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げんしけんSSスレ6
- 1 :マロン名無しさん
:2006/03/24(金) 20:47:54 ID:???
げんしけんSSスレ第6弾。
前スレが容量オーバーしたのであわてて立てます。
未成年の方や本スレにてスレ違い?と不安の方も安心してご利用下さい。
荒らし・煽りは完全放置のマターリー進行でおながいします。
本編はもちろん、くじアンSSも受付中。名前欄にキャラ(カプ)記載を忘れずに。
☆講談社月刊誌アフタヌーンにて好評連載中。
☆単行本第1〜7巻好評発売中。
☆作中作「くじびきアンバランス」ライトノベルも現在3巻まで絶賛発売中。
【注意】
ネタばれ含んだSSは公式発売日正午12:00以降。 公式発売日正午以前の最新話の話題は↓へ
げんしけん ネタバレスレ8
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1140782112/
前スレ
げんしけんSSスレ5
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1141591410/
- 2 :マロン名無しさん
:2006/03/24(金) 20:48:49 ID:???
- げんしけん(現代視覚文化研究会)まとめサイト(過去ログや人物紹介はこちらへ)
http://ime.nu/www.zawax.info/~comic/
げんしけんSSスレまとめサイト(このスレのまとめはこちら)
ttp://www7.atwiki.jp/genshikenss/
エロ話801話などはこちらで
【椎応大】げんしけん@エロパロ板 その2【くじあん】 (21禁)
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1122566287/
げんしけん@801板 その4 (21禁)
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/801/1127539512/
前スレ
げんしけんSSスレ5
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1141591410/
げんしけんSSスレ4
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1139939998/
げんしけんSSスレその3
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1136864438/
げんしけんSSスレその2
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1133609152/
げんしけんSSスレ
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1128831969/
げんしけん本スレ
「げんしけん」 木尾士目 その125
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/comic/1141525563/
- 3 : ◆suTtoKok..
:2006/03/24(金) 20:49:33 ID:???
- スレ立てついでに
前スレ>>455(恵子のお話)
ども、原案者です、リスペクトどうもありがとうございます。
個人的には恵子に痛い男女関係まで背負わせるのはちょっと酷かなーと思いますが、
恵子にも何らかのきっかけはあった筈なので、それの補完を考える点では
とても参考になりました。ぜひまたこの方面の考察を深めていただければ幸いです
- 4 :マロン名無しさん
:2006/03/24(金) 21:10:09 ID:???
- えーと、前スレの「サマー・タイム-2-」は今回はあれで終りかな?
なんかあっという間の500K越えだったな。
では感想を…
青春ですねえ…思い込みとすれ違い…思わず遠い目をしてしまうね、おいらみたいな親父は。
これからどうなるのか期待してます。
- 5 :マロン名無しさん
:2006/03/24(金) 21:19:31 ID:???
- サマー・エンド-2-
見てたら泣けてきた…GJです
- 6 :マロン名無しさん
:2006/03/24(金) 21:37:02 ID:???
- >>1さん乙。
もうそんな時期かいな、早いね。
- 7 :4 :2006/03/24(金) 21:53:52 ID:???
- ぎゃあ、タイトルを間違えてる(泣
サマー・エンドでした。深く反省し、謝罪します。
スマンカッタ orz
- 8 :マロン名無しさん
:2006/03/24(金) 22:02:16 ID:???
- >サマーエンド2
絶望した!再度の鬱展開に絶望した!
続き次第では練炭とエンヤのCDを買わねばならん…
- 9 :マロン名無しさん
:2006/03/24(金) 22:27:44 ID:???
- >サマーエンド2
あえて苦言を…鬱展開はいいんだけど、キャラが「らしくない」所があるような気が。
たとえば咲は親が金持ちだから、借金でキャバクラ…というのはないと思われ。
借金の肩代わりでお見合い強制、とかいう感じになるんじゃないかと。
そして笹原は気軽に「キャバクラに勤めたら行くよ」なんていえないんじゃないかな。
いくら一般人っぽくってもオタクだし。
そして何より、こっちのスレで終了宣言か続行の挨拶かしてくれ。
- 10 :サマー・エンド-2-〜なかがき
:2006/03/24(金) 23:16:13 ID:???
- すいません。いきなり500kオーバーでびっくりしてしまいました。
新スレを勝手に立てるわけにもいかず、オタオタしました。
すいません。
まだ続きます。一応頭から再投下させて頂きたく思います。
23:20から投下させていただきます。
- 11 :サマー・エンド-2-
:2006/03/24(金) 23:20:49 ID:???
- 激しい風が緩やかな坂をかけ上がっていって、中学生やそこらの仲良しグループがきゃああとはしゃぐ。
バサバサになった髪を顔を見合わせて笑うと、お人形さんの髪を梳かすように相手の頭を治してあげる。
ジト目で咲がじっと見ていた。
(きゃわいいのう…。けっ!)
店内に人はない…。スローな女性ボーカルの洋楽が流れる店内。
風のぶおうぶおうと音が時たまそれをかき消した。
煌々と照る照明。咲は電気代が勿体無いので消そうかとすら思った。
(くそう! せっかくの日曜になんで暴風が吹き荒れるんじゃい!!)
言わずもがな、土日祝日は書き入れ時であるわけで、特に赤字削減を命題に励む咲にとっては真剣勝負の大事な一日である。
それなのに強風…。ドア開けるのもしんどい…。しかも夜から雨の予報も出ているとか。
「ふふぁあああ〜〜〜…。」
大げさなため息で笑い飛ばそうとしたが、余計に虚しくなった。
(誰かこのお店に来て上げて下さい…。頼むよ…。
…………。
……………。
……………………………。
くそ〜っ!!、流行ってるショップ全部潰れろっ!!)
思わずそんな非人道的な考えがよぎる日曜の昼下がりであった。
- 12 :サマー・エンド-2-
:2006/03/24(金) 23:21:31 ID:???
- ふと見るとガラスの向こうに苦笑いの笹原が立っていた。
「はは…、春日部さん…いま人殺しみたいな顔してたよ………。」
「マジで?!」
鏡の前に直行して表情をチェックする。確かに疲れ気味で目に隈が出ている。
涼感の照明も顔色をより青白くみせていた。
「あ〜、こりゃひでー。」
「疲れてんね…。大丈夫?」
「そっちこそスーツ着て。今日も仕事なの?」
笹原はいつものスーツと革靴。ジャケットのボタンは全部外して、手ぶらという格好だった。
頭は風に煽られて分け目がメチャクチャになっている。笹原の目にも隈があった。
「まあねぇ…。今日は先生の取材のお供…。」
両手をポケットに突っ込んで重そうな足取りで歩く笹原。
「その先生は?」
「いまエステ&マッサージ中…。」
皮肉げに笑う笹原に、咲も同情の笑顔を向けた。
「まったく、マッサージ受けたいのはこっちだっつーのに…。」
「ホントだよなあ。私もエステ行きてー…。」
咲はマグカップにコーヒーを注ぐと笹原に差し出した。笹原は椅子に腰掛けてカップを手に取る。
そしてコーヒーを飲みつつ店内を見回す。
「客いないねぇ…。」
「そうなんだよね…。」
咲はずっぷりとカウンターに突っ伏した。笹原の視線を背中に感じつつ、暫く突っ伏している。すると、
もう何だかヘンなスイッチが入ってしまって、口から笑いが漏れ出してきた。
「ふふ…、うふふふふ…………。」
「春日部さん?」
笑いに震え始めた咲の背中を笹原はおののきながら見守る。
「ふふふ………、うふふふ……、ふあ、ふはははは………。うへへへほほほ………。」
「だ、大丈夫デスカ…?」
- 13 :サマー・エンド-2-
:2006/03/24(金) 23:22:07 ID:???
- 「くへへへ……。ふふほっほほほ……、くわはは、ふあははは…、あはははははははははあーーー!!」
テンションがMAXに達した咲は、くるっと顔を笹原に向けた。
「もーダメだ〜〜〜〜〜。もーお終いだあああ〜〜〜。」
咲は涙目で絶叫した。
「私はもうダメなんだあああああ〜〜〜〜〜!!!!」
「まあまあ。こんな日もあるって…。」
「い〜〜や。も〜〜限界だ〜〜〜。このまま閉店する運命なんだよ〜〜〜。そんで借金地獄だあ〜〜〜。」
「大丈夫だって。これから流行るよ絶対。」
「うっせー! オタクにファッションの何がわかるっつーんだよお!! も〜絶望だあ〜〜。キャバクラで働いて借金返すのが私の運命なんだ〜〜〜。」
「あ〜………、でもそうなったらちょっと行きたいかも?」
「くうう〜、他人事だと思いやがって! 私の絶望の深さがササヤンに分かるかああ〜!!」
「そう言われると『分からん]としか言えないよねぇ…。」
「ちくしょ〜〜! 敵だあ! 世の中ぜんぶ敵だああ!」
「まあまあ、愚痴ぐらいなら聞きますから…。元気出して。ほら。てんちょーお願いします!」
「完全にバカにしてるだろ?」
などと言いつつ、咲の顔にはちょっぴり生気が戻っていた。疲れも吹っ飛ぶとはいかないものの、空元気くらいは出た。
心の中も近頃では珍しくスッキリとしていた。立場上、愚痴をこぼせる相手もいない。
ただ聞いてもらってからかわれたたけだが、少しだけ気持ちが軽くなっている。
咲はぐーんと伸びをする。
「ふぁああ〜〜〜あ。愚痴ったところで、頑張りますかね。」
大げさなため息。聞いてくれている人がいるおかげで、今度は虚しくない。
笹原が嬉しそうな顔で言う。
「ちょっとは元気でた?」
「ちょ〜〜〜〜〜〜とはね。あははは。」
(そのちょっとが大事なんだけどな。)
咲は胸の中でそう呟いて、無言の感謝も付け足した。
咲は自分のマグカップにもコーヒーを注ぐ。黒く濁った濃厚なコーヒーから香ばしい芳香が揺らめいて、
それを一口、口にすればふっと表情が和らいだ。
そしてもう少し暖かい灯りするものいいかもしれないと思った。
- 14 :サマー・エンド-2-
:2006/03/24(金) 23:22:45 ID:???
- 「あ〜、んじゃ今度は俺の話を聞いてもらっていい?」
「なんだよ唐突だな…。」
咲は緩んでいた眼を見開いて笹原を見る。笹原は照れ臭そうで、首を重々しげに捻っていた。
深く吸い込んだ息をふーっと吐いて、体を小さく丸めている。
咲は体を笹原へ向けた。
「で、どうしたの?」
「いや………、ちょっと………、ケンカをしまして………。」
咲は呆れ顔で笹原を見た。相談のフリをしたノロケかいと警戒したのだ。
しかし、笹原の様子はそんな雰囲気ではない。顎が胸にくっつくくらいに首を折って、うな垂れている。
体が心持ち小さくなった気さえした。
咲は反省して表情を整えた。
「で、原因はなんなのよ。」
う〜んと唸る笹原。首を捻るばかりでなかなか答えが返ってこない。
咲はコーヒーのフレーバーを堪能しながら笹原の準備が整うのを待った。
暫くして、漸く途切れ途切れの言葉を笹原は返した。
「原因………、っていうか……、それはまあ、………タイミング的なもんで、……アレなんだけど。」
「うんうん。」
う〜〜〜〜んとまた唸る。咲はコーヒーをゆっくりと口に含んだ。
「あれかな? やっぱり彼氏って頼もしいほうがいいのかな? ………優しいのはダメかな?」
「いや、それだけ言われても何とも言えないけど…。」
咲は助け舟を出した。
「どんな感じでケンカになったのよ?」
「あ、あ〜…。まあ、それは俺が悪いんだけど…。荻上さんが描いたマンガを読んでたのね。」
「やおい?」
咲はニヤけて言ったが、
「ちがう。普通のマンガ。」
笹原の返答は真面目である。咲は(ヤベ、外した)と思った。
- 15 :サマー・エンド-2-
:2006/03/24(金) 23:23:22 ID:???
- 「そんで…?」
「まあ、読んで感想聞かせて欲しいってことだったんだけど。………ぶっちゃけてあんまり面白くなかったんだよ…。
展開が唐突だったりとか、セリフがちょっとカッコつけ過ぎてクサかったり。ラストもありがちなオチだったし…。」
「あー、それそのまま言って怒らせたの?」
「言えないよそんな…。」
笹原は情けない困り笑顔を見せた。そしてまたうな垂れる。
「俺はできるだけ良い所を褒めるようにしたんだけど…、何か逆に頭に来たみたいで…。そんでケンカにね………。」
咲は軽くため息をついた。それはきっとコーヒーの匂いがしたことだろう。
「まあね…。無理くり褒められてもねぇ…。ちゃんと言った方がオギーためでもあるし。」
そう言ったとき、俯いていた笹原が急に上体を振り上げた。
「ていうかそーゆーことじゃないんだよね。」
「は?」
咲は素っ頓狂な声を出してしまったが笹原はいたって真剣である。
「何ていうか、最近こう…、あれ…、何ていうか……、こう、うまくいってないんだよね…。
何か、俺が優しくしても不機嫌になることが多いし…。そんで頑張ろうとするんだけど、さらに空回るし。
やっぱり優しいのってダメなのかな? 女の子としてはつまんないの、そういう男って?
もっと強引にグイグイ引っ張るほうのがいいのかな? 荻上さんも強気攻めが好きみたいだし…。
俺もそういうのに応えたいんだけど、もともとヘタレっていうか、待ち体質で上手くできないし。
なんつーか、強引に『こうしろ!』みたいの苦手なんだよね…。でも荻上さんがそういうのが好きなら
俺もそうなりたいと思うし…。やっぱり俺が強気攻めになった方がいいのかな? どう思う?」
「………………。」
咲の頬を汗が流れた。
「いや、分かんない…。強気攻めって言われてもさ…。」
はあ〜と再びうな垂れる笹原。
咲はコーヒーを飲んで気を落ち着かせた。
- 16 :サマー・エンド-2-
:2006/03/24(金) 23:23:55 ID:???
- 「要はすれ違ってるわけね…。」
「まあ、そうかな…。というかも〜、情けないよ俺。ケンカしてすごい傷つけるようなこと口走っちゃったし…。最低なんだよ…。」
搾り出すような笹原の声に、咲も真剣な顔つきになった。
笹原はがっくりと肩を落としてうな垂れている。濃いグレーのスーツのせいもあって、それは巨大ダンゴムシのようだ。
(ここは私が何とか力にならないとね…。)
笹原の説明は要領を得ないながらもそれなりに雰囲気はわかった(と思う)。愚痴を聞いてもらったお礼にこっちとしても
何とかしてやりたかった。
「ササヤン頑張り過ぎてんだよ、たぶん…。」
「………そうかな? むしろ頑張りが足りないと思うんだけど。」
「もっと普通にすればいいんだって。普段のササヤンでいいの。」
笹原は納得がいかないとばかりに首を捻っている。咲はさらに熱の篭った声で続けた。
「例えば、恵子でも斑目でもいいけど、何かササヤンに評価を求めたとすんじゃん? そんときはハッキリ意見言うでしょ?」
「まあ…、それはね…。」
「それでいいのよ。素でいいの。」
「ええーー!! でも恵子とかと荻上さんとは全然違うし! 大事にしたいんだよ!」
(わかんねぇー野郎だなーー!!)
