写った瞬間彼女はアクセルを踏み込み、
暴走車の追跡を始めた。
下手に後から行って変な疑いをかけられる可能性が彼女にはあるのだ。

しかし、追跡は上手くは行かなかったけして、あれが早すぎるのではなく、
暴走車の常識に捕らわれない走り方に追いつくことが出来ないのだ。
「…なんなのあいつ、頭でもおかしいんじゃないの
 このままじゃ何時までたっても追いつけないわ…アイヴィス!マーク3の用意を」
「かしこまりました」
今更では、あるが、彼女が乗っているフェラーリは、純正のフェラーリではなく彼女が
自宅以外の場所でアーマーを装着する為に改造に改造を施したカスタム車なのだ。
至る所から現れたマシンアームによって、足から頭まで丁寧にアーマーが装着される装着が完了されると
彼女は車から発射されるように空へ飛び出していった。
車はアイヴィスが自動操縦で自宅ガレージまで運転するだろう

アーマーを装着し、空を飛び、やっと追いついたと思うと、目標は目的地についたらしく、車は既に蛻の空だった。
ただ、彼女の目の前には異様な静けさを放つ喫茶店があるだけだ。
暗視モードに切り替え、躊躇なく喫茶店に入った瞬間、彼女はまた絶句する惨い…凄まじい惨状がこの喫茶店の中で起きてしまっていた。

その凄惨な状況の中で、一人銃を握りながら、虚空を見つめている男が居る。
おそらくではあるが、コイツがやったのだろう。
「どうしたのかしら、スリリングなドライブの後は、カフェラテでも飲みながら殺人?
 はっきり言うけど、いい趣味じゃないわね?」

【テラシさんの状況が今一はっきりしないので、このような表現をさせてもらいました。
 いささか問題があるのでしたら修正するつもりです。
 ついでに、瞬間移動の条件などを教えていだたけたらありがたいです。
 一応、自分の見解は自分の意識を飛ばして、実体化させているものだと思ってますが
 違うんでしょうね。】

119 名前:GM ◆XP1EkAJnGs [sage] 投稿日:2010/01/09(土) 17:29:28 O
鳥を付け忘れた、申し訳ない。
避難所はプレイヤーが自由に相談して頂く場所だ。
有効に使ってくれ。

120 名前:GM ◆rA.taCR/oc [sage] 投稿日:2010/01/09(土) 17:31:32 O
(鳥を修正、度々申し訳ない。こちらも数日のうちに都市の設定を書き込む)

121 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/01/09(土) 17:39:43 0
>>120
>>101

122 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/01/09(土) 18:54:22 0
>>120
お前は誰だよ。PLでもないのに勝手に都市の設定とか決められても困るんだが?
ダンゴ虫は早々に巣に帰れよ

123 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/01/09(土) 18:59:04 0
>>120
そういうの決められると動きにくくなるから正直やめて欲しい

124 名前:ジェームス・フロイド ◆rA.taCR/oc [sage] 投稿日:2010/01/09(土) 19:05:15 0
>>120>>123
出来るだけ意見がある場合は名無しではなくトリップを記載してくれ。
これは最初の>>1に明記しなかった私のミスでもあるので申し訳なく思う。
それが出来ないのであれば、避難所で書き込むようにお願いしたい。
設定に関しては、完全に縛るつもりはないので安心して頂きたい。
あくまで舞台をある程度決めておくという程度だ。

125 名前:ジェームス・フロイド ◆rA.taCR/oc [sage] 投稿日:2010/01/09(土) 19:07:06 0
>>122氏に対してだった。誤記すまない

126 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/01/09(土) 19:28:46 0
GMじゃないじゃん、PLじゃん。何でGM名乗ったの?
しかも今の今までだんまりだったくせに何で仕切ろうとしてんの? 馬鹿だろ

それに舞台なら最初の10レス以内で出してるじゃん
あれ以上決めても他のPLに対する縛りにしかならねーよ
適時必要な設定を足してけばいいじゃん
あ、勿論『世界観にそぐわないよう』にな?

127 名前:アンポンタン ◆ulcmOHd8H6 [sage] 投稿日:2010/01/09(土) 19:30:25 0
名前: 坂田利夫
職業: コンビニ店員
勢力:正義
性別:男
年齢:25才
身長:165cm
体重: 60kg
性格:楽天気味な思考
外見:上下、某○クロの服
外見2:全身に諭吉を貼り付けた黄金のヒーロー
特殊能力:非常に運がいい、ただそれだけ
備考:非常に人生運が悪いコンビニ店員。
給料日に拾った1万円札の不思議なパワーで変身できるようになった。

宜しくお願いします


128 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/01/09(土) 19:30:43 0
全員まとめて外部避難所か総合避難所に池

129 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/01/09(土) 19:31:28 0
>>126
いい加減にしたほうがいいよ。

130 名前:本舘 ◇SGue2uUfkw [sage] 投稿日:2010/01/09(土) 20:51:05 0
>>109どうやらこの謎の少女、『ヒーローを護るヒーロー』らしい。
本来なら、こんな小さな少女に何が出来る…と言いたいところだが、彼女の能力は本物だ。
>「だって『ヒーロー』は皆を護るけど、でも『ヒーロー』は誰からも護ってもらえないでしょ?
 そんなの可哀想だよ。だから、私は『ヒーローを護るヒーロー』なの!」
なるほど、確かにその道理は成り立っている気がする。
しかし…
「僕はヒーローじゃない。僕はただの暇潰しとしてだな…」
と、少女の誤解を解く為に説明をしようと思ったが、既に少女は上空へと浮き上がっていた。
>「じゃあねお兄ちゃん! オジちゃん! あと変な人! 
 皆が『ヒーロー』でいれば、またいつか会えるかも! だからお兄ちゃん、頑張ってね!」
「おい、人の話は最後まで……まあ良い。今度会った時はきっちり僕の事を教えてやる。」
少女はどこかへ飛び去って行った。
「僕もそろそろ帰ろうかな…明日も学校だし。
 ……ディケイド、だっけ?君とも闘いたかったけど、今日のところは退いておくよ。
 楽しみは幾つか残しておかないとね。」
そう言い残し、僕はこの場を後にする。
家に帰ったらシャワーを浴びてすぐに寝よう…今日は少し遊び過ぎた。

131 名前:ジェームス・フロイド ◆rA.taCR/oc [sage] 投稿日:2010/01/09(土) 20:56:14 0
街には欲望が溢れている。金が幸せの全てではないと説いたところで
人の中の心が満たされるものではないのだ。
今日もまた3人の強盗が閑静な住宅街に押し入り4人家族の内、3人を殺し
1人を誘拐した。
強盗が3人の人間を殺して奪った金はこの街の平均所得の1か月分程度。

ただ、それだけの金の為でも人は人を殺す。
1人残された娘が強盗達に衣服を剥ぎ取られ狭い部屋で暴行されようとしている。
少女は神を憎んだ。もし、いるのならば絶対に許さないと。
こんな結末を、運命を自分に押し付ける神を。
絶望して目を閉じた少女が聞いた音。それは―
男達の荒い息遣いでもなく、自分の悲鳴でもない。

強盗たちの凄まじい悲鳴と、骨の折れる音だった。
目を開けた少女の前にいたのは、黒い蝙蝠。
闇から現れた救世主に見えた。
蝙蝠は肩や足を折られ呻く男達を無視しながら少女の前に身をかがめる。
彼の目には、「人間」らしい心があった。
少女は小さく、震える声で「ありがとう」とだけ言う。

蝙蝠は小さく頷くと数枚の小切手を手渡す。
強盗どもを柱に縛り付けて間もなく、警察が彼女を保護し犯人を収容していく。
少女は警察の保護施設で眠れぬ夜を過ごした。
家族との凄惨な別れ、そしてあの黒い蝙蝠。
彼女は何度も涙を拭き、そして彼が過ぎ去って数時間後。
夜が明けようという時―ようやく立ち上がった。

【翌朝 ジェームスエンタープライズ本社】

「坊ちゃま、今日は随分と沈んでおられますが……どうかされましたかな?」
執事のジェイコブが気遣うように紅茶を差し出す。
薫り高い湯気につられ、ジェームスは一口紅茶を飲む。
「僕は、無力な人間かもしれないな……だが、信じたい。
彼女を…そして、街を。」

数日後、少女は警察官を目指すべく全寮制の警察予備学校への入校試験を受けた。
今日も暴力の連鎖は繰り返される。しかし、それを止める者がいることも
忘れてはならない。

132 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/01/09(土) 21:09:42 0
何のためにGM名乗ってんの?
アホなの?死ぬの?

133 名前:麗源新貴 ◆S00N9pbnYw [sage] 投稿日:2010/01/09(土) 22:10:50 0
変身を解いた麗源の脚線はスウェットに隠されて、
それでいて、重力から見放されたように、やたらフカフカした足取りをする。
仮面を剥いだ彼の表情は、全くの自失だった。
無言の内に彼を見送る街灯の光が、時折、その顔を照らした。
バスの中で見舞われた、夢中も現実も綯い交ぜになった奇妙な感覚に背を押されて、歩く。

呆然の内に足を動かしていた麗源だが、原始より人間に刻印された帰巣本能とは恐ろしいもので、
知らず知らずの内に、ねぐらであるぼろのアパートの前へ着いていた。
彼はくすんだ外壁を見上げる。汚らしい。年中、カビと埃ばかり食べているせいだろう。
食べるという語を思い浮かべたら、麗源は急に腹が減りだした。
空腹感を覚えるのは、身体が健康な証拠である。急ぎ、自分の部屋へ入り込む。
電灯をつけながら、冷蔵庫に詰まった雑多な食材を掻きだして、
纏めてフライパンにつぎ込み、見目危なっかしい炒め物を作り上げた。
それを皿に盛る。そして食う。男一人の食卓は哀しい。しかし、食う。
食うたび、家族揃って晩餐を食べた昔を思い出す。――喰らう。

洗い物の手際もそこそこに、麗源は洗面所に入る。そして歯ブラシを手にした。
親の仇にいざ斬りかかる讐鬼のような形相を鏡に映して、歯の根まで丹念に磨き上げる。
その後よく口を濯ぐ。まだ終わらない。糸楊枝を構える。
石切鑿を握る練達の彫刻家の如き峻険な目付きで、歯石をゴリゴリやる。
また口を濯ぐ。やはり終わらない。口腔洗浄薬入りの白いボトルを取り出す。
打って変わって、慈母を前にした教徒に似た恍惚の面持ちで、口内を浄化する。やっと終わった。
行動の示す通り、最近彼はデンタルケアという、大変瀟洒かつ甚だ粋な趣味に凝っている。
職にも就かず、碌な人付き合いもない彼がいくら口の手入れをしても、丸で実用には繋がらないにも係わらず。
では何故、口腔の清潔を極めるのかと聞くと、まず要領を得た回答は貰えないだろう。唐変木なニートだ。

麗源は居間に戻ってテレビを付けた。幼稚園バスジャックのニュースをやっていた。ホルスタインの名も出ている。
何となく、肺臓の辺りをくすぐられるような気がする。反して、胃に岩を呑んだような心地もする。
腹が満たされて満足してなお、バス内での一連の件が、釈然としない感触を残していた。

段々眠くなる。麗源は嫌に薄っぺらい布団を敷いて、その中にうずくまり、暫くテレビの音声を枕にした。
謎の怪物が現れたと言う。思わずはっとする麗源。半ば無意識に掛け布団を持ち上げた。
しかし、間を置かず、その怪物は討伐されたとの続報が流れて、麗源の身体も緊張も萎んでしまった。
やがて、テレビは枕になっても揺り篭には向かない事に気付き、
その主電源を消して、プラグをも引っこ抜き、ついでにきちんと電灯も消してもそもそと夜具に篭り直した。

もっとヒーローらしく在りたいと思う。もっと人を守りたいと思う。
人を助けて礼を受け取り、悪を諌めて感謝を頂き、それに寄ってやっと、無為すぎる自分の存在が赦されているのだと感じる。
明日はもっと多くの正義を為し、明後日は更に巨大な悪を挫きたい。それが彼の意志である。
だが、その意志を支える為の、内張りを負う勇気は薄く、裏打ちを担う気概は脆い。
威気が剥がれ落ちた意志は、単なる意思になる。そこから更に覚悟が抜け落ちて、遂には矮小な意識だけが残った。
麗源は意識を抱いて目を瞑った。やがて睡魔が取り付く。睡魔は乱暴に幕を引き下ろす。そうして、麗源の一日は終わった。

134 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2010/01/09(土) 23:22:14 0
ちょっと違う奴がいるんだよなあ

135 名前:真性 ◆8SWM8niap6 [sage] 投稿日:2010/01/10(日) 00:05:30 0
>>111

あ、ありのまま今起こったことを話すぜ!『膠着状態にあったと思ったら突然通帳片手に現れた男が喋る銃で発砲してきた』
何を言ってるかわからねーと思うがッ!俺もまったく分からないッ!ただ一つ言えることは――

「ぱ、<パラダイムボトル>ッ――形状『円型盾《ラウンドシールド》』ッ!!」

防がなきゃマジ死にするってことッ!!
テレビのリモコンに取っ手をつけたような外観のゴツい銃の先端から閃光が迸る。警棒に巻きつかせていた"神様"を傘のように展開し、
俺は頭を覆ってしゃがみ込んだ。"神様"に『防ぐ』命令を送り、来る余波の襲撃に備える。

極彩色の防護盾に光弾が激突し、炸裂する。銀行の窓ガラスが次々に爆ぜ割れ、嵐のような風で札束が宙に舞う。
そしてそれは、轟音の後にやってきた。

「おぶあっっ――!!?」

巨大な拳で殴りつけられたような衝撃。踏ん張る余裕なんかあるはずもなく、足はあっけないほどに床と別れを告げて俺を放り出す。
防ぎきれなかった。"神様"の隙間を縫って入り込んできた爆風が防護壁のこちら側で再度膨れ上がり、俺は吹っ飛ばされた。
内蔵を全部引っ張り上げられるような慣性がまともに直撃し、急に重力が消え去ったと思ったら背中から壁に叩きつけられた。

心臓が止まってしまうかと思った。そのまま止まってくれたほうが幸せだった。
腰、背骨、首、後頭部と律儀にも脳から遠い場所から順番に衝撃と激痛が襲ってきて、俺は息もままならなくて、胃の中がひっくり返った。
いやな感覚。内蔵がかき乱されるように痛み、不意にえずいたと思ったら口が真っ赤な滝になった。マーライオンか俺は。

げひゅっ、と申し訳程度に声が出て、それきり何も言えなくなった。肺がうんともすんとも言わなくて、もう一度リバース。
なんか紫というか桃色というか、そんな色をしたぶよぶよの何かが透き通った血と一緒に飛び出した。うわあ、内臓だ。内蔵かこれ!?

「が……"がみざま"……!!」

内蔵破裂。頭部挫傷。全身複雑骨折。思いつく限りの重傷で、重症で、重体で、重態。五体が繋がってるだけまだマシだった。
指先一つ動かない。辛うじて"神様"に意志は通じ、俺の頭部だけを護って、痛覚の遮断と生命維持をしてくれている。
それが限界だった。原型を留めて意識があるだけの惨めな肉塊。呼吸すらできない、死者でも生者ですらない中途半端な俺。

誰だ、平々凡々のちょっと下なんて言った奴は。どう考えても最底辺、生物かどうかすら怪しい謎の物体に成り下がっちまった。
なんだこれ。やっぱりバチが当たったのか?俺みたいな小市民が大それた犯罪なんかしようとしたから、リアル神様の逆鱗に触れちまったのか?
なんだよ。自業自得かよ。誰も責められないじゃん。俺じゃん。俺が死んだら俺の仇も死ぬってわけで、つまり仇討ちは完了ってわけで……

駄目だ、全然わからん。何言ってんだろ。今際の際ぐらいもっとかっこよく逝きたかった。でもだめだ、走馬燈とか見えてこないもん。
走馬燈ってのは生命の危機に瀕した際脳が記憶から打開方法を無意識のうちに探していて、その残滓が見えるのが灯具の『走馬燈』みたいだってのが由来らしい。
それが見えてこないってのは、つまりもう脳が諦めてるってことか?おいおい諦めたら死合い終了だぜ?あ、誤字った。いやあながち誤字でもないか。寒い。


暗くなってきた。


やべっ――――


俺は死んだ。スイーツ(笑)

136 名前:岡田 ◆f1UBcxNLkXUi [sage] 投稿日:2010/01/10(日) 00:34:20 0
すいません、諸事情によりこれ以上参加できなくなりました
抜けさせていただきます

137 名前:星真一 ◆gdItqyWvZU [sage] 投稿日:2010/01/10(日) 01:03:33 0
背後で毒吐かれていることにはつい気づかず本館が少女に疑問を投げかける。
その疑問の答えに少女は、
>「『ヒーローを護るヒーロー』だよ!」
という答えが返ってきた。
一瞬何を言ってるのか理解できなかった部分もあるため吟味するために話に耳を向け続ける。
>「だって『ヒーロー』は皆を護るけど、でも『ヒーロー』は誰からも護ってもらえないでしょ?
 そんなの可哀想だよ。だから、私は『ヒーローを護るヒーロー』なの!」
彼女の言う事はその通りで主義・主張としては通っているのかもしれない。
だが、一つだけ俺は訂正する。
「俺は、この町全員を守っているなんて思っていない俺に出来るのはせいぜい
 手に届く範囲の人達しか守れない…俺はそんな大層な物なんかじゃないんだよ」
ヒーローとは本当に正義を優先し、寝食を無視する者達のことだ。
俺はそんな殊勝な人間ではないし今回のような余程の事じゃない限り警察に任せる人間だ。
それにこの力はそのように使われる物ではなく、この世の理に通用しない論外の存在を葬るための力なのだから。
なんて事を言っている最中に空に浮き上がっていた。
>「じゃあねお兄ちゃん! オジちゃん! あと変な人! 
 皆が『ヒーロー』でいれば、またいつか会えるかも! だからお兄ちゃん、頑張ってね!」
「……おじちゃんって俺まだ20代なんだけどなぁ…とりあえず帰り道は気をつけろよ」
少し凹んだが、一応年相応の少女には安全に気をつけるように言う。
まぁ心配ないだろうが。
「さぁて、お前等も一応夜道に気をつけろよ?背後からズドンなんてこともありえるからな?」
二人に背を向けて手をひらひらと振る。
シスターとガキ共は心配だが、その事は明日に後回しにする。
それに教会の修理になるだろうから早く寝たい。
さぁーて明日は仕事は多分ないから忙しくなるぜ。




138 名前:秤乃暗楽 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/01/10(日) 04:43:21 0
やっとこさ埃臭い地下からの脱出を果たした私は、随分とみすぼらしくなってしまったゴスを手で払う。
けれども満遍なく引っ付いた埃はひどく頑固で、一筋縄ではとれない。
仕方ないから一旦、その場で私はくるりと一回転した。
脳みそお天気晴れ晴れ笑顔のあの子じゃあるまいし、私にはこんな事似合わないから嫌なんだけど。
まあ誰かが見ている訳もないし、いいって事にしておきましょう。

だけど、さてさてどうしたものかしら。
あの大馬鹿、本当に私の話が通用したのか怪しいものだし。
案外まだ諦めてなかったりしてね。私の脳みそ。
だとしてもあんなのに遅れを取るような私じゃないけど。

一応、潰しとこうかしら? 
私に反感抱いてる奴がこの世界にのうのうと生きてるってのも、癪だしね。
頃合を見て、光に言ってヒーロー達を差し向けてあげましょう。

きっとあいつの子供達も皆殺しにされちゃうわよねぇ。
どんな顔するのかしら、あいつ。
馬鹿げた脳みそに描いた理想郷が、地面に張られた薄氷みたいに原型もなく踏み躙られたら。
その顔を見る為にこっそり忍んどくのも悪くないかも。

っと、そんな事を考えていたらいつの間にか、自分の目口が三日月みたいに歪んだ弧を描いている事に気が付いた。
いけないいけない、こんな顔じゃ次の予定がこなせないわ。
目を瞑って深く息を吐いて、ひとまず私は表情のリセットに心掛けた。

……さて、行きましょうかね。
確か彼は今日、一念発起して銀行強盗をやらかす予定だったわね。
大丈夫かしらねぇ。ヒーローにこっ酷い目に遭わせられてなければいいけど。

まあそんな神のみぞ知る事で懊悩しても無意味ってものね。
と言うかもしも酷い目に遭わされているなら尚更急がなきゃだめじゃない。

そんな訳で私は自分の影をワンドに与えて『門』を描いた。
これを潜った先にはどんな光景が広がるのかしら。
札束を抱き締めて、アパートのせっまい一室ではしゃいでる彼がいるかもしれないわね。
でも刑務所で膝を抱えて、さめざめ咽び泣いてたりしたらどうしましょう。

ま、それも見てみれば分かるわ。
さっさと行きましょうか。

139 名前:秤乃暗楽 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/01/10(日) 04:44:41 0
結論から言うと、門の向こうでは私の予想を遥かに超越した展開が繰り広げられていた。
酸素に触れて赤黒く変色した血溜まりに、腹部から溢れ出た五臓六腑が辺りに散乱している。
うわっ、何アレ。肋骨? 胸を突き破って出てきてるんだけど、グロいにも程があるでしょう。
良く見たら手足も訳の分からない方向に曲がってるし関節が幾つか増えてるみたい。
色々と身の気が弥立つ造形になっちゃってるけど、一番おぞましいのはこんなになってもまだ生きてるって事よね。
って言うかどう言う経緯でこうなった訳?

そう思って首を回してみると、何だかよく分からない外形をした銃を携えた男が立っていた。
片手に持った預金通帳に視線を逸らして、別に何でもないように平然とした態度だ。
一応『ヴィラン』であるこの元人間になりつつある真性を撃ったって事は、あの男は一応『ヒーロー』って事になって。
でもこれはどう見てもやり過ぎ。
人間一人死なせようとしているのにああも平静を保っていられるのは、どちらかと言えば『悪』の部類に入るだろう。

けど、今はそんな事はどうでもいいか。
とりあえずこのあの世まっしぐらな残念ちゃんを死なせないようにしなくちゃね。

「と言う訳で……じゃあねえ、『ヒーロー』だか『ヴィラン』だか良く分からない貴方。あと有象無象の皆様方」

言いながら再び門を描き上げる。
行き先は真性のアパート。

相変わらず死に体の真性に顔を近付けて、私は問いかける。
彼の眼前に、門に巻き込まれた数枚の紙幣を突きつけて。

「おめでとう。これで銀行強盗は成功ね。でもこんな小さな手で握れちゃうような、チャチな札束で満足?
 もっと悪い事、してみたいない? 貴方さえよければ、私がそのお膳立てをしてあげるんだけど。
 そうね、まず手始めに……そのだらしない格好からどうにか、ね?」

もしも否む答えが返ってきた場合は、このまま立ち去ってしまおう。
能力は良くても、見込みなしだわ。
首から上を貰って、あの馬鹿博士にでもくれてやればいい。
死ぬ前に一度くらいは糠喜びさせてやるのも一興だしね。

140 名前:秤乃 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/01/10(日) 04:48:26 0
>>136
お疲れ様でした。

と言う訳で勝手ながら後のイベントの種とさせていただきました。
そして>>135の真性さんには生き返りルートを用意させていただきましたです。
乗るも反るもご自由にですよー。

141 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2010/01/10(日) 12:33:53 0
コクハ市ね

142 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/01/10(日) 14:15:28 0
ヒーローTRPG避難所 in なな板【ヒロヒナ】
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1263100413/

143 名前:赤穂朗氏 ◆y6ZFeIPasDPg [sage] 投稿日:2010/01/10(日) 17:46:35 0
名前:赤穂朗氏(あこう ろうし)
職業:都市の職員(公務員)
勢力:悪(ヴィラン)
性別:男
年齢:30
身長:176cm
体重:60kg
性格:誰からも好かれる好青年
外見:会社員風のいたって平凡な服装
外見2:(変身後の姿) 人型の兎のような姿
特殊能力: 第一の能力:異空間へ物を引きずり込む
第二の能力:触れた人間や生物の記憶や能力を盗む
…と数々の能力もある
備考:平凡な市役所職員。しかし裏の顔は数々の殺人を犯している
異常者。暴力衝動を抑え切れず、度々殺人を犯してきた。
ある日、友人である岡田博士から受け取った「宇宙から来た鉱石」の
影響を受けて異能力を得た。
自分の真の正体を知った者は必ず殺してきた為、彼の本性は誰も知らない

(よろしくお願いします)

144 名前:トリッシュ ◇.H4UqpaW3Y[sage] 投稿日:2010/01/10(日) 17:48:26 0

声をかけても、男は反応しない。まるで屍のようだ
試しに軽く肩を叩いていると、まるで置物のように倒れた
「トリッシュ、今更なんですが、犯人はこの男ではないようです
 あの暴走車の運転手はスキンヘッドでした
 ちょうどあのTVに映っている男のように」
アイヴィスに促され、闇視モードを解除しTV画面を見ると
先程の中継映像の中に確かにスキンヘッドの男が居た
「照合完了…この男です」
「馬鹿言わないでよアイヴィス。録画した映像ならまだしも、ライブなのよ
 ここからこの教会までどれだけ離れているか分かってるでしょ」
トリッシュは狼狽するかのように、アイヴィスを怒鳴りつける
「しかし、照合率は99%ですから、双子でない限りは…」
「あぁもういいわ、とりあえず警察に連絡して
 私は店の電気つけてるから」


145 名前:赤穂朗氏 ◆y6ZFeIPasDPg [sage] 投稿日:2010/01/10(日) 19:36:16 0
私の名前は赤穂朗氏。
私は平穏な生活を好む。
誰とも争わず、面倒を嫌い平和を愛する。
今日も何事もなく、上司にも文句を1つも言われる事のないように
粛々と仕事を終えて帰宅した。

…だが、気がかりがある。
岡田博士だ。彼は私の「能力」に興味を持ち始めた。
化物を作り出し、私の愛する「平穏」をぶち壊そうとすら
している。
親愛なる友人だから見逃していたが、致し方ない。
彼の研究所に辿り着くと、博士は一心不乱にキーボードを叩いていた。
「邪魔するよ、博士」

>「私の体を面白い位ぶちのめしてくれた礼はしてやろう…成すすべなくぶちのめされて死ぬがいい」

「残念だが、博士……死ぬのは、貴方だ」
博士の隣に、兎の頭を持つ異形の人型が赤い空間を裂いて現れる。
恨みと憎しみに囚われた彼はそれに気付くはずもなく。
赤い空間に、狂気の悲鳴を上げながら引きずり込まれていく。

「君の存在は、私が覚えておこう」
LPディスク程度の大きさのディスクが赤い空間の隙間からポトリ、と落ちた。
それを私は無表情のまま鞄の中へしまい込む。
博士の研究所を出た時、既に街は夕闇に落ち始めていた。
「美しい……」
私は恥ずかしながら、そう呟いた。
この街はやはり美しい。そんな街で犯す殺人は、尚に美しい。

【連続殺人鬼 赤穂朗氏】

146 名前:旋風院 雷羽 ◆zYCuy2/gkI [sage] 投稿日:2010/01/10(日) 20:58:23 0
>>106>>110

「ラーメンセットだ。急いで作りやがれ」

変装用のぐるぐる眼鏡を装備した雷羽は、「おのれでぃけいど」と、
何やら妙な事を言っている店主に対し、不機嫌そうに注文をした後、
暇を持て余す様に店内に設置された安物のテレビを眺めていた。
そこに映っているのは夜のニュース番組で、今日起きた様々な事件を、
怜悧な感じのする美人キャスターがとりとめもなく語っている。
そして、その事件群の中には当然雷羽の起こしたバスジャック事件もあった。
だが、死亡者や重傷者がいなかったせいか、どうにも他の悪(ヴィラン)が
起こした事件に比べて扱いが小さい気がする。
やはり、人というものは誰かの無事より、誰かの不幸に注目したがるのだろう。

(……くそっ、俺様の芸術的かつ理知的な作戦が成功してれば、
 あんな雑魚共より目立てたっつーの!あー、ムカつくぜ!)
 そう思いながら、今しがた店主が作り上げた、
 目の前で湯気を上げているラーメンセットを食べようと割り箸を割り……

「あ"ぁん!?テメェ何言ってやがる!!
 あのバスジャックはどう考えても芸術的な――――」

突如、横に座りチャーハンを食っていた男が笑いながら放った
「バスジャックとか古臭いよなー」発言に、思わず男の胸倉を掴んでいた。
だがそこで、雷羽はハッと我に返る。

「「……」」

店内に広がっていたのは、何とも言えない気まずい沈黙。
数少ない客の、その全員が雷羽の方を向いている。
雷羽の胸に去来するやってしまった感。
ここで自分が悪(ヴィラン)であるとバレれば、当然雷羽は
住処にしているボロアパートへ戻れなくなるだろう。それはいけない
ただでさえ度重なる作戦失敗で給料が削られ、雷羽の生活は困窮しているのだ。
悪の組織の人間にも一応の生活がある。ここは怒りを堪えて誤魔化さなければならない。

「あー……その、げ、芸術的な……あれだ、美人キャスターじゃねぇか」

そう苦し紛れな誤魔化しを言うと、座ってラーメンセットをガツガツと食べ出した。
店内は暫くざわついていたが、雷羽がラーメンセットを食べ終わる頃にはもはや
何も無かった時の状態に戻っていた。この都会ではどうでもいい見ず知らずの他人に
興味を持ち続ける人間など殆どいないのである。

147 名前:旋風院 雷羽 ◆zYCuy2/gkI [sage] 投稿日:2010/01/10(日) 21:00:07 0
ラーメン屋を出た後、雷羽はボロアパートから歩いて数分の位置にある
人気の無い公園のベンチに座り、変装用の眼鏡を外して星を眺めていた。
日はすっかり沈み、月と外灯の光だけが雷羽を薄く照らしている。
「……」
改造人間である雷羽は、基本的に睡眠を取る必要が無い。
それは、単にその必要が無いからだ。倫理と道理を外れた
手術で改造された雷羽の悪魔的な肉体は、24時間休まず
行動し続ける事を可能としている。
雷羽が眠る時があるとすれば、深刻なダメージを受けた時や
気絶した時、或いは、機能停止する時くらいであろう。

だがそれは、逆に言えば眠る事が出来ないという意味でもあり、
故に、こういった何もする事が無い夜などには、
雷羽はアパートに戻らず、夜が明けるまでこうやって一人で時間を潰す事が間々あった。

148 名前:本舘 ◇SGue2uUfkw[sage] 投稿日:2010/01/10(日) 23:15:33 O
>>147帰路に着く途中、公園のベンチに人の姿を発見する。
会社帰りのサラリーマンか何かかと思ったが、よく見ればソイツは…
「なんだ、雷羽か。」
そう、先程バスジャックをしていたヴィランの幹部、雷羽だった。
僕は驚く雷羽をよそに、雷羽の隣に座り込む。
つい先程まで命の奪い合いをしていた相手と公園で鉢合わせたら驚くか…。
「こんなところで何してるんだ?
 作戦失敗して上司にでも怒られたのか?」
それが本当だとしたら原因は僕にもある事になるのだが…。
「おっと、恨まないでくれよ?僕だって君が憎くて君の邪魔をしたわけじゃないんだ。
 ただ単に、暇潰しに丁度良さそうだったからさ。」
この言葉に偽りは無い。
雷羽は僕に恨みがあるかもしれないが、僕は雷羽個人に恨みがあるわけではない。
だから状況によっては僕が雷羽の味方になり、星さん達と敵対することもあり得る。
「大変だよねぇ。どちらかの勢力に所属するのって。
 上司とか部下とかめんどくさそうだし。
 …君は何の為にヴィランに所属してるんだ?
 自らの正義か?上司への忠誠か?それとも…別の理由があるのか?」


149 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/01/11(月) 00:40:22 0
暗闇の中、一台の映写機が起動している
映し出されているのは、戦う仮面ライダーディケイドの姿
『仮面ライダーディケイドは、腰のライダーベルトに、カードを差し込む事によって変身する』
変身する士の映像と共に、どこからか不気味な声が聞こえてきた
『仮面ライダーディケイドは身長、192cm、体重、83kg、パンチ力、4トン、キック力、8トン、ジャンプ力は一跳びで25mを飛び、100mを6秒で疾走する』
戦い、動き回るディケイドの映像と、それに追する不気味な声
『仮面ライダーディケイドの武器は、腰に下げたライドブッカー、これは剣にも、また、銃にもなり、強力な破壊力を持っている』
映写機はライドブッカーを使って戦うディケイドを映す
『仮面ライダーディケイドは、分身能力や、透明化能力も持っている』
分身、透明化するディケイド
『仮面ライダーディケイドの必殺技は、30tの破壊力を持つ、ディメンションキック』
ディケイドが映像の中でディメンションキックを放った
『更に、仮面ライダーディケイドは、他の仮面ライダーに変身し、その能力を使う事ができる』
映像の中のディケイドがカブトにカメンライドし、クロックアップして見えなくなってしまう
『そして仮面ライダーディケイドは、他のライダーと協力して、強力な協力必殺技を放つ事もできる』
ディケイドとクウガが協力し、映像の中でクウガゴウラムが炸裂した
『仮面ライダーディケイドは更に、コンプリートフォームと言う形態にもう一段階変身し、より強力な必殺技を使ってくる』
映像の中のディケイドが、コンプリートフォームへと変身する
『こうなってしまうと、最早倒す事はできないだろう』
ブレイドのファイナルアタックライドがカメラに炸裂し、映像が途切れてしまった

『ディケイドは、全ての特殊能力を、ライドブッカーから出すカードによって使用する』
新たな映像が現れ、ディケイドがライドブッカーからカードを引き抜くシーンが映し出され、カードがアップになる
『つまり、ディケイドにカードを使わせなければ、奴は完全に無力なのだ』
その言葉と共に、スクリーンが破れ、その後ろから何と仮面ライダーディケイドが現れた!
『このサイボーグは仮面ライダーディケイドの動きと防御力を、寸分たがわずコピーしている』
チュイーンと音をさせて、前に進んでいく青い瞳のディケイドボーグ
その前方の暗闇から、別の真っ黒い怪人が進み出てきた
『これより性能テストを開始する!ディケイドボーグ、目の前の敵を殲滅して見せろ!』
不気味な声の命令に、ディケイドボーグは黒い怪人へ拳をふるって攻撃を開始する

放たれた連続パンチに、黒い怪人はビクともしない
それならばと距離をとったディケイドボーグがライドブッカーからカードを引き抜いた
その瞬間、黒い怪人がすさまじいスピードで腰の銃を引き抜き、ディケイドボーグの両手を撃ちぬき、ディケイドボーグはカードを取り落とし、その場に倒れこんでしまう
『ディケイドの腕の装甲なら打ち抜く事ができ、門矢士の筋肉を数日間弛緩させて使い物にならなくさせる強化筋肉弛緩弾だ。これでディケイドは両手を封じられ、カードを使う事ができなくなる』
両腕の筋肉が弛緩し、手をだらりとたらしたまま何とか立ち上がるディケイドボーグ
その頭に、黒い怪人は狙いを定める
『殺せ!』
黒い怪人が連続で撃った銃弾が次々と頭部に炸裂し、ディケイドボーグの頭部が割れ、次の瞬間ディケイドボーグはバラバラに爆発してしまった
『テスト終了!フハハハハハハハハハハ…完璧だ、後は門矢士を誘き寄せるだけだ。ザンジオー!コウモリフランケン!』
不気味な声に応じて、暗闇の中から真っ白い泡が湧き出し、それがあっという間に山椒魚の怪人、ザンジオーになり、その後ろにすぅーっとコウモリフランケンが姿を現す
『門矢士を一人で地獄谷におびき出せ!!』
「ウォーーー!」
「クェェェェーーーェ!」
謎の声に命じられ、2体の怪人は闇の中に消えていった

150 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2010/01/11(月) 13:53:28 0
「ウォーーー!」
「クェェェェーーーェ!」


151 名前:真性 ◆8SWM8niap6 [sage] 投稿日:2010/01/12(火) 09:12:28 0
俺は死んだ。スイーツ(笑)

「おめでとう。これで銀行強盗は成功ね。でもこんな小さな手で握れちゃうような、チャチな札束で満足?もっと悪い事、してみたくない?
 貴方さえよければ、私がそのお膳立てをしてあげるんだけど。そうね、まず手始めに……そのだらしない格好からどうにか、ね?」

俺は死んだ。

死んだんだってば。

死に掛けの俺の前に、俺の死体の前に、突然現れた少女が語る。彼女の背後には妙にのっぺりとした着色の穴が。
地獄色なんて種類の色があったらきっとこんな色なんだろう、そのどこに繋がるとも知れない穴からは紫電と雄叫びが24時間年中無給。
ひらひらと狭まった視界の中央で紙幣が踊った。畜生、見せびらかしやがって。位置的にフリフリなスカートの中身も見えた。役得。

「……あ」
――『チャチな札束で満足?』
「……あああ」
――『もっと悪い事、してみたくない?』
「……あああああああ」
――『貴方さえよければ、私がそのお膳立てをしてあげるんだけど』

それは三途のこちら側。生きるか死ぬかの選択肢。この手を取れば、取れば、取れば、――生きられるのか?
きっと彼女は異能の眷属。こんな修羅場に単身乗り込んできて俺を連れ出せるような、敏い手腕の持ち主。
この少女ならば、俺のR指定なこのナリをどうにかできるんじゃなかろうか。俺を、新しい段階へ手を取って引っ張り挙げてくれるんじゃなかろうか。

――だったらもう、悩む必要なんかない。

"神様"を使えば肺がぶっ壊れた現状でも言葉にして意思を伝えることが出来る。俺は首から上だけを保護された死人の様相で、
だけれどぐっと口端を引き上げて、笑ってやった。儚くても、不安定でも、強い笑顔。あとは、口に出して言えばいい。助けてくれ、と。死にたくない、と。

さあ、

言うんだ。

「――……悪いことしてぇ」

口が滑った。なんていうか、そう表現するほかないような感じなんだけど、俺の口から命乞いは出てこなかった。代わりに答えになってるのか微妙な
セリフがつるりと滑り落ちてきて、少女の膝元にぼとりと墜落した。慌てて誤解を解く旨と改めて救助要請しようとして、それ以上言葉が出なかった。
神様が居ても流しすぎた血は帰らない。覆水が盆に戻らないように、俺は意識を手放した。

俺の答えを聞いた少女の口端が、また同様にぐいっと引き上げられた気がするが、脳が死んだのでそれ以上考察することは叶わなかった。

暗転。
俺は生き返った。スイーツ(笑)

見えたのは知ってる天井だった。六畳一間のボロでもなく高級でもないアパートの一室。俺の部屋。窓からはこの上なく明るい月が見え、
明かりをつける必要を排していた。俺は起き上がった。驚いたことに起き上がれた。鼓動さえ聞こえてしまいそうな静謐の中で、俺は自分の身体を改めた。
治ってる。あれだけ原型留めてるのが奇跡以外の何者でもないって感じの体たらくだったのに、生まれてきたばかりのようにピカピカだ。スベスベだ。
服も元通りになっていた。まるで、あの銀行での一件がただの白昼夢であったような、ふわふわした感覚。ただ、確かに現実であったことの証左がここに。

「………………」

部屋に散乱する紙幣。俺がどうやったって持ち得ない量の野口英世達が、絨毯の模様と見紛うぐらいに散在していた。これがホントの散財ってか。
そして部屋の端、窓の下にもたれかかるようにして少女がいた。ゴスロリっぽい黒の衣装に身を包んだ、人形のように可憐な少女。犯罪的で、煩財的だ。
一人暮らしの男の部屋に少女が一人、傍から見れば完全に通報対象だが、それでいて力関係はまったくの間逆。俺には畏怖しか浮かばない。

「……あの、なんつうか、その。――粗茶ですが」

いつのまにか俺はちゃぶ台に湯のみと茶菓子を置いて、とっておきの玉露を振舞っていた。こういうこまごまとした作業は得意だ。ああ小市民。
過程はどうあれ助けてもらったことは確かなのだ。身体は万全に動くし、むしろ不摂生を続けていた昨日までより快調とさえ言える。
これ以上の手助けを彼女がしてくれるのならば、まずは話を聞くのが先決だろう。そう判断して、俺はとりあえずの歓待を行うことにした。

152 名前:旋風院 雷羽 ◆zYCuy2/gkI [sage] 投稿日:2010/01/12(火) 19:34:16 0
>>148
「ああん?誰だこの俺様を「なんだ猫か」みたいなノリで呼び
 やがった奴h……げえっ!? 貴様は昼間の糞ヒーロー!!」

夜の公園に一人きりという何となくセンチメンタルな雰囲気を
醸し出していた雷羽に、話しかけて来たのは、昼間に雷羽の作戦を
ぶち壊したヒーローの片割れである本館だった。
その本館は、何故か雷羽の隣に本館は何故か雷羽の隣に座ると、
とっさの事でリアクションに困っていた雷羽に何やら話しかけてきた。
曰く、昼の事は暇つぶしだと。曰く、何故ヴィランに所属するのかと。

故に、雷羽の拳が本館の腹部に向けて放たれるのは必然だった。

「……なーっはっはっは!! わざわざ人気の無い所に出てきて油断するとは馬鹿め!!
 昼に俺様の素晴らしい作戦を邪魔をした恨み、ここで晴らしてやるぜっ!!」

本館は忘れていたのだろうか。例えどれだけぬけていても、
例え今までの彼の作戦はほぼ全て失敗し、未だ一般人に死人をだしていなくても、

――――旋風院雷羽は、悪(ヴィラン)の改造人間であるという事を

幼稚園児を暴力で黙らせたのは誰だっただろうか。
ヒーローが現れた際に園児に銃を突きつけ人質としたのは誰だっただろうか。

この世界にはヒーローがいる。故に、そこで起きる悪も本物の悪だ。
もしも悪(ヴィラン)に暇つぶし程度の覚悟で関わろうとする人間がいるなら

 悪は容赦なくそれを食い潰す


153 名前:旋風院 雷羽 ◆zYCuy2/gkI [sage] 投稿日:2010/01/12(火) 19:35:09 0
変身せずとも、改造人間である雷羽の身体能力は常人の数倍を誇る。
変身していないヒーローなど、人外でもない限り敵ではない。
そうして、凄まじい重量と速度を持つ拳と蹴りが本館に向けて
放たれ――――なかった。蹴りは、何故か寸止めの状態で止まっている。
その奥にはつまらなそうな雷羽の顔があった。

「……ふん!やめだやめ!こんな誰もみてねぇ所でヒーローを
 ぶっ殺しても、俺様が目立てねぇじゃねーか。殺すならテレビの前でやらねぇと
 俺様の気分が収まらん!」

そう言って足を下ろすと、本館に背を向け公園の出口へ向けて歩き出していた。
気分が乗らなかった。或いは彼が持つ感性的な物に反しているとでもいう様に。
……と、その前に一度だけ雷羽は足を止める。

「俺様がヴィランにいるのは、敬愛するボスに従う為だ!
 それ以外に理由なんてねぇし、知らん!」

理由も無く、従うべきだと思うから従っている。それが示す事は――――
先の本館の質問に何故か律儀に答えた雷羽は、変装用の眼鏡を装備すると、
一人夜の街へと消えていった

154 名前:本舘 ◇SGue2uUfkw[sage] 投稿日:2010/01/12(火) 20:39:22 0
>>152-153
雷羽は僕にボディーブローを放ち、不機嫌そうに帰って行った。
どうやら、テレビカメラの前じゃないと気分が乗らないらしい。
目立ちたがりの中学生か…。
というか…
「僕はヒーローじゃないって言ってるだろ…」
誰も居ない公園で独り呟く。
……帰るか。
僕は腹部を擦りながら自宅へ向かった。

家に着き、ベルトの入ったバックをベットの上に投げる。
今日は夕食を作る余裕が無いな。
一人暮らしの僕には食事を作ってくれる人が居ない。
故に、家事は全て自分でやらなければならないのだ。
自由といえば自由なのだが、なかなか面倒な生活だ。

脱衣所で服を脱ぎ、鏡を見る……痣だらけだ。
いくら変身していると言えど、体に傷はつく。
人間とは比べ物にならない力を持った相手と毎日闘っていればこうもなるか…と、ちょっと納得してしまう。
もっと力が欲しい…圧倒的に相手を叩き潰す力が…。
あの少女から貰った力…使う機会は無かったが、凄い力だったな…。
あの力があれば……。
……ダメだダメだ、さっさとシャワーを浴びて寝よう。

シャワーを浴びて、髪を乾かしすぐにベットに入る…。
「……………。」
…寝れない。
何故だ?体は疲れている筈なんだが…。
興奮しているのか…?
しょうがない……寝るのは諦めよう。
たまには星を眺めて夜を明かす、というのも悪くないだろ。

155 名前:星 真一 ◆fSS4JmCGEk [sage] 投稿日:2010/01/13(水) 01:41:59 0
家の帰り道の最中、人気のない道で誰かに呼び止められた気がする。
「気のせいか?」
と思い振り返るとそこには一匹のカラスが居た。
当然の事ながらカラスがいる時刻などではなく、他の鳥など一匹もいる気配がない。
『私だシンイチ』
その声に聞き覚えがいや忘れる訳がないだろう、アーカム大学ではよく世話になったあの人物を。
『そのまま聞いてくれシンイチ、私は今このカラスをパスとして通じて話している。
 この会話は私と君にしか聞こえていない』
俺に連絡を取ると言う事は余程深刻な事があるのだろう。
『私達がこの都市に張っている邪神関連には引っかかる魔術センサーにある物が反応した
 それは宇宙から落ちてきた黒い石らしい、その石を回収しようとした僕の助手の一人が
 何者かに襲われてね、反応は取り込まれてしまったのか消えてその助手君は今は墓の中さこれは亡くなった助手君のためにも必ず回収しなきゃ行けない
 そこでだ、君に依頼したいんだその黒い石の回収もしくは破壊を願いたい
 期限は出来るだけ早く、引き受けてもらえるかな?
 もちろん報酬は出すよ』
この話を聞いて世話になった恩師の一人の依頼というよりも
その亡くなった助手の無念を晴らしてやりたいという思いが俺の中に湧き上がって来た。
「その依頼引き受けますよ、但し今週は所用諸々で探索は出来ないのでご了承願います」
『了解したよ、では頼むよ』
カラスはどこかに飛び去っていく。
「はぁ〜忙しくなるぜ、まぁいい事だけどよ」
再び家までの帰路を歩き始める。









156 名前:テラシ ◇vCpQPGCxWE [sage] 投稿日:2010/01/14(木) 17:32:36 0
蜃気楼のなかを錯綜する無数の影、狐に化かされたような奇怪な光景に、ディケイド達が仮面の下で、表情を曇らせる。
警官の死体と硝煙のなかでゆっくりと立ち上がるクウガは、その身に受けた銃創によって体の各部を赤黒く変色させている。
スキンヘッドの男が弾倉を外し、それを万華鏡のようにカラカラ回しながら、その子供のような顔立ちを白く際立たせている。
テラシは弾を一発ずつ込め、クウガの次なる攻撃に備える。それは反撃の準備というより、まるでリボルバーという顕微鏡のなかから
クウガの挙動を観察するような、嬉々とした表情から、自身もまたストラテジーを兼ね備えていることが見てとれる。
ディケイドがクウガの脇に立ち、何事かを吹き込む。

「え、いいのかよ士!こいつを逃がしたら、またどこで悪さをするか!」

テラシが不思議な表情で二人の顔を見る。まるで星空の観察中に異形な隕石が紛れ混んだように。
ディケイド達はバイクに乗り、エンジンをかける。稼動するタイヤの回転が地面との摩擦によって煙幕を生じさせる。
その網によってテラシは視界を遮られ、口元を押さえて何度か咳き込む。
周りの修道女達はまるで秘密事を隠すように、口元をハンカチで押さえて支えあっている。
ライダー達が去り、やがて神聖な静けさが辺りを包む。そこに佇む人形のようなスキンヘッドを無視して、まるで奥の霊廟から浄土への門が開かれたような神聖さが。
テラシは吸われて小さくなっていくインクの染みみたいなバイクの姿に見惚れている。
まるで競争するように怪我人を搬送する救急車の群れ、携帯電話にしがみついて現場の状況をまくしたてる浅黒い肌の男。
テラシはただその中に佇み、バイクの影の名残を頭に焼き付けようとしているのか、動こうとしない。
まるで現像液に風景を漬けて何かを確認しようとするみたいに。

やがて天からの使者のように固い甲羅を持った鋼鉄の女が飛来した。
テラシは怪訝な表情でそれを見ている。救命用のロボット?
背中からブーストする一対の炎がサイレン信号のように、辺りを何もかもを赤く滲ませる。

>「スリリングなドライブの次は何をするつもりかしら?アクションスターさん」

「驚いたな?よくできてる音声だ。どうやって作ってるんだ?」

テラシの家のTVは電波を受信していないため、彼女の中身が自分と同じ人間であることを知らない。
トリッシュ・スティールの取り澄ました顔立ちも、彼女の功績も知る由も無い。

「怪我人を助けに行きたいなら行けばいい。悪いが人形に用はないんだ」

テラシは挨拶代わりに手を掲げると、アイアンメイデンを背に反対の方へと歩き出した。

157 名前:トリッシュ ◇.H4UqpaW3Y [sage] 投稿日:2010/01/14(木) 22:27:44 0
「警察への連絡が完了しました。15分後に此方へ来るそうです」
「そう…わかったわ」
明かりのついた喫茶店の中を見回した後、またテレビに目を向ける
どうやら、怪物退治が終わったらしく中継のカメラもそろそろ途切れそうだ。
しかし、スキンヘッドの男はまだそこにまだ居る
此処までのことをする男が何もせず帰るだろうか?
否、断じて否
奴はまだ何かやらかすつもりだ
「アイヴィス!警察に連絡して「事情聴取は後日受ける」って
 これから現場に向かうわ」
「かしこまりました」
テレビの中継が途絶えた瞬間、彼女は教会に向かった

飛行中、空を飛んでいる少女を確認したが、放っておくことにした
別にこの都市で空を飛んでいる者は少なくはない
一々気にしている隙も無い

1分ぐらいで彼女は現場にたどり着いた。
まだ現場には、警察やらマスコミやら野次馬が残っている
その中から、すぐさま彼を見つけ、彼女は彼の目の前に降り立った。
「スリリングなドライブの次は何をするつもりかしら?アクションスターさん」
そう言いながら、彼の出方を窺う。
もし、彼が何かしようとした瞬間、エネルギー波で吹き飛ばす用意をする

158 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2010/01/15(金) 01:56:10 0
超エネルギー電磁波!!

