1 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/05/21(金) 17:55:04 0
はじめに

このスレッドはブーン系とTRPSのコラボを目的とした合作企画であります。
詳しくはhttp://jbbs.livedoor.jp/internet/7394/
をご覧下さい。

一応のコンセプトである『登場人物はAAをモチーフに』はどんなAAでも問題ありません。
でないとブーン系に疎い人はキツい物があるでしょうから。

登場人物は数多の平行世界(魔法世界やSF世界等)から現代に呼び寄せられた。
或いは現代人である。と言う設定になっております。

なので舞台は現代。そしてあまり範囲を広げすぎても絡み辛いと言う事から、
ひとまずは架空の大都市としますです。

さてさて、それでは楽しんでいきましょー。




参加用テンプレ

名前:
職業:
元の世界:
性別:
年齢:2
身長:
体重:
性格:
外見:
特殊能力:
備考:


2 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/05/21(金) 17:56:20 0
本編スタートから二日目。捕われのミーティオ奪還作戦が決行されようとしている


有志による超絶まとめサイト

http://boontrpg.blog41.fc2.com/



文明まとめ

:簡単に言えば、物に宿る特殊能力の素みたいな
:形はある。他の物に宿るけど、侵される事はない。
:だから宿った物を燃やしたりすれば、『文明』だけを取り出せる
:そう言った加工したりする技術職なんてのもいたり。公から闇にまで

:文明が宿る物には適性がある
:例えば過去の『妖刀』『神具』なんてのは、適性が抜群だったと考えればおkかも
:適性が不十分でも宿りはするけど、放置すると文明は離れていく

※つまり女の子みたいなモン。
 ブサメンは頑張っても引っ付かない。フツメンは努力次第で引っ付く。
 超絶イケメンはほっといても引っ付いてくる。みたいな?
 だから一つの物に複数の文明が宿るなんて事もあり得るかも?

:人によっても適性がある
:『情報干渉』系と「現象顕現』系がある。更に細分化出来るけどしんどい。
:適性は上に関係してくる。『治療系』なんて適性もアリ


3 名前:三浦啓介 ◆6bnKv/GfSk [sage] 投稿日:2010/05/21(金) 17:57:41 0
> 「三浦六花だな。確認した・・・」

露出男が自らの名前を呟いた事に、六花は眉を顰める。
名乗った記憶は無い。
ならば何故、この男は自分の名を知っているのか。
彼女の意識が解に至るのは早かった。
即ち、この男は『未来』から来たのだと。

再び、彼女は思考する。

> 「……すまん、壊れてるみたいだ」

> 「別に問題ないよ、おチビさん。こんなこともあろうかと、僕のパソコンにビル内の地図をインプットしといたからさ!
> 僕って天才!」

「……別に壊れてても問題無いわ。だって北が知りたい訳じゃないでしょ?
 ところでクソガキちゃん。見た所オタク臭い格好してるけど、『不思議なダンジョン』ってご存知?」

一旦カズミに向き直り、六花は問い掛けた。
言葉に皮肉と侮蔑の響きを多分に封じて、軽く顎を上げて言葉を紡ぐ。

「一体何処から地図を手に入れたか知らないけど、その地図を活用したいならついでにタイムマシンが必要よ。
 あぁそうそう、ついでにもう一つ聞いておきたいんだけど」

言葉尻に不穏の気配を放たせて、彼女はカズミの足元を蹴りで掬い上げた。
体勢を崩した彼の胸を、二本の指先で軽く小突く。
平衡を失ったカズミは両足も床から離れ、後ろに倒れていく。

そうして彼は尻餅をつき――何が起こったのかと
驚愕の表情を浮かべる彼の顔面を、六花は追い討ちとして蹴飛ばし、踏み締めた。
とは言え一応、眼鏡が割れて鼻血が出る程度の力加減にはしていたが。

「……おチビさんって、誰の事かしら? 私の足元にいる誰かさんの事って言うなら、納得出来るんだけど」

足元のカズミはそのままに捨て置き、今度は六花は警備員の二人へと振り向いた。

> 「ビビったが、どうせ文明の力か何かだろ…」
> 「バイト代貰う為にも、…いや貰う為だけだが、通さねぇ」

「……そちらにもお尋ねしとくわ。貴方達のバイト代って、病院の治療費より高いの?
 そうじゃないなら黙っていた方が賢明よ。酷い目くらいじゃ済まないから」

邪魔な連中をさっさと牽制し、再度彼女は露出男に視線を運んだ。
『未来の存在』と思しき男に。

「……多分ね、この男はお父さんの邪魔になると思うの。
 だからちょっとお話と、事と場合によっては交渉が必要なのよね。
 テナード、これ。『上位互換』でお父さんの元に行けるようにしてあるわ
 そのチビガキと、周りの面々と相談しながら、先に行ってて頂戴」

言い終えるや否や、六花は露出男――101型へと飛び蹴りを放った。

4 名前:三浦啓介 ◆6bnKv/GfSk [sage] 投稿日:2010/05/21(金) 17:59:04 0
「しかし五本腕ねえ。存外君が一番『遠い』ようにも見えるんだが……。
 ふむ、『遠い』と言うよりは『ズレている』だけなのかな?
 ともあれ、今は君に用は無い。何、殺しはしないよ。彼のお友達のようだからね」

緩慢な歩調で迫る久和を、三浦は寒々しい視線で見据えていた。
無論彼を殺さないのは、萌芽の友人と思しいから、ではない。
ただ単に、目的にはそぐわなかったようだがまだ用途はあるかもしれない。
そう判断しただけに過ぎなかった。

蔓延する血の臭いなど気にも留めていない様子で、三浦は久和へと歩み寄る。
否、歩み寄ると言うよりは、目的と自分の間に偶然彼がいた。
と言った足取りだ。
三浦の余裕に一層の怒りを燃やしたのか、
久和は血の枷を蹴散らし一足飛びに三浦へ殴り掛かる。

迫り来る四つの拳を二つは右腕で逸らし、一つは首を傾げて三浦はかわす。
けれども最後の一つは凌げず、彼は歯を食い縛った右の頬で受ける事になった。
いや――凌げなかったと言うと、語弊がある。
彼にはまだ防ぐ術が残されていた。
左手を使い拳を受け止めていれば、彼の口腔内に鉄の味が広がる事は、無かった。

「……ふふ、この『手袋』は『守る』には向いていなくてね。
 『迎える』事なら出来るが、それをしたら君は死んでしまう」

頬の痛みも気にせず不敵に笑みながら、三浦は両の手を久和へ伸ばす。
そして久和の纏うスーツの上下に三浦の手が、手袋が触れた瞬間。
忽ちスーツの繊維が窮屈に捩れ、拘束衣の魂を宿す。
直立の体勢を強制され、久和は微動すら取る事は出来なくなった。

「無理に暴れない方がいいよ。血の海に沈むのは嫌だろう? 暫くそうしているといい」

すれ違いざまに告げて、それきり三浦は彼を尻目にすら見る事は無かった。
彼の視線は、まず李を矛先と得る。
微かに、三浦の身体が揺れ動いた。

「……駄目だね。『近すぎる』か。となるとやっぱり……」

難色と期待の色を放つ彼の眼光は首の捻転と共に流れ、尾張に焦点を向ける。
途端に、三浦は強烈な重圧感に襲われた。
平衡感覚を損ない、一歩踏鞴を踏んで、辛うじて踏み止まる。
驚愕の色に面持ちを染めていた彼は、けれども次第に喜色を表に滲ませていく。

「ふっ……はは、やはり君だ。君こそが僕達から『かけ離れた』存在だ。
 朧な感覚でしかなかったが、今ので確信したよ」

堪え切れないと言った様子で、三浦は笑う。
しかし彼の表情は、長続きはしなかった。
不意に尾張が、これまで頑として自分に標準を合わせていた小銃を手放したのだから。

更には彼は拳銃を抜き、挙句三浦に背を向け発砲する。
狙いは、月崎真雪だったようだ。
脚を撃ち抜かれ、その激痛で彼女は目を覚ます。
周囲を満たしていた血塊も臭気も、余さず消えた。

一連の出来事に、三浦は満面に邪悪に染まった喜色を零す。
自分からしてみればいつでも殺せる存在の為に、大本命が致命的な隙を晒してくれたのだ。
嬉しい誤算にも程がある。

5 名前:三浦啓介 ◆6bnKv/GfSk [sage] 投稿日:2010/05/21(金) 18:01:06 0
彼は深く踏み込み、床を蹴る。
右手には白衣を、左手は鉤爪の如く構えて。
せめてもの迎撃と拳銃が連射されたが、彼は勢いを殺さずただ白衣を放る。

気に入りの手袋――『自由攻策』≪≫の
『触れた物に単一の攻撃方法を付加出来る』効果を施した白衣を。
銃弾は『粉砕』を付加された白衣に触れた途端に塵芥と化す。
更には白衣の端を掠めた銃身もが、粉微塵となり散った。

防御と目隠しを兼ねた白衣に潜み、三浦は尾張との距離を一気に詰める。
体勢を崩した尾張に、迫る彼の腕を回避する術は無かった。

「君は本当に馬鹿だな。あんな小娘の為に君は一手遅れた。……その代償がこれだよ」

不穏の音律を響かせる言葉に伴って、三浦は『自由攻策』を発動させる。
尾張のスーツの袖、その根元である肩口に。
『切断』を付加する。

スーツの分厚い生地越しに、鮮血が噴き出た。

一瞬遅れて、ほつれ一つないスーツの袖からするりと、尾張の腕が抜け落ち鈍い音を立てる。
最早尾張など居もしないモノのように扱い、三浦は足元を血で汚す腕を拾い上げた。
口元に、愉悦の狂喜の笑みを湛えて。

「さて、『これ』さえ手に入れば君達はもう用済みだ。いるに越した事はないが、その程度さ。
 そこで逃げようとしている女の子も……最早殺そうが殺すまいがどうでもいい。
 そもそも僕が手を下すまでもなさそうだしね。あの分じゃ間違いなく、何処かに辿り着く前にくたばるよ?
 まあそれは君もだけど。ともあれ今回はゲームに負けて勝負に勝った、って所かな。ところで……」

声を紡ぐに並行して、三浦は尾張の腕を断面を下にして掲げ、滴り落ちる血を手袋に浴びせる。
『自由攻策』によって『発火』を付加された血液が、床へと落ちた。
ふわりと熱気が広がり、炎が燃え上がる。

「……この『暴発迷宮』、とても簡単な脱出方法があるのは知っているかい?
 これは元々『瞬間移動』等の不法侵入に対する方策であって、あくまで防犯用の機構なのさ。
 つまり、中の人間に危害を加える為の物ではないんだ」

足元が、壁が、天井が、迷宮全域が揺らぐ。

「故に火災や地震が起こると、非常階段やスプリンクラーの使用の為に強制解除されるんだよ。
 さあサイ、帰ろうか……って、やれやれ困った子だ。今日の夕飯当番はあの子だって言うのに」

サイはまだ、飛峻と遊び足りないようだった。
と言うよりは、父の心配を誘いたいのだろうが。

「まあいいか。夕ご飯は僕が作ろう。これを手に入れたお祝いも兼ねてね。夕飯までには帰っておいでよ」


振動は次第に強まり、ついには立っていられない程となる。
そして迷宮内は再び、平時の姿を取り戻した。


【腕頂戴しました。サイちゃんの詳細は近い内に投下します
 パパっとミーティオの元に行けるように迷宮解除です
 ついでに解除の煽りでって事で混雑したパーティの再解消、再編成も行えますので御自由に
 六花は101型を未来の存在と予想して、邪魔になるかもと交渉に走りました
 101型さんは出来れば六花ちゃんと一緒に投げ出されてくれると嬉しいなあとか希望してみます
 テナードさんとカズミ君には三浦の方を示すコンパスがあるので今後の接触は可能です】

6 名前: ◆Ui8SfUmIUc [sage] 投稿日:2010/05/21(金) 19:17:55 O
<<こちら鰊だ。邪魔者の掃討は完了した……何?バイクが壁を?
わけのわからん事を言ってないで、着陸準備を頼む。こちらの様子は、もう見えているんだろう?
……ああ、そうだ。それじゃあ>>

鰊は携帯電話の電源を切り、周りを見回した。元はパーティー会場であったそこは、今は単なる死体置き場と化
していた。

「ふむ、」
「気に入らないって顔だな」
物陰からもう一人の鰊が現れる。全く同じ顔、服装だ。彼はハンカチで手についた血を拭いながら、潰れたばか
りの片目を痒そうになぶった。

「いやはや、流石にキツかったね。中々の手練れだった。
合計で三十四人も殺されたよ」
「殺し屋でもないのに、無理をするからだ」
「そこが気に入らないって?」

小綺麗な方の鰊は頷いた。

「だが殺したわけだ。実際問題、単なる運び屋のお前が」
「お前もな」

勿論そうだが、と片目が潰れた鰊は相槌を打った。

「だが、兎のためなんだろう?お仲間のためなら何だってするさ。朝日だって、親愛なる我らがゴッド・ファー
ザー、ブーム氏だってそう信じてるさ。
そうであるべきだってさ」
「そうかもしれん」

小綺麗な方の鰊は同意した。

「きっとその通りだ」
「仲間は大切だ」
「確かに、独り言は寂しい」
「実際、今とても寂しい。……なあ、そろそろ止めにしないか?」
「そうだな、僕がいずれそう言うだろう事は、とっくの昔にわかっていた」

片目が潰れた方の鰊は、懐からベレッタを取りだし、口にくわえて、引き金を引いた。晩御飯で冷やっこに醤油
をかけるよりもスマートで、洗練された、無駄の無い動きだった。

残った小綺麗な鰊は、片目が潰れた方の鰊の死体が、まるで最初からそこに居なかったかのように掻き消えるの
を見届けた後、死体置き場から離れて、廊下の所々に転がる死体を避けて、階段を登り、開かずの扉に近付いた。
試しにコツ、コツとノックする。しつこく、何度も、粘り強く。
やがてドンドンと言う力強い返事が帰ってきた。

「中身は居るのか、僥倖僥倖」

後はペリカンさえ来れば扉を開けることができる。そうすれば仕事の半分はおしまいだ。
扉にもたれ掛かって、鰊は気長に待つことにした。

【鰊→ミーティオ:扉越しに接触】


7 名前:ミーティオ ◆BR8k8yVhqg [sage] 投稿日:2010/05/22(土) 16:12:40 0
前スレ>>180

 適当にテレビのチャンネルを切り替え、ミーティオが着実に『文明』についての知識を吸収している最中、
 その男は音もなく、何の前触れもなく、唐突に出現した。

「おはようございます、竹内萌芽です」

 特にこれといった特徴のない少年だった。服装も、顔つきも、少なくとも記憶に残りやすいとは言えないだろう。
 逆に、そこまで没個性に徹することができること自体が、少年の個性であるようにすら感じられた。
 幽霊か何かのように二人――ミーティオと遥――の前に現れた彼は、不思議そうに呟く。

「……えっと、どっちがミーティオさんでしょう?」

 自分の名を呼ばれ、茫洋としていたミーティオの意識が、慌ただしく現状の認識を開始する。
 誰なんだコイツは。どうやって入ってきたんだ。そして、何故自分の名前を知っている――?
 しかし、その思考が決着を迎える前に、ミーティオの身体は動いていた。

「てめえッ、『フリューゲル』だな!!」

 重力を操作し、軽くなった身体をしならせ、その男に拳を打ち込む――が、腕は宙を突き抜けた。
 触れないのだ。確かに目の前にいる男に、ミーティオは触れることができない。

「……なんだ、こりゃ」

「あのね、ここは君の世界とは違うんだから、その『フリューゲル』とやらはいないと思うよ」

 呆れ顔の遥がそう指摘する。ミーティオも理論的には理解しているのだが、染みついた習慣はそう簡単に消えない。

「それとさ、急に動かれると、鎖が引っ張られて痛い」

「知るか、んな事。……で、てめえはどこの誰なんだよ?」

 少年はそれには答えぬまま、相変わらず曖昧な表情で言葉を続けていく。
 ミーティオを助けるために動いている、数人の異世界人のことだ。

8 名前:ミーティオ ◆BR8k8yVhqg [sage] 投稿日:2010/05/22(土) 16:13:44 0

 彼の話にいちいち反応するのは、ミーティオではなく遥だった。

「へえ、他にも異世界の人が来てるんだね」

「面白そうな人たちだね。会ってみたいな」

 ミーティオはと言えば、事態がよく飲み込めず、少なからず困惑していた。
 タチバナと丈乃助は知らない人間ではない(別に親しいわけでもないが)。
 しかしそれに留まらず、顔すら見たことのない人間が、自分を助けるために動いているというのは、いったいどういう事なのか。

「……ま、そんなわけでロリk……違った、タチバナさんたちと僕でこれからあなたを助けに行きますということを伝えにきたわけです」

 そう締めくくり、竹内はミーティオの額に人差し指を突き付けた。
 その爪先は彼女の皮膚を貫通し、頭蓋を貫通し、脳内にまで達する。


『この区画にフリューゲルが入ることは禁止されている』
『二度とその汚いツラを見せるなよ、ドブネズミめ』
『貴様のせいだ。貴様のせいだ。何もかもの原因は、貴様だ』

――――憎悪。黒く煮えたぎるような。

『あの男なら死んだぜ。知らなかったのかよ』
『なんつったっけなあ、ほら、あっちの方に住んでる野郎』
『おい、どこへ行く?』

――――殺意。赤く渦巻くような。

 忘れかけていた感情が、竹内の指を媒介して、ミーティオの頭を駆け巡った。
 鐘の音のように反響を繰り返すそれらの感情は、やがてあるイメージに結びつき、収束していく。

 背の高いスーツの男――タチバナ。理由もなく、ミーティオは彼を殺すことに決めた。

「だからおとなしく待っていてくださいね?」

 竹内萌芽は消え、後には何も残らなかった。


9 名前:ku-01 ◆x1itISCTJc [sage] 投稿日:2010/05/23(日) 11:37:32 0

『ちょおおおおおおおお! おれすごくない?! ねえおれすごくない?!
見てよちょっとこれ猫! おれ名前小鳥なのに猫!』

 サッカーボール大の球体から、けばけばしい蛍光色をした猫へと姿を変えた小鳥が背後で跳ね回っている。
 それを尻目に、ku-01は視覚化されていない情報に手を浸して処理へ励む。
 それに気づいた小鳥はku-01の肩辺りの空間に浮かび、その手元を覗き込むようにした。

「……これは、監視カメラの映像ですか?」

『正確には"文明の視点"みたいなもんだよ
 それ自体がオーバーテクノロジーである文明を、
 人為的に、しかもいくつもこの世界の技術であるこのちっさい電子計算機に突っ込むには
 そりゃあもう色々とこれまた無駄な技術が必要でさ』

 その過程でどうしても生まれてしまう操作の隙の一側面が、この"文明の視点"だというらしい。
 認識しやすくするため便宜的に作り出したいくつかの平面画面に、荒い映像が表示される。
 エントランスに車が突撃した様子を真上から映し出しているもの。
 あらぬ場所でなにやら密着した少女と男性。
 見るに耐えない有機物の塊となった人体達、など。

 それらを無感動に眺め、保存するほどのものでもないと取捨選択、次々に"文明の視点"を表示していく。

『しかし、そんなもんを使って、かつ体の中に取り込んじゃう人間ってのは本当にすごいんだよなぁ
 おれもそうだけどさ。進化のかのうせいってやつかねー』


10 名前:ku-01 ◆x1itISCTJc [sage] 投稿日:2010/05/23(日) 11:40:03 0

 ふにゃりふにゃりと笑うような小鳥の声も知らず、ku-01の目は一つの窓に釘付けとなっていた。
 どうやらビルの側面に位置する壁から発生したらしいその視点に、まばゆく光を反射する車体が映りこんでいる。
 地上何百メートルかも知れない反り立つかのごとき壁面を、まるで視点が傾いているかのように走っていく。
 その車体に乗っているのは、間違いなくku-01の現在の主人だ。

「……」

『うおっ、なにそれ?! 九十度かたむき変換とかしてる?!』

「恐らく、重力制御の作用かと」

 主人とはぐれる前、都村が彼女に手渡していたアクセサリの視覚情報をサイバースペースに貼り付け、小鳥に示す。
 それを読み取ったらしい小鳥は『ああ、ええええ』と、スペースを構成する上で余分となりえるその情報を消去しながら呻いた。

『普通思いついてもやんないだろ、こんなん……肝が据わってるとかそんなレベルじゃねえぞー……』

 主人は主人でなにやらやらなくてはならないことがあるらしい。
 ならばそれをサポートするのがKu-01の勤めだ。
 情報の取捨選択を早めるために電子操作卓まで作り上げてku-01は処理速度を速める。
 が、その集中は小鳥の声によって中断される羽目となった。

『なぁこれ、あんたの体じゃねぇの? 危ないよ』

 言われてそちらを確認すると、蛍光色の猫の小さな手が一つの窓を指差していた。
 制御室の片隅に発生している視点に、くたりと倒れこむ緑色の髪をしたボディが映りこんでいる。
 その直ぐ傍で、それを庇うようにして立っているのは、都村だ。そしてそれにゆっくりとにじり寄るのは、


11 名前:ku-01 ◆x1itISCTJc [sage] 投稿日:2010/05/23(日) 11:41:15 0

『おー、荒海のおっさんだ。ひさしぶりー』

「……照明操作、一時掌握。小鳥、少しお借りします」

『ん? どうぞどうぞ』

 片手で選り分けていたプログラムを掴み取り、引くようにして停止させる。
 音もなくそのプログラムの糸は引きちぎれ、現実世界でのビル内の照明がばつりと落ちた、筈だ。
 ku-01が操作したのはBKビル内の環境プログラムのうち、照明を司るもの。
 制御室のみを選んでいる猶予は無かったため、ビルの約半数の照明が落ちてしまったようだが、仕様が無い。

『おおー、思い切ったことするねあんた』

「回線起動します。小鳥、許可を」

『ああ、おれがマスターだからね。うん、べっつにすきにしてー』

「許可を得ました。インターネット回線起動。登録端末に通信します。通信成功。
シグナルの強さ、微弱。許容範囲内です」

 グリッドが捻じ曲がり、小鳥が使用しているらしいものとは別の回線をスペースに設置する。
 その通信の先は、都村が使用している通信端末。
 通話状態にはなっておらず、応答は無いが、それさえも捻じ曲げた。

「都村さん、生体反応は前方約2.4メートル地点です。回避、または攻撃をどうぞ」

 主人の友人を補助することも、また自分の勤めであると言い聞かせながら、立ち上げた通信用の窓にku-01はそう呼びかける。


12 名前:竹内 萌芽(1/11) ◆6ZgdRxmC/6 [sage] 投稿日:2010/05/24(月) 00:32:44 0

「ごめんね…」

自分と真雪、二人しかいない暗闇の中に響くのは、彼女の小さな声。

「……なんで謝るんです?」

「あなたのその悩みは、私は分からないわ…私とあなたは違うもん。
私は人の悩みに『分かるよ』なんて嘘は言えない、だって私はそれを言われたら腹立つもの」

そっと萌芽は顔を上げた。
でも、相変わらずこの空間は真っ暗で、彼女の顔を見ることはできない。

「理解する事だけが寄り添う事かしら?
人の心は完全に理解はできないから、自分の基準でみんなと寄り添えられればそれで良いと思う。…関係ないね、この話」

どこか自嘲ぎみに、小さく笑った彼女の声を聞いて、萌芽は自分の心になにか引っかかるものを感じた。


13 名前:竹内 萌芽(2/11) ◆6ZgdRxmC/6 [sage] 投稿日:2010/05/24(月) 00:34:02 0

ふと思い出されるのは、ずいぶん昔の記憶。
あのとき”n”で始まる名前だった自分は、今よりずっと幼くて、ただ一人で泣いていたのを覚えている。

「なによ、あんた またないてるの?」

ふと顔を上げると、そこには両手を腰に当てため息をつく幼馴染の姿。
涙を拭き、なんでもないと笑う自分に彼女は怒ったように言った。

「あのねえ、ひとりでないてたってなんにもかわらないわよ?
 なくときはだれかといっしょになきなさいよ、うれしいのもかなしいのも、
 ふたりでいれば『はんぶんこ』にできるんだからねっ!!」

そう言って、彼女はとなりで泣き始めた。
それを見た自分も、一緒になって泣いた。

今考えてみれば、妙な光景だったように思える。
でもあのときは、自分といっしょに泣いてくれる誰かがいるというのが、なぜだかちょっとだけうれしくて。
少しだけ、悲しさが薄れた。


14 名前:竹内 萌芽(3/11) ◆6ZgdRxmC/6 [sage] 投稿日:2010/05/24(月) 00:34:50 0

ぱりん
突如そんな音を立てて暗闇が”割れる”。

ふいに失われる、先ほどまで彼女から伝わっていた「温かさ」。
それが無くなって、萌芽は胸の中に大量の不安が流れ込んでくるのを感じた。

「真雪さん……? どこですか? 真雪さん!!」

ふと、暗闇のなかに何かの”気配”を感じる。
すがるように振り向いた萌芽の目に映ったのは、しかし彼が求める姿ではなかった。

「いやはや、ヒトというのはなかなかどうして、不思議なものですね」

―――そこにいたのは、昨日会った、青い毛並みの猫だった。

「決して『救い』にはなりえなかったはずの声は、しかし、結果的に新しい『救い』を呼び出してしまった。
 そして、それを呼び込んだのは、他ならぬあなた」

少年のような声で喋る猫は、二本の後ろ足で起用に立ち上がると、萌芽の足元まで来て彼を見上げる。

「なんなんです、キミは。真雪さんはどこです!!?」

混乱し、わめく萌芽に、猫はとぼけた口調で言った。

「さあて、とんとわかりかねますね。私はヒトではなく、ただのネコですから」

「またおあいしましょう」なんとも表現しがたい表情でそう言った猫は、静かに暗闇に消えて行った。


15 名前:竹内 萌芽(4/11) ◆6ZgdRxmC/6 [sage] 投稿日:2010/05/24(月) 00:35:53 0

”もる!! おいこら、もーる!!”

ぎゃーぎゃーとうるさい声に、萌芽の意識が覚醒する。

「……ストレ? ……ここは」

目に映るのは、高い天井。
耳に聞こえるのは、何かが地面でのたうつような音と、だん、だん、と床を踏み鳴らすような音。

ゆっくりと上体を起こした彼は、あたりを見回す。
飛峻が、少女と戦っていた。
久和がなにか白いものでくるまれ、床でもがいている。
なぜか片腕の無くなったおっさんが、音も上げずにうずくまっているのも見えた。

―――なのになぜか、肝心の真雪の姿が無い。

ふと視界に入るのは、床に書かれた赤い文字。

『先に行ってます』

その文字の赤黒い色は、血で書かれているように見えた。

「……あの人は、また無茶なことを!!」

彼女に何があったのかまではわからない。
しかし、床に血文字を書くなんて物騒な状況にまきこまれている彼女を放ってはおけない。

すぐさま立ち上がり、彼女の元へ走ろうとする萌芽。
しかし、走り出そうとしていた彼の足は、ふいに止まる。


16 名前:竹内 萌芽(5/11) ◆6ZgdRxmC/6 [sage] 投稿日:2010/05/24(月) 00:36:54 0

床でももがいている久和。
その足は、不自然に、妙な方向に曲がっているように見える。

うずくまっているおっさん。
音はまったく出していないが、その顔には苦悶の表情が見られた。

『人の心は完全に理解はできないから、自分の基準でみんなと寄り添えられればそれで良いと思う』

『うれしいのもかなしいのも、ふたりでいれば『はんぶんこ』にできるんだからねっ!!』

頭に響く、声。
気付けば無意識のうちに萌芽は、彼らの元に歩き始めていた。


17 名前:竹内 萌芽(6/11) ◆6ZgdRxmC/6 [sage] 投稿日:2010/05/24(月) 00:38:04 0

床でのたうちまわる久和。
萌芽はしゃがみこんで彼の額に自らの掌を合わせると、
”怒り”や”殺意”など、さきほど自分があやふやにしていたものを”はっきり別々に”した。

(なんで……なんで僕は……)

少し落ち着いた表情の彼の額を、ゆっくりと撫でる。
それでも久和の表情に苦悶が残っているのは、恐らく彼の足の怪我のせいなのだろう。

「痛い……ですか?」

久和の白い肌に、うっすらと浮く脂汗。
なんで自分はこんなことをしているんだろう?
自分は、一体何をしようとしているんだろう?

「大丈夫、ちょっと待っててくださいね」

萌芽はゆっくりと立ち上がると、今度は片腕を無くした男性に歩み寄る。

声こそは出していないが、相当つらそうな顔をしている。
側には女性がいるが、しかし、彼の痛みに対して、なんらかの対処法を持っているようにも思えない。

(……僕は……)

一つ舌打ちをすると、萌芽はふいに自分の着ているシャツの右袖部分を引きちぎった。


18 名前:竹内 萌芽(7/11) ◆6ZgdRxmC/6 [sage] 投稿日:2010/05/24(月) 00:40:08 0

「フェイくん!! 僕の体、よろしくお願いしますね!!!」

少女と戦っている飛峻にそう叫び、そして、破いた袖を口に詰める。
理由は簡単だ。
前に見たヤクザ映画では、たしか”指を詰める”ときはこうやっていた。

目を閉じ、両手を広げる。
自分という存在が、風船のように膨らんでいくイメージ。
そして、その自分の中に尾張証明と前園久和を包み込み、彼らと自分の感覚を”あやふや”にする。
その感覚の中から、萌芽は彼らが感じる痛みの半分を自分の何も感じていない痛覚と”あやふや”にした。

「グ……ぅぅ……!!!!」

食いしばった歯が折れそうなくらい、顎がきつく閉まる。
一瞬あまりのショックに気を失いそうになったが、なんとか気力で持ちこたえた。

涙目になりながら、その場に崩れ落ちた萌芽は、口に詰めた袖を吐き出すと言った。

「どうです……? ちょっとはマシになりましたか?」

簡単に言えば、彼がやったのは”痛み分け”だ。
激痛を感じているであろう彼らの痛覚と、自分の正常な痛覚を”あやふや”にすることによって、一時的に彼らの痛みを和らげたのである。

「とはいえ、これじゃ根本的な解決にはなってませんね……」

正直なところ、現実と感覚の境界を越えようとしている彼の”才能”をもってすれば、
痛みだけではなく怪我そのものを自分に移すことも可能だが、
それはたぶん怪我をしているであろう彼女のために取っておこうと萌芽は思った。

「やっぱり……助け、呼んできますか」

そう言って、萌芽は静かに目を閉じた。
人と寄り添うって大変だなあ。そんなことを思いながら


19 名前:竹内 萌芽(8/11) ◆6ZgdRxmC/6 [sage] 投稿日:2010/05/24(月) 00:41:14 0

【接触:宗方 丈乃助】

「昨日から思ってたんですけど、キミはなんかブラザーにソウルな髪型をしてますよね」

姿を現した彼の姿を見て、周囲の人間が驚く。
いい加減これにも慣れてきたなと、考える萌芽だが、しかし次の瞬間彼自身も驚くことになった。

まず、自分の分身に、片腕が無い。
更には両足があらぬ方向に曲がっている。
どうやら、”あやふや”にしているダメージのイメージが、そのまま分身の姿になってしまったらしい。
まあそれはこのさいどうでもいいや、と萌芽は用件を伝えることにした。

「ちょっと怪我人が出ちゃったので、助けて欲しいんです、ブラザーくん、たしかキミ直せますよね?」

今朝の鉄パイプのこともあるし、ひょっとしたら人間も治せるのではないかと期待を持って、萌芽は彼に訊ねる。
名前をないがしろにされた彼が訂正するが、正直今の萌芽にその余裕は無い。

「えっとむな? むね……あーもう、じゃあジョジョくん。
 その側で飛んでるコウモリとか興味があることは結構あるんですが、とりあえず、道案内を置いておきますんで
 助けに行ってあげてください、お願いします」

そう言って萌芽は、彼にしては珍しく頭を下げた。


20 名前:竹内 萌芽(9/11) ◆6ZgdRxmC/6 [sage] 投稿日:2010/05/24(月) 00:42:53 0

【接触:五月一日 皐月】

そこには、あまりに信じたくない光景が広がっていた。
変態だ。
社会の害悪が、年端も行かない二人の少女をはべらせている……

「……言いなさい」

きょとんとした顔をしているオールバックの青年に、萌芽は自分の足が折れているのも忘れてものすごいスピードで走りより、胸倉をつかんだ。

「言いなさい!! 僕の命の恩人に!! このシスタ……ウエイトレ……いややっぱシスターさんに!!
 一体何をしたか、今すぐ薄情しなさい!!!」

萌芽は案外律儀である。
受けた恩は忘れないし、それに萌芽はこの少女のことがそれなりに気に入っていた。
ゆえに、彼女の受けた恥辱は、全て自分が晴らしてやろうと萌芽は思っていたのだが、どうにもそうではないらしい。

「……え、あ、そうですか。すみません、はやとちりを……」

軽くタチバナのことを、「この子に何かあったら僕の思いつく限りの拷問を精神的に味あわせてやりますからね」という視線で睨みつけながら
萌芽は平謝りすると、小さなシスターにことのいきさつを説明した。

「と、いうわけなんです、すみませんウエイトレスターさん。何回も何回もお願いしちゃって……」

なんだかいろいろと誤りどころを間違えながら、萌芽は片方しかない腕で「ごめん」のポーズをとり、彼女に頭をさげる。

「今度必ずなにかお礼をしますから、どうか、あの人たちを助けてあげてください」

そういい残して、彼は姿を消した。


21 名前:竹内 萌芽(10/11) ◆6ZgdRxmC/6 [sage] 投稿日:2010/05/24(月) 00:43:34 0

【合流:月崎 真雪】

いつのまにか、真っ暗になっていた。
停電だろうか……?

どうでもいいが、本当にこの状態は辛い。
痛いというよりは、なんだか体に「もう動くな」と言われているような気分だ。
もっとも、これは自分ではなく、彼ら二人が感じている痛みなのだが。

真っ暗な空間の中で視覚でものを捕らえているわけではない萌芽は、目的の彼女の姿を見つける。

電気が落ちていて良かった。
おそらくこの姿を見られたら、彼女を驚かせてしまうだろうから。

話しかけようとして、萌芽はそれをやめた。
かわりに、そっと彼女の手を握る。

すこし思い出したかったからだ。
あの暗闇のなかで感じた、彼女の温かさを。


22 名前:竹内 萌芽(11/11) ◆6ZgdRxmC/6 [sage] 投稿日:2010/05/24(月) 00:44:54 0

自分の存在が、風船のように膨らんでいく感覚。
その内側にある真雪の存在から、怪我をしているという”事実”を”あやふや”にし、そして自分に付加した。

今頃、本体の自分の足からは、止め処なく血が流れ出ていることだろう。
なんだかそれも悪くないと思っている自分がいて、萌芽は少し笑ってしまった。

彼は少しずつ、気付き始めていた。彼が拒否する、人間の温かさ。
それが少なからず自分にもあるものだということに。

真雪の手を引きながら、萌芽は自分の進行方向にいるミーティオのことを考える。

行かなくては、どんなに体が悲鳴をあげても、誰のものでもない自分の足で。

「ま、分身なんですけどね」

そう言って、萌芽はけらけらと笑った。

ターン終了:
【五月一日皐月・宗方丈乃助組に接触】
道案内用の、全自動もるもるをおいておいたよ。浮くよ。
【月崎真雪回復】
変わりに大ダメージだよ、ぶっちゃけ死ねるよ。


23 名前:宗方丈乃助 ◆d2gmSQdEY6 [sage] 投稿日:2010/05/24(月) 19:43:29 0
>>19
「だからこれは自然に生えてるもんだから!ズレたりしねーんすよ!!」

『いや、確かに少し浮いていた。私の目に狂いは無い』

変ちくりんな蝙蝠もどきについ頭の秘密をツイッターされたせいで
俺の頭の中はパーティピーポープチョヘンザップな状態になったッス。
何とか周りの人らには気付かれてないようなんで、蝙蝠に俺も小さくツイッターしたッス。

「お、おい。蝙蝠もどきさんよ。俺のこの、その……頭の事ッスけど。
黙っててくんねーッスかね?」

『認めるのか?……まぁ、いいだろう。私はこのビルでヤクザどもに
幽閉されていた古代の文明だ。意志がある文明というのは少ないらしいが……』

ヘンな事を言う蝙蝠もどきを見ていると、隣で何か声がする。
誰だ?いや、何なんだ?

>「昨日から思ってたんですけど、キミはなんかブラザーにソウルな髪型をしてますよね」

「お、お化け出たぁあああああ!!」

>「ちょっと怪我人が出ちゃったので、助けて欲しいんです、ブラザーくん、たしかキミ直せますよね?」

「つーか、おめぇ昨日俺に戦えとか言ってたヤロウじゃねぇか!!
何の用ッスか?……怪我人。まぁ、ほっとけねぇ……ってのは分かるッスけど。」

>「えっとむな? むね……あーもう、じゃあジョジョくん。
>その側で飛んでるコウモリとか興味があることは結構あるんですが、とりあえず、道案内を置いておきますんで
>助けに行ってあげてください、お願いします」

浮遊する「幽霊ヤロウ」は俺を案内するかのように動き出した。
何だかきな臭い感じもしない事もないけど、やっぱ誰かが怪我してるってのに
スルーは出来ないのが俺、宗方丈乃助っすよ。

「オーケー、オーケー。この際、昨日の事は置いとくぜ。
そうと決まれば全力ダーッシュ!!そんじゃ、皆さん!少し抜けるッスよ!」

正直、毎日学校に遅刻寸前で登校してたからマジに足だけは自信があるっす。

【怪我人を治す為、全力でダッシュ開始】

24 名前:佐伯 ◆b413PDNTVY [sage] 投稿日:2010/05/24(月) 22:28:43 0
万事休す。か。と都村は心の中で呟いていた。
現在、都村の持っている文明は単に戦闘能力の底上げ程度の『身体強化』。
そして、敵との戦闘時に自分に有利な戦場に変化させ敵と自分を逃げられなくする『血戦領域』だ。
この二つに『一刀両断』がそろえばまず負ける事はないが、今、彼女の手には『一刀両断』はない。
貴重かつ、非常に強力なため今回は置いてきていたのだがそれが仇となったのである。

「……くぅ」

小さく唸り声をあげ、荒海を見やる都村。そしてその後、チラリとゼロワンを見る。
微動だにしないゼロワンを見てやはりダメかと、思い、そしてこうなればと覚悟を決める。
その時だ、ほの暗い制御室を染めていた明かりの火がかき消えたのは……

「なんや!?停電……小鳥のド阿呆が……」

そう告げて困惑する荒海。もちろん都村も同じく困惑していた。しかし、その困惑を払いのける声が都村の耳に届く。

『都村さん、生体反応は前方約2.4メートル地点です。回避、または攻撃をどうぞ』

声。その主はゼロワンであり、発信源は無線機。そして、突然の消灯。
そのキーワードから都村は彼女が何をしたのかを半ば勘で理解する。そしてその内容は正しかった。

「アナタは……そうか!なら、ジャッジ…!!」

漆黒の暗闇の中で都村は文明使用の為のキーワードを叫びながら腕章に手を掛ける。
しかし、それ以上の速さで都村に走る物があった。荒海銅二の文明『崩塔撫雷』だ。
それが都村の動作が終わるよりも早く床を走る。光とほぼ同じ速度で走る電撃だ。暗闇を照らすそれをかわせる者などは居りはしない。
床を走る一瞬のフラッシュが二人を映し出した時間は文字通りの一瞬。

「うぁ……!!」

「ほな、さいなら」

残酷に告げられる告別の言葉。軽い、と言っても人の身動きを封じるには十分すぎるほどの電圧を浴びた都村は脆くもくず折れる。
そして荒海は荒々しく首をつかむと片手で引き上げる。左手に光る紫電は妖艶な色つやをして居り触れれば魂さえも侵されてしまうだろう。
それを都村の腹部へと滑りこませようとする荒海。もう都村に勝機は無いかと思われた。
その時、そんな時に都村の耳にある音が聞こえた。
それは甲高い悲鳴にも似たエンジン音。正確にはエンジンを強制冷却するフィンの回転音だ。
それがまるでハイレベルなギターリフのように響き渡る。

あぁヘルライダー。それは地獄の底よりやってくる。彼らの為の戦いを行うため……
ほの暗い者達の意志を打ち砕き、その醜悪なる息の根を止めるために

そうだ;。あの彼女こそが騎手。この魑魅魍魎跋扈する地獄変。佐伯零がここに居る。ヘルライダーがここに居る。

「フフ。私の勝ちです……」

「なんや?」

「聞こえないのですね?」

このゴスペルが。と告げて都村は荒海の体を蹴り飛ばし、手を祓う。
着地と共に勢いよく床を蹴れば現実は彼女に答える。『身体強化』された体は素直に爆発的な速度で荒海との距離を離す。
そして、その直後に難攻不落の城塞は崩れ落ちた。

最初に現れたのは光。闇に包まれた制御室を照らし出す目が眩むほどの光。
そして間近で聴くフルスペックのメタルエクスタシーエキゾースト。間違いない彼女が来たのだ。

25 名前:佐伯 ◆b413PDNTVY [sage] 投稿日:2010/05/24(月) 22:29:39 0
「なんや……何者じゃあ!!ワレェ!!」

「通りすがりのおせっかいよ。覚えておきなさい!!」

返答。そして、それは宣言だ。

「通りすがりィ?ナメとんのか!?」

「舐めてない!実際そうとしか言えないんだから!!」

そう宣言。この言葉は彼女が彼女であるための言葉。
零れ落ちた記憶、なくした自分自身を形づくるかりそめの姿。
それが通りすがり。
通りすがりのただの、ただ何処にでもいるおせっかい。それが今の零の全てだ。

「荒海……銅二。お前、みどりに何をッ!!」

いきり立つ後方の人物を宥め、零は状況を把握する。
目の前に、そこに居るのは目標の一人。荒海銅二。
跪く都村が大体の状況を物語っている。つまり、戦闘中と言う事だ。それならば話は早い。

「大体わかったわ。降りて。こいつは私が……」

同乗者に降りるように指示を出し、自分は荒海を相手にすると宣言しそのままバイクで突っ込む。
その時、零の視界にとんでもないものが映った。

それは地面に倒れたまま動かないゼロワンの姿だ。

「ッ!?貴方……!!」

激高し、アクセルを吹かす零。
その思考には今までの冷静さはない。有るのはあり得ないほどに高まった憎悪。
なぜ憎悪なのだろうか?ゼロワンを傷つけられたから……?
だとしたら、自分はとんでもないエゴイストだ。

(誰かを…守るためなら。邪魔なものを全て壊してもいいの?)

そんな事は無い。それは判るのだ。しかし、今の彼女にはあふれ出る感情の衝動を抑える事は出来ない。
二つの相反する心。それを抱え零は荒海を引きずるように制御室から飛び出す。
そして、飛び込む先は反対側の扉の奥。そこが何処につながっているかは分らないが幸い、都村との連絡は取れる。
最悪、荒海を倒した後で連絡して『暴発迷宮』を解いてもらえばいい話なのだ。
そう判断した零は急制動を掛けて荒海をフロントカウルから引き剥がす。

「ぐぅ。この……やってくれたのう?」

「うっさい黙れ!!」

自らの相反した心の内に苛立つように罵声を吐き、それと共に飛びかかる零。
本来なら電撃を操る荒海に対して格闘戦などはもっての外。であるのだが、それでも零は頑なに攻めの姿勢を崩す事はしない。
衝動に突き動かされた為だけではない。勝算あっての行動だ。まだ、零は冷静さを完全に無くした訳では無い。

(文明の使用時には必ず使用する際の演算を必要とする……)

演算、と言っても大したものではない。例えば目の前にコップがあり、その中にある水を飲むと言った行動の為の演算だ。
そして、それにはそれなりに時間を必要とする。慣れという物も存在するだろうがそれを差し引いてもその時間はゼロでは無い。

(ならば!!)

26 名前:佐伯 ◆b413PDNTVY [sage] 投稿日:2010/05/24(月) 22:30:29 0
「アンタの文明って奴がなんだか知らないけど……使えなければただのがらくたでしょう?」

零があえて正面から突撃した理由。
それは同じ文明を使用したものでなければ分らない理由だった。
演算や、発動にかかるkeyを使用しなければ文明は意味を持たない。そこをついたのだ。

「よう考えたな。まぁええ……ほいなら!力ずくで行かせてもらいますわ!!」

そして始まる綱渡りのような命の取り合い。
荒く大ぶりな荒海の極道らしい喧嘩流と美しく流れる零の足捌きが正面から死合う。
激しくぶつかり合う二つの意志に合わせるように戦いは劇化。二手先を読みあう事が出来るほどのレベルだ。
そんな互いに譲らぬ攻防の末、単純にパワーの問題から零は押され始める。
無理もない、いくら零の身体能力が高いとはいえ限度がある。
さらに言うなら常に足を振り上げ荒海に文明を使用する思考を与えないように立ち回っているため体力に限界が来たのだった。

「はぁ、はぁ……なんて、タフな奴なの……ヤァ!!」

「フン。もぅへばったんかいな?ほんなら、今度はこっちか……!?」

「悪いけど文明は使わせない……!」

荒海が言葉を失った訳。それは単に零が初めて構えを見せたからだ。そう、構えを見せたたため……
今の立ち回りの中で、零は構えを見せていなかった。
それは零に手加減をする余裕があったためだが、もうその余裕はない。故に構えを見せた。

そのプレッシャーに息をのむ荒海。それに対して零は封印していた「打撃」を開始する。
風を切り裂く音と共に放たれる拳は一発一発が致死量を超えた殺意を孕み、荒海の闘志を削り取る。
まるで竜巻の様な勢いで繰り出される拳の一撃はそのすべてが正しく必滅。
覚醒を始めた零の前では『崩塔撫雷』を使う事の出来なくなっている荒海など、所詮は唯人でしかないのだ。

もう何度目の攻撃だろうか?水際で踏ん張っていた荒海だったがついに裏拳を正面から受けてしまう。
そして、そこからは崖から転げ落ちるかのような光景だった。
一瞬にして顔から離れた拳は鳩尾を突き、同時に踏み込み踵で相手の足を踏みつける。
そして、相手の動きを封じたところでもう一度、鳩尾に今度は中段蹴りを突き刺し、吹き飛ばす。

壁にぶつかり、そのままもたれかかりながらしゃがみ込む荒海。
数々の修羅場を潜りぬけてきたであろう荒海だが、流石にこの一撃は聞いたらしく目に宿る意志の光はかなり弱くなっている。

「どう?……って言っても喋れないか。おとなしくお縄について貰うわ」

「ワシャア……まだ諦めんぞ。お嬢さんを……」

苦悶の声をあげ、荒海は立ち上がる。
その手にはヤクザの事務所らしく備え付けだったのであろう日本刀が握られている。

「まだ、やる気……!?」

しかし、その返答は聞く事が出来なかった。
なぜなら彼、荒海銅二は倒れてきた巨大な戸棚の下敷きになったためだ。

「地…震?どうなってるのよ……」

ぼやき、隠れようとした時、零の無線機が突然鳴り響く。

【状況:地震に巻き込まれてちょっとピンチ】

【目的:A葉隠殉也と合流。
    C迷子の捜索。】

【持ち物:『重力制御』、携帯電話、現金八千円、大型自動二輪免許】

27 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/05/25(火) 01:15:36 0
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        ヽ   ヽ     /  /ヽ     
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28 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/05/25(火) 01:16:56 0
      /ヽ,,)ii(,,ノ\
     /(○)))(((○)\   こういう時はオナニーするんだお!!オナニー!!
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        /\ \   / /  ヽ   ))
   ((  / .   ◆◇◆◇◆  ヽ    
    .  /     ◇◆◇◆◇    ヽ     
     /      /◆◇◆◇      ヽ      
  .  /      / ◆◇◆ \      ヽ  


29 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/05/25(火) 01:21:30 0
93 :岸谷 新羅ψ ◆i85SSHINRA :2010/05/24(月) 03:16:53 0 ?2BP(601)
>>92
新潟中越地震を思い出すからやめてくださいよ。
あのときの光景を鮮明に思い出します。


94 :岸谷 新羅ψ ◆i85SSHINRA :2010/05/24(月) 03:18:37 0 ?2BP(601)
これは不味い!列車防護無線を!

※私は鉄道の設備の事を十分に理解しています。
新羅は防護無線のボタンを押し、ブザー音の最中、助けを待つ事に。


95 :岸谷 新羅ψ ◆i85SSHINRA :2010/05/24(月) 03:22:44 0 ?2BP(601)
救援列車となる列車は、このキハ95系気動車でしかありませんが…。
重さが64トンの割には360馬力のSulzer社製の非力なエンジンを積んだ
標準軌用のディーゼルカーです。


96 :岸谷 新羅ψ ◆i85SSHINRA :2010/05/24(月) 03:29:56 0 ?2BP(601)
それともう一つ。
DMH17Hを積んだキハ58系のジョイフルトレインのアルカディア号の
トンネル内での火災とか、極端な話なら、昔のキハ08系の
ガソリンカーの脱線事故の火災も鮮明に思い出します

30 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/05/25(火) 01:24:03 0
22 :岸谷 新羅ψ ◆i85SSHINRA :2010/05/15(土) 08:23:51 0 ?2BP(601)
鉄道が好きなのでお邪魔します。
マジレスをしますと、寝台特急カシオペア号の
スウィートルームの切符って、なかなか購入できませんよね。

私はキハ40系気動車の寝台特急が好きで、DMF15HSAエンジンが
ガーガー唸る環境でも眠れます。


23 :岸谷 新羅ψ ◆i85SSHINRA :2010/05/15(土) 08:28:55 0 ?2BP(601)
あ、申し遅れました。私はこういう者です。
デュラララ!!の世界からやってきた池袋の闇医者の岸谷 新羅です。

両毛線、日光線、烏山線、水戸線、真岡線、茨城交通湊線、
只見線、米坂線などのローカル線を愛好する鉄道ファンです。

電車よりも、ディーゼルエンジンで走る気動車の砲が好きです。


24 :岸谷 新羅ψ ◆i85SSHINRA :2010/05/15(土) 08:56:55 0 ?2BP(601)
気動車特急はキハ181系気動車とキハ187系気動車くらい。

普通列車用のキハ40/47/48系気動車はキハ20系列の
置き換え用として量産されましたが、自重36.6〜37tとヘビー級の割には、
220馬力という非力なDMF15HSAのため、電車と比較して足並みが
合わず、ダイヤ改正の大きな障害となり、後年、エンジン換装などの
複雑な経路を味わう事になりました。

キハ40系は加減速の多い仕業や勾配線区での運転には明らかに不向きです。
平坦で、駅間距離が比較的長く、一定の速度で走れる路線向きです。

しかし、JR東日本の烏山線のキハ40 1000番台、只見線の
キハ40などでは、現在もオリジナルの原型エンジンで走っています。

キハ40系のDW10液体変速機は変速1段、直結1段で、中高速域での
引張力を確保するとともにエネルギー損失を抑制した1段3要素型で、
起動直後の特性では、車重増大と相まって、非常に不利で、少し
動き始めたときの特性では、急激に加速がよくなると言った、特急用の
変速機を流用したが故の特性が現れています。

31 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/05/25(火) 01:25:48 0
34 :岸谷 新羅ψ ◆i85SSHINRA :2010/05/19(水) 18:05:00 0 ?2BP(601)
岸谷 新羅
「私は寝台特急サザンクロス号を追いかけて、借金を取り返す。ただそれだけだ。」

-蜃気楼というナイトメアフレームでサザンクロス号の後を追う。
当然、蜃気楼は栃木県小山市から僅か数時間でモンゴルまで飛べるという
性能を持っており、時速100キロ以下で走っている寝台特急まではすぐだ。-


35 :岸谷 新羅ψ ◆i85SSHINRA :2010/05/19(水) 18:10:11 0 ?2BP(601)
岸谷 新羅
「その前に借金を取り返してもらいましょう。」

ブラックジャック
「岸谷さん!何故ここに?」

岸谷 新羅
「ブラックジャックさんの行動パターンは私のギアス能力でお見通しだと言っただろ。」

ブラックジャック
「ボーナスは渡さない!」

岸谷 新羅
「ここは寝台特急サザンクロス号の車内です!逃げ場はありません!観念しろ!」

32 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/05/25(火) 01:28:23 0
37 :岸谷 新羅ψ ◆i85SSHINRA :2010/05/20(木) 03:03:07 0 ?2BP(601)
忌避されていると判断したため、私は別の列車に乗り換えます。
-停車駅に停車した後、私はサザンクロス号から降りて、その駅で、
特急券、寝台券を払い戻して、以後は普通列車へ乗り換える。-

※忌避されているのなら、別の手段という考慮を取るのは当然。
これ以上嫌われたくないし。


38 :岸谷 新羅ψ ◆i85SSHINRA :2010/05/20(木) 04:26:36 0 ?2BP(601)
忌避されていると判断し、変なネタを語った罰として、ゆっくりと立ち上がると、
列車の洗面所に行き、そこで…。♪テレレレ〜テ〜レレテ〜レレテ〜レ〜♪

-洗面所で、医療用メスを使って自分の手首を切った。-

33 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/05/25(火) 01:32:24 0
来いよ岸谷、電車マニアの屑ヤロウ

34 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2010/05/25(火) 01:38:09 0
岸谷呼ぶにも転載しただけじゃ気づかないとおもうぞwwwwww

35 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/05/25(火) 01:45:13 0
岸谷 新羅ψ ◆i85SSHINRAは群馬の屑ニート

36 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/05/25(火) 02:24:39 0
>>33-35
通報しといた
消えろカス

37 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/05/25(火) 02:33:24 0
vipperと遊ぶスレはここですか?

38 名前:岸谷 新羅ψ ◆i85SSHINRA [sage] 投稿日:2010/05/25(火) 03:21:16 0 ?
私が激烈にサバイバルTRPG寝台特急スレでアンチと煽り運転を
したから、このスレが荒れ始めてしまった事に絶望しました。

39 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2010/05/25(火) 10:12:07 Q
は?荒らし気取りか?この偽メンヘラ。
おまえみたいなニートみたいに一日何レスもしないだけでサバイバルもどこも普通に進んでるし、誰もおまえを相手にしてねーよ。
つーかいつになったら手首切るんだよ。口だけリスカ野郎。
手首うpしてみろよ。

40 名前:三浦啓介[] 投稿日:2010/05/25(火) 16:03:57 0
3 :三浦啓介 ◆6bnKv/GfSk :2010/05/21(金) 17:57:41 0
> 「三浦六花だな。確認した・・・」

露出男が自らの名前を呟いた事に、六花は眉を顰める。
名乗った記憶は無い。
ならば何故、この男は自分の名を知っているのか。
彼女の意識が解に至るのは早かった。
即ち、この男は『未来』から来たのだと。

再び、彼女は思考する。

> 「……すまん、壊れてるみたいだ」

> 「別に問題ないよ、おチビさん。こんなこともあろうかと、僕のパソコンにビル内の地図をインプットしといたからさ!
> 僕って天才!」

「……別に壊れてても問題無いわ。だって北が知りたい訳じゃないでしょ?
 ところでクソガキちゃん。見た所オタク臭い格好してるけど、『不思議なダンジョン』ってご存知?」

一旦カズミに向き直り、六花は問い掛けた。
言葉に皮肉と侮蔑の響きを多分に封じて、軽く顎を上げて言葉を紡ぐ。

「一体何処から地図を手に入れたか知らないけど、その地図を活用したいならついでにタイムマシンが必要よ。
 あぁそうそう、ついでにもう一つ聞いておきたいんだけど」

言葉尻に不穏の気配を放たせて、彼女はカズミの足元を蹴りで掬い上げた。
体勢を崩した彼の胸を、二本の指先で軽く小突く。
平衡を失ったカズミは両足も床から離れ、後ろに倒れていく。

そうして彼は尻餅をつき――何が起こったのかと
驚愕の表情を浮かべる彼の顔面を、六花は追い討ちとして蹴飛ばし、踏み締めた。
とは言え一応、眼鏡が割れて鼻血が出る程度の力加減にはしていたが。

「……おチビさんって、誰の事かしら? 私の足元にいる誰かさんの事って言うなら、納得出来るんだけど」

足元のカズミはそのままに捨て置き、今度は六花は警備員の二人へと振り向いた。

> 「ビビったが、どうせ文明の力か何かだろ…」
> 「バイト代貰う為にも、…いや貰う為だけだが、通さねぇ」

「……そちらにもお尋ねしとくわ。貴方達のバイト代って、病院の治療費より高いの?
 そうじゃないなら黙っていた方が賢明よ。酷い目くらいじゃ済まないから」

邪魔な連中をさっさと牽制し、再度彼女は露出男に視線を運んだ。
『未来の存在』と思しき男に。

「……多分ね、この男はお父さんの邪魔になると思うの。
 だからちょっとお話と、事と場合によっては交渉が必要なのよね。
 テナード、これ。『上位互換』でお父さんの元に行けるようにしてあるわ
 そのチビガキと、周りの面々と相談しながら、先に行ってて頂戴」

言い終えるや否や、六花は露出男――101型へと飛び蹴りを放った。

41 名前:三浦啓介[] 投稿日:2010/05/25(火) 16:06:12 0
>>19
「だからこれは自然に生えてるもんだから!ズレたりしねーんすよ!!」

『いや、確かに少し浮いていた。私の目に狂いは無い』

変ちくりんな蝙蝠もどきについ頭の秘密をツイッターされたせいで
俺の頭の中はパーティピーポープチョヘンザップな状態になったッス。
何とか周りの人らには気付かれてないようなんで、蝙蝠に俺も小さくツイッターしたッス。

「お、おい。蝙蝠もどきさんよ。俺のこの、その……頭の事ッスけど。
黙っててくんねーッスかね?」

『認めるのか?……まぁ、いいだろう。私はこのビルでヤクザどもに
幽閉されていた古代の文明だ。意志がある文明というのは少ないらしいが……』

ヘンな事を言う蝙蝠もどきを見ていると、隣で何か声がする。
誰だ?いや、何なんだ?

>「昨日から思ってたんですけど、キミはなんかブラザーにソウルな髪型をしてますよね」

「お、お化け出たぁあああああ!!」

>「ちょっと怪我人が出ちゃったので、助けて欲しいんです、ブラザーくん、たしかキミ直せますよね?」

「つーか、おめぇ昨日俺に戦えとか言ってたヤロウじゃねぇか!!
何の用ッスか?……怪我人。まぁ、ほっとけねぇ……ってのは分かるッスけど。」

>「えっとむな? むね……あーもう、じゃあジョジョくん。
>その側で飛んでるコウモリとか興味があることは結構あるんですが、とりあえず、道案内を置いておきますんで
>助けに行ってあげてください、お願いします」

浮遊する「幽霊ヤロウ」は俺を案内するかのように動き出した。
何だかきな臭い感じもしない事もないけど、やっぱ誰かが怪我してるってのに
スルーは出来ないのが俺、宗方丈乃助っすよ。

「オーケー、オーケー。この際、昨日の事は置いとくぜ。
そうと決まれば全力ダーッシュ!!そんじゃ、皆さん!少し抜けるッスよ!」

正直、毎日学校に遅刻寸前で登校してたからマジに足だけは自信があるっす。

【怪我人を治す為、全力でダッシュ開始】


42 名前:三浦啓介[] 投稿日:2010/05/25(火) 16:07:22 0
いきり立つ後方の人物を宥め、零は状況を把握する。
目の前に、そこに居るのは目標の一人。荒海銅二。
跪く都村が大体の状況を物語っている。つまり、戦闘中と言う事だ。それならば話は早い。

「大体わかったわ。降りて。こいつは私が……」

同乗者に降りるように指示を出し、自分は荒海を相手にすると宣言しそのままバイクで突っ込む。
その時、零の視界にとんでもないものが映った。

それは地面に倒れたまま動かないゼロワンの姿だ。

「ッ!?貴方……!!」

激高し、アクセルを吹かす零。
その思考には今までの冷静さはない。有るのはあり得ないほどに高まった憎悪。
なぜ憎悪なのだろうか?ゼロワンを傷つけられたから……?
だとしたら、自分はとんでもないエゴイストだ。

(誰かを…守るためなら。邪魔なものを全て壊してもいいの?)

そんな事は無い。それは判るのだ。しかし、今の彼女にはあふれ出る感情の衝動を抑える事は出来ない。
二つの相反する心。それを抱え零は荒海を引きずるように制御室から飛び出す。
そして、飛び込む先は反対側の扉の奥。そこが何処につながっているかは分らないが幸い、都村との連絡は取れる。
最悪、荒海を倒した後で連絡して『暴発迷宮』を解いてもらえばいい話なのだ。
そう判断した零は急制動を掛けて荒海をフロントカウルから引き剥がす。

「ぐぅ。この……やってくれたのう?」

「うっさい黙れ!!」

自らの相反した心の内に苛立つように罵声を吐き、それと共に飛びかかる零。
本来なら電撃を操る荒海に対して格闘戦などはもっての外。であるのだが、それでも零は頑なに攻めの姿勢を崩す事はしない。
衝動に突き動かされた為だけではない。勝算あっての行動だ。まだ、零は冷静さを完全に無くした訳では無い。

(文明の使用時には必ず使用する際の演算を必要とする……)

演算、と言っても大したものではない。例えば目の前にコップがあり、その中にある水を飲むと言った行動の為の演算だ。
そして、それにはそれなりに時間を必要とする。慣れという物も存在するだろうがそれを差し引いてもその時間はゼロでは無い。

(ならば!!)


43 名前:ku-01 ◇x1itISCTJc [sage] 投稿日:2010/05/25(火) 16:14:47 0
「大丈夫、ちょっと待っててくださいね」

萌芽はゆっくりと立ち上がると、今度は片腕を無くした男性に歩み寄る。

声こそは出していないが、相当つらそうな顔をしている。
側には女性がいるが、しかし、彼の痛みに対して、なんらかの対処法を持っているようにも思えない。

(……僕は……)
もちろん都村も同じく困惑していた。しかし、その困惑を払いのける声が都村の耳に届く。

『都村さん、生体反応は前方約2.4メートル地点です。回避、または攻撃をどうぞ』

声。その主はゼロワンであり、発信源は無線機。そして、突然の消灯。
そのキーワードから都村は彼女が何をしたのかを半ば勘で理解する。そしてその内容は正しかった。

「アナタは……そうか!なら、ジャッジ…!!」

漆黒の暗闇の中で都村は文明使用の為のキーワードを叫びながら腕章に手を掛ける。
しかし、それ以上の速さで都村に走る物があった。荒海銅二の文明『崩塔撫雷』だ。
それが都村の動作が終わるよりも早く床を走る。光とほぼ同じ速度で走る電撃だ。暗闇を照らすそれをかわせる者などは居りはしない。
床を走る一瞬のフラッシュが二人を映し出した時間は文字通りの一瞬。

「うぁ……!!」

「ほな、さいなら」

残酷に告げられる告別の言葉。軽い、と言っても人の身動きを封じるには十分すぎるほどの電圧を浴びた都村は脆くもくず折れる。
そして荒海は荒々しく首をつかむと片手で引き上げる。左手に光る紫電は妖艶な色つやをして居り触れれば魂さえも侵されてしまうだろう。
それを都村の腹部へと滑りこませようとする荒海。もう都村に勝機は無いかと思われた。
その時、そんな時に都村の耳にある音が聞こえた。
それは甲高い悲鳴にも似たエンジン音。正確にはエンジンを強制冷却するフィンの回転音だ。
それがまるでハイレベルなギターリフのように響き渡る。

あぁヘルライダー。それは地獄の底よりやってくる。彼らの為の戦いを行うため……
ほの暗い者達の意志を打ち砕き、その醜悪なる息の根を止めるために

そうだ;。あの彼女こそが騎手。この魑魅魍魎跋扈する地獄変。佐伯零がここに居る。ヘルライダーがここに居る。

「フフ。私の勝ちです……」

「なんや?」

「聞こえないのですね?」

このゴスペルが。と告げて都村は荒海の体を蹴り飛ばし、手を祓う。
着地と共に勢いよく床を蹴れば現実は彼女に答える。『身体強化』された体は素直に爆発的な速度で荒海との距離を離す。
そして、その直後に難攻不落の城塞は崩れ落ちた。

最初に現れたのは光。闇に包まれた制御室を照らし出す目が眩むほどの光。
そして間近で聴くフルスペックのメタルエクスタシーエキゾースト。間違いない彼女が来たのだ
一つ舌打ちをすると、萌芽はふいに自分の着ているシャツの右袖部分を引きちぎった

44 名前:ku-01 ◇x1itISCTJc [sage] 投稿日:2010/05/25(火) 16:17:17 0
蔓延する血の臭いなど気にも留めていない様子で、三浦は久和へと歩み寄る。
否、歩み寄ると言うよりは、目的と自分の間に偶然彼がいた。
と言った足取りだ。
三浦の余裕に一層の怒りを燃やしたのか、
久和は血の枷を蹴散らし一足飛びに三浦へ殴り掛かる。

迫り来る四つの拳を二つは右腕で逸らし、一つは首を傾げて三浦はかわす。
けれども最後の一つは凌げず、彼は歯を食い縛った右の頬で受ける事になった。
いや――凌げなかったと言うと、語弊がある。
彼にはまだ防ぐ術が残されていた。
左手を使い拳を受け止めていれば、彼の口腔内に鉄の味が広がる事は、無かった。

「……ふふ、この『手袋』は『守る』には向いていなくてね。
 『迎える』事なら出来るが、それをしたら君は死んでしまう」

頬の痛みも気にせず不敵に笑みながら、三浦は両の手を久和へ伸ばす。
そして久和の纏うスーツの上下に三浦の手が、手袋が触れた瞬間。
忽ちスーツの繊維が窮屈に捩れ、拘束衣の魂を宿す。
直立の体勢を強制され、久和は微動すら取る事は出来なくなった。

「無理に暴れない方がいいよ。血の海に沈むのは嫌だろう? 暫くそうしているといい」

すれ違いざまに告げて、それきり三浦は彼を尻目にすら見る事は無かった。
彼の視線は、まず李を矛先と得る。
微かに、三浦の身体が揺れ動いた。

「……駄目だね。『近すぎる』か。となるとやっぱり……」

難色と期待の色を放つ彼の眼光は首の捻転と共に流れ、尾張に焦点を向ける。
途端に、三浦は強烈な重圧感に襲われた。
平衡感覚を損ない、一歩踏鞴を踏んで、辛うじて踏み止まる。
驚愕の色に面持ちを染めていた彼は、けれども次第に喜色を表に滲ませていく。

「ふっ……はは、やはり君だ。君こそが僕達から『かけ離れた』存在だ。
 朧な感覚でしかなかったが、今ので確信したよ」

堪え切れないと言った様子で、三浦は笑う。
しかし彼の表情は、長続きはしなかった。
不意に尾張が、これまで頑として自分に標準を合わせていた小銃を手放したのだから。

更には彼は拳銃を抜き、挙句三浦に背を向け発砲する。
狙いは、月崎真雪だったようだ。
脚を撃ち抜かれ、その激痛で彼女は目を覚ます。
周囲を満たしていた血塊も臭気も、余さず消えた。

一連の出来事に、三浦は満面に邪悪に染まった喜色を零す。
自分からしてみればいつでも殺せる存在の為に、大本命が致命的な隙を晒してくれたのだ。
嬉しい誤算にも程がある。

45 名前:ku-01 ◇x1itISCTJc [sage] 投稿日:2010/05/25(火) 16:21:12 0
「アンタの文明って奴がなんだか知らないけど……使えなければただのがらくたでしょう?」

零があえて正面から突撃した理由。
それは同じ文明を使用したものでなければ分らない理由だった。
演算や、発動にかかるkeyを使用しなければ文明は意味を持たない。そこをついたのだ。

「よう考えたな。まぁええ……ほいなら!力ずくで行かせてもらいますわ!!」

そして始まる綱渡りのような命の取り合い。
荒く大ぶりな荒海の極道らしい喧嘩流と美しく流れる零の足捌きが正面から死合う。
激しくぶつかり合う二つの意志に合わせるように戦いは劇化。二手先を読みあう事が出来るほどのレベルだ。
そんな互いに譲らぬ攻防の末、単純にパワーの問題から零は押され始める。
無理もない、いくら零の身体能力が高いとはいえ限度がある。
さらに言うなら常に足を振り上げ荒海に文明を使用する思考を与えないように立ち回っているため体力に限界が来たのだった。

「はぁ、はぁ……なんて、タフな奴なの……ヤァ!!」

「フン。もぅへばったんかいな?ほんなら、今度はこっちか……!?」

「悪いけど文明は使わせない……!」

荒海が言葉を失った訳。それは単に零が初めて構えを見せたからだ。そう、構えを見せたたため……
今の立ち回りの中で、零は構えを見せていなかった。
それは零に手加減をする余裕があったためだが、もうその余裕はない。故に構えを見せた。

そのプレッシャーに息をのむ荒海。それに対して零は封印していた「打撃」を開始する。
風を切り裂く音と共に放たれる拳は一発一発が致死量を超えた殺意を孕み、荒海の闘志を削り取る。
まるで竜巻の様な勢いで繰り出される拳の一撃はそのすべてが正しく必滅。
覚醒を始めた零の前では『崩塔撫雷』を使う事の出来なくなっている荒海など、所詮は唯人でしかないのだ

46 名前:ku-01 ◇x1itISCTJc [sage] 投稿日:2010/05/25(火) 16:22:36 0
【合流:月崎 真雪】

いつのまにか、真っ暗になっていた。
停電だろうか……?

どうでもいいが、本当にこの状態は辛い。
痛いというよりは、なんだか体に「もう動くな」と言われているような気分だ。
もっとも、これは自分ではなく、彼ら二人が感じている痛みなのだが。

真っ暗な空間の中で視覚でものを捕らえているわけではない萌芽は、目的の彼女の姿を見つける。

電気が落ちていて良かった。
おそらくこの姿を見られたら、彼女を驚かせてしまうだろうから。

話しかけようとして、萌芽はそれをやめた。
かわりに、そっと彼女の手を握る。

すこし思い出したかったからだ。
あの暗闇のなかで感じた、彼女の温かさを。



22 :竹内 萌芽(11/11) ◆6ZgdRxmC/6 :2010/05/24(月) 00:44:54 0

自分の存在が、風船のように膨らんでいく感覚。
その内側にある真雪の存在から、怪我をしているという”事実”を”あやふや”にし、そして自分に付加した。

今頃、本体の自分の足からは、止め処なく血が流れ出ていることだろう。
なんだかそれも悪くないと思っている自分がいて、萌芽は少し笑ってしまった。

彼は少しずつ、気付き始めていた。彼が拒否する、人間の温かさ。
それが少なからず自分にもあるものだということに。

真雪の手を引きながら、萌芽は自分の進行方向にいるミーティオのことを考える。

行かなくては、どんなに体が悲鳴をあげても、誰のものでもない自分の足で。

「ま、分身なんですけどね」

そう言って、萌芽はけらけらと笑った。

ターン終了:
【五月一日皐月・宗方丈乃助組に接触】
道案内用の、全自動もるもるをおいておいたよ。浮くよ。
【月崎真雪回復】
変わりに大ダメージだよ、ぶっちゃけ死ねるよ。

47 名前:佐伯 ◇b413PDNTVY[sage] 投稿日:2010/05/25(火) 16:30:01 0
無理もない、いくら零の身体能力が高いとはいえ限度がある。
さらに言うなら常に足を振り上げ荒海に文明を使用する思考を与えないように立ち回っているため体力に限界が来たのだった。

「はぁ、はぁ……なんて、タフな奴なの……ヤァ!!」

「フン。もぅへばったんかいな?ほんなら、今度はこっちか……!?」

「悪いけど文明は使わせない……!」

荒海が言葉を失った訳。それは単に零が初めて構えを見せたからだ。そう、構えを見せたたため……
今の立ち回りの中で、零は構えを見せていなかった。
それは零に手加減をする余裕があったためだが、もうその余裕はない。故に構えを見せた。

そのプレッシャーに息をのむ荒海。それに対して零は封印していた「打撃」を開始する。
風を切り裂く音と共に放たれる拳は一発一発が致死量を超えた殺意を孕み、荒海の闘志を削り取る。
まるで竜巻の様な勢いで繰り出される拳の一撃はそのすべてが正しく必滅。
覚醒を始めた零の前では『崩塔撫雷』を使う事の出来なくなっている荒海など、所詮は唯人でしかないのだ。

もう何度目の攻撃だろうか?水際で踏ん張っていた荒海だったがついに裏拳を正面から受けてしまう。
そして、そこからは崖から転げ落ちるかのような光景だった。
一瞬にして顔から離れた拳は鳩尾を突き、同時に踏み込み踵で相手の足を踏みつける。
そして、相手の動きを封じたところでもう一度、鳩尾に今度は中段蹴りを突き刺し、吹き飛ばす。

壁にぶつかり、そのままもたれかかりながらしゃがみ込む荒海。
数々の修羅場を潜りぬけてきたであろう荒海だが、流石にこの一撃は聞いたらしく目に宿る意志の光はかなり弱くなっている。

「どう?……って言っても喋れないか。おとなしくお縄について貰うわ」

「ワシャア……まだ諦めんぞ。お嬢さんを……」

苦悶の声をあげ、荒海は立ち上がる。
その手にはヤクザの事務所らしく備え付けだったのであろう日本刀が握られている。

「まだ、やる気……!?」

しかし、その返答は聞く事が出来なかった。
なぜなら彼、荒海銅二は倒れてきた巨大な戸棚の下敷きになったためだ。

「地…震?どうなってるのよ……」

ぼやき、隠れようとした時、零の無線機が突然鳴り響く。



48 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/05/25(火) 16:36:06 0
トンファー龍虎乱舞!!

