【 禁断の壷 2.5.5.5 】
◆このスレッドのチャット部屋に入る◆
Powered by
QRかきこ
■掲示板に戻る■ 全部 1- 101-
201-
301-
401-
501-
601-
701-
801-
901-
最新50
げんしけんSSスレ
- 1 :マロン名無しさん
:2005/10/09(日) 13:26:09 ID:???
- 「本スレん時の荒れで この手のもんは遠ざけようとしてきたけんど」
「こないだの連載でつくづく分かった…… 私には無理だ 逃げらんね……」
「逃げらんねならいっそ行ぐのか 次のSS…… このスレッド作成で見極めるべさ」
試しに立ててみましたげんしけんSSスレ。
未成年の方や本スレにてスレ違い?と不安の方も安心してご利用下さい。
荒らし・煽りは完全放置のマターリー進行でおながいします。
本編はもちろん、くじアンSSも受付中。名前欄にキャラ(カプ)記載を忘れずに。
☆講談社月刊誌アフタヌーンにて好評連載中。
☆単行本第1〜6巻好評発売中。7巻は年末発売?
☆作中作「くじびきアンバランス」ライトノベルも現在2巻まで絶賛発売中。
【注意】
ネタばれ含んだSSは公式発売日正午12:00以降。 公式発売日正午以前の最新話の話題は↓へ
げんしけん ネタバレスレ3
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1124909177/
げんしけん(現代視覚文化研究会)まとめサイト(過去ログや人物紹介はこちらへ)
http://ime.nu/www.zawax.info/~comic/
「エロパロはそっち!!」「え? え? え?」
【椎応大】げんしけん@エロパロ板 その2【くじあん】 (21禁)
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1122566287/
げんしけん@801板 その4 (21禁)
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/801/1127539512/
- 2 :マロン名無しさん
:2005/10/09(日) 13:41:23 ID:0HjyXbqf
- >1
超乙
荒れるのはやだもんね。
- 3 :マロン名無しさん
:2005/10/09(日) 13:48:38 ID:???
- >>1
乙。
まあとにかく、やってみましょう。
- 4 :マロン名無しさん
:2005/10/09(日) 13:51:11 ID:???
- >>1
乙。
なんか一番手はプレッシャーがかかるのでしばらく様子見してるヘタレです。
- 5 :マロン名無しさん
:2005/10/09(日) 13:55:18 ID:0HjyXbqf
- さてはカラオケで1曲目には歌えないタイプだな?
気にすんな来てくれ。
- 6 : ◆9rae7Hwib2
:2005/10/09(日) 14:16:51 ID:???
- 4ではないが初灯火
- 7 :降臨1/3
:2005/10/09(日) 14:18:45 ID:???
- 「生きているな。おめでとう。」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
その学生服の男は白昼堂々、椎応大学に現れた。
大野加奈子は自分に当たったはずの矢が存在しない事に混乱し、状況を把握できないでいた。
「えーとえーと…貴方は…」
「ああ、すまない…自己紹介が遅れたようだ…。」
「俺の名は虹村形兆。この…『弓と矢』で素晴らしい力を君に与える者だ。」
「あ…あの…その…形兆さんがどうして私に…」
「…君には…これが見えるはずだ…」
そこにはミニチュアの軍隊…そう、人形やジオラマではなく、統制の取れた「軍隊」がいた!
バッド・カンパニー!この傲岸不遜な男・虹村形兆の幽波紋(スタンド)であるッ!
スタンドとは!戦う意思ッ!強い意志をもつ者だけが制御できる強大な力!!
「フフフ…完璧な統制…美しいとは思わないか?」
「あ、あの…だから…」
「エロカワイイコスプレ美女を見たら誰だって『ああ、この娘が本当に魔法とか使えたらな…』とか思うだろう?
で、自分にその手段があるとしたら…やらずには いられまい!誰だってそうする。俺もそうする。」
「そ、それで私を…?」
「ああ。お前は見事俺の『同類』として生き延びたわけだ…」
「…それって…死ぬ事もありえたってことですか?」
「まあ大体は死ぬ」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
空気が変わった。大野加奈子を中心に気とも靄ともつかぬ何かが集まって行く。そして…
ネコミミモード!
- 8 :降臨2/3
:2005/10/09(日) 14:19:35 ID:???
- 【Neko Mimi MoDe】
大野加奈子のスタンド。ネコミミキャラになり切ることができる。
それは見た目だけではなく内面や能力も兼ね備えた存在として、である。
ネコミミモード ネコミミモードで〜す ネコミミモード ネコミミモード
ネコミミモード ネコミミモードでーす ネコミミモード(うにゃ〜ん うにゃにゃ)
フルフルフルムーン!(キスキスキス…) ひげのおじさま(キスキスキス…)
や・く・そ・く・よ (キスキスキス…)
私のしもべぇ〜(キスキスキス…)
ネコミミモード ネコミミモード ネコミミモード ネコミミモードで〜す
ネコミミモード ネコミミモード ネコミミモード ネコミミモードで〜す
コスプレ…したくなっちゃった…
電波ソングが響き渡る中、大野さんが…変身…しちゃいました…
ヴェクター社の開発した対グノーシス戦闘システムKOS−MOS
に、ネコミミ。
「そ、そんなのアリ!?」
「ファンデイスクでネコミミつけたんですよ。さあ…」
「半殺しと全殺しどっちがいいですか?」
「ギニャー!!」
邪 神 降 臨
「…ふふふ…やはり俺はいつも正しかった!その力を存分に活用するがいい!」
「…やめてください…」
「ははは!さらばだ!」
小さな兵隊たちに運ばれる形兆!まるでベルトコンベアーで牛肉を運ぶようにッ!!
「あうう…」
- 9 :降臨3/3
:2005/10/09(日) 14:21:32 ID:???
- 次回予告
大野加奈子最大のライバル登場!!
「何でそんなにホモが好きなんですか?」
「ホモが嫌いな女子なんかいません!!」
荻上のアルター能力と大野加奈子のNeko Mimi MoDeが火花を散らすッッ!!!
「その無意味に育った胸に反逆する!!」「貧乳が何を言うか!!」
もうナニがナニやら。そしてその2人を見つめる怪しい影…
…次回、「そのヒゲの名は田中」絶対見てくれよな!
- 10 : ◆9rae7Hwib2
:2005/10/09(日) 14:25:39 ID:???
- 大野さんをモッコスにしたくてやった。反省はしていない。
- 11 :マロン名無しさん
:2005/10/09(日) 14:37:40 ID:???
- >>10
ここ設立の原因になった張本人だが
とても面白い。設定は自由奔放だがキャラクターのセリフがキャラから外れていないと思う。
「あうう」がいい。
- 12 :マロン名無しさん
:2005/10/09(日) 14:50:20 ID:???
- つーか生きてたんか虹村兄さんw
漏れもまた久しぶりにげんしけん改変ネタでも
考えようかな?
あ、そうそう。
>>1乙。
- 13 :マロン名無しさん
:2005/10/09(日) 16:44:43 ID:???
- >>1
乙。
まあ、色々あるけどこれでよかったんだよ。
- 14 :マロン名無しさん
:2005/10/09(日) 16:58:41 ID:???
- 遅くなったけど関連スレ
【赤面】荻上さん崇拝スレ 5筆目【ツンデレ】
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/cchara/1128295218/l50
げんしけんの荻上に萌ゆる夏
http://etc4.2ch.net/test/read.cgi/male/1119551401/
【げんしけん】大野加奈子萌えスレ【コスプレ】
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/cchara/1120478697/
【パンピー】 げんしけんの春日部咲【コーサカ】
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1101553767/
げんしけんAA総合
http://aa5.2ch.net/test/read.cgi/kao/1103363034/
荻上して30秒以内に大野さんされなかったら斑目11
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1119640095/
▲▲げんしけん 斑目×咲 推奨派スレ▲▲
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1104480192
◆げんしけん◆総合なりきりスレ
http://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1121263774/
- 15 :マロン名無しさん
:2005/10/09(日) 17:00:01 ID:???
- ●げんしけんの★笹原完士★に萌えるスレ●
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/cchara/1117604544/
お前ら!!オタクなら【げんしけん】買ったよな?
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/otaku/1040606377/
ヲタ的にげんしけんってどうよ??
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/asaloon/1115733468/
喪男ならげんしけん好きだよな?
http://etc4.2ch.net/test/read.cgi/motenai/1124031600/
同人誌を作る人間から見て「げんしけん」ってどう?
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/2chbook/1105963447/
げんしけん〜雑談ヲタ話〜 6
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1125972374/
〜アニメの話はこちらで〜
げんしけん 活動26日目
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/anime2/1120930216/
その他のげんしけんスレ
http://ime.nu/gulab.ruitomo.com/~gulab/s.cgi?k=%82%B0%82%F1%82%B5%82%AF%82%F1&o=b
- 16 :マロン名無しさん
:2005/10/09(日) 17:00:45 ID:???
- 関連HP
genshiken.info
http://ime.nu/www.genshiken.info/
kujian.info
http://ime.nu/www.kujian.info/
音泉
http://ime.nu/www.onsen.ag/
アニメスレのスレログ倉庫
http://ime.nu/logbackyard.hp.infoseek.co.jp/gensiken/
G-LINK(げんしけん くじびきアンバランスオンリー自動登録式リンク)
http://ime.nu/www.leaf64.mydns.jp/~g-link/cgi-bin/index.cgi
- 17 :マロン名無しさん
:2005/10/09(日) 20:13:08 ID:???
