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*小説です*
1*小説です* 投稿者:ブーとん  投稿日:2003年10月17日(金)13時40分55秒
はじめまして。小説書きたいと思います。
よかったら読んで下さい^^



2
☆レス110までを見る☆
111投稿者:ブーとん  投稿日:2003年11月27日(木)13時01分12秒

「…七世に、言われたんだ。自分の気持ち、しっかり相手に伝えて来いって…」

七世に…?
その瞬間、胸がぎゅう、と締め付けられる感じがした。
七世は、山ちゃんが好きなのに。
本当に、愛しているのに。
七世は…。

私は?

「……まって…」

自然に、口から言葉が出た。
頭の中はめちゃくちゃ。
体は小刻みに震えてる。

私は、なにしてるの?
なにが、したいの?
112投稿者:ブーとん  投稿日:2003年11月27日(木)13時08分56秒
「…東奈?」

「…ちょっと…まって…」

頬に、冷たい水が流れる感触がした。
でも、いつのまにか雨が降っていたから。
それは雨なのか、涙なのか、解らない。

「…東奈!!」

気づくと、私はベンチから立ち上がり、全速力で走り出していた。
同時に、山ちゃんが私の名前を呼ぶのが遠くの方で聞こえた。
足元は水溜りのせいでびちゃびちゃだし、せっかくの新しいワンピースも、少しずつ雨で湿っていく。
随分走って、どこまで来たかと後ろを振り向けば、公園はもう随分遠くになっていた。
微かに公園の外灯の光が見える。
「…わけ、わかんないよ…っ」
傍にあった外灯の柱に背中を預けて、そのままズルズルとしゃがみこんだ。
雨は、私の体に容赦なく降りかかっていた。
113投稿者:ブーとん  投稿日:2003年11月27日(木)13時11分40秒
「おはよー」
次の日、天てれの収録で、私はNHKに来ていた。
なんとなく後ろめたい気もしながら、控え室のドアを開ける。
「おはよー、東ちゃん!いつもより遅いねぇ!なんかあったの?」
ちーちゃんが、すぐに私の方に駆け寄ってきた。
「あ、ちょっと寝坊しちゃってさ、昨日遅かったから」
私は、心配してくれるちーちゃんに笑顔で答える。
「そっかぁ。あ、もうみんな着替えちゃったから、早く着替えてきてね!」
ちーちゃんは満面の笑顔で私の背中を押してくれる。
上着を脱いでハンガーに掛けると、近くの椅子に七世が座っていた。
「…あ、おはよう七世」
なるべく自然な笑顔で七世の横顔に話しかける。
「あ、東奈…おはよう」
七世も、少し引きつった笑顔で返す。
明らかに、いつもの私達ではなかった。
114投稿者:ブーとん  投稿日:2003年11月27日(木)13時15分51秒
収録は順調に進んで、そろそろ終盤に近づいてきた。
もう何時間座りっぱなしでいるんだろう。
いつものことながら、だんだん背中が悲鳴を上げてくる。
それでも、皆姿勢を正して一生懸命収録をこなしていく。
「…じゃあ、お知らせの方を…東奈!よろしく!」
加藤さんのセリフ。その後、私がボードを持って、お決まりのセリフを言う。
でも、何故かセリフが出てこない。
なんとか口を開いてみるものの、所々つっかかってしまって、上手くいかない。
結局、私のセリフの所だけを二回やり直して、やっとOKをもらった。
115投稿者:ブーとん  投稿日:2003年11月27日(木)13時18分56秒
「東奈ー」
収録が終了して、ずっとお尻とくっついていた椅子からやっと開放されると思った時、熊ちゃんが向かいの椅子からやってきた。
「なに?」
「なんか今日の東奈変だよ?なんかあった?」
熊ちゃんは、私の隣の椅子(さっきまで小百合が座っていた)に腰を下ろすと、心配そうな顔で私の顔を覗きこむ。
「ううん、なんでもないよー」
「ふぅん」
熊ちゃんに適当に返事を返して、立ち上がろうとしたその時。
視界がぐるりと一回転したような感覚が起こり、
次の瞬間、「ゴンッ」という鈍い音がスタジオに響く。
それと同時に、頭のてっぺんにじわじわと痛みを感じた。
「東奈!?」
意識が遠のいて行く中で、熊ちゃんの声が微かに聞こえた。
116投稿者:ブーとん  投稿日:2003年11月27日(木)13時24分55秒