159 名前:秤乃暗楽 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/01/15(金) 20:01:53 0
「――……悪いことしてぇ」

絶命の淵に立たされて尚、気概の限りを尽くして真性が搾り出したのは、そんな言葉だった。
予想から余りにも逸脱した回答に、私は不覚にもその意味が飲み込めなくて暫し呆然とする。
けどじわじわと、置いてけぼりにされた理解が後から付いてくる。

同時に、肩が震えた。
口端が知らず知らずの内に吊り上がる。
胸の内から溢れてくる笑いが堪えられない。

彼、最高だわ。
累積した劣等感と凡夫からの脱却願望のせいかしら、ものの見事に倒錯しちゃってるじゃない。
能力ばかりの俗輩だとしか思ってなかったけど、想像外に掘り出し物かも知れないわね。

いいわ。貴方にもう一度生きる権利を上げる。
だから精々頑張って大悪党になってちょうだいな?
極悪非道の巨悪な兇徒こそが、『ヒーロー』の価値を保ち高めてくれる唯一の餌なんですもの。

お気に入りの黒いゴスを彩るルビーに、私は右手に構えたワンドを添える。
ただのルビーじゃないのよ?
貴方が盗んだお金全部使っても、到底手に入らないくらいの高級品なの。

鳩の血の色って言ってね、どう? この胸がざわめく程に深い赤色は。
ただの赤とは相性の悪い私も、この禍々しい凶猛さを孕んだ血色なら扱う事が出来る。

だから、感謝なさい?
貴方の命の為に、この艶麗な真紅を散らしてあげるんだから。
……さて、そろそろ助けてあげないと本当に死んじゃうわね。

この美しい世界の中でも、至上の赤をワンドに宿す。
見とれるような赤、血の色、命の色。
それを小さく一振り。

瞬く間に傷が塞がり、真性の顔に血の気が戻っていった。
間隙を置かずに、彼は弾かれたように立ち上がる。
あらあら、随分と元気な事ね。まったく結構な事だわ。

呆然とした様子で真性は自らの身体を改めていた。
綺麗さっぱり、服に開いた風穴さえなければ、今日の一件が夢境の出来事だったと言っても通用する位には治ってる。
一通り自身を吟味し終えた真性は次に、部屋に散らばった紙幣を見渡した。
こんなに沢山の野口英世を一遍に見るだなんて、彼の人生では初めてかも知れないわね。

160 名前:秤乃暗楽 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/01/15(金) 20:06:01 0
それはさておき。
彼の視線が最後に捉えたのは、私だった。

>「……あの、なんつうか、その。――粗茶ですが」

生き返って早々真性は、彼には不釣合いな程薫り高いお茶とお菓子を私に振舞った。
随分と手際のいい工程だったけど、その辺も彼が凡夫たる所以なのだろう。

「玉露ねえ……こんな子供に夜更かしさせて、まったく何を考えてるのかしら」

冗談めかして言ってみるけど、申請は曖昧に口角を吊り上げるばかりでろくすっぽ反応を示さない。
何よ、人を怪物でも見るような目で見ちゃって。
失礼ねえ、まあいいわ。さっさと本題に移っちゃいましょ。

「これ、何だか分かるかしら?」

掌に隠していた石を見せながら、私は問う。
見る者を深淵に引き擦り込むような真紅は見る影もなく、それは真っ白に染まってしまっていた。
その白も、ただの白じゃない。

雪のように儚くもなく、陶器のような艶もなければ、羽毛のような優しさもない。
ただ何かが燃え尽きた後に残されるような、そこに横たわっているだけの死んでしまった色だ。

「本当はね、もっともっと綺麗な石だったのよ? でも貴方を助ける為に、こんな風になっちゃったの」

胸に手を添えて目を瞑り、心を痛めたような仕草で語る。
我ながら薄気味悪くなるくらい似合わない事してるわね。

「結構お気に入りの石だったけど……でもいいの」

目を薄っすら開くと、今度は口元に歪な曲線を描き上げる。
そうそう、こっちの方が私にはお似合いだわ。

「だって、貴方に代わりを取ってきてもらうんですもの。それも、これよりもっと綺麗な石をね」

この都市には強欲が渦巻いている。
だから財産が集まり富裕層が生まれ、それはまた新たな欲望と悪を生む。
地獄へ真っ逆さまに続く奈落みたいな悪循環だわ。
まあそのお陰で『ヒーロー』も生きていけてる訳なんだけど。

「と言う訳で、貴方にはもう一度強盗をしてもらうわ。今度は銀行じゃなくて、一個人を対象に」

明確に誰のお金と言う訳でもない銀行と違って、自らの悪意を直に誰かに振り翳す。
彼のちっぽけな器じゃ荷が勝ち過ぎかしら?
でもこれくらい、容易くこなしてもらわなきゃ困るわ。

粗末な強盗くらい、その気になれば誰でも出来る。
貴方には、貴方にしか出来ない悪事をしてもらわなきゃ。
それが『ヒーロー』を生かす為の糧となるんですもの。

これはその為の準備期間。
噎せ返る程に濃い悪意と言う毒に、少しずつ慣れてもらう為の。

161 名前:秤乃暗楽 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/01/15(金) 20:13:57 0
「私が欲しいのは『黒いダイヤモンド』。……一応言っとくけどクワガタ虫とかじゃないわよ?
 細かい話は置いとくけど、そう言うのがあるの。貴方にはそれを盗んできて欲しいのよ。それ以外は、全て貴方の物で構わないわ。
 それで、その持ち主なんだけど」

一度言葉を切り、真性に耳を傾ける猶予を与えた。
今や都内なら、寧ろ規模を全国にまで拡大しても知らない人などいないのではないかと言うこの名前。
何の準備も心構えもなく彼が聞いたら、卒倒しちゃうかも知れないもの。

真性の喉がごくりと生唾を嚥下する様を見届けてから、私は彼女の名前を紡ぎ出す。

「スティールインダストリアル代表取締役 、トリッシュ・スティールよ」

驚愕の余りに、真性が調子外れな悲鳴を上げた。

「夜遅くに駄目じゃない、そんな大声上げたら」

私の諫言への反応もそこそこに、弱弱しいながらも彼は抗議を始める。

「私は別にいいわよ? 地道にバイトしてでも返済してくれるって言うなら。どれだけ掛かるか知らないけど」

真性の談判をそっけなく斬り捨てると、私はさっさと話を再開する。
彼もどうやら諦めたようで、何だか早くも死を予見したような遣る瀬無い表情で私を見ていた。

「そんな顔しなくても、助力はしてあげるわよ。
 あの馬鹿博士に頼めばアンタみたいのでも……文字通りの化け物染みた強さにしちゃいそうだから却下ね。
 仕方ないから、私が力を貸してあげるわ。まったく、こんなの特別よ?」

まあ、また死なれちゃっても困るし。
これは奉仕よね、彼と言う種を悪逆非道の大樹へと成長させる為の。
だからこんな石の一つや二つ、惜しくなんてないわ。お気に入りには違いないけど。

服飾の一つだった黒い宝石を取り外して、色をワンドに捧げた。
そして彼の手の甲に、奇怪な模様の紋章を刻み込む。
ちなみに模様には特に意味はないわ。彼が趣味そうな造形で書いてみただけ。

「それが貴方の弱点、つまり能力以外の欠点を補ってくれるわ。
 少なくともちょっと撃たれたくらいじゃ、死んだりしないから安心して」

さて、これで備えは万端。
あとは真性に覚悟を決めてもらうだけ。
……と言いたいんだけど、彼の性格を鑑みるにちょっと追い詰めてやった方がやる気になりそうね。

「じゃ、決行は早い方がいいわ。出来るなら明日の夜にでも……楽しみにしてるからね?」

162 名前:秤乃暗楽 ◆k1uX1dWH0U [] 投稿日:2010/01/15(金) 21:47:31 0



そうして、私は彼の部屋を出た。
まだやるべき事は沢山ある。
でもその前に、私はぼんやりと夜道を歩き、小さな広場に立ち寄った。

握り締めていた手を開き、握っていた色を無くして死んでしまった二つの石を見つめる。

「貴方達の色、大好きだったわ。だからまた、いつか会いましょうね」

短く別れを済ませると二つを宙に、手首の力だけで軽く放り投げた。
重力の手はすぐさまそれを絡め取り、地面へと誘う。
粗い土にぶつかった石は風に吹かれた真砂のように、跡形もなく散ってしまった。

私は暫くその残滓を目で追っていたけど、ふと自分には似合わないなと思い至って、再び夜空へと飛び立った。

163 名前:赤穂朗氏 ◆y6ZFeIPasDPg [sage] 投稿日:2010/01/16(土) 00:15:03 0
>>155
朝の寝起きは心地の良い時間だ。
清潔感の漂う紳士と淑女がニュース原稿を読むのを拝見しながら
私は紅茶に口を付ける。
素晴らしい時間。この平穏な時こそ至福だ。

「―では、次のニュースです。スティールインダストリアル代表取締役 、トリッシュ・スティール
さんの持つ黒い石。通称ブラックダイヤモンドのお披露目が…」

私はその石の映像に釘付けになった。
まさか、私以外にもあの石を持つ者がいたとは。
冷や汗が出る。まさか、岡田が見つけた石は1つではなかったのか?
この赤穂の素性を知る者は消した。
岡田博士は記憶と能力を失い、町外れのスラム街に放置しておいた。
既に彼に石に関する記憶も、私の記憶も存在しない。
「驚いたな…ブラックダイヤモンドか。」
私は出勤用の服に着替える。質素ながら見下されるようでもなく、
簡素でありながら着心地の良いスーツだ。
私が初めて社会人になった歳に祖父が買ってくれたもの。
今でも大切にしている。

「さて…今月は誰にするか」
街で取り溜めた写真を眺める。都内の巨大なターミナルを写したもの。
幾つもの女性に赤い○が付いている。
朝のコーヒーブレイクの次に楽しみなのが出社前の「品定め」だ。
その品定めをしている中、もう1人の私「兎のような化物」が
空中をフワフワと舞いながらベランダから入ってきた。

「気付かれるぞ 殺せ 殺せ アーカム ホシ シンイチ 」

またこいつの予知能力らしい。完全ではないが、最近よく私に
危険を教えてくれる。
写真に新たに赤丸を付けながら私は頷いた。
「今月は彼女にしよう。アーカム大学勤務の非常勤講師…か」

164 名前:本舘 ◇SGue2uUfkw[sage] 投稿日:2010/01/16(土) 00:20:52 0
「星が綺麗だな…。」
こんなにゆっくり星を眺めたのなんていつ以来だろう。
たまには良いかもな…こういうゆったりとした時間を過ごすのも…。
最近毎日闘ってばかりで忙しかったし。
まあ、自分で望んで闘っているんだが。
……退屈でしょうがなかった毎日を、このベルトが変えてくれた。
ベルトを得るまでは家に居ても学校に居ても生きてる気がしなかった。
というより、自分が何故生きているのか分からなかった。
…いや、それは今でも分からない。
もしかしたら、ただ闘う為だけに存在しているのかもしれない。
それならそれで僕は満足だ。
以前のように何も考えずに生きているより、充実した生き方をしていると思っている。
何より闘っている時が、一番僕らしい時だと感じるんだ。
お陰で生傷は絶えないけどね…。


………何だか眠くなってきたな…。
4時か…今から寝て、起きれるかな…まあ良いや…眠りにつこう………。




165 名前:本舘 ◇SGue2uUfkw[sage] 投稿日:2010/01/16(土) 00:44:53 0
「星が綺麗だな…。」
こんなにゆっくり星を眺めたのなんていつ以来だろう。
たまには良いかもな…こういうゆったりとした時間を過ごすのも…。
最近毎日闘ってばかりで忙しかったし。
まあ、自分で望んで闘っているんだが。
……退屈でしょうがなかった毎日を、このベルトが変えてくれた。
ベルトを得るまでは家に居ても学校に居ても生きてる気がしなかった。
というより、自分が何故生きているのか分からなかった。
…いや、それは今でも分からない。
もしかしたら、ただ闘う為だけに存在しているのかもしれない。
それならそれで僕は満足だ。
以前のように何も考えずに生きているより、充実した生き方をしていると思っている。
何より闘っている時が、一番僕らしい時だと感じるんだ。
お陰で生傷は絶えないけどね…。


………何だか眠くなってきたな…。
4時か…今から寝て、起きれるかな…まあ良いや…眠りにつこう………。

166 名前:秤乃光 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/01/16(土) 15:58:51 0
宵闇と煌々と輝く月を背景に、秤乃光は星の海を泳いでいた。。
とは言え風に吹かれる綿毛のように、何の目的もなくそうしている訳ではない。
彼女は地上をきょろきょろと見回し何かを探すようにしながら空を飛んでいる。

彼女の目的はこの都市に生きる『ヒーロー』の一人、麗源新貴、彼だった。

「あのお兄さんも立派な『ヒーロー』だもんね。他人の為に危険を冒して、体を痛めつけて、心を削って。
 ……なのに自分を『ヒーロー』と認められないなんて、そんなのかわいそうだよ」

今から数日後、トリッシュ・スティールの持つ『黒の宝石』が大々的にお披露目される。
自社の為自らを『ヒーロー』だと曝け出した彼女にとっては、これもまた政略の一つなのだろう。
つまりそれは紛れもない『欲望』で、甘美な香りを嗅ぎ付けた蟻宛らに『ヴィラン』が群がるのは必然と言える。

『ヴィラン』には総じてより大きな悪に育ってもらう必要がある。
だが余りに悪行が横行してしまっては、今度は『ヒーロー』に対する信頼が瓦解しかねない。
それでは本末転倒。適度に鎬を削りあい、持ちつ持たれつの関係が好ましいのだ。
或いは、生かさず殺さずの胡麻や百姓のように扱うべきだ、とも言えるが。

ともかく、幾人もの『ヴィラン』が集うであろうお披露目会を看過する事は出来ない。
麗源新貴にとっては、丁度いい機会だ。
これを機に彼が『ヒーロー』としての自信を持ってくれれば、そう思い光は彼のアパートを訪ねた。

しかし、ふと彼女は背後を振り返る。
視線の先には本舘の家があった。

「……ま、こんな時間だし、起きてる訳ないよね」

特に警戒もなしに、光は再び麗源の部屋へと視線を戻した。
薄汚くくすんだ窓ガラスの向こうで、彼は穏やかな寝息に布団を小さく上下させている。
起こしてしまうのが躊躇われる程に安穏とした眠りについている彼に、けれども光は窓ガラスを軽く小突いた。
これは彼の為にもなるのだと、心の中で言い訳をしながら。

167 名前:秤乃暗楽 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/01/16(土) 16:04:39 0
夜道を徘徊して暫く、私はようやくお目当ての人物、旋風院雷羽を発見した。
折角の盛大なパーティーだもの。
彼だけ除け者だなんて可哀想だわ。

「こんばんは。……えっと、何て呼んだらいいのかしら。悪の怪人でよかったかしら?」

瞬間、私の眼前に暴風を纏った拳が迫る。
呼び方が気に食わなかった……って訳じゃなさそうね。

でも、それじゃあ全然足りないわよ。
改造を施されたとは言え、所詮は人間以上化け物以下。
夜の私に挑むなら、もっともっと力を手にしなきゃね。

「どう? 自慢のパンチがこんなか弱い女の子に止められちゃった気分は」

夜闇の腕に捕まえれた彼の拳をそっと撫でて、問いかける。

「貴方はまだまだ弱いわ。人間をやめても尚、『ヒーロー』に負けちゃう位にね」

答えを待たずに、私は更に言葉を続けた。

「だから、貴方がもっと強くなるチャンスを上げる。明日の夜、トリッシュ・スティールの邸を訪ねてみなさい」

それ以上は何も言わない。
何も聞かなくたって時が来れば、彼は自分が何をすべきか分かる筈だから。

さあて、これで役者は大方揃ったかしら?
楽しい楽しいパーティーには、素敵な俳優が不可欠だもの。

【明日と書いちゃいましたが、既に午前四時だし実質今日ですごめんなさい】

168 名前:星 真一 ◆fSS4JmCGEk [sage] 投稿日:2010/01/16(土) 19:00:52 0
起きる時間はいつもより早く、自然と起き上がる事が出来た。
理由としてはおいしそうな朝食の臭いが漂ってきたからだ。
「いつもより早い起床ですね真一さん」
目の前に麗しい女性が料理をして目の前に運んできてくれていた。
「今日はいいお天気ですね」
嬉しそうに窓を開けて天気を見ていると一匹の猫が入ってくる。
「飯食わせろーシンイチー」
猫が喋り、朝飯を要求してくる。
こんな光景がはもう日常茶飯事なので慣れてしまったと言うか、
魔術師の宿命としてこの世の理を理解し、魔を受け入れた者が魔術師たる所以であり
その影響で人外の者が引き寄せられる性質がある。
言っておくが朝食を用意してくれたこの女性は人間ではなく、この家兼事務所に元々住んでいる幽霊である。
猫も妖魔の部類に入る怪猫である。
パソコンの中から中学生ぐらいの少女の外見をした電子精霊のレンが実体化して出てくる。
「今日も騒がしいな、八尋私の分もあるのか?」
八尋という名の女性の幽霊はもちろんとにっこりと笑う。
「はいはいわかったよシオ、ちょっと待ってろよ」
とりあえずマーガリンの塗ったパン一枚を皿に載せて渡す。
「とりあえず頂きます」

朝食を終えると服装を整えて教会の修理の件を伝えて
送迎の言葉を背に受けて事務所から出る。
いつも教会に通る道の横にいつも買っている新聞屋がいた。
金を払って歩きながら買った新聞を見る。
「スティールインダストリアル代表取締役 、トリッシュ・スティール
の持つ黒い石。通称ブラックダイヤモンドのお披露目…まさか!?」
新聞の一面に黒い石が綺麗な女社長と共に写っていた。
まさかこんなにもあっさり見つかるとは思っていなかったが、何か違和感を感じる。
仮にもヒーローの人間がたかが石ころのために平然と人を殺すのかと。
俺は到底この女性がそんな事をするようには見えなかった。
だがもしもの場合があるため、このお披露目を直に見ようと思った。
「今日はとりあえず早めに切り上げて夜に確認しに行くか」
見つかった以上は早めに確認はしておかないとまずい
もしかしたら世界が破滅レベルの代物かもしれないからだ。
そうだとわかればさっさと教会に向かう。




169 名前:麗源新貴 ◆S00N9pbnYw [sage] 投稿日:2010/01/16(土) 23:48:36 0
麗源の朝はハードロックで始まる。歌詞は過激である。旋律は鋭利である。
ただ、ラジカセの音量だけは大分に絞って、板張りを隔てた左右の住人からの抗議は回避している。
慎ましやかな規模のギターソロに、頭の中を攪拌されながらも、
或いは、だからこそ、幻と現の境界は、いよいよもって明瞭に、彼の眼前へ迫ってくる。
その不透明の壁を、拳で小突いて、信用に足るかを確かめる事もできた。
しかしながら、壁の硬度を試せば試すほど、昨夜の一件は頼りなく思えた。

少女の衣服が断固とした白さを湛えて、闇夜によく映えていた。
そればかりが鮮明だった。他の記憶は危なげである。
半醒半睡のまま、彼女を部屋に招き入れた覚えがある。
トリッシュ・スティールとやらの邸宅へ赴けと、促された気がする。
あなたの為になるとか、曖昧な文句を残されたかもしれない。
後には不覚だけが残った。また寝て、起きて、今に至ったのだろうと推測する。

砂とも塵とも付かぬものを選て、銀の砂子と見つけたる物は、
結局、トリッシュ・スティールという人名のみである。
それ以降、記憶の断片たちは手で掬い上げられたそばから零れ落ちて、
選別を反復する度に蒸発を始め、やがて模糊と消えた。

麗源新貴の認識によれば、トリッシュ・スティールとは、
まず知らぬ者はいない、某大企業を率いて憚る女傑である。
感想はそれで終わる。特に憎悪も敬意もない、ごく無事な印象に違いない。
だからこそ、その名が夢中において、徒に形を取って現れるとは考え難い。

顔を洗っても、何かと腑に落ちない麗源は、
いつもの事ながら、一切の判断をカードに任せることに決めた。
延々とシャッフルを続けたカードの山を床におき、最上の一枚をめくる。

「……隠者。正位置か。」

隠者というと要領を得ないが、カードの名を探求者と置き換えてみると、合点が行く。
探求者とは、真理を探るべくして、自らを世の深層へと追い放った人である。
それが正位置で現れるということは、物事に向き合い、核心を探れとの司令に他ならない。
スティール邸を訪れろという事か。もしやそこで、純白少女の正体も知れるかもしれない。
――本来、タロットとか占いというものは飽くまで、未来を暗示したり、行動の指針を示す為のもので、
脅迫のダシに使うなどして、人間の行動を強制するものであってはならない。断じて司令ではない。
しかし、事もあろうに麗源は、自分自身が導いた占術の結果でもって、自分自身を束縛するという暴挙に出ている。
彼は人種としては、相当、愚な方に編入される筈だが、それも愛嬌であろう。

麗源は朝食の調理に手を抜いた贖罪として、例の如く歯磨きばかりに熱を入れた。
そして、あちこちがすり減ったスウェットを脱ぎ散らかし、アメリカンキャップとジャージで体裁を整える。
丸で整っていないとは言わせない。これも彼の、存分に磨耗した鋭気から打ち出された洒落っ気である。
カードを携帯して、颯爽とドアを開けた。――スティール邸へ。

170 名前:本舘 ◇SGue2uUfkw[sage] 投稿日:2010/01/16(土) 23:50:47 0
…………やってしまった…。
時刻は午前9時…完全なる遅刻…。
……仕方がない、今日は休もう。

学校に電話し、風邪を引いたので2、3日休むと伝える。
「さて…せっかくの休みだ。どうやって過ごそうか…。」
ベットに座りながらテレビをつける。
>「―では、次のニュースです。スティールインダストリアル代表取締役 、トリッシュ・スティール
さんの持つ黒い石。通称ブラックダイヤモンドのお披露目が…」
朝からなかなか興味深いニュースが流れていた。
これは波乱の予感だ。
ヒーローもヴィランも集まるんじゃないか?
ヴィランはブラックダイアモンドを奪うため、ヒーローはそれを阻止するため…楽しくなりそうだ。
こんな楽しそうなパーティー、参加しないわけにはいかない。
ギュルルルル……。
まずは朝食にするか。
「頂きます…。」
一人きりの朝食というのはなかなかに寂しいものだ。
まあ、最近は慣れたが…。
「ごちそうさま。」
さて、問題はこのパーティーが何時から開催するかということだ。
やっぱり夜からか?
夜からなら時間は有り余ってるな…。
とりあえず情報を聞き逃さないようにテレビをつけっぱなしにして、筋トレでもしてるか。
体を鍛えておいて損は無いからな。

171 名前:旋風院 雷羽 ◆zYCuy2/gkI [sage] 投稿日:2010/01/17(日) 14:48:10 0

「ぬがあああああああああっ!!!! ムカつくムカつくムカつくっ!!
 あの糞ガキ! この旋風院雷羽様をコケにしやがって!!」

都会の死角。投げ捨てられたゴミとゴミのような人間の生息地である
薄汚い裏路地で、雷羽はゲシゲシと地団駄を踏んでいた。
雷羽がそんな事をしている理由は、10分程前に妙な少女に遭遇した事にある。
本館と遭遇した公園から離れ、夜明けまで時間を潰す為に街を徘徊していた雷羽に
突如声をかけてきたその少女は、ヒーローであるかの様に雷羽に「悪の怪人」と
声をかけ、それに対し雷羽は当然の様に拳を放った。そこまではいい。
だが、問題はその後だ。雷羽放った常人の数倍の威力を誇る拳を、謎の少女は余裕で受け止め

『ねぇ、どんな気持ち?女にパンチ止められて今どんな気持ち?』
『改造人間のくせにこんなに弱いの?(笑)これはヒーローに負けるレベル(暗黒微笑)』

【注意!】台詞は雷羽の主観によるイメージ映像です
     現実に起きた出来事とは異なる部分がある場合があります

と馬鹿にした後、強くなりたければトリッシュ・スティールの屋敷に来いと言い残し、
去っていったのだ。そして、これだけ煽られれば単純な雷羽が怒らない筈が無い。

「くそぅ!!変身さえしてればあんな糞ガキ、俺様の小指一本で
 ギッタギタのメタメタにして額の骨が見えるまで土下座させて泣かせてやったってのに!!」

現に今も憤懣やる方ないといった様子で、蹴られすぎてひび割れた
アスファルト製の地面に対し怒りをぶつけている。
……だがしかし、この時点で雷羽にトリッシュという人物の屋敷に向かうという気は無かった。

ヴィランには、組織だって動く者と個人として動く者がいる。
後者の多くは、己が本能や欲望の赴くまま呼吸するかのように悪を行うが、
雷羽は前者の組織で動くヴィランである。そして、組織立って動くヴィランという
のは命令を聞かないコマを必要としない。独断専行で動くコマが『目的』の邪魔
になるという事を嫌うからだ。
それ故に雷羽は、例えどれだけ腸が煮えくり返っていようと
ボスの命令が無いまま悪を行うという事はしない。その発想自体が無い。
そういうように作られた。


なのでそれから暫くの後、彼のボスから雷羽に対して

『トリッシュ・スティールの持つ宝石を奪え。可能ならトリッシュ・スティールを再起不能にしろ』

とった旨の司令が入った時の雷羽は全力で了解の意を示したという。
なぜなら、その場所には先程自身をコケにした少女がいる筈で、
作戦の為ならばその少女を遠慮なくフルボッコに出来るからだ。

朝日に照らされない路地裏に、雷羽の馬鹿笑いが響いた。

172 名前:赤穂朗氏 ◆y6ZFeIPasDPg [sage] 投稿日:2010/01/17(日) 15:10:13 0
「なぁるほど。ふむ…黒いダイヤモンドは複数あるのか。」
朝日に照らされる街路樹を歩きながら赤穂朗氏は「兎のようなバケモノ」から
これから起こるであろう「出来事」をヴィジョンのようにして拝見していた。
片手には女性を切り取った写真を忍ばせて。
丁度今日は昼からの夕方までの勤務だ。時間はまだ在る。
赤穂はアーカム大学へ向うバスに乗り込むと鞄から新聞を取り出した。

「星さん、まだかしら…」
手作り弁当を持って大学前に立つ女性。長い黒髪が美しい167cm程度の長身の美女。
彼女の名前は杉村絵美。星新一の同僚だ。それほど親しくは無いが
最近、彼にほのかな恋心を抱いている。
今日は思い切って手作りの弁当を渡し、少しでも仲良くなろうと校門の前で待ち伏せしていたのだ。
しかし、待てど彼は来ない。そんな時、1人の爽やかそうな青年が絵美に声をかけた。
「すみません…実は星新一の友人のものですが。彼が貴方にどうしても
話しておきたいという事があるようで。少し、あちらの方へいいですか?」
にこやかな笑顔を浮かべ、親切そうに手招きする青年に絵美は疑う事もなく歩いていく。
辿り着いたのは誰もいない裏手の廃材置き場だった。

「星さんが私に伝えたいことって?まさか、私の事…」
顔を赤らめる絵美を見つめ、不気味に口を吊り上げる赤穂。
絵美は一変した表情に顔を歪め、思わず弁当を落としてしまう。
「え?な、何なんですか。…貴方、誰?」
赤穂の背後から空間を裂くように異形の人型が出現する。
同時に絵美の背後にも同じような空間が現れる。
「絵美さん。ずーっと君を見てた。今日は晴れ晴れしたいい気分だ。
さぁ、僕のモノになぁ〜れ。」
その瞬間、絵美の体が赤い空間の中へ連れ去られる。
凄まじい切断音と共に地面に落ちてきたのは、血まみれの絵美の服と
新一に渡すはずだった手紙。

その手紙に赤穂は一文を加える。
「これは警告だ  黒い石の事を これ以上 調べるなかれ」

満足したように赤穂はその場を立ち去る。

173 名前:トリッシュ ◆.H4UqpaW3Y [sage] 投稿日:2010/01/17(日) 19:40:59 0
男のあまりにもあっけない反応に彼女は一瞬唖然とした。
それなりの認知度はあると思っていたが、実際はここまで知られてないとは
「…って、違うわよ!用があるのはあなたよ!あなた!
 馬鹿みないな速度で逆走だけならまだしも、そのまま歩道まで走った挙句
 小洒落たカフェをメチャクチャして、無事に帰れると思っているの?ってちょっと待ちなさ」
とこの場から立ち去ろうとする男を止めようとした時、邪魔が入った
「すいません。サンライズタイムズの者ですが、
 インタビューをお願いしてもよろしいでしょうか」
新聞記者が割って入ってきたのだ。
「悪いんだけど後にしてくれない」
「他のヒーローに比べ遅い到着でしたね
 ところで、あなたが来たということは先ほどの怪物は不正流通された物
 と判断してよろしいのですか!?」
「我が社では生物兵器なんてものは作っていません!
 いい加減いいかしら?私も暇じゃないのよ」
しつこい新聞記者を振り切り、スキンヘッドの男を追いかけようとするも
時既に遅し、男の姿はどこにも見当たらなかった。

逃がしたのは惜しいが、男の顔と声はアイヴィスがしっかりと記録はしている
後は警察に任せよう。
そう思い、彼女は先ほどの喫茶店へ戻り、警察に事情を説明し、データを渡した後、帰路につくことにした。

174 名前:真性 ◆8SWM8niap6 [sage] 投稿日:2010/01/18(月) 02:57:56 0
前回までのあらすじ!
マジで臨終五秒前に突如として降り立った謎の少女・黒ゴスの助力によってなんとか一命を取り留めた俺、真性道程。
救助代と治療費として請求されたのは宝石、しかもその所有者はなんと世界で知らぬもののない巨大軍事企業の頭取だった!
捕まれば銃殺必至!でも黒ゴスは黒ゴスで逆らえば誅殺必至!八方塞がりの逢魔が時!どうする!どうすんの俺ェ!!――――

「どうするもなにも、やるしかねえじゃねえかッ……!」

ぼやきながら、俺はひたすら生産的活動に興じていた。正方形の紙片を用意し、然るべき手順でもって折り畳み、目的の形を作っていく。
俺が現在折り紙で製作しているのは、最もオーソドックな形状の紙飛行機だ。上から見ると鏃のような形をしたアレである。
出来上がる傍から紙飛行機に異能の力を込めると、風に乗せてオーバースロー。どれだけぞんざいに発射しても、紙飛行機は態勢を修正して飛んでいく。

ここは街の中央部、トリッシュ・スティールの邸宅が一望できるビルの屋上だ。俺は手すりに身体を預けながら、宵闇に紛れて作業を進めていく。
それにしても豪邸だった。超がつくほど豪邸だった。見えねえもん、敷地の端が。一体全部で何坪あるのやら、庭で運動会が開けそうなほどに巨大な邸宅だ。
入り口には守衛が二人立ってるけど、むしろ警戒しなくちゃなのはセキリュリティシステムの方だろう。常時サーチライトが右往左往し、ものものしさに拍車をかけている。
どうやら敷地内は完全に治外法権のようで、強化された視覚で遠目に観察してみたところ銃を携帯した武装警備員が庭を徘徊している始末。

「見つかったら敷地の外でも狙撃されんじゃねえのこれ……?」

苦笑しながら俺は紙片を夜風に預ける。目立たぬように黒の紙で折った飛行機はゆっくりと飛行しやがてスティール邸の庭へと侵入、着地した。
これで通算五機目の侵入となる。如何に高性能のセキュリティシステムと言えど、低速かつ小型軽量な紙屑には反応しないらしく、それは僥倖でもあった。
紙飛行機には"神様"を浸透させてある。これが紙飛行機自体の飛行制御を行いつつ邸宅に侵入し、着地した先で浸透を解除。
先に送り込んでおいた分の"神様"と統括すれば、一まとまりの"神様"が邸宅内部に存在することになる。着地点の傍の池まで念動して、水に浸透させれば。

「<パラダイムボトル>――形状『水兵《マーリン》』!」

水で構成された人形が完成した。これに屋敷の中を歩き回らせ、出来うる限りの情報を収拾する。"神様"とは感覚も繋がってるから内部構造をメモするだけで良い。
透明の水人形は夜目に判断し難いらしく、監視の眼光鋭い邸宅内部も比較的安全に徘徊することが出来た。十分に情報が集まったら能力を解除し、"神様"を回収する。
一時間ほどの作業で、スティール邸の内部構造は大体把握できた。地下だけは警備が厳重すぎて入れなかったけどまあ今回の任務には差し支えないだろう。
支度を整え覚悟を完了した俺は、そのまま手すりに足をかけ、ビルの屋上から宵の口を過ぎたばかりの夜空へと身を躍らせた。

それはそうとなんだかやたらに身体が軽い。一歩踏み出せば10歩分の距離を踏破し、軽く跳躍するだけで民家の屋根までジャンプできる。
試しに財布の中から硬貨を取り出してみて、軽く握ってみた。アルミ箔みたいに拉げた。どうにも身体能力がヤバいことになってるらしい。
手の甲を見る。剣を模した邪気眼の疼きそうな造型の紋章が、漆黒の染料で刻まれていた。洗っても落ちなかったから少なくとも水性じゃないっぽい。

『それが貴方の弱点、つまり能力以外の欠点を補ってくれるわ。少なくともちょっと撃たれたくらいじゃ、死んだりしないから安心して』

黒ゴスによれば、宝石に秘められたスピリチュアルでセンシティヴなパワーが俺の体内を全力疾走することによってなんか色々と恩恵を享受できるとか。
彼女の説明は物凄く抽象的かつ自己完結的だったので、俺は愛想よく頷きながらも実のところ半分ぐらいしか理解できていなかった。
理解したところで何がどうなるってわけでもないからそれは良いとして。うん、閑話休題。

そんなこんなで強化された足腰と足裏に展開した"神様"によって無事地上への生還を果たした俺は、呆気にとられる通行人を無視して疾駆を開始した。
縮尺を間違えたかのような巨邸はすぐに見えてくる。入り口に守衛が俺の姿を認める前に、邸宅内に少量だけ残してきた水人形に最後に指令を送る。
水人形をコンセントの穴に潜り込ませ、『通電』――屋敷全体に響き渡るような炸裂音と共に、ショートした電気系統は束の間の停電を邸宅にもたらした。

175 名前:真性 ◆8SWM8niap6 [sage] 投稿日:2010/01/18(月) 03:00:35 0
【状況:ブラックダイヤモンド窃盗作戦開始。屋敷のコンセントをショートさせてヒューズを飛ばし、一時的に停電状態へ。
 真性は停電の隙をついてスティール邸敷地内へ侵入】

176 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/01/18(月) 18:01:01 0
【トリッシュ・スティール社長のダイヤモンドパーティ!本日夜開催】

街の中心部の電子看板が今夜のイベントを伝えている。
一般客もチケットを持って参加するようだ。

177 名前:星 真一 ◆fSS4JmCGEk [sage] 投稿日:2010/01/19(火) 00:29:58 0
今日は昼過ぎに講義があるため、一旦教会の修理を終えてアーカム大学に向かう最中に
人だかりが出来ているのに気づく。
その時、なんだかとてつもなく嫌な予感がする。人だかりに割り込んでいると一人の警官に目を付けられる。
「駄目だよ関係者以外は立ち入り…星さんあなたですか」
礼儀正しくきっちり七三分けしている青年は石田警部補、ある事件で顔見知りになった警察官だ。
「本当は関係者以外は行けないんですが…貴方には見てもらった方が良いでしょう」
少し言いづらそうに立ち入れ禁止のテープの中を通してくれると白髪交じりの穏やかそうな初老の男性がこちらに気づく
この人も顔なじみの刑事で名を音栖(ねす)警部と言い石田警部補よりベテランの刑事である。
「…やっぱり来てしまいましたか、これを見てください貴方宛です」
音栖警部から手渡されたのは手紙だった。
手紙の内容からして書いた人が杉村絵美という俺と同じアーカム大学の臨時講師だった。
そんなに親しくなかったが、講師や学生達にはその容姿から人気だった。
手紙の内容はともかく、その手紙に付け足された文字に腕が怒りで震えた。
>「これは警告だ  黒い石の事を これ以上 調べるなかれ」
これは明らかに恩師である教授の助手を殺した者が残した警告状である。
怒りでついに全身が震え始める
彼女はなにも関係なかったはずであるそれで警告というそれだけの理由で命が奪われてしまったのだ。
殺した犯人よりも無関係の人を巻き込んでしまった自分の不甲斐無さを呪っていた。
その様子に音栖警部が肩をポンと置く。
「君のせいではないと思うよだから自分を責めるな」
やさしい声で慰めてくれる音栖警部には心から感謝しつつ、声を必死で振り絞って
「すまない…杉村さん」
手紙を再び音栖警部に手渡し、背を向けてその場から歩き出す。
石田警部補から背後から声を掛けられるが聞こえていなかった
今成す事は、黒い石を回収する事と犯人を引きずり出し杉村さんの仇を取ること。
俺はまずクールな思考と怒りを静めるためにその期間が出来る講義に出ることとする。
その後、すぐに相手も恐らくは狙うであろうダイヤモンドパーティーに乗り込む。
行動を迅速に決め、まずは最初の行動を実行するために動く。






178 名前:トリッシュ ◆.H4UqpaW3Y [続きは深夜か明日sage] 投稿日:2010/01/19(火) 03:48:27 0
翌朝、私は本社ビルにてインタビューを受けていた。
昨日の一件にではなく、今晩開かれるパーティーについてだ。
だが、はっきり言ってしまうと、このパーティーは罠だ。
しかし、目的も無く悪党を集めるために仕掛けるのではない。
それなりの目的はある。
その目的を語るならば、話は私がこのブラックダイヤモンドを手にする所から始まる。

このダイヤが私の元へ来たのは、ほんの4、5日前だ。
一週間前、事故で亡くなったことにされた叔父の遺産として私が受け取ることになったのだ。
叔父はかなりの野心家で、私が知らぬところでテロリストらに自社製品を流すだけではなく
私を殺し、会社を乗っ取ろうとするぐらいの悪人だ。実際に私は二度も殺されかけた。
そんな叔父がこんな宝石なんかを大事にしたのか、私には理解できかった。
私の知る範囲では、叔父は宝石などの財宝に興味を毛ほども示さない現金主義者のイメージがある。

だが、その謎はすぐに解けた。
叔父が隠していた裏帳簿を調べ、ある人物との取引記録を見た時に気づいたのだ。
叔父は愛人を作り、それに貢いでいたのだ。
と言っても愛人というのには大変な語弊があるだろう。
というのも、叔父は「C」という人物と頻繁に取引をしていたらしく
その発注証などに、自社製品の他にも、高価な宝石の類が売買されていたのだ。

なるほど、つまりコレも「C」へのプレゼントの1つなのだろう。
そこで、私は考え付いた。
コレをエサに「C」をおびき出し、叔父が流した武器の在り処を吐かせることが出来るのではないかと

そして、その為に用意したのがこのパーティーなのだ。
とそんなことを言う訳もなく、私はただ愛想笑いで都合のいい事を適当に言っていた。

そして、夜
私は赤いドレスを身に纏い、白ワイン片手にパーティー会場をうろついていた。
予め招いておいたゲストの6割は話を通した警察や軍の関係者で、
もしもの時は彼らが率先してゲストを避難させるよう言ってある。
残りの四割は危険だと知っててやってきた各界の著名人たちだ。
会場の真ん中には二重の特殊強化ガラスケースに覆われているブラックダイヤモンドがある。

179 名前:旋風院 雷羽 ◆zYCuy2/gkI [sage] 投稿日:2010/01/19(火) 18:41:58 0
「おい、肉の追加持ってきやがれ! この俺様を待たせるんじゃねぇ!!」
「雷羽さ――――ロドリゲスさん!こっちに美味いチキンがありますよ!」
「ハムッ!ハフハフ!ハムッ!」
「……肉うまうま」
「うめぇ!普段こんな飯食べる機会なんて無いから、自分幸せッス!!」

だだっぴろいパーティー会場内の一角で、ぐるぐる眼鏡を装備した
スーツ姿のツンツン頭の男と、黒のスーツとサングラスを装備した
数人の人間という集団が、ビッフェを貪り食っていた。
ツンツン頭の男の名前は、ミハエル=ロドリゲス。
某国が先日この国に設立したばかりの大使館の館長であり、
周囲の黒服サングラスは彼の連れてきたSPである。

――――という設定だった。

当然の事ながら、ロドリゲス=ツンツン頭の男は旋風院雷羽の変装であり、
周囲のSPは彼直属の戦闘員が変装をした姿である。
彼らのボスからの司令があった後、旋風院は戦闘員を引き連れて
某国の大使館に潜入し、睡眠ガスで、中にいた本物のロドリゲス氏と彼の部下達を監禁捕縛。
そのまま身分証を奪ってパーティーに紛れ込んだのである。
そうして、作戦開始の機会を虎視眈々と狙っているのだが……

「そういえば、雷h……ロドリゲスさん。作戦って始めなくてもいいんですかね?」
「フン!この程度の作戦、この俺様にかかればお茶の子さいさいだからな。
 だから、作戦実行はまずは腹ごしらえしてからだ。腹が減っては悪事はできねぇ!
 どうせタダなんだし、お前らも食って食って食いまくってやれ!! なーっはっはっは!!」

ぶっちゃけ、マナーにうるさいお偉いさん方の白い目が集中していて
もの凄く目立っていた。


停電が起きる、暫く前の事である


名前:雷羽の部下の戦闘員
職業:戦闘員
勢力:悪(ヴィラン)
性別:−(個体により異なる)
年齢:−(同上)
身長:−(同上)
体重:−(同上)
性格:−(同上)
外見:ただの人間に見える
外見2:全身を、黒に所々白い線が入ったタイツの様な物で覆っている
特殊能力:一般の人間の2倍程度の身体能力を持つ。
     ちなみに、変身の前と後で身体能力は変わらない。生命力強。
備考:下っぱ戦闘員。人間形態の時は言語を話せるが、変身形態の時は
   奇妙な鳴き声じみたものでしか意思疎通出来ない。
   彼らは洗脳手術を受けており、戦闘員になる以前の記憶は思い出せない。
   ただし、人格は変身前と同じである。社会に紛れ込む為、偽の戸籍を持っている者が多い。


180 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/01/19(火) 18:57:49 0
二人の少女が、大人達の雑踏の中で手を繋いで佇んでいる。
雪原の如き白さを除けば一切対照的な美貌を誇る彼女らは、それでも秤乃の性で繋がっていた。
ただし身形は平時と異なり、二人のお気に入りであるゴスロリは影も形も見られない。
代わりに彼女達の肢体を覆っているのは、どこかゴスロリと似た面影を感じる、西欧の姫君を想起させる白と黒のドレスだった。
そしてもう一つ。
普段彼女達の双眸を覆っているバイザーもまた、今は取り外されている。
認識変換の機能が付与されたそれが無い以上、如何に容姿を記憶していようとも、
どれだけ服装に既視感を覚えようとも、二人と『魔法少女』がイコールで繋がれる事はない。
要は『バイザー』と言う記号を介さぬ限り、何人たりとも『魔法少女』を認識する事は出来ないのだ。

「ねえ、皆ちゃんと来てくれるかなぁ……」

雪白に包まれた少女が不安に取り憑かれ、思わず零す。

「来るわよ。『ヒーロー』も『ヴィラン』も、強欲の芳気に釣られてね。……と言うか、こっち側の馬鹿約一名はもうそこでアホやってるし」

冥夜を纏うもう一人が、薄ら笑いを伴って返した。
同時、落雷宛らの炸裂音を伴って、屋敷内が暗転した。
一般客の悲鳴が幾重にも重なるがどうにも数が少ないのは、
恐らく招待客の大半がトリッシュによって備えられた『プロ』だからだろう。

「ほら……ね? お披露目会で停電だなんて、ステレオタイプにも程があるけど。
 こんな事をしでかすのはきっと彼だわ。もっとも、ここから華麗にダイヤを盗み出す、なんて事は期待出来ないけどね」

くつくつと楽しげに笑いながら、漆黒の少女は姉妹の手を引き、作られた冥暗へ溶け込んだ。

181 名前:秤乃 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/01/19(火) 18:59:01 0
酉忘れでした。上は自分のレスなのですです

182 名前:赤穂朗氏 ◆y6ZFeIPasDPg [sage] 投稿日:2010/01/19(火) 19:21:32 0
赤穂朗氏は定時に帰る。
タイムカードを通し、5時丁度に役所を出た赤穂の向った先は
「ニュース」で言っていたダイヤモンドのお披露目会場…ではなく
その近くの裏路地にある「看板のない闇医者」の家。
雑居ビルの3階までエレベーターで上がった赤穂が軽くノックをすると
1人の白衣を着た老人が出てくる。
彼の名前は「岡田伊作」。彼の親代わりだ。
先日、彼が「飲み込んだ」岡田博士の兄に当たる人物である。
「どうした、朗氏。今日はまた顔を変えに来たのかい?」
年老いた老人が手をかざす。手から幾重にも重なったメスが出現し
朗氏の顔を書き換えていく。
すると赤穂の顔がまったく別の人物へと変化した。
「いつもすまないね、父さん。少しばかり、野暮用が出来たもので。」
血の繋がりはないが、伊作と朗氏は親子以上の絆を持っている。
父親の「手術」を受け、朗氏は別人の姿のまま500m先にある
パーティ会場へ向った。

―パーティ会場の様子を遠巻きに見守る赤穂。
その手には漆黒の石が握られている。
会場に近付くにつれ、石が熱くなり内部から発光するように輝き始めた。
「……これは。なるほど……岡田博士が言っていた石同士が共鳴しあう
現象というのはこの事か。」
会場まで数メートルまで来た瞬間、建物の明かりが消える。
赤穂は咄嗟に身を隠すように柱の陰に回りこむと、待ち合わせを待つ
会社員を装う為に時計を見つめながら携帯電話を手にした。
(面倒ごとはごめんだ。私は無駄な争いを好まない……しかし、
あの石には少しばかりの興味があるのも事実。どうするべきかな…さて)

183 名前:本舘 ◇SGue2uUfkw[sage] 投稿日:2010/01/19(火) 20:51:14 0
「まったく…凄い人数だな…。」
>>176チケットが無いとパーティーに参加出来ない事をテレビで知った時は驚いた。
だが何とかチケットが手に入った僕は家にあったスーツに身を包み、隅っこの方に座り込んでいた。
どうやってチケットを手に入れたのかって?
そりゃチケットを持ってる奴から盗っ……ゲフンゲフン!
友人に譲って貰ったんだ。
良い友人だろ?
なにはともあれ、無事に入る事が出来たのだからラッキーだ。
問題は、ヒーローとヴィランがどのくらい集まるのか、という事だ…。
まあ、今回はどちらかが少なくても問題じゃ無い。
それは何故か……その理由は…。
僕自身がブラックダイヤモンドを頂こうという魂胆だからだ。
これならヒーローともヴィランとも闘える…。
我ながら素晴らしい作戦だな、うん。
くっくっくっ…楽しいパーティーになりそうだ…。
>>180と、一人で薄ら笑いを浮かべていると、炸裂音と同時に停電が起こった。
暗闇に紛れて宝石を盗もうという魂胆か?
定番の演出だな…。

あまりにも突然過ぎる出来事…当然、客の悲鳴が聞こえる。
…が、あれだけ客が居た割に、悲鳴の数が少ない。
………このパーティー、一般人の方が少ないんじゃないか?

とりあえずベルトを取られないように、バックを握りしめる。

184 名前:トリッシュ ◇.H4UqpaW3Y[sage] 投稿日:2010/01/20(水) 13:38:20 0
会場を見回してみると、絵に描いたような不審人物を何名か見つけた。
が、何もせずにそのまま放っておくよう指示を出し、何事もなかったかのように
また会場をうろつく事にした。

暫くして、雷鳴のような音と共に会場の明かりが落とされた。
「アイヴィス!状況報告」
とっさに携帯を取り出し、アイヴィスと交信する。
「どうやらブレーカーが落ちたようです。復旧まで5分
 セキリュティーシステムが完全に回復するまで15分かかりますが…如何なさりますか?」
「予定通りプランCでいくわ、そう伝えて」
そう指示を出し、速やかにゲストの避難を始めさせる。
「さて…どう仕掛けてくるか見ものだけど、そこまで私も暇じゃないのよ」
もしブラックダイヤモンドではなく、トリッシュの命を狙っている輩がいるのならば
今は絶好のチャンスだろう、何故ならトリッシュの胸部にあるリアクターコアからは
四六時中青白い光が発光しているからだ。
加え、アーマーを装着していないトリッシュはただの女性だ。
明かりを目標に、近づき、後ろから…というケースがありえる。

だからこそ、彼女はゲストに混じり、一旦会場から抜け出し、ガレージに向かうことにした。
おそらくではあるが、私が戻ってくるまでにブラックダイヤモンドが盗まれることは無いだろう。
理由は簡単だ。同じ目的を持ったもの同士で潰しあうはずだからだ。
それに加え、違う目的の奴らもいるなら、丁度よくそれの邪魔もしてくれるだろう。
「それにしても、動きにくいわね。」
そういうと、私は履いていたハイヒールを脱ぎ捨て、それなりの値がするドレスの裾を破り捨てると
ガレージ向かい走り始めた




185 名前:テラシ ◇vCpQPGCxWE[sage] 投稿日:2010/01/20(水) 13:39:15 0
テラシは逮捕された。
屋敷に踏み込んだ警察は、何の抵抗もせずうずくまるスキンヘッドの男を視認し、拘束し
データとの照合を済ませ、容疑者と断定した。
取調べでは刑事の質問に逐一相槌を打ちながら、まるで逆説的潔白のように、弁解も無く
全ての行いをその通り認めた。
ただ一つ彼が反論したのは「殺人は結果であり、行為そのものではない」ということだった。
留置所に拘留されている間、テラシはその同居人と静謐な昔話をした。
同居人のジョンはTVを泥棒した20代前半の若者で、職業はフリーターの享楽主義者だった。
彼は街の動向に詳しく、テラシの言うロボット人形がトリッシュ・スティールであることをすぐに見抜いた。

「そりゃ今一番ホットなヒーローさ、知らないなんてとんだ薄らトンカチだな」

テラシは牢獄の中から僅かに垣間見える外の様子を伺った。
鉄格子の中から見える世界は画用紙のように平坦で、風や色の脚色を欠いていた。
テラシは自分が少年のころの話をした。

「そりゃ暗い青春時代だったな。しかし、あんた、そういうことはそっと胸の内にしまっておくもんだぜ
 俺が悪党だったら……いや、悪党じゃなくても。刑務所の中で自分以外の連中に舐められたら終わりだ」

「胸の内」とテラシは言った。

ジョンは自分がかつては資産家の息子だったこと。親の仕送りで豪遊していて、
なるべく長くその生活を続けたかったが、見放されて泥棒になったこと。
以前にも刑務所に入ったことがあるが、どんな享楽主義者も他人の目線のなかではその人生を正しく遂行することができないということを話した。

「でもそんなのは過去のことだろう?過去のことで何を言われようが、関係ないな」とテラシは言った。

「ま、そりゃそうだろうけど」

「そうだ」とテラシは言った。

「けどなあ、過去の出来事はいつしかそいつの本質となりえるもんだぜ。あんたの場合も、そのスキンヘッドが証拠ってやつさ」

テラシは目を細め、外の世界を窺った。
何も見えない筈の空間に目を向ける男に、ジョンも怪訝な表情を浮かべる。
空には何羽かの鳥が囀りながら小さく羽ばたいている。
その地図の上の矢印のような小さな記号的鳥を見ながら、テラシは死というものについて考え始めた。悪い兆候だ。

「ジョン、お前は自分が死んだときのことを考えたことあるか?」

「刑務所に入ってからは、熱心に死後の世界を信じてるさ。それが楽園であれ、絶対的な無であれ、それが生きる希望となるんだ」

「その通り」とテラシは言った。

しかしこれだけの数の人間がいながら、年齢によって、人種によって生死観が違うのは妙なことでもあり、やはり人間らしい話だ。
動物における共通認識には死というものが含まれていない。人間だけが想像力をたくましくして死後の世界を想像できるのだ。
なったくおめでたい話だ、とテラシは思う。
生と死の拮抗があるからこそ人間は人生に価値を見出し、生と目的を享受できるからだ。こんなおめでたい話はない。
死は無限に続く。
男は死後の世界を知っている。




186 名前:テラシ ◇vCpQPGCxWE[sage] 投稿日:2010/01/20(水) 13:40:16 0
テラシは8歳の頃、同じ小学校のミリというに娘に恋をしていた。
そして一度だけデートをしたことがある。といってもテラシの両親が同伴していたから、
あまり込み入った話にはならなかったけれど。
彼女はいつも帽子を被っていて、医者の娘だった。
テラシは病院が嫌いだった。死に向かっていこうとする人間を蘇生させるのは、なんだか強引で、生のあり方に背いている気がしたのだ。
けどそんな偏見をもろともしないくらいミリはチャーミングで、いつもにっこり笑っていた。
デートの日、両親の車で映画館に向かっている途中、テラシとミリはお互いそっぽを向いて、
自分の感情が平坦なものであることを装うとした。しかし、それは残念ながら完璧な恋心だったのだ。
テラシはどぎまぎしながら、理性を飛び越えたよくわからないことを喋った。
彼女はにっこり笑い、前の座席から母親が睨んできた。

その夜上映されたハリウッド映画の内容も、彼女とお喋りしたなんやかんやのことも、今となっては覚えていない。
だが車で彼女を家まで送った後の短いやり取りなら覚えている。
「じゃね」
「じゃあね」
その恋は幼い疼きのようなものでは決してなかった。成熟した人間の血と血が溶け合うような
彼女のなかで胎動して生きていたいと思うような、複雑なストラテジーの噛み合ったような恋だった。
自分の感情とは思えないようなものが腹蔵され、闇のなかに沈殿されていった。その重さは彼を突き動かそうとし、
同時に彼を不安の底に沈み込ませた。
彼はただ彼女のことが好きだった。



187 名前:テラシ ◇vCpQPGCxWE[sage] 投稿日:2010/01/20(水) 13:41:21 0
学校での授業中、一人の生徒がミリの席に駆け寄った。テラシはそれを黙って見ていることしか出来なかった。
少年はその出来事から勇気が最大の美徳だと知ることになる。自分の立場への憂慮とか、無為な叱責とかがいかに汚らわしいことかを痛切に
感じるようになる。
その生徒はミリの机の前に立つと、そこにあった色鉛筆を床に落とした。
彼女が屈んで鉛筆をとろうとしたとき、彼は彼女の被っていた帽子を取り、微笑を浮かべながら自分の席に走り去っていった。
テラシは自分の勇気の無さを呪った。自分の人生の年代記を振り返って俯瞰しても、この一瞬ほど救いようのない自分は居ない筈だ。
どんな場合であれ、その後どんなことになろうと、そのとき彼は彼女とその帽子を守るべきだったのだ。
少女はつるっとした坊主頭のまま、黙って席に座っていた。その口元にいつもの笑みを浮かべながら。
その頭には髪が一本も生えておらず、痩せ細った人間の外郭として相応しいことに、何本かの血管が見てとれた。
その後何人かの女生徒が彼女を慰めにかかり、男子生徒と口論した。

ミリが病気だということを知った後も、テラシはその事実がうまく受け入れられなかった。
「よくなるの?」とテラシは言った。
「よくならない。治りようがないんだ」と父親が言った。
葬式に参列したときも、これは何かの冗談だとテラシはずっと自分に言い聞かせていた。
父親は気分の悪そうなテラシを家に戻そうとしたが、彼は拒み続けた。
事実を確かめないことには、帰ることは出来ない。
棺の中の彼女を見たとき、テラシは思わず大きなため息を吐いた。
彼女は不健康そうに痩せ細り、どう希望的解釈をしても、死んでいるようにしか見えなかった。
テラシはそのまま暫く立ち尽くし、生きていたら握ろうとしていた手をひっこめた。
「かえろう」とテラシは言った。
「うちにかえりたい」

家に帰ったあとも、テラシは死んだミリのことを考え続けた。
ベッドの中でずっと彼女の想像をし続けた。
生きる者として捉える妄想の隙間を、死という黒いぬめっとした者がかすめ通る。
想像が重みを増し、現実味を帯び、現実が片隅に追いやられ、心はそれでも死に落ち込まずにはいられない。
その錯綜は、戦火に隠れる兵士の追憶のように、どこかシュールレアリスティックな様相を呈していた。
彼は何日も学校をサボって家に隠れ続け、ひたすら自分を救済するための夢想に耽った。
その体験は彼を死者に変えた。ありとあらゆる生を拒みながら、唯一の生を求め、
ありとあらゆる死を拒みながら、死によって彼女と繋がっていたいと願った。
それは一種の分裂病だった。そうこうしている内にテラシは死への回廊を探り当て、死体と死体の間をテレポートする能力に目覚めた。
死は個人のものではなく、全体が一つの偉大な観念のもとに統合され、繋がっているのだ。

「話はここまでにして、もう行かなきゃならない」とテラシは言った。
驚愕の面持ちのまま首をへし折られたジョンは、その場に倒れ込んでいる。
テラシはジョンの顎を砕き、口をこじ開けると、街の次なる死体へとテレポートしていった。

188 名前:星 真一 ◆fSS4JmCGEk [sage] 投稿日:2010/01/20(水) 23:43:38 0
「さてと…上手く潜入できたがどうするかね…」
着いた時にはもう停電になっており、その隙を突いて
魔導衣を纏い、同化迷彩モードを展開し背景と同化していた。
もっとも本気を出していないため平均より力を持つ魔術師レベルにはやろうと思えば見破れるが。
「この屋敷の見取り図を見せてくれ」
携帯電話を介して電子精霊レンにこの屋敷のデータベースに進入しデータを解析
送信してもらう。
「了解したわ、ちょっと待ってね」
待っていると言ってもほんの数十秒であったが。
「はい今データを送るわ」
データを送ってもらい、見取り図を確認する。
「ふむふむなるほど…じゃあかたっぱしからおっと」
相手は気づいていなかっただろうが、トリッシュ・スティールと擦れ違う。
「丁度いいぜ、奴さんに案内してもらおうか」
トリッシュの後を見失わないように後を付いていくことにした。

189 名前:赤穂朗氏 ◆y6ZFeIPasDPg [sage] 投稿日:2010/01/21(木) 11:13:11 0
赤穂は停電で混乱するパーティ会場の裏手に回り込み、警備員に話しかけた。
「すみません……停電だと伺いまして。修理に来ましたが。」
赤穂が数多く持つ「偽造」の許可証の1つを見せる。
役所に勤める彼にとって証明書の類などの複製はお手の物だ。

警備員が黒スーツの男を呼ぶ。
裏口から現れた男は恐らくはトリッシュの部下の1人だろう。
「修理など聞いていない。お前、まさか…」
明らかに黒スーツの男は赤穂を警戒していた。
懐から無線機を取り出し、連絡を取ろうとする。
赤穂は朗らかな愛想笑いを浮かべて部下の手を握った。
「いやぁ、素晴らしい。そういうことですか。」

赤穂の能力。「兎のようなバケモノ」通称:アリス・イン・ワンダーランド。
触れた相手の記憶を「見る」ことが出来る。
見た相手の記憶を破壊するも、しないも彼の自由だ。
そして触れた相手を異空間へと引き摺り込む事だ。
黒スーツと警備員の背後に真っ赤に割れた空間の歪が出現する。
そこから細長い腕が現れ、彼らを引き摺り込んでいく。
悲鳴を上げる暇もなく、そこに残ったのは小便を漏らし失神する警備員と無線機のみ。
「念の為、君の記憶も破壊しておこう。そして、服を貰うよ。」

警備員の服を盗み、無線機を得る。
裏口から進入し、監視カメラが置かれた警備室に何食わぬ顔で入り込んだ。
既にトリッシュの計画は閲覧した。後はパーティとやらを見物する事にしよう。

(警備員に変装。様子を伺う。)



190 名前:旋風院 雷羽 ◇zYCuy2/gkI[sage] 投稿日:2010/01/21(木) 18:56:27 0
「もぐもぐ……んぐっ!? んゲホッ!ゴホッ!! 
 おい、なんだこりゃあ!?いきなり目の前が真っ暗になったじゃねーか!!」
「雷羽様、どうもこの建物全体が停電したみたいッス!」
「……肉ウマー」
「どっかのヴィランが動いたんですかね。どうします雷羽様?」

周囲の人間。そして暴飲暴食を行っていた雷羽達も、突然の停電に戸惑っていた。
何しろいきなりの事だ。視界が確保できないこの状況では、
警戒態勢に入り暫く行動を停止するのは、命のやり取りを日常としている
ヴィラン、果てはヒーローにとっても基本と言えるであろう。

だが、幸か不幸か雷羽達の戸惑いの時間は即座に終わる事となった。
その理由は、彼らのリーダーが雷羽だったからである。
旋風院雷羽という人物は――――そこまで考える程、キレ者ではない!

