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放浪探偵小説『野良猫ストレンジャーズ』
1放浪探偵小説『野良猫ストレンジャーズ』 投稿者:リリー  投稿日:2010年10月23日(土)20時11分38秒
CAST

脇菜々香
鈴木美知代
平田真優香
渡辺青來
鎮西寿々歌
白坂奈々

2006年〜2009年の3年間を描きます
2
☆レス1300までを見る☆
1301投稿者:リリー  投稿日:2011年01月06日(木)22時00分26秒
「それで…もう一つ、お願いが…」
「ああん!?図々しいヤツだな?おまえ…」
「私を…あなたの仲間にしてください…。目的が同じならば…」
「ヤダね!!」
「…即答ですね…」
「それこそ、『力不足』だぜ!!」
ダーブロウは、長い舌をベロリと出した。
「甘ったれるんじゃねぇよ!!てめぇは、このまま逃げな!!」
「逃げる?そんなこと…」
「てめぇの意見なんざ、聞いちゃいねぇよ!!」
ダーブロウは、乱暴に美知代の上半身を引き起こす。
「あぐぅ…!!」
両肩の脱臼の痛みに、美知代は顔を顰めた。
そしてこれまた乱暴に、ダーブロウは美知代の外れた両肩の関節を、元に戻した。
「あああ…!!」
「ほい!!これでいいだろ?早く、遠くへ逃げろ!!な〜に…心配するな。近いうちに、『TTK』は潰れてるよ。私の手によってな」
無理矢理、美知代を立たせて、ダーブロウは笑った。
「『TTK』は…私が潰す!!」
1302投稿者:リリー  投稿日:2011年01月06日(木)22時00分51秒
では、おちます

1303投稿者:ダーさん、鼻くそほじるなw  投稿日:2011年01月06日(木)22時01分35秒
美知代が抹殺対象に←
1304投稿者:俺もハナクソでクソワロタw  投稿日:2011年01月06日(木)22時19分31秒
 
1305投稿者:117  投稿日:2011年01月07日(金)17時31分58秒
結局、美知代はTTKを潰せなかったんですよね・・・
でも、あっという間にTTKの敵にね。
1306投稿者:リリー  投稿日:2011年01月07日(金)20時56分09秒
1303さん、1304さん
何気なく書いたんですが…
ウケていただいて何よりです
117さん
1303さんも仰ってましたが、美知代も晴れて有沙やダーさんと立場が同じになりました
いよいよクライマックスとなります

あと、昨日書き忘れましたが、昨夜でダーさんや有沙の出番は終わりとなります

では、更新します
1307投稿者:リリー  投稿日:2011年01月07日(金)20時56分34秒
上下峠の別荘地…。
菜々香、真優香、青來、寿々歌、そして奈々。
美知代以外の『チームL』のメンバーは、アジトに集められた。
5メートル以上はある、長方形のテーブルが置かれた食堂に、5人はいた。
皆はテーブルに着いてはいるが、目の前に食事は並んでいない。
今は午前2時を回っており、食事の時間など、とうに過ぎている。
しばらく遅れて、T−ASADAが軽やかなステップと共に、食堂に入って来た。
「LOVE〜〜〜〜〜!!」
相変わらず、にこやかにL字型にした右手を、ヒラヒラさせている。
「LOVE〜〜〜…」
さすがに疲れているのか、皆のT−ASADAに応えるテンションは低い。
しかも、誰も『ミッション』を成功させることのできなかった挫折感も手伝っている。
もしかしたら、『不合格』を言い渡されることになるかも…。
1308投稿者:リリー  投稿日:2011年01月07日(金)20時56分52秒
「ええと、皆さん。今回の『ミッション』は、大変残念でしたね」
T−ASADAは、相変わらずにこやかな顔を崩さない。
「残念でしたね」の、表情ではない。
「『不合格』…ですか…?」
恨めしそうな目で、菜々香はT−ASADAを見詰める。
「『不合格』?まあ、それは置いておきましょう」
「な!?」
菜々香だけではなく、皆はガタガタと椅子から立ち上がった。
自分達にとっては、一番重要なことではないのか?
「あ、あの…お言葉ですが…私達は、まったく『戦士』達のサポートが出来ず終いでした。何もやらせてもらえなかったんです。『おまえ達は、手を出すな』…と…」
奈々が、皆を振り返り、そして再びT−ASADAに向き直る。
「ですから、今回の失敗で、私達を『不合格』と断定するのは、フェアではありません!!」
「ええ。誰も『不合格』なんて言ってませんよ。むしろ、『不合格』なのは、『チームR』、『チームE』、『チーム7』でしょうね…」
T−ASADAは、落ち着いた口調で、またもやにこやかな顔で皆を見渡した。
1309投稿者:リリー  投稿日:2011年01月07日(金)20時57分10秒
「ですからね、あなた達に、新しい『ミッション』を与えます」
「新しい『ミッション』!?」
皆は、殆ど同時に声をあげる。
「とは言っても…この『ミッション』を成功させても、あなた達が『合格』になるわけではありません」
このT−ASADAの言葉に、皆は怪訝な顔を、お互い見合わせる。
「ど、どういう意味ですか…?」
奈々が、恐る恐る訊いた。
「早い話がね…」
僅かに、T−ASADAの顔が厳しく引き締まったように感じた。
「今回の新しい『ミッション』を成功させなければ、あなた達は『不合格』です…」
「…!!」
一様に、緊張感が走る。
「そ、その、『ミッション』って、何ですか!?」
逸る気持ちで、寿々歌が身を乗り出す。
「ええと…。あなた達…一人足りないようですが…」
わざとらしい仕草で、T−ASADAは『チームL』の皆を指を指して数え始める。
「は、はい…。『アンダー・クイーン』(中村有沙)を追う途中で、『スワン』(美知代)とはぐれました…」
奈々は、申し訳ないといった風に、頭を下げる。
1310投稿者:リリー  投稿日:2011年01月07日(金)20時57分23秒
「はぐれたのは、いつですか?」
「それは…4時…いえ、5時近くです」
「未だに戻ってきませんね?」
「…はい…」
「もしかしたら、『スワン』も『アンダー・クイーン』同様、組織を脱走したのかも?」
「そ、そんなわけは…」
そう言いかけて、奈々は口を噤む。
何度も美知代に電話をかけたのに、一向に出る気配がなかったからだ。
「はい。それで…私は、『スワン』の携帯に留守電を入れました。『今から1時間以内に連絡を入れなければ、あなたを脱走者と見なす』…と…」
「1時間以内!?」
菜々香が声をあげる。
「そ、そのメッセージは…いつ入れたんですか!?」
「0時…45分頃ですね」
「…!?」
菜々香達、5人の目は、一斉に壁に掛けられた、純金の時計に向かう。
今は…2時…。
1311投稿者:リリー  投稿日:2011年01月07日(金)20時57分43秒
「15分が過ぎました…。『スワン』を脱走者と見なします」
何の抑揚もつけず、T−ASADAは、淡々と告げた。
「も、もしかしたら…何か、連絡ができない事情があるのかも…」
菜々香が、すがるような目で、T−ASADAを見詰めて言う。
「何か、事故やトラブルに巻き込まれたんかも…」
寿々歌は、泣き出しそうな、笑い出しそうな、何とも複雑な表情を浮かべる。
「で、新しい『ミッション』は…」
T−ASADAは、菜々香と寿々歌の言い分を一切無視する形で、言葉を続ける。
「『スワン』を探し出して、ここに連れてきて来てください」
そして、こう付け加える。
「生死は問いません」
1312投稿者:リリー  投稿日:2011年01月07日(金)20時58分10秒
T−ASADAが食堂を去ってから、奈々を中心に、皆は円を描くように集まった。
「どうする…?」
まず、寿々歌が声を発した。
「どうする?決まってるじゃない!!」
真優香が、苛つき気味に答える。
「連れて来るしかないよ!!美知代を…。そうでなかったら…私達…」
それきり、真優香は黙りこくってしまう。
「生死は問わないって、先生、言ってたよね?」
青來が、震え声で言う。
「つまり…連れて来る美知代は、生きてても、死んでてもええ…てことや…」
暗い眼差しで、菜々香は床を見詰めている。
「と、とにかく…美知代は、生かして連れてきましょう」
奈々は、菜々香の言葉を打ち消すように、大きな声を出した。
「そこで、何とか先生に釈明させるのよ。脱走する気なんてなかったって…。そうすれば、もしかしたら…」
「甘いよ…」
今度は、真優香が奈々の言葉を打ち消した。
「絶対に、殺されるって…。美知代のヤツ…」
「そ、そんなこと、わからないわ!!ASADA先生だったら、もしかしたら…」
「だから、甘いっての!!リーダー!!」
真優香は、奈々を睨みつけた。
1313投稿者:リリー  投稿日:2011年01月07日(金)20時58分28秒
「あんた達、ASADA先生を根本的に誤解してない?あの人は、ダーブロウさんや夏希さんみたいに、『怒鳴ったり暴力を振るったりはしない』ってだけだよ?」
そして、真優香はジロリと他のメンバーを見渡す。
「あの人は…恐ろしい人よ…。多分…ダーブロウさんや、夏希さん以上に…」
「せやったら…!!『ひらたま』!!」
寿々歌は、真優香に掴みかかる。
「あんた、美知代を殺そうって…!!殺して、『戦士』になろうと、そういう気なん!?」
「うるさい!!『ひらたま』って言うな!!」
真優香は寿々歌の手を払い除ける。
「しょうがないじゃん!!美知代が悪いんだよ!!勝手にいなくなっちゃってさ!!大体アイツ、自分勝手な行動が多すぎるんだよ!!」
そして、その厳しい眼差しを、奈々に向ける。
「あんた、リーダーでしょ!?一緒に行動してたんでしょ!?しっかりしなさいよ!!あんたが悪いのよ!!」
非難の矛先を向けられた奈々は、グッと唇を噛み締める。
「そ、そんな…。奈々ちゃんを責めたら可哀そうだよ…。まだ、小さいんだし…」
青來が、奈々の側に寄り添って、肩を抱く。
「そ、そういう哀れみは…要らないから…」
奈々は、青來の手から逃れるように、背中を向けた。
1314投稿者:リリー  投稿日:2011年01月07日(金)20時58分49秒
「とにかく…美知代は連れて来る…」
菜々香が、低く、重い口調の声を出した。
皆は、一斉に菜々香の方を向く。
「生きたまま、連れて来る…」
「『ハチ』さん…」
奈々は、暗い表情を床に向けた菜々香を見詰める。
「そこで…ASADA先生が美知代をどうするか…わからん…。わからんけど…まず、ウチ等にできることは、それだけや…」
皆、黙って菜々香を見詰める。
「美知代を見つけて、生きたまま連れてきたら…万が一の希望が持てる…。先生が…美知代を許してくれるかもわからん…」
そして、菜々香は、奈々の前に歩み出る。
「それでええな…?『クゥ』…。いや…リーダー…」
真っ直ぐ、菜々香は奈々を見下ろす。
「ええ…」
奈々は、力強く頷いた。
1315投稿者:リリー  投稿日:2011年01月07日(金)20時59分14秒
「でも、みんなで闇雲に美知代を探し出しても、無駄が多いわ。もしかしたら、美知代がこのアジトに戻ってくるかもしれない…」
再び、皆は奈々を中心に集まり始める。
「だから、このアジトで待機するグループと、美知代を探し出すグループに別れることにするわ。待機のグループには私が入る。ここでいろいろと指示を出したいし…」
そして、奈々は皆の顔を一人一人見詰める。
「もう一人、私と一緒にここで待機してくれる人、いないかしら?出来れば、近距離攻撃の人がいい…」
奈々の目は、菜々香と寿々歌に向く。
「寿々歌、頼む」
菜々香が、寿々歌の肩をポンと叩いた。
「え?うち?何で?」
「何で…て…。ウチが、美知代をこの手で捕まえたいんや。死なない程度に、ブチのめしたいねん」
菜々香の目が、殺気立っている。
「ちょ、ちょっと、菜々香…。怖いよ…」
青來が、一歩、後ろに引き下がった。
「安心して。死なない程度って言うてるやん」
そう微笑んだが、目だけは、笑っていない。
1316投稿者:リリー  投稿日:2011年01月07日(金)20時59分30秒
「そう…。じゃあ、ここで待機するのは、私と寿々歌。美知代を探し出すのは、『ハチ』さんと、真優香と青來ね」
「でもさ…美知代を探し出すって…どこを探せばいいわけ?」
真優香の質問を、奈々は待っていたかのように、説明を始める。
「さっき、アジトの施設で警察の無線を傍受したの。そしたら、銀のベンツが交通事故を起こしたって会話を拾うことができたわ」
「銀のベンツ?」
「有沙さんが逃亡に使った車よ。その現場が、国道から外れた高級住宅街なの」
「高級住宅街?だって、美知代が捜索してたのは、天歳川の堤防付近じゃなかったっけ?」
「つまり…美知代はウソをついたのよ…」
この奈々の言葉に、皆は同時に彼女を見る。
「ウソ…?そんなウソをつく理由が、どこにあんねん?」
菜々香には、美知代の真意がわからない。
それは、奈々も同じだが…。
「それはわからない…。でも…ここに、美知代が戻ってこない理由があるのかもしれない…」
「とにかく、ウチ等はその高級住宅街付近から捜索すればええんやな?」
「そうよ。でも、くれぐれも気をつけて…。また、ダーブロウさんに遭遇するかもしれない…」
「うう…」
青來が、胃の辺りを押さえる。
その青來の気持ちは、この場にいる全員が味わっていることである。
1317投稿者:リリー  投稿日:2011年01月07日(金)20時59分53秒
では、おちます
1318投稿者:美知代対3人  投稿日:2011年01月07日(金)21時03分26秒
美知代が勝ちそうな気がしないこともないが
もしかしてのw
1319投稿者:なんかリリーさんて  投稿日:2011年01月08日(土)02時50分05秒
コメ返しの時は冷静(時々取り乱す)だけど
小説ではアツくなる印象だな
1320投稿者:リリーさんは  投稿日:2011年01月08日(土)10時15分18秒
雑談より小説を更新することに力を入れてるってことだね
1321投稿者:117  投稿日:2011年01月08日(土)11時20分08秒
一応、仲間でもありライバルだった美知代と対することに・・・
悲しい運命。でも、結果は・・・?
1322投稿者:リリー  投稿日:2011年01月08日(土)19時13分37秒
1318さん
菜々香、真由香、青來グループに行くと見せかけて…
なんてことも有り得ます
1319さん、1320さん
私、熱くなってますかね?
コメントは、とても嬉しいです
でも、やはり長くなってしまうと肝心の小説が読みにくくなるんじゃないかと思いまして…
私も、雑談は嫌いじゃないです
117さん
美知代は『戦士』脱落決定です
そして、美知代を捕まえなければ、全員脱落ということで、過酷な運命となってしまいました

