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げんしけんSSスレ5
- 1 :マロン名無しさん
:2006/03/06(月) 05:43:30 ID:???
- 「・・・・・・あ、ところで」
「さっきからちょいと気になってるんだけど」
「今書いてるのソレSSっすか?」
「あ」
「またスレッドに投下しようかと思って・・・・・・」
「・・・・・・スレ汚しですかね?」
「ならやめますけど」
「いや」
「むしろこっちが「ヨンデモイインデスカ」と
聞きたいところですよ」「ほんとに」
げんしけんSSスレ第5弾。
未成年の方や本スレにてスレ違い?と不安の方も安心してご利用下さい。
荒らし・煽りは完全放置のマターリー進行でおながいします。
本編はもちろん、くじアンSSも受付中。名前欄にキャラ(カプ)記載を忘れずに。
☆講談社月刊誌アフタヌーンにて好評連載中。
☆単行本第1〜7巻好評発売中。
☆作中作「くじびきアンバランス」ライトノベルも現在3巻まで絶賛発売中。
【注意】
ネタばれ含んだSSは公式発売日正午12:00以降。 公式発売日正午以前の最新話の話題は↓へ
げんしけん ネタバレスレ8
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1140782112/
- 2 :マロン名無しさん
:2006/03/06(月) 05:54:59 ID:???
- げんしけん(現代視覚文化研究会)まとめサイト(過去ログや人物紹介はこちらへ)
http://ime.nu/www.zawax.info/~comic/
げんしけんSSスレまとめサイト(このスレのまとめはこちら)
ttp://www7.atwiki.jp/genshikenss/
エロ話801話などはこちらで
【椎応大】げんしけん@エロパロ板 その2【くじあん】 (21禁)
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1122566287/
げんしけん@801板 その4 (21禁)
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/801/1127539512/
前スレ
げんしけんSSスレ4
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1139939998/
げんしけんSSスレその3
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1136864438/
げんしけんSSスレその2
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1133609152/
げんしけんSSスレ
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1128831969/
げんしけん本スレ
「げんしけん」 木尾士目 その125
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/comic/1141525563/
- 3 :前スレ633
:2006/03/06(月) 06:10:09 ID:???
- 意外と容量食ってしまったので、次スレ立てました。
続きはこちらに投下します。
・・・・CM挟んだと思ってくださいw
- 4 :801小隊第10話「オギウエ出撃」7
:2006/03/06(月) 06:11:09 ID:???
- 「よし!全員揃ったな!目標の基地は目の前だ!」
マダラメの檄が飛ぶ。昨日と打って変わった元気な姿にほっとする者もいた。
ひそひそ声で、タナカとクガヤマが話す。
「おい、なんか吹っ切れたみたいだな。キャラ作りとはなんか違う。」
「あ、ああ。よ、よかった。あ、あいつがあのままじゃ・・・。」
「ああ、死んでいった仲間に悪いからな。」
そういって二人で笑いあう。
「おい!そこ無駄話するな!」
そういってその二人に向かって注意をするマダラメ。
「「すいませんでした!」」
二人がそれに素直に敬礼で反省の言葉を上げる。
「ったく。気合入れろよ。これが最後の任務かもしれんからよ。」
「え??」
声を上げたのはササハラ。
「あー、今日の朝、大隊長から連絡があってな。そろそろ宇宙で皇国軍本拠地への攻勢が始まるそうだ。
あの第100特別部隊がいるそうだから、問題ないだろ。我等は、ここであの兵器を破壊さえすれば、もうやる事はない。」
「へー。よかったじゃん。戦争も終わるわけだ!」
能天気な声を出して、ケーコが両手を上に挙げて喜ぶ。
「ま、そういうわけだ。気合入れていくぞ!」
「「「「「了解!」」」」」
それぞれが自分のMSの乗り込む。ただし、クチキは骨折のためお留守番だ。
『クチキ一等兵、船の方頼んだぞ!』
『了解であります!この間は私が守るでありますよ!』
そんな通信を聞きながら、ササハラはシステムを起動する。
『・・・落ち着いていらっしゃいますね。』
「そ、そうですか?あはは・・・。ちょっと、考える事がありましてね。」
『・・・そうですか。・・・では頑張りましょう。』
「はい、会長!よろしくお願いします!」
それと同時に、マダラメのいつもの言葉が響く。
『それでは第801小隊、出撃する!全員、生きて帰るぞ!』
『『『『了解!』』』』
- 5 :801小隊第10話「オギウエ出撃」8
:2006/03/06(月) 06:12:26 ID:???
- 目の前には、大きな岩山があった。そこの空洞の奥に、基地はあるらしい。
付近はちょっとした荒野。ジャングルが開けた寂れた土地だ。
『敵影、レーダーでキャッチ!10機いるね!』
サキが輸送船のコクピットから声を出す。
「10機・・・ね。そう多くはないな。」
マダラメがコクピットで少し緊張をほぐす。
『いやいや、結構多いと思うんですが・・・。』
ササハラの突っ込みに、ニヤリと笑って答えるマダラメ。
「なに、この規模の基地なら20はいてもおかしくはないからな。
正直つらいかもしれんが、やるしかないな。」
『頑張りましょう。・・・これで終わりになるといい。』
そのニュアンスには他の事も含まれてるようなコーサカの言葉。
しかし、その事は流して小隊4機のMSは敵影付近へと接近する。
『近づいてるよ!気をつけな!』
サキの叫びにも近い通信が聞こえたかと思うと、目の前に一つの影が現れた。
「お!きやがったな!」
目の前に現れたのは黄色に塗装されたグフ・・・。
「き、黄色!?ま、まさか・・・。『荒野の鬼』か!?」
『ようこそ、連盟軍諸君。その搭乗しているMSが君らの墓標になるようだ。』
外部スピーカーから発しているのだろう、よく通る低めの渋い声が響く。
「へ、洒落たこと言いやがって・・・。クガヤマ、ササハラ、コーサカ!
あの黄色いのは俺が抑える。残りは頼んだぞ!」
『了解!隊長、気をつけてくださいね!』
『任せてください。やつは頼みました!』
『き、気をつけろよ・・・。』
マダラメの赤いザクが、荒野の鬼に向かい加速する。
コーサカ機、ササハラ機はそれに続くように左右に展開し、他のMSへと目標を定める。
クガヤマ機は固定砲座の形をとり、移動せず、そこから敵を狙う。
風の強い荒野の中で、戦いの火蓋は切って落とされた。
- 6 :801小隊第10話「オギウエ出撃」9
:2006/03/06(月) 06:15:10 ID:???
- ガキィ!
ヒートホークとヒートサーベルがぶつかり合う。
『はは!赤いザクとはな!趣味の悪い!』
スピーカーからあざけるような言葉を投げかける荒野の鬼。
『荒野の鬼さんは、そんな事でいちいち突っ込みいれてくださるんだなあ!』
同じようにスピーカーからそれに答えるマダラメ。
『ほう・・・。その二つ名を知ってるものが連盟にいたとはな!』
『こちとら情報が生命線なんでねえ!あんたに会わないように考えてたのさ!』
そう叫ぶと蹴りを入れようと足を上げるザク。
それに対し荒野の鬼は、体を中に入れる事でそれをかわす。
『くぅ・・・。』
『はは、接近戦には慣れているようだが、私に敵うはずもない!』
それだけ言うと、力任せにヒートホークごとザクを押し倒す。
「ぐはっ!」
背中に衝撃が来る。そのままヒートホークを押し付けようと力を込めるグフ。
『その判断は賢明だったようだな。ここで会った為にお前は死ぬ!』
『そいつはどうかなあ!』
その体勢のまま足を上げ、巴投げの要領でグフを放り投げる。
『うおおおお!!?』
ドシン・・・。衝撃音と共にグフは背中から落ちる。
『どうよ!?』
『フフフ・・・。やりおるな!久々に燃える相手だわ!』
そして、両者は再びにらみ合う。
その間も、コーサカ、ササハラ両機は一体づつ敵を撃破していた。
『うーん、視界が悪いね・・・。』
「うん。だんだん風が強くなってる・・・。」
砂嵐の中にいるように、ディスプレイには茶色一色しか映っていない。
『き、気をつけろよ・・・。』
しかし、敵は五里霧中。残りは荒野の鬼を入れて8機となった。
- 7 :801小隊第10話「オギウエ出撃」10
:2006/03/06(月) 06:20:23 ID:???
- 基地内部にて、ナカジマが部下へと指令を出す。
「よし・・・。兵器を起動させろ・・・。」
「え!?あの中には我が軍の兵も・・・。」
「かまうものか。敵兵が動かなくなるのだから関係あるまい。
それに、じいには耐性のつくよう装備を整えてある。完全ではないがな。」
そういうと、ナカジマはニヤリと笑った。
「あの中にいるならば・・・。すぐにわかるはずだ・・・。」
妙な感覚が走ったとは思った。
コーサカは二機目のザクを撃破したときに、違和感を感じた。
(こ、これは・・・。)
自分が普段感じている広い空間認識に障害が出てる。
彼はそう、ニュータイプだ。宇宙で人が生きるために得た世界を知る力。
だが、それにいま、非常に強い力が加わっているのだ。
「ううっ!」
頭が痛くなってくる。感覚が阻害される。目も、耳も、肌も。
全ての感覚が阻害されていくのだ。
『な、何だコリャ・・・。』
それを感じているのは自分だけではないらしい。
自分の感覚がぬきんでているために、人より先に感じたようだ。
『か、会長!?ううっ、何だこれ・・・。』
どうも、ササハラ機のシステムにも障害が出たようだ。
それも当然だ、感覚が阻害される力が発生しているのならば、
それに特化したあのシステムに障害が出ないはずがない。
「ま、まさか!これが皇国の新兵器の威力なのか!?」
驚きを隠せないコーサカだったが、感覚が阻害され、まともに動けなくなってしまった。
- 8 :801小隊第10話「オギウエ出撃」11
:2006/03/06(月) 06:22:44 ID:???
- 『・・・こんな形の決着は私としても不満だがな・・・。』
荒野の鬼がマダラメ機に近づく。
「ぐっ・・・。」
斑目に苦悶の表情がにじむ。五感が麻痺したようで動かない。
『せめて、一思いに・・・。ぐ・・・。やってやる・・・。』
相手も完全にまともに動けるわけではないようだが、それでも動ける。
「く、くそ、くそぉおお!!」
振り下ろされるヒートサーベル。まともにザクのコクピットに直撃する。
そして沈黙するザク。もはやピクリとも動かない。
『・・・すまんな。お前とはしっかりと戦ってみたかった・・・。』
それだけ言うと、次の獲物を狙い荒野の鬼は動き出した。
「み、皆さん、大丈夫ですか!?」
輸送船のコクピットでは、オギウエを除いた皆がその障害に苦しんでいた。
「お、オギウエ・・・、あんたなんでまともに・・・。」
サキが苦しそうにオギウエに話しかける。
「解りません・・・。はっ!じゃあ、出撃してる皆さんも!」
「そうみたい・・・。ああ!マダラメの反応が!!」
そう叫ぶケーコ。その言葉にオギウエの表情が青くなる。
「・・・わたし、出ます。」
「な・・・。なにいってんの・・・、やめなさい・・・。」
「そうだにょ・・・。それは駄目にょ・・・。」
クチキも何とか舵を取りながらオギウエを制しようとする。
「でも!まともに動けるの私だけですし!MSの訓練も受けました!
・・・・・・やるだけやります!」
「駄目!」
ケーコが苦しみを抑えながら叫ぶ。
「兄貴がさ・・・。あんたをもう二度と戦場に出したくないって・・・言ってたんだよ!
うう・・・。だからあんたにあのペンダントも渡したんだ・・・。
だから、駄目!出ちゃ駄目だ!」
「・・・・・・ありがとうございます。でも、私に出来る事をやるって、決めたんです。」
- 9 :801小隊第10話「オギウエ出撃」12
:2006/03/06(月) 06:33:08 ID:???
- 「く・・・やめろ、オギウエさん!」
ジムキャノンへと向かうオギウエを、タナカも、近くにいたオーノにも止められなかった。
「大丈夫です!みんな助けてきます!」
「や、やめてくださ・・・うう・・・。やめて・・・。」
オーノの叫びもむなしく、ジムキャノンへと乗り込むオギウエ。
ジムキャノンを起動させたオギウエは、コクピットの中であのペンダントを握る。
「・・・今助けに行きます。待っててください。」
『・・・・・・その状態でよく・・・。』
荒野の鬼がササハラ機を見つけたときには、
まともに動かない同士で戦ったザクを倒していたところであった。
「くぅ!新手か!?」
しかし、その視力も、頼りの会長も、まともに機能していない。
『・・・あああああ!!く、苦しい!』
「うう・・・。くっ!どうする!!?」
荒野の鬼は、そのままジムに近づく。
『・・・すまんな。せめて一瞬で逝け。』
ヒートサーベルを振り上げるグフ。
「う、うああああああ!!?」
その瞬間、ジムの機体が横に飛ばされる。
何とか見えた視界の中で見えたのはジムキャノンの姿。
「く、クチキ君か・・・?」
しかし、聞こえてきたのはそうであってほしくない人の声。
『ササハラさん・・・、大丈夫ですか・・・?』
「お、オギウエさん!?」
- 10 :801小隊第10話「オギウエ出撃」13
:2006/03/06(月) 06:33:46 ID:???
- 「敵のうち、一機、まともに動いています!!」
その報告を聞いて、ナカジマは座っていた椅子から飛び上がる。
「ははは!!やはりいたのか!!オギウエ!!」
大きな、そして恍惚に満ちた笑い声が基地内に響き渡る。
「この兵器を動かすための実験体であるお前以外、
この電磁流の中で動けるものはいないからな!!!
ようやく帰って来るんだ・・・。じい!そいつを捕獲しろ!」
『・・・了解いたしました・・・。』
基地内に響く荒野の鬼の声。
「あははははははははっははははは!!!」
ナカジマの笑いは途切れることなく、基地内に響き渡った。
- 11 :第801小隊(次回予告)
:2006/03/06(月) 06:43:54 ID:???
- ついに戦場へと戻ってしまったオギウエ。
その狙いが自分にある事など知らず、荒野の鬼と戦う事になる。
しかし、実力の差は歴然だった。捕獲されそうになるオギウエ。
その最中、ササハラがもつ青いペンダントが光を放つ。
次回、「震える空」
お楽しみに。
- 12 :3 :2006/03/06(月) 06:45:27 ID:???
- 今回は疲れました。
投下中に新スレ立てたりなんだかんだ疲れました。
ま〜、なんか楽しかったからいいですが!
ナチュラルハイ気味です。
- 13 :マロン名無しさん
:2006/03/06(月) 11:13:20 ID:???
- >801小隊
先ずはスレ立て乙。
それにしても斑目、ここでもえらい目にあってるな。
まあ奇跡的に手の骨折だけで済んだ、ってなオチを信じて次回を待ちます。
- 14 :マロン名無しさん
:2006/03/06(月) 12:44:12 ID:???
- >801小隊
乙であります!
作戦前夜の各員のひとときや、苦境に立たされる小隊の緊張感が読ませますね〜。
次が、オギウエが気になりますが、何より、
「生きていてくれマダラメぇぇぇぇぇぇぇぇッ!」
に尽きますよホント。
そうだ、コクピット貫かれたのはアレだ、斑目じゃなくて「班目」なんだよきっと!
- 15 :マロン名無しさん
:2006/03/06(月) 12:59:26 ID:KcNaH6QH
- >>801小隊
乙です!!
斑目ーーーーーっ!!死ぬなァーーー!!
この先どうなるんだろう?あー、きになる!
斑目が一人で回想するシーン、咲が気にしてはげましにくるシーン、
田中と久我山が斑目のことを話すシーン。
801小隊の中では、いつ命を落とすかも分からない日常の中で、
お互いが励ましあい、支えあっている。
その仲間意識の強さに、感動いたしました。
次回、また楽しみにしてます!!
- 16 :マロン名無しさん
:2006/03/06(月) 23:00:47 ID:NnTleSul
- >> 801小隊第10話
クッチー盗撮の伏線には気付いてましたよ!w
しっかし新兵器ってこんなんなんですね…いよいよナカジマとオギーの邂逅
というよりササハラとの離別?うわー3×3EYESみたい(古っ)。
ますます目が離せません!
- 17 :マロン名無しさん
:2006/03/06(月) 23:08:47 ID:???
- >第801小隊
読みましたー。スレ立ても乙!スレの消費以前よりも早くなってるねー。
改めて、ガンダム世界にげんしけんキャラがきれいに内包されてるよ。
ミリタリー物の描写もうまい!