「……停電か。どいつが起こしたかしらねーが、好都合じゃねーか!
 付いて来いてめぇら!今のうちに目的の石っころを手に入れちまうぞ!
 くくく。この迅速な作戦立案、流石俺様だぜ! なーっはっはっは!!」
「了解しました――――変身!!」
「ういっす!――――変身ッス!!」
「……把握。変身」

そうして、雷羽と部下の戦闘員3人(変身形態)は迷う事無く一直線に
ブラックダイヤモンドに向かっていった。
勿論、ヴィランヒーロー双方の集中砲火を浴びかねない危険な行為であるのは、言うまでも無い。

191 名前:真性 ◆8SWM8niap6 [sage] 投稿日:2010/01/22(金) 03:42:00 0
「げえっ、なんだってあんな衆目監視の中にあんだよ……!」

お目当てのブラックダイヤモンドは庭の真ん中に据えられたガラスケースの中に君臨していた。それよりも問題はそれを取り巻く人の群れ。
どうやら邸宅ではダイヤモンドを肴にしたパーティーが催行されているらしく、各界の著名人がボディーガードと同伴して来席していた。
ここのところ新聞もテレビもまるで観てなかったから失念していたぜ……でもまあよくよく考えたらこの状況は俺にとって極めて有利に働いてくれる。
俺はパーティの参加チケットを持っていない。ということはつまり足がつかないってことになる。少なくとも無関係のパンピーには嫌疑がかからないだろう。

それはさておいて、問題はむしろ今現在どうやってバレずにダイヤモンドまで到達するかだ。ゲストを装うにもジーンズにジャンパーというどうしようもない格好だし。
SPやボディーガードを連れていない一般人の姿もちらほら見るが、みんな正装している。スーツの一つでも持ってくりゃよかったな。
ちなみに俺は今、前もって調べておいた監視カメラの死角になる庭内の茂みに身を埋めていた。流石は金持ち、植え込みの手入れにも余念が無い。

「どうすっかなー……」

そもそも命を張ってまでリターンの薄いリスクを犯す必要があるのかって話だ。俺は巨悪になりたくて、今やってるこれは見るからに下っ端の使いっパシリだ。
黒ゴスは『コンビニで飯買ってきて。原付貸してやるから』ぐらいのノリで俺にブラックダイヤモンドの奪取を依頼(命令とも言う)した。
ダイヤモンド自体はスティール女史にとってタナボタみたいなものだから懐は痛まなくて、つまり俺の罪悪感もだいぶ軽減されるわけだけど、命がけには変わらない。
そんな俺がわざわざそこまで危険を冒してメリット皆無な任務に身を投じる理由は。

「――やっぱり、感謝してるんだろうな」

臨死の窮地から救い出してくれた恩人。異能を得た俺はどこか舞い上がっていて、身の丈に合わない銀行強盗なんかやらかして、本物のヒーローと対峙して、
現実を見せられた。『本物』はどこまでも『本物』で、ちょっと異能力を手にしただけの小物が張り合えるような相手じゃなかったのだ。実際、一撃で死にかけた。
そんな俺とヒーローの絶望的な差に堕とされた俺にとっての唯一の希望、あのヒーローと互角以上の実力をもった悪。それが黒ゴスであり、有り体にいうなら俺は、
憧れていたのだ。羨望で、尊敬で、憧憬の、偶像。まじりっけなしの『本物』、マジに最凶の悪。カリスマって奴なのだろう、俺はすっかりアテられていた。

「うし、これ以上うじうじしてても話進まねえしちゃっちゃと盗るか!」
「ほうほう。で、何を盗るんだね?おじさんにちょーっと教えてくんないかな」

不意に頭上から声が降ってきた。同時に冷や汗が背中で滝を作った。油の足らないブリキ人形みたいにキリキリと上を向くと、額に黒い筒状の物体が密着した。
自動拳銃の銃口だった。うわあ、ご丁寧にサイレンサーまで付いてるう。ちょっと勘弁してくださいよ、漫画やゲームじゃあるまいし警告なしに発砲とかしないよね?よね?
普通に引き金が引かれた。

「うひぃ!!」

咄嗟に植え込みから飛び出して前転回避。やったぜ当たってねえ!前転中無敵時間だ!回避性能+2だ!俺の頭部があった場所には風穴が元気な産声を挙げていた。
ああ、でもよく考えたら今の俺には黒ゴスの身体強化があるんだった。撃たれたぐらいじゃ死なないっていうし、ちょっとぐらい大胆になってもいいかな!
踏み込みで銃撃者との距離を埋め、キメ顔で回し蹴りを放つ。ふくらはぎに着弾した蹴りはそのまま相手の身体を縦に一回転させて芝生に沈めた。
すげえ。すげえ俺。

「なんだコイツ!ヘタレの癖して妙に強いぞ!散れ散れ!」
どうやら武装警備員らしき男達が駆けつけてくる。なんでバレたか不思議だったが、よく考えたら死角なのは監視カメラだけだった。警備員には見つかってもおかしくない。
俺としたことがとんだ誤算だったぜ。てへっ

「気持ち悪いんだよ不審者め死ねッ!!」

またもや普通に撃ってきた。
視覚も強化されているのでやけに弾がゆっくりに見える。避けるのは容易いがここはスーパーマン化した俺の恐ろしさを見せ付けるため痛い痛い痛い痛い!!
皮膚にめり込んだ鉛弾は思った以上に痛かった。打撲ってレベルじゃねーぞ。貫通しないことが奇跡のような衝撃。アバラとか折れそうだ。
そうなのだ。撃たれても死なないってのは撃たれても平気ってのとは違う。普通に痛いし。俺はもんどりうって倒れ、そして意識が飛んでった。

【身体強化を履き違えて銃弾を全身に喰らい気絶】

192 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/01/24(日) 05:35:29 0
おいどうしたんだよ止まってるぞ

193 名前:本舘 ◇SGue2uUfkw[sage] 投稿日:2010/01/24(日) 20:01:29 0
まいったな…これじゃ何も見えん。
まさか本当に暗闇に乗じてダイヤモンドを盗もうというのか?
>「……停電か。どいつが起こしたかしらねーが、好都合じゃねーか!
 付いて来いてめぇら!今のうちに目的の石っころを手に入れちまうぞ!
 くくく。この迅速な作戦立案、流石俺様だぜ! なーっはっはっは!!」
>「了解しました――――変身!!」
>「ういっす!――――変身ッス!!」
>「……把握。変身」
………暗闇の中、一段と大きな声が聞こえた。
あの馬鹿みたいな声は雷羽だ。
部下も居るみたいだな…。
このままじゃ雷羽にダイヤモンドを持って行かれてしまう…しょうがない、変身するか。
暗闇が幸いして、誰にもバレずに堂々と変身できる。

変身した僕は、あるカードを挿入する。
「あの集団だな…。」
それは暗視ゴーグルを召喚するカードだ。
僕の目にはブラックダイヤモンドに一直線に向かっている4人の姿がはっきりと映っている。
雷羽の部下と思われる3人は既に変身していた。

「ちょっと待った。」
僕は急いでブラックダイヤモンドと雷羽達の間に割り込む。
「最近よく会うね。悪いけどまた邪魔させてもらうよ。
 ブラックダイヤモンドは僕が貰う。」

194 名前:麗源新貴 ◆S00N9pbnYw [sage] 投稿日:2010/01/25(月) 00:13:10 0
街を往く麗源。項垂れながら、歩行の他を知らない機械になる。
背から夕暉が指す。彼の色彩は、影と橙とに、前後を分割された。
ビルが分割された。行き人も分割された。されないものを見つけるのは難しい。
彼は疲弊を覚える。歩く事に疲れたのか、歩いている今に疲れたのか、分からない。
次第に、考える事さえ面倒になった。いよいよ、器械だ。

スティール邸そのものの位置はすぐに知れたことだし、
事実麗源は、日の高い内に、一度そこを訪れていた。
ところが、と言っても、丸きり彼の想定を外れていたわけではないものの、
門前で立ち惚けを貫く二人の黒服によって、挨拶すら阻まれた。
彼らは共にサングラスを掛けていた。
しかしその視線は時折、確かに、麗源の喉笛の下部辺りを舐めていた。

その後は、仕方なく、インターネットカフェにお邪魔したり、漫画喫茶に失礼したり、
とにかく彼一人の孤独な世界を創造して、その中に篭った。
そういった店の出入りにも、一々カードを使って、天の意思を仰いたのは言うまでもない。
時は相当に早く過ぎた。普段の無聊な生活と比べると、随分楽なものだ。
ネット難民とやらの一生は、実に瞬く間なのだろうと、麗源は考える。
考えながら店を出て、歩く内に、今に至った。

また、スティール邸近辺へと足が向かった。
試しに彼は、邸宅の庭を囲みこむ柵を廻ることにした。器械には似合いだ。
廻る廻る……その無駄に、天も彼を見捨てたらしい。太陽はさっさと沈んだ。
闇を呑吐しながら、なお歩く。そんな折、彼の耳に、何やら悶着らしい人声と物音が届く。
柵の内からだった。麗源には怪訝も不審もなく、何気なしに、柵の向こうの庭を覗く。

>「気持ち悪いんだよ不審者め死ねッ!!」

罵詈雑言を追いかけて、パスンパスンと、拳が枕を打つような音が群発する。
続けて、柵の向こうに、芝生を蹴って駆け抜ける影が一つ二つ確認できた。
麗源は、様子伺いに屈めた腰を正して、眉を寄せて思案する。

「……そういうことか!」

どういうことなのか。人目を避けて、素早く近場のビルの合間へ滑り込む。
今朝に引いた正位置の隠者を思い起こして、彼の胸は高鳴った。

間もなく、スティール邸の庭へ向けて、闇から、一塊の影が擲たれた。

195 名前:麗源新貴 ◆S00N9pbnYw [sage] 投稿日:2010/01/25(月) 00:15:12 0
影は、背の高い金属の柵を一足に飛び越えて、見事内部への侵入を果たす。
着地の衝撃は上手い事に芝に吸収された。

「ちょっと……待てよ!!」

ぐったりとした真性を取り囲む警備員らが振り返る。

「何だ、ホルスタインか。」
「誰が乳牛だっての!」

いきり立つホルスタイン、もとい麗源に対して、警備員たちは然程の興奮も見うけらない。
再び真性の様子の観察に戻ったり、顔を寄せ合って秘かに話したり、色々だった。
色々ではあったが、少なくとも、麗源へ向けられる注意は微々たるものに違いない。

「その、さ。俺も事情があって来てるんだけど。」

麗源に向き直る者がいる。際立って体つきの良い、警備の頭担当らしい。

「事情ってのは、あんたもしかして、あの不審者に用があって、ここまで追いかけて来たのか?
 何にせよ、引き渡せってのには応じられない。
 こちとら、スティール邸の安全の絶対を約束さらせれているんだ。
 我々はあいつを拘引するつもりだよ。」
「拘引が念頭にあるなら、なぜ撃った!」

硝煙の匂いは、濃くはない。しかし、どこか独特のしつこさを孕んでいる。

「原因と結果が逆だな。撃ったところが、どうもあいつは生きているらしい。だから拘引を選んだ。」
「……余計にタチが悪い。じゃ、ハナから殺すつもりだったのか!」
「安全の絶対を保障されていると言ったはずだ。ところで……。」

警備の頭が、ずいと、皮の厚い掌を差し出す。

「招待状をお見せ頂けますか?」

たどたどしく気色悪い口調の質問を受け取って、麗源は素直に戸惑う。

196 名前:麗源新貴 ◆S00N9pbnYw [sage] 投稿日:2010/01/25(月) 00:18:52 0
「……こいつも取り調べろ。」

麗源の周りには、いつの間にか真性から離れた警備員が集い、引き捉えようと距離を詰め始めた。

「ちょ!ちょっとちょっと……!」

踊りかかる影の群れを、麗源は右に左にかわしながら、懐を弄る。
やがてバランスを崩して尻餅をつきながら、一枚のカードを選び抜き、掲げ上げる。

「見よ、我が手に宿るカードを!それがお前らの未来を示す」

立ち上がり際、ポーズを決めながら口上を紡ぐ。

「悪魔の正位置は、破壊性と暴力!即ち……って、待った!やっぱ今のはナシで……。」

警備員らは一瞬間に痙攣して、次から次へ、拳銃を手にする。
彼らの眼は虚ろに落ち窪んで、周囲の夜気を道連れにしていた。
空白の後、弾丸の交錯――麗源の心の安定は、がりがりと削られて磨耗する。
それでも、彼の肉体は人を外れている。弾丸が貫いたのは、黒いスカーフの一片のみである。
麗源は致命の鉛玉を避けて、脹脛にバネを仕込んだ如く、脅威の跳躍を見せていた。
戸惑った銃口を尻目に、真性の付近に下り立ち、その身体を抱え上げる。

「とにかく――。」

脱出が先決であろう。麗源は今宵に三度、月光に身を躍らせて、柵を飛び越え、スティール邸から離脱する。
そして、緊張の為の錯覚か、粘性の増した空気を掻き分けかきわけ、
真性の介抱のため、とりあえず、人気のない裏通りへと侵入する。
念の為に変身を解いてから、彼の頬を掌で叩いたり、声をかけるなりする。
彼こそが、真性こそが、己の人(じん)を変えてくれるのだと信じて。
あの幻が現であり、この邂逅が運命なのだと信じて。

【真性を連れてスティール邸から脱出。スティール邸に暴走警備員が発生。】

197 名前:赤穂朗氏 ◆y6ZFeIPasDPg [sage] 投稿日:2010/01/25(月) 20:10:56 0
停電の混乱に乗じて赤穂朗氏は警備員に成り済ます事に成功した。
アリス・イン・ワンダーランドの赤い目が光る。
真っ暗な空間でも周囲を見通せる視界を持っている。
赤穂は平然とした様子でパーティ会場の人々を避けながらダイヤモンドの近くまで
来た。

(なるほど……これがブラックダイヤモンド。素晴らしい輝きだな…)

つい、手を伸ばそうとする。思い直し手を戻そうとした瞬間…
懐の鉱石が赤熱し、ガラスケースの中のダイヤモンドの一部と引き寄せあうように
「合体」した。
ケースを擦り抜けたのは1部だけで、残りはまだケースの中に存在している。
(どういう……ことだ?)
困惑する赤穂の懐で輝く鉱石に反応するように、アリスの全身が
ひび割れ変化していく。
まるで進化でもするかのように、アリスはより凶暴な姿へと変異した。

(お前…触れたのか?ケースを擦り抜けて…)

アリスは言葉を返さない。ただ、赤い目が赤穂に真意を伝える。
(ふふ……これが石の力か。私の平穏な生活がこれでより完成される事になる…)

アリスが触れた石が何かに変化した。
それを赤穂は知ったのだ。

【ブラックダイヤモンドが”何か”に変化。対象が触れた時点で発動する?】


198 名前:トリッシュ ◇.H4UqpaW3Y[sage] 投稿日:2010/01/25(月) 20:12:14 0
非常灯の明かりが灯っている廊下を一心不乱に走るトリッシュ
その背後に姿の見えない追跡者がいるなんて思ってもいないだろう。

停電が直り、明かりがついた時、彼女は立ち止まった。
「流石は私ね。プラン通り」
彼女の視線の先には、壁にかかった高そうな油絵が飾ってある
そして、彼女は壁の絵に手を伸ばすと、まるで飲み終えた缶ジュースのようにそれを放り投げた。

絵が飾っていた場所には、何やら意味深なタッチパネルが隠されており、それには1から9までの数字がバラバラに並んでいる。
彼女は一旦、辺りを確認し、パスワードを入力すると、壁が開きガレージに繋がっているエレベーターが姿を表した。
彼女はエレベーターに乗る前にもう一度辺りを見回し、エレベーターに乗り込んだ。
彼女のプラン通りことが進むならば、ダイヤモンドが盗まれる前にアーマーを装着し、パーティー会場に戻れる筈だろう



199 名前:星 真一 ◆fSS4JmCGEk [sage] 投稿日:2010/01/25(月) 23:02:33 0
彼女を尾行していると急に立ち止まったので、俺も立ち止まることとする。
すると停電が直り、再び灯りが点り周囲が明るく成って行く。
そして彼女は飾ってある俺の年収では買えない様な高そうな絵を簡単に放り投げる。
やれやれ、お金持ちのお嬢さんの考えることはよくわからん
つーか勿体ねぇよとか思って見ている内に辺りを確認しており目が合ってしまいびびったが相手から見えることはないので心臓をどうにか落ち着かせる。
なにやらその奥になるタッチパネルを入力していた。
(なんだこの秘密基地への入り口みたいなのは…まぁこれぐらいあるだろヒーロー名乗ってるんだし)
入力し終わったのか、壁からエレベーターが出現する。
そしてもう一度辺りを確認するが、二度も同じ事はしないのでビビることなくエレベーターに滑り込みで入る。
とりあえず早いところ、黒い石を回収できることを願いながらエレベーターが着くのを待つこととする。


200 名前:秤乃 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/01/26(火) 16:46:32 0
「ね、ねえ暗楽ちゃん……。二人くらい、帰っちゃったよ……?」

光が不安げに暗楽の袖を引っ張る。

「あんの馬鹿……! 手際が良かったのは最初だけじゃない!」

無様にも昏倒し、更にあろう事かヒーローに抱えられて去っていく真性の醜態に、暗楽は眉間に皺を寄せつつ米神を押さえた。
次々沸いてくる愚痴と声にならない呻きを喉の奥で辛うじて殺し、彼女は再び周囲を見回す。

状況は単純で、しかしそれは脆弱性の強い安定だった。
今の所交戦中なのは本舘と旋風院のみ。
だがもう暫くもすれば、アーマーの装着を終えたトリッシュ・スティールが帰って来る。
或いは、迷彩を纏い彼女を追跡していた星の行動によっては、また別の結果もあり得るが。
更に一時戦線を抜け出した真性や麗源も、いつ帰ってくるか。もしくは帰ってこないのか。
挙句の果てには麗源によって、間抜けにも半開きになった口から正気を零した警備員達も跋扈している。
ともかくこの場の情勢は時流に伴って崩壊し、段々と勢力の対立は複雑になっていく。

けれども不意に、暗楽の目が見開かれる。
彼女の瞼を支配したのは驚愕と、そして胸中で刹那の内に湧き上がった激昂だった。

「ふふ……いい度胸してるわね。この素敵な舞踏会で、コソ泥みたいな無粋な真似するなんて」

警備員に扮して庭の中心たるブラックダイヤモンドに近づく赤穂を、暗楽の双眸は捉えていた。
見ればブラックダイヤモンドは、ほんの僅かにだが小さくなっているように見えた。
赤穂の胸の内に潜むもう一つの鉱石宛らに、彼女の視界が真っ赤に染まっていく。

「あの男……『ヒーロー』? それとも『ヴィラン』? ……どっちでも良いわね。
 光、アイツを石から遠ざけて。後は私がやる。貴女は頼んでおいた事をよろしくね」

必要以上に平淡とした、意図的に感情を排した声が紡ぎ出される。

「うん、任せて!」

暗楽のそれとは打って変わって、光の声はこの状況下においても明朗としていた。
どこかタガが壊れ外れているような、場にそぐわない日輪のような笑顔が輝いている。

暗楽の頼みを受けてひとまず、月明かりに人の形を与えたかのように可憐な少女は辺りを見回した。
彼女の視界が捉える物は、黒のダイヤモンドが中心になるよう展示された、彩色鮮やかな宝石の円環だ。

彼女が見定めたのはその中の一つ、唐紅に封をしたような宝石。

「宝石さん! 力を貸して!」

身を隠していた暗闇から上空へと飛び出し、ワンドを頭上に掲げ光は声を張った。
彼女の願いに応えるように、紅玉から色が抜け落ちていく。
そして彼女は暗闇の地表へと円を描いた。

ワンドに宿された紅が、彗星の如き尾を引いて走る。
整然とした軌跡を描いた紅色はしかし、次第にほつれるように荒げ、揺らいでいく。
程なくして紅は紅蓮と化して、ブラックダイヤモンドへのあらゆる接触を阻む隔壁を築き上げた。

同時に光源が生まれた事で、周囲の闇が局所的にだが祓われる。

光の役割はひとまずここまで。
もう一つ割り振られた役割の為に、然るべき場所へと移動する。

故に、この舞踏会の賞品にお手つきをした無粋者を叩くのは、

201 名前:秤乃 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/01/26(火) 16:48:10 0
「たぁあああああああああああ!!」

私の役目だ。この野暮も野暮、無粋と朴念仁のイデアと称しても差し支えないであろうこの男に仕置きをするのは。
ワンドに夜闇を吸わせて、その先端に巨大な斧刃を描き上げた。
私の華奢な矮躯には到底似合わないそれを、けれども私は目一杯の力で叩き付ける。

けれども斧は紙一重で警備員姿の男から外れ、奴の足元を大きく抉り飛ばすだけに留まった。
避けられた訳じゃない。
これは私なりの感情表現。どれだけの鬱憤が私の臓腑を食い荒らしているか、奴に伝える為のものだ。

「……駄目じゃない。パーティの終焉を飾る為に用意されたご馳走を、一人で摘み食いなんかして」

だけどそれは初弾だけ。
似つかわしくない振る舞いはすぐに仕舞い込んで、いつも通りの私を作り上げる。

「貴方が『ヒーロー』か『ヴィラン』か。敵となるか味方となるか。
 今はどうでもいいわ。悪い子供にお仕置きをするのは、当然の事だもの、ねえ?」

言葉と共に、斧刃が形を失い夜空へと還っていった。
私はワンドを頭上に掲げて、新しい色を呼び寄せる。

周囲に供覧された宝石の一つから、海に浸して染め上げたような青色を借りた。

「さあて……とっても不恰好なその服装だけど、仕方がないから一緒に踊ってあげるわ。
 せめて退屈はさせないでよ? パーティはまだまだ続くのだもの。こんな所で興を殺がれたら堪らないわ」

青く染まったワンドの先端で頭上に弧を描いた。
色が形を成して、警備服の男を取り囲うように氷柱が暗夜に兆す。

私が小さくワンドを振り下ろすと、それらは一斉に奴目掛けて降り注いだ。

202 名前:秤乃光 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/01/26(火) 16:50:45 0
秤乃光のもう一つの役割。それを果たすべく彼女は、烈火によって常闇から隔絶された庭の芝生へと降り立った。
描かれた火焔は周囲に燃え広がる事無く、辺りを煌々と照らしている。
そして紅の明かりを受けて、本舘と旋風院とその部下は対峙していた。

「また会えたね、お兄ちゃん。私の言った通りでしょ?」

炎が生み出す熱気にドレスの裾を揺らめかせ、両者の均衡を乱さぬよう静謐な足取りで、彼女は本舘に歩み寄る。
旋風院達は警戒の色を濃くしたものの、火焔から離れ宙を舞う火の粉を思わせる可憐さに当てられたのか。
とうとう睨み合いを崩す事は無かった。

「そのおっきな眼鏡はもういらないよ。だからしっかりと、私を見て」

言葉は本舘に、けれども視線は旋風院達から、決して逸らさない。

「あの時も、骸骨の時もそうだった。だから今回もそう」

彼女の目的はそう、彼にこそある。
秤乃光が姉妹から言い渡された意図は、

「……助けに来たよっ! お兄ちゃん!」

旋風院雷羽に、更なる強さを与える事だった。

203 名前:秤乃 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/01/26(火) 16:51:58 0
名前欄変え忘れる病気どうにかならないかしらなのです
201は暗楽の物となっておりますです

204 名前:赤穂朗氏 ◆y6ZFeIPasDPg [sage] 投稿日:2010/01/27(水) 00:32:11 0
>>200>>201
>「たぁあああああああああああ!!」

勝手に体が動く。叫び声のする方向に振り向くと同時に
見えたのは少女の姿だった。
足元が抉られた痕を凝視し、赤穂は腰を抜かした。
(な、なんだ?こいつは…たまげたなぁ)
>「……駄目じゃない。パーティの終焉を飾る為に用意されたご馳走を、一人で摘み食いなんかして」

少女は無表情でこちらへ迫ってくる。
赤穂の脳裏に浮かぶのはただ1つ。
――面倒事はごめんだ

>「貴方が『ヒーロー』か『ヴィラン』か。敵となるか味方となるか。
>今はどうでもいいわ。悪い子供にお仕置きをするのは、当然の事だもの、ねえ?」

少女は何事か呟いているが、そんなことはどうでもいい。
今はただ、この意味不明で奇妙な存在から逃げる事だけを考える。
赤穂の”アリス”は一般人には見えない。
いや、一般人は愚かほとんどの人間には見ることが出来ない存在だ。
赤穂は小便を漏らしながら、周囲に向け叫んだ。

「た、助けてくれぇ…!なんだか分からないが、変な奴が
”ダイヤモンド”を狙って現れたぞっ!!」

近くにいた警備員の仲間が非常灯を手に駆けつける。
「どうした!どうしたんだ、お前…え?」
>私が小さくワンドを振り下ろすと、それらは一斉に奴目掛けて降り注いだ。

丁度、その時だった。駆けつけた警備員を氷柱が貫き鮮血を上げる。
次に起きたのは停電からの脱却。
明かりが再びパーティ会場を照らし、惨状を映し出した。

「ぎゃああああ!!」
「なんだ、泥棒か!!」

少女の周囲で起こる悲鳴。赤穂は小便を漏らしながら少女を指差し
叫んだ。
「こ、こいつだ!私がダイヤモンドを確認しようとしたら…
いきなりこの女がッ…」
トリッシュの取り巻き達が駆けつけ銃器を手にしている。
赤穂は非常事態に紛れるように裏口を目指し駆け抜けた。


―「ヒーローだろうが、ヴィランだろうがそんな事は知った事ではない。
私はただ、自分が心地よく生きれればそれでいいのだ。
石に関しても……見れただけで満足さ。ふふ…しかし驚いた。
あんなガキが恐ろしい力を持っているとは…もらしてしまったぞ。
漏らして…」

不気味な快感に酔いしれながら赤穂はトイレで一物を握っていた。




205 名前:真性 ◆8SWM8niap6 [sage] 投稿日:2010/01/28(木) 03:33:47 0
「う〜〜っフラグフラグ」
今黄泉路に向かって全力疾走している俺は極潰し満喫中のごく一般的なオトコノコ。強いて違うところをあげるとすれば悪事に興味があるってとこかナー、名前は真性道程。
そんなわけで気が付いたら人気の無い裏通りで謎の男に解放されていたのだ。

「…………」

五里霧中の道程から無理やり引っ張り上げられたような感覚に、軽い酩酊感と浮遊感を覚える。それはともかくとしてここ十数分ほどの記憶を辿ると、
数多の銃口から一斉掃射の憂き目を見た俺は早々に現実を放棄しお縄を頂戴すべく身体を投げ出したような気がしないでもないが、五体十全である現状を鑑みるに。

「アンタが助けてくれたの、か……?」

返ってくるのは肯定。なんというか、助けられてばっかりだな俺。あれか?パターン化してるのか?お約束か?閑話休題。
延髄に電流が奔った気がして、俺は思わず飛び退いた。スティール邸は武装警備員蔓延る厳戒体制で、火線飛び交うあの屋敷から成人男性一人を
救助したのち逃げ果せるほどの手腕と器量。それらの符合が符号となって、俺の脳内に一つの答えを作成し、提出した。受理した俺(上役)は目玉を引ん剥いて警告する。

この世で人の理から逸脱せし者は、善か悪――つまりヒーローかヴィランのいずれか。程度の差こそあれ、天秤は誰もが必ずどちらかに傾いている。
俺は悪で、では目の前で言葉を待つ恩人は、どちらなのだろう。悪を助ければ悪などと単純な道理じゃないだろう。その力量を、他人の為に如何なく発揮できる傑物――
と言ったものの、現状で俺が左右できる事柄はあまりに少ない。彼がどちらであったとしても、命と窮地を救われたことに変わりはない。ないのだ。

「……いや、すまねぇ。反射的に逃げちった。今をときめく小動物系なんだよ俺。――マジに助かった、恩に着るぜェ」

小動物系の俺は手を擦り合わせて恩人を拝んだ。ともあれ窮地は脱して、だけれど何も解決していない。
依然ブラックダイヤモンドは手の中には無く、今一度死線を越える必要に迫られる。と、そこで俺の脳髄が再び感電した。天啓の如き閃き、ってのは嘘だけど。

「俺は真性道程(まさが みちのり)。"真性童貞"の真性に"申請道程"の道程だ。今でも親と市役所を恨んでる。――助かりついでに提案があるんだけどよ」

懐から手帳を出して拡げる。俺の入念かつチキンな潜入捜査によって得た緻密なスティール邸の内面図だ。
あのタイミングで都合よく俺に手を差し伸べてきたということは、目の前の彼もブラックダイヤモンド絡みの関係者である公算が高い。
それも、邸内で見かけなかったことから察するにギリギリまで外をうろついていた筈。つまり、正当な招待によって馳せ参じた可能性は限りなくゼロ。

「スティール邸でブラックダイヤモンドを肴にしたパーティーがやってるのは知ってるよな?そこでだ、――アンタ俺と組まないか?」

これは一種のカマかけだ。ヒーローにせよヴィランにせよ、善悪入り乱れる戦場でブラックダイヤモンドは一種の標嘗、つまりは争奪戦になる。
前者は護る為に戦い、後者は奪うために戦う――そこにどんな理念があろうとも、修羅場では最も単純な理が働くのだ。

「もちろん報酬が半々とは言わねえ。命の恩もあるし俺はもっと下手に出るさ。俺が欲しいのはブラックダイヤモンドただ一つ、残りはアンタの取り分で良い」

スティール女史の財産はブラックダイヤモンドだけじゃない。もちろんメインはそれだが、まるで花弁のように張り巡らされた宝石の環が十重二十重、
それらを総合すればブラックダイヤモンドが霞むぐらいの金額になるはずだ。そもそもブラックダイヤモンド自体は商業価値がそこまで高くない。
商品の値段というものは需要と供給、つまり流通を前提として付けられる。持ってるだけで足が付くような爆弾相手じゃ裏でも大した値段にならないのだ。
そりゃあ俺だって金は欲しいが、身の丈に合わない金額は手が震えそうで駄目だった。金の転がし方も洗い方も知らないしな!

「善でも悪でもこの際問わねェ。アンタを相応の武闘派と見込んでの頼みだ。――どうよ?」

前者の善者だった場合、この場で捕らえられてもおかしくないような提案だったが、俺の小動物脳ではこれが限界の打開策だった。
上手く言いくるめられない話力のなさを嘆きながら、俺はとりあえずの土壇場へ首を投げ出すことで誠意を顕にした。


【気絶から回復。麗源をヒーローだと知らずにブラックダイヤモンド奪還作戦に誘致】

206 名前:旋風院 雷羽 ◇zYCuy2/gkI[sage 2つに分けます] 投稿日:2010/01/28(木) 18:09:49 O
「……がーっ!! ま た 貴 様 か ! 
 毎度毎度、この俺様の作戦の邪魔をしに来やがって!!
 俺様は男のストーカーなんて欲しくねーんだよ!!
 戦闘員共っ!あの糞面倒くさいヒーローをぶちのめしてや……」

雷羽と部下達がダイヤを奪取しようと走り始めた直後、
ダイヤと雷羽達の間に一つの影が割り込んで来て、その足を止めさせた。
この状況で悪(ヴィラン)の行進に割り込んで来る存在といえば
――――そう、ヒーローである。
雷羽達の前に立ち塞がったのは、先日バスジャックを阻止し、
昨夜公園にいた雷羽に何故か接触を試みた、本館というヒーローだった。

そんな本館の姿を確認した雷羽は、前回の恨みつらみも込めて
部下である戦闘員達に攻撃の司令を出そうとし……と、そこで新たな出来事が起きた。

紅が闇を払い、第三の存在が介入を行ってきたのである。

旋風院達の目前に現れたのはゴシックロリータに身を固めた少女。
その少女は告げた。自身が本館に加勢する存在である事を。
そして、闇が掃われた事で雷羽は認識した。目の前の少女が、
昨夜自身を挑発した少女に極めて似ているという事を。

暫くの沈黙――――そして

「……なーっはっはっは!! まさに飛んで火にいる夏の虫っ!!
 まさか、この俺様の前にノコノコとぶち殺されに現れるとはな!
 貴様等がこの俺様に与えた屈辱、百万倍にして返してから石ころを奪ってやるぜ!!
 行くぞ戦闘員共――――変身っ!!」

そして、雷羽の体が黒霧に包まれ、鋭角なフォルムの
禍々しい気配を放つ黒い鎧を纏ったかの様な姿の怪人が現れた。

『説明しよう!旋風院雷羽は、感情の触れ幅が一定値にまで高まる事で、
 0.02秒で悪の改造人間『ダークメイル』へと変身する事が出来るのである!!』

207 名前:旋風院 雷羽 ◇zYCuy2/gkI[sage] 投稿日:2010/01/28(木) 18:11:01 O
ダイヤの確保の邪魔になる以上、雷羽が目の前の二人を攻撃する事に遠慮は無い。
ましてや、それが無駄に自信家である雷羽に砂をかけたヒーロー達相手であるとなれば、言わずもがなだ。
幼稚園バスでは力の一端しか見せられなかった。昨夜は変身すらしていなかった。
故に、ヒーローはここに来て始めて、ヴィランとしての雷羽の真の実力を見る事になるだろう。

「――――さあ、この俺様が直々に地獄に送ってやるぜ!!」

踏み込みが床をベキリと砕く音を置き去りにし、悪の改造人間『ダークメイル』は疾駆する。
数mの距離を詰めるのは一瞬、僅か一歩。放つ技は単なる右拳。
単純極まりない――――だが、それでも尚強い。
その威力は、速度は、変身前の雷羽の比ではない。早くて強い。
それ故に怪人。悪の組織が、人間を遥かに越えたヒーローを殺せる様に技術の粋を集め作った作品。
とあるヴィランの幹部たる雷羽のその拳、並のヒーローならガードもろとも
ボディを撃ちぬかれるであろう一撃が向かう先は、後から現れたゴシックロリータに身を固めた少女。
昨夜自分を攻撃してきた人物と同一だと雷羽が思い込んでいる少女だ。
背後からは彼の部下の戦闘員達が、どこに隠していたのかマシンガンを構え雷羽を援護している。

208 名前:本舘 ◆SGue2uUfkw [sage] 投稿日:2010/01/28(木) 19:19:44 O
>>206-207>「……がーっ!! ま た 貴 様 か ! 
 毎度毎度、この俺様の作戦の邪魔をしに来やがって!!
 俺様は男のストーカーなんて欲しくねーんだよ!!
 戦闘員共っ!あの糞面倒くさいヒーローをぶちのめしてや……」
僕は君のストーカーじゃない!
ついでに、ヒーローではないと何度言えば…
いや、今はそこを気にしている暇は無い。
雷羽達がいっせいに向かって来ている。
このままじゃダイヤモンドを奪われて…
>>200………ん?
ダイヤモンドの周りに紅蓮の隔壁が…。
>「また会えたね、お兄ちゃん。私の言った通りでしょ?」
この声はもしや…!?
>「そのおっきな眼鏡はもういらないよ。だからしっかりと、私を見て」
暗視ゴーグルを外し声のする方を見る。
紅蓮の炎により、確かにあの少女の姿が確認出来た。
>「あの時も、骸骨の時もそうだった。だから今回もそう」
>「……助けに来たよっ! お兄ちゃん!」
「あ、ああ。よろしく頼む…。」
駄目だ…完全に彼女にペースを握られている…。
だが、彼女の力があれば雷羽達を倒し、ダイヤモンドを手に入れる事なんて容易い事だ。
>「……なーっはっはっは!! まさに飛んで火にいる夏の虫っ!!
 まさか、この俺様の前にノコノコとぶち殺されに現れるとはな!
 貴様等がこの俺様に与えた屈辱、百万倍にして返してから石ころを奪ってやるぜ!!
 行くぞ戦闘員共――――変身っ!!」
雷羽がなにやら騒いでいる。
そして幼稚園バスで見せたあの姿に変身した。
>「――――さあ、この俺様が直々に地獄に送ってやるぜ!!」
雷羽が歩く度に床が砕けていく。
「ふっ…。そんな重そうな体で僕に攻撃が当たると…!!?」
数mは離れていた雷羽が、一瞬で距離を詰めて来た。
しかも僕の方じゃなく、少女の方に…。
気が付くと僕は、少女を横から突き飛ばしていた。
僕の右肩に、雷羽の強烈な右ストレートがめり込む。
無論、僕は壁まで吹き飛ばされる。
「ぐっ…ぅ……ぁ…。」
駄目だ…右腕は完全に破壊された。
まさかここまでとは…これはちょっと厳しいか?
「…に……にげ…ろ」
僕は少女に向かってそう呟いた。

209 名前:テラシ ◆vCpQPGCxWE [sage] 投稿日:2010/01/29(金) 05:57:13 0
>>207 >>208

闇夜のなかから男が現れる。正確には屋内だから闇夜とはいえないかも知れないが、
通された外気の面積は部屋を覆いつくして余りある。男にとって世界は内も外もない。
ここは屋敷でありながら、広大無辺の夜空の一部なのだ。

「強い希望の持ち主がいるな。いや、野望というべきかな」

テラシが察知したのは、その若さからか、危なっかしい佇まい本舘の内面に走る気概だった。
そこにのしかかるように突進していく雷羽の存在には、従順な犬を思わせる気迫が感じられる。
テラシは人の価値観を、砂漠のなかの湖のように、形に置き換えて知覚することができた。
人間同士の力関係や、立場のようなものを察知する嗅覚は持ち合わせていないものの、いつからか
自分には人の個人的領域を垣間見るある種の資質が備わっていることを彼は知った。
テラシの周囲には数人の巨漢が立ち塞がっている。時間を戻して説明すれば、テラシは会場でショック死した
老人の遺体の口の中から這い出てきた。彼に寄り添って蘇生をしようと、人工呼吸を行っていた別の客が
地鳴りのような声を上げて、小さいテラシを確認し、ヴィランだと断定した。
ヒーローの力など借りずとも、悪を懲らしめようとする気質は買うが、そこには実力が伴わない。
テラシは彼らを一瞬で「消す」と、老人の死体を片手で引き摺りながら瀕死の本舘の前に寄り添った。

「危なっかしいな……。ま、若いときは買ってでも何かを憎むもんだ。しかしあんたじゃ足りねえ」

振り返り、尊大そうな闇の甲冑を纏った雷羽に言葉を投げつける。

「あんた、ヒーローか?ヴィランか?」

短いがまっすぐな刀のような正確な返答が返ってくる。
後方では本舘と光る泡沫のような可憐で不確かな少女がやりとりをしている。

「そうか……この近くにまともなヒーローはいないか?なるだけ精神的に強く、できれば、男がいいな」

210 名前:トリッシュ ◆.H4UqpaW3Y [sage] 投稿日:2010/01/29(金) 15:40:22 O
ガレージまで降りるまでの時間はほんの数秒間、何もなければ直ぐに着くはずだった。

「何用かしら、わざわざそんなステルスまでして尾行だなんて」
何かを察知したトリッシュがエレベーターを止めたのだ
「しかし、随分高性能なステルスね。完全に背景に溶け込めて、尚且つ音が一切しないしないんだから
 正直、こんな狭い空間に入らなかったら分からなかったわ

 目と耳は欺けても鼻だけはごまかせなかったみたいね
 とっても硝煙臭いのよアナタッ!!!」
そう言って何もない空間を思い切り蹴り上げる
何かに当たった手応えを感じた
「どうやら大事な所に当たったみたいね

 油断するからそうなるのよ
 そうそう、ついでに言わせてもらうとX線透過とサーモグラフでもアナタの姿は確認できるわ
 だから、そうやってタカをくくっていると…」
エレベーターに隠してある拳銃を取り出す
「眉間に穴があくことになるわよ!!!」

211 名前:天堂寺宗司郎 ◆Hm6L3URGao [sage] 投稿日:2010/01/29(金) 18:05:17 0
名前:天堂寺宗司郎
職業:株式会社天堂寺工業社長
勢力:正義(ヒーロー)
性別:男
年齢:25
身長:182cm
体重:65kg
性格:冷静沈着、豪快大胆
外見:(変身前) 黒のスーツもしくは青色の作務衣
外見2:(変身後の姿)変身ツール:ライドカブト(カブトムシ型の小型ロボ)
銀色と赤の配色の強化アーマー。モチーフはカブトムシ。
複眼の色は水色。頭部はカブトムシを模している。
特殊能力:強化アーマーを脱ぎ去り素早い動きを行うモード(ライド)
と強固な鎧で攻撃を遮断する(アームド)の2形態を持つ。
また、腰の装備された高速移動装置を作動させ「アクセルモード」が
発動する。
武器は銃型の装備「スマッシュガン」と短剣状の武器「ライドブレード」
備考:トリッシュインダストリーと1,2を争う巨大企業の社長。
15歳で大学を卒業した天才、冷静沈着な性格で
祖母から受け継いだ巨大企業を経営している。
地球外から落ちてきた謎の隕石を動力源にし、独自の強化戦闘システム
「ライド」を開発した。


212 名前:天堂寺宗司郎 ◆Hm6L3URGao [sage] 投稿日:2010/01/29(金) 18:14:32 0
>>204
「よせ、その子は泥棒じゃ…ぁない。」

警備員に包囲された少女を庇うように現れたタキシードの男。
冷静沈着な言葉で警備員達を退ける。
「まだ息はあるな…早く救急車を呼べ。それまでに出来るだけの
応急処置はしてやる。」
貫かれた警備員の傷口に手を当て叫んだ。
手際よく止血をしながら去っていく1人の警備員を睨む。
「おばあちゃんが言っていた。泥棒ってやつは物を盗む時に、
もっと大事なものを失くすってな…頼んだぞ。」

天堂寺の指示を受け、カブト虫のようなメカが飛び回りながら
>>204警備員の後を追う。


######################################


>>210
処置を終えた天堂寺はトリッシュを探していた。
「やれやれ…今回の提携に関しての話をしておこうと
思ったが、何処に行ったのやら。」




213 名前:麗源新貴 ◆S00N9pbnYw [sage] 投稿日:2010/01/29(金) 21:15:28 0
>「アンタが助けてくれたの、か……?」

間もなく意識を取り戻した、真性青年の放った最初の文句は、こうである。
麗言はその言葉を素直に受け取って、
何とはなく、周囲に漂う人気の濃度の薄さを確認してから、応答した。

「……そういうことに、なるかな。」

続けて、一応ね、という冷ややかな語が、喉までせり上がってくるのを、どうにか飲み下す。
麗源にしてみれば、決して真性道程という一個人を救ったわけではなく、
己の人生に、何らかの転機を与えるであろう、
ある種、観念的な存在を、手中に収めたに過ぎない話だった。
一皮剥いてしまえば、存外、無味乾燥なところもある人物である。

真性は礼の言葉もそこそこに、己の氏名を紹介した。
真性道程。余りに輝かしいその四字の読みを脳裏に並べて、
麗源は、ふぐっ、とかいう、笑いの断片を口腔内に爆発させる。
そうして、俺の名前も特殊だよと微笑んで、麗源新貴の名を披露した。
麗しき源に、新しく貴きものあり。字面だけ見れば、随分な重宝を頂いたものだ。
麗源自身も有難く思っているが、分不相応な上、読みが妙だと、常々考えている。
お陰で幼少の頃、様々センス溢れるあだ名を頂戴した。
と、過去に逆行を始めた精神を引き戻し、麗源は現実を捕捉する。
己を生死の淵から救い上げた人物が相手とは言え、
今の世に、そう易々とフルネームを教える愚物がいるだろうか。
ただでさえ他人の庭に闖入してたような奴なのだから、
やはり、どうあっても、間違いなく、裏がある。
麗源がそう訝ってみたところ、果たせるかな。

214 名前:麗源新貴 ◆S00N9pbnYw [sage] 投稿日:2010/01/29(金) 21:17:13 0
真性の目的は、トリッシュ・スティールの保有するブラックダイヤモンド。
そして現在、スティール邸において、その逸品のお披露目会が開かれているという。
麗源には、そういった一連の件について、全く知る由もなかった。
社会生活を拒絶した人間の挙句としては、良い例である。
さても、パーティの最中を付け狙うとは、正しく大胆の至りに違いないが、
翻って、真性の示した手帳には、スティール邸の内面図が綿密な精度をもって書き込まれている。
賢しき男。彼が警備員に追い掛け回されていたのも、
単なる失態の為ではなく、何らかの不幸の結果ではないかと思い直す麗源。
思い直す内に――真性青年から、Bダイヤ奪取計画の連携を促された。

知性という点から見れば、麗源はそれほど劣等でもない。
ただ時々、曖昧な思惟とも、緻密な観想ともつかない、深い認識活動に陥る癖がある。
問題としては、どう道を辿ろうと、竜頭蛇尾にしか落ち着かないと決まりきっているところか。
深くふかく、脳髄を抉り出して、剥き出された心理の芯部に問いかけて猶、
彼は、物事に対する答えの出し方を、たった一つしか知らなかった。

「……頭を上げてくれ。」

真性の顔面の先には、一枚のカードが、ずいと差し出されている。
審判と、たった二文字が、癖も面白みもない筆使いで示されていた。

審判の正位置は分かりやすい。
燻っている現状から脱却し、新たな目標や状況が設定される、とのこと。
有体な表現を許してしまえば、好ましき意味での変身、と取れる。
たかがタロットとは言え、これ程の結果がでれば、蛇尾は蛇尾でも、白ニシキヘビ級である。

「よろこんで協力させてもらうよ。よろしく、真性君。
 とりあえず、俺のスタンスを述べておこう。俺は君に、運命を感じている。」

気味の悪い脅し文句とも取れる台詞をぶつけながら、麗源はカードを懐に戻す。

215 名前:麗源新貴 ◆S00N9pbnYw [sage] 投稿日:2010/01/29(金) 21:18:40 0
「俺は占いが趣味でね。それによると、今月に俺の人生に大転換が訪れるらしい。
 そしてまた、昨日の夜……夢か現実か、ちょっと確かじゃないけど、
 翌日にスティール邸を訪れろと勧められた。すると、まあ、こうして君に出会ったんだな。」

麗源の双眸がきらりと輝く。どうしても気味が悪い。

「君と行動を共にする事で、俺の運命は変わるんじゃないかと考えているんだ。
 つまり、それを望むということは、現状に不満を持っているわけだけど。
 ……解脱したいんだ。いや、解脱する。無聊は御免だよ。俺はあのカードに従う。」

ここまで言い立てておいて、途端に、麗源の唇の温度は氷点下まで落ちる。

「押さえておいて欲しいのは、俺は君個人に協力するわけでも、金品が目当てでもない。
 ただ、君と行動を共にするだけで、一生涯中の分岐点を見つけられると踏んだからだ。
 だから、今日のところの俺は、善だとか悪だとか、そんな二元論は一先ずお休みする。
 ……ともあれ、ドライに行こう。君もそのつもりだろうけど。」

弁舌家じみた喋り口である。珍しいことだ。
ぐいと伸びをした彼の背後から、ふと光が指した。
振り返る先は、過たずスティール邸のおわします方角であり、
成程、パーティが開催されているとすれば、庭のライトアップがされて然るべきである。
しかし、麗源が真性を救出に入ったときには、明かりはなかった。麗源にも覚えはある。
真性の表情を顧みるに、どうも不都合を感じているらしい。邸の停電を仕掛けたのは彼であろうか。
とすれば、手段はどうあれ、スティール邸の電力を掌握できる能力と知略を備えた彼は、相当に頼りになろう。
遺憾を挙げるならば、その停電も回復してしまった現状か。

「……頭脳労働は君に任せる。実働や、邪魔者の対応なら、任せてくれても良い。
 そうだ。念の為、誕生月日や血液型を教えといてくれよ。イイことに使えるから、さ。」

嘯く麗源。鋼鉄の処女宮に挑む影二つ。

【真性のBダイヤ奪取計画を承諾】

216 名前:秤乃光 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/01/30(土) 03:49:12 0
秤乃光を見るなり、旋風院雷羽はぴたりと硬直した。

>「……なーっはっはっは!! まさに飛んで火にいる夏の虫っ!!
  まさか、この俺様の前にノコノコとぶち殺されに現れるとはな!
  貴様等がこの俺様に与えた屈辱、百万倍にして返してから石ころを奪ってやるぜ!!
  行くぞ戦闘員共――――変身っ!!」

一瞬の静寂の後、高らかな笑い声が夜空を震わせる。
同時、雷羽の姿が再び禍々しさを感じさせる漆黒によって包み隠された。
宵闇が炎を破り舞い戻ってきた、と言う訳ではない。

夜色よりも尚深い黒は、他ならぬ雷羽本人の全身から、朦々と放たれている。
それがはたと吹き抜けた夜風に払われると、最早そこに剣山の如き頭髪を誇る旋風院雷羽は存在しなかった。
代わりに屹立していたのは純黒の霧が晴れても尚災禍の気配を待とう、闇色の怪人だった。

>「――――さあ、この俺様が直々に地獄に送ってやるぜ!!」

爆発的な踏み込みに耐え切れず、雷羽の足元が快音を伴って粉砕し、四散する。
飛び散った破片と粉塵を置き去りに、彼は右手を鉄槌さえも見劣る拳と成して光へと迫った。

けれども、それは光にとって好都合な展開だった。
『ダークメイル』への変身を果たした雷羽は、文句の付けようがないくらいに強い。
ヒーロー達に引けを取らず、五分かそれ以上に戦い、勝利さえもあり得るだろう。

それでも、足りない。
勝つ事の叶わない、敵わない程強大な悪こそが『ヒーロー』の糧となり、存在理由となる。
巨悪が存在するからこそ、人々は『ヒーロー』を渇望するのだ。

故に雷羽には、己に無力を感じてもらう必要があった。
緒としてまずは彼が放つ渾身の一撃を敢えて受け、その上で平然と彼の前に立ちはだかってみせる。
打ち勝てない『ヒーロー』がいるとなれば、彼の性格から推するに間違いなく更なる力を求めるに違いない。