咲は瞬間的にキレそうになったがそこはグッと堪えた。
「いいからそうしてみって。あとそーだな、早めにちゃんと謝ることだね。」
「それはしようと思ってるけど…。」
「荻上はササヤンが嫌いになったわけじゃないんだから。ただ上手く伝えられないから不機嫌に見えてるんだと思うよ。」
「…………、そうですか…。」
返事はしたものの、やはりどうにも納得がいってないような笹原である。腕組みをして首をあっちへ捻ったり、こっちに捻ったり。
- 17 :サマー・エンド-2-
:2006/03/24(金) 23:24:31 ID:???
- 咲はいよいよ痺れを切らして更なる熱弁を振るわんと立ち上がった。
「いいかあササヤン! お前の気持ちもわけるけどな、大事なのは二人が…。」
のだが、急に満面の笑顔を作って入り口に向けた。
「いらっしゃいませ〜。」
せっかくの熱弁は間の悪い待望の来客によって引っ込めざるを得なかった。
笹原は買ったばかりの腕時計に目をやってから背筋をしゃんと伸ばして席を立った。
「それじゃ俺も戻るよ。」
「うん。わりぃね…。」
笹原は来たときと同じように重そうな足取りでガラス戸を潜って行く。
咲の胸に不安な思いが残った。しっかりと言うべきことを伝え切れなかった気持ち悪さが、それに拍車をかける。
大丈夫だとは思う。笹原と荻上はどう見てもお似合いだし、ピッタリの二人だ。お互いに相手をちゃんと好きでいる。
オタク同士で趣味も話も合う。私と高坂とは違う。
一時すれ違って、ケンカをすることだってあるだろうが、大した問題じゃない。どの恋人同士にもあることなんだから。
あの二人なら当たり前に乗り越えていくのだろう、と咲は思った。
いま大事なのは、目の前の客を確実にものすることだな…。
- 18 :サマー・エンド-2-
:2006/03/24(金) 23:25:14 ID:???
- 無意識に腕時計の跡を摩りながら、笹原はネクタイを解く。
使い慣れた座椅子に腰を下ろして、上着の内ポケットから携帯を取り出した。
リダイアル履歴に並ぶ『荻上さん』を文字を眺めながら、しばし瞑目する。
(まずは、ちゃんと謝る…。そんで………。)
頭の中で予行演習を繰り返すと、うりゃ、と気合を入れた。
とぅるるるるーー とぅるるるるーー
コール音が返る度に、もぞもぞと体をくねらす。まるでトイレを我慢しているような仕草だ。
祈るような気持ちで、息を凝らしてその瞬間を待つ。
「はい…。」
でた。
「あ………、こんばんわ…。」
「……こんばんわ………。」
小さい荻上の声。笹原は耳を携帯に擦り付ける。
「いま話して平気…?」
「ダイジョブです…。家ですから…。」
「俺も家…、いま帰ったとこ…。」
「お疲れ様です…。」
「うん………。」
「………。」
「………。」
沈黙が流れる。
笹原は慌ててそれを埋めようとする。
「あの………、ごめん。こないだのこと………。本当にごめん………。」
「いいんです。私も悪かったし……。すいませんでした…。」
荻上の声は暗く沈んでいる。笹原は言葉を重ねる。
- 19 :サマー・エンド-2-
:2006/03/24(金) 23:26:35 ID:???
- 「違うよ…。悪いのは俺だよ…。荻上さんの気持ちも考えないで…、いい加減な感想言って…。
そんで勝手に怒って…、酷いこと言って………。」
「……………、はい…。」
「ごめん…。」
「………。」
「ごめんね…。もう絶対に荻上さんのこと、傷つけないから…。もっとちゃんと…、荻上さんのこと考えるから………。」
「………。」
「………。」
「俺、もっと頑張るから。荻上さんが俺を好きでいてくれるように、頑張るから…。」
荻上の声は聞こえない。
「ヘタレだし、今の俺には優しくすることしかできないけど、もっと頼ってもらえるようになりたいって思ってる。
漫画のことでも、もっとちゃんとしたアドバイスができるようになりたいし。荻上さんの助けになりたい。
荻上さんが強気な俺が好きなら。そうなれるように努力するから。だから………、その…。………ごめん。」
少しの沈黙。
永い永い沈黙の後、荻上の声が聞こえた。。
「………笹原さんの気持ち、分かりました。」
「………。」
「笹原さん…。」
「なに…?」
荻上の声はさらに小さく、そして震えていた。
「笹原さん言いましたよね…。私が好きなのは笹原さんなのか…、私の頭の中の笹原さんなのか、って…。」
「うん………、ごめん…。」
笹原は謝ることしかできなかった。
- 20 :サマー・エンド-2-
:2006/03/24(金) 23:27:09 ID:???
- 荻上は黙っていた。笹原の言葉を噛み締めるように。
そして、呟く。
「私…、分かりません…。」
「え…。」
「私が好きなのが、本当の笹原さんなのか…、私が勝手に想像してる笹原さんなのか…。」
「………。」
電話の向こうからは、すすり泣くような声だけが聞こえて…。
笹原は声が出なかった。
「本当の笹原さんて、どんな人なんですか………?」
涙交じりの荻上の声が、耳を打った。
笹原はだらしなく口を開けて、テーブルの上をただ見ていた。
電話は冷徹に荻上の泣き声を笹原に伝え続ける。小さく、押し殺したような呻き。すすり上げる息遣い。
堪え切れずに溢れる子供のような声が、笹原を打ちのめした。
「ごめんなさい…。おがしなごと言っでぇ…、わだし…、困らせるごとばかりでぇ…。」
涙声の合間の搾り出すような言葉に、笹原の口はわなわなと震えるだけ。
言葉を発することができなかった。
「もう…、きり……ますね……。
「………………。」
「………ごめんなさい。」
小さい弾けるような音がして、電話は切れた。
笹原は電話を下ろせなかった。
ぼやけた音だけが鳴るその向こうに、泣いている荻上がいて、泣かせた自分がいた。
なんでそうなってしまったのか、何も分からない自分がいた。
- 21 :サマー・エンド-2-
:2006/03/24(金) 23:27:50 ID:???
- 「ただいま〜。」
返事はない。部屋は暗い。ディスプレイモニタのオレンジの灯りと、デッキの時刻表示が浮かんでる。
引っ越して、二人で借りた部屋。
いま部屋にいるのは咲だけだ。コーサカは今日も帰っていない。
浮かんだ時刻表示は23:29。もうすぐ明日になる。
今日もコーサカに会えそうもない。
灯りをつけて、習慣としているうがいと手洗い。郵便物をチェックして、チラシをゴミ箱に突っ込む。
明日にならないうちに洗濯機を回す。部屋干しの洗濯物を畳む。にわか雨が降ったから、外に干さなくて正解だった。
テレビは禄なのがやってないが、つけている。
音がないのは、寂しい。
音楽はショップで聞き飽きていた。
バスタブを磨いてから、お風呂に湯を溜める。ユニットバスは嫌いで、一人暮らしの時からそれは部屋探しの条件だった。
温めのお湯にアロマを垂らして、じっくりとつかる。至福のとき。
でもそれはほんの僅かで、すぐに仕事や…、コーサカのことが脳裏をよぎった。
何かをはっきりと考えるわけじゃない。ただ頭の中に浮かんでは消えていくだけ。
お湯に緩んだ心に、いくつもの感情が波のように寄せて返す。
- 22 :サマー・エンド-2-
:2006/03/24(金) 23:28:24 ID:???
- 「今日も、会えないかあ…。」
バスルームにその声はこだまする。
最近の記憶の中のコーサカは、疲れて寝ている姿、駅までの短い道を歩く姿。あとは電話の声と、メールの中にしかいない。
涙が頬を伝って湯船に落ちる。咲は静かに目を閉じて、流れ落ちる涙に身を任せた。
不安が心を覆って、また別の不安がそれを塗り潰すだけ。
入浴を終えて、体を拭き、髪を乾かす。
洗い終わった洗濯物をハンガーとピンチに止める。
ベッドを置いた部屋の灯りをつける。
二つ並んだベッド。
引っ越すとき、ダブルベッドを買おうかと笑い合ったのを思い出して、自嘲が漏れた。
携帯をクレードルに嵌めようとして、着信に気付いた。
笹原から、昼間の相談の礼。今度ちゃんと話すということが書いてあった。
咲はふと、笑顔を覗かせていた。
ベッドの上に寝転がって、メールの履歴を見る。
コーサカからのメール。今日も帰れない。遅くなる。ごめん。その繰り返し。
こんな気持ちになるために、二人で暮らし始めたはずじゃなかったのに。
もう数時間後にはもう朝が来てしまう。
咲は携帯を置いて、灯りを消した。
- 23 :サマー・エンド-2-
:2006/03/24(金) 23:29:07 ID:???
- 疾うに閉まったはずの咲のショップ。
しかし、膝の高さまで下ろしたシャッターの隙間からは変わらぬ光が漏れていた。
手書きの見取り図を片手に、ジーンズ姿の咲がいた。
ラフな格好で、頭にはハチマキがわりにバンダナを巻いている。目の前には、いびつに配置された商品台があった。
それほど広くない店内で、大きな台を移動させるには綿密なプランとそれなりの力が必要だ。
咲は一人だった。
今日は恵子もいないし。多忙を極める高坂が来れるはずもない。頼める人もいない。
第一ここは自分も店で、自分が全部背負わなくちゃいけない場所だと思った。高坂には頼めない。
高坂は自分のやりたいことを頑張っている。
(エロゲー作りだけどさ。はは…)
自分も、やりたいことをやっているんだから。高坂に甘えるわけにはいかなかった。
(これをこっちにやって…。そうすりゃ、こっちのを向こうに持ってけるか…。)
紙切れをカウンターに置いて、重そうな台に向かい合う。
咲はしゃがみ込んで、床を傷つけないように台の下に布を噛ませようとする。
だが、重い。
片手で持ち上げようしても、十分に隙間ができない。両手で持ち上げて、足で押し込もうとしても上手く入ってくれない。
「クソッ…。」
もう一度しゃがんで何とか隙間に布を押しやる。そのとき、台を持ち上げていた咲の手が滑った。
「痛っ!」
- 24 :サマー・エンド-2-
:2006/03/24(金) 23:29:44 ID:???
- 慌てて手を引いて指を押さえる。鈍痛がゆっくりと指から伝わって、咲は顔を歪めた。
痛みが治まるまで、体を強張らせてじっと床に座り込む。
それから、指を押さえていた手を少しずつ解いた。
爪が割れて、血が滲んでいた。
(大したことないよ………。)
咲は立ち上がって指を口に含む。苦い、マニキュアの味がする。
店内に目をやる。
中途半端に動かしたディスプレイ。片付けてしまった商品。このまま朝を迎えてしまったら、店は開けられない。
このままやりきるか、元に戻すかしないと、どうにもならない。
口の中に、マニキュアの苦味が広がる。血のザラザラとした感触と一緒に。
咲は泣いてしまいそうだった。
もう疲れて、どうにもできなく、座り込んで、泣いてしまうのを必死で我慢した。
折角、自分の店を持って、夢を叶えて、やりたいことをやっているはずなのに、上手くいかない。
何でこんな惨めな思いをして座ってるんだろう。こんなことがしたかったのかな。
そんな思いが、針のように咲の胸を突き刺していた。
- 25 :サマー・エンド-2-
:2006/03/24(金) 23:30:44 ID:???
- ガシャンガシャンとシャッターが咲を呼んだ。
顔を上げずにいる咲。
またシャッターが、ガシャンガシャンと咲を呼んだ。
咲は台の隙間から顔を覗かせる。
シャッターの下から、見慣れた革靴が覗いていた。
「あれ? 春日部さんいるー?」
覗き込んだ笹原と目が合った。
「あ。ごめん、忙しかった?」
咲は慌てて立ち上がった。笹原に顔を見られないように。
「ああ大丈夫。いま開けるよ!」
鏡を顔を近づける。もしかしたら、本当に泣いてしまっていたんじゃないかと不安だった。そして、目に一杯に溜まった雫を拭った。
「どうぞー!」
半分ぐらいまで上げたシャッターを笹原が中腰になって潜った。
咲は奥に引っ込んでバッグのあったはずの絆創膏を探している。
笹原は店内を見渡して言った。。
「模様替えしてたの?」
「そー!」
笹原に聞こえるように大声を張り上げる。でも本当は、さっきまでの弱いな自分を隠したかったのかもしれない。
「ちょっとねー! 急に思いついてさ!」
「へぇ〜。」
笹原はカバンをカウンターにおいてに奥の咲を覗いた。
「でも大変じゃない? 一人でやってるの?」
笹原の言葉に、胸に痛みが走った。また大声を張り上げる。
「まーねー! でも急だったからさー!」
「恵子は? 今日は休み?」
「そー!」
「高坂君は? 頼めなかったの?」
絆創膏を巻く手が、一瞬止まった。薄暗がりの店の奥で、コンクリートの壁が咲を囲んでいる。
- 26 :サマー・エンド-2-
:2006/03/24(金) 23:31:30 ID:???
- 後ろから注ぐ灯りは咲の背中だけを照らして、彼女の顔は見えなかったが、笹原はその背中を見つめるのは後ろめたいような気がして、
視線を店内に戻した。
「別に声かけてくれれば、俺も手伝ったのに〜。」
「ありがとー! でも疲れてんのに力仕事させちゃわりーじゃん?!」
咲は笑いながら出てきた。顔は貼り付けたような笑顔だった。満面の、あるはずのないない元気一杯の笑顔を浮かべていた。
笹原は自然と上着を脱いでYシャツの袖を捲くっていた。。
「どれ動かすの?」
「え……、いいの…? もう夜遅いじゃん。疲れてんでしょ…?」
笹原を見る咲の目に、隠したはずの弱さが揺らいでいた。
「いや、これほっといて帰れないって。春日部さん怪我してるし。」
そう言って笹原は笑った。いつもの困ったような笑顔。
咲の心にふと温かいものがこみ上げてくる。もう暫く感じていなかった気持ち。
高坂のたまに見せる優しさに感じていた安らぎ、喜びに似ている気がした。
また涙が零れそうになって、咲は大袈裟に笑い飛ばした。
「あははは、そりゃ悪かったねー! 今日来たのが運の尽きだよ!」
「ま〜ね〜、じゃあどうしますか、店長。」
「んじゃ、この台の下に布挟んで。床が傷つかないように。」
「りょーかい。」
笹原がしゃがむと、咲もしゃがんだ。反対側の笹原か見えない場所に。
そこで咲は、また瞳を拭った。
- 27 :サマー・エンド-2-
:2006/03/24(金) 23:32:05 ID:???