それにしても、投下ペース速くなって、読む量が増えたなー。消化しきれんw
という嬉しい悲鳴。エロパロも活況らしいし(まだ一部しか見てない)
キャラの愛に溢れた人たち急増ですねー。
- 18 :マロン名無しさん
:2006/03/07(火) 00:16:47 ID:0jf1kvqw
- ども、「卒業式から一週間後」かいたへタレです。
SSスレ4のほうに昨日投下してきました(一応宣伝)
感想書いてくれた方に感謝。
>>621
>>623
荻上さんが会長になったら、げんしけんの活動方針とか真剣に考えて企画立てたりしそう。
で、真面目すぎて一人で悩んだりとかしそう。と妄想して今回の話に組み込みました。
荻上さんが「第1回〜会議〜」って言うのは似合いそうだな〜と。
>>644
ありがとうございます。「気持ちが分かる」と言っていただけて嬉しいです。
あと、確かに、「予想SS」っぽいなーと自分でも思いますが、話自体はわりとありがちな感じに作ったので…。
来月がねえ…原作はいつも予想をいい意味でうらぎってくれるので、むしろ「こうはならないだろう」という気持ちで作りました。
- 19 :マロン名無しさん
:2006/03/07(火) 13:48:03 ID:???
- >卒業式から一週間後
こら〜笹原田中久我山!お前ら鬼か!
人の傷口に岩塩すり込むようなことしおって、斑目かわいそ過ぎ!
こうなったら斑目、ステキな彼氏ゲットして奴らを見返したれ!
…気のせいかな、何か間違ってる気がするが、まあいいか。
- 20 :マロン名無しさん
:2006/03/07(火) 15:17:08 ID:???
- 彼氏かよw
- 21 :マロン名無しさん
:2006/03/07(火) 16:41:30 ID:???
- >>19
しむら〜彼氏彼氏!
- 22 :マロン名無しさん
:2006/03/07(火) 20:27:13 ID:???
- エロパロでの中荻を読んで妄想。中学時代の中島の独白。サイコさんが入ってる上、
設定が妄想全開なので注意してください。
- 23 :彼女は私のもの
:2006/03/07(火) 20:28:26 ID:???
- 私は荻上のことなら何でも知っている。
彼女が好きなことも、嫌いなことも全て。
だから、私は彼女を思うようにできる。
それは当然の権利。
なぜなら私は荻上を愛しているから。
私が荻上と出会ったのは、中学に上がってすぐ、部活動を選んでいた時だった。
(私の中学では強制的に部活動を強いられるのだ)
自慢じゃないが私は勉強も、運動神経も良く、先生からの受けも良かったので、かえって選択に迷っていた。
結局決めかねて教室に戻ってくると、彼女がいた。
彼女は回りのことなど気にもかけずに、ノートになにやら書き込んでいる。
分厚いメガネ。ぼさぼさの髪。制服の着方だって校則通りで、むしろだらしなくさえ感じる。
ガリ勉クンかな、とも思ったが、机の上にあるのは教科書ではなく、マンガ。
純粋に好奇心から声を掛けてみた。(クラスメートの名前と顔くらいとっくに全部把握していた)
「荻上さん、何書いてるの?」
彼女は固まってしまった。仕方ないので隙間から覗き込むと、どうもマンガを写していたらしい。
マンガの誌名をみると…ああ、知ってる。一応少女漫画だが、妙にホモの多い奴だ。
「ふーん」
わざとらしく聞こえるように言ってやる。
すると彼女はますます小さくなっていく。その様は小動物が身を守ろうとするように見えて、私の保護欲を誘った。
(気に入った。彼女を『飼おう』。優等生を演じるのはそれなりにストレスだし)
当時の私の荻上の認識はその程度でしかなかった。
- 24 :彼女は私のもの
:2006/03/07(火) 20:29:20 ID:???
- 早速行動に移す。荻上の希望する部活をそれとなく聞き出し、誘導し、二人揃って文芸部に入部した。
やる気のない先生。能力の無い先輩。だらけきった空気。私が好き勝手やるにはもってこいの環境だ。(一応、過去の出版物を読んだ上での評価だ。少なくとも私の目にかなう作品などなかった)
彼女を『飼う』のは楽しかった。最初は頑ななのに、一線を越えると急に親密になり、基本的にうっかりさんで、不意に弱く、リアクションが大きいのだ。
おだてるとのぼせて、しかるとうなだれて、冷たくすると必死にすがってきて、優しくすると赤子のように信頼してくれる。からかうとむきになって怒り、誉めると真っ赤になって照れる。
しばらくすると、私は彼女を手放せなくなっていた。
私がその手の『ホモ』小説を書き出したのは、彼女がきっかけだった。
彼女になぜホモにこだわるのか聞いたら、生意気にも「書けばわかります」などと言われたからだ。
私はマンガを書く気は無かったので、必然的に小説になった。(挿絵を彼女に書かせよう、という思いもあったが)
参考図書は家には山ほどあった。(私の父が文字通りの『読書家』で、文字があればマンガから辞書まで、純文学からエロ小説まで見境なしに読み集め、しかも整理が下手なので、多少借りたところで気も付かないという人物だったせいだ)
とりあえず、彼女の好きなマンガの人物の名前を借りて、そこらの本から換骨奪胎して適当にでっち上げると、彼女に読ませた。
酷評だった。こうも辛らつな言葉が彼女の口から発せられるとは思わなかった。
「…書きたくないなら書かないで下さい」
そう締めくくられた時、私は決意した。この身の程知らずなペットに教えてやると。自分が一体誰に口を利いているのかと。
- 25 :彼女は私のもの
:2006/03/07(火) 20:30:19 ID:???
- それからしばらくは蜜月と言っていい日々が続いた。
私の小説を彼女が批評し、彼女のマンガを私が批評し、時には協力して挿絵付きホモ小説を書いた。
いつの間にか、私たちの作品のファンだ、とかいう人間まで集まってきた。
だけど私には彼女らなど眼中に無かった。
いや、彼女以外に私の興味を引くものなど無くなっていたのだ。
そして、当時の私は今が永遠に続くと信じていた。
そんなものなど無いと誰よりも知っていたはずなのに。
その日は彼女の様子が変だった。
妙に落ち着きが無く、話し掛けても上の空で、いつもなら私だけを見ているはずの彼女の目は何も見ていない。
そしてその日、彼女は初めて部活を休んだ。
どうでもいい人間と、どうでもいい会話をしながら、退屈をもてあそぶ。
ついに耐え切れなくなり、早々に帰った。
そして見た。神社から出てくる彼女を。その笑顔が自分以外に向けられている事を。
その時は不思議と何の感情も無かった。
彼女とあれは別々の家路に向かう。
私は彼女の後をついて行く。彼女は一度も振り返らず、私に気付くことなく玄関をくぐっていった。
その後は良く覚えていない。
気が付いたら朝だった。
私は制服のままで、枕もとが濡れていた。
- 26 :彼女は私のもの
:2006/03/07(火) 20:30:55 ID:???
- 昨日、今日と彼女がよそよそしくなっていく。声を掛けても返事が返ってこなくなる。声を掛けようとするといなくなってしまう。
私の彼女がいなくなってしまう。
私のものなのに。
そして決定的な出来事。
「荻上が巻田とつきあってるんだって」
うそだ。そんなはずはない。かのじょはわたしのものだ。なぜ。わたしはきいてない。うらぎりもの。
私は策を練る。彼女を『あまり』傷つけず(多少は罰のうちだ)、あの男を徹底的に叩き潰して、彼女を取り戻すのだ。
そうだ、あの男を『受け』にしたイラストを彼女に描かせ、見せつけてやろう。
あの男には到底受け入れられないようなハードな奴を。
付き合ってる彼女が自分がヤラれるイラストで興奮していた、と知ったらあの男なら耐えられまい。
彼女を捨てて逃げ出すに決まってる。
そうしたら私は彼女に言うのだ。
「男なんてあんなものよ。大丈夫。私はあなたの全てを肯定して受け入れてあげる」
その時の彼女を思うだけでしびれるような快感を感じる。
さあ、渾身の力をこめてあの男の『受け』小説を書こう。
荻上が二の句を継げないような、彼女の創作欲を刺激するような奴を。
そして彼女を取り戻すのだ。
彼女は私のものだ。
彼女は私だけのものだ。
私は彼女を愛している。
ならば
彼女が愛していいのは私だけだ。
- 27 :彼女は私のもの
:2006/03/07(火) 20:33:00 ID:???
- 以上です。
- 28 :マロン名無しさん
:2006/03/07(火) 21:40:01 ID:kVgNjDTQ
- >>23-26
すげー!!中島の「あの眼」にヤラレテいた者なのでこんなSSはもう心のヒダに
嵌りまくりですよ。乾いた、淡々とした文章なのに触れれば溢れるようなウェットさが
もうたまらん。中島愛しいよ中島。
しかし上手いなあ。もしかして「うわっ面の思い」と同じ人じゃろか。
『神聖モテモテげんしけん』といいこのスレッドといい、
かなりな高レベルの力作ぞろいで
おもわず「本家」の発売日まであと何日かを
忘れてしまいそうですよ?
- 29 :マロン名無しさん
:2006/03/07(火) 21:42:52 ID:kVgNjDTQ
- 28です。
>>『神聖モテモテげんしけん』は
『神聖モテモテ現視研』のミスでした。
・・・いや元ネタの作品を全く知らないんですけどね。
- 30 :マロン名無しさん
:2006/03/07(火) 21:50:40 ID:???
- 馬鹿だろお前…
- 31 :マロン名無しさん
:2006/03/07(火) 21:53:45 ID:0jf1kvqw
- >>彼女は私のもの
読ませる文章ですねえ…。
中島、深くほりさげれば掘り下げるほど、興味深いですな。
- 32 :マロン名無しさん
:2006/03/07(火) 22:04:48 ID:???
- こりゃまた、荻スレの争議にタイムリーな内容で。うーん、中荻アンチの方?
中荻派の方?まあ野暮な詮索はここまでにして、内容は耽美的で散文詩のようだ。
支配欲、独占欲、偏愛の心情がよく描写されてるね。
- 33 :脈はあるのか
:2006/03/07(火) 22:20:35 ID:???
- 「ふぃー、疲れた…」
歩きながらそう呟くと、斑目はネクタイを緩めた。首を締め付けるようなこの感覚は、未だに慣れない。
(どうすっかな…同人ショップでも寄って帰るか…)
そして斑目は、行きつけの店へと向かった。
「いやー…今日は掘り出し物が見つかったなー」
右手に紙袋を持ちながら、満足そうな笑みを浮かべる斑目。
「…お、あれは…」
斑目は、10mほど先に咲が歩いているのを見付けた。そっと近付き、声をかける。
「やーぁ、春日部さん」
「ん? あぁ、斑目か。どしたのこんな所で……って、聞くまでもないか」
「はは…ま、そゆコト」
そのまま、並んで歩き出す2人。
「春日部さんは? 買い物?」
「ん…デートの帰り」
「…高坂?」
「当たり前だろ」
―――ズキッ
「は、ははは。そうだよな」
咲の口から「高坂」という名前が出る度、心が痛む。
「で、その高坂はどうしたんだよ?」
「なんか、0時売りがどうのこうのって言ってどっか行ったよ」
「あ…」
忘れてた。今日は0時売りがあったんだ。今から並んでも買えないだろうし、何より、咲と一緒に歩いているこの時間を無駄にはしたくなかった。
- 34 :脈はあるのか
:2006/03/07(火) 22:22:48 ID:???
- 「私、さ…」
不意に咲が語り出す。
「誤解してたよ」
「? 何を?」
「オタク、って奴らをさ」
「…」
「いい歳してアニメやゲームに夢中になったり、なんかフィギュアとか集めたり…正直、気持ち悪いな、って思ってたよ」
「ははは…」
「でも、高坂と付き合って、現視研に入って…オタクにもいい奴はいるんだな、って思った。なんだかんだで私と高坂をくっつけてくれたのはアンタらだからね。感謝してるよ」
「そりゃどーも」
「アンタらみたいな…アンタみたいなオタクだったら、なんだか好きになれそうな気がするよ」
―――え…。
「好…き?」
- 35 :脈はあるのか
:2006/03/07(火) 22:26:30 ID:???
- 「って、勘違いするなよ!? 今の私は高坂一筋なんだからな!」
「…」
「斑目?」
「春日部さん…」
咲の方に向き直り、真剣な顔になる斑目。
「俺…ずっと、春日部さんに言いたかったことが…」
「なに?」
「お……俺、春日部さんのこと……好…!!」
「ふぅ、続きはどうスっかね」
荻上は部室で1人原稿を描いていた。今回は斑目×咲という、健全な方向でいこうかと考えている。
「でも、いまいちペンが進まねェなァ…やっぱりやおいとじゃ気合いの差が………ってうわあッ!?」
「……」
いつからいたのか、荻上の隣には斑目が立っていた。斑目は原稿を覗き込み、読み終わると荻上に向き直り、こう呟いた。
「続きキボンヌ」
完
正直スマンカッタ。吊ってくる。
- 36 :マロン名無しさん
:2006/03/07(火) 22:28:27 ID:???
- >彼女は私のもの
頭の構造が東映系の俺は、本編での中島って単なる完全な悪人と認識している。
もしこの作品みたいな精神構造だとしたら、ある意味よけいに救いようが無いね。
- 37 :マロン名無しさん
:2006/03/07(火) 22:43:10 ID:???
- >脈はあるのか
スタンダードな斑咲かと思いきや、オチがwww まあ吊らなくてもいいデスヨ
それにしても投稿ペースが速い!!感想レスしないままのも増えたよ。
- 38 :彼女は私のもの
:2006/03/07(火) 22:49:36 ID:???
- ええと、普段は感想にはレスしないのですが、他の人の作品を引き合いに出されたので。
ついでに他の感想にも調子に乗ってレスしたいと思います。
>>28
「うわっ面の思い」の作者さんとは別人です。
ただ、個人的に好きな作品なので、光栄に思います。
>>31
恐縮です。
>>32
個人的には節操無しなので、どちらでもありません。
>>36
最初に断っているように、この作品での中島は、「サイコさん」で救いがありません。
まあ、それが彼女の本質なのか、一時的な「はしか」なのかはわかりませんが。
- 39 :マロン名無しさん
:2006/03/07(火) 23:03:19 ID:???
- >まとめの中の方への質問
最近投稿が増えている中、いつもご苦労様です。ところでエロパロの方も投稿増えてます
ね。ようやく最近そちらも読みました。まあ、自分の笹荻のイメージ損なわないように
最初は避けてたんですけど、読んでみると良作ですね。編纂の対象にする予定はあるんですか?
明らかに原作の性描写基準を超えてるし、エロパロの文学価値の良否の評価も難しいですけどねー。
- 40 :マロン名無しさん
:2006/03/07(火) 23:20:20 ID:0jf1kvqw
- >>脈はあるのか
来た来た、斑×咲の風が!!嬉しいな!!
最近斑目の話ばかり書いてるので、他の人のSSでも斑×咲読めるのがウマー!
な今日このごろ。オチに吹いたww
「続きキボンヌ」
いいですねこの展開。よければ続きも書いてくだされ〜。荻上さんはこの先どう書くつもりなんだろう…。
- 41 :マロン名無しさん
:2006/03/07(火) 23:42:49 ID:???
- >彼女は私のもの
>さあ、渾身の力をこめてあの男の『受け』小説を書こう。
>荻上が二の句を継げないような、彼女の創作欲を刺激するような奴を。
>そして彼女を取り戻すのだ。
>彼女は私のものだ。
>彼女は私だけのものだ。
>私は彼女を愛している。
>ならば
>彼女が愛していいのは私だけだ。
↑ココにシビレましたよ!
朗々と詠うように狂気の心情を吐露している。
>>36
なんてこった、俺が既にいるよ!
つか同意です。
>脈はあるのか
まさに「続きキボンヌ」です。
- 42 :マロン名無しさん
:2006/03/08(水) 01:02:14 ID:???
- >>彼女は私のもの
すげー独白だー。面白い〜。
しかし中島が荻上が好きというのはファンタジー(原作ではありえないという意味)
かなと思ってしまったり。
それでも中荻読むと面白〜と感じてしまう不思議。
それはそれ、これはこれなのかな〜。
>>脈はあるのか
荻上が描いてるっていう事が面白いwww
そして続きを希望してしまう斑目・・・。
やっぱり自分じゃ何も出来ないのね・・・。
>>39
中の人です。
えーとですね、エロパロはエロパロで作ろうかなーと思ったこともあるのですが、
いかんせん、労力と時間が掛かる事なので・・・。
エロパロスレ見てSS書き出した自分としてはリスペクトもかねて一スレ目から
まとめたいとは思ってるんですが・・・。
なかなか難しいところです。
- 43 :マロン名無しさん
:2006/03/08(水) 01:56:58 ID:???