- みんなもっと遠慮なく妄想を叩きつけるんだ!
- 18 :マロン名無しさん
:2005/10/09(日) 20:59:24 ID:???
- たぶんみんな創作中なんだよ。
それに書きたいときに書き、見せたいときに見せる。
それがSSクオリティ。
まあ気楽に気楽に。
- 19 :マロン名無しさん
:2005/10/09(日) 22:13:18 ID:???
- 17見たいな奴に限って自分は書かないのもSSスレのお約束
- 20 :マロン名無しさん
:2005/10/09(日) 22:18:21 ID:???
- だがまあ保守ぐらいの役には立つだろう
- 21 :マロン名無しさん
:2005/10/09(日) 23:52:17 ID:???
- 荻上ハァハァ
- 22 :マロン名無しさん
:2005/10/09(日) 23:58:49 ID:UxFchbTj
- いままでのSSをこちらで保管すると言うのはありかな?
そのSSの職人じゃない人が勝手に張り付けるのもまずいかな。
- 23 :マロン名無しさん
:2005/10/10(月) 00:15:02 ID:???
- それは今まで本スレとかで出たSSの中から転載して貼りつけるってこと?
いいんじゃね?SS書きがいない間の保守も兼ねて。
投下中・投下直後に貼るとか空気読めないまねしなければ。
- 24 :マロン名無しさん
:2005/10/10(月) 00:28:07 ID:POywscfw
- ならいいか。
じゃあ、エロビ見て寝ます。
- 25 :マロン名無しさん
:2005/10/10(月) 00:41:53 ID:???
- なんだそりゃw
- 26 :マロン名無しさん
:2005/10/10(月) 02:42:15 ID:???
- まあ待て、彼は一度寝て気力充実してから作業を始めるということだ。
- 27 :マロン名無しさん
:2005/10/10(月) 03:02:40 ID:???
- 荻上「創作SSなんて作家の妄想そのまんまのヘンなのばっかじゃないですか。そんなの書いて投稿するなんて信じられませんよ」
大野「創作SSで表現するのはキャラクターそのものです。それはセリフだけでなく内面も含めての事です・・・」
荻上「へ理屈ですよ。内面がセリフに表現されるわけがない。」
大野「表現できるんですよ!!」
大野「去年あれほど見事に『会長』をSSで表現した咲さん!!何とか言ってください!!」
咲 「終了!!後は流せ!!」
荻上「掲示板を私物化してますね。」
大野「あなたもやってみたらいかが?」
咲 「くはー」
- 28 :マロン名無しさん
:2005/10/10(月) 03:31:21 ID:???
- こっちにSS書いて、URLを本スレに書けばいいんだよね。
- 29 :マロン名無しさん
:2005/10/10(月) 03:53:49 ID:???
- いやURLは必要ないだろう
- 30 :マロン名無しさん
:2005/10/10(月) 05:05:07 ID:???
- >>22
それならまとめサイト作った方がよくね?
- 31 :マロン名無しさん
:2005/10/10(月) 05:27:55 ID:???
- >>30
まとめサイトに直接収納だと労力がかかりすぎるでしょ?
本スレ・派生スレ全部見て、その中からSSらしきものを探し出して、
サイトに載せるSSかどうか1つ1つ見極めて、
さらにそれを分類したりしてやっとまとめサイト開始、
また全てのスレをチェックしつづけて…とかな?サイト作るのは大体1人だし。
それよりはおのおのが良SSを持ち寄って(もちろんこのスレでのSS創作が最優先だが)
転載する形のほうが効率的ではないか?その形ならまとめサイトも作りやすいだろうし。
- 32 :マロン名無しさん
:2005/10/10(月) 09:21:47 ID:???
- そうか
- 33 :マロン名無しさん
:2005/10/10(月) 16:15:57 ID:???
- 笹荻ラブラブS投下Sまだー?
- 34 :マロン名無しさん
:2005/10/10(月) 16:16:50 ID:???
- 間違い
笹荻ラブラブSS投下まだー?
- 35 :マロン名無しさん
:2005/10/10(月) 16:34:58 ID:???
- むしろ最近の影の薄くなった斑目クンの心情を
- 36 :28 :2005/10/10(月) 21:36:06 ID:???
- >>29
本スレでもそう言われたが、本スレでの会話の流れからSSを作ったって
場合もあるから、URLを貼ってもいいんじゃないかな?と思ったもんで・・・
- 37 :マロン名無しさん
:2005/10/10(月) 22:15:01 ID:???
- >>36
こっちにレスしたよ。という意味での誘導でリンクを張るのはありだろう。
作品の紹介でURLを張るのは自己主張激しすぎだと思う。
- 38 :完全に妄想SS
:2005/10/10(月) 23:14:26 ID:???
- 「おーい。斑目君、早くしろ」
「はいー!」
ある日、俺はお得意様である市庁舎へ出向いていた。
何で俺が営業の手伝いをせにゃならんのだ。まあ、しがない平社員だから仕方ないけどさ。
やがて応接室に案内されると、鼓動がバクバクと早鐘を打ちはじめた。
やべー、緊張でちょっと吐きそう。そんな事を考えていると、不意にコトンとお茶を差し出さ
れた。
「どうぞ。ただいま担当者が来ますので、少々お待ち下さい」
「あ、ありがとうござい……」
俺は礼を言うために彼女に目を向けた。とたん、言葉を失った。
優しい目。通った鼻。その長髪から漂うシャンプーの香り。この雰囲気はまるであの人そっくり
だった。
「どうかしましたか?」
「い、いえ。何でもありません。大丈夫です」
どうやら俺は彼女を見つめてしまっていたらしい。恥ずかしさもあり、俺はうつむいた。
「そうですか? それでは失礼致します」
そう言うと彼女は、格別の微笑みを残し、その場を去っていった。
- 39 :完全に妄想SS
:2005/10/10(月) 23:15:01 ID:???
- 「というような事があったわけよ」
久々に来た久我山邸で俺達はくつろいでいた。
「ふーん。営業先で会った事務員が春日部さんにそっくりだったと」
お茶をすすりながら田中が口を開いた。
「で、でも。な、何で斑目が営業に行ったんだ?」
ポテチをほおばった久我山が至極当然な疑問を口にした。
「あー、それはな」
「それは?」
「……ぼうやだからさ」
「それ、関係無いっスから!」
俺のボケにツッコんでくれるのは笹原、お前だけだよ。その証拠に、田中達は『それは流せ』と
か言っている。
「ちょっと言ってみたかっただけだって。本当は営業の手伝いだよ。人手足らないんだと。つーか
さ、本題はそっちじゃ無くて。それだけ似てるの、どう思うよ?」
「どうって言われても、なあ?」
「そ、そうだね。世の中には似てる人が七人はいるって、ゆ、ゆうからね」
田中と久我山は興味がなさそうにお菓子をむさぼっている。
- 40 :完全に妄想SS
:2005/10/10(月) 23:15:45 ID:???
- 「何だよー。もう少し反応してくれよー。初対面で殴られなかったかーとか。オタク嫌いじゃない
のかー。とか」
「殴られたのか?」
「うんにゃ」
「お、オタク嫌いなのか?」
「知らん」
二人の問いに答える俺。答えになっているかどうかは知らんが。
「……さて、久しぶりに『くじアン』でもやるか」
「そ、そうだな」
俺をそっちのけでゲームを始めるとは! 何て薄情な奴らだ。
「あのー。俺、思ったんスけど……」
おー! 笹原。持つべきものは後輩だな。
「もしかして、斑目さん。その人に一目惚れなんですか?」
ギクッ! こやつ、もしかしてニュータイプか? 心読めますか、あなた。
「そ、そんなわけあるまい! ただネタになるかなーって思っただけさ。第一そうだったら俺が春
日部さんの事好きみたいじゃないか!」
……もしかして俺。とてつもない事を口走ったか?
- 41 :完全に妄想SS
:2005/10/10(月) 23:16:30 ID:???
- 「それもそうですね」
あ、納得してやんの。やはりお前はオールドタイプか。だから、荻上さんともなかなか進展しな
かったんだっつーの。
三人と別れ、自分のアパートで遅い夕食を取っていた。
俺、やっぱあの人の事好きなのかな? いやいや、そんな事あるまい! 一回しか会わなかった
人を好きになるなんて事、あるわけないじゃないか! まあ、あったんだけどさ。
……でも。俺は大切に保管している例の写真を取り出し、それを眺めた。
このままじゃ、針のむしろなんだよな。だったらいっそ……。
俺はスーツに身を包み、市庁舎の前に来ていた。仕事は有給を取っているので問題ない。
手には花束という武器を装備し、戦闘態勢は万全だ。
「よし、行くか!」
小声で気合を入れると、真っすぐに建物内に入っていく。
彼女は……。いた! 俺は目標を視認すると、そこまで最短で向かっていった。
「あの……」
「あれ? あなたは桜管工事工業さんの……」
- 42 :完全に妄想SS
:2005/10/10(月) 23:17:15 ID:???