では、更新します
1323投稿者:リリー  投稿日:2011年01月08日(土)19時16分02秒
菜々香、真優香、青來がアジトを発った。
食堂にいる奈々と寿々歌は、何をするでもなく、ただ時間を持て余すことしかできない。
当分は、菜々香達の連絡待ち…もしくは、美知代がアジトに戻ってくるのを待つだけだ。
「奈々…。疲れてへん?眠ったら?」
そう言う寿々歌の声も、あくび混じりだ。
「大丈夫よ。眠くないもん。それに、私はリーダーだから、眠ってなんかいられない…」
「リーダー言うても、一番チビなんやから、たまには思い切り甘えてもええんよ?」
そう言った後、寿々歌は「しまった」と心の中で呟いた。
こういう物言いを、奈々が一番嫌っていることを思い出したからだ。
また、奈々の生意気節が炸裂すると思うと、寿々歌は気が重くなった。
だが、以外なことに、奈々は微笑んでいた。
「あれ…?」
見間違いか、と思った寿々歌は、目を一、二回、こすった。
1324投稿者:リリー  投稿日:2011年01月08日(土)19時16分34秒
「今は、甘えない」
奈々は、笑顔のまま言った。
「『ミッション』が終わったら…思いっきり甘えさせてもらうわ。思いっきりね」
「そっか…」
寿々歌も、つられて笑顔で応えた。
初対面の印象から、奈々は随分変わったように感じられる。
いや、鎧のようにガチガチに固めていた敵対心や緊張感が剥がれ落ちて、素の姿を見せたと言ったほうが適切なのだろう。
「せやけど…」
寿々歌は、途端に表情を曇らせる。
「『ミッション』が終わったらって…美知代をここに連れて来ることやろ?美知代…やっぱり殺されるんとちゃう…?」
この言葉に、奈々は顔を引き締める。
悲壮感ではなく、何か、覚悟めいた表情だ。
「こういう事態に陥ったのは…リーダーである、私の責任…。だから…美知代を助けてもらえるように、私は何度も先生に頼むわ」
「せ、せやけど…もし、その頼みを聞いてもらえへんかったら?」
寿々歌にそう問われると、奈々はしばらく黙り込む。
そして、小さく息を吐き、口を開く。
1325投稿者:リリー  投稿日:2011年01月08日(土)19時16分50秒
「私…『オーディション』を降りる…」
「へ?」
「『戦士』を…諦める…」
自分の足下をじっと見詰める奈々の顔には、迷いがない。
寿々歌の胸に、熱いものが込み上げる。
「うちも!!」
「え?」
奈々は顔をあげ、寿々歌を見詰める。
「美知代を助けられへんかったら…うちも、『オーディション』を降りる!!」
そして、「いや…」と、その大きな目を天井へ向ける。
「このまま、『ミッション』を失敗したらええねん!!美知代を逃がす!!うち等も『不合格』!!これでええ!!」
「し…!!寿々歌さん!!」
奈々は、人差し指を口元に持っていき、厳しい目を寿々歌に向ける。
「滅多なことを、言うもんじゃないわ!!そんなこと、先生の耳に入ったら…」
「あ…!!」
寿々歌もようやく事の重大さに気づいたらしく、口を右手で抑えた。
1326投稿者:リリー  投稿日:2011年01月08日(土)19時17分08秒
「あら…?あなた達は?」
食堂のドアが開き、そこにはスイートロリータドレスの女性が立っていた。
金髪碧眼で、白い肌…。
「『候補生』が、そんなところで、何をしているの?」
「ジャ…ジャスミンさん…?」
寿々歌は、眠気が一気に吹き飛んだ。
『アロー』基地で会った、『四天王』の一人、ジャスミン・アレンがそこにいたからだ。
「お、お久しぶりです!!ジャスミンさん!!」
寿々歌は、椅子から立ち上がると、立体前屈のように深く頭を下げた。
「お久しぶり…?あなたは…?」
頭を下げている為、ジャスミンから寿々歌の顔が窺えない。
「あ、あの…『アロー』基地で一度お会いしてます。ダーブロウさんと一緒に…」
「あ…!!思い出したわ!!裸で歩いてた子よね?」
ジャスミンの顔は、明るく輝く。
「は、はい…。何か…恥ずかしい覚えられかたですけど…」
寿々歌は、顔を赤くして頭を掻いた。
1327投稿者:リリー  投稿日:2011年01月08日(土)19時17分29秒
「そうか…。『チームA』の脱走騒ぎで、とばっちりを受けちゃったのね?可哀そうに…」
ジャスミンは、きれいに整えられた眉を下げて言う。
「私は、そのダーブロウの行方を探してたんだけど、まったく手掛かりなし…。もう疲れちゃったから、戻ってきたのよ。『アンダーキャッスル』ってラブホテルに現れたって言うから、そこにも行って来たんだけど…」
「あ…」
「…?」
寿々歌が何かを言い掛けたようなので、ジャスミンは、その先を窺うように彼女を見詰める。
「その…『アンダーキャッスル』で、ダーブロウさんに会いました」
「そうなの!?」
ジャスミンの声が、一際高くなる。
「それで…どうしたの?今、ここにいるってことは、怪我もしていないのね?」
「は、はい…。でも…」
「でも?」
寿々歌は、言いよどんでいたが、意を決して話し出す。
「ダーブロウさん…『TTK』を潰すって…言うてました…」
その言葉を聞くと、ジャスミンは、その美しい目を僅かに細める。
「ふ〜ん…。バカな女…」
ジャスミンの冷たさを、寿々歌は感じ取った。
1328投稿者:リリー  投稿日:2011年01月08日(土)19時17分59秒
「あなた達に頼んでいいかしら?」
ジャスミンは、また穏やかな笑みを浮かべる。
「な、何でしょうか?」
「私、一日中、あのバカ女を探し回って、クタクタなのよ。二階にある私の部屋でシャワーを浴びてるから、その間に部屋の掃除をしてもらえるかしら?」
「は、はい…。お安い御用です」
そう言って、寿々歌は奈々の方を窺う。
奈々は、ただ頷くのみだ。
自分はここに残って、菜々香達の連絡を待っていると、目だけで伝える。
「じゃあ、お願いね」
ジャスミンは、首をゆっくりと回しながら、食堂を後にした。
「あの人が…ジャスミン・アレンさん…なのね…」
ジャスミンの姿が見えなくなっても、奈々は呆然と食堂の扉を見詰めている。
「キレイな人やろ?なぁ?」
まるで、自分の身内を自慢するかのように、寿々歌は奈々に同意を求める。
もちろん、ジャスミンはアメリカ人、寿々歌は日本人で、身内でも何でもないのだが…。
1329投稿者:リリー  投稿日:2011年01月08日(土)19時18分15秒
「失礼します…」
ノックをしても反応がないため、寿々歌は恐る恐る、ジャスミンの部屋のドアを開けた。
「掃除をしてくれって…。全然、きれいやん…」
あの、『アロー』基地での、ダーブロウの凄まじく散らかった部屋を見たせいか、この整然とした部屋のどこを掃除していいのか、わからない。
シャワーの音が、部屋の奥のドアから聞こえる。
「とにかく…ハタキでもかけておくかな…」
掃除道具ロッカーから、ハタキを取り出すと、カーテンの辺りをパタパタとやる。
「あら…?もう掃除に来てくれたの?ありがとう」
不意に声をかけられたので、寿々歌は無意識に振り返る。
「あ、はい。でも、掃除するほど、散らかってませんよ…」
そこまで言いかけて、寿々歌はまたジャスミンに背中を向ける。
シャワーから出てきたジャスミンは、バスタオルでその美しい金髪に絡む雫を拭き取ってはいるが、その姿が全裸だからだ。
「そうね…。ま、お掃除をしてちょうだいって頼んだのは、あなたをこのお部屋に呼びたかったからなんだけど…」
ジャスミンの声を、背中で聞く。
「う、うちを…?このお部屋に…?」
ジャスミンは、ゆっくりと寿々歌に歩み寄る。
「こっちを見て…」
「…はい…」
寿々歌は、うつむき気味に、緩慢な動作で振り返る。
真っ白なジャスミンの肌が、そこにはあった。
1330投稿者:リリー  投稿日:2011年01月08日(土)19時18分36秒
「あなたのことは覚えてるわ。また、会ってお話したいと思ってたの」
「ホ、ホンマですか…?うち、嬉しい…」
照れ笑いを浮かべ、寿々歌はモジモジと身体を捩る。
なかなかジャスミンの顔を見られず、視線を下ばかりに向けている寿々歌は、「下の毛も金髪なんやな…」などと、どうでもいいことを考えている。
「お顔を挙げなさい」
そっと、ジャスミンは寿々歌の顔を挟みこんで、自分の目と合わせた。
「は、はい…」
もう、寿々歌は催眠術にもかかったかのように、目の焦点が合っていない。
「お掃除よりも、あなたに頼みたいことがあるんだけど…」
「…はい…」
「私の特訓に、付き合ってくれないかな?」
「…はい…」
「それじゃ、そこに立っててね。動いちゃダメよ?」
「…はい…」
ジャスミンは、寿々歌に背を向けると、壁に向かって歩き出す。
寿々歌は、程よく引き締まったジャスミンのヒップに、うっとりと見惚れていた。
1331投稿者:リリー  投稿日:2011年01月08日(土)19時18分56秒
だが、寿々歌は、ことの重大さに今更ながらに気付く。
(うちが…?特訓に付き合う…?ジャスミンさんの…?『四天王』の…?)
段々と、心臓が高鳴ってくる。
(な、何をしたらええねん…!!)
そうこうしているうちに、ジャスミンが再び寿々歌に歩み寄ってきた。
相変わらず全裸だが、右手には西洋の剣、フルーレが握られている。
ジャスミンの専用武器だ。
「あ、あの…!!うちなんかに、特訓のお手伝いができるか…」
「大丈夫よ。あなたは、ただ、何もしないで立っているだけでいいから…」
「立ってるだけ?」
「そうよ。動いたら死ぬかも…」
「え…?」
寿々歌が、素っ頓狂な声をあげた時だった。
1332投稿者:リリー  投稿日:2011年01月08日(土)19時19分21秒
ひゅん…。
寿々歌の目の前で、風が吹いた。
目の前に、ジャスミンの剣先が…。
そこには、『LOOKINGGLASS』と書かれた、パッチが刺さっていた。
「あ、あれ…?それ…うちの…」
寿々歌は、自分の作業着の胸元を見る。
自分の基地の所属名が刺繍された、パッチがない。
やはり、その剣先に刺さっている物は、自分の作業着から剥がされた物だ。
「動かないで!!」
ジャスミンは、短く叫んだ。
ビクンと、寿々歌は直立不動の姿勢をとる。
ひゅん、ひゅん、ひゅん…。
寿々歌の身体の回りで、風が巻き起こる。
寿々歌の着ている黒い作業着に、幾つかの切れ目が走る。
「え…?え…?え…?」
細切れになった黒い布が、宙を舞う。
黒い布は、次々と寿々歌の身体から離れ、散っていく。
「こ、これは…」
そう、ジャスミンが自分の剣で、寿々歌の服を切り刻んでいるのだ。
1333投稿者:リリー  投稿日:2011年01月08日(土)19時19分47秒
ものの数秒で、寿々歌の身体を覆っていた作業着は、数センチ四方の細かな布キレになって全て離れた。
寿々歌も、ジャスミン同様、全裸姿となった。
「あ…。あ…」
それでも、寿々歌は指一本動かすことができない。
「うん、うん。相変わらず、私の剣捌きは一級品ね」
満足そうに、ジャスミンはフルーレの剣先を眺めながら呟いた。
「さてと…」
ひゅん…と、剣先は寿々歌の頭頂部を撫でる。
結んでいたゴムひもが切れ、寿々歌の髪はパラリと下に降りる。
「………」
小刻みに震えながら、寿々歌はジャスミンを見上げることしかできない。
「今度は、髪の毛を切り刻んで、丸坊主にしてあげる。その後は、あなたの皮膚を切り刻んで剥いであげる。筋肉組織は傷一つつけないでね…」
「あ…あうぅ…」
ジャスミンの自分を見下ろす冷たい目を見て、寿々歌は自分の死を意識した。
1334投稿者:リリー  投稿日:2011年01月08日(土)19時20分17秒
だが、ジャスミンは再び穏やかな笑みを寿々歌に見せる。
「ジョークよ。ビックリした?」
「ジョ、ジョーク…?」
寿々歌は、意味がわからずに、ただジャスミンの言葉を鸚鵡返しにするだけだった。
「あなたが可愛いから、ちょっとからかっただけよ」
からかっただけで、人を裸にするのか…?
基本的に、ダーブロウと変わらないじゃないか…。
と、寿々歌は思ったが、口に出せるわけがない。
憤慨よりも、安堵感の方が大きい…。
「さあ、こっちにいらっしゃい。私の可愛い、お人形さん…」
ジャスミンは、ひょいと寿々歌の身体を抱き上げた。
「…え…?」
「あなたをここに呼んだのは…お掃除させるわけでも、特訓の相手をしてもらうわけでもないの…」
ベッドまで運ぶと、優しく寿々歌を横たわらせた。
「あ、あの…」
寝かせられてから、寿々歌は慌てて上半身を起こす。
「じっとして!!」
そして、強引にまた寝かせられる。
1335投稿者:リリー  投稿日:2011年01月08日(土)19時20分51秒
ジャスミンも、寿々歌の横に横たわる。
「ふふふ…。『アロー』基地であなたを見てから…ずっとこうしたかったのよ。あなたに一目惚れしちゃったから…」
「う、うちに…一目惚れ…?」
それは、寿々歌も同じだった。
まるでお伽話の絵本から飛び出してきたかのようなジャスミンに、寿々歌は見惚れていた。
相思相愛だったというわけだ。
その事実を知り、寿々歌は天にも昇ったような心地になった。
「ほんと、可愛いわ…」
艶やかな、寿々歌の黒髪を優しく撫で付けるジャスミン。
「この唇も…」
人差し指で、そのぷっくりした唇を、ぷるぷると揺らす。
「で、でも…」
寿々歌が不意に口を開いたので、ジャスミンの指先が歯に触れた。
「みんな、うちのこと、『タラコ唇』て、言うんですよ」
「まぁ…。いけない人達ね…。でも…美味しそう…」
ゆっくりと、ジャスミンは自らの唇を近づける。
1336投稿者:リリー  投稿日:2011年01月08日(土)19時21分10秒
触れるか触れないかという位置で、ジャスミンは唇を止める。
思わず寿々歌が唇を尖らせたので、ふふっと息を漏らして笑った。
その息が、寿々歌の頬をくすぐった。
それだけで、寿々歌は全身に、高揚からくる震えを感じた。
ジャスミンは、チョンと唇と唇を触れさせる。
次はゆっくりと重ねる。
三度目は、舌を絡ませてきた。
「………」
寿々歌は、息ができなかった。
もし、それで窒息死してしまったとしても、寿々歌は幸福だと思った。
「ねぇ…。『戦士』になるのなんて…やめてしまいなさいな…」
唇を離したジャスミンが、そっと囁いた。
「…え…?」
「私の…お人形さんになって…。傷つくことも、殺されることもない…」
「で、でも…」
「ずっと、私が守ってあげる…」
再び、唇が重なる。
1337投稿者:リリー  投稿日:2011年01月08日(土)19時21分28秒
「毎日、ステキなお洋服を着せてあげる…。それで、毎日私の帰りを待ってなさい…。帰ったら…ぎゅっと抱き締めてあげる…」
ジャスミンの唇は、寿々歌の身体中に触れていく。
下へと、移動する。
「あ…」
くすぐったさに、寿々歌は身を捩る。
「でも…。ジョアンには内緒…。あの子、嫉妬深いから…」
「ジョアンさんは…大丈夫なんですか…?怪我をしたって…」
「あなたは、心配しなくていいのよ…。お人形さんは…」
「で、でも…」
「あなたは、何も考えなくていいし…何も悩むこともない…。私のことだけ、考えてなさい…」
寿々歌は、このジャスミンの言葉に溺れ始める。
何も考えなくていい…。
何も悩むこともない…。
『ミッション』のことや、『オーディション』のこと…何も考えなくていい…。
美知代をどうするのか…。
美知代はどうなるのか…。
そして、自分はどうなるのか…。
全て、棄てることができる…。
何て、幸せなことだろう…。
1338投稿者:リリー  投稿日:2011年01月08日(土)19時22分19秒
前回、あれだけシリアスなシーンをやっておいて、今回はエロでした…

では、おちます
1339投稿者:あげ  投稿日:2011年01月08日(土)19時26分31秒
  
1340投稿者:「下の毛も金髪なんやな…」  投稿日:2011年01月09日(日)10時25分08秒
ほんと、どーでもいいwww
1341投稿者:ジャスミンの全裸ムキ  投稿日:2011年01月09日(日)10時46分51秒
サムドラでありりんにもやってたけど、寿々歌で練習してたんですね
1342投稿者:相思相愛とは  投稿日:2011年01月09日(日)19時52分20秒
ちょっと違う気がする
1343投稿者:すいません  投稿日:2011年01月09日(日)20時35分49秒
冬休みで田舎行ってる間にスレが流れて、1300まで見れなくなってしまいました。
優しい方、どなたか1300までのスレ読めるURL教えてください〜
1344投稿者:ジョアンの嫉妬w  投稿日:2011年01月09日(日)20時54分43秒
何か可愛いなw
1345投稿者:>43さん  投稿日:2011年01月09日(日)21時03分20秒
http://113.37.205.107/log/tentele/101023201138a.html
1346投稿者:リリー  投稿日:2011年01月09日(日)21時38分14秒
1340さん
何をしていいのかわからない時って、こういう、関係ないことを考えてしまいますよね
1341さん
『フェンシング全裸ムキ』は、ジャスミンの必殺技の一つです
たぶん、もっとカッコいい名前がついてると思いますが…
1342さん
鋭いですね
ジャスミンの愛には、裏があります
1343さん
ほんとですね
もう、序盤の部分が読めなくなってしまいましたね
第一部も終わっていないのに、思ったより長い物語になりそうです
1345さん
ありがとうございます
おかげで、最初の部分を読み直すことができます
1344さん
ジョアンが、一方的にジャスミンに好意を寄せている設定です
ジョアンの療養中に、寿々歌と浮気ですからね

では、更新します
1347投稿者:リリー  投稿日:2011年01月09日(日)21時39分54秒
その美知代が、アジトの庭に忍び込む。
T−ASADAから…いや、『TTK』から、脱走者と見なされた美知代は、遠くへ逃げるよりも懐に飛び込むことを選んだ。
目的は、ただ一つ…。
シンプルな目的…それは…『ラビ』達の暗殺だ。
この最終目標は、最初から決まっていた。
自分が潰すべき組織から『敵』とみなされたからには、逃げるのではなく、攻めるべきだと覚悟を決めた。
(『ラビ』達を殺した後なら、私は、どうなっても構わない)
とにかく、『ラビ』達を殺すこと…『TTK』を潰すこと…。
その為に、今まで生きてこれたのだし、その為に、死ぬ覚悟を決めたのだ。
美知代は、身を屈めながら庭を突っ切って、屋敷の外壁に背中を着けた。
(『ラビ』達は、何処にいるんだろう…?)
そっと、窓を覗いてみようと背伸びをした時だった。
チクリとした痛みを、左手に感じた。
途端に、左手の握力がなくなり、握っていたジェラルミンケースを、芝生の上に落とした。
「…!?」
ジェラルミンケースを拾うことなく、美知代は身を退いた。
自分の身に何が起きたのか、よく知っているからだ。
1348投稿者:リリー  投稿日:2011年01月09日(日)21時40分44秒
ジェラルミンケースの周りに、長く細い針が、数多く突き刺さる。
この針を打ち込んだ者も、美知代はよく知っている。
「あなたね…?『TTK』から脱走した、『候補生』って…」
針を打ち込んだ者と思われる、少女のシルエットを、美知代は確認した。
「『A−1』…!!」
美知代は、目の前に立ちはだかる少女を睨んで叫んだ。
「…?『A−1』…ですって…?あなた…誰…?」
その少女は、ピンクと白の、スイートロリータのドレスを着ていた。
それだけで、彼女が『戦士』だということがわかる。
両手には、長さ、太さがまちまちな針が握られている。
目、鼻、口が大きい、外国人顔だ。
「ひさしぶり…だにゃん…」
「にゃん?」
その外国人顔の少女は、眉を顰めた。
「ミ〜たんのこと、覚えてる?」
ニヤリと、美知代は笑った。
1349投稿者:リリー  投稿日:2011年01月09日(日)21時41分06秒
「あんた…」
『A−1』と美知代に呼ばれた少女は、目を細めて美知代を見詰める。
「もしかして…『S−2』…?」
「正解だにゃん」
そう言うと、左手首に刺さった針を抜いた。
左手の握力が、元に戻る。
そして、充分警戒しながら、芝生の上のジェラルミンケースを拾う。
「香港で、一緒に訓練した以来だにゃん」
「あんた…まだ、『候補生』なんてやってるの?」
呆れ顔で、『A−1』は言った。
「あんたのことだから、とっくに『戦士』になれたと思ったのに…」
「そういう『A−1』は、『戦士』になれたみたいでよかったにゃん」
「名前を教えてあげる。『A−1』だなんて、味気ないから…」
『A−1』は、僅かに身体から緊張感を消して、背筋を伸ばした。
「私の名前は、加藤ジーナ…。コードネームは『スカーレット・ニードル』(真紅の針)…『チームK』所属よ」
1350投稿者:リリー  投稿日:2011年01月09日(日)21時41分27秒
『A−1』とは、『アロー』基地の1号…『S−2』は、『スワン』基地の2号という意味だ。
美知代とジーナは、香港で『暗黒鍼灸術』を習得した仲である。
その時、お互いを番号でしか呼んでいなかった。
今、名前を初めて聞いたのだ。
「ジーナ…。いい名前だにゃん。それじゃ、ミ〜たんも自己紹介…」
「いい。要らない」
ジーナは、掌をヒラヒラと動かした。
「『候補生』ごときの名前なんて、覚える必要、ないもの」
「むむ…!!」
美知代は、わざとらしく頬を膨らませ、ジーナを睨みつけた。
「それよりも、気になってるのは…」
ジーナが、気難しい目で美知代を見て言う。
「あんた…何で、にゃんにゃん、ネコみたいに鳴いてるの?香港では、そんな喋り方してなかったじゃん」
「これには、深いワケがあるにゃん」
「どんなワケ?」
「ミ〜たんの名前を聞いてくれたら、教えるにゃん」
「じゃあ、要らない」
ジーナは、徹底的に、『候補生』である美知代を認めないつもりのようだ。
1351投稿者:リリー  投稿日:2011年01月09日(日)21時41分47秒
「ジーナは…立派な『暗黒鍼灸術』師になったみたいだにゃん」
「そういうあんたは、どうしたの?ちゃんと『暗黒鍼灸術』、使ってる?アレを使えば、絶対に『戦士』になれるのに」
「ふふん…。ミ〜たんは、『暗黒鍼灸術』よりも、もと凄いものを武器にしたにゃん」
「何?まさか、名前を聞いてくれたら教えてあげるなんて言うんじゃないよね?」
「そう言いたいところだけど…是非とも聞いて欲しいから、只で教えてあげるにゃん」
「それは、嬉しいわ」
そう言うジーナの顔は、無表情だ。
「ミ〜たんの武器は、『魔法』だにゃん」
「『魔法』…?」
「ミ〜たんは、『魔法使い』になったにゃん」
「…意味がわかんないんだけど…」
そう言われた美知代は、オモチャのステッキを取り出して、頭上でゆっくり回す。
「こうやって…『マジカル〜〜〜…ぷぅ〜〜〜!!』って、呪文を掛けるにゃん」
「ふ〜ん…」
無表情のまま、ジーナは答える。
「聞かなきゃよかったわ」
1352投稿者:リリー  投稿日:2011年01月09日(日)21時42分07秒
「それじゃ、戦ってみるかにゃ?ミ〜たんの『魔法』と…」
「そのケースの中のものは、使わないの?」
美知代の左手に提げられているジェラルミンケースを、ジーナは顎で指し示す。
「ミ〜たんの武器は、コレだけにゃん」
自慢気に、美知代はステッキをジーナに見せ付ける。
「う〜ん…。結構、気になったりしてきたけど、やっぱり戦えないわ」
「…?どうしてにゃん?」
「だって、私は『戦士』だもの…。『候補生』ごときとは戦えない」
そう言うと、ジーナは、右手を高々と挙げた。
右手には、携帯電話が握られている。
「連絡させてもらったわ。お姉ちゃんに…。あなたに相応しい相手を、差し向けてくれるはずよ」
「お姉ちゃん…?」
「あ、言ってなかったわね。ジーナのパートナー、私のお姉ちゃんなの。名前は、加藤夏希…。名前くらい、聞いたことあるでしょ?」
自慢の姉の名を、ジーナは満面の笑みで口にした。
1353投稿者:リリー  投稿日:2011年01月09日(日)21時42分39秒
けたたましく、ドアが叩かれた。
中にいるジャスミンや寿々歌の返事を待つことなく、ドアは開かれた。
「失礼します!!緊急事態なもので…!!」
ドアを開けたのは、奈々だった。
「あら…。どうしたの?」
ベッドの上のジャスミンが、ゆっくりと上半身を起こす。
「あ…!!す、すみません…!!」
奈々は、慌てて目を伏せた。
そのジャスミンの姿が、全裸だったからだ。
「こちらの…『ミッション』のことで…『ルッキンググラス』が、そこにいないかと…」
そう言い掛けて、奈々は言葉を失った。
その『ルッキンググラス』…寿々歌も、全裸でベッドに横たわっていたからだ。
1354投稿者:リリー  投稿日:2011年01月09日(日)21時43分01秒
「『ミッション』だって言ってるわよ?お人形さん…」
ジャスミンが、ベッドの上の寿々歌に語り掛ける。
「『ミッション』…?」
寿々歌も、その裸の身体を一気に起こした。
「ど、どないしたん?『オーキッド』?」
恥ずかしそうに、身体を両手で覆って、寿々歌は奈々に訊いた。
「『スワン』が…ここ、アジトに姿を現したの!!」
「『スワン』が!?ホンマに!?」
「『デーモン・ハート』(加藤夏希)経由で、『メリー・ゴーラウンド』(T−ASADA)から連絡を受けたの!!」
「ゆ、許しを請いにきたん?」
「わからない!!でも、一応、武器を持ってきたわ」
奈々は、寿々歌の忍者刀を、ドア付近からベッドまで投げて寄越した。
「お、おう…!!」
夢のようなジャスミンとの一時から、現実に戻された寿々歌は、気持ちを戦闘モードに切り替えた。
1355投稿者:リリー  投稿日:2011年01月09日(日)21時43分25秒
「さあ、早く服を着て!!『スワン』は庭にいるらしいわ」
「ふ、服?」
寿々歌は、思わずカーペット上に散乱している黒い布切れを見詰める。
自分の服だった物だ…。
「服は…のうなってしもうた…」
困った様な、照れた様な顔で、寿々歌は答える。
「な、なくなった…?どういうことよ?」
そして奈々も、散らばっている布切れに気がついた。
「と、とにかく…早く『スワン』の所にいくわよ!!」
「せ、せやけど、うち、裸やで?」
「しょうがないわ!!このまま向かうのよ!!」
「このまま!?裸のまま!?」
「早くしないと、『スワン』が逃げちゃう!!」
「く…」
恨めしそうに、自分を裸にしたジャスミンを見詰める寿々歌。
「しかたないわね」といった目で、ジャスミンは微笑んだ。
1356投稿者:リリー  投稿日:2011年01月09日(日)21時44分11秒
「そ、それでは、急ぎますんで…窓から失礼します!!」
寿々歌は、裸のまま忍者刀を引っ掴み、ベッドから飛び降りると窓へ駆け寄った。
「ねえ…」
ジャスミンの声が、寿々歌の背中に投げ掛けられる。
「は、はい?」
窓を開け、身を乗り出した寿々歌は、再びジャスミンを振り返る。
「『ミッション』が無事に終わったら、またここに戻ってきなさい」
そう言って、ジャスミンは自分の隣を指差した。
「は、はぁ…」
歯切れの悪い返事を、寿々歌は返す。
「また…遊びましょう…」
「は、はい…」
寿々歌は、できればこのままジャスミンのいるベッドへ帰りたくなってきた。
1357投稿者:リリー  投稿日:2011年01月09日(日)21時44分32秒
「早く!!」
奈々が、寿々歌の背中を強く押す。
名残惜しそうにジャスミンを見詰めたまま、寿々歌は窓から飛び降りた。
そして、奈々も続く。
一人、部屋に残ったジャスミンは、寿々歌が去った窓を見詰め、独り言を呟く。
「そう言えば、あの子の名前、何だっけ…?」
確か、ダーブロウからは『ヒヨっ子5』としか紹介されていない。
「ま、いいわ…。人形に名前はいらないから…」
そして、その美しく輝く金髪を掻き揚げる。
「遊んであげる…。『壊れる』までね…」
1358投稿者:リリー  投稿日:2011年01月09日(日)21時44分47秒
では、おちます
1359投稿者:117  投稿日:2011年01月09日(日)21時49分30秒
ここでジーナ登場ですね。
しかし、緊急事態とはいえ、全裸で飛び出していく寿々歌ってw
寿々歌も、ジャスミンの誘惑にやられたか?
1360投稿者:さすがジャスミンw  投稿日:2011年01月09日(日)21時50分53秒
誘惑もすげぇw
1361投稿者:寿々歌全裸w  投稿日:2011年01月09日(日)21時52分42秒
何か着ようぜw
1362投稿者:やっぱり  投稿日:2011年01月09日(日)21時54分01秒
ジャスミンは候補生にすぎない寿々歌のことを大切に扱うつもりはなかったと・・・
1363投稿者:壊れるまで遊ぶだからな  投稿日:2011年01月09日(日)21時55分26秒
大切も糞もw
1364投稿者:リリー  投稿日:2011年01月10日(月)21時45分49秒
117さん
最後の『サムドラ』出演者のジーナがいよいよ登場です
美知代が『暗黒鍼灸術』の使い手と判明した以上、対決は必然でした
1360さん
ジャスミンは、誘惑よりも拷問が得意という設定です
四天王では、夏希が誘惑、ジャスミンが拷問、ダーさんとモニークは殺人が得意です
1361さん
裸にする必然性は、まったくなかったんですけどね
1362さん、1363さん
まだ、ジャスミンは『TTK』のジャスミンですので、まだちょっと非人道的です