- 「愛することは傷つけること」てゆーのはよく言われることですが、(どこでだ)
傷つけることは愛することではないんだな。
大事にすることも愛することじゃないし…‥、
愛するって難しい…。。
- 44 :マロン名無しさん
:2006/03/08(水) 11:19:46 ID:???
- >>23
かなり読まされました。
中島は複数パターンの描写がある割に説明が全くないキャラなので
解釈を膨らませると人によって全然違う人物像ができあがりますよね。
自分の中島像は置いといて、この中島も非常に面白く興味深いものでした。
>
最初は頑ななのに、一線を越えると急に親密になり、基本的にうっかりさんで、
> 不意に弱く、リアクションが大きいのだ。
>
おだてるとのぼせて、しかるとうなだれて、冷たくすると必死にすがってきて、
>
優しくすると赤子のように信頼してくれる。からかうとむきになって怒り、誉めると真っ赤になって照れる。
も、萌える…
- 45 :マロン名無しさん
:2006/03/08(水) 13:11:20 ID:???
- >脈はあるのか
またもや荻ワープオチかい!流行りなのか?
まあ好きだけど…
ただ斑目のリアクションだが、果たして「続きキボンヌ」と言えるかな?
むしろこうなりそう…
荻原稿を見ていた斑目、顔は真っ赤っか、目は真っ白な上に涙目、頬は膨らんで脂汗。
窓にダッシュする斑目。
それに必死でしがみつく荻上さん。
荻上「斑目さん、落ち着いて!!!ここは3階です!!!」
そこへ入ってくるクッチー。
朽木「こにょにょちわ〜、ん?何かありましたかのう?」
荻上「いいから斑目さん押さえて下さい!!!」
- 46 :マロン名無しさん
:2006/03/08(水) 13:29:19 ID:kFQ/lUO7
- >>彼女は私のもの
いや中島は原作でもかなり気になるキャラなのですが、
そして中×荻というのもつい想像してみたくなる組み合わせなのですが、
正直、ストレートにラブらぶな展開(中学1〜2年時でも)は
チョト違う・・・な違和感を拭いきれなかった俺には
ものすごくキましたコレ。
すげー。黒いのも歪んでるのも中島せつないよ中島。
>>「ふーん」
>>わざとらしく聞こえるように言ってやる。
>>
酷評だった。こうも辛らつな言葉が彼女の口から発せられるとは思わなかった。
>>「…書きたくないなら書かないで下さい」
>>そう締めくくられた時、私は決意した。この身の程知らずなペットに教えてやると。自分が一体誰に口を利いているのかと。
「女王と侍女」のはずが、飼い犬に手を咬まれた屈辱感。
毅然とした荻上に、ならばと正攻法で向かう中島。
確かに、それからの数ヶ月こそ、彼女にとって至福の時だったのでしょう。
ふたりの関係の深まりゆく様が堪りません。続きをゼヒ!!
- 47 :マロン名無しさん
:2006/03/08(水) 14:34:26 ID:EZldRSgG
- >>45
いや、さすがにここで三階ダイブはしないでしょ。
もしするとしたら、斑目が荻上さんに、
斑「え、この続きってどうなんの?…まさか告白成功したりすんの?荻上さんの漫画だし」
荻「いえいえ、さすがに漫画でもその展開はナイですね。成功話なんて、全く考えつきません。」
斑「!!」
荻「ここはむしろ手ひどくフラ…ちょ、ちょっと斑目さん!?」
部室の窓のほうに走りよる斑目。
荻「ここは3階っス!!」
斑「くそー!どうせ俺なんか…行かせてくれー!!」
荻「も、もしかして斑目さん、本当に春日部先輩…」
斑「!!!!!」(二重にショック)
そこにクッチー登場。
「あれ、どうしたのオギチン?斑目先輩に抱きついたりして?」
荻・斑「!!!」
…なんて展開は、ヤダなあ…斑目かわいそ過ぎ。
高「僕らが斑目さんをいじめるのは、みんな斑目さんが好きだからだよ」
斑(高坂に言われてもなあ…)
- 48 :マロン名無しさん
:2006/03/08(水) 17:05:04 ID:???
- > アンタらみたいな…アンタみたいなオタクだったら
「オタクとか関係なしにムカつくタイプなんですけど!」
って流れを荻は知らないからなぁww
- 49 :マロン名無しさん
:2006/03/08(水) 17:31:58 ID:???
- >>48
そういう人でも付き合っていくうちに打ち解けられるのが咲ちゃんの良い所であり、その影響で良い奴に変化していったのは斑目君の努力と成果。
1巻序盤はあんなだったのに、今の斑目の可愛いこと可愛いことw
- 50 :マロン名無しさん
:2006/03/08(水) 17:43:50 ID:???
- 「斑目くんも丸くなったもんだ」
- 51 :マロン名無しさん
:2006/03/08(水) 23:10:24 ID:EZldRSgG
- >>49
ですね。春日部さんはああ見えて人情家ですから。
斑目は今までけっこう努力してる。少しずつ。
でも努力してんのがあまり目立たないから、周りの評価に結びついてないような。
ほんとに、今の斑目は可愛くてもう…くはー!
- 52 :マロン名無しさん
:2006/03/09(木) 02:46:13 ID:???
- えーと、笹荻はまだまだ書きます書けます。
ちょっと気を抜いたものを、7レスで今から上げます。
- 53 :G(1/7)
:2006/03/09(木) 02:48:49 ID:???
- 「あ、前も言いましたけど自前っすよ、自前」
衝撃コスプレから半年、またしてもクッチー独りコスプレ大会を目撃してしまった。
夏休み明けのげんしけん部室は、気まずい空気に包まれていた。
しかしあえて空気を読まないクッチーは、むしろ大野にコスプレ語りをしている。
「やー、学祭のコスプレ大会?楽しみでアリマス!」
「私、新宿のショップで買っているんですが、大野会長は田中先輩の手作りで良いですよね」
「ワタクシも下、田中さんに直接頼んでみたいものですにゃ〜。ははは」
「着たいもの優先で、どんな系統のが似合うかは二の次なんですが!」
大野は辟易してしまい、返事は返せないがスルーも仕切れずダメージを受けている。
コスプレにポリシーが有るので、やってることの相違には言いたいことは多々ある
が、コスプレすること自体は否定できない。学祭でどうクッチーを封じたものか…。
何といったら良いものやら。
「あうぅ……(汗)」
荻上に助けを求める視線を送ってみるが、荻上は冷や汗をかきながら
ノートに鉛筆を走らせている。
あえて大野と朽木の方を見ないようにしている。
『う、恨みますよ、荻上さん―――!!』
『無理無理、無理です!!』
心の声はクッチー以外には丸聞こえだが、残念ながらこの場には3人しか居ない。
「荻上さん―――わ、わたし帰りますね!ちょっと用事が!」
現視研でまったり過ごす時間のはずだが、大急ぎで帰っていく大野だった。
- 54 :G(2/7)
:2006/03/09(木) 02:49:26 ID:???
- 残された荻上は、何やら漫画教則本を読みながらノートに向かっている。
朽木は話しかけるネタが何も出てこず手詰まりだ。
『ゲームの選択コマンドが表示されないバグでしょうか!?(汗)』
「…………。」
「お、オギちんは帰らないんですか?」
「…今日は、笹原さんが研修明けで部室に来るって事なので待ってますよ。」
「………あ、そうなんですかァ。なるほど――――」
『そ、それってもう付き合ってるって事ですか?私、情報に乗り遅れですか?疎外感ですか?』
「ワタクシ、ちょっとはばかりに…。」
『居るのも野暮というか、お邪魔かにゃ〜。その場に居るのも気まずいですし』
トイレへの逃避行。とりあえずの、逃げの一手を打ってみる朽木だった。
が、鞄を持って出ている。これは帰っているんじゃないのか?
独りきりになった荻上は、慣れたものだという様子で過ごしている。
『朽木先輩と二人きりなんて、さすがにまだキツイしなぁ……』
教則本のページをめくる。
『笹原さん、泊まりで研修だったから会うの久しぶりだなぁ』
そして鉛筆がちびている事に気付き、鉛筆削りを持ってゴミ箱へ移動。
くるくると回すと、ガリガリという音が部室に響く。
『んー、照れくさいというか……どんな顔して会うべか』
ちょっと赤面してくるうちにも、鉛筆は削り終わった。
席に戻ると、何やら新しい構図表現に挑戦し始めた。
笹原のこともすぐに頭から消えて、部室で独りの時間を過ごす。
- 55 :G(3/7)
:2006/03/09(木) 02:50:09 ID:???
- いつのまにか少し部室が暗くなった気がした。
荻上は立ち上がって、壁のスイッチを押して部屋の照明を灯すと、
何かの気配を感じた。
上の方で何か動いたような……でもただのシミですよね?
天井に楕円形の黒いもの。
『ああ、なんだゴキブリか。霊とかじゃなくて良かった。。。』
荻上は、そのまま席に戻りかける。
「―――!!」
じゃなくって!!奴が居たのだ。
ぐるっと振り返って、見るもおぞましい奴を確認する。
立派に黒く、しっかりと触覚が揺れている。
『う、動いてる、すぐ頭上で!?○△×※□……』
自分が動くとゴキブリも動く気がして、固まってしまう荻上。
その目はぐるぐると渦を巻く。
1分、あるいは5分も静止していただろうか。
荻上の頭の中では会議が開かれて、議論が継続中だった。
A『荷物をまとめて部室から逃げるのよ』
B『荷物をまとめるなんて悠長なことは言ってられない!即刻退避!』
A『笹原さんに電話をして呼ぶのは?』
C『久しぶりで「ゴキブリ退治に至急来て」ってロマンチックさの欠片もない…萎えるわぁ』
B『それより奴を殺さないと、明日から安心して部室が使えないではないか!』
A『じゃあ、スプレー買って来るか、叩く物を作るの?』
B『馬鹿!叩いたら中身が……中身が出るじゃない!それにスプレーは油で本とか汚れるし』
C『私はアイツに、丸めた雑誌ぐらいまで近づけないですよ』
A『……どうしたもんだべか?』
B『攻撃方法を考えるんだ!長いホウキで窓から追い出すんだ!』
- 56 :G(4/7)
:2006/03/09(木) 02:51:00 ID:???
- 「可決!」
小さくつぶやくと、荻上は天井のゴキブリから目を逸らさず、
慎重に窓を開け、隅に立ててあるホウキに手を伸ばす。
ホウキを動かすと、ゴキブリもあらぬ方向へ移動し始める。
「ああっ!」
棚の後ろに逃げられては元も子もない。
「えいっ、えいっ!」
必死でホウキを振るう荻上の勢いにやられたのか、ホウキの毛にゴキブリが絡まる。
いや、しがみついている感じだ。
『今しか無いっ!!』
獣の槍を手にした少年のような鋭い眼差しでホウキを操る荻上。
ホウキの先を窓から出すと、ブンブンと振るう。
ぽろりっ。
「やた、やったっ!」
ゴキブリは見事、落ちていった。
晴れやかな笑顔で溜息をつく荻上だったが。
『なっ、ナニぃぃぃ!!』
天井と、部室の扉に2体のエネミー発見。
「ヒィ…………」
荻上の目に涙の粒が浮かぶ。
しかし涙目のまま、ホウキで特攻を敢行してしまう。
結果は当然、目標ロスト……。
『う、動いたら殺られる!?』
ホウキをを両手で胸に抱えたまま、立ち尽くす荻上だった。
- 57 :G(5/7)
:2006/03/09(木) 02:52:13 ID:???
- ガチャ。
「ちはー」
ドアの陰から顔を覗かせたのはシャツにネクタイ、スラックス姿の笹原だった。
「さ、笹原さぁ〜〜〜ん………」
首をぎぎぎと入り口に向ける、青い顔の荻上が見えた。
「……?あれ?どうしたの?」
苦笑しつつ普通に部室に入ってくる笹原だったが
「駄目です!今……今、アレが居ます!黒い悪魔が―――!!」
ホウキを抱えたまま、笹原の傍に駆け寄る荻上。
「黒い悪魔?うーん、ひょっとしてゴキブリ出たの(苦笑)?」
上着と鞄を机の上に置くと、笹原は腕組みをした。
「はい……1匹はホウキで出したんですけど、さらに2匹出て……消えました」
「あ、上に……!」
机の上に有った先月のエロゲ誌を丸めると右手に構える笹原。
「だっ駄目ですよ!中身が出るじゃないですかっ!」
「えーーー(苦笑)それじゃどうするの?」
「さっきはホウキで窓から出しました」
「じゃあホウキ貸して(苦笑)」
手を伸ばす笹原。荻上の手の上を握ってしまう。
「あっ」
少し赤くなる二人。荻上は視線を逸らして照れている。
ベタベタバカップルへの道は遠い。
- 58 :G(5/7)
:2006/03/09(木) 02:52:59 ID:???
- 気を取り直してホウキを構える笹原。
「無残殺虫ホイホさんでも有ればなぁ」
などとマイナーな殺虫メカのネタを呟く。
もっとも、春にクッチーがコスプレしていたのも、そのライバル
であるコンバッツさんなのだが。
とりあえず、天井に居るターゲットに向かってホウキを伸ばす笹原と
不安げに両手を胸の前に組み、それを見守る荻上。
その時、不意にゴキブリが飛んだ!
荻上の方に向かって一直線――――。
「きゃーーーーーーーっ!!!」
「荻上さんッッ!」
普段はそう声も高くないが、叫び声は甲高い荻上の悲鳴が
サークル棟にこだまする。
荻上が目を覚ますと、床の上で笹原に抱き抱えられていた。
『うわーーー大胆……でねくて!』
「あ、あの、笹原さん?」
「…だ、大丈夫?窓から落ちそうだったから」
「ありがとうございます。アレは、奴はどうなりました?」
「うん、窓から飛んで出て行ったのが見えたよ」
「ホントですか?……よかった」
「やー、でもあと1ぴ――――」
ガチャり。
「大丈夫でありますか!?」
何故か近くに居たらしき朽木が、部室に入ってきた。
- 59 :G(6/7)
:2006/03/09(木) 02:53:48 ID:???
- 「――――やや!?こっ、これは失礼しました……」
「「ちがーーーう!!」」
笹原と荻上はハモって否定すると、大急ぎで立ち上がる。
「ゴキブリが出てね、荻上さんに向かって飛んだから」
笹原はやや必死に説明をしかける。
その説明に耳を傾けつつ、あごに手を構えてポーズを作り、朽木がゆっくりと歩む。
「そうでありマスカ」
ペキッ。
「「「ぺきっ??」」」
3人が朽木の足元に目をやると、靴の端から見える、黒い触角と脚。
顔をあわせて固まる3人だった。
後日、ゴキブリの巣は発見された。
田中が去年の夏にクワガタを買おうとした飼育ケースが
ロッカーの上の奥に有り、中のものは時間の経過で
ゴキブリの巣に変換されていた。
「やー、自然の驚異だねぇ……」
田中にしては珍しい失敗だ。誤魔化して笑うしかない。
「あれ以来、ワタクシの二つ名が『一撃殺虫』とか言われますし
荻上さんが何か前より距離を置くんですよ……」
流石に落ち込む朽木。
「すみません!けど、アレを思い出してしまって!」
テーブルの向こうで荻上が叫ぶ。
「お詫びに、学祭用に衣装を朽木君にも1着作るよ」
「それじゃあ無残殺虫ホイホさんのメイドVer.で―――」
「懲りてないのかよ!!」
笹原、斑目、大野のツッコミを受けて、してやったりの朽木だった。
- 60 :マロン名無しさん
:2006/03/09(木) 02:55:19 ID:???
- うわわ(汗)。
>>58は(5/7)m>>59は(7/7)でした。すみませんorz
というわけで 以上です…。
- 61 :マロン名無しさん
:2006/03/09(木) 03:03:07 ID:???
- 訂正が間違えてる。眠さというより単なるウッカリ者ですね。
>>58→(6/7)、>>59→(7/7)です。ああもう。。。申し訳ない。
- 62 :マロン名無しさん
:2006/03/09(木) 03:20:47 ID:???
- ホイホイさん!ホイホイさん!
いいね、こういう何気ない日常。こういうの大好きです!
まだだ、まだ笹荻はいける!そう実感しましたw
- 63 :マロン名無しさん
:2006/03/09(木) 03:59:04 ID:Fa5Pi34f
- >>G
イニシャルGが!!←(ハチク○ではそう呼ばれていた)
一人荻上さん会議とか、へっぴり腰で奮闘する姿とか、なにげに頼もしいササヤンとか、イロイロ美味しいクッチーとか、
面白かったです。
- 64 :マロン名無しさん
:2006/03/09(木) 11:44:01 ID:???
- >G
クッチーそうじゃないだろ!
デジカメデジカメ!
最高のシャッターチャンスじゃないか!