- 彼女がこちらに近づいてくる。くぅぅ、心臓が張り裂けそうだ。
「今、担当者をお呼びしますね」
「あ、違うんです! あの、コレを受け取って頂けますか?」
そう言い、俺は花束を彼女に渡した。
「あら、綺麗な花ですね。ありがとうございます。でも、どうして花束を?」
決めのセリフを言おうと台越しに彼女を見据える。ん? あれ? 彼女の左手に何か光るものが
見える。まさか……。
「……あのー。つかぬ事をお伺いしますが、もしかしてご結婚なされてますか?」
「はい。こう見えても一児の母なんですよ、私。えーと、それが何か?」
その言葉を聞いた時、体中の力が抜けていく気がした。
「あ、いえ。綺麗な指輪だと思いまして。あ、あの。その花束は、今後もうちの会社をよろしくお
願いしますという意味です。いやー、たまにはこういう変り種もいいかと思いましてハハハ」
自分でも何を言ってるのかわからないくらい、早口で口からでまかせを紡ぎだす。
「あ、それでは自分は仕事がありますので」
俺は、足早にその場を後にした。
家に戻り、例の写真を取り出して、それを眺める。
やっぱりこの人の方が好きなのかもしれないと、自分に言い聞かせるために。
「……ハハハ。やっぱ俺、どうしても針のむしろから逃れられないのかもな」
はぁ。俺に春が訪れるのはいつになる事やら、出来れば春の名を持つ人がいいな。例えば。
俺は写真を上に掲げた。
「この人とか。……なーんてな」
終わり
- 43 :マロン名無しさん
:2005/10/10(月) 23:24:50 ID:???
- >>38-42
むぅ。ちょっといい話だったし途中の笹原たちとの会話も悪くなかったが、
いきなり花束持って相手の仕事場に押しかけってのは斑目らしくないぞ。
そんな度胸も無いが、それ以前にかなり挙動不審な人だ、それ。
ラストへ持っていくのに花束は不要だろうし、もっとさりげなくいって欲しかった。
- 44 :マロン名無しさん
:2005/10/10(月) 23:34:59 ID:???
- いいですね。正統派だ。原作に春日部だから春が好きなのかという会話があったような・・・。
季節的に春を思わせるような情景が思い浮かばれます。
- 45 :完全に妄想SS
:2005/10/10(月) 23:39:18 ID:???
- >>43
すまん。確かにそうだ。
「俺に足りないのは、さりげなさか」
と、笹原風に言ってみる。
- 46 :38-42 :2005/10/10(月) 23:51:06 ID:???
- >>44
詩人ですねぇ。ありがたく漏れも浮かばれます。
- 47 :マロン名無しさん
:2005/10/10(月) 23:56:33 ID:???
- >手には花束という武器
個人的には武装錬金の合言葉ネタを使って欲しかったorz
でもGJ!
- 48 :38-42 :2005/10/11(火) 00:05:59 ID:???
- >>47
す、すまん。漏れの知識が斑目に追いつけなかったのだ。orz
「連邦の斑目は化け物か!」とか言ってみたりする。
いや、初期の外見の事じゃなくてね?
- 49 :笹荻パロディ
:2005/10/11(火) 20:16:27 ID:???
- 異端SS。この健全スレにふさわしいか分からないが、某漫画のシーンを借用した笹荻パロディー。
笹原受け、荻上攻めの内容。無理矢理他の漫画のシーンに押し込んだので、キャラクターが脱線したかも・・・。
- 50 :笹荻パロディ
:2005/10/11(火) 20:17:18 ID:???
- 編集者になった笹原 荻上のデビュー用一般向けのラブコメのネームの相談
部室にて
笹原「・・・んー、でもこの場面でこれはベタベタすぎて読者が引かない?」
荻上「いえ!読者は王道をこそ求めているじゃないですか!この主人公たちの二人きりの場面はこうなって当たり前という黄金のパターン!出せば必ずキャッチしてくれる!!王道です!!」
笹原「いや、でもこの場面からこんな展開は・・・荻上さんらしくないというか・・・」
荻上「ここはベタな内容をあえて避けるべきじゃないんです!むしろ逃げちゃいけないんです!」
笹原「せっかくの荻上さんのデビュー作だし、なにも最初から読者に迎合した内容じゃ無くても・・・っていうか荻上さん?何で顔が真っ赤なの?これって漫画のネームの・・・えっえっ?」
荻上「でっですから、こう・・・人間の心の奥底で忘れたフリしている欲望とか願望とか、ドロドロたまっているものを・・・ブワーーーッっと開放してあげるのも必要だとおっ思うんです!」
- 51 :笹荻パロディ
:2005/10/11(火) 20:18:04 ID:???
- 笹原「あっあのー、ネームの話じゃなくて、荻上さん?えっ?俺たちの・・・」
荻上「だっだからですね!自分の中の本音の部分にフタをしちゃいけなかったんです!それを開けて・・・人間本来持つエネルギッシュなパワーをドバーーーと全開に開放しなきゃダメなんです!!ここは読者を裏切っちゃいけないんです!!」(赤面全開)
笹原「そそそそそのとおりだよ、荻上さん!!読者を裏切っちゃいけないよね!!俺たち編集者と漫画家は!!」(赤面全開)
笹原「荻上さん!!」
荻上「笹原さん!!」
- 52 :笹荻パロディ
:2005/10/11(火) 20:18:38 ID:???
- 朽木「クッチーだにょー」(部室に入る)
笹原・荻上「!」(慌てて離れる)
笹原「やっやあ、朽木君・・・こんにちは」
荻上「・・・・(怒)」
朽木「?」
笹原・荻上「(ベタベタだー)」
了
- 53 :マロン名無しさん
:2005/10/11(火) 21:58:05 ID:???
- >>50-52
絶対、オギーの声裏返ってるはず。きっと必死だったんだなぁと
思わせる展開ですな。
しかし、何故に部室?
- 54 :マロン名無しさん
:2005/10/11(火) 22:23:42 ID:???
- >>50-52
やべぇw 面白いww
顔を真っ赤にして興奮して喋る荻を想像すると可愛すぎw
なんだっけこれ?吼えろペンだっけ?
- 55 :笹萩パロディ
:2005/10/11(火) 23:07:15 ID:???
- >>53
部室を舞台にするのは不自然と思いつつも、やはりクライマックスで邪魔が入ると
いう黄金のベタの役割はやはりクッチー以外にいないと思っただけです・・・。
となれば部室が彼の登場が一番自然な舞台っすしねー。咲の秘密も・・・。
>>54
元ネタはご推察の通りです。
ドモです。
- 56 :マロン名無しさん
:2005/10/11(火) 23:57:20 ID:???
- >>50-52
オモロw 暴走する荻上がヤケにはまってたな 絶対有り得ないシチュだけどw GJ
確か7巻だったかな チンプンカンプンだった人はブクオフかどっかで探してみるが吉
- 57 :マロン名無しさん
:2005/10/12(水) 00:23:30 ID:???
- やっぱオチはクッチーだな。
- 58 :マロン名無しさん
:2005/10/12(水) 00:45:21 ID:???
- 無人島の話でしたか。
6巻だっけ?
- 59 :マロン名無しさん
:2005/10/12(水) 15:58:13 ID:???
- クッチーには春は来ないのか・・・。
- 60 :マロン名無しさん
:2005/10/12(水) 16:52:13 ID:???
- クッチーは妖精王になる男だ
- 61 :マロン名無しさん
:2005/10/12(水) 18:45:45 ID:???
- 多分クッチーは最終回に、托鉢僧の格好で修行の旅に出ると思う。
いや、深い意味は無いんだが・・・
- 62 :マロン名無しさん
:2005/10/12(水) 20:44:28 ID:???
- >>49
キャラ脱線も、しっかりパロになってるのでこれは面白いよ!
絵で想像するとかなり笑えるww
こういうのは本スレでは読みたいとは思わなかったけど、
ここで読むとすげー楽しいなぁ〜
もっとぶっ飛んだ展開のでも結構楽しめそうだ。
- 63 :マロン名無しさん
:2005/10/13(木) 00:36:37 ID:???
- >>62
>こういうのは本スレでは読みたいとは思わなかったけど、
>ここで読むとすげー楽しいなぁ〜
俺が書いた訳じゃないが そういう風に言ってくれる人がいるとは
スレが立った甲斐がありましたな
- 64 :マロン名無しさん
:2005/10/13(木) 00:57:08 ID:???
- 本スレはねー。あれがもっと過疎ってて人も書き込みも少ないんならともかく、
今は考察と感想だけでも結構な量と速さじゃない。
そこにこういう作品的なものを投下されても正直読むのが辛かったんだよね。
- 65 :げんしけんの謎
:2005/10/13(木) 02:10:58 ID:???
- 増長です。暴走です。「俺は、俺はやっちまったのか・・・」という遊びです。
ごめんなさい。もうしません。流して!ていうかこんな時間だよ・・・。
- 66 :げんしけんの謎
:2005/10/13(木) 02:12:28 ID:???
- 第一幕 登場人物 笹原 斑目 咲 大野 荻上 舞台 部室
笹原・斑目「ちーす」
咲 「お前ら、遅いぞ。部室の年末大掃除終わっちまったぞ。」
斑目「悪い、悪い。で聞いたんだけど初代会長の遺物見つかったんだって?」
大野「そうなんですよ。咲さんたら『自分か来るまで開けるな』って言って・・・」
咲 「いや、だって盗聴テープとかカメラだったらまずいし・・・」
斑目「はっ?」
咲 「イヤイヤ、こっちの話・・・。ただのガラクタだったし・・・。」
笹原「何だったんですか?結局初代会長も謎の多い人でしたよね。」
咲 「これよ、これ」(机の上の石の破片を指差す)
- 67 :マロン名無しさん
:2005/10/13(木) 02:12:38 ID:???
