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小説『言の葉遊び』
1小説『言の葉遊び』 投稿者:遊具  投稿日:2004年06月07日(月)20時02分03秒
:注意:
誰も死にはしませんが、悲恋です。

:CAST:
主演:俵小百合 井出卓也
出演:てれび戦士
2投稿者:遊具  投稿日:2004年06月07日(月)20時04分49秒
きっと私の一生はずっと言葉にもてあそばれるんだ。
アナタの言葉に。

「小百合ってさぁ〜毒舌だけど、やっぱ美人だよね〜」
「は?己は何をほざくか。」
「小百合、その喋り方はキツイって……
 ほら、テレビとか見たいにさぁ〜もっと可愛く!」
「無理だね。」
「即答………。」

楽屋でスケジュールを確認してると、
まん前に現れた卓也。
何を言い出すかと思えば、いきなり『美人』だとさ。
意味分かんない。
3投稿者:あの、間違ってますけど。。  投稿日:2004年06月07日(月)20時05分00秒
それともこれであってるならごめんなさい!
4投稿者:遊具  投稿日:2004年06月07日(月)20時05分57秒
3さん>えっと、何が間違ってるか教えてもらえますか………?
5投稿者:あさひ  投稿日:2004年06月07日(月)20時08分00秒
頑張れvv長編も期待してまっす☆☆
6投稿者:3  投稿日:2004年06月07日(月)20時08分34秒
あ、いや、題名が言葉の遊びじゃないのかなー?
って。。
7投稿者:遊具  投稿日:2004年06月07日(月)20時27分26秒
あさひ>ありがとう!
3さん>あ、それは『言の葉遊び』で合ってますっ!!
8投稿者:遊具  投稿日:2004年06月07日(月)20時32分37秒
卓也に『美人』って言われて、いやなわけじゃない。
というより、嬉しい。
けれど、どこかお世辞っぽくて嫌。

「ホント素直じゃないよねぇー小百合はっ!」

七世がイタズラっぽくそういう。

「うっさい。
 だっていつも『男女』とか『毒舌』とか言いたい放題言う癖に、
 いきなり貴様は何を言うか。」
「……怖いってば…。」
「今頃気づいた?」
「いいえ…。」
9投稿者:遊具  投稿日:2004年06月07日(月)20時32分50秒
みんな私を怖がる。
それはきっと口が悪いから。

別に、そんなに怖くなんかないのに……。
ただ、言いたいことをちゃんと言うだけ。
だって、嫌じゃない?
何も言わずに笑ってうなずいてるだけの子って。
確かに、それで良い方に見てもらえるかもしれないけど……
私は、悪い方に見られても良いから、自分の意思はちゃんと持ちたい。

じゃないと、お姉ちゃんと比較されるから…。
10投稿者:遊具  投稿日:2004年06月07日(月)20時35分55秒
もう嫌。
あんな思い。
もうしたくない。

『小百合ちゃんはお姉ちゃんそっくりだね。』

そう言ったおばさん。
悪気はなかったんだと思う。
けど、嫌だった。
11投稿者:遊具  投稿日:2004年06月07日(月)20時36分06秒
私は私。
お姉ちゃんはお姉ちゃん。