- 壁のドライフラワーが外されて、その位置に目の覚めるようなグリーンの数字が並んだ時計が掛けられた。
他にも小さい雑貨が場所を変えた台や棚の上に置かれ、フックに掛けられた帽子が壁を彩った。
以前の近寄りがたい高級感は薄れて、
「何かポップな感じですね店長。」
とは笹原の感想。
「まあ、ちょっと気取り過ぎてたからね。ちょっとはカワイクしないと。」
「なるほどね…、で、もう午前4時なんですけど店長…。」
笹原はさすがに疲れ果てて床に座り込んでいた。口からは後悔の苦笑いが漏れている。
「いやあ…。感謝の言葉もないよササヤン。」
咲は申し訳なさそうに頭をかいた。同時に言い尽くせないほど感謝もしていた。
自分のワガママに最後まで付き合ってくれたのだから。
「まったく、春日部さん一人じゃ絶ぇ〜〜〜対っ終わってなかったよ!」
「あはは…、返す言葉も無いよ…。」
咲もペタリと床にへたり込んだ。カフェインのせいで冴えた目は、充血してピリピリと痛い。
台の移動からディスプレイのし直しまで酷使した足腰は痺れるように疲労してる。
少し汗ばんだ顔の化粧が気持ち悪い。手は少し赤くなって、まだ重みの感覚が残っていた。
「俺が来なかったらどうするつもりだったの?」
笹原の問いかけに、思わず咲は自嘲を漏らした。
(そうだな…、どうにもならなかったんだろうなあ…。)
自分の的外れな意地と頑張りに、笑ってしまっていた。
「ササヤンのこと言えないよね、これじゃ。」
「え、何が?」
「ほら、昨日頑張り過ぎるなって言ったじゃん? 普通にしてろって。お前の方だろって話だよな。あはは…。」
疲れた笑い声を上げる咲。笹原に目をやる。
笹原は少し悲しそうな顔で曖昧に笑っていた。それは体の疲れとか、寝不足よりも暗く笹原を覆っていた。
「どした………?」
- 28 :サマー・エンド-2-
:2006/03/24(金) 23:32:52 ID:???
- 「ああ………、まあ………。」
「なによ………?」
笹原は一瞬口元を歪ませて、そして情けなく笑った。
「またやっちゃよ…。春日部さんに頑張るなって言われてたのに………。まーた空回っちゃった…。」
「そうか…。」
咲はそう言って、笹原から視線を逸らした。とても見ていられなかった。悲しそうで、寂しそうで、苦しんでいた。
自分と同じようだった。
「わりぃね…。せっかくアドバイスしてもらっといて。この体たらくで…。」
「そー言うなって…。」
二人は黙って座っていた。まだ朝にはほんの少し遠い夜の終わり。街は静かで、外からは何も聞こえない。
剥き出しの業務用エアコンの穏やかな排気音が、店内に降り注いでいた。
あまりに静かで、咲も笹原も、このまま時が止まってしまうような気がした。
不意にけたたましいカブのエンジン音が走り去る。
まだ開けない夜の街を、新聞を満載したカブがけたたましく疾走していく。
笹原はゆらゆらと立ち上がって、大きく体を伸ばした。
「それじゃ帰ろうか。」
「そうだね…。」
咲も立ち上げって体を伸ばした。見違えた店内に少しだけ顔を綻ばせていた。
咲が言った。
「タクシー呼ぶ?」
「そうしよっか…。割り勘なら大したことないしね…。」
わざとらしくふらつきながらながら咲は店の奥に行って、バッグの中から携帯を取り出した。
ひとつ息を吐いて戻ろうとしたとき、バッグの横の紙袋に気が付いた。
「あああーーーーー!!!」
- 29 :サマー・エンド-2-
:2006/03/24(金) 23:33:25 ID:???
- 絶叫する咲。
「わっ! なにどうしたっ!!」
笹原は驚いて店の奥を覗いた。
すると、さっきよりも更に疲れた顔と、疲れた足取りの咲がふらふらと出てきた。手に少し大きめの紙袋と懐中電灯を持って。
「ごめんササヤン。これ忘れてた。」
「なに…それ…?」
恐る恐る笹原が尋ねる。
「電球…。灯りも変えようと思ってたの忘れてた………。悪いけど、もうちょい付き合って………。」
「ははは…。そんなことか…。ちゃっちゃとやっちゃいましょ。」
言葉とは裏腹に、いや、ある意味言葉通りに、椅子を電灯の下に持っていく笹原の手に力は乏しい。
二人とも苦笑を浮かべて、最後の仕事に取り掛かった。
「私が登るから、ササヤンちゃんと押さえてね…。」
「りょーかい…。電気のスイッチどこ?」
咲が手に持った新品の蛍光灯でカウンターの横の差した。付いているスイッチはひとつ。
パチンと押すと、店内は真っ暗に変わった。
笹原が懐中電灯で咲の足元を照らす。脚が高くて座る部分の小さい椅子の上に、咲が恐る恐る登る。
「ちゃんと押さえててよ! これフリじゃないからね!」
「そんなダチョウ倶楽部みたいなことしないって…。」
膝をぶるぶる震わせながら立ち上がると、笹原は光を咲の手元に向ける。椅子を押さえながらだと、けっこう難しい。
咲はまず今まで使っていた蛍光灯を外して笹原に渡す。
椅子の上からでも背筋を伸ばさないと電灯まで届かない。狭い椅子の上でそうするのはかなり怖かった。
蛍光灯を外すのにも以外に力が要って、危うくバランスを崩しそうになってしまった。
- 30 :サマー・エンド-2-
:2006/03/24(金) 23:34:14 ID:???
- 「ダイジョブ?」
「ちょいビビッた…。新しいのちょーだい。」
新しい蛍光灯を受け取ると、今度は少し慎重に力を加減して電灯にセットする。
グチンという心地よい手応えが咲の手に伝わった。咲は安堵のため息を漏らす。
「オッケー。ついたー。」
一旦、椅子から降りる。
そのとき、笹原の手が差し出されていた。
懐中電灯はあさっての方に向けられていた。
真っ暗な店内に慣れない咲の瞳に、それはぼんやりと映っていた。
「ありがと…。」
咲は小さく呟いて笹原の手に触れた。
温かく、少し固い掌の感触。笹原の掌の感触…。
咲の囁くような声を聞いたとき、笹原の頭に灼けるような痺れが走った。
体が強張って、熱くなっているの分かった。
何気なく差し出した手に感じた、体温。柔らかいさ。汗。
いつの間にか、笹原はゆっくりと咲の手を握り返していた。
- 31 :サマー・エンド-2-
:2006/03/24(金) 23:34:55 ID:???
- 笹原の瞳に咲の顔が映る。暗闇に霞んでいた顔が、少しずつ、鮮明に…。
自分の目を見つめる咲の顔が、少しずつ、少しずつ、鮮明になって…。戸惑うような彼女の目が、自分を見つめている。
(何してんだ私…、ササヤンの手を握って…、ササヤンもびっくりしてんじゃん…。早く…離さなきゃ…。)
咲は自分の顔がみるみる熱を帯びていくの感じた。
自分の指を優しく握る甘い感触。硬直していたはず手の力は気が付けば失われて、笹原の手に身を委ねている。
咲はその事実に戸惑っていた。そして胸の奥にこみ上げる幸福感に、弱弱しく抗っていた。
(うわ、うわ…。春日部さんこっち見てる…。なに手ぇ握ってんだ俺…。おかしいって…。)
笹原も同じだった。
力の抜けて身を任せる咲の手が、笹原の思考をかき乱した。少しずつ、でも確かにその手を握り返す力を強める自分の手。
触れ合った肌と肌の間が、火に触れているように熱く、氷に触れているように冷たく、心地良いことにうろたえた。
体から意識が抜けていく気がして、それを必死になってつなぎ止めようとするが、
咲の発する甘い匂いに、徐々にそれも覚束なくなっていった。
二人とも目を逸らそうとした。
でも、咲の瞳は真っ直ぐに自分の目を射抜いて、吸い込まれそうに目を逸らすことができない。
咲もまた、暗闇に光る笹原の瞳を見つめることしかできないでいた。
懐中電灯が、二人の足元を照らす。
二人の脚は、倒れ込もうとするように傾きかけていた。
(まずいよ…。俺には荻上さんがいるのに…。こんな…。)
(ぁ………、コーサカ…。ごめん…。)
そのまま、二人は唇を重ねた。
真っ暗な、夜明け前の部屋の中で。
つづく
- 32 :サマー・エンド-2-〜あとがき
:2006/03/24(金) 23:44:00 ID:???
- 重ね重ねグダグダな投稿になってしまってすいませんでした。
>>4
いきなり500kオーバーって言われてしまって。
一応、笹咲という予定だったのでこんな感じになりました。
名前なんて飾りです・・・ とうわけでお気になさらずに。
>>5
どうもありがとうございます。次も頑張ります。
>>8
ああ・・・、すいません。
なんかそう言われると、次が書きにくいです・・・
>>9
春日部さんちって金持ちだったんですか・・・
素で知りませんでした・・・orz
でも、自分で作った借金は自分で返す主義ということで、どうかひとつ・・・。
笹原は、愚痴と分かりつつ深刻にならないように、彼なりの気遣いということで、どうかひとつ・・・。
どうもすいませんでした。
- 33 :マロン名無しさん
:2006/03/25(土) 00:26:22 ID:???
- サマーエンドって・・・「終わり」ニュアンスですか^^;
妙にリアルで・・・
マジ 続きヨロ。
- 34 :マロン名無しさん
:2006/03/25(土) 03:07:59 ID:???
- 笹咲って何か言いにくいな。
- 35 :恵子と斑目
:2006/03/25(土) 08:44:18 ID:???
- だれもいない…投下するなら今のうち…
というわけで、恵子と斑目のお話です。一部に『下品』な描写があります。
嫌いな人はスルーしてください。
なんか書いてるうちに井原裕士の”ドールマスター”に似た話があったことを思い出し、
自分の引出しの少なさに愕然としてたりして…
- 36 :恵子と斑目
:2006/03/25(土) 08:45:44 ID:???
- 会社の飲み会を終えて、斑目は自宅へ向かっていた。
酔った体に冷たい空気が心地よい。
年の瀬を控えて、町も慌しさを加えている。
そんな中、飲み屋街の一角にあるコンビニの駐車場に、見知った顔を見つけた。
彼女は駐車場の車止めに座って、缶ビールを飲んでいる。
「恵子くん?」
斑目の声に、恵子はちらりと視線を向けるが、すぐに視線を外して新たな缶ビールに手をかける。
周りを見渡すと、あちこちにビールの空き缶が転がっている。
「えーと、何をしてるのかな?」
「見りゃわかるだろ」
間抜けな質問に、ぶっきらぼうに返す。
「あ、あー、もしかしてデートの待ち合わせ、とか…?」
「逆だバカ。置いてかれたんだよ」
恵子の声に怒りと苛立ちが混じる。
- 37 :恵子と斑目
:2006/03/25(土) 08:47:13 ID:???
- (しまった、地雷踏んだ。ここは何とか回避しなくては!)
アルコールの染みた脳みそをフル回転させる。
「あー、訳とか聞いてもいいかな?」
「ハァ?アンタ人の色恋に口を出す気?サイテーだな」
恵子は斑目を睨みつける。
(間違えたー!フォローしないと!)
脳みそは熱暴走一歩手前。
「なんなら送ってやるけど…」
「うるさいな!アンタにゃ関係ないだろ!!」
斑目に怒鳴りつけると、恵子は勢い良く立ち上がる。
酔いと立ちくらみが恵子の足元をふらつかせ、バランスを崩した体はある方向へ倒れこみ、その先には偶然斑目が居た。
恵子は斑目に抱きかかえられる形になった。
「お、おい。大丈夫か?」
- 38 :恵子と斑目
:2006/03/25(土) 08:48:01 ID:???
- 斑目の脳内は沸騰している。恵子の体からは酒と香水と、女の匂いがして。
恵子は斑目の安物のスーツにしがみつく。
そして。
「うぷ」
「?」
「げろげろげろげろ…」
〜〜少々お待ちください〜〜
(…人間は想定を大きく外れる出来事に出会うと、かえって冷静になるもんだな)
斑目は現状を酷く冷静に、あるいは他人事のように分析していた。
生暖かいスーツの汚れを無視して、恵子の背中をさすってやる。
「…気持ち悪い…」
「ずいぶんと飲んでたみたいだからな」
- 39 :恵子と斑目
:2006/03/25(土) 08:48:50 ID:???
- 「…水…」
「ちょっと待ってろ」
傍の自動販売機から、ミネラルウオーター買って渡す。
恵子は口をゆすいだ後、二口ほど飲むと、今まで閉じていた目を開ける。
目の前には腹から腿にかけて、べったりとくっついた、ソレが。
恵子にも現状がわかってきた。
「ああ!ごめん!!えっと、どうしよー!?えーと、えーと…」
青くなってパニックを起こす。あたふたと周りを見渡す。もちろん手を貸すような酔狂な人間などいない。
(昔の大野さんを見ているみたいだな…)
どこまでも他人事な斑目。
恵子はふと何かを見つけたように固まる。斑目がその視線を追うと、そこにはいわゆる『ラブホテル』が。
- 40 :恵子と斑目
:2006/03/25(土) 08:52:44 ID:???
- 恵子は斑目の腕を抱き、強引に歩き出す。行き先はもちろん『ラブホテル』だ。
「ちょっと、一体何…?」
斑目の質問に答えることなく、駆け込む。
手際よく受付を済ませ、目的の部屋の前まで移動し、ドアを開け、部屋に入る。
(いったいワタシはナニをしているのでショウ?)
恵子に引きずりまわされながら、斑目はのんきな事を考えていた。
「脱いで」
部屋に入るやいなや、恵子は斑目に告げる。
現状を理解できていない斑目がぼんやり立っていると、苛立たしげに歩み寄り、服を脱がせ始める。
「ちょっ、ちょっと待って?一体何がなんだかさっぱり分からないのデスガ?」
斑目の質問を無視して、黙々と脱がせていく。
気が付けば上半身はシャツ一枚。
恵子はベルトを引き抜くとズボンの前を開ける。
- 41 :恵子と斑目
:2006/03/25(土) 08:54:39 ID:???
- 「わーっ!!待った!タイム!そこはダメ!」
叫びながら斑目はあとずさる。そこにはベッドがあって、足を引っ掛けた斑目は後ろへ倒れこむ。
両足が地面から離れる。瞬間、恵子は靴を脱がせ、斑目が体を起こすより早くズボンを引き抜いた。
斑目がずり下がったトランクスを引き上げながら起き上がる。
恵子は脱がせた服をハンガーにかけると、バスルームに入り、湯の入った洗面器とタオルその他を持って出てくる。
やはりぼんやりとそれを眺めていた斑目にタオルとバスローブが手渡される。
「風呂、入ってきな。脱いだ奴は籠に入れとけよ」
「いや、あの、ワタシ状況が全くわからないのデスガ?」
「…脱がすよ?」
「ワカリマシタ」
とりあえず言われるままに風呂に入る。
(…一体ワタシはココでナニをしているのでショウ?ええと、もしかしてフラグが立ったとかいう奴デスカ?いやでも彼女は後輩の妹であって自分には想う相手がいてでも彼女は好きな人がいてこっちの気持ちには全然気付いてなくてだから清く正しく美しい交際を…)
のぼせたのか、だんだん訳のわからない考えになってくる。
「とりあえず、あがるか…」
- 42 :恵子と斑目
:2006/03/25(土) 08:56:11 ID:???