では、更新します
1365投稿者:リリー  投稿日:2011年01月10日(月)21時46分27秒
寿々歌と奈々が飛び降りた地点は…丁度、美知代とジーナが睨み合っているど真ん中だった。
「『スワン』!!」
寿々歌と奈々は、着地と同時に美知代を確認した。
「…!!」
美知代は、突然上から現れた二人に…更に、何故か裸でいる寿々歌に目を丸くした。
「寿々歌…。何で、裸にゃん?」
「そ、それは聞かんといて!!」
寿々歌は、顔を真っ赤にして、咄嗟に身体を両手で隠した。
「戻って来たのね?も、もしかしたら…許してもらおうと思ってるの?」
奈々は、まず手にしたチャクラムを後ろに回して隠す。
自分達は、敵ではない…と、伝えることが先だと考えたのだ。
「どうやら、そうじゃないみたいよ」
「え…?」
自分の後ろに立っている、ロリータドレスの少女を、奈々は改めて振り返る。
「どうして、今のうちにやっつけてしまわないの?ビックリさせるために、裸で登場してきたんじゃないの?」
ジーナは、不思議そうに首を傾げながら、裸の寿々歌を見て言った。
「そ、そういうわけでは、ないんですけど…」
美知代を視線に捕らえながら、寿々歌は後方のジーナに言い訳をする。
1366投稿者:リリー  投稿日:2011年01月10日(月)21時46分52秒
「許しを請いに来たわけではないにゃん」
ようやく、美知代は構えをとった。
手にしているのは、例のオモチャのステッキだが…。
「ど、どうして!?本気で、『TTK』を抜け出す気!?」
奈々が、美知代を責めるような、悲痛な声をあげる。
「成り行き上、そうなってしまったにゃん」
「成り行き上…?じゃあ、こうなってしまったのは、本意ではないんでしょ?それに、ここにこうして戻って来たってことは…」
「これ以上、お喋りしても無駄にゃん」
美知代は、奈々との会話を打ち切った。
『ラビ』達を暗殺に来たとは…まだ言うべきではない。
たかが『候補生』と言えども、命を狙っているとわかれば、『ラビ』達はますます身辺警護を固めてしまうだろう。
「おい!!『スワン』!!せやったら、うち等は、あんたを捕まえんとアカンくなるで!!」
身体を隠すことから、その両手を忍者刀を構えることに切り替える寿々歌。
(ここは…『魔法』で…寿々歌と奈々を眠らせるしかない…)
だが、問題は、同じ『暗黒鍼灸術』を操るジーナ…。
(私の『魔法』の正体を、見破られてはいけない…)
1367投稿者:リリー  投稿日:2011年01月10日(月)21時47分13秒
「行くで!!」
寿々歌は、忍者刀を抜き、『ダンドン』の構えをとる。
「ミ〜たんも!!」
美知代は、オモチャのステッキを頭上に掲げる。
まず、視線をステッキに移させることで、極小の針を口から吹き出すことに、気づかせない…。
(ジーナなら、突然倒れてしまった様子を見て、絶対に『暗黒鍼灸術』が使われていると気付くはず…。問題は、どうやって使ったのかと言う事…。これは、謎にしておかなければ…)
このステッキに、何か仕掛けがしてあって、そこから見えない針が発射されると思わせる…。
だが、それが通用するのは、おそらく最初の一発目だけだろう。
二発目で気付かれる危険性は高い。
(だったら…まず一発目で、寿々歌を眠らせて…わざと奈々のチャクラムを受けて、ステッキを手放す…。そして、油断したジーナを二発目で…)
美知代は、そう青写真を描く。
「どうせまた、『魔法』や、何やとワケのわからんことを言う気やろ?」
寿々歌が、ジリジリと間合いを詰めていく。
(もう少し…。あと…2メートル…)
自分と寿々歌の距離を、美知代は目で測る。
1368投稿者:リリー  投稿日:2011年01月10日(月)21時47分33秒
「あまり、近づかない方がいいよ」
寿々歌の背に、ジーナが声を掛けた。
「え?」
寿々歌は、充分美知代を警戒しつつ、ジーナを横目で見る。
「さっきから彼女は、あんたと自分の距離を測ってるわ。どうやらその『魔法』ってのは、超接近戦でなきゃ使えないみたい…」
(ち…!!)
ポーカーフェイスを保ちながら、美知代は心の中で舌打ちをした。
(やっぱり、ダメだ!!ジーナの前で、『魔法』は使えない…!!)
まず…ここから逃げ出さなければ…。
口に含もうと、針を持った手を、美知代は下げる。
「あ、あの…。失礼ですが…あなたは…?」
奈々は、ジーナを振り返る。
「加藤ジーナよ。『チームK』所属。コードネームは、『スカーレット・ニードル』。パートナーは『デーモン・ハート』…」
淡々と、ジーナは自己紹介を始める。
「『デーモン・ハート』…!?」
加藤夏希のパートナー…しかも、どう見ても10歳くらいの、幼い少女…。
「ちなみに、『デーモン・ハート』は、私のお姉ちゃんよ」
「そ、そうなんですか!?」
奈々と寿々歌に、緊張が走る。
1369投稿者:リリー  投稿日:2011年01月10日(月)21時47分52秒
「『マ〜ジ〜カ〜ル〜』………」
突然、美知代があの例のアニメ声で叫んだ。
「…!?」
奈々と寿々歌は、咄嗟に身を退いた。
「『ぷぅ〜〜〜〜〜』!!!」
ステッキを振り下ろす美知代だが、何も起こらない。
何も起こらないのは当然で、この呪文の絶叫の理由は、ジーナと奈々の会話を邪魔することにあったからだ。
いつ、ジーナが自分と知り合いだと喋り出すか、わからないからだ。
それに、『暗黒鍼灸術』のことを話されたら、もう終わりだ…。
「な、何や…。やっぱ、『魔法』なんて、役に立たんみたいやな…」
少し苛つき気味に、寿々歌は呟く。
「でも、『スカーレット・ニードル』の言う通りよ。『スワン』に近づいたらいけない気がする…」
奈々は、寿々歌の耳元で囁くと、両手の指で、チャクラムを回し始める。
いつか、『北斗七星』の照英と戦った時、美知代自身が…『魔法』は接近しなければ使えない…と、話していたのを思い出す。
「まず…私がチャクラムで攻撃を仕掛ける…。でも、それは『スワン』を誘導するため…」
「誘導…?」
「ある一点だけ逃げ道をつくるわ…。そこを…」
「わかった…。うちが、突くんやな…?」
「わかってるとは思うけど…」
「わかってるって…!!殺さへんよ」
1370投稿者:リリー  投稿日:2011年01月10日(月)21時48分24秒
「ふふ…」と、奈々が笑う。
「な、何やねん?どないしたん?」
寿々歌は、そんな奈々に戸惑いつつ訊ねた。
「意外と頭が働くのね…。『ルッキンググラス』…」
「い、意外とって何やねん!!やっぱ、あんたとは相性良うないな!!」
「あ…」
寿々歌の顔を見詰め、奈々は小さく声をあげた。
「今度は、何や?」
「そう言えば…【エレメント】の上で、私とあなたは相性良くなかったわね。《風》と《土》…。忘れてた…」
そんな奈々の言葉に、思わず寿々歌も顔をほころばせる。
「【エレメント】なん、気にしてたら、何もできんよ…!!」
「そうね…」
寿々歌と奈々は、再び美知代を見据える。
まずは…彼女を生きたまま、捕らえること…。
この後のことは…運命に任せるしかない。
1371投稿者:リリー  投稿日:2011年01月10日(月)21時48分45秒
奈々が、チャクラムを次々と上空に放った。
美知代の頭上に、円形の刃が高速回転しながら、滞空飛行している。
「………」
いつ、襲い掛かってくるのか…美知代はじっとチャクラムを見詰めている。
もちろん、寿々歌が襲い掛かってくるのも警戒している。
空中で、チャクラムはぶつかり始める。
暗闇に、火花が散る。
(奈々のチャクラムは、そんなに破壊力はない…。私を攻撃する為のものではない…)
攻撃するのは、あくまでも寿々歌だと考える。
(ならば、あのチャクラムは…)
ぶつかり合ったチャクラムは、一斉に美知代に…左斜め上から襲い掛かってきた。
「…!!」
美知代は、右上空(そこしか逃げ道がない)へ飛び上がった。
「今や!!」
それに合わせて、寿々歌も飛び上がる。
美知代の体勢が整っていないうちに、鞘の一撃で気を失わせるのだ。
1372投稿者:リリー  投稿日:2011年01月10日(月)21時50分33秒
だが…。
「あれ…!?」
驚愕の声をあげたのは、寿々歌の方だった。
美知代の跳躍が、異様に高かったのだ。
寿々歌のはるか上空を飛び越え、そのままアジトの屋敷の柵を飛び越えて行ってしまったのだ。
1373投稿者:リリー  投稿日:2011年01月10日(月)21時50分45秒
「な、何や…!!今の…!!」
芝生に降り立ってから、寿々歌は奈々の顔を見て叫んだ。
「と、とにかく、追うわよ!!」
奈々が、柵へと走り寄った。
「お、追うって!?うち、裸やで!?」
寿々歌は、悲鳴にも似た声をあげた。
「そんなの、知らないわよ!!『ミッション』中に、イチャイチャしてた、あなたが悪いの!!」
柵をよじ登りながら、奈々は寿々歌を見下ろし、怒鳴った。
「く…!!やっぱり、あんたとは相性が悪いわ!!」
寿々歌は、顔を歪めながら、助走をつけて柵を飛び越えた。
奈々も、遅れて柵を越える。
庭には、ジーナが一人残された。
「…自分の足に、針を刺したわね…。それで、足の筋肉が発達して、あんなジャンプができたんだ…」
しかし、ジーナにはわからないことがあった。
「いつ、針を打ち込んだのかな…?いや…針なんて刺さってた…?」
呆然と、美知代が越えていった柵を見詰める。
「もしかして…本当に『魔法』…?」
だが、すぐに首を何度も振った。
「まさか…ねぇ…」
1374投稿者:リリー  投稿日:2011年01月10日(月)21時51分40秒
ジーナの出番、終わりです
これで、『サムドラ』登場人物の出番は全て終了です
1375投稿者:とうとう  投稿日:2011年01月11日(火)00時13分25秒
全裸で敷地外まで飛び出すハメにwww
1376投稿者:『魔法』の正体が針って  投稿日:2011年01月11日(火)07時57分00秒
何かしっくり来ないな
まぁ言い張っちゃえば押し通せるだろうけど
1377投稿者:寿々歌以外の人にしてみれば  投稿日:2011年01月11日(火)19時48分47秒
何で全裸?ってなるよなw
1378投稿者:鍼の使い道すげぇw  投稿日:2011年01月11日(火)19時52分51秒
さすがだw
1379投稿者:まだななたちはしらないんだな  投稿日:2011年01月11日(火)19時55分18秒
自分と寿々歌のエレメントを
美知代が一気にもってることw
1380投稿者:リリー  投稿日:2011年01月11日(火)21時07分36秒
1375さん
それがプロ根性なのか、ヤケクソなのか、わかりませんが…
1376さん
たしかに、そうですよね
目に見えない、極細の針ということにしてありますけどね
1377さん
説明したくないでしょうね、何故、全裸になっているのかは…
1378さん
よくよく考えてみれば、美千代は無敵キャラになってしまいましたね
何でもできてしまいそうな…
1379さん
美知代は、自分で《土》だと話してますが、信じられてはいないようです
みんなの前では、ほとんどにゃんにゃん言ってますからね

では、更新します
1381投稿者:リリー  投稿日:2011年01月11日(火)21時12分22秒
美知代が、上下峠の林道を、猛スピードで駆け抜けていく。
寿々歌も懸命に追い掛けているのだが、ぐんぐんと引き離されていく。
「な…何て、足の速さや…!!オリンピック級やんけ!!」
そして、この秋の夜に、裸で走っている自分に呆れる。
いつか、『アロー』基地の中を裸で歩かされたことを思い出す。
「くぅぅ…!!このまま、街中まで逃げられたら最悪や!!」
寿々歌は、走るスピードを上げるが、ますます美知代との差が広がるばかりだ。
「と、とまらんかい!!くそったれ〜〜〜!!」
そう、寿々歌が叫んだら…なんと、美知代が立ち止まった。
「へ…?ホンマに止まった…?」
だが、美知代は転がりながら林の方へと逃れようとする。
美知代の立っていた場所に、何かが突き刺さっている。
「…!?棒…?釘手裏剣…!?」
美知代の行く手を阻んでいたのは、真優香…そして、菜々香に青來…!!
3人とも、この上下峠周辺を探っていたのだ。
1382投稿者:リリー  投稿日:2011年01月11日(火)21時12分45秒
だが、美知代が林の中へ逃げてしまったら、厄介なことになる。
「逃がしたらアカン!!」
寿々歌が叫ぶのと同時に、青來が飛鋲を放つ。
白いロープが波打ちながら、美知代の足下に飛ぶ。
美知代が寸でで飛び上がって避けたことで、木の根元に飛鋲が突き刺さる。
だが、青來は手首を回し、ロープで輪をつくる。
そのロープが、美知代の足に絡み付いた。
空中でバランスを崩し、美知代の身体は、林道に叩きつけられた。
「やった…!!『ヒドラ』、偉い!!」
倒れている美知代に向け、寿々歌が再びスピードを上げて走り寄る。
だが、菜々香の方が早い。
三節棍を、美知代に向けて振り降ろそうとしている。
1383投稿者:リリー  投稿日:2011年01月11日(火)21時13分06秒
「『フレイム』!!ダメ!!」
寿々歌の後方から、奈々がチャクラムを投げつけた。
直線を描き、早いスピードでチャクラムは飛んで行く。
「…!?」
そのチャクラムは、美知代ではなく、菜々香へ向かっていった。
菜々香は、咄嗟に美知代から跳んで離れた。
その隙に美知代は、素早く足から飛鋲のロープを解くと、林道とは反対の、とある別荘の敷地内へと駆けて行く。
林の方へ逃げなかったのは、チャクラムが行く手を阻んでいたからだ。
真優香が釘手裏剣を投げつけたが、それよりも早く美知代は駆けぬけ、別荘の敷地内へ飛び込んで侵入した。
「く…!!絶対に逃がしたらアカンで!!あの家の中で追い詰めるんや!!」
真優香達に合流した寿々歌は、別荘の敷地内へと走り出す。
「『ルッキンググラス』…!?あんた、何で裸なの!?」
真優香が目を丸くして、全裸の寿々歌を見詰める。
「そ、それは、聞かんといて!!」
顔を真っ赤にしながら、寿々歌は別荘の塀を飛び越えた。
「一体、何があったのかな…?」
「ワケがわかんないわ…。アイツ…」
真優香も青來も、寿々歌の後に続く。
1384投稿者:リリー  投稿日:2011年01月11日(火)21時13分25秒
林道に残っているのは、菜々香と奈々の二人だけになった。
「な、何で邪魔したん!?『オーキッド』!!」
菜々香は、怒り心頭で奈々に詰め寄る。
「あなたの為よ!!」
負けじと奈々も、怒鳴り返す。
「ウ、ウチの為…!?」
「『スワン』に、近づいたらダメ!!彼女の『魔法』の餌食になるわ!!」
「『魔法』!?あんた、そんもん信じてんの!?」
「『魔法』自体は眉唾ものよ!!でも、何か、奥の手を隠してる…!!わざわざアジトに戻って来たのも、相当『魔法』に自信があるのよ!!」
「…!?『スワン』は、何しに戻ったん?」
「わからない…。でも…許しを請いに来たわけではなさそうよ…」
「戦う気なんか…?『TTK』と…」
「まだ…わからない…」
奈々は、美知代が侵入した別荘を睨む。
そして、二人も別荘へと足を踏み入れる。
1385投稿者:リリー  投稿日:2011年01月11日(火)21時13分42秒
「でも…意外だったわ…」
奈々が口を開く。
「まだ、上下峠にいたなんて…」
「ウチもな、『スワン』がアジトに戻ってくると踏んでたんや。いつまでも事故を起こした住宅街をウロウロしてるとも思えんかったし…」
「良い判断力ね…。直情型の《火》とは思えない…」
「せやから、【エレメント】なん、関係ないんよ。それで、自分や他人に先入観持ってまったら、おもろないやん」
「それ…『ルッキンググラス』も言ってたわ」
「そう言えば…『ルッキンググラス』、何で裸やったん?」
「本人に聞いて…」
その時、ガラスの割れる音が響いた。
「…『スワン』…家の中に入った…?」
小声で、菜々香が訊いた。
「うん…。でも、もしかしたら、ガラスを割っただけで、まだ外にいるだけかも…」
しばらく、奈々は考える。
「『フレイム』…。あなたは、家の中に入って…。室内の接近戦なら、得意でしょ?逆に、私は外の方が戦いやすい…」
「わかった…。でも、もし『スワン』を見つけたら、ウチに知らせるんやで?」
「OK…。『ハチ』さん…」
「気ぃつけえよ…。『クゥ』…」
二人はコードネームではなく、あだ名で呼び合って、二手に別れた。
1386投稿者:リリー  投稿日:2011年01月11日(火)21時14分27秒
割られたガラスから家の中に入った菜々香は、三節棍を『又』の字の形状にして、慎重に廊下を進む。
上下峠の別荘地は、高級住宅が多いので、アジトほどではないにしろ、中は広い。
「…?誰や…?」
ドアを隔てた向こう側に、菜々香は声を掛けた。
「『ヒドラ』です…」
青來の声が聞こえる。
「…ドアを開けて…」
「うん…」
そっと、青來はドアを開けた。
音もなく、菜々香は部屋に入る。
「『パール』と『ルッキンググラス』は…?」
「二人で行動してる…」
「そう…。せやったら、『ヒドラ』はウチと行動せえよ」
「うん…。それはいいけど…『オーキッド』は…?」
「外にいる…」
「一人で…?心配じゃない?」
「おそらく…『スワン』は、この家の中で、ウチ等と決着をつけようと考えてるはずや」
「どうして、そう考えるの?」
青來は、不思議そうに菜々香に訊く。
1387投稿者:リリー  投稿日:2011年01月11日(火)21時14分52秒
「決死の覚悟で、アジトに近づいて来たんや…。すぐにでも戻りたいはず…。このまま逃げ出そうとは考えてへんはずや…」
「そ、そうか…」
決死の覚悟…。
それは、自分達も同じ覚悟で、美知代と対峙しなければならないという、菜々香の忠告と受け取った。
「直線的な『パール』の釘手裏剣よりも、柔軟性のある、あんたの飛鋲の方が、この室内では有効な気がする…。『スワン』の姿が見えたら、まず、あんたが攻撃して」
「わ、わかった…」
青來は、ギュっと飛鋲のロープを握った。
攻撃といっても、コレで美知代を傷つけることはできない。
何とか、さっきのように動きを封じ込めなければならない。
その時、何やら慌しく階段を駆け上がる音が鳴る。
「…!?上か!?」
菜々香と青來は、天井を見上げる。
「ウチ等も行くで!!」
「うん!!」
菜々香と青來は、同時に部屋を飛び出した。
1388投稿者:リリー  投稿日:2011年01月11日(火)21時15分16秒
その時、吹き抜け状になった空間から、光る物が飛んで来た。
「『ヒドラ』!!」
菜々香は、青來に飛びついて、その場から離れる。
廊下に、黒い鳥の羽根が着いた針が突き刺さっている。
「…!?コレは…?」
菜々香は、恐る恐るその針を抜き取った。
「危ない!!」
今度は、青來が菜々香に飛びついた。
また、鳥の羽根が着いた針が突き刺さった。
上を見ると、美知代が階段の踊り場から顔を覗かせていた。
両手で、何やら1メートル程度の黒い棒を持っている。
いや、棒ではなく、筒か…?
その筒を、口に持って行く…?
「吹き矢や!!」
菜々香が叫んだと同時に、その筒から羽根の着いた針が発射された。
『吹き矢』…これが、美知代の本来の武器…。
『スワン』基地から送られてきたジェラルミンケースに入った…美知代が『魔法使い』と名乗る前に使っていた…専用武器なのだ。
吹き矢から発射された針で、相手の急所を突く…。
『暗黒鍼灸術』を、吹き矢で行使するのが、美知代の戦闘スタイルだったのだ。
1389投稿者:リリー  投稿日:2011年01月11日(火)21時15分35秒
またも菜々香は青來の身体を引き寄せ、その場から跳び退くが…。
「う…」
青來が、小さく呻いた。
「…!?」
咄嗟に、青來を見る。
「『ヒドラ』…!!」
青來の首筋に、針が突き刺さっていた。
そして、ゆっくりと青來は前のめりに倒れる。
受身をとることなく、青來は廊下に突っ伏した。
青來は、ピクリとも動かない…。
「や、やりよったな!?『スワン』!!」
怒りに顔を歪ませて、菜々香は階段を睨み上げるが、そこにはもう、美知代の姿はなかった。
「く…!!」
菜々香は、青來の首に刺さった針を抜いた。
「ど、毒は…?」
針の先の臭いを嗅いでみるが、無臭だった。
「う、うん…」
すると、死んだように倒れていた青來が、眠りから覚めたように起き上がった。
1390投稿者:リリー  投稿日:2011年01月11日(火)21時15分57秒
「『ヒドラ』…!?あんた、何ともないの!?」
「ん…?何が…?」
まるで「おはよう」と挨拶をするのではないか…と思えるほど、青來は呑気な顔を菜々香に向けた。
「あ、あれ…?」
もう一度、菜々香は針を見詰める。
「何…?コレ…」
『暗黒鍼灸術』の存在を知らない菜々香は、美知代がどういう攻撃をしたのか、理解ができない。
「『スワン』や!!上に行ったで!!」
どこかに潜んでいた、寿々歌と真優香が階段を駆け上がった。
「あ…!!待って!!『ルッキンググラス』!!『パール』!!」
菜々香が叫んだが、二人は美知代を追って二階へ上がって行った。
「く…!!『ヒドラ』!!追うで!!」
この、美知代の攻撃の真意を見極めなければならない。
1391投稿者:リリー  投稿日:2011年01月11日(火)21時16分47秒
その時、吹き抜け状になった空間から、光る物が飛んで来た。
「『ヒドラ』!!」
菜々香は、青來に飛びついて、その場から離れる。
廊下に、黒い鳥の羽根が着いた針が突き刺さっている。
「…!?コレは…?」
菜々香は、恐る恐るその針を抜き取った。
「危ない!!」
今度は、青來が菜々香に飛びついた。
また、鳥の羽根が着いた針が突き刺さった。
上を見ると、美知代が階段の踊り場から顔を覗かせていた。
両手で、何やら1メートル程度の黒い棒を持っている。
いや、棒ではなく、筒か…?
その筒を、口に持って行く…?
「吹き矢や!!」
菜々香が叫んだと同時に、その筒から羽根の着いた針が発射された。
『吹き矢』…これが、美知代の本来の武器…。
『スワン』基地から送られてきたジェラルミンケースに入った…美知代が『魔法使い』と名乗る前に使っていた…専用武器なのだ。
吹き矢から発射された針で、相手の急所を突く…。
『暗黒鍼灸術』を、吹き矢で行使するのが、美知代の戦闘スタイルだったのだ。
1392投稿者:リリー  投稿日:2011年01月11日(火)21時17分02秒
もう一つの謎、美知代のケースの中身の正体(元武器)も明らかになりました