実の所光は暗楽の言う目的を全て理解しているとは言い難かった。
だがとにかく、雷羽を適当にいなし、彼の荒ぶる気質を煽ってやればいい。
それだけは理解して、実行するつもりだった。

――つもりだったのだ。

けれども雷羽の豪腕が光の眼前にまで迫ったその時、彼女の体をとんと、何かが押した。
風に揺られる羽毛のように容易く、余りにも容易く光の矮躯は突き飛ばされる。
彼女の真横を、雷羽の拳が轟音と共に突き抜けた。

217 名前:秤乃光 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/01/30(土) 03:50:00 0
振り返る。

右肩から二の腕が拉げ、口元を赤黒い血で汚し苦悶に顔を歪める本舘がいた。
炎に照らされ紅色に染まっていた光の顔が、灯りさえ受け付けない程の蒼白に染まる。

「お兄ちゃん!」

悲痛と驚愕の叫び声と共に彼女は本舘の元へ、脱兎の如く地を蹴った。
途中今まで見かけなかった男とすれ違ったが、彼女の狭窄した視界には映ってもいなかった。

「何で……? お兄ちゃんよりも私の方が強いんだよ!? 私は! 私は『ヒーローを護るヒーロー』なのに、何でお兄ちゃんが!」

感情を剥き出しに、光は問うた。
本舘など所詮は自分が管轄する『ヒーロー』の一人に過ぎない。
知っている事と言えば暗楽から与えられた写真や表層的な情報だけに限られる。

にも拘らず彼女は狼狽え、形と機能を失った本舘の右腕を掴んでいた。

ふと、本舘の唇が微動する。

>「…に……にげ…ろ」

彼が紡いだのは、尚も光を案じる意思だった。
言葉を受けて彼女は一瞬、硬直する。
表情も、体も、全てが静止した。

それは器に満ちた水が溢れ毀れる寸前に訪れる、静かな撓みだった。

「あ……う……ああぁああああああああああああああああああ!!」

少女らしからぬ咆哮と共に、光は夜闇を振り切り駆け出した。
僅かに残された理性の残滓も、 本舘に月明かりの癒しを施す事で消費される
激昂に支配され、彼女は月光を支配した。

ワンドの先端には尖鋭な刃、その根元には重厚な斧刃、対の位置には巨大な槌を描き、鋭敏に雷羽へと迫る。
彼女を迎え撃つは幾条の弾丸。
横殴りの雷雨もかくやに迫る凶弾を眼前に描いた光の障壁で弾き、尚も彼女は加速した。

視界に純白の光条だけを残し雷羽の隣を過ぎ去ると、光は後ろに控えた戦闘員達の懐へと潜り込む。
眼前へ突き付けられた二つの銃口を刃で一閃すると、背後に迫り銃床を振り上げていた一人を振り返る事なく突き刺した。
慌てふためく二人の片割れを返す刃で逆袈裟に切り裂く。

残された一人の銃を先端の刃で弾き落とすと、光はワンドを大きく振り被る。
月明かりの粒子を仰ぎ肥大化した槌が、雷羽と残された戦闘員を纏めて餌食とした。
戦闘員は屋敷の外壁へ、雷羽はトリッシュ邸の壁を突き破り塵埃の彼方へと消える。

間髪入れず、光は粉塵の幕を突き抜ける。
見開かれた瞳で眼下に転がる雷羽を捉え、彼女は満身奮力を以って槌を振り下ろした。

218 名前:秤乃暗楽 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/01/30(土) 03:50:40 0
>「た、助けてくれぇ…!なんだか分からないが、変な奴が
  ”ダイヤモンド”を狙って現れたぞっ!!」

警備服の男が上げた情けない声は、私の耳朶を叩く事なくすり抜けていく。
わらわらと群がる警備員達が鮮血と臓腑を散らしながら崩れ落ちていく様も、どこか別世界の出来事のように見える。
周囲で産声を上げる悲鳴も、男が私に指を差し何かを喚き散らしているが、どうにも現実感が感じられないのだ。
けれどもその中で一つだけ、妙にはっきりとしている物があった。
男の局部から水音が漏れ、同時に足元へと――やめよう、如何に言葉で飾ろうとも無理がある。
ようは警備服の男は、大の大人でありながら憚る事無く失禁していた。

そして率直に言えば、私は呆然としていた。
我が事ながら無理もないだろうと思う。
誰が想像し、また理解出来るだろうか。

善悪入り乱れた争いの最中に忍び込み、僅かとは言えブラックダイヤモンドを盗み出した。
その男が股間を濡らし足元から怖気の走るような臭気と湯気を上げているなどと。
図らずとも顔の部品が余す事無く引きつっているのが分かるわ。色々と異常過ぎるもの、コイツ。

私の思考が現実に遅れをとっている間に、新たな警備員達が駆けつけ、あのコソ泥は逃走してしまった。
十分に脅しは利いたと思うけど、どうにも私の溜飲は下がらないままでいる。
ひとまず私の苛立ちを随分と増長させてくれる、この鬱陶しい有象無象達を蹴散らしましょうか。

>「よせ、その子は泥棒じゃ…ぁない。」

だけど不意に、有象無象の包囲の外から声が聞こえた。
訪れた男は有無を言わせず警備員達を立ち退かせると、辺りに転がった死に体達を一々止血して回る。
でも甘いわね。暗くて顔は見えないけど服装を見るにそこそこのお偉いさん。
どうにも脳みそが生温い思考をしているみたい。

人はパンや理屈だけで動くものじゃないの。
同僚を死の淵にまで追いやられて、はいそうですかと引き下がるような連中はここにはいない。
命を懸けて職務を果たす彼らであれば、結託の念はより深い。

だったらどうするのか。
簡単だわ。今彼らを支配しているのは怒り。
それを他の感情で、塗り潰してあげればいいの。

タキシードの登場に紛れて、一人の警備員が私に銃口を差し向ける。
つまり、一人目は貴方に決まり。
銃を持ち今にも引き金を引こうとしていたその手が、前腕の中頃からぽろりと落っこちた。

一拍の間を置いて、悲鳴が上がる。
困惑と激痛を訴える泣き声を皮切りとして、新たに二人の警備員が銃を抜いた。
結果は同じ、二人の腕はそれぞれ手首と肘の位置で切断されて闇色の芝生の上に転がったわ。

219 名前:秤乃暗楽 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/01/30(土) 03:53:35 0
「ひィ……!」

凄絶な惨劇に気圧されたのか、一人が後退りする。
瞬間、足首から下が彼から血の涙を流しながら泣き別れした。
体勢を崩した彼は重力に後ろ髪を掴まれ倒れ込む。
そしてその背が芝生に達するまでに、更に脚の根元と胴体を深く切り裂かれて絶命を果たした。

最早その場の誰もが、動かなかった。
止血をしていたタキシードの男も、私を剣呑とした視線で射抜いて不動の姿勢を取っている。

「ねえ、貴方達もこんな風になりたいかしら?」

誰も答えない。誰も動かない。怒りの表情は何処へやら、警備員達は恐怖に支配されていた。
さっきのお漏らし男のせいで苛立ちに巣食われていた胸の内が、ほんの少しだけどすっと空いた気がする。
目元と唇が享楽に支配されて、細く欠けた月みたいな曲線を描いている。

「だったら跪いて、そこでじっとしてなさい」

やっぱり誰も応えない。誰も動かない。

「出来ないの……?」

問い掛けると同時に、表情を支配していた笑みを根こそぎ蹴散らした。
後に残るのはいつもの顔。私のお気に入りの、氷なんかよりずっと冷たい無情の仮面。
警備員達はわなわなと恐怖に震え、無明の闇しかない周囲を慎重に、臆病に見回した。

勿論、宵闇に紛れた夜色の刃を見付ける事なんて出来っこない。
水中で水の刃を見つけられるかと言われたら、誰もが首を横に振るに違いないもの。

どこにも逃げ場を失った彼らは一頻り震えて呼吸を荒げた後――ままよと言わんばかりに勢いよく、その場に蹲った。

「……よく出来ました」

従順な犬ならば、首を跳ねる必要はない。
それはヒーローもヴィランも同じ。

「あ……う……ああぁああああああああああああああああああ!!」

愉しげな嗜虐感を噛み締めていた不意を突いて、慟哭のような咆哮が私の鼓膜を揺さぶった。
声の主は光。聞き間違えようがない。
何があったのかと視線を向けると、光の背後には『ヒーロー』が一人、死に瀕した様相で転がっていた。

220 名前:秤乃暗楽 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/01/30(土) 03:54:19 0
見るに、アレは雷羽の仕業みたいね。
悪の研究者が如何にナンセンスな感性をしているのか証明してくれそうなアーマーだったけど、中々どうして性能はいいみたい。
後ろには戦闘員が三人に……あの坊主頭は誰かしら? 今まで見なかったし、招いた覚えもない。
もっとも急に点灯されたライトの逆光で、細かい顔の造形までは見えないけど。
あのお漏らしと同じく個人での、私達が把握し切れていない『ヴィラン』かしら。

ふと視線を逸らした隙に光は戦闘員三人を散らし、挙句には雷羽までもを殴り飛ばしてしまった。
完全に理性が飛んじゃってるわね。痛めつけてもいいとは言ったけど、あのままじゃ殺しかねないわ。
やむを得ず光を追い、窓とカーテンに代わって屋敷の内装を隠している砂煙に飛び込んでいく。

「少し頭を冷やしなさい」

裁きの槌を振り上げる光の眼前にまで顔を近づけて、そっと囁いた。
一瞬だけど、光の体が静止する。
ちょっと痛いけど我慢しなさいよ、光。

無表情に徹しきれず僅かに顔を顰めて、それでも私は光を強かに殴り付けた。
漆黒の槌が光を捉え、重い手応えを残してあの子を弾き飛ばす。

「さて……随分と無様を晒してるみたいね、悪の怪人さん」

壁にもう一つ穴が開いて、粉塵の向こう側へと見えなくなった光に向けていた視線を、私は部屋の中へと戻す。
暗闇に溶け込むような黒い鎧が、よろけながらも瓦礫を押し退け立ち上がっていた。
……何だか知らないけど呆然としてるみたい。

「……どうしたの? まさか、あの子と私を見間違えたとか言わないわよね?」

ぎくり、と心の声が聞こえてきそうなまでに、雷羽が動揺の仕草を見せた。
何ともまあ、実はコイツの脳みそはワンちゃん並みなんじゃないかしら。
色の判別が付かないのね、きっと。

「やめて頂戴な。あんな奴と一緒だなんて」

感情を取り払って、険悪さを際立たせて言葉を紡ぐ。
表向き、私は『ヴィラン』であり光は『ヒーロー』なのだ。
私達はあくまで敵対関係を装わなくてはならない。

「それにしても、こっ酷くやられたわね。上には上がいるとは言うけど、幾らなんでも……ねえ」

221 名前:秤乃暗楽 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/01/30(土) 03:59:02 0
今にも暴れ出さんばかりに拳が握られたが、振るわれる事はついぞ無い。
私が言っている事は純然たる真実であり、その手前で暴れた所で自身に圧し掛かる屈辱が増長するだけだもの。
犬と同程度の脳みそをしているせいか、そう言う感覚的な事には随分と聡いのかしら。

「で……貴方これからどうしたい? 部下を散らされて、自分もそんなにされて、まさか泣き寝入りするつもりじゃないでしょう?」

口元に開いた手を押し当てて、大仰に驚き煽ってみせる。

「貴方さえ良ければ……『アレ』着てみない?」

私の白く細い指が指し示す部屋の奥では、ガラスケースの棺に一対の鎧が暗闇に紛れて眠っていた。

「アレは『アイアンメイデン』のプロトタイプ、とは言えこれは『試作』じゃないの。
 出力や内蔵兵器が強力過ぎる余り人間では着用に耐えられなくて、
 あの女社長の気まぐれでこうしてインテリアとして扱われるだけとなった、つまり『失敗作』」

目線を鎧から雷羽に戻して、私はまたも彼を挑発するように言葉を紡ぐ。

「名前はそれぞれ『アダム』と『イヴ』。貴方に原罪の重みが耐えられるかしら?」

とは言え。
ここまで煽っておいて何だが、別に雷羽が『アダム』を着なかったとしても、
それはそれで問題なかったりするのよね。
なにくそ、俺はそんなモン無しでも強くなってみせらあと、奮起してくれるならば。

過程や方法はどうでもいいの。
悪が巨悪へと成長して、最終的に『ヒーロー』の糧となってくれれば、ね。

222 名前:秤乃光 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/01/30(土) 04:07:19 0
暗楽に殴り飛ばされ、光は裏口近くに位置する別館の壁を突き破った。
瓦礫と粉塵に包まれて、彼女は頭を振りながら倒れた上体を起こす。
埃が入った目を擦りながら顔を上げるとそこには、


>「…もらしてしまったぞ。漏らして…」


うわ言のような言葉を零しながら恍惚と一物を握る、赤穂がいた。
悪夢のような光景に、光が凍り付く。

「や……や……いやああああああああああああああああああああああああ!」

顔を耳まで真紅に染めて目を瞑り、反射的に彼女の足が蹴り上げられる。
遠慮も加減も知らない蹴撃が赤穂の陰茎を見事に捉え、赤穂は声にならぬ叫びを上げて転倒した。
けれども死の淵に立たされたかのように震えながらも、彼の男根はそそり立つその角度をより急にする。
更に赤穂はまどろみと陶酔の表情さえ浮かべていた。

「へっ……変態! 変態だよお! 近寄らないで! こっち来ないでぇ!」

蹲りながらも芋虫よろしく光へと擦り寄る赤穂に、彼女は何度も蹴りを放つ。
しかし赤穂は止まる事無く、寧ろ蹴り足を突っぱねるようにして段々と彼女との距離を詰めつつあった。
光の内に潜む警鐘が、引っ切り無しに警告を打ち鳴らす。

「やだやだ! やだあ! こっち来ないでよぉ!」

彼女は異質極まる恐怖を受け目尻に涙を浮かべながら、すぐさま身を翻しこの異質な空間から逃げ出した。

223 名前:本舘 ◆SGue2uUfkw [sage] 投稿日:2010/01/30(土) 12:14:35 O
>>209僕が動けないでいると、目の前に見た事のない長身の男が寄り添ってくる。
>「危なっかしいな……。ま、若いときは買ってでも何かを憎むもんだ。しかしあんたじゃ足りねえ」
何を言っているんだ…?
憎しみが足りない?
…駄目だ、血が出過ぎたせいか全然頭が回らない。
………僕の人生もここまでか…まあ良いさ…普通の人間よりちょっとは充実した人生だった。>>217>「あ……う……ああぁああああああああああああああああああ!!」
…おい!?ちょっと待て!
僕は確かに「逃げろ」と言った筈だ!
なのに何故彼女は雷羽の方に向かっている!
僕より強いと言っても、今の雷羽には…!!?
「つ…強い。…強…すぎる…。」
あまりの強さに思わず口が動いてしまった。
そして気が付く、自分の体の傷が多少癒えている事に。
何とか立つことは出来そうだ。
僕は壁を背に何とか立ち上がる。
>>220再び雷羽達が居た所に目をやるとそこに居たのは…あの少女によく似た少女…。
外見こそよく似ているが、放つ雰囲気は正反対だ。
…双子か…?
というより、白い方はどこに行った?
>「さて……随分と無様を晒してるみたいね、悪の怪人さん」
少女の呼び掛けに答えるように瓦礫の中から雷羽が現れる。
かなりマズイ状況だな…雷羽とあの黒い方はグルだと考えて間違いないだろう。
向こうは強者2人…こっちは重傷者が1人…。
カードを使ってもどうにかなる状況じゃない。
かと言って、このボロボロの体じゃ逃げる事も出来ないだろうし…。
僕は潔く全てを諦め、変身を解除した。
そして何やら会話中の雷羽と黒い方に話かける。
「話してるとこ…悪いが……殺るなら…さっさと殺って…くれないか…?」

224 名前:星 真一 ◆fSS4JmCGEk [sage] 投稿日:2010/01/30(土) 16:45:11 0
>「何用かしら、わざわざそんなステルスまでして尾行だなんて」
俺が付けている居る事がバレたのか!?ありえねぇぞ、コイツ魔術師か?
>「しかし、随分高性能なステルスね。完全に背景に溶け込めて、尚且つ音が一切しないしないんだから
 正直、こんな狭い空間に入らなかったら分からなかったわ

 目と耳は欺けても鼻だけはごまかせなかったみたいね
 とっても硝煙臭いのよアナタッ!!!」
と俺の大事な部分を蹴りやがった。
尋常じゃない痛みにのたうち回りながら、声を出さないように必死で頑張る。
>「どうやら大事な所に当たったみたいね

 油断するからそうなるのよ
 そうそう、ついでに言わせてもらうとX線透過とサーモグラフでもアナタの姿は確認できるわ
 だから、そうやってタカをくくっていると…」
スゲェな科学の力って…かなり強い魔術師が居ないと思って手抜きしてたが思わぬ落とし穴があったぜ…
>「眉間に穴があくことになるわよ!!!」
と銃を取り出してくる。
そんな物で撃たれても効かないし、怪我すらもしないが正直抜かったと思う。
油断から来た慢心だった
本気を出しておけばよかったと心の底から思いつつも、降参すべきだと思い
同化迷彩を解除して姿を現す。
「俺の負けだよ、まさか硝煙で気づくとはね…
 こりゃ油断した俺が悪いな今度から本気を出す事とするよ」
と素直な敗北を認め、そして謝罪と訂正を加える。
「美しいお嬢さんの後を付ける真似とプライベートを覗き見るような事をして悪かったよ
 謝るぜ、けど世界の危機にはそうも言ってられないんだ」
とここで自己紹介をする
「普通の人には無垢なる刃に選ばれし者と名乗るがお互いヒーローだから本名を名乗るぜ
 俺は星 真一、探偵事務所を営んでる探偵だ」
とここで名刺を渡したかったがそんな物は今はどうでもいい。
「ここでなぜこんな事をしたのかをあんたに話さなきゃいけない
 これを信じるか信じないかはアンタ次第だ出来れば信じてくれると助かる」
少し切羽詰った表情で告げてみる一刻も時間が惜しいからだ。
「アンタが持っているあの黒いダイヤモンドなんだが、詳しい事は省くが
 どうやら人類創造以前から存在する邪悪な超存在に関わる可能性の物が高い。
俺はそれを処分しに来た」
細かい部分は省いたが、大部分の真実を告げた。
「それでトリッシュ、君の協力が必要だ本来は俺一人でやろうと思っていたが
 そうも言ってられない、頼むぜこの世界の危機が掛かっているかも知れないんだ」
殺された教授の助手や彼女のためにも俺は成し遂げられなければならない
そういった思いでトリッシュを見て、協力を求めた。

225 名前:赤穂朗氏 ◆y6ZFeIPasDPg [sage] 投稿日:2010/01/30(土) 17:02:58 0
>>222
「ふふ…逃げなくていいじゃ〜ないか。」

這いずりながら赤穂朗氏はビッグスマイルを浮かべ光へ迫る。
一物は硬直し、光を放っている。
懐に在った筈の鉱石が赤く輝きながら赤穂の”それ”を包む。

「フ…フォオオオオオオオオオオオオ!!!」

赤穂の体から衣服が吹き飛び、トイレそのものをも吹き飛ばした。
爆心地から現れたのは全裸の赤穂。
そして、光の眼前に音もなく現れ彼女の両股をしっかりと掴むと
その太ももを嘗め回した。

「僕はね、女の子の太ももを見ると堪らなく興奮するんだぁ……
あれは5歳の夏だった。初めて石の力で女の子をこうして殺したっけなぁ……

ごめんね、つい、”ハイ”になって喋ってしまったよ。
今、私は最高にハイな気分だ……さぁいこぉうに……最高に!!」


赤穂の背後に逞しい体の兎のバケモノが出現する。
それは光に絶望を齎す異形の怪物。

「さぁ、どうやって死にたい?」

226 名前:旋風院 雷羽 ◇zYCuy2/gkI[sage] 投稿日:2010/01/31(日) 01:01:35 0
敵が複数いる場合、まずは弱者を狙う。
それは、悪(ヴィラン)としては当然の事であり、弱者を守るという
多くのヒーローが持っている性質を上手く利用した戦略の一つである。
しかしながら、この時の雷羽はそこまで深くは考えていなかった。
最後に自分に砂をかけたのが目の前の少女であると認識したから。
それだけの理由で雷羽はその拳を少女に向け――――その結果、それはセオリーに
従い、雷羽の予測の範疇の外で効果を発揮した。
雷羽の視線に入ったのは、肉にめり込む自身の黒い拳。
そして、伝わってくる骨を砕く感触。
文字通り人を殺せる雷羽の拳が、少女を庇う為に射線に割り込んで来た本館を捉えたのである。

慣性の法則に従いそのまま壁に叩きつけられた本館を見て、
雷羽は自身の予測と異なった結果にに、内心で一瞬怪訝な表情を見せたが、
直ぐにいつもの偉そうな態度に戻り言い放つ。

「……ハン!バカめ!そんなガキを守ってこの俺様の拳を喰らうとはな!
 ほんのちょっぴり俺様の予測とはずれたが……これで貴様らは終わりだぜ!!
 行くぞ戦闘員共!残った糞ガキをボッコボコにぶち殺してして石ころを回収だ!!」

そうして、雷羽が部下の戦闘員共々何やら話している本館と少女の下に歩いていこうと
すると、突如話しかけてくる声があった。見ればそこにいたのは謎のスキンヘッドの男。
――――この時、この時余裕をこいてスキンヘッドの男の問いに答えてなどいなければ、
或いは回避行動なり何なりを取れていた可能性もあったかもしれない。

「あん? ハゲ、このカッコいい旋風院雷羽様がヒーローなんかの筈がねーだろっ!!
 後、悪(ヴィラン)の俺様がヒーローの事なんぞ知る―――――な、がはっ!!?」

雷羽が風が自身の横を過ぎ去ったのを感じた直後、
振り返った雷羽が見たのは、マシンガンでの抵抗も虚しく先程の少女に
切られ、刺されていく自身の部下たる戦闘員の姿。そして、自身に振り下ろされる巨大な光槌。
とっさに腕を交差する事でダメージを抑えようとする雷羽だったが、
光槌はそんな雷羽をあざ笑うかのように吹き飛ばし、壁に叩きつけた。

227 名前:旋風院 雷羽 ◇zYCuy2/gkI[sage] 投稿日:2010/01/31(日) 01:11:19 0
全ては一瞬の出来事。そして、自身の直撃により崩れた壁の瓦礫を払いながら
立ち上がろうとした雷羽の目に再び映りこんだのは、止めを刺さんと再び光槌を
振り下ろす少女の姿――――そして、そんな少女を殴り飛ばした同じ顔をした少女だった。
何が起きたのか把握できていない雷羽に、少女は事実の積み重ねという名の罵倒を重ね、
雷羽に状況の把握を強制する。

曰く、自身がぶん殴りたかった相手は、この目の前の黒い方の少女だという事。

曰く、今の改造人間にして悪の幹部たる雷羽の能力を持ってしても今の段階では
   白い方の糞ガキに勝てないであろうという事。

曰く――――旋風院雷羽が、コケにされたという事。

「……ぬ、がああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!
 許さねぇ!!絶対絶対絶対ずぇぇぇーったいに許さねぇ!!!!
 貴様ら、全員この俺様が内臓をジュースみてぇにしてぶち殺してやるっ!!!!」

そうして、状況を把握した雷羽は吼えた。
自身に装備されている転送装置を起動させた後『説明しよう!雷羽の所属するヴィランでは、
幹部が直属の戦闘員を使い捨てにするか治して使うか選ぶ事が出来るのだ!! 雷羽は治して
使う派なので、負傷した戦闘員をヴィラン本部の医療部に強制転送する機能を持っており、
それを起動させたのである!』まだダメージの残る体に憤怒という名の燃料を注入し、立ち上がった。
先の魔法じみた攻撃を受け尚立ち上がれるというのは、腐っても雷羽が悪の幹部であり、
その能力の高さを見せ付ける物であるのだが、そんな物は今の雷羽にとって意味が無かった。
力が、先程雷羽を攻撃した白い少女を、目の前で偉そうにしているヴィランっぽい少女を
完膚無きまでにボコボコに出来る程の力が雷羽には必要だった。
そんな雷羽の耳に、雷羽がボコボコにすると決めた対象の一人から誘惑の言葉が入ってくる。
それは、二対の強化装甲の話。

――――そんな話を聞いて、今の脳みそが沸騰している状態の雷羽が
飛びつかない理由があろうか?いや、無い。旋風院雷羽はヒーローではないのだから。
従うべきと刷り込まれたボスの為、或いは自身の一時の感情の為に、
そこに使える物があるならば雷羽は何だって使う。必要ならば、怒りの矛先である
相手から受けた指摘でさえ利用する。美学やら何やらは、強さの次にあればそれでいい。

「……おい、黒い糞ガキ! 覚えてやがれ!貴様も、この旋風院雷羽様の
 復讐リストに加入したからなっ!!」

雷羽は黒い方の少女を(内心で)睨み付けた後、先程光槌で殴られヒビが入った右腕を押さえながら
ショーケースに近づいて行く。……と、その途中で、先程雷羽の渾身の拳を受けたにも関わらず、
立ち上がる事に成功した本館が、変身を解いた状態で止めを刺せと語りかけてきた。
だが、雷羽はそんな本館を一瞥すると

「うるせぇ!!俺様は今超超超超超超超ムカついてんだっ!!
 貴様みてぇに、糞ガキを庇ってぶっ飛ばされた上に、諦めの早い雑魚なんかに
 構ってやる暇はねーんだよ!!」

それだけ言って、本館を無視し、再びショーケースに視線を戻し歩きだした。
この時雷羽自身は気付いていなかったが、雷羽は本館を今までの様に「ヒーロー」ではなく
「雑魚」と呼んだ。それは、本館の言動に意識以外の部分で感じる物があったのかもしれない。

228 名前:旋風院 雷羽 ◇zYCuy2/gkI[sage] 投稿日:2010/01/31(日) 01:12:03 0
……そして、そして雷羽はとうとうショーケースに辿り着く。
左腕を振りかざし、生半可な銃弾なら余裕で受け止める強化ガラスを易々と殴り砕き、
中にあった『アダム』に触れる。触れてしまった。

「……ん? なにっ!?な、何だぁっ、これはっ!!!」

それは一瞬の出来事だった。
まるで変身する時の様に、雷羽とアダムを黒い霧が覆い――――

『アダム』と『ダークメイル』の融合が、始まったのである。

まるで最初からそうする為の機能が雷羽にあったかのように。
この事態を見越していたかの様に。或いは、そうする様に作られていたかの様に。

或いは、これはゴスロリの少女達でも予測出来ていなかったかもしれない。
そうして、表の科学の最先端と、裏の科学の最先端は融合し……

「……あ、ばば、ば」

黒い霧が晴れた後には、変身が解け、感電でもしたかのように、目を回し、
ぶっ倒れた痙攣している情けない雷羽と、『アダム』の消えたショーケースがあった。





……この時、黒い霧が雷羽を覆った時、雷羽を見ていた人物がいれば
その人物はほんの一瞬だけソレを目撃した筈だ。
黒い金属の鎧に、幾上かの白銀の線が混ざった。堕ちたヒーローの様な、“何か”を。

229 名前:真性 ◆8SWM8niap6 [sage] 投稿日:2010/01/31(日) 02:50:12 0
麗源新貴と名乗った恩人は、無骨で露骨な『審判』の二文字だけが書かれたカードを突きつけて、俺の誘致した作戦への加入を快諾してくれた。
どうやら言葉だけでなくカードでも意志表示をする心得を所持しているらしい麗源はその胡散臭さを余すと来なく発揮して自分を語る。出血大サービスだ。

「そりゃありがてェ、よろしく頼むぜ麗源氏。そのカード……タロットって奴か、俺も役柄だけなら知ってる。
 額面の意味とかはよく知らねえけど、名前のイメージだけで言うなら俺はさしずめ『吊られた男』って感じだ。主に真綿で締められてる的な意味でな!」

……ありゃ、スベったか。両者間の緊張を解きほぐす的な狙いでカマしてみたんだけどな。タロットのオーソリティからしてみりゃ失言だったのかも。
気を取り直して作戦会議に入る。麗源は参謀任務を俺に一任する旨を明言していたからここは頭脳の揮いどころだ。こう見えて俺は偏差値が半分を
切ったことが無いという天才的頭脳をお持ちなので問題ない。ついでに要求された生年月日と血液型も大放出だ。俺のファンにでもなるつもりなんだろか。

「えっとだな、ご存知の通りスティール邸は厳戒態勢、向こうは発砲も辞さない武闘派連中が大挙してダイヤを護ってるって構図だ……ちょっと待ってろ」

内面図を記した手帳を広げ、手を翳して異能を発動する。邸内地図を構成する黒の線が浮き上がり、三次元的な陰影を得ていく。
まさに飛び出す絵本の如く地図の隆起は完了し、みるみるうちに俺の掌上にスティール邸の精緻な立体模型が完成した。

「俺の能力を一部だけ大公開だ。克目しろよ?もちろん異能の全部は見せねえ。それがドライに行こうっていうアンタに対する俺の誠意だ」

立体図に向かって指を振り、事前の調査で得た武装警備員の割り当て位置をポイント。ただこれに関しては侵入騒ぎで変更されてるかもってのがネックだ。
中央のダイヤまでの理想的なルートは屋敷方面から迂回して辿り着く道だが邸内には監視システムが十重二十重、忍び込むってのは現実的じゃないだろう。

「ってなわけで現状を鑑みるにどこから侵入しても発見されるのは時間の問題、囲まれてアウツ……!特にサーチライトが生きてるってのがマズい」

このサーチライトというのが曲者で、邸内を隈なく照らせる上に自動で狙撃・撮影する機能まである。仮にダイヤを無事盗みおおせても、
布一枚程度なら軽々透過する分析機付きの監視カメラで顔でも撮られようものならその日からもう娑婆には戻れないだろう。アフターケアってのが以外に肝要。
公開報道されれば街中の衆目全てが追っ手になり、大金を得ても使うことすらままならない。スマートに盗るってのはこういうことにも気を使わなきゃなのだ。

「だからまずこのサーチライトを潰す。ライトは邸内の東西端に二機仕掛けられててその両方に数人体制で武装警備員がついてるから、これも無力化したい」

立体図の両端に赤の光を灯す。俺が侵入した当初は停電のおかげでサーチライトのシステムもダウンしていたが今度はそうもいかない。
非常用の独立電源に切り替えてるだろうし、最初に忍び込んだ時より警備も厳重になってるだろう。向こうも血眼だ。

「ライトを破壊するか停めるかしたら俺がもう一度停電を起こす。これに限っちゃあんまり効果は望めねえけど邸内の明かりを落とすことぐらいはできるはずだ。
 あとは庭に降り立って、武装警備員を倒すなり躱すなりして最短距離でダイヤを目指すぞ。で、脱出方法だけど……こっちの地図を見てくれ」

バックパックから市販の地図を取り出す。この街の25万分の一市街図だ。最初の侵入前にコンビニで買っといたものである。

「この街の未来都市計画は知ってるか?近いうちに電線とかを取っ払っちまって地下架線にしようってプロジェクトらしいんだけどよ、
 水道とかガスとかのライフライン、それから洪水時の排水も兼ねて地下にぶっといパイプを通してそこに纏めちまおうって話があるんだ。
 いわゆる『地下共同講』って呼ばれるラインだな。地下鉄よりも浅い地下に電線とかガス管とかまとめて通すっていう、でかい都市ならそう珍しくも無い話だ」

この都市計画に、スティールインダストリアルが社会貢献事業の一環として多大な援助をしているとニュースでやってるのを小耳に挟んだ。
なんでも、資金の代わりに都市に横たわる自身の屋敷の土地、その地下の一部を共同講のために開放したとかなんとか。つまり、

「異能で調べたらビンゴだったぜェ。邸庭のド真ん中、丁度ショーケースの下。ブチ抜けるぐらい浅い地下にこの共同講が埋まってる。――脱出する時は、下からだ」

地面を指差して、俺はニヤリと笑みを放った。

230 名前:真性 ◆8SWM8niap6 [sage] 投稿日:2010/01/31(日) 03:55:12 0
俺の能力『フラスコの中の神様《パラダイムボトル》』は万能だけど代わりに自走性能がアホみたいに貧弱で脆弱だ。
そもそも"神様"は何か物体に浸透(憑依とも言う)させないとその効果を発揮せず、憑依させても依り代の物理法則に縛られる。
何にも憑依させないナマの状態の"神様"はシャボン玉より遅い念動と形が自在に変わる程度で、俺は警棒に捲き付かせたりすることでその野暮ったさを回避していた。
もしも俺の手を離れた状態で動かすなら、空気や紙に憑依させて風に乗せるか『水人形』のように足を作って自分で歩かせるかしかないのである。
遠隔で使うにはあまりに運用し難いけれど、掌の上だけでなら全能で万能な異能。俺の"神様"は、そういう能力なのだ。

「耳塞いで口開けれ。鼓膜破れるぞ――爆破すっから」

俺達は再びスティール邸の前を訪れていた。ここは高い生垣と塀に囲まれた邸宅の東端、前向き斜め上を見れば、巨大なサーチライトが旋回運動に励んでいた。
ひんやりと夜露を含む強化コンクリの壁に指を吸い付かせる。離すと指跡の変わりに極彩色の燐光が白紙に落とした墨摘のように染み付いた。
壁から人が通れるほどの正方形を切り取るように指で極彩色の輪郭を引いていく――浸透した"神様"が丁度500mlを尽いたところで幾何学な落書きは完成した。

「<パラダイムボトル>――形状『粘質爆弾《C4》』!」

俺も壁から充分に離れると、鼓膜を保護しつつ、"神様"に『起爆』の指令を送る。壁の内部まで浸透させて爆破した為か、くぐもった轟声を挙げてコンクリの城壁は
四角形の風穴をその横腹にぶち開けた。巻き起こる粉塵は暫しではあるが突入する俺達をサーチライトの光から隠してくれることだろう。

「さあ行くぜ!この泥濘みたいな世の中と、未来を邪魔する不埒な壁に――俺達で風穴を穿とうッ!!」

よっしゃ、麗源と出会ったときから温めてたカッコ良いキメ台詞を噛まずに言い切った!本望だ!テンション上がりまくった俺は先陣を切って粉塵へ飛び込む。
韻もバッチリだ。もう自分を鼓舞しまくりなのだ。だって恐いんだもん!

「な、なんだぁ!?」「壁が爆発したぞ!エマージェンシー!!」「この糞忙しいときに……次から次へとよくもまあ!」

警備員達の恐声が煙幕の向こうで飛び交う。この忙しい時に?警備員が忙しくなると言ったら一つしかない。
その答えは、麗源を伴なってサーチライトの死角に位置する高台、ライト操作用の作業バルコニーへの階段を上りきった直後に網膜へと飛び込んできた。
このままサーチライトの懐まで走って警備員とバトり、どさくさに紛れて破壊する手筈だったのが、俺はついつい足を止めてあんぐりする。

「な、なんだよこりゃ――!!」

邸内は戦場になっていた。ところどころで火の手が上がり、血と硝煙の臭いに銃声と悲鳴の狂騒が見下ろす園庭の各所で展開されていた。
屋敷の一部は半壊し、トイレと思しき施設が外に露出している。警備員が死屍累々に、その傍で同じく倒れる私服の男、それを傍観するスキンヘッド。
とりわけ目を引くのは剣山を頭皮に接着したような黒衣の男、それと対峙するのはこれまた黒衣の少女――って、黒ゴスじゃねえか!?
あいつ来てたのかよ!あれか?俺が敗走したのも筒抜けだってことか?やっべ、ぼやきとかも全部聞かれてる可能性大じゃん。って現実逃避してる場合じゃねえ!

「――予想外だがむしろこっちの警備が手薄になって都合がいい!ついてるぜ、ついてるぜ俺ェ!続け麗源氏ッ!!」

既に精神がイケイケ状態な俺は最早構わず突進する。前方にはサーチライトを護る四名の武装警備員。俺は左端の一人に、強化された脚力でもって詰め寄る。
だけど相手も馬鹿じゃない。すばやく自動小銃を構え、警告なしにバラ撒いてきた。落ち着け、弾筋は見えるんだから極論、躱してこの銃弾は当たらない。
膝の沈み込みと発生するバネによって火線を潜り、掌に"神様"を現出。肉迫の勢いで掌底を警備員の鳩尾に叩き込み、"神様"を防弾プレートの奥に浸透させる。

「シビれろ!」

『感電』。真っ黒ずくめの装甲服の内部からバチバチと鋭い音が漏れ、紫電が網膜に残影を残す。左端の一人はぐえ、と断末魔を上げて泡吹き蟹になりながら昏倒した。
勝利の余韻に浸ってる暇はなく、他の警備員からの迎撃を恐れて俺はダッシュでサーチライトの制御盤の後ろへと転がり込んだ。これでとりあえずはセーフ。

「やるじゃん俺――!!」

あと三人ぐらい残ってるけど麗源頼んだぜ!俺ちゃんはもう無理っす!


【邸宅内に再び突入。サーチライトを破壊する為に監視台へ】

231 名前:秤乃光 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/02/02(火) 19:47:08 0
>「ふふ…逃げなくてもいいじゃ〜ないか。」

変態の間延びした声は、まだ後ろから聞こえる。
いっそ悪夢であればどれだけ幸いか分からない状況において、それだけが光の唯一の救いだった。
けれども、彼女の安堵はすぐに潰える事となる。
盛りの付いた雄犬さえも凌駕する変態性を秘めた雄叫びが、光を背後から突き刺した。

「ひゃっ!? やだ、やだぁ……!」

思わず身体が竦み、彼女は足を縺れさせる。
転びかけながらも何とか体勢を立て直したものの、彼女にとってそれは僥倖でも何でも無かった。
地面に向いた顔を上げると光の眼前には、全裸で股間を紅く輝かせた、満面の笑顔を湛える変態がいた。

「……っ! いや……やめて! 放してぇ!」

しかと両股を掴まれて、更には舌の生温い粘着いた感触にいよいよ光は半狂乱となり喚き、かぶりを振る。

>「僕はね、女の子の太ももを見ると堪らなく興奮するんだぁ……
> あれは5歳の夏だった。初めて石の力で女の子をこうして殺したっけなぁ……」


変態が浮ついた口調で、愉悦に濡れた唇から胡乱な独白を零す。
言葉を終えると再び、変態は欲情に塗れた舌を、月光を透かすような白さの太ももへと戻した。
まるで此処こそが元々あるべき場所なのだと言わんばかりに、変態は澱みなく光のドレスに頭を突っ込んでいる。
既に光は絶句し、思考停止に陥り抵抗らしい抵抗も出来ずにいた。
ここぞとばかりに変態は満遍なく、間違っても舐め残しの無いように舌の面をつつと這わせ、最後に舌先で余韻を舐め上げる。
純とした白は変態の劣情を受けて尚も穢れる事無く、故に変態の劣情は留まらない。
溶ける事も飽く事も無い砂糖菓子のように、ひたすらに直向に光の太ももを舐め続けた。
やがて変態の唾液によって、光の股は奇しくも艶やかな光沢を得る。
その様を見て、変態は倒錯した心臓の高鳴りを覚え、尚更に下劣な欲望を加速させた。
かくして呼吸を忘れた変態の荒げた鼻息が光の恐怖を煽り震わせ、押し殺した悲鳴が彼女の口端から零れ落ちる。
それが絶妙な香辛料となり変態は更に一物を奮起させた。


>「ごめんね、つい”ハイ”になって喋ってしまったよ。
> 今、私は最高にハイな気分だ……さぁいこぉうに……最高に!!

たっぷりと光の太股を堪能すると、漸く変態は彼女のドレスから頭を出す。
だが相変わらず彼の表情は恍惚に支配され陶酔し切っていた。
しかし次に紡がれた声は、これまでの様子からは想像出来ない程に冷酷なものだった。

>「さあ、どうやって死にたい?」

異形の兎が彼の背後に現れる。
光を救ったのは、寝起きに冷水を掛けられたかのような殺意の落差と、もう一つ。
何処からともなく彼女の耳孔に滑り込んだ、昆虫の羽ばたきを思わせる場違いな音だった。

232 名前:秤乃光 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/02/02(火) 19:48:04 0
赤い切れ目から伸びた魔手を、光は紙一重で背後に飛び退き回避する。
寸暇を置かずワンドに再び刃を描き、変態目掛け猛然と横薙ぎに振るう。
だが刃の描く軌跡の上に、変態は既にいなかった。

ほんの半歩の距離が足りず、月光の刃は闇夜のみを切り裂く。
続け様に繰り出した追撃も同じく、変態の体を捉える事は無かった。

「っ、なんで? なんで当たらないの……?」

ほんの一時ではあるが鳴りを潜めていた恐怖が、再び鎌首を擡げ始める。
足首を蛇の如く這い上がってくる感情を振り払うべく、光は刃を色に戻し、変態を取り囲う無数の光弾を描き上げた。
神速を以って四方八方から迫る月光の弾丸。
されど結果は同じ。紙一重の隔たりによって、月明かりの道筋は変態を外れていた。

「当たって……! 当たってよぉ!」

途端に、光の語調と息が荒く乱れた。
変態の発する夥しい変態性に触れて刻まれたトラウマが、このままでは再来を果たしてしまう。
脅迫めいた未来が確固とした足音を立てて彼女に歩み寄る。
少なくとも変態が如何様にして光の攻めを往なしているのか。
その種を見極めない事には、彼女が再び変態の毒牙の餌食とされるのは、時間の問題だ。

とは言え今の光に深く思案の海に身を委ねる程の余裕がある訳もなく。
彼女は尚も変態の接近を拒むべく、手数に任せた弾幕を展開する。

しかし直後に一つ、不可思議な現象が起こった。

彼女が月光を具材として今まさに、不可解極まる精緻の弾幕を描こうとした瞬間。
月明かりの礫が通るであろう領域から、既に変態は離脱していたのだ。

奇々怪々たる違和感に、光は一握ではあるが冷静さを取り戻す。

何故、変態は攻撃が繰り出される前から回避行動を取れたのか。
紆余曲折の思考を経て、彼女は一つの結論を得る。

即ち、眼前で不敵に立ち聳える変態には『未来予知』の能力があると。

233 名前:秤乃光 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/02/02(火) 19:51:13 0
ならばと、光は一計を案じた。
理解が及べば、抱いていた恐怖は格段に緩和される。
小鹿の如く震えていた脚も今やしかと芝を捉え、動きは精彩を取り戻していた。
彼女は軽く地面蹴る。

そのまま重力の手から逃れ夜空へ舞い上がると、月輪を背に変態を穿つべく流星を描く。
けれども変態はその全てを回避してのけた。
だが最早恐怖はない。構わず彼女は攻撃を続ける。

「……変態さんには、未来が見えてるんだよね」

返事は返ってこない。沈黙に秘められた意味は肯定か否定か。

「たぶん、そろそろ見える頃。……見えても、もう遅いんだけどね」

最後に歳相応の悪戯さを孕ませて、光はワンドを緩やかに振り上げた。
刹那、芝生を抉り地に打ち込まれていた弾丸が、変態を取り囲う光柱と姿を変えて打ち上がる。
変態の遠方から姿を現したそれらは徐々に徐々に、彼への距離を縮めていく。

変態に未来が見えている以上、遥か彼方から狙撃をしようが、光速を以って肉薄しようが、彼を捉える事は叶わない。
従って光は『見えてからでは回避の間に合わない』状況を、自らのワンドで描き上げたのだ。

「じゃあね、変態さん! もうあんな事しちゃ駄目だよっ!」

疾うに恐怖に足らないと判断した光は酷く明朗に、変態に手を振りながら走り去った。
随分と時間を掛けてしまったが、果たして本館は無事なのか。
事を終え今や彼女の思考の大略が、その懸念によって埋め尽くされている。

よって光は、背を向けた変態に振り返る事なく本館の元へと駆けていった。

234 名前:秤乃暗楽 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/02/02(火) 19:52:17 0
ふと、邸の外からくぐもった轟音が響いた。
カーテン代わりの塵芥が晴れると、邸の外壁辺りで新たな粉塵が舞い上がっている。
姿を現したのは真性道程。ようやく帰ってきたのね、あのお馬鹿さん。
……と、何の因果があったのか彼の後ろには光が管轄するヒーロー、確か麗源新貴とか言ったかしら。
両者の間にどんな協議があったのかは分からないけど、中々面白い組み合わせじゃない。

未熟なヒーローと出来損ないのヴィラン。
奇しくも庭の中央たるブラックダイヤモンドの周囲には、誰一人として存在しない。
警備員達も激戦区であったそこに近づくのは憚られたみたい。
二人を阻むのは唯一、光が用意した業火の隔壁のみ。
いいわよ、お膳立てはバッチリじゃない。

さあ、成長なさい矮小なる者よ。
私達『ハカリノイチゾク』の目的たる、世界の安定の為に。
貴方達は世界を彩る絵具になるの。

>「……おい、黒い糞ガキ! 覚えてやがれ!貴様も、この旋風院雷羽様の
> 復讐リストに加入したからなっ!!」

投げ掛けられた罵声に振り返ってみると、雷羽は憎まれ口を叩きながらも着実に『アダム』への歩みを進めていた。
素直で大いに結構だわ。

>「話してるとこ…悪いが……殺るなら…さっさと殺って…くれないか…?」

不意に私と雷羽の間に割り込んで、襤褸切れよろしく傷だらけの男が諦観丸出しの懇願を口にした。
こいつは確か本舘だったかしら。光が随分とお気に入りみたいだけど、こんな腑抜けの何がいいのかしら。

>「うるせぇ!!俺様は今超超超超超超超ムカついてんだっ!!
> 貴様みてぇに、糞ガキを庇ってぶっ飛ばされた上に、諦めの早い雑魚なんかに
> 構ってやる暇はねーんだよ!!」

返されるのは激情塗れの怒声。

「……だそうよ。言っとくけど私だって願い下げよ? 貴方みたいなどっちつかずの『なり損ない』を殺すなんてね、つまらないもの」

何かを言いたげな本舘の横をすり抜け、私は夜空へと身を預ける。
事の顛末を、舞踏会の趨勢を俯瞰出来る、とびっきりの特等席へ。

235 名前:秤乃 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/02/02(火) 23:51:24 0
少し加筆をしちゃったので訂正ですです。

「……だそうよ。言っとくけど私だって願い下げよ? 貴方みたいなどっちつかずの『なり損ない』を殺すなんてね、つまらないもの」

はたと、視界の外から雷羽の狼狽えた声が届く。
見てみれば、黒い靄の残滓を辺りに残して雷羽が倒れていた。
とは言え正確には、『雷羽のいた所に、雷羽と思しきモノが倒れていた』なのだけど。

何かしら? あの姿は。
堕落したヒーローを思わせる、『アダム』とも『ダークメイル』とも付かない全く新しい強化装甲。
あり得ない、強化装甲同士の融合だなんて。
何があったと言うの? 
特異だったのは『アダム』か『ダークメイル』か。それとも『雷羽自身』?