- 風呂から上がり、さっきまで着ていた下着を探す。見当たらない。仕方無しにバスローブを羽織ると、妙に丈が短い。裾を引っ張りながら前かがみに歩く。
部屋では恵子がハンガーにさっきまで斑目の着ていた下着を乾している。
「あの〜、上がりましたが…」
「あ、そう?こっちも一段落ついたし、アタシも入らせてもらうかな」
そう言うとまっすぐにバスルームへ向かう。
斑目はハンガーにかかったスーツに近寄る。
きれいに、とはいかないが、目立たない程度にはなっている。
(へー、たいしたもんだ。しかし下着を洗われたのは困ったな…乾くまで帰れんじゃないか)
そんな事を思いながら、とりあえずベッドに横になる。ぼんやりと天井を見つめる。
ふと自分の格好に気付く。このままで居ると、バスルームから出てきた恵子に自分の”その”部分が見えて…
斑目は大慌てでシーツにもぐりこむ。
- 43 :恵子と斑目
:2006/03/25(土) 08:57:33 ID:???
- 「何やってんの、アンタ?」
ちょうどよく恵子がバスルームから出てくる。そのままベッドの反対側に腰を下ろす。
「あー、恵子クン?ちょっと説明してくれるとありがたいのだが…」
シーツから頭だけ出して、斑目が尋ねる。
「何を?」
恵子はベッドの上で体の向きを変える。化粧を落とした所為か、妙に幼く見える。しかしバスローブ一枚羽織っただけの体は、十分に成熟していて。
斑目の位置からは胸の谷間や、神秘の場所が見えそうで、思わず顔を真っ赤にして背を向ける。
「いや!今の状況を!ですが!」
恥ずかしさと後ろめたさを隠すため、声を荒げる。
恵子はクスクスと笑ったあと、斑目に這い寄り、耳元に囁く。
「ス・ケ・ベ♪」
「どうか説明してください。おねがいします…」
斑目の声は半泣きだった。
- 44 :恵子と斑目
:2006/03/25(土) 08:58:51 ID:???
- 「別にそんな深い理由があるわけじゃないよ。あのままじゃタクシーも使えないだろうし、歩かせる訳にもいかないと思っただけ」
「…」
斑目はすねている。
「ああ、一応朝まで部屋を取ってるから、泊まっていってもいいよ」
「…」
まだすねている。
「あ〜…なんかアタシも帰るの面倒になってきたな…うん。アタシも泊まるから。よろしく」
恵子はそう宣言すると、斑目の隣に潜り込む。
「〜〜〜!!」
斑目は無言で悲鳴をあげると、ベッドから転げ落ちる。
「あのね!恵子クン!年頃の無関係な男女が一つのベッドで眠るなんて、そんなはしたない事は…!」
「…何言ってんの?」
「だから!俺が襲い掛かったりしたら!困るでしょ!」
「別にいいよ?」
思いもかけない答えに斑目が凍る。再起動。
「…ハイ?」
「だから別にいいってば。今回はこっちが悪いんだし、一回くらいならいいよ?」
斑目はぽかんと口を開けている。なぜか怒りが込み上げる。
「…ふざけんな」
- 45 :恵子と斑目
:2006/03/25(土) 09:00:18 ID:???
- 「え?」
「ふざけんなよ!そんな簡単にするだの何だの言うんじゃねーよ!」
「…もしかして、童貞?それとも心に決めた人でも居るとか?」
「!」
図星を指されて沈黙する。
「あ、そう…そういう考えなのか…ごめん、からかい過ぎた。そういうのもありだよね…」
恵子の声に影が差す。
「じゃあ、お互いに手はださない、と言う約束で…一緒に寝よ?」
「帰る」
「今から家に帰って、明日間に合うの?…それにそのスーツ一張羅でしょ?」
「ぐ…」
「あきらめてアタシと一緒に寝なさい」
斑目は大きなため息をつく。
「…なんで俺なんかと一緒に寝たいんだ?」
「…誰でもいいの。一人になりたくないだけ」
そう言うと恵子は顔を背けた。
その様子に斑目は不安を感じ、時計を見て明日の仕事を思い、仕事と一連の騒動の疲れを感じ…受け入れた。
- 46 :恵子と斑目
:2006/03/25(土) 09:01:46 ID:???
- 「わかった。一緒に寝る。…ただし、エッチは無しだ!」
「エッチって…」
恵子は笑いをかみ殺そうとして、耐え切れずに笑い出す。だんだん声が大きくなり、最後には叫ぶように笑う。頬を涙が流れる。
「ハァ…おやすみ」
最後にそう言って黙り込んだ。
部屋の明かりが消える。
斑目も急に眠気が押し寄せる。
眠りに落ちる寸前、「ありがと」と聞こえたような気がした。
翌朝、斑目が自分の腕枕で寝ている恵子に大慌てしたり、うっかり着替えを覗いてしまって怒られたり、ホテルを出る際、自分の手を引いて歩く斑目に、恵子がちょっと感動したりしたのは、また、別の機会に。
- 47 :恵子と斑目
:2006/03/25(土) 09:03:03 ID:???
- 以上です。途中で連投規制に引っかかってあせった…。
- 48 :マロン名無しさん
:2006/03/25(土) 09:45:27 ID:???
- エッチはなしw
- 49 :マロン名無しさん
:2006/03/25(土) 14:08:24 ID:???
- >サマーエンド2
なっ、何だこの展開は?
どう反応したらいいものやら…
練炭買ってきたけど、最後まで読んだら反応に困って練炭叩き割っちゃいました。
つづき…どうなんでしょう…
>恵子と斑目
ありそうw
特にさせたげると言われて怒る斑目とか…
- 50 :マロン名無しさん
:2006/03/25(土) 17:01:38 ID:???
- >サマー・エンド-2-
ああ、始まってしまいましたね傷の嘗め合い。
ころがり落ちるような悲劇にならなければ良いが……。
ともかくも、笹への気持ちが自然と傾いて行く咲のアパートの場面と、2人の見つめ合いの場面は好みでした。
続きを期待してます。
>恵子と斑目
斑目の狼狽とプライドが滑稽でGoodでした。
最後にふれた[別の機会]の部分がとても微笑ましいw
なんか知らんうちに容量オーバーしてたんですね。SSスレはげんしけんしか見たことないから分からないけど、どこもそんなもんですかね?
これから一本投下しようと思ってたけど、どんどんやっちゃうとマズイかな。なんかタイミングをはかれないw
- 51 :妄想少年マダラメF91(0/7)
:2006/03/25(土) 18:15:18 ID:???
- ……平成3年……
……斑目晴信、10歳の晩夏……
「妄想少年マダラメF91」
///////////////////////////////////////////
ということで、すみませんまたもスレ汚しにきました。
1つSSを投下いさせていただきます。
「ZZ」飛び越えて、「F91」です。
タイムスリップ要素はないですが、「時間」が絡みます。
みなさんいろんな曲をモチーフにされてるようなので、私も1つ2つ音楽を聴きながら書いてました。
「Deja-vu (in
Paris)」布袋寅泰(インストゥルメンタル)
「History Repeating」Propellerheads&Shirley Bassey
マニアックですみません。
またも第一部ということになりますです。ごめんなさい。
しばらくしたら7スレ投下予定です。
- 52 :妄想少年マダラメF91(1/7)
:2006/03/25(土) 18:19:34 ID:???
- ……And I've seen it before
And I'll see it again
Yes I've seen it before
Just little bits of history repeating……
【2005年9月24日13:15/秋葉原駅前】
秋葉原駅。電気街口から次々と、リュックを背負った暑苦しい男達の群れが吐き出されては、ラジオ会館や大通りの方へと消えて行く。
この日彼等は、有名エロゲメーカーの新作発売を目指して来ていた。発売日が急きょ数日伸び、異例の土曜日午後の発売となったのだ。
雑踏の中、何十人かは、そわそわといそいそと、同じ方向へ歩みを進めて行く。今にも駆け出しそうだ。
「慌てないでくださいねー。余裕は十分ありますからね!」
大通りに面した歩道に看板を持った男が叫んでいるが、誰も聞いちゃいない。
小走りのオタクが、「何で10時の開店時に売らないのかなァ?」とブツブツ独り言をいっている。
その横で、背を丸めながらボチボチ歩いていた男は、聞こえないほどの小声で、「間に合わなかったからじゃねーの……あんなに根詰めていたのに大変だな高坂も」と呟いた。
その男は、髪を雑に分けている。頬が少しこけた輪郭に、少し大きめの丸メガネ。ひょろりとした長身に、白いワイシャツと、よれたサマースーツを羽織り、磨いていない安物のローファーを履いている。
どこにでもいる疲れたサラリーマン。
彼の名は斑目晴信。この時、就職初年度。今日は午後から代休を取った。
斑目も昔なら、競うように駆け出して、必死に小売店の列にならんでいたであろう。
しかし、就職してからはスタミナと瞬発力を仕事に奪い取られていた。
(プシュケの新作、高坂に頼めば良かったかな? でも春日部さんにスゲー嫌がられそう……)
そんなことを考えながら、とぼとぼと歩を進める。
歩道の脇にできた人だかりを避ける。おおかたメイド喫茶のフリフリメイドが立っているんだろう。
「マニアックが大手を振って表を歩くようになっちまったなぁ。昔みたいにアングラな方が燃えるのに」と一人でブツブツ言っている。
「昔か……アキバに初めて来たのは何時だっけ?」
「この道」が長いだけに、さすがに思い出せなかった。
- 53 :妄想少年マダラメF91(2/7)
:2006/03/25(土) 18:22:13 ID:???
- 【1991年9月21日13:15/秋葉原駅前】
秋葉原駅。電気街口から次々と、リュックを背負った私服の小学生の群れ3、40人がワラワラ出て来てラジオ会館の手前に並ぶ。
この日彼等は、社会科見学旅行の一環として、この街にやってきた。周りの雑音をかき消すほどに、皆落ち着きがなく、今にも駆け出しそうだ。
「班行動を乱すなよー。3時には集合だからな!」
ジャージ姿でファイルを手にした担任の先生が叫んでいるが、誰も聞いちゃいない。
男子生徒の一人が、「何でここに来たのかな?」と、傍らの生徒に尋ねた。
尋ねられた男の子は、けだるげに、「先生がウォークマンでも買いたいからじゃねーの?」と答えながら、手元のメガネを拭いてかけ直した。
メガネの男の子は、髪はちょっと長髪、えりあしを少し伸ばしている。輪郭に比べて大きめの丸メガネをかけている。
ひょろりとした長身に、長袖と半袖のTシャツを重ね着し、ジーパンと、有名メーカーによく似たパチモンバッシュを履いている。
どこにでもいる男の子。
彼の名は斑目晴信。この時、小学3年生。今日は一部自由行動だ。
大通りに出た班目は、「じゃ、またここで待ち合わせな!」と、班を組んだクラスメートと別れた。
(班行動なんてやってられないよなー)
そんなことを考えながら、うきうきと歩を進める。
大通りの賑やかな店舗の数々に目を移す。ファミコン人気やスーパーファミコンの登場、パソコンの普及によって、秋葉原にもゲームソフトを扱う電気店や、ゲーム専門店が続々と現れていた。
「ドラゴンクエーサーW・中古で売ってないかなあ!」
- 54 :妄想少年マダラメF91(3/7)
:2006/03/25(土) 18:26:55 ID:???
- 【2005年9月24日13:20/大通り】
斑目は大通りをプラプラと歩く。大手レコード店が近づき、目当てのゲーム店が視線の先に見えてきた。
しかし、前方の横断歩道を歩いて渡っている女性の姿が目に入ってきた瞬間、彼は我が目を疑った。
(嘘だー!なんでこんな所に春日部さんがいるよ? 幻でも見てるのか)幻ではない。春日部咲がいかにもつまらなそうに、秋葉原の街を1人で歩いているのだ。
咲は重い足取りで横断歩道を渡りきり、トボトボと末広町方面へと歩いていく。5、6メートル離れたところに立っている班目には全く気付かない。彼はアキバ男たちの間に、ものの見事に馴染んでいるからだ。
(コーサカが来てるのか? でも何か変だぞ)
思わず4、5メートル後ろを歩く班目。付かず離れず。
前を歩く咲がふと立ち止まり、量販店の店先で山の様に飾られた携帯電話に目を向けた。
瞬間、班目も思わず立ち止まり、反射的にゲームセンターの柱に身を隠す。(何やってんだ俺、まるで尾行じゃないか)身を隠しながら自己嫌悪に陥る。
脳内のスクリーンには、恋愛ゲームのイベントシーンのように、萌え絵に変換された咲を追いかける自分を思い描いている。
(あーもぅー! 相手は知り合いだぞ! とにかく声を掛けてみよう。何かトラブルかも知れん)
そう思って意を決したとき、脳内スクリーンにお馴染みの恋愛シミュレーションの会話シーンが映し出され、コマンド画面が現れた……。
(よし!)咲の背後から肩を叩いた。
「あの、かすかb……」
その瞬間、斑目は目の前が真っ暗になった。大きな衝撃と激痛が腹を貫いた。咲が振り返り様、反射的にボディに拳をブチ込んでいたのだ。
「もしかして…オラオラですかあぁ……!」
斑目は古いネタを叫びながら、ドッギャァァァンッ!と仰向けに倒れた。
「痴話喧嘩か?」「何やってんだ?」周りの歩行者が少し足を止めて2人を見ては、また動き出す。
咲は思わず殴ってしまった相手の顔を見て驚いた。
「あれ? あぁッ斑目!? ゴメン! 変な人がつけて来てると思ってつい……! どうしてこんな所に……」
薄れていく意識の中で斑目は、上から自分を覗き込んでいる咲の心配そうな表情と、薄手のシャツから覗いた豊かな胸元に、ちょっと幸せな気分を味わった。
- 55 :妄想少年マダラメF91(4/7)
:2006/03/25(土) 18:29:24 ID:???
- 【1991年9月21日13:20/大通り】
ドラゴンクエーサーを売っている店を探す斑目少年は、大型電気店の前で、明るい栗色の髪の女の子を見かけた。
赤いランドセルを背負い、ひまわりの柄をしたワンピースを着ている。瞳が大きくて美人で、斑目は思わず見とれてしまった。
リコーダーを手に、不安げに周りをキョロキョロ見回している。自分より下級生みたいだ。フラフラと行くあてがなさそうで、誰かを探しているようにも見える。
(迷子かな?)思わず4、5メートル後ろを歩く班目。付かず離れず。
後をつけるだけでなかなか声を掛けられない。女の子がふと立ち止まり、電気屋の店先を覗き込んだ。
瞬間、斑目も思わず立ち止まり、反射的に別の電気店の柱に身を隠していた。(何やってんだ俺、これじゃ尾行じゃないか)身を隠しながら自己嫌悪に陥る。
脳内のスクリーンでは、ドラクエ(ドラゴンクエーサー)の町中のシーンのように、平面ドット絵の秋葉原の街で、ドット絵の女の子にピッタリくっついて歩く自分の姿を思い描いている。
(あーもぅー! 女子は苦手だよ! とにかく声を掛けてみよう。本当に迷子かも知れない)
そう思って意を決すると、脳内スクリーンがピロロロロロ!と変わって、ドラクエのお馴染みの戦闘BGMと、コマンド画面が表れた……。
(よし!)女の子の背後から肩を叩いた。
「あの、ちょっときm……」
途端、斑目は目の前が真っ暗になった。大きな衝撃と激痛が腹を貫いた。少女が振り返り様、反射的にボディにリコーダーの先端をブチ込んでいたのだ。
「ア……アテナぁ〜!」
斑目は古いネタを叫びながら、ズシャアァァァッ!と頭から倒れた。
「イジメか?」「病んでるのね最近の小学生は 」周りの歩行者が少し足を止めて2人を見ては、また動き出す。
女の子は、思わず人を攻撃してしまったことに驚いた。
「あれ? あぁッゴメンナサイ! 変な人がついてくると思ったから……」
薄れていく意識の中で斑目少年は、自分の側にしゃがみ込み、潤んだ瞳で心配そうに覗き込んでいる女の子の表情と、スカートの奥に覗いたぱん○に、ちょっと幸せな気分を味わった。
- 56 :妄想少年マダラメF91(5/7)
:2006/03/25(土) 18:32:02 ID:???