では、おちます
1393投稿者:吹き矢か・・・  投稿日:2011年01月11日(火)21時17分56秒
鍼飛ばすにはもってこいだなw
青來wのんきすぎるってw
1394投稿者:青來大丈夫かw  投稿日:2011年01月11日(火)21時26分05秒
 
1395投稿者:戦士の武器って  投稿日:2011年01月12日(水)07時57分04秒
どうやって決めてるの?
決まりとか法則とかある?
1396投稿者:リリー  投稿日:2011年01月12日(水)20時34分59秒
1393さん
さすがに、美知代は青來を殺すことはなかったのですが、危なく死ぬところでしたね、青來…
1394さん
ただ眠らされただけですので、大丈夫です
射ち所が悪ければ、死んでましたが…
1395さん
訓練を通して、自分に合った武器を選びます
『1000分の1』の一磨は、専用武器を決める前に『TTK』から離れてしまったので、バタフライナイフに出会うまで、武器なしで戦うことになったのです

では、更新します
1397投稿者:リリー  投稿日:2011年01月12日(水)20時35分27秒
二階へ駆け上がった寿々歌と真優香に向けて、暗闇から針が飛んで来た。
「うお!?」
咄嗟に、二人は両方向に跳んで避けた。
二人の丁度間の床に、羽根の着いた針が突き刺さった。
「コレって…吹き矢だよね?」
真優香は、大きな目を見開き、針を見詰める。
「コレが、あのボケの本当の武器やな!!何が、『魔法』や!!」
寿々歌は、暗闇を睨みつけた。
すると、また暗闇から針が飛んで来る。
「うわ…!!」
針は、真優香の方へ飛んでいく。
寸でで、真優香は避ける。
そして、また針は真優香の方へ…。
「く…!!同じ飛び道具を武器にしてる、私の方から始末しようとしてる!!」
「せやったら、うちが何とか近づいて、この攻撃をやめさせるわ!!『ひらたま』!!援護頼むで!!」
「『ひらたま』って言うな!!『ちんすず』!!」
真優香の怒鳴り声を背中で聞きながら、寿々歌は忍者刀を構えて暗闇に向けて走り出した。
1398投稿者:リリー  投稿日:2011年01月12日(水)20時35分47秒
今度は、針が寿々歌に向けて飛んで来た。
「こんなん、通用せんで!!」
寿々歌は、忍者刀を居合いで抜き放ち、針を叩き落とした。
同時に、釘手裏剣が寿々歌の背後から飛ぶ。
何だかんだ言っても、真優香は、しっかりと寿々歌の援護をしている。
バタバタと、右へ移動する音が聞こえる。
真優香の釘手裏剣を、避けたのだ。
「そこや!!」
暗闇の中、美知代の姿を確認する。
「行くで!!『ダンドン』!!」
右手に刀、左手に鞘を持った寿々歌は、身体を回転させる。
ふっと、美知代は寿々歌へ吹き矢を放つ。
「一段目!!」
針を、寿々歌は刀で叩き落す。
そして、鞘で美知代の即頭部を狙う。
だが、美知代は吹き矢の筒で、その攻撃を受ける。
金属音が響く。
どうやら、美知代の吹き矢も、金属製のようだ。
1399投稿者:リリー  投稿日:2011年01月12日(水)20時36分09秒
「二段目!!」
容赦なく、寿々歌は『ダンドン』を続ける。
刀と鞘が、吹き矢の筒を激しく叩く。
「三段目!!」
またも、吹き矢に攻撃を加える。
「く…!!」
美知代の顔が歪む。
どうやら、吹き矢の筒が、僅かに曲がり始めたらしい。
「四段目!!」
とうとう、寿々歌の刀が、美知代の吹き矢の筒を切り飛ばした。
「やったで!!」
これで、美知代の吹き矢を封じることができた。
寿々歌は、刀の刃を返す。
美知代を、殺してはならないからだ。
「五段目!!」
その時、あの例のアニメ声が、暗闇の部屋に響いた。
「『マジカル・ぷ〜〜〜』!!!」
1400投稿者:リリー  投稿日:2011年01月12日(水)20時36分40秒
「…え!?」
寿々歌の刀が、天井に突き刺さった。
寿々歌が投げた…のではなく、手放したのだ。
いや、手放したのではなく、右手の握力がなくなったのだ。
頭が混乱しつつ、寿々歌は左の鞘で攻撃を続ける。
「『ぷ〜〜〜』!!!」
今度は、鞘が天井に突き刺さった。
右手と同じく、左手に力がまったく入らない…。
「な、何や…?コレ…」
思わず、寿々歌は両膝を着いてしまった。
「ふふ…。これが…『魔法』だにゃん…」
美知代は、寿々歌の頬を両手で挟み、上を向かせた。
「『魔法』…?ホンマにあったの…?」
寿々歌は、力なく呟いた。
「おやすみ…だにゃん…」
口をすぼめ、寿々歌に息を吹きかけようとする。
1401投稿者:リリー  投稿日:2011年01月12日(水)20時37分02秒
その時、寿々歌と美知代の顔の間に、数本の釘手裏剣が飛び込んだ。
「うお!?」
思わず、寿々歌は身体を仰け反らせた。
そして、バランスを崩し、床に仰向けで倒れた。
「く…!!」
美知代は、釘手裏剣を投げた真優香を睨み、再び暗闇に消えていく。
「あ、危ないな!!『ひらたま』!!」
「文句を言われる筋合いはないよ!!『ちんすず』!!」
真優香は、美知代を追って、倒れている寿々歌の横を通り抜ける。
「く…!!ま、待ってや…!!」
まったく、両腕が動かない…。
寿々歌は、腹筋で跳ね起きる。
両腕は、肩からダラリと垂れ下がるだけだ。
「こ…これが…『魔法』やって…?」
寿々歌は、自分の身に起きたことが、未だに信じられない。
1402投稿者:リリー  投稿日:2011年01月12日(水)20時37分21秒
「『ルッキンググラス』!!大丈夫?」
後ろの階段から、菜々香と青來が駆け上がってきた。
「大丈夫やない!!両腕が動かん!!」
寿々歌は、美知代と真優香がいるであろう、暗闇を睨みながら叫んだ。
「え!?何で?」
「『魔法』や!!」
「何やって?」
「ホンマに使いよった!!『魔法』を…!!」
菜々香と青來は、寿々歌に並ぶように足を止める。
「そ、そんな…」
青來は、そこから一歩を踏み出せない。
「まさか…。ホンマに動かんの?」
菜々香は、寿々歌を横目で見ながら訊いた。
「動かん!!肩から先が、ズシリと重いわ!!」
「そんで…何で裸なん?」
「それは聞かんといて!!」
「どうでもええけど…。腕が動かんのなら、『ルッキンググラス』は、ここにおとなしゅう居るんやで?」
そして、「行くで!!『ヒドラ』!!」と、青來の肩を強く叩いて駆け出した。
1403投稿者:リリー  投稿日:2011年01月12日(水)20時37分40秒
「ここに…おとなしゅう居れ…?」
寿々歌は、菜々香の背中を見詰め、呟いた。
腕が動かないから…?
何もできないから…?
(そんなん…人形と一緒やん…)
「可愛いお人形さん」と、ジャスミンは言った。
(うち、ジャスミンさんに、『人形』言われて、何を喜んでたんや!!何もせんでええ、言う事は、うちが何も出来ないからか…!?)
寿々歌は、屈辱に震える。
自分は何だ…?
ただの着せ替え人形か…?
『戦士』ではないのか!?
「うちは…人形やない!!」
両腕が動かないまま、寿々歌は皆と同様、暗闇に駆け込んで行った。
1404投稿者:リリー  投稿日:2011年01月12日(水)20時38分16秒
「『ヒドラ』!!攻撃、頼む!!12メートルなら、『魔法』の影響は受けんと思うから…」
菜々香は、暗闇一歩手前で止まると、青來を振り返って言った。
「OK!!」
青來は、目を凝らして美知代の姿を探る。
背を向けているのが、真優香だ。
釘手裏剣を、懸命に投げている。
その先に、美知代がいるのか…?
真優香の釘手裏剣は、限りがある。
いつか、『北斗七星』の『照英』と戦った時、弾切れとなったことは、記憶に新しい。
その点、青來の飛鋲は、何度でも攻撃ができる。
「や!!」
青來は、真優香が釘手裏剣を投げる先に、飛鋲を放った。
ロープを蛇行させながら、美知代がいるであろう場所に、飛鋲は伸びていく。
「う…」
美知代の声が聞こえた。
手応えがなかったので、命中はしなかったが、おそらく体勢を崩すことができたのだろう。
「『パール』!!今よ!!」
青來は、自分でも驚くぐらいの声の大きさで、怒鳴っていた。
1405投稿者:リリー  投稿日:2011年01月12日(水)20時38分37秒
青來の声に押されたかのように、真優香は足に取り付けていた釘手裏剣を蹴りで放つ。
暗闇の中から、僅かに見えた。
美死代が、前転しながら窓へと近づく。
「逃げる気!?」
だが、もう既に、美知代は窓に手を掛けていた。
「逃がしたらアカン!!」
後方で、菜々香が怒鳴っている。
真優香と青來が狙いを定めようとした時、美知代は窓を大きく開け放った。
しかし、美知代は窓の外へ逃げることはなかった。
窓の外に…円形の刃が幾つも浮遊していたからだ。
奈々が、外からチャクラムを2階の窓に向けて放ったのだ。
「く…!!」
前方も、後方も、美知代は進むことができない。
そこに、新しいチャクラムが一つ、加わった。
それは、他のチャクラムにぶつかり合う。
火花を散らしながら、チャクラムは窓から室内へ、勢いよく飛んで来た。
「…!?」
美知代は、咄嗟に仰け反って、チャクラムを避けた。
1406投稿者:リリー  投稿日:2011年01月12日(水)20時39分00秒
同時に、釘手裏剣、飛鋲も美知代を襲う。
身を捩りながら、何とかその攻撃を回避する。
しかし、その体勢はバランスを崩し、次の攻撃を避けることはできない。
「今や!!」
待っていたとばかりに、菜々香は三節棍を振りかぶって、美知代へと飛び掛った。
そして、三節棍を、美知代に向けて振り下ろした。
「…!!」
だが、その三節棍を、美知代は素手で受けとめた。
「な、何やって…!?」
凄まじい握力で、美知代は三節棍を握っている。
しっかり握って、離さない。
「く…!!離さんかい!!」
菜々香は全体重をかけて引っ張るが、美知代はビクともしない。
美知代は、既に自分の右手に極小の針を打ち込み、自分の腕力や握力を増幅させていたのだ。
真優香、青來が菜々香を援護をしようとした時だった。
「『マ〜ジ〜カ〜ル〜…』」
あの、例のアニメ声…。
美知代が、『魔法』を行使しようとしている…?
1407投稿者:リリー  投稿日:2011年01月12日(水)20時39分18秒
「させるかい!!」
背後から、いつの間にか寿々歌が迫っていた。
両腕が使えないのなら、足で…。
そして寿々歌は、かかと落としを、美知代の脳天に炸裂させた。
「『ぷ』!!」
美知代の狙いは僅かに逸れ、合成吸収糸と同じ成分でできた、極小の針は、菜々香の右腕に打ち込まれた。
「…う!?」
一瞬で、菜々香の右手の握力がなくなった。
つまり…握っていた三節棍を手放したのだ。
凄まじい力で引っ張り合いをしてきたのだから、当然、美知代の身体は、後ろへ倒れこむ。
(い、いけない…!!)
必死で、美知代が体勢を立て直そうとした時だった。
「うりゃあああああ!!!」
菜々香が、美知代の目の前まで突進していた。
左の拳を振り上げている。
1408投稿者:リリー  投稿日:2011年01月12日(水)20時39分40秒
武器を手放したのなら、拳がある…!!
菜々香の左ストレートが、美知代の頬を捉える。
菜々香は、美知代に対してしてやりたかったこと…『思いっきりどつく』ことを、ようやく行使することができた。
「ふぎゃ!!」
美知代は、バランスを崩したことも手伝って、勢い余って、大きく開け放たれた窓から身を投げ出す。
「あ…!!しもた!!」
菜々香が、青い顔で叫んだと同時に、背後から、飛鋲が飛ぶ。
そして、まっ逆さまに落ちようとしている美知代の足に、絡み付いた。
「…『スワン』!!」
外で待機していた奈々の目の前に、美知代は逆さ吊りの体勢で宙に止まった。
「ふふ…。お久しぶりだにゃん…」
右の頬を赤く腫らした美知代が、力なく微笑んだ。
すぐさま、菜々香、寿々歌、真優香が二階から飛び降りた。
そして最後に、飛鋲のロープを柱に括りつけていた青來が、庭に降り立つ。
逆さ吊りになった美知代を、5人はグルリと取り囲んだ。
T−ASADAに新しく命じられた『ミッション』は、無事成功した。
『オーディション』が始まって、初めて『ミッション』を成功させたのだ。
1409投稿者:リリー  投稿日:2011年01月12日(水)20時40分13秒
多勢に無勢で、美知代の敗北です

では、おちます
1410投稿者:そのまま美知代が鍼とばしそうで怖いw  投稿日:2011年01月12日(水)20時49分20秒
誰かの頭に刺さるとかw
1411投稿者:美死代が、前転しながら窓へと近づく。  投稿日:2011年01月12日(水)21時54分03秒
美死代って…
1412投稿者:>11  投稿日:2011年01月12日(水)21時57分21秒
美知代が死んだの略みたいw
1413投稿者:リリーさんはどう思うんだろう  投稿日:2011年01月12日(水)22時02分40秒
天てれが改革っぽいこと打ち出したこと・・・
1414投稿者:なんで寿々歌は  投稿日:2011年01月13日(木)09時40分53秒
関西弁なん?
1415投稿者:リリー  投稿日:2011年01月13日(木)20時29分50秒
1410さん
美知代は、もう戦意喪失です
しかも、囲まれてますから、一人針を打っても無駄でしょうね
1411さん、1412さん
私も読み直してびっくりしました
1413さん
リニューアルされるんですかね?
てれび戦士が存続してくれるなら、それもOKです
1414さん
寿々歌は、兵庫出身じゃなかったですかね?

では、更新します
1416投稿者:リリー  投稿日:2011年01月13日(木)20時30分55秒
「これで…あんたをアジトまで連れて行けば…『ミッション』完了や…」
「『ミッション』?」
美知代が、逆さまのまま菜々香に訊く。
「『TTK』を脱走したあんたを、捕まえる…。ウチ等に新しく与えられた『ミッション』や」
「ふ〜ん…」
菜々香の言葉に対し、美知代は、まるで他人事のように返事をした。
「『生死は問わず』…て、先生には言われてたんだけど…」
奈々が、付け加える。
「だったら…殺してから連れ帰ったら、楽だったにゃん…」
自嘲気味に、美知代は呟いた。
もう、何もかも、諦めた目をしている。
「アホ!!」
そんな美知代に対し、寿々歌が怒鳴った。
「殺したないから、こうやって苦労して捕まえたんやないの!!」
「殺したくない…?どうしてにゃん?」
心底不思議そうな顔で、美知代は寿々歌を見る。
「ど、どうしてって…!?な、仲間やん!!うち等!!」
「仲間…?ミ〜たん達が…?」
そう言う美知代の顔は、笑いを堪えているようだ。
そして、こう言い返す。
「仲間じゃないにゃん。蹴落とす前提の、ライバルにゃん」
1417投稿者:リリー  投稿日:2011年01月13日(木)20時31分15秒
そんな美知代の言葉に、ますます寿々歌は激高する。
「な、何、言うてんの!!うち等は、今まで力を合わせて…」
「『ちんすず』…。あんたは黙ってて…」
後ろから、真優香が寿々歌の顔を押し退けて割り込んだ。
「私達の心の優しいリーダーはね、あんたがアジトに戻って、先生に心底謝れば、もしかしたら許してもらえるかもしれないってね…そんな甘い期待を抱いちゃってるの…」
チラリと奈々を見て、「笑っちゃうでしょ?」と付け加えた。
「…笑えるにゃん…」
しかし、美知代の顔には、一切笑みはない。
「でも…それは、中途半端な優しさにゃん」
「中途半端?どういう意味?」
奈々が、悲しそうな顔で美知代を見詰めながら訊いた。
「本当にミ〜たんの為を思ったら…今、ここで殺すべきだにゃん…」
「そ、そんなこと…」
「絶対に、許してもらえないにゃん…。そんなこと、わかりきってるにゃん…」
「………」
奈々は、黙り込んでしまった。
心の底で、奈々もわかっていたのかもしれない…。
美知代が許されることなく、殺されると…。
1418投稿者:リリー  投稿日:2011年01月13日(木)20時31分34秒
「そ、そんなこと…わかんないよ…」
震える声で、絞り出すように、青來が言った。
美知代を始め、皆は青來を一斉に見た。
「お願いだから…戻ってきてよ…。わたし達も…一緒に謝ってあげるらさぁ…」
青來の大きな目から、涙が溢れ出してきた。
「わたし達…美知代さんを殺す為に、捕まえたんじゃないよぉ…」
そして、肩を震わせて泣いた。
皆、黙って、そんな青來を見詰める。
「…泣くことないにゃん…。『ヒドラ』…」
自分の為に泣いてくれた青來を、美知代はコードネームで呼ぶ。
「むしろ、喜ぶべきにゃん…。これで、ライバルが一人減ったにゃん…」
「おいコラ…。美知代…。ええ加減にせぇよ…」
菜々香が、低い声で呻くように言った。
皆は、はっとして菜々香を振り返った。
菜々香の顔はうつむいていて、その表情は窺えない。
肩が震えている。
その震えは、怒りと悲しみ…両方の感情を読み取る事ができた。
1419投稿者:リリー  投稿日:2011年01月13日(木)20時31分48秒
「こわいにゃん…。『フレイム』…」
美知代は、そんな菜々香に対し、苦笑いで応えた。
「ウチは『フレイム』ちゃう!!菜々香や!!」
顔をあげ、怒鳴りつけた菜々香の目にも、光る物があった。
「それから…もう、にゃんにゃん言うな!!普通に喋り!!」
「………」
美知代は、じっと菜々香の顔を見据えている。
「ウチ、知ってんねんで!?あんたがまともに喋れるんを…!!」
「え?ホンマ?」
寿々歌は、改めて美知代を見る。
「やっぱりね…」
と、真優香は溜め息を吐いた。
菜々香は、逆さ吊りの美知代に、歩み寄る。
「あんたの本音を聞かせえ!!」
「本音…?」
美知代の声のトーンが下がった。
1420投稿者:リリー  投稿日:2011年01月13日(木)20時32分06秒
「ライバルが減った…?あんた…ウチ等をライバルなんて思ってないんとちゃう?」
「…どういう意味…?」
美知代は、アニメ声ではない…落ち着いた…低い声で訊き返す。
このことに、寿々歌はまたも面喰い、美知代と菜々香の顔を交互に見る。
「あんた…圧倒的やん…。ウチ等5人相手に、堂々と渡り合ってた…。あんたが『魔法』や何やとアホぬかさんかったら、今頃、あんただけ『オーディション』合格なんやないの?」
この菜々香の言葉に、ある者は驚きの…ある者は嫌悪の眼差しを、美知代に向けた。
「どうして、『TTK』から抜け出したん?」
美知代は、菜々香の問いに対し、ただ目を瞑って沈黙を続けた。
そんな美知代を急かすことなく、菜々香はじっと返答を待つ。
そしてようやく、美知代は口を開く。
「だって…。私は…『戦士』なんかになりたくないもの…」
「何やって?」
思い切り、眉間にシワを寄せ、寿々歌が言った。
「せやったら、何であんたは『オーディション』に参加したん?」
「そうよ!!あんたは、何がしたいわけ?」
真優香も、寿々歌に加わって美知代を責めた。
「美知代さん…。あなたの目的は…何…?」
最後に、落ち着いた声で、奈々が訊いた。
1421投稿者:リリー  投稿日:2011年01月13日(木)20時32分19秒
「目的…ねぇ…」
美知代は、溜め息を吐いた。
「ま、いいか…。どうせ殺されるんだもの…」
この言葉には、生きる執着が微塵も感じられない。
美知代は、皆を見回して…言葉を続ける。
「私の目的は…私のやりたかったことは…『TTK』を潰すこと…。本部の『アロー』に行けば、『ラビ』達に直接会えるチャンスがあるもの…」
「な…?」
「何ですって!?」
「会って、どうするつもりなん!?」
寿々歌が、震え声を出した。
「決まってるでしょ…?暗殺よ…」
この美知代の答えに、皆は騒然となった。
だが、菜々香だけは、じっと美知代を見詰めていた。
「何で…『TTK』を潰そう、思ったん…?」
「逆に、質問いいかしら…?」
美知代の菜々香を見詰める目が、厳しくなった。
「今まで…あなた達も、多くの仲間達を蹴落としてきたんでしょ?『オーディション』に参加できるぐらいなんですもの…」
皆は、何も答えない。
しかし、その答えは『YES』に決まっている。
1422投稿者:リリー  投稿日:2011年01月13日(木)20時32分35秒
「それで、命を落とした人もいるんじゃない?」
やはり、皆は答えない。
そして、やはり答えは『YES』だ。
「そういう人を…あなた達は、どう思うの?実力が足りなかったんだから、仕方がない?運がなかったから、仕方がない?」
皆の脳裏には、今まで自分の前から去っていった仲間達の顔が、一人ずつ浮かんでいた。
「私は、そうは思わない…」
美知代の言葉は、力強かった。
「私達の命は…死んでいった人達の上で成り立っている…。そして…『戦士』になったら…これから殺すことになる人達の上で成り立つ…」
誰かが、唾を飲み込んだ。
「私は…そんな、ただ深い闇へ降っていく螺旋階段を…壊したかった…。階段を壊せば…皆は上がっていくしかないでしょ?明るい地上に…」
「つまり、あんたは…ウチ等や、他の『戦士』、『候補生』の為に…『TTK』を潰そうとしたんやな…?」
やっと、菜々香が言葉を吐いた。
その声に、もう怒りの色は見えない。
「でも…あなた達は、このまま暗闇に向かって降っていけばいい…。今までしてきたように…私の命の上で、生きていけばいいのよ…」
そう言って、美知代は微笑んだ。
皮肉でも侮蔑でもない…安らかな笑みだった。
1423投稿者:リリー  投稿日:2011年01月13日(木)20時33分26秒
それでは、おちます
1424投稿者:美知代、ばれてたw  投稿日:2011年01月13日(木)20時41分43秒
何時から気づいてたんだw
美知代が二つの性格持ってるのw
気づいたの奈々か?
一番近くにいたから・・・
1425投稿者:たぶん奈々だな  投稿日:2011年01月13日(木)21時03分42秒
 