とりあえず無様に寝転がる雷羽の脇腹にに蹴りを見舞ってみたけど、起き上がる気配はない。
……全てが脚本通り、とは流石に行かないわね。

だったらいっそ、『踊る脚本家』はここまでとしてしまおう。

まだ何かを言いたげな本舘の横をすり抜け、私は夜空へと身を預ける。
事の顛末を、舞踏会の趨勢を俯瞰出来る、とびっきりの特等席へ。


となりました。脳内修正お願いしますです。

236 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/02/03(水) 00:58:07 0
長文乙
短くまとめろ

237 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2010/02/03(水) 01:17:21 0
気合だ

238 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/02/03(水) 01:43:06 0
纏め役で情報詰め込まなきゃだし2キャラ動かしてるし仕方ねーだろ

239 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/02/03(水) 13:13:07 0
そういうのは理由になってないんだよ
甘いの

240 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/02/03(水) 16:45:33 0
避難所でやれ
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1263100413/l50

241 名前:トリッシュ ◇.H4UqpaW3Y[sage] 投稿日:2010/02/04(木) 02:30:31 0
「何気取ってんの」
星の話を一通り聞き終えた後の第一声がそれだった。
恐ろしく冷めた口調とまるで養豚場の豚を見るような目線を星に向け言い放った。
「はっきり言わせてもらうと、私から見たあなたは完全な不審者なわけよ
`それで口を開ければ嘘か本当か分からない事を言って、挙げ句、ダイヤをぶち壊させてくれ?
 探偵さん、今は冗談を言ってる時間じゃないわ
 それに、ダイヤならパーティー会場に飾ってあるわ
 ダイヤが目当てなら真っ直ぐ行けばいいんじゃないの?
 リサーチ不足?それとも格好つけたいだけ?」
そう星に対し好き放題言いながらエレベーターを再起動させる

一秒もせずに、目的階であるガレージに着いた
着くやいなや、彼女は早足であるポイントに向かう
「貴方のことは全く信用はしてないけど、チャンスぐらいなら上げるわ
 ダイヤは今パーティー会場のど真ん中にあるわ
 恐らくダイヤの取り合いになってるはずよ
ダイヤが欲しいなら取り合いに参加して取るしかないわよ

 アイヴィス!マーク3」

床や天井から出て来たロボットアーム達がアーマーを装着させる
しばらくして、装着を終えた彼女は星に何も言わすに天井を突き破って月夜に飛び出していった

242 名前:本舘 ◇SGue2uUfkw[sage] 投稿日:2010/02/04(木) 02:32:12 0
>>230爆発音と共に麗源と見知らぬ男が飛び込んできた。
なんだ?サプライズゲストか?
彼等も中立なのか?
まあ、もうすぐ死ぬかもしれない僕にはあまり関係の無いことか…。

>>227>「うるせぇ!!俺様は今超超超超超超超ムカついてんだっ!!
 貴様みてぇに、糞ガキを庇ってぶっ飛ばされた上に、諦めの早い雑魚なんかに
 構ってやる暇はねーんだよ!!」
>>234>「……だそうよ。言っとくけど私だって願い下げよ? 貴方みたいなどっちつかずの『なり損ない』を殺すなんてね、つまらないもの」
……僕の殺るならさっさと殺ってくれ発言に対し、2人は非情な言葉を返す。
「なっ……!だ、誰が雑魚だ!…ゲホッゴホッ!!」
くそっ…随分となめられたものだね…。
オマケに、どっちつかずのなり損ないだと?
酷い言われようだ…。
そんな事を考えている間に雷羽は黒い方が言っていた強化装甲が収められているショーケースに向かっている。
アレを手にしたらもう誰も手が出せなくなる!
「ま、待て!」
無論、雷羽は僕の制止を無視してショーケースを壊し、強化装甲に触れてしまった。

次の瞬間、雷羽と強化装甲を黒い霧が覆う。
「……ん? なにっ!?な、何だぁっ、これはっ!!!」
あのリアクションを見ると、雷羽にとっても予想外の出来事らしい。
霧が晴れるとそこに居たのは新しい強化装甲を身に付けて倒れている雷羽の姿があった。

黒い方が脇腹に蹴りをいれるが、リアクションは無い。
死んだか…?
まだ状況が上手く掴めていない僕の横を黒い方が平然とすり抜けといく。
結局僕は雷羽にとっても、黒い方にとっても、殺すまでもないと認識されてしまったわけか…。
……絶対に見返してやる…。
あの2人を絶対に見返してやるぞ…。
その為にも、ここで死ぬわけにはいかない。
だが、僕の意思とは反対に意識が段々と遠のいていく。
どうやら、少し血を出しすぎたらしい…。
僕はベルトを両手にがっしりと掴みながら意識を失った。

243 名前:麗源 ◇S00N9pbnYw[sage] 投稿日:2010/02/04(木) 23:00:09 0
さて。真性青年の手際は、麗源の期待通り、鮮やかも極まる。
大企業代表取締役邸宅に、単身、失礼仕るだけあって、
その判断力と不敵たるや、やはり人類一般の頭脳ではないかもしれない。
それでも、麗源は彼を訝らない。今のところは、己の宣言通り、ドライに徹する。

真性の後に続いて、サーチライトを欺く高台へ上りながら、
望まれるスティール邸は、阿鼻の様相を呈してきている。
天井裏から針穴を通して、下に広がる地獄を覗き込むようだなと、麗源はどこか覚めた心地で思う。
不思議と、手段の目的化が早期に表れたらしい。
常時、そんな冷静かつ端然とした心理を携えていたなら、
もう少しまともな生を受け入れられたかもしれなかった。
仮にそうだとしたら、麗源はこの都市とも、真性青年とも、無縁に過ごした筈だが。

ともあれ、まず見据えるべきは眼前の問題に限る。
突然の乱入者の登場に、僅かながらも動揺したか、武装警備員の対応はやや鈍い。
咄嗟に乱射された小銃の弾丸をかわしつつ、
真性の身のこなしは電光の如く、果たして、
瞬きも許さぬまま、警備員の一人をあっけなく下す。
サーチライト制御盤に身を隠した彼の動きに間髪入れず、
麗源は弾除けとしていた物陰から手だけを見せ、カードを提示する。

「真性君、今日の俺も随分、運が良いらしいな。
 『吊られた男』の逆位置は、盲目、そして依存!さあ、『俺に従え』ッ!
 まずは、その銃口を下ろしてもらおうか!」

確かに運は良い。しかしながら、暗示効果は抜群とは言えない。
本来なら、警備員の意識を塗り潰して傀儡に変えることも可能なのだが、
生憎、彼らの見せた反応は、引き金から指を離すだけに終わる。
だが、現状においてはそれだけでも充分に足る。

244 名前:麗源 ◇S00N9pbnYw[sage] 投稿日:2010/02/04(木) 23:00:31 0
「銃を……。」

もぎ取り。

「そのヘルメットも……。」

引っぺがし。

「ごめんっ!」

腰の入らないタックルを喰らって、警備員三人共々、
抵抗を見せることなく、下界に浸る闇へと落ちていった。
彼らが気絶すれば幸いだが、そうでなくとも、
暗示による一種の『酔い』が残るだろうから、そう簡単に正気へ戻りはしない。
周りに気配はない。一息ついても差し支えなかろう。

麗源の能力である、カードによる暗示は、
決してタナボタの至りという訳でもなく、
彼独自の性癖と、人生におけるある事件の化学反応によって、
先天的な一種の才能が開花したからである為か、
変身の契機を伴わなくとも、些細ながらも効力を持つ。
尤も、そこのところの事情はどうあれ、
麗源は知恵を尽くして、変身をせずに、事を収めるつもりである。
ホルスタインはやはりヒーローなのだから、
その姿を借りて盗みを働くのは頂けない。

麗源の手には、軽量のヘルメットも自動小銃も二揃えずつあった。
その内一セットを、必要なら、と真性に示しつつ、
己も自前のキャップを懐に隠し、ヘルメットを被りながら、小銃の重みを確かめる。
ヘルメット程度では、サーチライトにも監視カメラにも対抗できないのは当然だが、
内輪に見ても、ふとした人目を誤魔化せる期待くらいは、神も許すかも知れない。
どうせなら制服まで頂戴したらよかろうが、事は何より迅速を要する。
銃は万一に備えて。麗源としては、血の赤を記憶に残したくはない。
何せよ、抱えて走るのが無理と言うサイズと重量ではないから、手中に収めて損はない。

245 名前:麗源 ◇S00N9pbnYw[sage] 投稿日:2010/02/04(木) 23:06:48 0
ライトの制御盤をくすぐってみるみる麗源。
様々ボタンが配置されてはいたが、そのカラクリに然程の難はなく、
いじる内に、すぐさま操作の勝手を飲み込むことが出来た。
光線は、広くない範囲を律動的に往復するのみとなった。
現状が現状なのだから、こういった変化に気付く者は、まずいなかろう

「これで、サーチライトの一つは掌握したも同然だけど……。」

当然、対岸に装置されたもう一つには、手は及んでいない。
磐石を敷くとなれば、ライトの双方を抑えるのが条件である。

「どうする。俺が二つのライトをどうにかしている間に、
 君が停電の手筈を整える手もあるし。
 念を入れて、どこまでも二人で行動する方法もある。」

律動する光線を見やりながら、言う。

「二手に分かれるってなら……落ち合うには、あすこいらかな。」

庭の敷地の中心部からややずれて、円形にたんこぶの付いたような、親子らしい池があった。
そこから少し離れたところに、得体の知れない赤い光が宿っている。
奇妙だが、それは今の麗源の心中に疑問を及ぼさない。

「……俺が言うことでもなかったかな。立案、宜しく。俺はどうとでも動けるよ。
 今夜なら……ナンでもできそうなきがする。」

【サーチライト半無力化。警備員から奪ったヘルメットと自動小銃を装備。】

246 名前:星 真一 ◆fSS4JmCGEk [sage] 投稿日:2010/02/04(木) 23:15:37 0
ハハハこいつは手厳しい。まぁ、それはそうだろうな
こんな話聞かされて普通は信じないだろう。
それに確かにトリッシュから見ても不審者として見られてもしょうがないだろう。
だが、これで分かった事があるそれは会場にあるブラックダイヤが本物である可能性だ。
わざわざこんないつ狙われているかわからない状況で本物ではなく偽者のブラックダイヤだと俺は睨んでいた。
だが、彼女はどうやら本物を会場に置いたという事が彼女の口振りからわかる。
まぁこれが演技なら彼女はたいしたものだし、俺も100%彼女の言う事を信じてる訳じゃない。

天井を破り、空に飛び出していく彼女を見ながら思考トレース機能を通して転移魔法を発動させる。
『転移魔法詠唱 目標地点のX軸、Y軸指定完了 転移開始』
魔方陣が足元から広がり、光が全身を包み終わるとその場から俺の存在は消失する。

会場に雷のような音と渦が巻くような瘴気と共に魔方陣が出現し、
その中から再び俺は構築されその場に立っていた。
「おえっ…気持ち悪くなるから嫌なんだよな」
まるでミキサーに入っていたような気分だが仕方あるまい。
近くに激しい耳鳴りが響き、魔導衣が鼓動する、邪神の力に反応している証だった。
その方向に向かうと段々と耳鳴りと鼓動は激しくなっていく
そしてソイツの後ろ姿を見た瞬間、俺は怒りが全身を支配する。
背後にびっしりと奴に殺された霊が張り付いていた
コイツが犯人だと叫んでいるように。
そしてその中には杉本さんが含まれていた。
「テメェかぁぁぁ!!」
灼熱を纏ったバルザイの堰月刀を持って怒りの一撃がソイツの背後を襲う。


247 名前:赤穂朗氏 ◆y6ZFeIPasDPg [sage] 投稿日:2010/02/05(金) 14:29:33 0
>>232
>「っ、なんで? なんで当たらないの……?」

少女の攻撃を爪先立ちの格好で避けながら赤穂は勃起していた。
「無駄、無駄…無駄ァ!!」

>「当たって……! 当たってよぉ!」

次に四つん這いになり逆さの格好で少女に追いすがる。
「フフ…逃げるんじゃないぞぉ!!このクソガキ…クソアマアァ!!」
アリスの力は赤穂に「未来を読む力」を与えていた。
少女の攻撃が通用しない理由はそこにある。

>「じゃあね、変態さん!」

「ん!?裸で何をやってるんだ?私は……我ながら恥じるべきだな。」
赤穂は、急に真顔になると去っていく少女を見つめながら勃起を止めた。
たまにはこういうのもいいだろうとは思うが、赤穂には解せなかった。
何故、少女の股からは不思議な匂いがしたのだろうと。
あれはまさか……

赤穂は考えるのを止めた。


248 名前:赤穂朗氏 ◆y6ZFeIPasDPg [sage] 投稿日:2010/02/05(金) 14:40:27 0
>>246
赤穂は倒れていた社員らしき男からスーツを奪うと
何食わぬ顔でパーティ会場へと戻る為に、廊下を歩いていた。
(今日は中々、楽しい日だった。他人の振りをして遊ぶのも
たまにはいいものだ…クククク)

優越な笑みを浮かべ歩いていると、背後で何かが動く音がした。
振り返り確認しようとするが、凄まじい叫び声が赤穂の鼓膜を叩いた。

>「テメェかぁぁぁ!!」

「んぅ?なんだぁ…君はぁ…」
叫び声と同時に声の主は、刃物を振りかざし赤穂に襲い掛かる。
しかし、その刃先は1歩遅れる。赤穂の前で停止したのだ。
その声の主を赤穂は知っていた。

「なんだぁ…君か。星真一君。」

アリスが堰月刀を掴み、そして星へと叩き返す。
赤穂は背中を掻きながら笑みを浮かべ、どうして自分だと気付いたのか
分かったとでもいいたげに後ろを指差した。

「あぁ、こいつ等が君に私だと教えたわけかい?
フフ……最近、”処分”してなかったからなぁ。
私としたことが迂闊だったよ。さっさと暗黒空間にばら撒いておこうか。」

《 ガォン!! 》

アリスが赤穂の背後に居る霊魂達を飲み込み、赤い空間へと引き摺り込む。
それぞれが悲鳴を上げながら、やがて姿を消した。

「どうせ君は殺すべきだった。丁度、いい。手間が省けたというわけだね。
今日、死んでくれるかい?」

アリスが星の右足を掴む。
先ほど、黒いダイヤモンドに施したそれと同じ方法で。
「アリスの新しい力だ。爆弾は好きかい?君の足を爆破する」

赤穂は笑みを浮かべ、そう宣言した。


249 名前:星 真一 ◆fSS4JmCGEk [sage] 投稿日:2010/02/06(土) 02:00:45 0
背後からの攻撃は決まったはずだった。
だがその目の前には化け物がバルザイの堰月刀を受け止め、
叩き返されるが受身を取る。
>「あぁ、こいつ等が君に私だと教えたわけかい?
フフ……最近、”処分”してなかったからなぁ。
私としたことが迂闊だったよ。さっさと暗黒空間にばら撒いておこうか。」
掃除機に吸い込まれるように赤い空間に悲鳴や断末魔が耳に残るぐらいに叫びながら消えていった。
人を蹂躙し、死者すらもゴミのような扱いに
さらに怒りに火が付き、バルザイの堰月刀の炎は更に燃え上がる。
「お前は何人殺してきた……お前の殺した人達にだって待っている人達がいたんだぞ…」
コイツだけは、コイツだけは確実に倒さねばならない
>「どうせ君は殺すべきだった。丁度、いい。手間が省けたというわけだね。
今日、死んでくれるかい?」
「その言葉…お前に返す!!今日はテメェの命日になる日かもな!!」
化け物に片足をつかまれるが、その瞬間堰月刀を展開させて投げる。
>「アリスの新しい力だ。爆弾は好きかい?君の足を爆破する」
「肉を切らせて骨を絶つ!片足をくれてやる代わりにテメェの頭を貰うぜ!」
2秒もしない速さで両手に二挺の回転式拳銃を出現させ、尋常じゃない核に匹敵する熱量の炎と
海すらも凍結させる極低温の弾丸を頭に向けて撃ち込む。





250 名前:左翔太郎 ◆/gk7MDoUlwA4 [sage] 投稿日:2010/02/06(土) 19:36:46 0
俺は左翔太郎。私立探偵だ―

風都を離れて数ヶ月。俺は新しい街で探偵事務所を始めた。
相棒と、厄介な所長を連れて。
この街でも俺の信条は変わらない。この街に住む人々を守る。
それだけだ。

#######

(パーティ会場)
「ここに悪党どもが集まるって聞いてきたんだが、どうやらもう
始まってるらしいな。おい、相棒!聞いんのか?」
翔太郎は食堂で食べ物を物色する相棒・フィリップへと問いかける。
フィリップは納豆を手に、興味深そうにそれを舐めていた。
「翔太郎!君は知っているか?この納豆という食べ物…実に興味深い!」

頭を掻きながら面倒くさそうにする翔太郎。
フィリップを連れ、ダイヤモンドの近くまで歩いていく。
「こいつがブラックダイヤモンドかぁ〜。
すげぇな、やっぱ。間近で見るとよ…」
翔太郎がダイヤモンドに釘付けになっている間に、フィリップは
周囲の異変を察する。

「翔太郎……どうやら、泥棒達は既にこの近くまで来ているようだ。」

そして手にする。緑色のUSBメモリーのようなアイテムを。
同時に翔太郎も手にする。黒色のメモリー。「JOKER」という名前を刻まれたそれを。

《パーティ会場でダイヤモンドを警備中》

251 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/02/06(土) 20:19:00 0
Bダイヤモンドって今炎に包まれてなかったか?
まあ脳内修正しとくけどさあ

252 名前:左翔太郎 ◆/gk7MDoUlwA4 [sage] 投稿日:2010/02/06(土) 21:19:27 0
《数時間後》
会場はヒーローと悪役が入り乱れる戦場と化していた。
翔太郎は燃え盛るダイヤモンドの傍で頭を掻き毟り混乱している。
「あ〜!!どうなってんだよ、これ!!っていうかフィリップ何処行った!?
おい、亜喜子!!あいつ探して来い!」

隣で呑気に煎餅を頬張る少女、鳴海亜樹子は翔太郎の探偵事務所の所長である。
「あのね、私もフィリップ君の事なんて知らないわよ。
だいたい、トリッシュ社長に前金貰っておいてこのザマじゃ警備の役割果たせてないじゃない!」

スリッパで翔太郎の後頭部を一撃する。
「いてっ!!」
情けない叫びを上げ、翔太郎は地面に膝を付いた。
翔太郎は炎に包まれたダイヤモンドから数歩、後退すると
ベルト型の変身アイテム、Wドライバーを起動しフィリップに問いかける。

(おい、フィリップ!返事しろ!!)

#########

>>228
「あれは…興味深い現象だね。」

>黒い金属の鎧に、幾上かの白銀の線が混ざった。堕ちたヒーローの様な、“何か”を。

フィリップは雷羽の変身を興味深そうに観察している。
時を同じくして、翔太郎の声がWドライバーを通して伝わる。
「なんだ、翔太郎か。随分とそっちは騒がしかったみたいだね。
でも、こっちでも凄い事が起こってるんだ。
君も見に来たらどうだい?」

《翔太郎:ショーケースの前で右往左往、フィリップ:雷羽の近くで変化を目撃》




253 名前:真性 ◆8SWM8niap6 [sage] 投稿日:2010/02/08(月) 04:02:39 0
先立って避難した制御盤の影からちょいと顔を出して麗源のお手並みを拝見。三人がかりの相手を任せるのは忍びないが、彼の能力は未知数だ。
麗源は自前のタロットから一枚のカード、逆さまの『吊られた男』を抜き出して警備員に見せ付けると、まるで催眠術みたいに彼等を無力化する。
どうにもタロットの暗示を現実へと変える能力らしく、その効力たるやまさに読んで字の如く霊験あらたか。伊達に粋な両親をお持ちでない。
麗源がライトの制御盤を弄繰り回して撮影機能を沈黙させ、まずは一機。凶悪極まるサーチライトの掌握は成功した。

ここまでは万事上手く進んでる。問題はこっからだ。もう一機のライトも黙らせ、停電と同時に銃弾飛び交う中庭を突っ切ってダイヤをダッシュで奪取だ。
上手い。

「どうする。俺が二つのライトをどうにかしている間に、君が停電の手筈を整える手もあるし。念を入れて、どこまでも二人で行動する方法もある。」

麗源の提案はつまり別行動。一人で行くには些か尿漏れが心配な道程ではあるけれど、現状じゃ最善の選択のように思えた。
だから俺の答えは応。鹵獲した自動小銃とヘルメットを受け取って、俺が水人形を造った池をランデブー地点に決め、俺達は別れた。

「よし、それじゃこっから単独行動だ。死ぬなよ、俺もなるべく死なないよう頑張るから!そんじゃアディオス――」

ヘルメットと小銃で身を固め、宵闇に挨拶のハンドサインを突き出しながら、俺はサーチライトの制御台から虚空へとダイブした。
前回までのあらすじ終了!
無事芝生と足とを再会させた俺は、配電室へ向かって全力疾走中だった。手近な窓を破り、絨毯で覆われた廊下を爪先走りで駆け巡る。

最初にブレーカーを落とした時はコンセントをショートさせてヒューズを飛ばすだけで済んだけど、非常電源に切り替わってる今はそうもいかない。
屋敷の電力事情を集中管制している配電室まで直接出向き、配電盤か発電機あたりを叩き壊す非常にアナログな工作をしなきゃならないのだ。
今のご時勢ネット経由でチャチャっとハッキングできる御仁も居るというのに、なんとも非効率な非行だ。超上手い。

階段や曲がり角に差し掛かるたび物陰に身を隠し邸内地図で位置を確認。やたらめったらだだっ広い屋敷は迷路みたいに入り組んでいて、超迷う。
フロアごとに武装警備員がうろついてるもんだからこれを無力化しつつ目指さなきゃならないってのもつらいとこ。
屋敷中に怒号が響き、どこから湧いてくるのか警備員達がどこからでも駆けつける。発見されて一分も経たずに、向かう先に4名の警備員が立ちはだかった。

「こっちだ!東館の方にも侵入者!気をつけろ、銃を所持してやがるぞ――!」

その通り。銃があるのはありがたかった。適当に弾ばら撒けばそれだけで牽制になるし、装甲服上からでも当てれば十分気絶に足りる。
こっちは多少当たっても気力で耐えられるけど相手は悪けりゃ死ぬってのは、銃撃戦において計り知れないアドバンテージなのだった。
となれば使わない手はないぜ。弾は倒した敵から補充できるゲーマーに優しい親切設計であるわけだし。

「<パラダイムボトル>――形状『剣付長銃《バイアネット》』!!」

自動小銃の先に刃状の"神様"を作り出し、『破壊』の指令を送る。前方から飛来する弾幕の雨を異能の銃剣で寸断し、突破する。
肉迫した真ん中の二人のうち右の警備員の顎に小銃のストックをぶちかまし、左が振るうコンバットナイフをヘルメットで防ぐ。
そのまま強化膂力で頭突きを叩き込み、すぐさま飛び退いて対応が遅れた両端の二人の胴へ向かって至近距離から小銃を乱射した。
防弾パッドの上から鋼の拳に連打された警備員はもんどりうってひっくり返る。ふう、頭とかに当たらなくてよかったぜえ……!!

「んー、だんだん要領が掴めてきたな。悪くねえ、この高揚感――ッ!!」

至近距離から狙いをつけても胴体に当たるか当たらないかな俺の射撃センスを嘆くより、心に芽生えた熱と悦が脳を痺れさせる。
銃をぶっ放すってのは存外、楽しい。身体強化のおかげで反動はむしろ小気味よく、なにより引き金引くだけで敵が倒れるのは未知な経験だ。
もともと戦うのは苦手だったけど、後衛で弾バラ捲くだけなら俺は天職かも知れないぜ。射撃下手なのは置いといて。
これでもしこの警備員達が死んだら、俺はどう思うんだろうか。感覚が手に残らないっていうのは、俺の心に妙なガラスを張っていた。

「――っと、モノローグでポエミィなこと言ってる場合じゃねえ。何やってんだ俺!」

律儀に銃弾を鹵獲してから、弾帯巻きすぎて野戦兵みたいになった俺は配電室への道のりを再開した。

254 名前:真性 ◆8SWM8niap6 [sage] 投稿日:2010/02/08(月) 04:05:59 0
【麗源と別行動。邸宅内部に侵入して配電室を目指す】

255 名前:秤乃光&暗楽 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/02/08(月) 14:32:16 0
ようやく派手に立ち回る事もなく、平静の椅子に腰掛け観客を気取る事が出来る。
だけど私の安寧も束の間で、地上で今夜三度目の産声を上げた塵埃から一体の特殊装甲が夜空へと躍り出た。
夜闇の一切を払い除ける金色と紅の色彩は、この邸とダイヤの主にしてヒーロー『アイアン・メイデン』のそれに他ならない。
さて、遅れ馳せにパーティへと舞い戻った彼女は果たしてどう立ち回るのだろう。

自らも踊り手となるのか、それとも私と同じく観客となるのか。
もしも前者であるならば、彼女のお相手は多分この私となるに違いない。
この星空を舞台として踊る事が出来るのは、彼女を除けば私や光ぐらいしかいないでしょうから。

「こんばんは、『アイアン・メイデン』さん。随分と大変な事になってるわね」

ドレスの裾を持ち上げて、ひとまずは恭しくご挨拶。

「ブラックダイヤモンドはもう風前の灯、手中の真砂。いつ貴女の手元から奪い去られてもおかしくないわ」

後はヴィランらしく、俯瞰した視線と見縊った口調を。

「それでこのパーティの中、貴女は一体どうするつもり?」

ワンドに夜色を溶かしながら、私は彼女に問い掛けた。




変態からの逃亡を成し遂げて、光はパーティ会場へと駆けていた。
空を飛ぶ事さえ失念して走り辿り着くも、元いた所に本館はいない。
ただ池と喩えるには十分過ぎる量の血液の後が、闇に紛れ切らず残っているばかりだ。

後ろ髪をじわじわと焼かれるような焦燥に、光は周囲を見回す。
辺りには点々と続く血痕があるのだが、夜目の利かない彼女はそれを見つける術を持ち合わせてはいなかった。
是非も無く、彼女は唯一の当てを手繰るべく走り出す。

点在する血痕の続く先、立ち聳える邸の壁に開いた、光が雷羽を打ち飛ばした際に出来た大穴。
周囲に彼と思しき姿が見えない以上、彼がいる公算が一番大きいのはそこだ。
よたよたと、戦闘時とは比べるべくもない、年相応の非効率な走りで彼女は邸へと向かう。

「お兄ちゃん!」

かくして光の予想は正しい物で、本館は邸の中で気を失っていた。
最早定着しつつある彼の呼び名を口にして、彼女は彼に駆け寄り青ざめた頬へ手を添える。
失われた血と暗闇が相まって死人もかくやの様相だったが、手を当ててみれば確かな生者の体温が彼女の皮膚を伝う。

ほっと胸を撫で下ろし嘆息を零して一拍、はたと彼女は顔を上げ周囲を見回した。
眼界が焦点を当て捉えたものは二つ。

まず一つは漆黒と白銀のコントラストを主張して、床で無様に昏倒している誰かだった。
言うまでも無く彼は先ほど彼女が打ちのめした相手、旋風院雷羽である。
けれども変態と相対していた彼女には、彼が新たな形態を得たなど知る由もなかった。

そしてもう一つ。
この会場には凡そ相応しくないラフな格好をして、光と本館の方を凝視する一人の男。
実際には彼女達の背後に位置する雷羽を彼は見つめていたのだが、これもやはり光には知り得ない事だ。

ともかく彼を敵と誤認した彼女は、ワンドを突き出し立ち上がる。

「お兄ちゃんに手出しはさせないよ! 私は、『ヒーローを護るヒーロー』だもん……!」

今度こそ、ちゃんと護るんだ、と。
小さく呟くと彼女は壁の穴から差し込む月光を絵筆に宿し、目の前の男を強く睥睨した。

256 名前: ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/02/08(月) 14:34:02 0
強い視線が、一点に注がれていた。
刺し貫くような眼光の先には、戦乱の巷と化したトリッシュ邸がある。
トリッシュ邸で騒動が起きてから既に結構な時間が経過していた。

当然騒動は邸の外へと徐々に伝播していく。
一般人へ、警察へ、そして――『ヒーロー』達へと、伝えられる。

「んっはっは! 荒れてるねえ、荒れてるねえ! 結構結構!!」

邸の傍に屹立するビルの屋上で、真紅のマントが風に揺られていた。
地肌にマントを纏わせ、無闇に筋肉を隆起させ誇張して、一人の益荒男が立っている。

「遅いよオッサン。漁夫の利狙ったみたいですげーカッコ悪いよ、アンタ」

トリッシュ邸へと向けられた視線は、何も一つではない。
この都市に生きる数多くの『ヒーロー』が、大捕り物の舞台へと集っていた。
屋上の先客――足元から全てを黒で統一した礼服然の服装に、同じく烏の濡羽色の長髪。
右の目だけが完全に隠れるよう不自然に偏った髪の奥では、退屈げに細められた双眸が潜んでいる。

「んはは! 『ヒーローは遅れてやってくる』たあ、まさしく至言だなあ!
 っと、こりゃ元々おめえさんの専売特許だったかあ!? 悪いねえ真似しちまって!」

邸から自分へと向けられた寒々しい視線も何のそのと。
オッサンと呼ばれた『ヒーロー』は太股を二度三度ぴしりと叩き、大笑いをしてのける。

「五月蝿え爺だ。ちったあ黙れねえのか、こっちにまで声が響いてんだよ」

音も前兆も無く、二人の『ヒーロー』の背後に、また一人新たな男が歩み寄っていた。
濃緑と草色を大理石模様に混ぜ合わせた迷彩が、ややあって屋上の床に溶け込むくすんだ灰色へと変容する。
ごつごつした造形のゴーグルを装着した彼は、その下に隠された精悍な顔つきを不機嫌に歪ませて雑言を零す。

「……んだとお? 手前、若造が。その青いケツを引っ叩いて真っ赤にしてやろうか?」

「出来る物なら、な。丁度いい機会だ。ご老体にはご隠居願うのも悪くねえ。
 なに、安心しろ。悪漢蔓延るトリッシュ邸に飛び込んでの名誉の負傷としといてやるよ」

宵闇に敵愾心が溶け込み、空気が粘性を帯びる。
吹き荒ぶ夜風でさえも追い払えぬそれは加速度的に膨らみ、一触即発の場を形成した。
険阻な表情で両者は互いに睥睨し合う。

「こーら! この馬鹿ちん二人! 何で『ヒーロー』同士で喧嘩してんのよ!」

声と同時、二人の頭がそれぞれ後ろから強い力を受けた。
抵抗する暇も無く、双方の顔面が衝突する。
硬質なゴーグルが益荒男は鼻先に、迷彩の男は目に減り込み、二者共々転げ回り身悶えする事となった。
出来損ないの漫才よろしくと言った様子に、黒尽くめの男が溜息を零す。

257 名前: ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/02/08(月) 14:34:52 0
「アンタもアンタで止めなさい!」

刹那、彼もまた不可視の力を受けて鼻柱を強かに、冷たいビルの屋上に叩き付けられた。

「っ……! 何で僕まで……」

理不尽な処遇に僅かに眉根を寄せ、彼はよろめきながらも立ち上がる。
そして遥か頭上を見上げた。

「ハイそこ覗かない!」

間髪入れず、彼は再び屋上への接吻を強いられた。
自らの不遇に暫し立ち上げれずにいる彼の視界に、硬質な音を伴って桃色の靴と白い脚が映り込む。

「普通の人間でしかない僕に止めろだなんて、無茶言うなよ。と言うかスカート履くなら空飛ぶなよな」

三度目を喰らっては堪らないと、黒尽くめの彼は最早立つ事も顔を上げる事もせず、そのままの体勢で言葉を紡ぐ。

「やーよ。魔法少女にスカートは付き物でしょうが」

「その年で魔法少女名乗るかい、アンタもう……」

彼が全てを言い終えるよりも早く、三度目にしてこれまでで最大の一撃が彼の頭部を捉えた。
今度は不可視ではなく直接の、頭を砕かんばかりの勢いを秘めた踏み付けだ。

「……『ヒーロー』同士で喧嘩すんなって言ったの、おめえさんじゃなかったか?」

呆然としながらも、益荒男がぽつりと呟いた。

「女の子の年齢を言及するなんて、それはもう悪よ。『ヴィラン』の業だわ。だからこれは正当なる正義なの」

悪びれないどころか何やら危険満載な思想を振りまいて、彼女は胸を張った。
淡い桜色とショッキングピンクを基調としたコスチュームは、彼女の平易な貧相な体付きを上手に誤魔化している。
これならば成る程確かに、身体の成長具合と服飾のセンスに限れば、少女を名乗る事も出来るだろう。

「ともかく、こんなとこで馬鹿みたいな争いしてる暇はないでしょ。
 『ラストサバイヴ』と『ワンマンアーミー』の名が泣くわよ?」

『寄ってくる大樹』『不倒不屈』の名を冠する益荒男と『二足歩行の軍事基地』『一騎当軍』と謳われる迷彩の男。
いずれもこの都市で名を知らぬ者はいない程の実力者だった。

「……アンタこそ何が『愛と正義の魔法少女。プリティピンク。略してPP!』だよ、安っぽい。
 しかもそれも自称だろ? 日曜日の朝七時にお帰り下さ……いや何でもない。もう『テレキネシス』は勘弁だ」

当然、彼らを軽くど突く事の出来る彼女も。

「素直でよろしい。ほら、アンタも『ローカルラプター』なんて立派な名前があるんだから。さっさと立ちなさいよ」

この場に肩を並べる『遅れてやってくる瞬殺者』『鈍足神速』と呼ばれる黒尽くめの彼にしても、同じ事が言えた。

258 名前: ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/02/08(月) 14:36:01 0
「まあ、お喋りとじゃれ合いはこの辺にしとこうや。そろそろ、楽しい楽しい捕物劇の時間だぜ?」

トリッシュ邸を眼下に捉え『不倒不屈』が口端を吊り上げながらそう言った。

「何仕切ってんだよ糞爺。何だって年寄りはこうも仕切りたがるかねえ」

「あぁ? オイこら手前、あろう事か糞を付け足しやがったな? マジでケツ叩き割るぞ手前」

「爺は別に良かったのかよ。ってか糞みてえに古いギャグ飛ばしてんじゃねえ。
 よっぽど隠居してえと見えるなこの糞爺は」

「その辺にしとかないと次はキスさせちゃうよ?」

「……腐ってるな、色んな意味で。おい待てテレキネシスはもう勘弁と言っただろうが、やめろ」

四人は互いにふん、と顔を背ける。
一息吐いて、次の瞬間には。
彼らの姿はもうどこにも、ビルの屋上には見られなかった。

259 名前:赤穂朗氏 ◆y6ZFeIPasDPg [sage] 投稿日:2010/02/09(火) 22:49:29 0
>>249
腰に手を当て、モデルのようなポーズで星を見下ろす赤穂。
その姿に激昂したのだろうか。怒りを込めた叫び声が廊下に響き渡る。

>「お前は何人殺してきた……お前の殺した人達にだって待っている人達がいたんだぞ…」

足元にあったゴミを拾い、それを掌で転がしながら星に向け微笑みかける。
「君は…ゴミがいくつ目の前にあったところで気にも止めないだろう?
私にとって、他人などその程度の存在って事だぁ……私は私が気分良く
明日も目覚める事が出来ればそれでいいのさ。」

>「その言葉…お前に返す!!今日はテメェの命日になる日かもな!!」

アリスの手を払いのけるが、赤穂の笑みは消えない。
口を更に歪ませ歯を見せながら大きく声を上げた。
「無駄だと言ったろう……無駄だと」

>「肉を切らせて骨を絶つ!片足をくれてやる代わりにテメェの頭を貰うぜ!」

「アリス!!」

眼前にアリスが飛び出し、赤穂を廊下の先へ蹴り飛ばす。
血を吐きながら、転げ回る。
弾丸は回避したが、自らの能力で自らを傷付ける不可解な行動を取った。
「あああああああああああ、気持ちいい!この痛みだ。
この痛みも、私にとっては快感に他ならないっ!」

そしてゆっくりと親指を押す。

―カチッ

星の体が足を中心に巨大な爆炎に包まれた

【星の右足に仕掛けた爆弾を発動】

260 名前:星 真一 ◆fSS4JmCGEk [sage] 投稿日:2010/02/10(水) 01:37:48 0
>「君は…ゴミがいくつ目の前にあったところで気にも止めないだろう?
私にとって、他人などその程度の存在って事だぁ……私は私が気分良く
明日も目覚める事が出来ればそれでいいのさ。」
その人の命をなんとも思わないその考えに、コイツは救いがたい野朗だと思った。
そして自分でもびっくりするような冷静な声で
「テメェみたいのを吐き気を催す邪悪っていうだな、そんな奴に容赦できねぇな」
>「無駄だと言ったろう……無駄だと」
>「アリス!!」
化け物が男を蹴り、その衝撃で放った弾丸を避ける。
>「あああああああああああ、気持ちいい!この痛みだ。
この痛みも、私にとっては快感に他ならないっ!」
「避けやがった…?ちっ、しかも変態か始末に負えないな!」
そしてもう一度、二挺の引き金を引こうとしたが、突然右足が爆発する
痛みと共に後方に吹き飛ばされる。
「ちっ……!」
足を崩し、当然仰向けの状態で倒れ片足は炎に包まれていた。
なんとも言えない痛みが駆け巡るが、少しずつ痛みが和らいでいくと同時に炎が消える。
『損傷確認 損傷部位右足 治癒魔法発動 修復まで約49秒』
魔導衣による自己防衛プログラムにより、装着者の生命活動維持のため
治癒魔法が自動発動する。もっとも部位と損傷レベルによって魔力消費が激しい。
それでもあくまで必要以上の魔力は消費させない魔導衣のサポートシステムは優秀といわざるを得ない。
「ちっ…油断したぜそんな能力を持ってるとはよ…」
なんとか立ち上がり二挺の銃をしっかり持ち直し、構える。
もっともあと23秒は歩けないが。




261 名前:トリッシュ ◆.H4UqpaW3Y [sage] 投稿日:2010/02/10(水) 06:54:51 O
星との邂逅はたった数十秒の出来事であったが、彼女のプランが乱れるには充分すぎる時間であった。
セキュリティーが回復していたのが、唯一の救いである
館の上空から現在の状況を確認しながら、冷静に指示を出す
>>253
「トリッシュ、東館に侵入者を確認」
その知らせを聞いた時、彼女の表情は少し曇った
東館には、発電機として大型リアクターコアが設置されている他
地下のガレージに続く階段まである
恐らく、侵入者の狙いは発電機であるだろう
それさえ潰してしまえば、セキュリティーなど心配する必要は無くなるからだ
「…東館のセキュリティーレベルをMAXにして、あと警備に東館から即刻避難するように指示
 侵入者は殺すなり、『応接室』にでもぶち込むなり好きになさい」
>>255
指示を出し、急いで会場に戻ろうとした時、まるで立ちふさがるかのように、黒衣の少女が眼前に居た
口調や言動からして彼女はヴィランであると察知出来た
「そうね…盗られるぐらいなら、いっそ壊そうかしら?
 どうせ、叔父が浮気相手に持ってきたロクでもない珍品だものね」
そう少女に返事をし、掌をダイヤに向ける
このまま、掌からエネルギー波を打ち出してしまえば、ダイヤは粉々になってしまうだろう
「それに、あのダイヤはある人物を呼び寄せるための撒き餌
 生憎、どこぞのキザったらしい探偵もどきに邪魔されて釣り針を垂らせ無かったけど…此処まで集まっているなら
 釣り針を垂らす必要は…無いッ!」
ダイヤに向けていた掌を少女に向け、リアクターレイを放った

262 名前: ◆.H4UqpaW3Y [sage] 投稿日:2010/02/10(水) 07:09:24 O
意気揚々と進む真性がT字路にさしかかったとき、それは前触れもなく起こった

進む先に赤い光線が現れ、こちらに向かってくるのだ。
一瞬、ただの光線で触れたら何かが起こるのだろうと思うだろうが
そんな生優しい物ではないと言わんばかりに、光線は高そうなツボや像を切り、徐々に、速度を上げ、数を増やして真性に迫る
幸いなのは、退路と別の道が残されていること
判断が一瞬でも遅れれば即細切れだ

263 名前:本舘 ◆SGue2uUfkw [sage] 投稿日:2010/02/11(木) 20:56:01 O
>>255>「お兄ちゃん!」
どこかで聞いたことのある少女の声…。
その声の主と思われる手が、僕の頬に触れる。
暖かくて、柔らかい。
声の主を確かめようと目を開けようとするが、なかなか目を開ける事が出来ない。
しかも体も動かない…。
……そうだ、思い出した。
僕は血を出しすぎて倒れたんだ。

>「お兄ちゃんに手出しはさせないよ! 私は、『ヒーローを護るヒーロー』だもん……!」
ヒーローを護るヒーロー……間違いない…あの少女だ。
僕は何とかうっすらと目を開け、口を動かす。
「無…理を……する…な。…僕、なら…大丈夫…だ。」
少女の視線の先には確かに見た事の無い変身スーツを着た人物が居る。
アレが味方か敵かは定かではないが僕を守ると言っているところを見ると、少女は敵と認識したらしい。
もしアレが本当に敵だとしても少女が僕に付いている限り、身の心配は無い。
僕が心配しているのはブラックダイヤモンドの所在だ。
「ブラック…ダイヤ…モンドは……まだ無事…か?」
このまま何も盗らずに帰ったんじゃ何をしに来たのか分からない。
ただ雷羽に致命傷を負わされに来たことになってしまう。
どうしてもブラックダイヤモンドだけは持ち帰る…。

264 名前:左翔太郎 ◆/gk7MDoUlwA4 [sage] 投稿日:2010/02/12(金) 12:09:54 0
>>255
>「お兄ちゃんに手出しはさせないよ! 私は、『ヒーローを護るヒーロー』だもん……!」

フィリップの前に、1人の少女が立ちはだかる。
「…僕はただ見ているだけだが、君もダイヤモンドを狙ってきた1人かい?」

(翔太郎、どうやらここにも1人いたらしい)

>>263
>「ブラック…ダイヤ…モンドは……まだ無事…か?」

立ち上がろうとしている男を見つめ、サイクロンのメモリを取り出す。
「僕たちはダイヤモンドを守る為にここにいる。
あれが悪用されない為にね。」

―サイクロン!!

(翔太郎、こっちに来てくれ)

「あぁ、任せろ!!トリッシュ社長、ここは任せたぜ!」

会場に到着したトリッシュにその場を任せ、翔太郎は駆け出していく。
黒いメモリ、ジョーカーをベルトに装着しながら現場へ向かう。
―ジョォオカァ!!

「変身!!」 「変身…」

2人の声が重なる瞬間、フィリップはその場で意識を失う。
フィリップの精神が翔太郎の体に宿り、2人で1つのヒーローが現れる。

―サイクロン…ジョォオカァ!!

少女と男の前に、黒と緑の戦士が姿を現す。
「…ダイヤモンドは渡さないぜ。さぁ、かかってきな!!」


265 名前:麗源新貴 ◆S00N9pbnYw [sage] 投稿日:2010/02/13(土) 00:03:14 0
時折植え込みの影を借りて、奔走する警備員の目を欺きながら、
まだ機能している片のサーチライトを目指す。

砂を踏むとも雪を躙るともつかない、芝の上を行く音が、
麗源の潜んだ植え込みの真ん前を過ぎた。警備員に決まっている。
麗源は、その行方に気配だけを縋らせる。
充分な距離の開いたのを確認してから、カードを一枚引く。
結果はそれほど芳しくなかった。しかし、カードを引き直し続け、
自分に有利な結果を求める事は不可能である。
苦虫を噛み潰しながら、声を挙げる。

「太陽の正位置は信頼、そして友情!
 『君と俺とは仲間である』……どうだ!」

足音が止まる。それ以上の反応はない。
麗源は、植え込みから顔を出して様子を伺うと、
やはりと言うか当然と言うか、一人の警備員が所在無さげに突き立っており、
その様子は紛うことなく、暗示催眠に意識を侵された風である。
銃を手にしてはいるが、銃口はだらりと下げられていた。
麗源に油断はない。ヘルムに手を掛けながら、警備員に正対する。

が、麗源の姿を捉えた警備員の目の色が咄嗟に閃く。
それを見逃さない麗源は、ヘルムを脱ぎ払って投げつけ、
警備員の体制を脅かしながら、自ら銃を構えて弾をばら撒いた。
下手な鉄砲なんとやら、乱射する内に、警備員は真後ろに軽く吹き飛ばされ、仰向けに伏せた。
胸は上下しているのだから、恐らく死なずには済んでいるらしい。

「……やっぱダメかぁ。」

というのも、敵愾心むき出しの相手の心を仲間意識に塗り替えるには、
相当な暗示効果が必要であり、人間体の麗源にはそれは不可能である。
先程の吊られた男の暗示では、相手方の意識をそっくり空白にするだけだから可能だったのであり、
意識を丸で逆方面へ向けさせると言うのでは、労力に全くの差があった。
確固たる反対意志があれば、暗示も効力を成さないという証左である。
もっともこれは人間体の場合であるから、
ホルスタインに変身していれば、今一つの押しがあるに違いない。

266 名前:麗源新貴 ◆S00N9pbnYw [sage] 投稿日:2010/02/13(土) 00:04:53 0
ヘルムを被り直して、再び例に寄っての道行きを辿る麗源。
ただし、先程よりは敷地の隅を選び、サーチライトと人目の両方を避ける。
幸い、発見されると言う粗相もなく、やや時をかけたが、
安全のまま、サーチライト装置の陣取る高台へと到達した。

階段を上りながらキャップを取り出し、夜空へ向けて擲つ。
それを認めたか、頂上で物議の醸された内に、
麗源は高台に駆け上がりつつ、滅多な見当をつけて小銃を乱射する。
制御盤に近づいた頃には、辺りに警備員がごろごろ転がっていた。

「とりあえずは、まぁ。」

首尾良くいったであろう。思い切って制御盤を弄る麗源。
撮影機能を切る。そうして倒れている警備員の服を引っぺがし、
ライトのガラス面をやや覆うようにして引っ掛けた。
こうすれば、照射光の形状は円形を崩し、
機能沈黙の手が及んだ事ののろしに成り得る。

時を得顔にニヤつきながら、麗源は高台を降りるが、
果たして意識を繋ぎとめていた警備員の一人が上体を起こし、
ろくに狙いも定めぬまま、小銃を撃ち放つ。

「うそォ!」

銃弾の一発は麗源の肩を掠めた。掠めたに留まる。
とは言え、痛覚もあれば出血もある。
思わぬ復讐を被って、驚愕のまま階段を転げ落ちる。
緊張の糸がついに切れたか、髄液が沸騰を始めた。
池の淵は見えているが、足が縺れて走れない。呼吸も乱れている。

(――どうすンだよッ!)

【両サーチライト無効化完了。肩負傷。高台の下で一時的行動不能に陥る。】

267 名前:赤穂朗氏 ◆y6ZFeIPasDPg [sage] 投稿日:2010/02/13(土) 13:52:41 0
>>260
勝利ッ 勝利ッ…… 大 ッツ 勝利!!

赤穂朗氏の顔は爆炎の先を見据え、勝利を確信した事による
ハイパースマイルに満ちていた。
「フフ……中々、面白かったぞ。だが、私の勝ち…ぃい!?」

>『損傷確認 損傷部位右足 治癒魔法発動 修復まで約49秒』
>「ちっ…油断したぜそんな能力を持ってるとはよ…」

自分の予測と大きく外れた結果に、赤穂の足が震える。
「なんという……事だ」
絶対的な自信で放った攻撃を星真一は耐え切った。
その事実が、赤穂のオルガズムを刺激する。
「いいぞ……私をもっと追い詰めろ。そうだ、もっと……」

しかし、星は銃を構えたまま動こうとしない。
いや、違う。赤穂は状況を察し、邪悪な笑みを浮かべる。
「そうか…回復は出来ても、完全にそれを終えるまでは
身動きは取れないというわけか。
ならば……今の内に暗黒空間にキサマの体をばら撒いてやる!!」

―ピピピピピピピ!!

赤穂が星に迫ろうとした瞬間、腕時計のアラームが鳴り響いた。
時計の時間を確認すると、赤穂は攻撃の手を止める。
「……ちっ。もう食事の時間か。私は規則正しい生活をしていてね。
時間通りに進めないと気が済まないのさ。
君をここで完全に殺せないのは、非常に残念だ。
たとえるなら、ケツの穴にくっ付いたままのチリ紙のカスをそのままにして
街へ出て行くような感じとでも言っておこうか。」

いまだ動けない星から踵を返し、赤穂は廊下の向こうへ歩いていく。

【赤穂、星との戦闘から離脱。赤穂は食事の場所へ行く事に夢中なので
背後から攻撃すれば一撃で倒せます。また時間があればちょくちょく確認するので】


268 名前:星 真一 ◆fSS4JmCGEk [sage] 投稿日:2010/02/13(土) 18:33:33 0
なんとか立っていられる…だが引き金を引けない。
相手が普通の人に見えるからか?それは違う
こんな外道に躊躇う理由は一つもないが、なぜか引けない。
無防備な人間の背中が撃てなかったいや撃ったことがないからだ
まだ迷っているのだ、目の前の生身の人間を
例え精神異常者の人殺し野朗でも。
いや、もしかしてこの状況が許せないのかも知れない
いつでも殺せる状態なのにあえて見逃されている
まるで余裕を見せるようにして。
「クソ……!」
そんな情けない自分を悔やんでいる内に奴が消えてしまう。
「どこ行きやがった!?」
治癒も終わり、急いで走り出すが見つからない。
「迷ってるうちに見失っちまった…ちくしょう!」
だが迷っている暇はない、一刻も早くブラックダイヤを見つけ出し破壊せねばならない
「あの野朗は今度見つけたら決着を付ける必ずだ……!」
猛ダッシュでブラックダイヤが飾られている場所に向かう。


269 名前:秤乃光 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/02/13(土) 22:53:30 0

「無…理を……する…な。…僕、なら…大丈夫…だ。」

ラフな服装の男、フィリップと対峙する中、光の背後から声が零れる。
意識を失っていた本館が、漸く覚醒したのだ。
途切れ途切れの呟きが耳孔を撫でる度に彼女は振り返り、本館の姿を網膜に納める衝動に駆られる。

「…僕はただ見ているだけだが、君もダイヤモンドを狙ってきた1人かい?」

けれども、光の願いが叶う事は無い。
眼前の男から、本館を守り通す。
自らに課した至上の命題をこなす為に、今ここで隙を見せる訳はいかないのだ。

「ブラック…ダイヤ…モンドは……まだ無事…か?」

「大丈夫だよ! 無事だから! だからお兄ちゃんはじっとしてて!」

やはり振り向く事は出来ず、光はただ声を張り上げた。
この『ヒーロー』紛いの青年はブラックダイヤモンドを、力を欲している。
となれば、彼はこの会場の『ヒーロー』も『ヴィラン』も、全てと敵対する立ち位置にいるのだ。

当然、ブラックダイヤモンドを譲ってやる事など出来ない。
ならばせめて、これ以上酷い怪我をしないように護るくらいの事はしたい。
そう思い、彼女はワンドを握る手に力を込めた。

「あぁ、任せろ!!トリッシュ社長、ここは任せたぜ!」

ふと、外から新たに一人の闖入者が現れる。

「変身!!」 「変身…」

「…ダイヤモンドは渡さないぜ。さぁ、かかってきな!!」

一瞬の明滅の後、正中線を境に碧緑と黒で体色を別つライダーが、堂々と拳を構えていた。
丁度壁に開いた穴の前に立ち塞がり、ブラックダイヤモンドへの道を阻むようにして。

機先を制したのは光だった。
ワンドを振るい月明かりの矢を描き、それらを一斉にライダーへと放つ。
けれども殆どは拳によって撃墜され、何発か命中した物も十分な威力は発揮しなかった。

「……だったら!」

一声吼えると、彼女は絵筆に刃と槌を描き加え、床を強かに蹴る。
刹那の間にライダーの眼前にまで急迫し、しかと握り締めたワンドを振るった。

月光の軌跡は三つ。
しかし一つとして虚構の牽制は存在しない。
一度刃が描いた道筋はそのまま形を得て、ライダーを襲った。

270 名前:秤乃暗楽 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/02/13(土) 22:55:04 0
>「そうね…盗られるぐらいなら、いっそ壊そうかしら?
> どうせ、叔父が浮気相手に持ってきたロクでもない珍品だものね」

淡青の光を零す女社長の掌がおもむろに、使嗾めいた緩やかさで地上に向けられる。
何だかブラックダイヤモンドを壊すだとか嘯いているけど、別に私は動揺も制止もしないわよ。
だってその程度の兵装で、そんな事が出来る訳がないんだもの。

いえ、壊せないと言うと何処か語弊が生まれそうだわ。
粉々に砕く事は出来たとしても、それだけではあの石を殺す事は出来やしないの。

>「それに、あのダイヤはある人物を呼び寄せるための撒き餌
> 生憎、どこぞのキザったらしい探偵もどきに邪魔されて釣り針を垂らせ無かったけど…此処まで集まっているなら
> 釣り針を垂らす必要は…無いッ!」

叫び声を追い越して、群青の閃きが私の視界を横断する。
予め描いておいた夜の壁が直撃を阻むけど、決して慢心は許されない。
何せ、敵は閃光。闇を打ち払うモノの代名詞。

宵闇の障壁にじわじわと、青い光が滲んでいく。
これはちょっと、不味いかも知れないわね。
新たに二枚の壁を描き上げるけど、寸暇の時も持たずに破られてしまいそう。

防御ではどうにも、分が悪いわ。
障壁を閃光が貫く矢先の所で辛うじて、私はその場を飛び退いた。
視界の端を破壊の秘められた光が掠めていく。

二発、三発と追撃に放たれる閃きを、縦横無尽に夜空を駆ける事で私は回避した。
見当違いの虚空を射抜いていた光線は徐々に微修正を加えられて、段々と私に肉薄する。
どうにも躱し切れない分は障壁を描く事で辛うじて凌ぎ、だけど私は考える。

この回避に意味は無い。
ただ悪戯に時間と体力を浪費していくだけで、待っているのは今以上の窮地しかない。

「いいわ……。だったら、遊びましょう? たまには子供らしく。貴方も堅苦しい事ばかりしてないで……」

ワンドに秘めた夜の色を、自分の周囲に球を描くべく走らせる。
宵闇の中に、夜色のドレス。
さぁて……これならどうかしら?