別々の人間だよ?
違う人間だよ?
なんで、そうやって、言われなきゃいけないの?
そっくりなんかじゃない。

私には私のやり方があって、
お姉ちゃんにはお姉ちゃんのやり方がある。

あなたと私が違うように、私とお姉ちゃんだって違う人間なの。
分かるでしょ?
12投稿者: 投稿日:2004年06月07日(月)20時43分51秒
『影』も、『宇宙へ』もよんでました!
面白かったですよ!今回も頑張ってください!
13投稿者:>12  投稿日:2004年06月07日(月)20時44分44秒
『七夕』だよ、この人の1作目は
14投稿者: 投稿日:2004年06月07日(月)20時45分28秒
あぁ!!↑のやつ、『影』じゃなくて、『七夕』ですよね!
何で影って書いちゃったんだろう・・??
15投稿者: 投稿日:2004年06月07日(月)20時46分17秒
13さん!ありがとうございますね!
16投稿者:あげ  投稿日:2004年06月07日(月)20時48分27秒
あげ
17投稿者:あげ  投稿日:2004年06月07日(月)21時41分51秒
18投稿者:新スレたてるのか……  投稿日:2004年06月07日(月)21時51分52秒
更新早いし、なによりこの小説も面白くなりそうなんだけど
新作にするたび新しいスレたてるのはどうかと思うのですが。
前のスレにリクしている人もいっぱいいるよ?
あっちはもう完全に放置ですか?
あめぞうには小説スレ嫌いもいっぱいいることを考慮に入れて
スレの乱立は控えた方がいいと思う。
19投稿者:遊具  投稿日:2004年06月07日(月)22時04分56秒
愛さん、ありがとうございます。
18さん>了解です。ただ、このスレは、題名が書いてしまってるので、
これを書き終わった後に、もう1つだけ、スレを立てて、
それで、新しいスレを立てるのはやめます。
ご注意、ありがとうございました。
20投稿者:遊具  投稿日:2004年06月07日(月)22時19分10秒
何で私は妹なんだろうって思う。
私がもし姉だったら?
私がもし一人っ子だったら?

誰も、お姉ちゃんと私を一緒くたなんかにしなかった。

だけど、私はたかが妹の分際。
姉の真似事だけをしてれば良い身分。
私は、私としては見てもらえないんだ。

あいつ以外には……。
21投稿者:道具  投稿日:2004年06月07日(月)22時24分05秒
あいつとの出会いは2001年。
新人のときだった。

『えぇー小百合ってゆっこちゃんの妹なんだぁー!』
『すっごーいっ!』
『じゃあさ、他のメンバーとも会ったことあるの!?』
『良いなぁ〜もう既に仲が良い人いてさぁ〜!』

私の周りに寄ってくる同じ新人達。
その言葉が苦しい。
あなた達のその言葉が苦しい。

だってあなた達の目に見えてるのは、姉である『俵有希子』だけだから。
『俵小百合』は、『俵有希子の妹』なのであって、
一人の人間じゃないのだから。
22投稿者:遊具  投稿日:2004年06月07日(月)22時24分39秒
21は、遊具です。
間違えて道具って打っちゃいました(あほ
23投稿者:遊具  投稿日:2004年06月07日(月)22時27分42秒
『でも、小百合ちゃんもゆっこちゃんに負けないぐらい実力あるから、すごいよ!』

姉を褒め倒す中、一人だけ、笑顔で私にそう言ってくれた人。
それが、今現在、私の好きな人になってしまった『井出卓也』。

『だって、こないだのオーディションのとき、
 すっごく歌うまかったじゃんっ!
 演技もすごい感情こもってて良いし!
 俺、ホントに同じ歳!?って思ったもん!!』
『そっかぁ〜小百合ってそんなすごいんだぁー!』
『じゃあ、いつかゆっこちゃん抜かすかもねっ!』

卓也につられて、周りのコの眼中にも、私は入ってきた。
思えば、このときから、私は卓也が好きだったのかもしれない。
24投稿者:遊具  投稿日:2004年06月07日(月)22時39分29秒
そんな素敵な出会いをした私たちも、今じゃただの喧嘩友達。
私の毒舌、彼のボケ。
良い感じにマッチした。
でも、私はそれでも良かった。
そのときだけは、『里穂の卓也』を『私の卓也』にできたから。

「なあ、小百合ちゃんっ!!頼みがあるんだけど〜」
「ちゃん付けするな!気色悪い。」
「気色悪いって……結構ショックなんですけど。」
「分かった分かった。
 さっさと内容を述べよ!!」
「……あのさ、収録なんだけど…」

ああ、またこのことか……

「分かったわよ。」

話を最後まで聞く前に私は返事を返した。
25投稿者:遊具  投稿日:2004年06月07日(月)22時42分20秒
「えっ!?俺まだ何にも言って……」
「分かるわよ!!
 いっつもいっつも同じ頼みごとばっかりなんだからっ!
 里穂と座る席変われば良いんでしょ!」
「さっすが小百合!」
「誰がこうさせたのよっ……」