- じゃあ、俺もいっちょ投下するか。
シリアスもので笑いはない。
ああ、笑いなんてないんだスマン。
ギャグ嗜好の人は読まんほうがいいかも。
状況的には夏コミ後、人の少ない現視研にて。
笹原が就職決まる少し前。
今月号における荻がなぜ赤面緊張していたのかの疑問を
自分なりの答えにしてみた内容です。
- 68 :げんしけんの謎
:2005/10/13(木) 02:14:23 ID:???
- 笹原「何?これ」
咲 「いや、最初は民芸品の石の仮面でインテリアに使えると思って机に置いてたらさー。大野がドジってカッターで指切っちゃって!!血が仮面に飛び散った途端!!針が仮面から飛び出して床に落っこちゃってガチャーンと・・・。んでこれ・・・。」
笹原・斑目「・・・・・・」
斑目「こっこれの他には何も無かったの?」
咲 「ガラクタだって。古い土器みたいな矢じりとか・・・。あと英語で書かれた古いノートとかあったよなー。大野」
大野「ええ。でもブリティッシュイングリッシュで書かれた『天国』とか『カブトムシ』とか『ドロローサ』とか訳の分からない言葉ばかりの雑記帳でしたよ。表紙にはかすれた文字でD・I・・・とか書かれてましたね。」
笹原・斑目「・・・・・・(滝汗)」
笹原「そっそれは今どこに・・・」
咲 「だから捨てたって。矢じりは危ないから平たい箱に入れて、ノートと一緒に、お前らがため込んでたエロアニメ雑誌に挟んで縛って、ポーンと燃えるごみに・・・。って血相変えて我先に何飛び出してってんだ!!おーいキミタチ?」
- 69 :マロン名無しさん
:2005/10/13(木) 02:14:36 ID:???
- あ、ごめん。投下中とは気付かなかった。先にやっちゃってください。
- 70 :げんしけんの謎
:2005/10/13(木) 02:15:03 ID:???
- 第二幕 登場人物 笹原 斑目 咲 大野 荻上 舞台 部室
(ゼエゼエと息を切らして机につっぷす笹原と斑目)
咲 「もう回収されて捨てられてるって言う前に飛び出すから・・・」
笹原「・・・初代会長の冗談ですよね。あの人そういう事しそうだし・・・。」
斑目「いやあの人だけは分からん!!」
咲 「お前ら何ごちゃごちゃ言ってんだ?ってか、荻上―。さっきから何眉間にしわ寄せて考え込んでんだー?」
荻上「いや、あの矢じりなんですけど、昔どこかで見たような気がするんですよね。」
咲 「どうせお前のど田舎村の古墳遺跡の土産かなんかだろ。」
荻上「失礼ですね!これでも東北じゃ大きい町なんですよ。まあ、昔テレビで行方不明者日本一という不名誉な特集組まれたことありましたけど・・・。杜・・」
斑目「わーわー!!そっその先は頼むから言わないで!!」
荻上「あっ!!思い出した!!何で忘れてたんだろ!!」
笹原「それはどんな・・・」
- 71 :げんしけんの謎
:2005/10/13(木) 02:16:49 ID:???
- 荻上「中学の頃の変な夢なんですけど、弓と矢を持った高校生が私に矢を打ち込むんです。そしてこう言うんです。『おめでとう。君は矢に選ばれた。君の能力は《さからうことの出来ぬ運命》によって出会った者によって目覚めることになるだろう。』その時の矢にそっくり!!」
大野「ホー、ホー。意味深な夢ですねー。その高校生が荻上さんの初恋の人ですか?恋のキューピットの矢みたいですねー。」
荻上「ちッ違います!!何馬鹿な事言ってんですか!!」(赤面)
咲 「ヒューヒュー」
(女性陣がキャッキャと騒ぎ立てる)
笹原「・・・荻上さん・・・。以前、荻上さんの同人誌ちらっと見ちゃったけど・・・やっぱり呪われちゃうのかな・・・。(しゃ射程距離は?無限?)」
荻上(顔を赤らめてプイッと横を向き)「呪われちゃいます!!」
笹原「・・・・(滝汗)」
第一部完 第二部は続くか分からない・・・たぶん続かない。
- 72 :げんしけんの謎
:2005/10/13(木) 02:17:40 ID:???
- あら、こちらこそゴメン
- 73 :マロン名無しさん
:2005/10/13(木) 02:18:55 ID:???
- …微妙だ。
別にJOJOネタでもいいんだけどせめてオチが欲しかった。
- 74 :マロン名無しさん
:2005/10/13(木) 02:20:59 ID:???
- JOJO読んでたけど・・・。意味がよく・・・。
- 75 :67 :2005/10/13(木) 02:22:32 ID:???
- では、そろそろ投下してよろしいかの。
まあ、シリアスものなんで、笑いは求めないで・・・。
- 76 :一人ぼっちの現視研(1/13)
:2005/10/13(木) 02:23:33 ID:???
- コンコン。
荻上は部室に入るときいつもノックをしている。
ガチャ。
「・・・・だれもいないか・・・。」
最近、こんな日が多い。
「仕方がないといえばそうなんだけど、大野先輩もいないのか。
・・・・上野かな?」
そうか、と思い当たる。今日は火曜日。大野は午前のみの授業なのだ。
とりあえず、しんとした部室の中に入って荷物を置く。
狭いはずの部室が、一人だととても広く感じられる。
「・・・・別にいいか。誰かいたからってなにかあるわけじゃないし。」
落書き帳を広げて、いつものように絵を描く。
お気に入りのキャラを納得がいくまで描き込むのが荻上の絵を描くときの楽しみ方だ。
最近のお気に入りは、某ロボットアニメ主役の親友。
笑顔、怒りの顔、悲しみの顔。
横顔、うつむいた顔、振り向いた顔。
「・・・・・。」
黙々と書き続ける。
カリカリ・・・・。ゴシゴシ・・・・。カリカリ・・・・。
- 77 :一人ぼっちの現視研(2/13)
:2005/10/13(木) 02:25:38 ID:???
- 一時間も経っただろうか。
「ふう。」
ふと時計を見、少し、驚く。
(この時間でも誰も来ないのか・・・。)
いつもなら、大野か咲がやってきて賑やかに会話する。
二人は荻上をよくおちょくる。会話のテーマに対しての意見を聞く。
それについて子供っぽい意見をかえす荻上を笑ったりからかったり。
「・・・ないとないで・・・・。」
(寂しい?そんな・・・。)
そう思った自分がとてもらしくないと感じて。
「でも、あるはずのもんがないと、やっぱ寂しいよなあ・・・。」
少し笑って、考える。
(自分は、何でここにいるんだろう?)
(別に絵を書くならここにいなくたって。)
そう思うけど、ついここに来ている。
誰かいるかなって思って、来る。
- 78 :一人ぼっちの現視研(3/13)
:2005/10/13(木) 02:26:57 ID:???
- 「なんで、私は・・・・。」
荻上は、知らず知らずのうちに大きな存在になっていたこの空間に気付く。
斑目達がいなくなって、人がいないことが多くなった。
大野は一番いるが、時間があるときは上野へ行ってしまう。
咲はお店のことで大変なようで、たまにしか来なくなった。
高坂はゲーム会社に缶詰で顔すら見ていない。
笹原は、就職活動で大変そうだ。
「みんな忙しそうだあ。しょうがないよな・・・。」
荻上にとって、ここは唯一の人との接点だ。
性格もあって普通の人にも、あれな人の中にも友達はいない。
荻上に関わってくる人がいるのはここだけなのだ。
いつの間にか、迷惑と思ってた彼らの言動を、求めていた自分がいた。
- 79 :一人ぼっちの現視研(4/13)
:2005/10/13(木) 02:28:10 ID:???
- ポタ、ポタ。
描いていたキャラクターがぼやける。
「あれ?なんで・・・・。」
寂しさのためだろうか、自分が情けなくなってきたのだろうか。
本人にもわからないのだろうけど、泣いていた。
「うぇ・・・。ヒック、ヒック。ええぇぇ・・・・。」
止め処がなくなってきて、堪え切れなくて声を上げて泣いた。
五分ぐらいたっただろうか。少し収まってきた。
「・・・・弱いまんまだ。あの頃となあんも変わってねえ。」
中学時代のいやな思い出。一人で強くなろうと上京した日。
自分を変えようと頑張ってきたはずなのに。
「・・・こんなんじゃあ、駄目だぁ。一人でも生きてけるようにしなきゃあ・・・。」
きっ、といつもの表情に戻って心を立て直そうとする。
「・・・そろそろ帰んべぇ・・・。」
- 80 :一人ぼっちの現視研(5/13)
:2005/10/13(木) 02:29:28 ID:???
