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赤い記憶5 赤い記憶5

「けど、君は得点王になったものの、チームは三回戦で負け…そして、君はキャプテンになれなかった…」

 吉田が言うと、公輝はコックリとうなずいた

 去年、卓也が占いのソフトで特許を取ったとき、里穂はアイツの事を尊敬するような眼差しでみてました
 オレにとって、それがどんなに苦痛だったか…
 オレには、里穂しかいないのに…
 公輝の家庭は、ほとんど崩壊状態だった
 家庭に居場所がなかった公輝の気持ちが、ますます里穂への思いを滾らせていった…アイツは、また新しいソフトを開発しているそうでした
 そうなれば、また、里穂の気持ちが卓也に傾いてしまう…
 オレは、あせっていました
 オレの里穂への気持ちは、強くなる一方なのに、現実のオレは、里穂から離れていっているように感じていました
 オレの里穂への気持ちが、どうしても里穂を自分の物にしたいという欲望へと変わって行きました

 そして、あの日が訪れたんです…

 里穂は、クリスマスの日は、うちに誰もいなくなるから、クリスマスパーティーをしようといいました
 里穂の両親も、妹もいない、三人だけのパーティーを…
 それを聞いた時から、オレはおかしくなっていた

 パーティーが始まるのは、午後六時から…
 それより早く行けば、里穂は一人でいるに違いない…
 そうすれば…、里穂と二人だけ…
 卓也がくるにしても、それは後のこと…
 いや、上手くすれば、里穂を自分の物にできたところを、卓也に見せつけてやることができる…

 そして、オレは12/25.約束の時間よりも早く、里穂の家に行きました

「あれ〜?、もう来たの?まだケーキ焼けてないよ!」
 里穂は、そういいながら、何の疑問も持たずにオレを家に招き入れました
 オレの心臓が、爆竹でも鳴ってるみたいに音を立ててました
 オレは、里穂の部屋に行き、ベッドに腰をかけた
 しばらくして、里穂がコーヒーを持ってきました
 あらためて見ると、里穂は思ってたよりもずっと綺麗だった…
 小柄だけど、胸はハッキリと膨らみがわかったし、腰つきも、全体の雰囲気も、もう子供じゃありませんでした
 オレの欲望は、すでに理性を蹴散らしていました…

「なあ、子供のころにやった遊び、覚えてる?
 ベッドに一緒に座ってやるやつ…?」
「え〜?、何ソレ?、そんなのやったっけ?」
 もちろん、そんな遊びはなかった
「じゃあ、教えてやるから、こっちに座ってみろよ」
「うん」
 里穂は、なんの警戒心も持たずに、公輝の横に座った…
「もっと近くに…」
 公輝は、里穂と肌がくっつくほどに近づいた
 9年ぶりに感じた里穂の温もり…
 だが、それは、今は公輝の欲望を煽り立てるだけのものだった…
「里穂!」
 公輝は、一気に里穂をベッドに押し倒した!
「ちょっ!、公輝、何するの!、やめて!」
 里穂は、必死で公輝を押しのけようとした
「里穂、里穂、オレは、ずっと前から、お前のことを…」
 そういいながら、言葉にするのも煩わしく、公輝は里穂の唇に、思いっきり吸い付いた!
「ん…!!、んん…!!!!!」
 里穂が、手足をばたつかせて抵抗する
 だが、里穂と公輝では、体格も力もまったく違った
 公輝は、サッカー部のエースなのだ
「ハァ…ハァ…」
 里穂の唇を味わった後、里穂を押さえつけながら、里穂の胸に顔を埋めた
 凶悪的なまでの柔らかさだった
 里穂の両手を、左手一本で押さえつつ、右手で里穂の乳房を鷲づかみにした
「痛い!!!」
 里穂の顔が、苦痛に歪んでいる
「里穂、里穂…」
 だが、今の公輝には、そんなものは関係なかった…
 今の公輝は、里穂の体を貪るだけの、欲望の塊なのだ…
 公輝は、里穂の服を脱がせ入った…
 公輝がつかんでいた里穂の腕から、その抵抗がなくなったからだ…
 里穂は、両手で顔を隠しながら、涙を流していた…

 消えそうなくらい小さな嗚咽が聞こえたが、公輝は無視していた…
 だが、次に里穂が発した言葉が、公輝の意識を一瞬で現実へと引き戻した

(卓也…)

「………!?」
 それは、蚊の羽音ほどの小さい声だったが、公輝の耳には、ハッキリと聞こえた
 その瞬間に、公輝の心の中で、何かが壊れて行った…

 なぜ、なぜ卓也の名前なんか呼ぶんだ…

 オレは、オレはずっと里穂を守ってきた…

 サッカーを始めたのも、ファッションを磨いたのも、すべて里穂のためなんだ…

 それなのに、里穂は、オレを受け入れてくれなかった…

 それだけならまだしも、卓也の名前を呼ぶなんて…

 公輝にとって、里穂はすべてと言っていい存在だった
 このまま、里穂を自分の物にしても、里穂はきっと自分から離れていくだろう…
 そして、卓也と…

 公輝の頭は、パニック状態になった…
 里穂が自分から離れる…
 それだけでも、この世から太陽が消えるに等しいことなのだ…
 それだけじゃなく、卓也に里穂を奪われる!?

