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赤い記憶3 赤い記憶3

〜東京家庭裁判所・第四審議室〜

 再び、公輝はこの部屋で尋問を受けることになった
 同じように、弁護士に付き添われて、下を向いたままだった
「やあ、少しは落ち着いたかな…?」
 吉田が、部屋に入ってきた
「いろいろと、君の事を調べさせてもらったよ。君は、家庭に不満を持っていたようだね?」
「………」
 つとめて明るく語りかける吉田だが、公輝の反応はむなしいものだった
「失礼ですが、今回の事件に家庭のことは関係ないでしょう」
 相変わらず、この弁護士は余計なところで口を挟んでくる
 ム…!っとしながらも、吉田は尋問を続ける
「…実は、昨日、里穂ちゃんの家に行ったんだ…」
「…!?」
 やはり、里穂のことになると、公輝は反応する
「君たちは、クリスマスパーティーをやるはずだった…
 君は、里穂ちゃんの家に行った…、そして、彼女の家から…このナイフを持ち出して、現場に向かったんだね…?」
「………」
 公輝の額に、イヤな汗が流れはじめた
 歯を食いしばって、なにかに耐えているようだ
「何があったのか、話してくれないかな…?」
 あの日、里穂の家で何かが起こったはずなのだ
 それこそが、事件を解明する鍵になるはず
 吉田は、そう確信していた

 ………

 長い沈黙であった
 公輝は、イヤな汗を拭きもせずに、ただ強く握り締めた自分の拳を見つめるだけだった…
(まだ…、なにかの要素が足りんのやろうか…?)
 吉田は、公輝を観察しながら考えた
 凶器が、里穂の家から持ち出したものであることからも、この事件は突発的な犯行であったと思われる
 子供のころからの親友を殺さなければならないほど、何か…
 それは、公輝の心に、かたく封印されている
 その封印を解くには、まだ必要な要素が足りないのかもしれない…
「わかったよ…、まだしゃべりたくないなら…仕方ない…
 ただ、これだけは言わせてもらえんか?」
 そういって、吉田は公輝を真剣な目で見つめた
「オレも、この仕事はだいぶ長い。ベテラン…と呼ばれてええ歳や…
 その上で言わせてもらうが、こういう場合、何も喋らんのは、君のためにはならんのや…
 何も喋らんと、エエように解釈されて、君の言い分なんか通りようがない」
 そこまで言うと、また弁護士が口を挟んだ
「ちょっと待ってください、コドモ相手に、そういう取引を持ちかけるのは…」
「いまはオレが喋ってるんや!、あんたは黙っててくれ!」
「な…!?」
 怒りと迫力を込めて、吉田は弁護士を怒鳴りつけた
 その一言で、弁護士は押し黙ってしまった
「君の将来のことを考えれば、ここで刑事罰を受けるか、矯正施設に入るかは大きな違いや
 刑事罰を受ければ、前科がつく。少年院に入れられ、20歳を超えたら刑務所に入らなならん。出所しても、職があるかどうかもわからん
 けど、矯正施設に入り、完全に更正したと認められたなら、社会に復帰し、高校へ進学することも、アルバイトしてお金をためて一人暮らしすることもできるんや
 このまま、なにも喋らんかったら、間違いなく刑事罰を受ける
 君はそれでエエんか!
 たのむから、喋ってくれ、君を…君の将来を、よくするためなんや…」
 吉田が、公輝に迫る
 その迫力に、さすがの公輝も顔を上げて吉田の顔を見た
「………」
「………」

 審議室に、異様な緊迫感が張り詰めた
 公輝は、口を閉じたままだが、唇がわずかに震えている
 何かを告白しようとしているのか…
 吉田が息を呑む、祈るような気持ちで公輝を見つめる…

 だが、結局、公輝はなにもしゃべらなかった…

〜家庭裁判所・控え室〜

「ふぅ〜」
 精力を使い果たした吉田
 結局、なんの収穫もなかったが…

(いったい、彼は何を隠してるんや…)

