シナリオ3日目 シーン1 クラスでコスチューム分担を決める話 --- 今朝のホームルームはがやがやと騒がしい。コスプレ喫茶の役割分担を決めているからだ。 明はさながら新規オープンの喫茶店をプロデュースするかのごとく、事細かに指示を出している。 どうやら昨日話していた彩葉のメイドと葵の甲冑は確定のようだ。 桃香「ていうかさ。勝手に担当決められても困るんだけど。」 桃香「文化祭なんてやりたいやつがやればいいだろ。私はそんな暇ないから。」 浮かれムード一色だった教室の雰囲気がガラリと一変した。明が巫女服担当に赤坂さんを推薦したところだ。 女性徒A「まじっすか姐さん?ででででも……。」 女性徒B「自分ちょっと楽しみだったッス、姐さんの巫女……。」 桃香「あんたらは好きにすればいいさ。とにかく私は無理だから。」 明はずっと赤坂さんを見据えたまま押し黙っている。 一樹「理由くらいは、教えてくれてもいいんじゃないかな……?」 女性徒A「そ、そうですよ。最近うち等ともあんまりつるんでくれないじゃないスか。なんか忙しいんスか?」 桃香「ほっといて。」 ひとことだけ言い放って赤坂さんは教室を出て行ってしまった。 何かワケありなんだろうか。いつもとは様子が少し違うようにも思える……。 誰も口を開かず教室内を居心地の悪い沈黙が覆ってしまった。 明「……ま、ダメなら巫女さんは諦めるってことで、次行くぜ次!」 明「実はな、巫女さん以外にもとっておきのネタがあるんだよこれが。聞きたいか?ウヒヒ……。」 あんなに推してたのに、あっさりと明は引き下がった。 場の空気を変えるための演技なのだろうか。そう簡単に諦めるような素直な奴とも思えないけれども。 明「セーラー服だよセーラー服!」 えーそれ普通じゃん、そりゃうちの制服はブレザーで普段見ないとはいえさー……。 明の提案への反応はいまいちのようだがクラスの空気は元通りになっていた。 僕はといえば明の声を聞きつつも、意識はさっきの赤坂さんの様子を思い出していた。 桃香『ほっといて』 一樹(なんだかさみしそうな顔だったな。) 一樹(赤坂さん、言い方は少しきついところがあるけれど悪い人じゃないと思っていたんだけど。) 一樹(後でそれとなく理由聞いてみようかな。) 物思いにふけっているとふと、クラス全員がこっちを向いているのに気づいた。 一樹「え?な、なに?」 明「だーかーら。聞いてなかったのか?。一樹、お前だよ。セーラー服(はぁと)」 一樹「え、ええーー!!」 一樹「ちょ、ちょ、ちょっと、ままま、待ってくれよ。なんで僕が、セーラー服?女装するって事?!」 明「どうせ自分では大したネタ考えてきてないんだろう?」 一樹「そ、そんなことないよ。僕色白で目が赤いから……敏腕営業マンとかいいかなって……。」 一樹「『僕と契約して喫茶店で飲んでいってよ』とか、ハハハ……。」 明「お前が営業マンって、宇宙のエネルギー回収でもするつもりか?そんなの誰が得するんだ、却下却下。」 明「色白で一見大人しそうな雰囲気で実は悪くないルックス、これは僕っ娘キャラの逸材やで!」 一樹「なんで関西弁……。」 明は聞く耳を持たない。 男子生徒A「そういや高西ってよく見ると可愛い顔してるよな。」 ねっとりとした視線を向けられて背後に悪寒を感じる。 女性徒C「わ、悪くないんじゃないかしら、そういう奇をてらったのがあっても。」 女生徒D「金田×高西かしら……いやきっと普段とは逆の立場で高西×金田だったりして!そうよ、きっとそうよ!」 そういいながらなぜか頬を赤く染めて明とこっちを交互に見ている。 名前の前後に何の意味が……これは……負のオーラならぬ腐のオーラというやつか! 葵「これは強敵……でも負けない。私の方が需要があるはず。」 何を争うつもりかわからないが葵は既に臨戦態勢のようだ。 彩葉「いい……いいよ!一樹セーラー服絶対似合うよ!私の中学の時の、一樹ならたぶん入るよね!私持ってくるから!」 彩葉まで鼻息が荒い。もうコスチュームの調達にまで話が及んでいる。 さっきの赤坂さんの件もあってかそこかしこから――お前はやるよな――と言いたげなプレッシャーを感じる。 非常に断り難い状況のようだ。 明「な?観念しなって。やるって言えば楽になれるんだぜ……?」 してやったりと明が最後の一押しをしてきた。 どうやらここまでのようだ。 僕はもう深く考えるはやめることにして流れに身を任せることにした……。