      ∧_∧           ドドドドドトドゴォォォ _  /
     _(  ´Д`)                [ 連 ]―= ̄ `ヽ, _
    /      )        =_  ̄_ ̄)(   〈__ >  ゛ 、_
∩  / ,イ 、  ノ/  --_- ― = ̄  ̄`:, .∴)  (/ , ´ノ \
| | / / |   ( 〈 '' ̄  = __――=  ;, / / /←>>38
| | | |  ヽ  ー=i~""  _-―  ̄=_  )":",/ / ,' .
| | | |   `iー __,,,―  ̄_=_  ` )),∴./  /|  |
| |ニ(!、)       ―= _ ) ̄=_)    !、_/ /   〉
∪     /  /     _ _ )=  _)       |_/
     /  /          = _)  
    / _/  
    ヽ、_ヽ


49 名前:岸谷 新羅ψ ◆i85SSHINRA [sage] 投稿日:2010/05/25(火) 19:11:18 0 ?
>>48
貴様、本当に噛み殺すよ。

50 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/05/25(火) 22:16:42 0
      ∧_∧  トンファーキ〜ック!
     _(  ´Д`)
    /      )     ドゴォォォ _  /
∩  / ,イ 、  ノ/    ∧ ∧―= ̄ `ヽ, _
| | / / |   ( 〈 ∵. ・(   〈__ >  ゛ 、_
| | | |  ヽ  ー=- ̄ ̄=_、  (/ , ´ノ \
| | | |   `iー__=―_ ;, / / /←>>49
| |ニ(!、)   =_二__ ̄_=;, / / ,'
∪     /  /       /  /|  |
     /  /       !、_/ /   〉
    / _/             |_/
    ヽ、_ヽ

51 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/05/25(火) 22:18:34 0
>>49
歯槽膿漏のくせにw無理すると自分の歯が抜けますよw

52 名前:三浦啓介 ◆6bnKv/GfSk [sage] 投稿日:2010/05/26(水) 18:31:14 0
>>李さん

「わっぷ……! 何これー!」

被せられた上着の袖同士を縛られて、サイは身動きを封じられる。
何とか上着から抜け出そうともがくが、どう足掻いても腕が引っ掛かって抜けないのだ。
挙句彼女は平衡感覚を損ねて、転んでしまった。

「むー! もういいもん!」

聞きようによっては諦めの言葉にも聞こえる声を上げて、しかし彼女は立ち上がる。
そして無理矢理、力ずくで上着から抜け出しに掛かった。
右肩が関節の可動限界を迎えて、静かに軋む。
それでも彼女は、そのまま左腕を伸ばした。
目いっぱい、全力で。

ごきりと、胸の内を嫌悪感で満たしてくれそうな音が響いた。
上着の膨らみが、彼女の右腕があらぬ方向に曲がっている事を示唆する。

「えへへー。これで上着も出られたし、お父さんも心配してくれるし。うん、一石二鳥!」

上着を放り捨て、ぶらりと垂れ下がるばかりの右腕を見つめて、サイは無邪気に笑った。
そうして李へと駆け出し、肩の外れた腕を身体を回して遠心力で彼に伸ばす。
僅かにだがリーチの伸びた彼女の手は、李の襟元を掴み手繰り寄せる。

「知ってるー? 肘とか肩の関節ってね、外れると結構伸びるんだってー。
 お父さんの読んでた漫画に書いてあったよー」

彼女の言う事に間違いはない。
無いのだが、それには言うまでもなく激痛を伴なう。
鎮痛の術など持ち合わせていない彼女は、しかし構わず右腕を酷使した。

「つっかまえたー。もう絶対離さないからねー」

宣言通り、彼女はビルが元に戻る際の衝撃を受けても、李を手放しはしなかった。
肩の関節が乱暴に、無造作に伸ばされて、常人ならば耐え難い痛みを訴えている筈なのに。
しかくして、彼女は李の襟元を掴んだまま、跳び上がる。
『自由歩行』と肩関節の外れた腕によって、彼女の身体は円を描き、李の頭上から踵を落とす。

仮にこれを凌いでも、サイをどうにかしない限り攻撃は延々と続くだろう。
だが引き剥がすにしても、彼女は掌に衣服の生地ごしに爪が食い込む程の力で、李を掴んでいた。
彼女から逃れる手段は、自ずと限定されてくるだろう。

【何かちょっと誘導っぽいレスですいませんです
 誘拐なり何なりしちゃって下さいな】

53 名前:ψ†ψΔ岸谷新羅(改)Δψ†ψ ◆i85SSHINRA [sage] 投稿日:2010/05/27(木) 03:54:15 0 ?
寝台特急スレで、激烈に忌避されているのを見て、自分で荒らした
責任感を抱えた新羅さんは、医療用メスで、自分の手首をスパッと…。

♪テレレレ〜テ〜レレテ〜レレテ〜レ〜♪

54 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/05/28(金) 20:29:26 0


55 名前:三浦啓介 ◆6bnKv/GfSk [sage] 投稿日:2010/05/28(金) 21:40:53 0
>>101型さん

『身体強化』を用いての飛び蹴りは、しかし101型に危なげなく受け止められてしまう。
奇しくも時を同じくして、『暴発迷宮』が解除される。
接触していた二人はそのまま、何処かへ飛ばされ戦場を移す事になった。

「……これが解除されたって事は、お父さんは目的を達したみたいね。
 ごめんなさいな、私からデートに誘っておいてなんだけど、もう帰らなくちゃいけないみたい。
 だから、さっさと終わらせてもらうわね」

手提げのバッグから携帯ゲーム機を取り出し、六花は『消火昇華』を起動する。
極彩色の閃光が101型の顔面を照らし――けれども機械である彼に、気概を削ぐ文明が通用する道理はない。
依然屹立する101型に六花は眉を顰め、しかしすぐに床を蹴り彼との距離を詰めた。
『威震伝深』を発動させたブーツで、再度蹴りを放つ。
反動、反作用を対象へ伝播させるこの文明は、打撃に用いれば防御不可の一撃を作り出す――筈だった。

「……『威震伝深』の無力化演算を開始――完了」

だが一体如何なる原理か、文明は十全の効果を発揮する事なく、容易く受け止められてしまった。
いよいよ困惑の色を濃厚にする六花をカメラで捉え、101型は起伏の乏しい音声を吐き出す。

「……三浦六花の無力化……当デバイスでは不可能と算出
 単純戦闘では破損の回避が困難と判断。修復の目処が無い為破損の回避を最優先」

「……それってつまり?」

「――逃走開始」

言葉を締め括るや否や、101型は猛然とその場から逃亡を始めた。
迅雷のごとき速度で、下半身は丸出しのまま。

「……逃しちゃった、か。それにしても、何だったの? アイツ。文明は効かないし、それに……」

胸中で兆した疑問に、答えは得られない。
釈然としないまま、六花は仕方なくその場を後にした


【5日ルールって事で
 ここぞとばかりに軽く個人的な伏線もどきを撒かせて頂きました】

56 名前:テナード ◆IPF5a04tCk [sage] 投稿日:2010/05/29(土) 23:06:49 0
>>3

「お、おい!」

少女――もといリッカの無駄のない動きに思わず唖然としてしまっていた。
だが、あの変態男へと飛び蹴りを放った瞬間、俺は思わずリッカへと腕を伸ばしかけた。

「放っておけば?」

背後からかけられた、不機嫌そうな声色のカズミの言葉が、俺の動きを止める。
確かに、先に行っててくれと言ったのは他ならぬあの少女だ。
だが、相手はどう見積もっても俺と同じくらいの背格好。
例え彼女の力が強いとしても、あんな得体の知れない奴と戦わせるのは危険だ。

「彼女なりの考えがあるんだよ、きっと。それを無碍にするってーのは、ちょっと野暮なんじゃない?」

心配する気持ちは分かるけどさ、とそう付け加え。
カズミは呻きながら起き上がると、ダバダバと溢れ出てくる鼻血を袖で拭う。

「警備員さん。あの白髪暴力女にだけは近づかない事をお勧めするよ。
 でないと、彼女の言うとおり、病院送りどころの話じゃなくなるかもね」

ほら、おチビさんって呼んだだけでコレだし、と自らの鼻を指差し笑いつつも。
さてと、とカズミは男たちに向き直る。

「僕達は敵じゃない。仲間を探す為にここまで来たんだ。
 どうか気害を加えないで欲しいんだ。僕らは君たちに干渉する気も、ましてや攻撃する気もない」

だよね、テナードと振られ、思わず間の抜けた声で答える。
だが、正体を完全に明らかにさせない俺という存在は、やはり信用出来ない存在だろう。

静かに顔を覆っていた仮面を外し、耳を隠していたフードを脱ぐ。

「…もしや異世界人かお前は?」

物々しい銃を持った男が、顔を曝け出した俺に問う。
その質問の肯定として、俺は無言で頷き、またフードと仮面を着用した。

「さっきも言ったが、俺たちは人探しをしている。
 ここで時間を潰している暇は無い。悪いが通らせてもらうぞ。
 ……着いてくるって言うなら、それでもいい。だがな」

邪魔するなら、それ相応の対応をさせて貰う、と言葉を足して、俺は踵を返す。

「行くぞ、カズミ」

その時だった。


57 名前:テナード ◆IPF5a04tCk [sage] 投稿日:2010/05/29(土) 23:08:29 0

唐突に、それはやってきた。

凄まじい揺れと轟音。
俺は予期せぬ現象を前に、その場で立っていられずにその場に膝をつく。
だが、その姿勢はすぐに四つん這いへと変わり、恐怖と混乱のあまり顔を伏せた。

地震はビル全体を揺るがし、あちこちで悲鳴や混乱の声が木霊する。
それも轟音に掻き消され、腹の中に浮遊感にも似た不快な何かがこみ上げてきて。
追いうちをかけるように、本日何度目かの頭痛までもが襲いかかってくる。
全く、次から次へと何なんだ、一体!

ようやく地震が止まった。
不快感と頭痛が治まるのを待ちながら、ゆっくりと頭を振る。
まずは状況確認だ。そう判断し、面を上げた時だった。

「! 色白!?」

視界に入った白。
それは、まるでミノムシのように白い何かに拘束されたままもがく、あの五本腕だった。

先程の地震のせいで震える足を無理矢理動かし、駆けよる。
どうやら足を負傷しているらしく、両足共に変な方向へと捻れていた。
額に脂汗を滲ませ、苦痛に表情を歪ませている。

「おい、大丈夫か!おい!!」

ふと、先程の公園での乱闘の事を思い出した。
フードの中に手をつっこみ、耳を挟んでいる十字架を外す。

警戒させぬよう、仮面を外して顔を晒した。これで味方だと判断してくれる筈だ。

「頼む、効いてくれよ……!」

リッカが自分にそうしたように、手にした十字架を色白男の耳に装着させ、軽く指で弾いた。
すると、淡い緑が色白男を包み込み、捻れていた足がみるみる正常な形へと戻っていく。

安堵の溜め息をつきつつも、そのまま色白男に絡まった白い何かを外しにかかった。
が、まるで鉄のように固く、中々外れない。

「くそッ!何なんだよコレ!おい誰か、カズミも手伝……」

そう言いかけて振り向いた先に、側にいた筈のカズミの姿は無かった。
リッカに手渡されていたコンパスと共に、いつの間にか忽然と姿を消していたのだった。


58 名前:カズミ ◆IPF5a04tCk [sage] 投稿日:2010/05/29(土) 23:10:23 0

落ち着け、落ち着くんだ。
ひたすらに息を殺して、悟られぬよう、背後へと近づいていく。

先程の地震には驚かされたが、どうやら暴発迷宮が解除された際に発生したものだったらしい。
現に、一緒に居た筈のテナード達の姿はなく、代わりに三浦啓介の背中を発見してしまったのだから。

長い黒髪が、歩みに合わせて揺れている。
手には、彼の者ではない誰かの右腕。

足音を立てるな。気配を悟られるな。
チャンスは一度だけだ。これを逃したら、きっと次はない。
銃を持つ手が、汗でジットリとしている。

コンパスを見やる。針はグルグルと回り続け、三浦啓介のほうへ向こうとはしない。
全く、「三浦啓介の元へと案内してくれる」と言ったから受け取ったというのに。
あのおチビさんめ。次会ったら請求書叩きつけてやる。

そして、まるで極上の獲物を仕留めたかのように、上機嫌そうに階段を降る三浦啓介に再び焦点を合わせる。
残念だったな、今度はアンタが獲物だよ。

「動くな」

持っていたリボルバー式拳銃の銃口を向ける。三浦六花に蹴飛ばされた際に、こ
っそり拝借させてもらった物だ。
距離は僅か2、3m程度。標準はしっかり彼の後頭部へと。

「三浦啓介だね?いや、この質問は愚問だったか」

クックッと自嘲気味な笑みを浮かべつつも、銃口を降ろす事はせず。
隙を見せたらアウトだ。ポーカーフェイスを保ちつつ、僕の口は言葉を紡ぐ。

「単刀直入に言おう。『イデアに関する情報』を渡してもらおうか」

興奮のせいか、先程彼の娘にやられた鼻がじくじくと痛む。
鼻の下に温かい何かが流れていくのを感じながら、言葉を続ける。

「僕にはとある目的がある。その為にはイデアが必要なんだ」

ゆっくりと安全装置を外した。
これで、もし彼に攻撃を仕掛けられた場合、いつでも反撃出来る。

「拒否したり、僕に攻撃を仕掛けてきたその場合は……」

一歩一歩近づきながら、締めの言葉を言い放つ。

「遠慮なく、その綺麗な頭を吹っ飛ばしてやる」


【テナード:迷宮解除に伴いどこかへ吹っ飛ぶ→前園久和と集合(?)。カズミーどこいったー】
【カズミ:三浦さんに喧嘩売りに行きました。これは酷い返り討ちフラグ】
【上位互換が壊れたのは伏線です。三浦さんごめんなさい
 猫はモノ男さんのとこに飛んじゃいました。着いていくなりなんなりご自由に】



59 名前:訛祢 琳樹 ◇cirno..4vY[sage] 投稿日:2010/05/30(日) 00:01:19 0
>「さっきも言ったが、俺たちは人探しをしている。
> ここで時間を潰している暇は無い。悪いが通らせてもらうぞ。
> ……着いてくるって言うなら、それでもいい。だがな」
>邪魔するなら、それ相応の対応をさせて貰う、と言葉を足して、俺は踵を返す。

…何か、あれだね。
私って空気だよね?
いや、いいんだけど。

「…目立ちたいのが男ってもんだべ?」

呟いて敢えてテナード、だっけ?の後は追わずに窓の方へ歩く。
窓を蹴りで勢い良く割って、…おお、本当に割れるんだね。
そして一言。

「えたーなるふぉーすぶりざーど」

相手は死ぬ。
いや、死ぬ代わりに上の解に向かって氷の階段が出来る。
火事だとかヤクザさんの撃った銃だとか、私の氷を溶かすには少し威力と火力が弱いよ。

「あ、ね、警備員さん。護衛に一人着いてきてくれない? 凍らせてでも着いてこさせる」

私が敵に襲われたらどうするんだい。
自己中?気のせいだよ。

……此処にシエルが居たら、な。
シエル、後で探しに行こうか。

「…さーあ、登ろうか」


60 名前:訛祢 琳樹 ◇cirno..4vY[sage] 投稿日:2010/05/30(日) 00:02:23 0

「…あれ?」

登り終わった所にはテナードは居ず、代わりに見覚えのある鎧。
あの、あれシエルだよね?囚われてるけど、囚われて気失ってるけど。
…ようし、助け出そうか。

「…っていっても、牢屋みたいなもんを私が…」

自分みたいな一般人が破壊出来るのか…。

「えっと…」

周りを見回す。
そこにはシエルの持っていた大剣が立て掛けてあった。

「これしかないか」

剣を全身の力で持ち上げ勢い良く、振る、前に緑髪の警備員が何かしていた。
盾から、炎?
何、熱してからぐにゃーってやるのかい?

そこまで考えて、警備員が牢屋の前を退いてから剣を振る。
するとすんなりと穴が空いた。

「助けに来た、けど今はそんな事いっても分かんないべな」

重いからこの鎧、脱がせるよ、ごめんね。
…服着てるから大丈夫だよね。

【訛祢琳樹:シエルをおぶって脱出開始、エロい事考えてないもん!】


61 名前:李飛峻 ◆nRqo9c/.Kg [sage] 投稿日:2010/05/30(日) 00:35:43 0
「むー! もういいもん!」

「ちょッ、おまッ!?」

無傷での決着という飛峻の目論見は成功したかに見えた。
少女の反応速度を上回るそれをもって完全に拘束したはずだったのだ。
しかし――

「待テ待テ!腕はそんな方向には伸びなイ。や、止メッ……」

ごきんっ、と。
自ら肩を外し少女は拘束を抜け出る。
歪に膨らんだ右腕は見てるだけで痛々しく、また実際に激痛を伴っているはずなのだ。

「えへへー。これで上着も出られたし、お父さんも心配してくれるし。うん、一石二鳥!」

だというのに、少女の表情はむしろ嬉しそうでさえあった。
そしてだらりと力なく垂れ下がった腕はそのままに、飛峻へと向かい全速力で駆け出す。

(まさか、まだ戦うつもりなのか!?)

飛峻は驚きの余り目を見開いていた。
だが少女は敵の心配などは意にも介さないとばかりに、外れた腕を突進の勢いを利用して振り切る。
受けたところで大した威力など無いだろうそれを飛峻はあえて避けた。
そうしたのはほんの些細な衝撃でも、今の少女には途方も無い痛みが襲い掛かるからだ。

しかし、それが裏目に出た。

「つっかまえたー。もう絶対離さないからねー」

限界まで伸びた腕のさらに先。
一本の指が飛峻の襟首へ架けられている。

(これが狙いかっ)

少女の指先が蜘蛛の如く這い、指一本分だった繋がりを五指で握りこむ磐石なものとする。
およそ子供らしからぬ、いや子供だからこそなのだろうか、己の身を度外視した少女の特攻に飛峻が捕まったその瞬間、それは起こった。

初めは揺らぎ。続いて振動。
最後は立っているのも間々ならない程の衝撃。

飛峻の視界の外で三浦が起こした行動によって、『暴発迷宮』の効果でその姿を捻じ曲げられていたBKビルが正しい姿を取り戻した。


62 名前:李飛峻 ◆nRqo9c/.Kg [sage] 投稿日:2010/05/30(日) 00:36:38 0
『重なっているものは個体として認識されてバラバラになることはありません!!』

少し前に聞いた兔の言葉を飛峻は嫌と言うほど痛感していた。
複雑に絡み合った空間が元に戻る際の衝撃を受けても少女は飛峻を放すことはなかった。

大地震もかくやと云うほどの激震。
その最中、ずっと飛峻を掴みっぱなしだった右腕。

少女を苛んだろう痛みは相当のものだったに違いない。
実際その額には脂汗が滲んでいる。
それでもなお、少女は行動を開始する。

掴んだ手を起点に、足場の無い空中を足がかりに、迷う事無く飛峻の頭へと踵を落としてくる。

「ガッ!」

それを額で受け止め、飛峻は大きく後ろへ仰け反る。
喰らうのを覚悟していたから意識こそ飛んでいないが、鋭い一撃により皮膚が裂けた。

「グゥッ!!」

続いて頬への膝蹴り。
真横に顔が振られ、砕けた奥歯が宙を舞い、ころんと地面に転がる。

その後も襲って来る攻撃を飛峻は全てその身で受け止めていた。
四方八方から滅茶苦茶に蹴られ、それでも飛峻の顔に浮かぶのは怒りではなく憐憫と後悔。

『えへへー。これで上着も出られたし、お父さんも心配してくれるし。うん、一石二鳥!』

そう、少女は父親に心配して欲しいが為だけに痛みに耐え、己の身体も省みず攻撃の手を緩めないのだ。
そしてそれは飛峻が手心を加えたがために生じた痛みでもある。

「ガフッ……」

幾度目かの攻撃の後、打撃では埒が明かないと判断したのか少女が選択したのはチョークスリーパー。
飛峻の背中にしがみ付き、意識そのものを刈り取らんと回した腕を締め付けてくる。

「すまなかっタ……痛かっただろウ」

対する飛峻はやはり振りほどこうとはせず、少女に届くかどうかといった掠れた声で小さく謝った。
しかしそれは敗北を受け入れたのでは無い。

飛峻はだらりと手を下げたまま、片脚を振り上げると呼気とともに地面に叩きつける。
中国武術における基本にして奥義たる震脚のそれ。

同時に全身の稼動域全てを用いて、その力を下から上へと伝達させる。
脚から膝へ、膝から腰へ、腰から背中へ、そして背中から肩を徹して少女に。
発勁による一撃を受け少女はびくりと背中を震わせると、それきり動かなくなる。
浸透した衝撃によって一瞬で気絶させたのだ。

「些か手古摺り過ぎた……カ」

気を失った少女を背負ったまま辺りを見回す。
真雪も尾張も兔も居ない。

代わりに居るのは口に布を詰めたまま、微塵も動かない竹内萌芽ただ一人。

「ドウシテこうなっタ……」

頭から血を流しながら発せられた飛峻のつぶやきに答えるのは誰一人として居なかった。

63 名前:李飛峻 ◆nRqo9c/.Kg [sage] 投稿日:2010/05/30(日) 00:37:40 0
「がああぁ……マユキ!オワリ!!」

今三人――兔を加えて――を求めて全力疾走している俺は、異世界に召喚されたごく一般的な青年男性。
強いて違うところをあげるとすれば、意識が無い少年と意識を無くさせた少女を抱えているってところかな。
名前は李飛峻。
そんなわけでヤクザに追われてビルのトイレに隠れているのだ。


「撒いたカ……?」

小脇に二人を抱えての強行軍はやはりどう見ても怪しすぎたのか、ビル内をうろついていたヤクザに発見され追いかけられる羽目になった。

「ヤレヤレ……やっぱりこのチョイスが不味かったのだろうカ」

抱えている内の一人。
竹内萌芽は服装こそ以前のままだが、その顔が違った。
先ほどまで激戦を繰り広げ、今は気絶している少女の手当てのため一度ショッピングモールに戻った際についでに拝借したのだ。
パーティーグッズの定番。被り物を。

萌芽と少女が敵対していたこともあり、万が一この獰猛な少女が先に目を覚まそうものなら襲い掛かるのは火を見るより明らかだ。
ゆえに一見して萌芽と判らないように仮装もとい変装をさせた、というわけである。

「三人とも無事だと良いガ……」

『暴発迷宮』の沈静化の結果、当初から行動を共にしていた真雪、途中から合流した尾張、兔の三人とはぐれてしまうという事態に陥ったことも
飛峻の焦燥感を増す要因となっていた。

(自分だけが別になったのならまだいいが……)

最悪なのは皆ばらばらになった場合である。
一刻も早く合流する必要があるだろう。

「そのためには――」

目指す階はさらに上。
飛峻は辺りにヤクザの気配が無いのを確認すると上を目指し走り出した。

64 名前:三浦啓介 ◆6bnKv/GfSk [sage] 投稿日:2010/05/30(日) 00:55:12 0
>「三浦啓介だね?いや、この質問は愚問だったか」
>「単刀直入に言おう。『イデアに関する情報』を渡してもらおうか」
>「僕にはとある目的がある。その為にはイデアが必要なんだ」

背後からの不躾な訪問者に、しかし三浦は笑みさえ浮かべながら振り返った。
目と唇で悪辣な曲線を描き、右手に携えた尾張の右腕で頭を掻きながら彼は答える。
顎を上げ、視線は意図的に天井付近へと泳がせ、カズミを眼中には収めないまま。

「イデアの情報、ねえ。……答える前に一つ、君が求めているのは一体何のイデアなんだい?
 それが分からない事には、僕にはどうにも回答のしようがないなあ」

小馬鹿にした響きを口調に含ませて、彼は言葉を綴る。
ほんの一瞬視線をカズミに向けるが、返答はない。

「……何だ、君もイデアが何かすら分かっていない、あのマーチヘアと同じか。
 だけど、今の僕はご機嫌でね。代わりと言ってはなんだけど、イイ事を教えてあげよう」

言葉と同時、彼は短兵急に頭の位置を逸らしながら、右足を蹴り出した。
わざわざ傍にまで歩み寄ってきた、カズミの腹部へ。
蹴り飛ばした彼を冷ややかに細めた双眸で見据え、彼は尾張の右腕は持ったまま、手袋を口で外す。

「銃を持っているのにわざわざ近寄ってどうするんだい君は。それに頭を狙うのもナンセンスだね。見た所銃の心得も無いだろう。
 オタク臭い風貌をしている割には、抜けてるんだねえ、君」

カズミが取り落とした銃を、『自由攻策』に覆われてはいない素の右手が拾い上げた。
汗が滲んで気色の悪い光沢を放つ銃を一瞥してから、三浦は再び床に放り捨てる。
鈍く重い金属音を響かせて転がったそれは、最早銃の形を保ってはいなかった。
黒光りする、懐中時計へと変貌していた。
彼が文明を用いた気配などは一切合切、無かったと言うのに。

「とは言え、僕が今機嫌がいいのは本当でね? 折角だからチャンスを上げるよ。
 それを拾うといい。時計の形をしているが、元は拳銃だからね。炸薬と雷管が入ってる。
 当然時間と共に爆発するけど……それを君が持っている間は、僕は君の相手をしてあげよう。
 君が怖気付いて時計を手放すか、手が原型を失ったらゲームオーバー。
 クリア条件は今度こそ僕の命を掌握するか……この右腕を奪い取るか、だ。
 これを無くすと面倒な事になってしまうからね。要するに君は、僕に対する交渉材料を手に入れれば勝ち、と言う訳だ」

一息吐いて、彼は挑発の音律を舌鋒鋭く紡ぎ出す。

「さあ、ゲームをしようか?」


【爆弾ゲームはっじまるよー
 時間は精々3〜5分くらいと言う事で】

65 名前:カズミ ◆IPF5a04tCk [sage] 投稿日:2010/05/30(日) 03:53:18 0

>背後からの不躾な訪問者に、しかし三浦は笑みさえ浮かべながら振り返った。
>目と唇で悪辣な曲線を描き、右手に携えた尾張の右腕で頭を掻きながら彼は答える。
>顎を上げ、視線は意図的に天井付近へと泳がせ、カズミを眼中には収めないまま。

>「イデアの情報、ねえ。……答える前に一つ、君が求めているのは一体何のイデアなんだい?
> それが分からない事には、僕にはどうにも回答のしようがないなあ」

その言葉に、カズミは言葉を詰まらせた。
実のところ、カズミはイデアに対する認識が朧で、形状はおろか、種類がある事すら知らなかったのだから。
それを見抜いたのか、三浦は小馬鹿にしたように言い放つ。

>「……何だ、君もイデアが何かすら分かっていない、あのマーチヘアと同じか。
> だけど、今の僕はご機嫌でね。代わりと言ってはなんだけど、イイ事を教えてあげよう」

言い終わると同時に、カズミの腹部を衝撃が襲った。
そのまま2、3メートル程吹っ飛び、固い床に強かに頭を打ちつける事となった。

「…………!!」

腹部と頭部に掛かる痛みに悶絶しながら、カズミは怒りと憎悪をこめて血唾を吐いた。
そんなカズミに冷ややかな視線を送りながら、三浦は手袋を外す。

>「銃を持っているのにわざわざ近寄ってどうするんだい君は。それに頭を狙うのもナンセンスだね。見た所銃の心得も無いだろう。
> オタク臭い風貌をしている割には、抜けてるんだねえ、君」

そこまで見抜かれてしまうとは。
銃という凶器をチラつかせれば隙を見せると踏んだのだが、どうやら彼は例外の部類に入るらしい。

三浦が、取り落とした銃を拾い上げた。
最悪のパターンを予想し、焦燥にかられるカズミの思考とは裏腹に、銃を一瞥しただけで、またそれを放り捨てる。
鈍い音を立ててバウンドし、カズミの足元へ転がってきたそれは、銃の形ではなくなっていた。

「懐中、時計……?」

訳が分からず、それを拾い上げた。
黒光りするそれは、寸分の狂いもなく、規則正しく時を刻んでいる。

>「とは言え、僕が今機嫌がいいのは本当でね? 折角だからチャンスを上げるよ。
> それを拾うといい。時計の形をしているが、元は拳銃だからね。炸薬と雷管が入ってる。
> 当然時間と共に爆発するけど……それを君が持っている間は、僕は君の相手をしてあげよう。
> 君が怖気付いて時計を手放すか、手が原型を失ったらゲームオーバー。
> クリア条件は今度こそ僕の命を掌握するか……この右腕を奪い取るか、だ。
> これを無くすと面倒な事になってしまうからね。要するに君は、僕に対する交渉材料を手に入れれば勝ち、と言う訳だ」


>「さあ、ゲームをしようか?」



66 名前:カズミ ◆IPF5a04tCk [sage] 投稿日:2010/05/30(日) 03:54:24 0

悪魔の囁きが、まるでエコーを掛けたかのように歪んで聞こえてくる。
三浦の顔を一瞥し、懐中時計に視線を落とした。

両手の中で、チクタクと音を鳴らす小型時限式爆弾。
それを力強く握りしめ、カズミは手すりに体重をかけるようにして立ちあがる。

「イカレてるね、アンタ。要は、いつ爆発するかも分からない爆弾を持ったまま戦えって事だろ?
 こんなイカレたゲーム、普通なら降りるのが常識なんだろうね」
 
無数のヒビが入った分厚い眼鏡を放り捨て、更にそれを踏みにじり、細い目を更に細めて嘲笑する。
おもむろに、懐に捻じ込んでいた、最早使い物にならない上位互換を三浦の足元に投げ捨てた。

「返すよ、それ。もうその役立たずに用はないからね」

ヘッドフォンに取り付けられた小さなボタンを、指で押し当てる。
そして、ボタンがあった場所から飛び出してきた黒いコンセントコードを右腕にグルグルと巻きつけ、プラグの部分を持ち構える。

「受けて立ってやるよ、そのゲーム。なんならもっとゲームを面白くしようか」

そう言い、カズミは懐中時計に付属しているウォッチチェーンを無理矢理勢いよくひきちぎり、首に巻きつけた。
セットが崩れ、うなじを隠す程度くしゃくしゃになった髪を手で梳き、お得意の人を苛つかせるあの厭らしい笑みを深める。

「手が吹っ飛ぶよか、こっちのがスリルがあって面白そうだろう?」

チャリチャリと、首の下で爆弾が揺れる。
再度、三浦に視線を向けながら、あの猫に倣って低く身構える。

「それじゃ、始めようか」

言い終わると同時に、ギリギリまで大きく飛び上がり、三浦へと飛びかかる。
表情を愉楽に染める彼もまた、ゲームを楽しまんとする気狂いだ。


「Lady――……fight!!」


【三浦さんに攻撃開始。これは首が吹っ飛ぶかも分からんね】


67 名前:Intermission ◆IPF5a04tCk [sage] 投稿日:2010/05/30(日) 04:27:06 0

「もー!カズミ、ご飯の時間だっていってるでしょー!?」

突如、主の居ない静かな部屋の外から、怒りを含んだ女の声が木霊する。
間もなく黒光りする自動ドアが開き、白いエプロンを着けた30代から40代位の女がズカズカと無遠慮に入室してきた。

『これは八重子様。坊ちゃんに何か?』

「あらBJ、カズミが何処行ったか知らない?あの子、何度呼びかけても返事がなくて……」

どこからともなく聞こえてきた声に、当たり前のように返事をする女、八重子。
室内を見渡しカズミがいない事に気付くと、カールのかかった髪を揺らし、腰に手を当て怒りを露わにする。

「全く!昼間っから何にも言わずに外へ行っちゃうなんて!
 せめて書き置きくらいしなさいと何度言ったら分かるのかしら、あの子!?」

『あの、八重子様……これには事情が……』

姿を見せないBJが、八重子に説明をしようとしたその時。
室内にけたたましく警鐘が鳴り響き、八重子は思わずたじろいた。

『緊急事態発生、緊急事態発生』

BJの無機質な声が発する、緊急事態発生。
その言葉に我に返り、八重子は一番近くにあったパソコンを起動させ、マウスを動かす。

『電波侵害の損傷、及び【マスター】の現在地を確認』

「場所は!?」

『BKビル非常階段、近くに文明使用者を一名確認』

その言葉を確認するや否や、パソコンを抱えヘッドセットを引っ掴み、八重子は部屋を飛び出した。
エプロンを脱ぎ捨て、代わりにグレーのコートを羽織り、一目散へとガレージへ向かう。
グレーの大型乗用車へ乗り込み、パソコンを助手席へと置き、ヘッドセットを装着した。

けたたましいエンジン音と共に、車はガレージを飛び出す。

「BJ、BKビルへの最短ルートを割り出して頂戴!」

『了解、ナビゲ―ションに表示します』

向かう先は、BKビル。
八重子は、ひたすらにカズミの無事を願った。

【八重子:カズミ救出の為BKビルへ】


68 名前:前園 久和 ◇CqyD3bIn5I[sage] 投稿日:2010/05/30(日) 08:29:50 0
>「しかし五本腕ねえ。存外君が一番『遠い』ようにも見えるんだが……。
>  ふむ、『遠い』と言うよりは『ズレている』だけなのかな?
>  ともあれ、今は君に用は無い。何、殺しはしないよ。彼のお友達のようだからね」

何か、記憶が曖昧だ。
…萌芽、白衣のおっさん、肉塊?
それに聞き覚えのある声が、

「…っ、猫?」

猫は、何をしているんだ?
動きが制限されてよく見えないが俺の身体は白い何かにくるまれているらしい。
それを取り外そうとしてる?
会って間もない俺に必死になって、こいつ馬鹿か。

「……」

動ければ、こんなメーワクかけねぇのにな。

「うあ、めんどくせ」

ほら頑張れ猫、後で甘いもん買ってやるから。
…チョコとか?

69 名前:不非 希射 ◇CqyD3bIn5I[sage] 投稿日:2010/05/30(日) 08:30:36 0
>「…あれ?」

男の後を追っていると、彼はふと立ち止まる。
なんだ、到着か?
そう考える希射の目前には牢屋に囚われた少女。

ブツブツ言ってから周りを見回す男に何をするのか首を傾げる。

>「これしかないか」

呟き大剣を持った男の真意を汲み取った希射は興味深げに男と少女を見。

「ふーん」

目の前の、大剣を持って女の子を助けようとしている男の手助けでもしてやろうか。
そう思い、牢屋を盾の炎で熱す。

そうして剣を振る男を後ろから眺めていると彼は少女の鎧を脱がし始めた。

「…何?エロス展開?」

わっふるしようと構えていたのだが、彼は少女を背負い此処から出ようとする。

「脱出か?なら道案内してやるよ」

希射はなるべく警備が手薄な場所を、彼に教えるように走った。

【前園久和:バーサク中の記憶無、にゃんこにチョコを与えてはいけません】
【不非雅魅:刀持って吹っ飛ばされました、この不憫さこそが彼】
【不非希射:矛盾持っておっちゃんの道案内、エロス展開無かった残念】

70 名前:不非兄弟 ◇CqyD3bIn5I [sage] 投稿日:2010/05/30(日) 09:56:07 0
>>69の前

あいつエタフォ使ったぞ、とかぅゎょぅι゙ょっょぃ、とかそんな空気になっている警備員二人に琳樹が言葉を掛けた。

>「あ、ね、警備員さん。護衛に一人着いてきてくれない? 凍らせてでも着いてこさせる」

「あ、面白そうだし俺行く。兄貴、これ借りてくぞ!」

「えっ」

少し躊躇う雅魅の矛を奪い取り、希射は氷の階段を進む。
雅魅は手持ち無沙汰にキョロキョロ辺りを見回し、場違いさに溜め息を吐くのであった。

「とりあえず、あいつらこの刀持ってかないのかなあ」

車の中の白い刀を拾い、心配するように呟く。
勿論、この刀の持ち主と雅魅は接点は無い。

「何かこれ見てると久羽を思い出すなあ」

思い出す、と言っても死んではいない。
久羽とは彼の友人である女性だった。

だがしかし、今この状況とは関係無い訳だが。

71 名前:◆Ui8SfUmIUc [sage] 投稿日:2010/05/30(日) 12:05:05 O
「ああ、僕だ……さっきの地震は。……何?兎が救援要請?」

携帯電話を握りながら、鰊は首をかしげた。滅多にないことだ。ペリカンによると、例のフェノメノンが致命傷
を受けた、と兎が連絡してきたらしい。

「わかった、直ぐに応援を寄越すが、追加料金を取ると……別の異世界人のサルベージ?ついでに一般人の救出
も?」

やれやれ、とぼやいて、鰊は遠く離れた自分の一部を指定された箇所まで歩かせた。

「全く、ここで分身できる数が随分減ったぞ……。
この扉の中に何がいるか知らんが、どうにかできる確率は随分減ったと、そう伝えておいてくれ。
酷いもんだと」


【鰊1:尾張、兎の救出へ
鰊2:真雪の救出へ
鰊3:李の救出へ
鰊4:ミーティオの捕らえられている扉の前で待機】



72 名前:月崎真雪 ◆OryKaIyYzc [sage] 投稿日:2010/05/30(日) 13:01:15 0

足を半ば引きずり、真雪は迷宮を行く。
無理に走ったせいで血が抜け、視界が朦朧とする。
「は…あぁ、ダメだなぁ…ふらついてる場合じゃ無いのにな…」
溜め息を吐いて、脚に巻き付けたカーティガンを縛り直した。
前を見据え、また一歩踏み出す真雪。その時、地面が揺らいだ。
「きゃあ!」
受け身を取る余裕も無く、真雪は鼻から床に激突した。

「う、がぁ…あ、あ、鼻が…」
どうやら、地震が起きたらしい。
血が垂れている鼻を気にせずに顔を上げると、照明はぱつりと切れていた。
「う…わあ…何か、廊下まで変わってる…」
先程まで、真雪は坂道を登っていた筈だ(建物の中に坂道は有るのか、という問題はこの際横に置く)。
しかし地震の後、今真雪が居るところはどうやら平面らしい。
どうするべきか悩んで、やはり前に進む事にした。




(でも、進んだ所で私に何が出来るの)
前へ進みながら、血を失った頭で考える。
ただ話が聞きたかっただけで、飛峻を巻き込んで先へ進み。そして、流れ弾に当たり逃げ出した。
何も出来ない真雪が先に進んで、何が得られるというのだろう。
(どうせ、何も出来やしないのに)
足手まといになりたくない?
ならばいつもどうり、家で祖母の怒声に怯えながら震えて居れば良い。飛峻を外に出して別れて、独りで。

そうすれば、何も変わらない。
真雪の行動で、誰かが迷惑を被ることは無かった筈だ。
(本当に、そうすれば良かった)
何も出来ず護られている自分など、独りで傷付いていれば良かったのに。
「あはっ…わたし、バカじゃないの…」
そういって、真雪は鼻血を流しながら涙を零した。脚が、もう動かない。


73 名前:月崎真雪 ◆OryKaIyYzc [sage] 投稿日:2010/05/30(日) 13:01:58 0




崩れ落ちそうな真雪のその手を、掴む者が居た。確認しようと顔を上げても、目の前の暗闇でほぼ見えない。
そして、何の前触れも無く、脚の痛みが消えた。文字通り、『消えた』。
「え、え? ええ!? ちょっと、あなた…! うわっ」
急に手を引かれ、バランスを崩しながら先へ進む。
少し強引で、暖かい掌。その手は確かに期待している。真雪と、共に進む事を期待している。
自己否定と諦めと、何だか色んな理由で冷えた真雪の心を、その掌は温めた。

「ま、分身なんですけどね」
いきなり聞こえた声の持ち主は、とても納得出来る人物だった。
「―――萌芽!?」
ケラケラ笑うその人物の名を呼ぶ。振り返った、そんな気がした。
「ちょっと萌芽何したの!? 何が何だか分からないけどありがとう!」
真雪が叫んで、一瞬の間が空く。何だかおかしくなって、今度は真雪がケラケラ笑った。




見つけた扉を開けて、真雪は小さくうわ、と言った。
まず鼻に付くのが、血の臭い。鼻が曲がりそうな、戦場の臭い。
ここは照明が少しだけ点いていて、ほの暗く死体達を浮かびあがらせている。
…どうも、つい先程死んだようだ。その死体を踏まないように、真雪達は慎重に脚を進める。
「人間って、大切なモノは右に置く習性が有るのよね…」
真雪がそう呟いたのは、そのパーティー会場で目に入った奥の扉が二つ有ったからだ。
自分の言葉を信じて、真雪は右の扉を思い切り開いた。




【真雪:折角だから俺は右の扉を選ぶぜ!】

74 名前:経堂柚子 ◆OryKaIyYzc [sage] 投稿日:2010/05/30(日) 13:02:50 0



いつまでも、真雪が降りてこない。
嫌な予感がして、柚子は迷宮の中に飛び込んだ。
その中で大鎌を振る。脳内に視界に、映像を映す無数のパネル。
【視外戦術】(サウザンド・アイ)―――大鎌『死精タナトス』に宿った文明だ。
そこに映った物、それは柚子が取り乱すのには十分だった。
「ユキちゃん!」

脳内に視界に、真雪が痛みに苦しむ姿が焼き付いて焦げ付いて、離れない。



真雪の下に向かうため、死精タナトスで位置を確認する。そして柚子は、妙なモノを見つけた。
アフロ男を先導し、ウエイトレス少女に何か頼み込む少年。
彼が、真雪に接触した。柚子の瞳が、歓喜に輝く。
「凄いわ…すごいわ! ビショップ!」
方向転換。
柚子は真雪の下に向かうことを止めて、ビショップと呼んだ少年の本体へ向かうことにした。



幸いにして、ビショップはすぐ見付かった。
見知らぬ少女と共に、ルークに抱えられていた。大きなリボンなんて付けちゃって。
「あらルーク、こんにちは」
死精タナトスを携え、笑顔で手を振る。ルーク自身は一瞬、誰の事を言われたのか分からなかっただろうか。
「ルーク、大変そうね…人間を二人も抱えちゃって」
そう言いながら、ルークに近寄った。リボンと猫耳に飾られたビショップの頭を撫でる。
「私なら身体収納の力が有るから、その内一人を抱えてあげられる。
出来ればビショップが良いんだけど、その女の子でも良いわ。
どっちもダメだったら、体から腕がサヨナラする事、覚えておいて」
迷うルークにそう言って、企むように柚子は笑った。
「ビショップを渡してくれたなら、ユキちゃんのもとに連れて行ってあげる!
…どお? 悪い取引では無いでしょう?」



【柚子:リーさんに取引。ルークとかビショップと呼んでるのは単なる柚子の性格と趣味】

75 名前:佐伯 ◆b413PDNTVY [sage] 投稿日:2010/05/31(月) 00:26:54 0
「地…震?どうなってるのよ……」

ぼやき、隠れようとした時、零の無線機が突然鳴り響く。
その声の主は零がてっきりやられてしまったと思っていたゼロワンの物だった
驚く零。
だが、そんな事など知りもしないゼロワンは全く気にした風も無くこちらに現在の状況についての説明とそれに元づいた指示を出してくる。

「つまり、揺れが収まる前に都村さん達と合流しろって事ね?」

そう確認をとり、零は血戦領域を離脱する。荒海銅二の事は気になったが今はそれどころではない。
もし、ゼロワンの言っていた特性が本当ならば自分は一人だけ敵中で孤立する事になる。
故に零は荒海の生死を確認せずに合流の為に移動する事にした。それが迂闊だとしても今はそれが最善だった。

(そうよね。いくら荒海がタフだとしても流石にあれだけ大きい棚の下敷きになって無事とは思えない)

一度だけ零は振り返ると迷わずに歩き出す。揺れはますます大きくなっていた。


「ヨォ。凄ぇだろ?アレが公文に協力してる異世界人って奴サ」

薄れゆく意識の中。荒海銅二は再び発生した『暴発迷宮』の効果により制御室へと飛ばされていた。
ぼろぼろの瀕死状態の荒海だったが、その目は死んではおらず無線を使いまだ残っている部下たちに指示を出そうとした時、彼女は現れた。

「なんや、ワシを笑いに来たんかいな……」

「まさかァ。むしろアンタはあの文字通りの化け物相手に善戦したって褒めてやりたいくらいなんだゼ?」

そう嘯くその少女『木羽柄 椿』はそれを称えるように両手を広げ、荒海に近づく。

「アタシの名は木羽柄 椿。アンタにチカラを貸しに来てやったゼ」

そう言うと少女は寧悪なる貌行を顕にし、荒海の体に触れる。

「《文明開化》……!!ッてな。どうだい?最高にゴキゲンだろう?」

「なんや…と?お前さん……」

「礼はいらねェヨ?アタシもさァ……あの女には手を焼いてるんだよねェ」

突然の鎮静効果に驚きを隠せない荒海。最もその鎮静効果はかりそめの物だが、それを荒海が知るすべはない。
そして、椿は荒海に頼み。という名の実質命令を下した。

「アンタの事については調べがついてるんだ。アタシの勘じゃァサ。あの女は今の内に仕留めておいた方がイイと思うゼ」

「アンタならそれが出来る。チガウかい。荒海銅二サン? それにサこれは遥ちゃんにとってもタァイ切な問題さね」

この言葉で良い。荒海銅二は古典的ともとれるほどの仁侠屋だ。この言葉を出せばほぼ確実に落ちる。
そう椿は確信していた。

「……さよけ。確かにあの小娘は厄介さかいな」

「ダロ?じゃあ、頼んだゼ。荒海のオッサン」

そう言い残し、椿は制御室を後にする。

「そうじゃのう。あの小娘はちと厄介や。ほやけどな……それ以上にワシも極道やけぇ」

暗闇と荒海だけが同居した室内で荒海は呟く。

「極道としての顔ってもんが有るからのぅ。言われんでもそうしとるわ」

76 名前:佐伯 ◆b413PDNTVY [sage] 投稿日:2010/05/31(月) 00:28:32 0
揺れが収まり、零が目を開けるとそこは、ゼロワンや都村と分れた展望エリアだった。
それを確認し、はぐれた者が居ないかを確認したが、問題は無く。零は胸をなでおろした。

「タッチダウンってとこね」

「そうですね。荒海はどうしましたか?」

「仕留めて、は居ないのよねぇ。でも、瀕死に近いと思う。だから早く『助けにいかないと』」

その零の言葉に、都村は少しだけ視線を落としたが問題は無いと判断したのだろう。無線機で待機中の各部隊に連絡を行い始めた。

「ふぅ。これで一件落着ですね。よかったよかった!一時はどうなるかと思いましたよ」

「悪かったわね」

その零の言葉に、そこに居る何故かを知っている三人は各々リアクションをとり、それに零はすねるような仕草を見せる。

当初の計画とは大幅にずれ込んだが武装面からみてもNOVA側が有利なのは変わらない。
混乱した烏合の衆を武力制圧すればいいだけの話になったのだ……問題無い。これでまた一歩「修羅人」との差を縮める事が出来た。
そう都村は思い、空を眺めた。

「もうここに居ても意味が有りませんし、お暇しましょう」

そう告げて都村は歩を進めようとした時、最初に零が異変に気がついた。

「待って……何か聞こえない?」

それは本当に小さな音だった。実際、都村自身も気がつかなかったほどに小さな音。それがだんだんと近づいてきていた。

「どうやら、簡単には返してくれないか……」

そう呟く零の声は既にかなり大きな音になっているソレにかき消されている。

そして、

《チーン》

本来とは違い異常な電圧で使用されたエレベーターは停止時に車の急ブレーキの様な音を立て止まり、呑気な音を発した。

「『崩塔ァ撫雷』!!」

そしてドアが開いた直後に発せられたその叫び。ソレと共に床一面を走るのは紫色の雷の奔流。
それが無差別に、床を這い回り、片っ端から障害物を吹き飛ばし、蹂躙する。
たまたま立ち位置が悪かったせいか、それをもろに食らう事になった零は吹き飛び、背中を壁に強く打ちつけてしまう。
喘ぐような声で息を吐き出し、そしてせき込みながら急な加圧をされた肺の調子を整える。

「……は、なんて奴……」

「すまへんのぅ……つい、手が滑ってもうたわ。ほな、始めようかい?なぁ!?」

【状況:商業区十階で荒海に襲われる。佐伯は体力を消耗しているうえにダメージを受けており、危険な状態。
    他のPLで合流出来そうな方、荒海さんと戦闘したい方は合流をどうぞ】

【目的:A葉隠殉也と合流。
    C迷子の捜索。】

【持ち物:『重力制御』、携帯電話、現金八千円、大型自動二輪免許】

77 名前:葉隠殉也 ◆sccpZcfpDo [sage] 投稿日:2010/05/31(月) 01:22:34 0
>「さっきも言ったが、俺たちは人探しをしている。
 ここで時間を潰している暇は無い。悪いが通らせてもらうぞ。
 ……着いてくるって言うなら、それでもいい。だがな」

無言で頷き、肯定するとどうやら人探しをしているらしい
付いて来るなら構わないというが、無線で告げられた場所まで向かうかどうするか悩んでいた。
だが行くとしても最低でも子供達の親を探すか、任せられる人間に託さなければならない

だがそんな事を考えている内に地震が発生する
即座に子供達を庇おうと二人を抱えて蹲る
そして完全に収まる頃には顔を挙げ周りを確認する
先ほどとは異なる場所に来ていたどこだか検討がつかない
だが動揺などをして子供達に不安を与えてはいけない
子供達の方を向き、安全を確認しようと振り向く

「大丈夫だ、安心してくれ子供達よ怪我は…」

いない。その場に子供達の感触が会ったのだがその場には存在していなかった。
どうやらあの地震の影響で自分だけ飛ばされたらしい
子供達の事が心配だが、今は確認しようにもできない

「ここは……」

「恋っぽいことしようぜぇ?」

背後から少女の声が聞こえ、即座に振り向くが誰もいない
しかし、背後にあったのはそれは剣というにはあまりにも大きすぎた。大きく、ぶ厚く、重く、そして大雑把すぎた。それはまさに鉄塊―――
そんな荒唐無稽な大きさをした一応剣という物の原型を留めた大剣になぜか心惹かれ近づいていく。
手を伸ばし、掴める距離まで来ると両手で掴み地面から糸も簡単に引っこ抜くことに成功する。

「さすがは私が見込んだ英雄殿だな」

横から先ほどの女の声が聞こえ、また振り向くがやはり誰も居ない

「幻覚なのか…?」

とりあえずこの大きすぎる剣をどうにかできないものかと思っていた矢先
少しずつ小さくなっていき、短剣ほどのサイズまでになる

「…なんなのだこれは?それになんでこんな場所にあったのだ?」

疑問に答えてくれる声はなく、静まり返っているはずであった

「大変だ遅刻遅刻!」

短剣をしまい、声が聞こえる方向に見失わないように全力で駆ける。

【葉隠:どっかに飛ばされる→変な大剣を発見→声の主の方向に向かう】


78 名前::『予測不能』(1/2) ◇6ZgdRxmC/6[sage] 投稿日:2010/05/31(月) 02:06:33 0

「アッヒャ〜? なんか変だぞ……?」

色んなものが混ざりすぎて、もう黒にしか見えない空間で赤い道化師は呟いた。
さきほど彼女の主人があの二人の痛みの半分を請け負ってからだろうか?
自分の中に妙なものが混ざりかけているのを彼女は感じ始めていた。

「なんか、なんだこの変な感触……アタシの中に、アタシからずっと遠い『何か』が入ってくるみたいな」

言葉で表現するには、感覚そのものが微細すぎる。
しかし、それは確実になにかの”変化”だった。

「『フェノメノン』と、彼らは呼んでいたようですが」

自分以外だれもいないはずの空間に響く、少年のような声。

「アヒャ!!?」

「皮肉なものですね、”彼女”があの世界から消えて、ずっと時間が経って、
 そして”彼女”とは全然関係のないこの世界で、いままさに”彼女”が作ろうとしたものが完成しようとしている」

声に驚くストレンジベントがふと眼をやると、そこには青い毛並みの一匹の猫がいた。

「あ、アヒャ、なんだよてめー……彼女って、”博士”のこと、なんか知ってんのか?」

79 名前:『予測不能』(2/2) ◇6ZgdRxmC/6[sage] 投稿日:2010/05/31(月) 02:07:42 0

「さあて、なんのことやら」

猫はそう言って、その顔になんとも表現しようの無い表情を浮かべると、
しっぽを彼女に向けて歩き始める。

「ア、アヒャ!? まてこら、てめーなんなんだよ」

呼び止める彼女の声に、猫は相変わらず歩みを止めないまま言った

「私ですか? 私は見ての通り、ただのネコですよ。それ以外の何者でもない」

顔を半分だけストレンジベントのほうに向け、猫は続ける。

「ただ、猫の私にも言えることがあります、彼女の……”ドクトル・トールヒル”の夢は、
 いま確実にこの場所で適おうとしている。変わりつつあるあの少年の手によって」

言葉と友に、猫は黒の中へと消える。

「なんだよ……なんなんだよ、あいつ」

残された道化師は、呆然とその場に立ち尽くすしかなかった。

ダイスロール:レス時間末尾
【1以外の奇数:SWORDVENT】【奇数:ACCELVENT】   【5以外の奇数:CONFINEVENT】
【1:FINALVENT】      【6:FINNALVENT】    【5:FINALVENT】
【偶数:SHOOTVENT】   【6以外の偶数:SWINGVENT】【偶数:ACCELVENT】

80 名前:竹内 萌芽(1/4) ◇6ZgdRxmC/6[sage] 投稿日:2010/05/31(月) 02:08:22 0

「―――萌芽!?」

暗闇の中に響く彼女の声に、萌芽はふいにびくりと肩を震わせる。

(まって、落ち着きましょう僕。今この空間にいるのは僕と真雪さんだけで
 今、僕の耳には僕の名前を呼ぶ声が聞こえて、つまり今、僕の名前を呼んだのは――)

「ちょっと萌芽何したの!? 何が何だか分からないけどありがとう!」

脳内が真っ白になり、なにを話したものか迷っている少年に、彼女はおかしそうにけらけらと笑った。

「あ、えっと、あの……」

名前で呼んでくれた。今まで自分のことを「竹内」としか呼ばなかった彼女が。
これは、一応”勝利”ということでいいのかな? と萌芽は迷う。
もともと真雪との『対戦』の勝利条件は、自分を”竹内萌芽”であると認めさせることだったわけだし。
つまり、もう自分が彼女と一緒にいる理由も……

(―――ッ!!)

ふいに胸がちくりと痛むのを感じた。

「……な、なんでもないです!! 行きますよ、真雪さん!!」

彼女の手を握ったまま、萌芽は平坦な道を彼女と友に歩き始める。
なぜ自分は、もう用も無いはずの彼女と一緒にいたがるのか、そんなことを考えながら。

81 名前:竹内 萌芽(2/4) ◇6ZgdRxmC/6[sage] 投稿日:2010/05/31(月) 02:10:03 0

歩き出してしばらくたったころ、ふいに萌芽の足に一際大きい痛みが走った。

「痛ッ……あれ?」

気がつけば、真雪から請け負った怪我を除いて、足の痛みがすっかり消え去っている。

(クワくんのほうは、なんとかなったみたいですね)

やったのはあの小さなシスターか、それともアフロか、はたまたまったく別の誰かか。
とりあえず安心した萌芽は、ほっと一息ついた。

(なんで……僕は)

真雪のことといい、あの二人の怪我人を助けたことといい
まったく自分で自分が分からないことが多すぎる。

そんなことを考えていると、前方のほうに明るい空間があるのが見えた。

82 名前:竹内 萌芽(3/4) ◇6ZgdRxmC/6[sage] 投稿日:2010/05/31(月) 02:12:11 0

そこはわりかし広い空間だった。
豪華な装飾が施された壁に、高い天井。
見上げたシャンデリアに仄かに電気が灯っているのは、電源が復旧したのか、それともここだけ非常電源でもあるのか。

照らし出されるのは、無数の死体。
鼻をツンと突く鉄の匂いが、なんとも吐き気を誘う。

死体から目を背ける萌芽を置いて、真雪は死体の中を平然と歩いていく。
女の人というのはこういうことに対して対性があると聞いていたが、本当だったらしい。

「人間って、大切なモノは右に置く習性が有るのよね…」

そう言って、おもむろに右の扉をひらく彼女。

「ちょっとまってください、そっちは……!!」

あやふやにした空間に妙な”気配”を感じた萌芽は彼女を止めようとするが、一足先に彼女はその部屋に入ってしまっていた。

83 名前:竹内 萌芽(4/4) ◇6ZgdRxmC/6[sage] 投稿日:2010/05/31(月) 02:34:04 0

「な、なんです。これ……」

その部屋にいたのは、”犬”だった。ただしそのサイズが尋常ではない。
萌芽の身の丈の何倍もあるそいつは、垂れた耳をぶんぶんとふりまわし、目をらんらんと輝かせながらこちらに向かってくる。

どうしようと萌芽は思う。
分身である自分は仮にこの犬のエサになっても何の痛手もないが、真雪は違う。
それに、どうやらこの犬は真雪のほうをねらっているように見える。
まあ見た目が普通な自分より、多少肉付きのよい彼女を狙うというのは分からない道理ではない。

とりあえず真雪の前に立ち、彼女を犬から遠ざける。

どうすればいい? このサイズの生き物であろうと、自分の才能を使って空間を”めちゃくちゃ”にすれば倒すことも可能である。
しかし、この距離で空間そのものを”めちゃくちゃ”にすれば、自分の近くにいる真雪にも被害を与えかねない。

「しかたない……いきますよ、ストレンジベント」

”アヒャ”

なんだか元気のない彼女の声と友に、萌芽の目の前の空間が赤く燃え上がりカードが現れる。
現れたカードは、三枚。

「元気がないわりには調子いいみたいじゃないですかストレ、さあ、行きますよ」

正直片腕がなく、片足に怪我を負った状態でまともに戦うことができるとも思えないが、
それでも自分が囮になって真雪を逃がすことくらいならできるかもしれない。

萌芽は床に落ちた三枚のカードを拾い上げ、犬を睨みつけた。

ターン終了:
【部屋の奥に扉が見えるよ】

84 名前:木羽塚 ◆AdZFt8/Ick [sage] 投稿日:2010/05/31(月) 14:43:41 0
『よかったんですか? ヤクザに協力なんてして』

「問題ネェだろ、こっちの所属は明かしてネェし」

携帯電話を片手に、髪の毛を靡かせながら、木羽塚はかつかつと歩みを進めていた。

「あのオッサンが佐伯を消してくれンなら万々歳なんだヨ、恩も売れルしな」

『そうそう上手く事が運ぶとも思いませんが……』

電話の向こうの声は何かを懸念している様子だったが、けらけらと笑って言葉を返す。

「ヤクザは義理人情に厚いんだロォ? 世の中ギブ&テイクだ、それこぞタダで協力してやる義理はネェヨ」

まぁ、生き残れたらだけどナ、と付け加えて。

「今、公文が動いてるこのタイミングはチャンスなんだヨ、ある程度戦力を突っ込んだ連中ガヤクザ如きにボコボコにされたラ上の連中も黙ってネーだろ」

『つまり……』

「この騒ぎが大きけリャ大きい程、進研が漬け込む隙ができンだヨ、無血開城シテ文明が手に入れば手に入る程アリガテーんだからナ」

かつん、と少女のブーツの踵が立てる足音が止まる。
何かがはじける様な音は、聞きなれた――銃声だった。
椿の手にあった携帯電話を弾いて、その手から落とす。

「テメェ……なにしとんじゃコラ……」

騒ぎの中で、まだ幸運にも生き延びていた連中の一人だろう。
全身に多少の傷が見られるが、両腕で銃を構える程度の力は残っているようだった。

「ガタガタ訳わかんねぇ状態になってよぉ……親父の手伝い行こうとしたらテメェ、親父に何をした!? 俺らに何させるつもりだ!? アァ!?」

「……どーすんダ、これ」

その叫びを意に介さず、木羽塚は打ち抜かれ、画面に穴のあいた携帯電話を持ち上げた。

「オイオイオイオイ、機種変したバッカなんだぞコレ……朝一で並んで買いに行ったのにヨォ……銃で壊されたら保険も保障も利かネェダロ……」

「…………っ!」

自分が視界に入っていない。
その事実と質問に答えない二つの理由が、ヤクザにまた引き金を引く後押しをした。
破裂音と共に、銃弾が木羽塚の眉間へと吸い込まれて行く。
中身の入ったスイカを硬い地面に落とした様な音が、響いた。

顔の上半分が消滅し、桃色の細胞が血液と共に床にぶちまけられる。
あまりに当然の結果に、撃った側がちっ、と舌打ちをした。

「けっ、後味悪ぃ……」

さすがに、ぱっと見だけなら女子中学生の少女だ。
何かをしようとしていたのは間違いなかったが、殺すのは早計だったか。
だが今は非常事態だし、余計なことに気を配ってる時間はない。
早く先へ進もう、とヤクザが銃を構えなおした直後だった。

85 名前:木羽塚 ◆AdZFt8/Ick [sage] 投稿日:2010/05/31(月) 14:44:47 0
「っテェだろオイ」

むく、と木羽塚が起き上がった。
負傷はどこにもない、若い肌がそのまま、打たれる前の状態へと戻っている。

「いきなり撃つか普通、やっぱヤクザは駄目か、下っ端の思慮がタンネェ」

「アァ!?」

何の《文明》の効果か、銃弾で貫かれても無傷。
ヤクザが次にとった行動は、合理的と言えた。
彼が構えている拳銃、それを握る手に仕込まれている文明を起動した。
最初の攻撃で文明を使わなかったのは、使用者自身に来る反動が大きい、というのもあるが、牽制の役目もあったからだ。
今目の前にいるのは紛れもない敵であり、一切の加減をするべきではない。
手にした武器に破壊力を付与し、触れたものを塵に変える文明、《霧散-ディスアペア-》を拳銃に注ぎ込む。

「消えろやコラァ!」

再び引かれた引き金は、先ほどと同じく一直線に木羽塚の顔に向かって突き進む。

「あぁ、そりゃダメだ、アタシ相手ならさっきの方が正解ダッタヨ」

果たして銃弾は、木羽塚の皮膚に触れた瞬間、消滅した。

「アタシにゃ生半可な文明はきかねーンだヨ、やるなら直接殴る、あるのみなんダけどヨォ」

気がつけば、少女はヤクザの体に触れていた。

「ちっと、遅かったナァ?」

《文明開化》が起動した。

「いっぎ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

文明が急激な進化をはじめ、適合していた肉体と剥離を始める。
否、性質が変化し始め、適合しなくなっていく、のだ。

「テメェが生き延びたらまた会おうゼ? アタシを殺してくれるナラ喜んで行ってやるからサァ」

それだけを告げると、悶えるヤクザにはもう目をくれず、踵を返して歩みを進める。

「予備があってよかったゼ、おい、聞こえるか?」

スカートのポケットから、折りたたみ型の携帯電話を取り出す。

「アア、悪ィ悪ィ、ちょっとゴタゴタしてヨ、マァやることは終わったからヨ、戻って打ち合わせといこうヤ」

電話の向こうから、言葉が返ってくる。
それに対して、椿は一言二言返し、そして通話を切った。

「……ふん、どちらがより文明を管理すべき存在か、ネェ」

進研が公文に仕掛けようとしているクーデター。
彼らが掲げる大義名分を、他人事のように呟いてから、にやりと笑う。

「テメェら何かにくれてヤルかヨ、イデアも文明も異世界人も何もかも、全部アタシのモンだ」

【クーデター作戦着々と進行中】
【木羽塚、BLビル脱出】


86 名前:木羽塚 ◆AdZFt8/Ick [sage] 投稿日:2010/05/31(月) 14:45:29 0
名前:木羽柄・椿(-きばつか・つばき)
職業:カヴァー:中学生/ワークス:『進研』幹部
元の世界:「この」世界。
性別:女
年齢:14歳
身長:156cm
体重:外見軽そう。
性格:常にニヤニヤと笑っている、悪魔的少女。基本残酷。
外見:長い黒髪に紺色のベスト、赤と緑のチェックスカート。そしてギラギラと光る赤い瞳。
行動指針:自分の《文明開化》を機能停止に出来るような《文明》、及びイデアの確保、進研に所属し公文へのクーデターを目論んでいるのも一貫してその為。
特殊能力:《文明開化》
椿の右手に仕込まれている、情報干渉系文明。
他の文明に干渉し、《開花》と呼ばれる情報を付与する。
《開花》影響下の文明はすさまじい速度で文明が《発展》、あるいは《進化》を行う。

《発展しすぎた文明はいずれ崩壊する》、または《人の手では扱いきれなくなる》という前提情報を基準に成立している能力である。
その為、急激な能力の上昇の代価として、近い将来に《文明開化》を受けた文明は滅んでしまうか、適合者の出なくなるロストテクノロジーと化す。
仮に内臓器官に文明を仕込んでいた場合、その内臓器官ごと肉体に適合しなくなってしまったり滅んだりするので大変危険。
また一度変化を始めた文明は、終了するまで拡散しなくなる。

保有者は《文明開化》より下位の、ありとあらゆる《文明》に干渉されなくなる。

:《黄泉還り-フェニックス-》
『死にたくても死ねない』椿個人の謎能力。
《文明》による攻撃では無効化される。

椿は自らが死ぬ為に、《文明開化》で目覚めた文明で《文明開化》を突破して《黄泉還り》を無効化できる文明を探している。


備考:「進捗技術提供及び研究支援団体」、通称進研の幹部にして内部組織の過激派、通称《ゼミ》の一員。
《文明開化》は既に相当数の人間に使用した模様。

注釈:NPCっていうぐらいだから都合よく使っていいと思うよ。
   雑魚キャラのパワーアップ、俺TUEEEEE等にお使いください。


87 名前:ミーティオ ◆BR8k8yVhqg [sage] 投稿日:2010/05/31(月) 20:35:02 0
「ハルカ。これよぉ、食っちまっていいのか?」

 冷蔵庫の中を指差し、ミーティオはソファに座る白い少年に訊いた。

「どれを指差してるの? まさか全部って意味じゃないよね……? まあ、好きにするといいよ」

 保存食もたくさんあるから、と遥はやわらかく微笑む。
 顔がほとんど同じではあるが、ミーティオには到底真似することのできない、気品のある笑みだった。
 許しをもらったミーティオはごそごそと食品を漁り始める。どれも今まで見たこともない高級品である。


「よぉ、お前、ハルカよ。お前はなんでこの部屋に閉じ込められてるわけ?」

 アイスクリームを舐め、不可解な頭痛に悶え苦しみながら、ミーティオは訊いた。

「言わなかったっけ。お父様が過保護なんだって」

「そのオトウサマとやらはどこにいやがんだよ。過保護なわりにゃ顔も見せねえじゃねえか」

「忙しいからね」

 一瞬だけ遠い目をして、遥は訥々と語り始めた。

「僕の父親は成川創世といって、成龍組の組長なんだ。ちなみに例の荒海は副組長だよ。
 今現在、この成龍組がここまで強くあれるのは、お父様の手腕に依るところが大きいって言われてる」

「はあん。要するにカラスの群れで一際でけえカラスか」

「そうそう。で、僕はそのカラスにとってのたった一羽の雛ってわけ……、いい例えだね。
 で、僕が生まれると同時に、お母様は死んでしまった。僕が助かったのさえ奇跡らしい」

「よくある話だな。あたしは両親の顔さえ知らねーからあたしの勝ちだ」

「勝ち負けを競うものじゃないでしょ?」

 苦笑。

「で、お母様を溺愛しちゃってたお父様は、ちょっとばかりおかしくなっちゃったんだね。
 組長としてはまだ若かったし、その頃の部下はさぞかし大変だっただろうねえ」

「おかしくなった? はっはぁ、亡き妻の面影を追い求めちゃうってか」

「そのとおり。そうして哀れな成川創世は、何を思ったか、一人息子を娘として育てることにしたとさ」

「はっ?」

 脈絡がない、とミーティオは思ったが、口にするのは止めた。
 狂ってしまった人間がすることなど、狂ってない人間が推し量れるものではないのだ。

「おそらくお父様の中では、僕は女の子だと認識されているんだろうね。お母様に似てるからかな」

88 名前:ミーティオ ◆BR8k8yVhqg [sage] 投稿日:2010/05/31(月) 20:38:24 0
「それ、嫌じゃねえのか?」

「仕方ないでしょう。僕が嫌がって男として生きれば、お父様はきっとまた心の均衡を崩す。
 成龍組は成川創世あっての成龍組なんだよ。僕のワガママで構成員やその家族を苦しめてはいけない」

「あー、……そういう気持ちはあたしにはわからねえな」

 自己犠牲。それはミーティオの性格からほど遠い言葉だ。

「だから僕は『お嬢さん』と呼ばれ、女として学校に通い、そしてお父様を安心させているんだ。
 はしゃぎすぎるとこうやって軟禁されるけどね……それを除けば、おおむね苦労事の少ない人生だよ」

「ふーん。そりゃ良かった。幸せそうで何よりだ」

「……ここまで聞かせて、その感想だとは思わなかったな」

「この部屋を見た限りじゃ、マジに恵まれた生活送ってんだろーよ。幸せじゃねえか。何が不満なんだよ。
 あたしの生きてきた18年とじゃ比べもんにならねーくらい幸せそのものだっつーの」

 興味を失ったかのように、ミーティオは勢いよく立ち上がり、開かない扉の前まで歩いていく。

「とりあえずあたしはここから出てーんだ。そしてタチバナを――」

 ――殺す、とは口にしない。

>>6

 しんと静まり返っている部屋の中、その音は聞こえてきた。
 初めは小さく――空耳かと思う程度に、小さく。しかし、やがて大きく、耳朶を震わせる。

 コツ、コツ、と。それは、明らかに扉をノックする音だった。

「おい! 誰かいんのか!? 開けろ!」

 ミーティオは力任せに鉄扉を叩く。しかし不思議なことに、その後ノックの音は止んでしまった。
 その様子を見た遥は首をかしげ、小さく呟いた。

「……おかしいな、ここに誰かが来れるはずは……荒海は何をやっているんだろう?」


【時間が追いつきました。以降、誰からの接触でも受けられます】


89 名前:テナード ◆IPF5a04tCk [sage] 投稿日:2010/06/01(火) 00:42:04 0

上段に構えたサバイバルナイフ。それを両手で握りしめ、緩急をつけて一気に振り降ろす。
だが、色白男を拘束するそれが破壊される事は無く、固い物質同士がぶつかり合う甲高い音が響くだけという結果に終わった。

刃の部分がボロボロになったそれを、怒りを込めて投げ捨てる。
俺はいよいよもって、頭を抱えるしかなくなった。

「ッだぁあああクッソォオ!ナイフで切れないなんてどんだけ固い物質だよ!!」

ファック!と悪態を漏らし、壁を殴りつけたりナイフを蹴飛ばしたり地団太を踏んだりと、やり場のない怒りをぶつける様は正に子供。
恐らく、寝転がったままの色白男も飽きれている事だろう。いい歳こいて何やってんだか、と。