卓也は本当に鈍い。
変わりたくなんかない。
せっかく卓也と隣になれたのに……
でも、里穂と卓也はラブラブだから。
私なんか邪魔者だから。

私はいっつも誰かの邪魔者にしかならない。
損な役。
『俵小百合』なんて……もうやめたい……。
26投稿者:遊具  投稿日:2004年06月07日(月)22時45分49秒
卓也にその気はなくっても。
私はそう思ってしまう。

卓也にとって私は『邪魔者』なんじゃないかって。
里穂にとって私は『邪魔者』なんじゃないかって。

私は、誰かにとって必要な人なんだろうか…?

「小百合、また変わってあげたの?」
「…山ちゃん。」

声が聞こえ、ふっと振り向くと、優しく苦笑する山ちゃん。
てれび戦士の中で、いや、世界中の全ての中で、
山ちゃんだけが私が卓也のこと好きなのを知ってる。
27投稿者:つぐみ  投稿日:2004年06月08日(火)16時50分18秒
***遊具***
おっす☆面白い!
小百合チャンカワイソォ〜。
卓也クン鈍感だね(苦笑)
28投稿者:遊具  投稿日:2004年06月08日(火)19時50分44秒
つぐみ>ありがと!!
29投稿者: 投稿日:2004年06月08日(火)19時52分31秒
30投稿者:遊具  投稿日:2004年06月08日(火)19時52分35秒
「だって……二人は付き合ってるんだし…。」
「小百合はそれで良いの?」
「……分かんないけど…嫌われるよりはマシだしね。」

無理に元気良く笑ってみせる。
山ちゃんはやっぱり苦笑いする。

ねえ、山ちゃんも笑ってよ?
馬鹿だな小百合、って笑ってよ?

誰か……私を笑って…
31投稿者:遊具  投稿日:2004年06月08日(火)19時55分10秒
「収録終わったあと、愚痴聞こうか?」
「……」

黙ってうなずく。
立っている山ちゃんが座ってる私に優しく手を差し出す。

私、どうして山ちゃんのこと好きにならなかったんだろう?
山ちゃんならきっと、私の気持ち受け入れてくれて……
優しくしてくれたのにナ…。

どうして、私が好きな人は卓也だったんだろう?
32投稿者:ええええ  投稿日:2004年06月08日(火)19時56分35秒
33投稿者:遊具  投稿日:2004年06月08日(火)19時58分06秒
29さん、32さん>あげ、ありがとうございます。
34投稿者:遊具  投稿日:2004年06月08日(火)19時58分34秒
「小百合っ!いつもアリガトネ!!
 ほんと感謝してるんだぁ〜!!」
「いえいえ、お幸せで何よりだよ〜!
 てか、卓也に里穂は勿体無い〜!!!」
「そんなこと…あるかも?」
「駄目じゃんっ!!」

収録前、里穂がお礼を言いに来た。
はっきり言って、今、里穂とこうやって喋れる自分が信じらんない。
しかも、お互い冗談交じりで楽しく笑っちゃって。

何ムリしてんの?
ほんと私って意味わかんないよね?

さっきまで、あんなに辛かったのに。
今だって、こんなに辛いのに。

どうして、笑える?
人間ってどうして笑いたくもないときに笑えるように作られてるの?
そう作ったのが、神様だとしたら、私は神様を一生うらむ。
35投稿者:ポテト  投稿日:2004年06月08日(火)20時11分17秒
「七夕」に続いてこっちもとてもいいですねvv
おもわず声にだしてよんじゃいました(笑)
がんばってくださいね!!
36投稿者:☆★  投稿日:2004年06月09日(水)08時27分50秒
これ、楽しい!小百合の悲恋物語だねっ
これからも、がんばって!!!
37投稿者:age  投稿日:2004年06月09日(水)22時08分58秒
38投稿者:ちえこ  投稿日:2004年06月09日(水)22時39分50秒
遊具さんこんにちゎぁ*^−^*初です!!
何か小百合chanがスゴク可愛そうだなぁと思いました。
これから小百合chanがどうなるのかスゴク楽しみです♪♪
39投稿者:遊具  投稿日:2004年06月10日(木)00時12分20秒
ポテトさん>ありがとうございます。
☆★さん>小百合の悲恋です〜、、ありがとうございます。
ちえこさん>ありがとうございます。
40投稿者:遊具  投稿日:2004年06月10日(木)00時15分02秒
「もう神事らんない……」
「………」