1426投稿者:うん、寿々歌は兵庫だけど  投稿日:2011年01月13日(木)22時47分26秒
『ルッキンググラス』は中国地区にあるんじゃなかった?
1427投稿者:117  投稿日:2011年01月14日(金)10時17分25秒
美知代はTTKを潰す気でも、良きライバルとして一緒に来た菜々香たち。
悲しい運命・・・。
1428投稿者:リリー  投稿日:2011年01月14日(金)22時27分50秒
1424さん、1425さん
気付いてたのは、菜々香、奈々、真優香で、気付いてなかったのは寿々歌と青來です
基本的にツッコミキャラは気付いてて、ボケキャラは気付いてません
1426さん
ああ、リアル寿々歌ではなく、小説の寿々歌のことですね
この件に関してのフォローは、第2部に語られる予定です
117さん
美知代は、最初から潰す気でオーディションに参加してたので、仲間達と敵対する覚悟はできていたのかもしれません

では、更新します
1429投稿者:リリー  投稿日:2011年01月14日(金)22時29分34秒
「美知代…。このまま逃げたらええ…」
「…!?」
菜々香のこの言葉に、美知代だけではなく、その場にいる全員が驚愕する。
「あんたに…『TTK』を潰すことは無理や…。ダーブロウさんも潰す、言うてるけど…正直、難しいと思うわ…」
「菜々香…?あんた…何を言っているの…?」
真優香が、菜々香の作業着に肩を、強く掴んだ。
しかし、菜々香は美知代に向かって語りかける。
「せやけど…あんたは充分戦ったと思うで…。死んでいったみんなも、充分やと思うてるはずや…」
「ちょ、ちょっと!!待ちなさいよ!!このまま美知代を逃がしたら…私達、『不合格』だよ?『戦士』になれないんだよ?」
真優香は、ますます菜々香の肩を強く掴んだ。
痣ができるほどに…。
「それならそれで、しゃあないわ…。実力がなかったんとちゃう?いや…運がなかったんかな…?」
「な…」
呆気らかんと答える菜々香に、真優香は二の句が継げないでいる。
1430投稿者:リリー  投稿日:2011年01月14日(金)22時29分59秒
「リーダー!!あんたは、どう思うのよ!!こんなこと、許せるの!?」
真優香の目は、菜々香から奈々へと向かう。
「私…」
奈々は、ゆっくりと自分の想いを口にする。
「いつか、ASADA先生に訊かれたよね?もし、このチームの中で犠牲にしなければならなかったら、誰を選ぶか…」
皆は、記憶の糸を手繰り寄せる。
確かにそんな場面があった。
『北斗七星』の『照英』と戦い、奇跡的に生き延び、『アロー』基地に戻って来た時…。
今考えれば、あれは美知代の『魔法』のおかげかもしれないが…。
「その時の私の答え…覚えてる?」
奈々は、こう答えた。
誰かを犠牲にしなければならない事態に陥ったら…それはリーダーの責任…。
奈々は、自分を犠牲にすると…。
「そして、あなた達と初めて会った時、こう言ったよね?『私は頭。あなた達は手足』って…」
「覚えてる…」
真優香は、不愉快そうに答えた。
「いざとなったら、頭を切り落として構わないわ…。そして…新しい頭を付け替えれば…」
そう言って、奈々は笑った。
「あんた…本気で言ってるの…?」
そう訊く真優香の顔には、怒りはない。
ただ、悲しそうな顔をしている。
1431投稿者:リリー  投稿日:2011年01月14日(金)22時30分16秒
「なあ…美知代…」
寿々歌が口を開く。
「それから…青來…」
「え?」
青來は、自分が呼ばれたのが意外だったのか、裏返った声を出した。
「あの、占いのおっちゃん、覚えてる?」
「占い…?天歳駅の…?」
「そう…。美知代も、覚えてるやろ?」
「………」
美知代は答えないが、忘れているわけではない。
あの老人に、『ペテン師』呼ばわりされたのだ。
「君に奇跡は起こせん」…とも、言われた。
「ねぇ、『ちんすず』…!!一体、何の話をしてるのよ?」
苛つき気味に、真優香が訊く。
「そのおっちゃんに言われたんよ…。うち等は、『運命共同体』やって…」
「『運命共同体』…?」
「そう…。これから、ず〜と一緒やって…。病める時も、健やかなる時も…」
「病める時?健やかなる時?」
真優香の頭は、混乱している。
1432投稿者:リリー  投稿日:2011年01月14日(金)22時30分37秒
「『病める時』っていうんが…間違いなく今やな…。美知代が死んだら…きっと、うち等も死ぬんよ…」
「そ、そんな…!!占いなんかを信じるなんて…!!」
笑ったような、怒ったような顔で、真優香は言葉を吐き捨てる。
「そんで…きっとこの先、『健やかなる時』もあるんよ…。うち、それを信じてみよう、思ってんねん…」
「は、話にならない!!」
真優香は、救いを求めるように、青來を見る。
「あんたは、どう思うの?青來!!」
「ねぇ…。行ってみない…?今から…」
青來は、真優香にではなく、美知代に語り掛ける。
「行くって…どこに…?」
青來に目を合わせることなく、美知代は訊いた。
「その占いのおじさんの所…。もし、あのおじさんが占ったことが当たってたんなら…これから私達がどうしたらいいか…教えてもらおうよ」
「ちょ、ちょっと!!青來!!あんたまで、何を…」
「『ひらたま』!!あんたは黙ってて!!」
両腕の動かない寿々歌は、肩で真優香を押し退けた。
「ええやん。行こう!!あのおっちゃん、言うてたやん。行くべき道を、いつでも教えてくれるって…」
「…今は深夜よ…?いるわけないじゃない…」
しらけきった声で、美知代は言った。
「せやったら、そのおっちゃんがまた現れるまで、駅前で待ってよう。ASADA先生には、まだ美知代が見つからんって、報告しといたらええ」
「呆れた…」
真優香は、首を横に振って、寿々歌から一歩離れた。
1433投稿者:リリー  投稿日:2011年01月14日(金)22時31分20秒
「なあ…。『関西人感謝フェア』って、まだやってんのかな?」
菜々香が、寿々歌に訊ねる。
「え…?」
「もし、やってるんやったら、ウチも行くわ…。そのおっちゃんが、ホンモンか、ニセモンか、興味があるわ…」
菜々香も、その占い師の老人に興味を持った。
いや、もう、自分の頭で物事を決めるのが面倒になってしまったのかもしれない。
或いは、疲れてしまったのか…。
「それでええ?『クゥ』?」
一応、リーダーである奈々に、菜々香はお伺いをたてる。
「しょうがないわね」と言うような苦笑で、奈々は一つ頷いた。
「よし!!行こう!!今すぐ行こう!!」
何故か、寿々歌は嬉しそうにはしゃいでいる。
「その前に、寿々歌ちゃん、お洋服着た方がいいんじゃない?」
青來は、気の毒そうな目で、寿々歌を見て言った。
「げ…!?そうやった!!うち、裸やった!!」
両腕が動かないので、裸体を隠すこともできないでいる。
「この家のタンスから、適当な服を貰っちゃいなさいよ」
奈々が、面倒くさそうに言った。
「で、寿々歌ちゃん…。何で、すっぽんぽんなの?」
そう訊く青來に、例の如く「それは聞かんといて!!」と、寿々歌はピシャリと言った。
1434投稿者:リリー  投稿日:2011年01月14日(金)22時31分41秒
「なあ、美知代!!あんたの『魔法』って、どうなってんの?うちの両腕は、どうなってしもうたの?」
寿々歌は、美知代に押し迫る。
「大丈夫よ…。私の『魔法』は、30分程度で解けるわ…。だから…もう10分もしないうちに、動くようになるから…」
淡々と、美知代は答える。
「ホンマに…?良かったぁ…。一生、このままやと思ったわ…」
安堵の息を漏らす寿々歌の目に、涙が浮かんでいる。
「ウチの右手が動くんは…30分後…?」
今度は、菜々香が訊ねた。
「そうね…。でも…私の身体は、しばらく動かないわ…」
「…?どういうこと?」
「私…あなた達5人と戦う為に、自分自身に『魔法』をかけたの…。パワーやスピードアップの『魔法』ね…。その反動で、身体が動かなくなるの…」
「そうなんや…」
ジロリと菜々香は、美知代を見た。
「だから…私の運命は、あなた達次第よ…」
つまらなさそうに、美知代は呟いた。
1435投稿者:リリー  投稿日:2011年01月14日(金)22時32分24秒
今日は、これでおちます

明日は、更新を休みますので、ご了承ください
1436投稿者:了解  投稿日:2011年01月15日(土)00時38分07秒
それじゃまた明後日
1437投稿者:質問だけど  投稿日:2011年01月16日(日)16時00分24秒
リリーさんはブログしてないの?
1438投稿者:やっぱ反動はあるのか  投稿日:2011年01月16日(日)16時39分11秒
きつそうだな
1439投稿者:今日の夜に期待  投稿日:2011年01月17日(月)00時41分55秒
忙しいんだろうなー
1440投稿者:リリー  投稿日:2011年01月17日(月)20時57分35秒
1436さん
すみません
一日のつもりが二日も更新を休んでしまいました
睡魔に勝てず、眠ってしまいました…
1437さん
ブログはしてないんですよ
面白そうな報告ができるような生活を送ってませんので…
あ、でも、一昨日、上野の西洋美術館で『デューラー』展を見に行ったんです
版画作品のみなんですが、もう、絶句するしかない…というくらい、素晴らしい作品ばかりでした
芸術家というか、職人というか、信仰心というか…凄まじい信念と創作力を感じました
残念ながら、昨日が最終日で、もう見ることはできませんが…
1438さん
反動で身体が動かなくなる…という設定にしたのは、これでは美知代が最強キャラクターになってしまいかねないので、そうしました
1439さん
すみません、お待たせしました
今、更新します
1441投稿者:リリー  投稿日:2011年01月17日(月)20時58分40秒
携帯電話がなる。
眠りかけていた間寛平は、ビクンと身体を震わせる。
もう少しで、椅子から転げ落ちてしまうところだった。
「…何時や…?」
携帯電話の時計を確認する。
「まだ…4時やないか…」
ぶつぶつと呟きながら、欠伸混じりで電話に出る。
「もしも〜し。カンペーちゃんで〜す」
《私です…。『ホイール・オブ・フォーチュン』(運命の輪)です》
「うん…?『ホイール』…?ケッタイな名前やな」
《あなたがたが、私につけた名ですよ?》
電話口の、『ホイール・オブ・フォーチュン』なる人物は、苦笑しながら文句を言った。
「うん…?ああ…。君か…!!ASADA君や!!」
《ちょっと…!!名前を呼ばないで下さい!!コードネームの意味がないでしょう!?」
『ホイール・オブ・フォーチュン』と名乗った男…T−ASADAは、慌てふためいた声をあげた。
1442投稿者:リリー  投稿日:2011年01月17日(月)20時58分59秒
「それで…こんな時間に何やの?」
《いつでもかけてきていいと、おっしゃったもので…》
「それでも、常識いうもんがあるやろ?さすがにわし、眠っとったわ…」
《いやいや…。『裏』の世界の人間ならば、今が活動時間でしょう?》
「今はわし、『表』なんよ。それで、何?」
《ええ…。ものの見事に、あなたの『予言』通りになっているので…少し、恐ろしくなりまして…》
「そうやろ?わしの占いは、外れたことがないんよ」
《まさに…あなたが私に示したカード…『タワー』(塔)の末路を辿ろうとしています…。『TTK』は…》
「そう…。そうやったな…。『タワー』や…」
寛平は、テーブルの上のタロットカードの一枚を表に返す。
それは、塔の様な建造物に雷が落ち、そこから瓦礫や人が、まっ逆さまに落ちている絵柄…??・La Maison de Dieu …と書かれた『塔』のカードだった。
《『塔』からまっ逆さまに落ちる二人の人物…。『塔』が『TTK』…。『二人の人物』は『チームA』…ということですね…?》
「さあな…。わしは知らん…。あんたがそう思うてんのやったら、その通りなんとちゃう?」
《『塔』が崩れているから、『二人』が落ちているんじゃない…。『二人』が先に落ちたから、『塔』が崩れた…。そう、あなたは仰った…》
「言うたような気がする…。ズバリ、当たっとんの?」
《ええ…。ズバリ…》
ASADAは、声を低くした。
1443投稿者:リリー  投稿日:2011年01月17日(月)20時59分15秒
《しかし…どうにもわからないものがありまして…。それで恐れ入りますが、こんな時間に、あなたに電話させて頂いたのです》
「うん?何やの?」
《『塔』に落ちる『雷』です…。この『雷』が、直接『TTK』を壊滅させるのですよね?》
「うん。そうや」
《その、『雷』とは、誰なのです…?》
「う〜ん…。そこまではわからん…。ただ…」
《ただ…?》
「『雷』いうもんは、すぐに消えてまうよな?光ったすぐ後に、消えてまう…」
《ええ…》
「つまり…『TTK』を直接壊滅させる人物は…すぐに消えてまう…」
《つまり…死ぬと…?》
「いやいや…。死ぬとは限らん…。ただ…みんなの目の前から、姿を消すだけかもしれん…」
《そうですか…。まあ、私はこのまま静観を貫きますよ》
「うん。その方がええ…。そして『TTK』が壊滅したら…」
《わかってますよ…。約束通り…私は、あなたの組織に入ります…》
一層、ASADAは声を潜める。
《『TDD』にね…》
1444投稿者:リリー  投稿日:2011年01月17日(月)20時59分35秒

「それで、ええと…。君を何て呼べばええんやったっけ…?」
《『ホイール・オブ・フォーチュン』です》
「そう、それや。それにしても、君のコードネームは、クルクル回っとるもんばっかりやな」
《私は『ラバーズ』(恋人)が良かったんですけど…》
「しゃあないやん。早いもん勝ちやから。確か、『ラバーズ』は、可愛らしい女の子やったな…。モグリ医者やけど…」
《あの…。もう一つ、質問よろしいでしょうか…?》
「何なん?」
《どうして、私を誘ったのですか…?『TTK』には、優秀な『戦闘教官』は大勢います。その中で、あなたは私に白羽の矢を立てた…》
「どうしてって…。君が最も優秀やからや。それに…最も恐ろしい男やからな…」
寛平は、顎を擦りながら、ニヤリと笑った。
1445投稿者:リリー  投稿日:2011年01月17日(月)20時59分54秒
「それに…」
《それに…?》
「君も、『TTK』を抜けたがっとったから…」
《どうしてソレを…?》
「わしに、わからんことは、ないよ…」
そこまで言いかけて、寛平は人の気配に気付く。
「すまん…。お客さんが来た…。もう、電話切ってええ?」
《お客…?こんな深夜に…?》
「うん。たぶん、君のよう知っとるもんや」
《私が…?》
「仔猫が6匹…」
《………》
ASADAは、しばらく沈黙した。
そして…《その仔猫達を、よろしくお願いします》と言って、電話を切った。
1446投稿者:リリー  投稿日:2011年01月17日(月)21時00分31秒
「ウソやろ!?あの、オッチャン、まだおるで!?」
寿々歌の素っ頓狂な声が、深夜の天歳駅前広場に響いた。
『チームL』の6人は、既に黒い作業着を脱いでいて、別荘から拝借した服を着ていた。
あの別荘の持ち主は、おそらく小学生くらいの娘がいるのだろう。
菜々香達の身体に丁度良い服が、たくさんタンスに眠っていた。
流行の最先端で、派手な色合いの服がいくつもあったのだが、目立ってはいけないと、皆は黒やグレー、茶系統の服を選んで着た。
もちろん、スカートは動き難いので、みんなパンツルックである。
1447投稿者:リリー  投稿日:2011年01月17日(月)21時00分43秒
「今、4時やで!?」
「し…!!静かにして!!誰に聞かれるかもわかんないんだから…!!」
奈々が、しかめっ面で寿々歌を振り返った。
「なあ…。あのオッチャンが、例の占い師なん…?」
菜々香は、自分の背中に負われている、美知代に訊いた。
「そうよ…。私を『ペテン師』呼ばわりした、おじいちゃん…」
そして「実際、その通りになったけど…」と、鼻で笑った。
「何か、胡散臭いわね…。本当に当たるの?」
真優香は、不信の眼差しを、その老人に向ける。
「当たるかどうか、わかんないけど…ただ、信じてみたくなっちゃうのよね…」
と、青來がフォローするように言った。
「ふん…!!青來、あんた絶対、怪しい宗教団体に、バカ高い壷を買わされることになるよ」
真優香が、青來の脇腹を肘で突く。
「行ってみましょう…」
奈々が、一歩を踏み出した。
1448投稿者:リリー  投稿日:2011年01月17日(月)21時01分18秒
「おやおや…?こんな夜中に出歩くなんて…アカン子達やね…」
そう、占い師の老人…間寛平は言ったが、にこやかなシワだらけの顔を、6人の少女達に向けた。
「こんばんわ…」
恐る恐る、奈々は寛平に声をかけた。
「あとちょっとで、『おはよう』やね」
「そ、そうですね…」
奈々は、困ったような顔で、菜々香達の方を振り向く。
「あの…。うち等のこと、覚えてます?」
寿々歌が、自分と青來…そして美知代を順番に指差した。
「もちろん、覚えてるよ。オッチャン、君等を待って、こんな時間まで店出しとったんやから」
「え…?ホンマ?」
「ホンマやで。君等が来る事…オッチャン、知ってたんやで」
寛平は、菜々香に背負われている美知代に視線を移す。
「それで…どうやった…?君の『魔法』は、奇跡を起こせたん?」
美知代は、力ない笑みを浮かべると、ゆっくりと首を横に振った。
「ダメダメだにゃん…。やっぱり…ミ〜たんは『魔術師』じゃなくて『ペテン師』だったにゃん…」
「そうか…」
相変わらず寛平は、笑みを崩さない。
1449投稿者:リリー  投稿日:2011年01月17日(月)21時03分51秒
あと更新一回分で、第一部は終わります

それで、大変申し訳ありませんが、第二部に入る前ん、書き溜めをしたいと思いますので、しばらく更新を休みたいと思います
わがままを言って、すみません

では、おちます
1450投稿者:え、ちょ、おっさんは寛平かwww  投稿日:2011年01月17日(月)21時10分52秒
まさかのw
1451投稿者:もしかして  投稿日:2011年01月17日(月)21時18分09秒
雷=美知代か?
1452投稿者:>51  投稿日:2011年01月17日(月)21時47分40秒
可能性あるなw
もしかしたらダーさんありりん美知代かもしれんがw
1453投稿者:雷はジーナでしょ?  投稿日:2011年01月17日(月)21時52分58秒
>みんなの目の前から、姿を消すだけかもしれん

この後、精神が崩壊して夏希と日本を旅立ってるから
1454投稿者:117  投稿日:2011年01月18日(火)13時22分52秒
寛平さんとASADAさんの本当の関係か・・・カードも意味深。
そういや、この前久々にMTKがASADAさんの振り付けでしたね。
次の更新、楽しみにしてます。
1455投稿者:せめて  投稿日:2011年01月18日(火)13時59分56秒
第一部を完結させてからにしてもらえるとありがたいんですけど…
1456投稿者:リリー  投稿日:2011年01月18日(火)21時01分55秒
1455さん
すみません
第一部は、完結させます
今日の更新で、しばらくお休みに入ります
ややこしいことを書きました
1450さん
寛平さんは、第二部でもチョロっと…でも、重要な役で出てきます
1451さん、1452さん、1453さん
雷の正体は、ジーナです
『サムドラ』では、直接ラビを殺すのは、ジーナの役目ですので…
そして、『グラスラ』まで皆の前から姿を消すことになります
117さん
ASADAさんも、『TDD』のメンバー表に名を連ねていましたからね
ASADAさんの『TDD』入りは、こういう事情があったのです