自分でも馬鹿らしくなり、寝転がったままの色白男に向かい合うように、どっかりと座り込む。
あぐらをかいた膝に肘をつき、深く溜息をついた。頭上の耳が所在なさげに垂れ下がる。
嗚呼情けない。俺もうすぐ39だよな?こんなんで大丈夫なんだろうか。

気を取り直して。

さて、これからどうするかと思考を巡らせる。
色白男は発見する事は出来た。今度はカズミやリンキ、それにリッカとも合流せねばなるまい。

先程の地震を体験した後、俺は一人で見知らぬ場所である此処へと飛ばされた。
ならば、他の連中もバラバラになった可能性もなきにしもあらずだ。

ズボンの尻ポケットから、リッカから貰った十字架を取り出す。
淡い緑の光を放っていたそれは、色白男の治癒を終えた瞬間に黒ずんでひび割れてしまっていた。
彼女に何と言い訳しよう。きっと怒るに違いない。

リンキやカズミはともかく、心配なのはあの少女の事だった。
もし、あの男とまだ戦闘を繰り広げているのだとしたら、非常にマズいのではないか。
彼女は自分の命を救ってくれたし、ここで見捨てていくのは良心が痛む。


『迷ったら動け。突破口は必ず見つかるもの』


ふと、昔、元上司に言われた言葉を思い出した。
そうだ、迷った時は行動あるのみ。うだうだ考えていても仕方がない。

……だが、予期せぬ方向で、俺達は強制的に行動せざるを得なくなってしまった。
何故ならば。

『居たぞ、侵入者だ!』
『捕まえろおお!』

「……嘘ぉ」

背後から、物騒な得物を手にした強面の面々が、自分達を捕縛せんと追い掛けてきたのだから。


90 名前:テナード ◆IPF5a04tCk [sage] 投稿日:2010/06/01(火) 00:44:15 0

人数は、あの場所で襲いかかってきた珍妙集団の倍はいそうな人数。
よく見れば、中にはあの珍妙集団によく似た格好の男達も紛れ込んでいる。もしかしたら本人達かもしれない。

「糞ッ!」

いくら相手が雑魚とはいえ、まともに戦ったところで、数で袋叩きにされるのがオチなのは目に見えている。
ならば、打つ手はたった一つしかない。

動けない色白男の背面から腕を回して胴を掴むと共に、膝の下に差し入れた腕で足を支え、持ち上げる。
所謂「お姫様だっこ」というやつである。野郎同士という絵面的に苦しいものがあるが、そこは勘弁願いたい。


「舌ァ噛まねえように――……気をつけな!」

色白男への忠告もそこそこに、跳躍の応用で足に力をこめ、一気に駆け出す。
いとも容易く集団を引き離す事に成功はしたものの、集団ははしつこく追い掛けてくる。

銃弾がギリギリテナードの脇を逸れたり、足を逸れて床に着弾したりと、集団はそれほど銃の扱いに慣れていないようだ。
この分ならギリギリ撒けるだろうか。
背後の野次や罵倒を撒き散らす集団を一瞥しつつも、角を曲がった瞬間。

「!!」

突然視界に現れた、誰かの腕。
咄嗟の事に俺は足のブレーキをかけられず、そのままその腕に捕まえられてしまった。

「うおおッ!?」

腕は、まるで俺を人形のように軽々と放り投げる。
両腕がふさがったままの俺は、勢いよく壁に叩きつけられる事となった。

「あでッ!?」

ゴン、とかガン、とか、そんな感じの音が頭蓋骨に響いた。そのまま床に尻餅をつき、色白男も俺の膝の上に収まる。
鈍痛が、体全体に広がる。丁度、タクシーの中でぶつけた時と同じ所を打ちつけたらしい。物凄く痛い。
後頭部を押さえて呻いている中、男達の会話が耳にいやでも入って来る。

『クソ、何処行きやがった!?』
『探せ探せ!!ぶっ殺してやるぇ!』

ドタバタと騒がしい足音が、段々と俺達の居る場所から遠のいていく。……どうやら、助かったらしい。先程の腕のお陰というべきか。
俺達が放り込まれたのは、服やら道具やらが散乱し、ロッカーが立ち並ぶ場所だった。
部屋を見渡すと、頭上にプレートのようなものがかかっているのが見えた。

『ROKKAR RUUMU』

「……まさかこれ、ロッカールームの間違いじゃあないだろうな……」

くだらない事にツッコミを入れていると、視界の隅に人影が入った。
恐らく、先程の腕の主だろう。礼を言おうと顔を上げて、思考がフリーズした。

腕の主は、リッカと戦闘していた筈の、現在全裸の皮ジャン変態野郎だった。



91 名前:テナード ◆IPF5a04tCk [sage] 投稿日:2010/06/01(火) 00:45:29 0

「ななななな、何でお前がここに居るんだ!リッカはどうした?というか服もどうした!?」

予想外の登場に思わず後退し(これ以上後ずさりも出来る筈はないので壁に背中を預ける形となるが)、側にあった拳銃を掴んで銃口を向ける。
だが、銃は不良品だったらしく、引き金を引いても反応を起こさない。
代わりに、軋むような嫌な音を立てて、真っ二つに割れてしまった。

俺の慌てぶりに特別リアクションを起こす訳でもなく、淡々と全裸男は返事を返す。

自分の名前は101型で、とある目的があってここへ来た事。
リッカとの戦闘の回避を最優先し、敵前逃亡したこと。
その後、あの集団達に追われ、ここに隠れ潜んでいたこと。
異世界人である俺に協力を求めようとし、ここに引きこんだこと。

因みに、皮ジャンは逃げる途中で破けてしまったとの事だった。
散乱している服は、どうやら新しい服を試着しようとした痕跡だろう。裂けてしまっている服もある。

「……成程な、よく分かった」

色白男は膝の上のまま、俺はコートを脱ぎ、黒のタンクトップとズボンという姿になる。
それを丸めて、全裸男……もとい、101型の顔へと投げつけてやった。見事ヒット。

「新しい服が見つかるまでは、それを貸してやる。その代わり!」

ビシリ!と人差し指を天井へと向け、一言。

「俺の言う事はきちんと聞く事、いいな?」

101型はこくりと頷くと、黙々と俺のコートを着用した。
どうやらサイズは合っていたようだ。コートは101型を膝のあたりまで覆い隠していた。

「……よし、誰もいないな。行くぞ」

色白男を抱え直し、部屋の外へ飛び出そうとした時、101型の無機質な声に呼びとめられた。

「何だ?」

何事かと振り返った瞬間、101型の右手が、色白男を拘束していた白い物めがけて一閃。
あれほどビクともしなかったそれは、まるで糸のようにするりと落ち、床に散乱した。

茫然とする俺に、101型が早く行こうと俺を促す。
呆気にとられながらも、色白男を地面へと降ろし、先を急いだ。


92 名前:テナード ◆IPF5a04tCk [sage] 投稿日:2010/06/01(火) 00:46:19 0

『いたぞ、アイツ等だ!』
『捕まえろ、さもなくば殺せえッ!』

「捕まえると殺すって矛盾してねーか…ッとお!」

どうやって嗅ぎつけるのか、男達はしつこく俺達を追い掛けてくる。
今度の奴らは飛び道具こそ使ってこないものの、数が多すぎる。まるで蟻か蜂だ。キリがない。

「チッ、しつけー男は嫌われるのは、どの世界でも共通なんだな、ッオラア!」

影から飛び出してくる者、待ち構えている者、何人かで固まって飛びかかって来る者。
それらを全て殴り倒し蹴り倒し、または持参していた銃で動きを止める等して、先へと進む。


追っ手が見えなくなった頃、ようやく俺たちは走るスピードを緩めた。
この分なら、大分引き離しただろう。息切れ一つしない101型に目を丸くしながらも、歩くのは止めない。

コーナーに差し掛かろうとしたところで、俺は一旦足を止め、後ろの二人に腕でストップを掛けた。
人の気配を感じた。もしかしたら、先程の集団の仲間かもしれない。
もしも、コーナーの裏に敵が潜んでいた場合、襲われたらひとたまりもない。

弾の残りを確認し、足音を立てぬようゆっくりとにじり寄る。
そして、銃を構え、一気に踊り出、叫んだ。

「手を上げろ!さもなくば撃つ!」


【ダイスロール:次レス末尾番号】
【4.9:八重子に接触】【0.4以外の偶数:訛祢琳樹と合流】【9以外の奇数:不非(兄)と遭遇】【0:佐伯、荒海と接触】



93 名前:テナード ◆IPF5a04tCk [sage] 投稿日:2010/06/01(火) 00:47:49 0
【9以外の奇数:不非(兄)と遭遇】


コーナーの向こうに居たのは、若干涙目になりながら両腕を上げる青髪の男だった。
記憶を遡り、先程俺達に勝負を仕掛け、リッカに牽制されていた警備員だという事を思い出す。

色白男が、警備員を見て驚いていた。
知り合いなのだろうか。だが、ここで立ち往生している訳にもいかない。

そう遠くない場所で、追手達の怒号が聞こえてきた。グズグズしてはいられない。
だが、こんな派手な格好だ。すぐに追いかけっこが再開してしまうだろう。

焦る俺の視界の隅に、一つのドアが目に入った。
警備員に尋ねると、どうやら仕入れた服や従業員、警備員の制服などを収納しておく倉庫らしい。

声はすぐそこまで迫っている。
その時、俺にとある作戦が浮かんだ。



「おい色白、101、警備員……俺に名案がある。耳を貸せ」


『隠れても無駄だぞ、侵入者め!諦めて出てこ……あ?』

わめき散らしながらコーナーを曲がった一人のサングラスを掛けた男を待ち構えていたのは、警備員三人と、一人の少女だった。
警備員の一人は見覚えのあるアルバイト、一人は深く帽子を被り、一人はサングラスを掛けているので顔はよく分からない。
少女は女子高生位だろうか。体格が分からない位のぶかぶかの服を着、帽子を被り、大きな鞄を所持している。


94 名前:テナード ◆IPF5a04tCk [sage] 投稿日:2010/06/01(火) 00:49:25 0
『何け、警備員さんか。脅かさんとって下さい…その女の子は?』
「すみませんねー。この子は迷子になっていたところを、ついさっき保護したのですよ。
 今から親御さんの元へ送るつもりです」

男はまじまじと、二人の警備員と少女を見つめ続ける。
警備員の一人は笑顔を貼り付け、もう一人は無表情のまま。少女は俯き続けているので、表情は窺えない。
サングラス男が耳にした侵入者の情報とは、一致していない。
暫く疑り深そうに観察を続けていた男は、ゆっくりと言葉を吐きだした。


『……そうけ、いきなり物騒なもん向けてすまんかったの。お勤め御苦労さん、不審者に気ぃつけろよ』
「いえいえ」

もと来た道を引き返し、男がコーナーを曲がって完全に姿を消す。
笑顔を貼り続けていた警備員の一人は、男がいなくなったのを確認すると、一気にその緊張を解いた。

「………ブハァ―――ッ!あー心臓止まるかと思ったー!」

制服の帽子を脱いだ、テナードの額から大量の冷や汗が流れ落ちる。
サングラスを付けていた警備員は、101型。残る少女は、色白男だ。

「変装作戦、成功だな。思ったよりこんなに上手くいくとは思わなかったが」

相手が馬鹿だったのが幸いしたか、と苦笑いするテナード。
深く帽子を被り直し、テナードは銃を構えた。

「このまま紛れて、カズミ達を探そう。
 警備員さん、案内してくれるよな?」

【テナード:警備員に変装、このまま逃走を続行】
【モノ男さんは服装は自由ですが、女と分かり、尚且つ体型が分からない格好をしておいてください】
【服や持ち物はモノ男さんが所持している鞄に入っています】

≪能力:文明消失≫
テナードの右の義手のみに宿る能力。文明ではない。      
テナードの感情が一際強い時に文明に触れると、文明が媒体から抜け出し、霧散する。
また、文明の媒体は何らかの異常をきたす。
テナード自身はこの能力に全く気付いていない。

95 名前:◆Ui8SfUmIUc [sage] 投稿日:2010/06/02(水) 23:12:34 O
【鰊1】

鰊がそこにたどり着いたとき、彼は幽かな不安を覚えた。兎と面と向かってあったのは、ずいぶん久しぶりだっ
た。彼にとって彼女は単なる友人であり、羽振りのいい依頼人であり、気違いと言う意味での同類だった。

「やあ」

鰊が声を掛けると、兎はひどく弱々しく彼をを見た。彼女の羽織る白衣は血まみれで、既に黒ずんでいた。伏せ
られた目は深い悲しみに沈んでいた。
ああ、と鰊は内心舌打ちをした。確かにこいつはこう言う奴だった。こいつの仕草はいつも誰かを思い起こさせ
る。大抵はいなくなった奴の事を―――或いはその理想を―――忌々しいほど完璧に押し付けてくる。

「……電話で話した時とは随分性格が違うな」

兎は答えない。ただ膝に乗せた、気を失った尾張の頭を大切そうに抱き寄せる。
物静かな性格の人。最初からそう言う性格なのだと、勘違いしてしまいそうになる。もちろんそんなことはない
のだが。
鰊は強くため息をついた。

「運ぶぞ、貸せ」

三人に分裂し、鰊は分担して尾張を持ち上げた。右腕が綺麗に切り取られている。何故だか出血はない。皮と脂
肪と筋肉が、美しく層を描いている。
後ろで兎が立ち上がったのを確かめてから、彼は尾張を運び始めた。


96 名前:◆Ui8SfUmIUc [sage] 投稿日:2010/06/02(水) 23:13:59 O
【鰊3】

「おい、そこの少年」

鰊はすれ違った、凄まじい勢いで(何故か人を抱えたまま)階段を駆け上がる少年を呼び止めた。

「君がひょっとして李……なんとかくん?」

返ってきた肯定の言葉に頷き、鰊は持っていたメモを彼に渡した。

「これは兎の電話番号だ。
で、彼女から伝言がある。よく聞けよ。一度しか言わない。

『四時に屋上で落ち合いましょう。
叶わなかったとき用に電話番号を教えておきます』

だ、そうだ。別に信用しなくてもいい。料金の発生しない仕事はいい加減にやるに限るからな」

半ば押し付けるようにメモを李に渡した鰊は、やれやれと首を振って、懐から銃を取りだした。

「じゃあ、幸運を祈るよ少年。またどこかで会おう」

驚く李を無視して、彼は銃を口にくわえ、躊躇なく引き金を引いた。


【鰊1:尾張、兎を回収
鰊3:死亡】

97 名前:宗方丈乃助 ◆d2gmSQdEY6 [sage] 投稿日:2010/06/03(木) 02:17:52 0
「おわっ!!なんなんすか!?」

走っていた俺、宗方丈乃助は突然の揺れに驚いているッス。
何か、色んなことが起き過ぎて頭の中まで蒸れて来たッス。
地震はやがて収まり、何とか自身を取り戻した俺は周囲の様子が変わった事に
再び驚いちまった。
まるで俺が瞬間移動したみてぇに別の風景が広がってる。

「あれ?おっかしーな。こんなとこに扉あったっけ。……んぉ!?」

突然向こう側から開いた扉に顔面を打ち付け悶絶する俺。
鼻の中から血の匂いがするから、鼻血が出たかと思ったけどそんな事はなかったぜ!

>萌芽は床に落ちた三枚のカードを拾い上げ、犬を睨みつけた。

「おめーは……」

犬に襲われている2人の男女がいる。
どうやら、俺を呼んでいたのはこの男の方だったらしいッス。
「随分と深い傷負ってるみたいッスねー。で、あんたが俺を呼んだわけッスね。

空中に浮かぶ男の分身を指差し、男の下へ向かう。

「あれ、あんたの飼い犬ってわけじゃなさそーッスね。
女の子の前でいいとこ見せたいっては分かるッスけど……あんま無理は
よくないッスよ。昨日は悪い奴だと思ったけど、あんたいいとこあんじゃねーッスか。
グッと来たぜ…!”クレイジー・プラチナム!!”」

【萌芽の傷をクレイジープラチナムで治癒、犬と戦闘開始】


98 名前:李飛峻 ◆nRqo9c/.Kg [sage] 投稿日:2010/06/03(木) 02:29:17 0
背中に少女、片腕に萌芽を抱え、飛峻は階段を数段飛ばしで駆け上っていた。
子供とはいえ二人分の重量を抱えているとは到底思えぬほどの速度だが、運搬されている両者からしたら最悪の乗り心地だろう。

「おい、そこの少年」

ショッピングフロアを踏破した辺りでふいに呼び止められる。

「……それハ、俺のことカ?少年」

辺りを見回すが飛峻と呼び止めた青年以外、他に人は見当たらない。

「君がひょっとして李……なんとかくん?」

「……飛峻ダ」

現段階でこの青年が敵か味方かはわからないが、さすがに名前を「なんとか」で覚えられるのは癪なので肯定と訂正で応じる。
こちらの返答に青年は面倒くさそうな顔をすると、手にしたメモを押し付けてきた。

「これは兎の電話番号だ。
で、彼女から伝言がある。よく聞けよ。一度しか言わない。

『四時に屋上で落ち合いましょう。
叶わなかったとき用に電話番号を教えておきます』

だ、そうだ。別に信用しなくてもいい。料金の発生しない仕事はいい加減にやるに限るからな」

青年は変わらず面倒くさそうな顔のまま言い終える。
しかし、その直後に取った行動は飛峻を驚愕させるのに十分過ぎた。

「あア、わかった――って何をする気ダッ!?」

いつの間にか取り出した拳銃を口に咥え、そうするのが当然とでもいうように引き金を引く。

――パンッ

と、乾いた音が響き、同時に青年の頭部が爆ぜた。

99 名前:李飛峻 ◆nRqo9c/.Kg [sage] 投稿日:2010/06/03(木) 02:32:34 0
「アー……クソッ!夢に出るだろうガッ!!」

飛峻は憤慨しながら相も変わらず階段を駆けていた。
怒りの矛先は先ほど遭った青年。
強制的に人の頭部が破裂する瞬間を見せられたのだ。
しかもそれが飛び散り方から内容物までやたらリアルなくせに、最後は霞の如く消えうせるのだから余計に性質が悪い。

「あらルーク、こんにちは」

そんな飛峻の内心を知ってか知らずか、場違いなまでに明るい声が飛峻を呼び止めた。

「……それハ、俺のことカ?ユズコ」

さっきもこんな遣り取りをしたような気がするが、連鎖的にイヤなものまで浮かんでくるので飛峻は考えるのを放棄することにした。
声の主は経堂柚子。忘れるはずが無い。
出会って最初の出来事が体内から血濡れの大鎌を取り出した彼女がヤクザ達をなで斬りにする、という強烈極まりない代物だったのだから。

「ルーク、大変そうね…人間を二人も抱えちゃって」

片手に件の大鎌を持ったまま、柚子が萌芽の頭を優しく撫でる。
それに伴い頭部にマウントされた髪の色と同色の猫耳と、異様にでかいリボンがぴょこぴょこ揺れた。

(しかし何故ルーク……ああ!アレのことか)

「ところでユズコ。
はっきりさせておきたいのだガ、内功や勁力とフォースは全然違――」

「私なら身体収納の力が有るから、その内一人を抱えてあげられる。
出来ればビショップが良いんだけど、その女の子でも良いわ。
どっちもダメだったら、体から腕がサヨナラする事、覚えておいて」

(そっちだったか!!)

ルークにビショップとくれば、いかな飛峻とてさすがに解る。

(しかし……今さらっととんでもないことを口にしなかったか)

しかも身体収納ということは、取り出す際に彼女が手にする大鎌と同じ状況で出てくるということではないだろうか。
そうであれば目が覚めたときは誰とも知れない者の血で塗れている。
一生モノのトラウマになる気がしてならない。

「ビショップを渡してくれたなら、ユキちゃんのもとに連れて行ってあげる!
…どお? 悪い取引では無いでしょう?」

「是非も無イ」

どちらか、と問われれば迷うまでも無く答えは決まっていた。
飛峻は躊躇せず萌芽を差し出す。
そして柚子が受け取ったその時、二人の頭上、展望フロアから雷にも似た爆発音が鳴り響いた。

100 名前:名無しになりきれ[age] 投稿日:2010/06/03(木) 10:01:13 0
100。良スレですね。繁栄を願います。

101 名前:前園 久和 ◆KLeaErDHmGCM [sage] 投稿日:2010/06/03(木) 18:51:56 O
>『居たぞ、侵入者だ!』
>『捕まえろおお!』

元気なヤクザさん方だな、等と久和が脳の片隅で考えている間に、テナードは彼を所謂お姫様抱っこと呼ばれる体勢で抱き抱える。

「…うわ」

男同士でこれはないだろう、という様な表情を見せた久和の耳に入った言葉はこれである。

>「舌ァ噛まねえように――……気をつけな!」

その言葉通りに、彼は歯を噛み締めテナードの走りに備える。
拘束された状態でお姫様抱っこされ、そして歯を噛み締めている彼は端から見れば間抜けだろうか。

あくまで拘束されているので、自分や自分を運んでいる相手の状態が見えず暇をもてあまし目を瞑っていた久和に、突然壁にぶつかったような衝撃が訪れた。
うお、だとか何とか言うテナードの声に目を開けるとそこには全裸の男と、服の入ったロッカーが並んでいた。
だが久和の視線はロッカーではなく、やはり全裸の男に向かう。

彼はへ、変態だー、と声にならない叫びを心中でしたところで全裸野郎(仮名)から目を背ける為にまた目を瞑ることにした。
…したのであるが、話はしっかりと聞こえてくる訳で、嫌でも久和は現状を把握する事になった。

「(全裸やろ、何?何だっけ?全裸型?全裸101?)」

まだ名前は把握していないらしいが、あの全裸男が人間でない事が分かったのと、服を着たことにより少し警戒を解く。
ただし彼が不審者であった事に変わりは無く少しの用心はしているが。

>色白男を抱え直し、部屋の外へ飛び出そうとした時、101型の無機質な声に呼びとめられた。
>「何だ?」
>何事かと振り返った瞬間、101型の右手が、色白男を拘束していた白い物めがけて一閃。
>あれほどビクともしなかったそれは、まるで糸のようにするりと落ち、床に散乱した。

「…すげ」

101型の行動に呆然としていたテナードに地面へ降ろされた彼は、腕や足を確認するように動かしてから少し遅れて二人の後を追って走っていく。
するとヤクザであろう男達を倒し、動きを止めている二人が久和の目に入った。

「…刀無いからあいつらの邪魔も出来ねぇ」

そう呟き、自分は彼らの足手まといなのではないかと少し不安になる。
その不安を振り払うように彼は頭を横に振りまた走り出すのであった。

102 名前:前園 久和 ◆KLeaErDHmGCM [] 投稿日:2010/06/03(木) 18:52:57 O
追っ手が見えなくなり、前の二人が走るスピードを緩め久和もそれに合わせる。
そして、三人の近くにまた男が一人。

久和達がコーナーに差し掛かろうとした時、テナードに腕で止められる。
彼は銃を確認し、コーナーに足音を立てぬようゆっくりとにじり寄り、そして一気に踊り出る。

>「手を上げろ!さもなくば撃つ!」

「ひ、ひぃ」

コーナーの向こうをさ迷っていた雅魅が情けない声を出しながら両腕を上げて出てくる。
涙目になっていた彼は久和の姿を見るなり驚いたような顔をし、久和もまたそうだった。

だが、追手の怒号が聞こえ四人は慌て周りを見回し。
…そして、ある一つの部屋がテナードの目に止まる。
彼はその部屋を詳しく雅魅に問い、そして少しの間を開けてこう言った。

>「おい色白、101、警備員……俺に名案がある。耳を貸せ」

「え」

名案とはつまり久和以外の二人が警備員に変装する事である。
久和は彼の身長の事を考え迷子の子供、という事にするしかないのだが。

「俺は嫌だ、誰が迷子だ誰がぁ!」

…彼がその案に賛同する訳もなく、倉庫内で誰が子供だ誰が低身長だ等とごねる。

「ま、まあまあ我慢してよ久羽さん」

「うっせぇ雅実は黙ってろ!」

「ひぃ…何か久しぶりに会ったら口調が荒々しくなってるよ…」

まあ結局の所、雅魅に宥められ変装は完了したのであるが。
お互いに何か誤解はしているようだが問題は無いらしい。

103 名前:前園 久和 ◆KLeaErDHmGCM [sage] 投稿日:2010/06/03(木) 18:55:31 O
ヤクザとの会話は面倒臭いので割愛するが、結論的に言えばテナードの名案は成功した。
しかし成功した事により、久和の機嫌が最底辺まで下がる事になるのだが。

「誰が女の子だ…殺してやる…」

雅魅はスカートやら可愛らしいセーターやらを着て物騒な事を言う彼に少し違和感を感じて口を開く。

「あれ?久羽さんっておn「このまま紛れて、カズミ達を探そう。警備員さん、案内してくれるよな?」

銃を向けられ冷や汗をかきながら無言で頷くしかできない辺り、彼の彼たる所以が伺える。

「え、えっと、カズミってあの一緒に居た子だよね」

「何処に居るかは分からないけど、ビルの案内すれば良いんだね…?」

「そんぐらいしか能無いしな」

「ひ、酷いよ久羽さん!」

「黙れ雅実」

しょぼんという擬音が似合う程しょぼくれ、ビルの案内をしようと走り出す雅魅。
やけにでもなっているのだろうか。

彼は壁に書かれた案内マップで階を確認し、まず展望フロアへ向かう。
そこで一言、間抜けな声を出した。

「…あれ?」

「(ていうか、何で腕五本もあるの!?はえたの!?)」

「(やだこわい!死にそう!)」

…そのツッコミは、些か遅いのではないだろうか。


【不非雅魅:展望フロアへごー。荒海さんに凸するようです】

104 名前:ku-01 ◆x1itISCTJc [sage] 投稿日:2010/06/03(木) 22:25:36 0

『あ』

 さて次は主人だ、とまた新しく通信を開始しようとしたところで、不意に隣の小鳥が声を上げた。
 蛍光色の猫はふわふわと物理法則に悖る形で浮遊し、『文明の視点』を見ていたらしい。

『あれ? これってあれか? みうら博士? やだおれこのひと好きだよ、テレビとかで時々でると絶対録画すんもん。
えーちょっと会いたい! 今から行ったら会えるかな。ってか何しに来てるんだろ。やっぱあれ? NOVAの手伝い的なあれ?』

 くるくると楽しげに回転して其の窓をku-01にも見せようとする。
 空間使用権限を無駄に行使して認識範囲内へと押し込まれるその映像を鬱陶しく思いながら、接続作業を続けた。
 小鳥は尚も映像を見せようとしてくるので、仕方なくその窓へと一部の認識を割く。
 映っているのは、薄汚れた白衣に乱れた髪が印象的な男性。解明度が低く上手く認識できないが、その片手になにやら掲げ持っている。

「……腕?」

 そして、その腕らしきものから滴り落ちた液体が床に落ちた瞬間、発光。
 不快感を催すような音声を伴って、ダイアログのような形を持った警告ウィンドウが幾重に開かれた。
 目まぐるしく開いては閉じするそれらを全て視認することはku-01には出来ない。が、いくつか認識のかなったものには『迷宮化の解除』という字列が見られた。
 隣で愕然としていた小鳥が我を取り戻したのか、概形を乱しながらも慌しくその警告ウィンドウたちを捌いていく。 
 画面の中からさきほどの光景は消え、周りの窓からも同様に次々と風景が消えてゆく。
 文字通り、迷宮化が解けたために稼動していた『文明の視点』が閉ざされたのだろうか。

『放火ぁ?! えええ、放火ぁ? うそぉ、なんという犯罪行為!』

「小鳥、一体何をしているのですか」 

『異常事態が起こるとめいきゅうかは解かれんの
 迷宮化したときとはまた違った"組み変わり方"するから、あんたの仲間も合流させたほうがいいんじゃないの?』

 言われた瞬間に接続が完了する。
 それと同時に、まだ完全に閉じていない『文明の視点』で都村たちが動いていないことを確認する。
 主人と共に乗り込んできた隊員は、どうやら都村の手当てをしているらしい。
 繋がった通信に呼びかける。

「マスター、ビル内に火災が発生したことにより迷宮化が解除されます。
この揺れは地震ではなく、建物自体が再度変形しているためのものです」

『接触し合っている生物は一個体として認識されるから、はぐれたくないなら一緒に居ろって言ってやるといいかもー』

 小鳥の言葉をそのまま音声データに置き換え、吐き出した。


105 名前:ku-01 ◆x1itISCTJc [sage] 投稿日:2010/06/03(木) 22:28:57 0
 どうやら主人達は無事に合流できたらしい。
 小鳥が映し出してくれた監視カメラの映像を確認しながら、ku-01は電脳空間で安堵の息を吐く。

『あれ、あんた、自分の体は?』

「後ほど回収いたします」

『あー、制御室につながってるから、そのまま移動するだけって訳か』

「そうなんですか」

『多分ねー……』

 蛍光色の猫は新しい窓を呼び出し、今度は制御室らしき画像を映し出す。
 相変わらず光源は無いままだが、蛍光色の猫が器用に指を鳴らすと、それは暗視装置を通したかのようなものへ切り替わった。

『うん、あるある。取り込まれてないよー。あ、荒海のおっさんもいんじゃん。うごけるのかおっさん。さすがだな!』

 その言葉に、思わずそちらを伺う。
 都村たちと合流したからには主人に危険はないだろう。元より戦闘能力の高いらしい彼女に対しての心配は不遜かもしれない。
 だが、彼が危険因子となる可能性も十分にある、大事を取っておいても損はあるまい。
 そうして認識した窓には、満身創痍の様子で座り込む荒海と、

『……あれ? きばづか?』

 まだ幼い、ショートカットの少女が居た。
 ku-01の足元辺りへと移動していた小鳥が思わずといった様子で声を漏らす。

「小鳥、知り合いですか?」

『知り合いも何も、えっと、ほらあの……同級生?』

 ぼそりと呟いた後、くりくりとした猫の目を瞬かせうろうろと視線を漂わせる。
 画像の中の少女は荒海の額にその手を当てた。暫くして荒海が恐る恐るといった風に立ち上がる。

『え?! ちょ、ちょ、ちょっと?! えっもう今日なんだよ! おれのまわりの色んなひとのイメージが崩れていくよ!
みうら博士といいきばづかといい!』

「?」

 小首をかしげるku-01を他所に小鳥はなにやら操作をして、制御室を出て行く少女の姿を監視カメラと新たに発生した文明の視点を活用して居っていく。
「意中の異性の事を目で追ってしまうのは男としてしょうがないことなんだよ! ストーカーじゃないんだからね!」という上司の言葉が不意に思い浮かばれる。

『えっ、えっ、ちょ、ちょっと待てってばきばづかー?!』

 声など届くまいに、小鳥はそう画面に呼びかけていた。
 その様子にやはり首をかしげながら、Ku-01はもう一度主人達の居る区域を移す窓へと認識を戻し、そして自分の失態を悟る。

「マスター!」

 通じたままとなっていた通信に向かって呼びかけた。
 壁に叩きつけられた主人の耳にその声は届いたのだろうか。
 画面の端に映りこむのは、鮮やかな紫電。

106 名前:月崎真雪 ◆OryKaIyYzc [sage] 投稿日:2010/06/03(木) 22:51:56 O
.
扉を開けた真雪を出迎えたのは、常識から逸脱した“犬”だった。
「 」
「な、なんです。これ……」
萌芽が、絶句した真雪の言葉を代弁している。
真雪など一瞬で飲み込みそうな大きな体躯。巨大な犬の表情は、狂気に満ちていた。



―――そして、その化け物の目が合った瞬間、鋭い音が鳴る。(『利他的な嘘』!?)
真雪の能力は、あくまで『聞いた』または『読んだ』言葉にしか反応しない筈だ。



知り得ない情報に混乱し、真雪はへたり込む。
萌芽はそんな真雪の前に立ち、目の前の犬を睨みつけた。
見上げた萌芽の背中は、何だか小さい。まるで、腕が片方しか無いような…
「待って萌芽! その状態で戦うつもり!?」
立ち上がって触れた彼の右半身。やはり、右の肩から先が消滅している。
「無茶よ! 戦える訳ないわ! 逃げようよ!」
真雪に突然しがみつかれ、萌芽が驚く。真雪の言葉に、面倒そうに息を吐いた。
その時、急に扉が開く。
出て来たのは、とても特徴的な髪型をした少年だった。
いや、もう一人居る。『竹内萌芽』が、もう一人そこに居る。
「おめーは……」
少年は萌芽の姿を見掛けて、とても驚いていた。
それはそうだろう。そばに居た筈の男の姿が、向こうにもう一つ有る。
「随分と深い傷負ってるみたいッスねー。で、あんたが俺を呼んだわけッスね。」
(呼んだ? なんでだろう…)
もう一人の萌芽を、彼自身が作り出したのだろう。
思い出すのは、昨日の霧と消えた萌芽の姿。

少年の声に、犬が振り返る。
睨まれても怖じ気づかずに、彼は言葉を続けた。
「あれ、あんたの飼い犬ってわけじゃなさそーッスね。
女の子の前でいいとこ見せたいっては分かるッスけど……あんま無理はよくないッスよ。
昨日は悪い奴だと思ったけど、あんたいいとこあんじゃねーッスか。
グッと来たぜ…!”クレイジー・プラチナム!!”」
少年がそういった瞬間、ピンク色のド派手な何かが萌芽に手を翳した。
犬が少年に襲いかかって…

そこから先は、真雪は知らない。状況が動いた瞬間に、真雪自身も動き出したからだ。
萌芽の手を引っ張って、視線の向こう。少年の出て来た扉へ飛び込んだ。

【犬部屋、脱出】

107 名前:経堂柚子 ◆OryKaIyYzc [sage] 投稿日:2010/06/04(金) 15:17:27 O
「是非も無イ」
ルークから帰ってきた答えに、柚子は嬉しさで微笑んでいた。
「嬉しいなあ! まあ、ルークならそう答えてくれるとおも―――」
柚子が言い終える前に、上の階から爆発音が鳴り響いた。
ルークと二人、顔を見合わせる。
「…どうしよっか」
まあ、そんな事を言っても、柚子の心は決まっている訳だが。
「本音ならユキちゃんの所にすぐにでも行きたいわ!」

言いながら下着ごとキャミソールを限界まで捲り上げる。
控えめだが形の良いバストが惜しみなく晒されるが、柚子は気にしないので問題は無い。
受け取ったビショップを横たえ、柚子も座った。

「でも、この爆発を起こした男、もの凄く強いの…」

臍の辺りに、ビショップの爪先を当てる。そして一気に押し込んだ。
穴が開いたなら後は速い。ずるずると流れのまま吸い込まれていく。
幅の問題で入らなかった箇所も、ビショップの体の向きを変えれば解決だ。

「そんな男が、万が一ユキちゃんに襲いかかってきたら大変よね…?」

そしてとうとう、ビショップの脇辺りまでが柚子の身体に収納される。
頭の先まで入れてしまえばあっという間に死んでしまうので、呼吸器は残しておくのだ。
最後に、上げていたキャミソールを戻して完成。

「だから、一応あの男は倒して起きましょう。…ルーク、なんで目を逸らすの?」

ビショップを取り落とさないように彼の顎に手を当て、タナトスを拾って立ち上がった。
ルークが何やら言ってるが、何の事か分からなかったので「何?」と返しておいた。

「さぁ、準備は終わったわ!
行きましょう、ルーク!」

きゃらきゃらと笑う柚子の表情は、どこか楽しそうだ。
階段を駆け上がる柚子はやはり、戦うのが好きなのかも知れない。


【れっつら展望エリア】

108 名前:宗方丈乃助 ◆d2gmSQdEY6 [sage] 投稿日:2010/06/04(金) 22:05:22 0
>>106
「で、これからどーすんすか?」

2人に振り向いた俺、窮地に駆けつけたんだし
そりゃ泣いて喜んでくれるっしょ!と思ってたぜ。
だけどさ。人生ってのはそんな甘くねぇーってことを再認識したんだ。

>そこから先は、真雪は知らない。状況が動いた瞬間に、真雪自身も動き出したからだ。
>萌芽の手を引っ張って、視線の向こう。少年の出て来た扉へ飛び込んだ。

「えぇええええええええ!!誰もいねぇー!!」
大声で叫んだせいで、大きな犬(大犬とでも呼ぶか)が俺の方に走ってきやがる。
俺は精一杯の力を込めてクレイジープラチナムの右ストレートを放った。

つもりだった。しかし、目の前でクレイジープラチナムの動きが止まっちまった。
何でかは分からない。でも、見る見るうちに俺の分身は石膏のような色に変化していく。
「ど、どーなってんだよ。マジで……」

そして、クレイジープラチナムは石造になっちまった。
こうなると、俺はただの品行方正な高校生でしかないんだよな。
冷や汗を流しながら犬の方を向く。どうやら、俺に完全ロックオンな状況らしい。
必死でドアの方へ走る。しかし、逃げれるわけなどなかったんだ。
凄まじいヘッドアタックを尻に喰らい、俺は壁に激突した。

「お……おげ。」

額から血が流れ、前がよく見えない。
どーやら、俺はこいつに食われる運命らしい。
呆然としたまま、犬と対峙する。

『よっこらせと。しかし、貴様の頭の中は蒸れるな……
ん?何だか大変な事に巻き込まれているな。』

さっきの蝙蝠もどきが俺の頭の中から出てきやがった。
しかも、”頭”をずらしやがって!!

「てめぇ!!マジぶっ殺すぞ!!」

『殺されそうなのは貴様ではないか。』

蝙蝠もどきの傍に1枚のカードが落ちた。
CONTRACTと書かれたもの。
こんな紙切れが何の役に立つのかわかんねーけど。

『契約、してやってもいいぞ。ただし、貴様の
倒した相手の魂を私が貰う』

【1人部屋で犬から逃げ惑うアフロ、スタンドは原因不明のフリーズ】



109 名前:テナード ◆IPF5a04tCk [sage] 投稿日:2010/06/04(金) 22:47:40 0
【10F この先展望エリア→】

天井に吊り下げられた白いプレートに書かれた文字が見える。
テナードにその文字が読める筈は無いが、どうやら10階に到達したという事だけは理解出来た。

「(カズミやリンキは大丈夫だろうか……)」

脳裏に一瞬の不安がよぎる。だが、今は此処からの脱出が最優先事項だ。
アイツ等なら(多分)大丈夫だろうと無理矢理そう思い込む。冷たいと思うかもしれないが、彼等がいようといまいと、テナード自身に問題はないのだ。

警備員の雅魅が振り返り、ここから先にあるエレベーターを使って脱出しようという案が出される。
それに同意し、先を急いでコーナーの向こうへと消えた雅魅の後を追おうとした刹那。

「なっ!?」

雷鳴にも似た爆発音。
同時に振動が起こり、まさか先程の現象が再発するのかと危惧するが、何も起こらない。

重い物が壁にぶつかる音が聞こえた。
不審に思ったテナードの鼻を、何かが焼け焦げる不快な臭いがつき、コーナーの向こうから黒煙が舞い込んできた。

嫌な予感がする。

黒煙の中へと飛びこみ、視界の邪魔をする煙を腕で取っ払う。
ようやく彼の目に映った光景は、凄惨という単語が相応しい場所となった展望エリアと、何故か大火傷を負った雅魅の姿であった。

「警備員!?」

焦燥感の入り混じった呼びかけがテナードの口から飛び出す。
そしてすぐ近くに、雅魅と似たような傷を負った栗色の髪の少女が倒れているのも発見した。

「おいアンタ、大丈夫か!何があったんだ!?」

女に駆け寄った瞬間、誰かの気配と殺気が肌を突き刺す。
殺気を感じた方へ振り向き、すぐさま銃を向ける。

殺気を出していたのは男だった。体中に紫電を纏い、涼しい顔をしてこちらを見下している。
先程の爆発音の正体は、コイツじゃないだろうか。テナードの直感がそう告げていた。

「何や、見慣れへん警備員やな。……誰に向こうてそないなもん向けとるんや、あ?」

男はエレベーターを背にして立っている。
この男を倒さなくては、先へ進めないということだろう。


110 名前:テナード ◆IPF5a04tCk [sage] 投稿日:2010/06/04(金) 22:49:20 0
「テメエが誰かなんて知ったこっちゃねえよ。
 うら若き乙女に手ェ出そうって変質者って事なら、見りゃ分かるんだがな」

銃口を男に向けたまま、嘲笑するテナード。男もつられるように笑いながら、ほぼ同時に指を鳴らす。
すると、指先から発生した紫電が空中を走り、テナードの耳を隠していた制帽を吹っ飛ばした。

「な……!」

「はん!やっぱり侵入者やったか!
このBKビルでこのワシ――荒海銅二を知らん奴ぁおらんからのう……お前さんらみたいな侵入者以外はなァ!!」

吠えるように叫びながら、また紫電を飛ばす荒海。
紫色の電流は、猛スピードで地を這うようにテナード達へと襲い来る。

「ッ、皆隠れろォ!!」

栗色の髪の少女を抱え、テナードはすぐ近くのキッチンの影へと逃れる。
間一髪、電流はテナード達を捉える事なく、壁へと霧散した。

「クソッ、何だアイツ!化物か!?」

荒海はまるで気でも狂ったかのように笑いながら、出鱈目に電流を走らせる。
その様子を陰から覗きながら、テナードは悪態をついた。これが『文明』だとかいう力だろうか。

「(反吐が出る)」

少女と雅魅を見やる。どちらも早急に手当てしなければ。だが治す為の道具がない。
救急治癒の存在を思い出すが、使い物にならなくなった事を思い出し、頭を振る。

やはり、あの男を倒し、誰かに助けを求めるしか方法はない。

あの男を倒す手立てはないか。せめて、何か武器になる物はないかと辺りを見回す。
キッチン内に視線を走らせる内、テナードの目にある物が飛び込んできた。

「(! 小麦粉とチャッカマン!?)」

再び視線を、荒海…否、荒海の向こう、エレベーターへと走らせる。
テナードの中で、名付けて「密室で粉塵爆発inエレベーター作戦」が網羅する。

しかし、これを実行するには、腕力やスピードのある協力者が必要である。今動けるのは、自分と色白男、そして101型だけ。
しかし、101型はともかくとして、色白男に腕力もスピードもあるようには見えない。
他に誰か協力出来る人間も居るようには見えない。

自分達を守ってくれる壁も、どこまで持つか分からない。
いずれにせよ、早い決断が迫られるだろう。


【テナード:荒海さんに凸。佐伯さんを救出するも一歩も動けず】
【密室で粉塵爆発inエレベーター作戦:
 エレベーターの中に小麦粉をぶちまけ、その中に荒海さんと火の付いたチャッカマンを放り込んで
 粉塵爆発を起こして荒海さんを倒そうという作戦。しかしこの作戦を実行するには、
 ・荒海さんの動きを止める
 ・エレベーターのドアを開ける
 ・小麦粉をエレベーターの中に放り込む
 ・荒海さんをエレベーターの中に放り込む
 これをこなす為に、少なくとも2人の協力者が必要】
【一緒に荒海さんボコろうず!って人はテナードと合流してくださいな】

111 名前:竹内 萌芽(1/7) ◇6ZgdRxmC/6[sage] 投稿日:2010/06/05(土) 02:25:25 0

グルルという、目の前の”犬が”喉を鳴らす低い音。
その場を満たす、地獄の底から響くような不気味な音の中に一際高い声が響いた。

「待って萌芽! その状態で戦うつもり!?」

ふいに自分の右手の付け根に触れる、彼女の手の感触。
ふと後ろを見ると、真雪が心配そうに自分の顔を覗き込んでいた。

「無茶よ! 戦える訳ないわ! 逃げようよ!」

あー、気付かれたか、と萌芽はため息を吐く。
正直、萌芽はまともに戦うつもりなど毛頭無かった。
適当に敵をけん制し、そのあとはこの分身をあの犬のエサとしてさしだせば真雪を逃がすことくらいはできるだろう。
それが萌芽の思惑だった。

さて、まともに戦える体でないことが真雪にバレたこの状況で、どうやって時間稼ぎをしよう?
この少女のことだから、おそらく自分を囮に逃げろなんて言っても絶対聞かないだろうし……

そんなことを考えていると、ふいに前方に見える扉が開いた。

扉から現れるのは、見覚えのあるアフロヘアー。
そして彼の右斜め上で浮遊する、丸いコウモリみたいなやつと、自分の分身。

「おめーは……」

こちらに気付いた彼に、犬から目は逸らさずに、しかし萌芽はにこやかに言った。

「ナイスタイミングです、ジョジョくん!」

112 名前:竹内 萌芽(2/7) ◇6ZgdRxmC/6[sage] 投稿日:2010/06/05(土) 02:32:04 0

つかつか、と頭をぽりぽりとかきながら、現れた丈乃助は二人と犬の間に割って入ってきた。
堂々と犬の腹の下を潜り抜けてくるあたり、怖いもの知らずというかなんというか……

(ちょっとシビれちゃいますね)

まるで正義のヒーローだ、と萌芽は目を輝かせた。

「あれ、あんたの飼い犬ってわけじゃなさそーッスね。
女の子の前でいいとこ見せたいっては分かるッスけど……あんま無理はよくないッスよ。
昨日は悪い奴だと思ったけど、あんたいいとこあんじゃねーッスか。 」

(いいとこがある……? 僕に……?)

その言葉に、えも言われぬ違和感を感じた萌芽がそのことについて考えていると
ふいに彼の隣の空間に不思議な”色”が浮き出てくる。

「グッと来たぜ…!”クレイジー・プラチナム!!”」

ぼんやりとしか見えないが、どうやら人の形をしているそれが、恐らく彼の能力なのだろう。
そう判断した萌芽は、彼のやろうとしていることに検討がついたので訂正することにした。

「あ、いや、ちょっと待ってくださいジョジョくん、ここにいるのは……
ややこしい話ですけど僕であって僕でな……」

萌芽の言葉が終わる前に、彼の隣にいるド派手ピンクの手が萌芽の体にかざされる。

「いや、だから僕が直して欲しいのは僕じゃなくて……!?」

ふいに体が引っ張られる。しかも引っ張られているのは、さっきまでなかったはずの右手だった。

「え、あの真雪さん!? そっちは犬が!! え、なんで右手……えええええええ!!?」

訳が分からないうちに、萌芽は真雪と友に犬の腹の下を潜り抜け、扉の向こうへといざなわれていた。

113 名前:竹内 萌芽(3/7) ◇6ZgdRxmC/6[sage] 投稿日:2010/06/05(土) 02:34:25 0

ぜえぜえという音が、薄暗い廊下に響く。

「真雪さん、怪我、ないですか……?」

息を整えながら、萌芽は側の壁にもたれかかる真雪に声をかけた。
まったく分身が実体を持つと、実体が無かったころには感じなかった疲労なんて感覚まで追加されるのだから困る。

とりあえず真雪が無事らしいことを確認し、萌芽は心の中でストレンジベントに話しかけた。

(ストレ、さっきの”犬”も、”捕捉”されたんですよね?)

”アッヒャ〜、バッチリだぜ、もる”

頭に響く、心なしかいつもよりテンションの低い彼女の声。

(ふふふ、僕に出会っただけで”捕捉”対象に入るなんて、便利すぎてバチがあたりそうです)

さきほどの”犬”の大きさや筋力を考えるに、久和を呼ぶのとは比較にならないほどの強大な”力”となることは間違いないだろう。

”転んでもただではおきないってヤツだなー”

まったくその通りだ、と萌芽は楽しそうに笑った。

114 名前:竹内 萌芽(4/7) ◇6ZgdRxmC/6[sage] 投稿日:2010/06/05(土) 02:36:29 0

「さって、じゃあいきましょうか、真雪さ……」

へたり込んでいる彼女に手を差し出そうとして、ふいに胸にちくりと何かが刺さるような痛みが走る。
それと同時に思い出されるのは、先ほどの少年の声。

『昨日は悪い奴だと思ったけど、あんたいいとこあんじゃねーッスか』

頭の中に、何度も何度も反響するその声に、萌芽は差し出そうとした手を止める。

(僕は……)

両足を怪我した久和、片腕を失った尾張の姿が、順番に脳裏に浮かぶ。
気がつけば萌芽は、先ほど取り戻したばかりの、しかしまだ尾張の痛みの半分を請け負う右手を見ていた。
その手に握られているのは、さきほど現れた三枚のカード。
それぞれのカードに描かれているのは、赤い鎖、赤い靴、赤い銃の絵。

(僕は、一体何を……?)

ふいに自分を呼ぶ声が聞こえて、萌芽は現実に引き戻される。
気がつけば目の前には、こちらを心配そうな表情で見る真雪の顔があった。

『人の心は完全に理解はできないから、自分の基準でみんなと寄り添えられればそれで良いと思う』

思い出される、先ほどの彼女の声。

(僕は……僕にできることは……)

萌芽は、三枚のうちの一枚、鎖のカードをポケットにしまうと、真雪に笑いかけた。

「ごめんなさい真雪さん、ちょっと待ってもらっててもいいですか?」

「大丈夫、すぐ終わらせますから」そう告げると、萌芽は再びあの”犬”がいる部屋に向かって走りだした。

115 名前:竹内 萌芽(5/7) ◇6ZgdRxmC/6[sage] 投稿日:2010/06/05(土) 02:37:44 0

”おいおいもる!! 一体なんだってんだよ!!?”

「あはははは!! 何なのかなんて僕にもさっぱりですよ!!」

走りながら萌芽は二枚のカードを見る。
なんとなく戦闘向きっぽいからということで選んだカードだが、正直この選択が正しかったのかはよく分からない。

カードの選択だけではない、こちらにしっぽを向ける犬に走りこんでいるこの状況を選択したことも、だ。

「もうなんでこんなことになってるのか訳わかんないですけど、とにかくあれです、”肉を食らわば机まで”!!」

”なんか色々まちがってないか……!!?”

走りながら感じるのは、本体の右足にめりこんだ銃弾と、尾張から請け負った右腕の痛み。
正直体が痛むのは変わらないが、それでも右腕が戻ってきたことは、戦おうとしている自分にとっては大きい。
にやりと笑いながら、萌芽は叫んだ。

「つべこべ言ってないで行きますよ……ストレンジベント、ベント・イン!!」

萌芽の両手に握られる二枚のカードが赤く燃え上がって消失し、転瞬現れるのは萌芽の右手、右腕、両足を包む赤い炎。

「おお、これって熱くないんですね」

呑気なことを言いながら走る萌芽が始めに感じたのは”速度の変化”だった。

116 名前:竹内 萌芽(6/7) ◇6ZgdRxmC/6[sage] 投稿日:2010/06/05(土) 02:38:39 0

”ACCELVENT”

「お!! はやっ!!」

ストレンジベントの声とともに、両足を覆う赤い炎が晴れ、かわりに彼の両足を包むのは
これでもかというくらいに凶悪な意匠をほどこされた真っ赤なブーツ。

ブーツの出現と友に萌芽の走る速度が急激に上昇する。
しかし、彼自身の足を運ぶ速度は、彼の移動速度に比べればまったく上昇していないといっても過言ではなかった。
当然である、速度を上げているのは彼ではなく、彼を包む空間そのものなのだから。

「なんですかこれ、動く道路の上を走ってるみたいですね」

少し興奮した口調で言う萌芽、彼はこちらの接近に気付いていない犬にギリギリまで近づき、そして、飛んだ。

「あれ、僕ってこんなに脚力ありましたっけ?」

こちらに振り向く犬の顔より高い位置に飛んだ萌芽は、そんなことを言いながら右手を覆う炎を犬に向ける。

”SHOOTVENT”

炎が消え現れる銃の形状はヤクザ映画でよくみるトカレフというものに似ていた。
もっとも、これもまた銃身は真っ赤で、銃になにか恨みがあるのかというほど凶悪な意匠を施されていたが。

「いっけー!!」

引き金を引く萌芽、銃口から放たれるのは、血のように真っ赤な細い光弾。
想像していたような反動はまったく無く、それに驚きながら、萌芽は着地した。

117 名前:竹内 萌芽(7/7) ◇6ZgdRxmC/6[sage] 投稿日:2010/06/05(土) 02:39:59 0

「あらら、効いてない……?」

視界に入るのは、こちらを上から睨みつける犬の顔。
まあまともに狙いも定めずに打ったし当然か。

右手でくるくると銃を弄びながら、萌芽は苦笑いした。

そして、向こうの方でコウモリと話しているアフロヘアーの少年に声をかける。

なぜ彼を助けようと思っているのか、一体自分はどうなってしまったのか。
わからないことはたくさんあったが、しかしとりあえず考えるのは後回しにして、萌芽はにこやかに言った。

「よくわかんないんですけど、とりあえず手伝いますよ、ジョジョくん」

ターン終了:
【丈乃助と共闘】

118 名前:訛祢 琳樹 ◆cirno..4vY [sage] 投稿日:2010/06/05(土) 10:17:42 O
警備員が私に声をかけてくる。

>「脱出か?なら道案内してやるよ」
>希射はなるべく警備が手薄な場所を、彼に教えるように走った。

「あ、ありがとう」

素直にありがたいと思った、と同時に疑いが胸に生まれる。
警備員の彼が何故侵入者の私を逃がすのだろうか?
不思議だ。
彼の今までの行動などから性格を分析するに気紛れ、なのだろうか。

「ま、考えても仕方無いべ」

逃がしてくれるなら着いていく。
逃がしてくれないなら戦う。
いや、逃げる。
戦いなんて危険な行動は出来ないさ。

そこまで考えて彼に着いて走る。
私に合わせてくれているのか、速度はシエルを背負っていてもギリギリ着いていける程度だ。

「…こんな女の子を背負って疲れるとか鬱だ死のう」

無意識の呟き。
運動不足で死にたい。
むしろ引きこもりたいね、永遠に。

…ああ、そういえば。

「…君は何という名前なんだべ?」

私は訛祢琳樹、という言葉も忘れずに添える。
彼の口から出た名前を脳の片隅に入れて、また無言で走り出す。
チラリと壁に書かれた地図に階数は、十階だった。


【訛祢琳樹:十階を走っとります、このまま荒海さんの所に行くかは不非弟さん次第】

119 名前:宗方丈乃助 ◆d2gmSQdEY6 [sage] 投稿日:2010/06/05(土) 20:31:46 0
>>117
『契約、するのかしないのか早く決めろ。』
萌芽が戻ってきたのを見て、俺は目を丸くした。
まさか、助けに来たって事か?
やっぱこいつ、悪い奴じゃないんじゃね?という思いをより
強くしつつ。やっぱこの台詞しかねぇーってこと。

「へへっ。お前のその行動、”グッと来たぜ。”」

『どうするのだ。貴様の力は封印されている。今は戦う手段が無い。
早く契約するかどうか決めろ。』

「あー!!もう!てめぇは契約を迫るNTT代理店の光回線勧誘電話かよ!!
俺は資料とか、他社との比較とかしてーってのに!」

頭を掻きつつ、俺は我に戻る。
こいつは命を賭けたやり取りだ。逃げる事なんて出来ねぇ。
ましてや、俺を助ける為にここに来たこいつを前にして
逃げ腰になんざなれねぇーってことだ。
俺はコントラクト―契約―のカードを手にした。
「オーケー。やってやろうじゃねぇか……!!」

『了解した。力を貸そう。だが、使い方次第だぞ。』

蝙蝠の傍から空間が開き、カードデッキが落ちる。
何の紋章もない、名刺入れみたいなもんだ。

『それを手に持ち翳すがいい。腰にベルトが出現する。
真ん中にデッキを差し込め。』

「へ?そんだけ?」

言われたとおりベルトが出現する。そして、中央部にある窪みにカードデッキを
差し込む。
「なんだかヒーロー番組の設定みてぇだな。……よし!変身!!なんちゃって!!」



120 名前:宗方丈乃助 ◆d2gmSQdEY6 [sage] 投稿日:2010/06/05(土) 20:32:52 0
冗談のつもりで言ったのだが、マジで俺の体を何かが覆った。
掌や足を見てみると、どうやらマジで俺は変身したっぽい。
「……どーなってんだよ。マジで……」

『カードを引け。剣が使えるはずだ。』

―SLASH!!
「お?」
手に付けられたバイザーにカードを読み込むと天井から剣が降ってきた。
どういう仕掛けだ?つーか、これマジで武器なの?
床に突き刺さった剣を引き抜き、巨大犬(省略して巨犬)へ向け想いっきり叫ぶ。

「よっしゃぁ!!こうなりゃヤケクソだぜ!うおおおおおお!!」

剣を眉間の位置に振り上げ、思いっ切り走り出す。
こうなりゃ、この剣でぶった斬ってやるぜ!

・・・・・・・・・・・・・・・。

結果からいうと、剣は犬の眉間に当たり真っ二つに折れた。
折れた剣を見つめ、俺は再び絶叫した。
「折れたぁああああああああああ!!!!」


『やはりバカには無理だな』

【契約してパワーアップの筈が、まさかの弱体化】



121 名前:三浦啓介 ◆6bnKv/GfSk [sage] 投稿日:2010/06/05(土) 21:56:40 0
一つ上の踊り場から飛び蹴りを放ったカズミを、しかし三浦は容易に受け止めた。
蹴り足を重ねた両手のひらで受け止め、足は固定したまま上体を逸らして威力を殺す。
そして彼の蹴り足が完全に勢いを損ねた所で一息に体を押し出し、カズミを一つ下の踊り場まで突き飛ばした。

「へえ、漫画の見よう見真似だけど、案外上手く行くモノだね。……それにしても、お誂え向きの形になったじゃないか。
 首の爆弾に、この立ち位置。これから僕は、この階段を降りていく。君はそれを食い止める。時間制限を迎える前にリタイアすれば命だけは助かる。
 どうだい、懐かしのゲームを思い出さないかな? ……君にはちょっと古すぎるかも知れないけどね」

滔々と諧謔を紡ぎながら、彼は階段を一段一段下りていく。

「……あぁ、そう言えば」

けれども不意に足を止め、かわりに再び口を開いた。

「君の知り得ない、多岐に渡り過ぎる力を使うって言うのはフェア……と言うかゲーム的じゃないね。
 だから僕は、これだけを使うとするよ」

宣言と共に、彼は右手にのみ『自由攻策』の手袋を嵌める。
更に白衣を脱ぎ去り、右手で掴みゆらりと垂らした。

「この白衣には今、『切削』の効果を秘めている。
 触れた所で死にはしないけど、その度に皮膚や肉が薄く、徐々に削り取られていくよ」

闘牛士が外套を振るうような所作で白衣を規則的に揺らしながら、彼は再び階段を下り始めた。


【クエスト始まるよー!】

122 名前:葉隠殉也 ◆sccpZcfpDo [sage] 投稿日:2010/06/06(日) 02:34:28 0
>>88
「大変だよ遅刻、遅刻!!」

その声を頼りに追い続けるが姿が見えない曲がり角曲がり角を行き来するが
それでも声の主の後姿すらも見えなかった
結構長い全力疾走もあるが尋常じゃない重装備をしているため、長時間顔色変えずに持っていられたのも異常だが
息が絶え絶えになりつつも必死で追いかける。

「追いつけんとは……俺より速いなだが見失うわけにはいかん」

ここで帝国軍人としてではなくこれは一人の男としての意地であった。
そして四十回後の曲がり角を曲がる際に帽子をかぶったウザギの耳を生やした
人の後姿を確認し、追い付いたを確信し最後の力を振り絞り駆け抜ける。
そして曲がり、覗き込むがそこには誰もおらず伽藍としていた。

「いない…?そんな馬鹿な…」

よく辺りを見回していたがそんな時に丁度良く扉が開く
どこかで見たような感じがする少女がいた



123 名前: ◆6bnKv/GfSk [sage] 投稿日:2010/06/07(月) 22:15:54 0
>>タチバナ、皐月

>  「休戦しよう。僕らも迷ってここへ来た。幸い両者ともに痛み分けだしね。こちらに攻撃意志はないから、この拘束を解いてくれないかい?
>
>
>   ――――さもなくば君の臭いを嗅ぐ。一片の欠片も残らず嗅ぎ尽くす」

常識の範疇を遥かに逸脱した変態に、君はドン引きを禁じ得ない。
全力で彼ののしかかりを外しに掛かるが、変態故の執念からか変態はびくともしない。
苦し紛れに振るうサーベルも、虚しく硬質な音を響かせるばかりだった。

> 「これっ、差し上げます、だから……このビルに閉じ込められている人を助けるの、手伝ってくれませんかっ!」

そんな中で発せられたからこそ、その折衷案は君にとってとても魅力的な物に感じられた。
更に盗賊である君の拠り所でもある宝石――のような物をちらつかされた事で、君の心は一気に揺らぐ。

「わ、分かった分かった! 手伝ってやるよ! 昨日チビっこい奴から盗んだ物も返すからさ! だからコイツをどうにかしてえ!」

124 名前:月崎真雪 ◇OryKaIyYzc[sage] 投稿日:2010/06/08(火) 05:05:35 0

「大丈夫、すぐ終わらせますから」
萌芽はそう言って、あの犬のもとへ走って行った。
「あ…行っちゃった…」
真雪はというと、止める事も見送る事も出来ず呆然としていた。
(どうしよう…)

真雪には目的が有る。
足手まといでも、足手まといなりに役に立ちたい。
そのために、一刻も早く最上階の『お姫様』を連れて行きたい。
だから、立ち止まる訳にはいかない。

しかし、真雪には情が有る。
萌芽は真雪の為に、最初に忠告してくれた。
誰にも話さなかっただろう彼自身の目的を話してくれた。
自身も片腕を無くした状態だったのに、真雪の怪我を癒やして立ち止まる真雪を引っ張ってくれた。
だから今度は、真雪が萌芽を助けたい。

だけど真雪は分かっている。
あの巨大な犬に、ただの少女である真雪がかなう筈がない。
しかも萌芽は待ってて、と言ったのだ。
置いていく訳にも、敢えて危険に飛び込み更なる足手まといになる訳にもいかない。

「どう…しよっか…」
思うだけでなく口に出す。真雪は立ち上がり、萌芽が消えた方へふらふら歩き出した。



「…どうするの」
目の前の扉を見上げて、真雪はぼそりと呟く。
扉を少しだけ開いて、中の様子を窺った。
「折れたぁああああああああああ!!!!」
…アフロ少年が、折れた剣を片手に叫んでいる所だった。

「どうしよう…」
中に居る二人と犬にバレないように、扉の影で溜め息を吐いた。

【扉に隠れて中を窺ってます。端から見ると多分ウザい。】

125 名前:カズミ ◆IPF5a04tCk [sage] 投稿日:2010/06/08(火) 21:52:26 0
>一つ上の踊り場から飛び蹴りを放ったカズミを、しかし三浦は容易に受け止めた。
>蹴り足を重ねた両手のひらで受け止め、足は固定したまま上体を逸らして威力を殺す。
>そして彼の蹴り足が完全に勢いを損ねた所で一息に体を押し出し、カズミを一つ下の踊り場まで突き飛ばした。


風を切る音と共に、カズミの体が宙を舞う。
受け身をとる余裕もなく、突き飛ばされた力により踊り場へと体が叩きつけられた。

「うっ……!!」

ベキリ、とかビシリ、とか何かが折れたような音が体内に響いたのが分かる。
立ちあがろうとし、肋骨の辺りから痛みが走った。打ちどころが悪かったようだ。

>「へえ、漫画の見よう見真似だけど、案外上手く行くモノだね。……それにしても、お誂え向きの形になったじゃないか。
>首の爆弾に、この立ち位置。これから僕は、この階段を降りていく。君はそれを食い止める。時間制限を迎える前にリタイアすれば命だけは助かる。
>どうだい、懐かしのゲームを思い出さないかな? ……君にはちょっと古すぎるかも知れないけどね」

「あのさぁ……オタクオタク言うけど、僕は生憎そういうのにキョーミないんだよね。
 ぶっちゃけ、アンタ達のがオタクなんじゃない?そんな根暗なルックスしてるし」

まあ、僕も人の事言えた義理じゃないけどね、と自嘲し、階段を降りてくる三浦から視線は外さない。

>「……あぁ、そう言えば」

>けれども不意に足を止め、かわりに再び口を開いた。

>「君の知り得ない、多岐に渡り過ぎる力を使うって言うのはフェア……と言うかゲーム的じゃないね。
> だから僕は、これだけを使うとするよ」

>宣言と共に、彼は右手にのみ『自由攻策』の手袋を嵌める。
>更に白衣を脱ぎ去り、右手で掴みゆらりと垂らした。

>「この白衣には今、『切削』の効果を秘めている。
> 触れた所で死にはしないけど、その度に皮膚や肉が薄く、徐々に削り取られていくよ」

>闘牛士が外套を振るうような所作で白衣を規則的に揺らしながら、彼は再び階段を下り始めた。




126 名前:カズミ ◆IPF5a04tCk [sage] 投稿日:2010/06/08(火) 21:54:01 0
三浦が一段降りる度に、カズミもまた後退する。また一段、一段と、三浦の進行を許してしまう。
幾度となくそれを繰り返し、タイムリミットは確実に迫ってくる。

白衣に触れれば、自分がダメージを受ける。
だが、正面を向き合っている以上、白衣の向こうの三浦には触れる事すら出来ない。

その時、カズミの耳に僅かだが音が入った。思わず、唇の端が緩む。

「(やっぱり、準備が足んなかったな)」

ここは一旦退くのが得策か。カズミはそう判断した。

「ゴメン、やっぱこのゲーム、退かせてもらうよ」

段々大きくなる、先程から聞こえる足音。カズミの判断が間違ってなければ、それは、救援の合図。

「カズミッ!!」

下方から飛んできた黒い物体。カズミはそれを寸分の狂いもなく受け止めた。
同時に首から下げた小型爆弾を三浦へと勢いよく放り投げ、手にした銃の標準をそれへと合わせ、躊躇う事なく引き金を引いた。

偶然かどうかは分からないが、銃弾は爆弾に命中し、爆発した。
三浦が被害を被ったどうかは分からない。何故なら、撃ったカズミ自身も爆風に吹き飛ばされ、階段から転げ落ちたのだから。
だが、今度は体をぶつけたりすることは無かった。

「ハハ、ナイスキャッチ!」

「ナイスキャッチじゃないわよ!もう!」

そこに、彼を受け止める八重子がいたから。
八重子は上階の三浦の姿を視認すると、慌ててすぐ横のドアを開き、中へ飛び込んだ。

「車は!?」

「ビルの向かい側の駐車場に停めてあるわ!」

不自然な程静かな、誰も居ない廊下を駆け抜ける二人。
と、カズミの目に、見知った男の姿が映った。

「あれ、琳樹さん…と、さっきの警備員さん!?」

思わぬ再会に驚くカズミ。

「灰猫とおチビさんは?」

どうやらはぐれたらしい。カズミは暫く思案し、口を開いた。

「とりあえず、ここから脱出しよう。近くに車を停めてあるから、それに乗って避難s」

突如、爆発。方向は、展望フロアから。思わず顔を見合わせる。

「……脱出しようと思ったけど、どうする?
 さっきの爆発が気になるってんなら、行っても構わないけどね」


【カズミ:三浦さんに敵わないと見るや最後っ屁をかまし逃亡
     訛祢琳樹達と合流】
【ビルから脱出したい場合はカズミ達をこき使ってやってください】


127 名前:竹内 萌芽(1/6) ◇6ZgdRxmC/6[sage] 投稿日:2010/06/09(水) 07:53:43 0

竹内萌芽は目を輝かせていた。

「かっこいい……!!」

目の前のアフロヘアーの少年―――宗方丈乃助が突如空中から取り出した名刺入れ。
続いて彼の腹部に現れたベルトに、丈乃助がそれを差し込むと
彼の周りの空間が波紋状にぶれ、次の瞬間丈乃助は”変身”していた。

まるで鎧のような、しかしそれよりもずっとスマートな外装。
左手を覆う籠手のようなバイザーには、細い溝があり、そこに丈乃助はベルトから引き抜いたカードを滑らせる。

―SLASH!!

音声と友に振ってくる剣を掴む丈乃助。
青黒く、まるでコウモリの翼のような形をした複眼を輝かせ、彼は目の前の犬に斬りかかっていく。

まさにヒーローそのものだ。
これは自分の助けなどなくても、彼一人の力で十分だったのではないか?
そんな風に萌芽が期待する前で、犬の眉間に当たった剣が見事にぽっきりと折れる。

「あ、折れましたね」

”アッヒャ〜、折れたな”

「どうでもいいですけど、なんであの髪型だけは変身後も変わらないんでしょうね?」

”アッヒャ〜? 実はカツラとか?”

「あはは、まさか」


128 名前:竹内 萌芽(2/6) ◇6ZgdRxmC/6[sage] 投稿日:2010/06/09(水) 07:54:32 0
軽く現実逃避しているふたりの前で、犬が丈乃助に襲い掛かる。

「お、いってる場合じゃなかったですね」

連続して手に持つ銃のトリガーを引く萌芽。
うまく狙いの定まらない弾の何発かがかるく丈乃助をかすった気がするが、まあ問題ないだろう、変身してるし。

「それにしても、テレビドラマみたいにはうまく当たらないもんですねー」

こちらに気付き、その巨大な口で萌芽を飲み込もうとする犬を、萌芽は
<ACCELVENT>の『身体強化』《ビルドアップ》によって強化された足で上空に飛んでかわし
上空からさらに光弾で追撃する。

それにもろともせず、大きく咆哮する犬。
萌芽はさらに与えるダメージを大きくするため、巨大な犬の背中に着地した。

ふさふさというよりは、どこか刺々しい印象を与える毛の草むら。
ごつごつして、しかし少し柔らかいその上を、『移送空間』《ムービングランド》で加速した萌芽はまっすぐ走る。
向かう先にあるのは、犬の首。

人間だって首を絞められれば苦しいのだから、犬にだって首への攻撃は有効なはずだ。
そう思った彼は、しかし犬の首にたどり着いて絶句する。

「なん……ですか、これ?」

129 名前:竹内 萌芽(3/4) ◇6ZgdRxmC/6[sage] 投稿日:2010/06/09(水) 07:57:14 0
犬の首にあったのは、そこらを歩く飼い犬でもつけていそうな深緑色の首輪だった。
問題は、そこに描かれている文字である。
白い、修正液のような(サイズを考えるにペンキであろうか?)ものでそこにでかでかと書かれているのは、
子どもが書いたようにヘタクソなひらがな二文字。

『ねこ』

「はい……?」

間抜けな声を上げる萌芽は、こちらを振りほどこうと必死に暴れる怪物と目の前の文字を見比べる。
どう見ても犬である。
耳でかいし、口はとがっているし、大きさこそ異常であるが、そうでなければどこにでも居そうな、ただのビーグル犬である。

つまりどう見ても犬である。

(真雪さんがみたら、こういうのも『嘘』として認識されるんでしょうかね?)

犬の後頭部に二発光弾を放ち、宙返りをしながら犬の背中から飛び降りる萌芽。

「……ッ!!!」

萌芽の足が床に着き、転瞬彼の体に”ノイズ”が走る。
まずい、本体のほうがだんだん限界に近づきはじめているのか
表情をゆがめる萌芽の、その頭に誰のものともつかない記憶が流れ込んでくる。

130 名前:竹内 萌芽(4/4) ◇6ZgdRxmC/6[sage] 投稿日:2010/06/09(水) 08:01:27 0
吼え続ける犬、男はがっはっはと豪快に笑うと、行った。

”犬のクセにええ根性しとるやないか、どうや、ワシと一緒に来るか?”

「ふざけるんもええかげんにしぃや!! 誰がお前らなんかと……!!」

男が犬の頭に触れる。
ばち、という音が響き、犬は意識を失った。
そこから”記憶”は少し途切れとぎれになる
ちいさな少女の膝の上でなでられている犬の姿。
たくさんの組員のなかで走り回る犬。
つけられた首輪。

”今日からお前の名前は『荒海ねこ』や、ええ名前やと思わんか?”

字がへたくそだと少女に笑われている男の姿。
そして、多くの敵に囲まれる犬の姿。

「ウチは護るんや……お嬢さんを、荒海のオジキを!!」

多くの敵に囲まれる中、犬の首輪が発光する。

「せやから、ここはウチの命に代えても通さん!!!」

「―――ッ!?」

なんだ、今のは。
気がつくと、萌芽は犬のヘッドアタックに吹き飛ばされていた。
銃を持ったまま壁に叩きつけられ、そのままずりずりと崩れ落ちる萌芽。

”もる!! 大丈夫か!!?”