「……?」

目が覚めた。
とりあえず、周りを見渡してここが控え室だということは理解した。
まだぼーっとする頭をなんとかフル回転して、自分が倒れて運ばれたんだと気づく。
試しに、体を起こしてみれば、頭がズキズキ痛んでやってられない。
仕方無く、そのままおとなしく寝ていることにした。

「あ、東奈!」
熊ちゃんの声が聞こえて、スタッフの人や七世達が歩いてきた。
117投稿者:ブーとん  投稿日:2003年11月27日(木)13時28分07秒
「大丈夫?熱があったなんて、なんで早く言わないの」
女性スタッフさんが、冷えたタオルを私の額に乗せると、厳しい口調で言った。
「……っ…」
まさか熱があるなんて思わなかった。朝からなんとなく具合が悪かったけど。
でも、そんなことよりもっと驚いたことが。

「…東奈?」
熊ちゃんが、不審な目で私を覗き込む。
「東奈ちゃん?どうしたの?」
やぎっちのきょとん、とした声も聞こえてくる。

「…ぁ…」

喉から、力いっぱい声を出してみる。
だけど、実際に口から出るのは頼りない音。
「もしかして…」
誰かの弱々しい声がして、みんながざわざわと騒ぎ出した。
私はそんなみんなの中で、この状況を理解するのに精一杯だった。
   
声が、出ない。
118投稿者:ブーとん  投稿日:2003年11月27日(木)13時36分03秒
「ちょ、ちょっと待てよ…東奈、なんか言ってみろ」
明らかに慌てた様子で、熊ちゃんが私の肩を両手で掴んだ。
「…っ…」
頑張って喉に力を入れてみるものの、喉がギリギリと痛んで上手く声が出せない。
私は、首を左右に振りながら熊ちゃんを見上げる。

「うそ…!声が出なかったら、どうするの!?そろそろライブもあるんだよ!?」
小百合が、真っ青な顔をして大きな声を上げた。
「…み、みんな落ち着けって!ただの風邪だろ?すぐ治るよ!な?東奈」
熊ちゃんが、笑顔でみんなに言った。
私も、できるだけ笑顔で頷く。
「とりあえず、病院行こう、東奈。お母さんには連絡しておいたから、もうすぐ迎えに来てくれるって」
スタッフさんが、私のバックを持ってきて、言った。
119投稿者:おもしろいです。  投稿日:2003年11月27日(木)21時19分03秒
これからどうなっていくのか楽しみです。
120投稿者:素朴な疑問ですが、  投稿日:2003年11月27日(木)21時44分53秒
熊ちゃんと七世は別々に遊園地から帰ったのですか??
121投稿者:気になるよね  投稿日:2003年11月28日(金)17時13分06秒

122投稿者:かいてください  投稿日:2003年11月29日(土)21時36分30秒
お願いします。
123投稿者:あげ  投稿日:2003年11月29日(土)22時27分20秒

124投稿者:おもしろいです。  投稿日:2003年11月29日(土)22時44分38秒
がんばってください!!
125投稿者:あげ  投稿日:2003年11月30日(日)20時26分28秒
   