散々踊らされたお礼に、一発くらい引っ叩いてやりたいものね。
控えめに作った冥夜の小槌を手に、私はゆっくりと、彼女に近付いていった。

271 名前: ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/02/13(土) 22:56:34 0
夜風に身を晒し待ち構えていた『ヒーロー』達が、一斉にトリッシュ邸へと雪崩れ込む。
けれども邸へ飛び込む影は『ヒーロー』だけに非ず。
漁夫の利をせしめようと潜んでいた『ヴィラン』達もまた、好機と言わんばかりに夜闇から姿を現したのだ。

「いよっしゃドンピシャ! さあさあ悪党共! 年貢の納め時だぜえ!?」

断固として握り締めた両拳を打ち合わせ、『不倒不屈』は雁首揃えた『ヴィラン』へと迫る。
髭が生えていると言うよりは、髭の中に顔が埋もれていると喩えた方が正鵠を射ている彼の表情に、獰猛な笑みが宿った。

『ヴィラン』達は一瞬たじろぐも当然の如く、次の瞬間には各々の武装を展開した。
いち早く『不倒不屈』を標的と捉え火を噴いたのは、対ヒーロー仕様の機関銃だ。
一発一発が対物ライフルの弾丸に匹敵するそれを、『ヴィラン』達は改造強化された膂力によって容易に発砲する。

数多の銃口が猛然と吼える。
雨霰と放たれる銃弾が、『不倒不屈』の一身へ襲い掛かった。

「んっはっは! 甘え甘え! その程度じゃこの俺様はぶっ倒せねえぜ!?」

しかしあろう事か。
『不倒不屈』は両腕を広げて掲げ、無防備のままに『ヴィラン』達へと邁進闊歩していく。

無数の弾丸が彼の体を捉えた。
だがそれらは悉く弾かれ、本来の役目を果たす事なく足元に沈滞した闇に沈んでいく。

「ほらほらどうしたあ!? そんなんじゃすぐに捕まっちまう……ぞっと!」

獲物に喰らい付く猛獣宛らに、『不倒不屈』は一足に『ヴィラン』達との距離を詰める。
だが次の瞬間、彼の視界を猛然と迫った鉄の拳が埋め尽くした。
前進に合わせて打ち込まれた一撃を避ける術を彼は持ち合わせていない。
拳はものの見事に彼の鼻柱に衝突した。

一拍置いて、『ヴィラン』達の下劣な高笑いが夜空に響く。

「ざまあみやがれ筋肉バカ! こちとらテメーの対策は日夜検討されまくってんだよ!」

仲間達の声を背に受け、『不倒不屈』に拳を放った怪人が胸を張った。

272 名前: ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/02/13(土) 22:57:49 0
「改造技術の粋を集めたそいつのパンチにゃ、流石のテメーも沈むだろ! やっちまえ!」

強化怪人は『不倒不屈』に勝るとも劣らぬ筋骨を誇る。
彼は足を肩幅にまで広げると拳を固め、『不倒不屈』へと迫った。
右の拳を鳩尾に沈め、左の拳が弧を描き脇腹を捕らえる。
体がくの字に曲った所で、打ち上げられた拳が顎を強かに穿った。

「ざまあねえな! 一方的じゃねえか!」

しかし背後の仲間達が罵倒を重ねる中、強化怪人は焦り、内心で冷汗の滝を作っていた。
拳の打撃は全てが完璧だった。
三箇所の急所をそれぞれ全力で貫き、全てに手応えがあった。

にも関わらず、『不倒不屈』は倒れていない。
あまつさえ身じろぎ一つさえ、してはいないのだ。

「んっはっは、いやあ立派な筋肉だ」

出し抜けに、『不倒不屈』が笑う。
笑いながら、緩やかに拳が振るわれる。
ただそれだけの拳が腹を打っただけで、強化怪人は崩れ落ち膝を突いた。

「俺も大樹。手前も大樹。じゃあ何で手前だけが倒れると思う?」

右腕を付け根から振り回し、跪く強化怪人の眼前に歩み寄って『不倒不屈』は問い掛ける。

「そりゃあな! 手前らの『根が腐ってる』からよ! 根っこが腐ってちゃ、どんな大樹もぶっ倒れるってもんだぜ!」

振り上げられた鉄拳が顔面を見事に捉え、それっきり『強化怪人』が立ち上がる事は無かった。

273 名前: ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/02/13(土) 22:58:48 0
「さあて、お次はどいつ……だぁあ!?」

両拳の骨を鳴らし悪党共へ迫る『不倒不屈』の眼前に、突如として爆炎が巻き起こる。
少々の遅れを伴って、騒音と暴風を撒き散らしながら、邸の上空に黒塗りの大型ヘリが訪れた。

「オイ手前、当たったらどうするつもりだったんだあゴルァ!」

鬼の剣幕で『不屈不倒』が怒鳴り散らす。

「当たってねえんだから喚くなや糞爺」

横腹の開放されたハッチから身を乗り出して、『一騎当軍』が謗りを交えた口調を返した。
彼の眼下では多くの悪党と一人の『ヒーロー』が我鳴り、銃声を響かせている。
けれども高度と速度の差が絶対的な壁となり、それらは彼に到達する事なく夜闇に溶ける。

「当たるかよ馬鹿共が。さあてどうやって散らしてやろうかねえ」

遥か下方で虫けらのように足掻く連中を見下し俯瞰し、『一騎当軍』は口端を吊り上げた。
適当に視界を揺らすと、視界の端で一際固まって明滅する殺意の蛍に指先を向ける。

「とりあえずあの辺だな。派手に散らせ、『プライベートプライベート』」

指示を受け、ヘリの運転席に座する人影が首を縦に振る。
彼には、顔が無かった。
宵闇がガラスから透過している事は関係無く、操縦手たる人影は顔を持っていなかった。

顔の無いパイロットが操縦桿に備えられたスイッチに親指を乗せた。
力強くそれが押し込まれると同時、ヘリの底部が開き、番いのミサイルが姿を外気に晒す。
産声も上げる事なく、ミサイルは夜空の静謐を破らぬままに射出された。
地上へと白煙の道が描かれ、爆音と紅蓮が脆弱な蛍火と悲鳴を喰らい尽くす。

「っしゃあ! 今ので十匹はぶっ飛んだな! さあてお次は……!」

「だあから手前! さっきから危ねえんだよ! そもそも『私的な兵卒』って、手前こそくだんねえギャグ飛ばしてんじゃねえか!」

「……よぉし、まずはあの五月蝿え糞爺からブッ飛ばすか!」

地上の『不倒不屈』を決して視界から外さず、『一騎当軍』は操縦手に旋回命令を下した。
ヘリの前部に備えられた標準器が徐々に、『不倒不屈』を中心に定めていく。
両者が完全に一致した瞬間、『一騎当軍』は発射を命じようと目を見張り――それ故に気が付けなかった。

ヘリよりも更に上空で、トリッシュ・スティールと秤乃暗楽が二人きりの舞踏会を繰り広げているとは。
流れ弾の閃光が闇に紛れた機体を貫いて、ヘリは制御を失い急激に高度を落としていった。

274 名前: ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/02/13(土) 22:59:35 0
 


「なーにやってんだか」

墜落するヘリを呆れ顔で見上げて、『PP』は嘆息を宵闇に溶かした。

「そもそも調子乗り過ぎなのよねえ。こいつらがロケランでも持ってたらどうするつもりだったのよ」

溜息を重ね、目を瞑り顰めた顔で首を左右に振りながら、彼女はしみじみと愚痴を零す。

「大体上から一方的に爆撃って、そりゃアンタ悪役の仕事でしょうに。やだやだ、これだから軍人って奴は……」

「……だぁああああああああああ!! てめえ! 俺達を無視するんじゃねえ!」

彼女の周囲から怒号が重奏となって大気を震わせた。
目に余る度を越えた無視にいよいよ、『PP』を取り囲む『ヴィラン』達が痺れを切らしたのだ。

「えー、だってアンタ達弱いしぃ〜?」

「気持ち悪い喋り方してんじゃねえ! ちったあ自分の歳考え……」

最後まで言葉を紡ぐ事は許されなかった。
悪態を漏らした『ヴィラン』の一人が浮かび上がり、脳天から地面へと垂直に落とされる。
顔面から首根っこまですっぽり芝生に埋もれた彼は暫しもがき、
やがて頭部を失った昆虫よろしく力なく沈黙していった。

「じゅ、十四号――ッ! てめえ、何て事しやがる! コイツは……コイツは、このヤマを終えたら!
 足を洗って血痕するって言ってたんだぞ! それを……それを……! 可愛い年下のかの……」

咽び泣きながら十四号を掘り起こす彼もまた、不意に足を不可視の手に捕まれたように宙へと浮かび上がる。
年下の彼女なる単語が気に入らなかったらしい。
『PP』は剣呑に細めた双眸で彼を睨み、拳から立てた親指を地面に向ける。
勢いよく、彼は頭から肩に掛けてを地面に埋葬された。

「あ……うあ……十八号まで! もう許さねえ! オイ出番だぞ、鉄騎一号!」

宵闇の奥から、地響きの如き轟音が響く。
規則正しいリズムで刻まれるそれは段々と、『PP』の元へ近付いていく。
やがて音の出所たる正体が、夜の暗幕を抜けて姿を現した。

それは黒光りする金属の塊だった。
随分と尖鋭なデザインの目立つそれは随分と無骨であるが、確かに人の形をしている。

「超硬度、超重量! てめーの『テレキネシス』じゃあコイツは浮かべらんねえだろ!?」

馬鹿笑いする悪党共に、『PP』は露骨にげんなりとした表情を浮かべた。

「何よ、そんなデカブツ……」

右手を翳し鉄騎一号を睨め付けると、彼女は己の異能を顕現する。
しかし、浮かばない。
不可視の念動力は巨大な装甲を包みながらも、浮遊させるには至らなかった。

275 名前: ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/02/13(土) 23:00:34 0
「へぇ……ちったあ頭使ってるのね……」

途端に、『PP』の唇が歪な曲線を描き上げる。

「じゃあ『コレ』はどうかしら?」

言葉と同時、彼女の姿が音も無く闇と挿げ変わった。
直後、鉄騎一号の背後へと移動していた彼女の手が、冷冽な鎧に密着する。

「瞬間移動……! だが接近戦なら寧ろこっちの望む所!」

突然の接近に面食らいつつも、悪党共はどこか虚勢めいた奮起した。
けれども肝心の鉄騎一号はどうした事か。
背後を取られたままの姿勢から、微動だにしない。

「おいどうした鉄騎一号! またとないチャンスじゃねえか!」

「……無理無理。こうなったらもう、コイツはただのウドの大木よ」

先程までの愉悦の表情は何処へやら、つまらなさそうに『PP』は呟いた。

「『サイコキネシス』と『テレキネシス』の違いって、分かるかしら?」

不意に、彼女が脈絡の無い話題を零した。
答えを待つ事もなく、彼女は話を続ける。

「答えは距離。『テレキネシス』って言うのは遠隔念動力の事を言うのよ」

つまり、と言葉が繋がれる。

「今私がやってるのは『サイコキネシス』。『直接念動力』なのよ。当然どっちの方が強力かは、語るまでもないわよね?」

一呼吸置いて、彼女の口上は尚も続いた。

「さて話は変わるんだけど、『メタルベンディング』って知ってるかしら? まあスプーン曲げの事なんだけど」

退屈げにしていた彼女の表情がふと、再び悦楽に支配される。

「今から私がしようとしている事は、なんて言うのかしらね?」

言葉の終わりを締め括るように、鉄騎一号の肢体からおぞましい破壊音が漏れた。
ごきり、ばきりと、人体から発してはならない音が次々と。

276 名前: ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/02/13(土) 23:01:27 0
罵倒の叫びが上がるが、それですら辛うじての限界。
誰一人として抗えぬまま、鉄騎一号は無残な姿と成り果てて味方の元へと投げ捨てられた。

「心配しなくても殺しちゃいないわよ。ベキベキした音は鎧の方を曲げただけ」

『ヴィラン』達とは酷く温度差を感じる無聊に満ちた声で、『PP』は言い捨てた。

「ソイツ自体はせいぜい腰痛止まりよ。まあ鎧が歪んじゃってるから、脱ぐ時地獄だろうけどね」

「……っ! ち、畜生! 覚えてやがれ!」

「はいはい、一昨日おいで」

情けない捨て台詞を最後に撤退していく『ヴィラン』達を、彼女は笑顔で見送る。

「どっちが悪党かわからねえ……!」

茂みに隠れていた、逃げ遅れの一般人がぽつりと呟いた。



「あー……何、もう皆始めてるんだ」

堂々かつのんびりとした歩調で、『鈍足神速』はトリッシュ邸へと踏み込んだ。
首を左右に振ってみると、既に其処彼処で戦火が上がっている。
視界の中央たる正面では、何やら本当に業火が舞っているから始末に終えない。

「ブラックダイヤモンドとやらは……もしかしてアレ? 随分と前衛的な展示方法だね」

言い終えてから、突っ込み役無しに冗談を飛ばすのは存外にお寒いものだと、彼は溜息を吐いた。
しかして立ち止まり、俯き加減の顔を上げ、討つべき悪党を索敵する。
丁度『ヒーロー』と『ヴィラン』が鬩ぎ合う間隙を縫って、庭の中央へと疾駆する一団が視野に収まった。

「やあお生憎様。卑屈な小悪党めいた手口は悪くなかったけど、ここは今から通行止めだよ」

先回りして悪党共の前へと立ち塞がり、黒衣の裾をはためかせて彼は宣する。

「やかましい! 退き腐れクソガキ! 毎度毎度邪魔しやがって!」

立ち止まる事無く、勢い任せに先陣を切った一人が『鈍足神速』へ殴り掛かった。
対して彼の行動はただ一つ。
首を振り、右の目を覆う長髪を払い除ける。

『鈍足神速』が己の意思で取った対策は、それだけだった。

「――『ミクロマクロ』始動。当座の敵は一人、制圧しますか? ――『YES』」

口元が小刻みに震え、彼は眼前にまで迫っていた拳に左掌を添えた。
最小限の力で以って一撃をいなすと同時に腕を引き寄せる。
体勢を崩し近寄ってくる悪党の腹部に、渾身の右拳を減り込ませた。

277 名前: ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/02/13(土) 23:02:42 0
「――追撃は? ――『YES』。気絶させた後に保持」

澱みない動きで左手を返し、裏拳が顎を強かに殴り抜く。
悪党の瞳から意識の色が消えた。
崩れ落ちる悪党の頭髪を掴み、『鈍足音速』は盾として彼を保持する。

「……畜生!」

「――小銃を確認。人質の価値は認められるか? ――『NO』。最も効率的な手段で放棄」

銃を構えた悪党目掛け、盾とされていた男が突き飛ばされる。
気絶した人間などただの重りだ。
寄り添われれば視界は狭まり、銃を構えるなど到底不可。

「っ! クソッ! 邪魔……」

『鈍足神速』の行動は迅速だ。
小銃の男が凭れ掛かる味方を払い除けた時には既に、彼を射程に収めていた。
夜闇の中から、右腕が振るわれる。

先端に宿る武器は拳ではなかった。
拳よりもずっと高威力、高効率の兵器。
大気の悲鳴を引き連れて紫閃が暗闇を切り裂き、新たな悲鳴を誘った。

「スティール・インダストリアル謹製スタンロッド。お味の方はどうだったかな?」

返答はなく、代わりに放たれるは無数の銃弾。

「回避法は三通り、選択を。――アンサー『ミスリード』」

スタンロッドが『鈍足神速』の手を離れ、宙を舞う。
紫電を迸らせながら緩やかに飛行するそれは、非常に目立つ目印で。
故に悪党達はロッドの描く軌道を、『鈍足神速』の移動と勘違いした。

銃口は彼本人から逸れて、銃弾はロッドを追って虚空を走る。

「――馬鹿は五人。制圧は? ――『可能』」

予備のロッドを取り出し、彼は疾駆する。
直前まで稲光を潜ませて、狙い済ました一撃。
悲鳴が上がる。

何が起こったのか把握出来ず、だがひとまず銃撃を止めた二人目を軽く殴打する。
電撃が主体である以上込める力は最低限でいい。
事実二人目は先の二人同様に激痛を訴える叫びを上げ、倒れ込んだ。

278 名前: ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/02/13(土) 23:03:30 0
「ンなっ!? ……クソッ、はええ!」

悪党の一人が思わず零した声は、正しく正鵠を射抜いている。

初撃を凌いだ時には既に反撃の拳が。
反撃が成功したのならすぐさま追撃が。
とにかく、『鈍足神速』の行動は、迅速を極めているのだ。

眼前に相対する三人に対して、まず彼は敵地深くへと潜り込んだ。
急な接近に彼らは焦燥に支配され銃を取り回す。
だが余りに三人が近かった事が災いして、各々の銃身はぶつかり、互いの行動を阻害した。

無論、これが『鈍足神速』の狙い。
無力化された銃を尻目に、悠々と三人を稲妻で殴り付けた。

「ち……くしょう……! 化けモンがぁ……!」

鮮やかの至りである彼の立ち回りに、辛くも意識の糸を繋ぎ止めた一人が罵倒を零す。
『鈍足神速』は彼を見下ろすと、再度首を振り、右眼を長髪で隠匿した。

「失礼な事を言うなよ。僕はいたって普通な人間さ。別に特別な力がある訳じゃない」

「……よく言うぜ」

悪党は嘲笑する。
しかし、『鈍足神速』の言葉に嘘は含有されていなかった。

「嘘じゃないぜ? 『ミクロマクロ』なんて大層な名前が付けてるけどさ。
 所詮は『手間暇掛けたサボり計画』だよ、こんなの」

彼の能力『ミクロマクロ』。
その本質は『戦闘の細部にまで条件反射を仕込む』事にある。
拳を放たれたらどう対処するか。蹴りならば、銃ならばどうするか。
無数の選択肢を逐一意識に刷り込み『マクロプログラム』として、
とある条件――『右眼を覆う髪を払う』事でそれを起動する。

脳を介さない反射のみに寄る攻防こそが、彼が『神速』の名を冠している所以だった。

「普通の人間だって、『ヒーロー』に憧れたりするモンだよ。ま、アンタらには無縁の感情か」

雷撃を待とうロッドで最後の一人を小突き、『鈍足神速』はぽつりとぼやいた。



【『ヒーロー』『ヴィラン』多数乱入。NPC共々ご自由に動かして下さい。背景扱いでも無問題です】

279 名前:真性 ◆8SWM8niap6 [sage] 投稿日:2010/02/14(日) 02:11:44 0
素性不明の協力者、タロット使い・麗源新貴と一時的に行動を別った俺、真性道程!
彼が西側のサーチライトを潰している間に停電を起こす為配電盤を叩き潰すミッションを請け負った俺はスティール邸の東を駆ける!
右へ左へ刻一刻と変化し続ける状況!チラ見した黒ゴスの安否も心配だ!つるぺた心臓に定評のある俺に明日は来るのか――!!

以上!前回までのあらすじッ!!

どうにもおかしい。
ある一時を境に道程(俺じゃないほうね)が楽になった。急にだ。あれほどうじゃうじゃいた警備員がいつのまにやら姿を消し、
角を曲がる際にいちいち安全を確認せずとも弾はおろか怒号すら飛んでこない。静まり返った屋敷に絨毯を踏む音だけが鼓膜を揺らす。

「撤退命令が出てる……のか?」

少なくとも俺の超絶戦闘力に恐れをなしたってわけじゃあなさそうだ。
小銃を担いでるとはいえ俺は一人、囲んでフルボッコなり遠距離から狙撃するなりやりようはあるはずだし、俺もそれを警戒してる。
あまりに不気味で不可思議な、静寂。ここまで上手くいきすぎてると逆に不安になってくる。
ので、耐弾ガラスで嵌め殺しの窓の一部を"神様"で切り抜き、首をちょいと出して庭の様子を見てみることにした。有意実行。首を出す。

目の前を軍用ヘリが横切り、眼前で芝生に突き刺さり、目と鼻の先で爆発した。

「んなっ――!!?」

咄嗟に首を引っ込め、爆風が流入しないよう"神様"で穴を塞ぐ。窓の向こうで爆炎がガラスを舐め、嵌め殺しのはずの窓がびりびりと震えた。
一瞬、窓を塞ぐのが遅ければ俺の鼓膜が殉職していた。二瞬、首を引っ込めるのが遅れれば俺の生首がこんがり生首にジョブチェンジを果たしていた。
怖え。マジ怖え。警備員相手に無双して調子に乗ってたけど、よく考えたら今の俺は『常人よりちょい強い』レベルでしかないのだった。
屋内戦用の弱装弾を二三発貰ったって死にはしないが、あんな爆発に巻き込まれたら死ぬ。普通に死ぬ。普通に死んじゃう。

「恐ろしいぜェ――命のやりとりってのは」

今墜落したヘリにも操縦手がいたはずだ。顔は見えなかったけど諦めたように微動だにしない誰かを俺は確かにコクピットに見た。死んだんだろうか。
どうにも庭での戦闘は激化の一途を辿りまくってるみたいだ。ついにヘリまで出てきたか……っつうかこんな夜更けに街中を飛んできたのか?
相当近所迷惑になったろうに。どんなモラルハザードだよ。

「麗源氏は大丈夫かァ……?」

庭に取り残してきた同行者に思いを馳せる。邸庭各地で勃発している争いはいよいよ以って混沌を極めてるっぽい。
窓に開けた穴から舞い込んでくるBGMは怒号に怖声、轟音劈音破砕音と各種品揃えも充実。どうにも数十人規模で戦闘が起こってるらしかった。
と、他人のことを心配してる場合じゃない。俺は俺で、なんだかのっぴきならない障害が待ち受けてるらしかった。前方を見る。

初めは、ただの赤外線感知装置の親戚だと思ってた。視認できる濃さの光の線が、行く手を阻むように廊下の壁と壁を繋いでいる。
さながらワイヤートラップか、もっと原始的に言うなら、鳴子の紐。こんだけ丸見えならラクラク躱して突破だぜ、と高を括って進んでみる。
光線もこちらへ向かって進んで来た。それでもその速度は歩く程度で、避けられないものでもない。やがて光線は廊下に置かれた壺を横切り、

横切られた壺が真っ二つになった。

「何ィィィィィ〜〜〜〜〜ッ!!?」

どうやらマジにレーザーメス。触れた箇所を焼き斬り、寸断するトラップ!しかも絶望的なことに壺斬ったあたりから光線の数が二本に増え、
瞬く間に二倍になり、連動するのか速度すら上げて増え続けるレーザートラップが向かってくる。本数が両手の指を突破したあたりから俺は踵を返して走る。
躓いて転びでもしたら一瞬でサイコロステーキかトコロテンだ。少なくとも"神様"じゃ治せない規模の致命傷だね!
迫り来る光線の速度は最早俺の遁走に追いすがるほどにまで加速していた。心臓が寿命を縮めまくるのを尻目に必死で退路を探し出す。

「あった――!!」

空回り気味に屋敷を駆け抜け、その都度追ってくる光線に尿漏れしながらついに施錠されてない部屋を発見する。
ここに逃げ込めばなんとかやり過ごせるだろう。ほぼ願望な予測に任せてドアを蹴り開けまろび込む。
窓の外では、西のサーチライトが翳っていた。――生きててよかった、麗源氏。


【光線に追われ部屋(応接室?)へ】


280 名前:本舘 ◇SGue2uUfkw[sage] 投稿日:2010/02/14(日) 21:25:54 0
>>264>>269どうやらブラックダイヤモンドは無事らしい。
まだチャンスは…あるか?
………いや、ほとんど無いに等しいな…。
こんな体じゃロクに闘う事すら出来ない。
仮に闘えたとしても、今トリッシュ邸に集まって来ているヒーロー、ヴィランの中じゃ僕のレベルは下の下〜下の中…。
僕と少女の前に立ち塞がるこの男もまた、僕より強いだろう。
2人の闘いを見ていると、いかに自分が未熟なのかと言う事が分かる。
ディフェンス、オフェンス、スピード、キャリア…
どれをとっても僕がこの2人に勝てる気がしない。
僕は2人の少女にも目の前の男にも雷羽にも、多分トリッシュにも勝てない…。
そんな男がヒーローもヴィランも敵にまわしてブラックダイヤモンドを独り占めしようなんて夢のまた夢だったんだな…。
認めたくはないが、今の僕の状況がそれを物語っているんだ。
雷羽に一撃で体の自由を奪われ、挙げ句の果てには少女に身を護られている…。
あまりにも情けない状況に涙が出てきた。
涙と共に、強い想いが言葉になって溢れてくる。
この言葉を人の前で…しかも、涙を流しながら言う時が来ようとは…。
「強く……なり…たい…!!
 誰よりも……強くっ………。」
口に出したところでそれがすぐに叶う夢だとは思っていない。
そんな事は分かっている。
だが分かっていてもなお、言わずにはいられなかったんだ。

281 名前:仮面ライダーW ◆/gk7MDoUlwA4 [sage] 投稿日:2010/02/14(日) 21:58:16 0
>>269>>280
Wの宣言に立ち向かってきたのは意外にも少女の方だった。
もう1人の男は戦意を失っているのだろうか、攻撃をしてこない。

>「……だったら!」
>一声吼えると、彼女は絵筆に刃と槌を描き加え、床を強かに蹴る。
>刹那の間にライダーの眼前にまで急迫し、しかと握り締めたワンドを振るった。


「なっ・・・おい、フィリップ!!」
回避が間に合わず、軌跡の内の1つがWの装甲を切り裂く。
火花を上げ、大きく後退するも踏ん張りながら少女へ問いかける。
「おい!ちょっと待て・・・あの男はともかくお嬢ちゃんまで泥棒か?
そんな歳して泥棒の仲間なんてやってたら親御さんが泣くぞ!」

翔太郎が叫ぶ中、右側のサイクロンメモリを制御する「精神」フィリップは
冷静に状況を分析していた。
《翔太郎、その少女は敵ではないかもしれない。むしろ、こちら側の可能性がある。
それに、あの黒い強化服の男は……恐らく怪我をしている。それに怪我をしているようだ》

フィリップの言葉に翔太郎の手が止まる。
《ここは僕に任せておきたまえ》
サイクロンメモリをベルトから抜き出し、金色のメモリーを装着し―!
「あぁ、分かった。とりあえず防戦しながら様子を見るしか無さそうだな」

――ルナァ!!――ジョォォカァ!!

金色のメモリーがダブルの右側を緑から金へと変化させる。
神秘の力を込めたルナメモリーの力が発動する。

>「強く……なり…たい…!!
>誰よりも……強くっ………。」

男の不意の言葉に、翔太郎は振り向き言葉を返す。
「あんたも、ヒーローなら…ダイヤモンドの力なんか借りるんじゃねぇ。
自分の力は、自分自身で築くしかない…そう、俺は思うぜ。」

【ルナジョーカー:ルナジョーカーはダブルの派生フォームの一つ。
「神秘の力」による変幻自在な能力と「技の力」による身体能力を組み合わせ、
手足を伸ばしたり、予測不能な動きのトリッキーな戦法で敵を翻弄する金と黒の戦士】



282 名前:仮面ライダーW ◆/gk7MDoUlwA4 [sage] 投稿日:2010/02/14(日) 21:59:15 0
≪怪我って2回書いちゃいました。ミスです、申し訳ありません≫

283 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/02/15(月) 23:35:06 0
948 :名無しになりきれ:2010/02/15(月) 22:28:34 O
赤穂基地がい過ぎる


949 :名無しになりきれ:2010/02/15(月) 22:31:46 0
本人は面白いと思ってるようだからいいんじゃね
GLぎりぎりだけど、今のところ削除するほどでもないし
不快に思うならNGに入れれば無問題


284 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/02/16(火) 02:11:33 0
本人以外も面白いと思ってるから問題ねーんよ

285 名前:旋風院 雷羽 ◇zYCuy2/gkI[sage] 投稿日:2010/02/17(水) 19:30:49 0
混乱は混沌を経て、もはや饗宴の様相を呈してきている。
ヒーローとヴィラン。黒い宝石を中心として始まった二つの概念の衝突。
初めは散発的に発生していたその騒乱は、新たに集まってきた役者達を加え
今や巨大な屋敷の全域で行われていた。
爆音、破砕音、切断音。静謐な夜を打ち砕き騒ぐ彼らの様子を
敢えて言葉で表現するのなら「祭」という単語が相応しいだろう。
黒も白も、全も悪も、清も濁も、非日常(ハレ)の中で混ざり踊り狂う。

そんな饗宴の場で、倒れている異形の影一つ。
その影が持つ名は旋風院雷羽。
先程不可思議にも試作装甲『アダム』との融合を果たし、
漆黒の鎧に白の線を奔らせた姿へと変化した後に気絶した、一介のヴィランである。
その雷羽は、誰もが誰も饗宴に浸り、気絶している彼の事など気にする
存在がいなくなった頃に、ギシギシと金属が軋む様な音を鳴らし、起き上がった。

「―――……―……――……」

ただし、起き上がったその口から出たのは呻き声の様なうなり声。
力なく両手を重力に任せるままに下げた状態で、目の部分の光も無く、
雷羽はただ停止していた。
気絶、しているのだ。立ち上がったにも関わらず、雷羽は気絶しているのである。
覚醒したのはその身体機構のみ。意識は未だ夢うつつ。
そんな雷羽が何故立ち上がったかと言えば――――“命令”の実行。洗脳。
自身の命よりも彼の『ボス』の命令を優先する様に製作されたその人格が
無意識に彼を動かしたのである。
意外かもしれないが、無意識という物は人を動かす事が出来る。
有名な例では、夢遊病患者の徘徊や一部の精神安定剤の副作用から来る
意識混濁状態の中での奇行といった物がそれに当たる。
偽者。贋作。模造品。
素材の人格を殺すという趣旨の元に埋め込まれた空虚な意思だが、
その強さは天然の意思をも上回る。何せ、その人格の根源に根付く物である上に、
不純が一切ないという狂気で構成されているのだから。

そうして雷羽は気絶したままで、無意識のままで、やがて一歩足を踏み出した。
黒いダイヤモンドへ向けて。当然、己が飼い主に与えられた目的を果たす為に。

286 名前:旋風院 雷羽 ◇zYCuy2/gkI[sage] 投稿日:2010/02/17(水) 19:31:47 0
「んっはっは!ざまあ見やがれバーカ!!
 ……うおっと!ここにもヴィランか! 今日は大漁だなあ!!」

だが、そんな雷羽に一つの影がぶつかってきた。
悪ある所にヒーローあり。その影の持つ名は『不倒不屈』。
もう一人のヒーローとの弾幕戦が回避された為に自由になった大樹の様な男である。
『不倒不屈』は雷羽という悪の姿を確認すると、一瞬の迷いも無くその拳を雷羽の
顔面部分に振り下ろす様に叩き込んだ。
鋼のように硬く岩山に様に重いその拳は、正に見敵必殺。

「……ほう、やるじゃねぇか!」

だが、今回においてその一撃は必殺と為らなかった。
『不倒不屈』の顔に浮かぶのは、感嘆と笑み。彼の撃ち放った拳は雷羽を床へと叩きつけ、
頑強なその床に放射状の罅を生み出したが――――全力では無かったとはいえ、
『不倒不屈』の拳を受けてから僅か数秒の後に、それを受けた雷羽が
立ち上がってきたのである。それも、大きなダメージを受けた様子も無く、だ。

「んっはっは!!最近は一撃でぶっ倒れるモヤシばっかでつまんなかったが、
 こいつぁ楽しめそうだ!いよーし、そんじゃあ、次はもっと気合入れてぶん殴るか!
 なかなか丈夫みてぇだが……手前の鎧はこの俺の筋肉に勝てるか!!?」

そうして『不倒不屈』が腰を要れ、先程のそれとは異なる鬼神の如き一撃を
叩きこもうとした時、それは起きた

「――――ガ、フッ!?」

銃の乱射にも耐える『不倒不屈』が膝を付いたのである。口から血を吐きながら。
見れば、その腹部には赤黒い痣が出来ていた。鋼の体現たる腹筋が
打ち破られたのである。 いつの事か?

決まっている。拳を叩き込まれると同時に、雷羽が恐るべき速度で『不倒不屈』の
腹に拳を打ち込んだのだ。

ガシャリ ガシャリ ガシャリ

聞こえるのは、銃弾を装填する様な音。鳴るのは三度。音は雷羽の右腕部分から。
そしてその音がする度に雷羽のボディの白い線が光を放ち、回数が増える度に
その光は強くなっていく。

287 名前:旋風院 雷羽 ◇zYCuy2/gkI[sage] 投稿日:2010/02/17(水) 19:32:34 0
……リアクターコアというトリッシュが開発したアーマー『アダム』に装着されていた
特殊なエネルギー装置がある。エネルギー砲の発射や、飛行をも可能とする
超科学の産物であるリアクターコアだが、それはダークメイルと融合した際に
その多彩な機能を殆ど失っていた。そして、その代わりに一つの機能に
その全スペックを付与する事となった。その機能とは即ち、

『身体能力の強化』である。

もしもバイクにジェットエンジンを搭載出来たら、どれ程の出力が出せるだろうか?
340トンの鉄の塊を空へと浮かばせるその動力を、全てあの小型の機械に使用出来たら?

――――そんなもの、絶対無敵に決まっている

そして、雷羽の新ボディはそれを可能にしていた。
リアクターコアという超絶無比なエネルギー源を獲得し、
改造人間の人間を遥かに上回る頑強さがボディに掛かる負荷に耐えさせ、
暴走しがちだったアダムのAIを、処理内容を単純化させる事で安定させ、
銃弾を装填する様に段階的にエネルギーを増加させる事で、過度な消費を防ぐ。

正に、悪魔の兵器。名づけるならそう――――『ブラックアダム』とでも言うべきか。

そうして、未だ無意識のヴィラン『ブラックアダム』は、『不倒不屈』を
もはや敵ではないと言う様に無視して、遅々とブラックダイヤに向けての
歩行を再開した。

288 名前:星 真一 ◆fSS4JmCGEk [sage] 投稿日:2010/02/18(木) 02:23:27 0
なにやら騒がしくなって来たため、余計なトラブルに巻き込まれたくないので
同化迷彩を使う事とする。
もちろん、トリッシュ嬢に見破られた手抜きなどではなく本気でやらせてもらう。
かなりマジで魔術構成をし、背景と同化する。
同化した上に見た者の認識が書き換えられ、それが当然と思うようになる
考えられる限り複合、複雑化しランダムで変わる形式で構成したため上位魔術師でも見破るのは
至難の技に近い芸当までに完成させた。
もちろん無臭、無音で完全に気にしなくなる。
「ったくドンパチうるせぇんだよ!どいつもこいつも邪魔すんじゃねぇ!」
人を二人も犠牲にしながら堂々と飾られているブラックダイヤ――――
たかだか石ころ一つのために人の命が失われているのに怒りはとっくに臨界点を超えていた。
「絶対にあのダイヤだけは破壊する俺の手で必ずな!」
そうこう言っている内にたどり着く。
扉をぶち破り、ブラックダイヤのある部屋まで到達する。



289 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/02/18(木) 03:13:42 0
>>288
部屋ってえか、庭の中央じゃね?
まあ脳内修正しとくけど

290 名前:トリッシュ ◆.H4UqpaW3Y [sage] 投稿日:2010/02/18(木) 14:48:03 O
少しずつ彼女を追い詰めていたと思ったが、どうやらそうでもないらしく
先ほどとは違って、ゆっくりと此方に近づいてきた。
狙いが完璧でないとふんだのか、それとも弾切れか
どちらにしても無駄な希望だ
何度か修正を加え狙いは完璧なものになっているし、弾切れを心配するような武装でもない
それを知らしめるかのように、彼女に向かって再度リアクターレイを放った。

しかし、甘かったのは此方の考えだった。
直撃を確信した瞬間、彼女の周りを廻る球体に弾かれたのだ。
そう来るならば、此方にも手はある
対装甲用小型ミサイルを腕部から出し、即座に発射する
これならば、例え直撃でなくともこれならダメージは与えられる。

291 名前: ◆.H4UqpaW3Y [sage] 投稿日:2010/02/18(木) 15:05:23 O
>>279
死に物狂いで隠れた部屋を見渡してみると、その部屋はとても質素で奇妙な造りをしていた。
小さな窓1つと部屋の真ん中に座り心地が良さそうな1人掛けのソファー1つ
使用人の部屋にしては生活感がまるでなく、物置にしては埃臭くもない奇妙な雰囲気の部屋だった


292 名前:麗源新貴 ◆S00N9pbnYw [sage] 投稿日:2010/02/18(木) 20:27:02 0
ヒトは夢から、案外、あっけなく覚める。
たかだか銃弾の一撃でさえ、現実と麗源の魂との溝を埋めるには、
充分と言うよりかは過分を満たしていた。
うつ伏せるその満身に廻っていた氷点下の水銀が、形態を変化させ、
赤く熱い尋常の血液へと回復して、しかも次第ながら沸騰する。
灰色に凍り付いていた脳髄もまた、やがては脈動を始めるのか。

まず彼の内によぎったものは、偸盗に加担していることへの後悔。
蝙蝠さながら、ぬらりと閃いた影が通り過ぎる間もなく、
次いで、何ら罪のない人間を傷つけた件に関しての負い目が舞い降りる。
それらを総合して、ついに自分は、ヒーローとしてだけではなく、
人間としての道を踏み外してしまったという、深い痛恨に牙を立てられた。
果たして、先程までの毅然とした意識は、
俄かに熱量を高じたスティール邸の気温に躙られてか、
深く青い夜空へと蒸発せられたかのようである。

麗源に関してを、一語で象徴させるならば、
脆弱という、何だか音の響きまで頼りない、その二字が似合う。
偶には身の丈に合わない気概を発揮するくせ、
その実、ひょっとした出来事でヒビが入ったり、または砕けたり。
今件に関しては、その好例であり、正しくいい面の皮であった。

(助けてくれ――!!)

半ばは幼児退行気味になる。
芝生の上に身体を丸めた彼にできる事と言えば、
せいぜいカードを選ぶだけで、事実、その他の手段を知らなかった。

(出てくれ、正義のカード!今の俺には、お前が必要なんだッ!!)

掲げ挙げたカードに記された、正義の刻印がある。
本来なら自己暗示能力により、彼の判断認識能力は著しく回復する筈だが、
自らカードを捜し選んだのでは、効果は発揮されないのである。
今の麗源には、それをさえ判断できないほど、知力が低下していた。

「どうしてッ!!」

そんな彼を戒めしてか、背後より弾丸が飛来、カードに風穴が開く。
正義の字は切れ切れになり、闇に粉された。

293 名前:麗源新貴 ◆S00N9pbnYw [sage] 投稿日:2010/02/18(木) 20:32:21 0
「ナニ、外してやがる!無理な改造で、利き手がお釈迦になったかァ?」
「狙ったんだ。いきなり殺しちゃ面白くない。」
「尤もじゃないか。ヴィランはヴィランらしく、それでは少し遊んであげよう。」

麗源の振り返った先に、横に連なりながら歩む影が三つある。
そのトリオの中心に位置する者の手にした銃が、かすかに硝煙を吐いていた。
やがて彼らは、へたり込んだ姿勢の麗源を取り囲みながらも、麗源なきが如し、勝手な会話を取り交わす。

「どうすンだよ。ちゃっちゃと済ませろ。オレは早くBダイヤを拝みてェんだ。」
「……一人ロシアンルーレットを。」
「へえ。それがやりたくて、毎回リボルバーなんて持ち出してるわけ?
 ごめんね。ちょっと付き合ってもらうよ。ま、どうせ死ぬなら、僕らを楽しませてからが良いよね?」

笑い声。銃弾のカチ合う響き。劇鉄の引き起こされる音。
目が機能不全に陥り、耳だけが活かされている麗源がいた。
鈍く光る短筒が、その眉間に合わせられる。

「じゃ、遠慮なく一発目を。どうぞ。」
「ダメ――。」

かちり。

「つまらん反応だ。」

口を開け放したまま、麗源は僅かに頭を振る。再び、かちり。

「どうかな。これから加速度的に、リアクションの勢いは上がると見た。」

麗源の目から、すう、と涙の筋が流れて、更には喉から軽い嗚咽が漏れた。三度、かちり。
続けざまに四度目のかちりがある。麗源は、無暗な運転を続ける蒸気機関のように、
一息ごとに精神を削られながら、ひっきりなしの呼気を吐き続けていた。
またのかちりが聞こえる前に、鼻汁も涎もを撒き散らして走り逃れようとするが、
脚がもつれて、その場に転倒するはめになってしまった。

「……見苦しいだけだな。良い加減にするか。」
「うーん、確かに。女性が相手だったら、他にやり方もあったけどね。」
「そンなら、オレに任せろ。オートマなら間違いはねェからな、え?」

黒光りするトリガーに指が掛けられる。銃口が凶暴な薄ら笑いを浮かべた。

「――やめろォォォォォッッ!!」

294 名前:麗源新貴 ◆S00N9pbnYw [sage] 投稿日:2010/02/18(木) 20:34:28 0
銃声は、ない。代わりに、乾いた生木の枝を容易く折るような音が三つ。残された幽かな悲鳴も三つ。
殆んど白眼を剥かれた麗源の双眸には、夜を切り裂くショッキングピンクが映っていた。

「イヤボーン、なんちゃって。どう、無敵のヒロイン気分は?アンタ自身は男だけどね。
 ……って、ちょっと。もしかして気絶してるの?おーい。」

『PP』は軽いテレキネシスを行使し、麗源の首から上を激しく揺さ振る。
つまりはこの行為を激しくすれば、例の三人の如く、頸がどうにかなるのであろう。
幸いなことには、彼女の機嫌を損ねる前に、麗源は気を取り戻していた。
何事か言おうとする彼を、人差し指の一本で制する『PP』。

「ジャージ姿に小銃とヘルメット装備した変人の事情なんて、聞きたくないの。
 ぶっちゃけ怪しすぎるけど、詮索は止してあげるわ。感謝なさい。
 じゃ、やましい事がないなら、さっさとここから立ち去ることね。」
「いや……その、俺にも用事が。人を待ってて……。」
「あんなヒドい目に遭っといて、まだそんな口が利けるんだ。馬鹿なの?
 確かに、アンタからは物凄くトロそうなオーラが出てるけど。」

麗源は無言の内に苦笑いを呈す。身体に染み付いた表情らしく、
顔面のみならず全身から立ち上る情けなさが、板についていた。
魔法の解ける時間は、とうに回ってしまったらしい。

「それじゃ、付き合ってあげるわ。
 弱っちぃ連中の相手するのもつまらないから、護衛として付いてあげる。」
「や、それはちょっと……!」
「冴えないヘタレ野郎と超絶魔法美少女の取り合わせは基本、そして王道でしょ!
 取り合えず、あの池辺りまで行って見ましょうか。
 あそこなら、その待ち人がやって来たら目に付きやすくて良いかもね。」
「どうしてそうなる――。」

軒並み語尾をぼかす麗源を、サイコキネシスで吹き飛ばす『PP』。
ややあって、庭の中心近くに、目出度い水柱が上がった。それからしばらくして。

「ごっめ〜ん、アンタの調子が余りに気に食わないから、出力強くしすぎちゃった。
 うん、けどアンタみたいな男も悪くないわ。そこらのヴィランよりいじめ甲斐があるから。」
「……どうも。」

雨もないのにずぶ濡れの野暮男と、奇妙に上機嫌な桃色女の姿があった。

【『PP』を伴い、待ち合わせ場所の池に到達。】

295 名前:秤乃暗楽 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/02/18(木) 21:12:20 0
人骨と言うのは私達が擁いている心象よりも随分と頑丈なの。
例えば有名な日本刀なんてのは、骨をまともに斬り付ければすぐにお釈迦になってしまうし。
銃弾の軌道だって実は逸らしてしまえる。
お酒に酔っての喧嘩で頭を撃たれたけど、翌朝二日酔いと思ってそのまま帰宅した男だっているくらいだ。

こんな無駄話で私が何を言いたいのかと言うと。
つまりとんでもない力でも、やり様によっては存外簡単に防げる物なのだ。
渾身の拳だって、ちょっと横から叩いてやれば空振りへ追いやる事が出来る。
まあ私はそんな経験無いんだけど。

ともかく、例の青白い閃光を防ぐ手立てが見つかった以上、もう私が慌しく飛び回る必要は無くなった。
悠然と近付いて、思いっきり引っ叩いてやるわ。ええやりますとも。
……と思いきや、そうもいかないみたい。

出し抜けに女社長の腕が不自然に隆起する。
あらあら素敵な力瘤、惚れ惚れしちゃうわ……とか言えたらどれだけ言い事でしょうね。
ミサイルってアンタ、私が避けたらとか考えなかったの?
『アイアンメイデン』が街を吹っ飛ばしたとか、スキャンダルにも程があるわよ。

「ちょっと面倒だけど……止めるしかないわよねえ」

周囲を旋回していた夜色の球体を射出して、ミサイルを空中で爆破させる。
さて、上手い事爆炎が広がっている内に次の球を書いておかなくちゃね。

「……ところで、地上の方は今どうなってるのかしら。まあ、あの子の炎があればまず大丈夫でしょうけど」

ちらりと地上を見下ろしてみる。
一見何事も無く、つつがなく皆は踊っているようだった。
でもあくまで、一見だ。

注視してみると分かる、色の乱れ。
気配も存在も感じ取れないけど、色に関してなら、私や光はどんなに細微な異常だって感じ取れる。
よっぽど腕の立つ魔術師、となると星とか言う探偵もどきかしら。

前言撤回。
あの男なら、光の描いた炎も消してしまえるかも知れない。
私は急いで地上に降りて、探偵もどきを止めに掛かる。

「……えっと、その辺にいるのかしら? ともかくこんばんは。悪いけど、その石は渡せないわ」

とは言ってみたものの。
一足遅れて、空から追ってきた女社長が地に溜まった闇に足を浸す。
あらやだわ。

これはもしかしたら、それなりにピンチ。
なんて状況かもしれないわね。

296 名前: ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/02/18(木) 21:13:37 0
神速の拳が腹部を打ち抜き、『不倒不屈』は吐血と共に崩れ落ちる。
だが膝が正に今、宵闇に沈み芝生に触れんとした瞬間、彼は持てる力全てを振り絞った。
辛うじて、寸での所で彼は踏み止まり――己の膝が芝に触れていない事を確認する。

「……セーフ! いや、ギリギリセーフだぞこりゃ! 突いてない! 付いてないな! うん!」

『不倒不屈』と謳われた彼は一応、己の二つ名にそれなりの愛着を持っているようだった。
看板に偽り無しと豪語出来る事を確認すると、彼は隣をすれ違って行った雷羽を振り返る。
彼の表情に宿るのは怒りではない。屈辱でもない。

純然たる好奇であった。
油断にどっぷりと漬かっていたとは言え、自分の片膝をあわや突かせるまでの一撃を放つとは。
かの『ヴィラン』ともう一度殴りあいたい。

獰猛なまでの笑みを浮かべる彼だったが――不意に彼の周囲を、
どこから湧いて出たのか有象無象の『ヴィラン』達が取り囲んだ。

「……オイ! 今がチャンスだぞ! あの『不倒不屈』が膝を突くなんて千載一ぐ……」

「やかましい! 俺は金輪際誓って膝なんか突いてねーよ!」

「ウソこけお前! どう見てもさっきの……」

「うっせ! バーカ! バーカ! もう俺ぁ怒ったぞ!? 俺がヘーキな証拠に超必殺技をお見舞いしてやらあ!」

悪童の如く叫び散らしながら、『不屈不倒』は豪快に両腕を振り上げる。

「喰らいやがれえ!! 超必殺スーパーウルトラアトミックギャラクティカハイパー
 パワーデラックスシャイニングファイナルミラクルワンダフルグレート
 あとそれから……ああもう長えな! 面倒臭えから俺様ボンバァアアアアアアアアア!!」

刹那、『不倒不屈』を爆心地として凄まじい気力が周囲に迸った。
圧倒的密度を誇る気合いは膨大な威力によって、彼を包囲する悪党共を纏めて吹き飛ばす。
完全に、何処からどう見ても、弁解の余地無く、ただの力技だった。

「お前それ絶対今考え……ぎゃぁああああああああ!?」

突っ込みもままならぬまま、悪に与する連中は散り散りとなった。
悠々とした、しかし雄大な足取りで、『不倒不屈』は雷羽へと迫る。
追い付き、追い抜き、前に回りこんで、彼は威風堂々と立ち止まった。

「よう……第二ラウンドと洒落込もう……ぜえ!?」

構えすら取らない雷羽の腹部に、『不倒不屈』は拳を打ち上げる。
杭を打ち込むような一撃を受けて雷羽は身動ぎ、しかし倒れる事はない。
それどころか再び、豪速の打撃がカウンターで『不倒不屈』の顔面を捉えた。

「……んっはっは、いいねえ! 今のは結構マジでいったのになあ! んっはっは!」

しかし、彼は笑っていた。
割れた額から血を滴らせて尚、猛獣の如き笑みは健在であった。

297 名前: ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/02/18(木) 21:15:08 0
「って……手前、まさか?」

けれども間もない内に、彼の破顔に皹が走る。
顔を顰めて雷羽を観察して彼は一言、吐き捨てた。

「なんでえ、手前意識がねえのかよ。洗脳か? 改造か? ……そりゃつまんねえな、興醒めだあ!」

激昂を余す事なく拳に乗せて、『不倒不屈』は雷羽に叩き付ける。
やはり、返されるのは神速の反撃。
抉るような軌道で脇腹に沈んだ一撃は、しかし『不倒不屈』を揺るがす事はなかった。
構わず、彼はがら空きの顎を渾身の拳で打ち上げる。

「っらあ! ぜんっぜん痛くねえな! 痛くねえぞ! 嘘じゃねえからな!?」

度重なる、完璧なタイミングで叩き込まれるカウンターを物ともせず、彼は叫ぶ。

「何で効かねえか分かるか? 分かんねえよなあ!?」

両腕を左右に大きく広げ、雷羽の頭部を両側から穿った。
当然胸も腹も脇も全てが隙だらけ、雷羽の正確無比な反撃は面白いように彼に通る。
だが関係なく、『不倒不屈』は平然と立っていた。

「手前の拳は強えけどな……重みがねえんだよ! ただ命令の為に打ってる拳だあな!」

両の手を組んで高く掲げ、満身の力を注ぎ込み鉄槌の如く振り下ろす。
留守となった胴体に凄まじい連打が打ち込まれるが、構わず『不倒不屈』は雷羽を殴った。

「そんな拳じゃこの俺様は倒せねえ! 俺様を倒せるのは、魂の篭った拳のみと知りやがれ!!」

弓を引き絞るように限界まで振り被っての、全開全力の拳が弧を描く。
防御を捨てた胴を、雷羽の拳が打ち続ける。
それを物ともせず、『不倒不屈』の鉄拳は雷羽の顔面に減り込んだ。

人形の糸が切れたように、雷羽が崩れ落ちた。

「んっはっは! ざんまあ! 俺の勝ち……って、おろ?」

しかし良く見てみれば、雷羽はまだ膝を突いていない。
辛うじて、寸での所で彼は踏み止まっていた。

「お? なんだなんだ。ようやくお目覚め……って奴かよオイ? 第三ラウンド、いっちまうかあ?」

追撃などと言う無粋な真似はしない。
ただ凶暴なまでの笑みを湛えて、『不倒不屈』は雷羽が立ち上がる事を待っていた。

298 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2010/02/19(金) 12:24:42 O
パンダ最強厨かよ
つまんね

299 名前:星 真一 ◆fSS4JmCGEk [sage] 投稿日:2010/02/19(金) 21:27:46 0
>「……えっと、その辺にいるのかしら? ともかくこんばんは。悪いけど、その石は渡せないわ」
そういって一人の少女が俺に語りかけてくる。
常人はおろか、魔術師ですら感じ取れないレベルまでに存在を隠蔽したのだが、
まさか、気づく者がいるなんて……
これはかなりの実力を持つ魔術師だと判断する。
だとしたら、この姿で居たとしても無駄であろう。
そう思い同化迷彩を解除し、姿を見せる。
「まさか、お嬢さんに見破られるとはな……
 マジで何者だ?」
そこまでの技能を持つ者はそんなに居るわけじゃないので少女に興味を持つが、
今はそんなところじゃない。
子供だろうが誰だろうが今の俺には残念ながら手加減出来そうにない
「それはできねぇよ…悪いな、そんなくだらねぇ物のために何人も命落としてるんだよ
 その人達のためにも引けないんだよ…絶対にな!!」
決意と譲れぬ思いで少女を見据えると同時に手に二挺の銃が顕現する。
「退け…一度しかいわねぇぞ
 退く気がないのなら…ぶっ飛ばしてでも行くぞ」
返答はなし、ならば容赦はしなかった。
問答無用で引き金を引き二挺の魔銃から怒りの咆哮が唸り声を上げ、
風を切りながら少女の方向に向かう。


300 名前:秤乃光 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/02/21(日) 22:31:18 0
光の放った斬撃は黒と翠の装甲から火花を散らす。
しかしライダーの機能に損傷を負わせたとは言い難い。
事実彼は踏み止まり、叫んだ。

>「おい!ちょっと待て・・・あの男はともかくお嬢ちゃんまで泥棒か?
>そんな歳して泥棒の仲間なんてやってたら親御さんが泣くぞ!」

その言葉で、光は彼が『ヒーロー』なのではないかと思い至った。
だがそうだとしても、彼は本館を咎めるだろう。
いずれにせよ、光のする事は変わらない。あくまで、彼を守るまでだ。

フォームチェンジによる変幻自在の攻防に惑わされながらも、彼女は懸命にワンドを振るう。

>「強く……なり…たい…!!
>誰よりも……強くっ………。」

悲痛な声が背後から響く。
彼の声は光の心の外殻に刃を差し込んだ。
彼女は一瞬硬直して、しかしその隙が突かれる事は無い。

>「あんたも、ヒーローなら…ダイヤモンドの力なんか借りるんじゃねぇ。
>自分の力は、自分自身で築くしかない…そう、俺は思うぜ。」

黒と金のライダーもまた、動きを止めて声を張り上げていた。
ここに至って漸く、光は彼が本館に害を為さないだろうと思う事が出来た。

「……そうだよ、お兄ちゃん。頑張ればきっと、もっと強くなれるよ。
 だから、今日はもうお休みしよう? この舞踏会を眼に焼き付けて、また明日、頑張ろうよ」

ワンドを収め、光は言った。

「……あっ、えっと、その……勘違いで攻撃しちゃってごめんなさい!」

ふと思い出して、彼女はライダーに頭を下げる。
しかして光は小さく一息吐いて――己が招いたもう一人の『ヒーロー』の事を失念していた。

なので麗源新貴が真性道程と結託した挙句に重度の懊悩へと陥ってるなどと言う事は、
当然彼女にとっては知り得ない事だった。

301 名前:旋風院 雷羽 ◇zYCuy2/gkI[sage] 投稿日:2010/02/22(月) 01:54:50 0
・・・

気絶した事により、改造人間には本来行う事の出来ない睡眠の様な状態に
浸っていた雷羽の意識。先程まで心地よい「何か」の導きに流され漂うままと
なっていたそこに、突如として謎の衝撃が加わり、波紋が浮かんだ。
それは一度ではない。二度、三度……繰り返される度に衝撃は大きくなっていく。
やがてその衝撃は地震となり、波紋は津波と化して、眠りこけていた雷羽の意識を
無理矢理に持ち上げ――――そして、そんな津波に溺れそうになる雷羽の意識の腕を、
雷羽がいつかどこかで見た事のある気がする白い人影が掴み、
ついにその表層へと、放り投げた。

古い機械を叩いて直すかの如く、旋風院雷羽の魂と肉体の歯車が、
ヒーローの拳によって、力づくで噛み合わさせられたのである。

「……のごあああああっ!!!!?」

意識が戻った雷羽に最初に訪れたのは痛み。
変身状態の雷羽は痛みという物を普通の人間よりも遥かに感じ辛いが、
それでもベースが人間である以上、痛覚は保有している。
そんな雷羽の痛覚は、今凄まじい痛みの信号を雷羽に送っていた。
それは何やら鈍器で力いっぱいボコボコとにされた様な感覚で、
自身が凄まじい力で暴行されたのだという情報を、雷羽に伝える。
その激痛に、覚醒した直後の雷羽は両手で頭部をかき抱くようにしてしゃがみ
込み呻いていたのが、やがて痛みが和ぐと左手で頭を抑えながら立ち上がり、
周囲を睨み付け騒ぎ出した。

「……お、オイこらどこのどいつだこの俺様のをボコボコと殴りやがった糞野郎は!! 
 すんげー痛ぇだろうがっ!! ……って、うおっ!? なんじゃこりゃあ!!
 俺様のボディがエライ事になってやがるっ!!?」

それにしてもやかましい男である。まあしかし、雷羽にとっては謎の気絶から
起きたら何故か自身のボディが変化していたという状態である。
混乱するのも仕方ないだろう。だが、嵐の様な今の状況はそんな混乱を待つ訳もなく、
騒ぐ雷羽の前に、愉快で堪らないという様な笑みを浮かべた巨大な影が立ち塞がった。

302 名前:旋風院 雷羽 ◇zYCuy2/gkI[sage] 投稿日:2010/02/22(月) 01:56:07 0
「んっはっは! ようやく目え覚めたみてえだな!

          ――――そんじゃあ早速、第三ラウンド開始だ!!」

「……あん? 何だてめぇh……うごあっ!!?」

繰り出される鬼神の如き拳が雷羽の顎を下から上へと打ち抜き、空中へと打ち上げた。
豪力。怪力。ヒーロー『不倒不屈』に先程の様な油断は無い。
目の前の悪を粉砕する歴戦のヒーローの一撃が雷羽を確実に捉えた。だが、

「ぬっがあああっ!! 何しやが……ああっ!! さてはテメェか!?
 ちょっとだけ気絶した間に俺様をボコボコ殴りやがった野郎は!!」

「だったらどうする!」

「ギタギタのメタメタになるまで貴様をぶん殴って、俺様を舐めた事を
 後悔させてやるに決まってんだろうがゴルァ!!!!」

「いいねえ!! やれるもんならやって見せろ!!」

だが、殴られた雷羽の意識は先程の様に飛んでいない。「ガシャリ」と更なる
装填音を鳴らし、殴り飛ばされた時の慣性に従い天井へと辿り着くと、
天井を蹴り、その反動を利用して『不屈不倒』への反撃の踵落としを放った。
『不屈不倒』はその一撃を腕で受けたが、余りの衝撃に『不屈不倒』の足元の床が
放射状にひび割れ陥没した。

今雷羽が目の前のヒーローにぶつけているのは、
先程の洗脳による「命令」とは違う単純な「怒り」である。
現在の状況、目の前の敵の正体、自身の変化。本来考える事は様々あるのだろうが、
生憎雷羽はバカだった。本人は認めないが、基本的にバカなのである。
バカ故に、単純。余計な事を考えず、目先の相手に己の全てをぶつける事が出来る。
それはある意味ヒーローに必要とされる要素であると言えるだろう。

そうしてここに、単純明快明朗快活な『殴り合い』が開始される


303 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/02/23(火) 10:58:56 0


304 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2010/02/23(火) 12:14:18 0
ヒーロー登録基本法保守

305 名前:仮面ライダーW ◆/gk7MDoUlwA4 [sage] 投稿日:2010/02/23(火) 17:58:41 0
>>300
>「……そうだよ、お兄ちゃん。頑張ればきっと、もっと強くなれるよ。
だから、今日はもうお休みしよう? この舞踏会を眼に焼き付けて、また明日、頑張ろうよ」

少女の言葉に安心し、仮面ライダーWのベルト【ダブルドライバー】を解除する。
変身を解除したコート姿の青年、左翔太郎は本館に手を差し出した。
>「……あっ、えっと、その……勘違いで攻撃しちゃってごめんなさい!」

「こっちこそすまなかった。俺は左翔太郎…私立探偵だ。
で、そこで寝転がってるのが俺の相棒のフィリップ。
その横に居る女が……っておい!」

「どーもぉ!!左探偵事務所所長の鳴海亜樹子でぇす!
何かお仕事あったらここまで連絡してくださいねぇ」
満面の笑みを浮かべ、光と本館に名刺を配るツインテールの少女がそこにいた。
翔太郎は嫌な空気を払うかのように咳払いをし、光と本館の2人に向き直った。

「 バットショットに監視させていたんだが――トリッシュ社長と
今戦ってんのは、君の知り合いか?
何だかよく似てる雰囲気だったもんでな…」

(バットショットで2人の戦いを撮影した画像を2人に見せる。)



306 名前:真性 ◆8SWM8niap6 [sage] 投稿日:2010/02/23(火) 18:46:02 0
ブラックダイヤモンドを窃盗すべく潜入したトリッシュ=スティールのお屋敷で、謎のレーザートラップに見舞われた俺!
触れた物を例外なく切断する恐怖の罠は、その数と速度を順調に上げながら、逃げ惑う俺に追いすがる。
人気の無くなった邸内を縦横無尽に逃げまくり、やっと見つけた小部屋へ押し入り、俺はトラップをやりすごせるのか!?
どうなる俺!前回までのあらすじでしたッ――!!