「お、大丈夫です……これくらいなんてことありません」

顔を上げれば、そこにはこちらを睨みつける犬の顔。
理性を失いかけているその目には、しかしまだしっかりとした意思が宿っているように萌芽には見えた。

「ストレ、この銃、もっと火力はでますか?」

”アヒャ〜? 大丈夫だと思うぞ、そろそろ『時間』だし”

『限定制御』《タイムイズバレット》の説明を聞き、銃のグリップを口元に持っていく萌芽。

「今、楽にしてあげますからね」

呟いて、一言、続ける。

「FIRE」

”―Burst Mode―”

ストレンジベントの声と友に、萌芽は犬に向けて引き金を引く。
一度に三連射される赤い光の弾が、動物の急所である鼻の頭に連続して命中した。

ターン終了:
【『限定制御』《タイムイズバレット》:
 『永久機関』《ノイマンズドリーム》により<SHOOTVENT>に蓄積された余剰エネルギーを制御する
 使用者の音声コードにより解除可能。】


131 名前: ◆b413PDNTVY [sage] 投稿日:2010/06/09(水) 21:10:14 0

代理投下の内容に一部抜けが生じておりました。
正しくは下記、

”なんや、お前”

血で汚された部屋、そこで小さな犬は目の前の男を睨みつけていた。

”ここの組員のペットみたいですわ、どうします殺っちまいますか?”

”はん、アホ言うな、犬にまで手ぇだす必要あるかい”

そう言って部屋から出ようとする、二人の男。
犬は二人の前に踊りでると、必死になって吼えた。

「バカにしいなや!! ウチかて『微猪護』の一員じゃ!!」

たとえ犬畜生の身とて、ヤクザのなかに生まれ、ヤクザの中で育ったのだ。
一通りの仁義は心得ている。
死ぬ覚悟はできている、殺すなら殺せ。犬はそう目の前の男二人にうったえかける。

”うわ、なんやこいつ”

若い組員が驚く中、年の行ったもう一人の男が、しゃがみこんで犬に視線の高さをあわせる。

”なんじゃ、ワレ、ご主人の仇でもとろうっちゅうんかい?”

>>129>>130の間に入ります。
参加者各位、並びに閲覧している方々に深くお詫び申し上げます。

132 名前:前園 久和 ◆KLeaErDHmGCM [sage] 投稿日:2010/06/09(水) 21:14:31 O
>重い物が壁にぶつかる音が聞こえた。
>不審に思ったテナードの鼻を、何かが焼け焦げる不快な臭いがつき、コーナーの向こうから黒煙が舞い込んできた。
>黒煙の中へと飛びこみ、視界の邪魔をする煙を腕で取っ払う。
>ようやく彼の目に映った光景は、凄惨という単語が相応しい場所となった展望エリアと、何故か大火傷を負った雅魅の姿であった。

「…は?」

唯一、と言っては誇張だが数少ない友人が目の前で大火傷を負った、その事実に久和は目を丸くした。
信じられないと言うような顔で、彼の元に歩み寄る。

「なに」

もはや周りの声など聞こえていない、こんな容姿でも昔からずっと仲良くしてくれた仲間が大怪我をしているのである。
治さないと。
その思考だけが彼の頭を支配する。

「ははは、動かねぇなんて馬鹿な冗談やめろよこのクソメガネ」

大丈夫、ただの火傷だ死んではいない。
いや、だがこいつはただの一般人だ、まさかという事も…。
そう最悪の結果が頭を過った時。

>「ッ、皆隠れろォ!!」

「…ッ」

テナードの声に一気に冷静になる。
そのまま、力も男性の平均以下程しか無い久和であるが、雅魅を運んで彼の元へ急いだ。
そして狂った様に笑う男の声から逃げるように耳を二本の手で塞ぎ、残りの片方の手を雅魅に翳す。

「人間。…でも仲間だから使ってやる、感謝しろよヘタレ」

祈るように目を瞑ると、少しの間を置いてだが雅魅の火傷が治っていく。
そして完全に治った頃には、彼の目は栗色の髪の少女――佐伯を見詰めていた。
勿論助ける義理は無い、人間なんて下らない、のたれ死ねばいい。
しかし、助けなければ猫や友人は怒るだろう。
もしくは幻滅する? それは、嫌だ。

「…チッ、このヘタレやバカ猫に怒られそうだから助けるだけだからな」

聞こえているのかは関係無く、自分の気持ちの整理の為に呟く。
そのまま彼は雅魅の時と同じ様に一本の手を佐伯に翳した。
そうしてやはり、雅魅の時と同じ様に火傷が治っていく。
治っていくのだが、久和の息も段々と荒くなり、見るだけで精神力を消費している事が分かる状態である。

「は、あ、一日三回が、限度だからな…」

「めんどくせぇ、能力だ…」

彼は自らの手のひらを見詰めながら、荒い息を吐きそう呟いた。

133 名前:不非 希射 ◆KLeaErDHmGCM [sage] 投稿日:2010/06/09(水) 21:15:22 O
>「…君は何という名前なんだべ?」

そう言った男は、自分は訛祢琳樹だと付け足した。

「不非、不非希射」

相手の名前まで教えられたら仕方無いと彼は自分の名前を口にする。
ちょっと前なら自己紹介も兄貴と一緒にして、そしてそのまま兄貴を馬鹿にしてたのに。
謎の懐かしさにそれが大分前だとという錯覚に陥りそうになる。
錯覚を振りほどくように頭を横に振ると、チラリと見覚えのある人間の姿が目に映る。

>「あれ、琳樹さん…と、さっきの警備員さん!?」>「灰猫とおチビさんは?」
>どうやらはぐれたらしい。カズミは暫く思案し、口を開いた。
>「とりあえず、ここから脱出しよう。近くに車を停めてあるから、それに乗って避難s」
>突如、爆発。方向は、展望フロアから。思わず顔を見合わせる。
>「……脱出しようと思ったけど、どうする?
> さっきの爆発が気になるってんなら、行っても構わないけどね」

「あー…」

希射は声を出し、カズミと琳樹、そして琳樹におぶられている少女を順番に見る。
そして最後に地面を見詰めながらこう言った。

「琳樹、さん? あんたは脱出しろよ」

「その女の子を逃がすって仕事があるだろ?
 俺は爆発音の方に行く、これでも警備員だからな」
そう続けた後に、カズミ達に背を向けて爆発音の方へと歩き出す。
そして誰にも聞かれる事の無いように、小さく小さく言葉を呟いた。

「それと、クソ兄貴が待ってるからな」


【前園久和:治癒能力を一気に使いすぎてヤバい、でも火傷負った二人を動ける程度には治癒】
【不非希射:展望フロアへGO】

134 名前:宗方丈乃助 ◆d2gmSQdEY6 [sage] 投稿日:2010/06/09(水) 21:34:23 0
>>130
「おい、全然効いてねぇーじゃねぇかYO!!」

蝙蝠ヤロウに貰った名刺で変身してみた俺、宗方丈乃助。
最強の剣を手に入れてここから一気に行くぜって感じだったんだけど、
現実は塩辛いZE!!

『その力は、変身した者の潜在能力を引き出すものだ。
貴様にその程度の力しかなかっただけという事。諦めろ。』

「はぁぁああああ!?ちょ、ちょっと待てYO!!
てめぇ、マジでふざけんじゃねぇーぞ!!」

蝙蝠ヤロウと痴話喧嘩をしているうちに、勝敗は決していたようで。
何だか、俺が助けられたみたいな?

>ストレンジベントの声と友に、萌芽は犬に向けて引き金を引く。
>一度に三連射される赤い光の弾が、動物の急所である鼻の頭に連続して命中した。

『よし、そろそろ頃合だ。カードを引くがいい。』

―FINAL ATTACK!!―

「お?お、おおおおおお!?」

蝙蝠ヤロウが俺の背中にくっ付き、そのまま宙へ舞い上がる。
まるでチョココルネのように回転しながら俺は犬へと突撃していった……


「……やっべ。マジやべ。なんだよ、このパワー……」

呆然とする俺を尻目に、蝙蝠ヤロウは既に息も絶え絶えの犬に向け
飛び上がる。

『”契約通り”、こいつは私が頂くとする』

「ちょ、ちょっと待て!何も命まで取るこたぁねぇーだろ!!」

俺の言葉に、蝙蝠ヤロウは今までに無い冷たい眼をして口を揺らした。

『どこまでも馬鹿な奴だ。弱者は強者に食われる、それが道理というもの』

【犬の処遇について蝙蝠とアフロが仲違い中】




135 名前:李飛峻 ◆nRqo9c/.Kg [sage] 投稿日:2010/06/09(水) 22:01:10 0
上階で突然起こった爆発に飛峻は柚子と顔を見合わせる。
ビル内はカオスの坩堝と化しており、最早何が起ころうと驚きはしないが、爆発という直接五感へ訴える現象は二人の気を惹くには十分な効果があったようだ。

「…どうしよっか」

思案顔でそう呟く柚子だったがその口元は半月に歪んでいる。
明らかに現状を楽しんでいる風だ。

(存外……いや、見た目どおり好奇心が旺盛とみえる)

「本音ならユキちゃんの所にすぐにでも行きたいわ!」

「確かにナ。しかしアソコにも助けを待っている者が居――」

飛峻の言葉は最後まで発せられることは無かった。
否、正確には発することが出来なかった。声の主であると飛峻の首があらぬ方向へと捻じ曲げられていたのだから。

(なんだこの展開!?)

なんの躊躇も予備動作も一切無く、柚子が自身の服を捲りあげたのだ。
着衣の下の下着ごと全部。
完全に虚を突かれた飛峻は顔をそむけこそしたものの、その実一部始終をばっちり拝見していた。

真雪の荘厳な霊峰とは違う、むしろ牧歌的ですらある滑らかな二つの丘陵。
しかし歳相応の伸びやかな曲線はまた別ベクトルの魅力がある。

「だから、一応あの男は倒して起きましょう。…ルーク、なんで目を逸らすの?」

「……もうソッチ向いても大丈夫デショウカ?」

恐る恐るといった感じで振り向く飛峻。

(……オメデタ?)

そこには元通り下ろされた服と、そのかわりにぽっこりと腹部が膨らんだ柚子が居た。
萌芽の姿が無いこと、柚子の言動、そして先ほどの異音。
そこから的確に導き出される答えを飛峻は気にしないことにした。

「さぁ、準備は終わったわ!
行きましょう、ルーク!」

「……了解しタ」

明るく笑う柚子とは対照的に若干疲れた様子の飛峻は、気絶している少女を背負いなおすと階段を駆け上がった。

136 名前:李飛峻 ◆nRqo9c/.Kg [sage] 投稿日:2010/06/09(水) 22:03:49 0
一言で表現するならそこはまさしく戦場だった。
十階、展望エリア。広々とした楕円形のフロアには複数の飲食店が軒を連ね、本来であれば景観を楽しみながら食事をする客で溢れているのだろう。

だが現在展望フロアに溢れているのは煙と埃、そして損壊した建築材。
その惨状の中心に佇むのは明滅を繰り返す紫電。

「アレがアラウミでいいのカ?」

飛峻は戦場から程よく離れたキッチンの一つに身を潜めながら、隣の柚子に声をかける。
道中説明された”もの凄く強い”男。名を荒海銅二。
雷撃を自在に操る文明『崩塔撫雷』の適合者にして、ビル内に屯している武闘派ヤクザの筆頭格。

「しかし……アレ。新種の生物兵器かなにかカ?」

複数を相手取っていながら、優勢なのはむしろ荒海の方だ。
空中に、地面に、縦横無尽に放たれる雷が襲撃者たちを追い詰めていく。

「挙句近づけば電撃のバリア。コレは暢気に眺めている訳にもいかんナ……」

二人の得手はともに接近戦。荒海とは最悪の相性だ。
ならばこそ、決定打を放てる可能性を持つ者を見殺しにするのは自身の首を絞める行為に他ならない。

「俺がアラウミを暫く引き受けル。
ユズコはソノ間に他の連中と接触してみてくレ……なるべく穏便にナ?」

プランを話し終えると飛峻は背負った少女を床に寝かせ、キッチン内の物色を始める。
目的の物はすぐに見つかった。
十数本の金串。十分な長さと鋭利な先端は投擲するのに丁度良い。
キッチン内には大小様々な包丁もあったが、こちらは敵に拾われると危険な武器になってしまうのだ。

「それではユズコ。後は頼んダ」

返答は待たず、飛峻は戦場へ駆け出す。
すでに襲撃者の内一人が壁一枚を隔てた位置へ追い詰められているようだ。

「疾ッ!」

その壁を狙って投擲。金串が壁にぶつかり、ギィンと軋んだ音を響かせた。

無言で首だけを傾け、飛峻を睨みつける荒海。
ただでさえ強面の荒海が見せたその仕草は、気の弱い者ならそれだけで失神しかねない威圧感だ。

直後、荒海がノーモーションで放った一条の雷を飛峻は瓦礫を蹴って跳躍することで避ける。
空中から二本。
空気を切り裂き飛来する金串は、しかし電撃で弾かれてしまった。

「声一つあげないのは流石だナ、ヤクザのメンツってやつカ?」

荒海の足の甲に革靴を貫き一本の鉄が突き立っていた。
先に放った二本に隠すように放たれた三本目。暗器術の一手である。

「ン?ヤクザかと思ったら違ったカ。オマエ……アレだろ?
雷の出前する昔のコントのアレだよナ。今日は他の二人は居ないのカ?それにまだ八時じゃないだロ。
いやー、それにしても生で拝めるとは眼福、眼福」

地面に着地した飛峻が最初にしたことは、荒海への挑発だった。

137 名前:ハルニレ ◆YcMZFjdYX2 [sage] 投稿日:2010/06/10(木) 13:47:16 0

それはある晴れた午後の出来事。
それまで気持ち良く昼寝を堪能していたハルニレは、騒々しい音の連続で夢から覚醒した。

「(何ナンダヨ、コンナ良イ天気ニ限ッテ……)」

音は止む事なく、騒々しさは輪を掛けて喧しくなっていく。
無理矢理起こされて不機嫌なハルニレのこめかみに、徐々に青筋が浮かんでいく。

「オイ、ヅェイソン。オ前様子見ニ行ッテ来イ!」

帽子をアイマスク代わりに深く被り、相棒に呼びかける。
しかし、あのいつもの無気力な声が返事をしないことに不信感を覚え、ハルニレは苛立ちながら振り返る。

「オイ、聞イテンノカヅェイソン!……ヅェイソン?」

振り返った先に、相棒は居ない。その代わり、見慣れない景色がハルニレの前に広がっていた。

「……ドウナッテンダ、コリャ」

ハルニレの疑問に答える者はいない。眉間に皺を寄せ、ハルニレは深い溜息を吐く。
ハルニレは立ちあがり、周囲を観察する。人気の無い裏路地は、どことなく不安感を与える。

何はともあれ、まずは現状把握をしなければなるまい。
人を求めて、ハルニレは歩きだした。


「シカシ……ココハドコダ?」

歩き始めて、既に30分は経過している。ハルニレの記憶には無い景色が、彼を圧巻とさせる。
時間が経つにつれ、ハルニレは不安を覚えていた。もしかしたら夢なのではないかと、思い切り頬をつねってみた。痛かった。

「腹マデ減ッテキヤガッタゼ……」

空腹まで覚え、途方にくれるハルニレ。

「(オ?)」

ハルニレの目に、黒光りする巨大な建造物が飛び込んできた。見たことのないその建造物の巨大さに、ハルニレは息を飲む。

「(スッゲー!何ダ、アノ建物!!)」

不安なぞ吹き飛び、彼は目を輝かせて興奮する。
どこかに出入り口はないかと何気なく視線を彷徨わせていた時、ハルニレは初めて人を発見した。

「オーイ!ソコノオニーサーン!」

なるべく気付いてもらえるように両手を振って、目の前に飛び出す。
黒く長いボサボサの髪を持つ男は、どことなく不気味な空気を醸し出している。
だが、同じく不審な格好をしているハルニレにとって、そんな事などどうでもよかった。
寧ろ、自分と似たような空気を持っている事に安堵の感情が芽生えた位だ。

「ナアナア、ココガ何所ダカ知ラネーカ?俺、寝テル間ニ迷子ニナッチマッテヨー」
 道案内シテクンネーカ?ツイデニ、飯食エル場所モ教エテクレルト助カルンダガ」

ハルニレはそう言うと、まさか目の前の男が自分をこの世界に召喚したとは夢にも思わず。
自分を呼びだした張本人である三浦啓介へと満面の笑みを浮かべるのであった。


138 名前:ハルニレ ◆YcMZFjdYX2 [sage] 投稿日:2010/06/10(木) 13:49:11 0

名前:ハルニレ
職業:亡霊
元の世界:平行世界
性別:男
年齢:25
身長:ひょろたかい
体重:かるい
性格:良く言えばフレンドリー、悪く言えば図々しい
外見:顔の左半分に火傷の痕、赤毛の短髪
   ボロボロのデカい帽子、だぶだぶの赤と白の縞模様の囚人服に黒いズボン、黒ブーツ

特殊能力:【エルム街の悪夢】
     相手に触れる事で、強制的に昏睡状態に陥らせる力。
     そして夢に入り込み、記憶を覗いたり、相手にとって一番恐ろしい物(トラウマ)に変身して追い掛け、弄り尽くす。
     ハルニレ本人が満足するまで、この能力が解けることはない。

備考:亡霊といっても、実質は人間と同じ。腹も減るし眠るし性欲もある。
   元連続殺人鬼。人(特に幼女やショタ)を殺す事に快感を覚えている真正のロリコン。
   死因は焼死。の筈だが、左半分の火傷を残し、死ぬ直前の姿のままでのうのうと生活している。
   普通に接すれば少し図々しいだけの人当たりの良い男……かもしれない。

特技:相手の年齢が分かる、ナイフ投げ

【宜しくお願いします】


139 名前:佐伯 ◆b413PDNTVY [sage] 投稿日:2010/06/10(木) 23:02:49 0
「つ…あ……!?」

口から吐き出される鉄錆色の吐息を見て零は朧朧ながら自分の置かれた立場を把握する。
同時に口内に広がるのは生臭い臭気と不快感。

「ぜ…ん身の血が煮沸……消毒された気分ね」

そう感想を吐き捨て、壁に背を預けるようにして体勢を整うようとする。
が、それも手にべったりと付いた血糊で滑り、結果として床を転げることになる。
もんどりうって仰向けになり空を仰ぐ零。その視界は赤い。

「意外に、キツいわ……死ねそうなのに死ねないって言うのは」

そう呟き、上体を起こして荒海を確認すると、都村が/メタルを振り回しながら果敢に挑んでいた。
狂ったように高笑いを行いながら雷を辺り一面に振りまく荒海に対して都村の戦い方はとても無謀ともいえた。
しかし、それでも都村は引く事をしない。床を走る雷を/メタルで片っ端から切り捨てて直進して行く。
それは、守る物があるから。引けない訳があるから。信念を持って居るから。
無くしたモノを拾い上げるため、手の平から零れ落ちた記憶の砂の一粒。友と過ごしたかけがえのない日々を奪った物への復讐の為……
都村が引く事は絶対に無い。例え、今度は己が「修羅人」となったとしても引く事は無い。

目的があるから。

零は死を感じてはいなかった。正確には死から来る恐怖を、だが……
その事を思い、漠然とだが失望を感じた。自分は一体何なのだろうかと……
彼女には自分自身に関する記憶がほとんどない。
そんな身の上に一抹の不安を感じ、しばらく休みを貰おうかと思った時だ、体中の熱が引いてくるのを感じる。

「は、あ、一日三回が、限度だからな…」

「めんどくせぇ、能力だ…」

「……頭に腕。……」

頭に腕。そう頭に腕の生えた人物がそこには居た。
どうやら治療を施してくれた様だが、そんなことより零には重要な事がある!!

(あれって、やっぱりひじ関節とか動くのかしら……てか、普通に触ってみたい……)

それはやはりつっこみだった!!
沈黙。なんとなく気まずい雰囲気を感じた零は礼を述べ、立ち上がり荒海を眺める。

「あ、ありがとう。……アレ、見て分るようにかなりヤバいから」

言外に隠れているか、避難するように告げ、零は走り出す。
走り出す。がその判断は走り出したその瞬間から間違いだったと思い知ることになる。
零は迫る雷を回避する事さえも覚束ないのだ、それに対して戸惑いながらもカバーに回る都村。

「ごめん……」

「!?無事…って感じじゃあ、有りませんね」

140 名前:佐伯 ◆b413PDNTVY [sage] 投稿日:2010/06/10(木) 23:03:52 0
何処となく棘のある様な、そして心配するような素ぶりの都村。
確かにこの状況では零は唯の足手まといだろう。しかし、そうだとしても零には荒海を止める義務がある。
そんな時、この状況を動かすような来訪者が現れる。まず、中華系と思われる服装の男性。
突然現れた彼は、奇襲とはいえ荒海を圧倒し、その攻撃を封じさせた。
こちらでは無く荒海を先に攻撃したことからも彼は味方と考えていいだろう。もちろん今は。だが。

「これは……風向きが向いてきたという事ですね」

都村はそれを確認するように声を上げる。しかし、その風向きも一瞬で逆向きに変わってしまった。
その向かい風とはその人物を追うようにして現れた大量の追手達。

「荒海の……伯父貴!!」

「げぇ!!アンタ追われてたの!?」

そう簡潔で分りやすい『感謝』の言葉を吐き、零はふらふらと貧血でも起こしたような動きで都村によりかかる。
しかし、それも都村からの「ひっつかないでください」と言う言葉と共に振り払われる。
そして、そんな最中にも続々とヤクザ達は集まってきており、気がつけばフロアには二十人を超すような数の兵隊が集まっていた。

「おぅ。ようやく来おったか……」

「伯父貴!こいつらは……」

「見ての通りや!コソ泥どもが仰山集まってるさかい、ワシが駆除しようと思ってのぅ……
 せやけど、お前らが来たんなら話は早い。かまへん。ぶち殺しにしたれや!!」

そう檄を飛ばす荒海。その迫力は流石としか言いようがない物だ。
そして、その配下の兵隊たちが一斉に動き出す。
各々、手には武器を所持しておりその全てが文明の恩赦を受けているようだ。どれも怪しいオーラが実際に目に見える。

しかし、それを遮ろうとする者も居る。
恐らくは中華風の男の知り合いであろう人物や、先の頭に腕の生えた人物。そして清掃員風の服装の……猫?
どうやらその全員が手を貸してくれるようだ。
一体、何が何だか分らないがこうなったらやるしかないと零は決意を決めた。

「しかし、こうも囲まれていては同士討ちの可能性もあります。
 これは、二手に分かれた方がいいですね」

「みたいね……貴方はどうするの?」

そう問いかける零。

【状況:やばいよ!荒海さんピンピンしてるよ!!】

【目的:A葉隠殉也と合流。
    C迷子の捜索。】

【持ち物:『重力制御』、携帯電話、現金八千円、大型自動二輪免許】



141 名前: ◆b413PDNTVY [sage] 投稿日:2010/06/10(木) 23:04:50 0
「始まるDestiny's Play.これは運命に定められた戦い。そう、逃げられない、逃げちゃいけない。あながうんだ。
 無限に繰り返される筈だった輪廻が終わりを迎えた今、キミを守る者はもう居ない。
 それでも、逃げてはいけない。今の君は翻弄されるだけの存在じゃないのだからね。切り開くんだ。きっと出来る」

時の暗闇を落ち、迷い込んだ場所でそれは呟いた。
その三つの紅瞳はあざ笑う様な三日月形にゆがみ、聖母の温かみで彼女達を包み込む。
声は言葉を紡ぎ続ける。まるでその先に居る人物の心を見透かすように……
その見つめる先は零達の居る場所。そして見つめる人物は佐伯 零。
その声の主は喜ぶように、あざ笑うように、いつくしむように、破滅を願うようにその様を見ることしかできない。
しかし、それは仕方のない事であった。そう、仕方のない事だ。自ら堕ちる事を望んだのだから。

「死ぬのが怖いのかい?そんな訳は無いだろう。怖いのは何もできず、誰も救えず、「全てに拒絶」される事…
 君はいつだってそうだった。だからこそあの悪夢は終わったんだ。だから今度もあながい、切り開くんだ」

そう囁き、励ます声は届かない。
なぜなら、そのメロディは存在さえも許されてはいないものだから。

「この僕を無限地獄の底に突き落とし、解放したようにね……」

自ら望んだ無限大の暗黒がその生を蝕む地獄の中で、それは混じり気のない慈愛の気持ちを込めて感謝の言葉を放つ。

「だから、今度もこのDestiny's Play(運命のいたずら)からあがなうんだ」

【状況:かつて零との接点があった何かが見ている。どうやら全てを知っている様子】

142 名前:タチバナ ◆Xg2aaHVL9w [sage] 投稿日:2010/06/11(金) 01:22:44 0
>>123

事態は拮抗していた。持ち前の変態的執念と犯罪的交渉術によって命と貞操に等価を持たせることには成功したが、
状況を打破する決定打となりえるものは一つもない。拮抗という状態は、ほんの一匙の意思が載るだけで容易く瓦解する。

>「貴方って言う人は徹底的にどこまで変態なんですかああああああああああああああっ!」

「ははは起き上がっていきなり人をどこまで変態呼ばわりとは失敬だね皐月君。どこまで?――――僕に限界があると思うかね!」

『ひていするとこちがくない?』

(さて、どうしたものかな。このまま押し切るには、天秤にかけた重さが足りない。動きは封じられ、アクセルアクセスも使えない。
 僕の用意できる攻撃手段は最早万策尽きたと言ったところか。いやはや参ったな、そろそろ顎が疲れてきた)

褐色少女は答えない。現状を鑑みて、せっかく捉えた命を手放すに値する提案かを吟味しているのだ。
彼女の中の秤が、一ミリでも敵意へ傾けば、予見し得るあらゆる残酷な手段を以てしても、彼女はタチバナをひっぺがすだろう。
その後に待っているのは確実な殺害。抵抗する術を持たないタチバナや皐月を血の海に沈めるのに、腕を二回振り下ろすので充分だ。

そろそろ命のリミットと同義である首の筋肉に疲労限界が訪れようというとき、皐月が胸元を弄り回しながら少女へ歩み寄った。

>「これっ、差し上げます、だから……このビルに閉じ込められている人を助けるの、手伝ってくれませんかっ!」

差し出したのは小さな、指先ほどの結晶。首から下げたロザリオから取り外したらしきそれは、幽玄に輝く神秘の物質。
タチバナが触れたら焼け爛れそうな清楚さを醸すそれは、真珠のようであり、磨かれた鉱石のようでもあった。
褐色少女のまっきりした目元がそれを捉え、透き通った黒目が瞳孔を開く。それからタチバナをチラ見して、言った。

>「わ、分かった分かった! 手伝ってやるよ! 昨日チビっこい奴から盗んだ物も返すからさ! だからコイツをどうにかしてえ!」

少女がサングラスを額に押し上げる。すると、セメント漬けのようになっていたタチバナの体躯は一気に自由を取り戻した。
指の先までしっかり動くことを確認すると、両手で褐色少女の肩を掴んで引き離した。踵を返すと、今まで止めていた呼吸を急いで再開した。
時間にしてわずか一分にも満たない交渉の間、タチバナはずっと息を止めていた。
息を吸ってしまえば匂いを嗅ぐのと同じであり、それでは取引の正当性を欠くと判断したからだ。取り戻すように、激しく肺を蠕動させる。

「ともあれ助かったよ皐月君。――ありがとう、危うく変態になるとこだった」

『えっ』

「このまま彼女の匂いを嗅いでいたら間違いなく変態だったよ。すんでのところで僕は穢れなき紳士ズムを保てた。――君が、救ったんだ」

『だまされるな!こいつむりやりいいはなしみたくしてけむにまこうとしてる!』

「それはそうと皐月君、」

ビシリとわざわざ一回転を加えて、タチバナは皐月に向き直る。両指が指すのは、彼女の纏う修道着。アクセルアクセスを内蔵したそれである。
アクセルアクセスは思念存在故に、その形状には多少の無理が効く。今は修道着の胴体部分を顔にして、そこから両手両足が伸びていた。

「その服飾幼女、アクセルアクセスは"顕現"を解除すると材料に使った物の組成を崩してしまうんだ。君の服ももちろん例外じゃあない。
 どういうことかというと、アレだね、露骨な読者サービスになりかねないね。――アンケート人気が欲しい時は僕に言いたまえ」

タチバナレベルの紳士にもなると、紙面から漂うインクの匂いを脳内変換してご飯三杯いくことも可能なのだが、閑話休題。
彼としては、皐月が読者人気欲しさに魂を売るまではアクセルアクセスの回収を保留しておく所存である。
露骨なサービスは飽きられる。小出しにしてこそ、ただの裸にも希少という価値が上乗せされるのだ。物の価値は積み上げた標高によって決する。
故に、人気がなければないほどサービスを増やして粗悪スパイラルに陥っていく少年誌の現状を、タチバナは憂いていた。閑話休題その2。

「さて、新しい仲間も増えたことだしそろそろ新天地へ旅立ってもいい頃合いじゃないかな。
 問題は、この迷宮がどこからどのように繋がっているか未だに把握出来ていないことd――」


言葉を切ろうとした瞬間、地震が起こった。
地震が起こるとほぼ同時に、視界の全てがぐるりと反転するのを感じた。

143 名前:タチバナ ◆Xg2aaHVL9w [sage] 投稿日:2010/06/11(金) 01:25:20 0
「っつ……この感覚は本日二度目だが、胃の中身を撹拌された気分になるのも変わらないな。
 いやはや、新たな性癖に目覚めた方がいっそ楽になれるかも知れないよアクセルアクセス。そうだそうしよう」

『……りくつこねてるようでじつはなんにもかんがえてないだろおまえ』

気がつけば、床と熱烈な接吻を交わしていた。立ちくらみを防ぐため頭をぶんぶん振って血を巡らせながら起き上がると、
精神で繋がったアクセルアクセスに繋がれた皐月、そして手元には咄嗟に掴み寄せて抱き締めた褐色少女、――の足があった。
生足である。もちろん生足を生育する土壌(人型)もちゃんとくっついているので、スプラッタ的な意味はない。

「……良い足だ。ハリ、ツヤともに申し分なく、弾力のある瑞々しい肌は細い足首とのアンバランスさは形容し難い若さの象徴だね」

『なんでいきなりあしのひんぴょうはじめた!?』

耳元でアクセルアクセスの高い声が響いたのか、例によって気絶していたらしき皐月が目を覚ます。
タチバナは無表情のままスーツの裾をまくり上げると、自分のなまっちょろい足をまろび出して褐色少女の生足と並べる。

「私は生足の精。お嬢さん、貴女が落としたのはこっちの美しい生足ですかな?それともこっちの小汚いおっさんのふくらはぎ?」

『しょうじきものには?』

「もちろん心の綺麗な皐月君には両方差し上げよう。頬ずりするなり添い寝するなりインテリアなんかにもオススメだよ」

『だれがとくするんだよ』

「――神を涜するんだよ。この世界に存在するなら、の話だがね」

表情を変えず、タチバナは足を仕舞い立ち上がる。皐月に手を貸しながら、ようやく目覚めた褐色少女を自分の足で立たせる。
どうやら『暴発迷宮』が何らかの外的要因によって解除されて、ビルの内部構造がもとに戻ったらしい。
タチバナ達がいるのは、BKビルの中でもとりわけ上のフロアのようだった。二十階は下らないだろう。

「んん?微かにだがミーティオ君の匂いがするぞ?残滓はほんの微量ではあるが確かにミーティオ君だ。24時間以内にここを通った形跡がある」

鼻をスンスン言わせながらタチバナはぐるりと首を回す。その視線の先には、荘厳な装飾で彩られた『壁』があった。
すり足で近寄ると、それがドアのあった場所を壁で塗りつぶしたような外観である。そこだけあからさまに、色も材質も違った。

「ここからミーティオ君の匂いを強く感じる。監禁目的のために特殊な被膜剤で扉を封印してあるのかな。
 出入りすることを考えるなら、特定の方法でのみこの壁を通過して部屋に入れる仕組みでもあるのだろうね。恐らくは、『文明』によって」

タチバナは懐からメモ用紙を一枚引っ張り出し、万年筆で『説明書』と書きつけて壁に貼り付ける。
『一筆New魂』が発動し、壁の『説明書』がメモ用紙に羅列され始めた。読み上げる。

「デモグラストポリマー……半液体金属。通常は高硬度の固体だが高い電圧の影響下では流動性質へと変化する金属」

流れてくる文字列の内容を要約するに、そういうことらしかった。
BKビルの住人に高圧電流を発生させる持ち運び可能な機材ないし『文明』を持った人間がいるのだろう。
それで、その限られた者以外に開くことの出来ない壁の奥へミーティオを押し込んだ。内外からの解放を防ぐ為に。

「人質として攫ったのならばミーティオ君は生きている。しかしそれならば彼女の性格を鑑みるにこのまま大人しく勾留されることを
 是とするわけがない。にもかかわらず、未だミーティオ君がここから出た様子がないということは……」

論理を帰結する。

「――ここは正しく"鳥かご"というわけだ。ここは二十余階、窓から脱出というわけにもいくまいだろうしね」

人質であるにも関わらず、人としての扱いを受けていない。そう解釈したタチバナの胸中に、熱を持った衝動が堆積する。
表情にはおくびにも出さずに、しかし万年筆を握る拳を白くして。

「ぶち壊そう。今すぐに」

振り上げた腕を、一気に打ち下ろした。

144 名前:タチバナ ◆Xg2aaHVL9w [sage] 投稿日:2010/06/11(金) 01:28:01 0
振り下ろした拳に握られているのはやはり万年筆。そこに宿った文明、『一筆New魂《セカンドスペル》』。
難攻不落の鉄壁に際して、如何な破壊手段を講ずれば囚われおミーティオをこの手に取り戻せるだろう。

デモグラストポリマーは通常条件下ならば極めて硬い金属である。故に、アクセルアクセスの拳であろうと破壊不能だろう。
皐月の服を犠牲にしてでも一旦顕現を解除し、この壁を材料に顕現し直してみるのはどうだろうか。
否、『暴発迷宮』が解除されたとはいえ、本流の『完全被甲』の文明効果は残っている。文明を素材に顕現はできない。

(メモ用紙に『ドアカッター』と書いて扉と壁の継ぎ目を切り離そうか……?)

それも、よくよく観察してみれば無駄と分かる。壁とデモグラストポリマーは完全に融合していて、継ぎ目がどこかもわからない。
『逸撃必殺』さえ健在だったなら――それも駄目だ。中にいるミーティオまで『破壊』しかねない。

配られたカードは実質で万年筆一本。これでどうにかする他に道はない。

『一筆New魂』はその文明効果の発動に『改名』という手段をとってはいるが、その本質は『情報の書き込み』である。
"凄く硬いスーツ"は"スーツ"に"凄く硬い"という情報を追加で付与したに過ぎない。それが本質。
ならば、さしあたったこの現状に対しても、裏技めいた活路が存在する――

「『一筆New魂』――!!」

壁へペン先を突き立て、流れるように文字を描く。
極彩色の曳光で彩られた言葉は、――――『高圧注意』。

万年筆が壁面を離れた瞬間、壁を紫電が蛇のように這った。蜘蛛の巣が拡大と縮小を繰り返すような動きで、光の筋がのた打ち回る。
『高圧電流が流れるデモグラストポリマー壁』に"改名"されたデモグラストポリマーは、付与された性質に抗わず、銀色の水溜りをタチバナの足元に作った。

開けた空間へ、大股で踏み出す。
皐月や褐色少女も伴って、あたかも凱旋でもするかのように、タチバナは突入した。

「やあ、やあ、やあやあやあやあ勢い余って6回も挨拶してしまったね!?実に丸々一日ぶりの香わしいミーティオ臭に粘膜がいい仕事をしそうだよ!
 全国津々浦々のお日柄は万事快晴最良なり、こんな日は外に出るに限るね。排ガスでも吸って肺を鍛えておかないと、大人になったときツラいぞ!?」

両腕を大鷲のように広げながら、大股で監禁部屋を闊歩する。ミーティオの姿を見つけ、歩み寄るが、

「やや!?なんと君はミーティオ君ではないな?しかも外見こそ美少女のそれだが――パンツの中の真実は一つ!僕の鼻は誤魔化せない!」

よく似た別人(しかも男)だと知るやいなやブリッジで顔を背け、そしてドアの死角になるところにようやくミーティオ(本物)を発見する。
遠くからでも充分に嗅ぎ分けられる、ホンモノの芳香。ミーティオ=メフィストの匂い。

「HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA――!!!!!」

ブリッジしたままカサカサと接近する。ミーティオがこちらを見る眼に、些かの温かみも感じられないことなど露知らず、
タチバナはブリッジ状態からバク転バック宙を華麗に決めてミーティオの胸先三寸の距離まで肉迫する。能面のような表情が割れる。
その日一番の満面の笑み。アルカイックな狂気すら感じるその笑顔をミーティオだけに振りまき、言葉を解放する。

「変わりないようで何よりだねミーティオ君。君に会うために万難を排し壁をぶち抜いてここまで来た。
 途中で何度か死にかけたが、のちに自費出版する予定の僕の自伝的波乱万丈武侠小説3巻を参照すると幸せになれるよ。
 さて、僕らは昨日道端で行きずっただけの仲で、特に積もる話があるわけじゃあないが、休鉄会を代表してこれだけは言っておこう」


咳払い完了。



「――――――君を、助けに来た」


【ミーティオと再会。アクセルアクセスは未だ皐月ちゃんの服。すぐ上の階で荒海さん達が戦ってることは知りませぬ】


145 名前:経堂柚子 ◇OryKaIyYzc[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 15:33:37 0

キッチンの影で、柚子と飛峻は息を吐く。

「しかし……アレ。新種の生物兵器かなにかカ?」

「ねー…あ、これおいしー」

いや、溜め息を吐いて居るのは飛峻だけだ。
柚子はキッチンに有った果物に舌鼓を打ちながら、荒海と遊ぶタイミングを窺っていた。
そんな柚子の様子を見て、飛峻の溜め息が深くなる。

「挙句近づけば電撃のバリア。コレは暢気に眺めている訳にもいかんナ……」

「私の遊び相手にはぴったりだと思うけど」

飛峻の言葉に柚子はそう答えて、果物の残骸を片付ける。
と、近くに有ったイチゴを摘み食い。

「俺がアラウミを暫く引き受けル。
ユズコはソノ間に他の連中と接触してみてくレ……なるべく穏便にナ?」

柚子が口元を紙ナプキンで拭っている間に、
プランを話し終えた飛峻は黙々と準備をしている訳だが、柚子は気付かない。
気付いていたらきっと、真っ先に荒海の下へ向かっていた。

「それではユズコ。後は頼んダ」

柚子がそれに気付いたのは、飛峻が彼女のそばを離れてからだった。

「はれ!? 居ない!」

その姿を探せば、彼は荒海に向かって金串を放った所で。

「〜〜〜〜〜〜っ!」

万が一にも被害が及ばないように、萌芽を身体から取り出し少女の死角の位置に寝かせる。
そこから離れ、栗色の柔らかそうな巻き髪の少女に駆け寄った。


「もぉ! ルークなんて知らないんだからぁ!」


大股で。


146 名前:経堂柚子 ◇OryKaIyYzc[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 15:34:55 0
.


「おぅ。ようやく来おったか……」

「伯父貴!こいつらは……」

「見ての通りや!コソ泥どもが仰山集まってるさかい、ワシが駆除しようと思ってのぅ……
 せやけど、お前らが来たんなら話は早い。かまへん。ぶち殺しにしたれや!!」

柚子にとってその人間達は、出来損ないの玩具だった。
様々な武器で以て柚子を血祭りに上げようとした人間から順に、柚子が血祭りに上げていく。

長槍を持った人間は、槍ごと鎌に刈り取られる。美しい切断面から、腸が飛び出た。
音波の日本刀は避けられ、首から血の噴水を上げる。頭が離れ、そして転げ落ちた。
絶対の破壊を誇る銃弾は、体内に収納する。恐怖に震える腕を掴み、柚子の体内へご招待した。

「―――ひ、ひぃい! 化け物おおおおぉ!」

一部始終を見ていた只の人間が、柚子を罵倒した。

「だから?
だから、それがどうかしたの?」

罵倒した人間を、柚子の細腕が捕まえる。
相手はただの少女の筈なのに、自分はヤクザの筈なのに、―――腕力が、全く敵わない。
ヤクザは、失神した。

「私は化け物だよ? ユキちゃんの為なら、いくらでも化け物になってあげる。
この力はそのためにしか理由が無いの。…きっと、貴方には理解出来ない。」

落ち着いた、だけど部屋の人間全員に聞こえる声で、柚子は宣言する。
そして、捕まえた男の喉を折りながら、高らかに笑った。

「あははははは! 初めまして! 私はユキちゃんの為の『黒の女王』! 名前は経堂柚子!
私はユキちゃんの飼い犬だけれど、きっとユキちゃんは願うからあなた達を助けてあげる!
ねえ猫のあなた、『パンプティ・ダンプティ』!
巻き髪のお姉さん、『赤のナイト』!
私は何をすればいい!?」

笑いながら、嗤いながら、鎌は敵の首を次々と捉えていった。



【柚子:取り敢えず敵をバッタバタなぎ倒してる。
話は戦闘しながらでも出来るよ!】

147 名前:月崎真雪 ◆OryKaIyYzc [sage] 投稿日:2010/06/12(土) 12:30:45 0


萌芽の銃が犬を撃ち抜いた。アフロ少年が犬に突撃した。
犬はすっかり弱って、スルスルと、小さくなっていく。

「終わった…の?」

扉を開けて、真雪は部屋の中へ入った。犬に歩み寄り、抱き締める。

「何だったんだろうねえ…」

弱った犬自身にも分からないだろうが、真雪は犬にそう尋ねた。
自分の名前を呼ぶ声がして、真雪は顔を上げる。萌芽が呆れたように溜め息を吐いていた。

「あ、萌芽…ごめん…」

危ないから待っててと言ったのに、真雪は結局来てしまった。
萌芽が怒るのも道理だろう。犬を抱えたまま、謝った。


ふと、アフロ少年の事が気になって真雪は後ろを向く。…何故か蝙蝠と喧嘩していた。

「面白い子ね」

萌芽にしか分からない音量でそう呟く。
と、どうやら喧嘩は終わったようだ。アフロ少年がこちらに来た。

「いきなり逃げ出してごめんなさい…それと、助けてくれてありがとう…」

彼にそう告げると、アフロ少年は照れたように笑った。

「私は月崎真雪。あなたのお名前は?」

どうやら、彼の名前は宗方丈乃助と言うらしい。丈乃助から、これからどうするのかを訊かれた。

「私はこれから、捕らわれのお姫様の所に行ってみようと思うの。
その…出来ればあなたも一緒に行かない?」

【真雪:丈乃助に打診】


148 名前:三浦啓介 ◆6bnKv/GfSk [sage] 投稿日:2010/06/13(日) 17:44:08 0
>>137

三浦啓介は、五臓六腑を炉として腹の中に業火を奮わせていた。
有り体に言えば、ブチ切れていた。

と言うのも、彼はほんの数分前までは満悦至極の上機嫌で悦に入っていたのだ。
だが雲の上を歩むような足取りで彼が非常階段を下っていた所に、眼鏡の少年が訪れた。
少年は挨拶も名乗りも無しに三浦へ銃を突き付ける。
しかし難なくそれを退けた彼は機嫌が良いからと少年の暴挙を見逃し、更にはゲームと言う名目でチャンスさえ与えた。
のにも関わらず、少年は無鉄砲に粋がってみせたくせに、いざ窮地に陥ると最後っ屁さえ残して逃走していった。

事の粗筋に三浦啓介の主観を若干加味した上で簡潔に語ると、こうなる。
少年の暴挙は、三浦の機嫌を完膚なきにまで損ねさせるには、十分過ぎた。

> 「オーイ!ソコノオニーサーン!」

ハルニレが彼に声を掛けたのは、そんな時の事だった。

> 「ナアナア、ココガ何所ダカ知ラネーカ?俺、寝テル間ニ迷子ニナッチマッテヨー」
>  道案内シテクンネーカ?ツイデニ、飯食エル場所モ教エテクレルト助カルンダガ」

良く言えば人懐っこい、虚飾なしに言えば図々しい事極まりなく、ハルニレは頼み事を立て並べる。
対して三浦は――怒気を助長させるでもなく、寧ろ冷静な思考を取り戻していた。
付け加えるなら、先程までの怒りは一切欠けさせる事なく、だ。
相対しても身体は微細にしか揺らがず、どうやらイデアへの指針にはなり得ないようだが、今この場にはお誂え向きでもある。
フェノメノンの右腕を確保している今、異世界人は体のいい駒としても扱える。
運良く拾い上げる事が出来たならば、それはそれで儲け物でもあり、いずれにせよ三浦に損は無い。
彼らが理知の及ばぬ暴挙にでも走らぬ限りは、だが。

「それは大変だねえ! だけど道案内と言うからには何処から何処へ行きたいのか、ちゃんと僕に告げられるのかな!?
 もし告げられるのなら、そして告げられなくてもだけど……僕とゲームをしようじゃないか!」

白衣を羽織り直し、包んであったフェノメノンの右腕を携え両腕を左右一杯に広げて、三浦は饒舌に語る。

「ゲームと言っても、なぁに簡単なものさ! 今からこの建物の中に飛び込んで、チビで眼鏡の小生意気なクソガキを嬲り殺すだけ。
 腹を裂いても首を切っても頭をかち割っても何をしようと最終的にブチ殺せばそれでよし。
 どうだい、見たトコ君はまともじゃなさそうだ! そんなの至極単純な初歩で容易で手もなく簡単簡明過ぎて朝飯前の造作もない事だろう?」

広げた腕を今度は目線よりも僅かに高い所に運び、三浦の弁舌は増々もって加速と回転を得る。
顎を上げて微かな高みから紡がれる抑揚の激しい語り口は、それだけでも彼の鬱憤晴らしとなっていた。

「そんな容易く易しく他愛が無さ過ぎて拍子抜けするくらい手間いらずな仕事をやってのけるだけで、
 僕は君に、道案内も美味しい食事も、僕の能う事ならなんだってしてあげようじゃないか! 楽しいゲームだと思わないかい!?」

高らかに謳い上げた彼は高揚に任せて閉ざしていた目を開く。
そうして目の前にいる紅白の囚人服に黒いズボンとブーツの、明らかな不審者の体を晒す男を俯瞰する。

「あぁそうそう、同じ子供でも女の子には手を出しちゃいけないよ? 僕の娘達だったら、君が逆にゲームオーバーになってしまう。
 そして一息に語りはしたけど、君がゲームに乗るも乗らないも自由だ。後者なら、僕はこのまま帰らせてもらうけどね」


【三浦プチギレ。カズミ狩りゲームを提唱】

149 名前:竹内 萌芽(1/5) ◇6ZgdRxmC/6[sage] 投稿日:2010/06/14(月) 01:36:06 0
「終わった……みたいですね」

みるみるうちに小さくなっていく犬(ねこ?)を見ながら、萌芽はほっと一息ついた。

「でも、ちょっとショックです。僕とジョジョくんの二人がかりであれだけやって傷一つ負ってないじゃないですか」

元のサイズに戻った荒海ねこを遠目に見ながら、萌芽は呆れながら少しだけ微笑む。

”あの犬の首輪に憑いてた『限界突破』《オーガノイザー》の効果だろうなー
 ……でもどっちにしろ、あいつ長くはもたないぞ”

「自分の命を引き換えに、他の誰かを守る。……ですか」

なぜか胸がちくりと痛むのを感じながら、萌芽はねこと、彼女を抱える真雪の元へと歩みよる。

「真雪さん……」

「あ、萌芽…ごめん…」

ねこを抱えたまま謝ってくる真雪に、萌芽は軽くため息。
別に本気で怒っているわけではない、待っていてと言って聴く真雪ではないだろうことは萌芽も予想していたから。
ただ、もう少し自分を大事に思ってほしかっただけ。
もしも万が一のことがあった場合、一番危ないのは、戦う術を持たない彼女だろうから。

(そのときは、僕も自分の命を引き換えにしてでも真雪さんを守ろうとしたりするんでしょうか?)

正直なところ萌芽は、荒海ねこがなぜ自分の大切なもののために命を張れるのか理解できないでいた。
実際は彼も、真雪や尾張の傷や痛みを請け負うなど、それに近い行為をしている。
しかし、彼が理解できないのは、今まさに他人のために自分の身を危険に晒している、他ならぬ自分自身だった。

150 名前:竹内 萌芽(2/5) ◇6ZgdRxmC/6[sage] 投稿日:2010/06/14(月) 01:37:12 0

ふいに、真雪の首が動く。
彼女の視線の先では、丈乃助がコウモリと喧嘩を繰り広げていた。
変身したりピンク色の変なものを操ったり、まったく面白い人だ。

「面白い子ね」

一瞬心の中を読まれたのかと思った萌芽の体が、ぴくりと跳ねる。
彼は照れ隠しも含めて、彼女の声に愛想笑いで返した。

「ぅ……ぅぅ……」

真雪の腕の中で、ぐったりとしていた犬がゆっくりと顔をこちらに向ける。
犬は彼女の腕の中からよたよたと這い出すと、萌芽の足元にこれまたおぼつかない足取りで近づいてきた。

「ウチは……負けたんか……。殺せ、このままやとオジキとお嬢さんに合わす顔がない!」

どうやらさっきの”混線”の影響がまだ残っているらしい。
萌芽には彼女の思考が、まるで少女の声で犬が話しているように感じられた。

「聞こえんのか!! 殺せ! ウチは……ウチは結局誰も守れんかった!!」

吼えながら、赤いブーツに包まれる萌芽の右足にかじりつくねこ。
その頭を、萌芽はそっとなでた。

「……なんのつもりや、慰めか、やめい、空しゅうなってくるだけや」

自嘲する彼女に、萌芽はとくに感情をこめずに応える。

「なんのつもりなんだか、僕にもよくわかってないんですよね」

「ッ!!?」

人間である彼が正確に自分の思考を読み取ったことに驚くねこ。
それ以上に彼の思考がクリアに脳内に流れ込んでくることに驚く彼女に、萌芽は構わず続ける。

「僕は、ほんとにさっきから自分がよく分からないんです、だから、考えるのやめることにしました。
 僕はキミを、キミのご主人様のところに連れて行きます。なぜだか分からないけど、僕はそうしたいらしいですから」


151 名前:竹内 萌芽(3/5) ◇6ZgdRxmC/6[sage] 投稿日:2010/06/14(月) 01:38:04 0

「なに勝手なことをいうてるんや!!」

抗議するために吼える彼女に、もるがはふふんと微笑む。

「勝手なことを言われるのも仕方ないじゃないですか、なんたってキミは今、文字通り”負け犬”ですよ?」

「なんやて!! もういっぺん言うてみぃ!!!」

わんわんとうるさい彼女を、萌芽はひょいと拾い上げた。
いつの間にか丈乃助と話している真雪の方に向き直りながら、続ける。

「いきなり逃げ出してごめんなさい…それと、助けてくれてありがとう…」

礼を言う彼女と、照れたように笑う丈乃助。
真雪の横顔を見ながら、なぜだか萌芽は胸にちくりと刺さるものを感じる。

(真雪さんって……誰にでも優しいんですよね……)

何を考えているんだ、と首を左右に振る萌芽。

「私はこれから、捕らわれのお姫様の所に行ってみようと思うの。
その…出来ればあなたも一緒に行かない?」

「え、ちょっと真雪さ……」

止めかけて、萌芽はなぜ自分がこの提案を止める必要があるのかと考えてみる。
そうだ、彼には回復能力がある。
未だにあの小さなシスターも自分の怪我を治してくれていないということは、
ここにいる彼にそれを頼んだほうが得策ではないのか。

それをとりあえず提案してみる萌芽だが、いま調度能力が使えなくなっているとかでその提案は却下された。

と、いうことは今自分の怪我を誰かが治してくれると期待するのは、ちょっとアレかもしれない。
今は自分の本体を管理してくれているはずの飛峻が、自分の体に止血処理を施してくれているのを願うばかりだ。
っていうか、先ほどから体になにかあたたかくてヌメヌメした感触がへばりついている気がするのだが気のせいだろうか?

152 名前:竹内 萌芽(4/5) ◇6ZgdRxmC/6[sage] 投稿日:2010/06/14(月) 01:39:13 0

「ハァ、じゃあ行くならとっとと行きますか」

ため息を吐きながら、萌芽は右手に持つ銃のグリップを顔の横に持っていく。

「"Three-eight-two-one"」

”Bloody-Fang come closer!! ”

”ってこれなんだもる!! アタシ聴いてないぞ!!”

「あはは、この不安定な能力の使い方、ちょっと分かってきましたよ」

笑いながら、萌芽は誰も居ない空間に向かって引き金を引く。
放たれる光弾が床に命中し、そこから巨大な火柱が上がった。
火柱を切り裂きながら現れるのは、血のように真っ赤なボディをした一台のバイク。

「”ACCELVENT”と”SHOOTVENT”を”あやふや”にして、さらに『永久機関』《ノイマンズドリーム》のエネルギーと僕の”才能”を使って創ってみました」

スマートで、全体的に鋭い、まさに『血塗られた牙』のようなボディーライン。
車体の左右には、四門ずつのミサイルユニットが取り付けられている。
さらに後部座席の後ろには、尻尾のような形をした赤いパイルバンカー。
それはまさに戦闘用バイクと呼ぶにふさわしい外観をしていた。

「なんか見た目が犬っぽいのは、このわんこのせいですかね」

萌芽の腕の中でぶすっとしているねこに笑いかけると、萌芽は彼女を真雪に渡し、そそくさと真っ赤なバイクにまたがる。

「何してるんです真雪さん、はやく乗ってください」

ぽいと、真っ赤で凶悪なデザインのヘルメットを真雪に投げながら萌芽は言った。

「ジョジョくん……? ま、ついてこれるでしょ。これ二人乗りですし」

少し拗ねた口調でそう言った萌芽は、エンジンをふかすとそのまま丈乃助を置いてけぼりにして走り出した。

153 名前:竹内 萌芽(5/5) ◇6ZgdRxmC/6[sage] 投稿日:2010/06/14(月) 01:40:55 0

普通のバイクの速度に、『移送空間』《ムービングランド》による加速。
目的の部屋の前には、一人の男が立っていた。

「キミのお仲間ですか?」

後ろの席の真雪がかかえているねこに訊ねるが、彼女は真雪の腕から飛び出ると、男を威嚇するように唸り始めた。

「こいつや……!! ウチの仲間を殺して、ウチが防げんかった相手……!!」

「襲い掛かるのとかはなしですよ、今の話を聞く限り、手負いのキミが勝てる相手じゃないでしょう?」

言いながら萌芽はバイクから降りる。
目の前の男から目は外さずに、右腰に『永久機関』《ノイマンズドリーム》のエネルギーで接着させたSHOOTVENTがあるのを確認する。

「僕たち、この先にいる人に用があるんです、通してもらえますか?」

ターン終了:
【再び丈乃助置いてけぼり:大丈夫、全自動もるもるがあるよ!】
【鰊と接触:もしものときはミサイルぶっぱなつ覚悟でござ候】


154 名前:宗方丈乃助 ◆d2gmSQdEY6 [sage] 投稿日:2010/06/14(月) 19:28:33 0
>>147
>>150

>吼えながら、赤いブーツに包まれる萌芽の右足にかじりつくねこ。
>その頭を、萌芽はそっとなでた。

「おい、犬ちゃん。そう怒るなって。俺らは敵じゃねぇーって。
そいつも、思ったより悪い奴じゃねぇーみたいだしな。」

萌芽を指し、小さく笑ってみせる。


『ところで頭の方は大丈夫か?蒸れてそうだが』

「蒸れるって何だよ!?え?」

>「いきなり逃げ出してごめんなさい…それと、助けてくれてありがとう…」

『おい、お前に礼を言っているんだ。答えてやれ』

「だからこれは自然のモンで……」

『もう頭の話はいい。彼女に向いてやれ。』

頭のズレを直しながら振り返るとそこにはベリープリティな
女の子がいやがった。さっきの彼女じゃん?
俺はにやけそうな顔を無理やり引き攣らせる。

> 「私は月崎真雪。あなたのお名前は?」

「あ?俺?俺は宗方丈乃助。」

『とてつもない馬鹿だ。あまり頼りにはならんぞ。』

頭の周りで飛ぶ蝙蝠ヤロウが笑いながら言いやがる。

>「私はこれから、捕らわれのお姫様の所に行ってみようと思うの。
>その…出来ればあなたも一緒に行かない?」

「だいたい、分かったぜ。俺もその姫様ってのを探してんだ……一緒に
いこ(ry」

ポケットに手を入れ、片方の腕を真雪へ向け差し出した。
やっぱここはカッコつけるとこっしょ。





155 名前:宗方丈乃助 ◆d2gmSQdEY6 [sage] 投稿日:2010/06/14(月) 19:38:01 0
>「何してるんです真雪さん、はやく乗ってください」

>ぽいと、真っ赤で凶悪なデザインのヘルメットを真雪に投げながら萌芽は言った。

「…………どうしたんだ?照れることはないじゃねぇーか。
帰りに一緒にイチゴパフェでも食うかい?勿論俺の奢りッス!」

目を伏せて真雪の反応を待つ丈乃助。しかし、反応が無い。
まるで、誰もいないかのようだ。

>「ジョジョくん……? ま、ついてこれるでしょ。これ二人乗りですし」
>少し拗ねた口調でそう言った萌芽は、エンジンをふかすとそのまま丈乃助を置いてけぼりにして走り出した。


「って、また置いてけぼりかーい!!」

気が付くと、既にバイクは加速しながら去っていく途中だった。
あまりの出来事に俺の頭から、アフロが落ちかけた。

『おい、ずれてるどころか落ちかけているぞ。』

蝙蝠が必死で俺のアフロを支え、そのまま中へ入っていった。
髪型は、元の体勢に戻り危機を脱したようだ。

「仕方ねぇ!!こうなったら奥の手だぜ……」

『奥の手?興味があるな……何だ?』

俺はクラウチングスタートの体勢を取って前方を睨んだ。
準備はOKッス。

「……徒歩だ!!」

『バカか。』


【徒歩で移動開始、全自動もるもるの誘導付き】

156 名前:カズミ ◆IPF5a04tCk [sage] 投稿日:2010/06/15(火) 23:44:48 0


展望フロアへと向かった希射の背中を見送った後、カズミは八重子と琳樹へ向き直る。
彼が脱出しろと言った以上、自分達はそれを遂行するだけだ。

「さーてと、ここに長居は無用だね。さっさとここからトンズラこかせてもらうとしま……」

そう言いながら、八重子が目指していた脱出経路へと視線を向けたカズミの言葉が、途中で途切れた。
驚愕のあまり強張ったカズミの顔を、大量の冷や汗がぶわりと伝う。

先程まで誰も居なかった筈の通路で仁王立ちしている少女。カズミはその少女に釘付けになっていた。
長い黒髪に紺色のベストに、赤と緑のチェックスカートを着た、一見どこにでもいそうな子供。
だが、ニヤニヤと笑う少女の瞳は、異質な赤でギラギラと染められている。

「き、ば、つか……!?」

震える唇から漏れた名前。対する少女、もとい木羽塚椿は、そのニヤニヤとした笑いを止める事無く歩み寄ってくる。
何故彼女が此処にいるのか。いいや、これは寧ろ想定の範囲内に入れておくべきだったか。無意識に、下唇を噛む。

「あれェ、アンタ……茂ィ?久しぶりじゃン。ゲンキしてた?」

「黙れ。何でお前が此処にいる?」

咄嗟に銃を構えるカズミに、とりたてて怖がる素振りも見せずに木羽塚は近づく。

「アンタ、転校したんじゃなかったっけ。何時戻っテきたんだヨ?」

「質問に答えろ。何でお前がここに居る?」

苛つき声を荒げるカズミ。木羽塚はそれを見て可笑しそうにクスクスと笑う。

「決まってンじゃん。公文潰しだヨ」

「ッ!!」

怒りに任せ、拳銃の引鉄を引く。だが銃弾が木羽塚に当たる事はなく、当の本人はケラケラと笑いながら去っていった。
怒りを露わにしたまま、カズミは顔だけを八重子の方に向け、言い放つ。

「八重子は琳樹さん達を避難させて。僕はアイツを追う」

「待って!」

そのまま駆け出しかけたカズミに、八重子はポケットから出した指輪を投げ渡す。
それを受け取ったカズミは、驚いたような顔をして八重子を見る。

「身体強化!?」

八重子はニッコリと笑い、親指をつきたてる。
カズミもつられるように笑い、言った。

「5分後にまた会おう」

そして、今度こそカズミは駆け出した。身体強化を指にはめて。




157 名前:カズミ ◆IPF5a04tCk [sage] 投稿日:2010/06/15(火) 23:45:33 0

<ピルリピルリ♪>

木羽塚を追い掛けて全力疾走するカズミのポケットから、軽快な電子音が鳴り響く。
走るスピードはそのまま、ポケットから黄色い携帯電話を取り出す。

≪着信:センパイ≫

「はい、こちらカズミ!……オレオレ詐欺ですか?」

いつもの軽口を叩いた瞬間、怒号が飛ぶ。

「冗談ですよ。そんなにカリカリしないで」

耳から携帯電話を遠ざけつつも、会話を続ける。
               ターゲット
「現在地はBKビル内部!先程≪木羽塚椿≫に遭遇、追跡中です!」

死体の山や横たわるヤクザ達、その他障害物を乗り越えながら、カズミは淡々と状況報告を続ける。
それにしても、身体強化をもってして尚、木羽塚はすばしっこい。見失わないようにするので精いっぱいだ。

「うわッ!?」

次の階段へ続くコーナーを曲がろうとし、カズミは何かに衝突し吹っ飛ばされ、尻餅をつく。
痛む尻を擦りながら、衝突した物の正体を見ようと視線を向ける。

「痛たー……って、おチビさん?!」

衝突物の正体は、おチビさんこと三浦六花であった。唐突な再会に目を丸くさせながらも、カズミは立ち上がり、笑う。

「こんな所で何してんの?まさか、その歳で迷子とか?
 迷子センターは一階にある筈だから、案内してあげようか?」

なーんてね、と冗談を飛ばし、クツクツと馬鹿にしたように笑う。
だが、目的を思い出し、カズミは慌てて転がった携帯電話を拾う。

「あいにく、今おチビさんに構ってる暇はないんだよね
 あ、センパイ?いえ、たった今、三浦六花と接触しました。害はなさそうなのでこのまま追跡を……」

突如、カズミの唇が動きを止める。ただ、電波に乗せられた言葉を、ただ聞き入れる。
表情を無くしたカズミの冷めたような視線は、目の前の三浦六花へと注がれた。

「……了解」

電源ボタンを押し、無表情はあの厭味ったらしい笑顔へと変貌する。
そして、ヘッドホンからコンセントコードを取り出し、プラグの部分を持ち構える。

「ごめん、前言撤回するよ。たった今命令が下ってね。
『三浦六花を捕縛せよ』、だってさ。人遣い荒いよねー」

ヒュンヒュンとカウボーイのようにコードを振りまわし、カズミはニッコリと笑う。

「一緒に来てもらうよ、おチビさん。ふんじばってでも連れて行く」

そして、そのコードの先を三浦六花へと投げ飛ばした。

【カズミ:現在地不明
 三浦六花と接触、三浦六花捕縛作戦を開始】

158 名前:ハルニレ ◆YcMZFjdYX2 [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 01:08:28 0
>>148

>「それは大変だねえ! だけど道案内と言うからには何処から何処へ行きたいのか、ちゃんと僕に告げられるのかな!?
> もし告げられるのなら、そして告げられなくてもだけど……僕とゲームをしようじゃないか!」

「ハァ、ゲーム」

男の不自然にも思える妙に明るい口調と、いきなりの提案に首を捻るハルニレ。
唐突に何を言い出すんだ、この男はと言わんばかりに目を丸くし、三浦を凝視する。

「(聞ク相手ヲ間違エタカ?)」

もしかしたら、ちょっと頭が可哀想な人種なのだろうか。
だが、その≪ゲーム≫という単語に興味をそそられたのもまた事実ではあるのだが。
話を聞いてからでも遅くはないかと判断し、ハルニレは静聴を続行する事にした。

>白衣を羽織り直し、包んであったフェノメノンの右腕を携え両腕を左右一杯に広げて、三浦は饒舌に語る。

>「ゲームと言っても、なぁに簡単なものさ! 今からこの建物の中に飛び込んで、チビで眼鏡の小生意気なクソガキを嬲り殺すだけ。
> 腹を裂いても首を切っても頭をかち割っても何をしようと最終的にブチ殺せばそれでよし。
> どうだい、見たトコ君はまともじゃなさそうだ! そんなの至極単純な初歩で容易で手もなく簡単簡明過ぎて朝飯前の造作もない事だろう?」

>広げた腕を今度は目線よりも僅かに高い所に運び、三浦の弁舌は増々もって加速と回転を得る。

「(オイオイ、目ガ笑ッテネーゾコイツ。マルデ"プッツン"シタ時ノヅェイソンダナ)」

ハルニレの脳裏に蘇る、獲物を目の前にした時の相棒が、目の前の男に重なる。それほどに、三浦が怒りに満ちているのが、彼には手に取るように解る。
また、見た目からは想像出来ないような、否、ある意味見た目通りの不穏な発言を続ける目の前の男に、流石のハルニレも少し引いていた。
だが男、三浦はそんなハルニレの心情など全くお構いなしに、更に弁説を続ける。

>「そんな容易く易しく他愛が無さ過ぎて拍子抜けするくらい手間いらずな仕事をやってのけるだけで、
> 僕は君に、道案内も美味しい食事も、僕の能う事ならなんだってしてあげようじゃないか! 楽しいゲームだと思わないかい!?」
>「あぁそうそう、同じ子供でも女の子には手を出しちゃいけないよ? 僕の娘達だったら、君が逆にゲームオーバーになってしまう。
> そして一息に語りはしたけど、君がゲームに乗るも乗らないも自由だ。後者なら、僕はこのまま帰らせてもらうけどね」



159 名前:ハルニレ ◆YcMZFjdYX2 [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 01:09:10 0

ようやく語り終えたのか、やっと良く回るその舌の運動を止め、口を閉ざした三浦。
その三浦を待っていたのは、神経を逆撫でするような、場違いにも甚だしい拍手。

「オ前、政治家ニ向イテルナ。内閣狙エルンジャネーノ?」

その言葉の直後、どこが笑うポイントだったのかは解らないが、急に噴出し爆笑するハルニレ。
暫く腹を抱えて笑い続けていたものの、三浦の視線に気づき、気を取り直すかの様に咳払いを一つ。

「ウォッホン!……エ―ト、要ハソノ≪クソガキ≫ヲ殺セバ良インダナ?
 デ、アンタノ娘サンニハ手ヲ出シチャイケナイ、ト。OK、把握シタゼ」

ハルニレには、とりわけ急ぐ用事もなく、目の前の男は貴重な情報源だ。偶には、こんな遊びに付き合うのも悪くは無いだろう。そう決断を下した。
久々の快楽に、裂けんばかりに口を三日月の形に歪ませるハルニレ。その瞳は、『殺気』で燃え上がっている。
しかし、その殺気を急に仕舞い、ハルニレは浮上した疑問を三浦にぶつけた。

「ソノゲーム、乗ルゼ。ダケドソノ前ニチョットシタ質問タイムダ。
 マズ、ココハ何処ノ"ストリート"ダ?少ナクトモ"パージルバニア"ジャネーッテコタァ解ルンダガ……」

アアソレト。

「オニーサンノ名前ト、連絡先カ住所モナ。俺ガ仮ニコノゲームヲ引キ受ケルトシテ、アンタハズット此処ニイル訳デモ無インダロウ?
 今カラ帰リマスッテ顔ダッタシ。セメテ、待チ合ワセ場所トカ決メテオイタ方ガ良イダロウ?ゲーム中ニ居ナクナラレテモ困ルシナ」

ホラ、俺迷子ダシと付け加え、どこからかペンと手帳を取り出す。
ああそういえば、とばかりに顔を上げ、にっこりハルニレは笑う。

「ソウイヤー、自己紹介ヲ忘レテタナ。俺ノ名前ハ"ハルニレ"。
 "マリス・ストリート"ノハルニレダ。宜シクナ」


【ハルニレ:取り敢えず三浦から情報を搾れるだけ搾りとる】


160 名前:ミーティオ=メフィスト ◆BR8k8yVhqg [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 16:28:39 0
「……おかしいな、管理室に誰もいないなんてことはないはず……」

 壁から生えたボタンをカチカチと押しつつ、遥は一人ごちた。

「何だ? そのボタンは」

「連絡用のブザーさ。ここの音声は常に盗聴されてるわけじゃなく、管理室から連絡をとる時にしか聴かれない。
 だから、こっちから連絡をとりたい時は、このブザーを鳴らせば誰かが反応するはずなんだけど……」

「誰も反応しねーな」

「うん……さっきから何回も地震があったみたいだし、忙しいのかな」

 実は、間隔を空けて二度ほど、この部屋は大きく揺れた。(迷宮化および迷宮解除の際)
 不安がるミーティオに遥は「文明が組み込まれてるから、倒壊することはない」と言いはしたものの、
 そもそもが『このビルが揺れる』ということ自体が、異常の中の異常である。

「誰もいねえなら好都合だ。なんとかして脱出してやる」

 ミーティオは不敵に笑い、外界と部屋を隔てている扉に手を触れて調べ始めた。
 開かないことは既に知っているが、脱出口はやはりここしかない。

「無駄だってば。君、鎖のこと忘れてない? 君がそこにいると僕の行動範囲がすごく狭まるんだけど」

「うるせえな……ん?」

 何かが聞こえた気がして、ミーティオは扉に耳を近づける。
 空耳ではない。確かに、誰かが扉のすぐ向こう側で声を出している。低い声だから、おそらくは男。

「おい、誰かいるぞ」

「本当に?」

 遥が答え、ソファから立ち上がったのと同時。

 ――幾重もの紫電が扉に走った。

「うおっ、あぶねえ!!」

 危うく感電しかけ、ミーティオは慌てて顔を反らした。その間にも電流は流れ続け、ばちばちと剣呑な音を響かせる。
 やがて扉の一部――壁との接着部分――に変化が訪れる。完全に一体化していた金属が溶け始めたのだ。
 否、溶けたのではない。デモグラストポリマーの特殊な性質により、液体状になったのである。

 そして、扉は本来の姿を取り戻した。

 呆然としている二人をよそにドアは勢いよく開き、数人の人物が入ってきた。

>「やあ、やあ、やあやあやあやあ勢い余って6回も挨拶してしまったね!?実に丸々一日ぶりの香わしいミーティオ臭に粘膜がいい仕事をしそうだよ!
> 全国津々浦々のお日柄は万事快晴最良なり、こんな日は外に出るに限るね。排ガスでも吸って肺を鍛えておかないと、大人になったときツラいぞ!?」

 タチバナ。そして――服装は違うが、カフェで見かけた無謀なシスター。もう一人は知らない女の子。
 ドアの陰になっているミーティオが見えなかったらしく、彼らは部屋の中に入り込んできた。

 ミーティオの中で、昏く冷たい感情が波紋を広げていく。


161 名前:ミーティオ=メフィスト ◆BR8k8yVhqg [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 16:29:24 0
「だ、誰……!?」

 怯えすら見せる遥に、タチバナは両手を広げて近づいて行った。変態だ。

>「やや!?なんと君はミーティオ君ではないな?しかも外見こそ美少女のそれだが――パンツの中の真実は一つ!僕の鼻は誤魔化せない!」

 紛れもなく変態であった。

 悪夢のような動きでタチバナは身体を反らし、四つん這いになった。ただし背中が下の、ブリッジ体勢である。
 その眼が怪しく輝き、ミーティオの姿を視野に収めた。高らかに吠える。

>「HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA――!!!!!」

 驚くべきことに、彼はそのままカサカサと歩行を始めた。人間業ではない。
 しかも最終的に腕の力だけで跳躍し、縦回転横回転し、音もせず着地。上げた顔はなぜかミーティオの胸元へ。

 役者のように整っている立ち姿を存分に見せつけた後、タチバナは満面の笑みを浮かべた。

>「変わりないようで何よりだねミーティオ君。君に会うために万難を排し壁をぶち抜いてここまで来た。
> 途中で何度か死にかけたが、のちに自費出版する予定の僕の自伝的波乱万丈武侠小説3巻を参照すると幸せになれるよ。
> さて、僕らは昨日道端で行きずっただけの仲で、特に積もる話があるわけじゃあないが、休鉄会を代表してこれだけは言っておこう」

