シナリオ3日目シーン3 放課後 葵編 --- 文化祭の準備は明日から本格的に、今日は各自で今後の準備を検討すべし、ということになった。 教室で残って仲間内でなにやら相談をしているグループもあればそそくさと帰宅している子もいる。 明「一樹ぃー。一緒に帰ろうぜ。」 明が鞄を持ってやってきた。 一樹「せっかくのお誘いで悪いけど今日は一人で帰るよ。」 少し気になることもあるし……というのは言葉にはしなかった。 (ここに選択肢を入れるか昼休みの選択に応じて自動でルート分岐するか…) 彩葉の絵がどんなものなのか、やっぱり見てみたい。 明「ちぃーつれないなぁー。ま、俺は別にいいけどよ、」 言葉を一旦切り、ニヤニヤしながら肘で小突いてきた。 明「後でちゃあんと聞かせろよ?」 一樹「な、……何をだよ。」 明「隠したって無駄無駄。顔に女のことを考えてますって書いてあるぞ?」 一樹「おいっ明……。」 明「じゃあな!しっかりやれよ!」 そういいながら明は教室を出ていった。妙なところで鋭くて困る。 何をしっかりやれというのだ。 当の彩葉は既に教室を出た後のようで、机には鞄も残っていない。 僕も荷物をまとめ美術室に向かうことにした。 〜〜〜〜〜(背景・場面切り替え)〜〜〜〜〜〜 美術室に着いた。 部外者がいきなりずかずかと踏み込むわけにもいかないので、廊下からそっと中の様子を伺ってみる。 幸い入り口のドアは開け放たれたままだ――彩葉は居るだろうか。 彩葉「一樹?」 と、僕が見つけるより先に彩葉に見つかってしまったらしい。 彩葉「来てくれたんだ♪」 一樹「うん。」 一樹「どうせすること無いしね。」 一樹「お昼に言ってた彩葉の絵、みてみようかなぁって。」 ???「あら、橙ヶ崎さん、お友達?」 ???「遠慮しないで入ってもらったら?」 彩葉「あ、はい。ありがとうございます。」 彩葉「だって。」 彩葉「ほらほら、遠慮しないで入りなよ。」 声をかけてくれた学生が他の学生が描いている後ろから難しい顔をして絵を見ている。 どうやら後輩の絵にアドバイスをしている先輩、のようだ。 彩葉「丁度これから仕上げをするところだったの。」 彩葉「ほとんど完成はしてるんだけどね。」 彩葉「ご意見いただけると幸いでございます先生。」 彩葉はイーゼルに絵を立てかけてから、けれんみたっぷりに頭を下げた。 一樹「うむ。苦しゅうないぞ。」 彩葉「アハハ。何それお殿様みたい。」 適当に合わせてみたがキャラを間違ったようだ。 笑いながら彩葉は頭を上げ、絵の脇に体をずらした。 彩葉「はいどうぞ!」 彩葉「なんだか照れるね。」 そういって見せてもらった彩葉の絵は……。 すごく、抽象的な、油絵だった。 絵の知識が乏しい僕のボキャブラリーでは上手く表現出来ないのだが。 幾何学模様に置き換えられた人の顔や建物に、カラフルだけど落ち着かない色使い。 隅々まで丁寧に描いているのはすごく伝わってくるんだけど、なんだかよくわからないというのが正直な感想だった。 一樹「……す、すごいね。」 彩葉「ふふふん。」 ある意味で圧倒されている僕をみて彩葉は得意げだ。 そう、圧倒された、のは事実だ。 絵の内容というよりも、想像していた絵と余りにかけ離れていたことに対して、面食らっている。 一樹「本格的だね。」 彩葉「でしょー。」 彩葉「文化祭の後はこのままコンクールに出すからね。本気だよ本気。」 一樹「これは、タイトルつけてるの?」 馬鹿正直に、何が言いたいの?と聞くわけにもいかず、それとなく意図を探るために聞いてみた。 彩葉「つけてるよ。」 彩葉「『あふれ出る青春のタナトス』ていうの。」 一樹「へ、へぇ……。」 しまった。余計にわけがわからなくなってしまった。タナトス?死の神様がどうかしたのだろうか。 彩葉の絵からは青春もタナトスもあふれ出るどころか微塵も感じることが出来なかった。 どっから降って湧いたんだと思うようなタイトルだ。 彩葉「で、美術部入る話、どう?」 彩葉「一緒に絵が描けたら楽しいよね♪」 先輩「あら、入部希望?」 先輩「男子部員は少ないから大歓迎よ?」 幸い、僕の率直な感想は、彩葉には気付かれていないようだ。 が、雲行きが怪しい。さっきの先輩も僕と彩葉のやり取りを聞いてこっちにやってきてしまった。 一樹「ま、まぁ入部のことはまたじっくり考えておくよ。」 一樹「とりあえず文化祭までは出し物のこと集中したいしね。」 一樹「彩葉の絵も見れたし今日はこの辺で帰るよ。」 彩葉「えー。もう帰っちゃうの?」 先輩「それは残念。」 一樹「う、うん。目的は果たしたし、ね。」 一樹「また明日ね。」 適当に切り上げてそそくさと帰路についた。 あのまま入部の話で二人に詰め寄られたまま長居出来るほど、僕は強くはない。 一樹(でもあの絵は予想外だった。明日また聞かれてもコメントしづらいなぁ。) -------