このページは、@wiki で 2019年01月18日 03:33:38 GMT に保存された http://web.archive.org/web/20060516192343/http://s.freepe.com/std.cgi?id=ushi1109&pn=01 キャッシュです。
ユーザがarchive機能を用いた際、@wikiが対象サイトのrobots.txt,meta情報を考慮し、ページを保存したものです。
そのため、このページの最新版でない場合があります。 こちらから 最新のページを参照してください。
このキャッシュ ページにはすでに参照不可能な画像が使用されている可能性があります。
@wikiのarchve機能についてはこちらを参照ください

@wikiはこのページまたはページ内のコンテンツとは関連ありません。

このページをキャッシュしたwikiに戻る

赤い記憶1 赤い記憶1

キャスト

主演 前田公輝

   飯田里穂
   井出卓也

   レッド吉田(TIM)

   山元竜一(友情出演)

〜JR池袋駅前〜

 突然降り始めた雨に、人々は慌しく駆け回っている
 一人の少年が、駅から出てきた
 片手には傘、片手にはノートパソコンを持っている
 満足そうに笑いながら、その少年は傘を差して歩き出した
 …ふと、その少年の足が止まった
 少年の目の前に、もう一人の少年が雨に濡れながら立っていたのだ
 二人は、何事か話し始めた
 傘を差している少年はにこやかだが、雨に濡れている少年の表情は暗く、硬かった
  傘を差した少年が、雨に濡れた少年に傘を差し出した
 その瞬間、傘を差した少年の腹部に、鈍く、重い痛みが襲ってきた
 少年は、雨に濡れた地面に両膝をついてうずくまった…
 少年の意識が、どんどん薄れていった…

 少年を中心に、歩道が赤く染まって行った…
 赤く…

〜東京家庭裁判所・第四審議室〜

「あれが、僕の担当する少年ですか…?」
 マジックミラーになっている窓から中を窺いながら、家庭裁判所捜査係官の吉田が言った
 事件を起こした少年は、弁護士に付き添われているが、俯いたままで表情はよく見えない
「ええ、まだお正月なのに、スイマセン…」
 係官が吉田に言った…
「なにしろ、事件を起こして一週間も立つのに、こちらの取調べには完全に黙秘しているんです」
 係官の声を聞きながら、吉田は少年が起こした事件の調書に目を落とした 

 氏名 前田公輝 年齢 14歳 私立HK学園二年生

 罪状は…殺人罪

 昨年の12/25、クリスマスの夕方、公輝は幼馴染で、同じくHK学園に通う井出卓也(14歳)をナイフで殺害。その場で逮捕された
 多くの目撃者があり、公輝の犯行であることは明らかだが、彼は黙秘を続けていた