結果から述べると、やり過ごせた。
蹴破ったドアを今度は丁寧にしっかりと閉め、内側にへたり込む。迫り来る致死の糸は、その効果範囲を廊下に限定いているらしく、
ドアを切り裂いては来なかった。冷静に考えたらセキリュティは廷内の財産を守る為のものなわけで、屋敷を傷つけたら意味ないんじゃん。
マジで盲点だった。次からの参考にするぜ!

「さて、と。ラッキーなことに配電室はわりとすぐ近くにあるっぽいぜ……問題はあのトコロテン製造機か」

地図を見るに、俺の居るこの『応接室』と配電室は同じフロアの部屋を三つ四つ隔てたところにあるみたいだ。
ドア開けーの、駆け出しーの、辿り着きーの3ステップにどう見積もっても十秒以上はかかる公算。
あのレーザートラップが今どの位置を往来してるかは分からないが、十秒もの間廊下に未切断物の存在を許してくれるとも思えない。

「どうする……運否天賦に任せてダッシュしてみるか?怖いな、ぜってー足とか縺れるぞ俺!」

賭けるにはあまりに勝算がない。いや、例え9割9分イケたとしても俺はきっと賭けに乗れないだろう。
リアルに命懸けのこの状況、戦場のド真ん中で言うのもなんだが、俺は自分の命が惜しい。すげえ惜しい。死にたくない。
どうにも死を実感し始めてから急激に俺の中で何かが醸造され初めてる。それは天啓的なものなのか、あるいは蓄積されたノウハウか。
俺は現状打破の方法を思いつきつつあった。死中に活を見いだすってのはこういうことを言うんだろうな。マジな話。行くぜ――

「<パラダイムボトル>――形状『粘性爆弾《C4》』!」

目の前を爆破して、物理的な意味での突破口をぶち開ける。爆発音と砂埃の向こうに開いた穴は――応接室の横の壁。
こちらも同じく無人の隣室へ踏み込んで、向かいの壁まで一直線。そこでまた"神様"を仕掛け、爆破する。

――そう。俺は廊下に一切出ず、部屋同士を隔てる壁をぶち抜いて進んでいた。
配電室まで部屋同士が地続きだったのと、丁度同じフロアにあったってのが幸いだ。レーザーに見つからないよう、部屋の中からそこへ行く。
先程と同じようにして通算5枚目の壁をブチ抜くと、そこには警備員二人を護衛に残しただけの配電室へと繋がった。

「――!?」

爆破の衝撃と爆音に硬直してる警備員、その右に飛び蹴りを食らわせ、反応した左側が小銃をこっちに向けるが、引き金を引かない。

「おいおいどうした撃てないのか?撃てないよな!なにせ俺の後ろには配電盤がある。迂闊に当てて壊しでもしたら責任問題だぜぇ?」

向こうも金で雇われてるプロである以上、自分が損害を受けるような行動は取れない。はずだ!
その証拠に今もこの警備員は、申し訳程度に特殊警棒を構えるだけ。それでも不用意に近付けないのか、じりじりと距離を詰めてくるのみだ。
不意打ちじゃなしに警備員と戦うのはこれが初めてかもしれない。格闘に自信はないが、今の俺には驚異のアドバンテージがある。つまり、

「――俺は気にせず撃てるんだよォ!!」

肩に架けてたこっちの小銃から適当にバラ撒いてみる。二発が警棒に弾かれ、三発ほど防弾スーツに当たる。警備員は地面に伏した。
現状の敵を全て制圧し、配電室には俺一人。"神様"で寸断の銃剣を作り、配電盤を逆袈裟にぶった斬った。
異能の刃でその身を横断された配電盤は、紫電をスパークさせながら上半分をゆっくりと斜めにずり落とし、沈黙させる。

今度こそ、スティール邸は宵闇へと包まれた。自家発電でもすぐには回復しない、絶対の暗闇。
俺は最寄の窓ガラスを割って、中庭へと身を踊らせる。サーチライトの合図が正しければ、麗源はとっくに池で待ってるはずだ。
果たして彼は待っていた。何故かずぶ濡れで、――隣に夜目にもわかる桃装束の女を連れて。

「待たせたな麗源氏!いつでもダッシュで奪取だぜ!?んで、隣の思春期こじらせたまま大人になっちゃった感じのお姉さんは――誰?」

「アンタも私を知らないの?やーね最近の若い子はみんなテレビも見ないのかしらん」

「いやマジで誰だよ!?え?え?知り合い!?」


【配電盤を破壊し、麗源と合流。隣のPPの正体は知らない様子】

307 名前:本舘 ◇SGue2uUfkw[sage] 投稿日:2010/02/23(火) 21:22:19 0
>>281>>300>>305>「あんたも、ヒーローなら…ダイヤモンドの力なんか借りるんじゃねぇ。
自分の力は、自分自身で築くしかない…そう、俺は思うぜ。」
………確かにそれは正論だ。
だが…
「僕は…ヒーローじゃ……ない…!
 しかし…君の…言っている事…は…正し…い。」
>「……そうだよ、お兄ちゃん。頑張ればきっと、もっと強くなれるよ。
 だから、今日はもうお休みしよう? この舞踏会を眼に焼き付けて、また明日、頑張ろうよ」
気が付けば二人は戦闘を止めていた。
男は変身を解き、少女はワンドを収めている。
そして今回は諦めるようにと、少女が諭してくる。
本来なら「ふざけるなっ!」と言いたいところだが…。
「分かった…よ。今回は…諦めて……やる…。」
今回は完敗だが、この屈辱は忘れんぞ雷羽…。

変身を解いたコート姿の青年は手を差し伸べてきた。
僕はベルトを床に置き、青年の手を握ってなんとか立ち上がる。
「スマンが、僕のベルトを持っててくれないか?」
立ち上がった僕は少女にベルトを持ってくれとお願いした。
彼女になら安心してベルトを任せられる。

青年の名前は左翔太郎というらしい。
他にフィリップという青年を紹介され、鳴海亜樹子という人物からはわざわざ名刺までくれた。
「ど…どうも…。僕は…本舘…梁だ。…よろしく…。」

咳払いをした翔太郎はトリッシュと少女(黒)が闘っている画像を見せてきた。
あの女社長は少女(黒)と闘っていたのか…。
どうやら翔太郎は少女(黒)と少女(白)の関係性を知りたいようだ。
確かにそれは僕も気になっていたところだ、丁度良いから話を聞かせてもらおう。

308 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2010/02/23(火) 22:30:02 0
ポワトリン!ポワトリンじゃないか!!

309 名前:秤乃暗楽 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/02/25(木) 06:53:47 0
戦闘が始まった。
淡青の閃きが迸り、遅れて星の二丁拳銃が放つ業火と極寒が追い討ちを掛ける。
無明を切り裂く閃光と魔術によって顕現された弾丸は、宵闇の防壁を穿ち貫いた。

壁を描き、隙を突いて離脱し、また壁を築く。
私は、防戦一方だった

「……っ、はぁ……! ったくもう、あの馬鹿は何処で何してんのよ……!」

相対する二人を退ける事は、別にさほど困難って訳でもない。
けれどもそれをしてしまえば、私はBダイヤモンドを自らの手で回収する必要が生まれてしまう。
守り手が、相対する者がいなくなったのに手を出さないでいては、不自然だもの。
不要な疑惑を抱かれない為には、私はBダイヤを奪わなくてはならない。

しかし、それでは駄目なの。
未熟なヒーローと、出来損ないのヴィラン。
彼らを飛躍させる為には、私自身がBダイヤを手にしてはならない。
このパーティの終幕は、あくまでもあの二人の手によって引かれるべきなのよ。
彼ら自身が、彼らなりの終点を迎えなければ、意味がない。

故に、私は防御と回避に専念していた。

「とは言っても……これ、結構キツいわね……!」

不審な違和感を覚えさせないよう、彼女は出来る限り紙一重で、攻撃を避ける必要がある。
当然、容易な事ではないわ。
そもそも私が有する戦闘における優位点は、高機動と堅牢かつ臨機応変な障壁にあるのに。
なのに私は今、二つの長所を自ら捨てている。捨てる事を強いられている。

やがて稲光が、業火が私の纏うドレスを掠め始める。
裾が焦げ、フリルに穴が開く。
どうしてくれるのよ、折角気に入ってきた所だったのに。

なんて軽口を考えてる暇も、そろそろ無いかもしれないわね。
氷の仮面を装ってきたけど、いよいよ焦燥に溶かされちゃいそうだわ。
けれどふと、遠くで頭の悪そうな声が響いた。

「待たせたな麗源氏!いつでもダッシュで奪取だぜ!?」

漸く、真性の馬鹿が到着したのね。あら、奇しくもダブルミーングだわ。
さて……じゃあもう幾分も持ちそうにないし、幕を引いてもらうとしましょうか。

「真性――!」

叫びながら、私はもう一度夜空へと飛び上がった。

310 名前:秤乃光 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/02/25(木) 06:54:31 0
見せ付けられた映像には、光の姉――秤乃暗楽が映っていた。
とは言え当然、両者間に繋がりがあると明かす事は出来ない。

「……あの子は、私と対の存在です」

こう言う時どう答えればいいのか、彼女は暗楽に言い聞かされていた。

「光に対する闇、昼に対する夜……としか言えません。ライダーさんなら、分かりませんか?」

ライダーに限らず、『ヒーロー』『ヴィラン』にはしばしば、自らの対極を成す者が存在する。
故に深い説明は不要で、執拗な追求もない。。
歳相応にしか頭の回らない光でも、この程度ならば問題なく語る事が出来る。

「本当なら、私が相手をしなきゃいけないんだけど……お兄ちゃんの傍を離れる訳にも、いかないから」

彼女の言葉は二重の意味合いで、本心であった。
光が暗楽の相手をするならば、互いに絶妙な手加減をしあえる。
けれどもアイアンメイデンと星を相手にしている暗楽は、酷く綱渡りな演技を強要されていた。
そして飛び込んでいこうにも、本館を少しでも危険に晒す事は、今の光にはどうしても出来ない。

結局、光はただ姉を見守る他なかった。
気もそぞろに、彼女は視界を揺らしている。

「……あっ」

ふと、視野の端で小さな影が揺れた。
追ってみると、それは真性道程と――麗源新貴。
暗楽と光が目に掛けてこのパーティに呼び付けた、主賓とも言える二人だった。

状況が動く。
光はついさっきまで失念していた彼に、それでも辛うじて叫んだ。

「お兄さん――!」

311 名前:秤乃光 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/02/25(木) 06:56:20 0
秤乃暗楽が夜空へ舞う。
しかし彼女の動きは酷く緩慢だった。
二人の『ヒーロー』は彼女よりも素早く上空へと飛び上がり、各々が渾身の一撃を放つ。
迸る科学と魔術の攻撃を、暗楽は障壁を描く事で防いだ。
が、不完全な体勢からの防御は不十分。

力の衝突による余波で暗楽は地へと叩き付けられた。
間隙を置かず追撃が彼女を襲い――

それでも、秤乃暗楽は口元に秘かな笑みを浮かべた。

一度も見せる事の無かった最高速の跳躍で、彼女は止めの一撃を回避する。
科学と魔術の破壊が芝生へと突き刺さった。
一拍遅れて、辺り一面に亀裂が走る。

トリッシュ邸の地下には、空洞の道が作られていた。
真性道程が逃走経路として見定めていた、未来のパイプライン。

亀裂は留まらず、ついには地盤が崩落する。
月明かりの届かない暗闇が、大口を開けた。

根差す基盤が崩れ、炎の障壁が四散する。
漆黒の宝石が、落ちていく。

『ヒーロー』も『ヴィラン』も、誰もが崩壊に巻き込まれぬよう退いていく中、二人の少女が叫んだ。



「「――跳んで!!」」

312 名前:真性 ◆8SWM8niap6 [sage] 投稿日:2010/02/26(金) 06:59:20 0
「真性――!」

不意に名前を呼ばれた。呼ばれた気がして声の方を見上げると、空中には呼び声の主、黒ゴスの姿が。
一人夜空を遊泳中かと思ったら、ヒーロー二人を遊撃中だ。ヒーロー恐怖症の俺はそちらを直視することができない。
だけれど、黒ゴスの意図してることはなんとなしに理解できた。描いた障壁を押し切られ、彼女は芝生へ墜ちていく。

叩きつけられる黒衣の少女。そこへヒーロー達のトドメの一撃が走る。俺は動かなかった。助ける必要を感じなかった。
他でもない黒ゴスだぜ?
なんてったって混じりっけなしの『本物』、超越者にして調整者にして調律者、秤乃暗楽なのだから――!!

彼女は俺を信用し、俺はそれに信頼で応える。だから黒ゴスが間一髪で攻撃を回避した時も、そこから目を離さなかった。
双極の至撃が芝生を焦がし、地面を穿ち、地盤を砕き、隔壁を貫く。生まれた崩落は、地下に空洞が存在する証左。
俺が目を付けていた、都市計画の地下共同溝――巨大なパイプラインが、その姿を露出した。

地盤というのは亀裂が入ると一気に脆くなる。例に漏れずスティール邸の庭も、中央に空いた欠落が周囲を侵食し、拡がっていく。
誰もが退いた。庭の中には無数の善と悪が入り乱れ、混戦状態だったのが崩落を契機に皆退散していく。

麗源新貴と桃装束を伴ってそこにいた俺は、確かに見た。

足元で亀裂に飲み込まれる池の水と同じように、

崩落した地面へと落ちていく、

――ブラックダイヤモンドの姿を。

「マジかよ……!!」

おそらくこの池の方向からしか見えていないのだろう、逃げていく連中はそれを一顧だにしない。
この事実を認識出来ているのはおそらく当事者の黒ゴスと、俺、そして麗源新貴のみ。
理解してから踏み出すまでの逡巡は皆無。ほとんど反射的に、俺は足を動かしていた。

そして、二重の声が届く。

一つは黒ゴス、そしてよく似た響きをもった別の嬌声。


「「――跳んで!!」」



それを呼び水にして、世界が圧縮された。

313 名前:真性 ◆8SWM8niap6 [sage] 投稿日:2010/02/26(金) 08:07:50 0
大気が粘性を帯びるのを感じる。目下最大の障害は空気抵抗だった。
後ろに麗源新貴がついて来ているか知覚する手段は乏しい。っていうか無理。振り向いたら首が折れそうだ。
ヘルメットのおかげで眼球が空気に圧迫されなくて済んだ。この速度じゃちょっとした塵も凶器だ。

俺は今、風になっていた。手の甲から体内を循環する黒ゴス謹製の身体強化紋に"神様"を行使して、
身体に流れ込むセンシティヴパワーの栓を開放することで一時的なブースト状態になっているのだ。
土壇場で思いついた技だから仕様も試用もナシで、もしかしたらもの凄い負担を強いられてるのかもしれない。

それでも、落ちていくダイヤを奪取するにはこうする他に方法がなかった。
踏み込んだ芝生を片っ端から破裂させ、割れた地面を更に砕きながら疾駆する。
だから、崩落地点まで駆けつけるのにそれほど時間はかからなかった。今をしてなおダイヤは空中にある。

「届けええええええ!!!!」

穴の縁から一気に跳ぼうと屈脚。ここから今の俺の強化跳躍でなら余裕で届く。届くぜ!
そして、溜めに溜めた膝のバネを解放せんと伸脚した瞬間、足場の地面が崩落した。

「んなッ――!?」

そうだ、良く考えなくともわかる理屈。穴の縁にそこまで強度があるわけない。まして今の俺は超人の脚力なわけで、
不安定な足場をそんな踏み方すればそりゃあ壊れますとも。ええ、壊れました。落ちていきます。
ですが、

――このまま諦めきれますか。ええ、きれませんとも!!

俺はヘルメットを脱いで"神様"で空中に『固定』し、それを足場にしてもう一度跳んだ。
足りないから、同様に小銃も犠牲にする。二度の追加跳躍で、ダイヤとの距離は一気に縮まった。
それでもなお、足りない。指先が掠め、しかし掌握すること適わず数センチ先の虚空へと去っていく。

なんだ、これで終わりか?さんざん大口叩いといて、結局また届かずに試合終了か?
俺は何がしたかった。何を求め、何の為にここにいる。ショーケースに張り付く貧乏少年のように、棚の上の餅を待ち続けるのか?
否。断じて否ッ!!

「お」

正義と悪の修羅場をくぐって、一つ分かったことがある。
両者の定義。正義は保ち、維持し、『護る者』。そして悪は、破り、壊し、『変える者』。
俺はどっちだ?決まってる。

「おおお……!!」

いつだって、俺は言ってたじゃねえか。それこそ口癖みたいに、俺だけに聞こえる言葉で。

「おおおおおおおおおおおおお――!!!!」

だから言うぞ。今も言うぞ。今だから言うぞ。言うぞ。言うぞ。言うぜ?――

「――悪いことしてえ!!」

つまりはそういうことなのだ。俺は変える。俺を変える。俺を取り巻く全てを変える。

何かが俺の手を掴む。暖かく、明るく、鮮やかなそれは人間の『手』。それはダイヤから伸びていて、俺の手をとっていた。
ダイヤが輝く。漆黒であった石身は眩い光に包まれ、蒸気のような靄が沸き上がっている。掴まれた『手』の感触を、俺は知っていた。

「"神様"――!?」

そしてそのまま『手』に引っ張られ、裏腹に俺は意識を手放した。


【崩落する庭でブラックダイヤモンドを確保。そのまま気絶し崩落に飲み込まれていく】

314 名前:左翔太郎 ◆/gk7MDoUlwA4 [sage] 投稿日:2010/02/26(金) 21:05:53 0
>>308
>「ど…どうも…。僕は…本舘…梁だ。…よろしく…。」

「おぅ、本館か。宜しくな。」
笑みを浮かべ本館を立たせる。翔太郎の顔は光という名前の少女に向き直る。

>「光に対する闇、昼に対する夜……としか言えません。ライダーさんなら、分かりませんか?」

光の言葉を受け、少しばかり考えた後答えを出そうとするも上手くいかない。
頭を掻きながら宙を見上げるその姿に、後ろから声がする。
「翔太郎、つまり2人はヒーローとヴィランと呼ばれる者達の調停者…ではないかな?
悪いけど、君たちの事も”検索”させて貰ったよ。つい、さっき…寝てる振りをしてね。」

フィリップと呼ばれた少年が起き上がり、翔太郎達に声をかけた。
それを聞き、翔太郎が更に話を聞こうとした次の瞬間。
状況は一変する。

>「お兄さん――!」

>「「――跳んで!!」」

ブラックダイヤモンドと共に辺りが崩壊し始めたのだ。
咄嗟の判断で本館を背負い、その場を離れていく。
「くそ…どうやら奪われちまったらしいな。
あのダイヤモンド、どんな力が秘められてんだ?フィリップ…いい加減
教えてくれてもいいだろ。」

「まだ分からないことが多い。しかし1つだけ確実に言えることがある。
あのダイヤモンドは…とてつもなく危険だ。」

【本館と少女を庇いその場から退避】

315 名前:星 真一 ◆fSS4JmCGEk [sage] 投稿日:2010/02/27(土) 02:46:47 0
その攻撃が彼女に当たるはずだった
だが、その尋常じゃない速さで避けられ地面当たる
それが崩壊の始まりだった。
俺とトリッシュの攻撃は芝生に当たり、いとも簡単に亀裂が入る。
そして亀裂が広がり芝生の中から巨大なパイプラインらしきものが見えてくる
だがそれに伴い地盤沈下も始まっていた。
足場がだんだんと崩れていく中、そんな光景のなかで、目に入る物があった。
そうブラックダイヤだったそれを見た瞬間怒りが吹き上がる。
「こんな物のせいで沢山の人の命が!!」
銃を向け、その一撃で破壊しようとした矢先

>「「――跳んで!!」」

その言葉と共に、急に奇抜な形状をしているバイクが突如飛び出してくる
「……!?」
一瞬止まったその時にとうとう踏み締めていた場所が崩れる
その瞬間、落ちていく自分を飛行するバイクが上手く載せてその場から離脱する。
「ちょっと待て!戻れあの石は破壊しなきゃいけないんだ戻れ!」
しかしバイクは無視して遠ざかっていくばかりであった。
【謎のバイクが出現、星を拾って安全圏まで離脱旋回中】




316 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2010/02/27(土) 10:29:07 0
アメコミのヒーローがコスチュームを着て
正体隠すのは、自分の生活や周囲の人を
守るため
どこの誰かわかったら、悪党が大挙して襲ってくるだろうが
(実際そういうエピソードもある)

317 名前:麗源新貴 ◆S00N9pbnYw [sage] 投稿日:2010/02/27(土) 20:56:32 0
ヒーロー、ヴィラン、あるいは中立、各々入り乱れるスティール邸にあって、
未だに己のあるべき姿を見出しきれていない者は、恐らくただ一人。

「アンタ、あれに似てるよね。ホルスタイン。
 一生うだつの上がらなそうなところが特に、だけど。
 ってかアンタ、まさかあいつの中の人じゃないよね?」

時折、思い出したように襲撃を仕掛けるヴィランと、
または彼らの撃ち放った弾丸の編隊を、念動力で食い止めては吹き飛ばしながら、
『PP』は事も無げに尋ねる。詰問といった口調でもない。
問われた側の麗源は、彼女の背後に隠れながら、水を滴らせて震えていた。
その瞳は確固としている。混乱は多少、収まったらしい。

「……だとしたら?」
「余計に軽蔑するかな。」
「余計?」
「そう。だってアイツ、ツメが甘いんだから。
 特に例は挙げないけど、私は色々とアイツの尻拭いをしたことがあるの。
 そんな奴の中身が、この戦場の最中で右往左往してるような阿呆だったら、
 ただでさえ今まで心証の悪かったところに、軽蔑に拍車がかかるじゃん。」

心当たりがない訳ではなかった。
麗源はホルスタインに変身して、夜な夜な悪党共と対峙するものの、
結局、後一歩のところでヴィランを取り逃がしたり、
二次被害の収集まで気が回らないことが度々あった。
その度、共闘していたヒーローから――
ホルスタインはその能力上、直接的な戦闘力に乏しく、
居合わせた他のヒーローのサポートに回る事がままあるのだが――
叱責を受けたり、白眼視を浴びせられたりが多い。
『PP』もやはり、そういったホルスタインの無様を、秘かに補助した覚えのある一人である。
当然ながら、麗源はその手の失態の反省はしている。とは言うものの。

「アイツ、所詮は三流だしね。ま、私は寛容だから、そこまで責めはしないけど。」

そう、赤裸々な批評を下されるのは、屈辱の極みである。
彼女の言葉が、ホルスタインに対する一般市民の感情の代表かと思うと、
薄っぺらい素材で出来た麗源の心には、手入れを忘れて尖った爪で引っかかれた如く、
乱暴で無遠慮な疵が、幾重にも連なって出来た。

318 名前:麗源新貴 ◆S00N9pbnYw [sage] 投稿日:2010/02/27(土) 20:58:40 0
そこに、麗源の待ちわびていた真性が、助け舟に乗って滑り込む。
その姿を目に留めた『PP』は一瞬間、彼をも念動力で吹き飛ばそうと仕草をするが、
麗源が彼に駆け寄った様を見て、一応の警戒を解く。

「いやマジで誰だよ!?え?え?知り合い!?」

興奮の為か、テンションの振り切っている真性に、そっと耳打ちする麗源。

「ごめん。変な奴に取り付かれちゃった……俺にもあいつが誰だか、よく分からないんだ。」

『PP』、ひいてはスティール邸に参じた四人の活躍は、街の住人には大抵知れているのだが、
その程度では、現実に即した情報収集を殆んど放棄している麗源には、通用しない。

「Bダイヤはともかくとして……まずは、あいつをどうにか。」

二人並んで、脅威の念動力者に向かい合う。

「あれ、アンタたちってもしかして、そういう関係?」
「違っ……。」
「冗談。けど――アンタら二人の思惑は見え透いたわ。もう、仲良くしてはいられないみたいね」

ヒーローという存在に共通している特徴とは、悪に対する嗅覚に他ならない。
真性の持つ、Bダイヤに対する執着を感知したか、彼女の目の輝きが増す。

「じゃ、アンタらの顔はしっかり覚えたから。今度会うのを楽しみにしててねん。」

己の身体に念動力を行使し、『PP』の影がふわりと浮く。

「……は?」
「ホントに鈍いのね。万が一アンタたちが生き残られたら、今度、私が相手してあげるわ。」

麗源の視界に、刹那、ノイズが入り、間もなく世界が動転する。
巨人が大地を鼓に叩いたか。地下に住まう古龍が吼えたか。
足下から巻き起こる凄まじい揺れに見舞われて、麗源は転倒した。
そうして、やや混濁する視覚を頼りに、空に消える『PP』の桃色を追い、
次いで、突然に走り出した真性の背を捉える。

319 名前:麗源新貴 ◆S00N9pbnYw [sage] 投稿日:2010/02/27(土) 21:00:13 0
「よせ――!」

麗源の認識。
庭に子供の落書きのような歪な線が走れば、俄かに亀裂に変わる。
地盤の絶叫が天を貫いたと思いきや、すぐさま折り返して音響の雨と降り注ぎ、大気がひび割れた。
時刻は深夜を通り越して、そろそろ朝方に足をかけている。
さては胡蝶が目を覚まし始めたのか。夢中に敷かれた舞踏会のホールは、あっけなくも崩壊を辿る。
そのカタストロフの中に在って、冷ややかかつ自分本位めいた輝きを灯すBダイヤを見た。
Bダイヤを求める、真性の疾駆。真性を追跡する、麗源の双眸。麗源をも誘惑せんとするか、Bダイヤの嘲笑。

麗源の思考。
まだ頭の隅では、偸盗という悪事に加担すべきかという自問が残されている。
今なら引き返せる。真性を見捨て、単身、スティール邸から脱することは容易かろう。
仮にそうしたとして、その素性はともかく、人間一人を捨て置いてしまった事への苦悩が待ち受けているのは無論、
かと言って真性と道行を共にすれば、己の体に更なる汚泥を塗りたくる事になる。
どちらに転んでも、今後の煩悶に身を投じるはめになることは明白で、
それではどちらを選ぶべきかと、苦慮を始めるのも必至である。

一度はカードの影響で、踏ん切りをつけられた彼だが、その効用は長くなかった。
今の彼も、カードに頼りたくて仕方がない。しかし果たして、この状況でそんな余裕があるものか。

そして、麗源の行動。

「俺は――。もう、顧みない。」

よろめきながらも、起つ。そして視る。やがて聴く。一歩前に出た。
一切を受動に任せた彼に、僅かな変化があった。彼の捉える世界が、僅かに色づき始める。
生れ落ちて20年近く、腹の底で醸造されてきた彼の想いが、
押さえきれぬ感情を炸裂させ、迸る光の奔流と咆哮する。

「変わるんだっ!」

駆けながら。

「グローリアッ(栄光あれ)!!」

見参。

320 名前:麗源新貴 ◆S00N9pbnYw [sage] 投稿日:2010/02/27(土) 21:02:54 0
真性に向けてBダイヤから差し伸べられる手に、
また、あるもう一本の腕が重なり合うようにして、
あわや闇に飲み込まれんとする男の姿を抱きとめた。
靡くトーガとスカーフが、意識を手放した真性の顔を優しく撫ぜる。

白と黒に配色された、どっちつかずの人影は、
夜に解け落ちそうな程に脱力した真性の肉体をしっかと抱え、
崩れ落ちる岩盤の断片を足場にして、得意の跳躍を繰り返し、
呑国の巨魚の如く口腔を開けた大穴から、やっとの思いで脱出を遂げる。
足下に芝生を踏んでも、まだ、踵の辺りがおぼつかない。
一息つきながらも、間もなく、己の全身に発破を仕掛けて駆け出した。

所々に現れた地面の隆起を幾度も飛び越える。
その度に、彼の心を風が満たした。その顔にあしらわれた仮面も揺れた。
道は上々である。無色彩の残光を幾つも率いて、影は走る。
地上に露出しているパイプラインを蹴り続けにして穴を開けた。
滑り降りたその内部には照明もなく、暗がりばかりが在った。
方角にして南北に、一直線に伸びる凱旋の道を、盲滅法にひた走る者がいる。

(変われたのか、俺は?)

仮面の内には、やはり、自問が逞しくされていた。

(ま、いいか。少なくとも、今の内は。)

走る。走り続けて、ようやく出口に達する。
白黒の人影は消え失せ、うって代わった麗源新貴が、
真性の身体を背負うのか引き摺るのか、余り配慮の見えない抱え方をして、
地下通路を後に、白み始めた空に残された星々の尋常な輝きを仰いだ。

少しでも人気のある方向を察して、真性を連れる麗源。
歩く内に小さなアパートを発見して、ここならまともな人通りもありそうで大丈夫と、
どこか安らかな顔で眠る彼の肢体を、その外壁に背をもたせかけるようにして安置する。
図らずもそのアパートは真性の住居なのだが、麗源にはそれを知る由はなかった。

ぐるりと辺りに視線を廻らせてから、ありがとうと、麗源は言った。
誰へともなくの感謝を擲ってから、真性に背を向ける。

ただ――ホルスタインに変身した時、その体色は凡そ白黒五分ずつに分かれる筈が、
真性の救出を志した時には、明らかに黒の割合が勝っていたという、
底の知れぬ、そして彼自身による自覚すらない、ある一つの問題を携え、麗源は帰路に就く。

【真性を救出し、彼の済むアパート前に安置。自身も家へ帰る。】

321 名前:旋風院 雷羽◇zYCuy2/gkI[sage] 投稿日:2010/02/28(日) 01:48:19 0
「な、なーっはっはっは!! この俺様に、そんなウスノロパンチが
 当たるかよ!! 諦めてとっととぶっ倒れやがれえっ!!!」

「んっはっは! そんな攻撃でこの俺様が倒れると思ってるのか?
 それより、手前こそさっきから避けるのに必死じゃねえか。
 男なら男らしく、殴られたらどうだ!?」

『不屈不倒』と雷羽の勝負は、一見均衡を保っていた。

雷羽は進化したその身体能力を以って『不屈不倒』の打撃を回避し、
更に隙を見ては手数の多い打撃をその筋肉に打ち込んでいる。
対する『不屈不倒』は、強靭な筋肉を鋼の様に引き締める事で雷羽の強力な打撃の
威力を減衰し、有り余るスタミナを持って一撃必殺の拳を撃ち続けている。

停滞した状況。ともすれば、打撃を当てている雷羽がやや有利に見えるが、
事実は違う。この戦い、押されているのは旋風院雷羽の方である。

油断を消した『不屈不倒』の繰り出す拳。それは疑いなく揺らぎ無く、その全てが
一撃必殺の威力を持っている。雷羽は無意識状態の時や先程の交錯時にその拳を
何度か受け、なお立ち上がったが、実はそれだけでもう精一杯だった。
強化された雷羽のボディを以ってしても、正面からまともに受けられるのは
数えられる回数だけだったのである。後一発でも喰らえば、雷羽は膝を付くだろう。
対する雷羽の攻撃は、効果こそあるものの、『不屈不倒』の体力を考えれば
それが効果を出しすのはまだまだ先の話となる。
今以上にリアクターからエネルギーを出そうにも、既に雷羽の行った
エネルギーの『装填』回数は4回に達しており、これ以上の出力を出せば、
暴走したエネルギーで自爆してしまうである事を雷羽の身体が雷羽へと伝えている。

一方は、無尽蔵の体力を以ってまだ暫くの間は耐えていられそうな拳を
受けながら、一撃で相手を粉砕できる拳を放ち続ける事で勝利が得られる。
もう一方は、いつ倒れるかも解らない相手に対し、相手の放つ全て一撃必殺の打撃を
気を抜く事無く一つも喰らわずに回避し続け、その隙間を縫うような、
攻撃だけしか出来ない状況で勝利を得なければならない。
雷羽は改造人間である為、スタミナ切れで倒れるという事はまあ無いだろうが、
こんな戦いでは精神が持つ筈が無い。ベースが人間である事の不利が
この戦闘においては前面に出てしまっていた。
恐らくは、この均衡はほんの僅かな衝撃で崩れ去る。雷羽の敗北という形で。

そして、その時はすぐに訪れた。別の舞台で行われていた戦いの余波で、
床が崩れ去り、黒いダイヤが落ち、雷羽の脳が、ダイヤを目で追う様、指示を出した。

「戦いの最中に、余所見はいけねえなあ!!」

獰猛な肉食獣の様な笑みを浮かべた『不屈不倒』の拳が雷羽の腹部へと突き刺さる。
衝撃は黒と銀線の鎧を突き抜け、雷羽の身体を口を開いた大穴へと叩き堕とした。

「ぐ、がっ!!? ば、馬鹿な! この俺様がこんな奴にいいぃぃぃ………!!!!」

そして、負け犬全開な声を残し、雷羽は暗い穴の下で瓦礫に飲まれていった。
恐らく死んではいないだろうが、もはや戦闘は不可能だろう。
歴戦のヒーローの前に、旋風院雷羽というヴィランは敗北を喫したのである。

322 名前:秤乃光 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/02/28(日) 04:19:20 0
崩落の余波が及ばない安全な場所にまで退避して、四人は一息吐いた。
けれども、その吐息が孕んだ意図は違う。
他の三人の嘆息が安堵からの物である事に対して、純白の少女は『覚悟』を決めるべく、息を吐いたのだ。
誰もが微動する事すら許さぬ速度で、秤乃光はワンドを振るう。
左翔太郎とフィリップ、両者を月光の刃が剣山の如く覆い尽くした。

>『翔太郎、つまり2人はヒーローとヴィランと呼ばれる者達の調停者…ではないかな?
>悪いけど、君たちの事も”検索”させて貰ったよ。つい、さっき…寝てる振りをしてね。』

光の脳裏に、先程のフィリップの声が反響する。
彼の言う『検索』が一体如何なる手段かは分かりかねる。
だが過程はともかく結果は、彼女と暗楽の正体がバレたと言う事には違いない。
『ヒーロー』にも『ヴィラン』にも、誰にも知られてはならない秘密が、露呈した。

この時点で選択肢は一つしか無い。
殺すしかないのだ。
二人のライダーも、変身を果たしていない今ならば容易に命を奪える。

そして怪我の有無に関わらず彼女に遠く及ばない、本館も。
殺すしかないのだ。
しかし、一向に彼女の腕は動かない。

どうしても、出来なかった。
光は人を殺した事が無い。
必要な殺人はいつでも、姉であり悪を担当する暗楽が請け負ってきた。

そうでなくとも、明日を頑張ろうと告げたばかりの本館を殺すなど。
明日を奪うなど、出来る筈が無かった。
故に、彼女は選択する。

「約束してください。……私達の素性を、絶対誰にも明かさないと」

言葉と同時、光は右手のワンドを胸元へ運んだ。
月明かりを受けて輝く透明な宝石から、純粋な輝きがワンドに吸い取られる。
彼女はワンドで頭上に弧を描き、筆先に宿った光輝の球体を夜空へと放った。

一瞬の間隙を置いて、光華が花開く。
発光の柱が轟音と共に降り注ぎ、地上の四人の周囲を削り取る。
光が霧散すると、辺りは焦土と言う言葉すら生温い、抉れて跡形も無い窪みと化していた。

「もしも誰かにバラしたなら私が、私が貴方達を殺します」
胸元で白く成り果てて散っていく宝石に目もくれず、彼女は告げる。
本館を一瞥すると、彼女は純白のフリルを翻して夜空へ飛び立った。

去り際、一度だけ光は振り返る。

「じゃあね……じゃないや。バイバイ、お兄ちゃん。えっと……頑張ってね」

それだけ告げて、今度こそ彼女は姿を眩ました。

323 名前:秤乃暗楽 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/02/28(日) 05:27:16 0
「……で、なんでコイツはこんな所で寝てる訳?」
二人が何処に逃げたのか。
一先ず思いつく当てに従い真性のアパートを訪れてみたら、何故だか彼は外壁に寄り掛かり昏睡していた。

「ねぎらいの一つや二つ、くれてやろうと思ったのに、ねえ」

余りに度を越えた間抜けな寝顔に思わず顔が緩む。
けれど何故かしら。いつもならすぐに仮面を被りなおすのに。
今はどうしてもそれを正す気になれなくて、私はそのまま屈み込んで、彼に近付いた。
手の内にはしかと、黒い宝石が握られている。

「貴方は本当によくやったわ」

言いながらBダイヤモンドを受け取ろうとするけど、彼は尚も手を開こうとしない。
心配しなくても、これを手放した所で、貴方が今夜手にしたものは無くなったりしないわ。
それから暫し悪戦苦闘して、ようやく私は彼からBダイヤを剥ぎ取った。

過程で何度か、真性は呻き声を上げていた。
そう言えば最後の崩落に至って、彼は随分と無茶をしていたわね。
私にも予測は出来ないけど、見えない所は結構ズタボロなのかも知れないわ。

でも、困ったわ。
ピジョンブラッドの紅玉はもう無いし、私には真性を治療する術がない。
あそこまで頑張った彼に何の施しも出来ないと言うのは、少々気が引けた。

「……仕方ないわね」

頬が、目元が、一層緩むのを感じながら、私は更に彼に近付いた。
こんな物で身体が治る訳もないんだけど。
まあ……サービスよね、うん。

目を閉じて、私は彼の頬に軽く。
本当に軽くだけど、口付けをした。

真性がもう一度、呻き声を上げる。
……ま、そりゃこんな事で傷が癒える訳もないんだけど。
事を終えてから何となく、妙な感覚が脳を侵すべく押し寄せてくる。

「とは言ったものの、これだけじゃ何があったかも分からないわよね」

私はとりあえず言葉を発して、その感覚を塗り潰した。
けれども結局何がしてやれるって訳でもなくて、仕方なく私は一枚の手紙を彼に残す事にする。

一言だけ『ご苦労様』と。

もしも彼が何か報酬を望むのなら、それはまた後に聞いてあげればいいでしょう。
「……本当にご苦労様、貴方はよくやったわ」
最後にもう一度、言い残す。

後は、私の仕事だわ。

324 名前:EM114-48-45-174.pool.e-mobile.ne.jp[sage] 投稿日:2010/02/28(日) 06:23:36 0
今回の失敗の原因を考える。
単にプランが狂ったからだろうか
いや、違う仮にプラン通りいったとしても取られていただろう
ならば、原因は単純に私の慢心にあるのだろう
遠退くブラックダイヤモンドを見ながらそう重い耽る
「…ダイヤとCの情報は諦めることにするわ
 でも、これは譲る気はないわ
 アイヴィス!リストMに載っている奴らに連絡して」
トリッシュが次に取った手
それは情報規制である
仮にこの失態が大々的に報じられた場合
会社が受ける損害は甚大なものになるのは必死だ
社長として、会社いや社員の生活を守るのは当然の義務だ
だからこそ、この一件は闇に葬らねばならない
そう心に誓い、各界の重鎮らの説得を始めた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

翌朝、ガレージにてアーマーを着たまま大の字で眠るトリッシュの姿があった
全財産の三分の一を費やしてしまったが、なんとか隠蔽することが出来たようだ。




325 名前:左翔太郎 ◆/gk7MDoUlwA4 [sage] 投稿日:2010/02/28(日) 22:41:31 0
>>322
>誰もが微動する事すら許さぬ速度で、秤乃光はワンドを振るう。
>左翔太郎とフィリップ、両者を月光の刃が剣山の如く覆い尽くした。

身動きすら出来ず呆然とする2人。
殺気を感じ取るが、翔太郎の目は光を見据えたまま動かない。
「……よせ。君はそんな事をするべきじゃない!」

>「約束してください。……私達の素性を、絶対誰にも明かさないと」

フィリップが何を言おうと立つのを制し、翔太郎が小さく頷いた。
「あぁ、君にも俺達に言えない理由ってのがあるのかもな。
分かったぜ…約束だ。」
一方の亜樹子は本館にしがみ付いたまま震えているだけだった。

「しかし翔太郎……彼女達には興味があるね。
この街の悪と正義のバランスに深く関る存在っていうことは
間違い無さそうだ。」

翔太郎は思案したまま動かない。
彼女の言葉が何を意味するのか。やはり何かが引っ掛かる。
大きく深呼吸すると本館の方を向いた。
「あんたは、これからどうすんだ?
コーヒーくらいなら俺の事務所で奢るぜ……あの子には
また会えるさ。必ずな。」



326 名前:本舘 ◇SGue2uUfkw[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:14:56 0
ブラックダイヤモンドをめぐる闘いは終わった…。
今回僕はダイヤモンドを手に入れる事も、まともに闘う事も出来ず、ただ自分が無力だということを思い知らされ…醜態を晒しただけで終わってしまった。
>>310>>322そして少女も去って行った。
少女達の正体を知っているのは僕達だけなのだろう。
言われるまでもなく、誰にも少女達の正体をバラす気は無い。

僕の心の中では少女の去り際の言葉が引っ掛かっていた。
>「じゃあね……じゃないや。バイバイ、お兄ちゃん。えっと……頑張ってね」
もう……会えないのか…。
僕には…必要だった筈だ、彼女の力が……いや、彼女が…。
それなのに僕は引き留めることも出来ず…ただ呆然と、去って行く彼女の姿を眺めていた。
>>325>「あんたは、これからどうすんだ?
コーヒーくらいなら俺の事務所で奢るぜ……あの子には
また会えるさ。必ずな。」
そんな僕を気遣ってか、翔太郎が声を掛けてくる。
「僕は……家に帰るよ。色々と……やらなきゃ…いけないことが…あるからね。
 …………縁があったら……また会おう…。」
3人に別れを告げ、痛む体をなんとか動かしながら家に向かう。
彼女が去り際に返してくれたベルトを両手に持って…。

327 名前: ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:17:16 0
人気の無い広場、白んだ空の下。

秤乃暗楽はブラックダイヤモンドを前に、ワンドを構えていた。
何をする為か、答えは至極単純――眼前の魔石を、殺す為である。
壊すではなく、殺すのだ。

壊すだけならば、他の『ヒーロー』や『ヴィラン』でも出来る。
アイアンメイデンの碧き閃光でも、星真一の魔術の弾丸でも。
旋風院雷羽の拳や、或いは本館でさえも可能かもしれない。

だが、それでは石は『砕けた』だけに過ぎない。
石の持つ本質を奪う事は出来ない。
だからこそ『殺す』。

彼女が有する格別の異能を以って、存在そのものを塵芥へと返すのだ。

彼女の表情は普段の冷ややかな仮面でも、余裕に満ちた笑みでもなかった。
ただただ、険しい。
しくじる事は許されないのだから。

『楽園』に住まう一組の男女が触れた禁忌。
彼らに『知性』を与え、原罪を植え付けた。
人々に『異能』を与え、異常な願望を植え付ける。

人類創造以前から存在する魔石。
聖書の中に『蛇』として、『サタン』として名を残した、触れてはならない絶対のタブー。
世界の均衡を保つ『ハカリノイチゾク』の天敵。

絶対に、破壊しなければならない。

極度の集中の中、暗楽はワンドを振るった。
緩やかに、魔石から漆黒が瘴気の如く漏れて出る。
霧の形状をした暗黒は徐々に細り、形を成してワンドの筆先へと宿っていく。

暗楽の顔が微かに安らぎ、しかし異変は唐突に起こった。

魔石が鳴動を始め、内に秘めた力を解き放たんとするように、赤く輝き始めた。
炎に放り込んだ炭さながら、魔石は段々と赤く染まっていく。

この現象は、奇しくも、もう一つの魔石を有する赤穂が潜ませた能力。
即ち爆弾化を、危機に瀕した魔石が自ら発動させようとしているのだった。
一転して暗楽の表情が凍り付き、彼女は急ぎ魔石を殺さんとする。

ワンドを染める漆黒は色濃くなっていくが、遅い。
魔石は巨大な爆風を巻き起こし、彼女を弾いた。
遥か遠くにまで吹き飛ばされて、暗楽は呆然と震えながらも空を見上げる。

陽光が僅かに染み渡る空に、砕けた魔石が幾つも、飛び散っていた。

328 名前: ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:18:12 0
魔石が降り注ぐ。

大仕事を終えた真性の元に。
微かな変化を得た麗源の元に。
心に澱みを渦巻かせている本館の元に。
そう言えばこのままでは任務失敗で、またも懲罰を喰らうのかと頭を悩ませる旋風院の元に。
泥のように眠りこけるトリッシュの元に。
結局為すべき事が何一つ出来なかったと悔いる星の元に。

『ヒーロー』と『ヴィラン』が入り交える強欲の都市に。

魔石が降り注ぐ。
灰色の空の下で、漆黒の艶を見せ付けて。
放たれる輝きは、自分を拾え、そして使えと命じているようだった。

【強い意志を持って挑めば、石の力を御する事も出来るだろう。
 君達は石を拾い上げてもいいし、無視しても、何処かに放り投げてもいい】

329 名前: ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:19:24 0
  


「クソ……クソッ! 忌々しい……! トリッシュ・スティールに天道寺の奴らめ!」
自社の低迷に窮まる業績変遷を前に、ジェームズ・フロイドは憤然と握った拳をデスクに打ち付けた。
執事が彼をたしなめるが、口を出すなとジェームズは執事を殴り付ける。

「ええい、クソ……! 不愉快だ! 僕は出かけてくる!」
最近になって、彼は『ヒーロー』としての働きが増えた。
けれどもそれは昔のように、正義感に依る物ではなくなっていた。
ただ憂さ晴らしとして、悪人を虐げる事だけが目的の暴力。

故に、今宵『ヴィラン』が終結するトリッシュ邸に、彼は向かわなかった。
誰が好き好んで、むき出しの劣等感を抱えたまま茨の園に立ち入るものかと。
トリッシュ邸へ『ヒーロー』が出払っている隙を狙った三下の悪党ばかりを捕らえ、彼は辛うじて自尊心を保っていた。

かくして夜空も白み、彼は帰路についた。
落ちぶれたヒーロー。
このまま堕落していく他無い彼の姿は、酷く惨めだった。

だが不意に、彼の眼前に悪魔が降り立った。
砕けた魔石の破片。
その姿に見覚えのある彼は、しかしどこか半信半疑に足元の破片を拾い上げた。
途端に、彼の全身をどす黒い情動が駆け巡る。
その奔流こそが、手中の小石が自身の望み焦がれた魔石である証左だった。

「……は、はは! 素晴らしい! 望んでもいなかった事だ!
 これがあれば、これさえあればあのクソッタレの二人を出し抜いてやれる!」

急ぎ、彼は会社へと戻った。
向かう先は開発研究室。
以前から構想していた新型の兵器を、完成させるべく。

スティールインダストリアルが開発した、リアクターコア。
天堂寺工業が開発した、バトルシステム『ライド』。
いずれもジェームズコープの技術によって再現する事は可能なのだ。
だが後追いの技術を幾ら作った所で、意味は無い。

しかし二つの技術を融合させた、全く別のシステムを作り上げたのなら。
それは傾いているジェームズコープを立て直すに、十分過ぎる物となるだろう。
そして彼、ジェームズ・フロイドは、その『新システム』の構想を既に完成させていた。

唯一足りなかった物も、たった今さっき手に入った。
即ち、魔石。

330 名前: ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:20:44 0
「さあ……行くぞ。最強の発明の……完成だ……!」
胸部に機械を埋め込むジェームズ。
けれども容器を思わせる造形の機械の中は、空だった。

「お坊ちゃま……やはりその……やめておいた方が……」
「黙っていろ! 僕の技術は、構想は完璧だ!」
不安そうに制止をかける執事を怒鳴り、彼は先程拾ったBダイヤを手に取った。

リアクターコアの核に、バトルシステム『ライド』の要領でBダイヤを据える。
魔石との繋がりをより深める事で驚異的な力を引き出す、新機構。

「『リアクター・マモン』の……完成だ……!」

装置の中に、Bダイヤが投げ込まれる。
紫電が迸り、装置とダイヤが結合した。
成功を確信したジェームズの表情に笑みが宿り――

――続いて漆黒の何かが、彼の全身へと逆流する。

悲鳴が研究室を木霊した。
執事は狼狽して、彼に駆け寄る。
そして装置を取り外そうとするが、彼の枯木のような手は別の腕によって制された。
執事の視線が装置からジェームズの顔へと移る。

「……はは、爺やは心配性だな」
ジェームズ・フロイドは、笑っていた。
久しぶりに見る彼の笑顔に執事は安堵して――しかしすぐに、新たな不安が心臓を締め付ける。

「クッ……ハハッ! 完璧だ……! 完璧だよ! これで奴らを叩き潰してやれる!
 いけ好かないトリッシュ・スティールも! キザったらしい天道寺の奴も!」

ジェームズの笑みはこれまでに無いほど、邪悪に塗れていた。
彼が生まれて以来ずっと付き添ってきた執事が、一度も見た事が無いほどに。

「完膚無きにまで叩き潰してやるぞ! そして喰らい尽くしてやる!
 どいつもこいつも『強奪』して、僕が絶対の『一番』となってやるんだ!」



数日後、天道寺工業の本社ビル並びに主要工場が一夜の内に全壊した。
進退窮まった天道寺工業にジェームズコープは救済策を提示したが――それは実質の吸収合併を意味する物だった。

331 名前: ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:21:42 0
気が付いタラ、僕は狭い筒の中ニイた。
薄緑色の液体に包まレテ、滑らかで透明な壁に阻マレた空間で、僕は生まレテイた。

僕は何故、生まれたのダロう。
考えてみたら、答えはすぐに分かっタ。
頭の中に刻み込まれた命令が浮カビ上がる。

僕は一人の少女を殺す為に、生マレタンだ。
黒い服を着た、小さな女の子を殺ス為ニ。
でもその命令に従う前に、僕ハ一つ疑問を覚えた。
一体この命令は、誰によって刻まれたんダろう。


一体僕の命は、誰によって作られたんだろう。


脳みその奥に浮かび上がる、ぼんやりとした人影。
満面の笑みで僕を見ている、多分男の人。
きっとこの人が、僕のお父さんなんだ。

アイタイって、思った。
無性に父さんにアイたかった。
ずっとずっと、この狭い筒の中で過ごしてきた。

お父さんにアイタイ。
会って、僕の頭を撫でてもらいたい。
こんな刻み込まれた命令じゃなくて、その口から命令を聞きたい。
アイタイ、アイタイ、あいたい、あいたい。


会いたい。


気が付けば僕は、僕を阻む透明な壁を切り裂いていた。
薄緑色の液体が流れ出て、真っ白な……とは言えないけど、くすんだ白の空間が広がる。
何だか分からないけど、祝福されているみたいで嬉しかった。

周りを見てみたら、僕と似た格好をしてるけど少しだけ違う、皆がいた。
孤独じゃないと考えると、また嬉しくなってくる。

そして、僕達は埃だらけの地下から緑溢れる地上へと飛び出した。
向かう先は人の沢山いる所。
ちょっと空気が汚くて凄くうるさいけど、きっとあそこに父さんがいる。


さあ、父さんに会いに行こう。
何処にいるのか分からないけど、父さんに会いに行こう。

332 名前:星 真一 ◆fSS4JmCGEk [sage] 投稿日:2010/03/03(水) 22:34:28 0
謎のバイクは安全な場所まで送り届けると何処かへと走り去っていった。
「いったいなんだったんだ…?」
その答えは誰もいない空間に答える者は存在しない。
「俺は……」
何も出来なかったという怒りと悔しさで身体が震える。
ブラックダイヤは壊すどころか奪われ、同僚を殺されあまつさえ
殺した犯人が背中を向けていたという理由で仇も取れなかった
これを無能として何と言う?
「チクショウーーーーーー!!」
変身を解いた生身の状態で強く地面を殴りつける。
何度も何度も血が吹き出るまでずっと
「ハァハァ…」
息が荒れ、どうにでもなれというように地面に寝転ぶ
「クソッタレ……」
自分の情けなさに自嘲気味に呟く
しばらく夜空を眺めていると空から何かが落ちてくる。
それをなんとなく拾ってみようとすると身体が反発するように反応を起こす
拾い上げてみればそれはブラックダイヤの破片らしかった
「なんでこんな物がこんな所に……」
正直疑問で尽きなかったが、依頼を思い出しとりあえず懐に入れる
「…とりあえず教授の依頼をこなすか」
探偵として引き受けた仕事はどんな事だろうが最後まで遂げるのがポリシーだ
「いつつ…とりあえずあとで手当てしてもらうか」
依頼をこなすべく、依頼主である教授の研究室にむかう。


333 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/03/05(金) 00:16:49 0
m9(^Д^)プギャーーーッ
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334 名前:秤乃 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/03/05(金) 00:18:57 0
http://jbbs.livedoor.jp/internet/7909/

新避難所です
騒動を呼んで申し訳ありませんでした

335 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/03/05(金) 00:22:14 0
m9(^Д^)プギャーーーッ
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336 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/03/05(金) 00:22:58 0
何でなな板に立てなかったんだよ('A`)
バカかお前

337 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/03/05(金) 00:27:15 0
結局なんだかんだいって、自分で管理したんだよw
仕切り屋なんだからパンダはw暖かく見守ろうぜww

338 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/03/05(金) 00:28:07 0
コクハもクソだが、パンダも強引に進めすぎたな。
そもそもお前が立てろなんて誰も言ってないのに。

339 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/03/05(金) 00:29:02 0
展開を急ぎすぎて少し本性が見えたなw
m9(^Д^)プギャーーーッ
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340 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/03/05(金) 00:30:05 0
避難所削除されたんだからさっさと立てなきゃ駄目だろw
そもそもコクハの膝下とか誰だって嫌だっての

341 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/03/05(金) 00:30:12 0
まだ立てろなんて書いてなかったろ…おいおい。

342 名前:真性 ◆8SWM8niap6 [sage] 投稿日:2010/03/06(土) 05:06:15 0
光に手を引かれ、俺は眩溜へ飲み込まれる。形容できない感覚が皮膚を浸潤して体内に至り、血流を通して中枢へと巡る。
指先をチリチリと焼かれるようなこそばゆさはやがて、肉を解いていくように俺の身体を光子に変えた。
やがて意識だけが取り残さる。俺の手首を掴んだいた手の先を視線で辿ると、等身大の人影が、光でその形を浮き彫りにしていた。

「"神様"――?」

『半分正解、ってなトコだなァ。おれは正しくお前が"神様"って呼んでるシロモノで、ついでに言えばおれァ神様じゃあネェ』

「……わけ分かんねえよ」

おっさんの体躯におっさんの渋声が意識に直接響く。脳味噌をかき乱されてるようでなんとも背徳的な感覚だった。
ダイヤを中心に展開したおっさんの虚像。"神様"に自由意志があったってのが驚きだ。それとも俺の深層心理的な何かか?