>「――――――君を、助けに来た」

「そうかい。そりゃまあ、何があったか知らねえけど、ありがとよ――」

 がらがら。がらがらがら。懐かしい音を聞いて、ミーティオは顔を綻ばせる。
 開き放たれているドアから、最愛の相棒――隕鉄が、がらがらと地面をこすりながら登場した。
 どうして無機質が勝手に動いているのかわからないが、とりあえず拾い上げた。手に馴染む感触。失われた半身が戻ったような気にさえなる。

「――あたしに殺されるために、来てくれて」

 抑えていた殺意を解放する。
 自分の全身に細かく重力修正を加え、最高の威力で振るわれた鉄パイプは――人間の反応速度を超え。

 タチバナの無防備な側頭部に、命中した。



162 名前:三浦啓介 ◆6bnKv/GfSk [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 20:53:54 0
三浦六花は屋上へ向かう途中、ふと背後から響く喧しい足音に振り返った。
同時に彼女の隣を、黒髪と紅碧のスカートを揺らした少女が走り抜ける。
すれ違った際の風に踊らされる白髪を抑えながら、六花は少女の後姿を視線で追う。
しかしもう一つ、追い縋るような足音が続いている事に気付き、再度背後を振り向く。
そうして足音の主が至るであろう曲がり角を凝視し続け――

> 「現在地はBKビル内部!先程≪木羽塚椿≫に遭遇、追跡中です!」

足音を追い越して聞き覚えのある声が聞こえた途端に身構え、人影が姿を現すと同時に前蹴りを見舞った。
これ以上ない手応えがブーツから伝い、カズミが彼女の眼前で尻餅をつく。

> 「痛たー……って、おチビさん?!」
> 「こんな所で何してんの?まさか、その歳で迷子とか?
>  迷子センターは一階にある筈だから、案内してあげようか?」

「結構。アンタこそ、その歳でデパートの中で追いかけっこ? 随分良い教育受けてるみたいね」

出会い頭に蹴飛ばされた事などは一切気にしていない様子のカズミを
憐憫と侮蔑の視線で貫き、六花は皮肉を吐き返す。

> 「あいにく、今おチビさんに構ってる暇はないんだよね
>  あ、センパイ?いえ、たった今、三浦六花と接触しました。害はなさそうなのでこのまま追跡を……」

「……誰がいつ構って欲しいって言ったのか、答えてもらいたいものね。
 やっぱり一度頭をかち割って中身が健常か確かめた方がいいんじゃない?」

呆れ半分侮辱半分の音律に伴って、六花のブーツの先が床を叩き、不穏に硬質な音を奏でる。
けれどもカズミはあくまでも自分本位に、携帯電話を拾い上げ通話を再開した。
実害が無い為放置していたが、いい加減本当にかち割ってしまおうかと、六花の表情が苛立ちに微かに歪む。

> 「……了解」

そして不意に、剣呑な彼女の視線とカズミの冷淡な視線が、交錯した。
一体何事かと、六花の面持ちには疑念が滲む。


163 名前:三浦啓介 ◆6bnKv/GfSk [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 20:55:02 0
> 「ごめん、前言撤回するよ。たった今命令が下ってね。
> 『三浦六花を捕縛せよ』、だってさ。人遣い荒いよねー」
> 「一緒に来てもらうよ、おチビさん。ふんじばってでも連れて行く」

言葉尻の余韻を追うように、振り回されていたコードが放たれる。
対して六花の面に浮かぶのは、呆れと幻滅。
胸の内に渦巻く感情をすり潰すべく目を閉ざし、溜息と共に。
ただの一蹴りで、澱みなくコードを断ち切った。
断絶されたプラグが遠心力に従ってあらぬ方向へと飛び去り、壁への衝突を経て床に墜落する。

「ねえ? ちょっとお尋ねしたいんだけど、良いかしら? 良いわよね。
 駄目とか言っても勝手に聞くわ。馬鹿みたいに威勢よく絡んでくるのはいいんだけど。
 アンタってさ、こと荒事にかけて取り得ってあるの? そんなカッコつけてコード振り回すなんて小学生でも出来るわよ?」

文明を発動させたブーツで、床を踏み絞める。『完全被甲』によって強化された筈の建材が、いとも容易く貫かれた。
六花のブーツに封じられた『威震伝深』とは、噛み砕けば『物理現象の反作用を作用の対象に跳ね返す』物だ。
だからこそ彼女の蹴り足は、ありとあらゆる物を無視してまかり通る。
堅固な壁であろうが、強靭なコードであろうが、人体であっても、当然。

「敵を知り己を知ればって言うけど、敵も己も知らないアンタが勝てる道理って一体何処にあるのかしらね?
 無鉄砲に粋がって掛かってくるだけなんて、馬鹿丸出しよ。それともアンタには私を下すだけの術があるって言うの? もし無いんだったら……」

『身体強化』による跳躍で瞬きの内にカズミへと詰めより、六花は大戦槍の突端もかくやの前蹴りを繰り出す。

「アンタ、ここでゲームオーバーよ」


【ブーツに触れればその部位が問答無用でズレます。掌で止めれば掌のみがすっ飛びます
 カズミ君が考えなしに無鉄砲に突っ込んできただけなら、ブッ殺もあり得ますですね】

164 名前:カズミ ◆IPF5a04tCk [sage] 投稿日:2010/06/17(木) 00:12:00 0
>胸の内に渦巻く感情をすり潰すべく目を閉ざし、溜息と共に。
>ただの一蹴りで、澱みなくコードを断ち切った。
>断絶されたプラグが遠心力に従ってあらぬ方向へと飛び去り、壁への衝突を経て床に墜落する。

>「ねえ? ちょっとお尋ねしたいんだけど、良いかしら? 良いわよね。
> 駄目とか言っても勝手に聞くわ。馬鹿みたいに威勢よく絡んでくるのはいいんだけど。
> アンタってさ、こと荒事にかけて取り得ってあるの? そんなカッコつけてコード振り回すなんて小学生でも出来るわよ?」

「取り得、ね。あったら欲しいよ」

六花の暴言に苦笑を漏らすカズミ。

>「敵を知り己を知ればって言うけど、敵も己も知らないアンタが勝てる道理って一体何処にあるのかしらね?
> 無鉄砲に粋がって掛かってくるだけなんて、馬鹿丸出しよ。それともアンタには私を下すだけの術があるって言うの? もし無いんだったら……」

>『身体強化』による跳躍で瞬きの内にカズミへと詰めより、六花は大戦槍の突端もかくやの前蹴りを繰り出す。

「おっと!」

繰り出された前蹴りを、『身体強化』による脚部の強化で跳躍し回避する。
そのまま六花と少しだけ距離を取り、口を開いた。

「確かに、僕は戦闘においては役立たずもいいところだね。君のお父さんにも言われたよ、銃の扱いがなってないってさ」

跳躍で避け、ブーツに接触しそうになった時はコードを犠牲にし、六花の相次ぐ攻撃を回避する。
そして言葉を紡ぎ続けながら、最低限ブーツには触れぬよう、六花と距離をとり続ける。

「そういえばさおチビさん、もののけ姫って知ってる?あのグロいアニメ映画。アレにさ、白い山犬が出てくるよね。名前忘れたけど。
 アイツって凄いよねー。首だけになっても人間相手に噛みついたんだから。あの執念は凄まじいよね。昨今の若者はあの精神を見習うべきだと思うよ、僕も含めて」

自虐にまたも苦笑し、ヘッドフォンに手を掛け、コードが伸びるボタンとはまた違ったボタンを押す。
そして間髪入れずに跳躍し、持ち構えていた携帯電話を六花の眼前へと突きつける。

「君だけが持っているとは限らないんだよ、三浦六花……≪消火昇華≫!!」

黄色い携帯電話のディスプレイから、目の眩むような閃光が迸る。その瞬間を狙って、身体強化の力でボディに一発だけパンチを捻じ込んだ。
勿論、先程の光は消火昇華などではない。只の強烈なフラッシュである。三浦六花の動きを一瞬だけでも封じる為の、思いつきの手段だった。

「それとね、おチビさん。一度倒したからと言って、油断してはいけないよ。
 あの山犬さんみたいに、死んでも首だけで君の首を狙ってくるかもしれないからね」

そのまま跳躍で距離を置きながら、諭すような声で言う。
六花の肩越しに見える、青い電流を纏いながら宙に浮かぶプラグ。それが、浮遊したまま猛スピードで直進し、六花の背中に触れた。

「切断したら終わり、だとでも思ったかい?だとしたら残念だったね。
 電波侵害はプラグの先からヘッドフォンまでが一つの集合体だからさ、切断された位じゃ操作を食い止める事は出来ないよ」

一旦言葉を切り、あの厭味ったらしい笑顔を見せて。

「ああ大丈夫、放電の威力は丸一日気絶する位だからさ、安心してね」

どこに安心する要素があるのだろうかというツッコミはさておき、カズミはその言葉と同時に、スイッチを入れた。


「≪電波侵害≫――【放電】!!」

【プラグに触れると気絶するよ!('(゚∀゚∩】

165 名前:三浦啓介 ◆6bnKv/GfSk [sage] 投稿日:2010/06/17(木) 00:46:18 0
> 「オ前、政治家ニ向イテルナ。内閣狙エルンジャネーノ?」

「それはどうも。ところで君はディスコのウェイトレスになれば天才的だと言われて嬉しいかい?
 そんな訳ないよねえ。何が言いたいって、全く嬉しくないお褒めの言葉ありがとう」

一体何が楽しいのか笑い転けるハルニレに、三浦は感慨の薄い小馬鹿にした口調を返す。
それから暫し彼が笑い止むまで、ぼんやりと宙空を眺め続ける。
三浦にとって興味があるのは『ゲーム』の参加者としてのハルニレであり、
異世界人ではあるが『イデアへの指針』にもなり得ぬ彼に対しては、今現在それ以上の価値を求めてはいなかった。

> 「ウォッホン!……エ―ト、要ハソノ≪クソガキ≫ヲ殺セバ良インダナ?
>  デ、アンタノ娘サンニハ手ヲ出シチャイケナイ、ト。OK、把握シタゼ」
> 「ソノゲーム、乗ルゼ。

「それは良かった! それじゃあ早速……!」

尾張の右手と自分の左手を打ち鳴らし、三浦は朗々と声を上げ、

> ダケドソノ前ニチョットシタ質問タイムダ。
>  マズ、ココハ何処ノ"ストリート"ダ?少ナクトモ"パージルバニア"ジャネーッテコタァ解ルンダガ……」

けれどもハルニレの発した問いによって、彼の言葉は半ばで断ち切られる事となった。

> アアソレト。
> 「オニーサンノ名前ト、連絡先カ住所モナ。俺ガ仮ニコノゲームヲ引キ受ケルトシテ、アンタハズット此処ニイル訳デモ無インダロウ?
>  今カラ帰リマスッテ顔ダッタシ。セメテ、待チ合ワセ場所トカ決メテオイタ方ガ良イダロウ?ゲーム中ニ居ナクナラレテモ困ルシナ」
>
> ホラ、俺迷子ダシと付け加え、どこからかペンと手帳を取り出す。
> ああそういえば、とばかりに顔を上げ、にっこりハルニレは笑う。
>
> 「ソウイヤー、自己紹介ヲ忘レテタナ。俺ノ名前ハ"ハルニレ"。
>  "マリス・ストリート"ノハルニレダ。宜シクナ」

突然の質問攻めに、しかし三浦は表情を顰めるどころか嬉々の色を示した。
相変わらず尾張の右手を用いて、大仰に拍手をしてのける。

「いい、いいねえハルニレ君。いや、正直な話をするとだね、僕は君を小間使い扱いにした後は普通に帰るつもりだったんだよ。
 初っ端にフラグを立てておかないとラストステージ直前で振り出しに戻されるクソゲーをご存知かい? 骨董品レベルのクソゲーなんだけどね。
 まあ君はそんな間抜けに成り果てるなんて事は避けられたようで何よりじゃないか」

相変わらずの勿体ぶった所作で、彼は冗長にも程がある前置きを垂れ流した。
これだけ喋り散らしてもハルニレの質問には何一つ答えていないと言うのだから、彼の無駄な饒舌も相当な物である。

「とりあえず、ここは君の知る世界ではないよ。名前なんて無い。ただ君の住んでいた所とは違う世界。それだけだ。
 信じるも信じないも勝手だけれど、寝ている内に迷子になりましたってのも同じくらい信じ難いと僕は思うよ?
 ともあれ、最初の質問に答えるならここはシベリア通り。そこの公園を抜ければラウンジ通りだ。聞き覚えはあるかい? 無いと思うけどね」

尾張の右手を無理矢理弄って握り拳を作らせて人差し指のみを立てて、三浦はそれを指揮棒のように振り回す。
一応の説明を皮肉で締め括ると、彼は尾張の右腕を肩に担ぐようにして落ち着かせた。

「それでだね、正直君の格好からだと君が文明人なのか原始人なのか、或いは文明社会に身を置く野蛮人なのか判断に困るんだよ。
 携帯電話の使い方は分かるかい? 普通の電話は? 電車は一人で乗り換えられるかな? ……いや、期待するのは余りに酷と言うものか。
 いいとも、僕もどうせなら伝聞だけじゃなくてその情景を見たいからね。確認の意味も込めて、君に付いて行こうじゃないか。
 僕が約束を放り捨てて去るつもりだったように、君がズルをしないとも限らない。それに依頼者がパーティに加わると言うのも、RPGじゃよくある話だからね」


【みうら けいすけ が パーティ に くわわった!】

166 名前:月崎真雪 ◇OryKaIyYzc[sage] 投稿日:2010/06/17(木) 17:58:11 0
.


目の前にいきなり現れたバイクに真雪が目を白黒させている。
萌芽は真雪では無い誰かに解説を始めた。

「”ACCELVENT”と”SHOOTVENT”を”あやふや”にして、さらに『永久機関』《ノイマンズドリーム》のエネルギーと僕の”才能”を使って創ってみました」
「なんか見た目が犬っぽいのは、このわんこのせいですかね」

専門用語ばかりで正直意味が分からない。
ただ分かるのは、萌芽の持つ文明と、萌芽自身の能力で作った、という事くらいだ。
そうして、萌芽から犬を渡された。
緑色の首輪を付けた、小さなビーグル犬。首輪にねこ、と書かれている。

「ねこ…ちゃん? あなたの名前…? なワケ無いか」

「何してるんです真雪さん、はやく乗ってください」

ちぐはぐな名前に困惑していると、赤くて丸い何かが飛んできた。突き指した。
拾ってみると、炎と血液のデザインのヘルメット。どうやら、それを被ってあのバイクに乗れと、そういう事らしい。

「この子渡した後にそんなの投げないでよ、この子が怪我したらどうするの。私だって痛かったのに」

文句を言いながらヘルメットを被り後部座席に乗る辺り、ちゃっかりと言うか真雪も自分を分かっているらしい。

「ジョジョくん……? ま、ついてこれるでしょ。これ二人乗りですし」

「え、置いてっちゃうの? ま、待って何で怒ってるのちょっと萌芽話を聞いてええーーーー!!!!!!」

拗ねたような萌芽の言葉を問いただそうとするも、全力のスピードでバイクが走り出す。
真雪の絶叫を残して、そのバイクは部屋から消えていった。



「萌芽の……バカ…っ!」

やっと止まったバイクで、真雪は肩で息をしながら萌芽の背中に頭を預けた。
腕に抱いていた犬の様子はどうだろうかと下を向く。

「ちょっと、あなた!?」

突然、犬が真雪の腕を飛び出した。真雪もバイクを降り、追いかける。

「どうしたのわんちゃん…」

犬が威嚇するその視線の先には、一人の男がいた。身長がとにかく高い。

「襲い掛かるのとかはなしですよ、今の話を聞く限り、手負いのキミが勝てる相手じゃないでしょう?」

不意に、後ろから聞こえた声。
振り返ると、バイクから降りたらしい萌芽が腰元に手をやりながら犬に話しかけていた。
その目線は目の前の男に向かっている。

「僕たち、この先にいる人に用があるんです、通してもらえますか?」

真雪は行動して良いものか分からず、ただ呆然と立ち尽くしていた。

.

167 名前:三浦啓介 ◆6bnKv/GfSk [sage] 投稿日:2010/06/17(木) 20:33:02 0
> 「確かに、僕は戦闘においては役立たずもいいところだね。君のお父さんにも言われたよ、銃の扱いがなってないってさ」

三浦六花の、動きが止まった。
疎ましげな表情が一転、凍土の如き冷徹さへと変貌する。

> 「そういえばさおチビさん、もののけ姫って知ってる?あのグロいアニメ映画。アレにさ、白い山犬が出てくるよね。名前忘れたけど。
>  アイツって凄いよねー。首だけになっても人間相手に噛みついたんだから。あの執念は凄まじいよね。昨今の若者はあの精神を見習うべきだと思うよ、僕も含めて」

「黙りなさい。……お父さんに言われた? 銃の扱いがなってないって?」

カズミの声など一切耳孔に届いていない様子で、六花は凄む。
抑揚の消え失せた声で、ただ彼の言葉を反復していた。

> 「君だけが持っているとは限らないんだよ、三浦六花……≪消火昇華≫!!」

視界を塗り潰す閃光も、直後に打ち込まれた腹部への打撃にも、彼女は反応を示さない。
ひたすら、殺気の迸る眼光でカズミを射抜き続けるばかりだ。

> 「それとね、おチビさん。一度倒したからと言って、油断してはいけないよ。
>  あの山犬さんみたいに、死んでも首だけで君の首を狙ってくるかもしれないからね」
> 「切断したら終わり、だとでも思ったかい?だとしたら残念だったね。
>  電波侵害はプラグの先からヘッドフォンまでが一つの集合体だからさ、切断された位じゃ操作を食い止める事は出来ないよ」

「それってつまり」

> 「ああ大丈夫、放電の威力は丸一日気絶する位だからさ、安心してね」
> 「≪電波侵害≫――【放電】!!」

「……お父さんに、銃を向けたって事よね?」

勢い付いたカズミの声とは何処までも対極に冷酷な音色を紡ぎ。
瞬間、六花の爪先がカズミの顎下を強かに蹴り上げた。
だが彼の顎から額に掛けてが抉られるなどと言う事は、ない。
『威震伝深』を発動していれば間違いなく、カズミは絶命していたと言うのに。

「よくもまあ。よりにもよって、アンタみたいな台所のゴキブリ以下のゴミ虫が」

背中に突き立てられた筈のプラグを、立花は無造作に掴み取る。
カズミの視野に顕になったそれはコードの被膜部分が不自然に伸びて、
接続端子部分を完全に覆っていた。
見てみれば切断された他のコード部分も全て、被膜が断面部を浸食している。
被膜の用途は『絶縁』と『防護』。
それらを『上位互換』によって強化してやれば、電撃が外部へ漏れる事は無くなる寸法だ。

右手に携えたプラグの先端のみ、立花は『上位互換』を解除する。
そのまま仰向けに倒れ込んだカズミの胸倉を掴んで引き起こし、肩口へ乱暴に突き立てた。
プラグに残留した電気が迸り、それでもお構いなしに六花はカズミの肩を抉る。
仮に彼が自らの放電で気絶したとしても、強引な覚醒を迎えさせられる事だろう。
最後に一旦プラグを引き抜き、再度憤怒の剣幕と渾身の力でカズミの腕に突き立てて、六花は彼を打ち捨てる。

168 名前:三浦啓介 ◆6bnKv/GfSk [sage] 投稿日:2010/06/17(木) 20:33:55 0
「私の」

そして、蹴る。
無防備に晒された脇腹に、全体重を乗せた爪先が減り込む。

「お父さんに」

更に、踏む。
両腕で庇われた脇腹には最早目もくれず、顔面を踏みしだく。

「銃を向けるなんて事が」

そして、躙る。
ブーツの底でカズミの右手を入念に、入念に。

「出来たものじゃない!? ねえ、何とか言ったらどうなの!?」

後はひたすらに、反復運動が続くばかりだ。
蹴り、踏み、躙り、嬲り尽くす。

「ホラ、言いなさいよ。小学校でも習ったでしょ? 悪い事をしたらごめんなさいと言いなさいって。
 それともまともな教育すら受けさせてもらえなかったとか? 親の顔が見てみたいわね?」

倒れ伏したカズミの前髪を掴み引き上げて、立花は尋ねる。
けれども彼は何も言わず、震える右手を彼女へと伸ばす。
恐らく、彼の行動に意図は伴っていなかった。
朦朧とした意識の中で、負けん気だけが先行して、彼を動かした。
それだけに過ぎない事が露骨に見て取れた為に、六花はそれを看過する。
事実、彼の右手は彼女に届きすらせず、力を失い垂れ下がる。
ただし暴れ狂う過程で胸元から飛び出た彼女の首飾りに、絶妙に指を引っ掛けて。
重力の手助けもあって、カズミの指は首飾りの鎖を引き千切り、そのまま持ち去る。

途端に、三浦六花に異変が生じた。
動悸が不規則に乱れ、手足は震え、悪寒に包まれ、意識に濃霧が掛かる。
彼女が父からの贈り物である首飾りに精神的な重きを置いているのは、事実だ。
だが幾ら依存しているとは言えちょっとした偶然で奪われたくらいで、こうも変調を来す訳がない。

それが本当に父からの愛の証左だと言われた――『文明』でない普通の首飾りであるのならば、尚の事だ。

「返……しなさい……!」

崩れ落ちるカズミの腹部に膝を埋め、無理矢理起立の姿勢に留める。
そして強引に迅速に、六花は首飾りを彼の手から奪い取った。
彼女の身を襲っていた異常の数々は僅かな余韻だけど残して、こぞって鳴りを潜める。

暫し、彼女は黙考する。
張り詰めた、思い詰めた表情で。

「……アンタ、まだ生きてるなら聞きなさい。謹んで、畏れかしこんで、平服して、崇め奉り、敬い、粛々と拝聴する事ね」

首飾りの防護を兼ねて両手でカズミの首を掴み上げ壁に押し付けて、六花は一方的に言葉を放つ。
酷薄な炎を胸の内に燃やし、その熱を眼光に宿し、一切の容赦を排した形相で。

「いいわよ。アンタの所に捕まってあげる。けど変な真似してみなさい。この首を捩じ切ってあげるから」

あくまでも自分の為に、彼女は提案では無く圧倒的上位からの命令を下す。
もしもこの期に及んでカズミが減らず口を叩き粋がるようならば、彼女は宣言通り彼を即座に殺害するだろう。


169 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/06/17(木) 20:40:44 0
三浦ってジョバーできないんだね。
自分が常に上位にいたいって事か。器が小さいわ。

170 名前:◆Ui8SfUmIUc [sage] 投稿日:2010/06/17(木) 21:30:11 O
「……」

鰊は混乱していた。
屋内でバイクを乗り回す奇妙な少年が二人乗りで現れて、犬が唸った。部屋に入れてくれ、と言うから。どう答
えようか、なぜバイクを?いやそもそもお前は誰だ。などと色々な疑問が膨れ上がり、とりあえず何か答えよう
と口を開いたらスーツ姿の男と可愛らしいシスターがふらりと現れ、止める間もなくあっさり扉を開いて、ブリ
ッジになって、鉄パイプがひとりでに部屋に入っていって、男は監禁されていたらしき少女にその鉄パイプで殴
られた。
部屋には同じ顔の少女が二人いる。

「……こうなることは解っていた」

混乱した状況に、ぽっかり生まれた静寂の中、一人呟く。
嘘である。だが嘘は大事だ。心を落ち着かせ、都合の悪いことからは目をそらす事ができる。
今分裂できる数は四人。
“仕事”は“扉の中身を回収すること”。バイクの少年は『どうでもいい』相手にする『意味がない』。
そしてペリカンが到着する時間まで扉は開けられないと思っていたが、『悪くない』これは、『都合がいい』。

「そこの鉄パイプ美少女とドレスアップ美少女」

鰊はベレッタを構えて四人に分裂し、とりあえずスーツ姿の男にありったけの銃弾を撃ち込んだ。

「「「「お前を助けに来た、付いてこい」」」」


【鰊1〜3:ピクミン状態。もうちょっとで屋上
鰊4〜7:とりあえずミーティオ奪取を最優先。仕事ですので
説得に成功したらこのまま屋上へ向かいます】


171 名前:葉隠殉也 ◆wJoMC4BYEY [sage] 投稿日:2010/06/18(金) 00:45:22 0
「ちっ、やはり追いつけんか!」

再度、見かけた兎の耳をした少女の後ろ姿を見かけ今度こそ逃すまいと
全力で追いかけているが、やはり時間の流れが違うようにギリギリで後姿が
見えるのみであったこのままではまた見失ってしまう

「仕方あるまい、瞬着!!」

その掛け声により収納空間より空間が裂けるように神冥滅甲が現れ
包みように全身を内部に引きずり込むようにして一瞬で着装する。

「逃さん!!霊力推進器噴射!!」

背中のバーニアが噴射し、爆発的な速さで加速する
そして速度が上がるにつれて近づいていく
とうとう手に届く位置までに来ることに成功する

「捉えた!」
手を伸ばしたその時、目の前に居た少女はフッとまた消える
「なっ……」

そしてそれに気づいた瞬間、目の前の壁をぶち破り
下へと降下していたすぐに上昇し、戻ろうと振り返ろうとしたが
少女が下の方に勢い良く降下し、こちらに笑いかけていた
「いかん!!」
すぐさま方向転換し、下に向かって急いで加速する
だが相手の降下スピードが速い
目前には壁が迫っていた

「超爆芯靴―――!!!」

足部の装甲に付属しているバーニアが噴射すると更に加速が増し、
必死で手を伸ばし、少女を救い出そうとする

「うぉぉぉぉぉぉ!!」

壁にぶつかるスレスレで手が届き、その柔らかい手を握る
だがクスッという笑みを浮かべると手の感触はすぐになくなり
すり抜けると同時に下の階の天井に物凄い音を立ててぶち破り、上手く着地する事に成功する

そしてそこで最初に見かけた光景は大勢のヤクザとそしてそこには傷付いた佐伯と都村がいた
見るからに彼女達が劣勢なのは明らかだった。
その中の最初は唖然としていたヤクザ共も気を取り直し、恫喝してくる

「なんじゃナレぇ!!」
「そんなふざけた格好しようからに、ちゃんちゃらおかしいわ!」
「お前もここで殺しちゃるわ!」

溢れる感情を抑えゆっくりとヤクザ共の方を振り向く

「その言葉、宣戦布告と見た!!
 当方に迎撃の用意あり
 覚悟完了!!」
身構え、高らかに正々堂々と宣言する。
【葉隠:正 義 誕 生】
【あとミーティオさんごめんなさい】


172 名前:カズミ ◆IPF5a04tCk [sage] 投稿日:2010/06/18(金) 02:14:36 0

>「……お父さんに、銃を向けたって事よね?」

その言葉がカズミの耳に入った瞬間。
直感的に、彼は自分の失態と敗北を悟った。

「ガハッ……!!」

≪電波侵害≫を持ってしても、三浦六花を止める事は叶わなかった。
六花の爪先がカズミの顎下を捕え、小さな体をいとも容易く吹っ飛ばす。
強烈な一撃を食らわされたカズミの意識が、床に叩きつけられた衝撃と共に消し飛ばされる。

「よくもまあ。よりにもよって、アンタみたいな台所のゴキブリ以下のゴミ虫が」

足音が近づいたと思ったら、今度は肩に刺すような痛みが襲いかかる。
刹那、プラグに残留していた電流がカズミの体を駆け巡り、声にもならない悲鳴が上がる。

いっそ気絶した方が楽だったかもしれない。カズミを待ち受けていたのは、更なる地獄だった。

効き手である右腕にプラグを突き立てられ、僅かに残った電流が左腕を蹂躙し、神経をズタズタにする。
ああ、こりゃ腕死んだな、と密かに自嘲する。錯乱した頭では、まともに思考することすら許されない。

その時、霞む視界の中に、怒り狂い三浦六花の声の中に、誰かの影と叫ぶ声がシンクロする。

>「私の」
『違う!』

>そして、蹴る。
>無防備に晒された脇腹に、全体重を乗せた爪先が減り込む。
影も同じように、カズミに蹴りを放つ。痛みが二重に重なったように感じる。

>「お父さんに」
 『違う!!』

>更に、踏む。
>両腕で庇われた脇腹には最早目もくれず、顔面を踏みしだく。


>「銃を向けるなんて事が」
 『こんな事が、現実である筈がない!!』

>そして、躙る。
>ブーツの底でカズミの右手を入念に、入念に。

>「出来たものじゃない!? ねえ、何とか言ったらどうなの!?」
 『コイツが、 の、  である筈がないんだああああああああ!!』




173 名前:カズミ ◆IPF5a04tCk [sage] 投稿日:2010/06/18(金) 02:15:48 0

「き、みは、」

悲鳴が、怒りが、悲しみが、憎しみが、痛みを通して脳内に濁流のように流れ込む。
それが六花からのものなのか、影のものなのか、彼には判別できない。

抵抗を見せない彼などお構いなしに、身体強化を発動させる暇もなく、怒りに我を忘れて三浦六花はカズミを嬲る、嬲る。
疲弊しきったカズミに、最早抗う術も、意思すらも残されていなかった。

>「ホラ、言いなさいよ。小学校でも習ったでしょ? 悪い事をしたらごめんなさいと言いなさいって。
> それともまともな教育すら受けさせてもらえなかったとか? 親の顔が見てみたいわね?」

>倒れ伏したカズミの前髪を掴み引き上げて、立花は尋ねる。
その言葉を耳にした瞬間、カズミの死んだ筈の右腕が、弱弱しくも六花へと伸ばされる。
だが、電流によって神経を破壊され、骨まで砕かれた右腕に何が出来ようか。
朦朧とする意識の中で、ただ目の前の少女を捕まえようと、必死に縋ろうとして。

空を彷徨う指先が、何かを捉えたのを感じた。何でもいい、それが彼女を引き留めてくれるものならば。
残り僅かな力と重力の作用で、それはいとも容易く引き千切られた。

その瞬間、カズミは確かに見た。怒りで染められていた彼女の表情が、一瞬にして豹変したのを。

>「返……しなさい……!」

>崩れ落ちるカズミの腹部に膝を埋め、無理矢理起立の姿勢に留める。
>そして強引に迅速に、六花は首飾りを彼の手から奪い取った。

やっと掴んだ、彼女を引き留める糸は、早くも崩れ去った。いよいよ、トドメを刺されるんだろうか。そんな考えがよぎった。

>「……アンタ、まだ生きてるなら聞きなさい。謹んで、畏れかしこんで、平服して、崇め奉り、敬い、粛々と拝聴する事ね」

>首飾りの防護を兼ねて両手でカズミの首を掴み上げ壁に押し付けて、六花は一方的に言葉を放つ。
>酷薄な炎を胸の内に燃やし、その熱を眼光に宿し、一切の容赦を排した形相で。

>「いいわよ。アンタの所に捕まってあげる。けど変な真似してみなさい。この首を捩じ切ってあげるから」

カズミは目を見開いた。予想外の斜め上どころのレベルを超えたその言葉に、混乱した。
何を言っているんだ、彼女は。これだけ抵抗して、自分をこんなにしておいてまで、何を。

先程の六花による私刑のダメージのせいで、声が上手く出せない。咳と共に、血の混じった痰を吐きだし、荒い息をする。
どうするか。体が動かない今、六花に運んでもらうか。そうだ、八重子と集合しないと、それから――――……。



そこまで思考を巡らせて、カズミは意識を手放した。
次に目覚めた時に待っていたのは、八重子の怒りの入り混じった、喧しい叱咤であったという。



174 名前:"G" ◆IPF5a04tCk [sage] 投稿日:2010/06/18(金) 02:18:11 0
「三浦六花、だな?」

カズミが意識を失ったとほぼ同時に、六花の背後に一人の男が現れた。
2メートルもありそうな体躯に、軍服が良く似合う。顔はガスマスクで確認する事は適わず、「G」と書かれた腕章を付けている。

男は気絶したカズミを一瞥し、ハン、と鼻で嘲笑する。

「モヤシめが。ガキのサポーター風情がカッコ付けようとするからこうなるんだよ」

その巨大な手でカズミを、もう片方の手で三浦六花の首根っこを掴み、持ち上げる。

「ハーァ……全く、何で俺様がガキの送り迎えなんかしなきゃなんねーんだよ」

数分前の八重子とのやり取りを思い出し、溜息を吐く男。三浦六花の抵抗など気にも留めることもなく。
そのままズンズンと窓の方へ進み、窓ガラスを壁もろとも、蹴りで破壊した。

「WIRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!」

壁の大穴から、大空へと。三浦六花とカズミを掴んだまま、フライハイ。


「≪空間移動≫【スペースムーヴ】!!」


落下する男の声と共に、空中に水色の歪みが発生した。
カズミがテナード達の目の前に出現した時と同じような、あの淡い水色の歪み。

生まれた歪みは、男の足を、体を、そして掴まれたカズミや三浦六花をもあっと言う間に飲み込んでいく。
こうして、男達は歪みの中へと姿を消した。

この間、窓ガラスが地上に降り注いだ直後の、僅か2秒の出来事であった。

【三浦六花、捕獲完了】



175 名前:三浦啓介 ◆6bnKv/GfSk [sage] 投稿日:2010/06/18(金) 19:11:03 0
三浦六花の連れ去られた先は、仄暗く広い部屋だった。
机も、椅子も、何もない空間にはただ一つ、壮大な演壇があるのみである。
ここは進研本社の地下に隠蔽された、秘密の空間。
本来ならカズミ程度一介のサポーターでは入る事など許されない。
が、今回は三浦六花を捕える一助となったとして、彼女と同じく『G』によって招き入れられていた。

即ち彼らは既に、『三浦六花を捕えたものとして扱って』いた。

「この……離しなさい!」

『G』にシャツの襟首を掴み上げられながらも、六花は後ろ蹴りを放つ。
だが、彼女の靴底は空虚を穿つのみだった。
すぐ背後にいる筈の『G』目掛け、確かに蹴りを放った筈なのに。

「無駄だクソガキ。俺様の『無限回廊』≪アルキメデス≫の前にそんな生ッチョロイ蹴りが届くか」

空間に関連する文明に適性を示す彼の前には、彼女の蹴撃は無意味だった。
『威震伝深』を発動しているとは言え、それ自体に『無限回廊』を看破する効力は無い。

「……あっそう。だけど、わざわざアンタから触ってくれてるんだから有り難い話じゃない!?」

ならばと、六花は自らの襟首を掴む彼の右手を蹴り上げた。
身体を捻転させ、巻き込むような蹴りであった為ブーツには触れさせられず。
よって『威震伝深』による攻撃は出来なかった。
しかし最低限、己を拘束する手を払う事は出来た。

捕縛から逃れた彼女は視界を素早く左右させる。
そうして出口を発見すると、脱兎の勢いで駆け出した。
立ちはだかるは、一人の影。風姿は淡い闇に紛れ、視認出来ない。
忠告もなく、六花は跳躍から横薙ぎの後ろ回し蹴りを繰り出す。
『威震伝深』を発動させてのそれは、軌道上のあらゆる物体を抉り飛ばす。

「……おうコムスメちゃんよ、あんま調子こくんじゃねえぞ?」

けれども六花の逃走経路を阻んだ人影の掌は危なげなく、低く轟く声と共に彼女の蹴りを受け止めた。
正確には彼の両手を覆う手袋に仕込まれた、『御身不通』の築いた不可視の壁が。
長髪のオールバックが、六花の蹴りが生んだ微風にのみ揺らされる。
彼は先日葉隠を襲撃したチンピラ――に紛れていた正真正銘『進研』の人間である。
あの時とは違い立場を隠す必要も無く、彼は『御身不通』を十全に働かせていた。
不可視の防壁は六花が出口に至るまでに道程の一切、万里の長城もかくやと封鎖していた。

「つー訳だ、嬢ちゃん。ちょっとばかし調子に乗り過ぎたなあ?」

立ち尽くす六花の背後で、擦れた男の声が紡がれる。

176 名前:三浦啓介 ◆6bnKv/GfSk [sage] 投稿日:2010/06/18(金) 19:13:42 0
そこに至り、初めて彼女は気付く。
自分の身体が一切合切、動く事を封じられている事に。
彼女の後ろに佇む人影は、仄かな暗闇でも認められる金髪のリーゼント。
先の長髪オールバックと同じく、文明ジャンキーの群れに潜み扇動に務めていた、『進研』の組織員だ。
新調した『見敵封殺』のグラサンに右手を添えながら、彼は六花の肩に手を添えた。

「『進研』へようこそ、お姫様」

嫌味な響きを孕む言葉と共に発動されるのは、彼の奥の手の一つ。
ボロボロの指人形に宿った文明、『剥志弱行』≪ロブストリングス≫

「……あん? 何だ、効きがわりぃな。まー三浦啓介のガキだってんなら、さもありなんってトコか。俺にゃどうでもいいこったが。
 オイ、ゴキ……おっと間違えた。『G』ちゃんよ、コイツどっかの空き部屋に詰めて『無限回廊』施しとけ。
 また命令すんなとかほざいてみろ? 今度こそマスク引ん剥いて封殺してビンタしてやらあ」

終ぞ払拭される事の無かった闇の中には、彼らだけでなく幾人もの組織員が潜んでいる。
そして彼らの殆ど誰もが、三浦六花を無力化するだけの『文明』を有していたのだ。

「あーあと、……あー何だ……お前だお前。メガネ。それなりにお手柄だったし、
 『ポイント』入ったろ。後で申請すればそれなりの文明が貰えるんじゃねえの。
 まあ治療で全部使い切る事になるかもだがな」

『進研』の裏を担う構成員には、各自仕事振りに対応して『ポイント』が割り振られる。
『ポイント』は金銭は勿論、文明による治療を受けたり文明とも交換する事が出来る。
無論仕事の際は組織の為に用い、私的に使用するにも組織人としての節度を厳守する必要があるが。

「それと、この嬢ちゃんは交渉材料だ。極論代替の利くお前と、この世にたった一人の……二人だったか?
 ともかく三浦啓介の娘なんだ。言わば『進研』の切り札の一枚だ。お礼参りはよせたあ言わねえが、節度を持てよ」

【進研について軽く掘り下げました。色んな目的の人間が一堂に会する理由付けでもありますね
中には金髪リーゼントみたくイデアや三浦なんてどーでもいいよって奴もいるでしょう】

177 名前:三浦啓介 ◆6bnKv/GfSk [sage] 投稿日:2010/06/18(金) 19:21:38 0
>>ハルニレ

BKビルの中へと踏み入った君は、見るだろう。
メガネのクソガキと思しき少年と、三浦の娘と思しい少女が、
まとめて軍服ガスマスクの男に誘拐されている様を。

「……面白い展開じゃないか。ゲームとしては、ね」

君の後ろで、三浦啓介は呟く。
黒髪の幕の内に潜む表情は、窺い知れない。
君は果たして、何を思うだろうか。

「ハルニレ君、ゲームは続くよ。化物ならぬ馬鹿者退治から、お姫様の救出だ。
 あぁ、安心するといい。住処と食事なら、ちゃんとゲームの間も保障してあげるよ。
 ホテルの一室でも取ってやれば満足だろう? 魔王退治の選別が銅の剣となけなしの小金だなんて言う王様とは違うからね」

彼はあくまでも、自分の領域に招き入れるつもりは無いらしい。
そして文明に関しても、終ぞ彼に説明をする事は無かった。



178 名前:ハルニレ ◆YcMZFjdYX2 [sage] 投稿日:2010/06/19(土) 03:23:57 0

>>165

三浦からの解答を半信半疑に、BKビルに潜入したハルニレ。
異世界だとか訳の分からない事を口にし、尚且つ自分の後ろを着いてくる三浦に疑心を抱きつつも、ハルニレはビル内の探索を続ける。

「(ソレニシテモ…)」

床に倒れ伏すヤクザ達をまたぎながら、表情を顰める。自分達が通った道は、まるでクーデターかテロでも受けたかのような惨状だ。
生きている者、死んでいる者。えげつない殺され方から、気絶させられた者まで。あちらこちらの廊下や壁が崩壊し、砂埃を上げる。

これは酷い、と一人呟く。ただ、表情は訝しげなものから、既に愉快そうなそれへと変わっていた。
一体どんな戦いが繰り広げられていたのか、想像するだけで胸が高鳴る。今にもスキップせん勢いで、ハルニレの足取りは軽やかだ。

だが、その愉悦のひと時は、突如終わりを告げた。

>>177

「エ?ア、チョオオオッ!?」

ボロ雑巾のような少年と、白髪の少女を抱え、蹴りで壁を破壊した大男。
だがハルニレが一番驚愕したのは、誘拐行為より、壁の破壊行為より、大空へと身を躍らせた事だった。

飛び散る硝子の破片が、太陽の光を反射し輝く。ハルニレはしばしその光景に見入っていた。
だが、我に返って壁の大穴へと駆けより、地上へと落ちていった筈の大男の姿を探すが、どこにも見当たらない。

>「……面白い展開じゃないか。ゲームとしては、ね」

地上を覗き込むハルニレの後ろで、三浦がポツリと呟いた。その言葉に含まれた感情に、計り知れない何かを感じ、振り向く。
長い髪のせいで、表情は窺えない。それが逆に、三浦に迫力を与えていた。

何と声をかければいいのだろう。先刻聞いた話が正しければ、連れて行かれた白髪の少女は三浦の娘に違いは無かった。
少なくとも、三浦の反応を見れば、判断材料としては充分だった。

「ア、アノヨオ」

>「ハルニレ君、ゲームは続くよ。化物ならぬ馬鹿者退治から、お姫様の救出だ。
> あぁ、安心するといい。住処と食事なら、ちゃんとゲームの間も保障してあげるよ。
> ホテルの一室でも取ってやれば満足だろう? 魔王退治の選別が銅の剣となけなしの小金だなんて言う王様とは違うからね」

ハルニレの言葉を遮り、三浦はゲームを続行しようと提案する。その言葉に、ハルニレはただ黙って頷く事しか出来なかった。
もう此処に用は無い。そう判断したハルニレは、踵を返した。

「オニーサン、一先ズ此処カラ出ヨウゼ。
 何時マデモコンナトコデ立チ往生シテテモ埒ガ明カネーシ。ホテルニ案内シテクレヨ」

そう諭し、一歩踏み出す。【>>171
だが次の瞬間、床全体が、何かが壁をぶち破ったかのような、凄まじい轟音と揺れに襲われた。


【一先ずBKビルからの脱出開始】


179 名前:テナード ◆IPF5a04tCk [sage] 投稿日:2010/06/19(土) 18:30:42 0

一気に様々な事が起きた。もう色々と着いていけない。

>>132
まず一つ、前園久和の能力。彼(?)が警備員と栗色の髪の少女に手をかざし、傷を癒す。
これは、公園での乱闘の六花の事を思い出し、類似した能力だとテナードは解釈した。

>>139
だが、テナードが驚いたのはその治癒能力ではなく、その後の少女の行動だった。
何故なら、少女は傷がある程度回復したとはいえ、足取りもおぼつかない状態だった。

にも関わらず、彼女はその傷ついた体で、また戦場へと一歩踏み出してしまった。
テナードはその行動に舌打ちし、少女の後を追いかけようとした。

>>136>>140>>146
その時、二重の意味での思いがけない増援がやってきた。
金串を飛ばし、荒海を挑発する中国風の少年。そして、笑いながら鎌を振り回し、敵の命を次々に奪っていく少女。

先程の、頭の中で思い描いた作戦を思い出し、増援者達を見据える。
もし彼らが味方だったとしたら……いや、今は味方といっていいだろう。

「お前はここにいろ。101、コイツを頼んだ」

疲弊しきった様子の久和にそう忠告し、101型に久和を任せ、テナードも戦場へと飛び込んでいく。
目指すのは、戦闘を繰り広げている中国風の少年と、鎌を振りまわす少女。

中国風少年の背後を取ろうとした雑魚の後頭部を、両の手で拳を作り薙ぎ払う。
気絶した雑魚を別の雑魚へと投げ捨て、テナードは少年へと一気に近づいた。

「おい、そこのチャイニーズボーイ。話がある!」

背後の敵を即座に裏拳で沈黙させ、テナードは言葉を続ける。

「見たところ、お前さんと俺の敵は共通しているらしいな」

俺に考えがある、とテナードはキッチン、エレベーター、そして荒海を次々に指差し、早口で提案する。

「あそこのキッチンに小麦粉がある。
 俺があのビリビリ野郎を食い止めるから、その隙にエレベーターを開けてそいつをぶちこんでくれないか?
 終わったらすぐに合図を送ってくれ。お嬢ちゃんは俺のサポートを頼む!」

そのまま、テナードは地を蹴って荒海の元へと駆ける。
今まさに攻撃を仕掛けようと少女へ振り下ろされかけた腕を、間一髪、先に伸ばした左手で受け止めた。

「女に向かって『ブッ殺す』とは、よっぽど教育がなってないんだな」

襲来者に邪魔をされ続け、荒海の怒りは頂点に達していたに違いない。
その証拠に、テナードに向けた視線には、溢れんばかりの殺気で満ちていたのだから。

「なんや、先に殺されたいんか?」

その言葉と同時に、荒海の腕が紫電を帯び始める。これで、荒海の標的は少女からテナードへと移行された。
これでいい。後は、中国風の少年が合図を送るまで、この男の動きを止めるだけだ。

「俺が相手だ、ビリビリ野郎!」

「上等や、生まれてきた事を後悔させてやるわァ!!」


180 名前:テナード ◆IPF5a04tCk [sage] 投稿日:2010/06/19(土) 18:33:07 0

テナードの右腕と、荒海の紫電の纏った右腕がぶつかり合う。
跳躍で避けるテナード達に、床伝いに電流を流しこんでも無駄だと悟ったのか、荒海が接近戦を持ちこんできたのだ。

勿論、自分達の親玉である荒海に戦いを挑む事を、子分達は良しとしない。
荒海への増援は増えに増え続け、戦場は混沌を極めていた。

「(……おかしい)」

荒海と拳を交え、蹴りを放ち、受け止められ、攻防を繰り返す毎に、テナードの体が異変を訴え始めていた。
手足が、思うように動かなくなってきている。テナードは違和感を感じた。

>>171

「な、なんだ!?」

テナードの死角で、何かが崩れるような轟音が鳴り響いた。
人一倍音に敏感なテナードはその音に驚き、その正体を確認しようと荒海から目を逸らしてしまった。

それがいけなかった。

「オルアァッ!!」

子分の一人が繰り出した一撃。本来ならば避けられた筈の攻撃が、テナードの腹へと直撃したのだ。
不意打ちの攻撃にテナードはバランスを崩す。それを狙って、崩塔撫雷を発動させた右ストレートが、テナードの鳩尾へと捻じり込まれた。

「ッ!!」

すんでの所で両腕を犠牲にすることで直撃は塞いだはいいものの、電流はテナードの義肢へと駆け廻る。
体の均衡が崩れたまま受けた攻撃に耐えられる筈も無く、そのまま壁へと叩きつけられた。

「ガハッ……!!」

101型に投げ飛ばされた時とは、また訳が違った。容赦ないその一撃を食らいながらも、テナードは何とか立ちあがろうと足に力を込め――……。

「(足が、動かねえ……!!)」

ならばと腕を動かそうとするが、こちらも何故か動こうとしない。
何とか起き上がろうともがく内に、テナードの鳩尾に、荒海の渾身の蹴りが直撃した。
全体重を掛けたその蹴りの衝撃でテナードは失神しかける。が、荒海の足を伝う高圧電流によって、焼けつく痛みと共に強制的に覚醒させられる。

「あ"ッあぁ"ああ"あああ!!」

「何や、エラそうな口利いてた割に、もう仕舞いか?ん?」

頭を蹴飛ばされ、呻くテナードを見下ろし、冷徹な瞳は殺気を携え、射貫く。

「仕舞いや、化け猫」

トドメの威力を最大級にまで上げた≪崩塔撫雷≫の右腕が、テナードの頭へと振り下ろされた。


181 名前:カズミ ◆IPF5a04tCk [sage] 投稿日:2010/06/19(土) 18:34:32 0

「すると、"異世界人"を確保したというのは本当の話でしたか」

ホテルのスイートルームのような一室で、ソファに腰掛け、柔和な笑みを浮かべる初老の男。
きっちり着こなしたスーツに合わないワインレッドの腕章には、"M"の刺繍が施されている。

「今は別室に待機させております。お呼びしましょうか?」

「いや、今は構わんよ。疲れてるだろうから、ゆっくり休ませて差し上げなさい」

八重子の提案をやんわりと断り、重い腰を上げる男。
モニターに映し出された、病室のベッドで安らかに眠るカズミを一瞥し、笑みを深める。

「そうですか……あの子が、ねえ」

くるりと八重子に向き直り、心底嬉しそうにまたソファへ腰かける。
彼にとって、カズミは孫のような存在であった。今回のカズミの働きは、彼の誇りでもあった。

「今回の治療費は、私が出しておきましょう」

その代わり、と人差し指をピンと伸ばし、不器用にウインクしてみせる。

「もう余り、彼に無茶をさせないように。暫くは絶対安静ですよ」

そう締めくくり、男は八重子に異世界人の元へ向かうよう指示する。
そして、ふと思い出したように、部屋を出て行こうとする八重子を呼び止めた。

「ああ、そういえば…君の上司、ああ、"A"は今何処に?…知らない?……分かった、もう行きたまえ」

今度こそ八重子は退出し、部屋には男一人が残る。
モニターにはそれぞれ、未だに眠り続けるカズミ、八重子と会話する異世界人、拘束された三浦六花、罵倒に近い口論を繰り広げる男達が映っている。

「さて、これからどうなる事やら……」

もうすぐ、意味の無い退屈な会議が始まる。
男は手にしていた杖で床を軽く叩くと、一瞬にして姿を眩ませた。


【テナード:李さん、ユッコちゃんにエレベーターで粉塵爆発作戦を提案
      ヤバいよ!荒海さんに殺されそう!】
【カズミ:翌日までお休み】


182 名前:ku-01 ◆x1itISCTJc [sage] 投稿日:2010/06/19(土) 23:21:20 0

「小鳥、応答してください」

『なんだようおれ今きばづかガン見すんのに忙しいんだよー』

「その彼女があの男性に施した行為は、一体なんですか。情報提示を願います」

 開いたウィンドウにかじりついている蛍光色の猫は、ふと視線を下げてku-01の言葉を噛み締めるようにした。
"文明の視点"がフォローできない範囲に入ってしまったのだろう。肉球のついた手を振るい、窓を閉じる。

『"文明開化"』

「文明開化?」

 世相風俗が一新され、大きく転換すること――ではないだろう。
 AIの中に開かれる語彙ライブラリを一旦停止させ、この場の状況に会った形でのその言葉の意味を探る。
 確か、主人とはぐれた際に行った文明についての情報収集で、そんな単語をちらと拾った気がする。
 あくまで噂話、もしくは与太話、軽口の類の単語だと判断、それほど重要なものではないとされるログに保存されていたが、

『文字通り、とある文明を開化させる。ジョグレス進化? みたいな? おれ世代じゃないからよくわかんないけど
あくまでうわさなんだけど、そういうのがあるん、だって』

 恐らく、荒海にそれが施された。

『あらうみのおっさんの文明は、自身の体に帯電する能力をもっていた。けど、今の映像を見る限り、放電してんよね』

 蛍光色の猫は小さな手を振って、"文明の視点"とは別の監視カメラの映像を映し出す。
 血の海が映し出され、もしやと反射的にku-01は主人の姿を探す。彼女は五体無事なままで映像の端に移りこんでいた。
 丁度画面の右上に映った形の荒海は、紫電を空中に走らせる。

『それが恐らく文明開化の効果、だと、思うんだけど……』

 いまいち自信なさげな小鳥の音声を聞きながらも、ku-01は繋いだままにしていた無線端末との通信レベルを上げる。
 何か、情報は無いか。主人の手助けをしなくてはならない。
 そこまで集音機能の高い端末ではないが、拾える最大限の音声を全て解析。
 音声に関して、ku-01はエキスパートとして組まれている。そうして雑音にまみれた音を解析するうちに、ひとつの声を拾った。


183 名前:ku-01 ◆x1itISCTJc [sage] 投稿日:2010/06/19(土) 23:22:44 0

>>179
>「見たところ、お前さんと俺の敵は共通しているらしいな」

 恐らく、荒海と対している内の一人の声だろう。
 誰に呼びかけているのかは判然としないが、その声は確かに荒海に対する『対策』を述べた。

「エレベーター」

『開けんの?』

「止めますか?」

『いや、ここまで入ってこられたじてんでおれもうあんたが何しようと止める気ないし』

「そうですか、ならば失礼いたします」

 グリッドの隙間を縫うようにして張り巡らされた幾千の構成システムを軽く撫で、解析する。
 多くを文明に頼り聳え立つこのビルは、中身は割合大味な形で成り立っているようだった。
 それを担っているのがこの小鳥だからかもしれない。
 探り当てたエレベーターの作動システムを握り、選り分け指に絡める。
 構内にある全てのエレベーターの位置を把握。一階に止まっていた箱を押し上げる。
 が、幾ら探れどもドアを開けるシステムが浮かび上がってこない。どういうことか、と小鳥を伺った。

『あ、いや、電力消費がなんとかとか言って、そこまではこっちでは操作できない……回線もつながってなかったりして……』

「……」

『だ、だってあらうみのおっさんがそうしろっていったんだもん! おれ珍しく言われたとおりになんのギミックもなしにそうしたんだもん!』

 喚く蛍光色の猫から目をそらし、無線端末へと音声で呼びかける。
 出来れば先ほどの作戦を聞いたものか、伝えたものか、主人か。この際誰でもいいと割り切り、けれど荒海へは届かないようにと注意を払いながらku-01は声を出した。

「エレベーターは向かわせました。後三十八秒でそちらへ到着します。それまで健闘を。
ドアの開閉は操作できません。そちらでお願いいたします」


【エレベーターを向かわせるよ!】


184 名前:前園 久和 ◆KLeaErDHmGCM [sage] 投稿日:2010/06/22(火) 18:12:25 O
>「……頭に腕。……」

治癒した人間が久和に初めて発した言葉は、彼を少し傷付けた。
頭に腕、だからなんだというのか。彼女も自分を迫害するのか、と。
そしてやはり人間は嫌いだと。
しかし次に彼の耳に聞こえたのは予想もしなかった言葉だった。

>「あ、ありがとう。……アレ、見て分るようにかなりヤバいから」

迫害されるどころか礼を言われた上に避難するようにと告げるのである。

「へ?」

間抜けな声を出して唖然とし、しかしフラフラと歩くのも覚束無い体を休めるように物陰に隠れる。

そして、少しだけ考えた。
長い間会っていない気もするあのおっさんみたいな人間は実際は少なくないのだろうかと。
だがやはり今は信用できない、等とも。

一旦思考を止める。
そして現状を確認しようとした彼は、ある一人の男の置かれている状況に目を見開いた。

「猫…ッ」

自分でも何故かは分からないが、彼が歩く事もままならない体の事を忘れ飛び出そうとした時である、

185 名前:不非兄弟 ◆KLeaErDHmGCM [sage] 投稿日:2010/06/22(火) 18:14:25 O
>「仕舞いや、化け猫」

男がその場に現れたのと≪崩塔撫雷≫がテナードの頭へと振り下ろされたのは、ほぼ同時であった。

「ふーはは、救世主登場」

彼がテナードを護るようにかざしたのは双子が持つ矛盾の内の盾である。
盾であるのに攻撃力を持ったムジュンの片割れ、しかし同時に攻撃は最大の防御でもある。

盾の効果は魔法と反射。
彼の文明は荒海の≪崩塔撫雷≫をよろけさせる程度には跳ね返した。

「やらせねぇぜ?」

「何か兄貴の仲間みたいだしさ」

いつもは兄の事など微塵も考えぬ希射がそんな台詞を吐く。
当の兄本人は喜ぼうか気持ち悪がろうか考えるのだが、お構い無しに弟は兄の方を見ようともせずに矛を投げ渡す。

「…俺も戦うの?」

「モチロン」

疑問に即座に答えられた兄は溜め息を吐きながら自分の身体に矛を突き刺す。
すると矛は水に入っていくかのように雅魅の身体に入っていき、そしてもう一度引き抜く時には彼の傷はほぼ完治していた。
矛の能力は治癒と防御、…そして矛盾を抱えた二人の男は同時に口を開く。

「お前が相手にするは二つの矛盾」
「お前が相手にするは俺達の真実」


「「さあ、流石な俺達を止められるか?」」


同時に言ったその台詞に迷い等は一切非ず。
しかし同時に言ったその思いに自信等と言うものは無し。
ただただ捨て身の覚悟のみ。

関係の無い者の為に命を捨てる覚悟、その矛盾のみ。

「ここまで来ちゃったんならさ」

「一花咲かせるのが流石ってもんだろ?」


【テナードさんへの連絡:怪我治したいなら最後の力振り絞ってモノ男が治します】

186 名前:李飛峻 ◆nRqo9c/.Kg [sage] 投稿日:2010/06/22(火) 23:42:39 0
「ホ、本当に全員集合しやがっタ……」

得意絶頂で荒海へ悪口雑言を浴びせていた飛峻だったが、今はその軽口はすっかり鳴りを潜めていた。

「おぅ。ようやく来おったか……」

荒海の手下、実に20人以上が駆けつけたからである。
その中にはちらほらと見たことのあるヤクザたちが混じっていた。

(撒いたと思ったが……失敗したか)

萌芽と少女を抱えての逃避行の最中、飛峻を追ってきた連中である。
頼みにしていた数的有利はすっかり覆り、荒海を始めとするヤクザたちは思い思いの得物を手にじりじりと包囲を狭めてきていた。

「―――ひ、ひぃい! 化け物おおおおぉ!」

だがその包囲網の一角から悲鳴が上がった。
声の方を見れば、ヤクザの一人の首が表情を恐怖に凍らせたまま真紅の放物線を描いて宙へ舞い上がる。

惨劇の創造主は柚子。
飛び交う剣林弾雨をものともせず、手にした大鎌で手近なヤクザを片っ端から撫で斬りにしていく。
対するヤクザたちは逆上して突っ込んでいく者も居れば、恐怖に駆られてへたり込む者も居た。

(イヤ……これは、むしろ流れはこちらにあるか)

手下連中はほぼ柚子が一手に引き受けており、荒海も仲間が居ることで広範囲の雷撃を放てない。
ならば今のうちに大物を狩ることが出来れば十分に勝機はある。
問題はその方法ではあるのだが。

「タマ獲ったらあぁああぁあ」

「さてト、どうしたものかナッ!」

奇声を発しながら刀を大上段に振りかぶるヤクザの顎を蹴り抜き昏倒させ、飛峻は次の一手を思案する。
手にした金串は残り3本。
荒海の体には数本の串が突き立っているがどれも致命傷には程遠いだろう。
足止めもそろそろ限界に近い。

「おい、そこのチャイニーズボーイ。話がある!」

殺気丸出しで背後から隙を伺っていたヤクザの気配がふいに消失する。
この渋い声の主が無力化させたのだろう。
飛峻は荒海を視界に納めたまま、声の主と背中合わせに対面する。

「あそこのキッチンに小麦粉がある。
 俺があのビリビリ野郎を食い止めるから、その隙にエレベーターを開けてそいつをぶちこんでくれないか?
 終わったらすぐに合図を送ってくれ。お嬢ちゃんは俺のサポートを頼む!」

「ナルホド、良い手ダ。それならアノ申公豹も流石に倒せそうだナ」

粉末と密室。導き出される策はすなわち粉塵爆発。
了承の言葉の代わりに飛峻は残りの金串を周りのヤクザたちに向け投げ放った。

187 名前:李飛峻 ◆nRqo9c/.Kg [sage] 投稿日:2010/06/22(火) 23:44:20 0
「ソコを――」

キッチンへの道を駆け抜けながら飛峻は先ほどの光景を思い出していた
背中合わせに声を交わした男。
すれ違いざまに後姿を見たその偉丈夫は、何故か頭部に猫耳が生えていた。

「――退ケッ!!」

流行っているのかもしれない。だとしたら自分の萌芽への見立ても間違っては居なかった。
などと益体も無い事を考えつつ、ヤクザの一人を出会い頭に飛び蹴りで撃沈する。

「ぐぺぇっ!?」

潰れたヒキガエルのような声をあげヤクザが前のめりに倒れ伏す。
ごづんと頭を打ち付けたのだろう鈍い響きに飛峻は顔を顰めた。

「オ?オマエはミウラと戦っていタ……無事だったカ」

目的のキッチンにたどり着くとそこに居たのは見たことのある五本腕。
所々ケガをしているようだが命に別状は無さそうである。

「スマン、今ちょっと立て込んでてナ。手伝えなくて悪いガ、コレでも使ってくレ」

飛峻は懐から少女の応急手当に使った包帯の残りを取り出し、五本腕へ放り投げる。

「さテ、白い粉、白い粉……ト」

目的の小麦粉はすぐに発見することが出来た。
小袋に分けられたものと未開封の大袋。

「まア多いに越したことは無いだろウ」

ずしりと重みのある大袋を担ぎ上げると回れ右をしてエレベーターへ。
だが、いざ向かおうとしたその時、備え付けの放送器具から艶やかな声が流れ出した。

<<エレベーターは向かわせました。後三十八秒でそちらへ到着します。それまで健闘を。
ドアの開閉は操作できません。そちらでお願いいたします>>

猫耳の偉丈夫の別働隊だろうか。
何にせよこれで付いてからエレベーターを呼び寄せるタイムラグは解消された。

「至れり尽くせりだナ。誰かは知らないが感謝すル」

オペレーターに届きはしないだろうが飛峻は礼を返すと今度こそエレベーターに向け走り出した。

188 名前:李飛峻 ◆nRqo9c/.Kg [sage] 投稿日:2010/06/22(火) 23:45:14 0
予告の通り、飛峻がエレベーターホールに到着したときには既に棺桶は到着し待機状態だった。

「ドンピシャだナ。……せいッ!」

渾身の力を込めて小麦粉の入った大袋を空中へ投げる。
そのまま靴の裏で『昇り』の表示を蹴りつけた。

くぐもった駆動音を立てながらエレベーターのドアが開き、自由落下の法則に従い小麦粉の袋が空から落ちてくる。

「墳ッ――」

飛峻は表示板を蹴り抜いていた脚を下ろしながら震脚。
掌は落ちてくる袋に既に添えられている。
下半身の捻りによって力を汲み上げ、対象へと一直線に伸びる腕を通して内部を貫き背部を穿つ。『徹し』とも呼ばれる浸透勁の一つ。

「―――破ッ!!」

掌の直線上、袋の裏側が弾けるように爆発四散し、エレベーターの中を白い粉末が満たす。
こちらの目的は果たした。
後は棺桶の中に対象を入れて火葬場送りにするだけだ。

「ネコミミィ!納棺の準備は完了しタ!!」

飛峻は今も荒海と戦っているであろう猫耳の偉丈夫に声をかける。


【これから毎日荒海さんを焼こうぜ?
 準備完了でございます。エレベーター到着の時間軸は戦闘中の皆様のご随意に】

189 名前:ペリカン ◆Ui8SfUmIUc [sage] 投稿日:2010/06/23(水) 00:23:09 O
遠くから、サイレンと鐘の音が近付いてくる。ペリカンは僅かにそちらに意識を傾け、直ぐにハッキングに使う
メモリを戻した。
ビル内部の回線はまともな物がなくて、仕方なく幾つかの回線を分担して使用し、外部で統合する作業を行わな
ければならず。衛星経由の作業という事もあって、やたらと手間取っていた。

(その上、小鳥ちゃんに正体不明の何かときたもんだ)

ペリカンは二人に気付かれないようデコイを駆使して、一般の事務所の回線を使用し、少しずつビルの監視カメ
ラを掌握していた。

(おや?これは……)

その過程で、とあるパソコンのHDを漁っていた手が止まる。本当はご丁寧につけられた(恐らくネットの幾つか
のサイトをブロックするための)設定を解除するためのパスワードを探していたのだが、彼にとって馴染み深い、
しかし一般人には使われるとは思えない単語が目に止まったのだ。

(この事務所って何だっけ……不動産?いや、これは偽装会社だな)

コピー、とっとくか。と思わぬ収穫に小躍りしながら作業を脇に置いた。ペリカンにとって、こう言うものは思
わぬ収入源になるのだ。

(んあ?)

ちょうどそのコピーが終わった頃に。全ての回線が吹き飛んだ。
停電である。

(無駄骨とか……ハハッ、ワロス)

若干心を折られつつ、意識を表層に引き揚げる。泥の中で泳ぐようだった緩慢な挙動が、本来の速さを取り戻す。
バイク女のせいで傷んだロータを気にしつつ、時間を確認する。まだ時間はある。手持ち無沙汰だ。と彼は暇潰
しに、奪ったファイルを眺めて時間を潰すことにした。

(ブーム型加速器建設計画ねえ……ありゃ、実質完成してるのね。場所は、地下か。
こんな大掛かりなものを全然マスコミに公表してないなんて怪しいなあ。
偶然とは思えないし、これは朝日辺りが食いつきそうだ)


190 名前:三浦啓介 ◆6bnKv/GfSk [sage] 投稿日:2010/06/23(水) 00:36:18 0

>>178

>「ア、アノヨオ」

何と声を掛けたものかと戸惑う君だが、不意にビル壁に空いた穴から風が吹き込む。
微かに揺らぐ三浦の長髪の奥に微かで、しかし獰猛な笑みが浮かんでいた事に、君は気が付くだろうか。

>「オニーサン、一先ズ此処カラ出ヨウゼ。
> 何時マデモコンナトコデ立チ往生シテテモ埒ガ明カネーシ。ホテルニ案内シテクレヨ」

「その格好じゃあホテルよりも留置所の方が宿泊先としては最適そうだけどね。
 揺ぎ無いポリシーがあると言うなら無理には言わないけど、
 僕としては是非とも身なりを整える事をオススメするよ?」

>そう諭し、一歩踏み出す。
>だが次の瞬間、床全体が、何かが壁をぶち破ったかのような、凄まじい轟音と揺れに襲われた。

「……おやおや、このビルで起こっている事に、興味があるのかい?
 確かにその格好と血みどろの争い事は、この上ないくらいに素敵なコントラストを描きそうではあるけどね」

体を捻り、首を曲げて、君の表情を下から覗き込むようにして、三浦は尋ねる。

「だけど、今の君は見た所丸腰だ。君に何か特異で得意な特技があるならともかく、
 この世界において君は猛禽類が空を覆う砂漠に打ち捨てられた赤子も同然なんだよ。
 この事を聞いても尚血塗られた戦場を垣間見ようと言うのなら、僕は君を止めまい。さあ、どうする?」

君は三浦の挑発染みた問いに肯定の意を返してもいいし、
無難にこの場を去って彼が言う『この世界』について尋ねてもいい。
勿論提示された道ばかりでなく、己の意思の描く道を歩むも勝手だ。

【とは言え、荒海さんトコはもう満員臭いですけどNE!
 行くとしたら最上階でしょうか。そちらも結構カツカツですけど】

191 名前:経堂柚子 ◇OryKaIyYzc[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 17:41:49 0
.柚子は片手に大鎌を携え、敵の中で踊る。
周囲には敵の首無し胴体だとか生首だとか縦半分に割られて臓物を撒き散らす遺体だとか転がっている。
全部柚子が作り上げた物だ。

そんなとき、パンプティ・ダンプティが声を上げた。
どうやら柚子は、彼をサポートをすれば良いらしい。
柚子は考える。

(サポート、ね。サポートって、何をすればサポートになるのかしらん)

今の状況を見渡せば、パンプティ・ダンプティ対荒海と
その他味方対荒海の兵隊、となっているようだ。
しかし、パンプティ・ダンプティを邪魔しようとする兵隊も少数だが居るわけで。

(うん、決めた!)