 公輝は、明らかになにかを隠している
 どうして、それを話して暮れないのだろうか?
「もう一度、証拠物件を確かめてみるか…」
 そういうと、吉田は、係官に二人のあの日の持ち物を持ってこさせた
 しばらくして、係官が二つのトレイを持ってきた
 それぞれに、公輝と卓也の当日の持ち物が乗せられている
「ん…?」
 二人の所持品を見たとき、吉田はなんとなく違和感を感じた…
「二人の持ち物は、これだけか?」
 係官に確かめる
「はい、警察が、その場で押収しましたから」
「う〜む…」
 二人の所持品を眺めながら、吉田が考え込む
 卓也の持ち物は、ノートパソコンに携帯電話、財布にハンカチ…
 公輝にいたっては、凶器の果物ナイフの鞘と、ポケットティッシュ

 これだけであった
「いまどきの中学生にしては、持ち物が少なすぎひんか?」
 確かに、いまどきの中学生なら、もうちょっと何か持っていてもよさそうだが、あまりに二人の持ち物が少なすぎる…
 卓也は、最近、新しい天気予報のソフトを開発していたそうだ
 どこで、何時ごろに雨が降り始めるかをピンポイントで予報できるソフトである
 ノートパソコンには、その開発中のソフトが組み込まれていたらしい
 デイィスプレイには、池袋駅周辺の天気図が映っていたそうだ
「池袋駅か…、それもわからんのよな…」
 この事件の調書を読んだときから、吉田には腑に落ちないものがあった
 なぜ、事件の現場が池袋なのか…?

 HK学園は私立だから、生徒も同じ区域ばかりに住んでいるわけではない
 だが、池袋は、卓也も、公輝も、里穂も、誰の家からも遠いのだ
 卓也も、クリスマスパーティーに参加するはずだった
 それなのに、なぜ池袋駅で降りたのか…?
「お!、この携帯、FOMAのF902iじゃないですか」
 そういって、係官が卓也の携帯を取り上げた
「中学生なのに、最新の携帯なんか持って…、いいなぁ…」
 うらやましそうに携帯を眺めている
「ちょっと待て!」
 何かを発見した吉田が、係官から携帯を取り上げた
「どうしたんですか?」
 不思議そうに、吉田を見つめる係官…
 吉田は、携帯のウラに貼ってあるプリクラを見ていた
 最近買ったのであろう、その携帯のプリクラは、まだ新しいものだった
 中央に里穂、それを両方から卓也と公輝が囲むように映っている
 三人とも、本当に楽しそうな表情をしている
「………」
 そのプリクラを眺めたまま、吉田は黙ってしまった
「あの…、どうかしたんですか?」
 係官が聞いた
 吉田は、しばらく黙っていたが、唐突に…
「卓也君の家に行こう!」
 そういって、吉田は卓也の家へと向かった

〜東京都・港区・台場〜

 卓也の家に行くと、悲しみにくれる両親をいたわりながら、卓也の部屋へ案内してもらった
 卓也の部屋は、いかにもパソコンマニアらしく、多くのパソコンのパーツで埋まっていた
「この部屋は、そのままなんですか…?」
「はい、あの日、あの子が出かけたときのままです…」
 吉田の問いに、母が答えた
「わかりました、ありがとうございます。では、下でお休みになって下さい」
 卓也の母を部屋から出すと、吉田は卓也の部屋の捜索を開始した
「ねえ、一体、何を探すんです?」
 わけもわからず連れてこられた係官が、吉田に尋ねる
「オレの予想が正しかったら、公輝君も卓也君も、きっと里穂ちゃんのことを好きだったんじゃないかと思う
 単なる幼馴染としてじゃなく、一人の女性としてね…」
 そういいながら、吉田は卓也の部屋をひっくり返している
 天気予報のソフトを作っていたからだろう、床には天気・気象に関する本でいっぱいだ
 吉田がいくら探しても、目的のものが見つからない
「そうや!」
 思いついた吉田が、パソコンの電源を立ち上げた
 卓也のパソコンは、ほとんどがソフトウェアの開発に関わるもので、プロテクトがかけてあった
 プロテクトをかけていないものは、ほとんどが何の関係もないものだった
「これや、ソフトウェア開発とは関係がないが、プロテクトがかけてある」
 膨大なファイルの中に、一つだけ無タイトルのファイルがあった
 だが、パスワードがわからなければ、ファイルをあけられない
「8文字の英数字の組み合わせ…
 iidetakuya違う、iidarihoこれも違う!」
 思いつくままに、パスワードを入力していく
 だが、誕生日でも、車のナンバーでも、パスワードは開かない
「くそ、パスワードはなんや!!!」
 興奮のあまり、激しく机を叩く吉田
 その時、ふと、里穂の言葉を思い出した