『お前が<パラダイムボトル>って名付けた能力は神域の異能じゃねェってこった。薄々分かってんだろ?お前も』

「別に俺だって掌にマジモンの神様が宿ってるなんてことは考えちゃいないぜ?どっちかっつうと、背く系の稼業だしな」

『お前の行いの善い悪いなんざ神はいちいち見ちゃいねェよ。神の教えってなァただのプロパガンダだ。広告塔だ』

「おっさんの涜神論なんかどうでもいいぜ。なんだって"神様"がブラックダイヤから出てきてんだよ」

『そりゃお前、呼んだだろ、俺を』

「ああ?」

要領を得ない会話だった。おっさんの話は抽象的に極まり、理数系男子の俺には右から左な内容。
それでも『呼んだ』ってのがなんなのかは理解できて、でもそれって"神様"的にはどうなのよって話。
そう、俺は確かに言った。叫んだ。口走った。

『――悪いことしてぇ』

反応したのは"神様"か、Bダイヤか。

『お前はもっと悪くなれる。もっと世界を変えられる。その為に俺ァお前を選んで、力を貸したんだ。だから違えるんじゃねェぞ?』


――正真正銘にして真性の『悪』。

『世界の変革者』としての道程を。



343 名前:真性道程 ◆8SWM8niap6 [sage] 投稿日:2010/03/06(土) 05:52:45 0
《――ありがとう》

暗転。

《……本当にご苦労様、貴方はよくやったわ》

覚醒。

目が覚めたら家だった。
何を言ってるかわからねーと思うが、俺には分かった。大体分かった。

満天の星空の下、俺は自宅アパートの壁に背をつけて眠りこけていた。
まだ寒くなるには早い季節で、路上に放置されてても風邪引いてないのは僥倖っちゃあ僥倖だ。
失った意識が微かに捉えていた感覚の記憶を辿るに、思い出すのは麗源の腕の中。他意はない。

どうやらスティール邸で気絶したあと、麗源の手によって彼の地から脱出し、逃げ仰せ、このアパートまで運搬されたらしい。
見回しても、麗源らしき人影どころか丑三つ時だけあって人っ子一人見当たらない。彷徨った視線を風が攫って夜空に融かしていった。
麗源がどうして俺の家の住所を知っていたのかは分かりかねるけど、まあ、あいつ俺のファンだし。多分。血液型とかで占ったんだろう。

「――ッ!そうだ!ブラックダイヤモンド!!」

跳ね起きて体中をチェックするも、俺が命懸けで窃盗した盗品は影も形も消失していた。
あれだけデカい宝石なら、どっかに紛れ込んだってことはないだろう。ってことは落としたか、あるいはそもそも手に入れ損ねたか。
どちらにせよ、あれだけ大立ち回りして何の狩果もなく逃げ帰ってきたとなれば、黒ゴスに泣いたり笑ったりできなくされそうだ……!

「……そういえば、黒ゴスは帰ってない、のか……?」

屋敷でヒーロー二人と交戦してたのを最後に、俺は彼女を見ていない。
あの超越系最強娘が簡単にやられるとは考えにくいけれども、多勢に無勢じゃ万が一ってこともあり得る。
ダイヤの失敗を責められるより、黒ゴスが五体満足で帰ってきてくれることのがずっと肝要だ。

思わず俯いて、視界の端に白い何かを見つけた。荒れ放題のアパートの前庭、石を重石にして地面へ直置きされた一枚の紙片。
拾い上げて、検分して、折り畳んで、仕舞った。
雑草生い茂る地面にへたり込んで、嘆息する。安堵と成就の溜息を吐く。

手紙には、無遠慮に一言だけ添えてあった。

『ご苦労様』

「は、ははは、なんだ、ちゃんとやれてんじゃん、俺――!」

それは任務成功の通達だった。ブラックダイヤモンドはちゃんと黒ゴスへと移譲された。そこには俺の尽力があり、彼女はそれを労ってくれた。
ったくもう。来てたんなら声とかかけてってくれれば良かったのによぉ!水臭いぜ黒ゴス!起こせよな!

……それとも目的が達成された今。もう、俺は用済みなんだろうか。

「――会いてえな、また」

強く、かそけく、気丈で、不退で、可憐で、妖艶で、非凡で、多彩で、何よりも、誰よりも――悪い奴。
秤乃暗楽という人間に、少女に、存在に、ヴィランに。俺はどうしようもなく憧れて、焦がれているのだった。

……少女に焦がれる22歳童貞ってのも、なかなかに背徳的な光景ではあるけれども。

「会いてええええええーーーーーー!!」

なんとはなしに見上げた空に流れ星が光る。俺は心中で願ってみる。

そして。

流れ星が、こっちに降ってきた。

344 名前:真性道程 ◆8SWM8niap6 [sage] 投稿日:2010/03/06(土) 07:33:57 0
「――うおおおお!!?」

あんまりにも荒唐無稽な現実に、俺はまったく反応できなかった。
矢のように夜空を奔る極光は真っ直ぐに俺へと飛来する。咄嗟に左手で顔面を庇う。瞬間。目の眩むような『色のない光』。
閃光は、受けた左手へと収束していく。やがて光が終逸したとき、左手の甲に異物感。痛みは無く、熱さだけがこびりつく。
見れば、甲に黒い石の欠片がめり込んでいた。まるで地に蒔いた種が定着するように、抵抗なく皮膚へと沈んでいく。

「これは――ブラックダイヤモンド、か?」

その輝きに覚えがあった。ついさっきまで必死に抱えていた宝石。黒ゴスが持っていった魔性の鉱物。
やがて石が完全に表皮の中へと潜ると、同じ『色の無い色』で甲に紋章を描く。それは、黒ゴスの施したものとは違う図式。
ん?欠片?ってことは――

見上げる。

「なんだこりゃ……!」

空が光条で覆われていた。鳥かごを内側から見たらこんな感じになるのか、上空を基点に幾条もの光が空を滑っていく。
さながら全方位型の流星群。ゆるやかに放物線を描きながら、街の至るところへと光の雨が降り注ぐ。
あれら一つ一つが俺に飛んで来たものと同じ、ブラックダイヤモンドの欠片だとするならば。

「砕けて、散らばってるのか……!?」

そして変化は、俺にも顕れた。
心に押し寄せる波濤。猛烈に何かを壊し穢し陵したくなる衝動。赤く染まる視界。黒ずんでいく思考。
泥濘のような誘惑に、ずぶずぶと嵌っていく。足が、腰が、腹が、胸が、肩が、首が――

不意に脳裏へと揺らめく、黒い少女の姿。

「お、お、お、お、お、あああああああああ!!!!」

右手を、握る!
強化紋を一杯に開いた拳を――侵食され始めた左手へと叩き込んだ。
ゴム鞠が破裂するような劈音を奏で、左手へと浸透した衝撃はそのまま欠片へと伝わる。
気が遠のきそうな痛みは、かえって脳にかかった霞を取り払ってくれた。

「ふざけんな……!この矜持は!俺が積み上げてきたモンだぞ……!!こんなとこで!誰かの横槍で!横取りされてたまるか……!」

再び俺を支配せんと光を強めるダイヤの欠片。
俺はそれを、右手で掴む。掴んで、握る。握って――握り潰す。

「俺は上!てめえは下だッ――!!」

握り潰して――掌握した。

光は収束し、終逸する。滾った熱は身体中を巡り、力の奔流となって軌跡を得る。
螺旋。円環。輪廻――

「この淀んだ世界に風穴を開ける為に!指針なき地平に証を立てる為にッ――!!」

そして、俺は光を降した。全てを飲み込み、血肉にした。
終わった光はいつまでも俺の左手に留まり、張り付き、輝いていた。


【ブラックダイヤの欠片を入手】

345 名前:旋風院 雷羽 ◇zYCuy2/gkI[sage] 投稿日:2010/03/06(土) 19:00:36 0
古めかしいボロアパートの一室には、四人の人影があった。

「ぬがあっ!? い、痛ぇだろうが!もっと丁寧にやりやがれ!!」

B「す、すんません!大丈夫ッスか雷羽様?」
A「あ。これ、肋骨の部分が破損してますね」
C「……ドドンマイ」

影達の名前は、悪の改造人間である旋風院雷羽と、その部下たる戦闘員A、B、C。
今の状況は、先の戦闘でボロ負けし瓦礫に埋まっていた雷羽を、
超技術で治療された部下の戦闘員達が回収し、本部に報告に向かう前に
雷羽の住処たるボロアパートへ、応急処置の為に運び込んだというものである。

B「それにしても、パワーアップした雷羽様をボコボコにするなんて、
 どんな化け物だったんッスかその筋肉親父ってのは」

「誰がボコボコだ! これは、あれだ。 ほんのちょびっと油断しちまっただけだ!
 まあ、敵もまあまあ強かったみてーだが、この俺様が油断せず本気でやってたら、
 あんな筋肉親父は指先一本でケチョンケチョンだぜ! なははは……いだだだだっ!!?」

A「あ、すみません。手が滑りました」
C「……ハハッ。ワロス」

これは、とあるヴィランの集団にとっての馬鹿馬鹿しい日常。
そして、そんな陰に生きる者達の日常へも、忍び込む様に闇は落ちる。

「さて、俺様はボスに今回の任務の報告に行くか……ああ!畜生っ!!
 腐れヒーロー共がいなけりゃ任務は成功してたってのに――――痛だっ!?」

B「ありゃ、窓から何か入ってきたみたいッスね。これは……黒い石ッスか?」
C「……水晶?宝石?」
A「綺麗ですね」

「貴様等この俺様の心配をしやがれっ!? ……あん?なんだその石ころ」

A「窓から入ってきて雷羽様の頭に衝突した物です。宝石かもしれませんよ?」

「……ぶぁーか! 放り投げる様なもんが宝石な訳ねぇだろ。
 ったく。俺様はもう行くから、お前もとっとと帰っとけ」

A「雷羽様。この黒い石はどうすれば」

「あん? お前にやる。俺様に石ころを集める趣味はねぇ」

A「え? あ、ありがとうございます。嬉しいです」
B「あー。羨ましいッス!自分も何か欲しいッス!!」

――――この後、戦闘員Aに『謎の黒い石』を渡すという選択を
行ってしまった事を、雷羽は生涯後悔する事になる。

346 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/03/07(日) 21:50:34 0
急に人が減ったように感じるな
一段落ついた事と騒動で熱が冷めたか?
活きてるなら新しい避難所に顔だけでも出して欲しいぜ

347 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/03/10(水) 22:40:43 O
ヒーローTRPGは諸事情により終了します。
皆様ご参加ありがとうございました。

348 名前:麗源新貴 ◆S00N9pbnYw [sage] 投稿日:2010/03/11(木) 01:23:55 0
時は、たかが人などを待たない。
麗源が疲弊した心身を引き摺る内、天は静かに漂白されつつある。
彼はアパートの自室になだれ込むなり、
玄関を入ってすぐのダイニングに服を脱ぎ散らかし、
活気のない黄淡色の全身を晒して、風呂場へ滑り込んだ。

シャワーノズルから水の礫が炸裂すれば、
ただでさえ普段から湿気の多い空間は更に潤い、霞に満ち満ちる。
真白の気に肌を撫ぜられながら、湯船が埋まるのを待つ。
まだ体の火照らない内に、氷を好きなだけ浮かべた梅酒を飲みたくなる。
丸で突拍子もない欲求だろうか。
いや。並々ならぬ緊張に身を投じていた麗源にしてみれば、
安らぎを得る手段としてなら、生理的に照らし合わせても当然の感想である。

バスルームに浮かぶ蒸気、せせこましい湯船に張られた湯、
冷凍庫を宿に借りる氷の群れと、水の三態は、顧みれば生活の方々に存在している。
融通の利かない人間の頑固さに比べれば、可笑しくなるほど柔軟かつ器用なものだ。
麗源などは融点が馬鹿に高い所為で、いつまでも非合理な思想に凝り固まっていた。
スティール邸にて、彼は真性の熱に当てられた為か、ささやかながら融解の体を見せたが、
その調子もいつまで続くか、見当がつかない。
いっそお前は、人間などではなく、水として生まれたかったのだろう、麗源。
今件の渦中を体験して、水の如きしなやかさを、少しでも知られたならば幸いだ。

そもそも、麗源の精神を捕らえし呪縛の本質は、どこにあるのか。

全ての因は、彼の喉元に残された傷にある。
スティール邸の玄関を守る黒服が目を留めていた、それである。
左右の鎖骨の逢瀬を見下ろすような位置に、小さいながらも真一文字の傷が見えよう。
変身能力を手に入れた切っ掛けも、この大都市に住まいを決めた動機も、
過剰なほどの薄弱意志とコンプレックスを携え、
挙句、歪んだヒーローとして誕生した発端も、この傷に纏わる一事件によって決せられた。
果たしてその一部始終は――今は、伏す。
麗源はアルコールの誘惑につられ、早々に湯船を脱してしまった。

349 名前:麗源新貴 ◆S00N9pbnYw [sage] 投稿日:2010/03/11(木) 01:25:01 0
梅酒は安物でも良い。代わりに肴が珍品だだ。
テーブルの上の、そのまた小皿の上に乗せられた黒い欠片を横目に、
麗源は安っぽい椅子に踏ん反りかえって、頭から湯気を立たせつつ、
ちびちびやりながら、その一片を縦から横から眺める。酒はそこそこ進んだ。

「黒雲母……か?」

否。正直を示すなら、Bダイヤの破片に他ならない。
そして麗源自身、それの内包する怪しい魔力には気付いていた。

真性と分かれた後、彼は街灯の下に、秘かな輝きを認めた。
吸い寄せられるようにして歩み寄り、腰を屈めて見つめた後、
右手で持ってそれを拾い上げるのは、滞りのない一連の動作であった。
しかしながら、欠片を手にした途端に、彼の心に暗い靄が渦巻いた。
あたかも、液中に黒いインクを垂らせば、瞬く間に漆黒が拡散する如く――、
その現象が非可逆性であることまで、全く同じく。
貧乏性の麗源は、手中に収めたものを捨てるに至らず、
本能じみた動きで、欠片をジャージのポケットに隠していた。
あるいは、麗源自身が、Bダイヤの魔力に惹かれたのだろうか。
スティール邸にて、Bダイヤにやや魅入られたのが糸を引いていたか。
いずれにせよ、彼がBダイヤの破片を持ち帰った事実に変わりはなかった。
そして、麗源は然程に察しの悪い人種ではない。
単に、認めたくないだけなのだろうか。己の暗部を。

「ま。……何でも良いけどさ。」

Bダイヤはそのまま打ち遣って、梅酒のボトルを冷蔵庫に放り込み、
ついでに台所で軽く口を濯いだ後に
フローリングの上に布団を敷き、その内に潜り込んだ。
洋室に布団は妙な取り合わせではある。
それも、「事件」に因があるのだろうか?無論、今は伏すのだが。

ともかく彼は寝る。ろくに歯も磨かず、『正義』のカードも作り直さず、意識を闇の向こうに擲った。

350 名前:宙野景一 ◆NuW.dKu6ngI9 [sage] 投稿日:2010/03/11(木) 11:26:48 0
新規参加させてもらいます

名前:宙野(そらの)景一(けいいち)(メタルボーガー)
職業:特務警官
勢力:ヒーロー
性別:男
年齢:23
身長:210cm
体重:80kg
性格:堅物なところがある
外見:眉毛の太い強面の巨漢、筋肉隆々
外見2:黒と赤のメタリックな装甲が全身を包み、胸には特捜警察を示すマークがついている、頭部はバイザーではなく金色に光るダブルアイ
特殊能力:普通自動車を片手で持ち上げる怪力と、戦車砲の直撃に耐える装甲を持ち、背中のフライトロケットで空を飛ぶ事ができる
専用支援ヘリコプター「スカイヒート」からガトリング砲、プラズマランチャー、大型ヒートブレード等の装備を投下してもらう事や、ミサイルランチャー、レーザー砲による支援射撃を受ける事ができ
腰部に専用大型レーザー拳銃「ヒートシルバー」を装備している
備考:日本政府が南アフリカの奥地から呼び寄せた特務警官、宙野が、最新鋭のパワードスーツを着込んだ姿
あらゆる法に縛られず、独自の判断で犯罪者を殲滅する事ができる超法的警官であり、平和のために日夜悪の野望に立ち向かう
普段は交番勤務に偽装しているが、有事の際はスカイヒートを呼び出し、メタルボーガーへといつでも変身できる
無論、正体は極秘事項

351 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/03/11(木) 17:00:05 0
戦争マシンで参加します

名前:石原・マーク・マダオ
職業:都市・市長(元トリッシュインダストリー副社長)
勢力:中立
性別:男
年齢:40
身長:175cm (装着時:230cm)
体重:80kg (装着時:192kg)
性格:女垂らし、非常にルーズな性格
外見:オールバックにヒゲ面、高級なスーツ
外見2:ダークブルーのメタルアーマー、飛行能力と対物兵器を装備している
トリッシュのアーマーの予備を改良した物
特殊能力:全身が火力の倉庫ともいうべき代物。
備考:都市の市長に当選したばかりの新人市長。元はトリッシュの会社で
副社長として手腕を振るってはいたが、「仕事に飽きた」との理由で退職していた。
共同で開発していたアーマーの試作品を改良し、独自の戦闘アーマーを開発している。
しかし、コアの改良に手間取っており現状でも完璧な代物とはいえない。
趣味は自宅に篭っての機会弄りと女性にしてもらう耳掻き。
普段は非常にいい加減な性格で、何もかも無茶苦茶ではあるが
市政への態度だけは非常に真面目な部分がある。
自ら街を守る市長を自負しているが、市民への公表は行っていない。

352 名前:石原・M・マダオ ◆bTpJe3giiIE2 [sage] 投稿日:2010/03/11(木) 17:13:31 0
空から黒い石が舞い降りてきた日。この男、「石原・M・マダオ」は
市議会で追求の矢面に立たされていた――

「市長、貴方は今回の騒ぎに警察を介入させてこのザマです。
どう責任を取るおつもりですか?」

「市長!市長!聞いてますか!?貴方のせいでまた市の犯罪率が上がってるんですよ!
市長!市長!!」

石原はこの都市の市長である。現在、この街が抱える問題は多い。
犯罪、貧困、そしてヒーローとヴィラン。
その全てを一気に解決しろといっても無理な話である。
石原は机に走り書きしていた女性議員の似顔絵の額に「肉」を書き足すと
マイクの電源を入れた。

「あ〜あ、聞こえてますか。あ〜…あ、電源付いてるね。こりゃ失礼。
先日の事件だが、こちらとしては適切な対応だったと思っております。
何せ、あれ程の規模の事件でしたのでね…警察だけで対応出来なかった部分は否めない。
現在、ヒーローとヴィランを取り締まる為の法案を準備しておりますが…
これにも検討の機会を頂きたいと。」

窓の外を見る。黒い粒が空から落ちていくのが石原の目にも映った。
これは何だ?と口々に議員や傍聴人達が囁き合う。
石原は場を宥める様に、陽気な笑みを浮かべ両手を広げた。


「黒い雨とは不吉なもんだ。私も、この前黒い宝石を愛人…いやワイフに
プレゼントしたら酷くしかられてね。しばらくは黒い贈り物は避けた方が
いいかもしれないな。」

議会閉廷の鐘がなり、議場を出て行く石原の眼には地面に転がる黒い粒が映った。
その輝きは何処か、深遠への誘いとも取れる輝きを放っていた――

「こりゃ、もう一騒動ありそうだな……」

街の新たな日々が始まる… Another day comes

353 名前:宙野景一 ◆NuW.dKu6ngI9 [sage] 投稿日:2010/03/11(木) 21:36:56 0
町外れの寂れた交番
そこに、身の丈2mの巨漢の警官と、定年間近な老いぼれた警官が二人、勤務している
「そーらのぉ、おめェもわけェのにこんな出世コースだだっはずれなとこ送られて大変だなぁ」
直立不動…ではなくぼんやりと交番前に立つ巨漢に、老いぼれ警官が心底哀れと言った調子で述べる
この交番は、この事件溢れる街に警察力の無い場所を無くそうなどと言う試みが行われた際建てられた完全に数合わせ的な交番であり
ほとんど出場回数は無いのだが、街が街なので数合わせだろうと何だろうといまだに存命しつづけている
その事件溢れる町で事件に出会わない交番に送られてきたのが、この見上げるような新米巡査だった
柔道で黒帯くらいは普通に持っていそうなこの巨漢の警官は、しかし見た目に似合わずどんくさく、最初少々恐れていたこの年老いた巡査部長も、今では生温かい目で彼を見守っている
「巡査部長〜」
「あんだ?」
ぼーっと突っ立っている巨漢が、書き物をしている巡査部長にぼけーっとした調子で尋ねてくる
「ヒーローって何でけーさつや軍隊に属さないんすかねー」
あさっての方向を見ながら尋ねてくる巡査に、巡査部長は軽くため息をつく
「…組織に属すると、組織に合わせなけりゃいけなくなるから。それが嫌なんだろ…。何だおめェ、あの何か、こう、アイアンメイデンの姉ちゃんが美人なんで、とっ捕まえようとか考えてるのか?」
冗談めかして答える巡査部長に、巡査は人畜無害な笑みで答える
「違いますよぉ、そんなおっかない。そんな俺がとっ捕まえられれば巡査部長、やってますでしょ?」
「違いねえな」
「あ、酷い」
冗談交し合い、談笑する二人の姿は、ここが怪人たむろし、死者がぼんぼん出るとんでもない街である事を忘れさせる
巨漢は、こんな雰囲気が大好きだった

354 名前: ◆bTpJe3giiIE2 [sage] 投稿日:2010/03/14(日) 23:39:01 0
≪ニュースの時間です≫

≪本日、市長の石原氏が新たな条例の発布について会見を行いました≫

「やぁ、皆さん。今回はマスメディアの皆様にも盛大に報道して頂けるよう
お願いする。まず、1つ。この街は病んでいる。
飢えと渇きが犯罪を呼び、ヴィランとヒーローによる絶え間ない争いが
破壊を生んでいる。そこで皆さんの提案したい。
ヴィランを取り締まる為の、新たな法的措置と力を保持する事を。
ここに、その力がある。見てくれたまえ。」

石原が咳払いをすると、会見場の舞台が反転しそこから無数の強化アーマーが出現した。

「これは試作品ではあるが、街を守る為の新たな盾となるべきものだ。
名前は、そうだな……メタルマンでどうだ?」

副市長が苦笑いを浮かべる中、首を傾げながらそれを見つめる石原。
どうやらネーミングは気に入って貰えなかったらしい。

「そして、もう1つ。ヒーローを取り締まる法律だ。
これは現在幾つかの案を検討中だが、市民の皆さんにも忌憚の無い意見を
頂きたいと思っている。そこでテレビを見ている君、貴方…誰もいい。
ヒーローとヴィラン。彼らを管理する方法を皆さんで考えましょう。
それでは。」

会見を終え、石原はラウンジへと戻っていく。
まるで高級バーのようなその場所で、オレンジジュースを飲み干しながら
石原は溜息を吐いた。

「ヒーローもヴィランも、一気に殲滅できる方法があれば苦労はしないが…
まぁ、少しずつやるしかないだろうな。この街の為に、な。」



355 名前:トリッシュ ◇.H4UqpaW3Y[sage] 投稿日:2010/03/15(月) 20:19:06 0
数日後、社長室で不機嫌そうな顔でテレビを見てみる彼女がいた。
見てはいるのだが、気持ちはそれどころではない
彼女は今大きな問題を山ほど抱えているのだ。
1つは「アダム」が旧リアクターコアごと盗まれたこと
多少欠点はあるものの兵器としての価値は恐ろしく高い
仮にあれが他の企業や悪の組織に渡ってしまったらどうなるだろうか…考えただけでも恐ろしい
2つ目は、天堂寺とデフォルトの合併だ
あんな事故の直後にここまでスムーズに事を進められるのだろうか?
加えていうなら、天堂寺サイドの重役数名は重傷で喋ることもままならないらしい
それに社長である天堂寺はまだ集中治療室の中だ
…怪しすぎる
それに最近のデフォルトコープからは悪い噂しか聞かないし
デフォルトコープの武器がヴィラン達に流されているような気もする
だが今は様子を窺うことしか出来ないだろう
「デフォルトらしいつまんないデザインね」
テレビに映るメタルマンに悪態をつき、リモコンを投げつける。
また問題が増えた。
石原がデフォルトに技術を流してしまったのだ
最悪だ。悪夢が現実になった瞬間だ
「あのバカ何考えるの!?悪用されたくないから秘密にしてるのにこれじゃ意味ないじゃない!
 久々に頭にきたわ!!ちょっと文句言ってくる
 アイヴィス!車出しなさい」

356 名前: ◆bTpJe3giiIE2 [sage] 投稿日:2010/03/15(月) 23:51:59 0
≪同日、市庁舎≫

「市長、デフォルトコープに関する報告が届きましたがご覧になりますか?
新型防御兵器の発注を行う上で、重要かと。」

トリッシュが報道を確認し激怒した頃――
秘書のメリルが書類を届けに市長室へやって来ていた。
石原はというと…?

「ピザは美味いなぁ。やはり安物のピザに限る。…お、来たか。
どうだ?メリルも食べないか?」

ピザを見せながら子供のように微笑んで見せるが、メリルはいつものように
作り笑いを浮かべて一言。
「いえ、結構です。私、ジャンクフード大嫌いですから。」

「あ、そう。これだからスイーツは…」

「何か言いました?」

メリルの語気に思わず腰が引けた様子の石原は場を取り繕うように
報告書に目を通し始めた。
「経営状態は順調…しかし、順調過ぎるな。
ここ1ヶ月で異常に回復している。」

「裏帳簿…ですか?」

「あぁ、最近あの会社には悪い噂が流れていてね。
調査部を動かしてくれ。勿論、相手に気付かれないように注意してな。」

更に気になるのは天道寺工業との合併だ。あの合併には幾つもの不自然な点がある。
重傷を負った工場長から証言を受けた内容から察するに、ただの爆発事故ではない。
石原の頭の中で、最悪のケースが浮かんでは消えた。

「市長、まさかとは思いますが…相手を探る為にわざわざデフォルトコープに
契約の相談を?」

メリルの推察を、微笑んで石原は返す。
片手にピザ、片手にシャンパンを持って。

「さぁ、どうだろうな。元々、あの会社の社長さんには興味があってね。
昔の同僚のハニーに比べたら大した興味じゃないが…まぁ、ブラフには
いいもんだろ?あのダサいスーツもさ。」

メタルマンの設計図を消去すると、石原は新たな立体映像
ディスプレイを起動した。

「悪役がいなくなればヒーローも居場所を失う。
まぁ、その時どうするかだな。野放しにするか、それとも
堕落する前に掻き消すか。」

≪市長、来客です≫

インターフォンから警備の職員の声が聞こえる。
どうやら誰かが来たようだ。





357 名前:宙野景一 ◆NuW.dKu6ngI9 [sage] 投稿日:2010/03/16(火) 02:04:41 0
すみません、設定を多少変更します、>>353は無かった事にしてください

名前:宙野(そらの)景一(けいいち)(メタルボーガー)
職業:不知火重工特設部隊隊員
勢力:ヒーロー
性別:男
年齢:23
身長:210cm
体重:80kg
性格:意地っ張り
外見:眉毛の太い強面の巨漢、筋肉隆々
外見2:黒と赤、青のメタリックな装甲が全身を包み、胸には不知火重工を示すマークがついている、頭部はバイザーではなく金色に光るダブルアイ
特殊能力:普通自動車を片手で持ち上げる怪力と、戦車砲の直撃に耐える装甲を持ち、背中のフライトロケットで空を飛ぶ事ができる
腰部に専用大型レーザー拳銃「ヒートシルバー」、特殊合金製大型ナイフを装備
備考:自衛隊の装備の多くを生産し、海外では様々な兵器の研究、開発を行っている不知火重工が、アイアンメイデンに対抗して製造したパワードスーツ
既に不知火重工は貧弱ながら簡易パワードスーツの開発、生産に成功しており、新技術こそ無いものの、パワードスーツの基礎技術と、既存兵器に関しては、業界ではトップであり
今回、技術力アピールのため、特設部隊を設立、ヴィランを撃破する広告塔として、メタルボーガーを送り込んだ
平時は新たに創設された不知火重工の支社内、特設ハンガー内に待機し
緊急時には直ちに出動し警察組織に協力し、ヴィラン殲滅を行う

358 名前:宙野景一 ◆NuW.dKu6ngI9 [sage] 投稿日:2010/03/16(火) 02:43:42 0
不知火重工
それは、日本屈指の兵器企業であり、トリッシュのスティール・インダストリアに勝るとも劣らない軍事産業である
この街にもその支社は存在していたが、怪人やらヒーローやらがたむろするこの町、では、影の薄い存在であった
しかし、その影の薄い会社とて、何もしていないわけではない
既にこの支社の地下に、ヴィランの襲撃を防ぐべく、極秘裏にハンガーが設立され、この街で運用される新たな兵器の到着を待っていた
トリッシュのアイアンメイデンが活躍するこの街で、同じ様にパワードスーツを活動させる事は、即ち不知火重工がスティールインダストリアに真っ向勝負を挑む事を意味している
そしてその戦いの火蓋を切る不知火側のパワードスーツが、到着しようとしていた

護衛機を伴った一機の大型輸送ヘリコプターが、新たに設立された不知火重工支社の駐車場にあるヘリポートへと降り立つ
そこから、一両の様々な電子設備を搭載した装甲車と、トレーラーが排出され、ヘリは再び空へと飛び去った
ヘリから降り立った2両の車両は、そのまま車内の工場へ入り、そこから地下へリフトで降りていく
「…ここが、今日から俺達の仕事場となるわけか」
上の今日のためにこの支社を存在させるためのカモフラージュである広いだけのボロくさい工場と違い、最新鋭の設備を整えた地下ハンガーを見て、装甲車に乗っていた巨漢が、横のバンダナに分厚いめがね姿の白衣の男に言う
「んーにゃ、正確にゃー君の職場じゃ無いね、君は外回り、僕等はここでスーツの研究、改良。力仕事君、頭仕事僕、アンダスタン?」
バンダナメガネの言葉に、宙野はふんっと鼻を鳴らす
「念のため聞いとくが、俺が出た時警察に後ろから撃たれるような事は無いんだろうな?味方に撃たれるだの逮捕されるだのはごめんだぞ!」
「心配無いよ、もう我々警察に協力する旨は伝えてあるんだ、君は警察からの指示を受けた指揮車両からの指示を聞いて、その通り動きゃいい」
ボリボリと、宙野は後ろ頭をかく
「……お前、メタルボーガーがアイアンメイデンに性能で勝ってると思うか?」
「ん?無理だね、現時点じゃ戦え負けんだろね。ま着てる人間が互角ならの話しだけどさ」
「なら、何で今上は勝負に出たんだ?」
その質問に、バンダナメガネが不愉快そうな表情になる
「少なくとも競える程度の物にゃ仕上がったからさ。そんで、僕達も正義のために戦う兵器を作ってますよ〜ってアピールするために僕等を出した分さね。…僕としちゃもっともっと凄いスーツ作りたかったけど、ねぇ」
「強いパワードスーツと、誰でも使えて数そろえられるスーツは違うだろうが。後者のが価値がある」
「両方勝って真の勝利って言えるんだよ」
ハンガー内に指揮車両を停車させて、バンダナメガネが呆れた声で言う
「相手が予算オーバーなので着てるんだから、こっちも予算ど返しでやればいい物を」
「…十分コストど返しだろ、アレは」
「……もう4〜5体はこれから送られて来るんだよ、メタルボーガーは。数で質を補う…ってか圧倒したいんだろうね、お上はさ」
指揮車両とトレーラーが後10台づつは止まれそうな広いハンガー内の地下駐車場に第一歩を踏み出しながら、バンダナメガネははき捨てるように言った
「あーあ、俺にその4〜5体作る予算よこせばもっと凄いの作ってやるのにねえ」

359 名前:秤乃 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/03/16(火) 02:52:56 0
魔石が砕け、彼方此方へと散乱してから数日。
秤乃光と秤乃暗楽は、二人して並んで座っていた。
畳張りの床に正座をする姉妹の表情は、険しい。

「魔石は殺せず、あまつさえ町中に破片となって散らばった……ですか」

彼女らの前には、一人の老人が座している。
長い白髪を掻き揚げて糸で束ね、温和そうな容姿には小さな皺が幾つも刻まれていた。
小振りの丸眼鏡を人差し指で上げ直し、老人は二人の少女を見据える。
そうして傍らに積まれた新聞紙を広げ、彼女らに示した。
号外と銘打たれたそれには、トリッシュ邸での一夜以降に起きた事件がつらつらと羅列されていた。

『異形の怪物再来、新たな脅威は今も街の影に潜んでいる』
『異能者氾濫? 急増する異能犯罪』
『増大した異能者が徒党を興している模様』

一際大きく掲載された事件を、老人が読み上げる。

「大事はこれだけ、些事小事に至っては数え切れぬほど。これら全ての事件が、
 元を辿れば君達の失敗に根ざす訳ですが……何か、弁解はありますか?」
老人は口調も面持ちも穏やか、しかし気配だけは冷ややかな怒気と不穏さを孕んでいた。

「……一つだけ」
気圧されながらも、秤乃暗楽は言葉を紡ぐ。
ぴくりと、老人が眉を顰め、無言と視線を以って彼女に続きを促した。

「妹は……光は与えられた仕事を違わずこなしました。失敗したのは、私だけです」
その言葉が意味するのはつまり、全ての罰は自分の一身で受け止める、と言う事だ。
慌てて光が身を乗り出し反駁を試みるが、暗楽は言葉を伴わなず腕のみで彼女を制した。

「ふむ、それでいいんですね?」
老人の問いに、暗楽は黙って頷く。

「ならば罰を与えましょう。秤乃暗楽、君は」

一体如何なる罰が科されるのか。
平静を装いながら、それでも暗楽は表情が、全身が強ばる事を禁じ得なかった。

「これらの事件の解決と、その元凶である魔石の回収。それを一刻も早く行って下さい」
「……はい?」
思いがけず、暗楽は惚けた声を零した。

「何だ、不満かい?」
「いえ……ただ、不可解です。それではただの……」
「いつも通りのお仕事、かな? その通りだよ。失敗に必要なのは究極、折檻ではない。挽回だ」

360 名前:秤乃 ◆k1uX1dWH0U [sage] 投稿日:2010/03/16(火) 02:55:08 0
老人は滔々と語り立ち上がると、二人の頭を軽く一撫でして去っていく。
けれども一度ふと振り返り、

「それに罰ならもう、光が受けてくれているよ。正座、そろそろ解いても構わないよ」

とだけ言って、今度こそその場を後にした。
老人の姿が見えなくなってから、暗楽は目を丸くして光へと視線を遣る。
小恥ずかしそうに、光ははにかんで笑っていた。

「呆れた……。ほら、もう行くわよ。お仕事は山ほどあるんだから」

「あーん、ちょっと待ってよぉ。まだ足が……あー! 待って待って! 引っ張らないでえ!」

泣き言を漏らす光を無理矢理引っ張って、暗楽は屋敷を出る。
空を飛べば足の痺れも少しはマシになるだろうと、二人は白昼の空へと浮かび上がった。
彼女達の眼下にはまず広大な敷地の日本風な屋敷が、次第に都市の全貌が捉えられる。

「もう暫く、彼らと付き合う事になりそうね」

「……そうだね」




自室に戻った老人は座布団に腰を下ろすと、先程手にしていた新聞を再度広げた。
ばさりばさりと乱暴に紙面を捲り、とある記事を開いて指を止める。

『石原氏、対ヴィラン用戦術兵器導入。同時に【ヒーロー規制条例】なるものを提案』

「……愚かな。この世に蔓延る悪辣、その全てを駆逐する事など出来はしない。
 例え一時は潰えても、必ず新たな悪が生まれる。
 その時に『ヒーロー』がいなかったら、悪意は世界へと浸透してしまうと言うのに」

記載された内容に、老人は酷く表情を苦くした。
新聞を握る手に思わず力が篭り、紙面が彼と同じく皺に塗れる。

善悪に限らず、遍く事物は途絶えず栄え過ぎず、あるべきなのだ。
何かが膨大になり過ぎれば、また絶滅してしまえば、その対になる存在も同様に滅ぶ。
丁度、秤の片方ばかりに重りを乗せたら、いつかは秤そのものが倒れてしまうように。
眼鏡の奥で目を閉ざし、老人は嘆息を零す。

「それも、ただ一つの例外、魔石を除いて……ですがね」

存在そのものが世界に害を為す、悪魔たる存在。
世界の安定を保つ彼の一族にとって、因縁深い仇敵。

「天秤の崩落を望む者もいれば、更には魔石の散乱。
 よっぽどこの都市は、嫌っているようですね。……我々『秤の一族』を」

361 名前:トリッシュ ◆.H4UqpaW3Y [sage] 投稿日:2010/03/20(土) 00:16:15 0
 怒りに身を任せて飛び出したトリッシュだったが
赤信号に捕まり立ち往生していた
「…」
どうやら今日は赤信号によく捕まる日らしく、これで12回目の赤信号だったりする
まるで何か大きな力が行く手を阻むんでいるようなそんな気がしなくもない
 そんな感じでイライラしている最中、けたたましいサイレンの音と共に数台のパトカーが目の前を通り過ぎた
「アイヴィス!」
それを見るや否や、彼女は直ぐに何が起こったのかアイヴィスに調べさせた
「銀行で立てこもり事件のようです、犯人は複数、全員武器を所持しています
 主犯格は異能者の可能性もあるようですね」
「警察だけじゃ少し難しい事件ね
 まぁいいわ、アイヴィス!マーク3!」
すぐさまアーマーを装着し、彼女は現場に急行した。

そのころ、市庁舎の応接室で市長を待つデフォルト氏の姿があった

362 名前:宙野景一 ◆NuW.dKu6ngI9 [sage] 投稿日:2010/03/20(土) 22:33:16 0
不知火重工地下ハンガーに、非常サイレンが鳴り響き、職員が慌しく行きかい、トレーラーと指揮車がリフトへと移動する
『第五銀行にて銀行強盗事件発生、警察に鎮圧協力要請送信!』
『ヒートシルバー、充電完了、メタルボーガーシステム、オールグリーン、いつでも起動可能』
状況を説明するアナウンスの声をトレーラーの中で聞きながら、宙野は闘志を燃やしていた

彼はこれまで、この日のために海外で厳しい訓練に身を投じ、そして、自らより厳しい訓練へ、より厳しい訓練へと己を追い詰め、鍛え上げてきたのだ
初陣であるこの戦いに、心が燃えないはずが無い

「さぁ!ドンっと行くぞ!」

猛々しい宙野の声にこたえるように、リフトは地上へと到着する
『協力要請、受理されました!』
『特殊企業協力法下に入りました。サイレン、鳴らします!』
アナウンスの言葉っと共に、トレーラー、指揮車に回転灯が出現し、サイレンが鳴り響く

特殊企業協力法、それは法改正によって誕生した、企業の特設部隊が警察の指揮下で行動する事を条件に、武器使用、怪人との交戦、凶悪犯の拘束等準警察権を得られるというものである
これにより、メタルボーガーは合法的にヴィランと戦う事ができるのだ

サイレンを鳴らしながら出撃したトレーラーと指揮車は、ほどなく目的地、第五銀行へと到達する
そこは既に燦々たる状況となっていた

「退避!退避ーーー!」
「応援求む!メタルマンを!メタルマンを早く出動させてくれ!」
警官、機動隊の悲鳴、怒声、そして銃声が響き渡り、砲弾を受けたパトカーが爆発炎上する
警官隊の銃撃にまるで怯まず前進するのは、3人の真っ黒い鎧の様なパワードスーツ姿の怪人達だ
手には対戦車ライフルやアサルトライフルなどの銃火器と、奪ったのだろう大量の金銭を持っている
怪人達は警官隊の包囲網を易々と突破すると、あろう事か機動隊の車両を奪い、逃走していこうとした

『警察から鎮圧命令が下った!相手はどこぞの悪の組織が作ったポンコツな独自生産のパワードスーツだ。メタルボーガー、頼むぞ!!』
メタルボーガーを積んだトレーラーと指揮車を見て、劣勢の警察側が慌てて要請したのだろう
要請を受け取った指揮車からすぐさま下された鎮圧命令に、トレーラーの後部ハッチが開く
「ぉおおおおお!!」
同時にブースターを点火し、宙野は外に飛び出すと、トレーラーを飛び越し、現場まで一気に飛んで向かった

「何だ!?野郎は!」
「ヒーローか?かまわねぇ、撃ちまくれ」
真正面から飛んできたメタルボーガー目掛け、強化服ヴィラン達は一斉に銃火器を放つが、メタルボーガーは素早くローリングで近くのパトカーの陰に飛び込み、攻撃を回避する
『宙野、ヒートシルバーの使用許可が下った、銃撃戦で…』
「必要無い!第一アレでは射殺はできても確保できない!」
メタルボーガーと強化服ヴィランの距離はまだ10m近くあり、メタルボーガーの隠れるパトカーには、次々に、大小の弾丸が炸裂してくる
この状況で銃器を用いない事は、無謀だ
そう指揮車内のオペレーターが反論しようとした、その時、突如パトカーが横転し、横倒しになったまま強化服ヴィラン目掛け走り出したではないか
宙野がパトカーを盾にし、怪力で押しているのだ
「!?」
まるでちゃぶ台でも返すように軽々パトカーを横倒しにしたメタルボーガーと、凄いスピードで突っ込んでくるパトカーに一瞬ぎょっとなった強化服ヴィランが一人、パトカーの体当たりを避けられずに間に挟まれ身動きが取れなくなる
「ちっ!!」
「野郎っ!!」
パトカーの攻撃を左右に避けた2人のアサルトライフルを持った強化服ヴィランは、左右からパトカーの後ろにいるはずのメタルボーガーに銃口を向けようとするが、そこにはメタルボーガーの姿が無い
上か!!
そう気づいた二人が銃口を上に上げようとした瞬間、左のヴィランの顔面に空からメタルボーガーが急降下キックを見舞い、右のヴィランの死角まで吹き飛ばして、そのまま腹にパンチを叩き込み、昏倒させる
残った一人がメタルボーガーの手際にたじろいだ、その時
ようやっと、アイアンメイデンが現場に姿を現した

363 名前:星 真一 ◆fSS4JmCGEk [sage] 投稿日:2010/03/20(土) 22:55:37 0
アーカム大学 教授の研究室

何十も魔術的な仕掛けが施しており、人払いの結界が張ってある研究室
魔術的な素養があるものには研究室が見えるのでその時点で隠秘学科の入学条件を
満たしている証だ。
「そうか…だが君はやる事はやっただから君は自分を攻める必要は無い」
報告が終わり、教授はそう言って報酬の分厚い札束が入った包みを渡す。
「彼女の件は非常に残念だったがね、悔やんだところで彼女は戻ってこない
 だから二度と彼女のような犠牲者は出さないようにすればいい」
教授の声は平坦を装っているが、内心は怒りでいっぱいなのだろう腕が無意識に震えていた
俺は静かに肯定し、包みを取り懐に入れて研究室から立ち去ろうとしたとき
教授に呼び止められ、西から連絡がありスクーターの修理が終わった事を告げられ
自分の研究室に来るようにと言伝を頼まれたと告げ、机に戻る
わざわざ、教授に連絡しなくても良いと思いつつ感謝し
研究室から立ち去った



364 名前:旋風院 雷羽 ◇EOAlM2MfzU[sage] 投稿日:2010/03/22(月) 21:05:41 0
黒いダイヤ、ヒーロー規制条例、技術の流出――――
まるで巨大な崩落の前兆の様に、少しずつ、しかし確実にこの街に闇が溢れ始めていた。
しかし、そんな中でも悪い意味で変わらないものもある訳で……

「なーっはっはっは!! 一般市民共、今のうちに精々平和を味わっているがいい!
 明日から貴様等はボスの従順な部下になるんだからなっ!!」

水道局。都市の基盤にして住民の生命線の一つである「水」を扱うその施設は今、
一人の男の進入を許してしまっていた。
黒い服に身を固めた、ツンツン頭に八重歯の男。その男の名は旋風院雷羽。
この都市に存在する“悪の組織”の幹部の一人である。
ちなみに、彼の部下の戦闘員達は体調不良という事で今回は付いてきていない。
その雷羽は今、水道局における上水道関連の部署――――つまり、人々の飲用水となる水を
処理する為の巨大なプールの前で、両手を組み、あいも変わらずの馬鹿笑いをしていた。
その手の中にあるのは、一本の試験管。中に入っている液体の色は濁った紫。

「ふふん。それにしても、流石は俺様、天才だぜ! この水道施設に精神汚染の毒を流し込んで、
 街に住んでる奴らを洗脳。組織に従順な奴隷に変えちまうとは、効果的にも効率的にも
 完璧な作戦じゃねーか!!」

既に独り言でアホの様に作戦を漏らしまくっているが、
今回雷羽が彼のボスより受けた命令は、今彼が手に持つ薬――――狂気の科学者ドクターナムルの
遺産である『マインドジャッカー』を使い、悪の組織に従順な人間を作り出せという物だった。
その命令を受けた雷羽は作戦を練り、水道局の人間に変装してここまで忍び込んだという訳である。
ちなみに、このマインドジャッカーに並のヒーローでさえ洗脳できる凄まじい効果があるとはいえ、上水道程の水量に薄めて使うと、精々水を飲んだ人々への犯罪への抵抗感が少し薄れる……つまり、
都市の治安が少し悪化する程度の効果しかなくなるのだが、どうやら雷羽はそこまで考えが至っていないらしい。
とにかく、そのアホらしい作戦はもう直ぐ決行されようとしていた。
試験管の中の薬が化学反応を終え、完成するまで後10分――――

365 名前:トリッシュ ◇.H4UqpaW3Y[sage] 投稿日:2010/03/25(木) 18:27:46 0
「随分と派手にやったものね。もっとスマートに出来たんじゃないの」
慌てふためいている敵ごしにメタルボーガーに話かける
「道路の補修とあとパトカーも…あれじゃスクラップね
 一番マズいのはスクラップの下敷きになってる車、警察車両じゃないわよね
 いいわよね〜何をしても国が尻拭いするんでしょ?わた…」
「フゥハハァッこれが俺の奥の手だ」
隙をつかれたのか、それとも空気が読めないのか
異能者だったヴィランによってアイアンメイデンは凍りづけにされてしまった
「このまま粉々にしてやらー」
ヴィランが殴りかかろうとした瞬間、凍結し動けないはずのアイアンメイデンがアーマーに張り付いている凍りを砕き、カウンターパンチを当てる
「悪いけど…それぐらいならもうテスト済みなの」
肩に残っている氷を払い落としながら、気絶したヴィランに言う
一段落し、このまま石原に文句を言いに行こうとしたその時
「グッドニュースですトリッシュ
 リアクターコアの反応を確認しました」
「場所は?」
「南西の貯水施設です」
場所を確認し、すぐさま彼女は飛び上がり全速力で反応する貯水施設に向かった

[2分後]
天井をつき破り、貯水プールに着陸した
辺りを見回すがアダムらしい姿は見当たらない
そのかわり、ツンツン頭の男を見つけた
「……あなた…確かこの前のパーティーで馬鹿みたいに騒いでいたわね
 まぁそんなことはどうでもいいわ、この辺りで私に似た奴を見なかった?」

366 名前:◇.H4UqpaW3Y[sage] 投稿日:2010/03/25(木) 18:28:44 0
「白紙に戻したいとはどういうことかな市長」
石原市長から話を聞いたデフォルトは狼狽した
あれほど大々的に宣伝した直後にいきなりなかったことにしろと言われたのだからしょうがない
その後、彼は原因や理由について訪ねるも石原は答えなかった
しばらくし、ドアを乱暴に開け応接室から出てくるデフォルト
その顔は歪に歪み、まるで鬼や悪魔を連想させるほど恐ろしい形相だ
「クソがッあのアホ市長何考えやがる
 あんな出来損ないだぁ?ふざけんじゃねぇ
 肝心要のリアクターコアのデータが一切無い状態でどうやれってんだ」
近くの自販機に八つ当たりしていると、彼の視界にトリッシュの姿が映る
「トリッシュ…いや、アイアンメイデン

 部下の責任は上司がとるもんだよなぁ

 貴様のリアクターコアの力を奪い私のリアクターマモン、いや、この私「グリーンレイヴン」は完全な存在となるのだ」

【変身しトリッシュの追跡を始める】

367 名前:宙野景一 ◆NuW.dKu6ngI9 [sage] 投稿日:2010/03/26(金) 22:50:21 0
颯爽と現れ、風の様に消えたアイアンメイデンを見送ったメタルボーガーは、呆然と立ち尽くしていた
戦い方も、パワードスーツの性能も、飛び去ったアイアンメイデンに自分が一歩及んでいない事が、身にしみじみと感じられたからだ
(…もし、あのまま最後のヴィランと戦っていたら)
不意を打たれ氷漬けにされたメタルボーガーは大破させられ、宙野は死んでいただろう
更に、周囲の状況だ
メタルボーガーの損害を減らそうとして戦ったばかりに、警察車両や道路に多大な損害を与えてしまった
(…………!!)
悔しさに塗れた宙野が拳を握りしめた、その時、不意に殺気がし、宙野はその場に伏せ、それと同時に宙野のいた場所を弾丸の雨が通り過ぎる
転がり、パトカーの影に隠れた宙野が見たのは、自分がパトカーで機動隊の車両との間に挟んだヴィランが車両の間から出て、自分の方にアサルトライフルを向けている姿だった
(……あの女には…かわせなかった。俺には…かわせた……)
一筋の希望を見出した宙野は、パトカーを盾にしようとして…
アイアンメイデンの言葉を思い出す
(そうだ……俺は完全防弾の鎧を着ている。銃撃を恐れる必要なんか無い)
そう思い、飛び出そうとし…やめる
(……だが……だがそれはスーツの力に頼る事に他ならないんじゃないのか?
糞っ、躊躇っている暇は無い…このままではやられてしまう
飛び出るか?
いや、盾に…
スーツか?
万一を考えた安全策を……
……どちらを)
『飛び出せ!宙野!!』
無線機から聞こえた声に、弾かれたように飛び出した宙野はパトカーを飛び越し、数発の銃弾を弾き返しながら高速でヴィランに体当たりを食らわせてマウントポジションを取り、顔面に鉄拳を降らせてヴィランを鎮圧した

昏倒したヴィランを警官隊がパワードスーツを脱がし、拘束する様子を見ながら宙野は肩で息をする
わずか一瞬、命をかけた一瞬の躊躇いが生まれてしまっていた
あの一瞬の躊躇いが、自分の命を奪ってしまったかも知れない事をこれまでの戦いの経験で知っている宙野は、冷や汗をだらだらと流し、呼吸を荒げる
「〜〜〜〜〜〜」
やがて言いようの無い感情が宙野の内から溢れ、宙野が拳を握り締めた、その時
『…宙野、浄水場で新たな事件発生だ。アイアンメイデンがヴィランと交戦している。既に装甲警備隊と警察が出動し、現地へ向かっているが、恐らく戦力にならんだろう。…お前は行けるか?』
指揮車から通信が入り、小刻み震えていた宙野が止まった
「……行けます!」
きっぱりと、力強くそういって、宙野はトレーラーへと歩いていく
スーツと「この街での戦い方」では負けても、自分自身は負けていなかった
そう心の中で自分に言い聞かせながら

ヒーローTRPG

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