- 【2005年9月24日13:35/大通り】
ようやく痛みが治まってきた。
斑目は歩道脇のガードに腰を下ろして休んでいる。咲が隣に寄り添い、「ほんとに悪いね!」と、片手を上げてゴメンのポーズ。もうこれで3度目だ。
咲は、自販機でジュースを買って来てくれていた。2人とも同じ銘柄の紅茶。フタまで空けてくれた咲の気遣いに、斑目は(ケガの功名か……なんかこういうのも悪くないな)と、思わず顔がほころぶ。
「でも何で春日部さんがアキバにいるんだよ?」腹をさすりながら斑目が問う。
彼女が言うには、斑目も会ったことのある昔の女友達が、話題のドラマ「電波男」に感化され、アキバに行きたいと話を持ち掛けたらしい。
「あぁー、新宿に居た人ね」
斑目は相づちを打ったが、あの夜のことを思うと、ほんの少し胸がチクチクする。憂い顔を悟られぬよう、すぐに、「最近多いからねー、勘違いした人」と愛想良く話を合わせた。
「でしょー、あんたらの実態も知らないニワカが多いのよ」
「さすがオタに詳しい春日部さん」
咲はその台詞に反応、「それよ! 友達も“彼氏オタクデショ、詳しいデショ”ってね。それでも店の準備で忙しい中、1日空けてあげたのよ」と呆れ顔。
もう斑目を置いてけぼりで話を進める。
「そしたらどうなったと思う? 駅で待ち合わせしてたら、“彼氏に呼ばれた。また今度ね”ってメールが来やがって! 腹立たしい!」
言い終わるやいなや、咲は凶暴な顔つきで手にしていた紅茶の空カンを地面に叩き付けた。目の前の歩道をいそいそと歩いていたオタクどもが一瞬足を止める。
「高田馬場におばあちゃん家あるんだけど、このまま行くのもシャクだし……」
歩き去っていくギャラリーの視線を無視しながら、咲は空きカンを拾い上げる。腰を下ろしながら髪をフワッとかきあげる所作の美しさに、斑目は見とれていた。
(周りから見たら、俺たちどんな関係に見えるのかな……つり合わないかな?)
(あ……何か昔、こんなことがあったような……)
「…………を買って帰ろうと思ったけどオタクばかりで、息を止めて歩くのが精いっぱい……って、ねえ斑目聞いてる?」
- 57 :妄想少年マダラメF91(6/7)
:2006/03/25(土) 18:37:24 ID:???
- 【1991年9月21日13:35/大通り】
ようやく痛みが治まってきた。
斑目少年は歩道の脇に腰を下ろしている。女の子が隣にチョコンと座って寄り添い、「本当にゴメンなさい〜」と、両手を合わせた。もうこれで3度目だ。
斑目は、「ダイジョーブ、ダイジョーブ!」と引きつった笑顔を見せる。
シャンプーの香りが漂ってくる。斑目は顔がボーッと火照ってくるのを感じ、(カワイイなあ、うちのガッコこんな子いないよ……)と、思わず顔がほころぶ。
「でも何で1人で歩いてたの? 迷子?」腹をさすりながら斑目が問う。
彼女が言うには、友達が本を買いたいと言うので、学校帰りについてきたという。古本だから普通の本屋にはないそうで、電車を乗り継いで近くの駅まで来たのだ。
どうやら本を買った後、歩いているうちにはぐれたらしい。
「近くに古い電車の博物館もあるからって、ドンドン先に行っちゃうんだもん」
このあたりの地理に疎い斑目は、「ここら辺の街は、中古のモノを売ってる店が多いんだね」と答える。自分もゲームの中古ソフトを探しにきていただけに、変な納得の仕方をした。
斑目は、話に出てきた「一緒だった友達」が男の子だと知って、ほんの少し胸がチクチクした。
だがすぐに、「大丈夫か? 一緒に友達を探してあげようか?」と話掛けた。
「んにゃ! いらない!」と、女の子はきっぱりと断り、「アイツも私も、駅が分かればちゃんと帰れるもん」と、すくっと立ち上がった。
斑目を倒した後で背中のランドセルに刺しておいたリコーダーをむんずと掴み、ズバッと引き抜いた。
(おぉっ! Tガンガルのビームサーベル!!)思わず激しく反応する斑目。気付くと女の子は険しい目つきになっていた。
ポンポンと、リコーダーを警棒のように手の上で踊らせながら、「勝手に歩き回りやがって、アイツ絶対シメてやるもん!」と幼い声でドギツイ一言を吐き捨てた。
(あ、あれ? ドユコト?)嫌な予感がよぎる斑目。女の子が斑目を見下ろして言う。
「ねーねー、ちょっと」
「ハイ?」
「ツマンないからどっか遊びに連れてってよぉ」
「さっきまでの弱々しいキミハイズコ?」
「あれはゴメンナサイをしてたからぁ。上級生なんでしょ、どっか連れてってー“オニイチャン”!」
ささやかな幸せの直後に、危機感を感じる斑目少年であった。
- 58 :妄想少年マダラメF91(7/7)
:2006/03/25(土) 18:39:47 ID:???
- 【2005年9月24日13:40/大通り】
「……ちょっと、斑目、聞いてるの!?」
咲の声にハッと我に返った斑目は、「あー、聞いてるよー」と慌てて返事をした。
遠い記憶は思い出されないままにかき消された。
咲の話を聞いていなかった斑目は、上手くごまかそうとして、「高坂の会社のゲーム、今日出るんだけど、知ってた?」と尋ねた。
「え、ホント!スゴイネ…!」咲は何も知らなかったらしい。
パッと明るい笑顔を見せたが、すぐにジト目で斑目をにらみ、「……って、何でアタシがエロゲーの発売を喜ばにゃいかんのよ!」と毒づいた。
さらに咲は汗をかきつつ、「……まさかここら辺歩いてるオタどもはエロゲーを買いに……」と、歩道を行き来する男達に視線を移す。
「……斑目も?」と尋ね、一歩二歩と後ずさって距離を置く。「え、俺、俺はエーと……」すぐに赤くなる顔はごまかしがきかない。
「悲惨だわー、こんなオタどもの性欲のためにコーサカが命削って働いているなんて!」
さすがの斑目も、「ヒドイ言いぐさだー」と苦笑いするしかなかった。
もう咲はヤケになってきた。周りに聞こえるように大声で、「ホントにこいつら、アニメ絵にしか発情しないのかねー」と一言。オタクどもの足が再び、一瞬止まったように感じられた。
嫌な予感がよぎる斑目。咲はガードレールに腰掛けている斑目を見下ろして言う。
「斑目、ツマンネーからどっか食べに連れてってよ。ここら辺においしい店ねーの?」
「うわー、なんか春日部さん1年生のころのテンションに戻ってね?」
ささやかな幸せの直後、危機感を感じる斑目であった。
(あれ?……やっぱり昔、こんなことがあったような……)
……それは昔見たことを
再び見ているだけ
そう、昔見たこと
ただ、ちょっとした歴史の繰り返し……
(つづく)
- 59 :妄想少年マダラメF91(あとがき)
:2006/03/25(土) 18:44:41 ID:???
- えーと、分かり辛い話でどうもスミマセン。
斑目の少年時代のボーイミーツガールを、現代の咲に絡めてやっちまいました。
「F91」の「F」は「フラグ」、「91」は「1991年」を意味しています。
失礼しました。
- 60 :マロン名無しさん
:2006/03/25(土) 18:55:57 ID:???
- >妄想少年マダラメF91
リアルタイム乙!
こういうシンクロというかデジャブ的な話は大好きです。続きに期待してます。
あと非常に個人的な感想かつ蛇足ですが…(できれば読み飛ばしてください)
咲さんはあまり人に(特によく知らない人には)ねだったり、頼ったりするタイプには思えんのですよ。
だからこそ「いい女」である、というか…それは幼少期からの”素質”だと思うのです。
ついでに、「オラオラ」より、「まっくのうち、まっくのうち」(アニメ版)だったら個人的には大爆笑。
- 61 :F91(移動中)
:2006/03/25(土) 19:17:55 ID:???
- さっそくのレスありがとうごさいます。
>いい女
あー、定義に納得。たしかに“話を転がす”ために咲の最後の横暴を作り出していたんで反省。
勉強になります。ご指摘ありがとうごさいました。
- 62 :マロン名無しさん
:2006/03/25(土) 19:56:05 ID:???
- 感想ありがとうございます。
>>33
まあ・・・あれですね・・・。
単純にハッピーエンドにはできないですよね・・・。
笹ヤンにはもう少し苦しんでもらうかな。
>>46
ふう。とりあえず人ひとり救うことはできたようですね・・・。
ちょっと無理ありましたかね・・・?
できるだけ納得できるように頑張ったんですが・・・。力が及びませんでした・・・。
これも修行・・・。
>>50
やはり原作での鉄板ぶりからすると・・・、
二人がくっつくとしたらこういうのしかないかな、と。
見つめ合う場面は書いてて不安だったので、そう言っていただけるとありがたいです。
構想ではあと2話で終了予定ですが、もしかしたら3話になってしまうかも・・・。
どうすべ・・・。
- 63 :マロン名無しさん
:2006/03/25(土) 19:57:50 ID:???
- すいません間違えました。
>>46じゃなくて>>49でした。
すいません。
- 64 :マロン名無しさん
:2006/03/25(土) 21:34:35 ID:SD9CLvuw
- SSスレ6、もうたってたんだ…(泣)やっとたどり着いたヨ…
さて、一気に読んだので、とにかく感想を。
>サマーエンド2
笹咲かあ…お互いに疲れてるからって、この展開は…。
うーむ…でも、意外性が面白い。SSならでは。とにかく続き、期待してます。
>恵子と斑目
良かった!!GJ!
斑目が恵子に、「Hはなしだからな!」と言えたことに、敬礼。
漢を見ました。
>F91
小学生斑目&春日部さんにぐっとキターーーーー!!
いつもいつも発想の奇抜さに感心いたします。
ああ、もう、小学生のかわいい斑目が、かわいい春日部さんをつれて…
もう脳裏にはっきりと思い浮かびますヨ…!!
- 65 :マロン名無しさん
:2006/03/25(土) 22:23:02 ID:SD9CLvuw
- さっきまで、SSスレ5で迷子になってました。orz
さて、遅くなりましたが、MとSの距離の感想、ありがとうです。
>>534
根性というか、気力だけで書きました。眠い目こすりながら…。
キャラへの愛が溢れてる、と言っていただき感激です。
また少し間を置いたらSS書きます。まだまだ書きたいもの、たくさんあります。
>>535
愛はもう、これでもか!と注ぎました。特に斑目には…
>>536
激励感謝します。
自分の書いたSSを一度冷静に見つめなおし、また再び歩き出す所存でアリマス!
>>538
538で書いていただいたこと、全てワタクシがSSでいいたかったことです。
あと相性の話も。ガンダム占いでジオングとエルメスがベストカップル、という根拠がなければ、今回の話書けませんでした。
>>537
星の声では説明しきれなかったこと、全部説明できていたらいいのですが…。
あと、高坂には、天才ゆえの苦悩があるのではと思い、書きました。
周りからは理解されない、高坂の内面があるような気がして。
>「スペックが恋愛の全てじゃない」って結論、綺麗事の絵空事かもしれないが信じたいものです。
私は信じてます。高嶺の花と付き合うのに、自分が高嶺の花と同等である必要はないと思います。
必要なのはどれだけ好きでいられるか、そのために努力しつづけられるか、だと思う。
結構、リアルでもこういうこと、あるとおもうのですが…。どうでしょう。
読んでいただいた方、本当にありがとうございました。
- 66 :マロン名無しさん
:2006/03/25(土) 22:57:11 ID:???
- 感想どうも!
>>64
>笹咲かあ…お互いに疲れてるからって、この展開は…。
嗚呼・・・、重ね重ね力不足です。
次回でちゃんと筋が通るように頑張ってみます。
次は斑目さん出したいけど、どうしよう・・・。
怖いな・・・。
- 67 :マロン名無しさん
:2006/03/25(土) 23:08:32 ID:???
- >>瞳の奥の景色
「有り得ない鉄板カップル崩し」をした上でのカップリング。
しかし長編で丹念に書かれた事によって、それが「有り得る事」として読めました。
高坂の落ち着きどころも、なるほど…と、納得しました。
高坂の心の開くタイミングが遅かった、ってのは有り得ますねぇ。
笑顔でシャットアウトしてますから。
>>サマー・エンド2
笹荻のすれ違いがっ!!うーん、解決策が見えるだけに、この掛け違いはもどかしいですね。
しかし現実には、そう易々と解決できない事の方が多いのも事実。
続き物は途中での評価が難しいですね。とにかく続編頑張ってください。
>>恵子と斑目
出てくるところを誰かに目撃されるというベタなオチじゃなくて良かったです。
何もしなかった展開もGJ!!
>>妄想少年マダラメF91
鏡写しの展開が面白いですね。過去の接点があったなんて。。。
まさに外伝!!
このままでも綺麗にまとまってるのに続くとは、楽しみです。
- 68 :マロン名無しさん
:2006/03/25(土) 23:33:09 ID:???
- >>妄想少年マダラメF91
作者さんはせんこくげんしけんの方ですよね?
いやー、今回も切り口が面白い!!
毎回、趣向を変えて楽しませてくれますね〜。
引き出しの多さに脱帽。
- 69 :F91感謝
:2006/03/26(日) 00:46:08 ID:???
- 駄文を読んでいただいた方々に心から感謝です。
>>60(あらためて)
>咲さんはあまり人に(特によく知らない人には)ねだったり、頼ったりするタイプには思えんのですよ。
確かに、そういう性質は幼少期にしっかりと育まれているはずですよね。春日部家は食育もしっかりやっていそうだし。
このご指摘は痛恨でしたー。進行重視でキャラを殺したというか…。まあ次でフォローしながら頑張ります。
>>64
>小学生斑目&春日部さんにぐっとキターーーーー!!
今回は導入なんで、次回いかにカワユク描けるか……自信無いですけど期待しないで待っててください。子ども版班目の容姿は、服を買いに行く話でちょびっと回想に出てくる中学生班目(後ろ姿)などから妄想しました。
>>67
>まさに外伝!!
今回の7レス分で終わらせることも可能だったんですが、「せんこく」みたいに原作へのリンクを張ったり、小学生時代の可愛らしさをもっとだしてあげたいと妄想が膨らんできたので…蛇足にならんよう頑張ります。
>>68
>毎回、趣向を変えて楽しませてくれますね〜。
そう評価していただけると嬉しいです。ただ逆に、真っ当な話や普通の恋愛が書けないんで、変化球ばっかりやってます。
ここでちょっとだけネタばらしを…。
○ローファー=語源は「怠け者」だそうで、ものぐさ男に合うシンプル靴。班目にも合うことでしょう。
○ドラゴンクエーサー=笹原は好きなゲームに同タイトルの「3」を選んでいます。
○ドッギャァァァンッ!(2005)、ズシャアァァァッ!(1991)=有名擬音を使いたかったので、車田対荒木となりました。
○「電波男」=テキトーです。この時期、フジで「電車男」やってたはず。
○Tガンガル=班目はこの頃から信者だったということでw
○物語の最初の英文と、最後の訳は、「History
Repeating」という曲から。歌うのは007の「ゴ〜ルドッフィンガ〜」で有名なシャーリーバッシー。実にシヴィ曲です。
この話、またまた続き物でご迷惑かけますが、どうかご容赦&おつきあいください。
- 70 :マロン名無しさん
:2006/03/26(日) 07:55:03 ID:???
