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俺と彼女と彼女。
1俺と彼女と彼女。 投稿者: 投稿日:2004年06月23日(水)22時05分41秒
「前田公輝ー!止まりなさーい!」

俺が前へ前へと走り進んで行くほどに、人々は皆、脇へ避けて道を作ってくれた。
別にそれで優越な気分に浸るわけではなかったが、
今この状況で、俺にとって有り難いこと極まりない。

風を切って走り抜けていく―――そんなかっこいいもんじゃない。

俺は容疑者だ。
しかも前科者。
もう数え切れないくらい、容疑を犯している。

容疑名、校則違反。
追いかけてくる奴も、警察様なんかじゃなくて我が校の風紀委員長様。
俺達二人は飽きる程に、さっきから校内鬼ごっこを続けている。
2投稿者: 投稿日:2004年06月23日(水)22時09分09秒
「はぁっ、はぁ、はぁ…」
周りに避けてくれた奴は、おふざけで逃げる俺を応援してくれているが、俺は真面目に必死なんだ。
しかも、体力にだけは自信がある流石の俺も、そろそろ疲労が滲み出てきた。
走るスピードも段々と落ちてきたのが、自分でもわかる。

足取りが重い。
(何周してんだ?!)
俺達はもう数え切れないくらい校舎内を、ぐるぐるぐるぐる走り回っている。

ふと、後ろを見た。
アイツとの距離がさっきよりも縮まっている。
(やべっ!)
俺は余力を振り絞って、ダッシュをした。
目指すは、あの角を曲がった階段の下の死角。
そこに隠れてしまえば、もうこっちのもんだと思った。

けど、俺のそんな計画はあまかった…―――
3投稿者: 投稿日:2004年06月23日(水)22時14分20秒
「事件」が起きたのは、その曲がり角を曲がる寸前だった―――。

ドンッ。

俺は何か軟らかいものにあたって、その場に尻餅をついてしまった。
「…っつう…。」
床に打った尻が痛い。
俺がそんな尻を擦りながら目を開けると、目の前には俺を同じような格好をした女の子いた。
ぶっちゃけ、足の間からパンツが見えている。
(ラッキー…かな。)
俺はそんな卑猥なことを考えながら、彼女の顔を見ると、何処かで見たことのある顔なことに気がついた。
別に知り合いなわけじゃない。
(誰だっけ…?)

大きな瞳。筋が通った高い鼻。小さな唇。
光に当たって少し茶色掛かった、ふわふわの肩まである髪。
4投稿者: 投稿日:2004年06月23日(水)22時23分11秒
全体的に見るとハーフっぽく、整った顔。
いわゆる「美少女」ってやつだ。

こんな可愛い子なら忘れるはずないのに、うまく思い出せない。
(誰だっけー?)
思い出せないのは、今追いかけられて頭がパニくってるからだろうか。
追いかけられてる?―――そうだ、今俺は追われてるんだった。
彼女の美しい顔立ちと、足の間から覗いたピンクのパンツに気を取られていたせいで、
今の自分の状況をすっかりと言っていいほど、忘れていた。

ふいに、背後に寒気が走る。
「あ、あの…。」
目の前の可愛い彼女が、俺の頭の上を指差した。
俺は、恐る恐るその指差した方向に首を180度回転させた。
「げっ…。」
俺は顔を引きつらせた。
「ごっ…じゃない!前田公輝!今日こそ、みっちり指導するからね!」
おいかけてきた小百合が腕組みをしながら、仁王立ちをして俺を見下ろしていた。
5投稿者: 投稿日:2004年06月23日(水)22時29分51秒
(しまったぁ…。)
ぶつかった彼女に見とれている場合じゃなかった。
小百合は、鬼のような形相で俺を見ている。
ぶつかった可愛い彼女は俺に何か言いたそうだったが、俺はそのまま小百合に襟の後ろを掴まれて、
相談室…俺にとっては地獄部屋へと連行されてしまった。

相談室なんて名前、絶対嘘だ。
ここは相談室なんて可愛い名前の部屋じゃない。
拷問部屋だ。
そこの部屋の常連の俺は、今日もまたその部屋へと行く羽目になってしまった。

ガララ…。
相談室のドアを開けると、そこは今までとは何処か雰囲気が違っていて、暗かった。
「あれ?何か違う?」
「あぁ、さすが常連さん。一発でわかったね。カーテンつけてもらったのよ。」
そう言って小百合は、閉めてあったカーテンを勢いよく開けて、二人分のパイプ椅子を引っ張りだしてきた。
「座って。」
迎え合わせに並んだ椅子を指差して、小百合は俺に指示した。
この椅子に座ったのは、もう何回目だろうか。
これももう数えられない。
6投稿者: 投稿日:2004年06月23日(水)22時42分47秒
「はぁー。」
俺は溜息を付きながら、指示された通りにパイプ椅子に座った。
俺はこのパイプ椅子が、あまり好きじゃなかった。
妙な緊張感を醸し出していて、何故か肩が凝ってしまうからだ。