126投稿者:あげ  投稿日:2003年12月01日(月)17時48分25秒
  
127投稿者:続き書いてェェ!!!  投稿日:2003年12月02日(火)15時59分54秒
 
128投稿者:ブーとん  投稿日:2003年12月02日(火)17時41分21秒
遅くなってしまってスイマセン!><応援してくれる皆様、有難う御座いますvv
>120サン☆それについては、これからの東奈と七世の会話で出てくると思うので、それを読んでみて下サイ*^^*
*************
「ただの風邪で良かったわね…」
病院の帰り道、運転席のお母さんが呟いた。
私は無言で頷く。
病院の先生曰く、「喉にあまり負担を掛けないで」ということで、それから無理に声を出すのは止めた。
「ライブまでに直しちゃおうね」
お母さんが私に微笑んで言った。
私はそんなお母さんの態度がいつもと違うのを感じ、照れ隠しにそっぽを向いた。
129投稿者:ブーとん  投稿日:2003年12月02日(火)17時45分08秒
それから、しばらくは天てれに出演するのを休み、ほとんどは家で生活することになった。
たまに、てれび戦士のみんながお見舞いに来てくれることがある。
特に熊ちゃんと小百合はライブの心配もあるのか、「早く直しちゃおう」といつも呟いている。
今日も、熊ちゃんと小百合とちーちゃんがお見舞いに来てくれていた。
「こんにちはー!東ちゃん、喉の調子どう?」
ちーちゃんがいつもの明るい声で話しかけてくる。
私は、近くにあったメモ帳に『治るのにはもうちょっとかかるって』と書いて、ちーちゃんに見せた。
「あ、そうだ!七世から手紙預かってきたよ。ホラ」
小百合が、上着のポケットから小さな紙を取り出した。
私は、それを受け取り、ゆっくりその紙を開く。
そこには、七世の可愛らしい字で、こう書かれていた。

『3時に公園で』
130投稿者:ブーとん  投稿日:2003年12月02日(火)19時57分14秒
熊ちゃん達が帰った後、私は近くの公園に向かった。
私と七世の間で、『公園』といえば、一つしかない。
遊具は、滑り台とブランコしか無くて、少し寂しい雰囲気が漂う公園。
七世に始めて会った場所。

「…あ、東奈!こっちこっち!」
公園に着くと、すでに七世がブランコに座って待っていた。
私は、首に巻いていたチェックのマフラーを巻き直すと、七世の隣のブランコに腰を下ろした。
「覚えてるー?ここ、私達が始めて会ったとこなんだよね」
七世が、遠くを見つめながら呟く。
私は、少し微笑みながら頷いた。
「その日、雨降っててさ。私が傘忘れて雨宿りしてたら、東奈が「これ使って」って。すっごいカッコ良かったよー!男の子かと思ったもん」
七世がケラケラ笑いながら言った。
「それから、天てれのオーディションで隣になってね。私はすぐ気づいたのに、東奈は気づかなくって。話しかけるのにすごい緊張したんだよー?人違いだったらどうしよう、とか」
七世は、その時のことを今でも覚えているらしい。
懐かしそうに、その時のことを語る。
正直、そこまで覚えているものか、とビックリした。
131投稿者:ブーとん  投稿日:2003年12月02日(火)20時06分47秒
「…いろんなことあったけど、それなりに幸せだったんだよねー…」
散々、思い出話を話して、一息ついた頃、七世がまた口を開いた。
「…東奈、山ちゃんから言われた?」
七世が何のことを言っているのか、聞かなくても解った。
ゆっくり、頷く。
「…そっかぁー…」
「…」
「私ねぇー、知ってたんだよ。山ちゃんが東奈のこと好きだ、って」
妙にハキハキした口調で、七世は言う。
「知ってて、山ちゃんに近づいたの。無謀だって、解ってたけどね」
「…」
「でも、このまま山ちゃんと付き合ってたら、なんとかなると思った。そのうち、山ちゃんも私のこと好きになってくれるかな、とかムシの良い事考えて、」
段々、目頭が熱くなってくる。
七世は、本当に山ちゃんが好きなんだ。
なのに、自分の気持ちは無視して、山ちゃんにあんなこと言って。
優しすぎるよ、七世…。
132投稿者:更新されてる!!  投稿日:2003年12月02日(火)21時09分46秒
うれしいです!!
133投稿者:友美子  投稿日:2003年12月02日(火)21時41分48秒
今日はじめて読みました!!
すごーく続きが読みたいです!!
早く書いて〜!
ブーとんさん頑張ってこれからも続きかいてください!!
134投稿者:???  投稿日:2003年12月02日(火)21時43分10秒
続きが楽しみ!!
これからもがんばってください!
135投稿者:ブーとん  投稿日:2003年12月03日(水)14時27分31秒
皆さん有難う御座います!頑張ります!*^^*
*****************