- >>F91
ああこれは、ちょっと待って下さい。
ミスターすき間産業の人、これはまた何と言うか、えらい意欲作を。
次回楽しみ。
あと「電波男」という本は実在するから、「電車マン」とかにすればよかったかも…
- 71 :マロン名無しさん
:2006/03/26(日) 23:49:05 ID:???
- よし、日曜の夜は人もいないしチャンス!
げんしけんが終わるだの終わらないだのって色々なスレでいわれてるのに
こんなお馬鹿なSS書いててイインデショウカ・・・。
10レスで投下します。
- 72 :ラジヲのお時間(1/10)
:2006/03/26(日) 23:49:42 ID:???
- 〜BGM・『神無月曜湖のげんしけんラジヲ!』テーマソング〜
〜FO〜
「どうも〜、いつ誰が聞いてるか分からないげんしけんのネットラジオをお聞きの方、
こんばんは〜、こんにちは〜、おはようございます〜。
今日も私、神無月曜湖が皆様に楽しい時間をお届けいたします!」
〜BGM・完全にFO〜
「しとしとじめじめして嫌な日が続きますが、皆さんはいかがお過ごしですか?
私なんかはコスプレの衣装がかびたりしないか心配で、
梟さん所に乾燥剤置いてきちゃいまいした。なんといっても、湿気が一番の大敵ですしね!
お百姓さんたちは雨がないと困るから、あまり天気が悪いとか言ってはいけないようですけど、
私としてはやっぱり晴れの方がいいと思うんですよ〜。
コミフェスも晴れじゃないと大変ですし!
日本に帰ってきて一年目の冬コミ三日目、雨になっちゃって大変でした〜。
荷物も多かったですし、色々と・・・ねえ?
サークルの先輩も、滑って転んで骨折しましたし。
・・・まあ、ちょっとそれは雨のせいだけとも言い切れませんけど・・・。
運悪すぎ?みたいな。」
〜笑い声が響く 小さく『うるせ〜』という声〜
「そうそう、コミフェス、といえば、今年の夏コミ、衣装決めました!
特に気合入ってるのは、三日目にやる最近再び注目されたあれですよ!あれ!
分からない人も、分かった人も、コミフェスでお会いしましょう!
やっぱりコミフェスのような大きな場所は、色々な人と交流できて楽しいです!
コスプレする人もしない人も、一緒に楽しくお話できたらな〜、と思います。
この三年ばかりでお友達もとても増えましたし。」
- 73 :ラジヲのお時間(2/10)
:2006/03/26(日) 23:50:24 ID:???
- 〜何かを探す音〜
「さてさて、お便りの紹介です!
えーと、RN「ういろー」さんからのお手紙です。いつもありがとうございます〜。
あ、初めての方に一応説明を。
お手紙、といってもメールです。元々それでしか応募してません。
『いつも楽しく聞かせていただいております。曜湖さん。
前回の放送時に言われていた『サークルの新入会0』の事ですが、
非常に可愛そうでなりません。事故があったとはいえ、悔しい思いをしてるでしょう。
しかし、今後入部希望などもいる事と思います。
実際私がサークルの会長をしている時はそういうこともままありました。
なので、今後に期待していただくといいかと思います。
元気のない曜湖さんだと、とても聞いていられないので・・・。
それでは、次回も楽しみにしています。ういろーでした。』
ういろーさん、ありがとうございます!
ういろーさんは最初の放送から聞いていただいているリスナーなのですが、
いつも言葉が優しくて私、とても癒されています。
そうですか〜、途中入部ですか〜。
私も九月からだった事を忘れていました。そういう人が、今後来ないとは限りませんものね。
よし、少しやる気出てきたぞ〜、頑張ります!
ういろーさん、またお手紙待ってますね!
〜『くじびきアンバランス』・CI〜
「さて、ここで音楽です。ちょっと懐かしい感じで、行こうかなあ、と。
くじびきアンバランスの主題歌で、『くじびきアンバランス』」
〜『くじびきアンバランス』〜
- 74 :ラジヲのお時間(3/10)
:2006/03/26(日) 23:51:28 ID:???
- 〜『くじびきアンバランス』間奏・FO〜
「今日、なんでこれをかけたかといいますと、ちょっと理由があるんですねえ〜。」
〜ガタガタいう音・言い争う声が聞こえる〜
「あ、ミキサーの田中さん、無理っぽいですか?え?
プロデューサーのベンジャミンさんが?あ、そうなんですか。
あ、入ってきた。」
〜ドタドタいう足音 椅子にドスンと座る音〜
「今日は、我がサークルの作家さん、於木野鳴雪さんに来て頂きました〜。」
〜拍手の音〜
「あのですね、於木野さんは夏コミで本を出すそうで、今日はその辺りのお話でも、と。
そのジャンルがくじアンだったもので、今日はくじアンの音楽を流してみました〜。
於木野さん、一言お願いします〜。」
〜キュキュキュ とマジックで書く音〜
「え、出るとはいったが話すとは言ってない?
・・・あらぁ〜、そういう態度に出るんですねぇ〜。そうですか、そうですか。
あら、笑みなんて浮かべて・・・。それで勝ったとお思いですか?
フフフ・・・。あることない事いっちゃてもイインデスヨ?」
- 75 :ラジヲのお時間(4/10)
:2006/03/26(日) 23:52:16 ID:???
- 〜ガタッ と椅子から立ち上がる音〜
「なら自分の言葉でお話くださいね〜。」
「ひ、卑怯ですよ!」
「どっちが卑怯だか・・・。」
「う・・・。こ、こんにちは於木野鳴雪です、は、始めまして・・・。」
「そう、それでいいんですよ!全く世話かかせて・・・。ねえ、笹原さん。
あら、プロデューサー何書いて・・・、あはははは!」
「え・・・、『於木野さん、よく出来ました。花丸。』・・・。馬鹿にしてるんですかー!」
〜ヒィ〜 ヒィ〜 と引き笑いの音 ガラスを叩く音〜
「はあ、はあ。ま、まあ、それはともかく。於木野さんの話はCMの後で。お楽しみに!」
〜ジングル・『神無月曜湖のげんしけんラジヲ!』〜
〜CM〜
「生き残る事は出来るか?」
「宇宙世紀の戦場を行きぬく一つの部隊」
「壊される世界、生まれる思い」
「引き裂かれた二人に未来はあるのか?」
「機動戦士ガンガル第801小隊」
「OVA第7巻、7月1日発売!」
〜ジングル・『神無月曜湖のげんしけんラジヲ!』〜
- 76 :ラジヲのお時間(5/10)
:2006/03/26(日) 23:58:38 ID:???
- 「・・・やー、CMの、観ました?」
「まあ、一応・・・。」
「今後の展開が気になるところですねー。」
「・・・ですね、特に引き裂かれた二人がどうなるのか、
ちゃんと収拾をつける気があるのか、監督にちゃんと聞いてみたいところです。」
「あー、そういえばインタビューで「まかせとけ〜」って泥酔状態で答えてたそうですけど。」
「・・・心配極まり無いですね。」
「まー、期待しないで待ってますかー。で、ですね。」
「・・・えーと・・・。」
「まあ、くじアンのお話でもしながら今回の本について。」
「一応、女性向けの麦×千尋本です。」
「くじアンには思い入れでも?前はハレガンで出すって言ってたじゃないですか。」
「・・・最初げんしけんで作った本がくじアンだったじゃないですか。
あの時に書いた事と、原作が結構気に入ってた事もありました。
あと、縁起かつぎも・・・、あるかもしれません。」
「なるほど。げんしけんとくじアンは切っても切れない関係ですからねえ。」
「そういうもんなんですか?」
「三年前は人気が最盛期でしたし、一昨年にはコスプレ大会で優勝したのも会長のでしたし。」
「ああ、かすか・・・」
- 77 :ラジヲのお時間(6/10)
:2006/03/26(日) 23:59:19 ID:???
- 〜ドン という大きなガラスを叩く音〜
「・・・その話題には触れない方がいいみたいデスヨ?」
「・・・そうですねえ。そして去年には先ほど出たくじアンの会長本発行でしたね。
とにかくとても関係が深いですよぉ〜。」
「多分、そんな雰囲気を少し感じてたかもしれません。」
「原稿の方は?」
「えっと、いままだネームの状態です。」
「ははあ。これから色々と妄想をこねていくんですね・・・。」
「なんかその言い方嫌です!」
「あらあら、だってその通りでしょう?」
「う・・・まあ・・・。」
「では、このラジオをお聞きの方に何か?」
「・・・いや、別に・・・。」
「それじゃ駄目でしょう!全く・・・。ん?
笹原さん、またなんですか?あらあ、これは困りましたねえ。」
「え?・・・『於木野さん、もう少し頑張りましょう。三角。』もうやめてください!」
「ほらほら、プロデューサーがそういってるわけだから。」
「うう・・・。このラジオをお聞きの方で、もし興味を持たれて、かつコミフェスに来られる方。
サークル『雪見庵』によければお越しください・・・。」
「ほら、できるじゃないですか!お、またプロデューサー・・・。」
「だから、やめてくださいって!」
- 78 :ラジヲのお時間(7/10)
:2006/03/27(月) 00:00:19 ID:???
- 〜ガラスを叩く音。ちょっとした喧騒〜
「ぷぷぷ・・・。今度は『於木野さん、完璧。四重丸。』・・・。おちょくってるとしか思えませんねえ。
なんかプロデューサー、これやってる時だけ人格違うなあ・・・。
さてさて、では再び音楽。同じくくじびきアンバランスから。
EDテーマ、『かがやきサイリューム』」
〜かがやきサイリューム・CI〜
〜かがやきサイリューム間奏・FO〜
「くじアン、アニメ見られてました?」
「ええ、まあ一応。でも、あの監督凄かったですね。
なんかサイケというか、妙な路線というか・・・。」
「なんか感性が元々のくじアンとは違かった感じはしましたね。
そのおかげで途中降板ですから。ある意味伝説に残るアニメかもしれませんねえ。」
「ああ、そうかもですね。
・・・その辺りはプロデューサーやディレクターさんたちの方が盛り上がりそうですね。」
「昔は毎日のように語りまくってましたからねえ。」
「はあ。」
「さてさて、ではこの辺でいったんCMです。」
〜ジングル・『神無月耀湖のげんしけんラジヲ!』〜
- 79 :ラジヲのお時間(8/10)
:2006/03/27(月) 00:01:34 ID:???
- 〜CM〜
〜寅さんのテーマ〜
「ワタクシ、ツルペタ属性、前世はヘビの生まれ」
「姓は斑目、名は晴信、人呼んでマムシ72歳と発します」
「ある時は太平洋の潜水艦」
「またあるときは不可思議ワールド」
「マムシの旅はどこまでも続く。」
「時には命を危険にさらし」
「またあるときははかなく恋に破れる」
「今度はどこへ、いくのか、マムシ72歳」
「オタクはつらいよ・DVDBOXディスク15枚組み」
「好評発売中!」
〜ジングル・『神無月曜湖のげんしけんラジヲ!』〜
「CM聞いて思い出しましたが、オタクはつらいよ、
10万ぐらいするらしいですねー、BOX。」
「うわ〜・・・。でもマムシ好きなら買いそうですよねえ・・・。」
「そりゃ、買う人がいなければ発売されないでしょうからねえ。」
「単品もあるらしいですね。」
「ですね〜。・・・さて、この辺でコーナーです!」
「ああ、あの・・・。」
「今日は於木野さんにもやってもらいますから!」
「ちょ、ちょっと待ってください!も、もう出ます!」
〜椅子から立ち上がる音 歩く音 扉のノブの音〜
〜遠くで、『あ、開かない!』の声〜
- 80 :ラジヲのお時間(9/10)
:2006/03/27(月) 00:02:15 ID:???
- 「いや〜、この機会を逃す我々ではありませんよ〜。
さあ、観念してお座りなさいな。」
「だってコーナーって・・・。」
「フフフ・・・。『漫画・恥ずかしい台詞を大声で言ってみよう』!!」
「いや〜〜〜〜〜!!」
「観念しなさい、助けは来ないですよ・・・。」
「笹原さ〜ん・・・。」
「無駄無駄、すでに彼は私の手の内ですよ。」
〜小さく聞こえる笑い声〜
「うう・・・。」
「さて、初代パーソナリティ、マムシさんが始めた『ガンガルのセリフを大声で言ってみよう』
から始まってずいぶん経つこのコーナー。前回は「魔方陣くるくる」でしたが・・・。」
「あれ、聞きましたけど、聞いてるほうがはずかしいですよ・・・。」
「今回は、やっぱりくじアンですよ〜。」
「って、マジっすか・・・。」
「於木野さんに、ぜひとも!」
「・・・ど、どれですか・・・。」
「会長の、『行かないで!千尋ちゃん!』で!」
「そ、そんな恥ずかしい台詞でも無いじゃないですか・・・。」
「じゃあ、思いっきりシャウトしてください!」
「いや、ちょ、待ってくださいよ!」
「感情こめていうと結構恥ずかしいですよ〜、この台詞。」
「うう・・・。」
「さあ、さあ!時間が終わっちゃいますよ〜。」
「・・・い、『行かないで・・・。千尋ちゃん・・・。』」
「ちょっと待ってくださいよ〜。それじゃぜんぜん感情こもってませんから〜。
それじゃさしもの千尋ちゃんも行っちゃいますって。
実際原作じゃ行っちゃいますけどね〜。
まあ、別のでもいいんですよ〜。他にもネタはたくさんありますから〜。」
「い、いや、うう〜・・・。『いかないで!千尋ちゃん!』」
- 81 :ラジヲのお時間(10/10)
:2006/03/27(月) 00:08:33 ID:???
- 〜むは〜 という息を吐く音〜
「いいですね〜!私の声じゃちょっと違うかなって思ってたんですよ〜!」
「こ、これで満足ですか!」
「はい〜、あ、プロデューサー?・・・あら〜。」
「え?・・・『正直、萌えた。』・・・本当ですか?」
「あらあら、顔赤くしちゃって。確かに、良かったですね!
さて、げんしけんラジヲでは恥ずかしい台詞を大募集中です!
新しい古いは関係なし!恥ずかしい台詞をどんどん送ってくださいね!
メールは、『ゲンシケンアットマークラジヲドットシーオードットジェイピー』まで!