 恐怖、後悔、絶望、憎悪…
 あらゆる負の感情が、公輝の中で爆発した…

 このままだと、卓也に里穂を奪われる!?

 公輝は、それを止める術を、一つしか思いつけなかった…
 卓也を…、永久に里穂の前から消すことだ…

 公輝は、里穂の部屋をでると、キッチンにあった果物ナイフを手に取った
 そして、池袋方面に向かって歩き出した…

〜JR池袋駅〜

「お!、やっぱり雨が降り出した…」
 ノートパソコンを片手に、卓也が言った
 卓也の開発した天気予報ソフトの予想に、ピッタリの時間で雨が降り出したのだ
「ふふふ、なかなかいいデキだ…、このソフトもイケるぞ〜」
 そんなことをつぶやきながら、卓也は傘をさして歩き出した…
 しかし、その足は、ほんの数歩で終わった
 卓也の目の前に、一人の男が立っていた…
「なんだ、公輝じゃん…。どうした、こんなところで?」
 卓也は、別段疑うわけでもなく、普通に語りかけた
「ははぁ〜、傘を忘れたんだな、TVの予報じゃ、夜中に入ってから降りだすとか言ってたしな〜
 どうせなら、メールで教えておけばよかったかなぁ?」
 卓也は、ソフト開発の成功に浸っているようだった
 公輝の顔色がおかしいのに気づくのに、時間がかかった?
「どうしたんだ、気分でも悪いのか?
 …とりあえず、入れよ、風邪引くぞ…」
 そういいながら、卓也は傘を公輝に差し出した…
 しかし、次の瞬間、卓也の腹部に、鋭く、鈍い痛みが走った…
「な…、公輝…?」
 何が起こったのか分からない卓也…
 深く刺さったナイフから、どんどん血が流れていく…
 卓也の足から、力が抜けていく…
 雨に濡れた地面に、卓也の血が広がっていった…

「…それが、あの日起こったすべてです」
 公輝は、一気に喋り終えると、疲れたように息をついた
「…携帯は、里穂ちゃんを襲ったときにベッドの脇に落としたんやな?」
「…はい、多分」
 これが、あの日におこったすべてだった…

 あまりに悲しい結末を迎えた、卓也と公輝の友情…
 卓也に里穂を奪われてしまう…
 公輝は、里穂への思いだけで生きてきた
 ソレが奪われることへの恐怖が、この事件の動機であった…

〜家庭裁判所・控え室〜

「ようやく終わりましたね、この事件も」
 コーヒーを出しながら、係官が言った
 あとは、このことを判事に報告し、刑事罰を与えるか、更正施設に入れるかを判断してもらうだけである
「そうやろか…?」
 吉田は、腑に落ちない…という顔で言った
 公輝は、事件が起こった時のことについては話したものの、ほかの事については、まだ口を閉ざしたままだった…
 卓也を殺したことを反省しているとか、後悔しているとか…
 そういうことに関しては、いまだ語っていない
「そんなことを言っても、仕方ないでしょう
 あんなに喋らないんじゃ、改悛の情が見られないとして、刑事罰相当と判断されても…」
 そう、それである…
 このまま、公輝が喋らなければ、更正は不可能として、少年院に送られる可能性が高いのだ
 せめて、一言でも、卓也を殺したことを後悔している…
 そういってくれれば、刑事罰を逃れられるかもしれないのに…

 刑事罰を与えるか、更生施設に入れるかについては、明確な基準はない
 だが、わずかでも改悛の情か認められれば、刑事罰を逃れる可能性はあるのだ
「なあ、このこと、もうちょっとだけ、判事には黙っといてくれんか?」
「ええ!どうして!」
 吉田の言葉に、係官が思わず飛び上がる
 捜査官の仕事は、調査して報告するまでである
 最終的に判断するのは、判事の仕事なのだ
 これを黙っているとなると、重大な職務規程違反になってしまう
「あんなに仲のよかった三人を、こんな形で別れさせたくないんや
 公輝君は、なにも喋らんが、きっと卓也君を殺したことを、心から悪い事をしたと思ってるはずなんや
 いまは、事件のショックや、自分自身への怒りで、心を閉ざしてるだけなんや
 オレは、なんとか、その心を開かせたい
 頼む、協力してくれ!」
 吉田が、頭を下げた
 自分より階級が上の吉田に頭を下げられると、係官もどうしようもなかった
「わかりましたよ、でも、いつまでも黙っとくわけにはいきませんよ」
「わかってる。秘密が守れるのは、せいぜい三日くらいや
 それまでに、絶対に公輝君の心を開かせて見せる…」
 吉田は、その決意を胸に、裁判所を飛び出した


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