永遠と続く、私の愚痴を、何も言わずに山ちゃんは聞いてくれる。
ただ、顔は苦笑してた。

「なんて私は馬鹿なんだろうって思うのに…
 それがやめれない自分がもっとキライ。
 席変わってって言ってくる卓也より、
 席変わってくれてありがとう、って言ってくる里穂より、
 2人を冷やかす公輝や望たちより…自分がキライ。」

そこまで言い切る私に、山ちゃんはため息混じりに口を開いた。
41投稿者:遊具  投稿日:2004年06月10日(木)00時17分22秒
「なら、もうやめれば良いんじゃない?」
「ソレが一番難しいの。」

どうしてやめれない?
ここまで来ると、自分でも分からない。
私はどこに向かってる?
本当に未来に向かって歩いてるの?

それとも、過去に逆戻りしてる?

分からない。
全てが、闇みたいに。
暗闇。
恐怖と不安。
沈黙。
全てが私を包み込む世界。

ダイキライ……

私は私がキライ。
誰よりも。
42投稿者:遊具  投稿日:2004年06月10日(木)00時20分22秒
どうしてもできないコトって、誰にだってあるでしょ?
どうしても速く走れないとか。
どうしても二十飛びができないとか。
どうしても遅くまで起きれないとか。

私にとってのソレは、『どうしても嫌われたくない』。
だから、一人でがんばっちゃってんの。

誰だって知らないのに。
誰だって見てくれてないのに。
私の努力なんかむなしく終わるのに。

それでも私はがんばり続ける。
愛する人がいるから。
43投稿者:age  投稿日:2004年06月10日(木)22時16分49秒
44投稿者:あさひ  投稿日:2004年06月10日(木)22時21分19秒
うん―深い愛…(笑)
凄く面白いですね。最近来てなくて申し訳な―いです。…。(おめえの応援なんかいらねえんだよ。とか思ってても黙って下さい。)
なんかどうもこう…胸キュン!?

すっごく共感出来ていいと思いマスデス。(偉そうに)

んでっゎ―お邪魔しました…。更新ガンバって下さいね♪
45投稿者:遊具  投稿日:2004年06月11日(金)14時45分01秒
あさひ>ありがとうですvv
46投稿者:遊具  投稿日:2004年06月11日(金)14時47分49秒
ねえ、卓也。
アンタは今でも思ってるの?

『小百合ちゃんもゆっこちゃんに負けないぐらい実力あるから、すごいよ!』

そう思ってくれてるの?

ねえ、どうなのよ。
今の私はどうなの?
世間一般とか人気とかじゃないの。
アンタにとって、どっちが上なの?

どっち…?
47投稿者:遊具  投稿日:2004年06月11日(金)14時50分10秒
「どっち…?」

思わず声に出た。

「何が?」

山ちゃんがそう言って聞く。
だけど返事なんかしなかった。

だって、山ちゃんにとっての上はきっとお姉ちゃんだから。
私なんてただのトモダチとしか思ってくれてないんだから。
ただの仕事仲間としか思ってくれてないんだから。

だけどね、卓也。

山ちゃんにお姉ちゃんより下って言われても、
七世にお姉ちゃんより下って言われても、
他の戦士やみんなにお姉ちゃんより下って言われても、

アンタに上って言われたら、私、それだけで十分なんだよ?
48投稿者:遊具  投稿日:2004年06月11日(金)14時54分30秒
言葉なんて単純なもの。
いくらでもごまかせれる。