ならば、邪魔が入らないようにこちらが全員撃破すれば良いだろう。
そうと決めたら話は早い。

まずは、上半身に何でも『収納』出来る亀裂―――柚子は入り口と呼ぶ、を開く。
ジャケットを脱ぎ、キッチンの中に放り投げた。

そして

「えいっ!」

キャミソールも下着も脱いで、同様にキッチンに放り込んだ。

「こっちの方がお洋服汚れないし、良いよね」

予想外の行動に固まった一人の兵隊の首をはねる。
空中に浮かぶ生首を、タナトスを振るって弾き飛ばした。
飛ばした先には、パンプティ・ダンプティ達を取り囲むヤクザ達。

敵の弾丸が自らの首に当たらないように注意しながら、
挑発するように兵隊の体をヤクザに打ち飛ばす。
そうして、柚子はすっかり敵に囲まれた。

「兵隊さんたち! どうしてあなた達は戦うの?」

「喧し…ぎゃあ!」

「どうせあなた達には、いくらでも代わりが居るのにね」

心臓を、腕を、脚を狙った銃弾は全て柚子の『入り口』に吸い込まれた。
敵の愚かさを笑いながら、柚子はますます踊る、踊る、踊る。
しかし、それは中断せざるを得なくなった。

「その言葉、宣戦布告と見た!!
 当方に迎撃の用意あり
 覚悟完了!!」

いきなり天井を貫き現れた軍人に、トランプの兵隊達が向かって行ったから。

「もぉ〜〜〜〜〜〜っ! バカあ!」

腹が立った柚子は、走り出す男の背中を次々と切り裂いていった。八つ当たりだ。

【葉隠准尉の所に雑魚が何名か追加】
【柚子は 半裸に なった!】

192 名前:ハルニレ ◆YcMZFjdYX2 [sage] 投稿日:2010/06/23(水) 20:39:28 0

>>190

「オォワッチ!?」

轟音と揺れに耐え切り、ずれかけた帽子を直してハルニレは溜息を吐く。
さっきのは何だったんだろうか、ガス爆発の類か、はたまたテロか。

「(オッカナイネエ)」

>「……おやおや、このビルで起こっている事に、興味があるのかい?
> 確かにその格好と血みどろの争い事は、この上ないくらいに素敵なコントラストを描きそうではあるけどね」
>「だけど、今の君は見た所丸腰だ。君に何か特異で得意な特技があるならともかく、
> この世界において君は猛禽類が空を覆う砂漠に打ち捨てられた赤子も同然なんだよ。
> この事を聞いても尚血塗られた戦場を垣間見ようと言うのなら、僕は君を止めまい。さあ、どうする?」

「……確カニ驚キハシタケドヨ、生憎狙ッタ獲物以外ニ興味ナインデナ」

三浦の笑みにそれまでの彼の印象に若干の違和感を覚えつつ、そうそっけなく言ってのけ、肩をすくめる。
あの轟音に関して関心はあるが、その場に行こうという興味とまではいかなかった。

「ソンナ事ヨリオニーサン、教エテオクレヨ。サッキカラ≪コノ世界≫ッテ何ナンダ?
 アノガスマスク野郎ハ何者ダ?オレハ気デモ狂ッタノカ?ソレトモ、コレハ全部夢カ?」

疑問を撒き散らし頭を振った所で、再度大穴から風が吹きこむ。
ハルニレは素顔を晒さぬように、頑なに……主に左半分を強く抑え込んだ。
ピンクにも近い赤毛の短髪が、帽子の間から覗く。

「…………モウ出ヨウゼ。サッキカラ感情ノ塊ガアチコチデ、ワンワンワンワン煩エンダヨ」

人の脳に入り込に、夢と記憶を支配する事を得意とするハルニレは、人の強い感情にとても敏感だ。
目の前の男は恐らく感情を隠すのが上手いのだろう。殆ど人らしい情念を感じなかったのだから。
しかし、ビル内のあちこちでは、沢山の人間が様々な感情を露わにし、混在し、ハルニレを不快な気分にさせる。

表情に出す事はなく、しかし眉を顰め、ハルニレは顔を覗きこんでくる三浦の視線から逃げるように背を向けた。
今度こそ、此処に用はない。さっさとこんな場所から出て、美味しい物でも食べに行こう。勿論、後ろの男の奢りで。

「早ク行コーゼ、オニーサン。歩キナガラデモ、オレノ質問ニ位は答エラレルダロ?」

善は急げ。腹が減っては戦は出来ぬ。
急かすように三浦の方を何度も振り返りズンズンと大股で脱出しようとするハルニレの足が、ピタリと止まった。


「…………………………トコロデ、出口ハ何処ダ?」


【バトルに参加する気は無し、お外に連れ出してやって下さいな】

193 名前:佐伯 ◇b413PDNTVY[sage] 投稿日:2010/06/24(木) 00:08:20 0
その出来ごとに前ぶれは無かった。
ただ、もし上げるとしたらば一瞬の暗転がその前ぶれと言うべきものだろう。
暗転は天蝕の標。日の光を蝕む(はむ)その者の名は……葉隠 殉也。
今、零達が窮地に陥ったその瞬間に彼は現れる。そう、それこそ一筋の光の矢の様に。

「その言葉、宣戦布告と見た!!
 当方に迎撃の用意あり
 覚悟完了!!」

正義誕生。神を狩り、滅ぼすための鎧に身を包むその姿は正しく戦赴人。

「ッ!?『物体変質』で保護された境界を破壊した…!!」

神冥滅甲「業」に身を包みガラス製の壁面を破壊して現れた殉也に対して都村はあり得ないとでも言いたそうに声を上げる。
それに対して零は都村に対して話すまいか悩んでいた事を打ち明ける。

「……葉隠殉也。彼やゼロワン、ハジメさんね。そして私は外から来た者達なのよ。
 外、外の世界からね。
 だからこその驚異的身体能力であり、ビルのセキュリティシステムへの直接侵入である……」

「つまり、アレが葉隠 殉也さんの持つ特性と?」

「そう。にしても……派手に行くわねぇ」

ニタリとした笑みは獰猛なる猛禽故か?それとも純粋に合流出来た事を喜ぶためか?
自ら破壊し、舞い散らせた硝片により輝きを放つ殉也に向けて零は走り出し、都村に声を掛ける。

「道をつくるわ。アナタと殉也は荒海を止めて!!」

その叫びと共に殉也に向けて襲いかかろうとしていた男達を後ろから強襲する。
飛び蹴りで斬りこんだ零にとっさに反応できなかった者、出来た者、差異はあるがどちらにしても挟み撃ちである状況は変わりない。
巻き込み、流し、引き倒し、投げ、そして打ち統べる。武器を持った集団に対するセオリー通りの戦法を持って零は戦場を支配する。

「殉也!!そっち行ったわよ!!」

数人を昏倒させ、最後の一人を零は殉也に向けて投げ飛ばす。
もちろん、彼の方は既に全滅済みだと言う事を確認してだ。
それを容易く、さも気にせんといった風に払いのけた殉也に零は声を掛ける。

「ど〜こ、行ってたのよ。探したんだから……
 まぁ良いわ。状況を簡潔に教えるわ。
 あの雷親父が荒海銅二。それで、ゼロワンは今ビルのシステムに直接侵入してるみたい。そして、私はボロボロ。」

なんとも言い得ぬ、表情で頷き謝罪をしようとする彼を手で制するとまだ有ると零は先を続ける。

「サイガはまだ見つかって無いけどアナタが来たなら大丈夫か。
 都村さんと協力して、荒海を止めてちょうだい。……ま・さ・か・嫌とは言わないわよね?」

そして「こんな状況だしね」と続け、裏拳でようやく起き上がり始めた雑魚の一人を再び昏倒させる。
パンパンと勢いよく手を祓い、ヤクザ達と合流した都村、殉也の両名間に零は立つと後方を、荒海を刺し示す。

「行って。こっちは出来る限り面倒みるから」

そう告げると零は二人に荒海を任せて当初の目的である「囮役」を買って出る。

194 名前:佐伯 ◇b413PDNTVY[sage] 投稿日:2010/06/24(木) 00:11:32 0
混沌とした戦場で零と殉也達は再び分かれる。
一人は魑魅魍魎、百鬼夜行とでも表現すべき混沌の乱戦場へと、
二人は悪鬼羅刹、雷鳴天神とでも表現すべき鳴る神荒海銅二へと、

「さぁ……来なさいな。一人残らず面倒見てあげるわよ?」

飛びかかってきた男達の中にその呟きを聞く者は居たのだろうか?
ただ、言える事は一つだけ。
聞こえたとしても聞きとる事は出来ないであろうと言う事だ。

「けど、多すぎるのは勘弁願いたいものね……!!」

そう付け加えて、零は手近にあった椅子を蹴り飛ばして盾代わりにすると飛び込んでいく。



《ガシャン!!》

《ジー》

破砕音ののちに流れる軽快なリズムとジャズミュージック。
その発信源は先の蹴り飛ばした椅子のぶつかった物。旧式の「ジュークボックス」だ。

『Fl~y Me To The Moon...』

凄惨たる戦場をクライマックスに彩り始める処刑曲。そのリズムに合わせるように零は周辺の敵を踊る様に薙ぎ払う。

「佐伯さん!!」

瞬間、瞬間の完全調和。まるでそれが良く出来た殺陣で有るような錯覚を誘う死会いの中に飛び込んでくる一本のスティック。

(気がきくじゃないの)

くるくると回るそれに向け人差し指を向け円を描けば、オリシはまるで答えるような軌道を描き手の平に収まる。
まずは一つ。
蹴りとの併用は想定されてはいないがそれでもやってのけるのが佐伯 零。
迫りくる刃をディスアームで無力化し、突撃してくる相手はパンギルムで関節を破壊する。更に足をそこに混ぜ込み引き倒した相手を盾とし陣を敷く。
これで準備は出来た。

「今よ!!」

そう、最初にオリシを投げてくれた公文の彼に声を掛け、背中に手を回す。
もはや見る必要すらない。願えばスティックは手に収まってしまうのだから。

ようやくそろったオリシを見やり満足げに頷くと、零は自らの事をナイトとよんだ少女の元へと強引に道を作り駆け寄る。
そして、

「女の子が自分から肌を晒すんじゃないの!!」

突っ込みを入れるのであった……


【状況:さり気無く荒海さんを押しつけて二手に分かれました。】

【目的:C迷子の捜索。】

【持ち物:オリシ『折りたたみ式警棒』『重力制御』、携帯電話、現金八千円、大型自動二輪免許】

195 名前: ◆6bnKv/GfSk [sage] 投稿日:2010/06/25(金) 18:09:46 0
>>185

「なァ〜にが矛盾じゃぁボケナスが……」

意気がる兄弟に、荒海の口調は冷ややかにして、ただ静謐。
だがそれは決して彼の心広きを示す物などではなく、寧ろ正しく、嵐の前の静けさと表すべきか。
そして直後に、荒海の面が修羅の形相へと変貌する。

「舐め腐るんやないど糞餓鬼共ォ! 警備員風情の三下が! そないな借りモン振り回して意気がっとるんやないで!」

荒海銅二が吼えた。
彼は彼なりに、壮大な意図の下に動いている。
その彼からすれば、警備員業務で借り受けただけの文明を振り回し空威張りする、
流石などと抜かしてのける兄弟は憤怒の対象にしかなり得なかった。
無論彼の思考に、あの『矛盾』が兄弟自身の物であるなどと言う発想はない。
この時代、文明を――それも完全に戦闘用の物を――個人で所持する事など、出来っこないのだから。
それこそヤクザ者や闇の世界の住民でなければ、だ。

手を高く掲げ、彼は電撃を放つ。
狙いは猫面の化物でも、戯けた兄弟でも、正義を名乗る偏屈人でも無い。
天井を這う、無数の配水管。
電熱によって内部圧力を高め、また水道管そのものも損傷させる。

そして、散水が起こった。

「自慢の盾とやらで防げるか見物やのお!? 纏めてくたばっとけや! 『崩塔撫雷』ィ!」



【散水+電撃。無差別攻撃っすね。佐伯組に煽りが行くかもだけどそれはご随意に
 もう誰からでもいいのでガツガツ攻めてきて下さいなっと】

196 名前: ◆6bnKv/GfSk [sage] 投稿日:2010/06/25(金) 18:40:50 0
>>柚子、佐伯

「あーあー! なんて事してくれるんですかあ! 今日の仕込みが台無しですよ!」

ヤクザ連中を相手に一騎当千の戦い振りを見せる君達二人。
しかし不意に君達目掛けて、どこかすっとぼけた怒声と共に鋭い棘が雨霰と放たれる。
常人であれば串刺しとなるのは間違いないが、君達ならば凌ぐのはそう困難ではないだろう。

「……なぁんてこたぁ無いんですけどねえ! ええそうですとも? アンタらが台無しにしてくれたのは……」

振り向いた君達の正面には、一人の男。
白い制服にエプロンとネクタイ、頭には随分と高いトップブランシェを被っていた。
そして彼の右手には鍋蓋、背後には大鍋が聳えている。

「俺のここ数年の必死の仕込みぜぇんぶだよド畜生め! あぁもうやってらんねえ!
 ぶちのめしてスープの出汁にでもしてやろうか! 脂身だらけと筋張った肉じゃあ大したスープも出来なさそうだがねえ!?」

怒りに囚われながらも流石に彼は語らぬが、彼は進研の構成員であった。
チンピラ衆にさえも組織員を忍ばせていた進研が、『Z会』にスパイを送り込むと言うのも、当然の話だ。
だがこれだけの騒動があれば当然、会は揺らぐ。崩落さえあり得る。
そうなればここ数年潜伏に腐心してきた彼の努力も、水泡に帰すと言う訳だ。

腹の底から叫ぶと彼は大鍋へと傍らの食材――パスタの束を放り込む。
忽ち、パスタは硬質にして尖鋭な棘と化けて、君達に襲い掛かる。
『錬金大鍋』≪アルケミーズレイルヘッド≫によって情報を書き換えられた食材は、
真っ当な使い方をすれば最高の食材となるが、このように凶器と用いる事も出来るのだ。

パスタの雨、溶岩の如き灼熱のトマト、堅固を誇り君達に喰らいつくコンキリエ。
さあ! 迫り来る艱難辛苦を払いのけあの男を打倒するのだ!
さもなくば君達に明日は無いだろう!

197 名前: ◆6bnKv/GfSk [sage] 投稿日:2010/06/25(金) 18:47:48 0
追記、コンキリエは貝の事であります。一応述べておきますですよー

198 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2010/06/25(金) 22:59:03 0
のようです

199 名前:皐月 ◆AdZFt8/Ick [sage] 投稿日:2010/06/26(土) 04:24:57 0
>>123
五月一日皐月は敬謙なる神の信徒である。

 >「わ、分かった分かった! 手伝ってやるよ! 昨日チビっこい奴から盗んだ物も返すからさ! だからコイツをどうにかしてえ!」

「それはもう全力を持って」

五月一日皐月は現在、自分が何を出来るかを全力で理解している。
よって彼女のとった行動は、タチバナの鳩尾に正拳突きを叩き込むという神が許した行いである。
火力は推して知るべし、だが。
まぁそれはさておき。

>>142
 >「ともあれ助かったよ皐月君。――ありがとう、危うく変態になるとこだった」

(突っ込みません、突っ込みませんよ、ええ)

行為に自覚症状があるならぜひともやめて欲しかったが、多分言っても無駄だと思う。

 >「このまま彼女の匂いを嗅いでいたら間違いなく変態だったよ。すんでのところで僕は穢れなき紳士ズムを保てた。――君が、救ったんだ」
 >『だまされるな!こいつむりやりいいはなしみたくしてけむにまこうとしてる!』

「大丈夫です1から100までまったくぜんぜんこれっぽっちもいい話になりませんから!」

我慢できませんでした。

>「それはそうと皐月君、」

「はい?」

突っ込みを終えてため息を吐きながら、ようやく一息ついたところで、タチバナが追い討ちをかけるように言った。

 >「その服飾幼女、アクセルアクセスは"顕現"を解除すると材料に使った物の組成を崩してしまうんだ。君の服ももちろん例外じゃあない。
  どういうことかというと、アレだね、露骨な読者サービスになりかねないね。――アンケート人気が欲しい時は僕に言いたまえ」

「…………はい?」

自分の命を救ってくれた、アクセルアクセスの宿っている自分の衣服に目をおろす。

「…………はい?」

店を出る際ちゃっかりウェイトレス服から動きやすい(?)修道服に着替えていたので、それは見覚えのある普段着だ。
袖を切り落としフリルを装飾し刺繍を編み込みつつも動きやすさを追求しコスト度外視で改造しまくった一品である。

「…………ええええええええええええええええええええ!?」

皐月は暴走した。

「ちょっと待ってください落ち着いて落ち着いて考えましょうええ落ち着きましょう落ち着け!
 いいですか私の修道服は初期費用12000円改造を施す事累計44時間!
 タイミング的に仕方なかったとはいえそういうことは先に言ってくださいよーっ! 
 というかそれってまたアクセルちゃんの力が必要になったら私大惨事じゃないですか!」

タチバナの腰を掴んでがくがくと揺らす。
が、爽やかな笑顔を保ったまま親指を立てられて、皐月は肩を落した。

200 名前:皐月 ◆AdZFt8/Ick [sage] 投稿日:2010/06/26(土) 04:26:24 0
>>20
>「……言いなさい」

丁度そのタイミングだった。
竹内萌牙がそこにいた。

>「言いなさい!! 僕の命の恩人に!! このシスタ……ウエイトレ……いややっぱシスターさんに!!
> 一体何をしたか、今すぐ薄情しなさい!!!」

何でこんなところに、そしていつのまに!

(というか肝心な時にいてくださいよ!)

とりあえずアクセルアクセスの顕現が解除される前でよかった。
もしここで服がなくなってたらもう取り返しがつかないところだった。

「あのですね? タチバナさんは(一応)私を助ける為に奮闘してくださったのであって……ええ、和解も成立しましたし」

ちらりと褐色肌の少女を見る、どこか嫌悪感の入り混じった視線でタチバナをにらんでいるのは気のせいだろうか。
多分気のせいだ、そういうことにしよう。

「というか、足! 足!」

よく見ると折れているように見えた。
が、本人は至って平気な顔をしている……
いろいろと説明を求めると、ここぞとばかりに教えてくれた。
とある少女が怪我をしたこと、それを何とかしてほしいと。

>「今度必ずなにかお礼をしますから、どうか、あの人たちを助けてあげてください」

その「お願い」は皐月にとって、いや、殺気にとって、非常に有用な情報だった。

(あぁ、なるほど、その娘が「竹内萌牙」の守りたい相手な訳ね)
(相手から接触を求めて来てくれんならありがたい)
(こいつは……私を敵だと思ってない)

皐月はにこ、と微笑んで、言葉を返した。

「はい、任せてください!」

でもその時には既に萌牙の姿はなかった。

「あ、あれ!?」
(あぁ、これが竹内萌牙の能力、か?)

「ど、どこいったんですか!? 見てましたかタチバナさん!?」
(どこにでも現れ、どこへでも消えられる能力……)

「もぅ……怪我したままなのに、無理して……」
(……私が動かないとダメかもなぁ)

心から「竹内萌牙」を心配する「皐月」と、
心から「竹内萌牙」と敵対する「殺気」の意識を内包しながら。

「とりあえず――行きましょうっ、ミーティオさんを助けに……」

自分で自分に気合を入れなおし、一歩足を踏み出した。
……ところで、またぐるりと視界が入れ替わった。

201 名前:皐月 ◆AdZFt8/Ick [sage] 投稿日:2010/06/26(土) 04:27:20 0
「……へ?」

気がつくと、また床に寝ていた。

(こ、これ何度目でしょう……うう、頭痛い……)

ゆっくりと体を起こすと、タチバナが微笑みながら問いかけてきた。
自らの足を露出しながら。

>>143
>「私は生足の精。お嬢さん、貴女が落としたのはこっちの美しい生足ですかな?それともこっちの小汚いおっさんのふくらはぎ?」
>『しょうじきものには?』
>「もちろん心の綺麗な皐月君には両方差し上げよう。頬ずりするなり添い寝するなりインテリアなんかにもオススメだよ」
>『だれがとくするんだよ』
>「――神を涜するんだよ。この世界に存在するなら、の話だがね」

「二人が仲いいのはわかりましたから後ろから刺されたくなかったらその人から離れつつ足をしまってください」

満面の笑みで告げると、タチバナはくるりと背を向けて鼻を鳴らし始めた。

(まさかとは思うけど本当にこの人、本当ににおいでたどってるんじゃ……)

信じたくはない一面だが、冷静に考えるとここに来る出発点も匂いだった気がする。
それから皐月がしていた事は、タチバナの後をついていくことだけだった。
ゼルタに何度か話しかけようとしたが、なんというか一度殺されかけた身だけあって気軽にそういうことも出来ず、手持ち無沙汰になってしまうのは仕方ない事だろう。

そもそも皐月がこの場に来たのは「流れ」に乗ったからである。
最終目標は「元の世界に戻る事」。
そのために必要なのは「それにかかわっているであろう竹内萌牙から目を離さない事」。
結果は「竹内萌牙の能力の大雑把な概要」と「竹内萌牙にとって重要である少女」の存在。
ありていに言って、皐月の目的は十分に果たされていた。

「って、何してるんです?」

立ち止まったタチバナにあわせて、皐月もまた歩みを止め、横からその挙動を覗いてみた。
万年筆を壁にさらさらと走らせ、少し後ろに下がるように促す。
小首をかしげながら言われたとおりにすると……壁が、液体になった。

「……うわぁ!?」

万年筆の文明……らしいが、何をしたのかはよくわからなかった。
さえぎるもののなくなった空間に、タチバナは足を踏み出す。
手で促されて、皐月とゼルタも後を追った。

>「やあ、やあ、やあやあやあやあ勢い余って6回も挨拶してしまったね!?実に丸々一日ぶりの香わしいミーティオ臭に粘膜がいい仕事をしそうだよ!
  全国津々浦々のお日柄は万事快晴最良なり、こんな日は外に出るに限るね。排ガスでも吸って肺を鍛えておかないと、大人になったときツラいぞ!?」

そしてこけかけた。
ぱっと見てみれば、助けるべき対象であるミーティオが二人。
しかし皐月が驚くより先に、タチバナがその存在を看破してしまった、極めて変態的に。

202 名前:皐月 ◆AdZFt8/Ick [sage] 投稿日:2010/06/26(土) 04:28:01 0
>「やや!?なんと君はミーティオ君ではないな?しかも外見こそ美少女のそれだが――パンツの中の真実は一つ!僕の鼻は誤魔化せない!」

さらに奇声を上げながらブリッジ移動を開始する姿を見て、なんと言うかもう全てがどうでもよくなってきた。

(あー……何しに来たんでしたっけ……敵と思われたりしないかなぁ)

>「――――――君を、助けに来た」

そして、タチバナが手を伸ばした。

>>161
>「そうかい。そりゃまあ、何があったか知らねえけど、ありがとよ――」

そして肝心のミーティオはと言えば

(……あれ?)

カラカラと、

(あの……顔、は)

ガラガラと、音を立てながら、鉄パイプを床に擦らせ、そして――


五月一日・皐月は非戦闘員である。
彼女に戦闘能力は皆無だ。
助ける側の人間ではなく、助けられる側の人間だ。
だから「助けられる人間の気持ち」はよく分かる。
目の前の、鉄パイプを構えた、ミーティオの姿は、それとはまったく違った。
「助けられる存在」ではなく「戦う存在」だった。

>「――あたしに殺されるために、来てくれて」

動体視力を超えた速度で振るわれた凶器に割り込めたのは、それが行われる直前に、体が動いた結果だった。
やった事は実に単純、タチバナに飛び掛り位置をずらす。
そして、自分の服で受ける。
アクセルアクセスの宿った、その修道服で、ミーティオの鉄パイプを。

「――ぁっ」

腹にめり込んだそれの所為で、思わず声が漏れた。
アクセルアクセスの防御能力を皐月は知らない。
それがどれだけの衝撃を耐えられるのか、どういう条件で防御が可能なのか、事前の知識は一切なかった。

それでも意識が残っていて、生きているという事は、防御に成功した、という事だろう。

「……タ、チバナ、さんっ!」

床に転がりながら、皐月は声を上げた。

「アクセルちゃん……戻して、たたか、って……くだ、さいっ!」

アンケート一位が取れるかどうかは兎も角として。
出来る事を必死にやった結果を,繋ごうとした。

【ミーティオの攻撃を防御、バトンタッチ】
【結晶0、変動無し】


203 名前:宗方丈乃助 ◆d2gmSQdEY6 [sage] 投稿日:2010/06/26(土) 17:23:19 0
>>166>>170
「ぜぇ〜はぁはぁ。なんとか、追い付いたっすよ。はぁ…で、ここがお姫様のいる場所っすか?」

>「そこの鉄パイプ美少女とドレスアップ美少女」

>鰊はベレッタを構えて四人に分裂し、とりあえずスーツ姿の男にありったけの銃弾を撃ち込んだ。

>「「「「お前を助けに来た、付いてこい」」」」

俺のスタンドが能力を失ったけど、鉄パイプは何とかお姫様のとこに届いたみたい。
しかし、何だが変だ。状況を見る限り、お姫様とタチバナのおっさん、それにシスターっぽい人が
争ってやがる。

「え?な、何がどーなってんだよ。あんたを助けにみんな来たってのに…!!」

>「――あたしに殺されるために、来てくれて」

>「アクセルちゃん……戻して、たたか、って……くだ、さいっ!」

「ちょ、ちょっと待ってくれよ!なんであんた等が戦わなきゃなんねぇーんだ!?
お、おいモルガだっけ?さっきの奴らなんなんだよ!!
4人に分裂しやがるし……昨日まで仲良かった人らは戦い出すし、ワケわかんねーよ!!」

【遅れて申し訳ないっす】



204 名前:葉隠殉也 ◆sccpZcfpDo [sage] 投稿日:2010/06/27(日) 03:14:40 0
神滅滅甲「業」は神――人外を滅する物であり、人に対して全力を出すには過ぎたる物である
そのため、まだ人は加減が効く部類なので無用な殺傷を避けることができる
指先を向け、襲い掛かろうとしているしている者達に液体が放たれ
顔に付着し、バタバタと倒れていく
だが死んでいるわけではない、昏倒しているだけだ

「安心しろ、これは非致死性麻酔液だ…しばらくは目覚めないがな」

いかに生命力が強靭な存在でも四日は目覚めるのは不可能に近い但し常識の範疇という意味で
だがその中に聞かない者がおり、淡々とこちらに向かってくる
立ち止まる意志は感じられずただ命令をこなすという感じであった
それを見てなぜか哀れという思いを抱きながらも障害は排除せねばならない

「せめて一撃で葬ろう…」

霊力推進器を加速させ、正義マフラーがたなびく
そして目にも止まらぬ速さでトランプの兵士達を瞬く間に切り裂いていく
あっと言う間に殲滅し、立ち止まる。

>「殉也!!そっち行ったわよ!!」

佐伯の声で振り向き、投げ飛ばされたこちらに向かってくる者を
手加減した上で叩き落すそれと同時にボロボロの身体でこちらに向かってくる
もっと速く駆けつけていたらこんな事にはならなかったのだろうか
申し訳ない気持ちになっていた

>「ど〜こ、行ってたのよ。探したんだから……
 まぁ良いわ。状況を簡潔に教えるわ。
 あの雷親父が荒海銅二。それで、ゼロワンは今ビルのシステムに直接侵入してるみたい。そして、私はボロボロ。」

責められても文句は言えぬと思い、謝罪でもしようかと思ったが
表情など見えぬはずだが彼女は察し、手で制止する

>「サイガはまだ見つかって無いけどアナタが来たなら大丈夫か。
 都村さんと協力して、荒海を止めてちょうだい。……ま・さ・か・嫌とは言わないわよね?」

今出来ることがあるのならば最大限やるだけの事ましてこんな怪我人に
無理はさせるわけにはいかない

「状況はだいたい理解した…了解した、だが君以外にも怪我人がいるみたいだな
力を貸してくれ<巡回医>」

呼びかけに対して、一体の白髪交じりだが若い医者姿の英霊が現れる

「この者と他の者の治療を頼むそれとお前と<機関王>の力を
借りるかもしれん」
「了解した」

<巡回医>に佐伯の治療を任せ、都村と共に荒海銅二に向かって駆ける。


205 名前:葉隠殉也 ◆sccpZcfpDo [sage] 投稿日:2010/06/27(日) 04:19:48 0
が、奴は電撃を上に放ち、奴の目的に即座に気づいた英霊達が警告する

『いかん、殉也よ都村を庇え!』

その言葉にすぐに従い、都村の目の前で止まり
襲い掛かる電撃から身を挺して庇う
普通の人間では確実に死んでいる電撃だが、まだ戦闘継続可能範囲だ
電撃が収まり、都村の安全を確認する。
庇ったお陰か、ダメージはないようだ

「電撃は厄介だな…」

『確かに厄介だな昇天・昇華弾はおそらくあの電撃が遮る
もしくは奴の近くで戦っている者にも影響を与える可能性がある
飛び道具は使用不可能に近い
人間の反射神経では避けることは不可能だからな
接近も容易ではない…ならば使う手は一つしかない』

提示された選択肢は現在において一つを選ぶ
目を閉じ、左手を目の前に差し出す
ただただ前へと手を伸ばす
荒海へ、彼の傍で戦っている者達へ
自分自身には変化はない―――が――佐伯を追っていた子供の隣に英霊が現れる
そして曲が――英霊達の軍楽隊の曲が鳴り始めたとき少年は右手を差し出し

『喝采せよ!喝采せよ!』
英霊の一体の声と同時に少年は紅い鋼の人型へと姿を変える
それと同時に横には同じく<巡回医>が右手を伸ばし、荒海の身体を現象数式でスキャンし
弱点を見極める
「俺はこの『左手』を伸ばすだからお前の『右手』を貸してくれ<機関王>」

スキャンを通して同じく右目に情報が入る

――辛うじて人間の領域にあり――
――大半の攻撃は通さず――
――彼の者を倒すには――

意識が<巡回医>とシンクロし、重なって口が動く

「「……なるほど確かに並大抵の攻撃では通用しないだろう
けれど鋼の彼は人ではない」」

三人の右目は連動し、荒海を見る

「「鋼の君我が<機関王>」」

「「僕が君にこう言おう刃の如く、切り裂け」」

紅い鋼の人型の右腕が荒海だけを電撃ごと包み込み、寸断する高熱の刃が切り裂き、
ここで死ぬような輩にはないのでもう一撃を放つ

「「王の巨腕(かいな)よ、打ち砕け」」

紅い鋼の人型の右腕が更に超質量の相手を圧壊させる一撃が放たれる

【葉隠:喝采せよ!喝采せよ!】
【さすがにヤバイかな…?変えてもらっても…問題ありませんよ】


206 名前:前園 久和 ◆KLeaErDHmGCM [sage] 投稿日:2010/06/27(日) 13:01:21 O
前園久和は陰から様子を見る。
盾と矛、雷撃、それと人間。
あの不非の弟に任せなければ、此処に来ようとさえしなければどうにでもなったのだろうか。
しかし此処に来ようとしなければどうにもならなかったのかもしれない。
考えても仕方の無いことなのだが現実から逃避したいのだろう、久和は思考を止めない。

「…あいつ」

そしてふと、あの男が目に止まる。
死にかけで動けもしないあの男。
放っておけばいい、と彼は思うのだが何故か足が動く。
何故か彼の元へ走り、彼の近くで静止し、彼の体に手を翳す。

「倒れたらお前のせいだ」

彼は呟き本日三度目の治癒を開始する。
説明の出来ない力によって彼の目の前の男――テナードの傷が治っていく。
ただし、深い傷は完全には治らなかった。

完治する前に彼はテナードの上に倒れかかる。
三度も連続して力を使ったせいであり、こうなる事は彼も分かっていたのだが。

「……くそ、お前のせいだからな…」

何故か彼はテナードを助けたかったのである。
他人が大嫌いな彼が、雷撃や周りの状況など忘れる程に。


【前園久和:テナード治癒、動けね、でも気絶はしてない】

207 名前: ◆6bnKv/GfSk [sage] 投稿日:2010/06/27(日) 21:24:16 0
>>205

人ならざるモノさえもを討ち果たす連撃の幕が晴れ、しかしそこに荒海の姿は無かった。
だが消滅したと言う訳では、そのような甘い結末では断じてない。

「……なんや、物々しいのは口振りばかりかいな。遅うて遅うて欠伸が出るわ」

君の視界の外から、荒海銅二の声は聞こえる。
あろう事か。紅い鋼の右腕が彼を捕らえんとした刹那、彼はその拘束から逃れていたのだ!
彼が離れ業としか喩えようのない芸当を成し遂げられたのには、二つの理由があった。

一つは彼に施された『文明開化』が、遂にその本領を発揮したのだ。
帯電から放電へ、そして『神経伝達を超えた電気信号』の発生。
更には『電磁力による超速機動』さえもを、『崩塔撫雷』は発現していた。

そしてもう一つは――他ならぬ君自身にある。
思い返してもみたまえ。君は此処に至るまで何をしてきた?
走り、走り、更に走り、対人外の兵装さえもを乱用して。
それでいて君の矮小な胃袋が堪えられるかと問えば、答えは否だろう。

そう、君は自覚こそまだ至らぬまでも、既に極度の空腹――エネルギー不足へと陥っていたのだ。
それでは自慢の兵装も十全の効果を発揮する事は叶わないのが道理だ。

「さぁて……それで仕舞いか? こっちは今すこぶる気分がよぅてなあ……!」

先程破られた水道管からの散水によって、床は今水浸しの状態にある。
彼は右手を仰々しく振り上げ、渺渺と広がる水溜りへと沈めた。

「ここらで一つ、悲鳴の一つでも上げさせたろうやないか!」

さあ急ぎたまえ諸君!
水溜りに留まれば、そうでなくとも散水を受け濡れ鼠となってしまえば、
君達は荒海の電撃に対して酷く不利になってしまう!

だが一人、君達の中に最早地力では動けぬ者がいる。
君達は力を使えぬ彼は用無しだと見捨ててもいいし、仲間か或いは正義の名の下に助けてもいい。

208 名前:テナード ◆IPF5a04tCk [sage] 投稿日:2010/06/28(月) 20:33:43 0

>「ふーはは、救世主登場」

朦朧とした意識の中、テナードの視界に碧が飛び込んできた。
荒海とテナードのギリギリの間に割って入り、荒海の一撃を防ぐ事に成功した。

「(味方、なのか……?)」

いつの間にか傷もサッパリ消えたもう一人が矛を構え、荒海に立ち向かう。
少々無謀じゃないか、と思いつつも、心の中で二人に感謝する。

>「ネコミミィ!納棺の準備は完了しタ!!」

その時、幸か不幸か、先程テナードが作戦を持ちかけた少年(少なくともテナードはそう認識した)が、準備完了の合図を送ってきた。
だが、今のテナードは動ける状態ではない。どうするかと一瞬迷った時だった。

「お、おい!何で来た!?」

テナードの目の前に、フラフラになった五本腕が現れた。待っていろという言葉を無視した五本腕に、テナードが怒りの色を見せる。
そんな彼の怒りなどお構いなしに、五本腕が自らの手をテナードへと翳した。

>「倒れたらお前のせいだ」

そんな呟きがテナードの耳に入った。すると同時に、テナードの体の痛みが、少しずつだが和らいでいく。
驚きながらも、手を動かしてみる。神経が回復したのか、きちんと動く。
彼の行動にまだ若干の怒りは覚えつつも、礼を言おうと口を開こうとした。

>「……くそ、お前のせいだからな…」
>「自慢の盾とやらで防げるか見物やのお!? 纏めてくたばっとけや! 『崩塔撫雷』ィ!」

そう言って、五本腕がテナードの上に倒れこんだのと、荒海が無差別攻撃を開始したのは、ほぼ同時だった。
水をもろに被ってしまえば、感電は免れられないだろう。それが示す事は、すなわち。

「(クソッ、間に合わな――――……ッ)」

今度こそ、死を覚悟する。せめて、この五本腕が水を被らないようにと、覆いかぶさろうとしたその瞬間。


209 名前:テナード ◆IPF5a04tCk [sage] 投稿日:2010/06/28(月) 20:36:44 0

「聖母之盾≪プリトウェン≫!!」


女の声。それと同時に、高圧電流が流れる音とそれを防ぐ音が木霊する。
テナード達を感電させる水は、襲いかかってはきていなかった。恐る恐る顔を上げる。
目の前には、淡いカナリア色の薄い膜のようなものが、テナード達を覆っていた。そして中心には、膜を発現させる、一人の女。

「間一髪、だったかしら?」

八重子だった。琳樹を自分の車まで避難させた後、BJの指示を聞き、大急ぎでここまで駆けつけたのだ。
疾風俊足≪マッハラン≫を駆使し、水がテナード達に掛かる直前に防護したらしい。年のせいか、息が上がっている。
テナードが何か言う前に、八重子が手で制する。動けない五本腕、それに抱えていた見かけない少年少女を、荒海へと視線を向ける。

「この子達は私が守ってるから」

>「ここらで一つ、悲鳴の一つでも上げさせたろうやないか!」
「行って!!」

その声に背を押されるように、テナードは駆け出していた。
荒海が水溜まりに右手を沈めた。恐らく、先程の方法をまた使うつもりなのだ。

「させるァア!」

荒海と対峙していた男を壁にし、大きく跳躍する。荒海が即座に反応し、テナードへ放電しようと右腕を上げる。
だが、彼の思惑が叶う事は無かった。

「な、何や!お前ェエ!!」

その右腕を、荒海の背後から平然と掴む男が居た。ミシリミシリと嫌な音を立て、文明無効化の完了を告げる。
電撃を受けて尚手を離さない、彼の名前は101型。対文明破壊兵器だ。

「オラァアア!!」

文明の効かない強靭な力に腕を掴まれ、一歩も動けない荒海が、テナードの攻撃を避けられる訳が無い。
渾身の力を込めて振るわれたテナードの握り拳が、荒海のボディ、鳩尾へと捻じ込まれた。


声を上げる事もなく崩れ落ちる荒海。101型は最早動かなくなったそれを、開きっぱなしのエレベーターへと放り込む。
もれなく、受け止めようとした部下達も揃ってエレベーターの中へ放り込まれる結果となった。

そして仕上げにと、テナードはチャッカマンを取り出し、火を付ける。
それを躊躇う事なく、閉まりかけたエレベーターへと勢い良く投げ飛ばし、入ったのを見計らって叫んだ。


「爆発するぞ!伏せろォオオオ!!」

【テナード:荒海さんをエレベーターの中へ投入。爆発しますんで近隣の皆様はご注意をー】
【てっとり早く倒す為に101型さん使っちゃいました。ごめんなさい】


210 名前:テナード ◆IPF5a04tCk [sage] 投稿日:2010/06/28(月) 20:38:29 0
【訂正
 テナードが何か言う前に、八重子が手で制する。動けない五本腕、それに抱えていた見かけない少年少女を、荒海へと視線を向ける。
 →テナードが何か言う前に、八重子が手で制する。動けない五本腕、それに抱えていた見かけない少年と少女を降ろし、荒海へと視線を向ける。】

211 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/06/28(月) 20:48:30 0
現行ではギャグ、学園、オリキャラ、ライト
名無しや初心者を受け入れるだけの余裕が無いスレは、いくら宣伝されても読む気にならん

212 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/06/28(月) 20:49:15 0
誤爆したスマン

213 名前: ◆6bnKv/GfSk [sage] 投稿日:2010/06/28(月) 21:04:55 0
三浦です
リアルの事情がちょいと忙しいのでハルニレさんへのレスに数日の猶予をください

214 名前:ハルニレ ◆YcMZFjdYX2 [sage] 投稿日:2010/06/28(月) 21:11:51 0
>>213
了解です

215 名前:タチバナ ◆Xg2aaHVL9w [sage] 投稿日:2010/07/01(木) 00:16:05 0
>>161
>>202
>>170
>>153
>>203

>「――あたしに殺されるために、来てくれて」
>「「「「お前を助けに来た、付いてこい」」」」
>「ちょ、ちょっと待ってくれよ!なんであんた等が戦わなきゃなんねぇーんだ!?」

状況を整理してみよう。若い男女がキャッキャウフフしている密室へ無理やり押し入った変態は、女の方に鉄パイプで迎撃され、
同伴出勤していたシスターに突き飛ばされ、分裂した知らない男にありったけの銃弾を浴びせられ、はぐれたアフロに心配された。
死角だが、まだまだ少年とバイクと少女と犬が状況の混沌化に一役買わんと控えているのだ。一世代前のCPUなら処理落ちものの人口密度である。

さて、そんな中で不法侵入前科二犯目を見事獲得したタチバナといえば、壁に突き刺さっていた。恒例行事の如く、突き刺さっていた。
ミーティオの鉄パイプは皐月の機転によって回避できたし、四人男のベレッタにはそもそも人を吹っ飛ばせる機能はない。
となれば皐月に突き飛ばされたことで壁にめり込んだと考えるのが道理だが、最早わざとやってんじゃないかってぐらいに、頭を壁に埋めていた。

首から上が壁に埋没しているから、タチバナの急所を狙った銃撃は全てスーツへと集中し、生憎と彼のスーツは『超硬い』。
大上段からのサーベルすら防ぎ切るそれにとって、屋内戦用の弱装弾では些か威力が不足していた。

>「……タ、チバナ、さんっ!」

『さつきだいじょうぶ!?けがない?すごいしょうげきいったよ!?たてる?――あとタチバナいきてる?』

タチバナの窮地を救った皐月は、代わりに鉄パイプの一撃を受けて――アクセルアクセスの防御があったにせよ、それは大変な覚悟である。
彼女は硬質な床に身を投げ出し、それでも壁に突き刺さるタチバナへ、声を投げた。それは自分の身を案じて生まれた言葉ではなく、

>「アクセルちゃん……戻して、たたか、って……くだ、さいっ!」

純然たる善意。どこまでも破滅的で自滅的で壊滅的で、――何よりも尊い決意の一言。
壁の中にあってそれを聞いていたタチバナはやはり壁に埋もれたまま鷹揚に頷き、そしてアクセルアクセスに願った。

「本気を出そう――彼女の覚悟に報いるように」

『まかせれ』

皐月の修道服に顕現していたアクセルアクセスが淡く発光し始め、その体躯を新たなる段階へと進化させていく。
緊急用のタクティカルプログラム。汎用重機である『精霊』を、戦闘に特化した形へと変えていく。
その鍵語を、タチバナは叫んだ。

「アクセルアクセス――『ACT.2』!!」

パァンッ!!

タチバナの服が弾け飛んだ。

216 名前:タチバナ ◆Xg2aaHVL9w [sage] 投稿日:2010/07/01(木) 00:18:13 0
銃弾すらものともしなかった堅牢を誇るスーツが、中のシャツごと爆ぜて散った。
肌着も当然吹き飛び、今の彼は妙にぴっちりしたビキニ型のブリーフだけが最後の砦として機能している。
首から上が壁にめり込んだ、半裸の変態。タチバナの現状を緻密に描写するならば、そういう感じだった。

世界は、氷結した。

『……なにがあったし』

「はははは流石のアクセルさんでも予想外のようだね!こんなこともあろうかとさっき僕の『超硬いスーツ』を
 『スーツ型時限爆弾』に改名しておいたのさ!たとえ壁に頭がめりこんでいてもところかまわず露出できるようにね!」

『ところかまえよ!なんでぬいだ!?』

「この部屋の女性密度を考えたまえよアクセルアクセス。狭い部屋に1、2、3――君を含めて4人もの"若い"女性が!
 これはもう脱ぐしかあるまいね!?――爆速で!」

『どうしてそこまでじょーきょーはあくできるのにくうきだけはよめないんだろーね』

「HAHAHA、空気など生まれてこのかた読んで行動した覚えはないよ」

想像以上に生っちょろくてだらしない感じの体を披露しながら、タチバナはまるで大根でも収穫するように壁から頭を引き抜く。
乱れたオールバックを手櫛で(にもかかわらず完璧に)整えながら、半裸の彼は部屋の中央まで歩いてきた。

「さて、僕が未だ五体を十全でいられるのも、この場で裸体を余すとこなく披露できるのも、――君のおかげだ皐月君」

おもむろに床に転がる皐月へと振り向いた。腰から上を綺麗に捻って、そのままの状態で床の皐月へ頭を近づける。

「君の、お、か、げ、だ。今年のノーベル変態幇助賞は総なめだね!?申し遅れたが、ありがとう。『色々と』助かった」

いつものアルカイックでエキセントリックな笑い顔や能面のような無表情とは一線を画す、『ただの微笑』。
だから、と繋げ、

「君を護ろう。僕と僕らの実存を賭けて。そして君にも『護って欲しい』。僕と、僕らと、――ミーティオ君を」

静かに、修道服が形を変える。皐月を包み護るように、抱き擁するように、支え立つように。
『アクセルアクセスACT.2』の正しい姿へと、変形していく。
やがて出来上がったのは、『皐月と同じ身長の』、修道服色の幼女だった。アクセルアクセスである。

「『ACT.2』は"精霊"を身に纏うことによって脆弱な本体の攻防力をカバーするモードだ。
 着装者はアクセルアクセスの『中の人』――言わばスーツアクターとなって、積極的戦闘能力を行使する」

"精霊"と着装者との意思のやりとりは素肌に流れる生体電流を介して行われる。
その為着装者は事前準備として服を脱ぐ必要があるのだが、登録者として自動で半裸になるタチバナはともかくとして、
皐月にとってはむしろ好都合な状況だったのかもしれない。奇しくも服がそのままアクセルスーツになるのだから。

「皐月君、君にはそのアクセルスーツを駆り、ミーティオ君を止めてもらいたい。君も彼女もどっちも無傷が望ましい。
 武装の種類は直接アクセルアクセスに聞けば教えてくれるはずだ。全て非殺傷だから、上手く使ってくれたまえ」

217 名前:タチバナ ◆Xg2aaHVL9w [sage] 投稿日:2010/07/01(木) 00:20:15 0
そこまで言って、タチバナはぐるりと上半身を回転させて向き直る。四人男と、珍妙頭と、竹内萌芽と、犬と少女。
それから気配を殺していたゼルタを順番に見据え、誰が敵で誰が味方かを考察する。この間0,2秒。

(とりあえず四人男は敵、ゼルタ君は味方。珍妙君とモル夫君は休鉄会の仲間。犬と少女はモル太郎君の友達かな)

「そこの四人衆――そう、量産型っぽい君達だ。ミーティオ君を助けに来たと言ったね。奇遇だな、僕もだよ。
 だが問答無用で撃ってきて、今こうしてくっちゃべってる僕を撃たないということは、交戦の意思なしなのかな?
 あるいは弾切れとも推測されるが、君達は見るからにプロだ。初撃で撃ち止めなんて無慮はやらかさないだろう」

半裸のまま、タチバナは鷹揚に饒舌る。
一触即発の事態で、しかも生身でありながら、それは酷く余裕のある表情だった。

「よろしい、ならば戦闘だ。無事僕の魔の手からミーティオ君を助け出せるかな?僕より早く!
 そしてこの場で僕『ら』にちょっかいかけたことを後悔してもらおう。――珍妙君、モル沢君、ゼルタ君、こらしめてやりなさい」

「ぇあ!?あたしも!?」
「勿論」

ゼルタが素っ頓狂な声で抗議する。
タチバナはいつもの無表情で、それをばっさり切り捨てた。

「戦わないのかね?こういうのは君の専売特許だろう」

「あたしの専門は盗みだっての!不意打ちで殺しはやれるけどマジな戦いはキツいよぉ」

「ああっブリーフが滑る!?」

「どんな状況!? わかった!やりますから手を腰から離して!!」

「さて、」

ずい、と一歩大きく踏み出し、あと一歩踏み込めば十分四人衆へ肉薄できる距離まで近づいてみる。
股間からにゅるりと飛び出した棒状の物体を手にとれば、それは万年筆型の文明である。

「こちらは四人、向こうも四人。丁度いいじゃあないか。ミーティオ君の件は一時皐月君に預けて、
 僕らはまずこの囚われの姫君を助けに乗り込んできた無個性パーティのお相手をしようじゃないか」

ブリーフ一丁のまま、どこまでも不敵に、宣戦を布告した。

「さあ!愚かなる勇者達よ!!僕ら休鉄会暗黒四天王を突破できるかな?今日の僕はちょっとだけダーティに行くよ。
 久々に忘れ去られてたキメ台詞の設定を発掘してみようと思う。――ネットに書いてあったから、間違いない」


【ミーティオ鰊チームvs休鉄会】
【鰊4〜7にゼルタ、丈乃助、萌芽、タチバナで戦うよう会長命令、一人一殺でもチームバトルでも可】
【ゼルタ君に関してはNPC扱いで。鰊さんの負担急増しそうですいません。】
【真雪さんに関しては面識がない上に休鉄会メンバーではないので会長命令ができない状況です】


218 名前:アクセルアクセス ◆Xg2aaHVL9w [sage] 投稿日:2010/07/01(木) 00:22:04 0
<アクセルアクターパート>

君の目の前には、前方を精密に捉えたメインカメラの映像が展開されている。
ロボット物にありがちなコンソールと計器類に囲まれているが、ぶっちゃけタチバナの趣味で雰囲気だけなので気にしなくて良い。
モニターにも障害物との距離やミーティオの生体反応が表示されているが、こちらは結構役立つ情報である。

『しんぱいしなくても、まもるよ。おまえはタチバナのおきにいりだから』

アクセルアクセスの声は、生体電流を介して直接君の脳裏へ響いてくる。

『きちょうなつっこみやくだもん。わたしも、おまえのことはすき』

操縦に関してはなんら心配することはない。君は修道服を着てうごき回るのと同じように、それ以上の速さと力強さで動くことができる。
布製の服を素材にしているとは言え、その布質の良さも相まって非常にしなやかで弾力に富んだ作りとなっている。
この弾力は衝撃を吸収し、攻撃者すら傷つけない慈愛の護りを発揮するだろう。

『いこう。おそいくるかいじんてつぱいぷおんなを、それでもだきしめてあげるために』

アクセルアクセスは、君の一歩を待っている。



【アクセルスーツを操縦してミーティオを捕獲しよう!】

【アクセルは自由に動かし、喋らせて頂いてオッケーです】

【武装一覧:スタンガン――高圧電流で対象を気絶させる。服の上からでも効果はあるが気絶までもってくのは難しいぞ!
     :スラスター――足の裏から推進剤を燃焼させて高速機動を実現するぞ!超速いぞ!
     :光学ステルス――屈折率を下げて視認しづらくする。服だけ消えるとかベタなオチはないから安心だね!
     :亜空間ホール――なんでも吸い込み、なんでも吐き出す。ホールはいくつか分かれており、タチバナの生活空間もあるぞ!
     :ライオットバルカン――鎮圧用連射砲。ゴム弾と催涙弾の二種類があるぞ!
     :フレキシブル警棒――近接用の警棒。伸び縮み自在。
     :シェルシールド――盾。超硬い。】

【その他近未来っぽい兵器ならなんでも後付け歓迎です】


219 名前:経堂柚子 ◇OryKaIyYzc[sage] 投稿日:2010/07/01(木) 00:55:12 0
敵の向こう側から、赤のナイトがやって来た。
何か有ったのかと柚子が振り向く。

「女の子が自分から肌を晒すんじゃないの!!」

意外な事を言われて、柚子は大層驚いた。
固まった柚子を狙う敵に気付き鎌の柄の部分で突く。
鳩尾に当たったらしく、敵はすぐに崩れ落ちた。柚子は敵を倒しながら、首を傾げる。

「そんなことユキちゃん以外に言われたの、初めて」

柚子の発言こそが意外だったらしい赤のナイトをほっといて、敵に集中する。

「あーあー! なんて事してくれるんですかあ! 今日の仕込みが台無しですよ!」

ちょうどその時、どこか間抜けな怒声を伴って鋭い棘が飛んできた。
柚子自身の頭や赤のナイトを狙った物だけ撃ち落として、柚子は振り返る。

「……なぁんてこたぁ無いんですけどねえ! ええそうですとも? アンタらが台無しにしてくれたのは……」

「何で怒ってるの?」と声を掛けたかったが、それは叶わなかった。
いきなりパスタの雨が降ってきたのだ。

「俺のここ数年の必死の仕込みぜぇんぶだよド畜生め! あぁもうやってらんねえ!
 ぶちのめしてスープの出汁にでもしてやろうか! 脂身だらけと筋張った肉じゃあ大したスープも出来なさそうだがねえ!?」

(…小物)

思ったことを口には出さず、鍋から飛び出る灼熱のトマトをタナトスで打ち返す。
それにしても多彩な攻撃が飛ぶものである。
まるで赤のナイトを退けた白のナイトのようだ。そして、柚子はそれが気に入らない。

(それがしが考案せし物…みたい。それだと赤のナイトが負けちゃうじゃない)

柚子は腹が立ったのである。
それ故に、彼に嫌がらせ。彼が放った攻撃を、すべて撃ち落としてしまおう。

と、突如水が降ってくる。まずい、柚子に被害は及ばなかったが赤のナイトが見えない。
どうなって居るのだろうか。

220 名前:経堂柚子 ◇OryKaIyYzc[sage] 投稿日:2010/07/01(木) 00:55:40 0

敵の向こう側から、赤のナイトがやって来た。
何か有ったのかと柚子が振り向く。

「女の子が自分から肌を晒すんじゃないの!!」

意外な事を言われて、柚子は大層驚いた。
固まった柚子を狙う敵に気付き鎌の柄の部分で突く。
鳩尾に当たったらしく、敵はすぐに崩れ落ちた。柚子は敵を倒しながら、首を傾げる。

「そんなことユキちゃん以外に言われたの、初めて」

柚子の発言こそが意外だったらしい赤のナイトをほっといて、敵に集中する。

「あーあー! なんて事してくれるんですかあ! 今日の仕込みが台無しですよ!」

ちょうどその時、どこか間抜けな怒声を伴って鋭い棘が飛んできた。
柚子自身の頭や赤のナイトを狙った物だけ撃ち落として、柚子は振り返る。

「……なぁんてこたぁ無いんですけどねえ! ええそうですとも? アンタらが台無しにしてくれたのは……」

「何で怒ってるの?」と声を掛けたかったが、それは叶わなかった。
いきなりパスタの雨が降ってきたのだ。

「俺のここ数年の必死の仕込みぜぇんぶだよド畜生め! あぁもうやってらんねえ!
 ぶちのめしてスープの出汁にでもしてやろうか! 脂身だらけと筋張った肉じゃあ大したスープも出来なさそうだがねえ!?」

(…小物)

思ったことを口には出さず、鍋から飛び出る灼熱のトマトをタナトスで打ち返す。
それにしても多彩な攻撃が飛ぶものである。
まるで赤のナイトを退けた白のナイトのようだ。そして、柚子はそれが気に入らない。

(それがしが考案せし物…みたい。それだと赤のナイトが負けちゃうじゃない)

柚子は腹が立ったのである。
それ故に、彼に嫌がらせ。彼が放った攻撃を、すべて撃ち落としてしまおう。

と、突如水が降ってくる。まずい、柚子に被害は及ばなかったが赤のナイトが見えない。
どうなって居るのだろうか。



221 名前:不非兄弟 ◆KLeaErDHmGCM [sage] 投稿日:2010/07/01(木) 02:04:55 O
「なあ」

盾を構えた希射が呟く。
彼の言葉は兄に向けられたものである。
しかし兄の返事を待つつもりは無く、言葉を続けた。

「俺達は流石だよな」

「う、うん」

弟の言葉に、兄は戸惑いながらも肯定をする。
自分達は何よりも誰よりも流石だと、彼らは昔から小さな疑問すらも抱かなかった。
しかし弟は表情も声も不満げである。

「なら見せ場はどこにいった?」

見せ場、死ぬ覚悟までしておいてある男に取られたあの見せ場だろうか。
というかそもそもアルバイトに見せ場なんてあるのだろうか。
甚だ疑問ではあるのだが、雅魅は口には出さなかった。

「あのおっさんと共に遥か遠くへ…」

「見せ場は、俺達の心の中に…じゃねぇよやかましい」

「……」

理不尽である。
自分で言ってやかましいとは理不尽以外の何物でもない。
しかし希射は雅魅に対しては理不尽の塊のような男である。
雅魅のプリンを食べておいてこのメーカーのプリンはまずいだとかなんだとか、正直ドSだとかを振り切ってただの理不尽野郎であり傲慢である。
だが雅魅はヘタレであるが故に文句は言えない。

ヘタレ野郎がそこまで現実逃避をしていると不意に希射が声を荒げた。

「間抜けだよな、俺達!流石とは程遠いぜ!?」

「かっこいいこと言ったのにな!?地の文とか思い切りかっこつけてたのにな!?」

「忌々しい猫野郎だぜ!ちくしょう!出番返せ!!」

そう息継ぎもせずに捲し立てた末に彼は周りに目を向ける。
そしてある男を見付けて、そのまま突進、体当たり。
効果は抜群のようだ、等とテロップが出るかどうかは分からないがとりあえず叫んでおく。

「くそおおお!食べ物を粗末にするなああああ!!」

そう、八つ当たりである。
まごうことなき、八つ当たりなのである。
そして彼が柚子を助けようなどとは微塵も思っていないらしいのも事実である。


【不非希射:鍋さんにとっしん、効果は今一つでも抜群でもどちらでもどうぞ】

222 名前:代理ですよー ◆b413PDNTVY [sage] 投稿日:2010/07/01(木) 23:59:48 0
三浦です。パソコン様がエラー吐いてお仕事のテキストが消し飛びました
あと幾許かの猶予が頂きとうござりまする
ですがもう進めた方がいいようでしたら、頑張りますです


223 名前:佐伯 ◆b413PDNTVY [sage] 投稿日:2010/07/04(日) 17:44:34 0
「そんなことユキちゃん以外に言われたの、初めて」

零の突っ込み。それに対する彼女の返答はどこか視点のずれたものだった。
一体、何を言っているのだろう?
こんな事は当たり前の事だ。そう、自分に関する記憶の無い零にとっても当たり前の事だと言うのに……

「なに!言ってッ!!るの!?」

攻防のさなかと言う事もあって零は息を区切らせながら否と答えを返す。
しかし、その間にも敵は迫っている。現実は非情と言う奴だ。
零は『敵』の迎撃を行いながらも少女に向けた言葉を紡ぐ。その内容はある意味で彼女らしいものだ。

「馬鹿!」

罵り。
同時にスウェイで背面から放たれた刃をかわし、続けて地面スレスレをなぞる様に背をのけぞらせながら正面からの凶刃をかわす。
そして、その二人の獲物を呼吸をするような自然さで一人を蹴り飛ばし、もう一人は後頭部に警棒を振り下ろす事で沈黙させる。
そして再び口を開こうとした時だ……その口は再び閉じられる事になる。
その理由は悲鳴交じりに飛来する殺気の塊。
見れば何かがこちらに向けて迫っているのだ。それも仲間を巻き添えにして。

「あーあー! なんて事してくれるんですかあ! 今日の仕込みが台無しですよ!」

零は飛来する何らかの物体を身を翻して避け、振り向く。

「……なぁんてこたぁ無いんですけどねえ! ええそうですとも? アンタらが台無しにしてくれたのは……」

声と細い針の様なもの…それは『福猫飯店』と書かれた看板の下の厨房に居る人物が発したものだった。
厨房の奥にはコックと思しき服装の人物が怒髪天を突くといった風体で揺らめいている。

(あちゃー……怒ってるよねぇ…?)

「俺のここ数年の必死の仕込みぜぇんぶだよド畜生め! あぁもうやってらんねえ!
 ぶちのめしてスープの出汁にでもしてやろうか! 脂身だらけと筋張った肉じゃあ大したスープも出来なさそうだがねえ!?」

……沈黙。あぁ、沈黙。

「オッケィ……」

再び彼の放った大量の何かが一斉に零に襲い掛かる。それに対して零は一向に行動を見せる事は無かった。
だが、それを防ぐ者がいた。先の少女だ。

「ここらで一つ、悲鳴の一つでも上げさせたろうやないか!」

そして轟音。どうやら向こうもかなり派手に始まっているらしい。
降りかかる火の粉は払い、降りかかる帯電した水しぶきは『重力制御』で打ち返す。

「オッケィ。ぶっ《非常にお聞き苦しい内容なので規制します(-、-;トソン》」

224 名前:佐伯 ◆b413PDNTVY [sage] 投稿日:2010/07/04(日) 17:47:24 0
-Fly me to the moon
-さぁ、私を月へと連れって行ってくれないかしら?
Let me play among the stars
星と戯れ、
Let me see what spring is like on Jupiter and Mars
火星や木星の春を見てみたいの

In other words, hold my hand
ねぇ、いい加減に私の気持ちに気づいて?
In other words, baby kiss me-
この手を握って、優しく蕩ける様な口づけしてほしいの.....-

いまだに流れる事をやめないこのラブソング。
乙女心をうたったこの歌詞に並んでもおかしくは無い程度には乙女である零に対しコックが放った言葉はあまりにもデリカシィが無いと言う物だ。
彼の放った言葉、特に「筋張った」辺りが事更に琴線に、コンプレックスに触れたのだ。

「あぁん?なんつった?なんつった?なんつったよォ?やれるもんなら……」

その先は続かない。零が怒りにまかせて片っ端から近くの椅子とテーブルを『重力制御』を応用して超高速で蹴り飛ばし始めたからだ。

「#」

視認より早いか、鍋から吐き出される大量の毒矢。その正体は食材である。
ガガガガと木製のテーブルを削り取り、開孔させるスパゲットーニ。それを見て零はお返しとばかりに皮肉をこめて指摘した。

「そもそも、アンタ料理人に!」

区切り、ならばと、今度は破壊された物より大きいテーブルを下から蹴りあげ、後ろ回し蹴りでコックへと放ち、9.8m/sの加速を追加して打ち込んでやる。

「料理人に向いてないわよ?ボロネーゼを作るならフットカチーネ等のソースがからみやすい物を選びなさい!!」

時速に換算すれば35.28km/hである重力加速度を得た巨大なテーブルの殺傷力は推して知るべし。

「そうよ!食べる人の事を考えて料理の出来ないアナタに料理人を名乗る資格は無い!!」

「ぐ、知った風な口を・・・・・・小娘がァ!!」

迫るテーブルに対しコックは配下のコンキリエを差し向けると迎撃を行う。
貝の形を模した餓鬼の顎門により一瞬の内にテーブルは解体され、脚が床を転がる。
そして餓鬼達は零に向け一斉に襲い掛かる。

「ハッ!」

兵(いくさ)に臨みて闘う者は皆、陣烈前(すす)みて行く(あゆみゆく)
恐れず、迷わず、刃を掲げて、ただ歩み行くは闇さえ震える■■■。
目をそらすな、目を閉じるな、さすれば今生の別れ。

「よっ!ハッ……!」

人外なる容姿をした巨大なコンキリエの群れ。
しかし、彼らをもってしても零を退ける事はかなわなかった。
それどころか彼女はコンキリエの一体をボールに見立ててリフティングを行い、蹴り返す。

「残念賞。ってところね?」

「上等……だァ!覚悟は出来てンだろうなァ・・・!!」

「of course.」


225 名前:佐伯 ◆b413PDNTVY [sage] 投稿日:2010/07/04(日) 17:48:39 0
死ねと言う言葉は聞こえない。聞く気もない。故に耳に入る事はない。
飛び交う食材を身を翻し、零は避け続ける。気がつけば足もとはぐちゃぐちゃになった食材に埋め尽くされて居た。
「あぁ、もったいない」と思いつつ足を取られないように場所を選んだ瞬間、狙っていたとばかりに周囲が全て壁として迫ってくる。

「ひゃ〜はっはっはっは!!これが本当の四面楚歌ってなァ!!!」

叫ぶ悪鬼。

しかし、

「オン!」

その程度で佐伯 零を、サエキ レイを、■■・■■を止める事など出来よう筈もない。
道が無ければ道を作ればよい。零は床を蹴り、空へと舞い上がる。
『重力制御』による恩赦を受けている零にとって重さなどは存在しないと同じ、舞い上がった躯はまるで当然のことのように天井に着地する事になる。

「どうよ?さっ、て……酷いものね」

どやがおとまでは行かないが満足げに呟き周りを確認する。
一言でいえば戦場はコックと荒海の手により蹂躙され、悲惨きわまる状況と相成っていた。


「くそおおお!食べ物を粗末にするなああああ!!」


どうやら、あのコックの相手も表れたようだ。

「なら、まずは……」

もはや口癖のようになっている行動前の呟きを洩らし、零は無線機に救護班を待機させておくようにと連絡を入れた。

【状況:鍋男の攻撃を捌ききって天井に退避。絵的には佐伯自身にかかる重力を完全に『重力制御』でコントロールして立ってます】

【目的:C迷子の捜索。】

【持ち物:オリシ『折りたたみ式警棒』、『重力制御』、携帯電話、現金八千円、大型自動二輪免許】

226 名前:竹内 萌芽(1/4) ◆6ZgdRxmC/6 [sage] 投稿日:2010/07/05(月) 02:13:30 0

男と対峙する萌芽と犬。
しばらく緊張した空気が流れるかと思いきや、それは一瞬で砕かれた。

年端のいかない娘たちをはべらせた社会の害悪―――変態が現れたのである。

「『一筆New魂』――!!」

オールバックのその男が、叫びながら何事かその手に持った万年筆で書き綴ると、
壁にしか見えなかった扉に光がのたうちまわり、一瞬にして溶け落ちる。

「あー、ちょっとタチバナさん……」

中は危ないと声をかけようとする萌芽を、タチバナは見事にスルー。
始めは普通に歩いて、中の女性二人に近づき、途中からしゃかしゃかと気味の悪い音を立てながら
ブリッジ走行で、走り寄った。

「ぎゃあああああああああああああ!!!」

その動きは、人のものではなかった。
あまりの恐怖に萌芽は、叫び声をあげ、がたがたと身を震わせる。

そしてその恐怖が、一瞬萌芽の判断力を鈍らせた。

「――――――君を、助けに来た」

「ストップです、タチバナさん! 今その人に近づいたら……」

「――あたしに殺されるために、来てくれて」

恐れていた事態が、起こってしまった。
すべて、自分のせいだ。
シスターに突き飛ばされたタチバナは壁に刺さり、四人に分裂した男に銃で滅多打ちにされた。

タチバナをかばったシスターはミーティオの打撃をまともに受け、床でうなだれている。

「あ……あぁ……」

なぜだろう?
なぜだろう、肩が震える。
すべて自分のせいだ。自分が、面白半分でミーティオに”あやふや”を使ったりしたばっかりに……

―――タチバナが、死んだ。


227 名前:竹内 萌芽(2/4) ◆6ZgdRxmC/6 [sage] 投稿日:2010/07/05(月) 02:14:42 0

なぜだろう、なぜ自分はこんな気持ちになっている?
胸が苦しい、自分のせいで誰かが死んでしまったという、この事実に心が耐え切れなくて押しつぶされてしまいそうだ。

結局、憎悪なんて見て楽しいものではなかった。

自分は……

「僕は……僕……は……」

そこから先の言葉が出てこない。
何を喋ったらいいのか、何を考えたらいいのか全く検討がつかない。
ただ理解したのは、取り返しの付かないことをしてしまったという事実。

―――のはずだった。

「お!?」

まず萌芽の目線の先のタチバナの服が、突如粉みじんに吹き飛んだ。
そしてなにやら妙な漫才が聞こえてくる。
片方はタチバナの、片方は幼い女性の声。

『ところかまえよ!なんでぬいだ!?』

「この部屋の女性密度を考えたまえよアクセルアクセス。狭い部屋に1、2、3――君を含めて4人もの"若い"女性が!
 これはもう脱ぐしかあるまいね!?――爆速で!」

女性? 女性に見せるために脱いだ?
さっきそこの女の人は実は男だと言っていた。
つまりこの部屋にいる”若い”女性というのは、皐月、ミーティオ、そして……

はっ、となって後ろを振り返る。真雪が、タチバナのほうを見ていた。
すこしばかり染まった頬と、読み取れない表情。

「ああ、そうでしたか、生きてたんですね、よかったよかった……」

タチバナに笑顔をむけながら萌芽は彼のほうにSHOOTVENTを構え、引き金を引いた。
タップダンスを踊るように、ごく自然な動作で彼はその弾をかわしてみせる。
こちらの攻撃などないのと同じという風にシスターと話すタチバナ。
ブリーフ一枚で。

そう、ブリーフ一枚で。

「くたばりなさい、社会の害悪!!!」

涙目で引き金を引く彼の、その目に浮かんだ涙に、ほんのちょっとうれし涙がまざっていたことを、萌芽は知らない。


228 名前:竹内 萌芽(3/4) ◆6ZgdRxmC/6 [sage] 投稿日:2010/07/05(月) 02:15:59 0

彼のSHOOTVENTには『永久機関』が内蔵されているため、弾切れはない。
しかし、とりあえず引き金を引くのにつかれた萌芽は、その場で体育座りをし、いじけていた。

「ちょ、ちょっと待ってくれよ!なんであんた等が戦わなきゃなんねぇーんだ!?
お、おいモルガだっけ?さっきの奴らなんなんだよ!!
4人に分裂しやがるし……昨日まで仲良かった人らは戦い出すし、ワケわかんねーよ!!」

となりで遅れてきた丈乃助が混乱している、萌芽はなげやりな口調で答えた。

「わけわかんないのは、あの人の生命力ですよ、なんなんですかアレ。
 もう人間じゃないですよ、普通あれだけ銃で撃たれたら死にますって、
 そのまえに壁にめり込んで呼吸ができてる時点でどうなんです、アレ」

そして、萌芽は組んだ足の隙間から、タチバナのブリーフを睨みつける。
続けて、ため息と友に、そっと呟く

「……負けた」

竹内萌芽、外見面ですべて平均的な男の子。
もちろん、男性の象徴たる、アレも平均。
男子としての敗北をはじめて味わう、今日この頃。

そして、思い出されるのは、先ほどの頬を染めた真雪の姿。
男としてのプライドは、すでにボロボロだった。

「よろしい、ならば戦闘だ。無事僕の魔の手からミーティオ君を助け出せるかな?僕より早く!
 そしてこの場で僕『ら』にちょっかいかけたことを後悔してもらおう。――珍妙君、モル沢君、ゼルタ君、こらしめてやりなさい」

すっぱだかのまま、どこかの黄門様みたいなことをいうタチバナ。
萌芽はゆっくりと立ち上がり、言う。

「あー、悪いですけど、それ僕はパスで。とりあえずあの人がああなっちゃったのは僕の責任ですし、
 シスターさんもちょっと心配ですから」

立ち上がった彼の全身に、ざざざという音と友にノイズが走る。
それに、どうやらこの”分身”の方も、きっと長くはもたない。
もし戦闘の途中で自分の分身が消えてしまったら、それは皆の足をひっぱることになってしまうだろう。
彼らに背を向け、ミーティオのところへ向かう途中に聞こえた、『休鉄会暗黒四天王』というフレーズに後ろ髪を引かれつつ、
萌芽は変身したシスターの下へ歩いていった。


229 名前:竹内 萌芽(4/4) ◆6ZgdRxmC/6 [sage] 投稿日:2010/07/05(月) 02:18:06 0

「真雪さん、見ていてください」

ふと、後ろにいる真雪のほうを振り向き、びしと人さし指を立てる。

「僕のほうが”大きい”男であると、証明します」

ふふん、と笑いながら、萌芽は両腕を広げる。
右腕の痛みがまだ続いているのが気にかかるが、今は置いておこう。

(ストレ、出番ですよ)

自分がまるで風船みたいに膨らんでいくイメージ。
彼は自分にとりこんだ空間のあちこちと、萌芽のなかにあるストレンジベントのイメージを”あやふや”にした。

「アヒャ!!」「アヒャヒャ?」
「アヒャ?」「アッヒャッヒャ!!」「アッヒャ〜」

天井のあたりから、可愛らしく、そして狂気に満ちた笑い声が聞こえ始める。
そして、降り注いでくるのは、赤くてふわふわの、虹色服を着た道化師たち。
床に落ちるたびにぽよんぽよんと跳ね回るそれらは、明らかに実体を持っていた。

”ア、アヒャ!!? なな、何だこれ!!”