では、第一部最終回です
1457投稿者:リリー  投稿日:2011年01月18日(火)21時02分22秒
「それで…今日は、お友達も連れてきたんやけど…」
遠慮がちに、寿々歌が寛平に話しかける。
「うん?ええよ、ええよ。もっと、ぎょうさん連れてきたらええ」
人当たりの良い笑顔で、寛平は答えた。
占い師という神秘性は、この老人から全く感じられない。
「『関西人感謝フェア』、まだやってる?」
菜々香は、無表情で寛平を見下ろしている。
「おう、あんたも関西人やな?ええよ。タダで占うで」
そう言うと、寛平はチャッチャとタロットカードをトランプのようにシャッフルし出す。
「待って…!!ウチ、オッチャンがホンモンかどうか、試したい」
「ホンモン?」
寛平の、カードをシャッフルする手が止まった。
「今からウチ等が占ってもらうことは、ウチ等の人生にとって、メッチャ重要やねん。せやから、失礼やけど、オッチャンをテストしたい」
「テスト…?アカン…。オッチャン、0点しか取ったことないんよ…」
菜々香は、寛平の軽口に一切反応せず、早速質問を開始する。
1458投稿者:リリー  投稿日:2011年01月18日(火)21時02分40秒
「ほんの2時間前…ウチ等は、何をしてたか…当ててみて…」
「は?未来のことやのうて、過去のことを当てるんか?」
「だって、未来のこと言われても、ウチ等はわからんもん」
「うん…。それもそうやなぁ…」
寛平は、再びカードをシャッフルする。
「過去のことやったら、君等が一番よう知っとるもんな…」
そして、カードの束を菜々香に差し出す。
「さ…。一枚、引いてんか?」
「一枚でええの?」
「うん。ええの…」
「美知代…。引いて…」
美知代を負ぶっている菜々香は、両手が塞がっている。
震える手で、美知代はカードを引いた。
自分の身体に針を刺して、無理にパワーアップさせた反動で、美知代は身体を自由に動かすことができない。
「あ…」
美知代は、カードを取り落としてしまった。
青いテーブルクロスの上に、カードが落ちた。
それは、木で作られた梁に足を縛られて、逆さ吊りになっている男の絵柄…XII・Le Pendu …と書かれた『吊られた男』のカードだった。
そのカードを見た途端、皆はギクリと息を呑んだ。
あの別荘で…青來の飛鋲に足を絡めとられた美知代は、まさにこのカードの男のように、逆さ吊りになっていたからだ。
1459投稿者:リリー  投稿日:2011年01月18日(火)21時03分00秒
「ん…?君…虐められてた…?」
寛平は、美知代の顔を覗き込む。
「ううん…。そうじゃないにゃん…。こうなったのは…ミ〜たんが悪いからにゃん」
穏やかな笑みで、美知代は答えた。
「ふ〜ん…。そうか…。ま、君達、仲良ぅせえよ。これから、ずっと一緒に過ごしていくんやから…」
「え…!?どういうことですのん!?」
菜々香は、思わず寛平に詰め寄った。
拍子に、美知代が菜々香の背中からズルリと落ちるが、青來がしっかりと支えていた。
「はい、引いてんか…?」
寛平は、逸る菜々香に、タロットカードの束を差し出した。
「………。『クゥ』…。引いて…」
菜々香は、奈々を振り返る。
「え…?私?」
不安そうに、奈々は自分を指差した。
「あんたがリーダーや…。あんたに引いて欲しい…」
「うん…」
慎重すぎる程ゆっくりと、奈々はカードを一枚引いた。
1460投稿者:リリー  投稿日:2011年01月18日(火)21時03分33秒
奈々の引いたのは、道化師の様な男が肩に荷物を担ぎ、足下に犬が付き従っている絵柄…Le・Mat …と書かれた『愚者』のカードだった。
「あの…。コレは…?」
恐る恐る、奈々は寛平を上目遣いで見る。
「うん。コレな…『愚者』や…」
「『ぐしゃ』?」
寿々歌が、顔を顰めて呟いた。
「『愚者』って…もしかして、『愚かな者』…と書く…?」
これまた恐る恐る、奈々が訊く。
1461投稿者:リリー  投稿日:2011年01月18日(火)21時03分43秒
「そうや…。ま、『アホ』ってことやな」
「『アホ』!?私達の未来が!?どういうことよ!!」
真優香は、いきり立って寛平に詰め寄る。
「ああ、堪忍…。コレ、別に悪いカードやないで?このカードの意味は…ズバリ『自由』や…」
「『自由』…?」
6人の少女達は、顔を見合わせた。
「ほら…。この絵の男、旅をしてるやろ?自由気まま、勝手な旅や…。この男は、どこへでも行ける…。これが、君達の未来や…」
「『自由』…。どこへでも行ける…?」
菜々香の目から…つっ…と、涙が落ちた。
「ん?どないしたん?君…」
寛平は、首を傾げて菜々香を見詰めた。
「ううん…。何でもない…」
慌てふためき、菜々香は涙を拭いた。
『自由』という言葉が…心の底から嬉しかったからだ…。
それは、他の5人も同じ事だった。
1462投稿者:リリー  投稿日:2011年01月18日(火)21時03分59秒
「あの…」
青來に抱えられた美知代が、寛平に語りかける。
「おじさんは、ミ〜たんに言ったにゃん。『奇跡を起こせない』って…」
「うん…。言うたな…」
「でも…ミ〜たんに代わって、『奇跡を起こす人がいる』とも言ったにゃん…」
「うん…。言うたような気がする…」
寛平は腕組みをして、考え込む。
「その『奇跡』は…みんなをハッピーにするのかにゃん?」
「う〜ん…。どうやろ…」
寛平は、ますます難しい顔になる。
1463投稿者:リリー  投稿日:2011年01月18日(火)21時04分14秒
「ハッピーになるかどうかは、人それぞれやな…。ただ…『奇跡』を起こしたモンは…ハッピーにはならんな…」
「それは…誰にゃん?」
「わからん…。ただ…『雷』やということはわかる…」
「『雷』…?」
「『塔』を壊す、『雷』や…」
「ミ〜たんに出来ることは…もう、何も…?」
「ないにゃん」
寛平は、穏やかな笑みで、厳しい一言を言い放つ。
「君達にできることは、コレや…!!コレしかない!!」
寛平は、今一度、『愚者』のカードを提示した。
「『旅』や…。『放浪』や…」
「『放浪』…?」
「『気ままな旅』や…」
1464投稿者:リリー  投稿日:2011年01月18日(火)21時04分28秒
「わかりました…」
奈々は、小さい声だが…力強く呟いた。
「今から、私達『チームL』は、『旅』に出るわ…。『自由』になる為に…」
じっと、他の5人の顔を見渡した。
「賛成の人は…?」
菜々香は、真っ先に手を挙げた。
そして寿々歌…青來と続く。
「信じられない…。こんな胡散臭い占いに…みんな騙されて…」
だが、そう言う真優香も手を挙げた。
「美知代さんは…?」
奈々は、真っ直ぐに、美知代を見詰める。
「ミ〜たんが…『奇跡』を起こせるのは…いつ…?」
誰に問うているのか…美知代は独り言のように言った。
「少なくとも…今やないな…」
「せやけど…」と、寛平は続ける。
「君の力が…君の『魔法』が…『奇跡』を起こす時がきっと来る…。残念やけど…ソレが、『今』やない…。『ここ』でもない…」
寛平の言葉を受けて、美知代の涙が、敷石が並べられた地面に、数滴落ちた。
「ミ〜たんも…『旅』に出ます…」
搾り出すように、美知代は声を出した。
1465投稿者:リリー  投稿日:2011年01月18日(火)21時04分45秒
「ありがとうございました。私達…『旅』に出ます。『放浪』の『旅』に…」
奈々は、深々と寛平に頭を下げた。
寛平は、軽く手を振って応える。
「『放浪』って…。一体、何処へ行こうって言うのよ…。それに…私達も『TTK』からの脱走者になっちゃって…」
まだ、真優香はブツブツと文句を言っている。
「大丈夫にゃん…。『TTK』は…なくなるにゃん…。誰かはわからないけど…『奇跡』を起こしてくれるにゃん…」
青來に背負われながら、美知代が言う。
「それまで、『TTK』に見つからんようにせな…」
寿々歌は、既に寛平の側を離れ始める。
「はよ、出よう!!この街を…」
奈々も真優香も美知代を背負った青來も、寿々歌の後を追った。
だが、菜々香だけは立ち止まり、寛平を振り返る。
「あの…」
「うん?まだ、何か聞きたいことがあるんか?」
「ウチ等は…これから、どこへ行ったらええんですか?『自由』や…言われても…。ウチ、今まで一度も『自由』になったことなくて…」
不安からか、菜々香の顔は、今にも泣き出しそうに歪んでいる。
1466投稿者:リリー  投稿日:2011年01月18日(火)21時05分00秒
そんな菜々香に、寛平は孫をなだめるように笑いかける。
「せやから…『自由』や…。どこに行ってもええんよ…」
「せやから…!!その『自由』が、ウチには、よう、わからんねん!!」
悲痛な叫び声をあげる菜々香。
先を急いでいた奈々達は、思わず立ち止まって振り向いた。
寛平は、ニコニコと、何度も頷いて、こう言った。
「『自由』にはな…道はないんよ…」
「道がない…?」
「そうやな…海みたいなもんや…。誰かが通っても、足跡が残るわけやない…。それこそ、東へ、西へ、南へ、北へ…今、自分がどこにおるんかもわからんようになる…」
「ホンマ…。怖いな…」
菜々香には、この先に不安しかないように感じた。
1467投稿者:リリー  投稿日:2011年01月18日(火)21時05分19秒
「せやから、仲間がおるんやろ?」
「え…?」
菜々香は、皆の方を見た。
奈々が…寿々歌が…真優香が…青來が…美知代が…じっと、自分を待ってくれている。
「君達は『自由』や。どこへでも行きなさい」
寛平の声が、背中を押してくれたような気がした。
菜々香はもう、早く仲間に追いつきたくて、転びそうになりながらも、皆のもとへと駆け出して行った。

第一部『東へ』・・・完
1468投稿者:リリー  投稿日:2011年01月18日(火)21時07分45秒
これにて、第一部終了です
アメリカドラマ風n言えば、シーズン1終了ですね

第二部から、タイトルにあるように、『放浪探偵小説』となります
今、第二部の途中で止まってしまっています
第二部を書き上げてから、更新したいと思います
また、時々このスレで近況を報告したいと思います

では、再開の時は、よろしくお願いします
1469投稿者:やべぇ、感動したw  投稿日:2011年01月18日(火)21時40分44秒
美知代、よかったやんw
ttkが潰れるという願望ははたせるわけやしw
ジーナは美知代の変わりにラビを壊したんだろうか・・・?
美知代の人格はまだ2つのままかw
冷静な土とにゃんにゃん風w
1470投稿者:海みたいなもんや…。誰かが通っても、足跡が残るわけやない…。  投稿日:2011年01月18日(火)22時32分40秒
このセリフ、カッコよすぎるw
1471投稿者:どこかの漫画みたく  投稿日:2011年01月19日(水)07時42分19秒
このまま放置しないで(リリーさんならそんなことないだろうけど)
絶対に戻ってきてね
1472投稿者:117  投稿日:2011年01月19日(水)13時49分35秒
第1部、お疲れ様です。
お〜、そういえばタイトルが『放浪探偵小説』でしたねw
これから放浪と。第2部も楽しみにしてます。
1473投稿者:私達の未来が「アホ」w  投稿日:2011年01月19日(水)14時50分36秒

1474投稿者:とりあえず、もう一度載せておこう  投稿日:2011年01月20日(木)21時16分11秒
R&Gシリーズ過去作品

『SAMURAI DRIVE』
http://113.37.205.107/log/tentele/070222214415a.html
http://113.37.205.107/log/tentele/070222214415b.html
http://113.37.205.107/log/tentele/070222214415c.html
http://113.37.205.107/log/tentele/070222214415d.html
http://113.37.205.107/log/tentele/070222214415.html

恋愛探偵小説『らりるれろ探偵団』
http://113.37.205.107/log/tentele/070923205005a.html
http://113.37.205.107/log/tentele/070923205005b.html
http://113.37.205.107/log/tentele/070923205005c.html
http://113.37.205.107/log/tentele/070923205005.html
《復刻版》
http://113.37.205.107/log/tentele/080504010637a.html
http://113.37.205.107/log/tentele/080504010637.html
1475投稿者:R&Gシリーズ  投稿日:2011年01月20日(木)21時16分30秒
青春探偵小説『グランドスラムの少女達』
http://113.37.205.107/log/tentele/080114213544a.html
http://113.37.205.107/log/tentele/080114213544b.html
http://113.37.205.107/log/tentele/080114213544c.html
http://113.37.205.107/log/tentele/080114213544d.html
http://113.37.205.107/log/tentele/080114213544e.html
http://113.37.205.107/log/tentele/080114213544.html

愛憎探偵小説『1000分の1少年』
http://113.37.205.107/log/tentele/091123215137a.html
http://113.37.205.107/log/tentele/091123215137b.html
http://ame.x0.com/tentele/091123215137.html
1476投稿者:野良猫シリーズ  投稿日:2011年01月20日(木)21時17分51秒
冒険探偵小説『野良猫トラベラーズ』
http://113.37.205.107/log/tentele/090404030755a.html
http://113.37.205.107/log/tentele/090404030755.html

放浪探偵小説『野良猫ストレンジャーズ』
http://113.37.205.107/log/tentele/101023201138a.html
http://ame.x0.com/tentele/101023201138.html
1477投稿者:ツグラム小説  投稿日:2011年01月20日(木)21時22分24秒
http://113.37.205.107/log/tentele/061024210839a.html
http://113.37.205.107/log/tentele/061024210839.html

『一七同盟』
http://113.37.205.107/log/tentele/061209235614a.html
http://113.37.205.107/log/tentele/061209235614b.html
http://113.37.205.107/log/tentele/061209235614.html
1478投稿者:勝手に失礼いたしました  投稿日:2011年01月20日(木)21時22分53秒
 
1479投稿者:顔射  投稿日:2011年01月21日(金)22時41分56秒

1480投稿者:リリーさん「ni」が苦手ですね  投稿日:2011年01月23日(日)09時27分50秒
>第二部に入る前ん
>アメリカドラマ風n言えば、
1481投稿者:あげ  投稿日:2011年01月31日(月)20時54分46秒





1482投稿者:リリーファン  投稿日:2011年02月03日(木)19時11分46秒
R&Gシリーズももう5年目に突入ですね
サムドラ開始当初は中学生だった私も大学生になりました
天テレは最近ほとんど見ていないのですが、
リリーさんの小説は毎日見てます
これからも頑張ってください
応援してます
1483投稿者:あげます  投稿日:2011年02月13日(日)22時50分00秒
近況が知りたいです
1484投稿者:リリー  投稿日:2011年02月14日(月)22時01分49秒
お久しぶりです
休みをとってから、一ヶ月が経とうとしていますね
おかげさまで、だいぶ書き進めることができました
この間、あめぞうに寄ることがなかったものですから、近況報告をさぼってしまいました
すみません

1469さん
ここで終わってもキレイな感じもするんですが、どうにも尻切れトンボですよね
物語はまだまだ続きます
1470さん
寛平さんの言葉だからこそ、という気もします
1471さん
はい、放置だけは絶対しないように心がけます
でも、今までレスしてなかったですが…
すみません

1485投稿者:リリー  投稿日:2011年02月14日(月)22時09分38秒
117さん
そうです
やっと放浪です
菜々香達同様、物語もふらふらしてますが…
1473さん
たしかに、真優香がムッとするのも仕方ないですね
1474さん
ありがとうございます
休んでる間、読んでて頂けると嬉しいです
1480さん
《i》のキーが弱くなってるのでしょうか?
時々、こうなります
1482さん
中学生が大学生に?
もう、そんなに時が経ってるんですね
そういえば、私も高校生でした…
あいがとうございます
とても嬉しいです
これからも、よろしくお願いします
1486投稿者:リリー  投稿日:2011年02月14日(月)22時09分57秒
1483さん
いままでレスしていなくてすみませんでした
一ヶ月ほど休ませて頂きましたが、まだ第二部が終わりません
でも、もうすぐ更新を再開したいと思っています
再開する前日には、報告をさせて頂きますので、その時は、また、よろしくお願いします
必ず完結させますので、いましばらくお待ちください
これからも、よろしくお願いします
あげ、ありがとうございます
では、おちます
1487投稿者:お疲れ様です  投稿日:2011年02月14日(月)22時56分14秒
再開を楽しみにしています
こないだ初めて浅草に行きましたよ
僅かの時間立ち寄っただけですが・・
一応、門はくぐっておきました
この近くにかの人がいると思うと
何か不思議な気持ちになりました
1488投稿者:リリーさん誰かにチョコあげました?  投稿日:2011年02月15日(火)16時51分05秒

1489投稿者:リリー  投稿日:2011年02月15日(火)21時07分11秒
1487さん
浅草行ったんですか?
ゆっくりしてくださったら良かったのに…
今度いらした時には、こじんまりした遊園地、花やしきで楽しんでください
私は、もう行き飽きましたが…
『花やしき少女歌劇団』という、小中学生のグループがありまして、秋葉原チックな固定ファンができつつあります

1488さん
友達や家族にあげました
チョコを溶かして固めただけですが…

今日は、第二部のキャラクター表を発表します

1490投稿者:リリー  投稿日:2011年02月15日(火)21時07分55秒
第二部『西へ』【2006〜2008】


脇菜々香 (10〜12歳)《火》   『フレイム(炎)』
鈴木美知代(10〜12歳)《風・土》 『スワン(白鳥)』
平田真優香(9〜11歳) 《水》   『パール(真珠)』
渡辺青來 (9〜11歳) 《風》   『ヒドラ(海蛇)』
鎮西寿々歌(8〜10歳) 《風》   『ルッキンググラス(鏡)』
白坂奈々 (7〜9歳)  《土》   『オーキッド(蘭)』
1491投稿者:リリー  投稿日:2011年02月15日(火)21時08分56秒
【暗殺組織『北斗七星』】

半田健人 《土》暗殺組織『北斗七星』・第一星・コードネーム『ドゥーべ(貪狼)』
上妻成吾 《水》暗殺組織『北斗七星』・第三星・コードネーム『フェクダ(禄存)』
西山茉希 《風》暗殺組織『北斗七星』・第四星・コードネーム『メグレズ(文曲)』
西岡純子 《火》暗殺組織『北斗七星』・第五星・コードネーム『アリオト(廉貞)』
照英   《水》暗殺組織『北斗七星』・第六星・コードネーム『ミザール(武曲)』
1492投稿者:リリー  投稿日:2011年02月15日(火)21時10分58秒
石田靖  《風》 ラーメン屋『伍麺亭』主人
豕瀬志穂 《火》 石田の娘
山崎邦正 《水》 道頓堀周辺をパトロールしている警官
浅野優梨愛《水》 私立『HL学院女子初等部』六年生 
八木俊彦 《風》 東京の中学生
1493投稿者:リリー  投稿日:2011年02月15日(火)21時11分57秒
【暗殺組織『中国殺技団』】
徐桑安  《風》 コードネーム『封神演義』
張紫星  《水》 コードネーム『西遊記』

他メンバー
『三国志』《火》
『金瓶梅』《土》
『水滸伝』《火》
1494投稿者:リリー  投稿日:2011年02月15日(火)21時12分38秒
【裏探偵『TDD』】

間寛平  《風》裏探偵『TDD』社長・コードネーム『フール(愚者)』
間信太郎 《水》裏探偵『TDD』社長代理・コードネーム『フール(愚者)』
高見映  《風》裏探偵『TDD』・コードネーム『マジシャン(魔術師)』(『怪盗ノッポ』)
ゴン太  《火》『怪盗ノッポ』の助手
1495投稿者:リリー  投稿日:2011年02月15日(火)21時13分58秒
変更はあるかもしれませんが、このようなキャストで物語は進みます

では、おちます
1496投稿者:>91  投稿日:2011年02月15日(火)21時24分07秒
これってw
ぬら孫とか風水学園でみるやつw
貪狼は狼、禄存は鹿、武曲は死んだ鎧武者、廉貞は金魚でかかれてたな
文曲は忘れたけど
1497投稿者:高校生だった?  投稿日:2011年02月15日(火)21時31分03秒
ということは今の年齢は・・・
1498投稿者:ノッポとゴンタが懐かしいw  投稿日:2011年02月16日(水)16時34分10秒
そうあんとしせいも懐かしいがw
やぎっちしほゆりあがどう絡むのかがきになるw
1499投稿者:張紫星って  投稿日:2011年02月16日(水)21時56分07秒
張沢紫星のこと?
1500投稿者:いよいよ  投稿日:2011年02月16日(水)22時19分06秒
優梨愛が出てくるのか
今まで頑なに出さなかったから、何かあるのかと思ったが…
1501投稿者:ロボットだけどね  投稿日:2011年02月16日(水)22時31分21秒
 
1502投稿者:高校生が書いてたのか!  投稿日:2011年02月16日(水)23時11分44秒
あの羽根攻めを・・・
1503投稿者:リリー  投稿日:2011年02月18日(金)20時48分45秒
明日横浜へ旅行に行きます
旅行から帰ってきたら、(たぶん月曜日)更新を再開できるかもしれません
1496さん
あれは、北斗七星の中国読み(?)です
角田さんの『アルカイド(破軍)』しか考えてなかったですけどね
1497さん
まあ、ご想像におまかせします…
1498さん
実は、ノッポさん出すかどうか迷ってるんですが…
キャスト表に出したからには、出さなきゃですね
1499さん
たぶん、紫星の本名はこうなんじゃないですかね
1500さん
嫌いじゃないんですよ
でも、ほんと出す機会がなかったんですね
1501さん
新人紹介でロボットやってましたね
おかげで、04年はロボットキャラに終始してました
1502さん
ほんと、とんでもないガキですよね
では、おちます
1504投稿者:ちゅぐ親父支援  投稿日:2011年02月18日(金)20時49分10秒
 
1505投稿者: 投稿日:2011年02月18日(金)23時29分51秒
 
1506投稿者:おぉ、ついに  投稿日:2011年02月19日(土)01時12分55秒
更新が再開される日が来るのか…

休止してからずっとサムドラ復習してたよ
やっぱ面白いわ、天てれのノリも織り込んであるし
猫ストも楽しみにしてるわ
1507投稿者:あげ  投稿日:2011年02月19日(土)07時25分16秒
   
1508投稿者:リリー  投稿日:2011年02月21日(月)21時30分29秒
お待たせしました
横浜中華街に行ってました
天津甘栗を山ほど買ってきました
1506さん
今日から更新を再開します
サムドラを読んでいただき、ありがとうございます
サムドラを読んでから、猫ストも読んでいただければ、なお楽しめると思います
これからもよろしくお願いします

あげ、ありがとうございます

では、更新します
1509投稿者:リリー  投稿日:2011年02月21日(月)21時32分15秒
第二部『西へ』

【2006〜2008】

《1》「スタートや…。ウチ等の新しい人生…」(脇菜々香)