「私、そのとき、ドロシーちゃんを作ろうとしてたんです
 おばあちゃんに買ってもらった、とっても大事にしてたお人形…
 でも、私、上手に作れなかった…
 その時なんです、一緒に粘土を作ってた公輝と卓也が私を手伝ってくれたんです…」

「dolloccy…!、これか!!」
 吉田は、急いでパスワードを入力する
「ビンゴや!」
 パスワードを受け付けたファイルが開かれた
 それは、一つの画像のファイルだった…
「これは…」
 一緒にいた係官も、それを見つめて唖然とする
 それは、里穂の小さいころから現在まで、卓也が集めていた里穂の画像の数々だった…
 そのファイルは、すべてが里穂の画像で埋まっていた
「これでハッキリした。公輝君も、そして卓也君も、里穂ちゃんのことを愛してたんや…
 二人は、一番の親友同士でありながら、恋のライバルでもあった…」
 これで、なんとなく事件の背景が見えてきた
 公輝、卓也、そして里穂
 三人は、小さいころからの幼馴染で、大の仲良しだった…
 しかし、三人が成長していくなかで、その関係は微妙に変化していった…
 そして、それは、クリスマスの日に、最悪の形となって出てしまった…
「もう少し、情報がほしい…
 スマンが、誰か探してほしい
 三人に親しくて、三人のことを外部から見てきた人間を…」
「は、はい、なんとか探してみます…」
 そういって、係官は卓也の部屋を出て行った
 吉田は、もう一度、卓也のファイルを見つめた
 三人の心は、どういう風に変化していったのか、それが、この事件のキーポイントになる予感がしていた…

〜HK学園・中等部前・ファミリーレストラン〜

 ようやく係官が見つけ出したのは、HK学園中等部三年生で、サッカー部の前キャプテンだった山元竜一だった…
 初等部のころから、公輝たちのことは知っている
「いやぁ、悪かったね、受験の前なのに」
 そんな断りをいれながら、吉田は山元の前に座った
「あの、なんなんですか、お話って?」
 警戒しながら、山元が聞いた
「いや、教えてほしいことがあるんだ、公輝君と卓也君、そして里穂ちゃんのことを…」
「はぁ…」
 あやふやな答えをする山元。なんで自分なのかが、まだ分かっていないようだった
「君はサッカー部のキャプテンだったんだってね」
「ええ、まあ」
 まずは無難なところから聞き始める吉田。山元に緊張させないように、気を使いながら聞き出す必要があるのだ
「君から見て、公輝君はどんな子だった?」
「そりゃあ、すごいヤツですよ
 アイツ、運動神経がいいから、オレがサッカー部に誘ったんですけど、アイツは、いつでも、誰よりも遅くまで残って練習してましたしね
 それこそ、日が暮れるまで」
 今年の大会が終わり、山元は引退した
 しかし、HK学園は一貫教育で入試があるわけでもない
 山元は、まだサッカー部に顔を出していた
「ふ〜ん、それで、選手としての彼はどうだったの?」
「すごいヤツですよ、足も速いし、ドリブルも上手いし、それになんと言っても、シュートのセンスは抜群でしたね
 ヤツが得点王になったの、知ってるでしょう?」
 サッカーの話になると、徐々に山元は興奮してきた
 それから、公輝がストライカーとして、どれだけ活躍したかを、存分に語った…


カワユス出会い☆もうすぐ春だお(^ω^)

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