「これは、僕の精神内で飼っているペットです。想像以上に柔らかく、そしてすごくはねます」

言いながら萌芽は、ぽよんぽよんと跳ね回るストレンジベントたちのうちの一匹にSHOOTVENTを向け、引きがねを引く。

「アッヒャ〜」

赤い光弾が命中した彼女は、すごい勢いで飛んで、跳ね回っているほかのストレンジベントにぶつかる。
ストレンジベントにぶつかったストレンジベントが、さらに他のストレンジベントにぶつかり、やがて彼女たちはまるでビリヤードの弾のように
お互いにぶつかりあいながら部屋の中を壁にぶつかりながら跳ね回った。

「あははは、どうです、相手の動きを邪魔しつつ、視界を塞ぐ効果を持つ僕の必殺技、名づけて、『ドカ雪ストレンジベン…』」

得意げに語る彼は、「『ト』ッ!!」という間抜けな音を発しながら、飛んできたストレンジベントを顔面で受け止める。
彼の顔面に張り付いたストレンジベントは、しばらく彼の顔の前であひゃあひゃ言っていたが、やがて飽きたのか、かれの顔面から手を離し、またぽよんぽよんと跳ね回り始めた。

「これ、よく考えたら敵じゃなくて味方にもかなりうっとおしいですね……」

「ま、いっか面白いし」と笑いながら、彼は幼女っぽくなったシスターの斜め後ろに立った。

ターン終了:
【ドカ雪発動:ストレンジベントは破壊が難しいよ! 銃で撃ってもはねるだけだよ!
       そして効果は部屋全体におよぶよ! すごくうっとおしいね!!   】


230 名前:荒海 ねこ(1/1) ◆6ZgdRxmC/6 [sage] 投稿日:2010/07/05(月) 02:20:06 0
荒海ねこは、走っていた。
先ほどの体力で限界は近い、ただ、自分の主人を守るために、彼女は走る。

「お嬢さん、すんません! ウチは、結局誰も守れんかったのに、こうしてのこのこと生き延びて……」

謝りながら、ねこは少女のような姿をした彼と、目の前の男の前に割って入る。
光り始める、彼女の首輪。
それに秘められたのは、自分の命を犠牲に戦闘能力を限界まで引き上げる文明。『限界突破』《オーガノイザー》
残された命は長くは無い。しかし、自分は少しでも長く戦い、彼が逃げるまでの時間、彼を守らなくてはいけない。
なのでそれを無駄遣いせず、少しずつ力に変換することにした。

ねこの姿は殆んど変わらない。しかし、その全身の毛は滞りなく逆立ち、目はらんらんと輝いていた。

「せめて、散り際は……限りなく美しく」

小さなビーグルは、最後の戦いに望もうとしていた。
犬として、任侠の女として。
己が君主を、守るために

ターン終了:
【四天王にねこが参戦したよ!】


231 名前:葉隠殉也 ◆sccpZcfpDo [sage] 投稿日:2010/07/06(火) 00:09:09 0
怪異――メタ・クリッター――と呼ばれる人を狂わせ、物理攻撃を無効にする化け物を
一撃で屠る――はずだった――

>「……なんや、物々しいのは口振りばかりかいな。遅うて遅うて欠伸が出るわ」

だがその包囲を掻い潜って傷すらも負わずに再び現れる。
その余裕に満ちた態度はやせ我慢などではない。
致命傷を負っているようにも見えない

『避けたというのかあの一撃を?
人の身でこれは相当の脅威と見たほうが良い
かの<666>と良い勝負かもしれんぞ』

「……あの能力は厄介だ確かに奴は強い―が人である以上弱点は必ずある」

だが時は待ってくれず
奴はそんな隙は見せなかった

>「ここらで一つ、悲鳴の一つでも上げさせたろうやないか!」

>「させるァア!」

先ほど接触した獣人の男と101型が協力し能力を無効化したようで
荒海を気絶させエレベータに叩き込む
火を起し、荒海を放り込むと獣人の男が叫ぶ

>「爆発するぞ!伏せろォオオオ!!」

だが奴も爆発とやらに確実に巻き込まれる距離にいたのは明白
それを見て浮かんだ考えは一つ考えを察知し、制止する英霊達

『止めろ、お前の行動は無謀だ!どの道間に合わん!』

その言葉を振り切り、推進器が稼動し再び駆ける。

「葉隠家の人間は言葉を曲げぬ、それに否定する前に行動を起すそれが帝国軍人だ!
俺はもう目の前で誰にも死なせん!」

テナードの目の前に来ると即座に抱え、踵を返し全速力で推進器を稼動させると
二、三秒後に爆発が起きる
それから爆風との追いかけっこが始まった―――

【ええと説明不足でしたすいません
とりあえず装着中は生命維持装置やらかなりの長時間戦えるために搭載しているため
基本腹ペコは起きません装着前が補給する機能が無いのでカロリーを消費します
後付設定みたい担ってしまいましたすいません】






232 名前:ハルニレ[sage] 投稿日:2010/07/07(水) 22:37:35 0


ハルニレは今、とあるビジネスホテルの一室にいる。三浦に与えられた宿だ。
一つしかないベッドに寝転がり、彼から手渡された小さな長方形の電子機械を弄くり回していた。


あの後、ハルニレ達は無事、あのビルから何とか脱出する事に成功した。
途中、爆発の際の揺れで鼻を強かにぶつけた以外では、全くの無傷であったから良しとしよう。
電子器具、もとい携帯電話を弄る事に飽きたハルニレは、懐からメモ帳を取り出し、開く。
異世界の事、「文明」なる概念、この世界の仕組み、他の異世界人達の存在、エトセトラエトセトラ。

一枚、また一枚、口達者な三浦が話した「全て」に目を通していく。どれもこれも信じられない話だが、否定する要素も根拠も証拠もない。

現に、表通りを歩き、彼が目にしたのは、いずれも見慣れぬ物ばかりであった。
馬車の代わりに鉄の塊が人を乗せ、SF小説や映画でしかお目にかかれないような近未来的な装置が当たり前のように存在している。

はしゃぎすぎて何度も迷子になりかけ、三浦に何度厭味を浴びせられた事か。
仕舞いには放置されかけたので、人生で初めて他人に「ドゲザ」を使った位だった。

回想と共にページを捲っていた手が、ふと止まる。ヘタクソな少年と少女の絵。
三浦の話を元に、ハルニレが描いた物だ。

殺すべきは、眼鏡のチビの少年。
救うべきは、白髪のチビの少女。
手掛かりは、二人を連れ去ったあの大男。

窓から見えるあの広いフィールドのどこかに、彼らがいる事は間違いないだろう。けれども。


「…………正直、無理ゲージャネ?」

豆粒ほどの大きさの人々が行き交うのを尻目に、小さく溜息を吐く。
頼りの三浦は、このビジネスホテルまで案内した後、携帯電話を渡し、使い方と電話番号だけ教えてさっさと姿を消した。

大方、自宅に戻ったのだろう。再び携帯電話を弄り回しながら、ハルニレは暇を持て余していた。
日はまだ高い。寝るにしても、少しばかり時間がある。ハルニレの視線は眼下の街へ。

「…ソウ、コレハ情報収集ダ、遊ビジャナイ、断ジテ!」


ハルニレの、情報収集という名の暇つぶしが始まった。


【ハルニレ:宿と情報ゲット、繁華街でブラブラ】
【所持品:財布、携帯電話、メモ帳、ナイフ×10】
【時間が掛かるとの事で進めさせてもらいました。不都合あったらすみません】


233 名前:ハルニレ ◆YcMZFjdYX2 [sage] 投稿日:2010/07/07(水) 22:39:02 0
>>232酉忘れサーセンorz

234 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/07/07(水) 22:40:26 0
看護婦は佐藤フィオナ

235 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/07/07(水) 22:41:06 0
うはw誤爆サーセンwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

236 名前: ◆KLeaErDHmGCM [sage] 投稿日:2010/07/08(木) 00:21:13 O
「あき? ひぃ?」

艶やかな長い黒髪とどこか狂気を孕む吊り目気味の漆黒の瞳を持った少女が誰かの名を呼びさ迷い歩く。
その少女は小学生程の年齢に見えるのであるが、一人で繁華街を歩いていた。

彼女の名前は弓瑠、父や母に名前という物は与えられておらず弓瑠と言うのは彼女が唯一とも言える"家族"に貰った名前である。

「迷った」

「違う、迷ったのはあきとひぃ」

一人で呟いて一人で納得する。
少女と言えど彼女には高いプライドがある、迷子になった等と思いたくないのだろう。

と、納得している間に彼女の目の前に一人の男が歩いてきた。
弓瑠は彼に――断じて迷子になって等居ないが、道を聞こうと話し掛けた。

「ねえ、お兄ちゃん」

男への第一声は妹属性持ちロリコン歓喜の幼女からのお兄ちゃん呼びである。
彼女は幼いと言えど頭は言い、自分の年齢や容姿の活かし方は分かっているつもりであった。
だがしかし、男へ話し掛けたのは凶と出るか吉と出るか。


【弓瑠:ハルニレ氏に接触、連れ去るもあきとひぃを探してあげるもご自由に】

237 名前:エレーナ ◆SQTq9qX7E2 [sage] 投稿日:2010/07/08(木) 01:09:18 0
>>232
>>236

「(怪しい、実に怪しいわドルクス!)」
「(ハイハイそうッスねー……おっしゃ、アイテムゲット)」

フラフラとあちらこちら歩き回る不審な男の後ろを、私とドルクスはひたすら尾行していた。
ダボダボの紅と白のストライプ模様のシャツを着、汚らしい帽子を被った実に怪しい男。
私の中で、「コイツは絶対怪しいぞ!」と警告を発していた。

私達がその不審な男を尾行しているのには、きちんとした理由がある。

私ことエレーナ=T=デンぺレストと部下のドルクスは、この世界の住民ではない。所謂異世界人というやつだ。
魔界で突如発生した異常現象の原因を探るべく、この世界へと舞い降りた。
そして、その原因がこの世界で行われた禁術である事に気付いたのだ。
禁術を行ったのは誰なのか。それを調べるべく調査を行っていた矢先に、あの男が現れた。
微かに、彼から禁術の気配を感じ、疑心を持った私達は今こうして彼の動向を探っている訳である。
以上、現状説明終わり。

男は尾行する私達に気付いてるのか気付いていないのか、あっちへフラフラ、こっちへフラフラ。
私と違い、ドルクスはあの男に興味ないのか、『でぃーえす』とやらに夢中になっている。
腹が立ったのでシルバーのそれを取り上げ、真っ二つに叩き折ってやった。

「(ああああああああああ!俺のDSゥゥゥウウウ!!)」
「(うはwwwwwwwメシウマザマァwwwwwww)」

とふざけ合ってる間に、あの男が消えていた。しまった、折角の手掛かりが!
気配を頼りに、急いで追いかける。ドルクスは未だに壊れたでぃーえすを引きずっている。ええいこの根暗め。

>「ねえ、お兄ちゃん」

何とか追いついた時には、あの男がゴスロリを着た幼女と接触していた。


【エレーナ:ハルニレさんに疑心を抱き尾行中】
【ブーン系から。宜しくお願いします】



238 名前:エレーナ ◆SQTq9qX7E2 [sage] 投稿日:2010/07/08(木) 01:12:14 0

名前:エレーナ=T=デンぺレスト
職業:蝙蝠魔人族デンぺレスト家の末裔
元の世界:魔界
性別:女
年齢:500歳位(外見年齢→10〜12)
      (魔力全開→20代前半)     
身長:通常→130センチ
   解除→168センチ
体重:禁則事項
性格:高飛車で我儘、女らしくロマンチストな一面もある

外見:踝まで届く金色のツインドリルヘアーを長く白いリボンでくくっている
   碧眼、蝙蝠をイメージさせる露出度の高い黒ドレスを着用

特殊能力:魔術、飛行(背中から羽を生やす)

備考:魔界で異変が起こった原因を探るべく次元跳躍してきた。
   魔界でいうと上流貴族の階級に当たり、典型的なわがままお姫様。   
   まだ若いので、魔力はそこまで強くはない。

NPC
名前:ドルクス
職業:エレーナの僕
性別:男
外見年齢:20代後半    
身長:172cm
体重:62kg
性格:常に冷静
外見:黒い髪、前髪が長く表情が分かり辛い
   服装は燕尾服
特殊能力:魔術、飛行(背中から羽を生やす)

備考:エレーナの忠実な僕。今時の若者のような口調で話す。
   その実態は人型の魔法戦闘武器。エレーナの命令に忠実に従う。



239 名前:三浦啓介 ◇6bnKv/GfSk [sage] 投稿日:2010/07/08(木) 17:19:41 0
>>不非兄弟

「何だあ? お前。たかが警備員風情が吠えんな見苦しい」

君は激昂と勢いに任せて突進を繰り出す
しかし考えてもみたまえ。君が迫るは怒りに冷静を欠いているとは言え、
ヤクザの世界に身を投じ――いや、むしろ彼が所属する組織を鑑みればヤクザなど無明の海より見上げる浅瀬程度の物なのかもしれない
そんな料理人然の男に対して、君の蛮勇は、怒りは一体如何なる価値を示す?
君達が世界に選ばれし勇者ならば、秘めたる力を持つ血族の末裔ならば
何の思慮もない突撃でさえ必殺の刃となり得るだろう
だが、君は違う。深慮もなしに、勢いのみを頼りに身の丈に合わぬ事件に飛び込んだ、凡夫なのだ
ならば君の突進が通じる由など、ある訳がない
故にここに告げよう。凡人たる君の突進は

こうかが ないようだ

と。料理人姿の男は危なげなく、迫る君に対して冷やかな視線と灼熱のトマトソースを放つ
踏み込めば足が焼け、更に正面と頭上からもマグマのソースは君に襲い掛かる
さあ、武器を振るい思索を巡らせこの脅威を払い退けたまえ! さもなくば死あるのみである!
だがもしも君が何らかの「選ばれし」の銘に足る要素を持っているのならば、それに頼るも良いだろう

240 名前:三浦啓介 ◇6bnKv/GfSk [sage] 投稿日:2010/07/08(木) 17:21:20 0
>>柚子

不非兄弟には一瞥とトマトソースのみをくれてやり、料理人風の男は君を見据える

「へえへえ成る程? そのトマトを打ち返しますかあ。でも食べ物を粗末にしたらバチが当たるって言うだろ不思議ちゃんよ。
 君の恥ずかしい口振りと態度が熟成されて特上の黒歴史になるのはなかなか楽しみなんだけどね?
 罰当たりな君はここで腐って果てて廃棄処分だなあ」

タナトスが触れたトマトは灼熱の温度を保ったまま、しかし破裂して液体となり君に降り注ぐ
男は君を、多少珍しい文明を持っているとは言え、裏の人間には遠く及ばぬ「なんちゃって」な。
思春期故の思い上がりに衝き動かされるだけのモノと断じている
文明の特性上、唐突に強大な力を得た人間が事件を起こすと言うのも、この世界には少なくない事だ

ともあれこうした理由から、男は君の末路を見届ける事なく視線を滑らせる

さあ、君には降り注ぐ灼熱を凌ぐに足りるだけの力が、企てが、出自が、決意があるだろうか?

241 名前:三浦啓介 ◇6bnKv/GfSk [sage] 投稿日:2010/07/08(木) 17:26:07 0
>>佐伯

一方で、男は君に対して怒りは勿論、困惑も顕わにしていた
見て取れる文明は精々、身体強化――これに関しては勘違いであるが――と重力制御
或いは『未来予知』等の文明はあるかもしれないが、それでも自分の『料理』をここまで対処されるなど俄かには信じ難い

――いや、彼が戸惑いを覚えたのは何もそれだけではなかった
初めこそ彼は君を筋張った肉と謗ったが、
戦いの最中、数分の攻防の中で見せた君の動きに彼は密かな感嘆を覚えたのだ

「いやあご鞭撻どうも、お蔭様で気が変わったよ。
 君は素晴らしい食材だ。是が非でもこの鍋にぶち込んで、最高の料理にしてみせよう。
 君にご賞味頂けないのが、少しばかり残念だねえ」

改めて、彼は宣言した
しかして君目掛け、数多の食材が放たれる
炎熱を纏うパスタの杭にマカロニのドリル
毒霧のバジル
爆裂する唐辛子

彼とて馬鹿ではない
君の軽やかな回避に対して、更に対応した攻め手を放つ


だが君ならばこの程度、凌いでのけるのは容易いかもしれない


君達はこの争いに終止符を打ってもいいし
今暫く戦いの空気に酔いしれてもいい

【鍋男だけ書かせて頂きました
 三浦はまだ余裕ありませんですスイマセン】

242 名前:経堂柚子 ◇OryKaIyYzc[sage] 投稿日:2010/07/08(木) 23:23:47 0


コックは柚子を嘲笑い、滔々と語る。

「へえへえ成る程? そのトマトを打ち返しますかあ。でも食べ物を粗末にしたらバチが当たるって言うだろ不思議ちゃんよ。
 君の恥ずかしい口振りと態度が熟成されて特上の黒歴史になるのはなかなか楽しみなんだけどね?
 罰当たりな君はここで腐って果てて廃棄処分だなあ」

撃ち落とした筈のトマトが割れた。
これに当たってしまってはいけない。水のように広がる灼熱を受け入れる術を、柚子は持っていない。
だから、避けた。筈だった。

「―――あ」

柚子の右目が最後に捉えたのは、顔に被る赤い灼熱。




「あ…あぁぁ…らい…いらい…」
顔の右半分を始め、首、右肩にまで掛かったトマトは、柚子の体を溶かさんと侵食していく。
他人から見れば、柚子の右の顔は完全に崩れてしまって居るだろう。
口を動かすだけでも激痛が走るため、唇を開けたまま、柚子は痛い、痛いと嘆く。

「たすけて…たすけてゆきちゃん…」

嘆きの中で振るうタナトスは、誰にも届かない。
空を切ったその刃は、何も映さない。

【顔が溶けたよ!】




243 名前:前園 久和 ◆KLeaErDHmGCM [sage] 投稿日:2010/07/09(金) 00:57:48 O


久和の治癒によりテナードが起き上がる。
その光景を倒れたままの彼は呆然と見ていた。

「おー…」

テナードを助けられた、その事実を無事に見届けた久和の意識は朦朧とし始める。

連続治癒を甘く見ていた、と彼は心の中で悔やむ。
何せ一日三回の治癒を一気に行ったのだ。
気絶をしても仕方がない。

「じゃあ、任せたぜ」

その言葉を皮切りに彼の意識は完全に途切れる。
先程まで動いていた腕が糸の切れた操り人形のように動かなくなる。


そして彼の視界が完全に黒に染まった時、とある男はピンチに陥っていた。

244 名前:不非兄弟 ◆KLeaErDHmGCM [sage] 投稿日:2010/07/09(金) 00:58:44 O
「あ、やっぱり?効果無い?」

一時の激情に身を任せた希射は酷く後悔していた。
そんな俺みたいなモブが突進しても無理だよね!そうだよね!的なあれである。
出番欲しさに突進してトマトソースを被っていては馬鹿の極みだ。
極みというか、この男は元から馬鹿なのであるが。

「おら!《突撃碧盾》!」

鈍く光る緑の盾が頭上に迫るトマトソースを跳ね返す。
ニヤッと笑う希射だが、足元の事を計算に入れていなかったようだ。
結果的に、頭上は何とかなったのだが足元のソースは彼一人ではどうにも出来なかった。

「やべ」

そう一言だけ発した彼の後ろには矛を正面に向けた兄の姿。
こっちに来るなと弟の口が紡ぐ前に、兄は言葉を発する。

「危なっかしいなあ、もう!ほら、《守護蒼矛》!」

矛先に青い薄く見えるシールドが張られる。
そんな物でマグマをどうにか出来るのか、等と思ってはいけない。
守護蒼矛は何物も通さぬ盾なのだから。

「おー、流石だな兄貴」

「弟を護るのが流石な兄だろ?」

「弟が突進するの止めるのもな」

245 名前:不非兄弟 ◆KLeaErDHmGCM [sage] 投稿日:2010/07/09(金) 01:00:31 O
敵が目前に居ると言うのにこの会話である。
流石流石言っているが流石というより馬鹿という称号を与えても良いぐらいだろう。
その馬鹿兄弟は、それぞれの矛盾を重ね合わせ顔を見合わせた。

「流石な兄弟による流石なショータイムの始まりだぜ」

「別にショータイムじゃないと思うけど」

「うるせぇ、非リアの敵」

「それ今言う事かな」

そしてどちらからともなく溜め息を吐く。
片方は呆れから、もう片方は何で俺が童貞卒業出来ないんだ等と言う私怨から。
しかしこうしていても仕方がないと思ったのか二人は口を開く。

「さぁ、矛盾を超えた矛盾のお出ましだ」

「でも俺達の矛盾って正直二つ合わせたら矛盾じゃないよね」

「うるせぇ馬鹿」

二人の言葉と同時に矛と盾が鈍い光を放ち《攻防矛盾》の形状が変化する。
右が青く、左が緑色をした一つの大剣。
最強の盾に最強の矛、その二つの性質を持つ剣。
斬れば炎で焼かれ、翳せば何物も通さぬシールドが張られ、貫けばその者を治癒する。

「おーばーぜ「希射うっさい」

しかし、しかしである。
最強とは言ったがやはり弱点もある。
一つはその重さ。
二人で持ってやっと自由に動かせる程度なのである。
それ以外の弱点は兄弟も知らない事であるが故に特筆しない。

「さあ、凶と出るのか吉と出るのか」

「流石だから吉に決まってるだろ」

言って兄弟は二人で肩を組み合い剣を持つ。
矛盾が矛盾で無くなった今、彼等はただ剣を振りかざすのみである。


【矛盾兄弟:矛盾が大剣になったよ!あと敵しか見えてないよ!溶けた顔とか知らん!】
【弱点1:重さ故のスピード、回避力等の低下】

246 名前:李飛峻 ◆nRqo9c/.Kg [sage] 投稿日:2010/07/09(金) 02:50:16 0
内部から生じた爆発によって弾け飛ぶエレベーター。
荒海銅二とその手下数名が納められた鉄の箱は、今や灼熱の檻と化していた。

背後から撫で付ける熱風にちりちりと首筋を灼かれるのを感じながら、飛峻はこの状況を作り勝利を拾い上げた者達を眺める。
一人は猫の顔を持つ偉丈夫の獣人、一人は筋骨隆々の大男、そして一人は異形の装甲を纏った正義漢。

(……上手くいったものだ)

誰か一人が欠けても荒海銅二の打倒も、全員が無事生還することも適わなかっただろう。
相手は紫電を自在に操り、一人で複数の相手と戦うことに長けた絶対強者だったのだ。

「モットモ、手放しで喜べたモノじゃないがナ……」

健闘を称え合う三人を眺めながら飛峻はひとりごちる。
おそらく飛峻と境遇を同じくするこの三人、今回は共通の敵が居たから味方たりえたが明日にはどうなるかわからない。

状況を冷静に読み取り、瞬時に戦術を組み立てた獣人の機知も――
電撃を受けても微動だにせず、荒海を封じ込めてみせた大男の力も――
鬼甲に鎧われ、絶影の速度で迫り来る炎の中駆け抜けた正義感の能力も――

そのどれも敵にまわせば容易ならざる手合となることは間違いない。
そしてそうなるかもしれない者は彼らの他にも居る。
何者かの思惑が交差するこの世界において、それは次の瞬間にも有り得ることなのだから。

「……マア、ソレはソノ時考えれば良いカ」

何より今は敵の頭を潰せたことを喜ぶべきだろう。
そう思い直し、飛峻は三人の下へ歩き出す。

「ッ!?」

だがその時、背後のエレベーターからとても人の放つものとは思えぬ殺気が飛峻を刺し貫いた。
振り返るのと同時、即座に臨戦態勢を取るもそこには誰も居ない。
あるのはひしゃげたエレベーターの中、折り重なり煙を上げるヤクザたちの亡骸だけ。

(気のせい……か?)

果たしてそれは死に逝く者が最後にあげた怨嗟の絶叫なのか。
それとも新たな魔人の誕生の産声なのか。
何れにせよ灼熱に覆われた現状では確認のしようも無い。

飛峻は一度頭を振ると、それきり背後を振り返る事無く駆け出す。まだ戦いの続く戦場へと。

247 名前:テナード ◆IPF5a04tCk [sage] 投稿日:2010/07/09(金) 21:50:27 0

爆発が起こる直前のほんの一瞬、エレベーターの隙間からあの男と目が合った気がした。
その目に宿っていたのは、怒りか、憎悪か、はたまた別の何かか。

だがそれも、変な鎧を纏った男に男に抱きかかえられ、あっという間に見えなくなってしまった。
襲い来る熱風や爆風よりも速く駆け抜け、男は俺を安全地帯、俺達を助けた謎の女の元まで運んでくれた。

「あ、有難うな」

そして男から発せられた声で、先程自分に「異世界人か?」と問いかけてきたあの白詰襟の男だと云う事実に気付く。
そういえば101型はどうしただろうかと辺りを見回すと、何時の間にか平然とした表情で隣に立っていた。

「お前も、有難うな。あの時、お前がアイツを止めてくれてラッキーだった」

すると、101型は表情を変える事なくこう言い放つ。

『俺は荒海止める機会を窺っていた。テナードが荒海の気を引きつけていたあの瞬間がチャンスだった。ただそれだけだ』

つまり、101型は、たまたまテナードを囮にしたという事になる。偶然と偶然が重なって掴んだ勝利といえよう。
何気なく視線を彷徨わせるテナードの目に、ある物が映った。

「色白!?」

つい先程自分達を救った謎の女の右腕に抱きかかえられ、ぐったりとした五本腕。
最悪の考えが頭をよぎり、女の腕から五本腕をひったくる。

「おい、しっかりしろ!オイ!おい!!」

全く動かない五本腕を揺さぶりながら、憔悴し困惑した表情で呼びかけるテナード。
だが、彼の危惧していた考えに反し、耳に届いてきたのは――……これでもかという位、安らかな寝息だった。
どうやら、ただ眠っているだけのようだ。連続で行った治癒に、体が悲鳴を上げていたのだろう。
脱力し、呆れにも似た薄い笑みを浮かべる。そして、突如現れたあの女――八重子に向き直った。

「アンタにも礼を言おう。だが腑に落ちない事がある。…何であの時、見ず知らずの俺達を助けた?」
八重子は一瞬だけきょとんとした表情を見せたが、やがて納得したようなそれに代わり、にこりと笑った。

「理由は簡単よ……ほら、これなーんだ?」

サッと懐から出して見せた『それ』。テナードには、見覚えがあった。

「!……カズミの眼鏡!?」
「ピンポーン。大当たりー」

フレームもガラスもグシャグシャになった、カズミの≪電波侵害≫の片割れ。
無事な方のレンズが、テナードや琳樹、そして八重子の側で横たわる少年の顔を映し出している。

「たまたま拾って、これを解析してみたらアラ吃驚!貴方達とカズミが接触した記録まで残ってたんですもの」

≪電波侵害≫は、テナードの所持していた≪緊急治癒≫に反応し、居場所までをも知らしめてくれた。
そして、テナード達がここに居る事を知り、BJの誘導を頼りにここまで来た、という事だった。


248 名前:テナード ◆IPF5a04tCk [sage] 投稿日:2010/07/09(金) 21:51:17 0

最大の敵を倒した今、八重子にとってもうこの場所に用は無い。
八重子は横たわる少年、≪予測不能≫の適合者である竹内萌芽を抱きかかえる。

少女、三浦サイにまでは手が回らない。公文の誰かか、または他の誰かに救助してもらうとしよう、そう判断する。

「ここから脱出しましょう。テナード、貴方は少なくともカズミの、私達の関係者よ。保護してあげる。
 勿論、そこの貴方達もね。…勿論、着いてくる着いてこないは、貴方達の勝手だけど」

そして、竹内萌芽を抱え直し、階段へと駆けだす。
少しだけ着いていくか迷ったが、五本腕をしっかりと抱きしめ、走りだした。


「BJ、最も安全なルートを割り出して!」
『そこから30メートル先に、包囲されていない非常階段があります。そちらを使って脱出してください』

ヘッドホンから流れる無機質なオペレーションに従い、八重子はただ走る。その後ろを、疲労感と痛みに耐えながら、テナードが後に続く。
耳に流れてくる的確な指示の通りに、非常階段へとたどり着く。

「…って、これを使えってか!?」

驚愕の表情で、テナードが叫ぶ。目の前には、一歩でも足を乗せれば、崩壊してしまいそうな程に老朽化した非常階段があった。
八重子は黙って胸元の真珠を連ねたようなネックレス型の文明――≪古新再生≫【ビフォーアフター】の一つを外し、それを地面に叩きつける。
すると小さな球形はこなごなに砕け散り、代わりに新品同様と化した非常階段が姿を現す。

「これで大丈夫。さ、降りるわよ!」

下まで駆けおり、また走る。此処に来て、テナードの容態が急変した。
がくりと膝をつき、五本腕を手放す事はなくとも、荒海から受けた傷の痛みと、疲労とストレスから、体力が限界なのは目に見えていた。

「頑張って!後もう少しだから!」

八重子の激励の声に、危なっかしい動きで立ちあがり、駆ける。既に、息も絶え絶えだった。
やがて、目の前に一台の乗用車が現れる。八重子は素早い動作でドアを開け、テナード達を押しこむ。
驚いたような表情をした琳樹を確認したのを最後に、テナードの意識は闇へと落ちていった…………。


249 名前:テナード ◆IPF5a04tCk [sage] 投稿日:2010/07/09(金) 21:52:31 0

『全く、驚いたったらないわ。まさか車ごと≪空間移動≫してくるなんて、無茶にも程があるわよ!』

「ごめんなさい、一刻を争う事態だったから…………それで、彼らは?」

『全員、治療は済ませたわ。今頃、隔離病室でぐっすりお寝んねよ』

「そう……良かった。有難うね、流石進研のナイチンゲールだわ」

『私と貴女の仲じゃない、お世辞はよして頂戴な。…で、本当なの?その、彼らが異世界人って』

「琳樹さん、あ、異世界人本人から話を聞いたから本当よ。≪嘘発見器≫【トゥルーオアフォース】も反応しなかったしね」

『ふぅーん。なーんか、不思議な感じよね。異なる世界の住民、か』

「そう。そして、違う世界に住む彼らの力なら。ゼミを、彼女を……アイツ等を止められるかもしれない」

『私からすれば胡散臭い話だけど…信じるしかないのよね』

「彼らを信じて。私達≪チャレンジ≫には、彼らの力を信じて、力を借りるしか方法はないの」

『はいはい、分かったからそんなに声を大きくしないで。もし連中が聞いてたらどうするつもりなのよ』

「あ……ごめんなさい」

『私は貴女の味方よ、八重子。貴女を信じてる、だから彼らの事も信じるわ』

「……有難う」

『そんな事より、A(エース)よA!こんな時に、アイツ何処をほっつき歩いてるのよ!八重子、貴女何も知らないの!?』

「ごめんなさい、私は本当に何も……」

『全く、肝心な時にいっつも居ないんだから、あんの馬鹿は!リーダーの自覚がなってないわ!』

「あの子なりに、きっと何か考えがあるのよ。それに、あの子なら近い内に帰って来るわ、きっと」

『【正義のヒーローは遅れて参上するものさ!】ってやつでしょ?特撮の見杉!』

「ふふッ……あ、もう行かなきゃ。M様に呼ばれてるもの」

『はいはい、……それじゃあね』


【テナード:BKビルを脱出、進研敷地内の隔離病室にて療養中】
【八重子:テナード、竹内萌芽他数名の異世界人の回収に成功】


250 名前:佐伯 ◆b413PDNTVY [sage] 投稿日:2010/07/11(日) 14:01:49 0
「なら、まずは……」

口癖の確認をとり、無線機に向けて状況を知らせ、要望を告げる零。

「はい。救護班を・・・・・・」

眼下に広がる惨状。
切り刻まれながらも虫の息で立ち上がろうとする者、荒海の放った初手により感電死した者、コックの放った攻撃に巻き込まれた者、
零の手により沈黙を余儀なくされた者、殉也の手により眠らされた者……

「これが、私達と文明ってものによって引き起こされた物。か」

正直に言って末恐ろしい物がある。と言っても過言ではないだろう。
あの時、三浦啓介は零に対して貴女達には文明と呼ばれる特殊な力のひな型が宿っている。と言っていた。
だとしたら……

「これが文明ってものの引き起こす、言わば負の面ってこと」

だとしたら、いずれ零達も彼らのように……

「へえへえ成る程? そのトマトを打ち返しますかあ。でも食べ物を粗末にしたらバチが当たるって言うだろ不思議ちゃんよ。
 君の恥ずかしい口振りと態度が熟成されて特上の黒歴史になるのはなかなか楽しみなんだけどね?
 罰当たりな君はここで腐って果てて廃棄処分だなあ」

「舐め腐るんやないど糞餓鬼共ォ! 警備員風情の三下が! そないな借りモン振り回して意気がっとるんやないで!」

「さぁて、次はお宅らだぜ。……三つだ。三つ数える内に『文明』を出せば痛ぇ目遭わずに済む」

彼らのように好戦的で他人を傷つける事に対して疑問を持たず、ただ自らの欲望に生きる。
そんな存在に変わり果ててしまうのだろうか?

「誰かを守るためになら……邪魔な物を全て壊しつくしてもかまわない。か
 そうよね。そんな当たり前のことなのに……なんで私はあの時それを疑問に感じたのだろう」

そう。そんな事は決してあり得ない。
そんなエゴイズムに従って生きて居ればいずれ、世界中が敵になって空っぽに鳴るまで戦い続ける事になってしまう。

「いやあご鞭撻どうも、お蔭様で気が変わったよ。
 君は素晴らしい食材だ。是が非でもこの鍋にぶち込んで、最高の料理にしてみせよう。
 君にご賞味頂けないのが、少しばかり残念だねえ」

正しい事なんて何処にも無い。だから人はそれぞれの正義を持つ。

「けど……それが他人を傷つけ、踏みにじり、さげすみあざ笑う理由にはならない。
 私はそう思った。そして……」

超音速で迫る灼熱の矢雨の中を零は駆け抜ける。
マカロニが頬をかすめ、真横をトウガラシの爆発が撫でつける中、零はチャンスをうかがうため全速力で駆け抜ける。

「私は全ての人を助けたいと!!そう願った!例えそれが偽善だとかエゴイストだとか罵られても良い。
 それもまた、他でも無い、誰でも無い私自身の願いだから……私の持つ正義って呼ばれる物だからッ!!」

跳躍と共に背中を押しのける衝撃と熱風。
吹き飛ばされ、きりもみしながら零は床に向けて一直線に落ちて行き、そして叩きつけられる。

「だからァ……それを命を掛けて、貫き通す!」


251 名前:佐伯 ◆b413PDNTVY [sage] 投稿日:2010/07/11(日) 14:04:48 0
そう、それこそが

「な……!?」

彼女と言う存在の願い!!

「bet(掛け金の提示)はもう終わった!次はアナタの番よ。さぁ、どうするの?call?raise?それともまさか……Fold(逃げる)なのかしら?」

その宣言に対する返礼として放たれる無数の悪意。
零はその悪意の群れの中に飛び込んでいく。今、目の前に居る人を助けるために。

「フッ……!」

無数に迫る弾丸の壁を寸での所でスライディングでブレイクスルーし、立ち上がるのは床を手で殴りつけて行う前方中返り。
そして、その超人的とも取れる運動性で零が駆け寄る先は……

「あああああああああああ!!」

「でぇぇぇええええい」

ラリアットにも似たモーションで零は鎌を振り回し暴れまわる少女をさらうとキッチンカウンターの上に背中から飛び込み、調理場へとけが人を刺激しないように転がりこむ。
キッチンカウンターから、向こう側を眺めれば先の二人組…恐らくは双子だろう。が戦いを始めている。

「予想通り。なら、私は……」

零の狙い。いや、取った行動とは単純にけが人の手当てだった。
戦闘ではなく救護。それはひどく場違いな物にも思えたが、しかし、それもまた彼女の願った事だ。
そう、放っておいたら死んでしまうかもしれない人が目の前に居るのに、それを見捨てて戦う事など出来ない。
故に、今はけが人の治療を優先した。この少女を捕まえたのは偶然という物だ。

「派手ですね。貴女は……生理用食塩水と簡易メディカルキット、それから消毒液と、はい。場合によっては現場でのオペになります」

「都村さん!!荒海は……?」

「とりあえずは片が付いてしまったようです。最も、彼に死なれてしまったのは不本意ですがね。
 それよりも、彼女への応急処置です。」

突如現れた都村。確かに零の行動は聊か派手かもしれなかったが、それ以上に

(いやいやいや!アナタのその気配の無さは正直驚きですよ!?)

もしかしたら、単に零が派手すぎるだけかも知れないが、それでも都村の隙のなさは特筆に値するものだと思われた。
そんな都村はしゃがみ込むと彼女の洋服を破り、患部の確認を行う。

「……酷い。半身にわたってのDDB。それから一部ではDBまで……助かる?」

超高温の物体によりかぶった全域を侵達成U度、特にひどい部分はV度、もしかしたらW度レベルまでの物かと思えるほど。
思わず零は助かるのだろうか?と疑問を抱いてしまった。

「助ける。じゃないのですか?とにかく、まずはこびりついた熱源および壊死化細胞の除去、冷却を最優先してください。
 <巡回医>さん。それから…佐伯さん。メディカルチームが来るまでの間申し訳ありませんが彼女をお願いします」



252 名前:佐伯 ◆b413PDNTVY [sage] 投稿日:2010/07/11(日) 14:08:28 0
そんな零に対して叱咤する都村。どこか慣れたその声はやはり都村はこういった場面に何度も立ち会っているだろう事を連想させる。
そして、一通りの指示を出すと彼女は掛けて立ち上がる。

「アナタは?」

零の問い。それに対して都村は木刀『一刀両断』《/メタル》でそれを指し示し、告げる。

「第一級文明犯罪者の逮捕です」

その声色はぞっとするように冷たく鋼の乙女を連想させるにふさわしかった。

【状況:ここから先はジャッジメントですの!!】

【目的:C迷子の捜索。】

零:【持ち物:オリシ『折りたたみ式警棒』、『重力制御』、携帯電話、現金八千円、大型自動二輪免許】
都村:【持ち物:警察手帳、クレジットカード、無線機、携帯電話、『一刀両断』《/メタル》、『血戦領域』《ジャッジ・メント》、『身体強化』《ターミネイト》、
        『禁属探知』《エネミースキャン》『視外戦術』《ゴーストタクティクス》、、『見敵封殺』《ロックオンロック》(内、使用可能なのは適性のある一刀両断、血戦領域、身体強化のみ)】

253 名前:ハルニレ ◆YcMZFjdYX2 [sage] 投稿日:2010/07/11(日) 14:28:15 0

>「ねえ、お兄ちゃん」

幼い少女の声が聞こえた気がして、ハルニレは周囲を見回す。
誰も居ないので幻聴かと錯覚するが、やがて声の主が足元の少女だと気付く。
ハルニレの見知ったドレスとは少し造りが違うそれを纏った、幼い少女。寧ろ幼女。
周りに保護者が居ない所を鑑みるに、おそらく迷子だろうか。
腰を折り曲げて片膝をつき、幼女と視線を合わせる。帽子で火傷の痕を隠しながら、ハルニレは綺麗な方の顔で笑顔を作る。

「迷子カ?オ母サンヤオ父サンハ?」

幼女の話を聞く内に、やはり彼女は迷子なのだと知る。
これは丁度良い暇つぶしだ。お兄ちゃんと呼ばれた事で上機嫌なハルニレは立ち上がり、幼女に手を差し伸べた。

「一緒ニ探シテヤルヨ」

迷子の幼女の小さい柔らかな手を繋ぎ、ハルニレは歩き出す。
幼女と同行していた保護者の特徴を聞きながら、数多の人が行き交う中を探し歩く。
だが、一向にそれらしい人は見つからず、いよいよもって日も暮れてきた。

「(コレハ本格的ニヤバイカモナ)」

小さな手を握る力を少しだけ強めて、少女を見下ろす。
暇潰しとはいえ、このままこの幼女を放っておくのは気が引ける。それに、彼女が少し不憫に思えてならなかった。

「絶対見ツケテヤルカンナ」

片膝をついて視線を合わせ、幼女の頭を撫で、「ホラ、笑顔笑顔」と幼女の頬を指で押し上げ、笑顔を形作る。
そして、手を繋ぎ直し、再び歩き出そうとした。

「イテッ!」

たまたま通行人の一人と肩がぶつかった。18、9位の少女だ。
ぶつかった相手はハルニレに謝罪も一瞥もせず、そのまま去っていく。

「何ナンダ、失礼ナヤツダナ…………ン?」

憤慨しながら、少女の後ろ姿を睨んでいたハルニレは、ふと疑問を持った。
何故、あの女性が自分と同じ携帯電話と財布を持っているのだろう、と。そして、妙に軽く感じる尻ポケット。
導かれる結論は、一つ。

「テメェ、待チヤガレェ――――!!」

幼女を連れての、追いかけっこが始まった。



「待テッツッテンダローガ!コノクソ女ァ!!」

肩で息をしながら、十数メートル前方の少女を追いかける。正しくは、少女の手に握りしめられた携帯電話と財布を。
肌が浅黒く焼けた盗人は、こちらをチラリと振り向き、悪戯っ子のように舌を出す。
青筋を浮かべたハルニレが、怒りに任せて投げ飛ばしたナイフをいとも容易く避け、ケラケラと笑って彼を挑発する。

「鬼さんこちらー!」

少女のあっかんべーで、更にハルニレのコメカミに青筋が浮かぶ。
猿顔負けの身軽さで、少女はどんどん引き離していく。
対しこちらは、スピードも体力もない幼女を連れている。幼女は顔を紅潮させ、今にも手を離しそうな程に苦しそうだ。
足手まといなのは間違いないが、不思議と手を離す気も、放置する気も起きなかった。


254 名前:ハルニレ ◆YcMZFjdYX2 [sage] 投稿日:2010/07/11(日) 14:39:28 0

「クソ、捕マエタラソノ憎タラシイ顔ヲ引キ裂イテヤル!」

物騒な悪態をつき、ハルニレは幼女を脇に抱える。見た目に反して腕力のあるハルニレの腕に、幼女がすっぽりと収まった。
足手まといなのは変わりないが、こちらの方が動きやすい。

「げ……」

幼女を抱えた途端に、ハルニレのスピードが上がったのを見て、少女の表情に初めて焦りの表情が浮かぶ。
逃亡を続ける少女とハルニレの距離が、どんどん縮まっていく。
今にも、手が届きそうな距離までに近づいていた。捕まえるのは時間の問題だった。
角を曲がったところで、ハルニレは勝機を確信した。袋小路だ。

「オラ、捕マエ……」

ハルニレの右手が、少女の腕を掴んだ。かに見えた。

「ヘ?」

スルリと、少女の腕がまるで蛇かウナギのようにハルニレの手をすり抜ける。
確かにこの手に掴んだ筈なのに。呆然とするハルニレの顔を見て、少女が初めてハルニレの方を向いた。

「ビックリした?」

ドレッドヘアの少女は、悪戯っ子の笑みでハルニレの顔を覗きこむ。
黒に近い肌は、僅かだが向こう側の景色が透けて見えた。

「透過少女≪アン・インビジブルガール≫。アタシはそう呼んでる」

目の前で透けたり戻ったりする少女を観察しながら、ハルニレは三浦の話を思い出していた。
この世界に存在する、科学にも魔法にも属さない概念の話。

「"文明"、カ」
「ブンメイ?何、ソレ?」

ハルニレの呟きに、少女は怪訝な表情で首を傾げる。更に少女の言葉に、ハルニレも眉を顰める。
目の前の少女の能力は、文明による加護ではないのか。そもそも、この少女は文明そのものの存在を知らないのだろうか。
この世界の住民なのに。

「この力はブンメイ?、じゃないわ。アタシだけの『超能力』なの!
 アタシが生まれた時から持ってた力なの。スーパーガールなの、分かる?」

不機嫌そうに頬を膨らませ、ヒステリックに地団太を踏む。
疑問を抱えながら、ハルニレは一応納得する事にした。ハルニレの持つ力も、同じく先天的な物だから。
少女は壁となる建物とハルニレを交互に見、お手上げのポーズを取った。

「でもこの力、1メートルより厚い壁はすり抜けられないんだよね。アタシの負けだ、これは返すよ」

投げ渡された携帯電話と財布を受け取る。ハルニレは幼女を降ろし、少女は悪戯っ子の笑みを崩さず、言う。


「ねえ、友達にならない?」


255 名前:ハルニレ ◆YcMZFjdYX2 [sage] 投稿日:2010/07/11(日) 14:40:23 0

ハルニレは再び眉を顰めた。この女は何を言っているんだ、と言わんばかりに。
少女は手を差し出し、笑う。

「アンタ、ここの人間じゃないでしょ。観光か何かでしょ?お詫びといっちゃなんだけどさ、この辺の道案内してあげる。
 アタシはジョリー。ヨロシク」

差し出された手を、暫くハルニレは見ていた。

「……ハルニレ、ダ」

その手を握ったかと思うと強引に引っ張り、顔と顔をキスしそうな距離まで近づける。
至近距離のまま、ハルニレはジョリーに耳打ちする。

「俺達ヲ尾ケテル奴ガイル。ソイツ等ヲ叩クノヲ手伝ッテクレナイカ?」

頬をほんのり紅潮させながら、ジョリーは頷く。
ハルニレは彼女の様子の変化に気づく事はなく、先程から自分達を尾行している者達へと声を掛ける。

「下手ナ尾行ハ止メテ、出テ来イヨ。ソコニ居ルノハ分カッテンダ。
 俺ノプライベートヲ無断デ覗イタンダ、容赦ハシナイゼ?」

【ハルニレ:尾行している連中に宣戦布告】
【所持品:財布、携帯電話、メモ帳、ナイフ×8】



NPC
名前:ジョリー(本名:榎 寿里(エノキ ジュリ))
性別:女
年齢:19
身長:167(ハルニレの顎辺り)
体重:56kg
性格:悪戯好き、フレンドリー
外見:黒のドレッドヘアー、黒人のように焼けた肌
   服装は白のチューブトップにデニム、アクセサリーをジャラジャラ付けている
特殊能力:透過少女≪アン・インビジブルガール≫
     体を透過させる事で、厚さ1メートルまでならすり抜けられる文明。
     少しの間だけなら、手を繋いだ人も透過させる事が出来る。
備考:不良少女。スリや麻薬運びなどで生計を立てている。 悪戯好きで、フレンドリーな性格。
   少々世間知らずで、文明の事は何も知らない。自分の文明を超能力か何かだと信じ込んでいる。



256 名前:宗方丈乃助 ◆JPgL0HK5gs [sage] 投稿日:2010/07/11(日) 18:58:30 O
>>217
>「こちらは四人、向こうも四人。丁度いいじゃあないか。ミーティオ君の件は一時皐月君に預けて、
>僕らはまずこの囚われの姫君を助けに乗り込んできた無個性パーティのお相手をしようじゃないか」

「いや、あの・・・なんでブリーフなんすか?」

股間を凝視する俺。
なんてまぶしい純白だ。
こんなに綺麗な色のパンツは見た事ねぇ。

>「わけわかんないのは、あの人の生命力ですよ、なんなんですかアレ。
>もう人間じゃないですよ、普通あれだけ銃で撃たれたら死にますって、
>そのまえに壁にめり込んで呼吸ができてる時点でどうなんです、アレ」

「で、相手は4つ子ちゃんっすか。まぁ、だいたい分かったっすよ。」


>「よろしい、ならば戦闘だ。無事僕の魔の手からミーティオ君を助け出せるかな?僕より早く!
>そしてこの場で僕『ら』にちょっかいかけたことを後悔してもらおう。――珍妙君、モル沢君、ゼルタ君、こらしめてやりなさい」

「おぅ、任せとけってやつっすよ。変身!!」

ベルトを巻き、変身ポーズをとる俺。
マジかっけぇと思ったが、なんだか変だ。

「あれ…なんだこれ。」

胸に無数の写真らしきものが出現した。
何がなんだかわからねーが、すげぇダサい。

「遺影みてぇじゃねぇか!!なんだよこれ!!」

蝙蝠もどきが俺の傍に来てなにやら呟き始めた。

≪それは貴様の出会った異世界人達とのリンクを示したカードだ。
出会えば出会うほど、力をあわせて戦えば戦うほどにそのカードは鮮やかさと
種類を増す≫

―ファイナル 二二二( ^ω^)二⊃ ライド……タタタタタチバナ!!

「うぉお!!た、タチバナさんが2人…!?」

俺の横にタチバナさんが現われた。いや、正確には分身ってやつか!?
しかもご丁寧にこいつまでブリーフ1枚じゃねぇか。

「よし、なんだかわかんねーけどいくぞオラァ!!」

俺は巨大なブリーフに変形したタチバナさんに乗り、4つ子ちゃんに突撃した!!

≪異世界人との交流により新たな力を得た。そのままブリーフに乗り
4つ子へ突撃≫



257 名前:弓瑠 ◇CqyD3bIn5I[sage] 投稿日:2010/07/11(日) 20:48:18 0
彼女がお兄ちゃん、と呼び掛けた男は笑顔で弓瑠を見る。
どうやら、話し掛けるべき人間を間違えては無かったようだと彼女は内心で安心する。

>「迷子カ?オ母サンヤオ父サンハ?」

男の言葉に弓瑠は迷子じゃない、等と言いながらも男に保護者とはぐれてしまったと話をする。
すると、道を聞こうとしただけの彼女にとって想定外の言葉が帰ってきた。

>「一緒ニ探シテヤルヨ」

それは彼女にとって思ってもみない、しかしありがたい言葉だった。
10になったばかりの彼女が一人で男二人を探せる訳も無く、それに不審者に誘拐される可能性もある。
いや、その場合は容赦無く矢で射ち抜くつもりであったが。

「…うん」

彼女が了承をした所で男と手を繋ぎ『あき』と『ひぃ』を探す。

>だが、一向にそれらしい人は見つからず、いよいよもって日も暮れてきた。

「あき、ひぃ…」

返事をしてくれないものかと二人の名前を呼ぶがやはり誰も答えない。
彼女が心細さに泣きそうになっている所に男が声をかけた。

>「絶対見ツケテヤルカンナ」
>片膝をついて視線を合わせ、幼女の頭を撫で、「ホラ、笑顔笑顔」と幼女の頬を指で押し上げ、笑顔を形作る。

「あ、ありがとう」

普段はこのような事をされると鬱陶しい等と思うのだが、何故かこの男にはそんな感情は沸いてこず、むしろ嬉しいと思った。
そして再び手を繋いで保護者を探そう、と思ったその時である。

男が通行人と肩をぶつけた。
そして少しの間、通行人の少女を憤慨したように見つめた後に彼はふとある事に気付いたようだ。

「(あ、サイフ盗られてる)」

弓瑠がその事に気付いた次の瞬間、

>「テメェ、待チヤガレェ――――!!」

男が叫んだ。


258 名前:弓瑠 ◇CqyD3bIn5I[sage] 投稿日:2010/07/11(日) 20:50:17 0
「うわ…っ」

いきなり男が走り出して、体が引っ張られた。
必死に着いていくのだが、やはり幼子の体では足手まといである。

「はぁ、は…」

もう手を離してしまおうか等と思った彼女を男は脇に抱える。
きょとん、とした彼女であるがまた走り出す男に納得したようである。
そして揺れに気持ちが悪くなったのか少し目を瞑り男と少女――もう捕まったであろうか―の会話を聞く。
いや、聞く、というか聞き流すと言った方が当てはまるであろう。

そして下ろされても尚、彼女は彼らの話を面白くなさそうに聞き流していた。
話に入れないのだから当然である。
頭が良い彼女でも、話に入れないと拗ねる時はあるようだ。

「…ねぇ、お兄ちゃ」

>「下手ナ尾行ハ止メテ、出テ来イヨ。ソコニ居ルノハ分カッテンダ。
>  俺ノプライベートヲ無断デ覗イタンダ、容赦ハシナイゼ?」

言葉を遮られ年相応にムスッと頬を膨らませる。
そして男の、彼の言葉によるとハルニレの呼び掛けを聞き精神を集中させる。

そして気付いたのは物音と二人分の気配。
彼女は恐らく一組の男女であると予想する。

「多分女の人と男の人、……戦いになったら、私はハルニレお兄ちゃんの味方だよ?」

だってあきとひぃ探してくれたもん、ぁはは。
誰にともなく呟いてニッコリと笑う。
それは少しだけ、狂気的な笑みであった。


259 名前:弓瑠 ◇CqyD3bIn5I[sage] 投稿日:2010/07/11(日) 20:51:11 0
繁華街に男が二人、一人は黒いスーツであり繁華街にも溶け込んでいる。
しかしもう一人は白い巫女服である。
そんな者が繁華街に溶け込む筈が無かった。

「お嬢様ああああ!!」

叫ぶのはスーツの男。
お嬢様と呼んでいる限り、女の子を探しているらしい。

「うるさいぞ、お嬢様は生米のようにしっかり者だから大丈夫だと言っている」

宥めるのは巫女服の男。
お嬢様はしっかり者だから、等と言っているがその実面倒臭いだけである。

スーツ男の大声と、巫女服男の服装により完全に注目の的である彼らは、そんな事など気にせずにお嬢様を探し続けた。

「お嬢様ああああ!どこだああああ!!」

「何度でも言うが柊、うるさいぞ」

「うるさくないぞ!秋人も探せ!」

柊と秋人。
片方は耳が痛くなるような大声で、片方はおにぎりを食べながら繁華街を歩く。
そこでふと、秋人が立ち止まった。

「そういえばお嬢様と思われる子供が男に抱えられてた、と」

「そんな事は早く言え!」

「いや、白米の美味さに何もかも忘れるところだった」

漫才のような会話をし合いながら彼らはお嬢様を抱えていた男が行ったであろう方向へと足を運ぶ。
…それが真実の道か間違った道なのかは、彼らの知るところではなかった。


【秋人・柊:お嬢様探し】


260 名前:ミーティオ=メフィスト ◆BR8k8yVhqg [sage] 投稿日:2010/07/11(日) 23:11:42 0
 タチバナの頭に命中した――と見えたのは、錯覚だった。あるいは、自分の願望が見せた暗い幻影か。

>「――ぁっ」

 神速で振るわれた『隕鉄』は、知りもしない修道服の少女に、その細い腹に、深々とめり込んでいた。

「あ」

 質量が質量であり加速度が加速度である。
 筋肉の少なそうな彼女の腹部は、ミーティオの一撃を耐えきるほどの防御力を持ち合わせてはいないだろう。
 ……というミーティオの予想を裏切り、彼女は床に転がって顔をしかめつつも、声を出すことができた。

>「……タ、チバナ、さんっ!」
>「アクセルちゃん……戻して、たたか、って……くだ、さいっ!」

>「……こうなることは解っていた」

 一瞬で戦場の様相を見せ始めたこの部屋に、また新たな顔が現れた。眼光鋭い男である。

>「そこの鉄パイプ美少女とドレスアップ美少女」

>鰊はベレッタを構えて四人に分裂し、とりあえずスーツ姿の男にありったけの銃弾を撃ち込んだ。

 数十もの銃弾が発射される。この男は跳弾の事を考えていないのだろうか。

>「「「「お前を助けに来た、付いてこい」」」」

「……は?」

 男の言葉が理解できず、ミーティオは聞き返す。いきなり四人になったかと思えば、何を言い始めるのか。
 助けに来たというのなら、このドアが開いた時点で目的は達成されているはずだ。

「悪ィけど、あたしは自分で自分を助けることにするぜ」

 部屋の奥、遥に視線をやったが、既にその姿はどこにもなかった。どこかに隠れたのだろう。

>「え?な、何がどーなってんだよ。あんたを助けにみんな来たってのに…!!」

 頭が全面核戦争の青年、丈乃助。タチバナと同じくカフェで出会った男だが、こっちに殺意は湧かない。

「よう、相変わらずご機嫌なアタマしてんなぁ」

 それだけ言って、ミーティオは視線を下げる。銃弾の嵐を浴び、絶命しているはずのタチバナを睨みつける。
 なぜか頭を壁に突き刺している彼は、見る限り無傷だった。『文明』の力によるものだろうか。

>「あ……あぁ……」

>「ちょ、ちょっと待ってくれよ!なんであんた等が戦わなきゃなんねぇーんだ!?
>お、おいモルガだっけ?さっきの奴らなんなんだよ!!
>4人に分裂しやがるし……昨日まで仲良かった人らは戦い出すし、ワケわかんねーよ!!」

 なんだかよくわからないが人が増えてきた。
 とりあえずタチバナにとどめを刺そう、と隕鉄を振り上げた時、それは起こった。

>「アクセルアクセス――『ACT.2』!!」

 スーツが弾け飛び、ある意味では正式な姿になったのは、タチバナという名の変態である。


261 名前:ミーティオ=メフィスト ◆BR8k8yVhqg [sage] 投稿日:2010/07/11(日) 23:12:23 0
 世界は、氷結した。

 さすがにミーティオにとっても、壁に突き刺さった男の服が爆発するというのは予想外すぎた。
 しかも唯一残った衣類であるブーメランパンツがまた……生理的に気持ち悪かった。

>想像以上に生っちょろくてだらしない感じの体を披露しながら、タチバナはまるで大根でも収穫するように壁から頭を引き抜く。
>乱れたオールバックを手櫛で(にもかかわらず完璧に)整えながら、半裸の彼は部屋の中央まで歩いてきた。

 すごい。自分がほぼ全裸であることを全く気にしていない。
 そして長身だから締まった筋肉なのかと思えば全然そんなことはない。さすが変態。

>静かに、修道服が形を変える。皐月を包み護るように、抱き擁するように、支え立つように。
>『アクセルアクセスACT.2』の正しい姿へと、変形していく。
>やがて出来上がったのは、『皐月と同じ身長の』、修道服色の幼女だった。アクセルアクセスである。

 つい先ほど隕鉄の一撃を喰らった少女が、姿を変えた。

>「皐月君、君にはそのアクセルスーツを駆り、ミーティオ君を止めてもらいたい。君も彼女もどっちも無傷が望ましい。
> 武装の種類は直接アクセルアクセスに聞けば教えてくれるはずだ。全て非殺傷だから、上手く使ってくれたまえ」

「はっ……何が何やらよくわからんが、あたしを拘束するつもりなら、全力で抵抗させてもらう」

 目を細める。地下生まれのミーティオにとって太陽の光は強すぎるが、室内なら特に問題はない。
 さらに、路地裏や排水路で生きてきた彼女は、周囲を壁に囲まれていたほうが動きやすい。

「来いよ」

 しばらく忘れていた殺意、憎悪、冷たい感情を視線にのせて、ミーティオは敵に対峙する。



【ニシンさんの提案は拒否】
【皐月inアクセルアクセスの攻撃を待ちます】


262 名前:エレーナ ◆SQTq9qX7E2 [sage] 投稿日:2010/07/12(月) 07:41:52 0
「(ハァ、ハァ……アイツ等、何時、まで歩い、てんのよ……!)」
「(俺のDS…………俺のDS…………………)」
「(あんまりしつこいとその頭かち割るわよドルクス)」

幼女と手を繋ぎ街を彷徨う男。日が暮れかけても尚、彼らは何かを探すように歩き続ける。
ハイヒールを履いている私としては、足がとても疲れた。 そろそろ休みたいけど、ここで止めてしまえば全て水の泡だ。

「(疲れたわドルクス、おぶりなさい)」
「(俺のDS…………)」
「(だめだこいつはやくしないと)」

展開は、その瞬間変わった。

>「テメェ、待チヤガレェ――――!!」

なんと、標的が走りだした。
どうやらスリのようだ。見失うまいと、私達も走る。

〜なんやかんやあったけど中略〜

「(中略しすぎだろ!!)」
「(どうしたんスか?お嬢様)」
「(いや、何かツっこまなきゃいけない気がして…)」

私達は今、男と幼女が盗人の少女を追い詰める所を盗み見していた。
何か会話しているが、こちらからは遠すぎてよく聞こえない。 と、男の方が声を上げた。

>「下手ナ尾行ハ止メテ、出テ来イヨ。ソコニ居ルノハ分カッテンダ。
> 俺ノプライベートヲ無断デ覗イタンダ、容赦ハシナイゼ?」
>「多分女の人と男の人、……戦いになったら、私はハルニレお兄ちゃんの味方だよ?」

「(……バレてるッスね)」
「(うううううううう煩い!こうなったらヤケよ!)」

向こうは完全に戦闘態勢だ。恐らく話を聞くタイプではないだろう。 私達は仕方なく姿を現した。

「フン、私達の完璧な尾行を見破ったのは褒めてやるわ!」

背中の四次元リボンから黒パラソルを取り出し、先端を男達に向ける。

「私の名はエレーナ=T=デンぺレスト!こっちの根暗はドルクス」
「誰が根暗ッスか、誰が」

ドルクスの頭を傘で叩き、傘を肩に担ぐポーズを決める。
向こうは二人+α、こちらも二人。戦力は五分。 ……………この勝負、勝てる。

「ドルクス!あの男の相手をしておやりなさい」
「ヘイヘイ、……マンドクセ」
「何か言ったかしら?」
「いえ何も」

ドルクスは男の前へと踊り出、右腕を漆黒の巨大な鉤爪のような物へと変化させる。
そして構え、無表情のまま男と向き合う。

「すんげー面倒臭ェッスけど……相手してもらうッスよ」

お嬢様が怖いし、とエレーナには聞こえぬよう付けたし、男へと飛びかかっていった。

【エレーナ:とりあえずドルクスをパシらせて高みの見物】
【ドルクスは喋らせるなり戦わせるなり好きにしてください】

263 名前:三浦啓介 ◇6bnKv/GfSk[sage] 投稿日:2010/07/12(月) 21:07:45 0
>>不非兄弟

大剣を構える君達に、しかし料理人姿の男の視線は相変わらず冷ややかであった。
項垂れこれ見よがしに溜息を零し、男は首を横に振る。

「……一匹の魚があったとして、さあ。それを捌いて適当な手段で調理すれば、様々な味が作り出せる。
 だがそれを丸ごと焼いちまえば……勿論それがいけないとは言わないが、味の多様性は失われる訳だ」

突然、彼は君達に向けて料理の薀蓄を語り始めた。
同時に、『錬金大鍋』から新たな食材が飛び出す。

「ついでに、知ってるかい? グルメ雑誌とかに載ってる料理の写真ってのはさ、表面に油を塗りたくったり
 下にドライアイスを忍ばせて湯気を過剰に見せたりしてるんだぜ。その方が美味しそうに見えるからな
 だけど、当然そんな事をすればその料理は食えなくなる。お前達はまさしくそれと同じ事をした訳だ」
 
鍋から飛び出した食材達は君達に四方八方、上方下方を問わずに迫る。
床からは溶岩のトマトソース。そこに爆裂トウガラシを咥えたコンキリエが跳び掛かる。

「さて、そんなスットロイ動きじゃ逃げ切れないよなあ? だからと言って、一本の剣じゃ全てを振り払う事も出来ないだろう。
 スタイリッシュなつもりかい? カッコつけのつもりだったかい? 身の程を知れって言うんだよ」

 そう、君達は判断を誤ったのだ。
 一本の矛で凌ぎ切れず、盾を用いてようやく君達は先の攻撃を凌いだのだ。
 なのに何故、君達は二つを一つに纏めてしまった?
 どうしてわざわざ、足を捨てるような真似をした?

 君達は見栄えばかりに囚われ、最適である戦略性を殺してしまった。
 その大剣は完全かもしれないが、この場においてはどうしようもなく不完全である。
 矛盾は、未だ矛盾のままなのだ。

「じゃあ、死んどけ。身の程知らずの大馬鹿野郎共。お前らは調理する価値すらねえよ」

 料理人風の君達に蔑笑を浴びせ掛ける。
 だが虚飾なく物を述べるならば、君達が助かる術は幾らでもあるだろう。
 秘めたる力の覚醒。文明の暴走。更なる奥の手を作ってもいい。

 けれども君が予定調和の歯車の神に頼る事を是としたくないのであれば、君達はただ足掻くだけでもいい。
 この場には頼り甲斐のある正義を謳う者が二人もいて、更にはお人好しの達人もいるのだ。
 君達が君達を助けられなかったとしても、彼らならば君達を助けられるに違いない。

【低機動力かつ剣一本じゃ厳しいであろう、全方向からの攻撃って事で】

264 名前:三浦啓介 ◇6bnKv/GfSk[sage] 投稿日:2010/07/12(月) 21:09:57 0
>>都村

「さあお待たせ……って何だ? さっきの女は何処へ行った?」

 料理人風の男は周囲を見回すが、キッチンカウンターの向こうにいる佐伯の姿は見えない。
 少々不満げな表情を浮かべて、しかし彼はやむを得ず君に向き直る。

「まあ……君も悪くは無さそうだし。あの女の前菜程度には丁度いいかもな。
 ……おっと、そんな表情するなよ? 別に食人の趣味があるって訳じゃない。
 なんたって……事が終わる頃には、君らはもう人間じゃないからな」

欲望の露見した笑みと共に、彼は大鍋に新たな食材を放り込む。
『錬金大鍋』によって情報を書き換えられた食材は威力を抱き、君へと迫る。

「……おっと、トマトはもう品切れか。あの女のハジケっぷりとトマトの酸味は良く合うと思ったんだが、勿体ないなあ。
 でもまあ、君を刻んで隣に添えるってのも悪くなさそうだ。ちゃんと形を残してぶっ殺せば……前菜に使った後でも十分残るよな」

彼は既に、君と佐伯の調理法にまで意識を至らせている。
故に食材の無駄遣いを省くべく、君へ迫るはパスタの杭のみとなっていた。

君は油断に塗れたこの男を叩きのめしてもいいし、数多の食材に囲まれ窮地に陥る不非兄弟を助けてもいい。
勿論自分の思い描く道に従うも自由である。

【食材にゃ限りがあります
 そしてパスタパイル攻撃】

265 名前:三浦啓介 ◇6bnKv/GfSk[sage] 投稿日:2010/07/12(月) 21:11:13 0
>>ハルニレ

今となっては過ぎた話に過ぎないが――三浦啓介は君に対して大まかに三つの事を教えた。
一つは、この世界の文明について。

「これを見た事があるかな? これは携帯電話と言ってね。……その前に電話と言う物は分かるかい?」

随所に嫌味を交えながらも彼は携帯電話を操作する。
どうやら何処かへと電話を掛けているようだが、彼の声の行方は、到底君には知り得ない事だ。

「やあどうも。……あぁいや、アポイントメントなら取ってないよ。まあそう言わずに。たったの一言で終わるからさ」

口角を邪悪に吊り上げて、彼は伝える。

「三浦啓介は『イデア』への羅針盤を手に入れた。……君が知る限りで最も偉い奴に、そう伝えればいい」

一分にも満たない通話を終えて、三浦は君へと向き直る。
彼の表情からは邪悪さこそ薄れていたが、喜色の笑みは相変わらずのままであった。

「……と、今の一言で遠く離れた何百何千、もしかしたらもっと多くの人間が僕のゲームに巻き込まれるんだ。面白いだろう?」

その後に君は彼曰く「つまらない」――携帯電話の真っ当な使い方と彼自身への連絡先を告げられた。
これが一つ目。そして二つ目は、この世界の『文明』について。
三つ目は彼の君へのゲーム、つまり彼の娘の捜索と奪還についてである。
他の異世界人や組織に対して吹っかけたゲームに関しては、彼が告げる事は無かった。

【進研など各組織に抗争の火種ばら撒き】

266 名前:◆Ui8SfUmIUc [sage] 投稿日:2010/07/12(月) 21:56:55 O
通れない

鰊は思った。困ったことに、彼女らへの申し出は断られてしまった。そして彼女はシスターと戦う。個の保存の
ために。欲求を要求に、要求を欲望に進化させる。ラカンだ。描写が枯渇している。予測が欠如している。色あ
せている。否、否、否、これもまた予想通りだ。ワカッテマス。
当然、その先も考えてある。説得が無理ならば、拉致してしまえばいい。その通りだ、異論はない。異論はない
だろう?諸君。

イエス、イエス、イエス。オールイエス。

そんな事より、通れない。
「タイミングを計るから陽動して……」

兎が真横で呟く。屋上へ行くには、“俺たち四人”がいる部屋の前を横切らなければならない。陽動して、注意
を引き付ける。兎ならば、一瞬でも注意を引き付ければ余裕だろう。彼女はそういう役割に立っている。極めて
機械論的に。古くさい考え方だ。
『だが真理だ』
面倒な真理だ。知るべき事が多すぎる。

「ああ、わかった。しかし、今丁度立て込んでる所なんだ。ハリウッドで言うラスト十分前だ。
わかるだろう?ここを逃したら今までの八十分が無意味になるんだ。大量生産された、退屈で、無意味で、無価
値を極めたもののほんの少しの意味らしきもの……“興奮”だよ。
今、君はそれを台無しにしようとしている。
そう言うのは、卑怯だ」
「……何を言ってるのかまるでわからない」

それは嘘だ。兎の機能にはそぐわない発言だ。だが俺は知っている。意味を理解し、把握し、演じる。ロールす
る。彼女は魂を写す鏡であり、残酷で薄汚い娼婦だ。俺が抱えているこの男はその事を知っているだろうか?知
るはずもない。
狼は人を襲い、狐は兎を追う。犬は狐を追い立てる。そして猫はそれらを観測する。皿には鰊が乗っている。彼
女のおやつだ。彼の兄弟は、今はペリカンの口の中にいる。実に不幸な兄弟だ。

「正気に戻ろう」

そして俺達はブリーフに吹き飛ばされた。みっともなくバラバラになった。ミンチだ。やった当人が驚いたよう
にこちらを見ている。部屋にいる全員が“俺たち四人”を注視している。腸が腹からはみ出ている。熱い。舌に
歯が突き刺さっている。痛い。しかし“俺たち四人”は、死ぬ間際になんとか“彼女達”のポケットにビーコン
を放り込む事に成功した。気付かれていない。問題ない。悪くない。これで座標は確定できる。後はペリカンに
任せよう。

そして、俺達は死んだ。

267 名前:鰊→兎 ◆Ui8SfUmIUc [sage] 投稿日:2010/07/12(月) 21:59:59 O
「……茶番だわ」
「そうでもない」

俺達は兎と共にヘリポートに立っていた。派手に死んだ“四人”は、今も死体としてあの部屋に散らばっている
事だろう。まだ分裂はしていないから。俺達は三人のままだ。

「陽動にしては上出来だったろう」

ヘリが降りてくる。まだ四時にはほど遠いが、時間を早めたのだ。
ゆっくりと降下してくるリトルバードの狭い腹を眺めながら、李は来るだろうか?と、兎はふと思った。今の性
格は鰊に準拠している。ひょっとしたら別人と取られかねないが。
そして真雪。今、まともに彼女と会うわけにはいかない。尾張が起きていなければ、彼女の能力で化けの皮を剥
がされては元も子もないから。

「……鰊。一応、あの部屋の奴らの足止めを頼むわ。
最後の最後で邪魔されたら敵わない」
「別に良いが、あいつらを捕まえようとは言わないのか?異世界人なんだろう?」
「別料金になるんでしょう?……いらないわよ。あんな奴ら。三浦が拘らない当たり、どうも大した価値もないみたいだし。
実際、ミーティオ・メフィストよりあの成川遥の方が興味あるわ……」


【宗方→鰊4〜7:ストライク。鰊4〜7死亡
鰊4〜7→ミーティオ、成川:死に間際にこっそりビーコンを仕込む
鰊4〜7:死亡。一応死体は残る(少し経ったら消える)
鰊1〜3、8〜11:元の部屋へ戻るよ!
リトルバード着陸。李の合流を待つ(兎は真雪を切り捨てるか迷い中です)】



268 名前:三浦啓介 ◇6bnKv/GfSk[sage] 投稿日:2010/07/13(火) 01:04:22 0
――『進研』――


「三浦の野郎がイデアの手がかりを見つけたとよ」

長髪オールバックの男が、金髪リーゼントの男に告げる。
金髪リーゼントは一瞬呆けた表情を見せて、しかし次に見せるは嘲笑。

「……で、何だってんだ?」

「分かってて聞いてんだろテメエ」

「おー、よく分かったな」

鼻で笑い、金髪リーゼントは口端を上に歪めた。
オールバックの眉間に、皺が寄る。

「『赤ペン』に入るつもりはねーよ。これで満足だろ?」

対してオールバックは、眉間の皺を一層深くした。

「……オーケイ、言い直してやる。『赤ペン』にも入るつもりはねーよ。
 あのアルファ組の馴れ合い連中にも、興味はねー。
 何だって孫馬鹿のクソジジイに頭垂れなきゃならねーんだか。……まー詰まる所、何処ともツルむつもりはねーってこった」

多少緩んだものの、未だオールバックの面持ちには怪訝の色が残っている。
だがいずれにせよ、これ以上言葉を交わした所で無駄であろうと、彼は引き下がる。

君達に敵味方があるように、各組織とて必ずしも一枚岩とは限らない。
進研に限らず公文やまだ見ぬ組織の中に身を置く者達も、目的を同じくしているとは限らないのだ。
↑ここまで


『チャレンジ』を『進研』の一派閥とさせて頂きました。また他にも派閥があるって事にしときました
意味は組織のサイズを大きめに取っておいた方が後々汎用出来て便利って事と、
後は悪の組織? でそれなりの立場にいるお偉いさんが孫思いの爺ってんじゃあ、余りにもカッコが付かねえかなーと言う事で
あくまで『チャレンジ』内でのお偉いさんとしましたです


269 名前:月崎真雪 ◇OryKaIyYzc [sage] 投稿日:2010/07/13(火) 04:25:58 0

目の前の人間の服が爆発し、ブリーフ一枚の格好になったら……
人はどういう反応を取れば良いだろう。
少なくとも真雪は固まった。そして、もう思考を停止して笑うしか無かった。




一人固まっている真雪を置いて、世界は進行する。


『「こちらは四人、向こうも四人。丁度いいじゃあないか。ミーティオ君の件は一時皐月君に預けて、
 僕らはまずこの囚われの姫君を助けに乗り込んできた無個性パーティのお相手をしようじゃないか」』

『「さあ!愚かなる勇者達よ!!僕ら休鉄会暗黒四天王を突破できるかな?今日の僕はちょっとだけダーティに行くよ。
 久々に忘れ去られてたキメ台詞の設定を発掘してみようと思う。――ネットに書いてあったから、間違いない」』

ブリーフ一丁の変態が分裂した男性に喧嘩を売り。

『「これ、よく考えたら敵じゃなくて味方にもかなりうっとおしいですね……」
「ま、いっか面白いし」』

萌芽が飛び跳ねる柔らかい人形を作り上げ。

『「よし、なんだかわかんねーけどいくぞオラァ!!」』

丈乃助が巨大なブリーフに乗ってその4人組を倒した。
そうして、その近くでは、鉄パイプの少女とシスターの少女が対峙している。



.


270 名前:月崎真雪 ◇OryKaIyYzc [sage] 投稿日:2010/07/13(火) 04:26:45 0
.