菜々香、美知代、真優香、青來、寿々歌、奈々の6人の少女が、暗殺組織『TTK』の壊滅を知ったのは、天歳駅前にいた占い師の老人に、これから進むべき道を教えてもらってから2日後のことだった。
その情報は、とある潰れかけたラーメン屋に置かれた、小さなテレビから流れるニュース番組で知った。
だが、そのニュースは暗殺組織『TTK』のことには一切触れていない。
ただ、国際的な犯罪組織の中心人物四人が、日本で急死した…という簡単な内容のものだった。
しかも、NHKの7時のニュースなどで大体的に報道されているものではなく、出所が不確かな情報であることから、小さな扱いだった。
注意していなければ、聞き逃してしまった可能性も高い。
しかし、これは『表』の世界での話であり、『裏』の世界では、一大ニュースとして、全世界を駆け巡っていることだろう。
だが、『裏』の世界からドロップアウトした菜々香達には、その激的な騒動を、偶然そのテレビで見るまで知る事はなかったのである。
1510投稿者:リリー  投稿日:2011年02月21日(月)21時32分42秒
菜々香達が天歳駅から、行き先もわからない長距離トラックの荷台に忍び込み、長時間揺られてたどり着いたのが、ここ大阪なのだ。
まず目に飛び込んできたのが、陸上選手が両手を挙げて走っている、グリコのネオン看板だった。
「うわ…。懐かしい…」
トラックが目的地に到着し、ドライバーが積荷を降ろす書類の手続きをしている隙に、荷台から脱出した菜々香が発した第一声である。
ここは、大阪ミナミ一の繁華街、道頓堀だった。
「まさか…偶然やろうけど、また大阪に帰れるとは思ってもみぃひんかったわ…」
「『ハチ』さん、感慨に耽っていないで!!早く、離れるわよ!!」
奈々が、菜々香の背中を押しながら、小声で言った。
人ごみに隠れるように、菜々香達6人は、戎橋を渡り、中心地に入り込む。
「何?この街…。目がチカチカして痛い…」
長時間トラックの荷台に揺られていて、不機嫌になっていた真優香が、さっそく愚痴を言う。
1511投稿者:リリー  投稿日:2011年02月21日(月)21時33分08秒
「うわ…。大きいカニさん」
青來は、カニ道楽の、動くモニュメント看板に見惚れていて、中年の歩行者の背中にぶつかってしまった。
「おう、気ぃつけんかい!!」
阪神タイガースの帽子を被ったその男は、振り向いて青來を怒鳴った。
「ごめんなさい」
涙目で、青來はその中年を見上げる。
自分が怒鳴ったのが、いたいけな美少女だったので、その中年は途端に弱り顔になる。
「あ…。ゴメンな…。オッチャン、ちょっと気が立ってたんよ…」
「い、いいえ…。私が悪いんです…」
青來はそう言って頭を下げた。
ビルの壁面に掲げられた電光掲示板には、プロ野球の結果報告が流れていた。
なるほど…阪神が負けていた。
「早く!!何、してんねん!!」
寿々歌が、青來の腕を引っ張って走った。
1512投稿者:リリー  投稿日:2011年02月21日(月)21時33分27秒
「『フレイム』基地って、どこにあるんだっけ?」
走りながら、奈々が菜々香に訊く。
「あ…。そう言えば、この近くや…!!心斎橋の辺り…」
「どこ?心斎橋って…」
「ここ、難波から地下鉄で北へ一駅…」
「ヤバイじゃない!!」
戎橋を北へ渡ろうとしていた6人は、慌てて引き返す。
その時、美知代が通行人とぶつかった。
「何や!?痛いのう!!」
髪の毛を金色に染めた若者が、美知代を怒鳴りつけた。
「ごめんにゃん」
美知代は、その若者に対し、猫のポーズで笑いかけた。
一瞬、その若者は美知代を見下ろしたまま止まっていたが、みるみるその額に青筋が浮かび上がる。
「何や?コラ!!ナメとんか、このガキ…」
「すんません!!ホンマ、すんません!!」
寿々歌が美知代の頭を無理矢理下げさせ、一目散に逃げ出した。
1513投稿者:リリー  投稿日:2011年02月21日(月)21時33分49秒
とにかく、『フレイム』基地から少しでも遠くへ離れようと、菜々香達は南へ走った。
本来ならば、真っ先に帰りたい所が、『フレイム』基地なのだが、『TTK』を脱走した身では、それも叶わない。
(小原先生…。みんな…。どうしてるやろ…)
菜々香は、後ろを振り返る。
道頓堀のネオンが、煌びやかに輝いている。
地下鉄にでも乗っていきたいのだが、あいにく6人は無一文だった。
天歳市を出てから、飲まず喰わずでここまで来た。
「お、お腹すいたぁ〜」
力なく、寿々歌は誰に言うでもなく呟いた。
「わ、わたしも〜」
青來も、寿々歌に同調する。
「ミ〜たんも、お腹ペコペコだにゃん」
美知代の走る速度が、みるみる落ちる。
「あんた、魔法使いでしょ?ご馳走でも出してよ」
皮肉混じりに真優香が言った。
「マ〜ジ〜カ〜ル〜…」
「やらんでええ!!」
オモチャのステッキをグルグル回す美知代に、菜々香は思わず怒鳴りつけた。
1514投稿者:リリー  投稿日:2011年02月21日(月)21時34分11秒
ふと、奈々が立ち止まる。
「どないしたん?『クゥ』…?」
菜々香が、奈々を追い抜き様に訊く。
「確かに…もう、限界ね…」
そう呟く奈々の顔は、蒼白になっていた。
一番幼く体力も少ない奈々が、最も限界に近いのだろう。
「何か…食べよう…」
息も絶え絶えに、奈々は皆に言う。
「食べようって…ウチ等、お金ないんやで?」
そう言う菜々香の背中を、寿々歌が叩く。
「この日本で、飢え死にするってことはないで?」
「どういうこと?」
「コンビニのお弁当って、賞味期限が過ぎたものは、そのまま棄てるらしいわ。この国のホームレスが生き延びていけるんは、そのおかげやって…」
寿々歌は、目の前にあるコンビニの店を、指差した。
すると、真優香がヒステリックな声をあげる。
「イヤよ!!そんな、棄てたモノを拾って食べるなんて!!」
「せやけど、しゃあないやん!!腹が減ったら、戦ができんのやで!?」
そう…いつ、『TTK』の追っ手が、自分達に迫ってくるか、わからないのだ。
今、この空腹の状態では、戦うどころか逃げる事もできない。
1515投稿者:リリー  投稿日:2011年02月21日(月)21時34分36秒
「だからって…そんなホームレスみたいなこと、出来るわけないでしょ!?」
真優香は、苛つき気味に、ポニーテールに括った髪を引っ張るように撫で付ける。
機嫌が悪い時の、真優香のクセなのだ。
真優香と出会ってから、彼女のこういう行為を見ない日はないのだが…。
「『ホームレスみたい』やのうて、『ホームレス』なんやで!?うち等は!!住むところがないんやから!!そんなつまらんプライド、捨ててまえよ!!『ひらたま』!!」
「あんたはいいよね。『ちんすず』!!こういうことに抵抗なくて!!拾い食いなんて、育ちのいい私にはできないわ」
「育ち?何、言うてんの!?うち等は皆同じ『TTK』出身や!!育ちはみな、同じやで?」
「だったら、遺伝子の問題ね。私の両親は、上品な人だったのよ。多分…」
「あんた、うちの親をコケにするんか!?」
顔も見たことがない親の悪口を言われ、寿々歌は逆上した。
すると、目の前に6つ重ねの弁当が差し出された。
「ん…?」
美知代が、弁当を両手で抱えて、ニコニコしている。
「あんた…。コレ…どうしたん?」
視線は唐揚げ弁当に止まったまま、寿々歌は美知代に訊いた。
1516投稿者:リリー  投稿日:2011年02月21日(月)21時34分57秒
「お腹が空くから、ケンカになるにゃん。お腹いっぱいになったら、仲良くなれるにゃん」
相変わらず、美知代はにこやかな笑顔を向けている。
「あんた…。コレ、どうしたの…?買ったの…?」
真優香は、怪訝な顔で訊いたが、そうでないことはわかりきっている。
買ったのなら、レジ袋に入っているはずだ。
「コラ〜!!待たんか〜い!!クソガキ〜!!弁当、返せ〜!!」
縞々模様の制服を着た、小柄な男が走ってくる。
「あ、あんた…まさか…」
真優香の顔が、強張っていく。
「うん。取ってきたにゃん」
「取ってきたって…」
「盗ってきたんかい!!」
6人は、バラバラとその場から駆け出した。
6方向に別れて…。
「待てや、コラ〜〜〜!!」
コンビニの店員は、当然、6人分の弁当を抱えている、美知代の後を追った。
1517投稿者:リリー  投稿日:2011年02月21日(月)21時35分21秒
美知代を除く5人が、弁当を盗んだコンビニの裏に再び集合したのは、1時間後だった。
携帯電話は発信機が仕込まれている恐れがあったので、天歳市を出る時に捨ててしまった。
だから皆が集まるまで、やたらと時間がかかった。
万引きしたばかりのコンビニの近くに舞い戻るのは気が引けたが、菜々香意外は不慣れな土地なので、落ち合う場所などわからなかったのだ。
「美知代さんは…?」
うんざりした顔で、奈々が訊く。
「わからん…。あいつだけが、店員に追いかけられてたみたいやけど…」
もう、歩く気力もないと、菜々香が呟く。
「当然ね…。お弁当を盗ったのは、あいつだけだもん…。何で、私達まで逃げなきゃならなかったのか…」
真優香は、抜けるのではないかという程の強さで、ポニーテールを引っ張った。
1518投稿者:リリー  投稿日:2011年02月21日(月)21時35分44秒
「お腹が空いて、もう走れない…」
青來は、その場にしゃがみ込んだ。
「ああ…。ご飯が食べたい…。ホカホカのご飯に…タラコでも乗っけてさ…」
「おい、コラ!!青來!!うちの顔見て、言うなや!!」
寿々歌が八つ当たり気味に、青來に噛み付く。
「と、とにかく…美知代さんを、探しましょう…」
奈々はそう言って立ち上がったが、立ち眩みを起こして、隣の青來に寄りかかる。
「…!?大丈夫?奈々ちゃん…!!」
青來は、咄嗟に奈々を抱き抱えた。
「だ、大丈夫…」
そう気丈に振舞う奈々だったが、体力の低下は目に見えてわかる。
早く、この食料問題を解決しなければならない。
1519投稿者:リリー  投稿日:2011年02月21日(月)21時36分09秒
「みんな…。こんな所にいたにゃん…」
ようやく、美知代も合流した。
だが、その手に弁当はなかった。
「あ、あんた…お弁当、どないした?さては、一人で全部食べたな?」
寿々歌は、非難するような目で、美知代を睨む。
「ううん。追いつかれそうだったから、放り投げて逃げたにゃん」
「追いつかれそうやったって…。あんた、『魔法』でもなんでもかけて、あの店員を動けんようにしてまえば良かったやん」
「こんなことで、『魔法』を使うなんて、勿体無いにゃん」
「勿体ない…?どいうこと?」
「秘密にゃん…」
もう、美知代の『魔法』の有効性は、ここにいる誰もが知っていた。
だが、相変わらず美知代は、『魔法』の種を明かさない。
「一つだけでも、持ってきなさいよ。奈々が、もう限界なのよ」
真優香が、溜め息を吐いて、青來に抱えられた奈々を見下ろす。
1520投稿者:リリー  投稿日:2011年02月21日(月)21時36分27秒
「もう一回、お弁当を盗ってくるにゃん」
「ちょい、待ち」
立ち上がり掛けた美知代の袖を、菜々香が引っ張った。
「食べる前に走るんやのうて、食べた後に走るんよ。それなら、逃げ切れる」
「食べた後?」
「コンビニの中で、バクバクお弁当食べることなん、出来るの?」
寿々歌は、半笑いになりながら訊いた。
「ちゃう、ちゃう。万引きやのうて、食い逃げや」
「食い逃げ?」
またも、真優香の顔が歪む。
「育ちのええ、誰かさんは気が進まんとは思うけど…」
菜々香が真優香の顔色を窺う。
「ふん」と、真優香はそっぽを向いた。
と、言うわけで、6人は、『伍麺亭』という名の、寂れたラーメン屋を訪れる。
そして、6人分のギョーザ定食とレバニラ炒め、かに玉と唐揚げを食べながら、『TTK』壊滅を伝えるニュースを知ったのだった。
1521投稿者:リリー  投稿日:2011年02月21日(月)21時37分36秒
第二部で、いきなりコンビニ弁当泥棒&食い逃げというスケールの小さなエピソードですが、これからよろしくお願いします

実は、道頓堀には行ったことないんですけどね…

では、おちます
1522投稿者:あげ  投稿日:2011年02月21日(月)23時05分23秒
 
1523投稿者:117  投稿日:2011年02月22日(火)13時58分44秒
お待ちしてました!いきなり、美知代が災難。
しかも、食い逃げ直前にニュースを知るとは・・・w
1524投稿者:美知代www  投稿日:2011年02月22日(火)15時06分33秒
魔法使えよこんな時こそw
1525投稿者:リリー  投稿日:2011年02月22日(火)22時48分52秒
117さん
お待たせしました
今夜、遅くなりましたが、更新します
美知代が災難というより、美千代で災難ってかんじです
1524さん
美知代の「勿体無い」が、全てを物語ってます
つまり、極小の溶ける針は、限りがあるというわけで…

あげ、ありがとうございます
では、更新します
1526投稿者:リリー  投稿日:2011年02月22日(火)22時51分18秒
「聞いた…?」
菜々香が、割り箸を咥えながら、皆を見回す。
「聞いたわ…」
もう満腹になったのか…先ほどから一切、料理に手を着けていない、奈々が答える。
「やったんや…。ダーブロウさんが…」
寿々歌の目に、涙が光っている。
「信じられない…」
そう言う、青來の目も潤んできた。
「やっぱり凄いね…。あの人…」
真優香は、久しぶりに眉間のシワを消すことができた。
「『奇跡』を起こしたのは…誰…?」
美知代が、そっと呟く。
「その人は…今、不幸の中にいる…。みんなの幸せの為に…」
頬に、涙がつたった。
「本当は…私の役目なのに…」
1527投稿者:リリー  投稿日:2011年02月22日(火)22時51分40秒
「どうしたんですか?」
このラーメン屋の従業員が、心配そうに美知代の顔を覗き込んだ。
水のお代わりを注いできた彼女は、小学校高学年か、中学生くらいに見える。
「お腹でも痛くなったとか…?」
そして、優しく美知代の背中を擦った。
「ええんです。何でもないです」
菜々香が、愛想笑いで応える。
そして、机の下で、美知代の手を握った。
『TTK』はなくなった…。
もう…逃げることはなくなったのだ…。
『自由』…。
あの占いの老人の、言った通りだった。
だが、菜々香達6人が、これからどう生きていくか、という課題は、残されたままだが…。
1528投稿者:リリー  投稿日:2011年02月22日(火)22時52分02秒
「ほんまに大丈夫ですか?久しぶりのお客さんやから…お父ちゃん、何か失敗でもしたんかと…」
そう言って、カウンター奥の調理場にいる、中年男を振り返る。
「アホか!!ワシは、腕だけは確かじゃい」
少ししゃくれ気味の顎をした、長身の中年男性はそう言って、娘を睨んだ。
「腕が確かなら、もっとお客さんが来てもええんやないの?」
娘も負けじと、睨み返した。
娘の方も、父親同様、少し顎がしゃくれ気味だ。
だが、色白のその顔は、可愛らしい印象を与える。
「せやったら、お母ちゃんも出て行かんかったかもしれん」
「おいおい…。そないなこと、お客さんの前で、言いなや…」
そう言って、中年男は苦笑いを菜々香達に向けた。
「せやけど、お嬢ちゃん達…こんな夜に、子供同士で夕飯なんて、どないした?」
この質問に、思わず6人は顔を見合わせる。
「塾です。塾の帰りです」
暫くの沈黙の後、奈々が張り着いたような笑顔で答える。
1529投稿者:リリー  投稿日:2011年02月22日(火)22時52分24秒
「へぇ…。塾?偉いねんなぁ。こんな夜遅くに勉強してんの?どっかの誰かさんとは大違いや!!」
どっかの誰かさんとは、自分の娘であることは明白であろう。
「何、言うてんの!!塾へ行こうにも、そんなお金、家にはないやないの!!」
「何、言うてんねん!!そんなお金があっても、おまえは勉強なんか、よぅせんわ!!」
このやりとりを見ている限り、この父娘は毎日口ケンカが耐えないのだろう。
だが、何ともほのぼのとした温かみを感じさせる。
(そう言えば…ウチ等は、ケンカする親もいないんやな…)
改めて、菜々香は自分達の境遇を淋しく感じる。
「ごめんなさいね。こんなみっともないところ、見せてもうて…」
照れ笑いをしながら、少女は水を注いで回る。
「せやけど、ほんま偉いね。何年生?」
「ええと…」
菜々香は、答えに窮する。
今、自分は10歳だから、就学年に換算すると、何年生になるのだろう?
1530投稿者:リリー  投稿日:2011年02月22日(火)22時52分42秒
確か、6歳で小学校に上がると聞いたことがある。
「4年生です」
「4年生?大人っぽいねんな。うちなんて、もう中一なのに、未だに小学生に間違われるんやで」
そう言って、少女は笑った。
「頭の中は小学生やんけ」
タバコに火を着けながら、中年男は意地悪そうな声で言った。
「うるさい!!」
キッと、少女は父親を睨む。
そんなやりとりも、菜々香を羨ましがらせる。
チョコンと、菜々香の足に、誰かの爪先が触れる。
奈々だった。
じっと菜々香の目を見詰めている。
「…?」
菜々香は、目だけで何のことか、と訊ねる。
「そ・ろ・そ・ろ」
と、奈々は声を出さずに、口の動きだけで伝える。
「何が?」
と、菜々香も口の動きだけで訊ねた。
1531投稿者:リリー  投稿日:2011年02月22日(火)22時53分03秒
呆れたように、奈々は天井を見上げた。
代わりに、寿々歌が口の動きで伝える。
「く・い・に・げ!!」
だが、僅かに息が漏れ、「に・げ」の部分だけ、少し声に出てしまう。
「ん?どないしたん?」
にこやかな顔を、少女は向ける。
「い、いえ…何でも…痛…!!」
寿々歌は、顔を顰めた。
思い切り、脛を蹴られたからだ。
蹴ったのは、真優香だった。
「あ、あの…お手伝い、毎日してるんですか?偉いですね」
焦りからか、奈々は、はるかに年上である少女に対し、『偉い』などと言ってしまう。
「あはは。おおきに」
少女は、明るく笑うと、奈々の頭を撫でてやった。
「こんな、潰れかけのラーメン屋、うちが手伝うことなんて、そんなにないんよ。でも、今日は、こうやってお客さんが来てくれはって、ぎょうさん注文してくれたんやもん。嬉しくて…」
そんな少女の笑顔を見て、菜々香も奈々も、胸を痛めた。
今から自分達は、金を払わずに食い逃げをしようと企んでいる…。
1532投稿者:リリー  投稿日:2011年02月22日(火)22時53分21秒
「こんなことが毎日続いたら、お母ちゃんも戻ってきてくれるかもしれんね」
笑顔で、少女は父親を振り返る。
「ふん!!逃げた女房に、未練なん、ないわ!!」
中年男は、まだ長く残っていたタバコを、慌しくカウンターに置かれている灰皿に押し付けた。
「そしたら、うちかて苗字を戻してあげてもええよ?」
「何を言うてんねん!!おまえの苗字は、これから先も、『石田』やないけ!!」
「ううん。お母ちゃん、家を出てく時、そのうち迎えに来る、言うたんや。そん時、うちの苗字は『豕瀬』やん。せやから、今のうちに『豕瀬志穂』って名乗ってんねん」
親子ゲンカの最中に、複雑な家庭事情を垣間見てしまった。
ますます、菜々香は食い逃げをし難くなった。
「今よ…」
真優香が、菜々香の耳元に囁く。
本人が言うには、育ちがいいはずの真優香が、食い逃げに一番熱心に見える。
だが、菜々香は、考えるよりも先に、行動に出てしまった。
1533投稿者:リリー  投稿日:2011年02月22日(火)22時53分46秒
「すいませんでしたぁ!!」
油でギトギトした床に、菜々香は土下座していた。
「へ…?」
言い争いをしていた父娘は、目を丸くして菜々香を見た。
他の5人も同様、目を丸くして、菜々香の背中を見詰めている。
「ちょっと…。『ハチ』さん…」
おろおろしながら、奈々は、菜々香とラーメン屋父娘を、交互に見ることしかできない。
「何が…?」
少し遅れて、少女…志穂は訊ねた。
「ウチ等、お金持ってません!!お代、払えません!!すみませんでしたぁ!!」
床を見詰めたまま、菜々香は叫んだ。
もう、誤魔化すことはできない。
奈々も、床に土下座する。
「す、すみません…。お腹が空いてて…」
寿々歌も、それに続く。
「ほんま、すんません…!!」
「ごめんなさい…」
青來も、土下座をする。
「く…!!」
苦々しく顔を歪ませて、最後に真優香も床に平伏せた。
1534投稿者:リリー  投稿日:2011年02月22日(火)22時54分41秒
では、おちます

1535投稿者:ここで終わるのかw  投稿日:2011年02月23日(水)11時23分25秒
くそー気になる…
1536投稿者:117  投稿日:2011年02月23日(水)13時34分37秒
なるほど、ラーメン屋は志穂と石田さんですか。夏イベのイメージ?
素直?に謝る菜々香たち、どうなる?
1537投稿者:美知代の存在感がダンダン薄くw  投稿日:2011年02月23日(水)13時41分56秒
美知代大丈夫かw
1538投稿者:あげ  投稿日:2011年02月23日(水)15時04分27秒
 
1539投稿者:リリー  投稿日:2011年02月23日(水)21時17分09秒
1535さん
内容は、凄くせせこましい食い逃げなんですけどね
今までの死ぬか生きるかに比べたら…
117さん
エドロポリスの時の配役です
あの時、志穂はお父さんに従順だったんですけどね
中学生くらいになったら、反抗のひとつもあるでしょうね
1537さん
大丈夫です
そのうち、また中心人物となっていきます