それにしても荻上さん、ロボコンばりにパニクってますな。
まあ女の子でゴキブリ平気な人は少ないと思うけど。
本編でもこういうぬるい話が見たいな。
- 65 :マロン名無しさん
:2006/03/09(木) 13:12:14 ID:???
- イイ……気分がほんわかしてくるような楽しいお話でした。
「可決!」からの荻上描写がとてもカワイイ!
こういう話書ける人は、実生活でも幸せなんでしょうなあ。
ちなみに、昨日の読売新聞の「編集手帳」では、「G」の脳には立派な学習機能があることが立証されたそうでつよ。
「おのおの方、油断召さるな」
- 66 :歪んだ愛
:2006/03/09(木) 14:32:13 ID:???
- 「ん…」
斑目は目を覚ました。カーテンの隙間からは朝の光が差し込んでいる。
今日は日曜日。仕事は休みだ。しばらくボーッと天井を眺めていると、頭に痛みが走った。
(痛っ…二日酔いか?)
そういえば昨夜、酒を飲んだ記憶がある。
(あれ…俺、誰かと一緒だったような…)
一人の時は二日酔いになるまで飲まない。誰が一緒だった?
(…なんだ…? 右腕が重い…)
ふと感じた右腕の重みを確かめるため、斑目は側に置いてあった眼鏡を取り、かける。
(ん〜…?)
目を細め、重みの原因を睨む。
「それ」が何か判明した途端、斑目は今まで出した事の無い大声で叫ぶ。
「ぎょわああぁぁぁああぁあぁぁああぁぁああぁッ!!!!!!?」
隣で寝ていたのは、荻上。しかも一糸纏わぬ姿だ。気付けば自分も裸。斑目コンピューターが、今の状況を整理する。
(いや、待て。落ち着け、俺。うん、まずはアレだ。状況を整理しよう。何故に俺と荻上さんが裸なのか。そして俺は何故に荻上さんに腕枕をしているのか。更に、何故に同じベッドで寝ているのか)
ぶつぶつと呟く斑目。酔いなどとうの昔に醒めた。
そして斑目コンピューターが導き出した結論は。
(ヤッちまった…)
左手で顔を覆う斑目。しかも辺りを見回してみると、ここは荻上の部屋だということが分かった。
- 67 :歪んだ愛
:2006/03/09(木) 14:33:40 ID:???
- 「ん…」
荻上が声を出したので、ビクッとなる斑目。否が応にも荻上の裸体に目がいく。
(ぅわ…きれーな肌…じゃなくて)
とりあえず右腕が重いので、そーっと引き抜く。
「…斑目さん…?」
斑目は口から心臓が出そうなほど驚く。荻上が目を覚ましたのだ。
「いやっ! あのっ! これはね! 違うんだ! 俺、酔っ払って、記憶がなくて…っ!」
上手く言葉が出てこない。すると荻上が再び目を閉じた。
「いいんです。私から誘ったんですから」
「へ、へー、そうなんだ。って、ええぇぇッ!?」
「しょうがなかったんです」
「しょうがなかったって…?」
《ピンポーン》
玄関のチャイムが鳴った。斑目の心臓は止まりそうになる。あろうことかチャイムを鳴らした人物は勝手に玄関を開け、部屋に入ってきた。
「え!? いや! 入ってきたよ荻上さん!?」
「……」
そして、部屋の戸が開かれた。
そこに立っていたのは。
「さ、笹原…」
笹原だった。笹原は二人を見ると、ゆっくりと近付いてきた。
「いや! 笹原、違うんだ! これには深いワケが…!!」
笹原は斑目の側まで来ると、微笑んだ。
「いいんですよ、斑目さん。全ては僕の計算通りだ…」
「な…!? ま、まさかお前……自分の彼女までも利用して…!?」
「彼女? まさか。それは表向きですよ」
「そ…そんな……荻上さん、こんな…これでいいの…?」
斑目の問いに、荻上は小さく答える。
- 68 :歪んだ愛
:2006/03/09(木) 14:35:33 ID:???
- 「仕方ないんです……だって私は笹原さんが好きですから…」
「そんなの…そんなの間違ってるよ荻上さん!」
「…」
「さて、斑目さん。これで貴方は僕の彼女を奪ったということになる。これをみんなにバラされてもいいんですかね?」
「笹原…お前…」
「ふふ…結局貴方は、僕といるしかないんですよ。そう、それこそ一生……ね」
「くっ…」
「もう離しませんよ。斑目さん…」
「やっぱ、笹×斑はいいなぁ」
荻上は一人部室で原稿を描いていた。前々回は高×笹、前回は斑×咲と描いてきたが、やはりこの二人の方がしっくりくる。しかも今回は自分も登場している。
「自分が出るって恥ずかしいなァ…」
ふと、ペンが止まる。
「笹原さん…本当に私のこと愛してくれてるんだろうか…。ひょっとしたらこの作品みたく、遊び…とかだったりして…」
自分の妄想で不安になっていたら世話しない。
と、そこに笹原がやってきた。
「こんにちはー。あれ? 荻上さん一人?」
荻上は笹原の方に振り向くと、涙目で訴えた。
「笹原さんっ、私のこと、本気で愛して下さいね!?」
「へ?」
完
- 69 :歪んだ愛
:2006/03/09(木) 14:37:02 ID:???
- 荻上同人オチを書いてる人物です。
こういう小ネタって、ひょっとしてお呼びでない?
- 70 :マロン名無しさん
:2006/03/09(木) 14:37:51 ID:???
- そういうオチかあ!
笹×斑と見せかけてそうくるわけか!
実は笹荻話だったとは・・・。
結構好きです、こういう話w
- 71 :マロン名無しさん
:2006/03/09(木) 15:28:09 ID:???
- >こういう小ネタって、ひょっとしてお呼びでない?
いやウェルカムっしょ(w
異例の<斑×荻>から<笹×斑>、そして<笹×荻>へと、楽しく読ませてもらいました。
- 72 :マロン名無しさん
:2006/03/09(木) 15:31:59 ID:???
- 一応書いてみました。「彼女は私のもの」の続きです。
相変わらず妄想全開な上、今回は暴力的な表現があるので注意してください。
- 73 :彼女に幸せを
:2006/03/09(木) 15:33:16 ID:???
- 結局私は何も手に入れられなかった。
あの男は去った。私の目論見どおり。
でも荻上は帰ってこなかった。
かつては信頼と愛情に満ちていた目にこもるのは不信とおびえ。
それはそうだろう。
彼女を裏切ったのは、彼女を利用したのは、間違いなくこの私なのだから。
あの男にした事には一片の後悔も無い。
そうされて然るべき事をあの男はやったのだ。
悔いがあるとすれば、それはあの男の器量を見誤ったこと。
秘密を自分の内に閉じ込められず、無様にも親にすがりつき、逃げ出してしまった小さな男。
そして問題を内輪で片付けられず、公にしてしまうその親。
よく出来た親子と言うべきだろう。
- 74 :彼女に幸せを
:2006/03/09(木) 15:33:56 ID:???
- 彼女には一片の非もない。道具に非などあるわけが無い。
責められるべきは私。
だけど名乗り出る気など毛頭ない。
私にも守るべき立場がある。
それにこれは彼女への罰とも言える。
おびえるがいい。疑うがいい。苦しむがいい。
そして気付け。お前の味方は私だけだ。
今日も荻上はヘッドホンで耳をふさぎ、ノートに向かっている。
だが私は知っている。彼女が常に聞き耳を立てていることを。
臆病な彼女には周りから孤立して生きることはできないのだ。
そんな彼女を観察しながら、くだらない会話をする。
「…ホモ上…」
どこかのバカの声がする。苛つく。彼女の事を何も知らない奴が彼女を語るな。
「だれだ、今言った奴!!」
立ち上がって怒鳴る。誰よりも自分が驚いている。これは私のとるべき態度ではない。
彼女が立ち上がり、教室を飛び出す。追いかける。追いかけながら後悔する。
これではだめだ。これでは私が彼女を追い詰めてしまう。
後ろを振り返る。まだ誰もついてこない。役立たずども。
再び彼女を追いかける。見失うわけにはいかない。
- 75 :彼女に幸せを
:2006/03/09(木) 15:34:43 ID:???
- …ようやく彼女の行く先の見当がついた。屋上だ。
『なんとかと煙は高いところが好き』なんて言葉を思い出し、軽く笑う。
私から逃げきれるつもりなのか?
屋上への扉にたどり着く。呼吸を整える。落ち着いて、慎重にやるのだ。
ノブに手をかけると、後ろから声がする。
ああ、文芸部で妙に私に懐いている奴だ。酷く息を切らしている。
この方が余計な事を言われずにすむと思い、そのまま屋上に出る。
彼女はフェンスにしがみついて外を眺めている。
胸が高鳴る。直接話し掛けるのは久しぶりなのだ。
「荻上さん、大丈夫?」
優しく声を掛ける。もういいだろう。彼女を許そう。彼女は十分苦しんだ。
彼女がゆっくり振り返る。私は優しく微笑みかける。泣いていたのか彼女の目が赤い。
私はゆっくりと近づく。彼女はおびえている。さあ、戻ってきなさい。
私はゆっくりと近づく。彼女はおびえている。優しく受け止めてあげる。
私はゆっくりと近づく。彼女はおびえている。そしてまた仲良くしましょう?
「荻上!!」
あと数歩、というところで隣の馬鹿が大声を出す。
彼女は体を震わせると、叫びながらフェンスをよじ登る。
駆け寄る。
大丈夫、間に合う。
そして
彼女がフェンスのふちに足を掛けた時
私の指が
彼女の背中を
押した。
- 76 :彼女に幸せを
:2006/03/09(木) 15:35:42 ID:???
- …すぐ下に大きな木が立っていた事もあって、彼女は軽傷で済んだ。
そうして私と彼女との絆は切れた。
彼女は部をやめ、卒業するまで私と一言も口を利かず、私と違う高校に進学した。
卒業式の日、私は馬鹿を呼び出して犯した。
馬鹿は泣き叫んだが、知ったことか。お前が悪いのだ。
お前さえいなければ私は荻上を取り戻せたのだ。
馬鹿は醜かった。荻上は可愛かった。
馬鹿は馬鹿だった。荻上は賢かった。
馬鹿の声は耳障りだった。荻上の声は心地よかった。
私はいつの間にか泣いていた。馬鹿が私を抱きしめて言う。
「大丈夫。私はずっとあなたの傍にいるから…」
ふざけるな。私が欲しいのはお前じゃない。お前など荻上の足元にも及ぶものか。
私は小説を書くことをやめた。
自分で見ても不出来な作品を絶賛されては、書き続けることなどできなかった。(馬鹿のせいだ)
それでも「ヤオイ」とやらから離れられなかった。
それが荻上と残した唯一のものだったから。
- 77 :彼女に幸せを
:2006/03/09(木) 15:36:30 ID:???
- 馬鹿はどこまでも私にくっついてきた。高校にも大学にも。
そして私たちは今東京にいる。
馬鹿がコミフェスに行きたいとごねたからだ。
見て回る。
私は買う気などない。冷やかしだ。馬鹿は一人ではしゃいでいる。
そして見つけた。
彼女だ。間違いない。
鼓動が早くなる。
足を踏み出そうとして肩に手がかかる。振り返ると馬鹿が不安げに私を見ていた。
生意気な馬鹿め。あとでお仕置きだ。
鼓動が静まる。私は一息つくと改めて彼女の元へ歩き出す。
「荻上…?」
声を掛ける。彼女が固まる。
隣で馬鹿が必要以上にはしゃぐ。うるさいだまれ。
「あ!これ荻上の本?スゴー!」
我ながらわざとらしい。
「まだ描いてたんだー」
うれしい。彼女がやめていなかった事が。私の見立てが間違っていなかったことが。
「買う買う!500円?」
「いーよ、あげる」
懐かしい彼女の声が心地よく響く。
「え、いーの?」「うん」「あんがと!」
ただこれだけのやりとりが楽しい。
隣の男に気付く。特徴のない、優しさだけが売りのような男。
「彼氏?」「違う!」「フーン」
否定する彼女。嘘つき。私を騙せると思ってるの?
「ま、いいや。同人誌あんがと」「ほんだら元気で。バーイ」
彼女から離れる。平然と。いつもどおりに。
馬鹿が傍に擦り寄る。
なぜか今だけは突き放す気になれなかった。
- 78 :彼女に幸せを
:2006/03/09(木) 15:37:19 ID:???
- 彼女は変わっていなかった。
昔と同じように頼りない男に捕まっている。
そしてまた放り出されるのだ。
それを繰り返して不幸になっていくのだろう。
彼女はバカだ。
そして私はもっとバカだ。
彼女が好きで
彼女と一緒に居たくて
彼女を幸せにしたくて
彼女を不幸にした。
たぶん二度と彼女に会う事はないのだろう。
今の私には全てを捨ててまで彼女を救おうとすることは出来ない。
だからせめて信じてもいない神様に祈ろう。
彼女の幸せを。
- 79 :彼女に幸せを
:2006/03/09(木) 15:37:53 ID:???
- 以上です。
- 80 :マロン名無しさん
:2006/03/09(木) 19:17:55 ID:???
- お疲れ様でした
「馬鹿」がカワイソスで泣ける
どうも脇キャラに感情移入する癖があっていかんなorz
- 81 :マロン名無しさん
:2006/03/09(木) 19:17:57 ID:???
- まあなんだ、キャラ(中島のみw)への愛に満ち溢れてるよね…
とだけ言っておこうか
斑目寅さんシリーズ続きキボンヌ
- 82 :マロン名無しさん
:2006/03/09(木) 19:56:18 ID:???
- > 彼女に幸せを
独善的で救いのないキャラではあるんだけど、
それでも大事なものを失った傷心の姿には
なかなかクるものがありますね〜
- 83 :マロン名無しさん
:2006/03/09(木) 21:32:32 ID:???
- >彼女に幸せを
荻上マジダイブ直前回想シーンを読み直してみたら、中島の隣にいたのは藤本だった…
…分かった。夏コミで中島と一緒にいた帽子女は、中島にいじめられ過ぎて激痩せした藤本だったんだ。
そうだ、そういうことにしておこう。
それはとにかく、歪んでるね中島。
「ガラスの仮面」で、月影千草の「紅天女」に入れあげた結果「紅天女」を幻の作品にしてしまった、速水会長を思い出した。
- 84 :マロン名無しさん
:2006/03/09(木) 22:14:07 ID:Fa5Pi34f
- >>歪んだ愛
それ何て荻クオリティ?
まさか、斑×荻が読めるとは!すごい妄想力をお持ちだ!
荻上さんの妄想オチだとイロイロ遊べていいですね。
>>彼女に幸せを
今までの中島の行動を、説明できていて面白い。
でも、ひとつ。
>彼女がフェンスのふちに足を掛けた時
私の指が
彼女の背中を
押した。
ここはどう解釈すればいいのだろう。中島が荻上さんを??
- 85 :斑恵物語-終-〜まえがき
:2006/03/09(木) 23:22:48 ID:???
- 漸く書き上がりました。
第三話の反省を生かして気合を入れて書いたんですが、
そのせいでめちゃくちゃ長くなってしまいました・・・orz。
30レス分あります・・・。
23:30から投下しようと思います。
>>38
「うわっ面の思い」書いた者です。
お褒めにあずかり、こちらこそ光栄です。
中荻はいいですねぇ。ブームに乗りたい・・・。
- 86 :斑恵物語-終-
:2006/03/09(木) 23:31:30 ID:???
- ルルルルッ、とベルが鳴る。
キーボードを打つ音とパソコンのファンが響くオフィスの静寂を電話のベルが破った。鼻にかかったような電子音が妙に耳に付く。
ワンコールが終わる寸前に、斑目は受話器を取った。電話を取るのも事務の仕事の一つだ。
「はい、桜管工事工業です。」
淀みなくそう応える。片手はシャープペンを握って、頭を数回ノックする。
コンビニで一本ずつビニール袋に包装されていた、105円の洒落っ気も何も無いシャープペンであるが、オフィスには相応しい。
「はい…、いつもお世話になっております。はい…、少々お待ちください。」
斑目は『保留』ボタンを押して、内線番号表を確認すると別部署に電話を回した。
電話の応対も、だいぶ板についていた。
入社したころは慣れない言葉遣いにシドロモドロ。セールスの電話に戸惑ったり、カツゼツの悪い相手に聞き返すにも勇気が要った。
相手の出方が予想を裏切るたびうろたえたものだが、今やなかなかどうして、立派な社会人然としている。
くすんだ灰色(ハーヴェストグレイとか言うらしい)の受話器を置いて、斑目はディスプレイに目をやった。
新人の斑目のディスプレイはまだ液晶ではない。小さい会社なので仕方が無いとはいえ、邪魔臭いCRTの巨体がこっちを向いている。
斑目の視線は画面の下に流れた。
画面の右下。時刻表示。
11:58
昼休みが近いこと確認すると、斑目は静かに嘆息を漏らした。
斑目の頭に、一人の女性の顔が浮かんでいた。いや、顔は見えない。俯いて、携帯の画面を見ている後ろ姿だ。
斑目の頭は自然と昨日にさかのぼっていた。
昨日の夜、少し歩いてから振り返ったときに見た光景。彼女は駅へまっすぐに歩いていって、そのうち見えなくなった。
そのイメージには、そのときの寂しい気持ちが添付されていた。
(今日・・・、来てんのかな・・・。)
ディスプレイに並ぶ数字の向こうに、馴染みの部室を思い浮かべる。
いつもの部室。現視研メンバーがいつの間にか集まって、ただ言葉を交し合う。慣れた場所の慣れた毎日のこと。
でも今日は行きたくない。
部室に、彼女がいるかもしれない・・・。
今日はまだ、会いたくない・・・。
- 87 :斑恵物語-終-
:2006/03/09(木) 23:33:26 ID:???