「あの日、遊園地に行った日にね、山ちゃんが東奈のとこ行った後。帰り道でさ、熊ちゃんに怒られたの。「お前はズルすぎる」って…」
途中で、七世の頬に一筋の涙が落ちた。
「東奈が山ちゃんのこと好きだって知ってて、それでも、山ちゃんを束縛して。最低だって。怒られた」
七世の顔は、涙でぐしゃぐしゃで。言葉を聞き取るのも少し困難だった。
「…いつだって、熊ちゃんが一番正しいんだね。少なくとも、私達よりは」
七世が言った言葉は、全て私の胸に突き刺さる。
今、もし私が普通に言葉を発せられたら。
七世を慰めたり、できただろうか。
きっと、無理だ。
136投稿者:ブーとん  投稿日:2003年12月03日(水)14時32分47秒

「…ごめんね」

七世が、私の顔をまっすぐ向いて呟いた。
「ほんとに、ごめんね…」
七世が言い終わらない内に、私の頬にも涙が流れた。
「…んで、東奈が、泣くの…?」
私は必死で首を横に振り、精一杯の気持ちを伝えようとした。
そんな私を見て、七世は更に号泣する。
「…悪いのは、私だよぉ…!」
七世は、両手で顔を隠し、しゃくり上げながら何度も謝罪の言葉を呟いていた。

私達は、何時間もの間、その場所で。思い出の公園で。
冷たい涙を、流し続けた。
137投稿者:友美子  投稿日:2003年12月03日(水)16時59分12秒
速く続きがよみたい!!
138投稿者:せつないね・・・。  投稿日:2003年12月03日(水)21時35分14秒
これからどうなっていくか楽しみです。
139投稿者:ブーとん  投稿日:2003年12月04日(木)18時38分45秒
友美子サン&138サン☆ありがとう御座いますvv頑張ります!*^^*
*************

翌日。昨日、長時間寒空の下に居た所為か、今日はあまり喉の調子が良くない。
朝から、喉がイガイガして異常に咳が出る。
自室でぼーっとしていた時、玄関のチャイムが鳴った。
お母さんが外出していることを思い出し、少し駆け足で玄関へ向かう。
「…あ、すいません。僕…って、東奈じゃん」
扉を開ければ、きょとん、とした顔で立っている熊ちゃんが目に入った。
返事の代わりに、笑顔で返す。
「いや、収録の帰りに寄ってみようかと思ってさ。おじゃましまーす」
外が異様に寒かったので、すぐに熊ちゃんを玄関に入れ、ドアを閉めた。
そのまま、階段を上がって自室に招待する。
140投稿者:ブーとん  投稿日:2003年12月04日(木)18時50分09秒
「どーよ?喉の方」
一階からオレンジジュースを持って来て、テーブルの上に置いた時、熊ちゃんが呟いた。
私は首を横に振る。ってか今日はちょっと調子悪いんだけど。
「そっか。まぁ、慌てることないよ。ライブまでまだ随分時間あるし、練習もまだ始まらないし」
いただきます、と、ジュースの入ったコップを手に取り、淡々と話す熊ちゃん。
私も、もう一つのコップを手に取り、コクン、と頷いた。
「…あ、そうだ」
「?」
いきなり、熊ちゃんが思い出したように口を開いた。
「山ちゃんがさ、」
『山ちゃん』という言葉を聞けば、心臓が飛び上がる様な感覚に襲われるのは、今に始まったことではない。
「…明日、来るって。お見舞いに」
141投稿者:友美子  投稿日:2003年12月04日(木)21時06分45秒
東奈ちゃんどうするんでしょ〜??
速く続きよろしくお願いします!!
あと友美子って呼び捨てでいいよ〜☆★
142投稿者:おもしろい  投稿日:2003年12月04日(木)21時16分47秒
続きが気になる!!!
143投稿者:あげます。  投稿日:2003年12月05日(金)22時56分54秒
続きが気になります。
144投稿者:続き書いてェ★めちゃ楽しみデス!!!  投稿日:2003年12月06日(土)22時26分39秒
 
