シナリオ3日目シーン2 昼休み行動選択 --- 一樹(さて昼休みだ。今日は明が文化祭の件で生徒会室に行くので一緒には食べられないらしい。) 一樹(どこで食べようか……。) (選択肢) 1.明は居ないが教室でいつも通り食べる 2.たまには学食に行ってみるか 3.屋上で食べるのも気持ちいいかもしれない (選択1) 一樹(明は居ないが教室でいつも通り食べるか。彩葉は居るみたいだし。) お昼は明と彩葉の三人で食べるのが自然になっていた。 二人とも付き合いは長いので昼御飯以外にも三人で行動することはよくある。 付き合いが長いとはいっても実際の所幼い頃どういう関係だったのか僕は記憶がなくなっているので、 二人から聞く話を元にすると、なのだけれど。 彩葉「金田君は?」 一樹「生徒会室に用があるんだってさ。お昼は適当に食べとくって。」 彩葉「そっか。じゃあ久々に二人で、だね♪」 彩葉はご機嫌だ。 ホームルーム以降終始この調子で、授業中にも時折アツイ視線をこちらに向けてはにやにやと含み笑いをしていた。 僕が女装することがよほど楽しみのようだ。 案の定早速その話題になった。 彩葉「楽しみだね♪一樹のセーラー服。」 一樹「当人は不安でいっぱいなんだけどね。」 不安な当人を尻目に、髪型もウィッグで可愛くしなくちゃね♪、とか、お化粧もやってあげるよすっごく可愛くなるから♪、だとか、 勝手に盛り上がってとどまるところを知らない。 一樹「そういえばさ。部活の方では何かするの?文化祭。」 とりあえず話題を切り替えようと彩葉自身のことに水を向けた。 確か美術部に入っていたはずだ。 彩葉「うんうん。」 彩葉「美術部は本業で勝負!なのです。各部員1点づつ絵を描いて展示するんだよぉ。」 彩葉「実は私もこのために2ヶ月前からこつこつ描いてたんだよ!」 一樹「へー。2ヶ月も?絵ってそんなに時間かかるものなの?」 彩葉「油絵だからね。何回も重ね塗りするし、削って塗りなおしたりもするしね。」 一樹「へぇ……。大変そうだ。」 パステル絵ならいつも見てるから得意なんだけど…… なんて皮肉めいた冗談を言うとまた彩葉は沈んでしまうだろうから言わずにおいた。 僕の記憶がない話や、人の顔がパステル絵で見えてしまうこの症状の話、 になると決まって彩葉は暗い顔で黙ってしまう。 心配してくれるのはありがたいけど少し過剰なんじゃないかとも思う。もしくは他になにか理由があるのだろうか? 彩葉「構図もかなり悩んだんだよぉー。自分の内面を開放してキャンバスに表現する……自己実現だよこれは正に!」 意味がわかって言ってるのだろうか……ともかく彩葉は今回の絵に相当腐心したようだ。 その後も絵の具の話や筆の話、スフマートはレオナルド・ダヴィンチの頃に考案された手法、のような雑学に至るまで、 飽きることなくうれしそうに話をしてくれた。 もちろん間にお弁当をつまむのも忘れずに。 一樹「一度見てみたいね、彩葉がそこまで頑張って描いてる絵、を。」 社交辞令ではなく、本当に見てみたいと思った。 彩葉「ほんとに?絵に興味あったんだね一樹も。」 彩葉「今日は丁度放課後に部室で描くつもりだったし見学に来たら見られるよ。」 一樹「あ、あぁ、うん。」 そのまま美術部入っちゃえば良いのに、と彩葉は嬉しそうだ。 正直なところ絵を見て良いものか悪いものかなんて全くわからないけど、彩葉がそれだけ夢中になっているのだから、頑張った成果には興味がある。 でも正直にそれを伝えるのは照れくさくて、曖昧な返事をしてしまった。 とりあえず昼食に専念することにした。 相槌も程々にサンドイッチの最後の一切れに手を伸ばす。 彩葉「ねーねー。一樹ってそのサンドイッチよく食べてるよね。購買部で買ったの?」 一樹「うん。『特製クラブサンド』って、カニカマとベーコンとレタスのサンドイッチ。学食のおっちゃんが毎朝作ってるらしい。」 彩葉「カニカマとベーコン??……美味しいの?」 彩葉は少し眉をしかめている。 一樹「学食のおっちゃんいわく、本場仕込の本格サンドイッチ、らしいよ。」 彩葉「へぇー。本場仕込かあ。なんかそういわれると食べてみたくなるね。」 一樹「……嘘っぽいけどね。おっちゃん絶対、クラブサンドの『クラブ』のこと勘違いしてるよ。」 彩葉「カニカマだもんね……。」 学食のおっちゃんは、お世辞にも、本場で仕込まれたような料理人には見えない。 腕は悪くは無いと思うんだけど。 一樹「でもこれが意外とあうんだなあ。」 彩葉「へぇー……。ねね、一口私にも頂戴?」 そういって彩葉は身を乗り出してきた。一口?僕が食べかけている、これを? 彩葉「いいでしょ?ね?」 答え終わる前に、僕に持たせたまま彩葉はぱくりと一口かぶりついた。 これって……。 気のおけない幼馴染、なのは僕も楽で居られるからいいんだけど、こういうのはちょっと……。 彩葉は気にならないのだろうか。オトコ、とオンナ、の距離感と言うか何と言うか。 それに彩葉は意外と男子からの人気も高いので、開けっぴろげにこういうのをされると嫉妬交じりのブーイングを受けたりもするのだ。 案の定今も、冷ややかな視線が向けられているのを感じる。シラナイシラナイボクノセイデハナイノダ……。 彩葉「あ、本当、意外といけるね♪」 彩葉はお構いなしの様子だ。 が、少し戸惑っている僕の様子を見て気付いたのか、急に取り乱しだした。 耳まで真っ赤になっている。 彩葉「わわっ、ごごごめんねっ、食べかけてるのを途中で食べちゃったりして。」 彩葉「ど、どうかしてるよね。口つけてないのならまだしも。」 彩葉「一樹も私がかじった残りなんて食べられないよねごめんね。」 彩葉「どんな味か知りたいばっかりに他のことなにも考えてなかったよもうそのサンドイッチ新しいの買うから捨てちゃってよね。」 彩葉「そ、そうだ私用事思い出した美術部の先輩の所に行かきゃならないんだったごめんね先に片づけるね。」 矢継ぎ早にまくし立てて彩葉は行ってしまった。 残された僕は、彩葉がかじったサンドイッチ、をどうしたものかと昼休みが終わるまで悩む事になるのであった。