- 昨日ことを思い出すと、斑目は気が沈んだ。胸の奥に石が埋まっているような、声も出ない気持ちなる。
『あれから』家に帰る道で、何度も恵子と交わした会話と表情を思い返した。
その度に、気がひどく滅入った。
自分の体を新聞紙でも引き千切るみたいに、ズタボロに引き裂いてしまいたくなる。
情けないことをした。女の子と一緒に楽しく過ごすこともできないのが情けなくて、格好悪かった。
だがそれよりも、自分が何か淡い期待のようなものを抱いていたことが恥ずかしかった。
恵子が素っ気なく歩いて行くのを、寂しいなんて思っている自分が、滑稽にしか思えなかった。
むず痒くて堪らなくて、思わず身震いして、慌てて家に歩き出したんだ。
でも、また今もこうして昨日のことを考えている。
自嘲が漏れた。
(ナニ柄にもないこと考えてんだよ・・・。キモイっての・・・。)
帰り道、恵子の言葉がずっと頭に響いてくる。
『やめてよ、そゆこと言うのさ…。』
車の音も街の雑踏もない恵子の声が斑目の頭の中で反響する。
『スゲーオタクっぽい。』
(そう・・・、そんで・・・。)
『……キモイよ。』
「ふはは・・・。」
小さい笑い声が口からこぼれ落ちた。その言葉を再生する度に、斑目の薄っぺらい胸は重くなった。
でも、気が付けばその言葉を何度も、繰り返し、自分に浴びせている。
(マジでマゾに目覚めたかな・・、つってね・・・。)
最初は笑って受けとめていた。『そりゃそうだ』、『当然だよ』、『オタクなんだしさ』って。
それが斑目のいつものやり方になっていた。こんな心が痛いときには、いつだってそうする。
無神経に咲を泣かせて、何にも出来なかったとき。偶然から一緒に食事をして、どうにもならない気持ちがもどかしかったとき。
いつだって、どこからかやって来た笑いが口から漏れた。
- 88 :斑恵物語-終-
:2006/03/09(木) 23:34:00 ID:???
- でも、本当は笑うしかなかったんだと、斑目は気が付いた。
胸が重くて、歩けなくなっていた。
住宅街の、遠くにパチンコ屋のネオンが見える道の真ん中で、じっとしている自分に気づいた。
擦れるくらい近くをピカピカのワンボックスカーが通り過ぎてても、体は動いてくれない。
夜の住宅街の道は、家の窓から暖色の蛍光灯が漏れているくせに、人っ子一人いない。
歯科の広告が張り付いた電信柱に手をついて、粉っぽい表面の汚れが掌にまとわりついて。
このまま家に帰ることが、どうにも堪らない気持ちだった。
座り込んでしまいたかった。
斑目は、またあの言葉を頭の中で繰り返す。
繰り返し繰り返し、自分に聞かせては確かめる。
自分は傷ついてなんかいない、ちょっとムシャクシャしただけだよ。
ただの悪口だよ。俺が嫌いって意思表示。でも別に平気なんだよな。俺も何とも思ってない。
慣れていないから、ちょっと勘違いしただけなんだよ。
やっぱり・・・、笑うしかなかったんだよな・・・。
- 89 :斑恵物語-終-
:2006/03/09(木) 23:35:03 ID:???
- 「お、どうした? お昼行かないの?」
教育係の先輩が、座ったままの斑目に声をかけた。時計はもう12時を回っていた。
斑目は、自分の顔が石膏で固めたみたいにギチギチに強張っているのを感じた。目の疲れをほぐすフリをして、慌てて顔に手をやった。
「あ、はい。そうっすね・・・。そろそろ行きます。」
何事もなかったように、愛想笑いを先輩に向けて席を立つ。
手を当てて肩を回すと、ゴリゴリと音が鳴った。
「斑目君て、昼っていつもどうしてんの?」
「たいがいコンビニですね。買ってその辺で食べてます。」
ふ〜んと先輩が唸る。すると、少しためらいがちで、彼は後輩を昼に誘った。
「たまには、一緒にメシいくか?」
「いっすね。どこかいいとこありますか?」
ほとんど反射的に斑目は応えていた。スーツの上着に袖を通す。
先輩は安心した様子で、『でもオゴリじゃねーぞ』と付け足した。
斑目はホッしていた。部室に顔を出さなくていい理由ができて。恵子と会わなくても仕方ない理由が出来たことに安堵した。
恵子と顔を合わせるのが、本当は怖かった。
きっと、何事もなかったように笑ってる恵子を見るのが怖かったのかもしれない。
会社の外は、空の底まで見るような青空が広がっている。遮るものは何もないのに日差しに夏の厳しさは無かった。
先輩の後をついていく。いつもは曲がるはずの道をそ知らぬ顔で通り過ぎるのが後ろめたかった。
斑目は心の中で呟く。
仕方ねーさ、仕方ねーんだよ、と。
それが、斑目が部室に来なくなった日の出来事だ。(北の国からの純の口調で)
- 90 :斑恵物語-終-
:2006/03/09(木) 23:38:07 ID:???
- 雨が降るのはいつものことで、今日その日も雨が降っている。
建物の古さを誤魔化すために塗られたやたらツルツルした外壁塗装を、雨水が這う。
溜め込んだ汚れを洗いざらい洗い落として、それでも外壁は曇り空にくすんでいた。
風の無い雨の日であったので、学内には傘を差す人が行きかっている。しとしと降る雨の中で話す人もいたが、大抵は靴や服、
または髪の毛が濡れるのを嫌がって建物に次々と吸い込まれていった。
そういった意味で、サークル棟も賑わっていた。各部室は雨の寒さを嫌ってしっかりと閉じられていたが、中から聞こえる声はいつもより大きいようであった。
しかしながら現視研の部室はというと、比較するに少し寂しい入りであった。
会長の大野は奥に座って最近のコスプレイベントの写真を広げている。咲が傍らで一緒に写真を見ているが、
下手に褒めるとまた執拗な勧誘攻撃に晒されるので、あくまで控え目な感想に止めている。
大野はそれが大いに不満なのであった。
「あー!
コレ! 見て下さいっ、かわいいでしょ〜?」
「うん…、そだね。」
なるべく目を合わせないように視線をコントロールする咲に、大野はしつこく写真を割り込ませてくる。
「ほら〜、これなんかどうですか?
あー、このコスいいな〜。私こういうの似合わないんで羨ましいんですよね〜。」
「へ〜…、大野ならたぶんどれ着てもかわいいよ…。」
「着れなくはないんですけどね〜、どうしても内面までは表現し切れないんですよ。こういうお姉さんキャラはなかなか奥が深いです!」
咲をガン見する大野であったが。
「そういうもんかねー…、私にはわからないですよ。」
咲は適当に写真の束をペラペラとめくっているだけで、躊躇なく大野の切なる願いを袖にしていた。申し訳ないという気すらないのである。
雨のせいで音響性の高まった部室に大野の唸りが、地の底からの声の如く響いた。
笹原はいつものように読書で耽っている。ただし、苦痛を伴う意味での読書だ。
- 91 :斑恵物語-終-
:2006/03/09(木) 23:39:16 ID:???
- 決してマンガやライトノベルやコバルト文庫やゲーム誌を読んでるわけではない。笹原が持ち難そう手にしていたの卒研用の資料であった。
念願の内定を得て編集者への一歩を踏み出し、荻上との恋も成就してラブラブな毎日を謳歌しているわけであるのだが、
ここらで棚上げにしていた卒研に本腰を入れなければと意を新たにしていた。
卒業して荻上と会う機会が減るのは口惜しいこと山の如しではあったが、留年しては内定を求めて彷徨った就職活動の地獄の日々が無駄になる。
というわけで久々に真面目に学生をしてるのであった。
とはいえ、ちょろっと読んで早くも眠くなってきたのだが…。分厚い資料はムズカシ語の羅列で成り立っており、わが世の春を満喫している
笹原にはヒトキワ落差が大きく感じられる。また加えて、昨日の夜も荻上さんとナニしてアレしていたわけであり…。昨日というか、ここのところ
暇を見つけてはアレしたりコレしたりばっかりであることは否定しようのない事実であるので、ぶっちゃけて寝ていない。
ある意味、寝てるけどね・・・。
むにゃむにゃ・・・。
笹原の手を離れた本が、喝っっ!!とばかりにけたたましく机を打った。
「おおっ!」
「あ…、ごめん。ぼーっとしてたよ、ハハハ…。」
自分の自堕落な日常生活を悟られまいと苦笑いで本を手に取る。幸い、大野も咲もさして気にしていない様子である。
(笹原さん眠そう…。寝てないのか…。うふふ…。まーそんなもんですよねー。うふふ…。)
(ササヤン…、楽しいか…、そーか、よかったなあ〜…。)
バレバレでした。
ふと、笹原は携帯を取り出した。しかし、メールの着信があったわけでも、メールを打つでも電話するでもなく、またすぐにしまった。
窓の外ではまだ雨が降っているようだった。
「荻上さん遅いですねえぇ〜…、うぅ〜ふふふ…。」
大野がニヤニヤして言う。笹原は苦笑いで返した。
「いや、ま、そーじゃなくて。今日も斑目さん来なかったなぁ、って。」
「あ、あー…、そうですねー…。」
大野も携帯を取り出して時間を見る。ミシンに向かう田中の待ち受けの隅に、1時を10分ほど過ぎた時刻が表示されている。
- 92 :斑恵物語-終-
:2006/03/09(木) 23:40:52 ID:???
- 「来ませんでしたね、斑目さん…。最近見ないですよね…。」
「そーだなー。」
咲は写真を机に放って、視線を中空に漂わせる。本棚の上にゲーム機やフィギュアやプラモの空箱が無造作に積んであった。
火事の原因となる大掃除で片付けてから、また随分溜まってきていた。
「忙しいのかな? あれで意外と…。」
咲が言った。笹原も大野もう〜んと唸ったきりで言葉が出てこない。
事務職の斑目が昼も食べられないほど忙しいはずがないのは皆わかっていたが、はっきりと言い切るのは何となく避けたかった。
「メールとかしてみました?」
大野が笹原に問いかける。笹原は小さく首を振った。
「してないねぇ…。そのうち来ると思ったし…。」
「今してみたら?」
「そーねぇ〜。」
咲の提案に、笹原は同意して携帯をジーンズの窮屈なポケットから引っ張り出した。
「止めとけよ。仕事中にメールしたって返ってこねぇって。」
少し離れた席にぽつんと座っていた恵子が言った。ギッチリと腕組みをして、机の上に広げたファッション誌を眺めている。
その様子は何だか囲碁でも打っているかのようで、少しジジ臭かった。机の上に底の深い大き目のバッグが乗っかっていた。
「来たくなったらそのうち来るだろ…。」
「あ〜…、まあね〜…。」
「それはそうですけどね〜…。」
恵子の正論に、笹原も大野も名残惜し気に言葉を濁す。掌の携帯は鈍い発光の省電力モードに切り替わった。
「アイツも社会人なんだし、向こうの付き合いってのもあんじゃねーの?」
視線を雑誌に向けたまま、恵子はきっぱりとした口調で言う。それは腕組みのポーズと合わさって奇妙な風格を恵子に纏わせていた。
笹原は携帯の重みに耐えかねて、腕を机に落とす。大野も右手の指で左手の指先をいじくるばかりで上手いこと反論のしようも無かった。
静かに成り行きを見守っていた咲が言った。
「でもさ…、気になるだろ…? 急に来なくなると…。お前気になんない?」
力の抜けた上体を咲は恵子に向ける。恵子は表情を抑えつけるように口元を歪ませた。
- 93 :斑恵物語-終-
:2006/03/09(木) 23:41:46 ID:???
- 「別に…、なんないけど?」
声にさっきまでの鋭さはなくなっていたが、咲はそれに触れるのは底意地が悪いような気がして、短く相槌を打った。
「あー、まあ…。」
「そー言われると言葉が無いですねえ…。」
「カワイソウだな、斑目さん…。」
「フツーだろ、別に…。」
恵子の言葉に鋭さが戻っていた。
笹原と大野は顔を見合わせて苦笑して場を和ませる。そして笹原の携帯は再び窮屈なポケットに押し込まれた。
「ま、夜にでも電話してみたら? 案外マジで忙しいのかもよ?」
「それが良いかね…。」
曖昧に笑って笹原は資料を手に取った。大野も広げ放題に広げた写真を大野なりの分類方法で整理し始めた。
咲はひとつため息をつくと、本棚の少女マンガを適当に見繕って開いた。そうしながら、咲は視界の隅の恵子を見る。
先程からの変わらぬ姿勢のまま、彫像のようにファッション誌のモデルを凝視している。
恵子の手が動くのは、時たまページをめくる時だけだ。それも、なかなか稀にしか起こらない。
咲もまた、同じページをいつまでも読むことになった。
- 94 :斑恵物語-終-
:2006/03/09(木) 23:42:48 ID:???
- 薄い雨雲の向こうがほんのりと日の光に滲んで、雨はしとしとと空からしたたり落ちて校舎を濡らしている。
今にも止みそうな弱い五月雨は、晴天が透けて見えそうな雲模様とは裏腹に降り続けた。
もう、濡れたばかりのアスファルトが放つむっとするような埃っぽい悪臭も流されて、学内は夜のように寒かった。
部室の窓ガラスを雨水が落ちる。濡れたガラスの外側と曇り空が、窓に貼られたくじアンのアニメ絵ポスターをよりくっきりと浮き立たせる。
外は雨でびしょ濡れなのに、ちっとも意に介さず微笑んでいるケッテンクラート会長が、少し奇妙な感じを醸し出していた。
笹原も大野も部室を後にし、いつの間にかそこには咲と恵子が残されていた。
二人は机の両端に向かい合わせで座っている。
「・・・あんさ。」
咲が言う。
「あんた何かあった?」
咲は手にしていた単行本を自身のヘソの上に乗せて尋ねた。恵子はまだファッション誌を開いていた。
「・・・何ソレ?」
恵子はパイプ椅子に座り直す。ずっと座りっぱなしでお尻に鈍痛を感じていたし、腰も少し痛かった。両肘を机の上に乗っけて、体重を分散させる。
そのとき少し背中を丸めて、咲を視界の外に追い出していた。
「別に何もないけど・・・。」
素っ気無く恵子は応える。咲はそれを聞いても単行本に視線を戻すことはなかった。少しう〜んと唸った。タイミングを計っているようだった。
「うんとさ・・、けっこう久しぶりに部室きたじゃん? そのわりに元気なさそーだったから・・。」
恵子はわざとらしくページをめくった。気にもしていないふうを装いたかったから。
視線が一瞬、自分のバッグを舐めた。
「・・・そーでもないよ。」
「どっか具合でも悪かった?」
「元気だよ。」
う〜んと唸る代わりに、咲はへ〜と間延びした声を発した。
端の黒くなった蛍光灯が部室の真ん中を鮮明に照らしているが、窓から雲が忍び込んできたようで、部室は何となく薄暗かった。
咲は次の言葉を模索して恵子を見つめている。恵子には咲の顔は視界の外であったが、咲の手が作る表情は否応無く目に入った。
恵子が言った。
「何でそう思うの?」
咲はちょっとだけ驚いて、また言葉を探して唸った。
- 95 :斑恵物語-終-
:2006/03/09(木) 23:43:51 ID:???