- その時。
ガチャ。
扉の開く音にはっとする。
「あ、荻上さんだったのか。」
笹原だ。いつのも柔らかな笑顔をたたえてはいるが、疲れは隠せない。
スーツの上着を脱いで、ふらふらと入ってきて座る。
「せ、先輩!どうしたんですか。」
荻上はさっきまで泣いてたことを悟られないかと、ひやひやしている。
「いやー、明日二次面接なんだけどね。時間が出来たから少しよろうかと。」
「そうなんですか。」
なるべく平静を装って。さっきまでのことがばれないように話す荻上。
「まあ、大学でのすべてはここだったからね。願掛けみたいなものかな?」
「それにしては今までは不発だったようですけど・・・。」
- 81 :一人ぼっちの現視研(6/13)
:2005/10/13(木) 02:30:44 ID:???
- 「あはは、そうね・・・。」
乾いた笑いをする笹原。しまった。そう思う荻上。
いま必死にやってる人に言ってはいけない事を言ってしまった。
「す、すいません、無神経なこといってしまって・・・・。」
「ん、ああ、いいよ。事実だし。」
少しの沈黙。
「・・・今度も同じ業種ですか?」
「んー、まあ、似たようなものかな。結果が出たら教えるよ。」
「はい。でも、まだあるんですね、募集。」
「うん、なんか新聞に載っててね。まあ、受けてみようかと。」
「そうですか・・・。頑張ってください。」
「うん。」
笑顔で応援に答える笹原。
先輩、頑張ってるんだな。そう思って、少し励まされた気分になった。
- 82 :一人ぼっちの現視研(7/13)
:2005/10/13(木) 02:32:25 ID:???
- 「それにしても早い三年半だったなあ。」
笹原はんーっと背伸びをしてぼんやりと回りを見渡す。
「こんなサークル入るなんて思ってなかったしなあ。」
「そうなんですか?はじめからこういうところ入ろうと思ってたんじゃないんですか?」
荻上にとって意外だった。
笹原は他の先輩達に比べるとめちゃくちゃ濃いわけではないが立派なオタクだ。
「入ろうとは思ってたけど、俺隠れオタだったしねえ。」
「え?隠れオタですか?」
「そうそう、高校の頃は自分隠してて本当の友達なんて出来なかったし。」
「え・・・・?」
- 83 :一人ぼっちの現視研(8/13)
:2005/10/13(木) 02:33:46 ID:???
- 「俺大学デビューっていうのかな?ここ入るきっかけですらドッキリだったからねえ。」
「毎年恒例って言う・・・。」
「あれで自分が興味があること看破されなかったら今も同じだったかもね。」
(あ、そうか、だから先輩は私に優しいんだ。)
荻上が自分と似た境遇であることを気付いていた笹原。
この難儀な後輩のことを常に気遣っていたのである。
「いやー、一回覚悟決めると後はまあ、知ってのとおり。堕ちるところまでって感じ。」
笹原はあはは、と笑う。
「でも後悔はしてないよ。この大学生活が終わることが寂しくてたまらないんだ。」
就職で必死になっている間に思い出していた今までの生活。
笹原はぼんやりと周りを見渡す。
- 84 :一人ぼっちの現視研(9/13)
:2005/10/13(木) 02:34:58 ID:???
- 「本当、色々ありました。」
笑みを浮かべ、懐かしむようにつぶやく。
そのまま、机に突っ伏して、顔を組んだ腕の中にうずめる。
「先輩・・・・?」
すー。すー。
そのまま寝入ってしまったらしい。
「疲れてるんだなあ。」
泣き止んだ頃に帰ろうかと思っていた荻上は、
「先輩をほっといて帰るわけにも行かないし・・・。
いや、そうじゃない。きっと私はここにいたいんだ・・・。」
先輩がいっしょにいる空間。
もう、そう長くあるわけではないこの空間にいられるから。
(寝ててもいい。少しでもいっしょに・・・)
(やっぱ私は弱いのかな?でも、それでも・・・。)
(少し疲れちゃったなあ・・・。)
そう思うと荻上も机に突っ伏して、いっしょに寝入ってしまった。
- 85 :一人ぼっちの現視研(10/13)
:2005/10/13(木) 02:36:07 ID:???
- 「・・・うえさん、荻上さん。」
声をかけれられて目を覚ますと、笹原が微笑みながら起こしてくれていた。
「・・・はっ、すいません。私寝入っちゃったみたいで・・・。」
「いやいや、お互い様だよ。俺が先に寝ちゃったからねえ。」
あはは、といつもの笑い方をする。
「あ、もうこんな時間。先輩、帰らなくてよかったんですか?」
「ああ、別に明日まではどこにいても。荻上さんが起きたら帰ろうかなって思ってたけど。」
「す、すいません・・・。」
「だからいいって。・・・・いいもの見れたしね。」
「え?」
「いや、いや、なんでもないよ・・・。あはは・・・。」
(いえないよなあ・・・。寝顔を見てたなんて・・・。)
「そうですか・・・。じゃ、帰りましょうか。」
「うん、そうしよっか。」
- 86 :一人ぼっちの現視研(11/13)
:2005/10/13(木) 02:37:38 ID:???
- 荻上は手早く荷物をまとめると、すくっと立ち上がる。
笹原も荷物を持つ。
「あ、荻上さん。」
「なんですか?」
「なにかあったら相談してね。頼りない先輩かもしれないけど、話聞く位なら出来るから。」
「え・・・。なんで、急にそんな事言うんですか。」
「いや、大したことじゃないんだけどね・・・。最近、これないからさ。なにかあっても、わからないし。」
「・・・・大丈夫ですよ、私そんなに弱くないですから。」
「そっか。ならいんだけどね。あはは。」
つっけんどんな荻上の答えに、いつものように、笹原は笑う。
- 87 :一人ぼっちの現視研(12/13)
:2005/10/13(木) 02:39:06 ID:???
- (先輩、泣いてたの気付いてた?・・・でも、突っ込んで聞いてこないなあ・・・。)
それが彼の優しさである事にとうに気付いている。
「・・・でも、一人で手に負えないときは・・・お願いします・・・。」
「ん?ああ、まかせてよ。頼りにならないかもしれないけど。」
「いえ・・・、そんな事ないですよ・・・。」
(きっとそう。私が困っているときに一番頼りにするのはこの人なんだろうなあ。)
(誰よりも、この人に会いたかったのかな、私は・・・。)
自分の中で新しい感情が目覚めていることにはとうに気付いていた。
(先輩が就職が決まったら・・・。この想い、いってみるのもいいかな・・・?)
今はきっと言っちゃいけないから。
(でも先輩、就職決まるんだべかぁ?)
- 88 :一人ぼっちの現視研(13/13)
:2005/10/13(木) 02:40:16 ID:???
- 「荻上さん?」
「え、あ、はい!」
「なにか考え事?」
少し笑って、訊ねてくる笹原。
「い、いえ、なんでもありません。就活、頑張ってくださいね。」
荻上は考えを読まれてしまった気がして、真っ赤になってうつむいて答える。
「うん、そうだね。頑張るよ。いろいろ、あるしね。」
「いろいろ?」
「あ、あ、なんでもないよ。さあ、帰ろうか。」
笹原はあわてて扉のほうに向かう。
(いろいろ・・・?考えても仕方ないか・・・。)
荻上も後ろについていく。
ガチャ。
バタン。
- 89 :一人ぼっちの現視研(オマケ)
:2005/10/13(木) 02:41:23 ID:???
- 帰り道にて。
「そういえば、今日は他に誰も来なかったねえ。」
「そうですね。大野先輩は午前のみだからきっと上野だし。」
「春日部さんと高坂君も忙しそうだしねえ。・・・・朽木君は?」
「あ!」(わすれてたあ・・・。)
- 90 :マロン名無しさん
:2005/10/13(木) 02:46:09 ID:???
- >>78
正統派の外伝って感じだ〜。同人誌で読みたいかも。
>
大野は一番いるが、時間があるときは上野へ行ってしまう。
> 咲はお店のことで大変なようで、たまにしか来なくなった。
>
高坂はゲーム会社に缶詰で顔すら見ていない。
> 笹原は、就職活動で大変そうだ。
クッチーはカウントすらされないのかw
と思ってたらしっかりオチに >>89
- 91 :げんしけんの謎
:2005/10/13(木) 02:56:29 ID:???
- やはり無謀な試みであったか。
ひとりぼっちのげんしけんかー。切ない!笹原たち卒業後の荻上が心配です。
- 92 :マロン名無しさん
:2005/10/13(木) 03:24:04 ID:???
- これはなかなか。描かれてない一日にはこんな日もあったんだろうなと。
うまく行間を埋めるSSだと思う。
- 93 :マロン名無しさん
:2005/10/13(木) 07:31:16 ID:???
- >>76-89
乙&GJ
前に荻スレ4に「合宿の夜に」書いた人かな?作風が非常に似てる希ガス
違ってたらスマソ
しっとりした感じでいいSSだとおも。
こういう地味(って言ったら悪いけど)な話を一話丸々オギー視点で描いた
原作も見てみたいなぁ。
- 94 :マロン名無しさん
:2005/10/13(木) 08:19:13 ID:???
- 感想、ありがとうございます。
>>90
その部分ははじめ朽木のことも入れてたんですが、
オチにしようと思って変えました。
正直な話、漫画で同人誌にしたいんですが、絵心がなく・・・orz
>>91
卒業後を考えると切ないですよね。その切ない感じの荻上を表現したくて書きました。
>>92
月一リアルタイム進行の漫画だけに語られない部分が多く、
妄想の余地があって面白いですよね。
今度は行間を埋める感じで現視研全体のギャグタッチなものを書いてみたいです。
>>93
あたりです(o^-^o)。作風ってばれるもんなんですねえ。
別に隠すつもりではなかったんですがw
原作でこんな話があったら切なくて死んじゃいそうですな・・・。
- 95 :マロン名無しさん
:2005/10/13(木) 20:32:03 ID:???