だけどその代わり私は言葉に遊ばれてる。

「山ちゃん……スキなヒトいる?」
「いるよ。」
「ダレ?」

学校のコ。
そう言った山ちゃんの声は淋しそうだった。

「だけど、ソイツにとって俺は、ただのクラスメイトだから。
 俺、まともに学校行ってないし。
 ナマエ覚えててもらえてたら、御の字って感じだよ。」

ははって苦笑しながら言うけど、本当はすっごい辛いんだと思う。
目が辛そうだから。
どれだけ顔をにこやかにさせても、目だけは、辛そうだったから。
49投稿者:遊具  投稿日:2004年06月11日(金)14時59分33秒
ヒトが他人を好きになるのは簡単なこと。
でもそれは自分が傷つくことを恐れないヒトにとってで。

私みたいな心の弱い人間にとってはすごく難しいこと。

「私も、卓也や山ちゃんぐらい心広くしなきゃね…。」
「俺は別に広くなんかないよ。」
「十分広いよっ!」
「広くなんかないってば〜!
 キミの愛する卓也くんだけで良いデショ?」

そんな声に混ざってドアの開く音がした。
た、くやが……入ってきた。

今の、聞かれてた……?
50投稿者:遊具  投稿日:2004年06月11日(金)15時01分52秒
母親が帰ってくるので、一度オチ。
また夜来ます。
51投稿者:遊具  投稿日:2004年06月11日(金)16時49分16秒
ちょっと暇があったので書きます。
52投稿者:遊具  投稿日:2004年06月11日(金)16時57分26秒
「た、くや……」
「ナニナニ〜!?
 2人でヒミツのお話ぃーっ!?
 もしかして実は付き合ってるとかっ!?」

あ……良かった。
聞いてないみたい。

「そんなわけないでしょっ!
 その単純な思考しか考えられない頭、どうにかしたらぁ?」
「なんだよー!
 英語の点数俺より低かったくせに!」
「他はぜーんぶ卓也より良かったもんねぇーっだ!」
53投稿者:遊具  投稿日:2004年06月11日(金)16時58分07秒
ほら。
また無理して笑ってる。

もうそうしてるのも嫌になって、帰るねバイバイ、最後の笑顔を見せて、
屋上を出た。

出た後……階段のところで、立ち止まった。

「……かばん忘れてた…」

また馬鹿にされる。
そう思って、出たら、山ちゃんと卓也の話し声が耳に入った。
なんか重要っぽそう…。

2人とも眼差しが真剣だから。
54投稿者:遊具  投稿日:2004年06月11日(金)17時02分16秒
「聞いてたんならそう言えよ!!
 おまえ小百合がかわいそうだとか思わないわけっ!?」

久しぶりに聞く山ちゃんの怒鳴り声より、内容に驚いた。
聞いてたんだ……卓也……。

「んなことしたら、これからいろいろ気まずくなるじゃんかっ!」
「おまえ、小百合が無理して笑ってんの知ってんのかっ!?」
「知ってたら、席変われなんて頼まねーよっ!!
 小百合、いっつも俺らのこと応援してくれてたし!」
「気づけよ!!同期だろっ!!」

そんなことを言われてる自分が一番可愛そうだった。
一番惨めだった。
一番嫌だった。

私は『可愛そうな存在』としか思われてないみたいで。
55投稿者:遊具  投稿日:2004年06月11日(金)17時05分46秒
「同期だからって何でも分かるわけねーだろっ!!彼女でもないのに!」
「おまえがそう言ってられるのも今のうちだっ!!」
「何でそうなんだよっ!どういう意味だよっ!」

もしかして、って思った。
私と山ちゃんの秘密、言われるんじゃないかって。

言わないで……。
言わないで山ちゃん……。
オネガイ……。

「おまえの中の小百合の存在がどれだけ大きかったか、
 もうすぐしたら分かるっつってんだよっ!」
「もう既に小百合の存在は俺の中で大きいっつーの!」
「それよりもデカイよっ!!小百合の存在はっ!
 あのなぁー!小百合に黙ってろって言われたから言わないでいたけどなぁっ!!」