- 「あ〜・・、何だろ? 全体的に?・・そんな感じだから。」
「そー・・・。」
咲には似合わない、自信なさ気な言葉だった。
「お前らしくない感じ。テンション低いし、コーサカのことも何も訊かないし。」
今度の理由には少しだけ自信が滲んでいた。咲は恵子が部室に入ってきたときのことを思い起こしていた。
いつもは真っ先にコーサカを探して、居なければ口に出して尋ね、いよいよ居ないとなると不満を口でも体でも表した。
今日の恵子は挨拶こそいつも通りであったが、部室を見渡すとすぐに手近な席に腰を下ろしていた。
咲は心の中で小さな覚悟を決めて尋ねた。
「コーサカに、何か言われた・・・?」
咲はムズムズするような感覚を背筋に覚えた。もちろん真面目に真剣に恵子の様子を心配しているのだが、
自分の彼氏とそれを狙う女の仲について気を揉むのは少しヘンだとも思った。
恵子は机に覆い被さるのを止めて、背もたれに体をあずける。雑誌を手前に引き寄せた。
「別に、最近会ってないし。」
続けて恵子は言った。
「それに、高坂さんのことはもういいよ。」
咲はしばらく沈黙して、考えを整理した。
「あ、もういいって・・・?」
「だからもういいの。ねーさんにアゲル。」
(アゲル? あげる…、あげるってか…?)
咲はその短い日本語を何度も暗唱した。それこそ今まで何度も恵子をコーサカから遠ざけようとしたくらいには暗唱した。
負荷のかかった脳が排熱するために、咲に大きく深呼吸することを要求して咲は従った。恵子はそれを見てもクスリともしない。
咲は行き酔いよく叫んでやった。
「あげるって、もともと私のモノだよ。コーサカは!」
冗談めかして応えたものの、恵子はノーリアクション。釣れない…。
笑うでもなく、照れるでもなく、無表情で座っている。咲は萎んでいく自分の笑い声を寂しく聞いた。
気を取り直して咲は言った。
「また何で?」
「・・・まあ。」
恵子はまた自分のバックに、一瞬、目をやった。
- 96 :斑恵物語-終-
:2006/03/09(木) 23:44:56 ID:???
- 「・・・・・・。」
「まあ、そろそろ潮時かなって。」
恵子の言葉に、咲の目が鋭く尖った。嘘をついているのが、どうしてか咲にはハッキリと分かってしまった。
別に何の根拠があったわけでもなかったけれど、確信に近い自信を感じていた。
咲は改めて恵子をしげしげと見つめる。恵子は机の端っこで、だらりと椅子に寄りかかっている。そのくせ顔は剛直したように張り詰めていて、口は堅く閉じていた。
決して自分に視線は向けないで、雑誌の一点を見つめているようだった。恵子の目はぼんやりと開かれていたが、瞼は瞬きを忘れていた。
「・・・なんかあったんでしょ?
躊躇いもあったが、咲は訊いた。結局は、咲は恵子がかわいかったのだ。
咲に妹は居なかったが、恵子に対してそれに近い感情を覚えていた。
咲は恵子の方へ椅子を引きずった。
「私には言いたくない?」
咲の声を聞いただけで、恵子には咲がどんな顔して自分を見ているのか分かった気がした。
咲の声は、押し付けがましくも、軽薄でもなくて、頼もしくて優しい。咲の手は袖からのぞいた自身の肘を抱きかかえていて、
その手も肌もうっすらと赤みを帯びて、本当に美しいと恵子は思った。
「私は言って欲しいんだけどね・・・。」
照れたように咲が言った。その言葉は恵子の目の底をグイっと掴んで、そのまま喉の奥まで落ちていった。
恵子は耐えられなくて口から言葉を吐き出した。
「・・・ねーさんてさ・・。」
「ん・・?」
口を手で抑えてしまいたかったが、手はパイプ椅子を掴んで動いてくれなかった。
「・・・ねーさんて、スゴ過ぎんだよ・・。」
「・・・。」
咲は声もなく恵子を見ていた。
「・・・ねーさんて、すげー・・、カッコいいし・・・、キレイだし・・、優しいし・・、頼れるし・・。」
恵子は顔を伏せた。
「頭よくて、面白いくて、話しやすいくて、かわいくて、なんか・・、すげー・・・、ちゃんとしてて・・、芯があるっていうか、立派だし・・・。」
「そんなことねーよ!」
咲は軽く笑ったが、静か過ぎる部室にその声は痛々しく響いた。咲は自分の表情が脆く剥がれ落ちていくのを感じて、自分の言葉を後悔した。
- 97 :斑恵物語-終-
:2006/03/09(木) 23:46:59 ID:???
- 恵子の唇がわなわなと震えて、いつもは大きく笑っているはずの口が歪んでいた。
「アタシみてーな・・、バカな小娘じゃ・・、どうにもなんねぇよぉ・・・。」
恵子の瞳から大粒の涙が零れた。涙は頬を走ってから恵子の服を濡らした。あるいはそのまま宙に躍って、雑誌のモデルの肌をシワくちゃに滲ませた。
恵子は声を出して泣こうとする自分の体を必死に抑えつけようとしたが、もうどうにもならなかった。
後は咲に泣いている顔を見せないように机に突っ伏して、両腕で覆い隠すことしか出来なかった。
泣き顔を咲に見られるのは嫌だった。
「・・・クソ・・なんで・・うまくいかねぇんだよぉ・・。恋愛なんて・・・・・簡単だと思ってたのになぁ・・・・。」
自分の口から零れた言葉を聴いて、恵子はまた声を上げて泣いた。
泣きながら、何で泣いてしまったのか、思いを巡らす。原因が心に浮かびそうになると、恵子は怖くて、また涙を零した。
咲はどうしていいのか分からずに、見ていることしかできないでいた。
恵子が泣いている。
頭に浮かぶのはコーサカのことだが、ならば一層、自分が何か言ってはいけないと思う。
咲に唯一できたのは、ハンカチを泣き伏している恵子の前に置くことだけだった。恵子にハンカチが見えないのは分かっていた。
雨が降っていて、恵子が嗚咽を漏らしているのに、部室は余計に静かで居たたまれない。
視線を外そうと思っても目は動かず、席を立つことも無理だった。
咲は自分が恵子に涙を流せたことが、とても辛かった。
- 98 :斑恵物語-終-
:2006/03/09(木) 23:47:36 ID:???
- 不意に恵子がゆっくりと立ち上がった。
化粧がぐずぐずに崩れていて涙の通り道がはっきりとしていた。目の周りの皮膚が紅くなって、まるで子供の顔のようだった。
咲が何かを言う前に、恵子はさえぎるように言った。
「ごめんね・・・。いきなり・・泣いちゃって。ねーさん、気にしなくていいから・・・。」
咲は何か言いたかったが、やっぱり何も出てこなかった。
「ごめん・・。もう帰るわ。」
言うや否や恵子は自分のバッグを引っ手繰って部屋を飛び出していった。
咲は腰を椅子から浮かせたままで恵子を見送っていた。立ち上がろうにも、追いかけようにも、心がついて行かなかった。
小さく音を立てて、再び椅子に体をあずける。パイプ椅子が軋んで鳴いた。
「・・・何だよ、・・・それ。」
そう言うのが精一杯だった。
- 99 :斑恵物語-終-
:2006/03/09(木) 23:48:21 ID:???
- 恵子は備品が並んだ狭い通路をバッグをぶつけながら縫うように歩いた。
すれ違う人に顔を見られないように手首を鼻先にあてがう。そうしていてもまだ涙が零れていた。
階段を降りたところで、小さな人影が出会い頭に前に立ち塞がった。
荻上だった。
「あ、あれっ? どうしたんすか?」
反射的に相手を見ようとした恵子の瞳を、荻上が驚いた表情で見ていた。
「何でもない。」
短く言って、恵子は荻上の横を走り抜けた。荻上が追いかけてくるかもしれないと思ったが、振り返らずに走った。
サークル棟の外は雨で、コンクリートもアスファルトも黒い灰色に変色している。
恵子は唇を噛み締めてバッグの中の折り畳み傘を探った。
恵子の手が止まった。
バッグの中の、包装紙に包まれた長くて薄い箱が恵子の手に当たっていた。包装紙を雫が濡らした。
口元を歪ませて、恵子はそれを掴むと、少し離れたクズカゴに投げ捨てた。
箱は雨ざらしのクズカゴに中に落ちていった。
悔しいくらいに見事。
包装紙はすぐにぐしょぐしょに濡れて変色して、薄汚いゴミに変わった。
- 100 :斑恵物語-終-
:2006/03/09(木) 23:51:35 ID:???
- 昨日から降り続く雨は今日もまだ止みそうにない。雨水を十分に蓄えた土と樹木と建物が冷気を放っている。
この雨で一気に夏は南の彼方に逃げ去って、かわりに秋がいよいよとばかりに腕を振るっていた。
斑目は紺色の布と黒い取っ手の紳士傘を差して久しぶりに学内を歩いていた。
傘を持っていない方の手には例によってコンビニのレジ袋を持ち、中身が雨に濡れないように手を胸元に引き寄せている。
斑目は水溜りを避けつつ歩いていく。それでもズボンの裾は跳ね上げた雨水に濡れていて、革靴も水が染み込んでつま先が少し冷たかった。
今日、斑目が部室に顔を出す気になったのは笹原からの電話のせいではなかった。
会社の終業時刻が近づいたころに咲からメールが届いた。内容はごく簡単で明日は部室に顔を出して欲しいというものだったが、
メールの最後におまけのように、ちょっと相談があるとあった。
返信メールで相談内容について訊いてみたが、長くなるから明日話すと返ってきた。こういうのは、斑目は苦手だ。
恐らく高坂のオタク趣味について、というのが斑目の予想である。今まで咲からの相談事は大抵その内容であったし、
自分にアドバイスできるのもその事だけだったのもあった。
何にせよ、斑目はこういうのが苦手だし、咲と顔を合わすのもちょっと気まずかった。恵子が明日来るのか訊きたかったが、
咲に分かるはずもないし、ダサいので止めた。
咲は意外にも部室ではなく、その前にある喫煙所に立っていた。木製のベンチは水を吸って茶色い汁を分泌しておりとても座れたものではなかった。
「あれ? またタバコ吸い始めたん?」
久しぶりのせいで、少し照れくさそうに斑目は言った。
咲の表情は暗い。手にタバコは持っていなかった。
- 101 :斑恵物語-終-
:2006/03/09(木) 23:52:50 ID:???
- 「ま・・、部室だと話しにくいからね。」
「あー、そうすか…。」
「今日はこっち来て大丈夫だったの?」
「うん、ま、別に…。この頃は先輩に昼メシ誘われてたんだけどね。」
「そーかい・・。」
咲は先に立って人通りの少ないサークル棟の隅に斑目を連れて行った。斑目は傘をギュルギュルと巻き上げて素直に後に従う。
適当に周囲の人気を咲は窺う。やや緊張して、斑目は咲が話を切り出すのを待った。
「最近さ、恵子と話した?」
斑目は声が出そうになった。
咲の様子からタダナラヌ雰囲気を感じてはいたが、思ってもいない名前を持ち出されて背中を殴られたように息が詰まった。
「最近よく話すって言ってたじゃん? 一番最近会ったのっていつ?」
神妙な表情の咲に、斑目は脳は混乱を極めた。一つの疑問が頭の中をオーバルコースを走るレーシングカーの如く駆け巡った。
(ど、どこまで掴んでいるんだ?)
質問の答えを導き出すに当たってそれは極めて重要な問題であった。が、咲の表情は固く、意図を読むどころではなかった。
「あぁーと…、前に、部室に顔出した日かな…? それからは会ってない…。ていうか他のヤツとも会ってないな…。」
咲は神妙な表情を崩さず、口元をいびつにひねった。斑目の額から冷や汗が滲み出ていた。
咲は言った。
「そんときって、私も居たときだよね・・?」
「ああ…、そーだったかな…? たぶん…。」
咲は傾げた首の角度を何度か変えて、そしてその度に口をひねって声にならない呻きを漏らした。
斑目は傘から雨粒を振り落としながらその様子をじっと見ていたが、無言に耐えかねて咲に尋ねた。
「あんさ…、どうかした?」
咲はひねった口元を緩めて、少し目を開いて言う。
「うん・・・、ちょっと・・。」
咲の表情に、斑目は徐々にに混乱から醒めていった。こういう顔の咲を見るのは、咲を泣かせてしまったあの一件以来だ。
「あー、んと・・。」
斑目は声の調子を整える。
「それって・・。」
「あのとき私なんか恵子に言ったのかなぁ・・・。」
- 102 :斑恵物語-終-
:2006/03/09(木) 23:53:32 ID:???
- 斑目の言葉を遮って咲は言った。斑目は咲の言っている意味が分からない。
「いや、別にフツーだったと思うけど・・。よく覚えてないけどね・・・。」
「うん・・・。」
咲は俯いて黙ってしまった。斑目は少し体を屈めて咲をのぞき込んだ。
「・・・どーかした? 何かあった?」
固く閉じた咲の唇が躊躇いながらも開く。小さく息を吐いて、咲は話し始めた。
「昨日なんだけどね・・・。」
「うん・・。」
「けっこう久しぶりに恵子が部室に来たんだけど・・。」
「・・・。」
「最初はササヤンとか大野もいてワイワイいつも通りだったんだけどさ、恵子がなんか元気なかった気がしたんだよ・・。
そんで私、他の奴らが出てったあとに恵子に聞いてみてんだけどね・・・。」
斑目の体はビリビリと少しだけ震えた。
咲はそこで言葉を詰まらせる。促すように、斑目は相槌を打つ。その声も少し震えていた。
「うん・・・。」
「そしたら、アイツ急に私のこと褒めだしてさ、いろいろ・・・。そんでなんか・・、アイツ、急に泣き出したんだよね・・。」
斑目は目の前が真っ暗になった。
真っ暗になってしまって、濡れたつま先がひどく冷たかった。
体が内側にギリギリとねじ込まれるように痛くて、座り込んでしまいたかったが、膝がギプスを嵌めたみたいで動けない。
咲の顔も見えないし、声も聞こえなかった。
「コーサカにそれとなく訊いたんだけど、最近会ってないって言うし・・。ササヤンに言うわけにはいかないからさ・・。」
「・・・。」
「斑目は何か知らない? 私、恵子にヤなことしたかな? ・・・って言うかずっと、気付かないで何かやってたのかな・・?」
咲の声は雨に濡れたコンクリートと同じぐらい冷え冷えとして寂しげだったが、斑目の頭の中でその質問の答えはすぐに出て、咲の声もすぐに消えた。
斑目は言った。
「春日部さんのせいじゃないと思うよ。」
斑目の口調はきっぱりとしたものだったが、自分のせいとは言わなかった。斑目にそう言う自信はなかった。
斑目にあったのは、恵子が泣いたということと、自分にはそれを防ぐことや事前にその兆候を察知することが出来なかったことへの落胆だった。
自分という人間がどうしようもなくつまらなく思えて仕方がなかった。
- 103 :斑恵物語-終-
:2006/03/09(木) 23:54:22 ID:???
- 「ごめん、わかんねぇ・・・。」
斑目はそう言ったきりで、あとは何かを台無しにしてしまったという思いが食欲も何もあらかた持っていってしまっていた。
軽く手を上げて、斑目は咲と別れた。咲は斑目に捉え所のない相談をしたことを謝ったが、斑目は無言だった。
上って来たばかりの階段を下っていく。一段下りるごとに食べる気にもならない昼食が斑目の腿を打つ。
ガラス戸を抜けて外に出る。雨音がして、やたらと静かだった。雨と昼時のせいか、人影はない。自分だけがぽつんとそこにいた。
「仕方ねぇ・・、仕方ねぇって・・。」
またいつものように呟く。咲を好きになってからずっとそうしてきた。そうやって誤魔化してきた。
いろいろな理由をつけて、いつもそう呟く。傷つくのを怖がって、傷ついているフリをする。
そういうことに慣れてしまっていた。
「斑目さん。」
驚いて振り向く。声をかけたのは荻上だった。
「あ、荻上さん。こんちわ。」
「久しぶりですね、部室に顔出すの。」
荻上は斑目の目を真っ直ぐに見据えていた。斑目はたじろいで目を逸らした。
荻上は言った。
「春日部先輩から聞きましたか? 恵子ちゃんのこと。」
斑目はドキリとしたが、愛想笑いで誤魔化した。ほとんど反射的にそうしていた。
「はは・・、まあね・・。ちょっとビックリしたね・・・。俺にはよくわからんけど・・。」
荻上の表情に目をやる。荻上は真っ直ぐに自分を見据えている。
少し光を宿した黒い瞳が刃のように爛々と光っていた。
「そうですか。」
荻上は短くそう言うと、背負ったリュックを下ろして中をガサゴソとまさぐった。
リュックから手を抜いたとき、荻上はグシャグシャの包装紙に包まれた物を握っていた。
「どうぞ。」
荻上はそれを差し出す。
斑目は訳も分からずに受け取った。
「何、これ?」
荻上はまた斑目を見据えていた。
- 104 :斑恵物語-終-
:2006/03/09(木) 23:55:41 ID:???