ここで音楽。於木野さんの大好物・ハレガン主題歌集より。『リライト』」
〜リライト・CI〜
〜リライト・FO〜
「ハレガン、やっぱりまだまだいけますか?」
「・・・そうですね。話も大分佳境に入ってきたとは思うんですけど。
まだまだ楽しめます。」
「やっぱり大佐のグループは魅力的ですし、主人公の兄弟もいいですよね〜。」
「ええ。それと異国の王子様とその家臣とか、キャラ、いいですよね。」
「そうですね〜・・・。え?はいはい、『あの忍者は荻野さんに似てると思うんだけどどうか?』」
「はい?そ、そうですか?」
「ああ〜、そういわれればって感じですね〜。」
「はあ。」
「ハッ!なるほど、今度そのコスプレをってことで・・・。」
「なんでそうなるんですか!」
「フフフフ・・・。」
- 82 :ラジヲのお時間(11/10)
:2006/03/27(月) 00:09:11 ID:???
- 〜ガラスを叩く音〜
「ハッ!軽くワープしてましたね〜、すいません〜。
あ、そろそろお時間ですね。長い間お聞きいただきありがとうございました。
今日のゲストは、於木野鳴雪さん。於木野さん、次回もよろしくお願いしますね〜。」
「はい・・・は?じ、次回?」
「あ、聞いてませんでした?次回から『曜湖・鳴雪のげんしけんラジヲ!』に変わるんですよ〜!」
「聞いてないですよ!!今回だけっていうから出たのに!」
「ああ〜、それはゲストとしては、ってことだと。」
「は、嵌められた!!」
「じゃあ、こうしましょうか〜、メールで『於木野鳴雪再登場キボン』が10通以上来たら、出るっていうのは?」
「それって少なくないですか!!?」
「そんなことないですよ〜、普段メールなんて一回やって10通来たら多い方なんですから〜。」
なんですか、それともそんなに自分に出て欲しい人が多いとでもお思いですか?」
「う・・・じゃあ、それでいいですよ!」
「安心してください、もちろん、偽装工作なんてしませんから。」
「し、しまった・・・。また挑発に乗って・・・。」
「皆さん、メール本気でお待ちしてます。ではでは!
また次回の放送でお会いしましょう!パーソナリティは神無月曜湖と」
「え、あ、於木野鳴雪・・・ってまだパーソナリティじゃないですよ!!」
〜喧騒と共にBGM・CI 喧騒がだんだんとFO〜
〜BGM・CO〜
- 83 :ラジヲのお時間(オマケ)
:2006/03/27(月) 00:10:45 ID:???
- 「いやー、今回の放送、今までとは違ってたね〜。」
「お、ヤナ聞いてくれてんの?あれ。」
「まあね、ヘビーリスナーだと思うよ〜。」
「お、おい・・・。もしかしてあのメール・・・。」
「な、何の事かな〜?」
「あ、怪しい・・・。」
「ま、まあ、それはともかくさ。あの荻上さんが良くあそこまではっちゃけたね〜。」
「いやー、笹原の奴がかなりやる事を進めてねー。」
「そうか〜、よかったよかった。次回の放送楽しみだな〜。」
「そういやお前今何やってんの?」
「ああ、印刷所で事務。」
「印刷所って・・・。」
「同人もやってる、ね。」
「フーン・・・。」
「たまに個人で同人誌出すにはいい環境だよ。」
「お前も楽しそうにやってるんだねぇ・・・。」
「お前は?」
「・・・キカナイデ・・・。」
- 84 :71 :2006/03/27(月) 00:13:11 ID:???
- レス数まちがえましたな。
ラジオネタは前誰かがやられてた気がするのですが、
それはともかくとしてラジオ聞いてたら書きたくなりました。
いいたい事は特に無く。
以上!
- 85 :マロン名無しさん
:2006/03/27(月) 00:18:55 ID:???
- >ラジオのお時間
GJwwwwwww
プロデューサー笹やんGJwwwwwwwww
次回「曜湖・鳴雪のげんしけんラジヲ!」 期待してますwwwwwww
- 86 :マロン名無しさん
:2006/03/27(月) 00:21:48 ID:DMAgWsrr
- >ラジヲのお時間
リアルタイム乙!
今月の展開でちょっと、かなり、凹んでたので、こういう楽しい話はむしろGJ!!
神無月曜湖さんの喋りがとにかく楽しい。あと流され受けな於木野鳴雪がww
CMが!!めちゃ豪華でした!!もう何度も噴き出しましたwww
- 87 :マロン名無しさん
:2006/03/27(月) 00:22:45 ID:???
- つっづっきっ!
つっづっきっ!
ヤナがここで出てくるとわ…!
- 88 :マロン名無しさん
:2006/03/27(月) 01:52:52 ID:???
- >>ラジオのお時間
おもしろーーー!!これ、是非次回もっ
えーと
「於木野鳴雪再登場キボン」こうですか!?
- 89 :マロン名無しさん
:2006/03/27(月) 02:16:32 ID:???
- >ラジヲのお時間
ワハハハハハ〜!!!
こんな時期だからこそ、こんなお馬鹿なSSがいい!!
- 90 :マロン名無しさん
:2006/03/27(月) 03:50:31 ID:???
- >ラジヲの時間
わははは!面白い〜。なんかもうSSじゃなく本物のラジオ番組として聞いてたよw(脳内声優でw)
こういうネタってストーリーSSとはまた違う難しさがあると思うんですけどねぇ…俺には書けねぇ。
みんな、荻上をどんな声で想像したんだろうか。
元会長なヘビーリスナーってひょっとして…?と思ってたらおまけでご本人登場で乙!(印刷屋か…)
一部、ベンジャミンを本名で呼んじゃってるのはあれはわざとですか?
おいおい、いいのか??と思って聞いてたけどw
途中の「荻野さん」はただの誤字だよな、と思うんですが。(読みは問題ないし)
- 91 :マロン名無しさん
:2006/03/27(月) 03:51:15 ID:???
- おっと忘れるとこだった。
『於木野鳴雪再登場キボン』
こうですね!?
- 92 :マロン名無しさん
:2006/03/27(月) 05:26:08 ID:DMAgWsrr
- では私も。
『於木野鳴雪再登場キボン』
ついでにマムシさんもうちょこっと出して下さいw
- 93 :マロン名無しさん
:2006/03/27(月) 07:51:19 ID:???
- >ラジオのお時間
「於木野鳴雪再登場キボン」!!
と叫んだところで感想を。
すごいですねー。一見ただのネタにしか見えないのに、ものすごく完成度が高い!
台詞だけなのに、キャラの表情まで見えてきそう。
雰囲気もいかにもラジオしていて、いい!
ぜひ続けて下さい。あと、録音したマムシDJのがあれば、それもぜひw
- 94 :マロン名無しさん
:2006/03/27(月) 08:57:06 ID:???
- >>ラジオのお時間
面白かったです。そして私も
『於木野鳴雪再登場キボン』でw
ああ、それから『漫画・恥ずかしい台詞を大声で言ってみよう』のコーナーにも。
ちょうど手元にあったので、漫画『黄金色のカッシュ」1巻第一話の
カッシュの台詞を鳴雪さんに…(知らなかったらごめんなさい)
「これ以上私の友達を侮辱してみろ!!!
お前のその口、切りさいてくれるぞ!!!」
恥ずかしいですね。鳴雪さんに『友達』って言葉、ぜひ言って欲しいです。
- 95 :マロン名無しさん
:2006/03/27(月) 12:53:19 ID:???
- >>ラジオのお時間
なんていうか、SSスレへの愛に満ちてるね
いやマジでGJです。技巧的にも、純粋な面白さも。
あと「於木野鳴雪再登場キボンヌ」
うわ10通に足りない?www
- 96 :マロン名無しさん
:2006/03/27(月) 12:57:19 ID:???
- あ、オレ書いてねーや。
「於木野鳴雪再登場キボンヌ!」
こうですか!?
- 97 :マロン名無しさん
:2006/03/27(月) 14:11:19 ID:???
- 「於木野鳴雪再登場キボンヌ!」
こうですか!?
わかりません><
- 98 :マロン名無しさん
:2006/03/27(月) 17:33:54 ID:???
- 於木野鳴雪再登場キボン!
これで9人目?
いじられる於木野サンがアワレでタノシイ!
ぜひ再登場願う!
- 99 : ◆suTtoKok..
:2006/03/27(月) 20:17:28 ID:???
- 実は俺も昔に
「え――――第一回――――
ワタクシ春日部咲がげんしけんメンバーにお話をお聞きする新コーナー
『咲が聞く!』をお送りします。記念すべき第一回のゲストは大野です、ホレ」
「えーとえーと、こんばんはっ……」
「その口調も既に懐かしいねェ…、どーよ田中とは?」
「ええ……もう……中距離恋愛になって半年経ちますが、毎日会えてた頃と違って、
週一回、2日しか会えないんですけど、それがまたメリハリが付いていいんです!」
「へーえ、そーゆーのもアリなのかぁ…… ところで付き合い始めの頃はなかなか手を
出さなかった田中だけど、作中でも一切語られてないけどどーなの?」
「いやまぁ……さすがに今は会うたび……って何を言わせるんですか!」
「自分から言ってんじゃーん。いいから全部言っちゃいなよ」
「ええ……咲さんのアドバイスに従って……コスプレでも……
田中さん、コスプレプレイ専用の衣装とかも張り切って作っちゃって……」
「ほーほーほー! んで大野オススメの田中のチャームポイントは?」
「毛ですね!」
「は?」
「いや、田中さん、毛深いじゃないですか。腕とか胸とか……すりすりすると
すっごい気持ちいいんです!」
(……聞くんじゃなかった……)「ま、まーオヤジ趣味の大野にはバッチリだねー、
昔からあんな感じだったのかな?」
「そーですね、やっぱり
とここまで書いて後を思いつかずにお蔵入りにした話があるので、
ラジヲ現視研は非常に楽しんだ。笹最高。
というわけで「於木野鳴雪再登場キボンヌ!」
- 100 :マロン名無しさん
:2006/03/27(月) 20:23:44 ID:???
- 10人だー!
さあオギノさん次も(ry
- 101 :マロン名無しさん
:2006/03/27(月) 21:05:39 ID:???
- >ラジオのお時間
面白いw 於木野鳴雪再登場キボンヌ
はづかしいセリフ!はづかしいセリフ!
- 102 :マロン名無しさん
:2006/03/27(月) 22:56:11 ID:VjCbRd4F
- お祭り騒ぎですな。まさにGJ!!
於木野鳴雪再登場キボ…二回目言うのはアリですか!?
ハズかしい台詞リク。
「ん」で。
- 103 :84 :2006/03/28(火) 00:05:11 ID:???
- よ、読んでくれてありがとうございます・・・。
(((((((((゜Д゜;))))))))ガクガクブルブル
びっくりするくらいの反応にかなりビビッてるんですが^^;
予想外じゃ〜〜〜!!
反応悪くても次回も放映しようと思ってたので次回もお楽しみに!
まとめてレスを!
>プロデューサー
彼らはこのラジオ放映中は会誌の中状態になってます。荻上だけ素です。
>CM
非常に手前味噌で、801小隊も現在鋭意作成中です。監督の言葉とその感想は私の本音です。
>ヤナ
神無月曜湖の〜でいくと決めた時から絶対に出したかったのです。彼は絶対聞くかと。
>本名
彼らは本名を隠してやってるわけじゃなく、キャラ作りの一環でPNで呼び合ってるということで。
なのでたまに本名が出る事もあるという設定で。荻野は完全にミスです^^;
>マムシ
マムシ、色々と考えて見ます。
>恥ずかしい台詞
何かあれば書いてくださると嬉しいです。どれが採用されるか・・・本当のラジオのようにw
ではまた、次回の放送もお楽しみに!
- 104 :84 :2006/03/28(火) 00:05:55 ID:???
- 放映って何だ・・・放送だろ・・・
- 105 :マロン名無しさん
:2006/03/28(火) 00:38:44 ID:???
- >びっくりするくらいの反応にかなりビビッてるんですが^^;
いや、あんなエサを撒いておいて喰いつかないと思う方がオカシイ(W=於木野鳴雪再登場キボン
インタラクティブつうか双方向というか、SSのキャラと読み手との幸福な時間を演出するという意味で楽しいフリだと思います。
次も期待しています!
- 106 :マロン名無しさん
:2006/03/28(火) 01:36:32 ID:???
- 楽しい話を作るはずが、欝描写の多いものになりました(汗)。なんででしょう。。。
では、6レスで投稿します。
- 107 :お家へかえろう(1/6)
:2006/03/28(火) 01:37:39 ID:???
- 時は2006年の冬。陽も傾き赤く色付く頃。
げんしけんの部室では、1年生らしき細身の男子会員と
金髪長髪の少女が言い争っていた。
そう、留学してきたスザンナ・ホプキンスだ。
その表情からは、いまいち感情がつかめない。
言い争うというよりは、男子会員はスーが何か言うたびに
一方的にダメージを負いよろめき青ざめるリアクション。
スーはといえば、きょとんとした様子で、別に怒っている
というわけではなさそうだ。
部室には他に、雑誌を読みふけるポーズで固まっている朽木。
そしてもう、一人、筆頭の下に苦笑いを貼り付けて、二人の間に
手刀で割ってはいる荻上さんの姿が有った。
荻上はスーの無邪気なネタ振りを止めようと話しかけるが、今度は
スーの方がシュンとうなだれてしまった。
うつむきながら、上目遣いで荻上を見つめるスー。
それを見て荻上は天を仰いで、右手で顔を覆った。
朽木はその頃、男子会員に話しかけ、一人で笑っている。
しかしちょっと苦しい表情だ。
彼なりに、場を和ませようと努力をしているのだろうが…。
- 108 :お家へかえろう(2/6)
:2006/03/28(火) 01:38:15 ID:???
- 遠き山に陽は落ちて、山の端から扇のように赤い色が見える。
そんな頃、荻上は独りでとぼとぼと住宅街への帰路をり歩いていた。
もともと猫背だが、今日はさらに背中が丸いような気がする。
足どりも重く、溜息をつき、うらぶれた中年サラリーマンも斯くや
といった疲労が浮かんでいる。
まだ比較的早い時間かもしれないが、4人組の若いサラリーマンが
前方から楽しそうに歩いてくる。全員20代だろうか。
横手にあった赤提灯の暖簾をくぐって扉を開けると、店内の喧騒が漏れる。
今日は金曜日だろうか。店内の客の入りは多い。
荻上はそれらに目を遣ることも無く、歩き続ける。
と、ピタリと足を止めるとズボンのポケットから携帯電話を取り出す。
送信履歴だろうか、方向キーを押すと、その表示をじっと見つめる…。
しばらくそうしていただろうか、左右に首を振ると、ぱたっと
電話を閉じ、またトボトボと歩き出すのだった。
暗い道を歩くと、前方に道が明るく照らされた所がある。
やがてスーパーマーケットの前に差し掛かる。
荻上の疲れた顔が、店の明かりに照らされ、その口元から吐く息が
うっすらと白くなり始めて冷え込んできたのがわかる。
顔を上げることも無く、自動ドアをくぐりスーパーの店内へと
足を進める荻上。
カゴを左手に持つと、惣菜コーナーへ。
つまらなさそうに惣菜を眺め、2回ぐらい往復すると、
結局何も買わずに、人の流れとは逆流しながら店内を
ぐるりと歩き出した。
- 109 :お家へかえろう(3/6)
:2006/03/28(火) 01:38:48 ID:???