145投稿者:ブーとん  投稿日:2003年12月06日(土)23時55分09秒
皆様ありがとうございます☆更新遅くてごめんなさい><なるべく早く書けるように頑張ります!
友美子チャン*呼び捨ては気が引けるので(笑)チャン付けで呼ばせてもらいますネ!*^^*
***********
心臓が、異常な速さで動いている。
背中にだらだらと嫌な汗が流れるのを感じた。
「…お前、逃げんなよ」
熊ちゃんが、私の目をまっすぐ見つめて、言った。
「例え、誰かを傷つけてしまうことになっても、」

…―――答えは、ひとつだ。

そういい終えると、熊ちゃんはいきなり立ち上がり、部屋を出て行ってしまった。
私は、ただ呆然とその場に座り込んだまま。

『いつだって、熊ちゃんが一番正しいんだね、』
『東奈が、山ちゃんのこと好きだって』
『…ごめんね』

昨日の七世の言葉が、何度も何度も頭の中で響いて、止まらない。
一階から、玄関の扉が閉まる音が聞こえた。
146投稿者:あげます!!  投稿日:2003年12月07日(日)21時46分22秒
がんばってください!!
147投稿者:もっといっぱい書いてほしぃ★  投稿日:2003年12月08日(月)14時46分21秒
 
148投稿者:かいてください  投稿日:2003年12月09日(火)21時30分36秒
お願いします。
149投稿者:ブーとん  投稿日:2003年12月10日(水)14時02分47秒
窓の外から聞こえる雨の音で、目が覚めた。
もう朝なのかと、枕元にある時計を見れば、針は10時を指していた。
とりあえず、起き上がろうと体を起こしてみる。
「――…っごほっごほごほっ…」
喉から「ヒー、ヒー」という嫌な音が聞こえ、咳が止まらない。
なんとかパジャマから普段着に着替えて、部屋を出て行こうとしたら、玄関のチャイムが鳴った。
少しして、一階からお母さんの声が聞こえてきた。
「東奈ー!山元くんー!」
すぐに一階に下りていこうとしたが、すでにお母さんが階段まで山ちゃんを連れてきていた。
「あ、ジュース持ってくるわ。山元くん、オレンジ大丈夫?」
お母さんが妙にウキウキした口調で山ちゃんに言った。
「あ、はい」
山ちゃんは、少し緊張しているのか、硬い表情で返事を返した。
お母さんが鼻歌を歌いながら階段を下りて行き、山ちゃんと私の二人きりになってしまった。
とりあえず、部屋の扉を開けて中に通す。
「…久しぶり」
中に入って、扉を閉めた時、山ちゃんがゆっくり口を開いた。
150投稿者:ブーとん  投稿日:2003年12月10日(水)14時08分01秒
「知らなかった、風邪引いてたなんて」
お母さんがテーブルにジュースを置き、部屋を出て行った時、山ちゃんが苦笑いして言った。
そういえばあの日、山ちゃんはスタメンじゃなかったんだ。
山ちゃんは、テーブルの上のコップを手に取り、一口飲んだ。
「…ごめん、お見舞い来れなくて」
なんだかひどく余所余所しい口調で、山ちゃんは呟く。
私は、出来るだけ自然な笑顔でゆっくり首を振った。
「…ほんとに、声、出ないんだ」
コップをテーブルに置いて、山ちゃんは私と目線を合わせずに言った。
ゆっくり、頷く。
少し沈黙が流れて、山ちゃんがまた口を開いた。

「…七世と、別れた」

今度は、しっかり目線を合わせて。
私の目を見つめて、言った。
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