(…あれ、これ)

真雪は、その空間には必要が無い。
力の無い真雪には4人組や鉄パイプ少女と戦えない。
そして、知り合いである丈乃助や萌芽の目には、真雪の姿は映っていない。

(ああ、そっか)

真雪は、その空間には必要が無い。



真雪がここまで行動してきた理由として、彼女が自分自身の存在価値を見いだせない事にある。
逃げて居るだけの自分。
守られて居るだけの自分。
否定されているだけの自分。
そんな自分が、どうして心から他人に好かれようか。
柚子がどんなに真雪を好いて居ようとも、真雪の自己否定は終わらなかった。
だけど、昨日出会った異世界から来た人間達。
彼等を助ければ、自分の存在価値が上がると、何の根拠も無く思っていた。

それは所詮、妄想の域を出なかったけど。

真雪の、『意思の強い自分』の張りぼてが、粉々に砕かれた。
後に残るのは、心から柚子を求める自分だけ。
これ以上自分が傷つくのを恐れ、みっともなく逃げ出す自分だけ。



その場から逃げ出し、エレベーターの前で真雪はへたり込む。
スカートのポケットを探れば、そこには携帯電話が有った。
それが壊れていない事を確認し、真雪は電話を掛ける。
しかし、相手は出ない。もう一度かけ直す。
それを何度も繰り返すうちに、真雪はついに泣き出した。

「ユッコが…出ない…」

真雪の声は、虚しくその場に響いた。

【ユッコに電話を掛けました。ミー様ルームには居ないよ!】




271 名前:◆Ui8SfUmIUc [sage] 投稿日:2010/07/13(火) 09:46:08 O
まともにやり合って勝てる相手ではない。
一撃を受けて、鰊はそう判断した。扉の影からそっと部屋の中を除き見る。思った通り、部屋の中はどこか白け
たような、気の抜けた炭酸水のような雰囲気になっていた。当然だろう。戦うべき相手があっさりと(本当にあ
っさりと)死んでしまったのだ。
彼等は油断している。
そこに漬け込むしかない。

(部屋から出た所を狙うか)

ペリカンの『圧縮』はじきに発動する。そうすれば弥が上にも奴等の足止めをしなければならない。けれど、今のまま
ではどう見積もっても足止めすらできるか怪しい。
ある程度損害を与える必要がある。
まだ、分裂はしていない。つまり部屋の死体は残ったままだ。今のところ気付かれる要素は無い。今は、奴等はあの美少女達を取り押さえに掛かっているようで、あの戦力差ならそれは容易く叶うだろう。
と、誰かが移動したようだ。一瞬、ヒヤリとしたがこちらには気付かず、そのままどこかへ行ってしまった。

(さて、気付いてくれるなよ)

扉を出てきたら、不意打つ。
緊張と停滞の間で、鰊は息を殺した。

【鰊1〜3、5〜11:誰かが扉を出たら不意討ち】


272 名前:経堂柚子 ◇OryKaIyYzc[sage] 投稿日:2010/07/13(火) 22:28:43 0


赤のナイトが、柚子をキッチンの中へ寝かせた。

(どうして、わたしをたすけたんだろう)

赤のナイトの決意を知らない柚子は、その行動を理解する事が出来ない。
いや、行動の全ての理由を『真雪の幸せ』に押し付けている柚子にとって、
見知らぬ誰かを『自らの為に』助けるその行為を理解する事が出来ないのだ。

『「……酷い。半身にわたってのDDB。それから一部ではDBまで……助かる?」』

真雪の幸せの為、全てを利用し自らをも切り捨てる。
そして、その行動の見返りも求めず誰も責めず、行動の結果を受け入れる。

それはある意味純粋で、そのまま破滅的な好意。
現に今、その好意が柚子の顔を破壊した。

『「助ける。じゃないのですか?とにかく、まずはこびりついた熱源および壊死化細胞の除去、冷却を最優先してください。
 <巡回医>さん。それから…佐伯さん。メディカルチームが来るまでの間申し訳ありませんが彼女をお願いします」』

柚子の肩や顔や胸にへばり付くトマトが、丁寧に取り除かれる。
そうして応急処置は開始された。
大丈夫かと柚子を呼び掛ける声が、遠く聞こえる。
熱に浮かされた脳で考えるのは、やはり真雪の事。

(ユキちゃん、大丈夫かな…泣いてないかな…
ユキちゃんのとこへ行きたいな…そして、ユキちゃんを抱きしめたいな…)

意識が朦朧として、考えが纏まらない。
その中で柚子の耳が捉えたのは、自らの携帯の着うただった。



―――未来へのパス 失くしたのなら
この牙で守ってあげる―――



真雪に我が儘を言って、お互いの着信音をお揃いにした。相手がすぐに分かるように。
つまりこの曲は、真雪と柚子の絆の証。

「…ゆきちゃん、ゆ…」

「黙っていろ! 死にたいのか!?」

声を聞かれたのか、叱られてしまった。
だけど、柚子は何度でも真雪の名を呼ぶ。

(だって、ユキちゃんが呼んでる…!)

何故、怪我などおってしまったのだろう。
こんなに重傷じゃ、真雪を安心させられない。

一回止んで、再び鳴りだす携帯を柚子は求めていた。



【携帯は取るまで延々と鳴り続けます】
【携帯は取るも良し、取らぬも良し、破壊(!?)するも良し】

273 名前:不非兄弟 ◇CqyD3bIn5I[sage] 投稿日:2010/07/14(水) 02:25:38 0
二人は焦っていた。
格好つけて剣など持った結果が、全方位からの攻撃である。
双子はゆっくりと顔を見合わせる。

「えーっと」

「まあ、そりゃ、こうなるよね」

二人は本当に焦っていた。
これでは玩具を貰って浮かれて怪我をする子供と何一つ変わらない。
流石とは言えないからである。

「い、いや待て、ここで死ぬのも俺ららしくて流石じゃないか…?」

「かっこよさを追求しすぎて殺されるのが流石?」

「…」

「…」

無言。
こうしている間にも迫りくる攻撃に、二人の顔に冷や汗が浮かぶ。
ここで死んでしまうのは流石などではなく馬鹿である、と馬鹿な二人でも分かったようだ。
そして悩んだ末に開いた口から出てきた言葉は、

「だ、誰かぁあああ!助けてくれぇえええ!!」

「希射お前さっきここで死ぬのも流石とか言ってたのに!」

……格好いいとは程遠かった。

【馬鹿兄弟:助けを待ってみるよ!こなかったら死ぬよ!】


274 名前:ハルニレ ◆YcMZFjdYX2 [sage] 投稿日:2010/07/14(水) 21:53:09 0
>>262

>「フン、私達の完璧な尾行を見破ったのは褒めてやるわ!」

バレバレの気配を晒しておいて、どこが完璧なのか。
物影から出てきた珍妙な男女の二人組を睨みつけ、心中で悪態をつく。
変わった黒ドレスを着た金髪ツインロール少女、もといエレーナは、側にいた青年、ドルクスと漫才を繰り広げている。
ハルニレはそれを苛々したような呆れた目で、ジョリーは物珍しげにハルニレとエレーナ達を交互に見ている。

>「ドルクス!あの男の相手をしておやりなさい」
>「ヘイヘイ、……マンドクセ」

向こうも完全に戦う気でいるようだ。ハルニレはサバイバルナイフを構え、相手の動きを待つ。
ドルクスと呼ばれた男が、ハルニレと対峙する。エレーナの方は、その場から動かない所を見ると、さしずめ様子見といった所か。
目の前の青年は、右腕を巨大な漆黒の――硬質なイメージを与える化物の鉤爪のような物へと変化させ、ハルニレを見据える。

>「すんげー面倒臭ェッスけど……相手してもらうッスよ」

感情の捉えられない表情で、ドルクスは言う。対し、ハルニレは不敵な笑みを浮かべ、サバイバルナイフを構えた。

「ソリャア、コッチの台詞ダ。俺達ァ忙シインデ………………ナッ!」

言葉の途中で、ハルニレは袖に隠していたダガーナイフをドルクスへと飛ばす。
だがドルクスは表情を変える事なく、難なくナイフをその右腕で弾き飛ばした。
ダガーナイフはコンクリートの壁へと突き刺さり、沈黙する。不意打ちは通じないと云う事か。
今の攻撃で一瞬でも隙を与えられたら儲け物だったのだが、やはり一筋縄ではいかないらしい。

「(ニシテモ……変ナ気配漂ワセヤガッテ、気味ノ悪イ連中ダ)」

眉を顰め、エレーナとドルクスをそれぞれ睨みつける。
ハルニレやジョリー達とは違った異質な空気を醸し出す彼らは、ハルニレに言い知れぬ不快感を与えていた。
姿形は人間のそれなのに、気配はまるで人とも獣とも違う、何か。
関わってはいけない、すぐに仕留めるか逃げるかどちらかを選らばなきゃいけない、彼の直感がそう警告した。
いや、逃げるなんて選択肢は彼のプライドが許さない。ハルニレのナイフが、鈍い銀色を放つ。

「1分デ済マセテヤンヨ」

その言葉と共に、鈍色の空に金属同士がぶつかりあう耳障りな音が響いた。

銀色と漆黒が、青い火花を散らせて交差する。
実力は五分といったところか。体力、力、スピード共にどちらも引けをとらなかった。
押しては退き、押しては退きの連続。気付かぬ内に、鉛色と化した空が、雨を降らせ始めていた。

「中々ヤルジャネーカ。見タ目モヤシノ癖ニヨ」

このままでは埒が明かないと判断し、距離を取り、相手の隙を窺う。
ジョリーはどうしてよいのか分からないのか、ハルニレの戦いを狼狽したように見ているだけだ。
暫し睨みあいが続く。雨は強さを増し、ハルニレ達を濡らす。


275 名前:ハルニレ ◆YcMZFjdYX2 [sage] 投稿日:2010/07/14(水) 21:54:44 0

先手を仕掛けたのは、ハルニレだった。

「オラァッ!!」

足元に出来た水溜りを水分を吸った砂と共に蹴飛ばし、目潰しを食らわせる。
相手が怯んだその一瞬を狙い、ハルニレはドルクスの懐へと飛び込む。

「(勝ッタ!)」

ナイフを上段に構え、一気に振り下ろす。

「ッ、ナニ!?」

しかし、ナイフの切っ先がドルクスを捕える事なく、空を切った。
前方へと掛けていた力のせいで倒れかけるところを何とか踏ん張り、よろけながらも体勢を立て直す。
そしてハルニレは気付く。ドルクスが、どこにもいない。

「危ないっ、ハルニレ!!」

ジョリーが咄嗟にハルニレの腕を掴む。その直後、ドルクスの鉤爪がハルニレの胴体を通過する。
ハルニレもドルクスも、驚愕を隠しきれない。二人はそのまま、引っ張った力の作用で絡まり合うように地面を転がる。
泥だらけのすり傷だらけになりながらも、ドルクスの背後からの攻撃を避けたらしい。
ドルクスが背後に回っていたのにも驚いたが、先程の現象にも彼はまた驚いていた。これも彼女の能力か。

「あ、危なかった……。ハルニレ、大丈夫?」
「オ、オウ。アリガトナ」

ハルニレの感謝の言葉が嬉しかったのか、ジョリーが白い歯を見せて笑う。
しかし、ジョリーの視線がすぐさま、ある一点へと集中する。

「ァ…」

帽子が、転んだ拍子にずれ、ハルニレの顔の火傷痕が少しだけ覗いていた。
すぐさま帽子を深く被り直す。少しだけ、気まずい空気が流れる。
ジョリーの視線から逃れるようにドルクスへと視線を向けると、彼はまるでハルニレを挑発するかのように待ち構えていた。

「隙ダラケナノニ仕掛ケテコネーッテノハ、ヨッポド自信ガアンノカ、ソレトモ只ノ馬鹿ナノカ?」
『どちらと取っても構わないッスよ。俺にとってはどうでもいい話ですから』

事もなげに言い放つドルクスに、ハルニレは地面に唾を吐く。血が混じっていた。
片手をついて立ち上がり、ドルクスを睨む。

「オメエ等ハ何者ダ。何デ俺達ヲ尾ケテイタ?」

ドルクスもジョリーも、何も言わない。ただ、視線が交錯し、無言の時間が流れるだけ。
この男に聞いたのが間違いだったか。ハルニレの視線は、エレーナへと移動する。

「答エロヨ、エレーナトヤラ。テメエ等ノ目的、洗イザライ吐イテ貰ウゼ」

顔についた泥と鼻血を拭い、ナイフは降ろさぬまま。路地裏に、ハルニレの怒りの籠った疑問の声が静かに響いた。


【ハルニレ:一旦攻撃を中止、質問責めタイム】

276 名前:李飛峻 ◆nRqo9c/.Kg [sage] 投稿日:2010/07/16(金) 03:50:14 0
荒海という強力なリーダー失ったからか、あるいは単純な戦力差によるものなのか、戦場はすでに残党狩りの様相を呈していた。
しかしそこは流石に荒海銅二が率いた武闘派ヤクザ達。
寡兵となっても、否、最後まで残った者達だからこそ未だ気を吐き交戦を継続していた。

「無駄な抵抗は寄セ。もうアラウミは討ち取っタ」

乱戦の最中、飛峻は対峙する一人のヤクザへ声をかける。

「もう少しマシな嘘つかんかい。クソガキ!兄貴が簡単にくたばるわけあるかァ!!」

対するヤクザは馬耳東風。
兄貴分の戦闘力に全幅の信頼を置いているからか飛峻の言葉を一笑に付し、両手で構えた拳銃を手馴れた動作で突きつける。
場慣れしているだけでは無い、おそらく銃の取り扱いに対する正規の訓練を受けているのだろう。
一見しただけでわかる程、無駄の無い動作をそのヤクザは見せていた。

「……馬鹿ガ」

だが所詮はその程度。この距離で銃口を見せることの愚に気づいていない。
ワントリガーで複数の弾丸をばら撒けるアサルトライフルやショットガンならいざしらず、男の獲物は単発の自動拳銃なのだ。
狙いが正確で有れば有る程、銃口の延長線上以外はすなわち安全地帯に他ならない。

指にかかる微細な動きを見極め、発砲と同時に瞬転。
初動で間合いの半分を殺し、慌てた男がそれでも素早く次弾の狙いを定めた時、最早そこは飛峻の拳打の射程距離。

突き出された腕を掴み、引き寄せ。正中線を肘で撃ち抜く。
体勢を崩されたことで一切の防御行動を封じられたヤクザは、一度びくりと体を震わせると飛峻にもたれ掛かるように気絶する。

「一つの技術を習得したことデ慢心したのがオマエの敗因ダ」

すでに意識を手放した男に酷評を浴びせると、飛峻は煩わしそうにそれを打ち捨てた。

ヤクザの年嵩は風貌から推測するに飛峻と同程度。
その相手にクソガキ呼ばわりされたのが存外気に障ったのかもしれない。

277 名前:李飛峻 ◆nRqo9c/.Kg [sage] 投稿日:2010/07/16(金) 03:53:29 0
無様に寝転がる男を見下ろし飛峻が溜飲を下げていると、突如場違いな程アップテンポな曲が鳴り響く。
突然のことにぎょっとして辺りを見回すと、その発信源は床に落ちているデニム地のジャケット。

「コレは、ユズコが着ていたジャケット?」

なおも鳴り続けるメロディアスなラインと、それに併せ切々と謳いあげる女性ボーカル。
それはまるで早く拾えといわんばかりに自己主張をしているようでさえあった。

「ム?」

しかし飛峻が拾い上げるのと同時にそれまで鳴っていた曲がぷつりと途切れる。
ジャケットのポケットの中から出てくる携帯電話。
液晶画面には見知った二人の少女が俯瞰で笑いあっている画像と着信を知らせる文字が映っていた。

「やはりユズコの物のようだナ……」

この状況下で柚子に連絡をとろうとする者といえばおそらく真雪だろう。
勝手に使用することの後ろめたさを非常時ゆえという建前で押し通し、飛峻は真雪へ連絡を取ろうする。

「……どう使うんダ。コレ」

だが肝心の使用方法がわからない。
飛峻の時代のそれと比べあまりにも古すぎるからである。

「黙っていろ! 死にたいのか!?」

飛瞬が携帯の扱いに四苦八苦していると、幾ばくかの怒気とそれを上回る焦燥をはらんだ声が聞こえてくる。
ややもすると人質を取って立てこもる誘拐犯のような台詞だが、声のニュアンスはむしろ誰かを案じているそれだ。

声のした方向へと視線を向けるとそこにあるのは妙に散乱したキッチンカウンター。
飛峻の位置からではカウンターが遮蔽となって見えないが、さらに奥の調理場からは緊迫した気配が伝わって来る。
何故か妙にざわつく気持ちを押さえ、踏み入ると――

「ユズコ!?」

そこに居たのは半身が焼け爛れ痛々しく横たわる柚子と、付き添う女性、そして医者。
飛峻は駆け寄ろうとするも、不意にその足を止める。
柚子の症状は重度の熱傷。戦闘に次ぐ戦闘で汚れにまみれた自分が近寄ったのでは感染症の引き金となりかねない。
だからこそ、意に反して前へ出ようとする足を必死に押し留めなければならないのだ。

「頼ム……ユズコを助けてくレ」

飛峻は治療を続ける二人へと、ひどく震えた声で、恥も外聞も無く懇願した。

278 名前:李飛峻 ◆nRqo9c/.Kg [sage] 投稿日:2010/07/16(金) 03:54:17 0
離れた場所にしゃがみ込み、飛峻は頭を抱える。
苦しむ柚子を前に自分は何も出来ない。
突き付けられた事実に意気は消沈する一方だ。

負の連鎖に入り込もうとしていたそのとき、持ったままだった柚子の携帯が着信音を奏でる。
のろのろと画面を見るとそこに映るのは「ユキちゃん」の文字。

(……出たところで何て言えばいい)

柚子の携帯に自分が出ることを真雪は当然訝しむだろう。
それどころか聡い彼女のことだ、親友の身に起きた悲劇に気づくかもしれない。

たっぷり数コール分悩んだ所で着信音が途切れる。

(……しかし出なければ出ないで結局心配するだろうな)

そんなことをぼんやりと考えていると二度目の着信。
使い方がわからぬまま取り合えずそれっぽいマークのボタンを押してみる。

画面に表示される「通話中」の文字。
刻まれていく通話時間が10秒を過ぎた頃、飛峻はようやく電話の向こうの真雪に声をかけた。

「無事だったかマユキ。今、何処に居ル……?」

279 名前:弓瑠 ◇CqyD3bIn5I[sage] 投稿日:2010/07/16(金) 20:28:49 0
弓瑠はほんの少しだけ拗ねていた。
戦いになり、自分の文明が役立つかと思い用意をしていたのにハルニレは攻撃を止めたのだ。
家族以外の他人の役に立とう等と思った事も無い自分がハルニレの役に立とうとしたのに、と少しだけ拗ねていたのである。

「…むー」

何故役に立とうとしたのか等彼女には分からない。
何故自分が拗ねているか等彼女には分からない。
一つ分かる事は彼女が彼の火傷を見ても尚、―――むしろ余計に、彼を気に入ったという事だけである。

「……ハルニレ」

ポツリ、とお兄ちゃんを付けずに彼の名を呟く。
何故だか少しだけ、心地よかった。

「…ぁはは」

笑う、笑う、そして彼女の視線は一匹の猫へと移る。
目に傷を負った黒猫。
彼女はそれを抱き上げる。

「家で飼ってあげる」

そう、飼ってあげるわ。
実験用モルモットなんていかがかしら?

彼女の口にも出さなかった呟きは、誰にも気付かれない。
彼女もハルニレ達の話を聞く気も無いのだから、まあ、良しとする。

280 名前:秋人・柊 ◇CqyD3bIn5I[sage] 投稿日:2010/07/16(金) 20:29:46 0
一方その頃の秋人と柊は、やはりまだお嬢様を探していた。
秋人のテキトウな道案内に何も考えない柊は着いていくのだが、やはりテキトウはテキトウ、着く筈もない。

「おい!お嬢様はどこに居るんだ秋人!」

「米神様が言うにはあっちだぞ」

「あっちは行き止まりだぞ秋人おお!!」

やはり漫才の様な会話を繰り広げながら、彼らはあらぬ方向へと歩いていく。
大の男がこの有り様である。
彼らの探すお嬢様も、きっと苦労をしている事だろう。

「む?此処じゃないのか」

「秋人、お前…ッ」

「ご覧の有り様だよ!」

二人揃って溜め息を吐く。
柊は十年の付き合いで大体分かっていたのに、と。
秋人はああもうおにぎりが無くなってしまった、と。

ああ、二人揃って溜め息を吐く。

「お嬢様はしっかりしているし大丈夫だろう」

「お前よりな」

「一言多いぞ秋人おおお!!」


【秋柊:迷子】

281 名前:不非兄弟 ◇CqyD3bIn5I[sage] 投稿日:2010/07/16(金) 20:31:03 0
助けを呼ぶ声も虚しく彼らは床から迫るトマトソースで身を溶かされていく。
コンキリエを剣で弾き飛ばしたのはまだ良かった、だが、床からの攻撃はどうにもならない。
ただの人間である彼らに溶岩に耐えること等出来ず、嗚呼、ただただ溶けるのみである。

「嗚呼アああァあ゙!!」

痛い痛い痛い、それを伝えるまでもなくただ絶叫。
痛い痛いと、緑の男は絶叫を繰り返す。
青い男は弟を慰めるように抱き締める。
痛みには耐えられぬ、だがしかし、弟の為に絶叫しようとする口には抗おうと。

美しい兄弟愛だとこれを見た者は言うのだろうか、だがしかしこれは愚かな兄弟愛なのだ。
抱き締めたから何が出来る、抗ったから何が出来る。
結論的に言えば何も出来ないのだ。

それを証明するように彼らはどろどろと溶けていく。
骨も内臓も全て、全て溶ける。
まあだがしかし、双子が一つに融解するのだから良い事ではないだろうか?
痛みと苦しみを味わって一つになるのだから、それは喜ばしい事である。
嗚呼、愚かしくも美しき兄弟愛かな。

「…ぁ………」

そうして最上級の苦しみを味わった兄弟は最上級の兄弟愛を胸に抱いて死んでいく。
暗い視界に抱かれて、腕が、脚が、頭が心臓が。

どろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろ

嗚呼、溶けていく。


【後に残るは一つの剣だけ】

282 名前:◇CqyD3bIn5I[sage] 投稿日:2010/07/16(金) 20:31:51 0
ハルニレさんへ
一週間ほど開けてしまう用事が出来ましたので五日ルールを過ぎてしまう場合は弓瑠を飛ばしてください。


283 名前:三浦啓介 ◇6bnKv/GfSk[sage] 投稿日:2010/07/17(土) 14:42:23 0

>>不非兄弟

「ホンット馬鹿だよなあ、お前ら」

溶けていく君達を眺め、料理人姿の男は目口を弓なりに歪める。
組織の暗部に身を置き、故に実利に敏いタチを持った彼には、君達の兄弟愛は理解し難い物だった。
大剣を再び矛盾に戻せば、一人が犠牲役を買って出てもう一方を逃せば。
二人の内、一人は逃げられただろうにと、彼はそのようにしか考えられないのだ。
ましてや『双子であるが故に、二人で一人』であるなどとは、例え告げられても理解など出来なかっただろう。

そして、後には一振りの剣のみが残る。

>>佐伯

「……おや? 何だい、その文明……拾うのかい?」

成る程、木刀『一刀両断』に適性を持つ君ならば、確かに残された大剣にも適合し得るだろう。
だがしかし、それでも男の余裕と喜色の笑みは消え去らない。
寧ろこの上なく滑稽な喜劇を見ているかのように、押え切れない笑声をくつくつと喉を鳴らして漏らしてさえいた。

「別にいいけどさあ……。それはウチの……おっと違った。『進研』の貸与物だと思うぜ?
 まさか公文のイイ子ちゃんが遺失物をそのまま横領だなんて……する訳ないよなあ?」

不非兄弟はただの、双子の警備員であった。
ならば彼らが大剣と言った、仮に文明でなくとも法に触れるであろう文明を私物として所持している公算は、限りなく低い。
あまつさえ仕事に持ち込むなど、到底可能とは思えない。
警備の仕事の為に、彼らの親元たる会社に貸し出された物だと断じる方が、妥当であろうと言うものだ。

「分かるかなあ? 奴らはさ、結局何も残せなかったんだよ。最後に残った文明は『進研』の物だ。
 奴らはただ、死んだだけなのさ。遺体もなく、遺品は名も知らぬ誰かの手に渡り、名は精々お役所の紙の上に残るくらいか」

男は殊更に、双子の死を、その存在価値を否定していく。
そう言う性格なのだ。他人を貶め、馬鹿にして、自分の優位性を満喫する。
なまじ料理の才と文明の適性を持っていたが為に、彼の悪辣な気質は幼少期より連綿と紡ぎ上げられてきた。

「いやはや、愉快だろ? この上なく、さあ。……昔、主菜よりも目立っちゃうお酒、みたいなCMがあったのを知ってるかい?
 彼らは正しくそれだったのさ。食材には役割がある。それは人だって同じだ。身の程を弁えて引いておけば、『進研』……おっと違った。
 俺らが抱える陰謀の片鱗に触れた事を、その刺激的な後味を、これからの人生で楽しめた筈なのにねえ」

男はあくまでも、自分がこの場において優位であると確信している。

さあ! このふざけた男の鼻っ柱を叩き折ってやりたまえ!
君には断罪の刃を振るう権利と義務がある!
そして何よりも――動機があるだろう! 

【余裕ぶっこきまくりんぐ
 長口上の間もパスタパイルは断続中って事で
 相手が攻撃を凌ぐ間も喋っていられる俺ちゃん超優位、みたいな感じです】

284 名前:訛祢 琳樹 ◇cirno..4vY[sage] 投稿日:2010/07/18(日) 00:10:27 0
>>249

訛祢琳樹は疲れていた。
進研の人間に異世界の事を聞かれた、だから正直に答えた。
それだけであるが、人と話しすぎて疲れてしまったのである。
落ち着いて状況を確認してみれば人とあまり話さない自分がこんなに他人と話していると気付いたのだから、落ち着かない方が良かったのかもしれない。

「…シエル、起きないべな」

彼はシエルの眠るベッドの傍で座っていた。
自分の巻き込まれている現状等ほとんど分からないが、ただ一つ心配なのは彼女の事であった。
これが恋だとか愛だとかだったか、等と考え彼は頭を振る。
恋人だとかそういうのは、もういらないという様に。

「恋人ってあれだよ、トラウマだすけな」

だって、私の元カノ殺して調理して、無理やり食べさせてくるんだべ?
彼の心中の呟きは誰にも聞こえない。

『おいしい?おいしいよねぇ?
 だってあの娘のお肉だもんね、あはぁははは』

「……うぇ」

思い出してしまった。口元を抑え、逆流してくる異物に堪える。
そして彼が泣きそうになりながら吐き気を抑える様に窓の外を見た、その時である。

「ねぇねぇ、おいしいおいしい人肉いかが?」

皆の耳にはかぁかぁと、
彼の耳にはねぇねぇと、
一匹の赤い眼をした烏が鳴いた。


【訛祢琳樹:幻覚じゃないよー幻聴じゃないよー、でも危ない人っぽいよね!っていう状況】

285 名前:エレーナ ◆SQTq9qX7E2 [sage] 投稿日:2010/07/18(日) 10:04:06 0
>>274
「(あらやだ、降ってきちゃった)」

持っていた傘を差し、私は観戦を続行する。
ドルクスに抗う彼を目で追い、フウと小さな溜息を吐く。
小さなお嬢様は私に殺意を向けてくるけれど、興味は無かった。
禁術の気配を漂わせる囚人服の彼だけに、私の意識は集中していた。

>>275
「(馬鹿な人)」

不意打ちなんて子供騙しが彼に効く訳ないのに。
無論、あの青年が知る由はないけれど。
>ナイフを上段に構え、一気に振り下ろす。

>「ッ、ナニ!?」

>しかし、ナイフの切っ先がドルクスを捕える事なく、空を切った。
>そしてハルニレは気付く。ドルクスが、どこにもいない。
ドルクスは彼の背後にいた。気配を一切消し、その右腕で彼を――――……

「! 止めなさいドルク>「危ないっ、ハルニレ!!」

黒い肌の少女の機転により青年、ハルニレはドルクスの手から逃れる。
ハルニレの躰をドルクスの右腕が通過した時は肝を冷やしたが、多分彼か彼女の能力なのだと推測した。

>「オメエ等ハ何者ダ。何デ俺達ヲ尾ケテイタ?」
>「答エロヨ、エレーナトヤラ。テメエ等ノ目的、洗イザライ吐イテ貰ウゼ」

私は答えるかどうか考えあぐねていた。
彼に突然魔界だの異世界だのなんだのと言ったところで、信じてくれるかどうか。
しかし、彼には知る権利がある。禁術の気配がするという事は、つまりそういう事なのだから。

「なら教えてあげる、私達は貴方と同じよ」

掌を上にし、炎の玉を出現させる。タネも仕掛けもない、れっきとした魔術。
炎の玉は雨に晒されても消える事なく、私の掌でめらめらと燃えている。

「貴方からは"禁術"の気配がした、だから何かあると思って尾けていたのよ」

けれどその様子じゃ何も知らないみたいねと付け加える。
炎の玉を消し、私は再度口を開く。

「貴方に多くを教える事は出来ないけど、これだけは言える」

雨は強さを増す。側に戻っていたドルクスが私の手から傘を取り、私の代わりに持つ。

「貴方の他にも、沢山の異世界人が存在するわ。…今の内に、味方を増やしておいた方が良いわよ」

もう彼らと戦うつもりはない。戦うだけ、時間の無駄だと悟ったから。
私達は踵を返し、彼らに背を向けた。
魔術で羽を出現させ、私達は空を舞う。時間はもう夜だった。

「さて、今夜の宿を探さないとね」


【エレーナ:宿探し】

286 名前:都村みどり ◆b413PDNTVY [sage] 投稿日:2010/07/18(日) 13:20:00 0
アイアンメイデン。/メタルの都村。
何時頃だろうか?彼女が『一刀両断』を使い始めたころにはなぜか定着していた異名だ。
理由は判らない。名付けた本人いわく、「お前の文明の使い方はスティーヴ・ハリスその物だ」と……
今、音速コードのライン上。この戦場。都村の眼下には食材と言う暴風雨に晒され命を落とそうとする双子、不非兄弟の姿がある。

「嗚呼アああァあ゙!!」

どろどろと……まるでチョコレートが湯煎されるように不非兄弟は溶けて行く。
その姿はどこか悲愛する二人の男を連想させ、そして…飲み込まれる。

「…ぁ………」

最後の一声。その一区切れを残し、不非兄弟は人の形を捨てた。どろどろに溶けた臓腑の破片が嫌がおうにも死を連想させてしまう。
彼らに対し、都村は憐憫を感じ、静かに黙祷を捧げる。しかし……この男は違った。

「ホンット馬鹿だよなあ、お前ら」

何処までもあざ笑うように、男は死すらも侮笑し興味など無いと吐き捨てる。

「さあお待たせ……って何だ? さっきの女は何処へ行った?」

お待たせ。
彼にとってはお待たせで済むような軽い内容であった殺戮という行為……
その姿に彼女はかつての親友であった美芹を思い出し、重ねてしまい胸が熱く高ぶるのを感じる。
女の名は『Benesse』』≪Burn's Expert and Necessary Earnest Strategic System 【Echo】≫ No.8 都村みどり。

「彼女なら人助けをする正義の味方をやってますよ。
 ……もしかして、私ではご不満でしょうか?」

零に向けた多少の嘲りの言葉を含めて、都村は言葉を返す。

「まあ……君も悪くは無さそうだし。あの女の前菜程度には丁度いいかもな。
 ……おっと、そんな表情するなよ? 別に食人の趣味があるって訳じゃない。
 なんたって……事が終わる頃には、君らはもう人間じゃないからな」

「サイドメニューと言う事ですね?でしたら『まっく』に行った際に聞かれる言葉をお送りします。
 『ご一緒にアイアンメイデンはいかがですか?』と」

欲望の露見した笑みと共に、彼は大鍋に新たな食材を放り込む。
『錬金大鍋』によって情報を書き換えられた食材は威力を抱き、都村へと迫る。
対する都村はと言うと、彼が動き出したと言うに未だに『又、おせっかいと正義漢もお得ですよ?』と場違いな事を言ってた。
そして、吐き出される大量の殺意の象徴。すなわち攻撃だ。しかし、そんな状況下でなお都村は冷静に振る舞う。
失敗は許されない。ならば、時間はギリギリまで使って完璧に仕上げるべきだろう。

「着弾まで一秒」

そう呟く都村の目にはメカニカルな身体強化。瞳に映るその世界には数字の様な羅列がびっしりとある。
『身体強化』《ターミネイト》の特化使用。それにより最高レベルにまで引き上げられた感覚器官はその世界の映像を.0001秒刻みで彼女に伝える。
そして、使用者の気が触れそうなほどの一秒が経過し、戦場にによる悲鳴のソロが……響き渡らなかった。

287 名前:都村みどり ◆b413PDNTVY [sage] 投稿日:2010/07/18(日) 13:21:24 0
「二つで一つの効果を発動する文明『攻防矛盾』《グラニード》ですか……」

代わりに響いたのは都村の声。凛としたその声音は大気を振わせる。
その方向はコックの真後ろ。不非兄弟が融け合わさった場所……そこに都村は瞬間移動していた。

「……おや? 何だい、その文明……拾うのかい?」

「別にいいけどさあ……。それはウチの……おっと違った。『進研』の貸与物だと思うぜ?
 まさか公文のイイ子ちゃんが遺失物をそのまま横領だなんて……する訳ないよなあ?」

恐らくはそうであろう。ランクA類C目の文明がおいそれと入手できてはたまったものではない。

『攻防矛盾』《グラニード》
分類的には制御系に分類される文明で『重力制御』の亜種に当たる物だ。
残念ながら都村には適性がないが、これを回収すればそれだけで公務を終了しても良いくらいには貴重な物だ。回収しない訳はなかった。

「分かるかなあ? 奴らはさ、結局何も残せなかったんだよ。最後に残った文明は『進研』の物だ。
 奴らはただ、死んだだけなのさ。遺体もなく、遺品は名も知らぬ誰かの手に渡り、名は精々お役所の紙の上に残るくらいか」

その自らを正当化する様な言い訳めいた戯言が静かに静寂に響き、食材の奏でる風切り音はそれを彩る様にスッタカートに迫り続ける。
この時、彼が……都村に対して脅威をさほど抱かなかったと言う事は致命的だった。

「いやはや、愉快だろ? この上なく、さあ。……昔、主菜よりも目立っちゃうお酒、みたいなCMがあったのを知ってるかい?
 彼らは正しくそれだったのさ。食材には役割がある。それは人だって同じだ。身の程を弁えて引いておけば、『進研』……おっと違った。
 俺らが抱える陰謀の片鱗に触れた事を、その刺激的な後味を、これからの人生で楽しめた筈なのにねえ」

長い詩を唱えるように唄い。自己陶酔する彼の眼には「今の都村がどう見えて居るのだろう?」
都村は迫る凶弾を防いではいなかった。全てを瞬間的に移動する事でかわし続けている。恐らくは『瞬間移動』の一種と無意識化に思い込んでいるのだ。

「下衆が……死人に鞭打ち悦に浸り、そして自らの立場を確立する。その姿はまさしく死姦に、使者を愚弄するに相応しい」

彼女の返答、吐き捨てた言葉は彩りすらせずに唯々軽蔑。もはや一縷の望みさえもないという事だろう。

もう時間切れだ。もう、時間/
              /切れなのだ。ならば処断するしかない。

「もう良いでしょう。今の言動から貴方が『進研』の者であると判断しました……理由はそれだけで十分です」


288 名前:都村みどり ◆b413PDNTVY [sage] 投稿日:2010/07/18(日) 13:22:15 0
切断される空間、事象、理念、幻想、思い、願い、事実、概念、情報、物質……彼女は法の名のもとにその全てを断罪す(断ち切)る
もし、行く手に飛びかかる灼熱のマグマがあると言うのなら……

《/》

その熱量を切り離し、食材の弾丸が彼女を撃ち貫こうと言うなら

《/》

その運動エネルギーを断ち切り無力化する。

「な……『瞬間移動』じゃ……」

そして、毒霧が道を塞ぐと言うなら道を行くと言う過程を斬り捨て……

《/》

そして、文明と言う過ぎた力を持ち法と秩序を乱す者がいると言うなら……

「ひ……ッ」

それを断罪する。



都村の文明を警戒しなかったと言う致命的ミスを犯した彼にとって、それは本当に刹那の出来事だった。
過去以外を断ち切る『一刀両断』を用いた都村の戦術は対峙する事で最大の効果をもたらす。
結局の所、それは戦術と言うレベルにすら至っていないシンプルな物だが、それ故に破られる事は無い我流の戦闘方法。
それは『一刀両断』により障害物を全て切断し、無力化すると言う乱暴な物。
彼女はそれに加えて対象を細かに演算し移動距離の概念のみを斬り捨てると言う移動手段を用いての擬似『瞬間移動』を使う事も出来る。
我流でありながら超一流。故に彼女はアイアンメイデンであり、スティーヴ・ハリスである。

「絶望が、刑務所が貴方のゴールです」

死刑宣告と共に腹部に押し当てられた『一刀両断』が患部を切り離すべく極彩色に光を放つ。
光が集い、闇が集い、その弾けた破片はあぁ万華鏡。
輝きが最高潮に達し、光の剣はその色を暴力的に染め上げる。それを確認した都村は『一刀両断』を引きぬく!

【状況:ナベちゃんと文明との接点を対象に/メタル使用(時間を引き延ばしたいなら別な文明を取り出すなり、後手キャンなりどうぞです)】

都村:【持ち物:警察手帳、クレジットカード、無線機、携帯電話、『一刀両断』《/メタル》、『血戦領域』《ジャッジ・メント》、『身体強化』《ターミネイト》、
        『禁属探知』《エネミースキャン》『視外戦術』《ゴーストタクティクス》、、『見敵封殺』《ロックオンロック》、『攻防矛盾』《グラニード》new!!
        (内、使用可能なのは適性のある一刀両断、血戦領域、身体強化のみ)】

289 名前:佐伯 ◆b413PDNTVY [sage] 投稿日:2010/07/18(日) 13:23:32 0
「あぁ……!!体温が上がりすぎて冷やした傍から温くなる!!」

都村がコック男と戦いを繰り広げる中。厨房の中でも戦いは繰り広げられていた。
《巡回医》とともに治療を始めた零だったが、予想外に少女「経堂柚子」の状態はひどいものだった。
なんせ、人間の細胞組織の自壊する温度以下に冷やそうとしても、その湿布が直ぐに発熱してしまうのだ。
これでは体温を下げるどころの話ではない。

「……こうなったら。緊急事態だし熱射病と同じ方法で行くか」

この判断は間違ってはいなかった。
結局のところ。今の彼女は局部的に大火傷を負っているが、それ以上に体温が高まっている状態なのだ。
例えるなら熱射病と並行して半身に火傷を負った状態。
これが今の経堂柚子の状態だ。
熱病、熱傷関係は時間との闘いである……奇跡的に意識は繋ぎとめているようだが、それもいつ容体が変化するか分らない。
出来れば早い内に体温を常温付近にもって行きたかった。

「今なん分!?」

「えっと……治療を始めてから…?」

「違う!火傷を負ってからよ!!」

「大体、一分半です!」

強心剤でもあれば、と零は思う。
バイタルチェックもままならないような状況では頼れる物は本人の気力のみ。
ともすれば彼女をつなぎとめる何かが失われれば後は落ちる……つまり事態は一刻も争う。
そして、それ以前に既に一分が経過してると言う事は脳にも障害が起きる可能性が出てきているという事だ。
もう、形など気にしても居られなかった。

「もう、男共はあっち向く!!」

そう言い服を一気に引き裂く。
ムッとするような熱気が顔を撫でつけ、思わずしかめる零。

「ちょっとごめんなさいね……」

そのまま股を開かせてそこに湿布では無く氷水の入ったバケツを直に置き、湿布は脇の下に挟み込む。
これで少しは変わるだろう。

「救護班は?食塩水と輸血も必要だな……いかん。間に合わないぞ……」

容体自体は安定し始めたがこれから起こるであろう事を思い《巡回医》が思わず弱音を吐く……

「ユズコ!?」

「アナタ……」


290 名前:佐伯 ◆b413PDNTVY [sage] 投稿日:2010/07/18(日) 13:25:50 0
「頼ム……ユズコを助けてくレ」

酷く震えた声で響く青年の声。
助ける……このままでは無理だ。不利要素が多すぎる。

「せめて……病院に、搬送しないと。でも…」

そんな時、ふと零の脳裏にある映像が流れ込む。
「やられました…多分、進研かな?とにかくこの上空に敵対すると思われる組織の者が居るみたいなんです」
AH-06 リトルバード……アレが上空を飛んでいたのだ。つまりこの建築物にはヘリポートがある。

(そして、あの状況下で計器に狂いが出たのなら着陸する筈……
 しなかったとしてもこの中に人員を投入、文明の回収をする為にヘリポートに降りる。つまり!!)

つまり、ヘリは高確率でこのBKビルの屋上に存在する事になる。
例え、着陸をしていなかったとしてもこちらでヘリを緊急出動させればそれだけ病院への搬送する時間は早く、安全になる。

「ねぇ、この建物にはヘリポートがあるわよね?アレを使えないかしら?」

その言葉を発した瞬間、修羅場と化したキッチンに間延びした看護師の声が響いた。

【状況:治療中。どう考えても治療が追い付かないのでヘリポートを使えないかと発言。
    (李さん達はユッコさんを連れて兔に合流しても良いし、逆に協力してヘリを奪取しても良いです)】

【目的:C迷子の捜索。
    E経堂柚子を助ける。】

零:【持ち物:オリシ『折りたたみ式警棒』、『重力制御』、携帯電話、現金八千円、大型自動二輪免許】

291 名前:シノ ◆ABS9imI7N. [sage] 投稿日:2010/07/18(日) 19:03:21 0

此処は今日も平和・・・・・・・・・・じゃない世界、モンスター・ワールド。
古今東西あらゆる怪物達が生活する、愉快でハラハラするモンスター達のための世界。
シノが住むジル・ド・レの丘は、今宵も咽返る血と薔薇の薫りでいっぱいだ。

「シノや、私の可愛いシノや」

黒ずくめの男が、ジル・ド・レの丘に聳える屋敷の廊下を闊歩する。
長い銀髪をオールバックにした貴族風のその男を、窓から差し込む月がニタニタと厭らしく嗤いながら見ている。
その姿は歩く毎に足元から銀の霞と化していき、やがて消える。
再びその姿を顕わしたのは、とある一室のドアの前だった。

「私の可愛いシノや、準備は出来ているかい?」
『おとーさま、いいかげん「私の」ってよぶの止めてくださいな』
「ああシノや可愛いシノ、旅立つ日まで私に冷たいなんて反抗期かい?お父さんは悲しいよ」

ギィィイイ、錆びれた蝶番が耳障りな音を立て、古めかしい木製の扉が開く。
そこに居たのは一人のロリ、もとい少女。
茶と亜麻色が混じったサイドテールを可愛らしい黒リボンでくくり、左目に黒い眼帯を付けた少女。
服装は"お父様"と違いYシャツにズボン、ワイン色のエプロンといった簡素な格好だが、背中に巨大な棺桶を背負っている。
お父様は満足した表情で頷くとシノへ手を差し出す。

「行こう、シノ。準備はもう出来ているよ」
「はい、おとーさま」

二人は手を繋ぎ、銀色の霞となって掻き消える。
次にシノが現れた場所はとある地下室の巨大な魔法陣の上だった。
隣にいたお父様は姿を消し、代わりに複数人の白いローブを纏った者達と、魔女のような格好をした女が目の前に居た。
彼女はモモ、シノの師匠。今回シノに"修行"を課した張本人だ。

「シノ、今回の修行は一段と厳しいぞ。何せ"別世界"へ跳ぶのだからな」
「解ってます、おししょうさま」

どぎまぎと緊張しつつも、シノはしっかりとした口調で答える。
その回答にモモは僅かに頬笑み、だが白いローブの男に耳打ちされすぐさま表情を消す。


292 名前:シノ ◆ABS9imI7N. [sage] 投稿日:2010/07/18(日) 19:04:48 0

「よいか、シノ。この修行は貴様の甘ったれた貴族の生活から180度逆転した厳しいものとなろう」
「しかし、私は信じているぞ。貴様がこの困難を乗り越え、立派なゾンビ・マスターへと遂げる事を」
「そして私達は祈っているよ。お前が無事に、この修行を終えられる事を、この世界で祈っているよ」

「さあ行け、ゾンビ使い=シノよ。この世界とは違う、日の当たる人間達の住む世界へ――――!!」



その言葉と共に、魔法陣が眩い光を放ち始める。光の風と共に、異世界へと繋ぐ扉が開かれる。
突風のような風がシノを包みこんでいく。シノの小さな躰が宙に浮かび、光の粒子となって消えていく。
その眩しさにモモとフードの男達は光から顔を覆い隠す。闇に生きる者に、光は毒だ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


光が収まった時、シノは"この世界"から完全に消え去っていた。
乱れた髪を直し、四つん這いの姿勢からモモは立ち上がる。

「・・・・・・シノ、済まない。騙すような真似をしてしまって」

光にやられた何名かが、外へと運ばれていく。喧噪の中、モモの懺悔の声を聞く者はいない。
もう光を発しない魔法陣へと近づき、ついさっきまでシノが居た場所へと触れる。

「信じているよ、シノ。お前はやれば出来る子だ」

モモの胸元から零れ落ちる一枚のタロットカード。そのカードには、一人の吊るされた少女の絵が描かれている。
吊るされた少女は、シノと同じ眼帯を付けていた。まるで、シノの運命を仄めかせるかのように。
それを拾い上げ、モモは目をほんの少しだけ細めた。吊るされた少女は、柔らかな笑みを浮かべ、太陽を胸に抱いていた。

「(そうだ、光に愛されたあの子なら、きっとやり遂げられる)」

運命に打ち勝ってくれ、シノ。誰にも聞こえない声でそっと呟き、タロットカードを握り締める。
これから待ち受ける運命は、過酷で絶望に満ちているかもしれない。
それでも、光と闇、両方に愛されたシノならば、絶望も希望へと変えられるだろう。
モモは、誰も居なくなった地下室を一度だけ振り返り、その場を後にした。


こうして、見習いゾンビ使いシノの、過酷な修行が今、始まった――――――――――・・・・・・。





293 名前:シノ ◆ABS9imI7N. [sage] 投稿日:2010/07/18(日) 19:05:42 0
名前:シノ
職業:見習いゾンビ使い
元の世界:モンスター・ワールド
性別:♀
年齢:11歳
身長:131センチ
体重:22kg
性格:暗い、ビビリ屋、チキンハート
外見:左目に十字架が打ち込まれた黒い眼帯を着用(左目は空洞になっていて、小さい物なら何でもしまえる)
   髪型は茶と亜麻色が混じったサイドテール
   服装はYシャツにズボン、血のようなワイン色のエプロン
   父親から受け継いだ巨大な棺桶を背負っている

特殊能力:――メイク・ザ・ゾンビ――
     胸飾りの≪イデア≫の力によって魂と契約を交わす事で、ゾンビを生成する
     血と肉と骨(トマトの果汁、豚肉等を代用しても可)を使い、肉体を形成し、魂を定着させる
     尚、シノはまだ未熟なので戦闘用のゾンビを生成する事は不可能(普通のゾンビなら作れる)
     +驚異的な回復力、怪力など吸血鬼の力の一部 

備考:吸血鬼とゾンビのハーフ。不死ではないが不死身に近い生命力と体力を持つ
屍とトマトが好物で、嫌いな物はにんにく(臭いから)。銀アレルギー(触れると蕁麻疹が出る)
『師匠』の意向により修行という名目で現代へ飛ばされる
吸血鬼の娘だが日の光も十字架は平気、しかもキリスト教を信仰している
その為周りからは≪異端少女≫と呼ばれ、虐められてきた過去を持つ

≪イデア≫
魂と契約する際に必要な力を秘めたエメラルド色の鉱石
現代にある≪イデア≫と関連があるかどうかは不明

【よろしくお願いしますー】

294 名前:月崎真雪 ◇OryKaIyYzc[sage] 投稿日:2010/07/20(火) 19:25:11 0
真雪が柚子の携帯を鳴らし始めて、4回目。
やっと通話状態になったそれに、真雪は半狂乱で叫ぶ。

「ユッコ! ユッコでしょ! 今どこに居るの!? 大丈夫なの!? ねえユッコ返事してよ!
ねえ、ユッコ! ユッコ!」

ひとしきり叫んだ後、聞こえた声は意外な人物の物だった。

『無事だったかマユキ。今、何処に居ル……?』

「―――飛峻さん!?」

どういう事だろう。
真雪が掛けたのは、柚子の携帯電話の筈だ。
柚子は真雪の着信にはすぐに出るはず。
つまり、柚子は電話に出られない状態に有るということか。
では、なぜ飛峻が出たのだろうか。つまり一緒に行動していたのか。

飛峻が電話に出た事により、真雪はますます混乱した。それが却って良かったようだ。
その混乱を鎮める為に思考して、その分だけ真雪を押しつぶしそうな不安まで落ち着いてきた。

「飛峻さん…うん、私は大丈夫よ。ここは…多分、最上階、じゃないかしら」

涙声でそこまで話して、一旦鼻をすする。
先程鼻血を出していたせいか、痛い。

「ユッコは電話に出られないのね。予想が付くのは…ユッコ、気絶か何かした?
…ところで、飛峻さんは大丈夫なの?」

飛峻が無事だと知ると、真雪の頭は冷静を取り戻す。
状況が把握しきれないのなら、これ以上自分の判断だけで動くのは危険だ。

「私は止まった方が良い? そっちに行った方が良い?」

295 名前:経堂柚子 ◇OryKaIyYzc[sage] 投稿日:2010/07/20(火) 19:26:41 0
熱が奪う意識の中で、柚子は過去を思う。真雪と出逢った過去。

その時は今とは真逆で、酷く寒かったし冷たかった。
それでも柚子は両親に、柚子を産んだ母に会いに行く為に道を進んでいく。
ピンクと白のエプロンドレスはボロボロで、髪も荒れて、顔はやつれた姿。
だけど、抜け出した『あの場所』へ帰る事だけは嫌だった。
だって…『あの場所』に居れば産みの両親は勿論、育ての両親にももう二度と会えないような気がするから。
しかし、10歳を超えたか超えない位の少女の行動力などたかが知れている。
冬の大通り、柚子は遂に倒れた。

その時彼女を拾ったのは、柚子と同い年位の姉妹。
後に姉妹ではなくいとこだと判明するが、判断力を失った柚子には分からない。
その姉妹の妹の方。同い年で、拾った柚子を特に世話した少女が真雪だった。
その時真雪は愛内家に世話になっており、家族である3人と共に外食に出掛けた帰りに偶々柚子を見つけたらしい。
ともかく、それをきっかけとして、柚子は真雪を慕うようになっていった…。



体を冷やされて、柚子はほう、と息を吐く。
その時、ルークの声が聞こえた。

「頼ム……ユズコを助けてくレ」

らしくない、酷く弱々しい声。
それが自分の身を案じてくれているのが、ただ単純に嬉しかった。
それと、赤のナイトの行動。
ただの他人なのに、何故そこまでして柚子を助けるのか。
理解は出来ない。理解出来ないけど、それでも嬉しい。
ああ、私は生きなければいけない。

(ユキちゃん。お母さんやお父さんやパパやママ。ルーク、赤のナイト。
みんなに助けられて、私は幸せだ)

弱音を吐いた男の服を掴み、柚子は呟いた。

「わた…し、いき、る…よ」

【柚子:意識はまだ有る。脳に障害が起こっているかは不明】

296 名前:ハルニレ ◇YcMZFjdYX2 (代理)[sage] 投稿日:2010/07/21(水) 14:31:11 0
見た目幼い追跡者は、ハルニレの問いかけに答えるか考えあぐねているようだった。
教えるべきかどうか、迷っている。そんな表情(カオ)をしていた。

>「なら教えてあげる、私達は貴方と同じよ」

「同ジ?」

やっと吐きだされた言葉は、おおよそ今のハルニレには理解しがたい内容だった。
何が同じなのか。人目を引くルックスか?確かに彼も彼女等も充分目立つ格好だ。
しかし、それ以外にも人目を引く格好をした連中ならいくらでもいた、それこそあの三浦とか後ろでゴソゴソ何かやっている幼女とか。

首を捻るハルニレだが、やがて一つの推測が頭をよぎる。
先程ドルクスが見せたあの人間離れした右腕、それに身体能力。

まさか、まさか。

「……異世界、人?」



エレーナは暫し沈黙する。ハルニレはそれを肯定とみなした。

他にも問おうと口を開きかけた時、エレーナの掌の上から、突如炎の玉が出現する。

「綺麗…………」

驚きの表情のまま、ジョリーがポツリと呟く。宙に浮く炎の玉は、雨風に晒されても消える事なく燃え続ける。
それは不思議と熱くなく、触れれるんじゃないかとさえ思った。それはタネも仕掛けもない、れっきとした魔法。
もう満足か、とばかりにエレーナは炎の玉を消滅させ、続ける。

>「貴方からは"禁術"の気配がした、だから何かあると思って尾けていたのよ」
>けれどその様子じゃ何も知らないみたいねと付け加える。

「禁術?」

術、それは先程やってみせた炎の玉の出現を考えると、魔法の類だろうか。
しかしハルニレは魔法を使った覚えはないし、そもそも使える訳がなかった。

>「貴方に多くを教える事は出来ないけど、これだけは言える」
>「貴方の他にも、沢山の異世界人が存在するわ。…今の内に、味方を増やしておいた方が良いわよ」

ハルニレやエレーナの他にも、多数の異世界人がいる。薄々予想していたが、まさか本当に居たとは。
>>265】しかし、自分に全てを話してくれた筈の三浦は、他の異世界人の存在については一切教えてくれなかった。
わざと教えなかったのか、それとも教える必要もないと思ったのか。今のハルニレには判断がつかない。
思考に耽るハルニレだが、エレーナ達の背中から羽が生えたのを見て我に返る。

「ア、オ、オイ!」

呼びかけも虚しく、二人は空高く舞い上がる。
伸ばした手に掠りもせず、あっという間に鉛色の空へと融けていってしまった。

297 名前:ハルニレ ◇YcMZFjdYX2 (代理)[sage] 投稿日:2010/07/21(水) 14:32:20 0
「な、何だったの、あいつ等……。ねえ、ハルニ」

ジョリーがハルニレの方を振り向き、思わず言葉を呑む。
それは、雨に濡れ空を睨む彼の目に、言い知れない何かを感じたからかもしれない。
暫くエレーナ達が消え去った方向を睨みつけていたが、諦めたように目を伏せる。

「モウ7時半カ…………」

ハルニレはもう一度溜息を吐き、黒猫を抱きかかえる幼女へと向き直る。
幼女と視線を合わせ、恐らく彼女にとってとても辛いであろう現実を告げる。

「ゴメンナ、オ嬢チャン。コノ時間ニコノ大雨ダ、モウ人探シハ出来ネエ」

しかし、必ず見つけてやると約束した手前、こんな雨の中に残しておく訳にもいくまい。
さて、どうするか。考えに考え、ハルニレは一つの決断を下した。

「良シ、決メタ。親見ツカルマデ、俺ガ面倒見テヤンヨ」

それは、余りにも突拍子な発言。警察に届けるなどという選択肢は、彼の中には存在しなかった。

ナ、と幼女に屈託無い笑みを向け、幼女の水を吸った黒髪をわしゃわしゃと撫でる。
握ったその手は、雨に体温を奪われて冷え切っていた。

「サテ、一旦ホテルニ戻ルカナ。ズットココニ居続ケタラ風邪引イチマウ」

立ちあがり、幼女の手を握ったまま、ホテルへの道はどっちだったか等と陽気に笑う。
すると、その様子を黙って見続けていたジョリーが口を開いた。

「道案内なら私がするよ」

「オ、助カルz「その代わり!」

ズズイ、とハルニレに詰め寄るジョリー。
切羽詰まったような表情のジョリーに、流石のハルニレもたじろぐ。

「あのさ、…………私の面倒も見てくんない?」

飛び出した言葉は、余りにも予想外の範疇を余裕で飛び越えていた。
口をあんぐりと開けて唖然とするが、すぐさま憤怒の怒号が飛ぶ。

「ハァア!?何デオ前ノ面倒マデ見ナキャイケネーンダヨ!!」
「お願い!部屋に泊めてくれるだけで良いから!」

そこから始まる二人の激しい口論。内容はこちらの都合により省略させていただく。
しかし、口論の途中で聞こえてきたか細い声に、ハルニレの視線が幼女の腕の中の黒猫へと移る。
うっすら涙を溜め、お願いポーズで上目遣いするジョリーと黒猫の視線に、遂にハルニレは…………折れた。

「……ッダアアモウ!解ッタヨ、タダシ泊メテヤルダケダカラナ!ソノ黒猫モマトメテ面倒見テヤルカラ俺ヲソンナ目デ見ルンジャネエ!!」

喚くハルニレに見えぬよう、ジョリーは悪戯っ子の笑みで幼女の猫にGJのサインを送る。
その顔も一瞬だけで、不貞腐れるハルニレに早くホテルに戻ろうと促し、道案内を始める。

「そうだ、ホテルに着いたら、後で着換えとか持ってきてあげるよ」
「ジョリー、オ前良イ奴ダナ!」

こんな事で機嫌を直す彼もまた、後先考えない現金な奴であった。

【ハルニレ:ホテルに戻ろうず、でも幾つか問題あるけどどうしよう】
【所持品:携帯電話、財布、メモ帳、ナイフ×8】

298 名前:皐月 ◆AdZFt8/Ick [sage] 投稿日:2010/07/21(水) 18:22:46 0
>>215
>「アクセルアクセス――『ACT.2』!!」

タチバナのその叫び声は、朦朧とし始めた意識に、多少の覚醒を促すには十分だった。
なぜならその直後彼の衣服を構成するほとんどが吹っ飛んで半裸になったからである。

(突っ込めない……!)

何せ一般人、物理的耐久力に関しては非常に脆いので、未だにまともに言葉を発することが


>「この部屋の女性密度を考えたまえよアクセルアクセス。狭い部屋に1、2、3――君を含めて4人もの"若い"女性が!
 これはもう脱ぐしかあるまいね!?――爆速で!」
>『どうしてそこまでじょーきょーはあくできるのにくうきだけはよめないんだろーね』
>「HAHAHA、空気など生まれてこのかた読んで行動した覚えはないよ」


「全力で読んでくださいよおおおおおおおおっ!」

できた。


>「さて、僕が未だ五体を十全でいられるのも、この場で裸体を余すとこなく披露できるのも、――君のおかげだ皐月君」
>「君の、お、か、げ、だ。今年のノーベル変態幇助賞は総なめだね!?申し遅れたが、ありがとう。『色々と』助かった」

すいませんできればその恰好で近寄らないでください……という言葉をぐっと飲み込む。
表情だけは真剣そのもので……しかし微笑が浮かんでいたからだ。
ぴしぴしと胸元の十字架が音を立て始めていた。

>「君を護ろう。僕と僕らの実存を賭けて。そして君にも『護って欲しい』。僕と、僕らと、――ミーティオ君を」






それから起こる異変に、脳がついていくまで、数秒を要した。

何かが体を包んでいく。
何かが自分を守っている。
味わったことのない感覚なだけに、皐月の意識はそれをどう表現していいかわからなかった。

>「『ACT.2』は"精霊"を身に纏うことによって脆弱な本体の攻防力をカバーするモードだ。
> 着装者はアクセルアクセスの『中の人』――言わばスーツアクターとなって、積極的戦闘能力を行使する」

よくわかりませんが変身スーツみたいなものなんですね! と自分を納得させる。

299 名前:皐月 ◆AdZFt8/Ick [sage] 投稿日:2010/07/21(水) 18:25:01 0
一瞬後にはなんかアニメでありそうなロボのコクピットみたいな情景が表示されているが、それが実際の挙動と一切関係ないのはなんとなくわかった。

「アクセルアクセス……ACT2……」

自分を包む精霊の存在を確か認識し、皐月は呟く。

「語呂がいい……!」

『おまえまでぼけにまわるなよ!』

そうでした。

今の自分に何ができて何ができないのかもなんとなくわかる――それもACT2の効果なのだろう。
それを踏まえたうえで、皐月は目の前に立つミーティオ・メフィストを見据えた。

皐月はありとあらゆる物事において、自分を下位に置く癖がある。
何か、相手と退治することがあれば、必ず『相手が自分より強いこと』を前提に考えるのだ。
コレは物理的な喧嘩がどうこうという話ではなく、日常的な出来事全てにおいてだ。

目の前に立つミーティオを、仮に数字で10とするならば

(アクセルちゃんが、同じく10……)

(で、私が-3、ぐらい)

合わせて7対10ぐらい、皐月はそう思っていた。
また、これは普段、元の世界での友達が常々言っていることではあるが

『相手を無傷で制圧するのは、相手より遥かに上の実力がないと相当面倒くさい』

……らしい。
何でそんな発言を常々しているのかという疑問はさておき、皐月は思っていた。



300 名前:皐月 ◆AdZFt8/Ick [sage] 投稿日:2010/07/21(水) 18:25:59 0
(相手は全力で、こっちを仕留めに来る)
                        ワ タ シ
(アクセルちゃんの力があるとはいえ、足手纏いも居る)

(真っ向勝負で戦って、相手を無力化するのは、多分無理だ)

周囲の反応を見る限り――アフロのあの人が言った――

>>203
「ちょ、ちょっと待ってくれよ!なんであんた等が戦わなきゃなんねぇーんだ!?」
                                         、 、、 、 、
つまり……この状況、自分と相手が向き合って、対峙しているのはおかしい事なのだ。
『助けに来た』のに『攻撃されている』のだから、冷静に考えなくても普通ではない。
そして、おかしいという事は、何か原因があるという事だ。

即ち、皐月が今すべき行動は……

(ミーティオさんを牽制しながら――その原因を探す事!)

故に。

「そっちはお願いします、私達は――あの人を止めます!」

周囲に声を張り上げて、動いた

『よしそれでこそしりあすてんかい! もえるね!』

アクセルアクセスの同調も取れた。
戦う手段は、この手にある。



>>261
>「来いよ」

皐月がすべきは牽制の一手。
右手に催涙弾、左手にスタンガンを構え――

「私達は、貴女を助けに来ました、それだけは――変わりませんっ!
 私は貴女を攻撃しません、だからお話をしましょう……」

そして。

「みんなで、帰りましょう!」





【行動分岐】
:交渉トークに応じる場合→牽制を続行
:攻撃する場合→催涙弾をしこたま足元に発射


【個人勝利条件:ミーティオを無傷で確保】
【個人勝利目標:ミーティオの攻撃行動の原因の排除】
【個人敗北条件:アクセルアクセスの耐久限界突破】
【結晶:0→1】

301 名前:李飛峻 ◆nRqo9c/.Kg [sage] 投稿日:2010/07/23(金) 00:45:26 0
電話口の相手、すなわち月崎真雪から返って来たのは驚愕。
だがそれも宜なるかな。親友にかけたはずの電話に全くの別人が出たとあれば誰だってそうなるだろう。

「飛峻さん…うん、私は大丈夫よ。ここは…多分、最上階、じゃないかしら」

お互いに数瞬の沈黙。しかる後再び携帯から響いてくる真雪の声。
先程までと同じ、若干かすれてこそいるが既に動揺から立ち直っている。

「ユッコは電話に出られないのね。予想が付くのは…ユッコ、気絶か何かした?
…ところで、飛峻さんは大丈夫なの?」

「あア。俺はせいぜい体中が軋む程度なのダガ……」

(当然気づくか……)

どう答えるべきか。気絶でもしたのか、と問われれば確かに事実の一つではある。
しかし柚子の負った怪我はそれだけで片付けられるものでは当然無い。

「私は止まった方が良い? そっちに行った方が良い?」

聡い娘だ――。返って来た言葉に飛峻は思わず関心する。
幼い頃から感情をコントロールせざるをえなかった真雪だから出来る芸当なのかもしれない。
誰もが不安なのは間違いない。だからこそ現状を受け止め最善を尽くす必要があるのだ。

「ねぇ、この建物にはヘリポートがあるわよね?アレを使えないかしら?」

折り良くキッチンからは打開策が挙がって来る。

「……ソウだナ。マユキ落ち着いて聞いてくレ。
ユズコは負傷しタ、重度の熱傷ダ。このままでは命に関わる可能性もアル」

一旦電話を耳から放し、ポケットを探りながらキッチンへ。

「ヘリはコチラで手配可能ダ。スグに連絡を取ってみル」

柚子を治療中だろう二人へ声をかけ、縒れたメモを取り出すと再び真雪に。

「今から言う番号に連絡を頼ム。ウサギが出る筈ダ。良いカ?番号は――」

展望エリアに来る途中の階段で、誰とも知れないメッセンジャーから受け取った紙切れ。
それには兔と連絡を取るための番号が書かれている。
かてて加えて兔が指定した合流ポイントは屋上。
この階にヤクザ達が集合した今、最上階に居る真雪なら危なげなく辿り着けるはずだ。

「ウサギも組織で動いてるなら治療施設の一つや二つは確保してるダロウ。……ソレでは頼んダ」

すまなかった。と最後に付け加え、それらしきマークのボタンを押して電話を切る。後はこちらも屋上に向かう準備を整えるだけだ。


(そうと決まれば流石に置いていく訳にもいかんな)

何故か以前寝かせておいた位置とは全く別の場所に絶賛放置中だった少女を背負う飛峻。
だが同様に居るはずの萌芽の姿は遂に見つけることが出来なかった。

「まア……モルガが居なくなるのはいつものことダナ……」

飛峻はそれ以上探すのを諦め、柚子達の居るキッチンへ戻っていった。


【 サイちゃん回収。真雪に兔さんへ連絡依頼 】

302 名前:八重子 ◆7JB32HCQRA [sage] 投稿日:2010/07/23(金) 18:29:08 O


二人の女が、訛祢とシエルの居る隔離特別病室へと向かっていた。
シエルは外傷は見られないものの、意識不明、謎の昏睡状態に陥っていたため、他の異世界人達とはまた別の病室に隔離されていた。

さて、琳樹達の元に向かう二人組の内の一人は、進研の制服に着替えた八重子。一人は八重子と同年代くらいで、SM嬢が着るような際どい黒のボンテージに白衣を羽織っただけの格好。おおよそ看護長とは思えない女性だ。
彼女が着ける腕章には、Cと記されている。

八重子の両の手で持った盆の上には、訛祢の為に即席で作ったスープがあった。
長い時間喋らせてしまったので、疲れている事だろう。腹も空かせているかもしれない。
そんな、彼女なりのささやかな配慮。

「別に貴女が用意しなくても、言えば私が作ったのに……」

Cの不服そうな言葉に、八重子は苦み混じりの笑みを浮かべる。この看護長に料理を作らせるのは、些か賛成しかねるという笑みだった。

主に、料理の腕前的な意味で。

「入るわよ、訛祢琳樹さん?」

両手が塞がっている八重子の代わりに、Cがドアをノックし、入室する。
昏睡状態のシエルの傍で座る訛祢の顔は、疲労を訴えるかのようにやつれているようにも見えた。

「お腹、空いてるでしょう?遠慮せずに食べて下さい」

八重子は訛祢に微笑みかけ、すぐ傍の丸テーブルに盆を置き、八重子もパイプ椅子の一つに座る。Cはカルテを取り出し、シエルの血圧や心拍数のチェック等を行っていた。

「(……それにしても)」

Cはチラリと、シエルの顔を盗み見る。眠り続ける幼顔の魔法騎士に、どこか懐かしさにも似た既視感を覚えていた。



303 名前:八重子 ◆IPF5a04tCk [sage] 投稿日:2010/07/23(金) 18:31:59 O

「(何でかしら、ね)」

そんな事を考えながらふと窓に目を向け、ギョッとした。何故なら、この階数なら普通お目に掛かる筈のない生き物、Cにとって天敵に等しい存在が其処に居たのだから。

「な、何でこんな所にカラスが……」

Cが追い払うよりも早く、換気の為に開け放しておいた窓から易々と侵入するカラス。そして訛祢の肩に留まり、Cを馬鹿にしたようにカァと一声。

「でっ、出て行きなさいよ、このケダモノ!男の人呼ぶわよ!!」

目の前にいる訛祢は男としてカウントしないのか。

「良いじゃないのC、カラスの1羽や2羽」

「全ッ然良くなァい!!」

若干涙目になりながらカラスから後ずさるCに対し、のほほんとした表情でサラッと言ってのける八重子。
しかし、野生動物は沢山菌を運んでくるため、衛生上良くないのは確か。
窓を開け放しておけば、いずれは出て行くだろう。Cは一度閉めた窓を開けようと、窓へと近寄る。が。

「……あら、一雨きそうね」

いつの間にか鉛色に変わっていた空を見て、離れて見ていた八重子がポツリと呟く。
そして彼女の言う通り、間もなく雨は降り出す。
これでは窓を開け放せない。Cは深い溜め息をつくのだった。

【カラス1羽、ごあんなーい】



304 名前:訛祢 琳樹 ◇cirno..4vY[sage] 投稿日:2010/07/23(金) 23:45:03 0
「から、す?」

彼がポカンと、声のした方向を見れば一匹の烏である。
女の声、それを発したのは烏、異世界といえど無茶苦茶なのは確かだと幻聴ですませようとするが、しかし。
彼の耳にはまたあの声が届く。

「人の肉、食べた事あるでしょう?
 ねぇねぇ、美味しかった?」

「……何、言って」

「ああ、そうそう、私は幻聴じゃ無いわ」

ねぇ、と烏が羽根を動かす。
どこか狂気を含んだ赤い瞳に琳樹が見惚れそうになった、その時である。

>「入るわよ、訛祢琳樹さん?」

「あ…」

>「お腹、空いてるでしょう?遠慮せずに食べて下さい」

入ってきたのは二人の女性、片方の持つ盆にはスープが乗っていた。
確かに腹は空いていたし、ありがたいが今はそんな気分ではなかった。
後で貰おうかだとかお礼を言おうだとか、彼が口を開きかけた時。

>「な、何でこんな所にカラスが……」

白衣を着た女性が彼女、と言っていいのだろうか、を追い払おうとする。
しかし彼女は琳樹の肩に乗り、

「あは、馬鹿ね、窓開けてるから」

と鳴いた。
勿論、琳樹以外には分からないわけだが。

305 名前:訛祢 琳樹 ◇cirno..4vY[sage] 投稿日:2010/07/23(金) 23:46:34 0
「……」

彼は少しため息を吐く、どうして私がこんな非日常に巻き込まれなきゃいけないのだと。
めぐりめぐってげふんげふん。
一部音声が乱れた事を深くお詫び致します。

「ねぇ、面白そうだしペットって事にしといてよ、味方味方」

入ってきた窓を閉められ、あはは、と笑いながら彼女は言う。
別に琳樹に断る理由も無く、言われた通りにするのだが。

「あー、その、これは私のペットで、」

名前は、と口に出そうとしたところで気付く。
そういえば名前を聞いていなかったと。

「名前は狂羽でいいわ」

「……名前は、狂羽」

くるう、彼女に相応しい名前だと彼は心の中で納得する。
そして彼女は一際大きく、

「あははは!」

カァ、と鳴いた。

【訛祢琳樹:ペット?をてにいれた!】


名前:狂羽 (くるう)
職業:烏
元の世界:現代
性別:女
年齢:??
身長:普通の烏程度
体重:普通のry
性格:狂気的っぽい
外見:赤い瞳の烏
特殊能力:不明
備考:琳樹にだけ声が聞こえる烏
琳樹に付いていくのは面白そうだからという理由、だと言っているが真偽は不明

306 名前:◇6bnKv/GfSk[sage] 本日のレス 投稿日:2010/07/24(土) 01:24:35 0
「お前、何をした?」

険しい表情で、料理人姿の男は吐き捨てる。
彼の面持ちの所以は、伸ばした腕の先。
そこにある己の文明、『錬金大鍋』に――手が届かないのだ。
ついさっきまで確かに扱えていた、触れられていた筈の大鍋に。
鍋も男自身も、一切動いていないと言うのに。

否、動いていないからこそ、だ。

「……思い出した。お前、『一刀両断』の都村みどりだろ」

彼女の操る文明『一刀両断』は、過去以外のありとあらゆる物を断ち切る。
そして彼女は今さっき男の文明との関係を断った。
関係とは即ち、男と鍋、二つの点が繋がる為の経路の事だ。
故に男か鍋のどちらかが移動すれば、男は再び大鍋に触れる事は叶う。
叶うのだが、それを都村が許す筈は無い。
僅かにでも妙な素振りを見せれば肉体か、意識か、或いはもっと重要な何かを、断ち切られるに違いない。

「……なあ、一つ提案があるんだ。何、悪い話じゃない。……君はまだ、俺の『適性』までは断ち切れていない、だろう?
 そんな演算をする時間は無かった筈だからな。それで……だ。
 俺としてはこの文明の適性を断たれるのは困るんだ。本職はあくまで料理人なんでね」

下手に出ながらも何処か不遜さの残る態度で、彼は提案する。
『錬金大鍋』は正しく使えば、食材に最高の調理を施す事が出来る。
それが出来なくなると言うのは、彼としては致命的なのだろう。

「だから、だ。『進研』の情報を洗いざらい吐く。代わりに俺の『適性』を断ち切るのはやめてくれ。
 勿論、その後は文明を悪用する真似は金輪際しないさ。……どうだ? 悪くないだろ?」

彼は微かに、口角を吊り上げた。
双子の未来を奪った彼が、これまでも多くの未来を奪ってきたであろう彼が。
自分の未来を断つなと、都村みどりに笑い掛ける。

悪い話では、無いかも知れない。
たかが小悪党一人に対して目を瞑る事で、巨悪への足掛かりが手に入るのだから。


【『進研』の悪事について言質が取れるかも
 代わりに鍋男君は自分を放免しろと要求します
 どうするかはご自由に!】


【TRPGの】ブーン系TRPGその3【ようです】

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