あげ、ありがとうございます

では、更新します
1540投稿者:リリー  投稿日:2011年02月23日(水)21時17分31秒
「ふ〜ん…。あんた等も、いろいろ大変なんやな…」
皿洗いをしている菜々香達の背中に向け、志穂は呟く。
「は、はい…。ほんまに…大変なんです…」
頬に泡を着けた顔を、菜々香は志穂に向けた。
まず、このラーメン屋の主人…石田靖は、怒るより先に事情を聞いてくれた。
だが、事情を話すと言っても、自分達は暗殺組織に身を置いていて、そこから脱走したなどと言えるわけがない。
言ったとしても、信じてもらえず、改めて怒鳴られるに違いない。
菜々香が答えに窮していると、真優香は奈々の背中を突いた。
(何よ…?)
奈々は、視線だけで訊く。
(あんたが、何とか誤魔化しなさいよ…)
真優香も、視線だけで訴える。
(リーダーでしょ?)と…。
奈々は、溜め息を吐き、5秒ほど考えると、事情を話し始めた。
1541投稿者:リリー  投稿日:2011年02月23日(水)21時17分50秒
実は、私達は姉妹なんです。
でも、みんな腹違いなんです。
父の家は何代も続く資産家で、父自身は今まで働いたことがありません。
何人もの女性と付き合って、子供を身篭らせました。
それが、私達です。
その度、父は軽い気持ちで認知をし、私達を引き取りました。
その時、莫大な手切れ金を母達に渡し、家から追い出しています。
世間体が悪いと考えたのでしょうね。
名前は、私達を産んだ母の名前を、それぞれに付けただけです。
だから、菜々香と奈々など、似たような名前を付けられてるんです。
父には、私達にはとことん無頓着なんです。
だけど、ある日、父が悪い友人に騙されて、財産を全て失ってしまいました。
途端に、私達は赤貧生活となりました。
屋敷を追い出され、安アパートに親子7人で済みましたが、ある日、父が私達を置いて出て行きました。
家賃を払えなくなった私達は、今日、アパートを追い出され、食べるものもなく、この街を彷徨っていました。
そして、とうとう空腹に我慢ができなくなり、このお店に入ったのです。
…という、嘘デタラメを、奈々はつらつらと、よどみなく話して聞かせた。
1542投稿者:リリー  投稿日:2011年02月23日(水)21時18分10秒
その嘘に、石田は号泣した。
そして、皿洗いと店の掃除をすることで、今回の食事代としてくれたのだ。
それに、これは立派な虐待だと、警察に行って保護してもらおうと申し出てくれたのだが、菜々香達は全力で断った。
『TTK』以上に、警察に近づくことなどできない。
「大丈夫です。それぞれの母親の所に、行ってみます」
と、奈々は言って聞かせ、なんとか納得してもらった。
「それなら、今夜は家に泊まっていって。な、お父ちゃん、ええやろ?」
志穂の言葉に、石田も二つ返事でOKしてくれた。
今夜のご飯と寝床は確保することができたが、やはり菜々香の良心は痛んだ。
狭い部屋の中で、6人は身を寄せ合って、3つの布団の中に入っている。
(こんなにええ人達を、騙してええんやろか…)
なかなか、菜々香は眠ることができなかった。
1543投稿者:リリー  投稿日:2011年02月23日(水)21時18分32秒

「でも…。良かった…」
奈々が、菜々香の背中に囁いた。
「良かった…?」
「うん…。あのまま逃げるより…ずっと良いことだと思う…」
その奈々に、寿々歌も同調する。
「そうやね。あんなええ人達に、迷惑をかけたらアカンもんね」
「何、言ってんのよ。『ちんすず』…」
鼻で笑いながら、真優香は言った。
「何やの?『ひらたま』…!!何か、文句でもある?」
布団から、寿々歌が起き上がって、真優香を睨む。
「寒いよ…。寿々歌ちゃん…」
肌蹴た掛け布団を、青來は引き寄せる。
「迷惑って…。こんな大勢、押しかけて、食べ物もお風呂も寝る所もお世話になってさ…。これが迷惑でなければ、何なのよ?」
寿々歌に背を向けたまま、真優香が言った。
1544投稿者:リリー  投稿日:2011年02月23日(水)21時18分59秒
「確かに…迷惑やな…」
代わりに、菜々香が答える。
今寝ている部屋は、志穂の部屋だからだ。
志穂は今、父親の寝室で眠っている。
年頃の娘が、父親と一緒に寝ることは抵抗があるはずなのに、志穂は快く部屋を貸してくれた。
棚の上にトロフィーが飾ってある。
それに、壁には賞状が…。
みな、大阪府内の水泳大会で優勝したものだった。
ラーメン屋の経営が苦しくなってから、スイミングスクールには行っていないと、志穂は言っていた。
「アカン…。眠れん…」
菜々香は、ゆっくりと起き上がり、部屋を出る。
何もすることがなく、とりあえず菜々香は階段を降りて、店のある一階へ向かう。
すると、そこには志穂がいた。
客席に座り、つまらなそうに漫画を読んでいる。
1545投稿者:リリー  投稿日:2011年02月23日(水)21時19分23秒
「あ…」
菜々香は、声をあげると、志穂がこちらに気がついた。
途端に、彼女は人懐っこい笑顔を見せる。
「眠れなくて…」
ぎこちない笑顔で、菜々香は答えた。
「うちも…。お父ちゃん、いびきがうるさいねん」
そして、菜々香を手招きする。
「仲、ええんやね」
椅子に座りながら、菜々香は言った。
「え?何が?」
「お父さんと…」
「仲がええって…やめてよ。ケンカばっかりしてんねんで」
「その、ケンカが仲良さそうなんやもん…。羨ましい…」
そう言って、菜々香は溜め息を吐いた。
「ああ…。菜々香ちゃんは…お父さんが…アレやからね…」
「ん?アレって?」
キョトンとした目で、菜々香は訊いた。
1546投稿者:リリー  投稿日:2011年02月23日(水)21時19分46秒
「いや…その…あんまり愛されへんかったって…奈々ちゃんが…」
「あ…」
そう…すっかり忘れていた、奈々の嘘…。
「そ、そうなんよ!!ウチのお父ちゃん、ロクデナシやから…」
愛想笑いで、菜々香は言った。
「強いねんな…」
「え…?」
「そない、笑顔で言えるなんて…。うち、お母ちゃんが出て行った時…一週間は泣いて過ごしたわ…」
そう呟いて、志穂は顔を伏せた。
「………」
思わず、菜々香は志穂の手を握っていた。
「帰ってくるよ…。きっと…。お店が繁盛したら…」
そう言って、菜々香は言葉を切った。
食い逃げをしようとした人間が、言っていい言葉ではない。
1547投稿者:リリー  投稿日:2011年02月23日(水)21時20分14秒
食い逃げは、無事許されました

では、おちます
1548投稿者:117  投稿日:2011年02月24日(木)09時34分00秒
石田号泣・・・めっちゃいい話、嘘だけどw
そうそう、志穂は水泳少女でしたね。
1549投稿者:奈々、すげえなw  投稿日:2011年02月24日(木)19時19分18秒
よどみなくウソをwww
1550投稿者:美知代の存在感w  投稿日:2011年02月24日(木)20時02分13秒
薄っw
1551投稿者:リリー  投稿日:2011年02月24日(木)21時52分41秒
117さん
2003年では、樹音のかませみたいな感じになってましたけどね
1549さん
リアル奈々は、こんなに嘘つきじゃないと思いますが…
1550さん
当分の間は、存在感が薄いと思います

では、更新します

1552投稿者:リリー  投稿日:2011年02月24日(木)21時54分23秒
「ねぇ…。うちのラーメン、美味しかった?」
志穂が、真顔で菜々香の顔を見詰める。
「え…?お、美味しかったよ…」
「嘘や。だって、スープ、みんな残してた…」
そう言えば、6人はドンブリのスープを、殆ど飲むことがなかった。
「う、うん…。スープは、ちょっと塩辛かったかな…?」
「スープだけ?」
「で、でも…レバニラと唐揚げは美味しかったで」
それは、嘘ではなかった。
唐揚げなど、寿々歌と美知代が、最後の一個をどちらが食べるかを決めるため、ジャンケンをしていたくらいだ。
「せやけどなぁ…。やっぱ、ラーメンで勝負出来んかったら、厳しいで…。ラーメン屋なんやから…」
「ラーメンに、ポテチ入れてみたらどう?」
菜々香と志穂の背中に、言葉がかけられた。
二人は、後ろを振り向く。
そこには、いつの間にか寿々歌が立っていた。
1553投稿者:リリー  投稿日:2011年02月24日(木)21時54分43秒
「どないしたん?寿々歌…」
「うん。うちも寝むれんのよ…」
そして、菜々香の隣に座ると、「お姉ちゃん」と言って、頭を肩に乗せてきた。
「何、甘えてんの?」
寿々歌の頭を押し返す菜々香だったが、悪い気はしなかった。
「ラーメンにポテチって…?」
志穂が、寿々歌に興味津々に訊ねる。
「うん。うち、何度か試してみたことがあるんよ。ラーメンに限らず、ちょこっと料理に足してみんねん。そしたら、結構、美味しくなるんよ。名付けて、『寿々歌マジック』や」
「へぇ…。ラーメンにポテチも試してみたん?」
「うん。美味しいで。せやけど、入れるポテチは、カルビーやコイケヤやのうて、プリングルスがええ。油が少なくて、シャキっとするさかいな。あと、そのまま入れるんやのうて、粉々に砕いてな」
「ふんふん…」
志穂は、漫画雑誌の裏表紙に、ボールペンでメモ書きをする。
「それから、スープは、もっと味を薄くせなアカンよ。ただでさえ、ポテチの塩味が加わるんやから…」
「あ…。やっぱり、辛いんや…」
志穂は、菜々香の顔を見て笑った。
菜々香も、志穂に笑い返す。
1554投稿者:リリー  投稿日:2011年02月24日(木)21時55分01秒
「楽しいわ…。久しぶりやもん…。こない、関西弁で話し合うの…」
気がつけば、菜々香、寿々歌、志穂…この場にいるのは、すべて関西人だ。
ここに、七海が加われば完璧なのだが…。
「そう言えば、関西弁を喋るんは、菜々香ちゃんと寿々歌ちゃんだけやな」
不思議そうに、志穂は二人を見詰める。
「うん。お母さんの出身地が…ウチ等だけ大阪やねん」
菜々香が、取って付けたような笑顔で答えた。
「うちは、兵庫やで」
寿々歌が口を尖らせて言った。
「そうなん?」
初めて聞いたと、菜々香が目を丸くする。
「最初は関西にいたけど…5歳の時、広島へ引越してん」
つまり…最初は神戸にある『工場』で生まれ、『フレイム』に送られたが、途中で所属が『ルッキンググラス』に変わったのだろう。
志穂がいる前なので、寿々歌は地名だけで自分の略歴を説明する。
1555投稿者:リリー  投稿日:2011年02月24日(木)21時55分17秒
「菜々香ちゃんのお母さんは、大阪にいるの?」
志穂が訊ねる。
「う、うん。いるよ」
嘘の返事をするのは、やはり気が退ける。
「どんな、お母さん?」
「ええと…気が強い人や…。怒ると怖いで…」
咄嗟に、菜々香は自分の戦闘教官…『マン・ハンター』(男狩り)こと、小原正子の顔を頭に浮かべた。
『TTK』が壊滅した後、彼女は…『フレイム』の仲間は、どうしているだろうと、菜々香は思いを馳せる。
「寿々歌ちゃんのお母さんは?」
今度は、寿々歌に訊ねる志穂。
「え…?うち…?」
慌てふためき、何やら考えるが、何も嘘が浮かばなかったのか、「赤ちゃんの時に別れたから、覚えとらんのよ」と、寿々歌は答えた。
(嘘がつけへん性格やね…。ウチと同じや…)
微かに、菜々香はクスリと笑った。
1556投稿者:リリー  投稿日:2011年02月24日(木)21時55分35秒
その後、三人の関西娘は、他愛もないことを話し合い、それぞれ部屋に戻った。
菜々香と寿々歌が志穂の部屋に戻ると、美知代、真優香、青來、奈々の4人は、すっかり眠っていた。
訓練されてきたため、いびきはもちろん、寝息をたてている者もいない。
「起こさんようにな…」
菜々香は、寿々歌に耳うちすると、そっと皆の身体を跨いで布団に入る。
寿々歌もそれに続くが、うっかりと真優香の足を踏んでしまった。
「あ…」
真優香が、ガバっと起き上がり、怒り心頭に怒鳴りつけてくるだろうと、寿々歌は身構えた。
しかし、真優香は眉を顰めて、寝返りをうつだけだった。
「あれ…?」
寿々歌は、拍子抜けしてしまった。
足を踏まれたのに、真優香が目を覚まさない。
熟睡している…?
1557投稿者:リリー  投稿日:2011年02月24日(木)21時55分50秒
「安心してるんや…。『TTK』がのうなったから…」
菜々香が、真優香の寝顔を見詰め、言った。
そして、安らかに眠る奈々の頬を、そっと撫でた。
やはり、奈々も起きることはない。
「ホンマに…安らかに眠ってる…。こんな日が…来るなんて…」
菜々香は、声を詰まらせた。
「泣いてるの…?菜々香…?」
寿々歌の問いに、菜々香は布団を被って答えない。
そして、代わりにこう言った。
「はよ、寝よう!!ウチ等も、ぐっすり眠るんや!!」
そして、こう付け加える。
「スタートや…。ウチ等の新しい人生…」
1558投稿者:リリー  投稿日:2011年02月24日(木)21時56分59秒
ラーメンINポテチの元ネタは、甜歌が出てたドラマの『まさとしラーメン』です

では、おちます
1559投稿者:一瞬まさしとラーメンに見えたwww  投稿日:2011年02月24日(木)22時07分02秒
 
1560投稿者:117  投稿日:2011年02月25日(金)10時25分56秒
寿々歌マジック、秘密レシピか。だいぶ2010初期w
少女たちも安心して寝られるようになったか・・・
関西3人娘、何かいいですね。
1561投稿者:青來あたり寝相わるそうw  投稿日:2011年02月25日(金)10時40分41秒
イメージだけどw
1562投稿者:なるほど  投稿日:2011年02月25日(金)13時32分44秒
寿々歌が『ルッキンググラス』所属なのはそういうわけなのね
どうして基地移ったのかも気になるけど
じゃあ広島弁も喋れたりするんだろうか
1563投稿者:まさしとラーメン吹いたw  投稿日:2011年02月25日(金)19時58分44秒
本の題名みたいだなw
1564投稿者:こどもの事情も押さえてましたか  投稿日:2011年02月25日(金)20時01分54秒
そこらのヲタ並に手広いですな
1565投稿者:リリー  投稿日:2011年02月25日(金)21時40分01秒
1559さん、1563さん
『まさしとラーメン』…地味な短編人情ものみたいですね
117さん
今年の要素も、ちょっと入れておきました
ほんと、あの中に七海も入れたい衝動に駆られましたよ
1561さん
手足が長いので、青來の寝相の悪さは迷惑になりそうですね
1562さん
取ってつけたような理由ですが、以前指摘された質問の答えになります
納得していただけたでしょうか?
1564さん
もちろん見てましたよ
甜歌のお父さん役の柳沢慎吾さんも、天てれ関係者になりましたよね

では、更新します
1566投稿者:リリー  投稿日:2011年02月25日(金)21時40分54秒
《2》「これが、うち等の生きる道やで!!」(鎮西寿々歌)

朝を向かえ、菜々香達6人は、深く深く頭を下げ、『伍麺亭』を後にする。
「落ち着いたら、いつでもラーメン食べに来てな」
石田は、笑顔で言ってくれた。
「はよ、来てね。もしかしたら、店が潰れてのうなってるかもしれんから」
そう言う志穂の頭を、石田はポンと叩いた。
食い逃げをしようと思っていた自分達に、こんなに親切にしてくれた…。
菜々香だけでなく、誰もが皆、熱いものが胸に込み上げた。
「お父ちゃんに、ポテチのこと言ってみるわ」
志穂は、寿々歌に耳うちする。
「うん!!絶対、やってみて!!ホンマ、美味しいから!!」
弾ける様な笑顔で、寿々歌は言った。
そして皆は、何度も何度も振り返り、愛すべき父娘に手を振った。
角を曲がるまで、父娘はずっと店頭に立って、見送ってくれていた。
1567投稿者:リリー  投稿日:2011年02月25日(金)21時41分12秒
「また、食べに来ような…。今度は、ちゃんとお金を持って…」
菜々香は、朝日の差す大阪の街を、眩しそうに見渡しながら言った。
「お金か…。どうやって稼ぐの…?」
寿々歌が訊く。
「そこはホラ…。我等がリーダー、『クゥ』様が、考えてくれはるやろ」
そう言って、菜々香は奈々の頭に手を置いた。
ムッとした顔で、奈々は菜々香の手を払い除けた。
「もし、また食べに行くんだったら…私、唐揚げだけ食べるね」
真優香が言う。
「うん。ラーメン、不味かったねぇ」
不味いと言いながらも、笑顔で青來が振り返る。
「ラーメンは不味かったけど…あんな美味しい唐揚げ、初めて食べた…」
「愛が入ってるにゃん…」
美知代が、小さく呟いた。
「え?」
皆の目が、美知代に集中する。
「隠し味に、愛が入ってるから、美味しいにゃん」
「そういう、こっちが赤面するようなこと、言わないでよ」
真優香は、苦笑いをして、美知代から目を逸らした。
「だったら、是非、ラーメンにも愛を入れて欲しいわ…」
1568投稿者:リリー  投稿日:2011年02月25日(金)21時41分28秒
「さてと…。現実的な話をしましょう」
奈々は、足を止める。
「これから私達…どこに向かう?どこで暮らす?どうやって食べていくの?」
そして、菜々香に視線を移す。
「私に丸投げしないで、是非、みんなで考えて欲しいわ」
これには、皆「う〜ん」と、腕組みをして唸るだけだった。
奈々は、溜め息を吐いて言う。
「まず…私達が、これから暮らしていくのに、障害になることを挙げていきましょう」
「はい…」
菜々香が手を挙げる。
「ウチ等が、みんな子供や…ということ…。子供だけでは、部屋も借りられん。仕事ももらえん」
この意見に、再び奈々は溜め息を吐く。
「そうね…。このままだと…ストリートチルドレンまっしぐらね」
「そんなの、絶対イヤ…。ストリートチルドレンなんて…何処の国の話よ…!!」
真優香は、鼻にシワを寄せて、吐き捨てるように言った。
1569投稿者:リリー  投稿日:2011年02月25日(金)21時41分48秒
「真優香は、ストリートチルドレンの、『ストリート』がイヤなんじゃにゃい?」
美知代が、言った。
「え?どういうこと?」
真優香が、美知代を見詰める。
「ちゃんと、屋根と壁がある所に住めば、とりあえず、ストリートチルドレンには、ならないにゃん」
「何を言っているの?だから、子供だけじゃ部屋なんて借りられないんだってば!!」
やれやれと、真優香は肩をすくませる。
「借りる必要はないにゃん。住んじゃえばいいにゃん」
「空き家かどっかに、入り込むの…?」
奈々は、じっと空を見上げて考える。
そして、首を横に振る。
「確かに、そういう方法もあるけど…住むだけじゃダメよ…。食べていけないと…」
「多分…あそこに行けば、食べ物はあるかもしれないにゃん」
「あそこ…?あそこって、何処?」
「昨夜は、近づきたくなかった所にゃん」
「警察?警察の留置所にでも入れてもらおうって…?」
半ば、ヤケクソ気味に、真優香が笑う。
1570投稿者:リリー  投稿日:2011年02月25日(金)21時42分09秒
「わかった!!」
思わず大きな声を、菜々香が出した。
「あそこって…『フレイム』基地のことやな?」
「正解だにゃん」
人差し指を、美知代は菜々香に向けた。
「そうか…。昨夜は、『TTK』が壊滅したことを知らんかったから、『フレイム』基地には近づけんかった…。せやけど、今は違う…!!」
もう、『TTK』はなくなったので、菜々香達の脱走の罪など、無効になっているだろう。
そして、『フレイム』だけでなく、各地方基地には、食料がどっさりと蓄えられている。
住む所と食べるもの…同時に問題が解決する。
「でも…やっぱり、今、『TTK』の基地に近づくのは、危険よ…。まだ、『TTK』の復活を考えてる人の、地下組織になってるかもしれない…」
奈々は、不安を隠せない。
「せやったら、ウチが様子を見てくるわ。ウチしか、『フレイム』基地のことは知らんからな」
菜々香が、ドンと自らの胸を叩く。
「うちも行く!!5歳まで、『フレイム』におったんやもん」
寿々歌も手を挙げた。
「そう…?だったら、お願いしたいけど…」
それでも、奈々は不安を消せないでいる。
《火》の菜々香に、《風》の寿々歌…。
ブレーキになる人物がいない。
1571投稿者:リリー  投稿日:2011年02月25日(金)21時42分31秒
「ミ〜たんも、行きま〜す」
美知代が手を挙げた。
「え…?美知代さんが…?」
思いっきり、眉を顰めて、奈々は美千代を見る。
「だって、ミ〜たんが言いだしっぺだし、いざとなったら『魔法』を使うにゃん」
「ダ、ダメよ…!!『ハチ』さんは《火》でしょ?寿々歌さんは《風》でしょ?そこに、また《風》の美知代さんが加わったら…」
「ミ〜たんは、《土》だにゃん」
「…え?」
この意外な答えに、奈々はしばらく絶句する。
「いい加減なことを、言わないで…」
冷たく突き放し、奈々は真優香の方を向く。
「真優香さん。お願いできるかしら?」
「はい、はい…。私に振って来ると思ってましたよ…」
ぶらぶらと手を振って、真優香は菜々香達の側に歩み寄る。
結局、菜々香、寿々歌、真優香の3人が、『フレイム』基地の偵察に行くこととなった。
1572投稿者:まさしとラーメンより  投稿日:2011年02月25日(金)21時42分56秒
まさしとクスリの方がいいww
1573投稿者:リリー  投稿日:2011年02月25日(金)21時43分16秒
では、おちます
1574投稿者:奈々wwww  投稿日:2011年02月25日(金)21時45分00秒
美知代信じてあげようぜw
風と土があることをw
2つ人格有るの知ってたならわかりそうなもんだがw
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