- 「昨日、恵子ちゃんがゴミ箱に捨ててました。部室に行ったら春日部先輩が事情を話してくれました。」
斑目は受け取った物にまじまじと見つめる。
包装紙は一度濡れて乾かしたようでシワくちゃだった。また包装自体もヘンテコに崩れていた。
「すいません。悪いと思ったんですが、中身を見ました。紳士物のネクタイです。」
斑目の背中に一瞬、熱いものが走った。
荻上は続ける。
「ウチでそういうネクタイをするのは、斑目さんだけですから。」
斑目は箱の感触を確かめる。ボール紙の箱も水を吸ったようで、ところどころ、握っただけで容易くへこんだ。
斑目は大事にその箱を握った。
「斑目さん。」
荻上は少し顔を上気させて言った。
「斑目さんは受けです! それも総受けです!」
「何言ってんの?」
「真面目な話ですっ!!!」
荻上は一喝した。
「メガネくんは受けが基本なんですっ!!!」
ますます上気させた顔で荻上は言う。顔を真っ赤にして筆を尖らせている。斑目は圧倒された。
「そういう意味で斑目さんは受けです!!」
「うん・・・。」
「でも、受けでも、恋愛には攻めなきゃいけないときもあるんですっ!!!」
荻上は一つ息をついた。
「ちゃんと恵子ちゃんの気持ち、わかってあげて下さい!」
そう言うと、荻上はまたひとつ深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。自分の言ったことの恥ずかしさに一層真っ赤に赤面していた。
斑目は自然と笑っていた。
「すいません。差し出がましいことを言いまして…。失礼します。」
「ちょっとごめん。」
斑目はすっきりとした顔をしていた。今度は斑目が荻上を真っ直ぐに見ていた。
- 105 :斑恵物語-終-
:2006/03/09(木) 23:56:28 ID:???
- 「部室って誰かいる?」
「ええ…、大野先輩とか、高坂さんも、笹原さんもいますけど…。」
「そう…。」
斑目は大きく息を吸って、グッと体に力を込めた。
「んじゃ、俺、春日部さんに話あるから、部室の奴らがこっち来ないように見張っといて。」
荻上は目を白黒させている。予想外の展開になったことに困惑していた。
「??
はあ…、いいですけど…。いや、そうでねぐて、私が言いたかったのは恵子ちゃんを…。」
「いや、わかった。みなまで言うな。」
斑目は掌を広げて荻上を制すと、足取りも確かにサークル棟の中に引き返した。
荻上も引きずられるようについて行く。
「あんがと、荻上さん。」
「はい?」
「助かったわ。」
「! ならいいです…」
荻上は自分の心意気的なものは伝わったようなので大人しく部室に戻った。
荻上は思った。
自分と笹原とが付き合う契機になった合宿を企画してくれた恵子に、少しは恩返しができたのだろうか?
- 106 :斑恵物語-終-
:2006/03/09(木) 23:57:48 ID:???
- 斑目は腹を決めて歩く。できるだけ早足で、決意が鈍らないうちに咲の前に行きたかった。
サークル棟の隅、咲はまだそこに居た。打ちっぱなしの冷たい壁に体をあずけている。
咲は驚いて壁から体を起こした。
「どしたの?
なんか思い出した?」
期待するような咲の声を、斑目は曖昧な返事でいなして近づいていく。
「いや、まあ・・、さっきの話とは、関係ないんだけどさー・・。」
「あーそう・・。」
咲は明らかに気落ちしたふうで、一瞬怯みそうになる。でも、ここで逃げるわけにはいかない。
斑目は一回目を閉じてもう一度気合を入れた。
「あんさ・・・。いきなりこういうこというのも何なんだけど・・。」
「あに?」
「俺と付き合ってくんない?」
声も若干ヘンだったし、言葉を選ぶ余裕もなかったが、意外にすんなり言えたことに斑目は自分でも驚いていた。
でも、咲のが確実に驚いていた。目が点になっていた。
「・・・マジで?」
「うん・・・、マジ。」
咲は通路を見回した。
「や、ドッキリじゃないって・・。ほんとに、マジで。春日部さんのこと、す、好きだから、俺と付き合ってくれ。」
急に咲の顔が真っ赤に染まった。
「え、え? ちょっとまって。何でそうなるの? すごい、急なことでビックリしてんだけど・・。」
「ごめん・・。でも、俺、もうずっと春日部さんのこと好きだったんだよね・・。高坂いたし、言えんかったけど・・。」
斑目は照れながらもしっかりと咲の目を見ている。斑目の告白が冗談でも嘘でもないことが咲にも分かった。
それだけに咲は、斑目を見ることができないでいた。
「なんか・・・本気だっていうのは、わかった・・・。」
「それで・・?」
咲は言葉に詰まった。体中から汗が噴き出して、再び混乱が頭を支配した。
「えぇ〜、ちょっと・・・、なんか、今すごい、わけわかんないから・・。急かさないでよぉ〜。」
目をグルグルさせて、咲は頭を抱えた。なんでこんなことになったのかさっぱり分からなくて、とにかく焦って、
さっきまで寒かったはずなのに今はどうしようもなく暑かった。
- 107 :斑恵物語-終-
:2006/03/09(木) 23:59:15 ID:???
- (恵子の心配をしてたはずなのに、何でこんなことに? わかんない〜。全然わかんないィ〜。)
斑目は緊張の面持ちで自分を見ている。どうしよう。ますます焦る。
「春日部さん?」
「なにっ?!!!」
過剰なリアクションに斑目もビビった。
「いや、ごめんね・・・急で。」
「うん・・。今かなり驚いてる・・。」
それが偽らざる本音だった。
「でさ・・、俺と付き合ってくれるかな?」
攻めの斑目に咲きは困惑してしまう。らしくない、押しが強い。
「それは・・・、何て言うか・・。私にはコーサカいるし。コーサカのこと好きだし・・。」
「うん・・。」
「斑目はいいヤツだと思うし。一年のころは・・、まー、馬が合わなかったけど・・。世話にもなったしさ。迷惑もかけてフォローしてもらったりとか・・。」
咲は少し俯いて、丁寧に言葉を紡いだ。今までのことを思いこしながら。ケンカもしたり、マジでぶっ飛ばしたこともあったり。
助けたり、助けてもらったり。新人会員を追い出したり、火事を起こしたりで、迷惑をかけたりもした。コーサカとのことで相談に乗ってもらったことも何度もあった。
もしかして、その度に斑目は傷ついていたのかもしれない。それでも斑目はおくびにも出さずに相手をしてくれた。
振り返ると、現視研メンバーで一番言葉を交わしていたのは斑目だった。
突然の告白は、驚いたが嬉しくもあった。
でも、自分が好きなのはコーサカで、嘘はつけない。斑目の気持ちに応えることはできなかった。
咲は言葉を探す。今までの斑目との関係は失いたくなかった。
「斑目の気持ちは、けっこうっていうか・・、正直嬉しかったけど・・。私はコーサカと付き合ってて・・。」
「春日部さん・・。」
斑目は静かに、しかしはっきりとした口調で言った。
咲は斑目の顔を見た。
「フるならもっとはっきりフッてくんない?
グチグチ言ってないで。」
「は???」
咲は鳩が豆鉄砲を食らったような顔になった。それがどんな顔なのかは、永遠にわかるまいっ!
- 108 :斑恵物語-終-
:2006/03/09(木) 23:59:56 ID:???
- 「え、今なんて?」
「うん、だからさ。気を使ってくれるのは嬉しいけど、ぶっちゃけ俺をフるわけでしょ?」
「あ〜…、そーですけど〜……。」
「ならもっとスッパリやって欲しいんだよ。何か、いい人だけど〜、みたいんじゃなくて。」
斑目は快活な笑顔を見せる。
咲はフツフツと怒りがこみ上げてきた。
「ちょっと待て〜〜〜!!! お前は私が好きなんだよな?」
「そうだよ。本気で好きだよ。もうずっと好きだったよ。」
「ならなんでそんな態度なんだ? やっとのことで告ったんだろ?」
「まー、やっぱり中々言えないよね。俺なんか春日部さんの眼中に無いのはわかってたからね。だから、今日まで言えなかったよ。フラれるの分かってたからね。」
「だったら何で告ったんだよっ!!!」
斑目は急に真顔に戻って、少し照れくさそうに顔を掻いた。
「告んねーとさ、終わりにできねーじゃん? 終わんねーと・・・、次いけないからさ。」
咲はハッとして、そして小さく息を吐いた。頭の中で漸く全てが一本でつながった。
(なーんだ・・。そゆことですか・・。)
咲はクスクスと自嘲を漏らして、斑目を少しだけ見直した。
「まったく、私もニブいなあ〜。」
「まあ、自分のことだと難しいだろうね〜。」
「それもあるけどさ。」
「??」
咲はおもむろに深呼吸して斑目の正面に立った。
「んじゃ、スパッといきますか。」
「お、おう!!!」
咲は斑目を目を見据える。斑目は顔を赤くし、唾を飲み込んだ。覚悟を決めて望んだ斑目だったが、いざとなると流石に緊張した。
「私はコーサカと付き合ってるし、コーサカが好きだ。だから斑目とは付き合えない。悪い。」
その言葉は、やっぱりちょっとだけショックだったが、中途半端にフラれるよりは何倍もマシだった。
自分の積年に渡る思いが、見事なぐらいバラバラに砕け散って、言えずに悩んでいた情けない自分がいとおしい思えた。
咲を好きだった時間が無駄になったとは斑目は思えなかった。
- 109 :斑恵物語-終-
:2006/03/10(金) 00:01:12 ID:???
- 「ははは・・、あんがと。こっちこそ悪かったデスヨ。」
斑目は照れ臭くて笑った。咲も同じだった。自分たちのやっていることが、青春マンガみたいで、妙に気恥ずかしかった。
でも気分は、スッキリとしていた。
「んじゃ、会社戻るわ。」
斑目は階段に向かって歩き出そうとして、咲が声をかけた。
「恵子のこと、頼むよ。次泣かせたらツッコミじゃ済まないからね。」
斑目は苦笑して振り返った。
「その手は食わないよ〜。俺も成長したかんネ。」
咲のカマ掛けを見破ったまでは上々であったが、斑目の顔はいつにもまして赤かった。メガネが曇りそうなほどだった。
「ま、ならダイジョブだね。」
苦笑いを残して斑目は階下に消えていった。
部室へ向かう咲の足取りは軽かった。
- 110 :斑恵物語-終-
:2006/03/10(金) 00:02:09 ID:???
- 「んじゃ行ってくる。」
恵子はそう言って、兄のサンダルを履いた。傍らには可愛らしいブーツがくたくたになって倒れている。
「いってらっしゃーーい。」
笹原はやや疲れた笑顔で恵子を送り出した。
恵子はそれを一目見てから、ドアノブに引っ掛けてあったビニ傘を取って部屋を出た。
外はまだ雨が降っている。
部屋を出て、忘れていた雨音に気付いた。昨日からずっと恵子は外に出ていなかった。
ビニ傘を開いて、雨の中に踏み出す。道に人影はなかった。
「つめて・・。」
恵子はそうこぼした。古い舗装路にはたくさんの水溜りが出来ていて、どれも恵子を罠にかけようと待ち構えている。
外灯に照らせれて白く光っては、サンダルを引っ掛けた恵子の素足を濡らした。
路上に駐車された車の横を通り過ぎる。黒く磨かれたミニバンの車体。窓ガラスに映った自分の姿に恵子は目をやった。
笹原から借りたジャージの上下に、後ろで結んだだけの髪。寝過ぎたせいか、泣き腫らしたせいか、顔はムクんでいる。
何の飾り気もない。化粧もしていなかった。ちっとも可愛くもキレイでもない自分がいた。
「きっつー・・・。」
そう言って、恵子は自嘲した。
(こりゃ、だめだわ・・・。)
恵子は携帯を取り出した。10時を回っていた。恵子はまた、ケンケンパでもするように雨の道を歩き出す。
近所のコンビニについて、500mlのペットボトルを何本かとスナック菓子、それとハーゲンダッツのアイスを2つカゴに放り込む。
剥き出しの千円札をポケットから出し、お釣のバラ銭をまたポケットに流し込んでコンビニを出た。
そこには思いがけない人が待っていた。
傘を差して、少し汗をかいた斑目がひどく驚いた顔をして自動ドアの前に立っていた。
- 111 :斑恵物語-終-
:2006/03/10(金) 00:03:39 ID:???
- 昨日あれから、恵子は笹原の家に転がりこんだ。実家に帰る気力は残っていなかった。
その時にはもう涙は乾いていたし、化粧も直していたが、笹原は何か感づいてたようで、まだるっこしいやり方であれこれ詮索した。
恵子はそんなの全部無視して、さっさとシャワーを浴びてベッドに入った。笹原に少し悪いと思ったが、他にやりようもないと思った。
布団の中で、いろいろのことが脳裏をよぎったけれど、ひたすら考えないようにしていた。でも、出来るわけが無い。
斑目の顔も、咲の顔も、自分が口走ったことも、どれも苦痛を強いた。
捨ててしまったあのプレゼントのこと。
今頃、雨でずぶ濡れになって、その上からもゴミが放り込まれて、クズカゴの中でぐちゃぐちゃになってしまうのだと思うと、胸が潰れそうになった。
嗚咽が漏れそうになるのを必死にこらえた。瞼の隙間からまた涙が沁み出して、恵子は笹原に悟られないように寝巻きの袖で拭った。
気がついたら朝になっていた。
夢も何も見なかった。雨の音がしていて、まだ昨日にいるような気がした。
実際、恵子の気持ちはまだ昨日にいた。笹原が出ていった後もずっと部屋にいて、お腹も空かなかった。何度か眠って、また夜が来ただけのことだった。
半ば癖のように起きぬけに恵子は携帯をチェックする。
メールが2件。発信者は斑目だ。1件目のメールは、もう何時間も恵子が見てくれるのをじっと待っていた。
今日会えないかな?というだけの内容で、それだけなのに恵子の頭はぐちゃぐちゃになった。
会えないし、会うのが怖かった。会ったとしてもまたツッケンドンに振舞ってしまう気がする。
会いたいと言ってくれたことが嬉しかったが、同じくらい嫌われるのが怖かった。
今まで男と会うときにしきたように可愛くなりたいのに、斑目の前では上手くできない。どうしてなんだろう。
そのことを考えるのも、また同じくらい怖かった。
2件目のメールは見ないで、恵子はまた布団に潜った。
今度は眠ることができないで、ずっと布団の中で叱られた子供みたいに小さくうずくまっていた。
笹原がその内帰ってきて、そうそうに風呂に入ると何も言わずに本を読んでいた。
何度も恵子の携帯がブルブルと震えて、恵子がそれを無視していても、笹原は何にも言わないでいた。
- 112 :斑恵物語-終-
:2006/03/10(金) 00:04:15 ID:???
- 「恵子、ちょっとコンビニ行ってきてくんない?」
それ今日初めて聞いた兄の言葉だった。トイレから出てきた恵子に藪から棒にそう言った。
「は? なんでよ。ヤダよ。」
恵子はそう言い返してさっさとベッドに戻ろうとした。ベッドの上に笹原は陣取った。
「頼むよ。俺、風呂入っちゃったから。風邪引いたらヤじゃん。」
ハンテンを羽織った笹原が情けなさそうに手を合わせる。恵子は戻る場所を失って突っ立っていた。
「自分で行けよ!」
恵子は無理矢理ベッドに押し入ろうとしたが、笹原も必死に抵抗したため敢え無くはね返される。
「いいだろー。泊めてやってタダ飯食わせてやってんだから! 行けよ! ほら、金やるから!」
ジャージのポケットに千円札を突っ込んで、あくまで笹原は譲ろうとしない。
珍しく意に沿わない兄の行動に面食らいつつも、面倒臭さが先に立って恵子はしぶしぶ折れた。
「何買ってくりゃいいの?」
「えーと、飲み物とか、菓子とか。適当に。」
散々粘って買いに行けせるわりには、随分ボンヤリとしたオーダーだ。
「んじゃ行ってくる。」
「いってらっしゃーーい。」
ドアが閉まったのを確認して、笹原は携帯から電話した。電話の向こうの声が訊く。
「おー、どうなった?」
「あ、うん、今行かせた。」
「おーおー、お疲れー。助かったよー。で、恵子に電話とか着てた?」
「うん、ずげーメール着てたよ。春日部さんが言った通り。」
「あ〜ん、それはますますよかった。あんがとあんがと。そんじゃねー。」
「あ、まだ教えてくんないわけね…。」
「はは、ササヤンにはまだ秘密だなー。」
「いったい何が起こってるのかサッパリなんだけど・・。」
「まー、カワイイ妹分への手助けと、せめてもの罪滅ぼしだよ。明日には話せるようになると思うから。今日は勘弁しといて。」
「??