言われる。
駄目。
56投稿者:遊具  投稿日:2004年06月11日(金)17時08分30秒
「小百合は、今年でっ!!」
「山ちゃんっっ!!!」

気づいたときには叫んでた。
めったに涙なんか出さない目から、たくさんの涙があふれ出る。

2人とも唖然として、私を見つめる。

「さゆ……り…おまえ、帰ってたんじゃ……」

山ちゃんが、恐る恐る低い声で聞く。

「か、ばん忘れたから……」

久しぶりにだす泣き声が、やけにむなしい。
この前ないたのは、おじいちゃんが、亡くなったときだったっけ……。
それ以来だな。
泣くのは。
57投稿者:遊具  投稿日:2004年06月11日(金)17時11分08秒
「山ちゃん……もう良いんだ…。
 だから、ソレは言わないで……。」
「でも、どうせ後1ヶ月で他のやつらにも、卓也にもバレることなんだぞっ!」
「その1ヶ月を壊したくないの…。」

みんな下向いて、困惑した表情を見せる。
こんなところで、こんなことしたくなかった。

もっともっと惨めに見えるから。
58投稿者:遊具  投稿日:2004年06月11日(金)17時13分23秒
卓也のソバにおいてあるかばんを取りに行く。

それに気がついたのか。
卓也がとって、私に渡してくれた。

「ありがと。」

いつもの作り笑顔をがんばる。
まるで、もう泣いてなんかないよって言ってるかのように。
まるで、もう大丈夫だよって言ってるかのように。
まるで、もう気にしないでって言ってるかのように。

でも、まだ、本当は泣きたかった。
まだ、本当は大丈夫なんかじゃなかった。
まだ、本当は気にしないで良いほど強くなってなかった。
59投稿者:遊具  投稿日:2004年06月11日(金)17時16分50秒
「じゃあね…!」
「さゆ、り……あのっ…」

卓也のつまった声が聞こえる。

「ばいばいっ!!卓也…!!」

振り返って、笑顔でそう言って、今度こそ本当に屋上を出た。
その後のことは知らない。
知りたくもない。

その後のことなんて。

ばいばいって卓也に言ったときの私も嘘だった。
私はどこまで嘘をつく気なのだろう?

次の収録のときは、流石に卓也とも気まずかったけど、
その次は普通だった。

私が、普通だよって感じで笑ったから。
60投稿者:遊具  投稿日:2004年06月11日(金)17時18分05秒
そして、11月。

ばれる。
今日、ばれる。

山ちゃんと私の秘密が。
セイカクに言うと、2人だけの秘密じゃない。
知ってる戦士はいっぱいいたけど、みんなで決めたんだ。

他の戦士に発表があるまでは、絶対に黙っていようって。
決めたんだ。
61投稿者:遊具  投稿日:2004年06月11日(金)17時20分30秒
「今年の卒業戦士を発表する。
 卒業する戦士にはもう言ってあるが。」

言われてない戦士達が、みんなで口々にえ?嘘?なんて声出してる。

「みんな言ってくれなかったんだー。
 言ってくれれば良かったのになー。
 でも言われなかったってことは、俺は違うんだぁー。
 な、小百合もだろ?」

卓也がいつもの笑顔でそういう。
私は、返事を返さず、笑顔を見せた。

卓也の顔がどんどん曇ってくる。
そして、ナマエが呼ばれた。
62投稿者:遊具  投稿日:2004年06月11日(金)17時24分04秒
「山元竜一、岩井七世、俵小百合…………」

『俵小百合』
しっかり呼ばれちゃったな。
ナマエ。

「嘘……だろ?小百合…が卒業?どう…して?」

私の卒業、美咲の卒業、結花の卒業。
みんなが一番驚いてたのは、この3人だった。

「もともと、3年契約だったんだ。私。」
「…………」
「あのとき…山ちゃんが言いかけたのはコレ。
 せっかく黙ってたんだから、言いたくなかったんだ。」
「…………」

卓也は黙って俯いた。

ちひろや里穂。
望、幸生、公輝といった、仲の良かったヒトたちがこっちに寄ってくる。
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