- そして通路沿いのワゴンセールの、特価の値札に目を留める。
各メーカーのカレールーとシチューの元が安売りをしているようだ。
カレー粉を手に取ったり、ビーフシチューやハヤシライス、
クリームシチューの粉を手にとって見比べている荻上。
その眉間は寄り、まだ難しい顔になっている。眉間のシワが張り付いて
しまわなければ良いが…。
やがてクリームシチューの元をカゴに一つ入れると、野菜コーナーへ。
ジャガイモ、ニンジン、ブロッコリーにシメジ。何を買うか
迷ったようで、カボチャやサツマイモも、一旦はカゴに入ったが
戻されたりした。そして玉ねぎをカゴに入れると野菜は揃ったようだ。
そして肉コーナーへ。豚肉や牛肉はスルーして、荻上が足を止めたのは
鶏肉売り場だった。カゴを横に置くと、ささ身や手羽を眺め、やがて
胸肉ブロックとモモ肉ブロックを両手に持って見比べる。
しかし、それをどちらも棚に戻すと、結局カゴに入れたのは
骨付きモモ肉だった。
部屋に戻ってきた荻上は、暗い部屋に明かりを灯した。
買い物袋を台所に置くと、手を洗って着替えてくる。
台所に戻ってくると、携帯電話を開き、しばらくメールを打ち
送信し終わるとポケットに戻し、エプロンを掛けると
料理に取り掛かる荻上だった。
まずは大なべをコンロに乗せると、もう一つ片手鍋に水を張り
スイッチを押すと強火に掛けた。
- 110 :お家へかえろう(4/6)
:2006/03/28(火) 01:39:20 ID:???
- 真剣な目をして包丁を手にすると、まな板を置く。そして
手際よく、慣れた手つきで玉ねぎ、ジャガイモ、ブロッコリーを
次々と大きめに切り分け、お湯が沸いたのを見ると
ブロッコリーを下茹でにした。
それを菜箸でボウルにとると、次に骨付き鶏モモ肉を
湯通しにして、皿を取ってきて横に置いた。
その間に他の野菜を大鍋にかけ、コンロの火をつける。
ブイヨンを一欠け入れるとふたをして、しばし待つ荻上。
今は無表情なようだ。部室を出てからさっきまで顔に
浮かんでいた疲れは抜けてきたようだ。
元々、こんな時まで笑顔でいるほど明るいわけではない。
やがて大鍋の蓋の蒸気穴から湯気が立ち上り、荻上は鍋掴みを
左手にはめるとふたを開けた。台所に大きな湯気が広がる。
目を細めて鶏肉を入れ、今度は少し待っただけで火を止めると
シチューの粉をサラサラと振り入れ、お玉で熱心に溶かし混ぜる。
荻上の無表情だった目じりが少し下がり、口元が緩む。
徐々に楽しくなってきたようだ。
冷蔵庫から牛乳を取り出すと少し入れ、ひと混ぜして弱火にする。
部屋にクリームシチューの甘い香りが広がり、香りを吸い込むと
荻上は目を閉じ、柔らかな笑顔を取り戻した。
そのとき、携帯電話が鳴ったようだ。
パチリと目を開けると、急いで開き、しばらく画面を見る。
メールを読み終わった荻上はニヘラ、という感じににやけた。
しかし炊飯器に目をやり、ハッとすると蓋を開け覗き込む。
中は空っぽだった。。。
黒目がちな目を見開き、ガーンとオーバーリアクションに驚くと、
大急ぎで頭の筆を揺らしながら米を研ぎ、炊飯器をセットすのだった。
- 111 :お家へかえろう(5/6)
:2006/03/28(火) 01:39:56 ID:???
- 週末の仕事を終えた笹原は、週末の夜から椎応大方面にやってきた。
いや、帰ってきた、といった方が適切だろうか。
真っ暗な道を厳しい顔で急ぎ足で歩きながら、携帯電話を取り出すと
その画面が光り、顔を寄せメールを確認する。
バックライトに照らされた笹原の口元が少し微笑む。
しかし目元も眉も、固まったままだ。寒さのせいだろうか?
携帯をポケットに戻すと、歩きながらこめかみをグリグリと
両手の指先で押し回す。さらに右手で額の肉をマッサージしている。
溜息をつくが、どうやら仕事の緊張が抜けないようで、その顔は
浮かないようで、とても彼女の元へ向かう男とは見えない。
今日は、仕事と日常の、気持ちの切り替えがうまくいかないようだ。
その自覚があるようで、足取りが重くなる。
笹原はしばらく歩き、ふと道沿いの閉店した商店のガラスに映る
自分の顔が目に留まった。
ガラスに映る顔は険しく、足を止めると笑顔を作ろうとしてみた。
営業スマイルはすぐに出る。しかしこれでは、昔からの笹原を
知る者には笑っていると思われないだろう。
笹原自身も、別の笑顔を作ろうとガラスを覗き込む。
しかしどうも、目元がおかしい。口の端だけで笑う…。
しばらくそうしていたが、やがて手のひらで両の頬を叩くと
怒っているかのように、ズカズカとした足取りで荻上宅へ向かい始めた。
その目は少し潤んでいる。なんと、泣きそうになっているようだ…。
重い足を引きずり、荻上の部屋の前まで来ると足を止め、
気合を入れると笑顔を作った。
笑顔を作る………そう、作り笑顔だ。
- 112 :お家へかえろう(6/6)
:2006/03/28(火) 01:40:29 ID:???
- そのとき、何かに気づいた様子で辺りを見回す。
寒い冬の空気に漂ってくる、温かくやや甘い香り。
隣の部屋の電気は消えている。荻上の部屋からの香りと気づくと
息を吸い込み、大きく息を吐く。
さっきまでいかり肩だった笹原のシルエットは、肩が落ち
少し丸くなる。
笹原は呼び鈴を押すと、部屋の中から聞こえる足音に合わせ
少し姿勢を正すとドアが開くのを待った。
やがて扉が開き、部屋の中から光が漏れ、それより明るい荻上の顔が現れる。
玄関の黄色みを帯びた温かい明かりを受け、笹原の柔らかな目元が照らされる。
よく冷えた夜空に、硬い星の光がきらめいているが、屋根の下の荻上の部屋では、
食卓には熱い湯気を立てるシチューが皿に盛られ、荻上と笹原は冬の寒さも忘れ、
暖かなひとときを過ごすのだった。
- 113 :マロン名無しさん
:2006/03/28(火) 01:42:14 ID:???
- 曲を元に…山崎まさよし氏の「お家へかえろう」を元に、来年の笹荻を妄想しました.…。
- 114 :マロン名無しさん
:2006/03/28(火) 01:44:55 ID:???
- ニヤニヤ(゜∀゜)顔がにやっけっぱなし。
仕事との切り替えがうまくいかない笹原が良かったです。
きっと笹原にとっても荻上さんは大切な存在になっていくんだろうなあ。
・・・やはりげんしけんは続くべきだ!
こんなシーンが見られないなんて人類の損害ですよ!(いいすぎ
- 115 :マロン名無しさん
:2006/03/28(火) 04:05:13 ID:???
- >>114
言い過ぎじゃない!
宇宙レベルの損害です!
- 116 :マロン名無しさん
:2006/03/28(火) 04:27:25 ID:n8Ag99Xd
- >>115
宇宙全ての生命が一つになり、「損害です」と言っている!!
(イメージ:元気玉)
まーあれです。今年の9月になったら「げんしけん2」、荻上とスーの二人が主役で始まりますから。
はっきり言い切ります。言葉は発すると言霊が宿りますから!
>お家へかえろう
書いていただきありがとうございました〜!何気ない描写GJ!
欝描写と言われてますが、だからこそ最後の三行の文に、ぐっときます。
冷たい心と体が一気に温まるのを感じます。
それにしてもこの荻上さん、料理上手そうですね。
この笹原、まだ仕事でうまくいってないのかな。すごく感情移入できる…。
- 117 :マロン名無しさん
:2006/03/28(火) 04:51:57 ID:???
- >>116
>この笹原、まだ仕事でうまくいってないのかな。
変な漫画家の担当になって、心身ともに疲れているのでは想像してみる。
普段から着物着てて、凄く小心で神経質で、太宰信者で、〆切が近付くと自殺騒ぎ、笹原が必死で止めると「死んだらどうする!」…
まあこんな調子ではないかと。
- 118 :マロン名無しさん
:2006/03/28(火) 08:08:31 ID:???
- >>117
絶望した!そんな笹原の仕事振りに絶望した!
- 119 :マロン名無しさん
:2006/03/28(火) 09:26:53 ID:???
- >お家にかえろう
気持ちの温かくなるSSでした。わしも仕事で命削っているので荻上のシチュー食べたい!
手作りの食事は、作る人の手間を思うと割り増しでおいしくなるし、真心を感じて心も温まります。一緒に食べればなおさらです。
手作りの食事、家族との共食が減って来ていることと、青少年犯罪が多いことにも因果関係があるかも。
それを思うと、荻上の手作りで気持ちをリセットできる笹原は幸せだと思う(いや犯罪犯すわけじゃないけど)。
それに比べて斑目の食生活がスゲー心配なんですが……。これをネタに書くか……。
- 120 :マロン名無しさん
:2006/03/28(火) 10:50:20 ID:???
- >>94
間違えた…
斑…もといマムシさんが5巻のレビューで「金色のソレ」って言ってる…
と言うわけですいませんが『黄金色』改め『金色のカッシュ』でお願いします。
Gガンガル?私は好きですが何か?
>>お家に帰ろう
荻上さんのシチュー旨そうだなぁ…うらやましいぞ笹やん!
- 121 :マロン名無しさん
:2006/03/28(火) 13:21:00 ID:???
- >>お家へかえろう
笹やん、漫画家と「甘やかして欲しいんですか」「そうじゃ!」って会話してたり
「笹原さんが面白い言うの載せてワシが失職するんだから、笹原さんも会社辞めて下さい」
言われたりしたんだろうか?
それはともかく、同じく荻上さんシチュー食べたい!!
…ふと気づいたら台詞や内心語りが無いね。
最近SSの形も凝ったのが色々出てきたなあ
- 122 : ◆suTtoKok..
:2006/03/28(火) 23:00:51 ID:???
- 毎度、新作です
例の件用に書きました
笹荻のバレンタイン話です
タイトルは例によってありません
では行きます
- 123 :マロン名無しさん
:2006/03/28(火) 23:01:18 ID:???
- 1
部室の棚の時計はお昼
笹、スーツ姿、手帳を見てニヤけている
今日は2月12日、2月14日に印が付いている
オギー例によってノック無しで入室、ちょいビックリ+笑顔「こんに……あっ、笹原さん」
笹、手帳を閉じて「あっ、荻上さん、こんにちは」
2
荻「今日はもう終わったんですか?」
笹「いや」「今日はこれからでね」「もうぼちぼち出かけるとこ」
無言で見つめ合う二人、微笑み会う、オギーちょっと赤面
荻「あの」「笹原さん」
笹「ん?」
荻「前から聞こうと思ってたんですけど…」
笹「なに?」
3扉
荻「私のどこを好きになってくれたんですか?」
笹超ギックリ、顔のっぺら、汗だく
4
笹うつむく、オギー微笑んで笹の横顔を見てる「…………?」
笹人差し指ふりふり「えーと」「その」「つまり…」
バタン、扉開く
大野「こんにち……あれ? お邪魔でした」
荻「いえ、そんなこと……チッ」余裕のニヤケ顔で
大野「うわー舌打ち」「ムカツキますねー」大野さんスイカ口で対抗
笹は助かったーって顔
- 124 :マロン名無しさん
:2006/03/28(火) 23:01:38 ID:???
- 5
笹「じ、じゃ荻上さん」「またね」
荻「あ はい」「いってらっしゃい」
バタン 見送るオギーと大野
大野「……で」「何の話してたんですか?」
荻赤面「え−と」「……」「大野先輩は」
大野「はい?」
荻笑顔「田中先輩のどこが好きなんですか?」
大野「え?」
6
二人とも赤面
大野「どこって」「そりゃ……」「……もう全部ですよ」
荻「あー……」「そうですか……」
大野「……」「……え」「なんですか?」「そんな話を笹原さんと?」
荻「あ いえ」「私がじゃなくて」「笹原先輩が、私のどこを好きになったのかなって……」
大野「あー」「でも確かに」「昔の荻上さんだと」「ちょっとそれは気になりますね」
荻「……ですよね」
7
大野「ツンデレな所とか」
荻「……デレは無かったと思います」
大野「じゃあツンダメですか?」
荻「何ですかそれ;」
大野「んー」
大野「あ! あれですよ!」 荻「え?」
大野「ほら! 部室でベアトリーチェのコスプレをした時!」「あれがかわいかったからですよ!」
荻「……またコスプレですか?」
- 125 :マロン名無しさん
:2006/03/28(火) 23:01:58 ID:???
- 8
荻「んー」「いや それはないですよー」
大野「そんな事ないですって!」「本当にかわいかったじゃないですか!」
荻「そんな事言ってまたやらせようとしても無駄ですよ!」
大野「本当なのにー」「笹原さんもかわいいって言ってたじゃないですかー」
荻「はいはいわかりましたよ」
大野「……ところで」「荻上さんは笹原さんにチョコとかもう用意してるんですか?」
荻「え?」
9
荻「いや」「もちろん差し上げるつもりですけど」「なんか慣れてなくて買いそびれて……まだ」
大野「手づくりはしないんですか?」
荻「まぁ作れなくはないと思いますけど」「……やっぱり作った方がいいですかね」
大野「んー」「初めてのバレンタインなら」「そーゆーのもアリなんじゃないですか?」
荻「そうですか……」
大野「そこでコスプレでお出迎え!」「プレゼント!」「これですよ!」ビシッ
荻「またそーゆう……」
大野(えーだって効果絶大は実証済みですよ?)
荻(マジっすか!!)
10
荻赤面鉛筆ふりふり「……」「んー」「いや、今回は」「チョコだけにしておきますよ」
大野さんちょっと不満そう、(!)、何か思いつく
大野「あ」「じゃあこれなんかどうですか?」
部室を漁る大野さん
荻「?」
部室外観
「コレですよ」「!」「かわいいですよ? きっと笹原さんも大喜びですよ?」「……」
11
ページ上は5巻105ページみたいな感じで
コスプレ衣装を合わせる大野田中
仕事中笹原小野寺(顔密着)
台所に立つ荻上(チョコ湯せん中)
2月14日――――
- 126 :マロン名無しさん
:2006/03/28(火) 23:02:18 ID:???
- 12
笹原、原稿とセリフ写植を目の前にして腕を組んで悩んでいる
小野寺「コラ」(バシ)本の背表紙で叩く
笹「つ」
笹「あ、す、すいません」
小野寺「何やってんの」「笹原くんの希望でのマガヅン編集部研修だろー」
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小野寺「研修もそろそろ終盤だし」「学生気分が抜けないようじゃ困るぞ」
笹「はっはい」「すいません」作業を再開する笹
椎応大学
部室に入る恵子「こーんにーちはー」
14
中にいるのは大野さんとクッチー、二人とも自然な感じ
大野「あら、恵子さん」
クッチー(こんにちはですにょー)
恵子「ねーコーサカさんはぁー!」
一コマの間
大野、クッチーを向いて「……朽木さん最近見かけました?」
クッチー「……見てないです」
15
恵子「えー」「じゃーねーさんは?」
大野「…………」
クッチー「…………」
(はぁっ)恵子ため息
大野「……バレンタインデー……ですか?」
クッチーちょっと反応、恵子、大野さんを見る
ちらっとクッチーも見る