まあ、いいよ…。そんじゃねー。」
携帯を置いた笹原は、まんじりともせず、恵子にいない隙に同人誌を読もうと思ったが、見つかったらハズイのでやめた。
- 113 :斑恵物語-終-
:2006/03/10(金) 00:04:53 ID:???
- 咲は携帯をたたむと、傍らの大野に目をやった。
「そんじゃ、次はこっちだね。」
「うふふ………。」
促された大野が怪しく笑う。隣にいた田中は引きつった苦笑いを浮かべている
「まったくぅ〜〜〜、困った人たちですねぇ〜〜〜〜〜、うふふ〜…。」
大野の目はますます怪しく光った。
- 114 :斑恵物語-終-
:2006/03/10(金) 00:06:31 ID:???
- 斑目はもう何時間も携帯と睨みあっていた。
会社が終わってから何度も恵子の携帯へメールを送っていたが1件も返信はない。電話をしても、何コールしても恵子は出てくれなかった。
気ばかり焦って、つい近所をブラブラしたり、部屋を妙に片付けてしまったり。気がつけばスーツを脱ぐのも忘れていた。
斑目はどうしても今日中に恵子に会いたかった。
机の上のクシャクシャのプレゼントを、斑目は見る。
これを受け取った瞬間、頭の中で何かが弾けて躊躇い続けていた一歩を踏み出すことができた。
咲に告白し、ケリをつけることができた。
(今日! 今日言うっ!)
斑目は強く思う。
あの後、部室から会社に戻っていつもの業務をこなした。体は感じたことのない興奮と高揚感でいっぱいだが、目の前にあるのはいつものディスプレイ、いつもの業務。
時間が経って興奮が治まってくると、たちまち不安がそろりそろりと近寄ってきた。
本当に言えるか?
春日部さんに告るのだって何年もかかったのに。言ったとしても上手くいくものなのか? ただの一人相撲かも。
いつまで経っても返ってこないメールを待っていると、絶望的な思いにかられる。いつものように諦めそうになる。
どうしていいか分からないのに、じっとしていらない。堪らなく歯痒い。
斑目は声を押し殺して、ベッドに拳を打ちつけた。
(くそー。苦しいなー。恋ってこんな苦しいんだなー・・・。逃げてーよ。じっさい、今まで何だかんだ逃げ回ってたけどな・・・。情けねーよな、ホント。)
- 115 :斑恵物語-終-
:2006/03/10(金) 00:07:44 ID:???
- 斑目は自然と今までの自分を思い起こしていた。
中学、高校と恋愛とは無縁に過ごしてきた。ああいうのは顔がいいか、スポーツができるが、話が面白くてノリのいいヤツができるものだと思っていた。
自分のようなオタクとは関係の無いもの。勉強して、アニメ見て、マンガを読んでいた。
大学に入って、咲に会って、人を好きになることが分かっても、結局は変わらない。ハナから諦めていた。
針のムシロとかいって、傷ついているフリをしていただけだ。本当は、相手が自分を何とも思っていないと、突きつけられるのが怖かっただけ。
どうしようもないヤツだ。
斑目はまた、今日しかないと思った。今日何もしなけりゃ、いよいよ救いようの無い馬鹿だ。もう咲には全部言ってしまったのだ。もう始めてしまったことなんだ。
不意に、斑目の携帯が鳴った。驚きながらも慌てて手に取る。
「おー、斑目。いまどこだ?」
田中だった。怒りがこみ上げた。
「家だよ!!」
田中は一瞬言葉に詰まったようだが話を続けた。
「今日ちょっとさ、面白いもんが手に入ったんで笹原んちの近くに来てんだけど。斑目も来いよ。」
斑目は怒髪天を衝いた。こっちがこんなに苦しんでのに、呑気なこと言いやがって。
「わり! 今日ちょっとダメだわ。また今度にしてくれ!」
早く電話を切りたい。もしかしたら、今この瞬間に恵子がコールしているかもしれないのだ。
しかし田中の野郎がヤケに粘りやがる。
「いや〜、来いって。借り物だから明日には返さなきゃいけないんだよ…。10分で済むから来いよ。」
「いや、今日はホントマジでダメだわ。切るぞ!」
「いや来いって!!」
いきなり田中のテンションが上がって、斑目はビックリした。
「ホントにすぐ済むから! …………うん。え〜と…、みんな来るし…。あ〜と…、なんか、笹原の妹もいるみたいなんだけどね…。」
なにっ!!!!
斑目の目の色が変わった。そして態度も変わった。
- 116 :斑恵物語-終-
:2006/03/10(金) 00:08:23 ID:???
- 「あ〜そ〜か〜…。う〜ん〜…。10分で済むの?」
「そう…。すぐ済むから…。それ見たら、俺らはソッコー帰るし…。な?」
「ほほ〜!!」
「…………どう?」
「ま〜…、そういうことなら行くよ。笹原んちでいいのな?」
「いや、まだ駅に着いたとこだからさ。笹原んちの近くのコンビニで買出ししてからいくから。そこで合流ってことでOK?」
「りょーかい。コンビニな、わかったわかった。」
携帯を切って深呼吸をする。後の動きは早かった。30秒後にはもう家を飛び出していた。
「やばかったね…。でも何とかOKでした…。」
少しやつれた田中。
カンペを持った咲と大野が冷や汗を拭った。
「ふ〜、ほんと手間のかかるヤツらだな〜。せっかく助けてやってんのに…。」
「お疲れ様でした〜、田中さん。グッジョブですっ!!」
「いやぁ〜…、慣れないことするもんじゃないね…。疲れましたよ…。」
「ま、後はアイツら次第だね。」
そう言うと、咲は缶ビールの栓を開けた。
- 117 :斑恵物語-終-
:2006/03/10(金) 00:08:59 ID:???
- 斑目は自分の目を疑ったし、またこの恐ろしい偶然に声も無かった。
大急ぎで(比較的近所とはいえ)笹原宅の最寄のコンビニにやって来て、田中が外にいないことはすぐに分かった。
少し呼吸を整えて、いざ店内を探そうとした矢先、一番会いたかった人がそこにいた。
恵子はパンパンに膨れたレジ袋を提げて立っていた。買った量に比べて、明らかに袋が小さかった。
ジャージの上下に、ポニーテールを思わせる結った髪で、レジ袋がビニ傘から滴る雫に濡れないように気を使いながら、傘を広げている。
広がった傘が雨を弾いた瞬間、二人の目が合った。
店内の明るい照明のせいで、恵子の顔がよく見えた。化粧も何もなくて、目の周りと鼻が少し紅かった。
ほんの一瞬の沈黙が、斑目の背中を押した。
「こんばんわ・・。」
「・・こんばんわ。」
恵子は顔を隠したくて傘を深く傾ける。斑目は腰を屈めて、傘の中の恵子を覗き込む。斑目は言った。
「メール・・、読んだ?」
言った傍から、返答を想像して怖くなる。斑目は初めて見る口紅を引いていない恵子の口元を見つめた。
「ごめん。見てない。・・・寝てたからさ。」
寝てたからと、もう一度恵子は付け足した。自分の気持ちを隠したかったが、上手くできない。
透明なビニール傘で顔を隠すように、それは多少屈折して斑目に映っているのだろうと思った。
「ちょっとさ・・・。話せるかな? 荷物持つよ。」
斑目が半ば強引にレジ袋を取った。恵子はその力がとても強かったのに驚いた。痩せっぽちでいつも愛想良く笑っているか困ったような顔を
していることのが多い斑目が、その時は真剣な表情をしていた。
恵子は、「あんがと・・。」というのやっとだった。
- 118 :斑恵物語-終-
:2006/03/10(金) 00:11:08 ID:???
- 雨の道を二人で歩いてく。
斑目は傘を持った手にレジ袋を引っ掛けている。
恵子は水溜りを言い訳にして努めて下ばかり見ていた。スッピンの顔を見られたくなかったし、斑目の顔を見れなかった。
斑目はズボンの裾をびちょびちょに濡らして、何故かスニーカーを履いていた。
斑目はビニール越しに俯く恵子を躊躇いがちに見ていた。頭の中で、今日何十回と繰り返したシミュレーションを思い出そうとするが、頭は真っ白だ。
笹原の家までの所要時間を逆算するだけでいっぱいいっぱいになる。
ええーい! ハナから経験値が低いのだ! 小賢しい計算などできるか!
「あのさ・・・。俺今日さ、春日部さんに告ったよ・・・。」
そう言うと、斑目は上を向いて顔の熱を発散した。恵子は俯いたままでいる。
「ふ〜ん・・・。んで・・?」
恵子は落ち着いた声で答えた。
(やっぱり・・。ねーさんなんだよなぁ・・・。)
そう思うと少し楽になれた。でも何だか、心の糸がプツンと切れた感じがした。体の奥にあった苦しさは薄れて、寂しさが残った。
「どうなったの?」
「フラれたよ。当たり前だけどさ。もー、思いっ切りフラれた!」
斑目は、まるで空に向かって喋っているよう言った。恵子は、地面に向かって喋っているように言った。
「それはそれは。ごしゅーしょーさま・・・。」
「でも、良んだよ。・・・むしろ、フラれるために告白したようなもんだからさ。」
斑目は、それは恵子に向かって言っていた。
「なんつーか・・・、ちゃんと区切りつけたかったつーかさ・・・。またオタク臭いって思うかもしんないけど。俺・・・、恵子ちゃんが、好きだからさ。」
最後の言葉だけはハッキリと胸を張って言い切りたかった。そして、それができた事が斑目は少し誇らしかった。
恵子の傘が跳ねるように揺れて、足が止まった。
「・・・やめてよ。・・・ウソでしょ?」
恵子の声は雨よりも冷たい響きがした。
- 119 :斑恵物語-終-
:2006/03/10(金) 00:13:44 ID:???
- 斑目の顔に、またいつもの愛想笑いが浮かびそうになる。冗談めかして誤魔化してしまいそうになる。
でも斑目はそれを奥歯で噛み潰して、恵子を見続ける。
「本気だよ。・・・なんか、春日部さんに告ったとか言った後で・・・、すげー・・嘘臭く聞こえるかもしんないけど。俺ホントに、恵子ちゃんのことが好きなんだよ。」
斑目は自分の言葉に篭った熱で、体中が熱くなった。
恵子は俯いたまま、涙が頬を伝った。それが嬉し涙なのか、違うのか自分でも分からない。気がつくと言葉が勝手に溢れ出していた。
「・・・なんで?
アタシ・・、ねーさんみたいにキレイじゃないし、カッコよくもないし・・・。バカだし。
この前だって、斑目に、オタク臭いととか、酷いこと言っちゃって・・。ぜんぜんカワイくないじゃん・・・。」
泣き声が漏れそうになって、恵子は両手で口を塞いだ。傘が落ちて、独楽のようにくるくると回った。
斑目は傘を恵子の上に差し出す。涙をこらえている恵子を、斑目はどうしようもなく愛しいと思った。
「んなことないよ。・・・すげーかわいいと、思うし。なんか改めて言うとハズイけど・・・。それにさ・・・。」
そして頬を掻きながら斑目は言った。
「俺、いつもそうなんだよな・・・。オタク趣味も、春日部さんも、気が付いたら好きになってて。恵子ちゃんも、気が付いたらそう思ってたんだ。
気付いたときには、もう自分でもどうにもなんないくらい好きになってんだよ・・・。」
恵子はそう言われて、自分が流しているのは嬉し涙なんだと思った。
今まで好きになった相手には、どれも理由があった。顔が良かったり、ファッションがイケてたり。音楽をやってるのがカッコ良かったり。
みんなが好きだと言うから好きになったこともあった。
でも、今度は理由が分からない。顔が特別好みなわけではないし、頼りがいあるとも言えない。オタクだとも思った。
優しいとは思うけど、これまでの自分なら物足りないと思っていたはずだ。理由が分からないかった。
だからこんなに好きだと認めるのが怖くて、苦しかったんだ。初めて何の理由もなくて、人を好きになったから。
「恵子ちゃん・・・俺じゃダメかな?」
- 120 :斑恵物語-終-
:2006/03/10(金) 00:14:57 ID:???
- 不安げな斑目の声。恵子は咄嗟に斑目に抱きついた。
「ダメじゃないよ。アタシも斑目が好きだよ。」
恵子の涙が斑目のYシャツにシミを作った。それは雨と同じ水とは思えないくらい熱く、斑目には感じられた。
斑目は突然全身に溢れた恵子の温もりに、抱き寄せてあげることもできずに突っ立っていた。
体に力が入らなくて、倒れてしまいそうで、少し泣いてしまった。
そしてそれから暫くして、斑目は漸く恵子を抱きしめた。恵子の体は驚くほど柔らかくて温かかった。
傘が二人の上に覆い被さって、二人に時間が経つのを忘れさせていた。
- 121 :斑恵物語-終-
:2006/03/10(金) 00:15:32 ID:???
- 「手ぇつないでいい?」
斑目は恥ずかしそうにそう言って、恵子も恥ずかしそうに頷いた。
手が雨に濡れないように、恵子は斑目の傘の中に入って、二人はまた歩き出した。
行き先は斑目の家に変わっていた。
そして斑目は、肩から提げたカバンに手を突っ込むと、シワくちゃの包装紙に包まれた物を取り出した。
それが目に飛び込んだ瞬間、恵子は慌てて斑目の手から引っ手繰った。
斑目の口から、あっ、っという音が漏れた。
「なんで持ってんの!!」
恵子はそれを両腕で抱えて覆い隠した。顔は真っ赤になっていた。
「うん・・・。今日、荻上さんからもらったんだよ・・・。恵子ちゃんが捨ててたって・・・。」
恵子は恥ずかしさで気が遠くなった。
プレゼントを買ったことも、渡せずに捨ててしまったことも、恵子にとっては知られたくない秘密だった。
恵子は斑目の足を見る。顔を上げられないから。そうやって斑目の次の言葉を待つ。
「それさ、まだ、中見てないんだけど・・。いいんだよね・・?
俺がもらっちゃって・・・。」
恵子の口元にほんの少しの笑みが滲んだ。
「当たり前だろっ!」
恵子は前を向いたまま、プレゼントを差し出す。仏頂面で恥ずかしさを誤魔化しながら。
斑目に笑顔が零れた。
「ありがと。大事にする。」
斑目は再び包装紙が雨で濡れてしまわないように、それをカバンの中にしまった。
「一生大事にしろっ! 家宝にしろっ!」
恵子は離してしまった斑目の手をまた握る。前よりも強く、しっかりと。そしていたずらっぽく笑うのだ。
斑目のために、誰よりもかわいく。
Fin
- 122 :マロン名無しさん
:2006/03/10(金) 00:28:07 ID:???
- >斑恵物語-終-
完結お疲れ様でした。
ここ数日続きを待ちに待っておりました。
>「手ぇつないでいい?」
と
>「一生大事にしろっ! 家宝にしろっ!」
は読んでいて頬のにやけが止まりませんでした。
この話を家宝にせねば^^
- 123 :マロン名無しさん
:2006/03/10(金) 01:10:19 ID:???
- 俺が一番はじめに言えることに誇りを持ってGJ!!!
- 124 :マロン名無しさん
:2006/03/10(金) 01:11:07 ID:???
- orz
…ちがうジャン
- 125 :マロン名無しさん
:2006/03/10(金) 01:47:48 ID:???
- >斑恵最終回
読了。
えがった〜。
長編本当におつかれさまでした。
雨の情景とシンクロして揺れる恵子や斑目の心情がたまらんですね。
「斑目さんは受けです! それも総受けです!」
と、“あえてフラレルために告る”斑目と咲のやりとりは最高でした。
原作の斑目も幸せになれますように……。
- 126 :マロン名無しさん
:2006/03/10(金) 03:15:52 ID:g8ptc4Ic
- >>斑恵物語・終
長編乙でした。GJ!
斑目を幸せにする展開に、ありがとうと言いたい。
ワシは「卒業式シリーズ」書いた物ですが、斑目をヘコませて終わってしまったので。
「失恋しても、それで斑目が成長できるなら…」と思い書いたのですが、
書いたあとで、ハッピーエンドにできなかったことに後悔しました。
斑恵物語・終では、斑目と恵子の心の成長を書きながら、特に斑目がたくましくなっていく姿に胸打たれる。
恵子が「初めて理由がなく人を好きになった」という事実に気づくことができたことに嬉しくなる。
そして情景がはっきりと浮かぶような雨の様子。
本当に面白かったです。
あーーーー!!こんなに面白い話読んだら、また書きたくなってきたよ!!
今度はワシも斑目を幸せにしたい!斑目の相手は、あえて!!あの人で…!