 吉田は、家庭裁判所の少年事件担当の捜査官だ
 少年犯罪が増加する中で、少年法が改正され14歳からでも刑事罰を受けるようになった
 公輝も14歳であるから、当然、刑事罰相当とされ逆送のうえで少年院送致となるところだが、少年事件の場合は、被告人が矯正可能と判断されれば、然るべき矯正施設への送致とすることもできる
 吉田の仕事は、この事件を捜査し、公輝を少年院に入れるか矯正施設に入れるかを決定することである
「結局、動機も、それまでの足取りも、なにもかもわからないってことか」
 吉田はため息をつきながら言った
 警察としては、すでに犯人を逮捕しているから、その時点で仕事は済んでいるわけで、残りの面倒なことは家裁に押し付けてしまおうという事だ
「仕方ない、とりあえず話してみるか…」
 そういうと、吉田はゆっくりとドアを開いた
「前田…公輝くんだね…?」
「………」
 吉田は、公輝の正面に座り、話しかけたが、公輝は俯いたまま、何の反応も示さなかった
「僕は、君の担当捜査係官で、吉田といいます。ヨロシク」
「………」
 少し声を大きくして話しかけるが、公輝は無反応だった
「吉田さん、彼は確かに取り返しのつかない事件を起こした。しかし、まだ未成年なんです
 まだ事件のショックが抜けきれてないようですから、言葉には気をつけてください」
 弁護士にたしなめられながら、吉田は公輝の顔を見た
 下を向いて俯いているから、ほとんど顔はわからない
 調書の顔写真を見る限りだと、かなりの男前だったが…
「じゃあ、公輝くん。君が事件を起こしたとき…、つまり、君が幼馴染を刺した時のことを話してくれるかな…」
 やんわりとした口調で、吉田が言った
「………」
 それでも、公輝にはなんの反応もなかった…
 その後、吉田は何度か質問を繰り返したが、公輝は貝のように口を閉じたまま、何一つとして反応しなかった
(どうしようもないやないか…)
 公輝に喋ってもらわないと、吉田にはどうしようもなかった
 吉田は、調書に目を通した
 現行犯で、言い逃れはできない状況であったから、警察の現場検証も、そこまで大したことは行われてはいなかった
 しかし、ひとつだけ、事件に関わりのありそうな情報があった…
(あんまり気が進まんが、なにか喋ってもらわんと、どうにもならん。このネタでゆさぶってみるか…)
「君の調書…、見せてもらったよ。ずっと黙秘を続けているね…
 実は、事件のデータに、ひとつだけ面白いデータがあるんだ…
 この、凶器のナイフについてだよ…」
 そういうと、吉田は膨大な調書の中から、凶器に関するデータを公輝の前にさしだした
 凶器は、刃渡り15cmの果物ナイフ
 どこにでもある、何の変哲も無い果物ナイフである
「君は、事件を起こした時、雨に濡れていた。だから、服なんかについた指紋は流されて発見できなかった
 しかし、このナイフだけは、よほど強く握り締めていたんだろう。残っていたよ、君以外の人物の指紋が…。その指紋の主は…、君と、被害者の井出卓也君と幼馴染の、飯田里穂ちゃんのものだった」
「…!?」
 公輝が、ようやく顔を上げた
 吉田が初めて見る公輝の目は、明らかに取り返しのつかないことをやってしまったことを理解している目だった
「よかったら、話してくれんか?
 このナイフは、どこから持ってきたんや?、君がナイフを購入した形跡はない。つまり、このナイフは、どっかの家から持ってきたもんや」
 いつのまにか、関西弁に戻ってしまった吉田
 だが、公輝は、歯を食いしばったまま、無言を貫き通した
「もういいでしょう、今日は。あまり彼を追い詰めると、ますます何も喋らなくなりますよ」
 公輝の様子の変化に気づいたのか、弁護士が取調べを無理やり終わらせようとした
「まってくれ、じゃあ最後に、どうして君たちは池袋駅前で出会ったんだ?
 それだけは教えてくれ!」
 吉田が必死に食い下がる
 公輝は、ほんのわずかだが吉田の目を見た
 だが、すぐに視線をそむけると、審議室を出て行ってしまった…
「ふぅ〜、結局、なにも喋りませんでしたね」
 一緒にいた係官が言った
「ああ、しかし、ひとつだけ分かった。何も喋らなかった彼が、ひとつだけ見せた反応…」
 吉田は、再び調書に目を落とした
 唯一といっていい、事件のデータ
 ナイフに残っていた、里穂の指紋である
 どういう形かは分からないが、この事件には、里穂が関わっているのだ
「どうするんです、これから?」
 係官が聞いた
「しゃあないやろ、明日、HK学園に行ってみるよ。そして、飯田里穂の家にも…」
 事件の手がかりは、里穂の指紋…
 それだけだった…

〜翌日・私立HK学園中等部前〜

 まだ冬休みだから、生徒は登校していない
 学校では、連日のように教師たちが会議を開いている
 同級生を殺害するという、ショッキングな事件なわりには、報道陣の数は少ない
 HK学園は、幼稚舎から大学まで一貫教育の私立校だ
 この学園の卒業者には、財政界の大物と呼ばれる人物が多く、そういう人たちの圧力で、報道が制限されているのだろう
 吉田は、事前に約束したとおり、2-B組の教室に向かった
 吉田は、昨夜のうちに調書を読み直していた。この事件に関わりがあると思われる、三人を中心に

 加害者である前田公輝は、いわば学園の人気者だった
 サッカー部のエースで、イケメンで、ファッションにも独自のセンスがあった
 バレンタインのチョコの数も、ハンパではなかったらしい