「溜息つきたいのは、こっちだよ。」
小百合は変な用紙とボールペンを持って来て、俺の前に座った。
その変な用紙とボールペンは毎回見ているが、いつ見ても「取り調べ」って雰囲気を出していて嫌いだった。

小百合は、その用紙に俺の名前やら学年を書き始めた。
何処か面倒くさそうな顔をしている。
「なぁ、そんな面倒くさいんだったら、俺を捕まえなきゃいいじゃない?」
俺は机の上に肘をつきながら、小百合に言った。
「本人のあんたがそんなこと言って、どうするの?私だってできたら、こんな事したくないよ。
 でも、あんたがいつまで経ってもその格好、直してくれないんだからしょうがないじゃない。」
7投稿者:がんばってください  投稿日:2004年06月23日(水)22時46分20秒
8投稿者:おもしろい!  投稿日:2004年06月23日(水)22時47分13秒
美少女が誰なのか気になる
9投稿者: 投稿日:2004年06月23日(水)22時50分19秒
そう…そもそも俺がこの部屋来た、風紀委員長の小百合に捕まえられた理由は俺自身の格好のせいだった。

オレンジ掛かった茶髪。
ワックスでツンツンに立てた髪型。
右に三個、左に三個開けたピアス。
腰まで下げて、ガラパンが最早見えてしまっているズボン…

この素行は、我がW高校ではどれもこれも校則違反だった。
俺は別にかっこいいと思ってることをやってるだけなのに、
世間一般的に俺みたいな格好の奴は「不良」というらしい。
それでうちの学校はその「不良」を生み出さないために、
こんな風紀委員やらを作り、厳しく俺みたいな奴を取り締まっている…まぁ、そんな感じだ。
今時の学校のくせに、未だにこんなことに力を入れてるなんて、古臭いと思うが。

「は?かっこいーじゃん、これ。何所がいけないのさ。」
俺は自慢気にオレンジ頭を、突き出した。
「普通、自分でかっこいいなんて言う?いくら、かっこよくても校則違反なものはだめなの。」
そう言って小百合は用紙に、頭髪の色・整髪料・制服の着こなしなどと、俺の問題点を記入していった。
10投稿者: 投稿日:2004年06月23日(水)22時56分17秒
次々に書き足されいく俺の素行を見ると、何だか俺自体を否定されてるみたいで腹が立ってくる。
小百合がやってるこの仕事は、毎度のことなんだろうけど、不思議と今日は無償に腹が立った。
「それ、また生活指導の先公に提出すんの?」
俺はまた机の上に肘をおいて、不満そうな顔をした。
「まぁね。あんたの場合は何度言っても聞かないから、こうやって実力行使で行くの。
 まったく…もう高二なんだから、いいかげん公輝も内申書とか考えた方いいんじゃないの?」
また始まった。小百合の説教。
でも俺は小百合に怒られるのは、別に嫌じゃない。
むしろ好きだった。

「だよなー。もう高2か…。じゃあ、そろそろ俺と付き合う気になんない?俵さん?」
そう言って俺は机から、身を乗り出して小百合に迫ってみた。
「からかわないで。」
しかし俺のそんなアピールは失敗。
すぐさま涼しい顔で、かわされてしまった。
「ちぇ…。つれねーなぁ。」
俺は少し拗ねた態度をとってみたが、これも無反応。
小百合は黙々と真面目に仕事を続けている。
11投稿者:美少女が女装した誰かだったら笑える  投稿日:2004年06月23日(水)23時20分29秒
でも面白い
12投稿者:そら  投稿日:2004年06月23日(水)23時21分56秒
もしかしてエマかな??
当たってるかしら…?頑張ってください!
13投稿者: 投稿日:2004年06月23日(水)23時29分22秒
机に向かって仕事をしている小百合。
窓から入ってくる陽射しが当たって、ストレートの髪がきれい。
長く伸びたまつげも可愛い。

初夏の薫りが、窓から入ってくる。
太陽は昼間、休むことなく俺達を照らし続けていた。
あの日もそんな季節だった―――。

だいたい今と同じ時期だったと思う。
今から二年前。
俺は中三、小百合は高一だった。
俺は小百合に告った。
近所の大きな噴水がある公園に呼び出して。
そもそも勢いで告ったのが、間違いだったのかもしれない。
破裂寸前の気持ちを、全部ぶつけた。
あっさりと俺の恋は散った。

今も耳に残るのは、噴水の水しぶきが跳ぶ音と小百合のあの言葉―――

―――「ごめん…。年下は無理。」
14投稿者:おもしろい  投稿日:2004年06月24日(木)20時45分09秒

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