- >>91
安心しなさい。
クッチーが留年して一緒に卒業してくれるから。
- 96 :マロン名無しさん
:2005/10/13(木) 22:27:30 ID:???
- 笹原「あのさ荻原さん・・・別に、話しても構わないならでいいんだけど、
コミフェスであの『中学の友達』と会った後、なんか様子がおかしかったよね。
なにか・・・あったの?」
沈黙する荻上だったが、意を決したように話し始めた。
荻「昔・・・私の周りに、同じ趣味の人がいなかったんです。だから、中学で彼女たちと
仲間になれたのがうれしくて・・・しらないうちに、彼女たちに依存するようになった
んです。あの子達のいうことに逆らえなくて・・・
あの子、お金の使い方が結構乱暴で、中学時代からお金を借りたり、学校に内緒で
バイトしたりしてたんです。それでも足りなくて・・・・私に・・・・」
笹「・・・・? なにかしたの?無理やりお金を借りたりとか?」
ふたたび、沈黙があった。そしてその後
荻「彼女は、同じクラスの男子たちからお金を集めたんです」
笹「どうやって?」
荻「私の・・・・・・ストリップ見物料。」
荻上は、トラウマとして封印していた、おぞましい記憶を語り始めた。
- 97 :マロン名無しさん
:2005/10/13(木) 22:36:50 ID:???
- BJ!回線切って(略
- 98 :マロン名無しさん
:2005/10/13(木) 22:37:19 ID:???
- 荻原?
- 99 :マロン名無しさん
:2005/10/13(木) 22:43:37 ID:???
- 気持ち悪い・・・・。
- 100 :マロン名無しさん
:2005/10/13(木) 22:44:12 ID:???
- もう、教師はだれもいなくなっている。
午後8時半、いったん授業や部活を終え、帰っていったはずの生徒たちが、
途中できびすを返してこっそり再度集まった。男子は、どちらかというと不良と
言ってもいい連中。その数は、10人を少し超えているぐらいだった。
「おい、ちゃんと来るんだろうな」
「お前、金とっといて駄目とかいうなよな。その時はお前が責任とってもらうぞ」
「だーいじょぶよ、あいつ私のいうこと絶対に逆らえないんだから。・・・ほらほら、来たじゃない」
荻上は、あらかじめ少しばかり話を聞いていたらしい。恐怖と不安の色が、目に宿っていた。
「・・・・・・」
音を立てないように拍手する男子たち
「おーおー、マジで来たよ」
「荻上、かなりいいっすねーー。俺、前から目ぇつけてたんだよ」
「ふつーはめだたねえけど、こうやって見っとすごくエロくね?」
「やばいヤバイ、」
「俺、もう少しオッパイでけえほうがいいんだけどな」
「おい、もう始めろよ」
荻上の”親友”は、わざとらしく手を合わせた
「今回まじピンチでさ。荻お願い、さっき言ってっしょ。ほんのちょっとで
いんだから。みんなクチ固いし、絶対だれにもバレないって」
荻「ほんとに、これ一回だけっしょ?もうヤだよ」
荻上は、泣きそうな顔で自分のスカートに手をかけた。
- 101 :マロン名無しさん
:2005/10/13(木) 22:54:59 ID:???
- >>95
荻上「それはそれで一人より何か嫌です」
>>96
健全SSだよ ここは 内容規制は無いけど・・・。
予想はしてたけど不可避かこういう投稿も。
- 102 :マロン名無しさん
:2005/10/13(木) 23:00:05 ID:???
- エロパロでやれ
- 103 :マロン名無しさん
:2005/10/13(木) 23:18:49 ID:???
- 注意書きとりンクをよく見ていなかったスマソ。
ここで中止する
- 104 :マロン名無しさん
:2005/10/13(木) 23:42:19 ID:???
- 何だか最近投稿が活発になってきていいですね。自分も書いてみたので投稿させて下さい。
メインは笹原と恵子です。
本スレにあった、
●笹と恵子は以前かなり仲良かったのでは
●恵子ってじつは実兄のこと信じまくり
●恵子の幼稚な恋愛ごっこに興じてる人種→
げんしけんメンバーに出会って大人になる推移に萌え
という考察から妄想して書いた為、恋愛とか抜きの地味〜な話に
なりましたが…少しでも楽しめれば幸いに存じます。
- 105 :笹原兄妹 1
:2005/10/13(木) 23:43:41 ID:???
- 「また落ちた…」
不採用の通知を見ながら、笹原は溜息を吐いた。
今月になって何回目の溜息になるだろうか。
どっと脱力感が押し寄せ、そのまま惰性でベッドに倒れこんだ。
就職活動の過酷さは一つ上の先輩達を見て知っているつもりだったが、
ここまで決まらないとなると、自分があまりにちっぽけな存在に思えてくる。
大学で4年間学んできたとはいえ、実社会においてはたいして役に立たないことばかりだ。
かといえ、目に見える形で何かしらアピール出来る能力など、自分は全く持ち合わせてはいない。
こんな自分を採用してくれる企業がどこにあるのか…考えれば考えるほど泥沼に嵌ってしまう。
こうなっては何も考えられない。いやむしろ考えないにつきる。
こんな時は誰にも会いたくないものだ。
笹原はベッドへ沈み込むように身を任せ、そのまま眠りにつこうとしていた。
"ピンポーン"
そしてそんな時に限って招かれざる客は訪れる。
寸での所で眠りから覚まされた笹原はベッドから重い腰を持ち上げ、
半分も開かない目で玄関へ向かった。
"ピンポンピンポン"
その間にも呼び鈴は容赦なく鳴り続ける。
就活から出た苛立ちがふつふつと大きくなってくるのが自分でも解った。
今ならどんな押し売りでもNHKの集金でも追い返せる気がする。
ドアの向こう側を睨み付けながら、笹原はゆっくりとドアを開けた。
「どなたです、か…」
徐々に鮮明になっていく視界に映ったのは、見覚えのあるヤマンバの姿だった。
「うぃーす」
笹原はすかさずドアを閉めた。
- 106 :笹原兄妹 2
:2005/10/13(木) 23:44:30 ID:???
- "ドンドンドンドンドンドン"
間もなくドアを連打する音が鳴り始めた。
「ムカツク〜 開けろサル〜」
今が夜であることなどお構いなしにけたたましい声で、相手は叫び続けている。
ドアの音は一向に鳴り止む様子もなく、こうなったらもう中に入れるしかない。
「うるせぇ!!」
「あ、開いた」
恵子は何の悪びれもない様子で言いながら、部屋に入り込んできた。
「声でけーんだよ!近所迷惑考えろ、ったく」
「何それ、ちょ〜感じわる〜い」
明らかな悪態をつく兄に文句を言いつつ、恵子は早くも部屋でくつろぎ始めていた。
恵子が椎応大近くの専門学校に入学してからというもの、
さも当然のように妹が部屋に入り込んでくることが多くなった。
別に寝床を貸す位なら大した問題では無いのだが
何の断りもなく抜き打ちでやってくるのだけは勘弁してもらいたい、と
笹原は頭を悩ませていた。
特に今日のような誰とも会いたく無い日はなおさらだ。
洗面所で化粧を落とす恵子に対し、当たるように話しかけた。
「大体来るなら連絡しとけって何度も言ってんだろ」
「え?今日はアニキんちに泊まるってちゃんと連絡したよ」
「え、マジで」
「実家に」
「俺に連絡来るのが先だろバカ!!」
- 107 :笹原兄妹 3
:2005/10/13(木) 23:46:03 ID:???
- 「何そんなピリピリしてんのさっきから〜」
服を脱ぎ寝巻きに着替えながら恵子が言う。兄妹の前では下着姿になろうがお構いなし。
気にする様子も無く睨み付けながら、笹原は吐き捨てるように返した。
「うっせーよ」
「ほらまた『ウッセーヨ』」
「…早よ寝ろ」
「『ハヨネロ』」
「……ッ!!」
いつもなら軽く流せる子供じみたリアクションにすら、本気で腹が立ってしまう。
苛立ちが頂点に達した笹原は、その場にあった台拭きを思い切り相手の顔に向かって投げつけた。
もっとも、ヒョイっと難なく恵子にかわされるだけだったが。
ヒッヒッヒ、と、自分と似ている顔が薄ら笑うのを見て、余計苛立ちが募る。
- 108 :笹原兄妹 4
:2005/10/13(木) 23:46:28 ID:???
- 〜〜〜〜
一方、恵子は兄に気を遣う様子など微塵もなく、そのまま思っていることを口にした。
「あ…もしかして就活まだ決まってないの?」
ピクッと笹原の動きが止まる。
「大変だね〜…っふぁ…」
恵子は大きな欠伸をしながら、態度と裏腹なセリフを口にした。
兄は次の瞬間、空の1000ml紙パックで思いきり恵子の頭を引っぱたいた。
「イタッ…大変だねっていってんじゃん!!バカザル…」
(うっ)
無言で自分を睨み付ける兄をみて、恵子は言葉を止めた。
こういう場合は黙って引き下がった方がいいと長年の勘が告げる。
数秒の沈黙の後、笹原はベッドに戻った。
「ったく八つ当たりやめてよね…サイアク〜」
ベッドに横たわる兄の背中に向かい、恵子は小声で呟いた。
「恵子」
ギク。もしや今の一言が聞こえたか、と思いながら振り返ると
何時にない真顔でこっちを見る兄の姿があった。
「…お前ちゃんと学校行ってんのか?」
- 109 :笹原兄妹 5
:2005/10/13(木) 23:47:35 ID:???