 それに対して、被害者の井出卓也は、学園内では目立つほうではなかった
 今時の中学生にしては小柄で、性格も大人しいほうだった
 ただ、コンピュータのプログラムや、ソフトウェアの開発にかけては天才的で、いくつか特許も持っている

 まったく正反対のタイプだが、幼稚舎のころからの親友で、幼馴染だった

  そして、この事件の唯一のカギを握っていると思われるのが、飯田里穂
 一言で言うなら、美少女
 古い表現をするなら、学園のマドンナ的な存在だった
 かわいくて、明るくて、誰にも分け隔てなく優しい彼女も、公輝と卓也と幼馴染で、三人はいつも一緒に遊んでいた
 三人とも、同じ2-Bの生徒だった
 大の仲良し三人組として、学園では知らない者はいなかったそうだ…

 それほど仲のよかった三人に、いったい何があったのか?
 それが、この事件の唯一の手がかりだった

〜HK学園・2-B〜

「そりゃあ、女子には人気がありましたよ」
 このクラスの担任が、吉田に答えた
「サッカー部のエースで、うちの学校は三回戦で負けたけど、前田は8ゴールをあげて得点王になったし
 特にオシャレにも気をつける方だったし、バレンタインにはチョコが鞄に入りきらないくらいでしたから」
 黒板のほうを向きながら、担任は答えた
 学園からも、余計な事はしゃべらないよう念を押されているのだろう
 大して汚れてもいない黒板を、セカセカと磨いている
 特に話すことはないから、とっとと帰れというサインだろう
「じゃあ、被害者の卓也君は?
 やはり優等生タイプでしたか?」
 吉田が聞いた
「いやいや、成績でいうなら、むしろ前田の方が上でしたよ
 前田も中の中くらいの成績でしたがね
 ただ…、なんというか、人を食ったところがあるというか…
 採点していると、時々気づくんですよ、コイツは本当は答えが分かっているのに、わざと間違った答えを書いているな…と
 まあ、人を馬鹿にして楽しむようなところがありましたね」
「答えが分かっているのに…?」
 間違った答えを書けば、点数を引かれる
 当然、成績は悪くなる
 しかし、本当の答えを、卓也は知っている
 そんなことをしながら、一人で楽しんでいたのだろうか…?
「じゃあ、飯田里穂ちゃんは?
 公輝くんたちと里穂ちゃんは、幼稚舎から仲良しで、いつも一緒だったとか?」
 さらに、吉田が聞いた
「ああ、そりゃあもう…
 いや、ウチは幼稚舎から一貫教育だから、みんな幼稚舎のころから一緒だから、みんな仲がいいんですが、あの三人は、特別に仲がよかったですよ」
 黒板を磨く手を止めて、担任が答えた
「飯田は、いうなら学園のアイドルでしてね、誰からも好かれるタイプなんですな
 前田も井出も、まったく正反対のタイプですが、飯田といると、なんの違和感もなく溶け込んでしまうんですな」
 確かに、二人のタイプはまったく違う
 一方は、スポーツマンで人気者
 一方は、パソコンが趣味で、変わり者だった
 そんな二人も、里穂がいたからこそ、友情が続いていたと、担任は感じていた
「…ひとつお聞きしたいんですが、たとえば公輝くんが里穂ちゃんを好きだったとか、そんな話をご存知じゃありませんか?」
 吉田が尋ねる
 14歳の年齢の子なら、やはりそれが一番の理由になりやすいことだろう
「う〜ん…難しいことですな…
 飯田は、誰にでも分け隔てなく優しいんです
 14歳といえば、いろいろとある時期ですからね
 飯田のようなかわいい子に優しくされれば、そりゃあ誰でも好きになるでしょう。しかし、それを恋愛といっていいのかどうか…
 あの年頃では、そういう一時的な感情を、恋愛と勘違いしやすいですからね」
 里穂は誰からも好かれるタイプだった
 公輝が里穂を好きだったとしても、それは殺人の動機になり得るほどの事だといえるのだろうか?
 確かに、その判定は難しいものだった


■無料■♪出会える美女を紹介♪

[戻] [無料HP作成]