- 「だいたい小学校の時、夏休みの宿題全部兄貴に手伝ってもらう程
勉強嫌いだったお前が続くはずねーだろ」
「…何時の話してんの?行くときは行ってるよちゃんと」
「…その言い方だと行かねー時は行ってねえんじゃねえか」
「……だってぇ どっちいしぃ」
「…………」
「それにお前やりたいこととかちゃんと考えてんのか?」
「あるに決まってんじゃん、遊び行ったりー買い物行ったりー」
「仕事の話だボケ」
「んなこと言ったらアニキだって大学行くとき考えてたのかよ」
「考えてなかったから言ってんだろがよ」
「自分のこと棚にあげといてさ〜?」
「それに大学と専門学校じゃまた違うぞ? …会計なんかこれっぽっちもヤル気ねえだろ」
「だって大学入れなかったんだもんしょーが無いじゃん」
- 110 :笹原兄妹 6
:2005/10/13(木) 23:47:59 ID:???
- 「…お前大変だなって人事のように言ってるけどな、明日は我が身だぞ?」
「…………」
「このままじゃ何処も雇ってくれんぞお前」
「大丈夫だって、その前にいい相手見つけるし〜」
「男しか頭にねーのかよ、お前は」
「童貞のアニキよかマシでしょ」
「…………ちっとは真剣に考えろよ …俺だって今頃になって出版社希望いったって、
何のとりえもないし、…正直こんなに苦労するとは思ってなかったよ」
「…………」
「内定の有る無しで自分が全否定されるんだぞ?解るか?」
「んー…解らん」
「…人のことバカザル言ってるけど、お前俺より頭悪いのにどうやって」
「バカにバカって言われたくないよねー」
「事実しゃーねーだろ、お前の場合専門だから本来そろそろ就活…」
「何だかアニキ、ますます偉そーになってきたんじゃない?ってゆーかー」
「おい、真面目な話…」
「あーあー、めんどい、もう寝るよ、オヤスミ」
「…………ったく」
- 111 :笹原兄妹 7
:2005/10/13(木) 23:48:35 ID:???
- 翌朝。
もぞもぞと布団から出る。
何回も二度寝を繰り返したせいか、時計はもう十時の針を回っていた。
いつもなら無理矢理兄に起こされる筈だ。どうやら部屋には自分一人だけの様だ。
辺りを見回すと、机の上に書置きが残されていた。
『愚妹へ
就活あるんで先に出る 出る時鍵はいつもの場所へ 布団はきちんと片付けること
昨日寝る前に言ってたこと もう少し真剣に考えてみろ でないと俺みたいになるぞ
どうせ暇で出かけんだったら 資格の参考書でも買って来い 絶対遊びに使うなよ』
「うげ…、アニキしつけ〜な…」
そう呟いたと同時に、昨晩の出来事――寝る前、自分をじっと見つめてきた兄の表情が脳裏に蘇った。
昨日は適当にあしらってしまったが、いつになく真面目な顔に戸惑いすら覚えた。
いままで兄のあんな表情は見たことがなかった。
「…そんなに就活って大変なのかねぇ…。……ん?」
兄のありがたいお言葉に目を通しながら、恵子はあるものに気が付く。
書置きと共に、重しの漫画に挟んであったのはヨレヨレの千円札3枚。
「…マジ?」
- 112 :マロン名無しさん
:2005/10/13(木) 23:53:01 ID:???
- …ちょっといざ書き込んで見たらとてつもない分量の
テキストになってしまいましたので一旦切らせて頂きます。
この後まだ展開があるんですがこのままじゃとても投稿できないので…。
- 113 :マロン名無しさん
:2005/10/14(金) 01:45:59 ID:???
- >>105−>>111
いいですね。会話が自然な流れでよどみない。兄妹仲も思春期を過ぎた兄妹のよそよそしさの無いきさくな仲のいい兄妹の会話。
最近、パロディに走って迷走している自分にはこういう正統派が癒される。俺も正統派また書いてみるかな。
本スレでは妹ネタに過剰に反応する人もいて読めなかったSSもここでは読めるし、SSスレ立ち上げて良かったと思います。
ここの住人に申すが、正統派、パロディ、ユーモア、ジャンルを問わず読みたいですね。
でも特に規制は無いけど低俗陰湿な内容は勘弁してほしいな。適切な良否の批評は是だが、批判、誹謗は慎みたいですね。
- 114 :113 :2005/10/14(金) 01:50:15 ID:???
- 失礼。なんか俺が立ち上げたみたいな書き込みの内容だった。
立ち上げ人に失礼であった。
- 115 :家出少女・荻上(1)
:2005/10/14(金) 02:24:58 ID:???
- なんか傑作揃いで気がひけるんですが、漏れも。
舞台は05年夏コミ三日目の前夜、新宿ってことで。
「キミキミィ、中学生でしょ?家出だね?」
<補導員>の腕章を巻いた初老の男が、いきなり荻上千佳の細い腕をつかんだ。
「は?!えええ!!ち、ちが……」
深夜1時の新宿駅東口。コミフェス最終日の待ち合わせ場所の漫画喫茶に向かう途中だった。
もう二〇歳近い女子大生なのに中学生に間違えられた屈辱感と、いきなり子供のように腕をつかまれたショックでまともな口が利けない荻上に、説教するかのように補導員が畳みかける。
「いくら夏休みだからって子供がこんな時間に盛り場をうろついちゃいけないよ。あのね、東京はとてもこわいところなんだよ。
薬とか売春とか、取り返しのつかないことになる子がたくさんいるんだ。キミくらいの歳の女の子を欲望の餌食にするようなクズ男がいっぱいいるところなんだ」
「わ、わたす、こう見えても大学二年です!椎応大学さ行ってます!(やば!訛りさ出ちまった)」
妙に慌てて、東北弁丸出しで主張する荻上を補導員は露骨な疑いの目で見た。
「大人をバカにしちゃいけないよ。東京にはそんなお国訛りの喋り方や垢抜けない服装の女子大生はいない。キミ、国は東北だろ?この季節の新宿や池袋や上野は、地方から家出してきた子がほんとうに多いんだ。
悪いことは言わない。今朝の始発でお父さんお母さんのところに帰りなさい。東京都には青少年健全育成条例というものがあってだね……」
「いい加減にして下さい!わたしは本当に椎応大の学生なんですっ!」
「じゃあ学生証は?連絡先は?」
「い、今は持ってねっす」
- 116 :家出少女・荻上(2)
:2005/10/14(金) 02:26:57 ID:???
- 学生証は部屋に置いた通学鞄の中だ。普段持ち歩いている携帯も中学時代の同級生から連絡が入ることが怖くて、電源を切って部屋に置いてきていた。笹原たちにも連絡できない状態だった。
「だいたいこんな時間にどこに行こうっての?」
「……サークル活動の一環として……出かけるところがあって……」
「嘘言っちゃいけないよ。こんな時間にサークル活動って、いったいどんなクラブなんだね?」
(コミフェス三日目に早朝から行列するだなんて、絶対言えないべさ……)
赤面して黙り込んだ荻上を見下ろした補導員は、勝ち誇ったように笑みを浮かべた。
(そんなに子供っぽく見えるんだべか。どうしよう。全然信じてくれないし。携帯置いてきたから笹原さんにも連絡できねえし)
「じゃあ行こうか。警察署の方でゆっくり考えて、お父さんお母さんに電話しよう。そうしたら今朝の始発で国に帰るんだよ」
補導員は荻上の腕をつかんで、力づくで連行しようとした。
慌てた荻上はアスファルトに両足を突っ張って、渾身の力で踏みとどまろうとした。しかし成人男子の腕力に較べて、彼女はあまりにも非力だった。体重も軽かった。
荻上は補導員にあっけなく引っ張られて、警察署に向かって歩き始めた。
引きずられながら、荻上は視線を落として呟いた。
「……帰りたくねっす……」
「え?なんだね?」
「……帰りたくねっす!東京から、現視研から離れたくねっす!国には帰りたくねっす!」
荻上は半ばパニックに陥っていた。前日会った中学時代の同級生にからんだ忘れたい記憶や、つらい思い出ばかりの故郷の風景が脳内でフラッシュバックしていた。
咲や大野や笹原のいる暖かく優しい空間から無理矢理引き離されて、あの暗く冷たい過去に引き戻されると思うと、荻上は自分でも驚くほどうろたえた。子供のようにポロポロ涙が出て、鼻まで詰まった。
外見からして幼い自分。無力な自分。いい歳してまともに身元の説明もできない自分。外側も中身も未熟な自分。そんな自分が情けなくて、さらに涙が出た。このままあの暗く冷たい中学時代に連れ戻されるのだと思った。
- 117 :家出少女・荻上(3)
:2005/10/14(金) 02:30:03 ID:???
- 「荻上さん……どうしたの?」
涙でにじんだ視界の向こうに、心配げな笹原が見えた。走ってきたらしく息をあらげていた。
「笹原さあん……」
泣き顔を見られるのが恥ずかしくて、顔をそむけた。
「補導!?ええ!?荻上さんが???ええとすいません。この子はうちの後輩なんですが……」
「後輩?この子中学生でしょ?キミは大学生?まさか出会い系とかじゃ無いだろうね?ロリコンは犯罪だよ」
初老の補導員と笹原の間で全然噛みあわない会話がはじまった。
そしてヘラヘラ笑いながらペコペコ頭を下げ、学生証を見せて一生懸命荻上の身元を保証する笹原の説明に納得したのか、補導員は笑顔で荻上に謝罪した。
「まさかほんとうに大学二年だとは思わなかったよ。失礼したね。でも堅気の女の子がこんな時間に出歩くなんて、どっちにしても感心しないことだな」
自分の失敗を棚に上げて偉そうに説教する初老の補導員。荻上は不機嫌な一礼だけでこたえた。
「あ、迎えに来てくれたみたいですね。じゃあ、この後輩の荻上はうちのサークルの方で責任をもって預かりますんで」
笹原は相変わらずヘラヘラペコペコと補導員に頭を下げた。
「ああ、あれがキミの言ってた大学サークルの……現代視聴覚文化研究会……?」
繁華街の向こうからやってくる白人女性が二人。黒髪ロングの女性が一人。どこか挙動不審な長身の男が二人。謎の大荷物を持ち、髪を束ねた男が一人。
深夜に集団徘徊しているそんな異常に怪しい集団に絶句し、白人女性の片割れの年齢にも疑問を感じながら、笹原の説明自体にはおかしなところはひとつもないため補導員は引くことにした。
「じゃあその子は責任をもってキミが預かるんだね」
「はい。責任をもって預かります」
夜の街に消える補導員。自分が涙を拭いている間にあっけなくトラブルを解決してしまった笹原。そんな笹原に完全におんぶに抱っこ状態で、子供のように扱われている自分が恥ずかしくて、荻上は怒ったように言った。
「あの……中学生と間違えられて補導されかけたことは大野先輩に……」
「あ、それは言ってないよ。安心して荻上さん」
「はい……また大野先輩や咲さんや恵子さんにしつこくからかわれるのはいやですから……」
自嘲のように笑う荻上に、笹原は優しい微笑みを返した。荻上はなぜかドキリとした。
- 118 :家出少女・荻上(4)
:2005/10/14(金) 02:32:02 ID:???
- 「おーい。笹原ぁ、何だよ急に呼び出して?始発まで漫喫で時間潰す予定じゃ無かったの?」
「すいません斑目さん」
補導員から荻上を取り戻すため、漫画喫茶にいた現視研メンバーを携帯で呼び出したのだ。
みんなに迷惑をかけてしまったことで小さくなる荻上だが、大野のセクハラ発言が元のペースに戻した。
「あら?わたしはてっきり笹原さんと荻上さんは、このまま新宿でご・宿・泊!するものとばかり思ってましたけど?をほほほほ」
「やめてくださいよ大野先輩!」
「ポン(笹原の肩を叩く田中)」
「ええと、実は始発までカラオケ大会でもどうでしょ?ってことで、みなさんを呼び出したんですけど」
汗をかきかき、笹原は提案した。
「お、カラオケ、いいねー」
「小生は無駄なエネルギーは使いたくないのでアリマス!」
「悪くないと思うけど、女性陣のご意見はどう?曜湖さん?」
「わたしは賛成ですけど、アンジェラとスーにも聞いてみますね。Angela,
Sue, Wanna try Karaoke 'till mornin? How about that?」
「Karaoke! Hell
Yeah!」
「Great idea! Way to go!」
「二人とも大賛成だそうです」
「じゃあ行きましょうか」
「笹原なに歌うの?」
「えーと、何にしましょうね」
連れ立ってゾロゾロ歩く現視研一行。その一番後ろにくっつきながら、荻上の大きな瞳は笹原の後ろ姿を追いかけていた。
(この人はどうして、わたしが困っている時や苦しんでいる時に、いつも助けに来てくれるんだろう?)
コミフェス会場では中学時代のトラウマに苦しめられている自分を支え、言葉の通じないスージー相手にパニックになっていた自分に助け舟を出し、今もこうして助けに来てくれる笹原。
そんな笹原の笑顔を思い出すとキラキラ輝いて見えて(そ、そんなわけ無いべさ!)と荻上は真っ赤になった顔を振るのだった。
笹原が、大野が、現視研のみんながいる優しく暖かい空間。その中にいる自分を、荻上は感じた。
コミフェス最後の夜が更けていった。
- 119 :マロン名無しさん
:2005/10/14(金) 02:50:53 ID:???
- >>115->>118
面白かった。中学生に間違われるとは・・・可哀想な荻上・・・。ロリに間違われるとは笹原・・・。
みんなに支えられ助けられる荻上が実にいとおしい。
方言が少し気になった。山形弁?東北弁の使用は実に難しい。
うまく使うと可愛らしいが、へたするとやぼったくなる。
「堅気の少女」うーむ、一時ぐらいで徘徊すると「堅気」でないのかと思えるが
頭固い補導員だったということで。
やべ、読みふけってるときり無い。もうこんな時間だ。
- 120 :マロン名無しさん
:2005/10/14(金) 03:27:30 ID:???
- >>115->>118
GJ&乙〜。
こんなことありそうだよねえ。
私は荻→笹へのフラグは常日頃のこんなことの積み重ねだとおもとります。
荻上かわいいよ荻上
- 121 :マロン名無しさん
:2005/10/14(金) 18:15:30 ID:???
- >>115-118
荻上かわいすぎだぜ
- 122 :マロン名無しさん
:2005/10/14(金) 21:07:41 ID:???
- 本スレでまだSS書いてる人もこっち来ればいいのにね
- 123 :マロン名無しさん
:2005/10/14(金) 21:47:19 ID:???
- だよね。っていうか「見られたい」人はやっぱり大所帯への投下の誘惑から逃れられないんだろうなー。
- 124 :マロン名無しさん
:2005/10/14(金) 21:53:55 ID:???
- >>115-118
続編を考えた。
帰路のゆりかもめ
斑目「おう笹原、夏コミも終わったわけですが今日の戦果どーよ?」
笹原「はは、尼爪の会長本とか、まあ色々ですよー」
斑目「へー意外だなー。尼爪は絵は巧いけど、ヒンヌーにこだわりすぎだから会長本はださねーと思ってたよ」
笹原「斑目さん、今日は女性陣が多いんだから声大きすぎですって(笑汗)」
斑目「おおー!やっぱグラマーキャラ大好きな笹原クン的には尼爪の会長本は掘り出しもんだよねー」
笹原「嫌がらせデスカ?」
荻上(……まあたカイチョーかぁ。やっぱ笹原さんは、セクシーで大人っぽい女の人が好みなんかなぁ。
それなのにどうしてこんなにわたしに優しくしてくれるんだろ。なんだかんだ言って妹さんにも優しいし、妹が増えたみたいに思ってんのかなぁ。
そりゃ変な下心むき出しでウザい人よりは良いけど、なんだか胸が苦しいなぁ。どうしてだろう。なんでこんなに悲しくて腹が立つんだろ?」
斑目「やっぱ萌えるのは妹キャラだよなー!ツルペタ帝国万歳!」
荻上(ロリキャラが好きなオタクはこんな人ばっかりだし!ムカつく!ムーカーつーくー!)
笹原「はは。長い付き合いなんですから斑目さんの好みのツボはよーく知ってますって」
荻上(わたしの変な妄想をさっぴいても、笹原さんと斑目さんなんか仲良すぎ。ムカつく!ムーカーつーくー!)
- 125 :マロン名無しさん
:2005/10/14(金) 21:54:30 ID:???
- 斑目「どーせわかんねえって。日本語で猥褻な話しても」
笹原「まーアンジェラさんの場合、本人のファッションがもっと猥褻ですしねー」
荻上(あ!笹原さんがアンジェラさんの胸をいやらしい目で見てる!同人誌だけじゃ物足りないわけ?この男エロ過ぎ!
そりゃ水着みたいなトップで巨乳の谷間が見えてれば男の視線は釘付けデスネ!さすが大野の友達ってだけのことはアリマスネ!
なんかついてくるスーも鬱陶しいし!ムカつく!ムーカーつーくー!)
大野「荻上さん、なんか物凄く機嫌が悪いみたいですけどどうかしたんですか?」
荻上「なんでもないですっ!」
荻上(……やっぱ笹原さんは、セクシーで大人っぽい女の人が好みなんだなぁ。
エロくてオタクだけど優しくて責任感があるから、わたしのことも妹扱いしてるだけなんだろうなぁ。
だからなんだってことは無いんだけど、やっぱり胸が苦しいなぁ。
そうだ。休み明けて大学行ったら、咲さんに化粧の仕方とか聞いてみよう。いつまでも中学生扱いじゃ悔しいもんなぁ)
- 126 :マロン名無しさん
:2005/10/14(金) 22:13:33 ID:???
- >>115-118
なんかオギーがホント萌えるよ。かわいくてかわいそうで。
色々妄想をふくらませてくれる傑作SSだと思う。
キャラや設定も生かしてるし、原作のストーリーの狭間に巧く入ってる。いかにもありそうな話だ。